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1975-03-14 第75回国会 衆議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十四日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十号   昭和五十年三月十四日     午後二時開議  第一 道路運送車両法の一部を改正する法律案     (内閣提出)  第二 畜産物価格安定等に関する法律の一部     を改正する法律案内閣提出)  第三 山村振興法の一部を改正する法律案(坂     村吉正君外十二名提出)  第四 農業協同組合合併助成法の一部を改正す     る法律案農林水産委員長提出)  第五 放送法第三十七条第二項の規定基づ     き、承認を求めるの件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  永年在職議員久保田鶴松君、根本龍太郎君及   び前田正男君に対し、院議をもつて功労を表   彰することとし、表彰文議長に一任するの   件(議長発議)  議員請暇の件  日程第一 道路運送車両法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第二 畜産物価格安定等に関する法律の   一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 山村振興法の一部を改正する法律案   (坂村吉正君外十二名提出)  日程第四 農業協同組合合併助成法の一部を改   正する法律案農林水産委員長提出)  日程第五 放送法第三十七条第二項の規定に基   づき、承認を求めるの件  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内   閣提出)の趣旨説明及び質疑  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提   出)の趣旨説明及び質疑     午後二時五分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  永年在職議員表彰の件
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) お諮りいたします。  本院議員として在職二十五年に達せられました久保田鶴松君、根本龍太郎君及び前田正男君に対し、先例により、院議をもってその功労表彰いたしたいと存じます。(拍手表彰文議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  これより表彰文を順次朗読いたします。  議員久保田鶴松君は衆議院議員に当選すること  十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽く  し民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院  議をもつてこれを表彰する    〔拍手〕     …………………………………  議員根本龍太郎君は衆議院議員に当選すること  十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽く  し民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院  議をもつてこれを表彰する    〔拍手〕     …………………………………  議員前田正男君は衆議院議員に当選すること十  回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし  民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院  議をもつてこれを表彰する    〔拍手〕  この贈呈方議長において取り計らいます。     —————————————
  5. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君登壇を求めます。     〔被表彰議員登壇拍手
  6. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、久保田鶴松君から発言を求められております。これを許します。久保田鶴松君。
  7. 久保田鶴松

    久保田鶴松君 ただいま、私ども三名の議員が、本院在職二十五年に及びましたことに対し、御丁重なる表彰の御決議を賜りました。まことに光栄に存じ、感激にたえません。  ここに、表彰を受けました一同を代表して、一言御礼を申し上げます。  私どもは、昭和二十二年四月第二十三回衆議院議員選挙におきまして、初めて本院の議席を得、新憲法のもとに新たに召集されました第一回国会に臨んだのであります。自来、二十五年の長きにわたり本院に在職し、今日の栄誉に浴することのできましたことは、先輩同僚議員の温かい御厚情、御鞭撻と、多年にわたる郷土皆様方の御理解ある御支援のたまものでありまして、衷心より感謝申し上げる次第でございます。(拍手)  いまや、わが国内外の情勢はきわめて重大であります。私どもは、同僚諸賢の驥尾に付し、微力ではありまするが、議会人として国民各位信頼と期待にこたえるべく、最善努力を尽くす覚悟でございます。今後とも一層の御指導を賜りますよう切にお願いをいたしまして、御礼の言葉といたします。  ありがとうございました。(拍手
  8. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君あいさつにつきましては、これを会議録掲載することといたします。(拍手)     —————————————     根本龍太郎君のあいさつ   このたび、本院永年勤続議員として院議をもって表彰決議を賜りましたことは、まことに身に余る光栄であります。  これひとえに先輩同僚議員各位の多年にわたる御指導の賜であります。謹んで心から御礼申し上げます。  思えば、敗戦の満州から引き揚げた直後、昭和二十二年の総選挙に於いて初当選して以来、今日迄同僚諸賢と共に祖国の復興と民主主義体制確立のために微力を傾けてまいりました。  今や、世界は人類史的な大転換期に立って居り、日本政治も根本的な改革を迫られております。  今回の栄えある受彰を機会に、初心に立返り、わが国のゆるぎなき繁栄議会制民主政治発展のため、微力を捧げて御奉公申し上げたいと思います。  何とぞ、今後とも変らざる御指導、御鞭撻を御願い申し上げ、御礼のごあいさつといたします。     …………………………………    前田正男君のあいさつ  このたび、本院議員二十五年在職の故に、永年勤続議員として院議を以って表彰を賜り、誠に身に余る光栄と存じ、感謝に耐えません。  顧みますれば、終戦直後、日本の再建は合理的社会建設にありと、政界進出を志し、昭和二十二年四月初当選し、新憲法下第一国会議席を得ましてより、主として防衛・安全保障確立科学技術原子力振興等、及び郷土開発発展努力して参りましたが、その間に於ける国政の推移と進展に思いを致します時、誠に感慨無量のものがあります。  これひとえに先輩同僚諸賢の絶大なる御指導と、郷里奈良県の皆様の多年に亘る温かい御支援の賜と、心から厚く御礼申し上げます。  ここに、今日の感激を肝に銘じ、初心に返り、議会政治確立郷土発展はもとより、我が国の繁栄の為、一身を捧げ最善を尽くすことを御誓い申し上げ、謝辞といたします。      ————◇—————  議員請暇の件
  9. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  川崎寛治君から、海外旅行のため、三月十五日から二十七日まで十三日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  日程第一 道路運送車両法の一部を改正する   法律案内閣提出
  11. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第一、道路運送車両法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。運輸委員長木部佳昭君。     —————————————  道路運送車両法の一部を改正する法律案及び同   報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木部佳昭登壇
  12. 木部佳昭

    木部佳昭君 ただいま議題となりました道路運送車両法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、自動車需要動向自動車登録検査等に関する事務処理に要する経費の増加の趨勢とにかんがみまして、自動車登録検査等に関する手数料の額の範囲を改めようとするものであります。  本案は、二月七日本委員会に付託され、同月十四日政府から提案理由説明を聴取し、二十一日質疑に入り、二十五日質疑を終了し、三月十三日採決いたしました結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  13. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  14. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  15. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第二及び第三の両案とともに、日程第四は、委員長提出の議案でありますから、委員会審査を省略し、三案を一括して議題とするに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。     —————————————  日程第二 畜産物価格安定等に関する法律   の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 山村振興法の一部を改正する法律   案(坂村吉正君外十二名提出)  日程第四 農業協同組合合併助成法の一部を   改正する法律案農林水産委員長提出
