運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-03-14 第75回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十四日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 久保田円次君    理事 河野 洋平君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 藤波 孝生君    理事 三塚  博君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 山原健二郎君       上田 茂行君    臼井 莊一君       床次 徳二君    楢橋  進君       西村 英一君    羽生田 進君       深谷 隆司君    小林 信一君       辻原 弘市君    長谷川正三君       山口 鶴男君    栗田  翠君       有島 重武君    高橋  繁君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部政務次官  山崎平八郎君         文部大臣官房長 清水 成之君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         文部省大学局長 井内慶次郎君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         文部省体育局長 諸沢 正道君         文部省管理局長 今村 武俊君         文化庁次長   内山  正君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      廣江 運弘君         自治省財政局財         政課長     石原 信雄君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     山口 鶴男君 同月二十八日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     楯 兼次郎君   高橋  繁君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   楯 兼次郎君     山口 鶴男君   石田幸四郎君     高橋  繁君 三月三日  辞任         補欠選任   有島 重武君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     有島 重武君 同月十四日  理事山原健二郎君二月二十六日委員辞任につ  き、その補欠として山原健二郎君が理事に当選  した。 同日  理事森喜朗君同日理事辞任につき、その補欠と  して西岡武夫君が理事に当選した。     ————————————— 三月十二日  学校教育法の一部を改正する法律案藤波孝生  君外四名提出衆法第五号)  私立学校法等の一部を改正する法律案藤波孝  生君外四名提出衆法第六号) 二月二十六日  私学助成に関する請願外四件(渡辺三郎君紹  介)(第八五九号)  同(小川新一郎紹介)(第九七八号)  同(大久保直彦紹介)(第九七九号)  同(大野潔紹介)(第九八〇号)  同(大橋敏雄紹介)(第九八一号)  同(近江巳記夫紹介)(第九八二号)  同(沖本泰幸紹介)(第九八三号)  同(鬼木勝利紹介)(第九八四号)  同(北側義一紹介)(第九八五号)  同(栗田翠君外一名紹介)(第九八六号)  同(小濱新次紹介)(第九八七号)  高等学校施設整備に対する財政措置に関する請  願(下平正一紹介)(第八六〇号)  私立学校振興助成法制定に関する請願下平正  一君紹介)(第八六一号)  私立幼稚園教育振興に関する請願高沢寅男君  紹介)(第八六二号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(嶋  崎譲紹介)(第八六三号)  学校給食充実及び保護者負担の軽減に関する  請願下平正一紹介)(第八六四号)  同(中澤茂一紹介)(第八六五号)  同(原茂紹介)(第八六六号)  女子教職員育児休暇法制定に関する請願(嶋  崎譲紹介)(第八六七号)  同(塚田庄平紹介)(第八六八号)  養護教諭全校必置等に関する請願外一件(湯  山勇紹介)(第九七四号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願外一  件(木島喜兵衞紹介)(第九七五号)  同外二件(嶋崎譲紹介)(第九七六号)  同外三件(山田芳治紹介)(第九七七号) 三月一日  日本フィルハーモニー交響楽団助成に関する  請願山原健二郎紹介)(第一〇一六号)  公立高等学校新設に対する国庫補助制度創設に  関する請願外二件(清水徳松紹介)(第一〇  一七号)  養護教諭全校必置等に関する請願外一件(湯  山勇紹介)(第一〇一八号)  同外一件(湯山勇紹介)(第一〇六一号)  同外一件(山崎始男紹介)(第一一〇〇号)  同外一件(湯山勇紹介)(第一一〇一号)  女子教職員育児休暇法制定に関する請願(辻  原弘市君紹介)(第一〇一九号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇二〇号)  同(長谷川正三紹介)(第一〇六三号)  私学助成に関する請願(有島重武紹介)(第  一〇二一号)  同外三件(井岡大治紹介)(第一〇二二号)  同外四件(小林信一紹介)(第一〇二三号)  同(坂井弘一紹介)(第一〇二四号)  同(坂口力紹介)(第一〇二五号)  同(鈴切康雄紹介)(第一〇二六号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第一〇二七  号)  同外一件(村山喜一紹介)(第一〇二八号)  同外四件(浅井美幸紹介)(第一〇五四号)  同外二件(井岡大治紹介)(第一〇五五号)  同(岡本富夫紹介)(第一〇五六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一〇五七号)  同(田中昭二紹介)(第一〇五八号)  同(高橋繁紹介)(第一〇五九号)  同外二件(長谷川正三紹介)(第一〇六〇  号)  同(栗田翠紹介)(第一〇九三号)  同(竹入義勝君紹介)(第一〇九四号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第一〇九五  号)  同(林孝矩紹介)(第一〇九六号)  同(広沢直樹紹介)(第一〇九七号)  同(三谷秀治紹介)(第一〇九八号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇九九号)  同(浅井美幸紹介)(第一一四八号)  同(新井彬之君紹)(第一一四九号)  同(有島重武紹介)(第一一五〇号)  同(石田幸四郎紹介)(第一一五一号)  同(小川新一郎紹介)(第一一五二号)  同(大久保直彦紹介)(第一一五三号)  同(大野潔紹介)(第一一五四号)  同(大橋敏雄紹介)(第一一五五号)  同(近江巳記夫紹介)(第一一五六号)  同(岡本富夫紹介)(第一一五七号)  同(栗田翠紹介)(第一一五八号)  同(矢野絢也君紹介)(第一一五九号)  同(山田太郎紹介)(第一一六〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一一六一号)  同(渡部一郎紹介)(第一一六二号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(辻  原弘市君紹介)(第一〇六二号)  同(有島重武紹介)(第一一〇二号)  大学夜間部廃止反対に関する請願辻原弘市  君紹介)(第一〇六四号) 同月六日  文教政策の確立に関する請願加藤陽三君紹  介)  (第一一九二号)  国立大学学費値上げ反対等に関する請願(山  田太郎紹介)(第一一九三号)  女子教職員育児休暇法制定に関する請願外六  件(安里積千代紹介)(第一一九四号)  私学助成に関する請願(有島重武紹介)(第  一一九五号)  同(沖本泰幸紹介)(第一一九六号)  同(鬼木勝利紹介)(第一一九七号)  同(北側義一紹介)(第一一九八号)  同(栗田翠紹介)(第一一九九号)  同(小濱新次紹介)(第一二〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一二〇一号)  同(荒木宏紹介)(第一二三五号)  同外二件(井岡大治紹介)(第一二三六号)  同(栗田翠紹介)(第一二三七号)  同外五件(長谷川正三紹介)(第一二三八  号)  同(正森成二君紹介)(第一二三九号)  同外一件(村上弘紹介)(第一二四〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一二四一号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一三一七号)  同(栗田翠紹介)(第一三一八号)  同(阪上安太郎紹介)(第一三一九号)  同(嶋崎譲紹介)(第一三二〇号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一三二一号)  同(辻原弘市君紹介)(第一三二二号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第一三二三  号)  同(村上弘紹介)(第一三二四号)  同(山口鶴男紹介)(第一三二五号)  同(山原健二郎紹介)(第一三二六号)  同(和田貞夫紹介)(第一三二七号)  東京教育大学祖師谷農場等跡地の払下げに関す  る請願津金佑近君紹介)(第一二三二号)  養護教諭全校必置等に関する請願外一件(山  崎始男紹介)(第一二三三号)  同外一件(湯山勇紹介)(第一二三四号)  同外六件(山崎始男紹介)(第一三一六号)  私立幼稚園教育振興に関する請願土橋一吉君  紹介)(第一三一四号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願外二  件(山田芳治紹介)(第一三一五号) 同月十二日  女子教職員育児休暇法制定に関する請願(有  島重武紹介)(第一三五七号)  同(山口鶴男紹介)(第一五〇五号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願外二  件(山田芳治紹介)(第一三五八号)  同(有島重武紹介)(第一四一四号)  私学助成に関する請願浅井美幸紹介)(第  一三五九号)  同(新井彬之君紹介)(第一三六〇号)  同外一件(有島重武紹介)(第一三六一号)  同(石田幸四郎紹介)(第一三六二号)  同(小川新一郎紹介)(第一三六三号)  同(近江巳記夫紹介)(第一三六四号)  同(沖本泰幸紹介)(第一三六五号)  同(高橋繁紹介)(第一三六六号)  同外六件(長谷川正三紹介)(第一三六七  号)  同(正木良明紹介)(第一三六八号)  同(矢野絢也君紹介)(第一三六九号)  同(山田太郎紹介)(第一三七〇号)  同(渡部一郎紹介)(第一三七一号)  同(大久保直彦紹介)(第一四一六号)  同(大野潔紹介)(第一四一七号)  同(大橋敏雄紹介)(第一四一八号)  同(近江巳記夫紹介)(第一四一九号)  同(岡本富夫紹介)(第一四二〇号)  同(沖本泰幸紹介)(第一四二一号)  同(鬼木勝利紹介)(第一四二二号)  同(栗田翠紹介)(第一四二三号)  同(山原健二郎紹介)(第一四二四号)  同(栗田翠紹介)(第一四五二号)  同(山原健二郎紹介)(第一四五三号)  同外五件(長谷川正三紹介)(第一五〇六  号)  私立幼稚園教育振興に関する請願萩原幸雄君  紹介)(第一四一五号)  私立大学に対する国庫助成増額に関する請願  (寺前巖紹介)(第一五〇七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一七号)  文化功労者年金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三四号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 久保田円次

    久保田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事森喜朗君より理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  3. 久保田円次

    久保田委員長 御異議なしと認めます。よって、辞任を許可するに決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの森喜朗君の理事辞任による欠員のほか、委員異動に伴う理事欠員により、理事が二名欠員となっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
  4. 久保田円次

    久保田委員長 御異議なしと認めます。  それでは、       西岡 武夫君 及び 山原健二郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 久保田円次

    久保田委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次、これを許します。栗田翠君。
  6. 栗田翠

    栗田委員 きょう私は、最初高等学校教育の問題について伺いたいと思います。  三木内閣が成立して以来、三木総理もまた永井文相も、教育を特に施策の中で重視するということを言っておられます。特に、文部大臣所信を先日は伺いましたけれども、これを拝見いたしますと、いわゆる新制高校高等学校教育について余り触れていらっしゃらないと思うのです。これは後期中等教育の非常に重要な部分をなしておりまして、いわゆる六・三・三制、初等中等教育の最後の完成ともいうべき部分高等学校だと思うわけです。これについて余り触れておられないように思うのですけれども、文部大臣は、この高等学校教育ということをどのように位置づけて  いらっしゃるでしょうか。
  7. 永井道雄

    永井国務大臣 確かに余り書いていないわけです。そこで、どう考えているかということなんですが、大体六・三というところは義務教育で定着しております。定着しておりますといいましても、これについて私は完全定着というような言い方はしたくないのは、相当疑問があります。というのは、六・三のところもいわいわゆる受験体制過熱化とかあるいは教科が過密になっておるということで授業についていけない子供というような問題がありますから、六・三のところもどうすべきかと思いますが、まず、しかしそれは一応ある程度の安定は達成した。  そこで、いま私が考えていますのは、高等学校考えますと当然幼稚園というものを考えなきゃいけないわけです。どちらについても義務化の声がございます。また、高等学校の場合には義務化といかないまでも全入という考え方もあるのではないかという御意見もあるわけです。これは、それぞれもっともな意見に聞こえますけれども、やはり学校体系全体で考えまして、そうして幼稚園のところに力を注いでいくべきか、それとも高校のところにもっと力を注いでいくべきか。たとえば高校義務化というようなことを考える場合にも、現在の高校を全体的に義務化する方法もありますし、それからイギリスなどがやった方法ですけれども、六・三の後に一年、二年と義務化のところをふやしていくという方法も可能であるわけです。そうでありますので、いまその問題について私自身考えているだけではなく、教育課程審議会でこの問題は相当徹底的に議論していただきたいということをお願いいたしまして、実は私が就任しましてから文部省のいろいろな審議会を見て、特にいま力を注いでいかなきゃいけないものはどこか。ほかにいろいろありますが、あの審議会は非常に大事であるということで力を注ぎまして、審議会レギュラーメンバーだけでなくて、ほかの方たちあるいは地方の意見をどんどんあそこに反映することを工夫しているわけです。  そこで、そういう段階でございますから、この高等学校についての私の考え方を織り込む前段階であるという意味合いにおいて、現在は非常に経済的に困っている側面がありますから、そういう面についてはできるだけの補助をするという方向は打ち出していかなければいけない。これは今年度予算の中でそこには力を注いだ。それも決して十分ではないと思いますが、力を注ぎました。高等学校をどう性格づけるかということについては、私個人だけではなく、その審議会においても大いに検討していただいて、次の段階に進んでいかなければいけない、こう考えているので御指摘のような表現になったというわけでございます。
  8. 栗田翠

    栗田委員 所信表明を伺いますと、小中高一貫教育内容精選充実ということを言っておられますが、まだ義務制にするかどうか、全入制にするかどうか、いろいろ疑問はあるとおっしゃっておりますが、そういう中で、一貫教育ということを特にはっきり所信で述べていらっしゃるわけです。これはどういうお考えに立ってのことでしょうか。
  9. 永井道雄

