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1975-03-18 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十八日(火曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 渡辺美智雄君    理事 井上  泉君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       足立 篤郎君    愛野興一郎君       今井  勇君    片岡 清一君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       佐々木秀世君    島田 安夫君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       本名  武君    綿貫 民輔君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    諫山  博君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         農林大臣官房         長      大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任  綿貫 民輔君      金子 岩三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出、第七十二回国会閣法第  八四号)      ————◇—————
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川武一君。
  3. 津川武一

    津川委員 いま、いろいろな事情があって、農業だけではなかなか食べていけないという農家がたくさん出てきた。農業を専業的にやりたいがなかなかやれない、いまよりもう少し生産を拡大したい、いまよりもう少し耕地面積を拡大したいという、こういう農民の数がかなりふえてまいりました。他方、また、農業収入だけでは生活していけないので、農業を縮小して農業外収入をふやしたいというようなことから、耕地を少し譲ってもいいみたいな農民が出てきております。  これに対して政府・自民党は適当な手を打たない。そこで、農民の中からいろいろな工夫が出てまいりました。一つには生産集団二つ目には農業経営受委託経営、もう一つには請負耕作、こういうものが出てまいりましたが、これはいまの農民が自分で工夫して、自主的に考えて創造した非常にいい案だと私は思うのですが、これに対して政府の考えをまず聞かせていただきます。
  4. 大山一生

    大山政府委員 御指摘のように、農作業受委託あるいは請負耕作というものが現実に存在するわけでございます。受委託は、四十八年の一月現在の農業調査で見ますと、二百万以上の農家が何らかの形で農作業を委託している。また、約三万八千戸が請負耕作に出されている。こういうふうな把握がなされているわけでございます。農協経営受託といいますか、これも面積としては百ヘクタール弱というかっこうでございますけれども、いずれにいたしましても、そういうかっこう受委託なり請負耕作があるという現実はわれわれも認識しているわけでございます。  なぜこういう問題が発生しているんだということについては、農地法の先般の改正等流動化という措置をいろいろと講じたわけでございますけれども、所有権の移転なり、あるいは十年以上の長期賃貸借というかっこうにおける流動化という問題が資産保有的傾向の中においてはなかなかうまく進まないというようなところから、一つ農民の知恵といいますか、それが出てきたものだということば私たちも事実だと思っておりますが、ただ、そういうふうな請負耕作というものが果たして本当にいいかっこうであろうかということになってまいりますと、全面的な請負耕作というような形態は、考えてみますと、これは利用関係が非常に不明確であり、また不安定である。また、そういうふうな耕作者に不安があるようなかっこうというものが好ましいものであるかどうかという点はやはり考えてみなければならぬだろうというふうに考えるわけでございます。  今度われわれが農用地利用増進事業というものを考えましたゆえんのものは、いわばそういうかっこうで現に請負耕作等がなされているようなところ、逆に言うならば、所有権を留保する中で貸したい人、そしてまた借りたい人があるという一つのところ、そういうところにおいては、むしろ農民集団的合意ということと、そして市町村関与という枠組みの中で利用増進事業をやる中で、どちらかというと、そういう請負耕作というものも集団的な合意協議の中でもってオーソライズしていくということも含め、単なる追認ということではありませんが、そういうかっこう請負等が出ているようなところは利用増進事業を行うのにふさわしいところであるというふうに考えてわれわれは今度の法律を出した次第でございます。
  5. 津川武一

    津川委員 そうすると、こういう状態に対して政府が打った手の一つが今度の改正だと考えてよろしゅうございますか。
  6. 大山一生

    大山政府委員 そういう事態も踏まえて今度の法律改正を出したわけでございます。
  7. 津川武一

    津川委員 そうすると、この間この改正案審議参考人として出席してくれた日銀政策委員東畑四郎さんが、こういう二つグループ農民の間で、借りたい人と貸したい人が相対相互信頼があるということが基本であって、あえて法をいじらなくても、耕作権をこのままにしておいてもそういう形でやれるのじゃないか、これが本当の立場ではないかと言っているわけなんですが、こういう考え方について、政府もそうだと思うのか、あるいは、そうだと思いつつも何らかの形で法的な規制をかけなければならないので改正することになったのか、この二つの兼ね合いについて答弁をしていただきたいと思います。
  8. 大山一生

    大山政府委員 貸したい人と借りたい人の集団的合意ということは基本信頼関係がなければできないということは、まことにそのとおりだと思います。ただ、貸したい人が安心して貸せるようにするということがどうしても前提として必要である。請負というような不安定な、しかも全面請負というような、ややもすれば法律的にはやや疑問を持つようなかっこうではなくて、安心して貸せるようにするためには、その貸したものが法定更新しないというようなことに対する一つ安心感を与えねばならぬということが前提になりますと、法律でそういう問題について、ただ農地法を排除するということだけではなくて、むしろ耕作権と安定という角度から言うならば、市町村というような安定的に事業を継続できる主体関与ということが当然前提になりますけれども、安心して貸せるようにするためにはやはり法律上の措置が必要であるということから今度の改正を出したわけでございます。
  9. 津川武一

    津川委員 明確にしておきたいと思うのですが、今度の改正基本の中においては、農民相対相互信頼と民主的な話し合いということが基礎であるという認識に立っていると思うのですが、これはいかがでございますか。
  10. 大山一生

    大山政府委員 絶対的背景としては、そういった集団的合意というものを踏まえての話でございます。
  11. 津川武一

    津川委員 そこで、私は、この審議を前に、おとといとさきおとといの二日間京都に行ってまいりましたが、それは、こういう絶対信頼のもとに民主的に自主的に土地を管理しているところはないかと思って行ってみたのですが、そうしたら、丹後京都の網野町の浅茂川というところにございました。ここは水害常襲地帯で、湿田で余り使えない十ヘクタールばかりの土地を四十四戸の地主が所有しておりまして、そこで一方もう少し土地を欲しいという農民もおりまして、もう少し土地を欲しいという十七戸の農民園芸組合をつくって、四十四戸の地主地主組合をつくってこれと協議した。ここでは、地主の方も園芸組合の方も、どちらも本当農民発意で民主的に協議した。それが四十六年の十一月ですが、決まった結論はこういうことです。地主組合湿田を埋めて、これを砂丘農業ができるような畑に直しました。園芸組合はこれを借りて耕作して、いま、チューリップスイカ大根三つの連作をやっているわけであります。こういう形で育っておる。もう一つの例は、京都の弥栄町の味土野というところですが、ここでは機屋ばらばらになっておる水田耕作している。ところが、機屋はなかなか忙しい。また、もう一方、何かチューリップでもつくりたいという農民がまた出てまいりまして、チューリップ耕作組合ができた。そうしたら、機屋地主の方でばらばら土地を一カ所に集めて、裏作として機屋が稲や水田をやり、表作をこのチューリップ耕作組合がやるという形ができた。そして、これは農協が販売まで協力しておる、農業委員会も協力しておる、こういう形に出てきました。  これが二つの例ですが、もう一つ、この二つの経験を踏まえて丹後地方でいろいろなことをやりましたら、保安林を解除してもいいというところがかなり出てまいりましたし、保安林としてもう少し整備しなければならぬというところも出てきまして、地主組合はこの保安林整備するところと解除するところを決めて、解除するところをチューリップスイカ大根を連作できるような砂丘農業畑地帯にする、そして今度は耕作する農民生産組合をつくる、地主地主組合をつくる、これには今度京都の府と、地元の町と農業委員会農協が非常に積極的に応援して参加してやる、と、こういうふうな形になってきた。ここでのものは、最初の二つの例は自治体援助をする、最後の三つ目の方は自治体はかなりかむということになりましたが、こういう形のものは農林省は支援する必要があると私は思うのですが、この点はいかがでございますか。自治体のこれに対する援助の仕方ということでもよろしいんじゃないかと思いますが、これに対する考え方はいかがでございますか。
  12. 大山一生