  17. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第二、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案日程第三、山村振興法の一部を改正する法律案日程第四、農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  委員長報告及び趣旨弁明を求めます。農林水産委員長澁谷直藏君。     —————————————  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正   する法律案及び同報告書  山村振興法の一部を改正する法律案及び同報告   書  農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律   案     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔澁谷直藏登壇
  18. 澁谷直藏

    澁谷直藏君 ただいま議題となりました三法案について申し上げます。  まず、内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における肉用牛生産事情変化並びに牛肉需要及び価格動向等に対処して、一定の規格に適合する牛肉指定食肉に追加し、畜産振興事業団にその買い入れ、売り渡し等の業務を行わせることにより、牛肉価格の安定と肉牛生産農家経営の安定を図ろうとするものであります。  委員会におきましては、二月十八日に安倍農林大臣から提案理由説明を聴取し、その後、慎重に審査を重ね、三月十三日質疑を終了いたしましたところ、本案に対し、日本共産党革新共同から修正案提出され、採決の結果、修正案は否決され、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、委員長提案により附帯決議が付されました。  次に、坂村吉正君外十二名提出山村振興法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、山村振興法実施状況にかんがみまして、その有効期限昭和六十年三月三十一日まで延長するとともに、振興山村における基幹道路整備、集落を整備するための住宅の建設農林漁業振興促進するために必要な資金の融通につきまして、特別の措置を講ずる等、山村振興対策の充実を図ろうとするものであります。  本案は、三月十三日付託され、同日提出者を代表して坂村吉正君から提案理由説明を聴取し、委員長委員会を代表して政府の見解をただした後、採決いたしましたところ、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  次に、農林水産委員長提出農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、提案趣旨を御説明申し上げます。  農業協同組合合併助成法は、昭和三十六年に制定され、その後昭和四十一年、昭和四十五年及び昭和四十七年の三回にわたる法改正が行われ、同法に基づ合併経営計画提出期限についての延長措置が講じられてまいりました。  その間、農業協同組合合併は、関係者努力により一応の成果をおさめてまいったのでありますが、いまだに五百戸未満という零細規模組合が相当数存在しており、これら組合の中には、今後合併を行い、その組織、事業並びに経営体制強化を図ろうと志向しているものが相当数あると見られるのであります。  このような実情にかんがみ、本年三月三十一日をもって期限切れとなる同法に基づ都道府県知事による合併に関する計画認定制度適用期間を、さらに三年間延長し、合併計画認定を受けて合併した農業協同組合に対しては、従前どおり法人税登録免許税等減免措置の特例を与え、合併促進の一助にしようとして、ここに本案提出した次第であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  19. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより採決に入ります。まず、日程第二及び第三の両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第四につき採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 放送法第三十七条第二項の規定に   基づき、承認を求めるの件
  22. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第五、放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員会理事宇田國榮君。     —————————————  放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認   を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔宇田國榮登壇
  23. 宇田國榮

    宇田國榮君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件に関し、逓信委員会における審査経過と結果とを御報告申し上げます。  本件は、日本放送協会昭和五十年度収支予算事業計画及び資金計画について、国会承認を求めようとするものであります。  まず、収支予算について申し上げますと、事業収支においては、事業収入は、前年度に比べて三億八千万円増の一千三百十三億三千万円でありまして、そのうち受信料収入は、前年度に比べて五十億三千万円増の一千二百七十九億七千万円を予定しております。これに対し、事業支出は、前年度に比べて二百十九億六千万円増の一千五百二十九億一千万円となっており、その結果、事業収支は二百十五億八千万円の支出超過となっております。これについては、資本収入資本支出の差額二百十五億八千万円をもって補てんすることといたしております。  また、資本収支においては、収入三百七十七億六千万円、支出百六十一億八千万円の規模となっておりますが、このうち、中継局建設放送設備整備等のための建設費として百三十億円を計上しております。  次に、事業計画は、難視聴の解消を図るための中継局等建設放送番組内容の刷新、及び社会情勢変化に即応した営業活動推進等の諸施策を実施することとしております。  最後に、資金計画は、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金需要及び調達に関する計画を立てております。  なお、本件には、「おおむね適当である」との郵政大臣意見が付されております。  逓信委員会におきましては、二月二十一日本件の付託を受け、数回の会議の後、三月十三日、討論もなく、採決を行った結果、全会一致をもって、本件は、これを承認すべきものと議決した次第であります。  なお、委員会は、本件に対し、自由民主党日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案に係る附帯決議を付したことを申し添えておきます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  24. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。本件委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————
  26. 羽田孜

    羽田孜君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  27. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案   (内閣提出
  29. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。法務委員長小宮山重四郎君。     —————————————  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案及び   同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔小宮山重四郎登壇
  30. 小宮山重四郎

    小宮山重四郎君 ただいま議題となりました法律案についで、法務委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、中央更生保護審査会の最近における恩赦上申事件の著しい増加の傾向にかんがみ、同審査会機能強化するため、委員四人のうち二人を常勤とし、それに伴う改正をしようとするものであります。  当委員会においては、二月十二日提案理由説明を聴取した後、参考人意見を聴取するなど、慎重審査を行い、本日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  31. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案   (内閣提出)の趣旨説明
  33. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 内閣提出科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。国務大臣佐々木義武君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔国務大臣佐々木義武登壇
  34. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  原子力開発利用は、現下のエネルギー問題に対処してわが国エネルギー安定供給確保するため、大きな役割りを果たすものであり、政府としては、その推進努力してきたところであります。  しかしながら、その安全性については、必ずしも国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい状況にあります。政府は、原子力平和利用推進に当たっては、まず第一に、その安全性確保のために万全を期し、国民の理解と協力を得なければならないと考えております。このため、研究開発安全規制とを同一の局で行っている現行の原子力行政体制の中から、原子力安全規制等原子力安全確保に関する機能を分離、独立させ、これを強化することにより、安全確保の明確な責任体制確立することがぜひとも必要と考えるものであります。  なお、これとあわせて、安全を確保するために必要な試験研究等についても抜本的な強化を図り、安全の確保に万全を期したいと考えております。  この法律案は、このような観点から、現在の原子力局事務のうち、核燃料物質及び原子炉に関する規制に関する事務原子力利用に伴う障害防止に関する事務等原子力安全規制に関するものを分離し、これを一体的かつ効率的に処理する体制として、新たに原子力安全局を設置するとともに、その所掌事務を定めようとするものであります。  なお、これらの改正とあわせて、科学審議官の定数を三人以内から一人に減じ、原子力局次長二人を廃止して原子力安全局次長一人を置くため、所要の改正を行っております。  以上が、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案   (内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  35. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。竹中修一君。     〔竹中修一登壇
