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1975-03-19 第75回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十九日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 久保田円次君    理事 河野 洋平君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 藤波 孝生君    理事 三塚  博君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 山原健二郎君       久野 忠治君    床次 徳二君       楢橋  進君    羽生田 進君       森  喜朗君    小林 信一君       辻原 弘市君    長谷川正三君       山口 鶴男君    栗田  翠君       有島 重武君    高橋  繁君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部政務次官  山崎平八郎君         文部大臣官房長 清水 成之君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         文部省大学局長 井内慶次郎君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         文部省体育局長 諸沢 正道君         文化庁長官   安達 健二君         文化庁次長   内山  正君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     田中 榮一君 同日  辞任         補欠選任   田中 榮一君     上田 茂行君     ————————————— 三月十八日  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第五一号)  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共  済組合からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第五五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一七号)  文化功労者年金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三四号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 久保田円次

    ○久保田委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。高橋繁君。
  3. 高橋繁

    高橋(繁)委員 最初に、教員ベアの問題で質問をいたしたいと思いますが、人事院勧告が出まして、過日の閣僚会議労働大臣あるいは大蔵大臣からいろいろな意見が出ていることは、新聞紙上承知しております。それに対して、文部大臣としては何ら発言もしておりませんし、その後の見解も発表しておらないということでありますので、最初にその教員ベアに対する大臣見解、過日の閣僚会議大臣発言をしなかった理由、それと見解について、最初お聞きいたしたいと思います。
  4. 永井道雄

    永井国務大臣 発言をいたしましたけれども、発言が、以下申し上げるようなことでしたので、多分新聞報道されなかったのかもしれませんから、申し上げます。  まず、発言しませんけれども、当然のことは、人事院勧告が、これは第三者機関からの勧告でございますから、その御趣旨というものを十分に尊重したいという気持ちを私は持っております。  発言をいたしましたことは、それはいまも同じように考えておりますが、労働大臣などからいろいろ御希望表明もありましたが、これは教員に直接関連することでございますので、この勧告を受けまして、そして取り扱っていく上では、なお慎重に検討させていただきたいということを申し上げたのでございます。現在もそういう気持ちでございまして、あの勧告内容というものをいろいろな角度から省内で十分に検討を進めていこうということで取り組んでいる段階でございます。
  5. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いま慎重に検討する段階である、こうおっしゃいますが、慎重に検討しなければならない問題が文部省内にあると思うのですけれども、あるとすれば、いまどういう問題が考えられておりますか、お答え願いたいと思います。
  6. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 基本的には大臣から申し上げたとおりでございますが、文部省から人事院に出しましたいろいろな要望勧告の相互の関連等につきましてなお検討をいたしておるということでございます。
  7. 高橋繁

    高橋(繁)委員 またいずれ機会がありますので、その節、具体的なものが出た場合に質疑をするとして、それ以上答えが出ないようですから、次に質問を移らせていただきます。  大臣所信表明がありまして、その所信表明に対して私がまず聞きたいことは、あなたが就任以来いろいろ会合あるいは記者会見等であなたのこれから取り上ぐべき問題、構想等についていろいろなことが取りざたをされております。その中で、けさテレビで言っておりましたが、大学入試改革をやりたい、あるいは、これは新聞でありますが、脱政争、こういうことが柱であると言われておりますけれども、国民は、民間人から起用された永井文部大臣には期待をいたしておると思います。したがって、大臣に就任してこれだけはやりたい、まず手をつけたいという問題については、いま言った事柄で間違いがないかどうか。あるいはそのほかにあるとすればどういう問題がありますか、お尋ねをいたしたい。
  8. 永井道雄

    永井国務大臣 これは今後またいろいろな問題を考えるかと思いますが、就任いたしましてから今日まで、私が重点を置いてまいりましたことは二つあります。一つは脱政争ということ、あるいはそれをもりと積極的な形で申しますと、教育関係の諸団体、諸組織がございます。そして文部省はそういう中で行政を担当しておりますが、文部省初めそういう教育団体との間の教育をどうしていくかということについての対話が十分でなかったように私は思います。そこで、今日まで非常に微力でございますが、対話を進めていくというふうに考えてまいりました。今後もその考えにいささかも変わりはございません。  ただ二番目は、対話をするとして主要なテーマは何かということでございます。これはもちろんわが国教育国際化とかいろいろのことがございますが、事国内教育関連をして申しますと、私はやはり受験体制過熱化ということに大きな問題があるように思いますので、対話をしていきます過程で一番重要視をして対話をしておりますのはその点で、これも続けていきたい。ただ漫然と対話をするということでなく、そこに一番の焦点を置くという考えでいるわけでございます。
  9. 高橋繁

    高橋(繁)委員 対話を重ねていくということと受験改革に取り組む、この二本の柱が出てきたわけであります。まず、過熱した受験体制を解消していくということでありますが、外人記者クラブで一月二十二日に、この大学入試制度改善をあらゆる角度から検討を加えて、しかも早急に受験体制に大きな変革をいたしたい、こう申しております。このあらゆる角度という面とそれから早急に受験体制をつくりたい、その早急という問題で、これはけさも五十二、三年ということを申されておりますが、大臣考えている最終的なめど、あるいは大きな変更をもたらすために力を尽くしたい、この大きな変更とはどういう方向考えていらっしゃいますか。そのあらゆる角度と時期と、またそれとあわせて大きな変更、いかなる変更をもたらすか。具体的にお考えをお述べいただきたい。
  10. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの大学入試の問題でございますが、これは先生も御案内のとおり、わが国で戦後進学適性テストとかあるいは能研テストというものも行われたわけでございます。しかし、いずれも立ち消えになりました。これは諸般の事情があったと思いますが、そうなりました。そこで結局この大学入試、これはそれぞれの学校先生方が問題をおつくりになるというのに任されてきたと思うのでございます。もちろん先生方いろいろ骨を折られました。私自身大学におりましてそういう問題にも直面してまいりましたが、その結果どういうことになったかといいますと、非常に多数の人が大学を受けまして、そして毎年いろいろな学校試験をする、そうすると、いままで出なかった問題をつくらなければいかぬということを方々で苦労するのですが、なかなかそれがむずかしい。その結果どうなるかというと、大体においていわゆるマル・バツテスト的なものになり、さらにまた、ものによりましては相当落とし穴があるような問題になるわけです。この大学入試の問題がそれであるというだけで終わればよろしいのですが、やはり大学に入ろうとすることを人々が努力いたしますから、そういう入学試験問題の傾向というものが高等学校教育にも非常に影響を及ぼしますし、実は小中にさえ影響を及ぼしているというのが現状だと思います。よくわが国では知育が偏重されて徳育が軽視されているというふうに言いますけれども、実は本来の知育というものも軽視されまして、どうしてもいまのようなテストが続きますと知育というより暗記教育に非常な時間を費して骨身を削って勉強するというような状況にあるというのが現状だと考えているわけです。  そこで、文部省がお願いしております大学入試改善会議中心としていま進めておりますことは共通テストというものをつくりたいということであります。すでに昨年度ある程度の予備テストをやりまして、そしてそのやり方というものを検討しておりますが、これを大学側協力を得て実際に今度は実施をしてみたいというふうに考えております。  それはいつごろであるかということでありますが、大学側の御協力を得る場合に、さしあたってわれわれが、また入試改善会議方々が非常にお骨折りになっておりますのは、国立大学協会の御理解をいただいて国立大学ではやはりこの共通テストというものを取り上げていただきたいというわけでありますが、まず昭和五十二年、三年というあたりをめどに置いております。そのときまでに実施するようにいたしたいということでございます。そういたしますとそれが一種の一次テストなりますが、その一次テストだけですと、それぞれの学校の特色というものが生かし切れないというふうに大学側として考えられる点もあると思いますから、その一次テストというものによってまず選びまして、次は二次テストをやる。しかし二次テストというのは現在の競争よりはよほどしぼられた人口にそれぞれなるはずでございますから、そういうところでは、いまのような暗記中心といいますものよりも、もう現在も相当数学校がやっておりますが小論文でありますとか、あるいはその段階ではいわゆる内申というふうなものも十分検討していただくことが相当できるのではないか。そういう形で五十二年、三年をめど暗記中心詰め込み教育というものを、大学入試制度改善することによって除去したい、こう考えているわけでございます。
  11. 高橋繁

    高橋(繁)委員 具体的には入試改善会議あるいは国立大学協会という中で結論めいたものが出る、その出るのが五十二年ないし三年であって、実際の実施はそういたしますと早くて五十四年ということなんですか。
  12. 永井道雄

    永井国務大臣 そうではなくて、実施を五十二、三年ということを考えているわけでございます。お話はすでに現在も入試改善会議国立大学協会の間で進んでおりますが、この内容を詰めますのは五十二、三年よりはるかに早い段階で詰めていきたい、そう考えております。
  13. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そのように五十二、三年をめど実施をしたいということでありますが、その大学入試改革と相まって、一つ学歴偏重をなくしていこうということで、大臣が盛んに対話をしていこうというように考えておるわけでありますが、これは並行されていかないと、大学入試改革がある程度前進してもなかなかむずかしい問題が残ると思うのですが、すでに一回ですかおやりになったようでありますが、対話ということでやった経験から大臣感触はどうなんですか。
  14. 永井道雄

    永井国務大臣 私の感触というのを申し上げますと、学歴偏重というのは一つの言葉ですが、さてその内容がどうであるかということになりますと、案外簡単でない。仕事によりましては、やはり学歴というものを相当尊重しませんと困ってくる場合があります。たとえば建築士のような場合に、本当に安全な建物をつくらなければいけないというような問題があるわけです。そこで、経済同友会の方々と話し合いまして、年齢別それから職種、業種別に現在採用、昇進に当たってどういうふうに学歴を考慮に入れているかということについて御調査願いたいということを要望したわけでございます。そして一昨日もう一回お願いいたしました。といいますのは、一昨日の前に先方から御返答がありまして、協力しようということでありましたので、文部省内で調査問題を作成いたしまして、その調査問題を参考に調査をしていただくということでございます。そういう意味合いにおきましては、まず最初のケースは、非常に経済界の方もその問題は重要であって、しっかりした事実に基づいて変えていかなければならないから協力しようという、そういう感触を得ております。
  15. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうした対話協調ということを基本としていくという姿勢でございますが、大臣が積極的にそういう対話を進めておる。しかしながら、この大学入試の問題、学歴偏重と合わせて非常にむずかしい問題があると思うのです。私は、まず文部省内が本当に大臣のおっしゃるような方向に一体進んでいるのかどうかということですね。省内対話協調は得られているかという問題を心配をするわけでありますが、ことしはもう昭和五十年、早くて五十二年から実現をしたいということになりますと、余すところ一年ということでありますが、早急にという大臣のおっしゃることは私は非常に賛意を表しますが、そのめどに対して文部省内の協調を得ながら、まとめながら、この学歴偏重の解消と大学入試改善というものについては大丈夫ですかどうですか、その辺を確認をしておきたいと思います。
  16. 永井道雄

    永井国務大臣 五十二、三年ということを申しましたのは、文部省内で対話協調がないから五十二、三年になるというのではなくて、やはり大学入試を変えますと、現在高等学校などで勉強している方は、現在の試験制度に合わせて勉強しているわけです。若干の猶予期間が必要だということから、いまのようなことになっているわけです。  さて、学歴のそういう調査とか、いまの試験制度について対話協調はよくできているかというお話でございますが、私の気持ちといたしましては、私は省内人たち対話をいたしまして、ときどき意見が異なることもありますから、異なる意見について意見を闘わして合意点に到達して進む、そういうことで私は協力してみんな仕事をしてくれていると考えておりますが、しかし人間にうぬぼれがあって間違っているかもしれません。しかし、そういう場合には、私の方が足りないということもあり得るわけでございますから、私自身も反省して、そしてお互いに一層そういうものをつくり上げていきたい。いままでのところ私としては、いろいろな政策の実現に向けて協力を次第に強めながら進んでいる心持ちでおります。
  17. 高橋繁

    高橋(繁)委員 その対話協調ということですが、けさテレビ日教組が、文部大臣との対話は形式的であるというように述べております。確かに対話対話、私はそこに協調というものが相備わっていかなければ、これは進歩もない、しかし、対話を重ねることによって協調が生まれることもあり得るかもしれませんが、いままで文部大臣日教組の問題は、たびたび従来論議を重ねておりました。この問題がなかなかしっくりしない。今回また日教組自体が形式的な対話であったというふうに報道をいたしておりますが、やはり私は対話協調ということはある程度並行されていかなくちゃならないし、あるいは対話の中に協調が生まれるということもあり得るかもしれないけれども、ますます協調がされていかなければならない日教組大臣対話が重なっていくたびごとに、だんだんとそれが実らない方向に行くのではないかということを心配するわけですが、この辺についての見解はどうなんですか。
  18. 永井道雄

    永井国務大臣 実はけさ日教組についての報道というのは、私朝早くから出かけておりましたので見ていないのでございますけれども、しかし、もちろん日教組の方でも、私の対話の仕方について批判があると思います。しかし、それは日教組でなくて、ほかの方にも当然批判があると思います。それで、批判があるというのも対話一つであると私は考えております。そういう批判をいただいてまたこちらも考える、そしてさらに積み重ねていく、場合によっては私の方が率直に批判させていただく場合もある。対話といいましても、対話をするとすぐに全部合意というのでは、対話ということもかえって成り立たなくなるわけでありまして、私自身としては日教組との関係で、委員長とも相当長い間、これはサンケイ新聞などに長い対談が載っておりますが、そういうものもあり、あるいは教育課程審議会梅根先生がおいでになっていろいろ意見を述べられたこともあり、そのほかにいわゆる公式と申しましょうか、そういう会談というものもございますので、必ずしも形式的とは思っておりませんが、しかし、御批判は御批判としてございましょうが、私自身としては所信姿勢を崩す考えは毛頭ございません。
  19. 高橋繁

    高橋(繁)委員 日教組があなたとの対話に対して形式的であったというように見解を述べたということになりますと、大臣がせっかく対話協調を深めていこう、そういうことから考えると、相反する方向に行っているのではないかと思うのです。したがって、所信表明したとおりさらに日教組との対話を深めていくという考えでありますか。
  20. 永井道雄

    永井国務大臣 非常に日教組文部大臣といいましょうか、文部省関係をお取り上げになっておりますが、実は国会でも、大学入試問題をめぐりまして、日教組方々も含め、相当数その問題の人が国会に見えて今度は意見を述べられるという機会も間もなくあるわけでございます。  そこで、対話が形式的であるとかあるいは内容が深まらないというのは、いろいろ御判断もありましょうけれども、私は必ずしも文部省日教組が話し合うだけではなくて、国会の場などでもいろいろな意見がそういうふうにして重ねられるようになってきている、またしていただいているということを非常に感謝しておりますし、また新聞あるいはテレビのような場でもそういうことが進められる、そういう形で次第に広がっていくということを期待しているわけでございまして、対話が離れていくように、手でお示しになりましたが、必ずしもそういうことばかりではないように動いているという私自身期待を抱いているわけでございます。
  21. 高橋繁

    高橋(繁)委員 対話は形式である。したがって日教組から質問状を出すということでありますが、もちろん出されればそれに答えをしなければならないか、そういう文書のやりとりでなくて、本当にあなたのおっしゃる対話協調を深めていくという立場で、あらゆるほかの団体ともいまおやりになる、いろんな場でも日教組と話し合う場があるということでありますが、直接的にそういう問題で今後も対話を進めていく考えでありますか。
  22. 永井道雄

    永井国務大臣 直接的に進めていく考えでございます。
  23. 高橋繁

    高橋(繁)委員 次に高校の問題で、これは先ほども論議をされましたが、端的に二、三の問題を質問いたします。  文部省は、五十年度予算要求段階で、わずかばかりでありますが七十億円の公立高校に対する財政補助をしようということで大蔵省に要求した、あるいは来年度この公立高校建設費に対するそうした文部省基本的な考えはどういう考えでいらっしゃいますか。
  24. 永井道雄

    永井国務大臣 いま私数字を持ってきておりませんけれども、昭和四十九年度から五十四年度にかけましての高校新設について各都道府県で御計画になっている数字をもとにしたものを整備しているわけでございます。人口急増地域につきましては、記憶に間違いがなければ二百五十校足らずということです。しかし人口急増地域でないところでも、高校進学ということをぜひ達成したいという非常に強い希望のあるところもありまして、そういう地域を寄せますと三百校以上になります。  本年度、起債の形による高校新増設の方法というものはとられましたのですが、しかしいま申し上げたような数字に基づいて、もちろん今年度だけで終わるわけではございません。これはそれぞれの自治体におきます将来予測というものも年度ごとに明確になっていくということがございまして、人口の移動というものが予測どおりにいかないということなどもあるわけです。そこで先ほど申し上げたような数字に基づいて計画を立てておりますけれども、しかしまた都道府県における将来の予測計画要望というようなものの動きもにらみ合わせながら弾力的に処理していかなければならないと思いますが、来年度以降も必ずそうした御要望にこたえるように一層の努力をいたしたいと考えております。
  25. 高橋繁

    高橋(繁)委員 要望にこたえるために一層の努力をするということでありますが、具体的にそうした公立高校に対する用地なりあるいは建設費補助をすることを考えておるかどうかということなんです。
  26. 永井道雄

