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1975-05-22 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月二十二日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 坂村 吉正君 理事 中川 一郎君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       伊東 正義君    今井  勇君       上田 茂行君    片岡 清一君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    小坂善太郎君       近藤 鉄雄君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       竹内  猛君    馬場  昇君       美濃 政市君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席政府委員         環境庁企画調整         局環境保健部長 橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         農林大臣官房         長      大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         参  考  人         (森林開発公団         理事長)    松岡  亮君         参  考  人         (森林開発公団         理事)     手束平三郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     近藤 鉄雄君   本名  武君     小坂善太郎君 同日  辞任         補欠選任   小坂善太郎君     本名  武君   近藤 鉄雄君     金子 岩三君     ――――――――――――― 五月二十日  松食虫駆除対策強化に関する請願(赤城宗徳君  紹介)(第三一四七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、農林水産業振興に関する件について、本日、森林開発公団理事長松岡亮君、同理事手束平三郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 澁谷直藏

    澁谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤鉄雄君。
  5. 近藤鉄雄

    近藤委員 前回三月六日の本委員会においても私は質問を申し上げたわけでございますが、いわゆるカドミウムイタイイタイ病関係について、その因果関係は必ずしも十分に究明されたものではない、科学的にも、医学的にも、これからまだまだ究明しなければならない点が残っているということを私たちは知ったわけであります。少なくとも、この関係についての厚生省見解、これで言われているようなはっきりしたものではないということが明らかであります。この点につきましては、過日の予算委員会におきましても、小坂善太郎委員質問に対しまして、環境庁長官が、いわゆる厚生省見解を一年以内に再検討するという答弁をしておられるわけでありますけれども、まず、環境庁にお伺いしたいわけでございますが、この問題に対して、現在、どのような研究を進め、そしていつ具体的に結論を出して、厚生省見解をどう改めようとしておられるのか、答弁を賜りたいと思います。
  6. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生から御質問のございましたところの、イタイイタイ病及びカドミウムの中毒についての学問的な研究をこの一年間に進めて、その科学的な結論によって、厚生省見解について、もし必要ならばどういうぐあいに手を加えなければならないかということについての問題でございますが、この点につきましては、環境庁といたしまして、一つイタイイタイ病に関する総合研究班というものがございまして、すでに本年二月の二十四日に鑑別診断研究班というものをもちまして、長崎のケースと、現在問題になっております生野のケースの両方のケースについての会合が持たれたわけでございます。  次いで、三月の十五日にイタイイタイ病に関する総合研究班の総会がございまして、私も出席いたしまして、その席上におきまして、行政見解あるいは裁判の決断というものは、あくまでも救済または行政上の措置をとるための判断であり、あるいは裁判の判決も権利に関する問題の判断であるので、学問的にはこれは未開の部分が中に残ることは事実である、それに対して学問の面では自由に検討していただく、また、いまこの点についていろいろ議論が交されており、国会環境庁長官が言われたように、この一年間にまとまる範囲内で、現在までの時点でイタイイタイ病についての医学的な見解はどうかということをできるだけまとまった整理をしていただいて、それに基づいて、四十三年に出された厚生省見解というものをもう一度見てみて、直すべきところがあるならば直す、そうでなければそのままでいくというようなことを、これは環境庁としては考えておりますので、研究班としてもその点をよくお含みの上検討をお願いいたしたい、ということをお願い申し上げたわけでございます。  それに次ぎまして、本年の四月の末には、このカドミウム汚染地域の住民の健康調査方式につきまして検討会が行われ、さらに五月の十八日には、これはこの専門家研究集会でございますが、骨軟化症という問題につきまして、整形外科と病理とレントゲンと老人病専門家に寄っていただきまして、事例の検討をしていただいたところでございます。  以上のようなことでございまして、環境庁といたしましては、学問の立場からは自由に公正に研究を進めていただいて、この一年間の間に学問的なまとまりの得られたもの、あるいはどこがわからないかというところは、できるだけそれを明らかにしてもらった上で行政的に対処をいたしたい、こういうことでございます。
  7. 近藤鉄雄

    近藤委員 これは大変な重大な問題でございますので、いま承ったわけでありますけれども、この問題についての結論を速やかに科学的に出していただきたいと思います。  実は、同じ三月六日の委員会において、厚生省環境衛生局長は、食品衛生法に言うところの米の中のカドミウム安全基準一ppmは非常な安全率を見ての基準だ、と、かように答弁をしております。そこで、この一ppmという基準でありますけれども、これも同委員会で明らかにしたわけでありますけれども、これはアメリカのアンワーという学者の犬を使っての研究、このただ一つ研究例だけを頼りにして決めているのだが、このような重大な問題でありますので、その新しい研究をいろいろな形でやって、そしてこの安全基準を改めてもらいたい。前の委員会局長答弁についても、非常な安全率を見ての話だから、したがって、これを改めるとすると当然一が一・五になり二になるような可能性もあるというような感触で私は受けとめたわけでございますけれども、この食品衛生法に基づくところの安全基準一ppmを一体いつどう改めるのか、また、そのためにどのような研究を実際に現在厚生省その他において行っておるのか、承りたいと思います。
  8. 三浦大助

    三浦説明員 カドミウム毒性につきましては、WHOの専門委員会の報告などがございまして、国立衛生試験所におきまして継続的に行ってまいりましたが、現在までのところ、特に基準を改めるべき結果が出ておりません。  しかし、その後、この基準につきまして、近藤先生を初めといたしましていろいろな方から御指摘がございました。厚生省は、高濃度のカドミウムを含みます飼料あるいは米を今後動物に与える研究を昨年の秋以降検討を行っておるわけでございますが、ただ、動物を用いました慢性毒性研究は通常二年を要するということでございますので、私ども、その結果を待ってなるべく早いうちに検討いたしたいというふうに考えております。
  9. 近藤鉄雄

    近藤委員 実は、私がこの問題を取り上げましたのは、昨年のやはりいまごろであったのじゃないかと思うのですが、そのときから厚生省としては研究をするんだという話だったわけであります。もう一年たちましたし、来年で二年になるわけでありますので、いまもお話しがあったわけでありますけれども、いろいろ研究を進めていただいて、どんなに遅くとも来年にはこの新しい安全基準厚生省としてぜひ出していただきたいと私は思います。  この米中のカドミウム安全基準一ppmが、こういう厚生省その他の研究を待って将来引き上げられる可能性があるということだとすると、現在食糧庁がとっている措置、すなわち一ppm以上の米はともかくとしても、〇・四から一ppmのカドミウムを含んでいる米は食管会計で買い上げても配給に回さないというのは、これは全く不合理だと言うほかはないと私は思うのであります。三月六日の本委員会でも、食糧庁長官は、この〇・四ppmという基準環境汚染調査地域の中で精密調査を必要とするか否かのいわば第一スクリーニングの基準である、これで決めたのであって、人体に対する影響の有無からではないとはっきり答弁をしております。そこで、このような一ppmという基準が非常に安全だという認識のもとに立って承りたいわけでありますけれども食糧庁として、〇・四から一ppmの米をこの際配給に回す気がないかどうか、改めて承りたいと思います。
  10. 三善信二

    三善政府委員 ただいま近藤先生の御指摘のとおりでございまして、〇・四から一ppm未満カドミウム含有の米につきましては、食糧庁としても、これが有害だというようなことは考えておりません。安全であるということは厚生省見解でもはっきりしているわけでございます。ただ、私ども配給に回していないというのは、御承知のように、消費者感情と申しますか、このカドミウムの問題が出ましたときに、消費者が全然小売から受け取らない、したがって卸も受け取らないというような、そういう事態が全国的に発生いたしましたので、この消費者感情を考慮して現在配給をしていないということでございます。  それならば、安全であるならば配給に回したらどうかという御指摘だろうと思いますが、もともとそういうものでございますし、私どもはできれば配給に回したいという気持ちは持っております。ただ、消費者感情からこういう現在の経緯になっているわけでございますから、先決問題としては、消費者にこの米は安全であるということを理解していただくということがやはり先決問題ではなかろうかと私は思います。その上に立って配給問題等研究は今後する必要はあろうかと思っております。
  11. 近藤鉄雄

    近藤委員 消費者感情も、これまでマスコミその他でカドミイタイイタイ病関係についてカドミ米の問題がいろいろと取り上げられましたから、なかなかそう簡単に変わらないという御答弁もわからないではありませんけれども、しかし、これは前の委員会でも御質問したのでありますけれども、もしも消費者がそれでもいいんだから配給に回してくれと言った場合に――一ころは日本も米が相当余っておったわけでありますけれども、最近は農林省の政策がよろしきを得て過剰米も余りなくなってまいりましたし、山形県のような優良な米のできる地域の米であれば、これは一以上はともかく〇・四から少しぐらいの量のカドミが入っておったっていいじゃないかというような消費者がいて、それを配給に回してくれと言った場合に、これは何も食糧庁が押しつけるのじゃなしに、消費者サイドからぜひ欲しいから売ってくれと言った場合に、食糧庁としては配給をしてもいいのじゃないかと私は思いますし、同時に、これは一以上の米であってもまぜれば一以下になるからいいじゃないかという議論もあるのですけれども、これを百歩譲りまして、一以上はともかく、〇・四から一の米と、それ以下のカドミ米と普通の米とまぜて全体として〇・四以下にして配給するということも大変理屈の通ったことだと私は思うのでありますけれども、この二点については、長官、どうでしょうか。
  12. 三善信二

    三善政府委員 まず、一ppm以下〇・四ppmの現在配給していない米について、希望消費者の方からあればこれを配給してもいいではないかという御質問でございますけれども先ほども私が答弁いたしましたように消費者感情というものがございますので、消費者の方に一ppm未満カドミウムを含んだ米は安全であるということをもう一度理解してもらうということが先決問題ではなかろうかと思います。その後でそういう希望があれば配給に回すとか、あるいは希望がなくても配給に回すとかいうようなことも研究をしてみたいと思っております。
  13. 近藤鉄雄

    近藤委員 こういう委員会カドミ含有米の問題を取り上げて、一ppmという食品安全基準がなぜできたのか、どういう計算根拠でできたのか、また、イタイイタイ病カドミ関係はどうなんだ、いわゆる厚生省見解で言われているようにはっきりとしたものではないというように、こういう議論がこの農林水産委員会その他の国会委員会で行われることがまさに消費者感情を正す具体的な措置である、と、かように私は考えているわけでありますけれども、しかし、同時に、くどいようでありますけれども、〇・四から一の米については、消費者希望すれば配給いたします、それはもう何ら人体に害のない米でありますから配給するのだということを食糧庁がまさに天下にはっきりと示されることが、これまたカドミ米に対する不必要な不安感アレルギーをなくする具体的な方法ではないかと私は思うわけであります。消費者感情があるから〇・四から一ppmのカドミ米はもう配給もしないのだということでは、やはり何かそこにあるから食糧庁としても配給しないんだろうということになりますので、消費者感情を考えて配給の押しつけは全くしません、しかし、御希望があれば喜んで配給いたします、と、そういうことをはっきりすることが間違った消費者感情を正す具体的な方法でもあると思いますので、長官はこの問題についてはぜひ前向きに検討していただきたい、かように私は思うわけであります。  そこで、〇・四から一ppmの米を配給することは余り本意ではないというような長官お話しであるわけでありますけれども、しからば、その米を主食用じゃなしに、たとえばせんべいだとか、みそだとか、しょうゆだとか、そういう用途に使うことについては構わないのじゃないかということは前委員会でも議論したわけでありますけれども、いわゆる一という基準ができましたのは、計算して出てまいりましたのは、まさに、このカドミを含んだ米を毎食毎日食べて、そして一生食べてもなおかつ安全だという基準が一ppmという基準であります。これすらも、前の委員会で明らかになったわけでありますけれども、非常な安全率、百倍とかなんとかという安全率を見ての基準でございますから、しょうゆで使うとか、みそで使うとか、せんべいで使うとか、これは主食として食べるのと比べては人体に入る量が絶対的に少ないわけであります。しかも、あえて申しますが、一以上なら現在食品衛生法では困るということでありますが、一ですらいいのでありますから、一から〇・四の米をみそしょうゆせんべいとして使わせる分には全く問題がないと私は思うのですが、長官、どうでしょうか。
  14. 三善信二

    三善政府委員 私どもとしては、一ppm未満の米、〇・四のカドミウムを含んだ米につきましては主食として食べても安全であるということははっきりしているわけでございますから、せんべい用であろうと、みそしょうゆ用であろうと、安全であることには変わりないわけであります。しかし、先ほどから申し上げております消費者感情についてですが、せんべい用にということでせんべい用配給するという意味ではなくて、いろいろと業界の意見なんかも私どもは一度聞いたこともございますが、そうしますと、これはカドミウムが入ったせんべいだとレッテルをされたらもう元も子もなく売れません、そういうようなことも考えなければいけませんし、というような意見もありました。それは一つの例でございますけれども、いずれにしましても、主食用じゃ消費者感情として忌避があるなら、せんべい用なら二次加工製品だからいいんじゃないかというお話しだろうと思いますけれども消費者感情としてはやはり同じようなことではなかろうかと思います。  そこで、非常にしつこいようで恐縮でございますけれども先ほどから私が申し上げておりますように、主食用であろうと、せんべい用であろうと、みそしょうゆ用であろうと、国民の方々の安全であるという理解を積極的に求めていくということから私どもはまず出発をさせていただきたいと思っております。
  15. 近藤鉄雄

    近藤委員 長官お話しもわからないじゃないんですが、食糧庁お話しを承っておりますと、消費者感情が非常に問題だとおっしゃっていながら、その消費者感情を正すための具体的な手だてを全くとられていない。繰り返して申しますけれども、一ですら非常に安全なものものを、〇・四から一の米は消費者希望しても配給もしないということでは、不必要な恐怖感をますますあおることになる。だから、私は繰り返して申しますけれども、本来一を改めるべきなんだけれども、しかし、これは厚生省さんの方でかねて検討して、二年かかるんだから、来年のいまごろには大体結論が出るということでありますから、少なくともその間に消費者になじんでもらうためにいろいろなことを考えてしかるべきじゃないかと私は思う。それが、いま申しましたように、主食とは全然違った量しか人体に入ってこないせんべい用みそしょうゆ用として使えないかということでありますし、業者の方と話をしたらどうも反対だというようなことを長官はちょっと申されたようでありますが、おそらく、カドミイタイイタイ病との問題をわあっと騒いでいるときに業者の方と話をされたのでしょう。そうすれば、それは全く困ったものだ、反対だということだったと思いますけれども、最近になってこれだけ冷静に客観的に議論国会の内外において行われているわけでありますから、一つの違った感じを持つんじゃないかと私は思うので、ぜひ具体的に接触をしていただきたいと思うわけであります。  それに関連して食糧庁長官に伺いますが、実は、従来、例の古米、古々米の処理方法として破砕米という方法をとっている。すなわち、古い米をみそしょうゆまたはせんべいに使うために、米を破砕して、そして値段を安くして配給をして売り渡しをしておられたわけであります。現在もその制度をとっておられるはずでありますが、私の調べでは、大体年間二十万トンぐらいの破砕米売り渡しをしていらっしゃる。そこで、〇・四から一のカドミを含んだ米が大体二万トンだそうでありますから、この二十万トンの破砕米に二万トンを合わせますと二十二万トンになるわけですが、十倍に薄められるわけですね。そうしますと、〇・四の米が十倍になると〇・〇四になるし、仮に一としても、十倍だから〇・一ppmになるわけでありますから、そういう形として、従来の二十万トンに二万トンを加えて十倍に薄めて、なおかつみそしょうゆ用米として売り渡す。破砕米に対しては非常にいま希望が多くて、一ころよりも、自分のところにも破砕米を回してくれという要望業者の方で出しているということを私は聞いているわけでありますが、そういう業者要望を受けて十倍に薄めたカドミ米を売り渡すということは、これも繰り返して申しますが、なじむ意味で、カドミに対するアレルギーをなくす意味で必要なステップだと私は思うのでありますが、長官、どうでしょうか。
  16. 三善信二

    三善政府委員 混米にして薄めてやるということですけれども、これは薄めると、薄めなければ害があるというような感情をかえって誘発しやしないかと私は思います。そうでなく、薄めなくても、一ppm未満から〇・四のものは安全であるということでありますから、これは、やるなら薄める必要はないと思います。ただ、配給の問題あるいは加工用の問題の、先生の御指摘のような問題をどういうふうにして今後まず消費者感情をなくしながらやっていくかということが基本的な問題だと私は思います。薄めるということは、薄めなければ害があるんじゃないかというような感情をかえって持たせるので、それは余り適当ではないんじゃなかろうかと私は思います。
  17. 近藤鉄雄

