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1975-06-26 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月二十六日(木曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 今井  勇君 理事 坂村 吉正君    理事 中川 一郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 井上  泉君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       足立 篤郎君    伊藤 正義君       片岡 清一君    熊谷 義雄君       角屋堅次郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       美濃 政市君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席政府委員         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         食糧庁長官   三善 信二君         食糧庁次長   下浦 静平君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計情報部長 吉岡  裕君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件 農林水産業振興に関する件(麦価問題)      ————◇—————
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和五十年産麦政府買い入れ価格について政府から説明を聴取いたします。下浦食糧庁次長
  3. 下浦静平

    下浦政府委員 昭和五十年産麦政府買い入れ価格につきましては、昨日米価審議会諮問をいたしまして答申をいただいた次第でございますが、その経過を御説明申し上げます。     〔委員長退席坂村委員長代理着席〕  昭和五十年産麦政府買い入れ価格算定につきましては、食糧管理法第四条ノ二第二項の規定によりまして、パリティ方式により算定をいたしましたものを試算として昨日の米価審議会にお諮りをいたした次第でございます。  そのパリティ指数につきまして申し上げますと、昭和四十五年度基準昭和五十年五月の指数、これは一七四・八一でございまして、昭和二十五、二十六年度基準昭和四十五年度指数二〇五・二〇となっておりまして、したがいまして、昭和二十五、二十六年度基準昭和五十年五月の指数が三五八・七一ということでございます。  したがいまして、昭和二十五年産及び昭和二十六年産大麦裸麦小麦それぞれにつきましでの政府買い入れ価格でございますが、これに乗じまして得ました指数、これはちょっと昭和二十五、六年のときのパリティ価格との対応の関係がございますので、若干の修正がございますけれども、こういう計算の結果出てまいりました価格が、大麦に2きましては三類二等五十二・五キログラム四千七百一円、前年対比四百三十四円のアップということでございます。それから裸麦につきましては、三類二等六十キログラム当たり六千三百八十円、これは前年対比で五百八十八円のアップということでございます。小麦につきましては、二類二等六十キログラム六千百二十九円、これは前年対比で五百六十五円のアップということでございます。こういうことで昨日の米価審議会で御検討をいただいたわけでございますが、この米価審議会におきましての論議概要を次に申し上げます。  まず、第一に、麦の政府買い入れ価格とその算定方式についての御論議でございますが、五十年産麦価につきましては政府諮問方式によって決定することはやむを得ないというような御論議がございました。また、麦価算定方式についてでございますが、現行パリティ方式によって算定することは差し支えないとする御意見、それから、パリティ方式実情に合わなくなっておりますので検討の時期に来ておる、生産費所得補償方式をとるべきではないかとする御意見、それからさらに現行パリティ方式基準年次が古いことでもあり、これを最近時に改める等何らかの改善を加えられないかとする御意見等の御意見があったわけでございます。  それから、国内麦生産対策についてでございますが、これも便宜私から申し上げますが、まず、水田裏作の促進、集団的生産組織育成等により国内麦生産振興を図るべきであるとする御意見、それから稲との作期競合を避けるために、麦のわせ品種開発等生産技術対策を積極的に講ずるべきであるとする御意見、それからさらに麦生産振興奨励補助金につきましては、その交付の時期、額等につきまして適切な改善を行うべきであるとする御意見等がございました。  三番目に、麦の政府売り渡し価格についてでございますが、このたび政府売り渡し価格についての諮問が行われなかったことにつきまして、物価対策の見地もあろうからやむを得なかったといたしましても、食糧政策上の配慮も必要であるという御意見と、それから当面麦の政府売り渡し価格現行のままであることにかんがみまして、麦の二次製品価格について適切な監視と指導を行われたいという御要請がございました。  米価審議会における御論議概要は以上のとおりでございます。  その結果、お手元にお配りしてございますように御答申をいただいたわけでございます。その内容は、一つは、「政府より諮問のあった価格算定方式に対して、所得補償による再生産確保を旨として決定すべきとの意見諮問方式によって決定することを適当とする意見、その他現行パリティ方式改善して決定すべきとの意見等があったが、この際諮問方式によって決定することはやむを得ないものと認める。」ということが第一でございます。第二には、「「農産物の需要と生産長期見通し」に関する閣議決定の趣旨にかんがみ、麦生産振興奨励補助金についてその交付の時期、額等につき適切な改善を行うことを含め麦の生産振興対策の拡充を図ること。」という御答申をいただいております。  なお、別に建議といたしまして、「麦類価格算定方式については、種々の意見があるので、政府において麦作の現状に即し具体的に検討されたい。なお、その結果をすみやかに当審議会に報告されたい。」と、こういう御建議をいただいた次第でございます。  以上、五十年産麦につきましての政府買い入れ価格についての諮問米価審議会におきますところの御論議、それから御答申並びに御建議につきまして、御報告を申し上げた次第でございます。
  4. 吉岡裕

    吉岡説明員 お手元に配付してあると存じますが、昭和四十九年産麦生産費調査の結果につきまして、概要を御説明申し上げます。  一ページに書いてございますように、四十九年産麦平均第二次生産費はここに掲げてあるとおりでございますが、小麦につきましては十アール当たりで二万七千八円、一俵当たり五千四百九十九円ということでございまして、その結果十アール当たり所得としましては一万三千五百四十九円、一日当たり家族労働報酬といたしましては二千四百六十五円ということになっております。  以下、六条大麦裸麦ビール大麦につきましてはごらんいただいたとおりでございますが、なお、「注」に書いてございますように、小麦裸麦につきましては、一俵と申しますのは六十キロであり、六条大麦ビール大麦については五十二・五キログラムということになっております。  なお、この所得及び家族労働報酬の前提になります粗収益算定当たりましては、本来の食糧庁買い入れ価格、要するに麦価基準にして粗収益算定しておりまして、奨励金等を含めた場合にどういうことになるかということは後ほど後のページの方で御説明申し上げます。  そこで、二ページをちょっとお開きいただきたいわけでございますが、この解説の分の主な点を御説明いたしますと、小麦について申し上げますが、十アール当たりでは生産費は前年に比べまして一五・八%の増加、これを一俵当たり、六十キロに直しますと一八・二%の増加ということでございます。その理由としましては、生産費調査農家につきまして十アール当たり収量が前年を約二%下回りましたために、収量が減った分だけ十アール当たりよりも一俵当たりの方が生産費増加が大きくなったということでございます。  それから、構成費の中の主なものでございますが、2に書いてございますように、労働費が全体の費用の四一%、次いで農具費が二〇%、肥料費が二八%、賃借料及び料金が八%ということでございまして、以上の四種目の合計で八五%の費用を占めておるということでございます。  この中の労働費でございますが、全体としましては一三・四%の増加にとどまっております。その理由としましては、おしまいの方から申し上げますと、まず、労働時間が省力化が非常に進みまして前年に比べて一三・八%減少をした反面、単価が前年に比べまして大幅に上昇いたしまして、労賃単価は三一・五%の増ということでございます。この単価増と時間の減少との相殺の結果、全体としては労働費は一三・四%の増加にとどまったということでございます。  それから、農具費は、これはほぼ前年並みとなっております。これは全体としては農具費はふえていく傾向でございますが、生産費調査農家の一戸当たり作付面積増加をいたしておりますために十アール当たり負担割合としては減少をした、こういうことでございます。  それから、肥料費でございますが、肥料価格、特に購入肥料価格上昇によりまして前年に比べ九・九%の増加となりましたが、なお、堆厩肥の施用量というものは相変わらず減少をしておるという傾向が見られます。  それから、賃借料及び料金でございますが、これは四九・七%というふうに大幅な増加になっております。原因としては、脱穀の委託が非常にふえたということがこの主な原因になっております。  以上が生産費を構成します主な費目についての御説明でございますが、そこで、収益性はどうかということでございますが、先ほど申し上げましたように、収量が若干下回ったということがございますが、御承知のような麦価上昇によりまして、粗収益としては十アール当たりで前年を二一・七%上回っておるという結果になっております。  それから、三ページに移っていただきまして、十アール当たり所得が(2)に書いてございますが、これは二九・一%の上昇ということで、さらに粗収益から家族労働費を含まない生産費総額を控除した額、つまり家族労働そのもの労働時間に対する報酬が幾らになったかということを一日八時間の計算で換算をしてみますと、二千四百六十五円ということでございまして、四十八年産麦に比べまして六〇%強の上昇という結果になっております。  なお、これに千八百円ないし二千円の麦の生産振興奨励補助金、それから契約生産奨励金というものが四十九年産で三百円支払われておりますが、これを足しまして、それを粗収益の中に計算をいたしまして出してみますと、十アール当たり所得が二万三千八百四十八円、それから一日当たり家族労働報酬に直しますと五千四百七円というふうな家族労働報酬になっております。  次、四ページと五ページに先ほど申し上げましたようなことが詳細に書いてございますが、これは省略をさせていただきたいと思います。  なお、六ページに生産費調査農家概要が書いてありますが、上の小麦の欄で見ていただきますとわかりますが、十アール当たりの粗収益は、これは麦価計算をいたしまして一二一・七というふうに四十八年産よりも伸びておる。それから、十アール当たり労働時間は二十八・八時間に減っておりまして八六・二%、約一四%ぐらいの労働時間の減少になっておるということでございます。  それから下の欄で、先ほど申し上げましたように、十アール当たり所得小麦で約二九%伸び、家族労働報酬の一日当たりにいたしますと千五百三十四円から二千四百六十五円に約六割の増、それから奨励金等を加えますと十アール当たり所得で約倍、それから一日当たり家族労働報酬計算しますと約三倍になる、こういうことが結果として出ておるわけでございます。  なお、利用上の注意には、私が申し上げましたような所得労働報酬等の出し方等が書いてございますので、ごらんをいただきたいと思います。  以上でございます。     —————————————
  5. 坂村吉正

    坂村委員長代理 質疑の申し出があります。順次これを許します。美濃政市君。
  6. 美濃政市

    美濃委員 ただいま五十年産麦価諮問内容説明されたわけですが、若干の質問をいたしたいと思います。  その前に、きょうは出席する政府委員下浦次長だけですか、食糧庁長官は来ますか。
  7. 坂村吉正

    坂村委員長代理 美濃君に申し上げます。  いまどうしてものっぴきならぬ仕事をしていますので、いずれおくれて来る予定でございますが、若干の時間おくれます。
  8. 美濃政市

    美濃委員 いつごろ来ますか。
  9. 坂村吉正

    坂村委員長代理 一応来る予定でございます。呼んでおります。
  10. 美濃政市

    美濃委員 まず、第一番に、ただいま生産費説明が行われましたが、現在すでに春闘も民間関係は大体終わり、もう少しで人事院勧告も出ると思うのですが、小麦が一日当たり、二千四百六十五円で、裸麦に至っては一日当たり千六百八十八円ということですが、日本のいまの社会でこういう労働賃金で構成されておるところは一体どこにあるのか、こういう低賃金で麦がつくれるのか、参考に聞きたいと思います。  それから、もう一つは、諮問パリティで行われておるがパリティ食糧庁計算したとしても、この生産費に当てはめて、予想される麦価で一日当たりの働く農民所得は一体何ぼ補償されると考えておるのか。  それから最近決まっておる賃金と予想される公務員賃金とどうなってくるのか、その比較を一応説明してもらいたい。
  11. 下浦静平

    下浦政府委員 麦価算定当たりましての算定方式は、先ほども御説明申し上げましたとおり、いわゆるパリティ方式なるものを二十七年以来使用いたしておるところでございます。これにはかねてからいろいろ御意見のあるところでございます。しかし、このパリティ比較によって算定をいたしました麦価に麦の生産振興奨励補助金を四十九年度から支出をいたしておりますので、いわゆる生産対策に関するいろいろな助成措置等もあわせお考えいただきたいと存ずる次第でございます。     〔坂村委員長代理退席今井委員長代理着席〕  なお、生産費麦価関係でございますけれども、ただいまのところは、私、手元に四十八年産の麦の資料しかございませんが、これは全国平均で申し上げまして、麦価カバー率と申しますか、これは九三%程度になっております。これはもちろん地域によってはかなりの相違がございまして、一〇〇%程度になっておるものもございますけれども、全国平均では九三%程度ということに相なっております。
  12. 美濃政市

