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1975-03-07 第75回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月七日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 大西 正男君    理事 片岡 清一君 理事 高鳥  修君    理事 中山 利生君 理事 古屋  亨君    理事 佐藤 敬治君 理事 山本弥之助君       亀山 孝一君    木村武千代君       岩垂寿喜男君    細谷 治嘉君       多田 光雄君    林  百郎君       小川新一郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席政府委員         自治政務次官  左藤  恵君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         参  考  人         (成蹊大学教授肥後 和夫君         参  考  人         (武蔵大学教授佐藤  進君         参  考  人         (日本大学教授北野 弘久君         参  考  人         (東洋大学教授井手 文雄君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ――――――――――――― 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     林  百郎君 同月七日  理事小山省二君及び古屋亨君同日理事辞任につ  き、その補欠として島田安夫君及び片岡清一君  が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月六日  地方公務員共済制度改善に関する請願(瀬野  栄次郎君紹介)(第一二八一号)  地方公営交通事業再建に関する請願田中美智  子君紹介)(第一二八二号)  同(三谷秀治紹介)(第一二八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)      ――――◇―――――
  2. 大西正男

    大西委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任についてお諮りいたします。  理事小山省二君及び古屋亨君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  3. 大西正男

    大西委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴い、理事が二名欠員となりましたので、その補欠選任を行うのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
  4. 大西正男

    大西委員長 御異議なしと認めます。  それでは、委員長は       片岡 清一君 及び 島田 安夫君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 大西正男

    大西委員長 内閣提出に係る地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案について参考人から意見を聴取することにいたしております。  御出席いただいております参考人は、成蹊大学教授肥後和夫君、武蔵大学教授佐藤進君、日本大学教授北野弘久君、東洋大学教授井手文雄君、以上の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人の皆様には、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々から御意見を約二十分程度お述べいただき、次に、委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず肥後参考人にお願いいたします。
  6. 肥後和夫

    肥後参考人 成績大学肥後でございます。  昭和五十年度地方税制改正案につき、意見を申し述べます。  昭和五十年度地方税制については、一方において、個人住民税四千四百九億円、個人事業税九十九億円、料飲税三百五億円、ガス税その他七十一億円、合わせて初年度四千八百八十四億円の減税を行うとともに、他方において、事業所税創設により二百二十一億円、入湯税税率引き上げ及び産業用電気非課税措置整理等により五十三億円、合わせて二百七十四億円の増税を行い、差し引き正味四千六百十億円の減税が行われることになっております。  国税が、たばこ値上げまでを一種の増税とみなしました場合、正味五、六百億円の増税となっております中で、地方税が四千六百十億円の減税を行う結果になっております最大理由は、四十九年度における国の所得税大幅減税に伴うはね返り減税約三千三百億円が生じたことが最大理由でありますが、そのほかの減税は、大体において、これまで著しく進行を見ておりましたインフレに対応するための物価調整減税であると見ることができるのではないかと考えております。  大筋といたしまして、低成長時代を迎えております中で、国民福祉生活環境改善を図るためには、西欧福祉国家の例を見ましても明らかなように、総体としての税負担率上昇を確保しなければならない、そうして総体としての税負担率引き上げの中で、地方税源充実、なかんずく大都市税減充実を図っていくことにならざるを得ないのではないかと考えております。したがいまして、今回の改正につきましても、必ずしも減税の面だけに評価重点を置くことなく、事業所税創設を積極的に評価したいと考えておりますが、なお、細部にわたる意見は、以下主要な税目ごとに述べたいと存じます。  まず、個人道府県民税及び市町村民税について。  個人住民税につきましては、四十九年度における国の所得税給与所得控除中心にして大幅に軽減されたことの影響で、自動的に約三千三百億円の大幅減税が行われましたほか、さらに人的控除引き上げ障害者、老人、寡婦、勤労学生等に対する福祉的配慮による減税約一千百億円を加えまして、合計四千四百億円の減税が行われているわけでありますが、所得課税給与所得依存に偏っている点から考えまして、このような減税はおおむね妥当であろうかと考えますが、なお基本的な問題点について若干の所見を述べたいと思います。  第一に、所得税住民税課税最低限のあり方についてでございますが、国と地方課税最低限に大幅な開きがあり過ぎるのは問題であろうかと考えますが、地方財源が窮迫していることや住民税納税者数等、現状を考えあわせますと、課税最低限を必ずしも国と同一にそろえなければならないとは考えておりません。国と地方両者を総合して適正な水準が維持されていればよいのではないかと考えます。  なお、先走ったことを申し上げるようですが、所得税負担調整のために所得控除の額を引き上げていく方法には限度があるということは、国際的に評価を受けておりますカーター報告等でも指摘されているとおりでございまして、スウェーデンでは早くから基礎控除以外の人的控除を廃止していますし、西ドイツでも本年一月から連邦所得税については累次の改正を行っておりまして、所得控除よりはタックス・クレジットの方がすぐれており、所得控除引き上げよりもむしろ社会保障給付充実の方を重視する逆所得税的な発想が注目され始めているという点を重視したいと思っている次第でございます。  第二に、住民税所得割税率表構成が、県民税では二%、四%の二段階市町村民税では二%から一四%までの十三段階構成されており、所得税が一〇%から七五%まで十九段階構成になっているのに比較しまして、特に県民税累進度が低い点が目立ちます。しかし、歴史的な経過を振り返って見ますと、その是非はともかくといたしまして、三十七年度の改正で国の税率表累進度が七五%まで引き上げられたときに、県民税税率表が三段階から現行の二段階に改められたという経緯もありまして、両者は一体として考えられてきたように思われます。また、所得税の三二%は地方交付税交付金として地方に還流するという点を考えますと、具体的にどのような税率表構成する方がよいかということは別といたしまして、両者を総合して見た場合の所得階層別税率表が適正に構成されていなければならないということは言い得るのではないかと考えます。  第三に、均等割についてでございますが、もともと負担分任的な発想で設けられたものでありましょうが、近年、応能負担的立場から個人住民税均等割を廃止すべきであるという考え方にも支持者がふえております。ただし、法人住民税均等割個人住民税とは別に考えなくちゃならないと思っております。  とにかく、このような考え方からしますと、特に県民税均等割二百円が据え置かれていることなどは問題であります。他方農村県等固有税源の窮迫しておりますところでは、均等割引き上げが望まれているものと承知しておりますが、このような点については、地方税源充実の全体的な配慮の中で適切な解決が図られてしかるべきものかと考えます。  第四に、土地の譲渡所得課税については、特に高額の長期譲渡所得に関する課税が強化されておりまして、社会的不公正の是正に関する国民期待に沿うものだと考えております。  以上が個人住民税に関する件でございます。  次に、法人事業税事業所得税について申し上げます。  その一、法人事業税及び法人住民税延滞金の利子が日本銀行の公定歩合の引き上げに対応して一二・七七五%までの範囲内で引き上げられましたことは、延納に対する適正な歯どめを設けるものと評価されると思います。  その二、法人事業税に一・一倍の制限税率が新たに設けられました点につきましては、特に四十九年の四月一日から超過課税を実施していた東京都の最高税率が一四%から一三・二%に引き下げられなければならないことになり、それに伴い昭和五十年度に相当額減収を余儀なくされる等のこともあり、論議を呼んでいる次第でございますが、大都市財源充実対策といたしましては、法人事業税だけ切り離すことなく、事業所税創設と一体的に考察されるべきものであると考えます。  法人事業税超過課税は、かつて秋田、青森、岩手、三重の諸県で実施されたこともありましたが、昭和三十九年度以降は行われていなかったところでありまして、今回この問題が再燃したこと自体大都市財源の窮迫を物語るものであると言えます。  この超過課税の根拠といたしましては、ナショナルミニマムを超える地域公共サービス最低限について、地域的独自性は当然に認められるべきものであるから、地域的に税負担格差があってもよいはずである。その場合、特に濃厚な地域的サービスを必要ならしめる原因は大都市に集中している事業活動にあるのであるから、地域特殊事情に応じて、法人事業税率格差があっても当然許されるべきことではなかろうかと理解しておりますが、他方現行税体系前提にする以上、国の法人税、他の地方団体地方交付税交付金住民税法人税割、法人事業税等収入影響が及ぶ関係上、国及び関係地方団体の間の調整が必要になってくることも避けられません。これらの諸事情を解決する手段として、法人事業税収入に対する大都市圏期待の高まりの中で制限税率が設定されたわけでございますが、あわせて事業所税創設された点も、やはり同じ事情を背景にしているものだと考えます。  特に、制限税率を一割増しに押さえた理由としては、法人所得に対する関連諸税の総合的な実効税率を五〇%以内に押さえるという産業政策上の考慮が働いていると考えられます。ただし、この負担率算定基準等につきましては、多くの論議があることは周知のとおりでありますので、今後、税制調査会その他で慎重な検討が行われ、国民の十分な理解と協力が得られるよう努力すべきものと考えております。  最後に、法人事業税法人所得課税標準としているにもかかわらず、物税として取り扱われている点が従来から論議を呼んでおるわけでございますが、付加価値基準等による外形基準課税に徹する場合、負担能力の弱い企業に及ぼす影響が大きいことから、その実現がなかなか困難であったわけでございます。その点、新設された事業所税外形標準課税性格がきわめて鮮明でございまして、このような点、従来の法人事業税の欠陥を補うものとして注目されるべきものだと考えております。  次に、事業所税について申し上げます。  事業所税は、すでに申し上げましたように、法人事業税を補完すべき特別事業税であるとともに、都市環境整備のため、特に大都市圏都市税源充実することを目的にする市町村税であるわけでございますが、課税標準として、資産割はともかく、従業者給与総額基準とする従業者割が用いられている点、今後の都市財源充実に寄与するものと期待されます。また資産割についても、固定資産税資産所有者課税されるのに対しまして、資産を使用して行われる事業活動課税することを目的としている点、外形標準課税としての性格が鮮明であろうかと考えております。ただ、次の点なお問題であり、適時見直しを行うべきであると考えます。  第一は、課税団体範囲についてでございますが、現在首都圏整備法第二条の第三項に規定する既成市街地として武蔵野市、三鷹市、川口市、近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域としては東大阪、尼崎、堺、守口、西宮、芦屋、人口五十万以上のもののうち特定のものとして仙台、広島、千葉、岡山等が考えられておりますけれども、その場合に、今後の情勢の展開に応じて、さらにその周辺の都市との水平的財政調整は必要でないか。あるいは国土庁の大都市事業所税構想等を一応無視することができるか。ないしは、そうしないとすれば、課税範囲の中に新しい都市を追加する必要が出てくるのではないかといったようなことが考えられるわけでございまして、この点については、適時見直しを図るべきものであろうかと考えます。  第二は税率でございますが、資産割あるいは従業者割、あるいは新増設に係る税率等が一応法定されておりまして、現在、法人所得に対して〇・四%ほどの負担率になるものと想定されておりますけれども、これらについても、今後この事業所税都市財源としてどのように位置づけるかということ、あるいは情勢変化等を踏まえて適時再検討されるべきものではないかと考えます。  次に、電気税についてですが、電気税のうち特に問題になりますのは、産業用電気に係る電気税非課税措置が二十四品目について廃止されたという点でございます。私も、いろいろ都市を回りましたときに、家庭用電気課税されて産業用電気課税されていないことによる地方団体減収等に深い関心を寄せたものでありますけれども、経済理論的に考えましたら、もし企業課税という点であれば、原料課税ではなくて、むしろ、法人事業税なり法人税なり、あるいは法人住民税課税なり、そういう法人所得に直接課税するのが、税体系としてはすっきりしておりまして、原料課税をどのように評価するか、そういう点で問題があるのではないか。したがいまして、私は電気税の無条件の課税強化という点には若干まだ留保をいたしたいと思っております。  次に、自動車取得税について。自動車排気ガスに係る保安基準に適合する自動車取得について減税措置を講ずるということは、大気汚染防止観点からきわめて評価されるべきものであり、今後このような自動車に対する税制上の措置等公害防止手段として使うという点については、なお積極的に考えるべき余地があるのではないかと考えております。  入湯税につきましては、今回数年ぶりに四十円から百円に引き上げられたわけでございますが、これらについては、都市税源充実するという観点から適当であると考えられるわけでございますけれども、他方民宿等と競合する非常に規模の小さな旅館等については、入湯税が営業上一つの問題になっているというような事実もあることを一応指摘したいと思います。したがいまして、入湯税等について、細かい税金でありますが、その運用についてはなお慎重な配慮が要るのではないか。  それから最後料飲税でございますが、料飲税につきましては、物価上昇に応じて課税最低限引き上げるのは当然であるとしまして、私が都市実態調査等をしました感じでは、都市財源としてもかっこうのものであるように思うわけでございまして、一応府県の財政事情等も十分に考慮しなければなりませんが、許される範囲内において、料飲税都市財源としての配分等を考えてもいいんじゃないかと思っております。以上でございます。(拍手)
  7. 大西正男

