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1975-02-12 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 中川 一郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 渡辺美智雄君 理事 井上  泉君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       足立 篤郎君    愛野興一郎君       伊東 正義君    今井  勇君       片岡 清一君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    三枝 三郎君       島田 安夫君    染谷  誠君       中尾 栄一君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君      米内山義一郎君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         農林政務次官  江藤 隆美君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      森  整治君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         農林省農蚕園芸         局普及部長   前田 耕一君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      澤井新一郎君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     津金 佑近君 同月十二日  辞任         補欠選任   佐々木秀世君     三枝 三郎君   諫山  博君     松本 善明君   津金 佑近君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   三枝 三郎君     佐々木秀世君     ————————————— 二月七日  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第二一号)(予) 同月六日  食糧管理制度堅持に関する請願紺野与次郎君  外一名紹介)(第三〇四号) 同月十日  食糧自給促進及び備蓄に関する請願(粟山ひ  で君紹介)(第三七三号)  ソ連漁船団日本沿岸漁船操業秩序確立等  に関する請願鈴木善幸紹介)(第三七四  号)  昭和四十九年度加工原料乳保証価格の再改定等  に関する請願鈴木善幸紹介)(第三七五  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣所信表明に、「わが国農業現状を見ますと、過去十数年にわたるわが国経済高度成長の結果、農村過剰人口は解消し、農家所得増大しました」とあるが、農業が繁栄をすれば農家所得増大ということは言えるわけですけれども、「過剰人口は解消し、」とか、あるいは「農家所得増大しました」というとらえ方というものは、一体どういう考え方過剰人口が解消したなんというとらえ方をしたのですか。農村過疎で困っておるでしょう。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全体的に見れば、農村において高度成長経済がスタートする前におきましては、過剰人口といいますか、次三男対策というようなことも農業関係においては言われた時期があったわけでございますが、高度成長に入りまして、他産業農業従事者がどんどん吸収されるというふうなことになって、結局、高度成長前の次三男対策等に苦慮していた時代等もあったわけですから、そういう意味過剰人口が他産業に吸収されて解消したというようなことが言えるのじゃないかと思っております。     〔委員長退席坂村委員長代理着席
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことは農村にとってはいいことだったと大臣承知をしてこの所信を表明されたのですか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん高度成長によりましてむしろ異常な流出が行われたというふうなことで、一面においては過剰という面は解消されるという面はあったわけですけれども、反面におきまして、過疎というふうな問題も起こりますし、また、農業労働力確保できないというふうな深刻な事態が起こったこともわれわれは率直に認めなければならぬと思っております。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 そのことは、農村過剰人口が解消したということは、農村適正人口になったということではないという意味理解をしていいのですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは適正であるか適正でないか、いろいろと観点があると思うわけでございますが、しかし、農業生産確保するための労働力につきましては、やはり十分な確保が今日の段階では行われていないということは言ってもいいのではないかと思います。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたは非常に学問もある方ですから、いろいろと言い回しをされて答弁をされると思うわけですけれども、率直に言って、「農村過剰人口は解消し」というと、何か、農村がいま適正人口になったような印象を与えるような書き方であるし、「農家所得増大しました」ということは、農業が非常に盛んになって、農民ふところぐあいがよくなった、つまり、農村地帯人口も適正になって富み栄えてきたというふうな印象を深くするわけでありますけれども、ここにあなたの所信で書かれておることはそういうものではなく、つまり、高度経済成長政策の結果一定の過剰人口は解消されたけれども、一面においては過疎という実態がやってきた、そしてそのことによって農村労働力というものも減少してきたのだということはお認めになっての表現ですか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この高度成長によりまして、確かに農村における生活水準が高まってきていることも事実であろうし、農家所得増大をしてきたことも事実でありますが、しかし、農家所得と言いましても、農業所得というよりは兼業所得という面もやはりずいぶんあるわけでございまして、過剰人口が解消した中においても、農業のいわゆる労働力というものは全体的に見れば非常に脆弱化をしていることは間違いない事実であろうと私は思うわけですが、高度成長という中で、少なくとも農村における生活水準等も高まっておるという事実は事実として認識しているわけです。しかし、その反面の労働力脆弱化であるとか、あるいは土地の騰貴であるとか、あるいは兼業が非常な勢いで進んだとか、そういうふうな反面の高度成長に伴うところのひずみもまた大きく今日の農業の中には出てきたということは深刻にわれわれとしては受けとめていかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 農村にいろいろとそういう深刻な面が出てきたことのよって来る原因というものが高度経済成長政策によってきたということはあなたもお認めになっておるでしょう。そこで、この高度経済成長政策のいわゆる農村版というものが農業基本法に基づく日本農政の柱になってきておる。その農政の柱である農業基本法というものは今日もう改むべきであるということが農政審議会小倉武一会長の発言の中にも出ておるわけでありますが、農業基本法をそういう形で見直さねばならぬ、改めねばならないという農林省農業政策政策立案の一番大切な機能を果たしておる審議会会長のこの言というものをあなたはどう理解をし、農業基本法に対しては現在どう考えておるのか、その点を承りたいと思います。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業基本法は御承知のように昭和三十六年に制定されたわけでございますし、その後高度成長が始まったわけでございます。したがって、いま私が申し上げましたように、そのころ日本農業というものは非常に大きく変化を遂げたわけでございますから、三十六年制定当時と今日とでは農業を取り巻く客観情勢が大きく変化をしていることはもう事実であろうと思うわけでありますけれども、農業基本法のいわゆる基本的な理念といいますか、考え方、いわゆる農業の総生産を拡大していかなければならない、選択的拡大も図っていかなければならぬ、生産性も向上していかなければならぬ等々の基本的な理念は、今日の農業政策を進めていく上におきましても間違ってはいないのではないかと私は思うわけでございまして、これからは、こうした状態変化客観情勢変化に即して具体策を積極的に実施していくということがむしろ必要じゃないかと私は思うわけでございます。  しかし、農政審議会で現在中間報告も出されておるわけでございますし、それから今後総会が持たれて、総会としての答申をお受けをして、われわれとしては総合的な食糧政策を打ち出さなければならぬわけでございますが、御存じのように、審議会会長小倉さんがしておられるわけであります。そこで、この農政審議会総会として今後の長期的な農政のあり方についてどういうふうな御答申を出されるのか、それを見て私たちとしても慎重に対処していかなければならぬと思いますが、農業基本法の基本的な考え方理念というものは今日といえどもそう間違ったものではないというふうに私は思うわけであります。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 農業基本法はこれからの農政を進めていく上において改めるべきであるという小倉会長意見は当然だと私は思うわけであります。つまり、高度経済成長政策がもたらした農村現状というものは、さっき大臣もお認めになった面というものが非常に強く出ておる。いわゆる現象でよい面をことさらに広く大きく宣伝をするわけでありますけれども、欠陥というものが出ておるわけでありますし、そういう点から、この法律ができた当初、この農業基本法に対しては、今日を予想して強力な反対を私どもは——ここにおいでの芳賀先輩等もずいぶん指摘をしてやられたわけでありますが、たまたまそのときの立案者であった小倉氏がもう改めるべきであるという見解を述べられておる。そしてまた、これからの日本の農産物の需給生産長期見通しの設定を進めるに当たっても、農政審議会意見を聞いて、それによって決めると言っておるわけでありますので、農政審議会会長意見見解というものは非常に重要な役割りを持っておると私は思うわけであります。  そこで、きょうこの審議会長出席を求めたかったわけでありますけれども、その時間がなかったわけなのですが、すでに需給部会からは中間報告も出されておりますし、そしてまた引き続いて答申がなされると思いますので、その時点に当たって審議会会長小倉氏を当委員会参考人として出席を求めて、これからの日本農政の進め方について会長意見等をじっくりとただしたいと思うわけでありますが、委員長においてよろしくお取り計らいを願いたいと思います。  その点について委員長見解を求めておきたいと思います。
  14. 坂村吉正

    坂村委員長代理 ただいまの井上君の御提案については、理事会でいずれ相談をして取り扱いを決めたいと思います。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 いま、国民最大関心食糧問題である。つまり、農政の面における最大関心食糧需給問題である。ところが、いま確かには私は承知をしておりませんけれども、大分前の新聞に、食糧備蓄をするには日本よりアメリカがよいだろうと、これは農林省側か、あるいは政府自民党側かどうかは知りませんけれども、そういう話が載っておったことがあるのですが、大臣食糧備蓄アメリカに求めるような考え方があるんですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄問題につきましては、御存じのように、昨年のローマにおける世界食糧会議におきましても大きく取り上げられたわけでございますし、今日の世界的な食糧の逼迫の情勢が今後とも恒常的に続いていくというような見通しを立てなければならぬということになりますと、やはり、備蓄ということは真剣に考えていかなければならない課題であろうと思うわけであります。     〔坂村委員長代理退席委員長着席〕  二、三日前の新聞でも御存じのとおり、ロンドンにおきまして食糧会議が持たれまして、アメリカから備蓄に対する提案がなされておるわけであります。これには日本側出席をいたしておるわけでありますが、われわれとしても米につきましてはある程度の在庫の積み増し等考えなければならぬわけでございますし、同時に、その他の食糧あるいは食料品、また飼料等につきましても、備蓄ということは、今回の予算でも多少の措置はとっておりますが、世界的な課題としてわれわれもこれを取り上げていきたい、積極的に取り上げていくべき時期に来ておるのじゃないか、と思うわけであります。  アメリカ日本食糧あるいは飼料等備蓄するという問題につきましては、考え方といいますか、話としてはそういう問題を論議したことはあるわけでございますが、もちろん、まだ、これをやるとかやらぬとかいうことを決めた段階ではないわけでございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 それは決めておれば大変なことであるし、日本国民食糧アメリカ備蓄するなんという考え方はとんでもない考え方だと私は思うわけですが、まだ決めてはいないけれども、そういう考え方というものは現在あなたの胸の中にあるのですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はいまそういう考え方を全然持っていないわけでありますし、アメリカ備蓄しても、アメリカ領土内、いわゆる主権の中にあるところの備蓄でございますので、世界的に食糧が非常に不足するという状態が起こったときに、もし輸出制限等が起こるということになれば、備蓄しておっても日本側としてはこれを活用できないという事態考えられるわけでございますから、そういう問題については、現在アメリカ国内における備蓄を推進するという考えは私は毛頭持っておらないわけでございます。  アメリカ側の方ではそういうふうなことを多少非公式に言ってきておることは事実でありますが、領土、いわゆる主権のあるアメリカ国内でございますし、不安定な備蓄ということになるわけでございますから、私としては、それに対しては、いまのところはそういう考えは全然持っておらないわけであります。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 大変結構な見解です。あなたが農林大臣として存在する限りにおいてはそういうふうなばかげたまねはしないということを私は心強く思っておるわけであります。アメリカ日本食糧備蓄をするなんという、そんな発想を一体だれが打ち出したのかと思ったら、アメリカ側にそういう見解があると言う。アメリカ食糧でも日本を締め上げようとしておるのですから、それはアメリカにはそういう考え方があると思うのですけれども、日本ではそういう考え方を持たないようにしていただきたい。それは農林大臣見解を一〇〇%信頼しておきたいと思います。  それで、備蓄の問題についてもいろいろとお尋ねしたいのですけれども、時間がないので次の問題に移りたいと思いますけれども、所信表明でも、あるいは農林大臣説明でも、農林省は物をつくり、そのつくった物を国民の台所あるいは国民生活に供給するという、そういう点についてはよくわかるわけですけれども、ただ、物をつくるためには何が必要なのかということを考えますと、やはり、肥料問題というものが避けて通ることはできない重要な課題なんだ。ところが、あなたの所信表明説明によると、これは農林省の役人がつくった説明だと言えばそれまでですけれども、あなたほど見識の高い政治家肥料問題をことさらに避けておるということは一体どういう心境ですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 避けたわけではないわけでございますが、いま御指摘がありましたように、肥料農業生産を行う場合におけるまことに重要な問題であることはもちろん当然でございまして、われわれとしても、化学肥料の適正な使用と相まって、堆厩肥等の有機物の適量使用等によりまして地力増強には努めていかなきゃならぬと思うのですが、御承知のように、化学肥料については、かねてからその供給の確保価格の安定に意を注いでまいりましたし、また、石油が昨年末に削減をされた際も特別な措置を講じまして、農民の皆さんに不安のないように措置をいたしたわけでございますが、この肥料価格につきましては、御存じ肥料価格安定等臨事措置法あるいは事前了承制に基づいて、原材料価格の上昇の確定分に限るというようなことでその適正化を図ってきておるわけですが、現在のところは化学肥料については一応安定をしておるというふうなことで大きな問題がない、そういう判断に基づいて所信表明を作成したような次第でございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうふうな考えだから、この説明やあるいは所信表明には肥料対策については一言も触れていない。それから農林省関係予算を見ても、この肥料関係に対する施策というものは、いままでの肥料検査機構をどうこうするというだけのものであって、具体的に予算の中に出ていないでしょう。ところが、いま日本の農地というものがどういう状態になっておるのかということ、これを農林大臣として承知しておってもらわぬと困るわけです。  そこで、昨年の九月に、内閣総理大臣に対して「国土培養地力増強に関する建議」が行われておる。これは土づくり農業の本来の姿であるということで、「土を守る運動会議」というものが結成をされて、その結成をされたことに基づいて、昨年の九月に、内閣総理大臣に「国土培養地力増強に関する建議」がなされておる。このことをあなたは承知をしておるのですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一応聞いておりまして、土づくり運動というものを展開をするわけでございますし、それに伴ういろいろの予算等も、五十年度予算におきましては、これの施策の中に予算措置を講じておるわけでございます。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 それは一応承知しておる、それに基づいて今度の予算に出しておる、こういうわけですけれども、それでは事務当局で御答弁願って結構ですが、この「土を守る運動会議」が出した建議書の内容と、そしてまたそれに基づいて五十年度の予算にどれだけの予算を計上しておるのかということを、私は不勉強で非常に申しわけないわけですけれども、この農林予算説明の中で説明をしていただきたいと思います。時間があまりないので、ひとつ要領よくまとめて説明してください。
  24. 松元威雄

    松元政府委員 土づくり建議、これは私も承知しておりますが、ただいま手元に資料を持っておりませんですが、要は、最近の日本の土壌というものが、化学肥料が中心になりまして、有機質肥料投下がどんどん減っている。したがいまして、当面はともかくとしまして、先々地力の低下が懸念される。したがいまして、有機質投下というものをもっとふやしまして、それで地力を維持培養して後世に残さなければいかぬというのが骨子だと考えておるわけでございます。  先生も十分御承知のとおり、肥料としましては化学肥料有機質の両方があるわけでございますが、両者バランスをとって施用しなければならぬわけでございます。ただ、現実には、近年は労力不足ということが基本原因でございまして、とかく化学肥料に頼りまして有機質肥料が減少する傾向があることは、これは厳たる事実でございます。  そこで、いかにしましてこの有機質肥料投下を進めていくかということでございますが、農林予算の中でも、肥料という表現ではございませんが、「地力」という問題で予算を取り上げているわけでございます。その場合、第一には、従来からもちろん地力維持培養事業はいろいろなかっこうでやってまいったわけでございますが、特に、五十年度におきましては、一つは、いわば土づくり運動というものを盛り上げるということに焦点を置きまして、これは国と県あるいは農業団体が一緒になりまして運動を盛り上げるということで、別にこれは金だけで済む問題ではございませんが、予算といたしましても、土づくり運動を助成する運動費につきまして予算措置を講じているというのが第一点でございます。  第二といたしますと、要は、労力不足原因有機質肥料が減っているということでございますから、どのようにしたならば農家の方々が有機質投下していただけるか。そうしますと、一つの方法といたしますと、いわば片一方には畜産におきます厩肥の問題がございますから、こういった有畜農家厩肥の処理と、それから特に畑作におきましては有機質肥料が非常に重大でございますから、両者を結びつけるということで、そのためのモデル事業を従来からやってまいったわけでございますが、これを五十年度も引き続きやるということが一つと、同時に、その場合、もう一つはそれをさらに伸ばしてやる必要があるのではないか。要は、そういった結びつきと、もう一つは省力的にやらせること、これをいかにしてやらせるかということでございます。  そこで、予算といたしますと、地力関係予算といたしまして、いま申しました土づくり運動推進指導事業ということで約八百八十万の予算を計上しております。(井上(泉)委員「それは何ページですか」と呼ぶ)その中では合計で入っていると存じます。それは大きくくくってございます。もう一つ農林予算説明でございますが、この二十九ページの方には、地力維持増進ということで、ただいま申し上げました土づくり運動の金と、それから米主産地地力培養推進実験事業ということで、従来に対しまして三倍程度の金を計上する。さらに新しく主要畑地帯等地力培養対策モデル事業ということで約九千万円を計上するということで、農林予算説明の二十九ページに説明を述べてございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたもお認めになったように、有機肥料化学肥料とのバランスがとれなければいかぬというわけでしょう。ところが、現在はバランスがとれていないと言う。バランスがとれていないというなら、現在の化学肥料使用高を見て、これをどれだけに減らしたならば、また、有機質肥料をどれだけ入れたならばバランスがとれるとお考えになっておるのか。その点を承りたい。
  26. 松元威雄

