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1975-03-27 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十七日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 上原 康助君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    大石 千八君       竹中 修一君    中馬 辰猪君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       山本 政弘君    和田 貞夫君       木下 元二君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (行政管理庁長 松澤 雄藏君         官)  出席政府委員         行政管理庁長官         官房審議官   川島 鉄男君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         行政管理庁行政         監察局長    大田 宗利君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         防衛庁経理局監         査課長     山下  博君         外務大臣官房領         事移住部長   越智 啓介君         外務省アジア局         中国課長    藤田 公郎君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      関  正命君         運輸大臣官房観         光部業務課長  佐々木建成君         運輸省自動車局         業務部長    真島  健君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   大石 千八君     篠田 弘作君   笠岡  喬君     木村 俊夫君   近藤 鉄雄君     木村 武雄君   吉永 治市君     千葉 三郎君   和田 貞夫君     岩垂寿喜男君 同日  辞任        補欠選任   木村 武雄君     近藤 鉄雄君   木村 俊夫君     笠岡  喬君   篠田 弘作君     大石 千八君   千葉 三郎君     吉永 治市君   岩垂寿喜男君     和田 貞夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第四九号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  許可認可等整理に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。越智伊平君。
  3. 越智伊平

    越智(伊)委員 許可認可等整理に関する法律案につきまして、少し勉強をしつつございましたけれども、まだ各省資料等も十分いただいてないのでございますが、きょうはとりあえず、行政管理庁に対しまして考え方を主としてお尋ねをいたしたい、かように存じます。ひとつ行政管理庁におかれましては、率直に、考え方について御答弁を賜りたい、かように思います。  まず最初に、最近における行財政硬直化に対処して、三木総理施政方針演説でも、今後行政改革に積極的に取り組む、こういう決意を述べられたのは御承知のとおりでございます。そこで、行政監理委員会においても、総理からの要請を受けて、今後における行政改革の課題と方向について提言を取りまとめ中である、こういうふうに伺っております。まず行政管理庁の今後の行政改革に臨む基本的な姿勢について御説明をいただきたい、かように存じます。
  4. 松澤雄藏

    松澤国務大臣 ただいま御質問がございました点に対して御回答を申し上げたいと思いますが、今後わが国が高度成長から安定成長への経済へと体質を改革するのに伴い、従来の陳腐化し、または非効率となった制度や機構などの改廃を初め、行政改革に取り組んでいかなくてはならないと考えております。三木総理は、現下の行財政硬直化に対処して行政改革に積極的に取り組む立場から、先日行政監理委員会に対して、行政改革についての提言を求められたものでございます。行政監理委員会は目下、これについて鋭意検討審議を進めており、近く成案が得られる見込みでありますので、行政管理庁といたしましては、同委員会提言を待って今後の行政改革に積極的に取り組んでいく決意をいたしておるものであります。
  5. 越智伊平

    越智(伊)委員 今回の許認可等整理法案は、昨年の十一月提出された行政監理委員会答申を推進するものであると承知をいたしておりますし、ここに、これもいただいておるわけでございますけれども、その答申はどのようなもので、またどのように受け取っておられるか、この点について御説明をいただきたい、かように思います。
  6. 松澤雄藏

    松澤国務大臣 まことに勝手でございますけれども、政府委員をして答弁をさせたいと思います。
  7. 川島鉄男

    川島(鉄)政府委員 それでは私から御説明させていただきます。  今回の行政監理委員会答申でございますが、これは過去、臨時行政調査会というところで改革意見が出されたわけでございますが、それから約十年を経過いたしております。その間におきまして社会、経済情勢、こういったものがいろいろと変動を見ているということにかんがみまして、改めてその許認可改善に関して総洗いをする必要があるんじゃないかということで御検討の結果いただいたものでございます。  それで、その内容でございますが、個別の許認可事項等の簡素、合理化の推進を主眼としまして、行政管理庁にかねて寄せられました各種の民間団体等からの御意見とか、あるいは地方公共団体等からの御意見とか、そういった御意見、御要望、それから過去において改革意見が随時出されておりますけれども、そういったものの中で未措置であったもの、今日的にもまだ問題として残っておると思われるもの、それらを含めまして約千二百二十件ばかりの素材を検討いたしたわけでございます。その検討した結果、監理委員会といたしましては、二百四十一事項について具体的な改善方法を示しまして御答申いただいたということでございます。ただ、二十二事項ばかりは、その委員会で御検討の途中ですでに改善が行われておりまして、正確に二百十九事項がこれから私どもが御答申に基づいて改善を図っていかなければならないものということになります。  その二百十九事項を、ある程度類型的に御説明申し上げますと、規制を継続してやっていく必要がないのだ、もうこれはやめた方がよろしいというような御意見のものが三十五事項ございます。さらに事務の簡素、能率化あるいは国民に対する利益を確保する意味におきまして、下部の機関において事務を処理するのが適当であるということ、これを一般的に権限を委譲するというふうに言っておりますが、こういった形で改善を図るべしと言われておりますのが三十六事項ございます。さらに統一的に処理することが適当であるということで、個々許認可を統合して一つ許認可でやれというような統合すべきものというのが十七事項ということでございます。そのほか規制のやり方を簡素化するということで、事務軽減するというようなことによりまして、規制を緩和していけという、たとえば許認可届け出事項にせよというようなそういった性質のものでございますが、これが三十四事項。その他簡素化を図れというのが九十七事項。こういう内訳になっておりまして、二百十九事項が今後改善さるべしというようなことでございます。  これが大体その答申の要旨でございます。
  8. 越智伊平

    越智(伊)委員 この行政改革を推進するためには、行政監理委員会役割りが非常に重要であるとは思います。しかし今回の答申が、非常に事務的に偏し過ぎているのではないか、本当にもっと重要な、本格的な許認可事項に取り組んでいくべきでないか、かようなふうにこの内容を見て考えられるのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  9. 川島鉄男

    川島(鉄)政府委員 この監理委員会の御答申でございますが、許認可という事柄性質そのものが大変じみでございまして、先生指摘のような意味もございましょうかと思います。ただ、この事項の中では、たとえば比較的重要な事項とされるもの、先ほど申し上げました二百十九事項のうち八十事項は、法律改正を待たなければ改善が行えないというような法律事項で、比較的重要な問題であるというふうに考えられますが、そういうふうなものが含まれております。  ですから、最初に申し上げましたように、本来がじみなことでございます。それで、答申内容事務的であるということについては、確かに御指摘のとおりだと存じますけれども、一つは、先生方の御審議の経過を伺っておりますと、許認可合理性を求めていろいろと御討議があったわけでございますが、それ以外にも実現が可能なことをなるたけ盛り込もうということで、いまのようにしぼられた数になったかと思いますが、そういうことで、そういう実現可能性というものを非常に重視したということもあるのではないかと思われます。しかし、その答申の中で、こういうふうに御検討になったわけですが、具体的指摘に至らなかったその他の事項につきましては、今後とも定期的に点検を行って、許認可改善を今後とも引き続きやっていくようにというような趣旨の御意見が含まれております。  そういうようなことで、若干その事柄性質がそういうことでありますが、内容としては重要なことではないかと存じております。
  10. 越智伊平

    越智(伊)委員 前の臨時行政調査会答申した許認可事項指摘事項、こういうものもまだ十分に改善されてない現段階で、この臨調答申して十カ年を経過したからということによって、いまどうしても見直さなければならない、こういうことの必要性、これは必要であろうとは思いますけれども、どうしてそういうことが必要なのか、以前の臨調指摘事項を十分に検討して実施した後にやるべきでないか、こういうふうにも考えられるのですが、この点いかがでしょうか。
  11. 川島鉄男

    川島(鉄)政府委員 御指摘のとおりでございまして、臨時行政調査会答申の中でまだ未実現事項がございます。  具体的に申し上げますと、指摘された総数は三百七十九事項でございましたけれども、大体三六%ぐらいに当たります百三十五事項がまだ未改善という姿でございます。しかし、その未改善のものの内容を見てまいりますと、やはり情勢が非常に流動的で、にわかに結論、廃止とかそういった措置に踏み切れないという状況のものもございます。あるいはその改善を図るについては、各省庁におかれまして、そこに付属しております審議会等に付議してその結論を待って措置したいというようなことがあって、なおペンディングになっているもの、あるいは数省庁にまたがっておりまして、それで結論を得るのに日時を要しているものとかいうのがございます。そういうものは一応ございますが、今度の御答申の中にも、臨時行政調査会の御指摘が、今日的にもやはり改善を図っていくべきものであるということでまた取り上げられておるものが、たとえば二十五事項ばかりございます。  そういうことで、情勢変化と、それから変化とは関係なしに、なお今日的問題になっておるというものは今回も取り上げておるという意味におきまして、今度の試みは意味があったのではないか、こういうふうに私ども理解しております。
  12. 越智伊平

    越智(伊)委員 ただいまも御説明の中に、各省庁にまたがっておられる、こういう御説明がございましたが、私の方も、この許認可法律案、当初に申し上げましたように、いろいろ検討をしていく中で、名省庁にまたがってなかなかこれは複雑である、でございますが、どうしてこれは各省庁でそれぞれ——総理は、もうたびたびの答弁で洗い直すとか見直すとか、こう言っておりますが、各省庁見直しをしていく、こういうことにした方がいいのでなかろうか。一括して行政管理庁がこの法律案を提出するということになりますと、非常に複雑で広範囲でございますが、こうした関係、私は各省庁でそれぞれ見直しをしていくことがいいのでなかろうか、こういうふうな疑問を持つのですが、この点いかがでございましょうか。
  13. 大田宗利

    大田政府委員 ただいま先生のおっしゃいますように、各省単独法で出すという場合もございます。ただ、それが制度基本の問題だとか、あるいは非常に重要な事項というものにつきましては、各省単独法の方がより適当だと私たち考えております。従来、行政管理庁では行政改革一環といたしまして、許認可整理簡素化ということを実施してまいりまして、昭和三十九年度の臨時行政調査会意見、あるいは昭和四十三年の行政改革計画という、そういう行政改革一環の中で許認可整理を実施してきたところでございます。  今回も先生指摘のとおり、基本的なものにつきましては、それぞれの各省単独法で提出する予定になっております。しかしその内容が、国民事務軽減の問題あるいは事務簡素化という軽微のものにつきましては、従来から行政管理庁が一括取りまとめまして法律案として提出するということになっておりまして、過去六回法律案として提出いたしまして、五回成立しておるということでございます。
  14. 越智伊平

    越智(伊)委員 ただいま説明がございましたけれども、この答申を推進する、こういうことでございますが、たしか答申事項数は約二百二十項、このうちに今回の法律案として提出されたものは二十数件とこういうことになっておる。第一番に約二百二十項目が二十数項目と非常に少ない。せっかく答申が出た、これはまあ私が申し上げれば、検討中であるとか折衝中であるとか、こういうことになると思うのでございますが、この点またそういうふうに非常に少ない、法律案として提出された項目が非常に少ないというのは、各省庁が反対をしておられるのでなかろうか、あるいは同意が得られない。同意が得られないということでやらないということになれば、せっかくの答申が何にもならない、こういうふうに考えるのですが、この点の御説明をいただきたい、かように思います。
  15. 大田宗利

    大田政府委員 行政監理委員会答申につきましては、先生の御指摘のように約二百二十でございます。この中に法律事項が八十、政令その他の事項が百三十九事項ございます。法律事項の中でこのたびの一括整理法案が十四、それから、それぞれ各省単独法で出しますものが四件ございまして、十八件ございます。  それから今後の予定といたしましては、五十年度に六事項、近く措置されるものというのが四十三事項ございます。法律事項の中で未措置となるというものが、一応十四事項ございますが、これにつきましては、今後行政管理庁といたしましても、積極的に各省に働きかけたいというふうに考えております。また政令事項につきましては、すでに改善済みが二十五事項ございます。五十年度中に措置するというものが六十二事項ございます。五十一年度以降に三十二事項ございまして、いまのところ未措置となるというのが二十事項ございます。これにつきましても、今後各省に積極的に働きかけたいということで、初年度あるいは五十一年度につきましては、一応の成果があるではなかろうかというふうに私たちは理解しておるところでございます。
  16. 越智伊平

    越智(伊)委員 今後積極的に取り組む、こういうお話でございますけれども、私は、いまほど行財政改革機運が盛り上がった時期はない、かように思うのでございます。先ほども申し上げましたように、見直しとか洗い直しとか総理も言っておられますし、あらゆる面でいまほど行財政改革機運が上昇しておる時期はない、こういうふうに思います。でございますから、本当に積極的に、これはこれとして、後もう早急に検討をする、そういうことにしていただきたい、かように思いますが、いかがでございましょう。
  17. 大田宗利

    大田政府委員 ただいま御説明いたしましたとおり、措置未定というものが合計で三十四事項になろうかと思います。これにつきましては、所定の措置が講ぜられますようさらに関係省庁と折衝いたしまして、措置予定時期を明らかにしていただく、そういう措置を今後とりたいと思っております。また各省で非常な困難というものもあるいは出てくるかもわかりませんが、それにつきましても、行政管理庁といたしましては、少なくとも答申が全部実現されるよう一層の努力をしたい、このように考えております。
  18. 越智伊平

    越智(伊)委員 先ほども御指摘を申し上げたのですが、今回の改正案、これを見ましても、本当に事務的な事項が非常に多い、こういう点で、行政簡素化という点で、これを改正したらどれだけのメリットがあるのか。もう一点は、これをやることによって、財政硬直化、こういうことを言われておりますけれども、経費節減の面でどれだけの効果があるのかということは、疑問を持たざるを得ないというふうに考えるのです。経費節減あるいは行政簡素化、これがどれだけできるのか、こういう点がいささかさみしい感じがいたすのでございますが、この点についてのお考えをひとつ御説明いただきたい、かように思います。
  19. 大田宗利

    大田政府委員 先ほども御説明いたしましたとおり、重要な施策あるいは制度基本に関する、そういうものにつきましては、名省庁単独法によって処理するという考え方でございます。したがいまして、一括整理法の中に含まれているそれぞれの事項には、比較的どちらかと言えば軽い、内容的には国民のいろいろな事務軽減の問題だとか、あるいは行政簡素化というものが含まれております。したがいまして、それぞれ個々につきましては、比較的メリットとしては低いとも思いますけれども、全体としては非常に影響のあるものもございます。  たとえて申しますと、風俗営業等取締法の一部改正によりまして、パチンコ屋等営業許可更新期間が三カ月延長されることになります。そういたしますと、一万以上の業者負担が半減してまいります。また警察におきましての事務負担も、約二〇%程度軽減されるのではなかろうかというふうに考えております。それから外国人登録法の一部改正によりまして、本邦に入国しました外国人新規登録申請期間が三カ月に延長されますと、従来登録を義務づけられていた年間約三万六千人のうち約八千人、これは大体二三%になろうかと思いますが、約八千人が新規登録をしなくても済むということになりまして、国民から見ますと事務軽減ということになります。また行政機関といたしましても、相当な能率化が図れるというふうになろうかと思います。
  20. 越智伊平

    越智(伊)委員 先ほども申し上げたのでございますが、昭和三十九年に臨時行政調査会許認可等に関する改革意見が出され、政府はその後、行政改革計画の三カ年計画というのを策定して、この許認可改善を図っておる、こういうふうに聞いておるものでございますが、その案件はその後どのようになっておるのか。ただいまも説明がございましたが、その三カ年計画がどういうふうに進んでおるか、詳しくひとつ御説明をいただきたい、かように思います。
  21. 大田宗利

    大田政府委員 最初に御説明いたしましたとおり、許認可検討対象は千二百でございます。これは約四十団体から意見を聴取しております。また臨時行政調査会の積み残しが百三十五ございます。それから行政改革計画の積み残しが百九十ございます。これらの積み残しにつきましても、今回の許認可検討対象に取り入れまして、百三十五の中では二十五、それから行政改革計画の百九十の中では二十四の事項につきまして改革意見をいただきまして、今後、合計四十九事項につきましては、これから推進するということになっております。したがいまして、臨時行政調査会あるいは行政改革計画のいままでの積み残しにつきましても、今回改めて検討対象にいたしまして、その中で約四十九につきましては意見をいただき、これから改善をいたすという予定にしております。
  22. 越智伊平

    越智(伊)委員 もう一点は、地方公共団体財政硬直化、もうこれはいろいろ意見がございますけれども、硬直化には違いない、そうしてそのことが非常に大きい問題になっておる、このこともそのとおりでございます。  そこで私は、機関委任事務整理、これを思い切って力を入れてやるべきでないか、かようなふうに考えるのでございます。この点について今後どのようにやろうというお考えか、ひとつこれをお聞かせいただきたい、かように思います。
  23. 大田宗利

    大田政府委員 機関委任事務につきましては、国と地方公共団体の間でいろいろ問題が言われております。今回の許認可整理につきましては、機関委任事務という問題だけに焦点を当てたということではございませんけれども、この許認可整理法案の中にも、機関委任事務に相当するものがございます。たとえて申しますと、この十二法律二十三事項のうちに、地方公共団体機関委任事務は、風俗営業等取締法、それから近畿圏既成都市区域における工場等の制限に関する法律外国人登録法建設業法都市計画法住宅地区改良法の六法律十五事項となっております。これらはいずれも機関委任事務でございまして、ただいま先生から御指摘をいただきました機関委任事務の簡素、合理化という点に沿うのではなかろうかというふうに考えております。  それから昨年の行政監理委員会答申事項二百十九の中で機関委任事務を見ますと、大体百四十が機関委任事務であるということでございまして、今後、答申の全面的な実行ということに努力すれば、少なくとも百四十につきまして機関委任事務簡素化されるという結果になろうかと思います。
  24. 越智伊平

    越智(伊)委員 いろいろお話を聞いたわけなんですが、先ほど申し上げましたように、私この各省庁関係でいろいろ接触した中において問題点がたくさんある、こういうふうに思うのでございます。  たとえば運輸省、いま呼んでおりますけれども参っておりませんが、一つの例を申し上げましても、タクシー許可の問題、これを見ましても、本当に実態に合ったようなタクシー許可が行われておるのかどうか。これの許可権は、御承知のとおり陸運局でやっておるのでございますけれども、これがいまのままでいいのかどうかということを疑問に思うのでございます。  たとえば私、四国でございますが、船で渡り神戸、大阪に着く、朝タクシーに乗ろうと思いますと、タクシーはたくさんいる、いるけれども乗せてくれない。そしてどこに行きますかといって聞かないと乗せない。しかもその場合に、何人か同じ方向に行くと一緒に乗せる。そして各人にタクシー料金を請求する。ただいまもそのとおり行われておる、こういうことでいいのかどうか、私は疑問に思うのです。  ところがまた一方、私のくにの方でタクシー許可申請をしておる。ところが一例を言いますと、四十七年の十一月に申請した、それがいまだに未処理である。しかも最近になってその動きが、既存のタクシー業者に減車、車の台数を減せ、こういう働きかけをしておる、それを減したら新しいのを許可する、こういうことが行われておる。こういう実態を見ますと、本当に一回、こういうものについては洗い直しをしなければいけないのじゃなかろうか、かように思うのです。  そこで、運輸省が見えたそうですが、運輸省にひとつお伺いいたしたいのですが、タクシーの新免は、申請すれば通常どの程度の期間に許可なり不許可なり——私は許可せいとも不許可にせいとも、それを申し上げるわけじゃないのです。どれぐらいの期間に処理をすべきか、これをひとつお伺いをいたしたい、こう思うのです。
  25. 真島健

    ○真島説明員 タクシーの免許あるいは却下処分が、どのぐらいの時間で行われておるかということでございますが、この問題は大分前に国会でも、どうもおそくていかぬのじゃないかというおしかりも受けておりまして、その後鋭意努力をいたしております。  全国的な現在の状況は、平均いたしますと大体、特別にいろいろ事情がございましてむずかしいものは別といたしまして、一年ないし一年半ぐらいで法人の場合には処分が行われておる。個人タクシーにつきましては、これは東京その他非常に申請件数の多いところと余り多くない局といろいろございますが、これも何とか、現在申請から数えまして一年以内には処理をしたいということで努力をしておるという状況でございます。
  26. 越智伊平

    越智(伊)委員 いろいろ問題があってむずかしい、こういうお話がございましたが、私は、それが不思議なように考えるのです。第一番には、申請したその申請が適当であるかどうかということの検討をすればいい。そしてそれが適当だということになれば、需給のバランス、国民へのサービス、こういうことを考えて必要であるかないか、幾ら申請して適当であっても、必要なければ却下する、それが許認可基本になるのでないか。そのことをおいて、情実であるとかいろいろ、そういうことの必要である、ないということより、そういうことの方が優先するからおかしいことになる、こういうふうに考えるのですが、いまのもう一回、申請をしたその申請が適当であるかどうか、また需給のバランス上必要であるかどうか、このことさえ決めればすぐに解決する。いまのような変化の時代に、許可するにしてもしないにしても、二年半も引っ張る、そのことが適正な行政だとは私は思えないのですが、いかがでございましょう。
  27. 真島健

    ○真島説明員 ただいまの先生お話、まことにごもっともなことかと思います。私どもも、各陸運局に対しては法律で決められた免許基準、これはございますが、さらに当該の地域の需給状況あるいは事業者の業務量の適正であるかどうか、そういうことを判断して、事務処理はできるだけ早くするように指導をいたしておるところでございます。  先生お話のような件が間々あるやにも聞いておりますので、そういう件については、さらに私どもからも、どういう事情にあるのか調査をいたしまして、できるだけ早く処理を進めるようにいたしたいと考えております。
  28. 越智伊平

    越智(伊)委員 それからもう一点、いまのに関連いたしまして、申請をした、それは適当である、ところが、最後に私が言った需給のバランスでもう台数はふやしたくない、ところが、善良な既存の許可台数を、具体的に言いますと、一社で二台ずつ減して四台減してくれ、そうしたら新しいのを許可する、こういう指導、これは直接指導でないけれども、人を介してそういうことが行われておる。これが行政指導の分野でございましょうか、どうでしょうか。
  29. 真島健

    ○真島説明員 いま先生のおっしゃられたようなことがございますとすれば、これは何と申しましょうか、私どもが各陸運局に指導しておる範囲を非常に逸脱しておると思います。
  30. 越智伊平

    越智(伊)委員 行政管理庁の方、いかがでしょうか。いまのようなことが現実に行われておる。これがいまの陸運行政のあり方です。一方では、先ほど私が申し上げましたように、神戸、大阪、こういうところの港へ行きますと、車はあってもタクシー乗り場へは来てくれない。どこへ行くのですか、距離が遠いところであったらどうぞ、こう言う。ですから、私なら私が神戸から伊丹飛行場、こう言うと、どうぞと言う。私がこういう服装でおると遠慮するが、コートを来ておると、飛行場へ行く方おりませんかと言ってなかなか車を出してもらえない。募集するんです。そうして二人乗る。二人乗ると料金を二人に請求する。もちろん私が乗っておる限り、払ったことはございませんけれども、そういうことが行われておる。  ですから私は、この両方の面を見て、この陸運行政、全くこれが日本政府行政であろうか、こういう感がいたしておりますが、いかがなものでしょう。
  31. 松澤雄藏

    松澤国務大臣 率直に申し上げて、全く芳しいことではないと思います。現実の問題として、そのような問題等が起きた場合は、率直に言って、そのやっておる会社、あるいはまたやっておる運転手等の名前等をお聞きになった上に立って、そして処置をするというふうなことにならざるを得ないと思いますが、いずれにいたしましても、決して芳しい方向ではないというふうに考えます。
  32. 越智伊平

    越智(伊)委員 私は、こういったことをあわせ考えまして、過疎地帯、こういうところでは、やはりタクシー業者の経営面のこともこれは考慮をしてやらなければならない。したがって、権力を持っておるからといって、既存の十台あるところを八台にせよとか——もちろん違法なこととか、そういうことがあれば別ですよ。しかし善良に経営をしておる者にはそういう圧力をかけたりすることはいけない、こう思うのです。それはもちろん、この業者の経営のことも考え国民へのサービスのことも考え、そういうことを考慮の上で判断をしていくというのが陸運行政である。一方、都市でいまのようなことをしておる。やはりそういう業者なり運転手は、いま長官からお答えいただいたようにびしびし処分をしていく、こういうことが行われない限りうまくいかない、こう思います。  そこで、運輸省にひとつお尋ねするのですが、いまの取り締まり指導は陸運局がおやりになるのですか、それとも警察がおやりになるのか、どちらがおやりになるか、また、そういう処置をどうしていらっしゃるのか、御説明いただきたい、こう思います。
  33. 真島健