    大西委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  8. 佐藤進

    佐藤参考人 佐藤進でございます。  昭和五十年度の地方税法改正についての意見をこれから申し上げたいと思います。  幾つかの項目について申し上げたいと思いますが、特に今回の改正では事業所税創設ということが問題になっておるようでありますので、これについてやや詳しく申し上げ、その前に、一番初めに私なりに印象づけられたところの、昭和五十年度の地方税改正の一般的な特徴というようなものを申し上げますと、これは先ほど肥後参考人が申されたところとも関連いたしますが、今回の地方税法改正による減税の幅が全体で四千六百十億円ということで、これは国税減税の幅約二千五十億円と言われ、たばこ専売納付金増額等を加えますと、大体減税をやらなかったというのに比べまして、また昨年度の地方税減税規模等に比べまして、かなり大きなものであります。しかし、その大部分は給与所得控除改正に伴う前年度の国税所得税減税はね返り分というようなことで、この減税姿勢というものはきわめて受動的なもの、受け身のものであるというふうに考えております。  ところで、多少この参考計数資料等数字を見まして感ずることは、都道府県税市町村税というようなものの二つの関係で、従来、市町村優先ということでシャウプ勧告以来市町村税が比較的高かった割合が、昭和三十九年度くらいが境目でありますが、四十年代はだんだん低下してきております。最近の動きを見ますと、また市町村財源の付与ということでその努力がなされ、またそれがある種の増税動きとも絡んでおるように思われます。市町村税源拡充努力が一応図られている点は評価できるのではないかという印象であります。  なお、それらの減税増税措置――増税それ自体は、五十年度は大きな額を見込んでおりませんが、それらを含んだ地方税収入全体の見込みは、昭和五十年度において、たとえば地方財政計画等におきまして、前年当初見込みに比べて二三・五%も地方税収入が伸びるという推定あるいは見込み基礎にしておりますが、これは現在地方団体等で、一〇%台あるいは一けたくらいしか地方税収入が伸びないという見込みを立てていることなどに比べまして、やや楽観的な数字ではないかという印象を持ちます。  二番目に、地方税法改正の個々の内容についてでありますが、第一の住民税改正につきましては、先ほど肥後教授が言われましたように、基本的な懸案の問題点というようなものにはほとんど触れていないので、それらの問題点を今後に残したものであり、その基本的問題に関連いたしましては、所得控除引き上げによる課税最低限引き上げ方式見直し税率見直し均等割等の問題それからより重要な国と地方税源の再配分というような、基本的な問題に触れていない改正であるというふうに感じます。  事業税改正におきましても同じでありまして、事業税事業主控除等引き上げ重点となっておりますが、この事業税におきましても、事業税の基本的な性格をめぐりましていろいろな問題があるわけであります。事業税所得基準あるいは法人利潤基準に対して、外形標準を導入する、あるいは付加価値基準を導入する、こういう方向が一応打ち出されておりますのに対して、この事業税については基本的には改正しないという姿勢が目立っておる。  ただ重要な点は、事業税制限税率の新しい導入という点であります。これにはいろいろの点で疑問を感ぜざるを得ないわけであります。制限税率は、標準税率に対して、地方団体の裁量に対して、一定の枠をはめようというものであります。この制限税率は、いろいろ調べてみますと、市町村税に非常に多く採用されております。大体基準としましては、標準税率の二割増しまでというような限度であります。都道府県については、住民税法人税割によって決定されるというような形だけのように思われます。特にこの事業税制限税率は、法人事業税超過課税を昨年後期より開始しております東京都に対する一つの枠をはめる措置というようなことであるとすれば、それは非常に問題があるというふうに感じます。  三番目に、たばこ消費税関係でありますが、ここでは一応増減収がゼロになるような形で調整するということが図られておるようであります。たばこ専売納付金増額を目指して、現在国では五月よりたばこ定価値上げを行う予定であります。地方消費税の場合は、前年度の定価基準になる、それから消費の減が見込まれるというようなことで、むしろ五十年度は減収する、その減収減収がないようにする補正措置をとる、こういうのがねらいのようであります。本数補正を行うということでありますが、これには、一般的な私の見解といたしまして、増減収ゼロということではなくて、たばこ税の国と地方を含めての総収入の中での地方シェアというようなものを少なくとも維持するというような形で努力をする必要があるのではないかという気がいたすわけであります。このままですと、五十年度においては、たばこ定価値上げの増加というものは、国の専売納付金の増というものにもっぱら吸収されるということになります。  たばこ消費税は、地方財源としては、安定的、普遍的で非常に有力な財源として次第に増大してまいりまして、たとえば四十九年度の予算編成時においては、たばこ消費税収入は国の専売納付金を、予算あるいは見込みでは上回るというような形をとっていたわけです。そこまで来ておる状況を前提としまして、たばこ税収入における地方シェアを維持するというような努力が必要でなかったかと考えられます。  その他の間接税につきましては、この税法改正案を拝読しまして気がついた点でありますが、料理飲食等消費税につきましては、物価調整減税というもので、ほかの住民税各種控除引き上げ割合等に比べてやや大き過ぎるのじゃないかというような気がすることが一つ。  それから自動車取得税に関しまして、低公害車を優遇するというような措置を打ち出して、これはまさに時代の要請に応ずるもので歓迎さるべきであります。この種の自動車取得税段階にとどめないで、さらに自動車保有税にもこれを拡大していくということが必要であると考えられます。しかし、これらの措置は概して消極的、受動的な改正に当たるものであるというふうに考えられるわけであります。  そこで、特に申し上げたいと思う事業所税でありますが、この事業所税は、事務所事業所税という名前の税としてこの数年間いろいろな論議の対象になってきたものであります。この始まりは、私の見ておるところでは、昭和四十五年の十一月の地方制度調査会の答申で最初に進められまして、それに応じまして自治省は、昭和四十六年、最初事務所事業所税不動産取得税、それから十万以上の都市に対してというような形で案をつくった。それから四十七年になりますと、列島改造のための各種新税構想として、みんな国税としての工業配置税等々を設けようという通産省の主張に対して一部譲歩した形で、自治省の方では都市整備税として、一部は都市財源に充て他は工業配置目的に使用する、こういう案を出した。それからさらに四十八年ごろになりますと、この列島改造新税というものがだんだん人気がなくなってまいりまして、もとへ戻りまして事務所事業所税を提案をしているわけであります。この段階では、九つの指定都市、都の二十三区区域というものを中心とし、固定資産税割と従業員給与所得割、この二つを組み合わせてやる免税点は五百平方メートル以下というような案で出されておるわけであります。四十九年度、昨年度改めて提案されたところの事務所事業所税案というものが今回の改正法の基礎になっておるわけでありまして、いわば自治省案ということでは四度目の正直という形で実現されようとしておるわけであります。その過程で、原案ないし前にいろいろ考えられた案を修正している個所、あるいは各省庁の調整ということで、いろいろな努力が払われている跡がわかるわけであります。  この税の問題点等について、いろいろ私の気がつく限りで申し上げますと、第一が、この税は都市環境整備のための市町村の目的税という形で規定されているわけであります。特に目的税ということで支出目的の拘束をしている点が目立つわけであります。いろいろな費目内容を指定して、それ以外には支出してはいけないという含みであるというふうに考えられますが、この中で、たとえば道路だとか都市計画事業に類するものがずっと入ってきておるわけです。そうしますと、いままで存在している道路目的税とか都市計画税とか、それとの関連が問題になるということが一つございます。  それから、目的税というのは、非常に乱用されやすいということが一般的に言われておりますし、それから目的税の要件と申しますか、どういうものを目的税にしたらいいかということについての考え方が非常にはっきりしていないのではないかと考えられます。一般的に、たとえば道路整備に要する費用を道路の利用者である者から取る、その道路費用のコストというものはその利用度に応じて高まるというようなことで、費用と税の間に相関関係が直接的にある。費用を完全補てんするというのが望ましいと言われているわけですが、たとえば都市環境整備の事業の一部をしか賄えないようなものを目的税にするという理由がよくわからないのであります。  それから、二番目に課税団体でありますが、これは肥後教授の方からすでに触れられましたが、九指定都市のほかに首都圏、近畿圏から九市、人口五十万以上の市からまた幾つか、これを政令で定めるというふうに述べているわけで、この点若干問題があると考えますが、私は特に問題にしたいのは、この種の税はいわゆる大都市特別税という範疇に入るものである。従来、都道府県税市町村税、この二つで地方税構成されているわけですね。今度は特定の大都市にだけ適用される税ということで、これは大都市特別税というか、第三範疇の税というか、そういうものを導入した。これに伴って当然課税体系上の問題が発生してくるわけであります。他の都道府県税市町村税とどういう形で関連してくるか、こういう問題がここで発生するわけです。  そこで三番目に、この税の課税の対象は、新増設の事業と現存の事業、こういう二つに分けられます。新増設の事業については、床面積基準課税をする。現在活動している事業については、床面積及び従業者割課税をする。課税対象と課税標準、これを絡み合わせて税の性格を規定しますと、この税は、新増設のものについては、不動産取得税のような流通税的な性格を持つと考えていい。現在活動する事業についての課税は、企業課税というような性格を持つものと考えられます。しかし、あわせて税の本質あるいは性格から見てどういう規定ができるか疑問であると考えられます。特に、床面積標準の課税というものに非常に重点を置いている点は、非常に問題だと思われます。これは課税の不公平を拡大するものであると同時に、財政需要に応ずる税収という意味での弾力性、伸長性という点では欠けるものであるというふうに考えます。  それから、一連の非課税範囲の規定、それから課税標準の特例の規定、免税点の設定等々について、これはそれぞれやはり問題があるように考えられます。  非課税範囲の規定というのは、七百一条の三十四というところに書いてありますが、証券取引所だとか、商品取引所だとか、あるいは石油のパイプライン事業だとか、何かそういうものを非課税にする項目が非常に多い。ちょっと範囲が広過ぎるのではないかという気がいたします。  課税標準の特例についても、これは四分の三とか二分の一とかに課税標準を軽減するという規定でありますが、この中にも、どういう意味で特例を設けているのかがよくわからぬ点がいろいろ多いわけであります。たとえば生鮮食料品の価格安定に資することを目的とする野菜の低温貯蔵庫の施設等々というもの、これはわかるのですが、みそ、しょうゆ、あるいは酒類の製造業だとか倉庫業だとか、あるいは旅館、ホテル業、これら全部の施設ではないようでありますが、それらはすべて課税標準の特例を設けて軽減するという規定を置く。これはなぜそういうことになっているのかを考えますと、先ほど言いましたような、床面積標準をとるということの矛盾がここにあらわれているのだというふうに考えられます。一般的に、課税の普遍性を実現するため、非課税範囲を厳重に制限する、特例も設けない、それから免税点については合理的な免税点を設定する。その免税点が果たして適当かどうかということについては、私どもは具体的な数字の提示をいただいておりませんので、判定できないわけであります。  その他、事業所税に残された問題といたしましては、事業所税の損金算入の問題がございまして、事業所税外形標準課税であるから、法人税課税標準算定の際、当然損金として算入できるということになると思います。そうすると、事業所税法人税減収につながる、法人税減収すれば交付税も減る、こういうふうな点が、たとえば東京都の事業税増税あるいは事業税超過税率の適用について、いろいろな形での批判的な観点からの発言の中で、損金算入は制度と結びついて他の地方自治体に迷惑をかけるという議論がありますが、この議論は新しい事業所税についてそのまま当てはまるということを注意しないといけないわけです。  それからもう一つ、この税法等には載っておりませんが、この事業所税は、交付税計算の際、基準財政収入に算入するのかしないのか、こういう問題があるわけであります。もし基準財政収入に算入するということになりますと、これはやはり交付税の減少というものにつながります。指定都市が現在ほとんどが交付団体でありますので、事業所税がふえたとしても、今度は交付税の方が減るということで、差し引き純増が幾らになるのか非常に疑問だというような疑問点が生ずるわけです。  交付税の基準財政収入目的税を含めていいかどうかというような問題がございます。道路関係の税等がこれに含まれておりますが、都市計画税等はこれには含めない。特定の目的に支出されるものだから、基準財政収入基準財政需要を基礎にして計算される交付税の際は考慮しないという考えのようであります。今回の税についても、この種の目的税は交付税の基準財政収入には計算しないということが望ましいというふうに考えられます。  以上、いろいろと問題点を申し上げましたが、事業所税の現実的な実現、それは設定の趣旨等から見て私自身は反対でありませんで、むしろ賛成であります。もし可能であれば、必要な修正を加えた上でその種の税を導入するということであれば、大変いいのではないかというふうに考えます。  以上、まとまりがありませんけれども、意見にかえます。(拍手)
  9. 大西正男

    大西委員長 次に、北野参考人にお願いいたします。
  10. 北野弘久

    北野参考人 日本大学の北野であります。ちょっとかぜを引いておりますので、お聞き苦しい点があるかと思いますけれども、あしからず御了承願いたいと思います。  私、きょう御出席参考人と違っておりまして、お三方ともに経済学の観点から税財政を研究していらっしゃる方でありますけれども、私の専門は主として法律学の観点から税財政を研究するということでありますので、問題についての力点が若干違ってくると思いますけれども、その点お含みおきの上、御理解いただきたいと考えております。  それから今回の改正案につきましても、さまざまなメリットがあるということにつきましては、ただいま肥後佐藤参考人からも御指摘がございまして、私も基本的には賛成であります。ただ、時間の関係上、もっぱら問題点だけを重点的に申し上げるということにしたいと思っておりますので、この点も御了承願いたいと思います。  まず最初に、第一点としまして、個人住民税に関する問題について申し上げます。  個人住民税課税最低限引き上げが今回においてもなされております。そのことにつきましては異論がないのでありますけれども、これにつきまして若干のことを申し上げておきたいと思います。  自治省の筋合いからは、個人住民税というのは所得税と異なる税金であるということがしばしば指摘されておるのであります。すなわち、住民というのは地方自治体からさまざまな行政上のサービスを受ける、個人住民税というのは、そういう住民が受けるサービスの度合いに応じて納付する税金である、必ずしも所得税のような応能課税に基づくものではない、こういったことが指摘されておるのであります。したがいまして、住民税課税最低限というものは、所得税のそれよりも低くなっても差し支えない、こういう議論がなされるのであります。また、現行所得割道府県民税率というものは、単に二段階税率になっておりますけれども、この点も必ずしも所得税のような超過累進税率にしなくちゃならないということにはならないという議論がなされておるのであります。このような考え方に対しまして、私かねてから疑問を感じておるのでありますが、四つばかりの疑問点を申し上げたいと思います。  まず第一に、負担分任というものは必ずしも応益課税という問題につながらないということであります。応能課税に基づく負担分任ということも理論上も考えられますし、実際上も可能である。現代におきましては、応能課税に基づく負担分任こそが強調されなくちゃならないということであります。  第二点は、憲法上、応能負担こそ租税立法上の最重要原則になっておりまして、この考え方個人住民税についても当てはまります。このような考え方が従来全く無視されてきましたのは、わが国では憲法論、人権論の観点から税制を考えるという姿勢がきわめて希薄であったということに原因いたします。  第三点といたしまして、個人住民税性格というものは、結局はインカムタックスである、所得税であるということになります。それゆえに、個人住民税につきましては、所得税と同じ所得課税構造が妥当しなくちゃならない、こういうことになります。  第四点としまして、応能負担の原則というものからはもとよりでありますけれども、さらに税制の所得再配分機能を十分なものにするという観点からも申しまして、所得税個人住民税とを総合化した形での累進所得課税の構造というものが確保されねばならない、こういうことになってくるのであります。  以上のような考え方から、私としましては、かねてから六つの問題を提起しておりまして、それをこの機会にも御紹介申し上げさせていただきたいと思います。  第一は、個人住民税の諸控除所得税と同額とする。これに伴いまして課税最低限も同額とする。  第二番目に、個人住民税均等割を廃止するということであります。  第三番目に、個人住民税につきましては、理論上、現行のような前年所得課税主義をとらねばならないという必然性はありません。所得税と同様に当年所得課税主義をとるということであります。  第四番目に、道府県民税市町村民税の双方の税率構造も所得税の総合累進税率構造の一環として構築するということであります。  第五番目に、利子、配当であるとか、土地、有価証券の譲渡所得等に対する税制上の優遇措置所得税個人住民税の双方について廃止する。  第六番目に、国、道府県、市町村の三者の税源配分を根本的に検討しまして、その成果に基づく合理的な配分率に基づいて所得税道府県民税市町村民税の各具体的な構造を決定する。現行では余りにも国に偏在し過ぎている、こういうことであります。  この税源配分の問題は、従来もっぱら財政政策の観点から論議されてきましたけれども、私のかねての主張から申しますと、これは詳しくは、「法律時報」という雑誌の最近発売されました五十年三月号で議論を展開しておりますけれども、自治体の財政権、課税権は憲法上自治体に保障された固有権であると私は理解しております。そういうことでありますので、税源配分の問題は、単に財政政策の問題ではなくて、まさに憲法上の問題でもあるということが、この際留意されるべきであるというふうに考えております。  なお、諸控除引き上げとは別に、恒久的な税法制度としまして、所得税個人住民税の双方につきまして、現代におけるインフレ下におきまして、物価調整税額控除制度というものを設置すべきであるということも、この機会に申し上げておきたいと思います。  また、基本的には所得税のレベルの問題ではありますけれども、土地等の譲渡所得課税のあり方につきましては、現行のような、保有期間の長短によって課税のあり方を別個に考えるという方法をとるのではなくて、保有期間の長短を問わないで適正価格を超える譲渡益部分に対して高率の課税を行うという方法がとられるべきであるということを私もかねてから主張しておりますが、これも、住民税の問題をも考慮しながらぜひ御検討願いたいというふうに考えております。  第二の問題は、法人事業税についてであります。  これについては、さまざまな問題がありますけれども、一つだけ申し上げておきたいと思いますが、事業税につきましては、御承知のように、多年にわたりまして制限税率というものが存在しなかったのでありまして、今回、制限税率を設けることが予定されておるのであります。これは、東京都の大企業に対する超過課税と中小零細企業に対する不均一課税動きに対処するためのものと考えられます。事業税法人税法上損金に算入すべきかどうかという問題は、理論的には立法政策の問題にすぎないのでありまして、事業税を絶対に損金に算入しなければならないという論理必然性は存在しないのであります。法人事業税におきましては、法人税と同じように、所得を課税標準とするたてまえが現行税制ではとられております。この点を重視いたしますと、むしろ法人税との均衡上、法人税法におきまして損金に算入すべきではないという考え方が妥当性を持つとも言えるのであります。  したがいまして、東京都方式によると地方交付税であるとか法人住民税等が減少するという理由は、本質論的なものではないということになってきます。東京都方式は、現行税法制度の枠の中で自治体の財源拡充方策として案出されたものでありまして、それはむしろ、憲法で保障された自治体の固有の財政権の趣旨に適合し、望ましいものでありまして、もとより法理論的には適法な措置であります。事は国と地方との間の税源配分のあり方という根本的な問題に関するのでありまして、この根本的な問題に手をつけないで、財政自治の観点から案出されました東京都の動きに対しまして、まさに報復的な形でこのような制限税率を突如として導入しようという姿勢は妥当とは言えない、このように考えております。憲法上の固有権としての自治体の財政権の趣旨から申しまして、従来の標準税率を規定するだけでよろしいのではないかと私は考えておるのであります。今回の措置は、御承知の摂津訴訟の提起後になされましたあのまさに報復的な児童福祉法の政令改正措置と同じ性質のものでありまして、とうてい国民の理解を得られない、きわめてアンフェアな措置と言わねばならない、このように考えております。  第三番目に、時間の関係で急ぎますが、固定資産税の問題について簡単に申し上げます。  固定資産税制のあり方につきましては、さまざまな問題があると思いますけれども、憲法論、人権論の観点から抜本的に検討される必要がある、このように私は考えております。現行固定資産税制というものは、収益税的な財産税として、しかも徹底した物税論の観点に立って構成されております。このため、固定資産の所有の実態、つまり、所有主体であるとか用途であるとか面積等を全く考慮しないで、画一的な課税標準、つまり時価でありますが、課税標準標準税率一・四%が規定されておるということになっております。このため、周辺の地価が高騰いたしますと、庶民の生存的な財産に対する固定資産税額までが自動的に異常に上昇するという仕組みになっております。  このような悲劇に対処するためには、基本税制のレベルにおきまして固定資産税制を憲法秩序に組み込むという観点から、つまり人権論の観点から現行固定資産税制の基本的な仕組み自体を抜本的に改める必要があるというふうに私は考えております。  憲法理論上、生存的な財産というものは人権として保護されねばならないのでありまして、一方、資本的な財産であるとか投機的な財産というものは、人権として保護されるに値しないのであります。つまり、これらの財産権の憲法的な価値が違うのでありまして、これに基づきまして税制の構造が考えらるべきである、こういうふうに私は考えております。このような観点から、固定資産税制を抜本的に、可能な限度において人税化すべきであるという要請が、法律学の観点から出てきておるのであります。  すなわち、現代における土地所有の実態を幾つかに類型化いたしまして、各類型にふさわしい課税標準であるとか税率の仕組みをそれぞれ規定いたします。たとえば農民にとっては、一定面積までの農地はまさに生存的な財産であります。また庶民にとりましては、その持っております一定面積以下の住宅地は、まさしく生存的な財産であります。このような生存的財産に対する固定資産につきましては、現実的にも、通例、市民的な取引価格、つまり市場的な売買価格というものは存在しないと見なければならぬのでありまして、理論的にも市民的取引価格で課税標準を計算することは合理的ではないということになってくるのであります。この種の類型につきましては、特別の評価方式、たとえば収益還元方式で課税標準価格を計算するというのが望ましい、こういうことになってくるのであります。また税率もできるだけ低くする、場合によっては非課税にするということも、憲法理論の観点から申しますと可能であります。  住宅地と申しましても、他人に賃貸しておりますような場合には、所有主自身の生存的な財産であると言うことはできません。このような場合には、所有主自身の生存的財産という理由で特別の課税上の扱いをすることはできないのであります。このような場合には、広く庶民の生存に必要な住宅地として賃貸されておるという点を重視いたしまして、所有主自身の生存的財産の場合に準ずる特別の類型を設けまして、それにふさわしい課税の仕組みを考えるというのが望ましいと思います。一方、巨大企業の所有いたします資本的な財産であるとか投機的な財産に対しましては、その課税標準につきましては市民的な取引価格を適用いたします。その税率につきましては、むしろ超過累進税率を適用するのが望ましいと考えられるのであります。なお、固定資産税を人税化するということの一環としまして、現行の免税点制度を基礎控除制度に改めるというのが望ましいと考えております。  第四番目の問題としまして事業所税でありますけれども、ただいま佐藤参考人から述べられました基本的な問題点の指摘につきましては、私も全く賛成であります。もちろん、この税の導入につきましては、これまた賛成でありまして、今回事業所税というものが設置されることになりましたことにつきましては、最大の賛意を表明するものでありますけれども、一つだけ問題点を申し上げておきます。  事業所税につきましては、この税が大都市における自治体の財源を拡充するという趣旨のものであるという点からいきましても、課税標準につきましては、一定の大企業につきましては償却資産をも課税の対象にすべきではあるまいか、このように考えておりますので、この点をこの委員会で御検討願いたい。  第五の問題としまして、電気税非課税措置あるいは広く租税上の優遇措置の問題につきまして所見を述べまして、私の所見の開陳を終えたいと思いますけれども、電気税非課税措置のうち、たとえば道路であるとか公園関係であるとか教育学術研究関係、児童福祉関係に関するものにつきましては、社会政策的な観点からのものであると見ていいと思います。したがいまして、こういったものにつきましては、むしろ憲法上望ましい非課税措置であるということになってくるのであります。しかし、特定の巨大企業に対する非課税措置というものは憲法上問題がございます。目下大牟田市で検討されておるところでありますけれども、私としましては詳しく申し上げる時間はありませんけれども、このような非課税措置というものは、憲法上保障された自治体の固有の財政権を侵害するものである、そういうことで憲法九十二条に違反する疑いがあるのではないかという考え方を持っております。  それはどういうことかと申しますと、一般の住民の納得を得られないアンリーズナブルな、不合理な租税特別措置というものを、自治対側の事情を全く無視しまして、一方的に国の法律で規定しましてそれを自治体側に押しつけるということは、憲法九十二条に違反するのではないかということであります。  第二点としまして、このような措置は憲法九十二条のほかに、憲法理論上容認できない不合理な差別を規定するものであるということで、憲法十四条に違反する疑いがあるということも考えられるのであります。あるいはそのほかに憲法二十二条との連関での問題点もございますし、さらに憲法八十三条、八十五条で規定する財政立憲主義の考え方、これはもっぱら憲法の規定は国税に関するものだとしますと、地方税の問題につきましては、一応そういった憲法の趣旨との連関で問題になってくると思いますけれども、そういう観点の問題も考えられるのであります。  この問題につきましては、これらの産業に課税した場合にはかえってコスト高となって国民経済的観点からも好ましくないという結果がもたらされるという反論が、自治省筋から示されておるということを聞いておるのですけれども、しかし一般の消費者を保護するということにつきましては、別途措置されるべきでありまして、このことを理由にして特定の巨大産業を税制上保護することは許されないのであります。それは別個の問題であるということであります。  もっとも戦後の混乱期と申しますか、あるいは日本経済が戦前の段階に復帰するまでのあの段階、すなわち敗戦で完全に崩壊しました日本経済というものを再建するための一環として、まさに至上命令的に日本経済というものを建て直すという、そういう観点が一般の国民の理解を得ておる段階、つまり戦後のある段階まではこのような措置を行いましてもあるいは国民の納得を得られたかもしれませんけれども、戦後三十年という今日の時点では果たして国民の納得が得られるかどうかは疑問でありまして、すでにいまから十年以上前に、政府の税調の答申でもこのことが批判的な形で検討されておるのであります。こういったことは、この種の税制上の優遇措置全体について言えるのでありまして、たとえば固定資産税であるとか、事業税住民税等につきましても、同じような問題が存在します。むしろ電気税の場合以上に、固定資産税事業税住民税等につきましては社会的な非難は高いと考えるのであります。それによりまして自治体は巨額の税収を失っております。電気税だけではなくて、こういった地方税制全般に関する巨大企業に対する税制上の優遇措置あるいは高額の資産所得者等に対する税制上の優遇措置につきまして、この際鋭い憲法論的メスを本委員会で加えられることを期待したいのであります。要するに、租税特別措置の整理合理化ということが今後引き続き検討される必要がある、こういうふうに考えております。  以上で私の意見の開陳を終えたいと思います。(拍手)
  11. 大西正男

