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1975-06-26 第75回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月二十六日(木曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 久保田円次君    理事 河野 洋平君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 藤波 孝生君    理事 三塚  博君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 山原健二郎君       上田 茂行君    臼井 莊一君       小沢 一郎君    久野 忠治君       高橋 千寿君    床次 徳二君       楢橋  進君    西村 英一君       羽田  孜君    羽生田 進君       葉梨 信行君    深谷 隆司君       増岡 博之君    三原 朝雄君       森  喜朗君    綿貫 民輔君       小林 信一君    辻原 弘市君       長谷川正三君    平林  剛君       山口 鶴男君    栗田  翠君       有島 重武君    高橋  繁君       安里積千代君    受田 新吉君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部政務次官  山崎平八郎君         文部大臣官房長 清水 成之君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         文部省大学局長 井内慶次郎君         文部省管理局長 今村 武俊君  委員外出席者         議     員 河野 洋平君         議     員 塩崎  潤君         議     員 西岡 武夫君         議     員 藤波 孝生君         議     員 三塚  博君         衆議院法制局第         一部長     大竹 清一君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員の異動 六月二十四日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     粕谷  茂君   羽生田 進君     内田 常雄君 同日  辞任         補欠選任   内田 常雄君     羽生田 進君   粕谷  茂君     上田 茂行君 同月二十五日  辞任         補欠選任   安里積千代君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     安里積千代君 同月二十六日  辞任         補欠選任   久野 忠治君     小沢 一郎君   高見 三郎君     羽田  孜君   床次 徳二君     増岡 博之君   西村 英一君     高橋 千寿君   羽生田 進君     綿貫 民輔君   深谷 隆司君     三原 朝雄君   山崎  拓君     葉梨 信行君   安里積千代君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     久野 忠治君   高橋 千寿君     西村 英一君   羽田  孜君     高見 三郎君   葉梨 信行君     山崎  拓君   増岡 博之君     床次 徳二君   三原 朝雄君     羽生田 進君   綿貫 民輔君     深谷 隆司君   受田 新吉君     安里積千代君     ————————————— 六月二十五日  私立学校振興助成法案藤波孝生君外四名提出、  衆法第三六号) 同月二十六日  義務教育学校等女子教育職員及び医療施設、  社会福祉施設等看護婦保母等育児休業に  関する法律案橋本龍太郎君外二十三名提出、  衆法第三七号) 同月十九日  学校教育の充実に関する請願野間友一君紹  介)(第三七五九号)  同(中川利三郎紹介)(第三八九六号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(辻  原弘市君紹介)(第三七九〇号)  過疎地域私立高等学校助成に関する請願外一  件(木島喜兵衞紹介)(第三七九一号)  私学助成に関する請願辻原弘市君紹介)(第  三七九二号)  学校図書館法の一部改正に関する請願加藤清  二君紹介)(第三八六五号)  公立学校女子事務職員産休補助職員確保に関  する請願川俣健二郎紹介)(第三八六六  号)  東京教育大学農学部移転に伴う跡地利用に関す  る請願長谷川正三紹介)(第三八六七号) 同月二十三日  私立医科大学の入学時寄付金制度廃止等に関す  る請願細谷治嘉紹介)(第三九一七号)  大学院生、研究生生活条件及び教育研究条  件改善等に関する請願安里積千代紹介)(  第三九四二号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(勝  間田清一紹介)(第三九四三号)  同(斉藤正男紹介)(第三九四四号)  女子教職員育児休暇法制定に関する請願外四  件(山口鶴男紹介)(第三九四五号)  同(安里積千代紹介)(第四〇三四号)  同(有島重武君紹介)(第四〇六〇号)  勤労学生のための大学夜間部廃止反対等に関す  る請願有島重武君紹介)(第四〇五九号) 同月二十五日  女子教職員育児休暇法制定に関する請願(木  島喜兵衞紹介)(第四一三〇号)  同(辻原弘市君紹介)(第四一三一号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第四一三二  号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第四一三三号)  同外一件(有島重武君紹介)(第四二一四号)  過疎地域私立高等学校助成に関する請願(米  田東吾紹介)(第四一三四号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(辻  原弘市君紹介)(第四一三五号)  私学助成に関する請願寺前巖紹介)(第四  二一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案起草の件  私立学校法等の一部を改正する法律案起草の件  私立学校振興助成法案藤波孝生君外四名提出、  衆法第三六号)      ————◇—————
  2. 久保田円次

    久保田委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  学校教育法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、かねてより各党間において御協議願っていたのでありますが、先刻の理事会において協議が調い、お手元配付いたしましたような起草案を作成した次第であります。     —————————————  学校教育法の一部を改正する法律案     —————————————
  3. 久保田円次

    久保田委員長 本起草案趣旨及び内容につきまして、便宜委員長から簡単に御説明申し上げます。  現在の各種学校は、主として職業その他実際生活に必要な知識、技術を習得させる教育機関として大きな役割りを果たしており、また、中学校または高等学校卒業後の青年のための教育機関として重要な地位を占めているものであります。  しかしながら、現行各種学校制度は、その対象内容規模等においてきわめて多様なものを、学校教育に類する教育を行うものということで、一括して簡略に取り扱っており、制度上きわめて不備であります。  よって、この際、当該教育を行うもののうち、所定の組織的な教育を行う施設対象として、学校教育法中に新たに専修学校制度を設けようとするものであります。  その内容の第一は、第一条に掲げる学校以外のもので、職業もしくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図ることを目的として所定の組織的な教育を行う施設は、これを専修学校とし、他の法律に特別の規定があるもの及び外国人学校は除くこととしております。なお、従来の各種学校制度は、そのまま存続するものとしております。  第二は、専修学校には、高等課程専門課程または一般課程を置くこととしております。  第三は、専修学校の名称、設置等認可設置者等に関する規定を整備することとしております。  第四は、この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することとし、この法律施行の際現に存する各種学校専修学校教育を行おうとするものは、その課程設置認可を受けることにより、専修学校となることができることとしております。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。  本起草案につきまして別に発言もないようでありますので、この際、お諮りいたします。  学校教育法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元配付の案を委員会成案とし、これを委員会提出法律案と決定するに賛成諸君起立を求めます。
  4. 久保田円次

    久保田委員長 起立総員。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 久保田円次

    久保田委員長 次に、私立学校法等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、かねてより各党間において御協議願っていたのでありますが、先刻の理事会において協議が調い、お手元配付いたしましたような起草案を作成した次第であります。     —————————————  私立学校法等の一部を改正する法律案     —————————————
  6. 久保田円次

    久保田委員長 本起草案趣旨及び内容につきまして、便宜委員長から簡単に御説明申し上げます。  わが国私立幼稚園は、昭和四十九年度において、幼稚園総数の六〇%を占めており、わが国幼稚園教育普及発展に重要な貢献をしております。この私立幼稚園のうち、六二%は学校法人以外の個人または宗教法人等によって設置された幼稚園であります。これらの中には、施設、設備を初め、教員組織等教育条件が十分でないものがあり、一般財政事情が苦しいために父兄負担が過重になる傾向があります。一方、現行法のたてまえは、公の助成学校法人立のものに限られております。  そこでこの際、学校法人以外の者によって設置された私立幼稚園の健全な発達を図るため、これについても公費による助成措置を講ずることができることとし、あわせて、その学校法人化促進する必要があります。  次に、本案の内容について申し上げます。  その第一は、国または地方公共団体助成対象となる学校法人のうちには、当分の間、学校法人立以外の私立幼稚園等設置者を含むものとし、さらに、補助金を受ける私立幼稚園等設置者は、補助金を受けた翌年度の四月一日から起算して五年以内に、当該学校学校法人になるように措置しなければならないこととしております。  第二は、日本私学振興財団貸し付け等対象に、当分の間、学校法人及び民法第三十四条の法人以外の私立幼稚園等設置者を加えることとしております。  最後に、この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行することとしております。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。  本起草案につきましては別に発言もないようでありますので、この際、お諮りいたします。  私立学校法等の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元配付の案を委員会成案とし、これを委員会提出法律案と決定するに賛成諸君起立を求めます。
  7. 久保田円次

    久保田委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  この際、ただいま委員会提出として決定いたしました両案について、永井文部大臣より発言を求められておりますので、これを許します。永井文部大臣
  8. 永井道雄

    永井国務大臣 専修学校につきましては、この法律趣旨を踏まえまして、新しく設けられます専修学校教育振興に努める所存でございます。  私立幼稚園教育振興につきましても、この法律趣旨を踏まえ、格段の努力をしてまいる所存であります。  なお、学校法人化促進につきましては、法律趣旨に沿い、また設置者の誠意に期待し、適切な措置を講じてその促進を図る所存であります。  また、国公私立幼稚園適正配置につきましても十分配慮し、その実現について指導してまいる所存でございます。     —————————————
  9. 久保田円次

    久保田委員長 なお、両法律案提出手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  10. 久保田円次

    久保田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  11. 久保田円次

  12. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいま議題となりました私立学校振興助成法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  周知のように昭和三十年代の後半から、わが国高度経済成長に伴って学校教育に対する国民需要ば急激に増大してきましたが、その需要の大部分の充足は、私立学校教育に依存してまいりました。その結果として、たとえば、昭和四十九年度においては大学学生数の七九%、幼稚園幼児数の七六%は私立学校に依存しており、高等学校ですら三一%という高い数字を示すようになったのであります。  このような学校教育における私立学校依存傾向にもかかわらず、また、昭和四十五年度から予算補助という形態で始めた国及び地方経常費補助を毎年充実していったにもかかわらず、国の私立学校に対する財政援助あり方等についての考え方は必ずしも確定せず、また、年々悪化していく私学財政危機が果たして切り抜けられるかどうか、常に危ぶまれてきました。特に、最近における人件費の高騰と石油危機以降の物価の急上昇は、私立学校経営に対して大きな打撃を与え、深刻な危機に直面させているのであります。これに対して私立学校は主として授業料その他の学校納付金大幅引き上げ収容人員増加等によって対処してきたのでありますが、このことは、反面、国、公立学校に比べて父兄学費負担を一層過重ならしめるとともに、私立学校の個性ある教育という理想を損なうのみならず、教育水準の一層の低下を招くこととなっているのであります。  このような私立学校の当面している危機的状態に対処するためには、まず第一にこれまでの予算補助形態から一歩を進めて国民の明確なコンセンサスともいうべき法律形態私立学校振興助成についての国の基本的姿勢財政援助基本的方向を宣明するとともに、私立学校も国の財政援助についての法的保障のもとに経営の安定の努力を払えることにすることが必要であります。  次に、以上のような国の財政援助についての法的保障創設に伴い補助金執行適正化をさらに図るとともに、国民の税金が真に有効に使用されることを担保するための措置をこの際採用することが必要であります。  以上が本法律案を御提案申し上げる必要な理由であります。  次に、本法律案の主な内容について申し上げます。  第一は、国が私立大学及び高等専門学校教育研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができることとしている点であります。このことは、私立学校の全経費の七〇%以上を占めるといわれる経常的経費を取り上げて私立学校特殊性を考慮して、二分の一という補助の目標を念頭に置きながらも、現下の苦しい国の財政事情を考慮して二分の一以内という裁量権を国に与えたものであります。  なお、経常的経費範囲については、恣意的要素を排除して客観的に政令規定することとしております。  第二は、都道府県が、私立高等学校、小・中学校、盲・聾・養護学校及び幼稚園教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところによりその一部を補助することができることとしております。  御承知のように、高等学校以下の教育については、古くから都道府県固有事務として地方自治原則にゆだねられる一方、昭和四十五年度から国の私立大学等に対する財政援助に準じて助成が行われてきましたが、都道府県間のアンバランスと最近における地方財政の困難から来る財政援助の不十分さに対しては、もはや放置することができず国は都道府県に対して補助することにより、これを除去しようとするものであります。  なお、国の場合と異なり、都道府県補助割合を明示していないのは、財政に関する地方自治原則を尊重するとともに、現に国が私立大学等に対して行うと同様の補助法律規定がなくとも行われている事実があるからであります。  第三は、この国の財政援助有効性を担保するための各種措置であります。まず、私立大学等経常的経費に係る補助金について、その減額及び不交付に関する規定を設けることとしております。  これは、健全な私学経営教育研究向上を図る観点から、日本私学振興財団法等施行の経験に基づき、適正な補助金執行を図るとともに、補助金減額、不交付理由法律上明確にすることとしたものであります。  次は、文部大臣は、昭和五十六年三月三十一日までの間、特に必要があると認める場合を除き、私立大学学部等設置及び収容定員増加認可しないものとしております。このことは、国の財政援助法的保障創設に伴い当面は、私立大学は個性ある教育という私学理想を高く掲げて量的拡大よりも質的向上を図ることが適切であり、また私立大学の一方の意思によって財政負担が無制限に膨張することを避けようとするものであります。  第四は、その他、関係法律について所要規定を整備することとしております。  第五は、この法律は、昭和五十一年四月一日から施行することとしております。  以上が、本法律案趣旨及び内容概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  13. 久保田円次

    久保田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二分休憩      ————◇—————     午後四時二十八分開議
  14. 久保田円次

    久保田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  藤波孝生君外四名提出私立学校振興助成法案議題といたします。  質疑を行う前に、塩崎君から発言を求められておりますので、これを許します。塩崎君。
  15. 塩崎潤

    塩崎議員 午前中にこの法律案提案理由を御説明さしていただきましたが、なお若干の問題につきまして補足説明をさせていただきたいと思います。  委員皆様方が最も疑問に思う点は、昨年の五月十四日に私の本当に私案といたしまして、私立学校振興助成法案を新聞にすっぱ抜かれたわけでございますが、そのときの姿と現在の提案されておりますところの法案の姿とが大変変わっておる、これはなぜかという点であろうかと思うのでございます。その点につきまして若干の御説明を申し上げたいと思います。  つまり、二つばかり疑問がございます。一つは、国が私立学校等に対しまして補助をする場合に、二分の一という補助義務を昨年の五月の案では課しておりましたけれども、今回の案では二分の一以内の補助をする裁量権限を国に与えておることでございます。それから第二点は、午前中にも御説明申し上げましたが、四十九年の五月十四日の案では、地方団体に対しまして高等学校以下の経常費について二分の一の補助義務を負わせ、それに対しまして国がその半分を補助する義務を負う、こんな構成になっていたのでございます。しかし、現在の案ではもうごらんのとおり、地方団体については補助義務は全く書いてございません。提案理由で御説明申し上げましたように、それは当然地方団体固有事務として補助することができるわけでございます。したがって、その補助義務規定あるいは補助する権限裁量権をあらわすこともやめまして、もういきなり、地方団体補助する場合には国はその一部を補助することができるというふうに、国の補助についての裁量権限規定しているわけでございます。当然のことでございますが、地方団体私立高等学校以下に対して補助割合については全く規定がない点は、当初の案とも全く異なり、今回の案でも私立大学に対する国の補助とも違った規定になっておるわけでございます。  この二つの点がなぜこんなに大幅に変わったのか、こういう点がいつも御疑問になってきているのではないかと思うわけでございます。それは言うまでもなく、財政上の理由でございます。(発言する者あり)  ひとつ静かに聞いていただきたい。私も、こういった点は全く財政上の理由として当然理由ありと、最近そのように態度を徹底するようになったわけでございます。御承知のように、これは経常費範囲についていろいろ問題がございます。しかし、いまの経常費を裸で引き出しますれば、私立大学等についても、五十年度の経常費は約五千億と見込まれるわけでございます。そして私立高等学校以下につきましても、大体経常費は期せずして五千億、こんなふうな計算になるようでございます。そういたしますと、私立大学等につきましては御承知のように、五十年度の予算におきましては千七億円の経常費補助が計上されているわけでございます。五千億に対しましては当然半分にも到達しておりませんところの、ちょうど大体二〇%の補助割合になるわけでございますが、当然二分の一の補助義務を負わせますと、二千五百億円と千七億円との差額の千四百九十三億円の財政支出が国に対しまして義務を負わされるわけでございます。千四百九十三億円が相当膨大な金額であることは言うまでもございません。こういうことによって初めて経常費に対しまして半分の補助割合になるわけでございます。  一方、私立高等学校に対しまして、高等学校以下の経常費及び地方団体及び国の補助金現状はどうなっておるかと申しますと、先ほど申し上げましたように、経常費の総額は五千億でございますから、その半分を国と地方とが持つといたしますと、国の補助所要額は千二百五十億円になります。そしてまた、都道府県補助所要額が千二百五十億円、合わせて二千五百億円の補助義務を私の当初案ならば課せられるわけでございます。ところが五十年度の予算におきまして計上されております金額は幾らかと申しますと、これまた御承知のように、国庫の補助額はわずか八十億円でございます。そしてまた、都道府県地方財政交付税計算上において見積もられましたところの補助予想額でございます、現実地方団体予算計上額等はまだはっきりいたしておりません。六百五十八億円と見込まれておるわけでございます。そういたしますと、私の当初の案の補助所要額の二千五百億円に比べまして、現実に五十年度に予想されておりますところの国及び都道府県補助予想額は七百三十八億円でございます。そういたしますと、二千五百億円マイナス七百三十八億円イコール千七百六十二億円の予算負担財政負担私立高等学校以下に対しましても国と地方公共団体が負わなければならないことになるわけでございます。そういたしますと、昨年の私の案によりますと、私立大学等におきまして千四百九十三億円、私立高等学校以下に対しまして千七百六十二億円、合計三千二百五十五億円の財政負担を負わなければならないという計算になるわけでございます。もう御承知のように、皆様方にこの金額がどんな金額であるかは申し上げるまでもないことでございます。  また、去年に比べましてことしの財政事情は大変窮迫していることは御存じのとおりでございます。四十九年度で七千六百八十六億円の赤字決算額を生じたわけでございます。五十年度の財政予想においても、四十九年度の土台が下がっただけで大蔵大臣の発表では九千億円の赤字が予想される。これに経済事情等を加味いたしますれば、まだまだわからないけれども、恐らく相当な赤字が予想される現状であるから、このような財政現状を考えると、昨年考えましたところの私の、私学振興助成についての基本的な国及び地方団体に対して補助義務を課すということ、しかもそれを二分の一で固定するということは大変な影響を来たすわけでございます。私はどうしても考えなければならない大きな要素であると反省、自粛、自戒いたしたわけでございます。  さらにまた、この私学問題じゃなくして全般といたしまして、財政硬直化の心配が大変ふえてまいりました。その硬直化にもいろいろな要素がございますけれども、硬直化の最大の要素は、法律をつくることによって、あるいは各官庁が種々の経済計画、財政計画を立てることによって、将来に対しまして当然増として予算に対しまして負担を課することが硬直化の最大原因だと言われているわけでございます。  これにはいろいろな見方がございますけれども、いままでの伝統的な見方によりますれば、私が考えておりましたところの、行政によりますところの私学振興助成法では大きな財政硬直化の原因になると非難されてきたこともあるわけでございます。このようなことを考えてみまして、私もいろいろ考えました。このような財源を生み出すためにはいろいろと財政全般の見地から、さらにまた教育財政の中でのウエートの置き方もひとつ再検討することによって、このような財政余裕を生み出すことができないかどうか。  それから第二は、この私どもの計画は、いまの三千二百五十五億円をいきなり当年度、五十一年度で課すというものではございません。五年間で五分の一ずつ均等分いたしまして実現する経過規定を置いておりましたが、五年間でも無理であるとすれば、ひとつこのような財政上のゆとりを何らかの形で生み出すことはできないかということも検討したわけでございます。しかし、いまの経済事情のもとで、これに対処するところの確たる見通しを持つ財政計画がなかなか容易ではない、私が考えましても、大方の御納得を得るだけの時間も大変少ないわけで、こんなことを考えまして、私もひとつ涙をのんで、先ほど御説明申し上げました二分の一以内の裁量権限、これを私立大学補助について規定することにいたし、地方私立高等学校以下につきましては、地方団体に対しましては地方自治のたてまえから二分の一というような拘束は置かない、しかし国が二分の一以内というようなことが一つの基礎になりますれば、現行においても、四十五年度から予算補助で始まりました私立大学に対するところの補助に準じて、交付税計算地方財政計画の計算ではやはり同じような計算方式がとられております事実から見て、善意で地方団体も国の施策に準じて二分の一を目標として進んでいただけるに違いない、それはそのときの財政事情に左右されましても、目標は二分の一になるであろうということを期待いたしました。  しかし一方、国の方はまだまだいろいろ考え方があります。地方固有事務であるからこの補助に対しては慎重でなければならない、このような考え方もございますが、しかしどう考えてみましても、高等学校以下に対しまして国が財政責任を負うことも、新しい教育の方向だろうと私は思います。さらにまた、このようなことを法律規定することによって、国が間接的にも財源を心配していくということも、いまの国と地方との関係から見ても適切なことであろうかと思うわけでございます。古典的な交付税理論ということにこだわることも私は問題があろうかと思いますので、一部の補助ということで、しかもその裁量権を国に与えるということでいたし方がない、こんなふうに考えまして現在の規定をつくらせていただいたわけでございます。当初は、国と地方私立高等学校以下に対しますところの補助を四条、五条と並べておりましたが、四条、五条と続けますと、四条の二分の一以内という規定地方団体にすぐ影響して、地方財政を制約するおそれがあるということも指摘され、私どもも気がつきましたので、これを九条に規定することによって別の角度からの補助とも考えて、理想はありますけれども、直接のつながりがないような苦心した規定の仕方をいたしました。もちろん補助割合規定いたしませんでしたけれども、そのような周到な地方団体に対しますところの、私立高等学校以下に対しますところの財政援助を期待していきたい、こんなふうに考えたわけでございます。  その他いろいろ、監督規定あるいは新しい収容定員増加とやった問題についても、考え方がございます。これらにつきましては、もう先ほども御説明申し上げましたように、当初の案にも大体そのような構想は出ておりましたので、ここでは重複を避けまして、御質問がありましたらお答えすることにいたしまして、補足説明はこの程度で終わらせていただきたいと思います。  なお、これは私の提案というより、私どもの議員立法という形になっておりますが、何と申しましても議員でございまして、詳細な、そしてさらにまた法律の細かい関係につきましては、私よりも、私を手伝っていただきました衆議院の法制局、さらにまた文部省の方々にも御質問していただきまして、私学現状、さらに今後の見通し等についてまた御質問をいただければ、私以上に御納得をいただける御答弁が得られるのではないかと思います。特に文部大臣は、私学問題について大変高邁なる御識見をお持ちのようでございまして、文部大臣にもひとつ御質問をお願い申し上げます。  以上でございます。
  16. 久保田円次

    久保田委員長 以上で発言は終わりました。     —————————————
  17. 久保田円次

    久保田委員長 これより自由に御質疑を願いたいと存じますが、会議の進行上、質疑をされる方は挙手の上、委員長の指名により御発言を願います。
  18. 森喜朗

    ○森(喜)委員 午前中及びただいまの提案者塩崎さんの御説明、よく拝聴いたしました。私は、五名の提出者の外に、調べてみましたら賛成者の中に入っておりますから、賛成という立場で御質問申し上げることになるかと思いますが、私は伺っておって、端的に申し上げて、当初自由民主党が私立学校振興に対していろいろな構想を考え、それが財政的な理由でここまで譲歩せざるを得なくなったという点はよくわかるわけでございますが、このような形にまで、これは藤波自民党文教部会長の御発言を参考にさせていただきますと、大骨も小骨も抜かれても、それでもやらなければならないのだということでありますが、この程度のことでしたら、こう細かく書く必要はなくて、もっと哲学的、精神的に、国は文教、私学というものに対してやはりめんどうを見ていくのだ、やはり補助をしていかなければならないのだというような、そういう精神規定の程度のことでよかったのではないだろうか、こんなふうに思いますが、これはひとつ、提案者の代表者ですから、藤波提案者からそのことについて伺いたいと思います。
  19. 藤波孝生

    藤波議員 私ども自由民主党は、日本の文教政策を進めてまいります中で、特に私学問題を非常に大きな課題として考えて、従来も取り組んでまいりました。野党の各党におかれましても、いろいろ文教政策をお進めになられます中で、私ども自由民主党と同じように、私学問題には熱心に従来もお取り組みをいただいておることに敬意を表しつつ、同時に、私どもも野党各党に負けないように、特に与党でもございますから、文部省をうまくリードしながらがんばっていかなければいかぬ、こう思いまして、従来も努力をしてきたところでございます。  特に五年前に、当時坂田文部大臣西岡政務次官であったと思いますが、与党の方でも特に八木徹雄さん、いまは亡くなられました、非常にりっぱな文教に対する見識と情熱を持った代議士さんでございましたが、その方を中心に、私学に光を当てていこう、わが国の高等教育の八割を担当し、高等学校で三〇%、幼稚園もほとんど八割を担当している私学にもっと光を当てていくようにしようということで、私学助成の道を開くように努力をしてまいりまして、それは年々予算措置としては実を実らせてきているわけでございます。  しかし、当初、そのころに五年を一つのめどとしてがんばっていこうということで計画を進めてまいりまして、昭和五十年度で五年目が来たわけでございますので、この後どんなふうにこの私学振興を進めていくか、そのためには年々大蔵省と予算編成の際に争いはしていくわけで、われわれとしてはどうしても私学予算をとろうということで、従来もがんばってきておるわけでございますけれども、やはり私学を正当に評価し、位置づけて、そして国あるいは都道府県私学に対してその評価し位置づけるにふさわしい財政援助をしていくということを法律の上で明らかにしていくことが非常に大事なのではないか、このように考えまして、森先生もいろいろその仲間に入っていただきましたが、文教部会の中に塩崎代議士を中心とするチームが誕生いたしまして、二年間にわたって私学立法の作業を進めてきたわけでございます。その間に野党各党からもいろいろ私学援助に対する御意見の発表等もございましたので、十分これらも参考にさせていただきつつ、ぜひわが国教育界の中で私学の位置づけというものを法律によって明らかにしたい、この情熱に燃えてその作業を進めてきたわけでございます。いよいよこの国会でなるべく早い段階に議員立法で提出をする、こういうつもりで大詰めの作業を進めてきたのでございまして、この間に野党の各党からは、ぜひこの国会で私学問題の一つの解決を図ろう、衆議院の文教委員会に願わくば私学に関する小委員会も設けて、ひとつテーブルに着いてお互いにいろいろな考え方を開陳し合う中でぜひこの国会で私学助成の新しい道を開くようにしよう、こういう御提案もあったりいたしまして、急いで国会上程の運びにいたしたいと思って話を詰めてきたわけでございます。しかし御高承のように、急にことしから財政事情が悪化してまいりまして、さりき塩崎委員からお話がありましたように、ことしの歳入欠陥、赤字がどれぐらいになるのか、やってみなければわかりませんけれども、非常に深刻な事態を迎えているわけで、その中で、当初私どもが考えてきた私学に対し国は二分の一、都道府県は高校以下の私学に対し二分の一、その都道府県に対し国は二分の一補助していくという、それを五年間で目標を達成するという当初の案は、いろいろ与党の立場で議員立法として国会に提出をいたしますについてはやはり実現可能な線を見出して、その中で与党内の了承も得て国会に提出をしなければいかぬということになりましたので、先ほど御指摘がございましたように、まあ外目には大骨、小骨抜かれたかというような感じになって今日国会提出の段階に至っておりますことは御存じのとおりでございます。  いま森さんから指摘がありましたが、それならもう細々としたことを書かないで、ひとつみんなで私学を大事にしようよという宣言立法のようなものでよかったのではないかというような御意見もございますけれども、これはやはり従来そういった作業を積み上げてきておりますので、その作業の積み上げの上に立って今日の財政事情で実現可能な線を求めたというところのその接触点は、この法律で明らかにすることによって私学関係者に大きな勇気を与え、そして日本の教育を担当していく中で、私学は、政治はこんなにも私学を理解をし、評価しておってくれるのかということによって重大な役割りを担っている私学人を勇気づけて、日本の教育の前進のために非常に大きな意味がある、こう考えましたので、できる限り従来作業を積み上げてきましたところのもので、現実に実現可能であるという表現はできるだけやはり残すことにしようかというようなことで与党としての内部をまとめてきたようなことでございますので、どうかその辺の事情を十分御理解をいただきまして、特に森先生はこの法案賛成者のお一人でもございますので、深い御理解をいただいて、ひとつこの法律案がぜひこの国会で成立をして、財政事情私学経営事情などはもう火の車になっておりまして、大きな役割りは自覚しつつもどうにも学校経営がやっていけない。だからここでもう学校を閉鎖しなければならぬか、あるいはもうこれ以上授業料の値上げということは、その学校を希望してくる学生に対して大きな負担になる、これ以上授業料の値上げはできないかという非常な煩悶をしながら私学人が大きな岐路にいま立たされているというところでございますので、こういうような内容法律案ならば当初の原案からするともう出さない方がいいではないかというような意見も全くないではありませんけれども、それでもこの立法が全私学人に与える大きな意味、また日本の教育界に果たすこの立法の意義を考えまして、この国会におくればせながら提案をした次第でございますので、ぜひこの国会で成立をすることができるように、自由民主党内はもちろんのこと、野党各党におかれましても平素の熱心な私学への御情熱をひとつこの私学助成法案の御審議に向けていただきまして、最終的には全会一致で成立をすることができ、日本の文教政策前進のために大きな一里塚になることができるようにひとつ御賛同をぜひお願いをいたしたい、こう考えているようなことでございます。
  20. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま藤波さんから、野党は大変熱心である、そしていろいろ提案もしたというお話がございました。それだけに野党もさっさと賛成せいというようなお話がございましたけれども、およそこの国会の文教の一つの特徴は、永井文部大臣、民間大臣が、教育を政治の場から静かな場へというその発想が委員会のこの運営全体においてもなされてきたし、このことを将来とも定着しながら、とかくいままで国会の中でもって、教育というものは国民全体にかかわる問題でありながら国会の各委員会の中でもって強行採決が最も多かったという委員会からの脱皮を図ろうとして努力をしてきたところだろうということは、これはみんな異議のないところだろうと思うのです。だからこそいままで懸案であったところの議員立法をみんな一緒になって満場一致でもって片づけようではないかということで、たとえばこの委員会の中に文化財小委員会が長く持たれておったけれども、その実を結ばなかったことを、今回河野委員長努力を中心にしてでき上がりました。あるいはきょう各種学校十年来の運動の問題にしてもあるいは私立幼稚園の問題にしても通り、かつそしてあすは育児休業のあの法律にしても満場一致でもって通るという、そういう意味で、たとえば大学大学をつくるというあの学校教育法の一部改正にしても、これはすでに理事会で何遍も確認をし合っているように、みんな一致するための努力を重ねてきたはずであります。この私学助成の問題も、そういう意味で先ほど藤波さんがおっしゃったように、野党は早くから法案を持ち、あるいは要綱を持っておったけれども、これは党利党略の問題でなしに、今日の私学問題というものは社会問題であるという観点から、野党は理事会においてたびたびさっきあなたおっしゃるように、小委員会を持とう、同じテーブルに着こう、そういう主張をし続けてまいったところであります。もちろんそういう意味では藤波さんがおっしゃったとおり各野党ともに今日社会問題化しておるところのこの私学助成についての熱意はまさにそのとおりであります。だからこそそういう主張をし続けてきたのであります。そこで、確かに自民党の皆さんはその限りでは大変苦労をされてきたのでありましょうけれども、なぜこの法案を自民党の提案で、しかもこの最終段階に出されて、野党に相談をしてみんなでまとまって、よりよき知恵を集中してよりよきものをつくろうという努力をすることなしに出されたかということについて、いまたまたま藤波さんが森さんの御質問に答えられましたので、私は、そういう意味では手続論上非常に不満であります。同時に、不満だということは、単にこの法案の出し方が不満だという意味ではなしに、この国会における委員会において、過去長い間の多分にイデオロギー的な争いに終始したかに外部には見えるであろうかもしれないこの委員会からの脱皮を図ろうとしたその努力は、さっき言いましたように、永井さんが文部大臣になられた、その永井さんがここに座っておられるというこの意味を具体的に生かそうとした努力だろうと私たちは思っております。(「そのことだよ。」と呼ぶ者あり)そうであるかどうかは別。われわれはそう思って、だから今日まで懸案であったところの議員立法でこの国会ではすべて片づけようという努力をした。この問題は、そういう意味ではまさに懸案であった。だから、そういう意味で、いま提案されていることに私は恨みがましいことを言うのではないが、いま審議をする限り、それでは、ここに各党の合意を求める、そのためには修正もあるいはときには継続もしながらも、その合意というものを、まさに国民的なコンセンサスを得るためのそういう努力をするつもりがあるのかどうかをまず第一に、内容に入る前に、いま藤波さんが森さんにお答えになりましたそのことを踏まえて、御質問をまず申し上げました。
  21. 藤波孝生