    ○真島説明員 運転手等の違法行為、相乗りあるいは乗車拒否その他の問題がいろいろございますが、これに対する陸運局の体制、これは随時業界に対する指導を行います。それから東京、大阪等のタクシー近代化センター、こういうものがあるところにおきましては、ここにおきまして運転手の登録等をやっておりますので、それに関連をいたしまして、乗客からの苦情処理その他を近代化センターで聴取して、これを陸運局に通報し、陸運局が悪質な者については処分を行っていく。さらに警察等にもお願いをいたしまして、陸運局に苦情のあったものは、もちろんその場で陸運局あるいは事務所が調べますし、警察に届け出られたものについては、警察からの通報によって適切な処分をしていく、こういうことになっております。
  34. 越智伊平

    越智(伊)委員 先ほど申し上げましたように、私は、神戸の中突堤にたびたび船からおりるのですが、もちろん、私ども元気な者は、元町なり三宮の駅まで歩いても、あるいは車に乗りまして相乗りをやりましても、私が払って、あとの人はいいですよ、乗りなさいと言っておろしてあげる。しかし田舎から出てきた本当に善良な年寄りや子供、こういう者からそうしたことで過当な料金を取る。しかも、まだそれでも三人、五人乗って走ってくれるのならいいけれども、足の悪いおじいさんが、行ってくれないから、あの立体橋を通って上りおりしながら歩いておる姿、これが神戸の姿ですよ。神戸が最も悪い。まだ大阪の方が少しいい。ひとつ神戸の港の実態を調べていただきたい、こう思いますね。そうして適当な処置をとってもらいたい。なかんずく、個人タクシーの方がサービスがよろしい。ですから、私どもも、なるべく個人タクシーに乗るようにする。個人タクシーはサービスがいい。ところが会社のタクシーは、近くであったら一人では絶対乗せないですよ。そうして四人、五人乗せて、みんなから料金を取る、こういうことをやっておる。これではいけないと私は思うのです。田舎のことを考え、都会のことを考え、両方考えあわせてみたら、いまの陸運行政、こういうことについて、本当に総理の言う見直し、洗い直しをしないといけない、私はこういうふうに思います。  そこで最後に行政管理庁長官、いま私は一例を申し上げたが、こういうことは陸運が一番多いんですよ。ほかにもないでもない、実際に実態を見ておりますとね。ですが、こういうことについて、今後この許認可改善にどのように取り組まれる御決意か、御決意を承って私の質問を終わりたいと思います。まだほかの省庁もあるのですけれども、十分資料もそろっておりませんから、きょうはこの程度にしたいと思うのですが、最後に長官の御所見のほどを承りたいと思います。
  35. 松澤雄藏

    松澤国務大臣 行政管理庁は、各行政分野を通じまして、共通的あるいは統一的に行政の体質改善を推進するため、真に国民の立場に立って行政制度の運営の近代化や合理化に関する監察を積極的、計画的に実施することにいたしております。これらの監察を通じまして、許可認可等制度について種々の角度から検討を加え、許認可整理及び運営の改善を推進する考えでおります。また同時に、国民の福祉増進の見地から、許認可等による規制を強化すべきものについても、その整理を促進する考えであります。  なお、行政監理委員会答申については、指摘事項改善を推進するほか、今回の答申に取り上げられなかった事項についても、機会あるごとに検討を加えて、そして推進する予定であります。  以上のような考え方をもって今後ともに進んでいきたい、かように考えております。
  36. 越智伊平

    越智(伊)委員 終わります。
  37. 藤尾正行

    藤尾委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  38. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鬼木勝利君。
  39. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 在外公館の問題でいろいろお尋ねしたいと思いますが、宮澤先生には久々のお目通りで、参議院時代から大変お世話になりまして、久々に質問する機会を得まして光栄に存じております。  外交諸般の問題についてお尋ねをいたしたいのですが、その前に直接本法案について少しくお尋ねをいたしたいと思います。  在外邦人が後顧の憂いなく子女の教育に専念できる——宮澤大臣は全世界のことをよく御承知と思いますが、私、海外にあちらこちら参りました場合に、視察をいたしました範囲内のことでございますので、あるいは小範囲のことであり、あるいはまた当たらぬこともあるかと思いますが、海外における邦人子女の教育に対して、これはまた文部省関係もございますが、そういう面に対する施設あるいは物的援助というような点に、外務省としてはどのように御配慮をなさっておるのか、まず、その点についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。大臣、その点ちょっとお伺いできますか。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 海外におります者の子女の教育につきまして、かねて鬼木委員から非常に御関心をお持ちいただいておりますことは、私どもといたしましても、ありがたいことに存じております。  本件につきましては、昨年、本委員会においても御決議がございました。私どもとしましては、その御趣旨に沿いまして、海外の主たるところに全日制の日本人学校を新設する、これは四十九年度におきまして四校新設いたしまして、五十年度にも五校予定しておりますので、五十年度の予算が成立いたしますと合計四十二校になることになります。また、そのための派遣職員の増強、待遇改善につきましても、逐年改善をいたしておりますのと、校舎の確保、拡充につきましても、あるいは補習授業に関しましても、逐年改善を図ってまいっております。  なお、具体的にもう少し政府委員から御説明を申し上げさせていただきます。
  41. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 昭和四十八年六月二十二日の外務委員会で、海外子女教育等に関する調査を行うために、小委員十三名よりなる海外子女教育等に関する小委員会というものを設置された、こういうふうに承っております。本件について調査を進めた結果、小委員会において海外子女教育等に関する件を決議した。小委員会まで設けて、それがどういうふうに具体化されたか。  いま大臣の御説明でお聞きしたところによると、相当これに力を入れておるとおっしゃっておりましたが、私が視察しました中南米あたりは非常に不備ですね。詳しく授業の実態も拝見してきました。それから教育課程というような点は、地域的にそれは多少違うと思いますけれども、非常に先生方が苦労しておられる。それから派遣の先生方は、期間が三年間という条件がつけられて行っておられるようであります。それは、いろいろな事情があるかと思いますけれども、そういう腰かけ的な派遣でなくして、本当に海外におる子女を徹底的に教育する、何らかの方法をとれば私はできると思うのです。それはいろいろあると思います。それから特別教室なんかの設備はほとんどありません。グラウンド、これが非常に狭隘である。体育の向上をはかるとか、心身ともに発達期にあるところの小中学校の、しかも義務教育のお子さんが、あれでは体育の教育というものはほとんどできないと私は思ってきました。それはいろいろな事情もありましょう。そういう施設、建物あるいは土地が手に入らないとかいうような点もあるかと思いますけれども、それは教育がいかなるものであるかということをお考えいただければ、私は、そういう土地の選定もできると思う。国外だからなかなか施設が手に入らないとか、建物が手に入らないとか、運動場の広いところが手に入らないとかいうことは、それは本当の意欲がないからだ。その証拠には、海外で教育を受けたお子さん方が、本国に帰られて、大半が日本語がわからない、こういう状態なんです。  そこで、そういうことは文部省のことだとおっしゃるかもしれませんけれども、私は外務省に大いに責任があると思う。そういう点、大臣いかがにお考えでございましょうか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、外務省に勤めております者も、その一部になるわけでございますけれども、在外商社でありますとか、あるいはいろいろな法人から現地に家族ごと行っておられる方とか、実は非常に大きな問題になりつつございます。ことに近年、そのように海外に勤めます日本人の数が大きくなってまいりましたので、家族にとりましても、本人にとりましても、非常な悩みでありまして、また次のゼネレーションまでその悩みを持ち越すというようなことになっておりますことは、もう御指摘のとおりでございます。  したがいまして、われわれといたしましても、現地の相手国との間に摩擦を生じませんようにしながら、できるだけそのような教育施設を充実していきたいと考えておりまして、施設の面からも、国会でも特に御理解をいただいて、予算その他逐年かなりふやしつつあるわけでございます。しかし何分にも、そのような制度の歴史が短うございますし、派遣の教職員につきましても、適材をたくさんに用意することがなかなかできない、あるいは帰りました後の問題等々もございまして、十分には思うようにできておりません。これは鬼木委員からはしばしば関心をお寄せいただいておることで、まことにわれわれとしてはありがたく思っておりますし、一生懸命やっておりますけれども、やはり制度の歴史が短いということが一つの原因であろうかと思います。気持ちはありながら、思うように十分にできていないということは、残念なことに存じておりますが、最大限の努力を毎年続けておるつもりでございます。
  43. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 外務大臣のお話はよくわかりますが、大臣のお気持ちが実際の効果にそれだけ出ていないということはお認めいただけると思うのです。  それで、これは私もかつて学校経営、校長の職に二十年ばかりあったのですが、昔の県立の中等学校、今日の高等学校ですが、他校から転校するという者、これはちょっと話が違うかもわかりませんけれども、官吏の方が非常に異動が激しくて、四国からやってくるとか、あるいは東北の方からやってくるとかいうようなことで転校さしてくれ、そういう場合には、私が特別の措置で、これは文部省が何と言おうとだれが何と言おうが、定員外であろうが何であろうが、そういう方は喜んで私は入れた。たとえ成績が悪かろうがよかろうが、入れてあげた。そうせぬと、親御さんなんかは安心して転任ができない。そういう人には特別個人指導をしてあげた。そのように私は職員を督励してやらした。  しかし、これはもっと大きな問題だ。海外に外交官がどんどん行かれる、あるいは法人の方がどんどん向こうへ行かれる。そうすると、子供の教育ということに対しては親が一番頭を痛める。宮澤大臣もお子様がおありだと思うが、子供の教育ということは一番大事なことなんですよ。ところが、そういう異国の空にあって完全な教育ができない。非常に半端な教育——半端な教育というと言い過ぎかもしれないけれども不徹底な教育、施設にしても、教材にしても、建物にしても、教科内容にしても非常におくれておる。この点は、きょう文部省からもどなたかお見えになっておれば十分申し上げたいと思いますが、私は文句を皆さん方に申し上げるのではなくて、これはぜひ再思三考していただきたい問題だと思う。そうしなければ、国外から帰ってこられたお子様が非常に困っておられる、これは私、重要な問題だと思う。何回も繰り返すようですけれども、役人さんなんかも転任のたびごとに頭を痛めておられるのはお子さんのことですよ。ましていわんや、海外からですから、これはひとつ格別の温情をもって大臣は御考慮いただきたいと思う。  私が調べましたところでは、これは東京の渋谷の教育委員会ですが、この二年間に渋谷区内在住の海外帰国児童、それが約八十名おる、そのうち半数が日本語を余り知らない、こういうわけです。だから、学校の授業に非常に支障を来たしておる、それはそうでしょう、半分も日本語がわからぬのですから。それで渋谷区においてはこれが対策として、外国から帰ってみえた児童生徒のために、小学校ばかりではありません、中学校の生徒のためにも、このたび独自に日本語教室を開設することになっておる。こういうことを渋谷区において、区の教育委員会でやっておる。  これからの問題は、文部省の問題になると思いますが、海外から帰国された児童生徒の教育に対してこういう支障を来たしておるということは、やはり文部省は十分考えていただかなければならぬと私は思う。  きょう文部省、どなたかお見えになっていますか。——海外から帰られた児童生徒数は、現在どのくらいございますか。わかっていなければわかっていないでいいです。ほぼでもいいです。
  44. 関正命

    ○関説明員 正確な数は、いまのところまだ調査は不行き届きでございますが、全国で約三千人と言われております。そのうち約千二百人が東京にいるようでございます。
  45. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、三千人ということは相当大きな数だと私は思うのですよね。毎年海外から帰ってくるのが三千人、そのとおり毎年三千人ずつ入れかわるということではないわけですからね。そうしますと、これに対する助成、これに対する予算という面については、外務省はもっときめの細かいお考えを持っていただいてしかるべきだと私は思うのです。  文部省といたしましては、その今日帰られた三千人に対する指導、教育をどういうふうになさっておりますか。渋谷の方でやっていることも御承知になっておりますか。三千人という帰ってきた子供が、体の弱い人もおりましょうし、あるいは非常に成熟がおくれている方もありましょうし、あるいはいま言うように日本語が余りわからない人もいらっしゃるでしょうし、その内容をよく調査していただいておりましょうか。
  46. 関正命

    ○関説明員 三千人全部に同時に手をつけるということが望ましいことでございますが、なかなか一挙にまいりません面もございます。したがいまして、いまさしあたりここ十年間ばかり、外務省の御協力も得ながら文部省でやっておりますことは、帰国子女教育の研究のための学校を指定しておるということが一つございます。それから国立の付属の小学校、中学校、高等学校、これに特別に帰国子女教育学級を設けまして、そこに受け入れておるということもやっております。  いま鬼木委員のおっしゃいました渋谷区自体のことは、私ども寡聞にして聞いておりませんでしたけれども、東京都の教育委員会を通じて、先ほど申しました研究指定校ということに申し出がありますれば、文部省からしかるべき御協力を申し上げられることができると思います。
  47. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは国立学校はおれたちはこういうふうにやっている、やるのだとおっしゃっておりますが、国立学校においてすら、私はきめ細かくこれはキャッチできていないのじゃないかと思うのです。  ところで地方は、これは公立学校、地方教育委員会等と御連絡をおとりになることを、私は文部省はやるべきだと思う。国家教育ということから考えた場合は、全国の公立学校、教育委員会を通して、海外から帰ってきた生徒は何ぼおるか、実態はどうだということを問いただし、御調査なさる、そして文部省に対してこうこうだと、互いにまた文部省と合議される、私はそうやっていただきたいものだと思うのです。  これは、あなたを責めておるのではありません。きょうは文部大臣もお見えになっておりませんしなんですから、決して責めるわけではありませんが、私はそのように考えます。いやしくも、そういう大事な、帰国した在外邦人の子女の教育がどのように行われておるかということは、国家的教育の見地から、文部省はそれを調査し、実態を把握するということが大事なことだと思う。その御意見、御高見はいかがでございますか。
  48. 関正命