    大西委員長 次に、井手参考人にお願いいたします。
  12. 井手文雄

    井手参考人 東洋大学の井手でございます。本日は、地方税制改正につきまして意見を具申する機会を与えられまして大変ありがとうございました。  私は、今回の地方税制改正に関しまして、今後の地方税制がどうあるべきか、あるいはその問題点、そういうものをやや大胆に指摘あるいは提言いたして今後の御検討のたたき台にいたしていただきたい、こういうふうに思っております。  今回の地方税制改正におきましては、事業所税創設が最も注目すべきものであろうと存じます。私は、この事業所税創設につきましては一応妥当であり結構である、こういうふうに賛意を表します。一応と申しましたのは、後でまたその理由を申し上げます。  大都市及び周辺都市財源問題の解決にこの事業所税がある程度貢献する、こういうふうに思うのが妥当だと思う一つ理由でございます。また、地方法人課税における応益原則の導入及び応能原則の補強として有効だというふうに考えるからでございます。  現在の法人事業税及び法人住民税所得課税でございまして、租税特別措置による減免あるいはウインドードレッシング、粉飾決算等々によりまして利益ある大企業が欠損会社となりまして、これらの税を負担しないことがございます。このことは応益原則及び応能原則に背馳するものでございます。事業所税は床面積と給与総額という外形標準課税でありまして、このことが右のような欠点をある程度相殺してくれると思うものでございます。  ただ、今回の事業所税におきましては、先ほどもだんだん御指摘がございましたけれども、中小企業に対するもののほか、収益力ある事業に対しまして相当広範に非課税措置あるいは減免措置がとられておりまして、この点は問題だと思います。  また、事業所税創設と抱き合わせに事業税制限税率が設けられました。この制限税率を設けること自体は反対ではございません。しかし、標準税率制限税率との開きが狭過ぎるように思われます。超過課税排除のために事業所税を設けたとすれば、この考え方にはくみしません。後で述べますように超過課税否定の考え方は訂正を要するものと存じます。  次に、事業税事業所税との併合という問題、これをひとつ提唱したいと存じます。  事業税は、たてまえは外形標準課税の物税でございます。この観点から法人所得計算上損金扱いになっておりますが、実際は所得課税でございまして、この意味におきましては損金扱いはおかしいのでございます。仮に現行のままとしますと、つまり所得課税にもかかわらず損金扱いといたしますと、この事業税が損金扱いであるとともに、事業所税がこれまた外形標準課税の物税でございますから、これも当然損金扱いとなるはずでございます。税制が非常に繁雑になります。  私見によりますと、事業税外形標準課税に改めるべきでございます。改めれば、堂々と損金扱いも許されるかと思います。そして、同じく外形標準課税たる事業所税とこの事業税とを合わせて新しい事業税創設する方がベターではないか、こういうふうに考えております。  新税の課税標準は、現在の所得、それに床面積、給与額としてもよろしいし、あるいは思い切って所得と付加価値を課税標準とするか、あるいは資本金を加える、あるいは売上高課税にするなど、いろいろございます。現に地方税法の第七十二条の十九を見ましても、課税標準の特例といたしまして「資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地積若しくは価格、従業員数等を課税標準」とすることができるということになっておるわけでございますが、こういう課税標準を本体とする、こういうふうに事業税を改める必要があるのじゃないかと存じます。課税主体はすべての都道府県といたしまして、標準税率制限税率との開きをかなり大きくいたしまして、税源の豊かな大都市の自主的超過課税による財源調達を可能ならしめるようにいたします。  このような考え方の背後には、事業所税創設は当面大変望ましいものでございますけれども、これからの恒久的な地方税体系のあり方を考えてみますと、これをこのままの形で事業税と並行して残しておくというのは問題もございますので、思い切って地方における法人課税に応益原則を導入するという観点から、この事業所税創設をスプリングボードとしまして、ひとつ地方税体系を考え直すことを検討したらどうだろうか、こういうことを提案いたしてみたいと存じます。  現行地方税制度は、地域的画一課税の原則に支配されております。これは地域間における税負担の公平を図るということが主たる目的でございまして、これも確かに必要であります。しかし、この原則を余りリジッドに適用いたしますと、地方団体の自主的課税権が侵害されまして、各地方団体の実情に応じた課税が困難となります。地域的画一課税では、税源あるところも、それを課税によって十分に吸収することができません。ここが超過課税が必要なゆえんであります。もっとも、税源乏しき地域では、超過課税をいたしましても税収はそれほど増加しません。こういう地域地方財政調整制度によりまして財源を供給さるべきものと存じます。いまや、この地域的画一課税の原則を少しく後退させる必要があるのではないかと存じます。  また、現行地方税制度は均一課税の原則にも支配されておりますけれども、これも同じように再検討の必要があるのじゃなかろうかと存じます。大企業ねらい撃ちの課税というふうに言いますと、いかにも不公平なようでありますけれども、弱小企業の減免を図ると言えば公平課税となるのでございます。均一課税とは一体いかなることを意味するのか、この点反省すべき時点にあるものと存じます。  次に、地方財政調整制度の再検討を提唱いたしたいと存じます。  簡単に申しますと、現行地方交付税制度とシャウプ勧告地方財政平衡交付金制度との比較再検討の必要があるのではなかろうか。また、地方交付税制度をとる場合には、その交付率の引き上げの是非が検討さるべき段階に来ているのではなかろうか。長い間三二%になっておりますが、たとえば三五%にするとか、その引き上げの是非が問題とさるべきときに来ているのではなかろうか。  それから交付財源、これは国税所得税法人税、酒税でございますけれども、これの一定率ということでいいのか、あるいは、たとえばこれに公債収入を加えることがどうかというようなことも検討の価値があろうと存じます。公債を国家財政の段階におきまして発行いたしまして、公共事業などがふえますと、それが超過負担等々を介しまして地方財政を圧迫することになります。こういう意味におきまして、公債収入を交付財源の一端に加えるというようなことも、これはこうしろというわけではなく、検討の価値があるのではないか、こういうふうに存じます。  次に、超過負担の解消策について一言いたしたいと存じます。  この超過負担の問題は非常に厄介な問題でございますけれども、これは単に、実額精算方式というようなものなどによりましては根本的な解決は不可能ではないかと存じます。実額精算方式では単価差による超過負担の解消は可能だということでありますけれども、たとえば質量差による超過負担の解消は、これは国と地方団体との間の価値観の調整が絶対に必要ではないかと存じます。たとえば、地方自治体の福祉行政や生活環境整備事業が適正か、過大か、過小かという判断において、国と地方自治体の間の合意が成立することによって初めて超過負担の解消は可能なのであります。地方団体が過大なる、あるいは質的に過度のたとえば保育所を建てる、そういう場合に国はそれよりも狭小の、あるいは鉄筋ならばそれを木造にするとか、こういうようなことでいいのだというその判断によって、結局その単価差は解消しても超過負担そのものは解消しないわけです。どの程度の福祉行政をやるか、どの程度の生活環境整備をやるか、行き過ぎがあるじゃないか、適当じゃないか、そういう点において国と地方との間で合意が必要である。その合意がないところに超過負担の根本の原因があるんじゃなかろうか、こういうふうに私は思っております。  それで、私はこういう問題の解決のために、国と地方との合同委員会の設置を提唱いたしたいと存じます。今日、国と地方自治体との間に余りにも価値観の開きがあり過ぎるように思われます。福祉行政の先取りというようなことも言われますけれども、それが一体いいのか悪いのか。国から言えば先取りで困る、地方から言えばそれはどうしてもやらなきゃいかぬ、こういう点において国と地方とでコンセンサスが成立しなければ、いつまでたってもこういういざこざは解決しない。これは困難かもわかりませんけれども、国の政策上ぜひコンセンサスが得られなければならぬと思うわけでございます。ですから、合同委員会の設置を提唱したい、こういうことでございまして、これも実現はそう簡単ではないかとも存じますけれども、御検討をお願いいたしたいと存じます。  次に、何といいましても、最も重要なのは、よく言われておりますように、国と地方との間の事務及び税源の再配分ということでございまして、これを強調いたしたいと存じます。  さしあたりましては、国と地方の税収を、いま三対七ぐらいでございますのをフィフティー・フィフティー、五対五ぐらいにすべきだ、こういうふうに思います。そのためにどうしたらいいかということでございますけれども、一つの案として、国から所得税の一部移譲というような方法が考えられないかと思うのでございます。今度の改正で、個人住民税所得割課税最低限度額が引き上げられましたけれども、まだ所得税のそれに及びません。先ほども参考人からこの点に関連いたしましては公述がございましたけれども、私は、国税所得税個人住民税、まあ所得割でございますけれども、個人住民税も全く同じ租税だと思います。したがいまして、両者において課税最低限度額が異なるのはおかしいと思います。  少し思い切ったことを一試論として申し上げますと、所得税個人住民税所得割は、課税標準を全く同じくし、累進税率が適用さるべき所得階層区分も全く同一とします。ただ税率だけが、国税と府県民税及び市町村民税において異なるのでございます。こうしておいて、国税所得税減税税率引き下げを行い、その分だけ住民税税率引き上げるという方法で、国から地方への税源の移譲を行うという方法が一応検討される価値があるのではないかと思うのでございます。  この場合、所得税における租税特別措置による不公平が、そっくりそのまま住民税に持ち込まれます。したがいまして、租税特別措置の徹底的な排除が前提となるのでございます。現在のままでありますれば、この租税特別措置影響住民税に及ばないような措置をとるべきでございます。租税特別措置というのは、大体いろいろの国家政策がありまして、それを税制面において実現しようとするわけです。したがって、国家が必要とする政策の実現とすれば、これは地方段階においても必要な政策だという見解もあり、そうすれば、国の段階の租税特別措置地方課税にそのまま持ち込まれるというのもやむを得ない、当然だとも言えます。しかし、現在の特別措置そのものが実際好ましいか好ましくないかということは問題でございますが、多くの批判がありますように、好ましからざる要素が多いわけでございますからして、これはまず徹底的に整理をしなければなりません。また、国の段階においては必要であるけれども、地方段階においては必要でない、地方が追随することは必ずしも必要ではないということもあり得るわけでありまして、その場合は、残されたる特別措置影響国税所得税段階にとどめまして、地方住民税においてこれを遮断するという方法がとられなければなりません。私の提案は、課税標準を国と地方と全く同じくして、税率を異にする、こういうことでございますから、別の話になります。  いま申しましたような方法によりますと、国税所得税住民税との総合負担率国民にはっきりわかります。そして、所得税は軽くなったが、住民税は重いというような不公平はなくなるのでございます。重いのは、国税所得税住民税と合わせた重さでありまして、住民税が重い、こういうような不平はなくなるわけでございます。この考えは、住民税所得税に対するいわば付加税ということになります。しかしこのことは、地方自治体の課税権を侵すものではないと思います。  ついでに申しますと、現在府県民税段階税率でありますが、これも当然累進税率となるわけでございます。また課税最低限度額を引き上げますというと、地方の税収が減少するという反対論もございますけれども、そのことは地方財政調整制度によって対応すべきものであろうと存じます。  とにかく、今日は、まさに大胆な発想によりまして、国税地方税を通ずる税制の立て直しが望まれる時期であろうと存じます。過誤を恐れないで、また伝統的な考え方にとらわれないで率直に現実を見詰め、大胆な改革案を提唱して検討を求むべきではないかと存じましたので、一応見解の一端をここに申し上げた次第でございます。(拍手)
  13. 大西正男

