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1975-03-26 第75回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十六日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 伊藤宗一郎君 理事 村山 達雄君    理事 山下 元利君 理事 山本 幸雄君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       大石 千八君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       小泉純一郎君    塩谷 一夫君       野田  毅君    宮崎 茂一君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山中 貞則君    綿貫 民輔君       広瀬 秀吉君    藤田 高敏君       武藤 山治君    村山 喜一君       荒木  宏君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵省関税局長 吉田冨士雄君         大蔵省国際金融         局長      大倉 眞隆君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君  委員外出席者         人事院事務総局         公平局長    今村 久明君         外務省経済局資         源課長     苅田 吉夫君         外務省経済局国         際機関第一課長 宇川 秀幸君         農林省農蚕園芸         局繭糸課長   泉  孝健君         通商産業省生活         産業局通商課長 黒田  真君         資源エネルギー         庁長官官房総務         課長      平林  勉君         資源エネルギー         庁石油部臨時石         油需給対策室長 山本 雅司君         資源エネルギー         庁石炭部炭業課         長       高瀬 郁弥君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     越智 伊平君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第三八号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより会議を開きます。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 関税暫定措置法改正案に関連して、直接関税率関係する問題は後刻にいたしまして、最初に、大倉国際金融局長がおいででございますから、国際収支見通しなどについて簡単にお伺いをしてみたいと思います。  昭和四十八年度、四十九年度、さらに五十年度の見通し等基礎収支などで見ますると、四十八年度は百三十億ドル赤字、四十九年度の見通しが五十五億ドルぐらいの赤字と、赤字幅はだんだん縮小されるような傾向にあるようでありますが、五十年度の見通しが三十九億ドルという基礎収支赤字見通しでありますが、週刊誌やあるいはエコノミストなどの論評などを総合してみますと、五十年度の後半からは国際収支問題もかなりむずかしい情勢が起こるのではないか、こういう論評が大変多く見られるようでございます。  そこで、四十九年度は三月で終わりでありますから、五十五億ドルという見通しが大体実績になりそうなのか、ならないのか。それから、五十年度は見通しの三十九億ドルという赤字程度でおさまるのか、もしおさまるとしたらどういう情勢からそういう見通しが立つのか、その辺を少々詳しく局長見通し、判断をお聞かせ願いたいと思います。
  4. 大倉眞隆