    ○関説明員 先ほどの私の御説明の仕方がちょっと不十分でございましたが、いわゆる研究協力指定校と申しますのは、公立及び私立の小学校、中学校、高等学校でございます。国立とは別でございます。  それからもう一つ、全国のいわゆる帰国子女がどのような実態であるか、数がどれくらいで、どこにどれだけいるか、それから帰ってきたときの学力はどうで、その後どういう指導を加えたらどうなったかということの調査は、昭和四十九年度に文部省が関係の方面の御協力を得まして実施いたしまして、実はいまコンピューターの操作中でございます。五月か六月には結果がまとまろうということになっております。できましたら御報告申し上げたいと思います。
  49. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そういう調査をいま目下実施中であるとおっしゃるならば、そういう点を、ここに外務大臣がいらっしゃるから申し上げますけれども、文部省が実態調査をなさって実はこういう状態だ、外国から帰ってきた子供はこういう状態ですよと外務大臣に、外務大臣もひとつこういう点はこういうふうな実態でございますからお考え願いたいという、やはり連絡、提携があってしかるべきだと思うのです。  どうですか宮澤大臣、外務省はただ家だけ建ててやればいいんだとか、鬼木がああ言ったから運動場だけふやせばいいんだということだけではなくして、教育の実績、実態がどうだということ、やはりその上に立ってお考えいただかなければならぬと私は思うのです。事実は本当に困っているんですよ。一番困っておるのはこの問題なんですよ。いかがでしょうか。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題には二つの面がございまして、一つは、外国におりますときにどのように教育をするかという問題でございますが、もう一つは、そういう人たちが日本に帰りましたときにどのように受け入れるかという問題があるわけでございます。  それで先ほど私は、在外子女の学校教育について少し申し上げたわけでございますけれども、それは政府が中心になって先ほど申し上げましたような施策を進めておりますが、なお同時に、それだけではなかなか手が回りませんで、子女を海外に非常にたくさん送りますところのわが国の民間の会社、それは商社、銀行等が多いわけでございますけれども、そういう人たちが数年前に相談をいたしまして、実は私もそのときに、個人の資格でかかわり合ったので存じておりますが、そのような政府の在外における施策を応援しようではないかということで法人をつくりまして、まあ御自分方の問題であるせいもありますけれども、民間の方でもいろいろに応援をしておってくれるという、これは外におきます教育施設の問題でございますが、同時に、これはちょっと事の性質上、申し上げることが適当かどうかわかりませんけれども、実は教育でございますので、学校教育もございますけれども、外国におります間の家庭教育という問題がやはりあるわけでございます。両親は日本語で話しておるわけでございますから、実はそういう教育のよりどころはないわけではありませんで、ことに最近はテープレコーダーであるとかテープというようなものが、かなりこういう目的のためにわが国でも開発されておりますので、御両親の心構えによっては、かなりの程度家庭教育でカバーできる面が現実にあるように存じます。そういうことをどうやって充実していくかという問題もあろうと思うのでございます。  これはしかし、外側における問題でございまして、今度はそういう子弟が帰ってまいりましたときに、受け入れる体制がどうなっているかという問題でございますが、一つは、ただいま文部省当局からお話のあったようなことがございます。それから少し上の大学などになりますと、少数の私立の大学におきまして、そのような、つまり一応の中学生程度の読み書きはできる、それからある程度の一般的な知識も持っておる、けれども日本語で答案を書いて日本の大学に入るほどの力はないという場合に、特別にそういう子女のためにある程度英語を主体にしましたような形で受け入れる、そういう学級を設けておる私立大学がこのごろ多少ございます。  そういうことはあるのでございますけれども、しかし実は、そういう大学へ途中から入りますというときには、単位の問題があるわけでありまして、その単位を外国で取ってまいりませんと入れません。しかも、どの大学の単位ならばお互いに融通し合えるかという範囲が、また非常に局限されておりますので、幸いにして先進国で教育を受けた場合には、そういう共通の単位を半分取って帰るということは可能でございますけれども、そうでない国では、なかなかそれができないというようなことがしばしばございます。  概観して痛感いたしますことは、いろいろな場合にアメリカンスクールの御厄介になっておる人が非常に多い。これは恥ずかしいことでございますけれども、実際にどうもそういうことでありまして、わが国全体としてこの問題を、文部省とか外務省とかいうことでなくて、やはり毎年どれだけのそういう移動があり、どれだけの教育対象があるかというようなことは、もう少し事態をはっきりさせまして、これは民間の協力も願わなければならぬことですけれども、基本的にどうするかということは、やはり根本的に考えなければならない問題であると存じます。
  51. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 結論的に私がお願いをしておることを大臣はおっしゃいましたので、私も非常に満足に思います。私は、かつて外務大臣にお願いをしたこともあるのですが、いま大臣のおっしゃるように、家庭教育が非常に大事だ、まことにごもっともで、学校教育、家庭教育、社会教育ということは、もうこれは不可分のものでございます。  それでかつて私は、お子さま方、いわゆる子女の教育に、家庭的にそういう雰囲気をつくるように、無論建物の様式も日本の様式と違いますから、そういう点までよくお考えいただきましたか、特別に、特別子女教育手当というようなものをおつけになったらどうかというようなことまで外務大臣にお願いをしたことがある。やはりこれは小学校、中学校あるいはハイスクール、それから大学でも、それは日本の教育とは体系が違いますので、単位の問題でもいまおっしゃるとおりだと思いますが、家庭教育ということについては、お父さん、お母さんは日本人ですから、日本の様式にやっていただいて、本当に勉強ができるように、その点も外務大臣に私はかつてお願いしたことがあるのです。そういう点まで宮澤外務大臣がお考えいただいておるということは、まことに卓越したお考えで敬意を表します。いま結論が出たようでございますので、実態をよく把握の上、特に御考慮をお願いしたいと思います。  次に在外公館について、本庁から外交問題に非常に造詣の深い方を査察使として派遣をしておられる。そして在外公館の管理運営等——そういうことのみならず、事務一般でもでしょうが、そういう全般にわたって査察をしておられるということを聞いておりますが、一回の査察で公館を大体何カ所くらい回っていらっしゃるのか。  なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、これは、はなはだ申し上げにくいことでございますけれども、やはり十分海外の公館の方々を——そういう事務一般のこととか、それも一番大事なことでございますが、管理運営とかいうことも大事でございますけれども、海外の大使、公使、領事、たくさんいらっしゃると思いますが、国内の情勢をキャッチすることが非常に遅い。言いかえますれば、ずれていらっしゃる。そういう点の教育も、もう少し指導、督励をしていただきたい。それは海外のことでございますから遅いでしょう。いろいろな通牒も遅くなるかもしれぬ。あるいは新聞なんかもずいぶんおくれるかもしれぬ。しかし国内情勢を十分把握されて、そして外交交渉をしていただくということが、本当に国際間の折衝をスムーズにするもとである。  これは、もう宮澤大臣は特に頭脳明晰な方だから、よく私の申し上げることは御理解いただけると思いますが、私どもが行っていろいろお話しするのに、どうも話のかみ合わぬことがある。ああそうですかというふうなことで、一番大事な問題でもそういう点がないでもない。ということは、査察使が毎年おいでになっておると言いますけれども、そういう面の指導、激励、督励ということが非常に大事だと思う。  そこでこれは、年に何回やっていらっしゃるのか。一回にどのくらい回っていらっしゃるのか。一回に四カ所とか三カ所でも回っておったら、全部回るには五年も十年もかかる。そういう点、どういうふうな仕組みになっておるのか。これは大臣が何でしたら、ほかの方でも結構です。
  52. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 査察の問題でございますが、外務公務員法に、在外公館事務が適正に行われているかどうかを査察のために、査察使を派遣するという規定がございまして、この規定に基づきまして、毎年おおむね二地域程度に査察使を派遣いたしてございます。  最近の事例を申し上げますと、四十七年度にアジア地域十七館、中米地域九館、四十八年度にアフリカ地域十二館、東欧地域十館、四十九年度は中近東地域十四館、大洋州アジア地域十二館、このような査察が行われたわけでございます。  ただしかしながら、年に二地域程度の査察ではもちろん十分ではございませんので、このような正式の査察に加えまして、それぞれの地域公館に出張いたします本省幹部等が、公館の実態の調査をできるだけしてまいるように努めておりますし、また大使会議その他で本省に帰朝してまいります現地の職員から、在外公館の実情を聴取して、これらの実情の把握に努めるというふうな措置を講じてまいっております。ただしかしながら、このような情勢、必ずしも十分だと考えておるわけではございませんので、今後とも査察の充実には一層努めてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、在外に勤めております職員が国内事情に疎いというふうな御指摘があったわけでございますが、この点につきましても、在外に勤務する職員が日本の国内の情勢、あるいは国内のニュース、こういうものをなるべく的確にかつ迅速に把握しておく、承知しておくということが必要であるということにつきましては、前々からこの対策を考えてきているところでございまして、これらの比較的へんぴな公館に勤務します職員の場合には、ニュースそのもののキャッチも必ずしも迅速でないというふうなうらみがあるわけでございますが、いろいろな手段を今日まで講じておりますけれども、たとえば毎日一般情報というものを全公館に流すというふうな措置をとっております。  しかしながら、このような情報伝達そのものも、いままでの伝達手段では必ずしも迅速を期しがたいという点もございますので、今年度から始めました通信網近代化二カ年計画というものを通じまして全大使館、代表部及び主要な総領事館等に対しましては、専用回線を通じて迅速にまたなるべく多量の情報を流す、また現地からの情報の本省送達を図るというふうな措置を講じているわけでございます。
  53. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、今日は毎日でも専用回線で即日即刻大事な用件は通知しておる。従来はテレックスか何かでやっていらっしゃったのでしょう。
  54. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ちょっと私の言葉が足りませんで、誤解を与えたようでございますので、その点は訂正さしていただきますが、四十九年度、つまり今年度から通信二カ年計画を実施いたしまして、まだやっと四十九年度の分が動き出そうという情勢でございまして、五十年度末にいま申し上げました二カ年計画が完成という予定をいたしております。四十九年度末におきましては、いまのような通信回線の専用回線の設置をいま急いでおりますが、それと同時に大型主要公館、具体的にアメリカの場合には、ワシントンの大使館と国連代表部を通じますファクシミリによる通信施設の整備ということを現在急いでいるわけでございます。  従来はそれじゃどうしているかという御質問でございますが、一般情報というかっこうで毎日国内の主なニュースを流しておりますけれども、この送達が地域によりましては必ずしも即日ということにまいりませんで、若干の時間がかかっておるというのがいままでの状況でございます。
  55. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 じゃ、従来はそういう制度もなかったし、機関もなかったので、ややおくれておったということはお認めになりましたね。——それで、やはり国際情勢はこのように目まぐるしく転換をしておりまして、日々新た、また日々新たなりというような情勢ですから、これからは一日も早く実施していただきたいと思うのです。  私どもが参りましても、本当に話がとんちんかんで合わない。まことに何のための公館か、何のためにそんなところにおるのか。だから、査察はしていらっしゃると思いますけれども、管理運営面とか、いろいろ諸般の事務のあれはしていらっしゃると思うけれども、それは公館に一日か二日かおって待遇されて、喜んでそのまま帰ってくるようなこと、もしそういうことじゃ本当の実績は私は上がらないと思う。そういうことがあっているとは私は言っていないが、もしそういうことであれば、私は徹底を欠くと思う。その点ひとつ結論として大臣のお考えを承りたい。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも、まことにおっしゃるようなことはございまして、私の経験では、何と申しますか、大きな公館と申しますのでしょうか、いわゆる幹線道路の上にあります公館は、いろいろな意味で情報がわりに早く豊富に行くのでございますけれども、少し支線の方になりますと、それは必ずしもそういうふうにはならぬというようなことは、私も自分の乏しい経験ですけれども存じておりまして、ことに一般情報というのは少し届くのに時間のかかるところがあったりいたします。しかしこれは届きますと、そう申してはなんですけれども、編集は上手にしてございまして、毎日の主なニュースそれから新聞の社説でありますとか、株式の市況でありますとか、かなりいろいろなところまで細かく行っておるのですが、一つは、それをどういうふうに利用しておるかということもどうもあるのではないかと思われます。  いずれにしましても、先ほど官房長から申し上げましたように、専用回線で送るようになりますと、ニュースの量も豊富になりますし、内容も細かくなる、早く伝達もできるということに、五十年度の予算でこれをお認めいただけますと二カ年計画が完成をいたします。  それから地域によりましては、NHKの日本からのニュースがほとんど一時間ごとに届いておるところ、これは、もうかなり豊富な知識を持っておりますが、これは届く範囲がかなり限られております。そういうところもございます。そういったようなことを拡充をしていかなければ、やはり外交をやりますときに、その日に本国でどういうことが起こっているかということは、どうしても知っておかなければなりませんので、なるべく客観的に、これは役所が編集をいたしましても、仮に政府を批判するような国内の言論であれば、それはそのまま伝えるという、この辺のことはそういうふうにやっておるように思いますけれども、そういうようなことまでも含めまして、できるだけ早く、国内のわれわれが知っておるのと同様のニュースを在外公館が知っておるというようなことに努めなければならないと思いまして、幸いにしてこの二カ年計画というのをお認めいただきつつございますので、少なくとも本年度のは認めていただきましたので、来年度のも予算を御承認をいただければ、これでひとまずその点は従来の状態がかなり改善されるのではないかと存じております。
  57. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 官房長のお話、それから大臣の締めくくりで大体了承いたします。  これは総定員法との兼ね合いもあるかと思いますが、在外公館の職員の問題ですが、率直に申しまして、在外公館の強化ということについて大臣はどのようにお考えになっておるのか。  外国の例を、ちょっと少し私見たのですが、一館当たり平均して、米国は十七人から十六人、フランスが十二人から十三人、インドが十七人、英国が十五人、西ドイツが十九人、日本は九人から七人、このようになっておりますが、これは、いろいろ考え方がありまして、少数精鋭主義、それだったら各国はみんなつまらぬ者ばかり集まっておるかということになりますと、これまた問題ですから、そういうことを言えば問題になりますが、どうしてこのように少なくて、そして対外的に十分これで事足りておるのか。一体大臣はどのようにお考えになっておるのか。なるほど強化しなければいけないというようなお考えを持っていらっしゃるのか、いやいやこれで結構だというようなお考えであるのか、そういう点について、時間がだんだんとなんですから、公館問題についてはその程度で引き下がりたいと思いますが、大臣どうですか。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は実は各国に比べまして、それは先進国と言われている国ばかりでなくて、そうでない国に比べましても、非常に少ない定員で仕事を長いことしてまいりました。やはり考えますと、第二次大戦の始まりますころから、一種の何と申しますか外交不信とでも申すのでありましょうか、そういうことがあり、そうして終戦後、しばらく外交がなかったというようなことがまた影響しておったと思うのでございますが、非常に少ない人間でやってまいりました。外務省自身は、そのことをここ数年痛感しておったようでございましたけれども、ようやく今年になりまして、各方面のそういうことについての御理解を得ることができるようになりまして、五十年度で初めて、こういう定員縮小の時期でありますけれども、大幅な定員増を政府部内では合意をいたしまして、ただいま国会で御審議をいただいておるようなわけでございます。  二百十人と申しますと、これは一年限りというふうに私どもは考えておりませんで、何カ年計画かで一定の水準にまで持っていきたいと考えております初年度でございますが、これでようやく、数年このテンポで増強ができますと、まあまあ中進国並みになるというようなことでございます。ようやくそういうことについて、いろいろ御関心を持っていただけるようになったことをありがたく思っておりますわけであります。鬼木委員には、前からそういう御指摘をしていただいておったのでありますけれども、おかげさまで広く御支援、御支持をいただけるような情勢になってまいりました。  しかし実際には、さあその定員をどのように有効に満たせるかという問題がございまして、現在の外務省における人員を機動的に配置するということが、これが何よりも大事でございますけれども、これは人間が現実に限られておるわけでございますから、したがって、あとは関係各省からそういう方の適材をいわば拠出をしてもらう、あるいはさらに政府関係の諸機関でありますとか、ジャーナリズムでありますとか、商社でありますとか銀行、会社、各クラスの人たちを合わせまして、少なくとも半数ぐらいはいわゆる民間に応援をしてもらわなければならないというようなことで、この定員が与えられましたら、その充足を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  しかしこれも、なかなか言うより行うがかたかろうと思っておりますが、一つは、しかし受け入れる外務省の側にも、やはり心構えというものが大切なのでありまして、ともすれば、そういうところへ途中から入っては、なかなか居心地がよくないぞというように受け取っておられる世間もずいぶんあるわけでございますので、この点は、これから何年かかけて大幅な増強を図るといたしますと、受け入れる私どもの方も、待遇なり受け入れ方の心構えなり十分に考えなければならないところでありまして、この五十年度初年度にまずそれをやらしていただきたいと思っております。
  59. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま大臣のおっしゃるように、各省から海外へ派遣になっている、出向される方もたくさんおありであることは私も承知いたしております。しかし大臣のおっしゃったように、外務省自体としてはやはり十分お考えになるべきことだ。それもいま大臣おっしゃったのですが、果たしてこれで対外的に十分であるかどうか、公館の権威を保っていくことができるかというようなことを、私どもは懸念いたしておるのであります。外交政策、外交事務がこのためできていないということを私は決して申し上げるのじゃない。それは、いまおっしゃるように、民間からの協力もありましょうし、各省からも協力があって行っていらっしゃるので、そういう点はあるいは十分できておるかもしれぬと思いますけれども、少なくとも公館の対外的な事務として非常にお困りになる点があるのじゃないかというようなことが、私の日ごろからの持論でありまして、総定員法とかそういうよういろいろな定員の問題は、大臣の政治的御手腕にまつのであって、党内における最もいい知恵者ということを言われている宮澤大臣だから、その点は、お考えいただければ、配置転換なんかも案外スムーズにいくのじゃないか、かように存じておるがゆえに、こういう問題を提起したわけでございます。  在外公館の法案については、大体以上で終わりにしまして、外交問題、諸般の問題について少しくお尋ねをいたしたいと思います。大分多いのでございますから、簡潔に大臣にお答えいただきたいと思います。  まず冒頭に、ちょっとお尋ねしたいのは、宮澤大臣は近く渡米をなさるというようなことを承りました。実は、きょうの日経にも出ておりますが、国内的にも重大な外交問題がたくさん山積をいたしておる、そういうようなときに、しかも国会開会中に米国を訪問されるという、何か日米間にそういう緊急な問題でも起きたのか、宮澤大臣が渡米されなければならないという緊急事態が起きたのか。これは何も文句言うのじゃありません。軽いお気持ちでひとつその点を御答弁願いたい。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 別段そういう緊急な問題があるわけではございませんで、実は私自身、就任後まず最初にいろいろ国内の勉強をしておきたい、いろいろな問題の処理をしなければという気持ちがございまして、外国に行く、あるいは渡米をするということは第二の問題であるというふうに考えてまいりました。  その間、アメリカの国務長官からは、このごろは御承知のように、よく各国の外相が多国間会議の場で議論をし、顔を合わせることが多いわけでございますが、その前にお互いに意見の交換をしておきたいというようなお申し出が何度か実はあったわけでございますけれども、国会の御審議中でございますから、そういうわけにはまいらずに今日に及んだわけであります。  そこで、もし四月に入りまして、短い間でも国会で事実上審議をお休みになるという期間があれば、その短い間ですけれども、その範囲で私はあるいは出られるかもしれないということを先方に申しておりまして、それにつきまして、しかしキッシンジャー長官も、御承知のように大変忙しい人でございますし、長く本国をあけておりましたし、また中近東その他中南米にも、そういういままでしばらくほっておった問題というのがあるようでございますから、今回、日程がうまく合いますかどうか実ははっきりいたしません。今日現在で日程が合いそうだということは、まだ申してまいっておりませんので、あるいは今回できますならば、短時間でも会って話をしてまいりたいと思っておりますけれども、未定でございます。  特にどうしても、この二週間なり半月なりの間に会って話をしなければならぬということがございますわけではございません。
  61. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、きょうの新聞にも、時期ははっきりしない、四月のある時期か、あるいは五月の連休のときにというようなことも載っておるのですが、何か特別に緊急な用件があるのか。  これは大臣、気を悪くしないで聞いてくださいね、私個人の考えですから。何か秘密協定の話し合いでもやってくるのじゃないか、あるいは総理が行かれるから単なる露払いの意見で行かれるのか、どういうことで国会開会中に国会から離れて行かれるのか、ちょっとわれわれ疑問に思ったものですから、お尋ねしたまでです。  それでは、その次ずっと順を追うてお尋ねしていきます。  非核三原則の問題でございますが、核積載艦船とか、あるいは航空機などが十二海里の領海、領空、そういうようなところを通航した場合に、これは核持ち込みだとわれわれは解釈するのでございます。非核三原則は、つくってもならない、持ち込んでもならない、持ってもならない、こういうことになっておるのでございますが、前の木村外務大臣は、非核三原則は単なる政策ではない、これは国是だ、こういうふうに発言をされたことを記憶しております。  そこで、三木内閣におけるところの外務大臣である宮澤先生は、どのようにお考えになっておるのか。なるほど前大臣が言ったように、私も、これは国是だと認識しておるが、このようにお考えになっておるのか、その点をまず最初にお尋ねをいたします。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非核三原則を堅持するということは、三木総理大臣が本院の予算委員会におきましても言明しておられるとおりでございまして、その政府の方針に変わりはございません。御指摘の点は、恐らく海洋法会議が行われておりますので、その結果として、いわゆる国際法として領海の幅が十二海里になったということになりますと、わが国の場合、幾つかの海峡が国際海峡になる、その場合に、ただいまの非核三原則との関係がどうなるのかというお尋ねでございますけれども、まず十二海里にするかどうかということにつきましては、ただいまの政府の立場は、進行しておりますジュネーブ海洋法会議の推移を待とうではないか、もし今回のジュネーブの会議で、その点についての国際的な合意が成り立たないというときに、わが国として領海の幅をどうすべきかということは、その時点において政府においていずれにするかを決定しようということに政府の方針が決まっておりますので、ただいまとしては海洋法会議の推移を待つということになっております。  したがいまして、御指摘になりました問題も、それとの連関において、その時点において政府の方針を決めるということになろうかと存じます。
  63. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、十二海里のわが領海、領空、そこを通過するということは、たとえそこへとどめようがとどめまいが、そこへ、わが領域に持ち込んできたとわれわれは解釈するんですね。なぜ、そういうことを私が申し上げるかというと、領海、領空を通過する、すなわちそういう船が寄港するとか空を飛んでいくとか、これが私はっきりしないから、いま大臣のおっしゃるのがはっきりしないからなんです。  聞くところによりますと、非核三原則を一つ、二つにしろ、持ち込ませずということは削除しろというような意見が自民党内においてなされておる、そういうことになってくるのじゃないかと思うのです。  ですから、私が先ほどお尋ねしたように、その前提として、前外務大臣の木村さんは、これは政策じゃなくして国是だ、こうおっしゃった。国是だということになりますれば、私は、これははっきりすべきだと思うのです。領海、領空を通れば、持ち込んできたことはもう間違いはない。  じゃ、品物をわれわれの屋敷の中へ入れてきて——私の家は、そんなに広い屋敷じゃありませんけれどもね。宮澤大臣のお宅は大したものかどうか、それも知りませんが、屋敷の中に物を持ち込んで通過していったというのは、これは持ち込んだことでしょう。たとえそこへ置こうが置くまいが、そこを通っていったということは、これは入ってきたことだ、持ち込んできたことだ。それをああだ、こうだと言うことは——しかも削除せずという考えは、これは佐藤総理も、沖繩返還の場合に非核三原則について、これは絶対のものだ、これは論議の余地はないはずだとはっきり言明している。  それをいまさら、まだ結論が出ないなんということを宮澤外務大臣がおっしゃるということは、かねてから私は非常にあなたを尊敬しておる、頭脳明晰な知恵者だということで尊敬しているんですけれども、案外そうでもないんだな。もう一度大臣、はっきり説明してください。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは、ちょっと長くなりまして恐縮でございますけれども、海洋法会議には御承知のようにいろいろな要素がございまして、経済水域でありますとか、あるいはただいまの領海の幅、国際海峡、それから海底の資源でありますとか、群島理論でありますとか、御承知のようにいろいろな問題がございますが、あれだけたくさんの国が集まりまして、海についての新しい国際法とも言うべきものをつくろうということでございますから、おのおのの国の主張が国益を反映してもう千差万別でございます。しかし、それを新しい一つの国際法典につくり上げたいということでございますから、最後のところは、やはり全体を一括して各国が合意をする、いろいろな要素を一括いたしまして合意をするという形にいたさない限りは、新しい国際法典は生まれがたいであろうというふうに思われます。カラカスであれだけやりましても、またジュネーブでこれだけやっておりまして、なお議論が続いておるわけでございますので、その点は御了解をいただけると思うのであります。  わが国としては、いずれにしても、そのような新しい国際法の生まれることが大事なことであると考えております。したがって、全体の一括した合意というもののでき上がることが望ましいことであるというふうに基本的には前向きに考えておるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘になりました問題は、そのうちの一つでございまして、仮に領海を十二海里にした場合に、世界の、恐らく百数十の現在公海と考えられます部分が、いわば領海と申しますか、そういうことになってしまえば、航行の自由というのは、従来の観念で申せば制限をされることになります。そうなりますことは、世界の海運にとりまして非常に支障を生ずる。ことにわが国のような海運国にとりましては、ことさらにさようでございますから、もし全体の一括合意の中でそのような点についても合意ができるなら、それは全体としての合意に参画した方がわが国の国益にかなうであろう、こういうふうに考えつつございます。  その場合に、仮に領海が十二海里になった、しかも従来のような航行の自由を確保したいとすれば、やはり国際海峡というようなものの考え方、これは新しい観念でございますけれども、それを新しい国際法として取り入れることが適当なのではなかろうか、いろいろ帰趨はこれからございますけれども、そうではなかろうか。そういう場合には、たとえ十二海里というものが今度の新しい領海ではありましても、そのような国際海峡という新しい国際的な法律ができました場合には、その国際海峡における各国の持っております権利、沿岸国の権利というものは、国際法のもとに律せられなければならない、そういうことが考え得る、予想し得る状況である。  ただ当然に、御理解いただけますように、そうかと申しまして、非核三原則が後退をするわけではございません。従来のわれわれの考えておりました、領海というものには持ち込まさないという点は、現状より悪くなるわけではありませんで、ただ仮に、そういう国際海峡という国際通念ができましたときには、われわれはそれによって考えなければならないであろう、こういうことがこの問題の全体の問題でありますけれども、しかし海洋法会議でそのような合意ができますかできませんか、いまだにはっきりいたさないわけでございますから、そこでしたがって、海洋法会議の、今回のジュネーブ会議の推移を見て、わが国が領海をどうするかを、改めてその時点で決定しようというふうに政府としては考えておるわけでございます。
  65. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 お話を承っておりますと、私はそう思わないのです。海洋法会議によって、それは無論大事でしょう、国際間の問題ですからね。それは海洋法会議は大事でしょう。そして仮に十二海里になったとする——航行の自由ということをおっしゃいますけれども、私は何もそれをどうだこうだと言っておるのじゃない。私が言っていますのは、領海が十二海里ということになった場合、それは十二海里決定でいいでしょう。それは結構ですよ。しかし、それと非核三原則と問題は別なんで、海洋法会議なんかそんな相手になる必要はないとか、航行の自由は認めないとか、そんなことを、そういう国際間の問題を私は言っておるのじゃありません。  いま最後にちらっとおっしゃったのですが、非核三原則の持ち込ませずということに対しては後退はない、それを聞いておるんですよ、私は。核積載艦艇が十二海里以上を通過するとか、あるいは領空を飛行機が通っていくとか、そういう場合には、これは非核三原則で持ち込ませないということがあるんだから。ところが自民党では一部で、持ち込ませずということは削除しろなんというようなことがあっておるから、部会で話が出ているから、それはおかしいじゃないか。これは前大臣は国是と言っておるじゃないか。政策じゃない。現大臣である宮澤大臣はどうお考えかと言うと、私も考えは同じだ、国是だと思っていると言う。その国是を、そんな公海の自由だとか海洋法会議のあれでどうだというようなことで、そういうことで非核三原則は侵犯されるべき性質のものではない。それははっきりしてもらわぬと、話をあっちこっちみな一緒になされたのでは話にならぬ、そういうことを申し上げておる。  だから大臣、いいですか、私は、もっとこういうことまできょうあなたにお尋ねしようと思うが、そういうことを、持ち込ませずという問題を、そんなあいまいな御答弁をなさったり、あるいは一部で削除しろなんというようなことが出てくるということは、これは立法化していないからだ。これをはっきり立法化すべきだ、国是と言っているんだから。こういうことまで私はあなたに申し上げたいと思ってきょうはやってきた。  大臣どうですか、立法化するお考えがあるかないか。それは、あなた一人で、おれは立法化する考えがあると言ったって、国会で皆さんがみな反対されればできぬかもしれぬ、また、あなたが一人で反対されたって、国会でみんながやれと言うならできるかもしれない。ただ、あなたのお考えを承りたいと思う。どうですか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 誤解がございますといけませんので、申し上げますけれども、この問題について政府が方針を決定したということは、まだないわけでございますので、これは重ねて申し上げておきまして、他方で、自民党の一部に、非核三原則というもののいわゆる持ち込ませずが、果たしてわが国としていい政策であるかどうかということについて、議論がございますことは確かでありますが、これは海洋法との関係で議論が起こっておると申しますよりも、御承知のように、核拡散防止条約との関連で、わが国としては、核拡散防止条約に加盟いたしますと、少なくとも、つくらず、持たずというところまでは、今後二十年間、国際的にそうしないという約束になるわけでございますから、それとの連関において、第三の持ち込ませずという政府の方針というものが、果たしてわが国の防衛上適当であるかどうかという議論が、自民党の一部にあることはおっしゃるとおりなんでございます。これはしかし、海洋法との関連で起こっておる問題でございません。政府はそれに対して、従来の方針を変更する意思がないということを、総理大臣がしばしば今国会でも申し上げておるわけでございます。  海洋法との関連は、御承知のこととは存じますが、わが国の場合、世界の大きな海運国であるという意味は、具体的には大型のタンカーがエネルギーの大半を輸送してまいる、それが今後、いわゆる国際海峡になるであろう部分を通過しておるわけでございますから、その通過が妨げられるということは、わが国にとりまして非常に国益に支障があることであろうと思うのでございます。  それで、タンカーと軍艦は別ではないかというお立場は、すぐに御指摘があろうと思いますけれども、先進国として軍艦というようなものを持っていないのは、ほとんどわが国ぐらいなものでございまして、その軍艦というものをタンカーとは別ですという主張は、なかなか国際会議では通りにくうございます。どっちかと申せば、タンカーの方がずうたいが大きゅうございますし、警備等々もどっちかと言えば手薄でございますので、通られる方から言えばもっと厄介な存在である。場合によっては汚染の度合いも大きいかもしれないということがございましたりして、軍艦とタンカーを分けるという議論がさあどこまでいけるかという問題があるわけでございます。  そういうこともございまして、海洋法というものを全体としてまとめ上げることが国益であると考えておるわけですから、そういう目的から申しますと、日本だけが一つの主張をして、そうして全体の会議がまとまらなかったということになれば、これは恐らく世界のためにも不幸だし、わが国の国益にも沿わないというような問題がいろいろございますので、そこで、この国際海峡というものをどういうふうにつくり上げるかという交渉にわが国としては非常に苦労が要る。わが国だけの立場ならば、こうすればいいということが比較的はっきりいたしますけれども、全体をまとめ上げていく上でどうするかということは、会議でなかなか苦労の要るところである。そういう意味で、政府としてはこの問題について、ただいま一つの立場をとらずに、この会議の推移を待とう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  67. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうすると、立法化の問題もまた推移を見てからということですね。いま直ちにそういう考えはない、そういう推移を見きわめたならば、立法化するというようなことを考えぬでもない、それから非核三原則は決して後退するものではない、こういうふうにおっしゃったと理解してよろしゅうございますか。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非核三原則が後退をするものではないということは、これは総理大臣がしばしば答弁しておられますので、そのとおりお考えくだすって結構と思います。  なお、それを立法化するかどうかということは、ちょっと私限りではお答えしにくい問題でございます。
  69. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まだいろいろお聞きしたいのですけれども、次々に問題を持ってきておりますので……。  この核防条約の批准に際しまして、米国から、核保障を確定するために——安保条約の第十条の末尾に、一年前にこれを通告すれば条約は廃棄することができるということが載っております。これは、もう国民だれでも常識的な問題ですからね。「この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。」こういう第十条の問題でございますが、外務大臣はどうお考えになるか。政府は、実質上安保条約を変更するようなことはお考えにはなっていないと思いますけれども、長期固定化するんじゃないかというような考えが私どもにはわいてくるわけなんです。  そこで、核防条約の批准のときに、米国から、核保障を確立するためにそういうことを言ってきた場合、こちらはそういう点に乗って、これを長期固定化する、長期化させるというような動きがあるのじゃないか。大臣はどのようなお考えをお持ちですか。これは、はっきりしてもらわぬとね。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府として安保条約を改定する意向は持っておりません。
  71. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それで、核防条約の批准に際して、絶対これは不可分のものだと私は思いますが、国際原子力機関との間に保障措置協定というものが行われると思う、締結されると思う。ところが、これは私、いずれも重要な条約だと思います。国会の承認を求められることが私は大事じゃないかと思うのです。いやこれは行政協定だから国会の承認を求めぬでもいいと思うというようなことを、あるいは大臣はおっしゃるかと思いますけれども、これは内容行政協定のように見えても、これほど大事なものはない、こう私は思うのです。これは同じものじゃないのです、異質のものですから。そうでしょう。保障措置協定というのと核防条約というものは異質のものです。だから、これを同時に、一緒に「及び」で出してもらわぬで、別個のもので同時に出すべきだ。同時に出すということは「及び」と言うて一本で出すわけじゃないのです。  これは大臣も御承知と思いますけれども、大陸だな問題で、南の問題と北の問題、これを「及び」と言うて一本でつないである。全然異質のものを「及び」とこうやって一本につないでしまっている、そういうことをされては全然話にならぬ。異質のものですから、出すのは同時に出すべきでありますけれども、「及び」でつないでもろうては困る。これは同時に出していただいて国会の承認を求むべき案件だ、このように私は考えますが、大臣の御見解どうでありますか。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府としては、この国会にまず核防条約そのものを御審議願いたいと考えまして準備をいたしております。それから保障措置協定は、これは確かに行政協定ではありませんで、国会の御承認を得なければならない性質のものでございます。両方ともそのような性質のものでございますが、この両方を一時に御審議願い、御承認を願うということは、一つ技術的な理由がありまして、各国もそうしておりますし、わが国もそうすることが適当でなかろうと思われるのでありますが、その理由につきまして、ちょっと御説明をさしていただきます。
  73. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 核不拡散条約と保障措置協定との関係につきましては、いま大臣が申されましたように、これは別個の条約として締結するという方針でございますし、そのおのおのについて国会の御承認を得た上で締結されるべきものであるというふうに考えております。ただ、その段取りといたしましては、核防条約につきまして国会の御承認を得て批准という方針が決定されましてから後、正式には保障措置協定についての交渉を国際原子力機関との間で行い、その上で調印をいたす予定にいたしております。したがいまして、段取りといたしましては、保障措置協定については、その調印を了しましてから後のできる限り早い時期に国会に提出して御承認をいただくということになると存じます。  ただ、核防条約の御審議をいただきます際に、保障措置協定の内容がどういうものになるかということは、国会の御審議にもぜひ必要な要素ではないかと考えておりますので、国会で核防条約の御審議をいただきます場合に、御審議の参考として保障措置協定の内容を提出するということを考えております。  保障措置協定につきましては、御承知のごとく、先般、国際原子力機関との間で予備交渉を行いまして、協定案につきましてイニシアルを了しております。したがって、その内容自体は変わらないということを予定いたしておりますので、その保障措置協定の内容を国会の御審議の参考として提出するということは可能というふうに考えておるところでございます。
  74. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうすると、保障措置協定は、法案として同時に出すのでなくして、説明、参考として出すと、こういうわけか。これは保障措置協定の審議いかん、検討いかんによっては、大いに核防条約に影響すると私は思うんですね。もう影響するところはなはだ大だと思うのです。ですから、異質のものではあるけれども、これは不可分のものですよ。あなたは専門家だからよくわかるでしょう。これは絶対不可分です。しかし同じものじゃない。異質のものですよね。だから、保障措置協定の動きによっては、全部この核防条約の方に影響すること、まことに大きい。そこで同時に法案としては出さないが、参考として出すと、こういうわけか。  というのは、法案が間に合わないのか、まだ勉強が足らぬのか。どういうわけでそれは説明だけにするのか。どうせまた後で法案審議やるのでしょう。法案として出すんでしょう。そこのところの説明はどうなんです。そんな手の込んだことをやらなくたっていいじゃないか。
  75. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 保障措置協定につきましても、それを締結いたします場合に、国会の御承認を得た上で締結するということは、先ほども申し上げたとおりでございます。ただ、核防条約のたてまえの問題といたしまして、批准した場合に保障措置協定を結んで国際原子力機関の保障措置の適用を受けるというたてまえになっておるわけでございます。また、その保障措置協定の内容は、御承知のように、わが国におきます原子力物質の査察をどういうふうにして行うかということでございまして、これは国内における査察制度をどういうふうに決めるかということと非常に密接な関係があるわけでございます。したがいまして、保障措置協定の実施につきましては、国内法が当然必要になってくると考えております。  そこで、私どもの予定しております考え方といたしましては、保障措置協定と関係国内法案、それとを一緒に国会に提出いたしまして御審議を得るべきものではないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、保障措置協定の内容がどういうものになるかということがわからなければ、核防条約自体の御審議に支障を来すということは、もう間違いないと思いますので、その御審議に支障がないように保障措置協定の内容を参考として提出するというふうに考えておるわけでございます。
  76. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それじゃ核防条約を十分に審議し得るだけの材料として、参考資料として全部それを提出する、こういうわけですね。福——それじゃ大体それで了承しましょう、もっと申し上げたいけれども、まだたくさん問題があるから。  まだ私、持ち時間大分あるので、次に、先ほどもちらっと言いましたが、大陸だなの問題です。これは先ほど大臣にも申し上げたけれども、出し方が大分おかしいらしいんですね。「及び」ということで一本につないであるそうですね、あの法案は。しかしこれは、いま別途論議がありますから、私はここで重複して申しません。  別の角度から、大陸だなの問題ですが、日韓共同開発区域は余りにもわが国に接近し過ぎておる。よろしゅうございますか、大臣。現在、海洋法会議が開催されておると思いますが、二百海里ということが圧倒的に皆さんの賛成意見であるらしい。おそらく経済水域は海洋法会議においても二百海里ということに決定されるであろうという見方が強い。そうしますと、五島列島というのがありますが、あそこから二百海里といいますと、もう向こうへ通り越していくんですよ。つまり日韓共同開発区域が、二百海里というと、その区域を通り越していくわけです。  そうしますと、率直に申し上げて、自分方のものをよそと今度は共同でやらなければならぬというような非常に矛盾した、国益を損傷することおびただしいことになる、こういう点について、大臣はどのように調整されるお考えであるか。韓国側の言うことに一方的に、そちらの方にあなたがお乗りになって、国民不在、国民無視、国益を損傷するようなことまでしてお決めになるのか、その辺のところが最も大事なことだと私は思うのです。大臣、私が申し上げておることおわかりでしょう。それは外務大臣だからわかり過ぎていて、私の方があなたから習おうと思ってきょうはやっているんだから。ですから、そういうことになりますと、私はこれは大変な問題だと思う。せっかくの日本の経済水域の権利を、韓国と話し合うて処理していかなければならぬ。これは大体どうなるのですか。今回の韓国との共同開発区域という特別法を優先するのか、いままでの一般法は後回しにするのか、私どもは、どうしても納得のいかない事態がここに起こっていると思う。  これは、もしそういうことにでもなりましたら、外務大臣、あなたは大変なことですよ。皆、承知しません。そういう点はどういうふうに大臣はお考えになっておりますか。いや、それは鬼木、心配するな、おれがちゃんと調整して、決して国益を損傷するようなことはしないから安心しておけ、こうおっしゃれば私もそれで引き下がります。その点について大臣の御見解を……。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳細なことは、後ほど政府委員から説明申し上げますけれども、この点は非常に大事な点でございますので、ぜひとも基本のところは鬼木委員の御理解を得ておきたいと思います。  問題は、共同開発水域になります南の地域についてでございますけれども、確かにあの地域は、仮に海洋法会議経済水域二百海里が決定いたしますと、わが国の経済水域の範囲に全部包含されます。同時に、韓国の経済水域にもかなりの部分が包含されることになります。つまり、そこで両方の経済水域の競合があの部分について、全部ではございませんが、かなりの部分について起こってまいります。その場合にどうするかということは、恐らく海洋法会議で厳格な決定、自動的な決定ができるかと申しますと、競合した両国の間の協議によって定まるというようなことが、まあ上手にいきまして最後の結論ではないかと思いますから、やはり両国協議の問題が南の地域のかなりの部分について起こってまいります。  それだけですとまだよろしいのですが、同時に、大陸だなという思想は、海洋法会議でもこれは当然に認められて残ることは確かでございますから、大陸だなの方の理論でまいりますと、大陸だなが大陸から出るということは、一般にもう認められることであろうと思いますので、わが国は島国であって、韓国は大陸に属しているというところからも、大陸だなの主張から申しますと、大陸に属しておる国の方が、まあ余りわが国に都合のよくないことをいま申したくはございませんけれども、どっちかと申しますと有利な立場に立ちます。わが国自身が、御承知のように深い海溝をすぐ近くに持っておりますために、向こうからの大陸だながこっちまで及んでいないと申しますか、わが国が島国で海溝で切られておるという地形にございます。  これは、平面図で日本列島を見ますと、その部分が九州に非常に近うございますので、平面図で申しますと、かなり日本に寄ったところに線が引かれてあるという印象を受けるわけですけれども、断面図で申しますと、実は中国大陸あるいは大陸から延びております大陸だながずっと日本海溝のあたりまで来ておりまして、そこで海溝になりますから、どうしても日本の方から大陸だなを主張する根拠が弱いということになりまして、その場合にどうするかということになりますと、これも、またかなり激しい議論をして、できるだけのことを言って、どっかで両方の間で妥協しなければなりませんが、大陸にある方の国が、まあ第三者的に見て有利でもありましょうし、それについては国際的な判例も実はあるというようなことでございますから、結局のところ、経済水域から見て、やはりどこかで両方の競合部分について話をしなければなりませんし、大陸だなについてはなおさらそうであるということでございますから、したがいまして、海洋法が国際法に仮に非常に早い時期に成立する、法典になるといたしましても、その時期はかなり後でございましょうが、なった暁にも、いまのような問題がどうしても残ってしまって、私は必ずしもわが国の立場は有利ではないというふうに考えますので、この際、ああいう形で両国間の合意をしておくことがわが国の国益にかなう、かように考えておるわけでございます。  詳細は、必要でございましたら政府委員から補足させていただきます。
  78. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまおっしゃるように、海洋法会議によってどのように決定するかということはごもっともでございます。それは互いに相手方のあることですから、それはあくまで合意の上で——日本だけが一方的にやるわけにもいかぬ、向こうが一方的にやるわけにもいかない。でございましょうが、経済水域に韓国の方も入ってきているのだ、こういうお言葉ですが、日本はほとんど入ってしまうのです。(宮澤国務大臣「全部入ります」と呼ぶ)そうでしょう。全部入る。向こうは幾分入ってくる。そういう点も私は十分考えなければならぬ。そういう点も考えていかなければ、これは国際間のことですから、合意の上で、納得の上でやるべきことでございますけれども、国益を尊重しないようなことでは、国民は皆黙っておりません。そういう点について、特に宮澤大臣の御手腕に私は御期待を申し上げておるわけです。  それから、時間がなくてどんどん急いではなはだ恐縮でございますけれども、外交のベテランだから何でもあなたにお聞きしようと思ってきょうはやってきたわけですが、日韓大陸だなの条約について、中華人民共和国それから朝鮮民主主義人民共和国、この両国から抗議が出ておる。その抗議が出ておることに対して、いずれもこれは正式な政府の抗議と見ていらっしゃるか見ていらっしゃらないか。それとも、そういう抗議は一切これを無視するのだ、無視という言葉は言い過ぎかもしれませんが、かかわらないのだというような態度をとっておいでになるつもりか。まず、その点をひとつ、簡明でよろしゅうございますから……。
  79. 藤尾正行