    永井国務大臣 いまのことは、五十一年度予算編成課題として検討させていただきたいというふうに考えております。
  27. 高橋繁

    高橋(繁)委員 検討するのですけれども、こうした公立高校に対する建設補助という問題で五十年度予算には七十億、あるいは五十一年度予算では二百億なり三百億なりということを、具体的にそういう前提の上に立って検討を重ねていくのかどうか、その辺はどうなんですか。
  28. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 この問題の主管は管理局でございます。管理局長がおりませんので私からお答えを申し上げたいと思いますが、五十年度予算及び四十九年度予算編成におきましては、ただいま先生指摘のとおり補助金を出すということで概算要求をしたわけでございますが、御承知のとおりの経過によりまして補助金は認められず、地方債をもって措置をするという結論になったわけでございます。  ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、この問題を将来どう扱っていくかということは非常に大きな問題でございます。具体的には五十一年度予算に対して文部省がどういう態度で臨むかという問題になるわけでございますが、補助金の問題も含めまして、大臣が御答弁になりましたように十分検討してまいりたいということでございます。
  29. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この問題は、いま局長もおっしゃったように、地方財政窮迫あるいは人口急増地帯高校新設あるいは全入制に近い入学をされている高校問題は、大変大きな問題でありますので、国庫補助という問題については、いまおっしゃったように積極的に検討をして、ぜひとも実現をしてもらいたいと思います。  次にあわせましてこうした高校問題で九十何%以上の入学がなされておる、ほぼ全入に近いパーセンテージでございます。義務教育段階では特殊学級設置はされております。学校教育法にも、七十五条には高校にも置くことができるというようになっておりますが、九十何%全入制に近い高校入学考えるときに、こうした高校にも特殊学級設置をしてそれに対応しなければならないという段階に来ていると思いますが、その辺の考え方についてはどうなんですか。
  30. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘の点も重要な検討課題であろうかと思いますが、御承知のとおり、ただいまは義務教育段階における特殊教育を充実したいということで、それに主たる努力を向けておるわけでございますが、内容といたしましては、五十四年度から養護学校義務制を志向する。同時にそれとあわせまして、小中学校における特殊教育の整備を図ってまいりたい。それから、特殊教育の対象になります児童につきましては、やはり早期の教育というものが非常に効果がございますので、幼稚部計画的な設置を進めてまいりたい。当面、特殊教育の進行といたしましては、そういうところに重点を注いでおるわけでございますが、高等学校における特殊学級ということになりますと、これは義務教育でもございませんし、高等学校教育を受けるというためには、やはりある程度の資質、能力というようなものも必要なわけでございますので、そういう点を含めまして、今後、高等学校特殊学級についてどういう指導をするか、これも慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  31. 高橋繁

    高橋(繁)委員 慎重に検討することはよくわかる。どの辺に慎重に検討されていくのか、今後の問題でありますが、五十四年までには義務教育の面における養護学校義務制になるわけです。したがって、現段階において全入制に近い生徒を持つ高校についても早急に考えなくてはならない問題であると私は思うのです。教育問題は非常に山積をいたしております。したがって、高校についても、文部省として、特殊学級についての実験的な学級を設けて研究を開始すべき段階に来ていると思うのです。そういう考えは持っておりませんか。
  32. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど来検討課題であるということを申し上げておるわけでございますが、当面の特殊教育全体に対する努力の重点は義務制の完全な施行というところに向けられておるわけでございます。高等学校教育につきましては、先生も御承知のとおり、特殊教育学校の高等部というものがあるわけでございます。高等部の教育をさらに拡充をしていく。つまり、特殊学級に及ぶ前に、高等部の教育を拡充をしていくということも、やはり事柄の前後といたしましては優先すべき課題であろうと思います。特に盲学校、聾学校等におきましては、社会的な自立を図るという意味からいたしましても、職業的な教育というものが非常に大事なわけでございます。したがいまして、そうした学校の高等部の職業教育の充実ということには年来努力をいたしておるわけでございます。特殊教育の対象になる生徒、これはかなり幅があるわけでございますが、当面の施策といたしましては、やはり高等部におきまして、ただいま申し上げましたような教育を充実していくということがやはり先決であろうと考えます。  もう一つ、一般の高等学校特殊学級を置くということでございますが、御承知のとおり、その障害にはいろいろな種類あるいは程度があるわけでございます。一般の高等学校でそういう方々を受け入れてどこまでお世話ができるかというようなことも一方考えていかなければならないわけでございます。特に精薄児の場合におきまして、これを一般高等学校特殊学級で受け入れるということになりますと、これはかなり教育的にもいろいろ問題があるように思います。ただ単に受け入れ設備ということだけではなくて、いろいろ問題があるように思いますので、そういう点をあわせながら今後検討をしてまいりたいということでございます。
  33. 高橋繁

    高橋(繁)委員 高等部はもちろんのことでありますが、いまも義務教育段階では養護学校、盲聾学校あるわけですね。ところが、先ほど申し上げたように、全入制に近い高校への入学生徒を持つ段階に来ておるわけですから、そういうことがないものですから、すでにこれは「すみだ教室」ですか、障害者の青年学級ということで、東京都内ではやっておるところもあるわけですね。高校に行けないから、そうした教室を設けて青年学級的なものを行って大変好評を博しているということなんで、この子たちも高校にそういうものがあれば入りたいということになるだろうと思うのです。ないから、自然発生的に民間あるいは地方自治体の力で、そういう方向を持っているわけです。ですから、もちろん高等部は充実しなければなりませんが、それに入ることのできない児童生徒は中学校段階におけるわけですから、こういう方向で実験学級的なものをつくって考えていかなくてはならない段階に来ていると思うのですが、どうなんですか、もう一度。
  34. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 特殊教育の振興が重要であるということは御指摘のとおりでございますし、私ども全くそのとおり考えておりますが、ただその制度的な整備を図りあるいは拡充を図るということになりますと、先ほど来申し上げておりますように、やはり義務教育段階の充実を先行させたいということでございまして、当面の努力はそこに向けられておるわけでございますが、御指摘のような点も確かに一つ検討課題でございます。  具体的に実験学級を設けてという御提案でございますが、そういう点も含めて、高等学校段階における特殊教育の今後のあり方につきましては十分検討させていただきたい。現在の就学教育機会といたしましては、高等部というものがあるわけでございますから、そこで必要な教育を与えるようにいたしておるということでございます。
  35. 高橋繁

    高橋(繁)委員 これは現実的な問題で、高校の定時制の問題です。  最近こうした不況下あるいは企業の操業短縮によって、定時制及び通信制の高校の生徒の転職、転学という問題で、定時制の高校は大変な問題になってきていると思いますが、文部省の第一回の調査が去年の十月行われた、その結果をここに私も持っております。しかし事態は十月以降進んでおるわけでありまして、そうした定時制の高校生に対する影響調査というものは、十月以降おやりにならなかったのかどうか。また、それに対応して現況はどうであるか。おわかりになれば御報告を願いたい。
  36. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 調査お話でございますが、十月に調査をいたしまして、その後さらに経済界の状況が深刻の度を加えてまいりましたので、去る二月二十日付をもちまして再度各都道府県教育委員会に、企業の倒産、操業短縮等の、定時制及び通信教育高等学校生徒に及ぼす影響について調査をいたしております。調査日は三月一日現在ということで、現在資料が集まりつつある状況でございまして、一応二十九県から報告を受けております。
  37. 高橋繁

    高橋(繁)委員 その報告によりますとどうなんですか、状況は。差し支えなくスムーズにいっているのか、あるいは退学をされる生徒が多かったのか、あるいは転職による転学はスムーズにいっているかどうか、その辺の心配はないですか。
  38. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げましたように、二十九県の報告でございまして、全部がそろっていないわけでございますが、中間的な形で御報告を申し上げますと、企業の倒産に関連をした就学の継続の問題でございますが、六十五社についての数字といたしまして、二百七十三人が倒産企業の社員という報告でございます。そのうち百七十人は従来どおり勉学を続けておる、八十三人は転学をして勉学を続けておる、残りの約二十人が退学あるいは休学を余儀なくされておるということでございます。でございますから、倒産企業全体について申しますれば、八%程度の者が退学あるいは休学を余儀なくされた、残りの九二%は何らかの形で学業が継続できておるという状況でございます。  それから、操業短縮等が行われている企業、これは報告の企業数が約五百七十でございますが、その関連の生徒数は約五千七百でございます。しかし、五千七百のうち、学業の継続が不可能になったという者は二十五名でございます。割合から申しますと、比較的影響を受けることが幸いにもきわめて少なかったということでございます。文部省は、御承知のとおり、昨年の十一月二十五日に局長名の通達を出しまして、企業が倒産をした場合あるいは操短等によって影響を受けました場合に、その生徒の学業の継続について特別な配慮をするように、特に新しい就職先の開拓等につきましては、職業安定機関との連絡を十分とって対処するように指導をいたしておる次第でございます。今日もそういう方向で指導を続けておるということでございます。
  39. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いまの報告では、さして問題はないようであります。  中卒あるいは高校卒で採用の内定取り消しの状況が労働省で発表されたのを見ますと、中学校はわずかでございますが、取り消しが十九名、高等学校で三百十三名。自宅待機が中学校で三百四十一名、高校卒で四千七百七十二名。これは特に繊維関係、機械、電機関係でございますが、中卒、高校卒のそうした取り消し、自宅待機というものに対してはいかような措置がとられておりますか。
  40. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘の点も大変大きな問題でございます。これに対しましては、去る二月四日付をもちまして指導通達を出しておるわけでございます。最近、採用内定の取り消しあるいは入職時期の繰り下げ等の事態が生じておるけれども、職業生活に第一歩を踏み出そうとしておる生徒にとりまして、こうした措置が行われることは非常に大きな打撃と失望を与えるわけでございます。文部省も大変憂慮すべき事態だと考えておるわけでございますが、各都道府県教育委員会並びに関係の中学校高等学校におきましては、公共職業安定機関と連携をさらに十分にいたしまして、不幸にして採用内定の取り消しあるいは入職時期の繰り下げ等の連絡を受けた卒業予定者につきましては、本人の希望をさらに聴取をいたしまして、適当な就職あるいは進路の選定が可能なように、さらに一層の進路指導の徹底を図ってもらいたい、こうした趣旨の指導をいたしておるわけでございます。これとあわせまして、労働省の職業安定局におきましても、全く同趣旨の指導を各府県の職業安定関係の部局あるいは直接に各企業等に対しても指導をいたしておるわけでございます。こうした労働省の指導と相まちまして、教育の面からも進路指導の徹底ということで、さらに行き届いたお世話ができるようにという指導をいたしておるわけでございます。
  41. 高橋繁

    高橋(繁)委員 ひとつこれは適切な指導をして、そうした問題を解決をしていただきたい。  次に、今回新しくスポーツ主事というのが設けられることになりましたが、この点について、スポーツの施設の問題とその主事の問題について質問をいたしたいと思います。  これは社会体育振興のために社会教育主事、指導主事ですか、スポーツ担当、こういうことでありますが、一体社会体育というものについてどういう定義を考えていらっしゃいますか、そこから質問いたしたいと思います。これは大臣でも局長でもどちらでも結構です。
  42. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 現在の社会教育法におきましては、社会教育活動の内容として、「体育及びレクリエーションの活動を含む。」というふうに定義してございますが、法律的に申しますと、体育、レクリエーション活動というふうに、社会教育に含まれておる身体運動の部分を社会体育あるいは社会スポーツというふうに言ってよろしかろうと思うのであります。具体的には、大体一般のスポーツあるいはスポーツとレクリエーションと言われる分野との境目にあるようなものでありましても、それが身体の練成、鍛練を内容とするようなものは社会スポーツというふうに考えて、それらをひっくるめて総合的に発展充実を図っていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  43. 高橋繁

    高橋(繁)委員 大臣はどのようにお考えですか。
  44. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま体育局商長から申し上げましたように、具体的には登山とかハイキングとかあるいはいろいろなレクリエーション的なスポーツ、ママさんバレーなんというのがこのごろなかなかはやっていて、私この間見に行ってとてもおもしろかったのですけれども、ああいう式のものですね。ああいう式のものがいろいろな地域で起こっていますし、いままで市町村でいろいろ開発してやってきているわけですが、そういうものをいわゆる学校スポーツというものに対比しまして社会教育、社会体育というふうに考えるのが常識的なことではなかろうかと私は思っております。
  45. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そういう社会体育振興のために、今回社会教育主事スポーツ担当というものを設けることになったわけですね。すると、いまおっしゃったようないわゆる学校スポーツ以外のスポーツ、たとえば、いま大臣おっしゃったママさんバレー、登山、ハイキング一切を含むということになりますと、その社会体育振興のためにそうしたスポーツ主事というものが設定されたと理解してよろしいですか。
  46. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 御趣旨のように理解いたしたいと思っております。
  47. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうしますと、大変幅広い問題になってくると思うのです。いわゆるスポーツ団体あるいは子供会、婦人会、そうした地域関係団体は数限りなくあると思うのです。そうしますと、わずかばかりの今回の社会教育主事ですか、スポーツ担当ということになりますと、社会教育主事が大変な荷を負うことになると思うのです。いまの体協あたりでも、社会体育ということでオリンピック、国民体育大会あわせてやっているわけでありますが、非常に困っておる。どこからどこまでがそうなのか、一体どこに重点を置くべきかということになると、また社会体育振興の場を一体どこに求めてそれを指導していくかということになると、かなり幅広いものになると、そういう全体をぼんやりとそうした意味でやるということでいいかどうかということですね。それはどうなんですかね。
  48. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いま御指摘のように、スポーツ活動と言いましても、ママさんバレーあるいはスポーツ少年団といろいろな活動があるわけでございまして、それらの活動を円滑に行いますためには、それに必要な場所の提供、場所の整備ということが大事でありましょうし、それらの活動を具体的に指導する指導者の問題というものがあろうかと思うのでございます。  そこで、行政としてはそれらにどういうふうに取り組んできているかということでございますが、指導者の問題について言いますならば、現在はスポーツ振興法に体育指導委員という制度がございまして、御承知のように、これは非常勤の職員でございますから、現実には学校先生であるとかあるいは自家営業の方であるとか、そういう方々で、自発的にひとつスポーツの指導をしてやろうとおっしゃる方を委員にお願いして、いま申しましたような各般の地域のスポーツ活動についてそういう方々に具体的な実技の指導その他をしていただいておるということでございます。  なお、いま御指摘もありましたように、たとえば日本体育協会におきましても、体育指導のための指導員の養成ということをやっておりますが、それらの養成された方々もいまの体育指導委員として、あるいはそういう身分を持たないで指導をする、こういうことをやっておるわけでございます。  ところで、そういうような各種のスポーツ行事における指導活動というものを特定の市町村というものについて見ますならば、いま申したような活動がやはり総合的に企画し立案されて、推進されてこそ、初めて当該地域としてのスポーツ活動が実質的に振興される、こういうことになるわけでございますので、今般のスポーツ主事という方のお仕事は、そういったような各種のスポーツ行事あるいはスポーツ団体のスポーツ活動というようなことを市町村単位ごとに総合的に推進するため、それらの企画、立案をしていただくということを主たる内容としてお願いをするということで、さらに地域のスポーツ振興を図りたい、こういうことを考えたわけでございます。
  49. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうしますと、これは社会教育法の中にいわゆる社会教育主事というのがある。この社会教育主事の中に含めたスポーツ担当ということになりますと、このスポーツ担当の資格は社会教育法にのっとってやるのか。だから、いま言ったように、社会教育の定義を位置づけて、そしてこのスポーツ担当の職務内容も明記すべきであると私は思う。そうでないと、このスポーツ担当の主事は一体何をやっていいかわからない。いま言ったようなことで、局長発言がありましたけれども、私はその辺をまずはっきりするということが大事であると思いますが、社会教育法にのっとって資格と職務内容については位置づけるのか、その辺はどうなんですか。
  50. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 最初お話し申し上げましたように、スポーツ主事は社会教育主事のうちスポーツを専門的に担当する者でございますから、したがって、その正式な名称は社会教育主事でございます。したがいまして、その資格におきましては、社会教育法において要求されますところの社会教育主事の資格を持っていただくということが必要でございまして、それにプラスいたしまして、スポーツ専門に担当するという職務の性格に照らして、スポーツについて経験なり能力を相当持っていただくということが必要であろうと思うのでございます。  そこで、具体的に職務の問題が、いま申し上げたようなことは法律には確かに書いてないわけでございますが、社会教育法の九条の三には、社会教育主事の仕事として「社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える。」こう書いてあるわけでございます。そこで、その専門的な、あるいは技術的な指導、助言という中身は何だと申し上げますれば、先ほど申し上げましたように、社会教育を行う非常勤の体育指導委員方々に指導、助言を行ったり、あるいはそれらの方々の行いますところの指導活動を総合的に企画、立案して推進をするという、陰ながらの、言ってみればプロデューサーといいますか、そういうたてまえの仕事をしていただくということになるわけでございまして、そういう具体的中身につきましてはこの法律からそういうふうに考えられるわけでありまして、そういう点は、われわれとしては関係教育委員会等に十分に御説明申し上げまして、その趣旨に沿って適切な人選をしていただくということでやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  51. 高橋繁