    大西委員長 これにて参考人からの御意見の聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  14. 大西正男

    大西委員長 参考人に対し質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  15. 片岡清一

    片岡委員 各参考人におかれましては、大変お忙しいところにもかかわりませず御出席いただいて、大変貴重な御意見を拝聴いたしましたことを心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。  そこで、時間も余りありませんので、二、三の問題について御質問を申し上げたいと存じます。  いま地方財政で一番大きな問題は、いわゆる財政の硬直化ということが言われております。これをどうするかということが税制上の基本的な問題でございます。  そういうことで、まず財政が硬直化しておるということについていろいろの見方がございます。先ほどから各参考人からお話がございましたように、大体国と地方との事務配分が悪い、あるいはまた国がいろいろの仕事を押しつけておりながら十分な税源が与えられておらない、また超過負担の問題について、いま井手参考人からもお話がございましたように、価値観の相違があってなかなかうまくいかぬ、そういうような問題等を御指摘になったのでございますが、確かにいまの地方財政で国の税金と地方の税金、地方では俗にいわゆる三割自治と言われておるのでございます。それで、たとえばこの税源配分をどういうふうに持っていけばよいかということは、大変大きな問題でございます。自治を尊重して自治財源をうんとふやせというような御意見が非常に多いのでございますが、私はそれに対して、そうすると一体地方格差というものをどういうふうに調整していくのかという問題があると思うのでございます。それらの点から地方財政硬直化の理由、まあこの理由は、私は人件費の問題いろいろあると思いますが、その税源配分問題点をとらえて御意見を承りたいのであります。  その問題について肥後参考人北野参考人のお二人にお考えをちょっとお伺いしたいと思います。
  16. 肥後和夫

    肥後参考人 なかなかむずかしい問題で、果たして御質問の趣旨に沿うお答えになっているかどうかは自信がないのでございますが、財政硬直化と申しますのは、非常にクールに割り切って考えますと、やはり税収の伸びと支出の伸びのバランスが崩れるところから生じているものだと思っております。ですから、従来のような高度成長が続けば、当然地方財政でも相当な税収入の伸びもありますし、国税三税の伸びもありましょうから、現在ほどに窮屈な状態にならない。ですから、硬直化のやはり根本的な原因は一応総需要抑制の中でとにかく発生しておりますわけですし、これから低成長時代に入ればますます従来のパターンで地方財政を運営しておりますと硬直化現象が出てくるわけでございますので、いろいろ考え方を変えなければならないのだろうと思います。  おっしゃいますように地方税源充実と申しましても、農村圏あるいは過疎圏では要するに固有税源を持ちましてもそう税収の伸びはない。やはり税収の伸びがふえるのは都市圏になるわけでございますし、他方また大都市には固有の要するに大都市財政の問題が出ておりまして、その中でいま四苦八苦し、新しい適応を試みようとしているところだと理解しているわけでございますが、なかなか一刀両断の明快な御返事はできませんので、ひとつ御勘弁願いたいと思います。
  17. 北野弘久

    北野参考人 片岡先生から非常にむずかしい問題を出されましたのですが、私は日本大学の教授でありまして、本邦最大の総合大学でありますが、同時に最もコンサーバティブな学風の大学の教授でありますので、きわめて平凡なことしか言えないわけでありますけれども、非常に大事な問題であります。  二つばかり質問が出たので、一つは財政の硬直化ということであります。一つはそれに関連しまして、自治体相互間の格差の問題が出たと思います。いろいろ見方があると思いますけれども、私が従来から言ってきておりますことは、シャウプ勧告におきまして国と地方の事務の再配分ということを非常に強調したのでありますけれども、それを受けまして御承知の神戸博士を中心とした神戸委員会が設けられまして、非常にすばらしい案が出されたのでありますけれども、それをその後の日本の政治がほとんど無視したという、そこに今日の悲劇があるのではないか。どういう事務を国が行い、どういう事務を地方でやるかという、これにつきましてはもっと抜本的な考え方をはっきりと打ち出しまして、それを実行する、そうしなければどういう財源をどういう形で与えるかということは決まってこないのでありまして、その辺のことをまずやっていただくということが大事なのではないか。憲法論的に申しますと、憲法九十二条が規定する地方自治の本旨とは何かという、何が地方の固有の事務であるかということを憲法論的に確定するということが法律論として出てくるのであります。  それから第二の問題でありますけれども、いまの問題にも関係してくるわけですが、できるだけ地方の独自の財源を与えることは大事でありますけれども、それには限界がありますので、それを操作するものとしまして地方交付税のあり方ということをこの際考えるべきではないか。地方交付税というのは、御承知のように一般財源というふうになっておりますけれども、現実には補助金化しておる、こういうことが言われておりますのですけれども、地方交付税の本来のあり方に立ちまして、少しでもその格差を是正していくということが必要なのではないか。それから御承知のように起債が自由ではない、起債をする場合においても政府の承認が要る、こういうことになっておりますので、そういった問題についてもできるだけ自治体の自由な立場を認めていくということが必要でありますし、超過負担という問題が起きてきますのも、基本的には国と地方との事務の配分の問題につながっておりますし、それから、国の方から自治体側の事情をあんまり考えないでいろんなものをやらせておる、こういうことに原因があるわけですが、超過負担の問題につきましては、今後こういう問題につきましては国と地方との間の共通の委員会を設置しまして、適正な手続に従って――これは法制化すべきだと思いますけれども、法制化をしまして、そういう特別の委員会で、どういう形で国が地方に補助金なら補助金を出す、そういったことをフェアな形で、公開された形で決定するという形で、話し合いでできるだけ決めていく、そういう制度が法制度化されるべきではないか、こういうことも考えております。
  18. 片岡清一

    片岡委員 なかなかこれはむずかしい問題でございますので、そのものずばりという名回答はなかなか得られぬと思います。ただ、根本的に考えの相違点といいますか、いろいろの説がある、その説の中の相違点は、一つは、あんまり国で自治体を統制するというようなことをやっちゃいかぬ、それから片方には、自治体にあんまり自由といいますか、したいほうだいさせておくと、それがやっぱり中には大変行き過ぎがあって、それが大変財政破綻のもとになるというようなことがあるので、ある程度やはり国で行政指導をする必要がある、こういう一つのニュアンスの問題だと思うのです。それは北野参考人といえども、その若干の指導は必要だということについてはお認めになると思うのですが、私は今回の地方財政の硬直化の問題の中にもやはりそういう一つの免れがたいジレンマがあると思うのです。人間は、同じに財産を分けてやっても、非常に財産をうまく使う人と、非常に道楽息子でどうにもならぬのとがおる。しかし、これはおのおの市町村長はそれぞれ住民の中から出てこられるのですから、そういういいかげんな人はいないと思うのですが、大変性格的にきちんとした人ときちんとしてない人とがある。そういう場合があると思いますので、そういうことでやはり一つの外部からのいろいろの運動によって非常に気が弱くなるということがあり得るわけなんです。またそれと同時に一つの人気取り政策といいますか、そういうもののために行き過ぎをする。そういうことをやはり国全体の立場から注意をする、勧告をするということが私は大変必要なことだと思うのですが、その点北野参考人、それから井手参考人、そのことについてお認めをいただけますかどうですか、ちょっと。
  19. 北野弘久

    北野参考人 お答えいたします。  これは私の書物をお読みいただけばわかると思いますけれども、たとえば「現代税法の構造」という書物を勁草書房から出版しておりますけれども、それに詳しく書いておりますのでお読みいただけばわかりますけれども、私は決して放任主義者ではなくて、むしろ国全体の観点から、ナショナルな観点から一定の基準を示すことが必要である、そうした意味の一種のコントロールを加えるべきであるということを主張しているのでありまして、決して放任主義の立場で言っているわけではないのですけれども、そういう観点に立っておりますので、いまおっしゃったことにつきましては基本的には私も賛成しております。
  20. 井手文雄

    井手参考人 北野参考人と同じように基本的には賛成でございます。地方団体によりましてはやはりいろいろございまして、おっしゃるように行き過ぎな無節操、無節制なところも確かにあろうかと思います。人気取りというようなことがあろうかと思います。地域の住民の欲求というものは非常に高いし、それをとめどもなく認めるということは問題でありましょうし、それからまた、他の地域でこうやった、だからこっちもこうやらなければならぬというようないわばデモンストレーション効果というものがありまして、とめどもなく財政需要もふえていくということもあります。ありますけれども、それはやはりそれなりに改めるべきだ。そのことがあるから中央からの統制が不必要に強化されるということにはならないと思います。もちろん地方団体も国の一部でありますから地域エゴに陥ってはいけないわけでございますから、国の統制、コントロールということを認めると同時に、やはりそういう一部の地方団体の行き過ぎを口実にといいますか、統制を不当に強める、これは考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  21. 片岡清一

    片岡委員 先ほど北野参考人から、今度法人事業所税ができたことと関連しまして制限が設けられました。これは大変きつい御意見で、何か都に対する報復的な手段だというようなお話がございましたが、それでは私はお伺いいたしたいのでございますけれども、今日法人税の最低免税点の引き上げ、これは世界で一番免税点が高くなっておるということは御承知のとおりでございます。それから法人事業税の最高点、課税率、これも大変引き上げになって、相当先進国並みになってきたし、去年臨時利得税などというもので、特にもうけた人に対してはきつい課税をしておるというようなことでございます。それと同時に、いま地方自治体が大変困っておるのは、経済が非常に上向きのときには大変自然増収が多かったために、それで福祉の先取りなんかも相当できたし、赤字を出さないで済んだ。そして東京都のごときは、三割自治とはいうものの、これは六割か、六割以上の自主財源というものを持っているわけです。そういうことから言いますと、やはりかなり事業が盛んになってきて経済が伸びると税金が上がってくる、そのために福祉もできる、こういうことがあり得るわけなんです。私は何も大財閥でも何でもないのですが、財閥に対して大いに規制すべきものはすべきであるというきつい意見を持っておる者なんです。ただしかし、これが余りにもあれもこれも積み過ぎると、やはり経済の意欲というものはだんだん低下して――重課税をし累進課税をする、そうしてさらに法人事業税も取る、事業所税も取るということで手足を縛り過ぎると、やはり経済というものが、自由経済のたてまえから言うと、一つの、気力を失ってくる。そうするとこれは全体的に税金の伸びも悪くなる。ことにいまのように自然増収がほとんどなくなり、あるいはダウンする、こういう結果になるのでありますが、やはりそういう点をある程度考えないといけない。そういう意味において、私は、だれが考えても余り無理にならないように制限をするということは報復でも何でもないと思うのですが、そういう点について大変厳しい御意見でございましたので、私の考え方に対してどういうお考えでございましょうか、ちょっと。
  22. 北野弘久

    北野参考人 お答えします。  これは非常にむずかしい問題でありますが、さっき表現しましたのはこういうことであります。  政府の税調のいろいろな議論などを見ておりますし、それからいろいろな方の議論を実際に確認しておりますが、動機ですね。昨年に東京都が地方税法六条の規定を使って不均一課税を行ったのでありますけれども、その翌年にこれをやるということでありますので。それから、いままで二十何年余りですか、たしかずっとこういったことなしに標準税率だけでやってきたのに、なぜ東京都がやった翌年にこういうことをやる必要があるのかということで、しかも税調のいろいろな議論を見ておりますと、かなり関係がある。因果関係が決してないとは言えないのでありまして、そういうことを考えますと、まさにアンフェアなものである。そういう意味で、かなり強い調子で表現したのでありまして、私は、制限税率的なものにつきましては、一般的には場合によって必要であるというふうに考えておりますので、いかなる場合でも反対であるということではなくて、たまたま今回の経過を見ておりますと、改正の動機を見ておりますと、まさに報復的な印象を与えておるという気がいたします。こういうことであります。  それから、児童福祉法の問題でありますけれども、これは地方行政委員会でありますのでぜひ御検討願いたいと思うのでありますが、摂津訴訟を提起されました摂津市の井上市長が大変張り切ってやっておるようでございますけれども、あの摂津訴訟の提起された直後に、これまた児童福祉法の政令を改正いたしまして、摂津訴訟の中心的なポイントを逆な形で改正するという、これではだれが見たって摂津訴訟が提起されたためにこのような改正をやったという印象を与えるのであります。  それから、私の最も経験しております例として申しますと、大島違憲訴訟でありますが、私は大島違憲訴訟の鑑定証人でもあるわけですが、大島違憲訴訟が提起されました、四十一年だったと思いますけれども……。そうしますと、昭和三十一年以来でありますけれども、それまで政府が税調で説明してきました給与所得控除に関する説明の仕方と、大島訴訟の提起された後の給与所得控除に関する説明の仕方とはまるきり違うのですね。三十一年の税調の答申の実際の作業は私体験しておりますのですけれども、そのときの考え方と、それから大島訴訟が提起された後の政府の答申の説明の仕方はまるきり違う。これは明らかに大島訴訟を意識した上での作為的な表現の操作でありまして、三歳の子供にもわかるような、きわめて大人げないと申しますか、紳士的でないと申しますか、そういうやり方である。そういう意味で私は申し上げたのであります。  それから、私も日本の国に生きておりますし、一応資本主義国家というものを前提として税法学を研究しております。社会主義国家になりますと税法はなくなりまして、私は失業いたします。これは冗談でありますけれども――。一応資本主義社会というものを前提にして議論いたします。ですから、重要基幹産業を国は保護すべきである、そういうことを私は一応認めておるわけです。ですから、戦後の混乱期でも、場合によっては税制までをも動員して重要基幹産業を保護するということの必要性を私は認めております。しかし税金は本来平等に取るべきでありまして、大企業は大企業の能力に応じて税金を納めてもらう。もし特定の企業を保護する必要があるならば、国会なり地方議会の承認を得まして、フェアに、目に見える補助金を出す。税金を取らないというような隠れた補助金ではなくて目に見える補助金で予算に計上しまして、国民を代表します国会のフェアな審議を受けた上でどんどん、たとえば三井系の企業に出すということは、国会の承認を得れば大いにやっていただきたい、こういうことでありまして、私は税法学者として税金はあくまで平等に取ってほしい。憲法の要請でありますから。しかし産業を保護する必要があれば別途の措置でやりなさい、国会がちゃんとその権能を行使されまして、つまり財政立憲主義の考え方に従ってフェアに予算に計上して国民の承認を得て堂々と補助金を出しなさい、こういうことでありまして、私は重要基幹産業を保護することについては日本人の一人としてやぶさかではないのであります。ただ税法学者としては、余りにもそういったことに税制を使うのはいけない、税金はあくまで平等に取ってほしい、こういう意見であります。
  23. 片岡清一

    片岡委員 もう時間が参りましたが、私は、ただいまいろいろお話しの中に、賛成できるところもありますが、基本的に賛成のできない点もございます。これはやむを得ぬことだと思います。それぞれの顔が違うように考え方が違うのでございます。  それで、ちょっと最後一つお聞かせをいただきたいのでございますが、各先生方いずれも皆、事業所税については、おおむね原則として御賛成のようでございます。そこで一つだけお伺いしたいのでございますが、この事業所税は、その反射的効果として、過密過疎の問題をある程度誘導的に解決してくれるんじゃないかという考え方、すなわち、過密をだんだん過疎の方へ、会社、工場を移すというようなことに役立つんじゃないかという考え方と、反対にもう一つ、せっかく税金を取って都市をきれいに、道路やいろいろなものを直すと、かえってみんな喜んで過疎地帯から過密地帯へ入ってくるんじゃないか、そういうことに逆の誘導をするんじゃないかという意見と二つあるようでございますが、これについて肥後先生と佐藤参考人のお二人から、どっちの方に重点がかかるか、ひとつ御判断をお聞かせいただいて、そして私の質問を終わります。
  24. 肥後和夫