    藤尾委員長 簡明に。
  80. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 中国からの抗議につきましては、外交チャンネルを通じて、直接に日本政府に対して中国政府から抗議の申し出があったという事実はございません。  ただ、日韓協定が調印されましたときに、中国外交部声明という形で、抗議の声明が発出された事実を承知いたしております。これにつきましては、政府といたしましては、調印前及び調印後に、この協定の内容を中国政府に十分に説明いたしまして、わが方としては、中国の主張し得る権利を何ら侵害していないということを確信しているということを、先方に十分説明してあるわけでございます。
  81. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは、正式な政府の抗議ではない、だがしかし、日本はそれに対しては十分説明をしておる、こういうことですね。——じゃ、向こうは納得したのですか。わかりました、結構ですと納得をしたかしないか。それからまた、こちらからはっきりその抗議に対して説明をした資料を、それじゃひとついただきましょう、どのように説明をしたか。また向こうからは、納得したら納得しましたという返事が来ているか来ていないか。あなたたちが、それは説明しましたと言ったって、説明だけで向こうが納得しておらなければ話にならない。  先ほども大臣は、この大陸だなの協定の問題にしても、互いに納得をしなければいけない、こういうことをおっしゃっておるわけです。もともと国際間のそういう、紛争とまではいかなくても、いずれにしても、そういうことが起きておる、いざこざが起きておるということに対しては、はっきりと国連憲章にも載っておる。これは御承知でしょう。国際間の紛争は、互いに当事国の間で円満に話し合いでよく解決しなければいけないということがちゃんと載っておる。そうでしょう。その点をひとつ説明してください。
  82. 高島益郎

    ○高島政府委員 理想的に申しますと、日本と中国とそれから韓国と、この三国間で協議をしまして、三国の合意のもとに何らかの取り決めができるというのが、一番理想的な姿であろうかと思います。しかし現実に、日本は韓国並びに中国と国交がございますけれども、韓国は中国との間にそういう関係はございません。したがいまして、日本と韓国の間で取り決めをするということはやむを得ない措置であろうかと思います。しかし中国は中国としての意見がございまして、これに対しまして、日本としては日本の立場を十分説明し、中国の権益を侵すものでないゆえんを十分説明いたし、口頭で説明いたしております。  なおそのほかに、将来、日本と中国との間に大陸だなの境界画定の問題について話し合う用意があるということも申し入れてございまして、その点は先方も十分承知いたしている次第であります。
  83. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 こちらからこういうことを言って、こういうふうに説明しております、向こうからはこう納得したあれのことが来ています、私はそれを聞いているのです。何も要らぬことを聞いているのじゃない。それを証拠として、じゃ国際間のそういういざこざや紛争が解決しておるのかとね。  国連憲章に載っておるでしょう。第二条第三項に「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」第六章に「いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。」平和的解決、このようにはっきり載っておるんですよね。  だから、大臣も先ほどから盛んに私の質問に対して、円満に両者が話し合いでと、こうおっしゃっておる。あなたたちがこれを話し合って、中国も北朝鮮も、抗議に対して何も問題は残っていない、きれいさっぱりしておりますというならば、その証拠を出してくれ、こういうことを言っている。簡単なことじゃないですか。それをだれかはっきりしてください。
  84. 高島益郎

    ○高島政府委員 日韓大陸だな協定につきまして、中国に対して十分説明いたしておりますけれども、その結果は、中国はそれで納得したということにはなっておりません。依然として、この問題については今後も日中間で話し合いをしていかなければならない、そういう性質の問題であると確信しておりまして、この問題、もちろんいま先生おっしゃったとおり、平和的な話し合いで十分日中間で納得のいくような解決を将来進めていきたい、こう思っております。
  85. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それじゃ困るじゃないですか。こちらが話はしたけれども、納得しておるかどうかはまだ不明でございます、事実、納得していませんよ。そういうことで、日韓の共同開発条約を結ぶとかなんとか言うたり締結するとか言っても、まだあなた、準備工作というか、予備工作というか、根回しというか、できていないじゃないですか。大臣は安心して、局長に君が説明せよ、安心しているのだ、大臣は、もうできているものと思って。ところが、できていない。これでは困るですよ。そういうことじゃ困ります。そういう点をはっきりしてもらいたいな。はっきりしてもらいたい。大臣どうですか。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり、あの条約に付表がついておりまして、図面がございますけれども、あの図面で引きました線というものが、中国が客観的に見て主張し得るような領域に入っておれば、踏み込んでおれば、中国がこれに対して異議を申し立てられるという、そういうおそれはあるわけでございますけれども、私どもあの線を引きますときに、中国がどのような主張をされても、まずこれは中国が主張し得る領域ではない、こう考えて線を引いておりますから、そのようなことは本格的な論争になり得る性格のものではないであろう。中国として確かに一遍ああいうことを言われた、これにはそれなりにいろいろお考えがございましょうから、私どもとしては、私どもの立場はこうこうであります、いつでもお話し合いに応じますということはお伝えをしてあるわけでございますから、私は礼譲の問題としては十分に尽くしておるというふうに考えております。
  87. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから、いま大臣のおっしゃったようなそういういきさつですから、その経緯に対しては資料として出してもらいたい、私ども検討しますから。どういうことを日本は説明したか、また向こうはどういう点でまた納得していないか。どちらが正しいとか、どちらがどうだということを私は言っておるのじゃありません。準備工作、根回しというものをはっきりやってもらわなければ困る、こういうことです。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 資料といたしましては、お手元にございますあの条約の付属の地図がついておりますので、その線の引き方が中国側の主張し得る領域に踏み込んでおるかどうかということを御判定いただきますと……。これが一番大事な資料であります。  それから中国側が具体的にどのような根拠で納得できないということを言われたかということは実はございませんで、一般的に中国としては立場を留保するということでございますので、それ以上に資料として差し上げるようなものは特にはございません。あの図面の引き方について御判定を賜りたいと考えます。
  89. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、付録についている地図の、向こうはそうじゃない、こちらはこうだということだけで、いまその線だけでとどまっておるわけですね。向こうの言い方とこちらの言い方は食い違っておる、向こうは違っていると言っておる、こちらは正しいと言っておる、それだけで終わっておるわけですか。言いかえれば、けんか別れということですか。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではございませんで、先方はこれこれのゆえをもって納得しないというふうには言っておられないわけでございます。ですから、この地域が自分の方に入っておるとかなんとかいう、そういう具体的な意味で故障を申し立てているということはございませんで、一般的にその立場を留保するというようなことを声明されたことがある。それで、わが国としては、どのような意味であるのかわかりませんから、お話し合いにはいつでも応じますと言っておりますけれども、その後、さらにこの点でというようなことは別段申し出がないということでございます。
  91. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは、話し合いにはいつでも応じます、けれども向こうからその後話し合いは何もあっていない、だから自然にこれは黙認しておる、承知をしてくれておるものだとわが方は解釈しておるわけですか。そのように考えていらっしゃるわけですか。これでもう済んだ、もう向こうは何も追い打ちで文句は言ってこぬから、わが方の言い分に対してもう納得したものだ、かように解釈をしておる、こういうお立場ですか。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それまたそうですと申し上げましたら、それは違うというようなことにまたならぬことでもございませんので、その点はお互いに両国の大きな友好関係考えて、先方がそういう立場を留保しておられる、われわれもそれは存じてはおる。しかし具体的にそれ以上にお話があっておるわけではない、こういうところでございます。
  93. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私が言っておるのは、何もいつもいつも日本は一歩後退しろ、何でも向こうの言うとおりになれ、そんなことは私は申し上げているのではない。先ほどから大臣のおっしゃったように、あくまで友好的立場からこれを円満に解決して問題を後に残さないようにしなければいけない。そのために友好を損ずるようなことになるとこれはよくないという意味から私はくどく申し上げておるわけです。  それではこの問題は、将来こういうことで中国との間に問題は起こらないと解釈してようございますか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らく中国の立場としましては、この問題は日本だけとの関連ではございませんで、韓国の関連もございますわけで、しかも韓国と中国との間に国交がないというようなことが事実でございますので、中国としてはその間いろいろなことを考えておられるのであろうと思いますので、私どもとしては少なくとも、十分に考えられる中国のお立場というものは考え、礼譲にもとらない範囲のものを御審議願っておる、こういうふうに考えております。
  95. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 結局、いまおっしゃるように、韓国が入っているからと——無論これは韓国とのなんですからね。しかし一方的に韓国の言われることに、言いかえれば日本は引きずられておるような感があるんじゃないですか。もう少し毅然たる態度で、対等的に韓国とこの条約を結ぶべきだと私は思う。経済水域の問題にしても、こちらは全部入る、向こうはほんの一部が入るというようなことは、これはもう明瞭なことですからね。同じ話し合いをするにしても、あくまでこちらの主張を通した話し合いをすべきだ、そういう基本的な問題からしてどうですかね、大臣。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、冒頭にも申し上げましたが、大陸だな条約というものは、国際的にある条約でありますし、海洋法会議でも当然に認められていく性格のものと思いますから、そういう理論でもし持ってこられましたときには、わが国の立場というものは、実はそうは申したくございませんけれども、これは、なかなかむずかしい立場でございます、韓国に対しまして、大陸だなでまいりましたら。
  97. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、大変くどく申し上げて恐縮ですけれども、いま大臣のおっしゃることはよくわかりましたが、結局いつでも話し合いには応ずるとおっしゃっているから、もしまた後日、中国からそういうお話が、こういう件に関していろいろ抗議的なお話があったとすれは、いつでもお話し合いに応じられるわけでございますね。  その場合は、今度は、こういう法案を私ら審議している関係上、どういうことを言ってきておるということをひとつ明らかにしてもらいたい。そういう場合には、そういうものを資料として配ってもらいたいと思う。今度の抗議の内容だって、私ははっきり具体的にどういうことで抗議があってということはよく承知しておりません。大臣どうですか、その点ようございますか。
  98. 高島益郎

    ○高島政府委員 中国外交部の声明は資料としてお届けいたします。
  99. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま時間の催促がありましたので、それじゃ、それはその程度にしておきます。  次に、これも大事なことですが、南ベトナム情勢はもう重大なる段階に来ておる、こういうように私は思います。ところが、新聞報道によりますと、三月二十一日のたしか読売であったかと思います。私の記憶が違っておれば、また御勘弁願いたい。「政府筋は南ベトナムの情勢について、どちらがパリ協定を侵犯しているか、だれの目から見ても明らかだ」このように発表された。はっきり新聞に載っております。「政府筋は、解放勢力側の激しい攻勢によって一段と緊張を深めている南ベトナム情勢について、どちらがパリ協定を侵犯しているか、だれの目から見ても明らかだ」と述べた。「これは解放勢力の攻撃に対して、政府が非公式に遺憾の態度を表明したものとして注目される」あとずっとありますが、これは大臣御承知でありますか、大臣が発表されたものですか、どなたが発表されたものですか。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 パリ協定が遵守されているか侵犯されているかということを確認するために、停戦監視委員会ができておるわけでございますけれども、これが全く機能しておらないというのが現状でございます。したがって、厳格にパリ協定がどのようにして、仮に侵犯されておるとすれば侵犯されておるか、それはだれが侵犯したのかということは、その置かれました機関のみが第三者として発言をし得ることであって、そのような発言は、私の考えておるところではございません。
  101. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 すると、これはだれが発表したのですか、「政府筋は」と新聞に載っておりますが。これは重大な問題ですよね。これは私の記憶しておる範囲では、従来こういうことに対して、国際間の紛争などに対して外務省はどうだこうだというようなことを発表されたことは、いまだかつてなかったと私は記憶しておる、あくまで中立性を尊重して。ところが今回に限り「政府筋は」と、こういうことが新聞に載っておる。そういうことになりますと、これは大変な問題になると思うんですよ。それじゃ外務省のだれが発表したんですか。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申しましたように、パリ協定の第三者による侵犯を監視する機構が設けられておるわけでございまして、それは機能しておりませんけれども、有権的にはやはりその監視委員会が判定を下さなければならない問題であります。いわんやわれわれとしては、現地に起こっておることを具体的に知っておるわけではございませんで、自分たちが確認し得る事態ではないわけでございますから、少なくとも外務省の名においてそのような考えを持っておることはございません。
  103. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それじゃ、これは外務省の発表じゃなくして、第三者がこのように言っておるという意味意見を発表されたわけですか。これは決してわれわれの意見じゃないが、第三者はこのように言っておる、こういうようなことを、まあ紛らわしい話だが、みな黙っておるがだれか言ったんじゃないか、外務省。寂として声なしだが、そういうようなときには、新聞記者に胸張って偉そうな顔してだれか言ったんじゃないか。大臣は困っているじゃないか。だれが言ったんだ。
  104. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何か表現等々で誤解があったかもしれませんが、外務省としてそのような判定を下し得る立場にそもそもございませんので、これは私から申し上げますが、外務省としてそのような判断をいたしておることはございません。
  105. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは当然だと思う。もしこれが事実だとするならば、私は大問題だと思う。北の方は、軍事物資なんかを基地からどんどん送るかもしれませんが、これはもう、そういうことを日本は肯定したというようなことになりますよ。日本は明らかに味方しておるんだ。こういうことになればこれは大変なことですよ。官房長はえらい澄ましておるが、あなた言ったんじゃないか。だれが言ったか。官房長なんかの責任じゃないか、それが官房長の責務じゃないか。だから新聞でも取り上げている。  沖繩あたりからどんどん品物を送っているが、これはだれが考えたって、今度の戦争は解放勢力が悪いだなんということを、だれの目から見てもそうだなんということを言われたんじゃ大問題だ。大体片方が正しいんだから、日本は一方に味方するなくらいのことは三歳の童子でもわかる。そんな軽々しいことを外務省なんか絶対言うべきじゃない。もしこれが事実だとするならば、これは大問題。さしずめ宮澤外務大臣はお気の毒だが首じゃ。  だれも言うとらぬ、言うとらぬじゃ、どうもこうもしようがない。何ぼ言うたって、言うとらぬ、言うとらぬじゃ、これは時間がたつばかりで……。
  106. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木委員に申し上げます。  外務大臣が責任を持って、外務省としてはそういうことは言っておらぬ、こう言っておられるのでございますから、その旨を了承してやってはいかがでございましょう。
  107. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 円満な委員長のお言葉でございますから……(「簡単に妥協してはいかぬ、もっとやれやれ」と呼ぶ者あり)ああ言うのもおりますから、委員長はその点もひとつ御了承願いたい。決して私だけが横車引いているのではないということだけは、ひとつ御了承を。  じゃ、委員長お話もありますし、何も私は皆さんをいじめるわけじゃございませんから、大臣が責任を持って、そういうことを言った覚えはない、また言うべき立場には外務省はない、こういうことをはっきりおっしゃいましたので、それで私、了承いたします。  その次に、南ベトナムの解放勢力は、ここではっきりと地盤を私は確立したと思うんですね。それは的確に政府を樹立したとか、的確に占領したとかいうわけじゃないですけれども、解放勢力はおおむね私は地盤を確定したと思う。そうしますると、南ベトナム問題の和平解決には、もう解放勢力の存在を私は無視することはできないと思う。  大臣は、それは時期が早いとか、もう少し推移を見たいとか、大方そうおっしゃると思う。多分そうおっしゃると思うが……(「答弁も一緒にやっておる」と呼ぶ者あり)もう時間が切迫したから答弁も一緒にやりましょう。——と思いますが、私は臨時革命政府の法的存在を認むべきときではないか、こう思うんですよ。ですから、これは事実上の政府、形式的に形はできていなくても事実上の政府、あるいは交戦国団体というようなことで認むべきではないか、このように思うのでございますが、どのようにお考えですか大臣。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、やはりパリ協定が一定の解決の方式を与えておるわけでございますから、私ども、ことに先ほどからしばしばお話しになりますように、判断を加えるべきでない局外者としては、パリ協定に定められた方式によって事態が解決されることが望ましい、そうしてその結果、われわれはどうするかということを決めるべきものではないかと考えます。
  109. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 おおむね私が言うのと同じだ。そうしますと、南とそれから中立軍とそれから解放軍、この三者で話し合いを円満にして、円満和平解決をやって、しかる後に、われわれはそれをどうこうやるのだというようなお考えと私、解釈してようございますか。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まあ、そういうことですね。
  111. 高島益郎

