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1975-08-22 第75回国会 衆議院 大蔵委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年八月二十二日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 浜田 幸一君 理事 村山 達雄君    理事 山下 元利君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       大石 千八君    金子 一平君       鴨田 宗一君    小泉純一郎君       塩谷 一夫君    田中  覚君       坊  秀男君    毛利 松平君       武藤 山治君    山中 吾郎君       横路 孝弘君    坂口  力君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  委員外出席者         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵事務次官  竹内 道雄君         大蔵大臣官房長 長岡  實君         大蔵大臣官房調         査企画課長   吉野 良彦君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省証券局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁長官   中橋敬次郎君         建設大臣官房会         計課長     伊藤 晴朗君         自治省財政局調         整室長     高田 信也君         自治省税務局府         県税課長    宮尾  盤君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 八月二十二日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     田中  覚君 同日  辞任         補欠選任   田中  覚君     奥田 敬和君     ————————————— 七月四日  一、銀行法の一部を改正する法律案広瀬秀吉   君外九名提出、第七十一回国会衆法第四一   号)  二、昭和五十年分の所得税臨時特例に関する   法律案武藤山治君外三名提出衆法第一三   号)  三、所得税法の一部を改正する法律案武藤山   治君外三名提出衆法第一四号)  四、法人税法の一部を改正する法律案武藤山   治君外三名提出衆法第一五号)  五、租税特別措置法の一部を改正する法律案   (武藤山治君外三名提出衆法第一六号)  六、国の会計に関する件  七、税制に関する件  八、関税に関する件  九、金融に関する件  一〇、証券取引に関する件  一一、外国為替に関する件  一二、国有財産に関する件  一三、専売事業に関する件  一四、印刷事業に関する件  一五、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制金融に関する件      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  この際、先般新たに就任されました竹内事務次官等よりそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。竹内事務次官
  3. 竹内道雄

    竹内説明員 今度事務次官に就任いたしました竹内でございます。主計局時代大変お世話になりましたが、ひとつ今後ともよろしくお願いいたします。
  4. 上村千一郎

  5. 長岡實

    長岡説明員 官房長を拝命いたしました長岡でございます。一年間経済企画庁に出向いたしておりましたが、また今後ともよろしくお願い申し上げます。
  6. 上村千一郎

  7. 吉瀬維哉

    吉瀬説明員 主計局長を拝命いたしました吉瀬でございます。理財局長時代大変お世話になりましたが、今後ともまたよろしくお願いいたします。
  8. 上村千一郎

  9. 大倉眞隆

    大倉説明員 主税局長を拝命いたしました大倉でございます。大変お世話になります。よろしくお願いいたします。
  10. 上村千一郎

  11. 後藤達太

    後藤説明員 関税局長を命ぜられました後藤でございます。七月まで銀行局担当審議官をいたしておりました。ひとつ今後ともよろしくお願いいたします。
  12. 上村千一郎

  13. 松川道哉

    松川説明員 理財局長を拝命いたしました松川でございます。官房長時代格別お世話になりましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしく御指導いただきたいと思います。
  14. 上村千一郎

  15. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 官房担当審議官から証券局長になりました岩瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  16. 上村千一郎

  17. 田辺博通

    田辺説明員 銀行局長を拝命しました田辺でございます。一年間証券局長を務めさせていただきましたが、今後ともよろしくお願いいたします。
  18. 上村千一郎

  19. 藤岡眞佐夫

    藤岡説明員 国際金融局長を命ぜられました藤岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  20. 上村千一郎

  21. 中橋敬次郎

    中橋説明員 国税庁長官を拝命いたしました。主税局長当時、大変御指導をいただきましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。      ————◇—————
  22. 上村千一郎

    上村委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣がまだお見えになりませんので、大蔵省の中で統一された見解があればそれに基づいてお答えいただきたいと思うのです。  経済が異常な不況を呈してまいりまして、不況対策も三次にわたってとられておりますが、経済浮揚の兆しはなかなか見えてまいりません。こういう中で、本年二月ごろから大蔵省の中でも言われてまいりました歳入欠陥、近く補正予算ができ上がるわけですが、この中では歳入欠陥をどう補てんするかということが大きな分野を占めておるものと考えられます。こうした基本の問題について統一見解として述べていただけるものがあるとすれば、お述べいただきたいと思います。  第一点は、経済不況現状とこれに対する浮揚見通し二つ目には、歳入欠陥の実態、これらについて見通しをお述べいただきたい。次官、お願いいたします。
  24. 森美秀

    森説明員 前段につきまして、吉野君からお答えをさせたいと思います。
  25. 吉野良彦

    吉野説明員 ただいま山田議員仰せになりましたとおり、すでに三回にわたりまして景気対策を講じてまいりました。その効果もいろいろ議論はございますが、やはりその効果もございまして、国内のいろいろな経済指標を見てまいりますと、本年の二、三月ごろを境にいたしまして生産あるいは出荷は上向きに転じてまいっております。しかし一方、大きな需要項目になっております個人消費支出でございますとか、あるいは民間の設備投資でございますとか、それからまた輸出入、そういったあたり指標は確かにはかばかしく伸びるというような状況にはなっておりません。  しかしながら、三次の景気対策も去る六月に講じたわけでございますから、これからやはりだんだんその効果もじわじわと経済に浸透をしていくというふうに期待もされますので、今後、これからなだらかに回復足取りをたどっていくというふうに私ども期待をしているわけでございます。
  26. 森美秀

    森説明員 歳入欠陥につきまして、主税局長から答弁させます。
  27. 大倉眞隆

    大倉説明員 山田委員承知のとおり、歳入見積もり政府経済見通しに乗って行っておりますので、九月に入りまして政府経済見通しの改定が行われるように聞いておりますから、改定されました数字によりまして改めて見積もりをし直すということになりますので、現時点では遺憾ながら、政府として歳入欠陥がこの程度規模になるであろうということをまだ申し上げられない。また同時に、九月決算状況がわかりませんと本当の大きさというのはわかってこないわけでございますが、しかし、九月決算が本当に確定いたしますのは十一月になりますので、とうていそこまでは待てない。九月決算の感じをつかむというあたりが今回の補正作業におきましてはぎりぎりであろうかと思います。  ただ、現在まで実績といたしまして四、五、六の三カ月の実績はわかっております。それから、近く七月の実績が出てまいります。四月は前年に比べまして九九%でございました。五月は九九・五%でございましたが、六月は九四・二%でございまして、三カ月間を累計いたしまして九六・三%というのが現状でございます。  ところで、前年の決算額に対しまして今年度歳入見積もりが達成されるためにはどの程度伸びが必要かということを考えてみますと、前年度決算額は御承知のとおり十三カ月分の税収で成り立っております。これを十二カ月分に調整いたしまして、それに対して五十年度の十二カ月分で一体どれだけの伸びがあれば歳入欠陥なしに済むのかという率を計算いたしますと、これは一八・七%伸びなくてはならないわけでございます。  一八・七%伸びてやっととんとんという状況のもとにおきまして、すでに実績のわかっております三カ月間は、伸びるどころか逆に減っておる、九六・三%であるという形でございますので、仮に今後期待どおり若干景気浮揚してまいり、今後は前年同額にまずなるという仮定を置きましても、やはり二兆八千億ぐらい足りない。九月決算が一部の新聞に言われておりますように前年比で半分近くになってしまうというようなことになりますと、その分がさらに上乗せになる危険がある。したがいまして、歳入欠陥が三兆円前後という、恐らく当初は予想もされなかったような数字になる危険があるというのが現状であろうかと思います。
  28. 山田耻目

    山田(耻)委員 経済見通しの方はなだらかに回復基調に入る、そういう判断をされておいでのようですが、今年度実質成長見通しを五ないし六%に見られて予算を策定されております。今年度経済成長が全部達成できるというふうには国民も思っていないし、われわれもそう思っていないわけですが、一体マイナス成長なのか、実質成長ならばなだらかな回復を続けていく中で何%ぐらい達成できるのか、その点についての見通しを述べていただきたいと思います。
  29. 吉野良彦

    吉野説明員 ただいまの、五十年度に一体どの程度成長率が見込まれるかというお尋ねでございますが、先生御承知のように、当初の政府経済見通しにおきましては、実質プラスの四・三%の成長率というものを見込んでいたわけでございます。しかし、その後、この見通しをつくりました時点以後、先ほどもちょっと申しましたように、当時想定をしておりました景気回復足取りが確かに全体としておくれがちであるということは否定できないわけでございますが、しからば年度全体といたしまして今後どの程度成長率が見込まれるかということにつきましては、ただいまの段階では何とも申し上げられない状況でございます。  いずれにいたしましても、見通し策定以後のかなりの変化というものがあることは事実でございますので、そういう意味で、現在経済企画庁の方におきましても、やはりこの政府見通しというものをこの際見直しを行ってみてはどうか、それが適当であろうというような考え方で、最近見直し作業に入っております。この作業の結果を見た上で政府としてお答えをするというようなことになろうかと存じております。
  30. 山田耻目

    山田(耻)委員 結局、当初の経済見通しは誤った、それで当初見込んだような四・三%の実質成長期待することはできなくなった、そこでもう一遍洗い直して経済見通しというものを再検討してみたい、そういうことがいまの状態だというふうにしか受け取れません。  そこで、こういう経済見通しを誤った、そういう事柄が五十年度予算に大きな影響をもたらしまして歳入欠陥を生じておる、このこととは無関係ではないと思うのです。しかも歳入欠陥が四、五、六月の予測で推計をすると、お話のございました二兆八千億程度歳入欠陥をもたらす。約三兆円ですね。こうした事柄を控えての補正予算策定にこれから入っていくわけなんです。きわめて事態は深刻と言わなければなりません。こういう事態に直面をして考えられることは、景気浮揚策をどうこれからとろうとするのか、これが一つ問題点だと思うのです。当然こうした事柄補正予算の中に組み込まれなくてはなりません。二つ目には、歳入欠陥をどう処理していくのか、どう補てんをしていくのか、この二つが大きな課題ではないかと思うのです。しかも、国民経済を考えますときに、決してなおざりにできない緊急な課題だとも思います。  そこで、大倉さんにもう一度お尋ねしますが、この予測されます歳入欠陥の二兆七、八千億をどのようにして補てんなさろうとするのか。少なくとも具体的には九月の見直しをしなければ明確に把握はできませんけれども、大綱的には私は方針ができ上がっているものと思います。それは当然財政当局の責任でもございますので、基本的なあり方はどう対処しようとしておるのか、こうしたことについてお話をいただきたいと思います。
  31. 大倉眞隆

    大倉説明員 全般にわたります問題を私からお答えするのが適当かどうか必ずしもわかりませんけれども、ただいまの山田委員の御指摘の線に沿ってできるだけお答えいたしてみますと、歳入欠陥がどの程度になるかを、かなり不確定要素は多いながらも何とか来月中には見当をつける、同時に、おっしゃいました景気対策として一般会計でどの程度のことをやることができるかということを決めてかかる、それで補正の姿が浮かんでくるというプロセスだろうと思います。  その場合に財源をどうするのかということにつきましては、これは財政だけの側から申しますれば、このような異常事態のときには、歳出を切り歳入をふやすというのが本則であろうと思いますけれども、やはりまさしく御指摘のとおり、いまの経済情勢で果たしてそれを全面的に行うことが適当かどうかという問題がございましょう。したがいまして、歳出面ではいわゆる行政的経費につきましてはできるだけの削減を行う。すでに実行上節減を要請しておりまして、これにつきましては補正予算のときに国会の御審議を経るという形で行政経費節減を行うという部分があろうかと思います。ただ、これは事業的経費にわたらない行政的経費の一部でございまするので、恐らく金額的にはさほどの金額になり得ないだろうと思います。  同時に、歳入面では、この機会に一般的に国民負担増加を求めるということがなかなか経済政策全体から見て適当な情勢だとも思えませんので、一般的な増税ということを五十年度に取り上げるということにはならないと思いますが、しかし、それにしましても、歳入面でできるだけの努力はしなくてはならぬ。私がこういうことを申し上げますとおしかりを受けるかもしれませんが、少なくともまず、酒、たばこの予定の増税法は何とかお通しいただきたいと思いまするし、そのほかにも、私どもでいま検討をいたしておりますが、年度中に若干なりとも増収期待できる項目は実現をいたしておきたい。しかし、これも恐らく金額的にはさほどのものにはならないであろうと思います。  したがいまして、残る財源はどうなるかと申しますれば、景気浮揚のために仮に一般会計で追加的な公共投資が行われるといたしますれば、それについてはいわゆる四条公債を発行してこれに充てる。さらに一般財源不足分につきましては、いわゆる四条公債すき間がございますから、これをまず充当してすき間発行を行う。なお足りない分は、場合によりましては特例法をお願いいたしまして、財政法四条の特例としての公債を出して今回の補正財源に充てるというようなことが考えられるのではないかと思っております。
  32. 山田耻目

    山田(耻)委員 結局、歳出の方は行政経費中心に冗費を節約する。歳入面は、直ちに増税というわけにもいかないので、わずかな金額だけれども、できるだけ政令省令措置できるものは措置して、あとは本格的に通常国会等法改正制度改正をやれば行う。それをやっても満たない部分については、財政法第四条に基づいた公債を発行する。  大体この振り分け見当がつきますか。
  33. 田中敬

    田中説明員 歳入欠陥の全貌がわかりませんとはっきりした数字のめどはつきませんですけれども、いわゆる公債措置をする部分につきましては、四条公債対象経費と現在国会でお許しをいただいております建設公債発行権限枠二兆円とのいわゆるすき間、差が約一兆円あるというふうに私どもは把握いたしておりますので、まず歳入欠陥のうちこのおおよそ一兆円というものは建設公債増発をお願いさせていただきたい。  先ほど主税局長が申しましたように、歳入欠陥がもしたとえば三兆円であるということになるといたしますれば、その一兆円との差額の二兆円が赤字公債になるわけでございますけれども補正規模いかんによりましては、たとえば補正によって歳出規模が減になる、景気対策公共事業費は別といたしまして一般部門歳出経費というものが節約その他によって減が立つといたしますれば、赤字公債は、その減が立った分だけは、ただいま仮に申し上げました二兆円から減少するであろう。それから、建設公債すき間発行額約一兆円と申し上げましたけれども、今後考えられる景気対策いかんによりましては、たとえば一般会計でそれをどれくらい負担するかによりますが、それは建設公債増発ということになりまして、すき間プラス景気対策分公共事業関係費建設公債プラスになって出てまいるという関係になってまいろうかと思います。
  34. 山田耻目

    山田(耻)委員 財政法四条に基づくこうした公債を発行して、穴の埋まらぬ部分に埋めていきながら財政の償いをしていく。その振り分けについては建設公債部分、これは国会で決めた枠がございますから、この枠の残余分と、なお不足分に対しては言われておるような赤字公債を発行して措置をする、こういうことなんですが、歳入欠陥見通しは、まだ補正予算規模が明確でない限りそれは確定しない、それはそうだと思います。  ただ、こんな時期になりまして、国民も非常に心配をし、注視をしております。こういう経済見通し政府の、無能だとは言いませんけれども、見誤って大変な事態を引き出してきたわけです。今年の当初予算で二四・数%の引き上げをやりましたときに、すでに当然増として二〇%以上を見込まなければならないという財政硬直の形を見せておりますから、そこらあたりで何らかの手だてを打たなくちゃならぬ、そういう内容的なものもあったかと思うのですけれども基本的には企画庁と大蔵省との関係経済見通しの誤りというものが大きな主因になっておることは否めない事実です。こういう面から考えていきますと、こういう一つ経済上の失敗というものが直ちに歳入欠陥を引き起こしてきて、それに対してすぐ公債という措置をびほう的に行いながら穴埋めをしていく、これだけでは私は国民のコンセンサスを得ることにはならぬと思います。  やはり今日、そういう公債発行などをして穴埋めを講ずるという前に、いまおっしゃっていました歳入面増収、特に金額の多寡ではございませんが、政令省令等を改正することによって当然税の増収を図るという手だてはないものか。新聞などを見ます、銀行の貸倒引当金の千分の十を少しさわりたい、こういうふうなことが伝えられておりますけれども、そういう公債に頼らずにその前に行うべき歳入増手だてというものはどういうふうに取り組んでおられるのか、そこらあたりについてお話を伺いたいと思います。
  35. 大倉眞隆

    大倉説明員 さきに、八月二日に政府税制調査会をお願いいたしまして、そのときに同様の御議論中心になりました。それだけ大きな歳入欠陥の懸念があるとすれば、今後国民負担増加を求めざるを得ないかもしれない。それは歳出を切るのか、あるいは保険料その他の料金を上げるのか、あるいは税をふやすのか、いずれにしても、そういうだれにも余り喜んではいただけない厳しい選択をどちらかに判断して、道を見つけなくてはならぬところに来てしまったのではないかということでございます。  その場合に、歳出保険料その他の料金の問題は、これは主計局の方からまた御説明があるかもしれませんが、租税につきましては、これだけ大きな赤字が、今後の経済成長の過程でいままでのシステムのままで、いわゆる自然増収によって漸次回復していけるか、自然増収赤字を返していけるかということにつきましては、かなり否定的な見解の方が多うございます。やはりいつの日であるかは別にいたしまして、一般的な租税負担増加を避けて通れないということが懸念されておる。ただ、先ほど申し上げましたように、今年度につきましては、これは経済情勢全般から見まして、一般的に国民租税負担増加を求めるというのに必ずしも適当な時期でないであろう。したがって、将来そのようなむずかしい道があるということを念頭に置きながら、その前に何ができるかということを考えるべきであろう。  したがいまして、いわゆる租税特別措置その他につきまして、従来から私どもなりに、既得権化慢性化をしないようにその都度できるだけの努力はしてきたつもりでございますけれども、もう一度改めて洗い直しをするということがどうしても必要ではなかろうか。ただ、これらはいずれも圧倒的に法律事項でございますので、やはり現実問題といたしましては、ことしの暮れまでに作業を終えまして、できるものから通常国会で御審議を願うということにならざるを得ないであろう。  そういたしますと、五十年度中の対策といたしましては、まさしくおっしゃいましたように、金額はほとんど期待できないかもしれませんけれども、行政府権限内でできることで何かないかということになります。私どもの方でいろいろ探してみましたのでございますが、やはりおっしゃいました貸倒引当金繰り入れ率につきましては、これを圧縮しても、いまの経済情勢から見て、また景気全般への影響などから見て、これはある程度は実行してもいいんではないかということでいま鋭意検討をいたしております。年度中の増収になりますためには九月決算に間に合わないといけませんので、ごく近い機会最終案を得まして閣議で御決定をいただきたいと、そのように考えております。  貸倒引当金以外に何かないかという点も御質問の中に入っておるように思いますが、これは非常に技術的なものが若干ないではございませんけれども、それぞれについてこの時期にやるのは必ずしも適当でないというような判断をいたしておりますので、五十年度中の措置といたしましては、具体的には貸倒引当金、それも全業種でなくて金融保険業だけにつきまして繰り入れの圧縮を考えるということになろうかと考えております。
  36. 山田耻目

