運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-03-06 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月六日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 坂村 吉正君 理事 中川 一郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 井上  泉君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       足立 篤郎君    愛野興一郎君       今井  勇君    片岡 清一君       熊谷 義雄君    近藤 鉄雄君       佐々木秀世君    本名  武君       上原 康助君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       竹内  猛君    安井 吉典君       栗田  翠君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    小宮 武喜君  出席政府委員         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         農林政務次官  江藤 隆美君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省食品流通         局長      森  整治君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部景         品表示指導課長 利部 脩二君         経済企画庁調整         局経済協力第一         課長      谷村 昭一君         環境庁企画調整         局環境保健部保         健業務課長   竹中 浩治君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 遠藤  茂君         沖繩開発庁振興         局振興第二課長 星野 省松君         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         大蔵省関税局企         画課長     松尾 直良君         農林省農林経済         局統計情報部長 吉岡  裕君         通商産業省貿易         局農水課長  瀧   巖君         会計検査院事務         総局第四局長  桜木 拳一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     近藤 鉄雄君   野坂 浩賢君     上原 康助君   美濃 政市君     安井 吉典君   諫山  博君     栗田  翠君   神田 大作君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     金子 岩三君   上原 康助君     野坂 浩賢君   安井 吉典君     美濃 政市君   栗田  翠君     諫山  博君   小宮 武喜君     神田 大作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤鉄雄君。
  3. 近藤鉄雄

    近藤委員 カドミイタイイタイ病関係について、本日、政府関係の方に御質問をしたいと思うわけでございます。  私の選挙区であります山形県南陽市にもいわゆるカドミ公害というものがございまして、そのために地元の農民が非常に迷惑をしているわけであります。しかし、いろいろ調べてみますと、カドミ問題がこれだけ社会的、政治的に大きな関心事になりましたのも、かつて富山県の神通川流域イタイイタイ病が発生して、このイタイイタイ病原因カドミではないかというような考え方から、したがって、カドミというものが人体にとって大変恐ろしい重金属であるというような一連の考え方から、いわゆるカドミ汚染地域という考え方が出てまいりましたし、また、いわゆるカドミ汚染米という考え方が出てきたと私は考えるわけであります。  しかし、最近になりまして、カドミイタイイタイ病関係というものが必ずしも正しいものじゃない、むしろ、異常な前提や仮説に立っていたこの関係が、社会的な混乱の中で早急に否定されてきたんだというような認識が高まりつつありますし、その基礎になりました厚生省見解というものが、その後の科学的な研究によってもどうも十分に証明されていないということが漸次わかってきたわけであります。  実は、私は、前国会におきまして、公環特農水、商工の各委員会でこの問題を取り上げまして、政府にただしたわけでございますが、そのときにおきましても十分納得のいくような御説明を私は得ていなかったわけでありますが、しかし、最近また、「文芸春秋」二月号の中で「イタイイタイ病は幻の公害病か」という記事が出まして、イタイイタイ病カドミ関係についてあらためて重大な疑問点が指摘されまして、この「文春」の記事を与野党が取り上げまして、さきの予算委員会なり、決算委員会なり、そして公環特等で再び関係委員方々から問題が指摘されてまいっているわけであります。まさに、カドミ人体に果たしてどれだけの影響があるのか、また、それがイタイイタイ病と本当に関係があるのか、そして、その関連でのカドミ米と言われているものの取り扱いをめぐって、果たして政府が正しい取り扱いをしてきたのかどうか、これが国会においてただされるべきであると私は思うのであります。カドミ米が発生したことによって、非常な経済的、社会的な負担をみんなが担っているわけでありますので、この点についてしっかりした議論を尽くしていく義務が国会にある、と、かように私は考えているわけであります。  そこで、時間も制約されているようでありますから単刀直入に御質問したいと思うわけでありますけれども、いわゆるイタイイタイ病というのは一体どんな病気なのか。私がいろいろ調べてみましても、イタイイタイ病があり、骨軟化症があり、また、同じ骨に関する病気として骨粗しょう症があるわけであります。そういうイタイイタイ病に類似の病気があるわけでありますけれどもイタイイタイ病骨軟化症骨粗しょう症等は、一体、それぞれどういうふうにその症状が違うのか、どこが同じでどこが異なっているのか、それを簡潔に環境庁担当官から御説明を得たいわけであります。  実は、環境庁環境保健部長橋本氏がこの問題のわが国における最高の権威者でありますので、御本人から直接私は承りたいと思っておったわけでありますけれども橋本部長がお見えにならないようでございますので残念でございますけれども、かわって保健業務課長竹中さんが来ているそうでありますから、竹中さんから、イタイイタイ病骨軟化症骨粗しょう症がどう違うのか、われわれ素人にわかりやすく簡潔に説明してもらいたいと思います。
  4. 竹中浩治

    竹中説明員 先生がお挙げになりました三つの病気症状の違いでございますが、簡単に申し上げますと、まず、骨軟化症というのは成人のくる病と言われておりまして、骨の中の灰分が非常に減少し、やわらかくなる。ただ、中年以上の多産婦に必ずしも限定をせず、骨がやわらかくなりますので、湾曲、変形等がございます。また激しい痛みを伴うものでございます。  それから、骨粗しょう症は主として老人に見られるものでございまして、骨が萎縮する。先ほど申しました軟化症の場合は灰分の減少が目立つわけでございますが、そういった質的の変化はございませんで、全体として萎縮をする。骨が変形をし、あるいは骨折をすることが多い。痛みも伴いますけれども軟化症ほど激しい痛みではないと言われております。  イタイイタイ病でございますけれども、御承知のように、腎臓尿細管障害、それから骨軟化症が見られるわけでございまして、激痛あるいは病的骨折骨変形等が起こります。ただ、骨軟化症と違います点は、尿細管障害と、それから中年以上の多産婦に多い、あるいはカドミ汚染地域で発見されておるといった点が違いかと考えております。
  5. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、いま御説明を聞いても、イタイイタイ病骨軟化症の違いがあまりはっきりしないようでありますけれども、そういうイタイイタイ病骨軟化症が出ているわけでありますが、しからば、そういう違った症状をもたらす原因について環境庁はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  6. 竹中浩治

    竹中説明員 原因でございますけれどもイタイイタイ病につきましては、カドミウムプラスアルファビタミンD欠乏とか、低栄養とか、あるいは妊娠とか、そういうもののように私ども理解をいたしております。  骨軟化症につきましては、これは、ビタミンDの摂取の不足あるいは先天的な酵素異常等によりましてビタミンDが活性化されないとか、あるいはファンコニー症候群、そういったものによって骨軟化症が起こる。  それから、骨粗しょう症につきましては、これは、大部分は、老化に伴います性ホルモンの分秘の低下でございますとか、あるいは栄養不足とか、こういった点が骨粗しょう症原因だと理解をいたしております。
  7. 近藤鉄雄

    近藤委員 しからば、そういうような原因に対して、一体どういうような治療をすればそれぞれよくなるというふうに考えておられますか、承りたい。
  8. 竹中浩治

    竹中説明員 治療法でございますが、骨軟化症は、先ほど申し上げましたようなビタミンD不足というものが大きな原因でございますので、ビタミンD療法、それから紫外線の照射あるいはカルシウム投与等が有効でございます。  骨粗しょう症につきましては、老化現象に伴いますものでなかなかむずかしゅうございますけれども男性ホルモン女性ホルモンの併用あるいはたん白同化ホルモン、高たん白食を与えるといったようなことが有効な場合がございます。  それから、イタイイタイ病につきましては、ビタミンD大量療法一般に少量では効果がないとされております。ただ、大量療法を行います場合には、腎の障害に注意しながら投与するということが必要とされております。なお、同時に、たん白同化ホルモンをあわせて投与することが有効だというふうに言われております。
  9. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、この問題について最後にちょっと承りたいのですが、この病人イタイイタイ病であり、この病人骨軟化症であり、この病人骨粗しょう症であるという判定一体どういう基準でしておられるか、承りたいと思います。
  10. 竹中浩治

    竹中説明員 三疾病の判定と申しますか、鑑別ということでございますが、骨軟化症につきましては先ほど申し上げたようなことでございまして、一般的にはやはりレントゲン骨粗しょう症鑑別するということが行われておるわけでございまして……
  11. 近藤鉄雄

    近藤委員 それの関連ですが、レントゲンで判別する場合ですね。骨軟化症骨粗しょう症レントゲンでわかるわけですね。しかし、それじゃイタイイタイ病骨軟化症レントゲンでわかりますか。
  12. 竹中浩治

    竹中説明員 イタイイタイ病は、先ほど申し上げましたように、骨の変化といたしましては骨軟化症が主体でございまして、骨粗しょう症も併存するということでございます。したがいまして、骨のレントゲンの上でイタイイタイ病骨軟化症を区別するのは非常に困難かと思っております。あるいは、むしろ同じような像を呈すると考えたほうがいいのではないかと思います。
  13. 近藤鉄雄

    近藤委員 骨軟化症の場合も、骨粗しょう症一緒に起こった場合もあるわけですね。ですから、これもレントゲンで見て、これは骨軟化症割合が多いとか、これは骨粗しょう症割合が少ないとか、そういう程度の違いでしかない。実際問題として、イタイイタイ病も、骨軟化症も、骨粗しょう症も、レントゲンで見る限りは、全くその程度の違いでしかないと考えてよろしいですか。
  14. 竹中浩治

    竹中説明員 骨軟化症骨粗しょう症鑑別でございますけれども、確かに非常にむずかしい面がございますが、レントゲンの上では、骨軟化症につきましては骨改変層が見られるが、骨粗しょう症ではそれが見られない。あるいは、病理学的な所見では類骨細胞の増加が骨軟化症に見られるが、骨粗しょう症では見られないといったところが鑑別点だと聞いております。  ただおっしゃいますように、レントゲン鑑別するのは非常にむずかしいことは確かでございます。
  15. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、さっき課長がおっしゃったのですけれどもイタイイタイ病の場合には腎臓がやられているということですけれども、これは何で判定いたしますか。
  16. 竹中浩治

    竹中説明員 イタイイタイ病の腎の所見は、腎の尿細管障害でございます。そこで、それを見つけ出しますには、尿の中に低分子たん白が出てくる。一般には電気泳動法でそれを確かめるという方法をとっております。
  17. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、まさに、腎性尿細管変化しているということがイタイイタイ病骨軟化症の違いだというような言い方を課長がされたわけでありますけれども、しからば、腎性尿細管変化というのは、一体、具体的にどういうふうに腎臓が変わっているのですか。それが変わることによって一体どういうふうに骨が影響を受けるのですか。
  18. 竹中浩治

    竹中説明員 腎臓尿細管という部分がございまして、その部分腎臓で再吸収を行うところでございます。そこの腎の尿細管が機能異常を起こしまして、再吸収が悪くなるということでございます。特に、イタイイタイ病の場合には、尿細管のうちで近位尿細管という部分がやられるわけでございますが、ここがやられますと、糖とか、たん白とか、あるいは電解質等の再吸収が侵されるわけでございまして、イタイイタイ病におきます尿細管変化骨軟化症との関係につきましては、一般には、尿細管障害で、血中の、特に燐の再吸収が損なわれて失われるわけでございます。それによりましてアチドージスを起こし、あるいはカルシウムも同時に失われるというようなことから骨の変化を生ずる、そういうふうに理解をいたしております。
  19. 近藤鉄雄

    近藤委員 しからば、腎性尿細管変化というものがいろいろと吸収率を悪くするといういまの話ですが、しかし、そういう尿細管変化する原因は何で変化するのですか。どういう原因からそういう変化がもたらされるか、承りたい。
  20. 竹中浩治

    竹中説明員 尿細管障害発現率といいますか、そういうものについては必ずしも多くはないわけでございますが、原因としましては、大まかに分けまして、遺伝的な疾患と、それから後天的に起こるものがございます。いまの問題といたしましては後天的なものが問題になろうかと思うわけでございますが、それといたしましては、たとえばビタミンD欠乏でございますとか、あるいはネフローゼ症候群とか、あるいは急性腎不全回復期でございますどか、それに重金属、特にカドミウム等重金属の中毒といったような原因があると聞いております。
  21. 近藤鉄雄

    近藤委員 ですから、まさに腎性尿細管病変化というものの原因がいろいろあるわけでして、カドミ原因であるかもしれないけれども それは数多くの原因の中の一つでしかない、と、こういうふうに了解していいわけですか。
  22. 竹中浩治

    竹中説明員 そのとおりでございます。ほかにも原因があるということでございます。
  23. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、逆に、今度は、腎性尿細管病変化判定する基準として、低分子たん白が尿中に出るということですけれども、低分子たん白が出るのは腎性尿細管変化があるからだけですか。
  24. 竹中浩治

    竹中説明員 ちょっとむずかしい御質問でございますけれども、低分子たん白が尿に出ますのは、原則的には、やはり、尿細管における再吸収の阻害以外にはちょっと考えにくうございますので、まず、尿細管変化以外では低分子たん白の尿中に出るというものはまずないのではなかろうかと考えております。
  25. 近藤鉄雄

    近藤委員 一体、いわゆるイタイイタイ病患者というのは何歳の人ですか。
  26. 竹中浩治

    竹中説明員 現在は大部分高齢者でございます。発生当時は、いまちょっと数字を持ってまいっておりませんが、大体若くても四十歳、それから五十歳、六十歳、その辺でございます。
  27. 近藤鉄雄

    近藤委員 率直に言って、非常に子供をたくさん生んだ貧しい農家の御婦人なわけでありますから、若干腎臓がやられているというようなことは、必ずしもカドミを経口摂取したからということじゃなしに——先ども課長からいろいろな原因があるのだというふうに言われたわけですが、したがって、単純にカドミから尿細管がやられて、それが今度骨に行くという厚生省見解の単純な理屈というものは、科学的に考えてみて十分な根拠のあるものではない。むしろ、いろいろなときにいろいろなことをやるわけですけれども、その中で、一つ原因、結果のチェーンをあえて強引に結論づけたというふうには解釈できませんか。
  28. 竹中浩治

    竹中説明員 確かに、先生のおっしゃいますように、骨軟化症という病気イタイイタイ病とは別の原因で起こる。あるいは、尿細管障害にしてもしかりでございます。そこで、それがたまたま両方がダブった人が出てくるということは当然あり得るということでございますが、ただ、そこで問題といたしましては、尿細管障害というものも、八十歳とかあるいは七十五歳以上という老人の方にはある程度の率が見られますけれども、いずれにしても、そう頻度の高いものではない。それから、特に成人骨軟化症というものはきわめてまれな疾患だというふうにされておるわけでございまして、その二つがたまたま一緒になる確率というものは非常に少ない。したがって、神通川流域におきましてあの程度の多発が見られたわけでございますが、それを偶然の結果というふうに理解するのはとても無理なんで、私どもとしては、やはりカドミ汚染プラスアルファというものが原因だというふうに考えておるわけでございます。
  29. 近藤鉄雄

    近藤委員 重症骨軟化症がまれな病気だという話ですけれども、しかし、ある意味ではイタイイタイ病も大変まれな病気なわけで、しかも、神通川流域以外のいわゆるカドミ汚染地域について環境庁さんが調査されているわけですけれども、しからば、同じ程度カドミ汚染地域においてイタイイタイ病が発生しておるのですか。
  30. 竹中浩治

    竹中説明員 カドミ汚染地域につきましては、私ども暫定対策要領によりまして健康調査を実施いたしておるわけでございまして、その結果、かなり判断のむずかしいものにつきましては中央の鑑別診断班で逐次検討を重ねてきたわけでございます。現在までのところ、神通川流域以外にはイタイイタイ病とみなされる典型的な症例はなかったわけでございます。ただ、ことしの二月二十四日に鑑別診断班が開催されたわけでございますが、そのときに、長崎県から出てまいりました二例につきまして、これも典型的なイタイイタイ病患者とは必ずしも言えないわけでございますが、なお精密な検査が必要とされる、あるいは……(近藤委員「それは具体的にどういう症状イタイイタイ病と似ているのですか」と呼ぶ)この例はいずれも腎尿細管障害はもちろんあるわけでございまして、あと、レントゲン骨軟化症はまずなかろうというのが大体の判断でございましたが、できれば病理的な検査もして確認をしたいというような御意見でございます。
  31. 近藤鉄雄

    近藤委員 そういうような、まずなかろうが、よくよく調べてみると骨が若干やられているかもしれないみたいなものは、カドミウム汚染地域じゃなしに、大体日本全国骨軟化症とか骨粗しょう症という名前があるのですから、数名はいるわけですね。そういう点はどうですか。
  32. 竹中浩治

    竹中説明員 おっしゃるとおりでございます。骨軟化症はもちろん少ないことは少ないわけでございますが、ないわけではございません。  それから、もう一つ、恐縮でございますが、その二月二十四日の鑑別診断班におきまして、例の生野の二例もやはり検討が行われまして、その一例につきまして、特に、生前のレントゲンその他の臨床所見骨軟化症所見があるという意見もございまして、これは結局結論は出ませんで、今後さらに検討されるということになっておるわけでございます。
  33. 近藤鉄雄

    近藤委員 ここに「昭和四十九年度鑑別診断研究部会 検討結果」というのがあるが、これは昭和五十年二月二十四日に開かれておる。恐らく課長もこのことをおっしゃったのだと思うのですが、この最後を読みますと、「環境庁依頼による兵庫生野地区剖検例検討」として、「故Y・K氏(男八十三歳)および故K・A氏(女七十四歳)」とある。大変高齢なんですね。そして、その「剖検ならびに臨床所見検討した結果、病理学的には骨軟化症存在は否定されたが、腎の異常所見は認められており、また臨床的にはK・A氏に」——「K・A氏」というのは、この二人のうちの一人の女性ですが、「K・A氏に骨軟化症所見をありとする意見もあるので、」となっている。ですから、私はあえて申し上げたいのですけれども、八十三歳とか七十四歳の日本の御老人方々をいろいろ詳しく調べてみると、骨軟化症が若干あるかもしれないという程度の人は、繰り返して申しまして、カドミウム汚染地域以外のところにだってあると思うのですが、そういう調査環境庁としてはしていらっしゃいますか。
  34. 竹中浩治

    竹中説明員 実は、カドミ総合研究班におきまして、現在、各大学病院等を対象にいたしまして、カドミ汚染と無関係骨軟化症がどの程度あり、あるいはその原因と考えられるものは何であるかという調査を実施いたしておりまして、この 点につきましては今年度内、つまり今月中にはその研究がまとまって発表がされるものと思っております。
  35. 近藤鉄雄

    近藤委員 イタイイタイ病骨軟化症の違いは腎性尿細管変化であると課長が言うわけですけれども、その腎性尿細管変化があるかないかは尿中低分子たん白存在で決める、こういうことで判定するということでありますけれども、いわゆるカドミウム汚染地域以外の御老人に対して、低分子たん白が尿中にある方の調査をしていらっしゃるかどうか。
  36. 竹中浩治

    竹中説明員 非汚染地域の低分子たん白陽性者の問題でございますが、先ほどから申し上げておりますイタイイタイ病総合研究班研究の一環といたしまして、四十八年度に兵庫県で、六十五歳以上の寝たきり老人の、いまの尿細管障害調査がございます。それから……(近藤委員「その結果はどうですか。何人中何人発生したのですか。あるいは発生しなかったのですか。」と呼ぶ)  その結果、四百十九名、およそ男女半々でございますが、調査をいたしまして、尿細管障害が見つかりましたのが十六名、三・八%でございます。  それから、なお、現在……(近藤委員「それは非汚染地域ですね。」と呼ぶ)さようでございます。
  37. 近藤鉄雄

    近藤委員 長崎県とか兵庫県においては、何人調査して、何人低分子たん白が出ているのですか。
  38. 竹中浩治

    竹中説明員 兵庫県でございますが、産米中のカドミ量が〇・四から一・〇の間の汚染地域農家につきまして調査をいたしました結果では、これは老人ばかりではございませんで、もっと低年齢層からやっておるわけですが、このときは、尿たん白、つまり尿細管障害でございますが、これが七・九%、それから同じ生野周辺で、〇・四以下の農家では一・二%、それから〇・四から一・〇のところでの非農家農家以外のところでは一・一という数字が出ております。  それから、もう一つ、これは秋田の小坂町のデータでございますか、百七十一例中八例、四・七%という数字が出ております。
  39. 近藤鉄雄

    近藤委員 問題は、腎性尿細管変化というものが一体本当に病気なのか、それともいわゆる老化現象なのか、その辺がどうも私ははっきりしないと思うのです。これは厚生省環境庁のどちらに承ればいいかわかりませんが、われわれがいわゆる人間ドックに入りますね。そのときに、私はまだ入ったことないので何を検査されるか知らないのですが、人間ドック人体にいろいろな障害が出ているか出ていないかの判定に、腎性尿細管変化というもののチェックをしているのですか、していないのですか。
  40. 竹中浩治

    竹中説明員 人間ドックでどういう形が行われているか十分承知をしておりませんけれども、御存じのように、人間ドックでは、当然のこととしまして、尿にたん白が出ているか出ていないかという検査はやるわけでございまして、それでたん白が出ておれば、恐らく、大部分人間ドックでは、そのたん白がどういう種類であり、あるいはその原因は何かという追求はされるんだろうと思います。
  41. 近藤鉄雄

    近藤委員 それは普通の……。
  42. 澁谷直藏

    澁谷委員長 近藤君、発言を認めてからやってください。
  43. 近藤鉄雄

    近藤委員 それは普通のたん白じゃないのですね。低分子たん白がいま問題になっておるわけですよ。率直に言って、人間ドックなんかでは低分子たん白調査をしていないのですよ。すなわち、低分子たん白調査をしていないということは、仮にそれが腎性尿細管病変に基づいているものにしても、それは通常の形の病気であるということになる。人間の体がどこか悪いんだということではなしに、たまたまある程度年をとればそういうものが出るということなんであって、その病気ではないことになる。言いかえると、腎性尿細管変化が非常に悪いものであって、それが骨を傷め、骨軟化症を生じ、または骨粗しょう症というものを生ずるとすれば、人間ドック検査においても当然これが含まれるべきだと私は思うのですけれども、含まれていないということは——時間がないので私はこの問題を余り突っ込んで議論できないのは残念ですけれども、いわゆるイタイイタイ病が、カドミ、腎、骨という関係を何とか無理をしてこじつけて、その原因、結果をつなごうという意図が出ているような感じがして仕方がないのです。  ここに、「救済制度におけるイタイイタイ病に係る公害病認定条件に関する研究」というものがあります。いわゆるイタイイタイ病の認定の基準ですが、この「昭和四十六年度環境庁調査研究委託事業報告書」の中に、この問題の権威者である重松先生が書いておられるわけでありますけれども、私はこれを読んで非常におかしいと思ったのであります。「イタイイタイ病の認定条件」として、「I  カドミウム濃厚汚染地に居住し、カドミウムに対する暴露歴があったこと。」となっており、これが最大条件なんです。あと、レントゲンその他によって骨がどうだこうだと書いてありますけれども、これはほかの骨軟化症とか骨粗しょう症と全く差がない。したがって、そういうある病人がおられて、これがイタイイ病かイタイイタイ病でないかの判定はただ一つなんです。最後の違いはこれだけなんです。その方がカドミウムの濃厚汚染地に居住しておって、そのカドミウムに対する暴露歴があったかないかだけで、同じような病人の人を、この人はイタイイタイ病だと言い、この人は骨軟化症だと言い、骨粗しょう症と言う。これがその基準になっているわけですので、私は、これは非常に独断的な基準であると断ぜざるを得ない。もしも実際の骨の関係とか、また腎の関係とか、血液の関係とか、そういうその他のことでイタイイタイ病骨軟化症判定できるならば、何も最初の大前提として、「カドミウム濃厚汚染地に居住し、カドミウムに対する暴露歴があったこと。」なんて要らないわけです。そうでしょう。どうですか。
  44. 竹中浩治

    竹中説明員 先生のお話しはイタイイタイ病の認定要件でございますが、これは御承知のように、カドミウム汚染地域で健康診断、健康調査をやりました場合の判定の、認定の要件というわけでございますが、公害による疾病というのはすべて量反応の関係と申しますか、汚染の量に比例をしまして、相関をいたしまして患者の発生が高まるということでございます。したがいまして、単にイタイイタイ病だけではございませんで、水俣病あるいは砒素中毒その他につきましても、公害疾病の認定の要件といたしましては、そういう暴露歴があることがやはり前提になるわけでございまして、同じ汚染のないところあるいは汚染地域であっても、摂取をしていないということが明らかな方につきましては公害病であるイタイイタイ病とは認定はできない、そういう趣旨で第一項にいま先生お話しの項目が入っているわけでございます。
  45. 近藤鉄雄

    近藤委員 ですから、繰り返し申しますように、イタイイタイ病イタイイタイ病ではないかという基準が、カドミ汚染地域におったかおらなかったかということで決めるのは大変独断的なんであって、それ以外のことで決めるなら理屈があると私は思うのでありますが、そこで、もう時間がありませんから環境庁に強く要望しておきたいわけでありますけれども、四十三年のいわゆる厚生省見解なるものを、その後の研究結果に合わせてもう一回整理して——私かいま指摘をしましたようなことや、その他たくさんあるのですが、時間がなくて言い切れないのが残念ですけれども、私みたいな素人が見たっておかしいことがたくさんあるのですから、これは早急に整理をしていただいて、厚生省見解なるものに対する新しい見解を環境庁で出していただきたいのですが、いつごろまでに環境庁としての結果を出していただけますか。
  46. 竹中浩治

    竹中説明員 イタイイタイ病厚生省見解につきましては、特に、「腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、」というこの「次いで」という文字につきまして、先はどから先生がおっしゃっています問題を含めましていろいろと学問的論争が非常に活発に行われておることは確かでございます。しかしながら、私どもは、現在の段階で、いま直ちに厚生省見解を修正する必要はないのではないかと思っておりますが、ただこの点についての研究が従来以上に推進をして、その結果、もし必要な場面が生じましたならば修正することにやぶさかではないわけでございます。  できるだけ早くそういった面の研究の推進を図ってまいりたいと思いまして、最大の努力をいたしたいわけでございますが、大変恐縮でございますが、いつまでにそういう研究が完了するかどうかにつきましては、ちょっとこの場で申し上げることができないわけでございます。
  47. 近藤鉄雄