    大山政府委員 その耕作権の中身をもう少し調べてみないとよくわかりませんけれども、いまお話しのありましたようなところは、いわば利用増進事業に乗りやすい地域であるというふうには考えます。
  13. 津川武一

    津川委員 ここでは集団一つ討議が始まって、耕作を拡大したい、少し縮めたいという個々の相対の相談ではなく、地域が全体として、地主地主として、耕作者耕作者として、かなり集まってここで集団討議している。この討議二つの町で合わせて合同討議をしている。したがって、地域農業をどうするか、この土地をどうするかということについて、共同でその利益が上がるように討議しておって、一人の農民と一人の農民というかっこうではない。こういう仕組みなんです。これは非常に大事な仕組みで、見てるうちに、農協農業委員会地方自治体もこれには協力しなければならぬというかっこうになったわけであります。  私は、今度の改正実態もそこにあるんじゃないかと思うわけです。本当の流れ、精神はこれではないかと思うわけですが、この点はいかがでございますか。
  14. 大山一生

    大山政府委員 とにかく、利用者側と、それから所有権を留保しながら貸したい人というものの全体の合意というような枠組みにはまり込む、しかも、その前提として、いわば所有権は持っておきたいけれどももう貸したいというグループと、それから何としても利用するというかっこうの、利用権を集積して規模を拡大したい人と、こういうふうないわば分化するかっこうがあって、しかも、いま言ったような、その間においての集団的な合意が成立する、そして市町村なり農業委員会農協といういろいろの機関がそういうことに対して積極的な関与をする意欲を持っている、こういうところにおいて初めて成り立つものだというふうに考えるわけでございます。  ただ、先生の言われましたケースの地主組合耕作者組合というかっこうだけがこれの基盤であるとは必ずしも考えないわけでございます。中には集落集落ということもあってもいいんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  15. 津川武一

    津川委員 農林大臣、いままで局長と私のやりとりを聞いてくれたと思いますが、今度の改正のもとの基本的な問題は、農民のそういう下からの発意、中からの発意、この発意からみんなで協議する、この協議農業委員会だとか、農協だとか、地方自治体だとか政府が応援する、これが今度の改正本当の底に流れている一番大事なものだ、こういうやりとりだったわけですが、大臣はいかがでございますか。     〔委員長退席藤本委員長代理着席
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、今回の法律改正基本的な考え方は、借りたい人と、それから貸したい人といいますか、所有者との間の下からの盛り上がりといいますか、これが基本になって、その上にいろいろと積み重なり合って利用増進事業が生まれていくというふうに私は基本的には考えておるわけでございます。
  17. 津川武一

    津川委員 大事なことだが、よくわかりました。  そこで、私もこの点を模索して、農業会議所や全中の人々と、どういうふうに運営していったらいいのか、基本がどこにあるのかということを話してみました。本も読んでみました。そこにおいでになっている農政課長からも話を聞いてみました。ところが、どうもさっぱりしないものがある。現にこの間の二月二十五日の竹内委員局長との話し合いを聞いても、下からの発意市町村調整の枠ではめてしまう、この発意基本市町村がやる、こんなふうなことが何か心配でしょうがないのです。そういう点で、農林省課長に来てもらったり、いろいろ聞いてみますと、本当皆さんも検討されたらしいが、事業主体市町村に置いて、ここで枠をはめていってしまっているので、せっかくの下の発意というものが思うようにいかない。いろいろ農協関係の人から聞いてみると、初めは反対する者は除いて、とにかく賛成する者だけに説明して、納得させて、やがては上からの説明会で無理に引っ張っていくという空気が感ぜられるわけなんです。現に、竹内委員との質問応答の中においても、そういう発意市町村の枠ではめるという危険があることを感ずる。  そこで、私たちは、農民の下からの発意というものを今度の改正案の中に修正として出したわけなんです。本当にオーソライズするのであれば、これを興すときの発意は、市町村ではなく、やはり農民においてこれを興し、この発意に基づいて市町村計画すべきだというふうに思うのですが、いかがでございますか。
  18. 大山一生

    大山政府委員 われわれは、利用増進事業というものは継続して安定的に行われなければならぬというふうに考えるわけでございます。何となれば、貸し方からは安心して貸せるようにする、しかし、借りる方から言えば安定した経営ができなければならぬ、こういうことからしますと、利用増進事業というものは安定して続けられるということが前提になるわけでございます。  しからば、安定的にそれをやれる主体は何であるかということになりますと、やはりこれは市町村であろうというふうなことから、市町村が策定の主体になるというふうに考えたわけでございます。しかも、それは、利用増進計画においての全員同意という中においては、いわば農民の、先ほど申し上げました貸し方借り方集団的合意という問題を全員同意というかっこうにおいてそれを実現する、こういうことにいたした次第でございます。
  19. 津川武一

    津川委員 局長の言われる全員合意言葉としてりっぱだが、ところが、下からの発意での合意ではなく、上から皆さん説明会をやると言っている。農民における実態は、説明会で何か説得されるということなんです。  このこととは関連ないけれども、私たちの郷里の尾上という町で、患者さんが病気になったときに越中富山の薬を使うのか、あるいは民間信仰に頼るのかということで私は役場に調査してもらったのですが、そうしたら、役場保健婦をやったら七%しか出てこないが、短大の女子学生を入れたら二十何%出てきたわけなんですよ。したがって、全員合意ということも、下からの発意合意ならいいけれども、いいところもあるけれども市町村は必ずしも民主的に行われていないところがありますので、この全員合意ということがかなり心配なわけなんです。  そこで、ここに参考人として来た静岡県豊岡の藤森村長さんは何をつくっているかというと、各部落ごと農地利用組合をつくっている。そして、その上に農地管理センターをつくっておる。また、農協皆さん政府の方といろいろ接触している間に、質問の中でだんだん出てきたことは、今度の法案でやるのに、市町村職員農業委員会農協職員土地改良区などの役職員で構成する農用地利用推進事務局規程の中で設けて、これで推進していきたいという考え方のようですが、実際に、この農用地利用推進事務局というもので先ほどお話ししたような発意のものを育てていくというお気持ちなんでございますか。
  20. 大山一生

    大山政府委員 先ほどから申し上げておりますように、全員同意という問題の中で、市町村がまず主体になるということは安定性を考慮したものであり、そして法律にもありますように、地元の意向というものから見て、これが必要と認められる場合に規程をつくって、さらにその規程に基づいて計画をつくった上で全員同意と、こういうふうなかっこうになっておるわけでございます。  これが事業実施につきましては、地方地方によって事情が違うと思います。しかし、規程等におきましては、先ほど申し上げましたような、貸し方借り方との全員合意といいますか、全員同意というような枠組みと、逆に言うならば自主的な事業実施組織というものの整備ということを背景として、それの発意を尊重するということは、これは一般論としては利用増進規程等において入れる、あるいは指導していいことであろう、こういうふうに考えるわけでございます。  ただ、法律の問題として言うならば、やはり市町村が安定的な主体であり、そしていわば民主的なかっこうでない——先生言葉をもってすれば、ファッショ的な発想であっては……(津川委員「フフッショとは言わない、押しつけとは言ったが」と呼ぶ)まあ、とにかく押しつけであるならば、これは全員同意ということはあり得ないわけでございますから、たとえば規程というものがあって、規程にのっとって計画がつくられて、その計画全員同意が得られるためには、その中において、全体の意思がそういうものであることが前提でなければなり得ないわけでございます。  したがって、市町村長独断でやって、独断規程をつくっても、それに基づく計画全員同意はあり得ないわけでございますので、全員同意ということは、裏返せば、そういうふうな自主的な組織の十分なコンセンサスの上に立って市町村長が動くということでございますので、その点についてはいまの法体系のままでいいのだろうというふうにわれわれは考えるわけでございます。
  21. 津川武一

