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1975-03-12 第75回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十二日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長代理理事 田中  覚君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 稲葉 誠一君       小澤 太郎君    越智 伊平君       小坂徳三郎君    増岡 博之君       村岡 兼造君  早稻田柳右エ門君       綿貫 民輔君    中澤 茂一君       日野 吉夫君    諫山  博君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         内閣法制次長  真田 秀夫君         総理府総務副長         官       松本 十郎君         法務政務次官  松永  光君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     佐々 淳行君         行政管理庁行政         管理局管理官  佐々木晴夫君         防衛庁防衛局調         査第一課長   石崎  昭君         自治大臣官房情         報管理官    川端 亮二君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     折小野良一君 同日  辞任         補欠選任   折小野良一君     佐々木良作君 同月十二日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     増岡 博之君   千葉 三郎君     綿貫 民輔君   中垣 國男君     越智 伊平君   濱野 清吾君     村岡 兼造君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     中垣 國男君   増岡 博之君     木村 武雄君   村岡 兼造君     濱野 清吾君   綿貫 民輔君     千葉 三郎君     ————————————— 三月六日  法務局、更生保護官署及び地方入国管理官署職  員の増員等に関する請願(赤松勇紹介)(第  一二二七号)  同(山本幸一紹介)(第一二二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 これより会議を開きます。  本日、委員長が都合により出席できませんので、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件並びに裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所田宮総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  3. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本委員
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 私は、本月の七日に参議院予算委員会でわが党の黒柳議員が追及いたしました自衛隊諜報活動、この問題についてさらにもう少し詰めてみたい、こう考えますので、それに関連する御質問を先にしたいと思います。  このときの問題をもう一度考えてみますけれども自衛隊中央資料隊秘密書類として「国内一般整理項目」というのによりますと、国内団体、人物の情報収集活動自衛隊の手で行われて、多くの資料コンピューターに組み込まれた可能性がある。これは個人基本的人権にかかわる重大な問題であるということが言えるわけです。坂田防衛庁長官もこのときは、「事実なら重大な問題だ、直ちに調査する」こういうふうに言っておられますけれども、重大な問題で、もう一度この点をよく考えてみたいと思うわけです。  自衛隊法の第三条によりますと「自衛隊任務」として「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共秩序維持に当るもの」こういうふうになっておるわけです。しかし、その自衛隊が国を守っていく、国民を守っていくという関係に対して、憲法に違反する重大なこういう諜報活動をやっていいかどうかという点で、やはりこれは自衛隊の根本的な基本姿勢にかかわる問題であると私たちは考えるわけです。すでに自衛隊では、前にも国会で追及されましたクーデターの研究をしておられたことが問題になり、坂田防衛庁長官も、「シビリアンコントロールを強める必要がある」こういうふうな見解もお述べになり、その方の準備もしていらっしゃるということになるわけですけれども、しかしながら、その自衛隊が国を守り国家の安全を守るという口実で何をやってもいい、こういうことには当たらないと思うのです。それで、こういうことがしばしば問題になってき、問題にされる事実があったという点をいろいろ指摘されておりますけれども、これはやはり自衛隊最高幹部の意識、考え方、そういうものが原因になっていくというふうな考え方もできるわけです。でなければ、自衛隊の中で一つ機関がこういう計画をしたり調査したり活動していくということはあり得ないということになるわけで、自衛隊あるいは防衛庁幹部がこういう問題に対して厳しい姿勢でおれば、下部機関においてこういう事実が出てきたりということはあり得ないと思うのですね。そういうところに、自衛隊の本質というものをもう一度考えてもらわなければならない。それは、国を守るために十分な、あるだけの力を出して防衛のための努力はしていただかなければなりませんけれども、それが逸脱していってしまうようなことがあってはならないと考えるわけです。そういう点について、自衛隊の現在の基本姿勢というものをもう一度明らかにしていただきたいと考えます。
  6. 石崎昭

    石崎説明員 自衛隊基本姿勢を私が申し述べるのが適当かどうかよくわかりませんけれども、御承知のとおり、自衛隊任務は、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共秩序維持に当るもの」とされております。したがって、その任務に照らして、個人思想信条調査するというようなことは任務でもありませんし、現にやっておりません。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 やっていないということなんですが、事実、調査をしたということになるのです。それは黒柳議員が追及したとおり、コンピューターにはめ込むために陸上自衛隊中央資料隊がこういう資料をつくった。これに対して防衛庁の方は、「計画はしたけれども実際には活動していない」という説明であって、参議院予算委員会ではそこまでで終わっておるわけですけれども、実際に中身を見ていきますと、重要な項目が全部網羅されておるわけです。憲法に抵触し、思想信条にかかわるような調査はしないといういまの説明ですけれども調査するための準備をなさったということになるんじゃありませんか。その辺、もう一度説明してください。
  8. 石崎昭

    石崎説明員 先ほど申し上げましたように、個人思想信条調査などはやっておりません。そこで、御指摘の、さき予算委員会黒柳議員が御提示になりましたものでございますが、その後調査した結果判明したところでは、コンピュターの導入に先立ってコンピュターをどういうふうに使うかという準備検討をいたしまして、その際、内局陸海空の各幕僚監部コンピューター使用方法をいろいろな角度から検討したわけでございます。この検討結果に基づいて陸上自衛隊中央資料隊が作成しました案が、黒柳議員が御提示になりましたものとよく似ておるわけでございます。内局陸海空の各幕僚監部はこの作成された案をもとにして種々検討を加えまして、その結果これは採用に至らなかったというのが、調査の結果わかったことでございます。
  9. 沖本泰幸

    沖本委員 重大なことをおっしゃっておるわけなんですがね。私の手元にあるコピーは、あなたがおっしゃるには、黒柳議員提示したものと似ている、こういう御発言なんです。これは黒柳さんが提示したものと全く同じものを私は持ってきておるわけです。これは、自衛隊の中でいろいろ検討した結果に基づいて陸上自衛隊の方で準備をした、だけれどもそれは採用するに至らなかったという、その準備したものとこれとは違うわけですか。黒柳さんが提示したものと似ておるとあなたはおっしゃっておるのです。これを一遍見てください。これは似たものであって実物コピーじゃないというなら、実物コピーでないということを言ってください。ここへ来て見てください。——防衛庁の方でそれを検討して、事実、黒柳議員提示したものは似たものであって実物コピーでないというのであれば、そういう答えをしていただきたいのです。実物であるなら実物コピーだということをお答えしていただきたいと思います。
  10. 石崎昭

    石崎説明員 いま拝見いたしましたが、非常によく似ております。しかしながら、われわれが調査した結果では、まず、この文書には日付が入っておりますが、いま拝見した文書には日付が入っておりません。それから、われわれが調査した結果わかったところでは、この文書には題名の後に「(案)」と書いてございましたけれども、これにはそれがございません。それから、マル秘という判こは、われわれが調査したところでは押してございませんが、いま拝見したものには押してあります。こういう幾つかの違いがございますので、私は非常によく似ているとしか申し上げられません。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員 では念のために委員長にも一度見ておいていただきます。——委員長、お願いがあるのですが、ただいま防衛庁石崎調査第一課長さんは、私が持っているのは参議院予算委員会黒柳議員が使った資料なんですが、これは実物じゃない、非常に似ているけれども幾つかの違っている点がある、こういうことをおっしゃっているわけです。そうするとわれわれがつくったということになるのですね。非常にあいまいなものを持ってきているか、全然防衛庁の中にあったものではないものを、われわれは違うものをつくってきたということになるわけです。似ているけれども違う、こういう御発言なんです。これは重大な問題で、これは参議院では総理もごらんになっているし、防衛庁長官ごらんになっているわけです。その資料なんです。それが非常に似ているけれども違うということは、これはにせのものを持ってきてやっているとか、あるいはつくり上げたものをもって政府に、防衛庁にいろいろと質問しているというかっこうになるわけで、これは重大な問題だと思いますので、後で、これは実物か、いわゆる実物コピーであるかないかという点、マル秘の判がない、あるいは日付がない、いろいろな点を御指摘になりまたしけれども、それを中心にして何らかの形で、これは十分に資料として信頼に足るものであるかないかということを確認していきたいと思うのです。それで委員長の方でお計らいいただきたいと思います、これは国会の中の重大問題にかかわるわけですから。
  12. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 ただいま沖本委員から申し出のございました件につきましては、後刻理事会で御協議申し上げたいと存じます。
  13. 沖本泰幸

    沖本委員 それじゃ、石崎課長に伺いますが、この似てないという点は一応おくとして、この中に挙げておる項目あるいは黒柳議員が追及した内容のものは、そういう資料の中にきちっと組み込まれておったのですか、どうですか。その点はどうなんです。
  14. 石崎昭

    石崎説明員 先ほど私はよく似ておると申し上げたつもりでございますが、調査した結果では、大変これによく似たものは確かに当時つくられておりまして、内容もわれわれはずっと点検いたしました。
  15. 沖本泰幸

    沖本委員 確認する意味で、すでにこれは採用しなかったという御答弁があるわけですから、採用してないのならそれだけの資料をここへお持ち込みになっていただいて、私はそれとこれと比較してみたいと思うのです。委員長の方でお計らいをしていただきたいと思います。
  16. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 ただいまの問題につきましても、あわせて後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。
  17. 沖本泰幸

    沖本委員 後刻ということですが、私の質問続行中に、防衛庁は近いわけですから、資料が取り寄せられないはずはないと思うのですね。ですから、ほかの方にでも電話でお申しつけになってお取り寄せいただきたいと思います。それで後ほど理事会でも御検討いただきたい、こう考えます。日を改めてということではなくて、当委員会の開会中にそういうお計らいをしていただきたいと思います。防衛庁の方はそういう計らいができますかどうですか。
  18. 石崎昭

    石崎説明員 これから防衛庁へ連絡してみまして、それができるようにしたいと思います。
  19. 沖本泰幸

    沖本委員 では、それはそれにいたしまして質問を続けますが、先ほど御答弁になった中で、従来、「内局は知らない」こういうふうなお答えだったと思うのですが、いま、「内局は知っていた」こういうお答えに変わっているわけなんです。ということは、どういうふうに導入するかということで種々検討したということは内局は御存じだったということになるわけです。さき予算委員会では「内局は知らなかった」というお答えだったわけです。「そうだったら重大問題だ」という防衛庁長官お答えなんですが、それは知っていたというふうに受け取っていいわけですか、どうですか。
  20. 石崎昭

    石崎説明員 予算委員会黒柳議員が御指摘になったときには、何分昭和四十三年のものでございますからそのときの実情がわかっていなかったわけでございます。そしてその後調査いたしましたところ、先ほど申し上げましたように、内局陸海空の各幕僚監部検討して、その検討に基づいて中央資料隊が作成したということがわかったわけでございます。したがって「知らなかった」というのは、古い話ですからわからなかったというだけであって、調査した結果いま申し上げたようなことでございます。
  21. 沖本泰幸

    沖本委員 古い話だから知らなかったというのは、古い話だから、突然で、忘れておったということになるわけですか。それはその当時は十分防衛庁の中では検討された事項なんですか、どうなんですか。
  22. 石崎昭

    石崎説明員 古い話でありましたので、その当時の状況を調べるのに時間がかかったわけでございまして、委員会で御質問になった時点ではその状況がわからなかったわけでございます。
  23. 沖本泰幸

    沖本委員 しかし、委員会時点ではわからなかったけれども、四十三年にさかのぼれば種々この問題は検討されたということになるわけです。そういたしますと、防衛庁の中の首脳、幹部の中でどの辺までがこの問題を知っておられたわけですか。
  24. 石崎昭

    石崎説明員 この件については目下引き続き調査しておりますので、いままでわかったところでは、どの辺までというのは、たとえば長官までであるとかあるいは局長までであるとかいうようなことまではまだわかっておりません。現在もその当時の記録を調べているところでございます。
  25. 沖本泰幸

    沖本委員 そういたしますと、予算委員会でも「この問題は十分調査して」という答えがあるわけで、その調査の結果、どの辺までが検討されておった、あるいは検討段階はどの辺まで検討しておって——これは国民の基本的な人権にかかわる問題であり、憲法に触れる重大な問題であり、そういう問題を防衛庁秘密調査事項としてそういうふうなことをやっていいかどうかというのは、これは重大な問題になってくると思うのですね。そういう内容のものを防衛庁長官に報告されておったかいなかったか、当時の防衛庁長官はそれを了解しておったか、あるいはあなた方のおっしゃるとおりに、検討はしたけれども採用に至らなかったというのはどういう点で採用しなくなったか、こういう説明のつく調査の結果というものは改めて報告されるわけですか、どうなんですか。
  26. 石崎昭

    石崎説明員 まだ調査は引き続いて行っておりますので、判明次第、御要望があれば御説明できるであろうと思います。
  27. 沖本泰幸

    沖本委員 これは参議院段階予算委員会の問題であり、これは予算委員会理事会でいろいろ検討される、そういうふうになると思いますけれども、私は同じ関連した質問をしておるわけであって、当時の問題として黒柳さんも、われわれの調査したところでは実際にこれは組み込まれておる、あなた方の方は採用していないと言うけれども、これは組み込まれておるんだということを言っているわけです。内閣の方からもその資料をもらいたいということが内々あったという事実を聞いておるわけなんです。これはまたあなたの方では似ておる資料、こういうふうにおっしゃるかわかりませんが、言葉の上の展開だけですから、あなたの方に事実を突きつける、だれがどうだったとか、どういう事実があったというところまではまだ触れて申し上げませんけれども内閣の方からもあなたの方にその資料をもらいたいということがあったということは、防衛庁の方で実際に使われておるコンピューターの中に打ち込まれておって、その内容のものはあるんだというふうにわれわれは受け取っておるわけです。  しかし、そういうものを、単に、あなた方は採用しなかったという点にとどまってこの問題を検討してみても、こういうものが一応いろいろと検討材料になって検討されたということは目的があるはずなんです。目的のないところに行動とか計画とかということはあり得ないわけですから、その目的というものは何か。あなたの段階で先ほどの答弁ですと、大臣までこの話がいっておったかどうか、長官までいっておったかどうかという点はまだ調査中だということなんですが、検討段階でこの計画ができたことは事実である。私の持っている資料とは違うけれども検討したことによって採用に至らなかったと言いますけれども検討される段階では目的があって検討をし、計画がつくられていくということになるわけですから、こういうものをコンピューターに導入しようとして目的を立てた。何の目的なんですか。
  28. 石崎昭

    石崎説明員 この案が作成された当時のいきさつは、先ほど申し上げましたように、コンピューターが導入されるに先立って、その準備のためにいろいろ検討されたということでございます。それで、コンピューターを能率よく使いこなすについてあらゆる角度から検討が加えられた模様でございます。その中に御指摘のような案も、使いこなすための一つ方法として考えられたと思いますけれども、それがさっきも申し上げましたように、さらに検討を加えた結果採用するに至らなかった。採用するに至らなかったというのは、結局適当な部分でないところは採用するに至らなかった。適当でないと判断されたからだと存じます。
  29. 沖本泰幸

    沖本委員 採用するに至らなかった経過だけをあなたはお答えになっているわけで、目的がなかったらやるはずないのですよ。だから、コンピューターに入れるのは、どういう目的コンピューターの中に打ち込んで使うかという目的があるはずなんです。その目的は何なんですか。種々検討したという中には目的検討もあったはずなんです。いろいろと各部門が寄ってこの問題を検討したということなんですから、検討材料たくさんあるんでしょうけれどもコンピューターの中に国会議員から内閣、あるいは労働団体から裁判所に至るまでの内容をやっているし、個人に関しては思想信条日常活動から交友関係、あらゆるものを打ち込む計画になっているわけです。それだけのものを打ち込んでいくという計画を立てていくには目的があるはずなんです。その目的というものを明らかにしていただきたいのです。
  30. 石崎昭

    石崎説明員 コンピューターをどういう目的で使うかということは、先ほど申し上げましたように、自衛隊に与えられておる任務がございますから、その任務を遂行するために必要な各種情報コンピューターに入れて使っていく、これが目的でございます。
  31. 沖本泰幸

    沖本委員 任務を遂行するために各種情報コンピューターの中へ入れるというわけですけれども、そういう点から考えられることは、たとえばアメリカウオーターゲート事件からしばしば問題になってきたCIAが、黒人のいわゆる反政府運動であるとか、あるいはベトナム反戦運動をやっておる人たちであるとか、そういう人たち個人のプライバシーの問題を国内調査してはならないというCIA活動の基本的な内容を侵して、秘密的に諜報活動をやっておったということがアメリカで問題になって、現在も追及を受けておるということが報道されておるところですけれども、それと全く同じような内容調査をしていらっしゃるということに当たるわけなんですが、そうすると防衛庁中央資料隊というものはCIAと同じような活動目的、その任務、働きというものが組み込まれているのですか。その辺はどうなんですか。
  32. 石崎昭

    石崎説明員 私ども任務は、先ほど申し上げたようなものが任務でございますから、したがって、国内個人思想信条、その他を調べるということは任務の外でございます。したがって、先ほど申し上げましたように、そういう必要はないという判断に立って採用されなかった、こういうわけでございます。
  33. 沖本泰幸

    沖本委員 ですから私の質問は、いまのお答えにも関係はしておりますけれども陸上自衛隊中央資料隊というものがあるわけですね。ある以上は、航空自衛隊にも海上自衛隊にもこういうふうなシステムの隊はあるわけですか。まずその辺から言ってください。
  34. 石崎昭

    石崎説明員 資料隊陸上自衛隊だけではありませんで、海上自衛隊にも航空自衛隊にもございます。正確なデータをいま持っておりませんけれども陸上自衛隊がもちろん規模が一番大きいわけでございまして、中央調査隊が約二百二十名、それからそのほかに地方方面資料隊というのがございまして、これが北部、東北、東部、中部、西部と五つの方面にございまして、これが合計して約百九十名おります。それから海上自衛隊資料隊というのは約四十名でございます。これは陸上に比べて大変規模が小そう、ございます。航空自衛隊には航空資料作業隊という名前のものがございまして、これが約五十名でございます。
  35. 沖本泰幸

