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1975-06-18 第75回国会 衆議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十八日(水曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 小宮山重四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中  覚君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       小澤 太郎君    小平 久雄君       福永 健司君    中澤 茂一君       日野 吉夫君    諫山  博君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         警察庁刑事局保         安部長     荒木 貞一君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省保護局長 古川健次郎君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君  委員外出席者         衆議院法制局長 川口 頼好君         警察庁刑事局参         事官      森永正比古君         警察庁刑事局捜         査第二課長   平井 寿一君         警察庁警備局公         安第二課長   渡辺 善門君         警察庁警備局公         安第三課長   柴田 善憲君         法務大臣官房審         議官      鈴木 義男君         法務省刑事局刑         事課長     吉田 淳一君         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         法務省刑事局参         事官      根來 泰周君         国税庁長官官房         総務課長    水口  昭君         文部省大学局学         生課長     十文字孝夫君         自治省行政局選         挙部選挙課長  秋山陽一郎君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本
  3. 沖本泰幸

    沖本委員 きょう私は、まず最初にけさつかまりました北九州ピストル乱射事件についてと、それから商法改正の中で監査制度の問題と決算について御質問していきたいと思います。  警察庁からは捜査課長お見えでございますが、けさ七時過ぎに犯人は逮捕されたようにテレビで見たわけですけれども、白昼、暴力団員が同じ暴力団員一人を射殺し、さらに市民の御婦人を射殺した、それから旅館にたてこもって、そのときに女性人質にして、最終的には人質は解放して逮捕されたという事件ですけれども、それ以前にすでに北九州では相当乱射事件が続発しておったということでもあり、以前には千葉県でも乱射事件が起きて市民恐怖に巻き込んだ、こういうことがしばしば起きており、こういうことでは日本治安に対して国民は非常な恐怖心が起きてくるわけで、これに対する取り締まり強化してもらいたいことは当然のことです。まず、その概要について御説明いただきたいと思います。
  4. 平井寿一

    平井説明員 ただいま御質問の、昨日の北九州における暴力団拳銃を使用した殺人事件でございますが、事件発生直後で詳細はまだ報告されておりませんが、いままでおよそ聞いております状況について御報告申し上げたいと思います。  昨、六月十七日の午後三時ごろでございますけれども北九州市の戸畑正津町というところにございます篠村進という人の家に、合田一家系統三代目小桜組の組員で川辺敏幸(三十歳)これが犯人でございますが、これがやってまいりまして、被害者の篠村という人、これも犯人と同じ一家に密接に関係あると言われておる人物でございますが、口論の上この被害者拳銃を一発発砲して殺害した。その後、同被害者の家から二百メートルぐらい離れました、これは同じく戸畑正津町の山下という人の家でございまして、山下初江さんという二十八歳の主婦が留守番していたのですけれども、そこに参りまして、玄関口拳銃一発を発砲して胸部に命中させて殺害いたしまして、さらにその後、通りかかった会社員の方の運転する乗用車をとめまして、北九州市の小倉区の方に逃走したという状況でございます。犯人捜査中、この犯人はかねて顔なじみだと言っておるのですけれども、二十六歳の女性を連れ出しまして、小倉区の「司」というホテルに一緒に一室に入りまして、この女性人質に立てこもっておったわけでございますが、警察官の説得などの結果、本日午前七時三十五分に部屋を出てまいりまして、これを逮捕できた、こういう状況でございます。
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 けさテレビ等説明を聞いておりますと、以前から相当乱射事件が続発しておったり、あるいは町のお祭りに暴力団関係しておること等、暴力団動きというものが北九州では相当市民の頭にきておるような状態で、暴力排除動きが相当あった。また、解説によると、警察の方が少し後手に回ったのではないかという解説もしておったようであります。そういう点で、暴力団同士の撃ち合い的なこと、これも市民恐怖に巻き込むわけですし、大きな危険が伴うわけですからこういうことがあってはなりませんし、われわれはいわゆる自分を保護するための武器の携帯は禁じられておるわけですから、その中にある警察権による治安維持というものが十分果たされないと国民は不安の底に落とされてしまうということになり、そういうことがあるわけです。暴力団実態というものは警察庁でも十分おつかみにはなっていると思うのですけれども現状実態をつかんでいろいろと手を打たれておるわけですけれども改造モデルガンであるとかあるいは密輸で入ってきた拳銃であるとか、最近しばしばそういうことが報道されておりますけれども、一体暴力団の中にこういう凶器がどれほど温存されておるか、使用されておるか、そういう危険性はどの程度あるのか、それに対して警察はどういう態勢をおとりになっていらっしゃるのか、そういう点について御説明いただきたいと思います。
  6. 平井寿一

    平井説明員 暴力団組織におきましては、暴力団相互間の対立抗争事件や彼らの暴力的さまざまな犯行手段としまして、拳銃などの凶器が有力な武器とされております。従来からこうした武器の収集、隠匿に、彼らとしては非常に狂奔しておるという状態でございますけれども警察といたしましても、彼らのこうした武器による凶悪事件未然防止を図るとともに、彼らの武装化一つでも解体いたしまして組織根絶に資するという観点から、拳銃中心とした凶器押収取り締まりには、これを暴力団取り締まり重点一つにいたしまして、全国府県で努力しておるところでございます。御参考までに申し上げますと、昨年一年間で押収されました暴力団関係者からの拳銃の数は、一年間で千五十四丁に達しております。本年も四月末現在で全国で同じく三百八十丁押収しておるという状況でございます。この拳銃で注目されますのは、十年ほど前はわりあい海外からの輸入拳銃というものが多く見られたわけでございますけれども、その後取り締まり強化によりまして、最近では改造拳銃モデルガン改造拳銃でございますが、これが非常に多いわけでございます。昨年一年間の押収量千五十四丁中、モデルガンの数が七百九十三丁を占めております。本年も三百八十丁中二百九十七丁がこうした改造拳銃という状況でございます。取り締まりの方針といたしましては、押収した凶器入手先の徹底的な追及によりましてその根源を検挙するという作戦と同時に、こうした国内密造、密売されております改造拳銃の発見あるいは密造場所の捜索ということによりまして、こうした銃を一丁でも多く押さえてまいろうということをやっておるところでございます。昨年来、凶器使用犯罪未然防止取締り月間というのを設けまして、本年の現在に至るまで、全国府県でこうした凶器類取り締まりということを、刑事部のみならず保安部門も含めまして、最重点で実施してまいっておるところでございます。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 こういう凶行に及ぶと見られる暴力団の性格にいろいろあると思いますけれども、さらにその中で凶悪的な犯行をするであろうと目される暴力団はどの程度あるのですか。
  8. 平井寿一

    平井説明員 現在私どもの把握しております暴力団の数でございますけれども全国で約二千六百団体、その構成員数で約十一万人と把握しております。これらの暴力団は一応博徒とかテキヤとかというふうな、伝統的な封建的擬制家族関係で構成されておる組織でございますが、いずれも大半が暴力常習者から成る集団でございまして、そういう意味では、私どもで把握しておる暴力団は一切これは非常に悪性の強い反社会的団体であり、常に暴力取り締まりの対象としては同様の比重で見てまいらなければならない、かように考えておるところでございます。
  9. 沖本泰幸

    沖本委員 先ほど御説明もありましたけれども取締り月間なり何なりいろいろな作戦をお立てになって取り締まりをおやりになっているわけですけれども、これは減少に向かっての傾向はあるのですか。また、減少させていくということについての何らかのめどはお持ちなんですか。その辺どうなんですか。
  10. 平井寿一

    平井説明員 先ほど、昨年末で把握しております暴力団数字を申し上げましたけれども、これは戦後暴力団の数が一番多かったいわゆるピーク時に比べますと相当減少しております。ピーク時と申しますのが、先生御承知のように、例の広島抗争事件など全国で一連の抗争事件が非常に多く行われました昭和三十七、八年ごろでございまして、この当時の暴力団の数が約五千団体、それから構成員数で約十八万人現存しておったわけでございます。その後、先ほど申し上げましたような作戦に加えまして、暴力団首領級徹底検挙目標にしたいわゆる頂上作戦であるとか、あるいは主要資金源封鎖作戦であるとか、こういった取り締まり全国的に実施してまいりました結果、そういった数字比較でも御承知いただけますように、大体十年間で団体数で約半減、構成員数で約四〇%減少した、こういう状況でございます。  私どもの方の取り締まり最終目標は、あくまでもこれは組織根絶ということにございまして、暴力団構成員個々の個人的な犯行を検挙するのはもちろんでございますけれども組織がある限りはこうした暴力犯罪の起こる余地は依然として残る、こういう観点に立ちまして、今後ともさらに一つでも多くの団体壊滅に追い込むような取り締まり作戦を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員 大体はわかったのですが、さらに、最近の社会情勢なり経済の動向なり、いろいろなことから国民の生活上の不安、社会不安、そういう中からこの種の事件なり何なりというものはさらにエスカレートする、あるいは手口をまねるような内容、それから暴力団同士がお互いのやりとりということよりも、むしろ市民事件の渦中に巻き込んでしまうような内容事件がだんだんふえてきておるような傾向にあると私は考えるわけです。そういうことで、たとえて言うならば三菱の爆破事件にしても、性質は全然異なることですけれども市民を中へ巻き込んでしまうということにおいては同じような傾向が言えるわけですし、あるいは暴走族暴走にしても善良な市民事件の中に巻き込まれる、そばづえを食うという内容がいろいろなところで起きるわけですから、一番根本になるこの種の取り締まりは徹底してやっていただいて市民の不安を除いていただきたい、こういうことですけれども警察庁の方は今後どういう対策でお臨みになりますか。
  12. 平井寿一

    平井説明員 確かにおっしゃられますとおりでございまして、こうした暴力団組織というものは、長い期間いろいろの社会状況の中で育ってきました一種の社会的存在だというふうに考えております。したがいまして、そのときどきの社会経済情勢に非常に敏感に反応してその実態も変わりますし、また、その犯行手口どもいろいろと変遷しておるわけでございまして、たとえば、昨今の経済情勢を反映して非常に金融に絡んだ事件が多く起こるようになったとか、あるいは市民商取引に介在してくるような、そうした資金源の求め方がふえてきているというふうな動きどもあるわけでございます。したがいまして、警察取り締まりといたしましても、従来の取り締まり方法の繰り返しだけではなかなかこれらの実態に応じた適切な取り締まりは遂行できないと考えております。今後とも彼らの実態変遷状況というものをよくとらえまして、それに合った適切な各種の手段を講じてこれらの壊滅に努めてまいりたい、かように考えております。
  13. 沖本泰幸

    沖本委員 いまの御説明にもありましたとおりですが、これは大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、改造ガンというようなことは以前は全然考えつかなかったようなことだったわけです。ですからフィリピンでつくられている登録されてない拳銃とか、海外のそういう拳銃がルートを通って入ってきたということの方が多かったわけです。最近、タイ等からも相当入ってきたというようなあれがあって、それがつかまったというようなこともあるわけですけれども、この改造ガンということになると、国内でもいとも簡単にできるというふうに考えられるわけですね。すでに「狼」グループ、あの連中が要人に向かってのテロを考えてつくりかけて持っておったということもあるわけですから、そういう点から考えますとこれは非常に危険であるということにもなるわけですし、そういうものの根源を断たなければやはり市民の、国民の不安はとれないということになると考えられるわけですけれども、今後に向かって、一番治安中心である大臣としてはどういう決意でお臨みになるか。この事件を契機にしてもう一度お伺いしておきたいと思います。
  14. 稻葉修

    稻葉国務大臣 御指摘のような爆薬の製造であるとか改造ガン製造であるとか、国内でいともたやすく製造されておる事実を私どももきわめて重視しておるわけであり、沖本委員の御指摘のとおりなんですが、第一義的には、警察当局調査に基づき、第二義的に、検察庁が送検を受ければ厳重にこれを取り締まるという秩序維持体制日本現行法はなっておるわけでございますが、一方、警察権力国家になることは厳に戒めなければならないことであります。これは憲法を尊重し擁護する立場にある者として、現行憲法は明確にそういう方向を示しておるわけでありますから、いやしくも、これらの事案にかんがみて警察権力強化し、検察権力強化するということの行き過ぎがありませんように注意すると同時に、厳に戒めつつ、治安維持には、御指摘のような事柄に対しては今後警察当局とも緊密な連絡をとって、検察庁が真剣にこれに取り組むよう指示もしてございますし、きょうの御指摘の、国会における御質問も受けまして、きわめて重大な御質問であるということを感じつつ、なお一層、このことも検察首脳部に伝えまして万遺憾なきを期したい、こう存ずる次第であります。
  15. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣、大分憲法問題では……。注意して御発言になっていらっしゃるわけですけれども警察国家になっては困るわけですけれども、しかし、少数の人の行為によって多数が生命の危険を感じなければならないということは当然断ち切らなければならない問題ですから、この点については十分さらに強化していただいて、根絶を図る体制をとっていただきたいと考えます。――警察庁の方、もうこれで結構です。  では質問を変えます。  民事局長にお伺いいたしますが、商法に関してでございます。監査役権限強化と、資本金五億円以上の上場会社に事前の外部監査を義務づけた改正商法は、政令によって一部の企業にはすでに適用されておるわけで、上場企業の大部分を占める三、九月期決算会社も適用を受けておるわけでありますが、この改正商法は、監査役について、従来の会計監査のほかに業務監査を行わせ、そのために取締役会への出席権取締役に対する違法行為差しめ請求権を与え、一方資本金五億円以上の会社については、株主総会前に公認会計士監査法人による会計監査を受けることを定めており、内部、外部からの監査を拡充して正確な財務内容を公開させて、不正とか不当な企業行動に歯どめをかけるという点にあるわけなんです。これは、前の田中法務大臣もこの法案の審議のときに非常にこの辺を力を入れてお答えになっていたわけです。  こういう中にあって、日本監査役協会などが、監査役を原則として常勤にして複数監査役制をとる場合には、監査役会をつくって意見調整監査計画の立案をし、同時に、監査業務の拡大に応じて手足となる事務局を置くことを提言しているという点があるわけですけれども局長はこの点、御存じでしょうか。これは非常に検討に値するということになるわけですけれども、この点、いかがですか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御指摘のように、昨年の十月一日から改正商法が施行になりまして、もうすでに半年以上経過したことになるわけでございますが、その間、決算期が到来し、そしてその決算期に関する株主総会が終了した時点で監査役交代が行われた会社が相当あるわけでございます。今度の改正商法によりますと、従来の会計監査を行っていた監査役が、その権限を拡大いたしまして業務監査まで行うことになった。そこで新しい事態に対応する監査役あり方というのが問題になるわけでございますが、私どもといたしましても、この改正後の実績というものについては非常に関心を持っておるところでございます。したがって、こういった点につきましては、いろいろ新聞雑誌等に出ました資料は一応整理して検討の材料としてとってあるわけでございますが、何分にもまだ監査役交代が行われた直後であるというところが多いために、いろいろ監査役選任に当たって会社側が苦労しておるという実情は聞いておるわけでございますけれども、あまり正確な調査というものはいたしておりません。監査室強化というような点につきましても、監査役協会でありますとか、あるいは関係の機関におきましていろいろ検討が行われておる模様でございますし、発表された論文も出ておりますけれども現状がどのように変わってきておるか、あるいは変わりつつあるのかという点につきましては、もう少し時間を置きまして調査をいたしたいというふうに考えております。現在のところその程度でございます。
  17. 沖本泰幸

    沖本委員 いわゆる公認会計士の力が非常に弱い面が日本熱学事件で出ておるわけで、これはただ単に一時的に事件として表面に出たということなんですけれども、わが国の経営風土の中に、利益操作ないし紛飾決算必要悪とするような風潮がまだ残っておる。そのためにこういう制度をつくりにがかったわけですけれども、なおかつ公認会計士欠陥監査というようなものも出ておるわけです。ですからこれは単に公認会計士だけを責めるわけにもいかないわけで、企業あり方について厳重に直していただかなければ法律改正した意味合いがなくなってくるということになりますし、この点については附帯決議で、公認会計士独立性制度的に保証しなければならぬというような点も決議されておるわけですし、選任、解任を総会決議で行うということも示されておるわけですから、この点について今後十分法律が果たす役割りをお考えいただいて力を入れていただかなければならない。最近、インフレ、不況の中で倒産会社がどんどん出てきておるわけですし、そういうものも考えていきますとさらにこの制度が生かされなければならないわけです。この法案を審議しておった当時もうすでにいろいろの欠陥が出てきて、民事局長もこれは早々にもう一度見直さなければならないんだ、こういうふうな御発言もしていらっしゃったと思うのですが、そういう点についてお考えはいかがですか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 公認会計士による会計監査の問題につきましても、今回の改正商法で新しい制度が取り入れられたわけでございます。その関係で、すでに若干の問題が生じておるということは私も承知しております。いずれにいたしましてもこの制度はスタートしたばかりでございますので、今後の実績というものをよく見て、そして改めるべき点を改めるという態度で行かなければならないと思います。ただ、先生指摘になりましたように、必要悪だというような考え方があるといたしますと、これは非常に問題でございまして、今度の改正商法の趣旨というものを十分に理解して、会社経営者監査をする人も、それから一般の外部の者も理解して、この制度を盛り立ててもらわないといけないというふうに考えておるわけです。  そういう意味におきまして、公認会計士に対する一つは運用、監督の問題がございます。これは大蔵省においていろいろ考えていただいておるところでございまして、もう少し間を置いてみなければわかりませんけれども、従来のような公認会計士というものが、新しい監査専門家として育っていくということが必要であろうと思うわけです。  それからもう一つ制度の問題でございます。この点につきましては商法改正の際にもいろいろ御指摘をいただきました。そこでわれわれといたしましては、一応商法改正はできたわけでございますけれども国会附帯決議もございますので、さらに株式会社のいろいろな問題につきまして総合的に再検討するという作業を目下進めております。その中で、今回の改正に出てまいりましたいろいろな問題点につきましてもあわせて検討することにいたしておりまして、先生お触れになりました会計監査人選任の問題、これをどうするかというような点につきましても、ほかの問題との関係考えながら十分に検討してまいりたい、このように思っておるところでございます。
  19. 沖本泰幸

    沖本委員 一応法務省の方で法律をつくって、実態に即した内容大蔵省の方でやっているということなので、そこに断層的なもの、開きがあって、局長さんとしては法律をつくって渡しておいた、やるのは向こうでやるのであって、そこからいろいろな問題点が出てくればもう一度考え直すということじゃないかと考えられるわけですけれども、それではどんどん動いておる日本経済実態に即した法律効果というものもこれは上げ得られないという点もあるわけです。ですから、法務省としては非常に扱いにくい法律ではないかというふうにも考えられるわけですけれども、やはり実態を十分つかんでいただきながらこの法律比較検討をどんどん進めていただくということが大事ではないかと思いますし、大蔵省との連携を十分とっていただかなければならぬというふうに考えられるわけです。先日も横山先生がアメリカからの進出について相当問題点を取り上げられていらっしゃったこともあるわけで、この制度が十分生かされるということは、やはり改正すべき点は改正していくという考えに立ってやっていただかないと、法律だけがあって現状にそぐわないということであれば、これはむしろそのために企業は苦しむわけでもありますし、その担当の衝に当たる人たちが迷ってしまって苦しんでしまうということになるわけですし、またそのことによって粉飾決算等がないように、法律効果を十分上げてもらわなければならないわけですから、そういう点、十分お考えいただきたいと考えるわけです。  そこで、結局この改正が実際に即して裏目に出ているという点も指摘されているわけで、年二回決算を年一回に改めて、ことしの十月期決算会社中間決算発表が始まったわけですけれども中間配当実施企業が案外少ないということで、この五月の三十日にソニーが発表をやったのが初めてですが、景気の先行き懸念からかけ声倒れに終わるのじゃないかという点が心配されております。東京証券取引所の調べでは、四十八年度末では全上場企業の三三・五%だった年一回決算会社が五月末現在では九三%に達するのじゃないか、こういう推定も出してきておるわけです。こうなってきますと、配当支払いも年一回になって投資家の方には不利となるために、この改正商法は中間配当をしてもよいということにしてあり、この適用を受けるのは今年十月期一回決算企業になるわけですけれども、個人の株主増大策などのため、年一回決算移行会社に対して中間的配当の実施を東京証券取引所あたりは強く求めているわけです。しかし、中間配当の実施は十月期決算会社で四一・七%、十一月期決算会社で五六・九%にすぎない、こういうふうな記録を出しておるわけです。それで、企業は三月期決算の際に中間配当はやりたいが、実施時期はこの秋まで何とも言えない、こういうふうなものも出てきておるわけで、結局としては、こういう法律のために個人の投資家が株式投資にだんだん背を向けてくるのじゃないかというような点が心配されておるわけですが、この点についてどういうふうにお考えなんですか。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御質問にございましたように、中間配当の実施状況というのは、大体可能な会社の半数くらいであるようでございます。これがどういうことかということは、私ちょっと正確な判断は申し上げかねるわけでございますが、何分にもこの制度ができた最初の機会であるということが一つございます。それからもう一つは、現在経済が必ずしも良好な状態に置かれていないという点がございます。中間配当の場合には、中間配当をすることによって次の決算期に赤字が生ずるような場合にはこれをしてはいけないということになっておりますことから考えますと、企業といたしましてもそう無制限に中間配当に踏み切るというわけにはいかない状態にあるのではないかと思います。これは中間配当というものが、株主総会決議を経ないで、取締役会決議だけで行われるという制約のもとに行われるわけでありますから、そういった、将来の決算期に赤字が予想されるというような場合にまで中間配当を行うことができないのは事柄の性質上当然であろうと思いますし、現在の経済情勢のもとにおきまして半数の会社が中間配当を行っておるということは、大体その程度のところが現状から見ていいところではないかというふうに思うわけでございまして、特に中間配当の制度自体に問題があるというふうには私は考えていないわけでございます。
  21. 沖本泰幸

    沖本委員 いまお述べになったとおり、中間配当を実施しながら、その後の本決算で欠損を計上した企業には取締役に損害賠償責任を負わせるということになっておるわけです。結局、お話しのとおり赤字見通しとなったために現金配当ができないことになって、苦し紛れに株式配当にする企業も出てきておるわけなんで、景気の動向に見きわめをつけて企業活動を運営するのが経営者の職務である以上、こういうふうな理由で中間配当を見送るということは、自己保身であるけれども、結局株主への義務を怠ってしまう問題が出てくる、こういうことになってくるわけです。そういうために株式の投資にいろいろと影響を起こしてくる、こういうことになってくると思いますので、この点は今後のいろんな動向を見ながらもう一度よく考えていただいて、そういうことにならないような十分な指導なり検討を加えていただく必要があるのじゃないか、こういうふうに考えますけれども、その点どうですか。
  22. 川島一郎

    川島(一)政府委員 確かに御指摘のような一面もあろうかと思います。ただ、私は、この中間配当というものが非常に特殊なものである、決算期の中途において行われるものであり、しかもその結果株主総会決議を経ないで取締役の責任で行われるというものでありますので、それが弊害をもたらすような形で行われるということは最も慎むべき問題であろうというふうに思うわけです。会社の利益が配当されずに残るというのは問題ではないかという御指摘でございますけれども、これはいずれ半年先に決算期が来る、その場合にその処理を株主総会で決めるという余地も残されているわけでございますので、必ずしも中間配当を行わなかったからその会社取締役が義務を怠っているとまで言えるかどうかは、私疑問ではないかというふうに思うわけです。しかし、これは経済界の実際に制度を運用する側から見ての問題というのがいろいろあると思いますので、もう少しこの制度が定着するまでわれわれとしては慎重に見守っていく必要があるのではないか、このように考えておるわけでございます。
  23. 沖本泰幸

