運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-06-18 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十八日(水曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 加藤 陽三君    理事 木野 晴夫君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    有田 喜一君       上田 茂行君    大石 千八君       笠岡  喬君    近藤 鉄雄君       竹中 修一君    中馬 辰猪君       戸井田三郎君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       吉永 治市君    木原  実君       和田 貞夫君    木下 元二君       瀬長亀次郎君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君  出席政府委員         内閣法制次長  真田 秀夫君         国防会議事務         局長      内海  倫君         防衛政務次官  棚辺 四郎君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官         房長      斎藤 一郎君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 久保 卓也君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第二課長   渡辺 善門君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月十八日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     戸井田三郎君   旗野 進一君     上田 茂行君 同日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     旗野 進一君   戸井田三郎君     笠岡  喬君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 このたびは御奇禍に遭われた後でございまして、昨日の六時半からということでございましたが、お医者さんのおっしゃることは聞かなければいけませんので、まげてきょうに延ばしていただきますように私どもみんなで委員長に話をしたわけでございますが、お元気そうでございますから安心をいたしましたが、どうかお大事にお願いしたいと思います。  ところで最初に、これはけさほど私どもの党でもこの際一言触れておけという話でございますから触れさしていただきますが、国民葬の際に総理暴行をお受けになったという、この奇禍にかかわる件につきまして、どうも穏やかでないことでありまして、昨年は私ども委員長成田一つ間違えばけがをしかねない事件もございました。そこで、この件の背景、どうも伝えられるところによりますと、坂田さんおいでになりますけれども、両方とも防衛庁ゆかりの方のようでありまして、どういう前歴の方がこの際このようなことをやったのかという点、あわせて昨年私ども社会党委員長も寸前でこれは事なきを得たのでありますが、そのときの関係の方もどうも前歴が似たようなことのようでありました。その辺をあわせて警察庁の方から御答弁をいただいておきたいと思うのであります。
  4. 渡辺善門

    渡辺説明員 お答えいたします。  去る十六日の不祥事犯を起こしましたことはまことに遺憾でございまして、警察庁といたしましては、現在右翼の視察取り締まり体制並びに警護体制について徹底的な検討を加えておりまして、再びこのような事犯を起こさないような体制をとる所存でございます。  筆保につきましては、昭和十五年の十月二十五日に岡山県の津山市に生まれまして、昭和三十四年三月に津山県立工業高校機械科を卒業しております。その後航空自衛隊に入隊いたしまして、三十七年の三月に空士長で満期除隊しております。除隊後直ちに大日本愛国党に入党いたしまして、以来現在まで同党の本部党員として活動しておりまして、党内では赤尾総裁に次ぐ実力者と言われております。現在までに暴力行為公務執行妨害道交法違反など検挙歴八十一回を数えておりまして、主な事件は、四十三年の一月二十日佐世保市における米原潜寄港反対労組員暴行を加えた事案並びに四十七年には東京国際空港二十番スポットにおいて、中国訪問藤山愛一郎議員になぐりかかろうとした事件など多数の事案を起こしておりますので、警察といたしましては、彼の所属する大日本愛国党に対しましては徹底的な行動確認視察体制をとっておりましたけれども、たまたま本人が早朝に出発しておりまして確認できずにおりまして、あのような不祥事案を起こしたというようなことになっております。
  5. 大出俊

    大出委員 もう一件承りたいのですが、昨年の私ども成田委員長に対する件も、本人は昔流に言えば防衛庁の下士官であったはずであります。これもさっきちょっと連絡申し上げておきましたが、わかればお話しいただきたいと思うのです。
  6. 渡辺善門

    渡辺説明員 お答えいたします。  昨年五月の事案でございますけれども被疑者佐藤信幸、大日本愛国党員でございます。佐藤信幸昭和四十五年三月に釧路の市立中学校を卒業いたしまして、本籍地理髪店などで稼働しておりましたけれども、四十八年の二月と八月の二回にわたりまして家出いたしまして上京、その後、同年八月二十九日に陸上自衛隊の武山駐とん地に入隊しております。その後、四月二十七日に退職しているという状況でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 いずれにしても、この種の事件というのは、総理の前で恐縮でございますけれども政党政派にかかわらず今日の民主政治根幹に触れる問題でございまして、あわせてその方々自衛隊にかかわり合いがある、少なくとも筆保さんという方の話にしても、空士長ということになりますと、これはそれなりの期間を経て除隊をされている、その方々がともに愛国党などということでこういうことかあるということは——私、実は自衛隊の内規に触れてかってここで長い質問をしたことがありますけれども、そのときの防衛庁長官山中さんも、この種のことが今後こんりんざいないように規律は厳正に、かつ退職後についても責任を負いたい、こういうお話でございました。悪い意味で言うのじゃありませんが、戦争をしようという訓練をするわけでありますから人を殺すということになります。相手を間違って総理であるとか民主政治基本である政党の党首というところにその矛先が向くなどということがあってはならぬという気がするのでありますが、防衛庁長官からひとつこの件は一言御言明をいただきたいと思います。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 すでに十三年前に退職いたしました者とは申せ、今回の犯人が自衛隊に三年間在職したことがあると聞いて大変残念に思っておるわけでございます。  私は、防衛庁長官になりまして以来、自衛官に戒めておりますることは、精強なる自衛官であると同時に、健全なる常識を持った国民の一人であってほしい、それからまた狭い視野でなくて広い視野、特に国際的視野あるいは知識、そういうものを持った自衛官でありかつ国民の一人であってほしい、市民であってほしいということを申し続けてまいっております。  こういうわけでございまして、今回のこの事件は、私は、まことに遺憾千万だと思います。今後部隊教育訓練、一人一人につきまして、また今後部隊を去っていく人たちにつきましても、そういうようなことが二度と起こらないように十分努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  9. 大出俊

    大出委員 総理自身のことで大変恐縮なんでございますが、つまり総理という国政の最高責任者おいでになるという意味で、御自身のことで恐縮でございますが一言承っておきたいのでありますが、先ほど来繰り返して申しましたように、この国の民主主義根幹に触れる問題であります、かつ総理国防会議最高責任者でもございます。あわせてこの件に関しまして、二度とあってはならない事件のはずでありまして、また自衛隊隊員諸君の日常の訓練なり精神的な面における扱いなりという問題とも絡むわけでありまして、正常な良識を持つ社会人でなければならぬはずでありまして、なお、そのことが要求される自衛官であろうと思うのでありますが、そういう意味を含めまして総理のお考えを聞いておきたいのであります。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 暴力というものが政治家身辺を脅かすということになれば、これはもう議会制民主主義の根底は失われるわけであります。また日本平和国家とか国際社会における平和共存といっても、全部暴力否定ということであります。そうでなければ成り立たない。日本社会から暴力を根絶しなければならない。そのためには教育からもあるいは政治の面においても、このことは強く戒めていかなければ、平和国家といってもそれは意味をなさない、こういうことでありますので、私は、三年間自衛隊教育を受けたという、この教育の場から、暴力日本社会から根絶するという徹底したそういう教育が施されなければならぬ、そうでなければ日本の将来は非常に危険であるという感を非常に強くいたしたわけでございます。
  11. 大出俊

    大出委員 時間の関係もございますから長論議はいたしませんが、私どもの党にも浅沼さんのとうとい犠牲もございました。また河上丈太郎さんなんかも刺されたこともございました。与党内部でも岸さんの件もありましたし、あるいは公明党さんでも現委員長竹入さんが大きなけがをなさる、あるいはうちの成田委員長についても仕組まれた計画がございましたし、宮本さん、共産党の方についても同様なことがありました。だからといって負けはしないわけでありますけれども、この点だけは、明確にそういう前歴を持つ方が、しかも一つの党の中心おいでになるというこういう現実をとらえて、放任をしておくということは私は不納得なんです。  私もかって吹原産業事件質問をいたしましたが、途端に警視庁からたくさんの人が私の身辺について、八日間、駅へ着けばおいでになる、家に帰れば一時間置きに見回りが来るという大変妙な思いをしたことがありますけれども、つまり警察力を含めまして、これらの方々に対する物の考え方ということですね。これは基本一つですから、その辺のところをどう考えて対処をなさるのかという点、念のため最後に承っておきたいのであります。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、暴力というものに対して、右も左も許してはならない、右も左も暴力というものは絶対に根絶しよう、警察当局も、暴力民主社会を破壊する根源である、右にせよ左にせよ暴力否定ということに徹底し、そういう意味から、日本民主社会を守るためにこれが警察当局の大きな職務であるということに対して、強くこのことを銘記してもらいたいと強く望むものでございます。
  13. 大出俊

    大出委員 どう対処するかという点については、まだこの件の直後でございますからここで問いません。総理のいまの御決断をひとつ生かしていただいて、自今このようなことが何党に限らず行われるべきでない、その方向に向かってお進めいただきますようにお願いをいたしておきたいと思うわけであります。  時間がございませんので次の質問に入らしていただきます。  このところ、私ども委員会でも、あるいは関係委員会でも次々に取り上げておられる問題ではありますが、いずれもそれなりに大きな疑問を残している問題がございますから、簡単にそれに一つずつ触れさしていただいて本論に入らしていただきたい。  第一に、私ども郷党先輩でございます藤山愛一郎さんが中国おいでになりまして周総理にお目にかかるという場面、この席上で韓念竜外務次官の方を通じて総理が四項目ばかり小川大使に話しておられますことについての回答をしている。これは予算委員会総理が言っておられますのは、念のために申し添えますが、小川大使が帰国した際、一つ条約を速やかに締結する、二つ、交渉日中両国最高首脳合意の重みを踏まえて進められなければならない、三番目、平和諸原則の堅持、四番目、小川大使三木内閣の方針に従い最善の努力をする、この四原則だとおっしゃったわけですね。ちょっと中身が受け取りかねる問題がありますけれども外交という問題でございますからあえて触れておられないのだろうと思うのであります。これにいろいろ中身がついているんだと思うのでありますが、この件に関する回答をしたという。  これをめぐって、宮澤さんの答弁によりますと、どうもあさっての方でものを言われても困る、あるいはあさってではない、おとといの方かもわかりませんが、そういう趣旨の答弁をされたわけであります。同じ選挙区におります先輩藤山さんのおっしゃっていることを聞きますと、そうではない、実は確たる相手方からの話であった、そして相手方中身に触れているのではない、よしんば秘密交渉であったとしても中国の側は中身に触れてものを言ったのではない、回答を正式にしてあるということを言ったんだということでありまして、ここらが一体どういうことになっているのか。  やはり日中国交回復のときもそうでありますが、たくさんの野党外交があって、中心は、もちろん外交権政府にありますからそれでいいのでありますが、相当国民皆さんがよく知った上で行われた日中国交回復だったと思う。だとすると、日中平和友好条約の締結は、そのときの共同声明から端を発しまして総理がいみじくも本会議で一番先に取り上げた公約でございまして、それだけに余り国民に知らせずにおくというのは、秘密があって悪いとは言いませんけれども、いかがなものかという疑問を持ちます。そういう意味で、率直にどうなっていたのか国民の疑問を解いていただきたい。  それからあわせて、藤山さんが何回もおいでになって、松村さんの後をお継ぎになっている形でありますけれども、せっかくジグザグしている、ぎくしゃくしているこの関係を、この際は直さなければならぬと私は思う、だから、それなりの人を特使のような形で派遣をしてこの関係軌道に乗せてもらいたいのだ、こういう言い方をしておりますけれども、その二点について総理の御見解をとりあえず承りたいわけであります。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、アジア太平洋地域の安定を図るために、日中の平和友好条約を早期に締結することが必要であると考えておる。これはもう私の変わらない信念でございます。ただ、ある段階が来たら国民に明らかにしなければならぬ、しかし交渉の途中一々これを公表するということが必ずしも好ましいものではないのではないか。当分の間この日中間の交渉というものは公表しないようにという指示を、私が小川大使に与えておることは事実であります。したがって、そのことが何か両国の間にそごを来した点になったのかもしれない。しかし、周総理の、それは文書ではありませんけれども、真意は私も承知をいたしておるということ、内容については申し上げませんけれども周総理からの私に対しての回答というものに対しては、私も承知をいたしておるということでございます。
  15. 大出俊

    大出委員 この過程で明らかにすべきでない、つまり俗な言葉で言えば秘密交渉といいますか、そのことを総理自身指示をしたというわけでございますから、したがって、宮澤さんのあのあさっての方に向いてものを言ってもらっても困るといったようなことが出てきたのだと思うのでありますが、ただ言葉の上で、これは日本新聞の伝えているところによりますと、大変妙な感情がこもっている感じの受け取られ方でありまして、そのことはやはり一つの誤解を生みやすい、ぎくしゃくしやすいわけでありまして、だから、そこらの問題については、私は、やはり配慮が要るのではないかという気がする。  そこでそれなりの、つまり藤山さん等が唱えている、提案をしている新たな、どういう角度からかわかりませんけれども、しかるべき人を派遣するという——私ともの方も、実は幾つかの代表団中国にも参っているわけでありまして、それぞれのルートからそれぞれの話は聞いております。それなり見解を持っております。急がなければならぬという気持ちを、私どもは持っておるわけでありますが、そういう意味で二番目の、しかるべき人を派遣するという問題についてはどうお考えでございますか。もちろんこれは総理のおやりになることでございます。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 実は昨日、藤山愛一郎氏と私は面会の約束をしたわけです。医者から二十四時間の安静を求められまして、それでお目にかかることができませんでした。近くお目にかかって藤山氏のいろんな御意見を承って私の判断をいたしたいと思っております。
  17. 大出俊

    大出委員 その種の詰めた話をしておられない段階でありますので、これ以上深追いはいたしません。ただ、私どもが見ておりましても、少しレベルを上げた形で政治的な分野を含んでのしかるべき人が行くべきではないかという気がするわけでありまして、ここらの点は恐らく総理もそんなこともお考えなんじゃないかと思うわけでありますが、是非ひとつ、正常な軌道に乗りますように、せっかくの御努力をお願いいたしておきたいわけでございます。  それから次の問題でありますが、韓国との関係の問題をめぐりまして、私も宮澤さんに何回か、四月三日でございましたか、アメリカおいでになる前に、選挙中でございましたが、この委員会質問もしたりもいたしましたが、そのときに、日韓閣僚会議は当時七月などと伝えられておりましたが、その気がないということを私にお答えになりました。  ところで、やりとりは数々行われておりますが、まず一つはっきりしていただきたいのは、時間がありませんから細かくは触れませんが、木村さんが外務大臣をおやりになっておるころに、朝鮮半島全体をとらえてものを考えたいという発言をしているわけであります。去年の八月十九日でありますが、国連全体として朝鮮問題処理の仕組みを変更していないが、もし将来この変化があれば、日本政府としても考え直すという点、あるいはまた、日本政府としては韓国ということだけのとらえ方をするのではなくて、朝鮮半島全体の安全ということを前提としてものを考えなければならぬと考えている、そのようなことを幾つか述べておられるわけであります。さらにまた九月五日の衆議院の外務委員会では、韓国朝鮮半島を代表する唯一合法政府とは限らないという言い方まで実はしているわけでありまして、朝鮮半島紛争があってはならないというそのことが唯一絶対の日本安全保障につながる、そういう認識がおありになったのだろうと思うわけであります。これが幾つかその後の宮澤さんの発言等でじぐざぐを描いて今日に至っているわけであります。  結論を率直に申し上げれば、何がどう間違っても将来に向かって朝鮮半島武力紛争が絶対にあってはならない、あらしめてはならないというその決意がまず私は総理になければならぬという気がするのでありますが、そこのところはいかがでございましょう。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 有事の際というものが起こり得ないと私は思っておる。最悪の事態を仮定しての御発言がありまして、それにも答えましたけれども、繰り返し繰り返し御質問がありますが、朝鮮半島武力衝突をあらしめてはならぬ、これはもうあらゆる努力を傾けなければいかぬ。それはなぜかと言えば、南北朝鮮においても望んでいないと思います。しかも強力な北鮮友好国であるソ連にしても中国にしても、あるいはまた韓国の強力な友好国であるアメリカにしても、武力衝突を望んでいないと思うのです。だれも望まない。非常な誤算がなければこういうことは起こり得ないと私は思っている。また起こるようなことがあってはならないわけでありますから、日本外交があらゆる努力を傾けて朝鮮武力衝突は避けなければならぬ、これはもう大前提です。起こった場合のこと、これはだれが考えても日本の安全に影響があることは明らかですから、まず必要なことは、この朝鮮武力衝突を防ぐということがもう大前提である。そのためにこそ日本外交はもう全力を傾けるべきである、これが私の非常な強い決意であります。
  19. 大出俊

