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1975-04-16 第75回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月十六日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 小宮山重四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       小澤 太郎君    小坂徳三郎君       小平 久雄君    濱野 清吾君       早川  崇君    福永 健司君       綿貫 民輔君    中澤 茂一君       日野 吉夫君    諫山  博君       沖本 泰幸君    山田 太郎君       玉置 一徳君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         外務省アジア局         次長      中江 要介君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  千葉 和郎君         法務委員会調査         室長      家弓 吉巳君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     綿貫 民輔君   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     木村 武雄君   玉置 一徳君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  法務行政検察行政及び裁判所司法行政に関  する件      ————◇—————
  2. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、昨日、質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  刑事補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  4. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、附帯決議を付したいと存じます。  案文を朗読いたし、その趣旨説明にかえさせていただきます。    刑事補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一 政府は、刑事補償制度趣旨及び経済事情変動等を考慮し、抑留、拘禁等による補償の日額及び死刑執行による補償額をより一層増額するよう努力すべきである。  二 政府は、無罪の確定裁判をうけた被告人に対し、その被告人又は弁護人が各審級における公判期日等に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並び弁護人報酬補償する制度の採用について早急に検討すべきである。  三 政府は、被疑者補償制度につき、その規程を整備するとともに、その適切な運用を図る所要の方策を講ずべきである。  本附帯決議案本案に付するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議について、稻葉法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。稻葉法務大臣
  6. 稻葉修

    稻葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、その実現に努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  7. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————    〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  9. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 引き続き、法務行政及び検察行政に関する件並びに裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  お諮りいたします。  最高裁判所矢口人事局長及び千葉刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  11. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  12. 横山利秋

    横山委員 先般、本委員会におきまして大臣に、いわゆる日韓司法共助協定なるものは一体何であるか、申し入れがあったのであるか否かと問いただしましたところ、大臣は、全然それは承知していないから一回よく確かめて、後日、当委員会において報告し、説明をしよう、こういうお約束をいただきましたので、その御報告をいただきたいと思います。
  13. 稻葉修

    稻葉国務大臣 横山さんの御質問をいただきましたので、その後、外務省に問い合わせましたところ、外務省の方でもそんなことは話題になっておりませんそうでございます。したがって、いまそういうことにつきまして何ら聞き及んでいないわけでありますし、法務大臣といたしましてはそのような協定を結ぶ考えもございません。
  14. 横山利秋

    横山委員 外務省からアジア局次長がおいでのようでございますが、外務省としては、韓国政府から、今日及び過去においてもそのような申し出はありませんでしたか。     〔委員長退席保岡委員長代理着席
  15. 中江要介

    中江政府委員 日韓司法共助の問題は、一般的な二国間の問題としては数年来両国話題になったことはございますけれども、今般の韓国刑法改正に伴いまして韓国側から正式に締結申し入れがあったかどうかという点につきましては、先ほど法務大臣が御答弁になられたとおりでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 過去にそういう御相談があったようでありますが、過去、韓国側はいかなる要望を行い、日本側がそれに対してどういう応じ方をいたしたか、基本的にこの種の問題について外務省はどういう態度であるか、伺っておきたいと思います。
  17. 中江要介

    中江政府委員 過去におきまして日韓司法共助取り決め締結について具体的な話し合いをしたということはございません。先ほど申し上げましたように、日本韓国のように、隣接しておりまして、いろいろの民事事件刑事事件が関連を持つ場合が多いという一般的な状況を踏まえまして、日韓両国で、あるいは司法共助取り決めというようなものを結んで司法共助を行うことがいいかどうかという一般的な意見交換というものは、ときどき、時宜に応じまして話題になったという程度であります。
  18. 横山利秋

    横山委員 その外務省のお考えは、民事刑事にわたってですか、あるいは民事だけですか、どちらかわかりませんが、そういうことを非公式であれ韓国側打診をしたことについては、法務省なりあるいは最高裁意思統一をなさっておやりになっているわけですか。
  19. 中江要介

    中江政府委員 司法共助取り決めが具体化いたします段階では当然司法当局とも十分協議をする必要があるわけでございますが、現在までのところはまだそれほど具体的な話としてはなっておりませんけれども、これは他国の例にもございますように、日本国内法上もその道が開けている問題でございますので、状況によっては考えなければならないかということを考えている程度でございます。民事刑事につきましては、一般論といたしましては、民事訴訟書類送達あるいは証拠調べという範囲内では、あるいはそのことがより個々の事件の解決に資するのではないかという考えもございますけれども、いままでのところ定まった考えを持っているわけではございません。
  20. 横山利秋

    横山委員 やや意外な気がするわけでありますが、それは、いまのアジア局次長の話によりますと、国内法、つまり、おそらく外国裁判所嘱託ニ因ル共助法のことだろうと思いますが、国内法があるから、最高裁法務省意見を聞かなくても、まず韓国側打診をしてもいいではないかというがごときお話のようであります。そういうことでよろしいかどうか。やや私は意外な気がするわけですが、過去はさておき、この際、最高裁並びに法務大臣にひとつはっきりしてほしいのでありますが、この日韓司法共助協定を今日の段階においてなさる意思があるかないか。事務を担当する法務大臣として、また最高裁の御意見もあわせてお伺いをいたしたい。もしそれが、そういう意思がないならば、外務省が勝手に外国政府と話し合っていることはちょっとおかしいと私は思うのです。
  21. 稻葉修

    稻葉国務大臣 韓国日本との間の刑事に関する司法共助協定を結ぶという考えはありません。民事については別でございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 最高裁はどうですか。
  23. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 ただいま法務大臣のおっしゃったとおりでございまして、刑事につきましては現在のところ考えておりません。
  24. 横山利秋

    横山委員 民事だけなら応じてもいいというようなお話のようであります。そういたしますと、そのことはいま外務省承知をして、これからそういうことをなさるお気持ちでございますか。
  25. 中江要介

    中江政府委員 これは司法共助という言葉が示しておりますように、日本韓国との場合ですと、日韓両国にとって、そういうことをすることが実益があるかどうかという判断でございますので、そこのところは、具体的になります場合には司法当局と十分御相談しなければいけませんわけでございまして、いまのところ外務省民事についての司法共助話し合いを具体的に進めようという考えを持っているかという御質問に対しましては、いまのところは持っていない、こういうことになろうかと思います。
  26. 横山利秋

    横山委員 今度はまた逆になってきたわけですね、話が。外務省は、民事についていま積極的にやろうという意思はないとおっしゃる。法務大臣最高裁は、民事だけならやってもよろしい。さっきの話と今度は逆になってきた。なぜ民事だけならやってよろしいか。なぜ民事だけでもいま直ちにやる意思はないのか。どうも話が食い違っておるのですね。
  27. 稻葉修

    稻葉国務大臣 韓国日本との間に刑事に関する司法共助協定は、ああいう刑法でもありますし、なかなか共助しにくい。民事については、国益に合するならばやったってよろしいけれども、いまは白紙だ、そういうことでございます。何も外務省司法当局が逆だというわけではありません。白紙でございますね。やる意思はないということではない。刑事についてはやる意思はない。しかし民事についてはやる意思がないというわけではない。やる意思であるかというと、やる意思も持っていない。
  28. 横山利秋

    横山委員 それはちょっと話がおかしいですよ、大臣言葉をもう少し選択なさればいいとは思うけれども、いま私どもが、日韓司法共助協定というものが物議を醸しそうだと——明らかに物議を醸しますわな。あなた方お考えのように、刑事事件だったら全く物議を醸しそうです。それはやらぬ。それはわかりました。それなら、民事だけならやってもいい。なぜやってもいいか、物議を余り醸さないらしいからと私は受け取った。けれども、その民事だけ一生懸命にやらなければならぬ理由はない。それが大臣のお言葉のようだ。それなら、いまここで学校の教科書を相談しているわけではない、お互いに政治家同士なんでありますから、この与える影響もございますから、相手に誤解を与えるようなことをしてもいかぬのですから、やってもいいけれども、余りやったって効果ないからやる意思はないですよと、そういう言い方じゃなくして、いまいろいろ物議を醸しそうなことであるから、日韓司法共助協定刑事民事ともいまは妥当ではない、いまはやる意思はありませんと、結論を明白にした方がいいんじゃないですか。
  29. 稻葉修

    稻葉国務大臣 刑事に関しましては当分、相当将来を見越してやる意思はない。しかし民事に関しては、やる意思はないと言って、相当な将来になってからやり出したらおかしいから、うそを言うことになるから、民事については白紙でございます、こう言っている。正直でいいでしょうが。
  30. 横山利秋

    横山委員 とにかく大臣、突如としてこういう問題が新聞に出てきた。そしてきょうやや明らかになったことは、法務大臣最高裁も知らぬうちに外務省韓国と話し合っている、あなた方の所管の問題について。これが国内問題ならともかく、国際問題で勝手に話をされて、この間なんか新聞に出ておるのに法務大臣が全く御存じない。こういうことはいけませんよ。あなた、外務省に、なめるなというふうに怒ってもらわなければいかぬ。  それではもう少しだけ伺っておきたいと思います。民事における共助協定、これが議論になることは当分ないことではありますが、具体的には一体どういうことなのか、それを具体的にどなたか専門家からひとつ聞かしてもらいたい。
  31. 中江要介

    中江政府委員 司法共助取り決めの実態につきましては司法当局から専門的に御説明いただけるといたしまして、司法共助取り決めという国際間の約束である面に限って申し上げますと、これは一口で言えば、書類送達証拠調べについて相互主義保証し合う、これが国と国との間で出てくる主たる問題点、こういうことでございまして、相互主義保証された上で行われる書類送達なり証拠調べというものがどういうふうな行われ方でなされることになっているかという点は、専門の方から御説明いただければと思います。
  32. 川島一郎