    肥後参考人 恐らく立法の趣旨の中には、特に国土庁あたりが最初案を出しましたときには、追い出し税的な発想があったと思いますし、やはり過密地域から出ていってほしい、適正規模になってほしいという期待があると思うのですが、それは結局は、この事業所税がどういうふうに運用されるか、現在の税率〇・四%程度というふうに負担率で考えられておりますが、これが適当であるのかどうか、あるいは先ほど私も意見を申し上げましたし、ほかの参考人も申しましたが、いまこの法律及び政令で一応指定されるような都市だけに限定して、それで効果が上がるのかどうか、いろいろ問題がありますので、直ちにこれで効果をどうこういま申し上げる段階ではなかろう。それに、いまできておる工場が、出ていくという設備をするまでには相当な期間がかかると思いますし、これは前に井手参考人も御意見を述べられましたが、私も、本来、やはり個人の所得にかかる住民税は応能負担で、企業にかかる税金は応益主義である方が望ましいと考えておりまして、そしてその応益主義は、たとえば事業税についてできれば付加価値基準の方がいいんだ。しかし、これはできないのだから一応できない。その補完税として事業所税ができてきた。まあ欠点はあるけれども、ないよりは、いままでなかった欠点を補うという面では非常に結構ではないかという程度の賛成でございまして、そう長期間にわたって出る効果をいま直ちにどうこう申し上げる段階ではなかろうかと思っておるわけであります。
  25. 佐藤進

    佐藤参考人 事業所税がいままでのいきさつからしまして、二つの目的をどういうふうに調和させるかということでいろいろな議論がなされて、今回の事業所税は、私の判断では過密過疎対策、あるいは工場追い出しというような表現で言われている事務所事業所税のいろいろな案の考え方をとらないで、もっぱら都市再開発あるいは都市環境整備という形で、それに計画をある程度馴化をしたということは、それなりに結構じゃないかというふうに私は考えます。  一般的な考え方として税の基本的な原則は、収入を、負担の公平という原則を守りながら調達するということで、余り政策的な目的を税の中に導入するということは、その政策の効果についてほとんど明確な数字が出ない段階で云々することはできない。現在の当面の課題は、あくまでも都市財源の強化ということで導入をするということでありますので――ただ、先ほど私申し上げましたように、いろいろ過密対策的な表現の内容の、たとえば面積基準が一番重要であるというようなことを考えますと、この税を課すると、やはり余り大規模なものを新増設の場合抑制するとか、あるいはそれによって規模をどうするというような効果が若干入ると思います。しかし、税の基本的な性格をどう考えるかということについては、私は都市財源という形で馴化するという方向は大いに結構だと考えております。  ただ、これがどの程度都市財源の強化に役立つかという点も、初年度二百二十億、平年度八百二十億というようなことで、これ以後もっと、たとえばスタグフレーションというような状況が進み、インフレが激化する、あるいは低成長が続くけれどもインフレあるいは物価騰貴の方は若干下がる形で維持するといたしましても、こういう状況が続きますと、地方財政難、先ほど一番最初に疑問とされましたような状況はいつまでも続くと思います。その段階で、ただ今後面積基準ということですと、そこから面積が資産価値にもあるいは利潤にも比例しませんですから伸びないですね。そうすると、今後伸びるのは恐らく従業員割ということで、給与所得、支払い給与がふえればだんだんとふえるというようなことで、そういう意味では、余り将来の展望として、都市財源としてどれだけ機能するかという点についても疑問である。私の基本的な考えは、この種の税を導入する段階で、先ほど問題視されましたような基本的ないろいろな地方税制国税との関係という問題を見直す材料になればいいんじゃないか。そういう意味で非常に実験的な税であり、今後見直しが必要なものというふうに考えます。
  26. 片岡清一

    片岡委員 ありがとうございました。
  27. 大西正男

  28. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 地方税法改正に関連いたしまして、諸先生から貴重な御意見を拝聴いたしましてまことにありがとうございます。  地方税法改正前提といたしまして、私、将来の経済情勢に対応いたしまして、地方自治体の役割りの重視とともに、国と地方との税源配分について積極的に国が配慮し、五十年度において実現をしないまでも、その方向に五十年度から操作を始めていくということは必要じゃなかったのではないか、かように考えております。この点につきましては諸先生も触れたようでありますが、井手先生が明確にこのことを強調せられまして、国と地方とをあるいは五対五の比率で配分すべきであるということについてお話がございましたが、私ども全く同感であるわけでありまして、この問題を今後地方制度調査会あるいは税調におきましても積極的に取り組んでいただきたいと考えておるわけであります。それにいたしましても、井手先生のほかの先生方は、佐藤先生も基本的な問題について触れていないという御発言がありましたし、また、肥後先生も、将来の  ちょっと私の聞き違いかもしれませんが、高福祉高負担というような考え方に立って、総体税負担上昇に伴いまして地方税充実しなければいかぬ、こういうふうな御発言がありましたが、国と地方との配分についての問題には触れていなかったようであります。これは今度の地方自治体のあり方について基本的な問題でありますので、井手先生は明快なお話がございましたのでよくわかりましたが、他の三先生からもう少し具体的にお考えをお聞かせ願いたいと思います。  それから時間の関係であと二点ほどお尋ねしたいと思うのでありますが、その一点は、地方自治体の課税自主権であります。この問題は北野先生から非常に明確な、憲法論に関連してのお話をお聞きしたわけでありますが、私も全く、事業税制限税率を設けて、そして事業所税創設と関連づけたということについては、地方自治体が、ことに東京都でありますが、ほかの団体もあったわけでありますが、いわゆる現行制度の中で自主的な財源を模索をしておるという中で、あることをやりますと、すぐ後で当然関連のない、これは事業税性格と、あるいは事務所税との性格も混同しておるきらいもあるかもわかりませんが、多年新財源として要望している問題を創設するのに、事業税の、当然自治体でやるべき課税自主権といいますか、ある程度まで超過課税をするということの芽を摘むようなかっこうで新税を認めるというやり方がやはり従来のパターンにこだわっているということでありまして、将来地方税のあり方をどうするかということよりも、過去の枠組みを重視をしておるということで、まことに残念だと思っておるのです、ことにもう一つ大きな問題は電気税でありますが、これも私は北野先生の書いたものを読ましていただきましたが、大牟田市に関連しておるわけであります。憲法論から税の法定主義は地方団体については条例主義が当然である、むしろ地方税制は、いわゆる憲法の精神で地方税の大部分が標準税制であるべきだというような考え方、全く賛成でありまして、地方団体の中にはあるいは行き過ぎがあるかとも思いますけれども、私は、むしろそういって実質的に課税権も住民参加のもとで、あるいは住民の意向をくみながら、自治体が正しい方向に行くことを誘導しなければならぬのであって、取り締まりをしたり、あるいは濃厚な指導をやって、一から十まで過保護の子供みたいにするということは地方自治の発展の芽を摘むのではないか、こういうふうに考えますので、電気税産業用課税につきましても、場合によっては思い切って課税をし、その判定は訴訟にまつというような考え方はまことに適切な考えであり、ことしは是非実現をしてもらいたい、かように考えておったのですが、できないのであります。その辺の課税自主権の問題につきまして、これは北野先生の御意向はよくわかっておりますので、他の三先生からお聞かせ願いたい、かように考えております。  もう一つ、細かい問題でありますが、それに関連いたしまして、私は、今度の新税の事業所税、事務所税なんかも、非課税はともかくとして、特例措置あるいは税率等は、これは当面は大都市が実施をされると思いますので、今後ある程度までいまの課税自主権を各自治体に任すべきである、条例でいろいろな検討を加えるべきである、余り細かくして余地のないように押し込めるべきではないというふうにも考えておるわけであります。  それからもう一つ自動車取得税の問題でありますが、佐藤先生がちょっとお触れになりましたが、公害関係で今回二%安くするというような措置がとられておるわけでありますが、私は、市町村の生活関連道路の整備あるいは生活環境整備という意味におきまして、ことに公害の総量規制とも関連があるわけですから、むしろ五%を一〇%ぐらいに引き上げまして、そして低公害車現行税率に据え置くというような英断をすべきではないか、かように考えておるわけであります。  ほかにもいろいろお聞きしたい問題もあるわけでありますが、時間の関係がございますので、以上三点につきましてお尋ねいたしたいと思います。
  29. 肥後和夫

    肥後参考人 非常に基本的な問題についてその回答を突きつけられたような感じで、お答えできるかどうか非常に自信がないのでございますが、私はこう考えておるのです。  地方自治というその考え方が、これはたとえばヨーロッパと日本で違っている。違っているというのは、要するに国がどういう仕事をし、その地域共同体はどういう仕事をするかということが、たとえばイギリスあたりですとちゃんと明確に区分されておりまして、社会保障とか国防とか、その他要するにナショナルワイドな仕事は国がやる。特にその地域住民に関連する仕事はその地方がやる。それに対応して税金がちゃんと、イギリスですとローカルレート一本でございますけれども、国と地方とに分かれておりまして、国が地方に対してやるのは財政調整だけのあれで、あとの地域でやる仕事は地域が責任を持ってやる。したがって、地方財政の赤字というような概念自身がない。そういうような国と、日本のように一つのサービスについて、社会保障なら社会保障あるいは教育なら教育すべて国もやれば県もやれば地方もやる、こういうような、要するに行政が縦割りになっておるところでの地方自治というものとどうも違うように思っているわけなんです。これは歴史的なあるいは風土的なものでございますので、どちらがいいというわけにはいかないと思うのですが、それに応じて、したがってなかなか割り切れない。そういうようなところから出ておりますので、やはり日本の場合には、要するにヨーロッパ型の事務配分期待するのは無理でございますから、一応縦割りにするとして、その中で一体どういうふうに考えたらいいのか。これはお互いに行政が重なっておりますので、お互いに責任の転嫁が起こってくるような問題がありますので、そういう深いところに根ざした問題もありまして、国と地方財源配分をいかにすべきかということについては、結局程度の問題でしかお答えできないというのが私の現在のあれでございます。したがって、現段階において一応その地方の財政需要に十分に適応できるような税源配分しなければならない。かといって、現在、御承知のように国の財源も決してゆとりがあるわけではございませんので、ヨーロッパの福祉国家で非常に目につくのは、国、地方の税金と社会保険料を合わせて国民所得の半分近くを負担させられているという事実でございますし、日本の場合にはこれが合わせて二十数%にしかなっておりませんので、これはだれが負担するかという問題は別にしまして、負担率総体の問題としては、福祉国家を目指し、しかも低成長時代に入ってくれば、負担率は上がらざるを得ないのだろう。現状ではやはり、国民生活に密着したサービスを政府が行うということであれば金は足りないわけで、それはやはり負担能力のある者が出して負担能力のない人にサービスをやっていかなければなりませんので、負担率は上がることを覚悟して、その中でできるだけその地域共同体、国民に密着したサービスに十分に金が回るようにするというように心がけていくというよりほかに、どうもなかなか一刀両断のお答えはできないというのが私の率直なあれでございます。  そういう意味で、たとえば課税自治権の問題につきましても、先ほども申しましたし、井手参考人もお述べになったわけですが、あるいはほかの参考人等もお触れになられたと思いますが、要するにナショナルミニマム、行政サービスのうちのナショナルミニマムを一応確保するという責任は国にある。しかしながら、それぞれの地域に応じてそれぞれ地域に応じた行政サービスの需要というのは当然あるはずである。それを仮にシビルミニマムというふうに言うとすれば、要するにナショナルミニマムを超えてシビルミニマムまでの行政サービスに対応する税金というのはやはり地域共同体で負担するというふうにあってしかるべきである。したがいまして、課税自治権そのものに対するお答えになるかどうか知りませんが、地域によって税負担に差があってもいいんだと私は思っているわけです。  ただ、先ほど法人所得に対する負担率について五〇%というような産業政策上の一つのめどというようなもので一応全体が律せられているんじゃなかろうかというふうに申し上げたわけですが、そのような全体的なものと地域とのある種の調整というものは、程度の差はあれ必要ではなかろうかと思っているわけでございます。  電気税につきましては、私は仮に電気税を取るということになれば、これは経費でございますので、当然企業の所得は減る。したがって、企業の所得にかかる税金はそれだけ軽くなるわけでございますが、それで当然電気税は転嫁されて一般の製品の、消費者が最終的には負担することになるんであろう。したがって産業別に見ますと、鉄鋼その他非常に電気税の大幅な軽減を受けている業種、大企業はあるわけでございますけれども、むしろこれに対する、企業に対する課税ということであれば、企業の所得に課税する。したがって、そのような手段の方が適当であるのではなかろうか。それは一つ税体系をどう構築するかというような観点からの問題でございまして、これは北野先生の憲法上の御発言とちょっとずれるかと思います。  それから自動車取得税等の問題については、私は実施可能性というようなものも考えまして控え目に申しましたが、たとえばその低公害車減税措置を講ずるだけじゃなくて、もしそのコンセンサスが得られるならば、むしろ公害をたくさん発生する車からは税金を取るということだって考えられる。本来税金というものは余り政策的な手段に利用しないように慎むべきであるということは一般に戒められているわけでございますけれども、これは前に東京都の公害問題のチーフでありました柴田徳衛さんの報告を聞きますと、結局はコストの問題に帰するというような御発言が、要するにコストが高くなるから公害防止、低公害車をつくれないということであります。そういうことであれば、やはり価格面にインパクトを与えることによってこういうような公害問題を前向きに解決するというような配慮は有効であるのではなかろうかというふうに思っております。  そういうふうに思っておる次第でございます。どうも十分なお答えにはなってないと思いますが……。
  30. 大西正男

    大西委員長 ちょっと速記をとめて。
  31. 大西正男

    大西委員長 速記を始めて。  佐藤参考人
  32. 佐藤進

    佐藤参考人 ただいまの問題に対して簡単に答えさせていただきます。  将来の税財政のあり方と、国と地方税源配分、事務配分というような点についてというお話でありまして、特に税源配分の問題は、私どもの方でもいろいろな形で検討をしておりまして、ある程度の目安といいますかビジョンといいますか、そういうようなものはいろいろな形で提案されております。それらを基礎にして私の考え方を申し上げますと、これは国と道府県とそれから市町村それぞれやはり税源は横割りではっきり区別すべきである。その場合どういう基準が考えられるかということですと、法人税国税としておいて差し支えないし、消費税もこれは全国各均一の規模で取らなければいけない。法人税については、特に法人関係課税地域による税源の偏在が著しい。それから景気政策的な配慮というようなものは法人税を通して十分実行できるというようなことで、法人税消費税それから私の私見では富裕税あるいは個人資産税あるいは法人資産税というような考え方もあると思いますが、富裕税というような税目を配置し、道府県に対しては現在の事業税付加価値基準に切りかえ、付加価値基準事業税というようなものを、いわば大規模改正という形で存置する。そのほか料理飲食税だとか娯楽施設利用税、そういうあれもありますが、過渡的に存置してもいいのじゃないか。そして特に現在問題となっている市町村の税源というものに関しては、これは所得課税、現在ある住民税をどういうふうに拡充するかという、また国からどれだけ所得税から移譲するかというようなことがございますが、これはやはり市町村の有力な財源として市町村住民税それから固定資産税、こういうものでまさに横割りの租税体系というものはもう一度考え直してみてもいいのじゃないか。もちろんたとえば所得税は全部市町村に移すことになるというような提案もございますが、それが過渡的な措置としてはたとえば半々というようなことも考えられるでしょうし、六、四ということも考えられると思います。しかし、それぞれの自主税源を各地方自治体のレベルに応じて配分するということですとそういうことになります。自主税源はどんな税でもともかく市町村税をふやせばいいんだということにはならないので、やはりできるだけ市町村の税として適切な税ということをいろいろな形で考えるとそういうようなことになるのではないかと考えて、これは、こういうような案がいろいろな形で税源配分構想というふうなことで学者の間でも議論されておりますが、さしあたりそういうような横割りが果たして可能かどうかということを中心にして論議をする必要があるのではないかと考えます。  交付税の問題については、その中に何を入れるかという問題も重要でありますが、交付税についてはこれの算定配分の過程をもう少し民主化してもいいんじゃないか、つまり、単位費用とか補正係数とかいろいろ基準財政需要の決定に当たっての基準というのは、いわば国が一方的な基準で決めてくる。全国画一な規模で決め、それをやや補正でするというようなことですが、その過程にもう少し地方自治体の、都道府県なり、市町村なりそれらの意見が直接反映するような仕組みを地方交付税の中で考えるべきじゃないか、こういうふうに考えます。  地方自治体の課税自主権の問題については、これは課税自主権といっても無制限なものであり得ないことは確かであります。それをどの程度の幅で認めるかということをめぐっていろいろな議論があるわけです。私が特に指摘し、また北野教授がいろいろな形で根拠づけられました法人事業税制限税率を一・一割増しというふうなのは、余りにも低過ぎるのではないか。都道府県制限税率というのは、このあれにも見ますように、ほとんどないわけです。それを新しく、しかも一・一というようなことで導入するということに非常に疑問を感ずるわけであります。  その他の新しく導入される事業所税について、非課税措置、特例措置税率等にある程度自主裁量権を指定都市大都市に認めるべきであるという御意見については、私もある程度同感であります。特に税率に関しまして、この一本、それ以外には考えないという規定をしているわけです。資産割あるいは従業者割、これを一本で規定をしている。これについて、もし多少とも地方自治を従来の考え方を生かして導入するということになれば、これにもやはり標準税率制限税率というふうなことが考えられるのではないか。そういう考慮が全くないということは問題ではないかというふうに考えております。  電気税自動車取得税等の問題につきましては、私は余り勉強もしておりませんで、今後の課題にしたいと思います。
  33. 北野弘久