    永井国務大臣 それは、小中は当然一貫でなければならないのですが、そこのところでさえ必ずしも一貫でなくて、小学校はまあ中学校への準備段階で、試験みたいなものがある。試験勉強をやっているということがあります。高等学校の場合でも、高等学校でやはり教育というのは一応完成していくはずのものなんですが、これは御承知のように、もう大学受験の場と化しているわけです。そこで、そういう姿の中で小中高授業が繰り返しになっているものも多いばかりか、非常に過密でございますから、一貫ということと実はもう一つ精選ということを考えているわけです。ところが、一貫とか精選ということを考えますと、当然審議会にもこれまでの検討一つの見解というものが熟しつつありますが、社会というと、まあ審議会以外の教育界方々、いろいろな御意見があるわけです、その一貫やり方あるいは精選やり方について。そこで、そういうものはいま方々の御意見を聞いて、一日も早く一貫ということ、そしてそこで一応完成していくのだったら、小中高でどういうふうに教科精選して一貫するようにすべきか、こう考えているわけでございます。
  10. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、やはり六・三・三の中で一つ教育段階完成させていくという考え方は、この一貫教育の中に含まれているわけでございますね。
  11. 永井道雄

    永井国務大臣 六・三というところが義務教育として完成していく。その後、高校というのが出てきますが、学校というのはやはりそれぞれの段階完成でありますのと、それからもう一つは、一貫という表現を用いますのは、先生もお詳しいと思いますが、日本学校小中高、非常に繰り返しになっているのが多いのです。それは知識の蓄積として非常にむだがあるんじゃないか。完成ということもありますけれども、上級学校に進んでいくときに、みんなそれぞれの段階で勝手にというかばらばらに教科をつくっていて一貫性考えていないこれまでの考え方を改めていくのがいい。その考え方からいきますと、大学でも、これは文部省が直接カリキュラムをつくりませんけれども、実際は大学のたとえば一般教養課程をつくっていったりするときに、高校などの課程もよく調べまして、繰り返しになったりしないように本当はしていくことが一つ可能性として考えられるべきものではないか。文部大臣が干渉するという意味ではありませんけれども、そういうふうに考えるべきだということから、私は一貫ということを言っているわけです。
  12. 栗田翠

    栗田委員 最近高等学校進学率は大層高くなっております。九〇%を超えるか超えないか、全国平均でもそうですし、場所によりましては九六、七%、八%ぐらいのところも出てきているわけです。これは戦後間もなく六〇%、七〇%の進学率だったときとはずっと様子が変わってきていると思いますが、そういう意味での高等学校の性格的な変化と言うとおかしいですが、進学率が非常に高くなってきたという意味での終戦直後との変化は出てきていると私も思うわけです。以前、このように数が多くなってきているので、ある意味では準義務教育とも言えるのではないだろうかということを七十二国会で質問いたしましたときに、時の奥野文相がそういうことも言えるというふうにお答えになっておられます。大臣はこの点についてどうお考えでしょうか。
  13. 永井道雄

    永井国務大臣 奥野前々文部大臣の御発言の内容を私はよく存じませんのですが、やはり義務化ということを考えるときにはいろいろな条件があって、相当慎重でなければいけないと思います。準義務化という言葉意味が何であるか私によくわかりませんけれども、義務化という場合には少なくも財政的に絶対に政府が責任を負えるという財源の問題があります。それからもう一つは、社会変化あるいは文化変化に対応いたしまして、すべての国民に絶対にそれだけのことを教育しておかなければ教育上間違っている、そうすることが正しいんだという教育学的な裏づけというものが必要だと思います。  私が初めに高等学校のことを考えると幼稚園考えざるを得ないと言いましたのは、やはり義務化の問題を考えるときには相当慎重でなければいけないと思いましたので、また、いま思っておりますから、そう言ったわけです。  おそらくその準義務化という言葉は、全入になっている、数が大ぜいになっているというような意味合いではないかと思いますが、私は、義務化の問題に関しては、私自身、これをどの段階で実現していくという場合でも、学校教育体系全体を考えて相当の自信を持って臨まなければならないものと思っております。
  14. 栗田翠

    栗田委員 いままでのお答えを伺っておりますと、所信表明高等学校についてあまり述べられていないけれども、これは高校教育を軽視しているのでは決してなくて非常に大事に考えていらっしゃる、ただ、いまいろいろの曲がり角に来ているということからはっきりとした定義づけその他ができないという、検討段階だからであるというふうに解釈してよろしいわけですね。
  15. 永井道雄

    永井国務大臣 全く仰せのとおり、私は、軽視しているというわけでは全くなくて重視しているんですが、文部大臣になります前から、学校教育体系のあり方というものはいま非常に大きな曲がり角に来ていると思っております。この仕事につきまして一層考えておりますが、それでありますだけに重視はしております。重視をしていることと言えば、私は大学重視をしていますが、大学とか高校、それをばらばらに考えてはまずいので、重視はしますが、軽々に私自身考え方をこの段階で申し上げない、そういうことです。
  16. 栗田翠

    栗田委員 所信の中で、いかにして受験体制過熱化の現状の改善を図るかという課題に取り組まなければならない、こう述べておられます。大学受験地獄もございますが、まず第一段階として、高等学校への受験地獄が父母の大きな問題になっているわけです。高校受験地獄の原因は一体どこにあるのでしょうか。
  17. 永井道雄

    永井国務大臣 いま高校志願者のうち高校に入れます者は、九八%が入っております。つまり二%が入れないということでありますから収容能力という方から言いますと、実はいま入れ物はそれほど小さいということはありません。ですから、前年度からいわゆる積み残しというふうな姿になっている人の数は、間違っていたら政府委員が修正しますが、多分二万人程度と思っております。  では、なぜ試験地獄的になっているかというと、これはやはり大学というところが相当ピラミッド型と言いましょうか、格差がございまして、そうしてある種の大学に入りたいということで高校で競争している。そうすると、そのある種の大学に入れそうな高校に是が非でも入らなければいけないということから集中競争現象が起こる。それが中学段階における受験体制過熱化であって、私は、収容のキャパシティーの方が小さいということよりその方が重要であると考えております。
  18. 栗田翠

    栗田委員 いま二%だけが積み残しであるから収容能力の方はさほど問題でないというふうにおっしゃいました。確かにいまの受強地獄高等学校間の格差の問題と言いますか、そういう問題をもめぐって大変大きな受験地獄の問題を起こしていますし、そこで学区制の問題などさまざま論議になると思いますが、きょうは、それは、私はおいておくことにします。  収容能力は、大体収容していて大丈夫だとおっしゃいますけれども、いま高校増設の運動というのはずいぶん大きな声で全国で起こっております。もし高等学校がもっとふえるならば、進学率も高まるし、いわゆる潜在的な進学希望者というのはずいぶんいるのではないだろうか。また二万人であろうとも中学浪人を出すということ、このことも大層問題ではないだろうかと思うようになっているわけですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  19. 永井道雄

    永井国務大臣 高校増設の問題が全国的に起こっているとおっしゃいましたけれども、それは全国的に人口急増地域で起こっているというふうに見るべきだと思います。つまりベビーブームの波が高校に押し寄せてきましたのは、三十七年から四十二年ぐらいだったはずですが、あのときは文字どおり全国的だったと思います。現在から五十年代の中期にかけて予測されますものは、人口急増地域のものであります。そこで、高校の不足という問題は全国の人口急増地域に起こっておりますから、そこに関しては、先ほどの収容力が十分ありますということは当てはまらないわけです。でありますから、ここについてはいろいろな形の財政的な裏づけが必要になってくる。それで、政府もこれについて財政的な裏づけに努力をいたしまして、三百億円の起債枠というものを設けましたが、その問題は先ほどの収容力がありますというふうに言いましたことについて、若干修正をすべき点だと思います。  それから、二万人程度の人が積み残しになっているからそこで考えなければいけないということなんですが、それはもちろん積み残しになっている人について考えなければいけませんが、他方、私が学校体系全体についていろいろ考えていると申しましたのは、たとえば各種学校というものがございます。各種学校の中にも、充実しているもの、規模の大きいもの、それほどでないもの、いろいろありまして、そういうものの一部を専修学校的なものに固めていったらどうかというようなことを国会でも御議論になっているというふうに私は理解しております。そこでいままでの考え方は、とにかく高校に行き、そして大学に行きというのですが、その大学も必ずしも中身が充実しているというふうになっておりません中で、日本の経済というものも急成長時代を終わって変わってきている。そうすると、むしろ各種学校的なものも、これまで以上に重要になる可能性もある。そういうものとの関連において考えなければならないので、私は、いま二%収容し切れなかった人口の問題についても、単純に全国的な高校増設問題ということで対処すべきかどうか、少し時間をいただきたいという気持ちでおりますのが偽らざる気持ちです。
  20. 栗田翠

    栗田委員 文部省は昭和四十九年度、それから五十年度、それぞれ高校建設補助金の要求をされております。四十九年度に三十億円、五十年度に七十億円を要求しておられるわけです。いままでの論理でまいりますと、こういうものは義務教育でないのだし、地方自治体が持つべきものであるから、国としては交付税、また起債などで賄っていくような立場で考えていくべきだというのを文部省大臣なども当時言っておられたわけなんです。けれども、そう発言された後に、こうして二年にわたりまして補助金の要求をしておられます。これはいままでとはお考えが多少変わった部分があるのだろうと私たちは解釈しますけれども、補助金要求を四十九年、五十年になさったというこの考え方変化の根拠はどういうところにあるのでしょうか。
  21. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 高等学校の建物の問題につきまして、地方自治団体が責任の地位にあるという考え方については、私ども四十九年、五十年予算要求の際、変わらない考え方でございますが、先ほどからもお話に出ておりますように、全国的ではございませんけれども、人口急増地域における高等学校の建物の逼迫の状況は相当なものがございますので、国庫補助金を支出することによってその学校の整備を促進いたしたい、こういう気持ちで、文部省がイニシアチブをとるべきであるといったような考え方から予算要求したわけでございます。しかしながら、予算折衝の過程におきまして、そういう原則があったり、あるいはまた財政措置として、起債措置によって相当な措置がなされるという見込みがついたこと等のために、予算折衝の最後の段階でおりたといったようなことになっているわけでございます。
  22. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、文部省としましては、いままでのいろいろなたてまえはあるけれども、いまのお話ですと、人口急増地での逼迫というのは非常に大変なものであるから、教育的な見地から見ても、補助金も出しましてこの窮状を救いながら高校教育を円滑にやっていこう、そういう教育的な配慮を加えられたということでしょうか。
  23. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 この事態に対して文部省教育的な配慮と申しますか、そういう牽引力になる必要があるというような意味で予算要求したといういきさつでございます。
  24. 栗田翠

    栗田委員 自治省に伺います。  自治省も四十九年七月十日の事務次官通達で、やはり高等学校の施設整備について国庫補助制度を新設されたいことということを言っておられます。また、第十六次地方制度調査会の中でも同じようなことが答申されておりまして、「高等学校建設費及び私学助成費については、従来いずれも地方費のみでまかなわれていたが、前者にあっては高等学校進学率の著しい向上にかんがみ、新たに国庫補助制度を創設することとすべきである。」というふうになっております。自治省のこのことについてのお考えを伺いたいと思います。
  25. 石原信雄

    ○石原説明員 お答えいたします。  従来、高等学校の新増設につきましては国庫補助制度はございませんで、もっぱら地方債あるいは地方交付税等の財源で対処してまいったわけであります。最近、主として人口急増地域などを中心に高等学校増設の必要性が高まってまいりまして、これらの地域においては財政的にもかなり苦しくなってきたという事情もあり、でき得べくんば高等学校の新増設について補助制度を創設してほしいという声が強まってきております。自治省といたしましては、できることならば、こういった事態に対処する意味で国庫補助制度を創設できないものかということで、関係省にもその検討をお願いしてまいったわけであります。しかし、昭和五十年度につきましては、国庫財政の状況、地方財政の状況を総合的に検討の結果、補助制度は見送るということになったわけであります。したがいまして、このような結論に沿って、私どもといたしましても、地方債の枠の拡大あるいは地方交付税の算定内容充実というようなことで対処してまいりたい、このように考えております。
  26. 栗田翠

    栗田委員 重ねて自治省に伺いますが、全国都道府県の知事会で、要望書なども同様の趣旨のものが出ております。人口急増地といいますと、大抵大きな都市を抱えた大県だと思いますけれども、そういうところからもそういう声が上がってきているということは、いま高校建設をしていくのに地方財政が非常に苦しい状態にあるというふうに思うわけですが、その辺は自治省、どうお考えになりますか。
  27. 石原信雄

    ○石原説明員 御指摘のように、比較的財政力があると考えられているような団体におきましても、最近は景気の停滞等に伴う税収の伸びの鈍化でありますとか、あるいは歳出面においては人件費の増大等いろいろな歳出要因の増加ということで、財政運営は必ずしも楽でございません。そういうような実情から、この高等学校の新増設に対して補助制度を創設してほしいという声があるわけであります。
  28. 栗田翠

    栗田委員 大蔵省に伺いますが、このような文部省、自治省からの要望が出ているにもかかわらず、四十九年度の三十億また五十年度の七十億を大蔵省は削られました。その根拠はどういうところにあるわけでしょう。
  29. 廣江運弘

    廣江説明員 お答えいたします。  高等学校の設置運営に関する経費につきましては、たびたび御説明もございましたのですが、高等学校教育が地域住民に対する教育サービスの提供であるという事柄の性質上、従来から交付税あるいは地方債によって財源措置をされてきております。この基本的な考え方は今後とも堅持していくのが適切ではないか、こういう考え方で、いま御審議をいただいておりますような内閣で決めました予算になっていると思います。
  30. 栗田翠

