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1975-02-20 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    有田 喜一君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       和田 貞夫君    渡辺 惣蔵君       木下 元二君    山原健二郎君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 山縣 習作君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         文部政務次官  山崎平八郎君         文部大臣官房長 清水 成之君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         文部省社会教育         局長      安養寺重夫君         文部省体育局長 諸沢 正道君         文部省管理局長 今村 武俊君         文化庁次長   内山  正君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       相川  孝君         警察庁警備局参         事官      半田  博君         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         厚生省環境衛生         局指導課長   河内 莊治君         食糧庁業務部長 志村 光雄君         自治省財政局指         導課長     関根 則之君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     瀬長亀次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一八号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。旗野進一君。
  3. 旗野進一

    旗野委員 学校現場を長く経験された文部大臣が、所を変えて今度は教育行政の最高の地位にお立ちになられた。これにつきましては、国民ひとしく注目もし、関心を持っております。その国民日教組等の諸君も、あなたに対して非常に御期待を申し上げておるように聞いておるのでありますが、卑近な例でありますけれども、私、実は昨年モスクワに参りまして、二、三の初等教育学校内を視察したのであります。そういたしましたら、同僚の中から女の校長に、お国では学校教師労働者であるかということを尋ねたわけです。そうしましたら、労働者ではあるかもしれないけれども子供教育を預かっておるのですから、教育者を直ちに労働者とは言いかねるというような回答があったのです。  そこで、そういうモスクワ学校の女校長とあなたを対比するわけじゃございませんけれども、あなたはあなたなりの、長い間現場におられた関係で、教師に対するあなたのいわゆる望ましい教師像と申しますか、そういうものをお持ちになっておられると思うのですが、もしお差し支えなかったらお考えをお聞きしたいと思うのです。
  4. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま、モスクワの女の先生のお言葉との関連において私の考えをということでございますが、それについてこのように思います。  モスクワの場合は社会主義国でございます。わが国の場合には、それとは違う現行憲法に基づく自由主義国でございます。そこで、おそらく社会主義国の場合にも、労働者ということに尽きないものがあると思いますが、わが国の場合には当然、労働者ということに尽きない非常に重要な先生としての役割りというものがあると思います。それは社会主義国と違いまして、現行憲法との関係において、つまり先生というものは、現行憲法が決めているそういう規定に基づいて、また教育基本法が決めている規定に基づきまして、やはり教育というものは政治的には中立でなければいけない、そういう基本的な原則に基づいて教師としての役割りを果たしていくのだと思います。その役割りというのは、これを専門職という言い方をする人もありますし、あるいは使命職と言ったり聖職と言う、表現はいろいろありますけれども、いずれも含蓄するところは単なる労働者に尽きないものだ。私は大学教師をいたしてまいりましたが、大学小中校もその点では変わりなく、やはり自分の持ち場におきまして、よく勉強いたしまして、そして教えている人を本当に伸ばしますように、自分教育者としての責任を持って仕事をしていくものだと思います。  ただそこで、それでは教師というのは全然労働者的な側面がないかというと、それはそうではないのであります。やはりこれも、憲法の二十八条に勤労者ということを言っておりますが、そういう意味合いで待遇の改善を望んだり、あるいは自分が受け取っている給与というものが適当であるかどうか、そういう問題については、たとえば労使の交渉というような言葉もございますように、やはり憲法のワク内において労働者的側面を持っていると思います。  そこで私は、教師としてはどういうものか、いまの御質問との関連で申しますと、あれかこれか、つまり、そういう専門的な仕事をする者あるいは労働者どっちかというのでなくて、その両面を持っている、かように考えております。
  5. 旗野進一

    旗野委員 御説明のことを伺えば、大体了承ができるわけでありますが、特にあなたは、私どもの伺っている範囲においては、教育者は政治の局外にあらしめたいということを申しておられたようでありますので、それらと関連いたしまして、今後の教育行政に対する、いわゆる精神的な糧の中核である教師像に対しては、ひとつ大いに勇気を持ってやっていただきたいことを、この機会に御要望、御期待を申し上げたいと思います。  そこで実は、きょう私がお伺いしたいのは、学校給食法の問題であります。学校給食法は、すでに二十年を経過しておりますが、あの混乱の中から十年後に発足した当時は、一応アメリカ余剰農産物と申しますか、そうしたものによって国民生活が立ち直り、また小中学校の生徒に対する給食という施策も、その点から生まれてまいったということも、これまた事実なわけであります。しかもそれが、二十年後の今日、昨年十一月の調査によりますと、小学校が九九%、中学校が八三%という内容を私ども承知をいたしているわけでありますけれども、この成果を得たということは、まことに好ましい姿であり、かつまた今後も、学校教育一環としてこれが実績を示されるであろうことを期待いたしますと同時に、文部当局といたしましても、この問題については、いろいろと検討なされておられるようであります。  しかもこれも、昨年の一月の記事でありますけれども完全給食義務制にしたいという考え方をお持ちのようでありますが、この点について、現在この学校給食に対して義務づけるという考え方をお持ちになっているのかどうか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  6. 永井道雄

    永井国務大臣 学校給食義務化の問題は、前から出ている問題でございますが、これを義務化すべきかどうかということについて、現在審議会で御検討願っている段階でございます。ですから、すぐに義務化という方向に踏み切るのではなく、審議会の御検討答申を得て考えたい、そういう立場をとっております。
  7. 旗野進一

    旗野委員 そこで、答申とおっしゃると、いろいろの方々がこの中に参加しておられるはずでありますが、昭和四十五年二月二十八日、保健体育審議会の会長から、当時の坂田文部大臣に対する答申が出ておるわけです。これは後でも申し上げるつもりでありますけれども、この内容を見ますと、片寄ったとは私は申しませんけれども、従来の学校給食がこのままの姿でよいのかどうかという問題です。これは、どういう意味でそういうことを申し上げるかといいますと、私は食糧の問題と関連があると思うのです。  そこで、私が申し上げたいのは、学校給食に使われるところの米というものは、わずか二十万トン程度しかないわけです。したがって、その問題について、何も私が米産地帯である新潟であるから、新潟の米を食わしてくれなんというような、そんなみみっちい考え方ではない。しかし何かパン食というものが、歴史的な一つの姿になって、今日までの学校給食が行われてきておったのではないか。嗜好選択の自由は、国民が今日お互いに持っておるわけでありますから、パンを食おうがうどんを食おうが米を食おうが、これは御自由であります。自由でありますけれども学校給食審議会答申を見ておりますと、どうも偏ったところの物の考え方に立っておるのじゃないか。そう申しますと、審議会委員方々を批判するようでありますけれども、何かしら歴史的な過程もありましょうし、二十年間という長い間の定着がそうさせたのではあるかもしれませんが、この際、学校給食一環としてのいわゆるこの行政について、どうもそぐわないものがあるというように私は考えております。  一昨昨年でありますか、米の問題が起きた際に、共産圏の不作というようなことから、急激にアメリカその他の国から買い付けたことによって非常に大きなショックを受けておる。そういう中にありまして、何か日本生産する米は一〇〇%で自給が余るくらいにある、けれども小麦類は一千万トン近い——食糧庁の方から、細かい話は後で聞きますけれども、少なくともそうした観点から立った場合に、一体皆さんが今日までおとりになられたところのパン食の歴史、パン食に対するこれからの方向づけというものに対して、従来と変わらない方向でお考えになっておるかどうか、これをひとつお聞きしたいと思うのです。
  8. 永井道雄

    永井国務大臣 パン食というもので学校給食をやってまいりましたのは、御指摘のとおりでございますが、これは一つは、栄養上の問題、それからもう一つは、米が不足していたころに発足しているという事情によると思います。しかしながら確かに、それから歴史的にいろいろ変化が起こってまいりまして、米の生産量は非常に多くなった、あるいは食生活が多様化した、それからまたさらに、最近は全般的な食糧事情変化というものもあると思います。  そこで、文部省考え方は、従来のものをただ変えないというのではないと思います。そうではなくて、やはり学校給食米飯を入れるということも工夫すべきであるという考え方だと思います。  ただ、それを入れます場合に、いろいろな条件というものをやはり検討しなければならない。といいますのは、パンのときとお米のときとでは、おかずも変わってくるわけであります。これは栄養量のバランスの問題と関連いたしております。それから、そういうふうに変わってまいりますと、コストにもまた変化が生じてまいります。そういう問題が一方にあり、また教育的に考えまして、いわば米飯の正しい食べ方と申しましょうか、そういうふうなことも考えなければいけない。  そこで、いままでのやり方はどういうことであるかといいますと、昭和四十五年から米食利用実験ということを始めまして、現在に及んでおります。そして昭和四十六年に、学校給食標準食品構成表というものを全面改正いたしまして、米食給食の場合のおかずとあわせて栄養基準量を示しました。それ以来、いまのような栄養との関連、また、おかずとの関連でいろいろ実験を続けてきているわけでございます。そして本年度も、それが続いておりまして、また明会計年度、つまり昭和五十会計年度におきましても、そういう実験を続けていく。そういう点で、実験校というものが相当ふえてきておりますが、ただ、そういういろいろな角度からの検討を進めて、まず一つ変化を起こさせるときには、相当しっかりした変化の根拠というものが明らかにならなければいけないという立場で進んできているわけでございます。  必要でございましたならば、その実験校がどのくらいどういうことをやっているかということについて、事務当局から御説明いたすことにいたします。
  9. 旗野進一

    旗野委員 お話を伺いますと、栄養の問題が問題になっておるようでありますが、私も、この栄養パーセンテージを一応持っておりますけれども、その前に「学校給食要覧」の十三に学校給食における米利用実験結果についてということが出ている。これを見ますと二、三、四、五、六まで、一よりもまず——この点の問題を見ますと、ただ米の秤量であるとか洗米であるとか、あるいは炊き方とか分配とかいうようなものに三時間かかる、パンの場合には一時間である、あるいはまた後片づけが五時間で、パンの場合は三時間四十分でしかないということが明瞭に記されております。何かそういうふうな、私から見ますと  いま、ここで私、栄養の問題について議論しようとは思いません。米と麦でどれくらいの栄養の差があるかぐらいなことは、大体常識的にわかるわけです。したがって、栄養に対するパーセンテージやそれに伴う副食物というような問題については、私は議論の余地はないと思うのです、これは皆さん方と私の考え方の相違かどうか知りませんけれども。ただ時間がかかるとか、あるいはまた米をあれする場合には、洗うのにも時間がかかるとかいうようなことばかりが、このいわゆる実験結果に伴うところの発表でしかない。  これは全く、私から見ますと、皆さんのいわゆる方向づけというものが、明らかに米よりもパン、いわゆる小麦粉、あるいはまた米飯よりもそうした方向に今後も持っていこうとする姿にしか見られない、受け取られない。その点を皆さん方は、どういうふうにお考えになっておりますか、私の考えが誤っておれば私は正したい、反省したいと思いますけれども
  10. 永井道雄

    永井国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  11. 諸沢正道

    諸沢政府委員 若干、私ども考え方を御説明申し上げまして、御理解をいただきたいと思います。  最初に、先生は、四十五年の審議会答申を見ると、米の方がパンよりもよろしいのだという考えで貫かれているのじゃないか、その考えはおかしいじゃないかと、こういう御指摘のように聞いたわけですけれども、確かに、これを読みますと、一つ栄養摂取という点から、カロリーはともかくとして、各種の栄養源摂取ということから言えばパンの方がよくないか、それから米というのは、どちらかと言えばおいしいものだから子供が食べ過ぎて、しかも、おかずは塩っ気の多い物などをとるということになると、どうも栄養摂取上アンバランスになりやしないか、こういう点の指摘がありまして、さらっと読みますと、あるいはパンの方がいいのだというふうにとれないこともないわけでございますけれども先ほど大臣お話し申し上げましたように、この答申は四十五年のものでございまして、その後、わが国における米の生産事情等考えて、四十五年から五カ年にわたって今日まで実験校を続けてまいったわけでございます。そして現在、またもう一度、審議会でこの問題も含めて検討していただく、こういうことになっておるわけでございますから、そこに時間の移り変わりがあるということを、ひとつ御了承いただきたいと思うのです。  それから、次の米の問題について、実験校でいろいろやっているけれども、その内容枝葉末節のことではないかというふうにもとれるわけでございますけれども栄養の問題につきましては、確かにいろいろ見方があると思うのでございますけれども、私ども学校給食というものの使命を、いろいろございますけれども、やはり国民食生活改善栄養の向上ということで考えますと、どうしてもこの問題を念頭から去るわけにはいかない。  そこで、ごく簡単に申しますと、子供学校給食においてとる栄養量というのは、一日のカロリーなりビタミン、脂肪、たん白といった栄養素の一日の総需要量のうち少なくとも三分の一以上のものは給食でとらせたい。特にカルシウムだとかビタミンAだとかいう家庭でわりにとりにくいものは、学校でどうしてもとるようにしたい。そのことを考えますと、パンがいいとか米が悪いとかいうことじゃなくて、そういうことを考え食品構成考えますと、やはりそれに合ったものを考えなければいけないという意味で、細かい話になりますと、あるいは煩瑣になりますからやめますけれども栄養の問題は、パンから米にかわるという場合に、どうしても考えなければいけない問題だというふうに私ども思っておりますので、ひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。  それから、米にするといろいろ手間がかかるとか時間がかかるとかいう問題なんですけれども、これは現在、米の給食を実施しております学校数というものを大ざっぱに申しますと、研究指定校として週に二、三回米食を食わしている学校が二百五十六校であったかと思うわけでございます。それからそのほかに、月に一回程度あるいは週に一回程度まぜ御飯であるとかライスカレーであるとか、そういったようなものを給するような米飯提供学校というのが約一千校、合わせまして一千二百五十校ぐらいのものでございます。したがいまして、現在給食をやっております小中学校三万校に比べますと、約〇・五%ぐらいにしかならないわけでございます。  そこで、この米をもっと拡大するということになりますと、現実の問題としては、財政上どれだけの負担増になるかということをやはり真剣に考えなければいけない。そうしますと、一つは現在、米飯提供学校において抱えております職員並みのことを、これからも米飯をやろうとする学校職員を置いたらどのくらいかかるか、あるいは米飯を提供するに必要な施設設備を、いまの米飯提供校並みにやったらどのくらいかかるかという財政の問題に還元してこれは考えなければいけない。そのことが具体的には手間がかかるとか時間がかかるとか物が要るとかいう問題になるわけですけれども、財源の問題にして考えました場合に、それではどのくらいかかるかといいますと、人の経費について言いましても、いまよりも二万人くらい人を、調理人をふやさなければいかぬ。そうしますと、人件費として二百五、六十億のものは要るだろう、あるいは施設設備改善するとすれば、もう三百億ぐらいかかるだろうとか、三百五十億ぐらいかかるだろうという試算が出るわけでございまして、要するに細かいことのようでございますけれども、そういう財政負担をするとなれば、これは市町村がするわけでございますから、市町村がそういう負担をするについては、やはり米のいいところというものを十分認識していただいて、そのような米給食をするためには、これぐらいの財政負担はやむを得ないのだということを十分理解していただいた上で私どもはやりたい。そのためには実験というものをもう少し続けさしていただいて、その長所、内容というものを、十分関係方々に御理解いただいた上でやりたい、こういう趣旨でございます。
  12. 旗野進一

    旗野委員 先ほどから私、申し上げたとおり、嗜好選択の自由があるわけですからね。しかも義務づけられておらないから、町村でもそれぞれ米飯に依存するところもあれば、パン食を実施するところもあるでしょう。そういう点と、それから今度、栄養の面においては、米の方が栄養がまさると言う人もいる。また劣っておっても、それをカバーする方法は幾らでもあると思うんです。私どもの経験しております中には、学校パンがおいしくなくて、おかずだけを食べて、パンはカバンの中に入れてしまって帰る途中に捨ててしまう、そしてどこかの店でおいしいアンパンを買って食べて、うちへ帰ってまた御飯を食べる、こういうふうな例をしばしば私どもは聞かせられ、散見をしておる。  そういうようなことを考えますと、学校給食の今日のあり方というものと、食糧庁あるいはまた農林省あたりが、米が余るから学校給食に回そうなんというものの考え方、そういうけちな考え方で私は申し上げようとしているのではない。あくまでも、いわゆる次の世代の子供に対する教育一環としてのよい慣行指導し、また食生活に対するいろいろ生活の中で体験したものを得て、そして学校給食本来の目的を達するということについて私どもも大いに賛成をしているわけでありますけれども、ただ遺憾ながら、よき慣行というものを行うにしては、やはり私は風土というものがあると思うのです。風土というものを考えれば、どうしてもアジア州一帯は米産、米食民族であるわけです。その米食をやめて、わずか五%ないし八%ぐらいの小麦生産しかない日本の国が、何でそうしたパン食にのみ依存をしようとするものの考え方をお持ちになっておるのかということなんです。  ここに私は一つの参考の資料を持っておる。米飯給食実験を三年間延長したい、実施校の希望にこたえて食糧庁とも折衝するという案が出ております。これは昨年の十二月十日の問題。しかも、この内容を拝見しますと、五カ年間すでに米飯給食について検討しておる。しかし五年間もかかって、日本人の食っている食糧に対して、それほど検討しなければならないのか。ところがまだ、なおさらに三年間延長したい、私にはどうしてもこれがわからない。わずか八%か五%程度小麦生産地帯で、米を考えないでパン食だけを考えようとするような方向づけは私は話にならないと思う。イギリスやあるいはまたドイツやフランスあたり小麦地帯で、日本の米がたくさんあるから米を食わせようと言った場合にどうなりますか。これはごうごうたる国民の非難が沸くだろうと思う。日本はそうじゃない。米がこれほど余っておるにもかかわらず——何も米の消費を、政策として学校給食に強いようという物の考え方では私はない。基本的な考えとして、どうしても私はあなた方がパン給食というものに対して——私は、決してパンを否定するんじゃないですよ。安全保障という問題だけでもない。やはり国民生活の将来というものを考え、そういうことを考えた場合に、いまの学校給食の姿というものが、私にはどうしても納得がいかない。  したがってもはや二十年もたって、パン食がせっかく定着をしたという中でありますけれども、この際、新しい文部大臣として、教師に対する指導と児童に対する、体育に対する糧としての米食というものに対して、もう少し真剣に考えられて取り組む必要があるのではないか。  私は、この問題について、文部大臣のお答えをお聞きしたいと思いますが、その前に一体食糧庁は、ただいたずらに、文部省からそういう申し入れがあった場合に、はあ、そうならば差し上げましょうということでおやりになっておるのか、あるいはまた、大臣やそうした方々が答弁されたり話されたことによって、にわかに学校給食米食を強いようというようなお考えでおやりになろうとするのか。こういう問題について、一体食糧庁は、文部省とよく話し合いをし、かつまたこの実験というものに対して参加をされておるのかどうか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  13. 志村光雄

    志村説明員 学校給食に米を取り入れる問題につきまして、いま先生からもお話がありましたが、私たちも食糧庁におりまして、その考え方と同じでございます。ただ、四十五年から実験授業で無償で米を交付しておりますけれども、その間に、やはり米に移り変わる際のいろいろな問題点等、非常に大きな問題があるわけです。先ほども時間の問題、施設の問題、職員増の問題、財政負担の問題等もあるような御説明がありましたが、私たちもそういう点、文部省から十分聞いておりまして、今後どう米飯給食にしていくかという問題については、ともども検討を重ねておる段階でございます。  ただ、たまたま昨年、先生おっしゃいましたように、世界の食糧事情が構造的に急変をいたしてきておりますし、また米の生産調整もやっておる中でございますけれども、やはり各国の例を徴しましても、その国の風土に適したものが主食であり、それが中心になって食生活が構成されていることは間違いない事実でございまして、この際、米を見直していただく。私たちとしても、米を見直して、日本人の食生活についてのある程度の将来のイメージづくり、農林省といたしましても、今後の日本人の食生活の型の一つのイメージづくりということを、先般、農政審議会の需給部会でございますけれども、「六十年見通しの際の食糧政策の方向と展望」の中にもうたっておりますように、農林省としても、そういうような方向が打ち出されてきておりますし、私たち食糧庁といたしましても、この際、米の消費拡大、特に学校給食を中心にして真剣に取り組んでまいりたいということで、現在文部省とも、さらに五カ年の実験結果を踏まえながら、どういう対策を立てるかということで十分検討いたしたいという段階になっております。
  14. 旗野進一

    旗野委員 文部大臣のお答えを伺う前に、いまの食糧庁お話に対して一言。  私は、消費拡大というような物の考え方でないのです、学校給食に対して。あくまでも米が最も民族の食糧としてふさわしいのだ、日本人の体質にはパンは向かないのだ、米こそが日本人の、いわゆる米食民族の本来の食糧であるということをもう少しあなた方が認識をされて、そうして学校給食という問題に大いに参画をされておやりになるのなら結構だと思う。五カ年も文部省検討しておられて、また三年間これを延長したいと言っている。どういう研究結果が生まれてくるのか、こういう問題について、あなた方は真剣に考える必要があると思う。古米や古々米をどう処分するかという問題じゃないのです。私はこれに対しては、小中学校の生徒に対する給食パン食に依存した過去の歴史的な過程から考えて、どうしてもこうあるべきでないかという結論を、むしろあなた方こそお持ちになるべきではないかと思うのです。  そこで、そういう意味から、細かいことはたくさんございますが、時間がありませんから文部大臣から最後に御回答をお聞きしたいと思うのでありますが、この際、そうした問題について、基本の考え方考え直す必要があるかどうか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  15. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、この問題についてどう考えるかというと、そもそもパンを使うようになりましたのは、かなり戦後の事情が影響している、それはお米がとれなかった、不足していたというところから発足しているわけです。そこで、給食をめぐる問題というのは、実は米あるいはパンということ以外に、学校教育の中に給食をどうやって生かしていくかというような教育の基本的な問題にかかわることもあり、そういう角度から給食というものを、今日及び今後の日本の社会の発展を考えまして、本格的に検討していくという考えを実は私は持っております。  そこで、その一つとして米の問題も出てくるのだと思います。それは食糧事情変化ということもございますけれども、それ以外に、日本人はどういうふうな食事の仕方をし、そして成長していくことが望ましいかということから教育の方で考えるべきものと思います。ただ、体育局長から申し上げましたように、切りかえていくときに考えなければいけないことは、やはり財政の問題もあると思います。特に地方財政に対する圧迫というものが余りありますと、現在でも相当の問題が生じておりますから、こういう点については、かなり慎重な考慮が必要であるということは、申し上げておく必要があると思いますが、しかし一般に、学校給食というものを本格的に検討いたしまして、そして教育の中で生かしていくことを主眼にして考えていく、そういう中に米、パンの問題も位置づけまして真剣に取り組んでいく、いわば前向きの姿勢をもって進むというのが私の考え方でございます。
  16. 藤尾正行

    藤尾委員長 上原康助君。
  17. 上原康助

    ○上原委員 まず最初に、提案されております法案について一、二点お伺いをしておきたいと思います。  今回、少年自然の家を国の管轄下に置くということが出されているわけですが、そのねらいは一体どこに置いているのか、まず、そこいらからお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 永井道雄

    永井国務大臣 少年の家というのは、国立少年の家でございますが、従来も公立少年の家というものがたくさんございます。そういう公立少年の家も相当の成績を上げてきておりますが、しかしさらに、そういう少年の学校外における教育を強化していくということがまず第一の眼目でございます。そういう際に、公立少年の家に比べまして、もう少し広域のものをつくって、子供の間にも経験交流というものをやっていく、さらに国立少年の家でいろいろな実験というものも考えていく、それから指導者を養成する、そういう角度から国立少年の家というものができたわけでございます。
  19. 上原康助

    ○上原委員 いまおっしゃるように、従来、公立の少年の家も各都道府県なりに相当あるようですが、それでは十分な実を上げ得なかった、さらに広域交流なり実験その他をもっと充実といいますか、強化をしていく上で国立少年自然の家を設置したいということですが、その場合に、特に青年の家の運用管理を見ても、せんだっても本委員会で若干議論がございましたが、私たちの側からいろいろ管理運営面をながめて感ずることは、ややもすると型にはまった、非常に中央統制的な管理運営というものがなされている節もなきにしもあらずなんですね。少年と青年となりますと、年代的にも幾分変わりますし、特に少年、小学校の児童、生徒を対象にした場合に、よほど運用管理の面において配慮をしなければいけない問題もあるのではないかという感じを持ちますが、そこいらについてはどのように御配慮をするつもりなのか。青年の家と関連させて考えてみても、この少年の家ができて、そこで研修あるいはいろいろ広域的な交流を少年たちが深める、その場合に、型にはまった、ある一つの恣意的な志向を持った方向での運営というのはあってしかるべきでないと思うのですが、そこいらについては、文部省としてはどういうお考えを持っておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  20. 永井道雄

    永井国務大臣 いま公立少年の家というものがすでにあるのに、国立少年の家というものができるのは、公立少年の家が不満足であったからかということでございますが、そういうことではないように思います。公立少年の家は公立少年の家としてもちろん相当の成績を上げてきたのですけれども、さらにそれを強化していくといいましょうか、発展させていくという意味合いから国立の少年の家ができるというふうに考えております。  そこで、その場合の考え方で、いわば型にはまったやり方をするのかということでございますが、それは学校以外の場における教育を強化していくという意味においては一つ方向がございますけれども、しかし型にはまった一つ考え方というよりも、むしろいろいろな実験というものを非常に重視していきたい。  具体的に申し上げますと、どういうことであるかと言いますと、たとえばいままででは同学年の人、それが一緒に宿泊して勉強する、あるいは訓練を受けるというふうになっておりますが、異なった学年の人でもそういうことをやってみる、そうすると、上級学年の人が下級学年の人に対して指導の練習ができる、子供同士でできる、あるいは相当異なった地域の人が集まりますと、いわゆる経験交流と申しますか、そういうこともできる、そういう多様な実験というものをだんだんに考えていくということが一つのねらいだと思います。  それからまた、この少年指導という問題、これは青年のときも同じでございますが、きわめて新しい分野ですから、その指導に当たる人たちというものも、だんだん質を高めていくということが非常に必要であるかと思います。それも、いままで指導していた人はだめなのかというふうに言ったら、それは必ずしもそうではなくて、これも熱意を持って当たってこられたのですが、さらにやはりそういうものを強化充実していくということが望ましいと考えまして、国立少年の家を充実していきたい、こういう考えでございます。
  21. 上原康助

    ○上原委員 いま大臣が御説明なさる範囲のことなら、これは特に問題にする必要もないかと思うのですが、ただ私たちも、沖繩にも青年の家なんかありまして、時折、労働講座その他の研修なんかで行く機会もあるわけですが、青年の家の現在の運用面、管理面を見てみますと、必ずしも研修、学習の場でないわけですね。相当道徳といいますか、あるいは思想教育の場として変化していっているきらいがあるわけです。したがって、活用する、利用する方も非常に狭くなっていっておる傾向があります。  たとえば一例を挙げますと、午前六時に起床して必ず国旗掲揚をして、そこに全部整列をしてやらなければいかぬとか、また午後五時になると国旗の降下をして一斉にやるというような、その他の運用面でもいろんな規則、規定が必ずしも自由といいますか——もちろん全然無制限な自由ということを私は言っているわけじゃありません。しかし、そういうことを好まない人が利用したくても、なかなか利用できないという問題が間々出てきているわけですね。これは議論のあるところでしょうが、少年の場合にも、そういうところまで規制をして運用をしていくのか。大臣がおっしゃる交流とか学習とか研究とか実験、そういうものなら大いに結構だと思うのです。しかし私が、いま申し上げたようなそういった一定のルール、一定の枠をはめたような運用の仕方であるとするならば、問題なきにしもあらずという議論も出てくるわけですが、そこいらについてはどうお考えですか。
  22. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの一定の枠というお言葉の表現でございますけれども、どこでも、学校にいたしましても、あるいは少年の家のようなところでも、一定の秩序と申しますか、これが必要であるということについては御異存がないと思うのです。ただし、そういう教育の場、これは学校でないところでございますが、いわゆる社会教育ということになりますが、そういう社会教育におきましても、教育というものは、中立公正と申しますか、そういう原則というものを持っていくべきであるということは当然だと思います、私的な場所ではございませんから。その角度、そういう原則というものは維持して、そうしてまた秩序ある中で、なるべく多様な実験を行っていく、こういうことを眼目にしているわけでございます。
  23. 上原康助

    ○上原委員 このことで余り議論してもと思うのですが、いま私が申し上げたようなことなども十分御配慮をしていただかないと、やはり設置された後にいろいろ問題が出てきて、かえって伸び伸びとした少年交流、少年教育の場になり得ないこともあると思うんですね。したがって運用面、管理面、規定面においては、そこいらも十分配慮をするということでなければ、そうやすやすとこの法案に賛成というわけにもまいらぬ面も、青年の家の管理運営を見て私たち感ずる面がありますので、その点は特に念を押しておきたいと思うのです。  そこで、限られた時間ですので次に進みますが、いまのこととも関連をしてくるわけですが、よく近年というか最近といいますか、というよりもずっと議論のされてきていることですが、教育現場における平和教育の問題というのは一体どうあらねばいけないのか。もちろん教育学者であられる大臣に、私のような者がそういうお尋ねをするのもどうかと思うのですが、少なくとも最近の教育内容なり教育の反動化あるいは中央集権化ということがいろいろな面で議論をされている場合に、正しい平和教育というものについての認識というものが、やはり必要じゃないかと私は思うのです。  これも、なかなか議論の分かれているところでありますが、大臣のお考えになっている平和教育というのは一体どういう御認識であられるのか。せんだって予算委員会でも、特に沖繩の教職員皆さんが、終戦直後から今日まで教育の向上に果たしてきた役割りというもの、あるいはその背景には平和教育というものがあったというような趣旨の御発言、御答弁があったという報道もなされておるわけですが、そういう意味で一般論でもよろしいし、平和教育とはどうあらねばいけないかという大臣のお考えなり、また学校現場における平和教育の問題との関連においての御所見を賜りたいと思うのです。
  24. 永井道雄