    沖本委員 いまお答えになった分についても御質問いたしますが、その前にお答えになった中で、任務を遂行するために情報収集をしていくということだけれども個人思想信条というようなものを調べることは任務外になるからと判断して採用しないことにしたというお答えだったと思うのです。しかし、初め計画されたときには、個人思想信条団体活動なり著書なり、あらゆる点を網羅したものを調べて資料を集めてコンピューターに打ち込むという計画なんですから、初めに申し上げたとおり、そういうものを調べていく、いまおっしゃった個人のたとえば思想信条任務外ということなんだけれども任務外に類するものを一応集めるということを計画した根本的な目的は何であったかということなんだ。ただテスト的にそういうものを、たとえばテレビがカラーを打ち出すために一つの色を出すとか、あるいはテレビが最初にいろいろな模様を出すとか、テレビにそういうものがありますけれども、ただ単に無作為でそういうものを計画したのか、あるいはこういうものを集める目的、何のために集めるか。使う目的がなかったら集めるはずはないのです。ですから、そういうものを集めるという考え方というものは、どこに根本があり、目的があったか、その辺をお答え願いたいと思うのです。
  36. 石崎昭

    石崎説明員 現在までに私ども調査した結果わかったところでは、この案がつくられた理由は、コンピューターを導入するに当たって、コンピューターのあらゆる可能性を追求してみるということで、コンピューターを一〇〇%使い切るための模範答案づくりのような感覚で、いろいろな材料を網羅的に並べてみるということをやってみたようでございます。しかし、それは非常にはっきりした目的意識に基づいてそういうものがつくられたということは、どうも調査結果では感じ取れません。むしろ、俗な言葉で申せば、事務屋の模範解答づくりというような熱意が大変先に立っておったというような感じでございます。これを実行に移すという非常にはっきりした目的意識に基づいてつくられたとは、調査結果からは感じ取れません。
  37. 沖本泰幸

    沖本委員 普通、官庁にはいろいろ役割りを持って部なり局なり課というものがあると思うのですが、まず、とっぴな質問ですけれども石崎さんの調査第一課長のお仕事というのはどういうお仕事があるわけですか。
  38. 石崎昭

    石崎説明員 私の課の所掌事務について御質問でございますが、内局調査一課では、要約して申し上げますと、情報業務の総合調整、政策立案——情報業務に関する政策立案でございますが、それと防衛及び警備に必要な国内情報の収集整理、これが調査一課の所掌事務でございます。
  39. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、石崎さんの御担当の中に、こういうふうな中央資料隊活動内容的なすべての業務に対するものの監督、管理的なお仕事があるわけですか。
  40. 石崎昭

    石崎説明員 おっしゃるとおりでございます。
  41. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、まあ四十三年、古いことですけれども課長さんはいつその第一課長に御就任になったわけですか。
  42. 石崎昭

    石崎説明員 私は昨年の八月に就任したばかりでございます。
  43. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、この中央資料隊の先ほど示しましたこういう資料が、採用しなかった、採用したというものにかかわらず、ほとんどあなたのところに網羅されているのじゃないですか。
  44. 石崎昭

    石崎説明員 この種の資料、記録は、私のところに必要なものは保存されております。
  45. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、あなたはこの問題に関してはほとんどお答えになれるだけのお立場であり、古いことだとおっしゃいますが、古いことでも過去のものをさかのぼって調べれば、あなたの手元でほとんどわかるということになるわけですね。  それで、あなたがお調べになって、参議院予算委員会質問に従って資料検討をいろいろなさったと思うのですが、そのあなたのお立場で、この資料は似ておるけれども、もともとのものとは違うということになるわけですね。そうしますと、この資料というものはつくられたものなんでしょうか。あるいはほかの方でこういうものがまだあるわけなんでしょうか。似ているけれどもマル秘なんか打たないということをおっしゃっておられますけれども、これにはマル秘という判こを押しておるわけです。それでこれは「複製を禁止する」「取扱注意」。だから、だれかの手によって、中身は似ているけれもど違っているような内容のものがあった、どこかにあった、つくられておるということになるわけですか。その辺どうなんです。
  46. 石崎昭

    石崎説明員 私どもの方では、過去の記録を予算委員会の御質問があって以後早速調べたわけでございますが、その結果出てきた書類は、先ほども申し上げましたように、いま私が拝見したものとは大変よく似ておりますけれども、違う点がございます。私は、予算委員会で御提示になったものが偽造文書であるとかあるいは改ざんされたものであるとかいうことは、何とも申し上げられません。それはわかりません。ただ申し上げられますのは、私どもが保存されている書類の中から出してきたものと、いま拝見したものとは若干の違いがある、大変よく似ておるけれども違いもあるということ、これははっきり申し上げられるわけでございます。
  47. 沖本泰幸

    沖本委員 これはあなたの方でも問題になるんですね。あなたの方の保管されている資料と私たちが持っている資料とは違うということは、あなたの方でも問題になるし、われわれの方としても問題になるわけです。全然全部が違うということではないわけですけれども、そういう別々の資料があったということは、いわば広範にあちこち散らばったということも言えるわけですし、同じような資料がよそにも流れておった、そういうことも言えるわけです。これはマル秘扱いであったというふうに、われわれの方では判こが押されてあるということになるわけですけれども、これは重大な問題になりますよ。委員長に申し上げたわけですから、後で確認はしていただきますけれども、そういう点についてあなたはどうお考えなんですか。
  48. 石崎昭

    石崎説明員 私どもが保存しております文書は、作成されて以後、防衛庁の中で責任ある人々によって保存されてきたわけでございますから、これが途中で偽造ないし改ざんされるということは、私はあり得ないことだと思います。したがって、私どもが持っています、私どもが発見いたしました書類は間違いなく本物であると私は確信しております。一方、いまお示しになったものは、これは本物であるかないかは、私何ら発言する資格ございませんのでわかりませんけれども、少なくとも私どもが持っているものは、内部で作成され、内部で保管されてきております、責任者がずっと保管してきたわけでありますから、途中からこれが偽造とか改ざんとかされる可能性がまずない本物であると存じます。
  49. 沖本泰幸

    沖本委員 そういたしますと、この「国内一般整理項目」の中で「目的」というのが書いてあるんですね。  一 目 的    この情報整理項目(以下整理項目という)は、中央資料隊における電計入力資料の整理に関する基準を示すことを目的とする。  二 構成   (一) この整理項目は、国外一般整理項目国内一般整理項目、特別整理項目及び補助整理項目からなり、各々の性格は次のとおりである。    ア 一般整理項目(国外、国内)      主として長期一般的要求に基づいて収集した情報資料を多角的に使用できるように整理するための整理項目。    イ 特別整理項目      主要な問題について収集した情報資料を使用目的に応じて総合的に整理するための整理項目。    ウ 補助整理項目      国名表及び地名表からなり、一般整理項目及び特別整理項目を場所の観点から補足するための補助項目。(時期の観点からの整理は処置注記により補足する)こういうふうなことがいろいろ書かれているわけです。   (二) 項目は、一般整理項目においては、国名等(地名)——項目——項目——項目——細部項目等から、また特別整理項目は、△特別整理項目(国名又は地名)——項目——項目——項目——細部項目等からなり、以下必要に応じて逐次細分類することができる。   (三) 個有名OB資料は、いくつかの種類にわけ、その一部は定形化し、別途補足する。こういうふうになっているわけです。  そうして「5 政治」という中で各項目ができて、「小項目」「細部項目」「細々項目」「備考」となっており、この中の分類で「A 全般」「B国会」ということで、「(1)概要 (2)衆議院 (3)参議院」「(a)概要 (b)組織・機構 ア 役員等 (c)勢力分野 (d)運営 (e)議事 (乙)その他」。それから「政府」欄があって、「組織・機構 内閣・省庁」「内政」「概要 基本政策 その他」。「外交」の点では「組織・機構 主要人物」「基本政策対米 対ソ 対中共」というようなことが書かれております。  それから、番号で「12」と打たれている中に、黒柳議員指摘した「文化思想団体 マスコミ団体宗教団体その他の団体」これが「社会団体」。「F」の項目で「労働団体」「総評系団体同盟系団体 中立労連系団体 新産別系団体 その他の団体」こういうふうにあり、「大衆団体」では「平和団体 学生団体 青年団体 婦人団体  市民団体農漁民団体その他の団体」。「H外事団体」「在日朝鮮人団体 日朝関係団体 在日中国人団体 日中関係団体 在日ソ連人団体」。それから備考に、「外事団体とは、在日外国人又は日本人を含めて結成している団体」。  長くなりますから主なところをいきます。  それから「13」という番号を打っている「人物」の中に、「政治関係」として「政党役員 国会議員 内閣 裁判所 自治体」。それから「社会関係」が出ているわけです。そして「備考」に「OB処理項目」として「氏名 生(没)年月日  性別 国籍 住所 家族 交友 学歴 職歴派閥 特性 活動歴」というものがあり、表に「国内一般整理項目」と、こういう表題を打ち、それから「中央資料隊」こういうふうに打たれているわけで、あなたのおっしゃったマル秘とか日付が入っていないとかという食い違いはあなた指摘しておりますけれども、全部は述べておりませんが、いま申し上げたような項目はあなたの持っている資料と一致しているわけですか、どうですか。
  50. 石崎昭

    石崎説明員 いま私は手元に持ってきておりませんが、私ども調査した結果では、内容は非常によく似ております。たしかほとんど大部分、全く同じだったと思います。
  51. 沖本泰幸

    沖本委員 それから、これを小さくした「OB整理項目」というのがありますけれども、この「解説」として、  1、収録の範囲及びOB整理項目の新設    本OB整理項目中央資料隊情報整理項目の趣旨(国外一般整理項目(案)(四三・三・二六)掲載)に基づいて作成したもので本冊収録分は四十三年五月までに概成された案を集成したものである。今後新設されるOB整理項目は、逐次分冊として追加する予定である。  2、本刑に収録した整理項目の種類及びその特色   (1) 人物OB整理項目     情報上重要な人物に関する資料を電計に入力する際の整理の基準とする。   (2) 団体OB整理項目     各種団体等。政府関係以外の組織体に関する資料を電計に入力する際の整理の基準とする。   (3) 機関OB整理項目     国家の立法、司法、行政機関政府機関およびこれに準ずる公的組織体(国防省の幕僚機関及び付属機関、軍学校等を含む)に関する資料を電計に入力する際の基準とする。  これは外国を当ててだと思いますけれども、こういうふうな内容のものが、皆なっているわけです。この中には日付とか経過というものが「解説」として載っておるわけですけれども、こういう内容も同じなんですか。違うわけですか。どうですか。
  52. 石崎昭

    石崎説明員 内容についてはほとんど同じであるというふうに、調査の結果わかったわけでございます。
  53. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、参議院予算委員会黒柳議員がいろいろと問題を指摘したという点についての内容的なものは、似ておるけれども、違うということではないのですね。いま私がいろいろ述べている点についても、その中央資料隊がこういうものをつくりあるいは計画した、あるいはあなたのおっしゃる点ではいろいろ検討したけれども採用しなかったという内容について、違っておるという点はないわけですね。十分問題としていろいろと議論するだけの中身はある、こう受け取ってよろしいですか。
  54. 石崎昭

    石崎説明員 調査した結果では、内容は同じである、細かく一言一句まで照合しておりませんけれども内容はほとんど同じであると存じます。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、これはコンピューターを導入する準備として、あらゆる角度からコンピューター可能性を追求する、そのためのプログラムとして、いわば図書館の目次のように、あらゆるものを網羅的に大変欲張って盛り込んだ、あくまでも事務的な素案であると私は承知しております。そうして、その中には自衛隊任務に照らして適当でないと判断される部分もあるので、そういうものを採用しなかったということは、防衛庁としては当時十分慎重に検討した上で、シビリアンコントロールの実を上げておったと私は存じます。
  55. 沖本泰幸

    沖本委員 しかし、私たち一般国民が日常生活の中でしばしば問題にされますけれども、たとえばタレントの生活内容について、週刊誌の中で暴露する問題がプライバシーの侵害であるという大きな社会問題を提起してみたり、われわれの生活の中で自己の生活環境以外の人の生活内容を調べるということは、これはお互いにプライバシーを侵すという点で不文律とされておるわけでもあるし、あるいは法律的には、個人人権を侵したということで重大問題として法廷闘争の場に問題が引き出されたり、そういうふうなのがわれわれの生活環境の中の、お互いに成人に達した以上は守らなければならない社会的な常識としてお互いが持っておるということになるわけですけれども、そういうものを侵して、防衛庁の中でそういう資料を集めなければならないほどの内容のものが計画されたという考え方の基本というものは、防衛庁の中に絶えずそういうものがあるのですか。その辺はどうなんですか。
  56. 石崎昭

    石崎説明員 いま御指摘のありましたようなそういう重大な問題であるがために、そのゆえにこそこれを不採用にしたという当時の防衛庁の判断は、私は正しいものだと存じます。
  57. 沖本泰幸

    沖本委員 判断が正しいとおっしゃるけれども、そういう計画を立てて、実際にこの計画ができたということ自体に重大な問題があるわけですね。だから、われわれが重大だというようなものを種々検討した結果、不適当といって不採用に決めたということは適切な処置であった、こういうことか知りませんけれども、少なくともこういう問題を検討するところというのは、防衛庁の中でも相当すぐれた人が集まってこういう計画をなまるはずなんです。そのすぐれた能力を持った方々がこういう計画をしたということに問題があるのじゃないのですか。  だから、最初にお話し申し上げたとおり、そういう基本的な物の考え方というものが防衛庁の中にあるということが言えるのじゃないか。これは適当ではないというふうにしたことは、防衛庁の方は非常に適切な判断であったと、そういう内容の問題ではないと思うのですね。そういう考えを持ったということは、これは重大な問題であって、防衛庁全体の中に、基本的な問題としてこういうところを指摘して、そしてそういう考えやそういうことをやってはならぬということが徹底されなければならないと思うわけです。しかし種々検討した結果そういうふうになったということと、先ほど言ったとおり、クーデターの計画があったり、突拍子もないものが防衛庁の中から引きずり出されてきて、そして国会で議論されるというところに、防衛庁の重大なものがあると私は考えておるわけなんです。  その辺は、そういうところになると、あなたは自分が答えるのが適当であるかどうかわからぬと言いますけれども、あなたも教育を受けて、仕事を離れたら日本人として日本国内に住んでおって、一般常識をお持ちなんです。個人思想信条を侵してはならないという点は、あなたも憲法の基本的な問題としてよく熟知していらっしゃると思うのです。それが裁判所の中まで調べてコンピューターに入れる。裁判所見えておりますけれども、後ほど聞きますけれども、そういうものが情報活動として必要であったという考え方、こういうふうに、国会の中から、政府の中身から、全部ほじくり出して、国会議員の中まで、あるいは、黒柳議員指摘していましたけれども、三木総理あるいは防衛庁長官も打ち込まれるかわからないし、各政党の代表から何から、いろいろなその人のプライバシーの問題全部が収集されて打ち込まれる、そういうふうな考え方を持つことは重大な問題だというふうに考えなければならないはずなんですけれども、あなたの考えとして、私の申し上げたことに対してどういうお考えですか。
  58. 石崎昭

    石崎説明員 何遍も申し上げますように、防衛庁は与えられている任務を遂行するための役所でありますから、その任務に照らして、いま御指摘のあったようなことはそもそも任務でもないし、必要も認めないわけでございます。したがって現にやっていないわけでございます。先ほどから御指摘のあることは、やっていないことについての御質問だと私は聞いております。事務的には、コンピューターの機能を最高度に生かすということであらゆる可能性を追求した結果、網羅的にいろんなものを盛り込んだ案がつくられたことはあるわけでございますけれども、それは、防衛庁としては十分検討を加えた結果、任務でもないし必要もないということで採用しなかったわけでございますから、したがって、個人思想信条をあたかも防衛庁が現に調査しているかのごとくおっしゃられても、そういうことはやっていないわけでございます。やっていないんだということを私はこの際よく申し上げたいと思います。
  59. 沖本泰幸

    沖本委員 あなたの方から、やっていないということは何度も聞いているわけなんです。黒柳さんも「百歩譲って」ということを言っているのです。あなた方の言うとおり「百歩譲ったとしても問題だ」ということなんです。われわれは、やっていると理解しているわけなんです。内閣の方からその資料を欲しいと言ってきたということも聞いております。だからわれわれは、まだ現に防衛庁の中にあると、こう認識しているわけです。これはわれわれの一方的な考えですけれども。だから、あったとしたらまだ突っ込んで聞かなければならない問題がたくさんあるわけです。アメリカにそういう情報を流したかどうかという点までわれわれは追及したいわけです。しかしながらそういうことを考えること自体が大変なことなんだということです。コンピューターにあらゆる可能性を考えてやったと言うけれども、あらゆる可能性を考えてやることについてはいろんな方法があると思うのです。しかし、こういうふうにまとめられて、内容検討されたということ自体が問題だというわけです。いま使っていないのだから、やっていないのだから、やっていないことについていろいろ言われるのは心外だと、こういうふうな受け取り方はできます。しかしわれわれの方としたら、百歩譲って、自衛隊の方でそういうことを考えたこと自体が問題だとしているわけです。  だからあなたの社会的な考えとして、社会人として一個人の立場に立ったとき、そういうことが許されるか許されないかという点から考えていって、防衛庁の方ではそういう問題は採用しなかったとおっしゃっておるけれども採用しないにしても、それに深く中身に入っていってそういう立案をしたことが問題だということで、防衛庁内に徹底をすべきことじゃありませんか。そういう計画を立ててはならないし、そういう考え方は持ってはならないのだ。ただ任務外だということで一片の問題として片づけられる問題ではないということになるのです。だから最初に言ったように、そういうあなたのおっしゃるような感覚でおるから、いろいろなことが計画されたり立案されたりするということになるし、そういうものもあるから、坂田防衛庁長官はもっとシビリアンコントロールを強めなければならないというようなところまで話が出てくるということになると考えるのです。ですから、あなた、石崎さん自身が、いつも防衛庁に年がら年じゅうおるわけではなくて、家庭にお帰りになって一社会人として生活なさっている分が半分あると思うのです。そういう立場に立って、こういうふうな物の考え方が正しいかどうか。正しくないなら、まして任務外だといってもこういう計画をしたところに問題を指摘して、徹底しなければならないところに防衛庁の中枢部としての仕事というものがあるはずです。その辺、どうなんですか。
  60. 石崎昭