    ○高島政府委員 パリ協定の仕組みは、南ベトナムにつきましては、サイゴン政府とそれから臨時革命政府、第三勢力、三者の話し合いによって統一を図る、しかる後に南ベトナムと北ベトナムとの話し合いによって最終的なベトナムの統一を図る、こういうたてまえになっております。
  112. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私が申し上げたとおり、三者で和平解決の話し合いをし、しかる後にというお考えですね。——そうですか、それじゃ了承しました。  次に、最後にお尋ねしたいことは、福田副総理が、北朝鮮の政策については慎重であってほしいというようなことを、外務大臣に申し入れをされたというようなことをちらっと聞きましたが、そういうことを申し入れされましたか。その点ちょっと……。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国と北朝鮮とのいろいろな協力関係あるいは人の交流等々いろいろあるわけでございますけれども、そういうことについて韓国とわが国との関係を無用に刺激するようなことにならないように配慮すべきであろう、こういうお話がございまして、まさに無用に刺激をするというようなことは外交としては上策ではございませんから、私は、言われることはごもっともなことであると存じておるわけでございます。
  114. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 朝鮮民主主義人民共和国に対して外交政策を進める上においては慎重であれ、特に北にのみ慎重であれ、こう言われた真意は一体どこにあるのか。いまちらっと仰せになりましたが、もしお差し支えなければ、もう少し具体的に、その内容はどういうことであったか。  これは大臣、事実かどうか知りませんが、いろいろなお話が巷間に伝わっておるからね。といいますのは、日朝貿易関係の抑制だとか、あるいは輸銀使用の制限だとか、あるいは邦人渡航の規制だとか人物交流の制限だとか、いろいろ事実か真実か、うそがデマか、そんなことは私は知りませんよ、だからあなたにお尋ねしているが、内容はそういうことじゃなかったかというようなことをちらちら耳にしますから特にお尋ねしておる。その点、お差し支えなかったら……。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 福田副総理は、別に具体的に何をどうと言われたわけではありませんで、物事を運ぶのにはやはり円満に慎重に運ぶべきものであって、とかくおまえはまだ思慮が足りないからそういうことがあってはならぬぞ、よく円満に準備をして運べよ、そういう意味のことを言われたのであって、具体的に何をどうと言われたとは私は思っておらないわけでございます。
  116. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうであれば結構だと思うんですよ。それは福田副総理だから、そんなことはよもやおっしゃるまいと思うんですよ。しかも福田副総理の信任の最も厚い宮澤先生に対してですから、あなたを誤りなきようにと思うて指導されたんだろうと思うから。しかし、そういうような世間でいろいろ言われておるようなことがもしあるとすれば、これはIPUなんかにも加盟している北朝鮮ですから、これは大勢に逆行する行き方だ、友好親善の意味からも、これはとんでもないことだというふうに私、個人的に考えたものですから、宮澤大臣にお尋ねしたまででございまして、別に気にとめていただかぬでも結構でございますが、そういうことであればまことに結構でございます。そうあるべきだと思っております。  まだございますけれども、ちょっと時間が、もうちょうど五時になりましたので、余りいつまでもやってもお疲れになると思いますから……。外務省の諸君も決して気を悪くせぬでくれよ。諸君を思うために言ったんだから、諸君の将来のためにも誤りのなきようにと思って言ったんだから、その点はひとつあしからず。大臣、大変御無礼しました。  では、これで終わります。
  117. 藤尾正行

  118. 和田貞夫

    和田(貞)委員 外務大臣、最近の韓国の国内情勢を見て、記者の追放なり言論の封殺なり、そういう国内情勢を見てどう思っておられますか。韓国の現状を、民主主義の国だというように見きわめられておられますか。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、個人といたしまして思っていることはないわけではございませんし、また過去に個人としていろいろ申したことはございますけれども、ただいまの立場から、いずれの意味におきましても批評をいたしますことは差し控えるべきものであろうと考えております。
  120. 和田貞夫

    和田(貞)委員 その差し控えなくてはならないというのは何か意識的な面があるわけですか。差し控えたいというのは、意識的な何かがあるのですか。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 独立した主権国家の政治のあり方について、いかようにもあれ、よその国の外務大臣が批評をするということは、原則の問題として私はいかなる場合にも差し控えるべきだというふうに考えております。
  122. 和田貞夫

    和田(貞)委員 昨年の八月十五日に起こりました朴韓国大統領の狙撃事件、早速政府が特使を派遣するという姿があらわれたのですが、その後、この事件についての捜査が進んでいくに当たって、韓国の捜査当局と日本の捜査当局にかなりの大きな開きがあったと思うわけです。     〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕 最終的には文世光が死刑に処せられたわけでありますけれども、それまでの間、特に大阪における泉大津というところに住んでおります吉井行雄君、この青年あたりが韓国の捜査線上ではまさに犯人扱いにせられておる。ようやく日本の捜査当局も、ことしに入ってから本人を尾行するというようなこともなくなってしまったということですが、根本的に韓国の捜査当局と日本の捜査当局に大きな隔たりがあった、そういうような点を見てどう思っておられますか。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 捜査当局のことにつきまして、どうも私、十分存じませんし、申し上げられる立場でもないと存じます。
  124. 和田貞夫

    和田(貞)委員 少なくとも朝鮮民主主義人民共和国とわが国との間に友好を保っていきたい、平和関係を保っていきたい、そういう友好平和の運動面に、何者かがその運動に水をかけるというような政治的な意図がその背景にあったというようにはお思いにならぬですか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 重ねて申し上げますが、捜査当局がどのような捜査をされたかということを私存じませんし、また、それについて所管でございませんから、かくあるべし、かくあるべきでないということを申し上げるべきではないと思いますけれども、外交の面から申しますと、恐らくただいま言われましたようなことではなく、韓国の立場から言えば、もう少し捜査当局が動いてくれなかったのかという気持ちがあったのではないかと想像いたします。しかしそれは、この際余分なことでありまして、わが国の捜査当局は、あくまで法に基づいて厳正に職務を執行する、それが基本であろうと考えます。それはまた今回の事件の場合、そのようであったというように私は信じております。
  126. 和田貞夫

    和田(貞)委員 この吉井行雄という青年は、大阪の泉大津に住んでおりまして、泉州労連という労働組合の書記局に勤務しておる。泉州労連という労働組合に勤務をしながら、自分の余暇を割いて日朝両国間の経済、文化の交流、両国民の友好親善関係を何とか樹立したいという目的で、泉大津に組織された泉大津日本朝鮮友好研究会という会の一員であります。そしてその目的の日朝親善のために、非常に積極的に運動を進めている活動家の一人です。  この活動家が、いま申し上げましたように、少なくとも韓国の捜査当局が当初発表いたしました内容によると、全く共犯者、共謀者、こういう扱いの発表であったわけです。いま大臣も言われておりましたように、韓国はそのために日本の捜査当局がもっと真剣にやれ、もっと真剣に協力せいというような要請もこれあった。それがために、この吉井行雄君が保護あるいは警護という名目で、この八月の十五日以来ことしに入るまで四カ月以上、大方百三十日の間というのは、この青年が私の家に来る場合でも、何町か離れたところにパトカーが置いてある、もう一日じゅうこの青年の行動について尾行される、あるいは監視されるという中で、非常に人権が侵害されるという結果まで引き起こしているわけです。  確かに、外務省は捜査当局でありませんので、そのことは関係ないと言われればそうでありますが、それでは、こういうような結果に至らしめたその原因、それは外務省としても責任を免れることはできないと思う。いわゆる旅券の発給が本人の知らない間に本人の名前を使われて、本人の名前で文世光が韓国へ渡っておったという形になっているわけですね。そういうあなたの方の所管している旅券の発給の手続に大きく責任があるんじゃないですか。それはどうですか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 捜査当局からだれもこちらへ参っておりませんので、その間のことを詳細に申し上げることができませんが、私どもの知る限り、このことについて捜査当局が、わが国内あるいは国の外からの圧力あるいは影響力によってどうこうしたというようなことがあったとは思えませんので、捜査当局が何かのことをしたとすれば、それは捜査当局自身が法のもとに必要な限りのことをした、これは私、捜査当局の責任者でありませんけれども、内部からも外部からもそれに何かの影響力が加わったとは思えない、これだけは申し上げることができると思います。  旅券につきましては事務当局から申し上げます。
  128. 越智啓介

    越智説明員 たしか、旅券法を改正するかどうかという問題については、いろいろ前から内閣その他で検討しておったのですが、たまたま、このような事件の前後に、一応関係省庁が集まって検討した結果、旅券の不正取得等を防止するための旅券法の施行規則の一部を改正する、これが二月一日公布になりまして、三月一日から施行になります。したがって、三月一日以降、旅券申請者の身元の確認事務を強化するとか、代理申請の取り扱いを厳格化するとか、在外公館における旅券再発給申請の審査を厳格にするとか、いろいろな改正点がございまして、一応、従来の旅券法のいわは時宜に合わない点をいろいろ改正した次第でございます。
  129. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは捜査当局が参っておりませんが、警察の方に聞いてみますと、大臣、信頼して捜査当局に聞いてもらっても結構ですが、捜査当局の言明は、十月二十五日でこの吉井君の尾行あるいは監視、こういう行動を警護というように言っておるんですが、この身辺の警護ということはもう打ち切りました、こういうように言っておる。しかし本人は少なくとも、ことしに入るまで、ことしの一月の中旬ぐらいまで、彼が朝出ると夜家に帰るまで尾行監視が続けられておった。しかし警察当局が言っておることを、一〇〇%そこまで譲歩したとしても、昨年の十月二十五日まで警護という名によって本人が尾行、監視を受けておったということは裏づけられるわけです。そのように本人が人権を侵害されるような結果になったわけです。現実の姿として。それは旅券の発給の手続にどこかに粗漏があった。  そこでいまの、旅券法の改正ということは考えないが、省令の一部を改正して三月一日から実施するということは、これが一つの原因になってそういうのが進んできたんですか。
  130. 越智啓介

    越智説明員 去年の事件以後にこれをつくったわけでありますが、その前から実は、いろいろな点で関係省庁で実質的に旅券法について甘い点がないか、そういう点は日ごろから検討し研究しておった次第であります。
  131. 和田貞夫

    和田(貞)委員 直接省令を改正しなくてはならなくなった、以前からどうやこうや言われておりますけれども、一番改正しなくてはならなくなったその原因というのはどこにあるんですか。
  132. 越智啓介

    越智説明員 これは、この事件と関連があるのですが、やはり旅券事務全体として旅券法を先般改正したときは、できるだけ国民が世界的視野を広めるために自由に外に出ようという風潮に基づいて改正しておりましたのですが、いろいろやっている間に、いろんな問題で海外でも問題は起こるし、それから国内でも各都道府県に旅券の発給事務というものがございますが、いろんなクレームが出てまいりまして、その辺を踏まえていろんな意味で、たとえば虚偽旅券の所持者の問題、これが在外各公館で頭の痛い問題でございましたので、まず旅券申請者の身元の確認をしっかりしようじゃないか。それからもう一つは、エージェントその他が代理申請をやりますのですが、これも余り自由になり過ぎて、いろんな意味で都道府県で文句が出てきた、そういう問題がいろいろございまして、ずっと検討し、研究しておった次第であります。
  133. 和田貞夫

    和田(貞)委員 タイ国で売春あっせんをやっておった玉本某は、一たん帰ってきてまた行っているでしょう。本来ならば、そういう姿というものは出てこないはずなんです。  それで岡本公三、重信房子ですか、今日あなたの方で概略、いわゆる擬装の申請によって、不正に発給申請をやって、海外にそのような不正申請によって旅券を確保して出ている者は、大体どのくらいおると思いますか。
  134. 越智啓介

    越智説明員 数多い発券のケースでございますので、ただいままでにわかっておるのが三十数件ございます。
  135. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それは、いままでの改正前の省令に基づく手続によって、どこにそのような原因が起こっておるというように思っておられますか。
  136. 越智啓介

    越智説明員 これは、いろんなケースがございますので、先ほど来申しておりますように、まず旅券申請者の身元の確認が甘かったということ、それから代理申請の扱いが少々緩かった、それから在外公館における旅券の再発給の申請の審査も、激務に紛れて緩かった、いろんな点がございます。
  137. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それは、いままで受付事務をやっておった都道府県知事の権限に属することですが、あなたの方がここに委任しておる事務ですが、具体的にいままではどうであってこういうように変わったということをひとつ説明してください。
  138. 越智啓介

    越智説明員 具体的に申しますと、従来の身元確認の書類を次のように改めました。  まず住民票の写しの提出を義務づけました。次に郵便はがきの提出を求めて、これを一たん申請者に郵送して、旅券を交付する際に改めてこれを提出していただく、これによって本人照会を非常に確実を期することにいたしました。さらに従来、身元確認書類とされていた物の中から、とかく疑義があった公共料金領収書等を削除して、官公庁の発行した書類、次のいずれかの提出を義務づけました。一が運転免許証など、二が健康保険、国民健康保険、年金手帳などの書類、ただし、やむを得ない理由によって右書類の提出ができない者については、印鑑登録証明書のほか、都道府県知事が適当と認める書類を提出する、こういうことになります。それから従来広く認めておりました代理申請、これを今後は非常に厳格に取り扱うことにしております。これは四月一日以降は、災害事故の場合、業務上やむを得ない場合、たとえばこれは出張中の人とか、それからその他真にやむを得ない場合、離島とか遠隔地あるいは病気の場合、その場合にのみこれを認めることといたしました。それから再発給申請も、三月一日以降、在外公館に旅券の再発給の申請があった場合には、在外公館は申請者の写真をまず本省に送付する。本省に保管してある本人の写真と照合を行って、その上で旅券を再発給することといたしております。以上でございます。
  139. 和田貞夫

    和田(貞)委員 身元確認をするのに、たとえば免許証、しかし免許証は国民が全部持っておるとは限らない。住民票、写真が添付されておらない。あるいは印鑑証明、これは代理で取れます。その上にはがきで本人の方に通知する、これも新しいことでありますが、これは一つ考え方として私は適していると思うけれども、それとて確実に本人であるかどうかということを照合することは非常にむずかしい面がある。特に発給申請については、本人に限るというたてまえじゃなくて、従来の代理申請を少し厳しくする、こういうことですが、代理申請がある限りは、そう簡単に不正な旅券の発給を防止するというようなことにはならないのじゃないですか。
  140. 越智啓介

    越智説明員 確かに、その点まだまだわれわれとてもこれで十分だと思っておるわけではございませんが、御承知のように、旅券法関係当局といいますと、外務省のみではございませんで、法務省、警察庁、運輸省、各官庁が集まりまして、内閣審議室を中心にして約半年余り練ってもんだ結果なんでございます。したがって現行法では、ぎりぎりのところで各省庁知恵を集めてこのような形で決まったわけでございます。もちろん御指摘のような点、われわれも少し不安な点もあると思っておりますが、これをしばらくこの形でやってみまして、その上なおかつという場合には、改めてまた担当各省庁が集まって協議する、こういうことになっておる次第であります。
  141. 和田貞夫

    和田(貞)委員 代理申請の場合に、いま災害、事故の場合、あるいは出張中の場合、あるいは本人が病気である場合、あるいは離島の場合、こういうようなことに限定されるように言われましたけれども、たとえば病気である場合に、診断書さえあればいいんでしょう。これはこう言ってはいかぬですが、診断書というのは現実の姿としてどうでもなるのじゃないですか。やはり原則として代理申請を根本的に認めない、あくまでも原則が本人の申請によるのだということじゃないと、代理申請の制度というのがある限りにおいては、これは根絶するというようなことにはならないと思うのですが、どうですか。
  142. 越智啓介

    越智説明員 それは検討の段階でいろいろあったときも、この点に外務省としては特に強い意見を持っておったのでございますが、代理申請という問題になりますと、どうしても法改正というところへぶつかってしまう。旅券法第三条の四項に指定を受けた代理人は認める、こういう規定がございますので、この点を直すためには、どうしても全面的法改正、この問題にぶつかって、結局法改正まで至らない段階で何とかやる方法として、このように全般的に旅券の取得方法を改正するということで施行規則の改正、こういうことをやった次第でございます。
  143. 和田貞夫

    和田(貞)委員 吉井君の場合は妻であったわけですけれども、まあ特例中の特例だと思います。本人が病気のために家族がかわって代理申請をする、あるいは代理受領をする、こういうことはまだしものこと、業としておる者までこういうものを認めるというところは、やはり再びそのようなことを繰り返す原因にならないですか。吉井君の名をかたって、これだけ本人が迷惑をかけられておる。その原因も、旅行業者の——まだ捜査の段階だということで、捜査当局は、具体的にその業者の発表はしておりませんけれども、これは旅行業者がやっておるのじゃないですか。旅行業者によってこれだけ吉井君が迷惑をかけられたのじゃないですか。それでもなお、旅行業者を含めて代理申請、代理受領を認めていくということでいいんですか。
  144. 越智啓介

    越智説明員 先ほど私、申しましたように、この点もやはり非常に論点がございましたので、そこで、繰り返すようですが、旅券法改正は外務省のみならず、いろいろな省庁関係しておるという点が第一点。もう一点は、しからば理由を少ししぼることによって、できるだけ排除する方向でいこうではないか、法改正に至らないという前提のもとにそういう検討をした結果、理由の面で相当従来と違ったきついしぼり方をした、こういうぐあいにわれわれ考えておる次第でございます。
  145. 和田貞夫

    和田(貞)委員 なぜ法改正をそれだけいやがるのですか。なぜ法改正を積極的にやろうとしないのですか。法はおいておいて、あなた方政令をころころ変えられて、これでもだめだったらこれで、これでもだめだったらこれで、というようなことになると、かえってまた自由に旅行したいという善良な国民の自由を束縛することになる。あるいは省令の改正いかんによっては、国民の人権が逆にこれまた侵害されるというようなおそれもある。そういうようなあなた方の役所の権限、役所の考え方でどうでもこうでもなるんだというようなことよりも、根本的に法の改正に持っていくという考え方は、いまなおないのですか。
  146. 越智啓介

    越智説明員 これは私個人いまから約六、七年前、領事課長というのをやっておりまして、そのころ旅券法改正は、五年間くらいかかって各省もんでもんで、国会に何度も出されてはつぶされ、出されてはつぶされ、結局その当時から、できるだけ外国に出ていく国民を自由に出そうではないかという国会の御意向を踏まえて、それでいろいろ努力してやっとつくった経緯がございます。したがって、法改正となりますと、これはまた大変な、各省庁集まって努力するわけでございますが、一応これをやった上で、やってみてもしどうしてもいけないということならば、また改めて法改正というものに取り組まなければいかぬという感じは各省庁とも持っておる次第でございます。
  147. 和田貞夫

    和田(貞)委員 運輸省来ておられるでしょう。——この旅行業者というのは、本質的な業務の内容というのはどういうことですか。
  148. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 旅行業者の業務と申しますのは、旅行業法に規定がございまして、宿泊機関なりあるいは運輸機関というものを旅行者に対してあっせんするという立場の業務が一つでございます。それから、そういうあっせんに付随いたしまして、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービスを提供するために、もろもろの付帯サービスをするということが二番目でございます。それから三番目に、旅行者の案内なり旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行、その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為、その他旅行に関する相談に応ずる行為といったものが旅行業務でございます。
  149. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そこの、旅行者の宿泊を取り次ぐとか、あるいは交通機関の便宜のために手続の代行をするとか、これはまだしものこと、三番目に言われた行政庁に対する手続の代行、ここまで業者にさすというところに、いまの関連でやはり問題があるのじゃないですか。それはどうですか。
  150. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 旅行業法と申しますのは、その以前は旅行あつ旋業法という名前の法律であったわけでございますけれども、旅行業務の実態というものを踏まえまして四十六年に法律改正をいたしまして、現在の旅行業法になったわけでございますけれども、その中にいま御説明いたしました行政庁に対する旅券の受給のための代行手続というものが、実態としてやはり大量の旅行者を取り扱うという意味でそういうものがかなり定着しておりますものでございますので、そういう実態を踏まえた上でこういう旅行業法というものができておるというふうに考えております。
  151. 和田貞夫

    和田(貞)委員 旅行業を営む者は、旅行の安全の確保と旅行者の利便の増進ということ、これは第一条に書かれておりますが、しかし、いま話しました吉井行雄君がこれだけはなはだしい迷惑をかけられる結果を生んだ、これは現在、旅行業法で行政庁に対する代行事務ができる、これが原因しているのです。旅行業者が吉井君の名をかたってこうすればいい、ああすればいいという知恵を授けてさしているところに、その原因が生まれておるんですよ。こんな大事な、大きな問題が起こっておるにもかかわらず、やはり行政庁に対する代行事務というのを続けていくという必要がありますか。
  152. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 先生指摘のうち、いま問題になっております件につきまして、旅行業者がそういう行為に加担したというような事実は、私ども運輸省観光部としては聞いておりません。  それから、旅行業法の規定の範囲をどこまで広げるかということでございますけれども、諸手続の代行と申しますのは、旅券の発給以外に、たとえば外貨を銀行に行って両替してもらってくるとか、いろいろな手続の代行ということが考えられますので、旅行業法といたしましては、およそ考えられる範囲というものを包括的に書いているわけでございます。そういう旅券の発給等について代行なり代理というものを認めるかどうかというのは、旅行業法で議論するということよりも、むしろ旅券法とかそちらの方で、別の政策的な見地で変わってくれば、その範囲で旅行業者はそういう仕事はできなくなるというふうに私どもは考えております。
  153. 和田貞夫

    和田(貞)委員 旅行業者がこの吉井君の事件の原因をつくったということじゃなくても、旅行業者の一社員が、業務に従事している者がやったということは事実でしょう。
  154. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 旅行業者の職員が、そういうことを意識しながら悪意でやったというような事実は、私どもは現在のところ聞いておりません。
  155. 和田貞夫

    和田(貞)委員 捜査当局に聞いてみなさい。旅行業者の職員、旅行業者の従業員じゃないですか。悪意に、意識的にということを言うけれども、吉井君の名前をかたって文世光の写真を張っておるんでしょう。それで悪意じゃないと思いますか、意識しておらないと思いますか。そういうような手続を教えるんですよ。そういうような悪いことを教えるのです。もっと言うならば、ただ客さえ集めたらいい、金さえ持ってきたら何でもやってあげるというふうなことまでしでかすんですよ。そうして国外では、われわれが目を覆うような恥ずかしいようなことを旅行者に教えて、それでつって旅行者を集めるというような業者もあるじゃないですか。現実にやっておるじゃないですか。どこへ行ったらおもしろいですよ、どこへ行ったら愉快に遊べますよ、そういうことまでやっている業者があるのです。  あるいは、もっと言うならば添乗員制度がある。添乗員制度というのは、旅行業者の旅行者に対するサービスです。サービスであると同時に、仮に旅行中に事故が起こったというようなことがあっても、やはりこの会社を代表する添乗員がおるために安心をして旅行者は旅行するんですが、それに会社に籍もないような学生アルバイトであるとか——人が足らぬので二、三人行くのに一人や二人をアルバイトで連れていくというならともかく、会社を代表する職員、旅行業者の職員、従業員を添乗員に派遣するのじゃなくて、全然会社に籍のないアルバイトを多くの旅行業者はやっておるじゃないですか。特に大きな旅行業者ほどそういうことをやっておるじゃないですか。そうして旅行者のモラルをむしろ低下さすようなことまで教えているというような事実があるじゃないですか。  そういうような旅行業者に対して、こういう大きな問題、一人の青年が人権の侵害を受ける、こういう事件が起こっておるのに、あなたの方でもっと行政指導をやって、旅行業者にえりを正させて、旅行者が海外に行って、他の者に恥ずかしい思いをさせるような行動をむしろ慎ますように指導するのじゃなくて、むしろそういうことを助長するような、悪知恵を与えるような業者あるいは添乗員もたくさんおるじゃないですか。この際何とか、こういう業者の指導というものを強化せにゃいかぬじゃないですか。どういうふうに考えていますか。
  156. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 旅行業者の業務の改善の問題でございますけれども、添乗員の問題が先生から御指摘がございましたけれども、確かにおっしゃいますように、海外旅行等が非常にふえてまいりますと、添乗業務というものがふえてくる。そうした場合に、必ずしも十分な能力なり経験というものを持たない添乗員が乗っていくという危険性はございますので、私ども現在、できるだけ社員による添乗ということを指導しておるわけでございます。それは今後とも徹底していきたいと思うわけでございます。  それから添乗員の質の改善でございますが、旅行業者で構成されております国際旅行業協会というのがございますので、そういったところで添乗員教育というものを、毎年度私ども指導してやらせておりますし、五十年度からさらに、そういう添乗員の教育というものを拡充していきたいというふうに考えておるわけでございます。  先ほどお話のございました旅行業者が、何か法律違反をするとかいうようなことがございます場合には、私どもが旅行業法に照らして厳正な措置をとるという体制は、従来ともとっておるわけでございます。私が申し上げましたのは、旅行業法がそれを助長しているということではなくて、およそやり得る範囲を書いてある、それが実際に旅行業者にどこまでやらせるかというのは、実態としてたとえば旅券法の運用なり何なりで、当然狭められるべきものは狭められるという意味で申し上げたわけでございますので、御了解を願いたいと思います。
  157. 和田貞夫