    高橋(繁)委員 社会教育主事には「社会教育主事の講習を修了したもの」とあります。そして、社会教育主事の講習はこうこう、こうやるべきだということがあるわけですね。ところが、このスポーツ担当にはそれに含まれるような項目が、まあこじつければあるかもしれないけれども、ないわけだ。社会教育主事はその「講習を修了したもの」とある。したがって、実際このスポーツ担当の主事の講習なり、そういうものは一体どのように考えておりますか。
  52. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 本年は社会教育主事のうちスポーツ担当者、別枠として三百名の予算を計上したわけでございますが、初年度でございますので九カ月の予算としてあるわけでございます。そこで、その最初の三カ月は、言ってみれば初めてでございますので、適切な方の選定あるいは資格付与の期間というふうに考えておるわけでございまして、四月から社会教育研修所におきまして社会教育主事の講習会があるわけでございますが、そういう機会に講習を受けていただく。また夏休みになりますと、国立大学数校で同じく社会教育主事の講習会がございますので、現在、各都道府県ではおおむね何人社会教育主事の定数、スポーツ担当者の定数を割り当てられるかという点について内々の御相談が決まりましたので、人選も進めていただいておるものと思いますが、そういう方について、いま申したような機会にまず社会教育主事の講習をしていただくということでやってまいりたい、かように思っております。
  53. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そういうことで予算を計上されて講習をやるようでありますが、私は、この社会教育法に従ってそうしたスポーツ担当主事という形でやることが果たしていいのかどうかという問題、それとあわせて、スポーツ振興法に示されております体育指導委員というものがあるわけです。これが現在、社会体育についての振興を各地域でやっているわけですね。そうした関係からいって、あるいは体育協会の指導者の養成、研修、そういうことから考えると、やはり社会教育法の中に位置づけていくことがちょっと余り適当ではない。あるいは省内にもそういう意見があったようでありますが。したがって、スポーツ振興法の中にきちっと位置づけて、そして、スポーツ振興法に示された体育指導委員との関連あるいは体育協会との関連、そうした方向にいくべきが妥当であると私は考えるわけであります。いま言ったように、社会教育法に示された講習の規定もありませんし、あるいはぴちっとした資格も、社会教育主事のための資格はありますけれども、スポーツ担当のための特別な資格というものもないことを考えると、何か社会教育法の中におることが矛盾を感ずるようなわけでありますが、その辺はどうなんですか。
  54. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 せっかくのスポーツ主事であるからスポーツ振興法の中へ規定をすべきではないかという御趣旨のように承りました。それは確かに一つ考え方であろうかと思います。ただ、現在の時点におきましては、社会教育あるいは社会教育主事というものの定義の中に法律制度といたしましてはスポーツも含まれるわけでございますから、これを社会教育の一環と見、社会教育主事の活動の一側面として唱えることも制度的には可能であるわけであります。そこで、私どもはさしあたってこのような制度のもとにスポーツ主事を発足させたわけでございますが、今日の時代においてスポーツを振興し、より充実するためにどうすべきかというような問題は、この問題に限らずたくさんあるわけでございまして、当然スポーツ振興法との関連において検討するという課題も今後出てこようかと思われるわけでございますので、御指摘のような点は今後の課題としてひとつ検討させていただきたいと思うわけでございます。
  55. 高橋繁

    高橋(繁)委員 したがって、社会体育の定義あるいは社会スポーツ担当の主事の任務といいますか、服務の内容ですね。社会教育というのは非常に間口が広い。最近はいわゆる幼児からお年寄りまであるわけです。それまで含めた、あるいは先ほど言った婦人会から子供会、青年、壮年、いろいろなあらゆる団体が多いということを考えると、社会体育振興とはうたってありますが、社会体育の定義と、そのスポーツ担当のどういう場を担当すべきであるかということをはっきりすべきだ、こう思います。いまないから、したがって、こういう社会教育法の中に社会教育主事スポーツ担当ということで、無理にこじつけて入れておるようなかっこうになっておりますが、私は、スポーツ振興という面から、そうしたスポーツ振興法の中にきちっと位置づけで、そしていろいろな諸団体との関連、振興法に基づいた体育、スポーツの振興ということでやるべきであるというふうに思いますが、その辺大臣はどのようにお考えですか。
  56. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまのお考えは、私は一つのお考えだと思います。  そこで、現在は社会教育の中で体育主事というようなものを考えていくわけでありますが、御趣旨の点は今後の一つ検討課題として、スポーツ振興法を改正する中で考えてはどうかということですが、これは今後考えていきたいというふうに思います。
  57. 高橋繁

    高橋(繁)委員 はっきりした社会体育の定義とその場ははっきりしていただきたいと思います。  そこで、社会体育振興のための指導主事が本年度から発足をするわけでありますが、問題は施設の問題です。この前も、西ドイツのゴールデンプランをつくったアーベルペック、これは二度来ておりますが、日本のスポーツ施設は三十年のおくれがあると指摘をしておる。仮にこれを資料に基づいて一例だけ申し上げますと、保健体育審議会で出されておる基準でプールを例にとりますと、この審議会の基準は八千三百九十、そのうちの公共団体の必要数というものは五十%と見まして、四十七年度において整備を見込みされたあるいはされると見越されたものが屋外で千九百三十八ですね。公共団体の必要数が三千七百九十一とありますから、そうすると三千七百九十一から千九百三十八を引かれた四十八年度以降の整備数は千八百五十三です。千八百五十三が答申の基準に対して四十八年度以降整備されなければならない数でありますが、文部省はその半数しか五カ年計画で見込んでいない。五十二年度までに九百二十七、この九百二十七のうちいま五十年度まで合わせて達成率が五八%、これは約六〇%近いから、まあまあ四十八年度の半分に示された九百二十七の達成はできる。あと二年ですから、若干残るかもしれませんが、ある程度文部省の示された目標に対しては達成できる。ところが、あと屋内のプールは現在文部省が示された達成率はわずか一七%、国民体育館の小はわずかに一六%、今度は国民体育館の総合で六九%、これはかなりいっております。運動場は四四%、国民柔剣道場ははるかに低くて、大型が二七%で小型が一七%。これは審議会の基準の半分ですよ。半分の達成率がまた三分の一あるいは二割以下という程度でありますと、いかにスポーツ主事を設けたり社会体育の振興を図ろうと思っても、この施設が全くおろそか、さらに体育施設協会で発表されたものを見るともっとひどいですね。この不足している現実についてはもう十分御存じであると思いますので、そういう施設の充実について、文部省の当初の計画についての現在のおくれと今後の計画についてはどういうようにお考えですか。
  58. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 ただいま御指摘がありましたように、保健体育審議会におきまして、四十七年に日本の社会体育施設のいわば必要数の基準を示されたわけでございます。それに基づいて計算をし、その後の社会体育施設の整備状況を見ますと、なかなかその基準までには達していないということは、事実おっしゃるとおりでございます。そこで、私どもといたしましては、逐年この施設整備のための補助金の増額という観点で整備に努力をしてまいっておるわけでございます。  ただ、いま御指摘なりました計数につきまして若干申し述べさしていただきますならば、四十八年以降の要整備数というところは、国の補助金に計上されております個所数を実績のごとく考えてやるならばこういう達成率ですよという御趣旨だろうと思いますけれども、現実には補助金に頼らない、単独事業によるスポーツ施設の建設相当あるわけでございますので、それよりはかなり数は多くなっておるのでございますが、いずれにいたしましても、審議会の答申に言う基準までは達していないことは事実でございます。  そこで、私の現在の考え方といたしましては、今後とも一方において一層この施設整備のための補助金の充実を図るということが一つございますし、次に、やはり既存の施設につきましても、相当よく利用されておるところもございますけれども、必ずしも利用が十分でないというふうに聞くところもあるわけでございまして、そういった利用面における効率的な利用という点についてさらにその趣旨を徹底し、利用の増進を図ってまいりたいということがございます。またこの施設の建設ということは、たとえば昨年の総需要抑制のように、スポーツ施設に限らず全般的にこういう建設事業がかなり足踏みをせざるを得なかったというような財政状況あるいは経済事情に左右される面もあるわけでございますので、一方では既存施設の活用という面から学校開放という点につきましても一層力を入れてやるべきであるということで、そういう点についての開放のための施設補助金であるとかあるいは学校開放に要する管理費の補助金であるとかそういうような充実を図ってまいりたいというようなことも考えてやってまいる、こういうことでございます。
  59. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いまのおくれている分ですね、たとえば柔剣道場あるいは国民体育館の小運動場、これはほかのものはプールにしても体育館にしても総合体育館にしても約六〇%から七〇%近く、これは審議会なんかでいくともっとうんと低いのですよ。あなた方が決めた文部省の緊急整備五カ年計画のうちのまだ二割、三割に満たないところが——これは一体必要ないのか、あるいは何でおくれているかと言っているのです。
  60. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 ただいま御指摘の点で特におくれておるというふうに数字の上で読まれますのは、屋内プール、国民体育館、柔剣道場、こういうところであろうかと思いますけれども、屋内プールにつきましては、これはやはり建設相当経費がかかる、維持運営に費用が、多額の経費が要るというような点も現在の情勢では一つの問題点であろうかと思います。またこの国民柔剣道場あるいは体育館というようなものにつきましては、あの答申では一応学校体育施設と切り離して社会体育施設として人口規模別に計算するとこういうふうになりますよという計算でございますが、現実に柔剣道等につきましては、学校においてそういう施設を設けられておる場合にそういうものをある程度利用させていただく、あるいはすべての地域において柔剣道に対する関心が必ずしもまだ十分高まっていないというような点等がありまして、目標達成率という点から見ますと結果的にはかなり低くなっておるところもあるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
  61. 高橋繁

    高橋(繁)委員 あと質問はたくさん残っているのですが、社会体育振興のための、いま言った社会体育の定義であるとか指導方針の問題、それとあわせてスポーツ施設の不足、特に今後週休二日制に伴っていわゆる公共的スポーツ施設ももちろんであるが、草野球的なものができるミニスポーツ施設であるとか小中学校の校庭の開放、国立大学の開放は現在やっておるようでありますが、さらにそれを進めるとかそうした社会の対応に応じたスポーツ施設の充実は早急に迫られている問題であると思うのです。それと同時に、週休二日制とあわせた一貫された教育というものも考えなければならない段階に来ておりますので、これはひとつ早急にやっていただきたいことを強く要請しておきます。  次に大臣にお伺いをいたしますが、最近塾、いわゆる日本列島が学習塾列島になるなんて、こう新聞に出ておる。商魂任せ。これに対しては文部省としては何ら手を打つあれもないというように私も現状では考える。しかしながら、教育ということを考えてまいりますと、こうした塾の問題あるいはいかがわしい養成所という問題がかなりあります。私の知っておるだけでも、これは例とし参考にしていただきたい。通訳養成所という、こういうものがあるわけですよ。これは全くもって学生が大変な被害を受けておる。いかがわしいポスターとかなんかがいっぱい出ておりますけれども、この養成所の所長は最初といまと名前を変えておる。しかも内容が、入ってみれば全然違うし、最初に授業料を取られちゃう。最初の募集要項についても、通訳になれるとか、いかがわしい広告ですね。こんなものがいま電車や至るところに出ております。そういうものを、行ったところが、実際は何もうまくいってないというような塾やこういういかがわしい養成所というものがはんらんをしておる。特に私は国際交流という問題で大臣に御質問する予定でしたが、時間がなくなりましたので、それとあわせて大変に流行しつつありますこの通訳養成、大学を卒業したけれども会話ができない、ここへ入って勉強したい。ところが事実と全然違う。あるいは小中学校の指導要領の過密によって力をつけなくちゃいかぬ。大学入試によるところの弊害というもので、塾が至るところにある。あるいは企業化しつつある。チェーン化しつつあるというような、あるいは家庭教師センターというようなものまで設立されておる。そういうことを考えますと、もちろん教育課程審議会でこの指導要領のあれを検討しているようでありますが、それとあわせて、権限外と言えば権限外でありますが、こうした塾、そうしたいかがわしい養成所、こういうものを何ら取り締まる場所もないし、被害を受けた学生は泣き寝入りという状態です。私はそういう生徒があってはならない。被害を受ける学生があってはならない。特にこの養成所なんか女の子だけです。男の子は文句を言うから採らない。女の子だけ集めて、そして上からおっつけてやる。しかも養成所の所長はどういう資格を持っているかわからない。講師も、外国から来た旅行者を雇ってそれで二カ月か三カ月で適当にやっておる。どんどん講師が交代する。そんなことで行われておるわけでありますが、そうしたものについて、私は教育をつかさどる文部省として何らかこれは手を打たなければならないときに来ていると思うのですが、その辺についてどうお考えでありますか。
  62. 永井道雄

    永井国務大臣 塾というのは実に多様だと思います。たとえば字を習うとか絵をかくとか、そういう学校教育の中で十分でないものを自分で生かしていきたい、こういう式のものもあります。また塾というよりはさらに整備して各種学校になっているようなものもあります。こういうものについては問題もありませんし、また各種学校というふうなものについては文部省としても当然責任を負っていくべきものだと思いますが、いまおっしゃいますいろいろな種類の進学塾あるいはいまの養成所のお話をなさいましたが、こういうものは文部省としては直接にこれを規制するというそういう権限を持っていないわけでございます。そこで進学塾のような問題については、もう先生がおっしゃいましたようにやはり受験体制をどうしていくかということとかあるいは教育課程というものの改善を通して、もっと学校教育というものの中で子供の要求というものが満たされるようにしていくということが非常に極端な進学塾のはんらんというものを防ぐ方法だと思います。  いまの養成所のような問題、これはもっと年配の人だと思いますが、こういうものについても実は、たとえば国際基督教大学では同時通訳の養成のための教育課程もありますし、それから、非常にきちんとした外国語学習のための各種学校もございます。やはりそういうものがあるということをなるべく社会の人たちに理解していただくという方法によって、いまの先生がお見せになったパンフレットの学校それ自体については私はよく存じませんけれども、そういう種類のものについては、そういうものがはんらんしていくのを防ぐようにするというのが、私は、いま私たちがやり得ることであり、またやるべきことだというふうに考えますが、その特定のパンフレットをお示しになった学校、それをすぐにどうするかというような形で、文部省としてそれに答えを出すということはなかなかできにくいのではないか。こういう問題については、やはり行政の立場というものもありますけれども、社会の方々の御協力も得て、教育機関というものの中に広い意味で入ってくるようなものは、やはりなるべくきちんとしたものになっていくように、官民の努力と申しましょうか、お互いに協力しながらやっていくという方法が望ましいというふうに私は考えております。
  63. 高橋繁

    高橋(繁)委員 これはひとつ研究をしていただきたいと思います。  最後に、国際交流の問題です。これは時間がありませんので……。  今後国際交流は、所信表明にもありましたように、「二十一世紀を目指して国際社会において人類の連帯を進める日本人の育成」ということでうたってあります。もちろんいろいろな国際交流が今後行われるわけでありますが、いま外務省でやっておる国際交流基金、この問題について、文部省としてはほとんどノータッチのような状況であります。私は、今後こうした国際交流基金との連携を深めながら、大学教授の交流であるとかあるいはそのほかの教育に携わる人たちの交流というものを含めて、文化の交流をしなければならない、こう思いますが、その辺の国際交流基金との関連はどうなんですか。
  64. 木田宏

    ○木田政府委員 国際交流基金は、御案内のように、対日理解の増進あるいは海外事情の対日紹介、国際友好親善の増進という観点からの人物交流につきまして、国際交流基金が担当するということになっておるわけでございますが、学術、教育、文化そのものの振興に関連いたします人物交流につきましては文部省が担当するというふうな一応の役割り区分になっておるわけでございます。  しかし、現実には、いずれにいたしましても、教育、文化あるいは学術関係の人が出入りするということになるわけでございまして、業務上の連携を十分にとっていく必要があることは言うまでもございません。したがって、役員構成につきましても、文化に明るい方が理事長にも就任され、また理事にも文部省関係者も入っておりますし、下の職員にも、教育交流等を担当しておりました者が関係職員として入って、事実上の連携は十分とよるようにしてございます。また、定期にというほどでもございませんが、年に何回かは関係者の間の相談をいたしまして、それぞれ教育、文化、学術の交流という面で協力し合う点につきましては、相互に相談をしながら、この場合にはどちらでというような御相談のもとに運用しておるのが実情でございます。
  65. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いまでも連絡等はやっているわけですね。  さらに、これは外務委員会のときでもいろいろ問題になりましたが、いわゆる社会主義体制の国、特に共産圏との交流は、国際交流基金では現実にはやっていけないわけですね。だからその面も含めて、広い世界的な——せっかくこうした方針もあるわけですから、文部省としても強力な発言をして、そうした方向に持っていくべきだと私は思いますが、局長どうなんですか。
  66. 木田宏

    ○木田政府委員 社会主義国との文化の交流等につきましては一般の自由諸国の場合と様子が違った点がございまして、国と国との間でしっかりした相談のできたものにつきまして相互にかなり計画的に交換するというふうなことになっております。  交流基金の方はむしろ一般の研究者、文化人というものを対象に呼びかけに応じてこたえるとかというふうな運営をいたしておりますものですから、交流基金の経費が社会主義国の人物交流に全然使われていないかどうかは、私ちょっといまここで知りませんけれども、一般的には国を対象にしての措置というのはそれほど多くはなかろうと思っております。日ソの関係には日ソの教育協力あるいは学術交流等の協定もつくられておりまして、それらの措置につきましては文部省が学術振興会を中心にして運用しているところでございますし、ポーランドその他の国とも学術振興会を通じて措置をとっております。これらの点につきましても、今後交流基金等とも必要な連絡は十分とりながら、御趣意の点は含んで運用に当たりたいと考えております。
  67. 高橋繁

    高橋(繁)委員 それじゃ最後に大臣にひとつ質問いたしますが、こうした国際交流をどんどん進めなければならないし、連帯を進める日本人の育成ということで、私は基本的にはやはりみんな人間でありますから、誠実さあるいは信頼感というものは、これは個人の価値観や国籍は変わっても、変わらない。したがっていま日本人におけるマナーの問題であるとかいろいろなことが取りざたをされております。  したがって、私は今後の日本の道徳教育なりあるいはそうした問題もあわせて、基本的な考えは地球全体、人類愛であるとかあるいは世界愛というものを基本にされた道徳教育がなされなければ、これから日本は国際社会においても非常なおくれをとるということに考えるわけでありますが、その辺大臣の国際交流を深めていく上についての基本的な考え方についてお伺いをいたします。
  68. 永井道雄