    山田(耻)委員 基本的な問題も手をかけなきゃならぬ段階にきたと私は思うのですが、長い間高成長時代を経てきまして、おっしゃっていました特別措置の問題も、その経済政策を推し上げていくある意味では企業優遇措置なんですね。だから、そういう特別措置の根本的な洗い直しをやるというおっしゃり方をしていますが、いろいろな経済雑誌を見ましても、税制雑誌を見ても、あるいは新聞等記者諸君の討論を見ましても、ほとんどおしなべてここに触れています。国民の認識もここに集中されているんじゃないかと私は思う。  いままでの高成長は、そういう企業優遇税制貯蓄優遇税制基本にして立てられてきた。これからの問題は、あなたもおっしゃっていましたように、高成長時代でないから税の自然増収は多く見込まれない。私もそうだと思う。言われておるような安定成長、低成長に入る日本経済であることは間違いないでしょうから、ある意味ではこういう租税特別措置というものは当然全廃をする、その立場に立って洗い直しをやる。全廃できないものもあるでしょうが、基本は全廃の立場に立って洗い直しに入る、こうしたことに今日の財政当局は一本筋を柱として通して、その上に立って当面の問題としての政、省令改正で措置し得べきものは何なのか、それに貸倒引当金というものがいま出ていますけれども、やはりこういう一つ段階を経て腹を据えてやる。だから、前者の方は五十一年度国家予算の中に当然入れられて、法律事項でございますからここでまた審議をすることになるでしょう。その決意があるかどうか、これが一点。  それから、当面の問題としての金融関係、保険を含めたものに限っての貸倒引当金、これは早晩やろうとなさっておる。ニュースによりますと九月から実施をしたいという大蔵省の意向のようです。しかも二十六日の閣議で決めたいと、こういうニュースまで出ております。これらについてはもっとはっきり中身を述べていただいて、やはりこの委員会が開かれておるのですから、それなりの意見を受けていただきたいと思う。  この一点、二点について、もっと詳しく決意のあるところを述べていただきたい。これは大蔵大臣、あなたにひとつお願いしたいと思います。
  37. 大平正芳

    ○大平国務大臣 租税特別措置につきましては、いま主税局長からもお話し申し上げましたように、毎年見直しを行いまして、これが慢性化する、あるいは既得権化することのないようにしてまいったわけでございますけれども、しかし、いま山田さんがおっしゃるように、今日の事態はこれまでの事態と違いまして、大変財政的にむずかしい局面でございます。したがって、この際の見直しは、従来の程度ではなくてもっと厳しいものでなければならぬじゃないかという御指摘でございまして、私もそのとおりに思います。したがって、この見直しにつきましては従来よりもっともっと厳しい見直しをいたしまして、御審議をいただくようにいたしたいと考えております。  それから第二の点でございますが、金融保険業に対する貸倒引当金圧縮の問題でございますが、仰せのようにこの九月期の決算から適用いたしたいと考えておりまして、いま関係方面との協議を急いでおるわけでございまして、来週中には政府の最終決定をいたしたいと思いますし、本委員会に対しましても事前に御連絡を何らかの形でいたしたいと思っております。
  38. 山田耻目

    山田(耻)委員 一の問題については、あなたもかなりの決意をもっておやりになるという返事なので了解をしたいというか、中身を見ないと了解できませんが、決意としてはいただきたいと思います。ただ、いまは、税体系、税制改革ということを法律事項で考えるのには私は絶好のチャンスだと思うのですね。それは、メリットのある部分、デメリットの部分、なかなか交錯するものですから、それが長い間いろいろな行政上の圧力となったりしてあなた方の腕を鈍らしたということもわかりますよ。しかし大平さん、この時期だから本当に腹を据えてやっていただきたい。特にその中の不公平な税制というのは、国民はもう許しませんよ。  さっきも酒、たばこのお話がございましたが、また臨時国会でお出しになるようです。それは財政当局としてはそうでしょう。しかし国民の認識は、不公正税制を直していらっしゃい、そうしなければこういう酒、たばこというのは完全な大衆課税であるからどうしても応じられないと、こういう意見が強いんですよ。私たち野党間でも、従来のパターンでこの問題をながめるわけにはいかなくなってきつつあるんです。それだけに、法律改正事項を伴う税制基本の問題については、通常国会で結構ですが、しかし、その決意は、いまあなたが述べられたような抽象的なものだけでは私は国民の合意を得るには至らぬと思う。もっと具体的に、もっと迫力を持って、そうして当面の政令等で行える問題については、私はこの際思い切っておやりになる、そういうことが大切だと思うのです。いまのあなたの御意見は従来のあなたの意見よりかかなり腹を据えておられるようなんで、私も若干杞憂を消していきたいと思いますが、一つ腹を据えてやっていただかなければいけないと思うのです。  それから、九月からやりたいと言われる貸倒引当金の問題について、私はどうもニュースを見まして不明朗に思うのですよ。一体、いま貸倒引当金の残高は幾らになっていますか。それをまず事務当局で結構ですが、申し述べていただきたいと思います。
  39. 大倉眞隆

    大倉説明員 いま手元に正確な資料を持っておりませんが、全産業で約二兆四、五千億、金融保険業で一兆二千億ぐらいだろうと思います。
  40. 山田耻目

    山田(耻)委員 四十八年度末の残高が二兆四千四百億と私も資料で見ているわけです。四十九年三月末の数字はまだつかめていないですか。銀行保険業だけで結構です。
  41. 大倉眞隆

    大倉説明員 年統計上の確定的な数字はいずれもまだ出ておりません。金融保険の有価証券報告書ベースでございますと、有税分が入っております。
  42. 山田耻目

    山田(耻)委員 私の調べた範囲では金融保険業だけで一兆三千百二十九億。こういたしますと、よく世間で言われましたし私たちも申し述べてきたのですが、好況、不況にかかわらず一番もうけているのは金融業である。しかもその金融業は利益隠しにこの貸倒引当金という隠れみのを持っている。これを少しさわらなければいかぬ。しかも貸倒引当金は千分の十を限度額として損金に算入しますね。それがいま申したような金額になるわけです。この貸倒引当金経済不況克服に余り影響はありません。そういう判断財政当局もなさっているようですね。  そこで、四十九年上期で結構ですから、この金融保険業の貸倒引当金に使った経験率といいますか、実行率といいますか、実績率といいますか、一体どれぐらいになっておりますか。
  43. 大倉眞隆

    大倉説明員 政令上の繰り入れ率がおっしゃいますとおり千分の十でございます。実際の貸し倒れがどの程度あったのかということにつきまして、それは貸し倒れの実態の認定につきましていろいろな問題があるということは申し上げなくてはいけないと思いますが、そういうことを前提にいたしまして私どもで若干のサンプル調査をいたしました結果は、千分の〇・二程度でございます。
  44. 山田耻目

    山田(耻)委員 千分の〇・二といいますと、千分の一の五分の一ですね。引当金限度額の千分の十というのは利益隠しと言われるに相当しますね。この引当金は余りにも巨額なものになってきておる。少なくともこういう引当金の制度を思い切って手直しをして、この目的はいわゆる実績率、発生率、その場合の貸し倒れの損金に充てる引当金なのでございますから、本当は実績主義でいいはずなんです。しかし、実績の五十倍も積み立てていかなければならぬ理由というのは一体何なのか。これはここで質問している私自身の気持ちの中にある疑惑じゃございませんよ。国民全体がそういう疑惑を持っている。当然取るべきものを取らずしておいて歳入欠陥とは何事か。そうして国民にそれをかぶせてくるとは何事か。当然の議論でしょう。  だけれども財政当局もそこに着目をされまして、貸倒引当金の手直しをしたい、洗い直しをしたい、私はその発想はいいと思う。しかし、その中身がもたもたしておるのは一体何ですか。大蔵大臣は九月決算で実施をしたいとおっしゃっています。どの程度のことをやろうと考えておられるのですか。実績主義でやろうとしておられるのですか。それとも千分の十を何%か下げてやろうといたしておられるのか。そこらあたりについてひとつ考え方を述べていただきたい。しかももう九月からやろうとなさるのですから、まだよく考えがまとまっていませんでは物笑いですよ。それをひとつ述べていただきたい。
  45. 大倉眞隆

    大倉説明員 現在どういう議論がなされておるかということを申し上げて、お答えにかえさせていただきたいと思いますが、まず実績そのものであるべきかどうかということにつきましては、私どもは率直に申して必ずしもそうは思っておりません。やはりこれは一種の評価性引当金に還元すべきものであろう。ただ、実績に対して一体何倍程度が妥当であるかということにつきましては、これはまたいろいろ議論がありますが、少なくともほかの業種に比べまして金融保険業実績と引当率との乖離が非常に大きい。そこだけは言えるけれども、さてどこまで圧縮するのが本当かということにつきましては、なかなか決め手はございません。しかし、いずれにいたしましても、圧縮してもいいではないかという方向で現在議論をぶつけておる。  それに対する反論を御紹介いたしますと、現状ではなるほど従来は貸し倒れは余りなかったかもしれないが、ここから先の成り行きを考えると、貸し倒れがかなり大型のものが発生する危険がありこそすれ、貸し倒れが減るという見込みはなかなか立てられないじゃありませんか、どうしていまこれを切っていいのですかという反論がまずあるわけでございます。それにつきましては、まさしく山田委員と同じような考え方で、それにしても実績との差がこれだけあるのだから、ほかの方に負担を求める前に、あなた方もいまの経済の中では相対的にやはりある程度強いのだから、それなりの負担をしてくださいということを申しておるわけでございまして、それにつきまして基本的にこの際手をつけては困るということは、もはや言っておられません。したがって、圧縮はやむを得ないと思います。したがって問題はその幅であるということでございます。(山田(耻)委員「どれくらい」と呼ぶ)  幅につきましては、私どもとしてはやはり金融機関というものが信用構造の基本であるから、他の産業と全く同じ率の引き当てでいい、実績対比で同じような幅の引き当てでいいとは思いません。やはりそれは信用構造を支えるための必要な内部資金の留保として、ある程度のアローアンスを見ることは必要だろうと思います。しかし、それにしましてもいまおっしゃったような両面の数字をながめれば、とにかく半分にしてもいいじゃないですか、千分の十を千分の五にしてもいいじゃないですかということで議論をいたしておりますが、しかし、それは余り一時に半減するということは、山田委員も御承知のとおり現実的でないわけでございますから、一時にやるのではなくて段階的に時間をかけて下げるということになろうと思います。  段階的に時間をかけて下げていきます場合に、いまこの時点で五ということを決め切っていいかどうか、五というのを決めるについてはもう少し余裕がないといけないのではないかというところがいまの議論の焦点でございます。ある程度段階的に下げていくという方向は了承をいただきました。毎期の下げ幅というものも、全体から見まして現在の税負担のほぼ一割増程度に相当いたします半期ごとに〇・五ぐらいというのが、私どもも妥当なところだと思います。したがって、〇・五ずつ下がってどこまで行くか、いつまでに行くかという点が最後の論点でございます。
  46. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうもおっしゃっていることが十分わからないのですが、この引当金は銀行の内部留保としてすでに大きなウェートを占めている。大体自己資本の二〇・一%と言われております。このことについて間違いはないのではないかと思うのです。  私は、貸倒引当金の制度を全廃しなさい、銀行はたくさんもうけているのだからそんなものは当然自前でやりなさい、こういうことは言いませんよ。金融行政というものが日本経済に与える影響を知っていますから言いません。しかし、実際に貸し倒れに必要な額の五十倍という積み立てをしていかなくちゃならぬという根拠は、あなたもおっしゃったように、ないはずです。私にもわかりませんし、国民にもわかりません。それを千分の五、いわゆる二十五倍程度にとどめたら——二十五倍が全く正当なのか過大なのか過小なのか、それも私はわかりません。しかし、財政当局のおっしゃっていることはむしろ保護的立場ですから、私は過大なものだと思う。二十五倍の千分の五でも過大だと思う。  しかし、いま大蔵省が千分の五というものを何とかやりたい、この九月から実施をしたいということをお決めになったのはかなり前だと私は思う。そうして、この二十六日に閣議を開いて閣議決定を受けて政令を出したい、こういう意向も持っておられたようにニュースで知ります。しかし猛烈な反撃が出て、千分の五はけしからぬ、半期に千分の〇・五ずつ引き下げる、二年間で千分の八にする、そうして向こう何年間かの後に千分の五にする。私は平常の場合ならあるいはそういう段階方式をとってもいいと思う。  しかし、今日の経済の実態、そうして歳入欠陥は中央地方に非常に深刻な波紋を投げかけておって、その一つの施策として公債を発行したり、大衆課税である酒、たばこ、郵便、特殊法人の料金までも受益者負担ということで引き上げようとする。一体、こういうものが表通りを通れると思いますか。臭いところにはふたをしておいて、やるべき手だては何かが起これは後退をする。これではこの時期に国民の合意を得て税収増を図ろうとするなんということはナンセンスですよ。税の不公平を是正するなんということも言葉だけでしょう。大臣のおっしゃった、租税特別措置の中で幾つか本気になって洗い直しをやりたい、それも言葉だけで終わらなければいいがと思うのですよ。一事がすべてですよ。  この臨時国会に酒、たばこの問題を出して、国民歳入欠陥の立場から歳入増を図ることをお願いしたいと真剣にいま大蔵当局が考えておられるのだったら、少なくともこうした目先の、政令改正できるものぐらいはてきぱき解決しなさいよ。それすらよう解決せんで、千分の十から千分の八に二年がかりで落ちていく、こういうやり方を国民は決して承知しない。大臣、ここらあたりについてどう処置なさろうとなさるのか、あなたの見解を聞きたいと思います。
  47. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、千分の十五でございましたものを千分の十まで圧縮してまいりました経緯がございます。それから、その圧縮する場合におきまして、引当金の実額を減額するというようなことでなくてやってまいりましたことも、山田さん御案内のとおりでございます。今度私どもがやろうといたしておりますことは、いま主税局長から御披露いたしましたように、半期に〇・五ずつ文字どおり圧縮していこうという決意でございます。そうして究極の目標を現在の二分の一のところに置いて、どういう速度でこれをやってまいりますか、あなたがおっしゃるようにいましばらく〇・五というのを半期で落としていくということは考えておりますけれども、〇・五%に至る筋道を全部いま確定すべきかどうか、それが適切であるかどうか、そういう点が確かに問題なんでございます。  しかし、これはわれわれが真剣に関係者との間で折衝をいたしておるところで、汗をかいてやっておるところでございまして、決してこれはイージーな道ではないわけでございます。時あたかも、環境的に申しますと大変むずかしい局面を迎えておりますので、金融保険業といたしましても、いま日夜大変心配しておる局面でございますので、これに対する抵抗も、みずからの利益を擁護するというような立場からでなくて、金融機関の社会的な使命という立場に立っての真剣な御提議もありますことは、われわれ理解して差し上げなければいけないのじゃないかと考えております。したがって、われわれといたしましては、精いっぱい真剣にこの問題に取り組んでおるのである、従来の感度と違いまして、よほど切り込んだ措置を考えておるのであるというように御理解をいただきたいと思うのであります。  酒、たばことの関連というようなことにつきましては、また機会を得てやりとりがあろうと思いますから、本日は失礼さしていただきたいと思います。
  48. 山田耻目

    山田(耻)委員 もう私の時間がございませんので最後に申し上げておきますが、いまおっしゃっていた貸倒引当金は、当初大蔵省案は、大倉さんがおっしゃっていたように、半分の千分の五にしたいということで折衝なさって、九月から実施をしたい、二十六日の閣議で決めて政令改正を出したい、そういう発想で臨まれて、結局引き下げは半期に千分の〇・五ずつ実施をする、そうして年間で一、二年間で二、二年間で千分の八にする、その方向が関係者との話し合いの中で、相手の事情の苦しさ等も考えてほぼ了解をしたというふうに私はいま印象づけられたのです。ニュースによりますと、それだけで五十年度で二百四十億、平年度で四百八十億の増収になる、こう伝えられております。あなた方が歳入欠陥のこの時期に当初出されたように千分の五にするということになりましたら、平年度どれぐらいの税増収になるという計算に基づいてなさったのか、それらを最後にお聞きしたいと思います。
  49. 大倉眞隆

    大倉説明員 ただいまの山田委員の御指摘ではございますが、主税局長といたしまして繰り入れ率の半減を目標に制度改正を考えたいということを主張したことは事実でございますけれども、それを一気に九月決算でいきなり抜き打ちに半分にしてしまうということを主張したことは一度もございません。それから、各国とも貸倒引当金繰り入れ率の縮減をやる事例はございますけれども、いずれも五年かかる、あるいはアメリカの場合は十八年かかるというようなやり方をやっております。それはやはり税負担でございまするから、目標は置きますけれども、毎期の負担増加というものにつきましてはそれなりの配慮があってしかるべきものと、これは主税局長としてもそのように考えておるわけでございます。  数字的な御質問でございますけれども、仮に半減するということにいたしますれば、それはいつが平年度かということでございます。ただ、増収の全体のスケールといたしましては、それは半分にいたしますれば法人税で約三千億の増収になる、これに地方税が乗る、また現状においては会社臨時特別税が乗るということになります。ただ、それは初年度幾らであるかということにつきましては、五十年度中に増収になりまするのは五十年九月決算分だけでございますから、まあいまの私どもの計算では三百億を切るとは思います。二百九十億ぐらいではないかといま思っております。年千分の一ということで五十一年度が動いてまいりますれば、五十一年度は五百七十億ぐらいになろうかと思っております。  なぜ五十一年度が五十年度の倍にならないのかということにつきましては、これは将来の伸びを加算すればもっとふえます。その点が一つ。もう一つは、先ほど従来と同じじゃないかという御指摘がございましたようですが、従来と実は違っておりまして、従来の改正は、率を引き下げましてもいわゆる積み増し停止という経過規定を置きまして、貸し金が伸びて新しい率とクロスするまではいままでの引き当て額をそのまま引き当ててよろしいという経過規定を置いておりましたが、今回はそれを置きません。したがいまして、十二から十に下げてまだ二年たっておりませんものですから、銀行の中のかなり多くの部分は現実には十よりも大きい引当金を現に持っております。それを九月期で九・五に引き下げますので、それだけ〇・五よりもよけいな負担が現実にはかかってまいります。その意味で、いま申し上げた数字の五十年度の半期分の増収見込みは、五十一年度の平年度分の二期分一ポイント分の増収見込みの半分よりも多いわけでございます。
  50. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは以上で終わりますが、私が申し上げましたのはおわかりいただけたと思うけれども歳入欠陥のために補正予算を組まれるに当たって、いろいろと歳出を削減して歳入をふやしながら、なおあく大きな穴には公債発行をやらざるを得ない、しかしその前提として不公正な税制を思い切って改める、洗い直す、この前提を強く私は述べたわけです。そうしなければ国民の合意を得るということにはならない、そういう強い私自身の決意をもって申し述べたのでありまして、大臣そこらあたりについてはかなり了知できることもあったようでございます。  いずれにいたしましても、補正予算編成は目睫に控えております。そうして通常国会の五十一年度予算、こうした国会審議の場を間近に控えておりますので、十二分にここらあたりについて整理された方向をお示しにならないと、異常な混迷を起こすということを覚悟なさってほしいと思う。衆議院、参議院を通して大変な事態を、この問題についてはそれぞれの党が考えておりますので、十分財政当局としては鋭意問題の、申し上げた方向の前進をお図りくださるようにお願いをして、私の質問を終わります。
  51. 上村千一郎

  52. 武藤山治

    武藤(山)委員 最近の日本の経済の動向あるいは財政の窮乏等々、大変問題が山積をしております。国の財政を預かる大蔵大臣として、こういう事態になったことについて責任をどう痛感されておるか、それをひとつ所信を伺いたいのであります。
  53. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国において成長の急速な減速と非常に深刻な景気の後退が同時に起こってまいりまして、いま、ひとり財政ばかりでなく、企業も家計も大変難渋をいたしておりますことに対しまして、財政を預かる立場におる私といたしまして、重大な責任を感じておるわけでございます。したがいまして、何としてもこの困難な局面を打開する糸口をつくらなければならぬわけでございます。と同時に、国民が将来にわたって確かな展望を持つことができるように財政経済の運営を図ってまいらなければならぬわけでございまして、それを軸といたしましてもろもろの施策を周到に考えてまいりまして国民期待にこたえなければならぬと存じておりまして、それが私のこういう重い責任にこたえる道であろうと思っております。
  54. 武藤山治