    松元政府委員 化学肥料有機質肥料関係は、単に成分比だけで比べることは非常にむずかしゅうございます。ただし、従来かなり有機質投下されておりまして、たとえば昭和三十年におきましては、堆厩肥が十アール当たり六百五十キロ投下されていた。それが四十八年では二百八十七キロに低下いたしておりますから、いわば三十年に近い数字に持ち上げたい。それからまた他方、堆厩肥を補うことにいたしまして、稲わら使用が多少進んでおりまして、これは三十年が七・五キロが現在は六十二キロとふえておるわけでございますが、これを考え合わせましてもトータルが足らぬわけでございますから、やはり、三十年くらいの堆厩肥投下量というものをめどにいたしまして、これをふやすようにしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 ちょっと聞き取れなかったですが、昭和三十年をめどにした状態に返すというわけですか。
  28. 松元威雄

    松元政府委員 説明がまずくて恐縮でございますが、いま申しましたのは、計数的に、化学肥料に対して有機質成分で代替する関係がなかなかつかみにくい、そこで、有機質肥料を三十年ごろを一つめどにいたしまして近づけるように努力してまいりたいということを申し上げたわけでございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、三十年ごろの化学肥料生産高と現在の化学肥料生産高ですが、その点については、通産省の化学肥料課長にこういうことでお尋ねするということで連絡してなかったので、あるいはおわかりにならないかもしれませんが、三十年ごろと今日との化学肥料国内使用量というものは大変な開きがあると思うのですが、大体どれくらいあるのですか。わかっておれば答えてください。わかっていなければまた次に聞きますから……。
  30. 澁谷直藏

    澁谷委員長 ちょっと、調べておくように……。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、時間をとりますので続けますが、農林省の方でそういう三十年ごろに戻すということは、非常に適切な措置だと私は思うわけですが、三十年ごろに戻すとすると、いまの化学肥料使用量というものをどれだけ減らさなければならぬのか。あなたの論理の帰結として、これはどれだけ減らさなければいかぬということは当然出てくると思うわけですが、どうですか。
  32. 松元威雄

    松元政府委員 私の申し上げましたのは、有機質肥料の量をふやすということが直に化学肥料が減るということには必ずしもならないのじゃないかと私は思うのです。と申しますことは、化学肥料化学肥料の機能がございますし、有機質肥料有機質肥料の機能がございます。もちろん、両者の共通問題としまして、あるいはNの量でございますとか、Pの量でございますとか、成分換算のものがございますが、有機質肥料化学肥料成分たる窒素分あるいは燐酸分、カリ分に数量的にかわると申しますよりも、有機質肥料本来の機能といたしまして、たとえば遅効性の効果がありますとか、あるいは土地を団粒化しまして育てるとか、そういう化学肥料の酸性分にはない効果がある。そういう意味におきまして、有機質肥料をもっと投下しなければならぬということを私は申し上げましたので、有機質肥料がふえますれば、成分換算を通じて若干は影響がございますが、完全に数量的に代替するというものとはちょっと問題が違うのではなかろうか。したがって、両者並行してやらなければならぬというように考えているわけでございます。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 あなたは農業をされた経験があるかどうか。恐らく、学問的にも実際的にもやったことがあるでありましょう。私自身も農業をやった者ですが、昭和三十年ごろには、その時分、ぼく自身、五反ぐらいの農地だったですけれども、化学肥料は一袋も使っていなかったですよ。終戦当時にも化学肥料なんかほとんどつくっていなかったが、ところが、食糧増産とかいろいろな形の中で化学肥料がどんどん入ってきて、それで化学肥料を使い出したわけで、有機質肥料をやることによって化学肥料が減るというものではないというような、そんな化学肥料万能の考え方というものがあなたの頭の中にまだ絶えずあるのじゃないですか。  有機質肥料を積極的に取り入れれば、勢い化学肥料は減らさなければいかぬ。化学肥料のもたらした弊害というものが土を汚染してきておるのです。そして、農薬によって国民の健康を損ねておる。そういうことから、今日もう地力が減退したから土づくりをせにゃいかぬ。有機質肥料でやらにゃいかぬ。そういうことが国民運動農民運動として盛り上がっておるでしょう。あなたの考え方はそれに水を差すような考え方じゃないですか。どうですか。
  34. 松元威雄

    松元政府委員 私が申し上げましたのは、有機質肥料は大事であるということは私も十分理解いたしております。ただ、確かに、肥料というものは、特に化学肥料というものは速効性効果がございますから、いわば化学肥料によりまして収量も上がったということ、これも現実には事実でございます。そこで、その場合の問題は、化学肥料の機能たる酸性分の効能というもの、これはもちろん有機質肥料の中にも酸性分がございます。しかし、化学肥料に代替するためには膨大な量が要るわけでございまして、そこで両者が相見合わなければならぬ。ところが、現在は化学肥料だけになりがちで、有機質肥料が非常に減っている。したがって、それはもとへ戻すようにしていかなければならぬということを申し上げたわけでございます。  しかし、だからといって化学肥料がその分減るかと申しますと、まあ、厳密に申しますれば、有機質肥料の中に入っております酸性分に置きかえる分はもちろん減りますけれども、しかし、それが大きく影響するまではない。やはり両者が必要じゃないかというふうに考えているわけでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 これは大臣にお尋ねするわけですけれども、この土づくりということ、つまり有機質肥料を使うということ、これを農業の面で積極的に取り入れなければならぬという建議書がこの会議からも内閣総理大臣に対して出されておるという中で、いまの農林省松元農蚕園芸局長のお話しだと、有機質肥料を推進するのかせぬのかちっともわからぬでしょう。それで、農林行政の中で有機質肥料をもっと使用するためにはどうするのかということ、ここに問題が発展をしていかなきゃいかぬでしょう。そういう考え方のない局長に対しては、局長を信頼されておる農林大臣として、もっと助言をしてやらなければいかぬと私は思うわけですが、どうですか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 局長の答弁が十分意を尽くさなかった点もあると思うのですが、いま御指摘のように、化学肥料万能であってはなりませんし、地力培養を行い、生産性を高めていくという意味におきましては、有機質肥料というものを積極的に取り入れていかなきゃならない。これのための土づくり運動というようなものもいま展開をいたしておりますし、予算措置等も説明をいたしたようにつけておるわけでございますが、今後ともこの運動を真剣に展開をしていくとともに、有機質肥料地力培養のために積極的に使うように農林省の行政としても積極的な姿勢をとっていかなきゃならない、こういうふうに思うわけであります。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 昨年の農林水産委員会で、わが党の島田委員が、肥料価格等安定臨時措置法の審議の際に肥料問題で質問をなされている。その中で有機質肥料の問題も取り上げられて、局長も言われるように、土壌が酸性化していくというようなことに対する対策として炭カルの施用とかいうようなことをもっと考えたらどうかという質問をなされたわけです。島田委員は、「炭カル施用、炭酸石灰施用の分野における農林省がいまのようなお考えでは、これは山元もたいへんだし、土地も酸性化していくばかりである。もっと積極的に取り組むという考え方を持っていただかないとこれはだめだ。答弁は要りませんが、私は強くこのことを指摘しておきます。」と言っておる。「答弁は要りません」と言うたから答弁もなかったわけですけれども、答弁がなかったということは、島田委員としては、農林省の方はこれを積極的に取り上げるであろうという期待を持っておったし、私もそれを期待しておった。  ところが、現実には、それに対するものとしては、土づくり運動として八百何十万ということです。日本国土は広いんですよ。日本農業面積は広いですよ。これに対して八百何十万で土づくりなんて、それは一つの県がやるだけのものしかないわけでしょう。こういう島田委員の質問に対して、島田委員は「答弁は要りません」と言うたが、私は改めてここで答弁を求めます。局長、どうですか。
  38. 松元威雄

    松元政府委員 ただいま予算で申し述べましたのは、土づくり運動はそういった運動費として計上しているということを申し上げたわけでございまして、それ以外に、いわばモデル事業的なものとしまして、先ほど触れましたが、米の主産地の地力培養推進実験事業でございますと、四十九年に対しまして五十年は三倍程度に拡充をしようとしているわけでございます。それから主要畑地帯等の地力培養対策モデル事業というのも新規に計上している。  ただし、私が申し上げたいことは、基本は、最近有機質肥料が減っております大きな原因労力不足ということでございます。したがいまして、一つは、いかにしましてまとまって集団的にやっていくかということと、もう一つは、簡単な機械で堆厩肥の製造、散布ができないだろうかということ。そのためのモデル事業、もちろんこれに全部負うわけではございませんが、そういうことを拠点として広げていきたいということで、モデル的にこういった事業も仕組んだわけでございまして、もちろんこの予算をもって全部をカバーするわけではございませんが、こういうことで少なくとも前よりも前進させていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、もう一つ、炭カルの問題は、これはまたちょっと性質の違う問題でございまして、特に酸性土壌の場合は炭カルが非常に重要でございます。したがいまして、特に北海道等は開畑の場合には炭カルに対して助成をいたしておりますが、普通の場合は炭カルの投下ということは、これはいわば通常の営農事業の一環でございますから、開拓地域と申しますか、そういう場合には助成事業に組み込んでおりましたが、そういったかっこうの助成はなかなかしづらいということで、一部特殊の不良土壌地帯という、通常の営農を超える場合には助成いたしておりますが、あとはそういった通常の営農の中で、融資等を通じまして炭カルの投下を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、これは委員長にお願いするわけですが、「土を守る運動会議」の内閣へ出した建議書を資料として提出していただきたいと思うわけです。つまり、これには農林省も入っておりますし、農業会議あるいは農協も全部参加しておるわけでありますから、堆肥の面で屎尿の——つまり、酪農地帯におきましては、屎尿問題というものが公害問題で非常に困っておる。ところが、北海道だけ例にとったら、北海道ではたくさん堆肥ができるが、その堆肥は北海道では全部使うだけのものはないわけでしょう。そうすると、それは東北なりあるいは関東の方なりで堆肥を生産して、堆肥の生産ができないような地域へ送り込むような、そういう体制をつくるということも必要じゃないかと私は思うわけですが、これについて大臣見解を承っておきたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、実は、二、三日前に千葉県に参りまして、千葉県の酪農地帯だとか畜産の地帯を視察したわけでございまして、堆厩肥が出るわけでありますが、その堆厩肥料をその農家で非常に効果的に使っているところもありますけれども、しかし、反面、これが公害等に結びついておるような状態で捨てられているというふうな点も見受けられるわけであります。また、これに対して、たとえば植木をつくっておる業界だとか、その他の農産物を生産をしておる業界等も堆肥が必要だが、しかし、その間を結ぶパイプがないものですから使おうにも使えないというふうな声も聞いておるわけでございます。  先ほどからもお話しがございましたし、私も申し上げましたように、有機質肥料を非常に有効的に活用していくという意味においては、これはもっと工夫をこらして、いまおっしゃるような面も何か工夫をこらして今後措置をしていき、研究をしていきたいと思います。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 非常に前向きな御見解ですので、ぜひ研究を進めて、それを具体的に農林省の行政の中へ取り入れるように要望しておきたいと思います。  そこで、こういうふうに化学肥料が入ってきたというのも、これも前段で申し上げたように、高度経済成長政策農村過剰人口を——大臣の言をかりるならば過剰人口を出したわけですから、農村労働力が不足になったわけで、それで、不足になったものだから化学肥料に頼る、と、こういうことを繰り返している。その一面、生産面に力点を置かねばならない農協の仕事というものが、流通部面へ力を入れておる。肥料にいたしましても、農村地帯における肥料の扱いは、八〇%以上の市場を農協が専有しておる。つまり、農協は、日本の中での農協商社と言われるほど大商社的な存在になっておるわけです。  そこで、農協の問題についてもっと掘り下げて質問をいたしたいと思うのですが、いまのような流通部門に力を入れるような農協のあり方ではなしに、この土づくり運動という形に表現をされているような生産部門、いわゆる生産の原点に立ったところに農協の活動の中心が置かれるようにしなければならぬが、農協は、物を売ったり、いろいろ観光をやったり、共済事業をやったりすると金もうけになるが、ところが、生産面に力を入れても金もうけにならぬから、自然に金もうけにならぬ仕事はやらぬでしょう。そこに、農協が本来の姿を失ってしまって商社的な様相を呈してきておるわけですが、こういう農協のあり方について農林大臣見解を承っておきたいと思います。    〔委員長退席坂村委員長代理着席
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、いま御指摘のように、農協の発足当時と今日とでは、世界経済的にも多様化しておりますし、農協を組織するところの組合員の兼業化等も非常に進んで、そういう中で生活も多様化しておる。そういうところで、結局、農協が発足当時と違いまして、金融であるとかあるいは流通面というものがむしろ中心になった活動が今日まで行われておるという事実は、これはもうそのとおりじゃないかと思うわけでございます。もちろん、生産等につきましても、営農の指導であるとか、あるいは生産団地等に農協も一緒になってやっていくとか、土づくり運動なんかもそういう一端を担わなければならぬわけでありますが、いま御指摘がありましたように、農協が生産と流通をもっと一貫的にした経営を図っていくような活動をしなければならぬという面は確かに大きくあるのじゃないかと思うので、この点は農林省としても十分話し合いをし、また、行政等におきまして指導も行いまして、生産面について農協がもっと自覚をしてやっていただくように努力をいたさなければならぬ。私も当然そうだと思っております。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、農協の問題につきましてはまた機会を改めて質問いたしたいと思いますが、次の問題として、これからいよいよ税の申告時になるわけです。  たまたま大臣は昨年は大蔵委員長をなされておうて、米の生産調整の補助金については、所得税及び法人税の臨時特例に関する法律を出されて非常に農民の方に喜ばれたということは、これは大臣もずいぶんいいことをしたとお思いになっておると思うわけです。ところが、これは米の奨励金だけであって、わきの奨励金、たとえばことしは農林省の指導でミカンに摘果奨励金を出したでしょうが、その摘果奨励金に対しても税金の対象にするとか、あるいはまた酪農家に対するいろいろな補給金とか補助金とかいうものに対するものまで税金の対象にするとかしているが、これは米と何も違わないでしょう。これはあなたも大蔵委員長として、政府にそういういいことを提唱されて実行させたわけですから、この際、農林大臣として、農林省所管の奨励金について、税金の面でも特例を設けるような働きかけをなされるのが当然だと思うし、それは非常に喜ばれることだし、結構なことだと私は思うのですが、どうですか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米の生産調整の奨励金につきまして、税で特別措置を講じておる。これは議員立法で行われておるわけでございまして、いまお話しがありましたように、昨年度は私も大蔵委員長をいたしておりまして、委員長提案で行ったわけでございますが、ことしも委員長提案で、米については特別措置が行われたわけでございます。同時に、私が聞いておりますことによりますと、委員長提案が採決されるに当たりまして、今後ともこうした奨励金等については配慮をすべきであるということを大蔵委員会委員長が発言されたということを聞いておるわけでございます。米については、農民の皆様は生産をしたい、しかし、農林省としては稲作転換を行っていただきたいということで、お願いをして奨励金をつけるということになっておりますから、この特別な税の措置についても、農林省としてもこれはやむを得ないというふうに判断をしておるわけでありますけれども、その他の奨励金につきましては米の場合とは性格が違っておるというふうな考え方から、現在のところは特別措置が行われておるのは議員立法でありますが、農林省としては、現在のところでは、生産の奨励金につきまして特別措置を講ずるというふうな考えまでは持っておらないわけでございます。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 その考えを持っていないと言うけれども、それは誤りと言うと何か悪いけれども、その考え考え違いじゃないか。あなたは、米は政府がお願いをしておると言うけれども、米にしても果樹にしても、酪農にしても何にしても、政府がやれと言わなかったものはないでしょう。そして、ミカンをよけいつくった、ミカンが余ったから摘果する、摘果の金を、補助金を出した、その補助金を税金の対象にするという、こんなことはないでしょう。     〔坂村委員長代理退席委員長着席〕  そこで、このことについてのあなたの考えは誤りとは言いません。誤りとは言わぬけれども、若干間違っておると思います。しかし、このことを論議しておると大変時間をとりますので、これまた委員長に要請をしたいと思いますが、ぜひひとつ理事会等で御検討を願って、そして、当委員会では満場一致をもって農林省関係の奨励金については税の対象からはずすべきである。こういうことでお取り計らい願いたいと思うわけですが、委員長、どうですか。
  46. 澁谷直藏

    澁谷委員長 理事会で協議いたします。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、その次に、ちょうどここに渡辺前農林政務次官がおいでになっておるので、恐らく引き継ぎの中でお聞きになっておると思いますが、ソ連の漁船によって日本の漁民がずいぶん迷惑を受けたことを私が質問した際に、渡辺政府委員からは、明快に、「もちろん、このような被害が続出しては困るのですから、そういうことはやめてもらいたいという要求はいたします。それから、損害賠償の問題についても、損害賠償ということばが適当かどうか知らぬが、実質上損害賠償をしてもらうということで、農林省としては、大臣とも相談をして外務省に要請をする」という答弁をいただいておるわけです。残念なことにはその後の経過を承知いたしておりませんが、この渡辺政府委員の答弁に基づいて、ソ連漁船が日本の漁民に与えた不当な被害に対してどういう交渉が今日までなされ、どういう結果が生まれてきておるのか、これを外務省並びに水産庁のほうからそれぞれ明快に御答弁を願いたいと思います。
  48. 内村良英