    近藤委員 長官、繰り返して申しますが、消費者感情消費者感情とおっしゃっているけれども、それを正すということを何もやっておられないで、これが変わらぬから、と、こういうことでありますから、私は百歩も千歩も譲って、これが正しい方法だとは私も決して思いませんけれども、ともかく、従来の食糧庁考え方は、〇・四から一以下であっても、カドミを含んだ米は観賞用動物のえさにもしないという考え方である。何に使うかといったら、ベニヤ板接着剤に使うとか、最近テレビで見たのですが、断熱材に使うとか、まさにこれはもう非食糧用である。食糧庁さんがそんな断熱材に使うとか、ベニヤ板ののりに使うとかいうことをやることは、これこそまさに、カドミ米というものはこわいものだよということを不必要に消費者感情にPRするものだ。過日もテレビで何か断熱材に使うということが出ておりましたけれども、これを見た主婦などは、まさにこれは大変だと思うわけですよ。だから、私は、率直に言って、長官のおっしゃることは矛盾しておると思うのですよ。片っ方では消費者感情を言っておって、しかも、カドミアレルギーをますます強固に固めるような措置を並行してやっていらっしゃる。私はあえて繰り返して申しますが、そういうことに使うんだったらもうやめてしまって、一以下のものは安全なんだから、お買いになりたい人はどうぞ買ってくださいというぐらいのことをやったらどうか。実際にそうしたって、いま日本には米がたくさん余っているわけでありますから、欲しいと言う人は少ないと思うのです。少ないと思うのですが、少なくとも希望したらお上げいたしますよというぐらいのことはちゃんとしていただくことが、まさに消費者感情を正しく改める具体的なステップだと思いますので、ぜひ再考をお願いいたしたい、かように私は思うわけであります。  これに関連して、この際承りたいわけでありますけれども、現在の世界には食糧危機で悩む国がたくさんあります。過日も私は田舎に帰りまして、日曜日の夜遅く、女房と子供たちテレビを見ておったわけでありますが、バングラデシュのレポートがありましたが、バングラデシュの大衆が飢餓で非常に苦しんでおりますし、目の前で子供が餓死しているわけです。こういう情景を見まして私の家内が私に申しますには、あなたがこのような貧しいかわいそうな人たちを助けることができなかったら、政治家としてのあなたを私は応援しないと言うのです。そう言って一本くぎを刺されましたが、私も家内に応援してもらわないと大変でありますから、これは何とかしなければならないと思って飛んで帰ったというわけでもありませんが、ともかくも世界じゅうには困った人がたくさんいるので、こういう方々食糧援助にこの〇・四から一ppmの米を前向きに使うということは検討できないかどうか。  私が調べてみますと、いわゆるケネディラウンドで、たとえば五十年度もバングラデシュに八百万ドル、数量で二万四千七百四十七トン出すことになっておりますし、同じくフィリピンには百五十万ドルで五千五百四十七トン出すということになっておるようであります。ただ、現在、これは米の援助でありますけれども日本の米じゃなしに、タイとかビルマの米をその八百万ドルなり百五十万ドルで買っているようであります。調べてみますと、これはトン当たり大体十万円で買っているわけですね。そこで、食糧庁さんが接着剤用として〇・四から一ppmの米を売り渡される場合に、トン当たり二万円前後だというふうに承っているわけでありますけれども、もしもそうだとすれば、その同じ金額で、片っ方は十万円、片っ方は二万円でありますから、これは五倍買えるわけです。したがって、バングラデシュも二万四千七百四十七トンの五倍の米を同じ八百万ドルで買えて、そして、より大ぜいの民衆に、米を提供することができるということになるわけであります。また、言ってみれば、トン当たり二万円ということだとそんなに大きな金額じゃないから、この際だからこれを全部無償援助でやるとしても、その接着剤用として払い下げるトン当たり二万円が仮に二万トンとしても四億円でありますから、そういうことを言っちゃいけないのかもしれませんが、食管会計は、ことしあたりは政府の予算を見ても九千億円でありますから、その中で四億円、五億円ぐらいの金はそう無理して回収しなくてもいい。したがって、これを全部無償援助として、このケネディラウンドに上乗せして必要な国に供与するということも考えていいのじゃないかと私は思うのでありますけれども長官、どうでしょうか。
  18. 三善信二

    三善政府委員 食糧危機バングラデシュに輸出したらどうかという御意見でございますが、これは国内の問題とは別個に国際問題があるわけでございまして、国内で現在現には配給していない米をバングラデシュにならいいじゃないかということは、国内的な問題と同時に国際的な問題もあろうかと思います。そういう意味で私どもは外務省なんかともいろいろ御相談もしたりしたわけですが、〇・四から一ppm未満カドミウム米について、国内はさておき、外国に輸出をしたらいいんじゃないかということは適切な措置かどうかということは、私はちょっと適当ではなかろうかと思います。  ただ、金額の問題についていろいろおっしゃられましたけれども、これは合板の接着剤用には先生指摘のように約二万円程度で回していますが、合板の接着剤用として売り渡します場合でも、私ども食糧庁の内部でいろいろ研究会をやりまして、学者先生も入れ、厚生省も入れ、そして検討して処分の方法等を実は研究したわけでございます。その場合に、たとえばアルコールに使うとかいろいろなことがそのときに出ましたけれども、そういう一番無難なやり方から、少しでもはけるようにということでとっているとりあえずの措置でございますから、これはこれなりに処置させていただくことにして、先ほどから近藤先生がおっしゃっておられるような、希望があれば配給したらいいじゃないかとか、希望がなくても配給するのが当然じゃないかとかいうような貴重な御意見もございますし、また、最近世論もありますし――世論と申しますか、一部の方々からそういう意見もかなり出てきつつございますし、そういう御指摘等も含めながら今後研究してまいりたいと思います。  ただ、国民感情と単純に申しましても一そういう世論とか国民感情というものは非常に大きな一つの力となりやすいわけでございますし、先ほどから申しておりますように、その方の理解と協力を得るためにできるだけのことを今後やっていきたいというふうに考えております。
  19. 澁谷直藏

    澁谷委員長 近藤君、そろそろ結論を急いでください。
  20. 近藤鉄雄

    近藤委員 仮に害がなくても、国内的に売らないものを海外に出すということは問題だということも私はわかります。だからこそ、繰り返し申しますが、食糧庁は強制的にそのカドミを含んだ米を買えとかなんとかと押しつけることはいけないと私は思います。しかし、希望したらオープンドアポリシーでドアをあけておきます。同時に、国際的にも、日本の国内で配給しないものを押しつけるのは問題だということは、これも私はわかります。だから一繰り返し申しますように一国内的にもドアをあけておいて、希望すればもちろん国内的にも売るんですよ。国際的にもドアをあけておいて、御希望がなければ決して押しつけない、御希望があったらそれは売ります、しかし、その場合にはいろいろなことを考えて、国内的にはトン二万円でしかやってないんだから、それは皆さんにお分けするときにも同じようにトン二万円でお分けいたします、と、こういうことを言えばいいわけでありますし、場合によっては、先ほど申しましたように、トン二万円でありますから、これはもう売らなくてもいいのであって、むしろ全くの無償援助で、従来の援助にそれを上乗せをしてお上げいたしますということ、これも繰り返し申しますように押しつけじゃない。また、従来日本はこれこれの援助をしているから、それの肩がわりを今度はこっちの米でやるんだということじゃないのです。従来の米の援助を全部前提にして、その上乗せとして、御希望があればそれはお上げいたしますということがなぜ国際的に問題になるか私はわからないのであります。バングラデシュなり、インドネシアなり、中東なり、ベトナムの政治家なら、喜んでその援助を受けて、そしてまさに目の前で死のうとしている国民に与えることがより人道的な道であり、また、政治家としての当然の責任だ、と、私はかように思うわけであります。そういう気持ちをその人たちが持ったときに、日本の政府は少なくともドアをあけて便宜を供与するということがあってしかるべきじゃないかと私は思うわけであります。  最初に長官からお話しがあったように、問題は、一ppm以下の米は絶対に大丈夫なんだということを本当に知ってもらうこと、それが大事であるということ、これもわかります。しかし、そういう気持ちを国民が持つための手だてを政府が全くしていないのじゃないかということに対して私は大きな不満を持っておりますし、だから、ドアをあけて、国内消費者も、また国際的に困った人も、そういう人が使えるようなことをすることが、ささやかかもしれないけれどもこの問題解決の第一歩だと私は思いますので、この問題につきまして前向きに御検討していただきますことを強く要望いたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終えたいと思います。  ありがとうございました。
  21. 澁谷直藏

  22. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 去る二月二十六日に、予算の分科会におきまして、カドミウムの問題について私は質問をいたしました。その当時、時間がなかった関係もありまして農林省関係の分が非常に簡単になっておりますので、改めてこの際時間をいただきまして質問をしたいと思ったわけでございますが、委員の差しかえをしていただいていることでもございますし、私の質問を許可されました委員長並びに各党の理事の各位の御好意に対して厚くお礼を申し上げ、極力簡潔に時間内においていたしたいと思いますので、政府の方々においても、要点について正確にお答えを願いたいと思います。  まず、私の質問の趣旨は、四十三年五月の厚生省見解は、カドミウムを経口摂取すると、つまり、口を通して摂取すると腎臓がやられて腎性の骨軟化症になり、そしてイタイイタイ病になるという見解であるが、これは非常に少数説に学界としてはなっておる。そこに問題があるのじゃないかと私は思う。  そこで、まず病理学の点から言うとどうかというと、その方の権威である梶川博士あるいは武内博士はともにそうではないという立証をしておられるのであります。また、中毒の面から言いますと、カドミウムの中毒というものはどういうものかというと、例の水俣病のメチル水銀の発見者である喜田村博士も、これはそういうことでないと言っておられる。そこで、動物実験をやったらどうかというと、動物実験をしてみてカドミウムを幾ら与えても骨軟化症にならない、かわりにビタミンDを与えないと三週間で骨軟化症の状況を呈するということが言われておるわけでございます。それでは臨床の面でどうかと言いますと、富山県の婦中町におる萩野博士と、それから石崎博士以外の方はほとんど否定的であるというわけであります。これはカドミウム猛毒説、金属カドミウムの棒にさわると、それを口へ持っていくと何か害があるというような、そういう国民感情がございました昭和四十三年から四十五年当時の考え方が、その後、時の経過とともに、あるいは学界の研究の進歩とともに変わっておるということであるわけであります。もちろん、私は、その当時の見解を出された厚生省を非難しようとかいうような気持ちは毛頭ございませんで、あれはあのときで十分意義があった、行政的にあそこでああいう結論を出すことはそれなりの意義があったと思うのでありますが、しかし、世の中は進歩しておるのでありますから、その進歩の状況に応じて行政も変わらなければならない、また、政治はその行政を監督する立場にあって、政治家としては意見を述べることは当然である、願わくは、間違った方向に進むようなことのないように私どもの立場から申し上げなければならない、こういうことなんでございます。  そこで、小沢大臣あるいは橋本部長等も私の見解に賛同してくださいまして、「すべてが解明できるかどうかわかりませんが、できましたら、私どもできるだけひとつ一年以内にそうした何かの統一的な、学問的な結論が出るように努力はいたしてみたいと思います。」ということを言っておられる。これは速記録のとおりでございますが、この点については、いま同僚の近藤委員からも質問があり、御答弁があったようでございますが、さて、そういう問題を踏まえて消費者感情、国民感情をどう見ていくかということであります。大体〇・四から一ppmまでの米は配給に回さないということでありますが、一ppmの米は有害とは言えないということを厚生省見解で四十五年七月に出しておるわけです。これは一九七〇年七月二十四日の食品衛生調査会、微量重金属調査研究会の結論によって出しておられるわけでございますが、これは自家保有米を食べておる人は一体カドミウムはどういう点で考えたらいいかというと、自家保有米をそのまま食べる人は一ppmまでのものはいいということになる。しからば配給の方はどうかということになって、配給の方になると、たとえば一ppmの自家保有米を毎日食べておる人と比して、今度は、配給を受けて〇・二ppmとかいろいろな米がまざって配給されてくるものを食べる人たちには〇・四から一ppmまでのものは準汚染米として食べてはいけないという消費者感情を持たせているということ、そういうところに私は一つ疑問点を持つのです。  いま、食糧庁長官は有害ではないのだというふうにおっしゃったように思いますけれども、これはそのとおりでございましょうね。有害ではないのだったら、やはり、行政官庁として、有害じゃないのだということをもっとPRなさる必要があるのじゃないかと思いますが、御見解を承りたい。
  23. 三善信二

    三善政府委員 御説のとおり、私どももPRをしたいと思います。ただ、食糧庁でPRしてもなかなかむずかしい点もございますし、関係官庁と一緒になって御協力を得て、そういうPRを積極的にやっていきたいということを先ほども御答弁申し上げたので、そのつもりでおるわけでございます。
  24. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 結構でございますが、もちろん、その根本にある厚生省なりあるいは環境庁なりの見解というものが基礎にあって、そしてそれは安全なんだということをおっしゃるのがいいと思うのですが、私は小沢環境庁長官にもいろいろ聞きまして、小沢長官は、厚生省環境庁も一ppmは害はないのだということをもう口を酸っぱくして言っているのだということを言っておられる。だったら、この四十五年の七月の大臣談話は、これはあの当時の状況で、今日はちょっと変わって考えていいのだということをあなたはここでおっしゃる必要があるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  25. 三善信二

    三善政府委員 大臣談話を変えるとか変えないとかいうことではなく、先生指摘のように、そういうように科学的にもはっきりしているわけでございますし、本質的にそういう一PPm未満カドミウム米は有害ではない、安全であるということを厚生省も言っておられますし、そういう趣旨で――これはただ食糧庁だけでわめきましてもなかなか信用していただけないような面があろうかということも思いますし、はっきりしておっても、やはり厚生省環境庁等とも協議いたしましてPRを積極的にやっていくというふうにしていきたいと思います。
  26. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 長官の言われることは非常に正しいと思うのです。ですから、この場でいまあなたのおっしゃったことを要約すると、厚生省環境庁も、あるいはまた農林省も、実は、一ppmないし〇・四ppmのものは配給して差し支えないのだと考えておるということはいまおっしゃったわけですね。違っておれば御答弁願います。
  27. 三善信二

    三善政府委員 有害でない、安全であるということを申し上げております。  それで、安全であるから本来なら配給して差し支えないということはそのとおりでございますが、ただ、具体的に配給するかどうかという問題については、先ほど来私御答弁申し上げておりますように、まず、国民感情をやわらげるとか、国民に理解してもらうとか、そういうようなことから手始めにやって理解を促進するようなことを積極的にやっていきたい、こういうふうに考えております。
  28. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 一つ提案があるのです。〇・四から一ppmまでの米は一万九千五百円ですね。これが約五万トンあるわけです。米が、端数がありますが、切り捨てると約二十二万円で、大体二十万円の差がある。のりに配給するものと普通の配給するものとの間に二十万円の差がある。五万トンあると約百億円ですね。そういうものをいまの非常に財政不如意の際にただ国民感情、国民感情と言っていらっしゃるけれども、国民感情というものは卒然として出てくるわけではなくて、役所がそういう危惧の念を持たれるから、したがって国民感情というものが出てくると思うのですね。だから、そういう点について、百億円の食管の赤字を置いておくということにあなたは矛盾をお感じになりませんですか。
  29. 三善信二

    三善政府委員 財政負担の問題も、これは膨大な問題でありますし、これを解決していくということは当然なことでございますが、ただ、財政負担がどうであるからどうだという直結をするより、その前に、このカドミウム米の問題については、私が先ほどから申し上げておりますように、やはり、解決していくべき本質的な問題があろうかと思っております。
  30. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 前とか後とかおっしゃるけれども、そうじやないので、これは同時的なものなんですよ。無害であったら配給して差し支えないのですよ。無害のものにトン当たり二十万円の差を置くということが不合理なんですね。私は、有害なものを財政負担があるから押っつけろということはちっとも言っているのじゃないのです。その点はひとつよく御研究を願いたいと思います。  それから、近藤委員の御質問にもそのような話があったのですけれども、それじゃそれを食べたい、二十万円出すところのものを二万円でくれるなら自分は食べたいという個人あるいは団体があれば、それをお認めになりますか。
  31. 三善信二

    三善政府委員 先ほども私がお答えしましたように、やはり、全体的にこれを配給に回していくためにどうしたらいいかということから、その基本的な問題から始めていかなければいけないと思います。ただ、個人的に、あるいは団体が希望したからそれをすぐ配給するということは、本当はそういうこともやりたいわけでございますけれども、そういうことをやっていると、希望する人でないと配給に回せないというような、そういう逆の感情も出てこようかと思いますし、私は、安全なものであったら安全だということを積極的にやって、全体的にこれを配給に回していくというようなことを、この際従来と考え方を変えてそういう方向で積極的に研究し、努力もしていく必要があろうかと思っております。
  32. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 従来と変えてというお話しだが、それは非常に重要な答弁だと思います。ぜひ、世の中の進歩とともに行政も変わるという考えを持っていただきたい。  そこで、私が申し上げるのは、希望者があれば配給するということは、いわゆる県民感情なり国民感情なりをやわらげていく手段じゃございませんかということで、これはカドミウムの棒にさわったら、その手を口に持っていったらもうイタイイタイ病になるというふうな考えが一方にあった時代、その時代につくった規定ですね。それが今日は無害だということになったなら、だれかがそれを希望して食べてみて何ともないということだったら――これは私か予算委員会質問した後であなた方の大先輩の笹山茂太郎さんが質問した中にあるのですが、秋田県で汚染米ということになっておる地区の米は大変にうまいということになっておって、その村は長寿村だったというのですね。長生きする人が一番多い。そういうことが現にあるのに、どこかのお医者さんがこう言ったとか言っているのだが、しかし、大体の先生たちは皆無害だと言っているものを七年も八年も置いておくということは、これは行政的にいろいろ批判を受けることじゃないかと私は思うのですよ。今日、われわれ与党はおとなしいですから、質問をここでさせていただくのがやっとなんだから黙っているが……(発言する者あり)まあ、御好意を最初に感謝したわけだけれども、われわれが黙っているからといっていつまでもほっておいちゃいけないということを申し上げるわけです。  それから、もう一つ、モチ米はどうですか。というのは、メチル水銀の問題があったときに、魚にはメチル水銀が相当あるけれども、しかし、魚は年じゅう食べるんじゃないから、ある程度汚染度というものをネグっていってもいいというふうな、非常に弾力的な方針をとっておられるわけですね。ことに、マグロは天然の水銀が〇・四ppmあるのですね。メチル水銀にして〇・三ppmある。しかし、そのマグロはもういいということになっている。それは、われわれはトロなんか高いから余り食べないのだから、たまに食べるのはいいということになっているわけです。そういうことを考慮に入れたときに、モチ米なんというものは年じゅう食べるものじゃないわけだが、こういうモチ米はどうですか。モチ米は別扱いにしませんか。
  33. 三善信二