    栗田委員 私学高等学校以下幼稚園まで八十億という補助金を今度出されておりますが、大蔵省はこれを認めていらっしゃるわけですね。私学の場合こういうものを認められて、高校建設の場合にはいまのような財政制度のたてまえということをおっしゃいました。財政制度のたてまえということだけで言えばどちらも同じだと思うのですが、なぜ高校建設の補助金の方だけが削られているのかということです。そのことについて伺いたいわけです。
  31. 廣江運弘

    廣江説明員 高等学校の建物の建設につきましても補助制度は行われておりませんが、必要な財源措置ということにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、交付税であるとかあるいは地方債で措置をされることになっているわけでございます。  それから、先生から私立高等学校等経常費助成補助金という八十億についての御質問がございましたのですが、先ほど御説明いたしました現在の財政制度のやり方はそのまま堅持することにいたしまして、各都道府県の間における助成格差が生じておりますので、そうしたものを是正し、かつ充実するために特別に国から都道府県に対して行うということでございまして、たてまえは貫いておると思います。
  32. 栗田翠

    栗田委員 いまの後の方のお答え、よくわかりませんが、高校建設補助金でも、それならそのたてまえを貫いて補助を出すことはできると思うのですけれども、どうして違うのですか。
  33. 廣江運弘

    廣江説明員 そういうわけでございますから、ことしは四十九年度に比べまして実に五倍の地方債の枠がとってある、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  34. 栗田翠

    栗田委員 地方債が五倍になったとおっしゃいます。昨年度の地方債の高校建設の実績は幾らぐらいになっていますでしょうか。
  35. 石原信雄

    ○石原説明員 四十九年度の地方債の最終許可は、まだ一部残っておりますけれども、おおむね三百億円近い額になると思います。ただいま主計官から御答弁申し上げましたのは、地方債計画の枠として前年度対比で五倍の枠を確保したということでございます。従来この計画枠とは別に、いわゆる枠外債という形で地方債の許可をいたしておりまして、そういったものを加えますと、ほぼ三百億に近い額になろうかと思っております。
  36. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、五倍にしたとおっしゃいますけれども、それは地方債の枠、名目六十億が三百億、五倍になったのでありまして、実質的には昨年三百億使っているということですね。しかも、これは高校建設予算だけで三百億、用地費を入れますと四百億近いというふうに、私、聞いております。ですから、いま建設費の問題を言っておりますけれども、実質的には何にもふえてないんじゃないだろうか。名目は五倍だけれども、中身がふえていないのに、起債をふやしたから、ふやしたからということで、それが唯一の理由のようになって削られているというように、私、思います。実際にはふえておりませんね。三百億というのは実質的にはふえていないわけですね。いかがですか、大蔵省。
  37. 廣江運弘

    廣江説明員 起債の枠で五倍ふえておる、こう申し上げたわけでございまして、そのほか実行の面におきましては、先ほど石原財政課長がお話しになったようなことになろうかと思いますし、なっていると思います。
  38. 栗田翠

    栗田委員 それでは、ことしも枠外債を大いに活用してふやすつもりだ、そういうお考えをお持ちなんですか。
  39. 石原信雄

    ○石原説明員 五十年度の地方債枠につきましては、五十年度に実施が予想される高校建設事業費を基礎にいたしまして、五十年度の予算上の単価を乗じて必要な事業費を算定しております。それに対して七〇%の起債充当率を乗じて枠をつくったわけであります。したがいまして、地方債枠というのは一応原則的にはそれで運用されるわけでありますが、ただ年度途中における情勢の変化等によって多少の弾力性は持っております。ただ、従来枠外運用しておったものを、今後はできるだけ枠内で、はっきりとしたルールを確立して財源措置をしようということで枠をふやしたわけでありますから、枠外を従来以上にどんどん認めるということではありません。ただ、そうかといって、しからば実質的な地方債財源の増がないではないかという御疑問が起こるかもしれませんが、今回の枠の設定に当たりましては、五十年度に予想される事業費を一応想定しまして必要な枠を確保したつもりであります。また、この地方債とは別に、地方交付税の算定上も、一般財源措置として高校建設の投資的経費の充実を図ってまいりたい、このように考えております。
  40. 栗田翠

    栗田委員 文部省に伺いますが、去年は一年間で高等学校はどのくらい建ったでしょうか。
  41. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 七十七校でございます。
  42. 栗田翠

    栗田委員 これは三年計画でずっとやってきて建ち上がったもので七十七校ですか。
  43. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 高等学校として設置されたもの、建物との関係なしに、学校としてオープンしたものが七十七校でございます。
  44. 栗田翠

    栗田委員 いま全国高校建設の計画が立てられていると思いますけれども、四十九年から五十五年度くらいまでに、全国ではどのくらいの数の高校を建てなければならないのでしょうか。その必要の数ですね。
  45. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 全国の都道府県教育委員会から、各県内の具体的な実情に即して計画を持っておる高校新設計画数を四十九年度から五十三年度までの五カ年にわたって報告を求めましたところ、全国で三百三十六校開設する必要があるという報告が来ております。
  46. 栗田翠

    栗田委員 去年並みの三百億の起債で、ことし以後の必要に応じてこれが建てられていくのでしょうか。
  47. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 三百億の起債の枠で、ただいま都道府県教育委員会から報告のある学校の建設は可能でございます。
  48. 栗田翠

    栗田委員 具体的なその中身をもう少し説明してください。
  49. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 全国から報告された数字は三百三十六校、四十九年から五十三年度までのプランでございます。  来年度の三百億の積算の内容となりますのは、四十九年度開設して五十年度建築の必要のある分七十七校、五十年度開設をする、そして五十年度から工事を始めるもの五十二校、五十一年度開設するものを五十年度に建物を建てておくという学校数の見積もり四十三校、合計百七十二校でございまして、その百七十二校を基礎として、その学校ごとの所要面積を掛け全体の工事費を算出して、それから所要の起債の枠を充当率七割として算出し三百億の枠をつくった次第でございます。
  50. 栗田翠

    栗田委員 一校について一体どのぐらいの予算で建つというふうに計画していらっしゃるのでしょうか。
  51. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 一校平均六億四千五百万円と推定いたしております。
  52. 栗田翠

    栗田委員 それは単年度の分ですか、それとも三年通して、完成してということですか。
  53. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 高等学校の建物として完成されたもの全部の建築費でございます。
  54. 栗田翠

    栗田委員 その点の計算が非常に実情に合わないのではないかと私は思うわけなんです。たとえば、特に人口急増地の場合、土地を入手するのが大層困難でございますから、いま東京都でも神奈川県でも埼玉県でも、そういう人口急増地に行って調べますと、一つ高等学校の規模をかなり大きなものにして、一気にたくさんの生徒を収容できるようにしなければやっていけないという、そういうやり方で建設が進んでいる実情だと私はつかんできております。たとえば東京都などを見ますと、一校で大体二十四クラスから三十クラス規模のものをつくらなければならない。そうなりますと、いまの建設費、非常に高騰しておりまして、学校の建設だけで三十五億円ぐらいかかるというのが私の調査した数字でございます。しかも土地が大変高うございますして、高いところでは一坪百万円ぐらいする。安くても二十万から四十万ぐらいします。ですから土地代だけで、安くて二十億円、こういう計算になっているわけなのです。いま用地費ははずしていろいろ論じておりますけれども、さっきの六億と三十五億は余りに違うわけなんですね。ですから、ただ数字で建つというふうにおっしゃいましても、これは実際には三百億の起債では建たないのではないだろうか。神奈川県などを調べましたけれども、やはり一校当たり建設費で、抑えて低く見積もって二十億という数字が出ております。この辺の食い違いを一体どうお考えになりますか。私、実情に合っていないと思いますが……。
  55. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 先生の挙げられた数字は、恐らく土地費込みの……
  56. 栗田翠

    栗田委員 いいえ、含んでおりません。三十五億、それから二十億は含んでおりません。
  57. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 私どもの計算は二十一学級の規模でございまして、鉄筋で平米単価八万四千四百円ということでございます。これは平均の単価でございますからまた平均の規模をとったわけでございますから、現在の情勢で小中学校の建物単価との兼ね合いからいきましても、八万四千四百円という平米単価は恐らくそう無理のない単価だと思いますし、学級規模の見積もりについては二十一学級の規模と三十五学級の規模とで計算しますと、それは相当な建築費の差があるのは当然でございます。
  58. 栗田翠

    栗田委員 いま建てようとしております人口急増地の高等学校ですが、一体平均何クラスぐらいのものが建つんでしょうか。つかんでいらっしゃいますか。
  59. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 各県いろいろ実態の違いがあるようでございまして、全体の学級数を想定しながら始めていくものと、とにかく大変であるというので初年度の分の学級数を決めて、後年度漸時増加していくものというようなことでございます。したがってまだ計数的に実態の規模がどのくらいであるということをつかんでおりませんが、教育長あたりと話をしておりますところでは二十三、四学級といったような話をよく聞きます。以上のようなことでございます。
  60. 栗田翠

    栗田委員 そういうふうですから計算がずれてくるんだと思うんですね。私はさっき申し上げましたけれども、方々調査しても大規模の学校を建てなければやっていけない。用地取得難であるから建てるときには、一カ所大きい土地を買ってそこに多少遠距離から通学させても高校生を入れるというやり方しかあり得ない。それは余り望ましくはないんだけれども、そういうことになるのだということをさっき私申し上げたわけです。ですから大きいところでは三十五学級などという学校ができてくるわけなんですね。そこのところを少しもお考えに入れられずに、標準的な学校で計算されたのでは第一単価が違ってくるわけです。しかも一平米当たり八万四千四百円、これは大変非常識ですね。いま大体普通の地方都市でも十万円ぐらいかかっているのではありませんか。まして人口急増地などではもっとかかるところがあると思います。小中学校で私ども調べまして、一体九万だったら安いですね。十万はかかっている、これが常識です。大層違うと思いますね。いかがですか。
  61. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 常識の違いがあるようでございます。
  62. 栗田翠

    栗田委員 そういう常識はずれのことで計算されてやっていけるなんというふうに考えられたのではこれは大変です。いま全国でこれだけ高校増設の声が高まっているときに、三百億の起債でやってまいれますということで折り合いがついているということ自体大層大きな問題だと思います。大臣はこのことについてどうお考えになりますか。いま私と管理局長とのやり取りをお聞きになってどういうふうにお考えになりますか。
  63. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの問題はいろいろな点に触れられていると思いますが、われわれとしては、先生が言われる三十学級を超える学校というところでは、当然こちらで計算したところより大きい額になるということはあると思います。なお教育長との話などで二十二、三学級というのが多いというふうに管理局長が申し上げましたが、これはもっと的確に数字を早くつかんでいくように努力したいと思っております。  さらに単価の問題ですが、実は私もこの問題はかなり気になっておりましたものですから、単価の計算がどうであるかということを繰り返し聞いてきているわけです。単価がそうなっておりますけれども、地域による別がありますから地域による別に応じた配分方法というものも考えられているわけで、そのことを考慮すると先ほど申し上げた単価計算でやっていけるというふうに理解しております。
  64. 栗田翠

    栗田委員 管理局長に伺いますが、いまの八万幾らという単価の根拠ですね、どういうふうに計算していらっしゃるのですか。たとえば安いところはどのくらいだと、現実に具体的にどういうふうに見ていらっしゃるのですか。私など見まして、八万円というのは最低ですね。最低で八万では地方でも建たないと思います。どういう根拠ですか。
  65. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 小中学校の鉄筋の単価が八万一千四百円、これは四十八年度から九年度へかけての超過負担調査に基づく結果を織り込みまして、超過負担はほとんど私どもの気持ちからすれば全くなくなるという推定の数字に基づいた全国平均の単価でございます。したがいまして八万四千四百円、小中学校の単価よりもさらに高い単価で積算しておりますので、単価については全国ならして考えてみますと、これで十分やっていけると思っているわけでございます。  それからまた高等学校の学級数が三十五学級といったようなお話がございますけれども、全国のことでございますので、十七学級、二十学級、十二学級といったような学校数も相当ございまして、全国平均で計算をいたしますと二十一学級と大体見ても、そう見通しとしておかしくないんじゃないかという算定の基礎は持っておるわけでございます。
  66. 栗田翠

    栗田委員 いまの計算根拠、大変おかしいと思います。先ほどから人口急増地が特に必要なんだということをしきりにおっしゃっておりまして、単価も全国平均ならすのと、人口急増地に特にたくさん建てなければならない場合とでは計算が違ってまいりますし、学級数もさっきのお答えですと、実際具体的にはつかんでいらっしゃらないのですね。何県が何学級の高校を幾つ建てる、予算が幾らというふうにやっていらっしゃらない。これはもう一度しっかりと調査し直して、それに見合った財政的裏づけを立てていっていただかなければならないと思いますが、この調査を改めてやっていただけますね。
  67. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 全国の都道府県教育委員会から計数をとりましたときは、それぞれ県から何市に何学級の学校を建てるという、そういう計画は個別にとってあるわけでございますが、県の方でもそれぞれ事情に応じまして、また年度当初の予算編成その他で計画が変わることがあるので、具体的に発表しなかったわけでございます。積算をいたします以上は、もちろん全国の個々の市町村について、所在地、学級数、その年度の計画面積、計算をいたしまして積算をしたわけでございます。
  68. 栗田翠