  36. 竹中修一

    竹中修一君 私は、ただいま提案されました科学技術庁設置法の一部改正法律案に関連し、自由民主党を代表して、政府原子力政策並びに原子力行政に関する所見を伺い、二、三の質疑を行わんとするものであります。  私は、わが国最初原子力船臨界出力試験をこの目で確かめてみたいと思い、お許しをいただき、昨年八月二十四日から十一日間、全く個人の資格で原子力船むつ」に乗り込んだものであります。したがいまして、「むつ」の出港から洋上試験放射線漏れトラブル、「むつ問題解決のための政府、青森県、むつ市、県漁連との四者協定の締結、「むつ」の帰港など、各時点、各段階において、実際に現場にいて、これに立ち会っていたものであります。  私は、この一連の経験を通じて、わが国原子力行政の現況並びにそのあり方について、いろいろと思いをめぐらしてみました。  まず、第一に感じましたことは、原子力船むつ」の安全性に対し、現地の住民、漁民が最後まで信頼を持てなかったことであります。それは大型船舶燃料が油から原子力にかわる方がよろしいという概念には賛成できても、現実の原子力船むつ」には賛成できかねるということであります。原子力船むつ」は、もともと実験船でありますから、トラブルが起こることもあり得ることでありますけれども、その場合でも、人畜の殺傷、あるいは環境汚染等は絶対にあり得ないような安全対策を講じているという地元民への説得の努力が不十分だったと思います。これは実験担当日本原子力船事業団のみならず、これを監督指導する立場にある政府当局にも言えることであります。  さらに、その後、本件に関しての国会論議を通じて感じましたことは、原子力安全審査及びその後の安全監視について、責任体制があいまいであるということであります。  もう一つは、現在の原子力行政が、原子力開発が先行してしまって、廃棄物処理温排水あるいは再処理など、いわゆる後始末の問題がおくれていることであります。すなわち、原子力行政全般を通じて見て、バランスがとれていないということを痛感いたしました。  この意味で、政府が総需要抑制予算の中で原子力安全研究予算を大幅に増額するとともに、特に、今回ただ一つ科学技術庁の中に原子力安全局を新設されんとすることは、原子力行政のうちで、特に安全関係重点を注ぐという強い政治姿勢を示したものと、私は大いに賛意を表するものであります。(拍手)  総理は、本国会施政方針演説の中で、「原子力平和利用促進原子力安全局の新設、新エネルギー技術開発重点を置きました。」と述べておられます。一昨年のオイルショック以来、わが国のみならず、世界各国において次のエネルギー源として、すでに実用段階に入った核分裂方式による原子力利用を考えていることは、周知の事実であります。その意味で、総理の御所見は妥当なものであると思うのでありますが、翻って、わが国原子力利用の現状はいかがでありましょうか。  わが国で、現在実用に入った原子力発電所は八カ所あるはずでありますが、修理、検査、点検中のものをはずすと、本日実際に稼働しているものは二基にすぎないのであります。原子炉の採算稼働率は七〇%程度と聞いておりますが、いままでの原子炉は、稼働していた場合でも七〇%を大幅に下回っているのが事実であります。原子力発電所は、このほか、建設中のものが十五基、建設準備中のものが二基あるわけでありますが、いずれも大幅に完成がおくれている現況であります。原子力船についても、またそのとおりであります。かかる事態を政府はどうように認識されておられるのか、その基本的な原因はどこにあるのか、総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。  政府は、わが国原子力開発計画の基本的な目標として、昭和四十七年六月、原子力委員会の策定した原子力開発利用長期計画にのっとっているのでありますが、この計画は、原子力開発の各項目についてそれぞれ目標を定めたものであります。それによると、昭和六十年度の原子力発電規模を六千万キロワットとしているのであります。政府は、さきに申し述べましたような客観的情勢を踏まえて、今後、原子力の間発利用をどのようにして進めていかれるのでありますか、また、この長期計画をこのまま進めていくおつもりであるかどうか、総理にお尋ねをいたします。  次に、現在の原子炉施設の安全規制に関する機構上の問題についてお伺いしたいと思います。  それは、現在の安全規制は、原子力発電について見れば、原子炉設置許可段階原子力委員会、すなわち科学技術庁が、詳細設計及び工事方法についての認可段階審査、使用前の検査、定期検査等は通産省が行っております。船の場合は運輸省であります。私は、原子力船の場合、運輸省は船体あるいはタービンエンジン等の検査をするものであって、船舶用の原子炉に関する責任者は原子力委員会、すなわち科学技術庁であると思っていたのであります。ところが、現実は、行政上の責任が科学技術庁と運輸省、原発の場合は通産省に分割されております。  私は、こういう点から考えてみて、たとえ原子力安全局ができたからといって、科学技術庁の中で責任の分界というものはできるかもしれませんけれども政府としては、依然として統括して責任を負うところがないように思うのであります。  今後、ますます原子力利用の安全確認の必要性や事務量が増大していく趨勢にあるわけでありますが、これに対応して、的確に、かつ迅速な行政上の処理が必要になるのであります。果たして関連行政機関の連携が緊密にできるものでありましょうか。私は、関連行政機関の緊密な連携というよりも、どこかのだれかが統一して行政処理をしていかねばならないと思いますが、総理は、原子力安全局という機構をつくったからもう大丈夫であると思っておられるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。  今後、原子力利用事業を進めていくためには、まず、第一に、地元住民の理解と協力を得なければならないわけでありますが、この協力を得る方策についてお伺いしたいと思います。  原子力船の場合も、原子力発電所の場合も、地元の一部から反対運動が起こって進展していないのでありますが、一体どこにその原因があるのでありましょうか。  考えてみますと、第一に、安全と環境問題に対する漠然たる不安があることであります。これは、いわゆる核アレルギー、または放射能ノイローゼと言われております。放射能漏れと放射線漏れとを混同した報道等もこれに輪をかけていると思います。  第二に、地元への利益還元が薄いという不満であります。これは、ややもすれば、ごね得と言われる運動にもなりかねません。  三番目は、原子力賛成だが、自分のところへは来てもらいたくないという心情であります。これは地域エゴと言われても仕方がありません。  第四に、政府のやることは、何でも反対という反対グループがあることも否定できません。  私は、核アレルギー、または放射能ノイローゼと言われるものは、正しい科学知識の普及を平易な形でどしどしやっていけば解消できるものと思います。特に、最近、沿岸漁民の心配している温排水の問題は、漁業補償をするからよいのだとか、ハマチやアワビの養殖にいいといったような従来のやり方ではなく、科学的な裏づけのもとに弊害をなくし、できれば、逆にこれを活用するという方策の究明が必要だと思いますが、いずれにしろ、これらの問題は、住民の立場に立って、誠意を持ってやることが大切であると考えるものであります。(拍手)  住民対策で特に問題となりますのは、政府のやることは、何でも反対というグループであります。政府の調査は信用できない、自分たちグループの依頼した学者でなければ信頼できないという実例がたくさんあります。科学は中正な立場をとるべきものであると思います。私は、このような反対運動には、政府は、従来の地元対策において、反省すべき点は大いに反省をして、今後は毅然たる態度を持ち、誠意を尽くして地元民と接触されんことを切望するものでありますが、科学技術庁長官の御心境をお伺いしたいと思います。(拍手)  最後に、原子力船むつ」に関して、これも科学技術庁長官にお伺いいたしますが、「むつ」の新定係港を決定すべき期限は、御承知のとおり四月中旬となっておりますが、私ははなはだ危惧の念を抱いているものであります。現地におきましては、早く「むつ」を他に移すべきであるという動向とは別に、逆に、定係港返上反対の機運も相当高まっているのであります。新定係港はすでに決定しているか、いまだ決まっていないとすると、その見通しはどうなっているのかをお尋ねいたします。  また、日本原子力船開発事業団の存続は、明年三月末で切れるのでありますが、それまでには試験は完了しないと予想されますので、この事業団の今後のあり方と期限について、どのように考えておられるかお示しいただきたいと思います。  以上、申し述べましたように、私は、わが国は好むと好まざるとにかかわらず原子力利用を進めていかねばならない運命にあるものと考えますが、その大前提になるものは、安全と地元の理解だと思います。政府のこの点に対する格段の御努力を切望して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  37. 三木武夫