    石崎説明員 計画したこと自体が問題である、あるいは感覚が問題である、物の考え方が問題である、姿勢が問題であるということになりますと、これはもう私のお答えする範囲を越えた問題だと思います。まさに個人思想に触れるような問題ではないかと私は思います。防衛庁としては、何遍も申し上げますとおり、慎重に検討を加えた結果、任務外であり、必要もないことであるということで採用しなかった、つまり実行に移さなかった、役所としてはこれだけのことに尽きると思います。物の考え方、感覚まで云々されても、私にはちょっとお答えのしようがございません。
  61. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは、防衛庁長官は「そういうことがあったとしたら重大問題だ」ということを参議院予算委員会で述べていらっしゃるわけです。「その責任についてあるいは処分については後ほど検討する」ということまで総理大臣も述べているわけです。あなたのおっしゃるとおり、そういう問題は個人思想にかかわる問題であって、問題外だというふうにとらえていいのですか。その点はどうなんです。
  62. 石崎昭

    石崎説明員 防衛庁は、任務外のこと、また必要のないことについて、慎重に検討した結果、このような案は採用しなかったわけでございますから、私は、防衛庁としての責務はその件に関する限りその段階で十分果たしていると思います。
  63. 沖本泰幸

    沖本委員 いまあなたのおっしゃっていることは問題ですよ。防衛庁長官や総理大臣が「問題だ」ということになっているのです。「責任の処分については実情を検討して考える」という点を述べているし、防衛庁長官も「これは重大な問題である」ということを述べていらっしゃるわけです。だから、採用しなかったということで問題はもう済んでいるというふうにとらえてもらうことは困るわけです。あなたはそういう立場にないかもわかりませんけれども、あなたの方で全部こういうものの立案なり何なりをおやりになっているわけですからね。そこのあなたがそういう考えでおったのではこれは問題なんです。  いまここであなたと論議をしても仕方がないことですから、後でこの問題は、記録に残ることですから追及します。そういう防衛庁考え方でいらっしゃるのかどうかですね、問題にしているのは。片づいて、それで終わって問題ないということではないわけでしょう。予算委員会でも、後、理事会でこれを検討するということになっているわけです。いまいつまであなたと問答してみたってしょうがないことですけれども、これからこの点はあなたも十分反省して、防衛庁の方も反省してもらわなければならないわけです。  それでは裁判所もお見えですから、裁判所の方へちょっと伺います。  裁判所の方では、あなたの方も調べるという計画があったわけです、裁判所が知らない間に。その点についてどうお考えですか。
  64. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 私ども、そういうふうなことが計画としてなされていたということも全然知らないわけでございます。しかしながら結果的には、防衛庁で申しておりますように、現在そういうようなものはコンピューターに入れていないということでございますので、それについて特に申し上げるべき意見というものはございませんので御了承いただきたいと思います。
  65. 沖本泰幸

    沖本委員 採用しなかったという答えだということなんですけれども、われわれはあるだろうと言うのです。  それじゃ石崎さんに伺いますけれども、この理事会でも、専門家によって、あるのかないのか。というのは、ただあなたの方で採用しなかったということだけで、いまもってやってない、それでそうやったんだからいいじゃないかというあなたの方のお答えなんです。われわれはあなたのお答えだけで信用するというわけにはいかないわけです。ましてこれも本物じゃないというお答えなんで、これも重大問題なんです。これはあとで党で検討しまして問題にしていきますけれども、そういうことなんですからね。われわれは国民を代表した国会なんです。国民の意思を代表して国会で日本のすべての政治の問題に対して議論しているわけです。政府の中に防衛庁はあるわけです。あなた方は任務によって仕事をやっていらっしゃるということになるのですけれども、その中の中身に重大問題があったということなんです。ですから、実際にコンピューター実物について専門家と一緒に行って、事実やってないという点を確認したいわけです。予算委員会の方では理事会検討するということになっております。もっとも内閣委員会、いろいろな専門の常任委員会がありますけれども防衛庁の中へ専門家と一緒に調べに行きたいと思うのです。その点どうなんですか。それでなければわれわれには、あるかないか、やってないかというのはわからないわけです。あなたの防衛庁の方で、言葉の上でやっていません、採用しなかったということだけであって。その点、どうなんですか。
  66. 石崎昭

    石崎説明員 コンピューターを専門家の目や手によって調べられることは大変結構なことではないかと思います。
  67. 沖本泰幸

    沖本委員 それじゃ調べに来てもらってもいいというわけですね。むしろあなたの方から、どうぞ専門家を連れてきてお調べ願いたい、こう答えていただきたいのですが、その点どうなんですか。
  68. 石崎昭

    石崎説明員 別にぜひいらっしゃってくださいとは申し上げませんけれども、そういう重大問題としてお考えのことについて、実態を正確にお知りになりたいというのはまことにごもっともだと私は思いますから、お調べになることは大変結構なことだと思います。別にぜひいらっしゃってくださいとかなんとかいうような問題ではないと思いますので……。
  69. 沖本泰幸

    沖本委員 じゃこの件は後刻委員長にお計らいいただいて、調べに行くという点について理事会で諮っていただきたいと思います。  それで、同じようなことになるわけですけれども、行管庁、お見えでございますね。——それで、あなたの方では「電子計算機利用に伴うプライバシー問題に関する意識調査結果報告書」というのをおつくりになったわけですね、ここにいただいておりますけれども、それでまとめまして、あなたの方でそういう意識調査をいろいろおやりになった段階——現在盛んに各省間でも電算機を導入しておりますし、また国鉄なんかでは切符を売るための電算機をどんどん使って切符を売っておるということになるわけで、非常に能率をよくしていくという点で、これはずいぶんあちこち導入されているわけですけれども、このプライバシーを侵害するという点について意識調査をおやりになった結果としてどういう調査がまとまったか、御説明いただきたいと思います。
  70. 佐々木晴夫

    ○佐々木説明員 お答えします。  いま先生御指摘の電子計算機利用に伴うプライバシー保護につきましての意識調査は、現在行政監理委員会に諮問中の「行政機関等における電子計算機利用に伴うプライバシー保護対策のあり方」という問題につきましての御審議の参考として、私どもの方で昨年十一月に東京都周辺並びに埼玉県行田市につきまして調査をいたしたものでございます。  お尋ねの調査結果について申し上げますと、実は問題を十八問一応用意いたしまして、これにつきましてのそれぞれの回答をまとめたわけでございますけれども、ごくかいつまんで申し上げますと、一つには、まずたとえば情報化社会なりそれからコンピューターについてどの程度認識度があり、それからまたどういう理解の仕方をしておるかということを一応調べました。これにつきまして、たとえばみどりの窓口そのほか、コンピューターの利用状況につきましては、八〇%以上の方が社会のあちこちの面で一応利用しておるということを御認識でございます。コンピューターに対するイメージとしましては、一般に、便利で現代社会になくてはならない存在であるという理解、あるいは便利な道具であるという理解が大変多うございました。  次に、プライバシーということが主題でございますけれども、このプライバシーという言葉につきましてその認識度を一応聞きましたところ、これは東京圏、行田市とも、ほとんど全員、実に両方とも九八%という数字でもって認識をしておられます。現実にプライバシーを侵害された経験があるかどうかということにつきましては、両方とも六%程度——これはそれぞれ主観が一応入りますけれども、侵害されたことありという方が六%程度でございます。したがいまして、プライバシー侵害という事案につきましては、いわばイメージにとどまるわけでございますが、どういうイメージを持つかということにつきましては、これは、自分に関するデータが知らないうちに集められていた場合、それから家族についてうそを言いふらされた場合、あるいは過去の経歴を言いふらされた場合、このあたりが大体四、五〇%、大変多うございました。結論的には、自分の前でこっそりといやなことがやられておるというイメージを思い浮かべる者が多いという感じでございます。  また、プライバシーの保護についての見方といたしましては、これは、絶対守るべしという方が東京圏で四二%、行田市で三五%、ある程度公開もやむを得ぬ、あるいは特に問題にする必要はないという方々がその残りございまして、大体相拮抗しておるのではなかろうかという感じでございます。ただ、コンピューターの利用に絡みますプライバシー保護の問題につきましては、いまのところ関心をお持ちの方は両方とも一六%程度でございました。  それから、一般的に他人に知られたくない情報はどんなものがあるかという質問をいたしましたところ、年収、それから資産の状況、そうした経済的記録を挙げる者が、これが東京でも行田でもほぼ三四、五%ございます。次ぎまして、たとえば政党あるいは宗教などの思想信条に関する記録、これがたとえば東京圏で二〇%、それから行田市で二%、それから過去の学業成績などの記録が東京圏一九%、それから行田市で一五%、このあたりがいわば三大項目と申しますか、そういう状況でございました。  いまは他人に知られたくない一般的な情報を一応申し上げたわけですが、これらの情報を行政機関に提供する場合につきまして改めて聞きましたところ、この三大項目がやはり数が多うございますけれども、一般的に他人に対する場合に比べまして、知られたくないという比率が大分下がってまいります。一般的に他人に知られたくない情報につきまして、特にそういう項目はないという方が実は五〇%程度、両方ともございましたけれども、行政機関に対する場合に知られたくない情報は、特にないという方が東京圏で六二%、行田市で七六%ということで、大分多くなってまいっております。  それからさらに、行政機関に対する場合につきまして、年金とか恩給とか税務とか、それから犯罪捜査との関係でもって個人情報を収集、利用することにつきまして尋ねましたところ、その目的と関連する種類の情報については構わない。目的に相反する、相反するといいますか、目的外といったような感じのものにつきましては、やはりそれは望ましくないという御回答が多くなったわけでございます。また、行政機関相互のそのような目的で行いますデータ交換につきましても、構わないとする者が半数を超えておりますけれども、一方で、これを民間に情報提供することにつきましては、禁止すべしとかあるいは好ましくないという否定的な回答の合計が七割から八割に達しております。  また、行政機関における各種個人情報の集中管理の可否につきまして尋ねましたところ、禁止すべしとする者が東京圏で八%、それから行田市で五%程度ございますけれども、あと、わからないとか、構わないとか、好ましくないという回答がほぼ三分されております。  最後に、電子計算機による情報処理に絡むプライバシー保護の必要性につきまして尋ねましたところ、東京圏では五六%、行田市では四四%がそれぞれ必要であると回答しておりまして、また、その対策の内容につきましても、諸外国で行われております例を一応出しましてその必要性を聞きましたところ、これは相互に若干ダブっておるわけですけれども、いずれも大変たくさんの方が必要とするというような御回答でございまして、これはできるだけ手厚く対策を講ずべきであるということのいわば反映であろうかと考えております。  以上でございます。
  71. 沖本泰幸

    沖本委員 きのうもNHKのテレビで、デトロイトの失業者の問題を海外報告で取り上げておりましたけれども、その中で、失業者が就職の窓口で、やはりあれはコンピューターだと思うのですが、テレビの画面に、その人の内容のものがどんどん担当の人のところへ行っているような仕組みになっておるわけで、外国でも、保険の関係とか医療の関係とかいうことで、その人の記録を残していくということで、広く使われておるわけですけれども、その使われ方にやはり問題があるということになります。  それで、行政管理庁の方では五十年度にプライバシー保護法をつくるという考えで、諮問委員会から出た答申に従って御検討になっていらっしゃるということなんですけれども、この保護法を五十年度中におつくりになるんですか、どうなんですか。
  72. 佐々木晴夫

    ○佐々木説明員 お答えします。  先生御指摘のように、電子計算機の利用ということは大変効率もよく、便利であるという面がありますとともに、個人情報を電子計算機でもって整理をするという場合には、たとえばお互いの情報交流が大変便利になる。また、情報の集中化が一応行われやすくなるというふうな、いろいろな御批判も一方にあるわけでございます。現実にはいまのところそれほどの進展はございませんけれども、いわば将来に備えて、そうしたような保護対策を護ずべきではないかという御議論が大変あちこちでも議論をされておるわけでございます。そういう意味で、私ども行政管理庁では、私ども機関でございます行政監理委員会に対しまして、昨年の六月に、先ほど申しました「行政機関等での電子計算機利用に伴うプライバシー保護に関する制度のあり方」につきまして諮問をいたしたわけでございます。ただいまいろいろと検討中でございまして、実は問題が大変複雑であり、広範である関係でもって、当面問題点の整理に力を注いでおるわけでございまして、一応その整理が終わります段階がこの四月の初めかというふうに予想されております。整理が一応終わりました段階で中間報告という形でもって一応出しまして、これで各方面の御意見を改めていろいろと承りたいというふうに考えております。最終答申はしたがいまして、各方面の御意見を承った後において最終答申という形になってまいりますので、その答申の時期は相当まだ時間がかかるものだというふうに一応実は考えておるわけでございます。  もう一つ、先生御指摘のプライバシー保護法をつくるのかつくらないのかというお話につきましては、これは、プライバシーといいますといわば民事法の領域でございますので、私どもの行政管理庁で直接扱うということではございませんけれども、それを背景にしまして、先ほど申しました行政機関のいわば道具としての電子計算機の利用につきまして、そういうことを意識しながらやっていくことにつきまして法律的に措置するかしないかという問題であろうかと思いますが、先ほども申しましたように、大変いろいろな関連の問題が実はございます。たとえば、いまの公務員の守秘義務というふうな歯どめも一応あります。それからまた一方で、たとえば統計みたいな分野ですけれども、個別にそうしたような対策が打ち立てられておる部分もございます。そういうことも一応ございまして、法律が必要であるかどうかということ自体につきまして、ただいま行政監理委員会検討中の段階でございます。法律が必要であるということに一応なりました場合には、いま申しました最終答申、若干まだ時間がかかると思いますけれども、それを待ちまして作業をいたすことに一応なりますので、これは五十年度とかなんとかということにとらわれずに、じみちに検討してまいりたいというふうに考えております。
  73. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは行管庁の佐々木さんはもう結構でございます。  じゃ、自治省の方にお伺いいたしますけれども、たとえば「国立市電子計算組織の運営に関する条例案」ということで、三月の六日に市長が提案して、「市民福祉の向上のため、プライバシーの保護をはかりつつ、行政事務を効率的に進めようとするものである。」ということで、「この条例は、市民の基本的人権を守り市民の福祉向上のため、行政事務近代化を目指し、電子計算組織を適正に利用することによって効率的行政事務の運営をはかることを目的とする。」ということで、扱い方について、第三条の中で「制限」として、「電子計算組織の利用にあたっては、市民の基本的人権を尊重し、市民の個人的秘密の保持をはからなければならない。」こういうことの条例案を出しておるのは御存じだと思うのです。  民間はもちろんのこと、各地方自治体でもそれぞれこういう電子計算機をどんどん使うようになっているわけですね。それで自治省の方としては、このたくさん使われる問題についてばらばらであってはいけないわけですね。こういうふうな問題について、いわゆる人権保護、市民の人権を守っていかなければならない、こういう観点に立って何らかの方法をお講じになっていらっしゃるわけですか。
  74. 川端亮二

    ○川端説明員 お答えいたします。  ただいま沖本委員から御指摘いただきました地方公共団体における電子計算機利用に伴うプライバシー保護に関する基準と申しますか、そういった点につきましては、行政監理委員会の御答申と申しますか、審議の状況をにらみ合わせながら、私どもとしては慎重に検討してまいりたい、そういうふうに考えております。
  75. 沖本泰幸

    沖本委員 慎重に考えると言って、その慎重は、役所の立場で慎重にお考えになるのですか、市民の立場で慎重にお考えになるのですか。
  76. 川端亮二

    ○川端説明員 地方公共団体目的は、住民の福祉の向上のために設立されたものでございますので、住民本位に考えてまいりたいと思っております。
  77. 沖本泰幸

    沖本委員 いまの川端さんのお話ですと、まだまとまっていないというふうに受け取れると思うのですけれども、その辺、自治省の方でも、各自治体で大きい小さいにかかわらず相当能率を上げていくために電算機の導入ということが図られていっているわけですから、それがあるためにこういうふうな条例を地方自治体でどんどんつくり出しているということが言えるわけですから、早々にまとめていただいて、それで何らかのことできちっとした自治省としての対策というものをお立てになっていただきたいわけです。その点、お願いしておきます。これは委員長もよく御理解できるところではないか、こう考えるわけですけれども——それじゃ川端さん結構です。  それで、法務省の人権擁護局長ももうお越しになったので……。現在いろいろ社会的にこの問題が出ておって、人権擁護問題としても問題点がたくさん出ていると考えられるわけですけれども、現状としてはどういうものがあってそれで人権擁護局としてどういうふうにお考えになっているか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  78. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答えいたします。  コンピューターに関する関係では、私どもの方にいわゆる人権侵犯事件として参っているものはいまのところございませんが、ただ、早くから、新聞、週刊誌、ラジオ等によるプライバシーの侵害という問題、あるいは住民基本台帳法に関係する問題で、プライバシーの侵害があるのではなかろうかというふうな訴えも受けておりまして、私どもはその点については、プライバシー保護が全うされるように、私どもの面から極力努力している所存でございます。  それで、どのように考えるかという問題でございますが、これは具体的な個々の事件についてどのような適正な処理を図るかということに基づいてお答えすべきことかとも思いますが、ただいまのコンピューターについては全く事案もございませんので勢い抽象的、一般的な考え方をお話しする以外にはなかろうかと思いますので、その点御了承願いたいと思います。  コンピューターとプライバシーとの関係につきましては、まずその情報収集、それから入力の問題、入力されたものを管理運営する問題、さらに出力の問題等があると思います。いずれにしましても、行政の能率を上げるということ、これは非常に大切なことでございますけれども、他面、プライバシーを侵すおそれもあり得るということで、その二つの要請をどう処理していくかという点に問題があるのではなかろうかと考えております。  まず、入力の部分についてわれわれが考えておりますところは、行政機関がそういう情報収集をして入力する必要があるかどうか。仮に必要があるとしても、その範囲をどの点にしぼるかという問題があろうかと思います。さらに、そのようにして収集、蓄積、整理されたものをどのように運営、利用するかという問題が次に続いてくるだろうと思うのでございますが、まず前段の問題につきましては、これまたはなはだ抽象的で恐縮でございますが、行政機関の行政目的に照らして相当と認められる範囲内において、妥当な方法で収集を図るということがぜひ必要ではなかろうかと思います。そしてその後の運営管理及び利用の面につきましても同様な考慮が必要でありますし、プライバシーの侵害のおそれがないように十分配慮されるべきではなかろうか、かように考えております。
  79. 沖本泰幸