    川島(一)政府委員 司法共助につきましては、御承知のように、外国裁判所嘱託ニ因ル共助法というのがございまして、この法律に基づいて行われることになるわけであります。その大筋を申し上げますと、ただいま外務省の方から説明がございましたように、訴訟書類送達証拠調べにつきまして、外国裁判所から嘱託があった場合にこれを日本裁判所で行う。その場合には、相互にそういう嘱託事件を扱うという保証があることが要件になっておるというわけでありまして、具体的に事件が起こりました場合に、外国からこういう事件について日本裁判所で調べてもらいたいということを言ってくるわけであります。それに対して日本政府の方で、それでは日本が同じような事件についてそういうことを頼んだ場合にあなたの国でもやってくれますかということを聞きまして、それで向こうでもいたしますという合意が成立いたしますと、その事件について嘱託に応ずる、こういう扱い方をしているのがいままでの大体の例でございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 外国裁判所嘱託ニ因ル共助法、それに基づいて、向こうから言うてきたら、おまえさんもおれの言うことを聞いてくれるか、イエス、それなら送達もしてあげましょう、こういうわけですね。そうすると、その間における協定というのはどういう役割りを果たすのですか。この共助法があるから、言ってきたらそれを一般論として共助協定を結ぶ、こういうことになるわけですか。
  34. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そういうことでございます。つまり、相互保証を取りつけるという形式に、ただいま申し上げましたのは一番簡単な方法でございますが、一般的に両国政府意思を確認し合うという意味で、協定というものをあらかじめ結んでおくということがあり得るわけでございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 外務省にお伺いしますが、かかる趣旨の、外国裁判所嘱託ニ因ル共助法に基づく共助協定というものはまだないですね。口上書はあるわけですね。この口上書共助協定に類するというふうに解釈すべきですか。
  36. 中江要介

    中江政府委員 呼ばれます名前が口上書と言い、あるいは交換公文と言い、協定と言い、これはいろいろな呼び方はございますけれども、それが国と国との合意を構成しているという意味では、仮にそれが口上書交換であっても、司法共助取り決めなり司法共助協定というふうに一般論としては呼んでも差し支えないかと私は思います。そういうものを結んだ例は、民事につきましてはいままで二十一カ国ございますし、刑事につきましては五カ国ございます。これは結んだといっても、大きな協定とか条約というような形でなくて、先ほど申し上げましたように、日本法律で認められている範囲内においての相互主義約束するという内容になっているものがすべてでございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 もう一つ、それでは、口上書であれ交換公文であれ共助協定であれ、同じ性格、同じ効果をもたらすとすれば、それらについて国会の承認事項になりますか、いかがですか。
  38. 中江要介

    中江政府委員 これは先ほど言及のございました日本国内法範囲内で行うことということでございますので、行政取り決め、すなわち行政府の間で処理できる案件である、こういう考え方でございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 議論はありますけれども、後に回します。  最後にもう一度お伺いをいたしますが、いま各省とも、民事といえどもいま直ちにそういう意思はないというお考えでございました。理論上の問題だけが残る。つまり、刑事名実ともにやる意思はいまないんだ、民事についてだけなら理論上別にいかぬとは言わないが、いま直ちにこちらからどうしてもという気持ちはないというふうに理解をいたしました。そこで最後にお伺いをするのですけれども、民事だけに限定をして、それじゃそれが政治的に刑事にまで発展をするおそれは一体ないだろうか。それから、民事だけならいいけれども、まあ積極的にやる気持ちはないという意味の中にどういう政治的な感覚が働いておるのか。  私の言うことがわかりますか。つまり、政治的判断がそこに働いているのではないか。いまの韓国状況は、先ほどどなたかから話がございましたが、「韓国における刑法改正」、これを参考のためにちょっと読みますと、   刑法第二編各則第二章外患の罪のうちに第百  四条の二(国家冒涜等)を次のとおり新設する。   第百四条の二(国家冒涜等) (1) 内国人が  国外において、大韓民国または憲法によって設  置された国家機関を侮辱、または誹謗するか、そ  れに関する事実を歪曲、または虚偽の事実を流  布するか、その他の方法大韓民国の安全・利  益または威信を害するか、害する恐れのある者  は七年以下の懲役、または禁錮に処する。(2)  内国人外国人または外国団体などを利用し、  国内において前項の行為をなした時も、また前  項の例に同じ。(3)第二項の場合には、十年  以下の資格停止を併科することができる。  六十万の在日朝鮮人諸君がおり、そのかなりの部分が大韓民国の国民でございますけれども、それらの人ないしは朝鮮民主主義人民共和国の人人、そういう人がこの国家冒涜の罪になる可能性は、日本というこの国内法のもとでございますから、韓国とは違うものですから、今度のこの刑法改正というものはもう本当にびっくりするようなことになると思います。  それで、こういうことだから刑事事件についてはいやだよ、日本国内韓国国内との状況が非常に違うからいやだよというふうにおっしゃるのも無理はないと思うのですね。しかしそういうことは何も法律だけでなく、一般論としてすべて言えるではないか。だから、理論上だけだけれども、民事だけならいいが、しかしいまこちらからやりましょうという気持ちにはなりませんという気持ちの中にこのような一般情勢も手伝っているのではないかと私は思うのですが、大臣はどういうお考えでございますか。
  40. 稻葉修

    稻葉国務大臣 横山さんのおっしゃるとおり、大韓民国日本国憲法体系、そのもとにおける刑事法体系、この違いが余りにも大きいものですから、刑事における司法共助協定というのはいまの状態でやるべきじゃないし、やれるものでもなかろう。それからまた、おっしゃったような国内における多くの朝鮮人の存在というような現状をも考えますとやれるもんじゃなかろう。ただ理論的には、民事の場合は書類送達とか証拠調べとかいうことでございますから、相互主義をとるならば絶対いかぬというものではない。だから刑事と同じようには民事については考えませんという意味で、別でございますと言うたのでございまして、民事については結ぶ意思があるようにお聞きになったら、それでは違うのでございましてね。ですから、大体横山さんと同じなんじゃないですか。そんなに違わないんじゃないでしょうか。私はそういうふうに思うのでございますがね。
  41. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  次の問題に移ります。四月十一日のサンケイによりますと「千葉刑務所暴動騒ぎ」という記事が載っています。これによりますと、千葉市にございます千葉刑務所服役者四百五十人、ここで、「事件があったのは、三月二十二日の午前十時半。同刑務所西舎出入り口で、服役中の泉水博(三八)が、巡回に来てうしろ向きになり、カギをかけていた最上貢管理部長にたちバサミを分解した凶器を持って襲いかかり、首を絞め上げるなどして、もみ合いとなった。一緒に巡回していた長谷川昇看守らが泉水を取りおさえたが、この格闘で、西条部長は顔と左手に一カ月の重傷を負い、また、長谷川看守も腕に軽いケガをした。その後に判明したところでは、泉水は、このさい暴動を起こすことを綿密に計画していた。計画では、泉水西条部長を人質に取ったあと、西舎出入り口のそばの階段をのぼって二階倉庫に立てこもる。そしてあらかじめ倉庫内にかくしておいた灯油二かんを頭からかぶり、看守らが捕まえにこようとした場合には、二人で“焼身自殺”する構えをみせて手出しができないようにしておいて、要求を出そうというものだ。要求は便せん三枚に書かれており、あて先は同刑務所長内容は、一般的な待遇改善、そしてとくに医療設備改善をもとめていた。泉水は、強盗殺人罪で三十六年五月九日、東京地裁無期懲役の判決を受けたが、同刑務所に移ってからは模範囚。“待遇”も四ランクあるうち最上級の「一級」で、この日は服役囚らが作業をしてもらう賃金の計算事務西舎入り口近くの計算室でしていた。同室はトイレが外にあるため出入りは自由。部屋の中には電卓など計算用具のほか、用紙を切るためにハサミが一本置いてあった。泉水はこのハサミのネジをはずして二本にし、そのうちの一本を凶器とした。千葉地検では、この事件泉水単独犯行か、あるいは背後に数人の決起グループがいたとの情報もあるため組織的な犯行かについて、捜査を進めている。」これがサンケイ報道であります。  まず最初に法務省伺いたいのは、この記事に関する限りは事実であるか、違っておることはどういうことが違っておるか、まず御説明伺いたいと思います。
  42. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私もその新聞を見て実はびっくりしたのです。それで、こんなことがもし事実だとして、法務大臣の知らぬうちに新聞に出るというようなことでは困ると思いまして矯正局長を早速呼んだら、いや、申しわけありませんが、そんな事実でなくて、ごく軽微な事件であったものですから大臣には報告してないんだ、こう言うておりましたから私は了承したのです。そういう事実は非常に違っているのです。ごく軽微なことで大臣にまで報告すべきような騒ぎじゃないということでございまして、どういう事実かということについては矯正局長から答弁させます。
  43. 長島敦