    永井国務大臣 平和教育というのは、これは日本どこでも——日本憲法というものは平和主義の立場に立っております。この平和主義というものの理解を深める、そして国際協調の精神をつくり上げていく、また教科書というものも、そういう角度から書かれているものを採択しているわけでありますが、それを原則としなければいけないと思います。  第二点といたしまして、平和というのは、平和主義の立場において是非実現しなければならないのでありますが、しかしわが国は、第二次大戦という経験もございまして、特に原爆による被爆という問題もありましたし、それから第二次大戦では、他国との間にいろいろ不幸な関係を生じたわけです。先般、沖繩について言及いたしましたが、特に沖繩という場所におきましては、現在も軍事基地が多いというだけではなくて、第二次大戦中から非常に御苦労が多かった。これは、わが国の中でもとりわけ際立った場所であると思います。  そこで、平和について考えていきます場合には、そういう苦労というものの現実から完全に目をそらしてしまいまして、そして観念的にただ学習するというのではなくて、そういう苦労というものに基盤を置きまして、本当に平和はどうやったら実現できるかということを考えていかなければならないと思います。  第三点といたしまして、ただ、そういうものを考えていきますときに、やはり子供に発達段階というものもあると思います。ですから、小学校の段階におきましては、一般的に申しますと、いわば基本的原則と申しましょうか、そういうふうなことを教えられることがまず適切である。そして中学、高校と進むにつれまして、平和主義の精神に基づいていろいろな過去の体験、それから今後の問題というものについて深く考えさせる。ただ学校教育というのは、やはり教育の場でございますから、そういうことを考えさせていく上に、少しでも政治的になったりするようなことがあってはいけないわけで、教育の場では、中学でも高校でもいろいろむずかしいものを考えていくときに落ちついて、静かに考える、そういう原則を貫くべきである、かように思っております。
  25. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁も、教育学者である永井さんの御説明としては十分理解できるわけですね。もちろん現在、文部大臣ですからそういう御方針でやっていかれることは結構だと思うのです。相当な面において、われわれとしても了解できる面があります。しかし反面、振り返って現在の教育行政なり教育内容というものをいろいろ考えてみた場合に、たとえば憲法九条の戦争放棄の問題にしましても、それを受けた教育基本法の十条なり、その他教育基本法に盛られた教育内容というものが、実際上は、それとは大きくかけ離れた方向に進んでいるというのが現状じゃないかという認識を私たちは持つのです。また、そう持たざるを得ない。  その一例として、たとえば教育委員の公選制の問題にいたしましても、公選じゃなくして任命制に変わっていった、あるいは教公二法の問題とかいろんな面で、教育の平和主義、民主主義を含め、人権尊重を含めて、本来常識的に考えてあるべき方向でない教育内容というものが今日どんどん進行してきている現状も、これは見方によって見解の違いだと片づけられない問題があると私は思うのですが、いま大臣が御答弁なさった三点の方向日本教育行政なり教育内容というもの、課程というものが実際に学校現場においても着実に進められておるとお考えなのか、その点もう少し明らかにしていただきたいと思うのです。
  26. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、教育というものは、決して教育学者として申し上げるとか教育行政者として申し上げるということでなく、きわめて常識的なことなんですが、どの国でもどの段階においても、理想的状態からなかなか遠いものだと思います。そこでみんな骨を折るのだと思います。  ただし、そこでどういうふうにこの平和の教育をやっていくかということになりますと、いま御指摘がございました中に、たとえばわが国憲法九条について違った考えがある、そういうことが教育現場に反映されているかどうか、こういう御指摘と思いますが、これは沖繩の例で私が記憶しているところを申しますと、たとえば中学三年の地理の教科書がございますが、中学三年の地理の教科書ではどういうものが採択されているかと申しますと、わが国には憲法九条というものがあり、平和憲法を掲げているのだけれども、しかしながら九条について異なった見解もある、それから沖繩では米軍の基地があって、そして住民の間に不安な気持ちがある、ということを書いている教科書を採択いたしております。  そこで、やはり教育と政治が違うと思いますのは、政治の場面ですと、これは、いろいろな政治的立場というものがあって、そこで、どういう立場をとって自分らは日本の国政を引っ張っていくか、そういうことであろうと思います。教育というのは、やはり政治と違いまして、これから社会を担っていく人を育成するわけでありますから、憲法九条というものについて異なった見解があります、そういうふうなことは書かれていますが、それについて子供たちによく考えさせるということ以上を出るべきものではなくて、その意味で、この教育基本法にございますこと、これはもう申し上げるまでもないのでありますが、私は、教育行政立場にありますが、教育行政というものは、国民全体に対して直接に責任を負う、そして不当な支配に屈してはいけないという原則がございますが、私は、教育行政を進めていく場合に、国民全体というものを考え、そして不当な支配に屈するということはない、そういう形で学校教育の場というものが中立、公正に進んでいくようにできるだけの努力をしたい、かように考えているわけでございます。
  27. 上原康助

    ○上原委員 たとえば沖繩の例をいま引用なさいましたが、中学三年の地理の本、まあ私は見ていませんので、後ほど勉強させていただきますが、そういう一例もあるでしょう。しかし、先ほど私が一、二点申し上げたように、教育委員の公選制から任命制に変わったこととか、あるいは教公二法の強行制定ですね、ほとんどこういう対立法案といいますか立法というものは、教育に関するものは、残念ながら国会でも全部と言っていいほど強行採決という経緯を今日まで経てきているわけですね。そこに、言われておるように教育の反動化、中央集権化あるいは日本職員組合との対立関係、いろいろなのが出てきていると思いますが、これはもう一朝一夕にして、そのみぞなり隔たりというものを埋めることはむずかしいと思うのですが、しかし、いまこそ私は、もっと真剣に、わが国方向づけあるいは最高法規である憲法というのが一体何を前文やその全体の流れの軸としてうたっているのかを考えなければいけないと思うのです。  といいますのは、やはり第二次大戦において、あれだけの戦争をぶっぱなしたというのが教育だったということは、われわれの年代まではそれはまだわかります、大学は行かないでも。しかし、今日の青少年の立場とかあるいは教育課程内容においては、むしろそういうものは避けて通るというきらいがないかどうか、そこに非常に危惧の念を抱かざるを得ない。国のファッショ化というものが論じられているさなかにおいて、私は、教育現場におられる先生方を初め、教育行政に携わっている方々の真剣な態度というものが求められていると思うのです。  そういう意味で若干この点申し上げたのですが、私の手元に「あたらしい憲法のはなし」という、これは恐らくかつて文部省が出したと思うのですが、小学生向けに書かれた内容で、今日のどの教育課程を見ても、こういうように本当に憲法についてわかりやすく素直に書かれた本というのは余りないので、若干引用してみますが、「戦争の放棄」というところで、   みなさんの中には、こんどの戦争に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとうとうおかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。このまえの世界戦争のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの国々ではいろいろ考えましたが、またこんな大戦争をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。  そこでこんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。  その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。  もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の国はさかえてゆけるのです。みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。こう書いてあるんですね。かつては、こういうことを、憲法九条に対しても、あるいはそのほかにもいろいろありますが、非常に素直といいますか——憲法九条、ここでその議論をしようとは思いませんが、誠実といいますか、正確に子供たちにも教えようという方向があったのです。  しかし今日、振り返って見て、確かに国際情勢の変化なり日本の社会情勢の変化、いろいろ変革はあったにしましても、大臣はいまも、こういう内容での戦争放棄に対しての教育指導方針といいますか、それは正しいとお考えだと思うのですが、私は正しいと思うのですが、どうですか。
  28. 永井道雄

    永井国務大臣 私の記憶に誤りがなければ、ただいまお読みになったのは、昭和二十二年のものでございますが、そこで、現在変わったかどうかというと、実はいまお読みになったようなことを学校で教えていると思います。ただ、いろいろ先生方あるいは教育をめぐる人々の間に断絶があって、そういう点でなかなかうまくいっていないという点は、御指摘のとおりだと思いますが、それじゃ、たとえば教科書は本当に変わってしまったかというと、そうではないのではないか。  そこで、これは沖繩で現在使用中の小学校六年生用の社会科の教科書でございますが、ちょっと御参考のために、現在どういうことが教えられているかを申し上げますと、   平和への願い 戦争は、武力で相手の国をしたがわせるために行われます。ですから、いったん戦争になると、人間は戦いの道具となり、ただ国のために働き、国のために死ななくてはならなくなります。このような戦争によって、すべてを失った日本国民が、新しく手に入れたものは、人間らしい生活としあわせをきずくために、どうしても平和を守らなければならないというかたい信念でした。   そこで、日本は、どこの国とのあいだに争いがおこっても、戦争によって、その争いを解決することはしない、したがって、戦争のための武力はもたないということを、憲法にはっきりときめています。   世界平和と人類の幸福 毎日を平和のうちに生きていくことは、わたしたちのもっともたいせつな願いです。日本人だけでなく、世界のどの国民も同じように願っています。したがって、どの国の人々も、他の国の人々を、同じこの願いをもつものとして信頼し、協力したいものです。   現在、もし自分の国の利益だけを求めて、弱い国を力で支配しようとする国があらわれたとすると、世界はふたたび戦争にまきこまれ、かぎりない不幸におちいります。日本憲法で戦争を放棄したのは、人類を愛し、戦争をにくんでいるからです。以下省略いたしますが、これは現在用いられている教科書でございまして、やはりこういう教科書で、戦後昭和二十二年に書かれた同じように原則的な精神というものは、今日も学校教育の中で脈々と続いている。これを大人もお互いに理解して、教育の場において、この精神というものをどう理解させ、考えさせるかというふうに進めていくべきであると思っております。
  29. 上原康助

    ○上原委員 その基本原理といいますか、方向は、いまも学校現場で取り入れられているというお話ですが、ぜひそうあってほしいわけです。私がいま引用しましたことも、御否定はなさらなかったので前に進みますが、最初に、先ほども少し申し上げましたように、なかなか現実の問題としてそういっていないという感じを多くの国民が持っておられる。また一方においては、そういう教科書内容とか、教育課程というものを否定とまではいかないにしても、かなり批判的な動きもある。したがって、それをどう調和していくかということが、大臣文部省の御苦労なさる点だと思うのですが、少なくとも、今日のいろいろな政治的、社会的、国際情勢を考えてみた場合に、もう一度私は、教育行政としての平和というもの、あるいは戦争放棄というものについてのかつての原点に返って、新しい認識の上で日本の今後の方向づけというものをやらないと、先ほど言いましたような危険な方向に行かないとも限らない。そのバックボーンになるのは、戦前のことを考えても、何といったって教育なんですね。それだけにぜひ、いま申し上げたようなことなども十分御勘案の上で、今後の教育行政に携わっていただきたいと思うのです。  ついでに申し上げますが、沖繩の小学校の六年の社会科の本にそういうところもあるという御引用でしたが、おそらく全国的にはそうでない面もあるのじゃないかと思うのです。戦争はかっこいいということで、これは日本職員組合の研修報告でも、ほとんどがもう先生方から戦争の話、憲法の話を聞くよりも、親から聞いたという方が多いというアンケートも、実際問題としては出ているわけですね。ですから私は、一方的に政治的な主観とか、そういうイデオロギーを入れて教育しなさいとは言ってないわけです。歴史の正しいあり方というものを教えるのが教育だと思うのです。かつて歴史的に有名な人物でも、いまはそうでなくなってみたり、時代の変化によってどんどん変わっていっては困るんですね。  ですから、そういう面からすると、現在の学校現場で行われている平和教育というものがどのくらい浸透しているのか、あるいは正しく受け入れられているかということについては、この種のアンケートを見ても、非常に疑問を持たざるを得ません。確かに沖繩の場合は別でしょう。かもしれませんが、しかし沖繩だけがどんなに平和教育をしたと言ってみたって、それは限られた局地であって、日本全体の、影響はあるでしょうが、大勢を占めるわけにはまいらぬですね。  そういう面で、ぜひひとつ、こういう平和教育の問題についても、正しい認識と理解と歴史の経緯というものを十分認識した上での教科書課程というものをいまこそ再検討する、あるいは考える段階だと私は思うのですが、改めてこの点について御所見を伺っておきたいと思うのです。
  30. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの問題につきまして、私がまず申し上げたいのは、先ほど読みましたのは、確かに沖繩で用いられている教科書でございますが、しかしこれは、日本全国で使われている教科書でもあります。したがいまして、別に沖繩だけでそういう教科書が用いられているというのではございません。ただ全国の何%が、この教科書を使っているかという数字は手元にございませんが、沖繩だけではないということを申し上げておきたいと思います。  そこで、これを文部省も検定しておりますということは、先ほどの新憲法の話、昭和二十二年の原則というものは、やはり指導要領においても今日十分守られているということだと思います。  そこで、この段階においてもう一つ覚悟を新たにしなければいけないのじゃないかというおことばでございますが、この点は、私も同感でございます。しかし覚悟を新たにするということを、具体的に申し上げますとどういうことであるかというと、かようなことだと思っております。  つまり、わが国は敗戦という非常につらい経験をいたしました。そして今日に至ったわけでございますが、次第にやはり自主的な国として自分の足で立つということでなければならないと思います。そういたしますと、国の中に、たとえば政治をめぐりまして相当違う立場というものがある。特に平和の実現の方法についても違う立場というものがございましょう。しかしながら、その立場があるからといって、今度は本当に子供を教えていく具体的な問題について話し合わないというようなことであってはならないと思います。  私は、たまたま党籍のない人間としてこの教育行政の責任を負うことになりましたが、その私が考えておりますことは、教育の問題に関連しては、その中に当然平和も含まれるのでありますが、こういうことに関連いたしましては、いろいろ立場の異なる人たちも、いままでコミュニケーションの断絶と申しましょうか、そういうことがあったのですが、そうでなく、共通の問題は共通に議論し、そして日本国民の間に相当の合意ができ上がっていく、これを自主的な国家として当然持つべきだと思います。しかし、そうなりましたからといって政治的な意見の違い、これが全然なくなってしまうということではない。これは、もちろんありましょうし、また、それがあるということが民主国家において当然のことと思います。  しかしいま、覚悟を新たにしてすべきことと申しますと、やはりそういうふうに事教育に関しましてはいろいろな考えを持っている人も、やはり子供立場に立ってお互いに話し合って、共通の地盤をつくり上げていくということを具体的にすることが覚悟のあらわれではないか、かように思っている次第です。
  31. 上原康助

    ○上原委員 大体大臣のお考えもわかりましたので、次に進みたいと思うのですが、これは大変困難な問題だと思うのです。いま党籍を持たない大臣なんで、そういうことでやりたいというあれですが、永井さんが三年も五年も文部大臣をお勤めになると、それは大分変わるかもしれませんが、案外そうでないのが政治の世界で、これは困ったことです。しかし、私が茶化すわけじゃございませんが、やはりそこいらの点を、国民全体がもっと真剣に考えて、平和教育とは一体どういうものなのか、あるいは国の外交、防衛はどうあらねばいかないかということについて、もう一度議論をする段階に日本は来ていると私は思うのです。その場合に、最も大事な教育内容について、時の指導者なり政治に携わる者がどういう方向で進めていくかということによって進路が決まる。誤った方向に行かしてはいかないということは、ある面においてはこれは共通していると思うのです。それだけにこの点を強調しておきたいわけです。  そこで、大分時間をとってしまいましたが、公立学校施設整備の整備計画、本土も含めてですが、沖繩との関連においても若干お尋ねをしておきたいのです。  文部省として、今後公立学校施設整備を進めていく上で何を一番重点に置いているのか。特に五十年度あるいはその後三年計画、五カ年計画というのがあるようですが、どういう方向、どういう面に最も重点を置いてやっていかれようとしておるのか、そのお考えをまず明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  32. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 公立文教施設の整備につきましては、総需要抑制のもとで来年度の予算は大変に窮屈でございますが、その中で重点的に指向いたしておりますのは、現在、人口急増市町村において小中学校の校舎の不足が目立っており、プレハブ校舎等がございますので、そういうことに最大の力点を置いていきたいと思っておる次第でございます。
  33. 上原康助

    ○上原委員 人口急増の都市地域、まあ当然のことだと思うのですが、その場合、小中学校だけですか。高校の面はどうなるのですか。
  34. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 高等学校関係も同じような事態がございます。ただ昭和三十七年、三十八年、三十九年、四十年度と続きました戦後のベビーブームによる高等学校の増設の状況と、最近の高等学校の増設の状況とは、必要とされる理由は事情が少し違います。最近では、人口の都市集中に起因する高等学校の増設の問題が非常に緊急でございまして、これは必ずしも全国一律あるいは一般的な現象ではございませんので、特に大都市を中心とする地域に限定されております。その関係につきましては、文部省としてというよりも政府としてという方が正しいと思いますが、来年度は起債の措置が講ぜられております。昭和四十九年度六十億の起債枠のところ、来年度は三百億の起債の枠を自治省の方で設定していただいております。これによりますと、百七十二校の高校の新設に着手できるという計数的な事情でございます。
  35. 上原康助

    ○上原委員 それで、大臣にちょっとお尋ねしておきたいのですが、確かに小中校の場合は義務教育ですが、高校の全入制ということも言われてから久しいし、高校までは義務教育にしてもいいという御意見もまたなきにしもあらずなんですね。少なくとも今日の社会情勢を考えた場合に、高校までは義務教育とみなすか、あるいは制度化するかは別としましても、やはり九〇%以上の進学率になったということ、これは考えるべき点じゃないかと思うのですが、その点についての大臣のお考えはどうですか。
  36. 永井道雄

    永井国務大臣 高校義務化の問題については、少なくも二点、非常に重要な問題があると思います。と申しますのは、高校への進学が確かに九〇%を超える、そういう状況になりましたが、他方幼稚園も、特に保育所を寄せますと、非常な就園率になっておるわけです。幼稚園の関係者の方々の間には、幼稚園義務化ということを考えてはどうかという御意見もあるわけです。そこで義務化の問題を考えますと、高校だけは考えない、やはり幼稚園なども考えなければいけないということになります。  そこで、第二点といたしましては、それではその義務化というものを学校がやっていく場合に、義務化の根拠になるものは何かという問題があると思いますが、義務化の根拠は、おおむね二点から検討されるべきものだと思います。  第一点は、日本において、今日及び今後の社会の発展を考えましたときに、すべての国民が何年間、どの程度のことを絶対に学習しなければならないかということが明確にわかりませんというと、なかなか義務化というふうにいきません。今日までは九カ年ということでよろしい、これを上に——高校といいましても、三年ふやすのか、一年ふやす、二年ふやすという方法もあります。あるいは、むしろ幼稚園というふうに下に行くことが望ましいのじゃないかという議論もございます。ですから、こういう点で社会の今後の発展と、そして教育内容というものを十分に検討していまの義務化の問題は考えるべきだと思います。  もう一つは、義務化考えます以上は、相当の財政的な裏づけというものがないといけないわけです。そうでないと無責任になるわけでございます。現在、高校におきまして、私立の学校に通っている人が、学生の全体から申しますとおおよそ三〇%、それから幼稚園の方では、やはり私立がおおよそ八〇%ということでございますから、仮に義務化に踏み切るという場合には、いずれの場合にも、相当の財政的準備というものがないと軽々にはいたしがたいものだと思います。  したがいまして、私は、高校義務化の声が起こってくる理由というものを十分に理解いたします。非常に重要な声の一つであると考えますけれども、と同様に、やはり幼稚園義務化の声も考えなければいけない。そういたしますと、軽々には高校義務化ということを言うべきではなくて、いま申し上げました観点から十二分に検討するということがなければ、高校義務化というものには進みにくい。しかし、それを十二分に検討しながら進んでいくということが必要であろう、かように思っております。
  37. 上原康助

    ○上原委員 それは幼児教育を優先するか、高校を義務化にするか、上を広げるか、下を広げるかは議論もあるでしょうが、ただ、父兄や国民の声としては、どっちも義務化すべきというのが一番いいわけですね。が、いまの大臣の御答弁も理解できないわけじゃありません。  そこで問題は、義務化という方向づけが、かなり財政的な問題なりいろいろな面でむずかしいということであるならば、先ほど人口急増地域については、校舎の新設、増築というものを重点的に五十年度以降やっていかれるということですが、高校を新設する、新築するという場合は、いままで全然国の補助が出ていないわけですね。起債で五十年度は三百億認めた。これも六十億から三百億になったと言う。しかし、いろいろ調べてみますと、特に埼玉、東京、神奈川、その近郊というのは高校新設で非常に困っている。ですから、これは全国公立学校施設整備期成会の方からも陳情書も出ておると思うのですが、ここでも強く要求をされているわけです。文部省としては、五十年度の予算原案要求にはそれを出したようですが、大蔵省が削ったというお話もありますが、少なくとも今後、高校の面についても国の補助助成というものをやる、起債じゃなくして、地方自治体にまかすのでなくして、五十一年度あたりからこれは芽を出すという方向、強いあれがないといけないと思うのですが、これについてのお考えはどうですか。
  38. 永井道雄

    永井国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの問題ですが、この高校の急増地域における動態というものも、いろいろの推計が実はできるわけです。といいますのは、人口急増が、これまでのスピードと同じように今後も人口急増地域に人口が集中してくるか、あるいはこれまでとスピードが変わりまして人口動態に変化が生じるか、これはいろいろ意見の分かれるところでございます。特にいま、わが国の経済の態様が変化いたしてまいりますし、また都市の人口集中からまいりますところのいろいろな問題も発生しておりますし、さまざまな努力でむしろ大都市よりも中小都市というものを強化していきたい、そういう具体的な施策や人々の考え方もございます。そこで将来の人口動態予測というのは、相当複雑な問題を含みます。  次に、上級学校進学率でございますが、この上級学校進学率の推計というものは、高校に限りませず、大学もそうでございますが、従来とほぼ同じスピードで増大していく、そういう推計と、そうではなくて、従来と違った形で動いていくという推計もあるわけでございます。それはどういうことでありますかというと、たとえば大学などの段階では、もっと早く職業的な訓練を身につけて社会に出たいという者も出てくるわけです。そういうことが高校の進学率にも影響を及ぼすのではないか、そういう考え方もあります。したがいまして、いまの人口急増地域の高校の将来の新設見通し、これについて、いろいろな御要望もあることは十分承知いたしておりますが、私どもといたしましては、そういう御要望というものに十分耳を傾けながら、同時に、将来計画というものを検討していく考えでございます。  しからば、補助の面についてどうかという御質問でございますが、これは本年度、経常費につきましては全国的に、高校から幼稚園まで八十億という新しいものを計上いたしました。これが人口急増地域にいくのかどうかというふうな問題については、今後検討すべきことでございますが、少なくもそういう方向で、確かに高校あるいは幼稚園というものも非常に拡大しているわけでありますから、国として補助をするという方針から経常費につきまして、すでに今年度予算で計上しているわけでございます。  しからば建物の方はどうなのかということになりますと、これにつきましては現在、起債の立場をとっておりますが、これをとっている根拠はどこにあるかといいますと、高校はやはり義務教育ではないわけです。そうして設置主体というものは地方自治体にございますから、そういう状況の中では、国庫補助というのではなくて、起債という方法が妥当であろうかという考え方に基づいているわけでございまして、まずこの考え方というものに沿って行政を進めていったらどうか。経常費については、先ほど申し上げましたとおりです。  以上のような考えでこの問題に当たっているわけでございます。
  39. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと時間がありませんので急ぎますが、これとの関連で、沖繩の場合はいま高校進学率は本土と比較してどのくらいですか。
  40. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 七割強でございます。
  41. 上原康助

    ○上原委員 そういう背景もあってのことだと思うのですが、いま国の補助が出されていますね。幾らですか。
  42. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 補助率三分の二でございまして、五十年度予算におきまして、金額といたしまして約十五億を予定しております。
  43. 上原康助

    ○上原委員 それは当分は続けるわけですね。
  44. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 現在の措置法が生きております間は続くと私どもは理解しております。
  45. 上原康助

    ○上原委員 そこで、これも各関係都道府県からは非常にいろいろな問題があるわけですが、沖繩には出すのに、なぜぼくらの方はないのかという議論が当然出てくるわけです。問題は、もちろんいま特別措置法があるから、その間という制限はあるわけですが、この種のものは、財政問題もいろいろあるとは思うのですが、あるものをなくしていくのじゃなくして、あるものの方向に持っていくという姿勢でないといかぬと思うんですね。経常経費については若干めんどうを見る、しかし新設については起債でやっていくということですが、こういう面で沖繩の場合は、後ほどいろいろお尋ねしたかったのですが、時間がありませんからあれですが、学校施設にしても格差があってこういう経緯が出てきている。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 しかし実際に、本土の関係者から言うと、何で沖繩には三分の二も補助を出して、こんなに急増で困っているのに出さないかという議論に単純に持っていかれるわけです。ですから、この種の問題は、ある方向に合わせて、将来はやはり国の方でそういった面の補助というものもやっていくという姿勢を文部省は持つべきだと私は思うのです。文部省が持たないと、大蔵省はとてもじゃないがこれはやれませんよ。改めてこの点は、もう少し前向きの御答弁をいただきたいのです、沖繩はなくさないということの。
  46. 永井道雄

    永井国務大臣 私が申し上げましたことは、先ほどの点で尽きるのですが、ただいま沖繩の高校にはそれだけ補助が出て、それと文部省立場、全国的な問題と矛盾するのではないかという御発言のように私は理解したのですが、実は私は、これはちょっと次元の違う問題だと思うのです。というのは、沖繩の復帰というのは国民の長い間の願いでございました。そこで、この願いが達成されたということは、国民ひとしくこれを喜んでいるわけでございます。そして沖繩がわれわれ日本の重要な仲間になったときに、やはり本土と沖繩の区別、差別なくそこでいい教育が行われていく、そしてまた施設の上などでも、長い間御苦労になった沖繩の方々に今後も御苦労をかけてはいけないという、そういう意味から私は発しているように思いますので、この点私は、日本国民の全部が理解してくれることのように思うのです。そして、そういう角度で沖繩開発庁の方でもお考えになっているのだと思います。そのことは、私の考えでは日本国民全体の願いでございますから、大変よろしいことなのではないかしら、こういうふうに思っているわけでございます。
  47. 上原康助

    ○上原委員 そこで、いまのことはある程度わかりましたが、教育の格差ということがよく言われておるわけですね。細かいところまでお尋ねする時間がありませんけれども、いろいろ四十七年から五十一年までの教育整備五カ年計画というものを立てて、確かに私は、政府がそれなりに努力をなされておるということもわからぬわけじゃありません。五十年度予算においても、相当の努力をしておるということは理解をいたしますが、しかし当初の計画が必ずしも一〇〇%達成できるとは思いませんが、かなりの落ち込みが出てきていることも御案内のとおりなんですね。よく本土並みの水準に引き上げていくのだ、格差をなくするというようなことを言っておるわけですが、実際に本土並みに格差をなくしていくにはあと何年かかるのか、それをやるには教育行政面、学校施設の整備を含めてどういう点を重点的にやっていかれるのか、その点を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  48. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 先生指摘のように、復帰の四十七年度を当初といたしまして、五カ年間で少なくとも公立文教施設の水準を本土並みに喰わせようという目標をもちまして、これは内部計画でございますけれども、五カ年計画を作成しておりますが、その計画の概要は、六十万平米の公立文教施設を新たに整備するということで、五十年度予算を含めまして四カ年度を終わることになるわけでありますけれども、四十二万平米、七割は達成しておる、したがって、十七万平米ばかり残るという勘定に相なります。  御参考までに申し上げますと、五十年度予算の予定面積は十二万五千平米でございまして、五十年度予算にかなり輪をかけた努力をいたせば一応当初目標を達成するということに相なる。ただ、計画の前提といたしまして、四十七年度からスタートをしておりますので、実は四十六年度のもろもろの計数を前提にして計画を組んでおるわけです。御案内のように沖繩の県内事情、人口集中の度合いが、計画を立てましたときに比べましてかなり激しく動いておりますので、沖繩だけの事情から申し上げますと、新しく計画を見直す時期に来ているのではないかと考えます。ただし、これも御承知のとおり、文部省が全国計画をお立てになっておりますのと一年ずつ計画のずれがございます。沖繩の方が早い時期に計画を組んでおるということになるわけですが、私どもの役目といたしましては、教育施設の地域格差をなくすというのが役目でございまして、その考え方からいたしますと、文部省の全国計画の中での施設水準の目標というものをにらみながら新しい計画を立てていくというのが当然の順序で、文部省より先走ることになるというのは、後日またいろいろとそごを来す要因になりますので、何年度から新しい計画を立てるかということにつきましては、もう少し慎重に文部省等と御相談をしながら策定作業を進めたい、かように考えます。
  49. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁でも、当初五十一年度までに本土水準に持っていくというのが、約七割強しか達成できないわけですね。そうしますと、いま御答弁があったように、本土もその水準でとまっているわけじゃないわけですよ。ですから、そこの整合性、調整というものもやった上での計画の見直しなりをやるべき必要があるが、これをやるには幾らぐらいの予算がかかるのですか。
  50. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 先ほど言葉が足りませんでしたけれども、私どもが計画を立てます段階では、当然、本土の方もこの期間中に施設整備が進むということを考えてそれに追いつく。ですから、もともとの不足分と本土の進み分とを合わせたものだけを回復するという計画でおったわけです。現在でもおるわけです。したがいまして、本土の方も流動的でございますので、正確にただいま計算しておりませんけれども、せいぜいずれてもそんなに大きなずれではない。ですから、あと数年間大変な努力を要するという問題では少なくともないと存じます。  ただ、先ほど来御指摘になっておりますように、高校進学率の違いが、本土と沖繩とでは二〇%近いところの違い、これを回復いたしますのが、当面私どもの最大の目標であるわけでございますけれども、それには、この部分だけを取り上げてみますと、まだかなりの努力は要るだろうというふうに考えます。
  51. 上原康助

    ○上原委員 予算は幾らくらいの見積もりですか、その間の大体の計画は。
  52. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 先生御案内のように、沖繩の青少年人口の占めます比率が、多県と違いまして非常に高うございます。しかもこれは、各年次別にばらつきがかなり激しい。どの時点でどういう目標を設定するかということによって、かなりお金が変わってくると思うのでございますけれどもただいまのところ、全体の金額が幾らかということにつきましては算出しておりません。
  53. 上原康助

    ○上原委員 それでは、あと一、二点、これとの関係でお尋ねしたいのですが、学校用地の借地の買い上げ問題、校地の買い上げ問題、これももう前々から強く要望されておるわけです。本土の資料もありますが、大体本土の場合ですと、一〇%以下のところが多い、あるいは国有地とかですが、沖繩の場合は二四、五%ないしその前後、学校によっては三〇%以上も借地であるとか、そういう傾向があるわけです。これなども、なぜそうなったかということは、多く申し上げる必要もないと思いますが、終戦のどさくさの中で、学校だけは何とかしなければいかぬということで、地主やそういう面との契約も全然ないままに学校というものができたわけですね、広っぱにも。そしてそれが既定事実となってきた。あるいは一方においては、米軍に土地はとられて、本来学校用地であるべきところが軍用地になってしまって、新しいところに学校敷地を求めなければいけなかったという経緯があるわけです。  これなどについても、もっと積極的に買い上げ問題なり予算措置、助成措置というものを講じていただかないと、いまのような物価高騰の中で、一方において軍用地の地代はどんどん上がっていく、地主さんは地代を上げなさいというようなことでやってきて、非常に大きな問題になってきて、地方自治体の財政に大きな圧迫を来している現状なんですが、この買い上げ計画については政府はどうお考えなのか、どのように進めておるのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  54. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 全国的な問題につきましては、文部省の問題でございますので、私の方からの御答弁は差し控えさせていただきますけれども、ただいまの沖繩におきます御指摘の問題につきましては、私どもといたしましては、もともとの校地を米軍に接収されたために新たに土地を取得しなければいけなかった、そのために借地をいたしておるというものにつきましては、計画的にそれを公有化していくという考え方で進めておりまして、前年度が七千八百万、五十年度予算では一億五千三百万の予算措置を講じておりまして、着実に問題を解決してまいりたいと考えております。
  55. 上原康助

    ○上原委員 この件は大臣、開発庁がもちろん窓口ですから、開発庁の方でいろいろ御苦労をする面もあるわけですが、文部省としてもいろんな面でやっていらっしゃると思うのですが、なぜそういう結果になったかという原因があるわけですから、そういう面で校地買い上げの問題なり施設整備の充実強化については、ひとつ次年度においても積極的に予算面の措置を講じていただくということでいいですね。
  56. 永井道雄

    永井国務大臣 もちろん、沖繩に関する問題につきましては、すべて沖繩開発庁と十分に話し合って進めていかなければなりませんが、沖繩開発庁が目標といたしておりますのも、公立学校教育を充実させ、特に沖繩における高校進学率が本土より低いというのを是正しょうということでございますから、私どもも、その点について基本的に全く同じ考えであります。そういう角度で今後連携しながら努力していくつもりでございます。
  57. 上原康助

    ○上原委員 もう一つ、沖繩のことでお尋ねしておきたいのですが、琉大の医学部設置の問題です。  これも、歴代の文部大臣がその必要性を認めて、設置をしていく方向で進めていくということ、また開発庁なり政府関係者もそういう御意向のようです。しかし実際問題として、なかなか進展していないという面がある。次年度の予算でもわずかに二百万円ですか、調査費が計上されただけ。これはある意味では、沖繩現地の受け入れ体制の面が十分まだなされていないとか、あるいは用地確保の問題等があるという御指摘もあるわけですが、どうも政府の方にもちょっと熱がさめたような感を受けないでもない。  新しい文部大臣として、沖繩の教育整備ということと、特にきょう触れませんが、医療行政の問題等もきわめて貧弱、そういう面からすると、医学部の設置というものは、他の都道府県と同様、また以上に必要性を持っておるわけです。次年度は二百万円の調査費しか出ておりませんが、少なくとも文部省としては、医学部を設置するという考え方は捨ててない、また積極的に進めていくという大臣の新たな御答弁なり見解をここで承っておきたいと思います。
  58. 永井道雄

    永井国務大臣 この問題は、私どもとしても真剣に検討いたしております。沖繩の医者の養成について考えなければならない問題点を一つ申し上げますと、そこに新しいものをつくったとして、こういう恐れもあるのです。つまり本土から相当数の人がそこに入りまして、そして養成されましてお医者様になる、ところが本土に帰ってしまう。そういうことが起こりますと、これは全く本来の目的に沿わないことになります。そこで沖繩に医師の養成ということが行われるようなそういう機関が設けられる場合には、本当に沖繩県人に益がもたらされるように工夫していかなければならないと思います。いま申し上げましたような点を十分に検討しながら、そこの問題も、そのほかにも考えなければいけないことがありますが、特にいまのような点が重要でありますので、こうした点を考慮しながら、もちろん前向きに取り組んでいくという考えで進んでおります。
  59. 上原康助