    美濃委員 いまの答弁はちょっとけしからぬと思うのですね。どうして基本価格説明しないのですか。基本価格の中に奨励金を勘案せよという不都合な話はないと思うのです。奨励金というのは、最近の国際的な食糧事情その他で、麦の自給率の向上のための政策として出しておるのです。勘案せよなどと、いやしくも食糧庁長官であれ一きょうは長官が来ていないのですから、あなたが責任者で、答弁しておるのです。勘案せよと言うなら、基本価格に入れてきちっと算定して、その結果が個々の一日当たり家族労賃に出てきておれば一それは二千四百円とならぬけれども、勘案せよなどという表現を使うのであれば、まずそれは基本価格に入れて麦価補償をして、麦をつくる農民生産意欲を向上させるようにして、きちっと安定的に生産が伸びるような措置をなぜとらないのですか。いつ切られるかわからないような、ああいうつかみ金のような生産奨励金価格政策の上で勘案せよなどという表現はもってのほかだと思いますが、どうですか。そんなものを勘案することはできないですよ。
  13. 下浦静平

    下浦政府委員 確かに、麦価それ自体と生産振興奨励補助金とは、片一方は補助金でございますから違う性質のものでございます。ただ、この補助金の方につきましては、これは生産対策観点からいろいろな助成をしようということで四十九年度から交付をいたしておるものでございまして、そういう観点から、いろいろな地域のまとまりでございますとかあるいは生産の伸びという観点から支出をいたしておりますので、これをこのパリティ方式の中に織り込むということにつきましては非常に困難な問題があるという点につきまして御理解をいただきたいと存じております。
  14. 美濃政市

    美濃委員 答弁をはぐらかさないでください。四十九年の生産費に今回一〇・二%ぐらいのアップであります。しかし、調べてみますと、肥料がものすごく上がっております。過燐酸で五二%ですね。これはもう異常な上昇です。過燐酸石灰が五二%、窒素肥料四一%、カリが四八%、化成肥料が五一%、種子は一四%、農薬一七%です。間違いありません。これが今日現在の生産資材の前年度対比上昇率です。  このように見ますと、今回の一〇・二%などというものは所得増加にほとんど向かわないんじゃないか。生産資材高騰に吸収されてしまう。そうすると、この麦価所得の方は、一日当たり家族労賃報酬は前年度据え置きというような状態に置かれる。そこで聞いておるのですよ。こういう低賃金で、特に裸麦は一日当たり八時間で千六百八十八円、小麦についても一二千四百六十五円、こういう低賃金がどこにあるかということを聞いておるのです。日本のいまの社会のどこにこういう低賃金が実在しておるのか、説明をしてもらいたいと思うのです。  農民だけにこういう低賃金で麦をつくりなさいと言う。こういう政策がどこにあるのですか。どこにこういう低賃金でやっているものがあるか。その実在しておるものの提示を求めます。日本社会におおよそ実在しないような賃金をもって麦の奨励をするのだとか、六十年度に麦の生産をいまの倍ぐらいにするなどといういいかげんな念仏みたいな政策はやめてもらわなければいかぬ。これじゃ麦なんか伸びっこないですよ。この賃金で麦をつくれと言ったって、これで麦をつくってどうして農民生活するんですか。
  15. 下浦静平

    下浦政府委員 麦の生産につきましては、先生これはよく御承知のとおり反収が非常に不安定でございまして、その関係労働報酬その他も非常に不安定に動くということはあろうかと存じておりますが、ここ二、三年のところでは家族労働報酬もかなり上がってきておるように承知をいたしております。
  16. 美濃政市

    美濃委員 私は反収のことを聞いておるのじゃないのです。反収説明に書いてありますからね。平均でとっておるのでしょう。十アール当たり二百六十何キロとっておるわけですから、そういうことを聞いておるのじゃないですよ。ちゃんとこれは専門の統計計算して出しておるのですから、この平均価には間違いないと、私はある程度信用しておるのです。ただ、こういう低賃金がどこにあるかということを聞いておるのです。それを素直に答えなさい。日本社会のどこにこういう低賃金があるのですか。
  17. 下浦静平

    下浦政府委員 ただいまのところ、ほかのものにつきましては私は承知しておりませんので、後ほどまた調査をいたしまして御返事を申し上げたいと思います。
  18. 美濃政市

    美濃委員 これは大変だと私は思います。これから米価決定するのでしょう。その決定に当たって、食糧庁責任者麦価なり日本賃金趨勢がわからないで、どういうふうに価格をしなければ食糧需給対策農民生活できないかということがわからないで、パリティであろうと生産費所得補償方式であろうと、価格試算が行なわれておる。パリティではじき出した価格だから農民生活に対する責任はありませんというものじゃありません。パリティにもとり方があると私は思う。大体、あの物価狂乱の中で算出されておるこの四十九年度の価格そのものが問題にならぬわけです。四十九年度の日本社会が構成されておる賃金との比較は問題にならぬわけです。  いまのところそういうことはわかりませんと言うのですから、これは質問になりません。長官が来るまで私は質問を保留したいと思います。下浦次長質問したって、日本賃金趨勢もわからぬような、そんな無責任答弁をもって私は質問を終わるわけにいきません。暫時休憩して、もう少し責任のある長官なり大臣なりに来てもらわなければ、いかに一般質疑といえども、こんな無責任答弁で済ますわけにはいかぬと思います。社会賃金趨勢はわかりませんと言うのですからね。これはどうでしょうか。
  19. 今井勇

    今井委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  20. 今井勇

    今井委員長代理 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時十分休憩      ————◇—————     午前十一時二十分開議
  21. 今井勇

    今井委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。美濃政市君。
  22. 美濃政市

    美濃委員 長官が見えましたから、さっきからの質問を継続して聞きますが、今回五十年産麦価を一〇・二%で諮問を行った。実際経費を調べてみますと非常に異常なくらい化学肥料が暴騰しております。過燐酸石灰で五二%、窒素肥料で四一%、カリ肥料が四八%、これは単肥ですが、これを化成肥料にしたものが五一%、と、肥料だけでこういう上昇です。肥料は特に上がっております。まあ横ばいのものもありますけれども、肥料というのは一番経費のウェートを占めるわけです。そして、種子が一四%、農薬は一七%です。そうすると、今回のアップ分物財投下という経費増加率にとどまって、農家生活をする家族労働報酬はほとんど四十九年据え置きにとどまるだろうと考えられる内容麦価である。  あるいは物財投下があっても、生産資材高騰によって労働報酬が多少下回るかもしらないという危険すら感ずる。  そこで、四十九年度の麦の生産費統計から公表されたわけですが、それによると小麦が一日当たり八時間で二千四百六十五円で、六条大麦が二千二百十五円で、裸麦に至っては千六百八十八円である。こういう低賃金にことしの麦価は結果的には据え置きになろうとしておる。そして、片や麦は六十年度に向かって食糧自給生産を増強していくんだと政策には打ち出しておるけれども、このような現況で、所得補償されない、生活の保障されない麦をつくっていくことで農業経営がどうしてできるかと私は考えるわけです。そこで、日本企業企業賃金にしても、公務員賃金にしても、こういう低賃金がどこに実在しておるのかということを私は聞いたわけですが、下浦次長答弁は、賃金実情は私はわかりません、パリティ計算したんだからこうなったんですという内容答弁なんです。そういう答弁ではもはや私は質疑を続行することはできないということで休憩しておったわけだが、長官はどう考えますか。考えるかということではなくて、具体的に言ってください。こういう低賃金日本社会のどこに実在しておるのですか。
  23. 三善信二

    三善政府委員 美濃先生が言われましたように肥料等が非常に値上がりをしているわけですが、その辺の実情をまず簡単に申し上げさせていただきます。  農業パリティ指数計算いたします場合に、御承知のように対前年比で一〇二五%アップになっており、昨年からことしの五月にかけての各項目についてのアップ率を見てみますと、経営費関係では、先生のおっしゃるとおり、肥料とか飼料、光熱費賃借料等も上がっております。あるいは労賃も一六%上がっています。それからパリティ計算します場合には、御承知のようにこれは経営費だけではなくて、家計費上がり等も当然総合的に見るわけでございますが、家計費の中で非常に上がっておりますのが交通通信費で、二四%対前年比で上がっております。それから保健衛生費一五%、教育費一九%、教養娯楽費は二五%上がっております。  パリティ計算をします場合には、こういった経営費あるいは家計費支出も中に全部織り込んで総合的にどうであるかということを見るのがパリティ指数の特徴でございますし、総合的に見まして経営の面では九・八%、家計の面では一〇・三%、総合的に一〇・一五%対前年比で上がっているというのが実情でございます。それをとらえてパリティ方式麦価計算いたしておりますので、御承知のような価格になるわけでございます。  そこで、お尋ねの労賃の問題で、統計情報部で出しております麦類生産費の中の労賃は、いま先生がおっしゃいましたように家族労働報酬の一日当たり二千四百六十五円が小麦で、裸麦が千六百八十八円、六条大麦が二千二百十五円ですが、この二千四百六十五円の小麦をとって、こんな低い労賃がどこにあるか、こんな低い家族労働報酬がどこにあるかというようなお尋ねかと思いますが、麦価だけで計算するとこういうように二千四百六十五円に家族労働報酬が一日当たりなりますが、たとえば二千円の奨励金を入れたり契約奨励金等を入れますと一日当たり家族労働報酬は五千四百七円になる。これは麦価だけは二千四百六十五円ということでございます。  また、これに匹敵するような安いものがどこにあるかというお尋ねでございますが、これは統計の方から出しております農村物価指数の四十九年度の概算の統計を見ますと、これは一例でございますが、一例で御勘弁願いますけれども、たとえば建設業で軽作業というところで男子が三千三百八十二円の一日当たり平均賃金、女が二千五百十五円、それで男女込みで二千九百四十八円、平均すれば二千九百四十八円というような数字もこの統計情報部の資料からいまちょっと見ましたけれども、一例としてそういうものはございますが、この麦の生産費調査家族労働費報酬一日当たり麦価だけでやりました二千四百六十五円より高くなっているというようなのが実態でございます。
  24. 美濃政市

    美濃委員 さっきも私は次長にも言ったのですが、基本価格に算入されていない奨励費ですけれども、公開の席上でそれを加えたらと長官みずからが言うのだったら、なぜそれを基本価格に入れないのですか。将来も約束されないものを、一時的に生産を刺激するという奨励金をもって、それを入れたらこうなるとかああなるという話は私は聞きたくありません。奨励金はあくまで奨励金です。そういうことをいやしくも国会で言うのであれば、どうしてそれを基本価格に入れないのですか。基本価格に入れて、そして計算をして出てきた数字で物を言うのであればそれは認めますが、基本価格に入っておりません。こんなものはいつ消えるかわからぬ奨励金ですよ。それは許されぬということです。それを明確にしてもらいたい。そして、あなたらが責任を自覚してもらわなければならぬと思う。それを除いたらこういう低賃金はありません。  それから、いま統計の話で建設業の話が出ましたが、いま九段宿舎を建築しておりますけれども、私は物好きですから日曜日に建築現場へ行って、いろいろと働いておる人の話を聞きますが、世帯を構成している一人前のとびは一日一万円です。大工も一日一万円です。それ以下で働いておる人はおりません。ただ、定年退職をして、あそこへ来て道路作業の自動車の旗振りをしたり、そういうことをやっておる人の中にはいま言われたような人がおります。家庭の主婦が多少の家計費の補充のために来るとか、あるいは定年退職後の人が来るとか、そういう人の賃金の中にそういうものがありますけれども、世帯を構成していて、高校へ行っている子供を教育しておるとか、そういうように中心となって働いておる世帯主の賃金は建築現場では全部一万円です。働く日は一万円であるということです。これを認識しておいてもらいたいと思う。どこを調べてみても二千円だとか三千円だという賃金はありません。これが一つ。  それから、第二点は、かなりの規模をつくっておるとあなた方はいつも言うんですが、私どもの北海道における農協の実績を参考のために申し上げておきますが、これはそこへ書きとめておいてください。まず、コンバインの刈り取り料が十アール当たり三千五百円です。それから六十キロ当たりの乾燥調製費が、ことしは燃料が上がりますから七百円です。コンバインで刈って持ってきて火力乾燥をやりますが、その六十キロ当たりの乾燥調製費が七百円です。それから、これも農協のトラクターの作業賃金ですが、十アール当たりの耕起料が二千円で、それからハローをかけて起てした後の整地作業が九百十円です。それにドリルで種をまきます作業が十アール当たり千百円です。合計四千十円が作業賃金です。それを集計いたしますと、一万五百十円となります。ですから、この統計のいわゆる賃借料及び料金との比較の前に、農薬とか光熱費とかその他諸材料、肥料費ですか、これとの差額が八千七百五十六円。ただし、二十八・八時間という家族労働時間は機械が入ることによってかなり大幅に軽減されますけれども、これだけの差があるわけですから、機械化したことによって反別にしてかなりの家族労働時間が軽減したからそう極端にコストが安くなっておるということにはならぬわけです。参考に申し上げておきます。  ですから、これは二十八時間と同じなんです。乾燥も、大方手で刈り取って機械が余り入っていないものも、大型機械を入れて、その機械に対する経費を払ったものも一大体同じです。ですから、こういう低賃金ではやれない。これはしっかり認識してもらわぬと困ると思うのですが、どうですか。長官の決意を聞きたいと思います。こんなことで麦がつくれるのかどうか。パリティ計算したんだからどうなろうと知りませんと言うなら知りませんと、これははっきりしてください。それとも、つくれないならつくれないとはっきり言ってください。これだけ私が話したらわかるでしょう。それとも、何もわれわれはわかりませんと言うのですか。どうなの。私の質問時間をちょっと超過したし、きょうは午前中に委員会を終わるというのですから、長官の最後の決意を聞いて私の質問を早く終わらなければならぬから、はっきりした答弁をしてください。
  25. 三善信二