    津川委員 全員同意は、上からつくるときにはなかなかいかない。だから、土地改良法でも三分の二の同意があればいいというのは、皆さんは九割以上の同意でやっているでしょう。三分の二の同意ができたといって、青森県の小田川ではいま農林大臣が訴訟を起こされておる。これが皆さんの言う全員同意、これは議論しない。  そこで、私が聞いているのは、こういった枠をはめた市町村の役員、農業委員会役職員農協役職員土地改良区の役職員などで構成する農用地利用推進事務局規程の中に設けて、これでやるのかということを聞いているのです。
  22. 大山一生

    大山政府委員 地方地方によって異なると思いますので、一律に、ということではございませんけれども、そういうふうな自主的な組織というものを原則的にはつくらせて、その発意を尊重するということは規程の中にうたいたいと思っております。
  23. 津川武一

    津川委員 尊重するのでなく、計画の一切をここにやらせてみて、市町村はそれを黙って見ていて、ぐあいが悪くなければやらせる、こういう形になるならば非常にいいと私は思うのですが、どうですか。
  24. 大山一生

    大山政府委員 常にそうなり得るかどうか、これは非常にむずかしい問題だと思います。しかし  一般論としては、その発意は尊重していいだろうと思います。
  25. 津川武一

    津川委員 発意を尊重して、これに大まかに民主的に仕事をさせていくということが非常に必要だと思うのですが、時間もないので、その論争はまた機会があればそのときに譲るといたしまして、そこで、農用地域外農地利用です。  今度京都砂丘地帯でわかったように、保安林を解除する。これは地主組合利用組合がみんなで話をしてここで利用増進事業をやる。こういう形でいくと、いま政府が農振法で指定したところの農用地が五百八十二万ヘクタールで、この中で農用区域外土地が百四十万ヘクタールぐらいあって、ここのところに拡大していくことがこの利用増進事業対象で、いままでにそういうところがあれば、これは農用区域内に取り入れると局長は言っている。必要なところを取り入れるのじゃなくして、法の対象をここまで向けていく必要があるかと思うのですが、これはいかがでございますか。
  26. 大山一生

    大山政府委員 農振計画をつくり、そして農用地区域を決めるというのは市町村固有事務というかっこうになされているわけでございます。したがって農振計画農用地区域を確定して、そこは農用地として長期にわたって保全し、そして振興すべきところであるということでございますので、いま言われたような場所があれば、やはり積極的に農用地区域に含めてまいる、こういうことであろうと思っております。  農用地区域外でもそういうところがあれば、それは農用地と同様に保全し、そして振興すべきところであるということではなくて、それはやはり農用地区域に入れるべきところであろうというふうに考えるわけでございます。
  27. 津川武一

    津川委員 その次に、利用権設定を受けるべき農民要件ですが、これは改正案補足説明の中にも出ておりますが、これは規程の中に設定も受けるべき農民条件を書き入れるつもりでございますか。
  28. 大山一生

    大山政府委員 利用増進事業の中で利用権設定を受ける者の要件、これは法案の十五条の五の第三項第二号にありますように、すべての農用地について耕作養畜を営む、そして常時従事する、そして効率的に利用する、こういうふうな条件をつけているわけでございます。したがって、利用増進規程の中におきましてはこれらのことは当然入れなければならないわけでございますし、また、これに反する内容のものにするということはできないわけでございますが、何と申しましても、具体的にはそれぞれの地域実情によりまして、農家の自主的な調整を経て決められるものであるというふうな考え方をとっているわけでございまして、生産性の高い農業経営を営むことが期待される者に対して利用権設定するという考え方で進めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  29. 津川武一

    津川委員 政府は、その規程の中に、農業によって自立しようとする意欲能力を有すると認められる者、または農業専従者である青壮年の基幹男子家族農業従事者がいるものであることなどの、中核的担い手ということを入れるつもりですか。利用権設定を受けるべき者の条件にこういうことは入れるつもりですか。そこまでは書かないつもりですか。これはいかがでございますか。
  30. 大山一生

    大山政府委員 模範定款例といいますか模範規程につきましてはまだ目下検討中でございますが、その規程におきましては、やはりそれぞれの実情に即して具体的に決めらるべきものだというふうに考えるわけで、先ほど来から申し上げますように、地域農業担い手となる意欲能力を有する者ということを基本として指導したいというふうに考えるわけでございます。  その場合に、基準となるべき青壮年従事者の存在ということは一応の目安として考えてしかるべきではないかというふうに考えるわけでございます。
  31. 津川武一

    津川委員 そうすると、基幹の農業従事者として女子がおる場合がかなり出てまいりましたし、しかも、女子が非常に高度な機械を運転して中核になっておるところが出てきたわけですが、いまの自民党の農政では、農民が自分を守ろうとすれば勢いこういうことになってくるが、政府のこの改正案では、これらの皆さん設定を受けるべきものから排除されることになりはしませんか。  第二の問題は兼業農家です。兼業農家にももう少し土地があったならばと、兼業農家には非常にこれを求めている農民がある。これがいまは全部従事していなくても、利用権設定を受けることによってやがてそうなっていくという場合は排除すべきじゃないと私は考えるが、私は、これが排除されるのじゃないかという心配がある。  もう一つは、農地法の下限の五十アール以下しか持っていなくても、農業に対して非常に熱心で、土地が欲しい、土地が欲しいということで、利用権のあるところはないかと探している農民がある。  これらの三つの人を政府は今度の改正で排除されるのじゃないかという心配がありますが、これは一体育てるのかどうか。一か八かの答弁ではなくて、そこいらの政府の方針を伺わせていただきます。
  32. 大山一生

    大山政府委員 まず、五十アールの問題でございますが、法形式論としてはあれを排除しておりますので、五十アールということには表面的には出てまいらぬわけでございます。  ところで、いま御指摘の問題ですが、先ほどちょっと、私は、青壮年従事者の存在を一応の目安として考えるということを申し上げたわけでございますが、これは、男女ということがあるにもかかわらず、画一的、形式的にはっきりしてしまうといいますか、そういうところまでは考えておりません。
  33. 津川武一

    津川委員 これを実際にやっていくときには、市町村農協など土地改良区の意見がかなり入ると思います。ところが、いまの市町村は必ずしも民主化されていない。農協がボス化されておるところがあって、ここで特定の大きな力がある人に利用権設定が集中される心配があるから私ばこう言うのです。そこで、こういう条件は、法の十五条のあれでつくっている以外のものはどうしても規程の中に書くべきではないというふうに思うわけです。この点が一つ。  第二番目の問題は、この間ここで参考人に出た豊岡の村長の藤森さんは、こういう形で利用権設定で専業農家に向いている人を育てていくと同時に、兼業農家を育てることが村の計画を遂行していく基本政策だと言っているわけですが、この改正によって兼業農家の対策がもっと落ちるのじゃないかという心配が出てくるわけです。  この兼業農家全般に対する対策と、二つ答えていただきます。
  34. 大山一生

    大山政府委員 藤森村長さんの言われましたのは、あそこに五つほど工場があるわけですが、そこで、工場に従事するかっこうで、兼業農家主体は将来ともあくまでもその兼業部分に置いて、収入源の主たる財源といいますか、生活力といいますか、それをそこに求めていくという方向に考えていく、こういうふうな考え方でございます。  利用増進事業は、いわば貸したい人間と借りたい人間がある。借りたい人間が利用権を集積していくということでございます。しかし、一般的にそういうふうな条件の熟していないところにおいては、自立経営農家をピークとする中核農家群といいますか、それを中心といたしまして、兼業農家も含めて集団生産組織というものの育成はなお続けていかねばならぬだろう、しかし、集団生産組織の極限まで分解したかっこうが、いわば貸し方借り方というかっこう利用増進事業ということに相なるのだろう、と、こういうふうに考えるわけでございます。  なお、最初に言われました問題は模範規程例でございますが、模範規程例は、常にそれに従わねばならぬということではございません。したがって、青壮年というものの存在ということはやはり目安でございますので、書いてしかるべきであろうというふうに考えるわけでございます。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 津川武一