    ○上原委員 いろいろ事情もあると思いますが、前向きに検討していく、また受け入れ面についても、私たちもっと積極的にこの問題については対応していきたいと思いますので、開発庁もそういうことでいいですね。
  60. 井上幸夫

    ○井上(幸)政府委員 御指摘のとおり、沖繩の医療体制というものは、たとえば人口のある単位当たりお医者さんの率で考えましても、全国平均をはるかに下回っておる。そういう意味で、私どもは緊急に医療体制を整備しなければいけないということを非常に強く感じております。  ただ、そのための手段といたしましていかなる手段がいいかということになりますと、文部省のお考え、厚生省のお考えを十分承って御相談してまいらなければいけないと思いますので、本件につきましても、ただいま大臣御答弁いたしましたように、たしか先日、予算委員会で厚生大臣が御答弁になりましたが、自分で現地に行ってよく考えるという答弁でしたが、そういう関係各省のお考えを承りまして、われわれといたしましても十分努力していきたい、かように思います。
  61. 上原康助

    ○上原委員 大臣がやるとおっしゃったからいいです。私、またあとで厚生大臣にもお尋ねします。  そこで、時間をとりましたが、最後に、ちょっと大臣にお尋ねしておきたいのですが、義務教育学校のいわゆる女子の教職員の育児休暇制度に関する問題です。これは前々から参議院で議員立法で提案をされて、今日まで日の目を見ないことになっているわけですが、特に本年は婦人年でもある、また学校現場においては婦女子の職員が多い、先生方が多いというような面から考えても、これは私、十分は勉強していませんが、調べてみますと、十年来の懸案なんですね。参議院の文教委員会では、いろいろ与野党調整をして、全会一致で議決されている。本会議でも通過をしたのです。しかし衆議院の文教委員会は、御案内の面もありますので、どういうわけか、これが廃案に去る国会でなっているわけですね。  しかし、今日、大臣は昨日も学校現場を視察したという報道がなされて、やはり教育現場が大事だと、こう大きく出ているわけです。現場の教職員の、特に女子の教職員方々の強い要求に対しては、もちろん内容をどうするかについては、いろいろ議論もあると思うのですが、少なくともこの強い要求に対しては、早急に文部省としても考えてやるべきじゃないか、考えるべきじゃないのかという感じを持つわけです。  そこで、この女子教職員の育児休暇制度に対しての大臣の御所見をぜひ明らかにしていただきたいし、同時に、何とか今年はこの制度化を実現していくことが必要じゃないかと思うのですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  62. 永井道雄

    永井国務大臣 女子教職員の育児休暇の問題は、御指摘のとおりこれもまた非常に重要な問題であります。私の理解しておりますのでは、これは国会の諸先生方も、早くから非常に重要な問題であるということでお取り上げになって、これまでいろいろこれについて御見解を詰めるように進めてこられているというふうに聞いております。  そこで、そういう状況でありますので、国会の方でそういうふうに進んできているわけでございますから、この問題につきましては今後も、国会の方でせっかく煮詰まって積み上げられてきたものに基づいての御提案があるというのを待って進んでいくのがよろしいのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  63. 上原康助

    ○上原委員 念を押すようで恐縮ですが、大臣としては別に反対じゃないというお考えだということでよろしいですね。
  64. 永井道雄

    永井国務大臣 もちろん私は、行政の責任者でございまして、国会の諸先生方が合意に到達されて、そして御提案になっているというものを常に尊重すべき立場にございますから、そういう点から申し上げましても、尊重して、この問題というものに私として取り組むべきものだ、こう思っております。
  65. 上原康助

    ○上原委員 ほかに海洋博の問題との関連における教育面、あるいは跡利用の点とか文化財の問題等についてもお尋ねしたかったのですが、約束の時間がかなり経過してしまいましたので、これで一応終えて後日に譲りたいと思うのです。  最後に、大臣のお考えがあればお聞かせいただきたいのですが、学校現場を視察なさるという意欲的な面もうかがえるわけですが、特に沖繩の教育施設なり、先ほど引用しました平和教育の問題なりについて、沖繩の教職員皆さんなり御父兄が、どれだけ戦後、教育を大事にするために努力をしてきたかということは、私以上に御理解いただいていると思うのです。そういう面で、教育格差をなくしていく、あるいは平和教育の原点とまでは言いませんが、そういう本土にはない教育の経緯というもの、過程というものがあった、また現在も、いろいろな面で苦労を余儀なくされている、そういう環境からしますと、今後文教行政をお進めになっていく上で、沖繩の教育施設視察をやるということは、ある意味では私は大事なことじゃないかと思うのですが、機会があればそういう御意思があるのかどうかお尋ねをしておきたいと思います。
  66. 永井道雄

    永井国務大臣 いま先生が、先生以上に私、沖繩の教育を知っているのじゃないかとおっしゃいましたけれども、とてもそうはいかない、それはやはり、先生の方が何といってもよく御承知に違いない。ただ幸いに私は、文部大臣になります前から、比較的沖繩御出身の学者あるいは教育者の方とお親しく願っております。そこで、これまで十数年にわたってずいぶんいろいろなお話を伺いました。非常に尊敬する方々でありますので、その方々からずいぶん勉強する機会に恵まれました。もちろん今後も、そういう方から一層勉強していきたい。  いま沖繩に来るかどうかというお話でございますが、これは、もちろんスケジュールや何かの関係もございます。しかし機会があれば伺って、そして私は、そういうものについてもさらに勉強するというふうでありたいと思っております。ただ、こういうものは、いつどういうふうにお伺いしますというふうになかなかお約束ができないということも申し上げておかないと、誤解を生ずると思いますから、それも申し添えさしていただきます。
  67. 上原康助

    ○上原委員 お気持ちはわかりました。  以上、いろいろお尋ねしましたが、私が申し上げたことなども、ぜひ取り入れられるところは取り入れていただいて、特に冒頭申し上げた少年の家の管理運営においては、平和教育とかそういった——この「朝日ジャーナル」を見ましても、ちょっとはしょって読んでみたのですが、やはり大臣のお人柄なりいろいろな面の片りんがうかがえるんですね。憲法に忠実でありたいとか、公平な行政をなさる、そういう面を大事にした文部行政を進めていくように強く要求いたしまして質問を終えたいと思います。
  68. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 午後一時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  69. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下元二君。
  70. 木下元二

    ○木下委員 このたびの文部省設置法の一部を改正する法律案でありますが、文部省の付属機関として国立少年自然の家を設置するということであります。この少年自然の家の設置目的はどういうことでございましょうか。そしてまた、公立少年自然の家、現在全国に六十九カ所あると聞いておりますが、この地方公共団体が設置しているものとの関係はどういうことになるのでありましょうか、お尋ねします。
  71. 永井道雄

    永井国務大臣 いま国立少年自然の家を、公立少年自然の家があるほかにつくる意味合いはどこにあるかということでございますが、もちろんこの公立少年自然の家というものも、相当な業績を上げてまいりましたけれども、国立少年自然の家をつくることによりまして、一層これを強化充実したいということでございます。  強化充実の内容ということは、どういうことかと申しますと、第一に広域圏にわたりまして人が集まることになりますから、そういう点で広域圏の人々と経験の交流ということができるわけでございます。  それから第二番目には、やはりこういうものは、非常に新しい考え方でありますので、いろいろ実験を繰り返しながらよくしていくことが必要だと考えますので、特に国立少年自然の家では、そういう実験的な試みというものに注目していく考えでございます。  ですから、先ほどの広域圏ということと関連して申しますと、いろいろの地方の子供が集まって経験を交流する、あるいは年齢的にも別の学年の人と交流をするというようなことも実験の中に考えているわけでございます。  第三番目には、こういうふうにだんだん少年自然の家というものが強化される中で、新しい分野として、こういうものについての指導者の養成というものが必要でございますから、国立少年自然の家では、そういう指導者の養成というものも考えていく。  大体、その辺が特に公立のほかに新たに国立少年自然の家を設ける理由でございます。
  72. 木下元二

    ○木下委員 わかりました。結構でございます。  次に伺いたいのでありますが、子供教育上の問題としましても黙視することのできない問題といたしまして、いわゆる朝来中学事件及び八鹿高校事件というものが起こりました。これについて質問したいと思います。  まず、朝来中学事件でありますが、これは朝来町の橋本先生の宅を包囲した事件であります。これに朝来中学の校長、教頭が解同朝田派の暴力に屈しまして、生徒を動員して橋本教諭の宅を包囲いたしました。  七四年十一月十二日の衆議院の地方行政委員会におきまして、林議員が生徒をこういう行動に動員することの是非についてただしましたところ、島田初中局小学校教育課長は、現在詳細な事実を兵庫県教委を通じて調査中であると答弁しております。答弁後すでに三カ月以上を経過いたしておりますが、その調査結果を明らかにしていただきたいと思います。
  73. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 昨年の十月二十五日、兵庫県の朝来郡生野町黒川小学校教諭の橋本哲朗氏宅の周辺で、朝来中学校の生徒が現地学習と称する集会に参加したということがございました。しかしこの集会は、いわゆる運動に学ぶための生徒の自主的な集会であったということでございます。教員は生徒の監督上の配慮からこれに付き添ったという報告を受けております。  文部省といたしましては、いずれにいたしましても、中学生が校外におけるこうした社会的な実際的な活動に参加することは適当ではないということで、兵庫県教育委員会等を通じて指導をいたしておるところでございます。
  74. 木下元二

    ○木下委員 ちょっとよくわかりにくかったのですが、それはいつといつ、何回にわたって、人数はどのくらいという、具体的な事実関係について私は聞いておるんです。
  75. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもが把握いたしております事実は、昨年の十月二十五日のことでございますが、朝来中学校の生徒約百八十人が橋本氏宅前に集まったということでございます。その趣旨は、ただいま答弁で申し上げたとおりでございますが、その際、約十人の教員がその場に出ておったということでございます。しかし、この出ておった趣旨は、ただいま申し上げましたように、生徒を引率してそこに行ったということではなくて、生徒が大ぜいそうした場所に出ておったものでございますから、監督上の配慮ということで、教員約十名が生徒に付き添ったということでございます。ただいま申し上げましたように、この集会は、いわゆる運動に学ぶための生徒の自主的な集会である、こういうふうに兵庫県教育委員会から報告を受けております。
  76. 木下元二

    ○木下委員 十月二十五日、一回ですか。
  77. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもが報告を受けておりますのは、一回でございます。
  78. 木下元二

    ○木下委員 この問題について、私、先ほど引用いたしましたように、きちっと調査をするという約束を国会でされておるんですが、その調査の結果、二十五日一回である、こう言われるわけですか。二回ございませんか。はっきりしてください。
  79. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 橋本教諭宅をめぐる問題につきましては、私どもは一回という報告を受けております。
  80. 木下元二

    ○木下委員 それから校長、教頭は参加したのでしょうか、していないのでしょうか。
  81. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 参加していないと聞いております。
  82. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと校長、教頭は、結局、二十五日一回だと言われるから、この橋本宅包囲事件には一切関与していないということになりますか。——二十五日には校長、教頭は参加していない、しかも、二十五日一回であるということになりますと校長、教頭は、もうそれ以上何ら関与していないという結論になるんですが、そういうことですか。
  83. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほども申し上げましたように、これは生徒の自主的な行動であるということでございますから、学校関係はないというふうに私どもは聞いております。
  84. 木下元二

    ○木下委員 十月二十三日、この日はございませんか。これは実は、私自身が二十二日に橋本さんの家に行きまして、とうとう私は一晩そこへ泊まりました。帰りかかったのでありますが、周囲を包囲されて、帰れなくなって泊まったわけであります。私は、国会議員として調査活動のために赴いたわけでありますが、とうとう帰れなくなって、妨害をせられて一泊したわけであります。  そこで、二十三日の状況というのは、したがって私自身が体験しておるのでありますが、この二十三日に生徒たちが来ておりますよ。現に私は、私自身の目で確かめておるんです。これは、どう調査されましたか。三人や五人ではありませんよ。大ぜいの生徒が来ているんです。この点についてはどうですか。
  85. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもが兵庫県教育委員会から聞きましたところでは、二十三日にはさような事実はなかったという報告を受けております。
  86. 木下元二

    ○木下委員 ここに写真もあるんですよ。これは橋本先生の家を、大ぜいの生徒が囲んでいる状況です。これは女子生徒。それからこっちは男子の生徒です。二十三日の状況については、テープもとっております、私自身が体験していることなんですから。この状況、これは前からあなた方の方で調査をされると言われながら、調査をした結果が、そういうことがなかったということでございますか。一体どういう調査をやられたのですか。もう一遍調査をやり直しされますか。
  87. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 朝来中学は、直接的には朝来町の教育委員会の所轄に属する学校でございます。したがいまして、直接的な監督あるいは所轄の関係は、朝来町の教育委員会ということになるわけでございます。県教育委員会は、県内全体の教育行政を総括するという意味におきまして、朝来町ないし朝来中学から報告を受けて、私どもに、ただいま御答弁申し上げたような報告をいたしてきておるわけでございます。  ただ、先生指摘のように、二十三日にも間違いなくそういう事実があったということでございますので、改めて二十三日の件につきましては、兵庫県教育委員会に照会をいたしたいと考えております。
  88. 木下元二

    ○木下委員 その点についても、照会でも結構ですが、よく調査をしていただきたい。  それから、こういうことはよくないという趣旨を言われましたけれども、そういうことを言われながら、これは生徒が自主的に参加をしたのであって、教師が引率をしたのでないというふうな言われ方をしておるのですが、少なくとも校外で生徒と教師が、客観的事実として一緒に行動しているわけです。これは幾ら生徒が自主的にと申しましても、やはり教育上の配慮は必要であります。少なくとも教師が校外で生徒と行動をともにし活動をする以上、やはり一種の教育活動として考えなければならない。それは一緒にやっても、校外で、学校教育とは別なんだ、だからかまわぬということにはならないと思うのです。いかがですか。
  89. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいまも申し上げましたように、中学生といった心身の発達の不十分な者が、校外におけるこうした実際的な活動に参加するということが適当でないということは、ただいま申し上げたとおりでございますが、県教育委員会からの報告によりますと、教員が付き添ったというのは、むしろそうした中学生の参加に問題があり、その生徒たちが異常な行動に出るようなことがないようにという教育的な配慮のもとに教師が付き添ったということを聞いております。したがいまして、そうした配慮のもとに教師現場に居合わせたといたしますならば、それも実情に即した措置であろうかと考えております。
  90. 木下元二

    ○木下委員 法務省の刑事局は来ておりますか。——この朝来事件の捜査、起訴はどういうことになっておるでしょうか。簡単で結構です。
  91. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 お尋ねの橋本先生宅包囲事件につきましては、この関係者と申しますか、事件の容疑者であります丸尾某ほか一名につきまして、逮捕いたしまして、神戸地検におきまして、警察から送致を受けて取り調べを進めたわけでございますが、これは勾留請求の段階で請求が却下されました。したがいまして、その後、在宅のままで捜査を継続いたしております。釈放後、相当日がたっておりますが、捜査を継続しておりまして、近く結論が出されるのではないか、かように聞いております。
  92. 木下元二

    ○木下委員 そのように刑事事件としてその関係者が逮捕をされる、現に捜査を継続中でありますが、そういう事件に子供が参加している。橋本先生という個人のお家を取り囲んで、長い間にわたって糾弾をする、そういう犯罪行為として警察が取り締まりをしておる事案に子供が行っているわけですよ。教師がそれに一緒に行くことが、一体これは構わぬことなんでしょうか。一体、県の教育委員会はそれがいいんだと言っておるのですか。もし、いいんだと言っておるとすれば、文部省としてそれをどう考えるのか。私は重大な問題だと思うんですよ。
  93. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、中学生がそうした行動に参加するということは適当ではないということを申し上げておるわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、中学生がそうした行動に参加いたしました場合に、それを見守るという意味において教師現場に居合わせたということも、これは学校教育上の配慮として認め得ることではないかということを申し上げておるわけでございます。事柄自体が、つまり生徒が、そうした御指摘のような行動に参加したことが適切であるというふうなことを申し上げておるわけではございません。
  94. 木下元二

    ○木下委員 大臣、この問題は決して教育上好ましくないという程度のものではないと私は思うのです。犯罪行為として捜査がやられておる、それに子供が巻き込まれておるという問題であります。こういうことは二度とあってはならないと思います。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 県教委に対しましても、厳しく指導すべきことだと私は思うのでありますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  95. 永井道雄

    永井国務大臣 先ほど政府委員から申し上げましたように、こういう活動に子供が参加をいたしますということは、全く教育上望ましくない、そういう立場で私たちは県教委に対する指導、助言を行っております。  さらに、それが犯罪の容疑があるという問題につきましては、当然、当局がその問題に対して対処すべきものでありまして、そういう疑いがあるということも一方にあると同時に、他方、教育それ自体として見た場合に、不適切であるという立場をとっております。
  96. 木下元二

    ○木下委員 警察庁に伺いたいと思いますが、八鹿高校事件で昨年の十一月二十二日に集団リンチ事件が起こりました。先生たち数十名が路上から学内に連れ去られまして、体育館などで暴行を受けたわけでありますが、時間にしまして午前十時過ぎから夜十一時ごろまで約十一時間、警察署には生徒たちが泣いて救助を訴えておりました。共産党の国会議員も、そのときには来ておりまして、警察署に対しまして、厳重にこの問題に対して出動をするように要請をいたしましたが、このように十三時間にわたってリンチが続いたのであります。なぜ救出しようとしなかったのか、理由をお答えいただきたい。
  97. 半田博

    ○半田説明員 お答え申し上げます。  八鹿高校事件につきましては、昨年の十一月二十二日の午前十時ちょっと前に、近くの方から、自分の家の前の路上で大ぜいの人が何か口論をしておるというふうな届け出がございました。それを受けまして八鹿警察署におきましては、署長以下約二十人が現場に急行をいたしました。現場に行ってみますると、狭い道路に百数十人以上の人が蝟集をして何やら喧騒をきわめておるというような状況でございまして、署長は人がきをかき分けて中へ入ろうとしたのですけれども、押し返されるというふうな状態の中で、この先生たちが学校の中に連れ去られた、こういうことでございます。  したがいまして、署長といたしましては、その後のことが非常に心配になったものでございますから、校長及び教頭に会いまして、一体いま中で何が行われておるのかということを問いただしたわけでございますが、その際、校長及び教頭は、いま県教委の方からも人が見えておって静かに話し合いをしておる、警察官に中に入ってもらうとかえって事態を混乱させるので入らないでほしい、こういうような趣旨の回答であったわけでございます。その後も、署長といたしましては、再三再四、校長、教頭あるいは県教委の参事等に、一体中でどういうことをやっておるのだということを聞いておるわけでありますけれども、平穏に話し合いが進行しておる、こういうようなことでございました。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 署長といたしましては、その間放置しておったわけではございませんで、そういうふうなこともし、また、その間に万が一のことをおもんぱかって県本部とも相談をし、警備体制も整えておったわけであります。夜に至るもなおそういうふうな状態が続いておるということで、警備体制が整うのを待って中に入ったところが、事態がすでに終わっており、そこに三十三人の先生がおられて、負傷されておる方も相当おり、これを救出したというのがその経過でございます。
  98. 木下元二

    ○木下委員 おおよそわかりました。  法務省の刑事局に伺いますが、この十一月二十二日のいわゆる八鹿高校事件の当日、学校長を初め学校教育関係者がとりました態度はきわめて不可解であります。集団リンチ事件に協力、加担していた疑いが濃厚だと思います。これまでわが党国会議員団を初めとしまして、自由法曹団など合計千名を超える現地調査団が調査結果を公表しておりますが、二、三例外を除きましてほとんどの調査団が、学校教育関係者がリンチ事件に協力、加担していたと報告をしております。リンチ現場を目撃しました八鹿高校生徒会も決議の中で、学校教育関係者が協力、加担した責任を糾弾しております。警察も住民の抗議に抗し切れず学校教育関係者を取り調べ、すでに何人かを検察庁へ書類送検をしまして、検察庁も被疑者として取り調べを始めております。昨日、八鹿高校へ直接電話で問い合わせましたところ、事務長の話では、小田垣教頭が豊岡の検察庁に呼び出されて出頭しておるということであります。県教委の職員らも取り調べを受けておるやに聞いております。  検察庁として、これまで十一月二十二日の事件に関連して学校教育関係者の取り調べを行ったことがあるかどうか、すでに何名の取り調べを行ったか、学校関係者何名、但馬教育事務所関係何名、兵庫県教育委員関係何名、その他教育関係者何名というように具体的に答えてもらいたいと思います。あわせて、それぞれの氏名及び今後の方針についても明らかにしていただきたいと思います。
  99. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 お尋ねの件でございますけれども、これは先生御案内のように、関係者十二名を昨年末逮捕いたしました。そのうちの九名につきましては、昨年末に神戸地方裁判所におきまして公判請求しております。その余の三名、その他若干の被疑者等がいるわけでございますが、これらにつきましては、現在なお捜査を行っておる段階でございます。したがいまして、捜査上のいろんな問題がございますので、個々的な詳しい御答弁は差し控えさせていただきたい、かように考えます。  ただ、御指摘教育委員関係者あるいは町当局あるいは学校先生、こういうものにつきましては、十数名の者が告訴されておる。したがいまして、被告訴人として取り調べの対象になっておる、その者たちにつきましては、それぞれ状況によりまして取り調べを進めておる、こういうふうに報告を受けておりますので、その程度申し上げさせていただきます。
  100. 木下元二

    ○木下委員 いまの詳しいことはお答えになりにくいというのはよくわかります。教育委員関係教育関係、町当局等十数名について、被疑者として取り調べを現に進めておる、こういうことでございますね。
  101. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 さようでございます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 七十四年十一月二十五日、衆院文教委員会におきまして、わが党の山原議員が、事件当日、学校内にいました教育関係者について質問しましたところ、安嶋初中局長は、校長室に校長ほか県教委の職員が同席していたとの報告を受けているが、杢谷教育次長がいたかどうかは確認していないと答えております。また、山原議員が、教育事務所の職員、県教委の職員がおりながら、何時間も事件を傍観したのはなぜか、適切な指導をしていたと言えるのかと質問したことに対して、安嶋初中局長は、適切な指導をしていたかどうか、私どもも疑問を持っているので、その間の事情についてさらに調査を進めていると答えております。  そこで、この事件当日、学校内にいた教育関係者の身分と氏名を全員明らかにしていただきたいと思います。
  103. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 十一月二十二日に、兵庫県教育委員会から八鹿高校に派遣しておりました職員でございますが、畑中参事、山岡係長、前田係長、喜始指導主事、植田教職員課の課員、それから但馬の教育事務所長の上田と聞いております。  なお、杢谷次長につきましては、当日は八鹿高校には出ていなかったということを聞いております。
  104. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、杢谷次長の所在はどうだったのですか、所在と行動について言っていただきたい。
  105. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 杢谷次長は、当日は八鹿高校にはいなかったということでございますが、本町から比較的近くの場所まで行っておったというふうに聞いております。
  106. 木下元二

    ○木下委員 どうしてもう少しはっきり言えないのですか。この八鹿高校事件に関係のないことをしておったというなら私は聞きませんよ、そういうことは。そうじゃないでしょう。八鹿高校のこの事件に近いところで、そして連絡をとりながらいたということははっきりしているんですよ。どうしてこれが言えませんか。
  107. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもが兵庫県教育委員会から報告を受けておるところによりますと、二十二日は但馬の教育事務所に用務があって行き、その後帰った。八鹿高校には行っていなかったということでございます。近くにと申しましたのは、但馬の教育事務所に用務があって行ったということでございます。
  108. 木下元二

    ○木下委員 どういう行動をしたのですか。
  109. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 杢谷次長の当日の行動については、特に聞いておりません。
  110. 木下元二

    ○木下委員 杢谷次長は当日、豊岡におりまして、現場と電話で連絡をとり合っていた、これは杢谷次長自身がはっきりと言っておるわけなんです。そして八鹿高校の方との第一報では、路上事件の後五名入院したのを知った、そして学校内にいない先生の氏名も、この八鹿高校にいなかったけれども、連絡をとってすでに第一報の段階で知っているのです。それから第二報、これは、ちょっと時間がはっきりしませんけれども、第二報では、入院患者が二十八名いることを確認しているのです。  そういうふうな状況を知りながら、杢谷次長は、何ら具体的な指示を、八鹿高校にいた校長あるいは教育委員会の職員らにしていない。このことは、わが党が県教委に行きまして直接事情を聞いております。杢谷自身は、そういうふうに言っておるのです。  そうしますと、そういう報告は文部省の方は、県教委から一切受けていないというのですか。
  111. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げましたように、杢谷次長は、八鹿高校にはいなかったという報告を受けておるわけでございます。  なお、その負傷者が出たことにつきましては、これは県教委当局の報告によりますと、事後に知ったということでございまして、いわゆる糾弾会の途中経過におきまして、さような事実が起こっておるということは承知していなかったと私どもは聞いております。
  112. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、その杢谷次長が、そういうふうに第一報、第二報で負傷者が出ておるということを知っておるのは、一体、だれから連絡を受けたということになるんでしょうね。教育委員関係は八鹿高校にいたけれども知らなかったということなら、杢谷次長は豊岡にいて電話連絡を受けて知っておるんだけれども、一体だれから連絡を受けたかということになりますね。そんなおかしな話はないと思いますよ。——まあ結構です。  事件当日の教育関係者各人の行動を、各人ごとに、一体どういうことをやったのか、細かいことは結構ですけれども、大まかに言ってくれませんか。
  113. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいまのお尋ねの前に、ちょっと申し上げておきたいと思いますが、事件の当日、学校にはもちろん校長、県教委からの畑中参事等がいたわけでございますが、県教委の報告によりますと、まあ但馬地区におきましては、糾弾会、確認会等と言われるものがときどき従来も行われておった、しかしながら、かなり激しい言葉のやりとりはあったようでございますが、暴力行為にまで及ぶようなことはなかったので、学校におけるいわゆる糾弾会も、まさか暴力行為にまで及ぶというような事態は全く予想していなかったというふうに聞いております。したがいまして、現場にいた教育委員会の関係者あるいは校長等がそういうことを知らなかったということでございます。したがいまして、それと同時刻あるいはそれより前に杢谷次長がそういう事実を知っておったといたしますならば、これは、はなはだ理解しがたいことでございまして、私どもといたしましても、さらに調査をしてみたいというふうに思います。  それから、当日の県教委の職員の行動でございますが、御承知のとおり、九月当初から、但馬地区の高等学校における同和教育指導のために、指導主事を派遣しておったわけでございますが、特に十一月の十八日、生徒側から、解放研の設置の問題について、教員側と話し合いをしたいということで、職員室の前に座り込むという事態が起こったわけでございます。そこで十九日以降、数名の指導主事を派遣いたしまして、生徒との話し合いに応ずるよう学校指導に当たらせたということでございます。事件当日におきましては、先ほど申し上げました、植田教職員課の係員を除きまして、四名の者は集団下校をする教員に対しまして、授業に戻るよう説得をしたり、あるいは八木川の川原での生徒集会に参りまして、生徒の指導等を行ったというふうに聞いております。なお、但馬教育事務所の所長の上田所長につきましては、事件当日、正午ごろ学校に参ったわけでございますが、その日の朝は、教育関係者の表彰式に出席をし、一時ごろに学校に行ったということでございます。その後は学校校長室、事務室、それから八木川の川原における生徒に対する指導、あるいは八鹿町役場における山口副知事に対する報告等の仕事をしたということを聞いております。
  114. 木下元二

    ○木下委員 短い時間ですので、私の質問にだけ答えてほしいのです。私は、経過などについては問うていないのです、当日以前の。授業に戻るように説得に努めたということですが、当時の状況から、とてもそういう説得をして、授業をやれるような状況ではなかったということははっきりしておると思うのです。そういう報告をしておるというように聞いておきますけれども、とてもそんな悠長な状態ではなかったのです。  警察が十回にわたって警告、要請を発した。先ほども警察庁の方が言われましたけれども、これは十回というふうに前から聞いているんですが、これに対しては、一体どういう態度をとったのでしょうか、教育委員会は。
  115. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 十回ということは、私も兵庫県教育委員会から報告を受けていないわけでございますが、ただいま申し上げました畑中参事が、八鹿署の署長と接触をいたしておったわけでございますが、十二時ごろに八鹿の署長から校長に対して、校内の状況を知らすように要請をされた。校長は、ただいま申し上げました県の畑中参事と相談をいたしまして、校内では職員と共闘会議側が話し合いをしておるという回答をしたということでございます。さらに十三時ごろにおきまして、畑中参事が署長と話し合いまして、生徒のデモについては、できれば中止するよう指導してもらいたいというような要請をしておるようでございます。また十四時ごろ署長から、校内の状況はどうかという質問があったことに対しまして、校内ではいわゆる糾弾確認が行われておる、このときは異常な事態が起こっておるということは、教育委員会側も校長側も全く承知をしていなかったということでございますが、そういうふうに答えたといったようなことで、数回、警察側との接触が畑中参事との間に持たれたというふうに聞いております。  一方、校長と八鹿の署長との接触もあったわけでございますが、校長は、校内では職員と共闘会議側との話し合いが行われており、いま警察が入ることは、かえって混乱を起こすのではないかというような意見を述べたというふうに聞いています。
  116. 木下元二

    ○木下委員 大ざっぱに言われましたが、ひとつこの点は、警察と接見した時刻、それからだれとだれとが話し合ったか、それから警告、要請の内容、返答の内容、そういうことについて、実は資料要求をしておったわけなんでありますが、とうとうまだもらっておりません。それで、その資料要求をしたいと思うのであります。それとあわせて、教育関係者各人の行動も具体的に明らかにしていただきたいと思います。これは八鹿高校の中で一体何をしておったのかということが、現在、非常に注目をされております。これを明らかにする意味で、私の方で資料要求をいたしますので、できるだけ早い時期に、大まかな点はわかっておるようでありますから、明らかにしていただきたいと思います。
  117. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文部省は御承知のとおり、警察等と違いまして強制的な捜査権がないわけでございます。したがいまして、詳細な事実あるいは正確な事実について、私ども調査をするということには明らかに限界がございます。簡単な一つの事実でございましても、これを確認するということは容易なことではないわけでございます。したがいまして、できるだけの資料は提出いたしたいと思いますけれども、個々人が、いつ、どこで、何をしたかというような詳細な点についてまでの御報告をいたすということは、これは文部省としては、きわめて困難であろうと思います。しかしながら、文部省が把握をいたしました限りにおきまして、できるだけ経過について御報告をいたしたいと思います。
  118. 木下元二

    ○木下委員 結構です。  それから七四年十一月二十八日、参議院法務委員会において内藤議員が、校長、県教委の職員らが現地闘争本部の中におり、警察はこれらの者が、中は話し合いだと言っているから入らなかったと言っている。これらの者は、中の状況をどのように把握していたのかと問いただしたのに対しまして、柴沼初中局高等学校教育課長は、県教委を通じてたびたび照会しているが、校長や県教委の指導主事は、校外の川原の生徒集会に気をとられていた、また校内での事情については、解放同盟の代表の方々といろいろ話し合った、そういう報告であると答えている。調査の結果、校長や県教委の職員が、中の状況をどのように把握していたのか、これを明らかにしていただきたいと思うのです。  先ほどお話を聞いておりましても、従前の経過に照らして話し合いが行われておるということであって、こういう暴行などが行われているという状況は知らなかったというふうに言われておるのですが、そういうことなんでしょうか。もう一度念を押して聞きます。
  119. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 十一月の二十二日、県教委の畑中参事が、解放同盟の南但支部連絡協議会の山本会長と、いわゆる糾弾について何回か接触をしておるという報告を受けております。最初十一時ごろということでございますが、山本会長が、解放同盟として糾弾確認会をし、自己反省書を書いてもらうつもりだということを申しましたことに対して、畑中参事からは、統制のある形で行われることを希望するということを述べたということでございます。そうした接触が、その後も食事をさせるかさせないかといったようなこと、それから八鹿の所長が解放同盟の代表と会いたいと言っていることについての話し合い等、何回か接触があったということでございますが、この時点におきましても、県教委当局は、学校内におきまして暴力的な事件が起こっておるということは知らなかったということでございます。
  120. 木下元二