    沖本委員 このことはすでにこの法律の審議のときにいろいろ疑問点が出されてきて指摘された点でもあることは事実なんですね。さらに、税の収入の伸びが少ないというところから引当金の内容についても課税していくような考え方もだんだん出されてきているということになりますから、そういうものとの絡みでこの法律が十分その使命を果たす、果たさないというところにもかかってくると思いますので、その点は監査制度とあわせて十分検討していただかなければならない問題ではないかと考えるわけでございます。その点今後十分お考えになってこのことに当たっていただきたい、こう考えます。  最後に、これは国税庁の方にお伺いしたいわけですけれども、五月二十六日付の大阪の読売の夕刊で、いわゆる税理士会の役員改選の選挙があって、それについて、民間団体の選挙に対して税務署の幹部が戸別訪問などをして不当に介入したという記事が載っておったわけなんです。それについて大ぜいの方が抗議行動をおやりになったという点にかかっておるわけです。まあ、いろいろ候補者が出て、それぞれの民間団体の運営についてよりよくしていくために役員を改選し、選挙もやっていくということにあるわけですから、それはいわゆる民主的に問題が運営されて行われればいいことで、その中でやはりお互いが推す人に出てもらいたい、こういうことでいろいろと運動なさることはこれは自由であるということになるわけです。  そこで税理士会の方からは、税理士法の改正なり税理士の制度内容について、もっと改善してもらいたいという運動もあって、ことしの冬に決起大会も行われて、そういう要望がどんどん出てきておるということもあるわけですし、それから税理士会の中では、一般に厳密な試験を受けて税理士資格をお取りになって税理士におなりになる方と、それから国税庁の職員を経ながら資格をおつけになって、そして民間におりて税理士の資格をお取りになる、こういう二つのあり方があるわけなんですけれども、ともすれば官から民に資格を取っておりてこられる方がいわゆる国税庁寄りのお仕事をなさる、あるいは税理士会に対する国税庁の監督権というものとあわせてそのあり方というものがいろいろ云々されてきておるわけです。そういうことのために税理士会の皆さん方は、当然在野の税務に携わる立場の方としてその独立性を尊重してもらいたい、あるいはその機能を十分果たすために税理士の独立を認めてもらいたい。国税庁の方の監督権というものがすべてにわたるのではないだろうという意見が多数あるわけです。たとえばこの新聞に出ておるようなことが事実といたしますと、すべてについて監督権があるので、この選挙まで介入してこられて、自分の方についていろいろ仕事をおやりになる人を主に尊重していくという偏向があるんじゃないか、こういうことが考えられるわけです。  この新聞を読んでみますと、大阪国税局安岡総務部長の話として、「直税関係中心に納税者との接触率が著しく低下している。というのも職員数が二十年来増えていないところへ法人数が三倍にふくれ、管内だけでも確定申告期に百五十万件に及び、これを処理するのはわずか九千人の職員だ。こちらとして依存できるのは税理士しかなく、行政協力してくれる人を選ぶために第一線の職員が動いたのだろう。選挙介入ではない」ということをおっしゃっておるわけですけれども、この中の「行政協力してくれる」、この協力内容というものが、何でも国税庁の言うことを聞くような行政協力という形になってくると、いわゆる納税者、仕事を御依頼する方々が非常に小規模企業の方が多いということで、国税庁との間にあっていわゆる納税の正確を期していき、あるいは納税者の立場も守っていくという立場にある税理士が国税庁の言いなりでやられると、結局国税庁の出先的な、下請的なことで、信頼して税務に関する御依頼ができない、そういう信頼がなくなってしまうじゃないかという点が一番懸念の材料であるというような事柄から考えていくと、どうしても税理士の独立を十分尊重し、果たしていけるような行政機構に体制を整えてもらわなければならないという点もありますので、介入した、しないということよりも、むしろそういうことによってたくさんの税理士の方に国税庁に対する不安を増大していき、そしてさらに納税者から信頼を失っていくということ、これは将来に向かって大きな問題点となっていくということになりますから、この談話の内容の事実についてお答え願いたいのと、今後の国税庁としての方針、そういうものも伺っておきたいと思います。
  24. 水口昭

    ○水口説明員 最初に、大阪における税理士会の会長の選挙の件でございます。現在、沖縄を除きまして全国に十三の税理士会がございます。ことしはちょうどその税理士会の会長選挙の年に当たっておりまして、御指摘の大阪合同税理士会におきましてもことしの六月の五日に会長の選挙がございました。その大阪における会長選挙に当たりまして、候補者が二人立候補されました。それぞれ支持団体を結成してかなり激しい選挙戦を展開されたというように伺っております。  そこで、これに関して大阪において国税局なりあるいは税務署が介入したんじゃないか、そういうふうなことが新聞の記事にも載っておるがというお尋ねでございます。私どもも早速大阪国税局に照介をしてみましたところ、まあ、御承知のように、国税局、税務署と税理士さんとは日ごろから仕事の関係で始終接触しておりますので、あるいは雑談等の際に大阪におけるその会長選挙の話が出たというふうなこともあったかもしれませんけれども、しかし役所の方がその会長選挙に直接介入するというふうな言動はなかったというふうに、大阪国税局からは報告を受けております。なお、申すまでもなく、この税理士会の会長選挙というものは、先生指摘のように、税理士会内部の問題でございますから、これに対して役所が介入するというふうなことは適当ではないし、今後ともそういうことのないように慎重に配慮してまいりたいというふうに思っております。  それからなお、その新聞の記事に、大阪国税局の総務部長がこういうふうなことを言ったという御指摘がございましたけれども、これも実は私、大阪の総務部長の真意を確かめたわけでございますが、この新聞記事が必ずしも総務部長が言ったとおりを伝えているわけでもない。この記事に載っております中で「行政協力をしてくれる人」云々というくだりがございましたけれども、これは先生も先ほど御指摘になりましたように、近年税務署の職員というものが五万何千でほとんどふえないわけでございます。それに対しまして仕事の方はどんどんふえまして、最近十年間で見ましても納税者数が二倍になっている、こういうふうな状況でございます。そこで税務署の力だけではなかなか適正な税務行政が運営できないということで、税理士会とかあるいは青申会とか法人会とか、いろんな協力団体にもお願いをいたしまして、少しでもよい税務行政ができるようにというふうに努力をしているわけでございます。そこでそういう状況をお話しして、今後ともそういうことで、税理士会には特に、たとえば申告期における小規模事業者に対する納税相談であるとか、そのほか記帳指導であるとか、いろいろ公益的な仕事も担当していただいておりますので、そういう仕事の重要性は今後ますます加わるであろう、こういうことを申し上げたのが真意であろうと思います。  それから第二の問題といたしまして、税理士法の改正の点でございます。税理士法の改正は、御案内のようにこれは立法問題でございますから、本来大蔵省の方の担当でございまして、国税庁が申し上げるのはあるいはいかがかと思いますが、まあ関係者でございますので考えを申し上げさせていただきます。  先ほど先生のお話しにありましたように、税理士会の方から現在の税理士法を改正すべきであるというふうなことで、税理士法改正要望書といったようなものが昭和四十八年の六月でございますか、大蔵省初め関係省庁に提出をされております。その中にいろんな改正点がございますが、先ほど先生が御指摘になりましたように、税理士法の基本的な考え方にわたるような部分の改正もございます。それから特別税理士試験を廃止せよというふうな要望もございます。それから公認会計士、弁護士といったような他の職業分野との調整を要するような問題も含まれております。そのほかいろいろございますが、そういったことでなかなかこれは大きな改正でございますし、ほかと関連する部分もいろいろあるということでそう簡単にはまいらないということで、大蔵省でも慎重にこれを検討するということになっておりまして、したがって、直ちに税制調査会等でこの問題を審議するということにはなかなかならないと思いますけれども、やはり長期的な問題として、重要な課題でございますので、この問題に取り組んでいかなければならない、かように考えております。
  25. 沖本泰幸

    沖本委員 私が国税庁の組合員の皆さん方に伺ったのは、この十年間で仕事の量が約十倍ふえておる、人員は一向にふえないのだということで、とうてい消化し切れないので自主申告に切りかえていった、それでもまだなおかつ大変なんだという御説明は聞いておるわけけです。さらにその人事に関しましても、戦争が終わって帰ってこられた方が元の職場に復帰なさった。約二十年以上も同じ職場で、上がつかえていて一向に上がらない。そういう職制の問題がいろいろあって、子供からも、お父さんいつになったら係長になるのだとか、いろいろな点を指摘されて、そういう点で実際に自分の持っている職務に対して意欲が落ちてしまうというような点、いろいろ御苦情をおっしゃっておられましたし、そういう点はいわゆる職制の複数制を採用していただいて、課長補佐であるとかあるいは係長補佐であるとか、いろいろな別の職制をつくっていただいて、そうして救済していく方法があるはずなんだ、そういう点の指摘も私は伺っておるわけなんです。そういう点もいろいろ考えていただかなければならない問題。そういう問題点とあわせて、在野におりていきたいという御意向の方もそこから出てくるということになり、そこに仕事の量がふえてとうてい消化できないので、今度は税理士さんが仕事の負担を負っていく、そこにいろいろと依頼していくということになるわけであり、最近は少額の所得に関してはほとんど納税協会であるとか納税団体であるとか、そういうところにいろいろとめんどうを見てもらいながら、それを税務署の方が指導監督しながらそういう問題も消化していくような形にいま変化が起きておるというようなことも伺っておるわけです。  そういう点が、結局税理士さんの仕事がどっちかこっちかわからないような関係になっていき、先ほども述べましたとおり、ただ国税庁の補助機関的な仕事になってしまって、法律で定められた本来の税理士さんの業務というものがきちっと行われない。なし崩しになっていく。そうなってくると、結局はいわゆる官から民の方へおりていかれる方の方がより依存率が高くなっていくということで、この記事に載っておることもまんざら否定できないような内容があるわけです。私自身が具体的にこの内容をつかんだわけではなくて、新聞によって御質問しているわけですけれども、それでもなおかつその点に疑問が持てるような現在の内容ではないか、こういうふうに考えられるわけです。ですからやはりそこのところは、非常に問題が大きいので、税制調査会で検討するにしてもまだいろいろそれまでに期間があるのだとかなんとかというお答えだったわけですけれども、これは早急に検討していただいて、そして制度上からも職責の上からも十分その機能が果たし得て、結論はやはり一般の大ぜいの納税者が安心して税金を納めていける内容に整えていただかなければならない。  最近は政治的な配慮から動いていく納税団体がどんどんふえてきて、その取り扱いについても種々紛々、いろいろな内容のことが考えられたり議論されたり、問題点が起きてきたり、そういう混乱の状態にもあるわけですし、インフレとか不況とかいうことによる倒産も非常に多いわけですし、ということになりますから、それにかてて加えて、先ほども話しておりましたとおりに税収の伸びが薄いということになれば、不特定多数からより多くのものを賄っていくようなことになっていくと、またその下に厚い荷がかかっていく、というようなことになってはならないと考えるわけです。ですから、税理士さんが十分その機能を果たすために、その職責を全うできるような内容に整えていただく検討を早急に加えていただきたい。そして税理士さんがその独立性を十分発揮できるような体制を早急に整えていただく方向で御検討していただかなければならないのじゃないか。これはきょう単にその議論をして終わる問題ではありませんので、その点は非常に重要な幅の広い問題だということなんです。ですからそこに十分考えをしていただいて、機能が果たせる方向に整えていただく手はずをしていただかなければならない、こう考えますけれども、その点いかがですか。
  26. 水口昭

    ○水口説明員 ただいま先生指摘の点は非常によく理解できますので、大蔵省の方にも伝えまして十分検討してまいりたいと思います。
  27. 沖本泰幸

    沖本委員 本来は法務委員会でいろいろと議論するところではなくて、むしろ大蔵委員会の方で大蔵省なり国税庁の御担当の最高責任者にこの問題をお話しして、検討していただくということが本筋ではないかと思いますけれども、この点、水口さんのもとで十分大蔵省の方にお伝えいただいて、早急に手を打っていただきたいと思います。それでは質問を終わります。
  28. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 稲葉誠一君。
  29. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、ことしの六月四日に公安調査局長・地方公安調査局長会議であなたは訓示されているわけですね。これを読んだのですが、ここに右翼のことに一言も触れていないのですね。これはどういうわけでしょうか。
  30. 稻葉修

    稻葉国務大臣 破壊的暴力活動に関しましては、右も左も同一に、厳正公平にこれに対処するという基本姿勢でございますので、特に右を挙げたり左を挙げたりしていないということに御理解いただきたいと思います。
  31. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなことないじゃないですか。前の方に左を挙げているでしょう。よく見てくださいよ。左の左かもわからぬけれども、挙げている。「最近続発する」云々と書いてあるでしょう。そして右の方のことは何も書いてないじゃないですか。これはどういうわけですか。
  32. 稻葉修

    稻葉国務大臣 公安調査庁設置法並びに破壊活動防止法に定めておる公安調査庁の任務に照応して、今日一番国民に不安を与えている一連の企業爆破事件及び過激派の集団殺し合い事件等に重点を置きましたためにそういうことになっておるわけであります。
  33. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 やはり公安調査庁なり法務省全体が右に対して非常に姿勢が弱いのですよ。ということはいまの中から出てくるわけですよ。これは何も書いてないんだ。  それから、公安調査庁長官の訓示というのがありますね。これにちょっと出てきますよ。これには出てくるのです。いろいろ書いてありますよ。いろいろ書いてあって、ほんの一部出てくるわけだ。「次に右翼関係団体の一部は、左翼勢力との対決姿勢を一段と強めておりますが、他方、核防条約批准、日中平和友好条約締結等の諸問題をめぐり政・財界要人に対する批判も強めてきており、これらの動向の推移には注視を要するものがあります。」本当にタイムリーですね。これは具体的にどういうことなんですか。
  34. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私の訓示には、国民に一番不安を与えている事例を二つ挙げて、それらには特に厳重な警戒を要するものである。右翼の者ももちろん警戒を要するものである。したがって、「以上の諸情勢にかんがみ、いわゆる破壊的団体調査・規制を通じて、公共の安全の確保に寄与する」という、この「破壊的団体調査」という中には右翼の者も入るわけであって、そういう具体的な細かい点につきましては公安調査庁長官の訓示に重複をいたしますので、私は大きく大臣訓示としてこういうふうに申し述べたわけでありますから、決して右翼を軽視しているというようなことはありませんし、右翼に甘いとか、そんなようなことは私は断じてございませんから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  35. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 心情的にあなたが右翼に通ずるなんていうことを言っているのじゃないのですよ。決してそんなことを言っているのじゃないのですよ。  そこで、公安調査庁の長官、きょう急に私の方で通告したのであれですが、次長おられますが、右翼関係団体の一部が、「核防条約批准、日中平和友好条約締結等の諸問題をめぐり政・財界要人に対する批判も強めてきており、これらの動向の推移には注視を要するものであります。」と、こう言っていますね。これは具体的にはどういうことなんでしょうかと聞いているわけです。これは抽象的に書いてあるから、具体的にはどういうふうな動きがあってどうなんだろうか、こういうことを聞いているわけです。これは大臣じゃなくていいですよ。
  36. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 ただいまの御質問でございますが、右翼関係は従来は左翼勢力との対決、その方に主眼を置いておりましたけれども、ここ数年来、こういう後段に書きましたような動向もあらわれてまいりましたので、われわれとして注視を要するものがあるということでございます。具体的な、だれがどういう発言をしたかというのはどうも、調査中のことでございますのでここではお許し願いたいと思います。
  37. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 破防法の指定団体、「破壊団体調査・規制を通じて、」云々と、こう言っておりますね。いま大臣の訓示の中にありますね。その中に右翼も入っている、こういうことですね、大臣の言われるのは。そうすると、破壊的団体という中にどういう右翼が入っているわけですか。
  38. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 お答え申し上げます。  右翼団体として、当庁で破壊的団体として指定しているものは八つございます。ただいま問題になっております大日本愛国党もその一つでございます。ただ、ほかの団体をここで申し上げますことは、その団体の名誉にも関することでございますのでひとつお許し願いたいと思います。
  39. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、この破防法の三十六条で、「法務大臣は、毎年一回、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、この法律による団体規制の状況を報告しなければならない。」こうありますね。これはどういうふうな報告をしておるわけですか。団体規制の状況というのはどういうことなのかよくわかりませんが、去年なりことしなり、どういうふうな報告をしましたか。われわれ国会議員の方にはどういうふうな通知が来ているのかな。これはこっちが不勉強で悪いかもわかりませんが。
  40. 稻葉修

    稻葉国務大臣 注意を要し、警戒を要する団体はあるけれども、これらの団体員が現実に破壊活動をしたという事実は一件もないという報告をしております。
  41. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま言ったような破防法の指定団体、これ、私知っていますよ。知っているけれども、私の口から言うのはあれだから、あなたの方の口から聞いた方がいいと思って聞いたんですけれども。  いまあなたの方で政党の名前が出てきましたね。あなたがおっしゃったでしょう。私が聞かないうちに出てきたのですけれども、その政党はどうして破壊的団体に指定されているわけですか。
  42. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 大日本愛国党のことでございますが、同党は、その党員が、昭和三十五年、浅沼社会党委員長刺殺事件、それから三十六年十二月、社会党鈴木訪中使節団長殺人予備事件というようなものを、直前に脱党しておりますが、その党員だった者が暴力事件を起こしておりますし、それから党員の言動が先鋭で過激でございますし、党機関紙にもそういう行動を、破壊活動を容認するような主張が見られますので、それで破壊的団体として指定をしております。
  43. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、今度の事件、おとといの事件は、第四条にいろいろ列挙してあります暴力主義的破壊活動にはどうも条文を見ると該当しないようにとれるのですが、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。あるいはそうじゃないのかな。
  44. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 そのとおりでございます。
  45. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、「団体活動の制限」それから七条の「解散の指定」、これは憲法で保障されておる思想、良心なり何なりの自由ということからして非常に重要な問題であって、これは本当に、規制にしろ簡単に行われるべき筋合いのものではない、こういうふうに私は思うのです。大臣、だから私は、国会の回りをマイクでどんどんどなって歩く、これは一つの政策に対して反対でどなって歩く、これは表現の自由で、あたりまえの――あたりまえというか、自由なのであって、だからけしからぬという議論は私はしないのです。しないのですが、どういうときになったらこの五条の団体活動の規制は具体的に行われるのですか。これはどうなんですか。条文には書いてあるけれども、条文を読むことは答えにならないので、ひとつ説明をしていただきたいと思うわけです。実際この場合に法務大臣はどういうふうに関係するのですか。これは公安調査庁の長官が五条と七条の請求をするわけになっておりますね。法務大臣としてはこれにはどういうふうに関与するわけですか。公安調査庁長官もあなたの監督下にあるのでしょうけれども
  46. 稻葉修

    稻葉国務大臣 公安調査庁の業務遂行について法務大臣が監督権を持っております。その監督権に基づいて、いろいろ業務遂行について報告を受けたり、報告を徴したり、これに対して一般的指示を与えたり、これが監督権であります。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはそうですけれども、具体的に、あなたが言われているように、大臣訓示の中で「破壊的団体調査・規制を通じて、」と、こう言っているわけでしょう。あなたは部下に訓示しているわけでしょう。そうすると、どうやって破壊的団体調査や規制を――すぐ規制するわけじゃないのでしょうね。調査を先にやるのでしょうけれども調査なり規制というものはどうやって破防法指定団体に対してやるのですか、こう聞いているのですよ。「公共の安全の確保に寄与することを目的」にしてやるというのでしょう。だから具体的にいまどういうふうなことを、いまそちらから名前が出たところに対してやっておるのか、こう聞いておるわけです。
  48. 稻葉修

    稻葉国務大臣 公安調査庁の職務権限は、公安調査庁設置法、それから破壊活動防止法等にあるわけですが、公安調査庁に対し監督権を持っております法務大臣といたしましては、いまお読みになったようなことにつきまして、一般的に公安調査庁を指揮激励する、それから報告を徴する。いまお読みになった調査活動は、公安調査庁長官がトップで、地方公安調査局長だとかそういう者を通じてやっております。その具体的なやり方はどうしておるかということについては、次長が来ておりますから次長をして答弁させます。
  49. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 私どもの現在のやり方といたしましては、先ほども申し上げましたけれども調査指定団体というのを幾つか指定いたしまして、その団体についての活動、それから組織、そういうものを調査して規制に備えるという調査でございます。
  50. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなことは書いてあるので、わかり切ったことを答えておるのだ。いろいろ答えにくい点があるかもわからないが、私の聞きたいのは、大臣が言っておるように、「破壊的団体調査・規制を通じて、」云々、こう言っておるのでしょう。そうすると、五条で、その「団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは、」云々と、こういうことでしょう。規制ができるわけでしょう。だから、こういうようなおそれがあるかないかということを中心にあなたの方では調査しておるのでしょう。こういうことなんでしょう、それは。あたりまえの話だ。その一つとしていまあなたの方で挙げたところの何とかという政党も入っている、こういうことなんでしょう。そういうこと以外考えられないのだけれども、そこはどうでしょうか。
  51. 稻葉修

    稻葉国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  52. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたの方としては、ある程度右翼が力を伸ばしてきた方が、伸ばしてきてそして左翼と対決した方が、バランスがとれていた方が、国内治安のためにも日本の政治を運用するためにも必要だ、悪だけれど必要悪だというふうにあなたの方では考えているのではないの。
  53. 稻葉修

    稻葉国務大臣 全く違います。
  54. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それにしては右に対する扱いというものは非常に軽いんじゃないか。あなたの訓示の中にも出てきやしないし、公安調査庁の訓示の中でもその右翼のことはほんのちょっとしか出ていないのですよ、あと、出ているところはありますが、これはちょっと差しさわりがあるから読みませんけれども、書いてあるんだから、そういう情勢のようにとれるわけですが、いずれにいたしましても、私は何もむちゃ言うんじゃなくて、法律の規定に従って、人権は人権として十分尊重しながら、そして憲法違反にならないような形で規制なり調査なり何なりをすべきだ、こういうことを言っているだけの話ですから、そういうことについては、いま言った破壊的団体調査というものは今後も継続して続けるということを最終的に確認してよろしゅうございますか。
  55. 稻葉修

    稻葉国務大臣 御理解のとおりでございます。
  56. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで別の問題にいたしますけれども、私はよくわからない問題の一つに選挙法の問題があるんですよ。どういう点がわからないかと言いますと、いま改正案やっていますから、この改正案のことについては私はここで聞くつもりじゃなくて、現行法について聞くんですが、現行法でまず聞くのは、たとえば文書にしても、いまの公職選挙法で許されている「文書」というのはこれは何と何ですか。ちょっと質問が不正確なんですが。
  57. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私も長い間たびたび現行公職選挙法に基づいて選挙やっているんでございますけれども、実際に余り細かいこと、よく知らないのですよ。知らないでよく選挙違反を余り起こさぬでやってきたなと思われるかもしらぬけれども、応援者には、よく選挙法を見て違反のないようにと言うてきております。ですから、ごく専門的な御質問でございますので、担当官に説明させていただきますようお願いします。
  58. 吉田淳一

    ○吉田説明員 これは先般御承知のことだと思いますが、一応現在の公職選挙法の体系では百四十二条以下で選挙運動のために使用する文書図画について一定の要件規制を加えております。それぞれについてもちろん罰則がございますが、代表的なものは百四十二条で、「選挙運動のために使用する文書図画」につきましては、「通常葉書の外は、頒布することができない。」というがの一つのメルクマールであります。もう一つは、選挙運動のために使用する文書図画を掲示する場合についてでございますが、この点について百四十三条が、選挙事務所に表示する等のポスターについて、一定の要件を備えて、この場合は掲示できるが、それ以外は掲示することができない。それ以外に、広い意味で文書図画に入ると思いますが、新聞紙、雑誌等についての一定の要件についての規制がございます。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはもちろんはがきだとか公報だとかはあたりまえの話ですが、だから私が言ったのは、選挙に関してと、こう言ったわけですね。  そこで、政治活動の自由ということは憲法で保障されておる、これはあたりまえの話ですね。それが選挙のときに政治活動の自由というものを制限できるという根拠、それは一体どこにあるんですかね。これは川口さんでも結構ですが、どの程度までの制限が許されるのかということですよ。その限界の問題ですね。
  60. 川口頼好

    ○川口法制局長 もう、御質問なさる先生御自身もとくと含んでおられることだと思うのでありますが、もともと、概念的には政治活動と選挙運動というのは峻別できます。しかし、実際になりますと、接着点、きわめて微妙な近接する場面が非常に広うございます。したがいまして、一方では憲法の、政治活動の自由、言論の自由というのを確保しなくちゃならぬことは当然でございますが、他方において、ざっくばらんに申しますと、選挙運動という試合が緊迫すれば、そこにいろいろな過当競争による弊害、したがって他方で選挙の公正さを確保するという必要性がふだんよりも厳しくなる。それに応じて政治活動の、つまり選挙運動に近接する政治活動の分野にもある程度の影響を受けるであろう。その限りでは、選挙の公正を確保するという見地と、それから憲法の政治活動の自由の保障というのとを調和的に解決する必要が生ずるであろうというふうに考えております。やはりある意味での規制は必要でもあるし、可能であろうというふうに考えております。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、その規制なり何なりというものが、どの程度までの段階だったならば政治活動の自由というか、その憲法違反というふうにならないのか、憲法の許容する範囲なのか。そこら辺のところは一応抽象的には説明していただいて――ということは、ぼくはあなたをお呼びするのは本当は何か悪いような気がするんですよ。だけどこれは議員立法だから、やはり衆議院の法制局長を呼ばないとおかしいのではないかと思うのでお呼びしたのですがね。その限界は抽象的にはわかりますけれども、余りに選挙法で縛ってしまったのでは憲法違反の問題が起きてくるんだと思うのですが、そこら辺の限界というものはどういうふうに理解したらいいのか、抽象的にあるいは具体的に御説明願いたいと思うんですよ。
  62. 川口頼好