    栗田委員 しかも昨年実績並みの起債で非常に財政的に配慮した配慮したなどとおっしゃっていらっしゃる。大体こういうことも実におかしいのでして、昨年よりは物価も上がっていますし、いま高校増設の声が高まっているわけですから、当然進歩がなくちゃいけないわけでして、三百億の起債で事足れりというこういう文部省の態度が、実際には補助金を大蔵省に削らせるというようなことになっていると私は思います。  それからもう一つ、地方自治体だけにまかせていく矛盾ですけれども、先ほど自治省もおっしゃっておりました地方財政が非常に圧迫されているという事実、これは全国都道府県知事会の切実な要望から見てもわかるわけです。それからまた大部市には他県から高校生の流入というのが実にございます。それはいろいろな学校の数のアンバランスなどから出てきているわけですけれども、東京都などを見ますと、四十七年度に二万一千人、四十八年度で二万三千人、四十九年度で二万五千人も千葉、埼玉その他から流入してきている、こういう実態があるわけですね。ほかの県の子供さんまで引き受けているという県が、方々の地方都市でもそこの中心的な都市にはあるわけなんです。ですから、こういうことを考えましても地方自治体だけに任せておくということの不合理さというのが出てきているのじゃないかと思いますが、いかがですか。その辺、どうお考えになりますか。
  69. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 全国の人間は、何も県内で固定しているわけでなくて、県から県へ動くという事態があるわけでございますね。そういうことについて、そういう事態がありながら、なお高等学校の維持管理については都道府県が責任を負う、あるいは設置者が責任を負う、そういうたてまえについて、地方交付税あるいは地方債の措置をしてきた。そういうものを基礎にしながら、その枠が拡大されることによって高校の建設が間に合えばそれでよろしいと思っております。
  70. 栗田翠

    栗田委員 枠の拡大は実際にされていませんし、余り間に合いそうもありませんしという実態なんですね。しかも起債というのは借金ですから、その県の負担になっていく、こういうことを私はさっきから申し上げているわけです。だから私は、よくないと思います。  それで次に、先ほどから、高校の不足は人口急増地に多く偏った問題であるとしきりにおっしゃっておりますが、その文部省の認識は間違っていると私は思うのです。  たとえば、ここに奥多摩町の資料がございます。奥多摩町といいますと、これは東京都にはなるわけですけれども、言ってみれば過疎地になるわけなんですけれども、この奥多摩町では、いま「都立高校新設をすすめる会」というのがPTAの中にできまして、大変熱心に運動しております。その町のPTAがいろいろな署名活動などをやっているのですが、その要望は「教育の機会を等しく与えていただきたい。」これは当然なことです。それから「通学条件の制約を除いていただきたい。」結局長距離の通学をしなければなりませんから、「交通機関利用上の不便」「通学距離が遠いため勉学に障害」「通学のための経費が大きい。」「健康上無理な通学」こんなようなことが言われております。それから「遠隔地教育の向上のため。」にも必要である、「地域住民の生活の安定のため。」にも必要であるし、まあいろいろそういうことが述べられているわけですね。当然な要求ばかり並んでおります。  この奥多摩から都立高校に通学している「高校生の声」というのがあります。「みんな交通不便で困っている。通学時間は、行き1時間40分、帰り2時間かかる。」「勉強する時間がない。クラブができない。バスの最終も早い。テストの時など車の中でする。」これじゃまるでかわいそうです。「バス代が高すぎる。一ケ月二、八八〇円。二人通学しているから大変だ。奥多摩分校ができても漠然とした高校ではだめではないか。」結局、ここでは奥多摩分校定時制を全日制にしまして、しかも単独高校にせよという、まあ地域ぐるみ、町ぐるみの運動が起こっておりまして、これは決して人口急増地だけの問題でないという一つの例でございます。  まだ私はたくさんの例を持っております。  たとえば佐賀県の玄海町東松浦高校というのが昨年建ちました。御存じでいらっしゃいますか。ここはいままで進学率が五二%だったのです。進学率が低いから要求がないかというと、そうではなくて、学校が適当なのがないために、行きたくても行けないから五二%に抑えられていたというのが事実なんですね。それで運動が起きまして、県への陳情その他非常に活発にやられて、昨年、この東松浦高校が建った、こういう経過がございます。  高知県にもあります。幡郡の大月町で、いまやはり分校をつぶすと言っているのをがんばりまして、逆に学級数をふやさせて、行く行くは単独校にさせていこうという運動が起きております。  私は、たった三つの例を挙げましたけれども、言ってみれば高校増設の要求というのは、ただ人口がふえて困っているというだけでなくて、全国的に高校へ進学させたいという世論が高まっているわけでして、それが進学率も高めているわけですけれども、過疎の地域でも教育水準を高めていきたいという熱心な父母、教師の要求があり、また子供たちの要求があるということですね。ここのところで、やはり人口急増地の問題であるから、そこだけの局所的な問題であるというお考えは、私、大層間違っていると思います。大臣、どうお考えになりますか。いまの幾つかの例をお聞きになりまして御感想をいただきたいと思います。
  71. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 まず全体的な傾向でございますが、三十八年から四十年までの三カ年間に全国で百八十万人の高校生がふえました。四十九年から五十三年までの五年間に二十七万人の高校生の増が見込まれております。この現象によりましても、三十八年から四十年までのベビーブームのときとは違った大勢であることがわかります。さらに、具体的に都道府県の教育委員会から設置の計画数をとりまして、その全国数が三百三十六校でございます。その三百三十六校のうちで二百二十校、六五%が七都府県にわたっております。したがって、この大勢を見て、人口急増地域が主力になっておる——その他の地域においてももちろん高校の新設の計画がございますが、主力になっておるということは十分言えることだと思います。
  72. 栗田翠

    栗田委員 大臣のお考えを伺います。
  73. 永井道雄

    永井国務大臣 私も先ほど申し上げましたのは、人口急増地域に主として高校増設の要求が起こっているということを申し上げたのであって、ほかの地域で起こっていないというのではございません。いま栗田先生の言われました奥多摩、佐賀、高知の例でございますが、確かにそういうことはあると思います。そこで、そういう場合には、ですから全体的な収容力のことを考えなければいけないのだと思いますが、しかし、現在のいわゆる高校増設の主要傾向がどこにあるかということを見ますと、人口急増地域に強い傾向が見られるのではないかというふうに見ております。
  74. 栗田翠

    栗田委員 私は、やはりいま高校増設を願う全国の世論というのは、教育水準を高めたいという大変前向きの声だというふうに解釈すべきだと思うのです。特に文部省としては、これを教育的な見地からとらえて高校教育が円滑にいくように、やはり大いに力を注いでいくべきだというふうに私は思うわけです。いま高校教育内容、その他受験地獄の実態を見ますと、大変憂うべき状態になっているのは大臣も御存じだと思います。中学の二年生くらいで三年の教科書をやっちゃいまして、三年の後半になるともう教科書を使わないでテキストなどをやる。そのために、ただでさえ詰め込み教育がもっとひどくなって、落ちていく子供は落ちていく。それからいろいろな振り分けの受験体制、こういうものもあります。その中で自殺した子供たちが大ぜい出てきているというのもあるのですね。  これが小学校教育にまで影響を及ぼしておりまして、私も最近、新聞をぱらぱらと見ていると、ますます大変なことになっていると思いますが、たとえば詐欺師主催の幼児テストなんというのが新聞に出ていまして、テスト、テストで、何とかいい高校へ行かせるためには小学校のときから、もっと幼児のときからテストをしなければならない、何か詐欺専門の人が学習塾をやっていたところに大ぜいわんさと志望者が来て、幼児テストをやったところが、テストの当日、詐欺師が逮捕されて主催者がいなくなったという笑い話のような悲劇もあるわけなんですが、こんな人のところにまで集まってくるという実態、それからいわゆる野放し乱塾列島なんて言われるように、子供が三つも四つも塾へ通っているという実態、いろいろなものがあるわけなんです。こういうものをやはり本当に直していかなければなりませんから、これは格差是正という問題とあわせまして、全国で起こっている公立高校をたくさん建てて、そこに進学を希望する子供たちができる限り入れるようにしていくというこの努力は、やはりどうしても必要だと思います。さっきから私、申し上げているように、起債で賄えばよいのだといっても、三百億くらいの起債では実際には足りない、去年の実績程度なんですから。こういうことではどうしようもありませんし、特に地方自治体の財政難の問題を考えてみますと、やはりこれは政府として大いに、国としても、これは義務教育でないからなどと言っていないで、努力をしていくべき問題だと思います。  最後に大臣に伺いますけれども、この点での最後の質問ですが、来年度引き続いて補助金制度その他について努力をしていらっしゃいますか。いかがでしょうか。
  75. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、いま栗田先生の言われた受験体制過熱化というのは全く御指摘のとおりだと思います。実は、けさ起きて新聞を見ますと、自殺をした人もいまして、非常に暗たんたる状況であると思っています。  そこで、これをどうするかということで、来年度の補助金を高校増設などについて考えてはどうかということでありますが、これは私は当然重要な課題として検討いたします。しかし、同時にほかのことも、考えているばかりでなくすでにある程度努力を始めておりますのは、どう考えてもわが国の教育大学のところで、大学を出ましてから社会で非常に学歴偏重ということがあると思うのです。これは否定できない事実だと思います。そこで、ある種の職業については学歴というものがどうしても必要なことがございますけれども、しかし一般に、要するに大学を出ていれば、また特にある種の大学を出ていると採用、昇進が有利になるということになっていて、それが明治の初め以来長く続き、特に戦後その風潮は強くなった。それでこの問題をどうするかということで、実は最近もある経済団体に行って、採用、昇進についての基本的なデータを出してほしいということを要求いたしました。で、協力してくれるわけですが、今後も実はその経済団体だけに限らず、ほかも調べる。同時に官庁における採用、昇進という問題もございますので、これについては人事院にもお願いをしているわけです。  そこで、やはり学校というのは、社会に出て活動していく職業的な準備ということのために必要であるという側面もありますが、しかしそれ以上に、ただある種の学校の学位を持っていると得であるという、この状況を何とか変えませんと、実は学校の数がふえても、中身のいい学校が果たしてできるかどうかという問題が残るように私は思います。こういう点も踏まえまして、そのうちの一つとして高校増設に関する財政措置をどうするか、これは非常に真剣に私として考えていきたいものと思っておりますことを申し上げておきたいと思います。
  76. 栗田翠

    栗田委員 大臣、そういうふうにおっしゃいますけれども、入試地獄の問題はやはり精神問題だけじゃ解決しないと私は思うのですね。どうしても学区制格差をなくしていくための具体的な施策、それからいま言いましたような建物の問題、これは大学でも同じだと思います。大学間の格差をなくしていくための政府としてのさまざまな努力と施策ということなどが必要になってくる、こういうふうに私は思います。  さて、次の点に移らせていただきますが、時間がなくなってしまいまして、ごくかいつまんだ問題で、私学助成のポイントだけを伺わせていただきます。  さっき大臣もおっしゃいましたように、きょうも新聞を見ますと、入試に合格したけれども、私学の入学金は工面できたが授業料が工面できないということで自殺をされた方があるわけですね。病気の夫を抱えたお母さんが子供の入学を喜びながら、しかし自殺をしてしまった、こういう悲劇が出てきているわけです。  それで、実際文部省の中間の調査でも、私大の平均授業料は五十年度で十七万六千四百九十八円、これは大変なものです。それで学生納付金が平均で三十六万一千六百二十四円。これは平均ですから、高いところはもう大変なものなんですが、これではとても一般の国民が私大にも安心して子供を送ることができない、こういう状態にいまなっております。こんなに納付金その他が高いにもかかわらず、しかも私学の経営はどういうふうになっているかと言えば、赤字の一途をたどっている。先日、二月に私大連明から「窮迫する私立大学財政」という調査報告書が出ておりますけれども、これを見ても「異常な物価急騰に見舞われた昭和四十九年度の私学財政は、今後の調査を待つまでもなく破局的状況」だと言っていますね。こういう状態がありますから私学助成を今度強めたのだというふうにおっしゃると思います。  ところで伺いますが、今度の私大の助成は千七億でございますけれども、これは必要な私学の経常費の二〇%のところにあるわけですね。それで政府は、三年間で二分の一助成をしていきたいというようなことを幾度か言っておられると思いますけれども、この辺についてお考えを伺いたいと思います。この状態で三年間でやれるおつもりなのか、それともできないと考えていらっしゃるのかということなどを伺いたいと思います。
  77. 永井道雄

