○
佐藤観樹君 ただいまは
小泉議員の方から、本
法案に対して賛成の
立場から御
質問がありましたけれども、私は、
社会党を代表いたしまして、
三木内閣ができてから初めての
公共料金の
値上げになろうとしておりますこの
製造たばこ定価法及び
酒税法の一部を
改正する
法律案につきまして、
反対の
立場から
質問をいたしたいと思うわけであります。
三木内閣は、当初の公約から
後退に次ぐ
後退を続けております。
独占禁止法の骨抜き、
政治資金規正法の
後退、核不
拡散条約の今
国会提出の見送り、
自動車排気ガス規制の
後退、まさに、
三木首相は口舌の士になったと私
たちは思うわけであります。そして、いま、
三木内閣の
政治的なバックボーンとも言うべき
社会的不公正の
是正、これすら大変怪しくなってきた、こういう感がするわけであります。
税制一つとってみましても、果たして、これで
社会的な公正を目指すことができるのだろうかと疑いたくなるわけであります。現在のような
インフレにあってこそ、
税制は、その重要な
機能である富の再
配分機能を遺憾なく発揮させなければなりません。
インフレでぬくぬくと潤った者からは、その
インフレ利得を税で吸収し、
インフレの大風に立ち向かうこともできず、やせ細っていった
インフレ弱者には、
税制でも、歳出の面でも救済の手を差し伸べる、これが私は
政治の本質であると
考えております。(
拍手)
総理府発表の
家計調査報告でも
指摘しておりますように、
勤労者の間でも、最近この三年間の
インフレの進行の中で、
所得格差がますます広がってきております。
所得の高い階層の
人々の
収入の
伸び率は、低い
人々の
伸びをはるかにしのいでいるのであります。このようなときにこそ、弱い
立場の低
所得層には
所得税の
減税を、強い
土地や
資産を持っている
人々には
増税をというのが、
社会的公正を維持するためにはぜひとも必要であります。
ところが、今年度の
所得税減税はわずかに千九百五十億にしかすぎません。これは
物価上昇を加味いたしますと、
減税はなきに等しいわけであります。そして一方では、今度の
法案によって、
たばこの
値上げで二千五百億円、
酒税の
値上げで千七十億円、ざっと
所得税減税の一・五倍の
増税が行われているのであります。
所得税をほんのちょっぴり
減税をしてもらったと思ったら、
反対に、
たばこと酒でがっぽり取られてしまったというのが、
国民の偽らぬ実感でございます。
こんな簡単な算術は、
幾ら経済に弱いと言われる
三木首相にもおわかりいただけると思います。こんなことで、果たして
土地も
資産もない
インフレ弱者を救済したと言うのでしょうか。税の持つ富の再
配分機能を働かしたと言うのでしょうか。
首相の言う
社会的不公正の
是正、これができるのでしょうか。それとも、これはやはり口先だけだったのでしょうか。
総理の
見解をお
伺いしたいと思うわけであります。(
拍手)
さらに、いま
お話がございましたように、
たばこや酒は貧乏人も飲むんだ、吸うんだというような
お話がございましたけれども、そこが問題なんでございます。
たばこや酒に含まれる
税金は、
松下幸之助さんが吸うものでも、
老人年金を受けるお年寄りでも同じ額であるという不公平があります。いまの
三木首相の
答弁の中でも、このことは多分認められております。同額というよりも、むしろ逆に、
所得の低い人ほど税の
負担割合が重くなる
逆進性を、
間接税に持っているわけであります。まさか、このように暮らしにくい世の中で、
老人年金を受けている者は
たばこを吸ってはならぬ、酒を飲むな、こういうことではありますまい。現在のような
インフレで、低
所得者ほど重くのしかかる
たばこ、酒などの
間接税を重くすることは、ますます不公平を拡大することになるのではないでしょうか。不
公正是正を絶えず口にする
首相の率直な御
意見を承りたいと思うわけであります。(
拍手)
また、
三木内閣の
政策課題の第一は、何と言っても
物価の
抑制にあったはずであります。たかが、
たばこぐらいと言われるかもしれません。
たばこは、いま成人の約八割、三千三百万人の
人々が吸っている、まさに
大衆の
嗜好品であります。
東京調布市の
多摩川団地に住む
会社員の
加藤修さん、四十二歳の方でございますが、同僚二人で
正月から禁煙を誓いました。
加藤さんは三万円のお小遣いで、
子供たちにケーキを買って帰るのが楽しみで、
たばこは一日
セブンスター一個、こういう方でありましたけれども、ことしの
正月からは禁煙いたしました。いままで
たばこ代は一月三千円で済んだわけでありますけれども、今度
値上げになりますと、これが月四千五百円の
負担になります。一家四人の
米代が六千円、これと
考え合わせますと、ずっしりと
値上げの重みを感ずると訴えております。
消費者物価指数への
影響が〇・六%、昨年十一月の
消費者米価に次ぐ大幅な
値上げであります。いま、
たばこの箱には、
皆さん方も御存じのように、「健康のため吸いすぎに注意しましょう」、こういうふうに印刷をされておりますけれども、さらに私
たちは、これはちょうど、「家計のために吸い過ぎに注意をしましょう」、こういう悲しいことになりはしないかと憂えているわけであります。(