    武藤(山)委員 現在の経済動向は、先ほど吉野調査企画課長の答弁では、鉱工業生産が上向いておる。確かに企画庁の月例報告を見ても、四カ月間鉱工業生産は連続して上向いております。この上向いている数字、動向というものは満足すべきものと認識をするのか。これではまだまだ足りぬ、足りぬとするならば、どの辺までの増加傾向というものが好ましいと大蔵大臣判断されているのか。  先ほどの吉野さんの答弁では、だんだん第三次不況対策効果が出て、なだらかな回復に向かっている、こう答えた。それは数字も、鉱工業生産に限ってはそういう数字が出ておりますね。これをもってよしとするか、財界が言うような、いやいやまだまだ大変で、もっともっと不況対策は即座に強化しなければならぬと認識をしておるか、大蔵大臣の認識のほどを伺っておきたい。
  55. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、三月以来鉱工業生産が若干上向きに転じておりまするし、出荷も微増しておりまするし、在庫も調整が若干進んでおりますことは御指摘のとおりでございます。けれども、一面、雇用の問題は有効求人倍率が〇・五七程度に低迷いたしておることでもございますし、決していまの状態が経済のバランスのとれた姿であるなどとは考えていないわけでございます。そればかりでなく、企業にいたしましても家計にいたしましても、財政もそうでございますけれども、相当無理をした経営、運営の維持をやっておるわけでございますので、何としてもいまの状態より相当企業の稼働率も高めに回復される、雇用について不安が起こらない、そういうようなところにぜひ持っていきたいものと思うのでありまして、政府としてはそのために全力を挙げていかなければならぬと考えております。  しからば、それがどういう水準であるかということでございます。それにつきましては、いま政府部内におきましてもいろいろ検討をいたしておるところでございまして、企画庁におかれては本年度経済見通し改定作業をいまいたしておりますし、私ども補正予算についての勉強を始めておりますので、しばらくその具体的な水準というような点につきましては時間をかしていただきたいと思っております。
  56. 武藤山治

    武藤(山)委員 私はなぜそういう論争をするかというと、大平さんが大蔵大臣に就任されて間もないころ、去年の九月三日、来年の日本経済がどうなるかということを大平大臣質疑応答をやっているのです。その議事録を私ゆうべずっと読んでみた。  世界は不況になりますよ。その条件はこういうものがたくさんありますよ。したがって、大蔵大臣としていまここで経済の動向というものを的確に把握して処方せんを誤らないようにしないと、かつての田中内閣のときの過剰流動性を生んだときと逆の結果を招来しますよ。そういう質問を私はしたわけです。そのときに大平さんは、今日の資本主義国家間の国際協力がきちっと成立をして武藤委員が心配するような事態にはならない、適切な政策手段を講ずるからと、こうあなたは答えている。ところがそうなっていないんだ。やはりタイミングを失しているんですよ。処方せんの書き方、さらに治療の仕方が常に後手後手をまたやっている。だから第三次不況対策をやっても、なかなかちょびりちょびりやってきたが効き目が出てこない。重病患者がなかなか治らない。これは私は大蔵大臣としての大きな責任があると思うのです。一回また九月三日の議事録を読んでみてくださいよ。  私はそのときに、最近の企業間の情勢を見ても、また労働者の労働時間数を見ても、残業の状況を見ても、昭和四十五年を一〇〇として六一・一、前年同月比で三〇・九、所定労働外労働が減っております。このことは大変重大なことだ。こういう点を大蔵大臣として十分見きわめて金融政策、財政政策を立案しなさい。そうしなかったら来年の経済は大変な事態に見舞われる。オイルダラーの問題、石油価格の高騰の問題から重複的なパンチを食うであろう。そういう予想を私はこの中で質問をしていたのであります。そのときといまとを比較してまことに私は残念に思っているんです、今日の政策手段の後手に回ってしまったということを。しかし、死んだ子の年を数えても始まりませんから、今後どうするか、これが最大の国民から負託をされたわれわれの責任だろうと思います。  そこで、いままでの第三次不況対策でなだらかな回復をもたらし、じわじわと効き目が出てくるというのが吉野さんの答弁でありますが、じわじわと回復過程に向かっていくだろうからこの程度でよろしいと一体認識しておるのか、第四次不況対策を早急にやらなきゃならぬと思っているのか。中身はいいですから、早急に第四次不況対策をやるのかやらぬのか。それともいまの鉱工業生産の状況やあるいは在庫、倒産、求人倍率、こういうような問題を勘案すると次のような手を打たなければならぬと思う、その次の手はどういうものなのか、そういう予想をひとつ大蔵大臣として明らかにしてください。
  57. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまのままでいいと思っておりません。したがって、補正段階で相当程度追加的な公共投資を考えなければならぬと考えております。
  58. 武藤山治

    武藤(山)委員 補正景気対策をやる。きょうの新聞によると、財界では補正予算前に第四次不況対策をやるべきだ。また、通産次官がはっきりけさの新聞でも要望しておるように、補正予算前に不況対策をやるべきだということを同じ政府部内の通産事務次官が言明をしている。そういう事態の中で、補正を組む前にやり得るのかどうか、やり得るとすればどんな手だてがあるのか。補正前に不況対策をやるとすれば何をやろうとするのか、政府はどう考えていますか。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 すでに武藤さんも御案内のように、われわれは公共事業の上半期七〇%までの契約促進措置を講じておりまするし、住宅融資にいたしましても下半期の分を上半期に繰り上げるというようなことをやってまいっておるわけでございます。すなわち、国会から政府に与えられた権限の中では、時期的な調整の道しかないわけなんでございまして、もしやる必要がございますならば、われわれにいま与えられた歳出権の範囲内におきまして時期的な調整ということは考えられると思います。しかし、プラスアルファの実質的な追加投資をやるということは、どうしても補正にまたなければなりません。
  60. 武藤山治

    武藤(山)委員 私もそう思う。したがって、通産事務次官の言うことは、景気対策にだけ目を向けて国家全体の広い視野に基づいた経済財政景気対策見解ではない、私は新聞を読んだ途端にそういう感じを持ったのでありますが、そういう点では大臣見解は同一であります。  いま大臣のお言葉の中に、公共事業費を十分消化するように上期七〇%、住宅建設もどんどんやる、こういう方針を出したということがあったけれども、現実問題としてこの問題が完全に消化されているのかどうか。公共事業七〇%繰り上げ執行と言うけれども、現実に現時点で大蔵省のわかる範囲内でどの程度公共事業の消化が進んでいますか、パーセントで言った場合。
  61. 田中敬

    田中説明員 政府といたしましては、上期七〇%の目標で執行を促進するということで、各省その体制をとったわけでございますが、現在わかっております数字を申し上げますと、七月末現在で公共事業費全体といたしまして五二・八%の進捗率になっております。  五二・八%というものが七〇%との関係あるいは過去の年度との関係でどの程度の促進状況であるかという点を申し上げますと、昨年は七月末が四一・三%でございます。四十七年が、これは促進年でございますけれども、五四・四%でございます。それから四十五年、これは通常年でございますけれども、五〇・八%という数字になっております。私どもが現実に把握しております範囲内におきましては、本年度の六月までは契約状況は非常に順調でございまして、懸念されました地方財源問題等につきましても、地方団体の適切な措置によりまして相当の進捗を見たわけでございますが、七月一カ月分だけをとってみますと新規契約率七・二%ということで、若干その遅延状況が見られるということで、この点につきましては今後さらに実態を詰めた上で関係省庁と協議して促進を図ってまいりたい、かように考えております。
  62. 武藤山治

    武藤(山)委員 きめ細かい配慮をし手当てをするとなると、一番肝心な論争は大臣ここなんですよ。公共事業費七〇%を消化すると言っても、消化するのは国が全部やるわけじゃない、地方自治団体がかなりの部分やるわけですよ。しかも地方自治団体は全部受け皿の持ち出しが必要なんですね、種銭がみんな必要なんです、国庫補助事業に。  そうすると、自治省にお尋ねしますが、五十年度予算の中で地方自治団体が負担をしなければならぬ金額は、絶対額で投資的経費は幾らになりますか、国庫補助事業に関連した支出は。
  63. 高田信也

    ○高田説明員 お答えいたします。  五十年度の地方財政計画上の公共事業費の総額は三兆六千二百十二億円。これに対します地方負担額は一兆三千九百四十七億円でございます。これに直轄事業の負担金並びに失業対策事業費等を加えました投資的経費の総額は、事業費で四兆五千五百六十四億円、地方負担額で一兆六千四百四十五億円になります。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 地方自治団体が一兆六千四百四十五億円公共事業を消化するために持ち出しをしなければならない、これはもう当然わかり切っている話です。大臣、いまの税収から見て地方交付税として交付される三二%の基礎になる国税三税の落ち込み、これによる地方自治団体の歳入不足、それから不景気による法人分の地方税、個人は前年の所得に課税されておりますから個人所得関係は地方税から抜けると思いますが、法人の場合はその年度内の決算で事業税あるいは地方法人住民税がかかるわけですから、これもかなり落ち込む。  その落ち込む金額の概算を自治省にずっとちょっと資料で出してくれということでやりました。仮に国税三税が一〇%減収となった場合には、地方税にはね返る分が交付税だけで四千四百億円、二〇%落ち込んだ場合交付税分だけで八千八百十七億円となる。それ以外に地方の法人地方税の減収というものもかなり見なければならない。三兆二千億円が法人地方税の予算でありますから、その二〇%落ち込むとするとこれもまた大変であります。ざっと大ざっぱな計算をしても、地方自治団体が一兆六千億円ぐらいの歳入不足。おまけに地方財政計画に基かないで、従来は自然増収があったから自然増収で賄えた人件費、財政計画外のものがたくさんある。その自然増収が、地方自治体は約六千億円あった。それがことしはゼロになる。  こういうあれやこれや、地方自治団体の財政の窮状を考えたときに、何らかの手当てをしなければ、公共事業費完全消化なんて幾ら閣議で決め、政府が鳴り物入りでやっても地方の市町村は受けられない。現実にお皿がないのです。受けられない。国の財政も容易ならぬ事態であるが、車の両輪のごとく回らなければならぬはずの地方自治団体のこういう状態というものを大臣はどのように認識され、これらについての処理策をどう考えるか、国家国民的立場から重大問題であります。これは自治大臣の任務ですなんと言える問題ではないのであります。そういう意味から、大蔵大臣のこの地方財政に対する手だて、処理をどうしたらよかろうかという私見でも結構だから、ここで国民の前に明らかにしてもらいたい。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 去年の歳入に巨額の減収が判明いたしまして、その結果ことしの予算自体も歳入不足をはらんだ予算ではなかろうか、したがって、ことしの予算の執行に当たりまして歳入欠陥をどうするかという問題は、当初から議論されておりましたことは御案内のとおりであります。したがって四月十五日、私は、巨額の歳入不足が判明いたしました段階におきまして、四十九年度どのように帳面を締めてまいるかということを閣議で御報告申し上げ、御了承を得た段階で決意いたしましたことは、こういう歳入の欠陥がございますけれども、しかし四月二日に成立させていただきました予算、これは忠実に実行したいので、各省大臣、既定の御計画をお進めいただきたいということを申し上げたわけでございます。それは当然地方財政計画もそれに含まれておるわけでございますので、いま自治省から御説明がありましたような地方財政計画でもくろみましたお仕事というものは、これを何としても実行していただく手だてを講じて差し上げなければならぬと考えております。  しかし、武藤さん御案内のように、国は、ここ四、五、六、七と税収を見ておりますと、必ずしも芳しい税収の成績ではございません。ところで、各府県、市町村の状況も、固有の税収も国と同様にやはり芳しくないわけでございます。交付税交付金が減るばかりでなく、みずからの収入も減ってまいっておるわけでございます。したがって、いまもくろみました事業を進めていただくにつきましては、それだけの財源の手当てをして差し上げないとこれは回らないということは、御指摘のとおりだと思っております。したがって、その点はみっちりと自治省当局と打ち合わせをいたしまして、どのようにやりくりをいたしますか十分協議を遂げて、何としても計画いたしました仕事は進められるようにいたしたいと、いま私は決意しておるということでありまして、それをどのようにしてやるかということは、これからの相談になろうと考えております。
  66. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは余り各論の細かいことまで大臣にお尋ねしようといたしません。一時間の持ち時間ですから、その範囲内で項目だけひとつお尋ねをしておきたい、こういう気持ちで質問しております。  一体、景気問題がどこまでいったならば日本の産業界がやや腹がきついなあという感じになって騒がなくなるのか、この論争は大変むずかしいですね。下村治さんの書物を読んでみますと、下村さんは物価が二〇%上がるぐらいまでいかないと日本の産業界がやや好況になったという感じにはならないだろう、したがって、政府年度間九・九%の物価で抑えるという他の最大命題を掲げておいたのでは、この不況問題というのは恐らく解決できないだろう。彼の言では、在庫率が一四七とか一四五という数字は、今日の経済成長率から比較をした場合、全く異常な在庫率なんだ。成長率がゼロの場合には在庫率もマイナスぐらいにならなければだめなんだ、つじつまが論理的にも合わないのだ。だから、そこまで持っていくための処方せんを書くとするならば、これは大変な物価上昇を覚悟でないとできない景気浮揚対策になるという論理なんです。この下村論理に対して、大平大臣、どう反論いたしますか。
  67. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、企画庁の方で経済見通し改定作業がいま進行中でございまして、補正予算を組む前提といたしましてそのことが行われるわけでございます。それに対しまして政府全体としてそういう形で一つの答えが出てこようと思うので、私がいまここで個人的な感想を申し上げても大して意味がないことと思いますので、それは遠慮したいと思います。  ただ、物価の問題につきましてただいまの政府の感度を申しますと、卸売物価も消費者物価もおかげさまで大変落ちついてまいっておりまして、ただいま予想いたしておりまする公共料金の予定いたしました値上げ、近くまた再度御審議をいただかなければならぬ酒、たばこの値上げ等も含めまして、そういうものも全部勘定に入れてみましても、それからまたわれわれが近く考えておりまする補正予算を考えるというようなことをいたしましても、両物価に異変が起こってただいま設定いたしておりまする政府努力目標というものが大きく狂うというようなことはないのではないかというような感覚をいま私どもは持っております。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣補正予算はいつごろ出しますか。それから補正予算項目は大きな柱は何と何ですか。  私の観測では、まず公務員給与はどうしても補正予算を組まなければなりませんね。これが人事院勧告一三・二%、まあ五%は予算化してあると計算して八%分、大ざっぱに見てこれが三千二百億ぐらいになりますね。これは主計局ですな、いま質問しますから聞いていてください。  災害もことしは大変ありますね。したがって、災害復旧の予算も追加を組まないと災害復旧ができないでしょう。さらに、年々の補正予算を見ると義務的経費というのもありますね。必ず補正の中に入っていますね。すると義務的経費はどのくらいあるのか。私の観測では二百億ぐらい。災害復旧が私の観測では一千億から一千五百億ぐらいなければ、まだ災害が来るかもしれぬ。政府が困ったときには泣き面にハチで、災害もいつもやってくるのですね。こういう事態ですから、これも手当てしなければならぬ。その他というのも年々かなりの額がありますから、これも二千億ぐらいになるのじゃなかろうか。それに加えて、景気対策として財界がやあやあ要求している項目をもし補正予算で盛ったら、これも大変な金額になるのじゃなかろうか。  主計局長が頭を抱えているところじゃないかと思うのですが、いま予想される補正予算の私が申し上げた幾つかの項目について、そういう項目は今度は考えない、これとこれは項目として必要だ、計算も武藤君の計算はまるで違う、大蔵省はこのぐらいだ、これを明らかにしてください。
  69. 田中敬

    田中説明員 追加財政需要補正項目につきましては、武藤委員の仰せられたような項目が考えられます。まず一つは給与改定の取り扱いに伴う所要財源、次には、すでに相当の災害が発生いたしておりますが、これの手当、その他義務的経費の問題が考えられておりますけれども、いずれの項目につきましてもまだ数字を、確定的なものを私どもは持っておりません。  給与の問題につきましては、完全実施をするとすれば二千五百億というふうな大まかなめどは持っております。災害につきましても、現に発生しております災害の報告を受けまして措置することになろうと思いますが、補正でお願いいたします災害の規模は恐らく五百億を下回る金額、確定のものは三百億ないし五百億の限度のところであろうかと思います。それと、もう一つ義務的経費につきましては、これもただいま各省と調整中でございますので、これがどれくらいのものになりますかわかりません。  ただ、武藤先生のおっしゃいました中に一つ落ちておりますのは、これは今後どういうふうに対処していくかという問題でございますが、三税の落ち込みによります地方交付税の減額問題というのが、これは一般会計からの歳出面としては当然考えるべき問題でございますので、それらの出入りを考えましたときに補正歳出がネットでプラスになるのか減になるのか、その辺のところはまだいまから検討したいと考えております。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいまの歳出要因を大ざっぱにずっと計算すると、地方交付税の歳入補てん、仮に私のさっき言った一〇%落ち込みの場合でも四千四百八十億円必要ですね。だから、やはり補正が一兆円ぐらい何だかんだかかってしまうね。それに景気対策を入れるとなると、またそれを上回る。  さて、そこでどこからそのお札を持ってくるか、こういう問題になりますね。大蔵大臣、どこから財源を持ってきますか。大臣に聞こう、大体大臣の感じを。
  71. 田中敬

    田中説明員 武藤委員はただいま地方交付税の落ち込みが一〇%の場合これだけ必要ですということでたとえば一兆円という数字をお挙げになりましたけれども、当初地方交付税の交付額というものは一般会計歳出項目として組んであるわけでございまして、私が申し上げましたのは、これが落ちくぼみによって減っていくということでございます。ただ、この減っていった地方交付税をどういうふうな形で補てんしていくかというのが別途の問題としてございますということを申し上げたわけでございまして、地方交付税の落ち込み分が歳出補正増要因として当然に出てくるというものではないわけです。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ補正の骨組みができ上がっておりませんので、どの程度歳入面で配慮をしなければならないのか、ただいまの段階で申し上げかねるわけでございますけれども、いまの段階で申し上げられますことは、歳入不足が起こる可能性が非常に濃厚である。そしてそれは相当巨額に上るのではないかと思っておりまするので、歳出の節約なり、歳入におきまして若干の増収努力をいたしましても、どういたしましてもやはり公債増発は避けられないのではないか、それによって処置せざるを得ないのではないかという見通しでございます。
  73. 武藤山治

    武藤(山)委員 赤字国債の発行ということに踏み切らざるを得ない、こういう大臣の答弁ですが、いつごろその赤字公債の発行はするのか。これは金融動向全体にもかなり影響がありますし、いつごろ出すかというめどの問題というものは肝心な景気との問題とも関連して大変な問題になるわけですから、臨時国会にその赤字分を、財源不足分公債発行で処理する法案を提案するのか。それとも大蔵省証券の短期借り入れでぶん回しながら、もっと先にいって年を明けてから国債発行の増額をするのか、その辺のタイミングはどの辺を考えているのですか。  まだ二兆円の当初予算の国債も九千億円発行が残っているわけですね。この九千億円の発行も大蔵省は九月、十月ごろまでにやりたいと言うのでしょう。そうすると、あと十一、十二、一、二、三の五カ月間で二兆円なり三兆円の国債発行をした場合、どういう消化をするのか。この当てはめ方もなかなか大変だと私は思うのですよ。そこで、台所を切り回している大蔵省がガラス張りに国民に、こんなぐあいで身上回しをやりたいのですよということを明らかにしてください。これは全くわからないのですか。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国債の問題につきましては後で理財局長から答えさせますけれども、国債、公債を幾ら出さなければならぬかということの前に、今度再度審議をいただきますお酒とたばこの法律をいつ上げていただくかということが決まらないと国債の計算もできないということを、私は武藤先生に念のためにそれだけのことをお願いしておきたいと思います。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、それは本末転倒なんだよ。もし大臣がそういう議論をするなら、われわれが過去の委員会において何回も耳にたこが張るほど、インフレ利得によるストックに対して税金をかけなさい、再評価税なり土地増価税なり富裕税なり、あるいは租税特別措置なりをもっと徹底的に改廃しなさいと言ったわれわれの言い分になぜ謙虚に耳を傾けなかったのですか。たばこと酒は上がるのか上がらないのか、君たち協力するのかと言う前に、こんな三兆円の赤字をつくるような財政運営をした大蔵大臣は、なぜインフレ利得者に対するストック課税もやる、富裕税もやる、租税特別措置も公正に全部洗い直す、それを徹底的にやらなかったのか。二月段階でもうこういう事態になることはわかったはずなんだから、三兆円にはならぬにしても一兆五千億か二兆円の赤字になりそうだというのは二月にわかったのだから、なぜそのときに早く処方せんを書き、手だてをしないのか。大臣の怠慢ですぞ。あなたは辞職しても間に合わぬほど大変な失敗なんですよ、日本の財政をこういう状態に陥れたということは。単なる経済見通しの誤りでありましたでは済まない。  かつて高木事務次官事務次官に就任した直後、大蔵省経済見通し財政のあり方について見通しに誤りがありましたと新聞に発表した、その謙虚さだ。そういうものは大臣、ないじゃないですか。私は、たばこ、酒の値上げがどうなるかなんということよりも、もっと根本的な税制のあり方を、ストックについて政府は思い切ったこういうことをやります、公平にしたから皆さんも協力してくれよと言うのなら話はわかる。大臣、話が逆ですよ。それは聞き捨てならぬです。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたの御意見はわかります。ただ、私の申し上げたのも、政府予算に組んで歳入の柱の一つになっているわけでございますので、その収入金がわからぬ限り補正予算をつくりようもないということは、申すまでもないことでございますけれども、この機会に一言つけ加えさせていただきたいということでございます。いま武藤さんとその問題で議論をしようとは思わぬので、そういう経緯になっているということだけをこの際申し上げたわけでございます。  国債の点につきましては理財局長から答えさせます。
  77. 松川道哉