    永井国務大臣 実は、私学の財政が破局的状況になるということを私が文章で書き出したのは十数年前なんです。ところがなかなかそういう政策が実現されませんで、非常に困った状況が続きました。それで坂田文部大臣の時分、昭和四十五年でありますが、私学についての助成が始まりました。にもかかわらず、現状において財政状況が安心したものになっていないというのは御指摘のとおりであります。そこで私としては全力を挙げまして、昨年度に対して五七・四%増の経常費を取りました。しかし、取りましたから話がうまくいきましたというようなことを申し上げようというつもりは全然ございません。むしろ問題は、今日もそうでありますが、今後に残されている。で、これをどうしていくかということであります。  その一つ考え方として、数年間に二分の一助成というような考え方もあります。しかし、実は私は事態はそれ以上の、いろいろな検討を必要としているのではないかと思っているんです。といいますのは、このぐらい長く私学というものがいろいろな形で苦しい状況にありますと、その内容につきましてもさまざまな問題を生じてくるようになりました。たとえば、水増し入学が非常にあるということは周知の事実であります。それから他方、学生と先生方の比率でございますが、こういうふうなものにも相当の問題があります。それから公認会計士が学校の収支決算を報告しておりますけれども、そういう収支決算というものにも問題が含まれていることがあります。そういたしますと、一律二分の一助成という姿で私学を助けていくよりも、私たちはやはり国民の税金を使って私学をよくしていくわけでありますから、通常、国公私の格差是正と言われますが、実は私学の中にも千差万別がある。格差というよりは、私は千差万別と申したいのですが、あると思います。  そこで、本年度から傾斜配分ということを考えるようにいたしました。それで傾斜配分は、先ほど申し上げました定員の水増し入学の問題とか、あるいは収支決算に問題があるというようなことがありますときに配慮するものであって、私学教育研究の内容というようなものはもちろん全然配慮いたしません。あるいは、ある私学が歴史が古くて有名であるというようなことも配慮するものではありません。そうではなくて、経営体質に問題があるというときに傾斜配分を行う、こういう姿で考えてまいる。一律二分の一という形ではなくて、いまのようなやり方をことしからとるようにいたしましたが、また来年度の予算編成までにはいろいろなことを考えてみまして、そして、もちろん前年度比で五七・四%ふえたところで私学の財政問題が解決していないことは明らかでありますから、さらによりよき方法というものを編み出していくようにしなければならない、こう考えております。
  78. 栗田翠

    栗田委員 学校ごと一律二分の一でないというお話はわかりましたけれども、そうしますと、助成額として大体どこら辺までに到達させたいというめどを持っていらっしゃるのでしょうか。
  79. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 二分の一補助という場合の、その二分の一を掛ける前の数字でございますね。その数字が私学の実支出額であるのか、あるいは私学の経常費の中の教員経費、職員経費あるいは典型的な物件費ということにするのか、そのあたりが非常に問題のある点でございます。したがいまして、当初五カ年計画を立てましたときは、教員の人件費の二分の一、それに物件費がある程度加わっていっている。後年度から職員の人件費に対する補助が始まったわけでございます。そういう歴史も踏まえまして、私学の財政の状況、教育条件の整備の状況等々を考えまして、私どもとしては、なるべく早い時期に私学の経営の健全な状態が現出するように努力をするつもりでございますが、先々のことでございますので、いつまでにどうするというところはまだ確定的にめどはつけておりません。諸情勢の変化とともに最大の努力をするつもりでございます。
  80. 栗田翠

    栗田委員 四十五年から五十年度までの五カ年計画は、人件費を含む経常費二分の一ということで言われておりまして、実際には一七%の達成率だったわけですね。それを是正していって、もう少し進歩発展したものにしていこうと考えていらっしゃるというふうに私は思っていたのですけれども、そうしますと、いまのお答えですと、まだ私学助成は暗中模索で、はっきりとした助成の計画だとか、大まかな構想というものもないということなんですか。その辺の大まかな構想ですね、そこのところをお聞かせいただきたいのです。
  81. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 昭和五十年度予算の編成に当たりましては、私学の私大の経常費の実支出額の二分の一を五十、五十一、五十二の三カ年において実現をしたいという目標のもとに予算要求をいたしましたけれども、折衝の過程においてそういう考え方にも難点のあることもわかりましたし、いま申し上げたような結果として、つまり、私学の経営の実情に即しながら、しかもその安定化に役立つように最善の努力をしていく。実支出額のすべてというよりも、やはり典型的な経常費の内訳を考えて議論して、それを積み上げて拡充の方向へ向かっていくというような結論になったわけでございまして、五十一年度予算については、まだ決定的な考え方を持っていない。しかしその方向としては、もちろん五十年度予算において要求したような方向に向かって最善の努力はすべきだと思いますが、予算折衝の過程も十分記憶にとどめなければならぬことだと思っております。
  82. 栗田翠

    栗田委員 その難点とおっしゃるのは、どういうことが主なものなのでしょうか。そして、そうしますと、五十年度当初文部省考えておられました、三カ年で全体としては二分の一の助成、ということはかなり破綻しているというふうに聞こえますけれども、そうなのでしょうか。
  83. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 私学の経常費の内容は、まさに、私学が千差万別であると同様に千差万別でございます。たとえば給与費について考えますと、ある学校においては初任給が八万円である、ある学校は、特別なケースでございましょうが、初任給が十二万円であるといったような場合もございます。国公立学校の均衡の問題もございます。そういう場合に、いかなる場合であれ、すべて実績の二分の一という考え方をとることには、国民の税金を振り向ける立場からは考慮すべきことがあるように思います。
  84. 栗田翠

    栗田委員 千差万別であることは私も認めておりますし、全部の学校に経常費二分の一助成がいいというふうにも思ってないのです。その問題ではなくて、現実に私学の経営難というのは四十五年度当時よりまさにもっとひどい状態になっておりまして、急いで救わなければならないところに来ているはずなんです。そのためには、やはり配分の方法その他はあるにしても、全体の計画というものや特に予算がいままでより必要になってきているということはわかってきていると思うのです。その点で、いま難点とおっしゃるのは、内容が千差万別であるということだけおっしゃっているのですけれども、それでは、全体としましてどれだけの予算が必要なのだということだとか、いつごろまでに達成しなかったら私学がやっていけなくなると文部省考えているからそのために努力するとか、そういうお考えはあると思うのです。五十年度初めの計画がそうでなくなってきたのが、いまさら私学内容が千差万別、いま気がつかれたわけじゃあるまいと思います。なぜそうなったのかということを伺っているのです。
  85. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 あるいは私の物の言い方が悪くて、非常に熱意がないように御理解かもしれませんけれども、四十九年度の計数として言えば、私学の経常費の中の一七%とおっしゃいましたが、人件費、物件費通算しますと、実支出額の一五%相当額が六百四十億という補助金になっているわけです。五十年度の予算は、実支出額推定額の二〇%ということになっております。したがいまして、それは非常にラフな計算で、予算の積算を討議する立場からは余りにも大まかでございますが、結論として大まかな物の言い方で言えば、一五%が二〇%までは上がって、その上がった分は私学の経営の一助になっていると思います。その比率をさらに上げていくべく、積算の内容を緻密に積み上げて予算の額をふやしていくことが必要だ、かように考えておるわけでございますが、五十一年度予算については、まだ省内で討議もいたしておりませんし、大臣の御決裁も得ておりませんので、私どもの立場から言えば、最大の努力をいたしますという抽象的な表現しかできないわけでございます。
  86. 永井道雄

    永井国務大臣 まだいま大臣の決裁がないということを管理局長が言ったのはそのとおりです。私いまいろいろ考えていることを申します。  つまり、私学を何とかしていい学校にしなければいけないと思っているのです。決して精神論で申し上げているのじゃない。そうすると、もちろん全体の額を上げていくことも大事なんですが、いろいろなことの工夫が必要であると思っております。  一つ動いてきていることを申しますと、私立医歯科大学というのは、御承知のように入学金、入学時寄付金が一人当たり非常に多くて、これは教育の機会均等という点から言って大変な問題だと思います。ところが、これにつきましては社会の需要ということから考えまして、十万人の人口に百五十人くらいのお医者様を設けるということは先進的な工業国に共通なことです。これはことしも一つ薬科大学を認可しただけでございますが、今後は私立医歯科大学というのをよくよくの事情がなければ新設しないという方向、そうして国立でこういうものはやっていく。これを昭和六十年度まで進めますと、ちょっと計算をしてみたのですが、大体十万人中百五十人というところにいきます。ですから、これの場合は、二分の一助成という方向ではなくて、むしろ国立のものをどんどんつくっていくという方向でございます。  さらに、実は昭和四十六年度ごろから懸案になっておりますが、私学私学と言うのですが、やはり日本大学全体を考えていくと、私学のほかに国立だの公立があるわけですが、そういうものがお互いに協力関係をつくることによって私学を強化していくという方向もあるわけです。特に研究などについてそうでございますから、いわゆる共同利用というものがすでにできておりますが、こういうものももっと本格的にしなければ私学の先生方の研究ができにくい、こういう問題があります。大学の設置形態の問題も引き続き考えていかなければならないと思います。  でありますから、私自身としては、もちろん私学全体の予算といういままでの考え方でふやしていくというのも一つの見地だと思いますが、しかし、それだけにとどまらず、大学の全体を見まして、国立にしてつくっていかなければならないものには、相当お金がかかってもこれはつくっていく、それから、いまの共同利用のようなものは強化していくというようなことも含めて、日本私学を含めた大学というものをよくしていかなければどうしようもないんじゃないか、そういう意味においてまだ決裁をしていないわけであります。  いま申し上げたことは考えておりますことの一端でございますが、なおこういうことを詰めまして、私は、日本大学、その中に重要な部分を占めております私学の現状というものの改善に努めなければならない、こう考えております。  それは二分の一にいついつまでに到達するということを申し上げないということの言い逃れで言っているのではないのです。そうではなくて、私は、相当日本の高等教育の姿というのはいままでひずんだ形で来ているように思いますので、そこを大いに検討して、全体強化の中で私学考えていくというふうにしなければならない、こう思っておりますので、以上申し上げた次第であります。
  87. 栗田翠

    栗田委員 私学内容をよくして国公私立の格差をなくしていくということは大切なことなんですけれども、そのためにも、いまそれにかかる予算といいますか、費用が必要になってきていますね。それはもう前から叫ばれていることなんです。  何といってもやはり、予算が必要で、助成は必要だということは否めない事実です。私学の抱えている負債というのはいま大変な莫大なものになっていますし、しかも、国立の学生と私立の学生の負担している支出も、それから受けている恩恵も大きな格差があります。比べると私大の学生というのは二十分の一くらいになっているんですね。これはまさに憲法の機会均等の原則に反する大変なゆゆしい問題になっています。しかも、国が国立大学私立大学に出しております一人当たりの予算というものを見ますと、約四十倍くらい国立の方があるんでしょうか、三九・四倍ですか、大変な差がついておりまして、これも大きな問題なんです。  ですから、いろいろおっしゃいますけれども、その内容をよくし私学充実させていくためにも、当面私学の経営危機を救っていくということとか、それから学生負担をもっと軽くして、だれでも望めば私学にも行けるような状態にすること、これが何より必要です。そうするとやはり予算の問題ですね。予算をとらなければならないということだと思うのです。千七億というのは五七・四%増だと言いますけれども、実際の初めの構想よりはるかに到達しない額になっているわけですね。私はそこのところを伺っておるわけです。実際にそうしたいのだけれどもできなかったのだということがありましたら、それはやはり率直におっしゃっていただいた方がいいと思うのです。国民全部の世論を背景にして、やはり大蔵省にも予算要求をしていくという運動を起こしていくためにも、そこは率直におっしゃるべきだと思うのです。今度この計画が崩れた——崩れたとまだおっしゃっておりませんけれども、崩れたとおっしゃったのと同じようなことでして、なかなか達成できない。最初の予定どおりいかないのですね。これはどうしてなんですか。結局は大蔵省との折衝の中で予算が思うようにとれないということが、一番の大きな原因ですね。そうですね。
  88. 永井道雄

    永井国務大臣 こういうのは普通政府委員が答弁するのかもしれませんけれども、私答弁します。  私は予算折衝のところで崩れたということでないように思っております。もちろんそれ以上要求していたんですが、千億を超すのは、相当大蔵省としてもここまで出すのかということに協力するということになったと思います。  どこに問題点があるかと申しますと、こういうことだと思うのです。つまり昭和四十六年の時点で中教審の答申が出ているのですが、その当時はいろいろな教育の将来計画の試算というのが、当時の経済社会五カ年計画に基づいているわけです。それに基づいていろいろ将来についての経済予測が行われておりますけれども、経済の態様自身が相当変化を来したという問題がむしろ下敷きにある。そこでその態様に合わせて教育計画も同じように変えてしまうと、これはもう大変な低下を来すわけなんですが、それはしない。それはしないということで出てきた数字が千七億という数字だと思うのです。  今後の日本の経済を考えていきますと、これは従来のような急速な高度成長というふうなことではないのでありますから、私はやはり教育計画というものもそういうことを勘案しつつ考えていくべきだというふうに思っております。  なお栗田先生の言われましたことで、もう国立と私立との間に学生一人当たりの負担が二十倍ぐらい違うというふうにおっしゃった。本当にそのとおりなんです。ところが、先ほど私がなぜ私立医歯科大学のことを申し上げたかというと、そういうところはもう二十倍どころの騒ぎでなくて、もっと大変な倍数になっているわけです。ですから、ある意味においては全く同じ考えに基づいて、その一番いびつになっているところはぜひ変えていかなければいかぬということで、これには全力を挙げていくという考え方でありまして、私は考え方の修正、後退というのではなくて、今後の日本社会の発展の中で、どういうふうにこの私学を強化していくか。それはおっしゃるように、どこの学校にも、そして全体の枠をただふやせばいいという方向だけではなくて、いまの私立医歯科大学のように非常なアンバランスになっているところは、今後私立をふやしていこうということは絶対避けなければいけない。ここは国公立にしていかなければいけない。そういう形で対応していくべきである。それから学生だけではなく、先生方がちゃんとした研究というのがなかなかできないから、それをどうするかというようなことも考えていくべきだということを申し上げたので、私はいまの考え方あるいは財政のあり方というものが、こちらが譲ってしまったからだめになったということよりも、日本経済全体の変貌の中で教育長期計画というものも練り直す段階に来ておるという理解を持っておるということを申し上げておきます。
  89. 栗田翠