    近藤委員 まさに、厚生省見解は、カドミ、腎、骨と非常に単純な関係で結論を出しているわけでありますが、非常に短時間の間に私が数点御指摘しただけでも、いかにあの見解がその後検討し直さなければならないものということがすでに明かだと思うのですね。大体、イタイイタイ病というものが問題になってからもうかれこれ十年近くなるわけですが、その間に厚生省見解というものが出たのが四十三年ですから、もう七年でしょう。あれは草々の間にやったのですから、やむを得ないのですけれども、この七年間の実績を踏まえて、ああいう単純直截な見解については、現段階で、少なくともこういう点が問題でこういう点はこうだというようなことぐらいは、一応の暫定的なものでも結構ですから今国会中ぐらいにでも早急に出していただきたいと私は思うのですが、きょうは部長も長官もお見えになっておられないので、課長、帰られたらよくその点をお伝えいただきたいと思うわけであります。  同時に、いままで私がかなり繰り返し申しておりますように、日本にはいろいろと同じような症状の人がいるわけですね。骨軟化症骨粗しょう症、そして低分子たん白が尿中に出る人もたくさんいらっしゃるわけでありますが、従来の環境庁調査カドミ汚染地域に限定して、それだけを一生懸命調査して、カドミがあった、さあ腎がやられた、さあ骨がやられたということなんであります。先日の予算委員会で秋田県選出の笹山先生がおっしゃっておったわけでありますけれども、笹山先生の選挙区のある町などは、いわゆるカドミ汚染地域の御老人の方の割合がその他の地域の御老人の方よりも多い。六十歳以上が町全体の平均で住民の一四%だけれどもカドミ汚染地域では一七%だということをおっしゃっている。だから、これを非常に単純に考えれば、これまたカドミを食べている人の方が長生きするという議論も、厚生省さんや環境庁さんがやったと同じような理屈を逆にたどっていけば、できないとも言えないと私は思うのでありますから、従来の調査カドミ汚染地に限っておったのを、幅を広げて、全国的に御老人方々の低分子たん白一体どの程度出ているのかということと、それから骨軟化症はどうなのか、骨粗しょう症はどうなのかということについて、時間ないから答弁はいいですから、早急に徹底的にこれをやっていただきたい。全国に寝たきり老人の方がたくさんいらっしゃるわけでありますから、その方々健康調査をするときにその低分子たん白調査をあわせてやるのか、これは一カ月もあればできることだと思いますので、この調査を大至急やって、そして結論をひとつ出していただきたい、私はかように思うわけであります。  こういうふうにカドミイタイイタイ病関係というものが非常に混乱をしておって、まだ、客観的な、科学的な証明、検証にたえるものじゃないと私は考えているわけでありますけれども、そこで厚生省の環境衛生局長に承りたいわけでありますけれども、米の安全基準カドミ一PPMというふうに決められたのはたしか四十五年ですか、決めていらっしゃるわけですけれども、なぜそのように決められたか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  48. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 米の中のカドミウムの安全基準を一PPMに定めました際の基本的な態度をまず申し上げたいと思うわけでございますが、米はわが国の国民の主食でございますので、非常にその安全率を高く見積もってこの基準を策定したわけでございます。  それで、この基準を策定するにあたりまして使用いたしましたデータでございますが、これにもいろいろな考えがあったわけでございますけれども、一応われわれが一PPMの基準を定めました際使用いたしました実験はアンワーの行った実験でございます。このアンワーの行った実験というのは、四つの段階の濃度のカドミウムを含む水を犬に与えまして、四年間の観察を行っておるわけでございまして、この際の実験が最高一〇PPMの濃度の水を与えておるわけでございまして、四年間何ら異常を認めなかったというデータでございます。この最高の一〇PPMを体重当たりの摂取量に直しますと、体重一キログラム当たり千マイクログラムのカドミウムということになるわけでございまして、この千マイクログラムというものをわれわれの体重で換算いたしました場合にどのくらいになるかということでございますが、この際七十五倍という安全率を使用いたしまして計算をいたしておるわけでございます。すなわち、体重一キログラム当たり十三・三マイクログラム、これを五十キログラムの成人に換算いたしました場合には六百六十五マイクログラムという数字になるわけでございまして、この六百六十五マイクログラムから、米以外の食品、すなわち野菜類とかあるいは水からもわれわれカドミウムを摂取いたしておるわけでございまして、その量が百六十五マイクログラムでございますので、その量を差し引きまして、われわれが米から摂取可能なカドミウム量を五百マイクログラムと計算いたしたわけでございます。  われわれ人間が一日に一体どのくらいの米を食うかということでございますが、昭和四十一年の国民栄養調査によりますと、米の一日平均摂取量が三百三十四・七グラムでございますが、これは平均値でございますので、米を非常にたくさん食べる人のことを計算いたしまして、これが一日五百グラム米の飯を食べるといたしまして計算いたしますと、先ほどの数値をこの五百グラムで割りますと一PPmという、かような数字になっておるわけでございます。したがいまして、この一PPmの数字を算定いたしますには、ただいま計算上いろいろな条件を申し上げたわけでございますけれども、そういった条件で非常に安全率を高く見積もってこの一PPmという数字を計算いたしております。
  49. 近藤鉄雄

    近藤委員 いまの局長の御説明ですが、私は、実は、この前の委員会でもこの問題を取り上げたことがあるのですけれども一体人間が一日五百グラム食べるのかどうか。これは最近は局長もおっしゃっておるように、三百三十四と解したということでありますから、非常な安全率を見ている。それから、アンワーの実験でありますけれども、一〇PPmの水を四年間与えたということですけれども、与えても何もなかったということでありますが、それは二〇PPmではやってみたのか。三〇PPmではやってみたのか。たとえて言えば、たばこを一本のんでオーケーだったから一本は大丈夫ということなので、二本ならどうだ、三本ならどうだ、四本ならどうだ、五本ならどうだという研究を全くしていない。これは率直に言って厚生省は怠慢だ。前にも私は申し上げたのですが、いまも改めて申し上げるわけであります。  さらに加えて、いわゆる水の状態のカドミウムですが、何か、酸化カドミウムの方が米とか何かに入っているカドミウムよりもいろいろ影響を与えるのだということでありますが、これも相当な安全を見ているわけであります。また、一方、七十五倍の安全率を見たということでありますけれども、聞くところによりますと、小動物は百倍の安全率を見て、中動物ですか、サルなんかは五十だ、犬は真ん中で七十五だということですが、これは頭の働きその他はサルと人間は似ているのですが、食べ物を考えますと、サルと人間よりも犬と人間の方が似ているんじゃないかという感じもいたします。ですから、私は、この一PPmという基準が非常な安全率を見た数字だというふうに断ぜざるを得ない。もう時間がありませんから局長から御説明を求めませんが、かつて、食品衛生調査会、微量重金属調査研究会のレポートの中で、それ以外の基準で一PPmを出している。たとえば労働衛生の見地からの基準も、二倍も三倍も非常な安全を見て計算をしておりますし、また、前に、カドミ汚染地域汚染地域でない仕分けをして、その場合に、脳中カドミウムの出る割合が三十マイクログラムパーリッター以上の者は第二次検診に回すというような、そういうような基準もつくっている。この基準のためには、やはり一PPm以下の米でなければならないというようなことか出ているようでありますが、これも私から言うまでもなく、いろいろと労働衛生の基準その他で出ているものを三倍にしろ、四倍にしろ、ということで決めているわけでありますので、私はこれは前にも厚生省にお願いしたわけでありますけれども、あのときに、これまた草々の間に決めた基準であります。あれから数年たっているわけでありますので、新しい研究によって改めるべきだと考えるわけでありますが、その点についてぜひ局長の御意見を承りたい。
  50. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘のように、ただいま暫定的に定めております基準の基礎の実験というものが必ずしも発症の最低濃度を示しているものではないわけでございます。(「公害か社労でやることじゃないか」と呼ぶ者あり一したがいまして、そういった発症し得る最低濃度の量の確定ということが必要かと思いますが、そういった点につきまして、ただいま国立衛生試験所におきましても種々実験を継続中でございます。  ただ、この慢性中毒の実験には非常に長時間を要するわけでございまして、ただいまのところ、いまの暫定基準を変えるような実験はまだ完成いたしておりませんので、さらに実験を継続してまいりたいと思っております。
  51. 近藤鉄雄

    近藤委員 時間がなくて恐縮ですが、それでは、一体いっその実験の結果が出るのですか。
  52. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に答えてください。時間がありません。
  53. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 早急に結果を出したいと思っております。
  54. 近藤鉄雄

    近藤委員 くどいようですが、早急とはいつですか。
  55. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 実験結果が出るのがいつかということを、ただいまこの段階で限定をするわけにはまいりませんので、できるだけ早急に結論を出したいと思います。
  56. 近藤鉄雄

    近藤委員 これは、さっきもそちらの方から、厚生か環境か、委員会がおかしいじゃないかというお話しなんですが、問題は、私たちが一番関心があるカドミ米取り扱いの問題で、こういうイタイイタイ病カドミ関係がはっきりしないじゃないですか。それから、一PPmの基準というのは、いま申しましたようにいろいろな安全を見て、こっちは倍にする、こっちは三倍にする、四倍、十倍にする、七十五倍までするというように、こういう非常な安全を見て一PPmという基準を決めているわけです。  そこで、最後食糧庁長官に実は承りたいのでありますけれども、こういうことであるにもかかわらず、あえて食糧庁が、〇・四から一PPmまでの米については政府が買い上げますが、配給もしない、また自主流通米にも認めないと言っておるのはどうしてですか。
  57. 三善信二

    ○三善政府委員 これには経緯がございますので、簡単にと申しましても、多少経緯を説明させていただきたいと思います。  と申しますのは、〇・四PPmという一つ基準、この数値でございますが、これは、実は、厚生省の方で、四十四年九月に、「カドミウムによる環境汚染暫定対策要領」というものをお決めになりまして、これによって、一般的に環境汚染調査地域のうちで特に精密調査を必要とするかどうか、その基準尺度として〇・四というものをお決めになったわけでございます。そのときに、この厚生省の「要領」の中にも実はこういうことがちゃんと書いてございます。「〇・四PPmという濃度は、さらに精密な調査を実施する必要性の有無を判断する尺度であって、安全とか危険とかいうような影響判断と直接結びつくものではない。」ということが言われているわけでございます。そこで、厚生省の方で、四十五年七月ですか、カドミウムの含有米の許容基準一PPmというものを決定して公表されたわけでございます。  そこで、私の方の食糧庁としましては、実は多少さかのぼりまして、四十三年ころから  これはいま先生が御指摘になりましたように、イタイイタイ病原因カドミウムであるというようなことが大体認められた時期でございますが、富山県の神通川流域から産出されました米について京都から——私ども、配給の操作上、消費県には生産県から米を回しているわけですが、京都の方からこの消費者の方から、配給に回してもらっちゃ困るということで、実は、富山県産米の流入を拒否されたということがございます。これは配給操作上非常に混乱を来たしました。実は、京都や奈良あるいは和歌山、愛知、大阪、大分、富山という県でいろいろとそういう問題が起こりまして、配給操作上、食糧庁としては非常に混乱を来たしたという実態がございます。  そこで、この〇・四PPmという一つの数値が、何となくこれは安全ではないんではなかろうかという感じを消費者の皆さんに持たれたのではなかろうかと思いまして、配給しましても受け取らないということでは、私ども、配給操作上それはできませんので、食糧庁としましては、この〇・四から一PPm未満の米は買い上げますが、配給には、現実にこれを拒否されていますので、ストップをしてきたという実態でございます。
  58. 澁谷直藏

    澁谷委員長 近藤君、遺憾ながらもう時間がきております。
  59. 近藤鉄雄

    近藤委員 あと一言だけちょっとお願いしたいのですが、長官が、食糧庁は消費者感情を考えながら、〇・四から一の米については、買い上げるけれども配給しないと言われたことは私は十分理解できるわけでありますけれども、しかし、いま私はこの委員会を通じて非常にくどく申し上げたんでありますけれども、イクイイタイ病とカドミ関係が非常に不明確であるだけでなしに、むしろ安全だというような考え方の方が強くなっていると私は思うのであります。  また、一方、それと関連いたしまして、一PPmというのは、大変くどいようですが、安全を見ての上での基準であるということでありますが、しかし、幾ら安全だと言っても消費者が食べなければ困るわけでありますが、たとえばわが山形県の南陽市の米について、〇・四から一PPmであってもぜひこれを配給に回してもらいたい、また、自主流通米で買いたいというふうに消費者が言ったら、食糧庁は配給していただけますか。
  60. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほど申し上げましたように、消費者感情の点からいまのような取り扱いをしているわけでございますが、私どもは、それが安全でないとか有害であるとか、いうようなことを考えているわけではございません。消費者感情からそういう措置をとっているということは重ねて申し上げておきます。  そこで、いずれにしましても、安全だからそれを配給にすぐ回せという御質問かと思いますが、やはり、消費者の方々が、これは安全である、有害ではないというようなことをもう少し理解していただかないと、配給しましても受け取らないというようなことでは何ともなりませんし、そういったPRと申しますか、これは食糧庁だけでできるものでもございませんし、やはり都道府県なんかと一体となって私ども今後努力していかなければならないというふうに考えております。
  61. 近藤鉄雄

    近藤委員 一言だけ最後にお願いしたいのですが……。
  62. 澁谷直藏

    澁谷委員長 もう時間が来ましたから、これで終わります。  上原康助君。
  63. 上原康助

    上原委員 私は、きょうは特にパイン問題でいろいろお尋ねをさせていただきたいと思います。  特に、沖繩のパイン産業の問題というのは、今日に始まったことではございませんが、最近、政府も御案内のように、非常な危機に直面をしてきております。予算委員会の分科会などでも、ある程度政府の対策なりあるいは考え方というものをただしてまいりましたが、きょうはさらに進めて、政府は今後一体どうしていくのかということでお尋ねをしながら、また、若干提案もしていきたいと思います。  そこで、今日のパイン産業の危機をもたらした原因というものはいろいろ指摘されているわけですが、しかし、昨年の七月段階あるいは九月段階においても、今日あることを予測をして、県の方もあるいは関係者もそれなりに強く政府に要請、要求をしてきているわけですが、なかなか問題が解決されずに、むしろ緩漫にされたきらいもなきにしもあらずなんです。  そういう意味で政府にお尋ねしたいのですが、特に農林、通産の方ですが、今日の沖繩のパイン産業なり、あるいは本土市場における需要と供給の関連についてどのように対策を立てていこうとしておられるのか。また、昨年沖繩県なり関係者が強く政府に申し入れてきたことに対して、行政的にも政策的にもどういうふうに指導なり助言をしてきたか。そして、沖繩の基幹産業であるパイン産業を保護育成していくことについて具体的にどのように進めてこられたのか。その点から明らかにしていただきたいと思います。
  64. 松元威雄

    ○松元政府委員 沖繩パインは現在大変な滞貨を抱えまして、非常な苦境にあるということはまさに御指摘のとおりでございます。  実は、パインについては、大づかみに申し上げますと、四十八年の夏ごろまでは比較的順調に売れておりまして、したがいまして、実は、私どもも余り大きな問題意識はなかったわけでございます。それに対しましてこのような滞貨になった原因は、大きく申し上げますと、二つ原因があろうかと思います。  一つは、冷凍パインを原料とするかん詰めが非常に製造されたということが一つ。もう一点は、総需要抑制によりまして需要が減少したということ、これが第二点というふうに考えているわけでございます。  そこで、実は、いま申し上げたとおり、四十八年ごろまでは比較的順調に売れておったというわけでございまして、この問題が出てまいりましたのは、昨年の夏ごろまず問題が出てまいったわけでございます。そのときはパインの滞貨がある。その原因は主として冷凍パインにありということでございまして、非常に苦境に陥っているから冷凍パインの抑制をしてほしいという要望がございました。それから、当面滞貨していて売れないからなるべく本土に引き取ってもらいたい、その間あるいはつなぎ融資をしてほしいという要請がございました。それから、またさらに、今後、輸入のグローバルの割り当て費について、その量を減らしてほしいという要望がございました。  そこで、私ども当省としましては、冷凍パインを原料とするかん詰めの製造を抑制するということがまず第一であろうと考えたのであります。これは、四十六年に冷凍パインを自由化いたしましたときは、これをかん詰めに回すということは予想していなかったわけでございます。それが冷凍技術の進歩によりましてかん詰めになった。その量も最初はさしたる量ではございませんでしたが、その後かなりの量に上っているということが判明いたしましたものですから、冷凍パインを原料とするかん詰めの製造を抑制することが第一であろうと考えたわけでございます。そして、そのための手段方法としまして、まず第一は、冷凍パインを原料とするという旨の表示をさせること。これは、実は、四十六年に自由化いたしましたときにもうあったわけでございますが、もし万々一これがかん詰めになって沖繩パインを圧迫する場合には表示をするという約束がございましたから、その約束の履行をメーカーにいたさせまして、まず表示させる。また、あわせまして、JASの受検を励行させる。これによって不良なる冷凍パインを原料とするかん詰めの製造を抑制する。こういうことは行政措置でできることでございますから、まず第一にやったわけでございまして、十二月から表示の励行が行われたわけでございます。これによりまして、まず抑制の第一歩に手をつけたわけであります。しかし、それだけではどうも十分ではないという御議論もございまして、冷凍パインの入ってくるのをもう少し押えなければいかぬじゃないかという御要望がございました。したがいまして、そのために関税を上げるということを検討いたしまして、冷凍パインの関税を、現行二〇%でございますが、これを三五%に引き上げるという方針を決めまして、関税審議会の議を経まして、二月の下旬にそのための関税定率の改正を国会に提案いたしているわけでございまして、この二つの措置によりまして、今後冷凍パインの製造はまず抑制できるんじゃないかというように考えているわけでございます。これが第一の手でございます。  第二につきましては、とりあえずの金融問題につきまして、これは現地の方とも打ち合わせをいたしまして、これまでに約十三億円の融資につきまして各般のあっせんをしてまいったわけでござ  います。しかし、それだけでは十分ではないということでございますから、ただいま沖繩県と協議をいたしまして、具体的な実態の把握、資料の整備を沖繩県に依頼いたしておりまして、それに基づいて今後さらに融資のあっせんを進めてまいりたいと思っているわけでございます。  さらに、輸入パインの割り当てにつきましては、こういう事情でございますから発給を見合わせてほしいということを通産省と協議をいたしておりまして、現在も発給を見合わせておりますが、今後ともこれをたな上げする方向で現在折衝中でございます。とりあえずこういう措置をとり、また、とりつつございまして、第一段階をやったわけでございますが、さらに問題が残っておりますから、続いて今後さらに各般の措置をいろいろ講じなければならぬというように考えておるわけでございまして、これまでとりました主な措置について御説明申し上げた次第でございます。
  65. 上原康助

    上原委員 そこで、いま局長のお答えになったことはこれまでもたびたび指摘をされてきたことですが、問題は、昭和四十六年の六月に冷凍パインの自由化というものがなされて、その当時から、自由化したならば沖繩産のパインには恐らく大きな打撃を与えるであろうということが指摘されてきたわけですね。しかし、製品化しない、いわゆるかん詰め化をしないということで、政府はさしたる支障はないであろうという前提で自由化している。だが、四十七年、四十八年、特に四十八年をピークに冷凍物が相当入り込んできた。  そこで、政府も、冷凍パインが市場に出回ったことによって、今日の消化の問題なりあるいはパイン産業の行き詰まりというものが出たということの原因はお認めになっているわけですが、改めてお尋ねしておきたいのですが、冷凍パインを輸入している業者は一体どのくらいあって、四十六年、七年、八年、九年、そして五十年の状況と、今後の見通しもこの際明らかにしていただきたいと思うのです。
  66. 瀧巖

    ○瀧説明員 冷凍パインの輸入量でございますけれども、ただいま御指摘のように、四十六年までは年間の輸入量が二千トン程度であったわけでございますが、四十七年になりますと一挙に一万四千トンを突破するというような状態になってまいりました。四十八年には二万二千トンというような急激な伸びを示したわけでございますが、四十九年に入りまして大幅に減少をいたしまして、その数量は一万一千トンと半減しているわけでございます。  この輸入業者の実態につきましては、必ずしもその数等についてはつまびらかではございませんけれども、ほぼ全量に近いものが台湾から輸入されているわけでございます。
  67. 上原康助

    上原委員 輸入業者については、全然政府の方ではつかんでいらっしゃらないわけですか。
  68. 瀧巖

    ○瀧説明員 それぞれがどの程度の輸入量を持っておりますかにつきましてはつまびらかにしておりませんけれども、ほぼ全国に非常に零細なパインかん詰め製造会社がありまして、こういった会社に提供する輸入業者がかなり散らばっていると存じております。
  69. 上原康助

    上原委員 ちょっといま御答弁には納得しかねるのですが、それじゃ、パイナップルかん詰めの輸入業者はどのくらいあるのですか。
  70. 瀧巖

    ○瀧説明員 私どもの知っております範囲では、各県の分布状況を見てみますと、静岡、愛知、和歌山、岡山、広島、徳島、福岡、佐賀、長崎、大分という各方面の、主として中小企業の方が中心になって輸入しているように思われるわけでございます。
  71. 上原康助

    上原委員 いまの御答弁は冷凍パインでしょう。パイナップル輸入取扱業者でしょう。私がお尋ねしているのは、パイナップルのかん詰めを輸入している業者はどういうものかということです。これは大体何社ぐらいあって、どういうものが主なのか。グローバルものですよ。
  72. 瀧巖

    ○瀧説明員 失礼いたしました。  かん詰めの輸入業者は七十一社ございます。この中には大手の商社がかなりのウエートを占めているわけでございます。
  73. 上原康助

    上原委員 パイナップルかん詰めの輸入業者と冷凍パイナップル輸入取扱業者でダブっているものがありますか。
  74. 瀧巖

    ○瀧説明員 必ずしも全社ダブっているわけではございませんけれども、ダブっている大手の商社がございます。
  75. 上原康助

    上原委員 その商社を明らかにしてください。
  76. 瀧巖

    ○瀧説明員 商社の名前を申し上げますと、丸紅、三井物産国分、日商岩井、こういうところがダブっているわけでございます。
  77. 上原康助

    上原委員 そこで、問題は、いま若干だけお挙げになったんですが、いわゆる外割りのパイナップルかん詰めの輸入をしておって、それも主として取り扱っていながら、一方においては冷凍パインも入れているというところですよね。これは商法からしても明らかに問題だと思うのです。皆さんはいろいろ指摘をされて、行政指導をやっておりますと言いながらも、こういう問題については実際にどういう行政指導をやったか、きわめて疑問を持たざるを得ないのですね。     〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕  三菱商事、三井物産、東食、国分、ライフ、住友商事、伊藤忠商事、野崎産業、国際通産、川上貿易、主なパイナップルかん詰め輸入の業者というのは大体こういうものですね。いま、まさに、買い占め売り措しみで一昨年来から問題になっている大手の商社なんです。丸紅もそうなんです。こういうものがかん詰めも取り扱って、同時に冷凍パインの輸入取扱業者にもなっているわけですね。大方がそうです。したがって、自由化をした、商行為の自由だと幾ら言ってみたって、保護育成をするという産業を一方に抱えておきながらこういうことを野放しの状態できたところに、農林、通産の行政的あるいは政策的な欠陥といいますか、それがある。沖繩のパイン産業を保護するというよりも、こういう商社の立場をどう保護していくかということをむしろ皆さんは優先しておるんじゃないかという感を受けるわけですね。  パイナップルかん詰めもグローバルとかいう外割りで割り当てられて、一方において冷凍物も取り扱うということを一体今後も野放しにするのかどうか、この点についての規制はどのようにお考えになっているのか、明確にしていただきたいと思います。
  78. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、私の方から冷凍パインに関する問題をお答え申し上げます。  私が先ほど来申し上げましたのは、冷凍パインは四十六年から自由化になった、したがってだんだん量はふえているという事実を申し上げました。ところが、大体四十七年からさらに四十八年前半ぐらいまではそれも含めておおむね順調に売れていたものでございますから、私どもも問題の把握が若干おくれたという事実はございます。問題が表面化したのは昨年の中ごろで、それからその後冷凍パインの製造を抑制することをいろいろやろうということでやったわけでございまして、したがいまして、昨年の後半以来になりますと冷凍ハ゜インの輸入量も非常に減っております。また、冷凍パインは、現にかん詰めの製造もだんだん減ってまいりまして、特に、十二月以降になりますともう激減になりました。しかも、関税率の引き上げをいたしますが、今後は冷凍パインを原料とするかん詰めの製造はまずないんではなかろうか。御指摘のように、いままで自由化しておりましたから自由に輸入していたことは事実でございますが、それが需要ある間は比較的順調にさばけていた。問題がはっきりいたしましたから、その後は冷凍パインの製造を抑制するためにそういう手を打ったということで、昨年の後半以来は輸入量も減っている、冷凍パインの製造量も減っているという事態にあるわけでございます。  あと、輸入の問題につきましては通産省からお答えがあろうかと思います。
  79. 上原康助

    上原委員 通産省はこの点どうなんですか。
  80. 瀧巖

    ○瀧説明員 先生御存じのように、冷凍パインにつきましては自由化されているわけでございまして、これに対します行政的なコントロールということがたてまえとしてはむずかしいわけでございます。しかし、実際の問題といたしましてはパイナップルかん詰めの輸入業者に、私どもの方からも現在の沖繩のパイン産業が置かれております深刻な状況につきまして十分認識するように申しておりますし、実際、パイナップルかん詰め輸入業者の有力な商社は沖繩パインかん詰めの販売代理店でもあるという立場から、こういったところは、私どもの要請に対しまして、冷凍パイナップルの輸入についても今後十分自粛していくという方向で対応するわけでございます。  ただ、冷凍パイナップルの用途といたしましては、すべてパイナップルかん詰めになるわけではなくて、それがそのままの形で消費されているという部分がございますので、これを全く輸入の入り口で抑制するということにつきましては問題が残るかと存じております。
  81. 上原康助

    上原委員 そんな、何を言っておられるかちっともわからぬような答弁では納得できませんよ。だから、むしろ、いま御答弁のように、問題はグローバルで輸入するものも大手の商社が押さえる、冷凍パインも大手の商社がやる、沖繩物も大手の商社が押さえているという、そこに、流通機構の問題を含めて独占支配の問題があるのだよ。幾ら行政指導をやると言ったって、こういうことを野放しにしておっては、もうかると思えばまたどんどん入れてつくりますよ。ここをどういうふうに本当に政府が政策的に配慮するかということまでやっていただかぬと当面の問題だけをやってもこの問題は解決しない。これを言っているのですよ。  余り時間もありませんので具体的なことまで言えませんが、改めてこの点について、どうするということについての方針だけはもう少し明確にしておいていただきたいと思うのです。
  82. 瀧巖

    ○瀧説明員 ただいま御指摘になりましたグローバル・パイナップルかん詰めの輸入商社に対します行政指導と申しますか、そういった指導は従来もやってまいりましたし、今後も私ども監視してまいりたい、さらに行政指導を強めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  83. 上原康助

    上原委員 行政指導をやる中身の問題ですが、どういうふうにやったのですか。たとえば輸入協会の代表を集めてやるのか、あるいは文書で示達をするのか。これまでやったやったと言うのだが、どういう内容でやったのか。何回やって、その内容はどういうものであったか。これは農林省も含めて明らかにしてください。
  84. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいまの御質問は論点がいろいろにわたっておると存ずるわけでございますが、先生のおっしゃった論点は、一つには、商社がみんな三つに関係している、つまりグローバル物も扱う、それから沖繩品の本土の代理店にもなっている、それから冷凍パインも扱っているということの御指摘があったわけでございますが、指導につきましては、私どもは、それぞれについて必要な指導をしているわけでございます。  私が先ほど来申し上げましたのは、確かにもうかることをやるものでございますから、冷凍パインを入れてかん詰めをつくってももうからぬようにという措置として、農林省といたしましては先ほど来申したような措置を講じまして、とにかくもうかる方にどうしても行きがちでございますから、もうからぬようにしようというので、まず、冷凍パインの抑制についてさっきの措置を講じて、現状では非常に減っている。今後も恐らく冷凍パインの製造は抑制されるだろうというふうに思っておりますが、そういう措置を講じているわけでございます。
  85. 上原康助

    上原委員 ですから、盛んに、行政指導をやりました、今後も続けます、と、これまでおっしゃってきたのだ。しかし、実際にそれじゃどういう行政指導をやってきたのかという中身はちっともないじゃないの。それを特に通産は明らかにしてくださいと言うのです。
  86. 瀧巖

    ○瀧説明員 いままで何回どういうふうにやったかというお話しでございますが、私ども、沖繩の問題が深刻化いたしましてから、数次にわたりまして、業者の方々に対しまして、この深刻な状況にどう対応するかということにつきまして、特にいま御指摘の大手の商社の自覚を促してまいりました。これは何回という数を具体的にここで思い起こせないくらい何度どなくなってまいっております。  そういった自覚の喚起ということが、私どものできますところの、いわば行政権の一つの限界でございますけれども、実際、私ども、その後の行動に対しまして監視をしているわけでございます。
  87. 上原康助

    上原委員 歯切れの悪い御答弁で納得しかねるのですが、もちろん、それは行政当局としての限界はあるでしょう。あると思いますよ。そこまで私は否定はいたしません。しかし、行政指導をやりました、今後もやりますと言うわりには、中身については全然明らかにできないということは納得できないのですよね。冷凍パインを原料としたかん詰めの製造会社にしても、四十九年の八月現在で、実に二十一社あるのですね。ぼくが一遍要求して皆さんが出した資料にそう書いてあるのです。それと、何かこの協議会をつくって、それ以外のやつも二十一社ある。四十六年から四十九年のわずかの間に約五十社余りも、冷凍パインをどんどん入れてかん詰めを製造した会社ができたのですよね。それはもちろん既存の工場を利用してやったということでしょうが、少なくとも五十社前後の会社が冷凍物を扱ったということは、逆に言えば、それだけもうけがあったということなのです。この事実は否定できないと思うのですね。だから、一方において中小企業はもちろんありますよ。しかし、大量に扱っているのはグローバル物を扱う、冷凍物をまた輸入をやる、沖繩物も押さえる、こういう流通機構の問題をどう直していくかということを含めて対策を考えないと、当面を糊塗したってだめなんだ。この点は強く指摘しておきたいと思うのです。  そこで、次に、大体大手の商社にはほとんど押さえられているのです。いまの流通機構はどうなっているのですか。特に、沖繩物の取り扱いですね。皆さんがよく沖繩での消化も考えなさいといろいろ言っておりますけれども、それはもちろん大事なことで、やらなければいけませんよ。しかし、いまの取引のその関係においては、ほとんど本土の大手の商社の取引代理店というものが実際に押さえているわけでしょう。この面の改善といいますか、流通機構の改革というものは全然考えぬでいいのかどうか、これについては政府はどうお考えですか。
  88. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたとおり、沖繩産のパイナップルのかん詰めの販売、流通は、従来から全量が本土の販売店を通じて販売をされております。しかも、沖繩のかん詰め製造業者と本土の販売店の間で結びつきがあるわけでございまして、ほぼ八〇%はいわゆる印刷かんということで発注されておりまして、本土の代理店と結びついて、それを通じて販売しているという実態にあるわけでございます。  これは、販売の仕方としますと、確かに自主努力の余地が少ないということでございまして、しかも、おっしゃるとおり、販売店の中には先ほどの大手商社もかなりございますから、それが結びついていることは事実でございます。ただ、それが、いままではこういった流通機構は復帰以前からそういった形で行われておりまして、一つには、沖繩側といたしますと、本土の市場が遠いということがございまして、したがいまして、そういったルートの方が便利だという面もこれまであったわけでございますが、昨今の事情になりますと、一方的に流通機構を握られておりますと非常に不利であるという問題がございますから、いまのような形はやはり漸次直していかなければいかぬだろうと思います。たとえば印刷かんでございますと、よけい販売店が引き取ってくれませんと売れないわけでございますから、漸次印刷かんを減らして、たとえば白地かんをふやすというように漸次変えていかなければならぬ。  ちょっとくどうございますが、何といたしましても、先ほど来私が申し上げたとおり、四十八年中ごろまではそういう形態で比較的順調に売れたものでございますから、余り流通機構の問題意識もなかったわけでございますが、こういう事態になるとそういう流通機構の不合理が目立ってくるという実態でございますから、これまではその役割りはございましたが、漸次これも変えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  89. 上原康助