    三善政府委員 たびたび私も申し上げておりますけれども、私ども、麦は六十年目標で増産をしていかなければならない、そのためには対策というものが具体的に実っていかないと麦の増産にはならないということは申し上げておるところであります。  そこで、四十九年産麦から千八百円の奨励金をつけることにいたしたわけですが、麦の増産、麦の対策という場合に、麦作の現状というものをもう少し認識をしながら、長い目で見て定着させ、また、経営の規模も大きくしながら効率的にやっていくという、そういうような生産一つの条件とか生産一つ経営のやり方を考えながら増産をやっていくということが基本的に必要ではなかろうかと私は思います。そういう意味で二十七年来先生方御承知のようにパリティ麦価そのものは決めておりますが、そういう奨励措置をともに講じながら今後の麦作の振興を図っていきたいと思っております。  北海道の例が出ましたけれども、北海道の場合は何と申しましても、いま先生がおっしゃいましたような大きな機械を利用し、そういうオペレーターの賃金も上がっていくし、そういう機械化農業と言ってもなかなか一それも簡単に抽象的に言っても効率的にどこまでなるかということは私どももっと研究していかなければならぬと思いますけれども、何を言っても面積が内地とは全然違うというようなことで、現に四十九年産麦、五十年産麦が伸びているのは北海道が一番伸びておりますし、内地の場合は九州がわずか伸びているというような程度でございます。ただ、北海道の場合は畑作で内地は水田裏作でございまして、畑作の場合には先生承知のようにほかの作物との輪作体系も考えながら特別の畑作の振興ということを考える必要があろうかと思いますが、何と申しましても内地の水田裏作をどうやって麦の増産に結びつけていくかということがやはり一番基本的な問題であろうかというようなことも考えているわけでございます。  したがいまして、米審の答申にも生産対策に特に力を入れてやれという御答申もいただいておりますし、私どももそういうことで今後対処してまいりたいと思っているわけでございます。
  26. 美濃政市

    美濃委員 時間がオーバーしたので、最後に一言申し上げて私の質問を終わりますが、答弁をそういうふうにはぐらかしては困ります。私は、所得補償しなければ麦は伸びないと言っているのです。北海道において伸びたと言いますけれども長官、国会が終わりたら私が案内しますから北海道へ見に来なさい。何も所得がよくて伸びたのじゃないのです。農政が悪いから離農が続出している。そして、過疎化して面積が拡大してどうしようもないから、農協が高い作業賃がかかるような機械を買ってやっているのです。それでも荒廃するよりもいささか所得になるということなんですが、自家労働ではやれない。それからもう一つは地力維持ですね。バレイショとかてん菜は非常に地力を吸収するけれども、麦は地力を傷めませんから、そういう輪作との関係で荒廃するよりもいささか所得になるということでやって、それで若干伸びておるのだ。北海道へ行って、基本的に麦をつくって生活ができるという所得が実在しておったらお目にかかります。国会が終わったら私が案内しますから私のところに来てください。そして、あなたらが考えているようなそんなものではないということを深く認識して、所得的に国民食糧として麦がつくれる体制を速やかに確立するということに全力を注いでもらいたい。  きょうの答弁は問題になっておりません。全く不認識である。長官も次長も実情を知らない。そういう物の認識で麦価計算するなどということはもう許されない。  これだけ申し上げて、私の質問を終わります。
  27. 今井勇

    今井委員長代理 芳賀貢君。
  28. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際、政府の麦価格決定に先立ちまして、重要な点に対して三善食糧庁長官並びに吉岡統計情報部長に質問をいたします。  まず、第一に、昨日開かれました米価審議会における政府諮問案の内容並びに審議会答申建議あるいは口頭による意見等について先ほど概要を聞いたわけでありますし、また、統計情報部長からは、昭和四十九年産の国内産麦に対する生産費の結果が資料に基づいて述べられたわけであります。  そこで、まず長官にお尋ねしたいのだが、政府米価審議会諮問したところの昨年度価格に対して一〇・二%引き上げる政府試算内容は、単に、食管法の第四条ノ二の第二項の前段において述べられている「昭和二十五年産昭和二十六年産ノ麦ノ政府ノ買入ノ価格平均シテ得タル額二農業パリティ指数ヲ乗ジテ得タル額ヲ下ラザルモノトシ、」という規定に基づいて計算されたもので、これが一〇・二%昨年よりも引き上げるという試算内容でありますが、問題は、パリティ方式によって基準になる価格算定するわけでありますが、それを下らざることを原則にいたしまして、後段では、「麦ノ生産事情其ノ他ノ経済事情テ参酌シ麦ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになっておるわけでありますから、この分についてはこれから政府決定して告示をするまでの間、いわゆるパリティ計算した基準になる価格に対してどのように積極的な参酌価格を加算して麦の再生産確保を図ることができるか。そういう決定価格をこれから作業されると思うわけでありますが、その点については、きょうは大臣の出席がありませんので、事務当局の責任者としてはどう考えておられますか。
  29. 三善信二

    三善政府委員 麦価を決めます場合に、いま先生が申されましたように、私ども、食管法の第四条ノ二の二項で、このパリティ指数昭和二十七年来麦価そのものは決めてきておりますし、今回も麦価そのものはパリティ指数で決めることにいたしております。ただ、党の中でも、また米審でも、生産対策についてのいろいろな御注文と申しますか、もっと振興を図るべく充実をしろという話がいまありますし、党の中で、麦価そのものではなくて生産対策として別にどういうふうな振興策をとるかということで、具体的にいろいろと検討をしていただいているような次第でございます。
  30. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私が聞いておるのは、政府買い入れ価格のほかに従来行った生産対策の一環としての補助金をどうするかということを聞いているのではないですよ。食管法第四条ノ二の第二項の規定に基づいて政府は麦の買い入れ価格決定して告示しなければならぬ。決めるに当たっては、まず前段において農業パリティ指数を基礎にした基準になる価格算定して、これに対して価格決定年における生産事情あるいは経済事情というものを参酌して、必ず麦の再生産が確保される価格を定めなければならぬということが食管法の規定なわけです。昨日までは前段のパリティ計算した場合にはこういう価格になりました、これは昨年の価格に対して一〇・二%の引き上げになります、と、そこまでは作業が行われたが、後段の大事な参酌事項というものを、特に国内における麦作の増産を実現するという見地から見た場合、どういうような生産事情、経済事情というものを把握してこれを勘案し、参酌して価格を決めるかということを聞いておるのです。一体どのくらい参酌価格というものを加算するわけですか。
  31. 三善信二

    三善政府委員 先ほども申し上げましたように、従来から麦価パリティ計算した額そのものを麦価として決めておりますし、法律では「下ラザルモノトシ、其ノ額フ基準トシテ麦ノ生産事情其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ麦ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と書いてございますが、麦価を決めます場合に、従来からこの生産事情とか経済事情とか——まあ生産事情でいけば、国民農業産出額の全体から見れば麦はまだ〇・四%くらいかと思います。国民経済の中でその生産のウエートは非常に少ないし、経済的に見てもそういう問題もございますし、従来から麦を百何十万トン、二百万トンつくったときからパリティでやってきているわけでございまして、こういう事情等につきましては従来も特に加算をするというようなことはいたしておりませんし、今回もそれは党に持ち帰りましても価格として加算をするということはいま考えられておりません。ただ、これからどうやって伸ばしていくかという、生産を増強していくというようなものは、私が先ほどから申し上げておりますように、一つ奨励施策として価格とは別個の観点からそれを充実していこうというようなことで党内でも一議論がされておりますし、私どももそういう方向で考えていくべきだと思っております。
  32. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。私が聞いているのはそういうことじゃない。これは法律で明定してあるわけだ。第四条ノ二の二項前段では、まずパリティ方式で決めるとして、それを下らないものを基準にして、それに生産事情、経済事情を参酌して、再生産が確保できる政府の麦買い入れ価格を定めるということになっているでしょう。買い入れ価格ですよ。その他の奨励金をどうするということを私は聞いているわけではない。食管法の明定するところに基づいて、ことしはパリティ計算された基準価格に対して生産事情、経済事情を数字でどう勘案をして買い入れ価格を決めるかということを聞いておるのです。勘案する考えがなければないと言ったらいいじゃないですか。
  33. 三善信二

    三善政府委員 はっきり申し上げますと、この後段の参酌するということは考えておりませんし、勘案するということは考えておりません。ただ、生産振興するために別の対策を考えておりますということでございまして、この点は先生がおっしゃるように考えておりません。
  34. 芳賀貢

    ○芳賀委員 考えていないということは、法律違反をあえてやるわけですね。法律には「参酌シ」ということが書いてあるわけだからね。それは参酌にはマイナスもプラスもあると思いますよ。しかし、下ってはならぬということが前段で定められておるわけだから、参酌し、勘案することになれば、パリティ計算した基礎価格に対して当然プラスになる参酌をしなければならぬということに実態はなるわけでしょう。どうして法律違反して参酌しないというわけですか。せっかく書いてあるでしょう。なぜ法律違反をやる気になっておるのですか。
  35. 三善信二

    三善政府委員 いや、「参酌シ」と書いてあるから、それを参酌しなかったから法律違反ということにはならないと思います。この規定の基本はパリティを「下ラザルモノトシ、」ということが一つの根幹でございまして、あと参酌するしないはまたほかの条文でもいろいろありますけれども、参酌する場合でも、一般的に申しましてプラスの場合もありますでしょうし、マイナスの場合もありますでしょうし、ここではプラスの参酌ということはいたしません、また、従来から一回もいたしたことはございません、と、そういうようなことで申し上げているわけでございまして、参酌しないから法律違反になるとおっしゃいますけれども、何もそうはならないと思います。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうふまじめな態度だから麦がどんどん全滅してしまったでしょう。参酌しないできたから全滅したのですよ。今度は長期見通し昭和六十年までに二倍に増産するということになれば当然——いままでは参酌しなかったから自民党政府が全滅させたわけでしょう。今度は復活させるためには、根拠になる食管法の規定に基づいて生産促進のできるような参酌事項というものを生かして買い入れ価格決定しなければ、生産者は安心して麦作に取り組むことができないということになるわけです。このまま全滅させるのならいいですよ。それならばいまのように思い切って参酌しませんと言い切ってもいいですけれども、何とかふやさなければならないわけでしょう。  ことしの五月十六日にわざわざ閣議決定を通じて「農産物の需要と生産長期見通し」というものを決定したわけでしょう。だから、三善食糧庁長官としては、この閣議決定に基づいて、昭和六十年までに麦については昭和四十七年を基礎にして二倍に増産しなければならぬという至上命令をあなたはしょっているわけでしょう。これは大変なことじゃないですか。もう四十八年、四十九年と二年たったけれども、全然これは進行していないでしょう。六十年に後十年間でどうして四百二十万トン、二倍にすることができるかというわけです。  それではもう一つ別な角度で聞きますけれども、農林省の統計情報部が何のために毎年麦の生産費とか米の生産費調査をしておるわけですか。これは相当の労力と時間を使っておるでしょう。先ほども吉岡部長から詳細な説明があったわけだが、この四十九年の麦生産費調査の結果というものは、昨年政府が決めた非常に安い政府買い入れ価格とこれを比較した場合において大きな間違いが発見されるでしょう。生産費というのは、結局、具体的に麦の生産事情というものをまず反映しておるということが言えるんじゃないですか。だから、農林省自身が調査した麦の生産費というものは一年おくれにはなるけれども、同じ年度における政府の決めた買い入れ価格と農林省が調査した生産費の結果というものは、当然これは比較対照して見る必要があるじゃないですか。だから生産事情とか経済事情というものは非常に抽象化されておる。漠然としておる。  それでは、生産事情の中に生産費調査の結果というものは入っておるわけでしょう。それを一体どう考えておられるか。何のために生産費調査をやっておるのか。これを伺いたい。
  37. 三善信二

