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1975-08-26 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年八月二十六日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       有田 喜一君    宇野 宗佑君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       竹中 修一君    林  大幹君       古屋  亨君    吉永 治市君       山本 政弘君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君  委員外出席者         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 齋藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力局         長       菊地 清明君         外務省経済協力         局外務参事官  梁井 新一君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 八月二十六日  辞任         補欠選任   大石 千八君     宇野 宗佑君   旗野 進一君     塩崎  潤君   三塚  博君     古屋  亨君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     大石 千八君   塩崎  潤君     旗野 進一君   古屋  亨君     三塚  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  3. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 先般、三木総理が訪米されまして、日米首脳会談が開かれたわけでありますが、その結果の共同声明共同新聞発表等々を読みまして、きょうは安全保障問題を中心に若干の質問をしていきたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、共同新聞発表の中で日米安保条約の堅持をうたっておられますが、その次に、日米両者、これは総理大臣大統領だと思いますが、「両者は、さらに、米国核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国日本防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。総理大臣は、日本は同条約に基づく義務を引続き履行してゆく旨述べた。」こういうような共同新聞発表があるわけであります。多くの国民は、このことに非常に信頼感を寄せたと思うのであります。ところが、たまたま日本アメリカ退役海軍少将ラロック氏が見えておりまして、各所で講演をされたようでありますが、その中で、これは八月九日の毎日新聞ですが、いろいろなことを言っておられますが、「ソ連核攻撃に対しては米国も無力であり、攻撃されればソ連を再攻撃できるということで抑止力が成り立っているにすぎない。従って米国民東京を守るため核を使ってワシントンを廃墟にしようなどとは考えていない。核のカサは神話である。」こういうような趣旨講演東京でなさったように新聞では報じております。  ラロック氏のほかの講演内容を見てみますと、これは米ソ核弾頭が幾らあるとか、あるいは朝鮮米国核弾頭をどれだけ置いておるとか、ヨーロッパにどれだけ置いておるとか、これはどうしてそういうふうな米ソの最高の機密の事項が推測できるのか、私はわかりません。信憑性についてもまあ疑問があると思います。疑問があると思いますけれども米ソの間には、御承知のとおり第一次戦略兵器制限交渉成立をしておる。ABM協定成立をしておる。昨年のウラジオストックにおけるフォード、ブレジネフ両首脳会談で第二次戦略兵器制限交渉をこの夏までにはと言っておりましたが、どうもまだそうはいかぬようでありますが、近いうちに交渉成立をするかもわかりません。  そういう情勢考えてみますと、やはりラロック氏の証言といいますか、講演は——彼はいまは一私人であります。しかし海軍少将として米海軍の要職を歴任した、こういう経歴を持っている方でありますので、この方の演説というものはある程度の説得力を持っておると私は思うのです。日本国民は、日米共同新聞発表共同声明を見、またこのラロック氏の講演内容を聞いて、どうなんだろうかと疑問に思う方も非常に多いんじゃないかと私は思うわけでございます。  御承知のとおり、米ソ間にはホットライン協定もありますし、核不戦協定もあることでありますから、どうもこの辺の事情を解明するのに私自身も非常に困難を感ずるわけでございますが、ひとつ日本の政府として、この問題についてはこういうふうにわれわれは思っておるのだということを、はっきりと国民にわかるようにこの席でお述べいただきたい、これが私の第一の質問でございます。
  4. 丸山昂

    丸山説明員 ラロック氏が日本へ見えましてからいろいろなところで講演をされておりますし、それぞれ新聞雑誌等で対談をされておりますが、全般的に拝見をいたしまして、アメリカサイミントン委員会出席をして証言をいたしましたことと、大筋において変わりがないように受けとめております。御案内のように、ラロック氏は元海軍軍人でありまして、海軍省におきまして一部核兵器について知識を得られる立場にあったというようなことからいたしまして、その証言しておるものが、まるきり根拠のないことではないというふうに考えるわけでございます。  ただ、核についての基本的な考え方が、シュレジンジャー長官国防年次報告の中にも出ておりますように、核の抑止力についての考え方といいますよりは、核兵器が使われた後の事態というものにむしろ重点を置いて考えておられるというような点が指摘されるのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、ただいまの先生の御質問安保条約におきます核の抑止力というものについての信頼性の問題でございますけれども、そもそも核の抑止力というものが一体どういうものであるかということは、核兵器を一たん使用したことによって相手方に再び立つあたわざる耐えがたい打撃を与えるものであるというこの核兵器特徴、こういうところから核兵器能力というものを相手方十分認識をさせる、いわゆる軍事能力の点について誤算のないようにするということが一つであると思います。  それから、核兵器というものはそういうことで、いわば現在の場合には一種の核の手詰まりということで使えない兵器でございます。使えない兵器はいかなる能力を持っておりましても、それ自体抑止力をそれだけ軽減されてしまうというおそれがあるわけでございます。そういう点で、核を使うという意思、これが相手方にやはり明示されなければならない。つまり、どういう威力のある兵器を明確に相手にいかなる場合において使用するかということを明示するということによって相手がそれを明確に誤算なく受けとめる、認識をするということによって当方に対する攻撃を思いとどまるという、そういう機能、心理的な作用が核の抑止力と言われるものであると思うわけでございます。米ソが現在持っております核兵器は、ある意味においてオーバーキルの状態になっておる。一たびこれが使われれば、全面核戦争になった場合において人類の破滅に近い状態になるという可能性を十分持っておるのでございます。そこで、そういう状態を背景として、米ソ核均衡というものが成り立っておるというふうに考えるわけでございます。  そこで、日本に対するアメリカ安保条約によるコミットメント日本にいかなる攻撃が行われる場合においても、必ずアメリカ防衛するということをたびたび明言をしておりますが、先ごろの日米首脳会談におきましても、同趣旨のことが再度繰り返し明言をされておるわけでございます。そこで、日本に対してもし核攻撃考えるような国があったとするならば、その場合にはアメリカがそれに対して報復をするというリスクを冒しながら日本に対して攻撃をしなければならないということになるわけでございまして、そういう意味で核の抑止力というものは十分日本に対して働いておる。したがって、アメリカ核抑止力信頼性というものは十分考えてよろしいというふうに私ども判断をいたしておるわけでございます。
  5. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの御答弁承っておりまして、私は、次の問題で伺いたいと思っておったのですが、その問題に触れざるを得ないのでありますが、近く坂田長官がお会いになるシュレジンジャー米国防長官は、核のファーストユーズということをこの間から言っておるわけであります。この点についてもラロック氏は、アメリカの国会が大統領戦争権限を制限する法律を決めたことによって、今後大統領が戦闘を遂行し得る期間は六十日だ、したがって、この間に戦局を好転させようと思って核の第一撃使用ということを考えておるのだろうが、これは非常に危険であるというふうなことを言っておるわけですね。いまの防衛局長お話しでは、使われないことによって抑止力が成り立っておるのだ、そういう見方もこれは確かにあると思うのです。確かにあると思いますが、いまのシュレジンジャー氏の核の第一撃使用も辞さない、ことにこれは朝鮮半島の問題に関連してでありますが、こういう発言がありますと、これまた国民はいまの防衛局長の御答弁で納得できるだろうかなという気がするんですが、その辺をもう少しわかるようにお答えをいただけないでしょうか。  それとその前に、これは外務省の方にお伺いしたいのですが、米ソ核不戦協定というものの内容をひとつ御答弁願いたいと思います。
  6. 山崎敏夫

    山崎説明員 御承知のとおり、この米ソ核戦争防止協定は、ニクソン大統領がモスコーを訪問いたしましたときにでき上がったものでございますが、これは核戦争が偶発的な理由によって起こるという可能性ないし危険を減少させるために、お互いに協議し合うということを目的としたものでございます。もちろん、現在の世界の平和が一種核戦力バランスの上に立っておるという現実は踏まえた上で、偶発的な問題によってそういう戦争が起こることを防ぎたい、また第三国の動きによって米ソがそういう核戦争に巻き込まれることを防ぎたいという趣旨ででき上がった協定であると理解しております。
  7. 丸山昂

    丸山説明員 先に私からお答え申し上げます。  いわゆる最初に使うファーストユーズということでございますが、ファーストユーズ通常兵器による紛争におきまして、一方が不利な状態になった場合に、核兵器を使ってその不利な態勢を挽回するということで、いわゆる通常兵器戦争において初めて核を使用するという、最初の第一使用ということがこのファーストユーズと普通言われておるものでございます。それに対しまして第一撃という言葉は、ファーストストライクという言葉がよく使われますが、これは従前から言われておりますように、やや奇襲攻撃的な使用でございまして、これによって相手方に大量の破壊効果をもたらす、こういうのがファーストストライクでございますが、よく混同されるようですが、このファーストユーズは、いま申し上げましたように、通常兵器から初めて核兵器に踏み切るという、こういう意味合いを持っておるものでございます。  そこで、朝鮮半島の問題に関連しまして、シュレジンジャー長官が、いわゆる核のファーストユーズ相手方つまり北鮮側侵攻があった場合においてファーストユーズを使うということもあり得るということを言っておるわけでございますけれども、つまりこれ自体は、在来からアメリカ核戦略の方針として打ち出してきております。要するに核が使用される状態というものにあることを相手方に明示をするという、その伝統的なポリシーに従って発言をされたものというふうに私どもは受けておるわけでございます。したがって、これは先ほど申し上げましたように、核の抑止効果というものをねらっておる、したがって、仮に北朝鮮から侵略があった場合には、核の報復も含めて覚悟をしなければならないということによって、北朝鮮側からの侵入意図を思いとどまらせるという効果があるように受け取っておるわけでございます。  そこで、こういったファーストユーズを強調することは、核の軍拡につながるのではないかというそういう批判がございます。こういった問題につきまして、これもやはりシュレジンジャー長官が、国防年次報告の中にこういういろいろの核の限定使用ということを言っておりますが、この限定使用に対する反論を幾つか挙げて、それに対する反駁を行っております。その筆頭に出ておりますのが、いまの限定使用という考え方は核の抑止ではなくて、かえって軍拡につながるのではないかという反論がある。それに対しては、そもそもその反論をなす立場の人は、核の抑止という概念を正しくつかんでないのではないかということを挙げて反論をいたしております。つまり先ほど申し上げましたように、核はいかなる能力があり、いかなる状態に置かれておるか、それからそれはどういう場合に使うのか、どう使う意思をはっきり示すかということで相手方誤算を起こさせないという、そういう状態に置くことによって相互侵略を防止する、こういう考え方がやはり抑止考え方であるということから発しまして、やはりファーストユーズという考え方を放棄してはならないのだ、やはりいつも通常戦争から場合によっては核を最初に使うということがあり得るのだ、もう最初に使うことはないというふうにファーストユーズをみずから放棄するということはないのだということをやはり明示しておくことが抑止につながる考え方であるというような説明をしておるわけでございます。  したがいまして、いま御質問の、その具体的な朝鮮半島に関連してのシュレジンジャー長官発言というのは、恐らくそういった、いま私が申し上げましたような観点からの発言ではなかったかというふうに推測をいたすわけでございます。
  8. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 御答弁趣旨は、私はいま聞いておったのですが、要するに戦略的な核兵器については、これはもう使えないものだ、抑止効果が十分に効いておる、戦術的な核兵器についてはファーストユーズということを言うことが、かえって抑止力になるのだという御答弁のようにいま頭の中で考えておったのですが、間違いないのでしょうか。間違いなければ次の質問を続けていきたいと思いますが……。
  9. 丸山昂

    丸山説明員 よく戦略核兵器あるいは戦術核兵器、場合によっては戦域核兵器というような言葉も使われておりますけれども、これもまことに恐縮でございますが、シュレジンジャー自身が、この点についてはデプロイメント、つまり配置上いまのような区別をするということは適当でない、使用上これを区別するということが考え得るかもしれないというような発言がございます。私ども考えますのに、確かに兵器特徴、性能その他から見まして、ある一定地域を限定して使用されるというようないわゆるミニニューク、レッドアイ、こういったような形のもの、そういうものがいわゆる戦術兵器として通常言われておるわけでございますけれども、用法的に見ました場合には、厳密にこれが戦術兵器であり、これが核兵器であるというような使い分けはなかなかむずかしいのではないかと思うのでございます。  ただいま御指摘ございましたファーストユーズということは、ただ単に戦術核のみではありませんで、戦略核につきましてもやはり同じような考え方がとられておる。それからもう一つ通常兵器核兵器との間には非常に大きな敷居、スレッシュオールドと言っておりますが、敷居がある。つまりファーストユーズに踏み切るまでに大変大きな決断をしなければならないわけでございますが、一たび核兵器使用されますと、それから全面核戦争に至るエスカレーションというものはたちまちにして広がるというふうに考えてよろしいのではないか、戦術兵器戦略兵器と言われるものの間の敷居はまずないものと考えてよろしいのではないかと思うのでございます。そういう点で、戦略兵器戦術兵器を区別する実益はないように思いますので、大変くどいようでございますが、先ほど申し上げましたように、戦略兵器戦術兵器双方について、やはりファーストユーズということを言っておったというふうに思います。  ただし朝鮮半島という具体的な問題をとらえて、どちらを意味しておったかということについては、私どもはっきりいたしておりません。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま防衛局長からお答えいたしましたとおりでございますが、シュレジンジャー国防長官のことし出ました国防白書等を読んでみますと、シュレジンジャー長官戦争をなくするという考え方、そしてそれの基礎となるものは、核あるいは通常兵力、それに抑止、そしてこの三つ一つであって一つも代替できないのだ、こういう基本的な考え方があると思うのです。それによって抑止力ができ上がるし、そしてそのことがまたデタント平和共存という基礎になっていくのだ、だから平和共存デタントというものは単なる平和じゃなくて、力の均衡あるいは力を追求する結果としてデタントというものが出てきたのだ、平和共存が出てきたのだ。これは歴史的に言いましても、たとえば一九六二年に、その当時はアメリカの核がソ連核兵器よりはるかに優勢であった時期でありましたけれども、キューバという、言うならば直接アメリカののど元にミサイル基地がもしできるとするならば、アメリカ国民の安全にとっては重大な脅威となる、こういうときにケネディはやはり核の使用ということを真剣に考えた。そのことを相手に正確に伝えた。したがって、フルシチョフとしては、これから引かざるを得なかった。こういう実績を踏まえて、六〇年代というのは、いわば平和共存、つまり主義主張あるいはイデオロギーが違っても協力していく部分があるのだという形に進んで行った。ヨーロッパにおいては、アルジェリアの戦争を終わって、ドゴールがやはり同じようなデタント考え方で、いま東と西においては対決の姿勢であるけれども、しかし東の方にもデタントの兆しがないとは言えないという一つの外交的な認識のもとにデタント政策が始められた。そしてブラントが、現実には東西両国の話し合いということの糸口を見つけて、そして七〇年代に入ってきた。そして世界の平和の基調というかあるいはデタント基調というものは、力の均衡の上に立ってデタント平和共存というものが敷かれておる。しかしヨーロッパにおいては、あるいは米ソの間においては、その関係は非常にがっちり組まれておるけれども中東あるいはかつてのベトナムというアジア、あるいは朝鮮半島には若干の危険な要素がないわけじゃない。隠されておるかもしれない。あるいは不安定な要素がある。その全体的な世界のグローバルな均衡状態が、ある局部的に破られる場合においては、やはり危険というものがあり得るのだという一つ認識がある。  兵器使用につきましても、通常兵器だけでやるのか、あるいは核もやるのかという選択があるわけでございますが、そうじゃなくて、やはり言うならば通常兵器戦術核あるいは戦略核、こういう三つ一つなんだという考え方で常にその能力というものがあるのだ、そしてそれは使うという前提でなければ抑止の働きはなさないのだ、こういう基本的な考えがあると私は思うのであります。  朝鮮半島に目を転じてみますと、グローバルな世界的な意味においては、やはりこの三つが不可欠なもので、どれが一つというわけにはいかない。しかし朝鮮半島では核の能力というものもありますよ、それを冒さなければ攻撃はできませんよという危険信号を送っておるということは、私は抑止力として当然なことだと思います。しかし同時に、それじゃ通常兵力だけで北の侵攻というものの安全性を守り得ないかどうかというと、そうじゃなくて、通常戦力においても均衡は保っておるというのがアメリカ考え方だと思います。これはファーストユーズの話をした後におきまして、時間は多少後でございましたけれども、同様の意味のことをシュレジンジャーは述べておると思うのであります。  しかも朝鮮半島の問題について非常に高い調子コミットメントをしたという意味は、やはりサイゴン陥落によって同盟諸国における動揺、心理的影響等がございました、あるいはタイあるいはフィリピン等において。そういうような同盟諸国に対する心理的な影響を鎮静させる必要もあるというような意味で、かなり強い調子のことを言ったのじゃないかというふうに思いますが、その真意は最近言っておりますように、通常兵力によっても南進を阻止する力を持っておるのだ、これはもちろんアメリカが駐留することによってという前提ではございます。しかしアメリカとしては、いま朝鮮で大規模な戦争が起こるということは望まない、望まないけれども、望まない一つのかなめとしては、やはり米国米韓条約を忠実に履行する、そして韓国にとどまるということであって初めて均衡が保てるのだ、つまり朝鮮半島全体に平和が保てるのだ、こういうふうな認識じゃないかというふうに思います。
  11. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの長官お話しで、デタントというものが通常兵力戦術戦略核兵器の総合したバランスの上に立っておるという認識は私も同感なんです。ただ、長官もちょっとお触れになりましたが、いわゆるデタントというものは、やはりアメリカとかソ連とか主な国々、東西両陣営の間の私は個々の国の関係だと思うのです。世界的にそういう情勢はない。長官もおっしゃっておるように、中東とかアフリカ等はむしろ緊張しておるじゃないか、これが本当だと思うのです。それはそれでいいのですが、私お尋ねしたいのですが、そうなりますと、ラロック氏は「「使える核」という考えは誤りで、制限的であれ戦術核使用全面核戦争に発展せざるを得ない極めて危険な考えであると強調。」こう書いているわけですね。これは数年前にこの委員会で私もお尋ねしたことがあるのです。アメリカの下院における軍事委員会で、ホロウエーという空軍大将証言をした。これはヨーロッパのことですけれどもヨーロッパNATOワルシャワ条約の勢力の問題から議員が質問いたしまして、もしあなたは通常兵力においてNATO側が劣勢であった場合には戦術核兵器を使いますか、こういう質問をしたのに対して、ホロウエー大将は、戦術核を使えば、これは必ずだんだんだんだんエスカレートしていく、だから、そのときにおける米ソ戦略核兵力の優劣といいますか、最終的に戦略核兵力においてアメリカがまさっておると判断できなければ、私は戦術核兵器を使うということを大統領に進言できないということを証言しておるわけですね。これは私は、軍人としては正しい見解だと思うのであります。  そこで私、いま長官の話を聞いておりまして思い出しましたのは、これは事実かどうか知りませんけれども、ベトナム戦争の際に、アメリカの国内においては、北ベトナムに対して戦術的な核兵器を使おうかという議論があった。これに対して自由主義諸国、イギリス、フランスあたりは、これはヨーロッパにおける米軍勢力が転用されるということも恐れたのでございましょうが、それは戦局を拡大するから使わないでほしいという要請をしたということがあったように私はいま覚えておるのです。そうしますと、アメリカ朝鮮半島における核使用というものが本当に限定できるものでないということになると、これは日本としても大変重大な関心を持たざるを得ないと私は思うのです。  一体、防衛局長もおっしゃいましたが、エスカレートするものですか、限定的に戦術核を使うことによって紛争をそこで収束できるものですか、どういうお見通しを持っていらっしゃいますか。これは大変むずかしい問題だと思うのですが、お答えできればお答えしていただきたい。われわれ国民としては、これは大変重大な問題だと考えておるわけです。
  12. 丸山昂

    丸山説明員 核の限定使用ということについて、結果的にそこで核が限定使用されたままでとどまるかどうかという御質問でございますけれども、先ほども申し上げましたように、通常兵器核兵器との間には非常に大きな敷居があるわけでございます。それを踏み越えるには相当の決断をしなければならない。また逆に、核兵器を使わないために、核兵器使用を防ぐために、通常兵力を強化するという方法が、これはやはりシュレジンジャーがそういう点を指摘をいたしております。  そこで、この限定使用という考え方は一体何から出てきているかと申しますと、限定的な核使用のできる、そういう核兵器が開発され生産されるというような状態になってくる前の段階においては、通常兵器からいきなり全面的な戦略核兵器使用という大きなギャップがあったわけでございます。それが逐次、核兵器戦術兵器化という方向をだんだんたどってまいりまして、核の抑止力のスペクトラムと申しておりますが、要するに太陽の光線を分析いたしますと、紫外線から赤外線と、こういうふうにずっと並ぶわけでございますが、そういうスペクトラムに極端に戦略核兵器が参りまして、こちらに通常兵器があるということになりますと、その間をずうっと埋める兵器ができ上がるという状態になってまいったわけでございます。これが米ソともそれぞれの技術の進歩に伴って、この体制がだんだん整ってきた。そこでシュレジンジャーの限定核使用という考え方は、要するにそのスペクトラムを、空白を埋めるということによって、米ソがともにやはり対応した抑止力の確保をねらうのであるという言い方をしておるのでございます。  そういう点で、限定核というものは抑止の面から見た場合において確かに効果があるというふうに考えるわけでございます。つまり通常兵器からいきなり戦略核に飛ぶのではなくて、その間に幾つかの段階でそういう核兵器が存在するということによって段階的に、ある事態に即してはこの兵器、つまりそのときの戦争の実態から見て、通常兵器からいきなり戦略核を使う、そういう飛躍をせずして、ある中間的なものを使用し得る、こういう場合が恐らく現実にはあるだろう。そういうものに対応して、やはりそれに使いやすい兵器というものを持っておるのだということが一つ抑止の力になるというふうに考えるわけでございますが、ただ、今度は使用をした面について考えます場合には、先ほど申し上げましたように、一たび核兵器が使われ、核の交換が行われるということになれば、これは一挙に戦略核にまでエスカレートするということは避けがたいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  13. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、私、問題の重要性は長官もおわかりいただいたと思うんですね。ベトナム戦争のときよりか、その後核兵器もずいぶん進歩いたしましたから——私、どういうふうに進歩したかわかりません。しかしシュレジンジャー長官お話しなさるときには、一体、戦術核の限定的な使用、発展しない使用というものが考えられ得るのかどうかですね。これは日本日米安保条約を結んでおるのでありますから、日本としても大変関心を持たざるを得ない、こういうことを頭に置いて話をしていただきたいということをお願いをして、次の問題に移ります。  その次の問題は、この前から坂田長官がこの委員会でもお述べになりましたのを私、伺っておりまして、日米の間の防衛分担とか防衛協力、これは私、大変大事な問題だと思うんですね。もちろん日本は憲法の制約がございます。憲法の制約がございますけれども日米安保条約というものの実効性を確保するためには、何でもかんでも足りぬところはアメリカにおぶさるのだ、アメリカ日本防衛の任務について日本は何にもしないのだということでは、これはアメリカ日本を信用しない。これは大変大事な問題だと思うのです。  いままで長官がここでおっしゃいましたことを聞いておりまして、私は、シーレーンの問題、これは別といたしまして、任務分担、機能分担というふうなこともおっしゃいましたが、たとえば対潜作戦をどうするとか掃海作戦をどうするとかいろいろあろうと思うのですが、これはいずれもポスト四次防の段階で防衛構想に取り入れられるべき内容の問題である、私は、こう解釈して大いにこれは期待しておったわけでございます。ところが、今度の日米共同新聞発表によりますと「日米両国が協力してとるべき措置につき、両国の関係当局者が安全保障協議委員会の枠内で協議を行うことに意見の一致をみた。」こう書いてあるんですね。私が想像し、国民の多くも長官の御発言に期待しておったと思う事柄が全くレベルダウンしてしまった。日米安全保障協議委員会というのは、日本側は長官と外務大臣ですが、向こうはアメリカ大使と太平洋軍司令官ですから、政治的な問題をそこで扱うのには適さない委員会じゃないか。もっぱら実際的なことをやる委員会ではないかと思うのですが、その辺がどうも私、よくわからないのですが、大臣はどういうふうにこの問題について、日米防衛協力、分担ということについていまお考えになっておるのか。また今度、シュレジンジャー長官とお会いになるときには、どういう問題を話そうとなさっておるのか、これに関連してお答えいただきたいと思います。
  14. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が日米間の防衛協力というものを考えましたのは、まず、やはりいま日米間に結ばれておる安保条約、この安保条約というものを両国の国益に照らして有効に機能させるために必要なことだというふうに思ったわけです。したがいまして、あくまでも日米安保条約という枠内においてこれをやろうというのが私の考えなんでございまして、日米安保条約を越えていろいろ話をするというつもりは実はございません。しかもその考え方は、国防会議懇談会におきましてもお話しを申し上げ、三木総理、外務大臣、その他の議員の御了承を受けたわけでございますが、いままでこういうようなことがなかったことがどうも私はわからないわけでございまして、こういうようなレベルダウンと先生おっしゃいましたけれども、そのレベルダウンであっても、そういうことから始めなければならないんじゃないかというふうに思います。  それからもう一つは、どうも日米安全保障協議委員会というものの構成が、先生御指摘のとおりであるということも私は知っております。知っておりますが、それであればこそ、実は閣僚レベルでございます向こうとこちらの責任者同士が会う必要があるのだ、そしてでき得べくんば一年に一回ぐらいはとにかく最小限度会う必要があるのじゃないか、あるいはお互いが必要と考えるならば二回でも三回でも随時会う、こういう慣行が日米関係に、防衛責任者同士にあるということが非常に大切なのだ、そのまずきっかけをつくるということでございまして、今後これがどういうふうに発展していくかということ、これはやはりもう少し時間をかけなければ、この二十年間やっていないものをここでやるわけでございますから、しかも私、シュレジンジャー長官をお呼びするについては、もう少し時間的余裕があるという前提を持っておったわけでございますけれども、しかし、これは先方の都合で日本には二日間、しかも実際会談をいたしますのは二十九日の二時間というふうに限定をされます。そういたしますると、通訳等も含めますと、中身はやはり一時間ぐらいなんで、これにはおのずとお話しし合う内容というものもやはり限定せざるを得ないのでございます。しかし、そこの糸口をつくる、日米間の防衛協力についての糸口をつくる何らかの話し合う場を持つということは非常に意味があることだし、それからもう一つは、いままで日米安保協議委員会なるものがございますけれども、われわれが防衛という立場から話し合うことによって、この日米安保協議委員会が言うならば活発に活動ができる、あるいはこれから静かに両方のいろいろな情報交換をやりながら、あるいは日本立場からいたしまするならば、憲法の制約を踏まえながらどこまでできることできないことを仕分けするか、これは単に二時間や一時間の会談で詰めるべき問題でなくて、もう少しやはり時間をかけて日米間において詰めなければならない問題じゃないか、あるいは事務的にいろいろな話し合いがある、そしてそのことを踏んまえて今度はまた私が訪米をする、そしてまた、そういうものについての政治的なお話し合いをするということで、日米安保協議委員会なるものが、確かに現地の司令官あるいはアメリカ大使と、こちらは外務大臣、私ということではあるけれども、そういう日米間における外務大臣と国務長官との年二回の定期会合が片方においては行われ、片方においては防衛責任者同士の政治的会談が行われるということによって、いままでの日米安保協議委員会の運営の仕方が新たな活動を開始するのじゃないか、それが結局は日米防衛協力の内容を高めていく一つの機関になっていく、こういうことでございまして、いま私がさしむき考えておりますことは、そういうことだというふうに御了承賜わりたいと思います。
  15. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 この共同新聞発表にありますとおり、安全保障協議委員会の枠内でも、こういう問題について協議をされる機関を設けられるということになるかどうかわかりませんけれども、されること自体は私は有意義だと思うのです。しかし、私どもが期待しておったのは、もっとレベルの高い政治的な問題、たとえば日本の対潜能力をどういうふうにするか、あるいは機雷の対策をどうするとかというふうなことになりますと、これはやはり潜水艦をどういうふうにしなければいかぬとか、あるいは対潜哨戒機をどういうふうにしなければいかぬとかいうふうな問題になってくるわけですね、ポスト四次防の防衛構想の中で。これはこういうところでやるべきではない。これはこれで結構ですが、これとは別に、日米の政府の最高責任者、防衛、外務両大臣と向こうの国防長官、国務長官との会談はやはり今後も引き続いてやっていただきたいということを思うわけです。
  16. 坂田道太

    坂田国務大臣 いまの問題、たとえば対潜能力を高めるということ、これはアメリカ側の期待もあるわけですが、しかし私から言わせると、日本は海洋国であって、四方海に囲まれ、しかも資源を諸外国に多量に受けておる、日本の生きる道というのは、やはり海上輸送というものを安全に保つということでございまして、これはもう日本の繁栄、それから日本の安全ということから考えれば、対潜能力を高めていくということは、やはり日本独自の防衛上のやらなければならないことなんです。言われようが言われまいが、もうやらなければならないことです。そういうことについて、たとえばポスト四次防でどう考えていくかというようなことは、当然私の頭の中にもあるわけでございまして、したがいまして、いまの四次防の達成状況あるいは油のショックにおいて欠落いたしました部分、これに対してどういう考え方をポスト四次防で持っておるのかということについての説明は、私は、今度も十分とは言えないにいたしましても、おおよそのことはお話しを申し上げたいというふうに思っておるわけであります。これはやはり日米防衛協力との関連がそれから出てまいるというふうに思うわけでございます。
  17. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それはそれで結構です。  ラロック氏が「朝日ジャーナル」か何かで、自分が海軍の退役前に日米の海上防衛についての協定か何かあったようなことを言うておられたように——ちょっといま資料がないのでわからないのですが、この点はどうなんですか。いままであったのですか、どうですか。
  18. 丸山昂

    丸山説明員 この「朝日ジャーナル」のラロック氏の言葉の中にそういう表現がございますので、私どもも内部的にいろいろ調査をいたしたのでございますけれども、そのラロック氏の指摘するような事実は、いまのところはっきり発見されておりません。したがいまして、私どもは、こういったものはなかったというふうに判断をいたしております。
  19. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私も、いままで国会における防衛庁の御答弁を聞いておりまして、なかったと思っておるのですが、そういうふうな発言があったものですから、やはり明らかにしておく必要があると思ってお尋ねしたわけであります。  委員長、少し時間を、二十分くらいよろしいですか。——では次に、朝鮮問題について少しお伺いをしたいと思います。  朝鮮半島の問題についての今度の共同新聞発表及び共同声明については、私は満足をするものであります。この線に沿ってこれから日本の外交が始まるわけだと思いますが、きのうの朝日新聞によりますと、今度の来るべき国連総会において日米など六カ国は決議案を出す。それは「現行の朝鮮休戦協定のワク組みをくずさず、米韓および北朝鮮間の協定に代える」「これを前提として在韓国連軍司令部を解体する」「在韓米軍は米韓相互防衛条約に基づき引き続き駐留する」こういう内容のものだ、こう書いてあります。この考え方の根本に私は賛成なんですが、これで在韓国連軍司令部を解体するということは、国連軍を解体をするということとどう違うのか。日本の政府の考え方は、司令部だけは解体して国連軍という組織は残しておくのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。
  20. 大川美雄

    ○大川説明員 いわゆる在韓国連軍と申しますのは、一九五〇年に安保理の決議に基づきまして設けられました国連軍司令部と、それからそれとは別に各国から提供されました兵力をあわせて言うものでございます。実はその休戦協定成立いたしました後、各国から提供いたしました戦闘部隊は、徐々でございますけれども撤退してまいったわけであります。現在では、国連軍司令部の本部と、それからその司令部に配属されておりますごくわずかの軍事要員が残っておるだけという形になっております。そこで、国連軍の解体あるいは撤退と申しますことは、国連軍司令部の解体という、そういった意味になると思います。
  21. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 日本の提案している国連軍司令部の解体ということは、これは国連軍そのものの解体と同じだと、こういうわけですね。そうすると、国連軍の組織はこの昭和二十五年の安全保障理事会で決めておるわけですね。これを決議案として総会へ提出するというのはどういうわけですか。
  22. 大川美雄

    ○大川説明員 昭和二十五年の安保理事会の決議では、北鮮軍の侵入を押し返すために各国が兵力を提供することを勧告する内容でございました。そこで、今度の国連総会におきまして国連旗司令部の解体、休戦協定にかわるいろいろな措置が講ぜられることを条件として国連軍司令部を解体するということは、国連総会でそういう意思が決定すれば、必ずしも改めて安保理事会の承認がなくてもよろしい、というのは、先ほど申し上げました安保理の決議は、各国に兵力を提供することを勧告するという中身のものでございましたからでございます。
  23. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 一九五〇年の十一月三日の国連総会における平和のための統合決議というのがあるわけですね。これにも「平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為があると思われる場合において、安全保障理事会が、常任理事国の全員一致が得られないために、国際の平和及び安全の維持のための第一義的責任を遂行し得なかったときは、総会が加盟国に対し、平和の破壊または侵略行為の場合には、必要に応じて兵力の使用をも含めて、国際の平和及び安全を維持し、または回復するための集団措置をとるよう適当な勧告を行う目的をもって、当該事項を審議しなければならぬ、ということを決議する。」こうあるんですね。ところが、今度日本アメリカと一緒になって出そうとする決議案は、平和のための統合決議の線に沿ったものだ、こう考えていいのですか、これを教えていただきたいと思うのです。
  24. 大川美雄

    ○大川説明員 日本を含めます数カ国で合同提案しております決議案の内容は、いまおっしゃいました国連総会の決議とは関係はございません。
  25. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そうしますと、この総会で仮にこの決議ができましても、これは勧告であって拘束力はないわけですね。その国際世論の形成の効果をねらっている、こういうことなんですか。今度の決議案はどういうことなんですか。総会でもしこれが否決されたら、かえって逆の効果を生むことになりませんか。何かやはり決議が通ることによって効果がないと、何で日本がこんな苦労してこういう決議案を出すのかなという気が私はするのですが、ちょっと外交問題はよくわかりませんので、教えていただきたいと思うのです。
  26. 大川美雄

    ○大川説明員 この決議案の一番のねらいとしておりますことは、要するに南北間の本当の意味での対話というものを推進していきたい、これが決議案の一番のねらいでございます。そのために現在の時点で最良の方法としてこの種の決議案を出したわけでございまして、各国が共同提案国の意図を理解してくれて、このような対話の増進に寄与するような形でこの決議案が採択されますことをわれわれとしては期待しておるわけでございます。
  27. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 わかりました。そうすると、仮にこの決議案が多数をもって可決されますと、国連軍の解体ということは即座にできるのですか、あるいはまたどういう手続が要るのですか。
  28. 大川美雄

    ○大川説明員 この決議が採択されますと、現在の休戦協定、これは過去二十何年朝鮮半島の平和安全のために非常に大きな役割りを果たしている休戦協定の中身、内容を何らかの形で将来引き継ぐような取り決めができることを前提としての国連軍の解体でございまして、決議が通りましただけでは、直ちに司令部の解体ということにはならないと思います。
  29. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私、ちょっと忘れておったが、これは来年一月一日から廃止するという内容でしたね。——わかりました。  もしこれが廃止になりますと、現在日本は国連軍と地位協定を結んでおるのですが、いま国連軍地位協定に基づいて施設、区域を何カ所提供しており、どういう内容のものかということをお答えいただきたいと思います。これはこの決議が通ると、明年の一月一日以降はなくなる、協定が失効するのですけれども、そこの点を教えていただきたいと思います。
  30. 松永信雄

    ○松永説明員 国連軍地位協定につきましては、地位協定の第二十四条に書いてございますように、国連軍が朝鮮から撤退していなければならない日の九十日後に日本から退出しなければならない。国連軍地位協定日本から国連軍が撤退する日に終了するというふうに定められているわけでございます。
  31. 山崎敏夫

    山崎説明員 現在国連軍に提供しております施設としては十一ございまして、これは具体的に申し上げますと、キャンプ座間、それから府中の空軍施設、それから立川の飛行場、横須賀の海軍施設、佐世保の海軍施設、キャンプ朝霞、横田の飛行場、それから嘉手納の飛行場、普天間の飛行場、ホワイトビーチの地区、それから最後に岩国の飛行場でございます。
  32. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 わかりました。それで結構です。  次の問題へ、時間がないから少し急いでまいりたいと思いますが、ASEANの協力の問題について簡単にお尋ねをいたします。  日米首脳会談後の記者会見で、三木総理が東南アジア諸国連合に対する協力の強化を言っておられます。私このことは非常に結構だし、経済大国としての日本が、日米安保条約信頼性を確保するためにはこういうことは必要だと思うのです。この間現在日本がASEANの諸国に対して援助しておる具体的な内容というものを私、教えていただきました。この三木総理発言による今度の日米首脳会談後の日本のASEAN諸国に対する援助というものは、どういう形で外務省は行おうとしておられるのか。またASEANの諸国からはどういう援助を日本に望んできておるのかということをお答えいただきたいと思います。
  33. 高島益郎

    ○高島説明員 実は東南アジア諸国に対しましての経済協力という点で、ASEANといいますのは組織としてのASEANでございまして、もう一つは、ASEANの諸国と申しますのはタイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシアの五ヵ国でございます。この五ヵ国に対しましては、従来からそれぞれの二国間の関係におきまして、先方の要請に応じて民生安定及び経済開発等の目的に資する経済協力を行ってきております。今後もその線に従いましてやっていくつもりでございます。  いま問題がありますのは、ASEANという機構に対しましてどういう協力ができるだろうかという問題でございますが、これまで日本がASEANという機構と関係を持ちましたのは、合成ゴムの問題につきまして日本の合成ゴム生産がASEAN諸国、特にマレーシアの天然ゴムの生産あるいは輸出に非常な影響を及ぼすという問題がございまして、この問題を契機に日本とASEANという機構との間でいろいろ会合を重ねてまいりました。ことしの七月の会合を含めまして過去三回会合をいたしております。現にASEANという機構との間に何らかの協力を持つといたしますれば、考えておりますのは、この天然ゴムの新しい用途の開発に関しまして先方から技術協力について要請がございますので、現在この点につきまして具体的に検討をいたしております。これだけにとどまらず、将来におきまして、このASEANという機構を強化するために、日本としてもしかるべき協力をしていく必要があるというふうに考えております。
  34. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大変結構なんです。私、去年タイ、マレーシア、インドネシアを回ってきましたけれども、やはりASEANの各国に対する援助ということも必要ですけれども、これからはやはり東南アジアの平和と安全の問題を考えますと、ASEANという機構が強くなってもらいたいと私は思うのです。ASEANという機構に対するプロジェクトに対して援助するという方向をお考えいただいておるということで、私は非常に満足でございます。  その次の問題は、インド洋の問題ですが、現実の国際政治の流れと申しますか、動きから見ておりますと、すでに大西洋というものはきのうの海であると思うんですね。今日の海は太平洋ですよ。しかし資源を中心とした世界の流れから考えますと、私は、インド洋こそ明日の海だという気がしてならないのであります。今度の日米首脳会談で、東南アジア諸国の問題には触れられたようでありますが、インド洋の問題について触れられなかったやに新聞では承知するわけですが、これは私は非常に残念だと思っているわけです。  そこで、数年前から国連にインド洋の平和地帯、ピースゾーンの案が出ておるわけですね。これはいまどういう審議の状況になっておるのか。日本もその委員会のメンバーであるようですが、日本はこれに対してどういう態度をもって臨んでおるのかということについてお答えいただきたいと思います。
  35. 大川美雄

    ○大川説明員 インド洋平和ゾーンの構想が初めて出ましたのは、先生がいまおっしゃいましたとおり、いまからちょうど四年前の国連総会でございます。それはスリランカといった国を中心に提案されたわけでありますが、この内容と申しますかあるいはその目的、目指すところは、インド洋における緊張の緩和、平和と安全の維持のために、あの地域における各国の軍事プレゼンスを今後増強しないということをねらっておる、こういうことではないかと存じます。翌年、いまから三年前の四十七年でございますが、これをもう少し詳しく検討するために特別の委員会が設けられまして、それがその後数回会合をいたしております。  ところが、まずそのインド洋の地域、範囲がなかなか合意が得られませんということが一つ、それからインド洋周辺にあります外国の軍事基地、これは何を指すのであろうかといったような定義あるいはその概念上の問題がございます。いま一つは、あの地域におります国々の必ずしもこの構想に対する態度が一致していない。たとえばインドの思惑とパキスタンの思惑が必ずしも一致していないというようなことがございます。それからそのほかに、アメリカソ連、イギリス、フランス、そういったような国々が、まあいろいろの配慮がございましょうが、必ずしも非常に積極的に熱心にこの構想を支援するというような姿勢を打ち出しておりませんので、この審議はまだ若干の時日がかかるのではないかと思っております。  これに対するわが国の態度といたしましては、これはやはり国際緊張の緩和といったような点、それから全面完全軍縮を推進する一歩になるという観点から、原則として賛成の態度をとってまいりました。ただし、無条件に賛成ということではございません。たとえば公海自由の原則を確保するとか、それから軍事大国を含むすべての関係国の本当に完全にその中身について合意を得た上でなければこれを設定することはむずかしい、関係国全部が合意することが条件である。それから沿岸国その他の関係国の安全保障について適切な措置がとられること、あるいは検証上の問題がはっきりするといったようなことが実現すれば、日本としてはこの構想に賛成である、こういう態度をとってまいっておるわけでございます。ことしの来月の十六日から始まります第三十回国連総会においても、この問題は引き続き議題に計上されておりまして、審議が行われる予定でございます。
  36. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 去年も国連総会で第一委員会の決議が採択されておるようでありますが、それを見ると、やはりアメリカソ連、いずれも棄権をしておるような状態ですね。これはやはり私、いまの日本の態度は態度として結構なんですが、アメリカ日本との間でもっと緊密な連絡をとってこれが推進をするようにぜひしていただきたいという希望を申し上げておきます。  時間がもう大分超過いたしましたので、最後に一つの問題を。  人事院勧告が出まして自衛官の給与の改定がまた行われるわけでありますが、長官の大変な御努力によりまして、隊員の食糧費三十億という予算がことし取れたわけですね。この三十億の予算は、今度の給与改定の際にはどういうふうに取り扱われるのでしょうか。それをお答え願いたいと思います。
  37. 今泉正隆

    ○今泉説明員 お話しありましたように、三十億の予算を計上しておるわけでありますが、これにつきまして営舎内居住自衛官の処遇改善をいろいろ考えました結果、営舎内に居住をいたしておりますという法的な拘束性に加えまして、他の国家公務員と比べまして営舎内の食事の点で明らかに自衛官という特殊性があると思われます部分、関係省庁とも調整いたしました結果、食糧費は年によって変わりますので一概に言えませんが、現在の一万一千六百五十円ベースで申しますと、八千百円余り、これを俸給額に戻そう、これを三十億円という予算との見合いで来年二月からこの部分を戻そう、俸給に加えるということで現在鋭意作業中でございます。
  38. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 来年二月から戻すということは、今度のベースアップ、人事院勧告に従って給与を一応改定する、来年二月からはどういう形で戻すのですか、また給与表を変えるということになるのか、その辺は具体的にどうなんでしょうか。
  39. 今泉正隆

    ○今泉説明員 今回のいわゆるベースアップ、給与改定の法案を提出いたします際に、来年の一月末までの分と二月一日以降の分とを合わせて提案をしたいと思っております。
  40. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 わかりました。  これで私の質問を終わります。
  41. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後零時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後零時三十五分開議
  42. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の防衛に関する件について質疑を続行いたします。大出俊君。
  43. 大出俊

    ○大出委員 時間がきわめて短いわけでございますから、なるべく能率的に質問をさせていただきたいと思っております。  日米会談その他を経まして、大臣、どうも大変御苦労続きのところにこの委員会に御出席を賜りまして大変恐縮でございましたが、事防衛、外交、裏表でございますので、そこから入らざるを得ないという気がいたしますので、お許しをいただきたいと思うのであります。  そこで、日米共同声明並びに共同記者発表なるものが出されたのですが、これは中に問題点が幾つもございますが、その前段に、私、四月三日に大臣にこの席で御質問申し上げたのでありますが、四月三日というのは、ちょうど九日でございましたか、大臣がアメリカにおいでになる、そういう時期でございました。一つ気になるのは、その前の与党の三部会合同会議等も開かれて、核防条約の批准という問題も当時ありましたが、アメリカ側に対して安保条約の継続的維持強化という基本線を持っておいでになって、対米折衝をなさった。これはアメリカ新聞にも当時出ておりましたが、日本側から安保条約の継続的維持強化を大臣の口を通じてアメリカ側に申し入れをした。アメリカ側としてはこれを非常に喜んだ形になっている。  そこで、後から申し上げますけれども、ニクソン・ドクトリンは死んでいるわけじゃないわけでありますから、このニクソン・ドクトリンの中では在韓米軍は撤退をするという方向になっているわけでありまして、いまは、三万八千ぐらいと言われていたものが四万二千ぐらいいるようでありますが、この在韓米軍についても、今回の総理のアメリカにおける御発言等々とあわせまして、日本側からも在韓米軍については継続的にいてほしいという日本意思表示をされている、この二つの点。つまり安保条約の継続的維持強化という問題は、ポスト・ベトナム、あと旬日を経ずしてサイゴン陥落という時期に、大臣がその意思アメリカに行って向こうに物を言われたという点、世の中そう書いておりますが、そういうことなのかどうかということ。あわせて、在韓米軍の継続的駐留問題も、日本側の意思がそうであるのかどうかという点。この二つを一番最初に承っておきたいのでありますが、いかがでありますか。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 安保条約のいわゆる確認と申しますか、という問題は、沿革的には大出委員も御記憶のように、いわゆる核防条約の批准の承認を国会にお求めをすることに関連いたしまして、自民党の内部に、わが国の安全ということとの関連において安保体制の確認を必要とする意見が強く出たわけでございまして、それとの関連で私がキッシンジャー国務長官と話をいたしたわけでございます。たまたまその時期は、まさしくインドシナ半島の情勢が急迫した時期ではございましたけれども、それとの関連であったわけではなく、主として核防条約との関連において与党内にございました議論に基づきまして確認をいたしたわけであったのでございます。  それから、先般の三木総理大臣の訪米に当たりまして、韓国に米軍がしばらく駐留することが関係各国にとって望ましいことである、日本にとっても望ましいことと思うという趣旨のことは、三木総理大臣がプレスクラブ等々公の席において述べておられますので、わが国政府の態度とお受け取りくだすって結構であると思います。
  45. 大出俊