    三善政府委員 モチ米についても同じような扱いをしているわけでございまして、モチ米と申しましても、普通のウルチ米とモチ米とを食べた場合にどういう化学的な反応があるのかという点は私はよく存じませんけれども、現在、モチ米も、普通もち用あるいはお菓子用として食べているわけでございますし、普通のウルチ米と同様の取り扱いをしているわけでございます。
  34. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 私の知っているお医者さんで河野稔さんという方がいらっしゃるのですが、この方は最初にカドミとの関係があるということを言い出した人ですが、当時は早まった、いまは間違ったと思っていると言っておられる。この方はイタイイタイ病の患者さんを三人治している人なんですが、この方の言われるには、カドミウムというやつは熱に弱いですから、もちはたまに食べるからいいんだけれども、あられなんかにして非常に熱を加えますと、どんなにたくさんあっても飛んじまうんだということを言っていらっしゃるのです。だから、さっき近藤議員が言われたように、いろいろ工夫して、いろいろな方法研究をすることが可能なんで、ただ危ない危ないということで聖域にして、アンタッチャブルにしておくのは考えものだということを申し上げておきたいと思うのです。  それから、もう一つ、混米の問題ですね。まぜる問題ですね。これも人の名前を挙げては悪いけれども、小沢長官も言っているのですよ。とにかく千二百万トンからの米の中で五万トンぐらいのものは大海の一粟のようなものだ、だからまぜれば、と言っておられる。長官、これは研究してくださいよ。いまここへ来るときも倉石前農林大臣と一緒になって、どこへ行くんだと聞くから、農林委員会へ行って質問するんだと言ったら、何だと言うから、この話だと言ったら、あれはおかしいよ、あれは混米にすれば、倍にすれば半分になっちゃうじゃないかと言っていましたが、これはもう常識ですよね。前の大臣もそう言っておられるんだから、これはぜひひとつ研究してくださいよ。しかし、これはまた御返事を伺うことにして、時間の関係もございますから、この際はこの程度にいたしておきます。  それから、最後に、土壌汚染防止の問題でございます。これは土壌汚染防止法によりまして客土をするというようなことで考えておるわけですけれども、どうもppmのとり方も問題があると言う人があるのです。いま、二・五ヘクタールの中で坪刈りして、そこの米がちょっとぐあいが悪いと、今度は全域を土壌汚染地域に指定するわけですね。しかし、このカドミウムがあるというのは食糧の関係でしょう。だから、やはり、食糧になった米を抜き取って検査するのが本当じゃないかというように私は思うのです。坪刈りというのは、これはどのくらいの米がとれるかということを検査するためのものでしょう。それを土壌汚染防止法の検査にそのまま適用しているということで、県も非常に困っているようですから、この点をひとつ御研究願いたいということを私は申し上げておきますが、どうですか。
  35. 大場敏彦

    ○大場政府委員 土壌汚染防止法に基づきまして、土壌汚染地域を指定する基準といたしまして、ただいま先生が御指摘になりましたように、二・五ヘクタールを一つの単位といたしまして――これは地形によってもう少し狭くとるケースもかなりございますけれども、二・五ヘクタールを単位といたしまして、そこで立毛中の水稲の検査をする、それから同時に、その直下の土壌を採取してその検査をする、こういった形で調査しております。  それからまた、同時に、先生が御指摘になりましたところの、食糧庁が食品を買い入れる場合の、その基準となるべき検査ということで、これはロット検査と称しまして、すでにたんぼから離れてしまった米を、たとえば生産者別あるいは部落別、字別といった単位で一つのロットを形成して、その中から一定のサンプルを集めて、そして、それを混合して米の中のカドミの含有度を調べるといった形で調査をしております。これは申し上げるまでもなく、食品として適格であるかどうか、つまり、その米の中に一ppmが含まれているか否かといった形の調査でございまして、食品としての適格性を判断して、適格であれば食糧庁が買い入れるという、こういう調査をしておるわけであります。  片一方、私ども環境庁が土壌の汚染地域を指定する場合には、その米と土壌との結びつきに着目して指定をするということになっておりますので、そのロット検査は字とか部落という単位でロットを形成して、それをまぜてしまいますから、個々の具体的な圃場、一筆一筆の圃場と実は結びついていないという形で、われわれがそれを利用できないといううらみはあるわけであります。  そういう意味で、結局、われわれの指定する基準といたしましては、この土壌を改良するのかしないのか、その必要があるのかないのかという形で調査をいたしますので、やはり、土壌と結びつきのあるような米の検定をして、それで土壌の指定の基準として使っていくということでございます。
  36. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 局長、それは大分違っているんですよ。そのあなたの考えは違う。もっと研究をしていただきたいと思いますのは、いま土壌の中に含まれるカドミウムの量と、それから、それからとれる米の中に含まれるカドミウムの量と、これは比例していないということを言われているわけですよね。それから、もう一つは、珪酸カルシウムをまくとこれは米の中に入っていかないという話もある。これは私は富山県へ行って知事さんから聞いたんですがね。  そこで、そういうことでございますから、これは少しラフ過ぎるのじゃないですか。というのは、いまどのくらい土壌汚染対策地域に指定をしておられるのか、私はちょっと役所の方へ行って聞いてみたんですが、八千ヘクタールぐらいで、さらに予定しているのを見ると一万ヘクタールぐらいだそうです。そうすると、いま単位当たり千四百万ぐらいかかるといいますから、千四百億円かかるわけですよ。その膨大な費用を農家の構造改善とか新農村建設の方の費用にもっと充てることにしてはどうか。いま、非常に不安定な基礎の上に、研究も不十分なままにこの土地改良を強行して、それだけの巨費を投ずるということであるならば、本当にもっと農村のためになることにやってもらうことにして、その点はしばらく留保されたらどうかというふうに思うのですよ。少しテンポが早過ぎるのじゃないかというように思いますが、どうですか。いまの珪酸カルシウムなどをまけばいいという問題も一方にあるのですから、非常に安直な方法でできるものをやりもせぬで、いきなり膨大な国費を投ずるという、その姿勢に問題があるというふうに私は思いますが、どうですか。
  37. 大場敏彦

    ○大場政府委員 カドミ汚染地域として現在指定しております面積は、約二千六百町歩でございます。  それから、調査がラフ過ぎるのじゃないかという御指摘がございましたが、これはもちろん過剰に指定することはあってはいけません。それはかえって農民の側にも迷惑をかけることになりますから、不必要な地域をこの地域は土壌汚染地域だというぐあいに指定することは避けるべきだと思います。また、同時に、落ちこぼれがあってもいけないことは当然でございますので、その調査につきましては慎重を期していきたいと思っております。  それから、地域を指定いたしました後に事業をするという段取りになるわけでありますが、これも、現在地域がたしか七地域ばかり指定してございますけれども、どんどんどんどん強行してやっているということではございません。やはり、地域の実態に即しながら慎重に実施しているというのが実態でございまして、先生からただいま御指摘がございました珪カル等も、これは一種のカドミの吸収抑制剤でございますが、そういったものも地域によっては使っております。それは決して排他的にそういうものは必要ないという態度ではございませんので、臨機応変に使っていきたい、弾力的にやっていったらいい、と思います。  それから、土地改良事業でございますが、これはむしろ農林省の方から御答弁願った方が適切かもしれませんが、実施に当たりましては、末端の圃場のところで排土、客土をいたしまして土の入れかえをするわけでありますが、これは先生指摘のとおり大事業でございます。地域によっては千ヘクタールに及ぶようなところがあります場合にはなおさら大事業でございまして、それは非常に大規模な事業になるだけに、やり方については慎重を要する。ことに、たとえばある川がありまして、その川の底質の巻き上がりとかいったことで、せっかく排土、客土という仕事をやったけれども、また汚染がそこに入ってきてしまって手戻り工事が出てしまうということであってはいけませんので、そういったことにつきまして十分留意をして、事業実施につきましては慎重を期していきたい、かように思っているわけであります。
  38. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 時間もないようですから大体これでやめますけれども、実は、さっきも申し上げた厚生省の微量重金属調査研究会の結論というものは、一PPm未満のものは有害とは言えないということで、それ以上のものは有害だと言っているわけじゃもちろんないわけですよ。そこで、一PPm以上のものがいまの汚染地域に指定されているのですが、これは二PPmにすると何ぼあるか、三PPmにすると何ぼあるかということを調べておられることはありますか。農林省から答えてください。
  39. 三善信二

    三善政府委員 いまちょっと資料を持ち合わせておりませんから……。
  40. 小坂善太郎

    ○小坂(善)委員 どうも、農林省もこれは余り熱はないみたいに見えますね。これは非常に大事な問題ですし、一回結論が出たんだから、さわらぬ神にたたりなしだという態度ではなくて、もっと前向きに問題を検討してもらいたいというように思います。  いまの資料の点は、国会にしょっちゅう私はおりますから、個人的な立場でいいですから、至急調べて持ってきてもらいたい。  なお、委員長のお許しがあれば、それをこの委員会の議事録に載っけさせていただきたいというふうに思います。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  41. 澁谷直藏