    松川説明員 まず国債発行の時期でございますが、これは先刻主計局の方から説明がございましたように、いろいろな補正要因、また歳入見積もり、その他を締めまして、その上で幾らの国債が必要になる、しかもそのうちで幾らが財政法四条に言う国債であり、幾らがこれから私どもが御審議をお願いしなければならない特例法に基づく国債である、そういう振り分けがなされてまいります。  そこで、前者の四条国債につきましては、これは補正予算の御審議が終わりまして成立いたしました段階で発行し得ることになろうと思います。また特例債の方は、補正予算のみならずその特例法の成立がなければ発行できない性質のものでございますから、これは予算と法律と両者につきまして国会の御承認が得られた後に発行することになろうと思います。  また、先生がお触れになりました大蔵省証券の転がしでファイナンスしてはどうかという点でございますが、これにつきましては、そのような制度をとっておる国が外国にはございます。また、歳入歳出の差額を一般的にファイナンスする授権を財務省に与えておるところもございます。ただ、わが国の制度から申し上げますと、まず第一は、ある年度歳出は当該年度歳入をもって充てなければいけない。そのブリッジをするために大蔵省証券の発行が認められているわけでございます。したがいまして、年度越しの経費に充てるために大蔵省証券を転がしていくことはできないというのが現在の法制でございます。  さらにもう一つ、しからば年度内であればただいま申し上げました補正予算ないし特例法の成立がおくれてもいいか、こういうことになってまいりますが、これにつきましては、大蔵省証券の発行の総額が予算総則において定められております。本年度でございますと一兆円という限度がございます。そこで、歳出を続けてまいります場合に歳入との差額がそれ以上になりますと、大蔵省証券をもってしてはファイナンスできない事態年度内にも起こり得る、かようになっております。
  78. 武藤山治

    武藤(山)委員 そのとおりだ。だから私は、議事録を読んでもらえばわかるけれども松川さん、二月、三月のこの委員会で、大蔵省は何かこの辺で制度的に抜本的に考えなければ大変なことになるのじゃないかと質問しているのですよ。たとえば、西ドイツのような経済安定法とか、あるいはいま言った大蔵省証券を年度内だけでなくて次年度にも転がせるような仕組みを考えるとか、何か君たちの方で考えないと大変なことになるのじゃないかということをここで言っていたんですよ。大蔵省は何もそういう手だてをしないで、相変わらず単年度主義の予算の中でこの財政の危機をどう乗り切るのか、この点については国民は大変不安を持っているんだよ。  その場になってから今度はさあ国債発行だ、二兆円だ、三兆円だというときに、一、二、三月ごろになって金融事情がどうなるかわからぬけれども金融機関に押しつけようとしたって、そう簡単に金融機関だって受けられない情勢が出てくるよ。きょうあたり新聞を見たって、金融はいま大分タイトになってきましたね。借り入れが大分ふえてきたので、金融機関としても「企業金融再びひっ迫 長期化する不況に先行き資金対策」ということで、銀行関係の内容も民間企業に貸し出す資金で大体精いっぱいになる。そういうところへ国が二兆円なり三兆円赤字国債を発行して資金を取り上げたら、中小企業はどうなるのだ、日本の企業活動はどうなるのだ、そういう不安も出てくるわけです。  だから、やはりそういういろいろな角度から検討した長期的な展望を大蔵官僚がいま作成してばんと出せないようなざまでは、日本の財政はなかなか容易ならぬことになりますよ。皆さんは月給だけもらって、局長になって、定年になってやめればいいかもしらぬ。国民はそれでは済まぬのですよ。もうちょっと大蔵省として毅然とした、今日の財政危機にどう対処するか、今日の経済にわれわれとしたらこういう青写真でいこうじゃないかということを、少なくも大蔵委員会理事会ぐらいには、こういう素案でひとつやってみたいがどんなものだろうか、皆さんの意向を聞かしてくれくらいの前向きの提案があってしかるべきですよ。何にもないじゃないですか、その日暮らしで、行き当たりばったりで。こういう点、私は大変不満なんですよ。  いま銀行では企業金融が再び逼迫してきて、いろいろな細かい事件がいっぱい起こっている。きょうは時間がないから私はそういう個別問題はやれないつもりでがまんをしているのですけれども、たとえば、いまの不況だからというので、政府系の金融機関には中小企業対策としていままでどんどん金が手当てされた。そうすると都市銀行は、金融が締まってきて需要が旺盛になると、都市銀行で借りている金を返させるために政府金融機関から借金さして返さしているんだよ。あるいは返さなくもいいから、おれの銀行へ貯金しておいてくれ。零細企業者がわずか百万か五百万の金を国民金融公庫で借りる、自分は使いたい。使いたいけれども、都市銀行の方で、いや、あなた、すぐ要らないのならうちの方へ貯金してくれ、うちの分はまだ返さなくてもいいから預金してくれ、あるいはうちの方の借金を返してくれ、これでは中小企業金融機関にせっかく手当てした資金が振りかえられるだけじゃないですか。そういう事実が私のところへちゃんと投書として本人から来ている。二件もある。みな都市銀行だ。金融はいまそういう状態になりつつある。  そればかりではない。貸倒引当金の今度の改正で、貸出額の千分の五になるまでは新規に積み増しを認めるが、それ以上になったときには認めないということになると、貸出金をどんどんふやす、そして貸出額を上にすれば、千分の五の絶対額も上がる、そういう競争も金融機関ではもう行われているのだよ、末端では。あなたの方は一回で二千四百億なり二千五百億なりばあんと税金で取るのじゃなくて、千分の五に上積みされる分について禁止するというかなり長期的な税金の取り方なんだ、いま山田耻目さんも質問しておったけれども。そんなことでは税の公平化とかいまのストックの分配を公正にするなんていう公正な政治じゃないですよ。三木内閣の政治に反しますよ。  いまそういうような中小企業金融の問題だって、あるいは銀行のあり方にしたって、いろいろな問題があるときだ。そのときに国債の発行を三兆円あるいは二兆円せざるを得ないという事態。野党は反対ですよ、赤字国債は。社会党はもうはっきり反対を決議しましたから、そんな簡単に特例法は通らないですよ、大蔵委員会は。だとしたらどうするかという対案を、こういう方法がありそうだ、あれがありそうだということも考えるべきだよ。時期が遅くなったら大変な事態になるということをやはり認識しなければ、日本の政治権力そのものの移動、崩壊、そういうものにつながっていくのだから、もうちょっと真剣に取り組む必要があるのじゃないですか。大蔵大臣、一般論としてどう思いますか。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 冒頭にもお答え申し上げましたように、いま確かに大変むずかしい局面でございますので、まず第一に感覚を新たにいたしまして、厳しい姿勢で歳入歳出全体にわたっての見直しをやらなければならぬことは仰せのとおりでございまして、そういうことがなければ、特例措置はもとよりでございますけれども四条公債増発にいたしましても、なかなか国会の御了承が得られないというようなことも仰せのとおり心得ておるわけでございまして、真剣に努力いたしまして、正直にその成果を委員会を通じて訴えますので、その点につきましては十分御審議をいただき、お国のために御理解をいただきますならば、早急に御承認を仰ぎたいものと私は思っております。
  80. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行局長、いまの話の中の政府系三公庫から借りた金を都市銀行へ貯金させるとか、都市銀行からの借金を返させる具体的事例が私のところにあります。後で提供します。銀行局として、こういう金融情勢経済動向の中であるから、さようなことは絶対にするな、ないようにせよ、そういうことをやはり都市銀行にひとつ指示してもらいたいが、あなたの見解はどうですか。
  81. 田辺博通

    田辺説明員 具体的な事例についてぜひお話を聞かせていただきたいと思いますが、一般論といたしましては、現在は都市銀行サイドにおける資金需要は大分落ちついてまいっておると思います。一方におきまして、中小企業金融等につきましては政府関係金融機関に貸し出し申し込みが来ておりますけれども、この融資状況は、一般論といたしましては順調にいっている、こう思っております。  御指摘のような点がありとすれば、具体的な資金の使途といいますか、ある具体的な政府関係機関の貸し出した金が都市銀行の借金を返すために使われるというのはちょっと変だと思います。ただ、企業の全体の資金繰りの問題でございますから、一方においては、たとえば高利で借りているものを返済するのは中小企業のためにも結構なことでございます。間接的に必要なその資金は政府関係機関から出ていく、これは一概にとめるという必要はない、むしろ結構なことではないかと思います。なお、具体的な事例についてよく拝聴させていただきたいと思います。
  82. 武藤山治

    武藤(山)委員 持ち時間があと五分になりましたから、大臣に最後に見解を伺いますが、もう新聞に再三出ておりますし、きょうの新聞にも、これは日本経済新聞でありますが、朝日にもどこにも全部出ていたと思います。経団連が不況対策として自民首脳にいろいろ要望をした、その項目をちょっと申し上げますから、大臣、この中で第四次不況対策として取り上げるべきだなあと思う項目には、これは取り上げる、これはだめだと見解を表明してもらいたい。  一つは、公定歩合を七%にせよ、貸出金利を引き下げよ、東北、上越新幹線、東北、中央道高速道路予算を追加せよ、住宅建設の促進費用を追加せよ、船舶輸出の促進に補助金を出せ、下水道工事の追加予算をふやせ、個人所得税、法人税の減税を行って個人消費をふやせ、投資税額控除制度を創設せよ、受注工事損失準備金制度を創設せよ、これは船会社。以上の項目を経団連が中曽根幹事長、河本通産相らとの懇談などを通じて政府、日銀に対し実現を強く要請。  大蔵大臣としていまの項目の中で第四次不況対策としてやった方がいいなあと思う項目だけひとつ示してください。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、今度の補正予算で私どもいま各省ベースでどういう施策をどの程度考えるべきかという検討をいたしておるところでございますが、その目標は、先ほど武藤委員も言われたような今日の生産の状況、稼働の状況というようなことでは必ずしも満足すべきものじゃないじゃないか、これはある程度回復する必要があるのではなかろうか、それから雇用が悪化するというようなことはあってはならないことでございますので、そういうことを念頭に置いて、どういうアイテムをどの程度この際めんどうを見させていただくか、これはひとつ補正予算検討しようということでかかっておるわけでございますので、具体的にいまどのアイテムについてどうとマル・バツ式に私がお答え申し上げるわけにはまいりません。いま政府各省で検討中である、しばらくお待ちをいただきたいと思います。  それから第二に、公定歩合の点は日銀の専管事項でございますので、これは日銀総裁にお尋ねをいただきたいと思います。  それから貸出金利でございますが、過去の公定歩合三回の引き下げに追随いたしましての金利の引き下げ状況は、追随率は比較的順調にいっておるように承知いたしておりますけれども、今後ともなお努力をいたしたいと考えております。  それから個人所得税、法人税の減税その他税制上の措置、そういうものはいま補正予算では考えておりません。  その他、受注準備金制度というようなものもいま私の頭にはございません。
  84. 武藤山治

    武藤(山)委員 わかりました。  そうすると、いま大臣が触れないのは東北、上越新幹線、東北、中央道高速道路、これは政府は着工を解禁したわけですね。工事に着工するということを建設大臣は再三におわしていたけれども、閣議でも承認をしたのですか。  それにもう一つ、本四架橋とか東北新幹線とか高速自動車道の大型プロジェクトで景気浮揚しようというねらいで、これを解禁して予算を追加するのですか、いまの五十年度予算の範囲内でやれというゴーのサインなんですか、この大型プロジェクトは。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘になられましたような大型プロジェクトにつきましては検討を進めておるわけでございまして、既定予算で足りるものか、追加を必要とするものか、それが必要とすればどの程度追加を必要とするかという点がまさにいま検討中であるということでございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。検討の対象にしていることは事実でございます。
  86. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま財界が要望した項目の中で、国民的に利害関係が大変絡む問題が一つある。それは公定歩合の第四次の引き下げをもし行うとすれば、七%にした場合の預金金利との乖離をどうするか。政府は自民党ですから、恐らく財界の言い分の方が強くなって、結局預金金利の引き下げという圧力が強くなって、預金大衆がまた金利を下げられてばかをみる、こういう心配がある。そこで、大蔵省としては、仮に第四次公定歩合引き下げが行われても、大衆の預金金利は下げないで解決できるという手だてを考える、たとえばこの委員会議論された法人預金と個人預金との分離、法人預金については公定歩合が上下変動した場合は連動する、個人預金は連動しない、そういう新しい制度を考えるとか、第四次公定歩合の操作をめぐって大蔵省としていまから腰を据えて対策を考えておく必要があると私は思う。その点は新銀行局長の双肩にかかっている、大いに期待をいたすところであります。  それから、東北新幹線や大型プロジェクトを解禁してゴーのサインを出したという真意が私はよくわからない。もし追加に全然予算を組まないで、五十年度予算だけで少々着工しておけというならばまだ了解がつく。しかし、景気浮揚のためにこれに新財源をさらに追加するということに対しては私は反対であります。それよりも、先ほど冒頭に申し上げた五十年度予算全体の公共事業費を完全に消化するための地方財政に対する手当ての方を優先すべきである、優先順位を誤っては国民期待に反することになるというのが私の見解であります。したがって、大型プロジェクトで景気浮揚策を図るよりも、地方自治団体の財政を充実して公共事業を完全に消化する、そのことが有効需要を全国的に均てんさせる、公平化させる、さらに中小企業関係に潤いをもたらす、そういう方向から個人消費の全国的ばらまきにもなる、こういう意味で、私は大型プロジェクトのゴーのサインに対しては大変な疑問を持っている一人であります。  最後にそういう配慮をぜひ大蔵大臣に希望を申し上げ、大蔵大臣見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大型プロジェクトにつきましては、検討の対象にいたしておることは事実でございますが、既定予算で間に合わすのか追加財源を必要とするのか、それは検討中でございますので、ただいまの段階ではお答えするわけにはまいりません。しかし、いま御指摘のように、地方公共事業が財源難のために不消化に終わるというようなことは回避しなければなりませんので、その点についての財源措置につきましては、自治省と相談の上、よく工夫してまいりたいと考えております。  金利政策につきましては、新銀行局長からひとつお聞き取りをいただきたいと思います。
  88. 田辺博通

    田辺説明員 預金金利の問題でございますが、確かに御指摘のとおり、これ以上貸出金利を引き下げるというようなことをいたします場合には、やはりこれは物の道理として預金コスト、預金金利の問題に逢着せざるを得ないわけでございます。これを引き下げる必要があることになるわけでございます。それを避けるために、法人預金と個人預金とを分離して、法人預金についてのみ御質問の趣旨は恐らく下げる、こういうことではないかと思いますが、これは法人の問題は……(武藤(山)委員 「そうじゃないんだ、そういうことも研究しなさいということなんだ。要するに預金金利を下げるなということ」と呼ぶ)前国会で先生の御質問もございまして、私どもいろいろと検討はいたしてまいりました。なお続けてまいりたいと思いますが、現段階におきましては、どうもやはり同じお金、預金でございますので、その預金をする人の人格、法人であるか個人であるかによって差別をつけるということは実際問題として非常にむずかしいのでございます。(武藤(山)委員「そんなことはない、法人は安い金利で借りておるのだから」と呼ぶ)  実際にむずかしいのみならず、金融機関のいろいろな預金構成を見てまいりますと、大体、中小企業金融機関と言われるものは個人預金の比率が高くて、商業銀行でございます都市銀行等は預金構成として法人預金の率が高い、こういうことになっておりますのですが、仮に非常に、仮説の問題でございますが、法人預金を分離してそれを低利にするということをいたしましても、中小専門金融機関の預金コストはなかなか下がらない。それでは中小企業向けの貸し出しはもちろんのこと、貸出金利全般を下げることは非常にむずかしい、こういう難問に逢着しているわけでございます。
  89. 上村千一郎

    上村委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十七分開議
  90. 上村千一郎

    上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  91. 増本一彦

    ○増本委員 景気対策一つとしての公共事業の問題と、それから中小企業の関係について、限られた時間でありますので若干お伺いしたいと思います。  午前中からも議論がありましたけれども、公共事業の関係で上期までに七〇%の契約の進捗を図る、しかし特に地方自治体の関係でいくと、それの裏財源の保証がきわめて深刻な問題であるというような議論も午前中ございましたが、それに関連して若干まずお伺いしていきたいと思います。  ちょうど九月になりますと各地方議会もそれぞれ開かれて、補正予算審議をされる。いまそれぞれ補正予算の編成や検討の真っ最中である。しかし、いろいろ御承知のように法人二税の大幅な落ち込みがあるし、また、それに加えて個人住民税にしてもやはり伸びは非常に悪い、マイナスも出ているというような状況で、地方財政自身も大変な赤字が明白になってきているわけですね。いまそういう状況で各地方自治体とも深刻な問題になっているわけですが、まずここで公共事業の進捗の具体的な状況について建設省にお伺いをしておきたいのですが、先般伝えられるところによると、それから午前中主計局の方からもお話がありましたけれども、進捗状況が七月に入って非常に伸びが悪くなってきた。その一つの原因として、地方財政の面での裏負担が非常にむずかしくなってきているという状況もあるのではないかというようなお話田中さんからも言及されたように思うのですが、特に公共事業の中の直轄事業や公団を除いたいわゆる補助事業ですね、その中でも特に住民の生活に関連を持っているたとえば下水だとか、あるいは生活関連道路だとか、あるいは公団以外の住宅だとかいうようなものの具体的な進捗状況というのはどうなっているのか、まず建設省から数字でお示しいただきたいと思います。
  92. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 お答えします。  七月末現在におきます建設省所管の公共事業の契約状況を率だけで申し上げますと、全体で五十年度予算計画に対しまして五三・〇%、そのうち補助事業が四六・二%でございます。  御指摘の、この中で生活関連として特に住宅なり下水の関係はどうかということでございますが、七月末現在につきましては一応総トータルしか数字をいま出しておりませんので、六月末で申し上げますと、ただいま七月末として申し上げました補助事業全体四六・二%に対しまして、六月末は三六・八%であったわけでございますが、この中で住宅対策関係が三七・二%、それから下水と公園を一緒にいたしました都市計画関係で四三・六%という数字に相なっております。
  93. 増本一彦

    ○増本委員 住宅、下水、公園の七月の月間の各契約率というのはわかりますか。
  94. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 ただいま御答弁申し上げましたとおり、事業別の契約率につきましては六月末現在でしか現在のところつかまえておりませんので、七月末の事業別につきまして明確な数字を出すわけにいきませんが、ただいま総トータルで申し上げました七月末四六・二%と六月末三六・八%の差、九・四%程度はいずれも伸びておるんじゃないかと推計されます。
  95. 田中敬