    沖本委員 時間も余りなくなってきましたのでまた端的に申し上げますけれどもコンピューターの弊害というのは次のようなことが考えられるわけです。悪意の利用者に悪用されるおそれがある。あるいは部内の者が不当に利用したり、いわゆる個人団体などの情報を盗む、こういう点があるし、実害が生じる。たとえば個人思想信条に関するプライバシーの侵害、それから情報が不十分であったり、誤りであったり、あいまいであったりしたとき不利益をこうむってしまう。たとえて言うなら、下級審で有罪記録があったけれども、その記録だけで最高裁で無罪の判決を受けた場合には、まだそういうものを記録されているということは本人は大変迷惑するということであったり、同姓同名の人たちの場合も、これは間違いが起こってくるということであったり、かたかなで打ち込まれるから文字の表現の解釈が食い違ったり、このほかにもいろいろあるわけですね。しばしば週刊誌なんかのすっぱ抜きなんかでプライバシーが侵害されるということで、これはもういろいろと新聞種になるような問題が起きるわけですね。  そういう点を考えて、コンピューター人権問題に関する人権保護法というような法律をつくったら、こう考えるわけですけれども、いまのところばらばらで各種コンピューターが使われているということになりますからいわゆる実例がいままで挙がってきていない。実際には実害が出ているわけですけれども人権擁護局の部門として、各地方なり本省の方の人権擁護局の方へ問題が上がっていないということである。ただ、それは裁判に持ち込まれて、人権侵害事件として裁判が行われているというようなことで、あなたの方を通過しないというようなことがあるわけですから、その点をしんしゃくしていただくと、そろそろやはり個人人権を守っていく、憲法の根本に照らして、いわゆるコンピューターが犯す過ちあるいは犯罪、こういうことに関して保護していくような法律をつくったらというふうに考えるけれども、その点どうなんですか。
  80. 萩原直三

    ○萩原政府委員 個々の具体的なケースあるいは一般啓発活動を通じまして、プライバシーの侵害がないように努めておりますし、また今後もそのようにしたいと思っております。ただ、立法という形でプライバシーを保護するという問題になりますと、これは私どもの所管外でもございますが、ただ人権擁護の観点からだけ申し上げさしていただきますると、やはりプライバシーという概念自体が、一応判例の上で述べられておりますけれども、立法対象としてとらえる場合には、現行の法制との関係もありまして非常に困難な問題があり得るのではなかろうかと思います。また、その他の問題につきましても検討すべき多くの問題があるのではなかろうか、かように考えております。
  81. 沖本泰幸

    沖本委員 将来、より現実にこの問題、先ほど防衛庁とのやりとりもお聞きになっていらっしゃったと思うのですが、各政府部内においてもいろいろ問題が出てくるわけですから、一つにまとめていくという立場からも法律をひとつ御研究していただきたいと思います。その点をお願いしたいと思います。     〔田中(覚)委員長代理退席、大竹委員長代理着席〕  それではコンピューター人権の問題はこれぐらいにして、あと、最高裁と民事局長がお見えになっているので、民事局長へ先にお伺いいたします。  商法の四百六条ノ三で休眠会社の問題が出ておって、それで中村法務大臣が四十九年十月一日付で「本日現在において最後の登記後五年を経過している株式会社は、まだ営業を廃止していないときは、商法第四百六条ノ三第一項の届出に関する規則(昭和四十九年法務省令第二十六号)で定めるところにより、本店の所在地を管轄する登記所に、その旨の届出をされたい。本日から二月内にその届出がなく、また登記もされないときは、その株式会社は、その期間の満了の時に解散したものとみなされる。」ということで、そういう通達をお出しになっていらっしゃるわけです。「公告アリタルトキハ登記所ハ同項ノ会社ニ対シ其ノ公告アリタル旨ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス」「第一項ノ規定ニ依リ解散シタルモノト看做サレタル会社ハ其ノ後三年内ニ限リ第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依リテ会社ヲ継続スルコトヲ得」というこになっております。  商法改正に伴って休眠会社の規定が新設されたわけですけれども、その運用状況——時間がありませんからもうこっちから申し上げますけれども、四百六条ノ三第二項に当たる規定によって通知を発送した会社の数、そのうち解散したとみなされる会社の数。通知の発送を受けたところは九万六千四百八十、解散したとみなされる会社の数は六万七千九百五十三、七〇・三%。  解散したとみなされる会社の中で、営業を廃止していないのに解散したとされた会社が現に存在しておりますけれども、これはどういうことになっておりますでしょうか。そういうふうな会社の実態をつかんでいらっしゃるかどうか。また、これらの会社に対する救済措置はあるのかどうか、その辺をお伺したいと思います。
  82. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 昨年、商法の一部を改正していただきまして、その結果新設されました商法第四百六条ノ三の規定によりまして、ただいま御質問にございましたような中村法務大臣、当時の法務大臣の公告がされまして、ただいま仰せになりましたような数の会社がその対象になったということは大体そのとおりでございます。  その結果、まだ営業をしているような会社で解散とみなされ、そして解散の登記がされたものがあるということでございますが、これは御承知のように、法律の規定は登記を基準といたしまして休眠会社の措置をとるわけでございまして、会社の実態を一々調べていたすものではございません。したがいまして、実際に解散の登記がされてしまった会社であるけれども実態がまだ残っておるというものもあろうかと思います。そういうものにつきましては、御質問にもございましたように、継続の決議をいたしまして、そして継続の登記をすることによってまた解散前の状態に復することができることになっておりますので、そのような措置をとる道が残されておるということでございます。
  83. 沖本泰幸

    沖本委員 具体的に申し上げますと、こういうはがきで公告をお出しになるわけですね。郵便の手違いで、継続しているのだということを出したけれども、遅配のため、あるいは戻ったり何かした関係で届かなかった、期限を過ぎて届いてしまったというふうな、会社の不可抗力の事態でそういう措置がとられるということがしばしばあるということを聞いているわけですけれども、この法律の趣旨というのは、そういう形で全部ばさばさやるということでなくて、救済してやるということが、誤ったことがあったら実際には救済してやるというのが法律の趣旨だ、こういうふうに受け取るわけなんですが、そういう立場から、そういう点について実際に救済の方法を講じてやっていただけないかどうかという点なんですが。
  84. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 わかりました。そういう御趣旨の御質問でございますと、商法の規定との関係が問題になるわけでございます。商法第四百六条ノ三は、法務大臣が公告をいたしまして、その公告をした日から「二月内ニ命令ヲ以テ定ムル所ニ依リ其ノ届出ヲ為サザルトキハ其ノ会社ハ其ノ期間満了ノ時ニ解散シタルモノト看做ス」ということになっておりまして、この「届出ヲ為サザルトキ」というのが、登記所に届け出が到達するということを必要とするものだというふうに解釈されるわけでございます。したがいまして、郵便の遅配によってたまたまその期間をおくれて登記所に届いたという場合には、非常にお気の毒ではございますけれども、法律の規定の効果といたしまして当然に解散してしまうわけなんですね。  その場合に、法律の弾力的な運用ということが考えられないかという御趣旨かと思いますけれども、これはきわめて形式的に処置せざるを得ない問題だと思いますし、また、規定の解釈から申しましても、どうも二カ月内にその届け出がなかったということになりますので、やはり一応解散の効果は認めざるを得ないというふうに思うわけです。したがいまして、先ほども申し上げましたように継続の手続をとっていただく、それによって解散前の状態に復するという方法をとっていただく以外には方法がないのではないか、このように思うわけでございます。
  85. 沖本泰幸

    沖本委員 実態そのものが、完全に休眠して、ただ事務的な手続で営業しておるという形でなくて、実際に、わずかな数ですけれども営業しておった。ところが職権で解散登記が行われたというような実態が調べた結果わかったときには、ただ定めてあるから通知を出して、もうそれで解散させてしまうということでないだけの配慮はないものかということなんですが、その辺、どうなんでしょうか。
  86. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 御質問の御趣旨は十分わかりますけれども、いかんせん、法律の規定の命ずるところによってその効果が生ずるわけでございますので、その場合には規定の解釈によって救済するという方法はないのではなかろうか、このように考えております。
  87. 沖本泰幸

    沖本委員 民事局長、もうそれで結構です。  あと、時間がありませんが、最高裁の方へお伺いいたします。大変時間を長くかけて申しわけありませんし、これから申し上げることも余り喜んでいただくことではないわけですけれども、三月五日付の新聞で「長すぎる裁判、判事もポカ」ということで、大阪の土地訴訟で、陪席交代のときに手続のミスで、結局はこのような土地の訴訟が三十年裁判に持ち込まれることになったという点についてなんですけれども、まあ、いろいろな問題はあると思うのですけれども、民事訴訟法第百八十七条一項で「判決ハ其ノ基本タル口頭弁論ニ関与シタル裁判官之ヲ為ス」ということに反しておるわけで、このような訴訟手続のミスは、最近十年ぐらいでどれくらいありますでしょうか。
  88. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  下級裁判所でどの程度あるかということは、特に統計をとっていないのでわかりませんが、最高裁で破棄差し戻しをしたという件数は、昭和四十年から昨年までで合計五件ございます。
  89. 沖本泰幸

    沖本委員 いずれにいたしましても、民事のこういうふうなことは、新聞の談話ですと、「陪席裁判官の一人が交代したあと、口頭弁論が再三、延期になったことなどもあり、うっかり更新手続きを忘れてしまったのでしょう。」ということ、そういう結果でいわゆる公正迅速に裁判を受けられる国民の権利というものが非常に侵害されているということになるわけで、そこの一点に尽きるのではないかと思います。その点に関しまして、最高裁の方では五件しかない、下級審の方は十分わからないということでございますが、こういう点、今後の戒めのため、あるいは国民の権利のために今後どういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
  90. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 この更新手続と申しますのは、審理のやり直しをやるということでございます。訴訟法上、訴訟手続は公判調書の記載のみによってこれを証明するということになっておりますので、本件の事案の場合にも、裁判官は更新の手続をしたけれども調書に載らなかったのか、それとも裁判官が更新手続をしなかったのかといったような事情はよくわかりませんけれども、抽象的に申しまして、これは明らかにケアレスミスであろうと思うわけでございます。このような訴訟手続上のミスによりまして国民に多大の不利益を与えるというようなことがあってはならないわけでございまして、そういう点に関しましては、今後とも会同その他を通じまして、そうした手続上のささいなミスを起こさないように今後とも徹底するよう、そういう機会をとらえて周知したいというふうに考えております。
  91. 沖本泰幸

    沖本委員 こういうミスは別にいたしまして、こういうことに至るまでの間に、非常に民事の裁判が長引く。これは前にも当委員会で御質問したわけですけれども、弁護士会の方の御説明によると、長いのは七カ月に一度という法廷審理が行われるという場合もあるし、四カ月、六カ月ではしょっちゅうある。それぐらい長くなりますと、もう全然頭から薄れてしまっている、その都度もう一度記録をずっと読み直してもう一度やっていかなければならないし、証人調べになってくるとはなはだ困ってくるということであり、また民事の問題はやはり相当当事者同士の利害が絡んでおりますから、反対に長引いた方が利益を得る方もおるわけで、その辺は法廷のやりとり、いろいろなものも出てくるとは思います。  それに関して、やはりこの弁護士会がおっしゃっているのは、昭和四十八年度で地・家裁、簡裁における充足数は、兼務裁判官のみあるいは裁判官未配置の庁を除いて、裁判所の全体に占める割合は五四・二%となっており、約半数の裁判所には裁判官が全く不在という点があった。この問題は毎年のように議論されておりますので、裁判所の方としても多少お考えにはなっていらっしゃると思います。また、四十八年度における下級裁判所の裁判官の定員と現在員を比較してみると、判事百四十名、簡裁判事百三十七名が不足し、判事補のみ二十名増、こういうことで、結局第一線の裁判官の不足が深刻だということが一方では言われるということになるわけで、この辺は裁判所の方としてもいろいろお考えになっていらっしゃいますけれども、やはり裁判の遅延ということがずっと話題になり続けているという点をお考えになっていただきますと、やはり国民の利害問題が十分絡むわけですから、その点についてこれからどういうふうに御対処していらっしゃるか、それをお伺いしたいと思います。
  92. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 裁判官の状況が御指摘のとおりであることはそのとおりでございます。裁判が迅速適正に行われなければいけないことはもちろんでございまして、私ども鋭意その努力はしてまいっておるのでございます。ただ、訴訟の遅延と一概に申しましても、今回の事件は農地買収の事件でございまして、私どもこれを行政事件と申しておりますが、御承知のように戦前は行政裁判所で行われておった種類の事件で、戦後、通常裁判所で全部行うようになった事件でございます。この行政事件は、実は裁判官として非常に苦手な分野でございまして、事件の性質上非常に複雑、困難であるといったような状況もございますので、行政事件ですととかく審理が長引くという傾向がございます。これはそういった面がございますので、裁判官をふやしたからといって、この行政事件について審理が促進されるということも余り直接にはございませんので、むしろ行政事件について習熟した裁判官を養成していくということが肝要であろうかと思うわけでございます。そういった関係で、最近におきましては会同、協議会、それから資料の整備といったようなことを通じまして、行政事件についても堪能な裁判官を徐々に養成しているという段階でございますので、今後そういうふうに裁判官が行政事件に習熟するということが、この行政事件の訴訟を早くする道であろうかということで、鋭意その方の努力を続けておるのでございます。
  93. 沖本泰幸

    沖本委員 大体これで、時間もオーバーしましたので終わりたいと思いますが、弁護士会の方からは裁判の遅延という問題、民事、刑事にわたっていろいろと注文が毎年のように出るわけでございますし、その間についての法曹三者のいろいろな意思の疎通なり何なりというものも十分図っていただきたいし、改善していただきたいということに尽きるわけでございますが、十分今後も御検討いただいて、こういうことのないような方向で善処していただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  94. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 稲葉誠一君。
  95. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最初に、公正取引委員会の性格というか、特に独立の問題をお聞きをし、それから現在の独禁法の七条の問題、それから統一見解なるものあるいはその他についてお聞きをしたいというふうに思うわけです。  まず、公正取引委員会の国家行政組織上の地位というのは、これは条文がありますからわかっているわけですけれども一つは、なぜ総理府の外局になっているわけですか。
  96. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会は「内閣総理大臣の所轄に属する」行政委員会でありまして、「委員長及び委員は、独立してその職権を行う」こととなっております。行政組織上は一応内閣総理大臣のもとに属し、その結果総理府の外局とされており、委員長及び委員の任命、予算等については内閣総理大臣のコントロールを受けるわけでございますが、委員会の具体的な権限行使については、上級機関の指揮監督を受けないで、その独立性が認められているわけでございます。そこで、なぜ総理府の外局になっているかということでございますが、やはり委員長及び委員の任命、予算等が内閣総理大臣のコントロールを受けるということを考えまして、職権行使は独立ではございますが、委員会としては総理府に外局として入っている、こういうふうに解しております。
  97. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 国家行政組織法の改正が昭和三十二年に問題になったときに、公取を経済企画庁の外局にすることと、それと特別調達庁を防衛庁の外局にするということで、防衛庁関係は決まったわけでしょう。公取の方は決まらなかったわけですね。その間の経緯はわかりますか。わからなければ後でもいいですけれども、どういうわけなんでしょうね、これは。
  98. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 ちょっと即答はいたしかねます。
  99. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どうでもいいのですけれどもね。  そこで端的にお尋ねをいたしますと、権限行使が独立独立というのですが、会計検査院、それから人事院、それと公取、この三つを比べたときに、どこがどういうふうに違うということになるのでしょうか、独立性において。
  100. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いわゆる独立委員会の性格とそれから憲法関係というのがいつも問題になるわけなんですが、それは憲法の条文から言いますと、六十五条で「行政權は、内閣に屬する。」とあります。それから六十六条の三項で「内閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負ふ。」という規定がございます。それからさらに内閣と行政権の行使との関係につきましては、七十二条に「内閣總理大臣は、」云々云々と、「行政各部を指揮監督する。」という規定がございますので、それで内閣の完全なコントロールが及ばないような委員会、つまり行政機関なんですが、を設けることは憲法上どうかという問題が前からあるわけなんで、特に人事院をつくったときに国会でも大変御論議があったようでございます。そういう完全ないわゆる独立委員会をつくることは憲法に違反するんだというふうに決めつけている学説もございます。それから憲法上疑いがあるというふうに、疑いを投げかけていらっしゃる有力な学説もございます。しかし、われわれの解釈といたしましては、憲法のいま申し上げましたような規定は、大体大綱的な、特に三権分立のうちの行政権につきましては大綱的なことを書いているのであって、必ずしも例外を全然認めないものではなかろうというふうに思っております。  ただいま会計検査院のことにお触れになりましたが、これは内閣と別個に、憲法自身が会計検査院制度を置いているのですから問題ないといたしまして、そのほかの人事院とか公正取引委員会とか、あるいは国家公安委員会あるいはその他もろもろございますね、そういうものについてどうかということなんですが、いまの憲法の規定は、大体行政権については大綱的なことを書いているのであって、例外は全然ないというわけじゃないだろうということを言いますのは、たとえば行政権の行使のうちでも、人の資格の審査をするとか試験をするとか、物の技術的な検定をするなんというのはいろいろな行政機関があるわけですが、こういうのはもともと事柄の性質上、上級官庁から指揮監督を受けて仕事をするのにはなじまない本のがあるわけです。そういうのは事柄の性質上例外だと思います。  そのほかに、いわゆる行政は政治から公正中立にしなければいけないという要請がありまして、それが非常に強く要求される部門、警察なんというのはそうだろうと思うのですが、そういう部門については、内閣の完全な指揮監督のもとに置くということが、かえって民主的な行政の上からいって望ましくないと言われる部門があるわけでございまして、そういうものにつきましては内閣の監督を非常に薄めておくということが考えられるわけなんです。いま申し上げました国家公安委員会とかあるいは公害等調整委員会とかあるいは公安審査委員会なんというのはそういう部門だと思います。それから準司法的な、準争訟的なことをやる場合、これもいま言ったような観点から内閣の指揮監督を薄めておくという手法が用いられるわけでございまして、公正取引委員会もそういったもろもろの政策から、内閣の所轄ということで、その職権は独立して行わせるという法制がとられているのだろうと思います。
  101. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはわかっているのですが、そうじゃなくて、会計検査院は憲法に規定があるのですからこの独立性が一番強いわけでしょう。人事院と公正取引委員会とでその独立性というものを比べてみた場合に、一体どうなのだろうかと聞いているわけですよ。ということは、学者は、たとえば佐藤功さんなんかは、人事院の方が内閣に対して独立性が強いということを言っているのですよ。ぼくはちょっとそれがわからぬものですからそれで聞いたのが一つです。  それからもう一つの疑問点は、独禁法二十七条で「総理大臣の所轄に属する。」というでしょう。その「所轄に属する。」という意味がどういう意味かということで、たとえば人によっては、内閣総理大臣は公取に対して指揮監督することはできない。これはまあわかった。その中で、私の言うのは法案の提出権ですね。法案の提出について、たとえば関係法律案等とかそれから政令、総理府令ですが、こういうものの立案、制定について、所轄の内閣総理大臣のコントロールを受けるということがそのまま言われておるのかどうかということですね、私の聞いている問題は。この独禁法の改正ということについて総理大臣のコントロールを受けるというのでは、この公取の独立権限ということから見て疑問があるのではないかということが考えられるのじゃないか、こう思うのです。コントロールを受けるとしても、改正案をつくることについて総理府のコントロールを受けるのは、そういう点について、公取の独立の権限ということから見てどうもおかしいのではないかということを第二の質問として聞いているわけです。
  102. 真田秀夫