    ○内閣総理大臣(三木武夫君) 竹中君にお答えをいたします。  竹中君が御指摘になりましたように、日本は、二十一世紀が来れば新しいエネルギー開発が行われるでしょうけれども、その間、火力発電、これを補っていくためには、やはり原子力発電というものに頼らざるを得ない。竹中さんは運命であると言われた、それぐらい強いウエートが原子力発電にかかっておるわけでございます。それが、御指摘のように、稼働率は低下するし、また、新しい発電所の建設は非常に遅延しておる。この現状をどう見るかということであります。  結局は、竹中さんと私は同じ考えです。安全と環境に対しての住民の不安というものを解消しなければ、この状態というものは是正することができない。そのことについて、いまの政府の意図を御理解願って、原子力安全局というものを新設して、局の新設は全部やらなかったわけですが、これだけは国策としてやったわけでございますから、今後とも、これを中心にいたしまして、国民の安全と環境に対する不安というものを解消して、そして、原子力発電というものをどうしても日本エネルギー源として開発しなければならぬということを、不安を解消しつつ、国民の理解に訴えてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)  それから、長期計画の点を御指摘になりました。  御承知のように、昭和六十年度に六千万キロワットという目標は、いま四百万キロワットですから、これがなかなか目標達成は容易でないことはおわかりのとおりでございますから、これは十分検討しなければならぬと思いますが、エネルギー需要動向とか、現実的な立地の動向とか、中期、長期の経済動向ともにらみ合わせて、これは十分に検討いたしたいと思っております。  それから、機構の点をお取り上げになりましたが、御心配をなさる点はまことにごもっともでございますが、今回、原子力安全局の新設によって、安全体制というものは、これを中心にして強化していきたいと思っております。  しかし、いま通産省、運輸省、科学技術庁、いろいろ原子力行政の機関というものが各省に分かれ過ぎておるではないか、これを統一して処理するようにできぬかということでございましたが、この問題は原子力行政の基本に触れる問題でありますので、いま、原子力の問題に対しての懇談会を内閣に設けて、各方面の意見を徴して、原子力行政のあり方の根本について懇談会で御審議を願って、そして結論を得るようにしたい。そういう、いまのような行政の状態というものを、何かもう少し——これは機構を統一するというだけのものではないと思うのです。機構の統一というのは容易でないと思いますが、各省にまたがる原子力行政というものが、何か機能的にもっと一元化できる方法はないかということは、十分に検討いたしたいと思います。お答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣佐々木義武登壇
  38. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 竹中議員の御質問に対する御答弁を申し上げたいと思います。  第一は、地元住民の理解と協力を得る方策についてでございます。  原子力開発は、いまお話がございましたように、必ずしも円滑に進んでおらないわけでありまして、その原因は、地元問題に集中的に実はあらわれておるような感じがいたします。御指摘のとおり、安全性に関する不安感、地元利益の還元問題、総論賛成各論反対といったような複雑な要因が絡み合っているのは事実でございます。しかし、それに対しては、地元の正当な要求は一つ一つ解決していかなければならない、積み重ねていかなければならないと考えております。  特に、安全性に関する地元の不安につきましては、これまでの地元への説明に必ずしも十分でないところがあった点は、謙虚に反省いたしまして、地元の住民の立場に立って、誠意を尽くしてその払拭に努力してまいる所存でございます。その際、御指摘のあった科学的な方策の導入等につきましても、十分心がけてまいりたいと思います。  もちろん、地元の協力を得るための基本的な前提としては、安全確保に万全を期することが必要でありますが、政府といたしましては、原子力安全局の新設等安全規制体制整備とともに、安全研究予算の大幅拡充、安全規制要員の充実等、安全対策を最重点強化いたしまして、安全性について、国民信頼の回復を図るべく、格段の努力をいたしておるところでございます。  また、地元に対する利益還元の問題につきましては、前国会で成立を見ました電源三法の活用によりまして、立地地域の公共用施設整備等を行うこととしており、今後とも、地元の納得を得るために一層努力してまいる所存であります。  次に、原子力船むつ」にかかわる新定係港の見通しはどうかという問題でございます。  御心配をかけておる新定係港の決定の問題につきましては、御指摘のとおり、地元との合意に基づきまして、ここ一月余りを目途に、新定係港候補地の選定作業を進めなければなりません。このため、本年一月二十三日、科学技術庁、運輸省及び原子力船事業団から成る新定係港推進本部を発足させまして、幾つかの候補地を集中的、具体的に検討させているところであります。新定係港の候補地は、これにより次第にしぼられてまいってはおりますが、最終の決断には、なお解決すべき問題が残っており、最後努力を傾けているところでございます。  いずれにいたしましても、御指摘のような点も考慮に入れ、「むつ」の教訓を十分生かし、地元住民全体の理解と協力を得て決定の運びとなるよう、細心の注意を払いながら、現在努力をいたしているところであります。  三番目に、原子力船事業団の今後のあり方についてでございます。  御指摘のとおり、日本原子力船開発事業団法は、昭和五十一年三月三十一日までに廃止するものとされております。一方、原子力船むつ」の開発は、いわゆる「むつ」問題を契機に、その後中断していることも御高承のとおりであります。  しかしながら、海運国としてのわが国の将来に思いをいたしますと、今後とも、官民相協力して原子力船開発を進めるべきことの重要性は、いささかも減少していないと考えておるものでございます。  これまで、原子力船開発は、原子力第一船開発基本計画基づきまして進めてまいりましたが、残念ながら、現在のこの計画は大幅におくれております。このため、原子力委員会におきましては、海外における原子力船開発動向、舶用エネルギーの将来の展望等を勘案しつつ、現在の基本計画を再検討することにしておりますが、この過程において、日本原子力船開発事業団の今後のあり方についても十分検討して、何らかの結論を得るものと考えており、その結論を待って対処してまいりたいと考えております。  いわゆる「むつ」問題は、わが国原子力開発史上、まことに遺憾な事件でありましたが、この教訓を今後の開発に生かして、いわば禍を転じて福とすべく、わが国原子力開発に全力を尽くして取り組んでいく覚悟でございます。(拍手)     —————————————
  39. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) 和田貞夫君。     〔和田貞夫君登壇
  40. 和田貞夫

    ○和田貞夫君 総理、あの原子力船むつ」が、漁民を中心とした地元住民の強い反対を押し切ってまで出港し、洋上での出力試験中に放射線漏れが生じ、五十日間もの漂流を続けた果てに、いまや撤去作業の進む母港で雪に埋もれてつながれているのでありますが、その姿にこそ、まさに、わが国原子力行政そのものが象徴されているとあなたはお考えになりませんか。(拍手)  私は、日本社会党を代表いたしまして、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について、わが党の考え方を述べながら、政府原子力行政に対する基本姿勢に対し、根本的再検討を求めるとともに、総理以下、関係閣僚の見解をただしたいと存じます。  わが国原子力行政が低迷を続けている最大の理由は、そもそも昭和三十年の原子力三法が決められたときに発しているものであります。  神奈川大学の川上教授が、「原子力という新技術の管理が、既往の行政概念になじみにくいものであるにもかかわらず、行政技術的な発想で原子力行政がスタートしたときから問題を内蔵していた」と指摘されていますが、まさに核心をついたものであります。さらに、同教授は、「原子力という技術の研究開発、利用にふさわしい体制はどうあるべきかという基本から出発しない限り、現象的な欠陥をいろいろ指摘してみても、在来的な官僚制度の壁にぶつかるだけである」と、その病根を実に明快に述べられているのであります。  本改正案の、原子力局原子力安全局とに分割するというような考え方は、政府原子力行政の致命的欠陥にメスを入れるものではなく、たび重なる原子炉事故に対する国民の不安と怒りをそらそうとする、官僚的発想による単なる機構いじりにすぎないと、厳しく批判されても仕方ないでしょう。(拍手)  現行原子力行政の中核である原子力委員会を、当時の論議では、原子力の平和利用に関する最高の企画、立案の決定機関とし、その執行を原子力総局に命ずることができるという、行政委員会に近い性格のものが構想され、閣議決定にまで持ち込まれたと記憶しているのでございます。しかし、現在の原子力委員会は、総理大臣の諮問機関というより、むしろ科学技術庁長官の諮問機関に成り下がり、直属の事務局も持たず、概して強力な予算の裏づけもなく、その権能にも多くの制約が加えられているのが実情でございます。  また、学界が当時、行政委員会案を主張されていたのは、第一には、原子力における先進諸国とも言うべき核保有国とわが国との技術格差が大きく、よほど強力な研究開発推進体制がとられない限り、格差の解消はむずかしい状況にあったことと、第二には、万が一の軍事的利用を防止する上でも、政治から分離した体制の方が好ましいとの考えであり、そのために、核保有国に従属的にならず、平和利用技術の自主的開発を進めるには、行政委員会の権限と独立性がどうしても必要であるとのことでございました。  ところが、日の目を見なかったのは、その権限と独立性を与えることに対して、たとえば、独禁法改正を骨抜きにし、公正取引委員会機能と権限強化に反対するがごとく、自民党と官僚が危惧の念を抱いたからでございます。そのほかには、もちろん、安全性よりも、経済性本位の開発を推し進めようとした産業界の意図も込められていたことは、また疑いのないところでございます。  原子力開発が始まって二十年を経過しますが、その間、ほとんど外国技術の導入にのみ終始し、特に原子力発電の分野では、国内に研究開発体制がないままに推移し、わが国と先進諸国との技術格差は全く解消していないにもかかわらず、産業界では強引に大規模原子力発電所の建設が進められてきたのであります。  諮問機関的な存在である現行の原子力委員会では、このような産業界での独走を防ぐことができないのは当然であり、原子力発電の技術導入路線と、原子力研究所などによるわが国研究開発計画との間に、有機的関連を持ち得ず、今日に至っているのでございます。これでは、原子力委員会の設置を決めた原子力基本法第四条の精神を全く喪失したものと言わざるを得ません。  先日の参議院予算委員会において、佐々木長官も、原子力委員会開発に力を注ぎ過ぎていて、安全性の問題についてはその責任の所在が分散し、独自の安全研究が不十分だとし、現行原子力委員会開発中心主義を認めざるを得なかったところに、現在の原子力行政は尽きているのでございます。  総理、この際、原子力行政を見直す考えはございませんか、見解を明らかにしていただきたいと思います。  