    ○大出委員 ここで防衛庁長官にもちょっと一言承っておきたいのですが、在韓米軍の継続的駐留ということ、これは日本の安全という角度からどうしても必要である、こう理解をしていいわけですね。これは新聞の記事ですから、あるいはそのままでないのかもしれませんけれども新聞の報ずるところによると、防衛庁の見解として、在韓米軍がもし撤退をする、いなくなるとなると、日本防衛というものを根本的に検討し直す必要があるとまで言っている方があるわけでありますが、そこのところは防衛庁長官、いかがでございますか。
  46. 坂田道太

    坂田国務大臣 白米会談三木総理並びに外務大臣がお話しになりました意味において、朝鮮半島に事が起こればやはり日本影響を及ぼしてくるという、そういう意味において、現状変更がない状態、それがやはり安全なんだ、こういう意味において、やはりその現状を維持しておるいわゆる駐留、朝鮮半島における、韓国における駐留というのは意味があるというふうなことであると思います。
  47. 大出俊

    ○大出委員 これは防衛というサイドからとらえて、在韓米軍がいなくなるということは日本防衛を根本的に再検討しなければならぬとまで言う人があるとすれば、一体防衛という側面でその布韓米軍が日本の安全のために必要だという根拠といいますか、一体それはどういう見方、どういう根拠で在韓米軍というものがいなければ日本の安全が損なわれる、こういうふうにごらんになるのか。それは兵力比較だとかいろいろございましょうが、一体どこにそのポイントがございますか。
  48. 坂田道太

    坂田国務大臣 軍事的な側面につきまして詳しいことは、防衛局長からお答えをいたすわけでございますが、私どもといたしましていま必要なことは、現状変更がないということ、そのために、韓国から米軍が撤退をするということは現状変更をするということ、やはりこれは危険な要素がある、こういう意味においてやはり日本影響する、こういうふうに考えております。
  49. 大出俊

    ○大出委員 これは後で詳しく聞きたいと思ったんですけれども、せっかく口にしましたから、その詳しくはというところをひとつおっしゃっておいてください。
  50. 丸山昂

    丸山説明員 ただいま大臣から申し上げましたように、基本的には朝鮮半島の軍事的な均衡が保たれておるのは、在韓米軍の存在を含めてであるという判断をしておるということが根拠でございます。これはもう先生に申し上げるまでもございませんが、韓国が陸約五十六万の勢力と、それから海は余り大したことはございませんが、空が約二百機でございます。それから北の方が、陸が四十一万でございまして、海は若干のミサイル艇、潜水艦を持っておりますけれども、余り大した勢力ではございません。空が韓国の約三倍、六百機の作戦機を持っておるということでございまして、この空の大きな落差というものを在韓米軍等によって補強しておるというふうに判断をしておるわけでございます。  先ほど先生からお話しがございましたように、韓国から米軍が撤退した場合において、日本防衛計画を抜本的に検討しなければならないというお話しでございますけれども、私ども在韓米軍の撤退それ自体だけで日本防衛計画の変更ということを強いられるかどうかということについては、必ずしもそう考えておりません。在韓米軍の撤退につきましては、いろいろ前提条件があると思うのでございます。韓国の軍事的バランス、現状変更をできるだけ避けるといういろいろな外交上の御努力、こういったものがあった結果として、韓国の米軍が撤退するというような事態も考え得られますので、直ちに在韓米軍の撤退それ自体日本防衛の見直しということにはならないというふうに考えるわけでございます。
  51. 大出俊

    ○大出委員 この問題は、いま国連総会——九月の十六日からでございましょうが、安保理事会等が開かれてきておりますし、斉藤大使が議長でございますから、議長国でございましょう。その問題とも絡みますしいたしますので、それをひとつ、もう少し質問をいたしましてから、詰めたいと思うわけであります。  そこで、もとに戻していただきまして、日米の共同記者発表が行われたわけでありますが、この中で、韓国条項、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明のときの声明の内容、それからナショナルプレスクラブで佐藤総理がお話しになった、これは印刷したものでありますけれども、いわゆる韓国条項、これとの関連で、ひとつはっきり御見解を承っておきたいのでありますが、この第三項でございます。第三項で「両者は、韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」この点を総括的に見て韓国条項の再確認と受け取っていいかどうかという点、外務大臣の口から直接承りたいのでございますが、いかがでございますか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は私どもワシントンにおりまして、この共同新聞発表を記者団諸君に御紹介をいたしたわけでございますが、その後東京から、あるいは東京新聞等々におけるコメントを見ますと、これが韓国条項と一緒であるか違うかというような議論が大分あるようでありまして、私自身率直に申しますと、どうもどこにそういう議論をしなければならない問題があるのであろうかというような、素直に申しますと私はそういう感じがいたしたわけでございます。実はいまだにややそういう印象を持っております。どこが違うか、どこが同じかと言われましても、ちょっと論理的にはっきりお答えがしにくい。私自身、実は何ゆえそういう問題が提起されたのであろうかという、問題の中身がきちっと把握できないような、率直に申しますとそういうところがあるのでございますが、まず事実関係を申しますと、今回の三木・フォード会談において、一九六九年の佐藤・ニクソン会談の結果発表されましたコミュニケの中のいわゆる韓国条項——いわゆると申しておきますが、について、どちらからも言及をしたことはなく、話題になったことは一遍もなかったわけでございます。これは事実問題として申し上げておく必要があろうと思います。  次に、新聞発表の第三項でございますけれども、これを私、強いて申しましたら、問題を朝鮮半島の問題としてとらえる、ということは、半島には南北両方があるわけでございますから、韓国だけに焦点を当てるというよりは、結局朝鮮半島の安定は南と北との関係、関連ということに尽きますので、従来から韓国に焦点を当てておったそれをもう少し——朝鮮半島の最終的な安定というのは、結局は一九七二年の共同声明の精神の延長上で、最終的には話し合いによって行われなければ恒久的な安定、平和というものは来ないという認識が私どもにございますから、そういう意味では韓国だけに何かこう注目を集めるよりは、やはり南北の関係というものから説き起こすことの方がより建設的なのではないか、そういうことから「朝鮮半島における平和」というふうに申しまして、それが東アジア地域、ひいてはその中にわが国が含まれるわけでございますが、それに必要である。また、この「必要」というのと「緊要」とあるのとどう違うかというような質問も当時なされたのでございますけれども、私ども特にわざわざ言葉を選んだわけではない。特に別の言葉を使う必要があるとも思わなかったし、同じ言葉を使う必要があるとも思わなかった。現状を比較的素直にここに述べただけのことである、こういうふうに私自身も思っておりますし、総理大臣もまたそのように説明をしておられるところだと思います。
  53. 大出俊

    ○大出委員 この辺ははっきりしていただかぬと私は困ると思うんですよ。外務大臣がお帰りになった十三日でございましたか、新聞記者にもいろいろお話しなさっておられますし、党内にも御説明になっているわけですね。そこで新聞が取り上げておりますのは——これは外務大臣がおっしゃっているのは、韓国条項の再確認、違ったものでないという、そうお取りになるならそれでもよろしいという言い方を実際にされているわけですよ。直接私は、記者の方にもお目にかかって、念のために念を押しました。で、ここに書いてあるのは違うのかと言ったら、いや、違いませんよ、ここはこういうふうに言ったからそう書いたんだと言う。宮澤さんは、韓国条項の再確認と受け取ってもそれはかまわない、それが一つ。まあ韓国条項に朝鮮半島といわばつけ加えたようなことなんだから、したがって縮めていけば同じようなことになりますよと。ところが、総理がそう言わなかったというわけですよ。総理の方は、この韓国条項を再確認したかどうかの問題というよりは、現実を直視してみたらこうなったということなんだというのが総理の説明なんですね。これは国民ひとしく注目をする共同新聞記者発表の中心点なんですから、ここらあたりで総理の御見解と外務大臣の御見解とが違うとなると、とかくいわゆる外務省と総理の——国際しょうがない大学の教授だから、あれはしようがないんだなんという話じゃ済まぬわけですよ。やはりこれは国のなにですから、悪口を言うわけじゃないけれども、そういうところまで問題が行ってしまう。そうすると、国民サイドから見ると、われわれのサイドから見ても、ワンクッション置いたのだということ、あるいはいや縮めていけば韓国条項なんですよと言い、片っ方で、いや、韓国条項なんというものじゃないのだ、現状を直視すればこうなのだ、これじゃ一体真意のほどがどこにあってこういうものをつくったか、合意したか、これは非常に疑わしくなる。日本の将来にとってこれは大変大きな問題になる。あなた自身おっしゃった、口から出したことがあるのだから。だから実は来ていただいたわけです。  そこのところは、いまのようにおっしゃると、三木さんが言ったことと前に宮澤さんがおっしゃったことの真ん中で物を言っているようなことになるわけで、そこのところをひとつもう一遍、どうなのかをはっきりさしていただけませんか。韓国条項というものは確認はしない——佐藤さんが御自分で途中で政治情勢の変化ということで訂正された時期がありました。木村外務大臣がはっきり、そういう時期ではないと言い切ったことがありました。だから、四月三日に私がその点についてちょっと触れたんだが、あなたはアメリカに行って、韓国条項を再確認した、こういうことだったわけです。今度はどうもそうじゃないのだと言われたんじゃ、では、この間の記者発表はどうなんだということになるので、そこのところをひとつはっきりしてください。いかがでございますか。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは当委員会でも、すでに御報告を申し上げたかと思うのでありますけれども、私が四月に訪米をいたしましたときに、共同記者会見のときに一外人記者から、いわゆる一九六九年の佐藤・ニクソン声明の韓国条項をいまでも確認するかという質問がありまして、私は確認すると答えております。そのときに私が韓国条項として考えておりましたのは、申し上げるまでもありませんが、一九六九年十一月二十一日の佐藤・ニクソン共同声明の第四項「総理大臣は、朝鮮半島の平和維持のための国際連合の努力を高く評価し、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であると述べた。」この部分を韓国条項と指すものと私は考えておるわけであります。  それで先般、三木・フォード会談の後この共同声明のブリーフィングをいたしましたときに、このたびはこういう違った表現であるから、それではこれは韓国条項というものと何か違うものであるか、こういう質問がありましたから、私は、これを韓国条項だと——一九六九年に佐藤総理大臣がニクソン氏との間に出しました第四項、そのことと同じ趣旨のことかとお尋ねになるんなら、そうお考えくだすって少しも差し支えないと、そのとおり私は申しております。  そこで、三木総理大臣が私と同じような表現をされないのは、何といってもそれは政治家としてのキャリアも違い、政府におけるお立場もより総合的なお立場でありますけれども、私が思いますのに、恐らく三木さんのおっしゃりたいことは、いまでもその「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」ということは、認識論としてはそう思っておられないはずがないのですけれども、わざわざ共同発表の中で朝鮮半島から説き起こしたというその一つには、将来の対話につながる、そういうわれわれの物の考え方をひとつぜひわかってもらいたいのだ、こういうふうなところへ重点を置いて言っておられる、こういうふうに私は見ておるわけであります。
  55. 大出俊

    ○大出委員 だから、事問題なんでお出かけいただいたわけなんです。これはどこの新聞の方々もひとしく、せっかく行って、ポストベトナムという時点で国民が注視している日米会談であった、そしてこれがその焦点なんですね。韓国条項というものは、木村俊夫さんのときに意識的に変えようとされた。率直に言えば、私は大変それを歓迎したわけですよ。人間的にも木村俊夫さんという人は宇都宮さんとも仲のいい方でございますが、佐藤さんが総理をおやめになってからの動きの中に、沖繩返還のあの時点、つまりベトナム戦争のピークであった時期でしたから、あのプレスクラブで物を言われた中身というものは少し前へ出過ぎたなという感じがあって、その後私は佐藤さんに三回ぐらい質問していますけれども、御自身のニュアンスにそれがある。そうすると、佐藤さんと木村さんのつながりもある。だから、それをこう引き戻してきた。ところが、宮澤さんになってがらりと変わったことになる。つまり、それはポストベトナムという時期があったり、あるいはお話しのように、まあ力んで物は言いませんが、核防条約の問題が党内にあった時期だったからそういう結果になったかもしらぬ。しかし私どもからすれば、大臣がかわるたびに外交姿勢、外交方針がころころ変わったんじゃたまったものじゃない。プリンシプルがないなんということじゃ外交はできないと私は思うわけですよ、この国の将来の安全のためにも。  だから、三木さんが帰ってきて——三木さんは帰ってきて一遍も国会へ出てこないんですからね。そうでしょう。外務大臣しか出ておいでにならない。だから、そんたくするすべもないけれども、記者の方々にお答えになっている面からすれば、これは明確に違う。じゃなぜ違うのか、そこから先がいまお答えになるのと私の認識とは少し違う。  それは、幾つかの新聞がお書きになっている原案なるものがある。これは三木さんがおいでになる前に、ここで私が質問したときに答えた中身とほとんど一緒です。だから、ここにあるのは三木さんの考え方だったのです。ここでは、原案で言うと「総理大臣大統領は、朝鮮半島における平和の維持がアジアの平和と安定にとり緊要であることに意見の一致をみた。両者は、かかる平和を維持するための現行の安全保障の仕組みの重要性に留意した。」原案と称するものと二つ違いがあるんですね。つまり、この原案なるものの中には韓国の文字は一つも入ってこない。明らかに朝鮮半島全体としてとらえている。防衛二法のときに私がこの席で三木さんに質問したときにも、朝鮮半島全体としてとらえるという点は全く御指摘のとおり意見一致する、だから、アメリカに行ってもそういう方向でいきたい、はっきりこうおっしゃっていた。ところが、結果的に韓国の文字が入ってきて、これはワンクッション置くかっこうになっている。そうでしょう。そうすると、三木さんがいまになってもなおかつ言わないのは——その後、私も関係の記者の方々に、アメリカに行った方もおいでになるのですから、いろいろ聞いてみた。そうしたら、外務当局と向こうとで、事務当局同士でこの原案というものはほぼ合意に近かったものだと言われている、真意はわかりませんよ。ところが、全欧安保会議からお帰りになったフォード大統領、キッシンジャー国務長官、ここのところでがちんとそれは困るという。そのときに一番先に、アメリカ側がそれでは困る、韓国を入れるということについて賛成をなさったのは外務大臣だという。これはたくさんの方がいろいろ調べているのだから、当たらずといえども遠からずということになる。あなたが三木さんを説得したら、三木さんが国会答弁をしてきた枠の中、範囲ならばよろしいということを最終的に言った。原案が変わってこうなった、こういうことですよ。  そうすると、三木さんの頭の中では、国会で私どもに答えているわけだから、その認識、これで行こうと考えている。ところが、そこで変わってお認めになった外務大臣の方は、韓国条項の再確認、この認識がある、だから違う。これが根本的な問題だ。したがって、おいでをいただいて、やがて次の国会で総理に私が質問する機会もあるかもしれないが、ここできちっと外務大臣の物の考え方は承っておかぬと、シュレジンジャー氏はいま韓国にいるわけですから、後の問題につなげるのにまことにこれは基本的認識なんですから、そこで実は外務大臣にいまの点を解明していただきたいのです。これはひとしく抱いている疑問でございますが、いかがでございますか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず某新聞に掲載されました原案と称せられるものでございますけれども、私は、その原案というものがある、これが原案であるという記載は不正確であると思います。そもそも、こういう共同声明のようなものには、あるいは共同新聞発表のようなものには、いわゆる原案というようなものはもともとないのでありまして、作成の過程は、両国とも事務当局がおのおのの考えを何度か何度かおのおので書きまして、第何次案、第何次案というふうにつくり上げてまいります。その上で、ある程度両国がおのおのの立場考えましたものを突き合わせてみまして、その上で共同で一つのものを作成して、その段階では無論わが国の場合でございますと私、アメリカの場合でございますと国務長官でございますが、間接に当然意見は申しまして、そうして最後のものができ上がっていくわけでございますから、どれが原案かというようなものは性質上存在しない、このことをまずはっきりさせておきたいと思います。  それから次に、先ほどのこうこうこういう経緯があってという伝聞としての御紹介がございましたが、詳しくは申し上げませんが、それは実は余り正確な伝聞ではないと思います。最終的にはキッシンジャー氏と私とが、直接会って話はいたしませんでしたが、この辺のところでいいのではないかということで共同声明、共同発表ができたわけでございますけれども、そういう伝聞というのは実は余り正確ではない。  実は、この韓国条項という話が、どうも私自身に問題のあり方がわかりにくいと思いますのは、たとえば先ほど木村前外相の話をなさいましたが、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」というこの佐藤・ニクソン声明、これは恐らく私どもの党内でございますと、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であるかと聞かれて、緊要でないと答える者はきわめて少ないのではないだろうか。木村前外相も緊要でないと思っておられるとは私にはとうてい思えない。緊要であるという認識は、少なくとも政府部内あるいは私どもの党内では、ほぼ大多数が支持をしておる考えではないかと思います。  そうしますと、今度は、朝鮮半島の安全はわが国の安全にとって緊要であるか、必要であるかということになりますと、それも答えはイエスである。何となれば、韓国というのは朝鮮半島の中にあるわけでございますから、これがこの朝鮮半島のほかでございますと、いろんな議論が発展するのだと思いますけれども朝鮮半島には韓国と北側しかないわけでございますから、その安全がわが国にとって大事であるということを、朝鮮半島という表現にしても、韓国という表現にしても、実は両方に矛盾があるとは私には思えない。そうじゃないでございましょうか。  というのは、朝鮮半島の安全というのは、南北の関係が平和で繁栄しておれば、あるいは南北というようなものが仮に平和な方法で一緒になってしまえば全く朝鮮半島は平和なのでありますし、そうでない場合には朝鮮半島は平和でない。朝鮮半島が平和でないということは、恐らく南、北両方にとって平和な状態でないということでございますから、その両方を分けて議論をする考え方は、どうも私には大変腑に落ちない。御質問があってもお答えをするのに、私は実は苦労をしておるようなわけでございます。正直を申しますと。ですが、先ほど申しましたように、今回の共同声明朝鮮半島というところから書きましたのは、問題は韓国だけではなくて南北の関係ですよ、このことは先々はやはり話し合いで解決をするのが本当ですということをにじませたい。これはちょうど昭和四十八年の田中・ニクソン声明は、やはり朝鮮半島から実は語りかけておるわけでございます。あのときには南北対話というものがちょっといい兆しを見せました。ですから、そういうわれわれの思いというものがここに込められていることは事実でございますけれども、さりとて韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であるかと言われれば、それは緊要であるとやはり答えることになるには変わりがないと思います。
  57. 大出俊

    ○大出委員 七二年の南北対話はホットラインの協定まで結んだわけでありますが、これは一つは、米中会談という歴史的に大きなデタントへの方向が出てきて、韓国、台湾の頭越しでニクソンさんが中国へおいでになるという、これが一つ大きなてこになっていると見ていいと私は思うのです。つまり、その辺に国際的な大きな変化があった。その辺から実はこの朝鮮半島全体としてとらえるという発想が出てきた。  ところで、一九六九年十一月の、これはニクソン・ドクトリンの後ですけれども、この時点というのはベトナム戦争のピークであり、わが方は沖繩を返せというときでありますから、したがってストレートで韓国とつながってしまっているというわけですね。  しかし、今後の共同声明は三木さん流に言葉をかえたような感じがするが、どこから詰めていっても同じこと。それで、あなたの方は、外務大臣はそう受け取られてもそれはいい、詰めていけばそうなりますとおっしゃっている。そこで、三木さんはどうなんだと言うと、総理はどうしても言わない。あなたはそこで真ん中に入って、キャリアの相違だ、こう言う。議会の子である三木さんと、あなたはまだ議会の子になっていないのかもしらぬけれども、三十七年ですか、フォードさんが三十五年だというのだから、三木さんはより議会の子だというわけですな。だから、それでは議会の子であり過ぎるからずるいのですか。三十七年もやるとずるくなるわけですな。だから、議会対策もあって正直に言わない、それだけのことだ。それでは、詰めていけば三木さんも一緒だとはっきり言い切れますね。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではないのでございます。つまり私としては、過去における両国間の首脳共同声明というようなものは、これはやはり情勢が完全に変わりません限り、両国を政治的には拘束をするものでございますから、そういうことをやはり所管の閣僚としては常に現実的に大切に考えていかなければならない立場でございますし、無論総理大臣は同じ立場を持っておられますけれども、やはり将来に向かって朝鮮半島の問題をどういうふうに考えていくかということに重点を置いて説明をされる、あるいは考えられる、これはもう私は当然のことであろう、国のリーダーとしてはそこへ重点を置いて物を考え説明していかれるということは、これは私は当然のことであろうと思います。
  59. 大出俊

    ○大出委員 だが、これはくどいようだけれども、外務大臣と総理大臣考え方は詰めていけば一緒なのかと言ったら、いや、そうじゃないのだとおっしゃるんなら、違うということになる。一つのものに一緒に行って出してきて違ったのでは、これは話のほか。  だから、私の聞いているのは、議会の子は議会の子で結構だけれども、いろいろ考えて言い方を気をつけているのだというならば、それでもいいけれども、期するところは一緒だ、違いがないのだということならば、ないとはっきり言い切ってくれぬと、いや違うのですと言われたのでは、一つのものをめぐって別なことを総理と所管の大臣とが言い合っていたのでは話が進まないでしょう。いかがでございますか。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、はっきり違いはないと申し上げておきます。私は、足元のことを、過去における共同声明であるとか、いま韓国におけるいろいろな政治情勢であるとか、あるいは少し緩和いたしましたけれども、南北間にいっときかなり緊張した状態があったというようなことを絶えず、つまり韓国側あるいは北側に対する国会における御説明あるいは新聞記者諸君との話等々がどういう影響を与えるかということを当然考えて、そういうことに重点を置いて申さなければならない立場でございますし、総理大臣としては、無論そういう現実認識はお持ちであるけれども、将来わが国をこういう問題との関連でどういうふうに持っていくか、将来隣国あるいは隣接地域であるこの地域がどうなっていくことが望ましいかという先を見て、そういうことに重点を置いて説明をされる。重点の置き方だけのことであって、韓国の安全が日本自身の安全にとって緊要であるかないかという認識論においては、私は異なるところがあるとは思いません。
  61. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、これは韓国条項の再確認だと言っても言い過ぎではないことになる、同じことだということになる。  そこで、もう一つここでつけ加えて承っておきたいんですけれども、後の方についている「両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」この「安全保障上の請取極がもつ重要性に留意した。」というこの「請取極」というのは、一体何を指しているのかという点ですね。ここに「ハビブ米国務次官補は、この諸取極が米韓防衛条約朝鮮戦争の休戦協定日米安保条約を指すと説明したが、」こういうことが載っていますけれども、一体この「請取極」というのは、どういうニュアンス、どういう認識でここにお入れになったということになるのですか。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、これを起草しておりますときに、両国の関係者の頭にありましたものは、例の国連軍解体に関する決議であったわけでございます。そしてその中において、国連軍を解体するということは、場合によっては来年の一月一日からでもやってしかるべきことと思うが、その際に、しかし一九五三年の停戦協定というものの枠組みを取ってしまうと平和の基礎がなくなってしまうということがわが国の立場であり、米国立場でもある、それで共同決議を出しておる、それが頭にございまして、この「安全保障上の諸取極という言葉が出てきたわけでございます。したがいまして、ここで申しますことは、休戦協定、それから無論米韓条約もあろうと思いますが、それが主として私どもの頭にあったわけではありますけれども、論理的に詰めていきますと、それなら国連軍の地位協定はどうか、これも関連がございます。また日米安保条約、これもわが国の安全、その関連において一定の地域における安全が結びつけられておるわけでございますから、周辺的にはそういうものが含まれるかというお尋ねであれば、論理的にはそれは関係があると申し上げるべきだと思います。
  63. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、休戦協定はもちろんのこと、国連軍の地位に関する協定がありますが、これもそう。あと米韓条約なり安保条約なりというもの、その周辺まで含めて「請取極」という、こういうことですね。  そこで、もう一つここで承っておきたいことは、この六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明のときの佐藤総理のナショナルプレスクラブ演説ですね。これは事前協議に絡みますが、「韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設、区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」「前向きにかつすみやかに」という旧来議論されてまいりました問題、この点は、今回の共同新聞記者発表との関連において、さっきの前段の御答弁による韓国条項と変わらぬものであるという認識ならば、当然このことも含めて考えなければならぬことになる。私は、脈絡からすればそういうことになる、こう思うのでありますが、いかがでございますか。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 冒頭に私がいわゆる韓国条項と申しますのは、昭和四十四年十一月の佐藤・ニクソン会談の第四項を指すものと考えまして、と答弁を申し上げております。私がいままで申し上げましたことは、そういう定義に従ってお答えをしておるわけでありまして、佐藤さんがただいま御指摘のように、当時ナショナルプレスクラブでなされた演説、この演説そのものにつきましては、実は佐藤総理がその後何年かの間に、これは表現としては適当でなかったというようなことを国会で言っておられます。したがいまして、私どもが韓国条項と申しますときに、このことを頭に置いて言っておるわけではない。そうしてそれならば、いまもし韓国に対する武力攻撃が発生した場合に、わが国はどのようにそれに対して事前協議に対処するかということになれば、これは三木総理大臣が前国会からしばしば答えておられますように、状況によってイエスの場合もあり、ノーの場合もある、これが政府の今日の立場でございます。
  65. 大出俊

    ○大出委員 三木さんは、核の持ち込みについてはすべてノーだと言い切ったわけですね。その前に外務大臣、これも私は外務大臣に直接質問したことがありますが、条約の解釈上は、条約を結んでいるのだから核についてもイエスもある、ノーもあるとおっしゃったのだが、時の政治情勢でございまして、総理は一貫して核の持ち込みについてはすべてノーである、こう言っておられるわけですね。そのことも含めて、つまり言い直しますけれども、このナショナルプレスクラブの佐藤総理の演説に言う「前向きにかつすみやかに」という、アメリカ流に言えば肯定的にというこの項は、その後の変化もあったから、これは今度の韓国条項から外れている、これを否定する、そこまでいっちゃっていいのですか。今日の外務大臣の考えは、このナショナルプレスクラブ演説は過去のものである、否定できる、そしていまあるものは、事前協議については状況によりイエスもあり、ノーもあり、核の持ち込みについては一切ノーである。これは過去のものといってもう切ってしまってよろしゅうございますね、そこのところは。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 プレスクラブにおける演説というものは、事柄の性質上、両国の首脳共同声明といったようなものとは性格を異にいたしております。ことに演説をされました佐藤総理が現職であられる間に、国会におきまして、あのときの表現はどうも必ずしも適当でなかったと言っておられる段階で、恐らく佐藤さんとしては、このときのプレスクラブの演説に対して多少の違った考えを持たれたものというふうに私どもは解釈をいたしておるわけであります。  翻って、現在政府がこの問題についてどのような立場を持っておるかと申し上げますれば、先ほど申しましたように、まさにこの場合にはイエスもあり、ノーもあるという三木総理大臣の御答弁そのものが政府の立場であるというふうにお考え願って結構と思います。
  67. 大出俊

    ○大出委員 これは時期が違い、表現が違うわけですから、その意味新聞の論調から言うと新韓国条項、まことに適切だと思うのですが、条項と言う。韓国に触れているのですから間違いない。この新しい新韓国条項なるものに関しては、事前協議についてはイエスもあり、ノーもある、核の持ち込みについてはすべてノーであるという三木総理が答えてきたこと、それが現在の政府の立場だ、こういうことですね。  そこで、先ほどの問題に戻りますけれども、さて安保条約上の「諸取極」という、新しいここの「かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」というのは、この国連総会等の決議案文その他をめぐってそういう日米双方の認識があったのだというお話しでございましたが、そこでまず二、三点承りたいのです。  ここに実は二つの国連に対する決議案文がございます。一つは、日本が主要提案国になっている韓国支持派側の決議案文、もう一つは、三十六カ国になりますか朝鮮民主主義人民共和国支持派側の決議案文、二つあるわけであります。  中身は申し上げても仕方がないような気はいたしますけれども、この違いというのは、実は当初、外務省筋からということで出された新聞発表の中身からすると、北側の決議案は、在韓米軍の駐留、つまり国連旗のもとにとなっておりますから、国連旗のもとの外国軍隊というものはどいてくれ、だが米韓条約のもとでいる米軍には触れていないのだという比較的弾力性のあるものが出てくる、そういう分析を外務省は流しておられます。ところが、案文を見てよく調べてみますと、明確にこれはすべての外国軍隊の撤退を求めている。金日成主席が言っている三原則なるものとほとんど一緒であります。そうなると、この決議文は全く真っ向から対立をする決議文になる、こういう認識にならざるを得ないということかどうかという点が一つ。  あわせて、時間がありませんから全部言ってしまいますが、日本は主要提案国の一つなんでございましょう。そうすると、いまペルーのリマで開かれている非同盟諸国会議、七十五カ国でございますかアルジェリアを議長国としていま進められている。そこで、どうやら韓国の側に立つ国々というのは七十数カ国のうちで十五、六あればいいところであろう、あの昨年の四十八・四十八否決以来の情勢の変化もある。  そうするとこの時点で、国連総会十月になるか十一月になるかわかりませんけれども、見通して、決定的な差になってきているという認識はだれの目にも明らかだろうと思うのですが、そこのところは一体どういうふうに外務省、外務大臣としては見ておられるのか。私のかつての質問に、在韓国連軍の解体というようなことになるとすれば、秋の国連総会でそういうことになりかねぬ面がありますと、そうなれば改めて新しい意味のフレームワークを考えなければいかぬということを外務大臣は答えておられる。その決定的な段階に近づいているという気が私はする。したがって、その認識が外務大臣としてはどういうふうになっているのかということです。懸命に韓国支持派決議案の多数派工作を積極的におやりになるということになるとすると、その結果というのは、私は非常に危惧するわけでありますが、そこのところの今後の外務省の方針というのはどうなるのか、あわせて承っておきたい。
  68. 大川美雄

    ○大川説明員 おっしゃいましたとおり、ただいま国連に二つの決議案が出ております。日、米、英等の国々が共同提案しております決議案は、第一の趣旨は、従来からありました南北間の話し合いを何とか促進していきたい、それが一番重要なポイントであろうと思いますが、その話し合いを通じまして朝鮮半島の平和と安定を達成するために休戦協定を何らかの形で維持、継承する、そういうことができれば国連軍司令部を解体の方向に持っていく、そのために関係当事国が話し合いをするということを主眼としているわけであります。それに対しまして、北側、北鮮支持諸国が提出しております決議案は、ただいま先生がおっしゃいましたように、国連旗のもとにあるすべての外国軍隊の撤退ということを書き、そのほかに休戦協定にかわるものとしての平和協定の締結を慫慂する、それから南北の間でたとえば兵力の相互削減あるいは武力行使といったようなことを実現するように、こういったような趣旨でございます。  それで、両方の間にどういう違いがあるか、いろいろ私ども北鮮支持国の決議案を分析し、いろいろその情報も集めようと努力しておりますけれども、若干不明な、必ずしもはっきりしない点があることは確かでございます。たとえば、いまもおっしゃいましたように、国連旗のもとにおけるすべての外国軍隊というのは、在韓米軍そのものを指すかどうかといった点、それからリアルパーティーズ、本当の当事者の間の休戦協定と申します場合のその当事者というのはどこどこを指すのであるか、韓国を含めているのかいないのか、そういったような問題がございます。そういった疑問点につきましては、いろいろ情報を集めて詰めておる段階でございます。  さて、この二つの決議案が今後どういうことになりますか、実はこの問題がいつ国連総会で審議されることになりますか、まだはっきりした時期が決まっておりませんし、その間にいろいろ情勢の変化はあり得るわけでございますけれども、少なくともわが国として米、英等と共同提案をいたしました以上、これは当然ながらいつでもやることでございますけれども、多数派工作はもちろんやっておるわけでございます。見通しといたしましては、現在の時点で結論的にどういうことになるか予想するのは、あるいは多少時期尚早に過ぎるのではないかと思いますけれども、ただいまおっしゃいましたように、ことしは決して容易なことではないということは客観的な情勢判断として申し上げられると思います。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、ただいまのような事実の御説明に基づきましてどういうことが考えられるかということになりますと、まず幾つかの点を指摘することができると思います。それは、両方の決議案とも関係国あるいは関係者が何かの話し合いをしなければならないということを想定しておるわけであります。それはあるいは片方のわれわれの共同提案国になっておりますものの考え方では軍というふうに言っておりますけれども、しかし、それはかつての休戦協定がそうなっておるからであって、話し合いは政治的な性格のものであることには間違いがございません。少なくとも米国、北鮮、さらに韓国等も私ども関係者だと思いますし、関係者がほかにもなおあるのではないかと思いますが、両方の決議案に共通な一つの問題は、関係者の話し合いというものがなければならぬということが一つございます。それからもう一つ、ある意味で共通点だと思われますのは、総会がどのような決議をしても、有効な最終的な行動は安保理事会から生まれなければならないという問題、ことにいわゆる北鮮側の決議案でございますと、米韓条約というのは二国間の条約でございますので、それが国連全体の問題になり得るかどうかという法律的な問題すらあろうと思いますが、最大公約数として申しますと、総会だけの決議では事態は進まないという共通点がやはりあろうと思います。  それから第三に指摘できると思いますのは、いま政府委員が申し上げましたように、北鮮側の決議の中に幾つかかなりあいまいな点がある。これはあるいは意識したあいまいさではないだろうかと思われるような節もございます。  そういたしますと、ただいま申し上げましたような幾つかの点の中から、これはまだまだいろいろな意味で両方の間でやりとり、話し合いのできる性格のものではないだろうか。あるいはそれは希望的観測であったではないかという御批判が後に生まれるかもしれませんけれども、しかし少なくとも話し合わなければ事柄は片づかないという点などから見ますと、やはりそういう努力を関係者はみんなすべきではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  70. 大出俊

    ○大出委員 だから、実はお出かけをいただいておるわけですが、新韓国条項と私は新聞に響いてあるとおり言いたいんですけれども、この中で外務大臣と三木総理のニュアンスの相違が、詰めていけば一緒だというさっきの御答弁でいいんですけれども、多少なり出てきている。それは所管ではない防衛庁長官坂田さんが、方々で座談会をやるたびに出てくる言葉、ワンクッション置いている、ワンクッション置いていると言うわけですね。朝鮮全体というとらえ方は真ん中にあるのだと言うんですね。私は、外務大臣に前から何遍も、朝鮮半島全体というとらえ方が前に出なければならぬということを主張し続けている。つまり日米間の新韓国条項というものが、原案というものは幾つも変わるから、果たして本当に原案かどうかわからぬにしても、恐らく三木さんの意思としては、韓国という表現をできれば使いたくなかったのだろうと私は思う。だから朝鮮半島と、こう出てきている。それが本当なんだとすれば、やはりここでどんなに日本が苦労しても、南北の対話という七二年の李厚洛さん初め名前が入っている文書があるんですからね、だから、そこに戻す努力が必要であって、単なる多数派工作なら全く意味がない。結果的に、なだれ現象と言えるアメリカ離れの昨今の事情から見て、いろいろな情報を私なりに集めてみると、総会としては相当な差がつくのではないか。もちろん安保理事会で拒否権という問題はあっても、大変な差がついた格好の中での拒否権というものは、南北ベトナムの加盟に韓国をひっかけたアメリカが拒否権を発動したと同じ意味世界の孤児になりかねぬということですよ、一つ間違えば。特に非同盟諸国の大多数をこの問題を中心にして向こうに回さざるを得ないというようなことになるということは、日本の将来にとって感心したことじゃない、そういう気がします。  だから、そこのところを甘い物の見方でと、後になってそういう批判があるかもしれないがと言うが、それじゃ困るわけです。斉藤大使も帰ってきて打ち合わせをしたはずなんだから、現状で厳しく物を見たら、甘く見ないで厳しく物を見たら一体どういうことになるか。「国連旗のもとにおけるすべての外国軍隊」と書いてありますけれども、それは米韓条約というものは別な条約なんだから、そこで言う米軍というものに触れていないという解釈をいまの段階で国連大使を含めておとりになるのかどうか。これが紛らわしいとおっしゃる一つの点です。  それから、相手方でございますけれども、確かにそれは、北の方々と中国の人民義勇軍と二つ並んでいます、休戦協定のときには。いまは、金日成氏が言っているのは自分の国だけ。相手、真の当事者はだれかと言ったら、それはアメリカなんだ。だから、休戦協定にかわる平和協定アメリカと結ぶ、韓国に触れていないというのが三原則。御自身が言っている、金主席が言っている三原則。その限りじゃ入っていないんだけれども、つまりそこに韓国を入れる余地があるという判断をあなた方は現時点においてするのかどうか。  そこらまで触れた上で、さて一体これから総会をどうするのか。そして総会でなだれ現象が起こっている感じがするので、向こう側が圧倒的に多数になるということになれば、その結果一体、私どもがいま問題にしているのは朝鮮半島、あるいはあなた方流に言えば、それをワンクッションにして韓国の安全がと、こういうわけですから、だから防衛庁長官にお出かけいただいているわけですから、まさにその問題なんですから、つまり前に外交ありということでワンクッション置いたと言っておられるわけですから、そのワンクッションのそこのところを、外務省がいまどこまでどうお考えになっているのか。いま挙げた三点の真意のほどをはっきりしていただけませんというと、防衛庁長官だって、方々の座談会でしきりにそれをしゃべっているわけですからね。所管ではございませんがと、こう言ってやっている。だから、所管の外務大臣に出ていただいたんですから、そのポイントについて触れていただきたい。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まさしくそこらの問題が、私どもとしても詰めていきたいと考えている種類の範囲のことでございますが、私としては、このリマ会議が終わりましたら、斉藤大使に対しては、いろいろな方法で、いわゆる北鮮側決議案のあるいは故意ではないかと思われるようなあいまいさについて、できるだけ国連のいわばロビーの場において、真実が何であるかということを発見するように努めてほしいということを申しておるわけでございます。いま言われましたようないろいろなところに、あるいは問題を解くかぎがひそんでおるのかもしれないというふうに考えますので。  ただ、ただいまの政府の立場考えますと、北鮮の決議案がもし仮に、韓国というものは相手ではないのだという、韓国というものの存在をいわば無視して朝鮮半島の平和の問題が解決できると本当に考えておるのであれば、それはわかりませんけれども、そうであるとすれば、それは私は現実的な態度ではないというふうに考えます。  それから第二に、米韓条約を直ちに廃棄して米軍が撤退をすることがいいのだ、もしそのような主張であるとすれば、これはやはり現実的でない。これは私の意見のみならず、三木総理大臣が、韓国に米軍が駐留することが当分必要であると言っておられますことからもおわかりになりますように、これも現実的な態度とは申しがたい。しかしながら、それらは、いずれにしても決議案を仮定の問題として解釈しての話であって、そこらのことは北鮮側もあるいはよく承知の上で何か故意にいろいろなあいまいさをこの中へ入れて、そうしてともかく話をしてみようではないかということであるのならば、これはわれわれの共同決議案も話し合いを前提にしておるのでございますから、そこに問題を一つ前進させるかぎがあるかもしれない。いずれにいたしましても、北鮮決議案の提案者側の現実に意図しておるところが何であるかということを、これから実は探し出さなければなりませんが、それを探し出す努力というものが、また関係者の接触の場になるということを私どもは期待しておるわけでございます。
  72. 大出俊

    ○大出委員 もう一つだけ承っておきますが、新聞に出る限りは、韓国支持派へ票集めということで外務省が踏み切る。つまり詰めていったら——国連大使がおいでになるのだから情報はわかっているんでしょう。提案国もあるんですから、安保理事会もやってきたんですから、しかも安保理事会の議長なんですから、詰めていったら、どうもこれは当初考えたように甘くない、話し合いの余地がないのかもしれないということが、斉藤大使が帰ってこられての情勢の分析なんだろうと私は思うのです、新聞を読む限りは。いま大臣は、幾つか話し合いのかぎが隠されているように思うと言うんですけれども、つまり一つ間違うと、まさに話し合いの場をなくしてしまうことに結果的になる。ここを私は非常に危惧するわけですよ、立場は違いますけれども。何としても話し合いの場をつくらなければいかぬ。私は持論だけれども、民族的なやはり日本の責任があるわけですからね。二つの分析国家になった最大の責任は日本にあると私は思う、朝鮮半島の場合に。だから、その意味で言えば、どんなことがあっても朝鮮半島で二度と再び武力による争いが起こるようなことにしてはならないという、これだけは断じてだめだという、立場は幾ら違っても、どんなことがあってもさせないという、そういう日本の民族的な必死な決意が要ると私は思っている、この問題は。  だから、そういう意味からすると、ここで一つ間違って話し合いの場をつくり損なうようなことになると、いまの全体の周辺の空気、ポスト・ベトナムという段階の空気からいって、むしろその緊張を高める結果にしかならぬ。ここのところを非常に私は危惧をするわけでありまして、そこのいまのポイントのところを、斉藤大使が帰ってこられて新聞に書いておるのを見ると、余地なしというふうなことで踏み切って、不利だから多数工作に行かざるを得ぬ、こういうニュアンスなんですね。いま大臣は、そうでない言い方を少ししたが、そこのところのウエートを一体どうお考えになっていくべきなのか、大事なことだと私は思うので承っておきたい。私は、不利だろうが何であろうが、ともかく話し合いの場を決定的に求める努力が最優先をしなければならない時期だろうという気がするので、これはあらゆる努力をしてともかく話し合いの場をつくる、こうでなければならぬという気がする。そこのところを承っておきたいのです。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 斉藤大使の報告は、実は御指摘のようなこととは異なっておりまして、もしそういう報道がございましたら、多少正確を欠いておると思いますが、大使の報告は、北鮮側の決議案についてあるいは故意かと思われる幾つかのあいまいな点がある、また私が先ほど御紹介いたしましたように、いずれにしても話し合いでなければ両決議案とも実を結ばないというようなこと等々から、事態は必ずしも鮮明でないという報告をしておるわけです。  それで、先ほどから申し上げましたように、やはりそういう接触の場を持って、真意を把握するという努力から始めなければなるまいということを私から指示をしておるわけでございます。  そこで他方で、先ほど御紹介がありました多数派工作云々でございますけれども、この二つの決議案があって、これは何とか両方で話し合いをしていかなければならないじゃないかという雰囲気ができますためには、両方の決議案にある程度の支持者が相応にいるということで初めてではひとつ話し合いをしてみるかということになるわけであって、百対一のような雰囲気でありましたら、そういうことにはならないわけでありますから、そういう意味では、おのおのの決議案、私どもの出している決議案も、私は、なかなかよく考えられているいい決議案だと思っておりますし、そう思う国も少なからずある、したがって、そういう状況においてひとつ両方の共通の基盤を発見しようではないかということで初めて話し合いという空気になるわけでございますから、それで、われわれの立場というものについて同調を求めるという努力をいたしましても、これはそれが対決に向かうという意味ではない。もちろん、おっしゃいますように、それがエスカレートいたしますと、ただの対決に終わってしまうという心配はございます。それは極力避けなければなりませんし、それがわれわれの目的ではないのであります。
  74. 大出俊

    ○大出委員 そうすると大臣は、百対一というのは極端ですけれども、それほどのなだれ現象にしないで済みそうだというお考えがあるというわけですな、いまのお話しは。もうこの問題の結論にしなければいけませんが……。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少なくとも過去一、二年国連総会で、いわゆる国連軍の解体をせよという相当多数の意見があって、それに対してわれわれの共同提案いたしました決議案は応じておるわけでございますから、その限りではかなりの同調者があると考えるのが私は当然ではないかと思うのでございます。
  76. 大出俊

    ○大出委員 それはひとつ、時の経過に従って判断をさせていただきたいと思うのであります。  そこで、いまの問題と絡んでもう一点だけ。ちょっと時間を過ぎて申しわけありません。  もう時間がありませんから理屈は申しませんけれども、九月十五日でございますか、日韓閣僚会議をお開きになるということでございましたね。日韓閣僚会議はしばらく中断をしておりましたが、先般、訪米前に韓国においでになって、これにもいろいろ異論はありますけれども、結果的に九月十五日ごろでございましょうか、日韓閣僚会議をおやりになる。そこで、さっきのいろいろな問題と絡むのでありますが、新韓国条項の討議であるとか、いろいろここにも載っておりますけれども、ここで問題は、年間三億ドルの借款になりますか、向こう十カ年ぐらい何か続けていきたいという、大変長い先を見た形での毎年三億ドル程度の安定した借款云々という新聞記事がここにあるのでありますが、この辺のところは、一体外務大臣はどういうふうに考えておられるのですか。有償無償三億ドルから始まりまして、恐らく十億ドルぐらいになっているのだろうと思うのでありますが、十億ドルというと三千億ですか、ここで年間三億ドルずつぐらいのということになりますと、これは相当なことになります。これはアメリカとの関係、いろいろあるのだと思いますけれども、そこのところは一体どういうふうにお考えでございますか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日韓閣僚会議は、今回は韓国側が招聘をする番でございますが、まだ正式の招請を受けておりません。したがいまして、いつということを私からいま申し上げるのは適当ではございませんけれども、私どもとしては、ただいま仰せになりましたあたりの日にちでございますと、仮に国会の御関係がありましても受けられるのではないかというふうに考えておるわけでございます。まだ正式の招請を受けておらないわけでございます。  それで、三億ドルのことでございますけれども、そういう報道がございました。これは過去の有償無償というものは、もう今年で終了することは明らかで、その点は両国とも理解をしております。今後の両国の経済協力関係ですが、たびたび御主張にもありますように、やはり民生の向上ということが基本的には経済協力の目的でなければなりませんので、そういうものに該当するようないわゆるインフラストラクチュアのしかるべきプロジェクトがあれば、それなりに国力の許す範囲で協力をしていかなければならないと思いますし、また産業関連で輸銀等々の金が必要であるというときには、プロジェクトによって自動的に出ていくものもございます。そういう態度は基本的に私ども持っておりますけれども、具体的にどういうプロジェクトあるいはどれくらいの金額というようなことは、まだ正式に韓国から聞いておりません。
  78. 大出俊