    ○真田政府委員 人事院と公正取引委員会と、職権の独立性につきましてどちらが強いか、どう違うのだというような御質問がございましたが、それはいずれも職権を独立して行うのであって、どうもそう違うとも思えないのですが、ただ人事院の場合は予算について例の特別な規定がございますので、その点を取り上げれば人事院の方が独立性が強いといいますか、内閣から離れて物が言える部面が強いというようなことはあるいは言えるかと思います。  それから独禁法の改正に関して、公正取引委員会が法案提出権がないので、総理大臣から、つまり総理府のコントロールを受けるじゃないかというお話でございますが、これはもともと、内閣法のもとでは国の行政事務は各国務大臣が分担管理するということになっておりまして、閣議請議は国務大臣しかできないわけでございますから、コントロールを受けるということよりも、むしろ、提出権は閣議のメンバーである国務大臣にしかないということからそういう結果になることだろうと思います。  そこで、じゃその公正取引委員会の職権独立とどういう関係になるかということでございますが、なるほど現行法で、二十八条でございますか、職権独立と書いておりますが、これは、この法律で現実に公正取引委員会に与えている権限の行使のことを言っているわけでございますから、そこで独禁法を見ましても、公正取引委員会にそういう政策立案をさせるというようなことは実はないわけなんでございます。ですから、なるほどこの前、公正取引委員会で公正取引委員会としての改正試案というものをお出しになりましたけれども、これは職権独立とは実は関係のない仕事だろうと私は思っております。
  103. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣がおいでになったので、時間が制限されていますから……。  この前、独禁法の改正について法務省の意見を総理府に求められましたね。そのときいろいろ法務省としての意見を恐らく大臣は述べられたわけでしょう。ことに商法との関連等について。それはどういうふうな法務省としての意見を述べられたことなんでしょうか。
  104. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それはきわめて簡単な話し合いをいたしました。念のためにメモしておこうということにいたしまして、それは、独禁法の改正に当たっては、憲法、民法、商法と刑法、基本的な法秩序に衝突しない範囲内においてなさるべきものである。文字どおりそうではないかもしれませんけれども、そうしてそれをメモして、私と総理府総務長官と同じものを取り交わして持っておるのです。
  105. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その「衝突をしない範囲内」ということが具体的にはどういうふうなことなんでしょうか。これは答えとしては民事局長の方がいいかな。
  106. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ちょっと正確に、ここにありますから。  昭和五十年二月二十七日法務省大臣室において、総理府総務長官と会談後に取り交わしたメモ、「独禁法改正案については、憲法のもとに、刑法、商法など基本的な諸法制によって定められている国民の権利保護、法秩序維持と調和する限度内においてなされるよう慎重な検討を尽くし、なるべく早く成案を作成することとする」。
  107. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その「調和する限度内」というのは、具体的にはどういうことを言われておるわけですか。これは民事局長でもいいですよ。
  108. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 たとえば仮に、将来、構造規制でやるところの営業の一部譲渡というような規定を新しく設けるとすれば、その公取委員会の審決はやはり二百四十五条と衝突してはいかぬぞといったような、そのほかにもたくさんありますけれども、そのようなことを念頭に置きながら取り交わしたメモであります。
  109. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣が急いでおられますので、こちらも順序が逆になったり何かしてあれなんですが、そうすると、ずっと今後独禁法の改正ということがいろいろな形で問題になってきますね。それに伴って商法なりあるいは民法、刑法、それも、どの点でどうかは別として、改正しなければならない点も出てくる。そういうことについても検討するようになる、こういうふうなことでございましょうか。
  110. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 独禁法の改正に伴って商法の規定を改正するというふうなことになると、法制審議会の議を経たり、いろいろ手数がかかって、とてもこの国会に成案を得て法案を提出して御審議願うという作業がおくれちゃうから、そういう商法の改正を伴わないでやれる範囲においてやろうじゃないかということにいまなっております。
  111. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、法務省だけでなく、総理府も商法を改正しないで独禁法の改正をするんだということに意見の一致を見ている、こういうふうに承ってよろしいのでしょうか。総理府の方、どうでしょうか。
  112. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 そのとおりでございます。
  113. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはただ、急に間に合わないからという理由ですか。それだけの理由でしょうか。大臣、どうですか。あるいは間に合えば商法の改正をやってもいいということなんでしょうか。
  114. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 間に合わない。間に合わないことは政治的に非常にまずい、こういうことです。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはよくわかりました。後で現在の独禁法七条の運用の問題、「排除措置」について細かい点をお聞きしていきたい、こう思っているのです。  そこで、この前当委員会でも大臣質問したのですが、消費者の保護の問題というか、消費者の立場からの改正というもの、これは民法なり商法には余りないかもしれません。あるいはあるかもしれない。民事訴訟法とかその他があるわけでしょう。たとえば独禁法にもある専属告発の問題、それから、審決が確定しないとそれが裁判に利用できないというような形で、損害賠償責任の、故意、過失の立証の問題に関係してくるわけです。この二つが大きく消費者との関連であるわけでしょう。それは今度は総理府の方では見送られたわけですか。これが第一点。  それから法務省、仮にそういうことだとしても、将来の問題として消費者の保護という立場からする訴訟制度なり何なりというもののやり方、これは非常に大きな問題になってくるというふうに私は考えるわけです。そのことを考えたときに、将来の対策として、アメリカばかりじゃないけれどもアメリカならアメリカが一番進んでいるというなら、法務省の民事局にも若手のいい人がいるんだから、どんどん留学さして勉強させろということを私は言っているわけです。たとえばニューヨーク市で、条例か何かわかりませんが、消費者保護のいい条例というか、そういうものができているということで言ったら、手紙で照会しているということを言っているんですけれども、そんなことでなくて、一年でも、そのぐらいでも留学さして、基本的に、具体的にどうあるか、将来どういうふうにしたらいいかということを法務省としてやっていく必要があるんじゃないかと言ているんです。これは局長に言ってもわからない。大臣にお聞きするわけです。そのくらいやらないと法務省は立ちおくれます。そういう点が第二の点です。
  116. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 独占禁止法の第一条の後段ですね、「以て、一般消費者の利益を確保するとともに」と、消費者の利益を確保することが目的の中に入っておりまして、今回の改正を目途にいろいろ論議いたしている過程におきましても、できるだけ消費者保護を手厚くしたい、こういう観点でやってまいったわけでございますが、具体的に専属告発権をどのようにするか、あるいは審決前置主義をどうするかということを論じてまいりますと、いろいろな方面に波及してまいりまして、これを早急に結論を得るということはなかなか困難であるという判断をいたしまして、それでは今後さらに検討を続けようではないかということで、今回の改正の素案と申しましょうか、政府段階でつくりましたところの案ではそれが入っておらないということでございます。
  117. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまの点、少し補足しますと、これは罰則の強化、それから課徴金の導入なんということも、広い意味では消費者保護になりますよ、これは不正取引がセーブされることになるんだから。そのほかに、法務省関係ではない独特な通知義務だとか、それからこういう不正がある、それに対して公取が、こういうことになっていますと、事情を答えなければならない義務だとか、そういう点は、わりに大ざっぱでございますけれども、消費者保護の規定も入れておる、こういうふうに思っています。  それから、独禁法の問題が出てからいまいろいろ考えてみると、私らを初めみんな研究不足だ。法務大臣よりなおお粗末なのは公取だし、その次が、どうも総理府も余り感心した状態ではない。まあそれでも一番しっかりしたのは刑事局、民事局ですよ。私はそう思う。しかしそれでも足りないから、留学さして、将来に備えてしっかり勉強しておけという意味のあなたの御所見は私も賛成です。こんなことじゃだめだ。もっとみんなしっかりやらなければだめだ。
  118. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣からそういう話があったのでよくわかりました。  そこで総理府、いまの二つの点についてさらに検討をすると言うのですが、これは確かに各方面に波及していく一番大きな問題です。だけれども、これは総理大臣もこの点について前向きにやるという話が何かあったのじゃないですか。だけれども、実際やってみたらあっちこっちからいろいろな問題が出たらしいと言うんだけれども、どういう方向で将来これをやりたいというふうに考えているわけですか。
  119. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 総理大臣からは、広く消費者保護をひとつ考えようではないかという一般的な指示と申しましょうか求めがあったわけでございまして、一部の新聞に報ぜられたように、あれをどうする、これをどうするということは全然話になっておりません。  そこでこれからの問題でございますが、ただいま法務大臣答弁されましたように、事は訴訟制度なりその他万般にわたってまいりますので、ただ一片の法律を書き直そうとしても相当腰を据えて検討しなければとうていうまくいかない、こういうふうな認識を持っておりまして、前向きにはどんどん進めますが、なかなかそれには時間もかかろう、こういう判断をいたしております。
  120. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 話がまた前に戻るのですが、問題は、公取の性格の中のいわゆる独立性といいますか、そういうふうなことに関連をして、たとえば独禁法の改正の中で、分割命令なり営業の一部譲渡なり、それについて審決なり何なり出すときにか、主務大臣の同意が要るというふうに仮に規定するとすると、この公取の独立性ということに抵触することになると考えていいんでしょうか。それはどういうふうに考えているのですか。総理府の方から統一見解が出たけれども、そういう点が書いてないから、これも統一見解としてはっきり聞いておきたいのです。
  121. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 政府の素案として出しましたものは「主務大臣と協議する」ということになっておりまして同意ということは考えておりません。一部そういう意見もあるやに聞いておりますが、それと職権行使の独立性との関係がどうなるのかという問題もあろうかと思いまして、法制局を初め関係の向きの公式の見解を得ようといま努めておるところでございます。
  122. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いま副長官がお述べになりましたように、現時点における総理府の案では事前協議ということになっておりますので、独立性と衝突するということはないだろうと思います。仮にもし、今度の分割といいますか、営業譲渡命令の審決をするには主務大臣の同意がなければいけないというふうな法律をつくった場合には、現在の二十八条の独立性との関係はどうなるかという御質問であろうと思うのですが、仮にそういうふうな法制になりました場合には、それは独立性とは相沿わない、衝突するということになると思います。独立性というのは、そこでその職権を行使するについては他の機関からの制肘を受けないということでございますから、もし新しい、営業譲渡命令をするに際して別の機関、つまり主務大臣の同意がなければ公正取引委員会が審決ができないということになれば、これはその部分については独立でない職権の行使の仕方が入り込んでくるということになって、公正取引委員会としては、独立して行う職権と、それからそうでない職権と、二色あるということにならざるを得ないと思います。
  123. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大体話はわかりましたけれども、なぜそう言うかというと、それはこの独禁法の改正について与党の中で、新聞紙上でいうところだと、同意を必要とするというふうにやれという意見が大分出ていましたから私は聞いたわけなので、筋はわかりました。  いま大臣が言ったとおり、これはみんなが勉強不足なんだよね、こっちも勉強不足だけれども。だからわからぬ。その勉強不足の最たるものはこの七条の規定だと思う。     〔大竹委員長代理退席、田中(覚)委員長代理着席〕 七条の「排除措置」というのがありますね。これはだれに聞いたらいいのですか。——ずっと条文があって、「営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。」こういうふうにありますね。これは具体的にはどういうことを意味しているわけですか。読んでみても内容がよくわからないのです。
  124. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 七条の営業の一部譲渡命令の性格について申してみますが、現行第七条では一定の場合に営業の一部の譲渡を命ずることができることになっております。この命令の審決が確定すれば、会社はこの審決に従う義務があります。会社は審決の内容を実現するよう努めなければならないのは当然でございます。会社の内部において株主総会その他の手続をとり、債権者、従業員等との権利義務関係を整理する等、これを実行するための所要の措置は多いわけでありますが、会社はこれらの措置を実行する義務があって、これらの中で何らかの支障を生じたからといって会社としての義務が消滅するものではない、そういうふうに解しているわけであります。
  125. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは今度出た統一見解の説明じゃないですか。そうじゃない。話はそこまではまだいってない。  そうすると、独禁法の改正で営業の一部譲渡についていろいろなことが言われているわけだけれども、順序が逆になったんだけれども、七条でこういう条文があるわけですよね。いいですか。七条でこういう条文があれば当然商法、特に株主総会の特別決議との関連が問題にならなければならないわけでしょう、できたとき、初めから。それがいまごろになって統一見解なるものが出てくるのは一体どういうわけなのか。
  126. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 七条をつくりましたときに、商法との関連というものも当然あったのでありましょうが、しかし、先ほど法務大臣答弁にありましたような、司法上の基本的な法制というものと衝突しないようにという配慮があってかと推定されるわけでありますが、特にその辺のところはそのような形のままで通ってきた。現実にこの七条が適用されたケースがまだ出なかった、こういうことだろうと思います。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 現実にそういうことがあったとかなかったとかいうことが問題じゃなくて、こういう条文があるのだから、そのときに当然商法との関連が、ことに二百四十五条、そればかりじゃないとしても、そういうこととの関連が問題になったはずじゃないかと言っているのだが、法務省、この点はどうなんですか。
  128. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 独禁法は、御承知のように昭和二十二年にできた法律でございまして、当時、日本は占領下にあったわけであります。したがいまして、法律をつくるにつきましてもいろいろ制約があったと思いますし、その点を十分突き詰めて考えてやったかどうかという点につきましては私は当時の事情がわかりませんので申し上げかねますけれども、その当時深い検討がされていなかったのではないかという感じがしないではございません。と申しますのは、営業の譲渡を命じたといたしましても、それは一体どういうふうに命ずるのか、その方法がはっきりいたしませんとそれに対する手当てというものも出てこないわけでございまして、その手当てがしていないということは、恐らく、公取委員会が適切な審決手続における指導を行うことによって、商法との衝突を避けながらできる方法があるということで規定されたものと思うわけでありますけれども、その詳しい当時の事情は私承知しておりません。ただ、実際問題として、公取の審決が下るという事態が起きました場合には、それが確定いたしましたときは会社は審決に従う義務があるというところから、商法との間の関係も克服する道があるはずであるという考えのもとにできておると思うわけでございます。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 総理府の松本さん、これは新聞ですからわからないと言ってはあれですけれども、あなたが例の協議と同意の点について、「同意を要すると規定すると独禁法二十八条に定める公取委の職権行使の独立性と抵触する。したがって、同意とするならば他に定めを新たに設ける必要がある」こういうふうにあなたの方で説明をしたというふうにみんな出ているのですよ。だから、同意ということになればそのこと自身が公取の独立性と抵触するのだからだめなんだという説明じゃなくて、同意するということに仮に持っていくとすれば、別に規定を設ければその同意が生きてくるのだというふうに、何か新聞なんか見ていますとそう説明したようにとれるのですが、そこら辺のところはどういうのでしょうか。
  130. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 新聞の報道は必ずしもニュアンスが正確に伝わっておらないと思うのです。公取委員会の職権行使の独立性から考えればこれは協議ということが当然だと考える。しかしどうしても同意というふうなことを仮に考えるとすれば、それは当然職権行使の独立性を規定した二十八条ですかの例外的な規定を置かざるを得ぬという説が強いから、そうなれば問題がありますよ。その辺のところは篤と党の方でも考えるべきだと、ここまで言ったのが私の真意でございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、この七条の「排除措置」は、この条文を見るといろいろな条文を並べて、こういうときだというふうに書いてありますけれども、どういうときに営業の一部譲渡なり何なりを命ずることができる、それに対して必要な措置をとれるということが、そのこと自身にははっきり書いてないのですよ、条文には。そこで、どういう状態が進んだときにこれを出すというふうに、政府側、総理府では考えているわけなんですか。これもはっきりしないんですけれども、何か長い独占状態が続くと——独占というといろいろ内容がありますけれども、それも三年か五年続いたときに初めてこれを出せるというふうに、七条の中に定義づけをはっきりさせていくということなんですか、あるいはそれは実際の運用としてそういうふうにしていくんだというふうなことなんでしょうか。
  132. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 七条は、三条違反その他明らかな法律違反でございますね。新たに規定しようと考えております、政府素案で考えておりますいわゆる独占的状態の排除措置につきましては、これは違法とは言えません、いわゆる構造規制と申しましょうか、あるいは少ししぼって弊害規制と言われるんでしょうか、いずれにいたしましてもこれは違法ではないわけでございますので、どうしてもそういうふうな独禁政策の観点から強い命令を出すといたしますならば、この要件はあくまでも明定されておらなければならない、こういう前提に立ちまして、独占的状態というものを三つの要件をそろえた場合ということで案をつくっております。その中に、外形的な標準のほか、新規参入がむずかしいということも入っておりますが、一番実際問題としての要件でありますある期間の独占価格、あるいはそれを前提とした独占利潤、その期間をどういうふうに見るのだというふうな論議の過程において、常識的に考えれば、これは景気のサイクル的なものを考えても三年ないし五年というふうに解するのが通常ではなかろうか、こういう論議をしてきたわけでございまして、そういった細かなものを前提としての独占的状態を判定した上で、しかし輸入政策あるいは関税政策、さらには金融その他の税制等による誘導政策等を加味すれば独占的状態が除去できる、競争状態が実現できる、こういう判断をすればあえて営業の一部譲渡等を命ずるようなことまで進まなくてもいいわけでございますので、そういうふうな要件をいろいろとはっきり書くということで、いま作業を続けておるというところでございます。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると七条の場合、いま言ったような形に改正したとしても、そういう状態が起きる可能性というか、そういうふうなものは実際にはない、あるいは、ないと言うよりも、ないような状態に持っていきたいということが主眼になるわけですか。
  134. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 公正取引委員会が、法律の提案権がないとかあるとかという議論は別にしましても、昨年の九月に委員長試案として改正の骨子というものを出したことは歴史的な事実でございます。その中で「企業分割」という項目を起こしておりますが、その後、委員長は、独禁政策から見た日本経済の実態を一番知っておる一人だと思うのでありますが、「現在の段階においてこれの対象になると思われるものは一つもございません」と答えておるはずでございますから、いまの経済情勢のもとにおいてそういう対象がむしろないというふうな前提に立っております。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、いわゆる統一見解というものを今度出しましたね。これで、株主総会が否決をしても会社に何か義務があると言うんですね。この義務というのはちょっとよくわからないんですけれども。刑事的な罰則が伴う場合があるのはわかりますよ。民事的に一体どういうことなんですか。義務はあるけれども責任はないという意味なんですか。義務というのは具体的にどういう効果を生むんですか。刑事的な罰則は別として。
  136. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 独占禁止法という公法に基づく義務ということでございまして、しかも株主総会の決議というのは、先ほどちょっと統一見解でのくだりで説明申し上げましたように、必要な措置、手続の一つでありますから、したがって、義務を負った会社、機関としての取締役は、仮に一回株主総会で否決されたといたしましても、可決されるような方向で何らかの措置を後続けていく、そうして公取の命令を遵守するような方向に持っていく義務が依然として残っておる、こういうふうになっております。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、その義務というのはどういうのだろう。単なる道義的な義務なんですか。道義的でもないのか。仮に義務に違反したときに、民事的な制裁としてはどういう制裁があるのですか。これはどういう効果を生むのですか。
  138. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 これはあくまで独占禁止法に基づく公法上の義務でございまして、民事的にはどういう義務とか、それを担保する何とかではございませんで、独占禁止法の審決に対してどうしてもこれは守らなければならない、こういう義務が最後まで会社に残る、こういう考えであります。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 義務が残るのはいいのですけれども、公法上の義務というのはよくわからないのです。刑事罰則を伴うから公法上の義務だという意味なのか、何かよくわかりませんが、それを株主総会で特別決議が必要だというので、仮に否決されちゃったとしたときに、一体会社側としてはどういう義務を負担するのですか。私の質問もよくわからないかもしれないけれども、私はよくわからないのだ、この意味が。
  140. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 これはケース・バイ・ケースで、どういう形の命令を審決によって公正取引委員会が出すか、これもいろいろな場合が想定されると思うのであります。その命令を受けた会社としては、それにどういう手順で、どのように具体的にやっていって初めて命令を遵守したことになるのかということもございましょうから、ここで公法上の義務はこうだからぴしゃりとどうだと言われても、それは現実の問題が起こって初めてその義務というものの具体的な内容がはっきりしてくるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは営業の一部譲渡をしろということを審決か何かで命令するわけでしょう。そうした場合に、それに従わなかったときに、罰則は別だと言うのですよ、どうなるのですか。何か特別な不利益というか、あるいは効果というか、それはどういうふうにどこから出てくるのですか。そういうものはないのかあるのか。
  142. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 営業の一部を譲渡せよという審決が確定いたしますと、それは会社に対して審決に従う義務が負わされることになるわけです。そこで、会社というのは法人でありますけれども、その執行機関が直接にはその義務を実現する責任を負うことになります。それは取締役です。しかし同時に、重要な一部の譲渡の場合には株主総会が決議をするという要件が出てまいりますので、その限りにおきましては、株主総会もやはりその義務を少なくとも反射的に負うという形になろうと思います。そこで、仮にその株主総会が否決したという場合にどうかということでございますが、株主総会としては、本来営業の一部譲渡が文句のない形で行われるのであればこれは賛成する義務がある。しかしながら、営業の譲渡の仕方でありますとか、ことに譲渡の対価その他の条件というのがございます。そういう点につきまして不満であるというような場合も当然考えられるわけでありまして、そういう場合には、もう少し別な形で考えろということを株主総会がその執行機関に対して言うということはできるはずでございまして、その限度においては否決ということもあり得るわけです。しかし、一たん否決されましても、株主総会の議事というのは一事不再議というようなものではございませんし、また営業譲渡の条件を変更してさらに再議に付するということもできるわけでありますので、そういう努力をさらに執行機関としてはすべきであろう。そういう意味において、義務は、一たん否決されたからといって消滅するものではなくして、否決された後にも残るということが言えるであろうと思います。そういう考え方は少しもおかしくないのではないかというふうに思います。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 株主総会が反射的に義務を負う、そんなことはないんじゃないですか。公取が重要なる営業の一部譲渡についての命令を出す。そうすると株主総会もそれに従わなければならない義務があるんですか。反射的という言葉がどういう意味かちょっとわからない。事実としてそういうふうになるかもわからぬけれども、株主総会自身を拘束するんですか。それならば二百四十五条の規定を排除するということを書かなくたっていいんじゃないですか。同じことじゃないですか。
  144. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 反射的に義務を負うというのは比喩的なことでございますからそれはしばらくおきまして、株主総会の決議を制度的に排除するということと、株主総会の決議を要する、しかし合理的な条件には賛成すべきであるということとは違うわけでありまして、全面的に排除してしまえば、これは執行機関がいかなる条件でやろうと自由自在だということになるわけです。しかし、株主は株主の立場から執行機関の譲渡案に対して文句をつけることはできるはずでありまして、少なくともそういう条件では譲渡に賛成しかねるということが株主の立場から言える。そういう意味で、株主総会の決議に付するということは必要であるということを申し上げておるわけです。  それから、これは審決の場合を離れまして、一般的に、株主総会としてはこういう場合にはこういう決議をしなくちゃならぬということがあり得るわけです。それは法律に従って決議をしなくちゃならぬという場合があるわけでございまして、その場合にも株主総会は法律に違反した決議をしていいんだという解釈は成り立たないと思うので、法律に従った範囲内で、株主総会の裁量の認められる限度での選択権を行使できる、こういうことになろうと思うわけです。ですから、公取の審決が確定いたしました場合にも、営業の譲渡をするという限度では、それが基本になるわけでございますから、そのことそのものに反対というのではいけないのであって、ただいろいろな条件等について、株主の立場から具体的な、こういう譲渡案に対しては反対だということは言えてもいい、こういうことでございます。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 審決が確定したら、端的に言うと株主総会を法律的に拘束するのですか、しないのですか。どうもはっきりしないんですよ。仮に拘束するとすれば、それに反する決議をしてもそれは法律的に効力はないのでしょう。ということは、いくのですか、いかないのですか。そこのところがどうもはっきりしないんですよ。わかりやすく話してくださいよ。
  146. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 具体的に審決がどういう形で行われるかということが一つ問題になるわけです。たとえば、漠然と会社の営業を半分譲渡せよというような審決が出たといたしますと、その譲渡すべき営業の部分というものをどういうふうに決めるかという問題が出てくるわけです。それについてはいろいろ会社の内部で選択の余地が出てまいります。しかし、恐らくそういう形ではなくて、どの工場を譲渡せよということになろうと思いますが、しかしそれにしても、譲渡の対価というものは審決には出されないであろうし、場合によっては譲渡の相手方についても、その会社が適当に相手を選択するという場合もあろうと思います。そういう意味で、具体的な営業譲渡の仕方というものについてはいろいろな考え方があり得るわけで、執行機関が決めて株主総会に提案したその具体的な案に対して反対するということがあっても少しも差し支えない、こういう意味でございます。  それから、株主総会が義務を負うか負わないかという妙な議論になったわけですが、私の申し上げるのは、個々の株主は審決の効力を直接受けるものではありませんから、したがって義務を負わない。ただ、株主総会というのは会社の機関でありますから、しかも会社はその審決を受けておるという立場にありますから、その審決を無視して全く自由な立場で否決をする、決議をするということは少なくとも許されないであろう、こういうことを申し上げているわけであります。
  147. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは、商法を改正しないでそういうことができるのですか。
  148. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 審決を受けた者は審決に従う義務があるというところから、そういう結論が出てくるというふうに考えておるわけであります。
  149. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、たとえば営業の一部譲渡の審決が確定したときには商法二百四十五条の特別決議を排除するという規定を設けたときと設けなかったときと、一体どういうふうに違うのですか。あなたの説明を聞くと余り違わないようになってくるのじゃないですか。それの規定があるとないとによってどこがどういうふうに違うのですか。
  150. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 さっきも御説明いたしましたように、株主総会の決議を要しないということにいたしました場合には、営業の譲渡の条件その他はすべて執行機関である取締役あるいは取締役会の決議でもって決定できるわけです。ところが、株主総会の決議を要するといたしました場合には、その条件ではだめだということを株主総会の立場から言えるということになるわけですから、譲渡の方法等につきましては執行機関に制約がかけられる、こういうことになるわけです。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで株主総会で、審決の内容にもよるかもわかりませんけれども、それを否決したときに、否決はしたけれども、それは否決そのものが効力がないという形になる場合もあるのですか。それはないのですか。
  152. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 否決されればさらに改めて別の案を出してそして承認を得なければならない、こういうことになるわけです。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうではなくて、株主総会が特別決議で、取締役会が出した案を否決してしまうでしょう。否決してしまった場合に、その否決そのものが無効だという場合もあるのかということなんですよ。審決が出た場合の話として。
  154. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 審決が出ているから否決した場合にはそれが無効であるということは当然には言えないわけです。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで株主総会の決議というものがまだ価値として残るというか、その必要性があるというふうに考えたらいいのか。そういうことだろうと思うのですが、株主総会が否決したものは会社に尊重義務があると思う。尊重義務というのは俗称だ、こう思うのですが、尊重義務があるといっても尊重しなかったときには、刑事的な罰則は別ですよ、民事的な制裁としてはどういうふうになるのですか。民事的な制裁そのものはないわけですか。
  156. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 民事的な制裁はございません。しかし、先生仰せのとおり、罰則もございましょうし、あるいはまた社会的なオブリゲーションと申しましょうか、審決に従わないということに対する世論なりいろいろ世間の批判なりというものは、法理論ではございませんが、あろうと思います。
  157. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、発表として一部書いたのは義務であるけれども強制力がないんだということになってくると、強制力がない義務というのは一体義務と言えるかどうかということになってくるんじゃないんですか。そこのところはどういうふうに考えたらいいのですか。
  158. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 強制力というものをどのように解するか、法律的、理論的にはいろいろあろうと思いますが、やはり罰則があり、あるいは社会なり世論の批判というものを頭に置けば、そういう意味では罰則に基づく法律的な、何と言いますか、担保されるものもありましょうし、社会的な批判による道義的な強制力というものが背後にある、こう考えていただけばと思います。
  159. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 民事局長、私の聞いているのは、罰則とか道義的な批判とか、これはいいですよ。営業譲渡の命令か何か、審決が確定したときに、それが強制力がないとすれば一体法律的な義務と言えるかどうかということなんですよ。それを聞いているんですよ。
  160. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 要するに会社の違反状態が続くというわけになるわけです。それは審決がありましても違反者というものはすべての場合に考えられるわけです。ですから、そういった違反状態が続くということになるわけで、それを除去するように会社の執行機関は最善の努力をしなければならない、こういうことになるわけです。
  161. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから逆に言うと、審決が確定して、それを実行する方法はどうなのかということですよ。それに至る担保は法律的にどうなっているのかということですよ。そうでしょう。そこに強制力がないと言えば、それは一体義務と言えるのかどうか、命令と言えるのかどうかということになってくるんじゃないのか。それはちょっと言い過ぎかな。どうなんだろう。議論がかみ合わぬのかもわからないな。営業譲渡の命令が出たところで実際には内容はないのじゃないのですか。会社のみんなの善意に期待する以外にないんじゃないですか。刑事罰則は別ですよ。
  162. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 意味がないことはないわけでございまして、そういう命令が出るまでには、いわゆる審判の手続の過程におきましても利害関係者としていろいろな意見も言うでありましょう。あるいはまた、素案どおりするとすれば、関係の主務大臣が産業政策の立場でいろいろの意見も言うでありましょう。そういうものを経て決まるわけでございますので、法律論はともかくとして、実際問題としては同意審決的なものになることが多いと思うのでありまして、そういうことになれば効果は大いに出てくると考えていいんじゃないでしょうか。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それじゃ民事局長、営業の一部譲渡の審決が確定したときに、それを実現する方法というものは最後的に一体あるのですか、ないのですか。そういう端的な聞き方をしましょう、ちょっと荒っぽいけれども。結局はないんでしょう。それをやらなかったときに法律的にやらせるという方法はないわけなんでしょう。裁判で訴えてやらせることができるのか。どういう訴えを起こすのかちょっとわからないけれども。またそういうのは法律の予想するところではないという意味なのかもわかりませんけれどもね。
  164. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 まさにそういうことになろうかと思います。裁判で強制する方法はもちろんございません。現行法の規定をもとにして考えますとそういうことになるわけです。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから結局、そんな改正をしたって、形だけは改正していかにもりっぱ、と言うと語弊があるけれども、実現性というものはほとんどないんじゃないですか。こういう法律だからそういう状態にならないことが一番いいんでということはわかるけれども、なったときにこういう審決をしたところで実現の方法というのはないんじゃないか、どうもそういうふうに考えられるのですがね。私の頭が悪いからかな、ここのところが何だかよくわからないんですよ。
  166. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 法律論を詰めてまいりますときには、先生仰せのようにそういうケースが出てくる可能性は十分あると思います。しかし実際問題といたしましては、そこに行くまでの段階においていろいろと意見も交わされるでありましょうから、現実的には審決が事実問題として実行される方向で行くのではないか。そういう方向を新しく入れるということが、経営者というものに対して、将来の経営の理念と申しましょうか方向というもの、寡占状態あるいは独占的状態に持ち込まないように自己規制させると申しましょうか、そういう意義は大いにあろうか、こういうふうに考えております。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、結局、今度の独禁法の改正にいろいろなことが書いてあるけれども、それはいわば俗に言う伝家の宝刀的なもので、それを抜くということではなくて、そこまでに至らないような状態の中で、こういう法律があるんだからということで問題を解決していきたい、実際はこういうふうなことなんですか。まあそういう性質の法律かもわかりませんけれどもね。それはどうなんですか。
  168. 松本十郎