    和田(貞)委員 添乗員制度がもっと厳格に、一定の資格を付与するとか、あるいは旅行業者の社員でなければならないというように義務づけるとか、そういうような措置考えられませんか。
  158. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 旅行業法に基づきまして資格づけをいたしておりますものは、取扱主任者と申しまして、旅行者と取引をする現場の人がいるわけですけれども、そういうものを管理、監督する地位にある者として、取扱主任者につきましては、現在、国家試験をやったりしまして資格付与をやって、そういう者でないとそういうことに従事できないということになっているわけでございますけれども、添乗員の場合は、一定の知識、能力をテストするというよりは、どちらかといいますと、現場における経験なりあるいは人格の問題と申しますか、そういった問題にかかわってくるウエートが非常に大きいものですので、直ちに資格要件というふうに結びつくかどうかは疑問があるわけでございます。現在のところ、研修制度というものを拡充して、先生から御指摘のありましたような問題が海外でいろいろ起きるということがないように、当面指導していきたいと思っております。
  159. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは国外の旅行だけじゃなくて、ついでの機会ですから国内の旅行でも——私は、きょうは時間がありませんから、この問題は言いませんけれども、逆に添乗員が亡くなったという事故があるのです。そしてアルバイトであったために、旅行業者が十分に補償しておらない。これは逆に、そういう事故が起こったときに、学生アルバイトを会社を代表する添乗員に派遣して、旅行者に事故が起こったときにどうするのですか。これは小さい旅行業者でなくて、大きな旅行業者ほど人手不足のために、旅行者が多いために、そういうアルバイトを活用する向きがあるのです。だからこれは、海外旅行だけにかかわらず、添乗員という問題について十分検討して、事故が起こってからでは始まらぬわけですから、研修も一つの方法でしょうし、モラルを高めるために努力してほしいと思います。  そうすると、あなたの方では、旅行業者の業務を削除されるような結果になるから、やはり旅行業者をカバーするために旅券の申請、発給、そういうものも従来どおりやらしてほしいというのじゃなくて、業者のそういう代行事務は、旅券法の改正によって旅行業者が代行するということがなくなってもいいという、こういう考え方ですね。
  160. 佐々木建成

    ○佐々木説明員 先生が前半におっしゃいましたような、国内旅行業者を含めまして添乗員、添乗業務のあり方といいますか、社員中心でやれという点につきましては、その方向で進めたいと思います。  それから旅券発給の代行を、どの範囲で旅行業者に認めるかという問題につきましては、これは私どもが直接所管する官庁でございませんので、先ほど外務省の方からも御答弁がありましたけれども、いろんな官庁に関係しておりますので、そういった場で、もし必要があれば議論させていただきたいと思います。
  161. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大臣、あなたもうっかりすると、名前書かれてどこかに、そういうようにされる恐れがあるわけです。また法をいじらないで、これでもかこれでもかというように役所流の考え方で省令の枠をどんどん広げていくということになると、これまた逆に人権が侵害される、国民が自由に海外渡航する自由が阻害されるという結果にもなるわけです。これはひとつ慎重に審議もしてもらわなければいかぬと思いますが、そういう省令をどんどん改正していくというのじゃなくて、せっかくの機会に旅券法の改正ということを、早い時期に踏み切るべきだと思うのですが、どうですか。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 旅券の事務につきましては、従来こういうようなことは、できるだけわが国民が自由な意思で、余り煩瑣なことがなく海外に出かけられるようにという考え方からやってまいったわけでございますが、また現行法も、これは国会の御意向でもあったので、そういうものを織り込んでおるように考えるわけですが、それが少数の不心得な人々によって悪用をされて今日の事態に至ったことは、きわめて残念なことであります。私どもとしては、やはり基本的には国民がなるべく煩瑣な思いをしないで海外に行けるようにということが大事なことであると考えていますけれども、まあしょせん言えば、その国の現状に適したような制度しかとれないということになってしまって、まことに残念なことでありますが、ある程度の規制を、先ほど事務当局が申し上げましたような形でせざるを得ないというようなことになってしまったわけであります。しかしこのことは、やはり残念なことであります。  旅券法の改正ということでございますけれども、これは実は、大変に長い時間を必要といたします。できれば現在の比較的自由な制度のもとに必要な省令を改めてやっていきたい、逆戻りをするようなことはいたしたくないのが政府の本意でありまして、そのようにまた、国民がこの制度を悪用しないようないわゆる常識を取り戻してほしいと考えております。しかし、先ほど事務当局から申し上げましたように、どうしても現在の法律ではこれ以上のところはいけないという限界がございますから、万一そうなれば改正考えざるを得ないと思います。しかし、できるならば国民の常識が戻ってまいることを、どちらかと言えば私としては大事に考えたいと思うのです。
  163. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大臣、本人であるかどうかの確認は、外務省が直接やられるんじゃないのです。知事に委任しておるんですよ。知事がやりやすいようにしてあるのです。その結果、知事に責任があって外務省に責任がない。知事が本人であるということを確認したから発給したんだ、こういうことで責任逃れのようになるわけです。あくまでもたてまえとして、旅券の申請は本人であるということ、代理申請というのは特殊な事情でやむを得ないということであって、あくまでも原則は本人である、こういうことにしなければいかぬ。そのためには、いま事務当局から答弁あったように、法の改正をするしか方法がない、こういうことを言っておられるのですが、やはり本来の姿というのは、本人が申請する、これがたてまえです。そのためには法の改正が必要だ、こういうことなんですから、そういう面で法の改正ということを検討する必要があるということを私は言っているわけです。どうですか。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど旅行業者お話もあっておったわけでありますが、多数の人がグループで旅行されるような場合の便宜ということも恐らく考えておったのであろうと思います。それは多数のうちには、制度を不心得に利用する人、あるいは業者もあろうかと思いますけれども、全体としてはせっかく進歩であったと考えておったわけであります。しかし御指摘のような事態が現実に起こってまいっておりますから、私としては、国民に良識が戻ることを期待したいわけでありますけれども、どうしてもそういう弊害の方が目立つということになれば、これまた法改正ということも研究をせざるを得ないであろう。もしそうなりましたら検討いたさなければならないと思います。
  165. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ひとつ法の改正考えてもらって、こういう吉井君のような犠牲者が出てこぬように検討してもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思います。  それから、時間もかなり経過していくわけでありますが、在外公館等の借入金の問題でございますが、古い法律昭和二十四年に借入金の確認に関する法律ができて、引き続いて借入金の返済の実施に関する法律ができたわけですが、確認に関する法律というのは、当初の在外公館等借入金整理準備審査会法という法律の題目が変わって現行法になっておるわけですが、その二条から四条まで削除されておるという経緯から見て、借入金の確認に関する法律というのは、三十年の十二月末でその時期が打ち切られておるわけですから、いわば法の運用というのは現在のところはもうないわけですね。ただ、いやこの法律によって無効なんだ、そういう権利がもう主張できないんだ、抹消されておるのだということを、いわばあなたの方が金を出すことを断わる法になってしまっているわけですね。それは事実でしょう。
  166. 高島益郎

    ○高島政府委員 仰せのとおりでございます。
  167. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そこで、この法ができた経緯というものをたどってみますと、終戦によって在外公館と本国政府との間に連絡もとれない、送金もできない、そういうことで、在留邦人をそれぞれ引き揚げさせていく、本国へ連れ戻していくための費用が非常に必要であるために、在留邦人の中から、余裕のある者というか、借りることができる、そういうような人たちからかなり金を借りて、その費用に充てていった。そして終戦後、この法律のもとに最高五万円、最低五百円の金額の返済をしているわけですね。一般的にそのようなことでこれを処理してしまっておる。先ほども御確認いただいたように、そういうものがあっても、この法律によってもう返済する必要がないのだ、こういうたてまえをあなた方はとっておられる。  ある大阪の人でありますが、上海に六年間住んでおられて終戦を迎えるわけですが、当時四十歳であって現在七十一歳というこの人が、死ぬにも死に切れないということで私の方に訴えてきているわけなんですが、いま申し上げましたように、この法によって処理をされたということ。御多分に漏れずこの人も、法によって五万円返済してもらっておるのです。しかしその人は、そのような引き揚げその他に付随する費用のために貸した金は、いま申し上げましたように、当然返済を受けておるわけなんですが、終戦と同時に、当時の中国政府との関係で、いわば表面に出せない金も在外公館としては必要であった。たとえば大使館、領事館の職員の給料さえも支払うことができない、こういうことで、普通借用証あるいは預かり証というような形で在外公館が預かった、借りたということを証明しているわけなんです。この人は、それ以外に裏金として、在外公館が必要だからひとつ何とかしてくれ、当時の上海総領事の豊田薫という人ですが、この人から裏金を貸してくれということで、借用証を渡さないで、これが一つの印や、帰ったら必ず返すからというので、いわば法で処理をした以外の金を裏金として、いわゆる別枠として在外公館が借りておるわけです。  本人は、昭和二十一年の四月に、家族四人とともに大阪に帰ってこられています。そしてさっそく外務省に行って、借用証でもない一つの番号札、何の印かわからない番号札をもらって、実はこうこうこうだったということで、帰って以来、二十二年の五月まで実に一年一カ月の間外務省に通っている。この番号札というものは、何物であるかということを外務省が確認できないために、それが借用証だ、あるいは預かり証だというようなこともなかなか確認してもらえなかったのですが、ようやく二十二年五月に当時の管理局長の大野さんから、確かに現地の領事館が裏金として預かったという確認のための証明書としてもらっているわけです。しかし証明書をもらったけれども、予算がないからもうちょっと待ってくれ、もうちょっと待ってくれということで引き延ばされていっている。本人としては、当然表金といいますか、表金、裏金という言葉を使ったら一番なにですが、表金については、この法に基づきまして申請をし、先ほど申し上げましたように、五万円を受け取っておるわけですが、借用証じゃなくて一つの番号札をもらってきたいわゆる裏金、当時の金額で現地では一億元、それが後に平価切り下げて五十万元ということになっているわけですが、今日の邦貨に換算すれば相当な金額になるわけです。それを、終戦だということ、お国のためだということで貸した。それがすでに法律で打ち切られておるからということで、その裏金はうやむやにされてしまっておる。  杉本さんという人ですが、当時四十歳だったのが七十歳になって、もう余命幾ばくもない、死ぬにも死に切れないということで、いまもなお、あなたの方に足しげく通っているはずだ。金額が、もらった五万円が少ないからけしからぬということを言っているのじゃない。こういう事情をあなたの方はどういうように思っておりますか。
  168. 藤田公郎

    ○藤田説明員 お答えいたします。  お話の杉本辰雄氏の問題につきましては、私どもも杉本さんから直接間接にいろいろお話を伺っておりますけれども、私どもの調査しました記録によりますと、杉本氏からの本件借り入れの確認申請というものが二件出ておりまして、うち一件につきまして、昭和二十六年十二月一日付で確認証書が発給されまして、先生いま御指摘のように、同一人に対する最高額としての五万円が翌年の八月に支給されております。  それから、もう一つの確認申請が出ているのでございますけれども、その確認申請につきましては、不確認、すなわち借入金としては認めないという裁定が記録に残っております。不確認の事由等につきましては、現在、どういう事由であったかということは、文書は残っておりませんけれども、御本人の方に不確認の通報を申し上げたときに、その事由も通報いたしておると思います。  私どもが、杉本さんにつきまして承知しておりますのは、以上のことであります。
  169. 和田貞夫

    和田(貞)委員 不確認だということで一緒に片づけられておるのですか。一つは確認して五万円返した、一つは不確認だ。それは、私が先ほど言いましたように、裏金として現地の領事館なり大使館が借用証を出してない。そして門標というか、番号札というか、どんなのかわからぬけれども、そういう番号札をもらって、帰ったら返すということだった。これは不確認ということで事を終えないでしょう。当時の総領事の豊田薫という、この本人に会ってみたら一番わかるんですよ。ここまで会って不確認だということを言われているのですか。
  170. 藤田公郎

    ○藤田説明員 御承知のように、ただいま先生おっしゃいましたように、昭和二十二年の五月になりまして、当時の外務省の大野管理局長が中国の法幣五十万元の借用証というのを出しておられるわけですが、それを借入金の審査委員会で御審査を願いました結果、これは適用対象外であるという決定を見たというふうに承知しております。
  171. 和田貞夫

    和田(貞)委員 外ですか。
  172. 藤田公郎

    ○藤田説明員 失礼しました。不確認ということでございます。
  173. 和田貞夫

    和田(貞)委員 不確認というのは、大臣、いま言われたように、こういうことを言うのです。本人が帰って、大野さんはその当時、中国におられないからわからぬけれども、本人が一年間足しげく訴えてきて、結果、当時の管理局長の大野さんが、それではということで、確かに豊田薫に対して五十万元を預託したということの証明が出ておるんですよ。証明が出ておるのに不確認ということはどういうことですか。
  174. 藤田公郎

    ○藤田説明員 その杉本さん以外にも、当時の非常に困難な状況下で借入金として御用立ていただいた金額及び件数等、非常に多かった方もあるわけでございますけれども、そういう状況を踏まえまして、この法律によりまして、同一人に対しては最高五万円を限度として支払うということになっておりますので、いずれにせよ、確認、不確認という問題は別にしましても、杉本さんお一人に対しては、最高限としては五万円が支払われるという結果になったと思います。
  175. 和田貞夫

    和田(貞)委員 確認をされたその申請書によって五万円を払っておる。確認されてないのは払ってないでしょう。確認された申請書に基づくこの一件については、最高五万円の金を返済しておるんですよ、あなたの方で確認したから。それでは、外務省の管理局長が出したこの証明書は、何の証明ですか。証明書をわざわざ出しておきながら、それは不確認だ、ネコババだ、これじゃ国民在外公館に対する信頼度というのはなくなるじゃないですか。確かに預けた、貸した、こういう事実の証明を当時の管理局長がやっておるんですよ。ここまで確認しておるのに、これを不確認だということで十把一からげで、貸したか貸さないかわからぬけれどもこれでおしまいだということでは、この人が死に切れないということを訴えるのは当然じゃないですか。それで事足りると思うのですか。
  176. 藤田公郎

    ○藤田説明員 確かに各一人一人の方々の状況を考えますと、いろいろお気の毒な状況にあった方というのは多いと思いますけれども、そのほかにも非常に多くの件数ないし金額を御用立ていただきながら、同一人に対しては五万円を限度として返済ということでがまんをいただいているという方も非常に多いわけでございまして、一応法律のたてまえでそういう形になったというのが、この借入金返済問題の状況ということであります。
  177. 和田貞夫

    和田(貞)委員 確認をあなたの方でされた、審査会法によって確認をされた、そのことについては、これは法のたてまえ上最高五万円、だから、この五万円に対しては不服のある者もおるでしょう。それはそれなりにあなたの言い分もわかる。しかし、現実に、金額が余りにも酷じゃないかということで係争中のものもある。あなたの方の立場は、もう済んでしまったということでそれは突っ張られたら結構だと思う。それはあなたの方の立場は立場で、その立場というのはようわかる。しかしながら、このことはそうじゃないのです。せっかく本人が引き揚げてきて、足しげく通った結果、外務次官までやられた大野さんが、そのことを認めて証明書を出されておる。外務次官といったら大臣の代行をする人でしょう。大臣の代行をする人が証明書を出しているものをなぜ確認できないのですか。これは法以外の問題として確認する、当然本人に迷惑かけたんだから。  言っておきますが、これは引き揚げのための費用に充てたという部類のものじゃないんですよ。日本本国から送金がないからということで、在外公館の職員、館員の給与その他に充てるために裏金として、政府が、国が借りているんですよ。しかも、帰ってきてから外務次官がこういう証明書を出しているのに、なぜその確認ができないのですか。なぜ迷惑をかけたままほっておくというようなことになるのですか。
  178. 藤田公郎

    ○藤田説明員 御本人は、お金の使われました目的が、通常の借入金の性格とは違うものだということを主張なさっていると承知しておりますが、借入金の性格と申しますのが、先生承知のように「引揚費、救済費その他これらに準ずる経費に充てるため国が後日返済する条件のもとに在留邦人から借り入れた資金をいう、」という規定がございまして、この定義のもとに、国として債務を負担するべきものかどうかを決定する審査会が成立しまして、その審査会においてそういう判断を受けましたものですから、確かに杉本さん個人の状況というのは、先生指摘のように、非常にお気の毒な状況というのはあったとも思いますが、ほかに私どもが扱いましたケースでも、一人で非常に多くの件数にわたりまして、非常に多くの金を御用立ていただきながら、五万円限度ということで打ち切りをさせていただいているケースも非常に多いわけでございますので、一応そういうたてまえで本件は処理されたということで御了承いただきたいと思います。
  179. 和田貞夫

    和田(貞)委員 繰り返しますが、これは大臣、ちょっと聞いておってくださいね。あくまでもその準備審査会法によって確認をされた金額がどれだけ上回った金額であっても、最高五万円という返済の実施に関する法律に基づいて、これはその法律に基づく最高五万円で打ち切っておるわけですよ。だから、それはあなたの言い分もわかるというのです、五万円で打ち切られているのだから。しかし、この件はそうじゃなくて、審査会法によって確認がされない結果によって支払われておらないけれども、これは外務次官までやった方が証明しておるんですよ。その証明に基づく金をなぜ返さないのですか。そこまで国民に迷惑かけるのですか。当時の総領事をやっておった豊田薫という人にまで会って何とか確認してやろうというような気持ちはないですか。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、いまから考えますと、和田委員の言っていらっしゃることは、いかにもそういうようにおっしゃる方もそう思っておっしゃいますし、恐らく多くの方がそういうふうに聞いておられるのだと思いますけれども、実はその終戦前後の、わが国の個人間ではなくて政府に対する債権債務、むしろ債権でありますが、一般にどのように扱われたかという、そういう背景のもとに考えませんと、問題の理解はむずかしいのではないかと私は思います。  すなわち、多くの方がもうお忘れになりましたけれども、あのときに政府に対して、たとえば物品を納入した者その他の債権を有する者の債権というものは、みんな補償打ち切りによってゼロに打ち切られたわけであります。ゼロというのは不正確ですが、一人五万円というような限度を残して打ち切られてしまったわけであります。いわば政府に物品を納入しながらその代金をもらえない。納入した事実がまことに明らかであって、その証明があっても一人当たり五万円以上は打ち切られてしまったというようなことが、これは御記憶でありますかどうですか存じませんが、当時の実際に行われたことであります。それは企業に対してばかりでなく、われわれ私人が国に対して保険料を払って契約しました戦争保険、自分の家や家財が焼かれたその保険金の支払いそのもの、これも政府によって打ち切られたわけでございます。このことは、恐らく当時の憲法に徴しましても、いまの憲法に徴すればなおさらですが、深く違憲とも言われるべき措置であったと思われますけれども、占領軍の指令に基づいて補償打ち切りの措置がとられました。そういう背景がこの問題にはございます。  したがって、今日の時点になって、いかにもこれは、国が確認した債務を、言ってみればネコババでありますが、したことはけしからぬではないかと言われれば、今日の常識からいえばそうでございますけれども、当時の背景はそのようなものであって、そういう関連において、そういうことを公平というかどうか存じませんけれども、バランスをとる措置がこの措置であったというふうに考えています。  したがって、いま言われました債権が仮に確認されたとしても、説明員が申しますように、それは一人当たり五万円であったわけでありますし、確認されなかったのは、何か別途の理由によるものでございましょうけれども、当時の背景はそういうものであった。今日から見ますと、はるかに遠い遠い時代の出来事で、いかにもわれわれの今日の憲法、法の観念には合いませんけれども、終戦前後の国に対する債権というものの扱いがそのようなことであったという、そういう背景に照らさなければ理解できない立法措置であったのではないか、私はこういうふうに考えます。
  181. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大臣、私は何回も繰り返しますが、確認されておったならば、いま大臣の言われることは理解できます、法律によって最高五万円だから。いま確認しようと思っても、この法律、幸か不幸か死んでしまっておるんですよ。確認しようと思ってもできないんですよ。何でこの法が生きている間に確認する努力をしてやらなかったのですか。総領事の豊田薫に会って確認するというようなことも、一つの方法であったのではないかと私言っているじゃないですか。そういう確認すらしないで、そして、いまとなったらこの法律がだめだからということで、これこそ本当に、いま大臣も言われたように、全く政府のネコババですよ。確認されておったら私は何も言わぬと言うのです。確認されてない。確認する努力を怠っておる。いまになってから、この法律はもう確認できないからということで、全くけしからぬ話じゃないですか。これではどうして政府を信用することができるのですか。在留法人が在外公館をどうして信頼することができるのですか。そこを私は言っているのです。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうして政府を信頼することができるかと言われるのは、いまの常識で考えればごもっともなことでありますけれども、とにかく、明らかに確認した債務をすら政府はそのような措置で打ち切ってしまったわけでございますから、当時の政府というものは、残念でありますが、そのような状況であったと申さざるを得ないと私は思います。
  183. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは三木内閣になって、社会的な不公正を是正しなければいかぬでしょう。法があるにもかかわらず、その法に基づいて、その法が生きている間になぜ確認をする努力をしてやらなかったのですか。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは何度も申しますように、当時のわが国が置かれた、その中における政府に対する債権というものの背景に照らして考えませんと、このことの説明はむずかしいだろう。今日ではこれは常識外の、恐らくは憲法違反の出来事であったと私は思いますけれども、しかし現実にそれが行われた、これはそういう時代の出来事であったわけであります。
  185. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いまなお外務省にこの書類の控えが残っておるんですよ。外務次官にもなった大野さんがわざわざ確認しているんですよ。確認しているにもかかわらず、その後につくられた法律でなぜ確認をする努力をしてやらなかったかということを言っておるのです。
  186. 藤田公郎

    ○藤田説明員 御承知のように、この証明書は昭和二十二年の五月十三日に管理局長名で発せられております。在外公館等借入金整理準備審査会法と申しますのは、昭和二十四年に実は実施されたわけでございまして、その間、御本人が審査会等に出されて確認を求められる時間と申しますか、最後の申請の時間というのは、昭和三十年の末で打ち切りになっておりますので、時間的余裕は十分あったと思います。
  187. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間的な余裕があったというのは、こっちの方で言いたいことで、時間的な余裕があったときに、なぜ確認してやらなかったかということですよ。なぜ確認する努力をしてやらなかったかと言っておるんですよ。これは確認してないじゃないですか。法に基づいてあなたの方が確認する努力をしてやらなかったじゃないですか。
  188. 藤田公郎

    ○藤田説明員 繰り返しになりますけれども、結局その審査会の判断を経て不確認という決定を見たということでございますので、その際、いろいろな事情等を考慮の上、審査会の結論が出たものと思われます。ほかにも同種の不確認という決定を見たケースも非常に多うございますし、ただいま大臣からも御説明申し上げましたように、現在の時点では非常に不公平である、おかしいという御主張は十分わかりますけれども、当時のこの借入金等の審査会の決定というものに対しては、同様の感じを持っていらっしゃる方も非常に多いと思いますし、同様の事情というもの、ないしはもっと御同情申し上げなければならないケースも多々あったかと思われますけれども、法律によりまして、一応そういう審査会というものの審査を経、確認を得たものは、同一人に対しては五万円を限度として返済をするということで法律が制定され、それに従って手続がとられたということでございます。
  189. 和田貞夫

    和田(貞)委員 何ぼ言ってもなんですが、確認されておったら、本人は理解すると言うのです。これは私も理解させますよ。確認する時間的な余裕というのはあったんでしょう。だから、あなたの方が確認した上に、なお五十万元がその上に乗っかっておった。けれども、法律が最高五万円だから、五万円でしんぼうしてくれということであれば、これは大臣が先ほど言われたような当時の情勢というものもわかるし、手続上の問題、法律のたてまえ、よくわかると言うのです。なぜ確認する努力をしてやらなかったか。いまさらになって確認しようと思ってもできない。そういうむごいやり方というのはありますか。それは本人が言うように、死ぬにも死ねないですよ。全くネコババじゃないですか。法のたてまえでできないということではなくて、あなたの方が事実確認をすることを怠ったのですから。また、いまさらこの法を改正しない限り確認することもできないなら、事によれば、この法の改正によってさらに確認してあげるということもあり得るじゃないですか。また本人を呼んで事実確認をすることを怠ったけれども、いま本人から事情聴取して、あるいは当時の総領事の豊田薫氏に会って改めて確認するということも、法による確認じゃなくて、外務省当局としては、確かに借りておった、預かっておったということを確認する方法もあるじゃないですか。そういうこともやらないのですか。
  190. 藤田公郎