以上のような現状に対し、わが党の基本的考え方は、原子力行政の基本姿勢を再検討し、自主、民主、公開の原子力平和利用の三原則を厳守し、安全性を第一とする一元化した原子力行政確立することでありますが、以下、安全面、エネルギー政策、原子力行政の組織上の問題点について、見解を承っておきたいと思います。  まず、安全面についてでございますが、原子力に関しては、未知の部分や困難が比較的少ないはずの遮蔽技術においてさえ、日本はきわめて未発達であり、基礎的研究の蓄積がいかに欠けているかは、原子力船むつ」の問題が証明しているところであります。まして、最近相次いで明らかになっている冷却パイプと炉本体の応力腐食割れ、蒸気発生器の細管腐食、燃料棒の破損、緊急冷却装置等の安全装置の機能不全などの問題も、さらにまた、使用済み核燃料の安全な再処理や、放射性廃棄物の最終処分の問題も、遮蔽技術より、はるかに重大な未知の部分や困難を秘めており、しかも、基礎的な研究が決定的に欠けているのでございます。また、内部に働く人々の集積被曝線量も、年々大幅に増大しているのが現状ではございませんか。  取り返しのつかない悲劇的な事故を未然に防止するためには、原子力船であれ、その百倍も大きな出力の原子炉を持つ原子力発電所であれ、また再処理工場であれ、このような実用装置を建造してよい段階ではなく、全分野における基礎的な実験、研究を積み重ねるべき段階であることが、だれの目にも明らかであるにもかかわらず、もっぱらアメリカの研究と運転経験や、米原子力委員会の安全評価に依存しているのが現状ではございませんか。  総理、この最も基本的な問題について、どのような考えをお持ちになっているのか、御見解を承りたいのでございます。  また、実用炉をどんどん大型化し、建設してしまってから、国民の安全にかかわる重大な技術上の諸問題の研究が後追いしていくなどという姿は本末転倒であり、他の公害に比べて、はるかに深刻になり得る放射能を大量に生み出す原子炉を、安全性の十分な確立なくして実用化し、商業的に先行させてしまってよいのでございましょうか。  ただ、いままでに建設された原子力発電所は、幸いなことに、まだ大事故を起こしていないものの、中小の事故や故障が続発し、いずれも稼働率が著しく低下し、美浜一号炉に至っては、昭和四十九年度の稼働率が、実に七%にまで低落しているではございませんか。一基に七百億円も一千億円もかけた原子力発電所が、ほとんど稼働できなくなるということは大変な損失ではございませんか。しかも、このことによって値上げされた電力料金が使われるのでは、国民は納得することができないのでございます。政府の責任ある答弁をこの際求めます。  あわせて、使用済み燃料棒の再処理の後にできる高レベル放射性廃液の処分を、最終的にどのような計画を持っておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。一千年以上も安全に漏れなく保管する必要があるとされているこのようなしろものの、安全な最終保管、処分方法が確立されないまま核燃料を使用し、再処理するなどというのは、全く危険千万ではございませんか。  原子力の環境、安全問題は、技術と社会の両側面から検討されなければならないのは当然ではございますが、昨年十月に原子力委員会の環境・安全専門部会から安全審査体制のあり方などの報告がなされたのが、今回の改正法案の背景となっていると考えられますが、この報告書は技術問題に終始し、原子力の平和利用推進に欠いてはならない住民の信頼を、いかに回復するかという根本問題が欠落しているのでございます。  わが国の行政全般にわたって言えますが、原子力行政におきましても、住民を行政の客体としてとらえ、実質的に公正な行政を確保することよりも、技術専門性を主体とした独善に陥り、行政の便宜と能率だけを考えて運用されてきたのが実態でございます。このことが、住民の不信感を増幅し、国民の理解と協力が得られないのは当然のことでございます。  また、原子力発電所や、その他の原子力施設の設置が予定されている自治体が、その受け入れを渋っているのを見るや、補助金をえさに、いわゆる札束でほっペたをひっぱたくような露骨なやり方にもなってくるのでございます。行政が住民との信頼関係を保持するには、事実をありのままに公開するとともに、とりわけ、原子力のような巨大な新技術の推進に当たっては、不断の対話が必要であると思います。  ところで、現下の原子力行政で最重要な原子炉安全審査会の委員には、安全性に疑問を持つ学者は任命されておらず、せっかく任命しても、良心的な委員は辞職してしまうという始末であり、現在は、企業秘密優先の委員ばかりで構成されているのが実態ではございませんか。(拍手)  また、昭和四十八年に原子炉の設置に係る公聴会制度を設置いたしましたが、ここでも地元民を代表する学者を参加させず、この公聴会には、核燃料処理施設の設置を含む原子力発電の全システムが、自然社会環境にどのような影響を及ぼすかという総合的な視点が全くございません。  また、開催の必要を原子力委員会の一方的判断にゆだねられ、質疑、討論が一切禁止され、公聴会で陳述された意見に対する原子力委員会の検討結果は、総理大臣に答申する時点でしか明らかにされず、それに対する疑問や新たな反論は、一切許されない仕組みになっているのでございます。  このような現状では、わが国エネルギー政策とも重要な関連を持つ原子力行政において、その開発推進の問題のみならず、世界で唯一の被爆国民として、核という問題に異常な関心を持つわが日本人の感情から見ても、原子力行政はさらに混迷を深めるであろうことは、だれの目にも明らかでございます。  総理、あなたも、去る参議院の予算委員会で、現在の原子力行政開発一本やりのような印象を与えている、安全性について国民の納得を得るようにしたいと述べられまして、原子力委員会の大幅改革をほのめかしておられるのでございますが、原子力委員会を独立した行政委員会に改組し、その委員長科学技術庁長官や国務大臣が兼務してはならないこととし、国会の議決によって選任された委員の互選によって決めるべきであると考えますが、いかがでございましょうか。原子力安全局のような機構は、行政委員会として衣がえした原子力委員会事務局として設置すべきであると思いますが、いかがでございましょう。(拍手)  また、国民信頼を得るためには、原子力基本法第二条に述べているとおり、すべての資料は公開すべきであり、原子炉安全専門審査会規制委員会とし、委員は、地域住民や労働者側の推薦する学者や技術者と、使用者側の推薦する専門家との同数ずつで構成すべきであると思いますが、いかがでしょう。これらにつきまして、明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。  さらに、仮想事故に対する災害評価の甘さがあること、あるいは、タブー視されていることが学者によって指摘されているところでございますが、あわせて、この面についての御意見を承りたいと考えます。  次に、エネルギー政策との関連でありますが、原子力発電と一口に言っても、今日の死の灰を必ず生み出す核分裂型の原子力発電は、決して長期的な本命ではなく、一時しのぎの、いわばかん詰めのようなエネルギー源にすぎないということが、多くの学者の見解でもございます。  本命は、死の灰を出すことのない核融合方式でありますが、石油や石炭やオイルシェールなどが本当に枯渇してしまった時点で、もし万が一、まだ核融合が実用化できない場合には、その間のつなぎとして、初めて核分裂型の原子力発電の建設を検討すべきであって、そのためにいま必要なのは、核融合の研究開発にこそ、もっと大きな力を注ぐべきではなかろうかと思います。  特に、日本のような大地震の多い、しかも人口稠密な国で、核分裂型の原子力発電所をつくるのは、諸外国に比べて危険性が著しく高く、幾ら大地震に耐え得るように設計してあっても、パイプに予期しないひび割れが生じているような状態では、そこから破断することにより、取り返しのつかない大事故になるおそれがあるのでございます。このことだけでも、大型実用炉の建設は当面中止させるべきではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。  最後に、わが国原子力行政が、軍事目的を主要に追求する米原子力委員会に決して追従することなく、あくまでも自主的、主体性を持つ日本原子力行政であるべきことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  41. 三木武夫

    ○内閣総理大臣(三木武夫君) 和田議員の御質問にお答えをいたします。  和田議員は、原子力委員会というのを、思い切ってこれを改組して、決定機関として、独立した行政委員会にしたらどうかという御提案でございました。また安全局も、その原子力委員会事務局として安全局を設置したらどうかという、原子力の機関に対して抜本的ないろいろな御提案がございました。  私どもも、いまの原子力行政というものを、そのままにしておくわけにはまいらぬと考えておりますので、原子力行政の懇談会を設けましたのも、ただおざなりの一つの改革というのでなくして、根本的に原子力行政というものを考え直してみたい。何分にも専門的な知識も要する問題でございますので、各方面の専門家の意見も徴して、これは近く発足するつもりでございます。そういうことで、そういう点も含めて、これは十分今後検討してまいる次第でございます。  「むつ」の漂流をどう思うかというお尋ねでございましたが、やはり原子力行政は見直さなければならぬなという感じを、私も深くしたわけでございます。  それから、安全性の問題について、どうも安全審査というものが、外国の研究に依存しておるところが多いから、日本は自主的になかなか安全審査が行えないのではないかという危惧の念をお持ちのようでありました。  これは、確かに外国の研究に依存するところが多いことは、もう申すまでもないわけでございますが、相当な歴史を経て、日本もまた、原子力開発に対しては、相当の経験、知識を持ってまいりまして、安全の審査に対しては、自主的に十分安全性確保できるという確信を持つに至っておるわけでございます。しかし、この問題については、やはり機構上の問題もございますし、いろんな点でこれはいろいろ再検討を要する面はありますが、自主的な安全審査を行える能力は持っておるというのが、われわれの考えでございます。  それから、安全性確保の意味から、原子力というものを、少し大型のものをやめたらどうかというような御発言がございましたけれども、これは大型、小型というものを区別して扱ってはいないわけでございます。  それから、原子力基本法に基づいて、成果は公開をするということが今後必要であるということ、われわれも同意見に考えておりますから、特殊な場合を除いて、できる限り資料は公開をして、国民の理解に訴えたいと思っております。  それから、エネルギー政策について、将来、核融合というものの研究促進していくべきではないか、われわれも同意見であります。日本は、将来、核融合というものに力を入れていくべきだと思います。  しかし、これは何分にも困難な技術でありますから、これはひとつ、恐らくはやはり二十一世紀の新しいエネルギーである、それくらいの腰を据えた研究が必要である、こういうふうに考えておるわけでございます。その間は、やはり核分裂のエネルギーに依存するわけでありますから、核分裂エネルギー安全性というものに対して、われわれが今後万全を期していくことが必要である、こういうふうに考えておるわけでございます。  御質問の答弁が漏れておりましたら、科学技術庁長官が補うことにしてもらいます。(拍手)     〔国務大臣河本敏夫君登壇