    三善政府委員 これは吉岡部長から答えた方がいいかと思いますが、麦の生産費調査の場合、最近は対象農家が百六十三戸か何かでございまして……(芳賀委員「答弁をもっと簡単に。生産事情の中へ生産費調査が入っていると思うか、入っていると思わぬかということを聞いておるわけです。簡単にやってください」と呼ぶ。)
  38. 今井勇

    今井委員長代理 簡潔に願います。
  39. 三善信二

    三善政府委員 簡潔にと申されましても、いろいろ申し上げた方がおわかりやすいかと……(芳賀委員「詳しいことは担当部長から聞くから、あなたとしては、生産事情の中に入っておるかどうかということをはっきり言えばいいんだ」と呼ぶ。)  生産事情の中には、生産費とか、そういうようなものも全然入っていないということではございませんし、今後の需給事情やら生産事情やら、そういうことを一応参考には当然していると申し上げていいと思います。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃ、入っているとすれば、去年、四十九年の生産費調査は先ほど吉岡部長から説明したとおりですが、まず、小麦については、六十キロ、一俵当たり五千四百九十九円で、政府の昨年の買い入れ価格は一俵五千六百三十五円だから、この分については生産費調査の結果よりも一政府買い入れ価格の方が一俵について百三十六円上回っておるということになるわけですが、第二に、大麦五二・五キロ、一俵については、生産費調査の結果は四千九百二十円で、政府の去年の買い入れ価格は四千三百八十八円だから、生産費価格よりも買い入れ価格の方が一俵当たり五百三十二円低く決められておる。結局、生産者から見ればこれだけ生産費というものを削減されたわけですね。結局それは自家労働に食い込むという結果がこの統計資料にも出ておるわけです。  もう一つ大事なことは、昨日諮問をして米価審議会がおおむね可とすると答申した、いわゆる政府試算価格というものの大麦一俵は四千七百一円ということになっておるでしょう。そうすると、一年前の四十九年の生産費調査は四千九百二十円である。一年たって物価、労働賃金あるいは生産に要する諸経費が大幅に上昇しておる中において、四十九年の生産費価格よりもことしの政府諮問価格の方が一俵について二百十九円低い価格ということになるわけでしょう。まさかこんなばかな価格を決めることはないと私は考えておるが、一年前の生産費調査の結果よりもさらにことし二百十九円も安い価格を決めようとするような、こういうやり方というものは重大な問題があるわけでしょう。結局、これは食管法の四条二項の前段だけで計算をするからこういうことになるわけですよ。  第三番目は、裸麦六十キロ、一俵の値段が農林省の四十九年の生産費調査は六千九百二十四円で、去年の裸麦政府買い入れ価格は一俵当たり五千九百十三円ですよ。そうすると農林省の生産費調査よりも一俵当たり千十一円政府買い入れ価格のほうが不当に低いということが明らかになっておるじゃないですか。一俵千円生産費よりも一安いのですよ。これじゃ自家労働報酬というものは全然なくなってしまうじゃないですか。特に、ことしの場合も、去年の低い価格に一〇・二%引き上げただけですから、政府諮問価格は、試算価格は六千三百八十円でしょう。そうすると去年の生産費価格よりも一俵についてことしの値段は五百四十四円さらに低いということになるわけですね。同じ農林省の中の食糧庁長官、同じ農林省の中の統計情報部長というものは無縁のものじゃないでしょう。ことしの産麦の価格決定に当たっても、去年の政府買い入れ価格生産費の結果が一体どうなっておるかということを考えて、一年だって経済事情や生産事情が激変しておる中において、最低再生産を確保することのできる買い入れ価格にするということは当然じゃないですか。これに対しては一体どう考えておるかという点です。     〔今井委員長代理退席、坂村委員長代理着席〕  もう一つ、私はこれは吉岡部長と長官に明らかにしてもらいたいわけですが、四十九年の小麦だけを例にとりますと、十アール当たりの家族労働時間は二十八時間で、これは四十八年の十アール当たり労働時間に対して農業労働生産性というものは約一四%高まっておるから、大体十アール当たり四時間余りの労働投下量というものが減少しておるわけです。これは民間や公務員労働者の労働生産性をはるかに上回る偉大な労働生産性というものを示しておるわけでしょう。一年に十アール当たり四時間労働時間が短縮されたということは、それだけ労働生産性というものは高まっておるわけでしょう。それに対して、家族労働費が九千百十一円、一日当たりが二千六百三円、時間当たりにすると三百二十五円ということにしかなっていないですね。高い労働生産性を発揮して一生懸命労働しても、時間当たりの家族労賃が三百二十五円。なぜかというと、この三百二十五円なるものが、いわゆる問題になっておる農業臨時日雇い労賃というものを農家の自家労働の評価替えに充てておるので去年はわずか三百二十五円にしかなっていないということになるわけです。  こういうような低い家族労働費を計上した一俵当たり生産費という結果に対して、さらに低い買い入れ価格を去年はもちろんことしも設定するというごとになると再生産確保はできないということになるのですよ。麦作を放棄しなければならぬことになることは当然のことですね。値段は安くても他の生産対策奨励金を出すからいいではないかということでは済まない問題だと思うのですね。そうじゃないですか。  もう一つ吉岡部長にお尋ねしたいのは、家族労働費のほかに家族労働報酬というものが産麦それぞれに示されておるわけです。これはいずれも家族労働費の一日当たり賃金額よりも低いわけですね。たとえば小麦家族労働費は二千四百六十五円ですから、一時間当たりにすると三百八円にしかならぬ。大麦の場合には一日当たり二千二百十五円だから、時間当たりにすれば二百七十七円にしかならぬ。裸麦の場合には一日当たりわずか千六百八十八円という家族労働報酬であるので、これでは時間当たりにするとわずか二百十一円にしかならぬ。結局、このような結果というものは、日雇い労賃の時間当たり、一日当たり労働報酬だけでも充足できないというのが昨年四十九年の産麦の生産費の実態ということになっておるわけです。  再生産確保と言っても、一年じゅう働いておる農家の自家労働に対して、少なくとも他産業並みあるいは米価決定と同じように五人以上規模の製造業の平均労賃をとれというのが一貫した方針でしょう。そうなると、昨年の製造業の五人以上規模の平均は男女込みで六百三十円ということになっておるわけだ。その六百三十円と農業日雇い労賃の三百二十五円というものを比較した場合、ちょうど半分じゃないですか。時間当たり三百円低く生産費調査というものは評価されておるわけですね。一時間三百円製造業よりも低いということは、十アール二十八時間労働が投下されており、そして小麦調査農家平均にすれば反収三百キロの五俵ということになれば、少なくとも労働費の評価だけで五人以上の賃金と日雇い労賃比較をした場合に、価格計算上一俵千七百円ないし二千円の差額が出るわけですよ。本来から言えば、この農林省の生産費価格で他産業並みということになれば、それぞれ一俵当たり千七百円ないし二千円の労働報酬の加算をしなければ本当の生産費調査の結果というものが出てこないわけです。これも議論の余地がないでしょう。  だから、ことしの価格決定に当たっては、昨年行われた麦の生産奨励金を初め集団化をやる場合の助長対策の助成その他、去年は相当前向きの奨励施策を行ったことは私も認めておるわけですが、しかし、それを基準になる政府買い入れ価格とすりかえて、この分をこれだけつけるから心配ないというわけにはいかぬと思うのです。あくまでもまじめに食管法の示す政府買い入れ価格を決めるということが一番大事な要件だと思うんですよ。どうですか、そう思うか、思わぬか、これは長官並びに吉岡部長からも明確にしてもらいたいと思います。
  41. 三善信二

    三善政府委員 思うか思わぬかということより、その前に、先生がいろいろなことを申されますのでそれに対してちょっと申し上げますと、たとえば麦の生産費調査は、統計でも申し上げておりますようにこれは事例的調査ということでやっております。百六十三戸でございます。  それから、全国平均ということで一応作業しておりますけれども、全国平均でいけばなるほど昨年の価格とことしの平均生産費は多少価格の方が上回っているというようなことは事実でございますが、中身を見てみますと、これは北海道、東北、関東、東山、東海、中国、九州と、皆それぞれ生産費というのは非常にぱらつきがありますね。(芳賀委員「それは統計調査部長を批判しなさいよ。」と呼ぶ)だから、そういうような生産費調査でございますし、それから毎年麦作においては収量も違うし、それから今後……(芳賀委員「委員に向かっておかしいじゃないか。作業した者を批判すればいいじゃないか。何を言っているのだ。」と呼ぶ)  そういう問題がございますということを私は申し上げているわけで、そういうことを勘案しまして、やはり何を申してもこの麦作の経営のグルントを育てていくということがまず基本ではないかということを申し上げているわけでございます。(芳賀委員「批判があれば統計調査部長を批判しなさい。委員会がつくった調査資料じゃないですよ。農林省が公表しているんじゃないか。」と呼ぶ)
  42. 吉岡裕

    吉岡説明員 先生からお話しのございました統計調査の問題について、私からお答えをいたします。  先ほどお話しのございました小麦とその他の産麦の家族労働報酬比較がいろいろございましたわけですが、この生産費調査につきましては、この七ページの七のところに「小麦以外の麦の生産費調査は、事例的な調査である」ということが「注」に書いてございます。と申します意味は、先生承知のように小麦については全国的にも集団的な産地が相当ございますので、小麦生産農家を対象にして、しかも農家の記帳によらなければなりませんので、それの協力を得ながら生産費調査をするということがある程度可能なわけでございます。ところが、その他の麦につきましては非常に地域的にも偏りがあり、また経営規模その他につきましても、経営の中でウェートが高いものから非常に低いものから千差万別でございまして、米の事情と麦の事情というものが非常に変わっておるわけでございます。  そういう次第でございまして、私どもの対象にしております生産費調査農家の数その他からいたしまして、小麦につきましては相当程度の代表性を持っておる。しかし、やはり主産地に収斂をしたような地域での代表性ではなかろうかというふうに思っておりますし、また、その他の産麦につきましてはやはり主産地の傾向を示してはおりますが、一つの事例的な調査というふうに御理解をいただきましてお扱いをいただくことは麦の生産実態等に照らしましてやむを得ないのではないかというふうに思っておるということをひとつ御理解をいただきたいわけでございます。  それから、御質問の中にございました労働時間の減少は確かにございますが、ここの十アール当たりの動力運転時間というものを見ていただきますと、この点は私どもの調査では小麦については前年とそう大きな変化が出ていなくて、脱穀等の委託作業が非常にふえているということで労働時間が減り、その結果委託料、料金等がふえているという結果になっておるわけでございます。  それから、労働報酬と評価賃金単価のお話しがございましたが、この点はおっしゃいますように、確かに、今日日本の農村で農業臨時雇い賃金というものが非常に例外的なものになっておりまして、こういうものの収集がだんだん非常に困難になってきておるということは実態としてあると私どもも考えております。したがいまして、私どもとしましては、臨時雇い賃金にかわるべき適正な、生産費調査単価として使うにふさわしい賃金を求めなければならぬであろうということでいませっかく準備をいたしておりまして、行政管理庁等との手続を終え、できるだけ早い機会に新しい賃金単価のとり方というものに取り組んでまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま、吉岡部長は、小麦以外は参考事例的なものだということを言っていますね。そういうことで昭和四十九年産麦生産費は出しているのですか。そういうことで公表しているのですか。「要旨」として、「昭和四十九年産麦類の平均生産費は、次のとおりである。」として、小麦六条大麦裸麦ビール大麦をそれぞれ列記しているじゃないですか。どこにも参考事例云々なんてことは書いてないじゃないですか。だめですよ。小麦については生産費と去年の買い入れ価格が大体似たようなものだが、それ以外は全部生産費よりも下回った価格でしょう。ことし決めたのもまた下回っておる。その点を指摘されて、麦の値段を安く決める場合の言い逃れとして、実は小麦以外は参考事例として出したので余り信憑性はない、気にしないでくれと言うのはおかしいじゃないか。そういうでたらめなものであれば小麦だけ出せばいいじゃないですか。信憑性のない、確信のないものをどうして一緒に並べるのですか。これはいつもの吉岡君らしくないじゃないか。一体何のためにこんなものを出すのか。
  44. 吉岡裕