    ○内村政府委員 ソ連漁船のわが国近海における操業につきましては、今年もソ連の漁船が引き続き操業しておりまして、今漁期、すなわち……(井上(泉)委員「それはあとで聞きますから、いままでの分、私がこのとき質問したことの結果を聞きたい」と呼ぶ)  先般の国会でも私どもから申し上げましたけれども、まず、この問題は、公海漁業でございますから、ソ連と操業に関する協定を結ぶことが非常に大事であるということを御答弁申し上げた記憶がございます。そこで、昨年の十一月にソ連と、日本近海における漁業操業に関する会合を持ちまして、紛争の未然防止の措置をとるとともに、紛争解決のための委員会を設置することについて原則的に合意が得られたわけでございます。したがいまして、これに基づきまして、ソ連側と協定を結ぶことで目下準備中でございまして、できれば三、四月ごろには協定を結びたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、なお、損害につきましては、そのつどソ連側に損害賠償を要求しておりますけれども、ただ、ときどき問題が起こりますのは、加害者が必ずしも具体的にはっきりしないという問題がございまして、私どもといたしましては、加害ソ連漁船を早く把握するということに努力しておるところでございます。
  49. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、どれだけいままで損害を要求されたのですか。これは渡辺政務次官がそういうことで大臣とも外務省とも話をされたんだと思うわけですが、この時点までの損害に対して、どれだけソ連側から支払いを受けたんですか。全然受けていないんですか。
  50. 内村良英

    ○内村政府委員 残念ながら、まだ支払いを受けたケースはございません。
  51. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、渡辺政務次官も、国会の場で、委員会の場で適当に答弁をされて、その後の行き先がわからぬということになっておるとすると、渡辺委員としてもこれは面目が立たぬと思いますし、その点、渡辺委員もぜひこれは協力をしていただかなければならぬわけです。  そこで、大臣、このソ連漁船による被害について、私は大体このときにずいぶん外務省の方にもやかましく言ったわけです。ところが、何とかかんとか言葉を弄して——と言っては悪いか知らぬけれども、言葉を弄して、結局何にもしていないわけです。この委員会で私が質疑をしたのが三月二十七日ですが、ところが、それからすぐ後でも、五月三十日の日本経済新聞によると、今度は、ソ連は日本漁船からどんどん罰金を取り、その罰金の返還を拒否しておる。こういうことをやっておるが、ソ連がこういう罰金の返還を拒否したことについては、これもそのまま見過ごしてきておるのか。これは大臣に問う前に、水産庁の長官なりあるいは外務省なりに聞きたいが、この日本漁船の罰金の返還を拒否したことは、これもそのままですか。
  52. 内村良英

    ○内村政府委員 その点につきましては、日本政府からソ連政府に厳重に抗議をいたしました。その結果、罰金のかわりに現物を押収したものにつきましては、全部返還になっております。ただ、罰金につきましては、双方の見解の違いがございまして、いまだに解決しておりません。
  53. 井上泉

    井上(泉)委員 罰金で取った分も、金額にしては二十六万円ということですから、金額は大したことはないですけれども、日本漁民としてはこれは耐えられない屈辱だと私は思うわけです。  そこで、大臣、十日か十一日かの朝、「スタジオ一〇二」で、ソ連漁船の、不法とは言いませんが、無謀操業のことが紹介されたんですが、ごらんになったですか。ごらんになったとするなら、それに対する心境をお聞かせ願いたい。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのテレビは見ておりませんけれども、しかし、実は、最近でも、今漁期だけでも一億一千万円、あるいはそれ以上の被害を日本側の漁船、漁業者は受けておるわけでありますし、最近もまた相当大規模な船団を組んで北海道にやってきておることを聞いておるわけでございまして、先ほど水産庁長官が申し上げましたように、専門委員会をつくることを両国合意をして、この三月、四月には、この専門委員会で、日本の沿岸における操業について、日ソ間の協定を一日も早く早急に結ばなければならぬと思うわけでございまして、私たちとしても、ソ連漁船団の太平洋岸における操業、北海道から千葉県等の沿岸における操業によるところの日本側漁業の受ける被害というものについては、非常にこれを深刻にとらえておりまして、一日も早く日ソ間の協定を締結して安全操業ができるように持っていかなければならぬ、と、こういうふうに考えております。
  55. 井上泉

    井上(泉)委員 公海だからおれのところがやるのは勝手だというやり方で、日本の零細な漁民が大きな被害を受けておる。これは事実ですからね。それで、この間「スタジオ一〇二」でも放送したとおり、そしてまた新聞でも載っておったとおり、北海道のあの人たちが現在まで受けた被害でも、一億数千万というものを受けておる。いままで受けたものも数億に上っておる。ところが、それに対してはソ連側からは一銭の賠償金も補償金ももらっていない。おそらく、こういうことについてもなかなか先へ簡単にはいかないと思うわけですが、こういうように現実に被害を受けて、漁民は本当に煮えくり返るような気持ちであるが、その気持ちに対して、その補償は当然何らかの形でやってやるというのが日本政府としての態度じゃないかと私は思うわけですが、そういうことについての大臣見解を承りたいと思います。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現在は、被害のあるたびにソ連側に対して厳重に抗議を申し込んでおるわけでございます。それに対しまして、ソ連側からも、善処をし、自粛をするというふうな回答も受けておるわけでございますが、やはり、基本的な協定を両国間で結ぶことが一番先決ではないだろうかと思います。  被害の補償等につきましても、ソ連側にその都度申し込んでおるわけですが、相手のあることで、ソ連側がこれに対して何ら回答をしないという状況に今日まで来ておりますけれども、協定を結ぶ段階においてこの辺の話も十分詰めていかなければならない、漁民の皆さん方の被害に対しては何らかの形において政府としても考えていくべきものである、こういうふうに思うわけであります。
  57. 井上泉

    井上(泉)委員 これをたまたま「一〇二」で放送されたのも、北海道の関係の漁民の方です。そこで、これは北方領土の返還の問題等もあるし、日本とソ連との日ソ平和友好条約の交渉の問題もあると思うわけですけれども、私どもは、日本の漁民をそんな形で、いじめるという言葉はいいかどうか知らぬけれども、日本の漁民に対して被害を与えることは日ソの友好上好ましくないことじゃないかと思うし、これは外交ルートを通じてきちんとしなければいかぬと思うのです。これは北海道だけでなしに、去年三月のときに私が指摘したのは、静岡県の沖合いまで下がってきたソ連のサバ漁船の問題を指摘したわけですが、これが、ことしは、サバ漁船は、日本海はおろか、日本海から太平洋岸の土佐沖までソ連の漁船がやってくるということが言われておるわけですから、日本の零細な漁民、一本釣りの漁民あるいは流し網をやっている漁民にとってはこれは大変なことだと思うのですが、これについて外務省は一体どういうふうなことをやってきておるのか。  つまり、去年の三月からことしまで、はや一年になるわけですが、その一年の間も検討しておりますと——いま水産庁の長官に聞くと、三月に何とかかんとかと言っておるようですが、こんなことで日ソの平和友好交渉というものが避けて通れると思うのかどうか。私はそのことを外務省の当局にお尋ねしたいのですが、どうですか。
  58. 木内昭胤

    ○木内説明員 先ほど農林大臣と、それから水産庁長官からも御説明がございましたとおり、外務省におきましても、この問題については非常な関心を抱いておるわけでございます。実際問題としまして、すでに損害賠償の伝達を再三にわたって行っておりますし、それから、これに対して遺憾ながらソ連側が明快な回答をしていないということも認めざるを得ませんが、同時に、こういう事故の未然防止のためと、それから紛争の円満な処理のために、先ほど来御説明がありましたとおり、とにかく日ソ間に話し合いの場を設けて、すなわち委員会を設置すべく、その取り決めの作成の交渉にすでに入っておるわけでございます。それで、昨年これを二回ほど行いまして、また近々なるべく早い時期に交渉を再開いたしまして、この委員会を設置し、事故を何とか防ぎたいというのが外務省の考えであります。
  59. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、賠償の問題の片がついていない。全然やってきてない。そして、その被害を受けたことは事実で、北海道だけでもすでに一億数千万円という被害を受けて漁民は泣いておる。それに対して、政府は、ソ連とも交渉して安全な操業のできるように話をするからいましばらく待っておれ、しんぼうしておれ、という現在の態度だと思うわけですけれども、いま、大臣も、現実に被害を受けた者に対しては、ソ連に取ってかわって日本政府として被害の補償金を一時立てかえるなり、何らかの形で考慮されなければいかぬというように言っておられましたので、その言に私は期待をしておりたいと思いますが、期待をしておって当てがはずれるということはないでしょうか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 漁業者の被害につきましては、賠償責任が当然ソ連にあるわけでございますから、ソ連側との間の交渉を煮詰めて、これについても協定が結ばれ、それによって賠償が支払われるということが当然のことであろうと思いますが、いま外務省からも説明がありましたように、今日まで再三にわたって申し入れた賠償につきましてもソ連側が明快な返事をしないということでございますし、今後はこれはもう外交交渉にまたなければならない問題でございまして、これはこれとして強力に進めていくわけでございますが、こういう事態も踏まえながら、漁民の被害については、何とかこれに対して政府としても考慮していかなければならない、私はそういうふうに考えております。
  61. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、期待しておってはずれないということでありますから、安心をいたします。  そこで、最後になるわけですが、魚と油とは同居しないということは水島の事故ではっきりしたでしょう。これは大臣もお認めになっておるし、常識です。ところが、石油基地の構想で石油基地を求めるところが、えてして魚の一番大切な海岸地帯というものが選ばれるわけです。たとえば高知県の宿毛湾というところがあるわけですが、ここは足摺の沖合いにかけて、日本の三大漁場の一つと言われる非常な漁場の豊庫を抱えた地域なんです。その地域に対して依然として石油基地構想というものが通産省の間で出されて、現地の漁民は、これに対する反対の署名運動だとか、反対の抗議集会だとか、そういうものをいつもやっていないといつ乗り込んでくるかもわからないという危険にさらされておるわけです。  そこで、きょうは通産省の方にもおいでを願っておるわけでありますけれども、通産省の方に質問する時間がありませんので農林大臣にお聞きしたいのだが、水産行政というものを大臣所信表明でも言っておるように重く見られておる。そのことから考えて、魚と油との同居しない中で、しかも水産資源というものはもっと開発をしていかなければならぬ。こういう現在の食糧事情の中で、そういう地域に、そういう豊富な漁場に被害をもたらすような石油基地を設けるというような構想はとんでもないことだと思うが、それを大臣としてはどうお考えになっておるのか。少なくとも漁民に対して安心を与えるような見解の表明を大臣から承りたいと思います。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 石油基地の問題は、わが国のこれからの石油需給状態考えましても、国として石油基地ということは大いに取り上げていかなければならぬ国策的な問題ではあろうかと思うわけでありますが、しかし、漁業資源保護という立場に立てば、こういう石油基地ができると、それに対していろいろの公害問題等もまた起こってくる可能性もあるわけでございますので、石油基地をつくる場合においては、現地の漁民あるいは漁協側との十分なコンセンサスといいますか、納得がいかれなければ、そうしたいろいろな問題を起こす可能性のある基地等についてはやるべきでない。ですから、私は、やるとしても、あくまでも現地の漁業者のコンセンサスが得られるということが大前提であるというふうに思うわけでございますし、その間に立って、農林省としても、漁業資源の保護という立場からいろいろと指導をしていくべきであろう、こういうふうに思っております。
  63. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣はエリート大臣ですから、通産大臣をやってもそれと同じような答弁をされると思いますが、どこへも当てはまるような答弁ではなしに、所管の農林大臣としては魚と油とどっちを選ぶか。つまり、二者択一ですね。いまの日本国民食糧事情から考え日本の水産業状態から考えて、この場合にあなたは魚を選びますか、油を選びますか、どっちですか。それだけでいいです。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省としては、そういう基地等ができる場合においては、漁民、漁業者、水産資源の保護ということについてのはっきりした見通し、コンセンサスがなければ何としてもそういう基地はつくるべきでないということはやはりはっきりしております。
  65. 井上泉

    井上(泉)委員 それじゃ、たとえばその地域が補償金をもらう——これは高知県の宿毛の漁連が百億という不当貸し出しをやって、その宿毛の地域の人だけでも何十億も漁連から貸し出しを受けておる。私はこの問題についてはまた後日いたしたいと思うわけですけれども、そういう場合に、石油基地を引っ張ってくれば補償金がどっさりあるし、自分の持っておる漁業権を売り渡すことができるから、漁連から十億や二十億は借りておってもへっちゃらよ、という考え方があるいはあるかもしれぬ。しかし、そんなことがあっては大変なことだし、あなたはあす通産大臣になるかもしれぬし、いつまた別の大臣になるかわからぬが、そういうときに、あなた自身、あやふやなそういう考え方ではなしに、将来を期待する大臣として、魚と油とどっちを選ぶべきであるのか。今日、日本の国としては油よりも魚を選ぶべきであるという端的なお気持ちにならないか。油は油として別に考えたらいいのですから、やはり魚を選ぶべきであるというお考えになって、仮に地元のボスの人たちが誤った行き方をするならば、おまえたちは石油基地をつくったら大変だぞ、それよりも魚を選ばなければいかぬぞ、これは日本のためにも大ごとだぞと言う、それだけの指導性を発揮するような大臣としての姿勢を私は望むわけですが、魚と油とどっちを選ぶか。もう一回答弁を願いたい。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり、漁業資源を保護していくという立場から、漁業者、漁民の利益を考え農林省としては指導もしていかなければならぬ、あくまでもこれに徹していきたい、こういうふうに思います。
  67. 井上泉