    澁谷委員長 ただいま、森林開発公団理事長松岡亮君、同理事手束平三郎君に参考人として御出席をいただいております。  参考人にはお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとう存じます。  参考人の御意見委員からの質疑によってお述べ願います。  質疑を続けます。柴田健治君。
  42. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 まず、マツクイムシの問題でお尋ねを申し上げたいのでありますが、現在マツクイムシに冒されておる面積と、それに対する材積量と、そして何県にわたっておるのかということ、その点をまず御説明願いたいと思います。
  43. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  マツクイムシの被害につきましては、瀬戸内海等を中心といたしまして大変な量が発生いたしております。四十六年度は約五十万立方、四十七年度が七十四万立方、四十八年度が約百四万立方、四十九年度の見込みが約八十万立方ということでございまして、特に、四十九年度で一番多いと見られておりますのは、この八十万立方のうちの四分の一の二十二万立方というものが岡山県でございます。特にひどいのがそのような瀬戸内海を中心といたしまして、さらに九州地方、そういうようなかっこうになっておるわけでございます。
  44. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いろいろ努力はしておられるようではありますが、一つも減っていない、蔓延しておるというのが現状でありまして、病害虫の駆除というだけの考え方ではもはやどうにもならぬのではなかろうかと思う。私たちはこの現状を見て、このまま放置しておくと防災対策上大変なことになるという判断に立たざるを得ないわけであります。たとえばあれだけマツクイムシで枯れておる山に火が入ったら防ぎようがない。先般も岡山の貝殻山一帯が二百町歩ほど焼けましたが、これはもうどうすることもできないという現状を迎えておるわけです。それに対して林野庁は依然としてただ単なるマツクイムシだという考え方に立って、単なる病害虫駆除だということを考えているようだが、それだけの考え方の駆除対策ではちょっと認識が悪いのではなかろうかという気がいたしますが、その点の考え方はどう思っておられるのか、御意見を述べていただきたい。
  45. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  マツクイムシの防除に対しまして、ただいま御指摘のようなことがあったわけでございますが、それに従いまして、私ども、防除法に基づく防除ということに中心を置きまして国営防除の対象県をふやすとか、あるいは予防ということを中心といたしまして私どもの予算を倍にふやすとか、そういうことで、空中散布等を中心とした予防に中心を置いておるわけでございます。  ただ、しかし、なかなか減っていないんじゃないかというようなただいまの御指摘でございますけれども、御承知のようなマツクイムシあるいはそれの根源でございますザイセンムシが原因であるということは、空中散布をすることによってこれはある程度防げるという自信を深めておりまして、それに中心的な対策をとっておるのでございあす。  ただ、山火事というようなこと等がございますが、それは立った木をそのまま放置することが山火事の火の勢いを強くするのではないかというような点等も問題になっておりまして、私どもはそういうことを考慮いたしまして、現在立っている木をなるべく十月ころまでには除去したい――火災時期は一月から三月までが多うございますから、せめて十月ごろまでにはこれを除去したいというようなことでそれぞれ対策をしながら、また、お願いもしながらやっているところでございます。
  46. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 このザイセンムシだけの被害であれだけの山が枯れるということは、われわれは林野庁の言い分もよく理解できるのですが、この媒介役をしておるマダラカミキリを征伐したらいいのだというだけでなくして、もう一つの学説というか、学者が言うておるところによると、大気汚染から来る一つの公害というものがある程度災いをしておるのではなかろうか、その大気汚染という一つの公害によって木が弱ったところに虫が繁殖してくるということもあるのではなかろうかというようにいろいろの説が出るものだから、どちらが本当かわかりませんが、しかし、何としても媒介役であるマダラカミキリを征伐するということも重要なことだと思う。けれども、それだけで将来マツクイムシが果たして撲滅されるのかどうかという懸念もわれわれは持っておるわけです。  後で松をまた植えたところで、またマツクイムシが蔓延してくる、同じことを繰り返していくんなら、この辺で、山の松でなしに、ほかの樹木、枯れないような、虫に冒されないようなものを一方では考える必要があるのではなかろうかという気がするのですが、その点についての研究というか、マツクイムシに冒されて非常に苦慮しておるそれぞれの関係県の意見をどういう形で聞いておるのか、そして、ただ単なる防除対策だけでなしに、緑を守っていくという考え方を今後どういう方法で実現させていこうとするのか、確保していこうとするのか、その点のお考えがあれば聞かせてもらいたいと思います。
  47. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  松がマツクイムシに、ザイセンムシでございますけれども、それにやられる、さらにそこには松しか植えられない、あるいは現在は松を中心として植えているということで、またそういうことを繰り返すのじゃないか、と、こういう御指摘だと思いますけれども、私ども、特に瀬戸内海のように風化いたしました花崗岩地帯におきましては、どうしても主となるのは松だということを考えておるわけでございますけれども、その中にハンノキ類とかいろいろ肥料になるような広葉樹等を混植いたしますことによって土壌をつくり、そしてそこに松が成林していくというようなことを考えていろいろな対策をとっておるわけでございます。  御指摘のように松にかわる植栽樹種はないのかということでございますが、実は、関係する県の林業試験場等もそれぞれ検討研究いたしておりまして、熊本県、山口県、香川県、福岡県等のそれぞれの県の試験場等におきましてもそういう研究をいたしておりますと同時に、五十年度から、国立の林業試験場とそのような各県の林業試験場等と連絡をとりながら、松のザイセンムシに抵抗性のある外国産の松、特にアメリカ産でございますけれども、現在、テーダ松、スラッシュ松のようなものの、松としての品種の研究をいたしますと同時に、瘠悪林のようなところでございますので、先ほど申しましたようなアカシヤ類、特にいま考えておりますのは、メラノキシロンアカシヤ、フサアカシヤでございますけれども、これらの被害跡地における適応性の調査というようなことを、調査の項目等を挙げまして五十年度から取りかかる予定でございます。特に、メラノキシロンアカシヤにつきましては、玉野市内で現在植えてその成績を見ておりますけれども、成績もいいようでございますし、また、火災にも強いというような結果が出ておるようでございます。  さらに、被害跡地におきます天然更新方法等の解明にも、植生推移の調査ということで進めておるわけでございます。  なお、これも一応試験ということあるいは調査ということで進めておるわけでございますけれども、御指摘のように繰り返すというようなことあるいは減らないのじゃないかというようなことに対しましても、災害対策ということ等を含めまして、あるいは復旧造林ということ等を含めまして、各県の具体的な意見を求めたいというようなことで、せっかくいま計画いたしているところでございます。
  48. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 ことしの五十年度予算で大幅に駆除費はふえておるわけでございますけれども、これで完全に処理できる予算かどうかという点なんです。いま盛んに駆除が始まったわけでありますが、このいまの予算では各県は足らないと言っているのですが、足らない範囲の補てんはどうするのか。ことし足りねばまた来年やればいいじゃないかという考え方自体がマツクイムシを蔓延させた大きな原因である。予算の範囲内で防除するという考え方自体がおかしい。一挙に撲滅するという予算の組み方をしないと何年かかっても撲滅できないと私は思うが、その点の考え方を少し聞かせていただきたいと思う。
  49. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  マツクイムシ関係予算でございますけれども、四十八年度が七億三千万でございまして、四十九年度が八億八千万、五十年度が十二億五千四百万ということで、これの獲得につきましても、先生の非常な御推進をいただいて感謝いたしておるわけでございますが、予防治山につきまして、特に予防中心ということでございますので、四十八年度は約六千ヘクタールでございました。それを四十九年度が一万二千、それから五十年度二万四千というようなことで、私ども、倍、倍というようなことで増額をしておるわけでございます。  なお、この点でも不足というような事態が起こりました場合に、過去においてもそのような措置をとったわけでございますが、予備費の要求をいたしましてでも、発生が非常に高い場合はそれで処置してまいりたい、かように考えておるのでございます。  なお、ちなみに岡山県でございますけれども、岡山県の場合が予防という点で大変おくれておりまして、この五十年度の予防の二万四千のうちの九千ヘクタールというものは岡山県を中心としてやろうと思っておるのでございまして、この点も、不足な場合はそのような予備費というような段階まで考えなくちゃならぬというようなことを私どもは考えておるわけでございます。
  50. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 御承知のように、ことしは地方財政計画を非常に締めつけてる。そしてまた、市町村はもちろんでありますが、都道府県のこの交付税の単位費用の中を見ると、ほとんど抑えているのですね。こういう形の中で、このマツクイムシの防除費は非常に地方負担が多いわけですが、やりたくてもやれないというのが地方財政の実態であります。これはどこの県も一緒ですが、これは自治省のこういう単位費用をあなた方に調べてもらえばわかる。そういう投資的経費が非常に抑えられている中でやれやれと言ったってやれない。その点の調和をどうとるのかということが一つの問題ではないかと思います。  同時に、岡山県はおくれておるとあなたは言われたけれども、おくれておるのは、あの土地の乱売買、乱開発の波によって、山の木は要らぬのだ、山はもう掘って荒らせばいいんだというときに、たまたま岡山県でも、そのときの知事は土地を本気で売った知事でありますから、山を守ろうという知事でなかった。それが大きく災いをして手おくれになっておる。われわれがいまになって一生懸命言っても、これだけ蔓延してきてはもう手の施しようがない。片一方では、病害虫の防除対策ではなくして、災害という面を含めて考えなければならぬ状態まで広がってきた。その責任は地方公共団体にもあるけれども、余りにも安易な考えを持っておったんじゃなかろうか。山に対しての認識という点について国も反省してもらわなければ困ると私は思うのです。  それらの反省を含めて直ちにこの撲滅をやってしまわなければならぬわけだが、被害の跡地対策はどうするのか、また、瘠悪林地の地帯の瀬戸内海の花崗岩地帯における緑をふやすためにはどういう施策を進めていくのかという、新しい林業施策の中で一つの予算のつけ方というものを考えなければならぬのではなかろうかと思うのですが、その点の御意見を聞かせてもらいたいと思う。
  51. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  地方財政の窮屈さというようなことでございまして、負担が大変むずかしいということを私どもは承知いたしておりまして、実は、そういうこと等も勘案いたしまして、国営防除というようなことで、国が全額持ちます国営事業といたしまして実施する県も毎年ふやしておりまして、四十九年度は十四県までふやしまして、五十年度はさらに六県をふやしまして、マツクイムシの発生している県が二十県となりますと大体網羅できると思いますが、そういうことで根絶を目標にいたしまして、なるべく県に御負担をかけないような処置を私ども努力してまいりたいと思っておるのでございます。  なお、山の認識とかいうようなことで御批判があったわけでございますが、特に、瀬戸内海のような松を中心といたしました国立公園地帯でもございますし、貴重な森林でございますから、私どもは懸命な努力をしまして、これが復旧あるいは保存というようなものを考えてまいる所存でございます。  なお、跡地造林等を含めまして、各県とも十分連絡とりながら、このきれいな瀬戸内海の緑を回復し、維持するような努力をいたすつもりでございます。
  52. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大いにやってもらわなければならぬわけだが、風光明媚な瀬戸内海がいろいろな形で海は汚され、山は荒らされるということで、もはや昔の瀬戸内海ではない。これをどう取り戻すかということは、ただ林野庁だけではなく、国を挙げて考えなければならない重要な問題だと私は思うのですが、その点は林野庁が一つの窓口でありますから、推進力となって、思い切ってやってもらいたい。これを強く要望しておきたいと思います。  次に、森林開発公団の方からもお見えいただいておりますから、駆け足で御質問申し上げますが、大規模林業圏の開発事業はいま全国でそれぞれの個所でやっているわけですが、どこでも悩みがあろうかと思いますが、特に、中国山脈を背景とする地域の大規模林業圏の開発事業というものは、ただ林道だけではなくして、森林の総合的な整備という構想の中で、あの県北、岡山県、そしてまた広島県、鳥取県、島根県ということで、三十二市町村の関係町村とあの地帯の林業地帯三十三万五千ヘクタールを対象に計画を立てて、計画造林なり森林関連産業整備ということで、森林のレクリエーションの地域をつくり、そしてまた過疎地対策としても思い切って資本投下をしてやっていくという、そういう夢というか、ビジョンでやる。それに対して地域住民は大きな期待を持っておることも間違いない事実であります。ところが、いまそういう林業圏の総合的整備の中で大規模林道というものが着工されたわけですが、その他の整備については、いまのような林道だけでもああいう形でやっておるのに、その他の計画というものはただ絵にかいたもちにして、ただ林道つけたらいいんではないかという程度に終わるんではなかろうかという心配があるわけであります。  それらの考え方に立って地域住民は大きな期待を持っておるんですが、しかし、林道の事業費の負担区分、工事費の基準単価の問題、そしてまた用地買収費の問題というようにいろいろと分類をして地方負担を考えてまいりますと、いまの地方財政の財政力指数という面から見て非常に弱い町村の中を通るわけでありますから、負担能力があるかどうかという問題がそこに当面大きなネックになってくる。そうしますと、いまの負担区分で強引に押し上げていくという考え方が林野庁なり森林開発公団の方にあるのかどうか、この点の考え方をまず聞かせてもらいたいと思います。
  53. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話しがございましたように、大規模林業圏の林業を中心といたしまして農業あるいは畜産との調整をとりながら、地域開発ということで、私ども全国的な事業着手を四十八年度からスタートいたしたのでございます。その中で大規模林道というものが中核的な先導的な役割りをするということで、これにとりあえず着手いたしておりますけれども、やはり地域開発でございますから、それぞれいろいろな産業等を取り込みながら、そこでいろいろな計画を実行してまいるつもりでございます。  ただ、この大規模林道につきましては、単なる林産物搬出道路ということだけではございませんで、地域の交通網との密接な関連におきまして、将来の車両の大型化あるいは交通量の増大とそれに対応できるような二車線というようなことで私ども計画いたしております。したがって、工事費といたしましても、全国的平均でございますけれども、メーター当たり十八万円というような高いものになります。しかも、その通るところが御指摘のような過疎の、そういう財政指数等につきましても非常に小さいところでございまして、負担力がないというようなことはまさにそのとおりでございまして、したがって、現在、この補助率といたしましては、国が六六・七%、県が二三・三%、地元負担といたしまして、受益者負担として一〇%で、現在はその一〇%につきましては二・五%の特別交付税というようなことで、現実には七・五%でございますが、そのような山村の実態に即しまして、私ども今後とも補助率のアップ、引き上げ等について積極的に検討してまいりたい、かような姿勢を持っておるわけでございます。
  54. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 中国山脈を背景とする大規模林道について、先ほどあなたが言われたところによると、国は六六・七%だ、延長二百五十二キロだということになっておるわけですが、二百五十二キロの中では開設の分が三十二・四キロ、改良の分が二十・一キロ、いま現在ある公道を利用していくのが百四十七・五キロという計画であります。ところが、岡山県の分を見ると、林道部分で事業費が全体でいまの計画では九十二億四千六百三十万円であり、これは先ほど申された負担区分で申し上げますと、この九十二億四千六百三十万が、国が六十一億六千七百五十万円、県負担金が二十一億五千四百二十万円、そして受益者の中で賦課金ということでやるわけですが、この一〇%のうち二五%が特別交付税で補てんをするということで、昭和四十八年九月二十六日に自治省の財政課長と林野庁の計画課長と森林開発公団の監理官の三名の方で覚書を交わしておる。それによって二五%特交で見る。その差し引いたものが、町村が六億九千三百五十万円ということになるわけでありますが、これを七分五厘で、五十七年度完成、そして四年間据え置き、二十一年償還ということで金利計算をしてまいりますと、地方負担が県の分は金利を入れると四十五億九千九百万円の負担になる。元金は二十一億五千四百二十万円であるけれども、七分五厘の金利計算でいくと四十五億九千九百万円になる。そして町村の方が二七・五%の負担として、六億九千三百五十万円にこの金利計算をしてまいりますと十五億六千四十万円になる。こういう負担でやれというのは少しおかしい。  と同時に、また、各県の中でいろいろと市町村から要求が出ておるわけですが、その要求は、市町村は財政力がないので、負担能力がないので県にかべってくれということである。それで、鳥取県においては町村から県がかべってくれという陳情を出しておる。その趣旨を鳥取県の議会が採択しておる。島根県の方は継続審議ということで、その陳情はいま継続審議をやっている。それから広島県の方は、知事が町村会においてかさ上げをするという言明をしたが、その分担の割合はまだ未定であるという実態です。山口県の方はまだそういうことは一切考えておりませんという県当局の考え方が出ておる。岡山県においても、市町村の方はこれだけの負担能力がないということで、県に肩がわりしてくれ、かべってくれという要求がいま出ておるわけです。末端ではこのままいくと県と市町村との対立関係になる。負担をしろ、しないということになるとけんかになる。こういう発展をしてくることが予想されるにもかかわらず、いまの負担区分でやれという。そして有効幅員七メートルで、基準単価が十八万円だ。ところが、用地買収の価格だが、臨機応変の弾力的運用をやっておるようでありますけれども、その用地買収費の価格というものが、林野の場合、原野の場合、畑の場合――宅地は余りありませんが、そしてまた田の場合というように、それぞれの土地の区分において用地買収費というものにまだまだ非常に格差があるし、差がある。これらを市町村が全部負担しなければならぬという実態を皆さん方はよく知っておられるわけだが、そうすると、それらの負担区分を見ると、いまの基準の十八万円が足らない。足らないものをどうしても市町村がかべらなければならない。そのかべるものは別であります。これはこの数字に出てこない。  その点の考え方は林野庁なり森林開発公団としてはどうせられるか、見解を聞かせていただきたい。
  55. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろと財政力の関係等を含めまして、地元の負担が非常に大きくなるということについての数字の御披瀝ございまして、私ども、その数字のとおりだと思っております。非常に負担能力のない地元町村でございますから、県議会等に対しまして県で肩がわりをしていただきたいというような陳情を各県で出されておるということにつきましても私どもは承知いたしております。ただ、ただいま決められたことは、そういう比率で補助なり負担区分ができておるのでございますが、先ほど答弁申し上げましたように、この補助率のアップにつきましてわれわれは積極的に検討したいということでお答え申し上げたのでございますが、さらに岡山県とかあるいは広島県というような後進地域差額のない県でございますとそのままの比率というようなことになるわけでございますけれども、大方のところが後進地域でございますので、県によっては八割の助成まで――後からの支払いというような形態になろうと思いますけれども、最高八割まで国の補助というようなことになるわけでございまして、その分だけ県は負担分が減るわけでございます。そういうこと等がございまして、県の方に何とか肩がわりしていただきたいというのが山村町村のお願いであろうかと思います。  したがって、私ども、こういうことがあることを承知いたしております関係から、どうしても何とかその補助率アップに努力したいということで努力いたしておりますけれども、特に、御指摘がございました用地買い上げ費でございますけれども、補償費がきわめて少ない、したがって町村が持ち出しているという実態も承知いたしております。  実は、全国平均キロ当たり約三百四十万円という林道の用地費を見込んでおるわけでございますけれども、現在着工いたしておりますところが国道とか県道とか、そういう取りつけのところでございまして、集落とか農地とかがございまして、一応非常に高い補償費を町村に別途見ていただいているというような場合もございます。しかし、一歩奥地、山地へ入ってまいりますと平均的なものはずんずん下がってまいりますので、超過して用地補償費を払っていただくというような現象は少なくなると思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、何はともあれこういう山村でございますから、そういう負担のないようにということを心がけますとともに、御指摘ございましたように、四年据え置きの二十一年償還ということでございまして、実質この償還が始まりますのは五十三年度ごろからでございますので、それまでにはその点を十分詰めさせていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  56. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 基準単価を上げてやるということが第一点と、それから、これほど大幅に用地買収費の価格を上げられないということになれば、財政力指数によって多少の差をつけなければならぬと思いますけれども、財政力指数の非常に弱い町村は用地買収費だけは自治省と話をして別途起債の枠を認めてもらうというような方法、手段がとれないものかどうか。用地買収費だけは自治省と話し合って別途の財源をつくってやるというような努力ができないものかどうか、その点はどうですか。
  57. 松形祐堯

    松形政府委員 ただいま御指摘がございましたように、確かに、十八万円というのは、先ほどお答え申し上げましたような取りつけの場所で工事費も単価が非常に上がっているというのが現実でございますので、この単価を上げる努力は、予算獲得の中でもあるいは運営の中でもわれわれは当然やるべきことだと思うのでございます。  ただ、いま御提案がございました財政力指数の少ない町村での用地買収費等の持ち出し分について、起債というようなお話しでございますが、私ども、その提案を受けまして、私どもの内部での検討はもちろんでございますけれども、自治省とも十分相談してみたいと思っております。
  58. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この点は十分前向きに検討して、大事業であるだけに成功させなければならないし、また、先ほど申し上げた基準単価においてももっと引き上げていい工事をしないと、自然破壊につながるような林道がまたできたんではあなた方の威信にかかわると思うのですね。国の名誉にかけても、これからの林道は自然破壊にはつながらないのだというような本当にりっぱな工事をして出さないと笑われると思うのですよ。その点はあなた方は十分責任を感じてやってもらわなければいかぬと思うのですよ。  それから、森林開発公団の方に聞きたいのですが、いまの予算額、たとえば四十八年度、四十九年度、五十年度――四十九年度から着工したのですけれども、四十八年度の繰り越しの金を充当されておるから四十九年度はふえておるようでありますけれども、五十年度のことしの予算では三億五千万が中国大規模林道の予算のようであります。確定ではないようでございますが、配分が三億五千万で、このとおりの予算のつけ方でいくと五十七年度で完成するのかどうか。これは森林開発公団理事長にお尋ねしたい。
  59. 松岡亮