    長島政府委員 事実関係でまず申し上げますが、その記事にございますように、三月の二十二日の午前九時十五分ごろに管理部長が所内を巡回いたしておりまして、この事件の起こりました西舎という建物でございますが、そこの南側の入り口のとびらを開きまして中に入って、入りましてからとびらを締めるために後ろ向きになりまして錠をかけておりました。そのときに、その場所から約七メートルほど離れております作業分室というところで働いておりました受刑者泉水というものが、急に管理部長の後ろへ回って背中を抱えるようにいたしまして、そこに書いてございますような作業用の洋裁ばさみをのど元に突きつけるようなかっこうをいたしましたので、管理部長がとっさにそのはさみを左手でつかんでもみ合いになりました。そこへ、その西舎というところで勤務についておりました長谷川という看守が付近におりましたので駆けつけてまいりました。その際にそばにおりました収容者二、三名も駆けつけてまいりまして、収容者の協力のもとにみんなでこの泉水を取り押さえたというのがそのときの状況でございます。  その結果、管理部長は左手ではさみをつかんだものでございますから、指の根元と申しますか、そこがはさみで切れたということで、それで全治一カ月程度の傷をそこに負っております。また長谷川看守、それから管理部長もはさみによって顔に多少の傷を負ったわけでございます。  この事件につきましては、何しろ被害者が管理部長でございますので、刑務所の中で普通は調査をいたしますけれども、調査をするのが不適当であろうということで早速検察庁にこの事件を告発いたしまして、検察庁にすべて原因その他についてただいま捜査をお願いしております。  このときの状況から判断いたしまして、これは捜査を待たなければわかりませんが、私どもの見ておりますところでは、そういった暴動というような計画があったとはとうてい考えられない状況でございます。  それからなお、そこに要求書というようなことが書いてございますけれども、こういう事件が起こりますと当然のことでございますけれども、本人の働いておりました計算室の部屋とかあるいは本人の房でございますとかを徹底的に調べておりますけれども、そこからはさような書類は一切出てまいりませんでした。そういった要求書というものは全く発見できておりません。  なお、所内の状況でございますけれども、この事件が起こりました前も後もきわめてなごやかでございまして、四月一日から所長がかわったわけでございますが、新任所長が毎日所内を回っておりますけれども、にこやかにみんな「所長さん」ということであいさつして、所長も単独で所内をまる腰で回っておりますけれども別に変わった様子はございませんし、従来どおり、収容者につきましては、各工場対抗の野球をやりましたり、誕生会その他いろいろの行事を講堂に集めたりしてやっておりますけれども、きわめて平穏な状況でございまして、どうもいまの私どもから見ております限りにおいてはそういうような状況にはうかがえないわけでございますが、この点については検察庁でただいま捜査をしていただいておりますので、その結果を待ちたいというふうに考えております。
  44. 横山利秋

    横山委員 世の中には聞くと見るとは大違いという話がありますが、この新聞記事といまの御報告では全く大違いで、ちょっと判断に苦しむわけであります。しかし念のために、それではさらに新聞に基づきましてだめを押しておきたいと思います。  これを見る限りにおいては、泉水というのは刑務所に移ってからも模範囚で、待遇も四ランクある最上の一級で、しかも服役囚らが作業をする賃金の計算事務——計算事務というのはわりあいにハイレベルの仕事だと思うのですけれども、そういうところに入っておる人間が突如として部長を刃物でやるということが、一体どうしてそんなことになるのかがわからないことの一つ。  それから二つ目は、この記事によりますと、「千葉刑務所は現在獄舎の建て替え中で、このためとくに医療体制が不備となっており、ここに服役者の不満が集中している」ということで、昨年首つりが二回、それから昨年七月に服役者同士のけんかで腹を刺された者がおる、こういうことなんかはどうなんですか。
  45. 長島敦

    長島政府委員 ただいま御指摘の、昨年度自殺が二件あった。それからそこにございますように同囚のけんかがございまして一人が死亡したというのは事実でございます。  この自殺をいたしましたのはいずれも長期囚でございまして、いずれも病気にかかっておりまして、前途を悲観したということで自殺をしておりますが、いずれも遺書を残しておりまして、医務の諸先生方その他に大変御親切な治療を受けたということについては非常に感謝しているけれども、前途を悲観したという趣旨のことをいずれも遺書に書いておったわけでございます。  同囚傷害の事件につきましては、ささいなことからけんかになったわけでございますけれども、この場合は腹を刺されておりましたので、即刻千葉刑務所に外科の先生が一人おりますが、その人が町の外科の先生も頼みまして二人で開腹手術をして、一応手術をしております。三日ほど経過を見ておりましたのですが、どうも経過が思わしくないというので八王子医療刑務所に移しまして、八王子の医療刑務所で様子を見た上でさらに再手術をしているというような状況でございましたが、残念ながら腹膜症状を呈しまして、とうとう死亡したわけでございます。  当該泉水本人でございますけれども、これは服役期間が長うございまして、無期囚でございますので、順次階級が上がりまして、四十六年十月から一級ということになっております。なお、昭和三十九年以降十年近く無事故でございまして、そういう意味では、模範囚と言えるかどうかわかりませんが、事故を起こしておりません。  今回の管理部長を襲撃いたしました原因でございますけれども、ここも検察庁でいまお調べをいただいておるわけで、お調べの結果わかると思うのでございますが、管理部長等の感じで、あるいはそうではないかと言っておりますのは、泉水が親しくしておりました受刑者がおりまして、これは病室にいたわけでございますが、治療の目的のためにその病室をかえたということがございます。従来の病室はこの泉水が働いておりました計算室に非常に近い病室でございました関係で、よくお互いに話し合う機会もあったようでございますけれども、病室がかわったためにそういう機会がなくなったということで恨んでいたのではないかというのが管理部長の想像でございます。これも検察庁の捜査の結果を待たないとわからないわけでございますが、あるいは個人的なそういう逆恨みと申しますか、処置についての不満があったのかというふうに思います。  それから医療設備でございますが、これはその新聞にございますように、現在一部の古い建物を建てかえしております。そのために多少の不便と申しますかが及んでおります。ただ、医療体制としましては、医務部長が内科の先生、それから医務課長が外科の先生、もう一人精神医の先生と、三人先生がおりまして、体制そのものとしては非常に整っておるというふうに考えておりまして、従来からここの医療自体についてはそれほど不満は聞いておりませんが、ただ建てかえ作業中のために病室等について非常な不便が出ておるというような実情でございまして、この点は早急に解決したいというふうに考えております。
  46. 横山利秋

    横山委員 お話で二つの問題があると思うのです。一つは、いま三人も先生がいらっしゃるからというお話ではありますが、刑務所内における医療問題はいかにあるべきかということであります。それから、いま、自殺が二人出た。しかしちゃんと遺書もあって、よくめんどうを見てくれたという遺書もあるという話ではございますが、しかしそうは言っても、自殺が出たというのは余りみっともいい話じゃないのでありますから、なぜそういうことになるのかということなんであります。  私、手元に、刑務所におられる諸君の体の調子、それから医療についてどういう意見があるかということを、全く詳しく調べてくれたのでありますが、救援センターの諸君が調べた内容がございます。これを一々御説明しておると非常に時間がございませんので大変残念ではございますけれども、後刻一遍私の方で見てもらいますから、自分の方としてはうまくいっているつもりではあっても、さて中へ入っておる諸君が私どもにくれる中でどんな告白なり意見を持っておるかという点を、一遍心を新たにして見てもらいたい、こう思います。  それからもう一つの自殺の方なんですが、ここに「自殺房について」という、自殺房に入った人の所感並びにその自殺房の状況について書いてあります。いま自殺があったということは、これは自殺房におった人が自殺されたのでない、一般的な自殺ですね。この自殺房というのは一体どういう意味ででき、どういうことがほかの房と違うのですか、どういう管理の仕方をしているのですか。
  47. 長島敦