    藤波議員 社会党の木島委員から、永井文部大臣が高くその存在、活動を評価せられておりますことを、与党である私どもは大変うれしく存じます。  対話と協調の三木内閣の中で、特に教育の問題については国民も非常に心配をいたしておりますし、まさにその対話と協調の政治を永井文政によって特に意義づけていきたい、こう私どもも考えまして、この国会が始まります段階からいろいろ理事会を中心に私どもからも御相談も申し上げ、また各党からもいろいろな御提案があるという中で、終始永井文政下の対話と協調の衆議院文教委員会の審議が進められてきたこと、私どもも大変ありがたく思っているわけでございます。それが一つ一つ実が実ってきまして、特に先ほど御指摘のありました文化財保護法の改正などは、二十年来の懸案の課題がその対話と協調の中から生まれた。もっとも、各省庁にいろいろな意見がございまして、それらを与党として取りまとめてまいりますには、河野委員長を中心に非常な苦労はありましたけれども、しかし、みんなの力で文化財保護法の改正という一大作業が達成し得たということは、大変ありがたいことであったと思っているわけでございます。  ちょうど私学問題についてもそのころに御提案がありまして、私どもも私学の小委員会を衆議院文教委員会設置をして、文化財と並行してやっていこうかと、考え方は全く同じでございますから、やっていこうと思いましたけれども、私学助成という仕事はやはり何といいましても金を伴う話でございまして、文化財の保護というのはもちろん金を伴うし、各省庁のいろいろ役所の仕事にかかわることであったり、それを切ったり、つけ足したりすることでもありますししますけれども、特に私学助成問題は、今後非常に大きな規模にのほる財政問題をはらんだ問題であって、そういう意味では、文化財保護法の改正というのはやはりその時代の一つの哲学を法改正によって顕現するものであり、私学助成というのは、各党がそれぞれ私学助成の哲学は持っているけれども、これくらいの助成をしていこうかという多分に財政のスケールが非常に焦点に浮かび上がるという問題でございまして、あくまでもこれは、国や都道府県私学にどのくらいどんな形で助成していくかというのが中心でございますから、私学から国や都道府県が金を取ろうという話ではないわけでございますから、ですから財政問題を伴っているわけでございまして、特にそういう意味では、やはりいま政府をお預かりをしている自由民主党の立場としましては、当然大蔵省の意見等も十分調整をして進めなければ、実現不可能なことを、これは議員立法であるからとはいえ、可決成立をさせて、結局後現実が伴っていかなかったということになりますれば、結局私学人の落胆を招き、政治不信に陥らせるということになってもいかぬものですから、政府とも十分相談をしながら進んでくるのに実は時間がかかったわけでございます。時間がなぜかかったかと言えば、こんなにことしの財政事情が悪化をしておって、こんなに財政当局の壁が深刻なものであるとは実は正直私どもも当初考えておりませんでして、ここには財政通の先生方もたくさんいらっしゃいますから、それはむしろ私どもの不勉強であったという以外にないのですけれども、非常に厚い壁にぶつかりましたので、一つ一つのみで砕き、おのでぶち当たりしております間に時間がたってしまいまして、私学委員会設置等も非常におくれるようなことになってしまい、申しわけなかったと思っているわけでございます。しかし、そういった中で、それでもやはり全国の私学が抱えております借入金が七千億とも八千億とも言われ、赤字が一千億とも二千億ともこれは想像もできないくらい深刻な様相を呈しておりますから、そういう中でやはりこの国会で成立をさせよう、こう思いまして、会期末に近づいてきてから、どうしてもこれは提出、成立の運びに至らしめたいと思いまして、大詰めの作業をいたしてきたわけでございまして、その段階に至りましたから、少し原案としてまとまってきたものを、各党にお見せをして、共同提案というテーブルにぜひおつきをいただきたいというふうに考えたのでございますけれども、しかし大体、各党とも私学助成の考え方は平素からお持ちであり、年々その御努力を積み上げてこられておるわけでございまして、まさにさっき申し上げました財政問題を中心としたところに私どもの非常に心配をしておるところがありますだけに、非常に会期末に近づいてきてからでも、平素御熱心にお進めをいただいておる、各党私学助成に対する考え方を基準として、この案を御批判をいただいたりあるいはそれぞれの各党の御意見等をお寄せをいただきます質疑を重ねます中で、この国会をぜひ通過をさせるような運びにさせていただくことができるのではないだろうか。こんなふうに思いましたので、今日に至ったわけでございます。  修正する意思があるかという御質問でございましたが、提案をいたしました以上は、ぜひこの案でこの国会を通過をさせていただきたいというふうに考えておりまして、ざっくばらんに申し上げますけれども、いろいろお考えのところは附帯決議等の道筋もございますので、どうか積極的に、そういった点につきましては御提案もちょうだいをして、一緒にひとつ考えさせていただきたいと思っておるようなことでございますので、提案者が修正しても結構でございますという答弁はないと思いますので、ぜひこの原案で通過をさせていただくことができますように格段の御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  22. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま、藤波さんおっしゃるように、各党が案を持ち、その考え方が大体似ておるのだということもおっしゃいました。だから、できるならば合意をすべきことである。そういうことが、時間的にあろうがなかろうが、まずなさねばならなかったところの行為ではないのか。逆に言うならば、この案ではとても合意が得られるものではないから、合意が得られないという前提のもとの案であるから——この国会の文教委員会の流れからするならば、当然そういうものをお出しになったということになるんだろうかと思うのですが、いかがでありますか。
  23. 藤波孝生

    藤波議員 ぜひ一緒のテーブルについて、今度の立法の共同提案という形にお願いをしたいと心の中では思っていたんですけれども、木島さん御存じのように、各党で共同提案をするためには、手続なんかがありまして、やはりいろいろ時間がかかるようですね。  それで、わが方としては、もう大蔵省なんかとも大げんかをしながらやっとここまでまとめてきて、そうして考えてみたらもうあと一週間ちょっとぐらいしかない。これはもうぜひ皆さん方に一緒にテーブルについてもらおうと思ったけれども、その各党内の手続を踏んでいますとなかなか——きょうも理事会で山原先生から、一つの政党というものは、一つの政策に賛成するか、反対するかということに藤波さん時間がかかるんだよと、大共産党のそういった内情の御指摘等もございましたけれども、そんなことを考えていますと、この提出する時間も間に合わなくなってしまう。やっこらさ何とか、とにもかくにも、ぼろくそに言われながらでも、これだけのものででも、私学に温かい政治の愛情の差し伸べをしていこうとやっとまとめたものを、さらに一緒のテーブルについてもらって、これで時間がかかってこの国会に提出もできないということになったら、与野党を通じて政治に対して非常に大きな期待を持っている私学人や、私学の大きな役割りを理解をし評価をしている国民に対して政治が申しわけのないことになってしまう。  しかも、やはり私学経営状態がそういう状態でありますだけに、それはわれわれも高い峰を目指しながらずっと進んできておって、これからもそういきたいと思いますけれども、当面ゼロよりも一を、一よりも二をということでやはり前進していかなければいかぬと思うのです。  教育の仕事というのは時間がかかりますから、一つのものが種をまいてから芽を出すまでに五年も十年もかかるし、花が咲くのには二十年も三十年もかかるだろうと思いますけれども、それだけにやはり種は早くまいていきませんと、文教政策というものはなかなか花が咲いていかぬのです。ですから、そんなことをあれやこれや心配しておりましたら、夜も寝られないようになってまいりまして、みんなと相談をしまして、とにかく国会へ提出しよう、そうしたら必ず各党ともテーブルについてくださるに違いない、そこでお互いに私学に対する温かい気持ちの交換をして、みんな一致して、ないよりもある方がいい、これでひとつ私学を勇気づけようということで、必ず御理解を得られるに違いないという確信のもとにこの法律案を——とうもそこをもう一つ、自民党だけで議員立法で提出したところを、じくじたる思いをしながら、時間切れにならぬように提出をしたわけでございますので、どうぞその辺の事情は御理解をいただくようにお願いをいたしたいと思います。
  24. 森喜朗

    ○森(喜)委員 藤波さんのないよりもあった方がいいんだ、ゼロよりも一、一よりも二、そういうお気持ちもよくわかります。それから、私もお手伝いをいたしておりましたが、ここまで来られるのに大変な努力をなさっておられました。特にここ三日間ほどは、恐らく塩崎さん、藤波さん、寝ておられないんだろうと思います。そうまでしてここまでやってこられたということは、私は私学の各経営者も恐らく多とするところだろうと思うのです。だからこそ、宣言立法、あるいは哲学的なものでよかったんじゃないだろうか。  ことしの予算で、私学助成をとることと人確法の第三次をやることに大臣も努力をされましたし、われわれも大変な努力をいたしました。そういうことから見ると、法的にこういうことの裏打ちをすることと、いままでのようにやはり予算を一生懸命やってきたことと、実効的にそう変わらないんじゃないだろうか。そうすると私学関係者はむしろ落胆するんじゃないか、私はそんなふうに実は思っているのです。だからあえて申し上げたのです。  そこでもう一つ、あなたがおっしゃっておられた、あるいは塩崎さんがさっきから説明されました、財政当局との闘いで、おので、ハンマーでぶち割って一つ一つ前へ進んできたんだ、こういうことをおっしゃった。財政当局というものは日本の財政を預っているところでありますから、これは厳しければ厳しいほど姿勢はいいと私は思うのです。しかし、財政当局のそういう財政理由というものと、国権の最高機関である国会での議決と一体どちらが優先すべきか、比重が高いんだろうかということに、私は大変疑問を持っているのです。つまり先般もこの委員会でも議論をされましたけれども、人確法に伴ういわゆる第二年度分の平年度分、これも積み残しをしております。端数がいささか残ったというならいざ知らず、二百三十二億なんというとんでもない金をそのまま積み残している。これも国会で議決をして、しかもその国会で決められた法に基づいて国が予算までつけておいて、それを人事院が一方的に積み残した。いろいろ聞いてみれば、財政当局のいろいろな理由、働きかけでどうも積み残したというのが、これは事実だろうと思います。この問題はまだ解決をいたしておりません。  そういうことを考えると、国会における議決、それよりも政府の財政理由とか大蔵省の言い分の方が強いんだということを考えると、私もこの法律をここまで持ってくることにいろいろ手助けをさせていただいて、ものすごく自己矛盾と何かさびしさを禁じ得ないわけでございます。そういう意味で、いわゆる国会での議決と大蔵省——きょう大蔵省が来ていないというのははなはだおかしいんだけれども、大蔵省の方の考え方か——党の中ではわかりますよ。党の中で、それは党の政調会長なり党の責任ある幹事長がわれわれを説得するのはよくわかるけれども、ここは国会の委員会ですから、この委員会の決定することより大蔵省のそういう財政理由の方が優先するんだということに私どうも納得いかないし、これから将来全部そのことが大きな前例となって、あるいは一つのスタイルとして残っていくんじゃないだろうか。せっかくいいことを決めても、財政理由でこれはだめなんですよと言われたんじゃ、国会なんかない方がいいと私は思う。  私はこんな考え方を持っておりますが、藤波さん一緒にやってこられたから藤波さんに答えてもらいたいのですが、これは日本の一つの行財政の仕組み、あり方の問題にもなってくると思いますから、総裁候補にもなられた河野先生、あなたはいまの私の意見についてどう思うか、それからあなたからお答えをいただいたら、この問題について政府のその一翼を担っておられます永井文部大臣は、私のいまの意見に対して何とお感じになりますか、お二方にお答えをいただきたい。
  25. 河野洋平

    河野議員 森先生の御発言はきわめて大事な御発言だと思います。  実態から言いますと、予算の上で表現をされたものが予算委員会を経て、あるいは本会議を経て議決をされて、その予算執行されていくわけでありますから、一つの国民の意思決定が行われたということになることも事実だと思うのです。  ただ、今度の私学の問題について申し上げれば、ことしも一千億を上回る私学助成を政府、与党一体となって予算の中に盛り込み、予算案を成立させました。この限りにおいては、野党はこれに反対をしたわけですから、野党は一千億を上回る私学に対する助成についてどういうふうにお考えになるかということが明確になっていないわけでございます。  私どもは、おれたちがやったんだと手柄顔をすることもできますけれども、そうでばなくて、むしろ私学関係者に対して、私学というものは大事なものなんだ、日本の学校教育の中における私学の位置づけを明確にするために、むしろこういう法案を出して、与野党一致の賛成によってこの法律を国会の議決として私学の位置づけをするということが大事だ、そしてこの法律を根拠にして来年度から私学にさらに大きな予算をつけていくということが、ただ単に金額がふえるということにとどまらず、金額がふえるかどうかも来年度予算については、いま森先生御指摘のとおり非常に問題があると思いますけれども、それと同時に私学関係者に対して自分たちが日本の学校教育の中の位置づけをきちっと得たという気持ちが非常に大事だ、こう私は思っておるわけです。ですから、いまの森先生の御指摘には二つの問題があって、ただ単に財政当局の判断、予算編成時に当たって与党と財政当局との間のやりとりがどれだけの意味があるかということと同時に、私学を本当に国民的背景のもとに位置づけるということももう一つ考えなければなりませんから、この法律はそういう意味で大変重要な意味があると思っております。特に野党の皆さま方には、これは全く私個人的な見解として申し上げたいと思いますけれども、予算委員会の席で少し、予算について本当に予算案そのものについて細かな質疑が行われて、文教予算の中で私学予算はこれでいいのかという丹念な御質疑が行われる、たとえば人確法に基づいて教員給与に対する予算がこれでいいのかという丹念な議論が行われたあげく、ことしのような事態になったということになれば、これは確かに森先生がおっしゃった予算と個別の、財政当局の予算執行に当たっての態度というものに大きな矛盾と、それから問題が出てくると思います。ところが、私どもが横で見ておりますと、予算委員会予算それ自体よりもむしろもっと包括的な御議論が多くて、細かい予算の御議論というものが全体から言うと少ないように思いますから、恐らく予算委員会での質疑あるいはそれを受けての本会議でのやりとりを見ると総額を認めたというだけで、中の使い方についてはもっと別の判断があるようにすら思えるのでございます。したがって、その中身については財政当局の判断ということだけではなくて、少なくともわれわれ立法府の議員として一つずつ法律事項として定めていくということはどうしてもやりたいし、やるべきことではないか、こう提案者として考えるわけでございます。  先ほど提案者の藤波代議士から、一より二を、二より三をという御指摘がありましたけれども、全くそのとおりで、私学振興しよう、私学助成しようというお気持ちはみんな共通の気持ちがあると私は思うのです。ただ、助成の方法について、思い切って八までいけあるいは七までいけあるいは十五までいけ、いろいろのお気持ちはございましょう。しかし、そこは、できるものから順にいこうという、方角が違っているわけではありませんから、できることから一つずつ出ていこうという最大公約数をひとつぜひおつくりいただきたい、こんなふうに思って、特に提案者の一人として野党の先生方にももう一度御賛成をくださるようお願いをこの機会にしたいと思います。
  26. 永井道雄

    永井国務大臣 先生の御質疑の意味は、文政に関する国会における御審議並びに文政に関する法案というものが提出される場合に、これと大蔵当局との関係、いずれが優位に立つかということについての私の見解を述べようというふうにまず理解いたしております。  私は、その問題に関しまして申し上げたいことは、そもそも大蔵当局自体が文教予算に限らず政府全体の予算を案として提出するにとどまるものであるということを最初に申し上げておきたいと思います。したがいまして、全体的な予算というものの最終的な決定は国会において行われるわけでございますから、したがいまして実は大蔵当局はこの問題に関して予算案を提出いたしまして、そして国会における御審議を経て決定するという意味合いにおいて、国会が当然優位に立たれる。そして国会の御決定に従って予算執行するという関係にあるかと考えます。  なぜこんなことを申し上げるかと言いますと、私は政府の国務大臣の一員として行政にかかわっているわけでございますが、その意味合いにおいて私も政府提出の全体的予算案に責任を分与するものでございますが、しかしながら国会と行政当局との全体、政府全体との関係について申し上げますならば、予算案の最終的決定、これが国会にあるということは申すまでもないことであるかと考えます。  しかし、そこで一つの問題を生じてまいりますのは、そうした状況というものが基本的にあるにもかかわらず、それ以上の予算要求を内包する法案が各分科委員会において提案された場合にいかなる関係に立つかという問題であろうかと思います。私はそうした場合に文部大臣として考えるべき問題は、当然国務大臣として国会の御審議、御決定に基づくところの予算というものがあり、その執行を分与する責任を持っておりますから、その予算編成上の責任並びに執行上の責任というものが一方にある。地方文教委員会における法案の御審議並びに提案というものとの調和を図るべく努力いたしますのが私たちの立場であろうかと考えております。
  27. 森喜朗

    ○森(喜)委員 一応いま提案者の河野先生それから永井大臣のお考え方わかりましたが、やはり私どもは大臣の言葉もずいぶんしんしゃくさせていただいて、国会は国民の総意を決定する大事なところだ、こういうふうに私どもも確認をしておかなければならぬと思います。  そこで少し中に入ってお聞きしたいのですが、それなら、私はもう端的に申し上げて、大変失礼ですが、さっき申しましたように、この程度なら宣言法案でもよかったのじゃないかということを申し上げたのは、一体この法律が通って、来年の具体的な予算の裏づけとどのような関連があるか。恐らく私学関係者もそれは一体どういうふうになるんだろうかということを非常に期待もし、不安も感じておられると私は思いますので、その辺をまず具体的にどのような形で進めていこうとしておられるのか、まずその辺のところを説明していただきたいと思います。
  28. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいま森委員から大変重要な御質問がございました。大きなこの法案に対する考え方につきましては河野議員並びに永井文部大臣からもお話があったわけでございますが、なお私も提案者の一人といたしまして、もう少し敷衍して、しかもその敷衍したことによって来年からの予算のあり方がどうなるかという点について重要な御質問がございましたので、お答えしたいと思います。  確かに、このような二分の一以内の補助をすることができるというような規定を見られて、これはないよりあった方がいいというような若干消極的なお感じを持たれておられるように思うわけでございますが、私はこれは大変、私が立案に参画したからという意味じゃありませんけれども、重要なそして将来の予算のあり方を示唆する法案だと思うわけであります。むしろ積極的にこの価値を評価したいと思うわけでございます。  それはまず第一に、森委員も疑問を持たれましたように、予算法律との関係、この問題からくるわけでございます。人確法のときも私は御質問をし、森委員もいま援用されました。永井文部大臣からもその一部について御答弁があったようでございますが、私は、予算というものは法律の下にあるものだと思うわけであります。したがって、法律によってこれだけの金額を組むべきである、そういうことが決まって、その数字のテーブルが予算案である、こんなふうに思うわけでございます。それは、人確法がこういった教員確保のために待遇を改善しろという、あれこそ少し抽象的でございまするけれども、それに基づいて八百億近くの予算が組まれたと私は考えておるわけでございます。つまり、予算案というものは、法律に基づいて国民がこれだけの債務を負うのだ、そのあらわれでございます。単に行政官庁である文部省と大蔵省との間の話し合いによって、そのときそのときの財政事情によって組まれるのが、これまでの慣行では予算案と言われておりましたが、これは大変おくれた日本の予算執行状態を反映するものにすぎない。アメリカでは、御承知のように法律によって予算ができるものでございますから、予算案というものは議決の対象にならない。私は、何としてもこの法律の方が今後の私学予算について、大きな、何と申しますか、制約をする、方向を示すものだと思いますので、そういった意味で高く評価したいわけでございます。  第二に私が評価する意味は、法律というものは国会が約束したものでございますし、私の提案にもありましたように、国民の明確なコンセンサスのあらわれてございます。皆さん方、これまで予算案では大変努力していただきましたけれども、大体どこまでが目標か、知っておられる方は少ないのじゃありませんか。亡くなられた八木徹雄先生が経常費の半分を補助しようというような口約束で大蔵省と文部省との話し合いでやってきたのですけれども、これはどこにも公認されて国会で承認された計画じゃないです。そのときそのときの行政官庁の思いつき、あるいは財政事情によって制約されるという考え方は、これは本当に、私学経営者から見ますれば大変迷惑な話だと思うのでございます。これだけ私学に対して援助しなければならないということが国民のコンセンサスになった以上は、国民が法的にこれだけの債務を負うのだ、そして、債務の目標は二分の一なんだということをあらわすことは大変意味があることなのでございます。そして、その目標に向かって私学経営者は希望を持って安定した経営ができる、こういった第二の大きな理由があるわけでございます。これまではトンネルの中を本当に真っ暗に走っておりましたが、この法案によってやっとともしびが見える、そうして、こういった二分の一まではいけるのだから私学経営者もひとつ努力しよう、こういうことは、私学の自主的な責務として第三条に明瞭に規定しておるわけでございます。予算にはこんなことは一つも書いてないのです。数字が並んでおる、どういう計算の根拠があったかということは、私どもは知らない。文部省と大蔵省の単なる話し合いでできておる。いつでも言い逃れできるような数字よりも、はるかにましな法案であると私は考えるわけでございます。さしあたって来年どうなるか。私は、財政事情は来年よくなるとは思いません。しかし、よくなればやはり二分の一、二千五百億円の予算を要求すべきだと思う。しかし、それがよくならぬとすれば、でき得る限りの最大限度の要求、努力を二分の一という目標に向かって——いま千億でございますけれども、五千億に対して、ひとつできる限りその半分の二千五百億に近づくような要求をし、その努力を払うのがこの法案の目標だと私は思いますし、そんなふうに努力していきたいと思います。もちろん、財政事情によってむずかしければ、できる限りの譲歩をいたさなければなりませんが、そういった目標が立った意味において、この法案の意義を、民主的な予算の進歩という意味からも高く評価してまいりたい。すべての予算はこういった法律に基づいて詳細な議論を経て組まるべきことを予期したものだとして考えていきたいと思うわけでございます。
  29. 森喜朗

    ○森(喜)委員 ということからすると、二分の一の目標というのは、亡くなられた八木先生のころから、これはもう私学関係者、私どもこれにかかわり合いを持つ国会議員みんなの夢、希望であったと思います。ですから、その二分の一という目標の表現の仕方が、私はちょっと内情を知っておるだけに言いづらいのだけれども、「二分の一以内」という、あえて「以内」を入れて、これが一体その努力目標と具体的に——目標ならこれは何もこんな「以内」などということは必要がない。この「以内」というのは将来ずっと残っていくわけでしょう。目標なら、何も「以内」ということを入れる必要はないので、もう少し「財政的事情により」あるいは、財政的事情がこうなればこの辺はこう処理できるのですというような表現の仕方や、あるいは付帯事項の附帯のつけ方もあるだろうし、私は何か方法があると思うのです。「以内」ということが、ここまで何か大蔵省と妥協したところだろうということになるわけですが、これが最後まで残ってくるのじゃないか。これについてどうですか。
  30. 塩崎潤

    塩崎議員 森委員の御提案もまことにごもっともでございます。私も「二分の一以内」という言葉は大変気に入らないわけでございますが、まだまだ進歩の過程にあります予算制度の中で、こういった表現の前例が多いから仕方なしに従った。恐らく、だんだんと各委員会がこの文教委員会のようになって、予算法律によって計算さるべきである、義務を負うべきであるというようなことになれば、いまの森先生おっしゃったようにひとつ二分の一を目標にし、あるいは二分の一と書いても財政事情によってときどき削減できるというような書き方をして、詳細に予算がこの法律に基づいて自動的に組まれるようなやり方、私はもう進歩の方向だと思いますので、今後ともひとつ研究させていただきたいと思いますし、森先生もひとつ大蔵省などを特に呼んでいただいて、新しい形の予算のあり方、こういった問題を特に私の後輩に御説教していただきたいと思うわけであります。
  31. 森喜朗

    ○森(喜)委員 新しい予算のやり方、これは私は文教委員会は、先ほど木島先生から手続上の問題で、文教委員会というのは、どうもいつも強行採決とか話し合いが行われていないという御指摘がございましたけれども、私は文教委員会の方がむしろいろいろな意味で、形はそういう形はございますけれども、非常によく話し合いを進め、本当に実りの多い成果を得ていると思うのです。その時代、その法案法案でいろいろな過程はございましたけれども、筑波の問題にしましても、人確法の問題にしましても、今回のこの私立学校振興助成法にいたしましても、やはり将来の教育のために大きな苦しみを乗り越えて新しい措置をしていく、この実効が上がっていくのはわれわれの次のゼネレーションの連中だろう、私はそんなふうに思って、そういう意味では確かにいいと思いますが、何かいまの塩崎さんの御説明で、この「二分の一以内」にいろいろの——私どもはよく理解はできますけれども、はっきり言って、大骨も小骨も抜いてがたがたにされたと言うけれども、さらにここだけはやはり守り通してほしかったなという気持ちがある。そういう意味では完全なものじゃない、画竜点睛を欠くというふうにあえて申し上げていいと思うのですが、この「以内」という問題は将来やはり予算実行の面から見たりあるいは財政的にももう少し理解のできるような形になればこの「以内」というような問題は当然取り除く、あるいは改正をする、こういうことでなければならぬと思いますが、藤波先生、いかがでございますか。
  32. 藤波孝生

    藤波議員 立法の過程でいろいろな議論が出ました。特に問題点は、やはり二分の一とびしっと規定をすることによって、それが何と言うか、この法律によって財政硬直化の要因を招いていくということになることが大きな問題点であったわけでございます。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕 しかし、そういった財政硬直化の要因になるような二分の一というぴしっとしたきめつけ方は今日の財政事情では非常にいかがなものかというような意見が前に出まして、「二分の一以内」という表現になりました。しかし、将来、びしっと二分の一ときめつけていくような改正ができるときが来るかもわかりませんし、また、財政事情が好転をすればどんどんと助成予算措置を講じていくということにもなるわけですし、それから政治は選択でございますから、たとえば財政事情が苦しくともいわゆる文教予算の中で私学に思い切り光を当てるのだ、そのことによって、場合によれば文教の他の部分で若干伸びをとどめて足踏みしなければならないような部分が出ようとも、私学に光を当てていくというようなことは、今後文部省の中でもいろいろ選択、決断が行われていくだろう、私はそんなふうに期待をいたしておりますけれども、そんなこともひっくるめて、二分の一以内でみんなが最善の努力私学助成にしていくという意味で、以内というような尾っぽはつきましたけれども、やはり二分の一という当初の目標をこの法律の中にとどめて、そこを目標にしてみんなでがんばっていこうという気持ちがあらわれておりますことをどうか御理解いただきまして、この法律を土台にするというか足がかりにするというか、さっき皆さん方からもいろいろ意見が出ておりますように、今後できる限り私学助成への財政援助がふえていくようにひとつ努力をしていきたい、こんなふうに思っているわけでございます。
  33. 森喜朗