    ○川口法制局長 最小限度申し上げられることは、言論の内容、つまり思想宣伝の内容そのものについての規制を加えることはまず許されないであろう、こういうラインは一方ではっきりと引くことができましょう。現在の選挙法で非常に細かい規制がいろいろございますけれども、その意味でフランスと似ているとよく言われますが、どうも枠のはめ方が非常に細かく刻んであります。それはいわゆる形式論的には政治活動の規制であるという議論があるいは成り立つかもしれませんけれども、いずれを見ましても言論の思想内容そのものを統制する規定は一つもございません。一つの枠組みといいますか、ちょっと比喩が悪いのでございますが、品物を入れる箱みたいな枠組み、そういうものの規制として一種の形式的な基準で、たとえばはがきは何枚とかポスターは幾らとか、それから政党機関紙はこうであるとか、一般新聞紙はこうこうであるというふうな規制がございまして、ここでいま私が将来にわたって、この線以上は出ちゃいかぬ、ここまでは可能だ、そこまで申し上げるのもおこがましゅうございまして、私どもいま申し上げたようなことで大体選挙法の立案に当たって、慎重に検討しているつもりでございます。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、政治活動の自由ということと選挙の公正ということと、これは一体どうなんですか。同次元のものなんですか。あるいは、次元から言うと政治活動の自由というものが上位のものなのか。そこら辺のところはどのように理解したらよろしいのでしょうね。
  64. 川口頼好

    ○川口法制局長 選挙の自由とそれ以外の政治活動の自由とを価値の次元で何か差をつける、これは無理でございまして、非常に広い意味におきましては、通常の常識としてはむしろ選挙運動というのは政治活動の最も緊迫した場面でありまして、それは結局民主主義の、代議制、議会制デモクラシーをとる政治活動の一番根底的なものは選挙に煮詰まるわけでございまして、むしろ、見ようによってはあらゆる政治活動というのは選挙に集中している、そういう見方すらできるわけでございまして、これに価値的な差をつけることはちょっと無理かと考えております。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 結論的には私もそう思うのですがね。  これはちょっと問題を変えるのですが、私はまたわからないのは、いま言ったように文書の制限がありましたよね。その制限の仕方がいいか悪いかは別なんですが、たとえばいま号外と称して、顔写真を入れて、この人に投票しようというのを選挙中にたくさん配ります。配るというのは、各人の家に配るのも駅で配るのも。いまやいっぱい配っていますね。私の言うのは現行法での問題です。現行法で一体どういうふうに法律的に理解をしていいのかということなんです。なぜ私がそれを聞くかと言いますと、自治省ではこれは違法でないという判断を発表してしまった、先に、法務省に相談しないで。法務省はこれは違法だというふうに理解していた、こういうふうに私はある人から聞いているわけです。名前は言いませんけれども。だから、現行法のもとでのそうしたいわゆる号外と称されるものは、一体公職選挙法から見てどうなのかということなんです。いいとか悪いとか、立法論は別ですよ。現行法から見てどうなのかということをお聞きしているわけです。まず法務省から伺います。
  66. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘の点について規定しておりますのは、公職選挙法で二百一条の十四という規定に関係するものだと思います。いまお話しがありましたように、自治省の見解が先に出て、法務省がそれとその当時違っていたという点につきましては、私、寡聞かもしれませんけれども承知しておりません。  二百一条の十四の解釈、これは、条文どおりのことを申し上げるのはまことに恐縮なんでございますが、要するに、政党その他の政治団体が発行する機関紙誌については、一定の要件のあるものに限って、選挙運動期間中に選挙に関する報道、評論を掲載して、そうして頒布することができるということになっているわけでございます。問題はその一定の要件ということでございますけれども、これは条文どおりでございますが、政党その他の政治団体の本部で直接発行するということが一つ、それから通常の方法で頒布している機関紙誌であるということが一つ、さらに自治大臣に届け出たものであるということでございます。先ほどちょっと申し落としましたが、政党その他の政治団体といいましても、これは公職選挙法十四章の三でございますが、そこでいわゆる確認を受けた政法団体だけに限るわけでございます。そういうものの各一に限って、ただいま申し上げましたような選挙に関する報道、評論を掲載して、そうして頒布をすることができるということになっておるわけでございます。  問題は号外についてでございますけれども、号外は、一般に通常の方法によって頒布しているもの――ほかの要件は全部満たしているといたしまして、その頒布方法が通常の方法によっているのかどうかという事実問題に帰着するのだろうと思います。この点につきましては事実関係いかんによりますので、軽率に一般論を言うのはむしろ誤解を招くおそれがあるのでございますが、いままでの実務の考え方としては、一般的に、いままで号外という形で駅頭などで頒布していることが頻繁に行われてきたというような形態の場合に、選挙期間中に同じようなことを繰り返しているという場合には、直ちにそれが通常の方法ではない、異常な方法だということで、通常の方法によらない頒布違反だということでこれを取り締まるというのが非常に困難であったのではないかというふうに私は理解しております。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 自治省も同じような見解ですか。
  68. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 ただいま法務省課長さんからお話しのございましたとおり、私どもも、通常の方法で頒布したものであるかどうかということにつきましては、やはりその内容によりまして、これが従来から行っておるような、そういう頒布方法であるかどうかというような点を具体的に判断をいたしまして決まるべきものである、このように考えております。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、通常の方法で頒布をしているということになってきて、それがずっと既成事実になってきている、こういう場合に、いまそれを法律で禁止をしようとすると憲法違反か何かの問題が出てきますか。必ずしも出てこないですか。そこら辺はどうなんでしょうかね。
  70. 川口頼好

    ○川口法制局長 いま参議院に現にかかっている現実の法案のことでございまして、私が断言的なことをかれこれ言うのは慎まなくちゃならないかもしれませんが、立案に当たりまして恐らくこの部分は政府案から出てきた部分でございまして、いまの御指摘の点は衆議院の修正部分じゃございません。そこで私の推測で申し上げるほかはございませんが、いわゆる、いまビラ公害とかその他言われているところの号外の異常な頒布というふうなものが非常に選挙運動に密着する、それからほとんど選挙運動に近い、と申しますのは、もっと詳しく申しますと、個々人のあれをどぎつく打ち出したものであるというのが一般であるというふうな事実の認識のもとにこういう立法がなされているのだろうと考えます。その限りにおきまして、一方で選挙運動の規制を厳しくしておきながら他方においてそれの脱法を許すということは合理的でございませんから、その意味でも調和がとれておりまして、憲法違反のおそれはないというふうに考えます。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この点は余り聞くとまた私の方であれになってまずいですから……。  別のことですが、もう一つ選挙法でわからないのは、わからないというか、わかっていて聞いているというのか、どっちかですけれども、お金の支出が正規に認められておるのは何と何と何ですか。たとえば選挙事務所の事務員だとか労務者だとか、それから選挙運動に従事する者とか、三つとにかくありますね。それらはどういうのでしたか。
  72. 吉田淳一

    ○吉田説明員 法務省の方からお答えすることが適当かどうかちょっとわからないのでございますが、公職選挙法の規定の仕方としましては、公選法の百九十七条の二で、選挙運動従事者、いわゆる選挙運動者、選挙運動従事者に対しては一定の額の実費弁償だけができる。それから選挙運動のために使用する労務者に対しましては報酬と実費弁償の双方について、一定の額の範囲内でできるという規定になっております。なお、このほかに、選挙運動に従事する者の中で一定の届け出を受けた者につきましては、その者に対して一定額の報酬を支給することができるというふうに公選法が規定しているわけでございます。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは、事務所に勤めている者は三十人以内とか制限がありますけれども、ほかの者は制限があるのですかないのですか。これは自治省の方ですね。
  74. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 ただいま御質問のございましたように、事務員につきましては人数の制限がございますが、いわゆる運動員または選挙事務の労務に従事する方につきましては人数の制限はございません。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで一番実際での問題になってまいりまするのは、そうするといまの選挙運動に従事する者、これは実費弁償をもらえるわけでしょう。それから労務者は実費弁償と報酬がもらえる。そうするとそれらに対する費用の支払い方、これは前払いというのは公職選挙法では認められていないのですか。どういう考え方に立っておるのですか。
  76. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 実費の弁償ということでございますので、実費の支出に対しましてその相当額を補償する、いわば償うということであろうと思うのでございます。したがいまして、通常は、運動員または労務者が支出をいたしました鉄道賃とかたとえば宿泊料等につきまして、基準額の範囲内ではございますけれども、その実費を精算をして支払うというのが普通の形態であろうと思うのでございますが、しかし、あらかじめそのような実費の支出が予定される場合におきまして、事前にその相当額につきまして概算で払い、かつ事後に精算することを条件とするというような場合には、これも実費の支払い方法の一つとして認められるものではないか、このように考えております。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 「選挙運動に従事する者」というのは具体的にはどういう人を言うのですか。それからどういう報酬がこの人はもらえるのか。
  78. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 いわゆる「選挙運動に従事する者」につきましては、いわゆる総括主宰者とか出納責任者のように、選挙運動の枢機に当たる者、街頭演説その他の選挙運動に当たる者という非常に広い概念でございますが、その方たちに対しましては実費弁償、鉄道賃とか船賃とか、そういうような運賃または宿泊料その他の実費弁償を支払えるだけでございまして、報酬につきましてはいわゆる一定の届け出をした事務員に限りましてしか認められない、このような規定になっておる次第でございます。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ただ現実には、選挙事務所から金がいけば、それがすべてもう投票取りまとめの報酬として金が動いたという形で、それで買収ということで――買収という言葉が、法律的に言う意味の買収と素人の言う買収というのは言葉の内容が非常に違うと思うのですが、いずれにいたしましてもそういう形でほとんどが逮捕されたりなんかされている状況なんじゃないですか。だから、選挙運動に従事する者がそういう請求書をちゃんと出して、こういうふうにして金が要るんだからというので請求書を出して、選挙事務所から仮渡しにでもしろ受けて、後から精算をするという形であるならばそれは選挙違反にならないわけですか。
  80. 吉田淳一

    ○吉田説明員 ただいま自治省の方からお答えになりましたように、概算前払いがすべて違反になると、すべて同じようには考えておりません。ただ、判例によりますと、事後で精算するなどということの約束もなくて、言葉が悪いのですが、ただつかみで渡すというような、そういう費用の積算なんかなくてそれで渡すような場合につきましては、実費弁償というのはあくまでもそれぞれの行為についてかかった費用の実費を弁償する趣旨でございますから、そういう実費弁償の趣旨とは認めがたい。そして、むしろ報酬性が認められる、いわゆる買収罪を構成する、そういうふうな認定の仕方をしている判例がございます。恐らくそれは正しいことだと思います。選挙違反の取り締まりにおきまして、単に金の授受があったからといってそれが買収だというのでは決してございませんで、選挙従事者に対していまのような公職選挙法で認められている実費の弁償と認められる場合には、もちろん取り締まりの対象にはしていないはずでございます。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 取り締まりの対象にしていないはずというのは、後からそういうふうになっているので、やっているときはみんなやられている場合が多いので、そうするとものすごく問題があるのですよ。いま言ったように、選挙運動者というのは人数に制限がないような話だけれども、自治省の説明を聞くと非常に人数が限定されていますね。そこはどうなんですか。
  82. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 人数を限定されておりますのは、選挙事務に従事する者のうちいわゆる事務員に限っての問題でございまして、事務員につきましては一定の人数に限りまして報酬を支給できる。ただし、その他の従事者につきましては、人数の制限がないけれども、反面、報酬は支給できない、このようになっておる次第でございます。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、選挙運動に従事する者というのは無制限に何人でも使っていいんですか。それでその人たちは具体的に何をするんですか。
  84. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 先生御存じのとおり、総括主宰者のように選挙の総括をする方とか、または街頭演説をせられる方とか、または応援弁士として個人演説会で演説をされる方、そういうように選挙運動にまさに従事をする方でございまして、いわゆる選挙運動のために使われて単純に労務をしたりする方とか、事務員という単純な事務をする方を除く広い考え方でございます。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、労務者というのは何をするんで、何人使ってもいいの。公営選挙の段階になってきて、労務者というのは一体何をするんで、何人くらい考えられるのです。
  86. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 選挙運動のために使用する労務者につきましては、たとえばポスター張りをする、それから自動車の運転をされるというような、非常に単純な労務につかれる方々を指しておる次第でございます。
  87. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、あなたのお話しを聞いていますと、選挙運動に従事する者、労務者、それから事務員、これらでしょう、実際は。そんなに数はいるわけはない。それから法定費用に入らないものがありますね。候補者の車だとか、いろいろな入らないのがあるでしょう。そうすると、法定費用は何百万という数字がありますね。いろいろな計算があるけれども、この計算はいいかげん――いいかげんと言っては言葉が悪いかもしれないけれども。これは自治省に聞いてもらっても困るんだ、議員立法で議員が勝手に決めたんだからわからぬのだというふうに答えるのでしょうけれども。  そうすると、いわゆる法律で許された費用、どんなに計算したって法定費用までいかないじゃないですか。法定費用の十分の一か五分の一くらいで終わってしまうんじゃないの。法定費用までどんなことしたっていかないでしょう。ただ逃げ道は一つある。選挙事務所の借り賃が何百万かかるという逃げ道はあるけれども、そんなことは常識では考えられないでしょう。だからどこかこの法律はおかしいんだ。法定費用という決め方自身がおかしいのか、もっと適正な報酬の出し方が足りないというのか、何かわからないけれども、いまあなたの言ったようなことを積み合わせてみると、法定費用のどのくらいになるのか、実際普通の場合、どうなりますか。
  88. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 法定費用につきましては、ただいまのように選挙運動従事者に実費弁償として支払う金額、それからたとえば労務者、事務員に対する報酬等のほかに、先生指摘のございましたように事務所の借り上げ料とか個人演説会の開催のための借り上げ料、無料の場合もございますが、有料の場合もございます。それからポスターの印刷代またはそういうようなものを総合いたしまして、候補者の方々によって重点の置き方は違うと思いますが、法定費用の範囲内でその支出をしていただく、こういうような仕組みになっておりまして、四十九年の改正におきまして、御承知のとおり従来の選挙運動費用につきましてはこれを倍程度に増額をいたしまして、その実行を期することができるようにいたした次第でございます。
  89. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなこと聞いているんじゃなくて、法定費用という額があるでしょう。額があったって、いまあなたの言われるような額を幾ら集めたって法定費用になりっこないのです。普通は十分の一以下、五分の一もいきはしない。だからこの法律の決め方はどこかおかしいんですよ。余り内輪話をするとまずいからしませんけれども、どこかおかしい。だから、実費弁償なら実費弁償というものを、人数を拡大してこれだけのものを払うなら払うとはっきりさせるとか、あるいはこういうふうなものをもっと認めるとかしなければ法定費用なんかいかないですよ。法定費用もいかないどころか、全然数字が合わないのですから。大体はよくいって五分の一ぐらいかな。もっとも法定費用の決め方自身がこれはおかしいのですよ。理論、根拠がないのよ。これは議員立法で、議員が決めたのであって、こっちが悪いのだからそれは何とも言えないけれどもね。ぼくは決めませんけれどもね。そういうことなんで、これは非常におかしいですよ。まあそれはそれとして、そんなことをここで議論しても始まりませんが、そういう点だけを申し上げておきましょう。――自治省、いいですよ。川口さんも結構ですよ。  そこで問題を変えて、前々から言われておる刑事被害者補償の立法の問題、これは率直に言いますと、大臣、私から言わせると法務省は全く熱がない。やる気がないというふうに私は思うのです。それはだんだんわかってきますけれども、私はそう思う。非常に残念に思う。それで、現在のこれについての進捗状況、刑事被害者補償法の立案過程というか、そこでの問題について、大臣から概略お話し願って、あとは政府委員の方からお話し願いたいと思います。
  90. 安原美穂

    ○安原政府委員 お尋ねの被害者補償制度の立案作業の問題でございますが、現在事務当局におきましては、この前にも申し上げております諸外国の法律の運用状況の資料の収集のほかに、まだ関係機関との協議の段階に至っておりませんけれども、補償の要件あるいは範囲、それから何よりむずかしいのはどの程度の補償をするかという額の問題、あるいはどの機関に補償の裁定をさせるかという担当機関の問題、あるいは申請方式によるかどうかの、いわゆる補償の決定をする前の補償請求の手続の問題等を検討をいたしておるわけでございますが、特に私ども事務当局で頭を悩ましておりますのは、労働災害補償その他いわゆる災害補償、あるいは証人等の被害についての給付に関する法律等の、いわゆる同種あるいは類似の制度との比較検討、バランスの問題等を考慮して、いま具体的な内容検討しておるというのが一般的な状況でございます。特に最近鋭意やっておりますのは、各地方検察庁に依頼をいたしまして、昨年一年中の死亡事件における、それからことしの一月初めから本年の末までに受理しあるいは発生いたします死亡を伴う犯罪事件、殺人その他、それから回復のほんんど不可能な重傷害の事件というものにつきまして、どの程度の事案があって、そしてその内容はどうであって、そしてそれについて示談ができたりする被害の弁償があったか、それから被害者がどのような生活の状況に犯罪の被害者の後おられるかというようなこと、あるいはそれぞれのケースにつきまして被害者側にいわゆる被害をこうむるについて何らかの落ち度のようなものがあったかどうか、あるいは犯人被害者関係が親族その他のいわゆる姻戚関係、親戚関係等があるかというようなことにつきまして、過去一年と、これから今年末までの一年、実態調査の報告を受けるということをいま鋭意進めておる段階でございまして、この報告を待って、いわゆる実態の把握の上で法務省としての案をつくるかどうかを決めたい、かような状況におります。
  91. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 外国の立法の問題は、これはもう大体わかっているのでしょう。鈴木さんもニュージーランドだったかどこかへ行ってきているし、それからブダペストの会議に行った人もいるし――これは法務省からは行かないのか、成績大学の斎藤先生も行っていらっしゃるし、それからイギリスの例なんかもいろいろある。その中で参考になるのとならないのとありますよ。全然立場の違うものもあるので参考にならないのもあるのです。  大臣、いま刑事局長が一番最後に言ったでしょう。一番最後に言った言葉は重要なんですね。法務省としての案をつくるかどうか検討するんだと言ったでしょう。これは法務省としてはやりたくないのか、法務省ではないんだ、これは厚生省だとかあるいはほかの総理府だとか、そっちでやってもらいたいというのか、そこら辺のところの考え方が煮え切らないのです。だから法務省としては余り乗り気ではないという印象を与えるのです。法務省としての案をつくるかどうか考えると、いま刑事局長が言っていたでしょう。だからこれは厚生省とか総理府にやってもらいたいという考え方が法務省としては相当強いのではないですか。相当強いという言葉が悪ければ、それがあるのではないですか。それは基本的な理念のやり方によっては確かにそういうふうな行き方になる場合もあるのですよ。だから私もわかりますけれども。そこですよ、問題は。結局は法務省がやるのではないのだ、ほかの省でやるのにいま一生懸命下働きしてやってもばかばかしいという頭があるのではないですか。どうなんですか。
  92. 安原美穂

    ○安原政府委員 まさに最後の言葉をおつかまえいただいて御追及を受けたわけでございますが、念には念の慎重な態度ということになると、実態調査をした上で法務省として案をつくるかどうかを決めるというのが最も間違いのないところでございますが、これまでもたびたび私申し上げておりますように、私の少なくとも実態調査をする前の気持ちといたしましては、各国の刑事政策その他を見ましても、あるいは例の三菱重工業の爆破事件における被害者の悲惨な状況等を見ましても、この制度をわが国としては前向きで取り入れるような検討を進めるべきであるという考え方は、私はそのとおり思っておるのでございますが、なお実態調査をした上でないと法務省として案をつくるということを明言することはできないということを申し上げたわけでありまして、決して後ろ向きでもございません。また、どうせつくっても法務省の所管にならないからやる気はない、そういうことではございませんで、これは何と申しましても、各国の立法の理由を聞きましてもきわめて深く刑事政策というものに関連をする制度でございますので、法務省としては、この国にこの制度を取り入れる以上は法務省が主体になって、イニシアチブをとって進むべき問題であるということにも覚悟をいたしておるわけでございまして、決して後ろ向きでもなく、権限的に消極的な権限争いをしておるわけでもございません。
  93. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 各国の立法例、立法例と言うけれども日本の法制と全く違うのがあるわけですから、率直に言って各国の立法例の中で全然参考にならないものもあるわけです。それなら、どこならどこが立法例として参考になるか、しぼった方がいいのではないですか。たとえばイギリスならイギリスだとか、どこでもいいですけれども。ニュージーランドの場合、そんなところ――そんなところと言っては悪いけれども、そういうところのものを持ってきたって全然違うのですから、これは無理ですよ。だから、どこにしぼるかをまずしぼってごらんなさいよ。
  94. 安原美穂

    ○安原政府委員 考え方は別といたしましてと申しますか、その考え方をとるかどうかは別といたしまして、被害者補償制度が非常に活発に運用されておるのは、もう御案内と思いますが、イギリスでございます。それから、制度としていま事務当局で参考になる制度だという考えを持っておりますのはニュージーランドの制度であるというようなことで、やはりイギリスの運用の状況あるいはニュージーランドの運用の状況というものが、もっと具体的に申し上げれば参考になるということでございます。
  95. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私もよくわかりませんが、ニュージーランドのあれを参考にすれば、恐らく所管は法務省でなくなるのではないかと思うのです。これは厚生省あたりに行くかもしれませんよ。いろいろあると思うのですが……。  たとえば実態調査と言っても、これは大臣、三菱のあの事件で被害に遭われた非常に気の毒な方がいらっしゃいますね。そういう方は実態調査をされるのは、あるいは気持ちの上ではお喜びでない方もあると思いますけれども、その実態調査をやろうと思えばすぐできるんじゃないですか。そういう調査がそんな一年もかかるのですか。各地の地検のあれを待たなくたっていいんじゃないですか。これは京都の例もあるし横浜の例もある。たとえば京都で同志社大学が中心になってやっているのもあるし、横浜では市瀬さんたちがやっているのもあるし、それから三菱の関係だったらば東京地検を中心に調べればできるのであって、そんなに一年間もかからなくたってできますよ。そういう点をもっとしぼってやればできるんじゃないでしょうか。そこはどうですか。
  96. 安原美穂

    ○安原政府委員 個々のケース、顕著なケースだけですぐ制度をつくるというのならある意味では簡単かもしれませんが、やはり国の制度として取り入れますには、いわゆるわが国の財政とも密接な関連を有する問題でございますので、どの程度の規模のものが制度としてわが国に取り入れ得るかということを知るためには、どの程度の事案が全国的にあり、どの程度の被害者状況にあるかということを知らないと、何と申しますか、よりよき制度というものの発足にはむずかしいのではないかという意味実態調査をしておるわけでありますが、実態調査ができるまで漫然と手をこまねいて地検の報告を待っておるのではございませんで、先ほど御指摘もいただきましたような各国の制度の運用の問題、あるいは実態調査と並行しながら、どの程度の額にすることがわが国の制度としては望ましいかというようなこと等、諸要件、あるいは機関をどうするかというような問題は、実態調査の結果どの程度の事件があるかということとの絡みにおいてどの程度の数の機関をどこに置くかということとも関連をしてまいりますので、そういう意味におきまして、全然何もしていないということではなくて、実態調査と並行しながらその他の制度の中身について検討を続けておるということでございます。
  97. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは財政上の問題があると言いましたけれども、イギリスの例であったって、財政上の問題は幾らぐらいですか。日本の金で二百億か三百億ぐらいのものじゃないですか。そんな大した金額じゃないですよ、失礼な言い方だけれども。そんな一兆円も幾らもかかるというあれじゃないですよ。イギリスの例なんかでは年間どのぐらいですか。
  98. 安原美穂

    ○安原政府委員 年間二、三十億だということでございます。
  99. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 けたが違うんじゃないですか。二、三百億じゃないですか。二、三十億ですか。それならあなた、二、三十億ぐらいの金が一体どういうふうに日本の財政に影響するのですか。それはいろいろな理屈ですよ。できるだけやりたくないということを考えると、理屈は幾らでもつくのです。やろうと思えばやる方に理屈はつくし、やりたくないということでつければ理屈は幾らでもつくのです。私はこれがむずかしいことをよく知っているからわかりますが、むずかしいことは確かにむずかしい。しかし、やろうと思えば早くできるのですよ。  それと、これはどことどことどこに相談しなければできないわけですか。関係官庁はどことどこですか。
  100. 安原美穂

