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中橋政府委員 去る四月十五日に、当
院大蔵委員会におきまして、
大蔵大臣が当面の
財政事情についての発言をいたしました。その際、四十九年度の
税収は約八千億円
減収になり、
国税収納金整理資金に関する
法律施行令の
改正によって
税収の
年度区分を改めることによりまして、約四千億円新たに四十九年度の所属の
税収になるということを申し上げました。最近におきまして四十九年度におきますところの
税収の概数がわかりましたので、まずそれを御報告申し上げたいと思います。
お
手元に配付してございます
資料「
昭和四十九年度
決算見込み」、それで御
説明をさせていただきます。
まず
税収不足、
政令改正前
税収不足額七千六百八十六億円となっております。これがあの当時約八千億円と見積もりましたものが、約三百億円
程度改善せられてこの
数字になったものでございます。それから、
政令改正によりまして新たに四十九年度の
税収になる
見込みの四千億円が、これも約三百億円多くなりまして四千三百三十億円となりました。したがいまして、
政令改正後におきましては、四十九年度の
税収不足額は
補正後
予算額に対しまして三千三百五十六億円となった次第でございます。
これに対しまして、その次の欄にございますように
税外収入の増二千六百二十億円、
歳出の不用千七百七十六億円、それで3の欄にございますように、差し引き千四十億円というのが
新規発生剰余金となる勘定になります。その中で
道路整備費財源、すなわち
揮発油税等が
補正後
予算に比しまして
増収になった分は、やがて
特定財源として充当しなければなりません。その額が六百二十二億円ございますので、差し引きいたしまして四百十八億円がいわゆる純
剰余金といたしまして
翌々年度の
国債償還原資となり、あるいは歳入に組み入れられるということに予定せられるものでございます。
この
政令改正前の
税収不足額七千六百八十六億円、私
どもの
税収見込みが非常に大きく狂ったという不面目な
事態が
発生したわけでございますけれ
ども、その
原因を私
どもも逐次反省をしております。まだ最終的な考え方は決まっておりませんけれ
ども、主な
内容といたしましては、これもさきに衆議院の
大蔵委員会において
堀委員からの御
要求がございまして提出しました
資料を今日配付申し上げております。
それによりまして御
説明をさせていただきますと、七千六百八十六億円の中で、まず第一には、
源泉所得税で千六十一億円
見込み違いが
発生をいたしました。これは主な
原因といたしましては、十二月支給の
民間ボーナスの
水準がわれわれの
見込みよりも低かったということによります。すなわち、
補正時におきましては私
どもは十二月に支給されるいわゆる
臨時給与は前年に比べて四〇%増ということをそれまでのいろいろな
データから見込んだわけでございますけれ
ども、現実にはそれを下回りまして、一二八・六%ということになりました。それが
原因でございます。
それから、二月から三月にかけましての
申告所得税におきまして、これがかなりの
見込み違いを生じました。その一つは
営業等におきますところの
確定申告における
所得の
伸びが低かったということでございまして、その
金額は一千百四十九億円でございます。これも
補正時に見積もりましたのが、たとえば
営業所得が四十九年度の
税収としまして
課税される総体の
金額としまして前年のそれに比べて二二%
伸びるであろうということを見込んだものでございますけれ
ども、
実績では
横ばいをやや下回りました九九%ということになりました。
それからまた、
土地の
譲渡所得につきまして前年分が非常に
伸びたものでございますから、その後におきますところの
譲渡の
実情等を勘案しまして前年の五〇%に落ちるだろうというふうに
補正時に見積もったわけでございますけれ
ども、これがさらにその半分
程度に落ち込みまして、対前年比二八%という
状況でございました。これによりまして二千三百七十億円
減収となったと見込んでおります。
それから、
法人税及び
会社臨時特別税におきまして八百六十億円の
減収がございました。これも
補正当時かなり先行きについて
見込みを落としたわけでございますけれ
ども、その中でも特に、
補正予算を編成いたしましたころにわかっておりました一年
決算法人の
状況というのが非常に対前年比では好調でございまして、一五四%という
数字を上期については示しておったわけでございますが、これを
補正時におきましては一〇〇%増ということにまで落ち込みを見込んだのでございますけれ