拍手)
現在のような
インフレのもとで、
財源確保という
財政上の
理由で
値上げをするということは、
国民の
インフレの心理、
インフレマインドを強く刺激するばかりであります。このような
緊急性のない
値上げは、
物価抑制を第一目標にしている限り、
考え直すべきであると思いますけれども、
物価抑制との関連をどう
考えていらっしゃるか、
総理にお
伺いをしたいと思います。
もし、
財源がないから、
福祉に回すお金がないからというなら、私
たちは、
インフレでもうけた強い者、
企業から取るべきであると、逆に
提案を申し上げます。たとえば、
法人税率を
平均四二・五%にするとか、
法人間の
受取配当を益金に算入するとか、
交際費課税を強化するとか、
広告費税の創設、利子、
配当所得の
総合課税、
租税特別措置法の整理、こういったようなことをすれば、私
たちの試算でも、ざっと一兆六千四百億円の
財源が見出せるわけであります。
インフレでもうけた
企業からは取らずして、
インフレで苦しんでいる
大衆から、
たばこの
値上げによって煙に巻くがごとき
政策を認めることは、私
たちはできません。
総理、あなたは議会の子を
任ずるとともに、
官僚出身でない
政治家を誇りとしてきたはずであります。
官僚は、強い者には弱いが、弱い者にはめっぽう強いという体質があります。あなたはそうでないはずであります。私の
提案する
税制改正を受け入れて、初めて、強きをくじき弱きを助ける
社会的不公正の
是正ができるのであります。
首相の
見解を承りたいと思います。
また、今回の
たばこ、酒の
値上げによりまして、国税の中に占める
間接税のウエートが非常に大きくなってきます。
三木内閣がいつまで続くかわかりませんけれども、今後一層
間接税の
割合を大きくしていくのか、また、最終的には、
物価の値上がりを導くような
付加価値税の
導入までいくのか、今後、この
間接税をどういうふうにしていくかについてお
伺いをしたいと思います。
以上五点につき、
政府の
基本政策にかかわる重要な問題でございますので、あえて
三木総理に率直な
見解をお
伺いしたいと思うわけであります。
次に、今回の
値上げの
理由、
専売公社の
あり方について、
担当大臣である
大平大蔵大臣に
伺います。
そもそも、
たばこ製造を
専売制にしているのは一体なぜでしょうか、どういう
メリットがあるのでしょうか。私は、
たばこが
専売制であるのは、
公社が、
国民に安くてうまい、だれでもどこでも同じ値段で安心して吸える
たばこを安定的に供給する、これが
公社の務めであり、
国民のための
専売公社にふさわしい
経営に変えていくべきであると
考えております。
少なくも四十三年の
長期計画には、この「安くてうまい」の
文字が入っていたわけでありますけれども、最近の
公社は、
皆さん方も新聞や雑誌で
ごらんになっていると思いますが、
値上げのためのキャンペーンを盛んに莫大な
広告費をかけて行っております。
皆さん方も
ごらんになったと思いますけれども、この中には、「うまい
たばこ」という字は入っておりますが、「安い」という
文字は入ってないのであります。これは一体どういうことでございましょうか。
物価高の折から、
公社としての現代的な
メリットというのは、
値上げをしないでやる、これが私は
公社としての
メリットであると思っております。この
公社の
社会的
責任、公共
企業体としての公共性をどう発揮すべきであると、監督
大臣たる
大蔵大臣は
考えていらっしゃるのかをお
伺いをしたいと思います。
今回の
値上げの最大
理由は、葉
たばこや人件費などのコスト高で、
公社が国に納める
専売納付金が減ってきたというものであります。それでは、
公社の
たばこが売れなくなってきたのか、量が減ってきたのか、とんでもないのであります。毎年百億本という膨大な
たばこが売り上げを伸ばしております。加えて、
消費者になるべく高い銘柄を買ってもらおうと、あらゆる手段を尽くした結果、
公社が国に納める益金額、これはどんどんと急ピッチに
伸びております。
昭和四十年が二千九百六十三億であったものが、四十五年には五千百五十二億円、四十九年には六千九百十四億円にもなっているわけであります。額でふえても、国への
専売納付金の
制度は、あらかじめ利益額の目標を決めて予算を立ててしまいますから、コストが予算以上に上がりますと、自動的に益金率が下がる。逆に益金率、つまり
税率を固定しておいてコストがアップになりますと、これをカバーするために
たばこの
定価を上げなければならないというシステムになっております。いま大蔵省、
専売公社が騒いでいるのは、この益金率が六〇%を割って、四十八年には五九・三%、四十九年には五六%となったから、これを四十七年以前の六〇%に戻してもらいたい、これが
値上げ法案の
理由であります。
一体、この益金率六〇%というのは、大蔵省と
専売公社が覚書を交換しているものでありますが、どういう意味を持つのでしょうか。また、
公社の
経営を硬直化させるこの専売
納付金制度は、
三木総理お得意の洗い直しを迫られているのではないでしょうか。この専売
納付金制度について、