    田中説明員 補足して申し上げます。建設省の方でお調べになりましたのと別途のルートで、私の方の決算系統で把握している数字がございますので、御説明申し上げます。  けさほども七月の契約率は七・二%で全体で五二・八%と申し上げましたが、七月の契約率七・二%の中で、住宅につきましては補助事業で一般会計公共事業費で八・七%、そういたしますと、住宅は累計で四五・九%になります。  それから、公園、下水道事業につきましては、一般会計の補助で七月で一一・二%、累計で五四・八%。  なお御参考までに、たとえば特別会計の道路等について申し上げますと、道路の補助は七月が九・九%で累計が四〇・五%、こういうふうな数字になっております。
  96. 増本一彦

    ○増本委員 全体等から見て、特に六月までは順調に伸びていたけれども七月に至って伸びが鈍化してきているという傾向はこの生活関連部門についてはどうなんですか、次長、言えるのですか言えないのですか。
  97. 田中敬

    田中説明員 生活関連部門をどこでとらえるかでございますけれども、目標率を大体七〇%に置いたといたしまして、四月−七月末の累計との差額を八月、九月で消化をしないと七〇%の目標達成はできないわけでございますが、そういたしました場合に、たとえばいまの住宅の補助事業をとってまいりました場合に四五・九%と申し上げましたので、残りが二四・一%になりますか、二四・一%を二カ月で消化するためには一カ月に一二%程度やらなくちゃならない、それが七月が八・七ということであるとすれば、その進捗率を少し上げないと七〇%にいかない。  そういう意味で、私はまだ先生の御質問の個々の事業について各月の進捗率をとっておりませんので、ここではっきり申し上げるわけにまいりませんけれども、一般的な傾向といたしまして、六月までの順調さに比べて七月はやや懸念が見られるのではないか。ただ、七月までの累計ベースでとってみればおおむね順調なベースである、こういう大数観察であろうと思います。
  98. 増本一彦

    ○増本委員 いま地方自治体の方では財政が大変困難になっているというところから、この裏財源が確実に保証されない限りは公共事業についても返上せざるを得ないとか、あるいはまた超過負担のついている事業については見送らざるを得ないというような意見も理事者の側から出ていることは、全国知事会での伝えられる発言その他でも、あるいは皆さん御自身が地方自治体の理事者と接触をされて、やはりお感じになっておられる点だと思うのですね。それで、七月がたとえば住宅で八・七%で、これから八月、九月でそれぞれ一二%以上という、いままでの月間の進捗率から見ると、二けたの大台に乗せてやっていくという点になりますと、これは裏負担との関係でも相当思い切った手を打たなければ、地方自治体そのものがこういう公共事業の契約の促進というものになかなか乗ってこれないという条件があるのではないかと思うのです。  自治省にお伺いしますけれども、いまの不況対策で公共事業を進めていくということとの関係で、いまの地方自治体の財政の実態から見て、たとえば住宅をとると、今後こういう裏負担を要する補助事業を二けたの大台に乗せていかなければ七〇%にいかぬという状態のようですけれども、それが地方自治体の側から見ると可能なのかどうか、その辺のところはどうなんですか。
  99. 高田信也

    ○高田説明員 御指摘のように、地方財政は大変苦しい時期を迎えておりまして、国税三税の減収に伴う地方交付税の減収、あるいは地方税の減収等が予測されるわけでございますから、私どもはこうした落ち込みが生じました場合に、これをこのまま放置しておきますならば、先生御指摘のように公共事業の消化、ひいては景気対策等についても重大な影響を及ぼすということで、こうした交付税なり地方税の落ち込みにつきましては、何らかの形で国において措置をするという方針で関係方面とも折衝をいたしております。したがいまして、地方財政計画上の運営が適正になされる限りにおきましては、公共事業の消化について、私どももできるだけ国の政策に準じて消化をしていただくように、地方団体に要求をしてまいりたいと思います。
  100. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、いまの状況から見ると、これは消化できるのですか。いまのお話だと、八月、九月で二けた台の大台に乗せなければ七〇%にいかないわけでしょう。ところが、いまもうすでにどこの都道府県をとっても現実に税収の落ち込みがあって、もう毎月毎月いわゆる調定をやっても、それでもたとえば法人二税は落ち込みが非常にひどいというような状況ですよ。そうすると、当初組んだ予算の範囲内でも、裏負担をつけてそれを受けてやっていく、あるいは事業について当初のとおり、たとえば前渡金を四〇%あるいは三〇%先に渡して事業をやってもらうというような場合でも、地方自治体自身はそれだけの財源を持っていなければ、毎月二けた台の大台で事業をどんどん消化していくといっても、それは私は非常に困難だというように思うのですがね。だから、いまの地方財政計画どおりに進めばこの七〇%は消化できるというのが自治省のお考えですか、そこのところを実はお伺いしたい。
  101. 高田信也

    ○高田説明員 地方公共団体の現在の財政状況、税収の状況等に非常な不安を持っております。先生御指摘のような問題もございまして、実は本日財政課長名の内簡で交付税あるいは地方税等の減収が生じます場合には国において何らかの措置をいたすということを地方団体に通知もいたしまして、できるだけ早急に大蔵当局とその話を詰めてまいりたいということでございます。
  102. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、この税収の不足額ですが、たとえば神奈川県を例にとりますと、六月の調定の結果、法人二税で前年対比七八%、そのぐらいに落ち込んでいるというようなことが言われていますし、全国的に見ても五月あるいは六月、皆それぞれいろいろ検討をされてみても、非常な落ち込みである、二〇%をはるかに超える落ち込みになっておるというのがいまの実態だと思うのですね。こういういまの推移で、九月の決算期はもちろんありますけれども、いまの財政危機と言われる中で地方税収の不足額が大体どのぐらいだと自治省では見込まれておられるのですか。
  103. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 御質問にございました五十年度の地方税収入の最終の締めはどういうふうになるかということにつきましては、現在まだ年度を開始した間もない時点でございまして、現段階で確たることを申し上げることは非常に困難であるわけでございます。ただ、いまお話にございましたように、都道府県税の関係をとりましても、その大宗を占めます法人関係税につきまして五月末におきます調定額を前年対比で比べて見ますと、やはりおおむね八〇%程度状況になっておるというような状況になっておりまして、いまの段階で今後どういうふうになっていくかということは確たることは申し上げられませんが、従来のような形で自然増収期待することはもちろん困難でございますし、相当程度の減収というものが出てくるんではないかというふうに私ども考えております。
  104. 増本一彦

    ○増本委員 大体五月の調定で二〇%落ち込んでいる、前年対比八〇%だということで勘定すると、逆算しますと、大ざっぱに言ってほぼ一兆円ぐらいというのは当然出てきますね、ほかのでこぼこもありますけれども。  そういう中で、実は午前中の質疑の中でもありましたように、交付税の減額が三税の減収のはね返りとして当然出てくる。しかし大臣は、当初予算は地方財政の点についても忠実に履行していきたい、こういうお話もありましたけれども、これはいわゆる地方交付税法そのまま地でいくというようなことになると、当然また自治体は落ち込み分だけ減額ではね返りを受けなくちゃならないという勘定になりますね。もうすでに地方交付税は二回目の支払いが終わっているわけですね、三回目が九月だという時期を迎えてこれにどういうように実際に対処なさるおつもりなのか、この具体的な検討の方向ですね、まだ決まっていなければこういうようにしたいというその手だてをお伺いしたいと思うのです。  初めに、自治省の方ではどういう手だてを実は考えておるのか、そうして国の財政大蔵省としては具体的にどういう手だてになるのか、両方からお伺いしたいと思います。
  105. 高田信也

    ○高田説明員 午前中もお話のございました国税三税の落ち込みに伴います地方交付税の減収額については、現在のところまだ私どもはっきりとした的確な数字をつかみがねております。午前中お話も出ましたように、国税三税の落ち込みが仮に一〇%であるとするならば、地方交付税の減収額は四千四百億円程度になるという仮の数字を申し上げたわけでございます。  私どもは地方財政計画上計画されました地方交付税につきましては、これは何らかの形で国の責任において措置をするということを大臣国会において答弁をされております。どういう方法で措置をするかという具体的な方途につきましては、いろいろな方法があるわけでございます。現在財政当局と御相談をいたしておる段階でございます。
  106. 田中敬

    田中説明員 自治省から御説明がございましたとおりに、まだ実際の減収額がはっきりつかめておりませんので、どのようにすべきかその具体的細目もまだ詰まっておりませんが、私どもとして考えておりますのは、三税の減収に伴う地方交付税の減額にいかに対応するか、それが一つでございます。それから二番目は地方税の減収額、いま先生は約一兆に近いであろうという数字を申されましたが、それをどういうふうにするかというのが二番目の問題でございます。  それから、歳出面につきましては、給与改定に伴う所要財源というものが地方公共団体にもあるわけでございまして、この財源措置をどうするかという問題、それから先の問題といたしましては、けさほど大蔵大臣から申し上げましたとおり、もし公共事業の追加というようなことをするとした場合における地方の裏負担財源対策をどうするかという問題、これらが検討すべき諸問題であろうかと思いますが、これをどういうふうにいたしますかにつきましては自治省ともまだ細部は詰めておりませんが、過去昭和四十年度あるいは昭和四十六年度に同じような事態が起きておりますので、そのときの事例等を参考にしながら検討してまいりたいと思います。
  107. 増本一彦

    ○増本委員 主税局長にお伺いしますけれども、たしか六月の税収が大体マイナス五・八%だったと思いますね。あるいはもっと近い数字がございましたら、それに基づいて、いわゆる対象となる一三税、所得税、法人税、酒税の現在の落ち込み分が大体そのまま仮に推移するとしますと、三税でどのくらいの落ち込みになるのでしょうか。
  108. 大倉眞隆

    大倉説明員 結論的に申しますと、なかなか三税の年度中の減収総額というものがつかみにくうございまして、と申しますのは、増本委員承知のとおり、九月決算、これが大物でございます。それから申告所得税、これは何ともいま見当のつけようがないということでございますので、三税でどうなるか。もう一つ酒がどうなりますかということがございまして……(増本委員「酒はだめだよ」と呼ぶ)ですから、三税で幾らになるかということは非常に見当がつけにくい。  ただ、全体の感じからいたしまして、歳入が当初の予想に比べて減る。そのうちのほとんど大部分は法人税と所得税ということで考えるといたしますれば、全体が仮に二割足りないという推計をすればこうなると先ほど自治省がおっしゃった。二割程度足りないかもしれないという感じは、そうえらく仮定的な数字だということはないと思います。
  109. 増本一彦

    ○増本委員 二〇%ぐらいは現実性があると、こういうお話ですか。
  110. 大倉眞隆

    大倉説明員 そういう感じだと思います。
  111. 増本一彦

    ○増本委員 いわゆる地方交付税の特別会計が当初予算ではほぼ四兆四千億でございますね。そのうちの大体二〇%ぐらいは現実の数字としてへこむというのが、平たく言えば主税局の見解であるということが一つ明らかになるわけですね。そうでしょう。違いますか。
  112. 大倉眞隆

    大倉説明員 くどくて恐縮でございますが、経済見通しの改定を待ちまして税目ごとに積み上げをいたしてみませんと、各税のそれぞれの見通しというのはまだ非常につけにくいので、けさほど私がお答えしましたのも、そう言いながらも仮に達観として全体の大きさを見れば、これくらいになる危険がございますということを申し上げておるわけで、いまの時点で二〇%程度三税が減るかもしれないということは、あながち非現実的でないというところまで申し上げておるわけでございまして、補正のときに大体その程度になるでしょうと言うところまでの自信はまだございません。
  113. 増本一彦

    ○増本委員 それはいいですよ。これ以上詰めようと思っても、皆さんの方で数字的に明らかにされないわけですからね。  しかし、財政危機といういまの地方財政も含めての危機に対応する対策としては、そういう非現実的でないというそこのところが一応一つの現実性を持つんだったら、いわばそれがもっと最悪になるかもしれぬけれども、ともかく蓋然性はそこいらのところにあるというお話ならば、そこを出発点にした対策を立てて、そこで考えていく、それに向かって検討を進めて手だてもとっていくということでなくちゃならないし、それがそれよりももっと少なければそれは幸いだということなんで、だから、そういう意味で考えれば、四兆四千億のうちの二〇%はいまの事態で考えられる地方交付税の減収になる。そうすると、八千八百億という勘定になりますね、一〇%で四千四百億というお話だから。この一応考えられる最悪の事態が八千八百億だと、これをまるまる減額してしまうというわけにはいままでのお話のとおりいかない。大臣は当初予算は忠実に履行をしていきたいというお話ですから、それは当然ないと思います。  しかし、具体的にこの八千八百億の財源を地方自治体の方にどのようにして保証していくのか。かつて昭和四十年度でしたか、減収があったけれども地方特例交付金というものを出しましたね。しかし、そのときには、所定の財源がともかくあったからそれが出せた。今度の場合には、その点はどうなんでしょう。非常に厳しいということになるのでしょう。そうすると、やはりほかの、第二予算財源となる財投を含めた問題で考えるのか。たとえば資金運用部資金などで考えるのか。そういう面について具体的な検討、方策というものはどういう方向でなされておるのか、その点はひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのです。  というのは、各地方自治体とも補正予算の編成期にいま入っている中で、これからの交付税が具体的にどうなるのかということとの絡みというのは非常に大事な問題で、その財源保証がはっきりしないと、単に当初予算どおり、地方財政計画のとおりやりますから安心して補正予算を組んでくださいと言ったって、もうその点についてはことしの最初のスタートのときから苦い思いをしているわけですね。たとえば、地方財政計画は七%のふくらみで組みましょうということで組んで、大体ほかの当初予算も、各地方自治体とも七%程度のふくらみを持たせて予算編成をしちゃったわけですよ。ところが、財源は法人二税だけでも二〇%も落ち込んでいる。どうにもならない。選挙のあった都道府県などでは、骨格予算を組んだけれども、その骨格予算のあばら骨の二本、三本また取らなければ実際にはできないというような状態も生まれている。やはり国が義務的に出す地方交付税については、具体的にこういう手だても含めて検討保証するから大丈夫だというところがはっきりしない限りは、私は地方自治体のいまの現状を見て、国としていまの時点で責任を果たすということにならないというように思うのですが、いかがですか。
  114. 田中敬

    田中説明員 その点につきまして、まさに自治省といま詰めておる段階でございまして、自治省からまだ細目の対象の御要求をいただいておりません。大まかな方向は希望という形で私ども承知はいたしておりますけれども、ようやくいまから具体的な詰めに入ろうという段階でございまして、何せ御承知のように、交付税が減額になりましても、国の一般財源赤字公債を出さなくてはならないかというような情勢でございますので、とても一般財源でこれをまるまる補てんするというようなことはかなわないことでございますので、ひとつどういうふうにあんばいしていくかということについて、いまようやく検討に入った段階でございまして、その点の解決策につきましては、いましばらく御猶予いただきたいと思います。
  115. 増本一彦

    ○増本委員 けさの日本経済新聞を見ますと、自治省の方は、地方交付税を減らさぬ、資金運用部資金を導入して総枠は予算どおり執行する、こういうように出ていますけれども、こういう方針というのは自治省としては決めたのですか。
  116. 高田信也

    ○高田説明員 先ほどもお話を申し上げましたように、自治省といたしましては、地方財政計画上計上された地方交付税につきましては、国において責任をもって措置をするということをたびたび表明をいたしておるわけでございます。本日も、財政課長名の内簡で地方団体にその旨を連絡したわけでございます。そういった基本的な考え方につきましては、内々財政当局お話し合いをいたしておるわけでございます。  ただ、具体的にどういう方向で減収補てんをするかということにつきましては、四十年度あるいは四十六年度等、一般会計で補てんをする方法、あるいは資金運用部会計から借り入れる方法といった過去の先例もございますので、なお最近の国庫財政状況等とも絡み合わせながら、今後大蔵当局と折衝を詰めてまいりたいということでございます。
  117. 増本一彦

    ○増本委員 そうすると、主計局の方は、この資金運用部資金を投入するということも一つの方法としては十分考えられることであるというように承っておいてよろしいわけですか。
  118. 田中敬

    田中説明員 それも補てん策の一つの方法として私どもも運用部の方にお願いをしなくてはならないかというふうに考えておりますけれども、運用部の方におきましても、今後資金運用部資金への追加財政需要というようなものが相当多額に予想されますので、それとの絡み合いもございますので、これはまたこれで大蔵省としてさらに詰めていきたいと思います。
  119. 増本一彦

    ○増本委員 ではひとつ理財局の方から、いま議論されている問題、資金運用部資金八千八百億という話もいま出ておるわけですが、その点を含めていまの状況と、それからそういう手だてが具体的にとり得るのかどうか、郵便貯金の伸びが鈍くなってきたとかいろいろ問題がまた出てきているようですが、ひとつお考えを伺っておきましょう。
  120. 松川道哉

    松川説明員 最近の景気の現況からいたしまして、税収の欠陥並びに財政運営が非常にむずかしくなっていることが国のみならず地方公共団体においても同様の状況にあるということは、私ども理解いたしております。そして、具体的にどのようなことをどうするかということにつきましては、あるいは担当者の間で話が進んでおるのかもしれませんが、私自身としてはまだ聞いておりません。  それから、先ほど来いろいろ御議論を伺っておりますと、地方の財政につきましていろいろめんどうを見るという手段が、あるいは国の一般会計あるいは運用部という御議論で、その二つしかないかのような響きもあるのでございますが、過去の四十年度、そしてまた四十六年度の前例を見ますと、たとえば交付税の減収につきましては、四十六年度には特例交付金を交付いたしましたり、運用部からの借り入れをいたしましたが、地方税そのものの減収につきましては、地方債を増額するとか財政調整積立金を取り崩すとかいったような各般の手段が用いられておるわけでございます。したがいまして、今回当面しております事態の解決に当たりましても、自治省と私ども主計局並びに理財局との間の三者の話し合いの過程におきましては、その財源調達の方法は限られたものではなく、いろいろ考えられるものすべてを考えながら、現在の時点において何がベストであるかということを判断してまいりたいと思っております。  なお、一言敷衍いたしますれば、ただいま増本委員も御指摘のように、運用部も四十六年ないしはずっとさかのぼって四十年のころと比べますと、相当使命が大きくなってきておりまして、あちこちにめんどうを見なければならない広い意味財政需要もございます。そしてまた一方、その原資となる郵便貯金の動向も、現在のところ余り定かではございません。そういったことから、この全体の処理につきましては、自治省と十分協議をしながら、何が適切であるかということを判断してまいりたいと思っております。
  121. 増本一彦

    ○増本委員 大体、地方議会の方は中旬からどこでも始まるんですね。いま議会での最も大きい問題は、補正予算の具体的な財源をどうするかという問題ですね。検討されるのは結構ですけれども、地方財政計画そのものは具体的にはもう今日の経済情勢のもとで破綻してしまっているわけでしょう。二〇%ぐらいの落ち込みになるというようなことになっているわけですから、そのもとでいろいろ検討をされる。しかも、自治省と主計局との間では事務レベルでいろいろ相談があるらしいけれども、運用部がもう一つの手だと言いながら、理財局にはまだ話がない。一体いつそれについてのはっきりした手だて見通しができるんですか。これは補正予算のときでなければ、それまでは地方財政当局もあるいは地方議会のサイドでもそれがわからないということになるんですか。その辺はどうなんでしょうか。
  122. 田中敬

    田中説明員 補正予算提出時期いかんにもよりますが、私どもは九月の中旬までに経済見通しをはっきりさせた上で補正予算の骨組みを検討したい、提出の時期は別といたしまして。そういう意味では、この問題がはっきりいたしますのは九月の中旬以降になろうかと存じます。
  123. 増本一彦