    井上(泉)委員 終わります。
  68. 澁谷直藏

    澁谷委員長 竹内猛君。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先般の農林大臣所信表明と、農林予算説明に関連して、農政の基本的な姿勢について、私は何項目かの質問をしたいと思います。  まず、第一に、大臣は、現在の農政最大で、しかも緊急な課題であるということについて、どういう問題が緊急かということについてお伺いしたい。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、国民食糧確保ということが農政最大課題ではないかと思うわけでございまして、農政を進める場合におきまして大事なことは、まず、第一に、現在の農業を取り巻く客観情勢がどういうふうになっておるかという認識が大事じゃないかと思います。     〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 この認識の上に立って基本方針を打ち出していき、その基本方針のもとに具体的な政策を裏づけていくということであろうと思います。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 食糧確保ということは前から言われたことであって、特に新しいことじゃない。最近のことじゃないですが、それはそれとして、それでいいです。  その次に、農業の危機ということが前から言われていますが、これはやはり国際的にも言われておるし、国内的にも言われておる。そういう中で、大臣は、農業の危機ということを一体どういうふうに受けとめられておるか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在の農業を取り巻くところの情勢の認識でございますが、私は、まず第一には、国際的に食糧が今後とも不足をしていくという恒常的な状況にこの二、三年来入ったということが一つの大きな変化であろうと思うわけでございます。同時に、また、国内においては、高度成長経済の中におきまして、一面においては、先ほど申し上げましたように、農家生活水準等は上がりましたけれども、しかし、労働力脆弱化しておりますし、あるいはまた兼業等も非常に進んできておりますし、同時に、過疎という問題も起こる、あるいは農村における生産の意欲というものも高度成長の中においては減退をしておるということも言っても過言ではないと思いますが、そういう国際的な、国内的な、内外における農業の直面しておる状態というものが非常にむずかしい事態に立ち至っておる、そういうふうな認識の上に立って農政を進めなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大体そこまではほぼ一致をしておるのですが、さて、そこで、大臣が就任された直後の記者会見で「攻めの農政」ということを言われたが、一体敵はだれか、味方はだれか、これをひとつはっきりしてもらいたい。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、私ほど申し上げましたような基本的な認識のもとに立って、私の農政に対する気構えといいますか、政治的な姿勢といいますか、そういう意味で「攻めの農政」ということを言ったわけでございまして、どちらかというと、いままでは高度成長の中において日本農業をいかにして守るかということに力点が置かれたというふうな感じも持っておるわけでありまして、今後はむしろ国際的な食糧不足あるいは国内における農業脆弱化というものから積極的な姿勢に転ずべきであるというふうな私の気持ちを表現したわけでございます。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 「攻めの農政」という言葉の内容がまだはっきりしないのだが、それじゃ具体的に尋ねますが、いままでの政府・自民党の農業政策というものは重化学工業中心で、農畜産物というものは海外に依存していくという方針をとってきた。そこで、問題は、農業というものが、食糧の自給率が非常に低下して、国際的にも不足して、大変危機的な状態になっている。そこで、農林水産業というものを日本の重要な産業として位置づけるという考え方があるかどうか。そういう考え方に対してむしろ企業が攻撃をかけてきた、あるいは資本の攻撃がある、こういうものに対して守りをするというならわかるが、農業というものを日本産業の中でどういう位置に置こうとするのか。基本的なものの考え方を聞きたいと思います。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業に対する位置づけというものは、国民農業に対する認識の問題にも根本的につながっていくと私は思うわけですが、最近では、国際的な食糧需給の非常な逼迫の状況というものも国民には認識をされてきておるわけでございますし、また、国内において、高度成長の結果、農業に対する相当な圧力が加わっていろいろとひずみが出てきた。そういう状態から、農業あるいは農林水産業というものが高度成長から低成長に移行しておる段階になってきておりますから、ここで大きく力点を置いて取り上げていくべきときであるというような国民的な一つの認識といいますか、そういうものが出てきたのじゃないかと思います。昔は、むしろ、国際分業論だとか、何かそういうふうなことまでが言われておったような時代もあるわけでございますが、最近においては、やはり食糧問題は大事だ、食糧の自給力を高めていかなければならない、というふうな空気が国民的な一つの空気となって出てきておる、こういうふうに私は思っておるわけでございます。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう国民的な空気が出ているということは認めるということですね。  そこで、さらにそれを日本産業、重化学工業と同じような——重化学工業が夫の座であるとすれば、農業は妻の座にあるというぐらいの、そういう心構えを持っておられるかどうか、もう一度お尋ねします。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 石油問題がこうした日本経済を非常に混乱させたわけでございますが、これがもし食糧問題という形になってきたならば石油問題で起こった混乱どころの騒ぎではないというふうに私も思うわけでございます。これは、国民もひとしくそういう点で食糧というものを見直してきているのじゃないかと思いますし、そういう意味におきまして、農業並びに農林水産業というものの国民的な理解も深まってきておりますし、今後の高度成長から安定成長に移っていくところの日本の経済体制の中においては農業は非常に大きなウエートを持つべきものであるし、また、持たせなければならない、こういうふうに考えるわけであります。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農林大臣は、そういう立場に立って農政の基調をどこに求めるか、その農政の基調について基本的な立場はどこに求められるか、それを聞きたい。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、そうした国際情勢日本農業の今日の状態を踏まえて、これからの農政の基調というものは、資源的な制約はありますが、そういう中にあって自給力を可能な限り高めていくということが第一であろうと思うわけであります。と同時に、国内におきまして自給のできない農産物があるわけでございますから、この国内において自給できない農産物については、今後海外からの安定的な輸入を図っていく。そういう体制をとっていく。ですから、自給力を可能な限り高めていくということと、国内において自給できない農産物については安定的な輸入体制を確立していくということ、これが今後の日本農政の大きな基調でなければならぬ、こういうふうに思うわけです。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業基本法という法律があるけれども、あれについてはどういうふうに考えられるか。これは守るべきものだと思うのか、それとも、これはどうも前提が崩れているぞというふうに考えられるのか、これはどうですか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 三十六年に農業基本法はできたわけでありまして、私も農林委員の一人として参画をしてできたわけでありますが、三十六年の時代と今日では農業を取り巻く客観情勢は大きく変化していることは、そのとおりであろうと思います。しかし、農業基本法に示されているところの、農業の総生産を拡大していくとか、あるいはまた生産性を向上していくとか、選択的拡大を図っていくとか、そういうふうな農業に対する基本的な理念といいますか、根幹というものは、客観情勢は大きく変化をしておりますが、そう間違ってはいないのではないかと思います。  ですから、もちろん農政審議会等の御答申も得て、各方面の御意見も十分拝聴しながら考えていかなければならぬ問題ではございますが、具体的な問題を一つ一つ解決していくためには今後は全力を尽くすということでいいんじゃないだろうか、私は、今日の段階においてはそういうふうに思うわけであります。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 四十八年の本委員会で、私は、農林省が出したところの、五十七年を展望する食糧生産見通しというものについて質問をいたしました。閣議の決定もしていない、農政審議会の議も経ていないというものを出して、本会議で、予算委員会で、あたかもいまの政府には農業政策がかくかくのごとくあるような印象を与える答弁をされておることについて質問をしたときに、これはまだそういう議を経ていないんだということで、そこで、その年の四月に農政審議会に付して以来約二カ年の間討議をして、この間一月二十九日に需給部会の報告があり、これがやがて農政審議会の議を経て答申されると思うが、この需給部会の報告に関して、農政審議会会長であるところの小倉武一氏が三十一日に記者会見をして、現在の状況の中では、国際食糧情勢並びに経済成長の鈍化傾向の中で農業基本法は実態にそぐわない、わが国の食糧の安定的供給のためには、農産物の国内自給だけを問題にするのは無意味である、そういうことからして、農業基本法を改正して食糧基本法を制定する必要がある、ということを発表しておる。  少なくともあれだけの討議をしてつくった農業基本法の中心であった小倉会長がそういうような発言をされておるということについて、農林大臣はこれをどう思うか。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 小倉さんの発言は新聞紙上等を通じて承知しているわけでありますし、小倉さんが農業界、農政における元老的な存在であるということも存じておるわけでございます。同時に、農政審議会会長という非常に重要なポストにおられるわけでございますから、私は、一度小倉会長とも近いうちにお目にかかって、その真意を聞いてみたいと思うわけでありますが、農政審議会会長でありますし、農政の基本方針、方向につきまして農政審議会でこれから論議していただくわけでございますから、農政審議会としてどういう結論を出されて諮問が行われるか、そういう中において小倉さんがどういうふうな采配を会長として振られるかということにもつながっていくわけでございますが、私としては、農政審議会の諮問を受けて、それに基づいて諸般の情勢を考慮しながら考えていくべき筋合いではないだろうか、と、こういうふうに思うわけであります。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 本来は、ここへ小倉会長参考人として来てもらって、ここで議論をしたいと思ったけれども、きょうは大臣所信表明に対する質問だということで、これは日にちを変えることにいたしましたが、いずれこれは小倉会長に来てもらって真意を聞きたい。  この問題については、このままではいけないと私は思う。農業基本法をつくるときに、あれだけの自信を持ってつくり上げた。われわれはあの最終的な採決には参加できなかったほど強硬にあれを採決した経過がある。そういうことでできた農業基本法だが、今日、あの中でねらっているような状態日本農業はなっておらない。  そこで、小倉会長価格所得を保障した対策をしなければならないということを常に表明しておる。それは、一月三十一日のあの記者会見だけではない。去年の米価をきめるときにも小倉会長は同じようなことを言っておられる。だから、これは突如としての発言ではなくて、もうかねがねからの考え方でありますから、この委員会としても、別な機会に小倉会長にぜひ来てもらって、十分にその真意をただすようにしてほしい。これは委員長の方で取り計らってもらいたいと思います。
  86. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 竹内委員のお申し出の件につきましては、理事会を開きまして、理事会において御相談いたします。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひ、そのようにお願いしたい。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、農業基本法ができてからすでに十何年かたっておりますが、この間に、農業基本法がねらっているような、二町五反の農家百万戸あるいは都市と農村所得の均衡というものができておらない、その責任は、農業基本法のそれが間違っていたのか、国の農政が誤っていたのか、農民が怠慢であったのか、この三つのうちのどこに問題があるのか、それを明らかにしてもらいたい。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業基本法につきましては、先ほども申し上げましたように、その根幹といいますか、基本的な理念については、私は、農業に取り組む姿勢としては今日といえども間違ってはいないと思うわけでございますが、今日の農業脆弱化してきたということにつきましては、農業という問題よりは、むしろ、客観的な日本の高度経済成長が今日の状況に至らしめたということにあるのじゃないだろうか、と、私はそういうふうに判断をしております。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私どもは、食糧確保する、そして農民生活生産を守るという立場からすれば、農業基本法は今日そのねらうところに至っていない、だから大変な失敗だと思うし、逆に、いま言われたように、高度経済成長という、あの当時からの、三十年代来の自民党の政策から言えば、農業基本法というものはまさに高度経済成長に沿ってやられてきたものであるから、これは成功じゃなかったんですか。自民党の立場からすれば、高度成長をねらった者からすればそうじゃなかったんですか。それはどうなんですか。  だから、いま言われたとおり、高度経済成長のひずみが農村に来て、農業基本法のねらいが崩れた。いまのお話しはこういうふうなことでしょう。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、高度成長にはいろいろと議論はあると思いますが、高度成長によって、日本の経済の国際競争力あるいは国民的な生活水準所得等が向上したことも事実であるわけでございます。しかし、一〇%以上というふうな、あの高度成長によりまして、農業だけではなくて、公害であるとか、あるいはまた交通問題であるとか、その他いろいろとそのひずみが出てきておることも事実でございますし、農業におきましては、先ほど申し上げましたように、高度経済成長によって農村における労働力が著しく流出をした、あるいはまた兼業がこれによって非常にふえてきた、農業に対する意欲というものが相当低下してきたということは、これはもう否めない事実であろうと思うわけでございます。  そのひずみの中の一つとして、農業においても、先ほどから申し上げましたような問題が今日起こってきておる。これを改めていくというのがこれからの農政課題でもあろうかと思うわけであります。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大臣所信表明の中に「計画」という言葉が一カ所出てきます。その「計画」というのは、鶏卵、卵ですね。それの計画生産をするということなんです。あの卵の「計画生産」という言葉は、あれは計画的に抑えるということなんだ。そこだけが計画なんです。ほかには「計画」という言葉は出ていない。三木総理大臣は、計画経済ということは、まことにこれはそぐわないと言ってきらっているが、最も総理大臣のきらう言葉がここにだけ出てきている。それは、卵ができ過ぎるから抑える。米も生産が過剰になれば計画的に生産調整をする。自民党の中では、いまの政府から言うところの計画というのは、すべてこれは無計画的な生産がやられて、少しオーバーをするという形になれば抑えるという意味のものしか持たないのですね。  石油にしても、あるいは食糧にしても、工業資源にしても、日本にはそういうものがない、そういうものはすべて外国に仰がなければならないという段階で、好むと好まざるとにかかわらず、総需要に基づくところのそれを供給するためには、一定の大きな計画というものがなければいけない、そしてすべての者に均てんするようにしていかなければならないというのが筋だろうと私たちは思う。そういう立場から、わが日本社会党では、農業に関しては、もう昨年すでに五十五年を目標にして、自給率九〇%、もし仮に外国からの輸入がなくても八〇%の、その一定のカロリーを供給するだけの計画を立てて、すでに農林省でもこれを検討しておられるし、倉石農林大臣のときにもここでかなりやりとりをした経過があるが、そういう立場から、私は、単に政府のつくったものを批判をするだけではなしに、一定の方針に基づいて次から幾つかの質問をしていきたいと思います。  まず、第一に、六十年を目標にした、農林省内につくられた委員会で提起されているものは七五%の自給率になっているが、これはいささか遠慮しがちであるし、非常に消極的である。ああいうようなことではぐあいが悪いし、同時に、もっと積極的な国土の総合利用なり、あるいは未利用地の積極的な活用なりというようなものをして、もっと大胆に国内におけるところの食糧の自給率を高めていくということにはならないか。なぜ一体ああいう消極的なものにしかできないのか、これはどこに遠慮をしているのか、こういう問題であれを再検討する必要はないか、考え方はないか、まずこの辺からお聞きしたい。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省としては、需給部会にデータとしてあの数字を出しておるわけでございますが、いまおっしゃるように非常に手がたい数字であると言っても過言じゃないと思うのですが、これは、やはり、現在の社会、経済の状況の中にあって可能な限り自給力を高めていくという現実的な立場に立ってあの数字を参考として需給部会に出したわけでございます。  御承知のように、人口もこの十年間で千三百万人くらいはふえるわけでございますし、消費水準も十年間で相当伸びていく。ですから、未利用地の開発であるとか、あるいは裏作の利用であるとか、あるいは農地の造成等も数字の中に織り込んでおりますが、われわれとしてはこれが可能な限りの非常に現実的な数字である。そういうものに基づいて、消費水準の向上、人口の増加を反映させて七五%という数字をはじき出しておるわけであります。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 前の四十七年を起点にした十年計画というのは、三年もしないうちにその大前提が崩れて、やり直しをしなければならないという段階になった。いまのままでいくと、この六十年を展望した計画も途中でまた大きく変えなければならない。そうならないという保証はないわけじゃないと思うが、これは確固不抜なものであるかどうか、もう一度その確信のほどを聞きたい。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 需要と生産長期見通しということでございまして、確かに、いまお話しがございましたように、四十七年にも見通しを立てたわけでございますが、その後の国際的あるいは国内的な経済、社会情勢の大きな変化によりまして、この手直しを行わざるを得ない。特に、今日までの高度経済成長というものから、今後は国際的な資源の制約等から見て、安定的な成長路線に移らざるを得ない。今後ともこの高度成長路線を再び望むということはとうてい不可能なことでございます。ですから、安定的な成長、四%とか五%とか、そういうふうな成長というものは今後変わっていかないだろう、今後十年間の大体そういうふうな見通しのもとに今度の長期見通しを立てていく、こういう考えでございます。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 経済の成長が鈍ったから、農業の方についても大分遠慮したようなそういう数字が出てきているわけだということですが、これはやはりいろいろと問題があると私は思う。これはあとの問題とも関連をするが、もっと大胆に農用地の利用なり開発なりをやって、国土の資源の総合的な活用をするという立場に立って、ああいう消極的なものじゃなしに、もっと堂々と大胆に出していかなければならない。そのために、この大臣所信表明の中にもあるが、農民生産意欲の出るような農政をやるといういまの農政に対して、現在の農村の、農家の皆さんは非常に批判的です。生産意欲が出るどころじゃない、これは場当たり農政であるとか、ネコの目農政であるとか、いろいろな形で批判をしている。  なぜそういうことになるのかというと、国の政策の中に、確固不抜の、不動の、これだけのことは確実に国が保障していく、だから農家の皆さんはしっかりやってほしいというものがない。国が指導したものがみんな失敗をして、借金をして逃げなければならないような状態ばかりつくっている。なぜそうなるかというと、先ほどから言うように、この計画というものが基本的に立てられていない。一億一千万の国民の総需要が決まって、これをつくるためにどれだけの農用地が活用され、そして地域別品日別の生産の分担が行われ、その計画には農民が参加をする、そして一緒にこの計画をやり、そして最終的には価格の保証を国がするという方式をとらない限り、農家の皆さんが納得するはずがない。こういうような方向で農政における国の責任、都道府県の責任、農業団体役割り農民の参加によるところの積極性というものができてこなければ農政としては片手落ちであるし、不十分だ、こういうふうに私は思うのです。  そういう意味において、現在の農政農家が本当に満足しているかどうかという点については、大臣は一体どのようにお考えか、もう一度伺いたい。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現在の農業の実態から見まして、農村等において、高度成長の結果の日本農政というものに対する不満があることも事実であろうと思います。特に私たちが心配しておるのは、農村における農業に対する意欲を持った中核的な農家の人たちが農業に対してもっと自信が持てるような、そういう信頼感を回復していくということが今後の農政課題でなければならぬということで、そういう意味に立って、いまお話しがありましたように、総合的な立場に立った食糧政策というものを打ち出していって、そこに対して今後の長期的な見通しを前提とした一つの総合的な食糧政策というものを打ち出していくということは当然なことであろうと私は思っておるわけです。  したがって、私も、この農政審議会の諮問を受けましたら、直ちに、いま御指摘がございましたようないろいろの問題を踏まえて総合的な食糧政策を打ち出し、そして御期待にこたえたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その、国の農政なり、そのときの政策の具体的なものは、これは予算によってあらわれるわけです。そこで、ことしの農林予算について農林大臣は満足かどうか。まず、そのことについて伺いたい。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今年度の予算は総需要抑制下という中において編成をされた予算であるわけでございまして、でありますから、私といたしましてももっと積極的な施策を盛り込みたいというふううに考えておったわけでございますが、そういう総需要抑制という中で編成されたものですから、もちろん満足すべきものであったとは言えないわけでございますが、しかし、今日の情勢下において、今後とも農政を推進していく場合における重要施策等につきましては今度の農業予算に盛り込むこともできましたし、今後の新しい農政の展望を目指す新しい芽といいますか、そういうものも多少は盛り込むことができたと思っておるわけであります。