    ○木下委員 私どもも、県の教育委員会には行きまして話をしたことがありますが、暴行は目撃をしていない、県教委としては、結局学内で暴力はなかった、そういうものは見ていないのだからなかったと思う、こういうことを一貫して言っておったのであります。  文部省の方も、そういう報告を受けて、それを信用しておったのでしょうか。信用しておるということですか。あるいはその後、県教委の方がそういう報告をしても、文部省は、初め信用しても、認識を改めたというならそれでも結構でありますが、どういうことでしょうか。
  121. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 県教委の態度は、ただいまお話がございましたように、学校内で暴力が行われていたかどうかということについては、県教委としては確認をしていない、だれも見ていないのだ、こういう答弁でございます。  しかしながら御承知のとおり、すでに公訴を提起されたものもあるわけでありますから、文部省といたしましては、やはり学校内において暴力的な行為があった、こう認めざるを得ません。
  122. 木下元二

    ○木下委員 実は私も、現地に調査に行ったんですよ。八鹿高校に行きまして、校長にも教頭にも会って話を聞いたのです。そうしますと、教頭などはこう言うのです。この教頭は、糾弾をされている体育館などにも出入りをしているんですよ。二階の会議場の糾弾場にも出入りをしておるのです。そして、そこで何を見たか。着衣がはがされたり、めがねが取られていたり、着衣が水浸しになっていた、顔つきは異常であった、こうはっきり言っておるのです。テープにもとっております。そして、これが糾弾会の通念的な状態であった、こう言っておるんですよ。これは教頭が私に言ったことでありますが、校長もこれは否定できない。校長は横にいて聞いておりましたが、否定はしなかった。  こういう状況を、教育委員会の方は、こういう教頭の話からしても暴行が行われておったということは明らかでありますが、それをどうして信用しないのでしょうか。県の事務所の上田平雄という人などは、赤はち巻きをして学校内を歩き回っておるのです。それからたとえば校長、教頭が生徒自治会役員と、この事件が起こった後に話し合いをしました。そこで、いろいろ状況について話し合いをして確認をしておるのでありますが、誓約書というのを、校長と教頭が署名捺印をして入れておる。それを見ますと、二十二日に校長は五、六回しか糾弾現場に行かなかった、こう言っておるのです。糾弾現場校長は行っているんですよ。暴行も見ておるのです。さらに生徒自治会役員と校長、教頭が話し合いをしまして、確認書というのをつくっておりますが、それには、十一月二十二日の事件は意識的暴力であったことを認めると、校長、教頭が総会で署名、捺印をしているんですよ。  ところが、そういう書面を交わすと、その場に立ち会っていた教育委員会の職員が、出入り口のところでその生徒会の人にいろいろ言ってその書類を取り上げておるのです。そういうものがわかると血の雨が降るかもわからない、どんな事態が起こるかわからぬ、こういうことを言ってその書面を巻き上げておるのです。一体そういう書面がつくられておるということは報告を聞いておりますか。
  123. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 聞いておりません。
  124. 木下元二

    ○木下委員 その書面は結局、生徒会に対して暴行事件があったということを校長が認めた、それを教育委員会が取り上げてしまって、証拠隠滅をやっているということじゃないですか。そういうことですよ。そういう教育委員会の報告をまともにお受けになるということも、私はどうかしておると思うのです。ですから、こういう事態について調査をするのに、私は調査のやり方に非常に問題があると思うのです。  もう一点聞きますが、これは去年の十二月十九日に、衆議院の予算委員会におきまして村上議員が聞いたことでありますが、半死半生のような状態に追い込むための場所に、おらぬ先生にまで出てこいと電報まで打っている、これが正当な職務命令と言えるのかと問いただしたことに対しまして、永井文部大臣は、この問題は、非常に重大な事態であるから文部省に当然責任がある、兵庫県教委にも責任がある、その事態について詳細に調査しなければならないということで進めているところであるとお答えになっています。この電報を打つようにしたのはだれでしょうか。そして、だれがどんな方法で電報を打ったのでしょうか。さらに、このリンチ現場におらない先生の氏名を、どのような方法で確認をしたのでしょうか、お尋ねします。
  125. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 この電報を打つように指示をいたしましたのは校長でございまして、現実に電報を打ちましたのは事務長でございます。  それから電報を打つ相手方の確認でございますが、校外から帰ってきた教師集団が入っております旧体育館に行きまして、その場にいた八鹿高校の教職員の氏名を承知したということでございます。  なお、つけ加えますと、このときは、その暴力的な行為があったということは見ていないということでございます。それから農業科の職員室に行きまして、不在の教職員がだれであるかということを確かめた。それから校長が、校外に出ましてそのまま帰った教職員の氏名等を聞きまして、その情報をもって不在の教員を認定する補足の資料とした。そういった諸情報を集めまして、小田垣教頭と事務長の二人で、だれが不在であるかということを確認して、そして、そうした教職員に対して登校するようにという電報を発したということでございます。
  126. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと意味がよくわかりにくかったのですが、私が聞いているのは、糾弾が起きておるのは体育館、それから二階に会議室がありますが、そこで起きておるわけなんです。電報を打ったのは、つまり学校の中で糾弾を受けていない先生方、それを呼び出すために出てこいという電報を打っているわけです。だれがいないのかということは、その糾弾現場を見て回って、だれとだれがいないかということを確認しなければ電報を打てないわけですよ。そうでしょう。解同の人は先生の名前を一々知らぬですよ。ですから、校長なり教頭がこれを見て、だれとだれが糾弾を現に受けていないかということを確認して電報を打っているんですよ。そうでしょう。違いますか。
  127. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 どの教員が登校していないかということは、お話のとおり、だれが登校しているかという事実を確認しなければ明らかにならないわけでございます。そして事務長並びに教頭が体育館に行きまして、そこにいる先生を確認をしたということでございます。それから農業科の職員室に行きまして、その室にいなかった教職員の確認をした。それから路上から何と申しますか帰宅をしたと申しますか、そうした職員があるわけでございますが、それは校長がいろいろな情報を聞いて判断をした。その他、小田垣教頭が事務長と相談をいたしまして、だれがいなかったかということを判断いたしまして、いなかった教職員に対して登校するように電報を打った、こういうことでございます。
  128. 木下元二

    ○木下委員 教頭が糾弾現場を見て確認しておるということなら、現に糾弾を受けておる状況は見ておるじゃないですか。その殴っている現場そのものは見ていないと仮に言うとしても、少なくとも、その前後の状況を見ているわけでしょう、私がいま具体的に指摘をしましたように。教頭自身が私に語っているんです。そういうひどい状況というものを見ているんですよ。それを暴力がなかったと言えますか。暴力がまさにやられた、そういう状況を教頭は少なくとも見ておる、このことは明らかじゃありませんか。  それから、いま言いました上田平雄が赤はち巻きを締めて校内を歩き回っていた、このことは報告に上がっていますか。
  129. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 教頭が第二体育館の糾弾の場に行ったということは、ただいま申し上げたとおりでございますが、そのときは暴力的な行為は行われていなかったというふうに聞いております。  なお、上田所長が赤はち巻きをして云々ということにつきましては、まだ確認をいたしておりません。
  130. 木下元二

    ○木下委員 糾弾現場を見て回ったとき、たまたま暴行がなかったとしても、いま私が言いましたように、その前後の状況を見ておるとすれば、暴行がやられた後だ、あるいはやられそうだということはわかるでしょう。その点はどうですか。
  131. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 その辺のところは、さらに詳細に聞いてみませんと、私がここで想像でお答えすることは適当ではないと思います。
  132. 木下元二

    ○木下委員 そこらもよく調べてみなさいよ。  もう一つ、八鹿高校差別教育糾弾共闘会議闘争本部というのがつくられていたわけでありますが、その共闘会議の闘争本部が、校長室の横の応接室に設置をされたことについて、文部大臣も、この点については、兵庫県教委から詳細な報告を受けなければならないと思っているというふうにお答えになっておられました。これは予算委員会のときであります。この闘争本部に使われておったことは、文部省はお認めになっているんでしょうね。
  133. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 県教委の報告によりますと、十一月十九日に現地闘争本部を置くことについて、校長から県教委に対して意見を求めたということでございますが、県教委は、学校にそのようなものを置くことは適当でないということを校長に指示したということでございます。したがいまして、現地闘争本部が学校に設置されたということは、私ども報告を聞いておりません。  ただ、二十一日から生徒がハンストに入ったわけでございますが、父兄の控え室ということで、校長室の隣に一室を設けることは許可をしたということでございます。
  134. 木下元二

    ○木下委員 父兄の控え室、それは何の父兄の控え室ですか。そして、それは表示をしたのでしょうか。どの部屋でしょうか。
  135. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 その部屋は、ハンストをしている生徒の父兄の控え室ということでございまして、校長室の隣の応接室が、これに充てられたということを聞いております。
  136. 木下元二

    ○木下委員 表示は……。
  137. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 表示につきましては確認をいたしておりません。
  138. 木下元二

    ○木下委員 全くうそっぱちですよ。あなたは、そういう教育委員会のうそっぱちの報告を真に受けているのですか。これは私、きのう直接確かめたのです。現地闘争本部という表示がこの応接室にされているのです。あるいは言葉が少し違うかもわかりませんが、少なくとも、現地闘争本部に類する表現で表示はされておる。模造紙で横三十センチ縦一メートル、墨で書かれておる。これを生徒たちは目撃しているんですよ。私は直接、生徒からきのう電話で聞きました。教育委員会はそういううその報告をしているのですか。あなた方の調査のやり方に私は非常に問題があると思うのです。そういう調査では、これは幾らたっても真相は明らかになりませんよ。どうしてそういう調査をやられるのですか。  七四年十二月十九日の衆議院予算委員会におきましても、村上議員が、文部大臣は現地を実際に調査をし、具体的な事実に即したあなたの一般論を適用する、そういう措置が必要ではないかと問いただしたことに対しまして、文部大臣は、それは全く調べるということは必要であると思っていますと答えております。また一月三十一日の予算委員会において不破議員が、朝来中学事件、八鹿高校事件に教育関係者が加担している問題について、文部大臣はいまだに何の報告も受けていないのか、何の調査もしていないのかとただしたことに対して、文部大臣は、県教委からは暴力に加担したという報告は受けていない、この問題に対して、県教委から来る報告を待って拱手傍観しているわけではないと答弁しておるのです。文部大臣は、現地を実際に調査したのでありましょうか、伺います。
  139. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文部省は、現地を直接調査をいたしておりません。御承知のとおり、八鹿高校は兵庫県立の学校でございます。したがいまして、兵庫県教育委員会の立場は、兵庫県下の教育行政を、何と申しますか監督する立場と同時に、八鹿高校の設置者という立場、二つの立場があるわけでございます。したがいまして、行政機関としての調査をするということになりますと、文部省としては兵庫県教育委員会に依頼をして調査をするということが、やはり行政全体の筋道であろうかと考えます。しかしながら、兵庫県教育委員会の報告が、すべて真実であるかということになりますと、これは異なった報告もあることでございますから問題の余地はあろうかと思います。しかし行政機関といたしましては、一応兵庫県教育委員会という行政庁の報告なり判断なりを尊重するということが、やはりたてまえであろうかと思います。  しかしながら、先ほど先生からいろいろ御指摘があるわけでございますが、そうした点につきましては、さらに兵庫県教育委員会との報告のずれにつきまして、今後調査を進めてまいりたいというふうに考えております。
  140. 木下元二

    ○木下委員 文部大臣に伺いたいのです。いまの答弁では私は納得しかねます。  この教育史上前例がないと言われる八鹿高校事件の実情を、文部省自身が直接調査をするべきではないかと私は思うのです。なぜこれをしないのか、しない理由を伺いたいのです。
  141. 永井道雄

    永井国務大臣 この事件は、非常に重要な事件でありまして、捜査も進んでおります。そして、それは非常に慎重に進められているということは申すまでもないことであります。そこで、一つ一つの事実というものを最終的には見きわめることが、捜査の立場からも必要でありましょうが、教育の方からも必要でございます。  そこで、そういう状況の中で私たちはどうすべきかということについては、これはやはり初中局長がすでに御説明申し上げましたように、私は、監督行政、そして設置主体であるところの教育委員会というものの正式なルートを通しまして、そしてこれをでき得る限り調べるという態度で進んでまいりました。しかし、いま先生が御指摘になりましたように、その調査も不十分というような問題が発生いたします場合には、調査を繰り返していくという方法でいかなければならない、かように思っております。
  142. 木下元二

    ○木下委員 結局この問題の調査は、県の教育委員会にやらせるのだということでありますが、これは地方教育行政法のどの条項によるんでしょうか。つまり私の方から申しますと、五十三条の二項によっておるのか、あるいは五十四条の二項によっておるのか。いかがでしょうか。
  143. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもは、一々条文の根拠を示して調査を行わせるということは行っておりませんが、御指摘の条文に即して申しますならば、八鹿高校に関しては、五十三条の第一項が適用される場合かと考えます。
  144. 木下元二

    ○木下委員 いや、あなた方は五十三条一項に基づいて調査をやっていないんじゃないですか。だから私は、やっていないようなことを言われるから、わざわざ五十三条の二項か、あるいは五十四条の二項かということを言っているんですよ。五十三条の一項に基づいてやるべきだということはお認めになるわけでございますね、それなら結構なんですが。
  145. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 認めます。
  146. 木下元二

    ○木下委員 この五十三条一項に基づいてやっているということですか。二項じゃないんですか。
  147. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもは、適用の規定といたしましては五十三条一項であろうと思います。なぜかと申しますと、第二項は「都道府県委員会をして、市町村長又は市町村教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、その特に指定する事項の調査を行わせることができる。」ということでございまして、たとえば先ほどの御質問について申し上げますならば、朝来町のケースにつきましては、この二項が適用されるかと思いますが、八鹿高校の場合は、先ほども申し上げましたように県立学校でございまして、県自体がその設置あるいは運営管理の責めを負っておるわけでございますから、直接的に五十三条一項を適用して調査をしておる、こう申していいかと思います。
  148. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この五十三条一項というのは、文部大臣が一定の事項について「必要があるときは、地方公共団体の長又は教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、必要な調査を行うことができる。」という条項なんです。つまり文部大臣が必要な調査を行うということでしょう。あなた方は必要な調査を行っていないじゃないか。みんな県に調査をさせて、そして県のほうから報告を求めておるのじゃないですか。そういうことじゃないのですか。あなた方の話をいままでずっと聞いていると、調査は県にやらして、そしてあなた方は、その県から報告を求める、こういうルートをとっていますね。この五十三条一項に基づいてやるのなら、これは文部大臣調査の主体として、県教委からも聞くでしょう、あるいはそのほかからも聞くでしょう。調査の主体は文部大臣としてやる、これが五十三条一項のたてまえですね。それをやっていないじゃありませんか。だから、私は聞いているんですよ。
  149. 永井道雄

    永井国務大臣 いまのことでございますが、私、調べてまいりましたが、どの条文のどの項が当てはまっているかということは知らないのです。ただ、どういうことをやってきているか、それからどういうやり方であるかというと、確かに県教委を通しまして調べるということは間違いありません。しからば文部省何も調べていないかというと、どういうやり方であるかというと、県教委が調べた報告をただいただいて、そうですかというのではない。そうではなくて、この間に何度も質問を発しまして、さらになおこういう点について理解したい、こういう点について一つの疑義があるから、はっきりしてほしいという姿で私たちも調査をいたしておりますから、これはただ、一つの報告書がくれば、それで調査は終わりという姿で進めているのではない。こういう形で今日まで調査は進んでいるし、そういうものであると私は考えております。
  150. 木下元二

    ○木下委員 大臣にお伺いする前に、ちょっと法制局の方に見解を伺っておきたいと思うのです。  文部大臣調査をする場合、これは法制度的にどうなっているかという点を伺いたいのですが、五十三条一項によって文部大臣がみずから必要な調査ができるということがたてまえだと思うのです。二項というのは、その調査に関して都道府県委員会をして特に指定する事項の調査を行わせることができる、そういう仕組みになっておると思うのです。それからさらに、五十四条二項というのがあって、報告などの提出を求めることができる。したがって、法制的には、特にまず都道府県委員会に調査を行わしめるとか、ルートを都道府県教育委員会だけにしぼって調査をさせるということにはならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  151. 味村治

    ○味村政府委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第五十三条の第一項の調査権、これは「第四十八条第一項、第五十一条及び前条」五十二条でございますが、この「規定による権限を行うため必要があるとき」に認められた調査権でございます。その調査の方法については、ここに特に規定がないわけでございますので、これは、もちろん相手方が任意に応ずるという前提であろうかと思いますが、必要と認められる限りは、どのような方法による調査もできるのではなかろうかと存じます。同条の第二項は、これはただいまの八鹿高校の事件には適用がない問題でございます。なぜかと申しますと、八鹿高校は県立でございますから二項は適用がございません。それから五十四条の二項でございますが、これは一般的に「教育行政機関は、的確な調査、統計その他の資料に基いて、その所掌する事務の適切かつ合理的な処理に努めなければならない。」という五十四条一項の規定を受けまして、このような合理的な処理のために「必要な調査、統計その他の資料又は報告の提出」を文部大臣が地方公共団体の教育委員会に求めることができるという規定であるかと存じます。したがいまして、五十三条二項のように限定された場合ではないというように考えます。
  152. 木下元二

    ○木下委員 つまり、この五十三条一項というのは、文部大臣調査の主体になって一定の要件のもとに調査をやるわけですが、その場合に、調査の対象なり方法というものは特別に限定がない、もちろん相手方の同意のもとにやるわけですが。したがって、県教育委員会だけからその事情を聞くというようなことは、法制的にそうなっていないということですね。
  153. 味村治

    ○味村政府委員 県教育委員会から報告を聞くということも、必要な調査の方法であろうかと存じますが、そのほかにも調査の方法は、法律の条文の上からは限定がないということでございます。
  154. 木下元二

    ○木下委員 結構であります。  文部大臣、これまで調査をするともう何回も言われながらもたもたして、私の質疑でも明らかになりましたように、非常に調査が進んでいないし、当然調査の結果判明されなければならない問題についてさえ判明していない。これは一体何が障害になっておるとお考えですか。簡単で結構です。なぜですか。明らかなことですよ。
  155. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私ども、直接的にいろいろな調査をする労をいとうわけでは全くございませんが、先ほど来申し上げておりますように、八鹿高校は県立学校でございます。しかも県教委の職員が現地に多数行っているというような事情もございますので、県教委から事情を聞くことが最も適切であるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、先ほど来御指摘のようないろいろな問題がございます。ございますので、現地について調査をするということも考えてみたわけでございますが、現地に参りましていろいろな調査をやり、そして、そこでいろいろ異なった事実が上がってまいりました場合に、やはり強制的な捜査権を持たない文部省といたしましては、そのいずれが真実であるかということを確定する能力にはなはだ乏しいわけでございます。  したがいまして、県教委の報告を基本にして私ども状況を把握しているということでございますが、しかし別にいろいろな方面からも、いや事実はそうじゃなくてこうだというようなお話も伺っておりますので、そうしたことにつきましては、さらに県教委にただすような措置もとっておるわけでございます。また国会等でも御質問がございますれば、県教委の報告と違う事実につきましては、さらにその説明を求めるというようなこともいたしておるわけでございます。  繰り返しになりますが、決して現地調査文部省がいやがっておるというようなことではないわけでございまして、調査をいたしましても、果たしてこれが事実であるかということを確定する能力が文部省自体にあるかないか、そこら辺のところは、やはり文部省調査についての限界であろうかというふうに考えておる次第でございます。
  156. 木下元二

    ○木下委員 私の質問にだけ答えてほしいのです。どうも先回りして答えられるからこんがらがるのですが、なぜその調査がおくれているか、その理由をどうお考えになるかを私は大臣に聞いているのです。一言でいいんですよ。一言で言えば、これはどういうことですか。県教委に調査をさせておるからではないのですか。そうお考えになりませんか。
  157. 永井道雄

    永井国務大臣 県教委に調査をさせているということよりも、この事件というものは非常に重大な事件である、そして一つの事実というものについての人々の観察、それから報告というふうなものについで、かなり多角的になり得る要素があるということが基本にあるように私は考えております。
  158. 木下元二

    ○木下委員 これは県教育委員会が、このリンチ事件に加担しているということが言われておるわけです。たまたまこれは、県教育委員会所属の職員が、個人として八鹿高校に行って事件に関係しておるという問題でないことは明らかなんです。これは県教委の職務活動として八鹿高校に行って、そしてリンチ事件に一定の役割りを果たしておる。これでは県教委がまともな報告ができるはずがないと私は思うのです、どう考えても。いや、それは実際に加損したかどうかわからぬじゃないかと言われるかもわかりません。それは調べてみないとわかりません。しかしこれは、少なくとも社会的にも加損した疑いが多分に出ておる。だから、もうすでに警察は取り調べをやっているのじゃありませんか。そうでしょう。刑事的にもすでに県教委の職員が被疑者として取り調べをされておる。これは、いま言うように個人としてやったことではないのでありまして、県教委の職務活動の一環としてやったことが犯罪事実として、被疑事件として調べられておるということなんですよ。だから、これはもう社会的、実質的には、はっきり言えば県教委自身が被疑者なんですよ。それを、その被疑者に対して調査をさせる。  私は実は、これまであなた方の調査のやり方を見ておりまして、調査の主体は県教委であって、あなた方はただ県教委が調査したものを報告だけ聞いておるというふうに受け取っておったのです。だから、さっきのような条文のことをお尋ねしたのでありますが、私がそう思わざるを得ないほど、あなた方の調査というものは調査ではなかったわけなんです。そうでしょう。調査という以上は、県教委からも聞く、ほかからも聞く。いま、いろいろ理由を言われましたけれども調査というものは、できる範囲で、そんなにしぼるのでなくて、一本化するのでなくてやるというのが調査なんです。そういうやり方をやらずに、社会的には被疑者の役割りを果たしたその県教委だけから聞くということでは、真相は明らかにならない。それがもたもたしておる原因なんですよ。これは、だれが見てもそうなんですよ。だから、私は質問をしておるわけであります。  さっきも私は、いろいろ具体的な事実を出しましたけれども、暴力があったことを校長が認める書面を県教委の職員が取ってしまって、いろいろ言葉でごまかして持っていったんですけれども、それが出てこない。これはどういうことですか。そういう証拠隠滅が行われておるのに、県教委の方にやらせるのだ、これを信用するのだ、こういう態度では幾らたっても明らかになりません。だから、私は問題を出しておるわけであります。  ひとつ文部省自身が調査に乗り出していただきたいと思うのです。これは、さっきも法制局の見解がありましたけれども、法的にはなし得ることなんです。むしろ権限としては、文部省が主体となっていろいろ調査をやるということがたてまえなんでありますから、それにのっとってやっていただきたい。本事案のような場合には、むしろそういう調査こそが本当の調査なんだ。被疑者だけに窓口をしぼって聞くようなそんなことではだめであります。ひとつ県教委からも事情を聞いていただく、これは結構でありましょう。同時に、校長や教頭からも聞いていただきたい。それから先生方からも聞いていただきたい。あるいは場合によっては生徒からも聞いていただきたいと思うのです。そんなにいろいろ意見が分かれるなんという問題と違いますよ。認識の問題なんです。具体的にどういうことがあったか、事実の問題なんです。刑事事件は刑事事件として調べられるのであって、何も私はそういうことを要求しておるわけではございません。そうではなくて、文部省として、これだけ教育上ゆゆしき問題を放置はできないはずだ。教育上の問題としてこの真相を解明する、これは当然の責任であります。そのことを要求しておるのです。大臣、いかがですか。
  159. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの調査の方法について、私たちは、今日まで県教委の話をただ聞くというのではなくて、繰り返し聞き直すという方法もとって進めてきたわけです。しかし、いま先生も御指摘のありましたように、さらに問題があるではないか、そこで、この方法をどういうふうに進めていったらいいかということは、十分に検討しなければならないことだと思います。しかし他方、政府委員の初中局長が申し上げましたように、さらに調査をして一、文部省としてその調査というものが調査として非常に万全であるためには、よほど方法というものについて十分な検討を行わなければいけないと思います。  したがいまして、そういう点につきまして文部省、それからまた行政の構造といたしまして県教委に、これが監督、設置の責任があると同時に、またその主体であるということも十分尊重しなければいけないことと思います。そこで県教委の見解というものも十分に聞き、さらに調査の方法を考えたい、こういうふうに思っております。
  160. 木下元二

    ○木下委員 県教委からも聞かれる、同時に、さらにこれにしぼるのではなくて、調査の範囲をもっと広げることを考えていくというふうに受け取っていいわけですね。
  161. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 従来は、県教育の事務局から説明を求めておったわけでございますが、さらに校長、教頭等からも事情を聴取せよというお話でございますが、たびたび申し上げておりますように、八鹿高校は県立学校でございます。八鹿高校の職員は県の職員でございます。したがいまして、県立学校について、あるいは県の職員について、教育委員会というものを抜いて文部省が直接事情を聴取するということにつきましては、これは、やはり設置者であり、監督者であるところの兵庫県教育委員会と十分打ち合わせた後でなければ、直ちには行えないことではないかと思いますが、いずれにせよ、県教委と十分相談をいたしてみたいと思います。
  162. 木下元二

    ○木下委員 いま言われた校長、教頭あるいは先生方ということになると、少なくとも身分は県の任命でありましょうけれども、これは決して外部の第三者から事情をいろいろ聞くということではないわけでありますから、少なくとも八鹿高校の内部で起こったこの重大な問題について、文部省として調査をするという以上は、直接関係をされたこうした先生方なりあるいは校長、教頭から事情を聞くというのは私は当然だと思うのです。  この点は、いま大臣も言われましたので、ぜひひとつ早急に実現をしていただきたい。よろしょうございますか。
  163. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま政府委員からも申し上げました方向で努力していくつもりでございます。
  164. 木下元二

    ○木下委員 もう最後でございますので終わりたいと思いますが、南但馬一帯では、解同朝田派の問題は、いろいろ問題を惹起したわけでありますが、幾らか改善が見られてきております。けれども、依然として異常事態というのは根強く残っておるのです。この地方の住民は、まだまだ自由に物が言えない。子供を安心して学校に任せられないという不安が残っております。先般、あの八鹿町で町長選挙があって、とうとう共産党と民主団体が推す町長が誕生をしたということでございますが、そういうことがありましたけれども、やはりまだまだ暗い面がこの但馬、特に南但馬一帯に残っております。  私も最近、但馬の方に行って聞いたのでありますが、中には、もう子供教育のために住まいを阪神間の方にかえなければいかぬ、こういう深刻な声まで事実起こっているんですよ。  この点について、三原前文部大臣は、四十九年十一月二十五日の衆議院の文教委員会で山原委員の質問に対しまして、南但馬で起こっている事態というのは異常である、県教委なり町村の教委が責任を持って緊急に処置されねばならない、そして文部省として指導、助言の責任を持つ、特に進学の問題も控えており、父兄の立場に立って早急に解決していく、こういうふうに答弁をされております。緊急な問題として早急にやるということを、何回も繰り返して言っておられるのです。ところが、いまだに解決をしておりません。事態の早期解決が望まれます。  私は、この段階でいまだに調査さえ十分にやられていないということでは困ると思います。調査の進め方を改めていただくという答弁の方向でありますので、これは、ぜひひとつ実現していただきたいと思います。そしてこの調査というのは、いろいろな行政を進めていく前提として調査をするわけでありますが、それは、これまでやってこられた指導、助言という形態があります。さらに場合によっては、地方教育行政法の規定がございます。違反の是正または改善のための必要な措置を講ずることもあり得るという立場で、ひとつ英断をもって進めていただきたい。特にこのことを要望しておきたいのでありますが、大臣、いかがですか。
  165. 永井道雄

    永井国務大臣 調査の上でどうするかという問題について、いまから申し上げられないことは申すまでもないことでございます。そこで、さしあたって進めなければならないことは調査でございます。これに今後一層努めていくということが、現段階の私たちの考えであります。
  166. 木下元二

    ○木下委員 質問を終わります。
  167. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木勝利君。
  168. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 本法案に入ります前に、永井大臣に二、三教育の基本姿勢についてちょっとお尋ねしたい。  御承知のとおり三木総理が、教育は福祉と相並んでともに私が最も力を入れたい重点政策である、このように言われた。私ども、これには大いに期待をいたしておるのでございますが、なおまた施政方針演説において「教育を本来のあるべき姿に引き戻す、あるべき場に引き戻す、それが非常に必要であると考える、教育を政争圏外の静かな場に移さなくてはならない、まず、そうした環境づくりが必要であると考えます。そこで、あえて政党人でないところの永井君を文部大臣に起用しました。これは永井文部大臣も御承知と思います。」このように三木さんはおっしゃっておるのです。  そこで、教育を静かな場に置く、すなわち私が考えまするに、文部行政というものは、教育の中立性を尊重すべきである、教育の中立性を貫き通さなきゃいけない、こうした三木内閣の教育基本姿勢だと私は思います。それを受けて立たれた教育、文部行政を担当される永井文部大臣は、教育行政、文部行政の基本姿勢を、どのようにこれからおやりになるのか。まあ、ここで短時間に簡単にというわけにはいかぬでしょうが、各論までいかなくても、総論として具体的にどのように御決意なさっておるのか、また抱負はどういうお考えを持っていらっしゃるのか、まず、その点をお伺いしたい。
  169. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま総理の施政方針演説からの引用に基づいてのお尋ねでございますが、政争の場から教育というものを離しまして、本来あるべきもっと静かな場所で教育を進めていくということについて、私が具体的に考えていることを申し上げますと、次のようなことであります。  一つは、わが国教育に、これは小、中、高、大学すべて、あるいは学校以外を含めまして、いろいろ教育上の問題があるかと思います。そして、それに関連する人々というのは、いろいろな組織があります。しかしながら、その組織間相互の話し合いというものが十分に行われてきたかと申しますと、私の見るところでは、過去において必ずしもそういう十分の話し合いというものが行われてこなかったように考えます。そこで実は、そこに重大な問題があるのでございますから、特に小中校などでは、いろいろな団体として、もちろん教育委員関係の会もあれば、校長会もありますが、他方に教職員組合というものもあって、そういう間にまた文部省というものが一つの十分な役割りを果たすべきですが、対話を進めてきませんでしたから、一層強くその対話というものを促進したい。  第二点としまして、ただ対話をするといいましても、対話をすれば問題が解決するというのではなくて、そこに共通な問題があります。共通な問題といたしましては、現在、特に受験体制が過熱化しているというような問題がありまして、これは政治的ないろいろな立場の別を問わず共通にこれを把握して、そして共通に理解して、そして共通に解決に努力し得るものも多々あるわけでございまして、私は、一例として受験体制の過熱化ということを申しましたが、そのほかにもそういう問題があるかと思います。  そこで、対話を通して国民共通の教育問題の解決にでき得る限り協力して解決に当たっていく、そういうことが私の今後進めていきたい、また、これまで多少とも進めてまいりました基本的な姿勢でございます。
  170. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま文部大臣お話を承りますと私も同感でございます。これは特定な方をどうだこうだと私は申しませんが、かつてはいま文部大臣がおっしゃったように、ある組織とは一切自分は会わないというようなことを言われた文部大臣もあったかに私は記憶しております。そういうことでなくして、永井文部大臣は十分話し合いをやるのだ、対話の形をつくり上げるのだ、まことに私は結構だと思います。そして国民大衆が望んでおる教育はどういうことかということに対して適切なる具体策を講じていきたい、まことに結構でございますが、三木総理の、教育と福祉は相並んで私は重大視しておると言われた点について、この点についても十分ひとつお考えを願いたいと思う。これは大学、高等学校、中学校、小学校、幼稚園、こう並べて考えてまいりますというと、非常に社会的不公正が多い。目に余るものがある。またその点について、後から少しずつ御相談を申し上げたいと思うのですが、そういうことに着眼をされた三木総理のお考えは私は正しいと思う。ただ、それをいかに具体化するか、その点については、あえて民間人の永井君を起用したと言われる総理の考えを、どうあなたが具現化されるかという点に、大いに貴職に対しては期待を寄せておりますので、その点よろしくお願いを申し上げたいと思う。  そこで、本法案に入る前にお尋ねしたいのは、これは前に問題になったと思いますが、私立学校法の第五十九条第十項及び第十一項の規定でありますが、これは衆議院の文教委員会で修正をされておる。内容は、いまにわかに申し上げても何ですが、文部大臣おわかりと思いますが、つまり私立学校に対して、高等学校は今回初めてですが、大学などに私学補助をしておるわけですね。そこで、これに対して経理の検査をするとか、つまり国で出してやっているからというので調査する、そういうことが規定されておる。これが第五十九条の十項及び十一項でございますが、これに対して私立学校あたりからの非常な希望がありまして、そういうことをやらないでくれ、困る、そこで、それはやりません、これは当分の間凍結する、適用しない、政令で定める日までの間はこれをやらないということで、「私立学校の自主性を尊重し、これをみだりにそこなわないよう、所轄庁の権限行使については、十分慎重な態度で臨むべきだとの意見があり、私立学校関係団体からはこの規定を削除してほしい旨の要望がありました。  以上の経緯から、私立学校の今後の状況を見守るため、本法案附則第十三条によって新たに設けられる私立学校法第五十九条一助成一第十項及び第十一項の学校法人に対する所轄庁の権限に関する規定は、これを政令で定める日までの間は適用しないこととした次第であります。」このように衆議院で修正されたわけであります。  ところが、漏れ承るところによりますと、かつてのある文部大臣は、どなたということは申し上げませんが、これは、もとへ戻すのだというようなことを言われたということを聞いております。これは、とんでもないことである。  そこで永井文部大臣は、どのようなお考えを持っていらっしゃるか。先ほど大臣から、皆さんがどのようなことを希望しておるか、その皆さんのお声に対しては、自分は十分沿っていくような考えを持っているというお言葉を聞きまして、まさかこれをもとに戻すというようなお考えはないと思いますが、せっかく補助をしてもらって、大学、今度から高等学校もですが、国の温かい、温情ある、教育の振興に対してまことにありがたい、喜んで皆さん教育の向上を図っていかれるやさきに、今度永井文部大臣が、はっきりまたここでこれを確認していただけば、皆さんはどのように喜ばれるかと、私はかように思う。その点、永井文部大臣の御見解を承りたい。
  171. 永井道雄