    大出委員 時間がありませんので……。実はワシントンポストが社説で、朝鮮に対する新しいアプローチという形でインドシナ問題その他に触れた後で、国連総会等で在韓国連軍の解体問題も恐らく出るだろうということをこれまた前提にして、もちろんこれはその場合に安保理事会がございますが、そこで一つ提案をしているわけですね、朴さんが核開発などということを言い出したことも踏まえまして。したがって、南北同時加盟——そういう先例ももちろんあります。西ドイツの例がここにございますが、当時の両国声明もございますけれどもそこらを踏まえて、つまり米国なり日本なり中国なりソビエトなりという周辺の国々が、言うならば四つの国が朝鮮半島現状維持に共通の利益を持っていることをまず認識し合って、いまおっしゃったように現実なんですから、その上で、とりあえず国連解体問題等をめぐってそれぞれ同時加盟方向国連に問題を持ち込むということを、アメリカはもちろんのことですがやるべきだ。そして四国が、これは保障と言ったらおかしいのでありますけれども、そのくらいのことまで考えるべきだという提案をいたしています。  またもう一つ南北不可侵条約を結ぶ、関係各国がこれをサポートしていくという方法もあるではないか、つまり何らかのそこに将来の安全に向けての具体的な手だてが要るんじゃないか。これは意味のないことではありませんで、ソウル−平壌間直通電話の架設及び運用手続に関する合意というのがここにあります。七二年の七月四日であります。電話がつながっているわけですから、いろいろなことがありますけれども、向こうの現地からの新聞を読んでみますと、それでもなおかつ電話がつながっているというところに韓国国民皆さん一つ安心感といいますか、それが相互にあるのだろうと思うのでありますが、そのことを非常に頼りにしているということまで書かれているのでございます。  したがって、それらの手だてを、日本外交というものは、隣りの国でございますから、相当大きなウエートがございますから、これからアメリカおいでになる御日程も承りたいのでありますけれども一つ議題としてお考えになってもいいんじゃないかという気が私はするのでありますが、いかがでございましょうか。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大出さんの御指摘になったように国連軍、これはまあ冷戦の所産であるわけです。したがって、いつまでもこの国連軍というものが現在の形で駐留することに無理ができておることは明らかであります。国連総会においても、この問題の帰趨というものがどうなるかはわからぬと言っても、これの存続は非常に困難な情勢に動いておる。しかし国連軍が解体をされても、朝鮮の休戦協定を破壊する目的ではないわけですから、休戦協定は継続されなければならぬわけですから、戦争状態に入るわけですから、そういう点でこれはもう国連総会一つの焦点である。ことに日本とか中国、ソ連、アメリカ関係の深い国々が、どのようにしてこの朝鮮半島の安全を確保していくかということは、これは非常に重大な課題であると私は思っております。  それについて、いま大出さんから、国連同時加盟等のお話もございました。私も、そういうことができれば、一つのそういう場を通じて常時接触、対話、相互理解を深める機会にもなるわけで、両国が同意するならば一つの方法だとは思いますが、北鮮の方が、やはり現状を固定化する意図のもとにそういうことを言うのだということから、これに対しては現在のところ賛意を表していない。私は、固定化はいけない、朝鮮民族の悲願は、いかに困難であっても朝鮮が統一される日をみんな望んでいるということは疑う余地がない。そういうことですから、ここでもう固定化してその悲願というものを葬り去るということは朝鮮民族の意図に反しますから、それは固定化するわけじゃないのだ、暫定的な一つの過程なんだということで、そういう了解を北鮮の方がすれば一つの方法だと思うのでありますが、これはやはり今次国連総会における重要な問題の焦点であるというふうに考えております。
  21. 大出俊

    大出委員 私も固定化を考えているわけではなくて、西ドイツの場合でも東ドイツの場合でもそうでありまして、まさに同一民族でございますから統一の悲願をおのおの持ち合っているわけでございます。その上に立って当面、どうも行き過ぎた憶測が流れる昨今の状況でございますから、その方向一つのポイントとして考えられるのじゃないかという言い方をしたわけでございまして、これまた時間もございませんので、この程度にさしていただきます。  次に、総理が八月の五日、六日でございましたか、フォード大統領とお会いになるという日程がきのう決まったようであります。ここに一つの記事がございまして、この記事によりますと、宮澤さんが四月九日にアメリカにお着きになり、それ以後のいろいろなことがあわせてここには触れられている。また、この中で私が調べた幾つかの事実もございます。  まず一つの事実は、三木総理の与党の皆さんの中で、核防に関するいろいろな議論がございます。表にこれは出ているわけでありますが、この議論の中で、最終的にこの国会に批准を求めるという態度をお決めになるという、これは出発の直前七日の日であります、皆さんの党の三つの合同委員会の席上であります。そして、そこで核防批准というのを宮澤さんが持っておいでになる、あわせて日米安保条約の堅持を再確認する、堅持、強化ですね、それを再確認する、これが実は宮澤さんに与えられた、皆さんの党側からの言い分であった。  そこで、おいでになってまさに二十分間のフォード大統領と宮澤さんとのやりとりでありますけれども、そこで安保の確認を、しかもこの中では、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明を踏まえている、そういう形の、つまりそれならば安保の堅持かつ強化でございます。佐藤さんの答弁は途中で変わっておりますから。それをおやりになってお帰りになったわけでありますが、この中でアメリカ側から、もう一つの問題として、具体的な日本の協力、援助という問題が出てきているわけであります。そこで、この日本政府の援助とは一体何だ。岩国あるいは沖繩などの米軍基地への米兵力の結集であるとか出撃の自由であるとか、あるいは核兵器の持ち込みであるとか、あるいは日本の、これはもちろん自衛隊を指すわけでありましょうが、有事の際の後方支援であるとかいうようなこと、これが要約して援助である。これに対して非核三原則については、総理は、ノーと言うのだということを再三言っておられるわけでありますが、宮澤さんは、話は聞いたが確たる返事をなさらないで、総理が訪米をしてキッシンジャー氏なりフォード氏なりに会うこの場面の議題ということでお帰りになったということになっているわけであります。  したがって、おいでになる議題、つまりフォードさんに会って話をされる議題、この中に安保条約の継続堅持、強化という確認、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明、これはプレスクラブの佐藤総理記者会見の中身を含めてのこれを再確認する、あるいは堅持、強化という方向をとる、こういうおつもりなのかどうか。当然議題になるわけでありますから、それと韓国の安全というのが、いま私が触れましたが、大変大きな議題になっているのじゃないかと私は思うのであります。安保問題その他とセットでありますから、そこらのところは一体どういうことになるのか。それまでの間に日韓閣僚会議というものは一体開かれるのかどうか。開かれるとすれば、それなりのことをまたわれわれは勘ぐらなければならぬし、考えなければならぬと思うわけでありますが、この道筋、一体何を重点に何を議題にされるのか。  お隣の坂田さんがしきりに言っておられる防衛分担という問題、この中には関係国への肩がわり、経済援助とあえて言わなければならぬ問題まで含まれるわけでありますが、そこらの問題に触れまして、どういうところを中心にしておいでになるのか承りたいと思います。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、日米の安保条約というものは、非常に軍事面だけが強調されますけれども大出さんがお読みになっても、最初に来るものは日米の「相互協力」、そして「及び安全保障条約」だから安保条約というものは、軍事面だけを強調して、広範な日米協力というものが何か置き去りにされたようなことは、日米安保条約に対する均衡のとれた解釈だと私は思ってないのです。日米協力というものは、経済面からごらんになっても、日本のいわゆるエネルギー、食糧、貿易その他から考えても、これだけ深い関係を持っておる国はないのですから、もう少し安保条約というものが正当な形で国民の理解を生むことが必要であると私は思います。軍事面ということを私は無視するものではありませんが、余りにも重点が置かれ過ぎておるという点、私は、もう少しバランスのとれた解釈を安保条約に与えるべきだという意見でございます。  そこで、いまのフォード大統領との会談ですが、岩国をどうするかとかそういう話をしようとは私は思わないのです。アジアがこれだけの急激な変化を遂げておるときに、日米協力という点でいろいろ共通の関心事がございますから、それは朝鮮問題も入りましょう、それは当然のことですから、そういうことも含めてもう少し高度な話をしてみたいと思うわけでございます。  いま防衛分担のお話がありましたが、私は、どうも防衛分担という言葉は、非常に誤解を生ずる言葉だと私は思うのです。防衛分担と言いますと何か対等なものがやる。日本は自国の防衛ということでしょう、日本の許されておる範囲は。何か同じような力を持っておるものが分担——しかも分担と言うと、この地域はアメリカ、この地域は日本という地域的なものが出てしまう。これからは日米協力としたらいいではないか。日米協力、私はそれが本当だと思いますね。分担などと言うから、いろいろといわゆる取り決めがどうだ、何がどうだということになるのだが、日米の安保条約というものは、そういう形にとらえることがこの条約の本来の姿だと私は思っているのです。  だから、いままでアメリカとの間に話さな過ぎた。常時当事者間でおやりなさい、そうして日米間でその接触をする。協力の限界というものがあるんですね。余りにも過大な期待を向こうに持たせて、それができないということになれば、次には失望がきますね。何か日本に対して不信感を持つかもしれない。日本にはできないことがたくさんあるわけです。憲法ばかりでもないですよ。そういうことからして常時、当事者間で協力の限界というものを話し合うことが必要である。そういうことで取り決めると言っても、情勢は刻々変わるんですよ。情勢は刻々変わるし、また、兵器も変化するわけですから、ある時点を限って永久に縛る取り決めをすることに私は反対なんです。それはやはり実情に沿いません。いろいろ話をして合意に達することはあるでしょう。しかし取り決めという何か永久に縛るようなことはできるはずはないと私は思うのです。  そういうことではなくして、常時緊密に話し合って、そうして協力の体制というものを話し合うことがやはり必要である、こう考えますので、フォード大統領と私が会って、そういう問題が、いきなり取り決めとかなんとか、私はそういう会談になるとは考えていないのです。
  23. 大出俊

    大出委員 ただ総理、これは大変重要なことなんですが、私も若き日の総理、若き日の私ということで、全逓信労働組合の私は初代青年部長兼執行委員ですが、そのときの逓信大臣がほかならぬ国民協同党総裁三木武夫さんですからね。しょてっぺんから、私は若いから食いついたら、あなたにきれいにいなされましたが、石田一松さんなどを抱えている時代です。しかし一党の総裁でございましたからりっぱな逓信大臣で、後にも先にもこれ以上の人はいなかろうという話に実はなったわけであります。ひざ詰めで話したことまでありますから、その限りわかるのです。おっしゃることはわかるのだけれども、さっき私が触れましたように、おいでになれば必ず共同声明が出てくるのです。そうでしょう。共同声明の中に日米の軍事協力、こう書くのですか、それとも協力維持、強化ですか。そうはならぬですよ。やはり中身というものは、三部会が荷物にしているように、自民党さんの外交部会、外交調査会、安全保障調査会などの三部会の合同会議が言っておりますように、日米安保体制の継続的維持、強化という筋の共同声明になるに違いないと私は実は思っている。総理は協力と言うが、総理のお人柄でわからぬわけではないが、結果的にやはり同じことになると思うのです。  ここに、私の友人のサンケイの千田政治部次長が、三木さんが総理におなりになる三日前に、あなたに会ったという記事がここに載っております。総理は、おなりになる直前に、安保にかわるものは何かないかという冗談を言ったというところから始まりまして、どうも安保というもののとらえ方の、つまりあり方を変えようという気があったのかもしらぬというようなことを詳しく書いています。いみじくもいま出てきているお話はそのとおりなんですけれどもね。だがしかし、本質を突き詰めればこれは同じことだ。だから結果的に安保の推持強化という、継続的維持強化という筋に乗った共同声明になるというおぜん立てをしなければいけない、そういうことじゃないんですか、結果的に。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ちょっとその前に、前の御質問のお答えをいたしませんでしたが、一つの問題は、安保条約は、大出さんと立場は違いますけれども、これはやはり安保条約を継続して維持していきたい。強化ということは一安保条約を何か改定して強化する考えはありません。現在の安保条約、これを継続していきたいという考えでございます。これはいろいろ立場が違います。われわれ自民党政府の立場は、安保条約を今後ともやはり堅持していきたいという考えでございます。  それから、佐藤さんのプレスクラブの演説は、速記録を見ますと、佐藤さん自身が、あれは言い過ぎて訂正していますよ。私は、プレスクラブの佐藤さんの責任を継承する考えはありません。  ただしかし言えることは、ああいう佐藤・ニクソンの共同声明があるなしにかかわらず、朝鮮の安全というものは、日本に対する重大な関心事であるし、かかわり合いがありますからね。ああいう共同声明があったから私はそう思うんでないんですよ。なくても国民全部がそう思っていますよ。やはり朝鮮半島の動向というものが日本の安全に対して影響が何もないと言う人はないですから、ああいうことは、もう共同声明があるからないからにかかわらず、私自身朝鮮半島の動向は重大な関心事であるし、日本の安全に対して重要な関連を持っていると私は認識しております。
  25. 大出俊