    上原委員 流通機構の面についても御検討なさるということですね。これは通産省もそういうお立場なのか、お答えいただきたいと思います。
  90. 瀧巖

    ○瀧説明員 私ども一の守備範囲でございます輸入業者というものに対します指導監督という立場から、ただいま農林省の方からお答えになった考え方と全く同じでございまして、農林省とも御相談しながら、同じような流通に対する行政を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 上原康助

    上原委員 そこで、沖繩産の優先消化ということが今日まで強調されてきたのですが、その優先消化をするための方法といいますか、これはまた行政指導の範囲にしかならないと思うのだが、どのように進めてこられたのか、今後はどうしようと思っておられるのか、伺いたい。
  92. 松元威雄

    ○松元政府委員 私、優先消化の方法といたしまして考えますと、大きく分けますと三つないし四つの方法があろうと思うわけでございます。何と申しましても、第一は、優先消化のためには、いわば競合するもの、その方の供給を減らす必要があるわけでございます。端的に申しますと、冷凍パインに沖繩パインの需要が食われてはいかぬわけでございますから、冷凍パインを原料とするかん詰め製造を抑制するということ、それから輸入品とも競合するわけでございますから、これからの輸入品の割り当てをどうするかということ、これも考えなければならぬ問題でございます。  それと、直接的な方法といたしまして、どのようにして沖繩産が売れていくようにするかということ、これは先生の御指摘の流通機構の問題もございますし、さらに、自主的販売努力の問題もございますし、そういうことを並行してやらなければいかぬわけでございますし、したがって、根っこの面におきまして、いわば競合品の方の製造を抑制するなり、あるいは入量調整ということをする。同時に、並行いたしまして、販路の拡大をする努力をしていくということでございます。  流通機構につきましてただいま先生から御指摘があったわけでございますが、こういった結びつきは従来はそれなりの意味があったと私は思うのでございます。かえってその方が便利であった。したがいまして、くどいようでございますが、四十八年中ごろまでは比較的順調に売れていた事実があるわけでございます。ただし、それにばかり依存し過ぎるとまた問題がある。本来これは商取引でございますから、両者の商取引、本土の代理店、沖繩側のパッカー、その間の商取引の問題であるわけであります。  したがって、この流通機構を変えるにつきましては、それぞれ両方の立場で考えなければならぬ。立場で考えると言っては語弊がございますが、一方だけに言いましてもなかなか変えられないわけでございますから、そこで、たとえば一つには、やはりパッカーの側がもっと力を持たなければいかぬだろう。いまのように印刷かんで仕切られたら困る。したがいまして、白地かんをふやすとか、その他の販売ルートも広げていくという努力をしなければならぬ。そのための指導はいたしたいというふうに申し上げたわけでございます。
  93. 上原康助

    上原委員 もちろんいま御答弁のようなこともあわせて改善していかなければいけないことはわかりますよ。しかし、問題は、優先消化ということを、要するに百二十万ケース現地にストックがあるわけでしょう。本土にも六十万から七十万くらいのストックがあり、グローバル物も一方に三十万ケースくらいのストックがあるというのは数字を挙げるまでもないことで、大体その前後のストックがある。いわゆる停滞をしているわけです。当面これを売りさばかないとどうにもならないわけですよ。しかし、私は、時間はありませんでしたがかん詰めがどうなっているのかという実態を調べてみたのですよ。いまスーパーとかデパートに売られているのはほとんどが外割りものなんですね。沖繩産のものは店頭にない。このドール、これはたしかフィリピン産ですか、これがリビー、アメリカ産ですね、タイホン、これが台湾、この三つは小売店へ行っても、スーパーへ行っても、デパートへ行っても飾られている。よく売れている。売れるというより、これしか飾ってないのだ。リビーが定価二百八十円、タイホンが二百六十五円、このドールが二百八十円。この三つは業者はよく売っているのですよ。沖繩産はないですかと聞いたら、あるにはある。後ろに隠してあるか、倉庫にしまってあるのだ。定価が二百四十円ですよ。もう一つ驚いたことには、皆さんは冷凍物は表示を十二月からさせているということをおっしゃっているのだが、実際はさせていない。これは恐らく冷凍でつくったものだと思うが、定価百六十円。これはよう売れるからということで、安く仕入れられるから、これを売ります。これを買わない人は、もっと安いものもありますよということで、これを売っている。これは福島市の荒井字宮脇、南福島食品加工社がつくっておるわけです。これには冷凍物という表示はありませんよ。現在の市場で販売されているのはこういう状態なんですね。だから、幾ら政府の方が行政指導をやりました、沖繩ものを優先消化させるためにやりますと言ってみたって、店先に飾られているのはこういった外割りであり、冷凍物でつくったものであって、これは小売店にしかないのです。スーパーとかデパートにはない。末端の小売店にようやくほこりをかぶって置いてあるか、どっちかなんだ。あるいは隠してあるかという状態である。  こういう販売ルートの問題なり業者の取り扱いについて、通産も、農林も、開発庁も、この百二十万余り、百九十万程度の滞貨というものを消化していくということを皆さんが具体的に考えないと、これはどうにもなりませんよ。だから、これをどうするかということについて明確に答えてください。私が調べておる限りにおいては全然行政指導をされていない。これはきのう、きょうこの委員会に私が出るということで決まりましたので、まだ私も十分な調査ではありませんが、先ほど指摘をした大手の独占支配の問題を含めて、もっともっと根本的な問題があると私は見ているのです。この問題は、場合によっては参考人か証人を呼んで業者の立場というものを明らかにしなければいかぬ。これについてお答えください。いまのやり方では全然だめなんだ。
  94. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいま小売店の販売についての御指摘があったわけでございますが、端的に申しますと、小売店は一番売れやすいと申しますか、小売マージンが多いと申しますか、そういうものを扱いがちになる。これはもう事実でございます。  そこで、問題は、元卸と申しますか、沖繩パインで申しますると、いわば本土の代理店、これが同時にグローバルを扱っております。それと次の一次卸、二次卸、それから末端の小売、その間の関係における取引関係にあろうと思うわけでございます。どうしても小売段階ではマージンが多くて売れやすいものを選ぶというのは当然の成り行きでございますが、そこで、先生の御指摘のとおり、両方扱っているわけだから沖繩が売れないと自分も困るではないかということも言ったわけでございます。扱い方によって沖繩をへんぱに扱ってはみずからも損ではないか、両方さばけるようにしなければいかぬじゃないかと言ったわけでございますが、確かに一年半ぐらい前までは両方ともさばけていたものでございますから、問題がそう深刻に出なかったわけでございます。こうなった段階におきましては、沖繩の優先消化ということにおきまして、しかもいま言った商取引の経路の中でどうやって沖繩品が扱ってもらえるようにしたらいいかということですが、これはやはり商売でございますから、それを含めてお互いに検討も指導もしなければならぬというわけでございまして、一義的に行政命令で扱えということも、実際問題としてこれはなかなかできかねるわけでございます。  とにかく、全体の需要が減っているわけですから、いままでみたいに両方売れるからという時代ではなくなってしまった。しかも、需要が減っているのはパインだけではございません。果実かん詰めば軒並みに減っているわけでございますから、その中でどうやって売っていくかということにつきましては、従来のように順調に売れるという時代とは違いますから、私たちの実態の把握もまだ不十分でもございますが、それらを詰めて、さらに私どもも必要な指導なり努力をしてまいりたいと思うわけでございます。  それから、もう一つ、ちょっと御指摘があったのでございますが、冷凍パインに表示がない。私が申し上げましたのは、十二月以降は製造について表示させたわけでございます。しかし、現に小売段階に行ったものまでは手が打てないわけでございます。しかも、これは印刷かんでございます。だから、製造については表示をするようにということは励行いたしております。ただし、流通経路にあって、特に小売などにあるものに対しましては、実際問題として手が打てなかったものですから、私も、製造について表示するようにというふうに申し上げたわけでございます。
  95. 上原康助

    上原委員 それではだめですよ。十二月以降冷凍物はほとんどつくっていないとあなたは言ったんでしょう。つくらぬものに幾ら冷凍物なんて表示したってだめなんです。不良品については皆さんもこれまでいろいろな例があるでしょう。少なくとも、これまでつくられたものについても、冷凍物は冷凍物という表示をしないと、二百八十円、二百六十円、二百四十円ということになりますと、その中間には沖繩の値段がある。そうしますと、いまの不況の中で、かん詰めを買ってみよう、百円安いやということで百六十円に行くのはあたりまえじゃないですか。そういったものについての具体的な行政指導なり政策的配慮というものがないから、ストックというものはどうしても消化できない。この問題は、もう口先だけではできませんよ。  そこで、こういうことだけ言い合っておっても始まりませんが、少なくとも、製造されたものについても、冷凍物は冷凍物というだけの表示をさせる意思はないのかどうか。これはできますよ。それは何もかんにしなくなっていいんだ。ラベルにしたっていいんだ。だから、商社が、マージンかあるのを——これは商売本位ならそれていいかもしれませんよ。しかし、国の農政というのはそうはいかぬでしょう。  政務次官がお見えになりましたからお尋ねしますが、国の農政というのはそうはいかぬはずなんだ。しかも、沖繩のパイン産業については、果樹農業振興特別措置法で皆さんは振興を奨励しているんですよ。この間も指摘しましたが、年次計画でいまの八万トンの原料生産量を十二万五千トンまで持っていくことについて、その見直しもやったということはまだ政府からぼくは聞いていない。国内の需要量にしても、三百三十万ケースが、確かにいま需要が二百四、五十万に落ちているか知らぬが、今後の見通しはどうなっているか。変更したということもまだ明らかにしていない。そうであるならば、農民や県側は、これまでたとえば計画にのっとってやるというのがこれまた常識でしょう。その責任は明らかにしなければいけませんよ。  そこで、冷凍物についてはこの表示はぜひやるべきだと思うのですね。通産省もそういうお考えはありませんか。
  96. 松元威雄

    ○松元政府委員 これは私も前から申し上げたわけでございますが、十二月一日以降製造するものに表示をしたということは、私ははっきり申し上げました。と申しますのは、実際問題といたしまして、流通段階へ入ってしまったものまで押さえることは非常にむずかしいわけでございます。特に、小売段階ではこれは事実上困難でございます。したがって、これからつくるものは表示をさせる。その場合、実は、正直言ってかなり抵抗がございました。というのは、これは普通印刷かんでございますから、印刷かんは先まであると言って、ずいぶん抵抗がございましたが、印刷しちゃったものは表示を張れということで、製造段階においては表示をされるということをいたし、現に実行しておるわけでございますが、流通段階に散ったものまで把握することはむずかしいので、そこまではいたしておりませんし、これまたむずかしいと思っております。
  97. 上原康助

    上原委員 それなら、いま店で主に売れているのはドールやらリビーやらタイホンですね。これしか売っていない。これはみんな輸入品ですよ。外割りですよ。グローバルです。そうしますと、これを押さえる以外にないわけですね。  政府、農林省が牛肉輸入をストップした理由は何ですか。それは政務次官でもいいですからお答えください。牛肉について、四十八年に十六万の割り当てを、たしか四万トンは落として、四十九年はすべてストップでしょう。畜産業者が困った、牛肉が国内で生産するものが売れないということで、外から入れたらいかぬということでいろいろな問題があって、田中前総理大臣がオーストラリアへ行ったときも、再開をするというようなことを言われながらも、農民保護という立場で、一方においてはそういうことをやっているわけでしょう。そうであるならば、これは同じ理屈ですよ。北海道や本土の農民が牛肉をつくって、売れないで困っている。政府がそれに対して政策的配慮をするというのであれば、当然沖繩のパイン産業についても同じことをやってもいいじゃないですか。そういうことはやらぬでおいて、ラベルも変えられません——これからつくるものは冷凍品ですから、幾ら張りつけたってだめなんですよ。これについてお答えください。
  98. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 沖繩のパインの問題については、私どももよく内容を承知いたしておりまして、特産物であるだけに、この問題については農林省としても非常に心配をして対策を考えてきたところでございます。  いま御意見のありました下期の割り当てについても、たな上げしてもいいのではないかという御意見でありますが、私どもとしては、できることならばぜひそうしたいと思っております。昨年二月一日に四万トンの牛肉の割り当てのたな上げをした前例もございますし、特に、パイン業界がこれほど困っておるときですから、ぜひともそういう線に沿って、関係各省の了解を得ながら、私どもはそういう方向で何とか処置したいという希望をもって、すでに準備を整えて折衝しておる段階でございます。  それから、もう一つは、もうすぐに四月一日が参りますから、五十年度の割り当て等についても、この実態をよく私どもは把握をしながら、この割り当てについては厳しく対処していかなきゃいけない、こういうふうに考えておるところでございます。
  99. 上原康助

    上原委員 通産もその御意見と同じですか。政務次官がお答えになったのだからいいかと思うのですが、まさか通産は業者保護ということで入れるなんて言いませんね。
  100. 瀧巖

    ○瀧説明員 私どもも沖繩の危機を十分了解しております。いま農林省の政務次官がおっしゃいましたような方向で私ども検討をしているところでございます。
  101. 上原康助

    上原委員 どうも通産の御答弁は少し危なげなんだが、政務次官の方で少しこういうことをやれば、江藤さんもいい政務次官になって、大臣にもなれるんだ。  そこで、こういういろいろな問題があるわけですね。鋭意御検討しておられる、極力外割りも抑えるということであるわけですが、一カ年間の消費量といいますか、需要量はもうすでにストックされているわけですね。沖繩産と、発注されて本土でまだ消化されていないグローバル物がある。しかも、この四月からはもう五十年度の生産が始まるわけですよね。そうしますと、恐らく御案内だと思うのですが、沖繩県の農林水産部で、二月十八日付で「パイナップル産業対策について」という要綱をつくっておるのを御存じですね。これについてもどうお考えなのか、御所見を賜りたいのですが、その五十年度産のパイナップル処理計画の中で、原料総生産量は八万三千トンぐらい見込んでいるのですね。生果で販売したいというのが三千百五十トン。濃縮ジュースにしたいというのが四千九百八十トンぐらい。それから加工用の原料、いわゆるかん詰めにするのが大体七万四千八百七十トン。そうしますと、五十年度も、およそこの計画でいっても百五十四万ケースぐらいつくられるのですよ。あるいは、場合によっては、原料の収穫が上回るとそれ以上かもしれない。現在ストックしているものが消化できないということで、四月以降の操業を中止するということを加工業者は言ったわけで、それから大問題になって、御承知のように農民代表を含めて八十名近くの方がつい二、三日前に上京していろいろお話しになったと思う。当面ストックの問題をどう消化をするということとあわせて、業者のことを考えるのも大事だが、業者ももちろん大変だが、つくっている農民をどうするかということなんだ。パイナップルしかつくれない北部と八重山の人は大変なんです。  したがって、ここで具体的にぜひお尋ねしたいことは、現在の消化については、本土取引業者が早急に引き取ることについてはどういうふうに考えておられるのかということです。それについては、利子補給の問題なり、資金的な手当てもいろいろとせなければいかぬと思うが、いま一つは、県民としてはこれは本当に死活問題になっておる。四月以降の操業については継続していいということをこの際政府の立場で明らかにしておいていただかないと、沖繩の農民はどうしてもやっていけませんよ。ここまで追い込んでも政府が具体的な施策を明らかにしないということは、私は納得しかねる。この二点については、きょうの段階でぜひ明確にしていただきたいと思います。
  102. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、本土の代理店と沖繩のパッカーとの関係について、先ほど先生の御指摘もございましたし、私もお答え申し上げましたが、特に八割までは印刷かんでございます。そうすると、長い間の結びつきがあるわけでございます。それを一方的に、売れないからといってなかなか引き取らぬ。ただし、遺憾ながら従来は契約があいまいでございまして、いつ引き取るとか、価格条件がどうということは、その都度の取引関係で決めたようでございまして、したがって、いまこういう引き取り難になっているわけでございますが、特に印刷までしたラベルのものでございますれば、これは引き取ってもらわなければ何ともならぬわけでございます。しかし、そこには、価格条件とか、数量とか、ざっくばらんに申しましていろいろ取引上の問題がからむわけでございますが、これは私どもも、本来引き取るべき社会的責任があるではないかといろいろ指導しておりますが、私どもも、これは県とも一緒になりましてさらに指導を強めたいと思っております。  もう一点は、今度はパッカーと農家の方の関係ですが、これもやはりかん詰めにするということで結びついているわけでございます。長年それで結びついている。それを滞貨がある、売れぬからといって、一方的に操業をしないということはやっぱり合理的ではないと私は思うのです。実は、私も工場はどうかと思って県にもいろいろ聞いておりましたが、いままでは、いや、それは工場によってはなかなかむずかしい工場もあるかもしれぬ、しかも、現在の工場は弱小が若干乱立ぎみでもあるし、今後は企業の合理化をしなければならぬ、沖繩県もこれを機会に企業の合併計画を持っているわけでございます。したがって、個別には問題があろうけれども、全体として見ればこれはちゃんと能力があるのだから操業はできる、と、こういうふうに言っていたものでございますから、私も、実は、一方的に操業停止を通告したことに対してはいささか意外に思ったわけでございます。一方的な操業停止ということは合理的でないと思いますから、さらに県とも十分相談いたしまして、操業は続けるようにしなければならぬというふうに私は考えております。  さらに、それとも関連いたしますが、もう一つ、やっぱりこの際に沖繩県のパインの今後のあり方ということもいろいろ問題があろうと私は思うのでございます。従来は九八%はかん詰めでございます。そういたしますと、いやでもおうでもパッカーに振り回されると申しますか、ある意味ではそういう面がございます。さらに、パッカー自体は本土の代理店との結びつきが強過ぎたという問題がこれまたございます。そこで、今後は沖繩パインの販路をどう拡大していくかということについては、従来のようにかん詰めが売れるからかん詰めだけでいいのかどうかはやっぱり考えなければならぬだろう。一部ジュースの計画もございます。私はこれも一つ考えたらどうかと思うのでございます。生の方は品質条件でなかなかむずかしい問題がございますが、たとえば本年のような機会はいい機会だろうと思います。沖繩海洋博はいい機会と思いますけれども、やはり、かん詰めだけではなくて、濃縮ジュースを含めて考えなければいかぬのじゃなかろうか。それについて、実は、そういうアイデアも若干県にも示したことがあったわけでございますが、さらに県とも具体的に協議しまして、ことしだけ切り抜ければいいという問題ではございませんので、今後も含めて、沖繩パインのかん詰めの製造の合理化、さらに沖繩パインの販路の拡大につきまして具体的な詰めを進めていきたいというふうに考えております。
  103. 上原康助

    上原委員 明快なお答えは得られなかったのですが、要するに、恒久対策として、いまおっしゃるように加工の仕方をもっと多様化していくということは私も同感なんですよ。もっと考えなければいかぬ。必ずしもこんなでっかいかんでなくてもいい。もっと濃縮したジュースにして、販売機なんかに突っ込んでコインで売れるような方法も将来はあると思うのです。こういうような技術改革も一緒に考えなければいかぬ。今日までそれはやっていないわけでしょう。もちろん政府がすべてをとは言いませんが、そういう技術改革の指導というものはなされなければいけないと思う。これは今後の話なんですが、今後といっても、すぐ五十年度から手がけなければいかぬと思いますので、それは同感です。  政務次官は沖繩についてそんなにわからぬ方でもないので、私はキビ問題を含めて申し上げるのですが、要は、いまストックをしているものの消化についてですが、これはそう腐るものではないですよ。だから、引き取ってもらわなければいかぬ。これは政府とパッカーと、今度の取引業者あるいは県があっせんして十分やれますね。できますね。  もう一つは、五十年度の操業については、これももちろんパッカーと農民、生産者、県といろいろあるでしょうが、これも引き続いて政府の行政指導によって、少なくともつくったパインを腐らす、投げ出すというような最悪事態というものは避けなければならぬ。そのためには操業させなければいかぬわけでしょう。五十年度も大体百五、六十万ケースぐらいできるという生産目標を立ててやった。これについても支障なくやれるように、政府も積極的に助言指導なり行政指導をやって、政策的な配慮もやっていくということだけは明らかにできますね。この点は政治の問題ですから、政務次官の方からお答えいただきたいと思うのです。
  104. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 まず、短期的な問題と長期的な問題について、局長からいままでるる御説明申し上げたとおりでございますが、滞貨問題については、これはおっしゃるとおり腐るものではありませんから、言葉をかえて言えば、適切な金融措置等を考えてみろという御意見であろうと私は拝察して承ったわけでありますが、そういう問題を含めて、滞貨の処理については十分対処をいたしたいと思います。  それから、四月から始まります新しい製造については、県もございますし、あるいは沖繩開発庁もございます。関係当局もありますから、そこいらとも十分相談をいたしまして、製造に支障のないように、私どもとしてはあらゆる努力をしてまいりたいと思います。
  105. 上原康助

    上原委員 そこで、財政措置の問題を含めて結論から言うと、ここまで来ると従来の商ベースだけではどうにもならぬということですよ。ですから、これについては政府が買い上げなさいという要求もいろいろと出ていますが、それもなかなかむずかしい。あるいは、輸出を考えてみたらどうかといっても、これもむずかしい。ということであるならば、結局は政府の政治的な配慮において何らかの金融措置をやらなければいけない。財政措置、助成措置をやらなければいけない問題だと思うのですね。政務次官はいまそこまで含めて検討するということですが、大蔵省の政府委員も来ていらっしゃいますので言いますが、ここまで問題が行き詰まってまいりますと、農林省なり通産省なりがそれなりの対策を立てた場合は少なくとも基幹産業としての作目に指定をして振興さしてきたわけですから、大蔵としてもこの種の問題については前向きに御検討いただかないと困る問題だと私は思うのですね。引き取った場合に、倉庫料とか敷料とか、あるいはそれの金利の問題もあるでしょう。また、農民の方も、パッカーとの関係において生産代をどうするかという問題もある。差額補償制度というようなことまで含めて、この際当面の緊急措置の中に入れて、その後に合理化をどうしていくか、加工のあり方をどうしていくかということとあわせて、生産の見直し調整を含めてやっていかなければいけない問題だと思うのです。これについても大蔵省の方から御答弁をいただいておきたいと思うのです。
  106. 宮下創平

    ○宮下説明員 お答え申し上げます。  ただいま農林政務次官の方から融資等の問題が述べられましたけれども、これはいろいろお話しを承りますと大変むずかしい問題でございますけれども、融資ということになりますと、御承知のように、現在沖繩振興開発金融公庫でございますかが滞貨融資等を行っておりますし、また、県を通じて、沖銀、琉銀等を通じまして預託をして運用しておる。あるいはパッカーとしての沖繩県に中金から金が出ているというようなことを実施しておりますけれども、そういった政策的な金融のほかに、市中ベースの金融のあっせん等の問題もございますでしょうし、これは農林省当局におかれましていろいろ具体策を検討されると思いますので、それらを踏まえて財政措置の必要性については判断してまいりたい、かように考えております。
  107. 上原康助

    上原委員 ぜひ財政的な面まで含めて対策していただかないと、これは解決できる問題じゃないのですね。  そこで、時間のようですから最後に政務次官に改めて要求しておきますが、それは実際に消化されていないのですよ。これもぜひ考えていただきたいし、同時に、沖繩のパイン産業をつぶすのかつぶさないのかということですね。ここまで、自殺寸前まで来ているものに対しての農政のあり方として、財政的にも政府は本当に考えていただかなければいけない問題だと私は思うのですね。これだけ深刻に追い込んでしまって、一方において失業者はどんどん出る。農業にUターンしようとしたって、一方においてはパインをつくってもつぶれるわ、サトウキビもろくに売れないやということになると、本当に一体沖繩をどうするかという問題なんだ。ここまで深刻に受けとめた場合は、いまの政府の財政状況からしても、あるいはいろいろな食糧問題の見直し面から考えても、できない相談ではないと私は思うのですよ。かりに全額政府が買い上げたにしても、県のあれからすると六十億前後の当面の問題は処理できる。もちろんそれはまるまるとは言いませんよ。そのぐらいの腹があるかどうかによって農民の生産意欲というものが出てくる。かりにそれができないで、どうしても沖繩パイン産業が今後できないということであるならば、作目転換するにはやはり一年ないし二年、三年かかるわけでしょう。しかし、今日までそういうような方針なり政策というものが出てこなかった。ここはやはり政府の方がしっかり押さえていただいて考えてもらわぬと困ると思うのですね。  この危機を打開していくために、農林省通産省含めて、きょうは大臣がいらっしゃらないで政務次官しかおりませんが、政府の本当の決意のほどを改めてぼくは伺っておきたいと思うのです。
  108. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 個人的なことを言って恐縮ですが、上原先生御存じのように、私は政務次官であると同時に、実は、上原さんの沖繩と一緒の九州の人間であります。したがって、復帰もおくれたことでありますから、たとえばサトウキビの問題にしても、基幹作物ですから、何とかしてこの特殊作物だけは安定させていかなければいかぬということで、皆さんと一緒になって、いささかなりともいままでも取り組んできたつもりでございます。  実は、冷凍パインがかん詰めに回るなどということを予想せずに自由化したということもありまして、需要の減退が非常に響いてこういう大きな滞貨を生み、それがひいては生産者農民にとって非常な不安になっておる。こういうことについては、これはキビの問題より以上に——キビはこのままどうにかやっていけば軌道に乗っていくのではないかと思っておるのですが、もう一つの重要基幹産業であるパインがいま大きな障害にぶつかっておるということについては、大きな問題として私どもはこれを受けとめております。したがいまして、今後のあらゆる施策を通じてこのパイン産業が安定していくように、農林省は農民のための農林省と心得ておりますから、一生懸命やってまいります。しかし、これは農林省だけで勝手にきめて勝手にやれる問題じゃございませんので、どのようなことをしたらいいのか、具体的にひとつ計画を練って持ってくるようにということで、実はそういう計画をいま県当局にも求めておるところであります。  県当局も農業団体あるいはその他関係団体と目下御相談をいただいておると思うのでありますが、その対応策が上がってまいりましたならば、よく関係当局と相談して善処をしてまいりたいと思うております。
  109. 上原康助

