○柴田悦子君 私は交通経済論を専攻いたしておりますので、交通経済論の
立場から、なお婦人でもありますから家庭の主婦の希望も大きく踏まえました
立場から、今回の
郵便料金の
値上げを
中心にいたしました
郵便法一部
改正の
法律案に反対するという
立場で、公述をいたしたいというふうに思っております。
主な反対の理由というのはかいつまんで言えば三点でありますが、その三点を順次これから述べてみたいと思います。
第一番目は、
料金改定の
内容をめぐって。こめ
内容と申しますのは、大幅な
料金値上げを問題にいたしたいわけであります。先ほ
どもどなたか公述人の方がおっしゃいましたように、
郵便需要というのは近年質的な変化を遂げてまいりまして、
郵便物の量的構成の変化というのを来しております。これは一、二種の伸びを大きく上回りまして
書留、
速達郵便の需要増というのが顕著なわけでありまして、
書留、
速達郵便料金というのが大幅に今回
値上げをされるというときに、前者の一、二種から受ける
値上げのデメリットよりもより大きな
国民への負担というか、そういうものにはね返ってくるということであります。特に三種の五倍
値上げというのを例にとってみますと、三種
郵便物といいますのは新聞、雑誌その他知的労働に携わる者にとりましては欠くことのできない部分であります。たとえば私個人をとりましても、大体七
種類の学術雑誌をとっておりますが、この学術雑誌の発行先の購入の
費用といいますのは輸送費を含めましての会費制度になっておりますので、こういう部分に大きな負担がかかるわけであります。特に、若い研究者の受ける負担というのは大変莫大なものになるということが予測されると思います。
それから次に、いろいろな
資料では、通信費の家計に占める
ウエートというのが大変低く〇・一二%という数字が書かれております。ところが、通信費を分析いたしますと、特に通信費の中の
郵便料の
ウエートが〇・一二%というふうに僅少になっておりますのですが、この
郵便料だけを家計の中で問題にするということに大変疑義を
感じるわけであります。と申しますのは、電話と
郵便というのはきわめて代替性が強いものでありまして、全世帯を平均化して
郵便費の家計に占める
ウエートというのをはじき出すのでは大変片手落ちであって、電話の所有主を除いて、あるいは除かない場合には加重平均をして、そして電話のない家の
郵便料の負担の
ウエートを出さなければならない。ここに大きな手落ちがあるのではないかと思います。しかも、この
郵便料の
値上げで大きな
影響を受ける階層というのは、いま言いましたような電話を所有しない階層並びに施設に入っている老人あるいは病人、これらは電話
利用という手段がほとんどないわけでありますから、そういうところにいる人
たちが最も大きな被害を受けるということであります。
次に、大きな第二番目の問題としましては、
料金改定の理由をめぐっての問題であります。これは、先ほどから問題にされております
郵便事業の大幅
赤字、その問題と、それから
郵便事業の
独立採算制をめぐる問題に触れることであります。明治四年に
郵便事業が開始されて以後、一貫しまして国有企業として営まれてきたということはもう周知の事実でありますが、国有企業に近年
独立採算制を導入するという動きがあちこちで活発になってまいりました。これは今回の
郵便料の
値上げを踏まえる大きな土台の理念にかかわるわけでありますけれ
ども、大体国有化される部門というものの前提条件は三つございます。これはもう言うまでもないことですが、
公共性、公共の福祉ときわめて密なる関係があるということが一つ。第二番目に、資本の投入額というのが巨額であって、私的資本の負担に負えないということが第二番目。第三番目は国家的要請という、そういう三つが国有企業の成り立つ大前提にあるわけですけれ
ども、
郵便事業を見ますと、今日特に第一点と第二点、つまり
公共性の理念とそれから資本投入の巨額性ということで国有化がずっと貫かれておる。もちろん戦前には第三番目の理由もあるし、戦後も一概に国家的要請が全くネグられていいということではありません。ところが、そういう企業に
独立採算制、つまり企業性を導入してくる場合には大変大きな問題が生じてきます。今日、都市交通の中での地下鉄
事業の問題あるいは港湾管理の問題等々にその