  99. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私はこういうふうに思うんです。なるほど今度の予算を見ると、われわれがこの委員会で幾つか主張してきたことについて細かく芽が出ていることは事実です。たとえば飼料対策なり、牛肉の問題なり、地力培養なり、その他わらの活用とか、いろいろとこの委員会でわれわれが主張してきたことについて、それが予算化されて、ごくわずかではあるけれども芽が出たということは、ささやかながら事務当局の努力は私は率直に認めたいと思うのです。いいところは認めなければならないわけです。  ただし、一番先に私が質問したように、全体として、いまの日本農業の危機あるいはひずみ、そして食糧をとにかく確保していかなければならないという重要な任務、これに対してはこの予算はきわめて不十分であると言わざるを得ない。その例をとると、これは形式的に言って非常に恐縮だけれども、だれが見ても国の予算全体が二四・五%伸びている、農林予算は一九%の伸びだ、国の予算の中に占めるその比率というものは一〇・二三%であって、昨年は一〇・七%であった、公共事業が、一般の事業が削られているときに農業の基盤整備には三・四%ついている、と、こういうところがおそらく誇りでしょうが、だけれども、そんなものは誇るに足らないと思うのです。そういうような状態であって、解説をすれば多少どこかに違ったところはあるにしても、全体の枠が何としてもこれは乏しい。そこで、これをやや歴史的に見ると、農業基本法によって、大企業中心で農業は小さくしていこうというときにおいてさえも、三十六年に基本法ができて、三十七年のときには一〇・一%、四十一年が一〇・六%。それから農業危機がいろいろ叫ばれるようになった四十三年、四十四年においては一一・二、その次が一一・四。これは補正を除いて当初予算がそうなっている。農政の転換と危機が叫ばれている今日において、与党からも財界からも農業を何とかしなくちゃいけないということが言われているときに一〇%台ということは、これはどう見たってさびしいじゃないですか。だから、これをかけ声農政と言う。十二月二十五日に三木総理が農業団体と話をしたときに、かけ声だけじゃだめだと三木さんは言われたじゃないですか。今度の予算は田中内閣の残党のつくったことだからやむを得ないにしても、安倍新農林大臣は、ある雑誌によれば、自民党の内閣が続けばやがて総理大臣のうちの一人だということになっているが、総理大臣になったつもりで、次の予算は、今度の予算はどういうふうにやられるかということを考えてもらいたい。一〇%というようなさびしいものじゃなくて、少なくとも一二%、一三%、一五%ぐらいに枠を広げて、その中で思い切った価格政策なり基盤整備なりをやる意思はないかどうか、まずこのことを私は聞きたい。
  100. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 予算についていろいろと御批判があるのはもちろん当然でございます。ただ、農業関係予算につきましては、食管であるとか、あるいはまた公共事業費等が大きなウエートを占めておるわけですが、今度の予算におきましても、私といたしましては、抑制予算の中においてはある程度の施策は盛り込んだつもりでございますけれども、もちろんこれは十分でなかった点はあると思います。したがって、今度食糧の総合政策を打ち出す段階にあっては、この総合政策のもとに、予算編成についてもさらに力を注いで、御期待にこたえるような五十一年度予算の編成ができるような体制を今度つくっておきたい、こういうふうに思うわけであります。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、一つの問題を出して、来年度を牽制する意味で、また、どれだけ努力をしたかということをちゃんと来年は見届けなければならないから、この程度で予算の問題はやめますが、食糧自給の問題について、できるだけは国内生産をし、できない部分は海外から輸入し、さらに国際協力事業団というものも活用して何がしかの食糧を得たいという考え方を持っている。考え方が三本足になっているわけだ。  そこで、国内におけるところのできるだけの生産ということについてはまた後で触れるが、この海外からの安定的な輸入あるいは国際協力事業団というものに期待をしているようだけれども、国際協力事業団などというものは、農林省も参加しているが、外務省が主管を持っていて、これに対して一体どれだけの期待ができるのか、われわれが国際協力事業団によって日本食糧の何%かの期待ができるというのは一体いつなのか、これをウエートの順に示してもらいたいと思う。要するに、国内の自給、生産、それから海外の輸入、協力事業団。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、第一は、国内における自給力を高めていくということがもちろん第一義であろうと思うわけであります。その次は、先ほどから申し上げましたように、自給のできない農産物については海外からの安定的な輸入を図っていくということであろうと思うわけでございますが、いまの国際協力事業団につきましては、もちろん、まだまだ、事業団としての農業協力あるいは開発輸入といったような問題について、ここで大きな成果を上げておるわけではございませんが、相手国との間の十分な理解と協力を得ながら、協力事業団を通じて農業協力あるいはそれによるところの輸入を進めていくということであろうと思うわけであります。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その国際協力事業団の問題に対して、予算書でも、あるいは大臣説明の中にも、かなり期待をしているような向きの場所が各所に出てくるが、現在そういうものがすぐ活用できないとするならば、そういうところに期待を持たせる必要はないじゃないか。だから、この問題についてはここでもう答弁は求めないけれども、これはもう少し表現を慎重にしなければ誤解を招くおそれがある。いまだに何らの手のつかないようなものに対して、こういうところにもあるんだというようなことでは、これははなはだ困ると思う。だから、いつになったらどれくらいのものがどういうふうにできるのか。この協力事業団というものは、本来、むしろ、海外に対する友好的な技術なり、そういうものの援助をしながら国際的にお互いに友好を深めていこうというものであって、決して、そういうところに食糧をつくって、日本がそこから食糧を入れてくるというようなものであってはならないと私たちは思うのですが、この点はどうですか。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、事業団の性格から見まして、農業協力あるいは技術援助、相手国の福祉の向上あるいは農業の開発といった面についてわが国として積極的に協力をし、さらに相手国において供給に余力がある場合にわが国がこれを輸入する、そういうことであろうと思うわけであります。
  105. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 食糧の自給の問題も、私はまだはっきりしていないのです。けれども、これは時間の関係から先の方へいきますが、またいずれこれは別なときにやらなくてはならない。  そこで、この備蓄の問題がいま言われています。去年もローマ会議でも備蓄の問題が出た。また、きのうあたりもロンドンで食糧会議があって、そこでやはりキッシンジャー提案による備蓄の問題が出ている。そして、六千万トンであるとか、あるいは三千万トンであるとかということを言われているが、日本でもやはりこの備蓄という問題は黙って通れない問題になっているだろうと思うし、大臣所信表明の中にも備蓄の言葉がありました。あるいは予算の中にも一部そういうものが出ている。一体、わが国においては、どういう品物をどれくらい、どこで、そしてどれくらいの費用をかけて、どういう制度のもとにこの備蓄というものをやられるのか。一部に言われるように、アメリカに倉庫があいているし、アメリカには品物があるのだから、アメリカで物を買ってアメリカの倉庫に入れておけばいいじゃないかという話もあるようだけれども、一体、備蓄というものについて本当に真剣に考えているのか、いないのか。まず、その辺についてのお答えを願いたい。
  106. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり、昨年のローマ会議日本出席をいたしまして積極的に討議に参加したわけでございますし、現在の世界の食糧情勢から見まして、備蓄といったことが国民的な食糧に対する安心感を持たせるという意味におきましても、備蓄につきましては真剣に考えていかなければならぬ問題であろうと思うわけでございます。そういうことで、国際会議等を通じて日本もこの備蓄問題では討議に積極的に参加し、また、協力できるものは協力をしていくというような姿勢でございます。  国内におきましては、米麦については食管制度でございますので、今度の稲作転換事業におきまして百万トンの稲作転換にいたしたわけでございますが、このままでいけば、米については大体ことしの端境期ぐらいには百万トンぐらい、あるいはまた来年の端境期ぐらいには百五十万トンぐらいの在庫ができるのではないだろうかと思うわけでありますが、この米麦については、食管を通じての在庫に余裕を持たせるということが必要であろうと思いますし、同時にまた、トウモロコシ、大豆につきましても、これは民間が備蓄をしております。それに対して国が助成措置をとっておりますが、こうした点はさらに助成その他の備蓄に対するところの積極的な国の施策を強化していくべきだ、こういうふうに思うわけであります。
  107. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ロンドン会議のあれは終わったかどうかわかりませんが、あのような国際的な備蓄会議に臨む日本政府の態度、農村の態度というものはどういうものか。相手が物を言うからそれに対応して答えるということではなくて、わが国としては、備蓄に対して、国際的に積極的にどういう発言をされようとするのか。その基本的な立場はどうですか。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度ロンドンで開かれたあの食糧会議は、アメリカが要請をして、それに基づいて参加したわけでございます。アメリカとしては、備蓄を先進国で行うべきであるということで、具体的ではないわけでございますが提案をいたしまして、近いうちに具体案をつくろうというような提案をいたしたようでありますが、しかし、参加国の間においてはいろいろと意見の相違等もありまして結論に達しなかったわけでありまして、日本としては、そういう中にあって、やはり、世界の情勢の中において備蓄が大事であるし、また、日本としてもこれに対して協力すべきものは積極的に協力をしていくという姿勢をとっておるわけでございますが、ただ、日本が非常に大きな消費国でもございますし、また、アメリカ側を初めとして、生産国等の備蓄構想といったものがどういうふうな配慮、どういうふうな考え方でなされておるかということについては十分見きわめていかないと——一つ考えとしては、備蓄構想というものに対しては賛成をしておるわけでございますが、どういう意図のもとにそれがなされておるのか、その備蓄をどのくらいするのか、どういう形で備蓄を行っていくのかというふうな具体的な問題になってくると、生産国、消費国との間にもいろいろと考え方の差があるわけでございますから、その辺は会議を通じて各国の意図も十分はっきりつかみながらわがほうとしては態度をきめていくべきである、こういうふうに思うわけであります。
  109. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 食糧生産する農業を発展させるという立場から考えたときには、優良なる土地を確保しなければならないということは常識なんです。ところが、現在は、優良な土地がどんどん工場や宅地につぶされていって、農業というものはきわめて劣悪なところに追いやられようとしている。  そこで、政府から出された案ですが、この「展望」によると、六十年の段階においても、現在五百六十九万ヘクタールの農地を、壊廃と造成の中で差し引き十六万ヘクタールを増加して五百八十五万ヘクタールというふうに見ていますね。現在資本が買い占めておる土地は四十万ヘクタール、こういうようなものを未墾地開発の対象として、都市側の土地需要あるいは市街地の再開発などを主体にして考えて、農地への割り込みを抑えて、農地を守るという立場に立って、こういうものをもっと農業開発に使う。さらに、巨大な土地を抱えているゴルフ場の問題があります。ゴルフ場の面積については、これは私は前々からどれだけあるかということを調査を求めているけれども、はっきりした調査は出てこないが、現在ゴルフ場として活用されているものが大体二十万ヘクタールくらいあるだろう。申請をしているものまで入れると二十九万ヘクタールくらいになるのじゃないか。私はゴルフをやってはいけないと言っているものではない。ゴルフは大いにやってもいいけれども、国内食糧が危機だというのに、りっぱに農作業ができる土地が余りにもゴルフ場にどんどん開発をされて、それを許可している。まことにこれはゆゆしいことだと思う。そういうようなことも考えなければならないし、さらに、高速道路網の建設予定地が各地にありますが、この高速道路をつくることによってりっぱな土地がつぶされていく。あるいは、新幹線などをつくる場合にもそうです。だから、新幹線などはトンネルを掘ってそれで使っていくような方法をやるべきだし、高速道路などはもういいかげんに中止をしたほうがいいだろう。総需要抑制で、現在の道路をもう少し利用したほうがいいだろう。  こういう限りある国土というものを食糧生産を第一にするというように考え、工場なども、農耕に適さないようなところになるべく工場をつくっていくような配慮を今後すべきじゃないか。こういうぐあいに農業というものを大事にするならば、そこら辺からすべての制度というものを考えていく必要があるのじゃないか。私はそういうふうなことを申し上げたいのだが、大臣はこういうことに対してどのように考えられるか。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農地を造成していくとともに農地を守っていくということは、農政において基本的に一番大事なことであろうと私は思うわけでございまして、今日まで高度成長の陰にあって農地等が壊廃をされておるということについてはまことに残念でありますが、今後は農地法を厳正に適用して、転用につきましては、これを厳しく規制をしていき、同時にまた、今度改正をお願いしておる農振法によって農用地の地域の指定を行いまして農地を守っていく、あるいはまた未利用地等につきましては、農用地開発公団等でこれを買い入れて農地の造成を図っていく、こういうようなことを総合的に重点的に進めていく必要がある、こういうふうに思うわけであります。
  111. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なお、この問題についても農振法の議論のときに私はさらにやりますが、それからもう一つは、既存の土地の利用が余りにも単純過ぎる。現在の土地利用というものは一〇〇%しか複合的には利用されていなくて、裏作、二毛作というものはほとんどされていない。気象条件から見て、太平洋岸のところは宮城県から以南というものは非常に二毛作に適しているところであるというけれども、これは作物の価格関係からそれをやらない。出かせぎをしてしまう。こういうような状態になっているが、これを活用すれば一五〇%の国土の複合利用ができると言われている。こういうようにもっともっと努力をすればやれる、国内の自給度が高まる、こういうことについても一考を願いたいということを私は提案をしながら次に進んでいきます。  現在わが国が輸入している外国の穀物は、現在日本の土地でつくるよりもはるかに面積を多く必要とする。あるものは六百万ヘクタールと言うし、一千万ヘクタールと言われる。こういうように外国からのものを輸入してきているということの中の中心は飼料穀物だ。だから、畜産も、大企業、大規模経営というよりは、むしろ鶏とか豚というようなものについては一定の限度にとどめて牧野改良をやって自給飼料をどんどん使い、牛に重点を置くようにしていって、なるべく国土の利用をして生産ができるようにすべきじゃないか、そうして豚とか鶏とかというものは、今日まで投資をして企業の形態になっているものはやむを得ないとしても、今後は家庭的な形で鶏や豚を飼って、廃物を利用して、糞尿を土地に還元するというようなことは考えられないか、余りにも機械的にやり過ぎやしないか、こういう感じがする。そうして総合的にカロリーを供給するような方法を考えたらどうかということが私の一つ提案にもなるし、また、意見でもある。そういう中から、農振法に対しての基本的な問題について、改正の問題についての意見大臣から私は聞きたい。  それは、今日における土地の価格から言って、所有権と利用権を分離して活用するということについては、やはりこれは必要だと思うし、そうしなければならない。ただし、農地法というものを動かして、農地法と農振法とが二元的な行政になることは避けなければならない。農地法、農業委員会、それから農業会議という、こういう一つの形態がある。もう一つは、農振法からいけば、農振法、市町村、都道府県という形態になる。この二元的なものをどうして避けるかという問題があります。もう一つは、農地に対する土地改良なり、いろいろな基盤整備をした場合に、当然、その土地は、所有のいかんにかかわらずこれに負担がかかってまいります。一体この費用は所有者が負担するのか、利用者が負担するのか、それとも折半をするのか、こういう問題が出てくるでしょう。こういったような問題について、農振法の場合には離作料や離農料がないのですから、この問題をどう処理するかという基本の問題についてどう考えるか。細かい問題は農振法の議論のときにいたします。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農振法はこれから改正につきまして十分御議論を尽くしていただきまして、御賛成をいただきたいと思うわけでございますが、農地を確保し、これを高度に利用していく、あるいはさらに経営規模を拡大していくという意味におきまして、利用権を設定するということで農業の非常な前進になるし、また、中核農家生産意欲を与えることにもつながっていくのじゃないか、こういうふうに考えて改正をお願いするわけでございますが、いま御指摘のありましたような農地法との関係、それから農業会議所との関係等につきましては、これが摩擦やいろいろの問題等が起こらないように十分配慮していくべき問題であろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  また、先ほどお話しがございました畜産につきましても、これは一つの御議論であろうと思うわけでございまして、肉につきましても、牛肉につきましては資源が世界的にも不足していくわけでございますし、幸いにして草資源はこれからも日本において相当自給できるという状況にあるわけでございますから、草資源は思い切って今後活用していく、開発をしていくということはどうしてもやらなければならぬ課題であろうと思います。鶏とか豚等につきましては、今後の需給の動向あるいは消費水準の今後の動向等も十分配慮しながら、安定成長といいますか、そういう方向で一つの政策を裏づけていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  農振法につきまして、もし足らない点がありましたら、局長から答弁をいたさせます。
  113. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど御質問のありました中にございました基盤整備事業等に要する費用を、所有者とそれから利用権の設定を受ける者とどちらのほうが負担することになるのだという御質問があったわけでございますが、土地改良法によります三条資格者につきましては、原則的には使用収益権者ということになっているわけでございます。しかし、一時賃貸借といったような場合につきましては所有者が三条資格者になる、こういうふうなかっこうになっているわけでございます。  そこで、改正農振法といいますか、今度農振法の改正で利用増進事業を行うという場合に、法規的には短期の賃貸借ということに相なってまいりますので、当初におきましては一般的には土地所有者に負担させるのが普通であろうというふうに考えております。しかしながら、われわれの考えといたしましては、これを実態的には継続していく、一定の期間ごとに継続するというかっこうで賃借権が設定されてまいりますので、将来のかっこうといたしましては、その間の問題につきまして地方地方によって事情が異なってまいるであろうというふうに考えております。そこで、農用地利用増進計画の中においてそれを定めるということで進めてまいりたいと思っております。  なお、事業ではなくて、土地改良事業でできました施設の管理という問題になってまいりますと、これはいわば利用権の設定を受けた者がやることが普通になるだろう、こういうふうに考えております。
  114. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農振法に関する問題は、その農振法の審議のときに詳しくやります。  時間の関係から問題だけ進めていきますが、農業振興をする場合に山村地帯が非常に大事だ。昭和四十年五月に議員立法で制定された山村振興法では千百九十七市町村が指定されました。現在、道路とか社会施設とか、その他いろいろな面でかなりの役割りを果たしてきたが、なおこれを継続する必要があると私は思うのです。これに対して、これは直接農林省の担当ではないかもしれないが、やはり農林行政の及ぶところでありますから、これをどう取り扱われるか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 山村振興法はお話しのございましたような議員立法でございまして、この法律に基づきまして各般の施策を実施してまいり、山村における経済力の培養あるいは住民の福祉向上に寄与するところが多かったわけでございます。しかしながら、山村は他の地域に比べまして、産業基盤、生活環境などまだ十分でない状態でございます。したがって、この法律は三月に切れるわけでございますから、これを延長してほしいという関係地方公共団体からの強い要望もあるわけでございます。これは議員立法でございますので、議員の皆様方の御意向によりまして改正が行われるわけでありますが、農林省としても、現在の山村の実態から見ましても、この山村振興法につきましては、今後これを改善し、さらに延長していただくことが望ましいと思うわけであります。
  116. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農産物の価格の決定の問題について、基本的な考え方を伺います。  政府は、わが国の農産物の七割は何らかの価格支持制度の対象になっていると言うし、そういう演説をあちこちでして歩いている。ところが、農家一つ価格の支持をしているような印象は受けていない。これはなぜか。それは、同じ穀物であっても、米は生産所得補償方式をとっているし、麦はパリティ方式だ。行政価格算定の基礎になっているところの評価がえの労賃にしても、農産物によっては農村の日雇い賃金をとったり、あるものは都市勤労者の賃金であったり、全く千差万別であります。こういうようなことになっているのは、それはその法律をつくった歴史的な事情もあるでしょうし、背景もあるでしょう。しかしながら、今日のように食糧が危機であり、農家生産の意欲を持ってもらわなければならないという状況の中では、こういうわかりにくいことはやめて、やはり生産所得補償をする。積み上げ方式で、そして農家にわかりのいい価格補償制度というものをつくって、農家の皆さんこういうふうに価格を保証するから一生懸命つくってほしいということが言えないものかどうか。どうですか。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農産物の価格制度につきましては、お話しのありましたように、各農産物によってそれぞれ算定方式等も違っておるわけでございますが、これは農産物それぞれが生産と流通の事情というものも違うわけでございますし、商品の特性というふうなこともあって、私もまだまだ十分理解しておらないような価格方式もあるわけでございますが、ああした価格方式がそれぞれ打ち出されておるということであろうと思うわけでございますが、私は、これからの農政を推し進めていく場合におきましては、こうした価格政策全体については、これを改善していき、生産者のコストが補償されるというふうな方向に改善をすべき点はこれを改めていくのが、価格政策のあり方としては今後ともわれわれが取り組んでいかなければならぬ課題であろうと思うわけであります。
  118. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は一つ意見を述べますが、政府価格の決め方は、予算があってそれから逆算をする逆算方式という形になって、きわめて高等な数字を使ってやられる。だから農家の皆さんは非常にわかりにくい。こういうわかりにくいことはやめて、きちんと積み上げ方式をするか、あるいは価格を決める審議会農民の代表をたくさん入れて、あなた方の代表がこのくらい入って決めているんだからというように、こういうようなもっと農家にわかりのいい価格の決定をする方式をとってもらいたいと思うが、大臣、どうですか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 価格決定方式には生産所得補償方式、パリティ方式、その他いろいろありまして、農民の皆さんもわかりにくい点があるわけですし、私も農林大臣としてまだまだ十分理解できない価格の算定方式等もあるわけでございますが、しかし、それぞれの農産物ごとにやっておるわけでございまして、それぞれの特性に応じてああいうふうな方式をとり、これはまた法律によって法定もされておるわけであります。価格政策全体については、今後とも、私としても全体的に研究をしてみたいと思っております。
  120. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がありませんから、あと二問だけ質問をして終わります。  その一つは、土地改良、基盤整備、農業の機械化と、それからそれに必要な燃料の確保がどうなっているかということです。いま、鉛の入った燃料を使ってはいけないということで、世間では鉛が入ったガソリンを使うことに対してはきわめて慎重であり、これはだんだん禁止をする方向にある。これはやむを得ない、いいことだと私は思います。ただし、農村においては、土地改良、基盤整備をやるために、近代化をするために、たとえばトラクターであるとか、コンバインであるとか、バインダーであるとか、こういう機械が相当入っているはずです。その機械に必要なガソリンは、やはり鉛が入った力の強いものでなければならない。そのガソリンは確保されているのか、どういうふうになっているのか。これは通産省ではどうなっているのか、農林省との関係はどうなっているのか、この辺を明らかにしてもらいたいと思います。
  121. 松元威雄