    上原委員 これで終わりますが、このパインというのは、これしかつくれない農民の方々がいるわけですし、また、自由化の問題そのほかとの関係がいろいろあるにしても、国内で生産できるものは保護していく、それを保護しながら合理化をしていって生産性を高めていくということも含めてやらないといけない問題です。われわれも県当局ともいろいろ相談をしながら具体的に問題提起もして、また、今後の恒久対策については誠意をもってやりたいと思いますので、ぜひ、いまの誠意ある御答弁で早急に解決するように改めて要望申し上げて、終わりたいと思います。  委員長、どうもありがとうございました。
  110. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 島田琢郎君の関連質問を許します。
  111. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、上原委員質問関連して、もう少し農林省と通産省の考え方をただしておきたいと思います。  そこで、これは局長で結構ですが、先ほど来政務次官の御答弁の中にもありましたが、今日の事態を招いている大きな原因は需要量が急速に落ち込んだことであるということが言われておりますが、さすれば、このパインについては、いつから目立って需要が落ち始めたのか、そして、現在はピーク時に比べてどれくらいの需要量になって推移しているのか、この点をまずお尋ねいたします。
  112. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、パインかん詰め全体の需要でございますが、これは従来はおおむね三百四十万ケースくらいだろう、多少十万前後の振ればあろうかと思いますが、三百三、四十万ケース程度じゃないかというふうに言われていたわけでございます。  そこで、その場合、基本的な姿といたしますと、沖繩産のものが大体百七十万から百九十万ケース程度、それからいわゆる輸入物が、四十七年が百二十万ケースの割り当てでございました。四十八年が百四十万ケースの割り当てでございました。したがいまして、合わせまして三百三、四十万程度だろうというふうに言われてきたわけでございます。実は、正直申しまして、ちょっとくどくて申しわけありませんが、私は、四十八年中ごろまでは両者ともスムーズに売れていたものでございますから、需要量を余りぴしっと詰めなかったわけでございます。ただ、私も当時若干疑問に思っておりましたのは、先ほど来お話しの冷凍パインを原料とするかん詰めでございます。これが数量はなかなか把握しがたいのでございますが、四十六年が十万ケースくらい、四十七年が六十万ケースくらい、四十八年が八十五万ケースくらいと言われていたわけでございます。これも正直申し上げまして、私どもなかなかデータが把握しにくいものでございますから業界から聞いた情報でございますが、そうすると、少なくとも四十七年まではそれが加わっての需要なんだろうかと思いまして、あるいはそいつが持ち越して繰り越されるのであろうか——その実態につきましてはなお詰めなければならぬ問題がありますが、従来は大体三百三、四十万ケースということが言われておったわけでございます。  それが、急に需要が減ったということが判明いたしましたのは、やはり昨年の後半からでございます。これはパインかん詰めだけの需要が減ったのではございませんで、ほかのミカンかん詰めあるいは桃のかん詰め等も非常に減っておりますので、そこで、これがどの程度減ったかというと、これもまだ昨年の後半以来の動向でございますから見通しが的確にきかないのでございますが、人によりましては、どうも三割くらい減っているのじゃなかろうかと言う。そういたしますと、百万ケースくらいの減になるという見方もございまして、これも正直申し上げまして、まだ私ども的確な見通しをつかまえておりませんが、しかし、これはやはり異常な姿であろう、ノーマルベースにまたもとに戻るのではあるまいかというふうに考えております。  非常に数字が粗っぽくて申しわけございませんが、大体そういう現状把握をいたしております。
  113. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 昨年の後半から目立って需要が低下し始めた。それで、先ほどの政務次官のお言葉の中の、でき得るならばという言葉は私は非常に気にかかるのです。あともう二十日くらいで五十年度の製造が始まるんですね。この時期で考えるならば、まさにタイムリミットなんですよ。そこで鋭意取り組むということが必要で、でき得るならばというような事態では現地はないということです。現地の実態というものはよくわかっておるとおっしゃいましたけれども、現地の実態は、あと二十日くらいの間でやってもらわなければならぬという厳しい状況にありながら、いまの次官の御説明では……(江藤政府委員「総合対策ですか」と呼ぶ)いや、緊急対策です。私がいま言っておるのは緊急対策ですよ。これはいろいろな面で急がなければならぬわけです。いろいろな閣議における決定とか、また、果樹農業振興特別措置法による基本方針の策定とか、まさに先ほど上原委員が指摘しておるように、この方針によれば十二万五千トンまで今後生産を伸ばしていくと言っておるんですね。昨年の後半からそういう状態が出てきたので、まだデータがそろっていないという局長説明ですけれども、そんな悠長な状態に現地はない。そういうことは昨年からわかっていたはずなんです。さすれば、政府側としては、この面の取り組みに対してまことに怠慢ではなかったかという気が私はするのです。  ですから、あと二十日くらいしかない新年度を迎えて、でき得るならばというようなことではなくて、これとこれとこれとを緊急に措置するということがきょうは明確にされないと、現地はこの危機状態を打破していくことはとてもできないと考えるので、政務次官、あなたがお考えになっておる緊急の措置をどのようにとられるかを、ぜひきょうは明示していただきたい。
  114. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 言葉の表現がおとなし過ぎたのだと思いますが、御存じのように、割り当てにつきましてのたな上げは農林省としてはいますぐやりたいわけです。三十五万くらいまだ残っておりますから、それはそっくりたな上げしたいということで実はいま折衝いたしております。と、こういうふうにもう少し訂正させていただきます。  それから、さっき上原先生が御心配になっておりましたところの、大量の滞貨に対する対策が講じられないと、四月からの操業が始まるわけでありますから、それはおっしゃるようにタイムリミットに来ておるじゃないかということであろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、県がいま具体的にどういうことをやってもらいたいかということを鋭意詰めておりますので、県が持ってまいりましたならば、私どもとしては、直ちにこの問題についてよく相談をして結論を出したいと思っております。決して悠長に考えておるわけではございませんで、言葉のあやでありましたので……。
  115. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 県からまだ農林省に具体的な対策について上がっていないという意味の御答弁でありますけれども、すでに、二月十八日に、「パイナップル産業対策について」というものが県から出されておりますね。これは農林省の手元には行っていないのですか。
  116. 松元威雄

    ○松元政府委員 私ども事務的にはこれは見ておりますが、県に聞きますと、これはまだ県としても十分固まったものではないようでございます。そこで、これを材料にしてさらに詰めていくということを申し上げたわけでございます。  それから、先ほどから対策が遅いという御指摘もあったわけでございますか、さっき私は需要の見方に触れまして、昨年の後半ごろから目立って、と申し上げましたが、実は、そう三割も減るということまではっきり思い詰めたのは、実は、わりと最近のことだったわけでございます。したがって、昨年の対策は、主として滞貨の原因は冷凍パインにあるのではないかということで、冷凍パインの抑制対策を一番中心に置き、いわば、とりあえずのつなぎの融資措置に中心を置いたわけでございまして、需要がこれほど減るということまでは、昨年はまだ必ずしも明確でなかったわけでございますが、さらに需要が減ったということがはっきりいたしますものですから、それに見合う対策を講ずるということでございます。
  117. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、この際ですから長期的なことについてもちょっと触れておかなければいけないと思うのですが、先ほどの、果樹農業振興特別措置法によって、基本方針の中で、パイナップルについては十二万五千トンの目標を生産量として上げているというのは、いまの傾向がかなり長期的に続くという見通しなのか、それともこれは短期的に、国内のいろいろな施策が完全になればこれは目標どおり進んでいくというお考えなのか、この辺が緊急対策とのかね合いで非常に大事な点だと思うのですが、これはどうお考えですか。
  118. 松元威雄

    ○松元政府委員 私は、やはり、いまのような需要の減少は異常だろうと思うのでございます。したがって、先ほど、ノーマルベースは大体三百三、四十万ケースぐらいであろうと申し上げましたが、やはりその程度はあるのじゃなかろうかと思っておるわけでございますが、ただ、いまの異常事態がどの程度今後続くか、さらにその回復過程がどうなるかということにつきましては、もっと検討しなければなりませんが、いまの減少は少し異常過ぎると思っております。  しかし、今後の全体の経済成長度が減少いたしますから、実は、そういう意味におきまして、農産物全体の需要見通しにつきましても目下農政審が検討いたしておるわけでございますが、この果樹農業基本方針にパインを加えました当時と経済成長率が違いますものですから、その点はやはり含めて検討し直さなければならぬと思っておるわけでございます。
  119. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 政務次官、そもそも、沖繩復帰前の対策要綱として、昭和四十五年の十一月二十日の閣議でパイナップル産業に対しての閣議決定をいたしておりますね。これによりますと、パイナップル産業については幾つかの整理しなければならない問題点もあるようだけれども、ともかく、沖繩の国内産パイナップルを優先消化するという原則をまず確立して、総需要量の中から沖繩産を差し引いて、残りを外割りする方針だということが一応確認されているわけです。ところが、今日のこういう事態が起こった原因は、先ほど上原委員からも厳しく問題の指摘がありましたとおり、これは外割りに大きな原因がある。したがいまして、一時ストップだけでは問題は解決しないと思うのです。長期的に見て、パイナップル産業のあり方という中での外割りの制度というものが一つ大きく手直しされなければならぬだろうと私は思うのです。私はいま手直しと言いましたけれども、基本方針として出されているところの、国内産の、いわゆる沖繩産のものの優先消化という問題がきちっと守られれば、まさに今日のような非常事態は起きなかったと思うのです。それがどこかで狂ったからこういう結果になったわけですね。  ですから、緊急措置としては、下期の外割りを差しとめる、たな上げする、これは当然のことなんですけれども、それだけでは問題の解決にならない。もう一度原点に返って、政府部内においてこの原則を貫いていくということが出てこないといかぬと思うのです。これは決意のほどを承るのではなくて、この原則が乱れてきたということに大きな反省をしながら、国内産の、沖繩産のパイナップルかん詰めを直ちに国内で優先消化するという、そういう具体的措置が何といっても必要だと思うのですが、この具体的措置についてお考えがあるとすればお示しいただきたい。
  120. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 沖繩のパイナップルの問題は、外割りだけではやはり解決をしないと私は思うのです。しかし、一つの大きなファクターであるということについては間違いはありません。  そこで、たな上げ措置をするということと同時に、私どもは、五十年度割り当てについては、今後の消費の動向を見ながら、沖繩産のもの、国内産のものの優先消化ができるように、その制度も十分に活用してまいりたいと思っております。  しかしながら、このパイナップル産業を安定させるためには、御存じのように、これは内地と違いましてずっと占領下にあったわけでありますから、国内の農業と違って、長い間そのままになってきましたが、たとえば品種の改良の問題とか、あるいはまた土壌の改良の問題など、ずいぶんやせた土地にそのままやっておるわけでありますから、そういう基盤整備、農道の整備あるいは機械の導入——あるいはまた、さっき局長もちょっと申し上げましたけれども、十二社、十七工場も乱立しており、いろいろな問題がたくさんあるわけでありまして、そういうことを全体的にひっくるめて、おっしゃるようにいい機会でありますから、私どもは初心に返って、今後もう一回この問題をやり直すぐらいの覚悟をもって取り組んでいく必要があると思っております。  なまじっかなことでこれが直ちに軌道に乗るとは思っておりませんが、しかし、これを乗せなければ沖繩の農業というものは安定しないということは十分認識をしておるつもりでございます。
  121. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、先ほど局長からも答弁がありましたけれども、パッカーと生産者側との価格交渉という問題があるわけですか、現実の滞貨という危機的な現地の状況等は別にして、この価格交渉のあり方について、行政上やはり指導に入るべきだという感じがかなりしておりますけれども、これだけ滞貨しているからなかなか皆さん方の要求には応ぜられないということが表に出てくる。結局、国内のパイン政策のあり方に不備が出れば、それがいきなり生産者にしわ寄せがいくといういまの仕組みについて抜本的にもう一つ改革が要ると私は思うのです。その点については農林省として検討されておりますか。検討されておるとすればどういう方法を今後とっていこうというお考えなのか。この点をひとつお聞きいたしておきます。
  122. 松元威雄

    ○松元政府委員 私は、価格問題というものは本来両当事者間で決めるのが本筋だろうと思います。これはパッカーと生産者の農家の間の関係もございますし、パッカーと本土の代理店の間の関係もそうでございますか、需給関係を踏まえたお互いの交渉と申しますか、それが本筋であろうというふうに私は考えるわけでございます。  ただ、その場合に、周りの条件といたしまして、需給関係が異常に悪化しているということにつきまして、それが異常に価格に不利に働くという、いわば外周りの条件につきましていろいろ不利な事情がございますから、そこで、滞貨の解消でございますとか、そういうことについては政府もできることをしなければならぬわけでございますが、直接的な価格に対しての介入はやはりなかなか問題が多かろうと思っておるわけでございまして、そこでできますことは、先ほど来、需給の異常な部分につきまして、長期の問題と短期の問題とあわせましていろいろなことをやっていくと申し上げたわけでございます。
  123. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、先ほど、政務次官は沖繩のパインの置かれている立場というものについて十分御理解がある、理解をしていると考えておったのですが。だから、そうであるなら、価格問題についても政府側として十分対処すべきだという前提に立っていま申し上げたわけです。しかし、局長の答弁は、まさに商行為の範囲から一歩も出ない考え方であります。それではパイン生産農家は定心してパインを生産することができない。いまの局長の答弁は、言ってみればまさに実勢価格方式で、それは現地での話し合いによって円満に解決すべきだという点で、政策上責任を持つという考え方が全くないということを明らかにされたと私は思うのです。しかし、お考えください。先ほど、私以上によくわかっている政務次官からも言われたが、沖繩でつくられているパインは簡単に転作のきくものではない。よそでつくられるものではない。こういう特性を考えたら、シェアはわずか四%といえども、沖繩の生産農家にとっては、これは死活の問題が常について回っているわけであります。一番大事な価格面は、政策上何ら手を触れないというのであれば、あの長い間の占領政策の中から解放された沖繩の島民に対しても、それではまことにお粗末過ぎるし、また、残念だと言わざるを得ないと思うのです。ですから、今日確かに滞貨が百二十万ケースもあって、そこがネックになって生産がスムーズにいかないという現実の問題に直面しているけれども、しかし、価格の上においてだって大変大きな影響をそこからもたらしているということを考えたら、この際、いわゆる商行為の範囲にとどめておかないで、積極的に行政上あらゆる措置を講じて指導すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  124. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 パインについては、政府が直接価格政策をやるとかいう方法をとっておりませんので、直接の商行為の中に、価格交渉の中に取り組んでいくということはなかなか困難ではないかと思っております。しかしながら、先ほど来御説明があったと思いますけれども、御存じのように、実は、関税を三五%にしますときも、零細企業がつぶれるではないか、かん詰め工場がつぶれるではないかということでずいぶんと反対が国内でもございましたが、そういう中にあっても、これはもう国内のものが優先ですから、農林省としては何としてもやらなければいかぬということで、実は二〇%の関税というものを三五%に引き上げたわけです。それは四〇%のクライスラー並みじゃないかというような御批判も実は当時受けたわけであります。同時に、一方では、輸入かん詰めについては五五%というきわめて高い関税をかけて、なるべくよそのものが入ってこないようにする。それが適切かどうかは別議論といたしまして、いままでは少なくともそれで順調に来ておったわけであります。一方においては、関税の面で直接価格介入のできない面はそういう面で援護射撃をして、先ほど申し上げましたように、残りの輸入の割り当て等についてもたな上げをしていこう、こういうことをして、とにかく国内のものを優先的に消費できるようにしょう、これ以上よそのものが入ってこないように、残りのものと五十年度のものについては消費動向を十分見ながら対応していこう、同時に、県から適切な具体的な案が出てまいりましたならば、滞貨処理を含めて、五十年度操業についてもできるだけのことをしていこう、と、こういうことで対処しておる。こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  125. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 時間が参りましたから、最後に一点だけ伺います。  いまの政務次官の御答弁については、私は正直言っていろいろ反論もございます。しかしながら、一番問題になる生産者価格の問題についてそういう姿勢では、私はまことにどうも飽き足りない。平常ベースのときは確かにそれで結構ですが、しかし、いまは異常事態だという認識の上に立ったならば、価格問題いわゆる生産者価格の問題に介入するのは当然でしょう。私はこういう考え方に立っております。  そこで、吉岡統計情報部長がお見えですから伺いますが、統計情報部としては、パインの生産費調査の結果から出た数字で、現在取引されている価格と比べて、それは正当なものですか、不当なものですか。
  126. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 統計情報部では、一定の生産費の調査の方式をつくりまして、沖繩総合事務所でハ゜インナップルの生産費調査を行っております。その結果を見ますと、これは昭和四十八年産が最近のものでございますが、一応の事例的な調査といいますか、そういうふうな性格の調査としてお受け取りをいただきたいのでございますが、十キログラム当たり、第二次生産費で二百四十二円というものが出ております。また、四十八年産のパインップルの農家の販売価格を、四十八年の八月から四十九年の五月までの間の農村物価統計調査で私どもが調べておるところによりますと、十キログラム当たり、これはかん詰め用の冠芽なし一級品という規格でございますが、これで三百二十七円ということが出ております。  一応私どもが調べました生産費と農村物価の関係の価格は以上のとおりでございます。
  127. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 この問題は詰めると大変時間がかかりますので、現状だけお聞かせいただいたにとどめて、私の質問はこれで終わります。
  128. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 次は安井吉典君。
  129. 安井吉典

    安井委員 いま、パインかん詰めが一年分食べるだけ余っていて、サトウキビに次ぐ沖繩の重要な産業であるパインナップルの栽培は一年間完全にストップしてもいいというぐらいな状況が今日つくられているという、この事態は、一つには、政府のパインナップルについての需給計画の重大な誤まりが一つと、それからもう一つはこういうことです。つまり、パインナップルは沖繩しかつくっていないのですから、沖繩が復帰して各府県並みになったが、しかし、ずいぶん長い間のハンディキャップをしょっている沖繩だから、沖繩の問題については特別にめんどうを見て考えていきますという約束があの復帰時に政府からあったのですから、沖繩の問題は、沖繩の問題は、と、常に念頭に置いた対応さえしておればこんなことにはならなかったのではないかと私は思う。つまり、需給計画の見間違いといったような技術的な問題も一つの大事な問題ですけれども、これは後で申し上げますけれども、それと同時に、沖繩への対応の政府の後退といいますか、そういうようなところにも問題があると私は思うのですが、政務次官、どうですか。
  130. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 沖繩への対応策について十分であったかと言われますと、必ずして十分であったと胸を張ってお答えすることは適切でないと私は思っております。それは長い間のブランクがあったわけですから、それを補うのにはより一層のものがなければならぬわけでありまして、それは全部が間違いなかったか、適切だったか、十分だったかと言われますと、それは十分でありましたということを私は言える立場にないと思っております。  しかし、そういうできるだけのことをやりたいという気持ちで農林省が取り組んでまいりましたことだけは御理解をいただきたいと思うのです。
  131. 安井吉典

    安井委員 十分でなかったということだけはお認めで、しかし、その中でできるだけのことはやってきたつもりだということでありますけれども、これからもこの種の問題は起きがちだと思いますので、ひとつ沖繩の問題は終わったのではないのだという心構えでのお取り組みをさらにお願いをしておきたいと思います。  そこで、パインかん詰めについての国内需給計画の誤まりという点について、見通しが少し甘かったという点を先ほどもお認めになっているわけですが、冷凍パインのかん詰め化と言いますか、そういうものが思いのほか進んでいることやら、パインのみならず果物かん詰めの総体的な需要減退ということも先ほどお触れになりました。ですから、そういう点においていろいろ見間違いがあったということではないかと思うのですけれども、私は、一番罪深いと思うのは、国内需要が二百三十万ケース、沖繩が百九十万ケースと供給を読んで、輸入外割り百四十万ケースですか、こういう御計画をお持ちだったようでありますけれども、その甘さというものが、上期において百五万ケースをバーンとお認めになったということですよ。だから、現在百二十万余っているのですから、いまになって思えば、これは上期も要らなかったのですね。あるいは百四十万のうちの半分を上期で、半分を下期とか、上期の方をもっと少なくさえしておけば、もう少しこの問題の深刻さにいかないで済んだのではなかったかとも私は思うわけです。ですから、輸入の方を、上期にどかっと多くの割り当てを置いて入れてしまったというところ、これが非常に罪深い結果になったのではないかと私は思います。  いずれにいたしましても、いまもお話しがありましたけれども、こういう事態になったのは、まず、国の責任というものが非常に大きかったのだということ、つまり、沖繩のパインをつくっている農家の責めではないということです。需給計画を国がお立てになって、そういう中で生産も行われておりパッキングも進んでいたわけです。ですから、この全体的な状況をつくり上げたところにおいての国の責任というものは非常に重大だと私は思うわけであります。その点を、さっきもお話しがありましたけれども、もう一度確認したいと思います。
  132. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 安井先生から御意見がございましたが、私も同感でありまして、復帰とともに、沖繩の農政は最初から始まったと私どもは受けとめております。  それから、当初割り当てを半分にすればよかったじゃないかという御意見でありますが、いまにして思えばそのとおりであります。しかし、調べてみますというと、一年間の全体の計画もございますので、いままではやはり上期に大部分やっておる。その方が全体の計画を進める上にいいということで、上期を大部分にして、下期はほんのちょっぴりだった。それをそのまま実は踏襲した四十九年度の割り当てになっておる。こういうことでございます。
  133. 安井吉典

    安井委員 政務次官は、つまり、そういうことで政府の立てた需給計画に責任があるということはお認めをいただいたものだと思うわけでありますが、これから具体的な対応についてお尋ねをしてまいらなければならないが、政務次官はほかの御用があるそうですから、やむを得ないと思います。ただ、いままでのしきたりでは、局長以下の皆さんに質問して、最後に政務次官がそのとおりですということを確認されるという一種のルールがあるわけです。  先にお帰りになっても結構ですが、これから後の質疑の中での政府委員の御答弁についてあらかじめ事前確認をして——普通なら後でするのを、いま初めにひとつ確認をしていただいて、それからお出かけいただきたいと思います。
  134. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私は、政務次官であると同時に、同じ九州の人間だという一つの地理的な関係もございまして、これはもうお互い自分のことだし、農林省としてもやらなければならないが、一政治家としても避けて通ることであってはならぬと考えまして、私なりに努力をしておるつもりであります。  したがいまして、事務当局としても、これは松元局長が非常に熱心にこの問題では組り組んでおりますが、何せ国だけのことではできませんものですから、沖繩県なりあるいは沖繩の農業団体との緊密な連絡なしに国だけが独走するわけにもまいりませんので、いま、具体的な対策を持ってくるように実はお願いをしておるところであります。  先ほど島田先生から、二月の何日かにできた対策を御存じかというお尋ねがありましたが、あれは実は非公式に伝わったものでありまして、正式に農林省に御提出を願ったものではないのであります。その時点といまとはまた若干違ってきましたものですから、もっと具体的に正式な  地方自治体はちょうど予算の編成期でもありますから、県としてもこういうことをやりたい、したがって国としてこういうことをやってほしい、そういうものをひとつ具体的に持ってきてほしいということをお願いをして、それが出てきましたならば、私どもも準備万端相整えておりますから、十分受けとめて対処をするつもりでおります。したがいまして、今後のパイン産業の安定のために、今後局長が答弁いたすことになると思いますけれども、そのことについては、大臣も政務次官もその答弁については一切同じ責任を負いますということをこの機会に申し上げて、実は、次の大会がございますので、一時間ほど失礼させていただきますが、またお呼びであれば後刻参りますので、お許しをいただきたいと思います。
  135. 安井吉典

    安井委員 これからの御答弁は全部政務次官が責任をとるそうですから、ひとつ気楽に御答弁願いたいと思います。  時間が短いので幾つかの要点にしぼりますけれども、冷凍パインによるかん詰め生産の実績はどれぐらいになっておりますか。
  136. 松元威雄

    ○松元政府委員 これは、実は、正直申し上げまして、非常に把握がむずかしい問題でございまして、私どもいろいろな推計もしてみました。けれども、いろいろな数が出るものでございますから、目下私どもがこれらしいと思っておりますのは、四十六年が約十万ケース、それから四十七年が約六十二万ケース、四十八年が約八十五万ケース、それから四十九年が約六十五万ケースーこれはいずれも暦年でございますが、そういうものをいろいろな情報から推定いたしておりますが、これは正直申し上げまして、私ども必ずしも自信のあるものじゃございません。一つは冷凍パインそのものの輸入量からも推計したわけでございますが、それとかん詰め量とにかなりギャップがございます。その辺はあるいはタイムラグがあるのかなと思っておりまして、ただいまのものは関係の業界から聞いた数字から推計いたしたものでございます。
  137. 安井吉典

    安井委員 このような重大な事態に至る一つの大きな原因が、輸入冷凍パインの出回り、かん詰め化といったようなことだとすれば、やはり、もっと正確に問題点を把握する御努力が欲しかった。つまり、いま起きた問題ではないわけですね。四十六年は十万ケースですからそう多くはないと思うが、四十七年にはそれが六倍になり、大幅にぐんとふえてきたわけですから、もっと早く手を打つべきであったという感じを受けるわけであります。  そこで、この対策の問題は後でまたお尋ねすることにして、もう一つ、これらに対する政府の施策ですが、いままでの質疑の中で、冷凍パインのかん詰めについての製造表示あるいはJAS規格の適用、あるいは冷凍パイン輸入関税の引き上げということはお触れになったかどうかわかりませんか——まあ、ありましたね。こういうようなことも対策としてなされている。それから、下期パインかん詰め輸入割り当てのストップといいますか、そういうようなこともお挙げになりました。それから、もう一つ、この沖繩産パインかん詰めに対する滞貨融資ですが、これも一つ大事な問題だと思うのです。現在までに約十億円ぐらいなされているけれども、しかし、当初、沖繩パッカー側は三十億も四十億もの要求をしていたはずであります。政府のてこ入れがなければ後の借り入れができないというふうな事情もあるのではないかと思うのでありますが、十億ぐらいじゃこれはどうにもならぬでしょう。残った問題についてどうお考えですか。
  138. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、前段にお触れになりました冷凍パインの過去の製造動向を申し上げたわけでございますが、もっと早くわかってしかるべきじゃないかという御指摘があったわけでございます。これも先ほど来申し上げたわけでございますが、ともかく四十八年中ごろまでは比較的順調に売れていたものでございますから、結果的には、それだけの冷凍パインからつくったかん詰めも消費されていた実態があったわけでございます。しかし、それがさらに量がふえたということを需要の減少、この両面から問題が露呈されたものでございますから、それに対応する対策を目下いろいろと講じたものもございますし、さらに講じようとしているわけでございます。  現在まで講じた施策につきましては先生にもお触れいただいたわけでございますが、あと、当面の措置として融資の問題があるわけでございます。これにつきましてはすでに十三億は融資したわけでございますが、あとどの程度要るのか、これも実は業界とも県ともいろいろ聞いているわけでございますが、資金需要はどれだけあるのかということと、それからもう一つ、金を貸す場合に担保の問題もあるということも融資機関は言うわけでございます。それから、金融機関自体の資金繰りの問題もあるということもあるわけでございまして、それらについて、私ども、実は前々から県に対しまして、資金需要はどうか、それから資金源はどうか、あるいは金利はどうかという点のいろいろな資料を要請いたしておるわけでございますが、実は、これもまだ十分データが整いませんものでございますから、データを整備次第、政府としましてもできることはするという決心でおります。
  139. 安井吉典

    安井委員 沖繩開発庁としても、この融資の問題については、現に公庫もみずからの傘下にあるわけですから、その点についてもう少し伺います。
  140. 星野省松

    ○星野説明員 ただいまの沖繩産のパインかん詰めの融資につきましては、昨年秋、この問題が出ました段階で、滞貨の問題につきまして、沖繩開発庁の方の中小企業資金の方で、滞貨融資ということで、一社四千万円を限度として十社に融資するということで現在計画を進めております。現在までのところ、九社につきましてすでに三億六千万融資をしているということで、残りの一社については現在手続を進めておるという状態でございます。
  141. 安井吉典

    安井委員 信連の方の融資がおくれておるという状況も聞くわけですか、その辺はどうなっていますか。     〔坂村委員長代理退席、中川(一)委員長代理着席〕
  142. 松元威雄

    ○松元政府委員 信連も枠は設定いたしておりますが、現在手続中でございます。三月末ごろまでには出るという見通しでございますが、確かに目下手続中でございます。
  143. 安井吉典

    安井委員 伝えられるところによると、担保の提供問題その他で信連融資だけがおくれている。つまり、公庫や農林中金や商工中金の方は出ているけれども、肝心の信連がおくれているという話でありますので、今月末までということでありますが、ぜひそれが成立するようなお骨折りが必要だということと、この計画が立てられてからの段階と現在の段階とでは深刻さがさらに加わってきているような気がする。ですから融資全体の問題についてもう一度見直しをし、きちっとしたものをつくり上げるということが必要だと思いますが、どうですか。
  144. 松元威雄

    ○松元政府委員 おっしゃるとおり、すでに枠の決まりましたやつの実行を急ぐと同時に、これだけではもちろん十分ではございません。そこで、現に追加融資の要望もあるわけでございますから、私が申し上げましたのは、先生もお触れになりましたが、その場合、資金源の問題とか担保の問題とかいろいろあるものでございますから、それらを見合わせて資金需要の具体的なデータを要請しているわけでございまして、それを見て、県とも十分相談いたしまして所要の対応策を講じなければならぬと思っております。
  145. 安井吉典

    安井委員 次に、百二十万ケースも滞貨しているという、そのかん詰めの処理の問題です。  地元の農業関係の各団体からは、全量政府が買い上げてくれという強い要求が出ているのは御承知のとおりでありますが、それについてはどうですか。
  146. 松元威雄

    ○松元政府委員 滞貨が非常な圧迫になっているということは事実でございますが、しかし、その滞貨を直に政府が買い上げるということは非常にむずかしい問題だと私は思っているわけでございます。実は、滞貨問題はパインに限りませんで、ほかにも非常にあるわけでございます。先ほどもちょっと触れましたが、他の一番身近な果物のかん詰めも相当滞貨がございます。もちろんそれは深刻さの度合いとか苦しさの度合いが違うということはございましょうけれども、直接的な方法といたしまして国が買い上げるという方法はなかなかむずかしい問題があろうと思います。したがいまして、それでない他の方法につきまして、これは一つの手段では済みませんから、いろいろな手段を検討してできるものをやっていこうと考えておるわけでございます。
  147. 安井吉典