    ○増本委員 大臣、退屈なようなんで一つ伺いますが、いまいろいろ議論をやりとりしまして、問題は、地方議会の方も九月の中旬に開かれて補正予算審議に入る。そのときの財源の裏づけの一つの問題として、やはり地方交付税が具体的にどうなるのか、三税の落ち込みのはね返りをどういうようにして国が救済をしてくれるのか。この点についての計画の方は、地方議会が始まる九月中旬に経済見通しができて補正予算の骨格についての本格的な取り組みが始まる。こういうテンポですから、これでは、ただ大臣が、当初予算のとおり忠実に実行しますとか、あるいは自治大臣も同趣旨のことを言っておられるようなことだけでは困るわけなんです。  もう一歩突っ込んだ具体的手だてをどうするというようなことを含めてきっちりと保証をつけてあげなければ、せっかく公共事業で景気浮揚させようとか、あるいは住宅、下水、公園というような事業もこの中でピッチを上げて進めていこうというようなこと自身が結局は空回りをしてしまうということにもなるわけで、その点についても、大臣としては地方財政、いろいろ地方自治体の人たちも含めて地域住民あるいは国民に対して、どういう面でいま地方財政の具体的な危機に対する対応をおやりになるというお考えなのか、その点をひとつはっきりさせてください。
  124. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いつもの年でありましたら、秋深くなりまして自然増収見当がついてまいりますし、歳入歳出のいろいろな項目につきましても漸次固まってまいりまして補正を考えるというような手順でやってよかったわけです。ところが、ことしは、あなたが御指摘のように、中央地方を通じまして大変巨額の歳入不足が予想される年でございますので、私どもとしてはできるだけ早く仰せのとおり対策を明らかにする責任を感じておるわけでございます。さればこそ臨時国会もできるだけ早めに召集をお願いするようにし、補正予算も年が押し詰まってというのではなくて、できるだけ秋口早目に出す用意をしようということで、せっかく準備をいたしておるわけでございます。  すなわち、仰せのような方向で政府は対応策を促進いたしておるわけでございます。しかし年度が始まりまして、四カ月、五カ月というときでございます。ことし決めました予算が中央にもありますし、地方にもあるわけでございまして、だからいまから後どうしてくれるのだという気持ちはわかりますけれども、いまある予算を執行いたしまして、もくろんだ事業をできるだけ忠実に運んでいただくということが私はいまの仕事じゃないかと思うのでございます。  歳入不足につきましての対応策ということにつきましては、たびたび政府も申しておるのでございますが、既定の計画はできるだけこれを損ねないようにやっていただくに足るだけの財源手当は工面いたすつもりでございますと言っておるのですから、政府を信頼して仕事を進めていただくように希望したいと思います。
  125. 増本一彦

    ○増本委員 少なくとも大臣にお願いしたいのは、この九月の中旬以降、あるいは補正予算が具体的に出るまでは、実際には交付税の問題にしても中身がはっきりしない、政府の対応する手だてが具体的にわからない、こういうことのないように、少なくとももっと検討を早め、そしてこれでいくんだということの姿形だけは、まず事前にやはりはっきりさせていただくということが、これはもう最低限のことだと思うのですね。地方財政が危機だ、政府も何とかする、しかし、その政策的な手だてはまだ明らかでない。これで地方財政の危機を乗り切れと言ったって、これでは乗り切りようがないじゃないですか。せめてそういうところでピッチを上げて、具体的に事前にはっきりさせるというようなことについての強力な指導力だけは発揮していただきたいというように思うのですが、それはよろしいですか。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり、そういう方向で全力を挙げたいと思っておりまするし、私の希望でございますが、国会の方も御協力を願いたいと思います。
  127. 増本一彦

    ○増本委員 それからもう一つ、減収補てん債ですが、これは結局、交付税がそのとおり出るとしても、法人二税を中心にした落ち込みがある。これをどうしても補てんしなくちゃならぬ。ところが、どうもいろいろ地方自治体から聞くところによりますと、法人二税の落ち込み分だけは見るけれどもほかの分については見ない、こういう方針に自治省の方ではなっているやに思われるのですが、そういうことなんですか。  この点は地方税収のすべてを見て、その全体の補てんを考えるということでやってあげなければ、これは幾ら地方交付税がそのとおり行っても、あとは二〇%ぐらい落ち込んでいるこの法人二税の減収補てん債だけということになると、やはりあとの、たとえば神奈川県でも二百億以上の赤字が出てこれをどうするかという問題があるわけですね。こういう点はどういうお考えで、どういうようにやっていくのか、まずこの点をひとつ明確にしていただきたい。
  128. 高田信也

    ○高田説明員 先生おっしゃいましたように、減収補てん債の対象を法人関係税だけにしぼっておるのではないかという御質問でございますが、私ども、まだそういう方針は決めておりません。  御案内のように、地方自治関係六団体からは全税目についての減収補てんを強く要望いたしております。私どもも、個人事業税あるいは住民税の所得割り等についても減収が生じた場合にどうするかということについて、法人関係での減収補てんとあわせて目下検討いたしておるところでございます。
  129. 増本一彦

    ○増本委員 では、地方税収の全体を見てその補てんを考える、こういうように承っておいてよろしいですね。
  130. 高田信也

    ○高田説明員 はい。
  131. 増本一彦

    ○増本委員 それではあと、はしょっちゃいますけれども銀行局長、私はこれまでにこの委員会などでも何回か申しましたが、いわゆる中小企業金融公庫それから国民金融公庫の一般貸付や普通貸付の金利、これが九・四%で依然として高い。地方自治体がやっている制度融資が、あれは一般会計のお金を使いますから大体八%ぐらいだ。だからどうしても零細企業の人たちは、先に地方自治体の制度融資を借りて、それでどうしてもやむを得ない場合に国民金融公庫などに行くという、こういう現実なんですね。  ここは公定歩合との関係はないんだということはそのとおりなんですけれども、長期の貸付金の金利も下げるという動きもあるし、この際、やはり一番いま経済の中で困っておられる、一番しわ寄せを受けている中小企業の金利負担を本当に軽減するという上から、やはり一般貸付、普通貸付の金利九・四%というのは、ひとつ大きく引き下げるというようなところに英断をふるうべきだというように思うのですが、そういうお考えはありますか。また、その点に移行していく見通しについてはどういうようにお考えなのかを承って終わりたいと思います。
  132. 田辺博通

    田辺説明員 中小企業金融向けの政府関係機関の普通貸付あるいは一般貸付のいわゆる基準金利は、御案内のとおり現在九・四%でございますが、この一種の基準金利の考え方は、すでに御案内のように、他の市中金利の動きと、それからまた政府関係機関そのものの資金コスト、この両方をにらみ合わせながら考えていかなければならない問題だと思います。  これは貸し出しの性質上、短期の金利の動きにすぐ影響を受けるというようなものではございませんが、恐らく御指摘になりましたのは、民間の長期金融機関のプライムレートがこの八月から 〇・二ポイント下がりまして、九・九%から九・七%になった。これに応じまして、開発銀行等のいわゆる基準金利も〇・二%下げたところでございます。ただ、中小関係のこの基準金利といいますものも、過去の経緯から見ますると、かつては長期信用銀行のプライムレートよりも高い時代がございました。それから四十六、七年ごろまでは同列になっておったわけでございますが、その後市中の金利が上がってまいりましたけれども、中小関係の基準金利につきましては、その上げ幅を極力下げてまいりました。したがって、現在は逆転といいますか、市中のプライムレートよりは低いという水準になっております。その差が御案内のとおり〇・三になっておるわけでございますが、このバランスは私どもとしては現在、適当なバランスではないかと思います。  さらにこれを引き下げようとする場合には、何と申しましても、政府関係機関の資金コストの問題に突き当たるわけでございまして、これは結局、運用部からの資金供与の金利に関係がある、それは結局また、原資でありますところの郵便貯金等の金利に関係がある、こういうややこしい状態になっておりますので、現在のところ、この中小金融機関の普通貸付の基準金利というものを動かすという意思はございません。
  133. 増本一彦

    ○増本委員 時間がないので終わりますけれども、これはひとつやはり本当に検討していただく事項だと思いますね。たとえば、それは運用部の資金を使っておられるわけですけれども、ここ長い間資本金そのものがふえていないというようなところからコストのかからない金が入っていない、こういうところが、今日ずっと金利そのものが九・四というぐあいに非常に高くなってきているという実態もあるわけで、だから、もちろん一般会計等からの出資を含めたものも考えなければいけないわけだけれども、しかしそういう中で、やはりいま大企業も金利負担を軽減しろと、こう言っているわけでしょう。財界の要望の中で一番先に出てくる問題ですよね。それもあるし、長期のあれについては〇、二下がっていて、政府金融機関なども開銀などについては下げているという問題もあるわけですね。  それで、一番ひずみを受けている中小企業のこの金利だけがいつまでも下げないということでは、これは政府金融機関全体に占めるシェアから見たら国民金融公庫にしても中小企業金融公庫にしても非常に小さいわけですから、いわゆる全体のプライムレートとの関係で与える影響というのはきわめて小さいはずだし、だから、逆転していると言ったって、ここはもう政策的な面を先に優先さして、中小企業の保護とか擁護とかいうことを前面にひとつ考えていただくべきではないかというように思いますが、時間がありませんので、これで終わります。
  134. 上村千一郎

    上村委員長 広沢直樹君。
  135. 広沢直樹

    ○広沢委員 若干の時間をいただきましたので、当面している問題について、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  けさから問題になっております景気対策中心として、いわゆる不況についてどういうふうな具体的対策を講じていくか、あるいはまた物価対策、これはけさは出ておりませんけれども、やはり物価対策もいままでの最大の問題でありましたし、まだまだ予断を許さないと思いますのでそういった問題、それからさらには、当面の大きな問題になっております財政のこれからの運営の問題、こういった当面する重大な問題が出てきているわけでありますが、最近の報道を見ておりますと、意識的に大蔵省が言っているのか、あるいはそれぞれの機関が予測をしているのか、いずれにいたしましても、いろいろな角度から論評がなされているわけです。  私は、きょうは、そうい?たことでその問題を取り上げながら大蔵省の考え方を聞かしていただく、ちょうどきょうは大蔵大臣が出席でありますから、大臣の所見をずっと承ってまいろう、こういうわけでございますので、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。  そこで、まず景気対策についてでありますが、景気回復が予想以上におくれている。これは当初から、ことしの初めも、大体第一・四半期には底入れをしてそれから回復に向かうであろう、こう予測されておったものが相当おくれておりますし、あるいは第二・四半期にあっても、先ほどのお話にもありましたように、経済指標を見ましてもまだはかばかしく進んでいない。そこで、さらにそれをバックアップする意味で第四次の対策を立てなければならないであろうということが言われておるわけでありますが、その景気回復が予想以上におくれている原因を端的にどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、大臣に所見を承りたいと思います。
  136. 大平正芳

    ○大平国務大臣 経済活動の根本は、いろいろな要素がございますけれども、まず一つには輸出でございます。輸出は、ことしの四月までは輸出、輸入ともふえてまいりましたけれども、五月から急激に減少してまいりまして、貿易収支が縮小均衡の姿になっておりまして、いままでのところ、先行指標を見ましても、これが伸長する希望がにわかに持てません。それが一つ。  それから第二は、内需の問題では、投資、消費、そういったものに対して国民の反応がきわめて慎重であるということでございます。経済力の半分は国民の消費でございますけれども、これが一向さえてこないわけでございまして、国民は今日の経済に対して、そして経済を取り巻くいろいろな制約条件に対しまして、非常に鋭敏な反応を示しておると思うのであります。いわんや投資に対しましてはきわめて消極的である、笛吹けども踊らずというのがいまの姿であろうと思うのでありまして、従来でございますならば、設備投資を促すというようなところから景気回復の糸口がつかめたわけでございますけれども、いまはそういう状況ではないように思うのでありまして、ただ唯一の活路が財政に求められておるわけでございます。  したがって、財政歳入の大きな不足にかかわらず、私が先ほども説明しておりますとおり、既定計画どおり忠実に実行いたしておりまするし、今度若干また補正予算も考えておるわけでございます。したがって、この方面から何がしかの回復の糸口をつかみたいということでございますので、回復がおくれておる主たる原因は、いろいろな経済要素が目下のところは非常に落ちつき払っておるわけでございまして、それをにわかに上向きに転ずる契機がつかめないでおるためであると思います。
  137. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常に景気は停滞ぎみである、おっしゃるとおりでありますが、特に各業界においても国民が望んでいるのは、一体こういう低迷からいつ脱却するんだろうか、これが最大の焦点なんです。  そこで、これまでの対策を見ておりますと、当然これは狂乱物価の後でありますから物価に最重点を置かなければならないということはもう申すまでもないし、私どももそれは強く主張してきたと同時に、やはり深刻化していく不況対策も、具体的な目標を掲げて、それに対する具体的な方途というものを示さなければならぬ。それが第一次から始まって、いま第三次不況対策まで来ているわけですが、一方、金融関係におきましても、御存じのように公定歩合を漸次三回にわたって引き下げてきた、こういうことですね。  そこで、どうも私はその過程から見ますと、一般の論調にもありますとおり、金融政策においても非常に及び腰といいますか、徐々にという形をとってきたんではないか。それからやはり不況対策にしても公共事業を中心にやっておりますが、これは公共事業というのは一部分では非常に景気に対する刺激的効果も出てくるんではないかと思いますが、部分的であって、総体的に出てくるかどうか。やはりそういった面のことから考えてみますと、どうも私は景気に対して政策が後追い的になってきたんではないかという気がするのです。それで結局、それぞれの金融政策にせよ財政政策にせよ、対策が打ち出されると同時に、その内容が発表されるとすぐにその次の段階景気対策をもうすでに求める声が上がってきているという実態から考えてみましても、そういうことが言えると思うのです。  そこで、恐らく今度の第四次対策、これは財政もその方向で考えているということでありますし、もちろんそれは金融政策、公定歩合の操作についてもそのことが言えるのではないか。またそういう予測がなされているわけですけれども、そのためにはやはりどの時点でどういうふうに具体的に行っていくか。ですから、ここでもう底割れじゃなくて景気は上向きになっていくんだ、それは前のような急速な上昇はだれが考えても、私も過去にも申し上げたとおり、そういうことはない。徐々にしか上がっていかないだろうということはもう定説です。  しかし、それにしても、やはり国民あるいはそれぞれの業界が求めているその方向に対して具体的な示唆を与える、ここまでいけばこうなるんだ、そのためには具体的にこういう対策を講じているんだということを、この際明確に示すべきではないだろうかと思うのですね。やった後から、これじゃどうもならぬ、次の対策を早く打ってくれというようなことでは、これはやはり後追い的であって、ずるずると今日まで予想以上に景気回復がおくれる、そういう結果を招いたと思うのですが、その点に対する所感はいかがですか。
  138. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまの経済状況というのは、かつて経験したことのないむずかしい状況であると思います。つまり一つの大規模な非常なスタグフレーションというような状態なんでありまして、インフレーションも需要からくるものばかりでなく、コストプッシュのインフレ要因も強いという二面性を持っておるわけでございまして、したがって各国の政府は、インフレ対策と同時に景気対策もやらなければいかぬというような二正面作戦を余儀なくされたわけでありまして、わが国もその例外ではございません。  その場合、これまでどちらかというと需要を抑えるという意味で総需要抑制策というのをやりまして、物価政策に傾斜した施策を行ってまいったわけでございまして、景気政策が立ちおくれてきたということは御指摘のとおりでございまして、それまでやってまいる勇気がなかなか出てこなかったわけでございます。しかし、ようやく先ほども申しましたように物価が落ちついてまいったわけでございまして、景気政策にもっと傾斜した施策がとれる状況になってきたことは事実でございます。したがって、今回は補正予算を通じて景気対策もある程度考えていこうというようになったことは、わが国の政策的な進展であったと私は思うのであります。したがって国民は、非常な気迷い状態でございましたけれども、ようやく景気回復という点については腰を据えてかかっていけるようになってきたと期待されていると思います。  しかしながら、この回復ということは、昔のような状態に回復するものでないということについても私は国民に十分理解していただいていると思うのでありまして、わが国の内外の厳しい制約条件というものは容易ならぬものでございますので、昔のように回復できるはずはございません。広沢さんの言われたように、ある程度の目覚ましい回復期待できないと思います。  したがって、けさ方から私が申し上げておりますように、一番大事な経済の不安、雇用の不安というようなものが起こらないようにするにはどの程度のところまで回復を可能にするか、そうして経済の新しい均衡をインフレを起こすことなく実現できるかということがこれからのわれわれの仕事であろうと思うのでありまして、そんなに高い天井でないと私は考えておるわけでございますが、それは国民自体もその点は覚悟していただいておるように私は思うのであります。
  139. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、先ほどもお話がありましたけれども、第四次対策は大蔵大臣としては補正予算で考えていきたい、これはそうでしょう。財源の裏づけを考えなければこれはできないからそういうことになるのかもしれませんが、やはり補正予算提出時期とこれは大きな関係が出てくるんではないかと思うわけです。やはり先ほど申し上げましたように、それが非常におくれるということになればまた後追いみたいなかっこうになるんじゃないか、また第五次を考えなければならぬようになるということになったんでは、これはまず信頼がなくなると思うのです。  そういうような関係から考えますと、大体補正予算提出できるような時期というのはどの辺を考えているのか。大体九月決算が、先ほど主税局長お話では、実際確定的になるのは十一月ごろになるというお話でございましたね。そこまでいくと、ちょっとこれはおくれ過ぎるのではないかと思うのです。やはり九月の中ごろに経済見通しを変えた時点、しかし経済見通しを変えると言っても、税収見込みも立てなければなりませんし、その後のあらゆる経済指標見直してみなければなりません。これはあくまで予想になるだろうと思うのですけれども、その点をはっきりしないと、この第四次の景気対策もぼけてくるのじゃないかと思うのですが、この補正予算提出時期はどうなのか。もしもおくれる場合は、これは第四次対策は前もって別個にお打ちになる考え方があるのかどうか、その点、簡単にお願いします。
  140. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まず第一に、政府経済見通しが九月の半ばごろまでに見当がつきますから、それをまず踏まえて歳入見積もり見直してみなければならないと思います。それから主税局長が言うように、九月決算状況全部でなくても、ある程度その趨勢はその時点で把握し得る限りのものは把握しておかなければいかぬと思っております。  それから、酒とたばこのことを申し上げて恐縮でございますけれども、それから郵便料金、これは五千億余りの増収期待しておったのが、まだ国会の御都合で実現せずにおるわけでございまして、これをいつから実現させていただくかという見当をつけなければいかぬと思います。できたら野党と話をして、いつごろまでに仕上げるからということのお約束をいただければいいわけなんですが、それができないとなれば、政府の方で見当をつけておかなければいかぬと思うのでありまして、まずこれが補正予算策定の前提の一つでございます。  人事院勧告はすでに出たわけでございますから、これをどのように処理いたしますか、これは方針を決めたら、それは補正予算に組み入れるわけでございます。  ことしは災害が例年より若干多いようでございます。しかしこれは、われわれ予備費も持っておりますから、若干の狂いがございましてもよろしいかと思いますけれども、その他の補正要因は大したことございませんので、そういったものを踏まえて補正予算の肉づけをやってまいるということでございます。  したがって、私といたしましては、できるだけ早く御審議を、十月に入って御審議をいただくようにいたしたいと思っておるわけでございますけれども、そういった諸条件がいつまでに整ってまいりますか、自信を持った数字をいつまでに手に入れることができるか、そのあたりはまだ完全に自信を持って申し上げることができないわけでございますが、状況状況だけに、できるだけ早く準備は急がなければならないと考えております。
  141. 広沢直樹