    ○大出委員 韓国軍の近代化計画というのがずっと進んでまいっておりまして、本年六月をもってこれは五カ年が終了をするわけであります。ところがアメリカの側は、韓国の側から言わせれば、ちょうど残りの金額四億六千六百万ドル、これが未執行分になっている。旧来、アメリカ側のいろいろな場面でそれぞれ言っておることの中に、日本への肩がわりという問題がある。シュレジンジャー氏がいま韓国におりますけれども、ここらの問題が中心的な問題である。  そうすると、どうも私が非常に危惧するのは、これは、いまここで細かく議論する時間がなくなりましたから申し上げませんが、防衛庁サイドがこしらえた文書の中に、通信機材だとか橋だとかトラックだとか、そういうふうなものに対して日本側が、これは民生だということで援助をする、それを韓国が買う金で兵器を買えばいいじゃないかという、つまり近代化五カ年計画はアメリカは金を出さぬ、日本に肩がわりしろという、アメリカから日本に何とかしろという要求もある、その中でそういう文書が出てきた。これは山中防衛庁長官長官になる少し前でありまして、この委員会でも問題になりました。その種のものはあったんだが出さなかったということになった。だから、四十八年の五月二十九日、三十日の安保協議会の事務レベル会議には出ていないということになった。だがしかし、そのときにこの席上で山中氏は、そういうものを防衛庁がつくったことはけしからぬ、こうおっしゃっておる。だが、その危惧なしとしない。  さっきからお話しに出ますように、均衡という意味でも軍事的に見ても在韓米軍というものは必要である。これは強調されておるところであります。総理もアメリカでそう言っている。つまり駐留していてくれというむしろ日本側の積極的な意思だ、これは韓国もそうでございましょう。また安保の長期継続的維持、強化ということもこちら側から持っていったことだ。そうだとすれば、当然日本のこれに対応する責任と義務という意味で、韓国に対してもう少し金を出せ、これは民生とかなんとかいろいろな理屈はつけられますけれども、金を出せというのは、これは当然相手方の言い分でしょう。まあ、そこらのことのみではありませんけれども、草々の間に外務大臣が韓国に行ってこられる、穏やかならぬ気が実は私どもするわけであります。ここらのところの危惧がございまして、ここで言う三億ドルだ云々だというのは、率直に言って、何遍もアメリカへおいでになっているわけでありますから、アメリカ側の物の考え方で韓国にもっと金を出せという要求はアメリカ側からないのですか。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはございません。
  80. 大出俊

    ○大出委員 もう時間がございませんので、それじゃ、とりあえずございませんことにいたしておきます。したがって、これはそういう趣旨のものではない、民生というものにしぼって日韓の間で話し合いで出すべきものを出す、出さざるを得ない、こういうことになるわけですか。念のために聞いておきましょう。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘になりませんでしたが、もう一つ、実は韓国をめぐっての国際——あれはIECOKというのですか、世銀等が中心になりまして、韓国のオイルショック以後の状況から見て、関係各国がどのような援助をすべきかという、世銀が中心になりました国際的に認知されたグループができておりまして、その中で今後の韓国の外国為替の所要量等、どれくらいであるかという一つの結論が出ております。そういうことは私どもの問題の考え方に何がしかの影響をするであろうとは考えております。
  82. 大出俊

    ○大出委員 もう一つだけ承っておきますが、韓国においでになって話し合いをされた外務大臣が、大陸棚協定の問題につきまして大変積極的に物を言っているような新聞記事なんです。これは継続審議には違いございませんが、この国会で何としても通そうというようなお気持ちがあり、かつまた韓国との間はそういうような話し合いになっているわけでございますか。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは私も非常に苦慮をしておる問題でございまして、韓国側からこの協定について、ともかく二国間の協定であって、当事者の片っ方はとっくに批准をしておるのに、片っ方はどうも批准が進まぬではないかという話がございました。実は各国の事情でと言って私は説明をいたして、政府としては極力努力をするということを申してまいったわけでございます。
  84. 大出俊

    ○大出委員 きょうは大変お忙しいところを呼び出しまして恐縮でございました。外務省の皆さんにおつき合いいただきましたことにお礼申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。  そこで、防衛庁長官に承りたいのでございますが、シュレジンジャー氏がおいでになるわけでございますけれども、午前中もちょっと質問が出ていたように思いますけれども、参議院で防衛分担ということを長官が言い始めてから久しくなります。     〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕 その間に私が三木総理質問していたときに、総理が私に、防衛分担、防衛分担と、こう言っているんだけれども、御指摘のようにどうもこれ適当でございません、私は防衛協力にすべきものと考えますということを三木さんが私の質問に答えてそう言った。以来、防衛協力に変わってしまって、大臣の方も今度防衛分担とおっしゃらずに防衛協力だ。まあシーレーン問題なんかもどうも入っていたとかいないとか、議事録がどっち向いたとかいう議論がありましたが、たまたま国民の皆さんの前で、国会討論会で大臣とひざをつき合わせましたら、シュレジンジャーさんが来られたときにはそういうことはもうやらない。やらないと言ったって向こうさんがやれと言うんじゃないのかと言ったら、いや、それは断わると言う。本当に断われますかと言ったら、断われると言う。じゃ、これは国民の皆さんに言うんだから間違いありませんかと言ったら、ないと言う。いささかくどいほど私は念を押しました。そういう問題があるのですが、とは言いながらも、向こう様には向こう様の意思がある。当然だと私は思う。  そういう意味で、まず冒頭に、加藤さんの質問と重複して恐縮だと思いますけれども、聞いていませんでしたからわかりませんが、一体具体的に何を二時間話し合おうとなさるのか。いろんな新聞でおっしゃっていることを見るけれども、きわめて抽象的でわからぬ。具体的に何を話すのか。話し合いの機構をつくると言うのだけれども、その機構というのは、一体どういう機構なのかというところから始めて、機構だけつくって中身のない話を二時間なさるのかどうか、これもわかりません。一体この重要な時期に何を話すのか。防衛庁側がすり合わせをしているというのが丸山さんの旧来からの答弁です。一生懸命すり合わせしていると言うのだから、微妙なことがあるのだと私は思うんですがね。何かなければすり合わす必要ないのだから。それだけ一生懸命すり合わせしてきたのなら、防衛庁に腹もあり、原案もあり、あるいは一次案、二次案、三次案、四次案、あるいはもっとあるかもしらぬ。あるいは細部にわたるものも詳細にあるのかもしらぬ。つまり何を将来にとって必要と考えて議題とし、かつどういうまとまり方を求めているのか、そういう点をはっきりしていただきたいのです。
  85. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほど加藤委員にお答えをいたしましたとおりでございまして、私自身といたしましては、そう前に言ったことと後と後退をしているというふうには実は思わないわけなのでございます。と申しますのは、そもそも日米安保条約があって、やはり防衛協力について何らかの話し合いが両国の責任者同士の間において行われる必要がある、そのためにシュレジンジャーさんを日本にお招きしたい、そしてそれについて、いろいろ防衛協力の問題についてお話しをしたい、その内容はどうか、それはいま事務的に検討さしておりますということをお答えをしておるわけでございます。実際私は、国会でもしばしばお答えをいたしましたように、できるならば十一月ごろを期待しておったのでございますが、やはり先方の都合がございまして、特に韓国からの要請が非常に強くて、この八月の二十八、二十九日に来られるということになったのです。しかも私との会談を詰めてみますると、わずかに二時間でございます。これははっきりと申し上げた方がいいと思うのでございますが……。そういたしますと、まあ話し合う内容というものを幾分整理をしなければならないのじゃないかというふうに思います。しかし、やはり話し合いをやるということそれ自体に非常に意味がある。二十年この方こういうようなことはなかった、これをやった、これからが出発なんだという意味において非常に意味がある。  それからもう一つは、ユニフォームの間同士にはいろいろ研究がなされておるけれども、そういうこともやはりシビリアンコントロールのもとにおいて行うということが新憲法の精神だというふうに私は思うのです。やはり天皇主権のもとにおける軍隊と、それから主権在民下においてシビリアンコントロール、あるいは言葉をかえて言うならば、ポピュラーコントロールを受ける自衛隊の存在というものの性格は違う。その意味において、やはり私は、一つのコントロールのもとにまず責任者同士の話し合いがあって、そしてシビリアン同士の話し合いがあって、あるいはユニフォームの話し合いがあるということが、日米安保条約というたてまえから、あるいはデモクラシーの議会というものを持って国民に対している両国としては筋ではなかろうかという非常に簡単率直な原理的なこと、この筋をひとつ正そう——正そうというと非常におこがましいのでございますけれども、そういうことを考えていたわけでございます。  そこで、その内容については、確かに本委員会におきましても、たとえば内容についてどういうことを考えておるか、それは作戦協力の大綱であるとか、あるいは情報交換であるとか、あるいはまた支援体制であるとか、あるいは米国に期待するものは一体何なのかというような、そういう問題があろうかと思います。しかし、これからひとつ、うちも事務的にも詰め、かつまた外務省ともそれこそすり合わせをしてやらなければならぬ。まあ言うならば、二十年間何もなかったところに新たにこういう非常に重大な問題を講和合うわけでございますから、したがいまして、糸口だけは始まるけれども、それを二時間かそこいらの間に、最初からこういうこと、ああいうことということで詰めるということはよくない、やはりもう少し時間をかけてじっくり構えた上でやるということが必要だ。  ですから今度の意味は、そういう意味でその機構を、何らかの機関を、しかもそれは国防会議懇談会を開きまして、三木総理あるいは外務大臣御出席のもとにおいて、日米安保条約の枠内においてこれをやる、しかも憲法の範囲内においてやる、あるいはシビリアンコントロールに徹する、こういうことでございまして、私はそれで結構なんだという立場である。あるいは中にはそうじゃなくて、もう少しそれ以上のものをというような期待も党内にはあったようでございますけれども、私は、とにかくまずこういうふうなことからしっかりすべきじゃないだろうかということを申しまして、そういうことで出発しようというふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、日米安保条約のいわゆる協議委員会の中であるいはどういうふうにこれを持っていくか、できればそこの中に何らかの専門委員会あるいはサブコミティーができれば、そしてそれについてたとえば合意ができれば、私たちとしては、まあまあ最初の段階としては満足なので、そして年に一回ぐらいは責任者同士が話し合う。ところが、安保協議委員会というのは、先生方の御指摘のございますように、米軍の司令官とかあるいは大使とか、そしてこっちは私、防衛庁長官あるいは外務大臣、こういうことで、少しレベルの均衡を失しているんじゃないかと仰せられますこともわからぬわけではございませんけれども、しかし私は、年に一回ぐらいずつ、あるいは必要に応じては二回でも三回でもお会いをするという、トップレベルの政治家の、責任者同士の話し合いがあることによって、いままでのこの協議委員会というものが活発に、あるいは防衛協力の問題について一歩踏み出すという意味はあるんじゃなかろうか、こういうふうな非常なつつましやかな実は入り方でございます。しかし、それはちょうど扇のかなめのようなものでございまして、そうすることによって内容をこれから考えていこう、こういうことなんでございます。  そういうことで、やはりそれは、この委員会等でも御指摘がございましたように、よく皆さん方の御意見等も承りながら過ちなからしめなければいけない。つまり憲法の制約のもとにおいてやらなければいけない、こういうことでございますから、私が最初考えておりましたことと、いまやろうといたしておることの中にさほど違いはない———違いがないというか、考え方としては一貫しておる、こういうふうに御了承賜りたいと思います。
  86. 大出俊

    ○大出委員 これは、どこの新聞でも書いておりますように、経過がありますからね。四月一日ですよ、参議院で上田哲君の質問にお答えになったのは。その後、私ども質問するまで何遍も方々で話をされたわけですよ、大臣は。ここで防衛分担、防衛分担、大きくなったわけですね。私が質問していったら中身が何もなくなっちゃったりしまして、さあ新聞が今度はどうも何か消えそうじゃないかと書いたりしたのですが、いま聞いてみると、何もないですな、これは。いまのお話しじゃ何もない。大騒ぎをして坂田シュレジンジャー会談などと言われるほどのものじゃない、いまのお話しを聞くと。いま一つだけしかおっしゃっていない。それは何かというと、話し合いの機関をつくるという。しかも、それは安保協議委員会の枠内だという。そうすると、安保協議委員会の枠内に、それならば事務レベル会議だってある。そうでしょう。制服なんかも出てきてやっておられる。そのほかに一体どういう名前のどういう機関をおつくりになるつもりなんですか。安保協議委員会があり、事務レベル会議等がある。そこに一体何をどういう位置づけでおつくりになるのですか、機関を。はっきりしてくださいよ。
  87. 丸山昂

    丸山説明員 いま大臣から申し上げましたように、安保協議委員会の枠内でという首脳会談の結論が出されているわけでございまして、この中にどういう機関を設けるかということについて、現在外務省と私どもの方で事務的な詰めをやっているということでございます。ただいま先生からも御指摘がございましたように、すでに安保運用協議会というのがございます。しかしながら、この運用協議会はここで決定をするという性格を持っておりませんし、それから前に国会でも御答弁申し上げておりますように、いわゆる戦略戦術という問題については、ここでは触れないという御説明を申し上げておりますので、この運用協議会以外のものを設置するのか、あるいはいままでの、在来の運用協議会を性格を変えてこういう問題についての検討をさせるのか、こういった点、いろいろバリエーションもございまして、事務的な詰めはまだ実はこれから相当両者の間で進めてまいらなければならないという段階にありますので、ただいまの段階でははっきりお答えができないということでございます。
  88. 大出俊

    ○大出委員 ずいぶん無責任な話で、私ども審議してきているんですからね、これは。長官は、新聞から雑誌から週刊誌からやたらいろいろなことをしゃべっちゃっているわけでしょう。よく読んでみると、言っていることをずいぶん集めてみたんですが、中にはうちの石橋書記長と話したものまであるんだから。どこをどう調べてみても何もない、調べてみると。安保協議会がある、運用協議会があるのも知らないわけではないけれども、いまの話で言うと、新しいものをつくろうか、つまり戦略戦術まで話し合うのをつくろうか、いや、運用協議会の中で話し合えるようにしようか、運用協議会の中で話し合えるようにするなら、それだけのことで何も言うことはない。運用協議会を公開するのではないんだから。私どもにはわからないんだから。戦略戦術は話し合わないことにしていると言ったって、しているかもしらん。私にはわからぬ、出たことはないんだから。そうすると、それは別に、運用協議会でやるのなら、いまあるままで、ただ、その中に戦略戦術の話し合いをするということになったということだけのこと。何も大きな騒ぎをすることはない。そうすると、これは何もないということでは、いままで何をわいわい騒いでいたのか、わけがわからぬ。  これはしようがないから、具体的に聞きますから答えてください。  一つアメリカの側というのは一体何を求めている。いままでいろいろなところでいろいろなことを言っています。皆さんに言ったってむだだから余り言わぬことにして、具体的に聞きますが、アメリカは、これは高宮が言ったとかいろいろなのがありますけれども、常識で考えたってあるので聞きますが、防空というのがありますな。空。私は、松前・バーンズ協定は生きていますかと聞いたら、丸山さんは生きているとお答えになった。だから、米軍との間の協定はこれしかないはずだ。空については松前・バーンズ協定しかない。ADIZは手前に引っ張って日本が決めて、防空識別圏は決まっている。はっきりしている。韓国には韓国の防空識別圏がある。韓国には三百十四師団、空軍がいます。沖繩は三百十三。三百十四師団は三百十四師団でやはり防空識別圏を持っている。だから、一つの飛行機に対して韓国からスクランブルがかかる、こっちからかかるという場合があり得るわけです。オケアン演習なんていって飛んできた。行ってみた。向こうからもこっちからも来たなんということがある。中には韓国の飛行機を知らないで、こっちがスクランブルをかけた。行ってみたら韓国だったので、あわてて帰ってきた。ばかみたいな話。  なぜ一体、こういうことになるか。アメリカの側だって、これはこのままで、ただで済まされないです。もとならば、つまり横田集約以前ならば、これはそれなりに意味がありました。一緒にいたのだから。それでCOC——府中に第五空軍司令部と自衛隊の航空総隊司令部が同居していましたね。私、行ってみたことがありますが、総隊司令部の責任者と第五空軍司令部の司令官とネームプレート入りの席が並んでいた。当時はこうなっている。それでCOC、これは戦闘指揮所ですね、ここで——日本本土あるいは沖繩を含めまして二十八ヵ所のレーダーサイトがございますね、これは情報を一手にここで握る、日米共同のCOC、戦闘指揮所でございました。本来戦闘指揮所というものはあったのです。日米共同の戦闘指揮所。これが昨年の六月、横田に移ってしまった。だから、そこにすでに米軍の席はない。下部機関にはADCC防空管制所がある。ここにも米軍の連絡係将校が来ていた。このCOCなんというのは、韓国との間はボイス通信をやっていたわけですね、声、口で。当時、私が参りましたときには。だから、すぐ韓国軍とも連絡がついた。鳥山なら鳥山とすぐ連絡がついた。ボイス通信ですから、声ですから。ところがそれもない。それでADCC防空管制所もない。こうなっているわけですね。だからスクランブルかけたら韓国軍の飛行機だった。あわてて回り道して帰った、そういうことができ上がっている。その間に連絡がない。  そうだとすると、これは平時、かつまた有事、長官のおっしゃるように有事の際に松前・バーンズ協定しかないんですから、その意味では補完なんです、米側が日本に渡したわけですから。そうすると、この間の空の共同戦闘というのは、三百十三が沖繩にいたり、三百十四が韓国にいたりするんですから、その間一体どうするかという、これは当然話し合いのテーマでしょう。あたりまえでしょう。アメリカがそう言う。不思議はない。そうすると、これは一体どう考えるのか、あなた方は一体どう考え、米側はこの問題をどう考えているのかということを答えてください。これが一つ。  次に、対潜能力を高めろ、これは本年二月のブラウン報告。本年二月のシュレジンジャーの国防報告に補完の意味で出しているブラウン報告がございます。米議会に出しましたこのブラウン報告の中で強調しているわけですね。対潜能力ASW、これを高めるよう日本を激励するんだなんて書いてありますね。だから、当然これは一つの議題です。  あわせて海上交通路の保護、これがございます。これはうらはらなんですね。対潜能力を高める、これと、つまり海上交通路の保護というのは裏表。なぜならば、シュレジンジャー氏が言っている言葉の中に、敵は——ソビエトですよ、主として。何をやるかと言えば、つまり水上戦力の劣勢な相手だから水中戦力で来るだろう、つまり潜水艦だというわけですね。そうすると、これはいま言われているシーレーン、航路帯をねらう。船が常時通っているそこを撹乱する、こういうことになる。第七艦隊が一番弱いのはどこかと言ったら水中勢力だ。対潜能力であります。だから一生懸命、多目的型に攻撃型空母を改編して、対潜能力のある機を載せてやってきているわけですからね。そうすると、いまこの広大な改編で何が欲しいかと言えば、対潜能力に違いない、向こう側にすれば。それを求めてくるのはあたりまえです。そこでしからば、いまのわが国の海上自衛隊の対潜能力というものはどの程度のものなのだ、これは相当な力に耐え得るものかどうか、それが一つ。力たり得ないのだとすれば、そこから先相手が求めているものに応ずるのか応じないのか。つまり相手方日本にもう少し何とかしてくれないかと言う。つまり対潜哨戒機、これは四十八機ぐらい必要だぞと言う。国産にするのかしないのかという問題は後から聞きます。向こう様はP3Cオライオンを使えと言うのでしょう、恐らく。P3Cはたしかロッキードでしょう、丸山さんそうでしょう。だから、ロッキードの副社長なんかを日本の大使にしているんだから、P3Cを早く採用しろ——シュレジンジャーさんが来て、二時間なんだが、二時間の半分ぐらいは兵器の売り込みになるかもしれない。ロッキードの副社長を大使にしてよく言ってあるじゃないか、何にもできないなんて日本が言うなら、せめてアメリカ兵器を買えぐらいと言いかねない。P3Cオライオン四十八機買え、対潜能力なんかないじゃないか、こういうことになりかねぬです、これは。つまり対潜能力の強化ということは、アメリカ側が求めるものでしょう。そうすると、P3C四十八機なら四十八機、それからフリゲート艦を十八隻ぐらいふやせと言っている。このくらいは最低限度必要だとアメリカが言っている。これは長い懸案ですよ、いま言ったのじゃない。  そうすると、そこらのところをアメリカ側が持ち出すのはあたりまえでしょう。それに対して坂田防衛庁長官は、二時間の中でそれが出てくるとそれに一体どう答えるのだ。そうでしょう。そうすると、現有海上自衛隊勢力プラス対潜哨戒機PXLは、ちんたらちんたら何年もかかってわけがわからぬじゃないか、これは一体どうするんだ、わけがわからぬ。向こうだって売りたいのだから、そのぐらいのことは平気で言いますよ。わざわざ空席になっていた大使にロッキードの副社長をおくめんもなく持って来るんだから。そうでしょう。そうすると、さて護衛艦の十八隻、これをどうするお考えでございますか坂田さん、こう聞きますよ、シュレジンジャーさんというのは頭のいい人だから。その後の方からP3Cはどうですかというようなことになると私は思う。そこのところは、二時間会談の中で一体どういうふうにお考えになるのか。これが実は二番目の問題です。  三番目の問題は、航路帯云々というのでありますが、これは、いまの最初の問題とも絡むんですが、ソビエトを意識するとなれば——対象国でも何でも構いません。ソビエトを意識するということになれば、日本の海上自衛隊のやれることというのは私は限られてくると思うんですよ。  まず三矢図上研究でも出てくるんですが、ソビエトは参戦するのかしないのか、参戦するという段階で三矢図上研究は何を決めたかというと、完全に三海峡の封鎖なんです。宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡の三海峡封鎖なんです。なぜならば、カムチャツカの一番突端にペトロパブロフスク軍港がソビエトにはあるけれども、これは凍る港ですから、相変わらずウラジオに百十六隻ぐらいの潜水艦が現在いる。この中で三十一隻といわれ三十三隻といわれたりいろいろするけれども、原子力潜水艦が三十隻以上いることに間違いがない。そうだとすると、これが太平洋に出るというならば、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡しか断じてない。いわゆる間宮海峡、いまのソビエトのタタール海峡、あれはあるけれども、黒竜江の土砂で埋まって明確に通れないのだから、そうすると宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡しかない。三海峡防衛というのは当然日本の分担になる。三矢図上研究のときからこれは分担だ。そうすると、三海峡防衛ということを含めた対潜能力ということが、当然アメリカから出てこなければおかしい。だから、そこらの問題まで触れて一体どう考えるのか、アメリカ側がどう考え防衛庁の側がどう考えるのかという問題。  ところでシーレーンですけれども、南西でも東南でも構いません。何遍も私は言っているけれども、六百海里ないし千海里と皆さんが文章で出していることは間違いないんだ。そうすると、東京からの大阪からのと言うけれども日本からということになれば、台湾の向こうまで行っちゃうことに間違いないし、また南西に下ればミクロネシアに近いところまで行くことに間違いがない。その航路帯、南西航路なんというもの、ミクロネシアに行く方に米軍の基地ができる。そのミクロネシア基地というのは、ニクソン・ドクトリンで明確にうたっている。これが出発なんです。どんどんできているのです。そうすると、将来フィリピンのスビック湾その他から、あるいはミクロネシア基地から弾薬など大量に輸送してくることがあり得るわけです。その辺になると、日本の海上の責任が当然出てくるわけです。当然アメリカとの共同作戦なり、すり合わせをどこでするかわからぬけれども、私に言わせれば、実はこの種のことをもうやってしまっていなければおかしい。  そうだとすると、この航路帯は断ると言うけれども、筋道として筋論として果たして断り得るものかどうかという点。アメリカ側にすれば、そのくらいのことは日本がなぜやらぬと言うに違いない。言い分としてはありますよ。それは一体どうするかという問題。これは大きく言えば三番目。  それから四番目。みんな並べていきますから。  さっき私は、韓国の近代化計画を申し上げたのだけれども、四億六千万ドルばかりアメリカは支払っていない、未執行である。近代化五カ年計画は米韓の間で米韓軍事同盟に基づいて取り決めてある。それが払えない。本年の六月で五カ年は終わっているわけです。そうすれば、どういうかっこうにせよ、当然日本側に肩がわりという問題が出てくる。だから苦し紛れにつくったのが、軍事援助と言ったらいきなり国会でばっさり来るから、だから苦し紛れに防衛庁案といわれたものは、通信機とかトラックだとか車両だとか橋だとかいうものについて日本が援助をする。韓国はそれを買わないで済む。予算が残る。その予算で兵器を買えばいいじゃないかという案まで出てきたことがある。これはシュレジンジャー報告やレアード報告の中からすれば、あるいは下院の歳出委員会等からすれば、NATOに対しては明確な要求をしているじゃないか、出さしているじゃないか、何で日本に対してそれをやらないんだ、やりなさいという決議までしているじゃないですか。そうでしょう。そうだとすれば当然出てくるはずです。そこらは一体どう受け答えるのかという問題。  それから、これらを含めて、さて日本防衛費というものは〇・八%だ〇・九%で果たしていいのかという問題。二%論というのはアメリカが昔から持っている論理ですよ。そうすると、シュレジンジャーあたりは、物を買わせる都合もあるんだから、二%ぐらいのものを組みなさいというようなことを言いかねない、これは。そこらのところは一体どういうふうに受け答えるのか。  これは、まあ空と海中心ですけれども、総体で防衛予算、対韓国の問題、日本が、だって四万二千の在韓米軍韓国にいてくれと言う限りは、いてくれと言っておいて、じゃ金出せと言ったらいやだという手はないだろう、これは。そうでしょう。防衛レベルだって出てこなければならぬ筋合い。そこのところは一体どういう受け答えをするのか。せっかく二時間話すんだから、少し聞かしてください。何にもないと言われたんじゃ委員会開いた意味がない。どうですか。
  89. 坂田道太

    坂田国務大臣 非常に整理をして、そして起こり得べき会談内容を御指摘いただいたと思うのです。そういうことで、これはブラウン報告等にもありますように、確かに空、それから対潜水艦能力、それからシーレーン、つまり海上護衛といいますか、そういうような面、恐らくそういうことは期待しているというふうに思います。  私は、先ほどもお答えをいたしましたように、これはアメリカから期待されるまでもなく、日本日本国民の安全を守るために当然考えられなければならぬ、また考えなければならぬことだ。もちろん憲法の制約はございますけれども、しかし、その制約のもとにあって日本の独立と安全をどうやって守るかという場合に、やはり一番大事な点は、日本は海洋国家である、資源を多数の国々に仰いでおる、そして今日の経済繁栄を確保しておる。そうすると、この海上輸送というものが途絶えた場合はどうなるかと言えば、この前のオイルショックでも歴然とわかるわけなんで、日本国民の生活の不安定というものが如実に出てくる。したがって、やはり日本というのは平和国家でなければならぬという理念というものが生まれてきたと思いますし、そのためにこの三十年間、日本はとにかく、平和であった、平和であったから経済繁栄ができた、こういうことであります。われわれは、なおかつこういう関係を維持していかなければならない。ということであるとすれば、日本独自の防衛構想を考える場合に、やはり対潜水艦能力というものは、日本海を含めて、あるいは三海峡を含めて考えなければならぬ、当然考えなければならぬことだと私は思うのです。  それから防空につきましても、やはり日本日本の防空力を高めていかなければならないと思うわけなんで、その意味におきまして、一体いま四次防はどうなんだ、そしてポスト四次防はどうなんだ、そういう問題について私たちの考え方を、まあ大体皆さん方に国会でお話しを申し上げているようなあの程度の話に私はすぎないかと思いますけれども、申し上げたい。つまり今後の防衛構想はどうなんだ、あるいはポスト四次防はどうなんだというようなこと、あるいはいま御指摘になりました三点等についても、恐らく向こうからの話もあるかもしれませんけれども、こちらからとしても申し上げてみたい、こういうことなんで、ほかに何かあと……。
  90. 大出俊

    ○大出委員 委員長、ちょっと済みません、せっかくこれ具体的に言っているんですから。  NATOの場合にはアメリカを含めて、西ドイツ、イタリアまで含めて二百万トンもあるわけでしょう。日本の場合には八万トン強か弱ぐらいですね、四護衛隊群で。そうでしょう。そうすれば対潜能力なんていうのは出てきますわね。何もいまの海上自衛隊が対潜能力ないとは言わぬですよ。潜水艦の潜水深度が浅いとか、原子力潜水艦なら三十五ノットで走るけれども追っつかないとか、いろいろなことはありましょうけれども、それはそれとしてそれなりの対潜能力はある。使いようでは幾らでも使える。補完的にというなら——ここまで言うとあなたまた気にされるけれども、トータル・フォース・コンセプトなる総合戦力構想の観点からすれば、北東アジアで唯一の戦力ですから、アメリカにとっては。そうでしょう。だがしかし、四護衛隊群、八万トンぐらいしかないことは間違いないんだ、これは。そうでしょう。NATOの場合なら、これはアメリカまで入れれば二百万トンある。だから日本に求める。あたりまえだ。そのあたりまえのことを聞いているんだから、そこらは議題になるのかならぬのかぐらいは、来る限りは事務当局の打ち合わせがあるんでしょうから、答えてもいいじゃないかと言っているんですが、いかがでございますか。何にもないなんて言われたんじゃ困るじゃないですか。
  91. 丸山昂

    丸山説明員 具体的に項目を挙げて御質問ございましたので、それに従いましてお話しを申し上げたいと存じます。  まず松前・バーンズ協定でございますが、これは御案内のように、日本の領空侵犯に対する措置という機能を持っておるわけでございまして、したがいまして、これに関連してADIZがあるわけでございますが、ADIZはエアディフェンス、こう名称をつけておりますが、私ども日本での取り扱いは、あくまでも平時的な警察行動の根拠ということにしておるわけでございます。  そこで、いわゆるその平時的な任務はこれで十分果たせるわけでございますが、有事についてどうするかという問題については、これは改めてやはり話し合いをしなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。(大出委員「話し合いの項目の一つ」と呼ぶ)はい。しかし、これは今回の話し合いの中には入っておりません。この協議の場ができましたときに、当然こういったものが話し合われるというふうに考えております。  それから対潜能力の問題、これは、いま大臣から申し上げましたとおりで、わが国の能力の現状は、もうむしろこれは先生の方がお詳しいわけでございますが、要するに四個護衛隊群、そのうちの一個護衛隊群の近代化がやっと三次防でできた。四次防はやっと半分ぐらいのところというところでございます。これは大変に立ちおくれております。  それから対潜哨戒機、これはP2Jがいま主力になっておりますが、これも御案内のように、近代的な潜水艦対処能力という点になりますといろいろ問題点があるわけでございます。そこでPXLの問題が出ておるわけでございますが、一般論として当方の対潜能力という問題について、この評価という問題についてこれは議題になると思います。両方で話が当然出ると思いますが、ただ、そのPXLについてP3Cを選べというようなお話しは、これは私ははっきり申し上げて出ないと思います。  それからその次、航路帯の問題で三海峡封鎖のお話しが出ましたが、これは私どもの海上自衛隊の有事の防衛構想の基幹でございます。日本が地理的な特性から絶対外国に対して優位に立っておりますのは、この海峡を押えているということが絶対の優位のあれだと思います。問題はやはり、これはわが方の海上自衛隊の作戦の基本の中に組み込まれておるわけでございまして、この点についての評価という話はあるいは議論の中に出てくるかと思いますけれども、はっきりいまのところで申し上げられません。  それから、その次のシーレーンの問題でございますが、これは私ども繰り返して申し上げておりますように、わが海上自衛隊の護衛能力を整備いたします整備目標として掲げておるわけでございまして、現実にたとえば南西あるいは南東といったような、こういう航路帯をそのときに設けるかどうかということについては、実ははっきりした構想がまだ立っておりません。一応この艦艇あるいは航空機を整備する基準として、私どもはこれだけの能力は最低限持ちたいということで挙げておるわけでございまして、この辺は具体的な作戦ということになりますと、これもやはり今度設けられます場において検討さるべき項目になるというふうに考えておりますので、この辺は要するにこういう構想で整備をわれわれが考えておるわけでございますが、アメリカの方がそれに対してどう評価するかということは、率直に聞いてみたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、大臣が申し上げましたように、これはアメリカから押しつけられたからやるとかいう性格のものではなくて、わが国自体の、海上前衛隊の対潜能力というものを整備する場合に、どこに目安を置いてやるかということについての実はわが国独自の整備目標であるということでございます。  それから、韓国近代化計画についての肩がわりの問題でございますが、これはあの当時のいきさつは、先生の方がよく御存じでございまして、結局、防衛庁でそういう案を出したというようなことがございますが、これは本来、防衛庁としての越権であるという、その後の山中長官のはっきりした御指示がございまして、当方としてはいささかもそんなことは考えておりませんが、むしろこれは政府全体で考えるべきことで、外務省の所管になることではないかというふうに考えておるわけでございますが、こういう点については、私ども独自でこういった問題についての回答をするということをなし得る立場にございません。したがいまして、今回はこういう話が出るというふうには私ども考えておりませんが、仮に出ましても、ただいま大臣申されましたように、わが方としての回答ははっきりしたことは言えない、留保する、こういうことでございます。  それから、防衛費の問題でございますが、これも大臣申されましたように、これはやはりわが国の自分の着物を着、下着を着るということでございまして、体に合ったものを着るということで、よそからいろいろとやかく言われる筋合いのものではないというふうに考えております。いろいろ巷間伝えられるところによりますと、ヨーロッパの三%というのを基準にして、それに至らない国があるというような指摘もあったかに伝えられておりますけれども、わが国に対しては恐らくそういう問題の指摘はないというふうに考えておるわけでございます。
  92. 大出俊

    ○大出委員 その中に対潜能力とか、あるいは高性能レーダーとか、あるいは早期警戒機であるとか、そういうふうなものは話し合いの場に入るのですか入らぬのですか。
  93. 丸山昂

    丸山説明員 ポスト四次防の作業を現在やっておりますが、ポスト四次防の期間内に問題になりますのは、FXそれからPXL、こういったものが、現在の主要装備がフェーズアウトしていく段階において、当然この期間に考えなければならないという、これはもう予想されることでございます。  それから、AEWにつきましては、現在の日本の航空自衛隊が持っておりません新しい機能を付加する、こういうことで、これは結局、金との相談ということになるわけでございまして、次期防で、できれば私どもこういう機能を備えたいと思っておりますけれども、その端緒をつけたいと思っておりますけれども、それが可能かどうかわかりません。結局、ポスト四次防の構想をいろいろ説明をする段階において、具体的にこういうものを考えておるということは、これは話題には出てくるかというふうに思います。
  94. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、PXLという問題だって話題には出かねないでしょう。一体、日本は次期対潜哨戒機何を選ぶんですか、日本飛行機なんかで一生懸命いじってますがね。P2Vにしたって、どうもいささか老化してと修理している人がみんなそう言っているわけですからね。だからそうなると、当然これはPS1にしてもそうですけれども、何とかしなきゃならぬ。これは懸案ですからね。国産するって一遍決めたやつをひっくり返したわけですから、これは当時の日米経済戦争で。決め直したわけですから。国産を解除して、国産を白紙に戻す、こうしたんですからね。いわくつきのものですから。当時解除した理由というのは、アメリカの要求をのもうかというふうに動いたわけですから、これは。ところが、ああいう結果になって今日まで残っているというわけです。だからこれは当然、次期対潜哨戒機は何にするんだということにならざるを得ぬのです。出ないとは言えないんですよ。  それから、ポスト四次防という問題がある。長官は、座談会でそれを説明するなんておっしゃった。四次防並びにポスト四次防についても説明したい、あなたは座談会の中で、今度のシュレジンジャー会談でそれを説明したいと言っておられる。だから当然これは話になる。そうすれば、これに引き続いてFXだって出かねない。今度シュレジンジャーが十一月に来るのを早めた理由というのはFXの売り込みだという、後から細かく聞きますけれども。大変なんです。坂田さんはだれだれのかいらいだなんて、あなたこの間、アメリカの大使館ですっかり歓待されてなどということまで新聞にいろいろ書いてあるんですから。後から聞きますけれどもね。だから、シュレジンジャー氏は商売人だから、やめればGDの社長になるというんだから、とうとうフランスを押さえてミラージュを自爆させておいて——自爆させたのはどうもゼネラルダイナミックスじゃなくて別の方のようだけれども、つまりそういうことまでやっているわけですから。ベルギーなんてひどいですね、これはもう。シュレジンジャーという人は大変な商売人ですよ。だから、この辺からFXだって当然出かねない。そう見なければおかしいのじゃないですか、どうですか。
  95. 坂田道太

    坂田国務大臣 いまPXLそれからFX、そういう問題について丸山局長からお答えをいたしましたことで、向こうは何を考えているかわかりません。しかし私は、国会でやはりポスト四次防の構想あるいはポスト四次防の内容というものはまだ御説明申し上げてないですね。ですから、これはポスト四次防をつくるに当たって四月一日に長官指示というものを申しました。それで、そこの考え方というものは、申し上げてもいいのじゃないかと思っておりますけれども内容まではやはり言えない。ただし四次防それ自体のいまのできぐあいですね、これはやはりはっきり言わなければいけないのじゃないかというふうに私は思っておる。  それから、いまのPXLとかあるいはFXとかいう問題も、これはやはり国会の関係があるし、ポスト四次防との関係がございますから、それは私たちの手続があるわけで、それまで何のかんの言う筋合いのものではないということでございます。
  96. 大出俊

    ○大出委員 これは言わないのですか、PXLだとかFXは。話に出なければおかしいじゃないですか。アメリカ調査団まで派遣していて、団派遣してお世話になっていて言わないなんて水くさい話ですね。相談し直してください、ここで。
  97. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま防衛局長から話を聞きますと、いや調査団も出しておるし、いろいろあるということなんで、あるいは話があるかもしれないが、しかし、それをどれを選ぶとかなんとかいうことは言わないということを私は言ったつもりです。
  98. 大出俊

    ○大出委員 人が質問せぬものを先に答えなくたっていいですよ、どれを選ぶということなんて。それはどれを選べとシュレジンジャーさんが言うんでしょうから。それはF16何とかしろとか言いかねないでしょう。F16はシュレジンジャー戦闘機と名がついているんですから。マクナマラ以来悪いくせがついている、これは。  そこで一つ、ここでかちっとしておきたいのですが、そうすると、議題というのは、対潜能力を高めろというようなことについて、現状つまり四護衛隊群ですが、それの近代化が一つ。いま半ばまでいったかどうかくらいのところでしょうから。八万トン強くらいでしょうか。だから、それじゃやはりいろいろ問題があるわけだから、これは議題になる。それから空について松前・バーンズ協定がある。韓国の空というようなこともなくはないはずですけれども、空の問題等については今回議題にするのですかしないのですか。それはしないというさっきのお話しだったんですが、出るかもしれないが当方としてはしない。     〔加藤(陽)委員長代理退席、委員長着席〕 海上護衛の問題はこれは話に出る。出るが、航路帯云々というのは、アメリカ側がまずどう考えているかというのをあなた方は聞く。アメリカ側がどう考えているも考えてないも、四十八年の四月十二日の下院の歳出委員会対外活動小委員会の席上でレアード氏が言っているのですから、だから、これは向こう側から出なければおかしい。皆さんだってアメリカ考えは知っているはず。ただ悪法の制約というのがあって、一つ間違うとがしゃんとくるからというので、どうもそこは御了解願いたいくらい言いたいでしょうけれども、これはそういうことで議題になる。それから次の四次防は、もう一年ありますけれども、大体まあこんなことにしかならぬ、不十分かも知らぬがということ、そして向こうが何と言うかということ。FXは調査団を送っているから、したがって、どうも調査団が行って世話になっておいて、恐らく売り込みたい方は歓待したんでしょうけれどもシュレジンジャーさんは次期社長なんだから。そうすると、それに対してありがとうござんすも言わぬで話は済まないんだから、四次防などと絡んでFX問題なども、それは出てくるだろうというところぐらいですか。あと議題に何かありますか。
  99. 丸山昂

    丸山説明員 先ほど大臣から申し上げましたように、一応二時間のうち通訳を入れますと半分ということになりますので、正味一時間の間にできるだけ有効に話し合いを進めたい。できれば大臣同士の政治家としての立場でのいろいろ話をお願いいたしたいと思っておるわけでございます。  大体まだこれは大使館の方と私どもの方ですり合わせをしている段階で、最終的ではございませんけれども、大きな項目に分けますと、まず極東の軍事情勢ということで、ポストベトナムにおける極東の軍事情勢、特に朝鮮半端、これは国防長官が韓国に行っていろいろ話をしてきた画後でございますから、その辺は向こうが詳しいだろうと思います。それと、当方が見ておる評価というようなものの突き合わせをいたしたいと思っております。  それからアメリカアジア戦略、これは、まあワールドワイドの戦略に基づいたアジア戦略ということであると思いますが、これは直接、当の責任者の口からできるだけ本当のことを聞き出したいというふうに考えておるわけでございます。  それから三番目が、いま大臣が申し上げましたわが国の防衛の整備の現状、問題点、それから次期防の構想、こういうところでございます。  それから最後が、日米防衛協力についての会談、大体そういうことを大まかには考えておりますが、これはまだ最終的に決定したことではございません。
  100. 大出俊

    ○大出委員 初めからそう言ってくれれば話は簡単なのに、具体的に挙げていかないと、そこまで詰まらぬというのでは困るじゃないですか。  それで、ここで一つ注文があるのですが、先ほど加藤さんの質問をちょっと私聞いて、途中で退席をしましたが、問題は核ですね。これは私、少し皆さんと認識が違う。たまたま先ほど、いみじくも長官戦術核というものも進歩しておりましてという言い方をされた。そもそもこれは、マクナマラ長官時代のエスカレーション戦略というスレッシュホールド、つまり敷居をどういうふうに越えていくか、つまり核を使いますよ、通常兵器ではございませんよという意思表示をまず明確にするというのが入り口なんですね。そうして次に——当時の戦術核ですよ。当時の戦術核の一番小さいのは、一・五グラムという戦術核、一・五グラムというのは耳かき一杯ぐらいのもの、そして千メートル立方四方に影響を持つ。これは鉛で遮蔽して撃つわけですね。それが一番小型なんですけれども、戦略研究所の当時の文献にはそう書いてある。それでそれを、相手がわからないのだから、人のいない山に一つ落とすというんですね。そしてこれでは人が死なない。つまり、それでおさまればおしまいという物の考え方ですね。これが限定的核使用の出発なんですね。そしてこれが第一段階。ここから七段階にエスカレートしていく。これがエスカレーション戦略ということで、この中では戦術核戦略核の区別はない、一連のものです。一連のものなんだが、使い初めと使い方の問題が明確にこれは分けられているという関係です。つまり、この時代の戦術核戦略核、いずれも大変な違い方でありまして、細かくいろんなものを読んでみますと、そこをラロック氏は言っているわけです。  そこで今回、一番の大きな問題は、ファーストユーズにしても、なぜ一体シュレジンジャーがそこまでの発言をしたかというと、つまり核戦略核兵器そのものの進歩、発達の度合いと核ミサイルのギャップは、米ソ間で一体どういうふうに変化しているのかというこの判断がある。  ちょうどアメリカの国防長官フォレスタル氏がビルのてっぺんから落っこって死んだいにしえから始まっている。これは飛びおりて死んだ。つまり、かつて空母フォレスタルというものをつくって、その名前をつけたわけだが、核兵器の開発予算を出してアメリカ議会に削られて、ソビエトが核を持ってくると言って死んだいきさつまであるわけです。だから、それ以後キューバの時期、六二年の話がさっき大臣から出ましたが、このときのミサイルギャップはアメリカは極端に大きい。ソビエトは極端に小さい。だから、キューバへのロケット持ち込みをフルシチョフが言った、途端に待機姿勢をとらせて死んだケネディが前に出た、向こうが引いたという、これはミサイルギャップの総体がそうだからです。片一方はポラリス潜水艦をつくる、ミニットマンという地下につくる核を開発した。片一方はまだ対艦型なんだから。まだ中に沈んでいない前なんだから。  では、一体、今日の米ソの核ギャップというものはどっちにどう向いているのか。私の承知している限りでは、いま核の問題については、アメリカ側が大変に自信を持ち始めている。MIRV、これをソビエトは四、五回の実験に失敗して進んでいない。ところがアメリカの方は、はるかに以前からこれに成功してきて、命中精度が決定的にいい。だから、さっき言った第一撃能力——ファーストユーズではないですよ。その第一撃能力でほとんどのものが、命中精度からいけば、もう軌道衛星もあるんですから、米ソの核というのは両方ともわかっているわけですから、そうすれば第一撃能力でこれはつぶせる。残る問題はポラリス潜水艦等です。これもMIRV化しているんだけれども。だから、そういう状況でペンタゴンが大変な自信を持っている。それはもう各所に出てくるわけですね。SALTなんかでもそうです。つまり、そういう側面があって、戦略核についてのまず自信が一つある。  それから戦術核については、スマート爆弾の方式でエレクトロニクスアイを使って誘導する。そうすると米軍はいない、はるかかなたからの遠隔操作で朝鮮戦争を核でできる、スマート爆弾化された戦術核で。そこまで来ているわけですね。そうすると、そういう背景にある自信、その場合の自信のほどはソビエトだってわかっているんだから、全面核戦争などと言ったって、彼我のギャップがどうなっているかわかり切っているわけですから、そうすると限定的な核戦術というのは可能であるということになる。だから、韓国で核を使うと言ったときに、ファーストユーズと言ったときに、わが方はスマート爆弾のようにできているエレクトロニクスアイでぴたりと当たるんですよ、心臓部にそれをやるんですよと、それだけなんだよということをソビエトには言う。悪ければとめろというわけだから。そうでしょう。  つまり、そこまでいかなければ、丸山さんのように使えない核というものは使えない兵器なんだと言ってしまっては、抑止力にならぬですよ。そうでしょう。また、さっき長官が言うように、よくなったと言ったって、それは戦略、戦術の区別はないと言ってみたって、そこまでのペンタゴンの自信がなければそんなことは言えない。そんなことを言ったら笑われますよ、知らぬ人ばかり世の中にいるんじゃないのだから。だれが見ても、あそこまで言ったことについては——ベトナムで使いたくって四人の核専門家をサイゴンに送ったけれども、使えないという結論ができた、当時はほかの欧州の国々も反対をしたから。そうでしょう。フランスだってドイツだってみんな反対したんだから。いまになってみれば、もうわかっていることです。だから、いま打ち上げたポスト・ベトナムというところだから、あえてその核についての優位性というものをその自信の上に立って言い放った、その反響は大きい、大きいからその辺でトーンダウンをしたというだけのことですよ。基本的には何も変わっていないですよ。シュレジンジャー戦略を読んでみれば、そんなことはちゃんと書いてある。  だから、そこのところをきちっととらえていただかなければ困る。それだからこそ、不可能なことを言っているのじゃないからこそ、坂田さんがシュレジンジャー氏にお会いになるのだから、その際は核使用というものは日本立場としてあるべきではないということを、これはむしろ逆にしかと私は言うべきだと思う。そこまでいくべきではないということをぼくは言うべきだと思っている。だから、あなたはそうじゃなくて、在韓国連軍等の関係均衡を破りたくないというような意識があって、あれは非常にいいことだとおほめになるかどうか知らぬけれども、そこらのところだけは念を押しておきたい。そういう背景なんだぞ、そこで言ったのだぞ、だから、万々一ないとはいっても、可能性としてはあり得るということになる、そういうことだから。だから、そういう意味では抑止力になってくることも間違いない。したがって、そこのところは、やはり坂田さんの物の考え方、座談会に書いてあることからすれば好ましくないと言っているのだから、そこのところはしかと言うべきだという気がするのだが、お考えだけ聞いておきたい。
  101. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほど核戦略につきまして、アメリカ考え方というのは世界的な、グローバルな意味考えておるということと、それから戦術核戦略核それに通常兵器、これは切り離せない関係において一体として考えておる、そしてそのことがやはり抑止ということにつながっていく、あるいはそれがまた同時に平和共存デタントにつながっていく、こういう彼の一つのフィロソフィーがあるということなんで、それを、朝鮮半島ファーストユーズという言葉を使った意味を私は説明したかったわけでございますが、実はみごとに大出さんが私の言わんとすることを説明していただいたんじゃなかろうか。だから、それが世間に非常によくわかると思うのです。でありまするから、北はもう危険を越えなければできないんだということで、結局、背後にある超大国といえどもその危険を冒さない、したがって平和が保たれる、こういう仕組みじゃなかろうかと思うんで、非常にありがとうございました。だから私は、その気持ちを踏まえてやはりシュレジンジャーとは対し、処したいというふうに思っております。
  102. 大出俊