    栗田委員 時間がなくなりましたので、実はこれは重大な問題でまだいろいろと質問しなければならないのですけれども、終わらなければなりませんけれども、いまの論議は大変なことだと思うのです。  大体いま私学関係者の方たち、また父母たちは、今度は私学助成が何とかうまくいくのではないか、少なくとも三年間に二分の一経常費助成ということは大変広く宣伝されておりまして、文部省はその方向で努力し、大蔵省もその方向で動いてくるのではないだろうかという期待を持っていたわけですね。そこのところが何か非常にあいまいになってきたということがわかりまして、これは重大な問題だと思いますので、この問題は引き続き質問もし、論議をさせていただきたいと思っております。  最後に委員長にお願いいたしますけれども、今度の私学助成の予算要求を文部省が大蔵省にいたしましたけれども、その予算要求をしました根拠を資料としていただきたいということ、それからもう一つは、その折衝の中での大蔵省の考え方を資料として出していただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わりにいたします。
  90. 久保田円次

    久保田委員長 理事会で相談いたします。  長谷川正三君。
  91. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私、去る二月二十六日の予算分科会で文部大臣に質問をいたしました海外からの引き揚げ帰国者の日本教育の問題につきまして、本委員会で再度お尋ねをいたしたいと思います。  戦後三十年、朝鮮、中国を初め、ソ連その他外地で幾多の辛酸をなめてようやくなつかしい祖国に帰ってきた方々が、すぐにはたと困るのは言葉が通じないということでございます。学齢期の子供たちはもとより、四十未満の方々は多く日本語を使うことができません。これらの方々に対して、何よりも社会生活に必須なこの日本語の教育について文部省は大きい責任を持たなければならない、こういうふうに考えるわけであります。引き揚げ者全体の援護の問題は、もとより政府が全体として特に厚生省、労働省等とも緊密に連携して行うべき事業でありましょうけれども、特に日本教育の問題、社会生活に何としても第一歩から必要なこの問題について、前回の予算分科会ではきわめて短い時間でございまして、私も幾つかの具体的な御提案を含めて質問を申し上げまして、文部大臣からもそれぞれについて、いまの行政の範囲、予算の範囲で直ちにできることと、さらに予算措置を講じて行わなければならないことと二つに分けられると思いますが、それぞれの項目について善処をしたいという旨の御答弁もいただいておりますが、きょうはこれをもう少し一つ一つ掘り下げてお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、最近の引き揚げ者の数、特にそのうち学齢期の子供を含めて日本教育を必要とする方々がどのくらいいるのかということを、文部省として押さえておいでになるかどうか、その点をお伺いします。
  92. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 海外引き揚げ者の中の学齢児童生徒の実態でございますが、厚生省援護局の調査によりますると、昭和四十九年におきましては次のとおりでございます。すなわち、引き揚げてくる国でございますが、中国、韓国、ソ連、この三カ国につきまして、六歳から十一歳までの児童が百二十一名、十二歳から十四歳まで——ちょっと十五歳という刻みがございませんので十四歳という刻みで申し上げますが、十二歳から十四歳までの生徒が七十一名、合計百九十二名でございます。このうち中国からの数字の中にはいわゆる一時帰国者が含まれておりますが、実態といたしますと、この一時帰国者は大部分が永住されるということでございますから、ただいま申し上げました数字が海外引き揚げ者の中の学齢児童生徒の年代に該当する者ということになろうかと思います。しかし日本教育を必要とする者ということになりますと、必ずしも学齢児童生徒だけには限らないわけでございますが、そうした数字を含めますと、四十九年度につきましては約千名という数字が上がっております。これはもちろん相当な高齢者までも含んだ数字ということでございます。
  93. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの御答弁ですと、学齢期について百九十二名、それから中国についてだけ学齢期を含めて日本教育を必要とすると見られる者が千名、こういう意味ですか。
  94. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 千名と申し上げましたのは、これは中国だけではございませんで、韓国、ソ連を含めまして学齢児童生徒以外の一般の成人を含めて約千名ということでございます。
  95. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それらの方に対して日本語を速やかに覚え、使うことができるようにするための施策としてどういうことをお考えになっていらっしゃいますか。現実にいま行われておることをお答え願いたいと思います。
  96. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 相当数の引き揚げ者がございまして、それが日本語を学びたいということでございますが、現状につきましては先般の予算分科会でも申し上げましたように、現在中学校の夜間学級、いわゆる夜間中学というのがあるわけでございますが、その中に日本語学級というようなものが設けられまして、その教育が行われている、あるいは一部の府県におきましては、中学校の夜間学級というまでには至っておりませんが、補習的な授業が行われて、こうした方々日本語に対する学習の要望にこたえておるということでございます。  なお、夜間中学日本語学級に在学される方は必ずしも学齢該当ということではなくて、学齢を超過した方もかなり含まれておるということでございます。このほかに、こうした引き揚げ者の方々に対する日本教育の機会というものは、文部省の所管においては特にないわけでございます。
  97. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまお答えの数字は、四十九年度の厚生省援護局調査の数字ですね。これは四十七年度、八年度、特に日中国交回復して以後は中国からかなり帰り始めておりますし、航空協定ができましてからなおふえている。そのうちの四十九年度分だと思いますが、四十九年度だけの数字で押さえて施策をしたのでは間違うと私は思いますし、それよりさかのぼった方々がどうなっておるか、今後予想される受け入れをどうするか、こういう数字を押さえて対処しなければならないものと考えますが、その点はどうお考えですか。
  98. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十六年度からの数字を持っておりますが、四十六年度からの海外の引き揚げ者は百二十一名、四十七年度は百二十名、四十八年度が二百五名、それから四十九年度がさっき申し上げましたように約千名でございますが、千八十名、五十年度は約七百二十八名というのが厚生省の見込みでございます。この中の学齢児童生徒該当者でございますが、全部の年度にわたって数字を実は手元に持ち合わせておりませんが、四十九年度について申し上げますと、全体千八十の中で百九十二名が学齢該当者である、こういうことでございます。  それから従来の施策ということでございますが、実は厚生省における施策の詳細は私は承知をいたしておりませんが、文部省におきましては、ただいま申し上げましたような夜間中学において実質的にお世話をするということでございまして、そのほかに特にまとまった施策というものは講じられていない現状でございます。  それからなお将来の計画ということでございますが、ただいま申し上げましたように四十九年度の数字が約千でございまして、五十年度の厚生省の見込み人員は七百二十八ということで、むしろ減少する傾向にございます。それでこの引き揚げ者の方々は、伺いますと大体全国各地に散っていかれるわけでございまして、一人、二人といったような形で散っていかれるわけでございますが、やはり組織的なお世話をするということになりますと地域的なまとまりということも前提になろうかと思いますが、東京都におきましては、予算分科会で先生からも御指摘がございましたようにある程度の人員のまとまりがあるものでございますから、夜間中学においでの方につきましては日本語学級というような形で日本語を教えておる、こういうような状況でございます。
  99. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 もう一つ、いま挙げました人数、たとえば千名というこの人数の全国分布状態についてはお調べになっておられますか。
  100. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 手元に数字を持っておりますが、府県別になっておりまして大変細かい数字でございますが、いかがいたしましょうか。
  101. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは細かい数字を一件ずつここで発表していただく煩を避けて、後で資料としていただきたいと思います。それをお持ちなわけですね。それからさっきの五十年度七百二十八というのは、五十年の推定ですか。五十年に入ってまだ三月までですけれども、急にふえてこういう数だというわけではないのですか。一年間の推定がこうだというのですか。
  102. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 厚生省における推定の数字でございます。
  103. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 この間の文部大臣の御答弁ではこの引き揚げ者の子弟の——引き揚げ者という言葉を使っておりますが、帰国者の子弟の日本語の教育については大泉等国立大学の付属で行っている、その他学校を指定して行っている、こういう御答弁があったと思います。いま初中局長お答えになった夜間中学校、夜間学級で行っているというのは、実は文部省施策というよりも、これは引き揚げの業務が、国が旅費を出してその本籍地なら本籍地まで帰す、あとは都道府県が世話をするというたてまえ上、たとえば東京都が苦心して受け入れをし、あるいはその当該市、区が努力をしてやっているというのが実態であって、文部省施策としてこういうことをやっていますとはまだ言える段階にきていないのじゃないかという気がしますが、その辺はどうですか。
  104. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 国立大学の付属学校の海外帰国子女教育学級の点につきましての御説明をちょっと申し上げたいと思います。  帰国子女教育学級につきましては、先生御指摘のように、近年海外からの帰国者が非常にふえてまいりましたから、言語、風俗、習慣、教育制度等の異なっております外国で生活しておりまして帰国する児童生徒が増加しておる状況に対処いたしますために、このような児童生徒を日本における教育に適応させるための教育のあり方を研究する必要がどうしてもあるというための実験学級といたしまして、昭和四十年度に、東京学芸大学の大泉中学校に最初に設置をいたしました。今日までに東京学芸大学の大泉の小学校、中学校高等学校、それから神戸大学の住吉中学校、これだけに帰国子女の教育学級を設置してただいま運営をいたしております。それで五十年度の予算におきまして、特にいわゆる関西地区におきまするこういう実験学級の必要もまた非常にふえてきておりますので、五十年度予算で、神戸大学の住吉小学校、京都教育大学の桃山中学校、この二つに新たに帰国子女の教育学級を設置いたしたいということで、ただいま予算の御審議をお願いいたしておるところでございます。  帰国子女の教育学級におきましては、ただいま申しましたように、教育のあり方を研究する実験学級としてやっておりますので、日本教育だけを取り抜いて直接教育をするということでなくて、外国で受けました教育との落差の関係でありますとか学習能力の育成、生活習慣、態度の育成、各教科特別活動等全般にわたりまして、どういうカリキュラムを編成して対応したらいいかとか、こういった形でこの帰国子女学級を運営をいたしておるわけでございます。  したがいまして、現に果たしておる機能といたしましては、特に大泉が四十年からやっておりますので、年間を通じましての実験研究の成果を公立学校等に指導資料として配付申し上げる。それから、文部省主催と大泉の学校の主催で、それぞれ年一回でございますが研究協議会も開催をしていく。その際は、特に大泉の帰国子女学級の主催の場合には授業公開等もやるとか、そういうことをやりまして、帰国子女がわが国の学校教育の体系、教育内容にどのようにうまく順応することができるかということを、あくまでも小学校教育、中学校教育高等学校教育全体の中でその実験をやっていくのだ、こういう形でただいま運営をいたしておるところでございます。
  105. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、大臣お答えになった国立大学の付属でということは、これは具体的には東京学芸大学の大泉付属小、中、高と、神戸大学の住吉小学校、住吉中学、この二つですね。
  106. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 五十年度の予算で京都教育大学の桃山中学をいまお願いしておりますので、五十年度からはもう一つふえるわけでございます。したがいまして、付属学校としましては六校で、小、中、高にわたりまして帰国子女学級を五十年からやりたい、こういうことでございます。
  107. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 もう一回確認しますと、五十年度京都教育大学の桃山中学ですね。それから前からある大泉の三つと、神戸大学の住吉中学。それから神戸大学の住吉小学校を五十年度で加えようということですね。
  108. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 はい。
  109. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それはわかりましたが、いまお話を聞いてみますと、私がいま取り上げた海外からのいわゆる引き揚げ帰国者の子弟がここに入っているのではなくて、在外公館の御子弟の方とかあるいは商社マンで外国駐在した方々が何年かたって帰国されているその子弟とか、そういうお子さんが対象であって、向こうの学校のレベルから日本学校のレベルにスムーズに移行できるようにいわば補習教育をやる。それを単に補習教育という形でなくて、実験学校としてそういうものを積極的に研究の対象として、今後こういう国際交流はますます深くなるからそういう面の研究をなさる、こういうことだと思いますね。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  110. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま先生御指摘のように、従来帰国子女学級には在外公館や民間会社の海外支店等に勤務しておった人の帰国子女が入学しておるということでやってまいりました。  四十九年に東京学芸大学の付属高等学校の学級を新設いたしたわけですが、その際に、東京学芸大学の付属高等学校の新しくできました学級の方に韓国からの引き揚げ者の方がぜひ入学をしたいという非常に熱心な御要望があったようでございまして、東京学芸大学の方でいろいろな御事情も承って、高等学校の方にその方を受け入れて、ただいま勉強していただいているそうです。  それから五十年の四月からですが、学校の方に照会をしてみましたら、ドミニカからの農業移民の引き揚げ者の方の子女が一人ぜひその高等学校の学級に入りたいという御希望があって、よく御相談申し上げて、入学していただくように措置を大体決めておるようでございます。  ですから先生御指摘のように、在外公館なり民間会社等からの方が中心でいままでやってまいりまして、四十九年から特に高等学校レベルの問題につきましてそういう御希望があって、いまそういう形で受け入れを一人しておる、五十年にもう一人する、こういうことのようでございます。
  111. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 韓国からのはお一人ですか。
  112. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 四十九年に韓国からの引き揚げ者の子女一人が入学をしておるようでございます。
  113. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうするとやはりこれは在外公館なり商社マンの御子弟が中心であって、いろいろそうした公務あるいは産業の面で外国へ行って活動する日本人の子弟が帰ってきて非常に困るようではいけないということは前から指摘されておりまして、それに手をつけ、その教育が行われていることは、私は結構なことだと思います。しかし、きょう私が提起した引き揚げ帰国者の問題はより深刻な問題でありまして、より国家的に早く行き届いた手を差し伸べるべき分野ではないか、こういうふうに思うのでございますが、その点は文部大臣いかがお考えですか。
  114. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま先生御指摘の引き揚げ者の日本教育は、先ほど御説明を申し上げたような形でしか行われていないわけでございますが、これは昭和二十八年三月に、「中華人民共和国からの邦人引揚児童生徒の転入学に関する措置について」という文部次官通達がございまして、その通達の中に、引き揚げ児童生徒を受け入れるために市町村教育委員会日本教育のために特に特設学級を設けることが望ましい、という指導をいたしております。これは二十数年前のことになるわけでございますが、文部省の指導の方針といたしましては、やはり特設学級を設けて受け入れを進めることが適当だ、こういう考え方でございます。  現状は、先ほど申し上げましたように、いわゆる夜間中学においてその受け入れが行われておるわけでございますが、御承知のとおり夜間中学というのは法制上認められた学校制度ではございません。従来は、この夜間中学の学級に対して教員定数の配当をするというようなことはいたしてこなかったわけでございますが、数年前から、現実に学級が編制されておればこれに対して定数措置をするという施策を進めてきたわけでございます。ただ、しかし、よく御承知のとおり教員定数というのはいわゆる公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の運用の枠内でその定数を措置するということでございます。したがいまして、私ども、この日本語学級についての定数問題というものは、先生先般御指摘のとおり十分検討しなければならない課題であるというふうに認識をいたしておりますが、ただいま申し上げましたようにいわゆる標準法の枠内でどういう措置が可能かということになるわけでございますので、具体的な進め方につきましては、さらに検討をさしていただきたいというふうに考えております。  定員の問題はそういうことでございますが、ほかに、先般担当教員の研修ということもやはり必要ではないかというお話がございました。この点につきましては、あるいは学術国際局長からお話しをいただいた方がいいかとも思いますが、現在、国立国語研究所で、外国人に対して日本教育を行う者の研修会を毎年行っておりますが、引き揚げ者の方々に対して日本教育を行う教員の研修ということにつきましても、ただいま申し上げましたような機会を通じてさらに推進するようなことも考えてみたいと思っております。  それから教材の点でございますが、夜間中学日本語学級に対しましては、文化庁の国語課で編集をいたしました「外国人のための日本語読本」これは初級と中級というものでございますが、すでに配付をいたしております。その他の教材をどう整備するかということにつきましても、さらに具体的な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、ただいま大学局長から答弁をいたしましたいわゆる帰国子女の教育の問題と引き揚げ子弟の教育の問題は、これは日本語に習熟していない児童生徒をいかに日本語に習熟させるかという課題、そういう点では同じ問題を含むわけでございますが、現在「帰国子女指導の手引き−小学校編」というものが出ておるのでございますが、これの改訂、それから同じく中学校編の作成を学術国際局において作業中であって、昭和五十年度早々に各学校に配付をしたいということでございますので、そうした施策も一方行われておるということをこの際御報告申し上げておきたいと思います。
  115. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの御答弁は、私がいまここで伺ったことの直接の答弁というよりも、分科会の質問についてお答えいただいたような気がいたしましたが、いま幾つか出されたその資料はいただけますか。
  116. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 差し上げるようにいたしたいと思います。
  117. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それはひとつお願いします。  そこで、ちょっとさっきの問題に戻りますが、国立大学の付属でやっている海外子弟の補習学習と申しますか、これはもちろん学級も認め、教職員定数もちゃんと認めて置いておりますね。
  118. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 それぞれ先ほど申し上げました大学の付属学校に、帰国子女教育学級として三学級とか六学級とか、学級数をはっきり認めまして、教員の配当もいたしております。
  119. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そこで、私は、この前、引き揚げ者の全国分布の状態ともにらみ合わせながら、今後それぞれの国立大学の付属にそういう受け入れをまずつくったらどうかということを御提起申し上げたのですが、いま伺っていますと、いわゆるいまある海外の公館あるいは商社の方々の子弟の教育と、純粋の引き揚げ帰国者の子供たちをごちゃごちゃにして、果たして同じようなレベルでうまい日本教育ができるかどうか。片一方は、日本教育というよりもむしろ日本のすべての学校水準に合わすための教育と言った方が早いんじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。たとえば、いま韓国から一名、ドミニカの方を今後一名入れる予定だというお話ですが、それでは中国から引き揚げた方々がそういう国立のところへ希望したら、みんなどんどん入れますか。
  120. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいまの点は、やはり東京学芸大学で申しますと、小学校なり中学校なり高等学校なりで、どの程度の、どういう経験を持っておる教官が実際に確保できるかとか、それから学級の運営、経営を大体どういうふうな全体の見通しのもとにやってまいるかとか、そういうふうな諸事情を勘案してまずはやはりその大学あるいは付属学校の方で判断をしないと、文部省の方でどうと言うわけになかなかいかないことでございます。先ほど申し上げましたように、国立大学の付属学校の場合は、東京学芸で申しますと、実際問題としまして、いま大泉で小、中、高をやっておりますが、大泉という場所の問題もありますし、小学校、中学校高等学校に聞いてみますと、入学を希望、志願された方に教育相談の形をまずとるそうでございます。そして付属の方で、このお子さんの持っておられる日本語の能力なら公立学校に入っていけば大体こなせるという方はやはりそういう御相談をし、むしろ日本語の能力が公立学校ではやはりむずかしいかなとか、また通学の便のことがやはり非常にあるものですから、そういうふうないろいろな状況を御相談する機能も果たしながらいままで運営をしてまいっておるわけです。  ただいま先生御指摘の高等学校の方の学級に韓国の方をお一人、それからドミニカの方を今度お一人入れるようでございますが、そのことが従前からやっております高等学校なら高等学校の帰国子女学級の方と同じ学級で運営していきましてどういう問題が出てくるか、そういった点も、まことに恐縮ですが、付属学校の方でのやはり日常の経験の中から生み出してこなければ仕方がないのじゃないか、そういうような考え方を持っております。
  121. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、私がこの前提起した国立大学の、いまあるところの実態は別として、今後国立大学の付属でそういう引き揚げ子弟の教育を受け入れるという方向の検討態度はなさるおつもりですか。それはやはり夜間中学のようなところでやってもらうというお考えですか。
  122. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 五十年度予算で、先ほど申しましたように、関西の方に二つ帰国子女学級を創設するということで、いま予算をお願いいたしておりますが、五十年度予算編成に当たりまして、先生のいまの御指摘ですと、従前型の帰国子女学級でございますけれども、その帰国子女学級をどの付属で実際に引き受け得るかという相談を相当の付属でやってみたわけです。ですが、やはり相当数そういうお子さん方が大体通学し得る範囲内におられるかどうかという条件が一つございますし、またそういったことについて当該付属でこういう教官が是非やろうというような話がまとまるとか、そういう条件等をまとめるのに、文部省としては相当な苦労を正直いたしました。いまの状況では、やはり従前型の帰国子女学級で研究した成果を公立学校等に提供してあげなければならない要素というものも非常にございますから、まずはそれに全力を挙げざるを得ないのじゃないか。  いろいろな国からの引き揚げ者につきましての、特に日本語の欠陥を補う日本教育という問題について、あるいはそういうことのできる教員を国立大学の教員養成学部で直接養成したらどうかという御意見もあろうかと思いますけれども、この点も、先生御案内のように、大体十二単位あるいは八単位外国語を取らして卒業さしておりまして、教員養成学部で開設しておる外国語の授業科目を見ましても、それほど広範囲には正直わたっていないわけでございますので、直接養成でやるというのもやはりなじまないいろいろむずかしい問題があるだろう。ですから、特に現場教員の外国語能力の問題というのは、ただいま非常に問題になっておりまして、教員養成学部の学生だけ海外に行く、留学するという制度も設けておるわけですけれども、やはり必要に応じての現場教員に対する何らかの形における現職教育というふうな形で補っていかざるを得ないのじゃないかというようにいま感じておるわけでございます。
  123. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 もうここは余りこだわりたくないのですが、要するに国立大学の付属の小中学校で、直接引き揚げ者の子弟の日本教育をやるということは、現在のところ非常に困難な状況で、今度の新説の桃山中学にしても住吉小学校にしても、今の方針は、やはり従来型の子弟の教育が中心、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  124. 永井道雄