    津川委員 そこで、私の質問の終了時間が来たので最後の質問に入りますけれども、農林大臣局長の答弁で明らかになったように、兼業農家対策は農林大臣として考えなければならない重大な問題だと思うので、これについて大臣に伺いたい。  その次に、最後の問題として有益費の問題です。これは草地だけでなく、かなり密度の濃い、高度に能率化された事業をやるべきだ、と私は思う。したがって、大きな土地改良もやらなければならぬし、機械も投資しなければならぬ。畜産であるならば、乳牛、肉牛十頭、二十頭と投資しなければならぬ。そのときに契約が壊れたのでは大変な話なんだ。そして、有益費は、その点で土地改良法だとかいろいろなことを民法で言っております。ところが、これを決めるのは、トラブルが起きると市町村農業委員会農協——しかし、必ずしも農協は全国すっぱりいっていない。市町村もかなり派閥があったりする。だから、この有益費の処理に対しては規程の中に明らかに盛るべきだ。トラブルをなくするためには、民主的な本当全員合意を得るためには有益費を規程の中に盛るべきだと私は思うのですが、この二点はいかがでございますか。
  36. 大山一生

    大山政府委員 最初に有益費の問題を、若干技術的なことでございますので私から答えさせていただきたいと思いますけれども……。
  37. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に答えてください。
  38. 大山一生

    大山政府委員 有益費というものは民法または土地改良法の定めるところでございます。そこで、水田裏作の場合というようなことも利用増進事業の問題としてございますので、したがって、すべての利用増進計画を通じて必要だとは考えておりません。そういうことから、指導上模範となるべき規程例なり計画例には示してまいりたいというふうには考えるわけでございます。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちがこれから農政を推進する場合に、農業を担う主体的な担い手としては、自立経営農家を中心とした中核農家という層にこれからの農業の中心になっていただきたいということで中核的農家という表現を使っておるわけでありまして、中核的農家を中心とする傾斜的な農業政策をとっていきたいということでありますが、中核的農家というのは自立経営農家、第一種兼業農家であります。しかし、その他の兼業農家に対しても、これを無視する農業政策をとるわけにもまいらぬわけでありまして、その他の兼業農家の方々も農業を担う重要な役割りを担っておられるわけでございますから、この兼業農家群に対しても農政上の配慮というものは加えていかなければなりませんし、同時に、また、これからの経済の成長過程におきまして、そういう兼業農家群に対しては、農業振興上の配慮を加えると同時に、各省庁とも連絡を密にして、その就職であるとかその他の問題等については十分な措置を講じていくということでなければならぬ、こういうふうな考えを持っておるわけでございます。
  40. 澁谷直藏

    澁谷委員長 もう時間ですから……。
  41. 津川武一

    津川委員 有益費は、これの処理が非常に大事で、ここで問題が起きると改正のせっかくのものが死んでしまう。したがって、これは事前に処理方法を規程の中に盛るのが一番民主的な方法だと思うのですが、これはいかがですか。大臣、最後に……。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは当委員会で答弁いたしました模範規程の中に十分加えておきましたから、御検討いただきたいと思います。
  43. 澁谷直藏

    澁谷委員長 林孝矩君。
  44. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農業振興整備法の改正案について質問をいたします。  四点ほどございますが、質問の要点は、今回の農振法の一部改正の背景には、近年の農業をめぐる環境の変化ということと、また、農業振興地域内における農業土地利用地域的にかなりひずみを生じておるということがあると思うわけであますが、と同時に、もう一つは、食糧事情が逼迫しているので、それに伴ってのわが国の食糧自給率の向上を図るということ、これは非常に重要な課題となってきておるわけでありますが、こういう背景を踏まえて農振法というものを考えて、その食糧自給という観点から私はまず質問をしたいと思うわけであります。  最初に大臣に伺いたいと思いますが、この農振法の改正ということと食糧自給の向上ということの関連を踏まえて、農振法の運用に関して、大臣はどのような方策といいますか、運用の仕方を考えられておるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のとおりも最近の国際的な食糧事情を見ますと、食糧は基調的に不足しておるというふうな段階にあるわけでございますから、わが国におきましても、これからの農政の基本課題は自給力を可能な限り高めていくということでなければならないと考えるわけであります。  そういう中にあって、この農振制度を活用し、さらに農振法を改正していく。そして、自給力を高めるための一つの方向として中核的な農家を育成していき、あるいはまた農家経営規模を拡大していく。そういうふうな方策を講ずることによってわが国の自給力を高め、農業の振興を図っていく。そういうように集中的、計画的に自給力を高める方策として今回の改正案を提案した次第でございます。
  46. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま大臣から答弁がありましたように、いわゆる食糧確保の大前提として農地を活用していき、また、農地を確保していくという、そういう意味でこれは非常に重要な法律であるわけであります。  そこで、去る十四日に参議院の予算委員会で提出された資料をもとに大臣にお伺いしたいわけでありますが、農振法の審議に関連して、日本の食糧自給という問題がいま非常に関心を呼んでいるわけでありますけれども、参議院の予算委員会に提出された資料を見ますと、「日本の食糧自給一〇〇%可能」という一つの提言でございます。  そこで、その中身について農林省としてはどのように考えられておるかということに関して具体的にお伺いしていきたいと思うわけでありますが、この提言の内容の柱は、一つは、耕地整備を徹底して反収を上げるということの一方、輪作、適作を推進するということが第一点で、第二点目は、専業農民の技術水準を引き上げるということが第二点。第三点目は、一戸当たりの農地規模をふやすための土地政策を立てるということ。この三つの柱にまとまっているわけであります。  食糧自給の可能性として、人口が多くて耕地が少ないから食糧自給は不可能だという考え方を打破しなければならないということと、それから、嗜好食品は別にして、現在の食生活を賄う食糧に対しては、技術的に食糧自給が一〇〇%可能であるという考え方であり、その内容として、延べ作付面積七百九十万ヘクタールでありますけれども、牧草、果樹、桑、茶というようなものは、通年作付として計算して、約二倍に計算すれば九百四十万ヘクタールとなる。これを五百数十万ヘクタールの耕地に一定の輪作方式を踏んでいかに作付けるかということが一つの物の考え方のネックになっているわけでありますけれども、これは決して不可能な問題ではないという提言があるわけであります。  もう一つは、わが国の恵まれた自然条件、優秀な労働力、工業技術水準というものをバックアップにして考慮していけば、基幹的食糧の一〇〇%自給は可能である、稲作、それから国民のたん白食糧源としての畜産業の振興、特に自給飼料である牧草の生産増強、それから流通改善、これに全力を挙げるべきだという考え方も提言されたわけであります。  農林省にお伺いしたいことは、まず第一点に挙げられておりますところの耕地整備を徹底して反収を上げるということ、それから輪作、適作というものを推進するということ、こういう考え方に対してどのような具体的な計画をお持ちになっておるか、これをまずお伺いしたいと思います。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちも自給力を高めていくということを農政の基本課題にいたしておるわけでありまして、農政審議会に農林省として提出いたしました資料も御案内のとおりであります。  現在、総合的な食糧の自給率は七三%程度でございますが、この六十年目標としてはこれを七五%に持っていきたいということを計画いたしておるわけでございます。二%のわずかな上昇にしかすぎないじゃないかという御指摘もあるわけでございますが、これは十年間の間に生活水準が九%ぐらい伸びていくであろう、さらにまた人口も一四%ぐらい伸びていくであろうという、こういうような背景の中で極力自給力を高めるという中で七五%という目標をはじき出したわけでございまして、現在の生活水準をそのまま六十年まで維持するということになれば、これは九〇%近い自給率になるわけでありますが、この生活水準が九%上昇する、あるいは人口が伸びていくということを考えれば、全体的には生産は二七%伸びるわけであります。  と同時に、需要の方は二三%ということですから、結局七五%の総合自給率というのが六十年目標としては現在考えられ得る数字でありますが、しかし、七五%を目標としてこれからやる場合においても、いま御指摘がございましたような土地とか水の確保、あるいはこれの高度な利用とか、さらにそのほかに価格政策の充実とか、あるいは技術面の強化とかいったことは総合的にやっていかなければならないことは当然でございます。  また、同時に先ほどお話しがありました農地につきましても、現在日本全体で農地の造成可能な面積は大体百五十万ヘクタールとわれわれは見ておるわけでありますが、六十年度までに、その間にあって少なくとも八十六万ヘクタールくらいの農地の造成も行っていかなければ、土地の確保という面において七五%の自給力の確保はむずかしい、こういうふうに考えておるわけです。  資源的制約がある中においてわれわれが考えられ得る可能な限りの努力はもちろんしていかなければならないし、そういう前提のもとに私たちは農政審議会に資料として御存じのようなものを提出をしておるわけでございます。今後とも私たちとしてはいま御指摘のございましたようなあらゆる総合的な施策を強化充実して、自給力を高めていくことに全力を尽くしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  48. 林孝矩