    ○松本(十)政府委員 法律に仮に書きます以上は、初めから抜かない刀と言うわけにはまいりませんが、しかし実際問題としましてはそういう状態が出現しない方が望ましいわけでありますから、経済法規というものはそういう性格を多分に持っているかと思うわけでありまして、こういう意味では先生のおっしゃるとおりかと思います。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これできょうの質問を終わります。
  170. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 諫山博君。
  171. 諫山博

    ○諫山委員 前回、私は、兵庫県南但馬一帯で起こった部落解放同盟朝田派の暴力事件の捜査について質問しました。それから相当期間経過いたしましたから、現在の時点でもう一回質問を繰り返したいと思います。  まず、南但馬一帯でたくさんの告訴、告発事件があったはずですが、何件受理され、被疑者として特定している人は何名いるのか。警察、検察庁でいろいろ説明が違うようですから、警察側から御説明ください。
  172. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  先般の、二月十二日の当法務委員会においてお答えいたしました段階では、警察が認知しております事件は、告訴、告発事件、申告事件を含めまして十六件、このうち申告事件が三件でございまして、告訴、告発事件が十三件でございます。このうち、二月十二日の時点までで四件、二十二名を処理しておるというふうに御答弁申し上げましたが、今日現在、これらの事件十六件のうち十三件を事件処理をいたしまして、検察庁に送致いたしております。なお、特定できました被疑者は五十三名でございます。
  173. 諫山博

    ○諫山委員 検察庁関係ではどうなっていますか。検察庁、だれもいませんか。——ではちょっと待ちましょう。
  174. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 ちょっと速記をとめてください。
  175. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 速記を始めてください。
  176. 諫山博

    ○諫山委員 警察庁に質問を続けます。  さっき、現在十三件は処理済みで、被疑者は五十三名と言われましたが、これは現在までの累計ですか、二月に答弁されたのを含めて、累計が以上のとおりですか。
  177. 佐々淳行

    ○佐々説明員 そのとおりでございます。
  178. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、まだ処理が済んでいなくて、警察が調べている事件というのはどうなっていますか。
  179. 佐々淳行

    ○佐々説明員 したがいまして、あと三件未処理の事件が、警察が認知しております事件のうち残っております。  なお、八鹿高校事件につきましては、現在までに合計二十四名、強制で十二名、任意で十二名事件処理をいたして送致いたしておりますが、この事件についてはなお捜査中でございます。
  180. 諫山博

    ○諫山委員 未処理、つまり検察庁に送検してない分で被疑者が何名ぐらい残っていますか。
  181. 佐々淳行

    ○佐々説明員 この数はちょっと特定しがたいと思います。と申しますのは、告訴の内容が被告訴人多数というふうになっておる事件等もございますので、ちょっと正確な数字は申し上げられないと思います。
  182. 諫山博

    ○諫山委員 検察庁関係質問します。  警察が受理した告訴と検察庁が受理した告訴とある関係で、事件の実態がなかなかつかみにくいのですが、検察庁としては、何件の刑事事件があり、特定した被疑者の数は何名になっているのか、わかりますか。
  183. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の南但馬地区一帯におきまして発生しました暴力事件等の受理の概要でございますが、御指摘の事件につきましては検察庁において合計二十件受理いたしておりまして、そのうち警察の送致に係る事件が五件であるという報告を受けております。それから被疑者として取り調べた人間の数は約二百名でございますが、警察から送致を受けた被疑者の数は五十三名でございます。
  184. 諫山博

    ○諫山委員 警察関係、検察庁関係、あわせて聞いていただきたいのですが、検察庁としては、被疑者として取り調べた者の数が約二百名、その中で五十三名は警察から送致を受けた者、そのほかに警察にまだとどまっている事件が件数として三件、被疑者の数はまだはっきりしない、これだけがとにかく刑事事件として警察、検察庁にあるということになりますか。警察から言えばどうでしょう。
  185. 佐々淳行

    ○佐々説明員 仰せのとおり、まだ事件捜査中ということで、警察は本件について依然捜査をやっておると申せると思います。
  186. 諫山博

    ○諫山委員 警察に質問します。  告訴、告発事件、申告事件の中で、被疑者を部落解放同盟朝田派の人たちとしているのが大部分ですが、そのほかに学校、町役場、育友会、教育委員会、警察、こういう関係者を告訴しています。この中で警察で調べている事件がありますか。
  187. 佐々淳行