    ○森(喜)委員 塩崎さんのお答えの中で、場合によっては来年度の予算ではいままでよりも期待ができないかもしれないというようなことがありました。この法律が皆さんの御協力で可決されて実行されていった場合、具体的にもう一遍事務当局に少しお聞きしておきたいと思いますが、私学予算はどのような形で効果をあらわしてまいりますか、局長。
  34. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 この法律案は、先ほど藤波先生の方からも御説明があったように、私学を大事にしていこうよという趣旨のもとに私学振興助成の骨格をお定めになったものと理解をいたします。立法府と行政府の関係で申しますならば、立法府においてこういう趣旨法律案が制定されますならば、行政府としては、その趣旨を最大に尊重して私学予算原案の積算、計上に当たらなければならないわけでございます。したがいまして、この法律案が成立するとしないとでは、私ども直ちに来年度の予算編成作業に当たって大きな影響があるわけでございます。つまり、この法案が可決成立いたしますならば、御趣旨に沿って最大の努力をしなければならない状況にあるわけでございます。(発言する者あり)
  35. 森喜朗

    ○森(喜)委員 いま委員の中からもちょっとそういう発言が、ひとり言だろうと思いますが、ございました。実は私も率直に言ってそう思っておるのです。さっきから私非常にこだわるようですけれども、この程度の法律でがまんしなければならなかった事情はわかりますが、ならば、この程度ならなぜ文部省がやらないのか。私は、文部省が本当にもっと私学を大事にしようという気持ちを、持ってはおられるとは思うけれども、やはり持っていただかなければならぬ。とりわけ、永井大臣御就任なされて、特にそうした私学に対する御理解の深い方でありますことは、先ほども塩崎さんからもお話がありました、皆さんからもお話がありました。私は、余り内聞のことを言ってはいかぬのかもしれませんが、どうも最初はむしろ文部省がありがた迷惑で逃げ回っておったような気がしてならぬのです。そうして、無理やりに引きずり出されてきた。わが党文教部会と文部省では、これは違うのかもしれぬが、そういう意味から見れば、文部省はやはり大蔵省の味方なんだな、同じ政府の仲間同士だなということも私はわかるのですが、文部省が本当ならもっと積極的に取り組むべきではなかったか。文部省でむしろ早く出して、そうすれば、いま先生からも御指摘があったように、この中でもう少しお互いに長い時間をかけて私学の問題等について、本当に主義主張を乗り越えて、実りのある議論がもっともっとできたのではないかというようなことを実は思うのです。  文部大臣に私は先ほどほかのことを伺ってしまいましたけれども、本当は最初に伺わなければならないのですが、わが党が出しましたこの法案に対して——私はいま文部省に対していささか失礼なことを申し上げたかもしれませんが、文部大臣自体、この法案に対してどう感じておられますか。
  36. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 関連質問。最初に塩崎さん、自民党提案者側にお聞きしますが——いまの問題に結びつきますから。議員立法でしょう。議員立法という形で提出されたのですから、委員会提案という形に持っていきたいという願望はおありでしょう。いかがですか。まずそれを聞きます。
  37. 塩崎潤

    塩崎議員 私は、ただいま議員立法だから委員会提案の願望を持つべきではないかというお話がございましたが、それも一つの方法だと思いますし、早期成立のことが望ましい場合には委員会提案ということがこれまでの慣行であったことは十分存じております。しかし、議員立法で委員会提案でなければならないというふうには考えておりません。そしてまた、私は議員が提案するのが望ましいと思っております。
  38. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その点はもう木島委員が経過を述べたように、この法案は、今国会最初から野党の側で小委員会をつくろうという提案をしてきたわけですから、その経過は、結果としてなかったということはまず確認できる。そこでもし自民党の側のいわば議員立法としてここで提案されるのだとすれば、いままでおっしゃった森君の意見と全く同じ意見ですが、大蔵省や国の財政を頭に置いて法律をつくる、中身に入りませんけれども、それに即した法律になっていますよね。と判断をします。  そこで、いまの森君と同じ質問を大臣にします。大臣はこの法律案を読んでみて、文教政策の将来の理念、大学あり方等々を含めて、議員立法という形で通してもいいと判断されているのですか。
  39. 永井道雄

    永井国務大臣 まず、これを議員立法として通すことはどうかということでございますが、私たち文教行政に当たる者といたしまして、最も尊重すべきことは国会の御意見であります。もちろん、国会の御意見というものを参酌しながら私たち自身が立法に当たるということもあるわけでございますけれども、しかし、筋道から申しますと、当然国会における御審議並びに御提案というものがきわめて積極的に展開されておりますときに、むしろ私たちはそれを非常に尊重して、そしてそこででき上がった法案、そしてそれがさらに法律として成立するというときに、その精神を尊重して行政に当たるというのが、私は筋道として最も望ましいのではなかろうかと考えております。  わが国は、ともすれば議員立法よりは政府提案が多いということが一般的慣行になっておりますけれども、原則的に申しますならば、私は、むしろ議員立法の数がふえた方がよろしい。私個人、また文部省に働きます人間、すべて教育に非常に強い関心を持っておりますからして、教育というものを強化していく、さらに現今におきましては私学を尊重していくことが重要であるということは考えている。これは間違いのないところでございます。しかし、その際にも国会におけるすなわち立法府における御討議並びに御決定というものは、これは国民の意思を反映しているものでありますから、そのような形で御提案になり御決定になったものに従って、われわれもひそかに心に秘めていた精神を呼び起こされて、そして仕事に当たっていくということの方が私は筋道であると考えておりますから、議員立法という姿の方が原則的に申しますならば、政府提案というものよりもわが国の憲法の精神に沿っているものと私は考えます。したがいまして、この法案というものが法になりました暁におきましては、もちろんこの第一条に示しておられますところのわが国における私学振興、これが国会の御意思であるということを改めて確認する。それは私たち自身も当然そうでなければならないと考えておりますが、一層その法の精神によりまして激励される。そして私たちは予算の編成に当たる。こういうふうに考えている次第でございます。
  40. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だとしますと、文部省はいまの場合引っ込んでおりますね。大臣も引っ込んでいるわけですね、この議員立法の場合は。大臣は対話と協調をおっしゃって、そうして学校教育については与野党が話し合って国民の意思をまとめるという趣旨で願っておられると思う。一般的な形式的な議員立法という意味じゃなくて、自民党がいままで委員会の中で木島さんが提案したような手続を踏む余裕がなくて、大蔵省がうまくいかなかったのでしょう。しかし突如として最初言われたものとずいぶん違う、大蔵省に迎合する法案をお出しになったとすれば、立法府として私学助成というものについて独自な判断を持とうというためのコンセンサスをいまから得ようとしたわけですね。短時間にやらなければならぬという事情はわかりますよ。しかし、その場合に議員立法という形はとっているけれども自民党提案で、野党が全部問題点が非常にあるというふうになった場合に、国会の意思は尊重すると言ったってやはり多数決ですね。しかも、残念ながら民主的な討論の過程が少ない、こういう事態になるから、大臣はどう考えるかということを聞いたのです。ですから、それはそれとして、塩崎さんに自民党提案について質問しますけれども、修正はだめなんですか。継続はだめなんですか。どっちですか。全然だめですか。一方的に採決してしまうのですか。
  41. 塩崎潤

    塩崎議員 私は御提案を申し上げまして早期成立を希望いたしておるだけでございます。これからの論議を御期待申し上げるだけでございます。
  42. 木島喜兵衞

    ○木島委員 まず最初から申しましたように、この国会における委員会というものは、そういう意味では議員立法を全部全会一致の方向で持ってきたわけですよ。だからそれはいとまがなかったかどうかということは、それはさっき言いましたからもう言いませんが、いまこの時間に合意を得るためにはときに修正もあるかもしれない、ときに原案のままかもしれない、ときに継続ということもあるかもしれない。いずれそういう気持ちがあるのかどうかということなんですよ。それで率直に言って、先ほどからのことを聞いておりますと、一つには大骨、小骨が抜かれた。だから野党との合意はだめだろうという考え方があるのではないのか。そして一方においては、いままですべての議員立法は全会一致の合意を求め、しかもそのことを意識的にやってきたという委員会の今日までのあり方及び今後を見通したところの委員会のあり方と、この法案におけるところの、これは合意を得られないのではないかという断定のもとにもしいまいられるとするならば、これはその限りでは明らかに矛盾である、そういう気がするのです。だからそういう意味でいま嶋崎さんはいままでの経過を、それはさっき私が言いましたけれども、言わないにしても、ここで合意を得るところの気持ちがあるのかないのか。そのことを教育行政の上においてどう理解をしているのかということをいま嶋崎さんが問うておられるのだろうと思うのです。その点についてのお考えをいただきたい。
  43. 塩崎潤

    塩崎議員 私はもうこの法案を二年半一生懸命やってまいりました。ですから、ほかのことは余り考えるゆとりがないくらい頭が熱くなっておりますので、いま私がお願いしたいことは早期成立、そして今国会成立。それもいろいろな手続を考えますと、どうしても早く皆さま方の御審議を得て成立させていただくことをお願いするだけでございます。私学財政現状は一刻も早く成立することを望んでいると私は思いますので、そういった観点からぜひとも御審議をお願いいたしたいと思います。
  44. 木島喜兵衞

    ○木島委員 成立を望んでいらっしゃるのは提出者同じことでしょう。しかしさっき藤波さんがおっしゃったように、提出者だからいまのところ修正とかその他を考えないというのは、提出者同じことでございますけれども、しかしそれは議員立法であり、そしてその議員立法は今日まですべて合意をしようという意思統一をされておる。だから、そういうことで成立を望むのは当然でしょう。しかしだから私は今日までの委員会のあり方からして、合意をする努力をしなかったのではないかとさっき言ったのでありますが、それは別としても、いま合意を得るところの努力をするつもりがあるのかとうか。成立をさせるために——合意をすれば成立するのであります。そういう気持ちがあるかどうかということを聞いたのであります。
  45. 藤波孝生

    藤波議員 合意をするのはいろいろな方法がございまして、この案に皆さんが賛成してくだされば合意をすることになるわけでございます。この案に対していろいろな意見がある場合に、たとえば修正とおっしゃいますけれども、どんなような修正の案が出るのかによって、御提案によって判断しなければならぬと思いますし、それはまさにそのときの状態によるわけでございまして、いろいろな御提案を出てはいかぬと私ども考えているわけではないわけでございます。ただ、いま塩崎さんからお話がありましたように、一刻も早く、私学の実情はこの法律が国会で成立することを期待いたしておりますし、やはり私学を大事にしようという法律の精神からいきましても、どうしてもこの国会で成立をさせたい、こう提案者は考えているわけでございます。もちろん各党一致で合意を得て、国会で成立することは望ましいことでございますけれども、他の法案もみなそうしたからこの法案もそうしようというお話は、ちょっと本筋を離れておる話ではなかろうか。たとえばきょうはやっと十年ぶりに各種学校法案が衆議院で通過いたしまして参議院へ送り込まれていきましたけれどもこれは十年かかっております。十年前に各種学校専修学校にして、これからの生涯教育、多様な教育形態の中で大きく各種学校を位置づけていこうと政治が考えました。その時点といまとを考えてみますると、各種学校の位置というのはもっともっと重要性を増してきてはいるわけですけれども、十年前にそれをやっておいていままた新しく手を打つべきことを各種学校にしてやれたら、各種学校というものはもっと生きたし、前へ進んだのではないだろうかというようなことを、きょう私は本会議各種学校の全会一致で通りましたあの姿を見ながら思ったのです。ですから全会一致ということは大変大事なことだけれども、刻々変わっていくこの時代の条件や社会の環境などを考えますときに、そこで果たすべき教育役割りを考えますと、どうしてもやはり急ぐ必要がある。こう考えますと、合意を求めるがゆえに時間が遅くなってもいいということではないということを、さっきから塩崎さんも私も申し上げさせていただいておるわけでございます。どうか御理解をいただきますようにお願いをいたします。
  46. 山原健二郎

    ○山原委員 時間の問題とそれから合意の問題との関係も出てきたと思うのです。だから私は最初にちょっと理屈を言わせてもらいますと、先ほどから提案者の塩崎藤波両先生の御発言を聞きながら、一つは何となく予算の重圧といいますか、大蔵省の重圧といいますか、そういうものを感じているわけです。それは苦労なさったこともわかるわけですが、しかし問題はここで論議する場合に、そのことより先に、やはり私学の今日の危機的な現状というもの、これがまず論議されていいのじゃないかと思っているのです。たとえば私学をどう見るか、教育の機会均等とか、あるいは国民教育を受ける権利とかいう問題もありましょうし、さらには今日の私学の一番困っておる問題は何か、こう考えてみますと、一つはやはり私学研究教育の条件の劣悪な姿、これをどう改善していくかという問題、それからもう一つは授業料及び学費の史上空前と言われるこの値上がりの現状をどう抑えていくかというここのところに出発点を置かないと、皆さんはそう言っておられるのではないけれども、ややもするとこの論議が予算が先にいってその予算の枠が重荷となって、そこでこの論議をされる。そういうことよりも、ここのところの私学現状を先に踏まえて、そうしてたとえば予算が仮に苦しくともこれはやらなければならぬ、こういう問題として問題を逆転をさせてお互いに考えていく必要があるのではなかろうかというのが第一点です。これは恐らく全員そういう立場に立っておられると思います。  それからもう一つの問題は、四十五年の私学財団法ができましたときに、経常費の二分の一を補助するということであのときの論議をいまも覚えているわけですが、あれで国が二分の一助成をしていくということになりますと、かなり私学は助かるというふうな大きな期待を持ったわけですね。ところが現実にやってみると、これまた予算の問題でしわ寄せを受けてきて、事態はますます深刻化していくという状態です。当時の私学関係者の中には、この私学助成、いわゆる人件費を含む経常費の二分の一論が出たときには、ああこれで相当生き返れるというふうに思ったのが、現実にはやはり予算の面からのしわ寄せ、そして事態はますます悪化していく、こういう経過をたどっておるわけです。だから考えてみますと、あの四十五年の決定、五年間に経常費の二分の一をするということは、仮に法律がなくとも本当にやろうとすれば、これは事態はまた好転をしておったと思うのですね。ところがそれは現在では一八%か二〇%の達成率にすぎないという状態で、今度は法制化だ、こういう形になってくるわけですね。その法制化に対してはまた私学関係者の人たちが大きな期待を持っている。それは現在の学費値上げという問題をこれで抑えて、学園にいろいろな紛争が起こらないようにしたいという気持ち、あるいは経常費の二分の一という数字が出ておりますから、その二分の一が来れば、あるいはうちの学校ではこれだけ先生の数をふやせるだろう、そうすると先生一人当たりの生徒数ももっと減って、そしてもっとましな教育ができるだろう、こういう期待があるわけですね。その期待にどうこたえるかというのが今度の法案の問題だと思うのです。  そういうことですから、そういう事態の中で野党の方では理事会におきましても昨年来、小委員会を持って精力的に集中して審議をしていこうじゃないか、漠然と考えておってもなかなか委員会だけでは進まないので、だから小委員会なら小委員会を持って私学関係者も呼んであなたの学校経営の状態はどうなのかとかいうようなことを集中して審議をして、そしてそれに見合うような法律を与野党一緒になってつくっていこう、そういう努力を重ねてみようではないかと言ってきたのがこの長い経過であったわけですね。それは先ほど各先生方が言われたところです。  ところがその間なかなか小委員会が成立するような状態ではなかったわけです。そして会期は延長されまして今日の時点になってきますと、実は昨日法案を正式にいただいて、そしてきょう提案者の方からの趣旨説明が行われたわけです。しかも、そうしますといままで新聞にしばしば発表されたりしましたところの法案とは少し違う点が出てきたわけです。いま森先生が言われたようなかなり違う面もあるようなんです。いままでは要綱その他新聞でも見てきたわけですけれども、いろいろ違う点もあるんじゃないかという予想もされます。まだ私も十分中身を見ていませんから……。ところが国会はどうかというと、七月四日というあと限られた時間です。衆参通じて一体これはどうなるのか。こういう事態の中でこの円卓式の討論が行われているわけです。そうしますと、この法案に対して真っ向から反対だとか、これに対しては賛成だとか、この部分は修正しなければならぬ、あるいは修正すれば一致できるだろうとか、こういうようなことは一つの法案をめぐって常に行われることなんですが、そういう常に行われることがこの法案で果たして行われ得るのかという心配が私どもはあるわけです。大変急いでおられるという問題があるわけですから、その急いでおられる問題は気持ちの上ではわかるとしても、しかしここも政党で構成されている国会ですから、政党にはそれぞれの法案に対する審査の機関もありますし、それに基づいて私どもは発言をするという段階です。そうすると、私どももこれはこの法案の審査を急がなければならぬ。それはふだんの場合とは違う緊急を要する問題として私たちも急がなければならぬことは理解しているわけです。しかしながら、ではそういう審査をして、いま木島先生が言われたように、たとえば私たちもそれぞれ法案、要綱、あるいは政策というものは持っていますから、率直に言えば、それはとてもみんな一致できるものではないかもしれません。たとえば授業料補助なんというのがこの法案の中にあるわけですが、これなどは私たちの方でずっと考えてきたのとなかなか短時間に一致できるものではないと思います、将来はできるかもしれませんが。しかし、短時間に一致できる部分だってないとは言えないと思うのです。たとえば今年度が千七億、これをあるいは二千億突破する金額にするとかいうような計算だってできないだけではない。そういうものについては与野党が一致して、じゃ大蔵省なら大蔵省の財政上の困難を全員で突破して、今日危機に立っておる私学の立場に立ってこれをどうするかということが論議されて私はしかるべきだと思うのです。だから、先ほどから言われておりますないよりはましだという言葉もわかるわけですよ。しかし、ないよりはましだと言い切れるかどうかということも、私たちはもう少し審議をしてみなければならない。  こうなってまいりますと、これは藤波さんのいまの木島さんに対するお答え、たとえば提案があればというお話、それは時間との関係も含めて言っておられますけれども、じゃその提案があったらどうするのかということになると、藤波先生の御答弁では、それはそのとき考える余地を持っておられるような御答弁でした。私はこの点では委員長にも伺っておきたいのです。こういうふうに私たちは審議しておりますけれども、私たちが本当に精力的な論議をやって、あるいは皆が一致できる部分が出てきたら、この法案の中のどこかを修正するというようなことまでやって、この委員会でいわばこの私学助成については円満に解決しようとしておる、そういうお考えに立っておるのかどうか。これはぜひ委員長にもお伺いをしておきたいのです。そうでなければ、最初に言われたように絶対もう修正はできません、仮にそうなってきますと、この短期間の間に私たちは何を迫られるかというと、この自民党提出法案に対してただイエスかノーかを迫られるだけなんですね。これではせっかくこういうテーブルをつくって論議をした効果はないわけですから、その辺はお互いに、やはり単なる手続の問題としてではなく考えて論議をしなければいけないと思うのです。だから、そういう立場をこの委員会全体がとるかどうかが問われているわけです。その意味で、この委員会を差配される委員長の御見解をぜひともこの際伺っておきたいのです。
  47. 久保田円次

    久保田委員長 これは提案がありますれば各党におきましていろいろ相談いたしたい、こう思います。
  48. 高橋繁

    高橋(繁)委員 今国会の開会に先立って、今度の国会は私学助成が最重点になるだろうという声がちまたでありました。したがって、本日出された案につきましても、先ほどからいろいろ苦心されたとか長い間検討なされてきたというお話もありました。そういうことを踏まえて、わが党を初め各党とも、私学助成法につきましては、昨年来検討を重ねて、ようやく要綱発表という段取りまできたわけです。だから、わが党としてはわが党なりの態度というものはすでに決めておるわけです。自民党の方々が苦労なさったと同様に、わが党も何時間、何日間かけて大変苦労してきた結論が出ておるわけです。そういうものが出ているのについて、本日出されて、先ほどからいろいろ意見を聞いておりますと修正ができないような趣もありますし、あるいは早くしなければならない、こういうことを考えますと、この案につきまして、党としては検討もしなければならないし、あるいはなおさら、修正ということになればさらに検討をする時間もほしい。しかも、先ほどから早くこれを片づけたいというお話がありましたが、その早くというのは一体きょうじゅうなのか、その点の時点はどう考えておりますか。
  49. 藤波孝生

    藤波議員 先ほど来山原委員並びに高橋委員の御質疑、御意見を承っておりまして、いずれも私学助成に非常な御熱意が各党ともあることを私どもも知りまして、大変ありがたいと思っております。特に、山原委員から、与野党一致して大蔵省に当たろう、予算の増額のために、ひとつ一緒に大蔵省に対して戦おうではないかというような御提案もございまして、大賛成でございます。やはりそれが国会の大きな役割りだと思うのです。文部省が財政当局にお金をくれ、お金をくれとこじきみたいに言っているんじゃなしに、やはり政治が大いにバックアップして一つの方向を示して、大蔵省にその措置を行わしめるというような方向へ持っていくことが非常に大事だと思います。そういう意味で、今後ともぜひ文教委員会に大蔵省当局なども呼んで、どんどんとそういった意味の与野党を通じての強い希望を申し述べていくような機会を持っていただくように、私からも委員長に特にお願いを申し上げたいと思うのでございます。  ただ、山原委員のお話の中にございました、五年前から二分の一というのを期待しておりながら、今日なお二〇%になっていない、またここで私学立法というようなことでごまかしていこうとするのではないかというような意味の御発言がございました。それは確かに五年前からそんな感じが出ておりましたけれども、さっき塩崎議員から御説明を申し上げましたように、八木徹雄先生を中心にして強くそういうことを望まれてきた、国会の中のたくさんの先生方も、二分の一ということを頭に描き、私学関係者も二分の一ということを頭に描きしてきましたけれども、結局それが閣議で決定もしなければ、法律という形ででもそのことがはっきりうたっていなかったということが、二分の一と思いながらなお今日二〇%も満たないようなことになってしまった大きな原因であった、こう思うわけでございまして、五年たってこの前車の轍を踏むことがあってはならない。今度こそは法律に根拠を置いて、政治が私学を大事にしようよということをうたい上げることによって、五年前の大失敗を繰り返さないようにしようということが今度の私学立法の大きな意味であったということをどうか御理解をいただきたいと思うのでございます。  また高橋委員からも、すでに公明党としては私学助成の方針は決まっておるのだ、それをいま自民党から議員立法で出てきてもすぐに対応できないというような意味の御意見がございましたけれども、決まっておればこそ、いまの自民党のこの議員立法の案がいいとか悪いとかという御質疑に加わっていただきやすい条件がすでにでき上がっているわけでございますし、ぜひそういった決まっている方針を御開陳をいただいて、われわれも勉強さしていただきたいし、そうしてその共通のテーブルの中から、この法案を中心にいたしまして、私学問題への意見交換をしていく中で、国会はこんなに私学のことを大事に考えているよということを内外にやはり宣言し、確認し合って進んでいきたい、こんなふうに思うわけでございまして、ぜひひとつその決まっているところを御開陳をいただいて、私どもの提出をしました案などについての御意見もお開かせをいただければ大変ありがたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。
  50. 森喜朗

    ○森(喜)委員 木島先生や山原先生、高橋先生の御意見、私も大変よく理解もできますし、私もそう言いたいわけでございます。しかし、先ほどからお話ございましたように、一を二にし、二を三にするということは、これはみんなで努力してやれることだと思いますし、いま各会派の先生方からもそういう御発言がございましたから、これから同じ国政に携わる者として努力をしていかなければならぬことだと思います。ゼロから一、二をつけることに私は大変な意義がある。ですから私はそのこと自体は大変大きな評価をしておりますし、会期が迫ってきたこの時点でどうしてもやろうというのは、大きな一つの希望をつけることでございますから、このこと自体私は大きな意義を感じております。だからこそ、せっかくのこの意義をもう一つという、つい欲張りも出るわけでございますし、またいろいろな意味で方策を改善させていきたいために、今後の大きな道を残しておきたいという意味で、私はあえてくどくどと申し上げているわけでございますから、本質的なものはぜひやりたいという気持ちでございます。  それからもう一つ、役所の姿勢についてもこだわったのも、やはり新しいこういうあり方に対して、逆に言えば役所の皆さんがやりたくても現実にできないこともかなりあると思うのです。やはりそういうことをもっと立法府として逆に働きかけてやっていくということも、やはり正しい日本の国の政治、行政の前進につながることだ、こんなふうに思いますので、私はあえて役所の皆さんにも強いことを申し上げたわけであります。  そこでもう一つ、これはこのことを進めてまいります中で、私ども自民党の中でありますけれども、やはり財政の硬直化ということが大きな壁でございまして、新しい政策を取り入れて、国民のために、国家のために政治をやっていきたい、しかし財政が大きな壁であります。今日の日本の国のように、ひたすら高度経済成長を走ってきた国家、国民にとっては、いまここで国家が壁にぶつかりましたからスローダウンしなければならないのですと、こう国民に呼びかけても、国民の方がむしろ火がついて、あれもせよ、これもせよという、こういう時代ですから、これを可能にできないのは政治の責任であるという風潮があるということも、またこれは現実であると思います。その中で、わが党の中でも議論が出ましたのは、それでは君たち財政をどこかで見つけてこいよ、こういうようなやりとりもあったと私も記憶しております。塩崎さん、特に西岡前文教部会長の時代から本当に苦労してまとめてこられたわけでありますが、塩崎さんも本気になってどこかの予算を削って持ってこようという努力もなさったと思うのです。これからは特に教育政策が大事でありますし、また教育政策全般の見直しということも大臣もしばしばおっしゃっておられるだけに、新しい施策をやってまいりますためには、やはり財政がどうしても関係をしてくるわけでございます。そうなると、私はやはり文部省なら文部省に与えられた一つの会計、財政、これをあるところではやはり削っていかなければならぬところも出てくるのじゃないだろうか。そうしない限りは政治に前進はないと思うのです。  この辺についてまず塩崎さんに伺っておきたいのですか、あなたは大蔵省におられて——あなたがもっと大蔵省におられれば日本の国はよくなったのだろうと思いますが、前非を悔いていまやっておられるのだろうと思うのですけれども、どうも大蔵省の方というものはやめるとえらい考えが改まってくるわけでありますが、そういう意味で塩崎さん自身いろいろな考え方をされたと思いますが、こうした方策を進めてまいりますと、これからも一を二に、二を三にしていくためにも、やはりどのような苦労をなさったのか、あるいはそういう文部省全体の財政のやり繰りというものについて、あなたも考えておられるところを少しお話を聞きたいと思うのです。
  51. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいまの森委員の御質問は私も全く同感で、これまで私どもが悩んでおりました点を大変お上手に表現していただいたものだと思うのでございます。  私は、人確法の成立によって、義務教育学校の先生たちの給与改善の問題が終わった後の文教予算の最大重点は私学問題、これに尽きると思うわけでございます。私学の現況に対しまして、国民が許される限りの資源をどうしてもつぎ込まなければいかぬと思うわけでございます。しかし、森委員のおっしゃるように、このことによって財政硬直化の原因になっては、これまた国民に対して申しわけなく思うわけでありまして、それだけむずかしいわけでございますが、私どもがあらゆる知恵をしほり、そして努力を払って、最初に申し上げました私学に対しまして私どもの資源をできる限りつぎ込むべきだと思うわけでございます。  そういった意味で、私がまず第一に考えておりますことは、この法案にもあらわれておりますように、私学が自分の財政について本当に責任を持ち努力をしてもらう、これが第一でございます。また、国もそうでございます。地方団体もそうでございました。私学もそうであったのですけれども、これまでの高度成長の路線がいつまでも続くような、拡張に酔ってきた。これがいまの苦しみの大きな原因の一つだと思うのです。そういった意味で、この私学振興助成法の三条にございます学校法人の責務、こういった点を私は十分考えていただきたいと思うわけでございます。これまでの努力は十分でないような点も私はあると思うのでございます。いたずらに補助金だけに依存する傾向がある。ヨーロッパやアメリカでは、私立学校経費の三分の一は大体民間からの寄付によって賄われているわけでございます。それに対しましては税制上の援助がある。こんなことを考えてみると、まず私学においてもひとつ現行の税制上のいろいろな制度も十分利用していただいて、国の補助金と同様に、また私学も卒業生の方々の御努力によって寄付金を集めるようなことはぜひともやっていただきたい。そして安定のための基金をつくっていただくことはぜひとも必要だと思うのでございます。  卑近な例で、これまで十万円を超えなければ私学に対して寄付いたしましても所得税から控除をしてくれなかった制度を、実は去年から一万円まで下げて、一万円以上なら個人の所得から控除するというようなことを、これを始めたわけであります。私は、このことは会社からの寄付だけが私学財政資金になるとは思わない、卒業生の善意の寄付、これを奨励するにはひとつ税法上の特典に待つこともいいと思って大いに推進したわけでございますが、このようなことが往々にして忘れられて、やはり簡単な会社寄付、あるいは文教委員会に頭を下げれば簡単に出るような国からの補助金、こんなことに頼っておったのでは、本当に国民私学に対する期待にこたえたことにならないと思うのでございます。さらにまた、これまた鶏と卵のイタチごっこみたいな感じがするわけでございますが、私学の膨張ですね、これが考えられる。そのために財政危機に陥る。こんなことを考えると、今後の私学膨張については歯どめをする。そうしなければ、国庫の補助私学の一方の意思によって無制限に膨張する。こんなこともひとつやっていただきたいと思うわけでございます。これは、この法案の附則の中の私立学校法の一部改正の中で、それを実現しているわけでございます。このような方法で、私学がまず自覚していただく。  それから第二は、森先生の御指摘いただきました財源を見つける努力、これをやるべきではないかというお話でございましたが、全く同感でございます。文教予算の中でこれから最も重点を置かれるべきものは私学予算でございますし、またその金額が先ほど申し上げましたように、現在の規模において大学で二千五百億円にまで到達しなければならぬわけです。先ほど申しましたように三千二百億要るわけでございますからなかなか容易じゃない。しかしこれは努力によってでき上がると思うわけでございまして、私はここではまだまだ案が練れておりませんので申し上げかねるわけでございますが、このような点についてもひとつ今後の研究課題として検討していただきたいのは、国公私立の格差の是正ということがこの私学振興助成法の目標の一つだと思うのでございます。そういたしますと、いまの国立大学財政のあり方が果たして私学財政とバランスの保たれたものであるかどうか。国立大学になればもう全額が援助される。私学となれば、先ほど藤波委員のおっしゃいましたように一五・六%という部分しか税金をつぎ込まないといった財政の仕組み、こういったものの間に本当に考えなければならぬ点がたくさんあると思うわけでございます。そしてまた父兄の負担で考えてみますと、授業料で平均いたしまして国立は私学の四分の一であり私学は四倍であるというこの実態、これは何を意味するか。これで本当の福祉国家といえるのかどうか。ここのあたりも真剣にメスを入れていく必要があろうかと思うのでございます。何も国立大学授業料を上げろという意味ではありませんけれども、これを放置しておっていいのかどうか、放置するとすればそれはどのような考え方で正当化されるか、こういった点に思いをいたしていけば、だんだんとこの私学財政についての財源も、非常に努力も要るかと思うのでございますが、出てくるような気がするわけでございます。これはなかなか各方面にも御異議がありますので、この委員会で申し上げることは適当じゃないと思うわけでありまして、今後ともひとつ慎重で注意深い、さらにまた深い研究をしなければならぬと思うわけでございます。  どうかひとつ森先生を初め多数の方々の御援助、御指導、御鞭撻を得たい、こんなふうに私は常々考えておるわけでございます。
  52. 森喜朗