    ○広沢委員 第四次不況対策の内容については、けさの新聞の一面に大きく載っておりましたけれども、これは具体的に決まったのかどうか知りません。それをざっと見ましても、やはり第一次、第二次、第三次と続けてきたいわゆる公共事業を増額していこう、こういうような方針のようですし、あるいは住宅関係といった方へのいままでと同じような考え方でのいわゆる対策のように思えるんです。  私はこれがやはり不況対策のポイントになるだろうと考えておりますのは、大臣も先ほどおっしゃいましたように、この原因の一つに輸出入の関係もある。内需においては、国内の投資だとかあるいは消費支出、これが非常な大きなウエートを占めている。これがなかなか思ったとおりいかないのだ、こうおっしゃるのですね。ならば、具体的に国内の消費支出を上げていくのはどうしたらいいのか、あるいはその投資活動が活発に行われるためには具体的にどういうふうな具体策をここで講じなければならないか、これが本当の不況対策になると思うのです。景気回復対策になると思う。それに対する具体的なものがはっきり示されないと、これはまあ国民も安心できないわけですね。  確かに輸出入の関係は、これは統計を見ましても停とんしています。それは世界的不況関係がありますから、一挙に改善しろと言ったって、簡単にそれはわが国だけではいきません。しかし、少なくとも内需の関係においてとり得る政策というものは、やはりここでもう一歩具体的なことを第四次対策では考えるべきではないだろうか。いまたばことかお酒とかの値上げの話がありましたけれども、これはいま具体的に国内消費が停とんしている、消費支出が停とんしている実態を見てみますと、その当否がおのずから明らかになってくるはずです。  大臣も御存じだろうと思うのですが、総理府の家計調査による五分位別の実態を見てみますと、第五分位、非常に収入の高い方は消費活動というのは落ちておりませんね。ところが、第五分位以下の特に三、二、一という低所得層ほどこの消費活動が落ちてしまう。エンゲル係数も高まってきておりますしね。それから、貯蓄に回そうといった生活防衛的な手段に走らざるを得ない、こういう形になってきているわけですよ。  それならば、いま大きく景気の足を引っ張っている消費支出を伸ばそうというのであれば、具体的にそれに対する対策を立てなければならないはずでしょう。たとえばたばこ、お酒の値上げにしても、これは一般的にもう大衆化されたものですね。これがたばこは五割も上がる、酒は二二%でしたか、まだ今回提出されておりませんから、出てきてみなきやわかりませんけれども、前回提出された内容というのはそういうものですね。そういったことから考えていきますと、やはり現在の原因に対して的確に具体的な対策を講ずるべきじゃないだろうかと思うのですが、そういう個人消費支出を増していく具体的な対策というものはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 普通、従来のパターンで申しますと、たとえば減税をするとか、あるいは金融を緩慢にいたしまして、あるいは設備投資を刺激するとかいろいろやって内需の振興を図るというのがオーソドックスな従来の景気回復の道であったわけでございますが、いますでに御承知のように大変な操短をやっておる産業界でございますから、いま設備投資をやれと言ったってそんなことやるはずはございませんし、国民の方も大いに消費をと言いましても、経済の将来に対する確かな展望が持てないと、なかなか消費活動に手が出ないと思うのです。  そこで、やはりいま一番大事なことは、そう高い、昔のような、高度成長時代のようなそういう昔に返すことはできないけれども、われわれはこの程度経済、この程度の雇用、この程度の生産、この程度の消費はともかく可能になるんだというような経済の展望がはっきりしてくるということが、私は消費活動を刺激する一番大きな力じゃないかと思うのです。そういう意味で、やっぱり早く経済の安定を図る、展望を明らかにするということが最大の政策目標でなければならぬと思います。したがって、今度補正を考える場合におきましても、どういうところをねらってやるか、どういう状態までの回復を考えるかという点をいま政府部内でも検討いたしておりますのは、そういう問題意識を持っておるからでございます。  しかし、あなたが言われるように、こういう時期に値段を上げちゃうというようなことは逆行するじゃないかという御指摘でございますけれども、これは物は程度でございまして、一方に戦前基準に比べますと千三百倍、千五百倍というような状態になっておるものもあれば、電話料の度数料のように二百倍というようなものもありますし、鉄道運賃のように三百倍程度のものもございまして、公共料金なんていうものは不当に抑えるものですから全くバランスがとれていないわけです。資源の配分がめちゃくちゃになってしまっているわけです。こういうような状態を、私は、上げるというんじゃなくて、やっぱり価格体系を少し調整さしておいていただかないと経済がもたぬじゃないか、資源の適正な配分はできないじゃないかということでお願いしておるのでございまして、小ざかしい、これだけ上げてこれだけ増収を図って、ほかのことは考えてないんだなんという、そういうやぼな考え方でやっておるわけじゃないことは御理解いただきたいと思います。
  143. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、ちょっと観点を変えまして物価の問題について若干聞いてみたいと思うのですが、確かに最近の経済指標を見ておりますと、御売物価にしてもあるいは消費者物価にしても、輸出入の物価にしても、落ちついています。これは実際に、果たしていまあれだけ大騒ぎした物価対策上で鎮静化してきたんだろうか、私は多少こういうふうな疑問を持たざるを得ないんです。その点を大蔵大臣は先ほど、ちょっと物価に偏り過ぎたが、今度は景気対策に少し本腰を入れていかなければならぬという意味のことをおっしゃいましたね。ということは、結局大蔵大臣の頭の中には、一応もう物価は大体静まってきた、そして、政府が約束したように来年の三月末まで、いわゆる年度内には一けた台になる、こういうはっきりとした御確信があるのかどうか、その点いかがですか。
  144. 大平正芳

    ○大平国務大臣 けさもお答え申し上げましたように、いまわれわれがもくろんでおります公共料金の値上げというものを皆勘定に入れ、補正予算の策定というようなことも計算に考え、要素に入れてみましても、そんなに政府のつくりました目標というのは大きく狂うまいというような感じがいたしております。しかし、それでもなお物価が上がっておることは事実なんです。それだから、私は物価問題を軽く見たらいいというわけじゃございませんで、春闘にいたしましても、一三、四%上がったということは、そしてそれを生産性の向上で吸収する道がないわけでございますから、これは物価に反映いたしますよ。これは結構なことじゃありませんよ。だから、物価がこれでいいんだなんて私は考えていないわけです。  ただ、今日経済政策をやる場合に、狂乱物価時代と違って、景気政策もあわせて相当のウエートを置いて考えられる余裕が出てきた。そういうことが考えられるようになって、政府部内におきましても一致して補正予算を組もうじゃないかというところまでコンセンサスが得られるような状況になったことは事実であると申し上げておるわけでございまして、物価政策はもうしばらく忘れていいんだというような頭でおるわけじゃ決してございません。
  145. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、これは実際に考えているかどうか知りませんが、大蔵省は先月の末に、いわ隣る来年度予算の概算要求には各省各機関において公共料金の値上げを盛り込むように強く要請した——これは大蔵大臣御存じかどうか知りません、新聞の報道ですから。そうなりますと、いまお話がありましたように、国鉄だとか電話だとか塩だとか、公共料金はそれぞれの所管においていろいろたくさんあるわけですよ。公共料金を値上げしないでいいとは私は言ったことはないのです。そんな考え方は持っておりませんけれども、しかしながら、値上げするにしても何をするにしても、やはり時期というものを考えなければならぬと思っておるのですよ。  それともう一つは、やはり公共料金というのは普通の料金と違って、低所得層から何からすべてに影響が出てくるものについてですから、ある程度採算がとりにくいものもあるだろう。そういったものを背景にして組まれているわけですから、何もかも赤字になったから、採算がとれなくなったからすぐ上げなければならぬというものでもないわけですね。それは政治的に考えていかなければならぬ。ですから、ことしの初めに一年間公共料金は凍結しようというような場面もあったわけですね。それは財政のいろいろな問題は、それぞれの料金体系ですからあったと思いますよ。ところが、この新聞によりますと、大蔵省は全面的に値上げを打ち出した、こういうふうになっているのですが、これはどうなんですか。
  146. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大蔵省は、八月末の各省の概算要求に対しまして、本年度予算の各省別の一五%増をシーリングにして御要求を願いたいということだけをお願いしたわけでございまして、その中身にまで注文をつけておるわけじゃございません。
  147. 広沢直樹

    ○広沢委員 ですから、これは時間もありませんので締めくくって申し上げますと、いわゆる不況対策というのは、確かに教科書的に言えば、柱は輸出輸入だとかあるいは消費支出の問題だとか、あるいは投資活動だとか設備投資だとか、こういうことを言われるわけですけれども、その中でも消費支出というのが大体景気を支えている半分くらいのウエートを占めていると言われておりますね。それが停滞しているのだったら、具体的にそれを上げていく手段というものも講じていく。財政的に窮屈なことはわかりますけれども、言われるような大衆、低所得層に影響が出てくるような値上げは一時抑えるとか、それがいわゆる公共料金を抑えるということなんですよ。これは物価が上がっているからそれを抑えるために公共料金を抑えるというのではなくて、あるいは不況になってもその対策のためにはそれを抑えていかなければならない段階もある。  それから、もう一つはやはり減税を考えるとか、これは財界だって、先ほどもちょっとお話がありました、新聞にも出ておりましたけれども、やはりその項目の中に、こういう段階において個人消費支出を上げていくためにはこの対策も考えなければならぬということを入れているわけでしょう。  そういうことから考えていきますと、第四次の対策の内容はまだ示されておりませんけれども、昨今の新聞の報道で見る限りにおいては、第三次までと大体同じような形じゃないんだろうか、これじゃ実際に国民期待しているような対策になるかどうかということを私は心配するわけです。それについてはまだ対策を立てている最中だそうですから、今後十二分に検討していただきたい。強く要望申し上げておきたいと思うのです。  それから次に、地方財政のことについては、けさも、先ほどもお話がありましたのでもうくどくどとは申しませんけれども、私の方からも強く要望しておきたいことは、どの市町村を回ってみましても言われることは、やはり地方財政赤字で窮迫をしているということです。それに対して自治省の方としては地方交付税を減額はしないという方針を出しているし、大蔵省の方は、これはまあ国税三税の三二%ですから、それが減れば必然的に減ってしまうということになるのでしょうが、最終的には当初予算に予定された額からは減額をしない、何らかの手段を講ずる、こういうふうに私は受け取ったのですが、それを確認の意味で、一言だけで結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中央地方を通じまして大変な財源難のときでございますから、歳出につきまして中央も地方もそれぞれ節約をしていただかなければならぬことは当然でございますが、先ほども申しましたように、ことしの予算なり財政計画なりで計画を立てましたことにつきましては、それができるだけ完全に実行できるような姿にしたいと思いまして、それに対する所要財源のやりくりにつきましては、自治省と十分相談の上、善処いたしたいと考えております。
  149. 広沢直樹

    ○広沢委員 それからもう一つは、財政の問題について伺おうと思ったのですが、ほとんど時間がなくなりました。  そこで、これも一言だけになりますが、また時をかえてお伺いしていきたいと思いますけれども、いわゆる今日の財政赤字といいますかあるいは歳入の不足、これを補う方法としましては、先ほどもお話のありましたとおり三通りある。歳出を切るか、あるいは歳入を図るいわゆる増税か、あるいは国債発行、借金をするか、大別するとこの三つだ、こういうことですね。ところが前の二つというのは、大蔵大臣もしばしば記者会見やいろいろなところで述べておられるように、なかなかむずかしい。最終的にはやはり国債、いわゆる借金に大きくウエートがかからざるを得ないのではないかと思うんですね。  そうしますと、今度の不況対策とかみ合わせますと、先ほど主税局長は、具体的な数字の煮詰めはできていないけれども、大まかな方向では大体こうなるのではないかというようなお話をなさっておられました。私も現在の税収の状況から見ると、それぞれの機関で話をされているように、相当大きな赤字歳入欠陥になるだろう、こう想像するのです。そこで、そのためには、国債の発行について旧来のパターンであってはこれは大変なことになるのではないか。そこで具体的に、今回は国債を大型に発行しなければならぬ、その上、不況対策で出す国債もありますから、相当大きな国債になるだろうと私は思うんですよ。それについて具体的にどういうふうにお考えになっているかということをお答えいただきたい、これが一つです。  それからもう一つは、これは銀行局長というよりも、所管が違うかもしれませんが、大蔵省としては公庫融資についてもいま低利の融資をやっているんですね。一般住宅の貸付は住宅金融公庫で五・五%の金利ですね。あるいは農林金庫におきましても、それぞれの態様によって非常に低金利政策でやっているわけです。そういうことは、一つはおくれている政策を推進していくという意味があってやっているのですが、これもやはり財政負担が大きくなってくるということで、財投の関係で逆ざやになるということで、これを直そうというお考えがあるやにここに打ち出されているわけですが、その点はいかがなものだろうかということ、これが第二点。  最後に、第三点の問題としては福祉問題ですが、その中で一つだけとらえて申し上げますと年金制度、これもやはり見直さなければならぬ、洗い直さなければならぬということを言っているわけです。これはある意味において、見直し、洗い直しをしていかなければならぬと私も思います。私は前から申し上げておりますように、基本的に見直していただかなければならぬ。ということは、これはいまの積み立て方式を賦課方式に直していく、そういう関係においていろんな見直しをやっていかなければいけませんが、ただ財源不足だという前提に立って、そこで部分的な見直しだけで糊塗していこうということについては、私どもはどうもこれは納得がいかない。だからその関係について、福祉元年というのを聞いたのは二年前なんです、それも二年たったら極端に、そういうことで期待された方向とは逆方向にこれが行くのではないかという心配があるわけですね。その点の所見を承りたいと思います。
  150. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国債の増発は避けられない状況であると考えております。できるだけしぼりたいと思っておりますけれども、それでも相当巨額になるのは避けられないのじゃないかと考えております。したがって、この公債政策はよほど慎重にやらないといけないこと、仰せのとおりに心得ております。したがって、これがインフレを助長することになってはならないわけでございまするし、同時に、したがってそれと関連があることでございますけれども、これの市中消化が円滑にいくように考えなければなりません。また、国債が発行されるけれども、それはどのようにして償還されるかという将来の展望も明らかになるようにしなければならぬと考えておりますし、そういった国債が大量に出てまいるということになりますと、ほかの金融をそれだけ圧迫するわけでございますので、そういう関連、調和を図ってまいらなければならぬわけでございまして、そういう点につきましては、私どもといたしましても全力を挙げて事に当たりまして、過誤のないようにやってまいるつもりでございます。  それから公庫融資、特利を物によりまして財政による利子補給制度に支えられてやっておる例が若干ございますことは、御指摘のとおりでございます。いま、その改廃ということにつきましては特段考えておりません。  それから、福祉問題でございますが、私ども、福祉政策はどんなに財政が苦しくても、これは鋭意追求していかなければならない優先施策であると心得ておるわけでございます。ただ、御案内のように、福祉というのは、日本のような社会におきましては、年々歳々高年齢化が進んでまいるわけでございますので、いまのままの福祉制度がそのまま延長してまいりましても、十年後、二十年後になってまいりますと、そのままの姿でも膨大な福祉予算になることは必至でございます。したがって、私ども申し上げておりますのは、そういう展望に立つ限りにおきまして、福祉政策というものを手軽に改廃するというようなことについては慎重にやってもらいたいと思うのであります。できるだけ着実に、本当の意味の福祉を追求したいことは、大蔵省としても鋭意考えておるところでございますが、福祉というものを追求する余り、勢い余りましてほかの政策とのバランスを失うというようなことになりますことはまた不幸なことでございますので、そういう点については戒めていただきたいというようなことを申し上げておるわけでございます。
  151. 田辺博通

    田辺説明員 公庫融資の特利の問題につきましてちょっと補足させていただきたいと思います。  大臣もいま御答弁になりましたように、この八月十七日付の読売新聞でございますか、何か具体的にいろいろと触れておるようでございますが、こういうことにつきましては現在考えていないのは確かでございますが、一般論としてちょっと補足させていただきますと、御案内のとおり、いわゆる政策金融の制度、その特利といいますか、金利条件なりあるいは貸し付けの対象というものは、やはりこれはその政策目的、それから時の財政資金の事情、あるいは民間の金融状況というものを常に見まして検討を加えていかなければならないものだと思っております。ちょうどいろいろな補助金を整理あるいは合理化したり、あるいは考え直すというようなものとやはり一連の同じ考えであるようでございますが、いずれにしましても、そういうような具体的なことは、あるいは来年度予算編成の問題として検討しなければならないことが出てくると思っております。
  152. 広沢直樹

    ○広沢委員 いずれにしましても、とにかく政策目的が十分果たされていない段階で、現在の財政事情がこうだからということだけで、いまの制度、せっかくできた国民向け、大衆向けの制度というものをどんどんと手直しするということは、それは十分慎重にやってもらわなければいけません。  所定の時間がオーバーしておりますので、また時をかえまして具体的にお伺いしたいと思います。ありがとうございました。
  153. 上村千一郎

    上村委員長 竹本孫一君。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に、景気見通しについて大臣にちょっと伺いたいのですけれども景気が上向いてくるということの期待はずいぶん前からあるわけですけれども、私はこれはなかなか困難であるというふうに考えております。その理由は、時間がないから特に申し上げませんけれども、この間ニューズウィークを読んでおりましたら、日本の経済はいまトンネルの終わりのところへ立っておる、しかし、これから先の景気がどうなるであろうかということについては余り楽観できない、理由はツーリトル、あるいはツーレイトと書いてある。要するに、手の打ち方が小出しで、そうしてツーレイト、遅過ぎる、こう書いてありましたが、トンネルのたとえも、その言葉も、大体私が使っている言葉であったので、ちょっとおもしろく読んだのです。  私は、日本の景気がすっとうまく立ち直りができないのは、世界経済影響もありますけれども、まず第一はツーレイトだ、次にはツーリトルだ、そのほかにもう一つ、対応の仕方の次元がちょっと低いじゃないかという三つの理由がある、ツーローとぼくは言っていますけれども、三つの理由があってなかなか景気が上向くのがむずかしい、こう思うのでございます。  その内容について論戦はやめまして、大臣の見ておられるところ、てこ入れをやらない場合、普通にいって一体どのぐらいから上がっていくのか。それから、補正予算等も含めて、これからの政策努力で、いつごろからやや本格的に軌道へ乗っていくという形にしようとしておられるのか。国民としても、これがいま一番聞きたい問題だろうと思うのですね。  その辺について、まず一つは時期、それからその上がり方の問題も、V字型とかL字型とかU字型とか、いろいろ言っていますけれども、私は、いま申しました致命的な遅過ぎた、少な過ぎた、あるいは次元が低過ぎたといったような矛盾を持っておりますので、相当大規模補正予算を組んで思い切った手を打たれた場合においても、なおかつU字型に景気を盛り上げるということはほとんど不可能に近い、やはり途中で何度か腰が折れる、私はW型と言っておるけれども、そういう形にならざるを得ないと思うのですけれども大臣の見ておられる景気回復のパターンはどういう型になるのか、あるいは、どういうようになることを期待しておられるのか、それから、いつごろからそういう意味で上がっていくということになるのか、その二つの点を、できれば具体的にお伺いいたしたい。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、ことしの春からやや経済指標はわずかながら好転の徴候を見せてまいったわけでございまして、生産も上向いてまいりました。在庫調整も進んでまいって、出荷も動いてまいったわけでございます。けれども、五月から急に輸出が減退してきた、縮小均衡に入ってきたように思います。国民消費は依然として手がたく、慎重でございます。設備投資にまだ動意は見られないわけでございます。雇用状態も決してよろしい状態とは言えないことも御案内のとおりでございます。したがって、政府判断といたしましては、いまは景気は底をついたと思う。そして、さらに景気の底割れがあるとは見ていないけれども、この景気は緩慢ながら上向いてくると簡単に考えられないので、相当底を低迷する時期がいましばらくあるのではないかというのが、いま政府、日銀の一致した見方でございます。  大変対策がおくれた、ツーリトルであるという御指摘でございますが、私は必ずしもそう思わないのでございます。何となれば、去年からことしにかけまして政府としては、先ほど申しましたように、非常に大型の歳入不足がございましたけれども財政は計画どおり大型予算をそのまま実行いたしておるわけでございます。二兆円減税というものも計画どおり平年度化いたしてまいったわけでございまして、この既定の政策を変えることなく踏襲しておるということ自体が私は財政面から相当景気対策に寄与しておるものと思いまするし、それが今日、経済がこういう状況でさらに景気の底割れを回避できて、若干ながら指標に上向きの傾向が出てきておる力ではないかと思っております。  しかし、こういうことで果たしていいかというと、これではとても、企業がこういう高度の操短を強いられておる、多くの企業が瞬間で見た場合に赤字を記録しておる会社が非常に多いというような状態は、私はやはり長く耐えられた状態でないと思いまするし、ここに雇用不安が加わってくるというようなことになりますとゆゆしい問題だと思うのでありまして、政府としては、ここでもう一歩積極的な景気対策を講ずる必要があるのではなかろうかと考えております。  しかし、それとても従来のようにもとの状態に回復するということは、諸種の内外の厳しい制約条件から不可能なことに近いことであると思います。生産の状況、雇用の状況から見まして、もう少しこれを上向いた状態に置かなければならぬのじゃないかと考えて、いま政府全体でどの程度までやるべきかという点について、せっかく検討をいたしておるところでございます。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 景気にこの上の底割れがないという点については私も同感です。しかしながら、景気は非常に低迷をしておると大臣もおっしゃいましたが、私の言うL字型ですね、景気が落ちて横をはっておる。株で言えば四千二、三百円のところを横ばいではっておる。問題はそれをいつU字型というか、私に言わせればWにしかならぬと言うのだけれども、簡単にU字型に上げていくだけのてこ入れをどういうふうにされるつもりか、あるいはいつからそれが上がるということになるのか。  その時期が、このままいつまでも低迷しては困るといまもおっしゃいましたけれども、そのとおりなんで、問題は、政策努力の目標は、たとえば十月からは相当景気を上げるということになるのかならないのか。去年の暮れごろから、もう暮れとか三月だとか六月だとかあるいは七月だとか、今度は十月だとか、いろいろ言っていますね。これについて、国民としては見通しがつかないで一番参っておると思うのですね。  これは見通しというのはなかなかむずかしいし、またつけたとおりにはならないものだと思いますけれども、いやしくも政府としては、たとえば十月なら十月には一応L字型からU字型の方向へ切りかえていく政策努力をするのだ、その決意である、そのためにこういう政策、こういう補正を考えておるのだというような積極的な構想がないと、何となくこれでは不十分だというのもよくわかりますけれども、もっとやらなければならぬというのもよくわかるけれども、その具体的な目標、指標というものが全然国民には示されていない、それでは余りにひどいではないかということなんです。そういう意味で、もう一度お伺いいたします。  たとえば、いままでの財政政策の功罪等については、これはいろいろ意見があるでしょう。大臣に言わせれば、おおむね所期の目的を達してきたから少しずつでも上がってきているではないかというお考えのようでございますけれども、しかし、おおむねその目的を達したところが今日のL字型ではないかということになると、これがまた一つの問題になる。しかし、そういう論争よりも、いま国民が一番知りたがっている、何月ごろになれば一体景気はどうなるのであろうかということについて、ひとつもう一遍よく伺いたい。  具体的に一つ申しますと、下期には何%ぐらいの経済成長を予定され、あるいは期待されていくのであるかということもあわせてちょっと、国民一つ努力目標が与えられるような具体的なお話を伺いたい、こういう意味であります。
  157. 大平正芳