    ○佐々説明員 警察で調べております事件は、教育関係者及び教育委員会関係者のうち、現場にいたという捜査情報のあった者等について捜査をいたし、現在までに、教育委員会関係については一人、教職員関係者について二人、合計三名を送致いたしております。そのほかの関係者は、先般の当委員会において直接実行行為に関係をしなかった共犯関係を調べておるかという御質問がございましたが、必ずしも直接実行行為に関係をしていなくても、現場にいたということで共犯の疑いのある者という形で捜査をいたしております。現在まで処理いたしましたのは三名でございます。
  188. 諫山博

    ○諫山委員 教育委員会、学校関係では警察の捜査はもう済んでいますか、まだ続行中ですか。
  189. 佐々淳行

    ○佐々説明員 先ほど御答弁をいたしましたように、八鹿高校事件そのものが現在まだ捜査継続中でございますので、その意味では捜査を終了いたしておりません。
  190. 諫山博

    ○諫山委員 教育委員会関係で一人送検したそうですが、いつごろ、だれを、どういう罪名で送検したのでしょうか。
  191. 佐々淳行

    ○佐々説明員 教育委員会関係者につきましては、三月十二日、本日、県の教育委員会同和教育指導室の主事前田昭一という人を、逮捕監禁致傷で送致をいたしております。
  192. 諫山博

    ○諫山委員 学校関係の三名というのは、いつ、どういう罪名で、だれを送検しましたか。
  193. 佐々淳行

    ○佐々説明員 教育関係者、教職員関係者は二名でございまして、これは同じく本日付で、八鹿高校朝来分校教諭の小山友一という人と山根新作という人、この二名を同一罪名で送致をいたしております。
  194. 諫山博

    ○諫山委員 教育委員会関係ではもっとたくさんの人が告訴、告発されていたと思いますが、それは捜査が済んで送検の必要なしということになったのか、それともまだ捜査続行中で未済なのか、どちらでしょうか。
  195. 佐々淳行

    ○佐々説明員 捜査の結果、送致の必要なしという結論の出た者もおりますし、捜査続行中で、なお容疑が固まらない、あるいは証拠資料その他が十分でないという形で捜査続行中である者もおります。
  196. 諫山博

    ○諫山委員 それは被告発人ごとにこの場で特定できますか。
  197. 佐々淳行

    ○佐々説明員 具体的な捜査の内容になりますので、この席で捜査の機微にかかわる具体的な特定の内容については答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  198. 諫山博

    ○諫山委員 そうしたら、送検の必要なしということで警察段階で処理が済んだ人はどうでしょうか。
  199. 佐々淳行

    ○佐々説明員 これも初期の段階で、必ずしも全部被疑者として事情聴取をいたしたわけでございません。参考人という形で聴取をした者もございますので、人権の問題もございますのでこの席へこれを明らかにすることは差し控えさしていただきたいと思います。
  200. 諫山博

    ○諫山委員 それ以外の育友会、町職員、校長、教頭、この人たちは警察は直接調べには当たらなかったのですか。
  201. 佐々淳行

    ○佐々説明員 校長、教頭あるいはその他の教育委員会関係者、教職員関係者、町の職員等についても直接捜査をいたしております。
  202. 諫山博

    ○諫山委員 校長、教頭についてはいつごろから被疑者としての調べが始まり、いつごろ被疑者としての調べが済んだのか、また何回ぐらい被疑者として調べたのでしょうか。
  203. 佐々淳行

    ○佐々説明員 本件は現在捜査中でございますので、答弁は差し控えさしていただきます。
  204. 諫山博

    ○諫山委員 検察庁関係でお聞きします。  初めにお断りしておきますが、私がこういう問題を質問するのは、兵庫県一帯で起こった解放同盟朝田派に対する捜査が敏速適切に行われていなかったのではなかったか、そのことが次々に事件を続発させる一つの原因になっているんじゃなかろうか、そうだとすれば問題だという観点から質問するわけですから、決して捜査の内容をどうこうという観点ではありませんから、できる限りお答え願いたいと思います。  八鹿警察署長の釜谷吉四郎という人が昨年十一月二十四日、神戸地検検事正あてに告発されています。告発人は吉富健二、罪名は公務員職権濫用罪、保護責任者遺棄致傷、犯人隠避という非常に罪の重い事件です。この事件の捜査はどうなっているのか、検察庁側からお聞きいたします。
  205. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の事件は、昨年の十一月二十四日に神戸地検に、公務員職権濫用、保護責任者遺棄、犯人隠避というような罪名で八鹿警察署長の釜谷吉四郎氏に対しての告発がございまして、神戸地検の報告によりますると、警察等の関係者約二十名の取り調べを行って、目下鋭意捜査中であるという報告であります。
  206. 諫山博

    ○諫山委員 保護責任者遺棄致傷というのは、刑法を見ますと三月以上五年以下の懲役というなかなか重罰に処せられる罪になっているのですが、被疑者の取り調べはすでに行われたのか。行われていないとすればいつごろ行う予定なのか、御説明ください。
  207. 安原美穂

    ○安原政府委員 被疑者の取り調べは行われたという報告を受けております。
  208. 諫山博

    ○諫山委員 私が現地でいろいろ聞く話と幾らか違うのですが、いつごろ被疑者が調べられたのか、そして被疑者の調べは終了したのかどうか、御説明ください。
  209. 安原美穂

    ○安原政府委員 目下のところ、いつかということはわかりませんが、いずれにいたしましても、捜査が終了したかどうかということは、目下捜査中でございますので、いわゆる捜査の秘密として申し上げるわけにはいかないので御了承願いたいと思います。
  210. 諫山博

    ○諫山委員 私は他の機会にも言ったのですが、この席で捜査の秘密ということはよほどの場合でないと使ってもらいたくないと思うのです。捜査の秘密ということで法務委員会での論議が十分なされないということになると、昔流の言葉で言えば検察ファッショにつながり得るわけです。私たちとしては、検察行政が適正に行われているかどうか、これに十分気を配りたいわけです。その場合に、いや捜査の秘密でございますからというような言い方がどんどん広がっていきますと、検察庁のやっていることに対して国会は物が言えないという大変な事態になるわけです。そういう観点でもう一遍質問します。  八鹿警察署長を警察に告発せずに検察庁に告発したというのはそれなりの理由があったからです。警察では恐らく公正な調べは無理だろう、そういう観点で検察庁に告発したわけですが、いつごろ捜査が終わるのか、そしてさらに釜谷署長が被疑者としてまだ調べられるのか。こんなことは説明しても何も捜査が妨げられることはないはずだと思いますが、どうでしょう。
  211. 安原美穂

    ○安原政府委員 国政の調査権に対して最大の敬意を払うべきことは当然のことでございまして、捜査の秘密ということを軽々しく言うべきではないこともよく承知をいたしておりまするが、いま諫山委員お尋ねのこの関係において、被疑者の取り調べが終わったのかというようなことを申し上げることは、まさに関係者に対して捜査の見通しをすでに申し上げるということにも相なりますので、その点は御勘弁を願いたいということでございます。そのほかに他意はございません。  なお、この件と申しますよりも、一般にこの南但馬地区の事件につきましては、検察庁といたしましてはできる限り今月中に捜査を終了したいという目途でやっておりますので、この事件につきましてもその範囲内に入る事件でございますので、今月末を目途に鋭意捜査中であるということで御理解をいただきたい、かように思います。
  212. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、八鹿警察署長を告発している事件では二十名の調べを行って、被疑者に対する取り調べも行ったけれども、あとまだ捜査が続くのかどうかということも言えないのですか。
  213. 安原美穂

    ○安原政府委員 捜査中でございますから、捜査は続いているというふうに御理解をいただいて結構かと思います。
  214. 諫山博

    ○諫山委員 校長、教頭は、暴力事件の共犯というよりか中心的な人物として告訴、告発がされています。警察ではすでに何回か調べを続けられたようですが、検察庁も被疑者として校長、教頭を調べましたか。
  215. 安原美穂

    ○安原政府委員 お尋ねの件につきましては、いつ、どこでということは申し上げられませんが、二月二十日現在におきまして、校長、教頭につきまして五回ないし七回の取り調べを行っております。
  216. 諫山博

    ○諫山委員 五回ないし七回というのは、校長について五回、教頭について七回、検察庁が被疑者として調べたという意味ですか。
  217. 安原美穂

    ○安原政府委員 校長さんに七回、教頭さんに五回ということでございます。
  218. 諫山博

    ○諫山委員 教育委員会関係で本日一名送検したというお話ですが、検察庁の方で送検を待たずに独自に被疑者として調べている人が何人いますか。
  219. 安原美穂

    ○安原政府委員 直接告訴を受けました者は教育委員会関係では三名でございます。
  220. 諫山博

    ○諫山委員 その三名の調べ状況がどうなっているのか、御説明ください。
  221. 安原美穂

    ○安原政府委員 これらの三名につきましてもそれぞれ数回取り調べを行っております。
  222. 諫山博

    ○諫山委員 校長、教頭については七回、五回という調べの回数が説明されましたが、教育委員会関係の三名についてはいかがでしょう。同じ程度で結構ですから御説明ください。
  223. 安原美穂

    ○安原政府委員 ある人については三回、ある人については一回というのが二月二十日現在の状況でございます。
  224. 諫山博

    ○諫山委員 告発されている人は特定しているわけですから、だれが何回ということは言えましょう。
  225. 安原美穂

    ○安原政府委員 但馬教育事務所長上田という方が告発されておりまするが、この人については三回、それから県教育参事の畑中、それから主事の山岡、両氏については各一回でございます。
  226. 諫山博

    ○諫山委員 この三名については被疑者としての取り調べはもう済んだのでしょうか。まだ未済ですか。
  227. 安原美穂

    ○安原政府委員 まだ取り調べ中でございます。
  228. 諫山博

    ○諫山委員 町職員で告訴、告発された人がいますが、これはどうなっていますか。
  229. 安原美穂

    ○安原政府委員 町職員関係で告訴を受けた者が合計七名あると承知しておりまするが、それぞれ各一回取り調べを終わっております。
  230. 諫山博

    ○諫山委員 育友会関係はどうですか。
  231. 安原美穂

    ○安原政府委員 育友会関係は手元の資料ではわかりませんので、ひとつ……。
  232. 諫山博

    ○諫山委員 いまの程度で結構ですが、後日お知らせいただけますか。
  233. 安原美穂

    ○安原政府委員 承知いたしました。
  234. 諫山博

    ○諫山委員 警察庁にお聞きします。  いま教育委員会関係で前田さんについては送検したという話で、検察庁で調べた上田さん、山岡さん、畑中さんですか、この人たちは警察でも調べていますか。
  235. 佐々淳行

    ○佐々説明員 これは警察関係の被告訴人ではございませんが、いろいろ事件の関係者として調べているものと思われます。手元の資料ではちょっとわかりかねます。
  236. 諫山博

    ○諫山委員 校長、教頭さんの調べが検察庁から説明がありましたが、警察ではこの人たちを被疑者として調べていますか。
  237. 佐々淳行

    ○佐々説明員 校長について被疑者としての取り調べを行ったと聞いております。
  238. 諫山博

    ○諫山委員 ずいぶん参考人調べが行われたと思いますが、参考人の数は南但馬一帯で延べ何名ぐらいになっておりましょうか。
  239. 佐々淳行

    ○佐々説明員 正確な数字をちょっと承知いたしておりませんが、数百名に及ぶであろうと思われます。
  240. 諫山博

    ○諫山委員 検察庁はどうですか。
  241. 安原美穂

    ○安原政府委員 報告によりますと、検察庁関係で取り調べをした参考人は実人員で六百名、延べで約千名と報告を受けております。
  242. 諫山博

    ○諫山委員 実人員と延べ人員の関係はどうなっているのですか。ちょっとわかりにくいのですが。
  243. 安原美穂

    ○安原政府委員 個人を単位にしますと合計で六百名ですが、その中には二回調べた方もおられるので、延べにいたしますと約千名になるということでございます。
  244. 諫山博

    ○諫山委員 二回調べたのを二人というのじゃなくて、二件について調べたという意味じゃなかったのですか。たとえば一人の参考人を一つの事件、で二回調べれば二人という計算をしたのですか。
  245. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の点は御指摘の点で問題でありますが、同じ事件について二回調べたのか、二つの事件について一回ずつ同じ人間から聞いたのか、よくわかりません。どちらも入っているのじゃないかと思います。
  246. 諫山博

    ○諫山委員 被疑者二百名というのは実人員の意味ですか、それともいま言った延べという意味ですか。
  247. 安原美穂

    ○安原政府委員 いわゆる実人員でございます。
  248. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、丸尾某のように一人で幾つもの事件の被疑者になっている人もあるわけですね。そういう人を一人として数えて被疑者が約二百名、こうなりますか。
  249. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  250. 諫山博

    ○諫山委員 今月いっぱいには結論を出すということですが、これは南但馬一帯での告訴事件全部という意味ですか。
  251. 安原美穂

    ○安原政府委員 大体全部でございますが、一件、去る二月の二十五日に南但馬地区一連の事件として告訴のございました朝来町議会副議長事件を別といたしまして、すべてについて今月中にという意味でございます。
  252. 諫山博

    ○諫山委員 たくさんの被疑事件のようですが、これは同じ日に同時に結論を出しますか。
  253. 安原美穂

    ○安原政府委員 そこまで詳細に聞いておりませんが、大体の事件というものの処理ということになりますと、全部をながめて公平な処理ということでありますので、全事件をながめながら処理をすると思いますけれども、その点については詳細は報告を受けておりませんのでどちらとも申し上げかねます。
  254. 諫山博

    ○諫山委員 南但馬一帯における捜査の概要はわかりました。  次に、南但馬一帯の部落解放同盟朝田派の刑事事件というのは昨年の九月から十月ごろから表面化しております。古いのでは昨年九月八日、朝来町元津国道わき事件というのがあります。これは九月十二日に告訴されているのですが、事件の態様は典型的な逮捕監禁傷害。約二百名の人が十名ぐらい人たちを取り囲み、連行し、二十数時間にわたってリンチを加える、そのために五名の人が二週間の難聴その他の傷害を受けるという事件です。告訴状では、「一昼夜にわたって長時間逮捕監禁した上、残忍非道なやり方で暴力の限りを尽くした」こういう表現が使われています。これは警察はいつごろから捜査を始めたのか、そして現在どうなっているのか、御説明ください。
  255. 佐々淳行

    ○佐々説明員 御指摘の事件につきましては、被告訴人を含めまして合計七名を検挙をいたしまして、送致をいたしております。送致の年月日につきましてはちょっと手元の資料にございませんので、後ほど調べて御回答いたします。
  256. 諫山博

    ○諫山委員 この事件の処理が済まないうちに、十月二十日から二十六日にかけて、橋本哲朗先生宅を包囲する、そして長時間にわたって不法監禁、暴力行為を働くという事件が起こりました。この事件では、十月二十四日、まだ不法監禁が継続中でありますが、兵庫県警に告訴しています。そして十月二十三日、監禁が継続中でありますが、橋本先生が神戸地裁豊岡支部に仮処分の申請をして、裁判所がその日のうちに仮処分申請を認容しました。仮処分決定の中で、「多人数で包囲し、同居宅に向けて拡声機を使用するなどして大声を発し、投光器で同居宅を照射するなど、私生活の平穏を侵害する行為をしてはならない」「居宅の周囲を多人数で包囲し、居宅からの出入りを自動車などでふさぐなど、居宅からの出入りを妨害する行為をしてはならない。」こういう主文の仮処分決定をいたしました。これが十月二十三日で、まだ監禁続行中です。この事件で共産党の木下代議士や県会議員も現場に駆けつけて警察に善処を要求しましたが、何一つ対策を立てておりません。  この事件の捜査はいつごろから始まり、現在どうなっているのか、御説明ください。
  257. 佐々淳行

    ○佐々説明員 御指摘の橋本先生宅事件につきましては、本年の一月の六日から二月の九日の間にわたりまして三回、合計七名、このうち二名強制捜査、五名任意でございますけれども、合計七名を検挙をいたしまして、事件を神戸地検に送っております。  なお、先ほどの元津国道事件の送致年月日でございますが、四十九年の十一月十六日でございます。
  258. 諫山博

    ○諫山委員 私が古い二つの事件を引き合いに出したのは、これだけ長時間、白昼公然と不法行為、犯罪行為が行われたのに警察が適切な措置をとらない。このことが部落解放同盟朝田・丸尾派を増長さして八鹿高校事件に発展していったのではないかと考えるからです。特に十月二十日から二十六日まで続いた橋本哲朗先生の事件では、裁判官が現地に赴いて現場を見て、私がいま読み上げたような主文の仮処分決定をしたのです。仮処分決定を見ただけでも、十月二十四日付の告訴が根拠のある告訴であるということはすぐわかったはずです。なぜ警察はこの時点で処置をしなかったのか。なぜ、犯罪を防止するとか、あるいは犯人を検挙するという措置をしなかったのか、私にはどうしても理解できません。どういう事情だったのでしょうか。
  259. 佐々淳行

    ○佐々説明員 橋本先生宅事件等、一連の九月ごろにおきまする事件の特徴は、不法逮捕監禁という違法行為に果たしてなっておるのかどうかというぎりぎりの線で、あくまでも本人の同意を得た任意の糾弾会である、こういう形で話し合いが展開をされておった、こういうところから現行犯検挙になかなか踏み切れなかったというふうに兵庫県警から報告を受けております。しかしながらその後におきまして関係者の事件捜査をいたしました結果、先ほど申し上げましたように、この事件について不法逮捕監禁等の容疑が出てまいりましたので、御指摘のリーダー格の丸尾良昭を含め七名の者を検挙し、措置をいたしております。兵庫県警としては、現行犯検挙はいたしておりませんけれども、この事件については適切なる捜査措置をとったものと私どもは考えております。
  260. 諫山博

    ○諫山委員 私たちが、反共暴力集団に対して警察が泳がせ政策をとっているのではないかと批判していることは御承知だと思います。いまの説明では、本人が承諾して糾弾会が行われているんじゃなかろうかという認識を持っていたと言われました。しかし、十月二十三日、逮捕監禁の真っ最中に仮処分の申請をしているわけです。告訴状が出されたのが十月二十四日、まだ監禁の続行中です。これが解除されたのは二十六日です。こういう事実を見ると、本人の承諾で取り巻かれているなんということがあり得るはずがありません。しかもそのやり方たるや、投光器を五台も据えつけて夜は昼間のように明るくする。そしてがんがんマイクでどなり立てる。木下代議士が救出のために行っても阻まれる。どう考えても、これは警察が泳がせていたのか、あるいは警察が暴力を恐れていたのか、どちらかでしかあり得ないと思うのですが、納得いく説明をしてください。
  261. 佐々淳行