    ○森(喜)委員 確かに財政硬直化という財政の厳しさを打開していくためには、私どもそれぞれ努力をしていかなければならぬことでございます。  ひとつこの機会に大臣にちょっと伺っておきたいと思うのでありますが、いま塩崎議員からもそういう御発言ございましたが、やはり国民の支出あるいは国民財政負担というものは公平でなければならぬと思います。そういう意味では、たとえばいまちょっとお話があったかと思いますが、国立大学授業料、これだけを仮に引き上げてもそんなことで埋められるとは何も思っておりませんけれども、しかしそれにしても国立大学授業料私立幼稚園授業料より安いというような現実でありますから、このいまの国立大学授業料について大臣は何と思っておられるか、これが一つ。  それからもう一つは、いま塩崎議員のお話の中にもありましたように、私学経営者、私学の先生方、必ずしも経営に一生懸命努力をしておるかどうかというのは私はいささか疑問だと思っておりますけれども、それにしても国立の大学の先生が果たして国の財政や文部省の予算を心配していることが一体あるのだろうかということに、私はちょっと疑問を持っております。もうすべてが国におぶさってしまう、そういう中で赤字になれば全部国がめんどうを見るのだというような、もちろん大学の学問、研究をしていく先生方に余り金の心配なんかさせてはいかぬのかもしれませんけれども、それにしてもどうも安易に流れやすいんじゃないかというような感じが実はするのです。この際やはり、切るべきところは切っていく、改めていくことは改めていく。特に大臣は何かの機会に東大、京大の偏重は改めるべきだということもおっしゃっておられます。同時に、私どもから言わせれば、国立大学全般に対する偏重、予算のあり方も、私はこの際これを機会に検討していかなければならない、こんなふうに思います。私の言わんとしていることを、高通なる大臣は十分御理解だと思いますが、それに対して御見解を承っておきたいと思います。
  53. 永井道雄

    永井国務大臣 まず、国立大学にいま予算が行き過ぎているんじゃないかという問題は、幾つかの面から考えなければならないと思います。私は、森先生が言われますように、東京大学、京都大学というところがいわゆる古くからの旧帝大の中心でございまして、そういうところに引き続きお金を注いできた。ところが、実はわが国大学学生人口が増大したわけでありますから、そういう状況の中で方々にいわば中心ができていかなければいけない。そのことを考えますというと、東京大学、京都大学中心にそこにたくさんの政府予算が行く、行っていたというあり方は考え直さなければいけないと思っております。  第二点といたしまして、それでは国立大学一般予算を減らしていいかどうかという問題になってまいりますが、これはなかなかむずかしい問題だと思います。実は私学の問題もこれに関連いたしますが、たとえば国立で医科大学をつくるという問題につきましては、これはもうわが国はおくれ過ぎているわけでございまして、そこで、人口十万人当たり百五十人の医者をつくるということを昭和六十年までには何とかして達成しなければいけない。このことのためには、これは国立でございますから当然予算を必要とするという事情がございます。これが一番際立った例でございますけれども、しかしながら、他方地方大学も拡充していく。仮にこの案で考えられておりますように、私学の新増設を認めないという場合、今後の大学人口の中で国立と私立との比率をどうするかということを考えてまいりますと、先ほどから話が出ておりますように、八割が私立でございますから、私立をふやしていかないで仮に大学人口がふえていくということを考えますと、国立大学全体の予算を簡単に減らすというようなことは考えにくい。ですから、東大、京大の問題は第一点ですが、全体予算の問題ということになりますと少し変わってくる面が出てくるかと思います。  それから第三点といたしまして、国立大学がいわば政府依存過ぎではないかと、そういう問題がございます。そういうことから来る、予算の使い方というものがもっと有効性を持った方がいいのではないかということ、これはいままでもある程度は議論されてきておりますが、私決して十分であるとは思っておりません。私自身は、実はそういうことから国立に、いままでの国立ではなく、公社のようなものにした方がいい、そして自分の経営努力というものがあった方がいいんじゃないかということを大臣になる前に提案したことがございます。実は中教審の答申の中にもそれと同じ案がございますから、これは私個人の意見ではなく、中教審の意見でもあるわけでございます。これがまだ検討課題として残っているということであろうかと思います。  さらに、第四点としまして、先生が一番初めに言われました国立大学授業料の問題でございますが、この授業料の問題というものを決めていく場合、やはり考えていかなければいけないのは当然私立との均衡という問題でございますが、これは私立の方をなるべく少ないようにしていく、そのことのために実はこういうふうな助成というのもあるのでございますから、私立が高いから国立を少し上げたらいいという議論に単純に飛躍しにくい側面もある。この面も考えなければいけない。しかし、それにしても上げた方がどうかというような問題、これは実は入学料とか、そういうところについてはすでに措置したわけでございますが、こういう場合には、やはり国立大学協会というような全体の国立大学の団体があるわけであり、これは八十校に及んでおりますが、この八十校の学長というものの積極的的協力というものを得てやるということ、つまり、先ほどから、財政の問題は重要であるけれども、同時に教育も重要だと、あるいは逆に言うならば教育のためにこそ財政が重要なのでございますから、私たちは、財政のことも考えますが、さてまた他方、国立大学の場合、いままでの一つの伝統として重要なるものは自治である。そういたしますと、この授業料の問題を考えていく上で一つ、均衡ということも大事でありますが、どうやって私学を下げていくかということも考えなければいけません。それにしても国立が高いという場合には自治との関連も考えるべきである。  先生の御質問の点については、以上四点私は考えを申し上げたわけであります。
  54. 久保田円次

    久保田委員長 これより理事会を開会いたしますので、午後七時まで休憩いたします。     午後六時三十七分休憩      ————◇—————     午後七時二十八分開議
  55. 久保田円次

    久保田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  藤波孝生君外四名提出私立学校振興助成法案議題とし、質疑を続行いたします。
  56. 森喜朗

    ○森(喜)委員 先ほどから、提案者からの成案になるまでの御苦労も開陳をいただきましたし、私ももちろんのことでありますが、各野党の皆さん方も私学に対する大きな助成をする、その柱を打ち立てていく、このことについてはいかなる政党の皆さんも恐らくここにいらっしゃる方みんながそう念じ、そう希望しておられることであろうと思います。  そこで、話をもう少し中身の方に進めてまいりたいと思いますが、高等学校以下に対する補助でございますけれども、ここに「一部を補助することができる。」と規定をしてあります。やはりここが私もさっきの「二分の一以内」ということと同じように一番ひっかかるところでございまして、「その一部を補助することができる。」ということは、しなくてもいいのか。事情によってはやらなくてもいいという、そういう逃げ道もあるような気がするんです。この辺について、進めてこられました塩崎さんから御説明をいただきたいと思います。
  57. 塩崎潤

    塩崎議員 確かに森委員の御指摘のように、私立大学に対しますところの国の援助と違いまして、第九条の高校以下に対しますところの財政援助は「一部」という規定の仕方が出ております。「補助することができる。」という規定の仕方は、私立大学の場合と同じでございます。「その一部」という形になっているわけでございまして、仰せのとおり考え方によりますればゼロでもいいというようなこともできようかと思います。しかしこの精神は先ほど来るる申し上げておりますように、都道府県の高校以下に対しますところの教育責任と申しますか、財政責任並びに監督責任、こういった地方自治固有の権限を尊重しておるわけでございまして、都道府県がどの程度まず高校以下について補助するかどうかは法律で決めないで、都道府県の自由なる裁量、自治の範囲にゆだねているわけでございます。もちろん先ほど申し上げましたように、国が私立学校に対しまして二分の一という一つの目標を出しますれば、現在、御承知のように五年前から二分の一補助という私立大学に対する国の援助にならって、都道府県もまた地方財政計画、地方交付税計算では二分の一ということを目標にしながら国の財政措置に準じて補助増加してまいりましたので、そういうふうになることを期待するわけでございます。しかし法律上は、おっしゃるようにまだそこまでの義務は課しておりません。しかし、これは現在の地方自治も尊重いたしましたことと、そして私学に対する財政援助が必要なこととの妥協でございます。しかし国は、都道府県が援助した場合に、本当は半分ぐらい持ってやってもいいじゃないか、あるいは三分の一という率を法定した方が完全に私学と同様に目安がついていいじゃないかという考え方があるわけであります。これもまた一つの譲歩でございまするけれども、やはりこれまでの経過から見ますと、ことしやっと予算に計上した程度であって、地方固有事務に対して、特に高校以下の学校財政援助に対して国が援助したことがないということの沿革があるわけであります。あくまでもまた地方交付税あるいは地方税の範囲内に任すべきであるという考え方も、私はこれまでの経過から見たら正しい考え方であろうかと思うのであります。そこはひとつ高校以下に対しますところの財政上の援助の必要性との間で妥協して、一部は少なくとも補助するということでいたしたわけでございます。  しかしその背後には、現在の地方財政の大変困難な状況を考えてみると、やはり地方団体も国からの援助がどの程度来るか、ひとつ明らかになるような方向の運用を考えていかなければならぬ。ことしの八十億についても、森委員承知のように、いろいろと配分の基準について意見があるわけであります。そして八十億円をどのように交付税計算上織り込むかについては不満もあるわけでございますので、これからこの規定の運用をひとつしっかりしたものにして、地方団体はもちろん、私立の高校以下の学校もどの程度の補助が来るか、そして安心して安定した経営ができるように努力すべきだと私は思うのでございます。御指摘のとおり書き方はまだまだ不十分でございますが、現状においてはまだまだいろいろな考え方がありまして、この程度が私は最も望ましい次善の姿ではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  58. 森喜朗

    ○森(喜)委員 私は大学の二分の一ということよりも、ことよりもというと大学関係者からおしかりをいただくかもしれませんが、むしろ高等学校以下の私学補助のことについて大きくウエートを置きたいと個人的には考えているわけです。これば後ほどまた少し中に入っていきたいと思うのですけれども、現実大学の中にもいろんなバランスがあると思いますが、とりわけきょうは嶋崎先生もいらっしゃるし、永井大臣も私学に御関係あるわけでございますが、石川県なんという県は伝統ある私立高等学校は皆つぶれかかっているわけです。事実倒産していると言ってもいいぐらいなんです。無責任にみんな県立移管になっていくわけです。ですから、そういう高等学校以下の学校を一番早く、大学は後回しでもいいとは私はあえて言いませんけれども、むしろ緊急性があるとするならばそこの方だと思っています。  ところが、現実にこの作業を進めてまいります中で知事会あたりがかなり抵抗しているわけですね。これはもう藤波先生や塩崎先生にもそういう御意見は通っていると思います。知事会は何も私学助成をするなということじゃないのです。それはよくわかるのだけれども現行の体制でいけば、結局県に大きなウエートがかかってくる。ますます地方財政を圧迫するということから反対をしているということは、十分われわれはわかるわけであります。したがって、このままいきますと、これこそまさに私が言う哲学精神的法案であって、全体的には細かく下がって決めておきながら、肝心のここが逆に宣言法みたいな形になっておることに、実は私は大変腹立たしさを覚えるわけであります。  そこで、この法律を通さしていただいて、そしていよいよこれを運用していきますときに、実際に国と県との高等学校以下の助成について具体的にどのような形になっていくのか、これは局長からでもお答えをいただきたいのですが、これが通ってこれを進めていく場合、一体どういう形で、具体的に県と国がやっていこうとしているのか。  それから、私がさっきから心配しているのは、県が財政上の都合でできませんと言ったら、どうなっちゃうのか。かえって各県にばらつきができてきたりして、えらいことになってしまう。そうでなくても、いま私学に対する交付税のあり方については知事の裁量で結構いいかげんにやっているところもあるのですから、ますますそんな形になってはいかぬと私は思う。その辺について事務当局からお答え願いたい。
  59. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 この法律案が成立いたしまして第九条が現実に動くようになりますと、この規定二つ役割りを果たすようになると思います。  一つは、従前高等学校以下の私学に対する財源措置地方交付税によって地方の自主財源のみによってなされておりました。私学に対する公共団体のかかわり合いが歴史的に変動してまいっておりますので、都道府県知事の私学に対する判断の差異により、各府県ごとに高等学校以下の私学助成に非常なアンバランスがございます。この補助金がそのアンバランスを是正するという意味で第一の役割りを果たします。  また第二には、この一部の金額の多寡によりましてはそれが都道府県に対する財政援助役割りを果たしますので、私学経常費に対する助成を通じて高等学校以下の私学振興を図ることができます。  その二つの機能を発揮するようになると思います。
  60. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そういたしますと、先ほど塩崎さんからもお話がございましたが、ことしの予算高等学校以下について八十億、率直に言いまして、まさに画期的なことを、初めて高等学校以下の私学に対して国が助成をしたという、大変勇断を実行したわけです。もちろん具体的な実行はまだこれからです。そのことと、今回のこの法が運用されていくときの関連性はどういうふうになりますか。もっと端的に言えば、その方がプラスになるということですか。
  61. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 従前の地方交付税をもって各府県ごとに財源措置をして、そしてその執行については全く都道府県知事の裁量に任せるという態度をとっていた時代と、この法が制定された後の状況を比べてみますと、国の補助金を通じて各都道府県に対する指導助言といったことも十分できるようになりますし、私学の独自性を尊重しながら私学振興を図るというような意味においては、従前とは相当に違った効果をあらわすことができるのではないか、この法律の第一条に書いてある趣旨の目的実現により沿うような努力がやりやすくなると思います。
  62. 森喜朗

    ○森(喜)委員 この八十億についての配分の方法等についてはまだ考えていらっしゃらないのか、目下考えていらっしゃるのか。もちろん考えていらっしゃるのだと思いますけれども、もともと最初からわが党として考えてまいりましたのは四分の一ですね、その一つの目標を仮に具現化といいますか具体化さしていくと交付税で一体どれくらいの金が要るのですか。
  63. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 この法律趣旨に従っていま先生のおっしゃる経費計算しろと言われますと、それは事務的には計算ができないわけでございます。と申しますのは、経常費範囲が実支出額でなくて今度限定されることになりますので、その限定の度合いがどうなるかということによってその数量は違ってまいります。したがって、いま先生が、仮に四分の一持つことにして幾ら金がかかるか、事務的に正確に言えとおっしゃると、正確には言えないわけでございます。それで、最高限をとってみますと、実支出額で計算した金額が一つの目安になります。今年度の高等学校以下の経常費の推定額が五千億でございます。五千億の半分が二千五百億、二千五百億の半分が千二百五十億でございますから、もうアッパーリミットが千二百五十億でございまして、政令で限定いたしますと、四分の一完全に実現した場合はそれ以下の金額になってまいりますし、それをまた年次的に改善を図っていくという考え方をいたしますと、八十億から逐年増額していくといったようなことに相なろうかと思います。
  64. 森喜朗

    ○森(喜)委員 いまの今村局長の考え方というのは当然塩崎さん、藤波さんも聞いておられるんだろうと思いますが、端的に言って、このあたりで妥協したと言うと変ですけれども、このあたりでまとめざるを得なかったのは、現実の数字と金額、そして本当に予算の裏づけをしていくという財政面を考えると、確かに問題も大きいし、責任も重いなということを感じられて、そしてこういう法律になったんだろうということは私も理解できます。  そこで塩崎さん、大学の問題と切り離していただきたいのですけれども、この目標と、われわれが意図しやっていかなければならぬ目的と、いまの数字との中に相当むずかしい問題が残されていると思いますけれども、この辺について、塩崎さん自身はただつくっておられるわけじゃないと思うので、どのような計算をなさっておられるか、どのような目標を考えておられるか。はっきり言えば年次的なスケジュールですね。私学関係者たちはこの点に非常に注目しているわけですから、その辺のことを、お考えでも結構ですから、この際、ここで具体的に示していただきたいと私は思います。
  65. 塩崎潤

    塩崎議員 その点はいま大変問題になっている点でございます。その問題になっている点も八十億円の予算が決まるときから予想されたことで、森委員は特に御承知のとおりだと思うのでございます。額もさることながら、八十億の配分方法が伝えられたときに言われましたことは、地方団体に対して予測ができないことが第一点の欠陥である。つまり、たとえば交付税で考えておりますところの七割以上出しているところにやるとか、いろいろぐるぐる回っていくような感じの計算によっていく、そこに予測ができないという欠陥が一つ。もう一つは、私学側に大変な不満を与えましたのは、御承知のように、せっかく八十億円もらったんだけれども、交付税計算上は差し引かれておるということです。県の計算では、八十億円を各府県に割った場合にどれぐらい来るか、それを差し引かれて交付税でもらえることになっておるというようなことを言われてがっかりしたようでございます。つまり、八十億円は上積みになってボーナス的に配賦されると思っておったのが、その当てがはずれたようでございますが、そのあたりにはいろいろの考え方がございます。  これらの計算を考えてみますと、いま申しました第一の欠点の予測可能性の問題、第二の、これが奨励的な、本当に上積みになるような、地方財政の刺激になるようなやり方、この二つの要請を加味していくしかないと思うのであります。  まず第一に、そういった観点から見ますと八十億円という額は少し少ないのじゃないかと思うのですが、森委員も御同感だろうと思う。  第二点は、その配分方法はできる限り簡明な、各府県の出し方に余り依存しないような方向、当然初めからこれぐらい来るということが予測されるような方向を考えるべきじゃないかと思うのでございます。それを突き進めますれば四分の一というような固定した率、これが一番望ましいと思うわけでございます。  しかし、いろいろいきさつがございまして、地方財政の自主性、そういった古くからの貴重な原則を尊重しなければならないといたしますと、そこに妥協を求めながら、若干の御不満があってもひとつがまんしてもらいながら、今後八十億円をふやす努力をしながら満足していく方向を見つけていきたい。少し抽象的な答弁で申しわけありませんが、私どもはそんな方向に努力すべきだと考えております。
  66. 森喜朗

    ○森(喜)委員 はっきり言って八十億では分けようがないのじゃないかと私は思っております。確かに大変意義のあることを予算措置したわけですけれども、かえってこれがまつわりついて不公平になってもいけませんし、それから公正を期せば期すほど余り効果がないということになるのじゃないかと思います。この辺は、塩崎先生を中心にして、配分の問題、あるいはこれから四分の一の固定した目標に向かっていくためには、どのようなスケジュールで、そのような目標を掲げて進んでいくかということは、これからも検討していっていただかなければなりませんし、当然行政に対してある意味では指導もしていっていただかなければならぬと思います。  もう一つ、大臣にちょっとお尋ねをいたしておきたいのですが、ことしの予算の大臣折衝のところでのこの私学補助を決定といいますか具体化されたわけでございます。この八十億については、どのような効果があらわれてくるか、あるいはこれをどのような形にしていくか、しばらく様子を見て高等学校以下についての今後の補助を考えようということが当時大臣折衝の中であったとかなかったとかというようなことを、私どもはこの作業を進めている中で聞いているわけでございます。したがって、財政当局、なかんずくわが党の政策担当の責任者たちもこの点をわれわれに対して非常に強調しておられたと私も感じているのです。高等学校以下については当分様子を見よう、つまり、八十億の運用の効果を見よう、それからだ、そういうこともあったから塩崎さんは多少バックしたのかもしれません。そのような感じもするわけですが、当時そういうお話し合いが大臣折衝の中であったのかなかったのか。そんなことはおっしゃらぬでもいいのですけれども、その辺のことと、これは今後効果を見ていこうということから言うと、この八十億の使い方というのは将来に大きく影響してくるように私は感じますが、そういう私の考えについて大臣どう思われますか。大臣の考え方を述べていただきたい。
  67. 永井道雄

    永井国務大臣 大臣折衝のときにいろいろ会話を交わしたわけでございますが、もちろんいま記録を持っているわけではございませんから、私が了解しております限りにおいて、大体どういう気持ちで八十億というものを望んだか、そしてまたその後考えているかということを申し上げればよいかと思います。  まず、八十億というのはもうそれっきりで、あとは考えないという種類のものではない。他方、今後もまたあの八十億程度のものでずっと続くというのでもない。ということは、そのいずれでもないわけでありますから、やはり一つの試行錯誤的な最初の試みであって、そういうことで今後は考えていった方がよかろう、そういうものと私は解しております。
  68. 森喜朗

    ○森(喜)委員 ちょっと乱暴なことを申し上げておしかりをいただくかもしれませんが、私学は大変な事態になっているということは、先ほど木島先生、嶋崎先生、山原先生、高橋先生、それぞれおっしゃっておられますし、とりわけ大学経費がかかってそれが全部授業料におぶさってくる、決していいことじゃないと思います。しかしまあ乱暴なことを言いますけれども、大学進学は自分で望んで行かれるわけでございますから、ある意味ではそのことは百も承知で進学をしておるということも私は事実だと思います。そういう面から見ると、高等学校以下の救済と言いますかいまの財政の援助と言いますか、これは私はどんなことがあっても、むしろ大学より早くやらなければいけない、私はこういう持論を常に持っているのです。だからこの作業を一緒にやってまいりましたけれども、途中から余り意欲が出てこなくなったのは特にこのあたりがすぼんできたことに私は実は非常に憤りを覚えておりますので、いま大臣の御見解どおり、お話のとおり、これでいいというものでもないし、今度やったものがそのまま続くものでもないということでございますからこれを多といたしまして、どうぞひとつ高等学校以下のことも、このまま行きましたら、日本の国でまあ大都会のようなところは結構ですけれども、小さな私どものような県になってまいりますと恐らく私立高等学校はなくなってしまうと思います。これは私は日本の教育にとっては大変な過ちだと思いますので、個性が豊かで、本当に全人教育ができて、すばらしい子弟教育ができるのは、むしろ私は私学高等学校や中学校でなければならぬと思っておりますので、私があえて何で大臣折衝のことを大臣に申し上げたかというと、この辺は当分様子を見ようなんというそんな大蔵省の考え方なんかで教育を語ってもらっちゃ困るからです。何をいま一番先にやらなければならぬかと言えば、私は何をおいてもここをやらなければならぬ。私に言わせれば大学に来た者は勝手に来たのですから、私はそういう意味でこの問題だけはないがしろにしてもらっては困るし、この問題だけはやはりできるだけ早期に国として財政補助をどうするのかということについて取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、念のために、注目されている私立学校振興のことでありますから、いま私が申し上げたことについて大臣の御決意を伺っておきたいと思います。
  69. 永井道雄

    永井国務大臣 先ほど大臣折衝の話が出ましたが、それは昨年の十二月のことでございます。それから起こっている事態の方がある意味ではもっと大事かと思いますが、それが将来予測につながってくるかと思います。事実私立学校授業料値上げということは父兄の非常な負担ということを意味していると思いますが、この四月の物価指数を見ますと二・六%の上昇でございましたが、そのうちの約一%が私立学校授業料値上がりによるものであります。これは実にほかのものに比べましても私立学校授業料というものが物価指数の変化に非常に大きな影響を与えるということを意味するのでありますが、さらに私立学校の中でどの段階のところが非常に上がったかというのを見ますと、実は大学よりも先生御指摘のように高校、中学、幼稚園というところが四月の上昇率が非常に高いのでございます。ということは、要するにそれだけ授業料を値上げせざるを得なかった。大学について申しますと平均二一・六%でございますが、高校は四六・八%、中学が三八%、幼稚園約四〇・九%ということでございます。ということは、やはりこの事実を見ましても父兄に非常に負担がかかっている。しかし父兄は是が非でも学校に入れなければいけないということでございますから、私は当然こうした数字に基づきましても、われわれ文部省はこの新しい法律というものができましたらば、この法律趣旨もまたそこにありますし、数字が示すところもそれでございますから鋭意努力をいたさなければならないと考えております。
  70. 森喜朗

    ○森(喜)委員 ただいまの大臣の御発言を多として、ひとつ塩崎先生、藤波先生もいらっしゃいますが、どうぞこの法律をここで通すことだけが目的じゃない、先ほどどの会派の先生方もおっしゃったように、私どもはゼロから一にするということに大変な意義を感じますけれども、それをさらに前進させて改善をしていくということにひとつ積極的に取り組んでいただきたい。これは全国の子供たちを持つ親の切実な叫びだと私は思いますし、こうして夜遅くまで皆さんに御協力いただいて審議を進めていくのもそういう大きな意義があるということで、いろいろな面で不満はありながらも各先生方が協力なさっているのだと思います。塩崎先生、これまでやってこられた主査、どうぞひとつこれから後も努力を願いたい、こう申し上げておきます。  もう一つ中身に入ってお尋ねをしておきたい点がございます。附則の私立学校法の一部改正でございますが、文部大臣は新しい大学の新設、それから学部の増設、収容定員増加等につきまして、これでは五十六年の三月三十一日までの間特に必要があると認める場合を除いて当分の間は認可しない、こういうことでございます。これは税金を負担していただく国民の皆さんに説明するには確かに国の財政はしり抜けであってはいけませんし、どこかで歯どめしなければならぬということは当然なことでございまして、そんなことを言ってはしかられますけれども、本当に私学経営ということにいろんな意味での意義を感じてやられた私学関係者はあると私は思うのですけれども、どちらかと言うと私学はもうかるからというようなことで悪い発想でやられた人はまたあるんじゃないかという感じを持って、やれば何とかもうかるんじゃないか、うまくいかなくなったらさあ国でめんどう見なさい、これでは国の財政はたまったものではないと私は思う。とは言いながら、自由主義国家の中で私学をこういう形でつくっていこう、つまり私学なんというのは本当の意味の教育のいわゆる塾から始まったものだと私は思うのですけれども、そういうことから始まっていったものを、これから自由な発想の学問ができない、あるいは現在ある大学が新しい学部、学科をつくってもいけない、あるいはもっと端的に言えば、経営上、財政上、学校財政状態を考えてみると、そういう意味で定員増をするということはいけないのかもしれないけれども、できるだけ私立私学経営を自分たちで努力して改善するということがこれはたてまえですから、そういう面から見て収容定員の増を認めないのだというようなことになってきますと、これはいまの自由主義の一環から見たら大変な、これはある意味での統制につながるという感じが私はするし、恐らくこの辺を私学関係者は非常に心配をなさっておられるんじゃないかと思います。  私どももこれを進めてまいります大学関係者にもいろんな御意見も伺ってまいりましたが、まあそんなことほかの大学の固有名詞を挙げてはいかぬですから自分の出た大学のことなら悪く言ってもいいと思いますが、まあ早稲田やそういうクラスになればもう経営能力なんかゼロで、はっきり言えば何が何でもとにかく国が半分補助してほしいというのが、私は総長初め理事者方の率直な考え方だと思います。  それから高等学校以下については、私さっき見解を申し上げました。大変変な言いあらわし方をしますけれども、発展途上国といいますか、これから発展をしていこうという個性のある特色ある大学がこのことによって発展がしにくいというような面も私は出てくるんじゃないかと思います。その辺について、あえてこれをしなければならなかった理由も、いま申し上げたようにわかるわけでありますけれども、これについて塩崎先生、どう考えておられるか。特に大事なことのような気がいたしますから、どうぞひとつ。
  71. 塩崎潤