    吉岡説明員 先ほど申し上げましたように、七ページをお開きいただきますと、「利用上の注意」の七のところに先ほど申し上げましたようなことが書いてございます。先生承知のように、生産費調査というのはいろいろな目的でやっておりまして、価格算定のための資料になるということもその一つでございますし、それぞれの経営改善対策のための資料としても使われますし、また、いろいろな行政的な生産対策のための資料としても使われるという非常に多角的な用途を持っておる調査でございますので、そういう趣旨で私どもはその他の産麦についても調査をいたしておるということでございます。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことであれば一ページに大きく書けばいいのですよ。一番大きな活字で書いて、小麦以外は自信がない、しかし、麦といってもいろいろ種類があるので、小麦以外の分については参考的に書いておいたのでそのつもりで扱ってくれということであれば別だけれども、大事な一ページというのは全部確信のあるようなことが書いてあるじゃないか。統計というものにはわれわれは信用を置いているのですよ。統計情報部長というのは農林省の中でも局長ではなく部長だが、少なくとも独立性を持っておるでしょう。長官だろうが、局長だろうが、おい吉岡部長、おまえけしからぬということを言う者はだれもいないのじゃないですか。だから、日雇い労賃の一時間三百円そこそこではじいた生産費調査よりも食糧庁の麦の買い入れ価格が去年も安い、ことしもまたそれよりもさらに安いという場合に、三善君これはおかしいじゃないか、生産費というものは法律のむ中「生産事情」等を十分に参酌して、これが反映できなければ麦の再生産は確保できないじゃないかぐらいのことをはっきりとまともに言う必要があると思うのですよ。これは私は重要事項として申しておきますが、そのくらいの決意でやってもらわぬと、周囲を見たってなかなかうまくいっていないでしょう。がんばってください。  先ほど同僚の美濃委員からも言ったとおり、きのう米価審議会政府試算麦価をおおむね可とするような答申を出したとしても、それに満足してその値段で決めるということは、われわれ農林水産委員会としては絶対これは認めることはできませんよ。だから、食管法第四条ノ二の二項の後段にあるところの、パリティ計算した価格生産事情、経済事情を十分に反映される価格でことしの麦作の再生産を確保すると同時に、政府が閣議で決めた昭和六十年を目標にする十年間二倍増産の目標が完全に達成されるような値段をこれから鋭意作成して、そして、それを自民党に相談する必要があれば、自民党の農林部会でも政調会でも審議会でもいいですから、こうしなければだめですよということをあなたが説明しなければだめでしょう。幸いにきのう米審の答申政府試算どおりでいいと言いましたから早くこのとおり決めてくれなんてことで、委員会へ来るのをサボってあちこち歩いているようじゃまともな値段は決まらないじゃないですか。それがいわゆる国会軽視ですよ。自民党だけがあって国会も委員会もないという間違った考え方、それがいまの日本の農業や食糧政策を根本から覆して誤らしておるわけですからね。国民の役人としてがんばってもらいたいと思うのですね。ときどき私はあなたにも直言することがあるのですが、これは大事な点ですよ。  そこで、最後の締めくくりになりますが、試算麦価をそのまま決めることは断じてまかりならぬ。  それから、特にこれからの問題として、まず一つは、政府が閣議で決めた長期見通しの実現に向かって、「農産物の需要と生産長期見通し」による生産目標を必ず達成するために、これは価格政策あるいは生産対策について実現する必要がある。それには生産基盤の整備の問題が大事だが、大増産をやるということになれば、内地府県における水田の裏作による米麦一貫体制の確立を進めなければ所期の成果を上げることはできないと思うのですよ。だから、これに対して特別の助長政策をとる必要がある。  もう一つは、北海道を中心とする畑地帯における麦作の集団化あるいは機械化というものが十分に意欲的に発展されるような体制についていままで以上に強力な助成を行う必要があるのではないか。  それから、いままでは国産麦を全滅させるために麦の品種改良も何もしなかったでしょう。このおくれを取り返すということになれば大変な苦労が要るわけであります。幸いにして農林省においてそういう試験研究のための技術陣というものは一応体制的には用意されているわけだが、それを活用していないわけですから、休眠させておるわけですから、その優秀な諸君が十分に奮起して品種改良とか栽培の改良等について第一線でがんばってもらえるような体制をつくるについて、予算を要すればそれを確保するということをやる必要があると思うわけであります。こういう点は重点的な増産対策、生産振興対策の強化ということになるが、これを十分念頭に入れてことしの価格決定をしてもらいたいと思います。  それから、もう一つは、昨年行われました麦生産振興奨励補助金等についても、二千円あるいは千八百円に区分するというような非常に不統一なやり方をして不満を招いておるわけでありますが、こういうものはできるだけ速やかにことしから一本化して、さらに補助単価等についても一再検討して上げるものは上げて、少なくとも、政府に売り渡した麦の販売価格農家が受け取ると同時期にこれらの補助金等についても支払われるようにする必要があると思うわけであります。  あるいはまた、集団的な生産地帯等の輸送費の問題であるとか、あるいは麦の振興奨励のための要綱等も非常に不完全な点があるわけですから、これらを政府の行政の中で抜本的に改善をして、全国的に農家の皆さん方が麦作についても意欲を燃やして十分に取り組むことができるようにすべきである。  こういう点はかかって今度の産麦の価格決定というものが一番基礎になるわけですから、思いを新たにして長官においてもぜひ十分にがんばってもらいたいと思いますよ。本当はこれは大臣を呼んではっきりさせたいわけですが、ちょうど参議院においてわれわれの委員会から送ったえさの品質保全とか改善に関する法律をきょう委員会で上げるということになっておるので、それに大臣が出席しておるわけでしょう。あなたが来なかった理由とは全然違うわけだが、きょうは食糧庁長官としてあなたの責任が一番重いわけだからしっかりやってもらいたいと思うのですが、その点についてはどう考えているのですか。考えがあれば示してもらいたい。
  46. 三善信二

    三善政府委員 御激励にこたえてしっかりやります。  長たらしい答弁をすると怒られますけれども、第一点の価格の問題は、麦価については従来どおりパリティでやることにいたしております。  生産振興奨励につきましては、いま先生も申されましたような点を踏まえて十分検討させていただきたいと思います。
  47. 松元威雄

    ○松元政府委員 従来著しい減少傾向をたどっておりました麦を六十年の長期見通しに即応してこれから大いに生産を伸ばすわけでございますから、端的に申しましてこれはなかなかむずかしい課題でございます。  この課題をいかにして実現するかということですが、そのためにはただいまの御指摘のように各般の生産対策をさらに充実させなければならぬわけでございます。四十九年から生産振興奨励補助金交付等の施策を新しく講じましたから、いわば歯どめがかかって伸びる曙光が見えた。これをさらにどのようにして伸ばすかということですが、しかも定着をしなければならぬわけでございますから、そのために、ただいま御指摘のように水田裏に重点を置いて伸ばしていく。あるいは集団化機械化を促進する。さらに、根底にはやはり品種改良の問題がございます。品種というのは、麦の早生、多収品種の改良、あるいはまた今度は米麦一貫生産体制に即応いたしました米の方の技術対策もございます。これらもしなければならぬわけでございます。  それから、さらに、生産奨励補助金につきまして、ただいま御指摘の二千円、千八百円の問題と早期支払いの問題等がございますが、これにつきましては私どもも五十一年産麦につきましていろいろ検討いたしたわけでございます。ただし、昨年かなりおくれたという御指摘もあったわけでございますが、若干申し上げますならば、一般会計からの生産振興補助金ということからかなり出し方に制約もあるわけでございます。たとえば補助金でございますが、交付申請をとらなければならぬという手続がどうしてもあるわけでございます。昨年は初年度でもございましたから非常におくれたわけでございますが、それではせっかくの効果が大幅に減殺されますものですから、これにつきましてはいろいろ検討いたしておりますが、今後さらにできる範囲で早期支払い等の努力をいたしてまいりたいというふうに考えます。
  48. 坂村吉正

  49. 中川利三郎

    中川(利)委員 先ほど同僚議員から、小麦の一日当たり家族労働報酬がわずかに二千四百六十五円だ、世の中にこんな低い価格があるかということで質問があったわけでありますが、まず、私が聞きたいことは、昭和四十六年度の農業白書の中に、このときの麦作の一日当たり労働報酬が、出かせぎ賃金比較した場合にも小麦でわずか二五%ということを指摘しておるわけでありますが、昭和四十九年度には何%なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  50. 三善信二

    三善政府委員 細かい数字でございますので、ちょっと調べさせていただきます。
  51. 中川利三郎

    中川(利)委員 昭和四十六年度で出かせぎ賃金のわずか二五%だが、相対的な傾向としてはこれを上回っているのか下回っているのかということぐらいはおわかりだと思うのですけれども、いずれにしてもこのような低い労働報酬で、再生産ができない、生産費を償えないものでありますから出かせぎが出ておるわけでありまして、いまあなた方は裏作の振興だと言いますが、小麦で申しますと二千四百六十五円という状況の中で裏作の振興だと言っても、それができるという保証がこの価格の中には全くないと思うのですけれども、この点はどうでしょうか。
  52. 三善信二

    三善政府委員 先ほどの賃金の問題でございますけれども、比較の対象として一つ使えますのは、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、たとえば建設業の軽作業で四十九年で一日当たり平均賃金は男女平均すれば二千九百四十八円で、それに比べまして麦の場合はまだ低くなっているということで、四十六年度に比べますればもっと上がっていることは事実でございますが、私どもは麦価麦価として計算をし、現在の麦作の全国的な国民経済的な位置づけというものも考えていかなければいけませんし、それから先ほど来御質問がありましたように生産費調査もありますけれども、地域によって、年によっていろいろと振れが多いし、各四麦によって振れが多いというような問題もございます。ですから、麦価麦価として、従来どおり二十七年以来やっておりますパリティ方式でその計算をすることにいたしておりますが、ただ、今後十年目標で倍以上に増産していくという大目標がございますので、そのために現在の麦作の実態を考えて、その実態をどう改善していくか、基礎をどう改善していくかということを含めて奨励施策を講じ、増産を図っていくというのが基本的な考え方でございます。  それで、おまえたちはすぐに奨励金等を含めて労賃の問題とかいうことを言うが、それはけしからぬというお話しもございますけれども、農家としてみますと手取りの金ということですぐに計算しやすい点も当然のことかと思いますが、そういう奨励金等を入れますと一日当たり労働報酬等もかなり多くなってきているというような実態でございます。
  53. 中川利三郎

    中川(利)委員 聞いたことだけに答えてください。いままで出かせぎがどんどん進行していたがこの出かせぎも最近の経済不況の中でしたくてもできない。そこで、さて麦作をやろうとしても、このような再生産を償えない価格ではできないので、麦作がどんどんつぶれていった。二重にいま困っているのが農民の実態なんです。しかも、出かせぎ賃金のわずか四分の一ということですね。いまでもその前後だということで、どう考えればこれで再生産ができるというのですか。建設の労働者はまだ、二千九百円ぐらいのやつがあるのだなんて、こんなことを言うなんということはまことに失敬な話ですよ。農業内部でどう生かすか、どう食っていけるかということを考えるならば、こんな全くお話しにならないようなものを押しつけておいてどうして裏作が振興できるのですか。裏作をすると言ったって、こんな間に合わない金じゃだれもやる人はおらないでしょう。この点についてあなたは十分だとお考えなんですか、どうですか。そこだけお聞きすればいいです。
  54. 三善信二

    三善政府委員 先ほどから申し上げておりますように、生産振興の対策を充実してまいることがこの麦の増産のために一番大きな問題であろうと思います。
  55. 中川利三郎

    中川(利)委員 だから、生産振興の対策の第一は価格をちゃんと再生産できるようなものにすることで、そのためにはこのようなインチキな価格ではだめだと言えば言い過ぎかもわかりませんが、出かせぎ賃金の四分の一だということが実態として本当に妥当だと考えるかどうかということを私は聞いているのですよ。
  56. 三善信二