    ○佐々説明員 警察は決して暴力集団を泳がせていたものでもなく、また暴力を恐れていたものでもございません。当時の状況をいろいろ兵庫県警から報告を受けますると、木下代議士の場合におきましても、橋本先生宅に立ち入られ、部落解放同盟側の者がその家を取り巻いた、こういう時点で警察部隊は現場に出動をいたしております。所要の規制措置をとって、十分安全に橋本先生宅から出られる状況をつくり、何回か「どうぞもうお出かけください」ということを促したのでございますけれども、「部落解放同盟の暴力集団の関係者が一人でもこの場におる限りは一歩も出ない」こういうことでお出かけにならない。このことにつきましては、共産党本部の方からも当時私どもに日夜連絡がございまして、私どもは適切なる現場措置を講じ、そういう状態を排除して違法状態をなくす、こういう状態を何回かつくったわけでございますけれども、「部落解放同盟側の者を全員この場から立ち去らせないと出られない」こういうようなことでございました。  また、橋本先生が御自分の意思で、同意を得て包囲をされておった、自宅に閉じ込められておった、こういうことはあり得ないではないかということでございますが、これはまさに御指摘のとおりでございまして、当時、部隊をこの一連の橋本先生事件に関しましては配備をいたしまして、状況によっては、そういう不法逮捕監禁の状態で「脱出したい、こういうことであればいつでもそういう措置をとるぞ」「いや、まだ話し合い中である」こういうようなことで結局現行犯逮捕に至らなかったということでございます。先ほど御説明をいたしましたように、この事件について事後に捜査をいたしました結果、逮捕監禁等の容疑が出てまいりましたので、強制捜査二名を含む七名を検挙いたして処理をいたしております。  そういう警察の基本的な姿勢につきまして、暴力集団を泳がせておるとかあるいは暴力を恐れておる、こういうことではあるまいかという御質問がございましたが、そのようなことはございません。
  262. 諫山博

    ○諫山委員 国民の護民官たるべき共産党の木下代議士が「暴力集団が一人でも残っている限り出ていかない」という態度をとったのは、私は当然だと思います。問題は、そういうことを代議士が言っているのに、なぜ警察がその措置をとらなかったかということなんです。  そこで法務省にお聞きしますが、この事件ではすでに監禁罪で起訴されています。その監禁というのはいつからいつまで続いたという公訴事実になっていましょうか。
  263. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘の橋本先生宅包囲事件についての監禁につきましては、県警から事件の送付を受け、神戸地検にも告訴のあった事件でございますが、まだ逮捕監禁罪という名前で処理は終わっておりません。まだ捜査中の案件でございます。
  264. 諫山博

    ○諫山委員 これは起訴された人はまだいないのですか。
  265. 安原美穂

    ○安原政府委員 まだおりません。
  266. 諫山博

    ○諫山委員 それじゃ警察に聞きます。  逮捕したそうですが、それはいつからいつまで監禁したという事実で逮捕したのですか。
  267. 佐々淳行

    ○佐々説明員 十月二十日から二十六日の間の不法逮捕監禁事案として送致をいたしております。
  268. 諫山博

    ○諫山委員 警備課長はいろいろ、本人の承諾とか、木下代議士が出れば出れた状態とか、まあ丸尾に有利な説明をされたわけです。それでも警察の逮捕時点では、やはり二十日から二十六日まで犯罪行為が継続していたということになっているわけですね。現場まで警察が来ていた、機動隊もいたというのに、なぜそれに適切な措置をとらなかったのか。これはどのように説明しようとも、泳がしたか恐れたか以外にあり得ないじゃないかという疑問はぬぐい去られません。  そこで、丸尾良昭が逮捕され、勾留請求されたけれども、いまごろ勾留請求してももう遅い、すでに証拠隠滅のおそれはないということで却下されたと聞きましたが、そうなんですか。
  269. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のような理由で勾留状が出なかったと報告を受けております。
  270. 諫山博

    ○諫山委員 私はこの事件の捜査のおくれを問題にしましたが、警察、検察庁の捜査がおくれたばかりに、勾留して取り調べようと思ったのに勾留して取り調べることができなかった、いまごろ勾留請求しても遅過ぎるといって裁判所からはねつけられた、こういう経過になっているわけですが、警察庁としてはこの点で反省すべき点はありませんか。
  271. 佐々淳行

    ○佐々説明員 告訴、告発事件の処理につきましては、可能な限り迅速にこれを処理し、事件送致をすべきが原則でございまして、その意味で、事件送致に若干の時間がかかっておるという点、御指摘のような疑惑を招くおそれもなしといたしませんが、この事件の特殊性は、従来から差別意識をなくすための糾弾という形でしばしば行われておりました事案が次第に暴力的な事件を伴うようになってまいった、そういう過程において発生をした事件でございまして、先ほど、現場に警察官が行きながらなぜ適当な措置をしなかったか、後になって十月二十日から二十六日の間不法監禁の事実を認めて、その罪名でもって送致をしておるのはおかしいではないかという御質問がございましたが、先ほど申し上げましたのは、現行犯逮捕をしなかった、それは現場の種々の条件からいって現行犯逮捕を行うだけの十分な条件が現場になかった、こういうことを申し上げたのでございまして、その後の捜査の結果、十月二十日からそういう状態があったという犯罪事実を認知をいたしましたので、事後捜査として処理をいたしたということでございます。
  272. 諫山博

    ○諫山委員 私が指摘した点で、法務省は反省すべき点はありませんか。
  273. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の橋本先生宅の包囲事件の関係ということにしぼっての、迅速処理に欠けるところが検察庁としてもあったのではないかというお尋ねであるといたしますれば、捜査の第一線にあられる警察で捜査中の事件につきまして、関心を持ちながらも警察の捜査に第一線をおまかせして、送致を受けて検察庁が処理を図るというのが刑訴のたてまえでございますので、この件に関する限りにおきましては、検察庁として迅速を欠いたという非難は当たらないのではないかと思っております。
  274. 諫山博

    ○諫山委員 私は、少なくともあなたたちはこの場で、あの事件の処理は適切でなかった、反省すべき点があったというふうに言わなければならないと思います。それをいろいろな言葉でかばい立てるというようなことでは、こういう問題というのはいつまでもなくならないと思います。この点では一番勇気があったのは裁判所です。裁判官は現場に行って、仮処分申請が行われたその日にこういう状態を解除するような命令を出しました。  私がなぜこういう古い事件を取り上げるかというと、もしこの時点で迅速に適切な措置がされていたら、二百名からの被疑者が出てくるような大事件が起こらなかったのではなかろうかと考えるからです。あれだけのことをやっても警察は手を出さない、だれだってこれはのぼせ上がります。この中心人物は丸尾でしょう。そして次から次に但馬一帯で暴れ回ったのが丸尾でしょう。八鹿高校の中心人物も丸尾でしょう。山本佐造の名前もここで出てきます。なぜ、このときに厳正な措置をとらなかったのか、なぜこの時点で泳がしたのか。このことが南但馬一帯の平穏を害することになったじゃないか、私たちはこう指摘しているのですが、こう言われてもやはり第一線の措置は正しかったと言われますか。
  275. 佐々淳行

    ○佐々説明員 八鹿事件の場合には非常にはっきりした暴力事件になったわけでございまして、このような暴力事件については直ちに断固たる措置をとるべきであった。現場においてなぜ現行犯逮捕をしなかったかという御指摘が八鹿事件についてございますとすれば、これは従来当委員会においても御説明をいたしたことかと思いますが、十分なる内部における情報の不足その他の事情から、それから部隊が当日フォード大統領警備に従事をしておったために、その点配慮がおくれ、事件処理が遅くなった、こういう点については、八鹿事件については私どもはもう少し敏速な措置を現場においてすべきであったであろうというふうに考えております。しかしながら、この一連のその他の告訴事件につきましては必ずしも、敏速なる処理を行わなかったために八鹿事件が発生したというふうに私どもは考えておりません。この種の告訴事件については、先ほど申し上げましたように、迅速に処理すべきが原則でございますが、この事案の微妙な性格から事件捜査が手間取った、こういう点はございます。しかしながら、それが原因で八鹿町事件が発生をしたと言うのは必ずしも当たらないのでございまして、この種の犯罪につきましては警察は断固たる態度で臨むという基本姿勢、従来もそうでございましたし、今後もそういう姿勢で取り組んでまいりたいと考えております。
  276. 諫山博

    ○諫山委員 もう一つ、古い事件にさかのぼります。  一昨年の九月から十二月にかけて、兵庫県西宮市で部落解放同盟朝田派によるさまざまなリンチ事件、暴力事件が起こっております。私の調査では、この間に五件の告訴、告発事件があったと思いますが、警察庁、どうでしょう。
  277. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お尋ねの、昭和四十八年九月、西宮市役所において発生した事案につきましては、兵庫県警が受理をいたしました告訴事件は四件と承知いたしております。  具体的に申し上げますと、第一の事件は四十八年の九月十七日、西宮市九月定例市議会出席のために日本共産党西宮市議団所属の市議五名が同庁舎内市議会に立ち入ろうとしたところ、庁舎内にいた部落解放同盟員十数名が入口ドアに立ちふさがって入場を阻止するなどをして、同市議の公務を妨害したという事件でございます。第二の事件は……(諫山委員内容は結構です」と呼ぶ)以上、これを初めといたします四件の事件の告訴を受理いたしておりますが、いずれもこれらの事件につきましてはそれぞれ事件処理をいたしまして、四十八年の十二月六日に被告訴人四人を第一の事件について、その他の事件につきましても十二月六日、神戸地検に送致をする等、四十八年に発生をいたしました事件につきましては四十九年六月二十九日及び七月九日を最後といたしまして、いずれも事件送致をいたしております。
  278. 諫山博

    ○諫山委員 いまの四件の中には十二月三日の勤労会館事件は含まれていますか。
  279. 佐々淳行

    ○佐々説明員 勤労会館事件は含まれておりません。勤労会館事件を含めますと五件でございます。
  280. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、五件とも全部警察の捜査は一段落して検察庁に送っておるということになりますか。だとすれば合計何名の被疑者を送検したのか、お知らせください。勤労会館を含めて。
  281. 佐々淳行

    ○佐々説明員 五件で三十八名と承知いたしております。
  282. 諫山博

    ○諫山委員 勤労会館事件では被疑者が何名で、罪名はどうなっていましょうか。
  283. 佐々淳行

    ○佐々説明員 勤労会館事件では、罪名は威力業務妨害、傷害及び暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で合計二十二名を特定し、神戸地検に送付いたしております。
  284. 諫山博

    ○諫山委員 これは、約二百名の人が集会を開いていた勤労会館に乱入して、ガラスを割ったり乱暴ろうぜきの限りを尽くしたという事件ですが、二十名しか送検されていないのはなぜですか。ほかの人は刑事責任がなかったのか、それとも刑事責任はあるけれども人の特定ができなかったのか、どういうことになっているのでしょうか。
  285. 佐々淳行

    ○佐々説明員 人の特定ができなかったということでございます。
  286. 諫山博

    ○諫山委員 この中に、後で南但馬の被疑者として名前の出てくる人が入っていますか。
  287. 佐々淳行

    ○佐々説明員 西宮市勤労会館事件における被疑者の名前は掌握をしておりますが、これと八鹿高校事件との重復の関係、ちょっと調査をいたしておりません。
  288. 諫山博

    ○諫山委員 法務省に質問します。  この五つの刑事事件は一昨年起こっているのですが、検察庁の捜査はどうなっていますか。
  289. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま、警察で捜査され、検察庁に送られましたこれらの事件は、最初が昭和四十八年の十二月六日であり、最後に送致のあったのが昭和四十九年七月十一日、したがって約八カ月の間に三回にわたって送致があったというふうに聞いております。その後、検察庁におきましては昨年の八月以降、すなわち三回にわたる警察からの事件送付の後で告訴人の取り調べを開始いたしましたが、必ずしも告訴人の協力が得られなかったというようなこともございまして時日を経過いたしておりますうちに、先ほど来御指摘の八鹿高校事件等一連の南但馬における集団暴力事件が発生いたしましたため、そちらの方が緊急を要するということで、検察庁の主力をそちらの方の捜査に向けましたために、その後この事件の捜査は停滞をいたしておりまして、近く、八鹿高校事件の捜査の処理の見通しもついてまいりましたので、迅速な処理をこの事件についても図りたいという方針でおります。
  290. 諫山博

    ○諫山委員 私は、昨年九月から十月に起こった朝来町の事件を迅速適切に処理しなかったことが暴力をはびこらした原因になっていないかと思い、問題を提起したわけですが、実はもう一つここに古い歴史があったわけです。一昨年九月から十二月にかけて告訴、告発事件が五件、そして言語道断な集団暴力事件が行われたのに、どうもまともな捜査がされていない。検察庁の方でもぐずぐずしている間に南但馬の事件が起こってそっちに手を取られてしまった、こういう状態が法治国家で許されるのかと私は思うのです。  丸尾は南但馬事件では中心的な役割りを果たしましたが、西宮事件のころはまだほとんど知られていない人物です。この西宮事件でいわゆる暴力的な糾弾を学んでそれを南但馬に持ち込んできたんだと彼自身が公言しております。ああいうやり方でやれば無理な要求でも獲得することができるんだということを西宮で学んだ、同じようなやり方を南但馬でやるんだと言って彼は暴力行為を繰り返したわけです。もし西宮事件でもっと敏速適切な措置がやられていたら、それこそ丸尾のような人物は出てこなかったかもわからないとさえ言えます。この点で刑事局としては反省するところはありませんか。
  291. 安原美穂

    ○安原政府委員 暴力は、思想、党派を越えて否定されなければなりません。そしてまた、暴力を放置しておくことがその後における暴力の増長を来すということもそのとおりであろうと思います。  したがいまして、諫山先生の御指摘のようなことは、筋道としてはよくわかるのでございますけれども、御指摘の西宮市役所関係事件につきましては、暴力がふるわれたということの疑いのもとになお捜査中でございますから、事案の真相は必ずしも明確ではございませんので、この暴力を捨ておいたために、あるいはこの事件を捨ておいたために南但馬の事件が誘発されたのであるという筋道を、事実関係としてはいまだ私は断定するわけにはいかないのではないかと思います。けれども、一般論としては、暴力事件が起これば迅速に処理しなければならない、それは放置することはよくないことだということについては私も同感でございます。
  292. 諫山博

    ○諫山委員 あなたはそう言われますが、西宮事件が起こったのは一昨年の九月から十二月ですよ。それがまだ検察庁ではろくに捜査がやられていないのでしょう。私が現地で聞きますと、八鹿高校を初めとした南但馬の事件が済んだら西宮事件を調べましょう、その次には、兵庫県では山口組とかいう暴力団の大事件があるからその事件の調べに手を取られます、それが済んだら朝来町議会の副議長さんの告訴事件に入りましょう、こういうのんびりした話をしているのですよ。  大体そういう調べの手順になっているのですか。そうだとすれば、町議会の副議長さんが勇気をもって告訴したのに、いつ調べが始まるかさえはっきりしないというような状態になるのですが、これは検察庁の熱意に問題があるのか、それともスタッフに問題があるのか、どこに問題があるのでしょうか。これを正常な状態だと考えているとすれば大変なことだと思いますが、刑事局長、いかがですか。人員が足らないからこういう状態になっているのか、それともこういう状態になっていることを是認するのか、いかがですか。
  293. 安原美穂

    ○安原政府委員 実はいま諫山先生がおっしゃったようなことを神戸地検の一主任検事、であろうと思いますが、検事がお話をしたということでございますので、それはどういうことであるかということを現地に問い合わせたわけでございますが、経緯は次のように理解されるのでございます。  御案内のとおり、御批判がございましたが、いずれにいたしましても南但馬の事件は捨ておけない緊急を要する暴力事件であるということで、検察庁は検察官十二名を投入いたしまして、昨年の十二月から今日に至るまで三カ月以上にわたりまして、先ほど申しましたように、被疑者約二百名、延べ人員にして参考人千人の取り調べを全勢力を傾注してやりまして、一応その事件の峠は越した、近くそれを収束すべき見通しを得ておったのでありまするが、そこへ実は、その一連の事件であるということでありますところの朝来町議会副議長事件の告訴があったものでありますから、検察庁の主任検事としては、もうこの事件については迅速に収束をしようと思っているところへさらにまたそのころの事件としての告訴があったということで意外の感を持って、その意外の気持ちをそのような言葉で申し述べたようでございますが、これは決して検察庁全体の基本方針ではございませんで、人が足らないのではなく、先ほど申しました十二人の検事をいまは五人にいたしまして、ほかの事件の捜査に専念するという体制がとれるようになっておりますので、あれをやってこれをやって、この順番にというようなことで、のんびりとこの朝来町町議会副議長事件を処理するということではございません。ただ、ほかの事件に比べまして着手が——告訴を受けたのが二月二十五日でございまして、これまた多数の関係人のおる事件でございますので、検察庁といたしましては県警の御協力も得て、これから迅速な処理を図ろうという方針でおるわけでございます。
  294. 諫山博

    ○諫山委員 最後に私は要望します。  この事件で、初めは告訴、告発状が警察に出されていたけれども、後ではほとんど検察庁あてになっているということを警察は考えていただきたいと思います。それは警察が役に立たないからです。警察が敏速適切に処置をしてくれなかったからです。そして警察署長までが告訴されるというような事態が出てきたから、警察はだめだということで警察に告訴状を出さなくなったのです。このことは、警察に対する痛烈な批判として警察は考えていただかねばならないと思います。  検察庁で、第一線の検察官が個人として非常に一生懸命努力されていることは私も理解できます。しかし、それにしても事件の処理が余りにも遅過ぎる。事件の処理が遅過ぎるために、勾留状を請求しても却下されるというような状態というのは、事件捜査としては大変な醜態だと私は思うのです。ところがその点について反省もない。反省がなければ改善策も講ぜられないわけですが、これでは本当に日本の治安に責任を持つ人の立場とは考えられません。こういう事実の中から、私たちは、反共暴力集団に対する泳がせ政策がとられているのじゃなかろうかと批判しているわけです。この点を改めて考えていただくことを要望しまして、この事件の敏速厳正な措置を希望して終わります。
  295. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 本日の質疑はこれで終わりました。  次回は、来る十四日金曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十三分散会