    北野参考人 それじゃ、結論的にだけ申します。  第一点は、財源配分の問題でありますが、先ほど申しましたように、憲法論的には、憲法九十二条に規定する地方自治の本旨は何かということを具体的に確定する、法規範論的に確定する必要があります。こういう研究は、従来日本の憲法学界で全くなされておりませんので、それが今日の自治体財政の問題点をもたらしているのであります。そういった、地方に固有の事務は何であるかということを学問的に確定しまして、それにふさわしい財源を与えるべきであると思いますが、大筋としましては、先ほど井手参考人からも話がありましたように、私も五対五ということを考えております。  それから、第二番目の問題、課税権につきましては申し上げる必要はありませんが、一点だけ申し上げておきますと、これは政府の方の考え方がどうも理解できないわけでありますけれども、これは学問的な研究がおくれているということが原因だと思いますけれども、財政権、課税権というのは本来国民が持っておるわけでありまして、自治体の場合は住民が持っておるということであります。まさに住民主権論あるいは国民主権論という考え方ですね。こういう考え方課税権、財政権の本質を説明しております。ただ、今日の議会制国家におきましては、たくさんの住民、国民が一遍に集まって議論できない、こういうことで議会を通じてやるということでありまして、議会がかわって課税権を行使する。決して国税庁であるとか自治体の税務当局が課税権を行使するのではなくて、議会が行使する。これは地方議会、国会、そういう議会が行使するわけであります。したがって、課税権の本質というのは立法権でございまして、国税庁はロボットにすぎない。国会がつくりました税法の規定を単にロボット的に執行するにすぎないのでありまして、決して国税庁が課税権を持っているわけではない。課税権は国民が持っておる、国会が持っておる、こういうことでありまして、自治体の場合も同じでありまして、自治体の課税権は住民が持ち、それを地方議会が行使する。地方議会は条例の制定という形で行使するということになります。これは憲法の趣旨でありまして、憲法理論的には自治体がそういう意味で固有の課税権を持っておる。しかしその固有の課税権の範囲でありますけれども、これは今後の研究によって具体化していく必要があるということであります。  これに関連しまして電気税の問題でありますけれども、さっきいろいろな方からも出ておりましたが、電気税は原材料課税であるから課税するとかえって国民経済的にマイナスなんじゃないのかという意見も出ておりますのですが、そうなりますと、企業活動に関する一切の税金はそうだというふうになります。法人税事業税住民税固定資産税等々を含めまして、企業の原価計算の対象になる公租公課は一切そうである。コストアカウンティングの対象になるものは全部そうであるというふうになりますと、同じ問題が出てきますので、税金は本来どういうふうに取るべきか、こういうことであります。消費者に転嫁されないように、あるいは価格が上がらないように、別途政治がその英知をしぼるべきでありまして、税金は平等に取るべきである、こういうことであります。  それから三の問題、すなわち特別措置の問題でありますけれども、これは先ほど申しましたので申し上げません。ただ、自動車取得税の問題につきまして、確かに公害をなくするということで税制が保護することも意味がありますけれども、余りに過保護であるという印象を私は持っております。これはどういうことかと申しますと、自動車取得税というのは自動車を買う人が納税義務者でありますけれども、この自動車取得税の税金を軽減するという形で結局メーカーを保護することになりますので、メーカーのマーケットでの地位を保護する、つまり国の法律が、そういう形で特定の企業、メーカーを保護する、こういうことになってきますので、憲法二十二条との関係から言っても問題が出てくる、こういうことで余り過保護にならない方がよろしいんじゃないか。ちょっと申しますと、国民の犠牲で、国民の税金を取らないという形で、公害をなくするということをやる、こういうことになってきますので、これはできるだけ私としましてはこういうことをやらない方がいいと思いますけれども、しかし現段階で必要であるならばやむを得ないとは思いますけれども、方向としましては余り税制を使っていくことは好ましくない、こういうふうに考えております。
  34. 井手文雄

    井手参考人 課税権の問題でございますけれども、これは私すでに申し上げましたとおりでありまして、現在の地方税制度が地域的な均一課税の原則によって支配されておる。これを少し緩和する必要がある。そのためには標準税率制限税率との開きをむしろ逆にもう少し広げて、そして地方団体の裁量的な課税、自主的な税率の操作ということがある程度できるようにする。むしろ広げる必要があるんじゃないか、こういうように考えております。制限税率を設けること自体は、私は反対ではございません。やはり一定の枠があって、その中での自主制ということが無難ではなかろうか。そのために相当な幅を持たせるということであります。  それから事業所税、これは私もちょっと触れましたけれども、いろいろな特例措置がありまして、軽減措置が行われておる。これは少し行き過ぎではないかと思うわけです。それからまた、こういうことも自治体の自主性にゆだねる、こういうことがむしろ望ましい。  それから事業所税にもやはり制限税率を相当幅広いところに、標準税率との開きを相当置いて、そしてある程度の都市の自律的な税率操作ということが可能なようにしておくということもどうだろうか、こういうふうにも思っております。  それから、自動車取得税との関連において、私は前からPPP、ポリューター・ペイズ・プリンシプル、公害原因者負担の原則ということを数年来折りにつけて書いておりまして、これと関連して、公害税というものをそろそろ日本でも考えたらどうだろうかということを書いてまいりましたが、やはりこの公害というソシアルコスト、企業の外部費用を内部費用に課税の形で取り込むことによって、資源の最適配分ということも可能だと思うわけです。ですから、むしろ公害発生者には重く、それから公害を出さない企業には軽く、こういうプリンシプルでいくべきじゃないか。PPPという公害原因者負担の原則と関連して公害税というものを考える。  それと関連しまして考えますのは、租税特別措置の中で、いろいろ公害防除設備投資なんかをやるというと、特別償却で税負担が軽くなるような仕組みにもなっているかと思いますけれども、これは逆でございます。むしろこれはPPPから言うと反対なわけですね。むしろそういう公害防除設備投資も企業負担という形に持っていくことが必要ではないか。  こう申しますと、いかにも企業に対して酷なように思われます。確かにそういうことかもわかりませんけれども、それは、そういうことが困難な中小企業に対しては別途措置を講ずる、こういうきめの細かい対策も必要だと存じております。
  35. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 ありがとうございました。
  36. 大西正男

    大西委員長 関連で、佐藤敬治君。
  37. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま山本委員が質問したので大体尽きていますけれども、私はもっと具体的に、もっと率直にひとつお聞きしたいと思うのですが、まず住民税に対する課税最低限の問題です。  これは肥後先生とその他の三先生、意見がもう真っ二つに分かれてしまっております。肥後先生の御意見は、そこに税務局長がおりますが、私どもいつも税務局長と話していますと、税務局長の言われるのとほとんど同じ発言でございます。  そこでちょっと、これは時間がありませんので、具体的に申し上げますけれども、私ども市町村の実態を見ておりますと、課税最低限を国と地方と一緒にする、こういうことは、市町村の貧乏さかげんということから言うと、ほとんど問題にならないと思うのです。私は、一緒にしても、差別しても大して違いがないと思うのです。そういうふうに意味がないとすれば、これは一緒にすべきだとか区分すべきだとかと言って議論していること自体がナンセンスで、そうなったら、これは非常に短絡した意見ですけれども、一緒にしてしまうべきではないか、こういう考えが一つ。  それからもう一つは、いまの貧乏な市町村、財政硬直化などと言うとよく聞こえますけれども、全く貧乏だ。何かの意味でこれを補てんしてやらなければいけない。  それを補てんする方法として、現在の制度としては、交付税というものがありまして、この調整をやっておるわけです。しかし、交付税というものは国がぎゅっと握って、それによって科学的だとは言っているけれども、現在の情勢を見ますと、法律できっちり定められているべきはずのものが、補正係数でもってどんどん変えられていって、最後にはおかしな形でもって交付されていく、その過程で中央が地方を牛耳るところの一つの道具として使われておる、これが実態だと思うのです。そういう意味で、貧乏な穴を、交付税ではなくて、できるだけ自主財源でもって埋める必要があるのではないか、地方自治の本旨から言うならばそういう必要があるのではないか、こういうふうに考えます。もちろん交付税の役割りを否定するものではございません。交付税というのはどこまでも必要だと私は思いますけれども、その前にやはりできるだけ自主財源を与えるべきだ。  そういう意味では、これまた肥後先生とほかの方々とかなり違っておるようですが、私は国と地方を通じての税の再配分がどうしても必要なものである。井手先生がおっしゃられたように、所得税の一部移譲でもいいでしょうし、そういうような税の再配分というものがもう焦眉の急である、こういうふうに考えます。  この二つにつきまして、肥後先生から御意見をお伺いいたしたいと思います。
  38. 肥後和夫

    肥後参考人 大分手ぬるいというのでおしかりを受けたわけですが、最初課税最低限の問題でございますけれども、私は、どちらかというと、これは国税地方税を含めて全体についての基本的な考え方なんですが、課税最低限で負担を調整するという発想方法はむしろ、非常に荒っぽく言えばやめるべきだと思っているわけです。というのは、いまネガティブ・インカムタックスというような考え方がありますが、あれは要するに課税最低限はゼロにする、そしてむしろ社会保障給付で負担の調整を図るという考え方であります。  そういう意味で、私は十分な、要するにそれぞれの所得階層に応じた適正なサービス、生活を保障するという発想に最も適当なあれは、タックスクレジットをふやす方法、だからむしろそういう発想に、いろいろ税金の問題を議論する影響力のある方々が少しなじんでいただけるとありがたいがなと思っているわけであります。  さきにも申しましたけれども、スウェーデンでもあれですし、それからドイツ社会民主党が政権をとって改正した今度の連邦所得税法でも所得控除をやめて、扶養家族控除をやめて、そのかわりに児童手当を出すというようなタックスクレジットに変えておるわけです。ですから課税最低限の高さ、低さということで全然問題にならない。むしろどれだけ住民に返っていくかということが問題だと思っているわけであります。そういうことでどうも課税最低限には私余り熱心でないわけなんです。むしろある金をどう適正に使うかということを考えたいということが一番基礎にあるわけなのであります。  もう一つは、今度は地方交付税かあるいは自主財源かという問題でございますが、これはどんなに自主財源を与えても、要するに貧乏な地方団体では税収は上がらないわけでございますから、貧乏な団体に対する手当てはやはり地方財政調整制度でやるのが一番いい。したがって自主財源を与えることによって財政的に潤う団体は、これはやはり富裕な団体、富裕なというか、要するに都市圏の団体である。都市圏の団体は都市問題という大変な問題を抱えておりますから、こういうようなところに自主財源を手厚く配慮することは必要でありますが、貧困な地域団体では幾ら自主財源を与えたってどうにもならぬというふうに私は思っておるわけでございます。  以上でございます。
  39. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 どうもありがとうございました。
  40. 大西正男

    大西委員長 多田光雄君。
  41. 多田光雄

    ○多田委員 どうも四人の先生方御苦労さまでございます。時間もありませんので、やや実務的にお伺いしたいと思うのです。  最初に、佐藤先生にお伺いしたいのですが、地方税の税収見込みにつきまして財政計画で二三・五%増と見ていることについて、先生からは、私の聞き間違いかもわかりませんが、先ほど何か楽観的なお見通しのようなお話がございましたけれども、これについてどういうふうにお考えになるか、もう一度ひとつ御説明を願いたいと思います。
  42. 佐藤進

    佐藤参考人 地方税収入見込み地方財政計画の基礎にもなる比較的重要な見通しでありますが、都道府県市町村税の中では、市町村税が二七・九%増、道府県税が一九・六%増、その中で特に問題になるのはやはり法人税課税関係収入が今後どれだけ期待されるかということで、ここで多かれ少なかれ二〇%以上、法人税県民税で二一・一%、それから事業税法人関係で二四・五%、それから市町村税関係では市町村民税法人税割が実に三九・二%といった伸びを想定しているわけですね。これはどうしてこういう高い伸びが期待できるか。去年、ことしとかなり法人税収入等も下がっておりますし、ちょっと常識と合わない。それから一般の都道府県、市町村等の五十年度の実態、これは私ども新聞等で若干知る程度でありますが、それだけ高く見積もって予算を組むということは実際できない状態にあるので、非常に疑問を感じております。  他の税目は多かれ少なかれ前年度課税原則というようなものですとつかめますけれども、法人企業活動の今後の動向をどういうふうに見ておられるのか。特に不況の影響等に対する対応が地方財政計画全体として非常にあいまいになっております。そういう点で疑問を感じざるを得ない、こういうことでございます。
  43. 多田光雄

    ○多田委員 次に、井手先生にちょっとお伺いしたいと思いますが、超過負担の問題で、先ほど超過負担解消合同委員会という御発言があったと思います。税法とちょっと外れますけれども、昨年私ども超過負担解消の特別措置法案をつくりまして、その中で、解消のための調査委員会というのを設けたのですけれども、先生のおっしゃっているこの合同委員会性格それから具体的な内容をちょっとお伺いしたいと思うのです。  それからいま一つは、その場合、過去にさかのぼって、五年間で約一兆円とも言われているのですけれども、こういう問題もそこで御処理されるようなお考えなのかどうか、これもお伺いしたいと思います。
  44. 井手文雄

    井手参考人 それほど細かいところまでは考えておりませんが、とにかく先ほど申しましたように、超過負担の問題はやはり国と地方とで政策について、あるいは行政のあり方について合意がないというといつまでたっても解消はしない。こういうことから、合意を得る一つの方法として、いわば話し合いの場が必要ではなかろうか。そういうことを考えるわけですから、具体的には、たとえば政府側は自治省なりからとか、あるいは全国の知事、市長の代表者というようなものが相会しまして、そうしてそういう話し合いをする。福祉行政の先取りと一方は言う、一方はそうは言わない、それは一体どうか。あるいは保育所とか老人ホームとか学校を鉄筋でつくって、児童数あるいは患者、老人何人につき何平米の建物が必要だ、それも国はぜいたくだと言い、地方は住民の要望にこたえて必要だと言う。そういうことで、平行状態ならば、超過負担は全然解消しない。だから、そういうことはやはり率直に、フランクに話し合うという場が必要だと実は考えて、具体的に、たとえばさっき言ったように、全国の首長の代表者と自治省の代表者とが、何か適当な代表者を選んで話し合いをするということで、具体的にその仕組みまでは実は考えていませんけれども、これは本当に必要だと思うのです。国の政策を行う上に地方自治体は福祉行政の先兵だ、こう言われておるわけで、地方自治体が福祉行政をやる。しかし、それはやはり国との関係なしにはいまの状況ではできないわけですけれども、その点について国と地方とで意見が食い違っていては、これはもう福祉国家というのはできない。やはり話し合いをしてコンセンサスを得る。これは絶対必要だ。ですから、こういう話し合いの場をどういうふうにつくるかということは当局の方にいろいろ考えていただきまして、私はここでは一つの提唱をすることだけでございますが、これでよろしゅうございましょうか。
  45. 多田光雄