    三善政府委員 四十九年の小麦で申し上げますと、政府買い入れ価格というものは平均生産費より高くなってきておりますし、基本は麦価で見ろということより、現在の麦作の状態を先生方も十分御存じのことと思います。北海道と東北、九州、中国で全部違うのですね。生産費でも倍の振れがあるのですよ。経営規模を見ましても北海道と九州なんか全然違うのです。しかも、平均すれば二反か三反という実態でございますから、どうやってそういう基礎条件を整備しながら麦作の振興、増産を図っていくかということは私ども一生懸命に考えているわけでございまして、単にそういう麦価の問題よりもむしろそちらの方が非常に大きなウエートを占めるし、その方の改善を図り、充実していくということが先決問題だと思っております。
  57. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたはこの二十年間で麦作がなぜ二十分の一に減ったと思うか。小麦だけで見ますと、ごく最近の四十年でさえ自給率が二七・八%あったのですね。四十八年にはただの三・七%ですね。これは整備条件などほかのいろいろなものではなくて、やはり麦価価格の問題が中心で、再生産補償する本当の価格を出さないからこういうことになったのでしょう。それをいまだにその反省もなくてその他の条件を持ち出している。いろいろな地域で振れがあるからということを理由にしているが、その他の条件ももちろんこれは必要なことですよ。しかし、肝心の再生産補償するためには価格を間に合うようにしてやるということが当然の話であって、そのほかのことでそれをすりかえることは許されないのだということがいまの農民の悲痛な叫びだということをどう認識しておるのか。そして、この価格であるなら裏作なんということは絵にかいたもちだということを私は指摘したいわけでありますから、もう一回御答弁いただきたいと思います。
  58. 三善信二

    三善政府委員 麦作が減ってきたことは事実でございますね。その理由としましては、これは単に価格の問題ということではないと私は思います。これはやはりこれまでの高度経済成長のあおりを食ってきたというようなことも非常に大きな問題であろうかと思います。そういう意味におきまして、私ども今後の食糧問題を見直していこうというようなことで、麦についても、簡単にそれじゃ自給しろと言いましても、現在九五%輸入しているわけですから、それを全部自給しようなんということはだれが考えても非常に不可能なことでございますから、できる範囲内でできるだけ自給率を高めていこうということで六十年目標も策定しその目標に従ってそういう奨励策、振興策を考えていこうということでございますから、その点はひとつ御了解を願いたいと思います。
  59. 中川利三郎

    中川(利)委員 麦作が減った理由価格ではないんだ、高度成長のためだと言うが、とんでもない話です。価格ではないと言うけれども、価格なんですよ。だから、間に合わないから放棄するのです。それ以外に何の理由がありますか。高度成長のためだというもう一つ理由を挙げましたが、これはだれが起こしたのですか。農業を高度成長の中にいけにえとしてその中にたたき込んだのは農林省の農政でしょう。自民党の農政でしょう。この点の反省を根本的にしないならばどんなにうまいことを言ったって麦作を振興していくことはできないと私は思う。いまのような奨励金なんていつ果つるかわからないようなものでどうしてこれができますか。  あなた方は基礎条件の整備だとかいろいろ言いますけれども、麦につきましては階層別の生産費調査がありませんから米の場合で比較して申し上げますと、三十アール未満、三反歩未満の米作一日当たり労働報酬の四十八年の全国平均は二千三百九十五円でした。ところが、ずっと多い五ヘクタール以上のそれは五千九百九十四円にいまなっているのですね。つまり、作付規模がいろいろな基盤整備なんかによりまして三十倍に開いても、一日当たり労働報酬は三倍にもならないというのが実態なんです。これは麦にも当てはまるでしょう。だから、出かせぎ賃金比較をされる一日当たり労働報酬というような視点で収益性を問題にする限り、栽培単位はその程度のウエートしか持たないということですね。出かせぎ賃金の二五%というのは、この麦作の低収益性は栽培単位が零細であるとかぱらつきがあるとかとあなたは言いますけれども、それより先に政策麦価がこのように低く抑えられているんだ。麦価がこのように不当に低く抑えられているというところに、根本的な原因があることを反省しない限り、どうして麦作振興ができるんですか。
  60. 三善信二

    三善政府委員 いろいろ御指摘がございますけれども、私ども農林省として——私は食糧庁でございますが、農林省全体として、農蚕園芸局も統計情報部も全機関を挙げて、試験研究体制も挙げて、この麦作の振興のためにどうやったら一番具体的に効果があるかということを私どもずっと詰めながら現在まで来ているわけでございます。私がここで申し上げていることは、農林省全体の総知をしぼりながら、試験研究でも品種の改良からもう一度やらなければいかぬという——いまやっているものもございますが、それらを普及しなければいかぬという基本的な問題からあるわけでございまして、先ほど来農蚕園芸局長が御説明申し上げておりますように、米と麦との作期の調整の問題一つをとっても大変な問題でございます。そういうこともやっていかなければいけません。  それと、また、先生が言われましたので私もあえて申し上げますけれども、麦作の場合に、九州等においては従来長雨で収穫時に全滅をしたことがあります。それは後は農業保険である程度は救えるからというようなことではなくて、そういう収穫時に激減をした、全滅をしたという経験も数回あったわけでありますし、そういうことで、麦は気象条件としてなかなかむずかしいというような問題も過去において繰り返してきているわけでございます。そういういろいろなことを積み重ねて、現段階においてこれを六十年目標にどうやって伸ばしていくかということを私ども農林省は挙げて総知をしぼってやっているわけでありまして、そのためには、先ほど来申し上げておりますように、基礎条件などそういう生産振興奨励策を充実し、拡充していき、そして定着させながら麦の増産を図っていく、そしてただ金をもらってすぐ翌年はやめるというようなことではなくて、着実に伸びていくというような基本的な問題に対決して、その具体策を考えていくことが基本であろうと、そういうふうに私は思っているわけであります。
  61. 中川利三郎

    中川(利)委員 食糧庁長官は私の質問の基本にほとんど答えておらないんだな。全機構を挙げて品種改良やその他の条件整備にがんばっていると言うけれども、いままでなぜ麦作がこのような安楽死のような状態になったかということの根本的な反省が、価格が引き合わないからだということが余りにも歴然としているにかかわらず、いまもって品種改良やほかの要因に——確かにこのことも必要ですよ。必要ですけれども、そういうこともあわせて中心的な柱に価格問題を据えつけなければならないんだということでですね。このことをいまの情勢が端的に切実に示しているものだと私は思うわけであります。  ここであなたを責めてもしょうがありませんが、今回米審の答申が出されましたが、この中では、第一の問題の、「価格算定方式に対して、所得補償による再生産確保を旨として決定すべきとの意見、」ということが、どう麦価決定すべきかということの第一に挙げられているわけですね。同時に、この建議というものもございまして、この中においても、昨年に引き続いて、しかも非常に強い言葉の調子で、具体的に価格算定方式検討せよということを言っている。特に答申の後段には、ことしの麦価について「この際諮問方式によって決定することはやむを得ない」という表現がありますが、この文意から拝見しますと、やはりいまのパリティではどうにもならないんだ、生産費所得補償できちっとやるべきだということを十分に言いながら、ことしは時間的な余裕がないからやむを得ないという意向だというふうに私は解釈しておるし、従来のいろいろな意見の中からも、新聞の論調なんかを見ましても、農林省はいままでのやり方ではもう通らないだろうということも言っているわけですね。これはきょうの日本経済新聞でありますが、「しかし麦の増産が今後の食糧政策の最大の柱になっているとすれば、麦の計算方式に対する結論をいつまでも引き延ばしておくわけにはいかないことを印象づけた麦価審議だった」ということであります。  三つの意見がそれぞれ出たと言いますけれども、所得補償方式をやれということ、これが歴史的にも積み上げられたところのいま当面する大きい課題だというふうに私は考えるわけでありますが、いまもってパリテイで、これからもそういう農民の声を押し切ってもやっていくつもりなのか。この際根本的な検討を迫られているというかっこうで前向きに検討する意向なのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  62. 三善信二

    三善政府委員 答申内容につきましては次長から御説明申し上げたと思いますが、いま先生がおっしゃいました答申の一の中で「政府より諮問のあった価格算定方式に対して、所得補償による再生産確保を旨として決定すべきとの意見、」というのが一番最初に書いてあるからこれが大部分で、この線に沿ってというようなお話しのように承りましたけれども、私ども米審に出ておりまして、きのうは出席者が二十二人でございましたが、皆さん方の御主張、御意見を伺っておりますと、生産費所得補償方式でやるべきではないかという御意見生産者側の方々が非常に強かったと思います。大部分の方は現行方式決定するのを適当とするという意見だったと思います。  また、現行パリティ方式改善して決定すべきだという意見については、これはいろいろ具体的内容として議論も私ども申し上げました。現在、二十五、六年の基準をとって、パリティのウエート改定を五年ごとにやりながら現在の五十年五月のパリティを使っているわけですが、どうも基準が古いのではなかろうかというような御意見もありましたが、これはウエートを改定して、そのときの経営条件あるいは家計支出の条件等を含めて改定しているわけでございますけれども、そういうふうに古いからといって現実にマッチしていないということでもなかなかまいらないというようなことも御説明いたしましたが、いまのパリティ方式をもうちょっと改善できないかというような意見もごく一部ございました。しかし、大勢は現行パリティ方式決定することを適当とするという意見であったということでございます。  ただ、いろいろな意見が昨年の米審でもございました。昨年も米審の答申としては、種々の意見があるので算定方式については広く検討されたいという建議を受けております。ことしは答申に書いてありますようにこういう種々の意見がございますので、もう少し政府の方で現実の麦作の状況に即して具体的に考えてみたらどうか、たとえばそういうデータが本当にそろうのかどうか、生産費一つをとってみても米と違って麦の場合はなかなかむずかしい問題もあるし、データの問題が果たしてできるのかどうかというような問題もあるし、とにかくもう少し詰めてみろ、と、そういう話はございました。その際いろいろな意見について詰めろということでございまして、生産費所得補償方式についてだけ詰めろというような意味ではございません。その点は正直にお伝えをしておきたいと思います。  農林省では生産目標の六十年の見通しに対して、従来から省内で各担当官あるいは部長等が審議官会議とか局長会議等をやっていろいろな角度から詰めて具体策を練ってきているわけでございますが、この麦の場合にもそういう点では私どもいろいろな検討をしてきているわけでございます。  そういう検討をもう少し詰めて、できるだけ早い機会に審議会に報告をしろということも言われておりますし、それから、どういうふうに考えていくかということは審議会でもひとつ検討をしなければいけないということは、これは会長が言っておられましたけれども、そういうことでございますので、この建議内容あるいは答申内容等については私は正直にお伝えしておきます。  したがいまして、私どもそういう答申を受けましたし、建議も受けましたし、この問題については真剣に、しかも慎重に考えて検討していかなければいかぬと思っております。現実にやっておりますけれども、さらにこれを詰めてやっていきたい。その場合に、生産費所得補償方式とかいうよなことだけの問題ではございません。いろいろなことを考えてやっていかなければいけません。まあ、生産費所得補償方式というようなことをかわりにやってもやれるのかどうか、生産費一つとってもなかなか振れが多いし、また、食管法を改正しなければやれないのじゃないかと私は個人的には思っておりますし、そういう問題もあるでしょうし、いろいろな角度から今後検討はしてみたいと思っております。
  63. 中川利三郎

    中川(利)委員 時間が参りましたので私は一言だけ言わせていただきますが、いまの論議でも明らかになりましたように、日本の麦作の安楽死というか、アメリカのいろいろな政策的な——自民党農政のこの非道なやり方の中でやられてきて大変な状態になったわけですね。その根本は価格問題なんですね。本当に再生産できる価格を何も補償しなかったから放棄してきたんだということ、この実態を踏まえてこれからの新しい長期見通しの中で六十年までには二倍にするのだということでなければならぬ。しかし、いまのような価格問題を外側に置いてやっていくなんということが基本では、これは絶対うまくいくものじゃないということですね。  したがって、農民の切実な要求にこたえ、農民が喜んで安心して麦作にかかれるような生産意欲を持たせるためにも、皆さんの計画が本当に達成できるためにも、この価格政策について本当に真剣に考えて善処せられますことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  64. 坂村吉正