  42. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) お答えをいたします。  原子力発電のコストは、その建設費が非常に大きいということを考慮に入れましても、重油発電所に比べまして、そのコストは非常に安くなっております。  そして、先ほど稼働率が非常に悪いというお話がございました。  現在、わが国で稼働中の原子力発電は、御案内のように、およそ四百万キロでございまして、建設中のものがおよそ千三百万キロでございますが、その中で、稼働中のものの中で例外的に悪いものもございますが、また、稼働率の非常に高いものもございます。そういうことで、よほどのことがありませんと、重油発電所に比べまして原子力発電の方のコストが安い、こういうことが言えると思うのであります。  そこで、電力料金との関係でございますが、そういうことでございますので、そのために電力料金が高くなっておる、そういう事実はございません。(拍手)     〔国務大臣佐々木義武登壇
  43. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) お答え申し上げます。  第一点は、原子炉の仮想事故に対する災害評価が甘過ぎはせぬかという御指摘でございました。  原子炉の立地につきましては、原子力委員会におきまして、先進諸国の審査指針、あるいはわが国における特殊な事情も考慮いたしまして決定いたしました原子炉立地審査指針というものに基づきまして、非常に厳正に評価が行われておりまして、その場その場での恣意的な評価を行っているものではないという点を、まず述べたいと存じます。  すなわち、立地の評価に当たっては、通常考えられないような万々一の事故の発生をも仮想いたしまして、その場合においても、なおかつ、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことが重要な要件となっているのであります。  さらに、専門的な説明になりますが、評価に際しては、炉心の全燃料が溶けて放射性物質が放出されることを仮定しているものでありますが、この仮定は、通常起こり得ないきわめて厳しいものでございます。  次に、再処理施設における高レベル放射性廃棄物の処理の問題でございます。  再処理施設で発生いたしました高レベルの放射性廃棄物につきましては、先進諸国における処理方法と同様に、慎重な配慮のもとに、施設内にとりあえず保管しておく方針でありますが、さらに、現在、一層処理安全性を高めるため、固化処理に関する研究開発を、動力炉・核燃料開発事業団におきまして、強力に実は進めている最中でございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手
  44. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣   提出)の趣旨説明
  45. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) 内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。厚生大臣田中正巳君。     〔国務大臣田中正巳君登壇
  46. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 国民年金法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  年金制度については、昭和四十八年に厚生年金及び国民年金を中心に、給付水準の引き上げと物価スライド制の導入を柱とする改善充実が行われ、昨年においても福祉年金額の引き上げ、物価スライドの繰り上げ実施などの改善が行われたところでありますが、その後における経済社会情勢の変動にかんがみ、最も受給者の多い福祉年金の内容をさらに充実させるとともに、拠出制年金についても、急激な物価上昇に対処した措置を講じていく必要があります。  今回の改正法案は、このような趣旨にかんがみ、福祉年金額の引き上げ、厚生年金、拠出制国民年金等の物価スライドの実施時期の繰り上げ等を行うとともに、拠出制国民年金の保険料の適正な改定を行い、年金制度の充実強化を図ろうとするものであり、また、年金福祉事業団に政府が出資できることとするための所要の改正を行うことといたしております。  以下、改正法案の内容について、概略を御説明申し上げます。  第一に、福祉年金の額につきましては、老齢福祉年金の額を月額七千五百円から一万二千円に、障害福祉年金の額を、一級障害について月額一万一千三百円から一万八千円に、二級障害について月額七千五百円から一万二千円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を月額九千八百円から一万五千六百円に、それぞれ引き上げることといたしております。あわせて、老齢特別給付金の額を月額五千五百円から九千円に引き上げることといたしております。  第二に、昭和五十年度における物価スライドの実施時期を、厚生年金及び船員保険については昭和五十年十一月から同年八月に、拠出制国民年金については昭和五十一年一月から昭和五十年九月にそれぞれ繰り上げ、あわせて、国民年金の五年年金の額を昭和五十年十月から、さらに月額一万三千円に引き上げることとしております。  第三に、厚生年金または船員保険の被保険者で、六十歳以上六十五歳未満の低所得者に支給する在職老齢年金につきまして、支給対象者の標準報酬月額の限度額を四万八千円から七万二千円に引き上げることといたしております。  第四に、拠出制国民年金の保険料につきまして、昨年に引き続き段階的引き上げを行い、その額を現行の月額千百円から三百円引き上げ、千四百円とすることといたしております。  第五に、年金福祉事業団につきまして資本金の規定を設け、政府が予算で定める金額の範囲内において出資できるものといたしております。  なお、福祉年金の額の引き上げは本年十月から、厚生年金及び船員保険の改善は本年八月から、拠出制国民年金の保険料の額の引き上げは昭和五十一年四月から、年金福祉事業団に関する改正は本年九月から、それぞれ実施することといたしております。  以上をもって改正法律案趣旨説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣   提出)の趣旨説明に対する質疑
  47. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。田口一男君。     〔田口一男君登壇
  48. 田口一男

    ○田口一男君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、私は、日本社会党を代表し、三木総理大臣と関係大臣に質問いたします。  この年金問題は、現在、国民の最も関心を寄せている問題であり、なかんずく、当面する老齢者の生活状態からもちろんのこと、本来、長期的な視野に立っての制度運営が基本となるものでありますから、誠意ある、そして具体的な御答弁を要望いたします。  かつて国連職員であったフランスのポール・パイヤ氏は、「老年の社会学」という著書の中で、「退職年金の問題になると、とたんに議論は感情的な色彩を帯びてくる」と述べているのでありますが、どう冷静に考えても、今回提案の老齢福祉年金一万二千円は、三木内閣の福祉重点政策の目玉と言われるには、ほど遠いものと言わざるを得ません。  四十七年に立案をして、四十八年二月に閣議決定を見た経済社会基本計画でさえ、五十年度に一万円を決めていたのであります。したがって、その後三年間の異常なインフレに対応する分がわずかに二千円ということであり、この程度の引き上げでは、いうところの目玉ではなく、二階から目薬と言わなければなりません。  この二月一日、本院予算委員会で、わが党の多賀谷委員から、老齢福祉年金の水準は、大体軽費老人ホームに入れるぐらいの水準とすべきであるとの御意見に対して、田中厚生大臣は、大体その程度のことを考えて、いま苦心しているとお答えになったのであります。ところが、一カ月経た今日では、三木内閣に対する世上の批判そのままに後退しているのであります。  そこで、三木総理にお尋ねいたします。  総理が、今月四日お会いになった古宮さん、北海道稚内から東京までの三千キロを歩き通した「もうがまんならん隊」の古宮さんの訴えにもあるように、改定時期の繰り上げも含めて、いま一度増額を考えるべきではないでしょうか。その決意のほどを示していただきたいのであります。  言うまでもなく、年金は、老齢者のための所得保障に重点を置く、つまりは、生活資金としての金銭給付が目的であります。もちろん、老齢者の生活がこの金銭給付のみで成り立つものではありません。医療、住宅、職場等々、その他の諸施策等と相まって老齢者の生活を支えなければなりません。この立場に立って、われわれは、目下の緊急課題である老齢者対策と長期的な視野に立っての制度の運営をも考えて、この老齢福祉年金を月三万円とすることを強く要求するものでございます。(拍手)  確かに、月額一千円引き上げるのに六百億、一万円で六千億という、財源的にかなりの金額を必要とするでしょう。にもかかわらず、今回の程度では、年金の拡大に大して役立っていないのであります。  そこで、この老齢福祉年金の持つ基本的な性格について、この際、改めて明らかにしてもらいたいのでございますが、すなわち、老齢福祉年金によって生活保障をする、言いかえれば、食っていけるという水準でなければならないとするのか、それとも、この年金は補足的なものであり、生活保障の機能を持つ他の拠出制年金、これとても十分ではございませんけれども、他の年金よりも水準が低くてもやむを得ない、つまりは、気の毒な老齢者への恩恵的対策であるとしているのか、この点をはっきりする必要があると思うのでございます。(拍手)  私どもは、もちろん食っていける年金、生計を維持し得る水準でなければならないと考えるものでありますが、総理はどのように考えておられるのか、お示し願いたいのでございます。  