    ○多田委員 いま法案と言いましたけれども、法案の要綱骨子でございますから訂正いたします。  そこで、次に北野先生に何点か一括してお伺いしたいと思うのです。  一つは、東京都の法人事業税に対して一四%の超過課税をしたことに対して、先ほど報復的云々という話もございましたけれども、制限税率も設けたわけですが、このことについて私どもとしては、たとえば法人事業税に対する損金算入をやめるというような方法をとっていくならば、自治省の言っている税体系を変える云々ということも通らなくなってくるというふうに考えているのですが、この点についてどうお考えになるか。  それから二点目は、租税特別措置の問題なんですが、自治体財政が非常に窮迫してきているということの一つは、過去の高度経済成長のもとで大企業その他の開発、これの下請にさせられてきているという面が非常に強いのですね。ですから、そういう意味で、租税特別措置によって非常に手厚い保護を企業が受けてきているという点から言えば、三分の一欠損法人が出ておるというのは、これは言わばその結果ではあるけれども、尋常な事態ではないというふうにも思うわけです。ですから、その点は根本的には今日の税法にあると思いますけれども、この点についてどうお考えになるか。  それから、いま一つこれに関連いたしまして、これの地方税へのはね返りの問題なんですね。これは私どもだけじゃなくて、多くの地方自治体もぜひ遮断してもらいたい、こういう強い要求を持っておるわけですが、これをどういうふうにお考えになるか、ひとつ伺いたいと思います。  それから三点目ですが、不均一課税の問題です。この点については、政府の方では自治法で公益上云々ということなんですが、この公益上ということの中身はかなり限定されたような意味に私どもは感じているわけですけれども、この公益上の理由という点についてどういうふうにお考えになるか、これを三点目として伺いたいと思います。  それから四点目。これは佐藤先生にもあわせてお伺いしたいのですが、先ほど事業所税創設の問題で課税団体のお話がございました。それで、集積の不利益なんかは東京だけでなくて、たとえばコンビナートその他の集積している四日市だとか、あるいはまた市原、こういうところでは消防の問題にしても公害の問題にしても非常に大きい負担を受けているのですが、こういう課税団体の問題について先ほど御意見もございましたけれども、ひとつもう少し突っ込んだ御意見を伺いたい。これは北野先生にもお願いしたいと思います。  それから、北野先生に電気税について先ほどお話をお伺いしましたけれども、やはり税の上で産業政策導入というお話もございましたが、もっとこれをオープンにできないものかという点で御説を承りたいと思います。  それから最後に、これは法学の立場からもあると思いますが、これも北野先生ですが、昨年来、例の田中金権問題でいろいろ国会でも論議されているのですが、政府の方では守秘義務、プライバシーを守っていく、そういうことでなかなかその資料の提出もされないわけなんですが、これは一般の守秘義務とは違うと私ども考えております。この点について先生の御意見最後に承っておきたいと思います。  以上、一括してお願いいたします。
  46. 北野弘久

    北野参考人 それじゃ時間もありませんので、ごく結論的に申し上げていきます。  最初に、多田先生の御質問にお答えすることにもなるわけですけれども、先ほど山本先生が御質問されたことについてちょっとお答えしなかったものですから、あわせて、第一の問題に関連しておりますので申し上げておきます。  私としましては、法人事業税に対する制限税率は、この段階で必ずしも設ける必要はないのではないか。もし必要があるならば行政指導の形で、つまり事実上の形で自治省なりが自治体に指導を行うということでも所期の目的は達成されるのではないかというふうに考えておりますので、そういう意味でこれは多田先生の御質問にも関係しておりますので申し上げておきますが、そのことを申し上げておきます。  それから第二番目の租税特別措置の問題でありますけれども、これはまさにおっしゃるとおりでありまして、欠損法人は多い。事業税所得課税でいきますと、欠損法人に対しては事業税課税ができない、こういうことになっております。その欠損法人というのは税法上つくられた欠損法人である場合がありまして、つまり税制上の優遇措置のために欠損になる、こういう場合があるわけですが、そういう場合はまさにそれは国の法律によって自治体が多大の損害を受ける、こういうことになってくるわけです。そこで、私としましては、現行法の枠の中でやるとしますと、各自治体で所得課税を実はやめまして――これは千葉県で検討されておるということを聞いておりますのですけれども、業種によっては外形標準課税の規定を使ってやっていくということが現行法の枠の中でも可能でありますので、これをぜひおやりいただいて、欠損法人に対しましても適正な事業税を徴収されるということをお考えおき願いたいと思います。もちろん立法論的には税制上の優遇措置を廃止しましてそういうことのないようにやるべきだと思います。  それから、国と地方の優遇措置の問題でありますけれども、地方税レベルの優遇措置には二つございまして、一つは、地方税法自体で規定するものと、いま一つは、国の所得税法であるとか法人税法等で規定する、あるいは措置法で規定する、そういったものが地方税に波及する、こういうものとがあるわけですが、両方とも、私は、これはできるだけ廃止すべきである。どういう企業税制上保護するかどうか、どういう課税物件を税制上保護するかどうかということは、これは自治体の判断に任すべきである、条例で決めるべきことであって、国の法律は余り介入すべきではないのではないか、こういうことで、国の法律では大枠だけ決めまして、その優遇措置の必要性につきましては、自治体の条例によって、自治体の判断に任せる、こういう方向でいくべきではないか。もちろん御質問の国からの地方への波及効果の切断の問題は、当然いまの問題とは別に実施すべきであると考えております。  それから第三の問題でありますけれども、不均一課税、これは非常にむずかしい法律論があるわけでありまして、自治省筋では、東京都の考え方では租税法律主義に違反するという意見を表明したということを国会の記録からも確認しておりますのですけれども、これは私、論文で非常に詳しい議論を展開しておりますので、後日御検討願いたいと思います。早稲田大学の出版部から出版されました「現代憲法の基本問題」という書物の中に、数十ページにわたって詳しい法理論を展開しておりますので、詳しくはそれに譲りたいと思いますけれども、何が「公益上その他の事由」に該当するか、あるいはどういう不均一課税を行うかということは、地方税法自体は実は何も言っていないのでありまして、地方税法の規定は非常にあいまいであります。包括的であるということは、まさに自治体の財政権、課税権の憲法上の趣旨を地方税法自体が確認しておるということでありまして、どういう不均一課税を行うか、どういう場合に「公益上その他の事由」があると認めるかは、挙げて自治体の判断にゆだねるというのが地方税法考え方ではないか。したがって、この地方税法六条の法の意味を具体化することは、挙げて自治体の条例にゆだねる。その条例がよほど不合理なものでなければ、地方税法六条違反、つまり、いわゆる租税法律主義違反であるということにはならないのじゃないか、こういうことで、けがの功名と思いますけれども地方税法のこういった規定を通じて法は憲法の自治体の課税権の趣旨を生かしていただくことを期待しておるのでありまして、とにかく私は、この六条の規定というのは法理論的にはすばらしい規定である、こういうふうに考えておりますのですが、この点はぜひお考えおき願いたいと思います。  具体的な内容でありますけれども、これは自治体によって違ってくる。巨大都市には巨大都市にふさわしい「公益上その他の事由」があるわけでありまして、たとえば東京都のような巨大都市におきましては、中小零細企業は集積の不利益を受けておる。また、税制の上でも必ずしも大企業ほど優遇措置を受けていない。一方、大企業の方は、税制の面でもさまざまな優遇措置を受けておりますし、それから、集積の利益を受けておる、こういうことで、そういったことを考えて中小零細企業の税金を安くするということは、まさに公益上の事由に該当いたします。  一方、大企業からたくさん取った税金を中小零細企業に還元する、あるいは一般の庶民に還元する、こういうことをも考えまして、地方税法六条の意味を考えるべきではないか、こういうことでありまして、私が最近言っておりますことは、地方税法六条の規定を解釈する場合であっても、納税のレベル、つまり租税の徴収のレベルだけの「公益上その他の事由」だけを考えるのではなくて、徴収された税金をどういうふうに使うかという、そういう問題も考えたところでの「公益上その他の事由」を考えるべきではないか。従来の法律学は、租税の徴収の問題と徴収された税金をどういうふうに使うかということを峻別する論理に立っておりましたけれども、これを総合化した形で法の意味を考えるべきじゃないかということで、六条の規定の意味を考える場合におきましても、東京都にふさわしい「公益上その他の事由」あるいは不均一課税の内容というものはおのずと考えられるのではないか、こういうふうに考えております。  それから第四の問題、時間がありませんから急ぎますが、事業所税の問題でありますけれども、これはもう特に私が申し上げるほどのことはありませんので、佐藤教授からも非常に詳しい問題点の指摘がありましたので、時間があればまた申し上げますが、五番目の電気税の方に移ります。  これはもう大牟田市長に提出しました私の鑑定書に書いておりますので、法律的な問題点につきましてはそれによって御検討願いたいと思いますけれども、私としましては、電気税の問題を含めまして、大企業の原価計算、コストアカウンティングというものを公開すべきである、国民の目の前にさらすべきである。これは最近、独禁法の改正の問題に関連して話題になっておりますけれども、単に独禁法の、経済法のレベルの問題でなくて、税制のレベルにおきましても、巨大企業につきましてはそのことを考えるべきではないか。巨大企業というのは一私企業ではなくて、まさに社会的な存在であります。そういうことで国民の民主的なコントロールを受けるべきであるということを税制の面でも考えるべきじゃないか。巨大企業の原価計算を公開する、こういうことで、税務調査につきましても、巨大企業につきましては、その税務調査の結果を国民に発表する、そういうことが必要なのではなかろうか。それから、電気税の問題を含めまして、電気料金の原価計算を公開するという形で消費者への転嫁などをチェックすべきである、こういうふうに考えております。  それから、第六番目に田中金脈問題、これまた論文に書いておりますので、詳しくは――法律論としてはむずかしい議論がありますので、簡単にここでお答えできませんので、「会計ジャーナル」という雑誌の最近出ました三月号に、これは日本公認会計士協会が発行しております雑誌でありますけれども、会計とか税金とかの専門誌でありますが、三月号に「税務職員の守秘義務」という論文を発表しております。サブタイトルとして「公務員法と税法との関係」というものをつけておりますのですが、これは地方税の場合も同じように当てはまる。  結論的に申しますと、田中さんの問題について、国税庁は一貫して守秘義務を理由に発表できないと言っておりますけれども、この学問的根拠は全くありません。もっともらしき三百代言的な法律論でありまして、私は法律学を二十年以上やっておりますけれども、こんなひどい法律論は初めて見たのでありまして、これは税法学に対する研究がおくれておる、そのことが、国税庁をしてあのような答弁を国会がさせておる、こういうことを国会議員の方も大いに御検討願いたいと思います。どの新聞も余り書かないので私はびっくりしておりますのですけれども、なぜ税法が一般の公務員法とは別に税務職員の守秘義務を規定したのかということでありますが、地方税法の二十二条に所得税法二百四十三条に当たる規定がございますけれども、同じことであります。私は、税法上の守秘義務というのは公務一般に関する守秘義務を予定していない。税務調査などを行うことによって税務職員は、行政客体である納税義務者、取引関係者の秘密を知る機会がある、その秘密を保護しようというのが所得税法あるいは地方税法で規定する税法上の秘密であります。これは純粋な個人的なプライバシーの問題でありまして、決して国税庁の言っているような意味ではないのであります。むしろ所得税法は一定の高額所得者の所得金額を公表せよ――所得の金額しか公表せよと規定上は言っているにすぎないのでありますけれども、あの趣旨は、高額所得者に申告漏れがあっては困る、国民は全体的に監視しようじゃないか、そういったことを制度的に保障する規定であります。税法上の守秘義務というのは、要するに個人のプライバシーに関する問題である。たとえば二号さんがおるとかあるいは不治の病の病人がおる、そういうことを知られて困る。そういう純粋な個人的なプライバシーを税務職員が知った場合に、これを漏らしてはいけない。漏らした場合には、それには刑罰による制裁を科す、こういうことであります。したがって、公務員法上の守秘義務に対する罰則よりも税法上の守秘義務に対する罰則の方が重いわけでございます。これはそういう税務職員が絶えず税務調査を行ってタックスペイヤー側に接しておる。そこで知り得た秘密を守るということでありまして、決して行政側の秘密を守るということではなくて、これはタックスペイヤー側の個人的なプライバシーを保護しようということであります。  田中さんの場合にはまさにあちらこちらの新聞雑誌等に書かれておりまして、もはやプライバシーがないくらい書かれておる。このプライバシーというのは、もちろんその人の職業であるとか、社会的地位等々によって違ってくるわけでありますけれども、要するに二号さんを持っておるとか、そういうことは秘密であります。田中さんが幾ら申告をしたか、税務調査の結果、幾ら所得があったかというようなことを国会等で発表することはむしろ課税庁としての義務でありまして、所得税法等で規定する税法上の守秘義務に違反することではない。つまり、個人的な秘密、プライバシーを侵害しない形で課税行政の適正さを国民に公表することは可能でありまして、税務資料の秘密を発表しちゃいけないということで拒否できる問題ではない。  第二番目の公務員法上の守秘義務が成り立つかどうかという問題でありますけれども、公務員法上の守秘義務というのは公行政一般に関する問題が中心でありまして、もちろん厳密には行政客体に関する側の秘密も含まれておりますのですけれども、税務行政について申しますと、現実には結論的にはもっぱら行政主体側の秘密になってくると私は解釈しております。  一体、今日の国家体制のもとで果たして行政側の秘密があっていいのかどうか。本当に秘密にしなければならないものがあるのかどうかということであります。国家の機密で最も重要なものは軍事機密でありますが、日本国憲法は戦争を放棄しておりますし、軍事の一切を憲法は保護しておりませんので、一体行政側の本当の秘密があるかどうか疑問でありますけれども、仮に一時的に行政側としまして秘密にしなければいけないという場合であっても、それを秘密にするに足る理由がなくなった場合には、その問題についてのプロセスについて公開をする必要があります。  一体、税務行政で行政側の秘密があるかどうか疑問であります。私は、ないという結論でありますけれども……。最近裁判で話題になった所得標準率ぐらいでありますが、あれについてもいろいろ議論があるわけです。仮にあるとしましても、それは役所の、つまり行政の便宜からの秘密ではなくて、法律が罰則までつけて保護しております秘密というのは、税務職員が漏らした場合に罰則を適用するという、そういう秘密というのは、行政の便宜のための秘密ではなくて、もしそれを発表した場合には国民全体の不利益になる、そういう秘密だけを考えるべきでありまして、そういうものだけが行政側の秘密になってくるわけです。そういうものとして、果たしてどういうものがあるか非常に問題でありますけれども、田中さんの場合で申しますと、一国の総理大臣でありますから、むしろ大いに課税庁の方でいままで調査した結果を発表することの方が申告納税制度を維持するために、あるいは税務行政の信頼を確保するために必要でありまして、秘密にすべきどころか発表した方が税務行政にとってプラスになる、こういうことであります。  詳しい法律論的な問題についてはお答えできませんが、先ほどの論文をごらんいただきたいと思います。要するに国税庁の議論は法理論上の根拠はないということを申し上げたいと思います。
  47. 佐藤進

    佐藤参考人 課税団体に関する問題点は、私の方で触れました点に関する御質問が重ねてありましたが、課税団体について、考え方といたしまして、いわゆる事務所事業所税の沿革から言って、一つ指定都市だけに限る。このうち東京都二十三区を含める。こういう考え方と、それからもう少し範囲を広げると、自治省第一次案というところでは人口十万以上というように非常に範囲を広げた。五十万人以上というのがここでは一つ基準となっているようでございます。首都圏、近畿圏の既成市街地云々、これではおのずから範囲が決まってくると思いますが、これを読んだ感じでは大体五十万以上の大都市ということにして、しかしそれは政令で決めるということに関連しましては、政令で決めるというのは、やはり租税適法主義という点からいろいろ疑問がありますし、もう少しやはりはっきり規定をする必要があるのではないか。  それから大都市の環境整備のための税源というこの支出内容というものは、多かれ少なかれ中小都市にも当然必要なものでありますので、この範囲をもう少し下げてもいいのではないかという気がいたします。私は、ここから当面すぐ、たとえば制限税率は二〇%増しぐらい拡大した方がいいというようなことが言えますが、何人までとかどこの都市までということは申し上げられません。これはあくまでも、私が繰り返し申し上げますように、実験的な形で導入されたもので、必ずしも現在の租税体系の中になじむかどうか非常に問題のあるものであります。地方自治体の要望で、自分たちのところで課したいというところがあれば、それをできるだけ広く受け入れるという態度が必要であると考えます。  なお、触れませんでしたけれども、範囲の限定について、指定都市と並んで東京都二十三区の区域ということが問題になっておりますが、それとの関連で問題がいろいろございまして、たとえば昨年度地方自治法改正によって東京都の特別区が区長公選、事務移譲、市の事務はほとんどそれを行う、また区長も公選するというようなことで、これは市になっております。それから五十万以上の区なんというのもございます。ところがこの税源は都に帰属するというような形になっているとすれば、その辺にもまだ問題がある。課税団体の点でいろいろ問題がある。  これは、いずれにしましても、いままでのいろいろな経緯の妥協の結果として出てきたようなものでございます。それ以後なおいろいろな形での改正が行われる種類のものというふうに私は理解しております。
  48. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  49. 大西正男