    ○林(孝)委員 具体的にお伺いいたしますが、それでは、一ヘクタール当たりの現在の生産量を、玄米、麦、大豆、牧草、根菜、野菜、果実の種類に分けてお答え願いたい。  もう一つは、いま大臣が御答弁になった趣旨から考えて、一ヘクタール当たりの生産目標を、いま申し上げた種類に関してどういうふうに設定されておるか、お答え願いたい。
  49. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  まず、米から申し上げますと、米については、四十七年度のヘクタール当たりが四千五百六十キロでございますが、六十年には四千八百五十キロで、これは水稲でございます。それから麦類につきましては、小麦がヘクタール当たり二千五百キロを三千百十キロ。大、裸は六条なり二条といろいろ分かれますが、六条麦を例にとりますと、三千二百九十キロを三千六百七十キロ。それから裸麦につきましては、二千三百三十キロを二千九百八十キロでございます。また、大豆等につきましては、千四百二十キロを二千百十キロ。それから野菜につきましては、これは先生御案内のとおり、葉菜類というように種類がいろいろ分かれておりますので、便宜その葉菜類と果菜類だけについて申し上げますと、葉菜類では二万九千五百四十キロ、それから果菜類では二万千八亘一十キロでございます。それから果物につきましては、ミカンが二万八百三十キロ、リンゴが一万六千四百八十キロが四十七年度でございますが、六十年度は二万七千五百キロ、リンゴについては二万二百五十キロ等でございます。
  50. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま答弁のあった生産水準というものは、農業先進国と比較してどのように評価されるかという点について、農林省考え方を聞きたいと思います。
  51. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  米については、水準としてはこれは世界的な水準を抜くものでございます。それから、その他の小麦等につきましては、反収から言えば西欧諸国に劣らないということでございます。その他のものについても、長期見通し等についても検討いたしまして、現在の試験場技術等を加味して、しかも現実可能性を考えた反収をほぼ達成したいということでございます。
  52. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、これだけの食糧のヘクタール当たりの生産量を確保するために、まず第一点として耕地整備ということでありますが、耕地整備に関していま農林省が考えられておる計画を明確にしておきたいと思うわけであります。
  53. 大山一生

    大山政府委員 現在われわれの考えておりますのは、圃場整備約百二十万ヘクタール、畑総六十万ヘクタール、こういう整備をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  こういうことをいたしますと、やはり裏作可能というようなことが問題になりますが、この点につきましては、機械化による裏作可能面積というようなものを百三十万ヘクタールまで持ち上げていきたいということを目標としているわけでございます。過去におきまして、四十七年までに整備されました田におきます圃場整備面積が約六十万ヘクタールございますので、さらに先ほど来申し上げました整備を行うことによりまして、関東以西のいわば機械化営農可能田を約百二十万ヘクタールまでにしたい、こういうことでございます。
  54. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、第二点目の問題としては、専業農民の技術水準を引き上げるという点についてでありますが、現在の農家の技術水準の分析については、農林省が出した農業白書によりますと、四十七年度における二兼農家の家計において、農外所得による生活費充足率が一〇五%であるということになっております。農業に生活を託していない二兼農家が技術革新に対してどういう意欲を持っておるかという点ですが、ところが、全国耕地の約二分の一が二兼農家の所有であることも農業白書に明確であります。  これがいわゆるヘクタール当たりの平均生産量の低い最大の原因であると考えられるわけでありますが、その点に対する認識はどのようにお持ちになっておられますか。
  55. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  確かに、兼業農家と専業農家生産性の比較なり反収の比較等につきましては、この四、五年前までは統計数字上兼業農家と専業農家との反収差というものはそう明らかでなかったわけでございますが、逐次兼業が深まりまして、しかも二兼農家の比重が高まるという点から、その反収の差と申しますか、生産性の差が出てきておるというふうに大観的にわれわれは把握しております。したがいまして、この点については、今回の法案等でもお願いしておりますように、中核的な専業なり第一種兼業等の男子農業専従者農業経営にほぼフルに働く農家を中心とした新しい土地利用体系なり生産組織をつくり上げることによって、先生御指摘のような生産力の全体としての水準の維持向上を図っていかなければならないというふうに考えております。
  56. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういう場合に、専業農家の一戸当たりの農地規模をどのように想定されておるか、お伺いします。
  57. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  長期見通し等におきましては、あるべき経営につきましては、所得倍増計画なり基本法ができた当時は水田作が圧倒的に多うございましたので、水田の規模で、たとえば自立経営農家は二ヘクタールとか、あるいは将来は四ヘクタールとかいうようにいろいろ想定いたしましたが、今日においては、御案内のとおり、畜産なり果樹作というような経営組織別にいろいろ分化しております。したがいまして、端的に経営規模というものについてのお答えがわれわれとしてはしにくいわけでございますが、農業所得でほぼ家計費を充足ないしはいわゆる中核農家と言われるものは大体八割ぐらいの充足率を持っておりますが、そういうような所得を上げられるというようなことでございまして、中核農家の平均を統計上で見ますと、たしか平均で二町四、五反というふうに、これは現状でございますが、なっておると思いますけれども、そういうことで、規模だけでなくて、むしろ所得的な視点で全体としてはとらえていきたいというふうに考えております。
  58. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農業振興に関する現在の農林省のそういう計画長期展望等があるわけでありますが、それを達成するための方策として、予算の裏づけがあると思います。その予算の裏づけとして、たとえば土地改良に対することしの新年度予算は、農林省のその目標を達成するための予算として十分であるかどうか、額はどのようになっておるか、十分でないとしたならばどれくらいが十分と考えておるか、その点についてお伺いします。
  59. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  食糧自給力の強化と、そのための農業振興のための諸施策の財政的な裏づけを強化しろということは当委員会でも種々御議論を賜りましたところでございますが、五十年度予算については、しばしば大臣がお述べになっておりますように、重点的な経費は確保したが、伸び率その他等においては、国全体の抑制的な基調で、人件費その他当然増的な経費が伸びる中で確保するのになかなか苦労したし、また、形式的な伸び率については限度があったということと、もう一つは、大事な土地基盤整備費等も公共事業であったために、国全体の公共事業が総需要抑制という観点から横並びであった中で基盤整備費の確保には最大限努力したが、なお必ずしも十分ではなかった。ただし、一般的な経費で、たとえば緊急飼料増産対策費等を初めとして重点に即した経費については最大限配慮したということでございます。  以上総括的に申し上げますと、事基盤整備等に関しましては、二年続きの公共事業費抑制の影響で、土地改良長期計画等の既定の計画について今後の努力にまつところが多いというのが五十年度予算の全体的なわれわれの考えでございます。
  60. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問に対して、具体的にいま十分でなかったというお答えがあったわけですけれども、十分な予算というのはどのように見込まれておるか。
  61. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  何ぼあれば十分だということはなかなかお答えしにくいのですが、具体的な例を申し上げますと、たとえば第二次土地改良長期計画は、これは自給力強化のために一番大事でございます。これの場合における農業基盤整備費の伸び率がおおむね年率一六%伸びれば、われわれの予定する基盤整備事業がほぼ達成できるということでございます。ところが、それが本年度は三・四%であったというようなところに現実の予算とわれわれの意図するところとの差が出ておるということでございます。
  62. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農林省が昭和四十四年に行った土地改良長期計画の補足調査の内容と、それからそれがどういう基準で行われたのかということについて答弁願いたいと思います。
  63. 大山一生