    ○大出委員 まあシュレジンジャー氏がああいうことを言ってみても、それは私、デタントの方向から外れて物を言っているとは思っていない。そういう国内世論じゃないから。アメリカの議会の空気も、アメリカの国内世論もそうじゃないから。ましてもう一つ大きな問題というのは、ここで地上兵力などを使うと言ったら、アメリカ国内は世論が沸いてしまいますよ。そんなことを言ったら、フォードさん大統領選挙に負けてしまう。だから、ここまで開発されている核を使うと言えば、地上戦力を使うんじゃないんだから、アメリカの青年の血を流そうというんじゃないんだから、権威ある世論調査で一四%しか即介入というのはないんだから、そうでしょう、だから、そういう政治的な背景もあるわけですから、決してこれは冷戦構造式な物の考え方じゃなくてデタントの方向に背景はある、アメリカはこりているわけなんだから。  だから、そういう認識である以上は、是非ひとつそこのところは、座談会でお述べになっているように、日本という国からすれば好ましい姿でないんですから、緊張緩和の方向に行くのではなしに、鎮静したのなら、あとトーンを落としたんだから落とした方向に突っ走ってくれなければ困る。国連総会というものを中心に話し合いの場をどうしてもつくってくれなければ困るという形に、それを私は外務大臣にお願いをしておきたかったわけです。というのはニクソン・ドクトリンは消えていない。マンスフィールド議員なんというのはあわてて北朝鮮に飛んでいるわけですけれども、それはなぜかと言えば問題は話し合いの糸口なんですよ。ですから、そういう点等を考えれば、ニクソン・ドクトリンの最終項目というのは、韓国の在韓米軍というのは撤退をするということなんですから、つまり、そのためにミクロネシアその他に基地をつくるというんですから、それがニクソン・ドクトリンの使命なんですから、だからこれが死んでない、生きている限りは、この線に乗らなければいかなる政権もアメリカでもたぬのですよ。ベトナム戦争のピークに、八十六万の軍隊を出したときにニクソン・ドクトリンをつくったのですから、だから、その路線は間違いないはずなんだから、やはりその路線に合った物の言い方で、まさにワンクッション置いたということが善意で考えてそうだとすれば、ワンクッション置いただけの意義のあるように防衛政策の面からもそれはサポートしていかなければならぬだろうという気がするので申し上げておきたいわけであります。  次に、時間がなくなりましたから単刀直入に承りたいのでありますけれども、FXの問題、PXしの問題、両方あるのでありますが、まずPXLはどうするつもりなのか。私も、長らく勉強してきておりますからここで申し上げれば長い時間かかります。それがまず一つであります。  それから次にFX問題は、これは丸山さん、あなたがこの間、ここに議事録を持ってきておりますが、私に答えたことからすればもう終わったと私は実は思った。やれやれと、そう私は思った。川崎空佐、山口空将補等の事件が起こったときに心配をして、私は増田防衛庁長官質問をし大騒ぎになったわけでございますから、二度とその繰り返しを、私の議席があるうちに、防衛をやっておるうちにやってもらっては困るという認識があって、予算の分科会で山中防衛庁長官にまず物を聞いた。直接買えぬか、商社入れなさぬな、そういう例もあるじゃないかと例も挙げて物を言った。そうしたら、そうしたいと言った。ところが、なかなかそうはいかないという状況が出てきて商社の顔が出てくる。だが、あなた方が言う選定基準。私がこの間申し上げたのは、航空防衛力構想、こう言ったら、あなたは御存じないとおっしゃった。それじゃ何を中心に決めるのだと言ったら、選定基準がある、選定基準に似たようなもの。その限りでいって外していくと、かつまた間に合わないものは除外していくと、またアメリカでないものは除外していくと、いやでもF14か15にしかならぬ。強いてもう一歩つけ加えて言えば、F14はイランが買っておるといっても海軍機ですから、だから、そうなればF15にしかならぬ。  これは実はグラハムさんですか、そっちの方の筆頭の駐在員か何かでいますから気には食わぬけれども、F15というものはグラハムさんが直接指導してこしらえた重戦闘機なんですから、だから余り気は進まぬけれども、長年防衛をやってきた立場は違いますけれども立場の相違を越えてあえて皆さんの政権のもとで決めるというなら、私は、F15しかなかろうという認識があったからこの間詰めてみた。そうしたらあなたの方の答弁は、なかなか丸山さんはっきり物を言いまして「形式的に選定基準というものだけを拾ってみれば、いまの段階においてもう結論ははっきりしているんじゃないかということをおっしゃられればそうでございますが、」というところから始まって、大体こんなところだろうというニュアンスになったと思った。ところが、どうも最近、これは私は真偽のほどはわかりません、わかりませんが、いろんな書き物があり過ぎる。実に多い。それで私は、そのことを一つ一つ確かめたい。  そこで承りたいのですが、ここにあるんですが、坂田防衛庁長官が七月のアメリカ大使館の独立記念パーティーにおいでになったというんですな。そうしたら、ホドソン米大使が坂田さんの肩を抱かんばかりの歓待をしたというのです。抱かれたかどうか私は知りませんがね。これもシュレジンジャーさんあたりから指示があって防衛庁長官を歓待しておけとかなんとか言われたのじゃないかと実は書いている。真偽のほどはわからぬという前提で申し上げておるんですよ。  そこで、これに書いてあるのは、私が六月三日にここで質問した。日本の置かれた立場からアメリカの機種以外は買えないはずだと前置きをして、米国製四機種の性能や米軍採用の実態に触れ、事実上候補機は総合武器体系やレーダーから見て、F14かF15にしぼられるのじゃないか、確かに私はこう言いました。これに対して丸山防衛局長は、こう答弁した。「厳密に解釈して御指摘のようなことになると思います。」議事録にそう書いてありますよ。「だが」というところで、いろいろやるだけのことはやらなければならぬので調査団を出したのだ、こういうふうにおっしゃった。だから、そうなると14か15で、制服の方々の方からすれば・米空軍ということになれば15になるいう実は論旨の私とのやりとりなんですよ。  ところが、これがYF16が死んだ子が生き返ったかのごとく表に出てきてみたり、F17を18にかえる。これはアメリカの採用の仕方もありますけれども、これは伊藤忠でございましょうが、そういうものが何かちらっと横の方に出てきたりするわけでありまして、そこで全部いきなり言ってしまうわけにまいりませんからそれこそワンクッション置きますが、まず承っておきたいのは、調査団の結論はいつ出るのか。聞くところによると、シュレジンジャー氏が早く来ることにしたのは、調査団の結論が出る時期、その前に売り込まなければ売れないからという、そういうことまで書いてある記事もある。したがって、調査団の集約はいつごろになるのかという点がまず一つでございます。  それから現状は、パリの航空ショーの場合には、これはYF16で出ておるんですよ。間違いなくYF16で出ておる。F16じゃないんですよ。つまり試作機のままで出ている、飛んでますけれども。だから、よしんば来年一月ですか、二月ですか、第二次調達調査団を派遣されるような話も聞きますが、その真疑のほどを以下二番目に聞きたいのですが、第二次調査団というものはあるのかないのか。そのときであってもF16には乗れないはずだ、できないんですから。試乗ができないはずです。ということなんだが、さて、その後の選考経過その他から見て、シュレジンジャー氏が来ることになっちゃったいまの時点ですけれども、現状一体、防衛庁としては選考基準を変えた、あるいは変える、こういうことがあるのかどうか。選考基準を変えないのだとすれば、あなたは前に選考基準をお話しになったから——私のこの議事録にある。この選考基準を変えない限りは、その後のレーダーの手直しだ云々だという話はあるけれども、全天候性にはまずならない、昼間の戦闘機ですよ、これは明らかです。だとすると、まず16が出てくる可能性というのは日本の場合にはないはずなんだが、そこのところは一体どういうふうにお考えなのか。  それからもう一つ、ハイ・ロー・ミックスという物の考え方シュレジンジャー氏の基本にある。ハイ・ロー・ミックス、つまり高い価格の重戦闘機、安い価格の軽戦闘機、それをミックスして戦闘する、その方が費用対効果でいけば安上がりだということです、簡単に言えば。称してハイ・ロー・ミックス・コンセプト、こういうわけですね。これがシュレジンジャー戦闘機といわれるものをベルギーにうんと言わせて、四カ国に三百五十機売ったいきさつですよ。だから、このハイ・ロー・ミックスという物の考え方は、選定基準その他を踏まえて今日あり得るのかどうかということ、まず、ここまでお答えをいただきたい。
  103. 丸山昂

    丸山説明員 まず、先ほど引用されました私の答弁、いろいろ物議を醸しまして、特にそういう中途の段階で非常にはっきりしたことを防衛局長が言うことは不謹慎であるということでございましたが、公式にこういう場で申し上げますれば、まだはっきり決まっておりません。いずれにしろ、いまの七機を対象にして公平に検討しておるということでございます。  御質問の順序にお答えを申したいと思いますが、まず最初調査団の報告はいつごろ提出されるかということでございますが、この調査団が現地調査に赴きます際に、現地に対して相当詳細な質問書を出してございます。これに対する回答が出そろいますのは、大体九月の下旬というふうに考えておりますので、十月中には報告書が出るのではないかというふうに期待をいたしております。その際に全部の回答が出そろうかどうかということについては、必ずしも保証しかねる面もございます。  それから、第二次の調査団を出すのか、こういうことでございますが、これは当然出さないと——要するにはっきりした段階になりませんとリリースをしない、これはもう御案内のとおりでございます。それから値段につきましても、はっきりしたものはその時点にならないと教えない、こういうことがございますので、来年、これはまだ時期ははっきりしておりませんが、大体二月か三月ごろになると思います。まだはっきりしておりませんが、来会計年度でこれを要求いたしております。ですから、来会計年度でございますから、四月以降と思われます。  それから第三番目は、この前お話しをいたしました選考基準を変えるのかどうかということでございますが、実ははっきり決まった選考基準というものはございません。大体このあたりを考えておるという、私どもこういう文官の立場で申し上げたわけでございまして、厳密なものはまだはっきり打ち立てられておりませんが、これは当然ORをやります際にはっきり決まってくるわけでございまして、一応この前申し上げましたことを大幅に変えるということは恐らくなかろうというふうに考えております。  それから四番目のハイ・ロー・ミックス・コンセプトでございますが、これはアメリカのように全世界に作戦場面を展開しておる国、こういうところで、しかも多数の戦闘機を必要とする、こういう立場にあるものについては、当然これはハイ・ロー・ミックス・コンセプトというものはわかるわけでございます。と申しますのは、たとえば全天候性のものでなくても、雨の降らない砂漠地帯、こういったところにおいては、当然普通の、そういうものを欠く戦闘機であっても、十分役に立つということがあり得るわけでございまして、わが国のように狭い地域において大体同じような気象条件、それは北と南では大分違うのは違いますけれども、そういうところにおいては、果たしてこのハイ・ロー・ミックス・コンセプトがそのまま適用になるのかどうかという点については、いまのところ、これをこういう考え方を導入すべきかすべきでないかという点については、まだはっきりお答え申し上げられない、こういう段階でございます。  それからもう一つ、YF16の問題でございますが、いま私どもわかっておりますのは、F16はゴーアヘッドをかけられましたのが七五年の一月でございまして、最初の試作機がデリバリーになりますのが七七年から七八年で八機ということになっております。したがいまして、来年参りましてもまだこの飛行機には乗れないということでございます。
  104. 大出俊

    ○大出委員 方針変えずとおっしゃるなら深追いはいたしません。  念のために申し上げておきますと、F16をシュレジンジャー氏がNATO四カ国に説明しているのがここに書いてありますが、この早期警戒装置つき空中司令部機の同時採用、これを力説しているわけですね。NATOの場合なら、あるいはそれは可能かもしれない。各国で買いますから、機数は多いですから。司令部機がここに一つある。これは頭文字をとるとAWACS、こうなっているわけですね。エアボーン・ウォーニング・アンド・コントロール・システム。この飛行機は大変高いですね。こんなものを、日本で何機も買わないのに冗談じゃない、そんなことできませんよ。昼間の戦闘機なんというのじゃ不経済な話で、むだに金を使うようなことになっちゃう。なぜならば、われわれが、われわれがと言って、私は違いますけれども、皆さんが意識しなければならないのは、一番強い国でございますから、極東に大変な空軍勢力を持っている国でありますから、アメリカが意識するのもそれですから、そうすると、国情が違う。そうなると、ちゃちなものでミグ型の二十幾つなんという最近のものとこれは太刀打ちができない。だれもそんなことはわかっているわけです、専門的に言えば。  だから、私は立場が違うけれども、皆さんがどうしても採用なさるということになるとするならば、意味のないものはこれは当然否定すべきであろうという気があって申し上げているということなんです。だから、いまのこの空中何とか司令部機なんというものは、シュレジンジャーさんの欧州の説明の中にありますから、念のために一言触れて御意見だけ聞いておきたいのであります。  それから、非常に不明朗きわまるのは、アメリカのノースロップがどんどん金を使ってフランスその他を籠絡したんですね。確かに籠絡をした。これはひどいもので、フランスのポール・ステラン将軍、これは国民議会の副議長をやっておられた。そこでミラージュ戦闘機の性能が米国戦闘機に比べてはるかに劣っているという書簡を政府高官に送った。これが公にされて、これは当時新聞に出て大騒ぎだったが、この方は辞職に追い込まれた。この事件があってすぐその後に、二時間ばかりたって、この人は交通事故にぶつかって、この将軍はひっくり返っちゃったんですね。国民議会副議長ステラン将軍が、五十年の六月六日の口です。ところがこれが、事故が起きて収賄事件ということで事実が明らかにされてからわずか数時間後、オペラ座近くの道路を渡ろうとしてはねられてということになっているわけですね。これはノースロップのコブラを売り込もうとしたんでしょうけれども、結局売り込み得ないでゼネラル・ダイナミックスになってしまったといういきさつなんですね。  また、これをめぐりましてベルギーなんかにもずいぶん利権が流れているんですね。ベルギーが採用すればとほかの国が条件をつけたからベルギーに集中したわけであります。アメリカの有力誌タイム、これによりますと、ベルギーの隣の国のフランスのミラージュF1を捨ててF16に決定した裏には、シュレジンジャー長官がベルギー製のマシンガン三千万ドル相当を購入する約束がなされていたり、また利益が大きいF16スペアー部品の製造の一部をベルギーのメーカーに任せると約束していたりというふうなことがあってと書いてある。  ここには、この記事の一番最後の方には、解散総選挙を控えている自民党某首脳シュレジンジャーが実弾を放ったといううわさも関係筋からささやかれているなんということまで書いてあります。となると、これは穏やかでない。そして坂田さんはだれだれのかいらいだなんて書いてあるのです。これは世の中で売っているものの記事ですから、ごらんになったと思うんだけれども、ここまで騒がれるというのは、これは意図的にするのかどうかわかりませんが、中には中曽根さんの写真が載っておったりにぎやかきわまるわけだ。山田洋行なんというのが、二部にも上場されてないのが代理店になるかもしれないなんてなことが書いてあったりいろいろする。  それで、こういうことは意図的に何かを考える人があって書くのか、それはわからぬ。わからぬけれども、この意味で一番ぴしっとしてなければならぬのはほかならぬ防衛自身。だから、そこのところを私はしかと、シュレジンジャーさんが来られるということでいろいろなことが流れておりますので、念を押しておきたい。  そういう意味でひとつ、いまの空中司令部機等の問題とあわせまして、大変に金がかかるという側面が16にはあるので、そこらはどうお考えか、日本ではそんなものは使えないということとあわせまして承っておきたい。
  105. 坂田道太

    坂田国務大臣 新しい飛行機を買うということにつきましては、これがいやしくも国民の疑惑を招くようなことは絶対にやるべきじゃないというふうに私は思っております。  それから余り私、新聞、雑誌、どういうふうに書いてあるかも実はよく知らないぐらいでございまして、むしろ知らない方がいいというふうに思っております。  それから、ちょっとお言葉にありましたから申し上げますが、この前、七月四日の独立記念日に確かにホッドソン大使から呼ばれました。これは実を申しますとシュレジンジャー氏の日程なんですね。しかもこれが十一月、十一月と言って、大体大使等はずっと言い続けてきておったんですよ。それが非常に早くなった。そしてそれが坂田さんちょっと申しわけないということです。そういうことだったと思います。ほかに何にもございません。これははっきり申し上げておきます。
  106. 大出俊

    ○大出委員 局長、ひとつさっきのやつ答えてください。
  107. 丸山昂

    丸山説明員 ただいま大臣から申し上げましたとおり、これはもう先生から、この前のときもその前の予算委員会分科会におきましても、直接調達の方式その他について二度と防衛庁の中から犠牲者を出さぬようにという大変ありがたい御趣旨がありまして、私どもとしては、繰り返して申し上げておりますように、あくまでもわが国の防空のために必要なものを選ぶという考えでございまして、これがしかもいずれの機を選ぶにしましても相当の高価なものでございますので、そういう点についていささかの疑惑も持たれぬように、航空自衛隊初め私どもとしては十分その辺を慎重に配慮をいたしまして対処してまいりたいというふうに考えております。
  108. 大出俊

    ○大出委員 さっきちょっと冒頭に言いましたが、PXLはもう決めなければいかぬだろうと思うのですが、これはいつまでほうっておくのですか。
  109. 丸山昂

    丸山説明員 PXLは、この前御報告を申し上げましたように、外国機の導入については当時この検討時期においてはニムロッド、それからアトランチックというものがございましたが、P3C一本にしぼっております。そこで外国機の導入と、これはライセンス生産を含めての問題でございますが、それと、それから国内開発という問題について関係省庁との間に詰めをやっておる段階でございます。五月二十五日から六月八日まで海幕から調査班を、アメリカの国防省それからロッキード社にそれぞれ派遣をいたしまして、その調査結果については現在整理中でございまして、近いうちにこれができ上がるということになっております。で、この再度の調査と申しますのは、当初国防会議の事務局の専門家会議で検討いたしました段階から、現在はたとえばP3Cにつきましてはアップ・ツー・デート・ツーという、いまスリーになっておりますが、ツーの段階まで中身が相当高度のものになってきておるということでございまして、そういう問題、それからこれはまだ価格もはっきりしておりませんけれども、一機にしぼりました段階でどの程度の近い価格が示されるかということで、これも最近のインフレ現象その他を勘案いたしまして時間の経過による変化というものを調べる、こういうことをやってまいったわけでございます。  で、一方、国内開発の問題につきましては、開発のプランというものが大体固まってまいってきておりますので、この両者について関係省庁、防衛庁、大蔵、通産というところでございますが、これで検討をいたしまして、その検討結果に基づいて措置をするということになっております。ところが大体めどとしては、五十一年度予算編成の時期までに結論を出すということ、私もこの国会の席上で申し上げておったわけでございますが、調査結果に非常に時間がかかって、まとめに時間がかかっております関係で、この八月末の概算要求の持ち込みまでには間に合わないということでございます。したがいまして、予算を持ち込みまして以後において結論が出ました場合においては、追加要求をさしていただきたいと思っておるわけでございます。
  110. 大出俊

    ○大出委員 あと具体的な問題を三点ほど承りますので、それぞれお答えいただきたいのであります。  一つは、うちの岩垂代議士でありますが、彼がまだこの国会に議席を持ちませんいにしえから私が何遍か質問をしてきた件なんですけれども、最近久しく私この問題に触れておりませんが、新聞に出ましたので承りたいのであります。それは横須賀に三カ所、旧来からの懸案でございますけれども、米軍の兵員クラブがございます。私も何遍か行ったことがございますが、通称EMクラブと言っておるわけであります。九千平方メートルばかりございます。それから長井住宅地区、これが二十八万七千八百平方メートル、稲岡エリアが一万九千平方メートル、この三施設の返還、日米両政府が原則的な合意に達したことが十七日明らかになったという記事なんです。ところが、これはよく見ると、横須賀の文化会館で開かれた「都市づくりを考える市民ゼミナール」というところで岩垂代議士が講師として防衛問題を説明をしたこのときに出てきた言葉なんでありまして、横須賀基地内の高層住宅約七百の建設を地元が承認するならばなどという条件がついているというふうなところからこの記事が書かれているわけであります。本人が正式に記者会見をしたり、記者発表をしたのじゃございませんから、しゃべっているのを横で聞いていて書いた記事でございますから、その意味では記事は必ずしも正確だとは言い得ないのであります。したがって、この際私は、直接この席で承っておきたい、こう考えまして、論点を申し上げたいと思うわけであります。  そもそも横須賀のブリックス湾に住宅を建てるというのは、横浜の米軍海浜一号住宅地と絡んでいたわけであります。それで、この返還を私、長らくやってまいりまして、いろいろなことがございましたが、米本国に問い合わせる必要がある、で、米本国の回答は、海浜一号住宅地のみならず、二号住宅地にせよ、ボイラー地区、チャペルセンター、山手住宅地などなどまで引き続き移転をするということであるならば認めようということになってきた。そこでまず第一番目に、海浜一号住宅地、この返還問題になってまいりました。交通事情との関係もあって米軍もどきたいということでございました。司令官に私、何遍か会ったこともございますが、そういうことで、横須賀のブリックス湾、泊湾に埋め立てをして、そこにこれを移す。四百二十六、四百二十七、四百二十八なんというやりとりが当時いろいろございまして、いま四百二十七くらいになっておるはずでありますけれども、三階建てはだめだとかいろいろなぜいたくを米軍は言いましたが、何とかかんとか落ちつけたという実は事情にあるわけであります。  ところが、これがその後、二号等との絡みなどなどから、七百戸ぐらいになりそうだという話が出てまいりました。だが、それは米側の言い値であるということでございました。これが私の当時耳にした話でございました。しかし当時、長野市長でございましたが、私も横須賀へ行って一日、横須賀市会の方々に、横浜市はけしからぬというようなことを、私がかわって怒られたこともございましたが、日曜日一日ぶっつぶして皆さんの御意見を承ったりいたしまして、長野市長も当時、決断をして基地の中でということになった、こういう実は経過があるわけであります。  そこで、片一方の方からすれば、七百戸だとかなんとか言ってそれがふえる、それがこっちの返還基地との関係で条件になってくるという、実はそこをまず聞きたいのであります。この三基地、岩垂君の話によると、数回にわたって防衛庁にお伺いをしたりして実情を聞いたわけです。その中で、米軍に防衛庁の担当の方々が話をされた。その話を向こうは気持ちよく受けた。その過程でのニュアンスとして、何とか返還をしてくれそうである。もちろん、これは手続その他ございますから、正式決定には時間のかかることでございますけれども、非公式の話で何とかこれは米側も返す、こういうことになりそうである、そういう受け取り方を防衛庁の方々の返答で受け取った、これがこの話の背景であります。  したがって、まずこの三基地の返還について皆さんは、米側はこれを返す、こういうふうに確信を持っておられたから、そのことを岩垂君へ伝えられた、こういうことだと思うのでありますが、まず、そこのところは一体どういうことになっていたのか。でないと、岩垂代議士がうそを言ったことになりますので。ただ場所が、非公式な話とこういう委員会とは違います。だから、委員会の席上としてはとおっしゃるなら、その話は承ります。だが、事のいきさつというのを承っておかないと、私も、私ども立場で非常に困るわけでありますから、そこらの御答弁をまずいただきたいのであります。  それから二番目に、アロケートなりなんなりという問題、基地の外、中というようなことは、私も前から知らぬわけではありません。条件がついているのかいないのか。条件が消えたという時点もございました。なおその後、また条件が出てきたというならば、その条件とは何かということを聞いておきたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  111. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 ただいまお尋ねの件でございますが、これは先生いまずっと経緯をお話しになったので、私どもの方で認識している事実を御説明申し上げたいと思いますが、岩垂議員が私ども銅崎施設部長、いまここにおりますが、のところに参りまして、いま御指摘の横浜海浜住宅の施設についての話し合いをしたわけです。いま御指摘があったように、かねがね横浜海浜住宅のいわゆる一号地区四百二十七戸の移転建設が進められておった。そこへ持ってきて、いまお話しがございました二号地区もどうかという提案が米側からございまして、一号、二号には九百十戸の住宅がございますが、これをそのままのみ込むかどうかということで具体的な移設戸数を現にアメリカ側と調整中でございます。まだ結論は出ておりません。そこで、こういうものを移設するについては、地元の横須賀市とも十分調整をして措置したいということで、横須賀市ともそういう措置を考慮しております。  そこで、岩垂氏がおいでになって、施設部長との間でいま申し述べたような話し合いがありまして、そのいきさつを御認識いただいた上、今後この問題をどうしたら解決できょうかということで、岩垂議員とうちの施設部長の間で話し合いがあった。そのときに、うちの銅崎施設部長が、横須賀市がかねがね米側に要望しておる兵員クラブEM、そのほかの二カ所のところについて銅崎氏の意見を申し述べた。見通しについても彼の考え方を言ったということを言っております。そのことが結果的には、その過程において岩垂氏がどういう感触をお持ちになったか、かなり希望的ないい感触をお持ちになったのかもしれませんが、新聞にああいうかっこうで出たのでございまして、事実関係はいま申し述べたように、まだ決まったわけでも何でもございませんので、将来のEMクラブ、その他の施設の返還についての見通しを、幾らか感触として申し述べたというのが事実でございます。この点については、今後残された問題として私どもはいま申し述べた方向で努力をしていきたいというふうに思っております。
  112. 大出俊

    ○大出委員 非公式な話で表に出しにくいのですけれども、岩垂君にいろいろ聞いたものですから、銅崎さんと話もしてみたわけですけれども、やはり岩垂君が別にうそを言っておるわけじゃない。だが、これは非公式な話ですから、手続もございますから、その意味では別にこういう席で追及をする気はありません。いろいろあるけれども、米側は返還をする、こういう方向である、そういう見通しを当時皆さんの方でお持ちになっていた。そういうニュアンスの話を岩垂君にしている。だから岩垂君は、そのことを新聞記者に発表したのでも何でもなく、一つの研究会の席上で彼が受け取っている、つまり防衛施設庁が将来を展望している明るい見通しを、つまり米側は返還しそうである、そういう見通しの話をした、こういうことがあるわけですね。  ですから、いまの答弁に加えてそこらの、つまりやりとりをした中身について、詳しくということは申し上げませんが、そういうことがあったのだということを答えていただかないと、これは直接何遍も、四回も話しているそうですから、これはちょっとこのままそうですかと申し上げにくいわけであります。つまり明るい見通しであることを岩垂君が聞いた、ただ、これは手続もあれしますから最終結論じゃもちろんない、こういうことなんだというそこらのところはどういうことなのか。差し支えない範囲でひとつ答えていただきたいのと、今日これらの地域の返還について、この席上で明るい見通しを持っていいというふうにお答えいただけるのかどうか、あわせて承りたいわけであります。
  113. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 ただいまの点については、銅崎部長は岩垂議員とお話しをした際に、個人的な意見として、目下米側と下交渉をしておる感じを、やや明るいふうにお話しをしたというのが事実でございます。  ただいま、こうやって公式にお答えするならどういう答えが出るかということでございますが、これは確かにいま米側と折衝中でございますが、下交渉でございまして、まだ十分な折衝ではございません。したがって、ただいまの時点で返還の見通しについて、はっきり返ってくるであろうというようなことなどは、ちょっと申し上げにくいのでございますが、今後、努めてその市当局の意向を尊重しながら、米側に好意ある配慮をやってくれということを、精力的に強力に行うつもりでおります。
  114. 大出俊

    ○大出委員 米側は、この問題は一体どうなんですか。米側は一体、どんな態度なんですか。
  115. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 米側は、まだ正式な交渉でございませんで、何となし係官の感触を非公式に聞いておるという感じから得た個人的な感じを銅崎部長が申し述べたわけです。米側と正式な交渉になりますれば、ちゃんとしかるべき委員会に持ち出すとかいう手続はやはり進めなければならぬというのが、今後の手順でございます。
  116. 大出俊

    ○大出委員 これは何か条件めいたものがあるわけでございますか。
  117. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 まだ折衝してみないとわかりませんが、ただいま何もございません。
  118. 大出俊

    ○大出委員 現在のところない、やや明るい見通しを個人的に伝えた、こういうことだったわけですね。  これは、まあお互いに言葉ですから、やりとりは非常にむずかしいわけですけれども、これは皆さんの方が、ある意味で当該地区の議員ですから、好意的な感情もあったりしてお話しになったという側面もあると思いますから、だから深く詰めることはいたしません。いたしませんが、つまり折衝の過程で——非公式な下折衝の過程と言った方が正しいと思うのですが、やや明るい見通しをお持ちになった、そういうことだったから、そのことをお話しになったのだというふうに受け取りますが、それでよろしゅうございますね。
  119. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 お話しのとおりでございます。
  120. 大出俊

    ○大出委員 そこで、さっきの二号地等をめぐりまして——これは戸数で九百十でございましたか、二号地。
  121. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 はい。
  122. 大出俊

    ○大出委員 つまり、この問題の話の方はどういうことになっていますか。
  123. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 これは、いまお話しの初めの四百二十七戸については、早い段階において正式に、昭和四十四年三月の合同委員会で決定しておりますが、後から加わってきた部分を含めて全体を、九百十戸になりますか、これをどの数字で押さえるか、いまもっぱらやり合っておるところでございます。まだ具体的に申し上げられる数字は出ておりません。
  124. 大出俊

    ○大出委員 私は、たとえばこの記事になっている——この記事には記者の方のセンスもおありになると思う。御勉強もなさっている方でしょうから。だが、四百二十七戸と決まっているわけです。これは当時、長野市長時代に認めているわけですから、市民感情もございまして三地区返還をする、だから、そこに少しふやせとかなんとかいうことは、これはいまの問題じゃないと私は思っているのです。そんなことを市に言ったって、市議会もあり市民もあってのことですから、だからそこらが、三地区が返ることについてあわせてどう判断するかということは、これはまた別な次元の問題でございまして、だから私は、この三地区の返還というのはぜひひとつ、その明るい見通しを広げていただいて、長年の要望でございますから、早急に市民のものになって返ってくるという、そういう結論をお出しいただく御努力を欲しい、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  125. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 この三地区の返還については、かねがね地元横須賀市の強い要望であるので、私もまだ着任早々でございますが、十分この事柄の重要性を理解して、米軍にすでに私からも話をしたことがございますし、今後うんと努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  126. 大出俊

    ○大出委員 あわせて承りますが、逗子の池子でございますが、この間私、ちょっと質問しましたら、さらっと流れた質問になってしまったんですけれども、横浜防衛施設局長水谷平一郎さんが「新しい年を迎えて」ということで、一月五日の防衛施設広報がございますが、この中でこの池子に触れておられるのです。「池子弾薬庫は、横浜側が返還され、高速バイパスが開通することになれば良いと思います。」これはそうしたいという希望を述べている。「然し、逗子側は大変不満でしょう。国土が狭くて過密なのが悪いのですが、そして、二市に跨っているのが、更に悪い条件になっていることも、良くわかっているのですが、」ということで、新年に当たってその抱負の一端として述べているのです。  そこで、この久木の中学校の隣接地域につきまして、これは倉庫だとかあるいは鉄線を張るとかいろいろなことがあるんでしょうけれども、こちらも市の方に連絡済みでございましょうか。それから横浜の側、この水谷さんが新年の抱負で述べておられる点、こちらの方は一体どういうことになるわけでございましょうか、二地区にまたがりますからあわせて承っておきたい。
  127. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 手続が一緒になっておりますから、二地区一緒にお答えしますと、池子弾薬庫のうち、後からおっしゃった南横浜バイパス区域の一部を、その区域の中を縦貫する一部分を道路の用地として返還してほしい、それから同時に、その用地で区切られる一部分を、横浜市寄りの方ですが、災害避難用の緑地帯を兼ねた公園にしたいから返してほしいというのが一つでございます。それからもう一つは、逗子の市域にかかる久木中学校の運動場及び市民の運動公園用地として返還をしてほしいというこの二つでございますが、これは横浜の局長が年頭のあいさつでそういうことに触れたのも事実でございますが、施設庁としては、この両方の市の要望の趣旨を踏まえて米側と非常に強く折衝してまいりまして、ようやく八月十九日に開催の施設特別委員会において米側から、横浜市の分についてはとりあえず一部分を、それから逗子の分については久木中学校の区域として必要な分を、それぞれ条件がつきますが、倉庫があったり、それからフェンスをしたりすることがございますので、条件がつきますが、条件を付して返還するということを言ってきておりますので、施設特別委員会で話が出れば、後は御承知のように、合同委員会に持ち上げてだんだん手続を了すればいいのじゃないかというふうに思っております。ほぼ確定した感じでございます。  それから、あとまだ要望にこたえる努力は今後も重ねていきたいというふうに思っております。  なお、市にはそれぞれ連絡してございます。
  128. 大出俊

    ○大出委員 簡単に承りますが、もう一つ、すぐそこの山王ホテルですね、あすこのところに米軍の将校クラブなどがあるわけですが、ここにある書類は、東京都に出された陳情書なんですが、それで、これが民有地でございまして、米軍が使用中でございますが、裁判でこれは民法に基づいて返せと、こういう判決が出ているわけですけれども、皆さんが抗告しておられる。ところが、これはよく、ちょっと非公式な話だから誤解されているようですが、安全自動車がみんな買っちゃったんだから地主がそれだなんていうようなことをちょっと耳にしましたが、そうじゃなくて、私は、ここに全部一括して書類についてのものを持っているんですが、しかも地割りもここには全部ある。気の毒な方がおるんですよ。女の方で、この中にわずかな土地を持っていて、もう年齢で、土一升金一升という土地ですから、もうそれこそ何とも耐えられぬ気持ちでいるおばあちゃんがいるのです。  そこで、ここの所有者は、確かに安全自動車株式会社の中谷保平という方、これは山王ホテルの重役でしたから、まあ似たようなことなんですけれども、それから日本交通株式会社の川鍋さんのところの土地、大林組の土地、大日本企業の土地、確かにございます。ございますが、小森喜代治さんという方の個人の所有地がこの中にある。小森喜代治さん、九十・四四坪、零細な土地であります。奥田登喜さん、四十・〇三坪、これがいま申し上げた方であります。それから輪島誠二郎さん、これが二十・〇二坪。坪数は四十とか六十とかいいましても、この土地というのは大変な価格です、すぐそこですからね。  これは全くの民有地なんですから、いままでこんなケースを——これだけ土地の価値あるものを、米軍の都合で押さえっ放し、借りっ放しで返さない。裁判までやった。それで国側が負けている。民法上これはもう当然返すべき土地であると言っている。それをまたそのままぶん投げておくという、そういう不親切きわまる話はない。  それで、この六十、四十なんという土地を個人で持っている方々は、そう大きな声を上げられない方々なんですよ、弱いんですから。大きな企業ならば、国とのいろいろな折衝がありますから物を言えるんだけれども。やはりここまで来ると、上告だ云々だといって時間を延ばさないで、これは結論はだれが考えても——私のように長く防衛をやっていまして、こんな不合理なところをこのまま置いておくなんというばかなことを容認できないですよ。だから私は、この点は、向こう二年なら二年、期限ぐらいはつけて決着をつける、こういうふうにはっきりしていただきたいと思っているのですが、いかがでございますか。
  129. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 ただいま御指摘の点はそのとおりでございまして、四十八年の八月に一審で負けまして、明け渡しをしろという結論が出まして、それにさらに九月になってから国は東京高裁に控訴しております。現在、相手方と訴訟中であるという形になっておりますが、御指摘のように長いことかかっておって、これはまことに懸案でございまして、私どもとしては、一つの頭痛の極みたいなことになっていて、訴訟は訴訟として、別に和解の方途はないかということで、また訴訟と並行して和解の工夫をやっております。これはなかなか相手にも主張がございますので、簡単にできるとは思いませんが、いずれにしても、もう訴訟の結果も近々出ることでございますし、そういう意味で期限が限られたようなことになっておりますから、私どもとしては解決を何とか早くやりたい。  それで、これが出ていくについては、代替施設がどこかに要るわけなんですが、その行き先をどうするかということで、御案内かと思いますが、赤坂プレスセンターと称するところがございまして、そこへ持っていくことも一案として検討しておりますが、これまた都市計画法上の住居地区に指定されておったり、それからいろいろな面積の問題があったりして、米側とも交渉しておりますが、いずれにしても、早期に何とか解決したい。御指摘のとおり努力いたします。
  130. 大出俊

    ○大出委員 これは個人所有地ですからね。これは相手があってとおっしゃるけれども相手は米軍なんですよ。こういう問題、余り米軍にぜいたくを言わしちゃいけませんよ。接収地じゃないんだから。そうでしょう。個人の所有地なんだから。  それで、その個人が経済的に泣いているというのに、いつになっても返さない。しかも判決が出てもまだ返さない。これはそうなると人道上の問題ですよ。こんなケースを戦後いままでほっぽっておくなんというふざけた話はないと私は思っているんですよ。だから物を言うんだが。  この点は、久保次官に私、電話で申しましたら、久保さんも、本当にこれはお気の毒過ぎるのだというわけですよ。だから、ちょっと私はこれはさわらざるを得んのだがと言ったら、ぜひこれはやってくれというわけだ。次官がそう言っている世の中に、久保さんだって前施設庁長官なんだから、返すべきものだと本人が言っているんだから、やはり皆さんここのところは一年なら一年、二年なら二年、期限を切ってくださいよ。そうでないと、もう年配の方にすると待ち切れぬですよ。いかがですか。おおむねこんなところでひとつ何とか解決を図る。米軍というのは、こうなるとぜいたく言うんだ。本牧の米軍一号住宅だって、やれ教会も一緒に持っていけとか、学校も持っていけとか、そんなこと。向こうもブリックス湾のことはわかっているのに、三階以上はだめだとかね。じゃ日本人の住宅はどうなっているんだと言って、私は米軍に文句を言ったことがある。やはりそういうところは、少しこわ談判をしても個人を救ってくれなければ困りますよ。  大臣、これはいかがでございますか。個人なんだからね。だから、やはり向こう一年とか二年とかいう間にともかく決着をつける、そういう意思で努力する、こんなふうにしていただけませんか、大臣。待ち切れなくなってしまいますよ。
  131. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 先ほどもお答えしたように、米軍の出ていくところを大至急こしらえまして、期限の問題についても、和解の段階でぜひ期限をつけてくれと地主側が言っておりますので、これはいろいろ技術的な問題を含めて、それじゃどういう期限にしたらいいかということを、所有者側の御意向をよく承って、できれば期限つきで和解をしたいというふうに努力しております。和解の項目の一つにそれを言われておりますので、出ていく先を探すのと、それから地主さんの方の非常に御迷惑されておる立場をよく考えて措置をするということをお約束いたします。
  132. 大出俊

    ○大出委員 私がここで二年、こう若い切ったって、あるいは建物をどける、建てるという問題がありますから、東京都の関係は、必要ならぼくらも幾らでも話もしたいと思っているので、ぜひそれは決着をつけていただきたい。  それからもう一点だけ簡単に承っておきますが、立川の基地の一番北の側にアメリカンビレッジというのがある。これは住宅専用第二種です。これは場所は地図でお見せしてありますからおわかりだと思うのであります。前に電話で簡単な回答をいただきましたが、米軍が直接契約しているんだからあずかり知らぬ、こういう話です。それはいささかおかしな話で、宮澤さんの答弁だって、国連軍の地位協定だってあるというさっきのお話しで、米軍の地位に関する協定がないわけじゃない。国内におけるこの国の諸般の法律その他との関係も明確になっているわけであります。だから、そういう不親切な話でなくて、これも民有地なんですから、それでここの方々もいいかげんでということなんですから——最近はこういうものはいろいろ方々に残っておる。立川基地の現状は御存じのとおりでございまして、こんなところに米軍が住専第二種で住宅をつくっておかなければならぬことはないわけであります。借りておかなければならぬことはない。だから、そこらのところは、米軍の方でどこに通っている方々がいて、米軍そのものは一体その借りている住宅というのは永久に置いておかなければいかぬものかどうか、そこらぐらいのことはあなた方の方で物を言っていただける責任があろう、こういうわけでありますが、いかがですか。
  133. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 いまの建物は、実は私、先週の末初めて立川の現地へ行って、非常に紛らわしい建物があるので、これは何だと言ったら、いまのアメリカンビレッジがあることがはっきりしたわけです。  これは、おしかりを受けましたが、米軍へわれわれ国が施設、区域として提供したものではなくて、要するに民間の人、不動産業者なり第三国の人が、民間の所有地にアメリカ風の外国人向けの家を建てて、そしてあの辺に勤務しておる米国人などに、民間人もおるそうですか、家を貸しておるということで、そういう意味では、私どもの直接の仕事の対象にはなっておらないわけであります。ただし基地に隣接しておることでもありますし、私が見に行っても、これは何だと思うくらいですから……。  現在の状況は、承知しておるところでは、約三百戸そういう木造の平屋建てがある。所有者は、いま申し上げたように不動産業者などがおる。居住者は横田及び立川基地に勤務しておる米軍人あるいは民間人もいる。この居住者が契約をして不動産業者に家賃を払っておるという形態でございます。  そこで、民間の建物であるので、いままで申し上げてきたような基地とは全く違って、単なる民間ベースで米国軍人に貸しておるという性質のものなので、大変扱いがむずかしいわけでございますが、施設庁として地元のいろいろな要望も承知しておりますので、われわれとして関与できるところがあればできるだけ関与したいと思いますが、その辺おのずから限界がございますので、御了解いただきたいと思います。
  134. 大出俊

    ○大出委員 そのうちに関与していただくようなことにいたしまして、改めて物を申し上げることになっておりますので……。  ただ、全くどうも基地のすぐ隣でいろいろな意見があるところでございますから、そちらの顔というのは困る、こういうつもりで物を言ったわけでありますが、お調べいただきましたのでそれで結構でございます。  大変長い時間恐縮でございました。以上をもって終わります。
  135. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路雅弘君。
  136. 中路雅弘

    ○中路委員 シュレジンジャー長官が韓国からの帰途、二十八日、二十九日に訪日になって、二十九日ですかに長官お話しになる。今度のシュレジンジャー国防長官坂田長官のいわば軍事会談ですね、アメリカの国防長官が訪日をするのは四年ぶりのことですし、特に三木・フォード会談の上に立っての具体的な話だと思いますし、安保体制の今後の方向づけを決める非常に重要な会談として注目をされているわけですが、先ほどからの皆さんの御質問もあるので、私は、きょうはこの問題について少し詰めた御質問をしたいのです。  最初に、ダブるわけですが、この会談の主要なテーマといいますか、何を協議されようとしておるのか。特に、この協議の中でいろいろ意見交換をされるわけですが、結論としてどういう取り決めといいますか、合意といいますかを考えられておられるのか。いわゆるテーマの中身ですね、その中身と何を合意されようとしているのかを最初に簡潔にお伺いしたいと思います。
  137. 坂田道太