    塩崎議員 財政援助の保障と並びまして一番大事な今度の改正のポイントでございます。どうしてもこの改正の真意を、ただいま森先生の言われましたように、私は私学関係者にも十分に理解してもらいたいと思うのでございます。  この改正の理由は、ただいま森委員の御指摘にあるまでもなく、財政上の理由が一つあることは間違いありません。私学の一方的な意思だけで定員を増加して、そうしてそのために補助金が無制限に支出されるおそれがあることはこれは避けなければならぬ点でございまして、血税と言われる税金の使途については有効性が担保される措置が必要であると思うので、財政上の理由があることは言うまでもありません。しかし森委員も御承知のように、この規定財政上の理由だけではないことは御承知のとおりでございます。  まず第一に、御承知のように日本の進学率は大学についてはアメリカに次いで高い。考え方によりますればこれがいろいろの問題を醸しているようであります。その進学率も、御承知のように大学経営が苦しいから収容定員をふやすことによってその財政難を救うというようなことがあったらおかしいと思うのであります。それはもちろん国の援助をふやすことによって質的な向上を図るべきだ、教育水準内容の充実を図るべきだと思うわけでございます。そしてこれまでの風潮が高度成長下におきましてマンモス化あるいは総合大学化、こんなようなことは私学の建学の精神というんですか、個性のある、特徴のある教育理想とする私学の精神から見て全く適しないものだ。どんな小さな大学でも特殊性のある、個性のある教育をモットーとして伝統のある学部をつくるべきだと思うわけであります。そういった観点から見ますと現行法は欠陥がございます。大学の新設あるいは学部の新設の際には認可になっておって、学部の学科とか収容定員増加認可しなくてもいい。初めは認可なんだがその後はどっちでもいいというのも全く不合理な話でございます。私は、こういった教育上の見地からもどうしても認可制度にかけ、しかもこのような恒久的な財政援助の保障制度ができ上がるわけでございますから、教育上の理由からも五年間ぐらいは原則として定員は増加しない、量的な拡大はねらわないで、本当に個性のある教育水準向上をねらっていただきたいと思います。  しかし、いま森委員御指摘のように、そうは申しましても適正な規模の大学というものも必要でございます。これは当然認可しなければならぬ。しかしその認可の方針がいわゆる官庁の独善的な考え方でできては大変でございます。それはやはり私学教育の自主性を阻害いたしますので、この法文にありますように、私学審議会の意見によって必要と認めるというような客観的な基準によって、文部省だけの判断ではございません、そのような客観的な、私学関係者も入っておる民主的な審議会の意見によって必要と認めれば弾力的に定員の増加も学科の増設も認めようじゃないか、こんなふうに考えておるわけでございまして、これは絶対禁止だと言われておりましたら大変かわいそうなことだと私は思っております。ちなみによくよく考えてみますと、国立学校の方は予算が認められて初めて定員の増加がある。国立学校はいわゆる認可制度予算と同時に行われているようなことでございます。それから考えてみますとこの制度も当然正当視されるべきであるし、現在の教育水準のもとでさらにまた新しく財政援助が進みます際にはぜひとも欲しいと思うのです。  それからもう一つ、国立学校だけじゃなくて私立学校の中でも、いままでの実績を見ますと、届け出制度とは言いながら御承知のようにすでに文部省との間で話し合いがついていわば内認可と申しますかそういった約束事ができない以上は届け出はしないというわけで、現実は、私学の急膨張の弊害の観点から見て話し合いによって初めて増加が行われ、届け出が行われる、こういう運用をされておるわけでございまして、現にそのような運用を考えられておることを考えますと別にいま支障があるとは私は考えていないわけでございます。こういった新しい財政援助が進みます際には、私学関係者の深い理解を得て、こういったこれまでの量的な拡大だけを追わない、質的な充実を追うという観点からぜひとも御賛成を願いたい、こういった観点から大学経営の改善を図っていただきたい、こんなふうに思うわけであります。
  72. 森喜朗

    ○森(喜)委員 中身のいろいろな不備や、先ほどから各先生からの御質問もありますように、確かに満足できなくても、国が大きく私学というものへの助成をこの法律によって明確にするという、これは一種のまた革命だとも思います。ですから、そういう中に当然犠牲が伴うことは私も十分にまた理解ができますし、私学関係者もまた、そういう私学のあり方、健全な大学経営、それから適正な規模とは一体いかなるものであるかというようなこともこの際これをてこに議論をしていただくことは大変いいことだと思うし、私学関係者もそのことを十分この機会に研究をしてもらいたい。私もそう思います。が、それにしても何かかわいそうな気がして、これを認めなければ二分の一の——二分の一は現実にならないわけですか、この目標には達成できないのである。いやならやめなさい。やはりそれは惜しい。しかしこの足かせは、自由主義社会の中でこんなむごいことはないじゃないかという気持ちもあるだろうと私は思いまして、特にこのことについて強く私もいろいろな意見を持っているわけでございます。  そこで五十六年という五年ということに——これは当初の案から考えれば当分の間ということになっておったようでございますが、当分の間というのはどの程度のことか私もわかりませんが、法的にはどの辺の意味かわかりませんが、あえて五年とされたのは何か意味があるのでしょうか。これはさっき大臣の答弁の中にもちょっと話が出ましたし、自民党文教部会長いらっしゃいますが、いわゆる大学マップといいますか、日本に大学が一体どれだけ要るんだ、適正な大学、そして全国にどのような大学が要るのかというようなこととも関連があるような気がするのですが、そういう作業のことも考えて五年となさったのか、これをお答えいただきたい。
  73. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいま森委員がすでに御示唆のとおり大学マップの作成等の、いわゆる高等教育の方向についての問題と関連があって私どもは五年と決めたつもりでございます。御指摘のように当初は当分の間認可はしないものとするという考え方でおりました。しかしよくよく考えてみますと、当分の間という規定は御指摘のとおりあいまいでございますし、これもまた法律でございますので、いろいろの政治上の理由からなかなか改正もできない。そうすると硬直化して不測の損害を与えるおそれもなしとしないわけでございます。さらにまた、このような大例外でございます。どうしても期限をつけた方がいいと考えたわけでございますし、そしていまの大学マップ等の関係は、五年以内ぐらいにつくって早目に世の中の期待にこたえなければならぬ、こんなふうな気持ちで、附則でございますから、経過的な規定でございますから、明確に五年というふうに規定したわけでございます。その間に、いまもおっしゃったように高等教育のあり方、大学の配置図というようなことは文部省の御努力を、国公私立通じてぜひともつくっていただきたい、こんなふうに思っております。
  74. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そういう意味ではできればこれを附帯決議ぐらいで、消えるものであると言いながらも法律でこう書かれるということは——自由社会の中で統制するといろいろ問題が多いのです。たくさんあります。米だってそうです、国鉄だってそうだし、健康保険だってそうだし、特に最近よく問題になっております繊維問題なんかで輸入一元化なんという、ああいうようなことも、統制を一部でやって後は自由にさせるということに必ず不満も出てくるし、問題が生じてくるような気がいたしますから、本当は附帯決議ぐらいで、こうぎらぎらしないような形でできなかったのかなという感じを持ちますが、どうなんですか。
  75. 塩崎潤

    塩崎議員 確かにおっしゃるように、附帯決議等によって、定員の増加を抑制するというようなこともできたかと思うのでございます。しかし、せっかくの財政援助を法的に保障する制度が始まるときでございます。そしてまた、この法律という国民の明確なコンセンサスの中で、国民私学の量的な拡大よりも質的な充実、伝統ある学風、個性のある教育、こういったものを希望するんだとあらわすことも私は大変意味のあることだと思いまして、このように規定をさせていただいたわけでございます。  考え方によりますと、中には、これは予算上の基礎には算入しない方向でやったらどうか、収容定員増加はやはりいままでのように届け出にして、文部省と意見が合わないようなときには、森委員のおっしゃるように、このときには補助金をその増加した部分だけにはやらなくてもいいじゃないか、こんなような意見もございます。私も四十九年の五月の案の中ではそのような考え方をとってみたわけでございますが、よくよく考えてみますと、これはどうも小手先の感がするわけです。首尾一貫しない考え方である。予算補助しないということはやはり教育上も好ましくない。国の代表としての文部省の意見の表明であるとしますれば、やはり定員の増加は許可すべきではない、認可すべきではない、こういうふうな考え方が出てくるわけでございまして、そこが首尾一貫いたしまして認可制度にし、しかも五年間だけはひとつ認可をしないということをあらかじめ明瞭にしていこう。しかし弾力的に、審議会等の意見を聞きまして、必要がある場合には認めようではないか、こんなふうにしたわけでございまして、運用は、森委員の御心配のように、審議会の意見も聞いて、文部省だけ単独の意見で決まるわけじゃありませんので、このような森委員の御質問の趣旨を反映して弾力的に行われる、必要がある場合にはもう優先して本当に速急に認められる、こんなふうに考えております。
  76. 森喜朗

    ○森(喜)委員 よくわかりました。わかりましたし、またこの辺の運用が一番、せっかくいいものをつくりながらうらみを残すようなことがあってはならぬと思いますので、私はくどく申し上げているわけでございます。  そういろいろ聞いてまいりますと、特にこれは文部大臣か今村局長に伺っておきたいと思うのですけれども、まあ特に塩崎さん、定員増ということについては特に慎重にしなければならぬという御発言があったと思いますが、その辺がこれはいま大きな政治問題、むしろ社会問題と申し上げてもいいと思いますが、いわゆる入学難ですね、受験地獄。これは現実は、大学の格差とかそれから、はっきり言って受験の技術上のことで倍率が高いということも現実だろうと思いますが、それにしてもそういう受験地獄という現象をなくすることが、これはもう大臣もそうだろうし、どの先生方も皆そう思っておられる。そういう面から見ると、定員の方はこれはふやさぬ方がいいんだといま塩崎さんは言っておられるわけですが、その辺と、経済情勢がかなり変わってまいりましたから、これ以上ふえぬだろうということも見られますが、あれは五十一年ですか、五十二年ですか、四〇%ということまで出ているわけですから、その辺とちょっと矛盾してこないのかなと思う。できるだけそういうことがないように枠を拡大してあげなきゃならぬ、逆にそちらの方を抑えてしまうということになれば、せっかくよくしなければならぬこの受験地獄解消に逆に足かせをはめるということになるんじゃないかなという心配もちょっといたしますが、それについて、特に定員増の問題等につきまして大臣のお考え方を……。
  77. 永井道雄

    永井国務大臣 これは高等教育懇談会で昭和六十年までを目指しての長期計画を最初に立てていたわけです。それで言いますと四〇%までいくであろう、一番初めの考えは筑波大学程度の大学をあと百つくらなければいかぬというようなことであったわけでございます。ところが、石油ショック以来いろいろわが国の経済の態様に変化を生じて、さらに諸外国の例を勘案いたしますと、アメリカ合衆国などでは大体年間五十ぐらい、これは私立でございますが、大学が減っているという状況が見られます。そのほか、大学を卒業しませんでみずから大学をやめて、ちょうどいま日本で問題になっております専修学校各種学校に入って実際に働こうというような人口も増大している。これは他国のことでございますから直ちにわが国に当てはまるというわけではありませんけれども、しかし高等教育懇談会はこういうことも勘案いたしまして、高等教育という枠の中にいままでのようにいわゆる大学と言っているものだけではなく、専門学校等もう少し広く考えて、弾力的に将来の高等教育進学者を考えていくという立場を一番最近の報告書でとるに至っているわけでございます。  したがいまして、筑波程度の学校百校というふうに言われましたころの将来予測は一応消えている。そればかりか、現在の高等教育懇談会の考え方はかなり弾力的になっておりますから、私はそれとの関連で、今回の法案の中にあります私学についてはいままでは量であったがこれからは質という考え方は矛盾しないというふうに考えております。かといって、それでは全然ふやさないかというと、これは塩崎先生も御指摘になっておりますように、審議会においてこれを検討する、特別な場合というものはもちろんそこに弾力性を求めなければいけない、そういうふうには考えておりますが、しかし全体的な将来予測という点との関連で申しますと、この点は矛盾していない、私はかように理解いたしております。
  78. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは、これはある程度今後に対しても一つの大きな——大臣の御発言かちょっとこれは御無理かもしれませんけれども、将来において影響力が出てまいりますが、ここに「特に必要があると認める場合」、この法律を運用していく場合、現実の問題として大臣ば、この「特に必要があると認める場合」というのは、もちろんこの審議会、私大審の意見を聞くことでありますが、大臣は文部大臣におなりになる前から教育に対して一つの大きな御見解を持っておられるわけであります。日本の学問というのは——日本ではなく世界、学問というのはこれでいいというものはありませんから、当然新しい分野、新しい部門についての学問、研究というものは進めていかなければなりません。これは私どもでもわかるわけであります。その辺の、「特に必要があると認める場合」というものを具体的に大臣はどの程度のケースを考え、どのような範囲を考えておられるか、御見解を承っておきたいのです。
  79. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 私は、この条文を拝見いたしまして、ずいぶん苦心してあると思いました。必要があると認める場合はということではなくて「特に必要があると認める場合」というようなことが書いてございます。この必要があると認める場合といいますと、文教の充実を求める文部大臣は、学校をつくりたいという希望に対してはこれは全部必要があるというふうなお認め方をされることになるのだろうと思います。「特に必要がある」というのは、たとえば大学学校設置あるいは学部の増設等々については、現実問題として四、五年の準備がございます。それで、準備をされているものはそれぞれの必要性に基づいて準備をされておるものでございますから、そういう事前の準備がされているものが申請をした場合、そういうものは経過期間中の措置として認める必要があろうかと思います。それからまた、大学マップとの関係がございますが、地域地域によりまして高等教育機関の非常に整備されていない地域がございます。そういう地域からの申請につきましては、これはその地域の高等教育水準向上を図るために必要があると思います。それからまた、日本の職業構造、産業構造の変化に従いまして、新しい分野の学問の開拓が求められる場合がございます。そういうものに対しても道を開く必要があるのではないかと思います。それからまた現在までのわが国教育のあり方について一般的にいろいろ問題もございます。そういうある意味では低迷しているこの教育界に清新な道を求めて、新しい試みをやりたい、まさに私学の独自性、建学の精神に基づいて新しい試みをやりたいと言われるような場合に、それがわが国教育から考えてみて特に必要があると認められるような場合は、それはもちろん私大審、大学設置審議会の意見を聞かなければなりませんが、「特に必要があると認める場合」、いま考えただけでもこういうことがございますので、具体的に個々のケースを拾っていきますと、いろいろな場合に大臣に特に認めていただく必要がある場合が起こってくるのではないだろうかと存じております。
  80. 森喜朗

    ○森(喜)委員 いまの事務当局の考え方で、塩崎さん、与党の、しかも今日まで国立だけではなくて私学問題に取り組んでこられた主査として、私学関係者の意見も十分あなたは聞いておられると思うのですが、大体そういう考え方でよろしゅうございますか。
  81. 塩崎潤

    塩崎議員 森委員の御指摘のように、この問題は私学関係者一番心配しておる問題でございます。私は、いまの今村管理局長の御意見を聞いて、まずまず大筋において考え方は正しいと思っております。ケース・バイ・ケース、いろいろの事態が生ずることと思いますし、俗説では理工科系の学部学科でなければあるいは定員の増加でなければというような意見がございますが、そんなことは私はないと考えておりますし、ただいまの今村局長のお話でもそのように聞きましたので、おおむねそのような考え方で進めていただいても支障は生じないし、私学関係者にも迷惑を与えないのではないか、こんなふうに思うわけでございます。なおしかし、そのためには大学設置審議会及び私立大学審議会の意見を聞くことになっておりますので、この審議会の方々の意見も重視していただく、そしてまた適切な意見が出ることが望ましいと思うのでございます。
  82. 森喜朗

    ○森(喜)委員 大変くどいようですけれども、この辺だけは特に運用上十分に御協議をいただいて、慎重に進めていただきたいと思うわけでございます。特に私は、これは今村局長十分御存じだと思いますが、ここ近年さかのぼって、ここ二、三カ年の中で、もっと延ばしていいかもしれませんが、認可を申請して許可された大学というのは大概学部が一つか二つでしょう。それでせいぜい定員が二百名くらいなのですね。それで相当膨大な投資をしているわけです。昔のように奇特な人が全部自分で出してやるというのは、本来私学のあり方としては本当はいいのでしょうけれども、そんなことはいまの世の中で求めるわけにはいきません。おそらく経営者は、といいますか、私学をつくられた方は、少なくとも二年くらいはこれでやって、その次ばこれをやって——確かにさっき塩崎さんが言ったように、人をふやすこと、そして経営をよくしようなんていう、これは不純な考え方だけれども、またそういう計画を立てておられたと私は思うのですね。その立てておられた方が、これが来るということで、これはさっきも発展途上国と申し上げたのですが、これから発展しようという大学がこれでみんなお先真っ暗になった、こういう理解をして受けとめていると私は思うのです。その辺のことをひとつ、もっと具体的にこれをやるなら、まあはっきり言えば、逆に最近さかのぼって何カ年くらいにつくった大学についてはその理あらずとか——あらずと言ってはちょっと露骨だが、もうちょっといい文章が出てくるかもしれない。あるいは学部が三つとか二つしかなかった場合にはこういうふうにしてやるとか、ここまで実はもうちょっと細かなことを本当はしてあげた方がよかったのじゃないかなというふうに思いますが、私の考え間違っておりますか。
  83. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 先ほど立ち上がる前にそのことは申し上げようと思っていて忘れていた項目でございまして、私大審議会においてもそういう意見が出ております。私大審議会は私立大学の関係者、学識経験者をもって構成されておりますが、先生のおっしゃるような議論が出ておりまして、まさに私学経営者が苦心をなさって小さな芽を育てて、それを適正規模の学部あるいは大学に仕上げていく、その過程において先生のおっしゃるような経営の適正規模という観点があるわけでございまして、それによってむしろ私学経営を合理化し、健全化することができるわけでございます。またそれによって無用な国庫補助を防ぐこともできるわけでございまして、そういうものについてはまさにケース・バイ・ケースで十分尊重して考慮していかなければならない、かように存じます。先ほど立ち上がるときに念頭にあったわけでございますが、答弁している間に失念した事項でございまして、非常に重要な一つの項目であると考えます。
  84. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいまの森委員の御提言は、大変大事な原則で、とにかくケース・バイ・ケースの思想になれていない日本人には、そのような方針を明確にあらかじめ示していただく方が経営が楽だというような、投資も本当に安心してできる、こういう要請があることがあるから、なお大事だと思うのでございます。これはぜひとも私も——文部大臣は官僚育ちではございません。ひとつ学者としてまた評論家として本当に伸び伸びとしたお考えの持ち主でございますから、いま私学の方々がこの認可制についてやはり文部官僚の裁量に任せておくことに対して大変な不信があることはもう御存じのとおりだと思います。私はひとつ、お上には弱い、長いものには巻かれろという日本人で、これは一々不服があったらどこかに訴えて裁判ざたにするまでのいわゆる行政訴訟というようなことを起こすことが苦手の民族の、個性の少ない日本人ですから、よほどこの運用を大事にしていただいて、少なくともケース・バイ・ケースの中にどのような思想があるかというようなこともひとつあらかじめ明示して、このような場合には認可されたのだというような考え方をあらかじめ出すとか、アメリカではよくケースメソッドと言っておりますが、そういう慣例法的なものをひとつ明らかにして、私学にひとつ研究していただく、そんなふうなことをして、明瞭なる森委員の御指摘の具体的な基準が予知せられるような仕組みを考えないと、この「特に必要があると認める」というような表現だけでは、文部官僚に絶大なる権限を与えただけで、ひょっとまた局長がかわって——今村局長なら絶対に信頼の置ける局長なんですけれども、後どんな局長が来るかというような心配がございます。そのあたりの国民感情を十分考えていただきたい。それは森委員の提言は私は大変効果があるような気がいたします。どうか御研究をお願いいたします。
  85. 永井道雄

    永井国務大臣 私は森先生の御質疑それからそれに対する塩崎先生のお答え、いずれも全く同感でありますばかりか、私としてこの際特に申し上げておきたいことはあるわけでございます。  一般わが国におきまして国立大学の方がすぐれている、それで私学というのはそれより劣っているという考えがあります。そこで私学助成をすると私学が国立並みになるのではないかというような考え方がありますが、私はむしろ逆であると考えております。今後必要なことは、国立を私学化することであって、これは私学助成法案でございますが、国立を私学化する、ということはどういうことであるかと言うと、国立ももっとそれぞれ特色を持ってほしい、そこで自主的に新しい計画を出していただきたい、これが私がごく最近の国立大学協会の全国の集会でも各国立大学学長に申し上げた点であります。でありますから、私は大学というのはそもそも全体が私学の精神というのでなければならないと考えております。国立も本当はそうならなければいかぬ、いわんや私学におきましては当然のことでありまして、これは公費がその一部を負担することになりますけれども、そうすることによって、無性格な、画一的学校になっていくというのではなくて、まさに私学の精神が興る。明治の初めのようなことをもう一度日本で興すことは可能ではなかろうか。そういう精神に基づくものと考えております。  将来のことでございますから、具体的なケース・バイ・ケースはどういうふうに考えていくか、こうしたことは私学の審議会において御検討願わなければいけませんけれども、現在の段階におきましても、たとえば私が就任いたしましてからどんなことをやったり言ったりしているかということを申し上げれば御理解いただけると思いますから、一、二の例を申し上げます。  実は上智大学に参りました。私は国立に行く前に私学を訪ねたわけですが、上智大学では毎年自分の大学の教授の中から大学に対して年間二億円寄付があるわけです。これは大学の教授が、もらっている月額の半額を学校に寄付しているのであります。これは事実であります。こういうことを聞かれると非常に不思議に思われるかもしれませんが、実はあそこに百二十人神父がいるのであります。この神父はみんな独身でありますが、日本人の先生と同じ額の給料をもらっているわけであります。全部寮に住んでおりますので、もらっている給料の半額を百二十人の先生が学校に寄付をする。そういたしますと、二億円実は学校は先生の寄付によって収入が増大している。それによって非常な学校経営の体質の改善が行われているという事実を知ったわけでございます。そこで、私はこの学校に対しましては積極的に補助をするという方針を決めました。これが一例でございます。すなわち、そういうふうな形で非常に積極的に、これはもちろん国立にも見られないことであることは言うまでもありませんが、私学の中で神父さんのように先生方がみんな半額給料を納めるということは一般にはなかなか期待できないことかと思いますが、そういうふうな努力があるところには積極的に助ける。しかしそのほかの努力ももちろんいろいろございますから、そのほかの種類の努力についてはまた検討しなければいけない。  あるいはもう一つ、二つ考えていることを申します。これは実行したということより考えていることで、将来私学審議会などで御検討を願うことでありますが、先ほど局長が申し上げましたように、わが国の社会のいろいろな変化に応じて必要なことがある。それを現在の学校がやっていないときにどうするかというような一例といたしましては、たとえばわが国では英語とかフランス語はいろいろな学校で教えておりますが、朝鮮語を教えている学校はほとんどない。あるいは東南アジアの言葉を教えている学校はほとんどないという状況でありますが、そういうふうな言葉を教えるということは、わが国が国家として存続していく以上、必須欠くべからざるものでありますから、さようなことを考える学校があらわれるというような場合に真剣に考えなければならない。恐らく私学審議会はお考えになるであろう等々、幾つか、ケース・バイ・ケースでございますが、私が考えておりますのは、この法案法律となりました暁には、日本の私学が国立に右へならえして無性格になる、それをもって質がよくなるというのではなくて、むしろ国立も含めて本当に私学の精神が興るということのためにこの法案があるものと理解をして、私たちはこの法律成立の暁には行政に当たるべきであると考えておりますので、特にこの点は申し上げておきたいと考えております。
  86. 森喜朗

    ○森(喜)委員 大学みずからいろいろな意味で改善をし、改革をしていく、大事なことだと思います。そういう意味で、国が向けさしていく形ではなくて、筑波方式も、大学みずから新しい形を生み出していく、これがこれから明治二百年に向かっていく日本の大事な姿勢だと私は思います。しかし、大学人特有の、ノーサポート・ノーコントロール、こういう哲学を彼らは持っているわけであります。が同時に、これから国の金が入るわけですから、国の金はまさしく国民の血税でございます。野方図に使われてはたまったものじゃない、これもまた真理でございます。したがってこの辺を、私は、いまの私学は、まあ鶏が先か卵が先かわかりませんが、やはり経営においてはかなり野方図なところがあると思うのです。何か、各種ありとあらゆる大学の学部をみんなそろえることがまさに総合一流大学のような、そんな感じで野方図に広げていって、そしてそれを一般の寄付、卒業生だとか、ありとあらゆるところに寄付を求めて、それも最近はなかなかむずかしくなっていく、これはあたりまえの話で、受け皿が大きくなればそう簡単に寄付で賄い切れない。それを結局国にめんどう見ろということでは、私は大学自体にも反省をしてもらわなければならぬことがたくさんあるような気がいたします。  そういう中で、たまたま上智のお話が出た。これは適正な上智大学の規模でできることでもありますし、そういう特殊な例があったからだと思いますが、そういう意味で、文部省自体は、この助成法が運用されて、そして効率が上がる国の財政援助ができてと仮定をいたしまして、そういう方向に進んでいくとしまして、私学の質の向上といいましょうか、あるいは経営のあり方ですね、そういう面についてこれからどのように文部省は考えていかれるのか、お伺いをしたいと思います。
  87. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 大学に対する私学経常費補助金を通じまして、私学教育条件が整備されていくような方向に努力をしなければならないと思います。  いま先生は私学の質の向上と言われましたが、先ほどから大臣もしばしばお答えしておりますように、私学は、建学の精神に基づいてそれぞれの私学がそれぞれに特色のある学問の内容を持って、自由に研究なさるという雰囲気は保障されなければならないと思いますので、私どもこの経常費補助金を通じて考えることは、教育内容には絶対に関与することなく、その教育の外的な条件の整備確立ということについて国費との関連で配慮すべき点は十分努力をして、たとえば定員の増加が多くて教育条件が悪いとか、そういうことのないような努力をすべきである、かように考えております。
  88. 森喜朗

    ○森(喜)委員 大臣は、質の向上だけであってはいかぬと思いますけれども、私学経営のあり方などについてどのように考えておられますか。
  89. 永井道雄

    永井国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、建学の精神を持つ私学が興れということでありますが、いますでに局長が申し上げましたように、私学を助ける、あるいは私学に対して政府が補助をするということは、内容に立ち入ることではない。しかしながら、経営上非常に不当と思われるというようなものに対しては、私たちは、いまもすでにそういう問題を考えておりますが、今後も引き続いて考えていかなければいけないと思っております。そうしないとかえって私学の精神が興らない。たとえば非常に入学定員をオーバーして学生がたくさん入っているというような場合、こういうふうな場合は当然考えなければなりませんが、そのほか幾つかの例がすでに書かれておりますけれども、そうした経営体質上の問題というものを生じたものについては、当然、大事な国民のお金を使うわけでありますから、われわれは十分注意して臨んでいかなければならないと考えております。
  90. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは、いま大臣、局長の御答弁、お考えを伺いましたが、やはりこの辺が、これからまたもう一つの面で大事なことでございまして……。  第十二条「所轄庁の権限」についてちょっと触れておきたいと思うのです。所轄庁とは何ぞや、どこでありますか、まず承っておきたいんです。
  91. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 「所轄庁」は、私立学校法第四条の所轄庁の意味で書いております。  私立学校法第四条によりますと、「第一号、第三号及び第五号に掲げるものにあつては文部大臣」が所轄庁でございまして、「第二号及び第四号に掲げるものにあつては都道府県知事」が所轄庁でございます。その第一、三、五号を読んでみますと、第一号が「私立大学及び私立高等専門学校」、第三号が「第一号に掲げる私立学校設置する学校法人」、第五号が「第一号に掲げる私立学校と第二号に掲げる私立学校とをあわせて設置する学校法人」でありまして、これらについては文部大臣が所轄庁であります。次の二つ、第二号「前号に掲げる私立学校以外の私立学校」、つまり、大学、高専以外の私立学校、それから「第二号に掲げる私立学校設置する学校法人」、これについては都道府県知事が所轄庁でございます。
  92. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは提案者に伺っておきますが、いま所轄庁の権限の項につきまして、局長から御説明がございました。提案者の方もそういう意図で進めておられるわけでございますね。  それと同時に、先ほどちょっと大臣とやりとりをいたしましたけれども、いわゆる私立学校のこれから経営の指導、指導と言ったら、ちょっとこれは党側からおかしいわけですけれども、監督と言いましょうか、そういう面について、所轄庁の権限ということが一番いやがられる。つまりコントロールされるのではないか、サポートされるのではないかということに対して、一番私学側がいら立ちをしている、神経をとがらせるところであろうと思うのでありますが、この辺について、この法律をつくるためには当然必要なことでありますから、この辺の条項をつくる精神と皆さんの考えておられることと、これからの運用との問題について、一応塩崎さんから考え方を聞いておきたいと思います。
  93. 塩崎潤