    松元政府委員 御指摘のとおり、このガソリンが無鉛化対策になるわけでございますが、その場合、既導入の耕運機等の中には有鉛ガソリンでなければならぬものがございます。したがいまして、その供給を確保するということは大事な問題でございます。しかも、先々有鉛ガソリンの供給は先細りになりますから、当面と先を踏まえまして、有鉛ガソリンでなければならない農機具のある限りは供給を確保しなければならぬという考え方に立ちまして、通産省と具体的に打ち合わせをしておるわけでございますが、そのため、有鉛ガソリンの供給量につきましては、当面はもちろん先々も確保し得るように、需要量をお互いに算定いたしまして、しかもそれは末端まで配送されるようにといったことで、十分打ち合わせが済んでおります。  さらに、つくるだけではございませんで、これが末端のガソリンスタンドに供給しなければならぬ。その場合、たとえば農村地域ではスタンドが一つしかないというところもございます。そういう場合には、たとえばポータブルの給油施設あるいはスタンドを新設するとかいたしまして、配給にも支障がないようにいたしまして、つくる方から、配給の方から、両面から見まして有鉛ガソリンの供給に支障がないようにということで、具体的に通商産業省と打ち合わせをいたしまして確保対策を講じておる、こういう次第でございます。
  122. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡単に答弁してください。
  123. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  いま農林省の方から御答弁がございましたとおり、私どもも農林省と十分打ち合わせを続けているところでございます。農業用の燃料の確保、特に無鉛化に伴う影響がないようにするという点については今後とも努力をしていきたい、かように思っております。
  124. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に、米の生産調整をもう打ち切ってもらいたいということです。大体これは打ち切る時期に来ているけれども、まだ続けるような話がありますが、もう米の生産調整はやめて、そういうような費用があればほかの方へ回してもらうということが必要だ。そして、確固とした基本的な立場に立って農政を前の方に向けて進めていくということが必要だと思う。これが第一。  そして、先ほどから質問をしてきて、一番先に農業の危機なり問題点を伺ってきている中で、幾つかの点について一致するところもあるが、かなり違うところがあります。そこで、私は、農業の構造改善ではなくて、農政を基本的に考え方を変えなければいけないと思う。人と水と資源を農村から奪うということではなくて、水を農村に返し、労働力を返し、そして資源を活用する。こういうぐあいにするために、長期の計画を立てながら具体的に年次計画を細かく立てて、農家の皆さんが参加をしてそれに意欲を持って生産ができるような、そういう農政に変えていかなければ日本農業は大変なことになっていくと思うのです。そういう意味において、本委員会なり、あるいは農林省の中でもいいですけれども、農家が参加をして日本農業のことに対していろいろ討議をする委員会なり、何かそういうものができないかどうか、そういう意思はないかどうか、こういうことについて最後のお伺いをして終わりたいと思います。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米の稲作転換事業につきましては、五十年度が最終年度でございます。五十一年度からの問題につきましては、米の需給の動向、国際的な食糧の事情、さらにまた転作によって奨励をしなければならない農産物の問題等も考慮をしながら、五十一年度以降というものは新しい角度に立って検討していかなければならぬと思いますが、一応五十年度で打ち切りということになっておるわけでございます。  それから、いま、国民的な立場に立った食糧問題を討議するような場をつくる必要があるのじゃないかというふうなお話しでございますが、私も、農政審議会の御答申を得て、私どもが総合的な食糧政策を打ち出す段階においては、やはり国民的な御理解と御協力が要るわけでございますから、広く御参加を願ったような形で国民的な国民食糧会議といったようなものをつくったらどうだろうかというふうな考えを持っておるわけでございまして、これはひとつ真剣に取り組んでみたいと思うわけでございます。  なお、国会においては、もちろん農林水産委員会で十分御審議をいただかなければならぬことであります。
  126. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  127. 澁谷直藏

    澁谷委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  128. 澁谷直藏

    澁谷委員長 速記を始めて。  この際、午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  129. 澁谷直藏

    澁谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  今井君。
  130. 今井勇

    ○今井委員 わが国の食糧の問題につきまして、先日の大臣所信表明の内容を踏まえまして、与党の立場から若干の御質疑をいたしたいと思います。  大臣は、わが国の食糧の問題につきまして、世界的な食糧事情の変化わが国農業生産構造の変化を踏まえて、今後わが国が立ち向かわなければならぬ食糧政策の基本方向としておおむね次のようなことを言われたのであります。すなわち、国民食糧を安定的に供給するためには、長期的な視点に立って、この限られたわが国の国土の土地資源を最高度に利用する、そして、可能なものはできるだけ国内生産をするが、今後とも輸入に依存しなければならぬものは、その安定的な輸入の確保を図る、そして自給率を高めていくのだ、と、こういうふうな趣旨のことを言われました。私もその趣旨には同意をいたしますが、そこで、わが国の農業生産構造が近年非常に変化をしてまいりまして、世に言う農村の崩壊というふうなことが叫ばれております。その中で、その状況としては、よく言われますように、高度成長下にありまして、農業部門から多数の基幹的な労働力が流出していったとか、あるいは兼業が多くなっていったとか、それから大量な農地の転用等あるいは地価の高騰によって規模の拡大等がなかなかできないとか、いろいろ言われておりますが、私は、それにもましての大きな農業生産構造の変化というのは、農民の心を失ったことだと思います。わが国の農政について、もし大きな反省点があるならばこの点だろうと私は思うのであります。  ただいま農民は、兼業はもちろんでありますが、専業農家でありましても、先行きに対する不安、あるいは地域社会の中から孤立していやせぬかという孤立感があると思うが、そのほかにもう一つ大事なことは、農民自身の心の中に母なる大地を忘れていやしないかということで、農民にとって最も基本的な土地というものを離れて農業というものを考えるような考え方が、特に若い人たちの間に芽生えてきているように私は思えてなりません。たとえばそのいい例が、どろまみれになって土地にしっかり足をつけて農業をやっていくのだというふうなことをきらってくる風潮があります。その一つのいい例が、金肥を多量に使いまして、堆肥、厩肥のようなものを使わなくなる。あるいは、かってある同僚議員が言っておりましたが、牛をお座敷で飼うようなことを実はしておったのであります。しかし、これについては農民だけを責めるわけにはまいりません。私は、農民が先行き不安を感ずるゆえんのものの一つに、政府価格の決定の決め方そのものにも大きに問題点があるように思います。自家労働の評価を、私どもに言わせますれば、不当と言いたいくらいに安く見る。そういうことをしておったのでは農民が安心して農業をやっていこうとすることにならないと私は思います。したがって、田にペンペン草を生やすと同時に、農民の心にペンペン草を生やしてしまったのではなかろうかと思うのであります。こういう観点から農政考え直さないと、ただ自給率を高めるというふうなことを申しても、本当に農民が心の底からそれを理解し、信じて政府の誘導策に乗ってこないおそれがなかなか多分にあるように私は思います。  そういう観点から以下の質問をいたしたいと思いますが、私のその認識について誤りがあれば御指摘いただきたいと思いますが、政務次官、いかがでございますか。
  131. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 いま、今井委員から、農民の心にペンペン草が生えておるというお話しと、それから、価格決定その他について、政府のとってきた態度に誤りがあったのではないかというふうな御指摘がありまして、それがこれからの農政を進めていくための一番基本的な認識であるという意味の御説がありましたが、私もそのように思います。  御案内のように、大臣が就任をされましてまず申されたことは、守りの農政から攻めの農政に転じていこう、積極的に農村農民の心の中に触れ合うような農政を求めて、これから国会の皆さん方の御叱正も賜りながら役所の総力を挙げて取り組んでいこう、と、こういうことでまず姿勢を示されたわけであります。したがって、そういう観点に立って私どもはこれから農林省として農政というものに取り組んでいこう、これが安倍農政の基本だ、と私は理解をいたしております。
  132. 今井勇

    ○今井委員 ただいまの政務次官の御答弁を聞きまして、まことに心強いものがあります。  以下、若干の質疑を続けたいと思いますが、時間の都合もありますので、私は問題をしぼりたいと思います。  国内生産の可能性の問題について質疑をいたしたいと思いますが、平べったく言えば、自給率をいかにして高めるか、どのくらい高めることができるかという問題であります。  自給率が減りましたのは、もうすでに何遍か言われていますので繰り返しませんが、その自給率を高めるために政府は幾つかの施策考えておられるように思います。そのものの一つは水田裏作の拡大であり、不作付地の有効利用、また、地力の維持培養というようなものを三つ大きく掲げておられるように理解をいたしておりますが、そこで、この問題を本当に達成するために政府はいかなる対応策を持っておられるのか。これはただ単に言葉で言ったのでは、現実の問題としては実現しかねるものばかりでありますので、それらのそれぞれについての政府の対応策について、まずお伺いいたしたい。
  133. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 お尋ねの趣旨は、これから自給率を高めていくわが国の農政の基本方針についてのお尋ねでありますが、御案内のように、国際的な食糧の不足と、それから国内的にも非常に嗜好が多様化してくる中にあって、わが国としてこれからどうやっていくかというと、根本的には、国内で自給のできるものは極力自給力を高めていくということに全力を挙げていく。そして、どうしても自給のできないものがありますが、それは、たとえばトウモロコシ、マイロに見るような家畜のえさ、そういうものがありますから、そういうものは安定的な輸入を図っていく。つまり一、二カ国ということではなくて、もっと広く安定的な輸入の道を図る、そして総合的な食糧政策を進めていく、これがまず第一番の基本になるであろうと思います。  しからば、今後の国内農政の推進に当たってはどうするかということになるわけでありますが、それは、いま御案内のように、昭和六十年度を目標とする農産物の需給長期見通しと今後の食糧政策のあり方について、実は農政審議会で御審議をいただいておるわけであります。この結果を待って、農林省としてはこの長期的視点をここに一つ焦点を決めて、まず第一番にやることは、効率的な土地の利用を考えるためには農業基盤の整備事業ということをどうしても第一番に考えていかなければならぬことは当然でありまして、私どもが昭和五十年度予算で基盤整備事業に非常な力をいたし、また、皆様方にお力添えを賜ったのもそこにゆえんがございます。  それから、もう一つは、農用地をどういうふうに確保していくかという問題が一つあります。これは、国土利用計画法に基づいて利用区分を設定する、あるいは農振法の成立を図ってもっともっと効率的な農地の利用というものをはかる、あるいは農地法の規定に基づいて農地転用の規制を十分に今後も監視をしていくというふうな、いわゆる農用地をどういうふうに確保していくかという問題がどうしても取り組まなければならぬことでもあります。次には、もう限られた農地でありますから、今後水田、特に裏作と言いますと水田でありますけれども、この水田の裏作をどうするか、麦あるいは大豆、あるいはえさの作付を進めていくために裏作をもっともっと高度に利用するのにはどうしたらいいかという問題があります。それから、先ほどと関連がありますが、農地の利用と、それから集団化、もう一つは制度金融の問題があります。どうしても金融が伴いますから、そこで、五〇%増しの四千五百億の近代化資金を準備をする。あるいはまた農林漁業金融公庫も四千三百何十億というものを準備する。特に、ことしは御承知のように初度的経営資金、運転資金をその中に準備する。こういうふうなことをはかりながら、相続税の制度の改正と相まって、これ以上農地が分散しないように、まず一つの枠をはめていかなければいかぬ。もう一つ、先ほどちょっと御意見がありましたが、いよいよ来月は畜産物を初めとして、いろいろと価格改定の時期にも当たりますので、今後の動向等を十分参酌して、物価、賃金に見合うだけの適切な価格決定というものをしていかなければならない。そういう価格政策の強化の問題が一つあります。  それから、最後には、実際に農村の皆さんが今後取り組んでいくためにどういう農業技術を取り入れていくか、その指導体制をどうするか、品種改良等をどうしていくかという、そういう農業技術等の問題がありますが、これらを総合的に組み合わせながら今後の農政を進めていきたい、このように私どもは念願をいたしておるところでございます。
  134. 今井勇

    ○今井委員 政府のお気持ちはわかりますが、では具体的に聞きますが、たとえば農業基盤の整備についてですが、私どもが帰りまして農民と接しますと、農業基盤を整備することについては皆さん非常に歓迎をいたしますが、その負担率、補助率の問題について、どこへ行っても私は非常な不満を聞きます。国がこれからの限られた土地を有効に利用するという大目標を決められるならば、もっと国の補助率を高めて、極端なことを言えば、ほとんど全部国が出してやってくれるというふうなことをなぜしないのか。あるいは今回の水田裏作等の問題につきましても、用排水の分離あるいは地下水の調整等いろいろ問題があろうと思います。そういう排水事業一つをとりましても、補助率をもっと高めてくれないかというふうな具体的な意見が出てくるわけであります。政府はそれに対して問題があるのでなかなか一挙に踏み切れないという気持ちはわかりますが、こういう大事業をやろうとするこの機会にこそ農業基盤整備について思い切った抜本的な対策を講じなければ、農民が本当にそれを信用してついてこない、私はそのように思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  135. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 私もかねがねそういう意見を持っております。基盤整備事業というものは農村の一番大事な基礎をなすことでありますから、したがって、まず第一番に採択基準の緩和、それからいまの御意見のとおり補助率の引き上げ、同時に補助残に対する融資、こういうものをひっくるめて総合的に、今後ともに制度あるいはその他の改善の問題につきましては積極的に私どもは取り組んでいきたい。これは私どもが事業を進めるのに一番切実に感じておることでもありますので、今後ともに十分に御意見を体して努力をしてまいりたい、このように思っております。
  136. 今井勇