    ○安原政府委員 財政に関係があって、わが国の財政の根幹を揺るがすというほどのことを言っているわけではございませんが、制度として発足する以上は、お金の要ることでございますから、どの程度のお金が要るかということもまず見込むべきだという趣旨でございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。  なお、関係機関として私ども考えておりますのは、何よりも犯罪の被害者ということになりますと警察とは密接な関係がございますし、それから、広い意味での社会保障制度との比較権衡というようなことになりますと、やはり厚生省あるいは労働省というようなところ、それから財政の問題では大蔵省というようなところがさしあたり関係機関ということになるのではないかと思っております。
  101. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いまの話を聞いているでしょう。そうすると、これは二十億か三十億か、ちょっとわかりませんよ。わかりませんし、ほかの方で補償を受けている場合もありますから、いろいろあると思うのですけれども、これはやろうと思えばそんなになずかしくないですよ。これは確かにむずかしいけれども、いずれにしたってそんなに完全無欠のものはそう簡単にできないですよ、この法律は。  ところで、各省庁との話し合いというか、連絡会議みたいなものを持ったの、持ってないの。いつごろ持つの、持つとすれば。これはどうなっているの。実態調査実態調査と言って、そんなものはすぐにできるよ、そんなのは。
  102. 安原美穂

    ○安原政府委員 正式の連絡会議ではございませんが、国会でこのように議論を願っておることでもございますので、財政当局とは、もしそういうものが導入されればどういうことになり、どういう制度が各国にあるかというような、いわゆる予備的な説明というようなことはある程度やっておりますが、正式の相談というところまでは至っておりません。どこまでもやはり正式に関係機関と協議をするという以上は法務省のたたき台のような素案ができないといけませんので、それはやはりこの実態調査の終了前後というようなところに早くてなるのではないか。つまり、五十一年の三月ころになるのではないかというふうに考えております。
  103. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 実態調査実態調査と言って、実態調査で五十一年の三月ころと、こういう話ですね。それはなるほど丁寧にやるのにはこしたことはないわけですけれども、そんなにやらなくたって結論は出ますよ。数字は出てくるはずですよ。過去一年間のあれだってもう済んでいるわけですから、もう実際にできているところだってありますよ。これは刑法の改正で保安処分のことのいろいろな調査だってずいぶんやっているのですもの。これは各検察庁で出している。これをやろうと思えばすぐできるのですよ。どうも何だか余りやる気がないように考えられるのですね。もっともそれは、やる気がないと言ったって、本来なら立法府である議会がやるべきなんで、それを政府にやれやれと言うのもこれはおかしいんだという議論もありますから、何だか変ですけれどもね。そんなに実態調査を長くやる必要はないですよ。  そうすると、五十一年三月というと来年の三月でしょう。それは実態調査やって何ができるというの。実態調査が終わるということなんですか。立法が、一つの案としてでき上がる目安だと、こういうのですか。どういうことなんですか。
  104. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど申しました実態調査のうちで、昨年度の受理しました、あるいは発生しました事件についての調査はこの六月末までに報告が全部到達いたしますので、それで取りまとめができるだろうと思いますし、それから五十年、本年の事件につきましても、各地方検察庁に三カ月ごとに報告を求めておりますので、ことしの一月から三月の報告についてはいま整理中でございますし、近くまた六月末に二回目が来るというような状況でございまして、ことしの末まで何もそれの、実態調査の分析、検討ができないというわけではございません。
  105. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、仮に法案が提出されるという一応めどがいつごろかということ、これが一つと、それから、そのときにこれは遡及するのですか。将来の問題だけれども、遡及することを考えているの。
  106. 安原美穂

    ○安原政府委員 そこがまさに検討を要する問題でございまして、遡及させるかどうかということもあわせて検討しなければならない問題だと考えております。
  107. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこが確かに問題なんですよね。遡及するとして、いつ幾日まで遡及するかということもまた問題ですし、だからそれが問題で検討するとなると、それでおくれればおくれるほど、現実にいまそういうふうな被害に遭って困っておられる方は不利をこうむるということになるわけですから。  これは大臣、いろいろ憲法の方も忙しいでしょうけれども。もう憲法はいいか――もう憲法はいいのだろうけれども、これはひとつ本当に一生懸命やってくださいよ。私の方も小委員会をつくって恐らくやることになると思いますが、だからそこら辺のところを決意というか、しっかりとしたものを大臣が出していただいて別の質問に移りたいと思うのですがね。どうですか、大臣
  108. 稻葉修

    稻葉国務大臣 この間の問題の前に、横山さんの御質問に私お答えしたことを記憶しておりますが、稻葉問題あって、大分記憶が薄れましたけれども、私はこういうふうに思っているのです。そのとおりに言うたかどうか、正確でないかもしれませんけれども、私は、日本憲法のたてまえから言うと、著しい例として爆弾事件などの被害者は、これを救済しないということは文明国の名に恥じるというような、民主的な文化国家を目指している憲法の精神にも反するという心持ちを持っているのです。したがいまして、犯罪被害者補償制度をつくるべきである、踏み切るべきである、こういうように思うて、そうしたらいいじゃないかねと刑事局長や次官に言いますと、なかなかむずかしい問題があるのですと言うから、むずかしいところを勉強して解明していってやったらいいじゃないか、こういうことを言うてきまして、いま刑事局長が稲葉誠一議員の質問にお答えしたような段取り、作業を鋭意進めておるというわけでございますから、いましばらくごしんぼうをお願いしたい。
  109. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 こういうのはないのが文明国の恥なんですね、各国の立法を見ると。おくれるのも文明国の恥なんですよ。役人というのはいっぱいいますけれども、優秀なんですけれども、絶えずあなたが言って、活を入れていかないと怠けますからね。絶えず活を入れなければだめですよ、いいですか。
  110. 稻葉修

    稻葉国務大臣 活を入れろという御要望でございますが、あんまり小言ばかり言っていると効き目がなくなりますから、たまにがつっと言うので、ひとつ御勘弁願いたいと思うのです。
  111. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはよくわかりましたから……。とにかく私どもの方も、国会の方でも恐らく今度は理事懇をやりましてその問題に取り組むと思うのです。恐らく参考人を呼んで聞いて、それから始まると思いますから、私どもの方も一生懸命やります。確かに技術的にむずかしい点はあるのですよ。それは私もよくわかるのです。そういう点はありますけれども、克服すべきは克服して、そうしてやっていきたい、こういうふうに考えますので、やっていってもらいたい、こう思います。  警察の方にちょっとお聞きするわけですが、滋賀県の長浜に赤十字病院があるわけですが、ことしの五月に天皇陛下が全国の植樹祭で長浜に行幸されたわけですね。このときに私服の警察官が長浜の赤十字病院に自動車で乗りつけて黙って入っていって、それで監視をしたりいろいろなことがあったということでお聞きをするのですが、まず、私服の警察官が車三台かな、三台におのおの二、三名くらいが乗って、ことしの五月二十四日の土曜日ですが、午前十一時ごろに長浜の赤十字病院の構内に入っていったということは事実ですか。
  112. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 後でまた御質問に応じて詳しい事情は説明いたしますけれども、お邪魔したことは事実でございます。
  113. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そのお邪魔したというのは、それは法律的な根拠は何ですか。何か治療に行ったの。
  114. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 一つ一つ分けてお尋ねがありますと法律的問題その他ということで若干事実の説明に困難を生じますので、第一線から聞いた事実について若干御説明を申し上げます。  五月二十四日に天皇皇后両陛下の長浜市内の行幸啓がありました直前に、ある方からの提報によりまして、長浜の赤十字病院の精神神経科のお医者さんの間で、両陛下の行幸啓に対しまして抗議をする、直接行動があるというふうな提報がありまして、その事実を解明して事前に十分連絡をして行くというようなことでなくて、通過直前でございましたので、とりあえず、そのような行動があるのかどうか、そういう点を確かめに参りまして、もちろんそういうふうな提報も間違いがあるときもございますので、病院に確かめに行った、こういうことでございます。ですから、形の上では私服で自動車に乗ってまいりましたけれども、その自動車も病院の駐車場に入れまして、駐車代金を払って、そして病院の中に入って、外来のところでお医者さんのいろいろなお尋ねとかそういう事情があったということでございます。ですから現地におきましても、そういうふうな実情の中にありまして、病院のお医者さんが五月二十六日に県警本部の方にお訪ねになり、二十七日には所轄の警察署にもお見えになりまして、先生が御指摘になられるような、精神病患者に対して監視をしたのではないかというようなお話しとか、病院の方々に一人の警察官が暴行をふるったというようなお話しとか、あるいは白いブルーバードに乗っておった警察官が何かお医者さんをはね飛ばすというような、強い抗議もあったわけでございますが、調査の結果そういう事実はございません、こういうふうなお話しを申し上げたようないきさつがございます。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 こっちが聞かないことをみんなしゃべっちゃったので……。  私の聞いているのは、まず病院へ入っていったことは間違いないですね。入っていって、じゃそういう事実があるかないかということを院長なら院長に会って聞けばいいじゃないですか。院長に対して面会を求めも何もしないのじゃないですか。
  116. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 非常に冷静の間でそういうふうなことが行われるとすれば、当然警察官が院長にお話しをし、あらかじめ電話をかけて、こういう事情で行きますのでよろしくというようなお話しをすべきだと思います。しかし、非常に直前のそういうふうな提報でありまして、お話しをすればわかるのではないかということでとりあえず行ったところが、やはり詰問の状態とか、あるいは多くの方々で取り巻いてのお話しとか、そういうふうな、そもそもの実情をお話しするような零囲気でなかったということで、そういうふうな事態を何とかその場で解決すればというような気持ちが急いで、いろいろな想像以上の紛糾とか、あるいは御理解できなかった面があった、こういうふうに聞いております。
  117. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 天皇陛下がお通りになったのは午後一時半ごろでしょう。それで警察官が行ったのは十一時ごろあるいは十一時半ごろで、時間的に二時間くらいあるわけですね。そこで入っていって、最初から何か待合室のソファに座って患者を監視したり、それから外出する患者の後をつけたりなんかしておった、こういうふうに私どもの方では報告を受けておるのですね。最初からだれに面会するということなんか全然言ってないのじゃないですか。
  118. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 最初に申し上げましたとおり、お医者さんのうちで、何か直接行動をするであろうというような提報があったということで、その実情を確かめずに、あるいは事前に御了解を得ずに参りました。そこでただそういうふうな事情をお話しする零囲気でなかったので、現実の問題としてそういうふうな人の動きがなければ結構であったわけでございますので、そういう点、監視をしたとかあるいは尾行したとか、そういうことではなくて、事情を確かめ、あらかじめお話しをお伺いするという気持ちが行動の中にあらわれなかったというところに非常に遺憾な点があるわけでございます。どうぞよろしく。
  119. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、遺憾な点があると言って、どっちが遺憾なんだ。病院の方が遺憾だったと言うのか、警察の方が遺憾だったと言うのか、よくわからない。
  120. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 先ほど来御説明いたしましたとおり、こちらがやるべきことをいろいろ申し上げておきましたけれども、それをやらなかった点がこちらの方のやはり反省すべき点であったということを申し上げておるわけでございます。
  121. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 聞かれたときにも本当の名前を言ってないですね。いいかげんな名前を言っていますね。これはどういうわけですか。山東町の山田と答えておる。山東町というのは陛下がお通りになるところかな。
  122. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 派遣したのは警部補の身分のある者でございますけれども、周りの多くの人からいろいろな話を言われたので、その場が紛糾しなければいい、そういう気持ちが先立って――正々堂々とこちらの立場をお話しし、御理解を得るようにすれば問題はなかったと思います。ですから、先生のお指摘のとおり、そういうふうな事実はあったというふうに報告は受けておりますので、その点もやはり今後の指導の問題に考えていかなければならぬ、こういうふうに感じております。
  123. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは警察手帳は見せたのですか。
  124. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 ですから、先生指摘のとおり、山東町の何々、こういうような話をしておりますので、警察官であるという身分は示しておらなかった、こういうことであります。
  125. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたの方で情報があればこれは確かめに行くのは仕事だからやむを得ないかもわかりませんが、その病院は、お医者さんが何ですって、天皇陛下が来るのをとめる――とめるわけはないけれども。何だというのですか、ビラをまくというのですか。そういう話があったのですか。
  126. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 警察としても、爆弾予告電話じゃございませんけれども、その情報源とか、あるいはそういうふうな内容というものを十分確かめた上で、御迷惑にならない形で行くのがやはり警察の常道だと思うわけでございますけれども、何分事前に急な情報で、とりあえず、病院でございますので話せばわかる程度で行ったところ、予想以上にそういうような詰問があったということでお話しのような状態があらわれたわけでございます。非常に予想しなかった事態、こういうふうに言っておるわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どうも、その予想しなかった状態がなぜあらわれたのか、ちょっとよくわからないのです。  それから、何か病院の職員から、警察官の身分も明らかにしない、それから手帳も出さない、いろいろな名前を言う、多分にせの名前を言う、何しに来たのかもよく説明しないということで、警職法の範囲を逸脱しているじゃないかというふうに職員の人から指摘されたようですね。そういう事実はありますか。
  128. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 そういう事実があるように聞いております。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうしたら、常日ごろいろいろ教えているのでしょうから、警職法の第何条でどうなんだ、それでこういうふうに来たのだということを説明したらいいじゃないかと思うのですけれども、それは説明はしないのですか。ふだんからそういうふうにしろというふうに訓練をしておるわけじゃないのですか。
  130. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 最初に御説明申し上げましたとおり、現地からの報告によりますと、初め、とりあえず行って、そういうふうなお話しを聞けばそういう問題もはっきりし、わかるというような立場で、訪問の形でお邪魔いたしましたので、あらかじめ警職法とかどうとかというような感じで行っておらないように聞いておるわけでございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、警職法の範囲を逸脱しているではないかというように指摘されると、やせた二十歳代の警察官が、ここに写真もありますが、長身の、目の鋭い、なかなかスマートな人ですが、この人が突然、若いから怒ったのかもしれぬけれども、そばにいた看護人を、これは研修生らしいのですが、何か背中を突っついたというのかぶん殴ったというか、そういうふうなことをみんなが見ているというのですけれども、そういう事実はどうなんですか。あるいはそれに似た行為というか。
  132. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 そういう事実は非常に問題でございますので、第一線から詳しく聞きましたけれども、そういう暴行をふるったという事実については、ない、こういうふうに聞いております。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 暴行をふるったというのじゃないけれども、そこで払いのけようとしたか何か知らぬけれども、そういう段階で相手にぶつかったとかなんとかいうことはあるというのですか。全然肉体的な物理的な接触はなかったというのですか。接触はあったけれどもそれはこういう理由なんだ、自分の方は悪くないのだ、こういうふうなことなんですか。
  134. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 何人かの方からそういうふうな意味合いの詰問を受けておる状態でございますので、若干体と体との触れ合いというようなものは物理的には現出したでありましょうけれども、そういうふうな、意図的に暴力をふるってどうするというふうなことはなかった、こういうふうに聞いておるわけでございます。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 初めのあなたの話は、何も物理的な接触すらなかったような答えですね。そこまでぼくが聞かなかったかもしれぬが、そういう答えですね。順々に聞いてみると、そういうふうな物理的な接触はあった、あったけれども故意にあれしたわけではないというふうなことのようなんですが、そうすると、とにかく物理的な接触はあったけれども故意にやったのではないのだ。物理的にどこをどうしたというのですか。
  136. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 その間の詳しい事情については、もちろん私どもも、だれがどこに立って何人がどうしたというようなことを詳しく知り得た状況には現在ございません。ただ、そういうふうな何人かによって詰問されたということが言われておりますことと、いま先生お示しのような写真が多数撮られておりまして、こちらから話し合いで行ったというような形での想像されたムードと、その場でのムードとが非常に違いがあったということは言えると思うのでございます。しかし、警察官がそもそもそこへ行ったのは、あるいは御指摘のような患者の方々とか医師の方々とか、そういうふうな方々に対する警察官の日ごろの態度というものは、決して御指摘のような乱暴をふるうとかそういうような気持ちではございませんので、われわれの方としては、警察官は警察官なりの、患者の皆さんの保護の問題とかあるいは先生方に対する常時の連絡とか、そういうことを心がけておる状態でございますので、私は、そういうふうなムードではあったけれども暴行をふるったというようなことはないという、そういうふうな説明を了解しておるわけでございます。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その日の午後ですか、二時過ぎにですかね、何か抗議をしたお医者さんが駐車場の玄関前を歩いていたら、私服の警察官が乗っていた車、白いブルーバード、滋賀県の五五ぬ一九-七三、これは公用車かな、いきなり十メートルほどバックしてその人をはねのけようとした。それはいたずらしたのかもわかりませんけれども、そうして神社の方に走り去ってしまったという事実があるのですが――あるというか、私どもは聞いているのですが、この点についてはどうなんですか。
  138. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 お答えいたします。  駐車場に車をとめておりまして、出る場合にはバックをして出なければ自動車は出ないというふうな状況でございまして、後ろの方から追いかけるような形で写真を撮るような方がおったけれども、その間においては相当な開きがあって、別にそういうふうな、だれもがやるような状態で出たということで、何かぶつけるとか、そういうふうな意図なり形というものはなかった、こういうふうに説明を聞いております。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いずれにしてもこれは、お医者さんや病院の人たちが写真を撮ったとか何かというのは、それだけの事情があるから写真を撮ったので、普通の平穏な状態なら何もそんなことをしないので、その平穏でない状態になったということについては、いま言ったような警察官に責任というか不備があるということをあなたの方で言うから、一応これ以上はここでやめておきますが、このことについてその後、警察へ赤十字病院から抗議文なんか行っていますね。それから滋賀県精神神経科医会というのかな、そこから県警本部に申し入れ書みたいなものが出ておりますね。こういうのは私は異例だと思うのです。普通の状態ならそこまではおそらく行かないのじゃないかと思うのです。そういうものが出ておるところを見ると、よほどここへ行った私服の警察官の態度や、やったことや何かが悪かったからじゃないかと思うのですが、こういうふうな抗議なり申し入れに対しては、どういうふうな申し入れがあってどうしたのですか。
  140. 荒木貞一

    ○荒木政府委員 この点は先ほども申し上げましたように、五月二十六日の県警本部に対するものと、二十七日に所轄警察署に対するものがございまして、その内容は三点ばかりあるようでございますが、先生からも御質問がありましたとおり、精神病患者に対する監視は患者の人権を侵害して精神医療を阻害するものである、こういう意味の話が一点。それから第二は、精神神経科へ入った警察官のうちの一人が病院の職員を殴打して負傷させたということと、それからいま最後に御指摘がありました、白いブルーバードに乗車していた警察官が医者の一人をはねようとした、こういうふうな申し入れがあったわけでございます。それらにつきましては、私ども十分調査をいたしまして今後良好な関係を持って初めていろいろな問題が成就するわけでございますので、そういう事実を確かめましたところ、そういうふうな事実を証明するようなものがない、こういうふうに言われておりますけれども先生指摘のように、こういうふうなことを言われ、あるいはそういう状況になるということに対するやはり今後の問題というものを反省しなければならない、こういうことを考えて指導を十分してまいりたい、こういうふうに考えております。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 このことについては――このことじゃないのですよ、こういうふうなことに関連するのは社労なりあるいは地行なり、その他のところでまたやりたいと思うものですから、結構です。  次に、監獄法の改正問題、特に代用監獄の問題を中心にしてお聞きしたいわけですが、大臣が来てから大臣にまた聞きたいのですが、最初にお聞きしたいのは、昭和三十二年の三月に矯正局の中の矯正法規室で、これはおそらく朝倉さんがやられたのだと思うのですが、監獄法改正要綱仮草案というものを作成して、「監獄法を未決拘禁に関するものと行刑に関するものの二法の体系をとること、」それから「警察の留置場は拘置監にのみ代用するものとし、その改善をはかること等について要請している。」こういうように、東京三会の合同代用監獄調査委員会からの文書の九ページ上段に出ているのですが、これは具体的にどういうことですか。恐らくこれは、矯正法規室というのだから朝倉さんのところじゃないですか。まあ答弁は局長ですが、これはどういうものですか。それとその間の経過を……。
  142. 長島敦

    ○長島政府委員 矯正法規室の監獄法改正要綱仮草案というものが当時つくられておるのは事実のようでございますが、これは実は法規室限りの検討しました仮草案のようでございます。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは非常にりっぱですよ。内容もいいし。差し支えなければ資料として提出をしていただきたい、こう思うのですが、出していただけますか。
  144. 長島敦

    ○長島政府委員 長年監獄法の改正作業を矯正法規室でやっておりまして、その過程の一つの、歴史的と言うとあれでございますけれども、作業の過程でつくった簡単な要綱のようでございますが、そういう意味で御参考ということであれば出すことに支障はございません。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 具体的内容はどういうことですか。「監獄法を未決拘禁に関するものと行刑に関するものの二法の体系をとる」これは具体的にどういうふうなことですか。もう少し詳しく説明してくれませんか。
  146. 長島敦

    ○長島政府委員 これは恐らく、従来からそういう主張がございましたように、未決拘禁法というものと、行刑に関する、受刑者に関する法と、二つの体系を分けて考えたらどうかという考えだと思います。
  147. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その考え方の方が正しいのじゃないですか。私もそういう考え方なんですが、それがどうして理想に走り過ぎるというのですか。長島さんはどういうふうにお考えになるのですか。長島さん個人のお考えといってもあれなんですけれども
  148. 長島敦

    ○長島政府委員 ちょっと個人の考えを申し上げるのは適当でないと思いますが、考え方として確かに二つあると思います。分けた方がいいという考え方は、いわば実質的に考え考え方だと思います。未決拘禁者の立場と受刑者の立場は御承知のように違いますから、そういう意味では実質的に二つを分けて考えるというのには十分理由があると思います。一方、立法技術的に見ますと、たとえば給養の問題でございますとか――給養というのは食事その他でございますけれども、共通の面が非常にたくさんございます。そういう意味で、立法形式としましては一つ法律でやっても、そこの中でその違いに応じて、そこははっきりと違う点は違うように書いていく、技術的にはそういう考えもあろうかというふうに考えております。
  149. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、日本のいまの監獄法はどういうふうになっているのですか。
  150. 長島敦

    ○長島政府委員 いまの監獄法は条文が非常に簡単でございますけれども、監獄法の体系としてはやはり一本に入っておりますが使い分けが一部なされておるというふうに見ております。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは私も後で詳しく研究してから聞きます。  それから後の、「警察の留置場は拘置監にのみ代用するものとし、その改善をはかること等について要請している。」こう言っていますね。これはどういうことですか。
  152. 長島敦

    ○長島政府委員 そこにございますように「拘置監」と書いてございまして、いわば未決の者は別としまして、現在は代用監獄に受刑者が入り得ることになっておりますが、その点はいかにも刑の執行といいますか、そういうことを代用監獄でやるのは適当じゃないという、これは行刑の前からの一つの希望だというふうに理解しております。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これはそのとおりでしょうね。いま代用監獄に既決囚が入っているのがありますか。
  154. 長島敦

    ○長島政府委員 数は現在把握できておりませんが、軽犯罪法違反なんかで拘留になりましたような場合に、未決通算等がありまして、執行すべき刑が二日とか三日とかいう非常に短いのがございます。そういうような場合、刑の執行として残っておると思います。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで法務大臣、前に小林法務大臣がいましたね。この人は昭和四十五年五月六日の衆議院の内閣委員会でこういうふうに言っているのですよ。監獄法の問題についての質問なんですが、「私は、実はうかつにして、就任後しばらくたってから監獄法というものがあることを知って、まことに驚嘆をいたした。いま監獄というものはありません。全部刑務所になっておる。組織規程なり設置法ではみんなそうなっておるのに、まだ監獄法が直らない。これは、法務省の非常な醜態、怠慢だと思うのです。したがって、かようなものが、憲法制定後、明治四十一年のものがいまだにそのままあって、そうして、刑務行政というものが、めちゃくちゃとは申しませんが、みんな矯正局長の通牒などでもってこう薬ばりをしてどうやら過ごしておる。したがって、今回のような事件が起きるのも、」何が起きたのかちょっとわかりませんが、「起きるのも、やはりこういうところにも遠因がある、私はこういうふうに思っておる。まことにこれは心外なことでありますから、とにかく、監獄法というとんでもない法律があるということで、私は直ちに事務当局に命令をいたしまして、次の国会には必ず提出をいたすように、こういうことで、いま準備を進めております。」こういうふうに述べているのですね。これはうそじゃないと思うのです。  そこで、事務当局に命令をして次の国会には必ず提出いたすように準備を進めておる、これは四十五年五月ですね。ことしは五十年の六月でしょう、約五年たっているのですがね。このときからいうと次の国会というのはいつかも忘れましたが、これはどういうことなんですか。私が言うのは、監獄法の改正というのは一体どうしてこんなにおくれているのですか。本来なら、憲法ができたときに刑事訴訟法が新しくなったのですから、当然そこで監獄法の改正ということが行われなきゃならないはずですよね。会議だけでも百五十回か二百回くらいやっているらしいですね、監獄法改正についてその後。そして、これは一体現在どういうふうになっているのか。どこがネックなのか。たとえば刑の一本化の問題があって、刑の一本化の解決ができない以上は監獄法の改正ができないなんて説もあったのですよ。そういうことを言って、監獄法の改正がおくれる理由にいままでしておった場合も確かにありました。刑の一本化なんか、刑法改正草案じゃできないことになっているでしょう。だからどうするのかですよ。後で詳しく聞いていきますけれども、監獄法の改正、一体いまどのように進んでいて、どの程度の目安がつくのですか。どういうふうな理想を持ってやるのですか。大ざっぱな点は大臣から答えてください。
  156. 稻葉修