    永井国務大臣 いま先生が提起されておられます問題というのは、一種の過渡段階の課題だと思うのです。先ほどから国立の付属のお話が出ましたが、国立の付属でも、いわゆる帰国者以外に、ことしは世田谷の付属の高校に実はタイ国の人が入ることになりました。これは外国人でございますが、それも受け入れる。これも全く新しい実験といえば実験なわけです。そのほかに、全国に昭和四十六年から四十九年まで帰国した子供の総人数は七千人弱というのでして、それについてやはり指定校、協力校、これについてはまた政府委員から御説明いたしますが、つまり帰国者というのは数が多くて引き揚げ者というのは少ないですけれども、引き揚げ者の場合でも、帰ってくれば、子供さんの場合は当然親御さんと一緒に住んでいますから、そして親御さんは全国に散らばっているわけですから、それを国立の付属にまとめるということが果たして妥当なのか、それともやはり親御さんが住んでおられるところに近い学校で、だんだんに帰国の人たちの教育との関連で考えていくべきか、そういう問題もあるかと思いますので、私はそこまで申し上げて、もう一つやっております全国的なことについて政府委員から御説明申し上げます。
  125. 木田宏

    ○木田政府委員 いま大臣から御答弁申し上げましたように、国際交流が活発になってまいりますと、年々外国から帰ってくる子供たちの数が多くなってまいります。しかし、これらは基本的には父兄の居住地に住むわけでございますから、居住地の義務教育学校がそのような子供を気持ちよく受け入れて教育してくれるということにならなければ問題は解決しないことだと思っております。ただ、いままでの学校の実態がなかなかそういうところまで弾力的に適用できる状態に至っておりませんものでございますから、一面では国立大学の付属に実験学級のようなものをお願いをし、東京と関西でそういうものを一つつくってみる。しかしもう一つには、公私立、小中学校で十四校、高等学校で八校程度にすぎませんけれども、これにやはり比較的帰国子女の多く集まってくる学校にモデル的な研究施策を進めてもらうということをいたしておるわけでございます。しかし、ここまで通ってこられない子供たちもたくさんおりますので、一面ではもう少し特別に、日本語が習熟する期間、就学義務の猶予をしてもらいたいというお申し出もありまして、初中局の方にも御依頼をして、数カ月程度就学猶予の措置をとってもらって、普通の学校に何とか通わせ得る段階まではとりあえず親元で特別の指導をするというような工夫もしてもらっております。  最近、別のことでございますが、海外に設けられました日本学校に毎年二百名前後の先生が出かける。現在、ちょっといま正確な数字を忘れましたが、四、五百名程度海外の学校に勤務しておる先生たちもおります。先般百七十名ほどの派遣の激励の機会に、私は、ぜひ現地でそれぞれの国の言葉をマスターしてくるということを一つお願いをしたわけでございます。こういう方々が帰ってきて、そして自分の近在の学校でそういう子供たちをまた受け入れるというようなことが広がっていくということになりませんと、この問題はなかなか解決いたしませんので、実験的に国立学校で幾つかの学級をつくってもらい、また実験的に公私立の学校の中で比較的そういう子供の集まっております学校に何らかの設備の援助をしたり研究をお願いしたりしておるわけでございますが、行く行くは、やはりそういう子供たちが所在の学校で気持ちよく受け入れられるように、日本学校制度がある意味では国際化するということを念願して、関係局にお願いをしておる次第でございます。
  126. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 時間が大分なくなってまいりましたが、実はこれから具体的な本論に入りたいところなんです。  もう一つ伺いますが、いま国立大学については大体全貌がわかりました。私、率直に実感を申し上げますと、政府関係の在外公館の子弟とか、それから在外商社マンと申しましても、これは大体日本の大資本、大企業がバックにあると見ていいわけです、そうすると、政府とか大企業の子弟については、国はいち早く、帰ってきた場合にスムーズにその子弟が日本の各級の学校に溶け込めるように特別の学級をつくり、研究体制をとって、手厚くとまでいってないでしょうけれども、まだそれ自体から見れば不十分でしょうけれども、それだけの手がついている。ところが、戦争の犠牲者とも言える、あるいはいまドミニカの話も出ましたが、日本の海外移民政策というようなところから、あるいはどこか不備がありまして帰国を余儀なくされるということがまだまだ南米あたりからも今後も、そう数が一遍に多くはならないにしても、さみだれ式に続くことは十分考えられますね。そうしますと、こういう子弟にこそむしろ国は一番先に、これはだれも援護する者がないのですから、こういう方にはより以上に厚く、国立大学がまず先頭になって付属にそういう施設を、全国ただ機械的につくれなどとは申しません。特に引き揚げる方が比較的多く居住する地域、ある程度固まる地域があるのじゃないか。そういうところの大学にはいち早くこういうものを設けて——どうも政府関係職員の子弟や大資本、大企業関係の商社マンの子弟は日本に帰っても大変優遇された措置をとられている。こういう長い間外地で苦労されて、ようやくなつかしい故国へ帰ってきたけれども、どっちを向いても言葉も通じないという子供たちにいち早く国が抱き上げるようにして、日本語の指導から、あるいは学齢期であるならばなるべく早い機会にそれぞれの日本学校に、いま木田局長が言われたように、日本のすべての学校日本教育をする一つの機関があって、そこへ入ってきて、ちょっと無理だと思えば、そこでもってしばらく、半年くらいは専門の、そこの国の言葉もわかり、そして日本語の指導についても特殊な技術を持った方がスムーズに教えて、そして早く日本に溶け込ませる。こうなれば私は理想だと思いますけれども、一遍に行かないにしても、国立大学の付属あたりがこの子供たちについても大きく愛情をかけて施策を行うことについてぜひ今後は御一考を煩わしたい、私はこれを一言申し上げておきたいと思います。  それから次に、研究指定校というのですか、何か大臣のお話の中に、大学の付属ではないけれども、こういう海外子弟の日本教育に対しての指定校を置いているというようなお話があるのですが、これはいま全国に幾つ、小中高なら小中高がどこにどれだけあるのか、ちょっとそれを教えていただきたいのと、それに対して国は、たとえば研究指定校であればこの補助金等を何か出しておるのかどうか、そのことをひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  127. 木田宏