どうも今回の改正案は、三木内閣の唱える社会的な不公平の是正、特に社会的弱者援護の問題と年金制度の問題とを重なり合わせて、年金制度に対する将来の見通しを欠いたまま、ただ目前の緊急避難的な措置として、この老齢福祉年金を一万二千円に引き上げたにすぎないとしか思えないのでございます。そうではないでしょうか。そうでないとするならば、むしろ今回の改正を通じて、一般財源の制約を口実として、高福祉高負担を押しつける下地をつくろうとしているのではないでしょうか。その点を強く指摘したいのでございます。  現に、財政制度審議会の社会保障に関する建議は、「福祉年金について、一般租税財源だけではなく、拠出制年金の被保険者及び事業主に応分の負担を求めること」云々と述べており、また二月二十七日、大蔵省は三木総理に、「福祉財源を確保するためには、一般的消費税である付加価値税などが真剣な検討課題となる」との大蔵省の基本姿勢を説明したと新聞が報道しております。昭和五十一年度に繰り上げることになった年金財政再計算期を前にして、この際、老齢福祉年金の性格、財政負担のあり方などについて、大蔵、厚生両大臣からも明確な御答弁をお願いいたします。  そして、国民所得に占める社会保障給付費の比率は、わずか約七%の状態にあるわが国を、せめてフランス、西ドイツ並みの一五%以上に引き上げるべきではないでしょうか。大蔵大臣の御所見を伺いたいのでございます。  次に、年金財政、年金制度に関連して、厚生大臣に、さらに突っ込んでお尋ねをいたします。  昭和五十一年度の財政再計算に当たって、大臣は、この際、制度の全般的、根本的見直しを行うと述べておられるわけでありますが、今日まで断片的に語られている考え方は、一例として、去る一月二十四日の年金局長の基礎年金構想や、昨年九月、当時の政府・自民党首脳会談での賦課方式への切りかえ論などございますけれども、これらは、むしろ国民に、とりわけ年金受給者に不安を与えているのが実情でございます。  つまり、基礎年金構想などの背景には、老齢福祉年金と拠出制国民年金の財政問題があり、さらに、厚生年金や、その他の公的年金制度間の財政調整にまで発展するのではないかと心配しているのであります。われわれは、制度、財政の抜本的改革を強く望むものでありますが、ただ、その際には、公的年金の持つ性格からいって、当然に生存権の保障、社会的連帯、そして世代間の合意によって支えられるという基本が貫かれていなければなりません。(拍手)  この基本的立場から、多くの問題点、欠陥を持っている現行年金制度に対して、抜本的改革を主張するものでありますけれども、以下、申し上げる諸点について、厚生大臣の御所見を伺いたいのでございます。  その第一は、何と言っても、それぞれの年金給付水準が、絶対的、相対的に低いことでございます。いわゆるナショナルミニマムを保障する給付水準になっていないのであります。したがいまして、今日の基準で、すべての年金制度の最低保障を月六万円とすることが必要であります。  第二に、国民皆年金制度であると言われておりますけれども、現在最も給付を必要とする老齢者の大半が、本格的年金給付を受けるに至っていないのであります。具体的には、現在の老齢福祉年金受給者約四百万人、それと、俗に谷間と言われた老齢特別給付金受給者約五十万人、さらに、拠出制国民年金の経過年金受給者約二百五十万人がそれでございます。これらの人々は、本来的に年金権を有する者と見なければなりません。したがいまして、夫婦で最低保障額を支給するものとして、一人月三万円、夫婦で六万円とすべきでございます。  第三は、今日ようやく物価スライド制を採用されたとはいうものの、いわゆるタイムラグが解消されておりません。したがいまして、今日のインフレ、物価高のもとにおいては、消費者物価上昇率が一定水準を超えた場合に、緊急物価スライドを行うことが必要であります。さらに、社会経済の変動に対応し得る仕組みとするためにも、賃金自動スライドを賃金改定期の四月から実施すべきであります。  第四には、年金制度が、大まかに分けても、八つもの制度に分かれていることでございます。しかも、相互の整合が不十分であり、各制度間の給付水準格差ははなはだしく、昨年度の平均月額で五千円から五万円という格差があるのでございます。さらに、標準的な支給開始年齢もまちまちであります。年金年齢をめぐる論議は、いわゆる定年制とも大きな関係を持っておりますけれども、いずれにいたしましても、年金年齢を統一し、どの制度に移っても、ひとしく通算することが必要であります。  こうした問題を抱えている各年金制度の中でも、わが国年金制度の大宗を占める厚生年金は、とりわけ問題が多いのであります。  その一つの例として、定年退職者の再就職の扱いがございます。いま御提案がありましたが、六十歳から六十五歳までの厚生年金受給者が再就職した場合には、その受ける賃金に応じて年金をカットされるという在職老齢年金制度があるわけでございます。年金受給資格のつくまで働いて、しかも、政府の中高年齢者の再雇用の呼びかけに応じ、もちろん年金だけでは食っていけませんから再就職はする、すればしたで年金がカットをされる、これが社会的公正と言えるでしょうか。  そればかりではありません。さらにその上に、再就職後の低賃金が原因となって、最終的に年金生活者となったときに、年金額が減るというはなはだ矛盾した年金計算方法のために、現在泣いておる者もあるわけでございます。このような弱い者いじめは即刻やめるべきであります。  加えて、自分の年金を自分で計算できないという複雑な仕組みになっております。これを在職時最高賃金の六〇%になるように、西ドイツなどで採用している年金ポイント方式などを検討すべきではないかと考えます。厚生大臣のはっきりした御答弁を要求いたします。  第五点は、年金における妻の座をどう見るかということでございます。  直接的には、厚生年金や共済年金などの遺族年金の支給率でございます。これらはすべて基本年金額の二分の一となっており、厚生省の調査の結果でも、遺族年金受給者の悲惨な生活状態が明らかにされているのでありますから、障害年金とともに通算制度を採用すると同時に、当面、遺族年金の支給率を、百分の八十を最低とすべきであります。  最後の第六点は、財政の問題でございます。  われわれは、無拠出老齢福祉年金は、これを全額国庫負担とするとともに、他の公的年金は賦課方式を採用すべきであると、一貫して主張してまいりました。  ところが、厚生省のこれに反対する理由の最たるものは、いわゆる世代間の負担の不公平ということでございます。今後の老人人口比重を考えれば、次の世代の負担が大きくなるから、いまのうちに積み立てておいて将来の負担を軽くするのだと言うのであります。  ところが、厚生大臣、物価が年に二〇%以上も上昇している現状では、四十九年度で、実に二兆三千億円の積立金がインフレによって奪われているのでありますから、二十年、三十年先には大変な目減り、減価になることは、だれが見ても明らかでございます。しかも、一方で、保障すべき社会的所得水準ははるかに高くなっているでしょう。これでは積み立てておいても、ほとんど足しにならないのではないでしょうか。  また、わが国はこれから本格的な人口の老齢化を迎えるからと言っておるのでありますけれども、人口問題研究所の調べによりましても、六十五歳以上人口の割合は、確かに昭和四十五年の七%から昭和六十年の九・五%、昭和七十五年には一三・四%に達するものと予想されています。しかし、欧米工業国の六十五歳以上人口割合は、現在すでに一〇%から一四%レベルにあるのであります。その状態で、今日、賦課方式によって充実した年金水準を給付しておるのであります。なぜ、これらの諸国と肩を並べるわが国だけができないのでしょうか。  次いで言えば、六十五歳以上人口と、十五歳から六十四歳までの人口、すなわち生産年齢との対比を示す老齢人口指数を見ても、昭和八十年になって初めて、今日の欧米工業国の指数と同程度になるのであります。工業先進国として、アメリカ、EC諸国に伍するわが国が、国民所得に占める年金給付はわずか一・六%、西ドイツの十分の一、フランスの五分の一にすぎないのであります。
  49. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) 田口君、申し合わせの時間が過ぎましたから、簡単に願います。
  50. 田口一男

    ○田口一男君(続) しかも、関係指数は、なお二十年から三十年の余裕があるのであります。この事実からも、いますぐにでも、賦課方式によって食える年金を支給すべきであります。三木総理の決意のほどを示していただきたいのであります。  最後に、現在の老齢者は、教育、税金など、社会的には掛金を掛けてきたと見るべきでありますから、掛けていないんだから、あめ玉年金でいいというのは大変な間違いでございます。順送りで社会全体で親孝行という賦課方式こそが、生存権公的年金制度の基本にかなうものと考えます。  福祉充実を希望する三木総理、そして、社会保障問題に熱心な田中厚生大臣の明快な御答弁を期待いたしまして、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  51. 三木武夫

    ○内閣総理大臣(三木武夫君) 田口議員にお答えをいたします。  田口議員は、福祉年金をこの際大幅に引き上げたらどうか。三万円という額を御提示になりました。  この福祉年金は、御承知のように、これは掛金のない年金でありますから、多いにこしたことはございませんけれども、その福祉年金は、すべて国民の税金によって賄うよりほかにはないわけであります。三万円という福祉年金を支給いたしますと一兆八千億円、一兆八千億円の税金を持ってこないと、三万円の福祉年金を支給するわけにはいかぬわけであります。  それで、政府とすれば、一万二千円ということは、いま七千五百円でありますから、一挙に一万二千円にしたということは、こういう財政の条件の中で、これは相当な決意であったということでございます。そのために、財政当局なども苦心をして一万二千円という福祉年金にいたしたわけでございまして、無論これでは十分でないにしても、何とかして、インフレのもとにおける老人の生活の支えに少しでもなるようにという、政府の意図というものを御理解願いたいのでございまして、一万二千円というのでも相当な苦心をしたのでございますから、田口議員の言われるような、三万円とかいうものにさらにそれを増額するということは、そういう気持ちはあるにしても、財政的にはこれは不可能でございます。そういう考えは、いまはないわけでございます。  それから、老齢福祉年金の性格についてお尋ねがございました。  最初は、これは千円から出発をしたのですから、敬老的なものでしょうが、今日では老後の生活の設計の支えになりつつあるということは、福祉年金の性格の変化をわれわれも考えておるわけでございますから、今後とも改善を図ってまいりたいと思うわけでございます。  しかし、今後これを充実するためには、いまお話し申したように、財源の関係もございますし、いろいろな年金制度全般の問題とも関連をいたしますので、いま、年金制度全般を見直してみようということで、厚生省で検討いたしておりますから、その過程で、慎重に福祉年金の年金額については検討を加えたいと思うのでございます。  また、賦課方式というものを田口議員は御提案になりました。  この年金制度も、ある時期が来ると、非常に受給者が急増するわけでもございますので、直ちにいま賦課方式に切りかえることには問題があると思いますが、将来の一つの財政方式の問題としては、この問題も慎重に検討しなければならぬ問題でありまして、親孝行ということを言われまして、若い人たちみんなが老後の生活のめんどうを見るということで、老後の生活の保障に対して、みんな、若い人たちも国民も、全部がお互いにめんどうを見ようじゃないかという社会連帯的な考え方というものは、私も賛成であります。そういう形でお互いに老後の生活が不安のないように、老後を守ることは、やはりわれわれとしての責任であると考えておる次第でございます。  お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇
  52. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質問の第一は、老齢福祉年金の財源についてでございます。  いまは、御案内のように、一般租税財源によっておるわけでございますけれども、田口さんが御指摘の老齢福祉年金の性格にも関連いたしまして、将来、拠出制年金の被保険者に応分の負担をかけてもいいじゃないかという論議もあれば、間接税その他の税源に期待すべきじゃないかという議論もございます。今後の経済社会の動向を見ながら、総合的に判断すべきものと考えます。  第二の御質問は、国民所得に対する社会保障給付の割合を引き上げたらどうかという御質問でございます。  現在七%程度でございますから、フランスのように一五%のものもあるのだから、もっと引き上げるべきでないかという御提案でございます。しかしながら、これは社会の構成が日仏の間では違うわけでございまして、申すまでもなく、六十五歳以上の人口比が、フランスにおきましては一三・四%でございます。日本は七・五%でございます。また、年金受給者の被保険者に対する比率は、フランスは二七・一%、日本は四・二%というように、全然構成が違っておるわけでございます。いわば、日本の社会保障制度は、制度としてでき上がりつつはございますけれども、まだ若く、熟していないわけでございますので、一概に日仏の比較を形式的にいたしましても、意味はないのではないかと思うのでございます。  その証拠に、振替所得の増加率が非常に顕著な増加を見ておりますことは、御案内のとおりでございまして、私ども、いま直ちに、そういう問題意識を持ちまして、特に社会保障給付を上げなければならぬというようには考えておりません。(拍手)    〔国務大臣田中正巳君登壇
  53. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 田口さんにお答え申し上げます。  老齢福祉年金の性格については、ただいま総理が申し上げましたから繰り返しません。  そこで、福祉年金の性格はさることながら、なお給付額の向上を図る必要があると思われますが、従来のような一般会計のみに依存するようなやり方では、これ以上余り多くを期待できないので、したがいまして、目下給付向上のための財源及び財政方式を検討中であります。いまいろいろと御心配をいただきましたが、その手法については、まだ決まっておりません。  大蔵大臣から御説明がありましたが、国民所得に対する社会保障給付費の割合でございます。  わが国の社会保障は、その特色として、やっている政策の数、種類については、ヨーロッパの社会保障先進諸国に遜色がないものと思われますが、一部政策の内容について、おくれをとっていることは否めないと思います。特に、年金の成熟度及び人口の老齢化が、いま大蔵大臣が言ったように、欧米に比較しておくれておるのでありまして、この方面の給付にかなりの差が認められますので、今後は、人口の老齢化と年金の成熟度との関連において、年金等の社会保障の充実に特に力をいたしていかなければならないというふうに思っております。  そこで、欧州並みの老齢人口化が完成をするのは、恐らく昭和七十五年度程度だと思われますものですから、その節には、ヨーロッパ等と同一の水準を確保しなければならないと思われておりまして、その緒につくために、ここしばらくの間、どういう給付をどういうふうに上げていくかということについて検討をしているところであります。  また、わが国の年金の水準と、ナショナルミニマムの関係でございます。  わが国の年金は歴史が浅く、給付水準も十分ではなかったのでございますが、昭和四十八年改正で大幅の向上を見たことは、御案内のとおりであります。しかし、今後とも給付水準を上げる必要があるので、五十一年度に財政再計算を行うことにいたしております。ちなみに、この財政再計算は、本来は五十三年のつもりでございましたが、現下の情勢にかんがみて、二年繰り上げてこれをやろうということであります。ナショナルミニマム的な考え方の導入というのは、理想的には望ましいことだと思いますが、お説のように、最低保障六万円というのは、ただいま直ちに実施することは困難だと思われます。  福祉年金と経過年金を三万円程度にしろというお話については、総理からただいまお話がありましたが、これについては、やはり何といっても、財源等の問題を踏まえて見ますると、私は、三万円をいますぐに実施することは困難だというふうに思います。  賃金スライドを四月に実施しろということであります。  わが国の労働事情から、賃金をスライドの指標に導入することは簡単ではない、かえって妥当ではないというふうに思われます。なお物価スライドを続けていって、一定の期間の財政再計算期に、諸般の状況を見て、年金額の改定を行うという従来の手法の方が、合理的であろうと思われます。また、物価スライドの指標となる年度間の物価上昇率が判明するのは五月初めでありますので、事務処理の能力の面もあって、四月から実施せよというのは無理だと思います。  各年金制度のアンバランスを是正せよということでございます。  わが国の年金制度は、確かに、いろいろな制度があって、目的と沿革が違っておって発達したものですから、これを、いまにわかに統一することはなかなかむずかしいわけでございますが、今後、各制度間を通じて、整合性のとれた受給権を図ることが必要と思われますので、老齢年金の支給開始年齢の問題等も含めて、今後、公的年金制度全般の基本的なあり方について、関係省庁の間に十分の調整を図って検討を進めたいと思います。  在職老齢年金について、いろいろお話がございました。  これについては、退職を要件としておった厚生年金に、在職ということで例外的に認めたときには非常に喜んでおったのですが、最近またいろいろと御意見がありますので、これについては、一部前向きに検討しなければならない問題があろうというように思っております。  しかし、低賃金で再就職すれば、一部の方が年金額が下がるというのは、非常なレアケースでございますが、事実あるということでございます。これは昭和四十四年に、年金水準を引き上げるために、昭和三十二年九月以前の低い標準報酬を切り捨てたという親心から始まったものでございますが、この制度が非常に複雑なものですから、したがって、ごくまれなケースでありまするが、非常に低い標準報酬のところに再就職した人について、年金額が下がるというまことに遺憾な事例が起こってまいりました。これについては率直に認めます。したがいまして、これは近い将来に改定をいたさなければならないと思って、せっかく作業中でございます。  年金計算を、どなたでも、お年寄りでも、簡単に自分の年金が幾らになるだろうということを見れるような簡単なものにできないかというお話ですが、ごもっともなお話だと思います。  しかし、わが国の民間労働賃金というものは、年功序列型とはいいますものの、やはり肉体労働者等におきましては、一定の年齢以上になりますと給与がダウンをするというような傾向も実はあるものですから、簡単にいかないわけで、したがって、在職期間中の全期間中の標準報酬を平均するという手法をとっておるものですから、したがって、なかなかむずかしい、よくわからないという傾向がございます。やむを得ないことでもあろうと思いますが、また、いまのお説についてもごもっともだと思われますので、できるだけこれは簡略にいたしていきたいというふうに思っております。  それから、遺族年金の支給割合が五割であるということについては、これはどうもけしからぬではないかということでございます。  これは、各年金制度全部が五割ということで、今日まで押し通してまいりました。恩給法の流れをくむものじゃなかろうかと私は思うのでございますが、今日の御時世から見ますると、やはり二分の一ということは、私は妥当でないと思われるわけでございまして、次の改正時に、何とか、八割とまでいくかどうかはわかりませんけれども、いまの五割よりこれをさらに向上させたいというふうに思って、今日検討をいたしております。  賦課方式につきましては、いろいろお話がございましたが、賦課方式というものが一体どういうものであろうかということについて、いろいろとお互いに勉強をしてみたいというふうに思っております。  完全な賦課方式、これをいま直ちにとれるかということについて、私もいろいろ勉強しておりますが、いま直ちにあなたがおっしゃるような、現在の老人が、あるいは福祉年金の受給者が、過去勤務がすべてにあったというふうに考えて、この人たちにも拠出年金と同じ年金を支給するというような完全な意味の賦課方式をとるとするならば、一体保険料はどのぐらいになるであろうかという検討をいたしておりますが、端倪すべからざるものになるはずでございまして、したがって、賦課方式については、私は、いつ、いかなる時期に、どういう範囲でこれを導入していくかという綿密、しさいな検討が必要だと思います。しかし、賦課方式というのは、今後の年金の財政方式としては十分に検討に値するものと思われますので、この導入について、できるだけのひとつ努力をいたしてみたいというふうに思っているわけでございます。  以上でございます。(拍手
  54. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  55. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会      ————◇—————