    ○藤田説明員 そういう努力の一つとしまして、当時の大野管理局長が証明書を出され、これに基づいて審査会の御審議を得てああいう決定に至ったということでございますので、そういう意味での確認の努力というのは行われたものと思われます。
  191. 和田貞夫

    和田(貞)委員 管理局長が確かに借りたということを証明しているにもかかわらず、なぜ確認できないのですか。管理局長が証明を出しておるんですよ。出しておるこの証明というのは何ですか。外務省の出す書類というのはほごになるのですか。外務次官になった人が証明しておるにもかかわらず、なぜ確認できないのですか。確認していないんだ。
  192. 藤田公郎

    ○藤田説明員 冒頭申し上げましたように、不確認という記録が残っておりまして、何ゆえに不確認であったかという理由等は、御本人あてに説明があったものと思いますけれども、現在、その事由等を述べた記録がございませんので、一件については確認し、ほかの一件については不確認であったということだけしか現在のところ申し上げられないと思います。
  193. 和田貞夫

    和田(貞)委員 本人は何ももらっていないのですよ。こうこうこういう理由によって不確認であったということは、当然文書通知をするはずですよ。何も通知をもらっていない。いまだに足しげく本人は通っておりますよ。通っておるけれども、この法律がこうだからしようがないのだ、もうおしまいだおしまいだということだけ言うておるんですよ。確認されてないんですよ。また不確認だ不確認だということで、本人に通知も何にもしてないんですよ。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の環境から申せば、それは御本人に不確認の理由を御通知してないことはあり得ることだと思います。役所には審査会の審議経過というものがあったのでございましょうけれども、その記録は残っていないということでございます。恐らく私の考えでは、一件一人五万円であるから、その要件はこの方は満たされた、したがって、もう一件の不確認になった理由がどうだったかについては、別段御通知をする特定の利益がないと判断して御通知をしなかったのかと思いますが、それにしても、審議会の審議の経過は記録があればわかったであろうと思います。いまになって申せば、時効の問題は別にいたしますと、それでもそのときの政府行政行為を訴訟で争えたかもしれないではないかという立場はあろうかと思いますけれども、残念ながら当時のわが国の政府というのは、先ほど申しましたような背景において行政をしておった。今日から見れば、いかにもお気の毒なことでありますけれども、そのようなわが国であったという背景を、やはり御当人にも御理解をいただくということをお願いをいたしたいと思います。
  195. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大臣、いまもうすでに七十一歳になっておるのです。いまだに足しげく外務省に通っておるんですよ。係の人にしか会えない。法は法だから、法のたてまえというのはわかりますよ。しかしとりあえず一回、大臣が直接本人に会って事情を聞いてやるというような気持ちはないですか。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が本委員会で、和田委員に対しまして正式に先ほど答弁いたしましたところをもって、御本人にも御了解をいただきたいと思います。
  197. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、それはもう切り捨てということですね。切り捨てですか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法の上での救済はなさそうに思われますし、またそのことが、当時のわが国の政府行政のあり方から言えば、こういうことを公平というかどうか存じませんけれども、そのような扱いを一律に行わざるを得なかったという事情については、御当人にも、杉本辰雄さんでございますか、御了解を得たいと存じます。
  199. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は、本人でないから了解はできません。私は、この件については、そういう切り捨てるというんじゃなくて、やはりもう少し温情味のある態度を三木内閣としてはとってほしい、ほしかった、こう思うのですが、外務大臣は、会う必要がない、会ってもやれぬというような非常に無慈悲な態度については、非常に憤りを感じます。  しかしながら、この点につきましては、なおもっと本人の態度も聞いて、私は、この点については、さらに別の機会に本人にかわって——あるいは本人と同じような立場の者がまだまだあると思うのです。あなた方のミスをそのまま過ごしておいて、努力もしないで、いまとなったらやむを得ないのだ、仕方がないのだ、こういうようなことで切り捨てる、ネコババにする、こういうような外務省の態度についてはけしからぬ話だ。強い憤りを感じます。また場所を改めて、この点についてはもっと深く論議してみたい、こういうように思いますので、きょうのところはひとつこの辺で終わりたいと思います。
  200. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員長代理 木下元二君。
  201. 木下元二

    ○木下委員 お疲れでしょうが、引き続いて質問いたします。  在外公館職員は、所要の通常業務のほかに接受国の情報収集を恒常的で主要な任務の一つとして重視していると言われておりますが、その情報収集の目的や方法あるいは活動についてお尋ねしたいと思います。
  202. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 在外公館に勤務する職員は、任国にありまして外交活動を行っているわけでございますが、その外交活動の一環といたしまして、情報収集という活動、あるいはそういう仕事を当然行っているわけでございます。情報収集につきましては、いろいろな方法があると存じますけれども、できる限り多面的な情報収集を行うということを期待されておるわけでございます。
  203. 木下元二

    ○木下委員 もう少し詳しく言われませんか、その活動とか方法について。一応伺うだけにとどめておきますが、もう少しわかれば……。
  204. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 所在します任国または土地、場所、それによってもいろいろ異なっておると存じますが、ただ一般的に申しますならば、大使館としての通常の活動として、任国の政府機関とできる限り密接な連絡を保ちながら、政府機関からの情報あるいは意見交換、情報交換というふうなことを通じての情報の入手ということが、まず当然考えられます。また政府機関のみならず、民間の経済界との接触を図ることによっての経済情報の入手、あるいは報道陣との接触を通じてのもろもろの情報の入手、こういうふうなことが考えられるわけでございまして、与えられた環境において、できる限り多面的な、また幅の広い接触を行うことによって、情報を多量に、またできる限り的確な情報の入手に努める、これが在外公館の職員の任務であります。     〔加藤(陽)委員長代理退席、越智(伊)委員長代理着席〕
  205. 木下元二

    ○木下委員 その目的はどういうことですか。目的もいろいろ多目的にわたっているということですか。
  206. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 在外の公館は、大使館、総領事館を含めまして、本省に対しまして現地で入手いたしました情報を報告するということが期待されているわけでございまして、本省におきましては、必要な情報を関係政府機関、場合によりましては経済情報などは、関係民間団体等にもなるべく早く連絡をするというふうに心がけているわけでございますが、一般的に申しますならば、日本の対外関係という観点から、できる限り正確な情報を早く入手することによって、わが国の対外施策に過ちなきを期するということにあるわけだと考えております。
  207. 木下元二

    ○木下委員 次に、中東、アラブ諸国には、在外公館職員としてアラビア語に堪能な職員は何人配置されておりますか。
  208. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 アラビア語の職員が、たしか二十二名であったかと存じますが、現に配置されております職員は、エジプト、レバノン、シリア、ジョルダン、リビア、スーダン、アルジェリア、サウジアラビア、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、これらにそれぞれ一名ないし二名のアラビア語要員が配属されております。
  209. 木下元二

    ○木下委員 全部で二十七名ということですか、堪能な職員が。
  210. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 失礼いたしました。十六名でございます。
  211. 木下元二

    ○木下委員 次に、在日米軍人の不法行為による日本国民の被害と、その取り扱い上の問題点について伺いたいと思います。  今日、在日米軍基地は、整理縮小という名のもとに、実際は陸海空三軍の機能が集中強化されており、軍人も依然として約五万人が配置をされていると言われております。  ところで、これら在日米軍人の不法行為事件は、サンフランシスコ条約発効以降におきまして、今日まで何件発生しておるでしょうか。
  212. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 私いま日本年度ごとのデータを全部持っておりますけれども、昭和二十七年から昭和四十九年、この四十九年のところは十一月三十日までのところでございますけれども、これのトータルが全体で十四万四百三十五件でございます。
  213. 木下元二

    ○木下委員 十四万四百三十五件という不法行為事件だそうで、おびただしい数字であります。しかもこれは、あくまで防衛施設庁がつかみ得たもので、被害者や遺族の方々が泣き寝入りをしたまま表ざたにならなかった事件というのが、ほかにも数多くあると思うのです。その点はいかがでしょうか。
  214. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 駐留米軍の事故と申しましても、これは一般に公務上の事故と公務外の事故があります。公務外の事故と申しますのは、勤務時間でないときに、私として行動しているとき、たとえば市中に買い物に行くというような状態、こういうものがございますが、通常、起こりました場合は、公務外のときは一般私人として扱っておりますので、あるいは加害者、被害者同士でのお話し合い、いわゆる一般の示談というのがございますが、そういうものがあるかと存じます。ここで私、申し上げましたのは、そういう示談もございますけれども、地位協定に基づきましての補償あるいは見舞金、そういう措置をした部分だけを申し上げたわけでございます。
  215. 木下元二

    ○木下委員 とにかく事故の多発現象というのは異常な状態だと思います。ここに防衛施設庁調べの資料がありますが、これを見ますと、昭和四十八年は三千百三十四件、三十一年は最も多く一万二千九百八十八件。少ない年でも、昨年は二千四十一件に達しております。外務大臣は、このような在日米軍人によって引き起こされました不法行為の実態を御承知でしょうか。一体、事故発生の原因はどこに問題があるとお考えでしょうか。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変に広いお尋ねでありますし、私は、そういう事故のようなことについて深い知識を持っておりませんので、十分な判断はできませんが、やはりよその国に来て、場合によっては独身であるということもございましょうし、あるいはまた、軍務というものがもともと楽なものではございません。年齢的にも恐らくは一定層の年齢に属する人たちが多いわけでございましょうから、そういったようないろいろ複合した環境の中で起こったことではないかと存じます。
  217. 木下元二

    ○木下委員 その点については、後ほどおいおい伺っていきますが、防衛施設庁に伺いますが、この米軍人の不法行為による日本国民の被害の実情と、そしてこれが具体的にどう解決されたか、あるいは係争中であるかという処理の状況を全面的に把握されておられますか。
  218. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 大変広範なお問い合わせでございますけれども、ただいま申し上げました件数が、私どもの把握している件数でございまして、逐年この件数は減ってきております。そしてこの事故の中の八五%は、大体交通事故ということでございます。したがいまして、この交通事故につきましては、国内で一般に行われておりますような補償の制度と申しますか、そういうものに準じた形で処理をしておりますので、日本人同士の事故に大体準じたような形で処理をしている次第でございます。
  219. 木下元二

    ○木下委員 そこで私は、具体的事件の実例を挙げまして質問をいたします。  笠井事件と呼ばれておるものがあります。これは昭和四十二年四月二日午前二時ごろ、米軍横田基地近くの福生市内で、米空軍横田基地野戦整備中隊所属のソーアー・K・バーントソン、当時二十一歳が、若い女性を助手席に乗せ、酒に酔って運転し、笠井義治さん、当時三十二歳を轢殺した事件であります。  被害者の遺族の妻雪さんと子供の裕子さんの損害賠償請求額は、当初九百六十四万九千百五十七円でありました。葬儀費用が十六万一千七百四十二円、得べかりし利益が八百九十八万七千四百十四円、慰謝料が二百万円で、強制保険百五十万円を控除いたしましたものであります。これは後に請求が拡張されまして、二千七十六万五千二百四十二円になっております。この請求に対して、米軍側が慰謝料として提示した額は幾らでありましたか。
  220. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 保険を差し引きました額が二百十六万三千五百七十四円でございます。これは昭和四十四年の六月二十日に提示された額でございます。
  221. 木下元二

    ○木下委員 著しく低額だと思うのです。しかもこの回答額は、米軍人に対しこれ以上請求しないという念書と引きかえの条件つきではなかったと思うのです。  また遺族の方は、余りにも低い、人権無視の回答だということで、受領を拒否しておるというように聞いております。その点は間違いありませんか。
  222. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 間違いございません。
  223. 木下元二

    ○木下委員 この米側の決定額は余りに低いと思うのですが、その内訳はどういうことですか。
  224. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 ただいま係争中でございますので、金額について申し上げるのはいかがかと思いますけれども、一般の補償のやり方でやっておりまして、ただ、そこにありますところの過失相殺の関係意見の食い違いがあるために、このような形になっておるということでございます。
  225. 木下元二

    ○木下委員 過失相殺ということですが、いまの米側の提示をしてきた決定額二百十六万何がしのその内訳はどうかと聞いておるのです。
  226. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 私、いま数字は持っておるわけでございますけれども、まだ係争中でございますので、またこれは個人の問題でもございますので、この場で申し上げるのはなにかと思いましたので、抽象的に、一般的な賠償の基準でやったものに対しての、過失の相殺の率に食い違いがあるということから生じておる、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  227. 木下元二

    ○木下委員 係争中でも、その内容が言えないことはないと私は思うのですが、その二百十六万と提示をしてきた内容は、たとえば逸失利益がこういう計算でもってこれだけ、あるいは慰謝料がこれこれで幾らというふうな内容は提示をされたのでしょうか。
  228. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 内容の提示はあったということでございますけれども、私どもはわかっておりますけれども、しかしいずれにしても、相殺の率が違うというところに問題があるわけでございます。
  229. 木下元二

    ○木下委員 過失相殺ということを米側は言っておるそうですが、施設庁は本件事案の事実関係を調査されたのでしょうか。また、どういう調査をされてどういう結果が出ておるのか。過失の点はどうなんでしょう。
  230. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 この事件につきましては、警察におきます調書等をもとにいたしまして実態を把握したわけでございます。そして一般に判例、その他におきますところの同種の事案についての相殺率と申しますか、そういうものを勘案して配慮したということでございます。
  231. 木下元二

    ○木下委員 防衛施設庁の査定額は幾らなんですか。米側の決定額が出る前に、防衛施設庁が査定をして査定額を出し、それを米側の方に報告をすると思うのですが、その額は幾らになっておりますか。
  232. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題は、まだ結着がついておりませんしいたしますので、この数字は差し控えさせていただきたいのでありますけれども、通常の算定の仕方による額で出しておるわけでございます。
  233. 木下元二

    ○木下委員 それはおかしいじゃないですか。結着がついてないから、その査定額が言えぬとはどういう理由でしょうか。これは査定額はこっちにもわかっているのです。じゃ私の方から言いましょう。これは七百三十二万円。被害者の方もよく知っているでしょう。これはあなた方の方で被害者の方に言っているのじゃありませんか。査定額の七百三十二万円、この計算方法、算定基礎を明らかにしていただきたいと思うのです。
  234. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 私、申し上げておりますのは、係争中であるということと、それから個人の問題であるために、中身についてはこの場で申し上げないということに考えたわけでございますけれども、先生がおっしゃいました額というのは当たっております。(木下委員「計算方法」と呼ぶ)計算方法は、この方のいろいろな収入その他に関連が出てまいりますので、控えさせていただきたいと思います。
  235. 木下元二

    ○木下委員 計算方法は、本人の収入その他にというのは、どういうことですか。明らかにできない理由は……。
  236. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 その基礎のところは、御本人の亡くなられた時点におきますところの収入ということに関係がございます。そういう問題にもわたりますので、非常に個人的な問題がありますので、控えさせていただきたいということでございます。
  237. 木下元二

    ○木下委員 それでは、その点についてはあえて私はそれ以上深追いして聞きません。けれども、施設庁が査定した結果は、この米側の出した決定額と比べましても相当な開きがありますね。米側は二百十六万幾ら、それに対して施設庁の方は七百三十二万ですから、三分の一以下ですね。これは一体どういうことなんでしょうか。どうしてこんな開きがあるのでしょうか。
  238. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 御承知のように自賠の保険がございます。この保険額を差し引いた額をアメリカ側は提示しているということでございます。そこが一つ違う点と、もう一つは、過失相殺の考え方が違うというところに原因がございます。
  239. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、あなた方の七百三十二万というのは、保険額を控除していないわけですか。そうすると、保険額というものは百五十万ですか。
  240. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 入っております。保険の入った額です。
  241. 木下元二

    ○木下委員 だから、控除していないのでしょう。
  242. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 ええ、控除していません。
  243. 木下元二

    ○木下委員 百五十万……。
  244. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 そうです。
  245. 木下元二

    ○木下委員 保険額が入っていないというと、これはこの百五十万を引いた額ということになりますが、五百八十万ぐらいになるのですか。それにいたしましても米側と相当開きがある。施設庁の額そのものも、請求額から比べますとはるかに低いわけでありますが、米側と比べると、米側の方がもっと低い。これは、どうしてこういうことになるのでしょうか。計算の仕方が根本において違うのですか。
  246. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 アメリカ側の計算そのものがどこが違うかということは、私も詳細には存じておりませんけれども、一番の大きな問題は、過失相殺の考え方が違っているというところが影響が出ている一番の原因でございます。
  247. 木下元二

    ○木下委員 過失相殺ということを盛んに言われますが、一体、どういう過失があるというふうに、この事件では米側は言っているのですか。どういうことですか。
  248. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 ここで施設庁の対米交渉について申し上げるわけでございますけれども、この公務外の事案といいますか、これは地位協定の十八条の六項というのであるわけです。それで、いわゆるたてまえは、私人の行為ということになりますので、施設庁といたしましては、その実態をつかんでそれの報告書をつくって提出するという形になっております。ただ、施設庁といたしましては、単に報告書をつくって提出するということではよからぬということで、ややアメリカ側との交渉をあっせんをするというところまでやっておるわけでございますが、たてまえ上は、アメリカ自身がアメリカの法律に基づいて決定をするというたてまえになっておりますので、施設庁としてのアメリカに対する物の説明は、実態をよく説明するというところまでが限度であるということでございます。したがいまして、アメリカ側の査定の内容そのものをつぶさに話し合いで協議すると言いますか、説得すると言いますか、そういう限度まで行き得ないというのが実態でございます。
  249. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、アメリカの方は過失相殺で二百十六万と言っているが、この事件の実態をどういうふうにとらえて、どういう過失相殺をするのかということは、施設庁の方にもわかっていないということですね。  それで施設庁は、先ほども言われましたように、いわば仲介者的な立場に立って、被害者の方の請求も聞き、そして施設庁として調査をして、米側に報告書を出す。それで米側に対して、その報告に基づいて説明もする。それに対して、米側の方から決定額をもらうわけですね。そうすると、その決定額と施設庁の方の査定額との間に相当なギャップがあるということになれば、これは一体どこから出てきたのか、なぜこういう大きな開きがあるのか、私は当然、そこは煮詰めていくことになると思うのですが、そういうことはやらないで、米側が決定額を出せば、ああそうですかということでそれを持って帰るのですか。そういうことですか、扱いは。
  250. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 たてまえといたしまして、十八条の五項による公務上の事故でございますならば、これは国が責任を持ってお支払いをしますし、アメリカとの交渉というものも、しっかりできるたてまえになっております。しかし公務外の問題になりますと、これは、いわゆる私人としての行為であって、アメリカ側の方も、当人同士の話し合いで決着をつけるのが筋だけれども、見舞い金として十八条六項によってアメリカ側が支出をするというたてまえになっておりますので、日本側としては、報告書を出す、しかし、それだけではいかぬということで、その報告書の中身について十分実情を説明して、アメリカの理解を求めるというところまではいくわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、アメリカが見舞い金の支出ということでございますので、それ以上の折衝と申しますか、というのは限度があるというふうに申し上げているわけでございます。
  251. 木下元二

    ○木下委員 大体、見舞い金なんということは、これは後から私は聞くつもりでおりますが、そういうことはどこにも書かれていないんですよ。どうも米側の態度というのは、人権無視で貫かれておりますよ。しかも防衛施設庁は、それにへっぴり腰で言いなりになっておるという感じがするのです。  この事件、これは防衛施設庁と直接関係ありませんけれども、刑事事件として見ましても、一体どういう処理がされたかということを申しますと、これは業務上過失致死という罪名で起訴をされておりますが、公判請求は略式なんです。罰金はわずか三万円なんです。身柄拘束もされていないのです。これは、初めに私、申しましたように、酔っぱらって運転してこの事故を起こしているのです。日本人がやった場合なら、これはもう身柄は拘束をされ、そして略式なんということはあり得ません。しかもこれは、被害の弁償もされていないんですね。こんな事件が略式で処理をされる、裁判所もそれを認める、こういうのは、私は長い弁護士経験がありますけれども、聞いたことさえない。こういう扱いが裁判の分野でもやられているのです。これはもう防衛施設庁だけでなくて、裁判もアメリカに気がねをして、被害者感情を無視して進められておるのじゃないか、対米従属じゃないか、私はそういう感を深くするわけであります。  さらにもう一例申し上げて、議論をしたいと思うのです。それは、米兵が起こした残虐な殺人事件について、明らかにいたしたいと思います。  事件発生は昭和四十一年九月。話は古いようでありますが、決して過去の問題として済まされない不幸にも新しい現実の問題であります。この日、東京都豊島区内で、米軍朝霞基地内の米陸軍第二四九総合病院勤務のエドウィン・E・スチュアート、二十二歳と、スチーブン・K・コリンズ、二十歳、いずれも陸軍二等兵、この二人が二人がかりで、無抵抗の今井浩祐さん、当時三十一歳に対して、頸部を締め、ビールやしょうゆびんなどで乱打をし、全身に三十数カ所の傷を負わせて殺害をした事件です。  ところがこの二米兵は、懲役八年の刑事第一審の判決を受けましたが、さらに遺族の請求で民事訴訟となりまして、一千六十万円の賠償金支払いの民事判決が下りました。これは東京地裁であります。昭和四十四年五月八日。この事件に対して、米軍は遺族に幾ら支払ったでしょうか。
  252. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 五百四十万ちょうどでございます。
  253. 木下元二

    ○木下委員 この事件の処理に当たって防衛施設庁は、このような判決が出ているにもかかわらず、在日米軍賠償部に対して、幾らの賠償勧告額を提示したのでしょうか。
  254. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 突然のお尋ねでございますけれども、これで見ますと八百六十四万円であります。
  255. 木下元二

    ○木下委員 防衛施設庁は、米軍側のこの慰謝料は、事故の残虐性、被害者の将来性あるいは遺族などの条件から見て、一体誠意のある妥当な額と思っていられるのですか。いかがですか。
  256. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 こういう前途のある方が亡くなられたことについて、しかも大変残虐な行為によって亡くなられたことにつきましては、本当にお気の毒だというふうに私たち思っておる次第でございます。したがいまして、こういう問題の処理については、手厚くすべきだというふうに考えます。しかしながら、ただいま申し上げましたような制度上の問題からいたしまして、アメリカ側としては、そういう慰謝料といいますか、見舞い金というものの支給をしたということでございます。
  257. 木下元二

    ○木下委員 この刑事事件の二審の方では、この二人の米兵は懲役六年の判決になったわけでありますが、遺族の今井礼次さん、これは亡くなった人の兄さんでありますが、この人の話では、刑務所で刑期を服役したのかどうか全くわからないということであります。しかも米軍側は遺族に対してこの五百四十万円を支払ったということでありますが、兄の今井礼次さんはこう訴えております。地位協定の壁にさえぎられて日本の法律が及ばないのが実態だ。家族手分けして裁判のために約三年間故郷の秋田と東京を往復したが、その裁判費用が百五十万円以上もかかっている。本当に費用でもなければ泣き寝入りになるところだ。もう弟は帰ってこないが、再びこのようなことがあってはならないし、そのために何とかいまの矛盾を改善してほしい、と訴えておるのです。  さらにもう一例、私はついでに申しておきます。これは民事確定判決を経た車両による致死事件であります。大平伸という人で、事件当時五十四歳、この人が昭和四十六年九月十八日午前一時十五分ごろ、神奈川県相模原市矢部二丁目二十四番地先路上を自転車で進行中、ロバート・R・アンタランという米兵の乗用車に追突をされまして即死した事件です。そこで遺族の母、妻のほか子が三人おるわけでありますが、この人たちが横浜地方裁判所に民事訴訟を提起しまして、判決を受けたわけであります。四十七年七月二十日に判決がありました。これは、この遺族らに対して総計一千四百八十六万四千二百二十三円を支払え、及び、それら金員に対する昭和四十七年三月二十八日以降完済に至るまで、年五分の割合による損害金を支払えという判決であります。  この事件も公務外ということで処理をされました。また被告の米兵は行方不明でありますが、防衛施設庁の査定額は幾らだったのでしょうか。そして米側の裁定額は、当初幾らというふうに示されたのでしょうか。
  258. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 その案件につきましては、判決が出ておりましたので、当方としては査定をいたしませんで、そのままの額をアメリカ側に提示をいたしました。それから、アメリカ側がそれに対しまして申し出てまいりました金額は、当初は二百六十四万六千円でございましたけれども、当方として再三交渉いたしまして、四百十一万というところまでになった次第でございます。
  259. 木下元二