    ○木田政府委員 現在研究協力校というふうに称して御委嘱申し上げておりますが、小学校では公立五校、私立一校、中学校では公立六校、私立二校の八校、高等学校では公立が二校、私立が六校の八校でございます。四十九年度の実態でございます。これらの学校に対しまして、若干の器材、教材等を、一校平均六十万程度の見当で差し上げる、そのほかの研究事業等の事務費等を若干考えておるという程度でございます。五十年度にはこうしたものの数をさらにふやしたい、特に高等学校段階でふやしたいというふうに考えておりまして、高等学校には十六校程度御委嘱をして、子供たちの受け入れも積極的に図ってもらいたいというふうに考えておるところでございますが、予算が上がりましてこれからの施策として進めていくつもりでございます。
  128. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの学校は余り多くないのですが、ちょっと具体的に教えていただけますか。
  129. 木田宏

    ○木田政府委員 それでは学校名を読み上げてまいりますが、小学校では、八千代市立勝田台小学校、目黒区立東山小学校、それから私立でございますが、啓明学園の初等学校、これは中学高校もございます。それから名古屋市立田代小学校、芦屋市立精道小学校、豊中市立上野小学校、この六校が小学校でございます。  中学校では、船橋市立葛飾中学校、目黒区立東山中学校、世田谷区立駒留中学校、大田区立田園調布中学校、中野区立第三中学校、私立で成蹊中学校、それから公立になりますが、横浜市立境木中学校、私立の山手学院中学校。  高等学校では、東京都立の秋川高校と東京都立の三田高校、この二校が公立の高等学校でございます。私立では聖望学園の浦和高等学校、それから堀越高等学校、順心女子学園の高等学校、桐朋女子高等学校、桐蔭学園の高等学校、それから仁川学院の高等学校、この八校でございます。
  130. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの研究指定校で、やはり学級をつくってやっておるわけですか。
  131. 木田宏

    ○木田政府委員 それぞれの学校ごとにいろいろ教育指導のやり方を工夫していただいておるわけでございますけれども、一般的には、できるだけ普通の教育活動で一緒にできる者は、他の学級の子供たちと、あらかじめその学級に入れておきまして一緒に教育するということを考えておりまして、そしてやはり日本語を中心にあるいは補習をしなければならないというような場合に特別の学級で指導をする、あるいは個別に一人一人の指導をする、こういう指導の仕方をいたしておるわけでございます。ですから、普通の学校に置かれました特殊学級と同じような教育の手段をそれぞれに御工夫くだすっておるようでございまして、順応できます限り早目に普通の学級に入れていく、こういう指導方針でやってくだすっております。
  132. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいまの指定校で教育を受けている対象の子供というのは、引き揚げ帰国者の子弟ではなくて、やはり在外公館とか商社マンの子弟ですか。
  133. 木田宏

    ○木田政府委員 基本的には、たとえば目黒区立の東山小学校、中学校等でおわかりのように、この地区に在外勤務から帰ってこられたいろいろな方が比較的多く住んでおるということから起こってくるわけでございまして、これは公立の学校の場合でありますならば別にだれでなければならぬというわけじゃございませんから、特定の者に限定して入れるというふうな御方針では必ずしもない、事実上の問題であろうかと考えております。
  134. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのお答えのように、実際にもう日本語が全然わからないという引き揚げ者の子弟の場合には、やはりこういう学校には事実上、はいれないのじゃないか。ほかの教科ではできるだけ差し支えない範囲では一般学級に入っていて、そうして特に補習を必要とするとか、これは言葉はもうちょっとやってからでないとまずいという場合に、そういう者を集めて、そこで特別の教育を施す、こういうような形であるというふうに伺いましたから、これは当然、全然日本語がわからないというようなお子さんではちょっと歯が立たないのじゃないか。これもまた私がさっき申し上げたとおり、国立大学で受けている層と大体同じ層の子弟がこの機会を得ている、恵まれている。この面から見ましても、私は一番困っている必要な引き揚げ者子弟がここからも実際上締め出されているという、言葉は穏当でないかもしれませんが、事実そういう結果になっているのではないか。そういうことを考えますと、そうしてこういう学校には、金額はわずかであっても、年間六十万ですか、そういう研究費あるいは若干の事務費の補助をしておる、こういうお話であります。  そこで私は、このことを悪いとかいいとか申し上げません、これもぜひ必要だし、さらに拡充も必要だろうと思います。国際交流が激しくなりますから必要だと思いますが、私が申し上げたいのは、これに引き比べて、いま引き揚げ者、帰国者の子弟が、あるいは学齢期はすでに過ぎているけれども困っている青年たち、あるいは四十未満のお母さんたち、こういう方々日本教育の体制については著しく立ちおくれていると断ぜざるを得ない。これについて文部省は、政府の全体機関との関係も大いにあろうと思いますが、早急に施策充実させる必要があると私は思いますが、その基本的なお考え大臣にこの際はっきりお尋ねしておきたいと思います。
  135. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘のように、この海外から引き揚げられた方々、お子さんだけではなく、年輩の方も、日本社会に適応していく上で必要な日本語の教育がおくれているということは全くそのとおりであると考えます。  そこで、こういうものは整備をしなければならないと思いますが、これは考えまするのに、恐らく学校教育だけではなくて、特に御年輩の方などの場合には仕事もしておられるということでありましょうから、社会教育というような角度からも検討するようにいたしたいと考えております。
  136. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大臣は、基本的に私の見解を認めていただきまして、そして今後幅広い施策を行うという御意思を明確にされたものと受け取ります。いま社会教育の話もありましたが、この前の予算分科会でも提起いたしましたように、たとえば週三回の講習で半年くらいやると大体日本社会に溶け込める、あるいは職場にもつけるというようなそういう施策社会教育面でもぜひ工夫をしていただきたいと思いますが、そういう御検討はなさっていただいたでしょうか。
  137. 永井道雄

    永井国務大臣 具体的な方法を、いま週三回とかおっしゃいましたけれども、週三回というところまではそれこそ私は断言できないと思いますが、方法は十分検討いたしたいと思います。
  138. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そこで、先ほど来国立大学の付属及び研究指定校と申しますか、そういうことの実態が明らかになったわけですが、いま血の出るような努力で東京都でも四つほどの学校、夜間中学で取り組んでいる方々、これに対してできるだけの施策をしてほしいと思うわけでありますが、さっきお話しの中に、この夜間中学の学級をようやく——これは法律上は存在しないはずだけれども、事実学級が存在すれば学級として認め、これに対する定数法の範囲内での定員は配置するようにした。ところがその夜間中学の中に日本語学級をつくる場合、これは日本語学級としてまたひとつそれを認め、そこへ定数を配置するということはそこまでいま至っていないのでしょう。それは早急に改めることはできませんか。
  139. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 重要な課題だというふうに考えておりますが、先ほども申し上げましたように、教員定数は標準法の枠内でということでございますので、その枠内でどういう具体的な操作がつきますか、十分検討さしていただきたいということでございます。  さらに申しますと、学級編制が教員定数の算定の基礎になるわけでございますが、一学級は御承知のとおり四十五人で編制するということが原則になっております。したがいまして小さい学級を幾つかつくりました場合に、そのできた学級をそのまま認めて教員定数を配当するというやり方は現在いたしてないわけでございます。児童生徒の数に対応する標準的な学級数というものが計算されて、標準的な学級数に対して定数を算定するということでございます。日本語学級の生徒の数というのは、いまありまする一、二、三学年の学級の定数の中に含まれておりまして、それを抜き出して教育しておるわけでございます。根っこの三つの学級につきましてはさっき申し上げたように定数配置はしておる。引き出したその学級については定数配置の根拠になっていない。なんとなれば、その生徒の数はそれぞれの三つの学級に分解されて計算されておるからでございます。つまりそれが現行の制度でございますが、しかし、標準法の運用という面において何らかの措置が講じられないか、さらに検討をさせていただきたい、こういうことでございます。
  140. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 法改正が必要なら堂々と法を改正したらいいと思いますが、これにはまたいろいろな問題を含むと思いますから、やはり実情に即した運用で、少なくともさっき申し上げたように、国立大学の付属やあるいは指定校で受けている子弟に比べてこの引き揚げ者の子弟が非常に悪い条件の中で、全く夜間中学の教師の善意とまことに献身的というか、英雄的ともいうような奮闘によって支えられている。そして財政的なこれに対する援助もほとんどない。定数も認めていないということであれば全然ないといった方がいいでしょう。これは非常に問題だと思います。特にさっき教材の問題とかそういう問題について工夫というようなお話もありましたが、学用品その他こういう子弟は主として貧しい子弟でありますから、それらについての援護措置とか、あるいは指定校等には視聴覚関係の機械を学術国際局の国際教育文化課の方からか貸与をしているということも伺っております。そういうようなものは、早速にこういう夜間中学日本教育を血みどろにやっているところにはぜひ貸与するということがいまの行政運用の中で十分できるのではないかと思いますが、そういう点はいかがでしょうか。教育機器の貸与問題です。
  141. 木田宏

    ○木田政府委員 研究協力校に対しまして、いままで特に言葉の問題を助けるための教材、教具等の援助をいたしております。それをどの範囲までに広げていくかということは、関係局ともよく相談をして、今後のことを考えてみたいと考えております。
  142. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまこの面についても前向きの御答弁だったと受けとめて、早急にひとつそういう手だてで、国もようやくこの問題に懸命に温かい手を差し伸べようとしている、そういう実感が現場の教師やあるいは教育を受けている子弟にびんびんと響くような速やかな施策を私は強く要望いたして、なお細かい問題がまだたくさんございますけれども、特にさっき初中局長が、現行法の中でも何とか運用で工夫したいというこの点はぜひひとつ早急に何らかの措置がとられますように再度要望し、全体としてもう一ぺん大臣からこの問題への御決意を伺いまして私の質問を終わります。
  143. 永井道雄

    永井国務大臣 私、先ほど申し上げましたように、これは重要な問題でございますから、政府委員が申し上げましたように、現行の法の枠の中でもでき得る限り柔軟に要求に応じて、海外から帰られた方々が勉強しやすいように工夫していくつもりでございます。
  144. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 終わります。      ————◇—————
  145. 久保田円次

    久保田委員長 国立学校設置法の一部を改正する法律案及び文化功労者年金法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。永井文部大臣。     —————————————  国立学校設置法の一部を改正する法律案  文化功労者年金法の一部を改正する法律案     —————————————
  146. 永井道雄

    永井国務大臣 このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律は、昭和五十年度における国立の大学の新設、学部の設置及び短期大学の新設並びに分子科学研究所の新設等について規定しているものであります。  まず第一は、富山医科薬科大学及び島根医科大学の新設についてであります。  これは、近年における医療需要の増大と医師の地域的偏在に対処するため、無医大県の解消を図る施策の一環としてこれらの大学を設置し、医師養成の拡充を図るとともに、医学研究の一層の推進に資そうとするものであります。  なお、富山医科薬科大学につきましては、富山大学の薬学部を移し、医学部及び薬学部の二学部として、医学と薬学が連携して教育研究を推進することといたしております。  第二は、千葉大学の看護学部の設置についてであります。  これは、看護の分野における指導的人材を養成するとともに、わが国における看護学の教育研究の推進に資そうとするものであります。  第三は、弘前大学、京都大学及び鳥取大学の医療技術短期大学部の新設についてであります。  これは、近年における医学の進歩と医療技術の高度の専門化に伴い、看護婦の養成及び資質の向上に資そうとするものであります。  第四は、分子科学研究所の新設についてであります。  これは、分子の構造、機能等に関する実験的研究及びこれに関連する理論的研究を行う国立大学共同利用機関であり、これにより化学、物理学、生物学等関連分野の発展に寄与することが期待されるものであります。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  このたび政府から提出いたしました文化功労者年金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。  文化功労者年金法は、文化の向上発達に関し特に功績顕著な者に年金を支給し、これを顕彰することを目的として昭和二十六年四月に制定された法律でありまして、以来今日までの間に文化功労者として決定された者は二百六十八人に上り、わが国文化の振興に資するところ大なるものがあったと信ずるのであります。  文化功労者に支給される年金の額は、昭和四十九年度におきまして、百五十万円から二百万円に引き上げられたところでありますが、昭和五十年度予算案におきましては、引き続き、これを二百四十万円に引き上げるのに必要な経費を計上いたしました。  この年金額の改定のためには本法の改正を要するのでありますが、近年における社会的経済的諸事情の変遷には著しいものがあり、これらの諸事情を勘案して年金額の改定を行い、速やかに支給するため、このたび、文化功労者に支給すべき年金の額は政令で定めることといたしております。  以上がこの法律案の提案理由及び内容の概略であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  147. 久保田円次

    久保田委員長 これにて両案の提案理由の説明は終了いたしました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る十九日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十四分散会      ————◇—————