    稻葉国務大臣 新しい憲法下の新しい刑事訴訟法の制定のときに、監獄法を同時に改正すべきであったではないかということが御質問一つでありますが、その点につきましては矯正局長から説明があれば説明させます。  それから、監獄法の改正は小林法務大臣が次の国会と言ったのにいままで何をしていたのだという御趣旨の御質問です。これは、実は私、就任したのは去年の十二月ですから、それまで何をしていたかということはよくわからないのです。しかし、就任以来、局長説明を聞き、私自身も勉強をして、これは早急に改正を要する法律である、したがって作業を進めていってもらいたい。記憶の違いがあれば後で直してもらいますが、何でもことしの八月くらいには改正の案が矯正局長のもとではまとまるであろう。そして法務省案にするのは、いままで一生懸命やったのですから、別に直すところもそんなにないだろうと思いますから、できるだろうと思います。前の小林法務大臣じゃないけれども、次の国会くらいには出せるのじゃないかなというような気もいたしますが、間違っておれば矯正局長から訂正させます。
  157. 長島敦

    ○長島政府委員 おしかりを受けたわけでありますが、私が着任いたしましたのが四十八年の一月でございますが、当時、矯正局の中の第三次案というところの案ができておりました。私、それを拝見いたしまして、局内だけで議論をしておりましてもなかなかこれは作業が進まないということで、お願い申し上げまして、関係各局の参事官級の方に御出席をいただく懇談会というものをつくりまして、それを通じましてこの第三次案をもとにしながらいろんな点から根本的にまた検討を加えまして、おおむねこの懇談会におきます議論が煮詰まってきておる段階でございますが、実は明日と明後日に全国の刑務所長会同がございまして、この会同の協議事項にこの問題をかけておるわけでございますが、最終的にと申しますか、現場の意見を十分に聞きました上で局としては結論を出したいというふうに考えておる段階でございます。あと、もちろん正式には、省内のみならず、これに関係いたします各省がございますので、そういう方面の意見も十分に聞かなければなりませんが、夏の期間をかけまして精力的にさような作業を進めて、できますればこの秋には法制審議会へかけていきたいということで鋭意作業を進めておるわけでございます。
  158. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 長島さんも朝倉さんも非常にまじめな方だし、学者だし、りっぱな方ですから私も尊敬しているのですが、いまの案の中の現在のあれと違うポイントというのはどこですか。いま述べられる範囲で述べていただければ……。
  159. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほども申し上げましたように寸現在の監獄法は非常に条文が少のうございまして簡単な条文になっております。多くの部分がそういう意味法務省令の施行規則あるいは累進処遇令等によって運用されておるわけでございますけれども、そういうものの中でやはり法律に書いた方がいいという事項もかなりあるわけでございます。ことに人権に関しますようないろんな規定につきましては、法律でやはりはっきり書いていくということが必要なものも多数あると思います。そういう点は法律にやはり上げていくべきだというふうに思っております。  第二には、御承知の国際連合の最低基準規則が出ております。これは国情の違いによって全部そのまま採用できるものではないというふうには考えておりますけれども、少なくともその精神と申しますか、それが日本の国情に合う限りにおいては、そういう方向に沿って、もし充足するために必要な規定があればそういう規定をもうけていきたいというふうに考えております。  第三点は、現在の監獄法のもとにおきましても矯正の運営は着々、と申すと言葉があれでございますけれども、改善を進めてきておりまして、開放的な処遇とかいろんな処遇が現在すでに行われておるわけでございますが、そういうものの根拠を法律の中に置くことによりまして、一層そういった新しい国際的な水準あるいはそれを超えるような処遇が可能になる素地ができるというふうに考えておるわけでございます。  柱で申しますと、そういったような三つの点を柱にしたいというふうに私は考えておるわけでございます。
  160. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで問題となってくるのは、私は代用監獄の問題だと思うのです。代用監獄は、明治四十一年に監獄法ができましたが、その当時からこれは問題になっているのです。衆議院の議事録を見ますと花井卓蔵さんなんかが出てくるのです。政府委員で小河滋次郎という人ですかが出てきて、この小河さんなんかの言っているのは、「なるべく留置場は将来におきましても監獄として用いない方針をとるつもりであります。」こうはっきり言っていますね。これはたしか監獄の父とも言われた人でしょう。私は知りませんけれども。  そこで、いまなお代用監獄というものが使われておるんですね。これはどういうわけで代用監獄というものが使われておるのか。実際の運営はいまどういうふうになっているのかということをお聞きしたいわけです。  そこで資料として提出願いたいのは、なかなかむずかしい資料ですが、一つは、きょう現在で代用監獄としてそこに入っている被疑者並びに被告人の数がどのくらいいるかということです。これが一つです。  それから二つ目は、現在各拘置所、拘置支所の定員と入っている人の数、これが二つ目です。  なぜそういう資料を要求するかというと、拘置所の方は、恐らく選挙違反も出てしまったからあれですけれども、半分くらい入っているところもありますが、大体半分入っていないですよ。だからあいているのですよ。だから何も代用監獄を使わなくても初めから拘置所を使えばいいのです。拘置所がいっぱいだというならわかりますよ。いっぱいで入り切れないから代用監獄だというのならこれはしようがないかもわからぬけれども、あいていて入るのに入れないで、代監代監でみんなやっているんですね。だから私はそういう資料を要求するわけですよ。  それからもう一つは、現実には代監でどのくらい長く入っている人がいますか。いろいろな例があるでしょう。たとえば三日、それから二十日。二十三日で起訴されたとして、起訴後もなおかつ入っている人が代監にどの程度いますか。これはきょう現在で調べてもいいと思うのです、連絡すればすぐわかるんだから。  この辺のところをまず調べていただいて、そして問題として考えられるのは、一体代監というのは代なんですから、本来は拘置所に入れるのが本筋なのか、特別な事情のある場合にのみ代監に入れるというふうに考えるのが正しいのか、そこら辺の考え方は、一体法務省としてはどういう考え方をしているのですか。代監というのはいろいろな問題が出てくるから私は聞くわけですが、たとえば判例などを見ましても、結局「勾留場所をいわゆる代用監獄とするのは特段の事情がある例外的な場合であるというべきである。」これは和歌山地裁、昭和四十二年二月七日の判決です。その他がありますね。もちろんこれに反対の判決もありますよ、わかっていますけれども。だから、代監なんですから、特段の事情がある例外的な場合に入れるべきじゃないのですか。それをいまこっちに入れるのが本筋にしてやっているんじゃないのか。そこら辺のところはどうなんですか。代監というものをどういうふうに考えているか。
  161. 長島敦

    ○長島政府委員 最初に、資料要求がございました点ですが、これは警察で調べないとわかりませんので、日にちがかかるかもわかりませんが、調査をいたします。  ただ、それに関連して一言申し上げたいと思いますのは、拘置所があいておるから拘置所へ全部収容すればいいじゃないかというただいま御指摘がございましたけれども、実はその距離的な関係がございまして、拘置所あるいは拘置支所は町中が多いわけでございますけれども、簡易裁判所とかあるいは裁判所の支所の一部等、かなり距離が離れているところがございまして、これへの出廷あるいは検察庁への護送、そういうふうなことには相当の人数がかかるわけでございまして、設備だけでなくて職員の問題が実は拘置所にとっては非常に大きな問題でございます。そういう点も資料をつくります際に、できれば拘置所の実態もまた御説明申し上げたいというふうに思います。  それから第二番目に御質問がございました、本来監獄へ入れるべきで、代用監獄は特別の必要がある場合に入れるべきではないかということでございます。先生指摘のように、裁判例が二つ出ておるようでございまして、この点は実は刑事訴訟法の解釈に関することでございますので、できれば、刑事局の参事官が出席しておりますのでそちらから回答していただきたいというふうに考えるわけでございます。
  162. 根來泰周

    根來説明員 ただいま御指摘のように、代用監獄がいわゆる代用であって特別なものであるかどうかという点につきまして、判例は二つに分かれておりまして、一つは、拘置所が原則であるという趣旨の、御指摘の和歌山地裁の判例もございます。また、これに反しまして、鹿児島地裁の判例のように、そういう縛りはないのだというふうな考え方もございます。私ども刑事局といたしましては、ただいま刑事訴訟法のたてまえからいたしまして監獄ということについては何ら径庭はないわけで、ただ警察官署に付属する留置場を監獄に代用することを許容したその監獄法の規定は、官庁営造物設営上の代用措置を規定したものであって、勾留については代用というような考え方ではないというふうな考え方をとっておりますので、その拘置所原則論という考え方には賛成できない立場でございます。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは、訴訟法のたてまえからいってもいまの考え方はおかしいのじゃないですか。たとえば名古屋地裁の判例を見ますると、昭和四十五年一月二十日、これは五十九ページにありますね。「本来被告人の勾留は、逃亡または罪証隠滅防止の見地から身柄を拘束し、裁判所の審理に奉仕するものであり、又当事者一方の身柄を相手方の支配に委ねるのは、当事者主義を強調する刑事訴訟法の精神に反するから、その勾留場所として拘置監を原則とし、ただ特段の事情が認められる場合には、代用監獄を指定しうるものと解すべき(である)」こういうふうに言って、代用監獄とした部分を取り消して拘置所を指定していますね。これが本当の考え方なんですよ。だから、法務省当局では、拘置所の場合と代用監獄の場合と、実際の取り調べがどういうふうに違うというふうにあなたは理解していますか。
  164. 根來泰周

    根來説明員 ただいま御指摘のように、当事者主義に反するというような判例があることは承知しておりますけれども、当事者主義と申しますのは、いわゆる被告人の段階になった場合を言うものというふうに解釈しておるわけでございます。それで現在の運用といたしましては、被疑者の段階では代用監獄に留置している例は非常に多いのでございますが、起訴された段階ではほとんど拘置所の方へ移監しているのでございます。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それならもう一つさっきの資料に、代監にいる場合に被疑者のものと被告人のものと分けてください。これは被告人のものが相当ありますよ。それは警察が被告人になってから置くのをいやがるわけですよ。もし事故でも起きたときに責任を問われるからそれで早く送るのですけれども、拘置所の方でもいやがるわけじゃないですけれども、相当ありますから調べてください。  これはこういうふうな判例すら出ているので、代監にやるのはこれは取り調べの便宜のためじゃないのですか。だから、代用監獄における取り調べの状態と拘置所における取り調べの状態とどういうふうに違うのかと聞いているのです。まず時間の点はどう違いますか。
  166. 根來泰周

    根來説明員 拘置所の場合とそれから代用監獄の場合の取り調べの実態ということにつきましては、いろいろ個々ございますと思いますが、時間的には代用監獄の方がある程度融通がきくという実態でございます。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ある程度じゃないですよ。一番融通がきく。そのために代監でやっていくんですよ。これは夜十時、十一時まで調べている場合も多いでしょう。拘置所へ来ると、警察官が一々来て拘置所の許可を得てやらなければならないものだから非常にいやがるわけです。絶えず下から知らしてくればいいんだからね、代監の場合。検事の方だってほとんど代監に置きっぱなしでしょう。置きっぱなしで、最後のところに来てちょっと調べて起訴するというのが普通のような状態になっている。普通というのは、特別な事件は別ですよ、そうでない場合。  そこでいろいろお聞きしたいのですが、代監は、一つはいまの時間の問題、これは極端に違いますね。  それからよくわからないのは、この代用監獄の場合に適用される監獄法の施行規則というものの範囲の問題ですね。これは私もよくわからないんですよ。読んでみてもわからない。たとえば糧食の自弁購入の場合だとか健康保持に必要な運動の場合だとか、いろいろありますね。それから入浴の場合とかいろいろあるでしょう。こういう場合に一体どういうふうになっているのですか。
  168. 長島敦

    ○長島政府委員 その点につきましては、私どもの解釈は、お手元の資料の中に大阪地裁の判決がございますが、それと同じ解釈に従っておりまして、この監獄法の条文の中に、たとえて申しますと監獄法の三十三条というような規定がございますが、三十三条に刑事被告人については衣類とか臥具は自弁とするという規定がございますが、その二項に「自弁ノ衣類臥具二関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」というふうに規定がございます。こういうふうに監獄法自体に「命令ヲ以テ之ヲ定ム」と書かれております場合には、この法律に基づいて出ました命令でございますが、具体的には法務省令の監獄法施行規則でございます。施行規則の九十二条で自弁の衣類臥具についての規定がございますが、それは代用監獄にも適用があるというふうに解しております。ところが、先ほど御指摘がございましたような糧食とか運動等につきましては、この法律自体に「命令ヲ以テ之ヲ定ム」という規定がございません。したがいまして、その点についての監獄法施行規則の規定は、法務大臣がいわば法律の趣旨に従いまして決めましたいわゆる執行命令と申しますか、そういう性質のものだというふうに理解しておりまして、したがいまして行政上の、組織上の組織が違っております代用監獄の場合には当然にはそういった施行規則の規定は適用がないというふうにしておるわけでございます。したがいまして、個々の監獄法の条文を見まして、「命令ヲ以テ定ム」とあります場合には施行規則が適用になる。そうでない施行規則の条文につきましては、これは法務省所管の監獄に適用がありまして、代用監獄については当然にはそういう施行規則は適用がないというのが従来の解釈でございます。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もう時間があれですからやめますが、そうすると、監獄法がそのままストレートに代用監獄に適用になる場合とならない場合とある。そうすると、拘置所にいる場合と代用監獄に入っている場合とで、たとえば普通の場合は三十分以内の戸外運動をさせなければならないとか、それから何日間に一回入浴させなければならないとか、それから夏はどうだとか、寝具の日光の消毒はどうだとか、いろいろ規定がありますね。それが拘置所の場合と代監の場合とで、待遇というか処遇は違うのですか。違うとすればどういうふうに違っているのですか。実態はどうなんですか。そこのところ、代監は極端に悪いんですよ。だから聞いているわけなんですよ。それを、あなたの方ではそこらのところはわからないようなことを言う。一体どうなっているのですか。この辺のところは調べたことがありますか。それは官庁が違うから調べにくいということで調べられないのですか。これが一つ。  それから、時間が来たからもう一問だけ質問します。これはそこにいる俵谷さんが書いたもので、「犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第四回国際連合会議」これには長島さんも出ていたでしょう。これでこういうことを言っておる。さっきの監獄法の改正の中に出てきました国連の最低基準規則、これに関連するんだと思うのですが、これについて矯正局長は、「同規則が収容者の権利の面についての規定が多く、その義務に関する規定に欠けており、これを充たすことも社会復帰をはかるうえに必要ではないかと指摘した。法務省矯正局の朝倉参事官は処遇の人権面、自由化の面においても、具体的な規定をおくことが望ましいと要望し、」こういうふうにありますね。  お聞きしたいのは、それは一体どういうことかということです。この書き方は、いかにも国連の基準というものと日本実態とが離れていて、国連の方が理想的過ぎるんだ、だからこれを上に寄せるのではなくて、日本実態の方が正しいんだというふうにとれる。これは羽山氏が矯正局長のときにしゃべったらしいんですけれども、よくわかりませんけれどもそういうふうにとれるので、そこをどういうふうに理解するのかということですね。理想的なものならそれにくっつけるように、今後監獄法の改正の中でやっていったらいいのではないか、こう思うのですがね。それが第二ですね。  前の質問といまの質問と合わせてお答え願って、時間が来ましたので私の質問を終わります。
  170. 長島敦

    ○長島政府委員 第一の点でございますが、警察につきましては被疑者留置規則という国家公安委員会規則が出ておりまして、この留置規則によりまして、代用監獄についても、ほかのいわば施行規則等が適用になる場合あるいは監獄法がある場合はもちろんそうでございますが、それ以外の場合に準用するというような規定が置かれております。実態につきましては私ども詳細な事情がわかりませんので、どのように食い違っているかということのお答えは現在ちょっとできない状況でございます。  第二の問題でございますが、羽山局長がどういう発言をされたのかという内容は、どうも資料がございませんので……(稲葉(誠)委員「ここにある」と呼ぶ)その程度のことは書かれておりますが、具体的な内容が実はわからないわけでございます。ただ、当時、その国連会議に出ましたときの日本のナショナルステートメントと申しますか、日本考え方としましては、最低基準規則は守るべきだ、この遵守ということを国際的にもっと進めるべきだという立場でありました。その後、現在までその立場は変わっておらないわけでございます。そういう意味で、どういう御趣旨のことであったのかわかりませんが、言葉が非常に簡単でございますのでわかりませんけれども、羽山局長も、局長として出られておりますから、そういう全体の趣旨に反した御発言ではなかったものというふうに理解するわけであります。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これで質問終わりますが、それでは国連の、正式に何と言うのですかね、この最低基準規則、これを資料として出してもらいたいんですがね。
  172. 長島敦

    ○長島政府委員 はい。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それともう一つは、拘置所と代用監獄――代用監獄もこれは法務大臣の監督権が及ぶか及ばないか、いろいろな議論がありますよ。ぼくは率直に言うとよくわからないのです。だけれども、あなたの方の関係の、関係というか、被疑者や被告人が入っていて、私は本来拘置所へ入るのが筋だと思っているんですが、代ですからね、それとの処遇が具体的にいま私が指摘したようなところでどう違うのか、これがわからないというのは……。これはあなた、監獄法の改正の中で今後一番大きな問題になってくるのですよ、代監をどうするかということが。私はこれは廃止すべきだという意見ですがね。それは起きてきますよ、廃止すべきだという意見が。それで、これは廃止すべきだという意見のときに、一体拘置所をどの程度にしなければならないとか、拘置所の費用がどうかかるとか、いろいろな議論が出てくると思うのですね。これは議論があります。たとえば、参事官室にいたのかな、稲田という人がいますね。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕 この人の書いたのがあります。これはいま新潟刑務所長やっている人かな。あの稲田さんが書いたのがある。いろいろありますよ。その議論が出てくるのですけれども、その実態がどういうふうに違うかということがわからないで監獄法の改正なんかできませんよ。これはよく調べてもらいたいんですよ。調べにくいと思うのだ、これは警察の管轄だから。だけれどもそれは当然の責任として調べてもらわなければ困りますよ。そこらのところ、はっきりしてください。いずれ別の機会にまた質問しますけれどもね。
  174. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のように、代用監獄の問題は監獄法改正の際の最も重要な問題の一つというふうに理解しております。今後警察とも十分実は話し合うつもりでおるわけでございますが、そういう意味でもちろん運用の実態も十分につかまえたいというふうに思っておりますので、先ほどと同じように急にはできないと思いますが、できるだけ速やかに実態を把握するようにいたします。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いま聞いていただいたとおり、よくわかりましたね。監獄法改正の問題全体を通じて、これもまた積極的に大臣としても取り組んでもらいたい。こんな古い法律で……。
  176. 稻葉修

    稻葉国務大臣 しかと承知いたしました。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 終わります。
  178. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 横山利秋君。
  179. 横山利秋

    横山委員 まず、きょうは警察関係で大いにほめたいところと、大いにまずいところ、しかっていかなければならぬところと、両方あるわけでありますが、検察陣の指揮監督をする立場の法務大臣にも聞いてもらいたいと思います。  最初の事例は、東京北区役所、小林区長に絡まる諸問題であります。ここに一つの文書がございますから、まずそれから読み上げます。     念 書   小林区長は、   昭和四十九年十一月十四日午前十時二十分から正午まで、王子信用金庫本部理事長室に於て大前三次郎、富田直之、鈴木たけ、堀内英雄、堀内文吾の五名に対し、次のような事項を語った事実を確認する。   一、王子運送は、区の仕事を請負うと五台の車を使えば十台分を請求して支払いをされた。   二、区役所第二庁舎の建設工事に当り、浜野さんは請負人の畑野組から「区長に渡す」といって三百万円受取ったが、もちろん私はもらっていない。   三、浜野さんは、行政委員などの人事に介入してきたことは事実である。(選挙管理委員、教育委員)特に娘婿を教育委員会の指導室長にさせろと言ったが結局させなかった。   四、このほかもっと重大な問題があると語った。    昭和五十年三月三十日               大前三次郎(印)               富田 直之(印)               堀内 英雄(印)               堀内 文吾(印)               鈴木 たけ  この文書が北区における中心的な問題なんであります。御想像がつきますように、濱野さんというのはわれわれの同僚委員の一人であります。おわかりですね。それから大前三次郎さんは信用金庫の理事長、自民党員。富田直之さんは自民党の都会議員、前議長。堀内英雄さんは自民党の前北支部長。堀内文吾さんは元都議会議員。鈴木たけさんは元衆議院議員鈴木仙八さんの奥さん。  これが問題になりまして、北区においては北区政調査特別委員会が設置をされた。そうして統一地方選挙の前にこの調査が行われた。これは新聞の引用でありますが、「北区政調査特別委員会(上代国吉委員長)は四月十四日、①特定業者からの献金行為②水増請求③産業会館建設計画にともなう不正事件の有無、などについて「直ちに結論を得るに至らず、関係者の告訴による司直の判断の経過を見守り、その結果をまって適切な処置がとられるよう期待する」との方向を出して解散した。」そして直ちに選挙に突入したわけですね。これが私が質問する第二番目の事実。  第三番目の事実、「五月二十三日、北区議会議長あてに三上仁一王子警察署長から次のような要請があった。文書は「捜査関係事項照会書」となっていて「捜査の必要上刑法第百九十七条二項によって、昭和五十年四月三日及び同十一日開催された北区政調査特別委員会の傍聴者名簿各二部あて送付してもらいたい」というもの。」これが第三の事実であります。  第一の事実は、事実というには少し語弊がありますが、これは問題になった念書です。第二番目は、その特別委員会が司直に依頼をして、解散をして選挙に突入した。第三番目は、その間、警察から北区議会議長あてに傍聴者の名簿をくれと言うた。これは事実であります。  そこで私は警察に聞きたいわけであります。この文書は、刑法第百九十七条二項によって傍聴人の名簿をよこせと言った。あたかもそのことについては違法ではないようには思われる。ところが二つの問題がある。  一つは、五月二十三日当時は北区議会の構成がまだできてなくて、正副議長が選任されたのは二十九日。その間、二十九日前に事務当局が勝手に名簿を渡しちゃった。これは警察に関したことではないとおっしゃるかもしれぬが、区議会の最高責任者が許可していないという問題です。  それから、一体、この区役所の中で行われている委員会の傍聴人、たとえばきょうも傍聴人がいらっしゃる。この傍聴人が、国会でもそうですが、傍聴に来ていらっしゃる。それを国会の事務総長に、名簿をよこせと言うことが一体想像されるだろうか。そうしてまた、仮に万一想像されるとして、その傍聴人を、きょうおまえさん何を聞いてきた、横山は何言った、稲葉は何言ったと、そういうことを調べる必要性というもの、調べる政治性というもの、そういうことが考えられることなのか、常識的なことなのかということなんであります。  これは俄然北区の区議会におきましては大問題。つまり、北区議会というものが知らぬうちに警察の、言うならば泥ぐつでじゅうりんされておるということなんです。二つ目には、その傍聴人がそこで名前を知られて、警察が傍聴人のところに調査に来た。あなたは委員会を聞いておってどう考えましたかとか、委員会の質疑応答はどうでしたかということを聞かれた。議会の傍聴をすることについて警察から調査を受けるなんてゆめにも思わない人たちだ。私はこの話を聞いて、なぜそんなことを警察がやろ必要がある。それはもうあなたは違法でないと言うかもしれぬ。しかし、私はきょう法的に違法であるか否かの議論をするためじゃないですよ。常識的に、そういうばかげたことをして何の益があるか。一つには非常識であるということと同時に、一つにはそういう傍聴人から聞いた言葉が、今度この問題で告訴が行われているのですが、調査に何の益になるのか。そんな、傍聴人から聞いた話で、警察が、告訴された諸問題についてどういう効果があるか。全くこれはおかしな話だと思うのです。  まず第一に、警察が傍聴人の名簿を区議会に対して要求する。それなら国会にも要求することがある。そういうことが適当な処置だと思うかどうか。第二番目に、そうしてもらったやつで傍聴人を次から次へと調べるということが適切な措置だと思うか。第三番目に、そういうことをやって傍聴人を調べた結果が、何かの捜査上のプラスになると本当に思っておるのか。三点について伺いたい。
  180. 森永正比古