    ○大平国務大臣 竹本さんのおっしゃるとおりでございまして、そういう目標を国民に提示するというのは私は政治の責任であると思うわけでございます。したがって、その作業をいま政府としても鋭意やっておるわけでございます。  この段階で申し上げられることは、いまのGNPギャップは相当なものでございますけれども、この全部を政府でひとつ埋めろなんという破天荒なことができるはずはない、これはだれもわきまえておっていただけると思います。ただ、どの程度それではこれで上げるべきかという点がまさに問題なんで、上期は現実に実質成長がどこまで可能であったかという点、これはいま鋭意数字を集めているところでございまして、私まだ自信が持てませんけれども、下期は相当上向いたところへ持っていかなければいかぬわけでございますが、それが、今日言えますことは、年間を通じて四・三%と実質成長を見ておった、それは大変むずかしいとは思いますけれども、しかし、去年のようにマイナス成長であっては困る。そういうことはないと思いまするし、この間にどういうところに持っていけるだろうかということについて、この九月の半ばごろまでには政府として一つの答案を出そうということで鋭意作業中でございますので、いまこの段階で私からまだ申し上げられないのでございますけれども基本的に考え方はあなたのお示しのようなラインに沿って政府作業中であると御承知願いたいと思います。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済が上昇線を簡単にたどりにくくなっておるというのは、先ほど申しましたが、ツーレイト、ツーリトル、ツーローだからだと思うのですけれども、その中でも特に遅過ぎたということが私は大きな原因だと思っているのです。  これはまあ議論は別にしまして、ただ一つ言いたいことは、目標をもっと具体的に示していただきたいということもそうなんですけれども、いま一番大きな原因は、私は個人消費がしぼみ過ぎたということじゃないかと思うのですね。個人消費が本格的にならなければ設備投資が動くといったって動かれない。輸出の方は対外的な条件がいろいろありますからこれは別としまして、国内においては、個人消費というものがことしの経済の計画でも大体八十六兆円ぐらいでしょう。ですから、これが一割萎縮をすれば八兆円から萎縮しちゃうわけですね、購買力においては。したがって、第三次不況対策といっていろいろ御苦心を願ったけれども、結局九千億円、乗数効果を二倍と見て一兆八千億円、こういうことなんですね。だから、一割萎縮しておるところに一兆八千億を埋めてみても、まだまだなかなか数学的に見てもギャップがある。  問題は、これからの問題を私は特に力を入れて考えたいのですけれども、その場合に、たとえば下期に五%か七%かいろいろ議論が出ておりますが、このぐらいの経済成長までは政府としては持っていきたい、あるいは持っていくんだ、こういう強い呼びかけが行われれば、そこまで政府も決意したのかということで、国民の個人消費というものに非常にいい影響が出てくるんではないか。私はそういう意味で、去年の十月、大臣にいろいろ質問しましたときにも申し上げたのですけれども経済国民が自信を失うということが一番大きなマイナスだ。ですから、いまはそれがそういうふうになっちゃったんだから、国民経済はこれから立ち直るんだという強い自信を与える、これがもう数字以上の心理的、政治的な効果がある。そういう意味において特に、大臣は慎重居士ですけれども、もう少し積極的に国民に希望と自信を与える気魄を示していただきたい。これは要望にとどめておきましょう。  それから、時間がありませんから簡単に次の問題を申し上げますが、歳入欠陥があるということと赤字国債とがすぐ結びついて、今度はいよいよ赤字国債が出るんだ、三兆円出るんだといったような議論が盛んに巷間伝えられておるのですけれども、これは私はいつか予算委員会でも申し上げたのですけれども、三公社五現業のあり方でも常にそうなんです。それからまた石油ショックでも私はそうだと思うのですけれども、とにかくいままでの考え方とかいままでの構造とかいままでのシステムを全部そのままにしておいて、そして赤字の計算をして、よって赤字国債をこれだけ出すとか、よって料金をこれだけ上げるとかいうような初等数学的な計算では、私は政治にならないと思うのです。  そこで、やはり段階に応じてそれぞれの時点で、われわれのいままでのあり方というものに対する厳しい反省、それから今後のあり方に対する厳しい構造改革というものが伴わなければ政治にならぬと思うのですね。ただ、こういうふうに赤字が出ましたから赤字国債はこれだけになるだろう、こういうふうに赤字が出ましたからこれだけ料金を上げましょうというようなことで、自己改革も自己反省もほとんどない。私はそういう意味で、日本の財政もそうですし、経済も全部そうですし、またわれわれの姿勢も含めて、とにかく自己反省、自己改革というものがなさ過ぎる、あるいはまた、歳入欠陥赤字国債という議論も短絡し過ぎておる、その間にいろいろの努力が要るんだと、こう思うのだが、その点について政治家としての考え方をどういうふうに持っておられるのか伺いたい。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大体あなたが仰せになったこと、私全く同感でございます。私どもも、漫然算術的帰結として赤字公債を計算してこれを発行するというようなことで事足りると考えておるわけではございません。事そこに至るまでには、歳入歳出両面を通じましてあらゆる財政として考えるべきものはとことんまで考えておかなければ、国民の理解は得られるはずはないと思うわけでございます。あなたが構造改革、自己政革と言われましたこと、私もそのとおりに考えておるわけでございまして、そういう方向で最大限の努力をした上でしかもなお足らない場合に、いろんな条件と対策を具備した上で公債増発について理解を求めたい、協力を求めたいと考えております。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 抽象的に考えると、あるいは言えば、自己改革が必要だと御賛同をいただいたわけですけれども、ぜひそれを具体的に展開していただきたいということですが、たとえば、午前中に貸倒引当金の問題がいろいろ論議をされました。これもそのとおり、いろいろ重大な問題あるいは矛盾があると思いますし、例の石油ショックの問題も、たとえば同じ石油を二億八千万キロリッター前後のものを買うのに、あるときは四十億ドルぐらいで済んだものが八十億ドルになり、やがて二百億ドルになるということになると、大ざっぱに計算をしても、同じものを買うのに百五十億ドルぐらい犠牲が大きくなったわけですね。もちろんそのうちの一部は製品に転嫁して外国からまたかせいだんだから、少しは元を取ったということになるのでしょうが、大ざっぱに考えて百五十億ドル、約五兆円の出費が、むだにというか、必要以上に大きくなった。この犠牲を消化する方法というのは、結局消費を節約してそれこそわれわれの生活の自己改革をやるか、あるいはより以上に働いてより多く輸出をするか、そういうふうに、これを埋めていく方法というのは経済の初歩的な原理に従う以外にないと思うのですね。  ところが、石油ショックを受けて一時は銀座のネオンサインも消したり何かしたのですけれども、物理的に三億キロリッター近くのものが入るとなると、またもとへ戻って、われわれの生活体系、生活システムは全部もとのままに続いていると思うのですね。どこに自己改革があったかということを考えてみると、むしろアメリカあたりの方が真剣に、ドライブレスからヒートレスまで始めて、とにかく五%ぐらいは生活程度を落とさなければならぬというようなことまではっきりアメリカの政治家は言っておる。ところが、それ以上に石油の自給力もない日本の方は、物理的に入らないということについては一時騒いだけれども、物理的に入ってくるということがわかったら、経済的な対応は何もできないままにほとんど忘れておる。私はその点を言うのです。  とにかく、われわれはあらゆる事件に遭遇するたびに常に自己改革や自己反省をやって一歩前進をしなければならないのに、日本の政治、日本の財政、日本の経済は大体きのうのまま、昨年のままに続いて生きておる。その点の努力がなさ過ぎるではないかということを私は言うわけであります。  そういう意味から、もう一つだけついでに言いますと、けさ実は私は感じたんだけれども、大蔵委員会が始まり、大臣が見える前に、竹内次官以下、ここに九人か十人か見えてあいさつをされた。これもちょっとぼくは大臣についでに、自己改革の一つとして気がついて感じたから申し上げるのですけれども、ぼくはいまの政治では、石油ショック以来の考え方ですけれども、消費は美徳なりの辺までさかのぼって考え直さなければいかぬという考え方なんです。でありますから、とにかくわれわれは、中国でさえも勤倹建国と言っていますね、四大スローガンの一つは勤倹建国だ、そういうときに、石油ショックを受けた日本は勤倹建国も言わなければ勤倹貯蓄も言わない。個人消費のあり方についてもほとんど変革はなかった。そういうことも含めて、ひとつ本格的な自己反省を言うという意味で、先ほど大蔵省の首脳がかわられた点についてちょっと私考えたので申し上げたい。  一つは、大体われわれが顔を覚えたころには局長は皆かわってしまうのですね。何年に一遍ずつかえるつもりかということを伺いたい。それから、そのことが一体行政の能力を上げることになっているのか下げることになっているのかということも、大臣の考えを伺いたい。やはり行政機構というものも、一つの仕事になれるのには少なくとも一年あるいは一年半かかる。そして本当に能率が出るということになれば二年から三年だというのですね。ところが、一番優秀な何々局長とこちらも期待しているような人がぽんとどこかへかわってしまう。かわる方は子供の教育を初めとして大変な迷惑を受けるわけでしょうけれども、栄進すればそれでいいのかもしらぬが、しかし、国家から言えば、移転費まで含めてまた大変な費用のむだがある。これは笑い事じゃない。ぼくは大変重大な問題だと思うのですよ。  それは、ことに大蔵省は、ここにお集まりの皆さんがそうであるように皆優秀なんだ。もっと働いてもらいたいし、板についたところでしっかりやってもらいたいと思った瞬間にぽっとかわってしまう。中にはやめてしまう。ずいぶんまだ働ける人が次々にやめてしまうのも、国家の人物経済上非常に惜しい。民間では、あるいはまた公団では、こちらの方の公団の上の方に総裁か副総裁で来るのだといって、いまから迷惑そうな顔をして待っているのですね。そういうことも困る。だからもう少し、これは人物経済からいっても大蔵省局長はかわり過ぎると思う。その点について大臣はどうお考えか。今後もどんどん一年ごとぐらいにかえていかれるつもりであるかどうか、これはちょっとお考えを承っておきたいのです。  私は、役人というものはもっと真剣に本気で働いてもらわなければいかぬと思う。働き盛りのときにぽんぽんかえてはいけない。また、働き盛りにやめさせてもいけない。悪かったら定年制の方を延ばせばいいのだ。それから後がつかえておるという議論もあるのだけれども、そんなにつかえるような人事の採用をしなければいいだろう。後がつかえたからどんどん優秀な人をやめさせるということは、余りにもおざなりの人事ではないか。そういう意味で、大蔵省局長級は異動し過ぎると思うが、一体どういうお考えであれだけ異動させるのか。あるいは今後はその関係はどういうふうに考えていかれるのか。これは国家的な意味においてちょっと一応伺っておきたい。
  161. 大平正芳

    ○大平国務大臣 できるだけ行政官として手なれたポストにおりまして経験を生かしていくということは、私は竹本さんの言われる意味におきまして賛成です。できるだけ長くその職におられる方がいいと思います。それでそうありたいと念願しておるわけでございますが、大蔵省の場合、いまの局長級の後から数年間、どういう都合であったのかわかりませんけれども、ずいぶん人事の都合でたくさんの幹部職員を採用いたしまして、人材が雲のようにおるわけなんです。それで、その人たちにそれぞれところを得ていただかなければならぬわけでございますが、いまいるすぐれた諸君に長くそこにおっていただくのも結構なんですけれども、そうなりますと、続く連中になかなか志を遂げる機会が与えられないということで、人事全体の活力をいまの与えられた条件のもとでどう生かすのが一番いいかに、私も非常に苦吟をいたしたわけでございます。  それで、あなたの言われるようなところと、もちろんそういう考え方もございました、いまのようにかえるという考え方と非常に彼此勘案いたしまして、どちらにすべきかの選択に困ったわけでございますが、五十一対四十九ぐらいのところでいまの選択をやったのが実相なんです。それにはいろいろな御批判があろうと思いますけれども、人事の構成から考えまして、そういたしますのが全体の活力をフルに動かす場合においてベターじゃないかと判断したわけでございまして、これが絶対いいという確信を持ってやったわけではないわけでございまして、それなりの疑問もありましたけれども、その方がややベターじゃないかと判断したのが実際でございました。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 問題はベターの内容なんですけれども、これは議論になりますからこれ以上申しませんが、要望として、とにかく役に立つ、活動ができる人を必要以上にがたがた動かしてみるというような悪趣味はやめる。これは吉田さんが大臣の首を百何人かえたとか言って喜んでおったけれども、あれ以来の悪い習慣ですよ。人事というものは、文官任用令というものが昔あったけれども、その任用という字は、ここにおられる上村先生もその辺は専門家かもしれないが、用いて任せるという意味なんです。任せることのできないような者は用いない。用いたら任せる、任せたら当分やらせるということでなければ、一年たったらまた大異動だなんというようなことでは本当の仕事はできない。私は人物経済上からいっても、また移転費に伴うむだな経費の節約からいっても、これはとにかく考えてもらいたい。  それと、時間がないから、赤字国債をやるつもりであったけれどもそれもやめますけれども、ついでにもう一つ言っておきたい。  大蔵大臣、日本は大臣の数が多過ぎますよ。大体くだらぬ大臣と言っては申しわけないから申しませんが、大して役に立たないような大臣がおる。その道のエキスパートでも何でもない。大平さんの大蔵大臣はだれが見ても天下周知のエキスパートで尊敬しますが、とにかく何もわからぬような大臣大臣になって、大臣の給料をもらうだけではなくて、どれだけ行政にむだがあるかわからない。大臣制度というものは、それこそ先ほどの取れる税金は取るべきだ、取りもしないうちから赤字が幾ら、公債が幾らなんというのはおかしいという議論と同じように、取るものは取る。それから出す方ももう少し節約をしなければいかぬ。もう少し倹約をしたりむだを省かなければいかぬ。大体二十二兆円の予算の中に行政費として二兆六千億ですか、その一割を倹約すれば二千六百億円浮くのだ。国民の方から考えてみて、いまの役所の中のむだというものは一割ということではないでしょう。そういうものに対してぴしゃっとメスを入れてもらう。その上で赤字がどれだけ出るというのでなければ、私の言う自己改革、自己反省の上に立った赤字対策にはならぬ。  そういう意味で、行政機構の改革も考えてもらわなければならぬし、あるいは三公社五現業を初めとして公団、公社のあり方にもこの際メスを入れて、一割くらいの経費の節約をさせる、それが政治の姿勢ですよ。それと同じような意味において、大臣、政務次官についてもこのあり方が大体正しいのかどうか、この辺で一遍国民の要望に沿うために本格的な検討を加えるべきだと思うのです。大臣にそういうお考えがないかどうかを伺って、終わりにします。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 自由民主党政府の数多くのメリットのうちの一つは、私は人間をふやさなかったことだと思うのです。ここ四十三年から四十八年までの公務員の数字を調べてみますと、中央においては若干減っております。これは毎年毎年、定員管理、定員を減少する計画を実行して、増の要求が一方にございますけれども、それ以上減らしていったわけでございまして、これは非常にむずかしいことなんです。パーキンソンの法則からいっても非常にむずかしいことだと思いますけれども、それはともかく、歴代の内閣がいろいろやってくれてそういう状態になっていることはいいことだと思います。  一方、地方の方は、これは三十数万ふえておるわけなんです。これには警察官やあるいは教員の増員もありまして、地方ばかりの責任じゃございませんけれども、われわれも責任を負わなければならぬ面もございますけれども、やや定員管理が中央ほどにいかなかったのではないかと思う面がございます。  しかし、いずれにいたしましても、行政費の節約というものは人間をふやさないことなんでございまして、できたら少数精鋭に持っていくことが行政の基本だと思うのです。そういう方向は竹本さんと全く同様に私は賛成でございます。  大臣は、いま総理大臣を除いたほか二十名おるわけでございまして、これより多い政府もありますれば、これより少ない政府もあるようでございまして、いままでの経緯を経てここへ来たと思いますけれども、やや細分化されておるのじゃなかろうか、国務大臣はもっと少ない定数でもっと総合的な立場で行政を掌握する方がいいのじゃないかという考え、私の意見はどうだと聞かれればそういう考えを持っておりますが、全体として公務員の定数をふやさないできたということに免じて、政府がともかく一応これまでやったことに対しては評価していただきたいと思います。  そういうことで進んでおりますが、内閣の定数の問題につきましては、御指摘もございますので、今後もなお検討をさしていただきたいと思います。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 要望でございますが、とにかく日本の財政当局というのは予算を通じて一番大きな権限を持っておるのですから、国の経済や国の政治、そういうもののあり方に決定的影響力を持っておる。そういう意味からいって、またいままで、これは大臣にも少し責任があると思うのだが、高度成長時代、毎年二五%ずつ予算をふやしていくというような行き方をしましたね、大体概算要求は。あれが根本間違っておりますよ。坂には上りがあれば必ず下りがある。景気にも上るときと下りがある。会社にも伸びるときと縮むときがある。国家の予算だけは、税金の基礎に立って、そして後はインフレ政策で、自然増収という形で二五%ずつふくらましていった。そういうことをやっておれば、おのずから、中央と地方の問題じゃなくて、全体がたがが緩んでしまう。  やはりデフレの過程というものは、資本主義的には合理化の過程なんだ。そういう意味で私もいま言っておるのだけれども、とにかく毎年伸び伸びるということで、その間何らの慎重さも反省もないような財政運営をしてきたこと自体がやはり問題だと思うんですよ。もうこの辺で、いい転機だから大いにそれを見直してもらいたい、こういう要望でございますから、よろしくお願いいたします。
  165. 上村千一郎

    上村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十二分散会