    安井委員 先ほど上原君もお触れになったのかもしれませんけれども、滞貨パインの八〇%ぐらいは商社のブランドがついている。それがそのまま工場に眠っているという事態がどうも不思議に思われるわけです。聞いてみますと、その商社とパッカーとの間のきちっとした取引契約とかいうふうなものがなくて、ずっと以前からの商慣行に頼っているという面もあるようです。これはいささかのんびりし過びているという感じを受けるわけであります。しかし、従来それでずっと済んで問題なかったものだからそれで来ているのだし、私は、それは商社側の逃げ口上にはならぬと思います。そういうものを許すわけにはいかぬと思う。全量政府が買い上げろという率直な要求はありますけれども、私は、少なくも商社のブランドがついているやつは商社の責任ではないかと思います。ですから、その商社に責任をもって処理させるということが必要ではないか。あるいは、そんなふうなことでぐずぐずしているうちに値崩れするのを商社の方は待っているのではないかとさえ勘ぐりたくなる。売れないからといって、それはみんな農民の責任だ、パッカーの責任だというやり方で放置する態度は許せないと思う工それから、ホワイトラベルのものもあるようですけれども、これは商社にすぐにと言ってもあるいは問題があるのだとすれば、これは政府が直接の責任を持って処理をする。こういう二つに分けた考え方もないわけではないと私は思うのです。  このとりあえずの滞貨の処理の問題について政府はいろいろ考えておられると言うが、これならというのはどれなのか、また、いま私が申し上げたようなことはどうなのか、その点について伺います。
  148. 松元威雄

    ○松元政府委員 滞貨の処理の問題は、現在の約百二十万ケースの在庫と、それからさらにこれからつくられる五十年産の問題をどういうふうに売っていくかという問題両者あわせて考えなければならぬだろうと私思うわけでございます。したがいまして、滞貨の処理の方法も一つでは済まないと思っております。また、ある程度時間がかかる問題もございます。そこで、大体三つないし四つの方法でいろいろきめ細かくやっていかなければならないのではないかと私は思っているわけでございます。  一つには、要するに、今後ライバルと申しますか、それになるものを少しでも量を減らすということで、先ほど来申し上げましたが、今後新規に冷凍パインからつくることを抑制する。ほうっておけばライバルはふえるわけでございますから抑制する。これも滞貨の解消に資するわけでございます。  それから、これも先ほど来お話しがございましたが、今後の輸入枠を極力減らす。先ほど私は下期はたな上げの方向で折衝中と申し上げましたが、五十年以降もやはり適正な輸入量に調整する必要があるわけでございまして、これはもちろん関係各省と協議しなければいけませんが、農林省としますと極力適正量に調整する。そういたしましていわばライバルを減らす。これもさばく要素になるわけでございます。  それと、直接的な処理ということで、一つには、印刷かんのものにつきまして、これは長い取引慣行でございますから、いままではスムーズに売れていただから問題はなかった。それがこういう事態になりますと、これはお互いの取引関係で問題が露呈されてくるということでございますから、もちろん役所といたしましてもいままでもずいぶん指導してまいりましたが、これもなかなかお説教だけではいかぬわけでございまして、やはり、もうかる方に物事は動くという事実は否めないわけでございます。したがいまして、そのためにどういうふうな手段を講ずるかということですが、いま言った競合の方の発生を極力押さえていくのと見合わせまして、従来も指導いたしておりましたが、さらに一段と要請に努めたい。本来、社会的な物の道理としますれば、印刷までしたかんを渡しているわけでございますから引き取るのが本来だと思うわけでございますが、そこにどうしても取引がからむ。そうすると指導だけでは済まぬものもございますが、さらに役所も指導を強めますが、さらに効果のあることを何かしなければならぬだろう。それにはどうしたらいいかということをあわせて検討いたします。  それから、もう一つは、白地かんを中心とします需要の拡大という問題でございまして、量は当両は多くないかもしれませんが、たとえば集団給食の方にももう少し売り込みをいたしたいと思っております。それから、また、たまたまちょうど海洋博といういい機会もございますので、この機会も利用いたしまして販売していきたいということで、そのために必要ならば普及宣伝費も出そうかと思っておるわけでございますが、そういうことを含めて少しでも需要をさばいていきたいと思っております。  それらを全部組み合わせまして、ある程度具体的な数字にせぬといかぬだろうと思っておるわけでございますが、さらに、五十年産につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、単に今後もかん詰めだけに頼るのでは危ないと思うのでございます。したがって、ジュースの需要も拡大しなければならぬ。これはもちろん後の問題につながりますが、それも含めまして検討しまして、具体的な数字で詰めていきたいというふうに考えております。
  149. 安井吉典

    安井委員 いまある滞貨は、とにかく全然ゼロになる状況が望ましいわけですね。というのは、年度が変わればまた次のやつが出てくるわけですから、長い間置いておけないのです。そういう意味合いで、いずれにしても、百二十万ケースというものは何らかの形で人間のおなかの中に入れてしまわなければいかぬのですよ。そういう需要の拡大というものが必要なのは当然だし、したがって、いまちょっとお触れになったようですが、学童給食に向けるとか、まずい給食のときにパイナップルのかん詰めを先生にあけてもらって食べるというのはいいじゃないですか。そのことで沖繩のこの問題の解決にも役立つとすれば大いにいいと思う。ですから、この際、ちょっとドラスチックなあり方かもしらぬけれども、滞貨を一掃する方法についてもっと真剣に考えていただきたい。そういうことをきょうは申し上げておきたいと思います。  それから、今後の問題でありますけれども、このように余ってきた段階では、五十年度はとりあえずパインかん詰めの外貨割り当ては一時中止するというぐらいな対策が必要ではないか。特に、冷凍パインのかん詰め生産の中止をすべきではないか。なかなかむずかしいですとさつきも御答弁がありましたけれども、いまある滞貨をどうしてなくすかということとを考えるときに一これからの質題はこれから先の問題ですけれども、その外貨割り当ては来年は一時中止をするぐらいの構えで臨まなければ問題の解決にはならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  150. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、冷凍パインからつくられるかん詰めは、いままでの措置によりまして、これからはまず量はそう出ないのではないかと私どもは実は思っておるわけでございます。現に、十二月の量は非常に減っております。したがいまして、先ほど来の問題、特に関税の引き上げ問題もございますから、これはまずまず抑制できると私は思っているわけでございます。  そうしますと、一番の問題はグローバル物でございますが、もちろん、これにつきましては、このような需給の事情を十分見きわめて対応しなければならぬと思っておりますが、その数量を具体的にどうするかにつきましては、これはまず下期のたな上げをどうするかという方が先決でございまして、それで実はいろいろ交渉の真っ最中でございますものですから次に入っておりませんが、したがって、計数的には私も現段階ではまだ何とも申し上げかねるわけでございますが、このような需給事情を踏まえまして、これは慎重に対処していかなければならぬというふうに考えております。
  151. 安井吉典

    安井委員 五十年度の需給計画はまだですか。
  152. 松元威雄

    ○松元政府委員 まだでございます。
  153. 安井吉典

    安井委員 いつごろ決めますか。
  154. 松元威雄

    ○松元政府委員 需給計画というのは、具体的に申しますと、グローバル物を幾ら割り当てをするかというのが直接的な役目であるわけでございます。もちろん、それ以外に全体の需要を見るための需給計画の策定ということはございますが、じかに出てくるとはやはり輸人割り当てをどうするかという問題でございますから、私ども、とりあえずまず下期のたな上げということの交渉に全精力を注いでおりまして、五十年の数量の交渉にまだ入っていないものでございますから、いつまでにということは、現事情ではまだちょっと申し上げかねる段階でございます。     〔中川(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 安井吉典

    安井委員 冷凍。パインをもう少しチェックするという意味合いでの関税引き上げがありますね。三五%ですか。それで目的が達せられるとお考えなのかどうか。これは農林省と、それから大蔵省からもお見えのはずですから、両方からひとつお答え願います。
  156. 松元威雄

    ○松元政府委員 関税率の三五%の引き上げにつきましては、関税体系の問題がございます。それから、両者のコストの比較の問題がございます。そこで、コストの見方についてはもちろんいろいろ見方もあろうかと思いますが、私どもは、三五に上げれば、これで冷凍パインはまず抑制できるというふうに思っております。
  157. 松尾直良

    ○松尾説明員 ただいま農林省の松元局長からお答えいたしましたとおり、私どもも、関税率三五%が妥当な水準であろうということで、ただいま関税暫定措置法の一部改正案を国会へ御提案申し上げておる次第でございます。  四十九年の冷凍パイナップルの輸入実績については、先ほど上原委員の御質問に対して農林省の方からお答えがございましたが、四十八年の二万二千トンに対しまして、一万一千トンと、ちょうど半減をいたしております。さらに、三五%に引き上げられるということで、冷凍パインの輸入問題はほぼ解決できるのではないかと、かように考えております。
  158. 安井吉典

    安井委員 一部からは、輸入関税を五五%ぐらいに引き上げてくれなければとまらぬという説もあるわけですよ。そういう説もあるものだから、政府は三五%で見通しは大丈夫なのかということを私はいま伺ったわけですけれども、また先になって見通しが誤りましたというふうなことにならないように、さらにこの点は慎重に御検討をいただきたいと思います。関税定率法の改正の問題も出ておりますから、その際でもいろいろ検討が行われると思うのですが、お願いだけしておきます。  もうあとわずかしか時間がありませんが、これから後のパイン需要の喚起の問題でありますが、先ほどもこれはいろいろお触れになりましたが、ジュースへの利用だとか、それから生食用ですか、そういうような形でもっともっと需要を喚起する必要があるのではないかという感じも受けます。私ども沖繩へ行って、帰りに空港でおみやげに生のパインを二つ三つ買ってぶら下げて帰るというのもいいものだと思うのですけれども、空港にはありません。沖繩から帰る人は、それこそ関税の特例があるものですから、洋酒を下げて帰ります。これは、こちらから行った人は残らずそうだと言っていい風景なんですが、洋酒も下げて帰るなと私は言うわけじゃないが、洋酒を三本下げて帰るなら、同時にパイナップルも三本下げて帰るぐらいな仕組みをしてもいいのではないかと思う。海洋博があるからということだけじゃなしに、海洋博はさらにまた特別な需要の増強になるが、いつもそういうようなことかできればいいなあと私はときどき思いますよ。  それから、ハワイなどでは、最近は私は知りませんけれども、パイナップル畑にパインのスタンドがあって、冷凍パインの冷たいやつをそこで食べさせてくれる。あれも、あそこでもいできたやつをすぐ食べさせるわけじゃないでしょうけれども、ちゃんと冷蔵庫に入っているやつを食べさせてくれるのだろうが、パイン畑で、あの暑い中で食べさせてくれるということでえらく人気があるわけですよ。だから、もう少し何かそういうふうな新しい需要の喚起の道も今後の問題として取り組んでいただきたいということがあります。  それから、もう一つつけ加えて、あわせて御答弁いただきたいわけですけれども、これは島田委員からもお尋ねがありましたが、将来のパイン生産の問題ですね。目標年次を置いて、全体的な果樹農業振興特別措置法に基づく計画もあるわけでありますけれども、それについても、そういう新しい需要が喚起されるかどうかという問題も含めて、やはり見直しも必要ではないか。そういう中で沖繩の農業の中にパインをどういうふうに位置づけていくのかということをもう一度明確にする必要があるのではないか。酸性土壌でも山の傾斜地でも育つというこのパインにかわる作物というものはあり得ないわけなんですが、そういう実態を踏まえて考えるときに、さっき上原委員がいろいろかん詰めを並べておりましたけれども、その当の沖繩へ行っても外国のかん詰めが幅をきかしているというふうな実情なんですよ。あるいは本土でもそうですよ。自分の国の中で、しかも、アメリカに取られていた沖繩が返ってきたという、その沖繩のかん詰めが余っているのに、こっちの方で外国のかん詰めをどんどん売りさばいているというのはおかしいですよ。  だから、私は、この際、新しい需要の喚起の問題と、沖繩におけるパイン農業の今後の位置づけの問題と、沖繩のパインこそすべての果物かん詰めの中で優先させるべきだという方針と、この三点について伺って、これで終わります。
  159. 松元威雄

    ○松元政府委員 需要の喚起と申しますかの御指摘は、私も全くそのとおりに考えております。正直申しまして、実は、いままで、販売等につきましては、役所もそうでございますが、関係者も余り意識がなかった。と申しますことは、先ほども私も申し上げましたが、四十八年ごろまではまずまず売れていたものですから余り関心がなかったというのがやはり実情だろうと思うのでございます。そこで、こうなりますと、いままでみたいに順調に売れてくれないことになりますから、関係者が一緒になって知恵を出さなければいかぬと考えておりまして、販売努力は、政府も必要な事項につきまして、たとえば先ほど普及宣伝費と申し上げましたが、そういう措置も講じまして、これは一緒になって販路の拡大に資してまいりたいと思うわけでございます。  その場合、生食も一つの方法でございますが、やはり、これは大量はなかなかむずかしいだろうと思います。私、さっき、本年度の海洋博の機会なんかには、沖繩のパインをよく知ってもらういい機会でございますからということを申し上げたわけでございますが、それよりも、ロングランで見ますと、ジュースは一つの方向じゃないかと私は思っておりますが、これもまだ濃縮ジュースは現在ございませんから、相当詰めて検討を要するわけでございますので、実は県当局ともこの問題を詰めようと思っております。  そういうことで、第二点の、今後における沖繩パインのあり方につきまして、なかなかこれもいろいろな問題もございます。沖繩パインというのは、立地条件からしますと、ほかの国に比べれば必ずしも恵まれておりません。これは気候条件から申しましても品質から申しましても恵まれていないのは事実でございますが、その地域にとりましては、ほかに代替性作物がきわめて少ないというものでございまして、沖繩全体をならしますと、総生産額でのウェートは五%程度でございますが、その地域としてはきわめて重要なものでございますから、そこは十分認識をして施策を進めなければならぬと思っておるわけでございまして、その場合、果樹農業基本方針におきます目標につきましても二面から見直す必要があるだろうと私は思っております。  一つには、やはり今後の需要をしっかりと見定める必要があるわけでございまして、いままで需要は減っておりますが、今後どうなるのか。それがまたいままでのような成長率が続かないわけでございますから、その場合に需要がどうなるかという面、それから、また、かん詰め以外の需要の形態、いまジュースという問題を私は申し上げましたが、それを含めてもう一度きちっと見直しをしなければならぬと思っております。  それから、また、基本的には沖繩パインを優先的に消化する。一つは、これは国民全体がその心がけを持ってほしいと私は思っておるわけでございますが、これも国単独ではいかぬわけでございますから、それが実行できる措置、体制というものがやはり必要だと考えておりまして、これも一つの対策では済まぬわけでございますから、先ほど来ここでいろいろ御指摘がございました事項はいずれもそれにからむ問題でございますので、それにさらに具体的に対応してまいりたいというふうに考えております。
  160. 澁谷直藏

  161. 中川利三郎

    中川(利)委員 先ほど近藤委員からの御発言にもありましたように、最近、カドミ汚染米の問題やあるいはイタイイタイ病なんかにつきまして、自民党筋から、因果関係はないんだとか、あるいは一PPm以上の汚染米でも食わせても一向差し支えないんだというような風潮なり論調がずっと出ておるようでありますが、国民の立場からいたしますと、これは大変な安全軽視だといいますか、そういうこととして重大だと思うわけであります。こういう傾向に合わせましたように、私の地元である秋田県、つまり天下の米どころでありますが、ここでは、四十九年産米の中で一PPm以上というふうに烙印を押され、すでに赤札を張られて仕分けされた汚染米が一万六千八百二十九俵ありますが、これは大変な数でありますが、これが食品衛生法のロット方式というやり方に切りかえて計算をし直したら、突如として、この一万六千八百二十九俵の八五%に当たる一万四千六百九十二俵というものが全部合格米になった。わずかの二千数百俵を除いてはほとんどが合格米になった。汚染米が二千何百俵しかなくて、あとのものはみなオーケーだった。こういうことで政府に売り渡されておるという事実があるわけであります。  これを見ますと、つまり、きのうまではこれは危険な米た危険な米たと言われていたものか——一PPm以上ですからね。それがきょうからもうこれは安全だ安全だということになっちゃった。そういうことで政府に売り渡され、その中のある部分は堂々と消費者の口にも渡っている。そういう状況があるわけでありますが、これは国民の生命と健康にとってまことに重大な問題だと思いますので、この点について政府の見解を聞きたいわけであります。  まずもって、環境庁、農林省の順序にひとつお聞かせいただきたいと思います。簡単に、一言でいいです。
  162. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に答えてください。
  163. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 私どもは、御承知のように、土壌汚染防止法に基づきまして汚染の範囲を確定するために、二・五ヘクタールに一点という調査を現在実施しております。その結果が先生のおっしゃいました秋田県での約一万六千俵の汚染米があるということになったわけでございますが、私は、その調査に関する限りは、これは正しいというふうに考えております。
  164. 三善信二

    ○三善政府委員 秋田県のお話しでございますが、食糧庁で従来一般的にやっておりますのは、土壌汚染防止法による地域の調査によって、そこから産出された一PPm以上の米は買っていないということはやっておりますが、一部の県では、いま、食品衛生法のロット調査でやっているところもございます。秋田県の場合は、一PPm以上の米であっても、食品衛生法上で決められたそのロット調査のやり方に従って調査して、一PPm未満であるというものがその中から出たら、それは食糧庁としては買うことは当然のことだと思います。
  165. 中川利三郎

    中川(利)委員 聞いてることにはっきり答えてくださいよ。これは一PPm以上の汚染米だということで仕分けされ、赤札を張られた米ですよ。一PPm以上は赤札ですよ。俵の上に赤札が張られる。一以下のやつは黄色の札ですね。そうして仕分けされた米が、その同じ米が、検査方式を別のやり方にしたら今度はみな合格米だ。一以上のやつが一転して一躍オーケーになるなんということは、国民の常識からしても許されるものではないだろうということで聞いてるのですよ。これをどう思うかということを聞いてるのですから、この点について的確に答えていただきたいと思います。これで納得できますか。
  166. 三善信二

    ○三善政府委員 いま申し上げましたように、食品衛生法上の検査で、ロット方式は現在認められているわけでございまして、一PPm以上の米といま先生が言われました、土壌汚染防止法に基づき調査された地域で産出された米は、その中にはいろいろ——一PPm未満のものもあろうかと思いますが、全般的に一PPm以上と認められたものの中に、やはり一PPm未満のものもあるわけでございますから、そういう意味で、平たく言えば、もっと詳しく調査したというようなことも言えるかもしれません。そういう意味では、これはそう非常識なやり方とかというようなことではないと私は思っております。
  167. 中川利三郎

    中川(利)委員 ここに新聞がありますが、そんなばかなことを農民が一体どう受け取っているか。これはことしの二月二十二日のある新聞でありますが、「“カドミ隠し”に広がる不信感」とか、あるいはほかの新聞を見ますと「“忍法カドミ隠し”」というんだな。「汚染米、一転大量パス 新検査法で一万四千俵 秋田処置に困り?出荷済み」となっており、片っ方では、「鷹巣米の名汚す」というようなことで、「怒る農協秋の検査拒否も」となっておるんだな。あなた方はいまりっぱなことを言っても、実際の農民はこういうやり方に対してどう言っていると思いますか。これは秋田県の米どころの鷹巣町の農協でありますが、そこの福田精一組合長はこう言ってるのですね。「細密調査に協力して欲しい、という県の要請に基づいて」つまり、これは土染法だな。「県の要請に基づいて組合員を説得するのに大変な苦労をした。やっと協力を取り付け、出荷の際に、汚染米には赤札、準汚染米には黄色の札を付けて、積み分けるなどの作業も全部組合員にお願いした。それなのに、今まで危険だと処理された米が、今度は“安全”というのでは納得出来ない。組合員に何と説明したらよいのか」とふんまんをブチまけているわけです。  これに対してお医者さんはどう言っているかと言いますと、「これに対し、独自で公害問題と取り組んでいる秋田市の中通病院公害委員会一中谷敏太郎委員長一は、「ロット調査方式で分析すると当然数値は下がる。これは“疑わしきは罰する”々という公害対策の理念に逆行する“カドミ隠し”の便法だ」と厳しく批判しておる。」ということです。一般の大衆、消費者はどう言っているかというと、「一方、消費者の間にも不安と不信感がつのっている。農薬公害に対する恐怖から、大曲市内で生産される無農薬米を共同購入している秋田市民生協の家庭班・秋田大学糠塚宿舎四班の主婦たちは「調査方式を変更したのは、数値のトリックで消費者をまどわすもの。カドミに対する根本的な対策を抜きにして、“食べても安全”という説明はおかしい。伸び盛りの子供たちが安心して食べられる米を供給して欲しい」と評している。」ということです。こう言って怒りをぶちまけているんですね。国民の立場から言うと——生産者、農民はもちろんですが、こんなきのうまで危険だった米が、検査方式を変えたら今度は安全だなんということはあり得ない。違う米ならいいんですが、昼は悪人で夜は善人になるなんというようなことはあり得ないということと同時に、こんなこと自体で何と国民に説明がつきますか。このことについて、厚生省が来ていますから、厚生省にも農林省にも一回お伺いしたいと思います。
  168. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 土壌汚染防止法と食品衛生法との検査法の違いでございますが、これは分析方法そのものは全く同じでございますが、ただ、サンプリングの方法が異なるということでございます。それで、食品衛生法でこのロット方式を決めておりますのは、やはり、食品として流通している米を検査する立場に立っておるわけでございまして、その点、土壌汚染防止法の立毛検査とは目的が異なるためだとわれわれは考えておるわけでございまして、現に流通している米の安全性という点から、われわれはロット方式をとらざるを得ないわけでございまして、このロット方式によりまして検査いたしました結果が、一PPmのものであれば、食品として流通させても国民の健康に影響を及ぼすような結果にはならないというふうにわれわれは解釈いたしております。
  169. 中川利三郎

    中川(利)委員 分析方法の違いだけだ。同じなんだ。あなた方厚生省の立場は流通の方だ。農林省は生産の方だ。米は同じ米なんです。農林省の方の細密でやれば、土染法の方式でやれば一PPm以上なんだ。おたくでやれば必ず希薄になるんですよ。検体を小さくして、狭めるわけですから、必ず薄まるのはあたりまえですね。実際はこれは食品ですから国民の腹の中へ入るわけですから、厚生省のこの食品衛生法のやり方でいくと、本来厚生省の立場から言いますと、一以下ならみんな食ってもいいことになっているが、厚生省のこのやり方に対して、農林省は、厚生省ではそう言うけれども、国民感情から見てこれは疑わしいということで配給しておらないわけですね。そうすると、おたくのやり方でいくならば、国民は、何を基準にして、何を信頼して食べたらいいかわからなくなると思うのですね。  そういう点で、私は、食糧庁長官から、こういうばかなことがあるもんかということで、何と納得させることができるかということでもう一回伺いたいと思います。
  170. 三善信二

    ○三善政府委員 一ppm未満の米は食品衛生法上安全でございますし、本来は配給しても差し支えない米でございます。ただ、けさ、午前中も私は申し上げましたけれども、いろいろ経緯がございまして、厚生省が、昭和四十四年でございますか、細密調査をするための判断基準として、尺度として、一応〇・四PPmを——これは有害であるとか安全ではないというようなことではないとわざわざお断りをして、そういう基準を設けて調査一つの尺度にしたわけです。それが消費者の感情として、〇・四以上は有害ではないかとか、安全ではないじゃないかというよおな、そういう感情もいろいろ加わったんだろうかと私は推察するわけでございますが、いずれにしましても、私ども毎日この配給の仕事をやっているわけでございますが、配給に回しますと、消費者の方でこれを受け取っていただけない、拒否されるというようなことがあちこちで起こりました。これは大阪初め、京部、愛知、奈良、和歌山、大分、富山もそうですか、そういうようにあちこちで起こりましたけれども、そういう国民感情上安全でないとか有害であるとかいうようなことじゃございません。そういう国民感情、消費者感情に訴えまして、現に受け取っていただけないものですから、それで、一応、〇・四から一PPm未満の米については配給操作上配給しないことにしようということで決めているわけでございます。その点はひとつ御理解を願いたいと思います。
  171. 中川利三郎

    中川(利)委員 御理解できませんな。なぜかと言いますと、一万六千何ぼというのは一PPm以上の汚染米なんだ。そういうふうに仕分けされ、赤札を張られた米なんだ。ところが、それが一転して、その中から非汚染米つまり、〇・四以下ですな、何でもない完全にりっぱな米だというものまで出てしまっているんだな。千三百三十一俵のあとは、〇・四から一PPm未満のものが一万三千三百六十俵出ている。消費者の方へ全部それが何でもない米として、一PPm以上のものまで出回っていく。準汚染米ももちろん大量にあるわけですが、これで国民が納得できるかということですね。だからこそ、〇・四以上のやつは、国民はそれを配給しても配給を受け取らない。国民のための政治だということになりましたならば、こういうむちゃくちゃなやらせ方ということは、疑わしきは罰するというような立場から言うなら一体どうなるのかということですね。こんなことを許しておったら、政府なんというものは一体何だということになると思うのですよ。国民が現に受け取らないということは、それだけの危険性を感じているからでしょう。それをあなた方は細工して、これを「忍法カドミ隠し」と言うんだが、配給までさせているというようなことはけしからぬじゃないですか。  ここでけしからぬとかけしからなくないというようなことを論議しても始まりませんから、それでは具体的な事例でお聞きしていくわけでありますけれども政府が買い上げる準汚染米ですね。一PPm以上は買わない、一以下のやつは、〇・四までの分は買いますね。この準汚染米がどのような処理基準で処理されているかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  172. 三善信二

    ○三善政府委員 現在、〇・四から一PPm未満の米は、食糧庁が保管しておりますのが約五万七千トンございます。四十四年産米から四十八年産米までの分でございます。それで、私どもこれを何とか処理していきたい、処分していきたいということで、いろいろ研究会もやりましたが、現在やっておりますのは合板用ののりでございます。合坂工業用ののりにこれを処理するように販売する。非常にまだ少量でございますけれども、そういうことで使用するということをやっているわけでございます。
  173. 中川利三郎

    中川(利)委員 私の手元に昭和四十九年十一月十九日付で出した食糧庁長官の通達があるわけですね。これで見ますと、今度政府は、群馬だとか宮城県だとかいろいろなところに、準汚染米をのり用に加工していくための工場をおつくりになることになっていますね。五カ所ですか。その場合の準汚染米の委託加工の実施について、これこれのことをやらなければならないということを指摘しているわけですね。それを見ますと、「趣旨」として、「この要領は、カドミウム汚染等により配給不適となった政府所有米穀を」、つまり、これは〇・四から一未満ですね。これを「合板接着剤の原料用に売り渡すに当り、当該米穀の横流れの防止のため、政府の委託加工により玄米のまま粉砕したものを着色加工の上売り渡すこととし、」云々と言って、そのほかにいろいろな規定が書いてあるのですね。そのとおりですね。  この通達を見ますと、そのほかに、立ち合いを必ずやらなければならないとか、この準汚染米の処理の工場はこれこれの資格条件が完備しておらなければならないとか、そういうこともあります。準汚染米について、政府はいろいろなこの取り扱いのための基準を設けているわけでありますが、最も手のつけられない、一番危険だと言われる一以上の米に対してどういう指導基準なり、どういう取り扱い要領をつくっていらっしゃるのか、この点をお聞きしたいと思います。
  174. 三善信二

    ○三善政府委員 一PPm以上のカドミウム汚染米につきましては、これはやはり食用に回さないわけでございますし、また、横流れしたり間違われたりするようなことがないように厳重に取り扱っていかなければいけないということで、食糧庁としましては、譲渡許可と申しまして、生産者がそれを売る場合、あるいは工場等でこれを買う場合にそういう許可を個々の件数ごとにやることにいたしております。一PPm以上の汚染米につきましては、大体現在染色用ののり用途に限定して使用させることにしておりますが、いま申し上げたように、譲渡許可を一件ごとにいたしております。譲渡許可しますときに、いろいろな条件をつけたり、また、その譲渡先が果たしてそういう染色用ののりを加工する工場であるかどうかということも確実に認定をしてやるとか、それから、また、譲渡を受けた工場につきましては、何トンの数量をいつ工場に持ってきて、いつどういう工程でのりにしたとか、そういったいわゆる使用台帳を私どもはその工場につくらせております。また、その使用台帳に基づきまして、のりに加工が終わりましたらそれを食糧事務所に報告させるということもやっております。さらに、製造過程等におきまして、食糧事務所の職員に指導監督をさせるというようなこともやっております。そういうことで、一般の流通に回らないように、食糧庁としてはそういう注意をいたしているわけでございます。
  175. 中川利三郎