    大山政府委員 二つございまして、一つは、圃場整備等について地下水の現状がどうなっており、農道の整備状態がどうなっているかといったような現状農地における整備の水準と、それを整備するにはどうしたらいいかという調査と、もう一つは、農用地開発適地とは何であり、どの程度あるかということ、この二つの問題がございます。  先生の御指摘はむしろその後段の農用地開発に関することだというふうに思いますので、農用地開発の方を申し上げますと、まず開発可能地につきまして、一般の農地についてはおおむね傾斜度三十度以内、草地については二十五度以内で、月の平均気温がその作物の生育に適しておって、しかもそこが今後とも主産地形成される見込みのあるところということと、さらに、農用地開発のための調達の可能性があるかどうかということ、こういったような基準でもって調査いたしたわけでございます。
  64. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その中で農振地域及び農用地区域がどれだけあったのか、説明してください。
  65. 大山一生

    大山政府委員 御存じのように、これは四十四年の調査でございます。したがって、当時においては農振地域というものの網はかぶっておりませんので、その段階ではちょっと申し上げかねるわけでございますが、現在、農振の網をかぶせました現状の中で、山林原野で農用地として開発すべきところということでは八十六万ヘクタールが入っておるわけでございます。ただ、その八十六万ヘクタールが入っておるということがイコール百五十万ヘクタールのうちの八十六万ということには必ずしもなりませんで、調達の可能性という問題については、地方住民の意識の変換ということもございます。したがって、八十六万だけが将来とも開発適地として農用地区域に入っている面積であるということにはならなぬ。むしろもっとふえてしかるべきであり、また、われわれは、新規地区の採択に当たりましては、その農用地区域外であっても開発適地があればそれをなるべく取り込み、そして、事業着手までには農用地区域に入れさせるというかっこうで対処しているわけでございます。
  66. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農用地区域がどれだけあったか。農振地域については網がかぶってなかったということがありますが、答弁の中には具体的に明確にされていないわけですね。五十年度予算の中でうかがわれるところを見ますと、開発可能地の基本調査を行うという計画がありますが、先ほど開発可能地の判定基準をもって答弁されましたような内容でまた今度も行われるのか、この基本調査の基準、計画というものを明確にしておいていただきたいと思うわけであります。
  67. 大山一生

    大山政府委員 五十年度に、三新全総といいますか、新全総の開発計画なり経済社会基本計画の改定が行われる予定になっておりますこととも対応いたしまして、農用地整備水準あるいは開発可能地、こういうものの賦存量を明らかにするための基本調査費を計上いたしております。内容についてはまだ最終的な決定を見ておらないわけでございますけれども、過去の四十四年の調査と対比した場合にはも当時と異なってまいりますのは、一つは、それが比較的遠隔地にあることで、そういうことになると、それとのつなぐ道路の問題が一つございます。それからもう一つは、自然保護という問題との関係における問題が新たな要素として加わってくるであろうというふうに考えるわけでございます。
  68. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その計画等が決定するのはいつごろになるか。五十年度予算のことでありますから、もう本当は決定していなければならないと私は思うのです。そうして、なぜ決定していなければならないかというのは、ここにはやはり調査費という予算が組まれておるわけでしょう。調査の仕方いかんによってはその予算額というものは非常にまた変化してくるわけですね。そういうことから考えますと、いままだ決定していないというところで予算を要求されるという、こういう考え方は逆であると私は思うのです。こういう計画に基づいて調査をするからこれだけの予算が必要だというのが予算要求の筋であって、計画が全然決まっていないで予算を要求するというのは納得ができないわけです。
  69. 大山一生

    大山政府委員 概略は決まっております。したがって、予算が成立いたしましたら早急に内容を詰めたいと思っております。ただ、詰める場合におきまして、先ほど申し上げましたように、新全総なり、そういうものとの調整といいますか、そういう問題もございます。  前回の調査に比べて、新たな要素といいますか、より精密を要する問題といたしましては、たとえば開拓につきましてはも大型機械の使用という問題からいたしまして、その傾斜がさらに十二度以内のところ、あるいはそうでないところは二十度以内というように、こういったような傾斜についての問題としてはあるわけでございます。  それからも、もう一つは、社会経済上の条件といたしましては、主産地形成という問題を先ほど申し上げましたけれども、さらに精緻な生産、流通等の面からの可能性という問題を詰めなければならぬというふうに考えるわけでございます。  それから、草地利用につきましても、先ほど二十五度ということを申し上げましたけれども、最高傾斜をどうするかといったような問題も出てまいります。  特に省力的、能力的な作業体系との関係における問題、それから権利関係の調整の可能性のさらに詳細な追求といったことが新たな要素として入ってくるわけでございまして、それらの詳細な費目のつくり方、こういった問題を目下検討中ということでございます。
  70. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま検討中である調査の方法、具体的な調査の項目、内容等について、農林省としてはいつをめどにまとめるつもりなのか、お答え願いたいと思います。
  71. 大山一生

    大山政府委員 極力早くまとめたいと思っております。そして末端の調査に入るのは、少なくとも夏にはもう調査に入りたいというふうに考えております。
  72. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、農振法の線引きによる農用地区域内に組み込まれた農家に対する優遇措置についてでありますけれども、政府生産調整によって荒れ地になっている土地がかなりありますがいまどのくらいあると見込まれておるか、お答え願いたいと思います。
  73. 大山一生

    大山政府委員 御指摘の点につきましては、現在緊急に調査をいたすことにいたしております。その結果で面積が出てくるわけでございます。
  74. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これがいわゆる利用増進事業対象となると私は思うわけでありますが、この点についても、結局、法案を提出する、法律を決めるという、そういう段階において調査の過程にある先ほどの問題も今後まとめていくということで、いわゆる不確定要素が多過ぎると思うのですね。そういう不確定要素を前提にして法案審議をするということになりますと、非常に不明確なまま法律が採択されたり、あるいは否決されたりするわけであります。  そこで、今後の問題として、要望しておきますけれども、そういう具体的な問題に対する掌握、把握というものを委員会においてもう少し明確に答弁できるように農林省は用意して法案を提出してもらいたい。これは大臣に答弁をしていただきたいと思います。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 資料等につきましては、可能な限り農林省としても調査いたしまして、そして本委員会にも提出もいたすわけでございますが、先ほどお話しがございました休耕田等につきましては、これは先ほど局長が答弁いたしましたように、五十年度に精密には調査はいたしますが、相当な部分は農地に復元をしておるというふうに私は考えておるわけであります。ただも一部、たとえば谷地田であるとか、あるいは都市周辺の転用待ちの農地、転用待ちの休耕田があることは事実でございますから、そういう点については十分調査をしたいと思っておりますが、大部分といいますか、相当の部分はすでに農地に復元をしておるというふうに私は判断をいたしております。しかしこの点については五十年度で徹底的に調査をいたしたい、こういうふうに思っております。
  76. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間がありませんので、後一点に質問をしぼってお伺いいたします。  有益費の算定基準、これを明確にしていただきたいと思います。
  77. 大山一生