  65. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三善食糧庁長官に対して、昭和五十年産麦価について質問をいたします。  昨二十五日に米価審議会が開かれまして麦価諮問されたわけでありますが、大麦三類二等、五十二・五キログラムに対して四千七百一円、前年対比四百三十四円増、裸麦三類二等、六十キログラム六千三百八十円、前年対比五百八十八円増、小麦が二類二等、六十キログラム六千百二十九円前年対比五百六十五円増と、おおむね一〇・二%の諮問がなされて、そのとおりの答申が出たわけであります。  米価審議会は昨日十時過ぎから開かれましたけれども、私も農林省三番町分室に、午前八時半から答申がでました二十二時過ぎ、そして記者会見を終わる二十二時三十分過ぎまで詰めましていろいろと結果を聞き、また武田会長の御意見等も聞いてまいったわけですが、それらを踏まえて、今後のためにもぜひ食糧庁長官にお尋ねをしておきたい。農林大臣がいますと具体的なこと以外にもっと政策的なこともお尋ねしたいと思っておったわけですけれども、時間が限られておりますので、きょうは長官に対してはしょって質問をしたいと思っております。  まず、今回の米価審議会麦価諮問に当たって私が感ずることは、ことしは従来にない団体の要請等もありましたし、また、農林大臣に対する武田会長の建屋丁案並びにその経過をずっと見ておりましても、今回は答申のほかに建議がなされておるし、さらに口頭申し入れという三つになっております。これは従来になかったことでありまして、口頭申し入れがなされたということ一つ考えましても、今回の麦価米審ではそれだけ従来と違った各委員の意見がいろいろあったということの証左でもあると同時に、特に集約してこういつた申し入れ等をなさったというふうに会長からも報告がございましたが、これらを見ましても、午前中からいろいろ論議してまいりましたように、麦価決定に当たっては重大なときが来ている、このままではいけない、こういうふうに思っております。農林省もいろいろ事情はあるにせよ、今後の食糧需給、日本の農政の方向を位置づけるためにも、真剣に十分検討せなければならぬという重大な時期が来ていることをひしひしと感じたし、恐らく農林大臣も食糧庁長官も感じたと思います。そういった意味でかつてない答申建議、口頭申し入れということがなされたわけであります。  そこで、私がまず第一点としてお尋ねしたいことは、答申の中で、「政府より諮問のあった価格算定方式に対して、所得補償による再生産確保を旨として決定すべきとの意見諮問方式によって決定することを適当とする意見、その他現行パリティ方式改善して決定すべきとの意見等があったが、この際諮問方式によって決定することはやむを得ないものと認める。」というふうに第一項に答申されておりますが、これを見ましても、いわゆる従来のパリテイ方式によらずに何とか算定方式を考えていかなきゃいかぬと思いますし、また、長官、農林大臣等が言われるように、所得補償方式を含めていろいろな意味で検討をせなければいかぬということで、従来にない各委員の活発なしかも強い意見が出たことをひしひしと感じたわけであります。だれがどう言ったとか何対何でどうだったということは私もある程度掌握しておりますけれども、これは審議会の中の問題でありますので、そういうことを一々は申しません。ことしは私は各委員の発言、動き等をできるだけキャッチしてまいりましたが、各委員もわれわれが思っていることにかなり近い方向でいろいろな意見を前向きに述べておられることを聞いて、やはり時代の流れも変わってきているなということを認識してきたわけであります。  そこで、この答申の第一項目について長官はどういうふうに受けとめておられるか。将来日本の麦作を振興するためにはどうすればいいか。口を開けば麦の振興ということを政府はおっしゃっているわけですが、一昨二十四日の当委員会でも、またその前の六月十九日の当委員会でも大臣初め長官に対して私は質問したわけですが、いわゆる麦作振興を言うならば、いろいろ理由はあるにせよ、政府としては四項目理由を挙げておられましたけれども、実際には増産のうらはらになるものは価格である。価格が一番大事な問題である。いまは北海道、九州は麦が多い。そしてまた小規模面積で、しかも地域差とかいろいろなものがあるというふうによく言われますけれども、そういうふうにして価格がはっきりして安定し、農家が再生産に見合う希望が持てるならば、所得補償方式によってできるような麦作の振興が必ず図られる。それがないために地域的においても小面積な、しかも北海道、九州に偏るような麦作になっていると言えるわけです。そういうことを何ぼ論議してもしようがありませんが、日本の食糧需給と、また、日本の将来の麦作をどうするかという意味から真剣にこの際この答申案に基づいて考えていただきたい。長官答弁によってさらに質問することにして、まず第一点としてそういったことをお伺いしたいのであります。
  66. 三善信二

    三善政府委員 昨日の麦価米価審議会は従来と違って非常に活発に算定方式等についての意見があったのではないかと、そういう雰囲気について先生はまず申されましたけれども、昨年も私はこの麦価決定の米審にも出ましたが、昨年もやはり同じような算定方式についての御意見もございました。ただ、ことしは昨年よりそういう意見を言われる方が多少多かったということは事実だと私思います。私もそれは感じております。そのかわり、私どももまた正直に生産費所得補償方式をとったらどういう問題があるとか、現行パリティ基準年次をもし変更したらどういう問題があるとか、そういうことも非常にはっきり申し上げたつもりでございます。そういう意味では、米価審議会の委員の方々もいろいろおわかりになった点もおろうかと実は思っているわけです。  いずれにしましても、昨年も、算定方式については麦作の現状に即して種々意見があるから広い意味から検討しろというような建議を受けておりますし、私どもはそれを受けて省内でいろいろ検討はしてまいってきておるわけでございます。今回も同じようなそういった建議がございまして、その検討をできるだけ早くして、その結果を審議会に報告しろというような建議を受けております。大臣も、この算定方式についてはいろいろむずかしい問題もありますが、しかし、省内でいろいろ検討をしましようというようなことを昨日記者会見等でも申されておりましたが、現実に実際に具体的に検討する場合にはいろいろなむずかしいことがあるわけでございます。資料が大体あるかどうかというような問題もあるわけでございまして単につかみ金をして麦価につけ加えるというわけにもまいりませんし、価格というとこれは非常に厳密な一つの理論と理屈を要しますし、そういう面でも非常にむずかしい問題があろうかと思います。生産費所得補償方式をやるなら食管法でも改正してやったらいいじゃないかというような御意見もあろうかとも思いますが、いろいろな問題がございますので……。  ただ、私どもはなおざりにこれを考えているわけではございませんで、真剣に検討していきたいと思っております。
  67. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この第一項目に「この際諮問方式によって決定することはやむを得ないものと認める。」とあるのですが、「この際」というのはことしを意味するのかというふうにわれわれは疑問を持ったわけですけれども、米審の武田会長は、「この際」とは何もことしだけの意味じゃないということで、これについては建議を出しておるということなのであります。いま長官からもあわせ若干答弁がございましたが、私も米審後会長の意見等をいろいろ伺ったのでありますが、建議によると、「麦類価格算定方式については、種々の意見があるので、政府において麦作の現状に即し具体的に検討されたい。なお、その結果をすみやかに当審議会に報告されたい。」となっているんですけれども、会長も、畑作、水田裏作もあるのでこの点のどういうふうな利害があるか、よく再検討してもらいたい、具体的には、今後麦作が進展するために審議会に報告せよ、すなわち従来から議論の発展がない——先ほど、昨年も建議されたと言われましたが、これに似たような建議をされたことは私も承知しておりますけれども従来からたびたび米審がいろいろと答申建議を出しておるにもかかわらず議論の発展がない、そこでことしは特に突き進んだ建議をした、と、このように会長も言っておられるわけです。これに対して政府の方は重大な決意をしてもらわなければいかぬと私は思っているわけです。  それで、この報告はいつごろまでに出すつもりなのか。また、これに対して従来と違った強い意味の建議であるということを十分受けとめておられるであろうと思いますが、その点について長官はどう考えますか。
  68. 三善信二

    三善政府委員 「この際」と書いてありますのは、何もこの一年はとかことし限りとかいう意味ではないというふうに私は解釈しておりますし、武田会長もそういうことをおっしゃっておられました。ただ、この建議に「すみやかに当審議会に報告されたい。」ということが書いてございますが、いろいろ審議会検討しました結果等について私ども今回も議論したりしましたが、ひとつまとめてそういう資料を出して、そして一遍米審の懇談会でも開いて、そういうところで一遍議論したらどうかというようなお話しもございましたし、いずれにしましても、先ほど申し上げましたようにこの問題についてはまずできるかできないかという問題からあるわけでございますから、いろいろな方式について可能か不可能か、可能であればどういう点をどうしなければいかぬのか、資料があるかどうか、と、そういうようなことも正直にまとめて懇談会へでも報告してくれというような現実的な御要望が会長からもございました。
  69. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 武田米審会長は、十分な検討結果でないと意味がないということを記者会見でもはっきりと質問に答えたわけです。と同時に、「この際」とはことしという意味じゃない、十分な検討をしてもらいたいから、仮に具体的に言うとすれば、来年の麦価を決める前には少なくとも一応の報告をしてもらいたい、それまでに十分な検討をしてやってもらいたいという意味であるということを会長は確かに言っています。すなわち、来年の六月までということです。そのことは会長がそう言っているんですから、政府も十分それを受けとめてそれまでにはこういったことに対して検討して建議にこたえなければならぬと思うが、どうですか。
  70. 三善信二

    三善政府委員 十分な検討結果をと申されましたのは、資料等も十分整えてというようなことを私どもは会長から聞いておりますし、できれば来年の米審前に懇談会でも開いて、そういうものをまとまったところで報告をしてくれというようなことだと私どもも受けとめておりますし、それまでに、非常にむづかしい点はむずかしいとか、この点はできないとかできるとか、そういうことも含めながら資料等も整えられるだけの資料は十分整えて報告をいたしたいというつもりでおります。
  71. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 来年六月の米審の麦価決定までに、いま食糧庁長官がおっしゃるように資料をまとめて、この米審の建議に基づく十分な算定方式等の検討を報告されるように、また、来年の麦価を少しでも変えることができるように私はお願いしたいと思います。  そこで、ことしの麦価についても最終的には政府決定してもらうわけですが、答申の2についてお尋ねしておきます。  「「農産物の需要と生産の長期見通」に関する閣議決定の趣旨にかんがみ、麦生産振興奨励補助金についてその交付の時期、額等につき適切な改善を行うことを含め麦の生産振興対策の拡充を図ること。」というふうになっておりますが、これは長官はどういうふうに受けとめておられますか。
  72. 松元威雄

    ○松元政府委員 これは、麦を、六十年の長期見通しに即応しまして今後生産振興しながらやるわけでございますが、そういたしますと、価格のほかに各般の生産振興対策を一段と拡充しなければならぬわけでございまして、御案内のように四十九年から生産振興奨励補助金交付等の施策を講じまして、その結果減少に歯どめがかかったわけでございますが、伸び率がまだ小さい、これはもっともっと伸ばさなければいかぬ、そのために各般の生産振興策を拡充せよということで、この各般の生産振興対策といたしますと、先ほど御説明申しました米審の論議がありましたとおり、生産振興奨励補助金の問題もございますし、それから水田裏作の麦作を伸ばすための方策もございますし、それからさらに麦作集団の育成、機械の導入等の施策もございますし、それからまた根本をなします品種改良等の問題もございます。これらを含めまして総合的にしなければならぬということでございまして、そういうことを受けとめまして、この補助といたしまして生産対策を拡充してまいりたいというふうに考えるわけでございます。  その場合、中段に書いてございます「麦生産振興奨励補助金についてその交付の時期、額等につき適切な改善を行うことを含め」と書いてございますのは、その論議の経過にもございましたが、生産振興奨励補助金交付につきまして四十九年度が初年度ということでございまして、かなりおくれたわけでございます。したがいまして、それにつきましてもっと早く払えないか、相なるべくならば価格と一緒に払えないかというような御要望もございました。それからまた額につきましても、二千円、千八百円と差をつけたについても御議論がございました。  そこで、それらを含めまして、今後五十一年以降産麦につきまして「適切な改善を行うことを含め」というふうに表現されたというように理解いたしておりまして、前回もここでも御論議があったわけでございますが、現在の一般会計から支出いたします生産振興奨励補助金でございますから、そうなりますと、この補助金の目的性からいたしまして、交付の仕方あるいはまた奨励金の額につきましてはおのずから制約があるわけでございます。したがいまして、五十一年産麦以降これをどのように適切にするか、その改善方法につきまして政府といたしましてはいろいろ検討いたしたわけでございますが、そういうことにつきましてこういった答申が出ましたものですから、これを具体化するためにさらに検討を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  73. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長からかいつまんで話がありましたが、肝心なところが抜けておるので、三善食糧庁長官に最後にお伺いしておきます。  先般、六月十九日とおとといの六月二十四日にも私は農林大臣と食糧庁長官にも質問したのですが、現在の千八百円ないしは二千円の奨励金についてもいろいろ問題があるわけです。こういった奨励金について、早くこれを価格に含めろということと、また、この千八百円と二千円の差をなくしろ、というようなことを言ったわけです。このことについては武田米審会長も触れておるわけですからわかっておられるかもしれませんが、この千八百円と二千円の奨励金の差をなくしろ、一本化しろということを米審会長は強く言っておるわけです。そして、従来からこの奨励金は十二月ごろに決まって翌年二月ごろ支給される。これでは意味がないということを私は指摘しましたが、米審会長も同じく、そういったことには問題がある、委員からも相当問題が出たからこれを早く支給するようにしろということを言われている。こういったことを含め、そしていま局長がおっしゃったようないろいろなことも含めて改善をやってもらいたいことと、簡単な三行の答申の第二項目ですが、これは重大な意味を持つ内容であるので、食糧庁長官も農林大臣も十分にこれを受けとめておられると思うが、長官はその点を十分認識しておられるかどうか。  また、私は武田会長にいろいろと再質問をしたが、千八百円、二千円の区別を一本化せよということについては委員の意見が特に多かったというようなことを特に強く再度お話しをされました。そういう意味でこれはあらゆる広い意味を含めての答申であるということをはっきり言われておりますが、これに対してその辺の考えをお伺いしたいと思います。
  74. 松元威雄