    ○森永説明員 ただいま御指摘がございましたように、東京都北区における黒い霧事件というものについて現在内偵を進めておるところでございますけれども、これに関してはまだはっきりした事実は把握されておりません。  ただいま御質問ございました告訴事件に絡む問題につきましてお答えを申し上げたいと思いますけれども、北区の区政調査特別委員会におきます傍聴人に対しまして、現在のところ一件だけ事情をお聞きいたしております。  これに関連いたしまして三点について御質問があったわけでございますが、第一点は、このような措置が適当であるかどうかということでございますが、この事件につきましては、北区政調査特別委員会における参考人の発言をめぐる問題でございます。したがいまして、当事者だけの事情聴取では乙の真相を明らかにすることができませんし、また公正も期せられないわけでございます。したがいまして、どうしても傍聴人の方に、どのようなこの告訴事実に関する発言があったのかどうか、そういう点について確かめる必要があったわけでございます。しかしながらこれについては、議会の傍聴人でございますので慎重に取り扱っていかなければならないわけでございます。したがいまして、その必要性、妥当性については十分検討いたしまして、その必要性の範囲内で措置をした、こういうように考えておるわけでございます。したがいまして、ただいま御質問の適当であったかどうか、かつ妥当であったかどうかということについては、私どもは、適正、妥当であるというふうに考えておるわけでございます。  また、御質問の中に、このような方法をもって傍聴人から事情を聴取した結果が、捜査上プラスになったのかどうかということでございますが、ただいまお答えをしたことの中で御説明できたものと思いますけれども、さらに繰り返して申し上げますならば、この種の事件につきましては当事者の発言だけでなく、第三者の証言を得てこれを立証していかなければ十分に事件として立件することができないわけでございますので、そういう意味において十分に役に立つものと確信をいたしておるわけでございます。
  181. 横山利秋

    横山委員 あなた、自分の言っていることの矛盾撞着に気がつかないのですか。あなたはいまこう言いましたよ。どうしても捜査上必要であったからやった、それが第一だった。それから一人だけやった。どうして自分の矛盾に気がつかないのですか。こういうことがどうしても必要であったとあなたはおっしゃった。捜査上必要であった。必要であったなら、一人だけやるというのはどういうわけなんだ。みんなやらなければいかぬじゃないか。私はあなたに、もう率直にこの際、こういうことについては適当でないと考える、まあやったことは仕方がないけれども、これからやりませんと言うてもらいたいのだ。また、言うべきが当然だと思いますよ。こういう委員会で何があったかを、傍聴人をこれから調べる、そんなことが国会でやられてごらんなさいよ、みんな黙ってませんで。調べる方法は、この念書に沿った問題やあるいは会館建設について金を取ったという疑いの問題、そのことがどうしても議会の傍聴人を調べなければ捜査ができなかったとあなたは言い張るつもりですか。いいかげんにしなさいよ。あなたはいま、どうしても捜査上必要だったと言いましたよ。あなたはそんなこと本気で考えているのですか。警察とはそういうところですか。この調査をするのに絶対不可欠な要件として、傍聴人を調べなければならなかったとあくまであなたは言い張るつもりですか。そうなら、何で一人だけ調べてあとはほかっておくつもりだ。もっと率直に、私も助け舟を出しているのだから、こういう議会側に反発を招くような問題は必ずしも適当な方法ではないと……。単に北区議会だけではないですよ。全国で、議会の傍聴者を調べてやるということが違法でない、警察は今後やるというような印象を与えるということがどういう結果を招くか、民主主義議会制度に対するどういう影響をもたらす問題か、考えて物を言ってもらわなければ困るのです。もう一遍あなたの率直な答弁をお願いします。
  182. 森永正比古

    ○森永説明員 この問題については幾つかの事件がございました。一つは黒い霧事件でございます。それで、黒い霧事件については、冒頭申し上げましたように一応内偵を進めておるところでございますけれども、ただいま傍聴人について一応事情聴取をいたしたというのは、区政調査特別委員会内における発言をめぐる告訴事件についてでございます。それにつきましては、議会内でどのような発言をされたのか、それが告訴事実に該当するのかどうかということは、これは当然調査しなければいけないと思うわけでございます。したがいまして、これは当事者にももちろんお聞きいたしましたし、これは議会議事録もございますから、そういうもので間に合わすことができないかということで、そういうものも調査いたしました。ところが、早くて七月の上旬にならなければできないというようなことでございます。告訴事件については、速やかに捜査をやって送付をいたさなければいけませんので、真にやむを得ないということで、傍聴人の方に事情をお聞きしたわけでございます。  それから、必要性があるならば一人というのはおかしいじゃないかという御指摘があったわけでございますが、私どもは、議会内におけるところの傍聴人に対する事情聴取でございますので、必要最小限度にとどめなければならないということで、お一方で十分であるかどうかという問題はありますけれども、とりあえず一応お一方だけお呼びいたしまして事情をお聞きしたわけでございます。その結果でさらに必要性があるのかどうか、こういうことは検討しなければいけないと思うわけでございます。これについては、現在のところは考えておりませんけれども捜査の進展等に伴いまして必要性が出てくるかもわかりません。そういう場合については、先生の御指摘もございましたように、これは慎重にやるべき問題でございますので、さらに必要性等について十分検討いたしまして、まあ、お聞きしなければならないということであれば慎重にやるべきであろう、それも必要最小限度にとどめるべきであろう、こういうように考えているわけでございます。
  183. 横山利秋

    横山委員 あなたは一人だけ調べたと言うんですけれども、確かに調べられたのは一人だ。だけれどもほかの人にもやっているのですよ。あなたはその事実を知らないのですか。住所、氏名が違っておったからその人は行かなかったということもあるのですけれどもね。一人だけやったのじゃないですよ。あったのは一人だけれども、ほかにもずっとやっているんですよ。そういうことを御存じなんですか。御存じで物を言っているのですか。私に適当に答弁しようと思って言っているのじゃないでしょうね。少しはあなた、さっきの話とニュアンスが変わってきたのですけれども、それじゃ一人でやめて――その調べたのは五月二十三日ですか、いま何月ですか、それから何もしないのはどういうわけですか。やれと言っているんじゃないですよ。実際は、ごうごうと非難が起こったのでもうやめちゃったということじゃないのですか。それを私が言うのは、もうそんなことはこれからやめなさいよとお勧めしているんだ。しかし、あなたがどうしても、必要があったらやると言い張るならとことんまでここで議論しましょう。そういうことが議会民主主義というもの、そういうものの中で適当なことであるかどうか。  それから、何も関係のない傍聴人を調べて、傍聴人たった一人なり、あるいは複数でもいいが、その傍聴人の、筆記もできないような人、そこに座っておって、感覚的に、ああ、あの人はああ言ったね、こう言ったと思うというようなこと、そういうことを証拠書類にとろうというのですか。議会へ傍聴に行った人の発言を、捜査の必要上の重要な資料にしようというのですか。そのプラス面とマイナス面とをはかりにかけてみて、あなたも常識のある人だと思う、なおかつそれでも必要があればやるとあなたはここで言い張るつもりですか。私は、これが必ずしも違法ではないという助け舟も出して言っているんだけれども、そういうことをおっしゃるなら法律論からも入りましょうか。政治論からも入りましょうか。少なくともこういうやり方は適当なやり方じゃないから、今後やめなさいと私は言っているんですよ。あなたは、まあ、必要があればやるけれども慎重にしたいということで言葉を濁しているけれども、この際、そういうやり方はやめなさいと私ははっきり言っている。やめなさいよ。
  184. 森永正比古

    ○森永説明員 捜査の必要上ということでやっておるわけでございますけれども、必要があれば何でもやるということを申し上げているわけではないわけでございます。ほかに方法があればそういう方法をできるだけとって、そして傍聴人の方には御迷惑をおかけしないというのが好ましいわけでございます。しかしながら、これまでに事情聴取をいたした万につきましては、ほかに方法が当時なかったということでそういう方法をとったわけでございます。このことについては適法妥当ではなかろうか、こういうことで申し上げたわけでございます。今後につきましては、もちろんほかに、先ほど議事録の問題なども申し上げましたけれども、そういうことで、ほかの方法で立証することができる方法を十分考えまして、そういうことでできるだけ間に合わせていかなければいけない。万一そういうことでできないということであれば、そのときはまた検討しなければいけないだろう、こういうふうに考えておるわけでございまして、捜査のためなら傍聴人の方もどんどんやっていいということではございませんので、ひとつ御了承願いたいと思います。
  185. 横山利秋

    横山委員 法務大臣、直接あなたの所管じゃないけれども、ある人は、「区議会の傍聴にいっただけで警察から調べられるなんて…恐ろしくて恐ろしくて、区議会の傍聴など、もう、絶対いきません。」と言っている。この人の感覚に少し問題があることは認めますよ。だけれども、この黒い霧という話があって何となく行ったら、何回も電話がかかって、そして警察がやってきて、あのときあなた傍聴しておってどう聞いた、どう聞いたといって聞かれるというのだ。そんな迷惑かかるようなことならもう行きません、こう言っている。これは庶民の心理です。そのときに自分がこう聞いた、ああ聞いたということを言って、それが捜査の重要な資料になる。何でこういう傍聴人に責任を負わせなければならぬか。いまの参事官の話はだんだん、慎重に、慎重にというふうになってきたのですけれども、議会民主主義というもの、国会、県会、市会、区会、町会、村会に至るまで、警察が傍聴人を調べて捜査の必要に資するというようなやり方が、何か一番最初はどうしても捜査上必要であったなんて、そんなあほうな言葉を聞いて偶然とするわけですが、今後こういうことはやめた方がいいという、私が勧めている点について大臣はどうお考えですか。
  186. 稻葉修

    稻葉国務大臣 所管でありませんものですから――こういうきわめて重大な捜査上の方法についての、やめるかやめないか、どうだ、法務大臣はどう思うと言われましても、所管が違うものですから何ともお答えができませんが、その具体的事案について必要があったのかどうかにつきましても、事案をよく……
  187. 横山利秋

    横山委員 議会人としてどう思いますかね。
  188. 稻葉修

    稻葉国務大臣 議会人としてですか――。議会人としては、ほかに速記録を見たり、現に発言したりそれから委員長として聞いたり、そういう当事者につぶさに聞いた方がいいようには思いますが……。一般論としてそう思います。
  189. 横山利秋

    横山委員 全く同感ですよ、大臣発言に。何か傍聴人を調べることがどうしても捜査上必要だなんてあほうなことを言うから、私はあえて時間をかけているのですが、ほかの方法をやるのが当然のことなんで、この傍聴人の心理は、もうこんなことなら傍聴に行きませんという、そういう傾向をもたらし、そしてもう口をつぐんでしまうという傾向をもたらす。ですから――私はこの調べられた傍聴人、行っておった傍聴人、出席しておった傍聴人がどちら側であるか知りません。小林区長側であるか反対側であるか私に関係ないことです。しかしながら、こういうことが結果として、警察のやっていることが何かもうもみ消し的な状況、おかしな方向に歩き出しているという感じがするんですよ。あなたが捜査をしようとしていることが逆な現象に、この黒い霧事件をおかしな方に問題を発展させておるという印象さえ私は受けているんですよ。  そこで聞きたいんですが、そんな傍聴人の調べをするよりも、告発をされたことをしっかりやったらどうだ、警察はもっと上を向いて歩いたらどうだ、何しているんだ、こういう声がこの問題については天の声になりつつある。だから改めて聞きますが、告発された黒い霧事件について警察捜査の進捗状況はどういうようになっていますか。
  190. 森永正比古

    ○森永説明員 先ほども若干触れましたけれども、黒い霧事件につきましては内偵を進めておるわけでございますが、しかし現在のところ具体的な事実は把握されておりません。しかしながら、問題が問題でございますので、さらに具体的事実の把握のために努力をいたしたい、このように考えております。
  191. 横山利秋

    横山委員 捜査上の問題があるから、状況があるから説明はできないということはある程度はわからぬではありません。けれども、この問題が、派生的にそういう傍聴人を調べる、傍聴人を調べたことについての問題が発生して、それが警察に対する逆の疑惑になってしまっておる。おかしな方へ警察が動いておって、肝心の黒い霧についての捜査についてはおかしな感じを庶民に与えているということはお忘れないように願いたい。どうなんですか、まじめにこの黒い霧の告発された問題について調べているのですか、いないのですか。
  192. 森永正比古

    ○森永説明員 これまでにもやっておりますけれども、今後もさらに一層努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  193. 横山利秋

    横山委員 この北区政調査特別委員会の決議は、「関係者の告訴による司直の判断の経過を見守り、その結果をまって適切な処置がとられるよう期待する」ということになっています。ですから、警察のその成果がなければ調査委員会の結論も宙に浮いてしまうんですよ。そしてまた、警察調査でこの黒い霧事件の十分な解明ができないならば、北区のこの問題についての解明はもうできません。そしてその解明ができなかった発端は何か。警察がおかしな茶の木畑へ入ったからこうなったんだということになりかねないんですよ。その点を十分ひとつ戒心をしてもらいたい。  そして、私がこれほど言うのでありますが、もしあなたの方が議会に、国会であれ、県会、町会、村会、区会、いかなることであれ、議会の傍聴者を調査する、そして傍聴者によって議会の中で行われた質疑応答を調べるというようなおかしなことを今後なさるとしたならば、断じて議会人として私は容認できません。これだけははっきり申し上げておきます。いま法律論を言っているのではないのです、くどく言いますけれども法律論は法律論で議論があるけれども法律論で言うのではない。常識論、政治論として言っている。同時に、警察として、いま大臣がおっしゃったようにやるべき方法が皆無じゃないのでありますから、こんな茶の木畑に絶対に入ってはならぬということをかたく言うておきます。  それから、おとついですか、三木さんのお気の毒な状況について、きのうも地方行政委員会、両院でもうやっておるのでありますから多くを申しませんが、私は全く愕然とすることは、政府が赤尾敏を招待していることですね。招待をしておいて、その子分が総理大臣を二回にわたって殴り飛ばして転倒さした。しかも佐藤さんの葬式の、数万の人が見ている前で。まことに警察として何をやっておるか。これは直ちに全世界へ報道が飛んでいますね。  しかも、私が一番いやな気持ちがしたのは、警察の不手際もさることながら、三木総理大臣の姿勢です。姿勢というのは、転倒した姿ですね。私は、一国の総理大臣という職についてはそれなりに敬意も払い、三木さん個人の政治家としての立場というものも非常に尊敬をしておる一人なんです。これは結果としては警察の責任でありますが、同時に、私、写真のマスコミにも一言言いたいと思っています。もし新聞記事で、あの三木さんが転倒してこうやっているかっこうですね、それを記事として、三木さんはだらしないかっこうで転倒したと書けば、これはすぐ、何だ、そういう書き方があるかと言ってしかられますわね。だれしも黙っていません。けれども写真で、一国の総理大臣がこんなだらしないかっこうをしておる。写真で受ける印象はだらしないかっこうですよね。記事で書けば必ず問題がある。けれども写真はそのままです。あの写真を見てみんながひとしく思うことは、まことにだらしないかっこうでおるなということが一つ。それから、一国の総理大臣が何か道化師みたいな感じがしますな。権威も何もありはせぬ。総理大臣だって転ぶときには転びますわ。転ぶけれども、あの印象というものは実に総理大臣の職に対して権威を失墜する写真である。それからもう一つあの写真の中で感じられることは、三木さんに何の責任もないことが、三木さんにも何か責任があるという印象をあの写真から受ける、よその国の人が見た場合、あるいは何かの場合。あの写真だけの印象ですよ。そういう点では人権じゅうりんというか、国権じゅうりんに近い。もしも写真から受ける印象を記事にして書いたならば、これはごうごうたる非難でしょう。原稿に書いた場合には必ず庶民が黙っておらぬ。しかし、写真から受ける印象というものは変わらぬですよ。だから、捜査陣のだらしなさもさることながら、あわせてマスコミについて少し節度を持ってもらいたい、私はこう考えるわけなんです。  あの事件について、福田自治大臣、公安委員長は責任者を出すと言っているのですが、あなたに聞いてもしようがないことなんですけれども、あれだけの警戒陣の中でどうしてあんなことが起こったのか。きのう話は若干聞きましたけれども、改めて伺いたい。
  194. 渡辺善門

    ○渡辺説明員 御説明申し上げます。  故佐藤榮作元内閣総理大臣国民葬儀という厳粛な行事に際して、一国の総理が暴漢に襲われるという事件を防止できなかったということは、総理はもとより、一般国民に対してもまことに申しわけない、かように考えている次第でございます。  どうしてそういうような事件が起きたかということにつきましては現在検討中ではございますけれども、まず事案の概要とその経過を説明いたしまして、いままで把握しているところを御説明申し上げたいと思います。  まず、事案の概要でございますけれども、十六日の一時五十三分ごろに、三木総理が佐藤元総理の御遺骨到着を出迎えるために、日本武道館内から正面玄関の歩道近くに歩み寄ったところ、被疑者の筆保が報道陣の後方から「核防条約批准反対」と叫びながら飛び込んできたわけであります。総理の背後から正面に回りまして、右手で総理の顔面を二回殴打しまして、総理はその場に倒れたという状況でございます。筆保は、三木総理は屈辱的不平等の核防条約批准を強行せんとする国家、民族の敵だ、即時自殺することを勧告するというような自殺勧告書と、それに刃渡り十四・五センチの登山ナイフをセロテープで取りつけたものを所持しておりまして、警戒陣は暴行直後、現場で公務執行妨害と銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕した次第でございます。  取り調べました結果、自供によりますと、筆保は当日六時ごろに文京区大塚の愛国党本部を出まして、荻窪――池袋の間を地下鉄で往復しながら時間待ちをしておった。そして、東京駅の大丸デパート便所に入りまして、黒ダブル上下、黒ネクタイに着がえ、喪服姿になりまして、タクシーで午後一時ごろ武道館に到着したわけであります。到着しまして正面玄関わきの報道陣の中に紛れ込んでおりまして、同玄関前に赴く総理をそのときに発見して、核防条約反対と叫んで飛び出してきた。そして勧告状を渡そうとした際に、とっさに暴行を加えたというような供述をしているわけであります。  犯行の動機、目的につきましては、先ほど申し上げましたように、核防条約が批准されたならば日本の将来は絶望的だというように考えて、総理に批准反対を訴え、聞き届けられなければ自殺を勧告するつもりであったというように述べておるわけであります。また、同人は単独で計画を実行したと述べておりますけれども、警視庁といたしましては、党本部と筆保の居室二カ所につきまして捜索を実施するなど、引き続き事件の究明を進めているという状況であります。  特に、どうしてそういうことになったかという、問題になります警護と右翼の視察体制でありますけれども国民葬に伴う警護、警備のために、当日警視庁は武道館の直近に第一方面警備本部を設置しまして、約千四百名の警察官を配置して警戒に当たっていたわけであります。事件当時、総理の身辺及び正面玄関前の御遺骨到着場所周辺には、身辺、行き先地警護員五人を含めまして、制私服二十三人が配置について警護、警備に従事しておったという状況になっております。  また、右翼の視察につきましては、右翼が当面最も強い関心を持っております核防条約が今国会で批准される可能性が強まったために、大日本愛国党を含む右翼虞犯者の視察を警視庁としては強化していたわけであります。筆保は、朝の八時、愛国党事務所並びに同党が実施した核防条約批准反対の街宣活動視察の過程で所在不明であることがわかったわけでありまして、そこで直ちに警視庁の公安三課は、右翼担当課でございますけれども、担当者を増強いたすなど所要の措置をとったわけでありますけれども、先ほど説明いたしましたように、他の弔問者と同様のかっこうで報道陣の中に紛れ込んでおったということや、玄関前には相当数の一般弔問者もいたというようなことで、右翼視察員も、警護、警戒に当たっておった者も事前に、同人を発見することができなかったというのが、このまことに申しわけない事件になったわけでございます。  以上のような状況でございます。
  195. 横山利秋

    横山委員 この面は、単に警備が十分でなかったということのみならず、私が申し上げた、総理大臣の職というものに、ああいう写真を含めて非常に重大な影響を与えておる、その責任をもあわせて考えてもらわなければいけないと思うのであります。いまの警察は、爆弾事件で全日本のみならず、私は全世界からも拍手喝采を浴びたと思っておる。よくやった、じみちな調査をして、あれだけの爆弾事件犯人をよく挙げたというふうな好評を得た、その次の瞬間にこのようなだらしのないことをして、総理大臣のああいうかっこうを見せる、そしてもうごうごうたる非難を一瞬さらされるということは一体どう考えたらいいのか。まことに警察の諸君に対して、ほめた瞬間に今度は何をやっておるかという非難について十分考えてもらいたい。  爆弾事件について二、三を伺いますが、時間がございませんから項目的に伺いますと、爆弾事件の中から発生した一つ問題点としての刑事被害者補償法案なるものについては、先ほど議論が進みましたからこれは省略をいたします。  それで、爆弾事件を通じてみて、ああいうようなことは現行法で十分対処し得るか否かということがまず聞きたい第一。  それから第二番目に、私どもが承知する限りにおいては、被疑者の諸君が全く普通のサラリーマンであり、全く普通の奥さんであるということなんですね。これは新聞が一様にとらえておることなんです。ですから、赤軍のように何か常に教育を受けたり、あるいは訓練をしたり、あるいは結社を組織してやっておったり、そういうものでなくて、われわれの共同社会の中におって、ごく普通の人であり、しかもその普通の人が、確信犯とでも申しますか、とにかくそのことについては毫も疑いを入れない信念を持っておるという人間ですね。そういう、やったことを罪と考えていない、しかもそれは普通の人間であるという者に対処する捜査あり方、あるいは、法務大臣にその点は聞きたいと思うのですけれども、そういう人間に対する政治のあり方、どう考えたらいいのであろうか。私も実は正直に言って戸惑いを感じておるわけであります。爆発物取締罰則を含めて、現行法でこの種の問題に対処し得るのであるか、あるいはこの経験によって、捜査について今後考えるべき点がないか。そして法務大臣には、いま言ったように、この種の人たちについて一体われわれはどうあるべきか。それは政治的にどうあるべきか、教育上どうあるべきか、またどう考えて今後立法化をしたらいいか、どうお考えになるか伺いたい。
  196. 柴田善憲

    ○柴田説明員 多数の国民の御協力を得まして、今回の一連の企業爆破犯人を検挙できたわけでございます。現在なお捜査継続中でございますが、いわゆる「東アジア反日式装戦線」と名乗ってからの十一件並びにその前段の四件の、合計十五件の爆破事件がこのグループの犯行の全貌であるようでございます。現在、さらに鋭意捜査、取り調べを継続中でございまして、全事件をきちっと処理いたしたいと考えております。  そこでお尋ねの、一体現行法で対処していけるのかということでございますが、これにつきましては、私どもといたしましては現在与えられております法律をさらに一生懸命適用、運用いたしましてこの種の犯罪に対応していきたいと考えておりますし、何とか、一生懸命やれば対応していけるのではないだろうか、そのように考えております。  次に第二の、全く普通のサラリーマンあるいは主婦、しかし内容は皮をかぶったオオカミであるといったようなものをどうやって捜査していくのか、今後どうやっていくつもりかという点でございますが、実は私どももこの点が今回の捜査で一番むずかしかった点だと考えております。ただ、しさいに見てまいりますと、全く普通とは申しますが、たとえばその行動がきわめて警戒的である。たとえば電車に一つ乗るにしても、必ず飛び乗ってから一遍は飛びおりてみるというようなことをやる。あるいは、大変普通な生活をしているように見えて部屋の中は絶対にのぞかせない。部屋の入り口にカーテンを厳重につりまして、人が来れば全部廊下まで押し出して会うといったような、微細な不審点が認められるわけでございます。したがいまして、そのような微細な不審点をとらえて重ね合わせてみれば、やはり不審者ということで把握できるのではないだろうか、このように考えております。それにいたしましても、今回のこれまでに判明しております被疑者、被告人十名はいずれもアパートに住んでおったわけでございます。また、御承知のように、たとえば東京の例をとりますと、約四百万人のアパート人口があるわけでございまして、そのアパートに住んでおるその人たちの中から、どうやってこのような凶悪な犯罪を犯す者どもを見つけ出すか、やはりむずかしい問題があろうかと思うわけでございます。そこでさらに国民各位の御理解と御協力を得ながら、いま申しましたような微細な点をとらえながら、重ね合わせながら、このような者を発見し、追い詰めて、検挙していくという方向でさらに努力をいたしたい、このように考えております。
  197. 稻葉修