    松岡参考人 先ほど来のお話しはまことにそのとおりでございまして、私どもも大変苦心をいたしておるのでございます。  五十年度の予算の実情についてはいまお話しがございましたが、確かに、公共事業費の抑制、一方では諸物価の値上がりということで、ただいま計画されております大規模林道の、特に中国の関係の分でございますが、全国的に同じようなことでございますけれども、計画どおりにいくにはいまのペースではやや困難があるのではないかと思います。私どもとしましては非常に厳しい状態でございますけれども、できるだけ予算を確保していただきまして、また一面では工事費の節約その他いろいろと工夫いたしまして、少ない予算でもなるべく進捗させるようにやってまいりたいと考えております。
  60. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 松岡参考人の発言はちょっと気にかかるのですが、少ない予算でも伸ばすようにやりたい、できるだけ能率を上げるということになると、どこか倹約をして節約するということになる。そうすると、工事そのものの中身を、たとえば土どめでも一メートルぐらいでしんぼうするとかというように工事の手抜きというものがいろいろと出てくるんじゃないですか。そこで、たとえば二十センチの側溝を十八センチに狭めるとかいうようなことのないようにやってもらわないと、あなたの意見をそのまま言うと、金額は少ないけれども伸ばすものは本気で伸ばすということになると、やはりどこかが手抜きになるのではなかろうかという判断にわれわれは立つようになります。  要するに、森林開発公団は何のためにできた機関かということなんですが、この事業は目標年度までには完成するんだ、そのためには思い切って大幅に予算をふやしてもらうという姿勢でないと林野庁の長官にあなたはだまされるという可能性もある。ですから、林野庁長官がどれだけの政治力を出すかということは、あなたらがバックアップしてハッパをかけてやらないと、与えられた金額でできるだけやりますということでは、これは計画どおりいかないことははっきりすると私は思う。この点、森林開発公団ももっと元気を出して、地元の市町村の意見もよく聞いて、そして工事も完全なものにしていく、予算もうんとつけてもらうというような姿勢でなければ、あてがわれた金額でやっていきますというような姿勢では、もはや森林開発公団は要らないのです。林野庁に任せておけばいい。それでは何のために開発公団をつくったかということになるので、その点は十分配慮してもらいたいと思う。  それで、長官、市町村の財政はこのままいくと、山口県はどうするとか、広島県はどうするとかばらばらになってしまうから、ある県は県が肩がわりしたが、ある県はやらないということになる。そういうようにばらばらになってくるとまた混乱が起きる。県なら県が全部肩がわりするものなら、県の方にも大規模林業圏は大きな事業としてできるなら国が全部やらなければならぬ問題だけれども、県の起債もひとつ思い切って考えてやる、市町村も考えてやるが県の方も考えてやるから、その点は協力、協調の精神で余りけんかはしないように、負担についてはうまくやれ、と、こういうような姿勢を林野庁が出してやらないと、そこはよろしゅう頼みますという程度ではこれは解決しないと思うのですが、長官、どうですか。この問題についてあなたは積極的に乗り出して調整をやられますか。
  61. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  県が、町村ごとにいろいろな経済の状態等も違うので、これを肩がわりするについてもいろいろ検討して、統一的にやったらどうだというようなことでございますが、県自体の経済力と申しますか、そういうものも違っておりますし、また、それを通過いたします町村の指数等につきましても差がございますし、それをいかなる形でまとめるかというようなことは非常に問題があろうかと思います。  しかし、問題はあるにいたしましても、先ほど申し上げましたようにこれが五十三年から償還ということでございますから、私どもも、なるべく早い時期に関係するところとも十分打ち合わせをしながら検討をさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  62. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 だから、先ほどちょっと申し上げたのですが、四十八年九月二十六日に自治省財政課長、林野庁計画課長、森林開発公団監理官の三者で覚書を交わしておる千分の二十五という率ですが、自治省は石原財政課長、林野庁は秋山計画課長、森林開発公団は大町監理官ですが、課長ペースでこれだけの覚書ができるなら、大臣クラスでもっと煮詰めて負担区分を上げるような覚書ができないものかどうか。課長クラスで千分の二十五になったものなら、大臣クラスなら五〇%ぐらいになるんじゃないかという気がするのですが、この点については、このままの財政措置を続けていくのか、どこかで変えていかなければならぬ、もう少し特交の方で見てもらわなければならぬだろうという判断に立って今後政治的に折衝される意思があるのかないのか、それをまず聞かせていただきたい。
  63. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの課長レベルにおける自治省等との覚書でございますけれども、この点につきましては、一応暫定処置ということでそのような処置をとっておるわけでございまして、基本的には、現在の特交ということだけではなしに、私が先ほど来申し上げておりますように、補助率の問題あるいはそういう負担区分の問題等につきましても何とかしたいという気持ちでございますので、十分その辺を踏まえまして検討させていただきたいと思っております。
  64. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間がございませんから、森林開発公団の方に来ていただいても十分お尋ねすることができませんが、改めてまた御意見を聞かせていただくようにします。  次に、官房長、きょうは大臣もおられぬようですから、あなたに聞きたいのですが、「岡山県総合福祉計画」というものが去年の四月にできているのですが、この「福祉計画」をあなたは読んでいただけましたか。
  65. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 岡山県が新しい知事さんにかわられまして、産業福祉計画をおつくりになったということは承知しておりますが、その中身については、私はまだつぶさに勉強をしておりません。
  66. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 県でも、市町村でも、地方公共団体は地方公共団体で勝手にやりなさいというような時代ではいまはない。農政を進める中で、具体的にいろいろな法律がございますが、地方公共団体がその法律の枠以外にはみ出して勝手にやるのならいざ知らず、現行の法律の枠内でできるだけ農業を振興させていこう、農政を発展させていこうという考え方に立ってそれぞれの地域の分担計画を立てる場合に、それに対して国が知らぬ存ぜぬではいけないと私は思うのですよ。できる限り国と県と十分事前に話し合うということも大事でありますけれども、やはり国の考え方も速やかに下に周知徹底をしなければならないが、県の方の考え方についてもそれとあわせて十分話し合いをするという姿勢がなければならない。そういう基本的なものを踏まえてこの福祉計画を立てておるのだな。われわれはそう思っておるわけです。  この中の福祉というのは――いまはネコもしゃくしも福祉福祉と言うのですが、本当の福祉のあり方というものは何か、福祉の定義は何かと言うと、ただ老人や身体障害者というような方々を対象にするのではなくして、教育も文化も、また、農業も水産業も林業も全部ひっくるめて人間の幸せに結びつけるような構造の変革というか、産業政策、経済政策を進めていくということ、そういう大きな立場に立って考えたら、そこの福祉計画の中にそういうものを入れていくということは当然理解できるし、また、新しい発想として考えてみる必要があるとわれわれは思っているわけです。  その岡山県の福祉計画の中で、農政のあり方というか、農業政策を進めることについて具体的なものが書かれているわけです。たとえば生産組織の育成指導という項目の中に、農業経営なり、機械利用なり、研究集団の育成なり、あるいは優秀な後継者の育成というようなことを具体的に書いているが、これを実現させるためには、どう考えても県独自ではできない。それに国がどこまで協力してやるか、財政の必要なものは財政の裏づけをどうしてやるかというように大きな気持ちで温かく指導もし、助言もし、協力もしていかなければならぬのではなかろうかという気持ちを持って私はお尋ねを申し上げるわけです。  そこで、たとえば農業生産基盤の整備についても、何年度から何年度までにはどうするんだ、圃場整備については、五十五年度までには現在のものを五一%まで圃場整備を終わるようにしていきたい、農道整備でも、いまの現状からいくと五八%ぐらいまで整備をしていきたい、基幹用排水施設整備も五一%ぐらい改良したい、畑地帯の総合整備も六一%ぐらいしたい、飼料基盤整備も七〇%ぐらいやりたい、農地防災保全の事業についても七四%ぐらいしたい、農用地の総合開発をするにも七九%ぐらいしたいというように、目標を昭和五十五年を目標に置いていろいろ計画を立てておるわけです。  これについて、農林省の新しい安倍農政は攻める農政だと言われるが、その攻める農政と、地方公共団体がこういうように具体的に立てた計画に対してどう協力をするのかということについてわれわれは関心を持っておるのだが、協力しないのかするのか、するとするならどういう方法で進めていくかということをまず聞かせてもらいたいと思うのです。
  67. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  本件については十分御案内の先生に対していかがかと思うわけでございますが、各都道府県の自主的な農業振興計画は、それぞれの地域の実情に応じて立てられておるわけでございまして、その地域の特性なりあるいは農業推進の意欲というものが十分反映されておると思うわけでございます。その計画の性格とか、作成の手続とか、その他計画期間とか、それぞれその県の固有の事情によって立てられている面があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、ただいま先生から御指摘がございました土地改良の計画にいたしましても、御案内のとおり第二次土地改良長期計画を持っておりまして、これの総事業費十三兆の事業の着実な推進ということを考えておるわけでございまして、その推進に即して各都道府県がやっていただくという立場に立っておるわけでございます。  もちろん、それぞれの事業の具体的な毎年毎年におきます採択なり、あるいは俗な言葉で申します予算の配分という点におきましては、それぞれの県の自主的な意欲というものの端的な表現でございます計画を十分配慮しながら進めるというわけでございますが、何と申しますか、その振興計画の作成そのものなりあるいはその実施についてはわれわれといたしましても十分指導、助言を差し上げまして、地元の意欲と国の政策の貫徹というものが一貫するように努力をしていきたいという姿勢でおるわけでございます。
  68. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この岡山県の福祉計画の中には先ほど申し上げた点もありますが、たとえば価格安定制度の充実、これも県だけではなかなかできないわけです。たとえば金融政策では、農林漁業金融政策を進めても、五十五年度までにはおよそこの程度枠が必要であろうという計画を立てている。そして融資枠の拡大とか、利子補給をどうするとか、これもまた県だけではできないという問題もある。それから農業団地の育成でも、総合モデル団地を十八カ所つくるんだ、農産園芸団地を七百六十八団地つくるんだ、ふん屎処理システムの団地を三団地つくるんだというように書いてあるわけですが、これらもやはり県だけではできない。それにどう協力してやるか。たとえば流通加工の施設改善についても、卸売市場の整備ということで国の方も今度市場計画を変えるようでありますが、四十五年度の計画を今度はここで五年たったから新しく十カ年計画を立てる、その中で岡山市なら岡山市の中央公設市場の開設をどうするのかということについて農林省がもっと積極的に本気にならなければできないのに、県なり市の方でやれやれと言う程度で農林省の方はもたもたするというような姿勢、そういうようにいろいろともたもたする現状の姿勢から割り出して考えたならば、これは地方でどんなに計画を立ててもうまくいかぬという気がするわけですね。それらを踏まえてそれを善処し前進させて発展させていくには本当に熱意が必要だと私は思いますので、その熱意に対して私たち農林省の方に強く要請をしたい。  ただいままでの予算の組み方を見ても、農林省はいろいろアイデアはうまいのですね。各省の中で一番アイデアがいいのは農林省だと思う。アイデアはうまいのだが、それの財政的な裏づけがない。農林省だけでささやかな予算を組んでばっと広げる。ところが、下の方は何もないわけです。そうすると、何ぼ補助をやるからおまえがやれと後から押しつけをやるわけですよ。ところが、地方公共団体が負担する財政力というものはどこから農林省は認めておるのだろうかという疑問が起きる。そうすると農林省は自治省と上でよく話をしているのだろうかという気がするが、自治省の方に聞くと、いや、農林省人たちはなかなか頭のいい人ですから、アイデアがうまいから、どっとどっとと新しい表現を使って、新しい名称を使って予算をつけていかれますけれども、地方公共団体の財政負担については自治省との話し合いは余りないと言うのです。その点については、官房長は農林省内をコントロールする重要なポイントなんですから、自治省の方とも少し話をして、これからの地方公共団体の負担とその財政の問題については農林省はこういう考えを持っておるのだ、地方公共団体にこれだけの負担が要るのだがその点は考えてやってもらいたいというようにある程度の話をしておかないと、地方公共団体とすれば自治省がこわいのですよ。おしかりをこうむっては困るということになるわけですからね。  攻めの農政ならそこまで配慮して、上の方の問題は農林省がコントロールしてやる、調整してやるというようなことをしてやらないと地方公共団体は困るのではなかろうか。こういうことにいまなっておるわけですから、その点の今後の中央段階における調整と農政を進めるについて、地方公共団体の役割りと任務と同時に、また、地方公共団体が立てておるそういう福祉計画の中における農政の推進についてどう協力するかということを総合的に判断をするのは官房長だと私は思うので、官房長の今後の心構えと御意見を聞かせていただいて私の質問を終わりたいと思います。     〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕
  69. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 国の地方に対する財政援助については、われわれは地方に対する農政推進のための各種の事業の予算化ということに努めておるわけでありますが、その際、単に国家予算における予算の確保のみならず、農林予算は御案内のとおり間接補助的、地方公共団体経由でございまして、その負担も期待するという予算が大部分でございますので、地方の財政の観点なり、あるいは地方の裏負担の充当という点については十分配慮しなければならないという点は先生指摘のとおりだと思います。  われわれといたしましても、従来も、地方財政計画の段階なりあるいは地方交付税における基準財政需要等の見方につきましては国が実施しております補助事業の裏負担が確保されるように努めてきたつもりでございますけれども、財政硬直化問題等は、単に国家予算だけではなく、特に地方にも非常に重要な問題になっておりますので、国の段階におきます事業の予算化、補助事業等につきましても地方負担が十分確保できて、本来の意味の事業がもっとできるようにわれわれは一段の努力をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  70. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 次は、中川利三郎君。
  71. 中川利三郎

    中川(利)委員 ことしもまた米価の季節がやってまいったわけでありますが、四十九年産米のことでお伺いしたいわけであります。  私は、米どころと言われる秋田県の出身でありますけれども、その秋田市周辺の農協倉庫の中にいまほとんど米がなくなっている。いつもならばどんなに早くても七月ごろからなくなったりするわけでありまして、昔は端境期まで生産地の農協倉庫の米はあったわけでありますが、いまはもうほとんど底をついて、六月早々にネズミの運動会と言うと言い過ぎになりますけれども、そういう倉庫まで出てきておるという状況があるわけであります。したがって、食糧庁は、日本は米が余っているんだ、米があるんだあるんだと言いながら生産地の農協倉庫に米が全くなくなってるということは、米があるという言い方がどうも私は気になってしょうがないわけであります。なぜこのような異常な蔵出しになっているのか。生産地から米をどんどん運ばなければならない事情は一体どこから来ているのか。  東京の人が急によけいに飯を食うというか、お米を食べるということでもなさそうですし、なぜこのような状況が起こっているかということをまず前段としてお聞きしたいわけであります。つまり、米の絶対量はそれほど異常な逼迫を来たしているのかどうかということですね。これをお答え願います。
  72. 三善信二

    三善政府委員 米の全体の需給の問題かと思いますが、先生御承知のように、需給は、米については逼迫いたしておりません。と申しますのは、四十九年産米でも大体もう集荷が終わりかけておりますけれども、予定した集荷量を順調に集荷いたしておりますし、片や、需要の方は、私ども昨年来需要は多少伸びるんじゃないかということを思っておりましたが、需要の方も大体横ばいと申しますか、これまでの減り方より減り方が非常に少なくなったという程度ではなかろうかと思います。したがいまして、全体の需給の問題としては、国内的に米について逼迫しているということはございません。  在庫量につきましても、今年の十月末に百十五万トンの古米持ち越しをできるように準備をいたしておりますし、来年は百五十万トン程度の在庫を持てるように、生産の計画、集荷もそれに見合わせてやりたいということでございます。
  73. 中川利三郎

    中川(利)委員 米の在庫の現状がほぼ平均してバランスがとれておる、決して不足ではないということでありますが、それならばなぜ生産地の農協倉庫から米がどんどん出されているのかということですね。つまり、不足ではないけれども、その米が消費地の農協倉庫だとか営業倉庫だとかいうところに非常に偏って蓄積されているのか、そういうことしか考えることができないわけでありますが、そういう状態はどうなんですか。
  74. 三善信二

    三善政府委員 多少数字について申し上げますと、たとえば秋田県の場合を例にとりますと、四十八年産米と四十九年産米につきまして、それぞれ三月末時点で対前年どのくらいの在庫量になっているかということを申し上げます。  四十九年産米で申し上げますと、秋田県の在庫の量は三月末で二十三万六千トンでございます。それから昨年の場合、前々年と比較しますと昨年は二十四万八千トンでございますので、四十八年産米の場合より四十九年産米の場合は、三月末時点で比較した場合に多少少なくはなっておりますが、先生御承知のように、昨年度は非常に豪雪がございまして輸送が非常にとだえた。したがいまして、県外への搬出というものが非常におくれました。そういう関係もございます。  それからもう一年さかのぼりまして四十七年産米で比べてみますと、在庫量は三月末で十八万七千トンでございますから、四十七年産米より四十九年産米の場合は、ことしの三月末日の在庫でございますが、非常にふえている。  こういう状況でございますから、秋田県の場合、従来と比べて県内の農協倉庫等の在庫量が特に非常に減っているということにはならないんだろうと数字的には思っております。
  75. 中川利三郎

    中川(利)委員 一つの例を出しますと、たとえば秋田県に天王町農協というところがありますが、これが去年の四月の末には大体十万四千俵ぐらいあったわけですが、ことしの四月の末は約四千五百俵なんですね。大変な違いなんです。五月分に対しては全部オーダーが来ておりまして、五月の末にはほとんど空っぽになるということになっているんですね。河辺町農協という農協もありますけれども、これも五月中に倉庫が空っぽになる見込みなわけです。オーダーが全部来ておるわけです。三月末現在を調べてみますと、在庫量が去年の二分の一です。半分ですね。一昨年の三分の一になっておるんです。こういうことは従来なかったことなんですね。特に、天王町の場合を見ますと、この一月だけで五万俵も搬出、出庫させているんですね。  あなたは全体としてはほとんど変わらないのだと言うけれども、これらの農協をずっと調べてみますと、ほとんど考えることができないような出庫超というか、異常な出庫量、蔵出しをどんどんさせられておりまして、これはもう「米はそれだけ不足だか」ということで、みんな異口同音に農民が言っておるわけでありますけれども、そうすると、米は全体として秋田県にあるにかかわらず、平均してあるにかかわらず、こういう異常な状況をどう言えば説明がつくのか。普通だと説明がつかないわけですね。これはどういう現象なんでしょうか。
  76. 三善信二

    三善政府委員 先生御承知のように、各農協倉庫の在庫の問題につきましては、それは倉庫の保管の状態によって非常に違うわけでございます。たとえば夏場に品質の保全上不安があるような倉庫もございますし、あるいは薫蒸をいたします場合に薫蒸が非常にできにくいというような老朽倉庫もございますし、補修を必要とするような農協倉庫もございます。それから、駅の周辺に営業倉庫と低温倉庫等があるからそこまで持ち込むとか、あるいは消費地に早く持ち込むというようなこともございますし、いま例を挙げられました中で私どもが調べておりますのは、天王町でございますか、この天王町の農協の倉庫の場合は非常に在庫率が低いということでございますが、この天王町の農協の倉庫につきましては、私ども食糧事務所でいろいろ聞いてみますと、これは薫蒸ができないような倉庫だということを聞いておりますし、そのために早く出荷をするというようなこともやっているわけでございます。  そういうことで、たとえば秋田県の場合、個々に分けてみますと、そういういろいろな事情によってある農協の倉庫は在庫が非常に少なくなっておるし、ある農協の倉庫は多くなっているというように種々雑多でございまして、それぞれ農協の倉庫の実情に応じて食糧事務所でそういう指導をしているわけでございます。
  77. 中川利三郎

    中川(利)委員 農協倉庫の実情によってそれぞれ仕分けをしているのだということでありますが、去年と比べ、あるいは一昨年と比べ、考えることのできないような異常な早期出庫ですね。これはいまの倉庫の状況なんと言ったって、ほかに説明がつかないわけですね。とりわけ、いまの河辺農協なんかの例を申しますと、あなたはいま薫蒸の設備が云々ということを言いましたが、わざわざ薫蒸を指摘されて、昨年相当の多額な金をかけて、それを直したりしているんですね。それを修理して、ちゃんといいものに変えているわけです。にもかかわらずこういう状況が起こっておるということですね。しかも、地理的な状態なんというものは、昔から農協倉庫はそこに建っているのですから、そんなに異常な出庫を強制されるということは、日本全体がそんなにバランスが変わっていないと言いながら秋田県はこのようなばらつきがあるということは、昨年の米価闘争における出庫に対する不協力といいますか、あるいは阻止といいますか、そういうものに対する報復措置じゃないだろうかということを言わざるを得ないということですね。この政府のやり方は江戸のかたきを長崎でとっているんじゃないか、こんなことが許されていいのかという怒りがいま農民の方々の間にたくさん燃え上がっているわけであります。私も最初はそういうことはないだろうということでいろいろ考えたけれども、そうでないとこれは説明がつかないのですよ。  そういう出庫不協力ないしはそれに類したことに対しての明らかな報復措置だというふうに私は理解しているわけでありますが、これに対する皆さんの御見解はいかがですか。
  78. 三善信二

    三善政府委員 先ほど申し上げましたように、個々の農協の倉庫につきましては食糧事務所で、もう少し詳しく申し上げますと、たとえば銘柄米とか非銘柄米とか、それから輸送の状況とか、そういったすべての客観的な状態を加味しまして、食糧庁で指示をして出庫をしているということでございます。  昨年の場合と比較しますと、農協倉庫等全体としましても、秋田県の場合、豪雪とかいうようなものがございましたので昨年は非常におくれたということも事実でございます。  いま御指摘のように、昨年の米価闘争のときに出庫不協力とかいうようなことを秋田県でもやられた倉庫、農協がございます。それに対する食糧庁の報復措置ではないかというお尋ねかと思いますが、そういうことではございませんで、確かに、昨年の場合、私どもはそういう不協力がないように警告もいたしましたし、それは当然のことだろうと私どもは思っておりますが、そういう報復措置とかなんとかいうようなことである農協の在庫が極端にことしは少なくなっているというようなことではございません。
  79. 中川利三郎