    永井国務大臣 私の考えは、私立学校につきまして、私立学校の自主性、そして建学の精神に基づいて教育を行うというのを尊重する、そういうことが一番大事だと思っておりますから、そういう角度から教育行政を進めていく、このように考えていることを申し上げておけば、その問題についての私の態度というものもおわかりいただけるかと思います。
  172. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その点は、文部大臣からはっきり承りましたので了承いたします。  次に、これは永井文部大臣も十分お考えいただいておると思いますが、今日の教育費の増大ということにつきまして、家庭経済、家庭生活に及ぼす影響は非常に甚大で、まさにこれは社会的問題なんです。私どもは、教育費の父兄の負担軽減ということを叫び続けてまいったものでございますが、三木総理の言われた、決して私は三木総理の言葉じりをとらえるんじゃないのですけれども、おれは教育には重大関心を持っている、おれの重大なる政策だ、いわば三木内閣の目玉政策だ、非常に力を入れていらっしゃるがゆえにあえて申し上げるのですが、社会的不公正の是正を図る。  ところが、現状はどうかと申しますと、これは東京都の卑近な例を私は申し上げますが、文部省の連中みんな見えているからもうわかっていると思いますが、都立高校を希望する者が五三%ある、あとの四七%は私立高校だ。ところが、都立高校はわずかに三百五十円の受験料を納めればそれで事足りる。それはもちろん経常費は、授業料も要りましょうし、あるいは校友会費とか、同好会、課外授業、教科書代、それはいろいろ要りますが、入学のときに要るのは受験料三百五十円ところが、私立高校はおしなべて十万円から二十数万円要るわけですね。これは入学金とか、あるいは施設費とか後援会費だとか、これは非常な不公正と言いましても、これより大なる不公正はありません。しかも五三%と四七%ですから大体半々ですね。そうすると、半分の人は三百五十円で行けるが、後の半分の人は最大限で申し上げますと二十万円、もう不公正もこれより大なるはなし。これは、先ほど文部大臣がおっしゃいましたが、この問題、高等学校に対する受験率がますます激化する、もう激烈をきわめる、そういう点において家庭経済に及ぼす影響並びに経済のみならず家庭生活をこわす。親子あるいは御夫婦、ごきょうだいの間にまで及ぼす心理的影響というものは、まことに甚大である。これは大きな社会問題だと私は思う。  そこで文部大臣は、だから本年は、高等学校に八十億の助成をするようにしたのだ、これは初めてじゃないか、おれが文部大臣になってことしから初めてやるのだ、こうおっしゃる。とばかりは思いませんけれども、将来まだこれからどんどんやるとおっしゃるかもしれませんが、わずかに八十億の助成をされたから、これでもう事足りるのだというようなお考えはもってのほかで、まさに隔靴掻痒の感があると私は思う。  そこで、こうしたことに対して、この不均衡是正という総理の考えられておることを、教育行政の面において永井文部大臣は、将来どのようにおやりになるお考えであるか。これは解決するのだ、先ほども、私がこれからやる考えのうちの一つ、二つ、こう仰せになった。そのお考えに対しては私は大いに意を強うしますが、その点について大臣お話をもう一度承りたい。
  173. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま東京都における高等学校の公立、私立の学生の在籍比率をお示しいただきまして、東京はなかなか大変な地域の一つでございますがどうするかということでございます。  そこで、総理が福祉と並んで教育が大事だと言われます合蓄は、やはり相当不公正と申しましょうか、そういうものを教育の場面におきまして是正していくということだと私は思うのです。  そこで、そういう観点に立って考えますと、東京都の高校の問題も非常に重要でございますが、鬼木先生には申し上げるまでもなく十二分に御承知の点と思いますが、まず私立の大学の問題もございます。あるいは幼稚園の問題もございます。そこで相当総合的にわが国教育制度というものを考えてみなければならないかと思っております。  大学につきましては、専門学校大学に昇格いたしましたのが大正七年でございまして、実は私など生まれるまだ前のことです。ところが、昇格はいたしましたが、当時、助成をいたしませんでした。助成という方向が打ち出されましたのは、坂田文部大臣の時期でございますが、その間、半世紀を経ております。したがいまして、この半世紀の間にいろいろ起こりました私立大学の経営上の問題というものはなかなかむずかしいものでございまして、私は、もちろん微力を尽くすつもりでございますが、一朝一夕にそうした問題が解決するであろうというふうに申し上げれば、これは非常な誇張になるかと思います。  そこで、その大学につきましては、坂田文部大臣の時分から助成がふえまして、そうして幸いに本年度は皆様の御協力も得て千億円を超したわけです。ところが高校また幼稚園、あるいは小、中にも比率は少ないですが多少ございますが、そういうものをどうするかということで、先ほどの八十億円という数字が出てまいったわけでございます。そういう意味において初めてでございますが、しかしもちろん、これで事足れりというようなことではございません。  そこで、来年度以降のことを慎重に考えてまいりたいと思いますが、それは、やはり幼稚園から大学までの全学校教育体系の中でどういうふうにわが国の国庫補助あるいは私学助成というものを行っていくべきか、いろいろな角度から検討していかなければならないと思います。  他方、こういうことも必要なのではないかと思っております。と言いますのは、わが国で非常に進学率が高まるのは、もちろん日本人が非常に学習に熱意があるという伝統もございますが、他方におきましては、今日、学歴社会というものの傾向が非常に強くなってきておりまして、それが学校外の社会におきまして、学歴尊重ということであればよろしいのですけれども、学歴偏重というような風潮もないとは言えない情勢でございます。そこでこれは、学校外の社会の各方面の御協力も得まして、不必要なところでそれほど学歴を偏重することはない、これは、やはり昇進とかあるいは採用のときに、非常に必要なことだと思うのですが、そういう角度というものも、さらに総合的な考えの中に加えまして考えていかなければならぬ。  ですから、先ほど指摘の東京都の問題に対する答えとしては、いささか包括的過ぎる感を与えるかもしれませんけれども、しかし他方、私考えますのに、それでは大阪府の幼稚園の問題はどうするかという御質問もあり得るわけでございます。そういたしますと、私が責任を持って教育行政を進めていきます場合には、その一つ一つの問題というものはもとより大事でございますが、やはり国民的な立場に立って全体的にどうしていくかという政策を少しでも明らかにしていく、こういう方向で進む中で、それぞれの問題が幾分かでもよい方向に向かっていくというふうに努力いたしたいと思っております。
  174. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの文部大臣の御答弁を拝聴しまして、一々ごもっともで、私いささかも異論は差しはさみませんが、私がお尋ねしたことは、単なる東京都の高等学校の例を挙げたのであって、教育全般に対してはまさにあなたのお説のとおりで、幼稚園にしても今日非常に不公正の度は深い。小学校、中学校においても大なり小なりこの例はある。ですから私が申しましたのは、結局、三木総理の考えはあなたが受けられたのだから、社会的不公正をなくするということを教育の面に移した場合には、これは教育全般にわたって討議すべきことは当然であります。私は、単に高等学校だけのことを申し上げたのではない。これは一例をとったのです。  そこで、いまの文部大臣お話を承っておりますと、全般を一応見直してよく検討したいという御答弁でございますので、それに対しては私も大いに了承いたします。ただ、私が申し上げておるのは、今日の教育というものが、従来の教育——私は、全部変えてしまえなんて、そんなことは申し上げません。しかしながら少なくとも、だれだれ大臣が過去においてどうした、こうおっしゃった、坂田さんとか。よく知っています、私も。私も国会に十一、二年お邪魔しておりますので、よく存じておりますが、問題は、従来の教育政策に対する積み重ねでなくして、積み上げでなくして、ここで相当抜本的にお考えを変えていただかなければいけない。三木内閣の政治姿勢というものは、従来の政治から流れを変えていこう、政治転換の年だということを総理はおっしゃっておる。流れを変えていくんだ。従来の政治体系に対して積み重ねでいくんだという発言はあっておらない。それだったらわれわれも承知しません。文部行政担当者としての永井先生が、過去のことをお考えになることは、それは結構だと思う。温故知新、古きをたずねて新しきを知る、これは結構だと思います。しかしながら、過去のことにこだわらないで、永井教育行政というものを、方針というものを打ち立てていただかなければ、民間人である永井君をあえて起用したと言われる根本精神、総理のお考えに対して、私は、はなはだ僭越なことを申しますけれども、あなたの使命は達せられないと思う。  だから、ひとつ、勇猛心をふるい起こして、国家教育百年の大計を樹立していただきたい、何ら右顧左べんすることなく。たくさんの人のある中で、特にあなたは選ばれて文部行政の最高責任者になっていらっしゃるのですから、あなたに対する期待は、先ほどから申しますように、非常に大きいものがあるのですから、その点ひとつ、勇気をもって教育行政の改革をやってもらいたい。政治の上積み積み重ねではなくして、政治転換、政治改革でなければいけないと思う。その点に対して永井先生のお考えを承りたいと思うのです。
  175. 永井道雄

    永井国務大臣 大変お励ましの言葉をいただきまして、感謝申し上げます。  従来と違うかということでございますが、これは政争の場から教育を静かなところに移すという線に沿いまして、少しずつ努力していくという点が従来と異なると思います。こういうものは一つ一つ具体的に実行いたしていかなければいけないというふうに考えまして、すでにお聞き及びかと思いますが、文明問題懇談会というものもつくりまして、そこはとらわれない立場で、わが国の今日の文明あるいは今後の文明、そういう中で、たとえば現在コミュニケーションということを言いましても、いままでですと大体文字ですが、今日は映像文化といいましょうか、テレビのようなもの、そういうものも入ってきているときに、どういうふうに学校考えるかというようなことも、もうすでに委員の方も決めまして、この三月から議論に入っていただく考えであります。その場合に、委員方々はとらわれない立場で御議論願う、私がそれから学んでいくという考えで進んでいくわけでございます。  なお、いまのように静かな場で話し合うということが、実は学校教育体系全体を考えるというような上でも相当の転換になるというのが私の考えです。どういうことか、幾分具体的に申し上げますと、たとえば大学の段階で考えますと、国立大学協会、そして公立大学協会、そして私立につきましては私学連盟ほか幾つかの団体がございますが、それぞれ国立、公立、私立の大学のことをこれまでお考えになってきて、大学全体をどうするかというような議論が十分に行われたと思いませんのです。そこでそれは困る。これは国立、公立、私立というようなことにとらわれずに大学というものを考えていく。こういうことは一例でございます。ほかのこともございますが、私が新しい方向でやっていこうとしていることの一端でございます。そういう考えで進んで、お励ましにこたえるように努力いたしたい、こう思っております。
  176. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さすがに卓越したるお考えをお持ちのようでございますので、どうぞひとつお考えどおりに十分対策を練っていただきたい、かように存じます。  そこで、本法案に入りまして少しくお尋ねしたいと思いますが、今回、学制百年記念事業として全国の各地域に国立少年自然の家を設置するように計画しておる。ところが「かねて準備を進めてまいりました最初の国立少年自然の家が高知県室戸市において事業を開始する運びとなりました。」十月一日にオープンだ。この提案理由の説明ですが、私は、非常に異様に感ずるのですが、学制百年記念事業として全国各地域に設置するように計画した、ことし初めて室戸に十月一日オープンだ、こういうことになっておるようでございますが、これじゃ一体、いままで何をしておったのだ。しかも都道府県で設置しております公立の少年自然の家などは、八十カ所からあるわけなんですよ。公立の青年の家は全国に二百二十三カ所ある。国立の青年の家はわずかに十二カ所ですね。公立は二百二十三カ所、これは何回言っても同じこと。ようやく国立の少年自然の家がことし初めてできる。これじゃ一体、何をやっておるのか。  安養寺社会教育局長にでも私は聞きたいんだが、文部省の社会教育局なんというのは一体何をしているんだ。いいかげんな、後追い社会教育局と名前を変えたらいい。私も社会教育については十分いままで努力してきた。旧制の中学校の教員を私は二十年やっておった。校長は十年やっておった。愚かなりといえども、三十年間教育に携わっておるわれわれには、こんなことでは承知できない。国家興隆のもとは教育にあり。社会教育局長、ひとつその点、明確な答弁をなさい。ただじゃおかぬぞ。
  177. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 一応経過など御説明いたしまして、御理解をいただきたいと思います。  昭和三十年ごろに、主として勤労青年の健全育成というようなことを考えまして、国も補助をする、都道府県また市も青年の家というものをつくろうではないか。これは青年が身近に集まりまして、お互いに共同の研修をする、話し合いの場所を持つ。これは市街にあってもようございますし、また山野に、自然の場所にそういう施設をつくってそこへ行ってもいい、こういうようなことで始まりまして、だんだんにふえてまいりまして、その教育的な成果は大変高く評価をされたわけでございます。  だんだんふえてまいっておりますときに、たまたま昭和三十四年になりまして皇太子殿下御成婚の記念ということで、静岡県の御殿場に何かつくろうという際、これはひとつ国立でりっぱなものをつくって、各地でやっておられるもののもう少し大型の広い交流の場所を青年に提供しようではないかというようなことに事柄が運びまして、最初に国立の青年の家ができ上がったわけでございます。  国立の方は一つ始めておったわけでございますが、公立はその後もどんどんふえまして、そういう中から、これはやはり青年のそういった教育指導者というものを、もう少したくさんつくらなくちゃいけない、しかし場所がない、そういう仕掛け自身が乏しいというようなことに相なりまして、そういうような場所は、まさしく国立の施設にして担当すべきではないか、しからば大いに元気を出してやりましょうということで、昭和三十八年度になりまして二番目の国立の青年の家が熊本県の阿蘇にできたわけでございます。  逐次、そういうことでございますので、これはお休みをしないで、全国にブロックといいますか、国立の青年の家をつくり続けていこうということで、今日そういった計画も全体があらかた体をなしまして、明年度予算でも、これもまた最後のものでございますが、十二番目の国立青年の家を島根県につくる、建設に本格的に取りかかる。この間に沖繩復帰ということがございまして、沖繩には早速国立の青年の家をつくる。総計十三、これで一応国立の施設は終わり。  この間も、大いに公立の施設が評価をされましてつくり続けられてまいりまして、いま御指摘のような二百を超える公立の青年の家というものができたわけでございます。これは当初は、勤労青少年にということでございましたが、いろいろ高等学校に進学する人たちの数がふえまして、現在は大学、高校在学生が半分、勤労青少年がややそれに続くというような実際の利用の程度に変わっておりますけれども、ねらいはまさしく青年教育ということであったわけでございます。  こういう間に、これは青年の部でございますけれども、少年教育ということも大切じゃないか。在来、義務教育に学んでおります子供のために、少年団活動とか校庭開放とかいうふうなことを多少やっておったわけでございますけれども、やはり学校外の子供たちの教育の場所というもの、しかも自然に触れさせる、仲間づくりをさせるというようなことが大いに必要だ、これが欠けておるのじゃないかということで、それなれば一番身近なところで、これは足のこまい子供たちのことでございますから、国も補助をするけれども、県、市で、当該地域内で適当と思われるところにひとつつくってくれぬかというようなことで、どんどんやってまいりました実態が、御指摘のように八十になろうかということになっておりまして、これは四十五年度からそういうことをしておったわけでございます。  そういうことをあれやこれややっておりまして、たまたま学制発布百年の記念事業がいろいろとり行われまして、それをいろいろと評価をいたしまして、これから先の百年の子供たちのために後世に残すものを、われわれは何をすべきかというような議論を文部省としていたしたわけでございますが、その一つに、ひとつ少年のために、義務教育子供たちのために何か活動の場所というものをつくってやろうではないかというような話が出てまいりまして、四十七年にそのための会をつくりまして、茅先生を座長に、いろいろそういう御専門の方々の意見を聴取いたしまして、ひとつ国立の少年自然の家というものをつくろうではないか、これは義務教育子供たちに本当に自然に触れさせる、これはもう町にはつくらない、自然の中につくるのだというようなことに結論が出まして、それからだんだん準備を整え、四十八年度に若干の調査費、四十九年度は基礎にかかるような工事費、そして五十年度には本格的な建設をして、とりあえず年度中には業務を開始するというところまで予定を立てようというような予算の仕掛けをいたしました。そういうことでございますので、今回ぜひひとつ法律を直して、そういうれっきとした施設ができ上がるというような根拠をいただきたい。  なお、これには青年の家のときのいろいろ評価がございまして、考え考えつくっていくというのはよくない、したがって、どういう計画、規模、内容、事業、こういうものをやるべきかということを、事前に調査会を開きまして、そこでいろいろ御詮議をいただき、若干の実態の調査等もしていただきまして、これは全国的にしかるべき区域においてそういうものをつくるべきではないかというようなことで、いろいろと御指示もいただきまして、そういう方向で、今回大いに予算の規模も拡大をして、お願いをしようというようなことをあわせて御検討願っておるというような経過並びに一応の見通しになっておるわけでございます。
  178. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたのいまの説明を聞いていると、考え方が非常におくれておるんですね。あれやこれややってまいりました——あれやこれややってないじゃないですか。あれやこれややっているのは都道府県です。しかも、あなた方の基本的考え方が間違っている。  これは大臣、あなた、ひとつよくお考えくださいよ。こういう社会教育施設あるいは教育ということに対して、何か事があった場合に記念事業としてやろう——教育の推進、教育の興隆、第二の国民の養成ということを第一義にしてこういうものをやるのだというのなら理屈はわかる。皇族が来られたから、その記念にひとつ社会教育会館をつくろうじゃないか、学制百年記念にこれをやろうじゃないか、じゃ、この次はもう二百年のときしかやらぬと言うのか。ふざけたことを言うんじゃない。教育というものは、そういう行き当たりばったりで  じゃ、何かここへつくってもらいたいというようなときには、天皇陛下をここへ連れてくればいい、そうしたら、それを記念してつくる。しかし、そういう教育施設というようなものを、記念樹を植えるような考え方じゃ話にならぬ。  本質的に教育の基本に立ち返って、今日のこういう時代にはまず義務教育の青少年を大事にすべきだ。何があろうがなかろうが、そんなことは関係ない。教育の本質に立脚してやるべきである。そもそもの考え方が間違っておる。都道府県では八十カ所もつくっている。そして、ことし初めてつくりますとここに書いてある。それも学制百年記念でございます、この次は二百年の記念につくります、こんなことが言われますか、あなた方、こうしてわれわれに審議してくれと言って出してくるが。そうして全国に計画があります、計画もここに載っておる。三カ所である。それもことしは室戸市に一カ所。全国各地にどことどこと、最終的にどれだけつくるのですか。何年度に終わるのですか。三ヵ所はここに書いてあるからわかっておる。宮城県の花山村、それから福島県西郷と栃木県の那須町、これは一緒になっておる、隣接だから。それと長崎県の諫早、三カ所じゃないですか。ことしは室戸だけ一カ所。全国各地につくります、各地ということを一つの意義にしているが、本当に局長しっかりしてくださいよ。永井文部大臣は横からむずむずしているよ。それをひとつはっきり説明してください。
  179. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 ただいま御審議いただいております予算の中には、十カ所に関係する予算を計上して御審議願っておるわけであります。誤解いただきませんように、ひとつ地区などを、くどくどしくなりますが申し上げますと、全国の十二の地域に逐次つくっていくというような全体計画をつくりまして、これは北海道、東北、北関東、中部等々、十二の地域を一応予定の区域ということにいたしまして、室戸が、いまお願いしている筋によりますと五十年度に開始をする。そして逐年建設にかかっておりまして、それが開所されるというようなことにいたしまして、現在ともかく十カ所予算上の手をつけておるわけでございます。あと適当な候補地のない地域が二カ所残っておりまして、これは御希望がいろいろございますけれども、まだ専門家なりわれわれが相談してそこにしようというような個所づけができませんものですから、これは五十一年度以降の予算事項にしようという計画でございまして、これの全体がいつにでき上がるというようなことは、まだ確定をしたわけではございませんが、少なくとも十カ所は、予算的にも手をつけまして、先を急ごうというような計画になっておるわけでございます。
  180. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから、あなたの説明は非常にあいまいですよ。十カ所つくる計画はしております、いつでき上がるか、それはまだわかりません。それは十カ所つくることはわかっていますよ。予算は三千六百万で一カ所。だから十カ所だから三億六千万組んであるようです、予算書を見たら。そうでしょう。それから公立の方は三十カ所。これは八千万、だから二十四億、五十年度の予算にとってあるようです。ところが、この予算はとってあるが、これはどうなるんです。いつできるのかわからぬようじゃ話にならぬ。パンフレットを見なければわからぬようじゃ、何をしておるかわからぬよ、社会教育局長は。
  181. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 国立と公立と両方ございまして、国立の総予算が現在十億二千万円計上してございます。そのうち、いろいろ申し上げました十カ所分が、それぞれの形で計上してあるわけでございます。片一方、公立の施設ができますので、それに対して国が補助金を出す、一カ所が八千万円、三十カ所二十四億円が計上してある、こういうことでございます。
  182. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それで、なおまたほかにずっと予定地をしているという話ですけれども、これは大臣ひとつよくお考えくださいよ。予定地はどことどこと、それで十カ所こうやるのだ、それはいつでき上がって、いつオープンの予定だとかという計画もなくて、そんなずさんな計画があるかね。いまここへ家を建てよると、これはいつでき上がるかちょっとわかりません、そんなことじゃ話にならぬですよこれは。おかしな話だ。どうですか。
  183. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま社会教育局長から御説明申し上げましたように、十二カ所つくるのでございますが、十二カ所つくっていくのを幾つかに分類いたしまして、すぐに建設するもの、それから創設の調査にかかっていくもの、それから調査をしていくもの、まだ場所が未決定なもの、少なくもそのくらい、四種類くらいあるわけであります。  そこでまず、建設を進めていくものが三つあるのですが、そのうちの一つは、今会計年度中にできる。ですから、あとの二つは非常に早い機会にできる。そして現在、創設調査と言われているその次の種類のもの、これも今度はその次に出てまいりますから、おおよその見当はつきます。それから調査をされるもの。それから最後に残りました二つは、まだどこにつくるかということははっきりしていません。  それで、これは一つつくるのにお金がかかる、相当大きなものでございます。これは幾らでも御説明申し上げますが、室戸も敷地で申しますと五十六万平米くらいある。そこに相当大きなものができます。でございますから、それをつくっていく上で、そういう順次計画で進めているわけで、別に先がわからないというようなことではなくて私たちはやってまいりますが、しかしまた、先生がおっしゃるように、なおこういう計画をちゃんと詰めて、一層確実に建設していく。特にこれが青少年教育に大事だというのは御趣旨のとおりでありますから、そういう角度で今年度の三つ、そしてまた来年度以降それを進めていくというふうにいたしたいと思います。
  184. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 社会教育局の皆さん方のねらいどころ、目的、これは私、大いに結構だと思います。先ほど局長説明されたように、大いに自然に親しむ、学校教育と校外教育は一致していかなければいけない、車の両輪のごときものだ、まことに御説ごもっとも。ですから、大いに自然に親しませて、そして環境上から子供の育成に十分留意していく、そして若い、小さい青少年の夢を育てる、まことに結構であります。  ただ、その計画が、私に言わせるともう少し計画は綿密にやるべきである。しかも、ほとんど都道府県にやらせている。まあ先ほどからお話があったように、国立は大きいから、なるほどそれは大きいでしょう。それは都道府県の方よりも国の方が大きいことはわかっている。けれども、建物が大きいとか小さいとかいうのじゃなくして、教育の根本方針、本質から国が率先してやるべきだということを私は言っている。いつも都道府県におんぶするというのは間違いだ。  しかもこれは、永井文部大臣に特にお考え願いたいと思いますが、公立の方の助成は建物の三・五分の一になっている。あとの運営費、維持費その他は全部都道府県。建物の三・五分の一だけは補助してやろう、あとは全部おまえたちが勝手にやれ、これは大変な地方自治団体の負担です。しかも先ほど、私申しましたように、全国で国立はわずかでしょう。公立青年の家は二百二十三カ所もあるんですよ。それから国立青年の家は、先ほど言った十二カ所ですよ。少年の家も同じことですよ。公立少年の家は八十カ所あるんですよ。国はことし初めてですよ、どうですか、文部大臣。国立少年自然の家は、ことし初めて室戸にできる。公立はもうすでに八十カ所ある。国立青年の家は十二カ所ですね。公立は二百二十三カ所ある。それで地方団体にはどんどんやれ、社会教育は大事だ、大いにやれ。そして補助率は建物の三割に満たないんですよ。三・五分の一。あとは全部おまえたちでやれ。ほかの、たとえば幼稚園とか保育所とかああいうのは、御承知のとおり建物の三分の二の補助をいたしております。  この点が、これから問題だ。社会的弱者というものは、人ばかり対象になるべきじゃないと私は思うんですよ。社会的弱者というのは、人だけを言うのじゃない。都道府県は、国から見れば弱者。市町村はなおさら。高度経済じゃなくして、低経済ですからね。強い者を助けていくんじゃない、弱い者を助けていくのです。  こういう点も文部大臣、十分お考えいただきたいと思う。都道府県は、あなた、どんどん社会教育施設を、もう数字であらわしたとおり、国は青年の家ようやく十二カ所、都道府県では二百二十三カ所、大変なんだ。二十倍も三十倍もつくっている。少年の家は八十カ所もある。こっちはようやくことし初めて。それも学制百年の記念。この次は二百年の記念につくると言う。  そういうことで文部省の社会教育局なんというのは何のためにあるのだ。おまえたちがやれやれやれと、わずかの金をぽっとやっておいて、あとはやれ。これで地方財政はますます逼迫する。これは一例ですよね、それだけで逼迫しておるわけではありませんが。そういう点、文部大臣いかがにお考えですか。
  185. 永井道雄

    永井国務大臣 長年教育界においでになりました先生が、教育に大変強い情熱を持っておられるのに励まされる思いです。年齢のことなど申しますと変ですが、多分私の方が先生より若いのですが、しかし先生の非常に意気盛んなるものに打たれた思いがいたしまして、私たちも、大いにしっかりやらなければいかぬという決意を新たにいたしました。ただ私たちも、そう先生と違う志を持って先ほどから政府委員が申し上げていたのではないということも、やはり申し上げておくべきかと思います。  と申しますのは、確かに地方公共団体にそれほど負担をかけるようになってはいけないということで、これは公立少年自然の家に限らず、ほかのものにつきましても、国家でいろいろ補助をするということを工夫いたしてきておりますが、公立少年自然の家のほかになぜ国立をつくるかという意味合いの一つも、やはりこういうものが八十と進んでいる以上、そして政府もそれに対して補助をいたしてきておりますが、やはりそれだけでは足りないじゃないか、そこで国立というものを全国に十二カ所設けたい、そういう形で国が責任を負っていきたいというのでありまして、その点、先生がお考えになっているのと同じように、やはり地方公共団体の負担というものを減らしていきたい。  そればかりでなく、公立自然の家につきまして補助率が三分の一と聞くが、三分の二に引き上げたらどうかというような御意見でございますが、これのいままでのやり方は、そういういわゆる定率補助というのでなく定額の方向でやってきているわけです。といいますのは、補助金額は、昭和四十九年度では一施設平均建築費というのが約二億五千万円となっておりますので、それに対して六千万円を交付する、しかしさらに整備費補助金というものも考えておりまして、昭和五十年度には一施設当たりの補助金額というものを八千万円に引き上げて計上するという形で国からの援助を強めていくということも考えているわけでございます。  なお、それでも足りないではないかという御見解もありましょうけれども、それであるだけに、この国立少年の家を一層強化して、そして国の教育に対する責任を果たしていきたい、こういう考えでおります。
  186. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 少年の家に対して補助率が上がってきたということは、私も承知しております。それはもう一般社会はすべて、少年の家のみに限らず、一般物価も、非常な悪性インフレと言われるように、物価の高騰というものはすさまじいものですから、過去においても物価はずっと上がっておりますので、すべての点から、それに見合って——だから、いかに補助率が最初少なかったかということもわかるわけです。そしてこれは先日、課長さんからもお話を聞きました。これは上げております、その率も上がっておることも聞いておりますが、上がったところでようやく三割に満たない、三・五%の維持ですからね。  だから先ほど、くどいように申し上げて恐縮でございますけれども、そういう上積みの政策でなくして——私か先ほど文部大臣に、あなたに期待しておるというのはそこなんですよ。じゃ、ことしはこのくらい、もうちょっとし上げようか、もうちょっとプラスアルファしようか、そういう上積みの政治ではなくして、行政でなくして、三木さんは政治の転換ということを言っているのですから、政治の流れを変えると、こう言っているのだから、そこは勇断をもってもっと増額をしていただく、根本的に考え直していただく。  しかも、何回も申し上げますようですけれども、金のない中から都道府県は、国はことし初めてやるのに、もうすでに八十カ所もつくって、苦しい中から非常な努力をしておるんですよ。私学補助の問題だって、誘導措置だということをおっしゃっておるんですが、公共団体からよけい出すようなところには出すけれども、出さぬところにはその配分を考える、だったら、これは誘導措置とおっしゃるのに当てはまるじゃないですか。地方公共団体は、もうない金の中から出してやっているんだから、そういうところには、大いに奨励の意味で補助を増してやろうという、これは永井大臣のお考えにまさに符節は合うじゃないですか。  ですから、そういう過去どれだけ増しましたからどう、それは過去のことであります。過去を問うているんじゃない。きょうの政治、これからの政治を私はお尋ねしているのです。いいですか、永井文部大臣、誤解のないように申し上げますけれども、従来の文部大臣がだめだと言っているのじゃありませんよ。それは従来の文部大臣は、皆選ばれたりっぱな方ですから、その当時その当時の内閣の施政方針に沿ってやってこられたのだから、それに対しては、いささかも私はどうだということは言わない。そんな御無礼なことは申し上げない。その点誤解のないように。  ただ三木さんが、政治を転換するのだ、流れを変えるのだ。だったら、特に選ばれた永井文部大臣、ピンチヒッターだ、流れを変えてもらいたい。それには勇断を持っておやりなさい。あなたを応援していますよ。国民はみんな永井文教行政に対して期待していますよ、こう申し上げておるのだから、何もあなたに文句を言っているわけでもなければ、あなたが、永井が来たけれども、あいつはやはりつまらない、そんなことを言っているんじゃないのです。  どうですか、自信を持ってやっていただきたい。消極的な、過去がどうだったから、こうだったから、そんなことをおっしゃっていたんじゃ話にならぬ。どうですか。
  187. 永井道雄