    大出委員 これで終わりますが、核防批准というものが前提になって、そのかわりとして非核保有国の安全というものの保障がないではないか、これはだれにもある意見です。議論です。それが前提になるから安保の維持強化になるわけですね。  そこでいまのお話は、継続的維持は考えているが、強化を考えているわけではないと。それから佐藤さんのプレスクラブの発言、前向きに、かつ速やかにという、これじゃまるっきり事前協議じゃないわけでございますから、どうもこれは私は言い過ぎたと後でおっしゃっておられる、議事録をここに持っておりますが。それを継承する気はないとおっしゃるのだから、事前協議は事前協議と正常にとらえるという意味でございましょうから、その点が明らかならば、その点はわかります。それも一言触れておいていただきたいのでありますが……。  そこで、いまの問題と絡みますが、私どもは、核防について一昨日の連合審査でも申し上げましたが、この核拡散防止条約は間違いなく核拡散防止しかうたっていない。非核保有国の開発を認めない、禁止するという条約でしかない。ならばアメリカ、ソビエトの覇権主義とも言わなければならぬ。ソビエトのかさの下、アメリカのかさの下にみんな非保有国を入れて押さえておく、そういう物の考え方に私は大反発をする。あの条約は、そこらについては何の義務づけもない。軍縮という問題の義務づけもない。核軍縮、削減、制限、禁止に向かって何ら明確なものがない。うたっているけれども、これは義務づけではない。非保有国それ自体について安全保障をどこにもうたっているわけではない。抑止力というものは相手に脅威を与えるのですから、その意味では与えられ続けている。  そこで一つは、あの条約の手直しはできないのですから、改めて、被爆国である日本だから権利がある、国連に対してなぜ一体、超核大国の核の軍縮の義務づけなり制限の義務づけなりというものを、明確にしたものを日本提案をしないのか。あわせて、非核保有国の安全保障に関して国連へ、日本が被爆国という立場から提案をしないのかという二つの問題を宮澤さんに提起をしたら、真意は全くよくわかる、私も全くそのとおりだと思う、こう言う。思うが、持っているのは当事者同士なんだからというところから、さっと逃げられる。となると、われわれは核防条約には賛成できない。  なぜならば、原水禁なるものの長い運動の過程での一番ポイントは、いかなる国の核保有も認めない、あるいは開発も認めない、実験も認めない、使用も認めない、これが被爆者の原点ですよ。また、それを抱えた日本国民の。あれに入ることによって、大国の核保有をすんなり認めて入る結果になる。非核保有国の安全保障に関する問題に触れてないのに、それにすんなり入ることになる。つまり大国の核保有を認めた前提になる。軍縮の義務づけも、制限の義務づけもない。それでは賛成しろと言ったって賛成はできない。掘り下げていけば、この運動論の原点に立って川崎国際局長談話が出ておるわけですよ、片や安保強化という問題があるということを踏まえて。両方ですよ。  だから、そのいまの点について、政府の姿勢というのは、被爆国なんですから、国連に向かってその問題を提起する。今回の再検討会議の例の非同盟諸国の動きなんというのはまさにそれですよ。だから、かみ合わない議論じゃない。その意思を政府は持つべきだ、こう私は言っているわけですが、いかがでございますか。これは私どもの方針に大きくかかわる問題です。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初にやはりこの問題に触れて、私が訪米するについてこれをおみやげにするのかと、そんな考えはありません。そういう考えはありませんが、大出さんの説には、私自身もどうも納得ができないんですね。それは確かに不平等条約の性格を持つでしょう。核を持っておる国はそのままにしておいて、これから核の拡散を防いでいこうというんですからね。しかしわれわれの願いは、やはり世界の唯一の被爆国民として、核の脅威を世界からなくしたいというのがわれわれの念願でしょう。そういうためには、これから大いに人類社会日本外交というものが積極的に努力しなければならぬのは、そういう核戦争の脅威をやはりできるだけ世界から少なくして、一口に言えば、平和外交を推進するということでしょうね、日本外交は。だから、そうするためには、日本が国際的に説得力を持つ立場をとらなければいかぬ。日本発言力が、何か後ろめたさを持つ発言力では私はいけないと思う。  だから、日本がここで開発をしようとするならば——核兵器を開発できる日本かあえて開発をしないで、そして核保有国に対して核軍縮というものを——西独も入ったんですからね。日本と同じような立場になっておる西独も批准しまして、九十三カ国になったんでしょう。まあ世界の主たる国は皆入ったわけです。そういう非核保有国というものの会議、再検討会議もあって、相当な決議があすこで行われた。大出さんと同じような感情を皆が持っておるわけでしょう。こういうところを舞台にして、日本はやはり積極的に核兵器の問題、この問題に対してやがてこれをなくしたいという、これは長い時間がかかるけれども、この努力をして日本がやはり国際的発言力を持つことが必要なんではないか。  非核三原則というものを持ちながら、調印をして五年もこれを批准しないというのは、やはり何か日本がそう言いながら核兵器の開発というもののフリーハンドを残そうとしておるのではないかという国際的な疑惑というものを、これではなかなか払拭できませんよ。世論調査をしても、欧米とも、やはり核をやるのでないかという世論が非常に高いわけですね。これを断ち切るんですよ、日本が。その断ち切った立場に立って世界に向かっていま大出さんの言われたような核軍縮、こういうものに対して積極的に日本が先頭に立つべきですよ。核戦争というものが起これば人類は共滅ですから。それをわれわれは体験しておる、この発言力は強いんですよ。この発言力を大事にしなければならない。それを日本が調印して五年もの間、いろいろなことを言って、そして批准をおくらすことでは国際的な説得力はありませんよ。自分は入らないで外におって核軍縮足らないじゃないかと言うことは、やはり国際的に私は説得力があるとは思えませんね。  ですから、残念ながらいま核保有国はあるわけですから、これはそのままにおいておいて、これをこれから軍縮で攻めていくんですよ。一方において日本が、核開発の能力、核兵器の開発能力を持っているのは、だれが見ても、日本、西独というのは、経済力からしても考えられます。そういう国々があえて核開発をせないでこの条約を批准したということは、これから一つの歯どめにはなりますよ。これからもそういう核兵器を開発しようという意図を持っている国があるかもしれませんから、この有力な国がここで参加したということは大きな歯どめになる。それはやはり、日本が核の拡散を防ぎたいということは、わわれの願いですから、それに対してある程度の寄与をすると思いますね。はずみをつける一つの原因になる。それを、アメリカ、ソ連なんかは持っておって、そいつをやめないからけしからぬという理由でここで日本が批准をおくらすことが、本当の大出さんのねらっておる、そういう核のない世界へ向かって一歩近づく道であるとは私は思わないのです。  それはやはり、われわれから言っても不平等だと思いますよ。大国も勝手なところはあると思いますよ。しかし、それなら、いますぐ米ソに向って核兵器を全廃せよということは不可能なことですよ。不可能だとするならば、日本の、せっかくどこにもない被爆国民であるという悲願を体して、そういう世界に向かって後ろめたさのない発言力を持って世界で努力することが日本の立場ではないか、こういう点で、あなたの言うことはわかりながらも、どうも社会党にもこの点は御再考を願いたいと私は強く望むものでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 議会生活三十七年のキャリアに基づく説得演説をいま聞かされましたが、これは若いうちから聞いているから私どもはなれているんですけれども、しかし、これはここで議論する時間がなくなってまいりましたので、承るだけにしておきます。言うことは外務大臣にさんざん言ってありますので。  そこで、おっしゃることはよくわかりますが、ただ私ども、原水禁運動を長くやっていますから、運動の原点を振り返ってそうはいかないという考え方に実は立っているわけであります。  そこで、最後になりましたが、十五、六分ありますのでしかと承りたいことがあります。それは防衛分担であれ、防衛協力であれ、中身は変わらぬと私は思っておるのでありまして、言葉はどちらでもいい。だが、これは重大なことでありまして、私がここで質問をいたしましたときに、参議院の質問を受けて質問した。ところが、それがだんだん消えていく感じで、私も長い論議をしておりますが、私の質問と参議院の上田君の質問が食い違ったということで、実は参議院で大出質問によっておれの質問のときの答弁と違うのじゃないかというところから始まった。私は、当時議事録を持っておりましたが、議事録には周辺海域という言葉を明確に使われておる。だが、その訂正を求めているのではないかと言ったら、初めからその考えはないのだからそんなことはないと答えた。これは丸山さんの答弁です。後になって参議院のやつを振り返ってみると訂正を求めていた。しかも質問者の了解を得ていたかいないか知らぬけれども、まるっきり私にうそを言ったことになる。重大な問題だから聞いているんですから、まことにもってこれは納得いたしがたい。めったにこの法案を通せないと私は思っているんですがね。ただ、その釈明を求めていると長くなりますから先にいきます。  共同作戦の大綱であるとか共同作戦の機構であるとか、あるいは日本の周辺数百海里であるとかいう言葉が出てきている。数百海里の方からまず入ります。これは旧来の答弁をあなた方は変えたことになる。周辺数百海里、ここに新聞の記事がございますが、まだ議事録ができておりませんから見ておりませんけれども、ここで言っておるのは「「日本の周辺海域(数百カイリ−千カイリ程度)を海上自衛隊艦艇の主たる行動範囲として、その海域における海上交通の保護を図る」という考え方を、有事の際の日米防衛分担の立場からより明確にしたものとみられる。」という記事であります。日本の周辺海域数百海里ないし千海里を、有事の際の海上自衛隊艦艇の主たる行動範囲とするのだ。これは朝日新聞でございます。これは大変なことです。  私、ここで、時間がありませんから簡単に申し上げておきますが、かつてこの委員会でいろいろ議論をいたしまして、そのときにこれはきちっとしているのです。四十八年の五月二十九日並びに三十日の事務レベル会議にあなた方がお出しになった文書があった。これは上田君に出されるまでもなく、この委員会で楢崎君から提示した問題です。あなた方、文書を出せと言ったらお出しになった。見て読んでくれというので私は読んだ。だから、あなたは廃棄したと言うが、本物をちゃんと読んで私は知っている。  そこで、周辺海域という言い方で数百海里から千海里まてたとなると——航路帯じゃないんですよ。そういう文書を出しておった。楢崎君が持ってきて出した、山中防衛庁長官のとき。それが大変なことになっちゃう。航路帯としてというならまた話が違ってくる。さんざんやりとりをして、実はここで差しかえをした。中路さんもおいでになるけれども、最初のあなた方がお出しになった文案、そこのところだけ読みますと、「ただ公海上における海上交通の保護について、日本の周辺海域一数百海里ないし千海里程度)を海上自衛隊艦艇の主たる行動範囲として、この海域における海上交通の保護をはかるべきものと考えている」こういうふうに書いてあった、あなた方の文書では。それを出した。航路帯じゃない。いまこの新聞が取り上げているあなたの答弁、これは大変なことだというので詰めてまいりました結果として、大河原アメリカ局長が最後に出し直します、こう言った。それをさらに私が念を押して質問をした。そうしたら、ここに書いてありますが、「去る五月二十九、三十日に行なわれた日米安保事務レベル協議の際、米側参加者に対する説明に用いられた防衛庁の説明資料中、海上自衛隊関係の主たる行動範囲について、日本の周辺海域一数百カイリないし千カイリ程度)と述べられているが、これは周辺海域については数百カイリの範囲内であり、また特定の航路帯を設定する場合には千カイリ程度の範囲で検討していきたいとの意味であるので、念のため」アメリカ側に申し入れた。それで向こうは了解をした、こういう答弁なんですね。  それを、あなたが航路帯というのではなくて、周辺海域数百海里から千海里というニュアンスで物を言われると、この地図で言うとどうなるかというと、千海里というと、一海里が千八百五十二メートルでございますから千八百五十二キロです。この地図の尺度で計算をすると。しかもどこからと言ってない。これが日本からになりますと、たとえば沖ノ鳥島から南東航路でいきますとトラック島まで行ってしまう。ミクロネシア群島の真ん中です。マリアナ諸島をとっくに越えてしまう。グアムを越えてしまう。これが南東航路です、航路帯であっても。それから南西の航路帯をとってみるというと、台湾の隣の石垣島は、沖繩ですから日本の領土です。そこから計算するとサイゴンの近くまで行ってしまう。これでいけばマラッカ海峡防衛論だってうそじゃない。北の方はどこへ行くんだといったら、カムチャッカ半島まで行ってしまう。露領沿海州は極東の範囲に入ってないはずですよ。それが露領沿海州をカバーしてしまう。日本海はもちろん全部、中国の領海まで全部行ってしまう。それが自衛隊の周辺海域。いまこの答弁で言えば一種の専管水域ですよ。アメリカとは指揮系統は違ってもいい、専管水域でこういうことにしてしまおうとすれば敵に脅威を与えますよ。専守防衛じゃない、これは明確にやることになる。この問題を一体あなた方はどうとらえているのだ。いま沖ノ鳥島から向こうフィリピンまで行っているんですよ自衛隊は、海難救助と言って。  だから、どうしてもこれでやるのだと言うなら私はそれでもいいですよ、それなりのことを考えればいいんだから。あなた方答弁がぽつぽつと変ってくる。私がここで押え込むとまた向こうで変ってしまう、それじゃ困る、ここのところは一体どうなのだという点が一つ。  それからもう一つ、あなた方は共同作戦の機構をおつくりになる、こうおっしゃる。そこで承りたいのですが、それならば日米統合作戦司令部というものをお考えになっているのかどうか、あわせて作戦調整所というものをお考えになっているのかどうか。  念のために申し上げておきますが、昭和四十年度フライングドラゴンという計画がございました。このころはまだ防衛庁、それほどひた隠しにしなかったから表に出てきている。この昭和四十年度フライングドラゴンの中で作戦調整所というものが明記されている。これは三矢図上研究の松野さんのときの委員会でも論ぜられていることであります。  念のために申し上げますが、この三矢図上研究というのは小委員会ではっきりしている。衆議院予算委員会で問題とされた統幕3第38−30号についての文書は、昭和三十八年二月一日、この研究の当事者が作成したもので、組織、手順、日程を定めたものである。すなわち、研究を行うためのものにすぎず、防衛庁及び統幕各幕の幕僚監部のいずれにおいても正規に決定された文書ではない、制服の方々が研究をしてそれを系統的にまとめて五冊にしたのです、そこまでは政府は認めた。それは正規のものでない、研究の成果をまとめたのだということ。だが、制服の方々が田中義男陸将を統裁官にしてずらり名を連ねて、背広の方もオブザーバーで入っている、そういう研究ですよ。  時間がないからいっちゃうのだけれども、あなた方の答弁を逐一聞いてここまで触れずにきましたが、ここで書いてあるもののほとんどがいまぼつぼつと出てきている。いいですか。ここではっきり共同作戦の調整機構を明らかにしているのです。しかもフライングドラゴン作戦というものを——朝鮮半島で第二次朝鮮戦争が起こったらという前提で三十八年に研究したのが三矢研究なんだ。いまあなた方がぽつぽつ出していることは、ほとんど一つ残らず全部ここにある。作戦調整機構というものは司令部がなければできないでしょう。第七艦隊は別な任務を持っているでしょう。専守防衛じゃないでしょう。思想統一もしなければならぬでしょう。  だなら、端から一つずつ挙げていけば、まず日米防衛分担について、用兵の基本に関する事項というところから細かく始まっている。日米共同作戦の準拠すべきものは何かということで日米共同作戦要領というものができている。これは至るところに出てきます。これをあなた方の方は日米共同作戦大綱ということでお答えになっている。これは表に出ている。これは鬼木さんの質問です。  作戦要領の要領というものは、細かく中身を規定してある。たとえば共同作戦は安保第五条の適用を受けた時点の想定か、安保五条の適用を受けない時点、つまりその前にやるのか。あるいは自衛隊の用兵地域等についても、わが国の施政のもとにおける全領域並びにその周辺海空域となるのか——なっているんですがね。これかつまり公海における共同戦闘だ。中路さんの質問に出てきている。はっきりしている。  それから、さらにその外域。つまり共同作戦要領によれば、まず領海がある、その周辺がある、その外域があるという想定なんですよ。外域というのは公海なんです。その共同作戦要領が決められているわけです。とうとう外域、公海までが出てきている。  それから安保条約の運用、つまり安保条約をどういうふうに運用するかということ、これは何も決められてない、表向きは。ところが作戦資材の軍事援助というのは一体どうするのだというところから始まっている。弾薬はどうするのだ。  念のために聞いておきますが、弾薬はどのくらい備蓄があるのですか。有事と、こうおっしゃるあなた方は、協力でも防衛分担でもいいですけれども、その作戦資材等の軍事援助、これは詰めておかなければならぬ、こうこの中でなっている。弾薬その他は一体どういうふうにするのですか、米本国から持ってくると言うんだけれども。それから安保条約の運用は具体的にどうするのか、その基本。それから朝鮮武力紛争が起った場合に二つある。安保五条による場合と安保六条による場合がある。全部細かく挙げてある。  時間が長くなりすぎますから、この辺で一遍御答弁をいただきましょう。逃げないで少しはっきり言ってください。それならそれでいいんだから、議論できるんだから。
  28. 坂田道太

    坂田国務大臣 四月二日に参議院の予算委員会上田哲君にお答えいたしました私の答弁の中に海域分担というのは言っておりませんから、この点は明確にいたしておきたいと思います。
  29. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 まず最初に、昨日の私の答弁の中で数百ないし千の周辺海域というような話が出ておるようにいま先生から御指摘ございましたけれども、私もいわゆるSCCの関連のメモについての国会のやりとりにつきましては、議事録をずっと勉強いたしまして、その中にわが周辺海域について数百ないし千ということで問題になったことを承知いたしております。したがいまして、私は、今回のこの問題を通じましての本委員会並びに予算委員会、それから参議院の各委員会におきます御答弁の中では、終始わが国の周辺の数百海里、仮に航路帯を設定する場合においては千海里以内ということで明確に申し上げてあるはずでございますので、私も、昨日につきましては千海里ということは恐らく申し上げてないはず…一大出委員新聞に出ているじゃないですか」と呼ぶ)新聞はそう報道されておりますが、私は、少なくともそういうことは申し上げておりませんので、在来御答弁申し上げていることと一つも変ってないということを再度申し上げておきます。(大出委員「また後退だ、従来どおりなんだろう」と呼ぶ一従来どおりでございます。  その次の共同作戦の司令部をつくることを考えておるのかどうかということでございますが、ただいま三矢研究の問題に関連しての御指摘がありました。昨日、大臣からも御答弁申し上げましたように、まさに有事の際におきます日米が共同対処をいたします場合のすり合わせをするということが一番眼目になるわけでございまして、そのためのいわゆる共同作戦調整機関と申しますかこういうものは絶対に必要であるというふうに考えております。  で、いまのところこういう問題も含めまして、安保の運用の問題についてどういう問題があるのかということを日米相互間で検討する、そのための機関を、大臣が申し上げておりますように両政府合意によって、具体的な形はまだはっきり決まっておりませんけれども、そういうものをつくりまして、そこで両政府の当事者の間で、ただいま申し上げました作戦調整機関をどういうふうにするか、それから弾薬補給その他についてはどうするか、そういう問題を一々検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから先ほど、弾薬の備蓄の質問がございましたが、ただいま陸につきまして備蓄は六万トンでございます。
  30. 大出俊