    長島政府委員 自殺防止房というのは非常にショッキングな名前でございますので、そういう名前は使っておりませんが、これは例の、一昨年でございましたか、赤軍の森でございましたか、自殺事件が東京拘置所でございまして、当時当委員会でもいろいろ御指摘がございました。そのときに、自殺の中で一番多いのは首つりであるということで、やはり房の中の構造その他に首をつりやすいような欠陥があるのではないかということが御指摘になりました。そこでいろいろと何回も試作をして研究をいたしまして、できるだけ普通の房と生活環境が変わらないで、しかもそういう首つりなんかができないような房をどうやってつくったらいいかということで、何回も試作を繰り返しました。その結果できましたのがいま御指摘の自殺防止房というものでございます。これが一般の房と違います点は、房内のおよそそういうものをかけるような突起物は全部撤去してございます。埋め込みその他の方法によりまして、ありません。もう一つ違います点は、御承知のように窓の外に全部鉄棒の格子がございますが、これを覆いませんとそこへかかるものでございますから、ただ全部前に金網等を張りますと部屋が非常に暗くなりますので、窓の半分だけをとりまして、そこの鉄棒にひもがかからないように網の覆いを張ったわけでございます。こっち側の半分は網を張ってございません。そういう意味で、窓をこっち半分は定着してございます。そういう意味で、日が入ります分では、窓の半分については網が張ってあるということでやや日照が制限されておりますけれども、日が照っておりますときの状況では一般房と比べましてもほとんど差がないというふうに、私どもが見たときはそういう印象を持っております。  そこで、そういう目的でつくりましたところでございますが、ここへ収容いたしますのに一体どういう者を入れるかということ、これはもちろん自殺の危険が予想される者を入れるわけでございます。危険が予想される者をどういうふうにしてそれでは選定するかということが問題でございまして、当時精神医学、心理学、それから従来保安の事務をやっておったようなそういう専門家が集まりまして、何回も検討に検討を加えました結果、自殺の要注意者判定表という一つのチェックリストを完成しております。これにも一種の手引きがついておりますが、それを現在使っておりまして、そのチェックリストでチェックをしてまいりまして、その徴候が幾つか出てまいりまして一定の点数以上になってくると申しますか、そういうような危険性が非常に出てきた者を、その危険性のある限りにおいてそういった部屋に入れている。この結果を見ますと、たとえば東京拘置所等におきましては、その防止房に入れましたために自殺が防止されたというケースが非常にたくさん出てきておりまして、効果から言いますと非常に効果が出ておるわけでございます。千葉の二人の収容者の場合は病室にいた者でございまして、そういう防止房等にはもちろん入っておらなかったわけでございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 何とも、聞くも痛ましい話でございまして、どういうふうに表現したらいいかわかりませんが、少なくとも自殺を避けるためにこの自殺房をつくったということは恕すべき点はございます。いまお話を聞けば、それに入れる人の選択にかなり慎重だというお話は承りました。特にこれは慎重にしてもらわぬと、もうあそこは自殺房だということが——本当は自殺防止房だね、自殺防止房だということが所内では皆恐らくわかっているのですね。そういうところへ入れられる人間の心理等も考えて、この扱いについては特に慎重にしていただかなければなりません。私の手元へ来ました自殺房へ入った人の所感を見てみますと、必ずしもあなたのいまおっしゃったような慎重な選択、そういう意味の選択が全部が全部行われているとは思われない。「看守も、「一般房は“仮拘置”だが、自殺房はちがう、あそこは悪い奴が入る」と言う者がいるくらいに、エゲツなくなっています。」こういう表現が適当かどうかわかりませんよ。しかし、そういうことを看守が言ったよということを自殺房に入った人が報告をしているわけでありますから、扱いには十分慎重でありたいと思います。  それから次は、首都圏連続女性殺人事件として、OL宮田早苗さん殺しの容疑で千葉地裁松戸支部に起訴されていた茨城県生まれ小野悦男が無実を訴え、おれはそういうことはない、宮田さん事件は警察のでっち上げで、絶対におれはやってないと争っておる。その状況が十五日の朝日新聞に載りました。ここに小野悦男からの手紙があるわけでありますが、まず法務省からこの起訴容疑の事実を簡潔にひとつ聞かせてもらいましょうか。
  49. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の被告人小野悦男につきましては大別して三つの公訴事実があるわけでございまして、最初の起訴は昨年の十月二日に松戸市等における常習累犯窃盗ということでなされており、さらに十月の二十一日に同じく松戸市における住居侵入、強姦の公訴がなされておりまして、さらに最近におきましていま御指摘の、本年三月十二日の公判請求でございます強姦殺人、死体遺棄という三つの公訴事実で公訴を提起されている被告人でございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 これを見まして、小野悦男は前がある人間でございますが、私は愛知県の警察の、犯人と思ってつかまえたら犯人でなかったというある有名な事件をどうも思い出すわけですが、仮にいまあなたからお話があった三つのうち二つは事実かもしらぬけれども、この宮田さん殺しについて一抹の疑念がある。前があるから宮田さん殺しも事実ではないかというような、愛知県で起こった前車のわだちをもう一つ通りそうな気がさっといたしますが、その点についていまの調査状況はいかがでございましょうか。
  51. 安原美穂

    ○安原政府委員 いまの宮田早苗という女性に対する強姦殺人事件につきましては、横山委員御案内のとおり、警察から身柄の送致を受けましたのが昨年の十二月の十一日でございますが、その後裁判官の勾留状の発付を得まして、勾留延長までして取り調べをいたしましたが、結局勾留満期の日である昨年の十二月三十一日に一たんこの案件につきましては釈放をしておるわけでございます。つまり、その段階におきましては検察官としては公訴を維持するに足る証拠としては十分ではないという判断であったと思われるのでありまするが、そういう意味で一たん釈放いたしました後、五十年の一月の二十日ごろからさらに、犯人でなければわからないような指摘による被害者の衣類の発見あるいは詳細な自白というもの等がありまして、先ほど申しましたように、本年の三月十二日に公訴を提起するに足りる十分な証拠があるということで検察官としては公訴を提起したわけでございまして、御指摘のように検察官としては慎重の上にも慎重な捜査と判断の結果公訴を提起したものでございまして、何分まだ公判中の段階でございまするから詳細を申し上げるわけにはいきませんが、少なくとも検察官としては確信を持って公訴を提起したものと信頼をいたしておる次第でございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 まあそうだとは思いますが、私も神ならぬ身の知る由もございません。ただ、御参考のために、まあ同僚諸君にも聞いてもらいたいと思いますが、小野悦男からの手紙を少し披露いたしましてひとつ判断の資にしてもらいたいと思います。   皆さん、私は松戸市連続殺人の容疑者で警察  のデッチアゲで(宮田さん殺しで)六ケ月メに  起訴されて居ります。松戸拘置に居ります。私  は七月二十七日歩行中にパトロール職務質問で  警察につれてゆかれ、何時間もおかれ、権力を  かさにかけ、おどしました。その日に警察から  かいされ、前科者なのでマークされて居りまし  た。そして九月十二日妹の家より逮捕状も見せ  ずに、引れていった。窃盗の取り調べ十日ぐら  いで終り、警察は馬橋の殺人の事についてきき  だした。そして、私が口を聞かなかったので、  今度は(警察は)(すずらんそうに)ハシゴを  かけて学生の所に入た人がいるがお前だろ、警  察は日るよる調べたが私が口を開かなかったの  で今度は、たべ物をかってくれずこまった。私  は土方などをして居ったのではらがひってこ  まった。それでも口を開かないので警察は今度  は、女の人の所に行き、しらないとゆうのに警  察は無りに強姦にデッチアゲてしまった。そし  て別件逮捕にされ松戸警察より印西警察の密室  ぼうにほうりこまれた。今度は殺人で別件逮捕  され、十二月三十一日に、殺人は釈放、外に出  たわけでは有りません。コウモリが出た時の  事、宮田さんが殺された所は、あそこらどが何か  刑事がゆい、図をひろけて見せ、私に何でもよ  いから、図をかけなとゆって居り紙に何か所も  かかせられた。そして次の日に、馬橋に引き出  し散歩に行とだました。   馬橋に行と皆んながあつまって居ったので、  そして私をみぞの所に(こうもりが)あった。  お前がゆった所だ。私はこことはゆはない、く  るまよりおりないでいると松戸の所長さんがき  て、私におりる様にゆったが、私はこことはゆ  はない。三十分ぐらいがんばって居ると、所長  さんが、栄町の方に行くとゆい、そしてみせの  前にとまりマンチゆうでもと千円私にくれた。  そしてコウラトマンチゆうをかってもらった。  そしてたべて居る時、私に今一度行ってくれ、  私の顔を立ると思ってたのむとゆはれ行ってし  まった。   そのあと、馬橋に三十回ほど行かされた。そ  して六ケ月間も家の人にもあわせづおかれた。  母さんにあいたい、ならば松戸の連続殺人をみ  とめろと毎日の様にゆはれ脅迫で、みとめてし  まった。(宮田さんのみ)   これはうその自白です、私はやって居ないの  で警察は、二部室の中に女の人の顔のシタイの  写真を何度も居いて私を脅迫した。私はそれで  も口を聞かないので刑事は、今は、口を聞かな  いのだから(タヌキタ)とゆうてセンコウでい  ぶした、五時間上いぶされた。こんな事をされ  たのは私が初めと思います。警察は自分のてが  らに成る事は、度な事でもする。警察のこんな  密室の調べはゴウモンの様なものです。これで  は、本当の自白は生れません。うその自白が生  れます。   どうか皆さんも私の事をわかって下さい。   皆さんへ  一、警察のひどい取調べの事  二、物証についてくはしく説明で気る。  三、裁判長に正し、はんだんをしてもらう。以上の趣旨であります。これ、ずいぶん言葉も——恐らく手紙をガリ版に書いたのでありましょうけれども、それにしてもこういう文章でありますから、この小野悦男の人柄もある程度にじみ出ている手紙でもありましょうし、また、小野悦男の教育水準その他もわかる手紙でもあります。そして、多少の誇張が仮にあったといたしましても、かなり事実に即して物を言っているのではないかという感じを私はこれで受けているわけであります。そのほか、これに関するいろいろなものが手元へ来ておるのでありますけれども、何しろ公判の最中でありますし、ここでシロクロつけることもございますまいから、要するにこの裁判の結果がシロかクロかという問題と、もう一つは警察の人権問題が若干浮かび上がっておるような気がいたします。  終局的には、私がかつてここで取り上げました愛知県の風天会事件にやや似ておるのではないかという感じがいたしますので、関係の個所におきましては慎重の上にも慎重に処理をされんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  53. 保岡興治