    永井国務大臣 いま先生が御指摘なりました点は、全く、私としては同感でございまして、そこで大学あるいは大学を卒業した人たち、社会に出た人たちの間での文化交流というものも大事でございますけれども、もっと小、中、高というレベルにおきまして国際理解を深めるとかあるいは人類というものとの連帯感、そういうものを日本人として持っていくための教育、これはわが国の憲法も志向しているところでございますから、私は今後一層そうしたものが強まっていくように、文部省としても臨んでいくべきである、かように考えております。
  69. 高橋繁

    高橋(繁)委員 あと質問が残りましたが、また一般質問でやることにいたしまして、一応ここで終わりにいたします。
  70. 久保田円次

    ○久保田委員長 この際、約十分間ほど休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後零時二十二分開議
  71. 久保田円次

    ○久保田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  72. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 先日、大臣から国立学校設置法の一部を改正する法律案の提案理由の趣旨説明がございましたが、この最初で「まず第一は、富山医科薬科大学及び島根医科大学の新設についてであります。」こう言って、富山医科薬科大学の創設についての理由の説明がございましたが、富山医科薬科大学が成立する過程で富山大学の中でどんなことがあったのか、大臣はその経過をお聞きになっておりますか。
  73. 永井道雄

    永井国務大臣 大要は聞いておりますけれども、これは政府委員から御報告いたします。
  74. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 富山県におきます医学教育機関につきまして、薬学関係者の間で医学と密接な関連を有する富山大学の薬学部と和漢薬研究所との関係を考慮し検討がなされておりましたが、富山大学としても薬学部及び同和漢薬研究所の参画した新しい構想の富山医科薬科大学設置いたしまして、医薬一体の総合性と協力態勢の実現を目指すことを四十九年七月末の評議会で決定し、学長より申し出がございました。これに基づきまして、概算要求時点から富山大学の薬学部を新しい富山医科薬科大学に引き継ぐことといたしまして概算要求をし、予算の計上とともに富山医科薬科大学の創設ということで国立学校設置法の改正案を御提案し御審議を賜るに至った、こういう経緯でございます。  なお富山大学内部におきまして、この問題に対しましていろいろな検討が行われておりますが、主として私どもが報告を受けておりますところでは、七月に入りまして部局長懇談会、それから薬学部、和漢薬研究所の教授会、工学部教授会等の審議があり、薬学部及び和漢薬研究所の合同教授会の決定を受けまして臨時評議会が開催をされ、七月三十一日に評議会で正式決定になりまして文部省に申し出があった、こういうふうに報告を受けております。
  75. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大臣は今回三木内閣のもとで文部大臣になられたわけですから、一昨年来の筑波大学の本委員会における私の論議については、議事録でも参照していただければ大変幸いだと思いますが、この富山医科薬科大学の成立の過程における大学内部の決定過程を見ますと、東京教育大学が筑波大学をつくり上げていく過程と全く同じケースをたどっております。  いま局長が報告されたのは形式的な報告であって、実際はどういう過程をとったかというと、簡略に申し上げますと、七月三十一日の評議会決定に基づいて薬学部が離れて今度の医科薬科大学を創設するという決定に大学がなったかのように報告されております。ところが、この決定が行われた後に行われた富山大学内部の組合がやった世論調査では、医科薬科大は十分審議しないで決定されたと思うがどうかという質問に対して、経過を知らないと答えたのが四三・一%、それから大学の自治、民主的運営という観点からこのような決定は不満であると答えたのが三六・六%、組合のデータですからこういうデータをそのまま信用していいかというのは、いろいろ調査のやり方や何かもありましょう。しかし約八〇%の人たちは、評議会決定後に行われた富山大学の中の世論調査であるのに、医科薬科大学の成立に賛成していないわけであります。  そこで、その前の経過を見ますと、七月三十一日の評議会決定の前の七月二十五日の文学部の教授会では、医科薬科大学をつくるというタイプもあろう、富山大学の中に薬学部と医学部をつくるという案もある、その他三つの案が出まして結論を出しかねていたわけであります。それよりさかのぼりまして七月の十七日に、工学部は分離反対を決めております。二十五日には、文理学部は結論を出しておりません。続きまして、この評議会決定の直前に行われました教育学部は反対をしております。それから教養部は疑問があるということで評議会の決定に際しては保留するという態度をとっております。したがいまして、薬学部教授会を除きまして富山大学の各学部では、医科薬科大学という薬学部を分離して新構想大学をつくることについて、各学部教授会は賛成していないということがあります。したがいましてこの評議会の決定はが箝口令がしかれまして、各学部教授会では、決定をもうしたのだ、これ以上各学部教授会では審議をしないことにしようと申し合わせをしているのです。その結果、これが新聞に抜かれまして事は重大になったのでございます。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕  こういう過程をたどっておりますが、ここで非常に重要なことは、七月の下旬に評議会で決定するのですが、七月五日という七月の一番早い段階で薬学部教授会は文部省との連絡の上で、文部省から提案された医科薬科大学という新しい大学方向にならば協力はできるということを前提にして薬学部教授会では討議されているわけであります。その薬学部教授会では、それ以前に六月末の段階ではどうかというと、六月末の段階では、富山大学の中では、新しい大学をつくるのではなくて、富山大学の医学部を増設して、医学部、薬学部という旧制の大学にあるような形の学部増設の要求をしたのに対して、文部省は新しい医科薬科大学という形に持っていく方が望ましいという指導が行われ、それを軸にいたしまして薬学部教授会でそれが決定されたのです。その薬学部教授会の決定が文部省との連絡の上で行われたことについては、他の教授会はもちろん知らないし、そして新しい問題がいよいよ各教授会にかかってきた段階では、いま申し上げたようにいろいろな疑問と反対の意見があって、そして評議会が開かれた結果、この評議会では、その結論について採決はとっておりません。採決はとらずに箝口令をしいたわけでございます。それが決定の過程なのです。こういう決定の過程は、ちょうど筑波大学に際して、私がここで教育大学内部で筑波大学を構想する過程について文部省の指導があっているということをいろいろ議論をしたのに対して、文学部教授会や教育大学内部の教授会の自主的な改革案に基づいて行なわれた行なわれたという議論を今日までしてまいりました。ところが、また今度の医料薬科大学に関しても、それは新たな医科薬科の専門的な新しい大学をつくるということの意味はそれなりにありましょう。しかし問題は、学校教育法で言うところの大学は、学術の府であって、総合大学を目指すという理念があると思います。だから、学校教育法の中に、大学は幾つかの学部を置くことを常例とすると決め、そしてそれ以外の場合には研究、教育の新たな組織を設けることができるということを言っているわけであります。ですから、総合大学という前提に立って、薬学にプラス医学部という富山大学の要請があったにもかかわらず、そこを薬学部だけを分離して、新たな医科薬科という単科大学的な形の、あちこちに去年あたりから次々と出ておりますね、この単科大学方式というものが富山においても指導されたというふうに私の調査では明らかになっております。したがいまして、昨年の十月国政調査に参りましたときに、その問題を富山並びに富山大学調査いたしました。その調査をいたしましたときに、私たちに返ってきたのは、いま局長がお答えしたのと同じでございます。ところが、実際に私がいま手元に持っておりますようなもろもろのデータを実はすでに私は持っていたのです。ですけれども、国政調査の場でごたごたしてもしようがないと思いましたから、いずれこれが国会に出たときに、この経過を明らかにした上で、大学の今後のあり方の問題について大臣並びに局長意見をただしたいと考えて今日までまいりました。  そこで、この細かな経過についてはいまさらここで議論をする意思はありません。しかし、総合大学という今日の、たとえば人口が都市に集中し、都市の人口の集中に学生の集中が多いということ、しかもその学生は田舎に帰らずにまた都会で就職するということ等もあり、また片一方に大学の格差という問題があって、大学というものをむしろ地方に分散し、地方にいわば学術の中心としての大学を強化していく、そういう考え方を永井文部大臣は幾たびか問題として出しておられます。そういう大臣の今日の文教政策の新たな考え方に基づいて見た場合に、こういうつまり大学創設の過程というのはこれでいいのかどうか、この点について大臣にお聞きしたいと思います。
  76. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの富山大学の成立過程のことは、お話を承りましていろいろ考えさせられるものがありますが、それとの関連で御指摘になったのは、総合大学と単科大学関係ではないかと思います。私は、理想的な形としては総合大学というのがいいのだと思います。それはいままでもそうでありましたし、今後もそうでありますが、ここに非常にむずかしい問題がありますのは、これは嶋崎先生も総合大学においでになったから御体験になっていると思いますけれども、各学部教授会というものがあって、形式的には総合大学なんですけれども、実質的には連立大学といいましょうか、そういう姿に陥りやすい、そういう傾向がこれまであったということは否めないと思うのですね。  そこで、だから単科がすぐいいということにもならないと思いますが、しかし単科の場合でも問題が——私は日本の場合なかなか形式にないように思うのです。つまり、総合大学をつくると、必ず総合的な研究や教育が行われるかというと、形式がそうなっても、その中の学部あるいは研究機関が全くばらばらになって交流がなくなってしまうということもある。今度分子科学の共同利用研究所ができましたけれども、ああいうものの場合、一応離れた研究所ですけれども、運営のよろしきを得れば、いろいろな種類の学校の人がそこに集まり得るし、そしていわゆるインターディシプリナリーな方向が出てくる。  そこで、これからいろいろ工夫していかなければならない問題の一つは、やはり学問の総合性といいますか、余りひどく細分化された形で大学をつくっていくのは望ましくないと思うのですが、その場合に、問題点がどこにあるのか、つまり運営の方法をよほど考えていきませんと、単純に総合大学方式にすれば総合性は確保できるというものでもない。ですから、単科大学をつくる場合にも、単科大学でありながら他の大学との連携をとるというようなことを促進することが事実上できますれば、あるいは学部という形よりも研究や教育等の中身について、相当いわゆるインターディシプリナリーな方向にも向かい得る可能性があるのではないか。まず、総合と単科の問題については私はそういうふうに考えているのでございます。
  77. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 総合と単科という場合も、これからもいろいろ、次に共同利用研究所の質問をいたしますが、非常に大事なことは、憲法二十三条、学問の自由と大学の自治という憲法の要請があって、そして学校教育法には大学の体系というものがあって、そこには大学というものはどういうものかというのがあって、そしてそれに基づいて国立学校設置法に伴うところの法の体系が出てくるわけであります。ですから、新しい単科の大学をつくるときに、憲法の要請や学校教育法で言っている大学の体系というものをいつも前提にして大学というものを考えていかなければならぬと思います。ですから、学校教育法で、戦後の大学改革の中で言われた学術の中心という意味と総合大学という意味を今日の段階で変えていくならば、学校教育法大学の体系を再検討していくことを一方でやらなければならないはずであります。  ところが、実際には、いままでの法改正を見ますと、学校教育法の一部を改正して新しいものをつくり出す、今度は国立学校設置法の一部を改正して新しいものをつくり出す、なし崩し的にいままでの学校教育法で言うところの大学考え方と少しずつずれながら新しいものができていくのです。ですから、そろそろ一定の時期に、戦後の日本の長い間の大学の歴史というものを、数十年間の歴史を今日まで再検討してみて、そしてこれからの大学ということについて、学術体制はどうなのか、学部中心大学はどうなのか、それから私学と国立との関係はどうなのか、そういう問題について、もう一度総合的に考えながら、この延長線上で考えるのではなくて、一遍そこを切断しながら問題を立て直していくということをやらなければならぬ時期にそろそろ来ているのではないかと思います。学問の発展の上からも、日本の大学というものをめぐる状況の変化から見ても。  そういうときに、いままで次々とつくられている医科系の単科大学というのは、筑波方式で言われる開かれた大学という言葉が必ず出てきて、前国会でも私は問題にしましたが、法律で決めるべき参与というような機関を省令で具体化していくような文部省の指導が一方に出てくる。そういうことがなし崩されながらどこにその焦点がしぼられているかというと、確かに新しい学問の研究、研究教育のあり方という大義名文を一方にかざしながら、他方では大学の管理運営に力点を置いた大学方向が志向されている、そういう可能性がここ数回の国会での私の論争の中でも感じられてならないのです。そういう意味で、おっしゃった総合大学か単科大学かという大学政策の理念の問題については、今後はいろいろの議論がありましょう。富山大学の場合であれ、一昨年の筑波大学の場合であれ、大学自身が薬学部のほかに医学部を増設してくれという形で要請が出てきている。それは大学の評議会の中で決定しているから、そういう要請が出てきているのです。富山大学は、戦後の新制大学じゃなくて、かなり伝統のある大学ですから、ここはもうそれぞれの学部をかなり持った総合大学です。そういう総合大学の持っている理念を富山大学先生方が前提にしないで学部増設の要求をするはずがない。これを新しい単科か総合かという理念で、大学内部の討議と大学内部の研究の自主性、大学自治のあり方を無視して、そういう要求だったら予算をつけませんよ、はずして新しいものをつくるなら協力いたしますというような形での誘導ですね、いわば財政を片手に持ちながら大学改革を誘導していくという最近の大学行政のあり方が非常に問題だと私は思っているのです。そういう意味で、この富山医科薬科大学の場合もその一つのタイプである。なぜならば、そういう新構想の大学が、医科、薬科という二つの学部を持って日本で新しいタイプのいい医学、薬学研究の大学になるとするならば、これを決定する過程で、なぜ富山大学の中で、学問の要請とかいう諸条件の中で徹底的に討議をして結論を出すような手はずをとらないのか、これが非常に疑問なわけでございます。この問題はこれ以上議論しませんが、こういう経過をいままでとっているということが、私の推測ではかなりあると思います。文部省が、文部行政として誘導しつつ大学改革を促進していく、それには、もちろん日本の学術体制や教育体制かよくなる方向に——悪くなる方に誘導するはずはないのですから、そのこと自体が全部悪いと言っているのではなくて、そういう誘導をしていく際には、大学の自治や学問の自由をあくまで前提にしつつ、それが侵害されたというような禍根を残さない経過を慎重にとっていただきたい。富山の場合にも、結果としては新しい大学を承認せざるを得ないと思いますが、議論の中でも必ず筑波方式が問題になっています。こういう大学のつくり方は、新しい医科薬科大学の構成とか、そういうことじゃないのです。つまり、こういう創設の仕方の中に筑波方式的な誘導がある、だから、そういう意味では危険だぞ、これは大学先生方の持っている必要以上の自己防衛意識かもしれません。実はそんなに恐れなくてもいいですよということでもあるかもしれませんが、そういう議論が、私の手元にある諸文書を見てみますとどの学部でも行われています。それだけに、今回の富山医科薬科大学設置について、そういう経過があるということを大臣はしかと考えておいていただいて、今後新しい大学創設に当たっては、そういう問題についての検討をしつつ事態を進めていただきたい、この問題ではそういう要望をしておきたいと思います。  そこで、今度は二番目の質問ですが、分子科学研究所の新設に関連して。これは国立学校設置法第九条の二、「国立大学共同利用機関」に新たに分子科学研究所が入るわけであります。  さて、大臣は、この間の趣旨説明の中で、「これは分子の構造、機能等に関する実験的研究及びこれに関連する理論的研究を行う国立大学共同利用機関であり、」と、こう規定されておられます。「国立大学共同利用機関」というのは、国立学校設置法第九条の二で言う「国立大学共同利用機関」という言葉を、大臣がお書きになったかどうかは別として利用されていると思います。  そこで、時間がありませんから一々聞きませんが、第九条の二の前文、「国立大学における学術研究の発展に資するため」、したがって、共同利用研究機関は「国立大学における学術研究の発展に資するため」にあるわけですね。目的は明確であります。第九条の二は、「国立大学における学術研究の発展」という目的があって、その目的のための「国立大学の共同利用の機関」であると規定して、「かつ、国立大学教員その他の者で当該機関の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させるため、次の表に掲げるとおり、研究所等を置く。」こうなっています。したがって、この条文は、目的は国立大学の学術研究の発展、その名称は国立大学の共同利用機関、そしてそれを「国立大学教員その他の者で当該機関の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させる」、こういう条項でございます。  この間、文部大臣は、朝日ジャーナルの「苦難の私立大学」という特集でインタビューに答えておられますが、その一番最後に、大臣は大変得々と、と言うと表現が悪いけれども、「文部省としても、豊橋に分子科学研究所、名古屋にプラズマ研究所をつくって、私大にも共同で利用してもらうといった方向で、そういうことをぼつぼつやっている。」と述べておられます。これがインタビューの最後の締めくくりでございます。ここで、文部省としても、豊橋の分子科学研究所や名古屋のプラズマ研究所は私大にも共同で利用してもらう方向だとおっしゃっている。内容は私大にも利用してもらう日本の学術研究の共同利用機関ですね。ところが、この条文は「国立大学における学術研究の発展」と書いてあります。この間に矛盾はありませんか。これを大臣、どう理解しますか。
  78. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘がございました第九条の二に、二つに分けて事柄が挙げてあるわけでございまして、国立学校の教授等の身分を持った者が構成をする共同の研究機関として、国立大学の共同利用機関としての位置づけの共同利用機関ができるということと、「かつ、」そこで一つ分けまして、「国立大学教員その他の者で当該機関の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させるため、」というふうに、二つに割ってあるわけでございます。機関としては、国立大学共同利用の機関としてつくるわけでありますけれども、それとともに、同じ目的の研究に従事する者に利用させるための機関として置くという趣旨を明記いたしておるわけでございます。
  79. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国立学校設置法の第四条には大学付置研究所がございます。第四条には、「国立大学に、次の表に掲げるとおり、研究所を附置する。」二項には、「前項に掲げる研究所のほか、国立大学教員その他の者で当該研究所の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させるため、国立大学に、次の表を掲げるとおり、研究所を附置する。」こう書いてあります。こちらの国立大学の付置研究所は、第九条の二に言っているように「国立大学における学術研究の発展に資するため」とは書いてありません。国立の大学にある付置研究所か私立大学先生方をも含めて共同で研究をすることができる。その研究は国立大学にある付置研究所だが、その研究の内容はおのずと日本の学術研究の発展、そういうものに寄与するがゆえに、わざわざ国立大学における学術研究の発展に資するためとは書いてないと私は理解します。ところが共同利用研究所の場合は、なぜここには第四条で言っているような意味での学術研究に寄与するという一般的な意味で共同利用研究所を位置づけていないのですか。それはどう答えますか。
  80. 木田宏