    塩崎議員 この十二条の所轄庁の権限規定は、大変沿革のある、森委員承知のように、かつては大変混乱を生じた規定の名残でございます。  御承知のように、昭和四十五年に私学振興財団法が制定されました際に、その附則によりまして私立学校法の五十九条を直しまして、これとは相当違っておりますが、これに似たような権限規定を入れましたときに、御承知のように、自民党政府で提案したその規定を、提案後、自民党の中から国会で修正した経緯があることは御承知のとおりでございます。     〔河野委員長代理退席、委員長着席〕 そうして、結局その修正の方向は、この権限規定は、政令で定める日まで施行しないということになったことは御承知のとおりでございまして、これは現行私立学校法附則の十四条四項に明瞭に規定してあるところでございます。  私どもは今度の私学振興助成法をつくる際には、この権限規定をどうするのか、そしてまた、かつて凍結されたままでありますところの五十九条の権限規定をどのように処理したらいいのか、これを総合的に考えるべき時期に直面したわけでございます。そこで、私も、森委員のお助けも得まして、私学の方々と十分論議いたしました。前回の私学財団法の際には、論議が少なかったことがあのような混乱を生みました最大原因であったことに気がついたわけでございます。  それから第二に、現行私立学校法五十九条の十項の規定は、その各号の中に若干広範に権限を受任したところがありまして、そこに恐怖感を与えた点もあったわけでございます。  この規定ば、御承知のように憲法八十九条から来たと言われております。公の支配に属しない教育の事業に対して公金を支出してはならない。そこで、昭和四十五年から八木プランと言われるもので経常経費に対しまして半分までの補助をしよう、しかしそのためには、公の支配に属するような規定、つまりそれを権限規定と考えたわけでございますが、それがその前提として必要である、こんなふうに考えてきた補助と一体の規定であったわけでございます。それが政令によってストップされておる。これをどうするか。いずれにいたしましても結末をつけなければならぬ問題でございますが、今回この十二条で規定することによって結末をつけてきたわけでございます。そうして、もう凍結を解除いたしまして、来年の四月一日からは、この十二条の所轄庁の権限規定施行されて差し支えない、そうして大方の私学の方々もその真意が十分納得されたと思うわけでございます。旧私立学校法五十九条の十項の規定は、権限について三号ございました。今度の規定は四号でございますが、一号をのぞきまして——一号は大体同じです。旧五十九条の十項の二号、三号と、新二号、三号、四号とは内容において相当変わっております。しかも、民主的で、これなら仕方がない、このような場合には監督を受けても仕方がない、勧告を受けても仕方がない、是正命令を受けても仕方がない、その規定を二、三、四にいたしました。かつて論議不足でございまして、私学側が大変不安を感ぜられました点は除去いたしました。今回の改正規定は、森委員心配でございましょうけれども、十分な理解をもって迎えられる、そうして四月一日から施行されても心配のない規定でございます。その関係で、多年の懸案でございました、五年間もどうしたらいいか十分な見通しがついてなかったところの、政令に委任されたままの私立学校法第五十九条十項の凍結の規定は廃止した、こういうことでございます。
  94. 森喜朗

    ○森(喜)委員 国民の税金を使うわけですから、正しい意味での監督規定というのは厳しくなければならぬと思いますが、逆に、私学の本当の意味を阻害しないような形で、これは事務当局、文部省は十分考えていただきたいと思います。  同時に、何か余りにも、大学のそういう監督といいますか、いかにも文部省がやっておるのだということを見せたいばかりに、余り意味のないことをときどきやっておられる。たとえば、これは条件の中にあるのでしょう。建物に対して土地が六倍なければならぬだとか、そういう昔つくった規定は、いま高層化しているところから見るとまことにおかしなことだし、その用地が足りないからこれは不適格校である。あるいは、書物は完備していかなければならぬのかもしれませんが、いろいろな事情でその書物がなかった、これまで不適格校として外へ出していくことが果たしていいのか、そのくせ、一番問題になりますのは、大学の入学難のころにむちゃくちゃの定員をとっておる、こういうことなんかはむしろ、はっきり言って本当の不適格校だと私は思うし、それから俗に、根拠がどこらにあるかわかりませんけれども、事実われわれも耳にするのは、金にまつわるような忌まわしい事柄が案外多い、こういうようなことはもっと厳しく文部省、監督官庁はやっていかなければならない。どうもそのあたりが案外ノーズロであって、かっこうだけつけているというような感じがして、もうちょっと私学のことも考えてやればいいなと思うことも私はよくあるのですが、その辺のことにつきまして、これは今村局長からお話を承っておきたいと思います。
  95. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 いま提案されております法律案の第十二条に「所轄庁は、次の各号に掲げる権限を有する。」一、二、三、四号と書いてございますが、これは現在の私学法第五十九条の第四項に三号の権限が書いてございます。それから五十九条の第十項の三号の権限が書いてございます。つまり六つの項目の権限が書いてあるわけでございますが、これを先ほど塩崎先生のお話のように取捨選択をして四項に整理したものでございます。  それからまた、先ほどむやみやたらに形式的な審査をしておるではないかということの一例として、大学設置基準を引用して、校地の面積が校舎の面積の六倍以上なければ認可をしない。現在の都市の状況によっては校舎の面積の六倍以上の面積を必要とするとまで形式的にやかましく言わなくてもよろしいではないかという御趣旨の御質問がございました。大学設置基準の附則の第二項によりますと、その原則にただし書きがついておりまして、「ただし、特別の事情があり、この面積が得られない場合は、教育に支障のない限度において、この面積の一部を減ずることができる。」という規定がございます。確かに先生のおっしゃいますように、大学設置基準は昭和三十一年にできた基準でございまして、その後社会の状態も違っておりますので、現在ではこのただし書きの活用を図っております。また申請者の側からすると十分な弾力的な運用ではないかもしれませんけれども、およそ大学をつくる以上はやはりある程度の水準は必要でございますので、教育上の必要を考え、具体的な事例に即しながらこのただし書きの運用をやっておるような次第でございます。したがいまして、所轄庁のこの権限の行使に当たりましては従前の規定を六項目を四項目に整理したことでもございますし、また実態に応じて、しかも教育の水準が維持できるようにという観点から誤りなきを期する所存でございます。
  96. 森喜朗

    ○森(喜)委員 どうぞ新しい私学助成の道を切り開くという、日本の教育が始まって百年、まあ遅きに失したということでありますけれども、先ほど大臣もおっしゃったように、まさに明治の先達たちは、教育と国鉄と北海道開発、当時、大きな政治的意図を政策的にあらわしたのだろうと私は思います。それが今日の日本の繁栄につながってきたわけでありまして、明治二百年に向かって新しい教育の一つの施策を進めていっていただきたい。そういう意味で、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、いろいろ議論はありましたけれども、人確法もいろいろな意味で効果を、そしてまたいろいろな意味で教育問題というものを国民の中に、爼上に上げてきたということで大変効果があったし、筑波もそれ自体いい大学のあり方ということについてこれも大きな一つの効果をあらわしてきた。  それからもう一つ大きな柱は私立学校だったと思います。特に自民党前部会長として、西岡氏は、このことについて一番情熱を燃やしてこられたわけであります。ただ、こういう形ででき上がったことについては、私同様、西岡氏は不満であったというように私も聞いておるわけでございますけれども、これまで進めてこられた責任者として、先ほど藤波議員から伺っておりましたけれども、西岡議員から、提案者の一人として、この私立学校助成法の意義と、それからこれからさらに進めていかなければならぬ、先ほどお話が出てまいりました大学地図、マップとか私学の質の向上とか等々につきまして、西岡提案者に先ほどから質問したい、したいと思っておりましたが、あなたがおいでにならないので——まあ議運の理事をなさっていられるからお忙しいのだろうと思いますが、提案者のお一人として、ぜひひとつ御見解を、御感想なりまたこれからの考え方を述べていただきたい。あえて御質問を申し上げます。
  97. 西岡武夫

    西岡議員 森委員の御質問にお答えをいたします。  すでに私立学校振興助成法案についての基本的な考え方につきましては自民党の文教部会長藤波議員より総括的なお話がございましたので、私から特につけ加えることはございませんが、あえて申し上げますと、今回のこの私立学校振興助成法案は、当初私どもが意図をいたしておりました内容からいたしますと、御承知のとおり、森委員御指摘のとおり、また森委員御自身がこの法案の作成に御参画になられて、その二年半ばかりの間の御苦労をしてこられた過程の中で、もっと中身の濃いものであったはずであると非常に残念に思っておられることと思うわけでございます。その点は、私も、提出者の一人として、このような案しか提出できなかったことをまことに遺憾に考えておるわけでございますが、先ほど藤波議員からもお話がございましたように、やはり政治の責任は現状を一歩でも改善をしていく、一歩でも前進させるということにあろうかと思います。したがいまして、オール・オア・ナッシングのような形でいろいろな問題に取り組むべきではないのではないかということで、一歩前進ということでみずからを慰めてこの法案提出をさせていただいたわけでございます。したがいまして、私どもは今後、これは野党と皆様方の御協力も得ながら、将来はやはりよりよいものにこの私学振興助成法案を育てていくべきではないだろうかということを考えておるわけでございます。  なお高等教育のあり方につきまして御質問があったわけでございますが、私どもはこの法案提出するに当たって、やはりわが国の高等教育全体についての政策の中で、残念ながら私学に対する施策というものが、少なくとも五年前の大学紛争まではわが国には存在しなかった。これは申し上げるまでもなく私学の発生した当時のいろいろな状況の中から私学の性格づけというものがあって、そういったことも今日までわが国における私学についての国の施策というものが確立をしていなかったという原因であろうと思います。したがって文部省ばかりを責められるものではないと思います。しかしながらそれにしてもわが国の文教政策について最終的な責任を持たなければならない文部省がいままで残念ながら私学に対する十分な施策というものが行われなかったということを私どもは痛感をするわけでありまして、大学生にいたしましても、現在二百万になんなんとする学生のうちその八〇%近くを擁している、そういう私学をいままで放置してきたということは、やはり政治の責任であろうと思います。ところが一方、それではこれからの高等教育のあり方として一体どれだけ大学がふえていくのであろうかということを考えますときに、いまこの時点で私どもば大学の量を拡大するよりも質を充実するということの方がやはり重視されなければいけない、かように考えたわけでございます。その政策、その考え方の一環として今回のこの私立学校振興助成法も立案をしたわけでございます。と申しますのは、何らの資源を持たない日本民族の将来は、やはり現在の大学進学率に見られるような国民全体の学問に対する非常な情熱というものが唯一の、何と申しましょうか、財産であろうと思います。そういう意味では国民の大多数が高等教育に進んでいくという方向は私どもも大いに促進をしていかなければいけない。しかしながらそれであるだけに、いまこの時点でわが国の高等教育内容を充実しておかなければ、将来の量的な拡大にもこたえ得ないのではないだろうかということを私どもの間でいろいろ検討した結果、いろいろただいま御指摘のございました、大学の新設等を五年間基本的には抑制していくんだという、ある意味ではいろいろな御批判も受けるであろう政策もこの中に盛り込んでいる。しかしながら、これは何も将来ともに高等教育機関をふやしていくんだという方向、道を全く閉ざすということではないということをぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもは、今回この助成法案を御賛同いただきまして成立させていただく、これが私学助成に対する完成した姿ではなくて、これでようやく一歩を踏み出したんだという認識を持っているわけでございます。どうぞよろしく御賛同を賜りたいと思います。
  98. 森喜朗

    ○森(喜)委員 冒頭に申し上げましたように、私どももこの法律に一生懸命に取り組んできただけに、これで満足だと必ずしも思っておるわけではございません。あえて、最初からこの作業に取り組んでおられた西岡議員に提案者の一人としてお考えを伺ってみたわけでございますが、まさしく西岡氏の御発言どおり、無から有を生み出すところに大変な意義があるわけでございます。ただ願わくば、先ほど各会派の先生方から御質問がありましたように、こうした議論をもう少し早くから、そしてもっともっと掘り下げて議論を進められたら、もっともっとよかったわけでありますけれども、しかしいろいろな事情も、先ほどから各提案者からのお話のとおりあったわけでございます。新しいものを皆でつくり出す、そしてそれをこれから皆の力で伸ばしていく、より中身を濃くし、そしてよりすばらしいものにしていく、それもまた立法府にいるわれわれの仕事だというような感じもいたします。  私もいろいろの点御質問を申し上げたわけでありますが、賛成者の一人でございますから、いろいろ問題はあろうと思いますが、きょうこの国会で可決をしていただいて、そして全国の私立学校関係者に対して一つの大きな光を与えるという意味で、各先生方の御賛同を心からお願いを申し上げまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  99. 久保田円次

    久保田委員長 木島君。
  100. 木島喜兵衞

    ○木島委員 せっかくこういう円卓会議で、一つの焦点になるたけ皆がしゃべれるようにということで企画をしたわけでありますけれども、ただやはり質問をしていきますと、継続されると、途中から入っては悪いみたいな気がしまして、それで私最初に質問しましたけれども、森さんに別々な話を順々に指名されたのでは気勢をそがれまして、円卓会議というものを開いた意味が余りないので、それで私は一つだけの質問、テーマを一つにして、しかもそれになるたけ多くの人たちが集中されることを、強制しませんが、期待をして、一つだけ。  五カ年間で大学学部等を、言うならば原則として認めないということですね。いま大臣や局長は、建学の精神とかあるいは内容にわたっての補助金減額等はやらないんだというような御答弁がございましたね。これは少なくとも大学の自治だとかあるいは学問、思想、教育研究等の自由というものを前提にしていらっしゃるし、同時に大学の自治あるいは教育の統制ということを考えていらっしゃらないということだと理解をします。すると、五カ年間大学を、あるいは学部、これは学科を含みますよね。例外はあるけれども原則として認可をしない。このことの思想は一体どこから来ているのでしょうか。
  101. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいま森委員の御質問にもお答えいたしましたが、教育上の理由財政上の理由でこういった規定を入れたと御理解を願いたいと思います。  第一の教育上の理由は、先ほど来出ておりますところの私立学校につきまして、さらにまた高等教育全般について今後しばらくは量的拡大よりも質的充実を図る。つまり建学の精神、伝統ある学風、個性のある教育、こういった私学理想を追っていただく。それは総合大学化でもなければマンモス化でもない、やはり小は小なりとしての特徴のある教育ができるはずでございますので、もう、大学の進学率が三二%にも達しました今日、こういった考え方は十分採用できると思うのであります。しかもまた、国立の大学につきましても、私学との間の調整を考えながら、たとえば医学部は今後は国立中心であるというような原則を二年ぐらい前から打ち立てた今日でございますので、国公私立の間の分野を考えながら国民の高等教育に対する要請を満たしていきたい、これがこの趣旨の一つでございます。  それから第二の財政上の理由は、これまた先ほど御説明申し上げましたように、私学の一方的な意思によってだけ定員がどんどんいままでのように増加いたしますれば、定員を基礎といたしまして補助金が支出されます関係上、これはどう考えてみましても財政負担が無制限に膨張するおそれがある。こんな点はひとつ十分に考えなければいけない。それはやはり一つの審査機関としての文部大臣があっていいではないか、こういった考え方でございます。  なお、いろいろと御質問がありましたら、後でまたお答えを申し上げます。それが二つの大きな理由でございます。
  102. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまの御答弁の高等教育の量と質、たとえば質がいいとか悪いとかということはある程度判断ができるかもしれないけれども、その認可する者がその質を判断していいのかどうか、このことが先ほど申したところの基本的な思想の問題になります。  量の問題は、これにも多くの問題はありましょう。多い方がいいのか、少ないのがいいのか、現状がいいのか、これは議論の存するところでありましょう。しかし、きょうは焦点を合わせるためにそれをいま議論をいたしません。けれども、たとえば量がよけいだとするならば、それは別の手段があり得るとも思います。たとえば定員の何倍も採っておるということから切っていくということもありましょう、学生の量だけで言うならば。質とも絡みますから。幾つかの手段は別にあると私は思う。あるいは財政上のことであるならば、ここにもありますけれども、補助金減額等によるところの措置もありましょう。そのことによって、質のもし悪いという形式的なもの、先ほど御答弁にありましたな、大学の形式的な面におけるところの質の悪いと申しましょうか、そういうものは減額等でもってなすべきことでもありましょう。そういう問題と、大学を文部省が統制をする、学問の自由や思想、教育研究等の思想のそういう自由とのどちらに重点を置くかということは、これはきわめて重大な問題だろうと思うのです。他で措置をすることは——基本的なものは基本的に守りながら、他の手段によってもし質と量というものが判定できるという部分は、それはそれらの措置はあり得るだろう。そのことを重点にしても、基本的なものはどこまでも守らなければならない。およそ、今日までの、戦後の日本の教育におけるいろいろな問題というのは、法的に一言で言って、教育法で言うならば、教育基本法第十条の「教育は、不当な支配に服することなく」という、そのことにかかわっての問題でもあったでありましょう。そのことはまた文部省の教育の統制であったか否かという問題でもあったでしょう。私はここでいま私学の問題を財政上から振興を図ろうとするその意図はわかるにしても、一方においてそういう基本的なものに配慮がもし欠けておるとするならば、私はきわめて遺憾なことであると思うのです。その点についてお伺いをしたいのであります。
  103. 塩崎潤

    塩崎議員 私は、この十三項の定員の増加原則的な不認可という問題が、質の良否の判定という大変むずかしい、裁量の伴う権限を通じて、統制につながるのではないかという御心配を述べられたような受け取り方をしたわけでございます。しかも、量の規制あるいは質の充実について、いろいろの方法がある。そういったことを十分にしないで、いきなり定員の増加認可制度にかけることについては、統制につながるのではないかという御心配のようでございます。  確かに、私どもも自由民主党でございまして、自由民権から生まれた政党で統制が最もきらいな政党でございますので、私どもはそういったことを全く考えておりませんし、昨今の官庁の民主化の趨勢から見まして、統制に陥るというようなことは毛頭考えておりません。しかも、民主的な公務員法上の公務員の方がやられるわけでございますし、さらにまたそのおそれを避けるために常識的な、しかもまた私学関係者の意見も十分反映されると思われますところの審議会の意見を聞かなければいけないことになっておりますので、私はそういう点は心配がないと思うわけでございます。すでに国立大学についても定員の認可制をとっておることと同じことでございまして、予算と定員の認可とは同時決定される、予算で認められて初めて定員が決まり、それから定員法がつくられるということを考えていただきますれば、これについて種々の統制という御心配もない、御批判もないことを考えますれば、私はこの十三項の規定は十分私学の関係者の方々にも納得され、木島先生にも御承認いただけるのではないか、こんなふうに思っております。
  104. 木島喜兵衞

    ○木島委員 受田先生済みません、一言だけ。  ただ、いまあなたがおっしゃったようなことで、具体的なことでは、個々にはないんだ、ないんだと言いながら、実は大きな流れとして日本の教育が統制になっているということから、今日の教育のイデオロギー的紛争が、一言で言うならばさっき十条の不当の支配と申しましたが、そこにあるんだと思うのです。そういう個々の問題ではないんだ、やはり原則原則でどこまでも守る、ここまではやる、個々は個々で別のことを考える、弊害があるならば。そのために、個々の弊害のために原則を間違えてはいけない、現象のために原則を間違えてはならない、そのことを私はいま主張しておるのであります。  受田先生、どうぞ。
  105. 受田新吉

    受田委員 いませっかく問題になっている十三項の問題を私からも指摘したいと思うのです。  いま量的拡大を質的転換への規定にもなるというお話でございましたが、私は量の問題で国立、公立私立のこの五年間の凍結期間中における学生数の伸びぐあい、それを私立はストップということになるならば、国立と公立でどれだけ増員せしめるのか。昭和五十六年の時点において、現在三二%の同年齢の大学入学の率がどこまでいくか、それをあわせて、五年後の見通しをお聞かせ願いたい。
  106. 塩崎潤

    塩崎議員 私はこの規定は、受田先生のおられないときに御答弁したことになっておるかもしれませんが、現在定員の増加は、御承知のように届け出制度になっております。しかし、その実際の運用におきましては、教育上の目的に照らしてこういった場合ならよろしいという場合に、初めて届け出ということがされて受理されておる、こういう経過があるわけであります。したがいまして、届け出制が現実には認可制度と同じような運用をされておる。そこに法律上の問題があり、それは文部省としては行き過ぎではないかというおそれがあるわけでございますけれども、実際はそういうふうに運用されているわけでございます。この事実に着目いたしますれば、それを認可という形に追認したいすぎない。したがって、今後の五年間の見通しは、いままでの趨勢をもとにして考えるしかないと思うのでございます。しかしながら、現在の経済情勢であり、私学財政が大変苦しくなってきた現状、さらにまた高等教育については質的充実を図るべしという声の方がはるかに強くなってきた世論も考えますと、私はこれまでの五年間に伸びました趨勢よりも落ちた趨勢、伸びは少なくなった趨勢になる、こんなふうに見ておりますが、それはいろいろ将来の判断でございますから、文部省の管理局長にも聞いていただいて、私が申し上げたことが現実にいまの届け出制度がどのように運用されておるか、これらをあわせて聞いていただけば大変幸せだと思うわけでございます。
  107. 受田新吉

    受田委員 文部省に対して。文部省はこの五年間に国立学校の学生定数をどこまで伸ばそうとしておるのか、御答弁を願います。
  108. 永井道雄

    永井国務大臣 詳細な点は管理局長がお話を申し上げるといたしまして、文部省の長期計画は、御承知のように、高等教育懇談会で検討しているわけでございます。これも受田先生がおいでにならないときに私がちょっと申し上げたかもしれませんが、要するに高等教育懇談会発足の時期には非常に大きな長期計画を立てまして、当時はどんどん大学が大きくなるということでございましたから、昭和六十年度には四〇%に到達するというような計算をしておりました。しかし、ことしのあれは四月と思いましたが、新しい報告書が出まして、情勢が大分変わってきている。というのは、もちろんこれは経済情勢もございますが、実際は大学の卒業生の数が非常にふえますと、希少価値というものも減るわけでございますね。そういう問題もあるわけであります。それから、それに伴いまして、学歴別の待遇の差というものも縮小してきている。これはことしの労働省の報告にもございます。そこで、高等教育懇談会はいままでの見通しを修正いたしました。そこで、いままでよりは伸びないだろう、しかし、それにしても伸びていくのだから、どう考えるかということで、これは大学のほかにも高専など、あるいは各種学校的なものも考えていったらどうかという新しい報告書を出しているわけでございます。そこで今後五年間ないしは十年間の数字というものを計算いたしておりますが、しかし今度はそれを学問別に見まして、一番はっきりしておりますのは、先ほど塩崎先生もおっしゃいましたように、お医者さんの養成というようなものは非常にはっきりいたしております。これについては昭和六十年までにお医者さんの数を人口十万人に対して百五十人に到達させる。これは国立だけでそこへ持っていくという数字でございます。現在もう一つ検討中のもので比較的早く固まってくると思われますのは、歯医者さんの問題であります。  そういうわけで、他の学科につきましてはそれほど詰めた数字になっておりませんので、高等教育懇談会で全般的な見通しを立てた、そういうのが一般的な概況でございます。
  109. 受田新吉

    受田委員 この論議されている規定の中にある、文部大臣は、「大学設置審議会及び私立大学審議会の意見を聴いて特に必要があると認める場合を除き、」ですが、このそれぞれの審議会に意見を聞く際に、文部省が意図的に聞くのかどうか、つまり、これは非常に必要だと思うものだけをかけるのか、そしてかけた以上、審議会が必要だと結論を出せばみんなこれを認めるのか。審議会の意見がぜひという答えであっても、文部大臣が、余り審議会の必要と認める大学や学部の設置が多過ぎる、これは整理しなければいかぬというふうになるのか、これら二つの審議会の意見はそのまま聞くのか聞かないのか、ひとつ承りたいのです。
  110. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 いま問題になっております法案私立学校法の附則第十三項によれば、形式的な論理から言えば、御指摘の問題を法律の形式で読んでいけば、文部大臣が判断をして諮問機関である審議会に諮問をして、そして文部大臣が自主的な判断をして決めるということでございます、論理だけから言えば。しかし、現実の模様を少し御紹介しなければいけないと思いますが、この私立大学審議会は二十人の委員をもって組織されておりまして、私立大学の学長、教員または私立大学設置する学校法人理事からなる委員、それから若干の学識経験者で構成されております。非常におえらい先生方のお集まりでございますので、いま申し上げましたような法律の論理からくる方式だけで仕事をしておるのではなく、諸問題を私大審の先生方に御報告をして、その中の御意見をいただきながら事務的な整理をし、また事務的な整理をした結果を先生方の御意見を聞きながら修正をし、何といいますか、非常に高い識見に導かれて仕事をいたしておりますので、いま申し上げたような、形式論は形式論として、実態的には私学の関係の代表者である先生方の御意見を十分尊重しながら事務運営している実態でございます。
  111. 受田新吉

    受田委員 いまの点、ちょっと局長、えらい先生だからといってえらい敬意を払っておられるが、その決定は素直に文部大臣が聞くのか、たとえ審議会の答えが出ても、文部大臣が判断してこれは必要でないと認めれば審議会はへのかっぱでもない。やはり最終的には文部大臣の意図で決まるのだ。そこをひとつ明確に。
  112. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 二つに分けて御説明申し上げたのは、法律権限関係から言えば、諮問機関でございますから先生のおっしゃるようなことがあり得るわけでございますけれども、現実にはないということでございます。(「法律があるのにどうしてないのだ」と呼ぶ者あり)申請のあったものは全部審議会にかけて御意見を承っておりますし、審議会の御意見は十分に尊重して従来そのまま大臣の決定をいただいておるということでございます。(受田委員「将来のことを言うのですよ、これから先の」と呼ぶ)それは現行法設置認可も同様の規定があって、私がいま申し上げるような実態でございますので、同様の規定である附則第十三項も同様の事実によって運営されていくであろうと予測をするわけでございます。(受田委員「それはおかしい、それではちょっとやってください」と呼ぶ)
  113. 山原健二郎

    ○山原委員 これは大変な問題が出ているわけですよ。では、この法改正によって法律化するわけでしょう。それといままでと一緒だという答弁ですね。それでいままでどおりでよければ、法律化しなくたっていいのだから。どうなんですか。
  114. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 私が申し上げますのは、説明、言葉が足りなくて先生方の御理解を十分得られなかったと思います。従来の大学設置認可文部大臣大学設置審議会、私大審議会にかけて認可するか、しないかを決定するというのが従前の条文でございます。ですから、従前の条文も形式的に言えば、文部大臣が審議会の意見のとおり聞かなくてもいいではないかという形式論理は成り立つわけでございますが、そういう実態はなかったという事実上の説明を申し上げたわけでございます。それと同じパターンに属する附則十三項ができましても、私大審の性格上、また文部大臣と私大審の関係上、従前と同じように私大審の意見を十分尊重しながらその私大審の意見に沿って文部大臣が判断をなさるであろうということは、法規の型が同じですから、その運用も考えていきますならば、行政の範疇として恐らく同様の事実上の取り扱いをするであろうという説明を申し上げることは、これはまた理屈だと思うのでございます。
  115. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いまの説明で、十三項に「文部大臣は、」ということでいま法律化しようとしておられるわけでしょう。それと、「昭和五十六年三月三十一日までの間は、」と期限つきでしてあるわけでしょう。  ちょっと提案者に聞きたいのですが、「文部大臣は、昭和五十六年三月三十一日までの間は、」云々と書いて、その「認可は、しないものとする。」。すると、この五年間というものはかなりきついあれになってくると思う。そうではないですか。この意味で、これは法律化したのではないですか。
  116. 塩崎潤

    塩崎議員 高橋委員の御質問のとおり、五年間は原則認可しないわけでございます。特に必要がある場合は、大学設置審議会、私立大学審議会の意見を聞いて認可するわけでございます。「特に」というところに若干のニュアンスの差があるだけでございまして、審議会の意見を聞くことの法律的な問題はいままでどおりだ、こういうふうに私は考えます。
  117. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いままでどおりであるなら、なんでここに提案者は法律化しなければならないのですか。
  118. 塩崎潤