    保岡委員長代理 青柳盛雄君。
  54. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、去る四月七日の最高裁判所の裁判官会議でなされました二つの事柄について質疑をいたしたいと思います。  一つは、毎年起こる問題と言ってもよろしいと思いますが、司法修習生が判事補に任命してもらうような希望を出したのを拒否される、いわゆる新任拒否といいますか、そういう問題でございます。それからもう一つは、これもときどき起こってくる問題でありますが、司法研修所の弁護教官の嘱託が公正でないという問題。はからずも同じ日の裁判官会議でこのような重要な問題が起こったことは、その日の新聞紙上などでも報道されまして、一般の人たちも知るところとなっておるわけでありますが、私ども法務委員会に所属する者といたしましても無関心ではおれない問題でございます。どちらから先にお尋ねしてもよろしいわけでありますけれども、私の印象では、いずれも同じ根から出ている出来事のように思う。つまり、最高裁判所の姿勢が、思想、信条を問題にしている、あるいは特定の団体に所属していることを問題にしている、そういう人事がこの二つの事柄にあらわれている、こういうふうに考えるわけです。  まず最初にお尋ねをしたいのは、司法研修所の弁護教官についてであります。このことにつきましては、私は四十八年三月九日の当法務委員会でお尋ねをしたことがあり、最高裁判所矢口人事局長からお答えもあったわけでありますが、その際も私は、これは決してこういう問題の起こる根源を軽視しないで取り除くことが重要であるということを意見として述べましたけれども、その後しばらく問題がちょっと表面化しないでおりましたので、私も、果たしてどうなっていたか、頭の中に関心が強く残っていないままで今度の出来事を知って実は驚いているわけであります。  この弁護教官の嘱託ということは、従来の慣例というのがあるようでありまして、昭和三十年ころまでは東京三弁護士会の推薦者がそのまま日弁連の推薦者という形で推薦されていきまして、そしてそれがそのまま全員委嘱される、つまり最高裁の方では選択の必要がない、まあ自動的にと言ってもいいのかもしれませんが、そういう形だったのに、その後は選択の余地を残すようなために倍数の推薦を要望されてきて、そしてそれが大分定着をしてきた。しかし、これに対してまたいろいろ問題が起こって、倍数でも順位というのがあるのに、その順位を全然無視されるとか、それから、刑事弁護の人として推薦した人が嘱託されないで、民事弁護として推薦された人が刑事弁護の教官として委嘱されるというような、推薦者側の意向というもの、つまり弁護士会の意向というものが全く踏みにじられるような状況が起こってきている。だから、本来こういう複数推薦というやり方自体に問題があるのだから、もとに戻って、必要な数だけ単数で推薦すべきではないかというようなこともあったようであります。  そこで私はお尋ねをするわけでありますけれども、複数にしなければならないという何か根拠ですね、もう一遍お答えを願いたいと思うのです。
  55. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 司法研修所の弁護教官をどのようにして任命させていただくかという問題でございますが、これにはまあいろいろ長い歴史があったわけでございます。ただいま過去の大体の経緯について青柳委員から御指摘がございまして、大体はそのとおりでございますが、ちょっと補足させていただきたいと思いますのは、当初、単数で御推薦をいただきまして、その方を任命させていただいておったということは事実でございますが、その際には、御推薦をいただきますまでの段階としまして、実は、今度おやめになる弁護教官あるいはお残りになって引き続き教官を御担当になる弁護士出身の教官、そういった方が、この次はどういう方がいいだろうかというようなことでいろいろと司法研修所長と御相談をいただいたわけであります。もちろん人事でございますので、表立っていつ幾日どういう協議を行うというようなものではなかったことは当然でございますが、大体弁護士会とも教官方が密接に御連絡になり、また司法研修所側ともよくお話しになりまして、今度だれだれがおやめになり、そのかわりにはどういう方がいいのではないかということでお話し合いがあったのでございます。そういうことで大体いいとされた方を教官の側からも弁護士会の方にお話しになり、また所長の方からも弁護士会に申し上げ、そういった方を弁護士会から日弁連を経まして御推薦になっておった、こういう経緯があるわけでございます。したがいまして、単数推薦という時代が相当長く続きましたけれども、いわばスムーズに人事が行われますために十分の準備と申しますか、根回しといったものがあったのでございます。それが、昭和三十五、六年ごろにそういった形がなくなってまいりまして、複数推薦という時代になり、今日に至っておる、こういう経緯でざざいます。  いずれにいたしましても、司法研修所教官は、この前、御指摘の当委員会での御質問にもお答え申し上げたかと思いますが、最高裁判所が責任を持って任命すべきものでございますので、やはりできるだけ広い範囲から適任の方を選ぶ、そういう意味の基本的な姿勢と申しますか、方針というものがあるわけでございまして、それは今日まで変わらなく続いてきておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  56. 青柳盛雄