    永井国務大臣 私、いまの御趣旨に励まされて、また就任以来、流れを変えるという総理のおことばもありましたが、その気持ちでやってきているつもりでございます。  ただいま、もっとやれということなんですが、実は文部省の一般会計予算も、御承知のように三五・五%の伸びでございます。これは御審議を願っているところでございますが、政府全体の予算の中で相当際立った伸びであることは申し上げるまでもないわけです。なおまた先生が御指摘になりました私学の助成というものにつきましては、大学のレベルで五七%の増、それから高校以下を含めますと六九%の増ということです。それから国立少年自然の家というふうなものも、これは新たに考えられたものでありまして、やはり予算的にも相当これにお金を注いでいくという形で進んでいるわけです。  私といたしましては、就任いたしまして、現下のわが国の置かれております財政状況の中ででき得る限り文教行政というものの予算を伸ばしたい、そして、その中における社会的不公正というものを少しでもなくしていくという眼目で編成いたしました予算の一部がこの少年自然の家でありまして、確かに、もっとさらに進むということもあるかと思いますが、この昨年の暮れからことしの初めにかけましてでき得る限り伸ばして、そして現在、御審議を願うものとしては、流れを変える上でこれが、私が皆さんの御協力を得てやりました予算編成というものの最善の施策ではないかということで御審議を願っているわけであります。ですから、少年自然の家について、また私学助成について、もっとそれはお金があればなおよろしいのでありますけれども、今日はこういう姿で流れを変えていきたいという考えで御審議を願っているわけであります。
  188. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは、ちょっと後に戻りますけれども、いま大臣がおっしゃったから申し上げますけれども、私学補助の問題も、これは大体高等学校の方は百七十億、つまり都道府県が二五%、国が二五%、五〇%の補助ということの計画で、このようにしてやってもらいたいというのが、三・五%、そして三年計画だ、百七十億を要求したところが八十億に削られた、つまり二%、こういうことになっておりますので、こういうことに対しても、私は大いにまだ申し上げたいことがある。けれども、これは一般論として冒頭に、私学補助の問題に対してはお尋ねしましたので、各論に対しての詳細のお尋ねは、また後日にいたしたいと思いますが、いずれにしましても、八十億といういまだかってなかった高等学校の私学補助という素地が初めてできたという点は、これは私、大いに多とします、ただ、その額においては、まだ私は満足できませんけれども。これが、まさにいままで全然なかったことをやるのだ、ここに私は流れが変わったと、こう申し上げたい。  ところが、いままであったのにプラスアルファしたのは、これは流れを変えたのじゃない。その点はひとつよく文部大臣はお考え願いたい。いままでの上積みの政策ではなくして、政治の転換、政治改革でなければうそだ。その点を、大変くどいようでございますが、永井文部大臣期待するがゆえにあえて申し上げておきます。  そこで、いまの問題にまた返っていきますが、公立の少年自然の家と、それから国立の少年自然の家運営費その他内容、機構等がどのように違っているのか、これをひとつ局長に御説明願いたい。
  189. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 公立少年自然の家は、公立の施設でございますから、各都道府県なり教育委員会がそれぞれ責任を持って運営しておるわけでございまして、現在ございます平均的な大きさで申しますと、子供の宿泊施設の大きさを二百人ぐらいという形で、それぞれ必要な規模を経営しておるわけでございます。  国立少年自然の家は、一応現在考えております形で申し上げますと、子供の宿泊施設の大きさを四百人という形で考えていきたい。これは国立の組織でございますから、その機構なり定員の大きさなり、そういうものの細部は、予算との関連でいろいろときめてまいっていくわけでございますが、現在までの考え方でございますと、所長以下事務をする組織とあわせまして専門的な指導員を、そこへ組織をしたいというような考え方をしてございまして、まだ全体の規模は確定してございませんけれども、大体そういう方向で裏打ちをしていきたい。  それから、働き方の違い方でございますが、先ほどから申しておりますように、国立の方は公立の施設よりも大きゅうございまして、より広域的な少年の交流の場所を設け、いろいろ実践的な、実験的な仕事をみずから行います。そしてその成果を、各地にございます公立の施設にいろいろと提供したり、また協力し合って、少年の教育活動に励んでいこうという形でございます。  それとあわせまして、国立は日本的な規模で少年教育指導者、たとえて申しますと、公立少年自然の家でございますとか、少年団というようなものの指導者の研修の場所、そういうものでもありたい、かように考えておるわけでございます。
  190. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうすると、いまあなたは、その機構や運営の方法を言われたんだが、内容において、使用目的は先ほど聞いたんですが、その事業内容において公立と国立はどのようにやっておられるのか。責任は国が持ち、片方は都道府県で責任を持つ。ところが公立の、青年の家でも同じですが、青年の家でも少年の家でも、都道府県に任せきりであるのか。責任者は都道府県だ、公立は。国立は国だ。だったら責任は全部都道府県にあるんだから、本省は、文部省はこれにタッチしない、こういうことであるのか。また、その内容はどういうことをやるのか。年間のスケジュールはできておるのか。年間の教科課程というものが、いわゆるカリキュラムというものができておるのか。そういう点について、もう少し系統的に話してください。
  191. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 同じような教育施設ではございますけれども学校では、おっしゃるように、それぞれの学校の段階別に小、中、高等学校、幼稚園も含めまして学習指導要領というような細目のスタンダードになるようなものが、国の基準としてきめてございまして、いろいろ教科書その他の教材、先生の資格等々法定をしてあるとか、いろいろ綿密な仕掛けができておるわけでございます。それに比べますと、少年自然の家またお話しございました青年の家にいたしましても、これは社会教育施設でございまして、その中身につきましては、主としては青年なり少年が自発的にそこへ集まりまして、そこで団体的な活動をする、青年の家なり少年自然の家の指導組織は、それに対してお手伝いをするというようなかっこうになっておりまして、そのあたりが、もう少し内容的には弾力的に、自発的にそこへ来る人がみずから学ぶその場所を、こちらは提供するという仕掛けになっております。  なお国立でございますれば、国が当然責任を持つわけでございますが、数多くの公立の家は、それぞれの設置者が責任を持って管理運営するわけでございまして、職員もその設置者の支配下にあるわけでございます。ただ国は、公立のそういった諸施設に対しましていろいろ指導助言をする。いろいろ知恵を出し合いまして、その終局的な少年教育なり青年教育の実を上げていくように国としてお手伝い、アドバイスをするというような法制的な間柄になるわけでございます。
  192. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、文部大臣よくお考え願いたい。地方でやっておる、公共団体でやっておるのは責任者がおって、いまのお話では、そこへ喜んで皆が集まってくる、それを指導するのだ。国の方は国の方で責任を持ってやっておる。そのやっておる内容が、公共団体の方は指導助言、補導をする、いまのお話では。だったら、公共団体でやっておることに対して指導、補導、助言をどのようにやっておるか。たとえば何月何日から何月何日までこういうことをやったという、その活動内容を、年次報告でもいいが、あるいは月間報告でもいいが、そういう報告が文部省に来ておるか。  それをどのように指導、補導、助言をしておるか。なおまた、公共団体においては、教育委員会あたりでそれをやっておると思いますが、それに対する計画がなければ、スケジュールというものがはっきりなければ、しかも指導するということになれば、はっきりしたカリキュラムというものがなければ、行き当たりばったりで集まってきた者を指導します、責任を持ってやります、そういう保育所みたいな、ただ集まった者のお守りをするというような考え方では最も非科学的だ。  私、何か資料を提供してくださいと言ったら、「国立の青少年指導養成研修事例について」というのが一つ二つ来ている。私の九州の阿蘇の青年の家、それから新潟県の青年の家、これはすこぶる事務的で、これに対してどういう指導をした、指導者はどういう資格を持ったどういう人がやった、その結果はどういうふうだ、一切追跡指導も何にもない。いささかもこれについてはチェックしてない。ただ鬼木が出せと言ったから、何でもいいから何かその近所にあったのをリコピーして出しておけといったような、こういうおざなりなことでは、これでは実績は上がりませんね。  そういう点について社会教育局長、もう少し的確な説明がほしいですね。そんな抽象的なことでは、これは納得できません。
  193. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 ちょっとくどくなるかと思いますけれども学校の場合は、小学校なら小学校で学習指導要領というような基準がございまして、それを教える人は、国の定めた法律による免許状を持っている人でなければ先生になれない。なった人も、それを持っているものについてのみ教えることができる。教材は何かといいますと、文部省が検定した教科書を採用する。いろいろ施設、設備もそれにふさわしいような充実をしようということで、国も出せば地方も出すということで充実をするというように、いろいろ規矩準縄が整ってでき上がったところでやっておるわけでございます。  多少飛躍しますが、先生も公民館というのを御承知だと思います。あれは、地域の住民が自分たちでこういうことをしようじゃないかということで仲間をつくって見えまして、そこでいろいろ勉強される。コーラスもありますし、レクリエーションもありますし、お花のけいこもありますし、講演会もございますけれども、そういうことにしたときに、設置者の方は貸し座敷屋じゃありませんから、そこに館長初め専任の指導員がおりまして、それにふさわしい指導をその都度やります。自分でできなければ、自分の方で相談した講師をよそから呼んできましてお話も聞くというような形でやっておりますけれども、公民館の仕掛け自身は、住民が自発的に勉強する、その勉強を助長する仕掛けを公民館がとっておりまして、何をしに来なさいとか、何をしてはいけないとか、何しかできないというようなことは一切言わない。  これと早速子供を預かる施設を同じだと言うのは、言い過ぎでございますけれども、およそ少年自然の家とか青年の家というものは、概して言えば、ねらいはそこにあるわけでございまして、そういう自然の中の環境に施設をつくっておきまして、所長以下責任のある者がそこでいろいろ、子供たちが来ればそれを指導しますけれども、そこへ来る人たちは団体で来まして、学校先生の引率であれば、学校先生指導する、それをアドバイスをするとか、そういうような自発的な創意工夫に満ちた活動の場所を提供しようということになっておるわけでございますから、年のうちにどういうことが逐次順繰りに、どういうぐあいに行われるというようなものではないということを特徴といえば特徴でございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  なお、言いっ放し、やりっ放し、散らかしっ放しで成果を積み上げておらぬではないかという御指摘がございますけれども、現在、国立少年自然の家は動いておりません、これからでございますが、実体のございます公立少年自然の家で申し上げますと、それだけの数多くの少年自然の家の人たちが、全国的な広がりでございますので、いま組織をつくっておりまして、年に二、三度集まって、お互いにいろいろ、自分たちのやりました情報の交換なり成果の評価なり、したがって今後、どういうことにいそしもうじゃないかというような御相談をずいぶんしていただいておりまして、文部省はそれに対して、いろいろとこちらの希望も申し、また向こうのいろいろな御希望も聞かしていただきまして、だんだんに文部省指導、助言というような役割りを果たすということで、公立少年自然の家に対するわれわれの役割りを果たしておるというような状況でございます。
  194. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 公民館の説明をいまあなたはしておったわけだね。私は公民館のことを聞いているんじゃない。公民館ぐらいのことはだれだって知っている。公民館というのは、もうあなたのおっしゃるように、大体において集会を目的としておる。一つの集会所なんですね、各部落の、各町内会の、隣組あたりのね。それは、あなたのおっしゃるとおりです。  ところが、青年の家とかあるいは少年の家というのは、それは高きより低きに水が流れるように皆が喜んで集まってくるということも大事だ、大事だけれども、そんな無鉄砲に、わけがわからぬときにどんどん来るということじゃなくして、やはり日曜日だとか、あるいは農村地帯であれば、農閑期とか夏休みだとか春休みだとか、ことにこれは青少年、小中学校の小さい子供だ、だから大体、公民館だって同じですが、きょうは何があるから集まってください、公民館の館長は、こういうこと、こういうことを教育すべきだとちゃんとスケジュールを組んでおりますよ。だから大体の基準というもの、それも学校教育のように、一週間に何時間授業だ、時間割りを決めてこうだ、そんなことをやれと私は言っているんじゃない。季節的にでも、こういうことをやる、しかも宿泊をさせるんだからね。しかもきょうは、あそこに遊びに行こうじゃないかといって、青年の家に行こうじゃないかといって、ただぶらぶらやってくるんじゃないんだからね。宿泊させるんですからね。学校では専門課程の先生もいらっしゃる。指導者の問題もあとで聞きたいんですけれども……。  それからまた、各都道府県の公立の少年の家からでも、何月何日から何月何日までこういうことをやった、人員はこれだけだ、内容はこういうことをやった、結果はこうだというような年次報告とか、あるいは月間報告というようなものがあっておるのか。あなたは、文部省は、指導、助言、補導をすると言われたから、そういうことはどういうふうにやっておるか。私の質問には全部外れて、そして公民館の要らぬことを言っておる。公民館と青年の家とは違いますよ。少年の家とは違う。だから、無理なことを私、言っているんじゃない。  学校のように、年間何時間以上は、これは及第ができるとかできぬとか、出席日数は何ぼなければならぬとか、そんなことを言っているんじゃない。ちゃんと先生の教科課程を決めて、時間割りを組んでおるか、そんなことを言っているんじゃない。もう少し系統立ったことをおやりになっておるか。やっておらぬならやっておらぬでいいが、いま組織づくりをしているとか、どういうふうにやっていけばいいかというようなことを、いま体系を整えようとしております、それは結局いままではやっていなかった、これからそういうことをやろうと思っておりますということが、ようやく最後の答えであったように私は解釈するんだが、もう少し局長、その点を……。
  195. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 繰り返し同じようなことを申し上げることになるわけですが、それでは国立の青年の家を限定的に例として申し上げますと、これは国立でございますから、文部省から一つ考え方を各所長へ示しておりまして、その中で団体宿泊訓練による次のような事業をやりなさいというぐあいに指示してございます。それは団体活動あるいは勤労青少年の活動、さらには青少年指導者の研修の事業、こういうものをやってください、こう言っておるわけであります。中身についてどういうことをやれというのは、一切所の方で研究をして実施をするということになっております。  それから仕事の運び方に二種類ございまして、若干のものにつきましては、青年の家の各所ごとに自分で事業を主催してやる仕事、もちろん先ほど申しました三種類の業務の内容に限られておるわけでございますが、たとえば青年団リーダーの研修をやるということで、どこどこの青年の家が主催事業としてやりますからということで、教育委員会なりしかるべきところへお知らせをして集まってもらう。これは自分で事業を全部経営するわけでございます。それ以外の大半の年間の事業は団体で宿泊訓練をする、自分たちはかくかくしかじかの研修を所においてやりたいということで申し込みを受けまして、じゃこういう時期にいらっしゃいということでやりまして、来た人たちは、そういうことでございますから、自分たちで課題を持って入ってきまして、自分たちで勉強する。それについてこちらの方では、所の方では、しかるべき講師の依頼を受ければ講師をあっせんするとか、あるいは自分の方におります専門職が求めに応じていろいろアドバイスをするという形で受け入れの事業を大半やるということでございまして、その内容は来る人が持ち込んでくるというようなかっこうになっているわけでございます。  まあ公立青年の家も、大体このような形で運営されておりまして、全国的に青年の家の会議がございます。これは国公立全部入っておりまして、少年自然の家につきましては、国立はございませんが、現在、公立の自然の家の所が全部入った全国の組織がございまして、いまぼつぼつではございませんで、在来から、つくりましたとき以来、情報交換なり研修の成果をお互いが確かめ合って、そして全体的にどういうことをしようかという将来の方針も相談して立てていくというようなことでございます。  なお、国立青年の家につきましては、所長の方から、毎月どういう事業でどういう人がどの程度来たかというような実態を確認する報告も求め、集計もし、評価もしております。公立少年自然の家とか青年の家につきましては、これは全国の組織がございますので、そこから、いろいろ事情を聞かしていただくというようなことで、われわれとしては、その結果をフォローしておる、またアドバイスも申し上げておる、こういうような状況になっております。
  196. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ようやくおぼろげながら、私の質問に対する答弁が終わりの方にかすかに出てきたように思うが、まだこれでは十分でありませんがね。少年の家あるいは青年の家のあなた方の方のパンフレットをもらったんですけれども、「計画できる活動内容」計画ができると書いてあるんですよね。だから計画をどういうふうにやっているか。「自然観察、自然探究、天体観測」「ハイキング、キャンプ、登山」「写生会、遠足、レクリェーション、軽スポーツ」「学級会、グループ集会、奉仕活動」「各種の研修会、野外活動など」ずっとあるんですが、そういうことを、いまあなたの言われるように、子供が集まってきた、子供のことを主体にやっている、それは結構。結構だけれども、やはりこういうことを計画して「計画できる活動内容」と載っているんだから、そういう点についてどのようにやっておるのかということを、私は詳細お聞きしたんだけれども、どうもはっきり返事がない。  私は、これで満足はせぬけれども、時間の催促も受けたので、最後にもう一つ、それでは指導者をどのように養成しているか。私は、指導者が非常に問題だと思う。文部大臣、よくお聞きください。なぜそういうことを言うかといいますと、かつて私が昔、こういう青年の家とかなんとかいうようなものによく雇われ講師で行ったことがある。ところがそれは、先ほど局長も言っておられたが、学校あたりははっきり資格を持った人がおりますけれども、全然無資格で、何にも教育にも経験のないような人が来て講師だなんていって、何かのんべんだらり話でもしてというようなことがなかったでもない、あったというと怒られるかもしれぬから。あるいはなかったかもしれぬが、そういうことのないように、指導者の養成ということに対してはどのようにやっていらっしゃるか、それをひとつ社会教育局長
  197. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 具体的な例を引きましてその大体の傾向を御説明申しますと、国立青年の家では、青年団体のリーダーとか青年施設専門職員の研修というようなことをやっておるわけでございますが、これにつきまして、年来関係者で相談をいたしまして、ある程度の専門の程度の差による指導の中身をつくりまして、端的に言いますと、長くいろいろなことをやる研修のレベルと、それに至るまでのレベルというようなものをつくりまして、それぞれ希望者を募りまして、主催事業でそのような二種類の研修をやっている。主として国立青年の家は、そのうちの上級の方を担当いたしております。出てきますのは、各都道府県あるいは青年団体から指導者の希望者が出てまいりまして研修を受けます。それからもう一つは、各都道府県の段階でそれに続くレベルの指導者研修といいますか、養成の事業をやっていただきまして、これには国がその事業のための補助金を差し上げる、そしてその補助金に足し前をしていただきまして、各府県府県が自分たちの青年の家なりしかるべき場所で、次のレベルの指導者養成をやっていただくというようなことで、いろいろと青年指導者の現在の養成と研修を続けておるわけでございます。  少年の家の指導者につきましても、事情は全く同じでございまして、だんだんに施設ができましても、りっぱなそういうような素養を積んだ指導者が数少ないという現況でもございますので、これは日本にございますいろいろ大きな全国的な組織の団体の方々にも呼びかけまして、文部省も専門の者が入りまして、少年の団体リーダーはどういうような研修を受けるべきかという相談を一年がかりでやりました。その結果のまとめたものを、各都道府県なり関係施設へ送りまして、こういうことでみんなそれぞれ研修をしようではないかというようなことで、現在その事業が進んでおるというような形になっております。もちろんこれには、法定の資格というようなリジッドなものはございませんで、そういうレベルの研修を一応終了したというようなものを、責任者が証明をするという形で、みんながその経過を採用しようという形にしておるわけでございます。
  198. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 指導者が現在不足しておるということは、局長がはっきり言われたから、私もそうだと思っておる。これは私、指導者が一番大事だと思う。建物だけたとえどんないいものを建てても、それを指導する人に人を得ないということになれば、これは画竜点睛を欠く、もとがしっかりしなければ。  文部大臣にちょっと申し上げたいのですが、この指導者養成ということに対しては特段のお力を入れていただきたいと思う。外国の例を二、三、御承知と思いますけれども申しあげますと、イギリスは指導者を養成するカレッヂといいますか、短期大学でしような、一年間か二年間養成して、そしてこの大学を卒業した者に青少年の指導者としての資格認定証書を渡しておる。非常に計画立った最も合理的なやり方をやっておる。それからフランスは民衆教育主事という、日本で言う国家試験みたいなもの、国家免許を与えておる。それからドイツは指導者の指導期間、特定の休暇を与えておる。十日間なら十日間、二十日間なら二十日間、特定の有給休暇を与えておる。それほど優遇しておる。そして、これは学校と同じなんです。百二十の単位といいますか、教科課程、それを履修させる、それを取らなければ卒業できない、認定をしない。これは非常に系統立った、社会教育に対するところの意欲の実に満々たるものがある。それほど国が重要視しておる。それからノルウェーは、指導者養成の場合は、これは個人でなくして、その指導者養成の機関に対して補助をしておる。それから集まってきた指導者に対しては旅費を与えておる。これは、ずいぶんきめの細かい、至れり尽くせりの指導者養成に対する意欲ですね。  そういう点、わが国の社会教育に関する指導者養成ということについては、ずいぶんおくれていますね。全然話にならない。地方の青年に呼びかけて集まらせておるとか、そして指導しておりますと言うが、指導した者はそのままほっぽり出してしまう。これはやはり精神的にも物質的にも、物心両様から推進していくべきじゃないか。今日、指導者が足らないということは、私はやはり大きな問題だと思う。やはりすべて根本がはっきりしなければ、もと足りて末生ず、もとがはっきりしなければ教育の実績は上がらない、これは一番大事なことじゃないかと思う。人をつくるということは簡単ではないですね。建物がいいから人がよくできるというわけにはいかぬ。  そういう点について、最後にひとつ、文部大臣のはっきりした御所見を承りたい。
  199. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま先生指摘になりましたように、建物が教育するのではなく、人間が教育するわけでございますから、教育におきましては、特に指導者の養成が重要であることは申すまでもございません。  ただ、先生がいろいろ例を挙げられました国々に比較いたしまして、わが国では、学校教育の方に相当力を注いでまいりました。この点で相当の水準に達していると思いますが、社会教育につきましては、今後指導者の養成が非常に大事であるということは御指摘のとおりと思います。  ただ、その養成の方法につきましては、たとえば社会教育主事というようなものについては、現在でも大学で養成に当たっていることは先生も御承知のとおりであります。しかしそのほかに、もう少し機動的に動けるそういう社会教育指導者、特にそういう人たちが、青少年団体のさまざまな活動の指導に当たっていくということが大事でありますから、先ほど社会教育局長が御説明申し上げましたように、青年団体の指導者養成の基準というものもつくったわけであります。  しかしさらに、数も重要でありますから、補助をいたしまして指導者の数をふやしていく。ですから基準、それから数、それからまた各大学との連携ということも考えまして、教育というものは建物よりも人間が大事だ、これは社会教育の場においても、全くさようであるという考えをもって一層指導者の養成というものを強化いたしますように力を注いでまいります考えでございます。
  200. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの大臣の御説のとおりと思います。いついかなる時代といえども、家庭教育学校教育、社会教育、三者一体となって教育の実績を挙げなければならぬ、これは互いに相マッチして、影の形に添うごとく三者一体となって教育の実績を挙げなければならぬ、向上を図らなければならぬ、これは多年の私の考えであります。  幸いにして御造詣の深い永井文部大臣も、私の意見に同意していただきましたので、今後、社会教育ということに対しては、本当に根本目的、趣旨に沿うように、いまから伸びていかんとする第二の世代を担うところの青少年に対して、本当に美しい、うるわしい夢を育ててやるという根本趣旨に沿って特段のお力を注いでいただきたい、かように存ずるわけでございます。  社会教育局長には、大変御無礼なことも言ったけれども、まあ熱意の余りだからあしからず。  それじゃ、大臣、どうもありがとうございました。委員長、これで終わります。ありがとうございました。
  201. 藤尾正行

    藤尾委員長 和田貞夫君。
  202. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私はまず、国立少年自然の家の設置について若干お聞きしておきたいと思うわけなのですが、この目的が、少年を自然に親しませるということ、そうして健全な少年の育成を図るということ、ここにあるように理由は述べておられるわけでありますが、まず文部省がお考えになっておられる健全な少年というのはどういう少年なのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  203. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの健全な少年あるいは健全な青年とは何か、これは非常にむずかしい問題だと思います。なぜむずかしいかというと、こういう問題について日本国民すべてが考えておりまして、そうして、それぞれの人が真剣に考えておりますから、いろいろ具体的な点については、異なる見解というものがあるからむずかしい問題と思います。しかしながら、それほど持って回って考えませんでも、基本的に言いますればどういうことになるかというと、少年というのは家を出て学校に参ります。そうしてまた、この少年自然の家との関連で申しますと、次第に社会に出ていくわけですが、そういう家庭、学校、社会の三分野にわたりましてだんだん成長していきますが、その過程において少年を見ますれば、だんだんにいろいろなものが発達してくる。一つは、からだが発達してくると思います。同時に、知恵が発達してくると思います。さらにまた徳というものも伸びてくると思います。そこで知育、体育、徳育ということを申すわけでございますが、私はやはり家庭、学校、社会の三分野におきまして、知育、徳育、体育というものが本当に混然一体となってバランスのとれたたくましい少年になっていくというのが健全な少年ということではなかろうか。  またそれを、わが国の社会に置いて考えますと、わが国の社会というものは、本当に多様な人々の考えを生かしながら民主的な社会をつくっていくということでありますから、自分考えを主張すると同時に、他の人々の考えもまた尊重してこれを傾聴する、しかしながら、和して同じないというような人々がたくさんできてくるということが、民主的な社会の発展に望ましいわけでありますから、非常に抽象的な表現でありますが、いまのようなことがわれわれの考えるいわば健全な少年でございます。その健全な少年が具体的にどうあるかということになりますと、いろいろ議論がありましょう。そのいろいろな議論というものもやはり生かしながら健全な少年というものを考えていかなければいけない、こういうことでございます。
  204. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 思想的な問題は別といたしまして、一つには、精神面としてやはり日本憲法というのがあるわけですから、平和に徹する人間づくりでなければいけない、民主主義に徹する人間づくりでなければいかぬ、そういうことが私は言えると思うわけなんです。  一方では、やはり発育の途上で、極端に言うならば、パチンコの好きな子供あるいは度を過ぎたおませな子供、こういう子供が私は健全な子供じゃない、こういうように思うわけなんですが、いま大臣が言われましたように、やはり学校教育、社会教育、家庭教育、それぞれあるわけですが、学校教育の場合はさておきまして、今日の大方の国民の家庭環境というものを見てみましたら、たとえば団地生活者、文化住宅に住んでおる者あるいはアパートの一室で親と子供が同居しておる、こういうようにきわめて狭隘な家庭環境の中で子供が発育していく、こういうことが現実に存在するわけでありますし、さらには学校の周辺、住居の周辺を見渡しますと、子供にとってはかなり悪影響を与えるような社会環境というものが、これまた現存しているわけであります。  国立少年、青年の家の設置も、社会教育の条件整備として考えられたわけでありますが、条件整備は条件整備として、一つの目的を達成するため、これは必要であろうかと思いますが、いま申し上げましたような家庭環境あるいは社会環境、これらの問題について、これは文部省の所管でないと言えばそれまででありますが、やはり教育に携わり、教育の直接責任官庁である文部省としては、これらの問題を現実にどういうようにとらまえて、どういうように改善をしていかなければならないのか、このような点をどういうようにお考えになっておられるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  205. 永井道雄

    永井国務大臣 確かに、今日の社会環境というのは、非常にむずかしい多くの問題もはらんでいると思いますが、その一つとして、核家族のようなものは、住居が非常に狭隘であるというようなことをお話しになりましたが、まさにそのとおりだと思います。この少年自然の家は、やはりそういう意味におきまして、特に都市部で自然というものからも隔絶をいたしまして、そして狭いところでは、いわば伸び伸びと連帯するということをなかなか覚えにくい生活環境がありますから、そういうものをやはり変えていくというねらいを持っていると思います。  ですから、条件整備と申しますけれども、そもそも自然の中にこういうものをつくるということ、さらにまた、そこでもって何をやるかというと、いろいろやろうとしていることはございますが、特に重要な仕事一つとして、自然の観察だけではなく、自然の中でいろいろな活動を行う、これはハイキングもありましょうし、サイクリングもありましょうし、そういうことを一人でやるのでなくて団体行動でやっていく、そういうことも、いまのような生活環境を変えることの一つだと思います。  しかし、そのほかに社会環境ということを申しますと、いろいろな問題がたくさんありますので、一つ一つ取り上げて申すわけにもまいりませんが、恐らく御指摘の点は、たとえば現在の日本の風俗というようなものが相当乱れてきたりしていることが、都市部において特に悪影響を及ぼすというようなことだと思いますが、そういう問題も非常に重要でありまして、ただこういう問題は、それこそ監督によってよくしていくというよりは、国民の自主的な活動というものによって、たとえばわが国の映画であれ、あるいはテレビの内容であれ、そういうものが向上していくのが望ましいのだと思います。また、そうなっていくように私たちの文部省というものもお役に立つことができるということが非常にいいのだと思います。  そういうことで、現在のコミュニケーションというものも非常に変わってまいりまして、テレビを見ている時間も子供にとって長いですし、その番組などもいろいろな内容をはらんでおります。そこで、そういうふうな問題もどんどん考えていこうじゃないか。これからの変わっていくコミュニケーションの中で人間はどうなっていくかというようなことを、最近つくりました文明問題懇談会というようなところでも議論をしていただいて、この議論の結果を私たちに聞かせていただく、そういうことで私たちも勉強し直して、一層そういう現在の社会のコミュニケーションを考える。  そのほかたくさんございますが、ぜひ一つだけつけ加えておきたいと思いますのは、環境に悪いところはありますけれども、しかし人間、環境のせいにばかりいたしておりますと、やはり弱くなると思います。ですから、相当厳しいあるいはむずかしい環境がありましても、そういうものの持っているむずかしさというものを克服いたしまして、たくましい子供というものが育成されるようにならないといけないのじゃないか。人のせいあるいは環境のせいばかりにしてはいけないという面もあると思いますから、そういう点で私は、わが国の、特に幼児期あるいは少年期の教育というものがきわめて大事である、そういう角度から行政に取り組んでいきたいと思っております。
  206. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 この自然の家を、最終的に国立の施設として何カ年計画でどの程度建てるかという計画がおありだったら、ひとつお聞かせ願いたい。
  207. 永井道雄