    中川(利)委員 取り扱いの指導基準というものはあるのかどうかということを聞いているのです。
  176. 三善信二

    ○三善政府委員 基準といって、はっきり文書にしたものはございませんが、いま申し上げましたように、取り扱い上そういう譲渡許可の条件とかいうようなことでやっておりますし、現に、食糧事務所は私どもの出先でございますから、そういうところに十分指導をさせ、県等にもそういうことは十分指導するように注意をしているわけであります。
  177. 中川利三郎

    中川(利)委員 政府買い入れの準汚染米については、これを横流れしないように着色しなさいとか、立ち入りについては、たとえば、「加工工場は、加工を開始するに当たり、所長に対して食糧事務所職員の立会いを依頼するものとし、」云々というようなかっこうで、もう厳格をきわめているのだな。準汚染米は、一以上を凶悪犯人とするならば、これは軽犯罪法に該当する米なわけですね。これに対してこれくらい取り扱いについて厳しいものを持っておって、片っ方には何にもそれが関係ない。ただ、農林大臣が譲渡する際に譲渡許可を与える、あとは適当に見るんだということです。ここにおたくの譲渡許可というやつがありますけれども、条件をつけていると言うが、これは何が条件ですか。食糧への転換をやってくれるなと言っても、こんなものをやってくれるなという歯どめは一つもないでしょう。使用台帳をつけろと言っても、これは歯どめがどこにありますか。必要と認めるときには指定する職員が立ち会いますよと、こういう程度でしょう。片っ方の準汚染米とこれと比べてどんな違いがありますか。  つまり、国の行政というものはそういう面では逆立ちしておるんじゃないですか。国民の安全の面からいたしましても一番検討して押さえなければならないものを野放しにしており、そうして準汚染米はこういうふうにきつくやっているということは、国民の健康と安全という面から見た場合に、一体これはどう答えることができるのかということですね。環境庁が来ていますので環境庁からちょっと伺いたいが、こういうやり方についてはどう思いますか。問題があると思うのですが、御意見をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  178. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 ただいまの御質問は非常にむずかしい御質問でございますけれども、それぞれの調査の目的がございまして、それぞれの調査に従ってやった結果に従って、やはり行動せざるを得ないのではないかと思います。  私どもに関して言いますと、土壌汚染防止法に基づく調査に出た結果、おそれがあるという地域については、やはり、土壌改良をやっていくという方向でやらざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  179. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたは何をとんちんかんなことを言っているのですか。私の聞いたことに答えていただかなければいけないのですがね。  厚生省、いまの見解に対する御返答をいただきたいと思います。
  180. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 食品衛生法で定めております米の中のカドミウムの安全量というのは、これは、やはり、食品衛生法というものが非常に伝家の宝刀的な法律でございまして、これに違反すればすべて廃棄その他の処分を強制的に行うような法律になっておりますので、いわゆる最終のぎりぎりの線と申し上げましょうか、そこで法律的には基準を決めておるわけでございます。  ただいま先生がおっしゃいましたように、食品等による人間の危害を防ぐためには、できるだけ安全なところでこれを操作していくことが必要ではなかろうかと思うわけでございまして、われわれの定めております一PPmの範囲の中で、なおかつできるだけの安全性を見ながらこういった米の取り扱いをされているという点については、われわれもこれが当然のことだと考えております。
  181. 中川利三郎

    中川(利)委員 何か返事がぴんとこないね。私は、一PPmの外側の、以上のものを聞いているのですよ。これは一番危険な米なんだ。あなたは一PPm以内のものをあれこれ言ったって、その一番危険な米を実質上野放しにしているのじゃないか。国がこれに対する取り扱いの措置を決めたものは何一つないじゃないか。問題は、こういうことがこのまま放置されていいかどうかということですよ。  環境庁はそういうことの所管だと思うのです。つまり、これは農林省も相手にしない米だ。厚生省も相手にしない米だ。これは食品衛生法なんて関係ない米だな。そうしますと、環境庁として、こういうものに対しては、全くおれは知らない、府県知事さんにまかせておけばいいということになるのか。一番危険な凶悪なものを国が責任を負わないで、真ん中ごろの何か緩いものに対してはあれこれ基準を立てておる。こういうあり方は、国の行政として、また国民の安全を守るという面からして妥当なものかどうか。この点について御見解を聞かせていただきたいと思います。
  182. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 いまの問題も、私どもとしましては、決められている方法でやって、安全だということになれば、それは当然だと思いますし、環境庁としましては、これは農林省が許可を与えて販売その他をやっておりますので、農林省の方で十分御指導いただきたいというふうに考えております。
  183. 中川利三郎

    中川(利)委員 環境庁は農林省の方で御指導していただきたいと言うが、その農林省が、これを指導する体制ができておらないということを言っているじゃないですか。文書も何にもない。取り扱い基準もない。ただ、譲渡する場合、引き渡す場合、移動させる場合、農林大臣が許可を与えるというだけがまあ目玉と言えば目玉でしょう。あとは何もないじゃないですか。こういうことになると、実質的にこの責任を持つのはだれですか。汚染米の責任を持つ役所というのはだれですか。お答えください。
  184. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほどから私が申し上げておりますように、一PPm以上の米につきましては、譲渡許可をやっているわけです。しかも、譲渡許可をして、その米がどこからどこの工場に運ばれ、台帳までそこに備えさせて、工場も確認し、報告もさせ、そして食糧事務所の職員を立ち会いに向けたり、あるいは食糧庁と別個の立場で、県も、県によっては非常に厳重に指導しておられるわけでございまして、そういうことで、何か非常にイージーに取り扱っているように先生は言われますけれども、私どもとしては、そういう細心の注意を払って、現実に横流れしたり食用に回されたりしないように監督指導していけば、それで事は足りるのではないかと思います。現実にそうやっているわけでございます。  そういうことで、食糧庁としては一生懸命この問題については努力して、細心の注意を払っているということを申し上げてもいいのではなかろうかと私は思っているわけでございます。
  185. 中川利三郎

    中川(利)委員 たとえば準汚染米では、横流れ防止のために着色するのだということだが、着色していますか。
  186. 三善信二

    ○三善政府委員 これは、合板用ののり等は着色をしても、使用目的としては一向に差し支えないわけですね。  これは染色用ののりでございまして、染めるわけで、そののりですから、その色がつくというようなことで——着色して流通させるということは、これはその使用目的のために非常にむずかしいということも私たちは聞いているわけでございます。
  187. 中川利三郎

    中川(利)委員 いずれも歯どめが一つもないことは事実でしょう。横流れしたってわからないのだ。ただ、台帳があると言ったって、あなた方がついているわけじゃないでしょう。  これは長崎県の例ですが、まだ十俵単位の汚染米しか出ていない当時は、食糧庁の役人が来て、全部その作業の終わるまでついておったことがあるのですよ。それくらいかつてはやっていた。ところが、いまたくさん出るようになったら、もう手も回らないけれども、こういう汚染米がこれだけ出ているときに、ただこの程度のことしかしない。ここにあなた方の条件をつけた譲渡許可書がありますよ。これが何が歯どめなのかということですよ。  もう少し具体的に言いましょう。実は、秋田県では、昭和四十七年、四十八年の両年度の産米——それまでの産米の中のカドミ汚染米、つまり一以上ですが、百八十八トン余り、いま凍結して在庫しているほとんどのものでありますが、俵の数にして三千五百五十一俵、これを昨年の十二月五日に農林大臣の譲渡許可を受けて、ことしの一月十七日に東京都の江戸川区の安達糊料というのり会社と売買契約をしているのですね。精米にしているのですよ。もう玄米じゃないですよ。普通なら玄米ですな、おたくの準汚染米の場合は。それをわざわざ精米にして、工場着渡しの値段がキロ当たり二十円、一俵に換算すれば千二百二十円ですね。この百八十八トンというものは、この安達糊料の年間使用分に匹敵するものなんですよ。大変な量なんですね。かつて農林大臣が何回かそういう汚染米の譲渡許可をしているわけでありますが、その中でも最大の、いままでかつてない膨大な量なわけですね。そうですね。こういう状態がいまあるわけでありますが、これに対して、玄米で出すべきものが、精米にして出すことを契約してみたり、全くずさんなやり方なんですね。いま、秋田県の平鹿郡の平鹿町というところでは大問題が起こっているのですよ。そんな汚染米をおれのところで勝手に精米されたのでは、第二次公害だとか、二次汚染のおそれがあるからということで、全部いま問題にしているわけですがね。何も基準がないものですから、県が勝手にそれでやろうとしているわけですね。  こういうことについて、厳格な監視体制も何もないまま精米されたり、送られたり、さらにそれが何ら歯どめがないということであるならば、これは一体どうなるのかということですね。単なるその企業の横流しを心配するだけでなくて、こういう程度の中では何一つ保証される手だてがないじゃないか。とりわけ、この準汚染米のこれで見ますと、さっきも言いましたように、「玄米のまま粉砕したものを着色加工」するとか、加工施設の工場は、「他の食品又は飼料等の製造施設と完全に分離しゃ断されており、原則として、別棟となっていること。」だとか、あるいは、「政府から委託を受けた原料米穀の変形加工を他の者に再委託してはならない」だとか、「県間運送により受入れる原料米穀については、加工工場に直接搬入し、引き渡すものとする。」だとか、もういろいろなことを規定しているのですよ。国民にとって一番おっかない汚染米がそういう歯どめも何にもなくて、精米の段階においても、県が勝手にそういう農民の不安をよそにしてやれる状態にあるということがそもそも正常なあり方かどうか、これはあなたがどんなに弁解をしたって問題じゃないかと私は思うのですが、どうですか。これは農林省と環境庁厚生省、それぞれからお聞きしたいと思うわけです。
  188. 澁谷直藏

    澁谷委員長 中川君に申し上げますが、時間がもうすでに経過しておりますので、結論を急いでいただきたいと思います。
  189. 三善信二

    ○三善政府委員 私どもとしましては、一PPm以上のカドミウム米が確実に工場に使われ、染色用ののりに使用されるように、今後ともできるだけ細心の注意を払って、また指導もしていきたいと思います。
  190. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 いま食糧庁長官の言われましたように、こういうものが回らないように、所管の官庁においてやっていただくようにお願いをしたいと考えております。
  191. 中川利三郎

    中川(利)委員 回らないようにと言ったって、回るようにできている、何にも歯どめがないじゃないかということで、後は時間がないからやめますけれども、そのことで申し上げているのです。一番悪質なものを、凶悪犯人を野放しにしておいて、軽犯罪者をあれこれやったって始まらないでしょう。それでは国民は納得できませんでしょう。こういう状態について、これは農林省が直接所管じゃないだろうと思うのですが、はっきりした国の責任で取り扱い指導の基準をつくるべきだ。それでなくても、いま、先ほど言いましたように、カドミ汚染の一PPm以上も食わしていいとか、困果関係が直接イタイイタイ病とはないとか、そういう風潮がどんどんつくられてきているのです。そういう中で、だれが国民の健康に責任を持つのか、国民の命に責任を持つのかという点になると、先ほどからのいろいろなお答えの中にも明らかになりましたように、本当に責任を持っている人がいない。ただ、そういうことはあり得ないと思うということだけだ。  なぜこの基準なりそういうものがはっきりできないかということについて、最後環境庁に伺いたい。これは環境庁の責任において取り扱い基準だとか指導だとか指導要領だとかいうものをつくるべきだと私は考えるが、この点についてどうですか。
  192. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 確かに、そういう意味で、一PPm以上の危険な米がそういうことになってはまずいと思います。そういうことで、環境庁が主体となってやるかどうかは別としまして、そういうものをつくることについて、またいろいろ御相談をしていきたいというふうに考えております。
  193. 中川利三郎

    中川(利)委員 では、終わります。
  194. 澁谷直藏

    澁谷委員長 関連質問を許します。栗田翠君。
  195. 栗田翠

    栗田委員 私は、きょう、お茶の問題について伺います。  いま、世界的に農産物の生産が需要に対して足りなくなるんじゃないかということが言われるようになりまして、国内で自給できるものはなるべく自給率を高めるべきだという声が一般の世論になっております。これは当然なことだと思います。それで、農林省もそう考えていらっしゃると思うのですが、特にきょうはお茶の問題ですが、日本の緑茶というのは、世界的に見ても大変品質がよろしいし、国内では需要も大層高く、歴史的にも輸出産業であるわけでございます。言ってみれば、日本の特産物というふうに国際的に言えるのではないでしょうか。こういうお茶をできる限り一〇〇%国内で自給できるような方向で政府としても努力していくべきだと私は考えておりますが、その点について農林省はどうお考えでしょうか。
  196. 松元威雄

    ○松元政府委員 緑茶の自給度を高めるようにといういまの御質問でございますが、私も極力自給度は高めたいと思っておるわけでございます。ただ、御案内のように、緑茶そのものはすでに昭和二十六年から自由化されているわけでございますが、それに対抗してちゃんと日本の緑茶がやっていけるというようにすることが必要であるわけでございます。現在では約九割程度の自給率でございますが、一つには、今後生産性を高めるということ、それからもう一つには、何と申しましても品質はわが国がすぐれております。したがって、より品質を高めるということ、そして、消費者の需要に見合った品質のものをつくり出すということ、こういうことによりまして極力国内自給率を高めるということでございまして、現在農政審議会で御審議を願っております「農産物の需要と生産の長期見通し」におきましても、昭和六十年にはいまよりも自給度を高めるような数値として御審議をいただいているわけでございます。
  197. 栗田翠

    栗田委員 そういういろいろな努力の中で、一〇〇%自給していく方向で努力をしておられますか。
  198. 澁谷直藏

    澁谷委員長 政府委員側に申し上げますが、栗田君の持ち時間が非常に少ないので、簡潔に要領よく答弁してください。
  199. 松元威雄

    ○松元政府委員 一〇〇%という必要は必ずしもないのでございまして、おおむね一〇〇%に近いということで、六十年には九七%程度を目標といたしております。
  200. 栗田翠

    栗田委員 お茶の輸出入の状態を見ますと、輸出は一九五五年は一万四千五百トンでしたけれどども、現在は七分の一の二千トンに激減しております。しかも、輸入の状態は逆で、非常に増大しておりまして、一九六〇年千五百九十七トンが、七三年には二万一千八百トン。この中で緑茶は一万二千八百トンぐらいですから、全体の一二%も国内に輸入するという状態になっております。体この原困はどこにあるのでしょうか。
  201. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、輸出が減りました原因でございますが、これは、たとえば戦前はもちろん日本はお茶の輸出は非常に多かったわけでございますが、それとはもはやいま需給構造が違っているわけでございます。と申しますことは、戦前は北米が中心でございましたが、戦争中に北米の嗜好がコーヒーとかココア等に移った、あるいはまたジュース、コーラ等が伸びたというふうにして需要が変わってまいったわけでございまして、したがってお茶の輸出が減ったということでございます。  それから、もう一つは、戦後新たに開拓した市場として北アフリカ市場がございますが、これは価格の安い、たとえば中国茶といったものが伸びておりまして、市場は失ったということでございます。  それから、また、何と申しましても国内の需要が旺盛でございまして、輸出は価格が安うございますから国内で売った方が有利であるということもあるわけでございます。  したがいまして、輸出が減ったという、その数字だけで論ずるわけにまいらぬわけで、それなりのやはり理由があるわけでございます。  それから、輸入でございますが、確かに輸入もふえているわけでございますが、これはやはり需要が伸びたということと、また、その中におきまして、品質的にはもちろん輸入ものが悪いわけでございますが、いわば増量剤としての需要がございまして輸入がふえてきたというわけでございまして、両者対応いたしまして現在国内の需要にはこたえているわけでございます。
  202. 栗田翠

    栗田委員 昨年、すそもの相場といいますか、二番茶以下が大層値が下がりました。そうしたら、緑茶の輸入が五千六百三十トンですか、ぐっと減ったわけです。結局、いま言われたようにブレンド用に使われているということですけれども、そうなりますと、すそものの相場と、それから台湾茶その他の、安い、日本で生産されるものの三分の一ぐらいの価格で入るものかどんどん輸入されてくることとの関係で、非常に不安定な状態になっているわけです。この輸入がふえていったら相場が下がっていくのではないだろうかと思いますし、しかも、こういう中でいまみんなが脅威に感じているのは供給過剰の兆しが見えているのではないだろうかということで、そういうことが生産地では言われているわけでございます。  現に、農林省が出された需給計画を見ても、昭和五十七年には自給率一〇二%となっております。それから、都道府県の計画を見ますと一二五%で、大分これは生産過剰の状態になるわけですが、ここに差がずいぶんあるということ自体問題で、この需給計画の洗い直しということも必要だと思いますが、きょうは時間がないのでそれは申し上げられませんけれども、こういうふうな状態がいま出てきておるわけです。ミカンなども生産過剰で暴落しまして、しかも、その上オレンジその他の輸入がされていて、ミカン農民がいま大層苦しんでいる実態が出ておりますけれども、お茶がそういうことにならないように、政府としては大いにいまから努力をしていくべきだと私は考えております。台湾茶がそういうことで入ってきまして、その他も入ってまいりますけれども、引そもの相場に相当大きな影響を与えているということ自体、さっきの自給率を九七%以上に高めていくというお考えに対して大変うらはらじゃないか、と、私はそういうふうに思うのです。  もっと大変なことがございます。それは開発輸入の問題です。私が調べたところでは、いまケニアなどに丸善製茶が進出しまして、また、「山本山」という、例のよく宣伝しているお茶会社がブラジルなんかに出ているわけで、開発輸入を始めた。そこで緑茶をつくって、安い緑茶を日本にブレンド用に輸入するということがいまやられ始めているようです。この開発輸入の問題については政府はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  203. 松元威雄

    ○松元政府委員 御質問は三つばかりのポイントがあると思います。(栗田委員「開発輸入の問題だけで結構です」と呼ぶ)はい、わかりました。開発輸入につきましては、これは茶が御指摘のとおりわが国の重要な農産物でございます。それから、また、近年お茶の植栽意欲が非常に強いものですから、このまま放任しますと将来過剰問題が生ずる危険があることはおっしゃるとおりでございます。したがいまして、いま生産者団体も自主的にそういった問題に対応しようとしておるわけでございまして、国もそれに助成をいたしておるわけでございますが、そういう事情にあるわけでございます。  そこで、政府といたしまして、開発輸入を進めるということは特にいたしたわけではございませんので、政府の政策的な資金等が特に投下されていたわけではございません。いわば、民間ベースで自由でございますから、御指摘のとおり、ケニア、ブラジル等に一部で開発輸入か行われているという実態はございます。その数量は現状ではそれほど多いものではございませんで、ケニアが約六百トン、ブラジルは約三百トンという程度の数量はございますが、これはいわば民間ベースで行われているということでございまして、そこで国といたしましては、こういった一部ではございますけれども基本的にはやはり国内の自給度を高める方向でございまして、それは、やはり、品質をよくし、コストも下げて競争できる、自前で対抗できるというふうにすることが基本だと思っております。
  204. 栗田翠

    栗田委員 いま分量があまり多くないとおっしゃっています。確かに、いま分量はさほど多くはございません。しかし、これはいずれ多くなっていくのではないだろうかという問題が一つあるわけであります。  ここに昨年の八月に出された外務省の経済協力局の資料があります。アフリカ地域経済協力効果測定調査団報告書ですが、これを見ますと、たとえばケニアのお茶の問題ですけれども、ケニア政府は大変熱心だということです。そして、現在の工場規模の大幅拡張を強く希望しているというふうに言われているわけなんです。この中を見ましても、現在できている単一工場が年産六百トン、単一工場としての年間生産能力は世界最大、こういうものがつくられているわけでして、ですから、これがどんどん広がっていった場合には大変だということです。  それじゃ、これについて具体的などういう対策を持っていらっしゃるのか、これをこれ以上広げないように規制される考えを持っていらっしゃるのかということが一点です。その点、まず伺います。
  205. 松元威雄

    ○松元政府委員 先ほど、これは民間ベースで行っているということを申し上げました。それから、そうなりますと、これは、やはり、向こうから来たもの、開発輸入されるものと日本のものと、品質なりコストなりがもちろん競争関係にあるわけでございます。したがいまして、基本的には、開発輸入でどんどん入ることは望ましくないと私は思うわけでございますが、それを制度でどうこうというよりも、やはり、国内の方で物をよくするということ、コストも下げる努力をするということで対応するのが基本だろうというふうに考えておるわけでございますし、それから、また、確かにあの地域では本来は品種的に緑茶ではないわけでございまして、紅茶の品種を製法で緑茶式にするわけでございますから、品質はやはりわが国の方がよろしい。ただし、増量剤に使われるという要素がございますから、そういう下級茶の方につきましても、いま言った品質向上とかコスト引き下げをやりまして対抗できるようにしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  206. 栗田翠

    栗田委員 先ほどから民間ベースだとしきりにおっしゃっています。政府としては特に進めるつもりはないんだけれども、まあ貿易は自由であるから、と、こういうことをおっしゃっております。  経済企画庁に伺いますけれども政府はこの開発輸入に対して海外経済協力基金を出していますね。長期の融資を丸善製茶その他に出しているはずですが、一体幾ら出ていますか。
  207. 谷村昭一

    ○谷村説明員 経済協力基金から一億一千四百万円の資金を出しております。
  208. 栗田翠

    栗田委員 望ましくないと言いながら、民間ベースだと言いながら、国の基金をこうやって援助に出している。一体これはどういうことなんでしょうか。  もう一度伺いますが、「山本山」の方ですね、ブラジルにはどのくらい出していますか。
  209. 谷村昭一

    ○谷村説明員 ブラジルには出しておりません。
  210. 栗田翠

    栗田委員 たとえ一カ所でありましてもこういうわけなんです。結局、さっきから自給率を高める高めると言いながら、こうやって国の援助をやっている。これでは結局はミカンその他と同じになるんじゃありませんか。供給過剰になるのじゃないかと心配して、しかも日本の特産品として守っていきたいとだれしも思っている。農林省も口ではそうおっしゃっている。そういうものについて海外協力基金なんというのを、長期融資を出している。このことでもうかるのはどこかと言えば、結局丸善製茶です。安いお茶を安い労働力でつくって、そっくりこれを日本へ持ち込んで、品質がいいわけでも何でもないけれども、これをブレンドに使って、じゃその分安くなるかと言ったら大して安くなっていないと思うのですね。こういうことに国が援助をしているということ、これは大道問題だと思いますが、いかがですか。
  211. 松元威雄

    ○松元政府委員 私、若干答弁が不正確でございましたが、少なくとも、農林省といたしましては、開発輸入を大いにやって入れるということは望ましくないと思っております。そこで、いま一社ございましたけれども、こういった需給事情を十分  私ども踏まえまして、開発輸入によってどんどん輸入がふえていくということがないように、今後も関係各省で十分これは相談いたしたい、それで基本的に日本の自給度を上げるように努力してまいりたいと思います。
  212. 栗田翠

    栗田委員 次に、公取委に伺いますが、外国の輸入品がブレンドされております。台湾茶が何%とか、どこそこのものが何%と表示するようになっていますけれども。これは実際に実行されていますか。静岡はお茶屋がたくさんあります。私は静岡ですのでずいぶん調べましたけれども、表示されているものをいまだ見つけたことがないんです。一生懸命探しました。どうですか。やられていますか。
  213. 利部脩二

    ○利部説明員 景品表示法に基づきまして、いまおっしゃったような表示をしなければならなくなったのは去年の五月からでございますが、そして、おっしゃるように、台湾とか外国の茶が混入されている場合には、その旨を表示しなければ法律に違反することになっております。そういう指導は続けておりますが、私も、実は、そういう表示をされたお茶をまだ見ておりません。
  214. 栗田翠

    栗田委員 つまり、輸入されていることは確かでありながら、表示されたものがない。これは、言ってみれば不当表示なんです。国民も、こんなものが人っているということがわかったら買わないかもしれないのですが、それがまぜられて、実際にかかっている原価よりかなり高く売られている。これは大企業が大もうけをしている、ということになるわけなんです。徹底的に調査をして、今後表示が厳密にやられるように指導してください。  次いで、あと一つだけ伺しますけれども、いまお茶の値の問題で一番農民が困っておりますのは、資材、肥料などの大きな値上がりなんです。あの石油危機以来ずいぶんいろいろなものが高値安定しまして、ざっと聞いただけでも、お茶を縛るPPひもと言っていますが、ポリのひもが初め三百円だったものが千二百円になって、それが四百円に落ちついた。「大海」という荒茶を入れる袋が、九十円が二百三十円まで上がって、下がることは下がったけれども、百六十円になったというのです。燃料、重油やプロパンが三倍になりまして、このことで、昨年ぐらいはお茶の価格も多少、平均すれば上がっておりますけれども、純収益というものは減っております。こういうことで、この資材、肥料を抑えていくということをいま努力していかなければいけないと思うのです。  ところで、伺いますけれども、硫安のような肥料は、指導価格というものを農林省が決めておられると思いますが、これはいま幾らで指導価格を決めておられますか。
  215. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のとおり、農業資材の価格は石油危機以来上がったことは事実でございます。これは何分原材料価格が上がった、石油そのものが上がった、ナフサが上がった等々がございましたものですから、極力役所は便乗値上げを抑制したわけでございますが、結果的には上がったという事実は否定できないわけでございますが、役所は全農を十分指導いたしまして、便乗値上げは厳に抑制をさせ、さらに監視も続けているわけでございます。  お話しの点は末端価格の問題かと思いますが、その場合、いまの価格の決め方は、生産者の組織である全農がメーカーと交渉して価格を決める。それが基準になっているわけでございます。それに対しまして末端価格は、それに全農のマージン、経済連のマージン、それから単協のマージンというのが加わって、それに単協で、末端におきまする物的費用が若干加わる場合もございます。したがって、一応のマージン率の標準を決めておりますが、経済連以下、特に単協段階ではマージン率に若干差がございます。農林省は、もとの値段は全農を指導いたしまして、メーカーとの間の値段につきましては指導いたしております。それから、また、全農は、経済連、単協につきまして標準マージン率は指示はいたしておりますが、地域で若干差があるということは、これはある程度あることはやむを得ない次第でございます。
  216. 栗田翠

    栗田委員 経済連に対する指導価格は、硫安なんか決まっているのじゃありませんか。末端でなくて結構です。幾らですか。——時間がありませんから、おわかりにならなければこちらの調べたものを言いますが……。
  217. 澁谷直藏

    澁谷委員長 栗田君、言ってください。
  218. 栗田翠

    栗田委員 はい。私の調査しましたところでは、トン当たり二万三千五百六十七円、つまり、これは二十キロ単位で売っていますが、四百七十一円になります。  ところで、私は、これを県下の六つの農協が幾らで売っているか調べました。A、B、O、D、E、Fと六つの組合です。Aは静岡県内の東部の農協です。Fが西部、あとBからEまでが中部地方、この六つを調べたわけでございますが、驚きました。硫安が、A農協では六百四十円、BからEまでが六百二十円、Fが五百九十円、平均一・三倍というふうになっているわけなんですね。大層高うございます。これだけの幅がマージンで必要だとは考えられませんし、それから、農協ごとに大変価格が違っております。このことをどうお考えになりますか。
  219. 松元威雄

    ○松元政府委員 数字がおくれて失礼いたしました。  経済連の販売価格は四百七十三円でございました。単協マージンは、標準といたしましては単協は約一〇%のマージンでございますが、このマージン以外に、さらに、末端の積みおろし費用でございますとか運送賃を込めているところもございます。したがいまして、若干差がある点はございます。ただ、平均的に見ますれば、たとえば物賃の価格を比べてみますとそれほど大きな差はございませんが、確かに、単協によりましてマージン率の差、それから物的経費の差はございます。
  220. 栗田翠

    栗田委員 一・三倍という価格で売られていることについて伺っているのです。伺ったことだけに答えてくださればいいです。もう時間がなくなっていますので……。これはずいぶん高いのですよ。こういう状態をどうお考えかと言っているのです。
  221. 松元威雄

    ○松元政府委員 それはマージン率に差はございましても、確かに、御指摘の一・一二倍というのは高いと思いますので、私、その地帯を実地にお教えいただきまして、実態を調査してみます。
  222. 栗田翠