    ○青柳委員 前回質問した際にも、検察教官の場合などは法務省、検察庁の方と事前に打ち合わせをして、そして推薦されてくるから単数でも問題はないのだ。しかし弁護教官の場合はそうはいかないということで、いまの御説明で歴史的な経過を、この前はお話のなかったことを知ったわけでありますけれども、引き続きその地位にある人あるいはやめる人などがその出身の弁護士会あたりと相談をして後継者を選び出して、それを最高裁の人たちと相談をし、これはいいとか悪いとかいう、つまり根回しですね、人事に関する根回しが行われるということが必ずしも明朗なものではない。弁護教官制度というものを司法研修所の中に設けた意味というものを考えた場合には、そういうたらい回し的なやり方では十分にその趣旨が生かされない、むしろ損なわれるのではないかという意見が推薦者側の方に出てきたのではないかというふうに思います。  したがって、実績は私は知りませんけれども、弁護教官の資質というようなものが低下する危険を防止するのにはどうしたらいいか。どうもたらい回し的な、なれ合い的なやり方だと、本当に修習生などが信頼する、また客観的に見ても非常に高く評価できるような教官が推薦され、それが委嘱されるのではないというようなことになる弊害、これを防止する、その点においては弁護士会の責任というものは非常に重くなるわけです、推薦するわけですから。だから、その責任の重さを十分に感じて、そしてそれを保証するような制度考えなければいかぬというので、東京弁護士会などでは人事推薦委員会というのですか、そういったような組織を設けて、しかも公聴会まで開いて、果たしてこれは推薦するに適任であるかどうかということを弁護士会内の世論に問うて、それで大丈夫だというところで、しかも順位をつけて、これは複数の場合は順位をつけざるを得ませんから順位までつけて——順位をつけるなどということは、本来推薦される本人にとってみると、正になってみたり副になってみたり、一位になってみたり二位になってみたり、余り名誉な話じゃないのですけれども、あえてそういう順位までつけて、そうして推薦していく。だから、よほどこれは弁護士会とすれば責任の重いことをやっているわけですね。もしもその人が予想に反して余り芳しくないということになりますと、単にその人個人の問題ではなくて、推薦をした弁護士会の権威にもかかわる。不面目きわまりないことになるわけでありますから、そういう点ではいわゆるなれ合いみたいなものは全然出てこないし、また派閥争いというようなものももちろんなくなってくるわけでございまして、全く民主的、公正に行われる。だからこれは単数で少しも不合理性はないと私は思うのです。というのは弁護士会に対する信頼が前提にあれば——あればという条件つきです。  裁判所の方で、おれが任命権者だ、だけれども推薦するのが余り当てにならないからどうも信用できない。ある程度は信用する。だから複数でくればそこで選択の自由があって、信用は半分くらいだけれども、決定はわりに公正に行われるというような議論になってしまうわけですが、そういう点で最初の根回し方式と、それから弁護士会が責任を持って推薦するという方式、これは弁護士会が、さっき言いましたような公開で公聴会まで開くなどということをするかしないかはその弁護士会の推薦の方式によるわけでありますけれども、いずれにしても弁護士会が会として責任を持って推薦する。しかも日弁連というところがそこをちゃんとチェックすると言うのですか、東京弁護士会から持ってきたからといって日弁連が無条件にそれを推薦するというわけでもないし、一弁からでも二弁からでも同じだと思うのですが、だから慎重の上にも慎重を期して推薦されてくる。こういうのを、まだちょっとうまくないというので、根回しがないのだからやはり複数でなければいかぬという。その根拠は、信用しないのか。いや信用しているのだけれども自分の方の都合でまずいのか。その辺、お答えいただきたいと思います。
  57. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 弁護修習ということは重要な問題でございまして、修習生の修習ということには最高裁判所が全責任を負っておるわけでございますが、日本弁護士連合会あるいは単位弁護士会の御協力を得なければとうていできないことである、これは私どもも十分承知をいたしております。それからまた、弁護士会がそういった観点から真剣に御推薦をいただいておるということも十分わかっておるつもりでございます。  ただ問題は、司法研修所の弁護教官はあくまで弁護を御担当いただく司法研修所の教官ということでございまして、どういう教官を任命させていただくかということは、あくまで最高裁判所がその責任と権限において決めさせていただく問題ではなかろうかというふうに基本的には考えております。ただ、いまも申し上げましたように、十分弁護士会の御意見、御協力を得なければいけない問題でもございますので、それに当たりましては弁護士会から複数の候補といったものを御推薦いただくという、そういうやり方が、裁判所の定められました権限というものを適正に行使していく上におきまして、また弁護士会の御協力ということを適正に織り込んでいく上におきまして、最もいいやり方ではないかというふうに考えて、複数推薦制ということが事実上行われているわけでございます。  しかし、それはあくまで事実上の問題でございますので、弁護士会のお気持ちは、真剣なお気持ちということはよくわかっておりますし、適正な候補をお選びいただいておるということもよくわかりますけれども、たとえば順位があって、その順位を尊重しなければいけないとか、あるいは民、刑の割り振りというようなものを弁護士会でお決めになったものをそのままやらなければいけないとか、あるいは単位弁護士会の事実上ございます割り当てと申しますか、枠といったようなもの、そういったものを絶対これはもう動かせないものだというふうには実は私どもは考えていないわけでございまして、あくまで相当範囲の中から一応弁護士会に御推薦をいただき、その中から自由に選ばしていただく、こういう方式でおるわけでございます。相当範囲と申しましても、じゃどれぐらいかということになりますので、一応現在倍数以上ということで御推薦をお願いしておる、こういう状況でございます。
  58. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまのお話ですと、司法研修所というものの運営といいますか、機能を十分に発揮させる責任が最高裁判所にあるのだ、だからその機能を働かすための人事というような問題についても最高裁判所が権限と責任もあるのだから、他から決められたままをのむわけにはいかぬのだという議論にも一理あるように聞こえますけれども、この司法研修所で行われる仕事というものが、最高裁判所の主としての仕事といいましょうか、優秀な裁判官を養成し、そして裁判の公正を期するという、そういうことのほかに、検察官もそれから弁護士も養成するという、いわゆる法曹三者といいますか、こういう機関なんですね、この研修所というところは。したがって、たまたま最高裁判所にこれは管理運営が任されているといっても、それで独断的にできるものではなくて、三者の意見が十分に反映するということでなければ民主的な運営ではないし、また、本来司法修習というものが単にもとの司法官試補みたいな者を養成するのとは違うのだから、そのことを頭に置かなければいけないと思うのですよ。  そこで、弁護教官というのは管理運営について何かの役割りを演ずることになっているのかどうか、その点はどうですか。
  59. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 司法研修所の教官は、修習に関します重要な事項について教官会議で発言をいたし、その決定を行うということでございます。その場合、ここで教官と申しますのは、正式に常勤の教官として任命された方を法律の上では指すわけでございますが、御承知のように、弁護教官は教官の事務を委嘱するという形で非常勤の教官ということになっておりますので、一応法律の形からは正規の教官会議の構成メンバーではございませんが、最高裁判所の規則によりまして、そういうふうな事務の委嘱を受けた方でも適当と認める方は教官会議に加わって御発言がいただけるということになっており、実際問題といたしましては、そのように事務委嘱を受けておられる弁護の教官方も、一般の裁判官あるいは検察官出身の教官と全く同様に、教官会議で重要な研修に関する問題について御議論をいただき、御決定をいただいておる、こういう状況でございます。
  60. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまのお話のように、司法研修所規程の四条というのを読んでみますと、二項のただし書きに、「研修の企画その他の重要な事項を定めるには、教官会議の議を経なければならない。」そして四項には、「司法研修所長は、司法研修所規則第三条の規定により嘱託を受けた者を教官会議に参加させることができる。」これで弁護教官はいわゆる嘱託された教官、非常勤の教官としていまのお話のように発言権があるわけなんですね。責任もあるわけです。こういうことが果たしてどの程度に機能を果たしているのか、実際私にもよくわからない。案外と教官会議というのは形骸化されて、上席会議とかいうのがあったりして、結局は所長さんの一方的なやり方といいますか、それを追認するというか、報告を受けて了承するという程度の機能しか果たさない。こういう点で、管理運営についてはむしろ抜本的に考え直して、たとえば法曹三者及び国民代表を構成員とする管理運営委員会というようなものを創設してやるべきではないかという、積極的な改革案もあるわけなんです。それはそれなりに推進すべきものがあると私は思うのですけれども、それはいまの問題ではありませんから後回しにいたしまして、現行の中でもこういう制度があるわけですね。  そうだとすると、この弁護教官というのは法曹三者の中の弁護士会を代表して、修習について、また研修所の運営について在野法曹の意向を反映する、そういう任務もあるのじゃないか。ただ技術的な面で修習生に弁護の技術を教えるとか、あるいは在野法曹としての人権感覚を修習生に与えるとか、もちろんそのことは重要であります。決して私はその重要性を少しも過小評価するものじゃありませんが、しかしまた、それと同時に、それと無関係ではない弁護士会の修習制度に対する要求、意向というものを反映する立場の人間ではないか。別に、選ばれてチャンピオンとしてそこに送り込まれるというようなものではないにしても、そういう性格が全然ないということにはならないと思うのですね。やはり弁護士会の権威をもそこに代表してもらうという含みもあると思うのです。だから、人格、識見に秀でている人であり、憲法や人権に関する感覚がすぐれておる、法技術にも精通しているというような、そういう者が選ばれていくわけですから、この根本的な考え方ですね、やはり三者で協力し合ってこの司法修習制度を運用していくという考え方が基本にあれば、私は、先ほどお話がありましたような、何か人事については、あるいは管理運営については最高裁が権限があるんだからといったような形式論でなしに——もちろんそういう権限があるという形式をわれわれは否定するものじゃないのですけれども、それを何か金科玉条のようにして、だから裁判所の方では人事について自主性を持つために、下請じゃないんだから、向こうが決めたのを全部のまなきゃならぬみたいな形はまずいといったようなことはすべきじゃないと思う。ただし、弁護士会が責任持って推薦してきたといっても、それぞれ立場の違いがあり、見解の相違というものはあるんだから、最高裁判所として考えてみると、弁護士会では最良と言われるのかもしれないけれども、われわれの方ではそうも思えないというようなこともあり得るとは思うのです。  しかし、そこをどう調整するかの問題は別といたしまして、何かもう、最後の断は自分の方で下すから、その調整なんということは必要ない。おまえの方で複数で出してくればいいんだ、倍数で出してくればいいんだ。それから順序だって狂わせるよ、割り当ても狂わせるよ。割り当てといったって別に法律で決まっているわけじゃありませんけれども、大体東京弁護士会から何名、一弁、二弁それぞれ何名といったような実績もあるわけです。会員の数からいっても、いろいろの意味からいっても、多少その人員の差異というようなものもあると思うのですね。そういうことを全然頭から除いてしまって、好きなようにやっていいんだということは、どうも何かそこに底意があるのじゃないか。今度私どもも資料としてもらいました最高裁判所あての東京弁護士会、第二弁護士会、それから日弁連の抗議文書、これ、いずれを見ましても、今度の措置は「思想、信条を問題としたものと推測される」ということが全部言われていますね、この三者とも。これはどうですか。この点何か弁明の余地、ありますか。
  61. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 権限があるからあらゆることを無視して決めるんだということを考えており、またそのようにしておるわけでは毛頭ないわけでございまして、あくまで、先ほど来申し上げておりますような歴史的な経過を経まして、複数の御推薦をいただいた、その中で最もいい方を教官として決めさせていただいておる、裁判官会議がお決めいただいておる、こういうことでございます。今回に例をとりましても、日本弁護士連合会から御推薦をいただきました中から御決定をいただいておるという状況でございまして、日本弁護士連合会あるいはそのよって来ります単位弁護士会の御意向を無視しておるというものでは決してないわけでございます。いずれも、日弁連が適任であるというふうに御推薦をいただいた方々で、その中から選ばしていただいておるということでございます。  ただ、先ほど来御指摘のように、同じ複数の御推薦をいただくということでありましても、おのずとまあ、まずこれというようなお考えはおありになろうかと思います。これまでは順位といったような問題、日弁連からの御回答をいただく際に順位を付していただくことはいかがであろうかということで強く申し上げてきておったわけでございますが、今回は順位をつけさせろというような御意向でございました。順位というものが出てまいりますと、第二順位から採ったとか、第一順位をどうしたかというような問題が出てまいりますので、その辺、問題点はあろうかと思いましたが、あくまで御推薦をいただく側でどのようにお考えになっておるかということ、それはやはり大きな資料としてしんしゃくさせていただかなければいけない問題でもございますので、それほど強くおっしゃるならば、最高裁判所の側として順位を当然のものとして考えるわけではもちろんございませんが、おつけいただくことについて特にこれを問題にするというようなことはいたしませんということで、御推薦の書類をそのままいただいたような状況であったわけでございます。そういう状況でございまして、あくまでその中から選ばしていただいておるものでございますので、思想、信条あるいは団体加入とか、そういったような問題は全くらち外の問題でございまして、いろいろそういった趣旨のお申し入れをいただきましたけれども、それは決してそういうことで決められたものではない。あくまで御推薦をいただいた中で最も適任と思われる方を裁判官会議で選んでいただき、それがあのような結果になっておる、こういうものでございます。
  62. 青柳盛雄

    ○青柳委員 推薦の側で順位をつけたのにはそれだけの理由があるんだということは理解するが、なおかつそれにとらわれないといいますか、まあこういうお答えでありましたが、そこでお尋ねしたいのは、この問題が起こったことが新聞などで報道されるのを読んでみますと、この弁護士会の推薦がどうもそのとおりにはされないで、順位が上であるにもかかわらず外されてしまうとかいうようなことがあった人たちの名前がずっと挙げられて、しかも経歴のようなものも載っているわけですね。その経歴などを見ますと、所属団体のことはともかくといたしまして、過去においてどんな訴訟にタッチしたかというようなことが書かれているのです。これは新聞社で取材してわかったのか、それとも公知の事実なのか、それはともかくといたしまして、いずれも、公害事件だとか、あるいは憲法にかかわる長沼ナイキ訴訟だとか、その他松川事件というような公安事件だとか、非常に特色のある事件を手がけた人たちで、刑事弁護でも相当のベテランというふうに言われている方々のようでございます。そういうのが弁護士会で十分慎重に審議されて、弁護教官として適当であろうということで出された。特定の人などについて見ますと、自由人権協会の事務局長という特定団体の特定の地位というようなことも書かれております。それからさっきの憲法の問題では家永教科書訴訟だとか、それから朝日訴訟と言われる憲法二十五条の問題だとか、こういうようなことにもタッチしている。それからある弁護士は日教組の顧問弁護士で、四・一一統一ストの日教組槇枝委員長の地方公務員法違反事件の弁護をやっている。こういうようなことがどうも理由ではないか。だから思想、信条に無関係などというのはどうもおかしいということがマスコミの報道を見てもわかるし、また日弁連、東弁、二弁の抗議の中にも、そう具体的には指摘してありませんけれども、書いてある。  そこでお尋ねするのですけれども、推薦されてきた人の経歴とか傾向とか素質とか、そういうようなものは最高裁判所では独自に何か調査網を働かして調べるのかどうか、それをお尋ねしたい。
  63. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御推薦をいただきます場合には、その付属書類として御提出をいただいておる経歴等の書類もございます。そういったものはもちろん参考にさしていただきます。それから、これはいずれも法曹の方でございますので、裁判所でも十分わかっておる方もございます。場合によりましてはそれほどでない方もございます。部内の各層の意見を聴取する、これは当然のこととしてやっております。
  64. 青柳盛雄