    坂田国務大臣 まずシュレジンジャーと私との防衛協力に関する協議の内容でございますが、先ほど私並びに防衛局長からお答えをいたしましたように、その一つは、主として朝鮮半島をめぐる軍事情勢についてのシュレジンジャー長官考え方、それに対するわれわれの考え方アジアにおけるアメリカ側の戦略の中身、それからわが国を防衛する、あるいはわが国の安全保障ということについての私の考え方防衛努力をどの程度しておるか、その内容、たとえば四次防達成の状況あるいはポスト四次防についての構想、これは具体的には言えないにいたしましても、どういう考え方なのかというようなこと。それから防衛協力それ自体の問題でございますけれども、先ほどからお答えを申し上げておりまするように、安保条約の範囲内でというか、枠の中で両国の防衛の責任者同士が話し合う機会を持つということ、これはやはり意味のあることだ。そしてでき得べくんば、安保条約の枠内ではあるけれども、何らかの機関、話し合う場ですね、それは単にユニオンホームだけじゃなくて、政治家、シビリアンを含めた形におけるそういう日米防衛協力に関する場が合意されれば幸いだというふうに思うわけでございます。  それから従来、私が当委員会並びに予算総会等で申し上げておりまして、もう少し、その内容はどうだったかというようなことの御質問がございましたから、作戦協力の大綱であるとかあるいはまた情報交換であるとかいろいろな項目を申し上げておるわけでございますが、なかなか、短時間でございますからそういうようなことまで話が及び得るかどうか、ちょっと疑問だと思うのでございます。むしろ、それは今後に残された課題としまして、時間をかけて、両方何らかの機関ができました上で詰めていく問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  138. 中路雅弘

    ○中路委員 この日米防衛分担といいますか、皆さんの言葉ですと防衛協力、この構想が国会でも論議になってから四カ月余りたつているわけですね。その期間、いろいろのことを皆さんが公にされている。たとえば、これは連合審査会の私に対する長官答弁ですが、何を審議するのか、どういうことを合意するのか、取り決めをするのかという質問について、具体的にお答えをされています。  これは連合審査会のときの長官答弁ですが、日本の安全を確保するために自衛隊と米軍が整合のとれた作戦行動をとるようにする、その内容というものは、あるいは形式というものは、いま検討をしているわけでございます。しかしながら、その中におきまして私ども考えておりますのは、作戦協力の大綱であるとか情報の交換であるとか、あるいは補給、支援であるとかいうことを考えておりますし、いま御指摘になりましたような連絡調整機関の設置というようなものも合意に達したい、そして平素におけるユニホーム同士の研究合同というようなものもひとつオーソライズされたものにしたい、そして、これは防衛庁長官と国防長官との合意というようなものを考えておりますが、しかし、この点につきましては、いままだ検討しているということ。さらにその後の答弁で、できるだけひとつこの合意は公表できるようなものにしたいと思っていますという答弁をされています。これはその前の十三日の当委員会の質疑ですけれども。  ここで中心に長官が述べられているのは、日米防衛分担についての少なくとも作戦協力の大綱、こういうものについて十分話し合いたい、そして何らかの取り決めなり合意を得たいんだということが一つの柱になっているわけですね。そして私が、この問題についてはじゃ公表するのか、できるだけ国民の皆様に公表したい、国会の答弁のどこでもこれに大体類似するような答弁をされている。いまのお話しですと、時間がなかなかない、できればこういうことも時間があれば少し話し合いたいということですね。  いままで国会の中で、具体的にこういう問題について討議をしたいんだ、それでいまはその構想について具体的に検討している段階だ、それが会談の直前になって、時間があればそういうものも幾らか意見交換をしたいというふうに、全く後退しているわけですけれども、それでは私たちに国会の中で、こういう作戦協力の大綱も具体的に検討していきたい、何らかの合意をしたいという問題は、今後どこでこの問題を詰めていくというお考えなんですか。
  139. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点は、多少事情の変化があったということを一つ申し上げておきたいと思うのでございます。  と申しますのは、本委員会でも申し上げたと思いますが、大体私は秋ごろにシュレジンジャー長官が来られる、それならばかなりな準備もこちらは整うという状況が実はあったわけです。ところが、七月四日にアメリカ大使館に呼ばれて、そうして先ほどのお話しではございませんけれども、大使が言われましたことは、非常に早くなったんだ、それで韓国にも行く、日本にも来るということで期間も二日ぐらいしかないのだ、こういうことでございまして、そういう相手方のやはり都合もあるものでございますから、やはりそれに応じた対応の仕方をしなくてはいけないというのが私どものいまの考え方でございます。  しかしながら、この本委員会あるいは国会で申し述べましたことは、やはり私たちの頭の中にあることでございまして、いずれそういうようなことにも触れていかなければならない問題だと思います。もちろん、それを出すにつきましては、各省庁間の話し合いを通じまして決めました形でやらなければいけないというふうに思うわけなんで、そういう意味で、いま申し上げますような時間的な制約がある、その中でどういうようなことをやるかというようなことになりますと、先ほど申し上げましたような形にならざるを得ない。まあ、それはそれなりに意味があるのではなかろうかと思います。言うならば、何らかの話し合う場の合意を得ますならば、それによってこれから、先ほど申し上げましたようないろいろな項目の話し合いが行われる。そしてまた、それは恐らく白米安保条約の協議委員会を通じて詰めていくということになろうかと思いますが、その場合でも、またできれば一年に一回ぐらいシュレジンジャー国防長官と話し合うというようなこともまああり得るわけでございますから、そういう機会にまた話し合いをする、そうしてまた、実際恒常的にできております安保協議委員会、そのサブコミッティでございますか、そういった場を通じまして国会で私が申し述べましたような問題についてこれから話し合うということになろうかというふうに思います。
  140. 中路雅弘

    ○中路委員 相手方の都合で幾らか変わったのだというお話しですけれども、じゃ相手方は、今度の相手方シュレジンジャー長官の方は、韓国を訪問して今度は坂田長官と会われる、これに対してアメリカの方の、これは七月十六日ですが、ワシントン発共同電、新聞報道等を見ますと、こういう報道になっています。「シュレジンジャー長官は、韓国訪問の後訪日するため、ベトナム後の韓国の安全保障との絡みで、日米防衛力強化と日米防衛分担が取り上げられることになる。」ということで、今度の訪日も、アメリカの方はこの問題が中心の会談内容だということを言及した報道もしているわけですね。十一月ごろを考えていたのが日にちが早まったのだ、時間も短い、だからテーマが少し変わったのだというのじゃなくて、今度の訪日自身が、すでにこのことが中心内容だということを相手方も言っているわけですね。また来るシュレジンジャー長官自身が、これは繰り返し言っているわけですが、皆さんがいままで国会で答弁されたことと全く符合するのです。  たとえば、これはたびたび引用されていますけれどもシュレジンジャー長官が、「ワールドレポート」の五月二十六日に書いているのを見ますと、日本米国に多くを依存するのではなくて、多くの防衛費をもっと支出するのが望ましいと思っているかという問いに対しての答えですけれども、「私は彼ら、日本が共通の防衛において日本の役翻りを真剣に果たすことを期待している。これは対潜水艦戦争、輸送路の防衛、防空等といったものに対する特別の力点が含まれている。近年においては、こうした努力がわれわれの予想したよりも積極的なものでなかったという限りにおいて、われわれは新たな努力を期待しておる。」ということを言っているわけですね。ここでシュレジンジャー長官が、いままで日本が十分この点では積極的でなかった、新しい防衛協力で期待するのは、対潜水艦戦争、輸送路の防衛、防空等といった問題だということを挙げています。皆さんがいままでおっしゃった、今後アメリカ防衛協力、防衛分担の話し合いをするという作戦協力の大綱、この三つの問題が中心で、国会でも答弁されていたことと全く符合するわけですから、今度の会談がこういうことが中心に置かれていたということは事実じゃないですか。  なぜそれがいまのように、話し合いの場をつくることが意義があるのだとか、糸口だとかということで、公にされていたことがだんだん立ち消えになってくるのか。そしてそれはどこで詰めるのだと言えば、新しくできる協議の場ですか、ここで十分やっていきたい。この協議の場というのがどういう性格のものか、後でお尋ねしますけれども、そういうことになれば、私自身が何回か御質問したように、国民の前にこの協議が公にされるのか、そうでなければ秘密協定のようなものになるじゃないかということを御質問しましたら、今度の日米の軍事の首脳会談の中身については、できるだけ国民に公表したいということを約束されている。しかし、いまのお話しであったら、ここで討議されるのは、情勢の意見交換はやられる、いろいろ両方の防衛力の説明もやられる、しかし実際に合意したいということは協議の場をつくるということだけだ。それから、後は一年に一回くらい両方の責任者が定期に会うのがいいだろうというお話しで、あと実際の中身は全部、どういう機関ができるのか、新しいその場で具体的に詰めるのだということになれば、私が言いましたように、具体的な中身は全部公表されないまま隠された状態になっていく。私たちに約束されたことと違う結果になるじゃないですか。
  141. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま向こうのシュレジンジャー意思として御指摘になりましたのは、ずいぶん前の記事でございますね。しかも、それはシュレジンジャーが正式の手続を経てわれわれに伝えたものではございませんですね。私どもは、そうじゃなくて、やはりアメリカ大使館を通じて、正式の手続を踏んで題目やなんかを決めるわけでございます。ですから、その時点と、その後七月四日にシュレジンジャー長官から電報が来た、こうだということについては——やはり向こうでも十一月くらいということを考えておったと思うのです。ところが、韓国からの要請が非常に強かったのだろうと思いますが、そういう事情変更があったから、アメリカ大使が私を特に急に呼ばれまして、そしてそういうような話になったわけなんです。私は、そちらの事情で、十一月でなくてもう少し早い機会にということであればそれなりの準備をいたします、こういうことでございまして、これは日米両国の間のことでございますから、いろいろ変化があるということをはやはり認め合った形においてやるべきものだと私は思うのです。  それからまた、私は、ことさらに隠すとかなんとかじゃなくて、どういうことが話し合われたかということは、これは先方のあることでございますけれども、できるだけ国民の方々にわかるようにやるということが非常に望ましいことなんだという考え方は、いまも実は変わっておらないわけでございますから、そこのところは一貫しておるというふうにお考えをいただきたい。しかし、最初私が言っておりましたようなことを今度の会談でというふうにはいかなかったということは認めざるを得ないというふうに思います。
  142. 中路雅弘

    ○中路委員 幾つか理由を挙げられていますが、この構想を述べられてから四カ月余りになるわけですね。シュレジンジャー長官の訪日が近づくに従って具体化されるのじゃなくて、新聞の報道でもいままで表に出されたことがだんだん逆に立ち消えになっていっている。ということは、私は、会談の時間が短いというような問題ではなくて、一つシュレジンジャー長官等のさっきの一つ発言にもありますように、日本に対する要求が非常に大きい。しかし日本の場合には憲法の制約もある。長官も、この機会に一挙に共同作戦の具体的な範囲も広げて、構想も立てたいとお考えになったのでしょうけれども、やはり考えてみればいろいろ制約もある、表に出すわけにいかない問題もある。そういう中で表では後退せざるを得ないのじゃないかと私は推測しているわけです。しかし、できるだけ公表したいというお約束です。  シュレジンジャー長官は、たしか新聞の報道ですと韓国で終わって共同声明を出されるそうですけれども、今度の坂田長官との会談の後、この会談について、それではどういう形で中身について国民に知らせるのか。また今度、恐らくそれは具体的にそこまでの詰めはなかなかむずかしいだろう、いままで約束したことを。その今度の会議ではむずかしいだろうと言われている問題を、具体的にいろいろ今度の会談で詰めていった場合に、国民にできるだけ公表したいというお約束をどういう方法で守られるのかということをお聞きしたい。
  143. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは素直に私、申し上げておるわけなんで、まだ今度の会談をどういうふうな発表の仕方をするか、これは相手のあることですから。ですけれども、私は、できるだけ国民にわかるように——恐らくシュレジンジャー長官としましても、アメリカに帰って、どういうふうなことを話したのだと、あるいはコミットしたのだということをアメリカの国会に言わなければならない責任があると思うわけなんです。あるいはまた、恐らく日本新聞記者の方々あるいは外人記者等にもいろいろお話しがあると思うのでございますから、その意味において、私が先ほど申し上げましたように、できるだけ発表できるものは発表したいということには変わりはございません。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 じゃ、いまこれだけは合意をしたいとおっしゃっている問題について、もう少し具体的にお聞きします。  いわゆる防衛協力の問題、防衛分担の問題で、協議の機関の設置のことを安保協議委員会の枠の中でお話しになっています。この構想については、当委員会でも丸山局長のこういう御発言がこの前もあります。この協議機関について、その前に、この協議機関というのは幾つといいますか、どういう構想なのかということも触れていただきたいのですが、それと関連してこういう発言があります。「まずわが方の制服の最高責任者、それからアメリカの方の日本におります最高の責任者というものが必要だと思います。それからあと民事上の問題、一般行政上の問題、いろいろな問題がございますので、内局のシビリアンあるいは各省のそれぞれに関係した者、こういった者が当然、特に日本の側としてはここに加わるべきではないかというふうに考えております。」「アメリカに提示する場合には、もうちょっと具体的な形で出してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。」  もう会談までわずかしかありません。恐らく構想はできているのだと思いますけれども、この協議機関の設置について、新聞報道等によりますと、二本立てという報道もされています。いわゆる文官を、シビリアンを含めた機関と、もう一つは制服の機関というふうに二本立てという話も出ていますが、まず最初に、このあたりの構想からお話しを願いたいと思います。
  145. 丸山昂

    丸山説明員 先ほども大出先生の御質問に御答弁申し上げましたように、現在、外務省と事務的にこの問題は詰めておる段階でございまして、いろいろ細かい点で問題がございますので、今度の会談までに結論を得るということはむずかしいのではなかろうかと思っております。今度の会談においては、先ほどから大臣おっしゃっているように、そういう場を設けるという点についての両者の合意ができればそれでよろしい、御案内のように日米安保協議委員会の枠内でということになっておりますので、次に日米安保協議委員会が開催される時期にはっきり決まればよろしいというふうに私ども考えておるわけでございます。  先ほど私の前の答弁を御引用になっておられますが、基本的な考え方は、やはりシビリアンコントロールの実を上げるということが一つの大きなねらいになっておりますので、したがいまして、文官である各省の担当者、それがどの程度入るかというような問題、これもいろいろ検討の余地がございますが、まあ基本的な考え方としては、この前私が申し上げましたこととそう変わっておりません。結論的にどういうことになるか、そういうことについては、いまの段階でははっきり申し上げられません。  それから、その組織を二つとか一つとかいうお話しがございますけれども、これはやはりいまのところ一つしか考えておりません。ここでこの問題を一括して検討するということでございまして、幾つもつくるというようなことについては、ただいまの段階では考えておらないと、こういうことでございます。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 いまのお話しですと協議機関——新聞の報道ですと、またいまの答弁でも、協議機関をつくるということだけは合意をしたいというお話しだったですね。いまの答弁ですと、それもそういう場所を設けるということの合意で、どういう協議機関をつくるかということは、今後の安保協議委員会の場でやるのだ。そうするといままでの、こういうことを協議したいという構想というのは、全く全部今度の場ではなくなっちゃったんじゃないですか。とにかくそういう話し合いの場をやるということだけの合意ですか。
  147. 丸山昂

    丸山説明員 いま申し上げておりますように、要するにその場を設ける、協議研究をする場を設けるということについて双方合意に達したいということでございまして、協議をいたします中身は、これからひとつ長いこと時間をかけて詰めてまいらなければならない問題でございますので、そういう場をつくるということを申し上げておるわけでございます。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 いま、一つというお話しがありました。安保協議委員会の枠の中で一つつくる、シビリアンコントロールを生かす。そうしますと、いまあります文官と制服両方で構成している日米安保運用協議会ですか、これとの関係はどうなるのか。この性格を変えるのか。この安保運用協議会というのは、いまアメリカ局長も参加されていますし、防衛局長も参加をされている。統幕議長、それに在日米軍司令官、アメリカの方の大使館の関係者、こういう人たちで構成されていると思うのですが、これとの関係はどういうふうになるのか、その点はどうなりますか。
  149. 丸山昂

    丸山説明員 運用協議会は、いま御指摘になりましたとおりに、関係者は私たち防衛庁、外務省のそれぞれの担当局長、それから統幕議長というのが日本サイドでございます。日本側は外務省の有田審議官が現在座長の役を務めております。それからアメリカ側はシュースミス公使、それから担当の参事官、それからガリガン在日米軍司令官、参謀長といったスタッフでございます。これは外務大臣とアメリカ大使との間に合意が成り立ちまして、その後、日米安保協議委員会においてこれが追認された形のものでございます。で、これは国会でたびたび外務省の方からも御説明がありますように、フリートーキングの場でございまして、ここで何事かを決定するという場ではございません。それから、いわゆる戦略、戦術に関する問題は、ここでは取り扱わないということがはっきり言われておるわけでございます。  ただ、先ほど私が申し上げましたように、現在その協議研究をする場ということについては、相当柔軟に考えておりまして、屋上屋を重ねるような組織をつくることについては、外務当局もできるだけ避けたいという御意向でございます。私ども現在、この安保協議委員会に関連している組織というのはこのほかに二つ三つほどあるわけでございます。したがいまして、できるだけ簡素にするためには、やはりスクラップ・アンド・ビルドをやりまして、あるいは在来のものを改組してやるとかいうことも考えておるわけで、いま申し上げました安保運用協議会を改組してやるということも検討の中身としては入っておる、こういうことでございます。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 そうしますと、この協議機関というのは、いま私が述べました安保運用協議会、この性格を変えるといいますか改組をして、戦略、戦術の問題も討議をしていく、そういうふうにやっていくということも考えている、まあどういう形にしても、大体そういう構成になるだろうというお話しですか。  いままで一番大きい防衛分担問題でこれと関連して問題なのは、やはり有事に際する作戦の調整、連絡、このことがいつも問題になってきたわけですね。作戦の具体的なすり合わせ、この点では、いまのはシビリアンの人たちも入っておりますから、具体的な作戦協力、分担、調整ということになれば、当然、実動面での作戦の調整機関が必要になってくる。だから、いま一つだとおっしゃいましたけれども、ミカンの中の袋かどうかわかりませんけれども一つ二つという論議は、結局この協議機関の中に具体的には制服のそういう機関が当然必要になってくるんじゃないか。そうしなければ具体的な作戦の調整というのはできないわけですね。それはどういうふうに考えられているのかということ。  それから、いままで制服の間でやられていた日米の幕僚研究会同ですね、これは制服レベルでの研究、協議の組織としてあった。これを長官は、私への答弁で、オーソライズされたものにしたいということも答弁されている。これとの関係はどうなるのか。こういった点をもう少し詳しく構想を話していただきたいと思います。
  151. 丸山昂

    丸山説明員 有事の場合のこれは、日米それぞれ指揮系統が別で動くわけでございますから、結局この指揮関係の調整、作戦調整というものが必要であることは申すまでもないと思います。問題は、有事の際の問題でございますので、どういう形の作戦調整機関を設けるかということについて、それを研究するのは、いま問題になっておりますこの研究の場でひとつ検討をして、日米相互間に合意を得られれば、そういう形で出発する——出発するといいますか、有事の際にはそういう形で運用するというところまで問題を詰めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、長官から申されました、いわゆる幕僚の日米相互の研究でございますけれども、その日米幕僚研究会同というのは、御案内のように、日本にあります米軍基地の機能面についての検討、研究を行うということで、わが方が統幕の事務局長、先方が在日米軍の参謀長というところで開いております。これは第九回の日米安保協議委員会で設置を認めておるものでございます。長官の言われました日米の制服レベルの研究と申しますか、これは統幕にもございますが、名簿でそれぞれ検討をやっておるわけでございます。これは出先の関係もございまして、きわめて事務的な、技術的な問題をやっておるわけでございますが、こういったものも、いま申し上げました新しい研究の場において大綱を示して、ここでコントロールをするという方向に持ってまいりたい、こういう考えでございます。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 あなた、相当具体的にいままで、こういうことをやりたいと国会でも言っていられるんですね。たとえば作戦の問題でも、両者の機能分担ということからも当然作戦の調整機関が必要だということで「そういう意味両者の作戦調整といいますか、こういうものの機関は、有事の際には常識から言っても当然必要なことでございまして、こういうものを、日米相互に、どういう構成メンバーで」それから場所まで言っているんですね。「どこにつくるのかというようなこと、かなり具体的な問題を日米の間で詰め」たいということを言っておられるんですね。いま一つ協議機関が一応できる、そのもとで、当然、作戦調整の何らかの組織が必要だということは、いまもおっしゃっているわけですが、当然、作戦調整ということになれば統幕だけではいかないですね。陸海空とありますから、恐らく四つできるんじゃないですか。つくらなければ作戦調整できない。具体的な構想の中身までは私いま触れませんけれども、お考えをここまで国会で言っておられるんですから、もう少し具体的にお尋ねしたいんですけれども、一応安保運用協議会、これを改組するか、あるいはどうするかは別にしても、一つの協議機関をつくる、これはシビリアンが入っておりますが、具体的な作戦調整のすり合わせをやっていくためには制服の機関が必要だが、これはいままでの幹部会同のものを発展させるのかどうか、この点のお考えもお聞きしておきたいのですけれども、いずれにしても四つは必要になってくる、この作戦調整の機関が。そういう点については、大体構想はそれに違いないと思うのですが、お考えはどうですか。
  153. 丸山昂

    丸山説明員 今度もしそういう研究、検討の場ができますれば、これは当然、少なくとも外務省、私ども、それから制服というところに関連してまいりますので、そこで問題を御検討いただくということになるのでございまして、ただいまのところ、全く防衛庁の中の考え方でございますので、実際にそのとおりになるかどうかという点については、そこで御検討いただいた結果によらざるを得ないというふうに思います。  それで、いま先生から御指摘の、それぞれ陸海空がまたこのカウンターパートを含めての検討でございますけれども、これは当然かなり専門的な分野にわたることでございますし、その当事者間でひとつ検討してもらうというようなことが必要ではないかというふうに考えております。そこでお認めいただけるかどうかという点については、まだはっきりしておりませんけれども、私ども考えとしては、そういうものも設けていただければと思うわけでございます。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 局長のこの前の答弁は、構成だけじゃなくて、いま読みましたように、どこに設けるかということも日米の間で具体的に話し合いたいというお話しですね。防衛庁の側としては、いまお話しのように、そういうものを設けていただきたいという考えアメリカと話をされるということになるわけですが、設けるということになりますと、どこでということになれば、当然場所は限定されてきますね。市ケ谷か横田ということになりますね。日本側としてはどちらを考えているか。結局、作戦調整の統幕が入りますね。作戦調整の指導部というか、事務局が必要ですね。現実にその幹部がしょっちゅう、有事でない場合にはそこにいないにしても、そういう調整機関をつくるとすれば、機関の事務局がどこに置かれるかということは必要になりますね。考えられるのは、太平洋軍司令部のある横田か、府中から去年の十一月に移りましたから市ケ谷か、どちらかになりますね。私も統一的な司令部だとは言いませんけれども、しかし作戦調整をやるわけですから必要になりますね。皆さん、どこにつくるかということまで詰めたいというお話しですから、防衛庁の方のお考えを聞きたい。
  155. 丸山昂

    丸山説明員 これも全く雲をつかむような話でございますが、当然この場所は、私が申し上げておりますのは、通信連絡、それから御案内のように、コマンド・アンド・コントロールでございますので、情報収集、情報がそこへ集約されるようなシステムを考えなければなりませんし、それから当然、最近のように大きな表示板その他ディスプレー装置を全部設けなければいかぬとか、要するに平たく申しますと、金のかかる、そう大した金ではないと思いますが、いずれにしろそういう問題も含んでおりますので、その場所をどこに置くか等についても、これはやはり検討していかなければならぬと思います。当然、これはわが国におきます双方の調整ということになるわけでございますから、やはりわが国の政府機関あるいは防衛庁の各部隊、幕僚幹部、こういったものに連絡のよろしい場所というようなことになるかと思います。具体的にどこということは、私自身まだイメージに出ておりませんので、はっきりしたことを申し上げられませんが、いずれにしろ、やはりそういう問題も含めて検討していく必要があるだろうということでございます。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一問聞いておきますが、この新しい機関の設置ということは、たとえば名称ですね、この名称はどういうことを考えられているのかということ。それから、これは法改正になりますか、この機関の設置は。それから予算措置はどういうふうになるのか、そのあたりもちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  157. 丸山昂

    丸山説明員 これは日米の合意に基づいてでき上がるものでございますので、別に法律という問題は出てまいらないと思います。それからとりあえず、これはもう予算は要らないと思います。と申しますのは、安保協議委員会その他も外務省では恐らく組んでおられないと思いますので、とりあえずは予算は要らないと思います。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一周だけ、これに関連してお聞きしておきたいのですが、どういう名称にしろ、いまの制服の作戦の調整機関ですね、これは平町の段階でつくられるわけですか。話がつけばこういうものをつくりたいと防衛庁の方の構想ですけれども、それはどういう段階で考えられるわけですか。話がつけば平時の段階でそういうものを一応置かれるわけですか。
  159. 丸山昂

    丸山説明員 これも、いまのところははっきりわかりません。要するに機能をいたしますのは有事の際ということでございます。そのために平町にいろいろ準備をしなければならないということであれば、平時にいろいろ打ち合わせをする必要はあるかと思いますが、要するに機能を果たすのは有事の際ということでございます。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題だけで時間はとりたくないのですが、三矢作戦計画ですね、かつての六三年の、これを見ますと、この構想と同じなんですけれども、「安保条約に基づき、白米両部隊の作戦を調整するため設置されるべきもの」として作戦調整機関の設置の問題を挙げているわけですが、この作戦調整機関、調整所は「防衛出動の待機の得点で設置をされて共同行動を開始し防衛出動の下令の時点で本格的な共同作戦を展開する」というのが三矢作戦の計画の中に出ています。この三矢作戦の中でも問題になったのですが、これは防衛出動の待機の時点で設置をされるというふうに述べているわけですが、いまの構想が活動するのは当然有事になってからだと思いますけれども、もし機構として平時の段階から設置をされるとすれば、まさに三矢作戦計画よりももっと一歩出た考えを皆さん持っておられるということになって、果たしてこういうことがいまの憲法の制約の中で、安保体制の中で法的に許されるのかどうかということも私は問題になると思うのですが、はっきりとどの段階でつくるということをきょうお答えになっていませんけれども、重要な問題なので長官にこれについてのお考えをもう一言お聞きしておきたい。
  161. 坂田道太

    坂田国務大臣 いずれにいたしましても、やはり憲法の範囲内においてやらなければなりませんので、そういうようなことを含めまして、もう少し時間をかけて十分慎重にやらなければいけないというふうに私は思うわけでございます。何しろ三十年やってなかったものをやろうというわけでございますから、もう少しやはりいろいろな協議を、防衛庁あるいは外務省御当局ともやりながらこれを進めていかなければならない。しかもまた、相手のあることでございますから、相手の話も聞きながら詰めていくというふうに御了解を賜りたいと思います。いまも申されたようなことも十分注意をしてまいりたいと思います。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞いているのは、防衛庁の方の構想としてつくりたいと考えておられるこの制服の作戦調整機関といいますか、各幕で恐らくつくられるのでしょうが、これは協議の機関の中でそういうことが決まれば決まった段階で平時の段階でも、機能するのは共同作戦ですか、有事の場合になるんですけれども、そういう機構としてどの段階でつくるのか、もしそういうことの話がつけばですね。これはどういうお考えなのかという防衛庁の方のお考えだけを聞いておきたい。
  163. 坂田道太

    坂田国務大臣 まだ防衛庁の方でもその点を煮詰めていないわけでございますから……。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 いままで皆さん自身がこういうものをつくりたいと、シュレジンジャー会談までにもつと具体的に煮詰めたいという答弁をしばしば国会でされている問題で、この会談の数日前になって、その調整機関一つにしても、じゃどの段階で設置をするのか、それ自身もお答えできないというようなことは、こういうものを一挙に打ち上げたためにいろいろ問題が大きくなってきた、だから後退したというのではなくて、やっぱり一応伏せて話してみようというお考えがあるんじゃないですか。私はそうとしかとれないですね。一般の新聞では後退、後退と書いてあるんですが、私は後退じゃないと思っているんですよ。後退じゃなくて、余り表へ出し過ぎた、これじゃまずいということで、改めて新しい協議の機関の中でみんなやっていこう、そういうお考えになるから、こういうところでも今度は文字どおり後退の答弁しかできない、そうじゃないですか。
  165. 坂田道太

    坂田国務大臣 いや、それは全くの誤解でございまして、ちっとも先生のお考えのように思っておらないわけです。やはり私の処理の仕方というのは、なるたけオープンにして、そして皆さん方の意見を聞きながら、過ちなからしめるようにして進めていきたいというのが私の考えなんで、これを秘密にして、そうして皆さん方に知られないままに何か決めてしまおう、そういうようなことは毛頭考えておりませんから、その点だけはひとつ御了解賜りたいと思います。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 それでは、もう一度これだけお尋ねしておきますが、協議をされて合意された問題あるいは取り決めた問題、これは必ず国民に公表するということはお約束していただけますか。
  167. 坂田道太

    坂田国務大臣 もう私はたびたびお答え申し上げておりますように、先方のあることでございますけれども、やはりできるだけ国民の方々にわかっていただくというところに、シビリアンコントロールのもとに自衛隊が存在するという意味があるというふうに思うのでございます。そこのところだけはひとつおわかりをいただきたいと思います。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 これは会談の後改めてまた関連してお聞きしたいと思うのですが、もう一つ、これは問題がちょっと別ですけれども、やはり会談と関連して、時事通信社の「世界週報」の八月二十六日号によりますと、同通信社の杉浦さんという人が、ワシントン特派員ですが、「三木訪米の成果と日米関係展望」という記事の中でこういうことを書いておるわけです。「さらに米議会に根強い防衛分担論も、政府レベルの要求にまでもち上げられる可能性が強まってきた。国防省の首脳は記者との単独インタビューで、日本に求めたい点として、1対潜能力の向上、2航空機の近代化、3米軍基地に働く日本人労働者の賃金を日本政府が負担することなどの点をあげた。これは明らかに米議会の日本フリーライド論、防衛肩代わり論を受けたものであり、八月末のシュレジンジャー国防長官訪日の際に米側が持ち出す公算は大きい。」というような通信記事が出ているわけです。また、他の新聞の報道ですと、この問題に触れまして取り上げられた場合でも、問題が微妙なために発表されるかどうか不明であるという通信も出ています。取り上げられるかどうかということの問題は別にしまして、アメリカの方から、もしこういう問題の要請が出た場合の防衛庁長官のお考え、これだけお聞きしておきたいと思います。
  169. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほど大出議員の質問にお答えをいたしましたとおりに、アメリカ側が言う言わぬにかかわらず、日本防衛上、海洋国であります日本といたしまして、対潜能力というものを高めなければならぬことは自明のことだというふうに私は思っておるわけであります。あるいは防空というものにつきましても、空を近代化していかなければならぬということも、アメリカ側が言う言わぬにかかわらず、われわれがやらなければならぬことだ、こういうふうに認識しておるわけでございます。  もう一つ、労賃の問題、これは駐留軍労務者の問題について、施設庁におきまして毎年いろいろ苦労をしておることを私も承知をいたしております。ことに昨年来のインフレ、物価高、それに応じて三〇%以上の賃上げ、これが相当の負担になったということが考えられるわけでございますが、このような問題も、やはりわが国の経済政策によって物価鎮静の方向にございますので、去年みたいな状況はないということで、その辺の事情は説明をいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  170. 中路雅弘

    ○中路委員 次に、私は、前の国会の末期に、この共同作戦問題と関連して幾つか私たちの質問にも答弁されている問題、関連した問題でさらに御質問したいのですが、一つは、丸山局長が私や同僚の木下議員の質問にも答えて「日米共同作戦の範囲について、公海、公空に及ぶ」ということ、それは「わが国の周辺数百海里」という答弁をされております。これは木下議員の質問にも「作戦行動の範囲は、公海、公空に及ぶ」ということ「日本の周辺の数百海里を大体考えておる」という答弁がされています。  その前に私が、これは連合審査の日だったと思いますが、有事の際の自衛隊の行動範囲が公海、公空に及ぶとか、あるいは安保条約五条の発動による日米共同作戦も公海、公空に及ぶという政府の答弁丸山局長答弁はいつからそういうふうな解釈に変わったのかということで御質問しましたら、そのときの丸山局長答弁がこういう答弁になっています。解釈はいつから変わったのですかという質問について「四十四年の十二月二十九日に参議院の春日正一議員の質問主意書に対する答弁書、それから四十七年の十月十四日、参議員の決算委員会の提出資料、これは水口宏三委員の御要求によるものでございます。」ということで、あと、その中身に触れられているわけですが、これを読んでみますと、こう言っているんですね。「自衛隊が外部からの武力攻撃に対処するため行動することができる公海・公空の範囲は、外部からの武力攻撃の態様に応ずるものであり、一概にはいえないが、自衛権の行使に必要な限度内での公海・公空に及ぶことができるものと解している。」という答弁なんですね。私は、これから解釈が変わった、これはとんでもないと思うのです。  いままで、この公海・公空に及ぶ、こういう関連の問題で、たとえば六〇年の安保国会以来——安保国会で岸総理が、日本の場合は、この条約日本の領土が武力攻撃を受けるのであって、領土外に出るという場合は絶対にないのである、したがって、いわゆる集団的自衛権で日本の領域外で援助する場合は含まない、これは当時の安保特別委員会での岸総理の答弁であります。繰り返し政府はこういう趣旨のことを言っているわけですが、本来、第五条に基づく日米共同作戦の範囲も、たてまえとしては、日本の領域内に皆答弁を限定しています。ただ、岸総理もこういうことは言っています。自衛隊がわが国の領土を出て他国の領土に行くことは絶対にない、ただ、海と空の関係においては、領海や領空を出て公海や公空の一部に出ていくようなことは実際問題としてあり得ると思うということですね。この答弁は明らかに、あくまで領海、領空が原則なんだ、そうして一部海と空については公海、公空に出ることも認めているわけですね。春日正一議員のこれから変わったのだという、さっき読みましたけれども、この中身も、いわゆる公海・公空に及ぶというのは「外部からの武力攻撃の態様に応ずるものであり、一概にはいえないが、自衛権の行使に必要な限度内での公海・公空に及ぶ」というのを幾らか解釈は拡大していますけれども、この場合も、その武力攻撃の態様によるというんですね。態様によっては一部公海、公空に及ぶことがあり得るのだ、それも自衛権の行使の限度内。丸山局長答弁は、一切そうじゃなくて、わが国の防衛の限度内と言っているんですね。そのときの戦闘の自衛権の行使のあれで、海と空においては相手武力攻撃の態様によっては一部出ることがあり得るのだ、そういうことがずっと一貫した政府の答弁なのです。だから原則は領海、領空ということを原則にして、海と空に一部及ぶというのは、そういう戦闘状態の場合にあり得るということを言っているんですね。  私は、これを盾にして、公海、公空数百海里が作戦行動の範囲なのだ、これは全く解釈を違えるどころか、新しい問題を提起している。決してこの答弁書から解釈を変えたのじゃない、解釈を変えたというか、見解を変えたのは、あなたの答弁から変えているのです。前の答弁書とこれがどうしてつながるのですか。全く違う問題じゃないですか。
  171. 丸山昂

    丸山説明員 私は、いままでずっと政府で答弁しております線から一つも外れてないというふうに考えております。いま引用になりました赤日正一議員に四十四年の十二月二十九日に出されております答弁書、これは「自衛隊は、侵略に対して、わが国を防衛することを任務としており、わが国に対し外部からの武力攻撃がある場合には、わが国の防衛に必要な限度において、わが国の領土・領海・領空においてばかりでなく、周辺の公海・公空においてこれに対処することがあっても、このことは、自衛権の限度をこえるものではなく、憲法の禁止するところとは考えられない。」ということでございまして、私が申しておりますのは、全く同じ趣旨で申し上げておるわけでございます。  そこで、いま数百海里というお話しがございましたが、実は私、よくその前後の事情をここで記憶をいたしておりませんが、わが国の海上自衛隊の整備目標、これについて一応周辺海域について数百海里のところを目途にいたしまして整備をしておるという実態を踏まえまして申し上げたわけでございまして、これも前提に置いて、相手武力攻撃の態様に応じた場合においてそのぐらいのこともあるだろうという御答弁を申し上げておるのだと思います。  それからもう一つは、安保五条の場合でございますけれども、この場合も、私が申し上げておりますように、わが方はあくまでも個別的自衛権に基づいて行動をするわけでございまして、その場合は当然、いま私が読み上げましたことと同じ考え方で、必要な場合には周辺の公海、公空において対処するということもあり得る、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  172. 中路雅弘

    ○中路委員 そうじゃないですよ。いまあなたは、相手の態様に応じてと言われた。木下議員への答弁は、作戦行動の範囲はということから答弁に入って、それで周辺数百海里を大体考えているという答弁なんです。いまの答弁と違うのです。海と空の場合は相手武力攻撃の態様に応じて一部公海、公空にも及ぶ、原則は領海、領空だけれどもというのが、大体いままでの答弁でしょう、春日議員への答弁書も。しかしあなたは、作戦行動の範囲が周辺数百海里なんだという答弁なんですよ。明らかに違うじゃないですか。どうしてこれが同じなんですか。
  173. 丸山昂

    丸山説明員 考え方は私、同じだと思うのでございます。作戦範囲ということで出されたわけでございまして、この周辺の公海、公空に、必要な限度に及ぶという場合に、それが無限に及んでいくということではなくて、大体の限度ということをめど、これは実はそのめどを示すこと自体意味でございますけれども、あえてめどを示すのであれば数百海里ということになるでしょうという御答弁をしておるわけでございます。
  174. 中路雅弘

    ○中路委員 これは六月九日の衆議院予算委員会の吉國法制局長官答弁です、同じような問題についての。日米の共同作戦の場合にいって終わりにこう言っているのです、いまの関連のところを。「当然領海外においても共同作戦があり得るとまでは申しておりませんけれども、領海に限られるということにはならないということを申し上げております。」と言っているんですよ。これが法制局長官答弁です。これも結局、領海、領空は原則なんだ、しかし武力の攻撃の態様によって一部公海、公空に及ぶことがあるから、こういう言い方をしているんですね。当然、領海外においても共同作戦があり得るとまでは言ってないのだ、しかし領海に限られるということにはならないということも申されています。あなたのは、作戦の行動範囲が周辺数百海里と言っている。この法制局長官答弁とも明らかに違うのです。どうしてみんなこれが同じだと言うのですか。この答弁は、いま繰り返し言っていますように、共同作戦があり得るとまでは言ってないのだと言っているのです。あなたは、共同作戦の範囲は周辺数百海里だと言っているのです、公海、公空に及ぶと。
  175. 丸山昂

    丸山説明員 吉國長官のその御答弁、吉國長官日米の共同行動といいますか、これの実態についてはっきりイメージが上がらないので、そういう意味でそれについてはっきりした確信を持って説明をできなかった、だけれども、当然その領海、領空にとどまるものでないという原則はそこでおっしゃっておるわけでございます。  私が申し上げておりますのも、あくまでも武力攻撃の態様に対応して当方は公海、公空に及び得る、そういう考え方お話しをしておる。それがどこまでも無限に延びるのではなくて、大体数奇海里というところが限度でございましょう、この数百海里というのも、非常にはっきりした根拠があるわけではございませんが、先ほど申し上げましたような実態に即してそういう御答弁を申し上げておるということでございます。
  176. 中路雅弘

    ○中路委員 その吉國法制局長官の、これは予算委員会での答弁ですが、吉國法制局長官答弁でも、領海外で共同作戦がやられるとまでは言っていない。しかし領海に限られるということにはならないということだと言っていますね。それから春日議員への答弁でも、領海、領空というのが原則だけれども武力攻撃の態様によっては一部公海、公空に及び得るという意味答弁ですね。あなたが先ほど言いましたように、作戦行動の範囲が周辺数百海里と言っているわけですから、この吉國法制局長官なんかの答弁と違わないのだとすれば、領海、領空は原則なんだ、しかしそのときの戦闘の状態によって一部公海、公空に及び得る、それの範囲が数百海里だと言ったのだということならば、答弁が違いますね。昨戦行動範囲といって言ったのじゃなくて、あくまでそれは領海、領空が原則だけれども、戦闘の態様によっては公海、公空に及び得る、その及び得るのが数百海里ということで数百海里を出したのだということならば、前の答弁をそういうふうにはっきりと訂正されますか。
  177. 丸山昂

    丸山説明員 私は、違ってないと思うのですが、いま先生のおっしゃいましたとおりに、前提は領海、領空がまず前提であって、そしてそれに対する外部の侵攻の態様に応じて、領海、領空に限らず公海、公空に及び得るのだということで御説明を申し上げておるわけでございます。  その場合に、作戦行動の、要するに公海、公空に及んだ場合の当方の範囲は一体どこまで行くのだ、こういうことでございますから、数百海里というめどをお話しした、こういうことでございます。考え方において私はこの前の答弁をいたしましたときと変わってないというふうに考えます。
  178. 中路雅弘

    ○中路委員 これは長官に私お聞きしたいのですが、丸山局長答弁は、わが国の防衛の限度内においてというのがつきますけれども、作戦の行動範囲は公海、公空日本の周辺数百海里という答弁です。いま吉國法制局長官やあるいは答弁書、これは総理の答弁書ですが、答弁書を見ますと、共同作戦といいますのは初めから行動範囲として、あるいは領海外で共同作戦というのはあり得るとまでは言っていないということを言っているわけですから、いままでの法制局長官の見解と局長のこの前の答弁は私は違うと思うのです。この点で政府の間で非常にニュアンスの違うといいますか、全く解釈の違う答弁が出ているわけですけれども長官からもう一度、いままでの法制局長官の解釈、答弁、あるいは質問に対する答弁書、この問題と違わないのだということならば、その点についてひとつ明確なお考えを、自衛隊の行動範囲についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  179. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、ずっとこの委員会、予算総会等を通じてこの問題でずいぶん御質問がございましてお答えをいたしましたときにも、領海、領空には限らないのだということは、同時に公海、公空にも及ぶのだ、それじゃ一体、無限に行くのかという御質問がございましたので、いや、そうではございません、いままで国会で答弁してきましたことは、大体数百海里、こういうことはずっと一貫して答弁していることで、何ら違いはないというふうに思っております。
  180. 中路雅弘

    ○中路委員 それでは、もう一度長官に聞きますけれども、領海、領空というのが行動の原則なんだ、しかし海と空においては、その武力攻撃の態様によって一部公海、公空に及び得る、その公海、公空に及び得る範囲が数百海里だというふうな解釈なんだということで、初めから自衛隊あるいは共同作戦の行動範囲が、そういう武力攻撃の態様とは関係なしに行動の範囲そのものがその周辺数百海里——周辺数百海里と言えば、日本海からフィリピンを含めた広大な地域で共同作戦を展開することになりますね。そういうことじゃないんだと、そういうふうに理解していいですか。
  181. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこのところはあくまでも領海、領空にはとどまらないということで、やはり公海、公空に及ぶ……(中路委員「及ぶ場合の出発は」と呼ぶ)及ぶ場合は相手の武力の態様によってなんだけれども、しかし、それについては大体いままで国会でずっと一貫して言っていることは数百海里、そんなに無限に行くものではない、こういうのがわが方がずっと一貫してとってきたことだというふうに思います。  それからまた、日米の共同作戦の問題については、いかにも一体的な関係みたいに言われますけれども、われわれは個別的自衛権に基づいてやるわけで、その点が加わることはよく先生も御承知のことだと思います。われわれは独自の指揮権に基づいて行動するということ、それだけ申し添えておきたいと思います。
  182. 中路雅弘

    ○中路委員 大事な問題なんで、もう少し……。私が言っているのは、公海、公空数百海里というのは、初めからそれは自衛隊の戦闘行動の範囲として言っておられるのか。いままで言っておるのは、領海、領空でたとえば戦闘があると、それがいろいろ戦闘の状態によって公空、公海に及ぶ場合もあり得るというのが、いままでの岸内閣以来の答弁なんですよ。そういうことなのか。初めから領海、領空ということを原則にするというだけじゃなくて、最初から公海、公空での数百海里は有事の際の行動の範囲なんだ、そういう考えで数百海里を述べられておるのか、その問題をもう少し明確にさしてほしいということを言っておるわけです。
  183. 丸山昂

    丸山説明員 これは必ず私が御説明前提で申し上げているように、わが国防衛のためということで、本来領海、領空で守るのが一つのたてまえになっておりますけれども相手武力攻撃の態様に応じてやむなく公海、公空に及ぶ、こういうことになっておるわけでございまして、それはもう私、終始同じようなことで御説明申し上げておるわけでございます。  そこで、いま数百海里というお話しが出ておりますが、この数百海里というのは、別に憲法上の解釈からきておるのではなくて、わが方の現実能力からして大体その辺ぐらいのところであろうということを御答弁を申し上げているわけでございます。
  184. 中路雅弘

    ○中路委員 じゃ、確認しますけれども、領海、領空が原則だ、しかし相手攻撃の様態によってやむなく公海、公空に及ぶこともあり得るのだといういまのお話しですね。それに間違いありませんね。行動の範囲が周辺数百海里だ、自衛隊の、あるいは共同作戦の。そういう意味で言うたのではないのだ、自衛権の行使の態様の中で一部そういうことが及び得ることもあるのだということですか。
  185. 丸山昂

    丸山説明員 そのとおりでございます。ですから、行動範囲という言葉が非常に、御質問の行動範囲ということが非常に……(中路委員「あなたの答弁が言っているんですよ、行動範囲というのは」と呼ぶ)いやしかし、そのときの御質問が行動範囲だったんじゃないんでございますか。それで、それは非常にあいまいな言葉でございまして、要するにどこまで行けるのかという御質問であれば、それは大体そのぐらいのところまでは行けますということで、もちろん相手武力攻撃の態様に応じてということが前提になるわけでございますけれども、不必要に、何もないのにそこまで行くということではない、こういうことでございます。
  186. 中路雅弘