大蔵大臣の
見解をお
伺いしたいと思います。
いま述べましたように、益金率とは、国と地方自治体へ行く
税金の売り上げに占める
割合でありますから、すなわち、
たばこに課せられた
税率に等しいわけであります。四十九年度の益金率五六%は、五六%の
税金が
たばこに課せられているということを意味いたします。
皆さん、ダイヤモンド、エメラルド、これは物品税がかけられておりますけれども、これは一五%の物品税でございます。自動車が二〇%の物品税。ところが、この物品税がかけられているものは、そう毎日ダイヤモンドを買う方はございませんのに、こういうように一五%という低い率であります。けれども、
たばこのように毎日毎日
消費するものですら、なお五六%という高い率の
税金がかけられております。本年度
値上げをしないと四六・五%になってしまうと大騒ぎをしておりますけれども、このような
大衆から高率の税をしぼり上げるものについて、ほかに類を見ないのであります。
たとえば、
皆さん方がお吸いになる百円
セブンスター、これは
原価は三十三円と言われております。ところが、これは
税金が五十七円入っているわけであります。チェリーも、値段が一緒でご
ざまいすので、
原価と益金率は一緒でございます。五十円のホープ、
原価十九円であります。
税金が二十六円。それからハイライト、これは八十円でございますけれども、
原価は三十一円、何と四十一円の
税金がかけられているのであります。
大衆が嗜好するものについて、こんなに高い
税金をかける必要が果たしてあるのでしょうか。この件について、なお一層高い
税金をという
大蔵大臣の
見解をお
伺いしたいわけであります。
さらに、今回の
値上げは、
国民的なコンセンサスが十分得られているのかについては、非常に疑わしいわけであります。
政府の
税制調査会、専売事業審議会、こういったところでも十分な審議もされずに、大蔵省、自民党と
専売公社がなれ合いによって
国民に押しつけてきた
値上げと私は思います。もっと
国民の声を
公社の
経営に取り入れるために、
消費者、関連産業の労働者、
たばこ耕作農民、小売人、地方自治体などとのコミュニケーションの場を積極的につくり、
経営の
あり方を再
検討する機関をつくるべきだと
考えますけれども、いかがお
考えでございましょうか。
今回の
値上げの
理由の
一つに、もし
値上げをしないと、国への
専売納付金が、地方自治体に行きます
たばこ消費税よりも五十二年には下回ってしまう、こういうことが
理由の
一つに挙げられております。
地方
財政の危機が叫ばれている今日、地方
財源充実のために、国、地方の
比率を地方優先に上げるべきだとさえ
考えます。絶えず国への
納付金が地方よりも上回っていなければならないという発想には、地方自治は絶えず中央の下にあるべきだ、そういう
考えがあるのではないでしょうか。自治
大臣は、この地方
財政との関連においてどのように
考えているか、お
伺いをしたいと思います。
たばこに関する最後といたしまして、葉
たばこの海外依存問題について伺っておきます。
いまや、葉
たばこ耕作者はかつての半分に減り、二五%を海外産葉に依存をしている現状であります。これは、
公社が、
耕作者に対して生産意欲を起こさせる十分な
対策をとってこなかった結果であります。そして、いまや第二次中期
経営計画では、ブラジル、インドネシア、インドなどから、
日本の商社を通して開発輸入をすることを
考えております。しかし、たとえばインドネシアの南スマトラでは、悪名高き
日本の大手商社によって農業開発が行われ、借地料は、三十五年で一ヘクタール二千円と、ただ同然であります。農業労働者の賃金は、
日本円に換算して百円
程度となっています。このような生産方法で、確かに安いことは事実でありますが、果たして今後ともこんなことが続けられるでありましょうか。田中前
首相のインドネシア訪問でも言われましたように、民族的意識は高揚しており、加えて、世界は食糧危機を迎えております。このような世界的な原料事情の悪化傾向を
考えるとき、原料確保のために、目前の安い葉
たばこに目を奪われることなく、長期的な展望に立って、国内産葉の生産、育成に努めるべきであると
考えますが、
大蔵大臣の
見解をお
伺いしたいと思います。
最後に、
酒税の
値上げについて、一点だけお
伺いをしておきます。
酒税も、
間接税として
逆進性を持ち、
たばこ同様
大衆課税であることは論をまちません。
政府は、
値上げの
理由として、数量にかかる
従量税なので、思ったほど税収が
伸びないと言っておりますが、近い将来、額にかける
従価税に移行させるつもりなのか。またすでに、この
税率引き上げのときばかり、
ビール一本二百円の声も耳に入ってきておりますが、
政府は、このような酒類の便乗
値上げに対して、どのような有効な手を打とうとしているのでしょうか。
以上、私は、
三木内閣の
政治課題である
社会的不公正の
是正を中心に置きながら、多岐にわたって
国民に切実な問題点を
質問してまいりました。いずれも
三木内閣の
政治姿勢を問う踏み絵となっております。どうか、心して
答弁されることをお願いし、
質問を終わりたいと思います。(
拍手)