    ○木田政府委員 九条の二の前段のところが実は四条の第二項のところでは書いてないではないかという御指摘でございます。四条の二項は国立大学の研究所でございますから、当然国立大学のために置かれる研究所ということの了解事項が成り立っておるわけでございまして、したがって、それを広く他の者に利用させるという意味で二項の規定ができております。共同利用研の方は、その前段のところを、一応四条の場合には当然のこととして含まれておるものを書き起こしたというかっこうになっておるわけでございまして、やはり共同利用ということを協調いたしますために「かつ、」ということを書いたわけでございます。それで、九条の二の共同利用機関は大学に属さない独立の機関として設けました関係上、国立大学との関係ということを、やはり発生的な経緯もございますけれども、位置づけておく必要があるということから前段の規定が出てまいりまして、趣旨は後段の規定で運用するというところにあるわけでございます。
  81. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、そこでお聞きしますが、ここの国立学校設置法で言う国立大学というのは何ですか。
  82. 木田宏

    ○木田政府委員 設置法に書いてあるとおりでございまして、法律でつくられ、国の施設として維持運営に当たる機関、こういう意味に理解しております。
  83. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ここの国立学校設置法に言う国立大学というのは、正しいかどうかは別として、私はこういうふうに理解します。  国立学校設置法という法律は、学校教育法の中の大学のあり方、これを受けまして、国立大学という抽象的なものはないのであって、国立大学は個々の国立大学の個別があって、その個別の国立大学の類的概念として国立大学という概念が出てきているんだとぼくは思う。その個々の国立大学は、学校教育法に言っている教授会や学校の組織、大学の研究教育の組織を体現しているものだと思うのですね。ところが、この東京大学原子核研究所という付置研究所は、国立大学の、その個別大学の中の付置研究所ですね。ところが、ここで言う共同利用研究所は大学の外にはみ出ている研究所なんですね。ですからこの名称は、国立学校設置法の場合には必ず長崎大学ないしは九川大学、そして研究所の名前があって、県があって、そういう名称を付したわけです。ところが、この共同利用研究所の名称があって、次は県だけなんです。大学はありません。そしてその内容、研究の主なる力点が書かれてあります。ということは、国立学校設置法に言うところの大学と共同利用研究所というものの中身は、いわば異質な、つまり所管事項外の——所管事項外というのは、その研究所の組織、構成がほかの大学の付置研究所や大学と違うから、ここに違った組織というものが出てくる。そうしますと、当然国立学校設置法で言うところの所管事項とは違った、はみ出た共同利用研究所というふうに理解せざるを得ない、こう私は理解するのです。これは法律の条文をまず理解したのですね。  なぜそういうふうに理解するかというと、ここで非常に大切なことは、この国立学校設置法という法律は、個々の大学があって、その個々の大学の類的概念として国立大学というものを考える。そういう国立大学は、必ず個々の大学の中には学校教育法で言うところの大学の組織運営というものがきちっとしていなければならない。ところが共同利用研究所の場合は、運営規則を見ても明らかなように、協議会があって評議会があるだけで、そして客員教授があり、ときにはプロジェクトをつくるというだけの研究機関でありますから、これはどこかの大学関係があれば大学と言えます。しかし、大学関係がない証拠に、この二項には「前項の表に掲げる機関は、国立大学その他の大学の要請に応じ、当該大学大学院における教育協力することができる。」とうたっている。ここで言っているところの「国立大学その他の大学」というのは、国立、私立を含んでいるわけであります。そうしますと、特定の大学と共同利用研究所というのは結びつきがないわけであります。特定の大学と結びつきのない、ただ大学院の講義に行くスタッフはいるけれども、しかし、国立学校設置法に言うところの大学の組織運営とは違ったタイプの、いわば共同利用の研究機関です。そうしますと、国立大学設置法でいままでわれわれが設置してきたいわゆる大学、その大学とは違ったタイプの共同利用研究所というものがこの九条の二に生かされている、そう理解して、その上に立って、たとえば第二条の「「国立学校」とは、」と言って「学校教育法第一条に定める学校で国が設置するものをいい、」これが本来主文ですね。ところがこれを入れましたから、後でくっつけまして「第三章の三に定める機関を含むものとする。」こう読んだわけですね。そう読んでおいて、そして四条の方では、国立大学の付置研究所というのは一つのタイプだと言って、そしてそのタイプにも入らないから、今度は国立大学の範疇外の共同利用研究所というものをどこかに設けなければならないものだからここに持ってきている。ある意味では法技術的には大変苦労されたんだと思うが、実際国立学校設置法という法の体系から言えば、私は異質ではなかろうかというふうに判断します。いかがですか。
  84. 木田宏

    ○木田政府委員 国立学校設置法が、この一条及び二条に書いてありますように学校設置するというたてまえからいたしますと、ただいま御指摘のように、いわゆる学校教育法学校そのものではないものまで書くというのははずれているではないかという端的な御指摘だと思います。その限りにおいてはそのとおりだと思います。したがいまして、第二条で、国立学校設置法で言います国立学校には学校教育法一条の学校以外のものも含むという書き方に直さしていただいておるわけでございます。でございますから、この国立学校設置法は、学校教育法一条で言う学校プラスアルファのものである。なぜそういうことにするかといいますと、ただいま御指摘がございました九条の二あるいは第三章の三に書いてございます共同利用機関というのは、発生的な経緯その他からいたしましても国立大学の発展の姿であるという歴史的な経緯があるからでございまして、教官の人事あるいは研究体制その他の運用上から、やはり国立の大学が持っておりました大きな研究所、それを特定の個別大学だけではなくて、多くの大学の共同の体制として位置づけるために別の主体にしよう、しかしながら、やはり大学の研究として一体的な流れの中に加えておく必要があるということからこのような構成になっておるもの、このように理解しております。
  85. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、なぜこういうことを言うかというと、「国立大学における学術研究の発展に資するため」なんて書かなかったらよかったのです。わが国の学術研究の発展のため国立大学の共同利用機関として、と書いておけば問題はないのです。ところが「国立大学における学術研究の発展に資するため」というように目的を限定してしまいますとどうなるかというと、共同利用研究機関に私学の教官が自由に参加して——自由というか、専門家が相互にプロジェクトをつくって、そして日本の学術研究のために自由な研究体制で利用できるという解釈がしにくいという印象をまず与えるということですね。だから私学の連中はみんなここを問題にしています。私立大学の連中は、これはおかしいじゃないですかと。前の条文でも、国立大学の付置研究所の場合には共同利用ができますよ。ところが、この新しくできた幾つかのタイプの共同利用研究所というのは、国立大学における学術研究の発展という、目的が限定されているために、私学の人たちが自由にやれるようなものというより、やはり国立中心の共同利用機関というふうに読み取れるという批判が出てくるということ。実際に運用の面でもそれがあらわれている。  たとえば、すでに局長は手直しされましたけれども、いつかも予算委員会大臣に私質問しましたが、私立大学の教官と国立大学の教官には給与の格差があった。旅費やなんかの規程の格差があった。問題になったから直ったのです。問題になったから直ったけれども、事実上利用していくのに私立大学の教授が国立大学の助手並みなんですから、そんなむちゃな話がどこにありますか。いまはよくなっていますよ。しかし、そういうかつての格差、そういうものがずっと延長線上にあって、そして事実上、たとえば原子核の場合でもいろいろな場合でも、私学の先生方と一緒になって、たとえば素粒子なんていうのは一番典型的です。そういう研究グループをつくって、そして大学の中で自主的な研究を始めた。そうしたら大学の管理運営とぶつかってくるわけです。だから文部省に出す書類は形だけそろえるわけです。ところが、実際にやっていることは、たとえば旅費の問題やなんかというのは差別するわけにはいきませんから、だから文部省に向けては形だけ整えながら、実際の運用においては新しいタイプの共同利用的な研究所運営というものをやってきた長い経験があるのです。ある意味では学者たちの闘いだったと私は思います。だからそういうところからいわば付置研究所というものが一つタイプとしてあらわれ、今度の共同利用研究所、同時にもう一つのタイプは、法律には起こしていないけれども電算機センターとい共同利用があるわけであります。電算機センターの場合には、こんなふうに国立大学の学術研究の発展に資するためというようなことは何も書いてない。同じ国立大学にありながら、その国立大学、たとえば東京大学、京都大学、九州大学というところにある電算機センターは、国立大学教員のみならず私立の大学教員も共同で利用できるものだという施行の規則になっておりますから、非常に運営はうまくいく。ところが、事九条の二に言う国立大学における学術研究の発展という目的が限定されていることからくるそういう印象もありましょう、ひがみもありましょう、事実上運営に際して私学が排除されているという被害意識がこの共同利用研究所に対する批判になっている。  その一つの例として申し上げますと、国文学研究資料館、この国文学研究資料館というのは、御承知のように日本学術会議が幾度か勧告をしていく中で設置されたものです。その日本学術会議でこれを勧告するに当たって運動した先生方は、事務局は全部私立大学です。私立大学に事務局を置いて、私立大学先生方が主力になってこういう国文学研究資料館の創設に努力をされた。でき上がってみたものは、国立大学における学術研究に資するためという、こういう条項からきているかどうかは知れないが、利用度を調べてみますと、私学の利用度はやはり悪いのです。私学の先生方の研究の水準が低いなんという議論はここですべきじゃありませんから、そういう議論をしないで、同じように共同利用できているかということを見ると、文部省から得た私の資料でも、現実にたとえば高エネルギー物理学研究所の場合には、国立大学関係の人が三百六十人も利用しているのに、私立はわずか三人です。この場合に、四十七年度に国立は二百七十人も利用しているのに、私立はわずかに二十四人です。それから四十八年、四十九年も、国立大学は三けたなのに、私立大学先生方は本当に一けたか十二、三人でございます。国立極地研究所でも、四十九年度、国立の人が二十人使っているのに、私立の人は七人しか使っていない。プラズマ研究所でも、国立の大学が二百四十一人のところ、私立はわずか三十人でございます。国文学研究資料館はいま整備中でそのデータはありませんと言っているから、ここには出ておりませんけれども、恐らくこのような利用状況になっているのではなかろうかと推定されます。  そうしますと、この第九条の二にいうところの国立大学共同利用機関というもののいわば考え方について、文部省行政指導としてきちっとして、これは単にそう書いてあるけれども私学をも含めて研究者が共同で利用できる機関だということを明確に指示をして、そしてそういう批判の出てこない運営にするにはどうするかということについての行政指導が必要だ、こう考えます。これが一点。  それに関して、高エネルギー物理学研究所の運営規則を見ますとこういうことになっておりますが、ここは文部省の方はどう解釈しておりますか。高エネルギー物理学研究所の組織運営規則。文部省のこの書類でいきますと六百五十八ページから九ページにかけて。それの第二条の二項です。御承知のように、高エネルギー物理学研究所の組織運営規則でいきますと、研究系があって、そしてその下に研究部門が置かれることになっております。その研究系には国立大学の教授並びに助教授がその責任者になりますね。二項を読んでみますとこう書いてあります。「前項に掲げる」云々と言って、応用測定技術の「研究部門の教授及び助教授は、国立大学その他の関係のある機関の職員をもつて充てる。」、こう書いてあります。この「国立大学その他の関係のある機関の職員」というのは内容は何ですか。
  86. 木田宏

    ○木田政府委員 前段の共同利用機関が真に共同利用機関としての趣旨にかなうような行政指導をする、私どももその点は十分御指摘の趣旨に沿って努力をいたしたいと思っております。  発生の経緯その他から見まして、国立大学付置の研究所が国立大学との関連を持ちながら独立したという経緯がございまして先ほど来御指摘のありますような九条の二の前段の規定が出ておるわけでございますが、しかし、私どもがっくりました趣旨は後段の点を十分に考えたいということでございます。  そういう点から考えてみまして、いま高エネルギー物理学研究所の組織規定につきましての御指摘がございました。いま端的に御質問のありました「職員」は、「国家公務員」というふうに読まざるを得ない仕儀に相なってございます。
  87. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私立学校法の三十九条にはこう書いています。「監事は、理事又は学校法人の職員」と書いて、括弧して「当該学校法人の設置する私立学校の校長、教員その他の職員を含む。」と書いています。そうですね。だとすれば、ここに言う職員は、国立大学——いまのここを私流に読みかえるのです。私流に読みかえれば、国立大学その他の機関に従事する職員というのを私立大学の職員と読みかえるならば、高エネルギー物理学研究所の共同利用には私大の先生方が利用できるというふうに解釈はできると思うのです。本来この運営規則の趣旨は国立大学の職員のいわば兼任を頭に置いているのですね。そこにすでに実際に運営の場合には私立大学が利用できないということを意味しているわけです。非常勤講師にはなれますけれども、私立大学先生方が客員の教授としてプロジェクトチームのキャップになるということはこれでは事実上はできないわけです。したがいまして、こういう規定を、いままで文部省考えてきた解釈で行政指導しても構わぬけれども、それじゃ差別になるから、ひとつこの運営規則の中できちっと私立大学先生方か共同——大臣が言っているとおりなんですから。分子科学研究所はそうするのでしょう、大臣のいままでの話によれば。それが実際に運営できるようなそういう規則を、これは文部省でできることですから、きちっとやって、そして私立大学人たちが共同で利用できるという方向づけを解釈としても統一する。そして解釈ができない場合は改正する。そして共同利用というのは私学を含めての日本の学術研究のための共同利用だというふうに変える必要があると思いますが、どうですか。
  88. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘になっておりますお気持ちは、私どもも全くそのように考えるのでございます。ただ、大変私どもも取り扱いに苦慮せざるを得ない実情がございますけれども、それは国家公務員法に基づきます国家公務員の官職の考え方がございます。国の官職につきます者、あるいは充て得る者というものは、やはり国家公務員としての位置づけを持ったものでなければなりません。いま国立学校設置法の施行規則で書いておりますように、「充てる」といったような表現を使います場合には、同じ公務員制度の中の職員を充てるという以外には運用のしようがないのでございます。したがいまして、客員部門等も設けたり、いろいろな工夫をしておるのでございますけれども、国家公務員制度あるいは国の行政組織の組織論からまいりますやむを得ざる制約によりまして、全くの民間の人をそのポストに充てるということが施行規則だけで処置ができるということになっていないという点はひとつ御理解を賜りたいと思います。
  89. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それで大臣、大事な問題ですから、実際にはこういうことになっているのですよ。共同利用研究所は、そういう意味では私学の優秀な専門家が国家公務員でないがゆえに、いわば共同利用のキャップとして運用できないのです。外国人はいいのですよ。おかしいですね。外国人は客員教授でいいのに、私立大学の日本人のすぐれた人が客員教授になれない。これをどうするか。これは一つ検討課題です。  そこでいまの局長の答弁に、私、反論しますけれども、一般行政職の公務員は専念義務に基づく考え方はやはりあると思います。ところが教育公務員特例法の二十一条では「教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。」こう書いてあります。これは教育公務員の場合ですね。教育公務員特例法のこの趣旨は、いわゆる一般行政職の専念義務みたいなものを前提にした公務員と違って、教育、研究に携わっている人の場合には、そういう兼務が、その任命権者の判断ないしは研究教育という観点から見て可能だからこそ、この教育公務員の規定が出てきているとぼくは思うのです。したがいまして、私立大学先生の場合でも、これは公務員じゃありません、しかし私立大学先生方が非常勤講師で国立大学の共同利用や大学に講義に行くことができるわけですから、そのときには公務員になっているわけです。ですから私立大学先生は、何もその段階で、兼任教授というのはあるのですから、国立から——これも非常に差別があるのですけれども、私がかつて大学にいたとき、国立大学の教授が私立の新しい大学をつくるときに教授になって申請したのですよ。だから国立から私立は行くことができる。ところが、私立の先生方は、国立の大学の教授を兼任したり、これはできない。国立と国立の間は兼任して、客員じゃなくて片一方の教授会にも出るのです。だから、おっしゃるとおり国立内部においては非常にスムーズに事が行けるのに、私立と国立の関係の中では、そういう先生方の交流というものが非常にやりにくい制度的仕組みに今日なっています。だから、制度はそうなっているというのは回答にならないのであって、共同利用研究所のこの理念が、国立大学をとりましょう、私流にとって、日本の学術研究のために、後段の「かつ、」以降が大事だとすれば、私立大学先生方を含めて、優秀な先生の場合——もちろん私立大学先生方が言うように、いろいろ持っていって私物化して研究できる、国立大学先生は家へ持っていけるけれども、私も持っていけないのは差別だなんてそういう議論になってきたらこれは乱暴だと思う。それは公共的な財産ですから、乱暴ですが、しかし共同利用できるということについて、教育公務員並びに大学の研究教育という観点から見た場合に、他の公務員と区別して運営していくということが今日の学術研究にとって非常に不可避になっているのではないか。そういう意味てこの運営の——ぼくは教育公務員特例法を盾にとって一つの理屈で、いいかどうか別としてまあへ理屈かもしれません、しかしやはり教育研究というものの持っておる特性を考えて、そういう交流が可能になるような運営の仕方と運営規則の改定の仕方、そういうものを今後検討していただきたいと思います。大臣所信を聞きた
  90. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘の点が公務員制度全般に絡むことでございますだけに、私どもも何とかその障害を乗り越えたいというふうに考えておるところでございますけれども、国立学校設置法だけで処置ができるとか施行規則だけで処置ができるという問題でございません。今後の大きい問題として私どももよく検討したいと思っておりますが、そのことだけちょっと御理解を賜っておきたいと思います。
  91. 永井道雄