    栗田委員 ぜひ調査をしてください。
  223. 澁谷直藏

    澁谷委員長 栗田君、もう時間が来ていますよ。
  224. 栗田翠

    栗田委員 はい。あと一つです。  これはいま硫安だけじゃなくて、実はその他の資材も大変な状態なんです。A重油を調べますと、農協によってずいぶん値の差がありまして、末端価格ですが、Aの農協が三万三千円、Bが三万五千円、Cが三万五千円、Dが三万四千円、Eが三万二千円から三万四千円、Fが三万二千円と、こうなっております。それから、荒茶を入れる袋なんかは、これは同じものです。一枚二百十円、百六十円、百五十五円、二百二十円、百五十円、こういうふうにやたらに違いますね。これでは不信感を買うわけです。さぞもうけているのだろうという声がいま出てきているわけですね。末端だけでもうけているのか、途中でやっているのか、これもぜひ調査していただきたいのです。そして、農民が一生懸命生産しながら、こういう資材の高騰で純利益を減らされて苦しんでいるということと、ここのところを徹底的にやっていっていただきたいと思います。  私は、その他お茶の規格化の問題だとか、それから改植の問題だとか、いろいろ問題抱えていますが、きょうは時間がありませんのでこれで終わりにいたしますが、最後にいまの点だけお答えを伺いまして、調査をして正しい指導をなさるかどうかということをお答えをいただいて、終わりにしたいと思います。
  225. 松元威雄

    ○松元政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、中央段階の価格につきましては、役所も全農を督励いたしまして、適正価格を決めているわけでございますが、問題は流通段階である。その場合、どうも問題は末端の単協段階に実はあるらしゅうございます。多少差があることは事実でございますが、余り差があり過ぎるというのは、これは実態を十分調べる必要がございます。先生が御指摘のいまの数字もございましたから、私も、そこの具体的地点に伺いまして、十分現地の実態を調査いたしまして、しかるべく指導をしたいと存じます。(栗田委員「末端だけかどうかもわからないのですから、よく調べてください」と呼ぶ)  なお、同じ品質であることはもちろん前提でございます。
  226. 栗田翠

    栗田委員 それでは、終わりにいたします。
  227. 澁谷直藏

  228. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 復旧治山事業、予防治山事業、さらには普通林道についての不正について、林野庁長官並びに会計検査院に質問をいたします。  まず、最初に林野庁長官にお尋ねいたしますが、ただいま申し上げましたように、復旧治山事業及び予防治山事業、さらには普通林道等で国の補助事業になっている工事が、県の設計書に違反して、たとえば砂防堰堤で強度が要求される関係から現場練りのコンクリートを使うようになっているにもかかわらず、手抜き工事をし単価を安く上げるという関係から、民間の生コンを使って施工するというようなことがあった場合に、こういう砂防堰堤等は——特に九州等では雨量も多いし、集中豪雨等によって九州山脈はしばしば大水害等を起こす要因ともなっているわけですが、一たびこれが崩壊しますと下流の住民には大変な問題になるわけで、大災害が起きるということも懸念されるわけです。  そこで、本日は、林野行政の姿勢を正してもらうという意味からも、四つの実例について後でまた詳しく問題を申し上げるわけですけれども、まず、最初に、そういう施工にミスがあり、また、そういうような違反があった場合には、従来からも会計検査院の指摘等も受けられた場合もあるだろうし、会計検査院も人員が少ない関係から全部できないで、大体三二、三%ぐらいの検査というふうなことに従来からなっているようです。また、検査に漏れたというふうなことが起こる場合もあろうと思いますが、そういった指摘を受けたり、さらにはそういったことが従来からあった場合には林野庁長官はどういうように対処してこられたのか。一般論としてそういった面についての御見解をまず最初にお伺いしたいのであります。
  229. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話しがございましたのは宮崎県の西米良村で施行された工事に関連してのお話しかと思うのでございますが、私ども、かねがね、このような治山工事あるいは林道工事等の公共事業につきましては、適正にこれが施行され、その目的が達せられるようにということで指導いたしておるわけでございます。特に、設計個所ごとの概要協議とか、あるいは金額を決め、そしてさらに正確なる個所ごとの設計協議等があって初めて事業を承認いたします。そして、補助金申請等があった場合、これが工事着工ということになるのでございまして、特に、この種事業で工事費等の経費が二〇%以上増額されるというような場合は、重要な変更といたしまして、農林大臣の許可を得てくれという指導をいたしているのでございます。
  230. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 会計検査院の桜木第四局長、きょうは出席していただいておると思いますが、ただいま冒頭にお尋ねしましたような問題で後ほどいろいろ具体例をもって示すわけですけれども、従来から、この種設計のミスによる問題等を会計検査院として指摘した場合に、どういうように対処してこられたか。そういうことについて、まず検査院の方から答弁をいただきたいと思います。
  231. 桜木拳一

    ○桜木会計検査説明員 会計検査院といたしましては、国の補助金の経理につきまして、御指摘のように設計書どおりに工事が施工されていないというものにつきましては、毎年指摘いたしまして、これを検査報告に掲記している次第でございます。
  232. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 宮崎県西米良村大字竹原字尾春谷の砂防ダム工事、もちろんこれは農林省の補助事業になっておりますが、この工事は、事業費が二千二百六十九万円、業者は宮崎県西都市株式会社佐伯組となっております。もう一つは、同じく宮崎県西米良村大字村所字鉱山谷の砂防ダム工事でございます。事業費は二千六百八十八万二千円、業者は宮崎県西都市株式会社河野幸男建設となっております。  県の設計書では、この砂防ダムの施工は「1コンクリート工事は現場練りとする 2砂利は川砂利、川砂(洗い砂)とする」と示されておるのであります。ところが、私たちが現地を調査しました結果によりますと、実際の施工は現場練りではなく、村内にある合資会社共同生コンのプラントから運ばれた生コンクリートによって工事が施工されておるのでございます。指定された川砂利や川砂は使用されず、西都市平原にある共同生コン所有の採石砂利や、砕石するときにとれる粉末状の砕石砂を使用して施工しておるのが事実でございます。  そこで、骨材不足から、その対策として砕石を使用することはあるにしても、このような永久砂防ダムを構築する場合には、より強度のある安全性のある骨材を使うということは当然でありますし、設計書にもそのようになっておるわけです。これは先ほども申しましたように、一たんこれが決壊しますと下流住民は大変な災害を受け、人命に重大な影響を及ぼすからであります。  もう一つは、県は、このダムの表面強度は基準以上、おおむね百六十から二百キログラムあればよいと言っておりますが、幾ら表面強度はあっても、そのダムの本体の中身が果たして安全性のあるものかどうかということが当然問題になります。  さらに、そのため、このような山奥の砂防ダムをつくる場合には——すなわち、これは林野庁長官の出身県でもあるし、特に長官は林野庁の責任者でもあるということから、地域住民も長官に、あなたの足元であるからぜひともこれを善処してもらいたい、こういったようなことはたくさんあるんだ、目の届かないところでこういうことが行われると大変であるということで指摘をしておるわけですが、実際にこういった生コンでやると強度が弱くなって、現場練りで強度をつくるようなこの設計書と違って、地元住民も大変不安におののいておるというのが実情でございます。  そこで、この問題が昨年の十二月及び二月、宮崎の県議会でも取り上げられていろいろと問題になっております。これは熊本営林局を通じて林野庁当局の耳にも当然入っておるし、また、先日も二通告したので、いろいろときょうは調査していただいていると思いますが、実際問題として、はっきりした書類をここに四件だけ持ってきておる関係で指摘をするわけですが、後半にあとの二件は申し上げることとして、この二つについてまずお伺いしたいのであります。  この工事についていろいろ私の方で指摘した結果、完成直後、県の方もその実態を調査して認めた上で、ここに治山工事についての処理並びに検査結果として報告が届いております。全部を申し上げることは時間の関係でいたしませんが、要するに、減額処置をしておりまして、鉱山谷の方の砂防ダムは、請負額が二千五百四十五万四千円に対して減額を百四十二万八千円いたしております。尾春谷の方は、二千百三十万五千円の請負額に対して百三十八万五千円を減額いたしております。  これは後ほどまた具体的にいろいろ申し上げるので、概要だけを申し上げておきますが、このような減額をしたという事実からしても、その非を完全に認めておるわけでございまして、これに対しては——これも名前を言うことも本当にどうかと思いますけれども、本人も勇気を出して宮崎の行政監察局に提訴しておりましたので、その回答が出ております。すなわち、山田敏夫という方でありますが、宮監第七十七号昭和五十年二月十二日付、宮崎行政監察局長名で、山田敏夫あてに「治山事業に伴う適正工事施工について」という回答が出ておるわけです。この中にも、生コン使用の事実を確認するということで明快に述べてありまして、行監からも注意を受けておるところでございます。  そういった問題でございますが、これに対して林野庁長官は報告を受けておられるか。もちろん報告を受けておられると思うが、実際このような施工がなされておったんでは地域住民は大変不安である。こういった意味から、設計どおりに施工されていないということが許されるかどうか、その辺の御見解をまず承りたいのであります。
  233. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘かございました河野幸建設並びに佐伯組両氏の請負にかかる金額、それから設計変更後の金額、これはおっしゃるとおりでございます。  この宮崎県の西米良村で施工されました四十九年度の復旧治山事業についてでございますが、この事業というのは県が施行主体となって実行いたしたものでございます。  先ほど申し上げましたように、この種変更というような場合は、林業関係事業補助金等交付要綱というものを私ども決めておりまして、二〇%以上増額される場合が重要な変更として農林大臣の承認を受けていただきたいということになっておりまして、それ以外の変更につきましては、軽微なものといたしまして知事で行うということになっております。実は、この件につきましては、二〇%以上の増額を要するというような重要な変更ではないということで、林野庁には協議がなかったのでございますが、昨日先生から御指摘等もございまして、県の方に事情聴取等をいたしたのでございます。  この両事案につきましては、落札後、施工前に、現場近くに生コンのプラントがある。これは現場から十分ないし二十分の近距離でございますけれども、プラントがあるということで、生コン使用に切りかえたいという業者の申し出、協議か——これは特別協議と言っておりますけれども、それがございまして、後日設計変更するということを条件といたしまして、その場合は当然品質が生コンで確保される、また価格も安いということを条件といたしまして、口頭で承認を与え、そして変更事務は工事途中で行ってまいったわけでございます。  なお、このような設計変更という事案は、これはもう工事にはややつきものというようなことでございまして、それごとに設計変更というようなことではなかなか事業が進まないということがございまして、これは土木業界全部でございますけれども、そういうことを前提といたしまして、それ相当の時期になりますと設計変更をし、そして最後に精算する、こういう方法をとっているのでございます。  なお、御指摘でございましたけれども、生コンクリートが弱いのではないかというようなことがおありのようでございますが、コンクリートの品質というものは、これは各県どこでもそうでございますけれども、土木事業全体につきましての標準示方書というものが定められております。したがって、どこでそこのコンクリート打ちをするかという条件によりまして、これを現場打ちにするかあるいは生コンでやるかということを決めるわけでございまして、これは一つの手段でございますけれども一般的条件といたしましては、運搬距離が九十分以内というのが生コンの限度である。こういうことが一つの大きな条件になっておりまして、でき上がったコンクリートそのものの要件というものは、この設計のときにつけます仕様書にどのようなコンクリートを使うかということで決められておりまして、生コンでいくか現場でとるかというそれ自体は、このでき上がったコンクリートに差異はない、こういうふうに思っておるわけであります。
  234. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林野庁長官はいろいろとくどくど説明されましたが、二〇%増額でなければいかにも林野庁の責任でないように言われますが、いやしくも国民の補助金を出している工事に対して、県に対する指導監督は当然これはあるわけですが、二〇%増額でなければ林野庁は責任はない、と、こういうふうに理解していいんですか。
  235. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  これは一応公共事業としてのわれわれ指導要綱なり、そういうものを決めて、どういう基準で設計すべきかとか、あるいはどういうコンクリートを使った方がベターであるかとか、技術的なそういうものは当然に十分指導いたしておるわけでございまして、特に、私が申し上げましたのは大きな変更、二〇%以上のかかり増しするような変更の場合だけは協議してくれということで、その前に、設計審査というようなものを通しまして、補助金交付ということ、あるいはその金額を決めるという仕事を私どもはやっておりまして、設計審査の中でこれは十分処理されるものということでございます。
  236. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それではお尋ねしますけれども、県が行った減額処置というのは、実は、私たちが積算しますとずいぶん低く見積もってあってけしからぬと思っておるわけです。二〇%どころか、相当の変更をしなければならぬ問題なんですけれども、ここに黒いうわさがあるし、いろいろと問題があるわけです。あえてそんなことを言うなら何もかもここで言わなければならぬことになりますが、この県の減額処置をずっと見ましても、先ほど申し上げましたように、鉱山谷は千二百四十万一千円、それから尾春谷は千二百四十七万五千円となっておりますけれども、当初設計に対して設計変更が鉱山谷は千百五十三万四千円、差し引き八百六十七円、それから尾春谷の方は設計変更が千百三十五万二千円ですから、千百二十三円となっておりますけれども、実際は現場で生コン業者の相見積もりその他をとって検討してみますと、七千円から八千円、高くても八千五百円、こういうふうになっておるわけです。そうしますと、設計単価がものすごく高いということになっておる。この辺も本当におかしなことであります。現場で実際調べてそうです。この工事によっていろいろ積算をしてみますと、結局、鉱山谷の方は七百三十万円、尾春谷の方は六百万円も不当支出をしているということが明らかになるわけです。これは積算の基礎いっぱいありますから、必要があれば後でデータを出しても結構ですが、そういうことから見ましたときに、これは重大な変更をしているということになる。そういったことを抜きにしていま長官が答弁されたようなことを言われても、われわれは納得いきません。もしそれが百歩譲っていいとしても、災害があってもしこれが決壊したらばだれが責任とるか、重大な危惧の念を私は持つわけです。このことで論議しておると時間もなくなると思いますし、これはまたいずれ機会を改めて、この点詳細にこの委員会で時間をかけてやって結構です。  それでは、私は、こういった工事について会計検査院にお伺いしますけれども、こういったことが明らかになって、事実行管も認め、県もこれを認めて、そして減額をしているという事実がある。こういったことについて会計検査院は国会でこうして指摘を受けた以上は、再度これらを調査して、これらに対して対処しなければならぬと思うのですが、その点会計検査院はどういうふうに対処されますか。お考えをお聞きしたい。
  237. 桜木拳一

    ○桜木会計検査説明員 ただいま先生が御指摘になりました二件の工事は四十九年度の工事でございますので、四十九年度以降の工事につきましては、私たちこれから検査するというたてまえになっておりますので、これから検査いたしたいと思います。  なお、私どもの方で四十八年度検査を実施しておりますが、西都の分について、そういう事態の検査を一件見ておりますけれども検査院としては不当として指摘するまでに至っておりませんが、なお、県その他大学なり、そういうところで十分調査されているようでございますので、その結果を十分聴取しまして、それに基づいて対処したい、こういうふうに考えております。
  238. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大学の調査等を検討して十分調査の対象としたいということでございますが、御存じのように、家でもつくる場合に、これはヒノキでつくっていただきたいという注文に対して杉でつくったり、または雑木でつくるとなると、これは設計違反で、恐らく家を注文する人も納得いかない。これは材料が違うじゃないかと指摘されることはあたりまえです。そんな簡単な問題ではなくて、山奥で目の届かないところでこういったことが行われているんです。これは後でもちょっと申しますけれども、宮崎県の林務部の現場監督をしておる連中も、最初と工事が終わった後に行っただけで、中間は行っていない。だから、実際に県の方の監督もまさにミスがあるということで、大変これは指摘されておるところです。私は、これは、きれいに調査をしていただいて——これはほんの一、二の例を申し上げたわけですけれども、こういったことが山奥で目の届かないところではたくさんあるわけです。  それで、検査に来るというと、その日に限って現場練りに練るということで、ミキサーをその砂防ダムの堰堤のそばに据えつけて、そこでガランガランやって現場練りをする。検査官が帰ると、今度はまた生コンで運んでくる。こういうことをやっている人夫や皆さんがおるのです。証人は、何人でも出てきて証人になっていいと言うんです。自分たちは首になってもいいと言う。こういうぐあいです。住民を守るためにこういったことはぜひひとつ改めてもらいたい。会計検査院で十分調査をして、工事をやり直すなり、徹低した対策を講じてもらいたいというのが現地の住民の切なる声です。よく耳にとどめていただきたいと思うのです。  それで、いま会計検査院もおっしゃったように、宮崎大の工学部の助教授に、実際にダムに使用されたコンクリートの破片その他を採取しましてコンクリートの耐久性等を調べてもらっていますが、このデータも明らかに出ておりますので、十分会計検査院もこれを調べていただくようにお願いしたいと思う。  時間の関係で、林野庁長官にまたお尋ねしますが、この問題に関連して、鉱山谷、尾春谷の治山工事と並行して施工されていた他の現場の業者に対しても同じように設計変更をして減額の変更契約をしたということが数件ある、と、こういうふうに県は言っておりますけれども、地元をして調べさせたがなかなか言わない。林野庁としても十分それは承知しておられると思うが、その現場名、業者名、コンクリートの数量とかあるいは生コンの設計単価、請負額、減額した金額等、何件あるか知らぬが、あればその点お答えをいただきたい。
  239. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  その前に、先ほど強度が弱いので非常に地元の方が心配されているということでございましたので、一言申し上げておきますけれども、実は、コンクリートの、これは一般的なことで言えることでございますけれども、外の方は外気に常に接触する関係から、表面の強度は内部の圧縮強度よりも低くなるというのが一般的のようでございまして、実は、内部の方は強度が強くて外の方が弱いというようなことがございます。しかし、一般的にこういう監督というようなことは私どもかねがね注意いたしておるところでございまして、コンクリートを打つときの写真とか、あるいはそれの。コアなどをとっていくとか、あるいは表面強度をまた測定するどか、それぞれやっておるわけでございまして、今後もこれは十分私ども指導してまいらなければならないと思っておるのでございます。県の方でもいろいろ大学等にも依頼されて、所定の品質検査等をやっておられるということをお聞きしておるのでございます。  なお、先ほど、こういう七百万、八百万の違いがあるというような御指摘もございましたが、私、先ほどちょっと申し上げましたように、このような生コンに切りかえるようなときには、特別仕様書に基づきまして業者の方が県と協議をいたします。それを受けまして、コンクリートの必要な品質強度というものに合致するものでなくてはならぬということと、当然価格が安くなくちゃならぬということ等を前提といたしましての変更を承認するわけでございまして、その場合、地域ごとに定められた協定価格ということが生コンにはございます。したがって、それに運搬距離と途中のロスというようなもの等を掛けまして、生コンの金額が算定されるわけでございます。したがって、これには県の標準歩掛かりというようなもので計算されているようでございまして、そのような大きな不足というものが出るというのはいささか私ども不思議な感がするのでございます。  なお、ただいま御質問のございましたほか三ヵ所につきましてちょっと申し上げたいと思いますが、やはり、西米良村の宇戸谷というところで、河野建設、請負金額二千五十万、変更請負契約千九百七万三千円、その差し引き百四十二万七千円、これは現在工事中でございます。それから、同じく西米良の井戸内ナンバー二、伊達土木、請負金額千五百四十八万三千円、変更千四百六十七万三千円、その差額八十一万円でございます。これも工事は完了いたしております。もう一つは、同じく西米良の井戸内ナンバー一でございますが、横山建設、請負金額二千九十二万円、変更契約千九百八十八万二千円、その差額百三万八千円でございまして、これは生コンに切りかえるための変更でございます。
  240. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がたってまいりますので次に参りますが、いま林野庁長官はいろいろおっしゃったけれども、私もここにいろいろたくさん現場写真も撮ってきているわけですが、それはいずれまた明らかにするとして、強度の問題が、表面と中身というふうにおっしゃいましたけれども、つくったばかりのときにそんなことを言われては困るわけです。それは長い目で見れば表面は風化してくるということはわかっておりますけれども、事実検査の結果、つくったばかりの完工時点でそういうことが言われるわけです。そういったことで私は指摘をしているわけです。  次の問題を申し上げますが、昭和四十八年度予防治山事業で、これは宮崎県西都市尾八重、すなわち一級河川の一ツ瀬川支流の尾八重川流域の堰堤工事です。事業費は二千八十万五千円、業者は西都市株式会社佐伯組、さっきと同じです。もう一つは、昭和四十八年度普通林道湯之片線開設事業で、これは四十五年から九ヵ年計画で、総延長八千メートルの自動車道です。事業費は千八百二十一万一千円、業者は同じく佐伯組、こうなっております。  県の設計書では、この二つの工事とも強度を増す川砂利を使って工事現場でコンクリートをこね、流し込む、すなわち現場打ちということになっております。仕様書の上ではっきりそういうことになっているわけです。ところが、実際には、強度が減るところの、すなわち弱いところの砕石砂利を使った生コン工事が行われておりまして、しかも、使用された生コンは単価が安いことから、手抜き工事で業者は相当不当な利益を上げているということで、地元ではこれに対する不満と批判が大変起きているわけです。  私たちの調査によりますと、現場に生コンを流した形跡がある。これはここにあります写真が如実に示しておりますが、いまだにこれはずっと跡が残っております。骨材には砕石砂利が使用され、設計書どおりになっていない。次に、生コン車が現場に入った跡がある。さらに、現場付近の一ツ瀬川高鍋の砂利組合から現場に川砂利が持ち込まれたというようなことは一つも言っていないという証言も出ております。コンクリートの表面強度が指定以下でばらつきがかなり多いということで、これまたさっきと同じように大変心配しているところです。指定が一平方センチ当たり百六十キログラムというのに対して、実際には堰堤の場合は下流右岸で百三十六キログラム、同上部平面で百十五から百三十五キログラムの強度しかありません。また、指定強度以下でのばらつきが目立ち、強度の測定機であるシュミットハンマーの跡がつくほど軟弱なところがあって、非常に危険だということで、地元の不安を買っておるところでございます。  この問題についても、宮崎県会で二月にいろいろとこれを追及した結果、宮崎の知事も、非公式的に業者を指名停止処分にするから何とかこらえてくれということもすでに言われておるやに現地からの報告が来ておりますが、それはそれとして、先ほどもちょっと申し上げましたように、県の林務部出先である児湯農林振興局現場監督の証言も、着工時に一度行ったきりで、あと完成時に行っただけだ、その間一回も行ってない、間違いなく生コンで打ったということを証言しておりますし、現場監督が調べたときは、先ほど言いましたごとく、前もって下の方で合図すればすぐ機械を持ち込んで、前の日遅く現場で使用するようなミキサーを入れておく、帰ったならばすぐそれを撤収して生コンを運ぶ、こういうようなことをやっているということで、工事に当たっている人夫も、こういったことでいいのだろうかということで、長官の出身県でもあるし、長官にぜひこれは訴えて——いわゆる「五木の子守歌」あるいは「椎葉のひえつき節」で有名な九州脊梁山脈でありますけれども、災害があってはいけないということから、ぜひこれは指摘していただきたい。  いわゆる一罰百戒ということもあるけれども、こういったことはたくさんあるのですけれども、きょうは四点を指摘して申し上げたわけです。  先ほど、ほかにも三点林野庁長官が報告されましたが、ほんの宮崎の一部でこれだけでありますから、全国で言いますと相当なものなのではないかということで、私は、山奥の工事については、監督不行き届きということを心配をいたしております。これが事故がなければ幸いですが、もし水害その他で大変な事故になった場合には大変な問題であると思うわけです。  時間の関係がありますので会計検査院にお伺いしますが、いまの後の二つの問題も前回と同じようなことになりますが、これも会計検査院の四十八年度の決算検査報告を見ますと、この五十三ページに五五、五六、五七として宮崎県のものが三つ挙がっておりますが、実際にはサンプル調査で全部見ることはできないと思います。八百人余の検査院ですから大変だと思いますが、この検査報告にも指摘されておりません。たまたまこれは山奥であったからということと、または重要な工事その他ということから外れたために検査をしていないということではないかと思いますが、いずれにしても、こうして国会で指摘した以上、私は、こういった工事をほうっておくわけにはいかないと思う。地元の不安を除くためにも十分な検査をして、再度これに対する指示をしていただき、対処するようにしなければならぬ。その点検査院の方から見解を承りたい。
  241. 桜木拳一

    ○桜木会計検査説明員 先生御指摘のように、特に、山奥の工事などにおきましては非常にむずかしい面があるわけでございますけれども、私たちといたしましても、限られた調査官と限られた実地検査の日程の範囲内で一生懸命やっているつもりでございます。  後半指摘されました西都の問題につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、県の方で大学なりあるいは技術センター等でいろいろ調査されておる——私の方はまた詳細な報告は受けておりませんけれども、いろいろと調査されておる、あるいは強度なんかについても調査されておるということでございますので、その結果を十分説明を受けまして、それに基づいて私ども対処していきたい、こういうふうに考えております。
  242. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もうしばらく時間がありますので、林野庁長官に伺いますが、いま会計検査院の方からそういうように報告がございましたが、四十八年度工事についてはすでに決算検査報告が出ております。これには一部しか載っておりませんけれども、事実こういったことがあるわけでございまして、これらを含めて会計検査院の方でもいろいろ調査していただくということでございますが、林野庁長官として、いまの問題についてはどのように考えておられるか。いまの問題について、私の指摘に対して長官の対処方針を伺いたいと思います
  243. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来いろいろ御指摘があったわけでございます。私ども、山の崩壊を防ぎ、あるいは下流の方々を守っていくという立場の林野庁でございまして、そのための治山工事であり、また林道工事でもあるわけでございまして、これが適正に施行されるということは当然私どもの仕事のうちでございます。したがって、いろいろ御指摘のような問題があろうかと思いますが、従来も適正な補助金の執行とか厳正な工事の実施ということはわれわれはかねがね心がけておるところでございます。今後とも引き続き適切な指導をやってまいりたいと思っております。
  244. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは、最後林野庁長官と会計検査院にお尋ねしますけれども、いままでいろいろ論議してきましたが、いまの後半の四十八年度事業の尾八重川流域の堰堤工事、それから普通林道の湯之片線の開設事業、この二つについても前半に申し上げたと同じようなことが言えるわけでございまして、実は、私の方でもいろいろ検討してみましたら、予防治山事業の堰堤工事では、積算をしますとこれで四百四十万ぐらい、さらに湯之片林道開設事業の方では四百十万円くらい——これは九ヵ年計画でやっているのですから、四十八年度分だけですよ。四十八年度分だけ見ても四百十万円ぐらいの不当な利益を業者が得ている。こういうような積算になるわけです。ここで指摘しておきますので、こういったことも踏まえて、会計検査院の方でも十分検査をして対処していただくようにお願いをしておきます。  時間の関係がございますからさらに続いて申し上げますが、県の報告によりますと、治山工事についても、四十七年度は治山事業だけで県が行っているのが、工事費が十五億七千五百三十九万五千円、その内訳として、国庫補助が十億一千六百三十四万七千円、県費が五億四千五百三十七万九千円になっております。四十八年度の治山事業は、宮崎県だけですけれども、工事費全部で十四億三千五百八十七万三千円、国の補助が九億三千八十五万四千円、県費が四億九千四百五十万九千円、こういうふうになっておりまして、相当な工事です。全部が全部とは申しませんけれども、いま本当に宮崎県の一部を申し上げたわけでございまして、山奥については相当な問題があると見ておるわけで、私ども鋭意調査してまいりますが、当局においても十分調査をお願いしたい、かように思います。  そこで、実は、四十九年の十二月十一日、林野庁のみならず農林省を含めた各省庁の四十八年度決算報告書を会計検査院がまとめて内閣に提出しております。この報告書によると、各省庁の補助金など四億二千三百七十五万円、これは百四十三件が不当に支払われたことになっております。これは前年度に比べ約一億円もふえております。さらに、不当とまでは言えないが、不適切な、いわゆるむだ遣いは約二十億円にも上って、国民の血税が合計二十八億円も浪費されたことが明らかになっております。政府は同報告書を四十八年度決算とあわせて通常国会に提出するということで、いろいろ審議をしているところでありますが、実際にこのような二十八億円の血税のむだ遣いがあり、この中には農林省関係は六十一件もございまして、一億一千三百十四万円で、農林関係は最も多い。次は、労働、建設省、こういうふうになっておりますが、検査院も、先ほど申しましたように、実際には実施の検査率というのが重要個所等についてやる関係から三二%しかできない。しかも、人員も限られた人員でやるということで、八百人ぐらいを動員してやっておられるようですが、いろいろと全部を見ることは無理であるけれども、せめて、こういう指摘を受けた場合の問題については林野庁もまた検査院も対処していただくということで、林野関係も含めて、こういった会計検査院の指摘の筆頭が農林省であるということから見ましても十分心していかなければならぬ、治山事業で下流住民の生命、財産を守るためにも十分対処してもらわなければならぬ、こういう意味で指摘をしたわけでございます。  足らぬ分はいずれ次の機会に留保して、また質問するとして、時間も参りましたので、私がいま申し上げたことに対する会計検査院、農林省の見解を最後に承って私は質問を終わりたい、かように思います。
  245. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいまいろいろと問題の御指摘がございましたが、私ども、先ほど申し上げましたように、検査院に指摘されることのないような工事を目標としたいという気持ちでいっぱいでございます。今後とも十分指導をしてまいりたいと思います。
  246. 桜木拳一