    大出委員 ちょうどジャストですが、一つだけ承って終ります。  その六万トンというのは、規模にもよりましょうけれども、何日分ぐらいあるのですか、それが一つ。それからもう一つ、松前・バーンズ協定というのは、これはADIZの問題と絡みますけれども、いまも生きているのか死んでいるのかということです。たとえば有事の際に、これは本来はバッジシステムが入ってくるが、三十八年よりいにしえは、スクランブルをかけるったって手がないのだから、米軍がその戦力を受け持つ、これが松前・バーンズ協定ですよね。これが死んだということは私は耳に入っていない、生きていると思っている。だが、その後バッジが入ったり何かしてきて米軍が日本に任したというわけですから、有事の際には米軍が当然これに手を出す筋合いなんだ、自衛隊の足らざるところを補完するのですから。そうでしょう。このところはどういうことになっているのですか。空の防衛分担なり協力なりというものが触れられていないのだが、いかがですか。
  31. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 松前・バーンズは、御指摘のとおり取り決めとしてはその効力は生きています。
  32. 大出俊

    大出委員 弾薬の方は何日分ぐらいというふうに、数字で言えば考えていいのですか。
  33. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 これはなかなか態様によって違うわけでございまして、中規模の戦争ということでございますと約半月でございます。
  34. 大出俊

    大出委員 そうですか。では韓国よりまだ幾らかよけいあるわけだ、韓国は三日分ぐらいしかないはずだから。  そこで、そうなると、私はいま三矢図上研究を申し上げましたが、実に制服の方々だけに至れり尽くせりですよね。ちょいちょい出てくる長官の答弁にも、ちょいちょい出てくる局長答弁にもちらっちらっとそれに触れてくるところがある、われわれが知っているだけに。それは同じように考えれば同じようなところにいくのだからしようがないのだろうが。そうでしょう。だから、それをもとにしてなくても、同じように考えれば同じようにいくのだから、むしろあの三十八年の三矢研究というものを土台にして協力というなら、この中で何と何と何をやるのか。それは憲法に触れるのか触れないのか。憲法に触れないということが総理のおっしゃっていることなんだから。協力ということも総理発言なんだから協力でいいが、あの中で、国内法の八十何ぼなんていうのもありますけれども、手続規定がなくて自衛隊法の百三条は発動できないのだから。そうでしょう。それで海上のというけれども、では一体、これは海上の警備行動なのか。どっちかといえば、いまの本筋は五条、六条対象ですから有事なんですね。そうすると、それはどこまでのことがやれて、どこまでがやれないのかということのサンプルがあるのだから、あなた方はそこらを検討したことございますか。
  35. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 実は、大変申し訳ないのでございますが、私どもが直接入ってまだ検討はしておりません。当然、先生のおっしゃるように、それを対象に検討するべきだと思います。
  36. 坂田道太

    坂田国務大臣 大出先生のお話、非常によく私わかるわけでございまして、やはり憲法のもとにおいて、その制約のもとにおいて、しかもシビリアンコントロールというこのもとにおいて、いまのようなものを話し合いたい、そしてはっきりいたしたいというのが私ども考え方でございます。
  37. 大出俊

    大出委員 総理に一言だけ最後につけ加えておきますが、たとえば公海で日米共同戦闘をやるということまで防衛庁はお触れになっているのですが、それは三矢図上研究にもありますけれども、たとえば北に向いてやったら、追跡権があるから追っかけていく場合があるが、公海ならば一体どこまで追っかけていけるのかという問題がある。三矢図上研究の方では、領海まで追っかけていけるんだが、ここから先は、占領するといったら米軍なんですというような分担ができているわけですよ。それは憲法すれすれなんだ。だから、そういうことを後になって言われたのでは困るので、あなた方は一体どう考えているのかということを出してくれなければ、いまのようなことでは困るのです、制服が専門家で、あなた方は専門家でないのだから。  そこで総理に、だからこれは大変むずかしいことでございます。重大なことでございます。軽々しく物を言わぬように、言うからにはそこらを全部検討しておいて言っていただかぬと、はた迷惑しますからね。こっちで言ったら引っ込んじゃった、またそれは答弁が違う、向こうは文句を言う、違うからまた引っ込む、これでは困るので、責任を負ってください、最高責任者総理なんだから。いかがです
  38. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ごもっともです。こういうことは軽々しく言うものではない。日本の場合は憲法という大きな制約があって、やれることというのは限られておるわけですから、やはりいろいろ検討するのにもう少し時間がかかります。その間はやはり発言はきわめて慎重にすべきことは当然のことだと思います。
  39. 大出俊

    大出委員 終ります。
  40. 藤尾正行

    藤尾委員長 木原実君。
  41. 木原実

    ○木原委員 大出質問に関連をしながら、もう少しお話を承りたいと思います。  共同声明があるなしにかかわらず、韓国の問題については国民の非常な関心がある、こうおっしゃいましたが、しかし総理が先ほどおっしゃいましたような一般論の問題ではないと思うのです。われわれの問題は、それにどういうふうに対応をしていくのか。国と国との取り決めがあり、安保があり、制度もあるわけです。  そこで、少しはしょりまして端的に伺いますけれども、たとえば先般の報道によりますと、キッシンジャー米国務長官が、もし韓国に事があるというような場合には、アメリカは軍事力を投入してでもこれを守るのだと、こういう意味の何か報道がございました。不幸なことですけれども、もしそういう状態になった場合には、日本はこれにどのように対応をし、あるいはまたどのように協力をしていくのか、これは一般論ですけれども、まず総理の御見解を伺っておきたい。
  42. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約日本の安全のために結んである条約ですから、韓国におけるいろいろな事態が日本の安全のためにどういう関連を持つかということで、日本が関連をしてくるのは、事前協議という条項が発動されて、そして日本に協議を求めてきた場合に、日本がこれに対して事前協議でノー、イエスを言うという関連がそこで起こってくるということでございます。
  43. 木原実

    ○木原委員 アメリカ韓国との間には米韓安全保障条約というのがございますね。もしアメリカ韓国との関係の中で米韓条約の、日本の安保条約の第五条とほとんど同じような条項がございますけれども、そういう状態が発動された、それに基づいて在日米軍が日本の基地から出動する、当然事前協議が行われます。そういう場合には事前協議でイエスもある、ノーと言う場合もあるという御発言がしばしばございましたけれども、そういう場合には大体イエスでございますね。
  44. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう場合にイエスと初めから決まるならば事前協議はないわけで、そういうものではありません。核兵器の持ち込みに対してこれはノーである、そうでない場合はその事態を、その実態を判断してノー、イエスを言うということでございます。
  45. 木原実

    ○木原委員 イエスと言う場合があり得るわけですね。問題は、そういう際に日本自衛隊はどういう対応をするのでございますか。
  46. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 御案内のように、わが国の自衛隊は、自衛隊法の定めるところによりまして、七十六条により、わが国に対する外部からの武力攻撃がある場合に限りまして防衛出動をするということになっておりますので、そういう事態がただいまの先生の御設問の状態で発生しない限り、自衛隊がアクションを起こすということはございません。
  47. 木原実

    ○木原委員 これは、あたりまえなことでしてね。ただ、そういうことではないんですね。まあ隣国で、恐らく米軍が出動するわけですから、武力衝突が起こっている、場合によれば戦端が開始をされている、そういう状態の中で、今度は日米安保条約を結んでおる中での自衛隊が、自衛隊法によって出動するのはあたりまえのことですが、そういう際には、ただぼんやりと訓練をしておる、それだけなんですか。そのときの状態は想定されませんか。
  48. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 いろいろその様相が千差万別でございますので、どういう事態を想定するかということにつきましては、実は私自身、まだその辺はよく詰めておりませんし、また制服の方からもよく聞いておりませんので、ただいまの段階でどういうことが予想されるかということについては、はっきりと御答弁できないと思います。
  49. 木原実

    ○木原委員 先ほど来、大出委員の方からも出されておりました、たとえば共同作戦についても、多くは想定に基づいての対応の姿勢、態勢を整える作業ですね。ここで問題になっておりますのは、たまたま韓国情勢に関して多くの国民も心配をいたしておりますし、われわれの最大の関心事は、自衛隊の対応の仕方ということについて、いろいろな分野について問題が出されているわけですね。  私がいま出しました問題は、キッシンジャー国務長官が、インタビューでありますけれども、事と次第によれば武力を投入してでも守る、こういう言明が一方であった。そうなりますと、それは当然、この米韓間の安保条約に基づく出動ということになるでしょう。そういうようなことが仮にこの隣の国で起こっている、そういう際に、日米安保条約のもとにある、しかも韓国条項は尊重をするという立場にある日本政府日本自衛隊がそれに対してどういう対応をするのか。つまり自衛隊の出動の可能性の問題、そのときの状況について御見解をまず聞いておきたい、こういうことなんですが、どうですか。
  50. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 結局、最初の御答弁ということになりますが、一般的に申しまして、わが国に対する外部からの武力攻撃ということが具体的に想定されるような事態になりませんと、われわれは発動できませんので、そういう事態が起きるのか起きないのかという点を詰めなければならないというふうに考えております。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、木原さんの御質問、これは最悪の事態ですが、二つの前提条件があると思っているのです。一つは、核兵器時代における国防の観念というものは、起こってきてそれからどういう事態になるか、実際の場合は、起こりましたときには、これが、いまから予定どおりに、こちらが想定するとおりに事態が起こるかどうかわからぬですよね。だから、私がいつも思うのは、核兵器というものが生まれてきてからの国防観念と昔の国防観念は違う。それがやはり一つの一番大事な違いである。核兵器時代の国防観念は、戦争の抑止力である、抑止することである。いろいろな軍事的な条約も、それは抑止力というものがやはり一番の大きなねらいだと私は思うのです。私は、安保条約自体もそのように受け取っておるのです。そういうことがやはり一つの大きな前提になる。これは防がなければならぬ、そのためにいろいろな集団安全保障条約というものも、戦争抑止力としての価値を持っておる、そういう側面を持っておる、核兵器時代は。  もう一つは、この朝鮮半島の場合は、これは日本は大変なことですから、何といっても近くですから、日本ばかりでなしに関係諸国もあるのですから、これはもう全力を傾けてそういう事態を防がなければいかぬ。これはいまいろいろ御質問があって、そういう場合といっても、ここで想定しておるような事態になるのか、どういう形になるのか、これはなかなかいまの想定どおりに事態が起こるかどうか困難ですが、これがやはり日本外交の一番の大きな、日本の安全を考える場合に重要な外交の題目であることは明らかであります。  そういうふうな今日における国防観念、集団安全保障条約の真の意味、あるいはまた、朝鮮半島というものに対するそういう最悪の事態防止のための外交努力、こういうものを前提にして、やはりいまのような場合だって、これは論理的にはそういうふうに考えることは可能ですからね。そうでないと、その二つの前提を抜きにしていますと、いかにも朝鮮半島にいろいろ事態が起こるような不安を国民に与えることも私は好ましいこととは思いませんので、二つの前提を踏まえて、そして有事の際の御論議を願うことが適当であろうと考えますので、申し上げておく次第でございます。
  52. 木原実

    ○木原委員 私は、総理見解に賛成です。私どもも、これは最悪の事態というものが起こったときにはもう終わりだ、こういうことなんです。したがいまして、外交努力をとおっしゃいましたが、私どもも、そのためには、政府はもっと積極的に——朝鮮の問題というのは、やはり深い歴史的な関係があるわけですね。また日本朝鮮民族のためにやらなければならない課題というのは、ある意味ではまだまだ残された分野がたくさんあると思うのです。そういうことも含めて、ともかく隣邦朝鮮半島が、不幸な分断国家になっておりますけれども、統一をされて、静ひつな国として発展をすることをわれわれもこいねがうわけです。そのためにはわれわれも、総理がおっしゃったような姿勢で最大の努力をやってもらいたい、これがもう大前提です。  ただ、総理は同時にまた、国の安全に責任を持ち、自衛隊の最高の統率者でもあるわけなんです。この自衛隊が存在するということ、安保条約が存在するということ、先ほども大出委員から部分的に触れましたけれども自衛隊自衛隊として、最悪の事態に備えるさまざまな作業をやっている、しかしそれが、しばしばシビリアンコントロールの枠をはみ出すというような事例があって、国会の中でもたびたび論議になりました。そのことがあるものですから、この機会に私が総理に伺っておきたいのは、そういう事態になったとき、自衛隊は過ちのない、限定をされた行動をとらなくちゃならないのだ、自衛隊の行動いかんが逆に国がある意味では巻き込まれると申しましょうか、滅亡に追いやられるようなことにもなりかねない、その引き金になってはいけない、こういういわば歯どめの立場から、そういう事態が想定されたときに、自衛隊はどの限度内で行動をするのか、こういうことをお聞きしたいというのが、もう私の質問のすべてなんです。  しかも大出委員も触れましたけれども、過去に何回か朝鮮武力衝突が起こるということを想定をしながら作業や演習等も行われておるわけなんです。そういうことから推測をしながら質問を申し上げているので、これはぜひひとつ、総理にも御理解をいただきたいと思うのです。あるいはまた、総理が、これでいいのかとみずからやはり問わなければならないような問題もあると思うのです。  そこで、もう少しこの点で、そういうことを前提にして質問を続けさせてもらいたいと思うのですけれども自衛隊がそういう状態の中に出動する、これは言うまでもありませんけれども、七十六条、七十七条というのは、総理の決断事項であり、国会の承認事項でもあるわけですね。したがって、われわれもまた、その判断の材料をやはり日ごろから持っていなくちゃならぬ、こういうふうにも考えます。  そこで、いま局長の方から歯切れの悪い答弁がありましたけれども、防衛出動がそういうときに行われる。ただ、一番心配をいたしますのは、米韓の関係がそういう形で進んでいく、安保条約の絡みがある、結果において、日韓米が一つのシステムの中で動いていく。そうしますというと、いわば朝鮮半島に起こった事態が否定しようのない形でわれわれの中に波及をしてくる。その中での自衛隊の行動があるわけですね。それは憲法の枠内でやるのだ、こういうのが従来の御答弁でありましたが、そのことを前提にいたしまして、自衛隊が出動する場合には、自衛隊法の中では二通りあるわけですね。たとえば七十七条による一種の待機と言いましょうか、そういうところから出発をすると思うのですが、そういうシステムについて何か御検討なさったことはあるのですか。
  53. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 韓国——韓国と言いますか、朝鮮半島に事態が発生してという想定下に、ただいまおっしゃったような防衛出動なり、あるいは防衛出動の待機というようなことを検討しておるということは聞いておりません。
  54. 木原実

    ○木原委員 出動の形については、この防衛出動が下令をされるかもわからないというような状態に立ち至ったときには、たとえば事態が緊迫をしたとき、このときに出動待機命令が出ますね。それからおっしゃったように、外部からの武力攻撃のおそれが発生をしたとき、それからまた、武力攻撃が発生をしたとき、少なくともこの三段階がありますね。それに基づいて最終的には防衛出動、こういう順序になるわけですけれども、これは、そうしますというと、待機のときから、つまり米韓安全保障条約が発動されたというような状態の中からも、すでに自衛隊としてはそれに対応する姿勢をとる、この自衛隊法の適用を具体的に考えますとこういう結果になるのですが、そういうことなんですか。
  55. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 問題は、あくまでもわが国の防衛のためにどうであるかということが基本的な物の考え方であると思うわけでございます。  そこで、米韓条約が発動されたということが、それがわが国の安全にとってどういう意味合いを持っておるかというそのときの状態におけるわが方の判断によるものだと思うわけでございまして、一概にそれがどういう形でどうなるかということについては、はっきりしたことは、いまの段階では申し上げられないわけでございます。
  56. 木原実