    稻葉国務大臣 爆弾事件は、警察の非常な努力と国民の協力とで挙がりましたけれども、三億円何とか事件なんというものはなかなか挙がってないです。そこで、いまの警察官の職務の執行について、人権擁護の立場から非常な制約を加え過ぎているのではないかなどという議論も私ときどき聞くのでありますが、また人によっては、警察官職務執行法の改正のときに自民党内でも批判的な立場をとった人たちに非難を加えられるようなこともときどき耳にいたしますが、しかしやはり民主社会において、余り警察権検察権の強化をいたしますと、また憲兵政治下の国民の不自由、生活の脅威というような世情をも醸しかねないと思うものですから、そういう点については私は余り賛成しない。いまの警察官職務執行法によって与えられた警察権限をフルに活用し、さらには科学的な捜査能力の獲得、付与に対する政治的、予算的な措置をして、そうして犯罪の検挙に万全を期していく方向で努力する以外にはないではないか、こういうふうに思います。  また、一見通常人のごとく見えておって非常に悪質な性格を持つ人間をどうやって見分けるか、これはなかなかむずかしい問題でございまして、今度の爆弾事件捜査、裁判等を通じて多くの教訓を私どもは得ると思います。そういう教訓を踏まえて、今後これに対処する捜査陣営、治安維持当局としての考えをまとめていきたい。ただいま、ああいう異常性格の、一見通常人のごとく見える、こういう異常な犯罪に会って、そしていま捜査を継続中なんでありますが、御質問に直ちに、いまこれに対処してこうやりますという明瞭な返答ができませんことをはなはだ遺憾に思いますけれども、この事件を通じて多くの示唆を受けると思いますから、それを踏まえて御要望に応ずるような検討を重ねていきたい、こう思っている段階であります。
  198. 横山利秋

    横山委員 私が提起いたした問題は、誤解を生ずるといけませんから申し上げておきますが、結論としては法務大臣の結論と同じなんでありますけれども、一番最初の前提の、職務執行法を強化するという意味で申し上げているわけではありません。  それから、いまそのことに関連して人権問題についておっしゃいましたから、私が感じております点を最後に申し上げたいと思います。  今回の爆弾事件に関連して、被疑者の姉さんが列車から身を投げて死にました。それから帝銀事件の平沢もたしか離婚していますね。うちへ投石され、あるいは日ごと夜ごと電話がかかり、あるいは手紙が来て脅迫されるということで家族が離縁をしております。それから赤軍事件ではたしか父親が自殺をいたしましたね。そのことは一体何を意味するか。もちろん、帝銀事件の奥さんや娘さんに責任は全然ない。それから赤軍事件で自殺をしたお父さんは全然関係はない。そして警察発表したところによりますと、今度の爆弾事件で、列車から身を投げたらしい姉さんも事件関係が一切ない。にもかかわらずこの人たちが自殺をしておるということは一体どういうことなのかということであります。  まあ、こういう悪いことをする人はどういう人であろうかと、そしてその日本人的興味というものが、どんな家庭だろう、どんなお父さんだろう、どんなお母さんだろうというところに行かないことはないと思うのであります。けれども、それを利用してマスコミが家族を追う、そして新聞にテレビに家族の顔が出てくる。警察警察で、家族に何か証拠はないかと、あるいはお父さん、お母さんなり、兄弟全部、親戚の家を残らず調べるということで、そこから必ずと断言していいほど、重大な事件犯人の身内の中で一家離散、自殺、韜晦、離婚という問題が発生をしておるということなんであります。  ですから、この姉は姉、親は親、犯人と家族とは全然、刑法の上においても、われわれの民主主義社会の論理の上においても違うのだという問題、人権の問題を明白に捜査の中でもマスコミの中でも確立をしなければならぬと思う。その確立した論理があるならばこういうことは避けられるだろう。何遍も言うようだが、私、別に三木さんに応援しているわけではないのだけれども、一国の総理大臣が本当にだらしがないかっこうをして転倒しておる姿が全世界に報道されるということの意味というものを、私はマスコミ関係者ももう少し考えてもいいのではないかと思うのであります。いわんや、それによって犯人のお父さんやお母さんをじゃんじゃん前面に出す結果、ついに自殺せざるを得ないまで追い込んでいく過程というものについて、私はマスコミの諸君に反省を求めたい。同時に、それは警察検察当局にも、そういう素地を与えないように注意してもらわなければ困るのであります。そういう要素をマスコミが与えないような注意をしてもらわなければ困ると思うのであります。  そこで、法務大臣に二つのことを要望したいのであります。一つは、むずかしいことではあるけれども、家族の権利、家族の人権を常に検察陣の中で守るようにひとつ注意、指導をこの際してもらいたい。それから二つ目には、これも政治的にどういう方法をやったらいいか余りわかりませんけれども、少なくともいまの、プライバシーに対してどこまでも追及するマスコミのあり方について自発的善処を促す方法がないだろうかということなんであります。この後者の方はやり方がなかなかむずかしいと思います。むずかしいと思いますが、今度の総理大臣のことから始まって、週刊雑誌に至りましては百語道断でございます。全く人権について週刊雑誌やあるいはおかしな雑誌はへとも思っておらぬ。そしてたまたま告訴される場合はほんの少し、このくらいの訂正を出すだけだということが私は感じられてなりません。ですから重ねて、家族の人権を守るよう検察陣に十分注意をしてもらいたし、同時に、方法はいろいろ考えてもらわなければいかぬけれども、マスコミから多くの商業雑誌に至りますまで、この人権の取り扱いについて慎重であるべきよう何か方法を考えてもらいたいと思いますが、法務大臣の意見を伺いたい。
  199. 稻葉修

    稻葉国務大臣 横山委員の御意見を含めた御要望については、私全く同感であります。結局は、犯罪の容疑者の家族に対する検察当局の捜査警察当局捜査、マスコミの追っかけというものは、これは人間としての思いやりがないからではないですかな。品性の問題に私は帰着すると思いますがね、そういう点ではね。結局これは、検察当局は私の責任、警察は国家公安委員長の責任において、今後厳重に、御要望に従いまして、同感ですから、よく一般的注意をしておきます。マスコミのそういう品性の問題は、これは結局世論によって直していく。また、自粛をされる同僚のりっぱなマスコミ人もおるわけですから、そういう方々の仲間同士の自戒等もあろうと思います。私も、この間も稻葉法務大臣事件で、何かちょいとこう手をやるとそこのところだけばつっとやるのですね。その意味において非常に同感であります。
  200. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 諫山博君。
  201. 諫山博

    ○諫山委員 ことしの五月十四日午後零時十五分に金沢大学で内ゲバ事件が起こりました。トロツキスト暴力分子の内ゲバ事件というのはもう余り珍しくなくなりましたが、それでも一つ一つ事件を分析するときわめて重大な内容が含まれています。  この事件の簡単な経過を説明しますと、五月十四日午後零時十五分ごろ、金沢大学教養部校舎南側道路北端付近で、金沢大学の生協に巣くっている革マルの学生約二十名に対して中核派の連中約十名が襲いかかって乱闘状態になりました。襲いかかった中核派の服装は、顔をストッキングで覆面する、白手袋をつける、鉄パイプを手にしている、こういう状態であります。乱闘は数分間で終わりましたが、時間が昼休みの直前で、多数の学生や教職員がこの様子を見ております。革マル派の学生は、道路に倒れた中核派の学生一人を放置し、他の中核派の二人を捕らえて、一般学生に向かって、これが中核の殺人犯だ、われわれはこれを粉砕した、こう絶叫し、そこで負傷者も発生しております。  こういう事件が起こったことがあるのかないのか、文部省、いかがですか。
  202. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 先生お話しのとおり、確かに、五月十四日午後零時十五分ごろ、教養部の構内広場で昼休みの集会の準備をしておりました革マル系と見られる約二十名の学生集団に、中核系と思われる学外者約十名が鉄パイプを持って襲いかかりまして、双方乱闘となり、中核系の学生三名が負傷し、二名が逮捕された、そういう事件があったということで、大学当局から報告を受けております。
  203. 諫山博

    ○諫山委員 もう少しその後の経過を説明しますと、零時二十分ごろ教養部の学生課長が駆けつけました。そのときはもう乱闘は済んでいます。学生課長は女子職員に救急車を呼ぶように命じて、零時三十五分に一人の男が救急車で病院に運ばれました。大学が県警本部を通じて中警察署の警備課に通報したのが零時三十分ごろです。そうして零時三十五分ごろ、中署の私服警察官約十名が現場に到着しています。こういう事実はあったかどうか、文部省はいかがですか。
  204. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 先生お話しの、大体概要としてはそういうような状況であったというふうに報告を受けております。
  205. 諫山博

    ○諫山委員 そこで文部省に質問します。  学外から金沢大学の中に攻め込んで殴り込みをかけた中核派の連中は何名だったのか、どういう素性の人物だったのか、わかりますか。
  206. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 学外者からの中核系と思われる集団は約十名でございます。それがどういう身分の者であるかということについては、大学当局としても把握いたしておりません。大学当局に聞いたところでは、学内者ではない。現にこの乱闘事件におきまして負傷した者の氏名が二名ほどわかっております。一人は新谷宏という者で、元金沢大学の学生でございまして、現在は金沢大学の学生ではありません。それから秋山和雄という元明治学院大学の学生、その二名はわかっております。
  207. 諫山博

    ○諫山委員 最初の説明で中核派が約十名と説明されたのに、ことさら人数を聞いたのは、約ではなくて正確な人数を把握しているかどうかを知りたかったからです。  中核派の連中が学外の者だということはわかっているわけですが、これがどこのどういう人物であるかということをつかまなければ対策は立てられないと思うのですが、これはわからないままですか。
  208. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 何分にも事件はほんの二、三分間の出来事であったようでございまして、中核派のグループはその後逃亡いたしておりまして、大学当局としてはそれが何者であったかということは確認できないでおります。
  209. 諫山博

    ○諫山委員 警察庁の森永参事官質問します。  私が説明したような事件が五月十四日、金沢大学で発生したことは承知していますか。
  210. 森永正比古

    ○森永説明員 そのような事案が発生したことは承知しておりますけれども、詳細につきましては、所管が違いますので警備局の方から説明さしたいと思います。
  211. 諫山博

    ○諫山委員 警察庁の柴田公安第三課長質問します。  金沢大学に殴り込みをかけた中核派の連中は何名だったのか、どういう人物だったのか、警察ではつかんでいますか。
  212. 柴田善憲

    ○柴田説明員 金沢大学に殴り込みをかけた中核派は十名ぐらいであったようでございますが、正確な数字は、現在捜査中でございましてまだわかりません。ただ、その中で三名の者はわかっております。二人は逮捕いたし、一人は指名手配をいたしておる状況でございます。それによりますと、いま御説明がございましたように、一人はかつての金沢大生、一人は明治学院大生、一人は芝浦工大中退の者のようでございます。
  213. 諫山博

    ○諫山委員 一緒に殴り込みをかけたのですから共同の組織に属しているのじゃなかろうかと思うのですが、彼らの根拠地はどこであり、どこから殴り込みをかけたのか、わかりますか。
  214. 柴田善憲

    ○柴田説明員 一緒に参ったわけではございますが、彼らの本拠地がどこであるか、あるいは彼らが皆同じ組織に属しておる者であるかどうか等はいずれも捜査中でございまして、現在までに判明いたしておりません。
  215. 諫山博

    ○諫山委員 どこから殴り込みをかけてきたのですか。殴り込みの出発地。
  216. 柴田善憲

    ○柴田説明員 現在までに判明いたしておりません。
  217. 諫山博

    ○諫山委員 文部省に質問します。  この事件での負傷者は、さっきのお話しでは殴り込みをかけた中核派側三名、殴り込みをかけられた革マル側にはない、こうなりますか。
  218. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私どもが大学の方から報告を受けている限りでは、中核系の学外者三名のみということでございます。
  219. 諫山博

    ○諫山委員 警察は、負傷者についてはどういう掌握をしていますか。
  220. 柴田善憲

    ○柴田説明員 負傷は、いま文部省の方からお話しのように中核が三名のようでございます。ただ、かけられた方の革マルに一人軽傷者があるのではないかということで調べておりますが、確認に至っておりません。
  221. 諫山博

    ○諫山委員 この事件で、その日のうちに直ちに警察による実況見分が行われ、多数の証拠物件が押収されているようです。私の調査によれば、鉄パイプ、長いもの短いものさまざまで合計二十本、ヘルメット一個、血痕つきガーゼマスク六枚、軍手三組、覆面用ストッキング十一枚、ゲバ棒を巻いた金大自治会旗一枚、そのほかとなっていますが、こういうのが事件当日押収されていますか。
  222. 柴田善憲

    ○柴田説明員 押収物件について申し上げます。  当日実況見分をやりまして、十一件、百五十二点の証拠資料を押収いたしております。主なものは、鉄パイプが十九本でございます。それから鉄パイプを携帯するためのサックが二個、それからはだ色のナイロンストッキングが十一枚、白マスクが六個、それから軍手が六双ということになっております。それから金大の自治会旗一枚、これは鉄パイプを巻いておったそうでございます。以上のようなものが主なものでございます。
  223. 諫山博

    ○諫山委員 文部省に質問します。  襲撃をかけたのは約十名、鉄パイプが十九本押収されたということのようですが、この鉄パイプはどちらが使ったのですか。双方とも使ったのですか。
  224. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私どもの方は大学からそのような詳細につきましては報告を受けておりません。
  225. 諫山博

    ○諫山委員 私がいろいろあなたにきのう聞いて、調査がきわめて不十分だったから、もっと具体的に質問するから具体的に調査してもらいたいということを要望したはずです。鉄パイプが十九本押収されたことは知っていますか。
  226. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 当日の現場検証におきまして、鉄パイプ等多数の証拠物品が押収されたという報告は大学の方から受けております。
  227. 諫山博

    ○諫山委員 それは襲撃した側だけが使ったのか、襲撃された側だけが使ったのか、それとも双方が使ったのか、つかんでいますか。
  228. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 残念ながらその辺のところは、大学当局としても能力の範囲を超えるところであろうと思いますし、つかんでおりません。
  229. 諫山博

    ○諫山委員 能力の範囲を超えると言うと、調べたけれどもわからなかったというふうに聞こえますが、調べてもわからないほどむずかしい状況で衝突が起こったのですか。こういう問題を調べなかったのじゃないですか。文部省、いかがですか。
  230. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 その辺までは具体的に、大学の能力の範囲を超える問題でもございますし、そういうことまで調査する必要はなかろうかと思いまして、調査は具体的にはいたしませんでした。
  231. 諫山博

    ○諫山委員 あなたは事もなげにきわめて重大な発言をしましたが、学生が襲撃を受けておるわけです。襲撃した側の判明した三名も大学におった人たちです。こういう襲撃が白昼公然と大学内で起こる。そして学生がこの鉄パイプを使ったのか使ってないのか、調べる必要がないと言うのですか。このゲバ棒が大学の中にかねてから置かれていたのかどうか、こういうことに大学は関心を持たなくてもいいというのですか。調べなかったと言うならわかります。調べる必要を認めなかったと言うなら私は絶対に承服できません。どちらですか。
  232. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 調べる必要がないということではございません。大学当局としても、調べる能力があればその範囲で最大限、それがどうであったか、どういう状況で使われたかということを調べるべきであると思います。
  233. 諫山博

    ○諫山委員 これは法務大臣に直接関係した問題ではありませんが、治安と人権という点から見ればやはり人ごとではないと思います。大学で昼休み時間の直前に、多数の面前で内ゲバがあったんですよ。その場で、警察説明では十九本の鉄パイプが押収されておる。こういうのを大学当局が調べる能力がないとか手が回らないとかいうことで治安が保たれましょうか、人権が保障されましょうか。もし文部省がそういう態度で内ゲバに臨んでおるなら内ゲバはなくなりません。大臣、いかがですか。
  234. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そういうゲバ同士の争いによる暴力事件というようなもの、それから一般に暴力事件というもの、これは大学の中であろうと幼稚園であろうと、お寺の中であろうと公園であろうと、許すべからざるものである、治安当局として私はそういうふうに思っております。したがいまして、その暴力の行われた空間を管理する責任者、御指摘の場合は金沢大学の当局者が、暴力に使われた凶器類がどういうところに隠してあったか、大学内のどこかに最初から置かれておったものかどうかという程度のことは当然調査すべきものだ。それが大学の責任だと私は思いますね。
  235. 諫山博

    ○諫山委員 私も法務大臣説明の方が正しいと思います。大学当局が人ごとのように、そんなところまで調べは及びませんとか、調べる必要はありませんというような言い方をするなら、内ゲバ問題に本気に取り組んでおるのか。われわれが、トロツキスト暴力学生を泳がせておるとあれだけ口やかましく言っておるのがまだわからないかと言いたいんですよ。  そこで警察に聞きます。この鉄パイプは襲撃側が持ってきて使ったものなのか、あるいは大学に保管してあって襲撃された側が反撃用に利用したのか、どうだったのでしょうか。
  236. 柴田善憲

    ○柴田説明員 十九本の鉄パイプのうち十一本は金大の自治会旗に包まれてあったわけです。警察部隊が現場に行きまして実況見分を始めましたときには鉄パイプを所持している者はおりませんでした。したがって、この十一本は金大の自治会旗に包まれてその現場の近くにあったということのようでございます。残りの八本は襲撃用に使われたものではないかと思いますが、この点も物の捜査ということで現在捜査中でございます。
  237. 諫山博

    ○諫山委員 警察にもう少し聞きます。  この乱闘というのはほんの数分間、五分間もかからずに終わっております。その乱闘の現場で自治会旗に包まれた十一本の鉄パイプがあったということは、乱闘が始まってどこからか鉄パイプを持ってきたのではなくて、襲撃隊が来たときにすでに現場に鉄パイプが用意されていたということになるわけです。またそうならざるを得ないわけです。そうだったのかどうか。いかがですか。
  238. 柴田善憲

    ○柴田説明員 この旗に包まれた鉄パイプがどういう状況でそこにあったものか、最初から用意しておったものなのか、それとも、すわということでどこからか持ち出してきたものなのか、そこらは現在捜査中でございまして、現時点では判明いたしておりません。
  239. 諫山博

    ○諫山委員 文部省に聞きます。  いま警察説明したようなことをあなたたちは知らないのですか。また、調べようともしなかったのですか。いかがですか。
  240. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私どもは、学園の中でそういう暴力抗争が行われるということがあってはならないと思っておりますので、それをまず防止するためのいろいろな具体的な注意事項を大学に対して指導助言という形で申し上げてきたわけでございます。特に、先生指摘のように、こういうゲバ事件におきましては往々にして鉄パイプ、竹ざお等の凶器が使用されるということがございますので、かねてから機会あるごとに繰り返しまして大学当局に対しましては、学内に鉄パイプ等凶器となるようなものを持ち込まないように、それからこれらの物件が特定の場所に隠匿され退蔵されるということがないように、常時学内を点検して、そういうものがあった場合には直ちに撤去してほしいということで重ね重ね指導しているところでございます。
  241. 諫山博

    ○諫山委員 それは一般的なきれいごとじゃないですか。現にこういう事件が起こったときに適切な対処をしなかった。とすれば、幾ら一般的にきれいごとを言っても何の意味もないじゃないですか。たとえば現に五月十四日に鉄パイプで殴り合いが行われているわけです。少なくとも、警察の把握では十一本は金沢大学にあった、金沢大学の自治会旗で包まれていた、こういうことがわかっているのに、あなたはその問題に関心を示そうともしなかった。私は文部省の責任はきわめて重大だと思います。  そこで警察にもう一遍。これは当然犯罪行為になるわけですが、警察としては、殴り込みをかけた側にはどういう犯罪が成立するという立場をとっているのか、殴り込みをかけられた革マル側にはどういう犯罪が成立すると見ているのか、現在の認識を説明してください。
  242. 柴田善憲

    ○柴田説明員 殴り込みをかけた側でございますが、これはまず凶器準備集合罪、それから、けがをしておる事実が確認できませんが、もし確認できれば傷害罪、さらに、集団で暴行を働いておりますので、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等の適用がある事態であろうというふうに考えております。  また、反撃をいたした状況、これは実は警察部隊が行きましたときにはすでに事態がおさまっておりましたので警察はその事態を把握いたしておりませんが、反撃をいたしました側にも傷害、あるいはいま御指摘のように鉄パイプ等を使っておるとすれば、いまの状況ではどうやら旗に包んであったようでございますが、凶準的な状況があったのかどうか等の観点を含めて現在捜査中でございます。
  243. 諫山博

    ○諫山委員 殴り込みをかけた側には住居侵入罪というのは問わないのですか。一般にこういう場合はどういう取り扱いをしていますか。
  244. 柴田善憲

    ○柴田説明員 建造物侵入罪を問う事態もあろうかと思います。今回の場合は建造物侵入罪も問える事態ではないかと思っております。
  245. 諫山博

    ○諫山委員 殴り込みをかけた側では被疑者が何名であり、殴り込みをかけられた側は被疑者が何名なのか、御説明ください。
  246. 柴田善憲

    ○柴田説明員 殴り込みをかけましたのは先ほど申し上げましたように十名くらいであったようでございます。ただそのうちの三名だけしか現在判名しておらない。そういう意味では被疑者は三名ということになりますが、その他に七名前後の者がおるということで捜査をいたしておるわけでございます。また、殴り込みをかけられた側、これは事態がおさまった後へ参りましたものですから、そのときの応戦の状況等がはなはだ不分明で捜査はなかなかむずかしい点があるのでございますが、当時二十名くらいがおったということのようでございますので、そういう観点から捜査を進めておるわけでございます。
  247. 諫山博

    ○諫山委員 この事件は、白昼、大学の中で、衆人環視の中で行われたわけです。警察は、殴り込みをかけられた側、これも当然犯罪が成立すると見ているようですが、本気で被疑者として責任を追及するつもりですか。
  248. 柴田善憲

    ○柴田説明員 被疑者としての責任を追及すべく目下鋭意捜査中でございます。
  249. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、明白にもうだれだれが犯罪者だという認識はついているはずだと思いますが、そこはどうですか。
  250. 柴田善憲

    ○柴田説明員 だれだれが被疑者である、あるいは被疑者である疑いが濃いという段階にまでは、まだ捜査はいっていないというふうに聞いております。目下捜査中ということであります。
  251. 諫山博

    ○諫山委員 参考人を何名くらい調べましたか。
  252. 柴田善憲

    ○柴田説明員 詳細な参考人の数は承知いたしておりませんが、関係者等からいろいろ状況を聞いておるということだそうでございます。
  253. 諫山博

    ○諫山委員 今度は少し問題が変わりますが、事件当日零時三十五分ごろ、中署の私服警察官約十名が現場に到着しました。そして革マルが押さえている攻撃者側二人を逮捕しようとしたけれども、革マルの学生に妨害されて逮捕が失敗したということがあったはずですが、どうですか。
  254. 柴田善憲

    ○柴田説明員 私どもの聞いておりますところでは、革マルが一人押さえておりました者を常人逮捕という形で警察が引き継ぎを受けておる、このように聞いております。
  255. 諫山博

    ○諫山委員 文部省もこの点は知っているはずですが、いかがですか。警察が逮捕に来たとき、金沢大学の学生が二人をつかまえておった。しかし渡さずに、結局逃げてしまったということがありますか。
  256. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 一人革マル派の者につかまえられていた者が現場で逮捕されたという報告は受けております。
  257. 諫山博

    ○諫山委員 これはもう少し、後で調べてみてください。  それから、大学側が負傷している人を病院に連れ込んだ、ところが病院からその男が逃げてしまったということがあるはずですが、その逃げた男はつかまりましたか。
  258. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 その男が病院から逃げたということは聞いておりますが、その後つかまったかどうかにつきましては大学から報告を受けておりません。
  259. 諫山博

    ○諫山委員 警察はいまの点どうですか。大学側が病院に連れていった、ところがあなたたちが逮捕する手続をとっていなかったから病院から逃げていったでしょう。それはどうなっていますか。
  260. 柴田善憲

    ○柴田説明員 けがをいたしまして病院に入院いたしました人間がございました。その者が襲撃した側の容疑者ではないかということで一生懸命捜査をいたしましたが、捜査が及ばないうちに、固まらないうちに強引に退院されてしまったということはあったようでございます。そこでさらに鋭意捜査を続けまして、五月の二十日になりまして、先ほどちょっと申し上げた芝工大中退の男でございますが、この男を容疑者であるということで逮捕状の発付をいただきまして、現在全国に指名手配中でございます。
  261. 諫山博

    ○諫山委員 文部省に質問します。  事件が起こったのは五月十四日。ところがそれより五日前の五月九日に、石川県警察本部から金沢大学の学生部に次のような情報がもたらされているはずです。中核派の者約十名が二台の乗用車に分乗して金沢に向かっている、十五日ごろまでに金沢大学の革マルの集会を襲撃するだろうということが警察から大学に伝わっているはずですが、聞いていますか。
  262. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私ども大学に問い合わせましたところ、警察からの連絡はそのような具体的な内容のものではなかったというふうに聞いております。確かめましたところ、五月十日ごろということでございますが、所轄署の方から金沢大学学生部あてに、ちょうどこの時期、全国的に中核、革マルの内ゲバが発生し殺害事件まで起こしている、金沢大学においても内ゲバを起こすおそれがあるので大学当局も十分警戒してほしい、そういう御連絡があった、そういうふうに報告を受けております。
  263. 諫山博