    永井国務大臣 これは数は十二でございます。それを四分類いたしますと、大体いまの建設の進捗状況がわかるわけですが、三つがすでに建設に取りかかっているものでございます。そのうちの一つ、高知県の室戸のものが、今会計年度中に開設ということでありますから、あとの二つも、やはり遠くない将来に開設するところに持っていきたい。それから二番自は、創設準備に取りかかっているものでございまして、これは南近畿にございます。ですから、ちょっといま、何年のいつごろ開設ということは、なかなか申しにくいと思いますが、二番目にこれが入ってくる。そのほかに六つありますのは、いま調査段階でございますからその次に出てくる。そして四番目の種類の二カ所、これは全国の地図をつくりまして計画を進めているわけですが、まだどこにするかということの決定に至っていない、大体地域だけは決まっておりますが。  そこで、何年間にこの十二をつくるかという御質問に対して、いま的確に何年じゅうにできますということをお答え申し上げることができないのは、大変遺憾でございますが、しかし段取りとしては、いまのような形で最初の三つ、次に一つ、それから六つ、そういう姿で建設していく考えでございます。
  208. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先ほど大臣が言われました自然になじめない少年、自然に親しむことができ得ない少年、これらの少年が利用する施設として十二カ所考えられたわけですが、そういうような自然に親しむことができない地域、たとえば東京、大阪というように大都会を初め、大体どの程度あるというように把握して十二カ所ということを計画されたのですか。
  209. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 少年が自然に親しみ得るという問題の中身なんですが、これは、いろいろ最近の報告なり実験の結果をわれわれ見聞しておるわけでございますが、たとえば昨年、私自身驚いたのですが、山形県の相当へんぴな方の学校で、子供がイナゴを知らない、先生自身がびっくりしまして、これは、どういうことだということで関心をもって調べたら、農薬の関係自分たちの周辺にイナゴがいない。こういう山の中の子供がイナゴも知らない、昆虫一つにしても、昔おったそのつもりでおると、子供たちはそれを知らない、これは大変だということで山へ子供を連れていく、いろいろそういうことをする必要があるということをやった。そうすると、子供自分でいろいろなことを発見し、興味を持ち考える、そういう生活習慣がついてきた。  これは、たった一つの例でございますから、それが日本全国津々浦々というわけではございませんけれども、そういうことで、何もコンクリートの大都会の中でだけ自然力がなくなっておるということではございませんで、日本の相当広い分野にやはり自然というものが見失われつつある。これは、われわれの意識の問題自身にも関係があるわけでございますが、そういうような、多少大げさな言い方になって恐縮でございますが、そういう実態から、やはり少年に直接自然を見聞させ、触れさせるというようなことから、次第に教育的な指導をしようじゃないかというようなことを考えまして、かつそれも、集団で仲間と一緒にするというところに、発達段階をとらまえたところの相当重要な意味があるのではないか。皆の中で規律を重んじ、友達づくりをし、社会性を養うというようなことも必要ではないかというようなことを両々あわせ考えまして、子供たちの自然の家というものをつくりたい。  これはすでに、公立は国の補助金で建設が四十五年以来始まっておったわけでございますが、だんだんふえてまいりますと、学校以外の少年教育の分野での指導者の数が少ない。おりましても、十分でないというような資質の問題もございますので、そういうものは、ひとつ国立でそういう研修の場所を提供し、養成もしょうということで、国立の少年自然の家も地区地区につくっていこうではないか、相ともに連携いたしまして、子供教育を充実していこうというような考え方でございます。  多少長いおしゃべりになりましたが、そういう意味で、子供たちに自然に直接触れさせよう、全国そういうことでやれば、各都道府県、市がつくられる施設の助成も国はもっとやりたい、また国もそういう意味で、十二地域を大体行政的なあるいは文化圏というようなものを考えまして、各地域ごとに一つはつくろうではないかというような発想でございます。
  210. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いま社会教育局長が言われましたように、極端に言うならば、高度経済成長政策の中で日本列島全体、自然が破壊されつつあるということかと思うわけでありますが、私も、まさにそのように思うわけです。  そうなってまいりますと、十二カ所や二十カ所ということでは話にならぬわけで、主として公立の自然の家をつくることに対して国が援助していくということでなければおぼつかない、この点は理解するわけなんですが、今日の地方自治体の財政事情の中で、助成ということで全くつけ足しのような補助金や助成金というようなことでは、自治体が前向きになって予算化していくという財政能力が今日もうないわけなんです。  学校教育施設や福祉施設も同じことなんですが、これは、いつの場合も言われておりますけれども、もともと政府の方が自治体に対して補助をし、助成をしていく施設の積算基準というのは、全く実際額とかけ離れた基準単価になっておるわけですから、かなり大きな助成措置をするということでなければ、自治体は前向きになってやっていくということができないと思います。  したがいまして、そのような面に力こぶを入れて、公立の自然の家をこれから増設していくという方にウエートをかけられるのか、あるいは国が直接、今回提案されておりますような施設を積極的に設置していこう、こういうように考えられておるのか、どちらの考え方に立っておるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  211. 永井道雄

    永井国務大臣 われわれの考えは、国立、公立両方を連携させながら発展を図るのがよいのではないかという考えでございます。確かに、国立が全部できましても十二でございます。十二でいまの要求を満たし得るということはとても考えられないわけです。そこで公立の方は、少年自然の家、現在まで約八十ございますが、そういうものに対する補助を強化していく。ですから、施設についての補助、施設の整備費も、この五十年度から増額いたしました。そういう形で、地方財政がなかなか苦しいという中で、建設につきましても、整備についても、国として地方財政負担をでき得る限りかけないで公立少年自然の家も強化いたしますとともに、他方国立をやる、この両方が連携共同しながら、いまの少年の要求に合っていくようにつくっていくということが望ましいと考えております。
  212. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 公立の自然の家と国の自然の家と両立さしていくということよりも、目的がやはり異なるということであれば、これは、もう一つの理由になるわけなんですが、たとえば財政事情のきわめて悪い自治体が、そういう公立の自然の家を建てていくことができないから国の方が直接建ててあげるとかいう方法なのか、あるいは公立自然の家の施設の利用の目的と異なった目的をもって国の施設を直接つくっていくのだということにするというのも一つの理由としてはわかるわけなんです。ただ、公立の方もどんどん建てさせていく、国が援助していく、国の方も直接建てていく、こういうことでは国の施設を直接設置するというような確固たる理由にはならない。どちらかやはり的をしぼって、国が直接建てるということが不十分であるとするならば、やはり財政援助、財政措置というものに力点をかけた施設をふやしていくという方向に向けていかなければならないと考えますが、その点はいかがですか。
  213. 永井道雄

    永井国務大臣 公立少年自然の家と国立少年自然の家にやはり役割りの違いはあると考えております。  といいますのは、およそ三点ぐらいを申し上げたいのですが、国立少年の家の方は、やはり日本地図を置きまして、そうしてどのぐらいの時間で子供の人口が動けるということを考えたのですが、広域であるということがやはり一つの特色であります。そこで広域圏でいろいろ少年というものが相互に経験交流ができるということが一つであります。  それからもう一つは、とにかくすでに八十の公立少年の家がございますし、そういう中で、いままでにもいろいろ努力がなされてきているわけですが、しかし一層そういうものを強化いたしてまいります上で、どんどん新しい実験をすべきではないかと考えるわけです。  具体的に申しますと、大体いままででは、各学年ないしは学級というような子供たちが、そのまま少年自然の家に行くわけですけれども、今度の国立のところでは、異なった学年の人たちも一緒に来る、そういうふうにいたしますと、たとえば上級生が下級生を指導するとかいうような形の新しい実験を試みることもできるわけです。そうすると、それがまた後には公立少年自然の家の方に取り入れられるかもしれない、そういうことも考慮いたしております。  三番目には、先ほど社会局長が申し上げましたように、何と申しましても、こうした要求がどんどん起きてきておりますのに引き比べますと、指導者の養成というものがおくれておりますから、そこで国立少年自然の家では特にその点に力を注ぎまして、指導者の養成というものを考えていく。その場合には、おのずから、いままで少年自然の家で御努力になっていた方々、そういう方々もお集まりになって、そこで、いままでの経験に基づいた情報を交換したりということもあることになるのだと思いますが、そういう形で、いわば国立少年自然の家をつくることによって、一層公立少年自然の家が活動しやすくなる。ですから、必ずしも同じものをただ二つ、国立、公立という違う設置主体でつくろうというのではなく、やはり国がつくる以上は、これをつくることによって、公立自然の家の発展にも役立つように、そういう積極的な役割りを果たすべきものと考えております。
  214. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 国立の場合は、公立の自然の家のいわば基幹的な意味の自然の家であって、各県自治体の少年の交流ないしは指導者の育成ということを挙げられたわけです。確かに、この地域における社会教育指導者というのは、これは、たとえば体育指導員であるとかあるいは子供会の指導者であるとかいう者も私は包含されると思いますが、きわめて善意的、好意的にやっておられる方が非常に多いわけでありますので、ただ、この養成をするということだけでなくて、それらの方々の善意や好意に甘えないで、社会教育の重要性というものを考えて、これらに対する予算措置、財政措置というようなものも考えておられるのかどうか。
  215. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 社会教育関係では、直接教育指導をする人も少のうございますが、社会教育の振興のための行政上の条件整備をするという組織も、やや見劣りがするわけでございまして、いろいろ行政的にも、教育指導の面にも、そういう人材を誘致し得るようなことを考えなくちゃならないと思っております。  端的に直接的なことを申し上げますと、現在、市町村に社会教育指導員というような非常勤の方々をボランティアでお願いする、先生お話しのように、在来のしきたりのように、もう手弁当で、あなたの好意だけが頼りというような、前近代的なやり方では長続きもいたしませんし、気合いも入りませんので、これは、やはりしっかりした財政的な裏打ちを市町村にしてあげまして、したがって、国も補助金を出すというような形で、継続的、組織的にそういう制度が運営されるような配慮をしたいというようなことで、これは始めて間もないわけでございますが、現在二千五、六百名の現実の指導員という者が町村でも活動していただいておるわけでございますので、われわれの国立少年自然の家も、これからつくるわけでございますけれども、そこの組織自体に固有の専門職員をたくさん持っておるというのも、現在いろいろネックがございます、限度もございますので、これは応分の幅で職制を整えることにいたしまして、むしろ、それとあわせて、もう少し積極的な教育的な意義を開拓するという意味で、実は少年自然の家の事業にはボランティアを、相当たくさん来ていただけるような財政的な用意をいたしまして、来られるから来るというのではなしに、自分たちの方で用意しておきますからぜひ来てくださいというようなことでお迎えをしまして、少年にいろいろな特技をそこで御指導いただけるようなことにしてみてはどうかというような新しい試みも取り上げようとしております。  これは考えた一例でございますけれども、お説のようにいろいろな分野でそういうことは必要でございますので、今後努力してまいりたいと思っております。
  216. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 施設をつくられるということ、これは結構なことですが、せっかくこの計画を立てられて、そうでなくても、先ほど来言われておりますように、山形県の子供がイナゴの姿も見たことがないというような例を挙げられたわけですが、せっかく自然に親しむことができない子供たちの施設として、自然環境に恵まれた所に施設をつくろうとするわけですが、そのことによってその地域の自然がまたぶっこわれてしまう、あるいは施設に通ずる道路をつくらなくちゃならないということで、道路建設のために自然が破壊されてしまう、こういうことのないように、今後場所を設定されるについても、あるいはこの建設をされるについても、その点の配慮をひとつ十分にやっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思うわけであります。  さらに繰り返しますが、田舎の方へ行けば、従来田舎の子供は、ドジョウの姿やらあるいはイナゴの姿というのはわかっておったけれども、その姿も見えないというようなことも、一つの自然の破壊でありますが、大都市の場合に、たとえば私の地元では、一つの小学校に千五百人の子供を抱えている、とにかく運動場で座ることもできない、こういう姿の小学校が現実にあるわけです。そこの先生が久方ぶりにクラスの子供たちを公園へ連れていって、さあ遊びなさいと言っても、すみっこの方にかたまって広いところで遊ぶことさえも忘れてしまっておる。とにかく、うぞもぞとしておるのが、これが自然だというように、子供が長い間の学校生活の中で、そういう感触を持っている。便所へ行く時間もなくて授業が始まってからなお子供が並んでいるという姿。あるいは中学校におきましても、一つの中学校でもう三千名を超えるような、こういう中学校がある。これでは教育を管理する面においても、これはもう学校という範疇に入らないような施設の中で学校教育をやっておられる。それもやはり広い意味で自然に親しむことができないことだ、こういうように私は思うわけですが、社会教育の充実もさることながら、そのような学校教育の条件整備というようなことにも、やはり今後ともひとつ力こぶを入れてもらいたいと思う。  さらに、この自然の問題でありますが、イナゴの話はイナゴの話として、かなり遠隔の地へ行って、なるほど山あり川ありというような地域へ行きましても、そこにカーテルだとかあるいはモーテルだとか、こういうけばけばしい看板を掲げたホテルがある。子供たちはそれを見て、これが自然だというふうに思っている。自分たちの生活環境の中でそれが自然だというように思っている。あるいは大都会の中では、登下校の際にいかがわしい看板を掲げた映画館の前を通っていく、ストリップ劇場の前を通っていく。あるいは町の中にもいかがわしいホテルがある、サウナがありトルコがある、そういうような環境。長い間の生活の中でこれが自然だというように子供が思っている。  先ほど大臣、少し話されたわけでありますが、やはり社会教育を進めるについて、社会環境というものを浄化していく、清浄化していく、このことが伴わないと、幾ら社会教育の条件整備をやったところで私はお話にならないと思う。児童福祉法でも、児童を心身ともに健やかに育成するということが国自体に義務づけられておる、あるいは国民としても、児童を心身ともに健やかに育ていくということが国民の義務に通ずる。にもかかわらず、いま申し上げましたようなことでございますが、いわば子供が健全に育っていくことを阻んでおる行為であろうと思う。その行為を国が排除するという責任があると思うのですが、どういうような排除措置をもって国の責任を果たしていこうと考えておるのか、まずひとつ、文部省の方でお考えを述べていただきたいと思います。
  217. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの社会環境をよくしていくというのは、それこそ多角的に考えなければいけない問題でございまして、文部省だけでできるということではなく、本当に役所はもちろん、官民協力しなければできないことと思います。ということは、しかし別に文部省のやることの言い逃れを申し上げているわけではなくて、文部省としてもいろいろやっていかなければならない。確かに、現在の環境いろいろ目に余る、そして子供の育成上有害なものが多いと思います。文部省としては、こういう問題について、たとえば総理府なども非常に青少年問題の検討をやっておりますから、そういう中央の官庁だけではなく、地方の公共団体あるいは民間の団体とも協力をして、そして文教行政を進めていくというわけでございますが、じゃ具体的にどういうことをやるのかというと、やはりこの環境が悪いときに一つの方法というのは、積極的によい環境をつくっていくということもあると思います。  そこで、どういうことを考えているか、また今後もやろうとしているかといいますと、たとえば大人の社会では、国立文化劇場もそういうものの一つでありますが、これは一例にすぎませんけれども、とにかくよい日本の文化というものをつくっていく、そして質のいいもの、これは大人の人にも、そういう自然に親しんでもらうということが大事だと思っております。また日本の伝統というようなことにかんがみますと、いわゆる文化財の保護ということもございますが、これは、きわめて迂遠なようであっても、実はそういう質のいい文化というものを、わが国の祖先が持ってきたものを大事にして、そして芸術などにつきましても、広く国民がこれに親しめるようにしていく、子供の前に大人のことをやはり考えなければいけないという考えで、そういう問題に臨んでおります。  しかし、子供にも当然必要でございますから、子供には、たとえば移動演劇というふうな形で、なるべく質のいい、子供のための演劇というものを、いわゆる主要都市だけにとどまらずに、方々動いていくということができる、あるいは質の高い映画というようなものを見やすいようにさせていく、そういう形で積極的に、やはりわが国がいままで持ってきた、そしてつくってきた、いろいろいいものがあるわけでございますから、こういうものが広く、大人はもちろん子供の世界にも広まっていくようにする。それは戦争の後、経済復興ということが主眼であった中で、私は必ずしも十分に行われてこなかったように思いますので、最近は、そういう方向にかなりの変化が生まれてきておりますが、その変化を助長しながら、官民協力して質の高い文化を生み出していくというのに文部省としてお役に立つべきである、かように考えております。
  218. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 文部省としては、文部省の所管の行政としてそのことを考えられるということは、これは私、必要であろうと思いますが、いま私が申し上げておりますのは、やはり子供が登下校をする際に、いかがわしい施設がある、好むと好まざるにかかわらず、そこを通っていくわけですから、現実に悪影響を長い間かかって与えているわけです。あるいは登下校の際だけではなくて、子供たちが住んでおる地域の周辺あるいは遊び場の周辺、そのあたりでもやはりいかがわしい施設があるために悪影響を与えておる。これらの施設の排除措置というもの、これは文部省の所管ではありませんが、官僚としての、役人としてのなわ張り的な考え方じゃなしに、積極的に文部省としても関係官署に対して、そういう排除措置のための法の規制の強化あるいは法の改正というようなことについて、やはり意見を述べてもらわなければいかぬ、そういうような姿勢になってもらいたいと思うわけですが、そのことはどうですか。
  219. 永井道雄

    永井国務大臣 いまのような御意見を生かして活動していくということのために、御承知のように、総理府に青少年問題というものを考える本部もあるわけでございます。これはもちろん、一文部省だけでなく、関係官庁というものが協力をしていくという角度でございますから、いまおっしゃいましたように、たとえば学校の周りに余り望ましからざるそういう環境があるというようなことについては、文部省だけで解決できない、積極的に文部省としても見解を明らかにして、御趣旨のように進んでいくのが望ましいことであるし、そうしなければならないと思っております。  またしかし、文部省としてもっと具体的に考えを申し上げますと、たとえば学校の周りに有害と思われるようないろいろな営業が行われる場合、学校の御父兄の間から住民運動などが起こりまして、そして学校の周りの環境として望ましくない、そういう声が起こったことが過去に幾つもございます。それは営業の自由という角度から申しますと、何でもいいじゃないかということになるかもしれませんが、教育上必ずしもそうではない。そういう問題について、私の知るところでは、いままでもそういうことが起こったときに、それぞれ当該の地域の教育委員会というものもそういうものに関心を持ちまして、そして父兄の要望というものをなるべく入れるように努力しているケースもあると思います。  そこで、文部省としましては、やはりそういう地方自治体における委員会と協力をいたしまして、そして、いまもおっしゃいますように、学校の周りの環境というふうなものは少しでもよくしていく、これに努力すべきである、こういうふうに思っております。
  220. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 風俗営業法による行政指導は警察がやっておる、トルコぶろ、サウナあるいはいかがわしいホテル業、これについては厚生省、こういうことですが、ひとつこれは警察にお尋ねしたいのですが、旅館業というものの、いかがわしいホテル、俗に言う連れ込みホテル、これは売春行為が行われる可能性というのが私はあると思うわけです。あるいは人権が侵されるというような、そういう場所にならぬとも限らない。そういういかがわしいホテルの行政指導なり取り締まりなり、あるいはトルコぶろ、サウナ、これは単なる公衆浴場とは、どういう見方で見ても考えられないわけなんですが、これを風俗営業の範疇に入れて今後行政指導なりその取り締まりをしていく、こういうお考えがないかどうか、ひとつお尋ねしたい。
  221. 相川孝

    ○相川説明員 ただいま先生の御指摘の問題についてお答え申し上げます。  御指摘がございましたように、いかがわしい旅館、連れ込み宿と俗称言われておりますけれども、こういう旅館につきましては、実は厚生省の旅館業法によって規制がされているわけです。これは私からお答えするのもおかしゅうございますけれども学校や児童福祉施設その他社会教育施設などから百メートルの区域内にあるときには、許可をしないことになっております。そういう場所的制限が加えられておる。私ども、風俗営業といいますか、善良な風俗を守るためにいろいろな警察活動、指導、取り締まり等もやっておりますけれども、御指摘の連れ込み旅館につきましては、確かに売春等に利用されるものもあろうかと思います。したがって、いろいろ問題があるわけですが、実はこの連れ込み旅館につきまして、警察としても何らかの規制ができないだろうかということで、たしか四十五、六年のころですが、だいぶ検討したことがございます。しかしその際に、私ども問題となりましたのは、連れ込み旅館と言うけれども、一般旅館と何をもって区分できるのだろうかという問題点にぶつかってしまったわけです。そこで、そうなりますと、一般旅館を含めて全部旅館を風俗営業法で規制するということにしてしまっては、大変またほかの問題が出てまいります。というようなことで、一応連れ込み旅館の風俗営業法による規制につきましては、検討はいたしましたけれども、具体的な規制にまで立ち至らなかったわけでございます。問題が残っていることは御指摘のとおりです。  それから、もう一つの問題はトルコぶろですけれども、これも先生指摘のように、公衆浴場法の許可の対象ということになっております。ただ、これにつきましては、風俗営業法の一部改正をやりまして、地域の規制、立地条件だけ規制をいたしております。そして現実にトルコぶろにおきまして、売春等法律に違反する行為がありました場合には、私ども必要な取り締まりをしているというのが現状でございます。いずれにしましても、風俗営業等取締法で特に法の目的は書いてございませんけれども、善良な社会の風俗環境というものを何とか維持していきたいというところにねらいがあるわけでございまして、そのほかに、ただいまいろいろ御指摘がございましたように、少年の福祉というものも、やはり風俗営業法の目的から若干逸脱するかもしれませんけれども、十分加味して私どもいろいろな指導、取り締まりその他の規制をやっておるわけでございます。  もう一つは、一般の生活環境といいますか、そういうものを静穏、しかも正常なものにしてまいりたい、このような多目的なねらいをもちまして、いろいろ法に許された警察活動の範囲内で必要な規制、指導等をやっているということでございます。
  222. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 厚生省にお尋ねしますが、風俗営業として取り締まる対象外にトルコぶろ、サウナがあり、いかがわしいホテルがある。厚生省の方としては健全な——健全なと言うとどうかと思いますけれども、法に基づく公衆浴場とそうでないトルコぶろ、サウナぶろ、あるいは旅館業法で定められた健全な旅館業とそうでない、ことによれば売春行為の場所に提供されるようなホテル、これらを区分し、区分けして行政指導を今後やっていくというようなお考え方はないですか。
  223. 河内莊治

    ○河内説明員 ただいまお尋ねの件でございますが、公衆浴場法に関連いたしましては、トルコぶろ、サウナとか、旅館につきましては、御指摘のいわゆる連れ込み旅館というふうなものを対象といたしまして、いずれも公衆衛生的な見地からいたしますところの規制を行っておる次第でございます。  旅館業の関係につきまして、先ほど警察庁の方からもお話ございましたように、昭和四十五年でございますか、そのときに、いろいろ警察庁との問題もございましたけれども、問題は、社会環境の浄化ということに関連いたしまして、やはり連れ込み旅館というものとなりますと、私どもの方で考えてまいりますのは、施設的な面あるいは設備的な面というふうなこと、さらに公衆衛生の観点、それにプラスいたしまして、四十五年に改正いたしましたが、善良なる風俗を害することのないようにというふうなことで規制をいたしておる次第でございます。ただこれは、厚生省の方では、あくまでも公衆衛生上の見地からというふうな観点が主体になっておるのでございます。  それから一方また、公衆浴場法の許可を受けておりますところの個室浴場でございますが、これは先ほど、警察庁の方がお話しになりましたように、風俗営業法の観点で立地規制がなされているということでございます。やはりあくまでも公衆浴場の中で、法律の趣旨は公衆衛生上の見地という言葉を使っておりますし、そういうふうな観点で従来から来ておるわけでございますが、いずれにいたしましても、風俗営業法との関係もございますし、関係行政機関ともお打ち合わせなどをして検討してまいりたいとは考えております。
  224. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私は、きのう新宿のホテル街を歩いてきたのです。旅館業法に基づく旅館業というのは、これは公衆を、宿泊場所として宿泊料金をとって宿泊させる、これが旅館業です。宿泊というのは、人がその施設を利用して泊まるということです。ところが、私の言っているいかがわしい旅館の前へ行きましたら、それに当てはまるような定義になっておらない。御同伴という条件がまずついておる。御同伴御休憩あるいは御休息幾ら、一時間増すごとに幾ら。これは宿泊ですか。宿泊施設ですか。これが旅館業法に基づく旅館というように言われますか。実は、それだけだったらまだしもです。その横の看板を見てみたら、全室レモンぶろ、どうですか、これ。もっといかがわしいところがありますよ。鏡の間のある特別室あり、こういうような看板を料金表の隣に掲げておる旅館があるのです。  そういう具体例を私は挙げたわけですが、それが果たして旅館業法に基づく旅館業なんだ、こういうふうに思われるかどうか。どうですか。
  225. 河内莊治

    ○河内説明員 旅館は、国民一般がレジャーあるいは商用等の目的でもって安心して利用できる健全なものでなければならないと考えられるわけでございますが、ただいま先生から御指摘のような点につきましては、やはり善良の風俗保持という観点から望ましいことではございませんので、全国旅館環境衛生同業組合連合会という業界の自主的な組織がございますので、そういうようなもの等を通じまして、自粛を強く要請してまいりたいというふうに考えます。
  226. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは、自粛じゃなくて、やはり法律に基づいて、旅館業法に基づく施設じゃないということであれば、これは法に基づいて行政処分もすることができるじゃないですか。そういうことで業者に自粛を求めるということじゃなくて、やはり行政指導を強化する、こういうことになってもらわなくちゃならないと思いますが、トルコもサウナも同じことですよ。公衆浴場というのは、公衆が入浴するための施設、これが公衆浴場です。公衆が、多人数が入浴する施設が浴場です。ところが、このサウナやトルコの前へ行きましたら、旅館と同じことです。一室一時間幾ら。時間制限があり、個室であるというようなことを条件に看板をかけられて料金が設定されているのが、これが公衆浴場といえますか。やはりこれらのトルコぶろなりあるいはサウナあるいはいかがわしいホテル、これは旅館業法なりあるいは公衆浴場法なりの適用から除外をさしていく。そして先ほど言いましたように、子供たちを健全に育成することができるような社会条件、社会環境というものをつくり上げていく、こういうことでなければならないと私は思う。また警察も、いま申し上げましたようなことを十分に考えていただいて、さらにこの二つの業種につきましては、将来とも風俗営業法を適用するなりあるいは規制措置を講じていくというような権能を警察の方も持つように、さらに努力してもらいたいと思うわけです。  そこで文部大臣、いま申し上げましたようなのが現実でありますが、社会教育法では、学校あるいは児童福祉施設その他の施設の清純な施設環境を保たせていかなくちゃならない、それを著しく害されておるというように施設の長が認めた場合に、都道府県の知事に意見を述べることができるというようになっておりますが、さらに学校教育法を改正して、ただ都道府県の長に意見を述べるということだけじゃなくて、社会環境をよくしていくという見地に立って、たとえば移転の要求を知事にするとかいうくらいの権能を施設の長に与えるという、積極的な姿勢の中でこそ初めて、先ほど申し上げましたような子供の健全な育成を阻害する排除措置になっていくわけであります。  そこで、社会教育法を変え、そのような社会環境を浄化していくという考え方にお立ちであるかどうかということを、お答え願いたいと思います。
  227. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの問題について、積極的に取り組んではという御意見でございますが、全く積極的に取り組まないといけないと思います。  ただ、そのやり方というものをどうすべきか、これは先ほどから申しましたように、現行法の枠の中でも、関係官庁と協力をしながら、また地方における、自治体における教育委員会と協力しながら、相当進めていくこともあると思います。  いま法改正の御意見がございましたが、そういう法改正の問題というものに向かう前に、相当進め得るものもありますので、現段階において、私が申し上げることができますのは、積極的に御指摘の問題には取り組む、そして、その問題を解決していく上で必要な問題が生じた場合には、検討しながら前進していくというふうに考えるべきであると思います。
  228. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 時間もありませんので、警察庁にもう一つつけ加えて申し上げたいのは、たとえば風俗営業の許可条件についても、学校その他の施設から百メートルの距離ということを一応の標準の規制として都道府県にまかせておるが、ただ、その施設から百メートルということだけじゃなくて、やはりそういう学校を中心とした施設の周辺の環境を阻害するような広範囲な地域の中でそういうような風俗営業を許可するというようなことがないように、強化するという意味で、私は、この風俗営業法の検討をしてもらいたいと思います。  さらに、警察は選挙のポスターは、じきに取り締まるけれども、ちまたにはんらんしておるストリップのいかがわしい絵の書いたポスターあるいは立て看板、これなんか全く取り締まったことがないじゃないですか。選挙のポスターを取り締まるだけじゃなくて、その方にもっと力こぶを入れなさい。厚生省の方も、これは先ほども申し上げましたように、公衆浴場法なりあるいは旅館業法を抜本的にひとつ改正する、その改正に当たっては、もちろん警察とあるいは文部省、これに加わってもらって、社会環境の改善浄化のために、これらの法律を改正するように持っていってほしいと思いますし、さらにいま大臣が言われたわけでありますが、社会教育法の改正も含めて、施設の長にもう少し環境浄化のための権限を与えるというようなことも含めて、ひとつ関係官庁打ち合わせて、前向きになって取り組んでいただきたいということを申し上げまして、この問題につきましては終わりたいと思います。  私はさらに、環境が著しく悪い中で育つ子供子供だけじゃありませんが、今日、三木総理も言われておる社会的な不公正の最たるものに、いまなお被差別部落が厳存しておる。この被差別部落に対する社会教育としての同和教育ということについて、文部省としては、いままでどのような方針に基づいて、どういうような施策によって実施されてきたか、ひとつ御報告願いたい。時間がありませんので簡単にひとつ。
  229. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 御指示でございますから中身をずばり申し上げますが、社会教育におきましては、同和地区における社会教育に関する諸集会の開催とか、関係教育団体の育成というようなことに補助金を出しまして、また指導者の養成、そういうものにも補助金を出しております。なお、そういう関係から、同和対策の集会所というものを整備する必要がございますので、それの施設整備費の助成というようなこともいたしておるわけでございます。なお五十年度は、集会所の施設のために必要な用地の取得費も新たに補助するということで、予算の審議をお願いしておる、こういうような内容になっております。
  230. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いまお答えになったのは、これは被差別部落の地域に対する社会教育の条件整備にすぎないわけです。すでに特別措置法ができてことしで七年目です。特別措置法に基づく被差別部落の環境整備計画というのは、ことしを含めてもう四年しかない。もうすでにことしは予算も組んでおるわけでありますから、来年からあと三年しか残らぬ。  それはそれとして、いまお話しになったと言っても、私はまだ不十分さがあろうと思いますが、しかし私が言いたいのは、今日政府の方でお調べになっただけでも、法務省の所管でありますが、同和問題に対処するために特別に開設された人権問題の相談所、この相談所に頼って差別事案なりあるいは人権問題について相談があって、法務省として取り扱われた件数というのは、昭和四十五年に一万七千七百五十四件、四十六年には二万五百十九件、四十七年には三万一千六百八件、四十八年には四万件を超えておる。昨年四十九年では五万件を超えようとしておる。どんどんどんどんと、この人権問題について、差別事案について、法務省に訴え、法務省に相談に乗っかかってくる事案というのは、むしろ年々ふえてきつつあるということです。  こういう実態というものを踏まえて同和教育、やはり同和地区を対象とした学校教育、あるいは社会教育というものも必要でありますが、やはり同対審答申で言われておるように、むしろ同和地区の教育を高めるというために施設を強化していくというだけでなくて、特に直接関係のない地方においても、啓蒙的教育が積極的に行われなければならない。  そこで、被差別地区の存在しない地域、あるいは全国的に言うならば、関西よりも関東から以北、以東、この地域の方々。私、個人的にも同僚の議員やあるいは関係者と話をすると必ず出てくる言葉というのは、うちの地域には差別部落というのはないから全然わからぬ、こういう言葉が出てくるわけです。北海道には被差別部落がないのだ、東北にはないのだということは、これは今日、同和行政を進めるについて基本的な考え、基本的な姿勢として、国民的な課題、国の責務、地方公共団体の責務として、この部落差別を完全解消していく、こういうことに基づいて政府も積極的にやっておられることだと思うわけなんですが、特別措置法ができて七年目を迎えるのに、いま申し上げましたような状態であるということは、一体いままで文部省がこの同和行政について、特に被差別部落を含まない地域に対して、どんな同和教育をやってきたかということが非常に疑わしいと思うのです。  それについて、いままでは手薄であったということなら手薄であったということを率直に言ってもらい、今後どういうように対処していくかということについてひとつお答え願いたい。時間がありませんからできるだけ簡単にしてください。
  231. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 最初に、初等、中等教育関係についてお答え申し上げますと、初中教育では学習指導要領の教科におきまして、これは主として歴史教育でございますが、同和問題の歴史的な経過について若干触れるところがございます。これは小学校、中学校、高等学校、それぞれ児童、生徒の発達段階でその触れ方は違うわけでございますが、ほとんどの教科書がそのことについて触れております。  それから道徳におきまして、小学校の場合でございますが、たとえば偏見を持たず、だれに対しても公正、公平に振る舞うようにということが、指導一つの事項として上がっておりますし、また中学校におきましても、差別のない、よりよい社会の実現のために力を合わせることということが述べられております。また高等学校の道徳におきましても、差別のない、よりよい社会を実現しようとする態度を養うための指導が適切に行われるようにしなければならない、こうしたことを述べておりまして、こうした道徳における扱いあるいは教科書における扱いというものは、これは同和地区だけではなくて、全国的にこうした指導が行われておるという状況でございます。
  232. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いま学校教育のことを言われたわけですが、私が言っておりますのは、社会教育を中心に言っておるわけです。その社会教育は、一体どういうような方法で被差別部落を含まない地域に対してやってこられたかお答え願いたい。
  233. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 社会教育関係につきましては、先ほど申しましたような事業を、そういう該当地域においてやる、社会教育の具体的な措置を各市町村でやるということでやっておるわけでございます。
  234. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、該当地域以外はやってこなかったということですか。そのことを尋ねておる。
  235. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 さようでございます。
  236. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 けしからぬ話じゃないですか。どうなっておるのですか。先ほど読み上げたように、被差別部落を特に含まない地域においても、積極的に取り組んでいかなければいかぬということになっている。いま取り組んでおらないということを認められたわけですが、大臣、そのような状態であるがために、部落は部落だけの問題だ、部落の問題は部落のある地域の問題だ、こういうことになりかねないわけだ。今後ひとつ、全国的な視野に立って、一体この部落というのは何が原因で生まれてきたのだということも、そういう歴史的な経過、これは国民がみんな知る必要があると思いますし、それをどういうようにして解決していくのか、そのための行政というのが同和行政なんだ、あるいは同和教育なんだということを国民全般に知れ渡るようにしないと、そこらあたりから同和予算が多いとか少ないとかいうような問題に派生してしまうわけです。どうですか。
  237. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、同和地区以外の地域においてこの問題を考えなければいけないということは、全くそのとおりと思います。特に同対審の答申にありますように、法のもとにおける平等という考えが国じゆうにありませんと、こういう問題というものはなかなか解決できない。  そこで小、中、高の学校教育につきましては、先ほど申し上げたとおりでありますが、そのほかに社会教育の場面においても、そうしたものが発展してくることが望ましいわけでありますが、その場合に一つ考慮すべきことは、学校教育と社会教育に若干の違いがあるということです。学校教育の場合には、指導要領というものもあり、そしてカリキュラムをつくってやるわけですが、社会教育の場合には、なるべく住民の自主的な提案、あるいは考えというものを生かすという角度がやはりかなり強調されておりまして、そのことは大変いいことだと思います。そのことから、たとえば同和教育問題というふうなものが、それほどいままで同和地区以外で提唱されてこなかったということもあるのではないかと思います。そこで、そのやり方というものは非常に工夫いたさなければならないと思います。  しかし社会教育の分野で、一切そうした問題がないかというと、法務省が出しております人権擁護のパンフレットというものも全国的に配付されておりますが、そういう精神にのっとって、やはり同和地区以外でも、学校教育の根本的な精神にのっとって、しかも住民の自主性というものを重んじながら、今後わが国全体にわたる問題というものをみんなで考えていく、教育をしていくということに力を注ぐべきであると思っております。
  238. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 確かに、学校教育と社会教育と異なるわけですね。異質のものであるわけですからね。しかしながら、地域の住民が自主的に活動しようと思っても、地域の住民がいかに取り組もうと思っても、知らされなかったら、あるいは指導されなかったらどうにもならぬじゃないですか。やはり国民的な課題として部落差別を解消していこうということであれば、特に被差別部落が存在しない、含まれない地域に今後力を入れて歴史を知らせる、政府の取り組み方を知らすということに力を注いでもらわなくてはならないと私は思う。  そこで、社会教育といっても、先ほど来言っているような設備の強化、施設を充実していくということも必要ではあろうと思いますが、目で、耳でこの教育をしていくという面が非常に必要であるあるわけです。  文部省なりあるいは総理府には、広報室というのがあるのですが、この同和問題について、全国民を対象としてどういうような効果を上げる広報活動をされたか、ひとつ文部省なりあるいは総理府からお答え願いたい。
  239. 山縣習作