    ○今井委員 大変前向きな御答弁がありましたが、そういう御計画なりを段階的になさるのも結構でしょうが、さらに一歩進めて、年次計画を決めて本当に推進されるように強く希望しておきたいと思います。  それから、もう一つ問題なのは、作付をしておりません土地が相当あります。そういう作付をしておりません土地を有効に利用するのだというふうに言われておりますが、それを一体どういう形で行うのか、そういうふうな具体策がなければ、これは言うべくしてなかなかむずかしい。作付をしないならしない必然的な理由があってしていないわけでありますが、それをどうして作付をさせるようにするのか。この点についての具体策はどうでしょうか。
  137. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 最近の情勢として、せっかくの耕作地の中に、たとえばたんぼの真ん中に不作付田があって、それが害虫を発生したり、あるいはいろいろと病害虫の巣になるということで問題があるし、第一、また、周囲に対する精神的な影響も思わしくない。こういうこと等も実はあるわけでありまして、まず第一番に私どもが念願しておりますのは、今度の国会でも継続審議になっておるわけでありまして、今後御審議を当委員会でお願いするわけでありますが、まず、農振法の改正をして、そういうものに対して今度は知事が十分勧告もできる、行政機関が勧告もできる、あるいはまた、そういうものを他の利用したいという人たちに利用ができる道をぜひ開くようにしたいものだ、と、このように考えておるところであります。
  138. 今井勇

    ○今井委員 確かに、おっしゃるように、政府は、未利用地を利用するために、農振法の一部改正ということで農用地利用増進事業というものを考えておられます。私は、確かにこの方策は適切な方策だと思います。したがって、この法律の精神をくみ取って、農用地利用増進というものをしっかり腹に込めて、りっぱな計画をつくり、それの実行のできるように十分な準備をしてもらいたいと思います。  もう一つ関連して御質問したいのは、構造改善と並んで、農民の悩みの種が農用機械の問題であります。農機具は最近非常に普及してまいりましたし、省力化には大変役立っておりますが、その農機具は、特にこれは中小の農機具と考えていただいてよろしいのですが、品種の更新等が非常にはなはだしいわけであります。そこで、農民は、その機械をある程度使っておりますとパーツがなかなか補給できないというような理由と、あるいはまた、農機具メーカーが新しいアイデアを織り込んで新しい機械をつくっていくということと、この二つの理由で農民は新しい物を買わざるを得ないようになってきておる。それが農家にとって相当な負担になっておることは政務次官も御承知だろうと思う。そこで、私は、中古品としての市場がなぜ成り立たないのかということを考える。できるならば、農民の力によってそういった農用機械を修理してまた使えるようにして交換する市場を開くことは、農民にとってたいへん経済の負担を軽減するゆえんのものだと私は思います。また、現に、私どもの故郷でもそういうことをやってほしいという強い願望があります。これに対して政府はどのように考えておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  139. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 先ほどの不作付地のことにつきましてちょっとつけ加えさせていただきたいと思いますが、今年度新しい予算で、不作付地が一体どういう状況になっておるかということの調査をしようということで、実は、調査費を計上しておるわけであります。もとの耕地に戻るものか、それとも戻らないものか、その可能性はどうか、あるいは面積はどうか、と、そういうことを一回全体的に検討いたしまして今後の利用増進についての計画を進めていこうということが一つありましたので、つけ加えさせていただきます。  それから、農機具の問題でありますが、部品がなくなったために新しい物を購入せざるを得ないという問題が実は出てくるわけであります。そこで、その農機具が現存する間、これは償却年限内においては特にそうでありますけれども、部品がないというようなことは絶対にあってはならないということで、業界並びに全農に対しても厳重に農林省としては申し渡してありますし、その確約も取りつけてございます。  それから、車みたいに中古品の市場がどうしてできないのかという御意見でありますが、私もそれはたいへん賛成であります。農林省としても、新しい農機具の購入状況、あるいは分布状況、あるいは耐用年数の状況というもの等をもうすでに二年間にわたって調査をいたしておりまして、できるものならばそういう取引というか、市場が形成されるように、何か方法はないものかということを私どもも目下検討中であることを申し上げておきたいと思います。
  140. 今井勇

    ○今井委員 そうすると、そういう御検討が進んで、ある程度の見通しがついたらば、そういうことについて政府は積極的に助成をするお気持ちがありますか。それをお聞かせ願いたい。
  141. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 どのような形で助成をしたらいいかということについては、まだ調査段階でございますからここでとやかく申し上げるわけにはまいらないと思いますけれども、そういうものがもっと生かされて——私どもも、農機具の耐用年数が余りに短いんじゃないかと思っているのです。ですから、これがもっともっと利用されて、もっともっと大事に使用できる道が開けるとするならば、そこで私どもが政府として何らか援助をすることによってその事業が軌道に乗っていき、効率を上げるということならば、それは十分検討したいと思っておりますが、いまこの段階でどういうふうにしたほうがいいとか、あるいはどういう財政的な援助をするとか、まだそこまでは達しておりませんので、今後研究をさせていただきたいと思います。
  142. 今井勇

    ○今井委員 農民の機械に対する負担の軽減という切なる要望を政府がまともにくみ上げて、そのようなことのできる方策を早急に立てられることを希望しておきたいと思います。  次に、農用地の問題でもう一つの問題は、日本の国のこの狭い国土をさらに有効に利用するという意味での、現在利用されていない土地を農用地として利用しようという積極的な面についてのことでありますが、土地改良長期計画では、四十八年から五十七年までの十カ年で七十万ヘクタールの開発をしようとしております。ところが、始まったばかりと言えばそうでありますが、一体、用地をどう確保してその実現を図ろうとするのか、やや、心配な面が幾つかあります。そこで、まず最初に政府の決意のほどを聞いておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  143. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 御存じのように、最近農用地の壊廃が非常に進んでおりまして、いま進められておる長期見通しにおいても、これから昭和六十年を見通したときには、約七十万ヘクタール程度のものがおそらく壊廃されるんではないかと見込んで実は作業が進められておるわけであります。そうすると、これは今後の食糧自給の上にゆゆしき大事でありますから、これ以上農用地が減っていくということについては、特別の事情のあるものを除いては絶対に減らしてはならないし、同時に、また、進んで今度は造成をしていくという努力を何としてもしなければならぬ。私どもはそういう二つの面で実は臨んでおるわけであります。
  144. 今井勇

    ○今井委員 その努力のほどはよくわかるのですが、たとえば里山、要するに畜産に林野の開放、これがよく言われますが、私どもの故郷でもなかなかうまくいかない。そういうふうな当然考えられてしかるべきものがなぜうまくいかないのか。そこあたりは政府は一体どういうふうに受けとめておられますか。
  145. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 国有林野の活用法というものができたのは、もっと里山を有効に利用すべきであるという意図のもとにできたけれども、その後かえって国有林の開放、活用がうまくいってないのではないかという意味の御意見ではないかと思いますが、私どもは積極的にそのようなものについては活用すべきであると思っておりますし、また、具体的な事例がございましたならばぜひお知らせをいただきたいと思います。十分調査をいたしまして取り組んでまいります。
  146. 今井勇

    ○今井委員 いま大変前向きな御答弁を聞きましたので、具体的な問題として、また回を改めてお尋ねをいたしたいと思いますが、そういう国有林野の開放の問題については、現実になかなか問題があることだけは御認識いただきたいと思います。  時間もたちますので次の問題に移りたいと思いますが、私は、農業技術の問題と、その普及の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、これから日本の新しい農政を展開していくということで、農業技術の問題には幾つかの問題点があろうかと思います。まず、農家に、生産性の高い栽培技術は一体どうすればいいのだろうか、どういうものをどうやればいいのだろうかということをよく教えてやらなければいけない。また、環境汚染が各地とも非常に言われておりますが、環境汚染等の防止技術といいましょうか、そういうものを防止すると言うよりも、むしろ積極的にこの環境汚染のもとになりますものを利用して、これを農業の上に役立てる新しい方策を当然考えなければならぬだろうと私は思います。それから、また、基盤整備や輪作体系などによります作物の生育環境の改善に注目した栽培管理の技術というものも当然考えなければならぬ等々があろうかと思いますが、農林省は、このわが国の農業技術に対して一体どのような態度で臨まれるのか。まず、本年度の予算が前年度に比べて一体どのくらい伸びているのか、そして、具体的にそういうふうな熱意を持っておられるのかどうか、そこから聞いてまいりたい。
  147. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 育種関係予算は、昨年度が四億三百四十四万四千円でありまして、五十年度は六億九千九百四十万八千円ということになっておりまして、前年度に比べて、この厳しい抑制予算の中でもかなり踏ん張った予算だと思っております。
  148. 今井勇

    ○今井委員 それでは、政府委員の方から、先ほど私が幾つか申し上げた問題点についての農林省の取り組み方、その他幾つかあろうかと思いますが、まず御答弁をお願いいたしたいと思います。
  149. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 もう御案内のように、いい品種をつくること、それから栽培管理を効率的にすること、これが基本になることは言をまちません。  そこで、御存じのように、たとえば米ですと、質のいいものは収量が落ちるということが一つあります。ですから、多収穫であって良質なものをどうしてつくっていくかということが米については何としても一つの大きな問題になります。麦では、一日早く刈り取ると一キロ収量が減る。だから、わせ化というのは非常にむずかしいと言われておりますけれども、しかし、わせ化をしながら収量を上げるというにはどういう品種をやったらいいのかという問題も実はありますから、たとえばサキガケ小麦、五月小麦というような新しい品種を開発しております。しかしながら、これをずっとやってきますというと、どうしてもいけない。ですから、たとえばネパールですとかパキスタンというようなところに行って新しい遺伝因子を導入して、そして種子の更新、品種の更新を図っていこうということで、これは実は昨年からすでにやっておるところであります。  実は、いま御意見がありました環境汚染の問題、あるいは進んでそういう畜産廃棄物等も還元していったらいいじゃないかという問題、これは直接還元する方法もいろいろ開発されておりますし、最近はまた、ふん尿についても、酵素を使って、これをまた適当な処理方法で非常に活用していくということもありますので、私どもは、これはもう重要な関心を持っております。  たとえば畜産でも、いままで一年に一匹しか生まれないやつを何とかして二匹生ますことはできないかということもことしから積極的にやってみようとか、あるいはまた、御存じのように、いまは作付の形がずいぶん変わってきまして、たとえばレンゲをまいたらいいのじゃないかと私は思っておりましたら、レンゲをまくと、今度は新しく機械でもって田植えをするときに苗が小さい、だから、機械で田植えをする場合に、青刈りのレンゲというものが非常に障害になって、その作物の栄養障害等も起こす、だから、この輪作体系を進めていくのには、いままでの既定観念でもってしてはなかなかうまくいかない、裏作に麦を入れようとすると、今度は稲作の植え付けの時期がおくれてしまうとか、そういうふうないろいろな問題が実はあるわけでありまして、これは何としても国立の農業試験場というものが中心になって、都道府県の試験場と大いに今後提携を密にしながら今後の農業技術の革新というものに取り組んでいこうではないか、と、こういう姿勢をいささかなりとも示したものが今回の予算だというふうに御理解賜れば幸いであります。
  150. 今井勇

    ○今井委員 こればかり議論するわけにいきませんが、私が非常に心配しますのは、私がいただきました農政調査委員会から出ております本で、牛飼いの専門家の本を拝見いたしますと、「牧草はいま、北海道から九州の端まで、まったく同一品種が栽培されていて、それこそ適品種もくそもない。何でもいいからつくればいいというのがいまの牧草じゃないか。」というふうなことを言っておられます。この方はいろいろやっておられるようですが、草地はふん尿処理場だという物の考え方で、牛のふん尿をそのまま草地にまかれて大変多量の草地の栽培をしておられる。これは多分その道の大家であろうと思いますが、これにまさる研究を農林省がやっておられるに間違いないと思いますが、そういうことで、農林省がこの新しい農政をきめるに当たりまして、農業技術の面においていささかもひけをとることのないように、どうぞ積極的に農民を指導していくような姿勢を持っていただきたいと私は思います。  それで、関連して心配なのは、農業技術改良普及員の問題であります。これは第一線に立ちましていろいろ農民の指導をやっている方々でありますが、その人たちの身分等につきましても現在いろいろ問題があることは御存じのとおりです。これが法律によりますと、現在の法では国と府県との共同事業であり、それから、予算定員のような形でその定数が決められており、身分に非常に問題があることは御存じのとおりですが、この農業改良普及員の改善について政府はどう取り組もうとしておられますか。端的にお答え願いたい。
  151. 前田耕一

    ○前田説明員 お答えいたします。  農業改良普及員と専門技術員、合わせて一万三千余人が全国に配置されておるわけでございますけれども、先ほど先生が冒頭に申されましたように、農民の心をつかむ普及職員が現在の農業あるいは農村変化に対応してうまく動いていないのじゃないかという御指摘があるわけでございまして、農林省としましては、昨年来、普及事業の整備強化につきまして検討を続けてまいっております。昨年の暮れに、普及事業の整備強化についての第一次案というものを報告いたしておるわけでございますけれども、これに基づきまして、当面の措置としまして、五十年度の予算におきまして、いま先生が御指摘の普及職員の待遇の改善の問題を含めまして、新規の予算もかなり芽を出した次第でございまして、さらに、普及職員の現在の農政における位置づけの問題、あるいは普及職員が持っております機能の発揮の問題、あるいは農業が高度化し、経営が専門化していく変化に対しての普及活動のあり方の問題、それから、先ほど申しましたように、農民が現地から離れているという問題を踏まえましての、直接適切に現地の課題に取り組めるための普及活動の問題、あるいは専門技術員、改良普及員の資質を向上するための問題、それから、先生がおっしゃいました国と県との共同農業普及事業のあり方とその意義づけの再確認の問題等々いろいろございまして、農林省関係各課及び学識経験者、あるいは都道府県普及職員協議会等と現在基本問題について詰めに入っているわけでございまして、普及事業の重要性にかんがみまして、なるべく早い機会に新しい方向を打ち出したいと考えておるわけでございます。
  152. 今井勇

    ○今井委員 そこで、なるべく早い機会ということをちょっと詰めておきますが、一体いつごろをめどにしておられるのか。
  153. 前田耕一

    ○前田説明員 先ほど申しました当面の課題につきましては、一応予算めどがついておりますが、基本問題につきましては、早急にやれる問題と少し時間のかかる問題がございまして、たとえば普及職員の技術審査機能とか組織化機能とか、そういったものについての発揮の方法につきましては非常に早い機会にできるのではないかと思っております。段階が必要であると考えております。
  154. 今井勇

    ○今井委員 いろいろ努力されていることは了解いたしますが、本当に農民と接触しているのは、あなたがいまおっしゃったとおり普及員なんです。普及員が自分のやっていることを本当に聖職として考えて、日本の国の農業はわれわれが一生懸命やるのだという気持ちを自分から起こさせるようにしないと、なかなか農民との間がうまくいかない。私は、選挙区でそういうふうな感じがつくづくいたしました。したがって、農民から愛され、農民から信頼される普及員をつくるという責務をあなた方が持っているのだということを確認されまして、これらの解決されない諸問題についての解決を一日も早くしていただくように強く要望しておきます。  時間もありませんので、あと二点ばかりお伺いしますが、えさの穀物であります。これは政務次官は最も見識のおありの方でありますが、将来の穀物の需給に対しては相当なものが見込まれますが、私の知っている範囲では、世界の粗粒穀物の中で日本が輸入しなければならぬ量というものは相当ふえますけれども、そのパーセンテージは現行のパーセンテージと大体とんとんくらいであろうから、これは何とか確保できるであろうというふうな説明を受けております。実は、確かにそのとおり、パーセントから申しますと、現在の日本の輸入シェアが二一・九%で、それが将来消費の伸びをたとえば五%に抑えた場合、いろいろあるようでありますが、大体一九%、一八%くらいだということで大丈夫なんだということでありますが、私はこれは非常に不安に思います。いまのような輸入形態を続けておりますと、このシェアを確保し、この量を確保することが必ずしも容易ではないように思いますが、これについて政府は、抜本的にと申しましょうか、基本的にどう考えておられるのか、いまのままでいいと思われるのかどうか、これは政務次官から聞きましょう。
  155. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 昨年一年間輸入穀物の高騰で生産者も苦しみましたし、私ども農林省としても苦しんで苦しんできたわけでありまして、そういう反省の上に立って、私どもは、やはり基本的には国内でえさをつくることだ、粗飼料の増産というものにあらゆる努力を傾けなければいけない、それには、国営あるいは県営、団体営を問わず、あるいはまた大型の開発、いわゆる事業団による開発とを問わず、積極的に取り組んでいかなければいかぬ、ということを考えております。  あるいはまた、御存じのように、ことしの予算の中でも、牧草地の再生といいますか、そういうことまでもやって自給率を高めていこうということをやっておるわけですけれども、いままでの国際的な事情もございましたが、大部分をアメリカに依存してまいりましたから、もっと広くこれから輸入の相手を求めていく必要がある。安定的なそういう輸入を進める必要がある。しかも、アメリカならアメリカとでも私どもは長期的に長期契約を結んで安定供給を受ける。その他のものについては、たとえばタイで御存じのようにいまトウモロコシをやっておるわけでありますが、それだけではなくて、たとえばブラジルで大豆をやるとか、あるいはオーストラリアとマイロの長期契約をするとか、そういうふうなことも、可能なものはこれからどんどん進めていくべきではないかと思っております。  同時に、御案内のように、海外協力事業団もいよいよ発足して軌道に乗りつつございますから、今後発展途上国に対して私どもは積極的な技術参加、資本参加をやって開発途上国からの輸入の促進も図りながら、特定国が不作のために決定的な打撃を受けるようなことのないように今後十分配慮してまいりたいものだ、このように考えておるところでございます。
  156. 今井勇