    ○木原委員 もっと具体的に言いますと、容易に想定されることなんです。総理が、先ほど申しましたように事前協議でイエス、こういう回答をしたときには、ほとんどそのときから日米の共同作戦みたいなものは始まるわけですね。たとえば韓国の事態が日本に波及をしてくる、そういう誘因というものが考えられるわけですね。たとえば日本の基地からの発進にイエスという回答を与えた、そうしますと自衛隊は、先ほどの防衛分担の話ではありませんけれども、発進をする米軍に対して支援をする、たとえばその補給的な援助をする、場合によれば、朝鮮半島で戦闘状態に入っておる米軍に対するもっと進んだ支援という状態も起こるかもしれない。これは日米安保に基づく、これから皆さん方がお進めになると言われておる共同作戦のありようにかかってくるわけですね。これはもう切り離せない関係でしょう。どうですか。
  57. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 まあ大変いろいろの仮定、前提がございますので、ただいまの段階で明確なことは申し上げにくいわけでございますけれども、たとえばそのいまの日本の基地から緊急発進をするというような事態ということになりますと、客観情勢その他において総合的にあらゆることを判断していただくということになると思います。したがいまして、いろいろその個々の問題については、こういう原則が決められておるわけでございますが、そういう原則を踏まえまして、総合的に総理のところで御判断をいただく、こういうことになるかと思います。
  58. 木原実

    ○木原委員 総理に、これはもう少し議論を詰めたいわけですけれども時間がございません。一つだけ御回答をいただきたいと思うのですが、いろいろな事態が想定されるわけです。最悪の事態の中でも日本自衛隊は、従来の、これまでの政府側の憲法解釈いかんにかかわらず、他国の領域あるいは空域を侵さない、この限度の中で行動をする、こういうふうな限界を設けることはいかがでしょうか。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当然のことでございます。
  60. 木原実

    ○木原委員 念を押すようですけれども、御承知のように日本の基地が攻撃を受けた、憲法上の解釈としては、それに対する報復として相手側の基地をたたくことは可能である、こういう解釈が何回か国会の中でも憲法解釈として示されました。しかしこれは、どこまでもいわば憲法解釈上の問題であって、われわれとしては、想定をされる隣国の不幸な状態を最小限度食いとめるためにも、自衛隊の行動の限界は、憲法上可能であっても、外国の領域やあるいは空域、海域を侵さない、ひとつこういう限界をはっきりしてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 従来、統一見解がこの問題についてはあるようでございますから、政府委員から統一見解を申し上げることが、私のお答えの前に必要だと思います。
  62. 真田秀夫

    ○真田政府委員 私からかわってお答え申し上げますが、ただいま木原委員も仰せられましたように、本当に理論上の憲法上の解釈問題としては、敵の基地をたたくことも場合によってはあり得る、許されるものだということがございます。それは昭和三十一年二月二十九日の衆議院の内閣委員会で御答弁申し上げております。
  63. 木原実

    ○木原委員 それは、政府側の見解が、解釈が出されたことはわかっているのです。ただ、この国会でも、先般来いろいろな安全上の問題や防衛上の問題について論議が行われました。国民がいろいろ心配もし、不安も感じている側面があると思うのです。私がきょう申し上げたかったのは、自衛隊の行動の、出動の問題を含めて、限界というものは国民に向けてやはりはっきり示しておく必要があるのじゃないのか。いよいよになれば、座して死を待つよりも相手を撃てと、この論理は戦争の論理なのです。自衛の名においてしばしば戦争が行われてきたというのも、その論理が転用をされたということもあるわけですね。したがって、いろいろな事態が想定をされるとは言いますけれども、少なくとも自衛隊の行動としては、憲法上の解釈いかんにかかわらず、他国を侵さない、その限度内で慎重に行動をする、こういうふうに、この状態の中で三木総理一つの御判断を示してもらいたい、私はこう思うのです。
  64. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最高責任者として私に課されておる責任は、憲法の範囲内で行動をするということでございます。現に私はそれを守る決意でございます。
  65. 木原実

    ○木原委員 もうこれで終わりますけれども、大変政治的な御答弁で、憲法の範囲内とおっしゃるわけで、その憲法の解釈の中には、事と次第によれば他国の基地をたたくことができる、こうなっておるので、これはひとつもう一言おっしゃっていただきたいと思うのです。大出委員から、先ほどたとえば追跡権の問題などが出ました。もしこの解釈がありますと、それに基づいてさまざまな事態の中で、やはりある意味では必要以上に外に出ていく可能性がある。憲法上の解釈はともかくとして、総理最高責任者としての判断として外へ出ることはない、どこまでも日本国民の安全を第一義に考えて限度内で行動する、こういうふうにおっしゃっていただきたいのですが、どうでしょうか。
  66. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の方針としては、憲法の範囲内、限度内で行動をするということでございます。
  67. 木原実

    ○木原委員 少し残念ですけれども、何か情勢が非常に流動的な時代でございますので、ひとつこれからのことにつきましても、ぜひ慎重な行動と判断をしてもらいたいと思います。  終わります。
  68. 藤尾正行

  69. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 三木総理に、最初に沖繩の問題と安保条約の問題について質問いたします。  この前、内閣委員会で沖繩の金武村に起こりました海兵隊による二少女の暴行傷害事件で、藤尾委員長がアダンの葉を持って総理にお会いになった。そのときに、調査した上で善処するといったようなことを総理は述べられておりますが、この事件について総理見解を最初に承りたいと思います。
  70. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最近に起ったような事態も踏まえまして、このような米兵が沖繩県人の人権を侵害するような事態があってはならない。日米両国の協力関係の上においても、こういうことを再びあらしめてはならない、そういうことで政府の方からも、アメリカに対しまして改めて軍紀の粛正を求めるとともに、こういう不幸な事件が再発をしないために効果的な方策を講じてもらいたい——こういうことか繰り返し起こされては、沖繩の県人の人権が侵害されるようなことが起こったのでは、日米間の協力というものに対して非常に障害になることは明らかですから、したがって、特に注意を喚起して、政府自体も今後再びこういうことが起こらないように、何とかしてこういうものを根絶したいということで、あらゆる努力を払う所存でございます。
  71. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 総理のそういったような所存とは逆に、あれからどんどん起こっているのです。たとえば、いまの金武村の少女暴行傷害事件、これは四月十九日。さらに去年の七月十日に行われた日本人青年殺人未遂事件に対して、日本政府は五月の六日に裁判権を行使しない旨を通告したいわゆる裁判権放棄事件。さらに次に五月二十四日、海兵隊MPによる日本人基地連行事件、催涙ピストルを撃って目をくらくらさして、ジープに乗せて基地の中に連れ込んだという事件。さらに一週間前六月の十一日、ところもあろうに国道の真ん中に十数名の海兵隊が酒を飲んで、日本人の運転手は——国道、県道は、主人公である県民が自由に歩けるというのが国道、県道であるにもかかわらず、運転手は真ん中を通れないで横を通った。ところが、その運転手に対してビールびんを投げつけてガラスを割ってしまった。これが事件になって発展しました。  私がこの問題を申し上げるのは、実に基地というものが百万沖繩県民にいかに重圧になっているか。総理に申し上げたいのは、これは簡潔に申し上げますが、いまの四十代以上の人は前の戦争の惨禍を知っております。しかし今度は、小さい子供たちまでアメリカに対する憎しみ、基地に対する憎しみ——この金武村における少女暴行事件に対して村民大会が開かれた。その大会で三年生の女「この事件を知ってとてもびっくりした。犯人が明らかになっているのに私たちの手で裁けないことがとても残念。また、沖繩の無力さがとても残念です。」次も三年生の女「金武には米兵による犯罪がいろいろある。こんな事件がおこるのは沖繩に基地があるからです」それから三年生の男「自由にあそべる海にしてほしい」次に先生の手記であります。教師の一人は「米兵からの被害」「次から次へと学園に犯罪が及んでくる気がする。私たちは生徒に人を疑うことしか教えることができないんでしょうか。」まさに民族の尊厳が侵されておる。民主教育、平和教育が侵されておる。こういったような、みんな疑いなさいと言わざるを得ないのかというこの教師の叫びは、何を物語るかという問題であります。国道、県道、これは安全に自由に歩けるというのが国道であり、県道であるにかかわらず、国道はアメリカに占領されて、主人公の国民はそばを通らなくちゃいけない。それだけでなく、そばを通ったらビールびんを投げてガラスをぶち割る。そういった沖繩の政治社会教育その他の状況をとらえて、沖繩県議会は全会一致、海兵隊の撤退を要求し、司令官の即時罷免を要求している。これは総理の属しておられる自民党の県連議員含めてです。こういうふうに沖繩では、まさに言語に絶するような基地の重圧がある。もう起こってくれるなと願いたくなるという状態ですが、どんどん起こってくる。  それでお伺いしたいのは、総理は一月二十四日の施政方針でうたい上げられました。すなわち日米協力の基本憲章は安全保障条約である。ところで、いま申し上げましたような日本国民の主権の問題とか基本的人権の問題、民族の尊厳、こういった問題よりも総理が言われたいわゆる基本憲章としての安保条約は優先するのかどうか、これをはっきり答えてください。
  72. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人権に優先する条約はありません。やはり人権というものを大事にし、尊重しなければならぬことは当然でございます。したがって、いま御指摘のようないろんな不幸な事件というものが最近起こっておりますので、この点については、政府当局においてもこれを防止するための具体的な対策というものを——ただその事件があった当時、アメリカの注意を喚起するだけでは足りない、ということで、アメリカ自身にも軍紀の粛正やあるいはそういうものを防止するもっと効果的な処置を講じてもらいたいということを強く要請しますと同時に、政府部内においてもこういう事態を防ぐために適切な処置というものを十分に、やはり何らかの方策を講じていきたいという考えで、とにかくこういう事件が繰り返し行われることのないように政府は今後積極的に取り組んでいきたい考えでございます。
  73. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 総理がいま基本的人権に優先する条約はない、そのとおりだと思います。民族の尊厳を侵すような条約はないと思うのです。であるならば、安保条約、日米のいわゆる基本憲章という問題が実に重大な問題になりつつある。いま申し上げましたように、知事はもちろんのこと、県議会そのものが米軍基地の撤去を要求せざるを得なくなるという状況は、まさに日米安保条約のもとで国民の矛盾が実に鋭く悲劇的に沖繩に起こっている、この証拠なんです。  したがいまして、時間の関係もありますので、いまの問題は後でどんどん出てくると思いますが、そのお考え、すなわち民族の尊厳や基本的人権に優先する条約なるものはないという観点に立つならば、安保条約の廃棄の問題あるいは基地撤去の問題といったようなものまでどんどん進められていくと私は見ております。  そこで、これは一昨日の十六日の核防条約の連合審査で、政府は核を持った米軍部隊と共同行動をとると答弁しておられます。これは政府の非核三原則の精神に反すると思うのであるが、三木総理、どう思われますか。
  74. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初の安保条約に対して、安保条約の存在そのものと安保条約の運用というものについては別に考えなければならない。瀬長さんは安保条約廃棄論ですが、私ども日本の安全のために必要であるという論者で、この点はあなたの説に御同意はできません。立場が違う。ただ、安保条約の運用について人権をじゅうりんするようなことがあってはならぬ。このことは別個の問題である。こういう問題の認識でございます。この点は今後そういうことのなからしめるための適切な処置を講じていきたい。安保条約そのものを否定する議論には私どもはくみするものではないわけでございます。  それから、いまの点につきましては、核の問題については、あらゆる場合に非核三原則を堅持するというわけですから、核を保有するアメリカ部隊と共同作戦はあるわけはないわけですが、詳細は政府委員からお答えをいたします。
  75. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 在日の米軍は、有事の際におきましても核を持ち込まないということになっておるわけでございますが、日本の周辺を行動いたします第七艦隊というようなものが、有事の際に核を装備するであろうことは当然予想されることでございます。その場合に、その第七艦隊が核抑止力として、日米安保上われわれが期待をいたしておりますアメリカの核抑止力、核のかさの一部を構成するというふうに考えておるわけでございまして、わが自衛隊と共同して対処するということも、安保の五条に基づいて当然やり得ることでございます。  そこで、非核三原則の精神に反するのではないかという御指摘でございますけれどもアメリカの核抑止力に依存するという国防の基本方針をとっている以上、そのとおりのことでございますし、それから非核三原則につきましては、わが領海も含めまして領土の中に核兵器を持ち込まさせないということでございまして、それにも反するゆえんではないというふうに考えるわけでございます。
  76. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私の申し上げたのは、アメリカの核部隊、これは空もあるでしょう、海もあるでしょう、これと共同行動する。非核三原則の精神は、領海、領空を問わず、いわゆる核戦争にかかわるようなものとわれわれは関係しない、さらに核兵器に近づいたりするようなことがあってはいかぬ、これが非核三原則の精神ではないのですか。私は、これは三木総理に聞いておるのです。唯一の被爆国である日本国民が、そういう方向国民的コンセンサスのもとで非核三原則——部隊と共同行動する、接近するということ自体は、非核三原則の精神に反するのじゃないかというわけなんです。総理いかがですか。
  77. 坂田道太