    ○山縣政府委員 御指摘の点でございますが、啓発活動の強化は、総理府といたしましても鋭意進めておるところでございまして、具体的に申し上げますと、いま目で、耳でと申されたわけでございますが、一般国民と申しますか、それぞれの地域の実情に合わせて啓発活動を実施していただくのが一番適当であろうということでございまして、各県の協力を得まして、同和問題に関する理解と認識を深める講演会を、各県に委託いたしまして実施しておるところでございます。  またこれは、初めての試みでございますが、一昨年十二月には、同和白書というべき「同和対策の現況」も発行いたしまして、それぞれ啓発活動に御利用いただいておるという状況でございます。
  240. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 社会教育に関しましては、指定されました地域につきましては、具体的な普及活動をやっておるわけでございますが、この地域をオーバーした上での、おっしゃるようなことはまだやっておりません。
  241. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それじゃ文部省、今後はやっていきますか、これからもやらないのですか。
  242. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 先ほど大臣からお話がございましたが、いままでわれわれの考えておりました社会教育の実際的な事業の遂行の仕方というのが、地域を集中的に、そちらの方へ事業活動をやるというような仕掛けでございまして、一般的には総理府なり法務省の方で、いろいろそういった法のもとの平等というようなことでの人権問題のPRなり教育をしていただいているわけでございまして、われわれとしては、そういう官庁とも相談をしたいと思います。
  243. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 相談をしたいってあなた、同対答申に、先ほどから繰り返して読み上げておるように、これは書いておるじゃないか。相談してやらないのかやるのか、どっちか。
  244. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 相談いたしまして、いずれみんなで考えて、社会教育として具体的にどういうことができるかという、やはりそういうめどを立てるという必要があると思っております。
  245. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 大臣、いまの社会教育局長の答弁をどうお思いになりますか。大臣の方で、社会教育というのは自主的にやはりやらなくちゃならない、住民が自主的にやる活動だということはわかっても、知らされなかったり指導しなかったらやっていけないでしょう。知らせもしないで、指導もしないで勝手にやれやれといったところでどないしてやるんですか。部落の歴史というものを知らない国民がたくさんおるのです。特に被差別部落の存在しない地域の方々は、ほとんどそういうことなんです。だから、国民的な課題になり切っておらない。だから、五回も六回も出て、せっかく法に基づいて、特別措置法に基づいて政府がやろうと思っても、それは予算を使い過ぎるとか予算が多過ぎるからという異なった、誤った意見さえも国会の中で出てくる。こういう現実の姿でしょう。  これは重大な問題としてひとつとらまえてもらって、大臣の今後の、それらの地域に対する社会教育のあり方、範囲を広げた視野の上に立った社会教育という重要性の問題についての決意のほどをひとつ述べてもらいたいと思う。
  246. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの御指摘の問題につきまして、やはり全国民考えていくということが非常に望ましいと思います。ただ、その方法を社会教育局長検討するというふうに申し上げましたのは、決して消極的という意味合いではないわけでございます。と申しますのは、これは学校教育もそうでございますが、とりわけ社会教育の場合に、それぞれ自治体における教育委員会とやはり協力して進めていくということが一つあります。もう一つは、学校教育以上に社会教育の場合には、それぞれの住民の団体あるいは住民の集団というものが自主的に提案してくるというものを十分に生かしていく、それが社会教育のよい面であると私は思っております。  そこで、法務省もいますでにパンフレットを出したり、あるいは総理府も工夫をしておられるということでありますから、そこで相談をして方法を工夫するというのは、これは決して消極的な意味合いではないのでありまして、やっていく以上は、非常に具体的に、どういう姿でやることが教育上効果があるかということを検討するわけでありますから、そういう角度で全国民的な問題であるところの同和教育に取り組んでいきたいと私は考えております。
  247. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 総理府の方、私あなたの方からきのういただいた資料をずっと拝見さしていただいたら、政府の直接の刊行物あるいは政府が委託した刊行物あるいは政府が委託したテレビ、ラジオ、新聞によるところの啓発活動、そういう中にたとえ一行の、たとえ一言の、これだけ重要な同和問題についての啓発活動というものがなされておらない。三十億以上のそういう啓発活動というか広報費が使われておるじゃないですか。たとえ新聞に一行でも、たとえ雑誌の一面でも、たとえスポットの放送にしても、何らなされていないじゃないですか。そんなことでいいと思いますか。
  248. 山縣習作

    ○山縣政府委員 いま御指摘の点でございますが、おおむね年二回でございます。言いかえますと、特別対策措置法が施行されました時点、あるいは人権擁護週間、そのような時期をとらえまして、一つは官報の資料版に同和問題とは何か、あるいは四十六年度調査で調べましたような地域の実態でございますとか、あるいは政府のやっております施策を啓発資料として掲げております。また同時に、昨年の十二月におきましても、これは総理府の広報予算の中でございますが、「時の動き」というものがございまして、これによりまして先ほど申し上げましたような啓発活動を行っておるところでございます。
  249. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 読む、見るは別です。読む、見るは別だけれども、あなたさっきから言っているように、おととし発行したと言うが、こんなものを発行して、何冊発行したのですか。一億一千万の国民の中に一体それは何ぼ出ておるのですか。いまあなたが言われた官報は、一体何人の国民が見ておるのですか。  やはりあなたの方で発行しておる——国会の中にも議論がある。たとえば事もあろうに、五月の三日の憲法記念日の日に、自衛隊は違憲であるか合憲であるかということ、これが国民の合意になっておらない自衛隊の募集を大々的に新聞でやる。全国紙から地方紙にかけてですよ。それだけの力をなぜ同和問題に力を入れないのですか。私はそこを言っているのです。  そんなことで鋭意やりましたとか、へちまとかはちまとか言うてくれるな。私が言っているのは、少なくとも三十億以上の経費を使って新聞広告なりあるいはテレビ、ラジオ、雑誌等を通じて政府のPR活動をやるのであれば、政府が国の責務として、国の責任で同和行政をやっていって同和問題を解決し、部落解放のために力こぶを入れているんだということであれば、それだけの熱意をなぜ示さないのですか。そこを私は言うておるわけです。  今後政府が、総理府が同和教育について、同和問題について全国民に啓発活動するために、自衛隊の募集をあるいは自衛隊の啓発活動をするように新聞、ラジオ、テレビを通じて全国民を対象にしたそういう啓発活動を今後やられるかどうか、そのことをお答え願いたい。
  250. 山縣習作

    ○山縣政府委員 先生申されましたように、一般国民に対します啓発活動、これは同和問題の解決に大きな役割りを持っておると思います。総理府といたしましても、この啓発活動の充実につきまして効果的な方法も検討しながら、推進に努めてまいりたいというふうに考えます。
  251. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 煮え切らぬ答弁ですが、地域においては地域の教育委員会なり、あるいはその地域の自治体の広報活動を、できるだけの予算を使って、市や府県が発行する発刊物を利用してできるだけ時期をとらまえ、機会をとらまえて、全県民、全市民を対象にこういう啓発活動を、むしろ国よりも自治体の方が積極的にやっているという事例がある。自治省を通じてそういう資料を取り寄せなさい。恥ずかしいじゃないですか。  私は、少なくとも政府が発行する、政府が発刊する、政府が委託する、目で耳で全国民を対象としたこういう啓発活動を、今後積極的にひとつ取り上げてほしいと思うわけですが、そのことだけの答弁を願いたい。
  252. 藤尾正行

    藤尾委員長 簡潔にはっきりものを言ってください。
  253. 山縣習作

    ○山縣政府委員 今後とも啓発活動の充実に努めてまいりたいと思います。
  254. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そういう抽象的な答弁じゃなくて、私は具体例を挙げてこういう方法でということを言うておるんですよ。全国民を対象にして目や耳で、部落問題というのは国民的な課題ですよ、政府はこれだけ積極的にやっているんですよ、国民皆さん御協力ください、こういう考え方、そういう態度に立って、いま申し上げましたようにこの三十億になんなんとするこういう広報費用を持って私はやってほしい。それをやってもらうかどうかということを私はお尋ねしておるんですよ。
  255. 山縣習作

    ○山縣政府委員 先ほど申し上げましたように、効果的な方法という点につきましては、私どもも十分検討を要するというふうに考えておるところでございますが、お示しの趣旨を体しまして、啓発活動の充実に努めてまいりたいと思います。
  256. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 時間が参りましたのでなんですが、繰り返しますが、この同和教育問題、同和教育というのは、まだまだ全国民的なものになっておらない。  かつては沖繩問題も、全国民的なそういう規模の上に立って果たして沖繩問題に取り組んだか、あるいはアイヌの民族に対する取り組みが、全国民的な課題として今日取り組んでおるか。部落問題についても同じことであります。  このような差別というものが今日いまなお現存しておるわけですから、現存しておればこそ、政府も公共団体も、積極的にその責務として取り組むということになっておるわけですから、ひとつ社会教育面あるいは啓発活動について、もっと積極的に政府が、全国民が正しい認識と理解に立つように、それを国民に求めるように努力をしてもらって、一日も早く、少しでも早くこの日本の国内に一切の差別が解消する、部落差別がなくなるというようなことになってもらいたいと思うわけですが、文部大臣一人しかおられませんので、文部大臣の方から政府を代表して決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  257. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、ほかの役所の代表というわけにまいりませんけれども……(和田(貞)委員「閣僚や」と呼ぶ)閣僚の一人ということはそうでございますが、先ほどから申し上げましたように、同和の問題は国民的な課題であると思います。そこで、わが国から差別がなくなるということは、これは、もうほんとうに絶対に実現しなければならないことでありますから、われわれは教育の角度からこれに努力をいたしてまいります。  それを進めていく上で、今日までは学校教育でやってまいりましたけれども、しかし社会教育上も重要なことでありますので、これは総理府を初め関係官庁と協力をいたしまして積極的に取り組んで、そしてわが国の社会から一日も早く差別というものをなくすようにお役に立つ、そういう決意でございます。
  258. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 終わりたいと思いますが、社会教育施設を充実していく、条件を強化していくということもさることながら、ひとつ社会環境の全般的な浄化、清純化のために、今後とも積極的に努力していただきたいということを申し添えまして、質問を終わりたいと思います。
  259. 藤尾正行

  260. 山原健二郎

    ○山原委員 大変おそくなっておりますから、簡明に質問をいたします。  文部省設置法の一部改正に係る少年自然の家の問題です。ちょうどその第一号が、私の出身の県である高知県の室戸市にできるということもありまして、このことについて質問をいたすわけです。  ちょうど私、きょうこの質問に来る途中で、時事通信社の出しておる「世界週報」を見たのですが、これに国の政治の形態は違いますし、また教育に対する考え方は違いましても、ソ連における例の子供たちが夏休みをどういうふうに過ごすかというのが、時事通信の特派員の方だと思うんですが、磯田さんという特派員が自分子供さんの経験で書いているんですね。昨年の恐らく夏休みのことだと思うのです。  それによりますと、ソ連の子供たちは、三歳から六歳まではダーチャ——ダーチャというのは別荘だそうですが、それに入るんですね。それから七歳から十七歳までの子供たちは、大体ピオニールラゲールというのに入るわけですね。その数が何と千五百万、こういうわけです。そして大体一カ月とかいうふうにそのダーチャとかラーゲルへ参りまして、子供たちは、そこで机に向かって勉強することはほとんどなくて、体を焦がし、そして体力を練るという状態で、この特派員の磯田さんのお嬢さんも坊ちゃんも、モスクワの近くにあるラーゲルに二十六日間行っているんですね。そこではハリネズミがいるし昆虫とかあるいは鳥類、それがもう盛んに動き回っている。そして面積が日比谷公園の十倍だというんですね。それがモスクワの四十キロのところにあって、磯田さんの子供さんたちも入っているわけですが、それがモスクワ近郊に何と七百二十カ所あるというんですね。そこで昨年の夏休みにそこへ入って体を鍛えた子供たちが、モスクワ近郊で七十万、これは「世界週報」に出ていました。  こういうお考え、もちろんそっくりなものではないと思いますけれども、何とか子供たちが自然に親しみ、そして体を鍛えるということを目標にして今度の少年自然の家というのができたんだと思うのです。  そう考えてみますとがなりスケールが違うし、子供を大事にする仕方というものも、これは、かなり国情によって違いはあっても、そのことだけ見れば相当うらやましい状態です。そういう国もあるのだということを考えてみますと、日本の場合に、少年自然の家、青年自然の家というのは、やはりきちんとしたものをつくってあげる、そしてそれも、枠を広げて、日本でほとんど自然を楽しむことのできなくなった子供たちにこれを享受さすということ、これは相当重要な問題だと私は思っているわけです。  したがって今回、室戸市の崎山台地というところにできることになったわけですが、一面、それも大事なことですし、地元の人たちは大変誘致運動をいたしましたけれども、実際喜んでいます。またそれと同時に、幾つかの不安もあるわけです。  そんなことを考えながら、私は、文部省の計画の中に、この東京、南関東一帯をどうするのかとか、あるいは人口密集地帯、これをどうするとか、あるいは甲信越をどうするとか、そういう計画があるのでしょうか。それを先に聞きたいのです。
  261. 永井道雄

    永井国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  262. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 国立少年自然の家の全体の設置計画につきましては、公立をうんとつくるという前提の上で、全国十二カ所にさしあたり急いでつくりたい、なお人口稠密で、環境上こういう施設が必要だというような首都圏その他の場所については、それにプラスアルファというようなかっこうで将来の課題として検討もしたい、かような全体計画を持っております。
  263. 山原健二郎

    ○山原委員 大変おくれた実態から出ていますので、これは私、思い切ってやっていただきたいと思うのです。  それで、今度できる第一号の少年自然の家について不安があると私言いましたけれども一つは、やはり地元の財政上の負担の問題ですね。これなんかも余りみみっちいことじゃなしに、室戸市というのは年間の予算が大体三十六億、これは遠洋漁業の根拠地でもありますけれども、最近は御承知のように遠洋漁業、カツオ、マグロがなかなかとれないとかいうような問題がありまして、非常に市の財政としては困難なところです。  そこで、用地の問題ですけれども、用地が御承知のように大体百万平米だと思いますが、それに要した費用として、市の開発公社を通じて二千二百六十八万円支出をしておるわけです。この用地が一体どうなるのかということですが、用地費はどうなるのでしょうか。
  264. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 当面のわれわれの考え方としましては、必要な用地につきまして使用料を払ってお借りをしたい、こういう考え方で進んでおります。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 愛媛県の大洲市にあります国立青年の家ですね。あれはどうなっていますか。
  266. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 これも同じような考え方でございまして、お払いしております。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると貸借契約を結んでやるわけですか。
  268. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 さようでございます。
  269. 山原健二郎

    ○山原委員 用地の場合は、私はできれば、適正価格で買い上げるとかいうことをしてもいいのではないかというふうにも思うのですが、これは自治省の方おいでくださっていると思いますが、地方財政再建法ですか、国立大学を建てる場合にも、用地の問題が常に問題になってくるわけですが、こういう場合、一番適切な指導方針としては、どういうふうにお考えになっていますか。どういうやり方が一番適切かという問題です。
  270. 関根則之

    ○関根説明員 基本的には、国立の施設などをつくります場合の用地につきましては、国が買収するなり、あるいは国有地があるときがございますので、そういうものがある場合には、国有地との交換をするという形で国に取得をしていただく、所有権を持っていただく、こういう形が原則的には一番よろしいというふうに考えておりますし、そういった形で指導をいたしております。
  271. 山原健二郎

    ○山原委員 私も、その方がいいと思うのです。というのは、誘致のためには、いろいろ誘致合戦が行われるんですね、競合の土地が出てきますから。そうしますと自然に、どうしてもここへ来てもらいたいというときには、かなり無理をした契約とか確認を文部省、国との間にして、土地の方はもう結構でございます、私の方は提供しますというようなことになってしまうわけですね。そういう確認書なんかも出てくるわけですが、実際は、もう地方自治体がそういうものを誘致したいときの気持ちはわかるのですが、やはり国立の施設であれば、国がちゃんとやっていくというたてまえ、ことに少年自然の家なんというものについて、金額としては大したことではありませんが、しかし自治体にとっては、これはかなり重荷になってくるわけですから、その辺はやはり明確にすべきだと思うのです。  大洲の場合も、恐らくまだ契約はできてないのじゃないですか、どうですか。
  272. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 早速調べて御返事いたします。
  273. 山原健二郎

    ○山原委員 賃貸契約をするにしましても、やはりてきぱきとやっていただくということが大事だと思いますね。  それからいま、自治省の方からもお話があったように、やはり話をして適正な価格で買い上げるということも必要だと思うのです。これが大都会地でありまして、広大な面積で土地の費用も高いなどというのとはまた違います。どうせ田舎の方へつくるわけですから、この辺はきちんとやってほしいのですが、いかがですか。これは、てきぱきやれますか、地元の要望とかそれぞれ意見もあると思いますけれども
  274. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 いろいろ問題がありますけれども、てきぱきやろうと思います。
  275. 山原健二郎

    ○山原委員 そのほかに整地工事として四千万円要るわけですね。これは県が二分の一、市が二分の一だと思いますが、ここでもかなりの負担になってまいります。整地事業というのは、国は全く手をつけないという考え方ですか。
  276. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 室戸の話でございますから、具体的に申しますと、粗造成をやっていただきました後は私の方で、すべてこちらでやるというように予定しております。
  277. 山原健二郎

    ○山原委員 粗造成の後は国の方でやるわけですね。
  278. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 はい。
  279. 山原健二郎

    ○山原委員 それからたとえば、ここには四国電力の高圧線が通っているわけです。その鉄柱などもありまして、それを家をつくるためには移転しなければなりませんが、その経費が大体千六百二十二万円だ、こういうふうに言われていますが、これなども地元負担でしょうか。
  280. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 もとに戻るようで恐縮でございますが、いろいろ事情がございまして、この土地に決めるというようなお話し合いを、地元の教育委員会なり県の人たちとやったわけでございまして、そういういきさつから、われわれとしましては、高圧線があるところはぐあいが悪い、これはのけてもらわなければ、あそこはとうてい候補地として選定もできない、じゃやりましょうか、やっていただきますかというような経緯もございまして、いまおっしゃいました千六百二十二万円というのは県市が半分ずつ分担をするということで、地元の工事ということでやっていただくということにしてございます。
  281. 山原健二郎

    ○山原委員 これなどは確かに、文部省の方も財政問題としてはそう思うようにはならぬことはわかりますけれども、こんなのは、第一、少年自然の家の上を高圧線が通っているなんというのは、場所がなければ当然、これをのけるというのは国がやるべきことだと私は思うのです。それは市の方には、先ほど言ったような弱みもといいますか、陳情する立場ですから、そういう点は何とか泣きながらでも、こういうことになるとは思いますけれども先ほどソ連の例を出したわけですけれども、本当に考えてみると、そういうものはやはり国が解決してあげていいんじゃないか。あるいはそのほかにも用地の調査費とか測量人夫賃、これらも決して多額の経費ではないわけですけれども、小さい市にとってやはり負担になっています。  私の聞きましたところでは、現在まで、昭和四十七年、四十八年、四十九年の支出しておる金額が八千三百三十万二千円、こうなっていますね。その中で県が負担しておるのが二千八百十一万ですから、この市が負担しておる金額が五千五百十九万というふうな金額になってくるわけです。こうなりますとかなり重荷なんですね。それから今度は少年自然の家ができました場合の水道工事が出てまいります。これが約一億かかるんじゃないかと思うのです。その水道工事に対する国の補助というのは六百七十万、県が六十五万。それは一億のうちの一千万にも足らないという状態なんですね。こういうふうに全部のしかかってきているわけですね。これなども、やはり地元に任すということなんですか。
  282. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 いまお示しになりました具体的な事項のほかにも実はまだいろいろ問題がございまして、具体的に施設をつくる際の費用だけのものでございませんで、その手前における整備計画をどうするかというようなことも相談中でございます。  しかし、われわれの方も、山原先生大学問題以来ずっと御承知のように、何もかもできるというような状況にございませんので、いろいろと現地でやっていただいて、しかも私ども施設に来る子供たちだけが独占するということでないものに限っては、ひとつ地元の方でも、その地域の住民の人たちにも、この際というようなことでお願いもするというようなことで、いずれだんだんに、そういったことは取り仕切りを早くまとめていきたいと思っております。
  283. 山原健二郎

    ○山原委員 すべて満足に解決できるとは思いません。だけれども、最初だからがまんをして、少々のしんぼうはしてもらいたいということではなくて、今後のことを考えましても、最初にこういう点はきちんとさせて、なるべく地元に負担を出させないような方法でやっていく、私はこれが正しい出発点だと思うのです。  そういう意味で、細かいことまで聞いているわけです。だから、財政負担の問題についても、自治省の見解もあるわけですが、それは当然のことで、今後の場合を考えましても、地元の要請に対してはできるだけ話し合いをして、その中で理にかなった解決をしていく、こういう立場をぜひ貫いていただきたいのです。余り負担のかかるようなことでは、これまた発展もしませんし、そういう点では、ぜひ問題を処理していただきたいと思いますが、大臣その点、細かなようですけれども、いかがでしょうか。
  284. 永井道雄

    永井国務大臣 いま御指摘のとおり、これは地元と十分に話し合って、理にかなったように建設を進めていくべきであると思っております。
  285. 山原健二郎

    ○山原委員 二番目の問題は、ここは崎山台地というところで室戸岬のところです。非常にきれいなところなんですが、この台地を削りまして土地造成をして、そこにできるわけですね。ところが、御承知のように室戸というのは、室戸台風で有名ですけれども、台風の常襲地帯なんですね。だから、絶えず強烈な台風があそこを通過いたします。そうしますと、その災害の防止という問題が出てまいります。さらに山をはぎ取って、赤土の地はだが出てまいりますと、猛烈な豪雨のところでもございますし、それが台地から下へ流れてくる、下には元地域というところもありますし、そして、そこは有名なビワの産地で、東京へ最初に出てくるビワはここの室戸のビワなんですが、そういう産地、これも被害を受けるんじゃないか。いわゆる農耕地の被害と人家の被害、そういう点では、この防災問題をやはり考える必要があるんじゃないかと思いますが、その辺検討されていますか。
  286. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 全体に排水その他いろいろな問題もございますし、そういった地形からくる問題もございまして、十分検討しておるわけでございますが、たまたま大雨の結果、いま山原先生のお示しのようなことが心配になったということを、つい最近われわれ聞かされまして、実は専門家でございます建設省の中国地方の建設局が現在調査中でございます。
  287. 山原健二郎

    ○山原委員 その調査の結果、周辺の農耕地あるいは人家に対する被害などが予想される場合には、それに対して防災上適切な措置がとられるんでしょうね。
  288. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 これは、その結果を待ちまして対策をとりたいと思います。せっかくお互い合意でいいものを、子供たちにつくってやろうといってやったものが、喜ばれないような結果になるというのは心外でございますので、われわれとしましても、おっしゃるとおり理にかなった結果を見たいと思います。
  289. 山原健二郎

    ○山原委員 この狭い日本ですから、宅地を造成しても、あるいは広大な面積を必要とするこういう施設をつくる場合でも、たとえば医科大学をつくる場合でも、やはり排水の問題あるいはその周辺の防災問題というのは必ず出てまいりますね。これは、いま予定されております医科大学の設置でも、何カ所かそういう問題に直面していまして、どこへつくっても、すべて満足にいくという場所は、いま日本にはそうたくさんないと思うのです。やはり山を削るとか台地を削るとかいうこと以外ないわけでして、そういう点から見ますと、ここは適地でないというところではない、適地ではあろうと思いますけれども、同時に、それだけの防災の体制というものは、やはり地元と話をしてきちんと組んでいただきたい、このことを要請しておきます。  それから三番目の問題として、これは下水の問題です。  元川という川が流れているわけですが、そこに排水をされるのではなかろうか。これは、そのまま室戸市の海岸に出るわけですが、この海岸はどういうところかお調べになったことがありますか、どうですか、いままでの話の中で。
  290. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 私自身もずっと見ましたし、関係者よく調べてございます。
  291. 山原健二郎

    ○山原委員 調べて何かお感じになったことありますか、この少年自然の家とこの海岸のつながりを。
  292. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 ウミガメが来まして卵を産むという大変珍しい土地である、子供たちが海辺に来ていろいろ遊歩したり、海に近づくというような意味でも、大変教育的な意義があるという地元の人たちのいろいろの吹聴は伺ったわけでございます。
  293. 山原健二郎

    ○山原委員 事実そうなんですよ。宣伝ではなくて、ここはウミガメの産卵地なんですね。徳島県の日和佐海岸、これは御承知のように、世界的にも有名になっていますが、それとすぐうらはらの関係にあるウミガメの産卵地なんですね。これは当然、残すことが少年自然の家にふさわしいものだと思います。もちろん市の天然記念物にもなっているわけです。そして、そこは海水浴場でもあるわけですね。  市としては、ここを観光資源というふうに呼んでおりますけれども、もちろん観光資源でも結構ですけれども子供たちが遊び、また、さまざまな探求をする、きょうも実は、少年自然の家を何でつくるのだと言ったら、その目的をお聞かせいただいたのですけれども、やはり自然あるいは動物の生態あるいは体を鍛える、こういうことになりますと、まさにウミガメの産卵地というのは大変重要な、少年自然の家の環境としてふさわしいものだと思うのです。それからまた海水浴場もそうだと思います。ですから、そういうものが汚染をされるということがないような手だてを講ずる必要があると思うのです。これは下水をどういうふうに処理するかとか、私も幾らか聞いているわけです。厚生省の七〇PPMを三〇PPMにするとかいうようなことは聞いていますけれども、こんなものも、本当に少年自然の家にふさわしい自然環境として守っていく。そこで子供たちが本当に自然を愛する心を育てていく、そういうことから考えましても、これなんかは絶対に守るべきものだと私は思うのです。  そういう点で、これについてなお検討を加えていただきたいと思いますし、また、これについての地元の要望、経費は多少かかっても、こういうのはちゃんと保存をしていくという体制をとっていくべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  294. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 それは、そのとおりにいたしたいと思っております。
  295. 山原健二郎

    ○山原委員 語尾はどうでしたか。そのとおり……。
  296. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 そのとおりにいたしたいと思っております。
  297. 山原健二郎

    ○山原委員 そうですが。それで大体わかりました。  最初にできるものですから、細かい点も出しましたけれども、本当に万全の、喜ばれるようなものをぜひつくっていただくように、また、そのためにも地元の市とかあるいは関係者とも十分話し合いをし、同時に、この施設の運営についても非常に民主的な、やはり子供を主体にした運営にしなければならぬと私は思うのです。ややもすれば従来、施設をつくると、その施設の管理に力が集中されて、本当に子供立場に立つか立たないかということがおろそかにされる面があるわけですね。  それからこの子供たちが、ここで研修をしたり体を鍛えたり合宿をしたりする場合の経費などについては、もうすでに計算されているわけですか。一律どれくらいでいくのですか。
  298. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 ことしの五十年度の予算には、五十一年一月から仕事を始めるという経費を若干計上さしていただいておりますので、年間どういう事業をするのかということは次の年度で全貌を明らかにできる。本年度は、もうほんの運営費の一部であるということで、確かなる経費の積算をまだ申し上げることができない状態でございます。  なお、運営の点に関しましては、これは、われわれとしましては初めてのことでもございますけれども、現に数十の公立の少年自然の家がございまして、実働して教育的な効果を上げておるわけでございますから、そういうようなことを参考にいたしまして、少年自然の家の者だけで何もかも取り仕切るということではなしに、地元県、市あるいは周辺の地域のいろいろ学識経験者、関係者のお知恵を拝借しながら運営をやり、教育計画を立て、さらにボランティアなどの御協力を得まして、実際に教育活動を活発にしていくというような方向で力を出していきたいと思っております。
  299. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、先ほどソ連の例を出しましたが、この特派員の報告によりますと、一カ月で大体九ルーブルか十二ルーブル、まあ所得に応じて少し高いようですが、一番最高で十八ルーブルというんですね。十八ルーブルというのは六千八百円だそうです。約一カ月間、三食食べておやつがついて、そして大体四十名で一つの班をつくって、それに二人の教師と一人の掃除夫をつけて、これが世話役活動に専念をしていくというようなことらしいですね。まあ、そういうところまでは望めないにしても、相当格安なことで子供たちがそこで体を鍛えることができる、こういう体制、それから運営費については、これは、やはり国がちゃんと見ていくということをぜひしてもらいたいのですが、その点はいかがですか。
  300. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 運営の経費は国が一切見て、もう現に国立青年の家も見てまいりましたし、これからのものもそうするつもりでございます。
  301. 山原健二郎

    ○山原委員 ありがとうございました。終わります。
  302. 藤尾正行

    藤尾委員長 次回は、来たる二十五日火曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十五分散会