    大山政府委員 有益費は、農用地利用増進事業によりまして農地を有効に利用するわけでございますが、その返還時におきまして増価額が現存している場合に、有益費の償還の問題が出てまいります。御存じのように、土地改良法によりますれば増価額、それから、その他の土地改良事業によるもの以外の場合におきましては投下費用または増価額のいずれか、こういうことに相なっているわけでございます。  そこで、この点につきましては、増進規程の中におきまして、先ほども多少申し上げましたけれども、それの評価の方法というものは、地方地方事情もございますけれども、増進規程の中にうたってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  78. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、地方自治体であるとかあるいは地方の農業委員会であるとか、そういうところがそれを担当することになりますか。
  79. 大山一生

    大山政府委員 紛争が起こるというような場合があり得るわけでございますので、有益費の額の認定ということにつきましては、市町村あるいは農業委員会が行うということをあらかじめ増進規程あるいは計画にうたい込みまして同意をとっておくというような方法をとりたい、そして、実際に紛争が起こりますれば、その市町村なり農業委員会の決定にまつということにいたしたい、このように思っております。
  80. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういう決定をし、あるいはそういう額を評価する技術を持った人、あるいは技術的にそれができるという体制、これは現地においてできておりますか。
  81. 大山一生

    大山政府委員 従前の有益費というものは、大体離作料の中に混在したかっこうであったというのが現状であろうと思っております。そこで、こういう有益費の問題ということになりますと、職務権限から言いますならば、農業委員会は過去においてもそういう紛争があった場合の調停というようなこともやっておられますし、さらに、その有益費とまたからんだかっこうで各種の水利権との関連における問題というようなものも出てきてあるわけでございまして、そういうものは地方、地方におけるいろいろの現状があるということからいたしまして、農業委員会あるいは市町村の産業係、それに土地改良の換地士とか、こういう方々の知恵を総合するかっこうの中で市町村なり農業委員会が実際の紛争調停に当たるというかっこうが最も好ましいかっこうであり、また、それが適切であろうというふうに考えるわけでございます。
  82. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これで終わりますが、この農振法改正のいま提起しました有益費の問題等仁しても、これはいわゆる生存権あるいは生活権に関する重要な問題と関連するわけでありまして、農林省においては、紛争等が起こらないように、あるいは公共性を持って行う事業でありますから、その陰に犠牲者が生まれないように、十分注意をして取り組んでいただきたいと思います。  以上で終わります。
  83. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  84. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案に係る芳賀貢君外三名から、また、日本共産党・革新共同津川武一君外二名から、それぞれ修正案が提出されております。  提出者より順次趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、ただいま提案されました農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案の修正案につき、その趣旨を御説明申し上げます。  ます、修正の内容を申し上げます。  修正の第一点は、第十五条の五第四項を修正して、市町村は、農用地利用増進計画を定めようとするときは農業委員会の決定を経なければならないものとしたことであります。修正の第二点は、第十五条の三に一項を追加して、都道府県知事は、農用地利用増進規程を認可しようとするときは都道府県農業会議の意見を聞かなければならないものとしたことであります。修正の第三点は、第十五条の十に一項を追加して、都道府県知事は、特定利用権設定すべき旨の裁定をしようとするときは都道府県農業会議の意見を聞かなければならないものとしたことであります。  修正の第四点は、第十五条の十五に一項を追加して、都道府県知事は、開発行為の許可をしようとするときは都道府県農業会議の意見を聞かなければならないものとしたことであります。  修正の第五点は、第十五条の十七の一条を追加して、都道府県知事は、農業振興地域のうち農用地区域以外の区域内においで、農用地区域内における耕作もしくは養畜の業務または農業用用排水施設の機能に著しい支障を及ぼす等の開発行為を行う者がある場合には、その者に対し必要な措置を講ずべき旨を勧告することができるものとし、その勧告を受けた者がその勧告に従わないときはその旨及びその勧告の内容を公表することができるものとしたことであります。  以上の五点でありますが、若干その趣旨を申し上げますと、修正の第一点から第三点につきましては、改正案において、農用地区域内で市町村が行う農用地利用増進事業及び市町村または農業協同組合が設定する特定利用権につき、農地法における第三条の権利移動の許可、第六条の小作地等の所有制限及び第十九条の賃貸借の法定更新等、農地法の根幹をなす規定の適用を除外しております。  元来、農地等の賃貸借等の権利移転は、耕作者の地位を安定させるため、許可制度及び法定更新等によって保護されており、これが運用管理は農業委員会の所掌するところであります。  しかし、農地等の不耕作地の存在や流動化が進んでいない現状に対し、改正案によれば、これが事業主体として市町村等を充てることとしておりこれは反面農地管理の二元化をもたらすおそれが懸念されるのであります。そこで、これらの事業等につき農業委員会系統が関与することにより農地行政の運用の一体化を図り、農地法の根幹を堅持することが必要であるとしての修正であります  修正の第四点につきましては、農用地区域内の開発行為を都道府県知事が許可する場合、土地農業上の利用を確保し、かつ、農地行政の運用の面から都道府県農業会議の意見を聞くことが必要であるとしての修正であります。  修正の第五点につきましては、改正案農用地区域内の開発行為につき許可制度を設けておりますが、農用地区域以外の農業振興地域において規制の及ばないいわゆる白地地域でいたずらに開発行為がなされ、それによって農用地区域内の農業経営等に著しい支障を及ぼす事態が引き起こされることは無視できないのであります。しかし、これについて許可制度を取り入れる規制は、その基準設定が困難であること等を考慮し、開発行為に対し必要な措置を講ずる旨の勧告及びその勧告に従わない者には、これを公表して社会的制裁を加えることが必要であるとしての修正であります。  以上が修正の趣旨であります。  何とぞ全員の御賛成を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  86. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次に、津川武一君。
  87. 津川武一

    津川委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の概要を説明いたします。  提案の理由となる農政上の問題は反対討論で明らかにしますので省略します。  修正案の第一は、現行法の国土総合開発計画、新産業都市建設基本計画など、悪名高き開発計画との調和条項を削除することであります。  第二は、市町村の立てる農業基盤の整備農地開発計画等を内容とする農業振興地域整備計画を単なるマスタープランに終わらせないために、国、都道府県の援助義務を明確にすることであります。  第三は、農用地利用増進事業農民の自主的、民主的な組織主体とした事業とするため、農民発意によって事業を行うこととすること、また、利用増進計画前提となる利用増進規程を定める場合、農民の意向を反映させるため、その地域農民同意をとることとし、さらに農業委員会の決定を経ることとするものであります。  第四は、開発行為の制限について、改正案では農用地区域にのみ限定されておりますが一体として農業振興を図るという現行法の趣旨から言っても、この開発行為の制限を農振地域全体に拡大し、農用地区域外農用地についても、開発行為による土砂崩れ等の災害や農用排水への影響から守ろうとするものであります。  第五は、本改正案の交換分合についてであります。五百八十万ヘクタール余りの農用地中百四十万ヘクタールもの農用地を除いた残りの農用地区域内の優良農用地を工業開発や都市開発向けの用地提供を容易にするための交換分合でありますので、反対でございます。仮登記された農用地等に対しては、融資等のあっせんにより農民の手に取り戻し、転用しなくても済むような措置こそ緊急に講ずべきと考え、全文を削除するものであります。  以上がわが党の修正案の概要であります。委員各位の御賛同をお願いして、修正案の提案といたします。
  88. 澁谷直藏