    ○諫山委員 五月十三日の夕方、金沢大学の法文学部で革マルの学生の集会が予定されていました。そこで学生部長は、十五日ごろまでという情報だったから、この集会が中核から襲われるのではないかと懸念して待機していたということがあったはずです。聞いていますか。
  264. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 先生ただいまおっしゃったようなことは聞いておりません。ただ、事件の前日の十三日には午後四時半から六時半くらいまでの間、革マル系の集団が法文学部の教室内で集会を行っていたということでございまして、以前から部内の職員にも注意するようにという伝達をしていたものですから、職員六名、これは学生部の職員四名、教養部、法文学部の学生係長それぞれ一名ずつ、計六名が午後八時まで居残って学内の状況に注意を払っていた、そういうふうに報告を受けております。
  265. 諫山博

    ○諫山委員 それは学外者が襲撃してくるのではないかということを予想して、残業させて警戒に当たっていたわけでしょう。どうですか。
  266. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私どもの方で受けた報告では、そのような予想があったかどうかということについては明らかではございません。
  267. 諫山博

    ○諫山委員 これもあなたに特に事実を指定して調査してくれと頼んでおった点です。五月十四日に突如として前ぶれなしに起こったのじゃなくて、ちゃんと警察から大学に情報は届いていた。十三日に来るのじゃなかろうかということで、十三日に関係者を残業までさせて警戒に当たらせておった、こういう事実があるから調べてくれと言ったはずなんですが、そういうことじゃないですか。私の方もあらゆる手でこの事件調査して、大学当局にも当たっておりますが、そうだったはずです。いかがですか。
  268. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 先生ただいまおっしゃったような、そういう具体的な連絡ないし用意というものはなかった、そういうふうに聞いております。
  269. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、十日ごろ行われた警察からの連絡というのは、だれからだれに対して、どういう方法で行われたのでしょうか。
  270. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 五月十日ごろ警察の方から御連絡がありましたのは……(諫山委員「警察のだれですか」と呼ぶ)所轄署の警備課長から金沢大学の学生部の次長あてでございます。
  271. 諫山博

    ○諫山委員 学生部次長はそのことを直ちに生協の村本理事に知らせているはずですが、そうですか。生協の村本理事というのが襲撃を受けた側の指導者の一人です。
  272. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 大学側に問い合わせましたところ、一般的に学内の関係の職員にも注意を喚起したということでございますが、先生ただいま申されました金沢大学の生活協同組合の村本常任理事という方が常日ごろ革マル系の者ではないかというふうに目されていたところもありましたので、注意を喚起したということでございました。別に他意があったわけではないということの報告を受けております。
  273. 諫山博

    ○諫山委員 生協の村本理事にわざわざ通報したというのは、村本理事が革マル派側だ。中核が襲撃してくるようだ。そこで攻撃される側である村本理事にわざわざ大学が警察の情報を伝えたということになるのでしょう。いかがですか。
  274. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 たびたび申し上げましたように、その注意は一般的な注意でございます。
  275. 諫山博

    ○諫山委員 私が鉄パイプのことをことさら質問したのはこれと関連があるからです。衝突は数分間で終わっております。あっという間の出来事です。そして襲撃した側がみごとに返り討ちに遭ったわけです。それは彼らに襲撃してくるということがちゃんと予想されていたからです。その証拠がこの鉄パイプです。あっという間に終わった襲撃のところに鉄パイプ十一本が置いたままにしてあったというのでしょう。襲撃されてからどこかに鉄パイプ一本取りにいくという時間はないわけですよ。襲撃をされたその現場に鉄パイプが置いてある、そしてそれがそのまま警察押収された、この事実は警察は認めているわけです。つまり、常識的に考えるなら、襲撃が予想されていたから、革マルは鉄パイプをちゃんと用意しながらその日の集会を企画したという筋書きになるはずですが、この重大な事実を文部省はつかんでいないのですか。
  276. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私どもは、大学の方からはそのようには御報告を受けておりません。
  277. 諫山博

    ○諫山委員 あなたが鉄パイプのことを調べてみようともしなかったということから、まともな回答が出てこないのだと思います。鉄パイプのことを本当に調べるなら、ちゃんと警察が認めているとおり、犯行現場に革マル側の鉄パイプが置いてあったという事実が出てくるのですから、私が指摘したとおりになるはずです。  そこで警察質問しますが、襲撃を受けた革マル側が、彼らは「昼休み反戦集会」と称する集会を準備していた。そこにちゃんと筋書きどおり中核が攻めてきた。その場には鉄パイプがちゃんと革マル側で用意されていた、この事実は認められますか。
  278. 柴田善憲

    ○柴田説明員 襲撃されました者が、あの時間に襲撃してくるということを承知しておったかどうかは、現在まだ判明いたしておりません。また、鉄パイプにつきましては、したがいましてそういうことで持ってきておったものなのかどうか、そこもまだ判明をいたしておらないわけでございます。
  279. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、昼休みに予定されていた集会の場に、革マル側がちゃんと鉄パイプを身近に用意していたということは否定できませんね。
  280. 柴田善憲

    ○柴田説明員 鉄パイプが襲撃の瞬間にその現場にあったものなのかどうかは、私どもはまだわからないわけでございます。と申しますのは、発生は先ほど来御指摘のように十五分のようでございますが、警察部隊が行きまして見分を始めましたのは四十分でございます。したがいまして、その間に二十数分の時間があるわけでございますので、その間にあるいはどこかから急に持ち出したものなのかどうか、そこらを含めて現在捜査中ということでございます。
  281. 諫山博

    ○諫山委員 乱闘が起こって警察が来るまでの間に、現揚にあった鉄パイプをどこかに隠すということならあり得ます。しかし逆に、乱闘が済んでいるのに警察が来るのを待ちかねてどこからか鉄パイプを犯行の現場に持ってくる、そんな例がありましたか。われわれの常識では理解できません。どうですか。
  282. 柴田善憲

    ○柴田説明員 この点は現在捜査中でございますのでわからないわけでございますけれども、ただ、現場の意思がいま御指摘のようなことで整々と動いておったかどうか、現場には相当の混乱もあったのではないか、そうすればあるいは警察部隊が来るというのに鉄パイプを持ち出してきたというようなこともあるかもしれない、そういう観点を含めて捜査をいたしておるわけでございます。
  283. 諫山博

    ○諫山委員 余りにも非常識な説明になっていますから、これ以上深入りしません。しかし、文部省はもう少しこの問題を真剣に考えなければならないと思います。私たちは、暴力学生を泳がせるな、断固として取り締まれということを一貫して主張してきました。大学の中に鉄パイプが置いてある、このこと自体が問題なわけです。そして、あなたも一般論としてはそれはいけないと言っております。しかし、本当に泳がせる気持ちがないなら、なぜこれをもっと断固として処置しないのか。現にこういう問題が起こっているのに、この十一本の鉄パイプがどこにあったのか、いつ、だれが持ってきたのかというような点になぜ関心を示さないのか。このことを反省してもらいたい。  この事件の特色は、私たちの調査によれば、警察がちゃんと中核の襲撃を予知していた。そして大学当局に知らせた。大学当局は襲撃を受けるであろう革マル側にもこのことを知らせた。そうするとちゃんと事件は予知されているわけですから、警察や大学が本当にこういう事件を防止するつもりなら、なぜ未然に防止しなかったのかということを問題にしたいわけです。あなたたちが幾らいろいろと弁明してみたところで、十三日には現に革マルの集会があるというので、大学当局の業務命令で何名かの人は残業させられている。しかしこれは大学の予測に反して襲撃を受けなかった。しかし、その翌日の昼、同じような形で襲撃に遭っているのです。もし大学や警察が本当にまじめにこの種の問題に取り組むなら、なぜ事前にこれを防がなかったのかということを私は強調したい。こういう問題がなくならない限り、政府がゲバ学生を泳がせているという私たちの言い方は撤回するわけにはいかないのです。その都度その都度、事実をもって裏づけられているからです。この点で文部省としてこの事件をどういうふうに反省しているのか、聞かせてください。
  284. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 私ども従来から、大学に対しまして、学内においてこのような暴力事件が発生しないように十分注意をして、対策を講じていただきたいとお願いしていたにもかかわらず、またこのような事件が起きましたことはまことに遺憾であると考えております。そこで具体的には、最近の全国の学生部の次長会議におきましても、こういう暴力事件が発生しないように、十分に大学において事前にとるべき予防措置を講じていただきたいということを厳重に重ねて申し上げました。それだけでなく、最近の状況等もございますので、具体的な注意点を挙げまして、一々全国の個々の大学につきまして、電話をもちまして具体的な指導なども行っております。私どもは、学園からこういう暴力事件根絶するために最大限の努力をしていきたい、そういうふうに考えております。
  285. 諫山博

    ○諫山委員 これは金沢大学にとっては非常に大きな事件でして、金沢大学は決してこれが初めてではないのです。たとえば昨年の十一月二十八日、「生協を明るくする会」の代表が生協に巣くうトロツキスト暴力集団から集団暴行を受けたという事件があります。ことしの三月二日にも、同じトロツキストが教養部学生二名に暴力をふるっております。学生一名は全治一週間という傷を受けております。そしてこういう問題に警察からも大学からも適切な措置がとられないまま、このたびの事件が起こったわけであります。  しかし、このたびの事件では、もう学生はがまんできないというので決起をいたしました。そして、暴力学生の拠点とされていたのは生協ですが、この生協民主化運動が起こったわけです。トロツキスト暴力学生、革マル派の学生理事の十名に対してリコール運動が始まりました。そして総代会には定数百三十二名の総代のうち百二十六人が出席するという状況の中で、革マル派の全理事一人残らず解任決議されました。そして、生協の総代会の後で「暴力を一掃し豊かな学園を目指して」という決議が採択されております。私は、金沢大学の学生や教職員がみずからの力で暴力追放を闘い取り、生協の民主化を闘い取ったということはすばらしいことだと思います。しかし、学生のやったこと、教職員のやったことはすばらしいことですが、これに対して警察あるいは文部省のやったことは何だったのかということで反省を求めたいわけです。警察や文部省が泳がせ政策を続けたにしても、いずれ民主勢力はこういう連中を放逐すると思います。このことは金沢大学で証明されているわけです。しかし、こういうことを文部省とか警察当局が余りにも軽々しく見たり甘く見たりしてはいけない、もっと本気で取り組めということが私の言いたいことです。  この問題については以上で質問を終わります。  次に、恩赦の問題です。  この前私はこの場所で、恩赦が公職選挙法違反者に多過ぎるじゃないか、党利党略に行われているじゃないかということを指摘して、自民党の参議院議員の選挙運動をして、公職選挙法違反で処罰された福岡県の副田直司という人の例を引き合いに出しました。この人は一斉地方選挙直前に恩赦で復権しまして、間髪を入れず自民党の公認として県会議員に立候補しました。そして当選しています。この人が恩赦になったときの議決書には、選挙違反としては非常に軽い、そして再犯のおそれはない、だから復権してもいいんだというようなことが書かれております。この前の一斉地方選挙でさまざまな買収事件が起こっていますが、福岡県関係で一番大きな買収事件を起こしたのは副田直司さんのようです。選挙違反で恩赦になったばかり、そしてあなたたちが再犯のおそれはなかろうと言っている人が、それから何カ月もたたないうちに一斉地方選挙で買収、供応の選挙違反を起こすというのは大変なことです。  警察に聞きたいのですが、どういう選挙違反事件がこのたびの一斉地方選挙で起こっているのか、その捜査状況はどうなっているのか、説明してください。
  286. 森永正比古

    ○森永説明員 御質問事件は、本年の三月五日、タクシー会社社長(五十六歳)ら五名が共謀の上、福岡市内の料理店丸喜荘におきまして、選挙人二十九名に対しまして一人当たり二千百円相当、総額六万円余の供応をしたものでございます。なおその後の調べで供応の幇助をした四名の被疑者も判明をいたしております。これらの者の捜査を遂げまして、現在検察庁に送致をいたし、それぞれの処分をしてもらっておるわけでございますが、その概要は、被疑者は三十八名になっております。そのうち逮捕された者は五名でございます。これらの者は選挙運動上の特別の地位というものはございませんで、一般運動員がほとんどでございます。罪種別に申し上げますと、買収事件で五名を身柄つきで送致をいたしております。それらの者のうち一名は処分保留になっておりますが、四名が起訴になっております。そのほかに被供応者二十九名、それから供応帯助者四名の三十三名につきましては書類送致をいたしておりますが、処分結果についてはまだ通知を受けていないのでございます。  以上でございます。
  287. 諫山博

    ○諫山委員 局長に聞きたいのですが、副田直司さんが恩赦になったのはいつでしたかね。
  288. 古川健次郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  御質問の副田直司氏が恩赦決定になりましたのは、昭和五十年、ことしの二月二十八日でございます。
  289. 諫山博

    ○諫山委員 法務大臣質問します。  二月二十八日に、再犯のおそれはなかろうというので、あなたも関係して、自民党の県会議員だった人を恩赦にしたんですよ。ところが、この人の選挙で買収事件が起こったのは三月五日です。恩赦になって一週間ですかね。その間に自民党の公認を受け立候補する、そしていち早く三十八名の人がひっかかるような買収事件を起こす、これはどういうふうに考えればいいんですか。この恩赦は正しかったでしょうか、間違っていたでしょうか。私は、恩赦をした最高責任者の一人である稻葉法務大臣の見解を率直に聞きたいと思います。
  290. 稻葉修

    稻葉国務大臣 あなた、私に、あなたも関係して恩赦を何とかと言いましたがね、それは法務大臣ですから、厳正中立性を持った中央更生保護審査会の決定が法務大臣のところへ来ますから、そういう意味では関係していると言えないわけではありませんけれども、これを恩赦にする意思で関係したというような、そういうようにおっしゃるんならそれは間違いですよ。いいですな。  そこで、あなたさっきから、再犯のおそれはないということが恩赦の理由に書いてあるが、再犯したではないかというようにおっしゃるけれども、再犯したわけではないですね。副田直司という人が、前の参議院選挙のときには自分が選挙違反を犯したんだ。今度は自分は候補者で、その候補者の応援者が選挙違反を犯したんで、これは副田直司という人の再犯事件ではありませんですよ。そういう点は事態を正確におっしゃっていただきたい。把握しておられるんだろうとは思いますけれどもね。  そこで、この二月二十八日に行った恩赦自体は、中央更生保護審査会の決定でございますから、いやそれは正しくない、こう言う権限は私には……。それは不当だと思うのです。そういうようにお考えならば至当なものと、厳正に御審査なすったんでしょうというのが法務大臣のとるべき立場です。ですからサインをする。そしてこれを内閣に上げて、内閣が官房で恩赦の決定をして、陛下の認証を受ける。こういう手続をとったわけですから、そのこと自体は間違っておるとは思っておりません。
  291. 諫山博

    ○諫山委員 幾つかの重要な発言があったのですが、第一は、恩赦手続における法務大臣役割りと責任です。私は、あなたがこの恩赦手続の最高責任者とは言いませんでした。「最高責任者の一人」という慎重な表現を使ったのです。私はあなたが最高責任者の一人であることは間違いないと思ったんですが、あなたの説明では、あれは盲判を押すだけだからおれにとやかく言われても困るというふうに聞こえました。これが間違いだったら、後で議事録を読んでください。そういう立場で法務大臣が関与しているんだとすれば、これは自分の責任を余りにも軽視するものだと思います。あなたの説明は、法務大臣は盲判を押すだけだからおれには責任はないぞという立場で答弁していますよ。これは後で議事録を見てください。  それからもう一つ、今度選挙違反を起こしたのは、副田直司本人ではない、副田直司の運動員がやったのだからこの恩赦の適正かどうかには関係ないということを言われました。これは法務大臣にもあるまじき発言です。たとえば糸山の選挙違反というのが大問題になっております。糸山英太郎自身が選挙違反をしたのではないのです。しかしそれでも政治家は許されません。そうでしょう。なぜ国民が糸山英太郎にやめろと言ったのか。これは糸山が選挙違反をしたからではないのです。糸山の選挙運動の中でとんでもない買収が起こったからなんです。あなたは長い間政治家をしているわけですが、自分がひっかからなければ候補者や議員は責任がないと思っていますか。いまの答弁はそうですよ。この点、もう一遍答えてください。
  292. 稻葉修

    稻葉国務大臣 いまおっしゃったことは、私はそのとおりだと思いますよ。私が自分で選挙違反をやらなくても、私の運動員が選挙違反をやれば非常に恥とし、また責任を感ずべきものだ。そんなことは当然です。私は法律的に、あなたが、再犯をやったではないか、恩赦の文書には再犯を犯すおそれはないと書いてあるのに本人が再犯したではないか、こう言われるから、そうではないということだけを申し上げた。これは御理解願いたいですね。  それから、盲判を押すなんていうことを私は言っておりませんよ。そういう半ば中立的な、独立機関的な立場にある中央更生保護審査会が慎重な審査の結果、恩赦相当、こういうふうに言ってこられるのを、恩赦相当ではございませんと言うて突っ返さない方がいいではないか、それはそのまま上げておった方がいいじゃないかという判断のもとに私はサインをした、こう言っているのであって、盲判を押したなんていうことは言っていない。
  293. 諫山博

    ○諫山委員 あなたは盲判を押したとは言いませんでした。盲判を押したというのは、私があなたの答弁を解釈した言葉です。あなたの答弁どおりだとすれば、おれは最高責任者の一人じゃないと言うのですから、それじゃ盲判を押したことになるのですかということですが、これは議事録を読んでください。  ところで、局長に聞きます。あなたたちが選挙違反でひっかかった人を恩赦にする場合に、御本人さえ再犯しなければいいという立場ですか。それとも、御本人は選挙違反はしないだろう、しかし運動員が選挙違反をやるかもわからないというような場合にも再犯のおそれはないという表現を使うのですか。私は恩赦というのはそんなものじゃなかろうと思うのです。御本人も選挙違反をやらない、運動員にも選挙違反をやらせない、副田さんは恐らくそういう人だろうからといって恩赦にしたのじゃないのですか。運動員がやるのはかまわぬという立場だったのですか。そのことだけを答えてください。
  294. 古川健次郎

    ○古川政府委員 恩赦につきましては、先生御承知のようにあらゆる諸般の情状をしんしゃくいたしまして決める。これは審査会でお決めになることでございまして、われわれ具体的にどうこうというわけには申し上げられない。もちろん本人に再犯のおそれがないと信すればこそ恩赦相当ということになる。それじゃ運動員がそのおそれがあるかどうかということについては、これはその諸般の事情に入るかどうかは私存じませんが、少なくとも本人に再犯のおそれがないという点については確信をもって審査会は御審判になっている、かように思います。
  295. 諫山博

    ○諫山委員 本人に再犯のおそれがないということは聞かなくてもわかっているのです。しかし、恩赦をするときに再犯ということを問題にする限り、どろぼうとか人殺しと違いますから、選挙違反恩赦の場合には、本人は選挙違反をしないし、運動員にも選挙違反をさせないということが判断の材料として必要なのではないかと聞いているのです。その後の方はどうなんですか。
  296. 古川健次郎

    ○古川政府委員 いま選挙違反ということは、いろいろな派の広がりで、ございましょうから、どういうような選挙違反が考えられるか、これは全く予想もつかないわけでございます。それじゃその本人の再犯がないにしても、運動員あるいはその他のそういう選挙違反が起こるかどうかというところ全部まで考えて、それが恩赦の判断の資料になるかどうかについては私もちょっと判断いたしかねますが、先ほどから申し上げているように、恩赦はあらゆる諸般の事情、犯罪者予防更生法の五十四条などにも書いております諸般の情状からすることでございまして、私が申し上げられるのは以上のことでございます。
  297. 稻葉修

    稻葉国務大臣 諫山さんちょっと……。私は、あなたのおっしゃることは相当の正当性を持つものと思いますね。ただ、あなたも法律家ですから、恩赦の理由の中に再犯のおそれはないと言ってあるのに再犯をやったではないか、こういうふうに私は聞いたものですから、だから、それは本人の再犯ではなくて応援者の新しい別な選挙違反でございます、こう申し上げたのを、私が何が悪いかという気持ちで言っているようにお聞きになったと思うのですが、それははなはだ私の言葉の足らざる点でございまして、応援者も含めて、恩赦になってありがたいと思ったら、本人ももちろん気をつけるべきであるし、運動員にも、実はこういうわけで恩赦になって立候補もできたのですから厳重にひとつやってもらいたいものだと言うて、応援者の中からも選挙違反を起こさないようにやるべきものだ。それが起こしたということははなはだ遺憾であると私は思います。はなはだ遺憾であって、恩赦の最高責任者の一人として不明を諫山さんにおわびせんならぬ、こういう気持ちではあります。
  298. 諫山博

    ○諫山委員 最高責任者の一入だそうですから、わかりました。とにかく二月二十八日に選挙違反で恩赦になって、三月五日に三十八名もひっかかるような買収事件を起こすというのは、これはひど過ぎますよ。だから、そういう問題については率直に検討するし、今後の恩赦についても、こういう前例があるのだということを知っていただかないと、あなたたちは恩赦のしっぱなしで、後どうなっているか恐らく余り関心を払っていないと思いますから、こういう例があるのだということをやはり見ていただかないといかぬと思います。
  299. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私は、中央更生保護審査会の委員の方々、それからその事務当局としての保護局長ではなくて、むしろ、恩赦後の、ことに選挙違反の恩赦後のそういうことの注意は、政治家であり、かつ法務大臣であり、恩赦の責任者の一人である私の抜かりであるというふうに思いますから、保護局長の責任全然なしとは言いませんけれども、責任の大半は私にございますから、この点は深くおわびを申し上げる次第です。
  300. 諫山博

    ○諫山委員 さっきはあなたは全く責任ないような立場で言われたから私も大きな声を出しましたが……。  それで、恩赦の公平を担保するために法律はいろいろ考えていると思うのです。その一つに、恩赦の記録は閲覧を希望する者があれば見せなければならないと書いてあるのですよ。これは法律に書いてあるのです。そして記録については、政令で記録のつくり方を定めろと書いてある。私は何回か局長さんのところに行って恩赦の記録を見せてくれと言って頼んだのですよ。ところが見せてもらえないですね。あるときのごときは、法務省に行ったら、いやその記録は総理府に行っているから総理府で見てくれと言われました。総理府に行っていろいろ手続をとって見せてくれと言ったけれども、見せてもらえない。それについては法務省としてはいろいろ弁解しているようです。しかし、とにかく法律では、国民はだれでも恩赦に関する記録を閲覧することができるとなっているのに、法務委員である私が記録を閲覧できないというのは法律違反です。そして聞いてみたら、いまだかつて恩赦の記録を閲覧した人はだれもいませんということだそうです。法務省ですから法律的な説明はいろいろ考えていると思いますが、これはいけませんよ。そして、だれでも記録を見ることができるというのは、恩赦の公平性を担保するための民主的な規定だと思う。どういう事務処理をすればいいのか、私は関与をしませんが、稻葉法務大臣の任期中にとにかく、私でもほかの人でも、特定の恩赦記録の閲覧を希望したら見られるようにしてくれませんか。法律では閲覧することができると書いてあるのです。
  301. 古川健次郎

    ○古川政府委員 大臣がお答えになる前にちょっと私から……。  法律的なことは触れないとおっしゃいましたけれども、われわれの方の解釈は、諫山先生御存じだと思いますが、犯罪者予防更生法の五十八条に閲覧の規定があるわけでございます。恩赦につきましては、私の方で保存しております恩赦関係の記録といいますか、これはすべて閲覧に供しているわけでございまして、ただ私の方で、私の方と申しますよりむしろ中央更生保護審査会でございますが、中央更生保護審査会の方で保存しております恩赦関係の記録といいますのは、議決書と、それから先ほど法務大臣も言われました法務大臣に対する審査会の恩赦の申し出手続書だけでございまして、これはすべて閲覧に供しているわけでございます。
  302. 諫山博

    ○諫山委員 ちょっと法務大臣に最後に聞きたいのですが、私さんざんその講釈を聞いたのですが、それはへ理屈じゃないかと言っているのです。われわれが法律を議論する場合に、判決書と記録というのは別物として取り扱うわけですよ。訴訟法でも、判決を閲覧する場合と記録を閲覧する場合というのは別問題として規定しているのです。いまの説明では、議決書は見せます、しかし記録なんかありませんという言い方なんですね。私、三百代言などという言葉はきらいなんですが、まさにそういう議論なんですよ。記録と議決書というのは違う。議決書というのは記録の一部分だ。そして法律が規定しているのは、議決書も含めてもっと広い意味の記録を見せろと書いてあるんだ。私ここで法律解釈はしませんから、とにかく見られるようにしてください。
  303. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私、その法律を実際よく知りませんが、御指摘ですから、あなたの御質問を伺っていると、それから要請を伺っていると、もっともじゃないかと思うものですから、この次の委員会までに返事します。
  304. 諫山博

    ○諫山委員 終わります。
  305. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十三分散会