ども、
実績は十一月
決算期から非常に落ち込んでまいりまして、そこに書いてございますように十一月
決算期のものは一〇三・九%、十二月
決算期のものは九六・四%、一月
決算期のものは九二・四%となったわけでございます。こういうことで八百六十億円の
見込み違いが生じました。
それから、
相続税につきましても、
課税財産価格が
見込みに比しまして
伸び悩みました、あるいは延納の
利用率が上昇したということで千十二億円、輸入の
伸び悩みということで関税で六百十億円、それから先ほどの
土地の
譲渡の動きが非常に少なかったということから、
登録免許税が
伸び悩んだということを主な
原因と考えておりますが、
印紙収入で六百七十八億円
減収となりました。
その他の
税目では
プラスのものもございますし、マイナスのものもございますが、通算いたしまして
プラス五十四億円ということになるわけでございます。
四十九年度は、先ほど申しましたように、
政令の
改正及び
税外収入の増、
歳出の不用でもってこれの収拾は行われたわけでございますが、五十年度につきまして一体
税収がどの
程度になるだろうかということは、私
どもも非常に心配をしておるわけでございます。
五十年度
税収予算額の算定に当たりまして、もちろん四十九年度
補正予算を策定いたしました際の諸
データを
基礎として用いておりますから、四十九年度の
税収について先ほど御
説明いたしましたような大きな
金額が
減収になったという影響が五十年度に響くということはもちろんでございます。この四十九年度
税収不足額、先ほど御
説明いたしました七千六百八十六億円というものを
基礎にいたしまして、単純に四十九年度
補正予算それから五十年度の当初
予算をつくりましたときの
伸び率を各
税目について適用して五十年度ベースに換算をいたしますと、約九千億円という
数字になります。
これはもちろん非常に単純機械的な計算でございますが、今日におきましては五十年度の
税収もまだ発足をしたばかりでございますし、五十年度の
政府経済見通しにつきましても、
政府はこれに即しまして物価の安定と
経済の緩やかな回復を実現するべく
努力を続けておる最中でございますので、当面これを改定するということも考えておりません。しかも私
どもが五十年度の
税収見込みを算定いたしましたときに用いました
経済諸指標というものも、いまは容易に新たなる
数字を見出しがたいのでございます。
したがいまして、今後の
税収としましては、四月十五日に
大臣が申し上げましたように
自然増収を見込むことはとてもできませんし、場合によりますれば
自然減収が生ずる
事態も考えておかなければならないという
事情でございます。そういうことに対しまして私
どもは
税収確保の道を一体今後どのように考えていけばいいかというむずかしい
事態に直面をいたしております。
その際に私
どもは、まず当面、たとえば今年度あるいは
昭和五十一年度というものを考えることと、それから早くて
昭和五十一年度から若干の期間、中期的な問題として考えるべき問題と、二つに分けて考えなければならないと思っております。
当面五十年度につきましては、
事態の推移とともに
税収の
状況もわかってまいりますけれ
ども、
歳出面におきましてもたとえば
行政経費についてはできるだけの節約を行わなければならない
事情でございますから、
税収面におきましてもできるだけきめ細かい再
検討が必要であると思っております。こういう
経済情勢でございますからもちろん一般的な増税は不適当でございますが、その中におきましても、かねて
税収について
自然増収が多額でありまして
余裕があった
時代にいろいろな政策的な
配慮あるいは
企業の
内部留保を増強するという
措置がやれたわけでございますけれ
ども、そういうものは今日のような国庫の状態でございますから
真っ先に再
検討しなければならないと考えております。
私
どもが当面
検討しなければならない
項目としまして考えておりますのは、これもお
手元にお配りしてございますけれ
ども、たとえば
引当金、
準備金あるいは
交際費課税、さらには
広告費課税、
ギャンブル課税といった問題が、先ほど私が申し上げましたようなきめ細かい
配慮としてさしあたって
検討しなければならない
項目だと考えております。
たとえば
引当金の中でも、従来から
大蔵委員会においてもいろいろ御議論がございました貸
倒引当金でございます。これも
実績との比較という意味におきまして随時見直しをすべきであるということはしばしば
お答えをしてきましたとおりでございますが、
昭和四十七年、四十九年と二回下げてまいりまして、今日それ以前の三分の二の率、千分の十ということになっております。