    永井国務大臣 最初に朝日ジャーナルを読まれましたけれども、私は、朝日ジャーナルで述べているのと同じ考えなんです。それは国公私の別が非常にはっきりしています。しかしそれらのところに相当の人材がいるわけで、これを何とかしてこの共同研究という方向に向けていかなければならないという考え方です。ところが公務員制度というような一つのネックがあるというのはいま政府委員から申し上げたとおりでありますが、目標はそこにあるわけですから、私たちとしても一応公務員制度の枠の中でどういうふうにやっていくかということを十分に検討します。そしてそういう形で今後、いまの共同利用研究所はいまのような姿ですが、今後の制度をつくっていくという上でなお一層検討しなければならない非常に基本的な問題を提起されておると思いますので、十分にその点を考慮に入れて、今後の日本の研究教育機関の発展のために役立つ制度をつくっていく上での私たちとして非常に深く配慮しなければならない点として、きょう嶋崎さんが御提起になった問題を重要なものとして検討いたします。
  92. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこでもう時間が——この問題でもう一つ質問したい問題がありますので、これは局長大臣検討していただきたいというふうに私は思いますが、この国立学校設置法の中に共同利用研究所をつくった。これは、私にすれば、国立学校設置法のいまの段階では異質だと思っております。ところが今度学校教育法の一部を改正しまして、この法案が提案されたら再度細かに議論いたしますが、大ざっぱに問題を出しておきますが、今度は学校教育法の六十八条の二として、「教育研究上特別の必要がある場合においては、第五十三条の規定にかかわらず、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる。」こういう新しい考え方がここにまた出ているわけです。ここには一つの新しい大学大学構想、日本の学術研究の今後のあり方の一つ方向性が出てきていると思います。こういうことは、これが今後どういうふうになるかは、私もまだ立法府の中で議論するにしては、責任を持って言うほど勉強しておりません。しかし、日本の今後の学術研究の体制というものをどう考えていくかという場合に、大学をどうするか、大学院の仕組みをどうするかということはかなり突っ込んでたくさんの議論をしなければなりません。しかも国立と私学という高等教育機関における教育の重点がかなり私学にあるだけに、今後の大学大学や学術研究のあり方をどうするかというのは非常に重要になる。こういう条項が今度改正でもし出てきた場合に、国会を通すか通さぬか議論してみますけれども、これといまの国立学校設置法の第九条と結びつけますと、いままでは共同利用研究所は大学の外にはみ出ていた。ところがこの上に今度は大学院ができますと、学部を持たない大学院というものはこの六十八条の二の規定によってつくることが可能になるわけであります。そうしますと、今度は国立学校設置法の中の大学になるわけでございます。だから学校教育法を将来改正して、新しい大学大学構想というものを、学部を持たないものをつくるという方向性がすでに文部省としては大学改革一つ方向として出しておる。つまりそういう方向に合わせて第九条を理解するということは今日の段階でできないわけであります。いまの段階は少なくとも立法府としてはまだ法律が提案されてないのですから。しかし政策論として、われわれが日本の全後の学術体制をどうするかという場合に、すでに文部省の方では、政府提案なんですから、大臣を含めて。そういう方向に問題が出されているとするならば、この国立学校設置法で言う共同利用研究所とこれはどんな関連があるのか。技術科学大学院という大学院とこういうものとはどんな関連があるのか。これからの日本の全体の大学院ないしは日本の学術研究の体制というものを変えていく非常に大きなてこになると思うのです。この学校教育法の六十八条の改正は。したがいまして、そういう方向に持っていくためにすでに国立学校設置法では必要に迫られて異質な共同利用研究所ができていた。それを国立大学という枠内にほうり込んでいた。実際は入らぬものを入れていた。ところが実際は、大学改革という将来の展望から見ると、いつかはつながってくるであろうという、もし目的意識的にすでにこういう条文がなし崩し的にできていくのだとすると、これはいかぬと私は思うのです。とにかく立法府でわれわれが議論する場合には、やはり日本の将来の大学というものについては予算をつけてどうしていくかを決めなければいけないのですから、その方向性というものをなし崩しに気づいていたら、そこにいくのだという話じゃなくて、日本の大学改革構想というものについて少なくとも大臣が、いろいろな諮問機関から意見を聞かれるでしょう。その聞かれたものについて、法律として審議する前に当委員会やその他の機関でそういう問題を専門的に議論をするような場所を国会の中に設けておかないと、これは立法府無視の行政で、文部省誘導型の大学改革だけが進行していくという結果になるということを恐れるわけであります。  したがいまして、この共同利用機関という一つの条文の持っている、学校設置法の中の異質性ということを私が議論した意味は、実は、将来の日本の大学改革というものと密接不可分になり得る。それだけに、立法府としてこういう問題を内容を詰めておいて、同時に私学と国立が今日、設置者が国であっても研究教育に共同利用しなければならないものについては最大限に、法の改正をするとか、それからその他の、いま大臣が約束してくだすったようなことで私学の先生方批判が出てこないようなことを早急に対処していただきたい、これが二番目の問題でございました。  さて、三番目の問題に移ります。  大臣にこの間ちょっと耳打ちしておきましたけれども、この間、毎日新聞に、「電話一本「解雇」筑波大の外人教師」という記事が載っております。簡単にここに書いてある解説を読みますと、筑波大学で中国語の外人講師が電話で一方的に解雇を通告されたので、それを納得できないとする教師と教え子、中国語関係人たちがあるところに集まってそして議論をしたということを言って、この解雇を通告されたのは梅先生ですが、この先生は筑波大学と東京教育大学の二つに、筑波大学の方は常勤の講師です。教育大学の方は非常勤の講師です。そういう形で今日まで来たのに、突如電話一本で解雇の通告が行われているという報道がなされておりますが、これについて大臣並びに大学局長は現在まで調査されておられるのですか。その経過をお聞きしたい。
  93. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 お答えいたします。  筑波大学におきまして、昭和四十九年五月一日付で学長と梅氏との間に雇用契約を締結しまして、同民を昭和五十年三月三十一日までの十一ヵ月間、中国語担当の外国人教師として雇用いたしましたが、昭和五十年度におきましては大学地域研究研究科の開設に伴う中国語担当教官の増員等の措置によって、中国語関係教育課程の編成実施が可能であること、大学院の開設等に伴い、他の分野から外国人教師の雇用についての要望が全学的に非常に多いこと等の事情から、中国語担当の同民とは雇用契約を更新しないということにしたようでございます。  なお、ただいま御指摘のありました、その経緯でございますが、私どもの大学から報告を受けたところによりますと、一月末から二月にかけまして開かれた関係学群、学系、センターの教員会議等で雇用計画案を作成し、二月十四日の教育審議会、研究審議会に付議をいたしました。同日、両審議会で審議し、研究サイドの雇用希望もあるので、候補者の追加提出を認めることとし、全体の調整等は両審議会の会長、副会長等の会議に一任ということになったようでございます。二月二十四日、両審議会の会長、副会長に学長、副学長、企画調査室長を交えた会議で、追加候補者も含め雇用契約の調整を行い、雇用計画案を取りまとめまして候補者をしぼったようでございます。  このような経過によりまして二月二十七日の人事委員会にそのような雇用計画案が付議されまして承認をされた。梅氏に、二月二十七日の人事委員会におきまして、五十年度、筑波大学の方では外国人教師としては雇用しないということに人事委員会で取り決めたので、担当副学長が同氏に対し、ただいま御指摘のように、電話で五十年度は契約をいたしませんという旨を連絡をいたしましたところ、文書による通知を求められ、三月三日付で学長名の文書を内容証明郵便で発送した、こういう経緯というふうに報告を受けております。
  94. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは大臣、非常に大切な問題ですからよく検討を先でしていただかなければならぬ問題だと思います。契約書にはこう書いてあります。本人と大学との契約書ですね。専任の講師として雇うときの契約書には、本人を解雇する理由のある場合は次のように限られております。「勤務時間、時間割その他服務に関して、大学の規則および指示を守らなければならない。授業時間は週平均十時間をこえないものとする。」これに違反すると解雇になることになっていますね。そして解雇するときには、ここには「解約しようとする一方から少くとも三十日前にその旨を他の一方に通知するのでなければこの解約の効力は生じないものとする。」と書いてありますね。外人の教師の場合の解約の仕方については一ヵ月前に本人に通告しなければならない。ところが本人には電話一本かかった。こんな非常識な国際的に非礼なことはありません、まず大学として。しかも一ヵ月というから先月の二十八日だったかもしれませんよ。しかし正規な文書を大学側が出したのは三月三日ですからまず形式的な意味においても契約違反であります。いいですか、局長大臣。契約書の趣旨に沿っていない契約違反の解雇通告を出している、これが一つ。そこへ持ってきて、今度はこの人が解雇された理由は、いま大学局長の言われたのはうそです。こういうことになっています。今年度の授業計画もう全部発表されています。四月以降ですから発表されておるのは当然です。この授業計画の中には梅先生の授業はこんなにたくさんあるのですよ、大臣。月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、しかも全部それぞれについて授業課目の担当も決まっております。それから授業内容についてもすでに報告が出ております。これはもう大学のことですからそんな一月段階でやるのじゃありません。同時に、こういうふうに梅先生提出した授業課目の内容、それから四月以降の授業の担任がはっきり決まっておる、そういう現状の中で、電話で通告された結果、筑波大学内部の中国語担当の研究科では正規の文書が学長あてに出ております。その文書にはこう言っています。名前は担当の教授牛島教授、それから講師が二人連名で三つの理由で要望書が出ております。その要望書の出た日にちは三月の二日です。電話があった、まだ正規の文書、解雇通知は来ていません、三月の三日に解雇通知が来たのですから。三月の二日に現代語・現代文化学系の教授牛島教授、上野講師、菱沼講師、この三人の名前で大学長に対して要望書が出ています。その要望書の中では、いま言ったのと違うことが言われています。第一は、梅先生は昨年の春以来ずっと来たがすぐれた教師である、だからいままでどおりに講師として採用してもらいたい。第二番目は、いまの外国人教師はことしは中国語を外したんだという話ですね。時間割りにこれだけこしらえておいて、それを見たって外すのがおかしいというのはおわかりでしょうが、この第二には、五名の外国人専任講師の枠が認められる場合に、いろいろ議論をされたが、英、独、仏、露の四ヵ国が今年度は優先して、中国語を外した、こう言っているのです。それで中国語関係は一名も認められていないです。時間割りには中国語はいっぱいもうすでにできている。これはだれが決めたのか。これが一昨年の国会で私が講論した問題です。筑波大学における人事は、研究科、既存の大学でいえば教授会です。教授会や研究科で、その専門に一番近い人たちが、学生の教育、研究に携わっている人たちが今年度はこういう先生が要るこういう科目で講義をしよう、そういうことをいつも頭に置きながら、基礎になるのは研究科の関連する先生方会議で決めなければなりません。ところが筑波大学の人事は副学長を中心にしたさっきの人事委員会であります。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕 こういうところに人事委員会を持っておくと、必要な科目を上の方で専門もわかりもしないくせに人間をシャットアウトしてしまうような事件が必ず筑波で起きるとぼくは予言をしておきました。同じことが起きています。ここではすでに副学長会議が二月下旬に突然中国語を外すという方針を決めて、電話一本で解雇の通告です。しかもこの解雇というのは非常勤講師ならいざ知らず常勤の講師ですから、一年ごとに更新するといったって本人がやめると言わなければ、大臣承知のように大学では外人教師の場合には一年で首を切らぬのです。続けていて後追認して発令していくのです。ですから、この人は筑波大学の専任の外人講師です。そういう条件の先生を現場の研究科の先生、教授を中心にして今年度絶対要ると言い、時間割りもすでに全部組み、そういう段階で二月下旬に電話一本で解雇の通告、やったのは福田副学長です。この福田副学長の問題については、いずれ筑波大学を総論でその後の筑波ということでぼくはもう一遍ここの委員会でやらしていただきます。きょうはその問題には触れません。しかし、副学長が副学長会議で決めたことを、電話一本で専任の教官の首を切るということがあり得るかどうか、この点をまず大臣にお聞きしたい。
  95. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 大臣のお答えの前に事実関係でちょっとお答えさせていただきます。  ただいまお話のございました第一の点といたしまして、昭和四十九年五月一日に学長と梅氏との間に取り交わされました契約書は、一応昭和五十年三月三十一日までの雇用契約でございますので、三月末までの雇用契約が一応終了いたしました後における問題は契約といたしましては一応別の契約の問題である、契約期間中における解雇の問題ではないという点はひとつ御了承賜りたいと思います。  それから第二点としまして五十年度の授業計画関係でございますが、私どもに大学の方から報告を受けておりますところでは、先ほども申し上げた点でございますが、五十年度開設の修士課程地域研究研究科関係で中国語等を担当する専任教員を採用し、第二学群関係で中国語等を担当する専任教員を採用し、修士課程地域研究研究科関係で雇用する予定の外国人講師等を一応はめ込みまして、五十年度の中国語の授業計画は共通科目においてあるいは専門科目におきまして梅氏を外し、梅氏の担当時間はない、ただいま申し上げました採用予定者をはめ込みました授業計画を私どもの方には一応持参を願っておるところでございますので、その点も大学の方から五十年度の問題として授業計画が私どもに届けられておりますのはそのようになっておるということをひとつ御理解賜りたいと思います。  それからもう一点、二月二十七日の人事委員会におきまして中国語の外国人教師は雇用しないとされたので、辰野教育担当副学長から梅氏に対しまして電話で連絡をしたということでございますので、その点もさよう御承知願いたいと存じます。
  96. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大臣が回答する前に、いまのやつでは、それは文部省側に上がってきているのは、もちろん大学自治ですから、大学の中でどういう経過があるかは、結論だけはそういう報告でいいとぼくは思うのです。しかしこの経過の中にはもう明らかにこれは思想問題がからんでいるのです。現に副学長が談話でははっきり言っています。学内で偉大な毛主席というようなことを言って政治宣伝をするから困る、こう言っています。私は梅先生に会いました。私はそんなことをやっていません、テキストにはいまの現代中国ですから、現代中国の共産党編とか革命何とか編というテキストは使います。しかし、自分が、日中国交ということを一生懸命に考えている人が日本の大学に来ていて政治宣伝をやるという非常識な判定をしているのはおかしいじゃありませんかと本人は言っています。大学におる人間なら常識でぼくはわかると思う。だからつまりこの解雇の出し方といい手続といい、いまおっしゃったのは、ぼくはそのデータみんな持っているのです。大学院担当は今度は防衛庁の人が来るのですよ、反共調査をやっている人が。その人は研究経歴のない人です。いずれまた明らかにします。だから、大学院に持ってくるときには、研究経歴もなければ、ただ中国語がちょっとやれるというのをマスターの先生にちゃんと早く持ってきているのです。その調査の機関というのは何かということをいずれまたここで明らかにします。だからそういうのがちゃんと上に来ていて、そして第一群、第二群の重要な中国語の科目に全部時間割りを編成している人をある日に電話一本で解雇する。この契約書は一年契約になっているから、局長、これは四月以降の話だとおっしゃるでしょう。そんなばかなことはないですよ。というのは、大学で外国人教師というのは、一度採用したときに、やめるかやめないかは本人の意思がなかったら継続するのです。常識です。国際的礼儀です。それは。ですから外国人教師というものを大学で使うときには国際的な常識がなければならない。同時にまたその人の専門家としての立場を尊重しなければならぬと思う。そういうときに、契約は一年ごとに決まっていますよ、これは全部更新していくのですから、文部省予算をつけるのですから。だけれども契約は一年ごとだからといって、契約中で四月以降の話を通告したのですからそれは該当しませんという解釈を局長がされてはぼくは困ると思う。そういう意味で、ここでぼくは別にいじめようと思っているのじゃないですから、誤解せぬでください。つまりこういう経過になっているということを大臣頭に置いていただいて、大臣にお聞きしたいのは、こういう経過を頭に置いて、大臣は三木内閣文部大臣ですから、日中共同声明の精神で考えておられますか。外国人教師の場合、中国の関係考えて。
  97. 永井道雄