    中川(利)委員 個別農協に対するねらい撃ちというようなことはやった覚えがない、指示した覚えがないとおっしゃるのですか。
  80. 三善信二

    三善政府委員 警告はしましたが、報復措置としてその在庫率を少なくする、早く搬出するというようなことはしておりません。
  81. 中川利三郎

    中川(利)委員 私の手元にことしの一月二十九日の日本農業新聞がありますが、ここに大きい見出しで、「出庫阻止闘争に報復」「出庫指令早める 食糧庁は否定せず」という内容の新聞記事が出ておりますが、これは日本農業新聞がでたらめなことを書いたということですか。  この記事によると、たとえば秋田県の経済連の鈴木専務、佐藤食糧部長が、この一月二十三日に秋田の食糧事務所長に対して、口頭で、「出庫拒否したことで、早期出庫されている農協があるように聞いているが、そのようなことをしないように」ということを申し入れている。秋田県の経済連が団体の名においておたくの出先にこういう申し入れまで行っているのですね。しかも、この中で食糧庁の言い分として明らかにされていることは、こういう報復について食糧庁買入課は「政府米は、あくまで政府の物で、農協の物ではない。出庫阻止によって需給に支障が出れば困るし、支障の出ないようにするのは、食糧庁、各食糧事務所として当然の事だ」と言っているということが書いてあるんです。そして高野秋田食糧事務所長は「農協、青年部等の受け止め方だが、否定しない」と言っているのです。つまり、「みせしめと受け止められることは否定しない」ということまでわざわざ談話として出しているんですが、これは一体どうなんですか。
  82. 三善信二

    三善政府委員 その出庫不協力ということについて、当時の米価闘争のときに、政府の米を預かっている農協倉庫でございますからそういう不協力なんということはしてもらいたくないということを私どもとして言うことは当然のことだと思います。  そういう意味で、私どもは、そういう不協力のところ等には警告を食糧事務所等から出しておりますし、たまたまいま新聞の記事をお読みになりましたけれども感情的な面も加わってそういうふうに担当の課長ないし班長さんが言われたのかもしれませんが、報復としてやったとかいうようなことは私ども全然考えておりません。
  83. 中川利三郎

    中川(利)委員 食糧庁長官が報復なんということは全然考えておらないにかかわらず、出先が「そのみせしめと受け止められることは否定しない」なんということを言っていることは、これは食糧庁の指導方針が末端まで一貫しておらないということのあらわれであって、そのしわ寄せがこういうかっこうで現実に起こされているということだと思うわけであります。  秋田県は去年米価闘争で比較的にいろいろあったわけでありまして、念のために東北各県の状況を見ましても、「県外への県別搬出数量」という皆さんの資料で五十年三月三十一日現在を見ましても、秋田県は二十二万七千トン出ているわけでありますが、東北六県の中の比率を見ましても、四七・五%と、搬出数量が一番高いのですね。ですから、全体としては目につかないかもわかりませんが、バランスはとれているかもわかりませんが、県としての搬出量が高いということと、あるいは県内の農協で見ますと、農協によっても、皆さんにねらい撃ちされたと思われる節のある農協の米はどんどん出庫させられている。したがって、県内の農協間の話では、秋田の言葉で言えば、「ああ、あそこの農協か、あれはもう米はなかんべ、米はもうねえはずだ、あれは去年しこたまやったものな」と、こういうことを言っているんだな。もうあそこでないのはあたりまえだろうということが常識の言葉になっているんですね。  このように農民に不信感を沸かせているということについて、かりそめにもこのような疑いを持たせるということは大変遺憾なことだと私は思うわけでありまして、あの時点で文書をやったとか警告したということはそれなりに了解しましても、今後末端に至るまでそういう誤解を与えないように――皆さんから言わせればこれは誤解ということになるのかもわかりませんが、誤解のないようにしていただかなければいけないと思うわけでありますが、長官の御見解をお聞きしたいと思います。
  84. 三善信二

    三善政府委員 私、お断りしたいのは、実は、そういう不協力というようなことを私はやってもらいたくないと思います。したがいまして、そういうことをやるような農協に対しては、私どもは依然として警告をしたいと思いますが、ただ、昨年の場合、先生がおっしゃるように、その報復措置としてやったんじゃないかというようなことは、私はそういうことはしておりません。担当の方で新聞に書かれているようにたとえ言ったとしましても、新聞の場合はいろいろとニュアンスを込めて書かれる場合もあろうかと思いますし、だれがどう言ったということをいまからせんさくすることも私はいたしませんけれども、私が申し上げましたように、去年の場合の報復手段としてそういうことをやったということはございませんから、その点はひとつ御了承を願いたいと思います。
  85. 中川利三郎

    中川(利)委員 かりそめにもそのような誤解を与えることはないように指導せいということに対しては十分なお答えがないままに、出庫不協力の事実は好ましくないんだということで、そこに重点を置いて御答弁なさいましたけれども、私は、実際に去年の六月二十五日の天王町農協の状況なんかをつぶさに責任者に聞いて調べたわけでありますが、実際、農協の責任者の方々が出庫拒否なんという法違反のようなことはやっていないし、そのことを奨励もしていないわけであります。ただ、青年部の人たちが、われわれは米で生きなければならない、われわれは米を何とか守って、それで飯を食えるように生きていかなければならないということでいろいろな運動をしたことは確かでありますけれども、この日の状況なんかを見ましても、詳しく言えば時間がありませんけれども、取りに来たマル通の車がそこの前でがやがやしておったから自分の方で引き下がっていったという例もあるわけですね。こういう場合はあの寄託契約書、農協と皆さんの方の契約書によりましても、両者で相談する、それで解決するということになっているわけであります。しかし、そういう手続もとらないで一方的にこれは出庫拒否だなんと決めつけまして、皆さんの食糧事務所の所長さんが現地に行って調べもしないで、ただ単にそういう運送業者の話の中でそれを決めつけてしまうということは非常に残念だということを現地の関係者が申しているわけであります。  それはそれなりに一つの問題があるどころだと思うのですけれども、だからといって、農協の責任者か青年部に対して刑事権限を発動して――おまえらそこをどけの、出せの、ということを言うことは農協の当事者の権限でもございませんし、いろいろな状況があると思うのですね。  今後、ことしの米価の中でまたどういう状態が起こるかわかりませんけれども、いずれにしても両者が誠意を持って話し合っていくという立場をとらないで出庫拒否だなんて決めつけを行い、しかも、その後の問題として尾を引くように江戸のかたきを長崎で討つようなこのやり方について私は主として重点を込めてお聞きしているわけでありまして、不協力その他に対する評価云々についてはまた改めて重ねてやりますけれども、江戸のかたきを長崎で討つというやり方を農民一般に疑心暗鬼として思わせるようなことはあなたの方でやらないと言っているんですから、末端に至るまでそういうことはやはりきちっと整理して一本の方針にしていただかなければ困るということを言っているんです。
  86. 三善信二

    三善政府委員 先ほど申し上げましたように、報復措置としてやったわけではありません。そういう誤解をされるようなところがあったかもしれませんが、そういう気持ちでやったわけではございません。  それから、政府の米を農協倉庫に預かってもらっているわけでございますから、その米を取りに行った場合に妨害して取れないようにするとか、あるいは拒否するとか、そういうことは本来的に米価問題と別の話ではないかという気が私はいたします。そういう意味では、私どもは、昨年のようなことは今後ないように、食糧事務所を通し、また農協の方々にも十分指導をいたし、お願いをいたしていきたいと思っております。
  87. 中川利三郎

    中川(利)委員 だから、出庫に対するいろいろな対応の仕方云々については、私もこの問題は改めてまた別にやりたいと思っているのですが、いま言っているのは、先ほど来申し上げているようなそういう報復措置については皆さんも再三言明しているからわかりますけれども、そういうことはやっていないんだと皆さんも言っているのに、下の方ではやっているということなんだな。これは単なる農業新聞の記者のニュアンスの関係だということではなくて、現に秋田県の経済連の団体の責任者が抗議に行っているわけですよ。こういう状況を踏まえてそういう答弁がいま返ってくるということは非常にそらぞらしいと私は思うのですよ。そういう疑わしいこと、そういうふうに農民に不信感を植えるようなことはやめてほしいという、このことで私は重ねて強く申し上げているわけでありまして、このことについての御発言を一言お願いしたい。  それから、もう一つついでにお聞きするわけでありますが、いま、あなたは、農協倉庫は政府の米を預かっているんだと言われたが、これは政府指定倉庫なんです。ところが、この政府指定倉庫がいまどんどん早出しをやられますから経営ができないわけです。保管料の収入が入ってこないわけでしょう。本来、端境期までに農協に何ぼか米があれば――昔は農協の収入というものはほとんど倉庫の保管料の中で賄っていたが、いまは二カ月分の人件費も払えないという状況です。しかも、政府からは、薫蒸設備はどうだの、あすこがどうだのというかっこうで、これを直せあれを直せと言ってくる。そうすると、その分の償却費も当然払っていかなければなりません。しかし、このように、四月末になればもう米が底をついてなくなっている、倉庫は空っぽだということになりますと保管料は入ってこない。政府の米を預かっているじゃないかと言いながら、預けさせて、そこに赤字を出させているということは一つの大きい問題だと思うわけであります。  大体、倉庫から米を出す場合のいろいろな条件もあると思うのですが、農協が成り立つためのそういう全般的な状況を考えてやれば政府倉庫米を預かって赤字を出したということは起こらない。少なくともこういうことは絶えず心がけるべき条件ではなかろうかと思うのでありますが、この点についてはいかがですか。
  88. 三善信二

    三善政府委員 農協の倉庫の経営状況につきましては、私どもも農協課の方で調べておりますけれども、倉庫自体の経営としては収入が減っていることは確かに事実だろうと思います。と言いますのは、過剰米がございましたときには相当長期間農協倉庫に保管しておりましたけれども、現在、御承知のように過剰米はもうございません。そういう意味で、農協の倉庫の預かる数量が少なくなってきているということは事実でございます。そういう面では、過剰米があったときといまと比べれば、それは倉庫の収入は減っているんだろうと私も思います。  ただ、保管料等につきましては、従来から、ほかの営業倉庫と比較しまして適正な保管料等を私ども支払っているわけでございますが、今後ともその問題については十分検討をしていきたいと思っております。
  89. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま私が質問した前段の、そういう疑いのあることをやらないということをかちっと言明せいということ、この点についてのお答えがなかったのですが、それをお願いしたいと同時に、保管料の問題について、農協倉庫が赤字だということをお認めになっておるが、しかし、ほかの仕事もあるんだ、保管料だけじゃないのじゃないかということ、これは確かにそのとおりです。しかし、もともと農協というのは農協倉庫の保管料が収入の大宗であったという歴史的な事実もあるし、それがだんだん減っていくものだからほかの方に手を伸ばしていくということになる。保管料収入が少なくなっていけば、農協は経営するために当然あの手この手を考え、そのためには肥料やあるいはえさの手数料を上げていき、結果的には農民がそのしわ寄せをかぶらなければならないということになっておるのですね。これは当然の話でしょう。皆さんが農協倉庫だ、これは政府の米を預かっているんだということを言いながらこういうことを実際起こしつつあるという問題は、これは非常に大事な問題だと思うのですね。したがって、過剰米があったときに云々と言っていますけれども過剰米の時代だけじゃなくて、このような異常な早期出庫になれば全く経営が成り立っていかないということがあるわけです。  ですから、いま保管料のお話しもありましたけれども、農協倉庫は同じ条件であればほかの倉庫との均衡を考えながら蔵出しすべきであるということを含めてお答えいただきたいわけでありますが、あわせて保管料を検討するということについて、いま一期十一円五銭だと思いますけれども、今期というか、五十年度産米についてどのように検討するのか、そこら辺の中身もあわせてお答えいただければありがたいと思います。
  90. 三善信二

    三善政府委員 先ほどの問題につきましては、私は、末端で誤解のないようにその点は指導はしていきたいと思います。ただ、重ねて申し上げたいのは、そういうことのないように、またそういう不協力とか拒否とかいうことのないように これは農協自身としてもひとつ考えてもらいたいと思っております。それは、もしあればまた警告をせざるを得ませんし、そういうことのないようにお願いしたいと思います。  それから、保管料の問題につきましては、先生ももう御承知のとおり、本年四月から約五%上げました数字でいきますと、国内米六十キロ一期当たり十円五十七銭から十一円五銭に上げたわけです。農協倉庫の保管料と申しますと、これはやはり営業倉庫との関連において決められるわけでございまして、農協倉庫独自でどうというわけにはまいりません。それで、営業倉庫につきましては、最近これはまた新しい角度から保管料について検討されているわけでございまして、いつごろその検討結果が出るか、運輸省の方に聞きましてもまだはっきりした返事はございませんが、目下その保管料について運輸省の方で総括的に検討いたしております。その結果が出れば、私どももそれに合わせて考えていきたいというふうに思っております。
  91. 中川利三郎

    中川(利)委員 時間の関係もありますからあと一つで省略しますが、いまの質問については、保管料もいま他省でその問題が検討されているから、それが決まり次第こちらもやるというふうに了解していいわけですね。  最後に米の検査の問題ですが、最近はどんどん出かせぎに出たりいたしまして、農家にはなかなか男手がなくなっている。そういう点で、米の包装をする袋も、いままでの六十キロの俵だとか麻袋からだんだん紙袋にかわってきているわけですね。しかも、三十キロの紙袋になりますと女の人も非常に扱いやすいという状況もありまして、秋田県でも昨年度で七百五十万袋くらいこの紙袋が出ているわけであります。これが使われているわけですね。ところが、この検査が、全部、一俵ごとに紙袋を結んで農協へ運ばれたものを開封して、一俵ごとの検査になっているわけですね。そうしますと、いまの人手不足やその他の問題からして、場所もとりますし、あるいは非常に時間もかかりますし、それを検査したらまた封を閉じるわけですからね。それよりも横に並べて刺し検査にして、その後粘着テープを張ってやるようにしたらどうだろうかということで、食糧庁もいろいろ実験もしたようでありますし、昨年は秋田県でも食糧庁や経済連やあるいは農協の関係者が集まって二回ほど実験しているわけですね。そうして、これは非常にいいから何とかこういうものを採用していただけないだろうか、刺し検査の方法に変えていただけないだろうかということで、秋田県では農協の組合長大会でも全員一致の決議を上げて要請をしておるという状況であることは御承知だと思います。こういうことについてはいろいろ問題があるかと思いますが、皆さんの方でも昭和四十二年にやはり実験しているわけですから、こういうかっこうのものを積み上げてきたということは、いずれこの点について検討の余地はあるのだということでないと――いま、あすすぐにでも直すということはオーケーということにはならないかもわかりませんが、そういうことでないとやってきた実験の意味は全くなくなると思うわけであります。  そういうことでお聞きをしたいのは、そのような方向に前向きに検討していくんだということなのか、それは全く考える必要もないのだというふうにお考えになっておるのか、これは事農協の人やおたくの検査員の問題にもかかわりますし、あるいはいまの農業の実態、労働力の実態その他にもかかわるし、あるいは農協の検査場所の問題にもかかわるし、そういういろいろな多面的な非常な農民の課題にもなっておるのでありますから、この点についてのおたくの構え方というか、考え方の基本というか、こういうものを農民の要求にこたえる方向で前向きに検討する用意があるのかどうかをお聞きしたいと思うのです。
  92. 三善信二

    三善政府委員 紙袋の検査の問題でございますが、先生先ほど言われましたように、三十キロ袋ということで、紙袋の方は年々伸びております。現在全体の四二・三%になっておりますが、ただ、一つ難点がございますのは、紙袋は紙でございますから、刺しで検査しますと、検査した跡が麻袋みたいにまたすぐもとに戻るということになかなかまいりませんので、刺しで検査した場合にはそれを後で補修しなければいけない。それをテープで張らなければいかぬ。そうすると、テープで張りますと、今度は輸送中にまたそのテープがはげたり、それからまた漏れたりして、なかなかこれはむずかしい。そういうことをいろいろと私どもも実験をしたり経験をしたりして、現在、紙袋は、おっしゃるとおりに開口検査をしているわけです。  そして、そういう紙袋の場合はその点が一番難点でございまして、何かいい方法はないか、刺しでもっと簡単にできないかという御質問だろうと思いますが、いろいろ検討はしてみたいと思いますけれども、なかなかその点でむずかしい問題はあろうかというふうに考えております。
  93. 中川利三郎

    中川(利)委員 いまのいろいろな米の問題、農協の米の出庫の問題、あるいは検査の問題農協の米の保管料の問題というようなことがいま当面生産者の中でも非常に大きい切実な要求になっておるわけでありまして、こういう点をぜひ真剣に考えていただいて、いま出かせぎなんかの問題がたくさん起こっている状況の中で農民が安心してやっていけるような状況をつくり上げていただきたい。  同時に、ことしの米価の季節もやってまいりまして、この点については後ほどいろいろ論議されるようでありますが、とりあえず申しますと、ことしの米価の基本として新聞なんかが伝えるところによりますと、一発回答だとか、あるいは同時諮問だというようなことが、これはあなたの方から出ているわけではないけれども、経済企画庁だとか、大蔵省だとか、とんでもない方向からもうはや出ている。価格問題ですからもちろんそれは各省に関係があるわけでありますが、農民のことしの米価要求に対して、まず皆さんの言うことを聞こうというのではなくて、ことしは不況なんだ、財政欠陥なんだと――憲法欠陥と財政欠陥が重なったようなかっこうで出てきて、それを盛んに吹聴して、一発回答だ、同時諮問だというような、ああいう先制攻撃みたいな言い方をしているわけですね。農民の立場からすると、これは非常に不合理きわまりない政府の言い方、出方が感じられるわけでありますが、いろいろとこの後も論議になると思うのですけれども、ことしの米価に対する食糧庁以外のいろいろな省庁の人がこういう言い方をしていることについて、食糧庁長官としてのあなたの基本的見解をお伺いして、私の質問を終わります。
  94. 三善信二

    三善政府委員 食糧庁としましては、具体的にどうしようというようなことをまだ考えておりません。これからいろいろそういうことも含めて検討をしたいと思っております。
  95. 中川利三郎

    中川(利)委員 ほかの省庁のいまの出方は……。
  96. 三善信二

    三善政府委員 ほかの省庁は、これはいつも米価の前等にはいろいろなことを言われますし、それがことし特に変わったわけでもございませんし、従来からいろいろなことを言っておられるのだと思います。
  97. 中川利三郎