    ○中路委員 不必要に、不必要というか、初めからそこで戦闘をやるという、そういう意味での行動範囲じゃないということでいいですね。
  187. 丸山昂

    丸山説明員 そうなると少しあれが違うのでございますが、要するに領空、領海、たとえば空の問題に限定して御説明をいたしますと、領空侵犯機というのが、領空侵犯機と言ってはあれですが、日本に対する爆撃機が攻めてくるということで、これは明らかに客観情勢その他から全部日本に向けて飛んでくる、爆弾を落とすということがはっきりしておる場合に、それが領海、領空に入るまで手をこまぬいて待っているということはございません。当然、被害を受けないために必要な限度内において公海、公空に出てそれを迎え撃つということはあり得るわけでございます。それは当然、憲法の許されるところだろうと私は考えます。
  188. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点、答弁の中に出ている問題、これとも関連するので続いてお伺いしますけれども、公海、公空においても、答弁の仕方は、ニュアンスの違いはいろいろありますけれども、わが国の防衛に必要な限度内でアメリカの艦艇や航空機も防衛することになるという趣旨答弁があります。たとえば一例を挙げますと、これは松本善明議員の質問についての答弁ですが、丸山局長が「わが国の安全を守るためにアメリカの船を守ることもあり得るということでございます。」ということで答弁をされているわけですし、また、これは五十年六月十八日の衆議院外務委員会ですが、防衛に必要だと思えば米国の艦船、飛行機あるいは同盟軍の艦船、飛行機も場合によっては守る、公海、公空、こういうことになりますねというので、あなたが「わが国の防衛のために必要であるということが出てまいりますれば、そういうこともあり得ると思います。」という答弁、こういう趣旨のことを何カ所かで答弁されているわけですけれども、この問題ですね。安保条約の第五条というのは、共同防衛区域を日本国の施政下にある領域と限定していると思うのです。公海、公空における米軍に対する攻撃について日本は何らの防衛義務を持っていない。この場合も個別自衛権ですから、集団自衛権というのはないわけですから、その点が安保条約の特殊性だということをいままで政府も強調されてきたと思うのですが、第五条に基づく自衛隊の行動は、集団的自衛権によるのでなくて、個別自衛権に基づくものでありますから、日本の主権に対する攻撃、これに対して個別自衛権の発動なわけですね。わが国の防衛に必要な限度内という前提はついていますけれども、公海、公空において米国の艦艇、航空機を防衛するということになれば、これは事実上、集団自衛権の行使を認めることになりますし、安保条約の性格も、大きく言えば変えるということにもなってくると私は思うのですが、この点は、たびたび同趣旨発言をされているので、もう一度明確にさしていただきたい。
  189. 丸山昂

    丸山説明員 これも、そのときに申し上げてあるわけでございますが、いまお読み上げになったところは、舌足らずの点で誤解を招くおそれがあるかと思いますが、要するにわが国は個別自衛権の発動の範囲、つまり日本国の安全を守るために必要な限度内において行動するわけでございまして、あくまでも最後まで、最終的にこの五条発動の場合においても、終始これで一貫をするわけでございます。  そこで、アメリカの軍艦を守ることがあるかということでございますが、それはいろいろ千差万様でございますので、当方が個別的自衛権の範囲内で行動している、その目的がわが国の安全を守るということに発しておるわけでございますけれども、結果的にアメリカの軍艦が助かったというようなことは全然皆無ではなかろうという考え方でございます。そういう言い方で私は申し上げておるわけでございます。
  190. 中路雅弘

    ○中路委員 あなたは、わが国の防衛の限度内でということをつけて、防衛する、守るということを言っているわけですね、先ほど言いましたように。答弁は舌足らずだったというお話しですけれども、いま二、三申し上げましたけれども、明確にそういうことを答弁されている。前の国会の質疑で、これはいつだったか、久保さんが答弁されているのがあります。やはり同じような質問ですね。「自衛隊は有事の際、米国の艦船や航空機を防衛する責務を負うことになりますか。」という質問に対して、久保さんは「安保条約の運用の問題だと思いますけれども日本側としては責任を持たない」と述べているのです。この責任を持たないというのは、その三つのうちのどれですかということを挙げて、第一番は能力上持てないのか、それとも憲法上それができないというのか、三番目に安保条約五条の制約からできないのかという質問に対して、久保さんは「正確には法制局と外務省からお答え願った方がよろしいと思いますが、私の考えとしては、第二と第三の両方からであると思います。」それで外務省の大河原さんは、ただいま防衛局長答弁のとおりでありますということで、いわゆる米国の艦船や航空機を防衛する責務は負わない、それは第一番に憲法上、そして安保条約五条のそれは違反だということで、見解を明確に表明されている。この答弁からいっても、この前の丸山局長答弁は非常にあいまいというだけじゃなくて、明確に負わないと言っているのに対して守るのだということを言っているわけですね。これは前の答弁で、自衛隊は有事の際に米国の艦艇や航空機を防衛する責務を食わないのだ、それは負えないのだ、それは個別自衛権の発動であり、憲法上、安保条約五条、この制約があるからという明確な当時の政府の答弁があった。これとの関係はどうですか。この見解に間違いないですか。そうだとすれば、あなたのこの前の答弁は訂正されなければいけない。
  191. 丸山昂

    丸山説明員 いまおっしゃっているのに対して、この前私が答弁しました、要するに結果として守ることになるということを申し上げてあるはずでございます。いまお読み上げになっておりませんが。それで前の久保局長答弁は、要するにアメリカの船を守る責任があるのかという、責任の有無についての御質問でございました。たしか楢崎議員の御質問だったと思いますが、それに対しては責務はないと言っておりますのは、そのとおりでございまして、日本安保条約五条その他からいたしましてもアメリカの船を守る責任はございません。私の御答弁申し上げておりますのは、わが方が行動をするのは、あくまでも個別的自衛権に基づいて行動をしておる、そしてそれはわが国を守るために動いておるのだ、ただ、その行動が結果としてアメリカの船を守ることがあるかもしれないという御答弁を申し上げているわけでございます。
  192. 中路雅弘

    ○中路委員 これは議事録ですが、丸山局長は松本議員の「わが国の安全を守るためにアメリカの艦船を守ることもあり得るというふうに言われましたよ。はっきりそう言っていますよ。」という質問に対して、あなたは「それは、そうでございましたら」ということから始まって「わが国を守るために、わが国の安全を守るためにアメリカの船を守ることもあり得るということでございます。」という答弁をされておるわけですね。わが国の安全を守るためにアメリカの船を守る、わが国を守るためにアメリカの船も守るのだということをここではっきり言っておられるのです。これは訂正されますか。あるいはこの趣旨は、あなたのいま言われたのとは違うわけですね。
  193. 丸山昂

    丸山説明員 松本議員の御質問に対しまして「先ほどから申し上げておりますように、わが国を守るためにわれわれは行動する。わが国の安全のために必要な限度内において行動するわけでございますから、結果としてアメリカの船がそのために救われる、その行動によって救われるということはあり得るだろうということでございます。」こう申し上げておるのですが、松本議員は、それは前言と違うじゃないか、訂正するなら訂正する、間違ったら間違っていると言えということを言われまして、それに対して私からやはり同じ趣旨を繰り返して申し上げておるわけでございます。
  194. 中路雅弘

    ○中路委員 公海、公空でアメリカの船や航空機を守る、そういう責任は直接負わないのだ、それは個別自衛権の発動の問題、行動の問題でありますということですね。それはこの前の楢崎委員への答弁ですけれども、憲法上、安保上の制約があるからということの明確な答弁がありますけれども、これと違わないのだ、これについて丸山局長もそのことについてははっきりしているのだというお考えだとすれば、もう一度そのことを明確にさせておいていただきたい。
  195. 丸山昂

    丸山説明員 いまのを、前の久保局長答弁を踏まえまして申し上げますと、アメリカの船を守る責任があるのかと言われれば、それは責任はございません。それから松本議員に私がお答えいたしましたように、わが国を守るためにわが国の安全に必要な限度内において行動する、その結果としてアメリカの船が救われるというようなことはあり得るだろうということでございます。
  196. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点、お尋ねしておきたいのですが、これはやはり私への答弁で、いわゆる第七艦隊が有事の際は核部隊だ、有事の際は核を持つということをお話しになって、この第七艦隊と共同行動をやる、共同対処をする、「わが国を防衛するという立場から、わが国の安全のために共同行動をする」ということになるということを丸山局長答弁されているわけですが、これと関連してお聞きしたいのですが、幾つかこれに関連した答弁が出ています。たとえば、これは鈴切委員発言に対する答弁で、核の搭載機あるいは搭載艦が緊急避難してきた場合、日本政府はこれに対してイエスと言いますか、ノーと言いますかという質問に対して、これは外務大臣ですけれども、「乱用されるおそれがございます。したがいまして、その場合でも当然に原則に立ち返るというふうに考えるべきものと思います。」いわゆるノーと答えるということも答弁をされている。  それから、これは丸山局長の私の質問に対する答弁ですが、「アメリカの航空機なりが核装備をして領空、領海には入らない、あるいは領空、領海に入るものはそういう核装備を付さない、こういう条件で作戦を考えてもらうということになる」という答弁もされています。あるいは別のところで「現実に核爆弾を持ちましたアメリカの航空機が途中で引き返すとかいうような問題、これは結果的には、わが国としては非核三原則をとっておりますからそういう形になると思いますけれども、それを細かく一々想定するということはきわめて困難な作業だ」というような答弁もされているわけですけれども、いずれにしても、有事の際に第七艦隊は核装備をする、そして公海、公空では共同作戦をやるのだ、共同行動をとるのだということは、すでに答弁で述べておられるわけですね。そして一方では、第七艦隊というのは安保の中核ですから、文字どおり共同行動をやる場合の当面の相手だ、公海、公空には核を持ったまま搭載機も艦船も有事の際に入るのは断るのだという答弁をされています。いままでのこういった、私が読み上げました一連の答弁については間違いございませんね。
  197. 丸山昂

    丸山説明員 私もはっきり記憶にございませんが、大体間違いないと思います。
  198. 中路雅弘

    ○中路委員 そうしますと、文字どおり有事の際、五条発動で第七艦隊と共同行動をやる場合には、今度は逆にその第七艦隊の艦艇や航空機は一切日本の基地には入れない、使用できない。長官は、基地の安定的使用というようなことで言っておられますけれども、有事の際は日本の基地は、アメリカの艦載機もあるいは第七艦隊の艦艇も事実上これは核武装するのだということをおっしゃっておるわけですから、端的に言えば使用は全くできない、そういうふうに理解していいですか。
  199. 丸山昂

    丸山説明員 核武装しておれば、これは入れないと思います。
  200. 中路雅弘

    ○中路委員 核武装するとあなたはおっしゃっておるわけですよ。だから私は聞いておるわけです、しておればというのではなくて。有事の際にアメリカの第七艦隊は核装備をするのだという答弁をされているわけですね。連合審査会のときの私への答弁でされているわけです。核装備をするのだから、私は逆に聞いているんですよ。今度は、逆に領海、領空に入れないのだから、日本の基地は使用できないでしょうと言っているのです。
  201. 丸山昂

    丸山説明員 御質問趣旨がよくわかりました。それは、有事に際すれば恐らく核装備をするだろうと思います。核装備をしておれば日本の港に入れないと思いますし、それからその時点において日本の港に寄港するのであれば、核装備を外して入ってくるというふうに考えます。
  202. 中路雅弘

    ○中路委員 だから、実際には漫画みたいな答弁をされているわけですよ。第七艦隊は横須賀を母港にしているわけですね。母港にしている間は核を持っていないのだ、有事になったらどこかに核を取りに行くわけですね。いずれにしても、どこかで核を積むわけでしょう、核装備をするわけだから。そして今度は戦闘行動になれば日本の基地は使えないのだ、皆さんの答弁はそういうことになりますね。こういう軍事行動は考えられますか。母港にして港にいるときは核を持っていない、そしていざ有事になったらどこかに核を取りに行かなければならない、それで今度はもう基地には帰れないのだという状態、私はこれを裏返して言えば、ラロックさんも言うているように、横須賀の港に入るときだけ核を外すということはないのだ、その部隊が核装備できる部隊であれば、これは当然核を持っているだろう、これが常識的な考えじゃないですか、皆さんの答弁を裏返しで考えても。軍事的に言っても、私の言っていることは可能なんですか。防衛局長、そういう漫画的なことを正直に考えておられるのですか。
  203. 丸山昂

    丸山説明員 平時の問題は、私はもう全然問題ないと思います。日本を母港にしている以上、核の問題、非核三原則をアメリカ側はよく理解して部隊配備をしておりますので、問題はないと思います。  それから、有事の問題でございますが、有事においては、必要性があれば、仮に現在のミッドウェーがその有事のときにおるとして、その場合、核武装の必要があれば、日本の母港化というのを犠牲にしても核武装をするのではなかろうかというふうに思います。
  204. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、いままでの論議、皆さんの答弁、これはとうてい国民を納得させないと思いますよ。実際に母権にしているときには、必然、平時だから核を持っていない。そして有事になって、どこかへ第七艦隊の艦艇やあるいは搭載機が核を積みに行って、たとえば朝鮮に行く場合に、核を積んで領海、領空を通らないで出動するのだ、そして今度は日本の基地には外さなければ入らないのだ、こんなことは、一番基地を使いたい戦時の場合に、事実上核を持てば使えないという状態にある、また、日本の領海、領空周辺で行動する場合は核を外さなければならない、そしてそれは有事の際は核部隊だと答弁されているわけですが、こういうことはとうてい国民を納得させることができない。この部隊が核部隊だ、平時の場合も核を外しているということはあり得ないのだということは、私は、第七艦隊に直接行って見なくても、皆さんの答弁の側から逆にそういうことは証言できるのじゃないですか。  私は、この問題をこれ以上論議をするつもりはありませんけれども、結果として皆さんの答弁を聞いていたら、そういう結果にならざるを得ないと思うんですね。そういうことは軍事的な普通の常識じゃないじゃないですか。長官、いまのは全くこっけいな事態だというふうにはお考えになりませんか。
  205. 坂田道太

    坂田国務大臣 ハドソン研究所のウィリアム・シュナイダー博士の見解がございます。これによりますと「米海軍では通常約二十隻程度の機動部隊を編成してパトロールに出るが、日本に寄港する艦艇は核ミッションについていない艦艇だけであり、高度に核装備化された地中海や北大上西洋の場合と違って、西太、平洋では通常装備のままでパトロールにつく場合が多い。たとえば、核装備できる空母ミッドウエーなどでも、通常装備のままでパトロールに出る場合が比較的多く、日本に寄港する場合は通常装備と考えてよい。たとえば、ベトナム戦争の最中でさえ、原子力空母エンタープライズは通常装備で出動していた。米国日本の特殊事情は明確に承知しており、一時通過も含めて、米海軍の艦艇や空軍機が日本核兵器を持ち込んでいることはあり得ないと思う。」こういうことでございまして、全く漫画的なことではないということだけは言えると思うのであります。いやしくも、ハドソン研究所のウィリアム・シュナイダー博士の見解でございますから。
  206. 中路雅弘

    ○中路委員 基地について安定的使用ということを、戦時になればなおさら自由にアメリカ側が基地を使いたいと要望していることも事実ですし、長官がそういうことについても話し合いされるそうですけれども、逆にそういう時期に第七艦隊が全く基地が使えないような状態にある。私は、先ほど言いましたように、この論議を聞いておられる人たちには、全く納得できない答弁だと思います。  しかし核の問題は、改めてまた別の角度から御質問したいと思いますけれども、時間が限られていますので、今度は簡単にひとつお答え願いたいと思うのです。  後で地元の問題で二、三私お聞きしたいことがあるので、一つだけ簡潔にお伺いしておきますが、今度の会談の中で在日米軍基地の使用について安定的使用と言われていますけれども防衛協力の問題と並んで主要なテーマになるだろうという報道も多くなされているわけですけれども、総理とフォード大統領会談共同新聞発表を見ましても、安保条約の円滑かつ効果的な運用ということを再度確認しているわけですし、また坂田長官自身が、新聞の報道によりますと、七月の末ですか、千歳や三沢で自衛隊員に話をされた中で、安保条約の有効性を高める上で米軍基地の安定的使用を図る問題について発言もされているわけですが、いま長官がここで言われている安定的使用という具体的な内容ですね、安定的使用の保障といいますか、検討されているもの、これを簡潔にひとつお伺いしたいと思います。
  207. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が安定的使用と言うのは、平時のことに重点を置いてお話しを申し上げておるわけでございます。と申しますのは、米軍基地に対する反対運動あるいは基地の空洞化というものが非常にある現実、こういうことは、やはり日米安保条約を結んでおるわれわれの当事者といたしまして義務があるわけでございまして、これが平時においても安定的に使用されるという状態になければならない。しかし、これまた同時に基地周辺の住民の側から考えますと、やはりいろいろの摩擦もあるし、トラブルもある。これについては、やはり政府自身が積極的に基地住民を納得させるような努力をする必要がある。あるいは騒音その他につきましても、特別の配慮をする必要があるんじゃないか、そういうことを私は申し上げておるわけでございます。そうして、やはりそういうような平時における安定的使用ということが同時に有事の際に有効に作動する、こういう結果になるのだ、こういうことでございます。それが有事の際にどうかこうかという問題は、まさにこれは外務大臣の所管事項でございまして、事前協議のイエス、ノーの問題になってくる、こういうことかと思っております。
  208. 中路雅弘

    ○中路委員 今度のシュレジンジャー長官との会談の中身についても、これは別の機会の国会答弁ですが、長官自身が防空や潜水艦対策よりまず最初に挙げているんですね。これは答弁ですけれども相手のあることだけれども、まず基地の問題、それからもう一つは、日本の上空の防空問題、もう一つは潜水艦対策、この三つじゃないかというような答弁をされているところもあるのです。それから新聞の報道によりますと、八月の初めごろから安定的使用の具体的内容防衛庁が検討されている。この問題として三つ挙げておられるわけですね。いま長官が言われた平時の際の第一番は、報道によりますと、在日米軍基地の運用のための環境整備、住民対策。二番目が基地の整理統廃合に伴う移転の円滑な推進。三番目が有事の際の在日米軍基地からの発進の問題、出撃の問題というのを挙げて、第三番目について、直接、いまおっしゃったように外務省の担当卒項であるけれども会談の中で、もし出たら長官はイエスを与えるという結論が伝えられているという報道もあるのです。  だから、この一部の報道によりますと、韓国に有事の際の安保条約による事前協議では、核兵器の持ち込みを除いてイエスと言うという結論を具体案としてシュレジンジャー国防長官に示す意向と言われているという報道も書いてありますけれども、この二、三の新聞に出ている報道についてて、長官はこの問題について会談の中で出た場合、どのように対処されますか。
  209. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは新聞に申しましたときにも、この事項はまさに外務省、外務大臣のお決めになることでございまして、私たち防衛庁といたしましては、やはり平時において安定的な使用ということ、これが大事なんだ、そしてそのことは、やはり日米安保条約を結んでおるわれわれといたしましても大事なことなんだ、こういうふうに私は申しておるわけでございます。
  210. 中路雅弘

    ○中路委員 長官がそう考えておられても、相手側から見れば、安定的使用ということになれば、有事の際の基地の運用の問題について考えるのは当然ですし、その問題について出された場合に、やはり長官としてのお考えも述べなければいけないと私は思うんですけれども、いま外務省の所管という関係も出まして、一言聞いておきたいのですが、これは外務大臣が先日、十三日ですか、アメリカの下院議員アジア訪問団ですか、一行が来られたときの新聞報道ですが、その会談で、韓国有事の際の在日米軍の基地使用について、明らかな北からの南進の場合と、小さな衝突程度の場合では日本国民の受け取り方が違うだろうというお話しをされていて、イエスともノーともあり得るという中で、この新聞記事ですと、いわゆる北側が一方的に南進と政府が判断すれば、戦闘行動について事前協議イエスを与えるという、小さな戦闘の場合と分けて話をされたので、示唆をしたのじゃないかという報道がこの発言とあわせて多くあるわけですが、事前協議ではイエス、ノーもあるというお話しなんで、私はここで、この前どこかの委員会、外務委員会ですか、火の粉をかぶるような場合というような表現をされた場合もありますけれども、事前協議の場合の直接発進の、韓国の安全は日本の安全ということも述べられているわけですから、そしてその中心に日米安保条約が不可欠の要素として置かれているわけですから、そういう中でイエスの場合、ノーの場合の基準、考え方、これについて局長からひとつ聞いておきたい。
  211. 山崎敏夫

    山崎説明員 この問題に関しましては、すでに宮澤大臣が外務委員会において答弁されておりますけれども、確かに、来日いたしました下院議員団と大臣が会われましたときに、これはたしか十三日でございましたか、北から大規模に南下攻撃してきたような場合と、その他の小さな紛争の場合とでは、日本側の反応はおのずから異なるだろうということは言われたようであります。これは私も同席しておりましたので存じております。しかし、ただそれだけを言われただけでありまして、それだけのことでありまして、それが大規模の場合にはイエスに自動的につながるというふうなことを言われたことは絶対ございませんし、大臣もそうではないということを明らかにしていらっしゃいます。  では、どういう場合にイエスと言うのかノーと言うのかということになりますが、これは結局、そのときの状況によって判断する以外にないわけでございますが、その際の判断の基準というものは、あくまで国益ということを考えてやるということでございます。国益とは何かと言えば、結局、日本の安全ということでございまして、もちろん日本の安全というものを守るためには、日本が全く孤立しているわけではございませんから、極東の、平和と安全とは関係はございますけれども、あくまでその基準というものは日本の安全を考えてイエスと言うかノーと言うかということであると存じます。
  212. 中路雅弘

    ○中路委員 私のお聞きしているのは、具体的に韓国との関係の問題です。この新聞記者の発表でも、韓国の安全は朝鮮半島の平和の維持にとって緊要、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む束アジアの平和と安全にとって必要ということで、二段論法ですけれども、韓国の安全と日本の安全に結びついているわけですから、日本の安全と国益と言われた場合も、これは韓国の安全ということと結びついているわけですね。だから、韓国でどういう事態になった場合に、それは日本の安全といいますか、事前協議のイエスということの基準になるのか、条件になるのか、これは国民にとっても非常に重要な問題ですから、私はその点で、一般的に日本の安全と国益というのじゃなくて、現実にこういう新聞記者発表をされているわけですから、宮澤外務大臣のこういう発言もありましたけれども、韓国のどういう事態を想定をされてイエス、ノーということをお考えになっているのかということを具体的な問題でお聞きしているわけです。
  213. 山崎敏夫

    山崎説明員 大臣も答弁しておられますように、韓国の安全が脅かされた場合に、日本の安全に影響があるということは事実であると思います。ただ、それがどういう場合に日本の安全に非常に直接の影響があるかということは、全くその具体的な事案に即して考えませんと判断いたしかねるわけでございまして、したがいまして、それとの関連において、アメリカ側が直接戦闘作戦行動をいたす場合に、わが国がイエスと言うのかあるいはノーと言うのかということも、いま具体的な想定をいたすことは困難でございます。結局は、先ほどから申し上げますように、一般的な基準として、日本の安全に直接かかわりがある場合を基準として考えるということでございます。
  214. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの問題は、改めてまた御質疑しますけれども、もう一点だけ聞いておきましょう。  その事前協議についてイエスを言う場合の承認ですね、これは個々の出撃について問題になるのか、いわゆる包括的な承認になるのか。イエスの場合は、閣議で行政権の範囲で決められるわけですけれども、その承認の仕方についてもう一言お聞きしておきたいと思います。
  215. 山崎敏夫

    山崎説明員 これは、その事態が偶発的なものであるか、大規模なものであるかによっても違うでありましょうし、結局、政府の責任において、包括的にやるか個別にやるかということも、その時点において判断すべきものであろうと考えます。
  216. 中路雅弘

    ○中路委員 時間がなくなってきたものですから、いまの基地の安定的使用の問題に関連した事前協議制といった問題については改めてまた御質問したいと思いますが、ちょっとあと短時間で二、三問お伺いします。  先ほど大出議員も質問されたのに関連があるのですけれども、私自身が予算委員会やこの委員会で取り上げてきた問題ですので、簡潔に三つばかりお尋ねしたいと思いますが、一つは、当委員会にもかかりまして、この前の国会の終わりには請願が採択をされている問題ですけれども、川崎の木月にあります米陸軍出版センターの返還の問題で、先日、この委員会の席上じゃなくて、前の久保長官から私に、十月一日で閉鎖になるという御連絡をいただきましたけれども、この米出版センターの返還の見通しの問題、この委員会で私二度ばかり取り上げていますので、その点について最初にお伺いしておきたいと思います。
  217. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 御案内だと思いますが、在日米陸軍司令部が、ただいま御質問の川崎にある米陸軍出版センターを五十年の十月二日付で韓国に移転する、そしてこの施設をできるだけ早く日本側に返還する予定であるということを六月十三日に発表しております。こういうことを公表しておりますので、十月二日に、予定どおりであれば韓国に移転して、後は返還されるものだと私どもは了解しております。ついては成り行きをよく見て返還の促進を図りたいというふうに思っております。
  218. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの見通しでは、十月二日に閉鎖になれば、後は返還の見通しがはっきりとしてきたという御答弁じゃないかと思うのですが、国会でもこの跡地に高等学校や公園ということの請願が採択されていますから、いわば国会の意思でもありますから、ひとつそういう方向に沿うように施設庁の関係の皆さんも努力をしていただきたいというふうに思いますが、その点についても一言お聞きしておきます。
  219. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 いまお話しの点は、返還の跡地利用の問題も絡むので、施設庁だけの問題ではないと思いますが、御要望の趣旨はよく承って、その線に沿って私どももできるだけの努力をしたいと思います。
  220. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点は、先ほども質問がありましたが、私が予算の分科会で取り上げた問題です。池子弾薬庫の一部返還で、逗子市から出されたのが二つありますが、その一つは、中学校と隣接した運動場の返還が施設委員会で決まったと私の方にも御連絡をいただきました。ただ、そのときの条件で、さくをつくることと返還地区内の倉庫の移転ということが条件になっているような新聞報道もあります。私、中にも入って下見で見てきたんですが、最初保安距離があるからということなんで中に入ってみましたら、弾薬も何も入ってない。船具が入っていて、アメリカの方は倉庫がわりに弾薬庫を使わしてもらっていますということなんで、これは保安距離もないじゃないか、返せるじゃないかということで、この委員会質問したこともありますが、あの倉庫自身が実際古ぼけた小屋なんですよ。この前に二度返還の問題があったとき、これも委員会で取り上げましたけれども、ガソリンステーションの代替をつくったんだということで鉄筋コンクリートのりっぱなステーションをつくられました。そのもとのやつは、小屋にドラム管を何本か入れてあったんですが、それがガソリンステーションだ、その代替だということでりっぱなコンクリート建てのステーションをつくられたのを私、覚えているのですが、今度の場合も、そういう形でこの倉庫の移転ということを条件にしているということになれば、私はけしからぬことだと思いますし、この倉庫はむしろ壊してしまった方がいいような傾いたような建物ですから、これの移設ということを条件にしていくということはけしからぬことだと思うのです。この点はもっと現地も見ていただいて、この前のような不当なやり方がないように、ひとつ一日も早くこの問題の解決に当たってほしいということが一点。  もう一点、逗子市から出されている点がございますね。これはゲートのところですか、左側の遊休地の返還の問題。市の方では第二運動公園にしたい。これについては、まだ御返事がありませんけれども、いま折衝はどうなっているか、見通しはどうなのか、この二つをお伺いしておきたい。
  221. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 お尋ねの久木中学校の運動場及び市民の運動公園用地の返還の問題ですが、先ほどもお答えしたように、この十九日に施設特別委員会においてそういう返還する旨の回答がございました。いま御指摘があったように条件がついております。これは、まだ施設特別委員会の段階でございますので、今後、条件の具体的なやり方については、対米折衝を終えて、最終的に合意手続を踏むまでまだちょっと間がございますので、いま御指摘のような点については十分私どもも承っておきたいと思います。  もう一つの部分については、今回回答がございませんでしたが、これは、まだほかにもそういうところがこの関連でございますから、あわせて今後努力してまいりたいと思っております。
  222. 中路雅弘

    ○中路委員 最後になりますけれども、先ほど大出議員が取り上げられた問題で、施設部長はちょっと微妙な問題なんでこういう席での御答弁はなかなかむずかしいと思いますけれども、私は、その席に同席をしていたものですから、新聞報道されていることでちょっとお聞きしておきたいのですけれども、この新聞報道によりますと、銅崎施設部長の発言として括弧つきで出ているところがあります。「米軍側は三施設」先ほどもお話しにあった横須賀のEMクラブ、長井住宅地区、稲岡地区ですね、これの「返還に原則的に同意している。条件としては、横浜市中区本牧の海浜住宅一号地の移転先として、現在、横須賀基地の泊湾に建設中の住宅四百二十七戸のほかに同二号地用の住宅としてプラスアルファの住宅建設を日本側が受け入れることをあげている」というのが、施設部長の発言として括弧つきで新聞に報道されております。  まずこの真意ですね。こういうことが条件なのか、または施設部長はこういうことをお話しになっているのか、それを最初一言お聞きしておきます。
  223. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 銅崎部長は、岩垂議員と十六日にお会いした際に、先ほどもお答えしたように住宅の移転の問題に関連して、いまの三つの地区の今後どうしたらよかろうかということの関連において、三つの地区の移転の進展状況をお話ししたのですが、公式に申し上げればまだ見通しがはっきりしたわけではございませんが、銅崎部長が下協議の段階で、向こうの係官などの持っておる感触を私的な意見としてお話ししたということを、岩垂議員は、その話の過程で感触としておとりになって、いまのような報道になったのだと思いますが、そういう意味合いにおいて、銅崎部長の意見の言い方が必ずしも適当でなかったとすれば、これは今後よく考えなければいけませんが、公式にはまだはっきりした見通しがございません。幾らか感触はあるということでございます。
  224. 中路雅弘

    ○中路委員 昨日も私は、横須賀の横山市長に午前中お会いしていろいろ話したのですけれども、市の方は四百二十七戸ですね、いま二百戸余り建設しているのですが、これをやっと受け入れた。それがまだ建設中にかかわらず、さらに合計すれば九百十戸になるのですが、幾らか調整しても相当の数ですね。これを受け入れることは市としてできないという市長としての意見なんですね。横須賀市としてはまた当然のことだと私は思うのです。この三つの施設が返ってくるということについては長い間の要望ですから、これはぜひとも促進していただきたい。しかし、これを受け入れれば返してやろう、これがお話しのような条件になったとすれば、非常に困るのだという強い要請ですし、私もそういう取引みたいな条件ではこれはけしからぬと思うのです。  返還の問題は返還の問題として詰めていただいて、この増設の問題はその問題としてどのように処理していくかということは、関係者と十分検討していかなければいけないと思いますけれども、この全く性質の違う三つの施設の返還と絡めて、たとえば横須賀市に施設庁が話を持っていくとかいうようなことは、私はぜひそういうことはやらないでいただきたいと思いますし、この増設の問題をどうするかということは、やはり関係のところで十分詰めて話し合いをしていくということと、三つの施設の返還については、長い間の要望でありますし、いま銅崎部長の個人的な感触でも、若干そういう展望も出てきておるとすれば、さらに具体的に促進をしていただきたいというのが私の意見なんですけれども、最後に、この問題について一言御意見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  225. 齋藤一郎

    ○齋藤説明員 三つの施設については、御指摘のようにかねがねの地元の要望でございますから、銅崎部長が得た感触どおりできればはなはだ幸せなんですが、これから鋭意努力してまいりたいというふうに思っております。  それから、住宅の問題については、四百二十七戸が先に決まって、これについては地元の御了解をいただいたのですが、その後のいろいろないきさつで、合わせて九百何戸の問題が出ておりますが、これはまだ対米折衝中でございまして、数が定かにまだ決まっておりません。したがって、まだ市側にもお話しするところまでいっておりませんが、これはこれとして私どもできるだけよく折衝して、かつ横須賀市の御趣向も承りながら前進させたいというふうに思っております。
  226. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので終わります。
  227. 藤尾正行

    藤尾委員長 鈴切康雄君。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうは大変に長時間にわたって、皆様方大変お疲れだとは思いますけれども、なるべく節約しながら進めてまいりたい、このように思っておりますから、御協力を願いたいと思います。  最近、朝鮮半島に関連をいたしまして、政府は有事における日米防衛分担あるいは協力、分担と協力とそれではどう違うかということなんですけれども、しょせんはアメリカに何を協力するのか、協力する内容を明確にすれば、たとえ小さくてもそれはいわゆる防衛の分担になってくるわけであります。となると、防衛分担から協力ということに変わったにしても、大して内容的には変わらないし、あるいは韓国における有事というように、有事という言葉を非常に使っておられますけれども、その意味というのはきわめて不明確なんです。  そこで、防衛当局及び外務当局にお伺いしたいのは、有事の意味について、定義についてお伺いしたいと思います。
  229. 丸山昂

    丸山説明員 私ども防衛庁の立場から有事というふうに考えておりますのは、御案内のように、自衛隊法によりまして自衛隊に対する権限が付与される時点というふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、自衛隊法の七十六条の防衛出動の下令、それから安保第五条の日米共同対処というのが、ここで言われているいわゆる有事である、法律的にはそういうふうに考えております。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、具体的な問題として韓国の例を取り上げて、有事とはいかなるものであるかということを実は申し上げているわけなんですけれども、私の方からひとつ具体的な例を申し上げますので、この場合にはやはり有事であるというふうに御判断を願いたいわけであります。  一つは国境における散発する衝突、こういう場合にはどうなのか、二つには、たとえばノモンハン事件程度の比較的大規模な国境紛争があった場合、三つ目は、本格的軍事作戦が発動する戦闘状態に陥った場合、こういう三つの問題が考えられるわけでありますけれども、それに対して自衛隊法第七十六条に基づく防衛出動ということをお考えになるとするならば、いまどのテストケースの中においてこういう場合にはぜひとも出なくちゃならないというふうにお考えになっているか、それを有事とお考えになっているか。有事というものについて非常に不明確なんです。明確でないだけに、これは明確にしておきませんと、アメリカと協力をするにしたって、日本の国が有事だと思ってもアメリカの国は有事ではないと思うだろうし、アメリカが有事だと思ったときに日本の国は有事ではないというふうに考える場合があるだけに、この問題は詰めておかなければならない問題だと思いますが、その点についてどうでしょうか。
  231. 丸山昂

    丸山説明員 私は、ちょっと先生の御質問の御趣旨を取り違えておりました。わが国の有事ということで先ほど御答弁申し上げたわけでございまして、わが国の有事の場合は、先ほど申し上げましたように、七十六条に規定されておりますように、外部からの武力攻撃あるいは外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む、こういう事態が出た場合、内閣総理大臣防衛出動命令を出す、こういうことになっておるわけです。それを私どもは有事、こういうふうに判断をすると申し上げておるわけでございます。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の言っているのは、朝鮮半島における、いわゆる韓国における有事という言葉が使われておりますね、あるいは有事における日米防衛協力あるいは分担、こういうことが言われておるが、そのいわゆる有事というのは、どういうことなんですかとお聞きしているわけなんです。
  233. 丸山昂

    丸山説明員 大臣がずっと申されております有事における日米防衛分担あるいは防衛協力という場合の有事と申しますのは、これはわが国の有事ということでございまして、その場合は、先ほど申し上げましたように、わが国に対して外部からの武力攻撃がある場合、こういうことで考えておるわけでございます。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる韓国条項において、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である、こういうふうなことになっておるわけでしょう。となると、韓国のいわゆる有事というものは、日本の国においても連動するという物の考え方で結局、日米防衛協力というものがなされ、そして取り上げられるということになるわけですから、そういうことを考えたときに、韓国におけるところのその紛争の程度をどのようにして有事として判断をするかという問題が実際には明らかになっていないわけです。  だから、私がいま申し上げましたように、北朝鮮と韓国との国境における散発的なそういうふうな紛争、あるいはノモンハンのような、もうかなり大きな衝突の事故、あるいは本格的な軍事作戦が発動されて戦闘状態にある、こういう三つのケースをとったときに、韓国としてもやはり安全という重要な問題が脅かされるわけですから、脅かされたときに当然、日本の国についても安全については緊要であるということを考えた場合、その判断はどうするのかと聞いているわけです。
  235. 丸山昂

    丸山説明員 韓国の問題に関連しての御質問でございますが、結局、韓国のそういういろいろな事態がわが国にとって有事になるのかどうか、この判断は、先ほどから申し上げますように、自衛隊法の七十六条の「外部からの武力攻撃」あるいは「外部からの武力攻撃のおそれ」ということでございまして、具体的にいろいろ事例を挙げられましたが、一般論としてはそういう事案が、日本に対して武力攻撃のおそれが出てくる場合、これは七十六条の適用ということになる事態だと思うわけでございますが、その場合はいわゆる有事というふうに考えてよろしいのじゃないかと思います。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうした場合、たとえば韓国に武力攻撃があった、あるいは武力行使が行われたというときに、日本は全然関係がないから一切ノータッチでいられる、そのようにお考えになられますか、全然ノータッチだ、日本の国に直接のいわゆる武力行使がないし、侵略の意図がないということであるならば、もう一切それはアメリカの方にも協力をしなくてもいいし、それから基地についても事前協議の、日本の国から発進するについてもイエスなんということは一切言わないし、そういう心配は毛頭ないんだ、そのように御判断になられますか。
  237. 山崎敏夫

    山崎説明員 ちょっと御質問趣旨が私、十分理解いたしかねるのでございますが、韓国における異常な事態が日本関係のない場合というのはどういう意味でございますか。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるというわけでしょう。それは韓国条項にちゃんとうたわれているわけです。ですから、韓国においていわゆる武力行使があった場合、それは日本の国については全く関係のないものであると言い切れないわけでしょう、結局は。韓国と北朝鮮でもしそういう武力行使が行われて、アメリカが韓国に対して米韓条約に基づいてこれに介入をした場合、日本の国はそれに全く関係がないかということなんです。関係がなくないでしょう。だから、韓国の安全は日本自身の安全についても緊要であるという以上は、これは日本の国にも何らかの関係が出てくるわけですよ。だから、その点についてはどうなのかと聞いているわけです。
  239. 山崎敏夫

    山崎説明員 いわゆる韓国条項を前提として議論を進めておられるようでございますけれども、今回、三木総理が訪米されましたときに行われました共同新聞発表におきましては、この朝鮮半島における情勢認識として「韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」というふうに言われておるわけでございまして、このことにつきましては、三木総理も、韓国というものはそこに一つ全く孤立してあるのではなくて、北にある北鮮の動向にも影響を受けるのだということをおっしゃっておられるわけでございます。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 したがって、北との関係がいろいろな意味で重要であるということは、先ほど外務大臣も答弁されたとおりでございます。したがいまして、そういう朝鮮半島の全体の情勢というものを踏まえてわれわれは考えてまいるわけでございますが、いずれにいたしましても、朝鮮半島においてそういう異常な事態があれば、それは日本にとって無関係ではあり得ないということは言えると思います。  ただその場合に、アメリカは米韓相互防衛条約上の義務がございますから、その義務に基づいて適当に行動すると思います。ただ、わが国はアメリカとの間に日米安保条約というものを結んでおるわけでございますから、その日米安保条約関係の規定に基づいて判断するということになるわけでございます。そして、先ほどから申し上げましたように、その際に米軍が直接戦闘作戦行動に出るような事態になった場合には、わが国としては日本の国益、すなわち日本の安全というものを中心にしてイエスと言うかノーと言うかを言うということでございまして、それ以上のことにつきましては、具体的な事態に立ち至りませんとちょっと何とも申し上げかねる次第でございます。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまあなたがおっしゃった新韓国条項というのは、韓国条項の再確認である、そのように先ほども外務大臣は言われたわけですから、私の言っているように、要するに韓国の安全は日本自身の、安全にとって緊要であるという結論と何ら変わりないわけです。ですから、韓国における有事というものが実際に運動して日本の有事にもつながってくるということになってくるわけですね。そうした場合に、韓国のその有事というものを、どういう判断の基準で有事とおっしゃるのかということなんですよ。結局これについていまあなたが答弁できないというのは、要するに、アメリカ日本で韓国における有事という問題に対しての判断の基準というものが全然話し合われていないところに問題があろうかと私は思うんですね。少なくとも韓国においてこれだけの武力行使があるとするならば、それはもう有事だという、そういう基準がないから、いまおっしゃったように、日本の国に直接に武力行使がない限りは、それはもう有事ではないのだというふうにおっしゃるわけでありますけれども、しかし韓国条項はまさしく連動して、日本の国も安全を脅かされるということになるわけですから、その点についてアメリカと有事の問題について話し合われる、そういうお気持ちはありませんか。
  241. 山崎敏夫

    山崎説明員 今回の日米会談におきましても、韓国における有事という問題について話し合われたということは私は承知いたしておりません。また、韓国における有事というものを定義づけることがどれだけの意味があるのか、ちょっと私としてはよくわからないのでありますが、いずれにいたしましても、日米関係日米安保条約に従って律せられるわけでございまして、直接戦闘作戦行動であれ何であれ、そういう事態が起こりましたときは、わが国が関係の規定に従って国主的に判断するということでございます。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 韓国の有事が日本の国に関係がないなんて、そんなことを言うならば、韓国条項を取り消しなさい。
  243. 山崎敏夫

    山崎説明員 韓国における有事というものについて、それを定義づけるような話し合いが行われたことはないということを申し上げたわけでございまして、韓国の安全が日本の安全に関係があることは、これは総理も外務大臣もおっしゃっておられるとおりでございます。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それであるならば、韓国の有事というものはどういう状態であるかということについて、やはりアメリカとその基準について話し合われなければ、有事という問題はすべて日本の国の安全にも連動して緊要であるわけですから、当然それは話し合われませんと、アメリカが一方的に自分は有事だと思って、そして韓国に関与する。ところが、日本の国は全然武力行使がない、侵略の意図がないわけですから、そういう場合においては有事ではない。そうなったら、防衛協力という問題について、日本の国は防衛協力をしましょうと言っていながら、完全に向こうのアメリカ日本の国との歯車が合わないという時点を迎えてしまうわけじゃないですか。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点についてお話し合いをしなければいけないんじゃないかという点はいかがでしょうか。
  245. 丸山昂

    丸山説明員 私ども防衛庁の方で考えております防衛協力という問題に関しましては、先ほど申し上げましたように、わが国、つまり安保条約で申しますと、安保条約の第五条によりまして、日本の施政権下にある両国に対する攻撃ということを前提といたしまして共同対処するという考え方で、その共同対処をいかにやっていくかということについての話し合いということが大きな筋になっておるわけでございまして、確かに先生のおっしゃるように、韓国における有事の際の日本に及ぼす影響というのは当然あるわけでございますけれども、一応私ども防衛庁で考えておりますものは、わが国に対する直接攻撃ということを前提として考えておる、こういうことでございます。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 金日成首相は、南進はしない、そう言明をしております。しかし、これについての論議はきょうはいたしませんけれども、宮澤外務大臣から、明らかな北からの南進の場合は在日米軍の戦闘作戦行動にイエスを与えるという意向の表明がありましたけれども日本政府としては、明らかな北からの南進をどのように客観的に、正確に判断をされるおつもりでしょうか。
  247. 山崎敏夫

    山崎説明員 鈴切委員は、宮澤大臣が明らかな北からの南進の場合に日本側は事前協議でイエスを言うというふうに仰せられましたが、これはあるいは十三日に宮澤大臣が米国の下院議員団の一行と話されたときのことを指しておられるかと思いますが、そのときに大臣が言われましたのは、北が大規模に南下して来たときとその他の小さな紛争が起きた場合とでは、日本側の反応はおのずから異なるということを言われたわけでございまして、それ以上のことはないわけでございます。したがいまして、大規模な南への進撃があった場合にイエスと言うというふうな話はしておられないと承知いたしております。(鈴切委員「もう一度言ってください」と呼ぶ)宮澤大臣がそのときに言われましたのは、北から大規模に南への進撃があった場合とその他の小さな紛争が起きた場合とでは、日本側の反応はおのずから異なるということを言われたわけでございまして、それ以上のことは言っておられないわけでございます。したがいまして、大規模な南への進撃があった場合に、事前協議でイエスと言うのだというふうなことは言明しておられない次第でございます。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、北から南進した場合、日本の国がアメリカの戦闘作戦行動に対して事前協議でイエスを与えるのはどういうふうなテストケースですか。
  249. 山崎敏夫

    山崎説明員 これは大臣も仰せられましたように、北から大規模な南への進撃があった場合には……(鈴切委員「イエスと言うんですか」と呼ぶ)おのずから反応が違うということでございますから、その場合には確かにイエスと言う場合もあり得ましょうし、それにもかかわらず、諸般の情勢から判断して、直接戦闘作戦行動に関してノーと言われることもあり得るということでございます。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 明らかな北からの南進をどのように客観的に判断するかということについては、結局はアメリカあるいは韓国の情報をうのみにする以外にないのですか。
  251. 山崎敏夫

    山崎説明員 もちろん、その当事者であります韓国あるいは米軍からの情報はわれわれは収集する必要はございますけれども、わが国も大使館を韓国に置いておるわけでございますから、その他のルートをもってもいろんな情報は収集できる、また周辺諸国からも情報を集めることはできるわけでございまして、そういう情報を収集した上で総合的に判断するということになると思います。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度逆に、もし韓国が明らかに北進した場合、それだってあり得るわけですから、政府の明確な態度としてお伺いいたしたいわけでありますけれども、在日米軍の戦闘作戦行動に対しての事前協議はノーとおっしゃるのですか。あるいはもちろん、補給活動のような広い意味での軍事作戦行動のための基地使用も拒否をされるべきではないかと思うのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  253. 山崎敏夫

    山崎説明員 韓国軍が北に進撃するというふうな事態は、私としては想定いたしかねるわけでございますが、仮にそういうふうな事態がありました場合でも、米軍の行動に関しましては、あくまで国際法上合法である行動だけであるべきでありまして、日米安保条約というものは、米軍が国連感電の関係規定に従って合法的に国際法に従って行動するという前提考えられておるわけでございます。その前提が成り立ちませんときは、日本の反応はおのずから異なると思います。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたは、韓国が明らかに北進はしないということを断定をされますけれども、相対的な物の考え方をしないと非常に片手落ちの物の判断になってしまうんですよ。そればかりではありません。アメリカがやっていることはすべて合法的であるというふうにおっしゃいますけれども、これは大変に大間違いでありまして、アメリカが例のベトナムのトンキン湾事件を一つのきっかけとして北爆を正当化したということは、後でおわかりになったじゃないですか。そういうことを考えたら、アメリカが必ずしも全部が全部正当であるということは言えないわけです。それに対して、もし日本が主体性のない物の考え方でいくとするならば、これは大変大きな過ちを犯すことになるだけに私は心配するわけです。だから、もしも韓国が北進をして、そして朝鮮侵略するというような事態が起こったとするならば、日本は厳然として、こういう問題に対してはアメリカのやることに対しても警告を与えると同時に、アメリカがもし日本の国から事前協議をもとにして戦闘作戦行動に出るというような状態である場合には、ノーと言わなければならないじゃないですか。その点についてはどうなんですか。明確に答えてくださいよ。
  255. 山崎敏夫