    永井国務大臣 日中共同声明の線で考えておりますし、国際関係は、日中に限らずきわめて重要であるという考えであります。
  98. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そういう意味で、筑波大学のこの人事は、私が一昨年の国会で必ずこういう問題が起きると予言した第一弾でございます。学生にも問題が起きています。それはいずれ体系的にやりますがね。先生方の人事という問題に必ずこういう問題があらわれるということの第一号なだけに、筑波大学に対する私の批判は当たっていると思っております。そういう意味で、大学問題だから文部省大学から言ってくるのを見ていればいいという性質のものではありません。日中共同声明が問題になり、三木内閣のもとで日中平和条約が結ばれようとしている今日の段階で、日本の大学に外国人講師として、しかも専任の講師として採用してきた人をある日突然電話で解雇、しかもその内容が思想問題を問題にしている疑いがある。ということになると、今日の日中関係の中で、日本の大学としてとるべきことではないと私は判断します。そういう意味で文部省として、大臣として、この問題にきちっとした対処の内面指導をしていただきたいという要望、これが一つ、これに対する回答。  もう一つは、もう時間もありませんから、東京教育大学の文学部は筑波大学と対応が違っております。東京教育大学の文学部は、教授会で一度採用しました、その後悔先生についてプライベートな問題を知りました、そこで、教室会議で徹底的に議論いたしました、その教室会議の結果、私たちは教授会決定どおり、来年度非常勤講師として採用したいという内定がいま行われています。したがいまして、この人事は東京教育大学を通じて文部省に上申されると思います。その際に、いまの二番目の質問ですが、東京教育大学の教授会が決定したその人事について、文部省は追認していただけるのは当然だと思うが、この点についての二番目の回答。前段と後段の回答をお願いしたいと思います。
  99. 永井道雄

    永井国務大臣 まず前段、内面指導というお話がございましたけれども、私先ほど申しましたように、国際関係というものを非常に重んずべきでありますし、国際関係でなくても、先生方とそれから学校の運営に当たっている者とのコミュニケーションがなるべく十分に行われて、納得がいく形で変更が行われるということが望ましいというふうに考えておることをまず申し上げておきます。これは筑波大学に限りません。  第二番目に、東京教育大学の教授会で検討が行われておって、そして梅先生のことを来年度考えておられるということについては、私たちも若干承っておりますが、この場合にも大事なことは、大学の御決定でありますから、大学の御決定というものを重んじて私たちは弾力的に対処するというふうに考えていることを申し上げておきます。
  100. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 第一は非常にあいまいですから、これを日中関係を頭に置かれるという大臣の回答と——しかし、私の経過の説明でおわかりのように、筑波大学の、肝心の専門の担当関係の教授を中心にして講師の連名で要望書が出ているのですよ、正規の解雇通知の前に。しかもこの先生は、いま申し上げたような経過で時間割りはみんな組んである。ですから、この解雇は、必ず社会問題になります。国際問題に必ずなります。それだけにきちっとした永井文部大臣の対処の仕方をしておかないと、これから非常に大きな問題になる可能性を持っておりますから、そういう意味で前段の筑波大学内部の対処についてもきちっとした対処をお願いしたい。これは改めての要望でございます。二番目の問題はそれで了解。  そこで最後に、もう時間が来ましたからやめますが、一昨年来私は筑波大学の問題に関連して本委員会でいろいろな質問をしてまいりました。その中でいまだに解決していない重大な問題がありますから、これも大臣は新しい気持ちで今後善処していただきたいという要望でございます。  それは、東京教育大学の文学部の教授や助教授の人事のプロモートが大変停滞しております。筑波大学のときに私はこれがもう明確にここでは問題だということを議論し、木田局長にも、大学の内部の人事についてこうしなさい、ああしなさいということは言えないけれども、教授会が決定して評議会に上がっているものを文部省に出す手続をとらせるくらいの内面指導はできないだろうかということを申し上げました。それがいまだに何にも解決していません。ですから、大臣、こんな事態が起きています。東京教育大学では古代ローマ史の日本で数える専門家でいつまでも助教授だった。東京大学が見るに見かねて教授で授用しました。日本の学術研究という観点から見て、そのすぐれた学者はなぜ東京教育大学では万年助教授で、東京大学に移るといって一挙に教授になれるのでしょう。そういう人事が筑波大学関連して東京教育大学で行われ、今日まで一つも解決しておりません。したがいまして、筑波大学の梅先生の問題は単に筑波大学の梅先生の問題だけじゃなくて、日本の大学のあり方の問題に関連をしております。教授会の決定、評議会とに関連する大学内部の人事の問題について、非常に暗い事態がいまだに続いております。それだけに梅先生の問題をもし教育大学文学部の教授会決定どおりそれを尊重されるとすれば、同時に一緒に出てくるであろう一切の人事問題についても、大学の決定を促進していただくように配慮していただきたい。この委員会での私の長い悲願であります。日本の大学考えるがゆえに、この問題を幾度か討議してまいりました。ですから、奥野文部大臣から、対話協調教育専門家として民間から出られた永井文部大臣のことですから、筑波大学の中にあったいままでの一切のことをこの辺できれいさっぱり、新しい生き生きとした研究、教育ができるように対処していただきたい。それはなぜかというと、プロモートが行われませんから非常勤講師しか雇えません。だから教育大学の学生は同じ授業料を払って同じ勉強をしなければならないのに、他大学に比べて差別されているということになります。ですから現在残っている学生——新入生はいませんけれども、残っている学生たちの教育権を保障するという、国民の教育権の立場から見ても、どうしても速やかに対処しなければならぬ事態だと私は考えております。その問題もあわせて検討していただきたいということを御要望申し上げまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  101. 久保田円次

    ○久保田委員長 羽生田進君。
  102. 羽生田進

    ○羽生田委員 私は、国立学校設置法の一部を改正する法律案について御質問を申し上げますが、その前に文教行政基本的問題について大臣の御所見を実は少しお伺いしたいと思いますので、さようにひとつお願いいたします。  文部大臣が去る二月ここで所信表明をなされまして、また五十年度文部省所管の予算の御説明がございました。その中で特に社会体育、スポーツに重点を置くというようなことで、私はこれは大いに賛成をいたしております。特にその中で、いままで文部省はとかく閉鎖的で、学校開放ということをしたがらなかった。そこを学校の施設を開放するというような説明を聞きましたが、これは私、ぜひそうしていただきたいのですが、一体学校開放ということにつきまして具体的にはどんなことをお考えになって、どんなふうにされるつもりなのか、お伺いしたいのです。
  103. 永井道雄

    永井国務大臣 私は具体的に考えておりましたのは、学校のいろいろな運動の便ですね、グラウンドのようなもの。今日でもそういうことをすでに試みているところがあります。しかしそのことから生じる管理上の問題もあって、なかなかめんどうな問題ではありますが、前向きに考えまして、やはりそういうグラウンドのようなものを一般社会に公開して、そうして使用できるような形が出てくることは望ましいということがその一つでございます。
  104. 羽生田進

    ○羽生田委員 それでは余りいままでと変わりがないということですね。特にいままでの御説明にはそういう説明がなかったのですが、今回特に学校を開放するという御説明があったんだけれども、特別なことはそれではないということですね。従来と変わりはないということですね。
  105. 永井道雄

    永井国務大臣 先生にちょっと伺いますが、それは義務教育機関の開放の問題、それとも大学も含めての開放の問題でお聞きになっているんでしょうか。
  106. 羽生田進

    ○羽生田委員 中、小学校の場合でございます。
  107. 永井道雄

    永井国務大臣 私どもは学校開放ということで考えておりましたのは、従来のような考え方を一層進めていくというスポーツの問題、しかしそのほかに、実は今度の所信表明の中で申し上げましたのは、学校の子供たちを社会に連れ出すという意味におけるいわゆる自然の家のような構想、それを広域でやっていくというようなことも含まれているわけでございます。
  108. 羽生田進

    ○羽生田委員 学校開放については、私ももうそれ以上はあれしません。  そこで、この学校開放とあるいは社会体育、スポーツというものに大臣が関心を持たれて進めていかれることに非常に敬意を払うのですけれども、残念なことには学校保健ということに関しまして全然お考えになっていただけない、あるいは極端なことを言うと、マイナスじゃないか、こう思われるのです。なぜそんなことを申し上げるかというと、大臣所信表明の中に健康とか保健とかいうことが一言半句もないことなんです。五十年度予算の説明の中にやっと一言健康ということがあったんですね。これはもう大臣の頭の中に、子供たちの健康教育とかあるいは保健指導とか保健管理とかいうものが全然ないんじゃないか、こんなことを言うと失礼ですけれども、私はそう言いたいのです。保健指導あるいは保健管理、健康教育、特に学校保健というものに関して大臣は一体どんなお考えを持っているのか、ひとつお伺いしたいのです。
  109. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、保健を決して軽視した考えはないわけです。特にわが国で戦後体位の向上ということが重要視されました。そこで子供に栄養をつけてやればいいとか、そういうふうなことが相当配慮されまして、また学校給食などもそういうことについては考えたわけです。しかし、体位が向上しても果たしてどのぐらい本当に体力を持っている子供がいるかというようなことについては、ずいぶん最近までいろいろな研究もあり、東京大学の江橋先生なども資料を挙げて、体位は向上したけれども体力がこれに伴わないということを言っておられますので、そういう点については私も非常に重要な示唆が含まれていると考えております。でありますから、学校におけるスポーツというものを重視したいということは、かねがね考えているところでありまして、これは一層推進していきたいと思います。しかしそういうスポーツ以外の保健、健康管理、こういうふうな問題も非常に大事である。そのことについても、私自身決して軽視している考えではなくて、やはりスポーツによって積極的に体力をつくり、さらに保健という立場から十分に知識を持って、そしてよい習慣をつけて健康管理を図っていくということは、当然に重視されるべきことであると考えております。
  110. 羽生田進

    ○羽生田委員 実は私、昨年も奥野前文部大臣に同じような御質問を申し上げたのです。しかし同じようなお答えをいただいたのです。ところが、五十年度予算を見ても学校保健ということに関して全然前進がないのですね。ほかがみな前進しておるところに前進がないということは後退といってもいいと思うのです。  そこで学校保健、学校給食、学校安全、学校体育、こういうような言葉が学校保健の中で普通使われておりますが、文部大臣は一体その中でどれが一番重要だとお思いか、ひとつお答えをいただきたいのです。
  111. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 大学局の関係一つ答えいたしますと、かねて先生からも、学校におきまして子供たちの健康のことを扱います養護教諭の問題につきまして、その養成をどう改革し、どう改善し、進めていくかという問題がございました。これにつきましていろいろな調査研究の結果、従前は御案内のように養護教諭の養成所で養成を図っておりましたが、茨城大学と愛知教育大学で養護教諭養成所を正規の四年の学部の課程に切りかえていくということで、五十年度からまず二ヵ所やらしていただこう、そうして養護教諭の養成につきましての本格的な体制をとり、この面における前進をぜひ図っていかなければならぬという御要望を受けまして、今後努力をしてまいりたい、かように考えておりますので、大学局の関係でその点をお答えしておきます。
  112. 永井道雄

    永井国務大臣 先生のお尋ねは、体育、保健、給食、どれが大事かというのだと理解いたしますますが、相互に関連をいたしておりますし、いずれも軽視できないものである、すべて重要視していくべきものであると私は考えております。
  113. 羽生田進

    ○羽生田委員 小中学校というのは特に発育盛りで、その人間の一生の健康をつくる時期なんです。したがって、学問なり教育も当然必要なんですけれども、何をおいても学校保健、特に保健教育、健康管理、これを忘れてはならないと私は思うのです。したがって、学校給食とか学校安全とか、あるいは学校体育とかスポーツとか、学校保健は一生の健康体をつくる手段なんです。したがって、どうしても学校保健に重点的にいろいろなことを施策していただきたい、私はこう思っているのです。それで実は、私は学校給食を別にとやかく言うのじゃないのですけれども、その一例が、余り時間がないので変な例で申しわけないのですけれども、五十年度予算で日本学校保健会に対する補助金が二千万円ですか、それから日本学校給食会に二億五千九百万円、十倍以上の補助金を出しているのです。これは何かどうも、二億五千万円というものを私は削れというのじゃないのですけれども、学校保健会に対します補助金もそのぐらいまで、もちろん五十年度どうのこうのじゃないのですけれども、お考えとしてそのぐらいのことをひとつ考えていただけないかどうか、そこを実はお伺いしたがったのです。
  114. 永井道雄

    永井国務大臣 決して予算の金額が直ちに重要度の尺度ではないように考えております。先生がおっしゃいますように、保健が非常に大事である。私もなお一層いまの先生のお言葉をきっかけに勉強いたしたいと思っておりますが、同時に給食も大事であるという考えを持っておりますわけで、決して金額を尺度としてあらわすような形で、一方を重要視いたしまして、他方を軽視したという考えは毛頭ございませんということを申し上げておきます。しかし、御指摘の点は重要であると思いますから、よく勉強いたしたいと考えております。
  115. 羽生田進

    ○羽生田委員 私は、昨年実は御質問申し上げたときのお答えの中に、体育局長答えの中ですが、四十九年度学校保健ということを重視する意味で、全国に三万人もおる養護教諭の関係の深い専門職を一人確保した、九ヵ月の予算だけれどもそれを入れたいというようなお話を伺いました。ところがその後、あとわずかしか四十九年度は残っておらないのですけれども、そういう専門職員が採用になったかどうか、これはちょっと体育局長にお伺いしたいのですけれども……。
  116. 永井道雄

    永井国務大臣 大変恐縮でございますが、体育局長は間もなく参りますので、参りましたらただいまの先生の御質疑に対してお答え申し上げるようにいたしたいと思います。
  117. 羽生田進

    ○羽生田委員 そういうようなことで、学校保健というものに対して非常に失望しておるのです。特に永井文部大臣、民間異色大臣ということで非常に期待申し上げておったのですが、実は全国の学校保健関係者は失望しておると思うのですが、私はぜひこの点に対して御再考をお願いしたいと思います。  そこで、時間がありませんので、国立学校設置法の一部改正についての御質問を申し上げますが、無医大県をなくそうというような文部省の御方針なんですが、無医大県をなくせば、いまの医療需要は満たされる、こういうようなお考えだと思うのです。そこで、医師の地域的な偏在を避けるとかいろいろなことで、各県に医大を一つ置こう、これはわからないじゃないのですけれども、医療というのは、これは当然医師一人でできるものじゃなくて、そのほかにパラメディカルというような関係人たちがたくさんいなければできません。そこで、看護婦さんの養成というようなことも国立でもやろうというようなところで、今度看護婦養成ということにも積極的に進まれておりますけれども、厚生省関係で医療問題というのはやっておりますが、医科大学等を設置して医者がどんどんできてくる、看護婦ができてくる、いろいろなことでそのバランスその他を、これは厚生省とは十分連絡をとってやっていただいておると思うのですが、そこらの点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  118. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま先生お話しのように、医療需要の増大に伴って、医師の増員、看護婦の増員が当然必要とされておるところでございます。この点につきましては、医師養成と看護婦養成のバランスを見てまいりますと、医学部関係入学定員が、国公私立全体を通じまして、四十一年から四十九年まで七九%増と相なっております。  一方、看護婦につきましては、厚生省の所管の分も含めまして、同じく四十一年から四十九年までの入学定員ベースでとってみますと、これもやはり七三%の増を見ておるところでございまして、養成数の伸び率という点では、大体七九%、七三%ということで、看護婦につきましても相当な増員が行われておると考えられます。  しかし、現在看護婦の養成、確保というのは非常に深刻なむずかしい問題に相なっておるようでございまして、ただいま厚生省の方の看護婦需給の計画を私ども承りまして、文部省といたしましては、准看も含めまして全体数の約二割が文部省関係で養成しておる数でございますが、今回御提案申し上げておりまする看護学部、あるいは医療技術短大看護科の設置でございますとか、あるいは高等学校におきまする衛生看護科の関係等におきまして鋭意努力をしてまいりたい、かように存じております。  なお、公立の大学、短大で看護の養成をやっていただいておるところにつきまして、五十年度から特に看護教育の重要性にかんがみまして、新規に約一億一千万円の補助金も計上するということを文部省としてもやらせていただいたわけでございます。厚生省の方の全体の計画を私ども常時承り、厚生省のいろいろな御助言もいただきながら、文部省として最大限の努力をやってまいらなければならないきわめて緊急の課題と私どもも心得ておる次第でございます。
  119. 羽生田進

    ○羽生田委員 それから医師養成というのは、根本的に考えてみて、いまのお話でも医師というのは生涯職業ですね。ほとんどが死ぬまで医師をやっておるのですが、看護婦というのは、定着率と申しましょうか、相当看護婦業務から離れていく人があるのですね。いまの七九%増、七三%増といっても、これはとても医師対看護婦のバランスがとれなくなるのじゃないだろうかという心配をしているのですが、そこのところは、文部省あるいは厚生省もどんなふうにお考えか、ちょっと簡単にお伺いしたいのです。
  120. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま入学定員の点でお答えいたしましたが、先ほど申しましたように、厚生省の方から私どもいただいております全体の年次計画を厚生省でお立てになります際、看護婦の当該年度の必要数をまず出して、その年の初めに就業しておる数を出して、いま先生指摘のように年間にやめていく看護婦さんの比率を出し、かつ上級学校でさらに勉強しようということで、進学で退職する方々の数を求め、それにただいま申しました新卒で新たに就業する数を出し、さらに現在看護婦の第一線の仕事から離れておられますが、要するに潜在的な看護婦の就業者数、もう一遍職場に帰っていただける方、そういった計数を厚生省の方で詳細御検討の上、年次計画をお立てになり、それをもとといたしまして私どももただいま申しましたような努力をしておる、こういうことでございます。
  121. 羽生田進

    ○羽生田委員 これは大臣にぜひお伺いしたいのですけれども、いまの医師の養成というのは、教育文部省関係でみんなやっておるのですが、大学を出まして国家試験は厚生省がやっておる。したがって教育文部省で、資格を与えるのは厚生省ということになるんですが、大臣はそこのところをそれでいいとお考えかどうでしょうか。実は、昔私どもは医者になるときには大学の教授というものは非常に信頼もされ、大学で卒業試験をパスすれば医師免許証を与えてもよろしいという形であった。ところが戦後、大学教育じゃだめなんだ、そこをもう一遍チェックしなければ免許証はやれないというようなかっこうになってきているわけですが、そこのところはいかがでしょうか。
  122. 永井道雄