    ○桜木会計検査説明員 私ども、農林省関係検査につきましては、ただいま先生から申されましたように一生懸命やっているつもりでございますけれども、なお御趣旨に沿いまして努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  247. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、以上で質問を終わります。
  248. 澁谷直藏

  249. 小宮武喜

    小宮委員 ここに三月四日付の朝日新聞の夕刊がございますが、長官はお読みになりましたか。
  250. 内村良英

    ○内村政府委員 夕刊のどこのところでございましょうか。
  251. 小宮武喜

    小宮委員 これは三月四日付の朝日新聞の夕刊です。この夕刊を見ますと、「アジ百万匹漁船かなわず 網を引っぱられ転覆 二人不明」という見出しで、「長崎市に本社を持つ丸十漁業会社の巻き網漁船第十一大洋丸が三日夜、鹿児島県種子島近海で操業中、網にかかったムロアジの大群にひっぱられて転覆、間もなく沈没した。乗組員二十一人のうち十九人はそばにいた僚船に助けられたが、あとの二人は行方不明になった。」という記事なんです。  そこで、この場合、転覆を免れるためにはどのような処置をとったらいいと思いますか。
  252. 内村良英

    ○内村政府委員 私も、その新聞は読んだわけでございます。  そこで、水産庁の方で現在この事故の原因等について調査をしております。そこで、私どもの受けている報告によりますと、今回の第十一大洋丸の事故発生地点は、鹿児島県の種子島東南八海里の付近でございまして、同船を網船といたしまして火船二隻、作業艇一隻、運搬船二隻の計六隻で操業し、ムロアジ約三十トンの予想外の魚群をとらえ、網を揚げているところ、急激にこの魚群が活動し、網船の船底方向に移動したため、船体が大きく動揺して転覆したものというような報告を受けておりまして、さらに詳細な原因究明については、現在保安部で調査中でございます。
  253. 小宮武喜

    小宮委員 この新聞記事によりますと、この事故は、風速二メートル前後で海はべたなぎであったというように報道されているわけです。それがあっという間の出来事で、船長としてももうどうにもならなかったということが言われておるわけですが、新聞報道を見ても、この場合、魚がいっぱいかかった、そして魚が底の方に逃げる、だから船が傾く、だからその場合は網を切ればいいんじゃないかというような意見をこれまでもいろいろ言われておるわけです。こういった二メートルというなぎのところでこういうような事故が起きたわけです。おかの人が考えるように、その場合にはやはり網を切れば助かったんではないかというような見方も一応できるけれども、わずか二メートルのべたなぎのところでこういうような事件が起きた。したがって、東海黄海方面の、常に八メーター以上の風が吹いておる気象変化が非常に激しいところでこのような事件が起きたら大変だと私は思うのです。だから、私は、これまでも、こういった東海黄海方面における作業艇というものは、この網船の安全上やはり廃止すべきではないという主張をやってまいりました。ところが、水産庁は、昨年十月三日のあのまき網漁業生産調整組合からの申請に基づいて作業艇を廃止して、さらに、今回は、漁業許可に基づいて、長官は作業艇の廃止を三月一日から実施しておるわけでありますが、この場合に作業艇があったら助かったのではないのかと私は思う。こういうような沈没だとか転覆だとかいう事故がいつもあっては大変ですが、しかし、そういうようなことが仮に起きることも想定して作業艇というものを残すべきだと私は感じるわけです。そしてさらには、昨年の六月二十八日にも、第十一大洋丸と同じように第八大洋丸が東海方面においてやはり沈没しかかった。これを僚船に助けられて危うく難を逃れたという事件も起きておるわけです。これは事件が未然に防止されたので水産庁には報告が行っていないと思いますけれども、しかしながら、その資料は水産庁にも提出しておるはずです。  こういうようなこと等を考えますと、これらの事故の経験からして、作業艇の必要性というものを私はやはり痛感するわけですが、これでも長官は作業艇は必要ないというように考えておられるのか、その点いかがですか。
  254. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま申し上げましたように、この第十一大洋丸の事故原因につきましては調査中でございます。  この大洋丸というのは九州西部地区で操業しておる船でございまして、トン数が六十九・九七トン、普通東海黄海で操業している船よりも小さい船でございます。この船団の構成は、この第十一大洋丸が網船になりまして、灯船二隻、作業艇一隻と、作業艇がいるわけでございます。この第十一大洋丸のまき網につきましては、作業艇があって、さらに運搬船が二隻いたということで、全部で六隻で一統を編成しているわけでございます。  これが作業艇を持つことができますのは九州西部であるから、生産調整規程の特認で除外されておりまして、現在におきましても作業艇が使えるわけでございます。  それから私ども調査の、と申しますか、とりあえず報告を受けたところでは、その網の規模が、本来ならこの六十九・九七トンに匹敵する網を持っていなければならないのにもかかわらず、百十一トン型の規模の網を使っていたんだそうでございます。したがいまして、船のキャパシティーに比べまして非常に大きな網を持っていたというところで、そもそもそこに大きな不安定要素があったわけでございます。そこヘムロアジが、魚探で見たらとにかく相当の大きな魚群がいたので、網を入れた。そこでそれに入ってまいりました。まず三十トンぐらい入ったのじゃないかと言われておりますけれども、非常にまれに見る大量のムロアジが入ったのでございます。  そこで、先生御案内のように、まき網というのは、巻いている間に魚がぐるぐる回っていますからいいわけでございますけれども、仮にその魚の中に優秀な司令官がおりまして一つの方向に向かって全部突進しますと、当然その不安定なことが起こるわけでございます。その辺の実情ははっきりわかりませんけれども、今回は、どうも、船底の方に大量に入ったムロアジが集中したというようなことがございまして、そこで船が安定度を失ったということで、原因はまだ究明中でございますが、とりあえず受けている報告によりますと、いずれにいたしましても、六十九・九七トンの船が百十一トンの船が使うべき網を使っていたというところに大きな原因があったのではないか、すなわち過大装備が原因になったのではないかというようなことが推察されるわけでございますが、まだ正確な調査結果はまとまっておりません。
  255. 小宮武喜

    小宮委員 長官、魚は網の中に入ると、あんたが希望するようにぐるぐる回ってくれればいいのだけれども、大概魚はやはり逃げようという本能があるから、突き当たったら今度こっちに行き、あっちに行き、もぐったりするわけです。それは日常茶飯事です。そんなことがあるわけですよ。だから、司令官がおろうとおるまいと、魚の群れというものは、どの魚かが行ったら大体みんな行くわけですよ。だから、そういうような意味では、そういうようなことが期待されるということでなくて、常に最悪の事態を考えておかなければいかぬということなんです。  今度の場合、作業艇を持っておりながら作業艇が使用されなかったということはどういうことなのか。あるいは灯船を作業艇ということにしておって、その作業艇は灯船の代用として使っておったのかどうか。その点はわれわれも調査しますけれども、いずれにしても、風速二メーターというべたなぎの中でこういうような事故が起きたということなんです。それに比べて東海黄海方面は常に八メーター以上の風速がある。しかも、気象条件の変化が非常に激しい。こういう中で長官は大胆にも作業艇の廃止を決定してしまったわけです。  この作業艇を廃止するについても、四十八年五月二十六日の生産調整組合の第十二回の総会で、水産庁が灯船の三隻を二隻に減らそうという方針を打ち出したのです。そのとき、この組合の中では、それは大変なことになる、この操業の実態からして、それは操業能力を低下させ、操業の安全の確保が極度に損なわれるという理由で大多数の組合員が反対をいたして、その結果、最終的には水産庁が、それではいまの三隻おる灯船を一杯は作業艇に使ってよろしいというようなことの方針を出したために作業艇か使われておるわけです。しかし、この場合の条件というか、水産庁もその方針を出すに至った背景になるのは、「削減した灯船については対応する漁携技術開発の見通しと関連しつつ必要に応じ当分の間これを作業艇として使用し得るものとする。灯船減船に伴う漁携技術に関する問題については水産庁と関係業界が協力して技術研究会を早急に発足させ早期完成に努力するものとする」ということになって、この操業形態合理化研究会が設けられたという経過があるわけです。  ところが、この研究会は、四十九年の四月二十三日までに六回の会議が持たれておりますが、いまだに結論が出ておりません。にもかかわらず、作業艇の廃止だけを水産庁は先行させた。それは三月一日どころか、生産調整組合規程では昨年の十月三日から廃止をしたわけでございますが、この廃止をした理由を再度お聞きします。
  256. 内村良英

    ○内村政府委員 まず、一般的に漁船の安全性の確保は、船自体の持つ造船工学的な安全性はもちろんでございますが、これを操船する乗組員の技量と判断が適切であることが大きな要素であることは申し上げるまでもございません。  現在、この海域、東海黄海で操業している百十一トン型の鋼船は、これを開発した当時基準とした主機関、漁労機械、漁具に比べ無秩序に大型化しているため、通常の操業時にあって造船工学的に安全の限界に近い状態にあると見られます。また、このことは今回の作業艇の使用禁止とは無関係でそういった現実になっている。そういった現実から見て危険性があるのではないかということでございますが、作業艇の使用禁止が操業の安全性に与える影響につきましては、今回の制限措置がとられることになった以降におきましても、付属船として灯船が二隻、運搬船三隻が使用できることになっているわけでございまして、従来作業艇が行ってきました裏こぎは、これらの、特に灯船によって行うことができるわけでございます。したがいまして、操業上の安全性はこれによって確保されるわけでございます。  ただ、問題は、従来灯船が二隻、作業艇が一隻おりまして、そのうち一隻の灯船が、集魚した後でまくわけでございますけれども、まいて、裏こぎを作業艇がやっておる。その場合、すでに次の漁場に行きましていろいろ漁業探知をやる、その機能が確かにできなくなるわけです。したがいまして、その投網回数が減るということはございます。しかし、安全性の観点からいきますれば、その灯船が裏こぎをやるわけでございますから、特に危なくなるということはないわけでございます。  それから、生産調整組合の規程につきましても、これは関係者が十分審議して、実際にやっておる漁労長その他を集めましてやったことでございますから、私どもといたしましては、安全性には問題がないというふうに考えております。
  257. 小宮武喜

    小宮委員 答弁は少し簡単にお願いします。  安倍農林大臣が、三月一日から漁業法に基づく大中型まき網漁業の許可に制限または条件を付した理由として、東海黄海における大中型まき網漁業が漁獲対象としているマアジ及びマルアジの資源保護を図るものである、と、こういうふうに言われているわけです。なるほど昭和四十七年度の農林省年報によりますと、四十三年が二十八万一千四百三トン、四十四年が二十七万八百五十六トン、四十五年が二十万三千三百五トン、四十六年が二十七万五千七百三十一トン、四十七年が十六万四千七百二十四トン、こういうふうになっているわけですが、四十八年と四十九年度の漁獲量はどうなっているか。少なくとも四十八年度は明らかになっておると思いますが、いかがですか。
  258. 内村良英

    ○内村政府委員 四十八年の全国のアジの漁獲量は十九万一千トンでございます。
  259. 小宮武喜

    小宮委員 まき網漁業の漁獲対象としているのは、アジだけではなくてサバもあるのですが、このアジとサバと分離をして、アジだけの資源保護を図ろうとしているわけです。理由の中ではっきりしているわけです。  それでは、まずサバの漁獲量の推移をひとつ説明してくたさい。——長官、ちょっとそっちの方で調べておってください。もう時間がなくなるから……。  それで、サバとアジは別々に回遊しているのか。漁獲されたときはアジもサバも一緒に入っているのですよ。だから、アジだけを資源保護の目的で禁止をしようとしても、アジとサバが同じく回遊しておれば、アジとサバをどうして区別してとるのですか。そのことと、前の答弁も含めて一緒に答弁して下さい。
  260. 内村良英

    ○内村政府委員 まず、最初にお尋ねの東海黄海におけるサバ類の漁獲量でございますが、四十年が八万六千トンでございます。それから若干飛びまして、四十三年が十三万九千トン、四十五年が十九万八千トン、四十七年が十八万九千トン、四十八年が二十万四千トンというふうにアジは非常に減っておりますけれども、サバはふえております。  それから、アジとサバを別にとれるかということでございますが、この数字からわかりますように、たとえば四十年のころはアジが三十九万九千トンで、サバが八万六千トンであったわけです。アジとサバは混獲されます。したがいまして、アジとサバを別々にとるということはできません。しかしながら、アジとサバと混獲されるわけでございますけれども、アジについて多少漁獲努力の制限をする、それがサバに影響するのじゃないかということでございますが、その面はそのとおりでございます。ただ、現在のサバの状況、特に価格の状況とか生産調整の必要性から見ますと、その程度のことは妥当性があるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  261. 小宮武喜

    小宮委員 いまの資料を後で出してください。  また、制限または条件を付する理由として、マアジ、マルアジが、近年における漁獲量の推移、資源の再生産を維持していく上で好ましくない状態になったというように言っておりますね。この原因は、ただ、わが国のまき網漁業が乱獲をしたことによってこういうような現象が出たとだけ考えておられるのか、その点はいかがですか。
  262. 内村良英

    ○内村政府委員 浮き魚の場合は、底魚と違いまして、漁獲努力が非常に強化された場合に資源が極端に減るということが典型的に出てこない場合もございます。しかしながら、漁獲努力が非常に強化された場合におきましては、資源が浮き魚につきましても影響を受けるということは、過去の東海黄海の漁業を見てもその傾向はあるわけでございまして、私どもは、現在のところ、アジにつきましても漁獲努力が大きい、こういうふうに見ておるわけでございます。
  263. 小宮武喜

    小宮委員 また、「資源に関する調査研究の結果から見て」ということが書いてあるのですが、調査はいつ行って、その調査結果はどうだったのですか。——時間がかかるから、詳しくはあとで資料で出してもらっても結構ですよ。
  264. 内村良英

    ○内村政府委員 西海区水研でやりました調査に基づきまして私ども判断したわけでございまして、必要がございますれば、その資料は提出いたします。
  265. 小宮武喜

    小宮委員 このマアジ、マルアジが好ましくない状態になっている原因は、なるほどわが国だけが乱獲したということもあるかもしれぬが、ただそれだけが原因なのかというと、ちょっと私は疑問を持つわけです。  というのは、長官もよく御存じのように、わが国だけが資源保護を盛んに言って、生産調整なり漁業法の改正まで強行して、長官は非常に熱意をもって取り組んでおるけれども、それでは、最近問題になっておる三千トンクラスのソ連船の大型まき網の操業の問題、あるいは最近は中国でも、三千トンの母船を中心にしての済州島の沖合いでの操業をやっておるわけです。また、韓国でも装備の近代化をやってどんどん漁獲量はふえておるのですよ。そういうようなやさきに、日本だけがただその調整をやるということはいかがなものか。だから、結果的には、私の方は生産調整をやつて、アジももうとりません、できるだけ少なくとりますから、中国の皆さん、韓国の皆さん、ソ連の皆さん、残った分はどうぞごそっりと持っていってくださいというように言っているのだということが言えるんじゃないですか。それをもし資源の保護ということを言うならば……これはまあソ連とも話し合うようでございますが、中国なり韓国なりソ連なりとも、こういうような資源保護の問題について同じテーブルで話し合って、資源の保護をどうするかということを考えなければ、向こうは三千トンの母船を中心に持ってきて根こそぎどんどん持っていくのですよ。私の方だけは生産調整をやって、作業艇も廃止して、われわれは少なくとります、どうかみんなでとってくださいというような、こんなやり方をやって日本の漁民を苦しめるのが本当の水産庁の姿勢なのかということを私は言いたいのです。  資源の保護ということを言われるならば、一つ質問をしますけれども、ソ連、韓国、中国のアジの漁獲量はどうなっておるのか。その漁獲量の推移を説明してください。……なければ、資料提出は後でいいです。
  266. 内村良英

    ○内村政府委員 まず、第一に、ただいま先生から御指摘のありました国のうち、ソ連は、この東海黄海の漁場では操業しておりません。したがいまして、直接的な競合関係はございません。  それから、韓国でございますが、韓国の場合には大体、韓国の専管水域の中で操業しておりまして、わが国のまき網漁業との漁場の競合関係は、今日のところ余り起こっておりません。  そこで、韓国の漁獲高でございますが、アジ類は、大体、四十三年が二千百二十八トン、それから四十五年が七百八十トン、四十七年が二千六百トン。サバはやはり日本と同じように伸びておりまして、四十三年が九千トン、四十五年が三千三百トン、それから四十七年が七万トンというふうに伸びております。  それから、中国でございますが、中国の漁業の実態は、中国というようなお国柄の関係もあって、必ずしも私ども正確にわかっておりません。しかしながら、現在の民間協定で、まき網につきましても一応規制の対象になっております。そこで、三月一日から日中漁業交渉が始まっておりますが、そのまき網の規制のところまでまだ話が行っておりませんが、これは恐らく向こうは出してくる可能性があるわけでございます。その場合におきましては、わが方としては、公海における保存措置についてはあくまで同等のものでなければならない。たとえば、日本だけが遠慮をして中国は勝手なことができるというようなことは絶対に承認できないということで交渉に臨んでいるわけでございます。
  267. 小宮武喜

    小宮委員 また、この漁業法による制限または条件の内容として、作業艇の禁止、運搬船の隻数を、一統につき三隻以内とするとなっておりますが、そうしますと、現在実施中の生産調整組合の調整事業との関係はどうなりますか。いま現在実施中の生産調整規程でも、運搬船については七百五十トンというように規制しておるわけですね。これが今度漁業法でやる場合は、運搬船は一統につき三隻だということで、トン数制限がないわけです。この点の関係はどうなりますか。
  268. 内村良英

    ○内村政府委員 許可条件の変更がありましたのは、先生から御指摘のございましたように、運搬船が三隻だということで、トン数制限はございません。
  269. 小宮武喜

    小宮委員 どうもよくわからぬけれども……。いま言われたように作業艇の使用禁止と、運搬船を一統につき三隻以内ということまで同じなんですね。ただ、後のやつが、調整規程では、共同規制水域内ではこの合計総トン数が三百五十トン以下とか、あるいはその他の指定水域内では七百五十トンとなっているわけですが、それでは、現在の調整規程が四月三日までとなっておりますから、四月四日以降は、いまの漁業法に基づくこの制限によって、運搬船についてはトン数制限がないというふうに理解していいですか。確認の意味でお聞きします。
  270. 内村良英

    ○内村政府委員 生産調整の調整規程を今後生産調整組合がどういうふうに扱うかということにつきましては、まだ私ども承知しておりません。  そこで、仮に生産調整規程がなくなるということを想定いたしますと、なくなった後におきましてはトン数制限はなくなるわけでございます。
  271. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、生産調整組合の方で現在の調整実施中のこの内容のものを、たとえば同じ内容のものを四月四日以降にさらに申請してきても、その運搬船のトン数制限はなくなるということですね。
  272. 内村良英

    ○内村政府委員 生産調整組合が現在の生産調整規程を四月以降延長したいということで申請が出て、関係方面ともお話し合いをした結果、生産調整規程を今後延長していくということになりますと、現在の運搬船のトン数制限は依然として効力を持ってくるわけでございます。ところが、生産調整組合が、四月以降は生産調整規程はもう廃止するということになれば、現在の七百五十トンという規制はなくなるわけでございます。
  273. 小宮武喜

    小宮委員 この問題はまたさらに後で質問しますけれども、それでは、水産庁が昨年十月四日に認可した生産調整組合の調整規程の四項には、「過怠金の額は百万円以内とする」となっておりますが、この調整規程の認可に当たって、水産庁は、百万円以内ということの理解はどうであったのか。たとえば一日につき百万円というふうに理解するのか、あるいは社会通念上、一航海した場合の過怠金を百万円とするのか、この点水産庁の見解を明確にしてもらいたい。
  274. 内村良英

    ○内村政府委員 漁業生産調整組合は、調整規程で定めるところによりまして、調整規程に違反した組合員に過怠金を課することができることになっておりますけれども、今回の場合のように違反行為があったときに、組合員であった者にも過怠金を課することができるかどうかについては、この組合の加入、脱退が自由であり、かつ、組合に加入していることにより、組合員はその漁業生産活動に種々の制約を受けることとなる実態にかんがみまして、組合が行う自主的な生産調整を効果的に実施するためには、組合の脱退後といえども過怠金は課せられるものと考えております。  また、過怠金は、組合定款の定めるところによりまして、理事会の議決を得て生産調整規程で定める範囲内で課するわけでございまして、その百万円の解釈の問題でございますが、その額は、過怠金の性格が私法上の契約違反に対する制裁の一種でございまして、組合がその内部秩序を保ち、かつ、調整規程の実効性を確保するための合理的な範囲で決めなければならないというふうに考えるわけでございます。  そこで、たとえば組合から脱退いたしましても、三ヵ月間は組合員としての規制が加わるわけでございます。その場合に、一統百万円ということがございましても、たとえばその間の組合規程違反による操業によりまして膨大な利益を上げているというような場合は、そういった利益も勘案して過怠金を課するということはあり得ることではないかと思います。  いずれにいたしましても、これは組合が自主的にやるわけでございまして、合理的な範囲の解釈につきましては、やはり、組合の意向も尊重しなければならないのじゃないかと思います。しかし、水産庁といたしましては、あくまで社会通念に照らして合理的な範囲のものでなければならないというように考えておるわけでございます。
  275. 小宮武喜

    小宮委員 長官の言われることは、何を言っているのかさっぱりわからぬですよ。生産調整規程では最高百万円以内ということになっているわけです。それが、そのほかの出漁をしたことによって高額な利益を受けたからということで、そのことも加味して合理的云々というのは、何をあなたは考えているのですか。あなあはちょうど一月の末か二月の初めに、もうここまで言わざるを得ないのですが、調停案を出しているのです。この調停案の中では、あなたは、過怠金については、その額を社会的通念により妥当と認められる額まで減額するということを言っておるわけです。この調停案は不調に終わったけれどもね。しかし、あなたのいまの解釈は、また問題を全くすりかえてごまかそうとしておる。しかし、もう時間がないから、この問題についてはまた改めて何回もやります。  最後一つ質問をしますけれども、この実施時期の問題でございますが、作業艇の使用禁止は漁船員の削減につながる問題でありまして、そのため相当の準備期間を必要とすることは当然であります。にもかかわらず、水産庁長官は、十四日に聴聞会を開いて、三月一日から強行しておる。このことについては、生産調整組合法第十八条にも「従業者に対する配慮」という問題がはっきりうたわれておるわけです。「組合の組合員は、調整規程に従いその漁業生産活動を制限するに当たっては、その従業者に不利益を及ぼすことがないように努めなければならない。」と、ちゃんと生産調整組合法の十八条にうたっておる。したがって、いかに漁業法に基づく制限を加えようとしても、この精神はやはり生かされなければならぬと私は考えるのです。これは、長官が働く労働者を本当にどのように考えておるかという基本的な姿勢にかかわる問題です。このような配慮もなさずして、十四日に聴聞会を開いて三月一日実施ということをなぜあえて強行しなければならなかったかということの理由と、従業員への配慮に対する考え方をどうしていたのか、なぜしなかったのかということについて御答弁を願います。
  276. 内村良英

    ○内村政府委員 まき網の生産調整組合の生産調整規程によりまして、十月から作業艇は廃止されていたわけでございます。そこで、その場合、若干の組合を除きましてほとんどすべての人が作業艇を廃止しているわけでございますが、その場合、そういった組合員の人たちにつきましても余剰船員の問題はあるわけでございます。そこで、私どもが承知しているところでは、大体平均一隻七名程度の作業艇に乗る船員がいたわけでございますが、それらの人々は大体配置転換等によりまして吸収されたわけでございます。  そこで、現在作業艇が残っている数は非常に少数でございまして、したがいまして、それに関連する乗組員の人も非常に数は少ないわけでございます。現在、まき網の乗組員について見ますと、一般的に乗組員不足の状況にございますので、中の配置転換で大体吸収されるというふうに見ておりますし、昨年の組合員の人たちが作業艇を廃止した時期におきましても、乗組員の労働問題につきましては大体うまく片づいたというふうに承知しているわけでございます。
  277. 小宮武喜

    小宮委員 先を急ぎます。  日本旋網漁業生産調整組合の調整規程に違反して過怠金を課せられたのを理由に、別法人である日本遠洋旋網漁業協同組合がその組合員を除名いたしました。このことについて、水産庁長官は、日本遠洋旋網漁業協同組合と日本旋網漁業調整組合とは表裏一体だという言葉を使っております。この旋網漁業協同組合は水産業協同組合法に基づいて設立された法人ですね。それで、また、旋網漁業生産調整組合は漁業生産調整組合法によって設立された法人です。したがって、その目的も異にしておれば、人格も別なんです。それを今度の除名に当たって表裏一体だという表現を使っておるのです。しかも、生産調整組合にしても、遠洋旋網組合にしても、加入脱退の自由は法的に認められておるわけですよ。だから、あちらの組合員がこちらの組合員に即ということにならぬわけですよ。それを表裏一体だという理由のもとに、その除名があたかも妥当かのごとく長官が答弁するというのは全く詭弁だと思う。私は、表裏一体という言葉が法律上あるのかどうかと言いたい。特に、長官は、法律を忠実に守る義務と責任がある。今度の漁業法に基づく制限及び内容についても、漁業法の第三十四条には「都道府県知事は、」云々となっているわけです。それを六十三条の読みかえ規定を適用して、これに「主務大臣は」とひっかけたわけです。それほど法律を自分の都合のいいように巧みに駆使する長官が、この除名問題について法律上妥当かどうかという判定を下しきらぬで、ただ表裏一体だというようなごまかし方は長官らしくない。また、法律を忠実に守る義務がある長官として、こういった答弁は許されないと私は思うのですよ。法律的にこの除名問題が違法か適法か、妥当か不当かという問題を一点お聞きしたい。  それから、この生産調整組合を脱退した、脱退したけれども過怠金を課せられた、これはやむを得ません。しかしながら、この脱退した人たちに——まあそれは脱退した人ばかりてはございませんが、漁業法の制限内容までをもってこれを規制するということでなくて、生産調整組合の組合員でも、この脱退したことによって不都合が生ずればアウトサイダーの規制をかけられるわけですよ。それが筋なんですよ。それを、漁業法の三十四条を適用してこのような生産制限をするとかいうことは、私は、これはもうどうしても納得がいきませんけれども、しかし、この問題はまた後でやります。しかし、答弁だけお願いします。
  278. 澁谷直藏

    澁谷委員長 小宮君、大分時間がたっていますから……。
  279. 小宮武喜

    小宮委員 はい、それでもう一つだけ。これはもう一緒に答弁してください。  それから、調停案ですが、先ほど言われましたように、長官が紛争をおさめるためにことしの一月末か二月の初めごろ出された調停案の中に、「昭和五十年一月二十一日、日本遠洋まき網漁業協同組合理事会において決定された脱退勧告は撤回すること」という一項が入っておるわけですが、この脱退勧告が不当だと考えられてこのような一項が入ったのかどうかということをあわせて、二点質問して、私の質問を終わりたいと思います。内村政府委員 まず、最初に、旋網の生産調整組合を脱退して、それから協同組合を除名するのは法律解釈上おかしいのじゃないかという点でございますが、漁協の定款の、「組合の信用を著しく失わせるような行為をしたとき。」ということがどう解釈されるかという問題でございますが、この点につきましては、漁業法、水産資源保護法等の法令等に違反した行為をし、また、その処分が定まっていない場合、それから第二といたしまして、詐欺恐喝罪等刑法上の犯罪にすれすれの類似行為をした場合、それから第三の場合といたしまして、当該漁協またはその組合員の大部分が加入している他の団体、たとえば漁業信用基金協会、漁業共済組合等の内部規定に違反し、そのことが当該漁協または組合員が行う漁業の秩序を著しく害する行為である場合、ということでございまして、今回の場合はこの第三の場合ではないかというふうに私は解釈しているわけでございます。  それから、調停の話が出たわけでございますが、私どもといたしましては、この種の紛争をなるべく円満に解決したいという意味で、御指摘のございましたような案を——これは案てございますが、たたき台といたしまして案を出したことはございます。そのときの私どもの気持ちといたしましては、なるべく紛争を円満におさめたいということで、ただいま御指摘のございましたようなことを一つ提示したわけでございまして、別に法律論に基づいてどうこうというようなことではございません。事を円満に解決するためにはそうした方がいいんじゃないかという配慮からそういったことを提示したことはございますけれども、調停がうまくいかなかったという事実があることは事実でございます。
  280. 小宮武喜

    小宮委員 これで、質問を終わります。
  281. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会