    澁谷委員長 以上で両修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  89. 澁谷直藏

    澁谷委員長 両修正案に対して別段御発言もないようでありますので、原案並びに両修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。稲富稜人君
  90. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び四党共同提案に係る修正案に対し賛成し、日本共産党・革新共同提案の修正案に反対の討論を行うものであります。  現下のわが国農業をめぐる諸情勢はきわめて厳しいものがあり、国民食糧の安定的供給体制の確立が緊急の課題となっており、これがためには、食糧自給度向上を目標として、農用地及び水資源の確保と高度利用生産基盤の整備農業担い手確保等の諸対策を総合的かつ強力に推進する必要があります。  本案は、かかる農政推進の要請にこたえ、農業振興地域における施策を拡大するために、農用地区域に含める土地の範囲の拡大、農用地を確保する上の交換分合の創設、農用地区域内における農用地利用増進事業及び特定利用権設定等による農用地利用増進、農用地区域内における開発行為の許可制度の創設等を行うこととしており、従来の農振法に改正措置を加えて、この地域に対し重点施策を講じながらこの制度の拡充を図ろうとすることが認められるのであります。  しかしながら、この改正案のうちにおいて、農用地利用増進事業及び特定利用権設定等について農地法の適用を除外している点は、現行農地法の運用を農業委員会が所掌していることにかんがみ、これら事業主体市町村等でありますので、農地管理の二元化を招くおそれがあること、また、農用地区域内の開発行為の許可制の導入を設けておりますが、この区域内の農業経営等に著しい支障を及ぼす事態に対し手当てがなされていないこと等、改正案において必ずしも十分でない点も認められます。よって、これらの点を加えた修正案及び原案をもって対処することが妥当と考えられるのであります。  以上により、私は、四党共同提案による修正案及び原案に対し、賛成の意を表するものであります。  また、日本共産党・革新共同提案の修正案は、実に現実離れをしたナンセンスなものであり、よって、これに対し強く反対するものであります。  以上で私の討論を終わります。(拍手)
  91. 澁谷直藏

    澁谷委員長 諫山博君。
  92. 諫山博

    ○諫山委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  歴代自民党政府農業破壊の経済政策のもとで、農業基本生産手段である農地は年ごとに減少を続け、昭和三十五年に比べて五十万ヘクタールも減少し、また、低農産物価格の押しつけによって耕作放棄や裏作の減少が顕著になり、耕地利用率は、昭和三十五年の一三四%から四十八年には一〇〇%にまで落ち込んでいます。  一方、農地価格は大企業の土地投機の影響で大幅に高騰し、経営面積の拡大を望む農民にとって土地取得は全く絶望的な状態となっています。  このような今日の土地問題を解決するためには、大企業の土地収奪をやめさせ、大幅な国費助成による農地の積極的拡大及び土地利用の向上を図るための土地基盤整備の強化や不作付地の復元に対する援助などが重要であります。  ところが、本改正案は、今日の土地問題を生み出した最大の元凶たる大企業本位の高度経済成長政策の一環である開発政策、都市政策に従属したまま、その枠組みの中で残地を囲い込み、その中だけでの農業振興という現行法の反農業的制約を打ち破るものではなく、したがって、今日の土地問題を解決し、日本農業再建の第一歩を踏み出すに足るものとはとうてい言えません。  改正点について言えば、第一に交換分合でありますが、これは、優良農地として残すべく線引きされたはずの農用地区域内の農用地の転用を容易にするものと言わざるを得ず、現在すでに五百八十万ヘクタールから四百四十万ヘクタールに減少されている農用地区域をさらに縮小することにつながるもので、認めるわけにはいきません。  第二に農用地利用増進事業についてであります。もとより、わが党はこの事業を一般に否定するものではなく、その最も大事な前提として、農民の自主性を尊重し、事業を民主的に運営することによって中小農民の利益を守り、農地法基本理念を発展させることこそが必要であると考えております。しかしながら、本改正案のどこを見ても、農民の自主性を尊重し、民主主義的運営を行うという保証は見当たりません。さらに、利用権設定を受ける者の備えるべき要件の定め方や、この事業がいわゆる中核的担い手育成策の重要な柱であることなどから考えると、初めから下層農家土地を上層農家に貸し出させることが前提となっていると断ぜざるを得ないのであります。  このようにいたずらに一部上層農中心の構造政策を追うことの非は、農業基本法成立以来の経過から明らかであり、真剣に全農家の利益を図るための自主的、民主的集団管理によらなければこの事業の成功もおぼつかないことは明らかです。  さらに、自、社、公、民四党共同提案の修正案について言えば、これが農用地利用増進計画を定める際の農業委員会の役割りを明確にしたことや、開発行為の制限について、勧告という不十分なものであれ、農用地区域以外の農振地域にも制限を及ぼしたことなどの意義を評価するにやぶさかではありません。しかし、このことをもってさきに指摘したような本改正案の問題点が解決するとはとうてい言えないのであります。  以上の立場から、わが党は本改正案に反対の態度を表明するとともに、さきに提案したわが党の修正案の実現こそが今日の土地問題の解決の一助になることを重ねて指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  93. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  94. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより採決に入ります。  まず、津川武一君外二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 澁谷直藏

    澁谷委員長 起立少数。よって津川武一君外二名提出の修正案は否決されました。  次に、芳賀貢君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  96. 澁谷直藏

    澁谷委員長 起立多数。よって、芳賀貢君外三名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 澁谷直藏

    澁谷委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  98. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、本案に対し、芳賀貢君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、ただいま修正議決されました農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近における国際的な食糧需給のひつ迫等農業をめぐるきびしい諸情勢に対処し、国民食糧の安定的供給体制の確立が緊急の課題となつていることにかんがみ、政府は、食糧自給度の向上を基本とする農業生産長期見通しを早急に樹立し、これに即して、農用地及び水資源の確保と高度利用生産基盤の整備担い手確保等の諸対策を総合的かつ強力に推進するとともに、本法の運用に当つては、農地法基本理念を堅持し、耕作者の地位の安定をはかる等、左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。       記  一、農業振興地域においては、各般の施策を総合的一体的に集中実施し、特に生産基盤の整備農業近代化施設等については、国の高率補助、融資の優遇等の措置を採用するとともに立ち遅れている農村の環境整備を促進するため農村総合整備事業等を拡充強化すること。  二、農業利用する土地、必要な水源等を確保保全するため、農業振興地域整備計画の作成又は変更及び交換分合等にあたり、これらを農用地区域内に積極的にとり込むよう強力に指導すること。  三、不耕作地、買占められて放置されている農用地及び農用適地等については、農業委員会のあつせん、農地保有合理化法人及び農業協同組合の受託事業等の制度を積極的に活用して売渡しあるいは長期貸付けが行われるよう措置すること。  四、農用地利用増進事業実施に当たつては、農家の意向、農地利用の動向等からみて事業実施条件が熟した地域において、農業委員会農業協同組合等の参加を得て推進体制を整備し、地域農業者の自主的な農用地利用調整を基礎として実施するとともに、安定継続して耕作できるよう利用権の存続期間及び継続設定につき適切な指導を加え、また、借受人が投下した有益費の公正確実な回収が図られるよう指導すること。  五、特定利用権制度の運用に当たつては、できるかぎり協議により対象農用地の安定的利用に留意して設定するとともに、特定利用権の存続期間満了後においても当該農用地が有効に利用されるよう、合意による継続使用農地保有合理化促進事業の活用等につき適切な指導を行うこと。  六、国土利用計画法に基づく国土利用計画及び土地利用基本計画の作成に当たつては、農用地及び農用適地等が十分確保されるよう配慮すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、委員各位の熱心な質疑の過程で十分御承知のことと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますよう、お願いいたします。(拍手)
  100. 澁谷直藏

    澁谷委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対して、別に発言もありませんので、直ちに採決いたします。  芳賀貢君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 澁谷直藏

    澁谷委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、政府の所信を求めます。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の趣旨を十分尊重いたしまして善処してまいる所存でございます。     —————————————
  103. 澁谷直藏

    澁谷委員長 ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  105. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会      ————◇—————