    ○青柳委員 確かにいろいろの調査に基づいて最終的な選択をされるわけでありましょうが、いま先ほど申しましたように、新聞報道などは事実に反することを書いていると私どもも思いませんし、ある程度個人的にも、この問題にされた、すなわち推薦されながら採用されなかった人たちも知っておりますので、この人たちがどういう活動をしておられるのか、それからそのものずばりで言えばどういう思想傾向を持っているのかというようなことも知っておりますが、いずれも民主主義を非常に大事にする、それから人権擁護に徹しているという点、この点では決して一歩も譲らない。在野法曹の権化と言うとちょっと大げさな言い方になりますけれども、在野法曹というのはやはり反骨精神といいますか、民主主義の社会でいろいろの見解の相違、立場の相違というものはある、そのときにどの側につくかといったら、やはり人権が侵されるおそれのある立場、国民の側に立つ。それに徹する。決してこれを取り締まる側とかというような官憲の側にはくみしないといったような、そういう在野法曹の本来の使命に徹しているような人たちだと私は思うのです。だからこそ信頼も厚くて推薦されていっていると思うのですよ。だから、こういうのを好みに合わないからと言ってはねてしまうというのは、最初も私言いましたが、司法研修所のあり方、司法修習のあり方というものを、何かしらやはり過去の司法官試補を養成した当時の官僚的な考え方ですね、そういうものに戻りつつあるんじゃないか、戻しつつあるんじゃないか。もう少し民主的に司法研修所のあり方、司法修習のあり方というものを考える必要があるんじゃないか。そうするとこういうトラブルは起こってこないと思うのです。  確かに、ことさらに事を荒立てるというか、抗争を事とするというようなことでは、これは正しくない。荒れる法廷だとか闘争とかいうような言葉が生のままで行われるような状態というのは司法のあり方を混乱させるだけでありますから、私どもはとらないところでありますけれども、しかしながら、見解の相違、立場の相違というのは大いにあるわけですから、それを突き合わせていく。そのためには、いわゆる体制側といいますか、裁判所の好みの側に全部人間を当てはめてしまう、それからはみ出すようなやつはみんな切り捨てると言ったらいいか、まあアウトサイダーみたいにしておくというような考え方は正しくない。だから、思想、信条ということがないと幾ら言われましても、やはり人権感覚の鋭い人はそれだけのやはり思想的な立場も堅固なんです。そういう人が教官として、将来弁護士になろうとする人を教育するというようなことは私は大事だと思うのです。単に弁護士だけではなくて、検事になる人であろうと裁判官になる人であろうとを問わず、憲法を守るという立場から、民主主義を守る立場から、人権を尊重するという立場は共通しているわけですから、だからそういう人たちの強烈な人格的な影響力というものを発揮させることは非常にいいんじゃないか。それは困るのだ、そんなのをやるとゲバ棒をふるうような暴れん坊に油を注ぐようなことになって、修習生の中から暴力学生の親分みたいな者が出てきたら大変なことになる、そういう心配はしなくていいと私は思うのです。というのは、そういう者が出ることを私も好みませんし、いま問題になっておる人たちは修習生にそういう影響力を与えるような立場の人かというと、私はいま言った事件の性格を見ますと、一人もそういう事件の弁護をやっていないのです。浅間山荘事件だとかあるいは学生の羽田事件だ、やれ新宿事件だといろいろありますけれども、ああいう事件の弁護を専門にやっておる人たちでもないし、法廷秩序を乱したということで一定の措置を受けたというような人でもない。だから、むしろこういう人たちの方が、そういう心配されるような法曹の出てくるのを食いとめる上でも役に立つんじゃないかとすら私は考えるのです。ですからひとつこれは何としてでも考え直す必要があると思います。  そこで、三者協議というのが一時ストップしておりましたが、最近これも再開をされたようであります。ここで具体的なケースの是正というようなことになると問題でありますけれども、具体的なケースでなしに、弁護教官の推薦制度などについて一遍話し合ってみるというようなこと、もし弁護士会の方からそういう提案があった場合に、最高裁の方では、いやそれはもう困るんだ、そんなことはここの協議事項の中には入りませんというようなかたくなな態度をとるのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  65. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 弁護教官に限らないかと思いますが、ことに刑事弁護教官は、法律知識、実務経験、憲法感覚、人権感覚にすぐれた方でなければいけないということはもう御指摘のとおりでございまして、私どももそのように考えております。今回日弁連の御推薦をいただきました中で任命さしていただいた方も、十分そういった感覚をお備えになっておる方というふうに確信をいたしております。それ以外の方をいけない、これは絶対だめだという趣旨で決めさせていただいておるわけではないわけでございまして、その点も御了解をいただきたいと思います。  それからまた、先ほど研修所内における弁護教官の管理運営といったような御指摘がございましたが、上席の教官にある程度のことをお任せいただくという慣例があるようでございますが、その上席の中には、刑事弁護の上席、民事弁護の上席ということで、弁護士出身の上席の教官も平等に御参加いただいて御審議をいただいておるというような状況にあるわけでございまして、決してひとりよがりと申しますか、そういうことで運営がなされておるものでもない、こういった点も御了解をいただきたいと思います。  それで、今回の弁護教官の選定の問題につきましては、日本弁護士連合会から倍数の教官の御推薦をいただきました。私ども、実はもう少し広い範囲の中から選択をさせていただけないだろうかというようなことで、追加の御推薦がいただけないだろうかといったような折衝もその過程においてはいたしたわけでございます。また、そういった折衝の過程を通しまして、いろいろの解決策、円満なる解決策ということにつきまして、真剣に十数回の日本弁護士連合会との折衝というものを行ったわけでございます。不幸にしていろいろな折衝が功を奏しませんで、結局、当初御推薦の方の中から選ばしていただくというようなことになったわけでございますが、この問題につきましても決して、そちらの方はそちらの方で適当な数を推薦してこい、その中からこちらはこちらで勝手に選ぶんだといった気持ちでおるわけでは毛頭ございません。先ほども申し上げましたように、弁護の修習ということで弁護士会の御協力を得るということは絶対不可欠の要素でございまして、そういう意味でその重要性というものは十分認識をいたしております。といたしますれば、やはり円満に日弁連とお話し合いをいたしまして、そうして円満な教官の人選というものができることが最良であることは当然のことでございます。今後もその点についてはできるだけ柔軟な姿勢で、事前に十分のお話し合いをしていきたいというふうには考えております。  三者協議が発足いたしましたことは御指摘のとおりでございますが、三者協議の場でこういった問題をやることは、やはり制度的なものと具体的な人選の問題がかなり密接に結びついておりますので、現在のところではちょっと問題があるのではなかろうか。やはりそれまでに、日弁連のいわゆる責任者と私どもの方とでいろいろと胸襟を開いたお話し合いをしていくということが好ましいのではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  66. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまのお話でございますが、四月九日付の日弁連の会長辻誠さんの最高裁判所長官村上朝一殿あての文書をちょっと読ませていただきます。   しかしながら、司法研修所の要請もあって今  回は倍数推薦をすることにしたので、当会とし  ては、被推薦者に順位を付し、できる限り第一  順位者を選任するよう、また順位を変更する場  合には、当会と事前に充分協議をつくすよう要  望した。   しかるに、司法研修所は当会の推薦に対し、  何ら具体的理由を明らかにすることなく、若干  名の追加推薦を求めてきたので、当会はこれに  応じなかった。   今般、最高裁判所及び司法研修所が当会と何  ら事前の協議をつくすことなく、四名の弁護教  官候補者について順位を変更し、且つ従来の慣  例を無視して選任したため異例の結果を生ずる  に至った。こういう経過の説明があるのですね。だから、いまのお話はずいぶん意を尽くしてやったんだけれどもうまくいかなかったというような話になっておりますが、この書いてあることとそれとはちょっと違うのですが、そのことの詮議はともかくといたしまして、三者協議のところで弁護士会の方からこれを議題にするかどうか、それは知りませんよ、全然知りませんけれども、仮にしないとしても、こういうことで抗議を受けるというようなことはこれは不面目な話だと私は思うのです。それは、非がどちらにあるかなんということを私はいま問題にするのではなくて、最高裁判所が日弁連から抗議を受ける、あるいは東弁や二弁から受けるというようなことが好ましいことでないことだけは明白ですよ。  だから、こういうことは余り芳しくないから、これからの場合——今度の人選について、これを削ったのはどういうわけだとかいうようなことで理由を示せとか示さないとかというような、団体交渉みたいな話をやれと言っているのではなくて、複数にするとか順位をつけるということが最高裁じゃ困るんだ、なぜ困るのかというようなこと、また片方で言えば、それは絶対おれたちの自主性を認めてもらうゆえんだから固執するという、そういう点を、平行線である場合があるかもしれないけれども、少し突き詰めた協議をしてみたらどうか。そうしませんと、こういう抗議をする、あなた方の方ではきょうまた裁判官会議を開くとかなんとか言っているけれどもこれに対してまた反駁をするとかいうようなことで論争をやってみたところで、不毛なことになる危険性がある。そこを私は言っているわけなんですが、研究してみる必要はありませんか。
  67. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御指摘の点はまことにごもっともだと思います。ちょっと先ほども申しましたように、三者協議ということでやる際にどのような形でやるかといったようなことにつきましても、せっかくの御指摘でございますので、もう一度十分検討いたしたいと思います。ただ、気持ちとしましては、決して話し合いをしないでおくというつもりではございませんで、十分日本弁護士連合会等とは今後も折衝を保って円満な方向に持っていきたい、今回の経験にもかんがみ、そのように考えておるわけでございます。
  68. 青柳盛雄