    坂田国務大臣 御承知のように、われわれは、日米安保条約に基づきまして、核抑止力を米軍に依存しておるわけでございます。したがいまして、有事の際におきまして米軍がその意味において行動をする、われわれはあくまでも自衛のために独自の指揮権をもって行動をする、対処をするというわけでございます。しかし、その連係行動というものはあり得るわけでございます。しかしながら、非核三原則がございますから、領海、領内には入ってこないということでございます。
  78. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私、申し上げたいのは、非核三原則はただ言葉どおり核を持ち込まさないということ、これはもちろん言葉どおりであります。少なくとも自衛隊が核装備したアメリカの核部隊と共同行動やること自体は、これは常識的に考えても核に接近している。もう核戦争という想定をするそうした共同行動をやること自身、非核三原則のいわゆる核を近づけないというふうな問題などと関連して、反していると私は思うわけなんですが、総理いかがですか。
  79. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、やはり日本は核兵器をみずから持たないという決意をしておるわけですね。しかし現実に核は存在するわけなんですから、核の抑止力というものはわれわれはこれを無視するわけにはいかない。現にいろいろ非核保有国の安全保障の問題というものが核防条約のときにも常に問題になるのは、それはやはり抑止力というものを評価するからであります。これは与野党含めて非核保有国の安全保障問題というものについては、現に核兵器があるということを認めて、これに対して有効な処置を講ずべきではないかということが論じられておるわけですから、現実にあるのですから、これに対して核の脅威、核の攻撃に対して抑止力を、いまの場合は日米安保条約ですが、この抑止力に依存するということは、核が現存する今日の安全確保のためには必要なことである、こう考えております。それは近づくとか近づかぬということじゃなくして、現に核というものが現存する以上は、この脅威とかこの攻撃に対して対処するためにみずから核をつくらない、みずから核兵器を持たないという日本とすれば、何らかのこれに対する核抑止力というものを持つことは国の安全のために当然のことだと思うわけでございます。
  80. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは抑止力の問題とは関係なしに核部隊とともに共同の行動をやる。共同行動というのは、いまいろいろ言葉遣いで指揮系統は別だとか何とか言われますが、有事の際は、もちろん戦争だけではなくていろんな有事の際が予想されますが、いわゆる有事の際、そういった共同行動をする相手が核装備をしているという場合の観点で、厳密に非核三原則を言うならば、これは違反しておると私は思うのですが、これを進めるためにもう一つお聞きしたいのは、それじゃ有事の際、自衛隊は公海、公空で米軍と共同行動するということになれば、たとえば核装備をしたアメリカの艦船が攻撃を受けた場合、自衛隊はこの米軍の艦船を援護しますか。
  81. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 わが国はアメリカと共同して対処する。安保五条に基づく場合であろうと、単独で対処する場合であろうと、いずれの場合におきましても、わが国の安全のため必要な限度内において行動するということでございまして、その場合、領海、領空に必ずしも限られず、公海、公空にも及び得るという御答弁をいままで申し上げておるわけでございます。したがいまして、公海、公空に及びまして日米共同対処しているという場合でございましても、あくまでもわが国の安全のため必要な限度ということでございまして、いまのような御設問の問題についていろいろ条件下があると思いますので、一概にお答えはできませんが、要するにわが国の安全のために必要な限度内であるかどうかというその事実についての判断、これがもとになるかと思います。
  82. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、わが国の安全にとって必要であるという場合に、共同行動しておる相手の核装備したアメリカの艦船が攻撃された場合には、わが国の安全のために必要であると判定したら米軍の艦船を援護するというふうに理解していいわけですね。
  83. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 いずれにいたしましても、ただいまの前提だけでそういうふうに判断されるかどうか、その辺ははっきり申し上げかねます。  いずれにしても、わが国の安全のために必要であるかどうかという判断に基づいて行動するわけでございます。
  84. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 安保の五条が発動された場合でも、これは援護しないということははっきり言えますか。
  85. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 具体的な御設問の事例には、いろいろ条件その他客観情勢があると思いますので、お答えがしにくいと思いますが、いずれにいたしましても、わが国の安全のために必要な限度において行動するということでございます。
  86. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 必要な場合には、結局そういった判断が下されたらアメリカの艦船を援護するというふうに理解していいのですね。
  87. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな場合を想定されて、ここで政府委員からノー、イエスを言うということは、私は無理だと思います。いろいろな条件があるのですから、その場合に政府としては判断の基準というものをお答えして、それが日本の安全のために必要なのかどうかということの判断をして、これに対して日本が対処する態度を決めるということで、具体的にこういうこと、ああいうことと言って、その場合が起こって、一々これに対して直ちにノー、イエスをここで言うのには非常に無理な点がある。やはり政府基本的な態度というものを申し上げて、それで対処していくのだということにいたしませんと、そのときにはどういう状況でそういうことになったのか、また具体的にはどうかという、そんな単純なものではないと私は思いますから、政府答弁としては、いまの限度以上にノー、イエスとはっきり申し上げることは、私はきわめて困難であろうと考えます。
  88. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは非核三原則の問題と関連するから私は申し上げるのですが、そうなりますと、たとえば米軍の艦船が攻撃を受けているのに自衛隊は全く知らぬ顔をするというようなことになる。これでアメリカ承知しますかどうですか、そこら辺は。共同行動するんですよ。核武装をしたアメリカの艦艇あるいは航空機と自衛隊が共同行動する、有事の場合、これはあり得ることなんです。それが攻撃を受けた場合、知らぬ顔をするということになる。それをアメリカに通告しておるのか、これから通告されるのか、いずれかだと思うのですが、どうですか、総理
  89. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 アメリカに一々、こういう艦船がやられた場合、この場合というものを想定して通告するようなことはいたしません。やはり安保条約の精神に従って日本の安全と——事前協議というものは、日本の安全にとってこのことを、アメリカの軍事行動というものをイエスと言うか、ノーと言うかということを判断するのですから、いろいろな起こる場合を想定して事前にアメリカに通告するようなことをする性質のものではない、私はこう考えます。
  90. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 米軍の艦船を守る必要がない。なかったら、アメリカとの共同行動の問題、これは一体どういうふうになるのか、ここら辺が問題だと思う。しかも相手は核武装をした艦船あるいは戦闘機、爆撃機である。そういう場合の共同行動、これは何か必要ではないのじゃないか、アメリカ自身がそう思っておるのか、あるいは一方的にそういうふうになっておるのか。これは共同行動ですから両方なんです。問題は核部隊、これとの共同行動、それで援護しないという場合に、もう知らぬ顔をしているということになるわけですか。
  91. 坂田道太

    坂田国務大臣 御承知のように、わが国は核を持てないわけです。わが自衛隊は核を持てない。したがいまして日米安保条約が存在する。つまり核の攻撃に対してはわが自衛隊は無力である、そういうことでございます。したがいましてそれはアメリカに依存する。その限りにおいてわれわれは連係的に行動をする、対処するということでございまして、わが国はあくまでもわが国の自衛のためにやる、わが国の安全のためにのみ行動をしなければならない、それが今日の憲法のたてまえであるし、また日米安保条約のたてまえである、こういうふうに思います。このことは、日本が非核政策をとっておることも、日本が専守防衛に徹しておるということも米軍は承知しておるということを御了解願いたいと思います。
  92. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 たとえば四十六年の沖繩国会で、当時の佐藤総理ははっきり言い切っております。米軍は米軍、自衛隊自衛隊、その自衛隊が米軍を守るという、そんなことはございませんと、はっきり共産党の岩間議員に答えております。もう実に明快です。ところが、きょうは核部隊との共同行動の問題で、もしアメリカ艦船が攻撃されたならば自衛隊はそれを援護するのか、支援するのか、助け合うのかということを言ったときに、前の佐藤総理のように明快じゃないんですね。わが国の安全、これを考慮の上考慮するということになりますと、むしろ核兵器に一歩近づきつつある。そのときはアメリカの艦船が、あるいは飛行機が核を持つ能力がある問題なんか出ておりませんでした。いま出ておるのは、核部隊との共同行動、これが出ているわけなんです。したがって現在の答弁は、だんだん非核三原則中身自体がいわゆる日本の安全、そういう問題の方向にすりかわって、あるいは安全と断定したら、アメリカの核艦隊、艦船、それを援護するかもしらぬというような答弁である。それは一体どういうふうに変ったのか。
  93. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 変わっていないと思いますよ。安保条約の適用について日本がいろいろな行動をとる場合に、日本の安全という点から考えてみて、日本の安全を確保するために必要かどうかということからくるわけでございますから、何もアメリカのためにわれわれの安保条約があるわけじゃないわけです。日本の安全を確保するためにあるわけでございますから、そういう角度から日本は判断をするということでございます。  瀬長委員の御質問は、アメリカがやられた場合、いろいろあの場合という具体的な御提示でございますから、それに対して一々どういう事態になるかわからないときには、政府としての基本的態度を申し上げることが必要だと思ってお答えをしておるわけで、特に後退をしたというようなことはございません。
  94. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がございませんので締めます。  最初に返りますが、いまの核問題といい、アメリカの特に核部隊との共同行動の問題といい、安保条約とその運用とは別々だと言われていた。ところが、最初に私が申し上げた沖繩の現実は別々ではないんですね。安保条約があり、地位協定がある。そのもとで区域、施設を提供された米軍、この米軍によるあの伊江島の発砲事件、いわゆる裁判権放棄事件、核部隊さらに海兵隊、そういったような基地の重圧で、ほとんど毎日のように悲劇的なことが起こっておる。だからこそ沖繩の県民は、そういうような安全、生命、財産にかかわるような基地、この基地の重圧を取り払わなければいかぬということが毎年毎年濃厚になりつつある。総理は、安保条約とその運用の問題を区別して言われたが、基本的人権を守り、さらに民族の尊厳を守るために、いかに安保条約日本国民の不幸の根源になっておるか現実が示しておる、私はそれを申し上げたいのであります。総理、何かありますか。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の安保条約は、沖繩の県民の人権を無視していいというような条約ではないので、条約前提なるものはやはり人権の尊重ということがあるわけですから、そういうことについては、人権の侵害をするような事件が頻繁に起こっておるという事態を踏まえてその問題を解決するということが適切な処置で、だから安保条約全体をもう破棄してしまえということは論理の飛躍である、こういう解釈でございます。
  96. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木勝利君。
  97. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先般、三木総理にはとんでもない御災難にお遭いになりました。私どもは、親しく日ごろから御尊敬申し上げておる総理の御身を案じておりました。ここに謹んでお見舞いを申し上げます。しかるに意外にもお元気なお姿を拝見しまして、親しくごけいがいに接する機会を得ましたことは、まことに光栄この上のことであります。衷心御同慶にたえぬところであります。これまさに天は三木を見捨てたまわず、大いに自信と確信を持って、ますますこの難局を乗り切って、国民衆望の善政をしかれんことをひたすら希望いたします。  そこで、総理にお尋ねしたいのでありますが、日中平和友好条約締結と覇権問題に関しまして、ソ連では公式な政府声明で、日本は締結に慎重を期することを望む、こう述べておりまするが、総理は、日本の真意の理解を求めるためにどういうような措置をとろうとしておられるのか。たとえばソ連に特使を送るとか、あるいは中国に日中交渉を打開するためにある特使を派遣するとかいろいろあるかと思いますが、どういう措置をとられようとするのか、その点を、時間がございませんので簡単にひとつお答えを願いたい。
  98. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、ソ連からそういう発言がグロムイコ外相からあったことは承知しておりますが、これはやはり真意の誤解に基づくものである。われわれは、中国と日中国交正常化後二年半ですか期間がたって、いま平和友好条約を結ぼうとしておるわけですが、その中で覇権条項というのが非常に——これは横道にそれた感じである、現状は。これをやはりもっと本筋に戻すことが必要である。覇権というものは、何も第三国を目当てにして覇権云々というようなことを言っておるものとは私は思わない。それは第三国を対象にするものでないことは共同声明にもうたっておるわけですから、覇権という一つの条項を、何か特定国を考えて覇権と言うのではなくして、この覇権反対ということは平和原則——いろいろな原則があります。平和五原則原則もあるし、国連における原則もありますね。そういうふうな一つの普遍的な、世界のどこの国にも通用するような普遍的な平和原則一つである、覇権反対ということをそういうふうに認めるのか、いや違う、覇権だけは別だ、平和原則以外に別な意味を持っておるのだというふうに考えるかという考え方を整理する必要がある。もし考え方を整理して——私は、平和原則一つだと思うんですよ。内政不干渉とか主権尊重とか、そういうふうなことの一つである。とにかくいろいろな定義がありましょうが、要は覇権主義ということは、やはり力づくで自分の意思を押しつけるということでしょう。これに対して反対ということで、平和原則一つであると考えたときには、問題はそんなにむずかしい問題ではない。これに特別な意味を持たしてくるといろいろな揣摩憶測を呼びましょう。だからこの覇権問題というものは、横道にそれないで、これを問題の本質に返すことがこの問題を整理するゆえんだと思います。  したがって、これはソ連を目当てにして、そうして日中の平和友好条約というものを結ぶものではない。覇権反対というものは、世界どこへ出しても普遍的に通用する平和原則一つである、こう受け取ることが必要であるというのが私の考えでございます。少し横道にそれていろいろな揣摩憶測を呼んだことはまことに残念なことであると考えております。
  99. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体わかりました。  次に、国防問題について総理にお尋ねをいたします。  実は昨日、本委員会において坂田防衛庁長官からいろいろお話も承りました。なお丸山防衛局長からも明快なお答えをいただきました。内容の是非は第二といたしまして、防衛庁長官と丸山名防衛局長がしっかりスクラムを組んでやっておるということは認めております。そこで、きょうは私は総理と論戦を交えよう、議論をしようというて参ったのではありません。時間はわずかに三十分でございます。そこで、総理のお考えを明快にお答えいただければ次々と参りますので、その点をひとつ前もって申し上げておきます。  先ほど申しましたように、ずいぶんきのう論議いたしましたが、有事の場合に、安保条約第五条が発動されるような事態において制服による作戦調整機関を設置する、こういうことを検討しておると昨日お話があったわけなんです。こうしたことは結果的に、指揮系統は日米別個の二元的なものである、こうおっしゃっておりますけれども自衛隊が米軍のアジア戦略に、その中に組み込まれていく。これはきのうもずいぶん話したのですが、事実は組み込まれていくのじゃないか、防衛庁長官は二元的とおっしゃるけれども。日米両国の軍事力のバランスの上からこれを考えました場合に、どうしてもこれは米軍が指揮権を握る。ようございますか。しかも自衛隊がそのもとにあって行動をするというようなことになるのじゃないかというおそれがある。これは私、きのうずいぶん論議いたしました。このようなことは絶対にない、あくまで二元的だということを総理は明快に仰せになることができるかどうか。もしあくまで二元的であって、そうじゃないとおっしゃるならば、その根拠をひとつ簡明にお答えを願いたい。
  100. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本自衛隊はいろんな制約を持っています。憲法の制約も当然でございますし……。したがって、米軍と自衛隊との指揮権というものは別々である、一緒ではない、別個の指揮のもとにそういう場合に行動がとられるという従来の防衛庁長官あるいは防衛局長答弁はそのとおりに考えております。
  101. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは、有事の際においてシビリアンコントロールはどういうふうに有効的に発効されるか、その点について総理、ひとつお答えを願いたい。
  102. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 シビリアンコントロールについては、防衛については政治が優先しなければならぬということは、これはもう当然のことでございますが、有事でも、あるいは有事でないにかかわらず、自衛隊は、その法律に従って文民である、しかも自衛隊の最高指揮監督権は総理大臣が持ち、そして政務の統括者は防衛庁長官である、この指揮監督に従ってその任務を全うするということが、有事、有事でないにかかわらず貫かなければならぬシビリアンコントロールの原則であると考えております。
  103. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まことに総理に申し上げにくいけれども、まだ抽象的で、どうもかゆいところに手が届かないような、隔靴掻痒の感がなきにしもあらずですけれども、きょうは論戦はしないと先ほど申し上げたものですから、時間は刻々来ますから、その点で一応承っておきましょう。  次に、日米安保条約で、直接日本が攻撃を受ける場合ということは、もうそれはわかりますが、それ以外の場合、いわゆる極東条項によって米軍は日本の基地を使用して軍事行動をとることができる、これは御承知のとおりでありますが、もしこのことがわが国の平和と安全に好ましくない、このように判断された場合、米軍の軍事行動を中止させるとか、いわゆるチェックするということは、わが国政府としては可能であるか、できるかできないか、これは私は大事なことだと思うのです。それはどうですか、総理
  104. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 わが国の平和と安全に関係のないような場合において、事前協議においてそれにイエスと言うことはありません。
  105. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 論戦しないと言っておったけれども、ちょっとその点が……。じゃイエスと言う場合ノーと言う場合、それはわが国の安全あるいは平和に好ましくないとお考えになった場合にはノーと仰せになるわけですか。
  106. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 イエスと言わぬということは、ノーということでございます。
  107. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 なかなか明快ですな。右でなければ左。まことに名答弁。さすが国会の長い間のベテランであるだけあって、ほかの連中もこういうふうに返答すると大変委員会もスムーズにいくんだけれども、くだらぬことばかり言うからいけない。総理を皆見習って。  次に、お尋ねしたいのでありますが、ベトナム戦争以後、その後に日米防衛分担問題ということが、これはきのうも坂田長官と四時間にわたって論戦をいたしましたが、時間があれば私も四時間でも五時間でも論戦することにあえてやぶさかでないけれども政府側から防衛分担問題ということがいま持ち出されて論議の対象になっておりますが、これは日本政府が、米国の日米韓軍事同盟にみずからを組み入れていくというような、そういう朝鮮半島を意識しての防衛分担という発想じゃないか。総理、私の言うことおわかりでしょうかね。私は、そのように考えるのでありますが、ようございますか。総理は、朝鮮半島で戦争やあるいは紛争が起こってはならないと、先ほども大出さんの質問に対してお答えになっておる。朝鮮半島においてそういうことがあってはならない、またないと確信しておる、戦争とか紛争とかいうようなことが。そのためには私は十分外交上の努力をいたしております。こういう御答弁があっておったことを私は拝聴したのです。  ところが今日、最も大事な防衛問題について、防衛分担ということが論議されておりますが、そのよって来たったゆえんは、これはまさに私は朝鮮半島から発想が来ておる、こう思うのです。じゃ総理は、おれは外交上そういうことは絶対ないように努力している、こうおっしゃっておるが、一体どういう外交上の対策、努力を、具体的にどういうことをなさっておるのか。  ことに、申すまでもないことでございますけれども朝鮮半島の北は全然日本との外交上の取り決めは何もない。そうしましたときに、どういうことでそういう自信のあることを言われるのか。そういうことはあり得ない、あってはならぬということを非常な確信と自信を持って仰せになっておるが、だったらおれは外交上こうこうこういうことをやっておる、だから諸君心配するな、そういう具体的な何があるのか、こういうことをひとつお尋ねしておきたい。
  108. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま防衛庁のいろいろな防衛計画というものは、朝鮮半島を意識して、そのことを焦点にして、そして日米間の協力関係というものをいろいろ話し合いをしておるというわけではないわけです。全般の問題であると御承知を願いたい。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  それから防衛分担という言葉は、何か誤解を生ずる言葉なんで、これからは日米協力と言う方が適当ではないかと坂田防衛庁長官にも言ったわけです。したがって、これはもう少し——日米間の協力については、いままで話さな過ぎたと私は思っているのです。だから大いにやったらいいということを言っておるわけです。こういうことで、協力関係というものをもう少しやはり進めていきたいと思うわけですが、それは朝鮮半島を意識しておるのではない。  それから、どうして戦争が起こらないと考えているのかということは、国連においても国連軍の解体問題というのは、国連の大きな問題になるわけです。これは存続が無理なような情勢ですが、しかし、だれもがあの休戦協定を維持したいと考えているのです。いままでの休戦協定を御破算にしてまた、戦争状態に入ることはだれも望んでいない。韓国北鮮もそれは希望してないし、そして友好関係にあるソ連にしても中国にしてもアメリカにしても日本も、もうだれも望んでないのですから、皆が何とかこれは防ぎたい。だから国連軍が解体されても、休戦協定そのものを破壊しようとはだれもしてないのですから、これは何らかの形でああいうふうな休戦協定というような考え方というものが継続されなければならぬと考えておるわけですから、やはり朝鮮半島というのは世界の耳目が集まっているわけです。  そういうことで、朝鮮半島というのは、この国連総会においても重要な問題の一つです。日本ばかりではないのです。日本けが、おまえ一人が力んでもだめだろうと言うが、世界だれもが、やはり朝鮮半島に軍事衝突の事態を起こしてはいけないと皆が考えておりますから、これは各国と協力してそういう事態を防ぐための国際的環境というものがすでにあるわけですから、何もないのに日本が一人相撲ではないわけですから、私は、絶対という言葉は使いませんよ、世の中のこと、しかし朝鮮半島自体がそういう軍事衝突の事態が起こるような——小さい紛争はあるでしょう。しかし軍事衝突が起こるような事態は私はまあ考えられない。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕  またそういうことのないために、今後関係諸国とも国連の場などを通じ、その他の個別的な外交折衝を通じて事態を防ぐためにもう日本は万全の努力をしなければいかぬ。実際朝鮮半島にそういう事態が起ったら、これはやはりもろに日本国民の不安というものは非常につのるわけでございますから、そういう努力をしていきたいと申しておるわけでございます。
  109. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは、やはり先ほどの大出議員に対する御説明の敷衍的なことであって、補足的なことであって、あくまで抽象的で私の質問に対しては大分お答えになっていただかなかった。こういうことをやってこうしておるという具体的なお答えがなかった。それに対してどうということはそれでいいですが、日本の基地から米軍が行動を起こすということは、あに朝鮮半島のみじゃない、全般的なものだ、むろんそれはわかります。わかりますが、しかし、いやしくも、日米韓と軍事同盟を結ぶようなそういう形に持っていくんじゃないかということは、等しく国民の疑惑の的になっておるわけです。その点はひとつ総理もお考え願いたいと思う。  それから、結局この問題に関連しておるわけでございますが、いま十分そういう点は努力をしておるからとおっしゃることはそれでわかりますが、それではこういうことをお尋ねしたい。  亡くなられた佐藤さんがニクソンと共同声明を出された。その第四項に——つまり朝鮮半島に対して平和的外交努力をなさるとあなたはおっしゃっておるけれども、ニクソンと佐藤さんとの声明韓国条項は、今日どのように総理はお考えになっておるのか。これはもう再確認はなさらないのか。そうしないとさっきのお話が私は矛盾してくると思うんですね。韓国のみならず朝鮮半島全体の平和、一朝有事の際には日本に直接関係が深い、それは韓国のみじゃない。ところがニクソンと亡くなられた佐藤さんとの韓国条項は北は含んでいない。それはもうないものとお考えか、もう一度それを再確認されるのか、再確認しないのか。これがまた大事なポイントになる。先ほどの総理の論理からいきますれば、これは私は大事な条項だと思う。それをどのようにお考えですか。
  110. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、韓国条項があるとかないとかいうことでなくして、韓国並びに朝鮮半島の動向というものが日本の安全に対して重大な関係を持っておるということは、国民が素直に考えたらだれでもそう思うと思いますね。だから、韓国条項があるからそう思うのか思わないのかという、そんなもののあるなしにかかわらず、韓国並びに朝鮮半島の動向というものは日本の平和と安全に対して非常な関心事であるし、また、これはかかわり合いを持つ問題である、あってもなくても私はそう思うのです。また韓国は、朝鮮半島は独立して存在していないのです。やはり朝鮮半島全体の動向に韓国の安全は影響を受けているんですから、韓国だけだというわけにはいかぬ。韓国並びに朝鮮半島の動向というものから、日本の平和と安全に対して重要な関心を持つことは当然である。共同声明は、そのときの首脳部がそのときの認識によって決めたものでありますから、そのときの認識としてはそういうことであったのでしょうが、いまも私はそれがあるからないからと言うのではないんですよ。あってもなくてもそう思うんですよ。だれでもそう思う、そういうことでございます。
  111. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 亡くなられた佐藤さんとニクソンとの韓国条項、つまり韓国の安全は日本の安全に非常に緊要である、こういうふうな韓国条項があるんですよね。ところが、あってもなくてもおれはそういうことにこだわらない、このように総理はおっしゃっております。そういうことはもう再確認しない、そういうことはあってもなくてもこだわらないと。なかなか三木総理は広いお考えで、ようございますね。そのように私、理解いたしますが……。
  112. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いや、あるからないからということで、韓国並びに朝鮮半島の動向が日本に重大なかかわり合いがある、ないと私は思わぬのです。あったからなかったから特にそういうふうに考えると言うのではないんですよ。それは私の認識ですよ。それはやはり韓国、またその背景をなす朝鮮半島の動向、韓国がぽつっと韓国だけで存在しないのですから、やはり韓国並びに朝鮮半島の動向というものは、韓国自体の安全に対して重要な影響を持ちますから、韓国並びに朝鮮半島の動向というものに対しては、私は重大な関心を持つものです。それはまた日本の安全に対しても重要な関連を持っておると私は強く信じておるんですからね。それはもう条項があるからないから、あったからそうだ、ないからどうだということではないということでございます。
  113. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは結局、このニクソンと佐藤さんの韓国条項の、韓国の安全は日本の安全に緊要であるということが韓国並びに朝鮮民主主義人民共和国の安全は日本の安全に対して非常に緊要であるというように解釈していいわけですね。ようございますね。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、私が言っておるのは、韓国並びに朝鮮半島の動向というものは、日本にとって重大な関心事でもあるし、日本の安全に対して重大なかかわり合いを持っておるということでございます。日本友好国である韓国の安全というものは、当然にそれとかかわり合いを持つわけですから重要であることは申すまでもございません。
  115. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これで質問は終ります。三木総理はお疲れであったと思いますが、どうぞお体をお大事になされて。ありがとうございました。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば非常な温いお言葉をいただきまして感謝をいたします。私もまだ当分日本に必要であると思いますので、これから十分静養をいたしまして、努力をいたしたいと思います。
  117. 藤尾正行