    塩崎議員 今度新しく、御承知のように学科の設置収容定員増加について改めて認可制度にし、しかし、今後質的な充実を図る見地から収容定員増加、学科の設置原則として認可しないということをあらかじめ法律で明らかにして、私立大学の方々に明示しておく、そういったことを頭に置いて経営していただきたい、こういうことでございます。いままでと同じことであったというものは、届け出制度認可制的に運用されておった。これは事実でございます。しかし、それは法律的には問題でございますので、五条の本文の方で明らかにした、新しく設定した、こう考えていただきまして、いままでのままでいいということにはならないわけでございます。
  119. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはいまのここだけの条文でなくて、私立学校振興助成法全体を貫いている法の体系と、それでこの私立学校法の一部改正が密接な関連を持っているわけですね。ちなみに、一つだけ例を申し上げます。後で細かいことを申します。  この私立学校振興助成法の第七条では「国は、私立大学における学術の振興及び私立大学又は私立高等専門学校における特定の分野、課程等に係る教育振興のため特に必要があると認めるときは、」云々とありますね。今度は国は特に必要があると認める場合は、これはふやすわけですね。ここに言っている「特に必要があると認める」これは国ですから、当然文部大臣ですね、形式的には。今度はここでははっきり国と言わずに「文部大臣は、」こうなっているのですよ。したがって文部大臣は、設置審議会の意見を聞いて、特に必要と認める場合を除いて原則としては認めないというのですね。だから国が片一方でふやすときには、特に文部大臣が必要というものをちゃんと形の上で本文で認められていて、それに関連して私学助成法で当分は原則としてはふやさないというときに、今度は文部大臣が主語になっているわけですよ。だからここで文部大臣を主語に持ってきて、「特に必要があると認める場合を除き」と言っているのは、法律解釈として言えば大学設置審議会及び私立大学審議会の意見を聞きますよ、しかし文部大臣が特に必要があると認める場合を除いて——だから文部大臣が判定するのですよ。そういう判定が含まれていて、原則としてふやさないのに、ふやす場合があるのでしょう。それが特に必要な場合なんです。それは審議会がふやしてくれと言ったから文部省がオーケーと言うのじゃなくて、文部大臣にそこでやはり認可についての裁量権があり得るという解釈をしなければ法律を起こした意味が全然ありませんよ。だからいままでの運営上やっているからということなら、こういう問題は本当は省令かなんかの附則でいいのですよ。過渡的対策として私学というものの全体の助成の中で、当面は質とかなんとかおっしゃるけれども、ふやさないのなら、何も法律条文で私学助成法の中にこういうものを一部改正で起こさなくても運用の問題で解決できる問題ですよ。  だからいずれにしてもここで言っているのは、少なくとも法律文部大臣が言う以上は、ここにやはりいままでの運営と違った文部大臣権限強化が当然解釈されるというふうに読むのが素直じゃないでしょうか。
  120. 塩崎潤

    塩崎議員 細かい法律論になりましたので、衆議院の法制局からもまた御答弁願ったらいいかと思いますが、私は今度の私学振興助成法によって、私立学校法第五条第一項第一号を改正いたしまして、学部の学科、収容定員を新しく認可制度に採用しなければ現在の届け出制度の行政上の運用によって同じように制度的に運用することは適当ではない。やはり法律上の権限を持って文部省は初めて動き得るわけでございまして、したがってそれを堂々と法律化しなければならないし、また国の補助がこのように法的に保障されるときでございますので、当然それだけの根拠はあると考えましたので、五条の一項を認可制度に直すことに——しかし認可制度にしただけでは、御心配の五年間原則として認可しないということが出てまいりません。いままでの認可制度の運用の中で認可は当然やられるかもしれないと言い出す人がおるかもしれぬ。いままでの運用だけで認可の期待を持つ人がいるかもわかりませんから、こういった政策的な意図を法律上はっきり出しておくべきである、それがこの十三項の規定でございます。私は、省令でもできなければ行政上の運用でもできない、やはり法律問題である、こういうふうに考えております。
  121. 西岡武夫

    西岡議員 実はお話を承っておりますと、具体的な条文のかなり技術的な解釈論に入っているわけでございますが、その前に、これはお答え申し上げるというよりは各委員皆様方、御質問をいただいている方々に実はお聞きをしたいという感じなのでございます。円卓会議でございますから、そこは少し自由にやらせていただきたいと思うのでございますが、この条文の基本的な思想と申しますか考え方と申しますのは、先ほどからるる申し上げたように、いまこの時点でわが国の高等教育機関が果たしてこれ以上量的に直ちに拡大をしていくということがいいのだろうかというところから実はぎているわけでございます。そこのところの基本的な議論というものがございませんと、この条文というものが、私どもの提案しております趣旨が正しく理解されないのではないだろうか。すなわち私どもはわが国の高等教育機関をいままでのように野方図に量的に拡大をしていく、要するに需要があって供給があるというふうな形だけで高等教育機関の量的な拡大を図るということは、わが国の高等教育機関全体を衰弱させるのではないだろうか。将来、先ほど森委員の御質問にお答えをいたしましたように、量的に拡大するということがあってもいまこの時点ではそのためにも大学の質的な蓄積が行われなければならないのではないだろうかというところにこのスタートがあるわけでございます。たまたまここに私立学校振興助成法という形でこういう条文が出てきたわけでございますけれども、この背景には、国公私立を通じて高等教育機関の量的なあり方についての政策の姿勢を私どもは出しているつもりでございます。したがって、いろいろ御指摘の御心配のように、私学を特に規制していくんだという考え方ではない、もっと別の次元からの発想が背景にあるということをぜひ御理解をいただきたい。  それからもう一つは、この中でいま御議論のございます十三項の中に「大学設置審議会及び私立大学審議会の意見を聴いて」というふうにあるわけでございます。確かに御指摘のとおり最終的な判断は文部大臣が行うということになるわけでございますが、事柄の性格上、先ほど今村局長から御説明がございましたように、学部を新設したり学科を新設したりする場合には、かなり専門的ないろいろな判断というものが伴うわけでありまして、たとえば教授の資格であるとかそういったことについてはかなり専門的な知識が必要であって、だからこそ大学設置審、私大審という専門家の集まりに意見を聞く、単なる聞くということだけではなくて、まさにそこの決定がそのまま文部大臣の決定につながるという権威あるものであると私どもは解釈しているわけでございます。しかもすでに御承知と思いますが、私立大学審議会等の委員の構成にいたしましても、二十名の審議会の委員のうち十八名が私大の皆様方であるという事実、また大学設置審議会の、これは専門分野がそれぞれございますので、四十五人という相当多い専門家の集まりでございますけれども、この構成も私立、国立大体同数の委員が出ておられる。こういったことからも私学に対して特に偏った判断が行われるというものではないと私どもは理解しているわけでございますが、要するにわが国の高等教育機関をこのまま量的に、言葉は悪うございますが、野方図に拡大させていっていいのか。ここではしばらく足路みをして、その間五年の間わが国の高等教育のあり方について考えてみるべきではないだろうかというのがこの発想の基本にあるということをぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  122. 山原健二郎

    ○山原委員 いま大変重大なことを論議され始めたわけですね。私学助成法という法律の名はかりているけれども、わが国大学構想の基本に関する問題がこの中には介在しておる。こうなってきますと、これこそ明らかにわれわれが論議しなければならない問題でしょうね。これこそいわば大学人を初めとして、自由民主党だけでなくて国民的なコンセンサスを得る、そういう論議がここのところでは必要だと思うのです。私どもも私学を何ぼでも勝手気ままにつくるなんという考えではありませんけれども、しかし、その問題はまさにこの私学政策あるいは大学政策の基本に関する問題だと思いますよ。だから、そういう問題がここに出てくるといたしますと、やはり私は本当に慎重な審議をしていくというこの姿勢がまず第一点必要だと思います。  それからもう一つの問題は、国立の問題であります。収容定員の問題ですけれども、先ほど文部大臣は、医科系の国立は少しできつつあるというお話がありましたが、これはいま本委員会にかかっておりますいわゆる大学大学の問題でずいぶん論議をしてきたところですね。たとえば現在の総定員法の中で、これ以上国立をふやすことが実際上できるのかという問題なんかもあるわけですね。それで、一方では私学はもうつくらないという五年間の規定がつくられていくということですね。ところが、もう一つの問題は、あの大学大学の論議に当たって、文部省はどう言ってきたかというと、学科、学部の新設や新しい大学をつくる場合のいわゆる大学の弾力性ということを言ってきたのですね。ところがここでは、いま塩崎さんも御説明になったように、学部あるいは学科の設置などに対する制限が加えられておるということは、私学における文部省自体が主張してきたところの弾力性というものが、ここで私学に対しては一定の規制となってあらわれてくるという問題があるわけですね。  それからもう一つの問題は、こういう十三項というこの法律化の問題が、法制局にこの問題は聞きたいのですけれども、一定の条件があれば国民学校法人をつくることができるという基本的な権利があるわけでしょう、それを五年間であれこれを規制をする、つくらせないということが、憲法上一体どうなるのかという問題も起こってくるわけです。これは法制局に聞きたいのです。こういうことが法律上許されるのかという問題ですね。  それと関連しまして、収容定員の問題です。一方では五条の二号のところ、十一ページ、「学則に定めた収容定員を超える数の学生を在学させている場合」、この問題。これは現在も御承知のように、もう現実にはほほすべての大学が、いわゆる水増し入学をしている現実であるわけですね。こういう問題を考えてみますと、じゃ、この「学則に定めた収容定員を超える」ということになりますと、ほほすべての大学でこの減額が行われるのかという問題なども出てくるわけです。あるいは一定の水増しは許すのだけれどもというような規制も、これはちょっとわかりませんし、そんな問題も絡みまして、いろいろ疑念が生じてくるわけですね。  だから、まず第一番にいま私が言いました法制局の見解、それから文部省が言ってきたところのいわゆる弾力性と主張してきたところとこの十三項の問題、これについて伺っておきたいと思います。
  123. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 関連していいですか。  山原さん、最初の質問が抜けちゃったのですけれども、さっきの西岡さんの発言は、この法律助成の意味を、大学改革に誘導するための財政措置法的な主張をなさったわけですよ。事実上そうでしょう。いままで私立大学をいっぱいつくってきた。しかし、大学をつくってきたけれども、その中には量が問題になっていたかもしれないが、いまや質なんだ。そういう質のコントロールという言葉をあえて使うと、そういうものがいまや必要だという判断に立った政策があると、こう言ったのです。私たち社会党の助成法の助成の考え方というのは、一口に言えば、私たちは目的はこう言っています。この法律は、教育の機会均等、教育条件の国公立私学との格差の是正、それが助成の根本的な意味じゃありませんか。だから、助成というのは、いまの日本の国立、公立私立ないし国立、私立、そういう格差ですね、それから、そこへもってきて、八割の人たちが私学で高等教育を受ける、高等学校でももう三割ぐらい受けている、そういう実情にあるときに、この教育の機会均等という観点からすると、多々いろいろな問題があるわけでしょう。だからこそ私学に対する助成という考え方が出てくるのであって、助成というものはそういう意味で教育の機会均等という憲法二十六条の考え方と、それからまた同時に、教育条件の国公立私学との格差是正というところに助成の基本的なねらいがあると思うのです。ところが、山原さんが最初に質問されたその質問は、この法律には助成の一つの政策的な意図が貫かれている。その一つがこの文部大臣の五年間のいわば「認可は、しないものとする。」ということと実は関係があると、こう言われた。その助成という意味とあなたの政策との関連はどうなんですか。それを関連して伺いたい。それで後のほかのことは……。
  124. 西岡武夫

    西岡議員 私は、ただいまの御質問の問題につきましては、この十三項の問題の意味するところを御説明をしたわけでございまして、私立学校振興助成法というこの法律の性格は、第一条の「目的」に掲げられておりますように、「学校教育における私立学校の果たす重要な役割」というものを考えて「国及び地方公共団体が行う私立学校に対する助成措置について規定することにより、私立学校教育条件の維持及び向上」云々というのを目的としているわけでございます。ところが、先ほど私がお答えすると申し上げるよりは御意見を承りたいと申し上げたのは、わが国の高等教育のあり方について、いまこの時点でこれ以上量的に拡大をするという方向をとるべきなのか。これは限られた資源ということを考えますと、当然、量的拡大も図り質的充実も図るということは言うべくしてなかなかできない。しかも教育というものが、単に経済的な条件さえ満たされればそれで条件が整えられるというものでは決してなくて、人材が必要であるということを考えますと、もうこれ以上量的拡大をいまこの時点で図ることは、わが国の知的水準というものを衰弱させていくのではないだかろうか。そういうことを考えますと、国公私立を通じてわが国の高等教育機関量的拡大は、ここで原則としては一時足踏みをさせる必要があるのではないかということをここでは申し上げているわけで、その具体的な措置としてこの項目が出てきたものだ、かように御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 いま西岡さんのおっしゃっていることですね、だから私が言っておりますように、これは日本の学術、教育研究のまさにその基本に関する問題をお話しされておると思うのですよ。だから、それは西岡さんたちの考えるような立場もあると思うのですね。恐らく自由民主党の文教部会の考えであろうと思うのです。それは私も一概に否定するわけではありません。しかし、それだけでいいのかという問題ですね。そこのところは、政策上の基本に関する問題は、それは当然論議してしかるべき問題であって、そういう点こそ私たちは論議をしなければならぬところだと思うのですよ。だから、そういうところこそいわばほぼ合意に達するということで、今日の経済状態あるいは今日の大学の実情、そういう点から検討していかなければならぬわけです。だから、それを一定の枠で、こういう方針しかないんだというものがここに出てきているわけでしょう、そうじゃなくて、本当にその問題については、たとえば現在の私学あるいは大学におけるどういうふうにこれを激励して、もっといいものにしていくかというふうなこと、あるいは財政援助をどうしていくかというふうなこと、まさにそれこそ総合的に考える。総合的に考えるなら、それこそまさに国民的なコンセンサスを得ていく、各党の意見もそこに集中されていく、そうしてその中での結論が出てくるということならわかりますけれども、やはりこれは自由民主党の案として出てきておる。しかも表面は私学助成法であるけれども、その背景には自民党の考え方がずばりとこの背景にあるという、この背景の大きな基礎が目の前に出てきたわけですからね。そうすれば私どもはこの法案をめぐってそういう基本的な政策上の問題についても相当の論議をしなければならぬのじゃないかということで、一層私はいまの再度の答弁によって考えるわけですよ。
  126. 西岡武夫

    西岡議員 実はただいま私がお話を申し上げましたわが国の高等教育のあり方についての私どもの考え方は、昨年五月、自民党の文教制度調査会、文教部会の名前で、高等教育の刷新、大学入試の改善及び私学振興に関する政策ということでこれを取りまとめたわけでございます。これは一年前に山原委員のお手元にも私の方からお届けをいたしたわけでございますが、その後国立大学の組織でございます国大協の代表の方々、私立大学のそれぞれの代表の方々をお招きをいたしまして、私どものただいま御説明を申し上げたような高等教育についての基本的な考え方をるる詳しく御説明をして御意見をいただいたわけでございます。各界の意見を十分聴取してやるべきではないかという山原委員からの御意見については、十分とまではいかないわけですけれども、それぞれの努力をここ一年間してまいりまして、各政党の皆様方にもそれぞれ文教の担当の方々に自民党のこれからの文教政策の方向はこういう方向をとりたいと考えている、御意見をいただきたいということを申し上げたわけでございます。  特に高等教育のあり方について量的拡大をこれ以上やるのかどうかということにつきましては、私どもが国大協の代表の方々から承った御意見でも、全く賛成である。これは国大協としての正式な御見解ではございませんでしたけれども、それぞれ御意見をいただいておりまして、非常に量的拡大は行わない、これから大学というものを新しく新設するということはできるだけ控えていくんだという考え方は、これはなかなか思っていてもいままでだれも言わなかったことでございますけれども、私ども自民党の文教部会としてはあえてわが国の将来のためにもここは思い切った提案をすべきであるということでこの方針を打ち出したわけでありまして、これについて皆様方から積極的な反論というのをいまだいただいていない、そういう背景の中でこの法案を作成していったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 いまお話しなさったことは、それは確かに国大協等の意見も参酌されているでしょう。だけれども、それは一つは量的拡大を抑えるというその背景の中には、いわばいままでの大学政策とかそういうものもあるわけですね。たとえば国の予算の何%ぐらいしか充てないという状態の中での、そういう中でのこれ以上という問題。だから一定の枠というものがあって、そこから生まれてくる大学関係者の方たちの一定の意見というものは出てくると思うのです。  しかし私たちが考えなければならないのは、国民教育を受ける権利は一体どうなるのかという問題が一面であるわけですからね。大学教育を受けたいという青年の数というのはこれは年々ふえていく。それは決して抑制すべきことではなくして、それはまさに国民教育を受ける権利として尊重しなければならない問題なんです。で、それらの問題と、いままでの一定の枠組み、いわば戦後三十年続いた自由民主党の文教政策のもとのその枠内で考えるものと、それだけで論議をしてはこれはならぬわけですね。そういう点で本当に国民教育を受ける権利、また年々増大していくところの大学教育を受けよう、この青年たちはまさにまじめに大学教育を受けて人格的にもそれから学問研究の上でもりっぱなものを身につけたい、こういう希望があるわけですからね。だからそれをどう考えていくかということも論議されなければならぬわけじゃないですか。
  128. 西岡武夫

    西岡議員 ただいまの山原委員の御指摘の問題は、私は先ほど申し上げましたように、将来、資源のない日本民族にとって、国民の知的な欲求と申しますか、高等教育機関にまで学んでいきたいというそういう情熱、熱情というものは本当に大切な財産なんだ、これを大切にしていかなければいけない、これがやはりわが国の文教政策の基本になければならないと思います。ところが高等教育機関というものは一体どういう役割りを果たすべきなのか。確かに先ほど確定した数字でも三二%の進学率になっている。ことしは多分三五、六%になっているのではないかと思いますが、そういうところまできた高等教育機関というものは一体何なのかということも私どもは考えていかなければならない。そうして特にいまの山原委員の御質問の中でちょっと欠けていると思いますのは、憲法二十六条に国民は、ひとしくその能力に応じて教育を受ける権利を有するとあるわけでございます。「その能力に応じて」ということを考えた場合に、高等教育機関教育にたえ得る能力を持っているかどうかというところをやはり考えなければいけないのではないだろうか。その点はいかがでございましょう。
  129. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私さっき質問したのは、そういうところにずいぶん問題があるのだけれども、はしょったつもりなんです。もしも、いま西岡さんがおっしゃったようなことが前提にあって、五カ年間大学なら大学を新設を設めないんだということが、そういう思想があるんだということでこの条項が入ったのか。とすると、これは憲法論になりますし、いまおっしゃった二十六条の能力なら能力論、あるいは十九条ですか、学問思想の自由、二十一条ですか、この自由等々、これはそういう議論になったら——私はさっき、そういうことでなしに、このことによって大学の新設を認めないということが、そういう憲法上のそれはいろいろな議論はあるが、それとのかかわりでどちらを優先的に考えたのかという言い方をしておったのです。だからその思想は、いまの西岡さんのは別個の、大学のあり方はどうなのかという問題であれば、この法案とかかわりなくて話しされるならば私はこれはこれでまたいいんですよ。それが背景にあり、根底にあってこう出たとなると、これは憲法論にいってしまうのですね。すると、法制局も来ていらっしゃるから、しからば憲法上どうかなんて、こうなっちゃうんですよ。むしろいま私はここで議論するのはそういうことでないんだろうと思ってさっき私は最初に質問をして短くやめたのです。私はいったら当然いま言った議論になっちゃうのです。だから私はそうでなしに、財政上のためだとかその他教育上というのは形式的なことでしょう、本質的なことじゃないでしょう、そういうもので憲法上のそういう問題を制限していいのかということを言っただけなんです。そうでないとこの問題は、これは拡大したら大変です。憲法だって大変な議論があるわけですから。いま能力論をおっしゃった。憲法二十六条の「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」というその能力なら能力という「能力に応じて」とは一体何かなんというと、それはあなた、大変ですよ。だからそれは、いまのは別個の議論としてというように御発言があった方が、この際いいんじゃありませんか。(山原委員「法制局の答弁を求めます」と呼ぶ)
  130. 大竹清一

    ○大竹法制局参事 まことに恐縮ですが、先ほどのお話の途中で入ってまいりましたものですから、恐縮ですが要点だけを……。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 十三項で、これは、いま一定の条件があれば学校法人をつくる権利を国民は持っていますね、それとこの十三項はどうなるのかと、簡単に言えばそういうことです。
  132. 大竹清一

    ○大竹法制局参事 ただいまの御質問につきましては、いろいろな考え方があろうかと存じますが、私どもが考えておりまする十三項は、ただいまおっしゃいましたように、だれでも学校をつくれると、こうおっしゃるわけですが、なるほどそれはそのとおりなんですが、いわば、問題の焦点がずれるかもしれませんが、国民職業選択の自由を持っている、あるいは自分の財産をどのような使い方をしようと自由であると、そういう意味における基本的人権と同じような意味において、学校をつくって人を集めて教育という事業をだれでも本来やれるんだというように考えていいのかどうかという点は、やはり、私が申すまでもなく現在私学認可制度がしかれている、その認可制度教育事業というものの絡みをどう考えるかと、そういうところから規定的に、完全な自由業種であるか非常に公共性の強い事業であるかによりまして、同じ形式的に認可制をしいておりましても、基本的性格は違うのではなかろうかと、こう考えております。その上に立ちまして、やはり教育事業というものは公共的な性格が非常に強いと、なるほど私学はある一定の条件を備えれば認可されるということになってはおりますが、だからといって、必要な制限は認可の条件に限ると、こう考えていいほどの自由事業であるかどうかという点から考えまして、この十三項のような、こういうある一定の期間ある目的があれば認可をしないというような立法をすることもまた可能であると、このように考えておるわけでございます。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 私ばかり時間をとるのはこれでおきますけれども、いまの法制局の答弁ちょっとおかしいですね。設置基準もあるわけですね、だから、あなたが言われるのは逆に受け取っておられるわけです。これは禁止するわけです。ほぼ日本国民全体に適用できる法律によってこれを禁止するということが憲法上どうなのかと、こう言っているんです。あなたの言われるように、認可事項だからむやみにつくるのを制限できるなんというものではなくして、ほぼ日本国民全体に及ぼす法律として、これを五年間禁止することができるということになれば、憲法上の問題が起こるんじゃないですかと、こう言っているわけです、つくらせないということですからね。つくろうとする者に対してこれを抑制をする、制限をするということだけでなくして、日本国民全体にこの法律が適用されるわけですね、それは憲法上問題じゃないんですかと、こう言っているんですよ。
  134. 大竹清一

    ○大竹法制局参事 ただいまの、教育事業をやっておる人あるいはやろうとする人、そのことと、およそ日本国民全体がいわゆる教育事業に参加するということを、何か意識して違うようにとっておられるように思うのですが、教育という事業を国民のだれでもが、ある一定の要件を備えれば認可される、こういう体制はまずどういう性格を持っているんだと、その上で、その認可制度と一体となってこの十三項のような規制ができるかできないか、だから、そこに十三項に必要性の程度があると認識すればそれは可能であると、こう考えているということでございますが……。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大学には大学設置基準がありますね。だから、一定の私立大学をつくってきて、法人の形をとり、一定の条件が整ってきて、設置基準に客観的に照らして見れば、大学をつくったりそれから学部を増設したりすることができる、これが国民教育の権利を保障するための私学のあり方ですよね。設置基準というのは客観的に省令にあるわけでしょう。それをつくることができるものを、今度は上の法律ですよ、省令じゃないですから。設置基準で仮にオーケーであっても、設置審がこの大学はまだいまからふやさぬ方がいいと判断をしたり、そんなのじゃなくて、文部大臣法律でもって、設置審の客観的な姿を持っているものの学部の増設や学科に至るものについて、五年間禁止するということを原則として決めるんですから、設置審があったって上の方でそれを今度は法律でコントロールするというのですから、設置審とこれと合わせていままでのように国民教育的権利と学問、思想の自由を保障するということになるわけですから、法律で、その上のもので禁止しちゃうんですから、設置審で客観的条件があったって禁止されるのですよ。それはおかしいですよ。その法制局の見解は全然おかしい。
  136. 大竹清一

    ○大竹法制局参事 ただいまの御意見でございますが、まあ文部大臣権限、それから設置審議会の意見を言う規定、これは御承知のように全部法律にあるわけです。要するに認可を受ける、その認可には、こういうようにして認可をしますよと、その法律と並んで認可を受けなければならぬ、認可を受けないと教育事業というものには参入できませんよという法律と並んで、今度は法律でやるわけでして、それがこう合体するわけです。だから、その認可という条項に基づく文部大臣権限あるいは設置審がいろいろ意見を言う、それを法律で抑えるからということはちょっとこう筋が違う。認可を受けなければならぬということと並んで……
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いままでは大学基準協会があって、そして大学設置審議会があって、そういうものによって大体大学のあり方というものについての一定の客観的基準を決めていますよ。そっちで事実上運用されたものを形式的な意味で認可してきたんですよ。それを今度の学校教育法の改正では、文部省の認可権というものが大学院の問題に関連して前に出てきましたですね。だけれども、いままでは、法律で言っている認可というのは、事実上は設置審の客観的な判断に基づいて、これでよかろうと言えば形式的に認可になったわけですよ。それがいままでの大学というものの自治を前提にした大学設置の仕方であり許可の仕方だったのですよ。ところが今度は文部大臣が、仮に設置審がいままでのとおりでいけば客観的に学部の増設や学科の増設ができると判断した場合でも、今度は文部大臣権限で五年間ふやすことができなくなるのですから。ということは、いままでの設置審と、法律的に決められた認可の形式的な運用と違ってくるんじゃありませんかと言っているのです。禁止するんですからね。これは禁止条項が原則なんですよ、認可はしないものとするというのが原則なんですから。これが原則なんですから、全然おかしいのです。
  138. 大竹清一

    ○大竹法制局参事 いま、その現行法のもとにおける文部大臣権限設置審の仕事の中身から現行法はこのように解釈、運用されているではないかと、こうおっしゃっているわけです。それはもうそのとおりだと思います。そこで、そういう現行法法律制度そのものと、この十三項を法律の面で合体さして、要するにまあ当分の間、五年間ですが、新しいやり方でやりましょうというのが、この十三項だと、こう理解しているわけです。  そこで、それは先ほどからおっしゃっている憲法論になるのかということと、憲法論とは言わぬがこういう政策をとることが立法政策として妥当なのかどうかという両方の議論があろうかと思います。私どもはそれは憲法論じゃなくして後者ではないか、そういうように理解してこの十三項を憲法上は差し支えない、こう言っているわけでございまして、そのことがすなわち妥当であるということではない。妥当論は立法政策として別にある、しかし憲法論にはならぬというのが先ほどから私の申し上げたいところであったのですが、言葉が足りませんで、そこははっきりしておりませんが、そういうことでございます。
  139. 受田新吉

    受田委員 大竹さんの御意見を承っていると立法論、それに政策論が入って、それが混同したようなかっこうになっているわけです。明らかに、いま西岡先生の御発言を聞いてもまさに政策的な御意見がこの法律に盛り込まれている。私たちは筋論を一応提唱したいのです。この学校教育法第四条によって学校の設立認可がされる、そうした国民に、教育事業者が学校をつくりたいということについての自由の世界に一つの大きな壁をつくるということを、これは一応やめて、そういうやり方でなくて、たとえば学校教育法第十三条に学校の閉鎖規定がある。つまり法令に反する学校等に対してあるいは監督庁の命令に従わないところに対しては閉鎖命令を下すことができる。そういうようなところで本当に不健全な学校があるならばなぜ閉鎖しないのかという問題、スタートした以上はそれをりっぱに育てたいという御意思が一応ありながら、現実によう育てないでいまのような大変不健全な学校を事実文部省はつくっておるのです。それを整理するために五年間の凍結規定を設けたいという政策的御見地をいまあなたはおっしゃったんじゃないか。つまりいままで量的拡大になり過ぎた現在の私学をむしろ質的向上をさせる期間を五年間つくるべきだという意味の御意見ではなかったかと思うのですが、そういう行き方をとるよりも、教育事業者が学校をつくりたいという自由権は一応認めてあげて、そしてこの五年間もし必要があるならば助成措置というものについて考慮すべきである、一応の基準に達した学校はどんどんつくってやってよい、しかし助成はしませんよ、五年間は助成のストップをしますよ、こういう行き方の政策をとる方が筋としては通るのではないか。学校の設立は自由にしておく、しかし助成法だから助成の点で五年間のストップをやろう、こういうやり方の方が賢明ではないか。そして一たび生まれた学校は、たとえ奇形的に生まれた学校であってもそれを健全に育てる、健康不良児も一応国家は最後まで見てやろうという御意思があるんであるならば、別途その方で考慮すべきであって、五年間設立を禁止するというような強権を用いるべきではないんだ。これを私は特に提唱したいと思うのです。  過去において学校教育法第十三条によって閉鎖命令を出した学校があるのか、私立学校法で第五条一項二号による閉鎖命令を出した学校があるのか、文部省の怠慢によって不健全に育ってきた私学を文部省はそのまま放てきして——むしろ不健全であるがゆえに逆に国家の助成を大きくしてやって、そしてそのような学校にこそ力を入れてあげる。そして助成措置について厳しい枠を決めており、たとえば私学振興財団から融資した、融資した支払いが遅延した、その遅延したという理由だけでもう例の助成対象から外してくるなどという、これはむしろ逆であって不健全なものを育てる御意思があるならば、融資した金額をお返しできないところにむしろ力を入れてあげるというぐらいの逆の療法をとる方が私学振興になるのですね。そういうものを怠っておいて五年間新しいものはつくらないというやり方、これは間違いである。だから私基本的には教育事業者がどんどん学校をつくることについてはこれを抑圧すべきではない。権利は守っておげる。同時に、助成措置として今後の五年間を新しくできる学校に関しては助成をやめますよ。非常に健全な基本財産等があって、そこに奇特な人が基本財産を大量に多額に提供したというようなときだけが健全に育つことにして、それ以外のところへは助成しない、こういうことにすれば、新しいものは遠慮するようになるでしょう。そういう行き方、基本的な考え方をひとつ変更してもらうべきだと思いまして、あえてこれを提唱します。御両所から御答弁を願いたい。
  140. 塩崎潤