    大西委員長 小濱新次君。
  50. 小濱新次

    ○小濱委員 各先生方には貴重な御意見を述べていただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  そこで、最後になりましたし、また時間も大分経過いたしましたので、これから一括して各先生方にお尋ねをしていきたい、このように思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  肥後教授とそれから佐藤教授にお尋ねをしていきたい、こう思います。  今回の地方税法改正の目玉は、事業所税創設されるということに対しては、先生と同様賛意を表するものでございます。法案による床面積、従業員数を基準としているわけでございますが、先ほど井手教授からはその他具体的な例を挙げてこれを加味すべきであるという御意見が出ました。  そこで佐藤教授は、床面積の矛盾と不公平の拡大ということで御意見がございましたが、いま少しその他の問題で御意見を聞かしていただきたい、このように思います。  また肥後教授に対しましては、問題であり見直しの必要性は課税範囲にあるとのお話でございましたが、非常に大事な事業所税の問題でございまするので、どうかひとついま少しくお話を承りたい、このように思うわけでございます。  次に、これも肥後教授にお尋ねをしていきたいと思いますが、土地の譲渡に伴う国税地方税配分が現在国中心となっているわけでございますが、地方としては、生活関連整備を行ってきた地方自治体の開発利益に応じて重点的に配分されるべきであるという意見が強いわけでございます。先ほど教授は国民期待するところである、こう述べられておるわけでございますが、土地譲渡に伴う国と地方との税配分のあり方、どのようにすることが適切であるかという御意見をひとつお聞かせをいただきたい、こう思うのでございます。  井手教授にお尋ねをしていきたいと思いますが、国の租税特別措置によって法人税などの国税が減免されているわけでございます。そのはね返りによって地方税減収を余儀なくされている、こういう実情でございます。このことについて地方自治体側は強い不満を示しているわけでございます。そこで、国の政策の影響によるこの地方税減収は断ち切るべきであるという考え方を私どもは持っているわけでございますが、この点について教授の御所見を承りたい、このように思います。  これは北野教授と肥後教授にお尋ねをしていきたいと思います。地方公務員の給与のあり方、これは基本的に全国一律に国家公務員に準ずるべきであるという考えと、地方自治体ごとに実態に応じて自主的に決定すべきであるという考え方が論じられています。先日も当委員会で、自治大臣のこの問題についての発言がございました。この点について北野教授も、地方財源の問題に触れてこの税配分という根本的な問題を先ほど主張されましたが、両先生の率直な御意見を聞かしていただきたい、このように思うわけでございます。  最後井手教授にお尋ねをしていきたいことは、先ほど超過負担の解消について御意見がございました。御提言ということで具体的な内容にはお触れになりませんでしたけれども、国と地方との合同委員会の設置、この問題については私どもも大きな関心を寄せております。この対策についていろいろと論じられてまいりましたが、私どもも近く何とか法案を提出したいと鋭意努力をしてまいったわけでございますが、先ほど先生は、構成、内容についてお触れになりましたが、いままでの累積赤字の対策、四十九年度までに一兆円と言われるこの赤字対策をいかにすべきかという問題やら、今後の赤字解消策がいろいろと問題となっておりますし、また合同委員会の権限ということもどこまでどのような方法でという、こういう意見も出ておるわけでございますが、大変具体的な内容に触れて恐縮でございますが、井手教授の御構想、御所見を承りたい、このように思いますので、各先生方よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  51. 肥後和夫

    肥後参考人 それでは、私から先に一応お答え申し上げます。  私に小濱先生から御質問のありました問題は事業所税課税団体範囲をどう考えるかという問題と、土地の譲渡所得税の国と地方への配分はどうあるべきであると思うか、それから三番目に、地方公務員の給与水準は国家公務員に準ずるべきであると思うか、それとも地域差があっていいと思うか、その三点であったと思います。  第一の課税団体範囲でございますが、たとえば具体的に申しまして、現在首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地としては武蔵野市、三鷹市、川口市だけでございます。たとえば武蔵野市、三鷹市について言いますと、それではそれから西のたとえば国分寺、小金井は一体入るのか入らないのか、あるいは立川は入るのか入らないのか、こういう問題は当然起こってくる。そういたしますと、それじゃ巨大都市の周辺の衛星都市の環境整備財源はどうするのかという問題が出てくるというふうに考えられるわけでございまして、この点は近畿圏についても同じでございます。たとえば東大阪、尼崎、堺、守口、西宮、芦屋といったようなところが現在指定されるようでございますが、それじゃ伊丹は一体どうするか、そういうような問題が当然その関連の周辺の衛星都市でやはり起こってくる。そうしますと、やはりそれらの間にこれを新たに指定を追加するのかどうかというような、それともあるいは追加しないで取るところは固定しておいて財政調整をするか、それはやはり何か加えるというようなことに、現在のこのたてまえからいくと、ならざるを得ないのじゃないかと思うのですが、そういう問題についての見直しが必要になってくると思います。それから、人口五十万以上のもののうち特定のものという点につきましても、現在仙台、広島、千葉、岡山と四市が一応候補に挙がっているわけでございますけれども、これでもやはり似たような都市がございますので、五十万というような基準でいいのかどうなのかという点は、これから実際に実施してみて、新しく問題に当面した段階で見直さざるを得ないだろうと考えておるわけでございます。  それから第二点の、土地の譲渡所得税収入を国と地方でどう配分すべきかという問題でございますが、一つは短期譲渡所得については、御承知になっておられますように、昭和五十六年度まで現行制度を継続する。長期譲渡所得については、一応小さな譲渡所得については現行の二〇%を適用するけれども、一応原則は廃止でございますが、それで新しい税制昭和五十六年度までの時限措置としてやるということでございますけれども、考え方としてはやはり高額の譲渡所得については重課する。重課する結果としてあるいは土地の供給が凍結するおそれはないかという点については、特に公共の観点から必要な土地の譲渡所得については、課税上の優遇をするというような措置でその供給を促進しようということになっていると思います。その配分でございますが、現在地方に対しましては、二千万円以下の部分については道府県民税二%、市町村民税四%の税率による、それからそれを超える部分については、その譲渡益の四分の三を総合課税した場合の上積や税額によるということになっております。これらについては、結局は現在のたとえば所得税住民税との配分等に準じて、やはり譲渡所得税についても――従来の配分の経緯がございまして、それを土台にしているわけでございますので、土地の譲渡所得だけについて国と地方配分割合を考え直すという場合には、やはり所得税全体の配分割合についてもあわせて再検討されるべきものではなかろうかと思っておるわけでございます。  それから、第三点の地方公務員の給与の問題ですが、一応考え方としては、さっきから私はナショナルミニマムあるいはシビルミニマム、コミュニティーミニマムか、地域それぞれの事情に応じた行政サービスがあっていい、そう考えるというふうに申し上げております。そしてまた、それに応じた税負担の差があってもいいはずだというふうな考え方基礎にして申し上げておりますが、これに準じて申しますと、地方公務員と国家公務員の給与は違ったって別に構わない。それをサポートするかどうかは、結局はその地域の住民の総意によるものである。ただ、国の責任において補助するものと地方の責任において賄うべきものの違いがあってもいいんじゃないか。それは要するに地方自治という考え方から言っても当然あっていいんじゃないか。ですから、国家公務員との給与の差を認めるか認めないかは、それは当然認めていいわけで、ただ、それを賄うべき財源についてどこまで国が責任を持ち、地方がどこまで責任を持つかという点につきまして、これは事務再配分の問題等もありますので、なかなか簡単には具体的な結論は申し上げられないと思いますけれども、考え方としてはそれぞれ責任を負う範囲内において、負うという前提で差があったって構わないというふうに考えております。
  52. 佐藤進

    佐藤参考人 事業所税課税標準である床面積課税は不公平であるということに関連して、課税標準はどうあるべきかという問題が私に出されたと思います。  この床面積課税は、事業所税の予定されている収入の過半を得るものというふうに想定されます。新増設の分はほとんど床面積基準で取る、それから現に活動している事業も床面積と従業員割半々で取る、こうしますと、私の理解では、当面の収入は七五%床面積で取る、今後伸びるのは恐らく従業員割だけだろうと思いますが、この種の税を課している税は全く知らないというような意味において、床面積課税というようなのはちょっと問題が大きいように考えるわけです。恐らく、これによって期待される政策効果というものは、できるだけ床面積の多いような事業所を大都市につくらないようにということだと思います。これは恐らく非常に単純で確実に把握できますから、そういう利点はあると思います。しかし、伸びは床面積課税からは期待できない。それから何よりも不公平であるということを私は申し上げたわけで、つまり課税の要件というのは、いろいろ応益とか受益者負担、原因者負担とありますけれども、能力に応ずる課税というのが基本原則でありまして、能力に応ずる課税の手法は何かということですと、床面積というものはほとんどこの基準にはならないわけですね。そういう意味で不公平である。税の基本的な性格にも関連するわけです。  この事業所税というものは一体何なのか、どういう種類の税かということがよくわからないのです。これは企業に対する課税なのか、あるいは新設の場合は建築主に課するというようなことで、その場合は建築主が要した費用、つまり建設費用というようなものを基準にして課する、あるいは固定資産額を基準にして課するというのは一つ考え方として成り立ちますし、それから取得税方式の場合も時価に応じて課するということが考えられる。それから現に活動している事業に対する課税の標準としてはいろいろななにがあると思いますが、利潤では正確に企業活動を把握できないというので、固定資産税額をとったり、あるいは従業員支払い給与額をとったりしておるわけです。それらを合成すれば、恐らく企業活動の規模を正確に把握できるという点では私は異論はありません。  そこで、床面積基準に比べて何がいいかということですと、四十八年段階自治省等が考えておりました固定資産税割と支払い給与割、この二つの方がより合理的であろう。それはいずれも比較の問題でありまして、そもそもこの事業所税というもの自体地方税の中にどういう形で定着していくかという点については、私は、肥後教授と同じようにその実態を見て判断すべきだというふうに考えておるわけであります。
  53. 北野弘久

    北野参考人 もう時間がありませんので、小濱先生の質問の第一点だけにお答えいたします。  地方公務員の給与についてどう考えるべきかということでありますけれども、一般的には、国ができるだけ国に準ずる形でやってほしいということを指導すること自体は差し支えないと思いますし、またしていいと思いますけれども、ただそれをしたら必ずやらなければいけないということではないのでありまして、各地方によって生活程度が違ってくる。東京都は非常に住宅費は高いとか、田舎ではむしろ住宅費は安いとか、各自治体の特殊事情によっていろいろ違ってきますので、基本的には自治体の特殊事情を踏まえて妥当な給与を決定するということが本筋だと思います。  最近、地方財政を圧迫しておるのは何か地方公務員の給与が高いからだということで、盛んにそれを非難する声が出ておりますけれども、それも一つの原因かもしれませんが、私は言われるほど大きな原因ではないという気がするのでありまして最近のそういった動きは、国の政策の次元で、根本的に解決すべき問題を、いわば責任転嫁の形で自治体及び自治体職員に押しつけておる、そういう世論効果をねらっておるのじゃないか、そういう気がするのであります。つまり地方財政圧迫の原因は公務員給与にあるんだ、そういう印象を一般の国民に与える、そういう政治的な効果と申しますか、その方が重要な意味を持って言われているんじゃないかと思いますので、この辺は、われわれは真相を追求しまして問題の本質を見失わないようにする必要があるんではないか、こういうふうに考えております。
  54. 井手文雄

    井手参考人 第一点は、国の段階での租税特別措置地方にはね返りまして減収を来す、これに対してどうかということでございますが、確かに法人地方住民税法人税割でございまして、国税としての法人税の何%ということですから、まさに国の段階におきまして租税特別措置によって法人所得が過少に算出されれば、当然法人税及び法人住民税法人税割が減少してくるという飛ばっちりを地方も受けます。  それからまた個人住民税所得割でございますけれども、これも基本的には国の所得税課税標準たる個人所得を結局課税標準にしておるわけです。したがいまして、先ほどから問題になっておりました課税最低限度額が個人住民税国税所得税とで格差がある、地方の方が低いということは、実はもとは合致してはおりましたけれども、国の段階所得税減税をするとそれがすぐ地方個人住民税の減少になってくるというようなことで、これではいかぬ。国が勝手に減税をしておる。地方事情が違うのに減収になるのはいかぬというので、いろいろな所得控除というものを国よりも少なくするということで、ある年からずっとそうやってきたものだから、課税最低限度額が少なくなっているわけであります。そのほかにも、国の段階で租税特別措置個人所得が過少に算出される。そうするとそれがはね返る。それをまたカバーするためには課税最低限度額を引き下げなければならぬ、こういうことでこれも入っていると思うのです。ですから私は、所得税個人住民税課税最低限度額は等しくなければいかぬという考え方ですけれども、こういうふうに格差が出てきたのは地方一つの抵抗のあらわれでございます。それが課税最低限度額の格差という矛盾を生んでいると思います。したがいまして、基本的にはまず国の段階で租税特別措置の望ましくないもの、あるいはもう使命を終わったもの、効果のないものそれは徹底的に国の段階において整理をする。そうすれば、地方へのはね返りはないわけです。それが根本だと思います。  それから、国の段階で特別措置のそういう納得のいくような整理が行われないということであれば、やはり先ほどの地方の抵抗のようなものでありまして、地方ではそういう特別措置を考慮しないで独自に課税所得を算出するということも考えられると思うのですね。そうすると今度は徴税手続その他で、徴税費その他もかかるかもわかりませんから問題もあると思いますけれども、地方段階で抵抗する。しかし最も望ましいのは、国の段階でそういう特別措置が合理的に整理廃合されなければならぬ、こういうふうに考えます。  それから次に超過負担の問題でございますが、累積赤字一兆円、これまでにずいぶん赤字が累積しておるということでありまして、これはいまからの問題と同時に過去の問題もその金額を確かめること、その超過負担の発生した原因を追跡し、調査をして、そして明らかに納得のいかない超過負担であるということが、これこそ先ほどの委員会というようなところではっきりした部分につきましては、やはり一挙にということはいかぬと思いますので、何年か、短い期間でありますけれども、一年以上の期間において手当てをしていく。まあ方法まで考えておりませんけれども、たとえば交付税――交付税は余り乱用するのは考えものですけれども、特別の交付税交付金、こういうような形が一つ考えられるかと私は思います。  それから今後の問題でございますけれども、これは当然超過負担を解消しなければならない。解消するために、先ほどのような合同委員会というようなものも必要ではないか、こういうふうに提案をいたしたわけでありますけれども、さしあたって具体的には、生活関連の土木事業とか建築とか、そういうようなものにも実額精算方式というものをやはり導入すべきだろうと思います。しかしそれでもなおやはり不十分だということは先ほど申し上げたとおりでありますからして、いわゆる政策に対する認識の問題、価値観の問題というものを統一するための委員会地方と国との話し合いの場というものが、非常に重要になってくる。その権限というわけでございますけれども、これはやはり、立法上どういう形の合同委員会にするかということと関連しますけれども、つくった以上は絶対の権限を持ったもの、そして、そこでぴったりとこれだけの公共事業が必要であって、望ましくて、しかもそれに対する補助単価はこうあるべきだ、こういうことにして、その上で実額精算方式を導入するということになろうかと思います。合同委員会につきましては先ほどからもいろいろ御質問がございまして、今度も小濱先生から権限の問題ということでございました。私も立法論になりますとあれですけれども、素人として私は、もちろんつくった以上は絶対の権限をお持ちになるべきである、こういうふうに思います。  大変抽象的でございますけれども、その辺でひとつ……。
  55. 小濱新次

    ○小濱委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  56. 大西正男

    大西委員長 参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。      ――――◇―――――
  57. 大西正男

    大西委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  消防に関する件の調査のため、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  58. 大西正男

    大西委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び出席の日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  59. 大西正男

    大西委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十九分散会