影響があらわれて
議論されているのは、皆さん方御存じのとおりであります。特にこの
郵政の場合は、三つの
特別会計部門、貯金、年金、
郵便、おのおのを分けて独立主義というか
独立採算制度というのを確立する方向を目指しているのですけれ
ども、これは独算制至上主義と言うべきではないかと思いまして、どちらにしましても、この三つの部門にわたる共通費の部分というのがきわめて多額に上るわけでして、局舎の建設の問題、あるいはそれぞれの局におられる管理職の人
たちの業務の問題、この共通費部分について、一体それをどのように今後
調整をとるかというようなことは、当然この
独立採算制との関係の中で見ていか赴ければならない。これは言うまでもないことであります。
さらに、
郵政事業の特徴といいますのは、労働集約的な産業でありまして、この
郵便用役というか、交通用役の一種に当たると思いますが、この用役生産というのはきわめて個別性がきついわけです。これは交通業一般に共通的
性格を有するものです。個別的
性格の強い
郵政の労働というのは、当然個別性を持つわけでして、労働集約的にならざるを得たいというのは言うまでもありません。これを大量的に処理する方法とか、あるいは労働生産性をいかに上げるかというようなことでの工夫というのは、おのずと限界があるということを申し上げたいわけです。特に、近年建設費の部門の
ウエートが次第に高まってまいりまして、建設費の過去十年における伸び率というものは他の部門を上回っておりまして、この伸び率の中で
中心は局舎の建設が
中心です。この局舎建設での自己資本比率というのが急速に低下いたしまして、借入金に依存をする。そうすると、借入金プラス利子負担というのが大きな
赤字となってこの千四百億の
赤字の中に繰り入れられてくるというようなことで、これらは当然一般会計部門から支出されなければならない部門でありまして、つまり、ランニングコストからは外される部分であるということではないかというように思います。
それから、大きな第三番目の問題であります。これは
料金値上げの原因についての理由でありますが、書かれておりますのが、労働者の賃上げが三〇%に及ぶという文言が挿入されておりまして、これは
郵政の労働毒の賃金というのを詳しく知っているわけではありませんが、賃金が他産業並みに上がっていくというのは、これは生活できる賃金という原理から言えば当然のことではないか。むしろ三〇%も上げざるを得ないというその理由こそが問題であります。これはインフレあるいは高物価政策というのの
影響を受けて上がらざるを得ないわけでありまして、このインフレ、高物価政策自体を問題にせずに、三〇%上がったという結果だけを問題にしておったのでは、一向に解決できない。先ほどの公述人の中にもその御指摘があって、賃金部門の上昇というのは直ちには解消できない、一度解消してもまた起こってくるではないかという発言がありましたけれ
ども、それと関連して
考えてみましても、この問題というのは、上がらざるを得ないその土台を解決しなければ、本来本当の
意味での解決にならないというふうに
考えるわけです。
郵政部門でのコスト削減への道というのが、先ほど来の私の公述からおわかりいただけますように、機械化、それから技術革新の限度というのがございまして、どうしても労働集約的な産業ですから、賃金のしわ寄せというのを大きく受げるというのはもう大前提でありますから、そこで、安易に人件費部分を節約するとか、あるいはそこの部分だけに目が向いていくというのは、これは独算制の理念と相対立させて
考えてみた場合にも大変大きな矛盾であるというように
考えるのです。これは
郵政の労働自体に誇りを持つというか、それから
郵政事業、
郵政というそういう業務を、
国民に対して責任を持つという
立場から、魅力のある業務にしていくという
努力が先行されない限り、
郵政労働の問題というのは解決をしたいというふうに
考えるわけであります。
というような理由で、主に第一、第二を
中心に、つまり
料金改定の
内容の問題、
値上げが
中心に置かれているというそういう問題と、それから
料金改定の理由が、
独立採算制の導入強化、その矛盾というようなところとあわせて、私はこの
改正案に対する反対の公述を申し上げたいというふうに思っております。