    山崎説明員 私は、韓国が北に進撃するような事態は想定いたしかねると申し上げたわけでございます。さらにまた、それをアメリカが支援するということは、ますますちょっと想定いたしかねるわけでございまして、そういう問題についてお答えすることは非常に困難な次第でございます。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 困難な次第でありますじゃなくして、当然北から南へ南進するということがあるとするならば、また場合によっては南から北へ行くという、そういう相対的なことは当然あり得ることなんです。そのとき日本の政府としては、どういうふうにその問題について対処されるかという問題についてお聞きしているわけですよ。こんな不明確なことないです。何でもかんでもアメリカの言うことは間違いないことなんだ、それに追随していけばいいんだ、日米安保条約はそういう意味においての協力であるというふうにお考えになるとすれば、私は大変に間違いである、そのように思うのです。アメリカ局長ですから大変にアメリカべったりだということはわかりますけれども、本当にそういうふうな物の考え方は、日本の将来を大変に間違う方向に進めていくようなかっこうになりますよ。きょうの議事録のできたものをずっとお読みになってください。あなたのおっしゃることは、もうしどろもどろで、全然論旨がはっきりしておりませんよ。いいですか。やはり何としても日本の国が自分の主体性で判断をしなければならぬじゃないですか。それでなければ、アメリカがたとえば事前協議を掲げておれば全部イエスと言わなければならぬじゃないですか。その点いかがですか。
  257. 山崎敏夫

    山崎説明員 先ほどもちょっと申し上げましたが、日米安保条約というものは、国連憲章の枠内において結ばれておる条約でございます。その前文にも書いてございますように「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」その上に立って結ばれている条約でございます。したがいまして、われわれとしては当然われわれの友邦であり、この安保条約の他の当事国であるアメリカが、国際連合憲章に定める原則及びその定めた規定に従って行動することを当然の前提としているということを申し上げておるわけでございます。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事の状態とそれから戦時国際法との関係をどのようにお思いになっておりますか。また、少なくとも有事とは戦時に準じた国際法が適用される状態であると私は考えるのですけれども、その点について、これは条約局長ですか。
  259. 松永信雄

    ○松永説明員 有事という法律的な概念は、もともと一般国際法上の概念としては存在しないと思います。どういう事態をもって有事と考えるかということは、その有事という言葉を使いましたコンテキストと申しますか、認識前提になるわけでございますから、したがって、国際法上有事というのはこれこれの状態を示すものである、それと戦時国際法との関係がどうなるかということを一概に規定することは非常にむずかしいと思います、たとえば武力攻撃が発生した事態ということでありますれば、そこにはいわゆる戦時法規が適用されるということは当然のことだろうと思いますけれども、何をもって有事とみなすかという一つ前提があるわけでございますから、その前提が、いまも私が申し上げました武力攻撃が発生した場合ということがあれば、それは戦時国際法規の適用関係が考慮されるということだろうと思いますが、一般的に有事と戦時国際法というものとの関係を定義づけることは非常に困難だろうと思います。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえば武力行使あるいは侵略、平和の破壊という点からとった場合における有事というものは、これは戦時に準じた国際法が適用されると私は思うのですが、その点はどうですか。
  261. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま武力攻撃が発生した場合ということを申し上げたわけでございますが、平和に対する破壊というようなことでございますと、そこはやはりいろいろなものが入ってくる、必ずしも武力攻撃あるいは武力の行使でない事態ということもあり得るのではないかと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、武力行使あるいは武力攻撃という事態に限定して考えれば、御説のとおりだろうと思います。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国連憲章は、戦争を違法化したことによって、戦争という国際法上の状態はなくなったということになっておりますね。特に安保理事会が事実上機能を停止しており、そして国連憲章第七章が十分に機能をしてない現在、事実上の戦争状態はいまも存在しており、その限りにおいては戦時国際法は完全に有効であると私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  263. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま御指摘がありましたとおり、国連憲章のもとにおきましては、いわゆる戦争というものは合法化されていないわけでございます。したがって、在来の伝統的な戦時国際法規の中に戦争を合法化するような規定があるわけでございますから、そういうものは現在はすでに働かなくなっているということは申せると思います。しかしながら、他方、現実武力攻撃なり武力行使の状態というものが間々発生していることは遺憾ながら事実でございまして、その場合に、戦時法規の関係諸規定がそれに適用されている、適用されるべきものであること、これまた御指摘のとおりだと考えております。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事に際してとられる軍事行動は当然、戦時国際法によって規制されるというふうに私は思うのですが、その点はどうなのか。  あるいはまた反面、有事の当時国以外の国は中立国として、中立法規の適用は当然であるというふうに思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  265. 松永信雄

    ○松永説明員 有事の際にとられる軍事行動という御質問がございましたけれども、実はまさしく私が先ほど申し上げております有事とは何かということが問題になるわけでございまして、具体的に戦闘を伴う状態ということでありますれば、そこに戦時法規が適用されていくということは当然であろうと思います。  また、その次の中立法規が適用されるかどうかという御質問でございますけれども、中立ということは、先ほど申しました伝統国際法のもとにおきまして戦争が合法化されていたときに、戦争当事国とその当事国でない国との関係を規律するためにつくられている法規でございまして、現在の戦争というものが合法化されていない国際法のもとにおいて中立法規がそのまま適用になると考えるのは適当でないと考えております。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる政府の言う有事に際して日米安保体制のもとに行われる防衛分担行動と、憲法第九条に基づく交戦権との関係はどうなりますか。
  267. 丸山昂

    丸山説明員 私ども考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、安保五条の日米の共同対処ということを筋として考えておるわけでございまして、その場合に、わが国の個別的な自衛権の発動ということを前提としておるわけでございまして、もちろん憲法九条に言う戦争放棄、この憲法九条の規定の枠内ということは当然その前提になっておるということでございます。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本国憲法は御存じのとおり、国の交戦権は認めないと規定してありますね。私の見解によるんですけれども、軍事力の行使を必然的に伴う防衛分担行動は、憲法第九条の交戦権の規定に反する疑いが濃厚であると思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  269. 丸山昂

    丸山説明員 先ほどから繰り返して申しておりますように、この安保第五条に基づきまして自衛隊が行動いたします場合にも、いずれにしろ個別的自衛権に基づいて行動するということでございまして、当然、憲法の枠内で、つまり第五条に基づく日米共同対処であるからして、新しく権限を付与され、あるいは行動の自由を得るということでは決してないわけでございまして、われわれはあくまでも個別的自衛権の範囲内においてわが国の安全を守るために行動するということでございますので、ここで申されておるいわゆる交戦権という問題に関しましては抵触をしないものだというふうに考えるわけでございます。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたがおっしゃる自衛権行使という問題については、国連憲章第五十一条に自衛権の行使というのが書いてありますね。国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、このように規定されているわけです。ところが、日米防衛分担行動は、国連憲章第五十一条の国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合とは必ずしも直結をしない点があるわけです。日米防衛分担行動はアメリカの軍事行動と直結をしているわけです。したがって、わが国の日米防衛分担行動は国連憲章第五十一条の自衛権行使とはならない。ある国が明らかにわが国に対して侵略行為及び明確な侵略意図がある場合に限り自衛権行使は適法であるわけです。単なる危険が予測されるだけでは自衛権行使の理由とはならないと私は思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  271. 丸山昂

    丸山説明員 それでございますから、これは私、一番最初に申し上げましたように、日米の有事の防衛協力分担というのは、自衛隊法で申します。十六条、つまりわが国に対する武力攻撃あるいはその武力攻撃のおそれのある場合、それから安保第五条、安保第五条は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」ということでございまして、国内法的にはいま申し上げました七十六条による発動ということでございますので、これによる個別的自衛権の発動ということは、いわゆる交戦権の問題とは関係がないというふうに考えるわけでございます。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛権行使というのは、いま私が申し上げましたように、相手方が直接侵略行為及び明確な侵略の意図がある場合、これは自衛権行使ですね。ところが、ここに一つ問題があるわけです。それは何かと言えば、北朝鮮とそれから言うならば韓国とが武力行使によってそこに紛争が起きた、これ対してはいわゆる米韓条約があるわけですね。当然それに対してアメリカが介入をする、アメリカが介入をすると、今度は日本は自動的に日米安保条約というものが発動されると同時に、日米安保条約に基づくいわゆる防衛協力ということで、日本の国も当然これに組み込まれていくというかっこうになるのじゃないですか。
  273. 丸山昂

    丸山説明員 韓国で問題が起きて、そしてアメリカが出動する、その場合、ただいまの先生のお話しでございますと、自動的に安保条約が発動されて日本がこれに巻き込まれる、こういう御論旨であったかと思うのでございますけれども、ここに出てございますいまの第五条は、先ほども読み上げましたように「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」ということでございますので、したがって、わが国領土内に対する面接の武力攻撃がございませんと第五条の発動はないというふうに私ども解釈しておりますので、韓国で問題が起きてそこにアメリカが出動したという段階においては、まだこの五条の段階ではないというふうに考えておるわけでございます。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五条の段階ではないにしても、たとえばアメリカ日本の国の基地から戦闘作戦行動を行う場合、日本の国においてはそれに対してイエスもノーもあるのだ、こういうお話しですね。となると、完全に日本の国から発進したいわゆるアメリカの空軍が相手方の基地をたたく、あるいはそれによって支援をするという形になれば、間接的に日本の国は明らかにアメリカに加担もし、そしてまた、言うならば韓国なら韓国に応援をするという形をとるかっこうになるわけでしょう。そうなった場合、相手国にしてみれば日本の国は全くの敵国である、そのようにとられても仕方がないわけですね。そうなった場合、もし相手国がその判断のもとにどうしても日本の国の基地をたたかなければ自分の国が危ういというようなことになった場合に、相手国は日本の国に爆撃を加えるなり、あるいは攻撃を加えるということにもなりかねないという危険性があるということについてはおわかりになりますか。
  275. 山崎敏夫

    山崎説明員 北と南との間で武力衝突が起こりまして、アメリカが米韓相互防衛条約の発動としてこれに介入し、米軍が出動するということになり、そうしてその関連において日本におります米軍が直接戦闘作戦行動に出撃するということになれば、まさにそれは事前協議の問題になるわけでございます。そういうふうな形でアメリカが北と南の武力衝突に介入するということは、わが国の安全に確かに関連してまいるわけでございます。したがいまして、それは事前協議の対象にしておるわけでございまして、そこでわが方としては、そのときの諸般の情勢を勘案して、そのときにわが国の安全というものを守る見地からイエスと言うかノーと言うかを決める、そういう一つの仕組みになっておるということでございまして、自動的に日本がそこに巻き込まれるということではないと存じます。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 朝鮮半島に発生した有事において、これに直接軍事介入をする米軍と防衛分担をするわが国は、国際法上いかなる立場に置かれると常にお思いですか。
  277. 松永信雄

    ○松永説明員 一般的に申しますならば、国際法上の問題といたしましては、日米間には日米安全保障条約という特別の国際法があるわけでございまして、この条約に基づく日米間の協力関係という法律的な状態が発生しているということだろうと思います。
  278. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 となりますと、アメリカ防衛協力あるいは防衛分担をするということは、明らかに国際法上においては中立性を失うということになりますね。
  279. 松永信雄

    ○松永説明員 先ほど申し上げましたごとく、国際法上の議論として中立であるかいなかということを、現在の状態において議論することは必ずしも適当でないと考えます。その理由は、先ほど申しましたごとく、中立に関する法規と申しますのは、戦争というものが合法化されていたときに、中立国の中立義務あるいは交戦国の中立を尊重すべき義務を定めた戦時法規でございますから、そういう意味で用いられております国際法上の中立というもの、そういうものが存在するか存在しないかという議論を、現在の国連憲章のもとにおける国際関係に当てはめて議論するということは適当ではないというふうに考えております。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃお聞きいたしますが、防衛分担をしている国の対潜行動あるいは作戦及び輸送基地の使用、あるいは船舶の護衛行動等について応援をするということは、戦時国際法上から言うならば、これは相手方の方から見るならば、明らかに敵対行動とみなされると解釈をすべきではないかと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  281. 松永信雄

    ○松永説明員 一般的なお答えになりまして大変恐縮でございますが、先ほども申し上げましたごとく、いわゆる戦闘状態、その武力攻撃という状態、これが発生しておりますときに、戦時法規の関係規定が適用されるということは、これは当然だろうと思います。ただ、いま御指摘に挙げられました対潜行動であるとか、あるいは護衛のための行動であるとか、そういったものは、すぐ直ちに戦時法規の適用を受けるかどうかということは、やはりその行動なり行為なりというものを発生しております状態のいかんによるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国の安全にとっての重大な関心事というものは、米軍の直接戦闘作戦行動にイエスとかノーとかいうような局限された問題というよりも、むしろ米国の戦闘にわが国がいかに関与し、それが戦時国際法との関係でわが国がどのような立場に置かれるかということが一番重大な問題だと私は思うのです。要するに、アメリカがもし朝鮮に対して攻撃を加える、加えた場合に、日本の国における基地を利用して発進をした飛行機がいわゆる朝鮮の基地をたたくというようなことになった場合、それはもう明らかに日本の国が完全にアメリカと連動し、韓国と連動し、そうして北朝鮮攻撃したということにとられるということで、日本の国が戦争に巻き込まれるおそれが多分に出てくるということ、これが私は一番大きな問題ではないかと思うのですが、その点についてどのようにお考えになっていましょうか。
  283. 松永信雄

    ○松永説明員 仮定の問題といたしまして、いま御質問がありましたように、事前協議を受けて日本の施設、区域が使用されて、いわゆる日本が基地として使用されて戦闘作戦行動が展開されるという状態を仮定いたしますと、その場合の基地は、まさしく戦闘作戦行動のための基地としての使用でございますから、そこで行われるいろいろな戦闘行動について戦時法規が適用されるということは、これは当然のことだろうと思います。それはその行動のいかんによって発生します状態に対して戦時法規が適用されるということだろうと思います。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シュレジンジャー国防長官が近く来日するわけでありますけれども防衛当局及び外務当局が予定をしている会談の議題はどういうものを予定されておりますか。
  285. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどもお答えをいたしたわけでございますが、まず朝鮮半島を中心といたしました軍事情勢というものについてのシュレジンジャー長官の見方、それに対してわれわれはどういうふうに見ておるかというようなこと、あるいはまた、アメリカアジア戦略、その内容について聞いてみたいというふうに思っております。  それからまた、わが国を防衛するその防衛構想と申しますか、私の考え方、そしてまた、今日まで努力をしてまいりました防衛努力、四次防の進捗状況、それにポスト四次防、これは具体的には言えないにいたしましても、一応重点を置くべき項、考え方、それから問題の日米防衛協力ということになろうかと思いますが、でき得べくんば、シュレジンジャー長官との話し合いの過程で何らかの日米防衛協力をやる場が合意できれば結構だというふうに思っております。  今度は、その防衛協力の内容等につきましては、先般来申し上げておりますように、時間も非常に限られた時間でございますし、あるいはこのたびのシュレジンジャーとの話し合いの中ではなかなか詰められない、むしろやはりゆっくり時間をかけまして、それからやるということの方がいいのではないかというふうにただいま考えておるようなわけでございます。でございますけれども、とにかく日米間に安保条約があって、そして作戦協力等についての何らの話し合いの場がないということはやはりよくないわけでございまして、これを持つということに意味があるというふうに思います。そういたしまして、でき得べくんば一年に一回ぐらいは双方どちらからでもいい、必要に応じて出ていく、あるいは来てもらうということで意思の疎通を図る、そして問題が出てくればそれを話し合う、そしてまた現在ございます日米安保条約の協議委員会等におきましてそれを検討してもらう、あるいは今度このもとにできます何らかの機関、サブコミッティーみたいなものができると思いますけれども、そういう中で詰めていきたい、こういうような仕組みをひとつ整えたいというのが、私のシュレジンジャー長官とお会いいたします問題点というふうに御了解を賜りたいと思います。
  286. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官から、基地の安定使用をさせるということについて、ぜひとも前向きに検討したいとかそういうふうなお話しがあっておりますけれども、地位協定においては当然、基地の提供が決められているわけです。あえてあなたが安定使用というふうにおっしゃったのは、どういう意図がおありなんでしょうか。
  287. 坂田道太

    坂田国務大臣 日米安保条約というものがあって、そしてわれわれは大規模な攻撃あるいは核の抑止力ということについて米軍に依存する、そういうことがあるかわりに、日本としては基地の提供というものが裏として、日本の義務としてあるわけであります。  しかし従来私、政治家として見ておりまして、安保条約の大事さというものは非常に強調されたんだけれども日本の義務として、基地の提供というものが裏返しとしてあるんだということが従来日本国民に十分徹底してないうらみがあって、やはりこの点はこういう機会に改めて強調する必要があるということをかねがね私は思っておったわけでございまして、安保条約と言うなら、やはりわれわれの義務は基地の提供であるよということは言わなければならぬじゃないか。むしろ基地の提供等につきましては、あるいはこれは外務省御当局の所管のことかと思いますけれども、しかしやはり私たちとしては、基地周辺対策あるいは住民との関係ということにおいては施設庁におきましてやっておることでございますが、平時におきまして基地使用をめぐっていろいろなトラブルが実はあちこちで起こっておる、こういうようなことはやはりできるだけ避けたいというふうに私は思いまして、それが平時において安定的に使用されるということは非常に大切なことだ、しかし、その基地があることのために、その住民にはほかの市町村にない御苦労がある、あるいは住民にとってはいろいろな迷惑をこうむっておる、たとえば騒音の問題にいたしましてもそうでございますし、いろいろのトラブルも起こっておる、そういうこともできるだけトラブルがないように、あるいは住民に説得できるような基地周辺対策というものを充実していくということが、また同時に、われわれ防衛庁の立場として努めなければならないことではなかろうかというふうに思っているわけです。  たとえば沖繩におきまして、一〇四号線の付近におきましてはその阻止運動がある、非常に危険な状況であって、ことしも演習を中止せざるを得なくなったので、バイパスをつくる計画でこれにこたえようとしております。最初は二年でバイパスができるということでございましたが、しかし予算的にもし一年でできることならば、こういうバイパスをつくるということは住民の危険度をなくするということにおいても、また基地の安定的使用ということについても非常にいいことじゃないだろうか、二年で計画していることを一年でやってしまえということで、大体これも来年の三月までに完成するというような方向に進んでおりますが、やはりそういうようなことを政府としても、また防衛庁としても努めて努力をする、平時においてこの基地が演習その他支障なく米軍が使用できるという態勢と、それからいま一つは、その基地周辺の対策に重点を置くということが非常に大事だ、こういう私の考え方なんでございます。そしてそのことが結局、有事の際においてやはりつながっていくということは言えるかと思うのでございます。しかし、その有事になるかならぬかということは、まさに外務大臣がお決めになることでございますけれども、ふだんの平時における基地の使用、やはりこれについて安定的に使用されるような状況、危険な状況のないような状態にするということはわれわれの務めであろう、こういうことでこれを強調しておるわけであります。
  288. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、米軍基地については縮小整理をするというそういう基本的な考え方で今日までずっと進められてきたわけでありますけれども、いわゆる安定使用ということは、アメリカの方からこういう基地を使用さしてもらいたいということであれば、それはもう結構です、どうぞお使いくださいというふうに、いかにもサービス過剰に基地を提供するかのような印象を与えないとも限らないようなお言葉じゃないかと思うのですが、その点について前々から政府が言っているように、米軍基地はやはり縮小統合していくんだ、そういう基本的な考えは変わらないのかどうかという問題と、それからニクソン・ドクトリンによって米軍はどんどんアジアから撤退をしていくわけですけれども、そうなった場合に、基地の集約化あるいはそれに対しての強化をされるというようなことはないのかどうかという問題と、それから、いま当面問題になっているのは、朝鮮半島の問題が大きくクローズアップされているわけですから、そういう意味において、現在の基地以外に、朝鮮半島に対するいわゆる基地の強化として、アメリカの方からこういう基地をもう少しというような話が現在あるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  289. 坂田道太

    坂田国務大臣 全体の基地の縮小といいますか、縮小整理、あるいはあるところに集中して、そしてほかの不必要なところは返還をする、こういう大方針というのはもう変わらないわけでございまして、これは沖繩におきましても、本土におきましても同じでございます。そしてまた、不必要でございましたら、どんどんこれは返還をしていくという基本方針を私たちは考えておるわけです。ただ、返還をいたしますにつきまして、その後、やはりこの程度は自衛隊として必要であるというようなところも中にはあろうかと思います。というのは、やはりこれから自衛隊の基地を確保するということは非常にむずかしい状況でございますから、そういうようなことも中にはあろうかと思いますけれども、しかしやはり必要最小限度のものにとどめまして、そしてその全体計画は進めていく、こういう考え方を私は持っておるわけでございます。  それから、いま朝鮮半島でどうだこうだということにつきましては、米軍からそういうような申し出があるというふうには承知をいたしておりません。
  290. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカの直接戦闘作戦行動にイエスを与える場合、その頻度、期限、規模については包括的なものであるか、あるいはその都度に制限をされるおつもりなのか、その事前協議の問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  291. 山崎敏夫

    山崎説明員 事前協議を受けましたときに、日本政府はどう対処するかという問題でございますが、これは政府の責任においてやるわけでございますけれども、これはそのときの事態が千差万別でございまして、これを一概に包括的にイエスと言うか、あるいは個別的にイエスと言うかということは決められない次第でございまして、結局政府はそのときの情勢に従いまして、その場合ごとに判断するということでございます。
  292. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 イエスという言葉を与えるということは、そう簡単にイエスを与えるべき筋合いのものでないし、またイエスを与えたら、これは完全に自由使用になってしまうということについてはおわかりでしょうか。
  293. 山崎敏夫

    山崎説明員 米軍といたしましては、日本の安全に寄与するため、また極東の平和と安全に寄与するために日本に基地を持っておるわけでございます。ただ、その米軍の行動が、ことに極東の平和と安全のために行う行動が戦闘作戦行動の場合とか、配備における重要な変更というふうな場合には、日本としても重大な関心があるので、これを事前協議の対象としているわけでございます。したがいまして、その事前協議を受けたときに、日本としてそれを包括的にイエスと言うか、個別的にイエスと言うかも、もちろんいまからはっきりと申し上げることはできないわけでございますが、さらにそのときに、仮にイエスと言う場合であっても、どういうふうなイエスであるか、いわば条件つきといいますか、そういうふうになるのかどうかということも、前もってはわれわれは決めかねる次第でございます。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すでについ最近、御存じのとおりにマヤゲス号事件で明らかに出されたように、米国の空軍と海兵隊はタイ政府の拒否を無視して、タイの基地から発進をしたという事実がありますね。私はこれは、外国軍隊に基地使用を認める限りもう必然の帰結だ、このように思うわけです。で、米国が軍事上必要な際には、当然事前協議制度は無視される、よしんば日本政府がノーと拒否をされても、それはもう無視されるということは、マヤゲス号事件で完全に立証されたと私は思っております。ですから、そう考えたときに、マヤゲス号事件は、信頼関係がいかにもろいものであるかということを証明したという意味においては、大変に重要な問題だと思いますけれども、この問題について政府はどのように判断をされておりますか。
  295. 山崎敏夫

    山崎説明員 マヤゲス号事件の場合には、たびたび御説明申し上げましたように、われわれとしてはこれは米軍の部隊の移動であるというふうに判断をいたしたわけでございまして、その限りにおいて米軍はその部隊を移動することは自由であったと思います。その後の米軍のいろいろな行動につきましては、われわれとしてはいまいろいろとコメントすることは差し控えたいと存じます。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 マヤゲス号事件においても、タイ政府がこれに対してノーと言ったにもかかわらず、アメリカは強引にしたというような、そういう意味考えたときに、日本の場合も、結局はそういうことが起こらないとはこれは決して言えない問題じゃないか、こういうふうに思うわけです。となりますと、やはり信頼関係というものが非常に疑問があるし、また戦闘作戦行動においてイエスを与えた場合には、もう完全に日本の国がその自由使用を余儀なくされてしまうということになるわけでありますから、この問題については事前協議にイエスもノーもあるというよりも、むしろノーを前提にしなくてはならないというふうに私は思うんですけれども、この点については防衛庁長官はどのようにお考えですか。
  297. 山崎敏夫

    山崎説明員 日本がそういう場合においてイエスと言うということは、まさに日本の安全に直接関係があり、イエスと言うことが日本の安全に寄与するというふうに考えるからこそ、イエスと言うのであろうと思います。したがいまして、われわれは日本の安全をむしろ損なうという場合にだけイエスと言うわけでございます。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対潜行動については、非常に大きな日米防衛分担の柱になっておるわけでありますけれども、対潜行動の範囲というのはどのようにお考えになっておりましょうか。
  299. 丸山昂

    丸山説明員 対潜活動につきましては、これはアメリカとの間に別に範囲を決めるという問題ではなくて、わが国が海上自衛隊の対潜能力を維持するための目安ということで、前から申し上げてございますのが、わが国の周辺の数百海里ということを考えておるわけでございます。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 で、数百海里ということになりますと、それは公海ですね。公海においてアメリカのいわゆる敵国の潜水艦を発見した場合、防衛当局はどういうふうな処置をおとりになりますか。いわゆる航空自衛隊機がこれを爆撃するのか、あるいはこれを米軍に報告して、米空軍の方に爆撃のバトンタッチをするのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  301. 丸山昂

    丸山説明員 これも、その戦闘場面というのが大変いろいろ複雑な要素がございますので、いま先生の御指摘のようなことだけでちょっと結論を出しかねるのでございますけれども、いずれにいたしましても、いま現在の対潜部隊、護衛艦隊それから対潜哨戒機でございますけれども、こういうものを整備する目標としては、わが国周辺数百海里の中で対潜活動ができる能力を備えたいというふうに考えておるわけでございます。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対潜活動ですが、具体的なやり方はどういうふうなやり方をされるのですか。それはいわゆる潜水艦をキャッチするだけなのか、あるいはそれに対して攻撃を加えるのか、あるいはアメリカにそれを通知して、そしてアメリカが実際にそれに対して対処をするのか、実際にそういう場合にはどうなんでしょうか。いわゆる戦争状態になっている場合ですね。
  303. 丸山昂

    丸山説明員 これは当然、独力で全部処理するということで考えております。ですから探知からそれを捕捉をいたしまして、最後に爆雷なり魚雷なりで攻撃をする、こういうことは一貫してわが海上自衛隊でできる能力を持つように訓練をいたしておりますし、そういうことをめどに整備もいたしておるというふうに考えております。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核兵器の問題ですけれどもシュレジンジャーが韓国に核兵器の配置を言明して、普通兵器の場合においても当然核兵器の先制攻撃があり得るということを示唆されましたけれども、政府は核兵器の先制攻撃についてはどのようにお考えでしょうか。それについて肯定をされますか、あるいは断固そんなことは、核兵器使用というものは困るんだ、そのようにお考えになっておりましょうか。
  305. 丸山昂

    丸山説明員 このシュレジンジャーファーストユーズという通常兵器の対立から最初核兵器使用する用意があるという発言、これは現実に核を使用するというよりは、むしろ核の抑止力によってアメリカの決意を相手方に明白に示したというような意味合いがある点を重く見ておるわけでございまして、そういう意味で直ちにこれが核使用あるいは核の戦争のエスカレーションにつながるというふうには考えておらないわけでございます。
  306. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、どこまでもこちらの方の主観的な考え方であって、アメリカシュレジンジャーはそういう通常戦争においても、NATOにおいてもあるいは朝鮮においても必ず先制攻撃をかける、そして戦術核兵器を使うんだ、こういうことを言明しているわけですね。言明している以上は、それがただ抑止力で、そういう抑止力効果をねらっておるということだけで済まされる問題ではないわけであって、もしそういう事態が起きた場合において日本の国はどういうようにされるのですか。いわゆる日本の国は、もしアメリカが先制核攻撃をしたときに、それに対して肯定をされるのか、そういうものは絶対に使ってはならぬ、そのように日本の国ではっきりと否定をされるのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  307. 丸山昂

    丸山説明員 少なくともあの時点において、シュレジンジャーが核を第一次的に使用するという言い方をしたのは、明らかに核の抑止力という効果をねらったものだというふうに考えておるわけでございます。ただ、しゃにむに核を使用するということであるならば、これはたとえ軍事的に効果があっても政治的には非常にマイナスであるという点を知るべきであると思います。しかしながら現実には、最初申しましたように、シュレジンジャー発言には明らかに抑止効果をねらった意味合いがあったというように私ども考えております。
  308. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国は非核三原則を国是としておるわけです。そればかりではありません。日本の国は今日まで被爆国として世界に唯一の国である以上、少なくとも核の先制攻撃をするという事態に対しては、これはアメリカに対して反省をさせなくてはならないし、これに対して絶対に反対をしなくてはならないというように私は思うのですけれども、あなたは、ただ抑止力だけで効果的な問題だから、核の先制攻撃というものは、言うならばその点だけをアメリカ考えておるのだというのでなくして、シュレジンジャーが核の先制攻撃も辞さない、やるのだというふうに言われている以上は、これはやはり一つは、やるのではないかというそういうふうな問題をとらえて、そして日本の国としてはどういう態度をとるのかという問題が起こってくるのじゃないかと思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  309. 丸山昂

    丸山説明員 一般論として、核兵器使用するということについては、わが国が非核三原則を国是としておる立場から当然それは好ましくないということで言うべきであると思うわけでございますが、また一方、わが国は安保条約によりましてアメリカ核抑止力に依存をしておるわけでございます。それで、日本に対するあらゆる攻撃に対してアメリカはあらゆる方法で守るということを公約をしてくれておるわけでございまして、その中には当然、核の攻撃に対して核の報復を含んでおるというふうに考えるわけでございます。こういったいわゆる核の抑止力という恩恵にわれわれはあずかっておるわけでございまして、これはそれなりの評価をしなければならないというふうに考えるわけでございまして、現実に核を使うかどうかという問題については、あくまでも非核三原則の立場から反対をするということであるというふうに思います。
  310. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる核の攻撃に対して報復をするということは、これは第二次的な報復手段であって、シュレジンジャーが言っておるのは、いわゆる先制攻撃をかけるというところに非常に問題があると私は思うのです。  そこで、これは東京地裁ですけれども、いわゆる原爆裁判において原爆の使用は国際法違反であることを判示しておりますね。われわれも原爆とか核兵器使用は、既存の国際語条約及び全人類の法確信によっても国際法違反であると確信をしておるわけでありますけれども、政府は核兵器使用を国際法違反と考えておられるかどうか、それについてはどうでしょうか。
  311. 松永信雄

    ○松永説明員 遺憾ながら、現存の国際法のもとにおきまして核兵器使用がすべて国際法に違反するということが確立されている状態ではないと考えております。
  312. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは要するに、核兵器の違法化の実定法がないということなんだと思いますけれどもね。とするならば、政府の法確信というのはどういうものですか。法確信というのは、要するに法律はないけれども、違法ということは不動の確信であるというふうにだれが見てもとられるという場合においては、慣習法として法確信という言葉がありますね。それに対してはどうなんでしょうか。
  313. 松永信雄

    ○松永説明員 現在の一般国際法のもとにおきまして、核兵器使用は違法であるということは言えないと思いますのは先ほど申しましたとおりでございます。ただ、政府といたしましては、核兵器の全面的な禁止、廃止ということが国際社会の究極の目標であるべきであるというふうに考えておりまして、そういう実定法が国際法の社会において実現するように、できるだけの努力を日本のみならず世界の各国がしていくべきであるというふうに考えているわけでございます。
  314. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では最後ですけれども日本政府は、国連あるいは軍縮委員会において、核兵器使用の禁止と国際法上の違法化を確立するために外交行動をおとりになる、そういう意思があるかどうか。いまあなたがおっしゃるとするならば、当然それを行動に移さなければならないと思いますけれども、そういう点について、当然、軍縮委員会あるいは国連において核兵器はもう違法であるということについてコンセンサスを得るような行動をおとりになるかどうか、その点について最後にお伺いしたいと思います。
  315. 松永信雄

    ○松永説明員 先ほど申しましたように、全面的な核軍縮が望ましい、究極的には核兵器の全廃が私どもの努力の究極の目標であるべきだと考えているわけでございますけれども現実の国際社会の状況というものを見ますときに、法律的に現在違法であるという断定はできないわけでございますので、ただ抽象的に核兵器使用は違法であるという主張を繰り返すのでは、私どもといたしましては、現実的な努力が実を結ばないということだろうと思います。それよりは一歩一歩軍縮を重ね、核軍縮それからさらに核兵器の全廃という方向に漸進的に進んでいくべきであろうというふうに考えているわけでございます。
  316. 藤尾正行

    藤尾委員長 受田新吉君。
  317. 受田新吉

    ○受田委員 外務省へ先にということでありますが、私きょうは少し猛烈な行動でここへ危うく滑り込んだわけでございまして、いささか疲労しているわけですが、答弁に立たれる政府の方々もまさに疲労その極に達せんとしておると思います。一時間半ほどお尋ねをいたします。  きょう議題になっている国の防衛の問題の中で、基本的な問題として憲法と安保条約関係から法律論を少し展開してみたいと思うのでございます。  特に今度、坂田長官シュレジンジャー長官と御懇談をされる、相談をされる前に外交的にも大事な問題として御認識を願っておきたいことがあります。それはわが憲法は海外派兵を禁止しているわけなんです。その例外というものがあるかないか。  たとえば国連の決議で、安保理事会の決議で日本に対してきわめて限定された範囲ではあっても、海外派兵の形のものを強制されたときに、これはどういう形になるか、憲法違反というので断るというだけで済むかどうか、ひとつお答え願いたいのです。
  318. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま国連決議という御質問がございましたが、一般的には国連決議は勧告的性格を持つものであって、強制的な拘束力は持たないとされております。  通常の場合において想定いたしますと、御質問のような趣旨の国連決議が採択された、成立したという場合に、それに応ずるか否かというのは各加盟国の問題であろうかと思います。わが国につきましては、憲法という制約がございますから、その制約のもとにおいて行動することになるというのが当然のことであろうと考えます。
  319. 受田新吉

    ○受田委員 憲法の規定に反した条約は結び得ないということですか。
  320. 松永信雄

    ○松永説明員 憲法に違反する条約は締結し得ないと考えております。
  321. 受田新吉

    ○受田委員 安保理事会は決議はできますよね。安保理事会の決議というのはありますね。そうした国連で日本の憲法ということよりも、非常事態になったときに、もっとより高度の世界の政策として強い要請があり得る。これは全然ないとは限らないわけで、その際は国連の決議、安保理事会の決議を拒否することができるということですね。
  322. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま、恐らく国連憲章第七章に基づく安保理事会のいわゆる強制行動についてのお尋ねだと考えますけれども、国連憲章のもとにおきましては、安保理事会の決定に従って各加盟国が強制行動をとらなければならない場合には、特別の協定が締結され、それに従って兵力提供その他の協力が行われるというたてまえになっております。したがいまして、その協定が結ばれなくて、自動的に安保理で決議が採択されたから、直ちにそれに協力しなければならないという事態は出てこないものと考えております。
  323. 受田新吉

    ○受田委員 質問を続けますが、いわゆる有事というのは一体どういうことでございますか。
  324. 松永信雄

    ○松永説明員 一般国際法上の概念として有事という概念は存在していないと考えております。したがいまして、有事というのはいかなる状態意味するかというのは、その特定の状態についてその国等がどういう認識を持つかということであろうかと考えます。
  325. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、宣戦布告のない有事というのがあるのか、事実上の戦争状態というような場合ですね。これは通常の観念から言って有事とは——政府がしばしば有事ということを言うておられるわけです。ところがいま条約局長は、有事という概念について明確なものがないというお話しでした。そうすると、政府が有事ということを言われる根源はどこにあるのか。これは防衛当局でも結構です。
  326. 玉木清司

    ○玉木説明員 先ほど来防衛局長からお答えしておりますが、私ども考えておる有事と申しますのは、自衛隊法七十六条に申します武力攻撃を受けたというふうに解釈いたします。
  327. 受田新吉

    ○受田委員 その外部の攻撃を受けたというときには、戦争法規の適用を受けますか。慣習法を含めてお答え願いたい。
  328. 松永信雄

    ○松永説明員 いわゆる戦時国際法なるものは、従来戦争というものが合法化されていたときに集大成されてでき上がりました一連の国際法典のことを言うわけでございますが、現在は国連憲章のもとにおきまして戦争というものはすべて合法化されてない、違法なものとされているわけでございます。でございますから、戦闘状態というものが発生いたしますのは、国連憲章のもとにおきましては不法な侵略、違法な侵略が行われたときにその状態に対処して行動がとられる、そのときに発生するという問題だろうと思います。そういう状態のときに、いわゆる戦時法規の関係諸規定が適用されるか否かということになりますと、それは現在の時点におきましても適用されるものであるというふうに考えております。
  329. 受田新吉

    ○受田委員 韓国において有事の状態が出たという場合に、これはいま仮定の問題でございますよ、その際に、わが国の領域が米軍の兵器の補充、軍需品、武器弾薬の補給とか輸送基地などにこれが使用されるということが起こる、そういう場合にわが国はどういう位置に置かれるのか。つまり米国の敵対国から見たら、そのわが国の米軍基地は明らかに敵性国とみなされるのではないかということです。
  330. 松永信雄

    ○松永説明員 ある状態が発生いたしまして、仮に米軍が日本の施設、区域を使用して戦闘作戦行動に出るという状態を想定いたしますと、その場合の米軍の行動というのは違法な侵略に対処してとられる行動に限定されるわけでございます。したがいまして、その際それに対する、すなわち米軍に対する戦闘的な行動あるいはその施設、区域を提供しております日本に対する、基地に対する攻撃という形で行われます行動、これはまさしく侵略の拡大という形になってくるわけでございます。
  331. 受田新吉

    ○受田委員 局長さん、前に椎名外務大臣のときに、ベトナム戦争関係日米安保条約のもとで日本はベトナムから見て敵性国であると見られるという答弁があったのを御記憶でございますか。
  332. 松永信雄

    ○松永説明員 敵性であるとか敵対国家であるとかいうことは、私は、法律的に熟した概念ではないだろうと思います。むしろ政治的に使用される言葉だろうと思いますが、アメリカと協力関係にある、そのアメリカと敵対的な関係にある国がアメリカとの協力関係にある日本について自分の利益に反対する、あるいは対抗する国であると観念することはあり得るだろうと思います。
  333. 受田新吉

    ○受田委員 外務省でも御存じの例の「国際法辞典」というのがありますね。その百八十二ページを読んでみると、「その領域の全部または一部を交戦国の軍事的使用に供している場合」その限りでその国の領域は交戦区域となり、他方の交戦国はそこで害敵手段、つまり攻撃使用することが認められると、こう書いてある。これは了承されますか。
  334. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいまお読み上げになりましたのは、いわゆる戦時法規がある戦争状態、戦闘状態に対して適用されるときの関係が響いてあるわけでございまして、それはまさしくそのとおりだと思います。ただ、その場合に日本の施設、区域を使用して行われますアメリカの行動というものはどういうものかというと、それには非常に大きな限定、制約があるということを、先ほど申し上げたわけでございます。
  335. 受田新吉

    ○受田委員 その制約があると言いましても、現に韓国を中心にしていずれの国かが韓国に攻撃を加えた、それに対して在日米軍基地から攻撃を加えていく、そのための補給基地として存日米軍基地が使用される、そうすると戦争状態ですよ。そうして見ると、向こうの国から見たら、攻撃を加えられた方の国から見たら明らかに敵性国家であって、その基地を攻撃することは当然国際法上、戦時国際法規で許されることですね。
  336. 松永信雄

    ○松永説明員 いま朝鮮半島において武力攻撃が発生し、それに対処するためにアメリカ日本の施設、区域を戦闘作戦行動のための基地として使用するという状態を御設定になられたわけでございますが、そういう場合に、もちろんこれは安保条約のもとにおきまして事前協議にかかるわけでございますから、一応仮定の問題としては、事前協議が行われて日本がイエスと言った場合というふうに想定いたしたいと思います。この場合に、先ほど私が申し上げましたごとく、アメリカの行動というのは、国連憲章のもとにおいて合法化される行動に限定されるわけでございます。すなわち、それは侵略が発生して、その侵略を排除するための自衛権の発動としての行動に限定されるわけでございます。したがって、その自衛権の発動に限定されますアメリカの行動の基地である日本の施設、区域を先方が攻撃してくるということは、これは侵略行為の拡大であって、現在の国連憲章のもとにおける国際法上は合法的であると認めるわけにはまいらないわけでございます。それはすなわち侵略の拡大でございますから、国際法上は認められないというのが正確なお答えになると思います。
  337. 受田新吉

    ○受田委員 侵略の拡大、しかしながら韓国で戦争が起こった、そういう際に、侵略侵略でないかとかいうようなことが明確に判断できるような状態でない、たとえば韓国自身が挑発されて攻撃を加えるということであれば、侵略阻止のための戦いということになろうが、また見方によっては、韓国自身が他の国からいま攻撃を加えられたからこれに反撃したというだけでなくして、どちらがどうかわからぬということも起こりますよ、それは現実の問題として。いままで戦争というものは大体そういうふうになっているんです。そんなにしゃくし定規にいっているわけじゃないですから、そのときに在日米軍基地が使用されるということになれば、相手の国から見れば、それはその基地をたたかなければ戦争の勝利が得られないのですから、基地をたたきに来る。そういうことが起こる。これが起こることは、当然侵略の上積みであると言っても起こることがあるのです。そのことは想定しなければいかぬのです。そのときにはどうなりますか。
  338. 松永信雄

    ○松永説明員 先ほど仮定を想定されていたわけでございますが、政府が従来から国会におきましてはっきりと申し上げておりますのは、事前協議が行われた場合にイエスと言うのは、日本の安全にかかわる場合においてイエスと言うということを申し上げているわけでございます。でございますから、いまの設例について申し上げますと、その場合は日本の安全が直接脅かされている状態だろうと思います。そこで、施設、区域が使用されて戦闘作戦行動の基地となっているという状態が発生いたします場合は、先ほど私が申しましたように、侵略を排除するための行動でございますから、その基地をたたくということは侵略の拡大になる、したがって、法律的に考えます限り、そういう基地をたたくという先方の行動というものは合法化されない、国際法上は容認されないということを言わざるを得ないわけでございます。ただ、事実問題といたしまして、そこに攻撃が加わってくるであろう、加わってくることがあり得るということ、これは別問題だと思います。
  339. 藤尾正行

    藤尾委員長 受田君にちょっと申し上げますが、防衛庁長官は八時三十分から米国のウォーターハウス博士と会談される予定になっております。  そこで、まことに恐縮ですが、集中的に防衛庁長官に御質問をいただきまして、八時十分ぐらいまでに御退席をお許しいただきたいと思います。
  340. 受田新吉

    ○受田委員 退席を許すことにするように質問をしてみましょう。  長官、あなたは米国長官と近くお会いになるわけでありまして、その両首脳会談日本国民のすべてが非常な関心を持っておるわけです。  そこでお話しの中に、報道を通じてわれわれが伺っておるのは、日米共同作戦あるいは防衛分担というような問題が俎上に上る。こういう場合に、共同作戦という行動、これは安保条約第五条によって「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」ということが挙げてあるわけです。ところが共同の行動をとった、とったところが、米国の軍隊の方は、米国はいつでも撤退することができる、つまり、ベトナムの例がはっきりしている。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 南ベトナムと一緒に共同作戦行動をとっておきながら、大統領意思も米上院の決議でこれが現実にひっくり返されておる。フォード大統領が何とか南ベトナム支援体制をしこうとしたら、米上院から完全にこれを拒否された。米上院の権能は大変なものでございますが、日米共同作戦行動をとったその後において、米の世論その他から、米国はこの行動はやめて撤退すべきであると一方的に決められたときには、一体日本はひとりぼっちになるのですか。そのことをちょっと伺いたいのです。  戦いをするのはいいが、戦いをやめるとき、撤退するのはアメリカのリードでやるのかどうかです。現に南ベトナムでは完全に、南ベトナムのグェン・バン・チューは米軍に勝手に逃げられて、ついに米頼むに足らずと慨嘆をしたわけです。このことを日本としては共同作戦行動に際して終始念頭に置かぬと、もう殷鑑遠からず、つい先般南ベトナムで、あれだけ一緒に提携した米軍が勝手に逃げてしまった、最終的には米上院が大きな権能を発揮して逃げておる。逃げたのです。日本がそういう危険を冒す可能性は十分あるわけです。ちゃんとした対策を用意しておかんといかぬですね。
  341. 坂田道太

    坂田国務大臣 日米安保条約がございます。そしてベトナムの場合といささか違うと私は思います。やはり日米安保条約というものがあるということとないということとは違うわけであります。しかしながら、アメリカはやはり世論の国でございますし、議会の権能というのは非常に強い。ことにベトナム後におきましては非常に慎重であるということは私たちも知っております。それであるがゆえに、私は、日米安保条約を結んでおれば、それに対する防衛協力ということについてはっきりしたことを考えておく必要があるということ、それからふだんにおいて、単に安保条約だけじゃなくて、外交はもちろんのこと、あるいは経済あるいはまた民間その他においてもいろいろのパイプが日米間において緊密にあって、そして両国民がやはりお互いの国益というものを理解し合うということが前提だと思うのでございます。その努力というものが非常に必要だというふうに思うのです。その一環としてやはり日米間に安保条約が結ばれておる。その防衛協力の問題についていままでなかった。これに対して責任者同士が話し合いをするということは、やはりその一歩ではなかろうかというふうに考えております。  ただ、法律的やその他の問題については、防衛局長からお答えを申し上げます。
  342. 受田新吉