    藤尾委員長 受田新吉君。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 三木総理、先般はどうも大変な災難で、されど非常に御健康で質問を受けてもらえますので安心してお尋ねをいたします。  三木さん、最初に、天皇陛下が今秋米国を訪問されるわけですが、その目的はどう理解しておられますか。
  119. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先般フォード大統領もおいでになりまして、そして天皇陛下がそのホストを務められまして、そういうことでも当然、天皇陛下がアメリカおいでになるであろうということを国民としても感じたでしょうし、また、しばしばアメリカからも招待を受けていることは事実です。ニクソン時代から招待を受けておる。したがって、天皇陛下は政治には御関係をなされませんけれども、しかし、両国のこういう友好親善関係というものの一つの非常に画期的なできごとだと思います。そういう点で、日米間の親善関係というものの基礎をさらに固めるために、大変に陛下の御訪問というものは意義があるものだと受けとめておるわけでございます。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 陛下のアメリカ御旅行は、アメリカから見れば日本の元首が訪問されるという形になりますか。
  121. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外国からとればそういう形だ、こういうことで歓迎をされると思います。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 日本からは象徴天皇、アメリカからは元首という判断での御旅行ということについて一つお尋ねしておきたいことがあるわけです。  私自身、陛下が日米親善のために、国際親善のために御旅行されることは非常に結構であると思いまするし、お年を召された陛下が御本人御希望されていることを果たして差し上げること、並びに米国に日系人がたくさんいらっしゃる、その皆様に大きな喜びを与えるという意味で大変結構だと思います。御平安な旅行を祈る一人であります。  ただ、ここで法律的に明確にしておかなければならないことがあるのです。それは、相互訪問という形で大統領の訪問をお受けになった日本、また陛下の訪問をお受けになるアメリカという形、一方では日本では元首という意味ではなくて象徴天皇としてお送りする、向こうからは元首が日本へ訪ねてくる、この関係はどうなりますか。そして陛下の御訪問は国事行為かどうか、これも明確にしていただきたいと思います。
  123. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうふうな憲法上の解釈というものを、アメリカ人はそういうふうに厳密に、どういう資格だというふうに受け取らないと思います。象徴天皇として、日本の象徴としてめ地位に基づいてアメリカはお迎えをするということで、天皇が憲法上どういうことであるかという議論がアメリカで行われたことは私は聞いたことがないわけです。そういうことで憲法において象徴としての地位をお持ちになっておる天皇陛下をお迎えするということで、そういう憲法論議というものがアメリカで繰り返されたとかそういうことが問題になったことは一度も聞いておりません。  それから、天皇の外国訪問は国事行為ではございません。儀礼的なものである。政治問題に関与することはあり得ないことでございます。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 田中・ニクソン共同声明の中に天皇訪米をうたったことに対する政治批判も出たほどでございますから、特に慎んでもらいたいのですが、日本側としては、陛下の海外旅行に対して何らかの法的根拠をつくって差し上げる方が親切ではないかと思います。陛下の海外旅行に関する法律というようなものが何かの形で生まれていまの疑義が解決できるように、国事行為ではない、しかし閣議決定はする、内閣の助言と承認は要るというようなあいまいな問題ではなくして、基本的な解決策を何らかの形でとっておく方が、非常に複雑多岐になりがちな法律論争を明確にする上で大切ではないかと思いまするが、御意見はいかがでしょう。
  125. 真田秀夫