    ○木下委員 判決が出た場合は、そのまま判決の額を払うように提示をすると言われましたけれども、さっき私が申しました今井事件の場合はどうなんですか。八百六十四万を米側に提示をしたと言われましたが、これの判決は千六十万円ですね。どうして今井事件では判決どおり提示をしなかったのですか。またこの大平事件では、本当に初めから判決額そのままを提示しましたか。
  260. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 判決を尊重すると申しますのは、公務上の場合に、判決がありますとその額を提示するということになっておりますので、公務上の場合も、それにならって、判決のあるものは提示しようということにしたわけでございまして、大平さんの場合は確実に提示いたしました。  それから、いまお尋ねの今井さんの場合、これは突然のお尋ねなのではっきりしませんでしたけれども、当時は施設庁で査定額をつくって、勧告額をつくって提示していたようでございますが、その後は、公務上の場合と同じように、判決があるものについては判決額を提示しようというふうにしたわけでございます。したがいまして、大平さんの場合には判決額を提示いたしました。
  261. 木下元二

    ○木下委員 とにかくこの米側の提示額というのは、余りにも不当に低額なので、裁判が進み、判決が下ったわけです。しかし判決後も、先ほど言われましたけれども、米側は依然として態度を変えようとしなかったのです。遺族の代理人弁護士が、私も会いましたけれども、施設庁と再三再四連絡をとり、交渉してもらちが明かなかったのです。しかも裁定額を最終的解決として満足の上受領することに同意しなければ支払わないという態度を米側は一貫してとっておったんですよ。これはもう御承知のとおりです。やっと最近になって、米側の態度が少し軟化して、これはもうごく最近ですが、やっと四百十一万ですかの線で解決をしたということです。  遺族の方にしてみれば、せっかく裁判をして認められた額なんです。損害金を含めますと、ざっと見積もっても千七百万なんですよ、この判決の額は。それをその四分の一にも満たない額で手を打ったということなんです。そうしなければ一銭の賠償金も入ってこないから、もうやむにやまれずこれで手を打ったということなんです。これはまさしく泣き寝入りを強制されたものだと私は思います。米兵に対して日本国民の命の値段が格安に扱われておる、こういうことだと思うのです。私は、同じ日本国民として、こうした扱いには納得できません。これは、だれしも納得できないと思うのです。  私は、この問題を外務大臣に聞きたいのですけれども、私がさっきから指摘をしました今井事件、あるいは大平事件の処理というのは、被害者の遺族にとって余りにも酷だと思いませんか。いかがですか。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 防衛施設庁もその間に入られていろいろ努力をしておられるわけでありますから、もともと金額でどのくらいならば人の命にかえられるかというようなことは、申すのが困難でございましょう、ですから私としては、ただ伺った印象だけでは何とも申し上げるわけにはまいりません。
  263. 木下元二

    ○木下委員 いや、伺った印象と言いますけれども、私は、具体的な事件を示して、それぞれこういう解決になっている、一般事件の解決から見て非常に安い価格で解決をしておる、この米軍軍人による不法行為の損害賠償請求事件の解決というものが。一般事件から比べて被害者にとって余りにも過酷な解決になっておる、そういうことの事実を示して私は質問をし、それは明らかになったと思うのです。ですから、そういうことについて、大臣として、これは同じ日本国民として余りにもひどい措置ではないか、こうお考えにならないかと伺っているのです。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しかしそれは、裁判による場合も御指摘の中にはありましたし、また過失をどのぐらいに考えるかといったような、そういうケースもあったようでございますから、一般の場合と比べてと言われましても、似た場合と比較をすることがいま私にはできませんから、それだけで印象を言えと言われましても、ちょっと申し上げにくうございます。
  265. 木下元二

    ○木下委員 過失相殺云々のことは、先ほど一番最初に申しましたケースであります。これは係争中だということですから、私はそれ以上突っ込んで申しません。けれども、あと二件申しました大平事件、今井事件、これは判決が出て、その確定した判決に従った支払いがされないわけなんですよ。そうでしょう。だから不当だ。これは明らかじゃありませんか。
  266. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 御指摘案件は、確かに判決があったわけでございますが、いろいろな事情もあって、これは当然こういうことはあろうかと思いますけれども、被告が全然出廷しないという状態で裁判が行われているわけです。これは当然そういう裁判があってしかるべきでありましょうし、また判決は尊重さるべきだと思いますけれども、そういう状態であったということが言われます。  そして私、一つ申し上げたいのは、全体をながめてみますと、たとえば四十七年度、これは一番新しいのですけれども、最高裁の事務総局民事局から出ております交通事故の賠償の判決がございますが、これは交通事故が八五%に達しているから、特に交通事故だけを取り上げてみたわけでございますが、四十七年度の判決額のトータルをずっと平均値を見ますと、大体七百万円から一千万円というところが二百五十六件ございます。それから千万円から千五百万円というところが百八十九件ございます。これが一番判決の多いところで、いわゆるお金で換算してはいけないのですけれども、まあ、交通事故で亡くなられた方に対する判決額の平均というのが、四十七年度はこの辺にあったということを示している数字でございます。全国的なものでございます。  そこで、米兵によりますところの公務上、公務外の交通事故の四十七年度の平均値を出してみますと、四十七年度、公務上の場合の平均は七百五十万見当でございます。それから公務外の場合には九百八十万の見当でございます。これは、亡くなられた方の収入なり年齢なり環境なりというものが違うために出てきているわけでございますが、そういたしますと、大体七百万から一千万見当のところに一番集中している国内の判決と平均的にはやや似ている数字ではなかろうか。したがって、特異な場合には変わるのでございますけれども、全般的にはそれほど差がないのじゃなかろうかというふうに思っている次第であります。
  267. 木下元二

    ○木下委員 私がわざわざ具体的な例を出して質問した問題にはお答えにならない。私の示した例は、判決が確定され、そしてその履行もされていないというケースで、これは不当ではないかと言っておる。それに対してお答えにならないで、一般的なことでそういうふうにすりかえられても私は困ると思うのです。しかも、その判決が出るに際して、欠席判決であったからというようなことを言われて、判決に従わないのは無理からぬと言われぬばかりの口調がうかがえるのですが、困りますよ、そういうことでは。  あなた方が、私の示した例は特殊なケースで、一般的にはそうではないというふうなことを言われるなら、私はそれでは具体的に申します。これは参議院の河田賢治議員に対して防衛施設庁が提出された資料であります。昭和五十年三月七日。これは公務上、公務外について、昭和四十八年度、四十九年度に分けてこの不法行為の事故発生件数が載っております。時間の関係で四十八年、四十九年合わせて申しますが、公務上は千百八十八件です。公務外が三千九百八十七件です。公務外の方がずっと多いわけです。そしてこれは、私が数日前に防衛施設庁からいただいた資料でありますが、それによりますと四十八年、四十九年の合計の公務上の賠償金の総計は二億一千七百十五万一千円、公務外が一億二百八十七万円、こういう結果が出ております。  これは、どういうことを示すかと申しますと公務上、公務外の件数の比率は約一対四ですね。正確には一・一対三・九ということになりますが、約一対四。そして金額の方はどうかと言うと、公務上と公務外では二対一ですね。逆に二対一であります。つまり公務上に比べて公務外の方がはるかに解決金が低い、全体としても。はっきり言えますよ、このことは。あなたは先ほど、公務上と公務外を計算して、何か公務外の方が金額が多いかのように言われましたけれども、全体として見た範囲では、これは公務外の方がずっと金額は低いですよ。これはあなた方がお出しになった資料によっても明らかなんです。だから、米兵によって損害を受けるという場合、米兵の都合によって、公務上である場合と公務外である場合によって、被害の弁償、取り扱いが著しく相違をするということ自体、これは権利侵害を受ける国民の側に立つならば、非常に大きな問題だと思うのです。そうでしょう。この点を私は外務大臣にお聞きしておるわけなんです。大臣、この点はお認めになりますか、こういう不公正があるということ。いかがですか。
  268. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 地位協定の十八条の五項では、公務上の行為について規定しておりまして、六項ではいま問題にしておられます公務外の規定が置かれておるわけでございます。それで公務中の問題につきましては、国が全部表面に出ましてやるわけでございますが、公務外の問題に関しましては、ただいま防衛施設庁の方から詳細に説明がございましたように、政府としましては、それを米軍に取り次ぐということになっておるので、たてまえ上も違うわけでございます。  それからもう一つ申し上げたいのは、こういう慰謝料の支払いということで、少し金額その他もごまかされているというお話でございますけれども、その前に、これが仮に本人がその米軍人に直接請求していくということでありますと、実際問題としてそういう補償額を獲得することは決して容易ではないのであります。御承知のとおり、軍人は非常に移動が激しいわけでございまして、そういう事件が起こりまして、それを追及しようとしても、なかなか相手をつかまえられないということもございますし、そういう意味におきまして、日本政府がその仲介に立ってアメリカ側に交渉し、そして米軍が責任を持って支払うというこの制度は、全体として見ますれば、私は非常にいい制度であるというふうに考えます。またこういう制度は、現にNATO諸国との関係においても成り立っているわけでございます。そういう意味で、政府といたしましては、この地位協定の仕組みは、それなりに十分の意義があると考えております。  ただ、実際の事件のそれぞれのメリット、額の多少については、いろいろな問題があると思います。また判決に対して米軍の慰謝料の額が少ないという問題はあると思いますが、その事情については、それぞれの事件の内容について検討いたしませんと、われわれとしても判断いたしかねますし、また裁判というものは、ややもすれば、相手方がいないために十分な調べも行われなくて結論が出されるということもあるような事情もあるかと思います。したがいまして、外務省の立場から見まして、こういう仕組みそのものは十分妥当なものであると考えておる次第でございます。
  269. 木下元二

    ○木下委員 私の質問に答えてくださいよ。私が言っているのは、具体的なそういう解決の仕方が不公正ではないかということを言っているんで、何も私は制度論をいま議論しているわけじゃないんですよ。どうも先回りしてそういうふうに言われると、議論がしにくいのです。しかも貴重な時間ですから、私の質問に答えていただきたい。  先ほどの笠井事件でも申しましたように、この防衛施設庁の査定する補償金の額が低いところに、私は第一の問題があるように思うのです。この査定をするに当たっての基準はありますか、ありませんか。あるかないか、質問に答えてください。
  270. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 あります。
  271. 木下元二

    ○木下委員 それは、この賠償に関するガイドである防衛庁の、損害賠償に関する内訓といわれるものですか。
  272. 山下博

    ○山下説明員 米軍の事故に関しましては、先ほど来総務部長からお話がありましたように、自衛隊の基準を適用してやっておられるわけでございます。したがいまして、自衛隊関係の損害賠償につきましては、そのような基準がございます。
  273. 木下元二

    ○木下委員 私のいまの質問、ちょっとはっきりしなかったかもわかりませんが、私が伺っているのは、いわゆる公務外の事故についての基準ですね。これは、いま言いました内訓ではないんですか。
  274. 山下博

    ○山下説明員 自衛隊の隊員が公務外で起こしました事故につきましては、そのような基準は持っておりません。
  275. 木下元二

    ○木下委員 いや、そんなこと聞いていないのです。私は米兵のことを聞いているのです。米兵が不法行為を公務外でやった場合に、それに適用される基準というのは、いま言った防衛庁の損害賠償に関する内訓ではないのかね。
  276. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 さようでございます。
  277. 木下元二

    ○木下委員 その内容をひとつ明らかにしていただきたい。
  278. 山下博

    ○山下説明員 自衛隊の隊員等が起こしました不法行為に基づきます損害賠償につきましては……(木下委員「自衛隊の方は結構ですよ」と呼ぶ)いま総務部長から御説明がございましたように、公務外の賠償についても、内訓を実際には適用なさっているということでございますので、そうしますと、自衛隊の内訓については、私の方から御説明申し上げるということになろうかと思いますので、御説明申し上げるわけでございますが、自衛隊の場合は、御承知のように、陸海空自衛隊あるいは調本、技本、付属機関とたくさんございまして、そういったところで賠償処理をやっておるものですから、その間の賠償業務が均衡を失し、あるいは不公平になることがあってはいけませんので、したがって、統一的処理を図るという意味合いにおきまして、賠償の手続とか、あるいは賠償の範囲とか額等の積算基準等について、賠償実施機関の長にその基準を示しまして、そして具体的な賠償事案の和解と申しますか、示談と申しますかの処理に資するということにしまして、部内限りのものとしてそのような基準を持っておるわけでございまして、そのような意味合いにおきまして、具体的にそういう中身を申し上げるというのは、いかがなものかというふうに考えるわけでございます。
  279. 木下元二

    ○木下委員 これは、自衛隊であっても、あるいは米軍であっても、その不法行為から侵害された国民の権利をどのように救済していくかを示す基準だと思うのです。これは国民の権利を救済する基準ですね。そうだとすれば、これは国民の前に堂々と私は明らかにしていいものだと思うのです。これは国民の権利を救済するのでなくて、かえって加害者を守るんだというのなら、明らかにできないかもわかりませんけれども、そうでないとするならば、私は明らかにできると思うのです。できませんか。
  280. 山下博

    ○山下説明員 先生御専門でいらっしゃいますので、私が多くを語らぬでもいいかと思いますが、防衛庁が損害賠償の責めに任じますような事故が仮に起こりました場合、防衛庁は残念ながら加害者ということになるわけでございます。加害者になりますと、やはり被害者あるいは被害者の御遺族から損害賠償の請求を待ちまして、その事故の処理をするという形になります。したがいまして、その際には、御遺族の御意向等を十分によくお聞きいたしまして、そして話し合いでこういうものを処理するというのが筋だろうというふうに考えます。  そこで、あらかじめこのような基準をお示しして何かこういたすということは、どうもいろいろ問題があるのではないかというふうに考えます。したがいまして、こういうプライベートな国民の権利に関する問題でございますけれども、やはり司法上の損害賠償という問題でもございいますので、個々具体的なケースで、それぞれ十分な話し合いで解決していくというのが、やはり適当な姿勢だろうというふうに考えますので、公表を差し控えさせていただきたいと思います。
  281. 木下元二

    ○木下委員 時間がありませんので議論をいたしませんが、私は大変姿勢がよくないと思うのです。  その内訓というものを、あなた方はひた隠しにされておりますが、昭和四十年十二月二十日、防衛施設庁総務部補償課長名で各施設局担当部長あてに事務連絡を出しているはずであります。それは内訓に定める「慰謝料支払基準の解釈および運用について」というもので、その中で慰謝料支払基準の解釈が明記されております。それによると「慰謝料は、療養および障害に伴い被害者に支払われる慰謝料と、死亡の場合に遺族に支払われる慰謝料の三種類に分れる。すなわち、療養に伴う慰謝料は療養期間一日につき七〇〇円以内の額、障害に伴う慰謝料は障害等級に応じ段階的に二萬円から一〇〇萬円以内の額、死亡に伴う慰謝料は死亡者一名につき三〇萬円から一〇〇萬円以内の額とそれぞれ定められ」と書かれております。いま私が読み上げました事務連絡は、間違いなく出しておりますかどうですか。
  282. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 部内の文書でございますけれども、出しております。
  283. 木下元二

    ○木下委員 この内訓は四十年以降、改正されておりますか。
  284. 山下博

    ○山下説明員 改正されております。
  285. 木下元二

    ○木下委員 いつ改正されたのですか。一番近い改正はいつですか。
  286. 山下博

    ○山下説明員 四十八年の十二月でございます。
  287. 木下元二

    ○木下委員 そうだとしますと、先ほど私が示しました事務連絡で言っている慰謝料などの金額は、当然改定されていることになると思うのですが、その中で死亡に伴う慰謝料は、幾らから幾ら以内の金額に引き上げられましたか。
  288. 山下博

    ○山下説明員 内訓の考え方は、原則といたしまして、慰謝料の額は、個々の賠償の事故につきまして、その性質だとか、あるいは加害行為の動機だとか、それから故意または過失の程度だとか、それから被害者の職業だとか年齢だとか家族の構成だとか、あるいはその家庭の状況だとか、そういう諸般の事情を勘案し考慮いたしまして、公平の観念から算定いたすという考えにいたしております。
  289. 木下元二

    ○木下委員 答えになっていないですよ。どうも時間がなくていかぬのですが、そんなことをあなたから言われぬでもわかっていますよ。諸般の事情を総合して勘案する、当然のことですよ。しかし、それを具体的に適用する場合に、どういう基準によってやっておるのか、その基準の物差しを先ほど私が明らかにしたでしょう。それが変わっている、改定になっているというのなら、どういうふうに改定になったか、これを聞いているのです。言えませんか。
  290. 山下博

    ○山下説明員 先ほど申し上げたような理由で、公表をはばかるものだということでございます。
  291. 木下元二

    ○木下委員 最終の改定が四十八年十二月一日だということですが、相当な日月が経過をいたしておりますし、物価も上がっております。またその改定でも、私は、なお低きに失するのではないかと思っているのです。相当な額にアップをすることを検討していただきたいと思うのです。  私は、ここで問題にしておるのは、その施設庁が使う基準について問題にしているわけなんでありますが、これは実は昨年の十一月に、先ほど申しました笠井事件の笠井さんを励ます会と全国生活と健康を守る会の代表が抗議行動を起こしまして、東京防衛施設局に行きまして要求書を提出しました。そのときに防衛施設局は、地位協定の実施については、本庁や米軍に単価改定を要請している。現状——この笠井事件に対してのことでありますが、現状を正しい状態と考えていないと答えております。外務省も、地位協定の不合理な面は御指摘のとおりで、上司によく伝える、あなた方もがんばってくださいと激励をしております。これは外務省でありますから外交辞令ではないかと思いますけれども、こういうことなんです。  防衛施設庁でさえ単価改定を要請しておるほど、不合理な、被害者側に酷なものになっておると思うのです。ぜひともこれは改定を早期実現をしていただきたい。防衛施設庁に要請いたします。いかがですか。
  292. 山下博

    ○山下説明員 積算基準につきましては、最近の裁判例だとか、あるいは物価の諸状況とかいうものを参考にいたしまして、いままでもそういうふうに検討をし、改善を図ってきたわけでございますけれども、今後ともそのような改善をいたしたいというふうに考えております。
  293. 木下元二

    ○木下委員 そこで、次は地位協定第十八条第六項について尋ねます。  地位協定の第十八条第六項の(a)であります。この(a)の日本国当局の査定する補償金と、それから(b)の合衆国当局の申し出る慰謝料、この二つはそれぞれ一体どういうものでしょう。時間がありませんので早くやってください。
  294. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 十八条六項の(a)に書いてありますのは、先ほど申し上げましたように、日本政府側から提出する報告書でございまして、これには補償金という形で査定をいたします。しかしアメリカ側が支払ってくるのは、(b)項に書いてございますが、慰謝料、英語ではエクスグラシアと言っておりますけれども、したがいまして、いわゆる見舞い金的性格のものを払ってくるというふうに仕分けされておるわけでございます。
  295. 木下元二

    ○木下委員 (a)項の方は、何も説明を受けぬでも補償金と書いてあるんですよ。だから、それがどういうものかと聞いておるのです。私が施設庁から説明を受けたところによると、いずれも見舞い金的なものというふうに聞いたのですが、そのとおりですか。
  296. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 いや、違います。(a)項で出ておりますのは、日本側から出す報告書の中に書くものは補償金である。しかしアメリカ側がそれを見て、自分なりの査定と申しますか、ということを行った上で慰謝料という形で出すので、性格が変わります。
  297. 木下元二

    ○木下委員 どうも私の方が説明を受けるのと大分違うのですが、(a)項、(b)項というのは、結局、防衛施設庁がその報告書をつくって、その補償金を明細をもって出す。米軍当局は、それに対して、それに対応するものとして見舞い金の金額を決める。したがって、この(a)項、(b)項というのは、それぞれ対応関係がある。したがって、そのお金の性格も、これは違ったものではないかのような説明を聞いたのだけれども、そうしますと、それは違うということですね。
  298. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 地位協定の解釈、私は適当でないのでございますけれども、私の理解では、日本側が出すものは査定された補償金であって、アメリカ側が払ってくるものは慰謝料ということですから、まあいわゆる見舞い金になるということでございます。
  299. 木下元二

    ○木下委員 いまあなたは、(b)項の、米軍当局は慰謝料を払う、この慰謝料は見舞い金だと言われますが、一体そんな日本語はあるのですか。慰謝料は慰謝料であって、見舞い金ではないんですよ。慰謝料というのは、精神的、肉体的な苦痛に対する損害賠償、これを日本語では慰謝料と言うんですよ。法的性格は見舞い金とは違います。それをあなた方は、特に見舞い金と言われるのはどういう理由ですか。
  300. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 これは私からお答えするのは適当でないと思いますけれども、いわゆる民法上の慰謝料といいますか、損害賠償の性格を持つ慰謝料ではなくて、これは英語ではエクスグラシアと書いてございますが、これがいわゆる見舞い金に当たるということだと思います。これ以上私がお答えするのは、語句の説明あるいは内容についての説明は、適当でないかもしれません。
  301. 木下元二

    ○木下委員 いや、あなた盛んに英語を言われますけれども、エクスグラシアというのは、確かに見舞い金的な性格を持ったものでありましょう。しかし、これは英文で調印したのですか。日本文で調印しているのじゃありませんか。
  302. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 日本文と英文と両方とも正文でございます。
  303. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、英文の方は見舞い金、エクスグラシアと書かれている。ところが同じく調印した日本文の方は慰謝料ということになると、性格が違うじゃありませんか。一体そういうことがあっていいのですか。しかし少なくとも、この地位協定は日本文でも調印をしておるということになると、その文言に従って解釈をする、これは当然のことですよ。慰謝料と書いてあるのに、これを見舞い金だと言うのは、これはもうサギをカラスと言いくるめるのと同じですよ。第一、英文ではエクスグラシアだ、日本文では慰謝料だということになると、これは一体どういう協定を結んだのか。これは大きなずれがあるわけでありますから、一体協定としてはどちらが有効なんでしょうか。これは協定の効力問題にもかかわる重大問題ですよ。  地位協定の字句上の解釈について食い違いがある場合、これを私、指摘をしますと、昭和三十五年三月二十五日に衆議院の日米安保特別委員会で、当時の法制局長官の林という人でありますが、この人は、「新協定の字句の解釈あるいは実施細目等につきまして、行政権の範囲でアメリカ側と取りきめました一つの国際約束だと思うわけであります。その意味におきまして、一つ行政的な取りきめでございます。」こう言っておるのです。それがこういうふうに日本文と英文で食い違うということになると、これは、そもそもあり得べからざることであります。これでは正しい運用ができません。外務大臣、この点、いかがですか。
  304. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、日本文の慰謝料も、英文のエクスグレシアペイメントというのも、いずれも正文でございます。ただ、これは条約でございますから、われわれがこの内容を解釈いたします場合には、もちろん両方をそれぞれ考慮して解釈するわけでございますが、いずれにいたしましても、なぜこの場合そういう補償金とか補償額という言葉をここで使わなかったかと言えば、この場合は、明らかに公務外の私の人の行為に関して、米軍当局がかわってそれに対して払うということでございますから、これは補償金とかそういうことは当然使えないわけでございまして、それでこの言葉が使われたのだと存じます。ただ、民法上の補償、慰謝料という言葉とこれが完全に適合するかどうかという点については、残念ながら私は、その点はつまびらかにいたしておりません。
  305. 木下元二

    ○木下委員 これは私、納得できませんよ。あなた方、それでごまかしたつもりですか。じゃ、これはなぜ見舞い金と書かなかったのですか。見舞い金と書いてないんですよ。日本語で慰謝料と書いてあるんですよ。そしたらそれは慰謝料じゃありませんか。その慰謝料を見舞い金と解釈するその根拠というのは一体何ですか。先ほどからあなた方は、結局、いやこれは見舞い金だ見舞い金だということを言われておるが、それはこの英文で調印をしたものにエクスグラシアと書かれておる、それであなた方は言っておるわけですね。しかし日本文では——少なくとも日本で効力を有するのは、この日本文じゃありませんか。そうすると、この問題は大変なことになると私は思うのです。大臣、この点、一体どうお考えですか。  こんなちぐはぐな、ずれのある問題をほうっておいて、そして先ほどから防衛施設庁のお話を聞いていると、いや、これは見舞い金だと、結局アメリカ側の英文の解釈の言いなりになっておるということなんですよ。そうではなくて、やっぱりこの地位協定の日本の文言に従って客観的な解釈をする、これが法的解釈ですよ。それで、どうしても英文の方と日本文の方とで食い違いがあって困るというのなら、これを改めるために、私はしかるべき措置を講ずるべきだと思うのです。そうじゃありませんか。大臣、いかがですか。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっとお待ちください。
  307. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと委員長……。
  308. 越智伊平

    越智(伊)委員長代理 時間をそれだけ延ばしますから、統一見解しっかりした答弁をさせないと——それでは、ただいまの質問につきましては、明日答弁を願います。
  309. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの点、恐縮でありますが、部内で見解の統一をする必要がございますので、明日まで答弁の留保をお許し願います。
  310. 越智伊平

    越智(伊)委員長代理 次回は、明二十八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十七分散会