    ○受田委員 局長さんどうぞ。逃げられた場合のことを考えておいて下さい。
  343. 丸山昂

    丸山説明員 確かに法律的に特別にはございません。要するに日本の場合には、日米関係安保条約というのがあるわけでございまして、ベトナムの場合にはそういうはっきりしたコミットメントはない。実質的にアメリカが肩入れをしておったというふうに私どもは理解をしておるわけでございますが、いま大臣がおっしゃられましたように、条約といいましても結局空文に終わる。要するに紙に書かれたものであるということに終わる危険性は、どの条約といえども絶えず持っておるわけでございまして、そういった意味で、やはり基本的にはある程度の自衛力を、みずから守る力というものはつけておく必要があると思いますし、また日米のつながりというのは、いま大臣がおっしゃったように、あらゆる面を通じて、防衛の面もあわせて、特に防衛の面のつながりというのは一視同仁的な面もあるわけでございまして、そういう点で幅広いそれぞれの場における日米協力といいますか、こういった面の活動を展開していくべきではないかというふうに考えるわけでございます。
  344. 受田新吉

    ○受田委員 ここで外務省も助太刀してもらってもいいんですけれども、五条の「自国の憲法上の規定及び手続に従って」というのは、日本の側ではどういうことになるのか、アメリカの側ではどうなるか、御説明願いたいのです。
  345. 松永信雄

    ○松永説明員 第五条にあります「憲法上の手続規定に従って」という表現は、この種の安全保障条約にいわば慣用的に使用されております規定でございますけれども、わが国について見ますると、これはもちろんのこと、憲法の枠内において締結される条約でございますから、憲法上の規定に従ってわが国の義務を履行するということは当然のことだろうと思います。ここで書いております「憲法上の手続」というのは、日本の憲法に照らしてみますると、手続に関する規定というのが特には設けられておりませんから、日本について言いますと、主として「憲法上の規定」ということが念頭に置かれているというふうに考えるべきであろうと思います。アメリカについて申しますると、これは米国の憲法上の手続が定められているようでございますから、そのアメリカの憲法の規定及び手続に従って行動がとられるということを条約で規定しているということだろうと思います。
  346. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカの側の方は、第五条によって「共通の危険に対処する」ために軍隊を派遣した、軍事行動をどんどん進める意思があるという状態であっても、アメリカでは米国上院にその権限があって、事実上軍事行動を阻止することができるんですね。それは御存じですね。事実、この間のベトナムがそうでしょう。そしてこの第五条には「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」のでありまして、宣言をしたが、これに双方の意思が共通の意思でなければならない、一方が撤退してはならないという規定はない。行動を宣言するけれどもアメリカが途中で勝手に撤退したからといっても、これは条約違反にはならぬですよ。そうじゃないですか。
  347. 松永信雄

    ○松永説明員 アメリカの問題につきまして、いま御指摘がありましたのは、戦争権限に関するアメリカの法律がございますが、そのもとにおいて、大統領戦争に関する権限というものが一定の制約のもとに置かれておりますことは私ども承知しております。しかし、その権限法にもアメリカ条約上の義務を妨げないという規定がたしか設けられていたと思いますし、この第五条の規定は、アメリカ日本防衛するという義務を条約上定めたものであるということは明白であり、私どもは、そういう解釈をとっておるのみならず、アメリカもその解釈については確認をしているわけでございますので、日本防衛する義務をアメリカは、法律の規定その他があるからといって免れることはできないというふうに私ども考えております。
  348. 受田新吉

    ○受田委員 第六条に「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とあって、これは一つの権限であって、これは使用しなければならない、駐留しなければならないという義務規定じゃないですよ、だれが読んでもね。いまあなたは、義務があるとおっしゃるが、この第六条の規定を読んでみると、これは義務規定がないですよ。これはただ権限であって義務じゃないと思うがどうですか。
  349. 松永信雄

    ○松永説明員 私が申し上げましたのは、安保条約第五条の規定でございまして、第六条の方で定めておりまするのは、日本防衛するという義務を履行するために必要だという前提に立って第六条で施設、区域の使用を認めるということが響いてあるわけでございます。したがって、これはアメリカの側に立って見ますると、施設、区域を使用するということが条約上の義務ではないという点は、まさしく御説のとおりだろうと思います。
  350. 受田新吉

    ○受田委員 だから、五条と六条ははっきり分離して考えて、混同しないようにひとつしていただきたいのですけれども、第五条で義務がある、第六条には義務がない、権限だけだ、そうしますと、防衛庁長官アメリカが途中で、憲法上の規定及び手続によって、アメリカなりの一つの法規によって、米上院は大統領の命令に対してもこれを拒否することができる、そういう強大な権限を持っている、韓国に紛争が起こった、それで在日米軍が行動した、しかし情勢をよく判断すると、もうこれはやり切れぬ、前に、マッカーサー元帥のように、破竹の勢いで計画したのが、大統領命令でとんざを来たしたようなことが起こるときに、日本は、イエスと言って共同作戦行動をとったというときに、米国が世論などによって、米上院がもう米国の軍事行動はやめるべきだと決定をしたら、これはやめさせられるんですよ。米国の規定でやめにゃいけぬようになっている。米上院はそれだけ強大な権限がある。そのときに日本は一人ぼっちになるんですよ。義務があるとおっしゃっても、その義務というものについては、これは明白に、つまり行動することであって、撤退する規定が書いてないのです。撤退に当たっては双方が協議しなければならぬということがないんですよ。  私は、三十五年の日米安保条約論争をやるときに、当時、洋さんや藤山さんにもちょっとこの点をお尋ねしたのです。つまり潮どき、引くというときに、双方の両国の意見が合わぬ、意見が合わぬときに一体どうなるのだ、この規定ではそれが明確にないじゃないか、つまりアメリカが勝手に引いた、日本は孤立して最後まで戦うのか、大東亜戦争のようなかっこうで、枢軸国のドイツがみな倒れていった、日本だけが孤立無援で最後まで戦っていく。日米共同作戦行動をとるとシュレジンジャーと話になって防衛分担の相談が出る、一緒にひとつ共同の敵に対して対処しましょうと御相談が二、三日うちに行われるというようなときに、御相談はいいが、大事なときには最後まで運命をともにするという関係というのは、この条約のどこを見ても拝見できぬですよ。特に第六条を見れば、権限はあっても義務がないのです。駐留しようとしまいといいことなのです。  それでわれわれとしては、有事というときに——有事ももういまはやめたのですが、駐留なき安保という体制にしておくのが一番いいということを提案しているのですが、それはそこなんです。いまのような在日米軍の基地を、米軍がその補給基地とか弾薬運搬基地とか、こういうものにどんどん使う、使うということになれば、もうりっぱに、その相手国から見れば敵性国家の基地になる。そういうときに、権限はあっても義務はない第六条の規定で米軍は施設、区域を使用することが許されるのであって、おってもおらぬでもいい規定だと思いますが、これはどうですか。長官、あなたは米軍が駐留しなくてもいい規定だ、使用したいときに使っていいという規定だと……。
  351. 松永信雄

    ○松永説明員 この第六条の施設、区域の使用を許されるという規定は、第五条でアメリカ日本防衛の義務を負っております。それに対して見合う日本側の義務という形で規定されておりますためにこういう形になっていると考えております。日本防衛に当たるというアメリカ条約上の義務を履行するために、まさしく日本における施設、区域の使用が認められているわけでございますから、仮の問題といたしまして、施設、区域の使用をしなくても全く日本防衛に支障がないという状態が出てきますれば、そのときには施設、区域の使用というのはなくなるだろうと思います。しかしながら、現在の時点におきましては、日本防衛に当たるという条約上の義務を履行するためにアメリカの軍隊が日本の施設、区域の使用を認められているというのが現実の実態であろうと思いますから、そういう施設、区域の使用がないという状態を想定することは、この安保条約のもとにおいては私は非常に困難だと思います。
  352. 受田新吉

    ○受田委員 いま第五条は「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」というのですから、武力攻撃が非常に危険を与えるからというので共同行動するんですよ。武力攻撃の危険がない、もういまのところ自国の平和及び安全を危うくするものでないというときに共同行動するわけじゃないですよ、五条は。そうじゃないですか。もういまにも敵が来るというような気持ちでおられるようですが、文章をよく読んでいただきたい。
  353. 松永信雄

    ○松永説明員 先ほど私が申し上げましたのは、第五条に「日本国の施政の下にある領域における」云々ということが書いてあるわけであります。したがって、この規定は、具体的には日本に対する武力攻撃から日本防衛するということであるわけでございます。それに対する見合いの義務として、第六条で施設、区域の提供あるいは施設、区域の使用を認めるという規定が出てくるわけでございますから、私は、先ほど申し上げました実態を考えるのが、この安保条約の解釈としては当然のことだろうと思います。
  354. 受田新吉

    ○受田委員 長官、これはあなたが、実際外部の武力攻撃に対して自衛隊法第七十六条における権限を行使されるわけです、総理大臣をお助けになって。考えてみると、非常に平和なお顔をしておられる方だから、めったなことはない。総理大臣自身一撃でころっと転ぶような平和なお方だし、総理大臣長官もまことに外形的には繊弱でいらっしゃる。しんは強いというおぼしめしはよくわかるのですが、総理も長官も非常に平和的に見えるタイプでいらっしゃる。三木さんでも、あの一方を殴られたときにもう一方を殴られる前に二の腕をつかんでねじったということをやらぬですよ。平和なお方だから、殴られて倒れるまでじっとすくんでおられる、こういうお方、長官とよく似ておられる、名コンビ。この日本は、お二人の責任者が平和なタイプであり、平和な心を持っておられるから、私はいま、平和的な象徴の両横綱がおられるという意味で安心はしておるのですが、しかしシュレジンジャーさんとお会いになって、短い時間に何かかたい約束をさせられたときに、共同行動の防衛分担の重い使命を与えられたときに、ここにある第五条に基づいて自衛隊法第七十六条の自衛隊の行動を命令されるということで、これはあなた自身の問題になってくる。条約論争じゃないことになってくる。  これを見ると、第五条は、武力攻撃がいずれか施政のもとにある領域で起こる危険があるということと、もう武力攻撃が加えられたというときの共同の行動でございますから、長官の御判断では、日本側から見てこの共同行動はやめるべきだと判断するときはどうすればいいのですか。自衛隊法で国会の意思を尊重してやるというときと、それから手を引くとき、対敵行動を一緒にした、しかし手を引くときは——米国意思は憲法上の規定、手続で、向こうは上院の権限が非常に強いのです。日本では、そういう権限は国会の意思で引けというとき以外にはないわけです。あるいはあなたの方の御判断でやるというときもあるが、その時期というものが、双方が意見をぴしっと合えばいいが、合わぬ場合にはどうなるのですか。これはあなたのお仕事です。条約論争じゃないです。潮どき、引きどき。勝つまでやるのですか。
  355. 丸山昂

    丸山説明員 これも最終的には内閣総理大臣が御判断されるわけでございますけれども、その時期、それから判断をされるタイミングというのは非常に重要だと思いますが、いずれにしても、わが国が戦争を継続することがきわめて不利であるということになれば、当然、撤退といいますか、戦争終結といいますか、その方途を講じなければならないと思います。
  356. 受田新吉

    ○受田委員 と思いますが、米国は憲法上の規定、手続が日本と違うのです。違う国同士が共同作戦行動を起こすわけです。そこで、ここで撤退していい、もうこの辺でよかろうという判断は、一体どこがやるわけですか。もう韓国に対する韓国条項などが物を言うて、イエスかノーかをどうするかというようなところまで来ておる、もう国益にかなうとなればイエスと言う場合があるのだ、イエスという場合があるということを言うておるのですから、そうすると、もう当然共同行動をやらにゃいけぬときがあるのです。あるときに、今度おしまいにする、もうこの辺でよかろうというときに、両国の意思が合わぬときはどうすればいいのですか。そのときはどうなるのですか。こちらがここまでやらにゃいかぬというときにはアメリカさんはさっさと帰っていく、ところが向こうはどんどん攻撃を加えてくる、引き続き在日米軍基地、さらには日本の各地にどんどん攻撃を加える、そのときに日本の自衛力で米軍が撤退してもなお防衛するのですか。つまり共同行動は、米軍が撤退した後においても日本が孤立してやる場合が起こる。これはやはり自衛のためにやらにゃいけぬですからね。そのことをちょっと明確にしていただきたい。
  357. 丸山昂

    丸山説明員 いまのお話しは、これは法律の解釈ではなくて、実際の戦争の遂行あるいは遂行指導の判断ということになってくると思いますので、大変これは高度の政治判断でございます。ですから、一概にどうと言うことはできないわけでございますが、要するにその場合に戦争を継続するのか、あるいはそこで戦争をやめてしまうのかという、その二つしかないと思うのでございますが、その辺、具体的な要素が私よくのみ込めませんので、簡単にどちらと、どういう過程を経てどういう決断を下すかということは、ちょっといまの段階ではなかなか申し上げにくいというふうに思います。
  358. 受田新吉

    ○受田委員 長官、これはあなたの方でお考えになっておかなければいけぬ。一緒に共同行動をした、しかし殷鑑遠からず——繰り返すけれども、たとえ南ベトナムと条約がないとしても米国は必死に南ベトナムを守ったんですよ。これは間違いない。長い間、千五百億ドルもの金を使って守った。あれだけの多くの人を殺して、日本以上の犠牲を払っておるんですよ。大変な犠牲、にもかかわらず、いざというときにはさっさとお帰りになったんですよ。このことは、国際間の信義ということは大事ではありますが、米国の判断で撤退というときになって、しかし日本は、はや矢はつるを放たれて、どんどん向こうさんが日本攻撃を加えてくるのだから黙っちゃおれぬ、米軍は撤退してこの問題から手を引くと言われても日本は自力でそれからやらにゃいかぬわけなんです。そういう場合には自力でやるのですかどうかということです。
  359. 坂田道太

    坂田国務大臣 われわれ日米安保条約に基づきまして、わが国の安全を守るために共同の作戦協力をするということでございますから、あくまでもこちらが主体的に判断をすべきこと、しかもその終結は、やはり一緒に終結があるように考えなければならないと思います。(受田委員「もちろんそうですけれども」と呼ぶ)しかし、そうだけれども、いま御指摘のように、これは仮定の問題だけれども、そういうこともあるということだって、可能性が全然ないわけじゃないということについて、やはりふだんから、私から言うとふだんから、アメリカ日本との間に単に安保条約があるから安心しておるということじゃなくて、あらゆる面において日米関係の協力関係、たとえて言いますならば、経済的な協力もその一つでございましょう、あるいはまたその他のいろいろな協力関係を密にしておくということが、やはりそのときに日本の国益を守ることになっていく、あるいは日本の安全を守ることにつながっていくというふうに思います。それ以外にお答えはできないと思うのです。
  360. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、米国上院が在日米軍の全面撤退をやる場合が起こったというようなことも考えられますよ。それはいまのが、駐留しなければならぬというわけじゃないのですから、権限はあっても義務じゃないのですから、あの六条は。  それからもう一つ、これは防衛庁のお仕事と思いますが、外務省の見解もあわせて、第六条の米軍が全面撤退ということは、これは事前協議の対象になるのか。こちらへ配備のときにはもちろん事前協議の対象になるが、全面撤退をするというときもやはり事前協議の対象になるのですか。大事な解釈ですから、ひとつ……。
  361. 山崎敏夫

    山崎説明員 安保条約第六条の実施に関する交換公文が事前協議の問題を書いてあるわけでございますが、それには「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更」となっておりますから、米軍が引き揚げるというふうなことについては、この事前協議の対象になるものではないと存じます。ただ、そういうふうな米軍が全面的に撤退するということは、これは安保条約が予想しておらない事態であります。やはりこの条約は一条から十条でございましたか、までの全体としてバランスのとれたものとしてお互いの権利義務が成り立っておるわけでございまして、この条約は当然、米軍の駐留を予想した条約でございますから、これは政治的な問題として政府はアメリカ側と話し合うべき問題であろうと思います。
  362. 受田新吉

    ○受田委員 交換公文の中には撤退の規定がない。配備の規定はあるが撤退の規定はない。だから、撤退するからといって事前協議しましょうというわけにはいかぬのですよ。そういう一つの片手落ちがここにある。  だから長官、そういうところでポスト・ベトナムの問題は、東アジア日本及び韓国にもうアメリカの西太平洋における防衛線がきちっと引かれておる。沖繩はかなめとして非常に大事に考えた。韓国よりもまだ沖繩をアメリカは大事にしておるんじゃないか。グアム、マリアナに後退したこの東アジアの勢力、四十八万という在外米軍も、まだ数を減らさぬでやろうという意気込みはいいけれども、やはり最後は日本と韓国そして沖繩——沖繩は日本ですけれども、沖繩、韓国を中心にした前衛線というものをアメリカ考えておると思うのですが、どうでしょうか。
  363. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは、ことしの国防白書を見ましても、西ヨーロッパは西ドイツを中心とし、そしてまた東アジアにおきましては日本、韓国というものを中心に考えておるということは御指摘のとおりだと私は思います。
  364. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことでありますから、米軍としても最後の拠点にわれわれの国と韓国を置いておる。したがって、韓国の——長官にひとつ質問をということですから、もう十五分だけ質問を集中しますが、キッシンジャーにしても国防長官にしても、それほど大事に考えているから、韓国の危機に際して核兵器使用もああして宣言しておるようなわけですね。しかし日本としては、核兵器使用発言を許してはならぬと思うのです。拡散防止条約というのは一体どうなんですか。核保有国が核を使わないようにしようという意味の拡散防止条約じゃなかったですか。あれはどうだったのですか。長官、閣僚としてどう判断されますか。
  365. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは、外務省から国会に核防条約が提出されましたときに、私どももこれに賛成をしておるということでございまして、私どもとしましては、非核政策をとっておりますし、それから被爆国でございますから、やはりそういう国民感情というものを、十分シュレジンジャー長官にもわかってもらいたいというふうに思っておるわけでございます。  そうではございますが、アメリカのいわば核戦略といいますか、あるいは世界戦略の内容は、先生いらっしゃらなかったところで申し上げたわけでございますけれども、全世界的な規模において核抑止力ということをやっている。しかもデタント平和共存というものが出てはおるけれども、それは力の追求の結果として出てきておる。つまり東、西の核も含めた——核にいたしましても戦略核戦術核通常兵器、この三位一体の形において抑止というものが考えられておって、そしてその上に立ってデタントというものが結果として生じておる。そういうわけであって、平和共存とかあるいはデタントとか一概に言うけれども、それは核の均衡の上にあるわけなんで、この核の均衡が破れる場合には、戦争誘発の非常な危険というものが残っておるわけで、核を使う、核を使うということは抑止ということに重点が置かれておるので、誤解によって相手方が攻めてくるということがなかなかできないようにするという、そこに重点が置かれておる。そこの全体的な仕組みということは、ひとつ先生も御理解を賜りたいと思うのです。しかしながら、われわれの国としては、あの非核政策をとっておりますし、被爆国でもございますし、今日の国民感情を考えた場合に、この国民感情というものは十分ひとつわかってもらいたいということは私は言えると思うのです。
  366. 受田新吉

    ○受田委員 私お尋ねしておるのは、拡散防止条約、核防条約なるものは、核抑止力を全世界に宣言していこうというわけですね。にもかかわらず、核を持っている強大なアメリカが先制攻撃として核兵器を使うというような暴言を吐くようなことに対しては、これはもう全世界の人類の敵ですよ、こういう発言は。この発言に対して、先制攻撃などに核兵器使用するものではないというはっきりした約束を、あなたはシュレジンジャーに今度お会いになったときに、日本国は拡散防止をもう決めて、核を持っている強大な国が核抑止に貢献していただくというので賛成した、批准しようとしている、しかし、あなたの国が核兵器をどんどん先制攻撃に使うような発言をしてくれたのでは全国民も納得せぬ、拡散防止条約などということは、もうとんでもないことに国民感情はなりおるんだ、及ばずながらわれわれがそれに協力してこようとした夢はもうくずれた、もう拡散防止条約の批准の必要なし、あなたのあのような先制攻撃核兵器を使うなんという暴言を、少なくとも一国の国防長官たる者、キッシンジャーさんまで言うておるじゃないか、これを取り消してください、ただ単におどすための発言などとしては余りにもお粗末だ、本当に世界の平和を願うなら核を持っておるが使わない、本当に抑止力アメリカのかさの下にある日本が、あなたのように先制攻撃核兵器を韓国で使いますよとやられたら、核を使えば今度は核で報復される、そうすると、日本は悲惨な核攻撃を受けて哀れな国になるのじゃないか、私は日本の国防長官としてそれをおそれる、シュレジンジャーさん、ああした暴言はおやめくださいと言うことができるかどうかお答え願いたい。
  367. 坂田道太

    坂田国務大臣 ちょっとその点が先生によく聞いていただきたいと思うのですが、私もシュレジンジャー国防白書を読んでみてわかることは、全世界的な規模において抑止力というものは——もう全然核を使わないというのは抑止力にならないのです。ですから、今日のデタントというもの、あるいは抑止力が効いて平和であるということは、使うという前提が一応あって初めて抑止力は働く。非常に禅問答みたいなものでございますけれども、やはりそれが今日の現実世界の姿なんです。ここは一方において、日米安保条約において核の攻撃に対してはアメリカに依存するということをわれわれが約束しておって、しかも核抑止力世界的な戦略の構造というか、あるいはアメリカのいわゆる戦争防止の考え方というものを理解しないようなことでは、日本を果たして守ってくれるかということは私はわからないと思うのです。ですからその点は、日本国内においては非核三原則というものがございます。このことはよく承知をしていただきたい。しかしながら、全世界的な核抑止力としての核というもののことはわれわれは理解せざるを得ない、私はそう思います。
  368. 受田新吉

    ○受田委員 私、長官に十分御認識を願いたいのだが、米中ソの核兵器、この核兵器相互牽制という作用が一つあるから、核兵器は実際は使わない兵器になっておるのです。使用せざる兵器になっておるのです。そこにまた核抑止力の効き目もあるわけなんです。だから地域的に、ある具体的な地域を示して、そういう使わない兵器としての抑止力、もうそれは世界の常識になっているのに、それを簡単に韓国で使用するような、しかも先制攻撃と言っておるが、そういう発言、こういうようなことでは、これはもう核抑止力じゃないですよ。核を持っておどすのにしては余りにもお粗末だ。  私は、長官の言われた意味についてもわからぬことはないのですが、日本のように核の犠牲を受けた国が、少なくとも隣国で核兵器を先制攻撃として使われるというようなことは避けてほしいと言うことは、これは長官、あなたが言われて日米の友好親善をこわすことはないと思いますよ。本当に平和を愛する国の防衛長官としてあなたの平和のお顔で訴えられれば、シュレジンジャーさんが、なるほど坂田さん、よくわかりますというので手を握ることができるのです。お願いします。どうですか。
  369. 坂田道太

    坂田国務大臣 どうしてああいうふうな強い調子シュレジンジャーが言ったかというのは、ちょうどベトナムにおきましてサイゴンが陥落して、その結果として同盟国の間においてかなりの動揺があった。たとえばタイにおきましてもフィリピンにおいても、そういうことでアメリカ離れというものが流行みたいなことになった。そのことに対してやはり……(受田委員「捨てばちでやったか」と呼ぶ)いや、捨てばちじゃなくて、やはりそういうことに対する鎮静の役割りをさせたというふうに思います。その証拠には、その後、同じシュレジンジャー長官が、通常兵力をもってしても朝鮮半島における軍事力の均衡というものは保ち得るというようなことをちゃんと言っておるわけでございまして、その点は、先生の御指摘の点も十分私、腹の中に入れて、シュレジンジャーとの会談に臨みたい、かように思っておるわけでございます。
  370. 受田新吉

    ○受田委員 十分腹へ入れておいて、顔を見たら、ああこれを言おうとしておるのだなというところで、向こうに対して説得力を持つようにやってもらいたい。  もう一つ、三十分ですからもうちょっと……。長官防衛分担構想、それから日本に対する防衛力の増強要請というものが自然に生まれてくるというときに、日本の経済の実情その他で日本国民の合意を得るのには米国の要請にこたえられないのだ、これに対しては何か注文が出そうですか、どうですか。防衛力の増強に対して注文が出る予測がありますか。
  371. 坂田道太

    坂田国務大臣 ポスト・ベトナム前にはかなりアメリカ新聞、雑誌あるいは議員の人たちの中にもただ乗り論というものが強かったと思うのです。しかしポスト・ベトナムからはそうじゃなくて、やはり日本の言うことにかなり耳を傾けよう——少し甘いかもしれませんけれども、そういうような気持ちが出てきたので、余り強い意思の押しつけみたいなことは影がある程度薄くなったのじゃないか。しばらく日本の言うことに耳を傾けてみよう、こういう態度に変わってきたように実は思うのです。しかし、これは会談に臨んでみないとどういうことかわかりません。しかし無理なことをやることは、せっかく日本防衛問題がわりあいに国会においてもまともに論じられるようになったこの時期に、私は、これはもうしばらくそういうようなことはかえってよくないというような気持ちを持っております。したがいまして、やはり防衛力を着実に整備していくということは大事だけれども、しかし、それはやはり他国に脅威を与えるようなものであってはならないし、また民生を著しく圧迫するようなものであってはならないのだ。このことであれば、憲法の制約のあるものであるとするならば、自衛隊というものをだんだん国民の方々はわかってもらえる、そういう見通しが実は私にはあるのです。こういうことは申してみたいと思っておるのです。
  372. 受田新吉

    ○受田委員 はい、わかりました。それはひとつやってもらいたいですね。  それから、おしまいにもう二分あるから……。長官、共同防衛にも関係する防衛分担というような言葉は問題があるけれども、はっきりしておいてもらいたいことは、第五条には日本の施政下にあるという明白な言葉があるのです。だから、施政下以外に協力を求めるようなことを、たとえば対潜行動などで協力してほしいとかとなると、施政下以外のところで協力を求めるというようなことになってくると、今度、潜水艦に対する哨戒任務等をお手伝いする、監視をすることでも分担させられると、そのことはもう軍事行動の一部というように見られて、日本の対潜哨戒機などがたたかれるという理屈にも通ずることになるのです。そういう問題がありますから、日本の施政下以外に防衛協力を求めることができないことを、十分第五条の精神をよく言われるということ。  それから、安保条約を私、一日かかって調べてみると、油断をするとこの条約からはみ出る。それから、この条約に対しても非常に期待的な御発言が——いま条約局長もそれをお持ちです。全体を通じてお二人の局長がそういう腹でいらっしゃる。つまり規定の上では米軍が徹退しても何ら法律的な制約はない。どうぞお帰りくださいということにも通ずるほど、この条約の文句からいえば、米軍が日本基地から全部引き揚げても条約違反ではない、しかし精神に違反するというような意味ですね、いま言われるのは。そうでしょう。条約上は、米軍が日本から引いても違反にはならぬ。ただ、この条約の精神からいって義務的な要素があるという意味でしょう。  そういうようなことですから、長官、この条約の一条、一条を、もう私、十五年前にこれを安保特別委員でやった問題だから、当時をよみがえらせながらいま論議しておるが、ちょうどそのときに懸念されたような事態が韓国条項を中心にしていま起こりそうになったのだ。それだけに長官に——いまあなたがお帰りになるのでやむを得ませんが、一分過ぎましたからあなたにはお帰り願って、あと事務局をいじめることにしまして、いじめるというのはいけませんが、お尋ねすることにしまして、長官、私の精神を十分くみ取って、日本の運命に関する大事な問題だとおぼしめしくださいまして、お帰りをいただきます。御苦労でした。  それでは政府委員の方々、申しわけありませんが、もうしばらくお願いしたいのですが、状態が非常に逼迫したと政府も見ておるようだし、ポスト・ベトナムの状態にわが国が何か重い使命を感じておるような世論も起こっておる。このときに、ひとつ韓国とそれから朝鮮民主主義人民共和国とをながめてみたいのです。歴史的に見たいのです。われわれは朝鮮半島を歴史的に見なければいかぬのです。いままで朝鮮半島がどういう歴史を持ってきたか、日本とどういう歴史のつながりがあったか、そういうことを感じていくべきだ。いかにも厳しい目で朝鮮半島を見るのでなくして、いわば二千年前には日本に文化を伝え、そして今日の盛大な文化の根源を韓国そして北朝鮮とがつくってくれた、多くの帰化人を日本に送り届けた、そういう国ですよ。そういう国であるがゆえに、この朝鮮半島の両国に対してわれわれは実は深い愛情を持って当たらねばならぬのです。その国がいま二つに割れておる。  私は、三年前に久野忠治君を団長とする朝鮮民主主義人民共和国訪問団の一員として金日成主席にも会っていろいろと話をしました。例の北と南の調節委員会のメンバーになっている第二副首相の朴成哲氏にも会ってきた。私は、この間一人で——韓国の被爆者、当時、広島と長崎へ徴用などでずいぶん朝鮮の人を連れてきて、広島で七万、長崎で三万の朝鮮の人が日本人として働いていて被爆された。その十万のうちで五万が被爆者として死んだ。三万が日本に残り、二万が韓国へ帰った。北鮮にも相当帰っておると思うのですが、帰った。それは大半が韓国だと私は思うのです。その韓国に帰った被爆者は、もう病院もなければ医師もおらぬ、本当に悲惨だ。原爆病というのは特殊な病気で、総合治療せねばいかぬのですが、胃腸とか皮膚の手当てをするにすぎない。だから治りゃせぬのです。悲惨な患者にたくさん会いました。  そこで、日本の医師に手当てをしてもらおうとして日本を訪問すると、こらこらと言って密航者としてひっつかまって、大村収容所から韓国に引き返される。これは悲惨な話だ。本当に残酷な話だ。私は、この問題にしぼって韓国に行きました。そして原爆被爆者救援大会に臨んだ。全韓国の国民にMBCというテレビ放送を通じて、この状態について韓国民の原爆被爆者に対する関心を深め、また原爆病院等の設置についても、日本は請求権が放棄されておっても道義的な責任があるから、経済協力その他の面でお手伝いの道を講ずるように努力してみたい、日本へ治療に来たい人は、治療目的のビザでなくして、単なる観光ビザ等でも自由にこちらへ来て治療に当たれるように骨を折って差し上げたい、これは七月二十日の話です。  その後、田中厚生大臣が広島で、私のいま言うたあとの問題、観光ビザ等でもやろうという話をされたが、私、外務省、法務省、厚生省とそれの打ち合わせに行った。私それを見て、その問題の解決に当たらなければならぬ大事な問題があるのですけれども、日韓閣僚会議のときに、被爆者のための原爆病院の設置要請などについては、ぜひひとつ外務省が十分力をいたしていただきたいことを、お帰りになって宮澤外務大臣に御報告願いたいとお二人の局長さんにお願いしておきます。  そのとき私、思ったのですが、北と南を私は両方見せていただきました。両方とも相手の区域に対して非常な猜疑と憎しみ、それから無理解とがある。同じ朝鮮半島で同じ朝鮮民族でありながら、歴史的に見て一体であるあの国に、どうして三十八度線を境にこれだけの大きな悲惨な状態があるか。自民党の方々は韓国だけを常に見てこられる。例外として宇都宮氏や田村さん、塩谷さんたちが行かれただけであって、まあ自民党の方は韓国だけに力を入れて、北鮮というものを共産主義の独裁政治であると見ておる。社会党、公明党、共産党の方々は今度は北鮮しか行かれない、朝鮮民主主義人民共和国にしか行かない。韓国に行かない。そして今度南帝国主義のかいらい韓国と言って、朝鮮民主主義人民共和国の側だけから見て韓国を判断しておられる。これは悲劇ですよ。つまり、一方の面だけ見て、一方を一つも見てない。社会、公明、共産の方々も韓国にも行ってみられればいいですよ。どんどん行ってみられて実情を調べて、どうしたらいいか。それから韓国へ行かれる方は、たとえ国交の開けていない国であっても、道が開けている以上は北朝鮮も行ってみられて、どういう状態になっておるかを調べられる。政府なども別にかた苦しい肩書きでなくして、一番近い国朝鮮民主主義人民共和国へ行ってみる、こういうふうに、このにらみ合いをもっと緩やかにして、両方にある無理解——相手を見ぬがゆえに、見ないでおいて何だかんだ言うておるのです。  ちょっと政府の側にお聞きしますが、トンネルが十九本ほど北から南に通って、一つの穴から一万人の軍隊が入り、十九あれば十九師団がソウルを襲う可能性があるという話を聞かれましたかどうですか。
  373. 丸山昂

    丸山説明員 私ども聞いておりますのは、はっきり発見されまして、中を発掘して調査をいたしましたのが二つ、鉄原の近所とそれからもう一カ所というふうに聞いております。それからもう一カ所は、あることが確実だけれども、まだそのトンネルの本当の場所がわからずにおって、現在探索中であるということでございまして、推測によればあと十三本くらいあるという話でございますけれども、それはまだはっきり見つかったという話は聞いておりません。
  374. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、一方の国だけ見て帰られた人は一方の国の側からしか発言せぬのです。そこに一つの不幸がある。一番の隣国だからどんどん交流して、双方の理解を深めるようにしていけば、日本朝鮮半島の本当に美しい統一に協力ができるのではないか。そうすれば、いまの韓国条項だ何だということも自然に解消して、平和な朝鮮民族の国家ができる。北は共産主義以外の自由を持たない国であることは明白である。南は朴政権を中心として、どちらかと言えばかつての日本の国家主義的な国家の形態をしている。野党の国会議員、新民党というのがわれわれの党に何しておるけれども、これは三分の一の国会の勢力で、三分の一が与党共和党、三分の一は大統領が任命する国会議員。大統領の任命する国会議員がおるから、どうしても新民党は政権がとれないかっこうになっている。選挙で直接選ぶ人は壁があるわけです。そういうことを見ると、まだ本当の完全な民主主義の国にはなっていない。しかしながら、両国とも同じアジア民族で、日本にとっても兄弟国、どの国よりも近い国ですよ。三十六年間日本の植民地として苦労をかけた国ですよ。したがって、日本朝鮮半島朝鮮民族にどこよりも深い愛情をもって当たるべきだと思うのです。  この点、どうしてこの問題の解決に当たったらいいか。私、両国を見ているだけに、本当にあの三十八度線に風穴をあけて、両方が交流して、北にいる家族を南の人が訪問に行く、手紙を出す、そういうことをやろうという例の三年前の七月四日の共同声明、あれに私は期待した。ところが、なかなか思うように運ばないということですが、四人の局長さん、これはどうでしょうか、外務省として朝鮮半島の両国に対して、本当に両国に平和と光が降り注がれる、そうした環境づくりをしてやるのが日本の使命だとお考えではないでしょうか。
  375. 高島益郎

    ○高島説明員 ただいま受田先生おっしゃられました七二年七月の南北共同声明は、実はわれわれも非常な期待をもってその後の進展を見守っていたわけでございますけれども、不幸にして、当時あれだけ希望を持たれた共同声明内容の実行が非常に滞っておりまして、対話も現在停滞いたしております。私ども、やはり朝鮮民族としての悲願、これは先生のおっしゃったとおり、平和的に統一することであろうかと思います。そのためには、やはり南北の当事者が対話を通じて、非常に深い不信感に満たされております両国の国民が、この不信感を払拭しながら相互の話し合いを通じて平和へ向かっての努力をしていくことが先決であろうと思います。私ども日本といたしましても、もちろんそのような対話を通じての緊張緩和あるいは終局的な平和な統一について、できることがあれば、間接的に、いかなる方法によろうとそれを援助していく、そういう姿勢で臨むべきであろうというふうに考えております。
  376. 受田新吉

    ○受田委員 今度国連の場で、韓国の方は朝鮮民主主義人民共和国との同時加盟でよろしいと言っている。ところが金日成さんの方は、朴さんと違って、統一を前提として考えていらっしゃる。これはなかなか骨が折れる。これなどは、やはり双方の主張をどちらかで譲り合わなければいかぬ問題です。国連軍の解体決議などというものを一方で持ち出すようなアルジェリア方式と、日本アメリカが出す方式とが違うが、それはこちらの方の主張を通してください、そのかわり同時加盟ということで国連の場で二つの国が——何か日本として両国から余り猜疑心をもって見られないで、日本は話せる国だ、北の方では政府を余り信用していないのがちょっと痛手ですけれども、政府が一歩前進の誠意を示して、両国に対して本当に平和なあすを迎えさせてあげたいなという配慮をする。たとえば、交通をもっと頻繁にやるとか、あるいは在日朝鮮民族の待遇をできるだけ公平にやるとかいうようなことで、一歩一歩前進してくると思うのです。これはいかがでしょう。何とか韓国に対して、また朝鮮民主主義人民共和国に対して、この二つの国が本当に平和な日を迎えるのに日本が一番大きな使命を持っているとお考えかどうか。アメリカの方で細工をするのではなくて、たとえば金日成さんとフォードさんとが会見するという宇都宮さんのあっせんの労もあるわけですが、そういうものを何とか骨を折ってあげてもいいと思うのです。  それから、韓国の側から見ると、せっかくいま日本との間の国交が開けておるのだから、経済協力について、いま申し上げたような人道問題などでしっかり力をかして、国防とかなんとかではなくて、人を大切にする方の協力をしてあげるとかいうようなことで、両国に対する日本の愛情が幾らでも具体的に出るじゃないですか。私、双方を訪問しているだけに、ここでひとつ日本外交で温かく両国を包んであげる、この御配慮を四人の局長さん、敬愛する方々でございますが、ひとつ外務省の省議などをそういうところへ向けて、朝鮮半島のあの対立抗争だけは——私、南へ行ってみると北を憎しみ、北に行ってみると南に対してすごい抵抗、これでは火と水ですよ。しかも同じ民族である。三十八度線というのは政治路線です。東西ドイツも政治路線で分断された。ベトナムも政治路線でやられた。朝鮮半島も政治路線で、よその国が勝手に三十八度線を引いた。それだけに、特にそのうちで朝鮮半島だけは日本が負担しようという配慮を四人で協議をしていただきまして、お答えはむずかしいでしょうから、私の意のあるところをおくみ取りいただくことをお願いをしておきます。  そこで防衛局長さん、韓国の軍隊と朝鮮民主主義人民共和国の軍隊と、それぞれの国の軍隊のバランスは、私、大体心得ておるのですが、米軍がいなくて南北の軍隊、北の方からも軍縮案が出たこともあるのですが、これは何とか均衡はとれますか。
  377. 丸山昂

    丸山説明員 軍隊は、数の上だけの比較では本当は優劣をつけがたいわけでございますけれども、一応数の上だけの比較をいたしますと、南が五十六万の二十三個師団、それから北が四十一万の同じく二十三個師団でございます。ただ、機甲化の率は北の方がよろしいというふうに見ております。  それから、海軍でございますけれども、これは南の方がトン数は約七万トン程度でございますが、アメリカの貸与のフリゲート艦、駆逐艦というのが主体でございまして、これが十隻ほどございます。北の方は約二万トンですが、ソ連から貸与されましたミサイル搭載の魚雷艇、これが十八隻、オサ型とコマ型、それぞれスティックスというミサイルを載せたものがございます。  それから、空軍でございますが、空軍は、韓国が約二百機でございまして、F86Fが主体でございます。新しい飛行機ではファントムとかF5というのがございます。それから北の方は約六百機、これは大変開いておるわけで、韓国の約三倍の勢力を持っておりますが、中身はミグの15、17、19といったところでございまして、新しいミグ21というのは余りないようでございます。それから中国から供与をされましたミグ19、それからF9という、これは中国の国産の戦闘機でございますが、これが若干あるようでございます。  そこで、総合戦力でございますが、大体陸は見合った形である。それから海はやや北が優位と見てよろしいと思うのですが、しかし、いずれにしても海は非常に小さな勢力でございます。それから空軍は、圧倒的に北が強いということでございまして、したがいまして、総合戦力で見ました場合には北の方が有利である。そこで在韓米軍がバランスを保つために存在しておるのではないかというふうに私ども考えております。
  378. 受田新吉

    ○受田委員 これは国連旗を掲げる在韓米軍、そうでしたね。在韓米軍、これは純粋な国連軍ではなくして、国連旗を掲げることのできる外国軍隊ですね。韓国の国連軍と称する米軍の性格はどうですか。
  379. 大川美雄

    ○大川説明員 韓国におります米軍は、米韓相互防衛援助条約ができるまでの間は、文字どおり国連軍の主体をなしていたと存じますが、それから後は米韓相互防衛援助条約に基づく在韓米国軍というふうに性格を変えたと申しますか、そういうふうに言われております。現在ありますのは国連軍司令部、それに配属されているごく少数の軍人がおります。この中で米軍から出ている人がおります。ですから、あるいは私のお答えすべきことでないかもしれませんが、あえて言えば米韓相互防衛援助条約に基づく在韓米軍と、それから国連安保理決議に基づいてあそこに置かれております国連軍司令部に配属されている米国軍人と、この二つのカテゴリーがあるのではないかと思います。
  380. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、もう質問は一応終わっている問題ですね。——じゃあこれはおきます。時間がもう迫ってきました。できるだけお約束の時間を守ります。  外務省、どなたにお答えいただけるでしょうか、南ベトナムにおける日本国民の財産補償問題。アジア局長ですか、これは通告はしてなかったので、急にさっき質問に入る前にしたので、大変御迷惑だと思うのですが、これはまだ国会で論議された記録がないようでございますから、この際、極東の問題の一環としてぜひお答えを願いたいのですが、ベトナムのゴ・ジン・ジェム政権からその次の政権に至るまでに政府がやられた政府借款による債権と、現在南ベトナムに残された日本企業の投資額というものを簡単に言っていただければと思うのですが……。
  381. 梁井新一

    ○梁井説明員 南越に対します円借款の債権残高は、ことしの五月で約百五十五億円でございます。この百五十五億円の処理につきましては、将来、南越政府との間に実効的な話し合いができる段階に達しましたときに、話し合いの一環といたしまして百五十五億円の問題を処理したいというふうに考えております。この百五十五億円につきましては、国際法上、当然わが方の債権が残る、当然向こうが債権債務関係を承継すべきものであるというふうに考えております。
  382. 受田新吉

    ○受田委員 それで、南ベトナムの新政権の政府借款の継続に対する考え方はどうなりますか。この新しい政権に対する……。
  383. 高島益郎

    ○高島説明員 実は現在、サイゴンに旧大使館がそのまま残っておりまして、現地の軍事政権といろいろ話し合いはしておりますけれども、そのような日本の持っております債権についての先方の考え方を探るという機会もございませんけれども日本だけでなくて、まだそういう債権につきましては各国そういうものを持っている国もございまして、いろいろ心配しているわけでございますけれども、現状までのところでは、いろいろ情報交換を通じて得た印象でも、まだどういう考えを持っているかという点についてははっきりわかりません。
  384. 受田新吉

    ○受田委員 日本の企業がずいぶん進出しておったですね。これらの点についても、国民は関心を持っているのですが、企業の投資は一体どういうふうになっておるのか。すべてが国有化されることになるのかどうかという懸念でございます。そしてその場合の補償。
  385. 高島益郎

    ○高島説明員 現在、民間投資といたしましては全部で約三十件、五百万ドルあると言われております。一般的に外国人の生命、財産は保障するということをはっきり新しい政権は言っておりますけれども、ただ、このような日本の投資につきましてどのような態度を具体的にとるかという点については、まだ現状ではわかりません。しかし、もしたとえば先生のいま仮定されましたような接収ということが行われる場合には、当然これに対する補償がなされなければならないという立場日本としては維持するつもりでございます。
  386. 受田新吉

    ○受田委員 いろいろと問題があるのですが、戦争で滅失した日本人の私有財産、こういうようなものについては、補償の道が現地でとれぬとするならば、日本で何かの補償をとるとかいうことが国際慣例としてあるのかどうかです。
  387. 松永信雄

    ○松永説明員 一般国際法上の問題としてお答えいたしますと、ある国における外国の国民の私有の財産が国有化その他によって収用されるというような場合に起こります補償問題は、その国の国内法の問題である。第一次的にはその国の国内法によって救済措置がとられるという問題であろうと思います。国内的な救済措置が尽くされた後なお救済されないという場合に、いわゆる外交保護権の対象の問題として政府の間で話し合いが行われることもございます。しかしながら、第一次的にはその国の国内法によって処理されるべき問題であろうと考えております。
  388. 受田新吉

    ○受田委員 その国の国内法で処理される。ところが、今度の南ベトナムなどは、前政権と現政権との間にそうした権利義務関係が継承されるかどうかというのは、外交交渉でやられる問題じゃないんですかね。普通国内法というと、新しい政権がどうということじゃなく、いままでの台湾の場合だって、台湾で日華条約で補償された問題は、今度中華人民共和国がこれを、日華条約のものを継承するというのが国際的な慣例となっているのかどうかというような問題と関連するのですか。
  389. 松永信雄

    ○松永説明員 戦争状態が終わりまして、それに伴って発生しましたいわゆる請求権の問題については、通常の場合、戦争終結後に締結されます平和条約において処理されるわけでございます。しかしながら、いま御質問がありました今度のベトナムにおける日本国民の財産の問題ということになりますと、ちょっと事態は変わってまいると思います。でございますから、政府といたしましては、南ベトナムの新政権のもとにおいてこれらの財産がどういうふうに処理されるか、それを注視して待つという状態にあるわけでございます。  他方、国際的な債権債務関係でございますが、先ほどお話しがありました政府借款ということになりますと、これは一般国際法上の問題として、国が存在する限り、その債権債務というのは継承されるというのが一般国際法上の原則でございますから、政権がかわったからといって、その債権が消滅する、債務がなくなるという性質のものではないというふうに考えております。  しかしながら、これについても南ベトナムの新しい政権がどういうような考えを持っておるか、どういう立場でこれに臨むかということについては、私どもはまだ何も承知しておりませんので、先方の立場なり方針なりというものを承知しましてから、これに対処する方針を検討すべきであると考えております。
  390. 受田新吉

    ○受田委員 ちょうど時間が来ました。時間を守ります。私も、きょうは六時半にこっちに着いて、民社党が最後を承ったものですから、昼間の仕事を片づけてこっちに出てきまして、遅くまで御迷惑をかけました。皆さん、御苦労でした。これで質問を終わります。
  391. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二分散会