    ○真田政府委員 陛下のなされる行為には、受田委員よく御承知のとおり、われわれから説明している従来の説明ぶりに従いますと、まず国事行為としての憲法に定めた一連の行為、それから全くの私人としての御行為も当然考えられるわけですが、この二通りだけかと申しますと、そうではなくて、中間的と申しますか、象徴たる地位に伴っておやりになる公的な行為というものが考えられるというふうに申しておりまして、この三種類でございまして、今秋予定されております御訪米も、もちろん憲法に列挙してあります国事行為ではない、さればといって純粋の私的行為とも申されませんので、数年前にヨーロッパに行かれましたときと同じように公的行為、学者によっては準国事行為と言っておる人もおりますけれども、そういう種類の範疇に属する御行為だろうと思います。  そこで、いま受田委員が仰せられました、天皇のそういう御行為についてのもっとはっきりした法律の規定をつくったらどうだというお話でございますが、何と申しましても、陛下の事実上の行為でございますので、特に法律がなければならぬという性質のものではない、これはおわかりいただけるだろうと思います。  あと、残りますのは、手続上の問題といたしまして助言と承認にはかからないはずでございますが、閣議で皇室に関する国家事務として宮内庁が所管し、総理府が所管し、ひいては内閣が責任を負うという部類でございますので、何らかのそういう手続を決めてもいいじゃないかという御意見もごもっともだと思います。だけれども、それにしましても、実は法律の形でなければならぬというふうにも思いませんので、その辺を含めましてなお検討してみることにいたしたいと思います。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 総理、あなたは非核三原則の強力な推進者、また本年劈頭の施政演説におかれても、日米安保体制における武力的な提携ということよりも経済的な、あるいはエネルギー、食糧等のような平和的な問題の方を大きく取り上げるべく提唱をされております。したがって、あなたは従来の総理がとかく武力的な日米安保体制に意欲を注いできた感じのする中で、どこかに平和のにおいのする総理の印象を国民に与えてきた。しかも非核三原則は内閣の生命であり、自民党政権の続く限りこれを守るという将来の展望までも決意されておる。それでありますと、今夏アメリカを訪れられたときに非核三原則のこの熱意を共同声明にでもうたうというような熱意がおありか。核拡散防止条約のおみやげがあれば、あるいはそれに取り組まれたかもしれぬが、このおみやげがないとなるとなかなか言いにくいとかいう事情があるかどうか。むしろあなたの熱意を日米共同声明に強くうたう。そこにおいて初めて日米安保体制の中の不安が日本国民の中から消えるということにもなるわけでございまするが、あなたのような久しぶりに平和への強いにおいのする、日米安保体制の上にも経済協力というようなところへ力を入れる総理が生まれたこの機会に、かつ非核三原則を強力に提唱される総理が生まれたこの機会に、初めて日米首脳共同声明にこの非核三原則の強烈な国民総意を反映させることを私は要望したいと思います。
  127. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の非核三原則というものは、世界的にも非常に理解されている。先般亡くなられた佐藤さんがノーベル賞まで受賞されたのは、非核三原則というものを推進したという理由が主たる理由になっておりますから、もう世界は各国とも日本の三原則というものは理解する。しかもその背景には、広島、長崎で世界で唯一の被爆国民であるということで、日本がそういう悲願を持つことに対して世界は深い理解を持っておるわけでございますから、私は、日本の今後の外交というものは、この非核三原則一つの基盤にして大いに平和外交というものを推進したらいい。これはいろいろ問題はあるけれども一つだけ防がなければならぬのは、核戦争の勃発を防止するということです。核戦争が起これば、もう人類はおしまいなんですから、何としてでも核戦争というものの再発を防ぐということが、プライオリティとしてこれ以上のものはないのです。いろいろなことを言ってみたところで、大きな核戦争をやられたら、人類は皆おしまいになるんですからね。だから、これだけの大きな人類の生存をかけた問題に対して、非核三原則というものを日本が堅持して、これで外交をやることが、日本が世界に対して貢献する道だと思いますよ。  そういう点で、この国会でもいろいろ御議論があるようですけれども、この批准を受けたいと私は切に願っておるわけですが、これをおみやげに私がワシントンへ行くことではないんですよ。これをおみやげにしなければどうということではないわけでございまして……(受田委員「大したことではないんだね」と呼ぶ)大したことでないことはない。しかし一つだけ私が申したいのは、どうも日本発言というものが世界に説得力がないんですよ。平和国家、非核三原則と言ってノーベル賞ももらっておいて、そうしてこの核拡散防止条約に調印して五年たっても——あるいは査察条項なども、原子力平和機構の中で日本に対して最大限度の不平等な措置でないものを、日本が今度のウィーンの会議においてもかち取ったでしょう。日本が平和利用に対して不平等な扱いを受けるということでユーラトム、欧州の原子力機構との間に差をつけられるということを一番の問題にしたでしょう。その問題が解決しても、なおかつやはり批准は受けられぬということで、日本平和国家としての発言力は何か後ろめたいものがないでしょうかね。もし言うことが真実ならば、日本は核兵器を開発しないという決意国民の意思として表明して、そこから平和外交を出発すべきですよ。自分は入らないで、核軍縮しないから何だと言っても、日本の主張はごもっともだと私は世界は素直には受け取らないと思いますね。自分はちゃんとそれだけ開発しようとすれば開発の能力を持ちながら、その道を断ち切って、世界に対して核兵器というものを軍縮でだんだんなくしていこうというこのことを、世界に向かって主張するのが平和国家としての日本の使命じゃないでしょうか。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカへどうするかと言うているんですよ。共同声明にうたうかどうかです。
  129. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この非核三原則ということは、もうアメリカも当然に知っていますよ。何かと言えば日米安保条約でこの問題は厳しく言っておりますが、あらゆる機会に私はアメリカにおいてもこういう日本の願いは伝えるつもりです。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 一番最後の質問です。時間に制約がありますので、いまから私まとめてお尋ねしますから、与えられた時間内にそれぞれ御答弁をまとめてしていただきたいのです。  総理、第一に防衛力の増強計画を政府は国力、国情に応じてやっておられる、しかしあなたの施政方針演説、非核三原則の採択などを見ますると、このあたりでもう長期防衛計画などにも一つの歯どめを持たして、いまの時点の防衛力が上限である、この内部で何とかならぬかと。むしろ平和外交を推進すること、そして国内において福祉政策を十分とること、そういうようなところへ力点を置いて、自然に国民合意を得られる形で現時点を上限とする防衛計画をお立てになる必要がないか。国論はいま二分も三分もされておる時点です。これほど国論が分裂するような国は外国にないような状態であるだけに、政府自身もそして自民党も、各党の立場も十分考えて、防衛力の増強をただ軍拡競争のような形にしないで、現時点を上限とする防衛計画の樹立。  それからもう一つ、長期防衛計画というようなものは、国民合意を得るために国会の承認を得るという原則、これはシビリアンコントロールにも大変影響しますので、長期防衛計画は国会の承認事項にする。国防会議の付議事項に、治安出動などという重大な出動はこれを掲げる。あるいは自衛隊の最高幹部の人事などもこの付議事項にするなどという、ただ単に防衛庁中心になった防衛計画というような問題でなくして、外交、財政、あらゆる面を取り上げた広い、平和的な防衛、国土、国民を含めた平和原則を立てるようなかっこうを進めるべきじゃないか。シビリアンコントロールの基本をやるのはやっぱり総理です。総理がそういうことをひとつ御検討願いたい。そして非核三原則はあらゆる国内法に優先するのかどうか、この問題もひとつ明確にしていただきたい。以上の点を御答弁いただきます。
  131. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私どもは、やはり日本の立場からしてある程度の最小限度の自衛力を持つことは必要である。自衛力を持たない、自衛力は持つ必要がないという説には賛成できない。ある程度の防衛力は日本が持つことは必要である。しかし核開発はしない、核兵器の開発はしないというのですから、日米安保条約によってそれは補完していきたい、これが基本考え方でございます。  しかし防衛力というものに対しては、一応の歯どめが必要であるのじゃないかという御説でございましたが、坂田防衛庁長官も申しておりますように、国民総生産の一%以内、これは国民総生産の三%も四%も使っておる国もありますが、一%以内というのが適当だと考えておるわけでございます。そして今後は、自衛隊もできるだけ整備更新とか近代化を中心とした質的な向上に重点を置いてまいりたい。むやみに拡大すると言っても、今日の日本の財政経済事情から言ってそれは許しませんし、また財政経済が許さぬと言っても、必要があれば優先しなければなりませんが、今日の情勢から見れば、日本の憲法下における自衛力というものは、いま言った程度が適当であろうと考えておるわけでございます。  その間、シビリアンコントロールというものは貫かなければ、過去の日本の歴史はそれを教えておるわけですから、シビリアンコントロールの精神というものは貫かなければならぬし、憲法の範囲内ということも逸脱してはならない。  ただ残念なことには、受田さんも御指摘になりましたけれども、防衛問題というものが国会内において各党の合意を見ていないというところに、長期的に考える場合においても非常にいろいろな支障になるんですね。だからこの問題について、もう少し歩み寄ることができれば日本の防衛政策というものはもう少し国民の中に定着すると思います。野党の立場を支持する国民というものも総選挙等にあらわれる支持率は相当にあるわけですから、国の安全保障に関する重要な問題が国内において国論が分裂しておるということは、いろいろな防衛計画を立てる上においても非常な障害になるわけですから、この問題についてすぐにコンセンサスを得ることは困難にしても、民社党が提唱されるように、国会内に安全保障の問題に関する特別委員会でも置いて、もう少し各党間でこの問題について話し合うような機会ができることが私は必要だと思っているのです。自民党もそういう考え方を推進してまいりたい。これはいろいろ立場は違っても、国の安全保障は、わしの方は考えないという、そんな無責任政党はあるはずがないんですよ。いろいろ方法論は違っても、国の安全を確保するということは政治の第一義的な責任であることは明らかですよ。その安全というものに対しての方法論に違いがあるわけですから、だから安保反対は反対でいいですよ、安保反対はいいけれども、国の安全保障というものに対して余りとらわれないで、やはりこれを各党が一遍話し合うような場ができないのか。そして予算委員会とかいろいろな場面はありますけれども、もっとこれを真剣に掘り下げるような話し合いの場ができるならば、この問題について、反対は反対であっても、何か各党間のもう少し共通の土俵ができるのではないか。  土俵がいま違うんですからね。それがやはり国民の中へ入って、皆違った土俵から発言する、自民党も違った土俵から発言するということで、こういう状態では国民のコンセンサスができるというような素地はないですからね。こんな先進国はどこにも例がないということでしょう。どこの国だって国の安全確保については、皆がそれぞれに苦心をしておるんですからね。そういうことは国会の問題ではございますが、われわれとしてもそういうことを切に願うものでございます。(受田委員「そこへ出た書類を見ていただきたい」と呼ぶ)  国防会議につきましては、いままで国防会議というものは余り開かれていないんですよ。いろいろ国防会議の懇談会もございますし、国防会議のあり方についてはこの運営について改革を加えたい。予算のときにちょっと国防会議を開くようなそういう国防会議ではいけない。これはやはり改革を加えたいと考えておる次第でございます。(受田委員「そこには要望したことが出ています。お尋ねしたことが手元に。いまの長期防衛計画の扱い」と呼ぶ)  長期防衛計画というのは、やはりいろんな情勢の変化もございますし、兵器の変化もあって、なかなかむずかしい問題ではございますが、こんなものは一年限りというわけにもいかないのですから、何か長期の展望を踏まえて国防会議などで話し合う議題だとは思いますが、いまかちっとした五年計画とか十年計画というものをつくり上げることには実際問題として困難があると思っております。(受田委員「国会に付議することです。長期防衛計画は国会に諮れ、それの提案です。防衛庁だけでやらぬで政府が国会に相談して承認をとれ」と呼ぶ)それは、やはりそういう四次防などに関してのことは、国防会議においては十分検討をいたします。それは、国会で御審議を願うのは、予算という形において十分な御審議を願いたいと思うのでございます。
  132. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  133. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  134. 木原実

    ○木原委員 日本社会党を代表いたしまして防衛二法案の改正に反対の討論をいたします。  海上、航空自衛隊計八百五十三人の定員増を認めるわけにはまいりません。  第一に、政府は他の行政分野におきましては定員削減の方針をとっておりまして、しかも行政需要がふえ、国民がサービスを求める分野においてもなお人員が政府の方針によって満たされていない。そういう状態のもとで自衛隊のみが定員増を求めるというのは、政府の方針としてもひとつ慎重に検討してもらいたいと思います。  第二の問題としまして、自衛隊の定員につきましては、陸上においてはもちろん海と空におきましてもなお一〇〇%充足をしていないという現状がございます。もし必要ならば、その定員の充足率を満たす中で賄うべきであると思います。すでに定められた定員を、その幅を容易に広げるべきではない。定員の枠を広げる理由は、今回の場合におきましても国民を納得させる理由に乏しいとわれわれは判断をいたします。  第三に、自衛隊はその装備、定員におきましても拡大の一途をたどってまいりました。そしてその歯どめについては、先ほども論議がございましたけれども、必ずしも明確に示されておりません。国民の不安は、自衛隊はどこまで高度成長をしていくのかという点にもあるわけであります。自衛隊にはさまざまな制約の条件がありますけれども、その制約を越えて伸びている。情勢によって、情勢に対応する姿勢の中で、自衛隊にも増減があってしかるべきであると思うわけでありますけれども、いまだかつて減ということはなかった。増の場合につきましても、なぜふやさなければならないのか、その情勢判断や長期的な戦略的な根拠についても、必ずしも政府は、少なくともこの国会の審議の中で明らかにはしていないと思うのです。これは先ほども、受田委員からの最後の質問の中にも示されておりました。ただ船ができたから人員をふやしたいというだけでは納得するわけにはまいらないわけであります。そうでなくても自衛隊の中で占める人件費が大きなウエートをすでに占め過ぎている、こういう判断もあるわけであります。  以上のような理由に基づきまして防衛二法案に反対をし、ひとつ再度検討し直してもらいたいと思います。  以上です。
  135. 藤尾正行

    藤尾委員長 吉永治市君。
  136. 吉永治市

    ○吉永委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し賛成の意見を表明いたします。  今日の国際情勢、特にアジア情勢は、改めて安全保障問題の重要性を浮かび上がらしてまいりました。しかもインドシナ情勢の急変等を見ると、安全保障体制を有効ならしめるためには、みずからの国をみずからの手で守るという自助の努力がいかに重要であるかということを痛感せしめられたのであります。  わが国の独立と平和を守るため、政府は従来から日本安全保障については、日米安保体制のもとで有事に備え、必要最小限の自衛力の整備に真剣に努力をしてこられました。しかしながら、日米安保体制の信頼性のより一層の強化と自衛隊教育訓練の徹底及び国防意識の国民合意を図るため、今後ともなお一層努力されるよう、強く要望いたす次第であります。  今回の自衛官八百五十三人の増員及び航空団の移転は、こうした努力の一環のものであり、わが国の防衛力の整備の上から見て、まことに時宜に適した措置であると確信をいたします。  なお、これら防衛力の整備とあわせて、基地周辺の住民に対する諸施策についても、引き続き一層きめの細かい対策を推進されるよう要望いたします。  また、防衛は国民の心から発し、国民の心に支えられるべきものでありますることは御承知のとおりであります。わが国の防衛力を真に国民的基盤に立ったものにするための諸施策を、なお一層積極的に推進せられるよう特に要望いたしまして、私の賛成の討論といたします。
  137. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路雅弘君。
  138. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  今日、自衛隊は、陸、海、空三軍二十六万、社会主義国を除くアジア諸国中第一位を占める強力な軍隊に成長しました。この自衛隊は、その装備、編成、用兵、訓練教育のすべての面から明らかなように、アメリカの太平洋軍の補完的部隊としての役割りを負わされた軍隊であり、また長沼裁判が糾弾したように、憲法九条に違反した違憲の軍隊であります。  今回の改正案は、海、空自衛官の増員と航空自衛隊第三航空団を小牧から三沢へ移駐させるという二点であります。  わが党は、当面、四次防に基づく自衛隊の増強に反対し、四次防計画の中止と自衛隊の縮小、スパイ基地や情報部隊などの廃止を主張してまいりました。今回の改正案は、このわが党の政策、主張とは全く相入れない四次防計画推進の自衛隊の増強であって、わが党としてはとうてい容認できないものであります。  また、第三航空団の移駐についてでありますが、第三航空団が置かれている小牧市は、都市化の進行とともに騒音公害など、住民との矛盾が激化し、加えて昨年七月、小牧基地第三航空団所属のF86Fジェット戦闘機が墜落をし、市民を含め死者、重軽傷者を出し、民家を全焼するという事故が起こりまして、小牧市議会による小牧基地移転決議を初めとする住民の基地撤去の運動が急速に盛り上がっていたのであります。  こうした背景のもとで、防衛庁自衛隊は、一面では住民の要求に押される一方で、他の一面ではこれを機会に第三航空団を三沢に移し、日米共同作戦体制の強化に見合った部隊の再編成を図ることを意図し、今回の三沢移駐を推し進めるとともに、小牧には、現在美保基地に置かれている航空自衛隊輸送航空団の一部を配備するというように、部隊の効率的な運用を図ろうとしているのであります。  このように今回の改正案は、小牧市民の基地撤去の要求にも背を向け、三沢市民の第三航空団移転反対の要請にも反して進められている自衛隊部隊の再編強化以外の何物でもありません。  以上のような理由から、今回の改正案の自衛官の増員、部隊の再編強化に強く反対をし、討論を終わります。
  139. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木勝利君。
  140. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私は、公明党を代表いたしまして、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する防衛二法案に対して、反対の討論を行うものであります。  昭和二十五年八月、警察予備隊が創設されまして、わが国の再武装が実施されて以来、すでに二十五年を経過いたしております。  当初、戦力なき軍隊と言われていた自衛隊は、今日では、核保有国を除くと世界で十指に入る状態にまで強化され、拡充されたわけであります。  しかもその間、自衛隊の行動範囲も拡大解釈されまして、従来の政府見解では、領域外に出ることはないとされていたのが、現在では、日米安保条約に基づく日米両国の共同行動が発動される際の自衛隊の行動範囲は、わが国の防衛に必要な限度内で公海、公空に及ぶと拡大されております。  また、防衛構想も、従来の専守防衛から戦略守勢に改められ、自衛隊が自衛という名のもとに積極的に敵地を攻撃することもあり得るとされております。  このような自衛隊の実態は、きわめて危険な道を歩んでいると言っても過言ではありません。  特に日米安保体制自衛隊は、米国のアジア核戦略体制に完全に組み込まれ、米国の主導のもとに置かれております。日米防衛分担によって一層その関係が明確にされようとしております。この体制は、非核三原則に反し、米国の核戦力を認め、進んで米国の核のかさの有効性を是認するきわめて危険なものであります。  このような状態に置かれている自衛隊をさらに強化拡充するための防衛二法案は、断じてわれわれは認めるわけにはいきません。  ベトナム戦争の終結により、平和への着実な歩みが開始されようとしているアジアにあって、今回の二法案においても見られるように、平和憲法を有するわが国が依然として軍事力増強を図ろうとすることは、まさに時代に逆行するところであります。  政府は、憲法第九条の戦争放棄の精神とわが党の提唱するところの絶対平和主義に基づく国民合意を速やかに確立し、全世界に平和憲法の精神を宣揚して、世界平和の前進を期すべきであります。  力によって立つ国は力によって滅亡することは歴史の教えるところであります。私は、政府自衛隊増強という軍事力優先政策を速やかに改めるべきことを強く主張いたしまして、本防衛二法案に反対いたしまして討論を終わります。
  141. 藤尾正行

    藤尾委員長 受田新吉君。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 私は、民社党を代表しまして、いま上程、審査されつつある防衛関係二法案に反対の意見を申し上げます。  私たちの党は、国土、国民を守るための最小限の自衛措置を認めておる政党であります。しかし同時に、いま置かれている日本の経済情勢、そして外交情勢等を見るときに、ことさらに防衛力の増強を図るべき時期でなく、むしろ防衛力を現時点に停止して量よりも質そしてそこに勤務される自衛官の待遇向上等に心を費やすべきであって、十八万の陸上自衛隊の定数の中で二万五千も欠員がある、しかも総理をねらうようなばか者が自衛隊で養成されているというような事態を見るときに、自衛隊の隊員の中で質的向上をこの際根本的に考うべき時期が来ていると思います。競争によって隊員が得られるような、選考事情がもたらされるような自衛隊であるためには、いまのように志願さえすれば通るような自衛隊であってはならない。この点からも、わずか八百人ばかりの増員を図る、それは海、空という方ではありましても、このわずかの増員を図るというお気持ちが私たちにはわからない。司令部を移転するというただ一つの変更の手続、そのために国会のこれだけの抵抗をあえて冒してまで通さなければならない法案であるかということを私たちは疑わざるを得ない。むしろ謙虚に、現時点の自衛隊の内部を十分整理して国民の負担を軽減させ、むしろ平和外交によって国の防衛を担当するという国民合意基本線を歩むべきであって、わずかな人員をふやすために大騒ぎをしてまでも法案を通そうとされる防衛庁当局の意図が私たちにははかり知れないのでございます。  その意味におきまして、わが党はここに、大変申しわけありませんが、二法案に断固反対の意見を述べた次第でございます。
  143. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  144. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 藤尾正行

    藤尾委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  146. 藤尾正行

    藤尾委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 藤尾正行

    藤尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  148. 藤尾正行

    藤尾委員長 次回は、来たる二十日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十三分散会