金融保険業につきまして千分の十ということになっております。
私
どもといたしましては、現在、
金融保険業に限りませんで、
製造業、
卸売業、
小売業その他全般的に、今日におきます
企業の
貸し倒れ償却の
実績が一体どの
程度になっておるのかということの
調査をやっております。貸
倒引当金はもちろん貸し金の評価でございまして、今日税金をかける場合に一体どの
程度それをしんしゃくすればよろしいかという問題でございますから、最近における
実績あるいは過去におきましての大きな
貸し倒れの
発生というようなものを
配慮いたさなければなりませんけれ
ども、こういった問題は、今日の
財政事情でございますから
納税者の御
協力を得て
改正の
方向に進んでみたいと思っております。
それから、
準備金でございますけれ
ども、たとえば
価格変動準備金につきましては、これも本年若干の
改正をお願いいたしましたけれ
ども、これも
財政に
余裕のあるときの
制度がまだまだ根幹となっております。たとえば
価格変動準備金の積み得る
対象あるいはその率または国際的に
価格変動の著しい
物品についての特別な
措置、こういったものについても一度洗い直してみなければならないと考えておりますし、あるいはまた
公害防止準備金といいますものも、
制度ができましたときは公害問題が急速に出てまいりまして
企業としてもなかなかそれに対応する
準備がない
時代に設けたものでございます。これについても、かねがねいろいろ御批判をいただいておりました。そういう
制度の問題をも含めまして、ちょうど今年度末で
期限が切れる際でもございますから、これについてもできるだけ早期に
検討をいたさなければならないと思っております。その他いろいろな
準備金についてももちろん全面的に一度再
検討をする考えでございます。
それから、
交際費でございますけれ
ども、これも年々強化の道を講じてまいりましたが、こういう際でもございますからさらに強化し得る道があるのかどうか。特にその際におきまして、
資本金基準あるいは四百万円という
金額基準、それから
否認割合の七五%、こういう三つの要素につきまして
検討しなければならないと考えております。
それから、
広告費課税につきましても、今日の
実態が一体どのようになっておるのか、またその
新規分野を開拓しなければならない
企業としての
広告費の
必要性がどの
程度あるのか、
交際費との
関連はどんなものかというような観点からこれを勉強しなければならないと思っております。
ギャンブル税につきましても、これも
大蔵委員会においてしばしば御質問がございましたし
お答えもしましたが、そのときの難点、
一体投票券の当たった人へ返す率に食い込むことができるのかどうか、あるいは
主催者への
配分率を変えることができるのかどうか、さらにはまたいろいろな
公益的事業をやっております
団体への
配分は変え得る余地があるのかどうか、こういった問題も
検討いたしたいと思っております。
ここに挙げました
項目は当面の
検討項目にすぎませんで、もちろんこれに限ったわけではございません、今後いろいろ勉強してまいらなければならないと思っております。
中期的な問題といたしましては、今後の
経済が一体どのように
成長をしてまいりますのか、それに伴いまして
財政需要が一体どういうような進み方をするのかという問題が
真っ先に決められなければならないと思っております。今日までの
高度成長がもたらしました巨額の
自然増収のあった
時代のように、減税もでき
歳出の
増加も賄えるという
事態は今後なかなか予測できないといたしますれば、恒常的に賄わなければならない
財政需要というものも、やはり安定的な
拡大ということを行わなければなりません。
私
ども税制から言いまして、いままでのような多額な
税収がないから他の
税目をということはとても考えられない話でございます。やはり
歳出の
伸びる
スピード、その
内容ということと、今後におきますところの
税収の問題を比較
検討いたしまして、その際に
税収として必要なものがあるのかどうか、あるとすれば一体どういうような
税目で、どのような
スピードでそれを
確保しなければならないのかという問題から入るべきだというふうに思っております。
いずれにいたしましても、その中期的な問題は、ここ当面の問題を
処理いたしました後の
検討というふうには考えておりますけれ
ども、当面とこの中期の問題は、いずれにしましても相
関連をいたしておりますので、今後いろいろとまた御審議を煩わしたいと思っております。
冒頭に当たりまして、御報告かたがたお願い申し上げます。