    ○青柳委員 時間の関係がありますのでこの問題は一応これまでにしまして、同じ四月七日の裁判官会議で四名の司法修習生が任官を拒否された。その前に二名の修習生がいわゆる落第をさせられたといいますか、二回試験に合格しなかったという問題もありますが、この合格しなかったというのには、試験を受けなかった部分があるとか、成績が全般的にふるわなかったというようなことで、追試をやる、あるいは一年留年させるというような措置がとられたそうで、これに対しても修習生の側ではいろいろ疑問もあるようでありますが、それはきょうは私は問題にしません。  きょう問題にするのは、いつもあることですけれども、思想、信条、特定団体加入を理由として任官を拒否するということはないんだという従来から言い古されたことが、今度また起こってしまっているんじゃないか。そのとおりではないんじゃないか。というのは、四名のうち二名は、公然たるというか、別に非公然組織じゃありませんから公然、非公然と言うこと自体おかしいのですけれども、裁判所の方でも特別な調査をしなくたって、さっきの弁護士の経歴の話じゃないけれども、自然に耳に入るわけですが、いわゆる青法協の会員であった。しかも一人の方は単なる会員ではなくて常任委員だとか、大阪の二十七期の支部長であったとかいうようなこと、もう一人の方は、特別に青法協の役職について活動したとか青法協の機関誌に論文を発表したというようなことはないけれども、一橋大学在学中、たまたま熊本の宮本裁判官の再任拒否事件などがあった当時に「裁判の独立を守る会」の全都学生連合というのがあって、その一橋大学内の中心的な活動をやっておられたというようなことで、司法修習生任官問題についてやはり積極的な人である。この二人は、成績は、同僚の見るところいずれも平均以上であって、特に一橋大学を卒業した方は成績が優秀、抜群という評判もある。だから成績不良というようなことで断られたのではないことだけは明白だということですね。  これは私がお答えを求めれば、成績が悪かったともおっしゃらないでしょうし、それから思想、信条、特定団体加入を問題にしたのでもないと言われるでしょうし、何か結論は、回答はわかり切っているみたいな感じがするのですけれども、それにしてもこういうことを頭に入れておいたらどうかと思うのですが、二十七期の修習生大会というのがことしの二月二十一日に開かれたようです。そして一定の決議をしているのですね。この決議は最高裁へ持っていっていると思うのです。当法務委員会にもこのコピーが届けられて、私も見ました。私、法務委員個人のところへもコピーが持ってこられて、いま手元に持っております。これは一から五までの決議事項がありまして、一々紹介する必要はありませんが、いずれも投票をやっているのですね。それでいま問題になっているのは、第三の1、「二七期に対して「全人格的評価」の名の下に、現行二回試験制度下での「成績」、思想・信条・団体加入・性別・年齢・身体障害等による新任拒否をするな。」こういうのがあるのですね。これは三百八十七票投票されたうち、賛成が三百二十八票、反対は二十五票、保留が二十六票、棄権八票。ほかの決議事項と比べて大体賛成の多い部類に入っている。  昨年は青法協であるというような理由をもって拒否されたという事実がなかった。それで、最高裁の方では例によってそういうことをまたやるのじゃないかとも思われたけれども、昨年の実績を見るとそれはなかった、だけれどもことしはどうか、まだ危ないということから、やはりこういう危機感というものが決議となってあらわれたと思うのです。ですから、これは単なる思い過ごしであるとかないとか言って議論を上げ下げする問題ではなくて、現実として、こういう心配を二十七期の修習生投票者三百八十七人のうち三百二十八人が持っておったということは厳然たる事実のようであります。これはまさか虚偽のことを書いてあるわけじゃないでしょう。この厳然たる事実をどうお考えになりますか。
  69. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 修習生から裁判官を御希望いただく方を、どのような方に来ていただくかということを裁判官会議でお決めいただきます。そのお決めいただくやり方と申しますか、中身、そういったものは、去年もことしも、またおととしも、そういう意味では少しも変わっていないのでございます。ただその結果として、去年は二人の方が不幸にして来ていただくわけにいかなかった、ことしはそれが四名であるというだけのことでございます。  ただ、修習生の方々が、できるだけ多くの人を採れとおっしゃる気持ちはわからないではございません。一緒に二年間席を並べて実務修習をおやりになった方の中から、任官を希望したにかかわらず希望どおりに任官できなかったという方が出てくることは、同僚として残念なことだということでお考えになる気持ちはわからないではございません。しかし、私どもの方としましては、十分あらゆる点から検討させていただいて、判事たるにふさわしい方、その方に来ていただくということをまた変えるわけにもいかないわけでございまして、そういったお気持ちはよくわかりますが、だからということで希望した者は全員当然採るべきだということにも私ならないのではなかろうかというふうに思っております。そういった点は研修所におきましてもあらゆる機会に教官方も十分話をしていただいておるのではなかろうかと思いますが、今後とも、それ以上に他意があるものではないということについては、十分修習生の方々にも納得のいくような説明をしてもらうように考えていきたいと思っております。
  70. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この決議に投票した修習生の人たちは、机を並べた同僚の中から一人でも欠けるようなことがあったらさみしいとか、そんな感じから言っているのではなくて、現行の二回試験制度というものも非常に不合理だ、それがこの括弧づきの「成績」を評定する、そして成績が悪いから落とすのだということに利用されるからこの制度に反対するのじゃないかと思うのです。成績というのは確かにいい悪いの判定はできるのでしょうけれども、むしろ成績というのは口実であって、思想、信条、団体加入、性別、年齢、身体障害なんということも差別の中に入ってくるわけですけれども、そういうのをカムフラージュするためのものじゃないか。決して、ただ同僚意識で一人も漏れなくということで決議しているのじゃないのですね。だからこの点はもう少し、人事を扱う者としてはそういう疑いを持たれないように慎重なやり方をしなければいかぬと思うのですよ。  この人たちがこの措置について抗議のための集会を持ったようであります。私はそれに行っておりませんから、ただ資料によって知るだけでありますけれども、十日の日に東京弁護士会か何かに集まってデモンストレーションか何かやったようなことが書かれてあります。そういうように興奮をするというか、そういう気分になるというのは、同僚が一人、成績不良ということで、あるいは何かの理由で拒否された、それが気に食わぬというようなものではないのですね。やはり思想、信条の問題を問題にしていると思うのです。それで最高裁とすれば、こういうふうな誤解というか、裁判所の方から言えば誤解か曲解と見るのでしょうけれども、こういうものを防止するための措置をとるというのに、たとえば四月八日に矢口人事局長が、任官を受ける、いわゆる採用された人たちに対する説明の席で、拒否された四人というのは成績がよくなかったのだから仕方がないのだ、この問題について論議することは正しくない、反対の署名運動なんかやるのは論外だ、青法協会員だから首にしたのじゃないかというのは正しくない、青法協会員かどうかなどということは裁判所は知らない、この説明に不満ならば君たちも裁判官にならないでやめてもらっても構わないのだ、少しよけい採り過ぎているのだ、そういう趣旨説明をされたというのですが、これはどうですか。
  71. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青柳委員がどういうところからそういうお話をお聞きいただいたのか、余りにも説明会で申したことと中身が違っておりますので、どうもお答えのしようがないのでございますが、御希望になった全員の方に——この席には内定された方に来ていただいたわけでございますが——この席にお見えいただかなかったのは非常に残念だ、ということは申しました。ただ、この理由について私の方からこれ以上何とも言いようがないのでそれは申し上げない、そのことは申しましたが、それ以上に、もうこれ以上議論するなとか、署名運動をするなとか、そんなことは一言も申しておりません。私、その後でどういう会があったのかもよく存じておりません。それから、一般の心構えを説きます問題として、いろんな採用後の赴任等に当たっての差し当たりの心構えと申しますか、そういった話はこれは例年いたしますが、その際にことしは政治的な団体加入の問題に触れまして、だれがどうということはないが、裁判官の現下における立場というものを考えると、モラルの問題としては入らない方がいいのじゃないか、ということは申しました。しかしそれだけでございまして、それ以上に、いやならやめろとか、そんなことを申すはずもないわけでございまして、まあ、御了解いただけるだろうと思います。
  72. 青柳盛雄

    ○青柳委員 まさかそこまで露骨におっしゃったわけじゃないでしょうけれども、例年になく多く採っているというようなこともあるものですから、そういうふうに曲解した人もいたのかもしれません。  それはともかくといたしまして、現実にはこの二十七期の任官拒否に反対する会という、これは仮称かもしれませんが、そういうものが個人加盟でできて、そして二十七期生のうち約二百人くらいがそれに参加している。もちろんその中には裁判官はいないと思います。恐らく弁護士だろうと思います。何か代表だとか事務局員というような人たちの名前も連ねてあるようでありますが、みんな弁護士のようであります。しかし、いずれにしてもこれができ上がって、そしてこの問題は相当大きく世論を巻き上げていく可能性もあるわけなんですね。だから私どもこの推移は注目せざるを得ないと思うのですが、いずれにしても、特定の思想とかあるいは団体とかいうようなことで裁判官の色を塗りかえるというか、そういう青法協に入っているような人間は排除しようなどという努力は避けるべきである。そういうことはわからないと言いましても、特別な組織を使ってその情報収集をやっておられるのかどうかということは私は知りませんし、青法協だということがわかっておっても採用されておる人もあるのでしょうから一概に何とも言えないのじゃないかという議論も出てくると思いますけれども、拒否されたときに、成績不良と幾ら言われても、青法協であった場合——あるいは成績は案外いいのだけれどもやはり裁判官には不適だというような人もいないわけじゃありませんから、弁護士ならばいいけれどもというようなことは、その人の向き不向きがありますから、そういうときには余り問題にしなくてもいいのじゃないかと思うのですけれども、帰するところ、どうも今度の場合、修習生が二百人も集まって反対運動を継続的にやっていこうというからには、決してそんななまやさしい問題ではないというふうに思います。  今後の推移によってまたお尋ねすることもあるかもしれませんが、本日は時間の関係もありますので、これでやめておきます。
  73. 保岡興治

    保岡委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十九分散会