    中川(利)委員 終わります。
  98. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 次は、瀬野栄次郎君。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 株式会社協同果汁工場問題並びにサッカリンの規制緩和問題について、農林省並びに厚生省当局に質問いたします。  本件については、私も過去十二回にわたり、特に協同果汁問題については昨年の十月並びに十一月にも質問してまいりましたし、その前にも四、五回にわたっていろいろと政府見解をただしてきたわけでありますが、この協同果汁は、御承知のように、果樹振興の消費拡大の一環として、農林省が調整役となって、チルドジュースの生産販売会社としてできたもので、去る四十八年十月六日に農協出資による株式会社協同果汁の創立総会が持たれ、場所は東京大手町の農協ビルで開かれたわけでありますが、資本金二億円、授権資本八億円で、そしてその仕事の内容としては、一つにはチルドジュースの製造販売、二つには輸入果汁の買い入れ、保管の事業を行うということで、農林省指導のもとに設立して、約三年近くが経過しておるわけでございます。  当初、四十八年度に京浜に一工場、四十九年には京阪地区に一工場を建設し、おのおの二千トン規模でつくる計画でスタートしたわけでありますけれども、その後京浜地区に四千トンの規模の一工場をつくる方がベターだということで、計画を大幅に変更し、茨城県水海道市に土地を手配しておるということになっております。しかし、運営方法について、出資者である農業団体間に意見の食い違い等があり、工場建設は延び延びになって、今日まで三年近くが経過しております。このため、協同果汁に割り当てられた四十八年度分の三百五十トンというものが――四十九年は果汁の割り当てがございませんでしたが、四十八年度分の三百五十トンというものが、これは外国産の果汁でありますが、昨年度輸入以来倉庫に眠ったままで、いわばたなざらしになっておる。このことについても、もう数回政府の見解指摘してきたところでございます。  さらに、この工場建設のために、四十八年度、四十九年度と二年間で計上された補助金が合計三億六千万円、一カ年間一億八千万円でありますが、この予算も結局未使用のままたな上げにされ、宙に浮いたかっこうで今日に至っております。倉庫に眠ったままの三百五十トンについては、長期間にわたって放置されれば品質が低下するし、倉敷料、金利もかかってくる、しかも国民に与える場合も古い品物を与えるということになりますので、栄養価も少ないものが売られてくるということで、まことにこれは問題であり、国民的に考えても損害であるということは国会で私がしばしば指摘したところでございます。また、国民の側から言ってもこれは損失であることは言うまでもありません。こういったことを追及してきたにもかかわらず、前の三百五十トンの使用のめどさえついていないのに、いつできるかわからない幻の工場に再び割り当てをしようとする農林省の態度は理解に苦しむというのが私の質問の要旨でございます。  そこで、逐次質問してまいりますが、私は最初に断っておきますけれども、過剰ぎみであるミカンの今後の消費拡大、また生産者に対するいろいろな対策等、安心して果樹経営ができるためにも十分配慮しなければならぬということはもちろんよくわかります。が、この工場はこういった状態で三年近くも眠ったままで、かけ声はよかったのだが、現に実際にそういったことがなかなか見通しも立たないという状況で、大変な国費の損失でもあるし、いたずらにメンツを重んじて今日まで経過しておるということが明らかである、と、かように私は申し上げたいのであります。  そこで、そうばかり言ってもおられませんので、具体的な問題についていろいろとお尋ねしてまいりますけれども、このように建設の行きどまっておるこの問題につきまして、今日まで私がたびたび質問した結果、農林省はどういうように踏まえて今日まで対策を講じてこられたか、最初にまずその点の概要を簡潔にお答えいただきたいと思います。
  100. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいま先生の方から経過につきましてるるお話しがあったわけでございますが、この協同果汁は、一つはチルドジュースの製造によるミカン需要の拡大ということと、もう一つは輸入果汁の受けざらという、このいわゆる二つの目的で発足いたしたわけでございますが、御指摘のように、当初想定いたしましたときよりも果汁の需給動向が大分変わってまいったわけでございまして、特に、チルドの需要が伸び悩むという事態がございました。したがいまして、そういった動向等からいたしまして、経営採算等の基本的な問題について株主間に意見の一致がなかなか見られなかったわけでございます。  そこで、今日まで延引いたしましたことはまことに残念でございましたが、農林省といたしましても、当初の本来の目的に照らしまして、いろいろ株主間の意見調整に努めたわけでございます。その結果、去る五月十五日に開催されました同社の取締役会におきまして、事業の基本方針につきまして意見の一致を見まして、早急に事業を開始するということでございます。  したがいまして、農林省といたしましても、今後協同果汁が健全に発展するようにさらに指導してまいりたいというふうに考えております。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省は、輸入果汁の問題については、ことしたしか三月の二十二日にアナウンスをしたやに私は記憶しております。その中で三百五十トンを協同果汁に対して割り当てたわけでありますが、かねがね農林省は、私の質問に対して、日米間で正式に文書を交換したわけではないが、日米の了解事項でもあり、前年より果汁の輸入を減らすことができないので割り当てを決めた、と、こういったように説明をしておられますが、前年の三百五十トンがたなざらしになっておる上に、さらにまた今回一連の輸入の中から三百五十トンを幻の工場に、まだできもしない工場に対して割り当てをするということの妥当性について、また、おくめんもなくこういった割り当てをしたということについて私は良識を疑うわけだが、これに対してはどういう見解を持っておられますか。
  102. 松元威雄

    ○松元政府委員 先ほど申しましたが、協同果汁の役割りの一つとして、輸入果汁の受けざらという機能があるわけでございます。したがいまして、まず四十八年度に三百五十トンを割り当てたわけでございます。ただし、残念ながら、先ほど申し上げましたように、需給動向から事業の開始が延び延びになっていたということは事実でございます。事実でございますが、協同果汁の当初の設立の本旨に照らしまして、やはり今後事業を続けていくという方向でございますから、また、それをしなければならぬわけでございましたから、四十八年度は残念ながらまだ手がついておりませんでしたが、四十九年度も引き続き協同果汁が本来の目的どおり機能するということを農林省は推進いたしておるわけでございますから、同様に割り当てをいたしたわけでございます。  なお、若干補足して申し上げますと、先ほど事業運営につきまして基本的の一致が見られたというふうに申し上げたわけでございますが、その場合、協同果汁が農協系のチルドジュースの製造につきまして一元化を図るという基本的方向は一致を見たわけでございます。ただ、その場合に、製造をみずからやるか、委託してやるかという問題はございます。当初は工場を新設するということでございまして、そのための補助金も組んだわけでございますが、その後各農協系でチルドジュースの工場ができたものが現にございます。そういたしますと、需要規模が当初想定よりは当面はなかなか伸びにくい事情にございます。そういたしますと、既存工場に加えまして新設工場をつくることは過剰にもなりかねない。将来チルドジュースがさらに伸びましてもっともっと設備が必要であるという事態になりますれば、これは当然工場をつくるわけでございますが、ここ一、二年の状況から、なかなかそういう状況にございませんから、製造一元化はいたしますが、その具体的やり方は、当面は既存の、これは全農系と日園連系の各県連の工場がございますから、そこに委託いたしまして、一元化という中に、具体的には委託によって進めてまいりたいというふうに考えておりまして、その場合、この三百五十トンを有効に使って需要を伸ばすというようにしてまいりたいというふうに思っております。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省は、通産省に対する覚書で、先年の三百五十トンの輸入をしたにもかかわらずたなざらしになっているジュースの割り当てについて次のように覚書を送っているわけであります。その覚書によると、「一、昭和五十年中に協同果汁(株)が製造販売の見通しが立たない場合、今回農林省より受領した三百五十トンの発注限度書に基く果汁輸入を中止させると共に、同発注限度内示書を他の需要者に交付することとする。この見通しの期限は、昭和五十年五月末までとする。二、協同果汁(株)が所有している今回割当の輸入果汁の転売を行なわざるを得ない場合、その果汁の輸入価格で転売を行なうよう指導すること。」という、この二つが覚書の内容として出されておるが、私はこれを見てまことに憤りを感じております。  御承知のように、三百五十トンも眠っておるのにまた三百五十トンの割り当てをして、しかも、これを輸入価格で転売を行うことを指導するというようなことを言っておられますが、輸入したときの倉敷料、金利から、また、その間のいろいろな状況がずいぶん変わってきている。こういった問題等を見たときに、こういったことが陰でなされておるのはどうも理解に苦しむわけだが、このことについて当局の釈明を求めたい。
  104. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいま先生の方から、何か、両省間の覚書云々ということでお読み上げいただいたわけでございますが、これは担当課長同士の了解事項のものでございます。協同果汁の製造販売の見通しが立たない場合には協同果汁に割り当てたものは輸入を中止する、そしてほかの需要者に回すということは確かに課長同士で了解いたしましたけれども、ただ、私どもとしますと、協同果汁を盛り立てるということが本来の方向でございますから、こういう他の者に割り当てるということは望ましくないことでございます。  したがいまして、株主間にかなり意見の相違がございましたが、意見調整に農林省もずいぶん努力をいたしまして、先ほど申し上げたように協同果汁に製造を一元化するということが先般の五月十五日の取締役会でやっと一致を見たわけでございまして、こういう事態にならないように、協同果汁がチルドジュースの需要拡大と農協系の輸入果汁の受けざらという機能を果たし得るように調整をして、その結果がいま実を結びまして、ただ、当面の需給事情から工場の新設はしばらく見送りますが、協同果汁に製造を一元化して、既存の農協系のチルドジュース工場を活用してやっていくというふうにいたしたわけでございます。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 過去に数回も私はこれを指摘していろいろ申し上げておりますが、聞いている人たちも理解に苦しむといかぬので申し上げるのですが、ミカンの過剰対策、消費拡大を図るということはわれわれも賛成であるし、また、これができれば結構なことであります。ところが、なかなかこれができるような状態にない。いたずらに農林省の予算を二カ年分も、三億六千万円も寝かせたままで、土地もはっきりしていないし、かけ声ばかりで中身は伴わない。これは足立農林大臣時代からのものであり、当時の名前は前回も言ってあるので一々申し上げませんが、前の局長時代からの問題であり、あなたも大変苦しい立場であろうと思うし、また、公開の席ではあなたもなかなか言えないところもあるかもしれぬが、いずれにしても、これをはっきりしなければぐずぐずといつまでもこういう問題は尾を引いていくし、今後ますます問題が重なっていくと思って、むしろ皆さん方にやらせるためにぼくはこういう質問をして督励をしているというような気持ちでおるわけです。これは前回も申し上げたとおりです。  そこで、いろいろ言えば、公開の席では局長もそういった答弁しか返ってこないと思うけれども、これは本当に残念でならない。こういったことでいつまでもぐずぐずしてほっておかれたら予算のむだにもなる。また、ミカンもいよいよことしは表年で相当な生産が予想されるときに、何とか対策を立ててもらいたいと思っているやさきにこういったことが解決しないままにぐずぐずいくということになれば、農林省局長以下当局もこのことで大変困るだろうし、また、議員に対する不信もいろいろ起きてくるだろうし、いろいろなことで職員も困っているのしやないかと思うから、むしろ、こういった国会指摘によって勇断をもって一時中止をするとか、あるいは延期をするとか、将来考えるとか、いろいろな手を打つべきじゃないかと思ってぼくは質問をしているわけです。  あえて聞いておきますけれども、いま局長がそんなにおっしゃるならば、もし、先ほど指摘した覚書に二つあるようなことであるとすれば、農林省は協同果汁が生産、販売活動がスタートできるという確固たる根拠のもとで割り当てたというよりも、むしろ、会社の事業活動の実行は現況からは無理と見て、各出資団体に果汁を戻すという既成事実をつくろうという意図のもとに行ったものじゃないかというように私は指摘したいのであります。これは三百五十トン枠設定の精神に反するもので、むしろ協同果汁枠は消滅する方が道理じゃないか、それが当然ではないかと私は申し上げたい。その方が余剰を抱えるミカン果汁の生産者にとってむしろ利益になるのではないか。今後幼齢木が成木になって、ミカンは五百万トン台になると言われて、生産者もますます不安がっているというときに、そういう余分な果汁を入れるのではなくて、国内のポンカンとかネーブルとかブレンド用のミカンもあるわけですから、過剰対策として、こういうものを使ってなるべく国内の生産の消費拡大を図るということが生産者に対して利益になると私は思うわけですが、この点はどうですか、局長
  106. 松元威雄

    ○松元政府委員 ミカンジュースの需要拡大を図るためにブレンドをする、そして品質が高まるということ、これは事実でございます。したがって、各生産者団体からもそういう要望があるわけでございます。したがいまして、四十八年でございましたか、五百トン輸入果汁を増加いたしまして、それをブレンドして品質をよくして国内のミカン需要の消費がより伸びるようにするということが行われた経緯があるわけでございます。そういたしますと、通常の場合でございますと、これを現在ございますジュースの各生産者に割り当てるのが普通でございますが、それが特に農協系につききましては、いわば大同団結をして受けざらになるということで協同果汁ができたわけでございます。したがいまして、もし協同果汁でなければそういう個々のジュース製造業者の方に行くということになるわけでございまして、それを農協系は一本化して協同果汁で受けるということにいたしたわけでございます。  そこで、第二に、協同果汁につきまして、これが本来の趣旨どおり事業開始ができるようにということでいろいろやったわけでございますが、需給事情が当初の想定よりも厳しくなったわけでございますから今日まで延引したということ、これは確かに私も残念でございますが、しかし、本来の目的を達成しなければいかぬ。そこで、先ほど申し上げたとおり種々調整に努めまして協同果汁に製造一元化をする。ただ、先生指摘のとおり現在まだ需要が伸び悩んでおりますし、設備過剰になってはいけませんから、工場の新設はしばらく見送る。しかし、製造は一元化をする。そして協同果汁の株主であります全農及び各県連の中にチルド工場を持っているものもございますから、その施設を活用して、委託製造をして、ブランドを統一して農協系のチルドジュースとして需要を伸ばしていくという本来の目的に近づけたわけでございます。  それが五月十五日の取締役会で決まったわけでございますから、それに従いまして、これを具体化すべく目下さらに進めているという事情にあるわけでございまして、先生の御指摘の問題をいろいろ踏まえながら最も現実的な解決をしたというふうに私は思っているわけでございます。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 果汁生産を委託してということでいろいろいま述べられましたけれども、これが果たしてうまくいくかどうか問題でありまして、苦肉の策としていろいろ考えられるわけでしょうが、五月十五日の役員会でそういう方向が一応定まったやに聞いておりますので、一応それはそれとして、それでは、過去二カ年間年一億八千万円、合計三億六千万円の補助金の工場建設は当分見合わせるということでありますが、補助金は大蔵省に返すということになるのか、また、ことしは予算はどういうふうに協同果汁については計上しておられるのか、その点も私は重々わかっておるけれども会議録に残しておきたいので、あわせてはっきりとお答えいただきたい。
  108. 松元威雄

    ○松元政府委員 四十八年度、四十九年度、過去の分につきましては、これは工場を新設いたしませんから、残念ではございますが不用に立てざるを得ないわけでございます。  それから、なお、五十年度につきましてはこういう事態でございますから、実はチルドの工場新設の予算要求はいたさなかったわけでございまして、様子を見てその後さらに考えたいということで、一年間いわば休みにいたしておるわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう数年前から私は何回も指摘してきましたが、局長、何だかんだと言ったけれども、結局私が言ったとおりになったじゃないですか。何だかんだとあなたが答弁しておるけれども、結局私が指摘したとおりになったわけですよ。これはもう最初からこの見通しは私は十分立てておりました。政治的にいろいろ圧力がかかったこともよくわかりますが、前局長、前々局長からの問題もあって、あなた一人に責任を負わすことは大変でありますけれども、あなたも大変苦しい立場だろうと思うが、農林省予算は大いにまだ使わなければならぬところにこんな多額の予算を数年間も眠らせておき、しかもことしはとうとう予算をつけなかった、そしてまた予算は返すということで、これは全く残念でなりません。しかも、その結果が、工場はつくらずにまた委託をしてやっていくわけだが、果たしてこれの見通しもどうなるかわからないのです。  それでは、やかましいことばかり言っておってもしょうがないから、一応お聞きしますが、業務開始はいつごろからやるつもりか、その点をお伺いしたいわけです。あれほど行き詰まってきてこじれた問題でありますし、五月十五日の役員会でも簡単に運営方針等について意見が一致したわけではないと私は思うのです。その中身についてもいろいろお聞きしたいわけですが、時間の制約もあるのでそれは省くとして、本当に実現が可能なのか、また、農林省としてはうまくやっていくという自信があるのか、これまたいずれ結果がわかるわけですが、はっきりと局長の決意のほどを承っておきたい。
  110. 松元威雄