    塩崎議員 受田先輩の御意見は私は一つの考え方であると思います。まず第一に憲法問題じゃなくして立法政策が問題であるというふうに受田先生は言われたわけでございますが、私も法制局の答弁を聞いておりまして、憲法問題よりも立法政策の問題だと思うわけでございます。立法政策が問題となりますと種々のやり方が出てくるかと思うのでございます。受田先生のやり方も一つの方法でございますが、私どもはやはり国民には親切に資源をこれから私立学校に投じていただかなくても、もう少ししんぼうしていただきたい。一遍でき上がりました後に閉鎖命令を出すということはなかなかむずかしいことでございます。これは人情の常でなかなかできないことを考えますと、全体といたしまして、いま西岡先生の言われましたように、私学が過剰ぎみであり、今後は量的拡大よりも質的充実だということになれば、憲法の許す限りにおいて五年間は設置を認めないという政策は私はとり得る可能性があると思うわけでございまして、それを御提案申し上げておるところでございます。  それともう一つ、受田先生は、私がこれまた先生のいらっしゃらないところで御説明を森委員にしたのでございます。去年の五月の私の案には、文部省が認定しない定員の増加に対しましては補助金対象にしないような仕組みの制限規定を置いておきました。先生はいま、そういった案はどうかと、認可という息の根をとめるようなやり方よりも、その点はフリーにしておいて、教育目的から認める、しかし財政目的からそれを否認したらどうか、こういう御提案があったのでございます。それは先ほど申し上げましたように、去年の五月の私の案にもあったわけでございますが、この点は私どもといたしまして、法制局において十分突き詰めて、このような案の方がより適当であるということで私学の方々にも御理解を大体において得たと思っているわけでございます。つまり、財政上不適当ならば補助金を与えないということは私は財政上の理由から単純に出てこないと思うのです。やはり教育上不適当であるから財政上も援助を与えないということが大部分であろうと思う。そういたしますと、教育上不適当であるのに定員をふやさすということは所轄省としての文部大臣にはできないことである。やはりこの点は学部の新設について認可制度をとっておるたてまえ、現行のたてまえから見て、やはり収容定員増加については認可制をとるということが至当であろう。しかもそれを全面的に五年間禁止するんじゃなくして、一つの認可基準の厳格化の、特に必要のある場合には設置を認めるという弾力条項を置きまして、全般的にはひとつ五年間はしんぼうしてくれということの政策の方がより適切である、こんなふうに考えまして、このような御提案を申し上げてきておるわけでございます。  なお、先ほど来たびたび申し上げておりますように、私学側も現行の届け出制度が文部省との話し合いによって受け取られない限りは定員の増加の届け出はしないようないま慣行になっております。つまり届け出制度認可制度のように運用され、しかも昨今の私学の過剰ぎみの傾向から見て、原則として文部省は収容定員増加は認めないのだなというような雰囲気になっておるわけでございますので、私は五年間のしんほうは必ずしも不適切な政策とは思えない。現在でも大分定着しておる政策でございます。しかし、むしろそれを裏をかきまして定員の増加を持ってこないで、やみ定員ですかね、定員をオーバーする実員を認めていることを生んでおるとすれば、これはまた、いろいろと山原先生からもお話がございましたが、この法律施行期日でございますところの五十一年の四月一日までには、不自然なこれまでの定員と、実情に即したところの、実員との間の調整をできる限り行った新しい定員はつくらざるを得まい。これは、施行日までに文部省において私学側との間に話し合いをして準備していただく、大体こんなようなたてまえで私学側にも話し、私学側も文部省側もそういうことにしようではないかということの合意ができておることを、御参考までに申し上げます。
  141. 受田新吉

    受田委員 もう一つ。先生、私はもう一つ提案したいのですが、この五年間の凍結規定をやめて、審査を厳重にして、運営の面で五年間なかなか新設はできないんだという形にすべきではないか。運営面でその道が開けませんか。つまり、基本的権利を抑えてまであえて五年間の凍結規定を設けることをやめて、一応従来の権利を十分認めながら、運用の面で事実上五年間めったなことに認可はできないんだという厳しい基準で運営される方法はないですか。
  142. 塩崎潤

    塩崎議員 ただいまの受田委員の御提言が、法律的に言えばこの規定でございます。私は、運用を厳しくするというような、法律の根拠に基づかない行政庁の裁量によってやることこそ、非民主的で危険性が多いと思うわけでございます。やはり国民に、五年間はやかましいんだということを国会の同意を得た法律によってやる方がより適切である、こういうふうに考えたからでございます。
  143. 久保田円次

    久保田委員長 先ほど山原君から文部省に対しまして御質問がございましたが、管理局長今村君から御答弁を願います。
  144. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 先ほど法案の第五条第二号を引用されまして「学則に定めた収容定員を超える数の学生を在学させている場合」は補助金減額して交付することになるであろうが、そうすれば、現在定員を超えておる私学がほとんど全部なんだから、ほとんど全部の私学補助金減額が起こり得るのではないだろうかという趣旨の御質問でございましたが、結果としては決してそうならないと思います。五条の規定に「その状況に応じ」「減額して交付することができる。」その状況に応じという言葉がございます。こういう規定が全くないといたしますと、現在、これは極端な例でございますけれども、調査しましたところ、ある大学の二部において定員の二十二倍の実員を持っている学校がございました。これで教育条件が整っていてまともな大学教育ができるわけでもないわけでございます。したがいましてその状況に応じ具体的に勘案をするということでございまして、現在のところ実態は漸次改善の方向に向かっております。  三年前から定員の六倍以上の実員を持っているところは補助金交付しない、昨年が定員の五倍以上の実員を持っているところは補助しない、ことしが四倍以上の実員を持っているところは補助しない、その補助する限度においてはその倍率を考慮して減額の場合のしんしゃくの材料とする、こういう態度をとっておるわけでございます。  実情は以上のとおりでございます。
  145. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この法案についてはたくさんな問題点があるわけです。今晩これで質疑はとてもし切れない、慎重にすべきだと私は考えますが、その中で第九条の「都道府県補助に対する国の補助」の問題ですが、都道府県当該学校における教育に係る経常経費について補助する場合に国が一部を補助することになる。そうなると、都道府県当該学校補助しない場合、これは一銭も行かないわけです。補助しないということは都道府県財政的な問題があって補助できない場合もあります。ますますこれは不公平になり、ただそうした財政的な誘導によって、その反面かなりの規制をしておるわけですよ。たとえば第五条の第五号にしても、学問の自由、私学の自由という問題にかかわる問題があります。それから、第六条にしても「補助の目的を有効に達成することができない」その判断基準は一体何であるかとか、第七条の「特定の分野、課程等に係る教育振興のため特に必要があると認めるとき」は、一体だれの——これは自民党の政策に合わない場合というように私は解釈するのですが、そういうようなことも考えられる。財政補助という問題については、きわめて高校以下の問題については薄弱でありますし、その反面、いろいろな規制がある。財政的誘導をしながら、かえって規制の強化を図る法案のように思っておる。その提案者の考え方は……。
  146. 塩崎潤

    塩崎議員 九条の仕組みにつきまして御意見がございました。私どもは、高校以下の財政援助についても国がある程度の責任を負うべきである、こういった考え方を持つものでございまして、いまの地方財政の現況から見て、高橋先生のおっしゃるように本当に心配するものでございます。しかしながら、この九条の背後にありますものは、御承知のように現在の地方自治法、地方財政法という地方自治のたてまえを原則といたしておりまして、国と地方との間の権限の分配は、御承知のように高校以下については都道府県が責任を負う、それは教育上の責任ももちろんでございますが、財政上の責任も負うということで、ことしに至るまで私立高等学校のみならず、公立高等学校まで、原則として一銭の補助もしてなかったわけであります。財政当局は今後もなかなかする気持ちはないようでございます。しかしその中でやろうとするわけでございますから、地方自治の観念のもとで補助をする場合には、ひとつ苦しい中で補助をするのだから国が見てあげましょうということで補助促進しよう、こういう考え方なんでございますので、これは地方自治原則と高校以下に対する援助の必要性との一つの妥協の産物、将来は高校に対して直接金をやるというようなことも私は十分考えられるところでございますが、それは国と地方との間の行政事務配分の根本的な問題でございますので、これは将来の検討に、相当長期の問題であろうかと思いますが、残されると思うのでございます。  なお、五条の問題は大学の話でございまして、高等学校以下につきましては原則として適用がないわけでございまして、その点につきまして、なお法制局からお答えが必要ならば細かい点まで申し上げたいと思います。
  147. 高橋繁

    高橋(繁)委員 九条の問題、財政豊かな都道府県の場合は現実補助をしているのですよ。それに対して国が一部補助するわけでしょう。補助できない東北の貧弱な県の私立の高校はもうつぶれかかっているんだよ。廃校のやむなきに至りつつある高等学校がたくさんあるわけだ。そういう高校に対しては何ら国が補助をしない、都道府県任せ、都道府県財政的にできない、そういう反面があるわけですよ。
  148. 塩崎潤

    塩崎議員 確かに、おっしゃる点は今後の検討問題でございまして、高校以下に対して国が義務教育のようにどこまで責任を負うかは十分検討したいと思います。(羽田委員委員長。本案に対する質疑はこれにて終局されんことを望みます。」と呼び、その他発言する者あり)
  149. 久保田円次

    久保田委員長 暫時休憩いたします。     午後十時三十分休憩      ————◇—————     午後十一時二分開議
  150. 久保田円次

    久保田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  藤波孝生君外四名提出私立学校振興助成法案議題とし、質疑を続行いたします。  この際、木島喜兵衞君より発言を求められておりますので、これを許します。木島喜兵衞君。
  151. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この際、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の四党を代表して動議を提出いたします。  すなわち、本案についてはなお検討すべき点がありますので、さらに慎重に審議を続けられんことを望みます。
  152. 久保田円次

    久保田委員長 ただいまの木島喜兵衞君の動議について採決いたします。  木島喜兵衞提出の動議に賛成諸君起立を求めます。
  153. 久保田円次

    久保田委員長 起立少数。よって、木島喜兵衞提出の動議は否決いたしました。  次に羽田孜君より発言を求められておりますので、これを許します。羽田孜君。
  154. 羽田孜

    羽田委員 本案に対する質疑はこれにて終了されんことを望みます。
  155. 久保田円次

    久保田委員長 ただいまの羽田孜君の動議について採決いたします。  羽田孜君提出の動議に賛成諸君起立を求めます。
  156. 久保田円次

    久保田委員長 起立多数。よって、羽田孜君提出の動議のとおり本案に対する質疑は終局いたしました。  この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において意見があればお述べ願いたいと存じます。永井文部大臣
  157. 永井道雄

    永井国務大臣 このたび衆議院文教委員会におかれましては、私立学校教育の重要性にかんがみ、私立学校振興を図る観点から本法案提出されましたことに対して深く敬意を表します。  本法案内容につきましては、政府といたしましてはやむを得ないものと考えるものであります。本法案制定の暁にはその趣旨を体して、わが国における私立学校教育の一層の振興に努めてまいる所存であります。     —————————————
  158. 久保田円次

    久保田委員長 引き続き討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案の採決に当たり、野党四党が動議として提出いたしました慎重審議の理由を述べながら、また、いま文部大臣が、やむを得ないと言われたような内容のものであるだけに、その理由を述べながら反対の討論を行います。  第一に、この法律案が自民党の議員提案で行われました手続についてであります。本国会は、民間人として文部大臣に就任された永井文政のもとで、対話と協調のもとに、日本の教育の重要な問題については全野党の討論と一致を見ながら新しい文教委員会のあり方を今日まで模索してきたことは皆さん御承知のとおりであります。そのことは、今日までに三つの議員立法を合意のもとに成立さした実績がそのことを物語っております。したがいまして、今回の私学助成法案に当たりましても、本国会中に、わが党や野党全員がこぞって各党の合意を今日まで提唱し、小委員会の設定を行い、その内容を煮詰めることを今日まで提案をいたしてまいりました。それにもかかわらず、会期末に至りまして、かつ、事前に内容も示されず、一方的に動議で審議を打ち切ろうとすることは実に遺憾だと思います。法案をわれわれが目にしたのはきのうの夜か、けさでございます。そういう意味で手続的にも一方的な内容の提示であったことは明らかであります。  しかもこのような、いまから申し上げますように、本案はきわめて宣言法的であって、今日の私学危機が解決できるのか、国、公、私立の格差解消、機会均等が得られるのかという重大な問題に何ら答えていないと思うからであります。しかもここ数時間の討論の中で明らかになりましたように、提案者たちは、この助成の理念が立法政策と深く絡まっていることを主張しておられます。その内容は、日本の大学の高等教育のあり方が、量から質へといまや変わらなければならない段階という状況認識に基づいていることであります。そのことは、この法案内容が示しておりますように、明らかに権力的統制の肯定の論理に立っているということであります。  法案内容について申し上げます。  まずこの法案の第一条の「目的」は、「この法律は、学校教育における私立学校の果たす重要な役割にかんがみ、」云々と言い、「修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立学校経営の健全性を高め、もって私立学校の健全な発達に資することを目的とする。」と書いてあります。本来の私学助成法は、今日の日本の高等教育や後期中等教育などの中で、国立と公立ないしは私立私立の内部における格差、こういう日本の教育の格差を是正するという意味で、今日まで私学教育の果たしてきた役割りにかんがみてその格差を解消するための助成でなければならないし、機会均等という憲法の理念に基づいた助成でなければならないと思います。したがいまして、第一条にその趣旨を明確に打ち出すことがこの助成の目的を明らかにすると思います。この点が抜けていることが、目的をきわめてあいまいにさしている一つの特徴でございます。  この法律案全体を貫いている特徴は、第四条で「国は、大学又は高等専門学校設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。」と規定しておることであります。このことは、「二分の一以内を補助することができる。」でございますから、いかに将来二分の一という目標を掲げていても、法律案を読む限りは、二分の一以内を補助することもできるが、しないことも可能であります。そういう意味で、もともと二分の一という目標を掲げてきた私学助成の理念がここであいまいにされております。  このことは、第九条においても、都道府県の小学校、中学校高等学校、盲、聾、養護学校幼稚園設置する学校法人に対する補助の場合は、「国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。」と、補助内容がきわめてあいまいにされているのでございます。  金を出す方はあいまいにしておいて、今度は私学に対する強制的な措置の条項がきわめて多数ございます。たとえば第五条をとってみるならば、「国は、学校法人又は学校法人設置する大学若しくは高等専門学校が次の各号の一に該当する場合には、その状況に応じ、前条第一項の規定により当該学校法人交付する補助金減額して交付することができる。」ということで、第五条は減額規定でございます。その減額の条件の中に、五番目に「その他教育条件又は管理運営が適正を欠く場合」とあります。「教育条件又は管理運営が適正を欠く」というのは何を指すのか、具体的に何を意味するのか、これをだれが判定するのか、それは国でありますから、これはきわめて危険な強制的な側面と考えなければなりません。第六条は、補助に当たりまして、さらに「第四条第一項の規定による補助金交付しない」という場合を決めております。第七条には、今度は特定の分野、課程に係る教育振興のため特に必要な場合は援助をプラスすることができるという規定があります。一方でコントロールしておいて、特に必要のあるときだけは国は「増額して交付することができる。」という規定になっております。  そのことは、さらに第十二条に至りますと「所轄庁は、この法律規定により助成を受ける学校法人に対して、次の各号に掲げる権限を有する。」として四つの項目を挙げております。この項目は、私立学校法の五十九条のかつて凍結された事項の法律的復活であります。しかも、このそれぞれの項目の最後を見ますと、最初の項目では、助成に際して「書類その他の物件を検査させること。」二番目には、「当該学校法人が、」云々と言って「その是正を命ずること。」三番目には「必要な変更をすべき旨を勧告すること。」四番目には「当該役員の解職をすべき旨を勧告すること。」これらの法律的な用語はきわめて監督的な、統制的な内容でございます。  それに反して、第十三条の学校の側はどうか。私立学校審議会、私立大学審議会、高等専門学校審議会の意見を聞き、その場合に当該の審議会に出席して、学校側は「弁明することができる。」と述べているだけであります。  片一方では強制的にいろいろと助成に当たっての権限強化を決めておいて、学校側は審議会に出てきて「弁明することができる。」ということでありますから、大学側は研究のあり方、教育のあり方というものについて意見を述べながら主張することができない、その弱さが明確に出ております。  この法案そのものがこのような性質を持っておりますから、一方で金を出し渋りながら、片一方では権限を強化してコントロールしていくという、まさに財政を頭に置いた法律であることは明らかであります。そのことは、先ほどの討論で明らかになりましたように、私立学校法の一部改正で六十三条の一項を改め、そして附則十三項として、「文部大臣は、昭和五十六年三月三十一日までの間は、」「私立大学設置私立大学の学部又は学科の設置及び私立大学収容定員増加に係る学則の変更についての認可は、しないものとする。」と、これまた強くうたっているのでございます。  この法の流れと立法政策の精神、思想をわれわれは探ってみると、明らかに今日の日本の国民教育権という観点から見た私学のあり方に対する国家的規制——大学自身が大衆化しているということに基づく大学の根本的な改革、新制大学の大衆性に絡む大学改革を抜きにして、助成に際して量よりも質という大学を考える大学改革の道を誘導していると言わなければなりません。その結果は、受験地獄の解消どころか、受験地獄はますます拡大し、今日教育の当面している問題には何らこたえないばかりか、格差の拡大をさらに拡大することは明らかであります。  以上の意味で、大臣がいままで提起されてきた受験地獄の解消ないしは日本の大学教育高等学校等々の教育の中に貫いている格差是正という問題に対して、むしろそれを促進するという意味で危険な内容を多々含んでいると考えざるを得ません。このような問題点を含む法案なるがゆえに、もっと慎重審議をすべきであるという意味におきまして、本案に対して反対の討論を行った次第でございます(拍手)
  160. 久保田円次

    久保田委員長 森喜朗君。
  161. 森喜朗

    ○森(喜)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております私立学校振興法案に対して賛成の討論を行います。  本日の長い議論の中で、学校教育の中に占める私学の意義、そして私学現実に招いている経営危機財政危機、このことはこの委員会の皆さんが認められているところでもあります。特に教育の公平な機会を与えていくという意味で、父兄負担の軽減ということも十分はらんで教育政策を改革していかなければならぬと思います。  いま嶋崎委員から、反対討論の中でお話がございましたけれども、この機会に、この国会の閉会間際の中でこのような法案が出てくることに対して確かに一つの意見があるだろうと私は思います。しかし委員会の討論の中で、なぜここまでおくれてきたのか、それでもなおかつこれを進めていかなければならないかということは十分国民の前に披瀝をされたと私は思います。先ほど藤波提案者の方からもお話がございましたけれども、たまたま嶋崎委員が反対討論の中でおっしゃったように、いわゆる議員立法がきょうこうして実りの多い賛成を得られたじゃないか、そういうお話もございます。しかし逆に言えば、無から有を生み出す意味でここで一歩前進をさせておいて、これから党派を超えて、みんなでつくり出したこの私立学校振興助成法をよりよい方向に持っていくということもまた立法府の存在の大きな意義があることではないかと思います。  また、いまごろになって、ゆうべだとかけさほど示されたというようなこともございましたけれども、自由民主党は私立学校振興助成法は早くから世に問うてきたわけでございますし、私が質問の中で、それがここまで後退しなければならなかったことについては私も不満があります。しかしそれでも二分の一以内の問題あるいは高校以下の問題については都道府県に対し一部を補助することができるというようなあいまいな規定については確かに問題がありますが、これをさらに国会の審議の中でこれから改善していこうという道もあるわけでありますし、財政あるいは社会の背景の変化によってむしろ積極的によい方向に、これからまたみんなで努力してその方向を目ざしていくということも可能性が残っているわけでありまして、私は、そういう意味でこれから私立学校に対し、立法府として行政も監督しながらまた善導しながら本当の意味の私立学校振興策というものを打ち立てていきたい、このように思います。  特にいろいろ問題、また危惧されてまいります監督規定の問題あるいは五年間原則として認可しないという問題等につきましても、私は提案者及び大臣そして管理局長との間に十分討論を交わしましたので、お答えをいただいたその精神をどうぞこれから運用面で生かしていただきたいと思いますし、特に五年間という一つの期間を設けたのも、いま嶋崎委員からこれこそまさに悪い方向に進むという御意見もございますが、五年間という意味は、むしろ西岡提案者からお答えをいただいたように、政党として新しい高等教育の抜本的な改革をさらにこれから目ざしていくという答えもいただいておりますので、私はそのことに大きな評価をし意義を感ずるわけでございます。押さえて、そして藤波さんの言葉をかりて言えばまさに上着も脱ぎ、ズボンも脱いだ状態と言われました。私は、この法はまさに下着も脱いだというような感じもいたします。しかしそれでも心の中に私学を大切にしよう、そして日本の教育の中で私学振興を国がしっかりと打ち立てていこうという本当に愛情のある法案がいままさに実らんとしているわけでありまして、そういう意味でこの法案が速やかにこの委員会で可決をされることを心から願い、また多くの日本の教育関係者もまた父兄もきょうのこのことに対して大きな期待を込めているということを私はあえて申し上げて賛成討論を終わりたいと思います。(拍手)
  162. 久保田円次

  163. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して本法案に反対の討論を行います。  今日、私学経営教育研究の条件は困難をきわめています。ことに最近のインフレ、高物価は史上空前の学費の値上げを呼び、父母負担が増大し、まさに危機的な状態を迎えています。私学助成はこの状態にしっかりとこたえるものでなければなりません。  今回出されました自民党の私学振興助成法案を見ますと、まず第一条の目的の項とはうらはらに経営者、国民、学生の要求からおよそほど遠いものであると思います。すなわち経常的経費二分の一以内となっていること、高校以下の助成については一部を補助することができるとなっていることなど、これまでの自民党案二分の一を補助するものとするという義務規定からも後退し、いままでと何ら変わらない一般予算要求方式であると思います。これでは来年度一体幾ら助成措置がとられるのか不明であります。私学経営者が年次計画をもって健全経営を回復するめどもありません。高等学校での都道府県における授業料補助については対象とならないため、補助打ち切りを発生するおそれもあります。  助成措置の不完全さと逆に、監督規定はきわめて綿密に組み立てられ、管理運営に関する介入の危険性をはらんでいます。特に五条の五号、さらに六条の規定、これらは減額、管理運営が適正を欠く場合補助金交付しないことができるなどの問題を含んでいます。また第七条の認可の強化は、文部省の都合のよい学科には補助誘導措置をとり得るものとなっております。さらに五年間にわたり、特に必要ある場合を除いて私学設置収容定員の増を認めない項も設けられていることもきわめて重大な問題であります。これらの問題を考えましたときにとうていこの法案に賛同することはできません。  次に手続上の問題であります。  この法案は本日提案、趣旨説明が行われました。そしてその審議の時間はきわめて短期間であります。そして疑問あるいはいまだに解明されない部分を残しております。当然慎重なる審議をすべきものと考えます。まさに教育を語るにふさわしい状態をつくって討議を進めるべきであります。今回行われましたこの採決は、きわめて非民主的な運営であると断ぜざるを得ません。  わが党は、私学助成につきましては、私学を公教育における重要な地位を占めるものと規定し、教育を受ける国民の権利を守り、さらに教育の機会均等を守るために、国公私立間の格差是正をなくすために私学に対する大幅助成、さらに授業料補助等を行っていく決意であります。私学教育研究条件の大幅な改善、父母負担の軽減、国公私立間の格差是正のために一層奮闘することを申しまして、反対討論といたします。(拍手)
  164. 久保田円次

    久保田委員長 次に高橋繁君。
  165. 高橋繁

    高橋(繁)委員 公明党を代表して反対の討論を行います。  私学問題につきましては、今国会の冒頭、昨年の秋以来今国会の最大の課題になるであろうと言われた私学助成問題は、かねてから本委員会で小委員会を設けて慎重に審議をすべきものだということを提唱していたにもかかわらずその機会が得られなかった。今回延長国会の最終段階で突如としてこの法案が出され、ただいま突如としてその審議が打ち切られたことに対し憤りを感ずるものであります。私学危機は日本の教育危機であります。その日本の教育の存亡にかかわるこの重大な案件に対し審議を打ち切られたことに対し、わが公明党も強い怒りを感ずるとともに、この私学助成の問題につきましては、わが党も昨年来慎重に検討をしてまいりました。この法案要綱なるものも発表をいたしております。態度決定もいたしております。にもかかわらず、そのわが党の意見も聞き入れられず、突如として審議が打ち切られたことはまことに遺憾であります。したがって、まさしくこの私学助成につきましては慎重審議をすべきであることを提唱いたします。先ほどの意見にもありましたように、この助成法案が一歩前進であるというように言っておりましたが、私は事教育に関しては、国民のコンセンサスを得て、百人が百人の方々が一歩前進するのでなければならない。ある一部の人だけが、あるいはある一部のもののみが一歩前進するのであってはならないと私は思うのであります。  法案内容につきましても、短い時間の中で審議はとうてい尽くされない状況でありますが、たくさんの欠陥を抱えておるようにも思います。  附則の十三項目については重大な問題を抱えております。  そのほか、助成の問題につきましても、私立大学私立高等専門学校経常的経費については二分の一以内であるとか、あるいはそれ以下の学校につきましては、都道府県補助したものに対して国が一部を補助することである。あいまいな補助規定だけであります。  それに比べて、この法案の第五条にあります「補助金減額等」にある第五号の「その他教育条件又は管理運営が適正を欠く場合」、まさしく私学介入の問題がひそんでおります。  第六条にしても、「補助の目的を有効に達成することができないと認めるときは、」この判断の基準もあいまいであります。  七条の「特定の分野、課程等に係る教育振興のため特に必要があると認めるときは、」補助金の増額の問題についても、まことにその基準というものがあいまいであります。  このほか、所轄庁の権限にしても、十二条の第三号について、「当該学校法人予算助成の目的に照らして不適当であると認める場合において、その予算について必要な変更をすべき旨を勧告すること。」等、財政的な誘導を片方でしながら、それに加えて規制の強化が含まれておるのが本法案趣旨であろうと思います。  わが公明党は、さらに時間をかけて慎重に検討して、私学危機を救うべくりっぱな法案を作成をいたしたい。よって、本法案については反対をいたすものであります。(拍手)
  166. 久保田円次

    久保田委員長 次に、受田新吉君。
  167. 受田新吉

    受田委員 私は、民社党を代表して、この法案に対する反対の討論をいたします。  私は、非常に教えられる言葉があります。政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える。まさに次の世代を考えるというこの私学振興助成法案は、国民の立場からもお互いの立場からも、りっぱな法案をつくってよい実を結ばせるべきものでございました。しかも、これは党派を超えて次の世代を考える、国民の期待にこたえたかった。したがって、実は私自身は超党派で委員長提案にする法案であるべきであると考えてまいりました。各党とも余り意見の相違はない。国公私立の格差を直して国民のための教育機関たらしめなければならないという点においては、大体各党が共通である。しかも従来国立、公立に比較して私学の陥没に対するお互いの私学への愛情も共通しておりました。自由民主党の方々はそのことを十分理解されて、単独の行動をされないで、お互い教育に対する共通の愛情を持っている野党にも常日ごろより熱心に連絡、折衝を図っていただきたかった。  ところが、この法案は突如として昨日提案されました。私もこの法案を拝見して、一通り各条章に目を通すだけでなお四、五日かかる法案であることを私理解さしてもらいました。ところが、きょう突如としてこれを質疑打ち切りへ持っていかれたということ、残念です。あと二、三日時間をかしていただいて、そして修正すべき個所があるならば、党派を超えて修正する、そして国民の前にデビューするときには、超党派で次の世代を考えるりっぱな法案にしたがったですね。この点顧みて痛恨です。  特に、私立大学設立の自主性というものを大事にしながら非常に困難な道をたどってきたのが私学でした。その私学に報いるに超党派のりっぱなプレゼント、これを贈るのにやぶさかであるべきではなかった。文部大臣は、その意味におきましては、非常に幅の広い文部大臣として民間から登用された人材として期待されておられる、その文部大臣御自身がいまやむを得ない措置としてごらんになるような法案になってしまった。これは残念ですね。どうかこの問題点の解決のために、できれば時間をかして修正への努力をなぜ与党の方々、していただけませんでしたか。  孟子いわく、梁恵王下篇に「民の楽しみを楽しむ者は民もまたその楽しみを楽しむ。民の憂えを憂える者は民もまたその憂えを憂える。楽しむに天下をもってし、憂えるに天下をもってする。しこうして王たらざる者はいまだこれあらざるなり。」とありますように、民と、国民と一緒に楽しみ、ともに憂えるりっぱな法案として、次の世代を考える法案としてほしかったと思います。  残念でございますが、現にいままさに採決直前でございます。この点、以上申し上げた理由によりまして、残念ながら反対の意思を表明いたします。(拍手)
  168. 久保田円次

    久保田委員長 以上で討論は終局いたしました。     —————————————
  169. 久保田円次

    久保田委員長 これより採決に入ります。  藤波孝生君外四名提出私立学校振興助成法案賛成諸君起立を求めます。
  170. 久保田円次

    久保田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  171. 久保田円次

    久保田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  172. 久保田円次

    久保田委員長 次回は、明二十七日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時三十九分散会      ————◇—————