    永井国務大臣 私は医師あるいは教師などもそうでございますが、非常に社会的な厚生、福祉に重要な役割りを果たす専門的な職業であると考えます。そこで、大学は当然、大学として養成のために全力を挙げるべきでありますけれども、しかし、大学だけでそれを完了するというのでなくて、たとえば医師の場合に、試験というものを、社会の厚生の問題を担当している厚生省というものが責任を持ってその行政に当たっていくということは至当であると考えております。問題は、われわれ文部省におります者と、それから厚生省と緊密に連絡をとりながら大学内容というものを充実し、そして社会の医療の要求にこたえていくことであると思いまして、そうした連絡調整というものが必要であると考えますが、現在の段階において医師試験というものが行われるということは、私は妥当なものであり、それを厚生省が担当しているということも方法として適当なものと考えております。
  123. 羽生田進

    ○羽生田委員 もう一つ、医師の養成について、実は自治医科大学、それから産業医科大学、防衛医科大学、こういうわれわれに言わせれば何かこう、特別医師養成というようなふうに考えられるんですが、これから先も、これは憶測なんでしょうが、農林医科大学とか運輸医科大学とか、これはもう考えられないことはないと思うのですが、そういうようなことに対して、大臣、これから先どうでしょうか。私は、どうもこういう特殊教育で医師を養成するというような考え方、これは何か少しへんぱな考え方じゃないかと思うのですが、これからも農林医科大学や運輸医科大学、こういう問題が出てきた場合には、文部省はどうされますか。
  124. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの御指摘の自治医科大学あるいは産業医科大学というような問題でございますが、もちろんある意味で専門的な側面を持っていると思います。自治医科大学の場合には僻地などで活動するそういうお医者様を養成するということは、非常に必要である、これは現在わが国で無医地区というようなものも相当数が多いという状況の中でぜひともその問題を考えていこうということでありましょうし、また産業医科大学の場合には、産業活動の中での安全確保というようなことを考える医者の養成ということを考えるようでありますが、私どもといたしましてはこの問題に関してやはりもちろん設置審議会におきまして十分検討いたしまして、そしてそれが審議会における基準と照らして妥当であるという場合にはこれを認めてしかるべきものと考えます。したがって、今後の問題といたしまして幾つかの可能なケースをお出しになりましたけれども、それは具体的にケースが起こりまして基準に照らして妥当かどうかということで判断を決めるべきものと思っております。
  125. 羽生田進

    ○羽生田委員 それから富山大学の薬学部をわざわざ富山医科薬科大学というので別個にするという問題、先ほど嶋崎先生からも御質問があったのでございますけれども、この理由には、医学、薬学一緒にやればいい方向に進むんだというようなお答えがあったのですが、これは将来ともこういうような形で総合大学から特にはずして医科薬科大学というようなものを考えられるかどうか、そこをひとつお伺いしたいのです。
  126. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 富山につきまして、富山医科薬科大学という新しい大学ということでただいま御審議をいただいておるわけですが、従前医学部がないところに薬学部のみがあった国立大学というのは富山だけだったわけでございます。そして富山大学の薬学部につきましては和漢薬研究所という研究所がありまして、この和漢薬研究所が臨床の研究ということで病院との関連をぜひ持ちたいという御要望等もありまして、そういういろいろな具体の事情を背景といたしまして、富山につきましては医科薬科大学という構想でいま御提案を申し上げているわけです。他地域において医と薬で一つ大学という構想はただいまのところ私どもは持っておりません。  それから、先ほど大臣からお答え申し上げましたことについて若干補足さしていただきたいと思いますが、自治医科大学文部大臣大学設置審議会、私大審議会に諮問しまして、審議を経て文部大臣が認可した学校教育法に基づく文部大臣所管の私立大学でございます。産業医科大学はただいま準備財団で御準備中のようでございますが、いずれ正式の審査を経なければならないことかと存じます。  ただいま先生指摘のように、いろんな分野でそれぞれの医師を養成する大学が全部独立していくのかという御指摘でございますが、やはり先ほど、これも先生からお話がございましたように、医師の養成はまさに生涯にわたる勉強であり、研修であろうかと存じます。その意味で学部教育における共通な医師としての勉強という点はやはり非常に重視しなければならぬ、それぞれの個々の特定分野へ突っ込んでいく深い研究なり教育というものは卒業後の研修も含めて考えていくというその基本的な考え方も十分私ども踏まえながらいろんな問題に対処してまいらなければならない、かように考えておりますので、その点ちょっと補足をいたしておきます。
  127. 羽生田進

    ○羽生田委員 私もそういう考え方なんです。これからいろいろな職域において、農村にどうも医者がちっとも来ない、農林医科大学をつくって農村に医者を引っ張ってこようとかあるいは国鉄とか飛行機いろんなところに医者が来ないから運輸医科大学をつくろうじゃないかというような考え方になっては困るのです。そんなことで医者を養成してもらっちゃ困るというので、今後そういう点は御注意していただきたい、実はこういうお願いなんです。  時間がありませんので、最後に分子科学研究所の創設について、これも私の希望でございますけれども、先ほど嶋崎先生から大変詳しく御質問がありました。例の四つのこういう研究所がございますけれども、やはり一般に開放するといっても、どうしても私立の学校の方からは入りにくい、あるいはその他大学関係なく一般の研究者が入りにくいという形では、せっかく——考え方はだれでも使えるのだという気持ちでも、これは入っていけないと思うのです。そういう意味で、特に分子科学なんというのは、わが国におきましては世界的にも相当に進歩している学問だと思うのです。したがって、だれでもが入れるような、本当に入りやすいような形にぜひひとつやっていただきたい。これは要望申し上げておきます。  時間でございますので、これでやめます。      ————◇—————
  128. 久保田円次

    ○久保田委員長 次に、文化功労者年金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。三塚博君。
  129. 三塚博

    ○三塚委員 ただいま議題となりました法案につきまして大臣見解を承っておきたいのですが、今日の経済社会は、高度経済成長時代が長かっただけに、物質第一主義、お金があれば何でも、幸せまで買えるような、文化まで買えるようなそういう錯覚を起こす、きわめて憂慮すべき社会状況であろうと思います。そういう意味で、文部省、文化庁の果たす役割りはきわめて重要であると思います。特に、民族は永遠の生命を持ちながら生々発展していくわけでありますが、その中において、教育、文化というものは継承されて初めて価値が高まっていくものだというふうに考えます。文化の中に含まれる芸術、学問、さらには宗教、ありとあらゆるそういうものが大事にされ、さらに振興されていくということが、人間性回復といいますか、平和で豊かな私どもが目指す社会というものに到達するのにはきわめて重要なポイントであろうと思うのでありますが、この件に関しまして、文化振興についての大臣所信をお聞かせをいただきたいと思います。
  130. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま先生の御指摘の点につきまして、全く同感の気持ちを深くするものでございます。戦後わが国におきまして、敗戦の直後、窮乏という状況があり、そこからやがて復興、経済成長という方向に向かいましたことも、一面においては理解できる点があります。しかし、過度の競争やあるいは物質偏重というようなもの、そういう状況の中で人心荒廃が起こっているということは、もう広く人々が憂慮している点であります。  そこで、私どもといたしまして、また私自身強く感じておりますのは、日本の歴史も非常に重要な曲がり角に来ておる。そして戦争以前からの、あるいはさらに明治以前からの幾多の重要な文化的伝統というものもあり、また文化遺産というものもあるのでありますから、これは先生の御指摘のように、ただ放置しておいたのでは少しも継承されるということはない。教育の場におきましても、こういうものを一層尊重して学習するようにしなければなりませんし、また文化遺産というものは保存すべきものは保存する、あるいは文化的な活動というものについて文部省としてもできるだけ力をかす、そういう形で、わが国の過去の伝統を墨守するというのではなく、創造的に継承していくという気持ちで文化の振興を図ることに全力を挙げたいと考えております。
  131. 三塚博

    ○三塚委員 それでは、この議案につきましてちょっと具体的にお聞きをしてまいります。  この文化功労者年金法の対象になられておる功労者及び文化勲章受賞者、現在まで何名ぐらい選ばれておりますのか、その辺をちょっとお知らせください。
  132. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、まず文化功労者につきましては、昭和二十六年の制度創設以来今日まで二百六十八名と決定されております。なお、現存者はこのうち百十九名でございます。  なお、文化勲章につきましては、昭和十二年に文化勲章令が創設されましてから百七十三名がこれを受賞いたしまして、このうち六十六名がただいま現存をされておる次第でございます。
  133. 三塚博

    ○三塚委員 ただいまの功労者及び文化勲章の受章の基準といいますか、その選考はどういうふうにやっておられますか。
  134. 清水成之

    ○清水政府委員 文化功労者の選考でございますが、御承知のとおり、文化功労者年金法で、わが国の文化の向上に特に功績顕著な方、こういうことでございます。また同法によりまして選考審査会を設けて選考する、こういうことに相なっておる次第でございます。そこで、法律に基づきまして、十名の選考委員を幅広く、しかも全国的な立場から御選考いただける方を委員にお願いして、御選考をいただいておる次第でございます。  ところで、どういう基準でというような御質問もございましたが、細かい基準は文部省としてお示しをいたしておりません。法の趣旨に基づきまして、委員に選ばれた諸委員方々が幅広い見地から公正に御選考をいただく、こういう運営をいたしておる次第でございます。
  135. 三塚博

    ○三塚委員 それで、文化に関する年金がほかにもあると思うのですが、文化関係というのは文化功労者年金だけで、あとはないものでしょうか。ありましたら、それをちょっとお知らせください。
  136. 清水成之

    ○清水政府委員 便宜、学術関係も広い意味でございますので含めさせていただきますが、ほかに芸術院の会員年金がございます。それからまた日本学士院の会員年金があるわけでございます。  金額の点はお尋ねございませんので、また後ほど進展に応じてお答えいたします。
  137. 三塚博

    ○三塚委員 金額は私の手元にあるのです。四十九年度予算では、功労者年金は二百万円であったと思うのですが、学士院また芸術院の年金を見ますとランクがあるわけですね。たとえば学士院院長さんは百五十万円、芸術院院長さんは百四十万円、また部長、会員、こういうことで十万ぐらいずつ開いておるわけでございますが、この辺は同じ学士院であり芸術院であるということであれば、余り開かぬほうがよろしいのではないだろうか、こういうふうに思うのです。たしか開いておるように思うのですけれども、どうですか、この辺は。
  138. 清水成之

    ○清水政府委員 一つは、開いておるというお尋ねの意味が、文化功労者と、それから芸術院会員並びに学士院会員との開きの点だと思うわけでございます。これらの点につきましては、一つはこの制度発足のときの滑り出しの沿革上の問題がございまして、そしてある間を置いて上がってくる場合に、滑り出しのときの金額が基礎にあるということがございます。それからもう一つ制度面で考えますと、御承知のとおり、文化功労者年金につきましては、どちらかと申しますと生活給的な要素というよりも顕彰的な要素がございます。それから一方、芸術院なり学士院につきましては、それぞれの法令にございますように、これはまた優遇というような制度上の開きもございまして、御趣旨の点もごもっともだと思いますが、そういうことで差があるということでございます。
  139. 三塚博

    ○三塚委員 人間国宝というのは年金の対象になっておるのですか。これをちょっと教えてください。
  140. 清水成之

    ○清水政府委員 それは文化庁の方から……。
  141. 三塚博

    ○三塚委員 それでは人間国宝は、いらっしゃるまで……。  本法律の改正の趣旨は、政令に委任する、これが基本になっておるわけですね。なぜ政令に委任しなければならぬのか、この辺ちょっと明確にお答えください。
  142. 清水成之

    ○清水政府委員 政令に委任するという点でございますが、昨年末の臨時国会でお願いした点でございますが、この点実現をされていただかなくて、私どもちょっと残念だったわけでございますけれども、今回改めてまた政令でお願いしたい、こういうふうにいたしておるわけでございます。その理由といたしましては、提案理由説明にもございますように、これはたとえばでございますが、国民の文化に対します意識の変化、社会的事情の変遷、それからまた国家公務員給与ベースあるいは国民の消費水準の動向、こういうものも勘案をいたしてこの年金額を決めてまいりたい、かように思うわけでございますが、現在金額を変えます場合は法律改正をお願いしなければなりません。ところが、いろいろ変化が次から次出てまいりますので、これらの点につきましてひとつ政令に譲らせていただきたいということがございます。  なお、その年金の額につきましては、御案内のとおり、予算をもちまして国会の御審議、御検討をお願いいたしますので、それを踏まえまして、できるだけ速やかにこの功労者の方に年金を交付させていただきたい、こういう趣旨で、政令でということでお願いをいたしておる次第でございます。
  143. 三塚博

    ○三塚委員 いまの政令の理由、余り迫力がないですな。というのは、年金の決定をするに当たりまして、法律になっておれば、ここで議論をしながら、これはもっと至当なところまで引き上げるべきであるとか適当でないとか、そういうことでやられると思うのです。ところがどうも日本の大蔵省は出し渋る、切ることが仕事だと思っておりますので、経済事情がだんだん厳しくなりますと、年金の所要額がそういう意味で制限をされるのではないかというふうに心配をするわけです。文化は、先ほど大臣が言われましたとおり、これはきわめて重要な行政であり、さらに文化功労者、また功労者にならぬ方でも多くの文化人がおられるわけでありますが、わが国の芸術、文化振興のために大変御努力をいただいておるわけでありますから、その代表者である功労者に対しましては、やはりそそうのないように、その生活上のメンツがそのことによって失われることのないようにきちっとしていかなければならぬと思います。大臣以下皆様方一生懸命やられておるようですから、まあそういうことはないと思いますので、先ほど言いました人間国宝、ひとつお知らせください。
  144. 内山正

    ○内山政府委員 ちょっとおくれて参りまして、大変申しわけございません。  人間国宝に年金が支給されているかという御質問でございますが、重要無形文化財の保持者、いわゆる人間国宝につきましては年金は支給をいたしておりませんけれども、その保持者が保持しておられるわざを維持向上させるため、あるいはその後継者の養成のための経費の一助といたしまして特別助成金というものを、五十年度におきましては年間百万円でございますが、これを支給いたしまして、その保存を図っているところでございます。
  145. 三塚博

    ○三塚委員 文化功労者、そして人間国宝、日本語的な感覚から言いますと、国の宝の方が上のような感じがするのです。それで功労者というのは、文化功労者は別として、功労者というのはたくさんおられるわけです。衛生功労者、消防功労者、たくさんいられる。国宝というのは、これは国の宝であり、きわめて数が限られておる。この宝が亡くなれば、そういう意味で国の大変な問題だろう、こういうふうなことにもなりかねない点でありまして、それを継続する後継者を養成するために特別助成金百万、片方の功労者二百五十万だということになりますと、これはバランスがくずれて、そっちの方が二百五十万、こっち百万という金高において差がつくような感じがしまして、国宝は功労者の下であります。こういうようにとられかねないだろうと思うのです。せっかく人間国宝という指定をされる、国宝に指定される方は、経験の中で、非常な努力、研さんの中でその芸域なりその境地を開かれた人が大変多いわけであります。そういう意味で、功労者の方々を拝見しますと、学識、知能抜群にして、そういう意味の功績きわめて顕著なそれぞれのオーソリティーがなられるようでありますが、その学問の道、芸術の道に、厳しさにおいては差はないと私は思うのですけれども、人間国宝の方は、人生過程において到達するまでの間大変御苦労をいただき、血と汗がにじみ出るような努力の中でやられて国宝に指定されているようなケースがきわめて多いように感ずるわけです。そういう意味で、東京大学出身がエリートであり優秀である、そして普通の大学及び大学を出ないでそういう立場を開かれていく人の方がいかぬ、こういうような思想にもつながりかねない。きわめて残念な感じもするのでありますが、私の考えが間違いであれば、これは訂正するにやぶさかでございません。  そういう意味でその辺の、もう少しひとつ所見、考え方をお聞かせください。
  146. 安達健二

    ○安達政府委員 重要無形文化財の保持者、これを俗称でございますが、人間国宝と言っておるわけでございます。重要無形文化財は演劇、音楽、工芸技術等の無形のわざでございまして、このわざを残すためにはそれを体現しておるところの人にがんばってもらわなければならない、こういうことでこの重要無形文化財の保持者の方々のわざの練磨、後継者の養成のためのいわば形式的な意味での助成ということでございます。したがいまして文化功労者年金とは性格が違うわけでございまして、実態的にも重要無形文化財の保持者で同時に文化功労者に列せられておる方もあるわけでございまして、したがいまして、両制度は違うというたてまえで私ども考えて運用いたしておるわけでございます。  ただ、先生のいみじくも御指摘いただきましたように、この重要無形文化財の保持者の方々は大変苦労してそのわざの練磨、後継者の養成に御尽力をいただいている方でございますので、現在の特別助成金の百万円につきましては、私どもとしては今後ぜひひとつこれを増額してその労に報いるとともに、そのわざの練磨あるいは後継者の養成に御尽力をいただきたいということにつきましては、先生の御説に全く同感でございます。
  147. 三塚博

    ○三塚委員 時間もありませんし、委員各位に大変御協力をいただきましたので、本日はこの辺でやめさせていただきますが、どうぞ長官ただいまのような方向で今後も行政を御担当いただき、来年度予算におきましてはその辺の十二分の御配慮を賜らんことを御要望いたしまして、終わります。ありがとうございました。
  148. 久保田円次

    ○久保田委員長 次回は、来る二十六日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十二分散会