    ○松元政府委員 いろいろと問題点の御指摘ですが、それは私も十分承知いたしております。ただ、ミカンジュースをめぐる情勢が当初つくったときと大きく変わっておりますから、その中での現実的な解決策といたしましては、少なくとも農協系のチルドジュースは協同果汁に製造一元化をするという基本理念は貫徹された。ただ、その具体的なやり方は、工場新設は当面はむだになるから見送るということでございますから、まあ基本線は貫いたと思っておるわけでございます。  そういたしますと、あとの問題は、この協同果汁の一元化のもとに具体的には農協果汁というブランドをつくって、農協系のチルドはすべてそれで製造販売するということでございますから、現在ございまする全農系の千葉の工場と、それから愛媛青果農協連の厚木の工場を中心といたしまして委託製造して販売するわけでございますから、今後は具体的にはその場合に委託の条件をどうするかということと、さらにどのルートを使って販売するかということをその構成メンバーと詰めていくという仕事があるわけでございます。これにつきましてはとりあえず基本方針は決まりましたが、それに従って役員改選も行うわけでございまして、六月中に新役員の改選を正式に行う。その間は準備期間でございますから、いまのような製造一元化のもとに委託製造していくということにつきましてさらに具体的に作業を進めるということをいたしておるわけでございまして、この基本線どおり進めるようにさらに役所も十分指導いたしたいと存じます。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長は基本線、基本線と苦し紛れにおっしゃいますけれども、これは工場建設を見送ったということ自体が協同果汁の設立意義がないというふうに私は判断せざるを得ないのです。目的は基本線で十分達していくとおっしゃるけれども、その辺は見解の相違としても、協同果汁が果樹振興の一環として農林省のいろいろな構想の中から設立された関係もあって、足立農相時代のいきさつもいろいろあることも私は承知しておりますが、メンツにかけてもこれを何とかというふうな、そういう農林省のメンツだけが先に立って実際に内容が伴わないというか、お先は全く不安である、そして見切り発車をした、と、こういうふうな感じがしてならないのです。その点私は将来に危惧を持つものであります。  時間の制約もあるのでこれらについてはまた再度いろいろ詳しくお尋ねすることとして、この関係でもう一点お伺いしておくけれども、五月十五日の役員会で将来の運営方針等がいろいろと決まっておるようですが、その中の業務の将来展望等を見ますと、バーター取引の窓口機関としての機能を協同果汁に持たせるというふうに述べられておるけれども、これはどうしてかということをお聞きしたいわけです。この窓口機関としての機能を協同果汁が持つということは従来のいきさつからも当然視されようというふうに述べられておりますが、これは何が当然であろうか。また、「従来のいきさつから」とあるが、そのいきさつとは何か、設立して足かけ三年近くもたっておるのに何もやっておらぬじゃないかということからいろいろと疑問を持つわけだが、要するに、このバーター取引の窓口機関というようなことを言っておるけれども農林省指導のもとにいろいろと検討しておられるわけだから、この点についても見解を述べてもらいたいと思います。  また、国産果汁すら余剰分を抱えているときに、バーター取引などはとんでもない問題であります。こういったことを私も、おととしだったですか、例のサンキスト社の関係で何回か追及したことがありますけれども、こういったことを堂々と運営方針の素案に入れておるということは将来問題であると思うわけです。生産農家に対してこれを言ったならば憤りを感ずると私は思う。また、バーター取引先は具体的にどういったところを考えておるのか。そういうようなこともいろいろ検討されておると思うが、それらについてお答えいただきたい。このことについては、特に四十九年十月十四日に当委員会で当時の倉石農林大臣に私がいろいろと質問した際にも、慎重な検討をするということで答えられてもおるわけですが、これらに対する考えが何ら改まってないということを見まして私は憤りを感じております。その点についてお答えをいただきたい。
  112. 松元威雄

    ○松元政府委員 たしか、前にも先生から御質問があって私もお答え申し上げましたが、このバーターにつきましては、これがやはり需要をふやす一つの方策であろうと私は考えております。と申しますことは、バーターということは等量交換でございますから、総量はふえるわけではございません。そして、まぜるから品質はよくなるというわけでございますから、これはプラスになるわけであります。私は方向はそう思っております。したがいまして、現にジュースの生産者団体の中でも要望がかなりございます。ただ、問題は、その場合、各ジュースの生産者がばらばらにバーターを行ったのでは、バーターしてブレンドできるものは売れるけれども、ほかのストレートは売れない。こうなってはいけませんから、やるならば調整をしなければならぬということでございます。ばらばらにやってはいかぬ。バーターということは等量交換で品質がよくなるから、そのこと自体は結構なことである。ただし、ばらばらやっては弊害が出る。やる以上は全国ベースで調整が要る。そういたしますと、その調整の窓口といたしまして、農協系にせっかくこの協同果汁という大同団結した会社があるわけでございますから、これを活用するのが一番実際的であるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、ただ、先生指摘のとおり、これまでは協同果汁のもとにみんなが一致しようということの基本方針がなかなかまとまらなかったものでございますからまだここまでいっておりませんが、やっと当面の製造につきましての意見一致を見たわけでございますから、それを進めて、さらにその後引き続きましてこの問題は検討中でございまして、まだもちろん検討の序論でございます。  私が一番申し上げたかったことは、要するに、バーターをするからには全国で調整しなければならぬということを申し上げたかったわけでございまして、その窓口として協同果汁が適当であろうということを申し上げた次第でございます。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日は農林大臣が所用のために欠席しておりますので、これは重要な問題でもありますから、農林大臣の出席を得て肝心な重要な問題はさらにまた質問いたしたいと思います。三月二十二日に三百五十トンの新しい割り当てをしたというアナウンスがあった直後でもありますし、きょうまでこの問題について数カ月質問の機会がなく、私は何回も質問の通告をしましたけれども、法案の審議のために今日まで質問ができなかったものですからきょうに至りましたけれども、当局も私の質問の内容を十分に検討されて、私の意のあるところに今後対処されるようにとりあえずきょうは局長要望して、また改めて農林大臣に質問することを留保します。  なお、きょう通告しましたグレープフルーツ違法添加剤の検出問題は次回に譲ることにします。  また、牛肉問題に対しても次回に譲るということにしまして、最後に数点、時間の範囲でサッカリンの規制の大幅緩和に対する問題について質問をいたしたいと思います。  食品添加物に対する基本的見解について伺いますが、厚生省は次の点についていかなる見解をお持ちであるか、お答えをいただきたいのです。  AF2など食品添加物の毒性が大きな問題になっているが、すべての食品添加物においてその安全性が確認または実証されていなければならない。また、食品は本来自然のままであるべきだという意見もあり、厚生省が現在認めてる三百三十三種類の食品添加物は余りに多過ぎる。その中で、安全性が証明されない、または有害性が証明されている添加物が幾つあるのか。あるいは、食品添加物には天然の添加物を用いるべきであり、化学合成物質は極力用いるべきでないという意見もあるわけでありますが、こういう意見について厚生省としてはどう考えるか。食品添加物に対する基本的見解を簡潔にお述べいただきたい。
  114. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品添加物の安全性につきましては私ども非常に重大な関心を持っておりますし、また、これにつきましては、国際機関でございますWHO、世界保健機関が中心になって、安全性の評価をどうするかということについて一つの原則を定めております。私どもはその原則に沿いまして、日本の実情等を加味して、化学的合成品である食品添加物を認める場合には十分な安全性を見た上でその指定をやってきておるわけでございます。  しかしながら、この化学物質の安全性についての評価の技術というものは非常に進歩してまいっておりますので、私どもとしては、国民に対して健康上非常に重要なものでございますので、常にその時代の進歩に合った新しい技術を駆使しまして、繰り返し繰り返しその安全性の評価を行っておるわけでございます。したがって、今日までに何らかの疑問が持たれた等のものについては指定削除等も行っておりまして、四十品目ほど削除しておるわけでございます。  また、一方におきまして、ただいま先生の御指摘のような自然食のようなものにすべきではないかという御意見に対してでございますが、私どもも全く同意見でございまして、安全性というものは一応証明されておりましても、その必要性の面について、食品の加工技術の進展とか、あるいは冷凍流通の普及とか、こういうような実情等もやはり十分反映させなければいけないということで、指定した当時は必要であったものでも現状においてすでに必要性のなくなっているものもあるということも聞いておりますので、実は、昭和四十九年度から使用の実態調査というものを保存料から始めておりまして、実際に各都道府県のその生産工場に行きまして、その使用の実態を十分調査して、今後、食品添加物の規制あるいは場合によっては必要のないものは削除するというような方向に新しい行政として展開を始めたわけでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 食品添加物の安全性の問題が一番大きな問題でありますが、再評価の見直し作業について、既存の食品添加物について、厚生省がその安全性の再評価を進めておられるように聞いておりますが、どのような食品添加物について再評価し、どういう結果が出たのか、また、その結果に基づいてどのような行政措置をとったのか、その点を明らかにしてもらいたい。  なお、この再評価は、多過ぎる食品添加物を削減するという方針でやっておられるのか、その点も簡潔にお答えをいただきたい。
  116. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品というものは国際的にも各国に流通しますので、それに加えます化学的合成品である食品添加物の安全性について同じような考え方で用いなければならないということで、WHOで、昭和三十三年でございますか、原則を勧告いたしております。この線に沿って、わが国におきまして、指定する際の安全性の評価の方法等について整理をする作業に入りまして、昭和三十七年から、保存料であるとか漂白剤であるとか、特に生体に対して作用を及ぼしそうなものについて特に厳重なチェックを開始してきたわけでございまして、現在までに、着色料あるいは保存料等について、先ほど申し上げましたように、AF2を含めまして四十数品目の削除をしてきております。  なお、この作業は、さらにそれ以外の食品添加物についても、かつて一度評価したものについても、それを含めましてさらに新しい技術を駆使して再評価を継続していっておるわけでございます。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回のこの規制緩和という問題は余りにも早手回しであったと私は思うわけです。これにはいろいろ理由があるわけですけれども、今回のサッカリンの規制緩和については、厚生省はいかなる理由でやられたのか、その点を明確にお答えいただきたい。
  118. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  サッカリンにつきまして、実は、アメリカの二カ所の実験データで膀胱にがんが出るというような発表がございまして、それまでアメリカでは自由にしておったのを使用基準を設定した。こういうような動きもあったわけでございまして、わが国におきましても早速食品衛生調査会の毒性部会におきまして検討したわけでございますが、どうもがんについてははっきりしない。しかし、当時のデータでは完全にがん原性を否定できない、特に膀胱がんのがん原性を否定できないというようなことから、WHOでは国際的な基準として一日の摂取許容量というものが五ミリグラム・パー・キログラム体重というような線があったわけでございますが、ちょうど日本においては国立衛生試験所で追試をやっておる実験の途中でございましたので、その結果が出るまではWHOの五倍厳しい一ミリグラム・パー・キログラム体重という、世界一非常に厳しい基準で暫定的に定めておったわけでございます。ところが、御存じのように、ことしの四月九日の日本薬理学会におきまして、国立衛生試験所で膀胱腫瘍に対しての疑いが晴れたというような発表がなされたわけでございます。これは私ども、前々から、先生の御指摘のように、食品添加物の安全性の審議というものは、あくまでも学会あるいは学会誌等に公表されたデータできちんとその審議をするように御指摘をいただいてきておったわけでございます。そこで、この公表された、わが国における発表されたデータに基づきまして、さらにWHOでの昨年の、この安全性を評価するグループのアメリカのがんが出たというデータを含めて、安全性、特に発がん性等について審議をして――やはり従前とおりの線でよろしいという勧告を行っておりますが、あるいはFDAで一度やめるという動きをしたというようなうわさもあったわけですが、その後現在の規制をこれ以上強めることはしないというようなときにFDAの方から発表されました見解、そういったようないろいろな諸情勢と資料をもとにしまして、特にがん原性を中心に毒性部会で検討していただきまして、その結果、従来から疑いを持たれていた膀胱腫瘍の発生の疑いはぬぐわれたという結論をいただき、同時に、世界各国で、オランダあるいはカナダとかでアメリカのがんの出たという実験を追試しておりますが、そういったものがちゃんとした雑誌に報告されておりますので、そういった資料等もまぜまして、さて、ではどの線まで緩和をすべきであるかという一日摂取許容量を中心に御審議をいただいて、WHOの決めておる線に戻すのが妥当ではなかろうかというような結論をいただきましたので、その線に沿って、ただいま先生が申されましたような緩和と申しましょうか、サッカリンについての本当の必要な線に限って使用量を改めて認める使用基準の改正の作業に入ったわけでございます。  以上であります。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 皆さん方に御協力いただいて恐縮ですが、時間も参りましたので最後にはしょって一問だけ質問して、厚生省見解をただしておきたい。  詳しいことはいずれまた厚生大臣等に直接いろいろとお伺いしたいと思いますけれども、まず、最初に、五月の十四日に田中厚生大臣に私は四項目のことについて申し入れをいたしましたが、これに対してはどう対処したかということをお答えいただきたいのと同時に、いま課長からもいろいろと答弁がございましたが、サッカリンの安全性という問題でいろいろとアメリカの例もとられましたけれども、われわれはこれには異論があります。国立衛生試験所で行われた単一の実験のみで安全と結論づけてよいのか。また、サッカリンに発がん性がないにしても、サッカリンに含まれる不純物、オルトトルエン・スルホンアミドと言いますが、これに発がん性があるという説もあり、はっきりとサッカリンに発がん性がないと断定されたわけではありません。市販されているサッカリンにはその不純物が完全に除去されておるかどうか、これも疑問であります。また、その点が食品衛生調査会でも疑問点として出されたということを伺っております。さらに、サッカリンや不純物の催奇形性、遺伝に対する影響、また、変異原性はどう評価されておるかということ、これらも問題であります。  さらには、以上のような点が明らかにされない限り、規制の緩和を行うのは早計であり、危険ではないかということを私は先日から申し入れの際も指摘しております。サッカリンを世界保健機構のWHO並みに規制緩和をしようというならば、いまいろいろ課長からも申されましたが、なぜサッカリンだけをWHOに見習っていち早く行おうとするのか。わが国の食品添加物の中には、WHO、FAO、国連食糧農業機構の評価が定まっておりません。すなわち、安全性が確認されない添加物がたくさんあることは御承知のとおりです。たとえば色素で言えば赤色一〇二号から一〇六号まで、または紫一号。特に、赤色一〇四号は幾人かの専門家によってその発がん性が証明されております。また、保存料について言えば、サリチル酸、デハイドロ酢酸なども安全性が確認されていないし、酸化防止剤については、ノルジヒドログアヤレチック酸などがWHO、FAOで安全性が確認されていないというふうに学者も発表しておるではありませんか。また、最近、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウムを相乗すると発がん性を発生させるという実験が、五十年三月二十九日の新聞等にも出ておりますように、発表されております。これらWHO、FAOで安全性を確認していないもの、または専門家より疑惑を提起されたもの、これらは直ちに実験するなり、または安全性が証明されるまで使用を一時禁止させるべきではないか、と、かように私は訴えたいわけであります。  前から言われていることなのに、厚生省は国民の健康を守るためにこのような措置をせずに、どうして今回は規制緩和についてのみ早手回しな措置をとったのか、私は疑問でなりません。私は、必要最小限以外は極力禁止し、疑わしきは使用せずという原則を貫くことをかねがね主張してまいっておりますが、業者らの意向のみを受け入れ、消費者の声を無視するような今回のサッカリンの規制緩和は大いに反省、再検討すべきであると、かように考えておるわけです。  先ほど言いましたように、時間も参りましたので、申し入れに対する大臣からのお考えの点と、それから今回の規制緩和を大いに再検討せよという点と、この二点にしぼって最後にお答えをいただきたい。
  120. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  先生から厚生大臣に、サッカリンの使用緩和については科学的なデータに基づいて慎重にすべきである、場合によってははっきりするまで緩和すべきではないのではないか、と、こういうような申し入れのあったことも私は聞いております。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、簡単にしぼって申し上げますと、まず、最初の国立衛生試験所の単独の実験だけで緩和をするのは問題があるではないかという点でございますが、これにつきましては、衛生試験所の実験はアメリカの実験と全く同じような投与量、動物種というもので追試をしておりまして、アメリカでの、その他には何も影響がなかったが膀胱に腫瘍が見られたという、この疑いを晴らすための追試の実験でございましたが、それについて見る限りでは膀胱腫瘍の疑いがぬぐわれたということでございまして、その他の不純物等の問題ももちろんありますが、これにつきましては、実は、日本のサッカリンは非常に純度が高いということで、カナダでもアメリカのがんの出た実験を追試しておりますが、これは日本のサッカリンを使っております。  純度の点も、先生からの、以前からの、もっと純度を一般に添加物は高めるべきだという御指摘に沿いまして、サッカリンにつきましても、先ほどの主たる不純物であるオルトトルエン・スルホンアミドというものにつきましては将来WHOで統一した規格をつくると思いますが、その検討の材料となっている――一〇〇ppmという非常に過酷な、非常に純度の高い基準になるわけですが、そこまで私どもは早速に基準改正をして、純度の非常に高いものにしております。したがって、この純度のもので実験をする限り、カナダと日本の衛生試験所の行った実験ではがん原性はどうしても見られない、つまり発がんの疑いはない、こういうことになっております。もちろん、この不純物等については、WHO、アメリカあるいはわが国でも、今後の問題として慎重にこの不純物に焦点を合わせて研究をしていくことは、ただいま検討中でございます。  それから、変異原性についてでございますが、実は、日本でもAF2等については変異原性が問題になったわけでございまして、食品衛生調査会のそういう専門家の遺伝学者等の参加もいただいて、その安全性を評価する基準をつくったわけでございますが、残念なことにこういった新しい基準ができたばかりでございますので、添加物につきまして、遺伝変異原性の問題、突然変異の問題というものの研究にこれから入っていくわけでございますが、幸いこのサッカリンにつきましては、カナダあるいはオランダ、ドイツ等で変異原性の問題も研究しております。それらのデータを見る限りにおきましては、突然変異作用の疑いがないというようなデータもございました。  それから、先ほど先生の申されました色素、赤色一〇四号とか、一〇六号とか、あるいはサリチル酸とかデヒドロ酢酸とかいうようなもので幾つかまだ完全に評価が終わっていない、そういうものについて一時中止してでも慎重にすべきではないかというようなことでございますが、先ほど来から申し上げておりますように、私どもとしては繰り返しこういったものについて安全性の試験をやってきております。そして、特に色素について申し上げますと、わが国で使っておる色素につきまして、従来の病理学的な試験、慢性毒性試験、発がん試験、繁殖試験というようなものを見る限りでは全く問題はないというようなものばかりでございます。  しかし、特に遺伝の問題を中心にしまして、現在一〇四号につきましては国立遺伝学研究所にお願いをしてやってもらっておりますが、こういったものについても、その方法論を含めまして慎重に検討し、そういった添加物の現在安全とされておるものをさらにもっと安全性の高いものというふうに、安全性を評価して国民の不安をぬぐっていくように今後も努力をしてまいりたいと思っております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で質問を終わります。
  122. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時七分散会