    ○今井委員 政務次官、そこで具体的にお尋ねしますが、民間の商社のそういうふうな活動にまつところが多いわけですが、私はそれだけではいけないと思うのです。やはり、政府が何らかの形で関与する制度、仕組みを考えて、ある部分は絶対に間違いないと——間違いないと言ってはおかしいのですが、低廉な価格確保できるような形のものを並行して考えないといけないのじゃないかと私は思いますが、具体策がおありならばなお結構、具体策がなければ、粗粒穀物の輸入確保の問題については格段の御尽力を願いたい。この点はどうでしょうか、何か政府に案がありますか。
  157. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 御存じのように、砂糖が一年間で六倍にロンドン相場がなりまして、農林省としては、このようなことでは大変だというので、実は、先般政府も関与いたしまして豪州との間に長期契約を結びました。先日またタイとも、これは民間ベースでありますけれども、同じように砂糖の長期輸入契約というものも結んだ。こういうことをしながら砂糖をやっております。そういう意味で、今後の、たとえばアメリカなり豪州なり、あるいはブラジルなりアルゼンチンなり、あるいはタイなり、そういうところからの開発輸入についてはやはり政府も積極的に乗り出すべきだと私どもは思っております。そういうことをやらないと、民間だけに任しておくわけにはもういかなくなったのではないかと思います。  それから、さきにちょっと申し上げましたが、海外協力事業団等によって進んでそういう輸入の道が開けるように、こちらから積極的にそういう技術なりあるいはその他の援助をして輸入ができやすい下地をつくっていくということが必要だろうと思っておるところでございます。
  158. 今井勇

    ○今井委員 ただいまの御答弁のような方向で政府が指導あるいはてこ入れをするという形の方策を至急に検討していただきまして、大量な飼料、えさが日本に安定的に入ってくるような努力をお願いいたしたいと思います。  最後に、水産物についてのお尋ねを二、三いたしておきたいと思いますが、これからのたん白質の供給源の重要なものであります畜産物と並んで大事なものは水産物でありますが、わが国の水産物をめぐる状況というものは、沿岸の近間の魚あるいは遠洋の魚を問わず、非常に大変な時期に遭遇しておることは御案内のとおりであります。  そこで、この間の農政審議会需給部会が案として出しております魚の数量についていささか私は危惧の念を持つものでありますが、この資料によりますれば、六十年における生産量として約千二百万トンというふうに書いてあります。これを達成するためには、沿岸漁場の整備であるとか、あるいは新しい漁場を開発するとかいうことに対する相当大きな努力がなければ、これだけの魚を確保することがむずかしいというふうに思います。そこで、その千二百万トンの内訳を政府は一体どんなふうに考えておられるのか、もしわかれば御説明を願いたい。
  159. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 御承知のように、昨年には日米の漁業交渉がございまして、いよいよ来月にはまた日ソのカニ交渉、日ソ漁業交渉、それから問題の第三次の世界海洋法会議と実はあるわけでありまして、わが国の漁業の将来にとっては非常に重要な時期になってきた。私は、実は、これは戦後一番のむずかしい時期ではないかと思っておりますが、その時期に千二百万トンというものが一体確保されるかどうかということについては、いろいろな計算、いろいろな推定をいたしまして、最低のもの——これは最高のものを見たのではありません。きわめてシビアに計算をして、そして、いまの置かれておる国際情勢等もにらみながら、最低のものとして千二百万トンの計画というものが実は数字で上がってきておるわけであります。したがって、これから先はいままでの国際漁場における既得権というものをわれわれがどういうふうに確保していくかということが大事だと思っております。その実績をどう確保していくか。勢い今後の海洋法会議との関連が出てくるわけでありますけれども、これは、おそらく、二国間協定に非常な重要度を置いて積極的に漁業外交を進めなければならぬ時期がもうやってくると私は思っております。  それから、やはり、何と言っても、漁業開発センターあるいは深海漁場株式会社等にも政府は金を出して、新しい漁場を開発しようと、実はいま懸命になっておるわけでありますけれども、同時に、いままで利用されなかった、たとえば南氷洋におけるオキアミというような新しい資源もこれから大きく取り上げて、今後の漁業資源として活用していくべきではないかと思いますし、それから、すでに予算に上がっておりますように、今後沿岸漁場をもう一度見直して、さらにその重要度に比重をかけて、漁場の開発、汚染の防止、その他ありとあらゆる沿岸漁業の振興策を図っていく、そういうことをやりながら何とか目的を達成しなければ、国民のそうした需要にこたえることはできないのではないか、このように実は思っておるところでございます。
  160. 今井勇

    ○今井委員 いまの答弁で非常に不満だと思いますのは、この見通しは最低限だとおっしゃったが、私はそうじゃなくて、これは非常に甘いと思うのですね。これは相当無理なと言いましょうか、希望的な量だと私は思う。  水産庁長官、その数字の内訳はわかりますか。千二百万トンの中で、沿岸漁場で新しくどのくらい確保して、それから、遠洋漁場をどのくらい開発してこの千二百万トンになるのですか。それはわかりますか。
  161. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま政務次官から御答弁がございましたように、今回の生産見通しに当たりましては、現在進行中の第三次国連海洋法会議の帰趨がわからないものでございますから、そういった要素は入れないで、過去の趨勢を基礎にいたしまして、その趨勢から手がたい数字をとると申しますか、各種の漁業につきまして過去の趨勢を基礎にして推定したものでございますから、今後のきびしい情勢と申しますか、海洋法会議以降の情勢はまだ流動的でわからないものでございますから、全然要素として入っていないわけでございます。  そこで、各漁業種類別に趨勢から最も手がたい数字をとった、こういうわけでございます。
  162. 今井勇

    ○今井委員 これ以上押し問答をしてもしようがありませんが、私は、直観的に、この数字というものはどうも相当努力しなければ達成できないような気がいたします。そこで、せっかく沿岸漁場の整備のための法律もできたことでありますから、それの実施について政府はこれから並み並みならぬ努力をされると思いますが、沿岸漁場についても、日本の国に残された漁場というものはそうたんとはありません。そういう漁場について、将来本当に国民が心配のないように積極的な施策を行っていただいて、魚族の保存、漁獲量の確保にせっかく御努力を願いたい。  同様に、遠洋漁業につきましても、確かにおっしゃるとおり今後の海洋法会議の成り行きもありましょう。しかしながら、何とか努力をして、わが国の水産資源の目標を達成できるような格段の御配慮をいただきたいと思います。このためには相当な努力と決意がなければできないと思いますが、まず、決意のほどだけ最後に承っておきましょう。
  163. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 日本の漁業というものは、沿岸から沖合いへ、沖合いから近海へ、近海から遠洋へという一つの目標があったと思うのです。しかし、それがいまはそうはいかなくなってきた。だから、私どもは、日本の漁業というものは国民のこれからの需要と相まって新たな時点に立たされたという自覚のもとに、決意を新たにして取り組まなければいかぬということで、いま大臣もこのことについては非常に頭を痛めておりまして、この問題については懸命に取り組んでいこうということにいたしておるわけであります。
  164. 今井勇

    ○今井委員 時間が参ったようですからもう一問で終わりたいと思いますが、これは先ほども社会党の議員から御質問があったことに若干重複いたしますが、非常に大事なことでありますので、なおもう一度念を押しておきたいと思います。  ソ連の漁業の操業によります北海道の沿岸漁業被害のことについてでございますが、これについて水産庁は現在ソ連とどのような交渉を持っておられるのか、委細御説明をいただきたい。  同時に、委員長にお願いいたしますが、この問題に関しまして同僚の三枝委員から関連質問をさせていただきたいという話がございますので、お許しを願いたいと思います。
  165. 内村良英

    ○内村政府委員 日本の近海におきますソ連の漁船の操業は、これは公海漁業でございます。今日まで領海侵犯のケースは一件もないということで、性格といたしましては公海漁業になっておるものでございますから、こういった問題につきましては、外国の例を見ましても、操業協定をつくって、そこで紛争を解決するというようなやり方をしておるわけでございます。現に、米・ソ、米・ノルウェーあるいはソ連・カナダというようなことで、そういったような操業協定ができておるわけでございます。したがいまして、わが国もソ連と日本近海における漁業操業につきまして操業協定を結ぼうではないかということを申し入れまして、昨年の十一月に会議を持ったわけでございます。その会議の結果、紛争の未然防止の措置をとるとともに、紛争解決のための委員会を設置することにつきまして原則的な合意が得られましたので、現在、日本政府におきまして協定案文を作成中でございます。これができ次第、ソ連側にそれを送りつけまして、ソ連と協定交渉に入るということを準備しております。  なお、取り決めの締結までの間におきましても、ソ連側に紛争防止の措置をとることを強く要請しております。先般も、北海道の苫小牧の沖の方にソ連の漁船が出てまいりまして、わが国の沿岸漁業に相当の被害が出ておりますので、それについて厳重な抗議をしたわけでございますが、そういったようなことをやっております。  それから、国の予算措置といたしましても、五十年度におきまして、事故の未然防止のため、監視船の配置、漁具標識及び警報器の設置助成等の措置を要求しておる次第でございます。
  166. 澁谷直藏

    澁谷委員長 関連質問を許します。三枝君。
  167. 三枝三郎

    三枝委員 お許しを得まして、関連の質問をさせていただきます。  ただいま水産庁長官から御説明がありましたが、それでは、ソ連に対して抗議を申し込んで、それに対するソ連側の具体的な反応がいままでございましたか。それをちょっと聞かせていただきます。
  168. 内村良英

    ○内村政府委員 昨年の秋からソ連の漁船の操業による被害が続出をしておりますので、外交ルートを通じて抗議をしました結果、ソ連側から、昨年の十二月十六日に、漁業相から現場の船団の責任者に対して日本漁業と紛争を起こさないようにしろという指令を出したという連絡を受けたわけでございます。そういった指令が出たにもかかわらず、なおいろいろなわが国沿岸漁業者の被害が起こっておりますので、ごく最近も、この問題について、従来よりも一層強い態度でソ連の漁船の操業の自粛を求めたわけでございます。その結果、ソ連政府から、これは二、三日前でございますが、「(一)、事故が続発していることは遺憾であり、事故防止のため万全の注意を払うよう船団に対して指示、警告してきているが、また重ねて警告を発し、事故防止に努める。(二)、もし違反の事実がはっきりすれば、関係者の処罰を考慮する。日、事故の発生の未然防止及び発生した事故の処理についての交渉を速やかに開きたい。」ということを言ってきているわけでございます。  そこで、われわれが外交ルートを通じて接しているところの感じでは、中央政府と申しますか、ソ連の漁業相としてはかなりまじめにこういった事故を防止したいと思っておるようでございますが、どういうわけか現場の船団がかなり乱暴な操業をしておるというのが現状でございます。
  169. 三枝三郎

    三枝委員 ただいま長官から明らかにされましたとおり、処罰までするという向こうの示達をしているにもかかわりませず、現場におきましては、いま日本の沿岸漁業は非常に大事な立場でありますが、いまだトラブルが起きている。  その例を申し上げますと、胆振の沿岸の漁業協同組合の連中の、特に沿岸の漁業に携わっている者が、この一月の二十九日から、物的な被害はあるのですが、生命、身体の危険を感じまして休業に入ったのでございます。そして、私は四日前に帰ってまいりましたが、日曜日まで休業しまして、それでは今後何ら収入がないのですから失業しなければならないというので、十二日目、一昨日再び操業を始めたのでございますが、きのうの連絡によりますと、いまだに相当の漁船が刺し網を壊されたり、あるいはタコつぼを、タコ箱を壊されたり、あるいはかごをやられたりしているということで、地元としましては安全な操業はできないということで非常に騒いでおるのでございます。現にこれは地元の新聞ですが、これはあとで次官に見ていただきますが、つい目の前に、このように大きな二、三千トンのトロール船が全部で三十数杯来ております。室蘭、あの辺の山がもう目の前に見えておるところでやっております。そういうことでございますので、再度長官にお伺いいたしますが、これらを踏まえまして基本的に今後どのような対策を講ぜられるか。さらに、これに並行しまして、相当被害を受けており、休業による損失というものは非常に大きいのでございますが、そういったものも含めまして救済措置をどのように今後行っていくか。これについて、もう時間がございませんので、要点のみで結構ですが、御答弁を願います。
  170. 内村良英

    ○内村政府委員 この問題の基本的な解決のためには、一日も早く操業協定を結びまして、その委員会等を通じて紛争の解決を図っていくということが必要だというふうに考えております。  なお、現在まで相当の被害が出ているようでございますが、これはソ連漁船という加害者がいるものでございますから、事件としては民事事件になるわけでございます。したがって、ソ連側に対して損害を請求しなければならないという筋の問題でございますが、けさ大臣から御答弁もございましたように、日本の沿岸漁民が非常に困っているという現実もございますので、これは措置をとるにつきましてはいろいろ他に影響を及ぼす問題もございますけれども、沿岸漁民の救済というような点から、この問題についてはまじめに検討したいというふうに考えております。
  171. 三枝三郎

    三枝委員 それでは、以上のような事態を踏まえまして、最後に江藤政務次官に御答弁を願いたいと思います。  私がこの問題を非常に重視しておりますのは、先ほど今井委員からも質問がございましたが、この千二百万トンという漁獲高を確保するという中で、沿岸漁業の占める位置というものは相当大きいものだと思います。さらには、限られたわが国のたん白資源におきまして、魚の持っているウエートというものは相当大きい。そういった観点、あるいはそれに伴う安全操業あるいは専管水域の問題、さらには日ソ間における友好関係の促進、それらのいろいろな点を踏まえまして、私は、地方の問題とは言いましても、これは単なる地方のトラブルではなく、相当大きな国の基本的な施策に関連するものであるという考えでございます。  そこで、いわば副大臣の立場におられる江藤大政務次官に——私はこれは決してお世辞を申し上げるのでありませんが、いずれ日本の漁業、農業の問題の解決に責任をもってやられるようなお立場に立つであろう政務次官に、大臣と同じ立場に立たれまして、以上のような点から政務次官の基本的なお考えあるいは決意のあるところを伺わせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。どうぞ前向きの御答弁をお願いいたします。
  172. 江藤隆美

    ○江藤政府委員 先ほど来長官から御答弁がありましたように、諸般の手続はいたしておりまして、その約束も受けておりますけれども、なかなか解決を見るに至っておりません。私どもは、体制の違う国ということで、いささかその真意をはかりかねておる面も実は多分にあるわけでありまして、関係漁民の皆さん方の迷惑というものは直接私も陳情を承りまして、まことに大変なことだと思っており、これは大臣も非常に心配しておるところでございます。  したがいまして、他に今後の日ソ間の漁業交渉のこともございますので、先方の了解がつくならば、これらの問題も含めて水産庁長官をソ連に派遣をしようということで、実は大臣の方で進めておられるわけであります。まだ先方からその回答に接していないわけでありますが、これをもって見ても、大臣の取り組む姿勢というものについても御理解がいただけるであろうと思います。  そして、ひいては、こうした世界的な資源戦争と言われる時代になってきて、今後この日本の大事な漁業資源というものを確保し守っていくという立場からするならば、これは一長官の責任に任しておいてはいけない、これは農林大臣みずからが最高の責任者として進んで積極的に取り組んでいくべきである、と、このように私どもは考えておりますし、同時に、また、大臣もそのような気持ちであります。きょうも事務次官ともそういう話をいたしまして、なるべく早い機会に、今後の漁業交渉のあり方その他についても大臣を中心に大至急に協議をしようではないかという話もしておるわけであります。  これはもう本当に現地の皆さんにはお気の毒だと思いまして、私どもも、与えられる職責を全うするためにこれから先も懸命の努力を措しまない所存でございます。
  173. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、明十三日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十一分散会