    ○松元政府委員 生産振興奨励補助金交付につきましては、ただいまお話しのように交付の時期と単価について確かに御論議があり、一律早期支払いという御論議があったことは私もただいま御説明申し上げたところでございます。ただ、私が申し上げましたのは、そもそもその答申が今後六十年の目標に即応して生産を伸ばしていきますための対策の一環でございますから、五十一年産麦以後は基本になるわけでございます。現在では生産振興奨励補助金は一般会計から補助金というふうに目的性が決まっておるわけてございます。したがいまして、目標に即応いたしまして来年以降生産を伸ばすためには、御指摘のような一律あるいは早期支払いということにつきまして奨励金の取り扱いの改善方策をいろいろ検討しなければならぬということは十分受けとめておるわけでございます。  それと、本年につきましては、いま申しましたとおり、そういった一般会計から支払う補助金という制約がございます。去年おくれましたのは、非常におくれ過ぎたということは初年度としてはございますけれども、奨励補助金でございますと、これは個々の農家から申請するとややこしい手続がどうしてもあるわけでございます。したがいまして四十九年はおくれた、ただし、余りにもおくれ過ぎましたから、現行制度の枠内でもさらにできる努力は最大の努力はしなければならぬ、と、両面考えている次第でございます。
  75. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三益長官もいまの局長の意見と同じだと理解していいですか。その点はどうですか。
  76. 三善信二

    三善政府委員 全く同じ意見でございます。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。
  78. 坂村吉正

  79. 稲富稜人

    ○稲富委員 もう本会議の予鈴も鳴る時間になりまして私の時間がありませんから、要点だけを二、三お尋ねいたしたいと思います。  まず、私は、今回の麦価の米審に対する諮問が同時諮問をなされなかったということは、自民党の内部事情を知っておるために非常に御苦労があっただろうと思います。この同時諮問が行われなかったということに対しては、安倍農林大臣がもしも同時諮問をなさったとするならば安倍農林大臣の将来に対する非常な汚点を残すことであったと私は思うわけですが、しかし、これを切り離されたということは、これは確かに長官の御協力もあったことであると高く私は評価するものでございます。  そこで、この際お尋ねしたいと思うのですが、今回麦価に対しての同時諮問をなされなかったということは食管法の精神に基づいてやられたものであると思いますし、近いうちに行われます米価審議会に対する諮問に際しましても同時諮問はなされないという含みも当然あるだろうというふうに私は解釈をしております。これは、大臣じゃないから長官からの答弁はなかなかむずかしいと思いますけれども、私はそういう解釈をしておるということを大臣にも十分伝えていただきたいということをこの機会に長官にまず申し上げておきたいと思います。
  80. 三善信二

    三善政府委員 麦価について、買い入れ価格売り渡し価格を同時諮問をしなかったという理由は、麦については従来から政令で当然同時諮問をするような仕組みになっておったわけですが、ただ、一昨年ですか、国際価格が非常に変動が激しかったものですから、六月の時点で小麦の国際価格の情勢を見きわめることはできないということで、政令でわざわざ本年というか十二月までに決めてもいいというふうに直したわけです。したがいまして、麦の場合はそれまでずっと買いと売りは同時諮問していましたし、それが当然のことだったわけで、国際価格関係でそうなっているのであります。  今回もこの同時諮問をしなかった、売りを諮問しなかったということは、結局国際価格が予算単価よりも非常に安くなっておりますので、そういう面もございますし、また、これからどういうふうに安くなるのか、高くなるのか、その辺がよく見通しもつきませんし、そういう意味で見送ったということでございますので、食管法の規定によって云々と先生はおっしゃいますけれども、そういう意味ではございませんから、その点は御了承願いたいと思います。
  81. 稲富稜人

    ○稲富委員 いずれにいたしましても、私たちは米価に対する同時諮問は食管法の精神から言っておもしろくないと思いますので、麦価に対する同時諮問をやらなかったような考え方で、米価に対する諮問に対してもそういう態度をとっていただきたいということを特にこの機会に希望を申し上げたということを大臣に伝えていただきたいということを私は申し上げておるわけでございますので、その点御了承願いたいと思います。  それから、もう予鈴が鳴りましたので、時間がありませんから簡単に申し上げますが、今回の答申の中に、麦の生産振興奨励に対して振興対策の拡充を図れということを答申されております。ここで私は農蚕園芸局長に申し上げたいと思うのでございますが、食糧庁から出してあります統計を見ましても、麦の生産が三十五年の六十万二千ヘクタールから年々歳々減っていまして、四十九年は八万三千ヘクタールということに小麦の場合は減少いたしております。大麦におきましても、裸麦におきましても、三十五年ごろから年々歳々麦作の生産減少いたしておりますが、この原因はどこにあるというふうに政府としてはお考えになっておるか、その理由を承りたいと思います。
  82. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のように、麦作面積は年々減少を続けまして、特に四十八年までの数年間は年率三割以上という大幅な減少でございました。この原因はいろいろございますが、基本的には四点あろうかと思います。  第一点は、これはそもそもに近いわけでございますが、わが国の麦作の規模が非常に零細でございまして、北海道は別といたしまして、都府県の場合は平均二十ないし三十アールという零細な規模でございまして、それに伴いまして収益性が低いということが第一点にあるわけでございます。  それから、第二点といたしましては、経済成長の中で冬期間の他産業への就業機会がふえたということ、したがいまして麦をつくらないでほかの方に出ていくということ、こういった就業機会がふえたということが第二であろうと思います。  それから、第三点には、表たる水稲との作期調整の問題が大きな問題であるわけでございまして、御案内のように田植えの早期化、それに加えまして近年は田植え機によりましてさらにそれが早まったわけでございまして、作期の調整が非常にむずかしいものになっております。これは地域によってかなり違いまして、九州の場合でございますと作期調整はかなり容易でございますが、特に関東でございますと、これはなかなか克服するにむずかしい条件がございます。こういった表作との関係から減少したというのが第三に大きな原因としてあろうかと思います。  第四には、麦の特性といたしまして収穫期に長雨がある。これは特に九州等に多いわけでございますが、したがいまして生産が不安定である。従来も長雨が降った翌年にはがくんと生産が減る傾向がございました。  大きくはこういう四点ばかりあろうかと思うわけでございますが、そこで、御案内のように、この減少傾向に対しまして、これではならじということで四十九年から生産振興奨励補助金等の施策を新しく講じたわけでございまして、その結果四十九年から減少に歯どめがかかったということで、わずかでございますが増加に転じた。したがってこれを今後ともさらに伸ばし、かつ定着させることが重要な課題であると思って、そのための各般の施策の拡充をいろいろ検討しているという次第でございます。
  83. 稲富稜人

    ○稲富委員 局長、そう体裁のいい答弁をせぬでいいんですよ。いままで悪かったのを去年から奨励したからちょっとふえたとおっしゃって、それによってあなた方は責任を逃れたように思っているが、大体、麦産がこれだけ減ったということは麦をつくっても引き合わないということなんですよ。麦をつくっても引き合わないからもう麦はつくらないということが大きな原因なんです。さらにまた麦をつくることに対して政府一つ奨励をしてない。海外から麦は買ってくるからいいじゃないかというような基本的な考え方、これらが総合いたしまして麦をつくる農家が少なくなったということなんです。あなたはいかにも天候に支配されるみたいなことを言うが、雨は昔から降っておったのですよ。何も三十五年から急に雨が降ったのじゃない。以前に日本で麦をつくっている時分から雨は降っておったのです。そういう天候のせいじゃないのですよ。それはやはり政府が麦作の振興というものを非常に無視したということなんです。それに対しては十分引き合う価格を与えなかったということと、そして麦はよそから買ってくるのだという安易な対策をやったということ、それによってこういうように年々歳々麦作の生産が減ったということなんです。非常に減ったから去年はにわかに奨励金を出したからわずかばかりふえたのです。  しかし、これでいかにも政府責任がもう逃がれたようにあなた方は思っているのですか。昨年から少し出しました、四十九年になったら少し奨励金を出したからふえましたなんて、こんなことであなた方は自分たちの責任が達せられたと思っているのですか。こんなことじゃないのですよ。なぜ麦が減ったか、どうすれば麦作の振興対策がやれるかということをもっと真剣に考えなくちゃいけないと私は思うのです。私はこの間もここで質問したのでございますが、こういうふうな状態になってくることに対して、ことに裏作をつくる地方においては麦の品種改良ということがいままで何年か前から叫ばれているのですが、どれほど麦の品種改良を政府がやったかということなんです。ほとんど放任しているじゃないですか。そして裏作はつくれとも言わない。荒らしたままにしている。これがすなわち麦作が減った原因であって、これに対して政府はいささか責任を負わなくちゃならぬ。  その反省も責任も感じなくて、ただ天候に支配されまして麦作は減りましたとか、よそに働きに行くようになって麦をつくらぬようになりましたからと言うけれども、引き合わないからよそに働きに行くようになったのだ。その帰一するところは政府責任があったのだ。その責任をどのくらいあなた方は感じられておるかということなんです。この点を私は聞きたいと思っているのですが、どうなんですか。
  84. 松元威雄

    ○松元政府委員 この麦の政策につきましては先ほど食糧庁から申し上げましたが、これはいろいろな角度にわたるわけでございます。御指摘の価格問題もございます。私のところでは生産担当でございますから、ただいま私は生産対策に即応して実は原因分析を申し上げたわけでございまして、おっしゃるとおり価格の問題と生産面の問題、それからまた技術の問題等いろいろございます。  そこで、それぞれの部局におきまして麦の生産振興対策に取り組んでいるわけでございまして、たまたま私は直接生産面に直結したような答弁をいたしたものでございますからあるいは不十分だったかも存じませんが、そういう環境条件で減っているということを申し上げて、それに対応して各部局でそれぞれ対策を講じておるということを申し上げたつもりだったわけでございます。
  85. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんから最後でございますが、この答申の中にもありましたように、将来の麦の生産振興対策に対しては充実を図るべきであるということを強く答申の中にうたってあります。この麦の振興対策をやるということは、やはり麦の価格というものが大きな力を持つわけで、麦を生産する者の希望としては、自分の生産した生産物の価格が十分補償されるということが何よりの大きな条件であると思うのでございます。この点については食糧庁長官も農村に育っていらっしゃるし、農村の事情はわかっているから、これほどの常識的なことはおわかりになっていると思いますから、本年度の麦価決定するに当たっても、麦作振興については価格問題が非常に大きな要素であるということを十分考えて本年度の麦価決定することが必要である。  この点に対する心構えがまず食糧庁長官にもあってもらいたいということを特に私は申し上げまして、もう本会議の本鈴が鳴りましたから、食糧庁長官の決意を伺って私の質問を終わることにいたします。
  86. 三善信二

    三善委員 いま松元農蚕園芸局長から御答弁申し上げましたように、農林省全体の問題として麦の生産振興ということには対処していくべきものだと思っておりますし、そういう意味で私どもも各局一緒になって、官房が中心になっていろいろな角度から検討をしているというような段階でございます。
  87. 稲富稜人

    ○稲富委員 今年度の麦の輸入の問題、それから輸入に対する価格の見通しということに対してもいろいろ聞きたいことがあったのでございますけれども、もう時間がありませんから、そういう問題はいずれまたいつかの機会を得てお尋ねしたいと思います。  要は、いよいよ麦価決定する時期に来ておりますので、十分その点を考えて麦価決定をやっていただきたいということを重ねて希望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  88. 坂村吉正

    坂村委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十一分散会