    大倉政府委員 まず四十九年度でございますが、御承知のとおり、基礎収支で五十五億ドル赤字という見込みを五十年一月につくったわけでございますけれども、それ以後現在までの情勢で一応推計いたしてみますと、まず経常収支では約二十五億ドル赤字と見ておりましたものが、若干縮まりそうでございます。それから長期資本収支で三十億ドル赤字幅と見ておりましたものが、これはかなり赤字幅が縮まりそうでございます。数億ドル、場合によっては七、八億ドルこの項目では赤字幅が縮まるのではなかろうかと思っております。両者合わせまして、五十五億ドル赤字見込みかなり顕著に縮小するのではなかろうか。  まだ三月が、数字がなかなかはっきり入ってまいりませんので、確たることは申し上げられませんけれども、両者合わせまして、場合によりまして七、八億ドルないしそれ以上の赤字幅縮小が見られるのではないか、いまのところそのように考えております。  そこで、五十年度でございますが、五十年度は、ただいま御指摘のとおり、政府見通しとしては基礎収支で三十九億ドル赤字と見込んでおります。同様の二項目に分けて申し上げますと、まず長期資本収支で二十二億ドル赤字を見込んでおりますが、これは五十年一月現在で見通しましたときには、かなり政策努力を織り込んで、いわばこの程度にとまるようにして運営してみたいという趣旨の数字であるとお受け取りいただきたいと思うのでございます。長期資本収支につきましては非常に流動的な要因が多うございますので、いまから五十年度全体がどうなるかということはまだわからない面がかなり多うございますが、ただいまのところ、私どもとしましてはこの二十二億ドル赤字幅を変えなくてはならないほどの要因はないのではないか、つまりこの程度で推移すると見込んだままでいいのではないかという感じを持っております。  次に、経常収支でございますが、これは経常収支じりで十七億ドル赤字幅と見込んでおったわけでございますが、それ以後、よく言われますように、輸出伸び率かなり顕著に鈍化してきておる、これは事実でございます。ただ同様に、一方、輸入の方も減少かなり目立っておりますものですから、両者合わせますといわば刺し違えみたいになっておりまして、いまの段階ではやはりこの十七億ドル赤字幅というのは、これを変えるところまでいかないでいいのではないか。  結論としまして、いまの段階ではやはり五十年度見通しは、大体三十九億ドル赤字という前提で考えておっていいのではないかなという感じでおります。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 この長期資本収支は、三十億ドル赤字というのがかなり改善されて七億ドルぐらい落ち込むだろう——聞き違いかな。大体七億ドルと言いましたね。(大倉政府委員「七、八億ドル」と呼ぶ)七、八億ドル減る。その減る原因は、長期資本収支の中の資産勘定が、海外へ出る資金が減るのか、それとも負債関係の方がふえるのか、これはどちら側に原因が主としてあるのですか。
  6. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この点につきましても、実は両面ございます。流出サイド見込みほど出ないという要因がございますが、これは実は大した数量ではないと思います。やはり流入サイドの方で見込みよりも相当流入が大きかった、大きくなりそうであるということの方に主因があるように考えております。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 ことしの世界貿易全体の展望は、昨年より全体的にどのくらい世界貿易伸びて、心配されたオイルマネー還流管理、これらの問題が世界貿易全体に与える影響というのはそうマイナス的に働かないと見てしかるべきなのか、その辺の世界貿易全体の伸びについての見通しというのはどういうことになりそうですか。
  8. 大倉眞隆

    大倉政府委員 貿易全体につきましては、あるいは関税局長からお答えする方が適当かもしれませんけれども、私どものいま持っております印象といたしましては、価格が当初の予想よりも高い、しかし反面、実質的な伸びは当初の予想よりも少ないというのが七四年の姿であったように思います。  七五年につきましては、やはり改定を何度かOECDなどでやっておりますが、その都度実質世界経済伸び率が落ちてきております。これで、今後の価格見通しいかんによりますけれども、二、三カ月前に考えられておりましたのに比べますれば、世界貿易について遺憾ながら若干縮小均衡的な傾向になる危険があるという感じをいまのところ持っております。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 世界貿易全体が縮小傾向にあるというその最大原因は、アメリカ経済原因があるのか、それともやはり外貨準備不足というものが開発途上国などで非常に減少したために、輸入そのものの量が開発途上国で減ってきているということが原因なのか。  もう一点は、年の初めにソ連アメリカ貿易協定がユダヤ人問題で破棄されたということが新聞に報道されて、その後ソ連アメリカ貿易協定問題というのはどう展開されているのか、この二つの点をお伺いしたいと思います。
  10. 大倉眞隆

    大倉政府委員 明らかに縮小均衡と言うのにはちょっと早いかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、縮小均衡の方に動く危険があるという感じを私は持っておりますが、その大きな理由としては、何と申しましても当初の予測に比べましてアメリカ経済実質的な伸びが低い、若干プラスしてくれるかと思っておったものが、いまの政府見通し実質が三・三%減、場合によるとそれより悪くなるかもしれないという点がございます。それから、OECDのその他の先進国につきましても、当初期待したほど実質経済伸び率が回復してこないという面がございまして、やはりそれが一番大きいと私どもは思います。そのために産油国以外の開発途上国輸出伸びない、したがって、輸入を伸ばしようがないという感じでものが動いていく危険がある。  外貨準備そのものにつきましては、実はいままでのところ産油国以外の開発途上国はそう急激に縮小してはいないわけでございますが、それぞれの政策運営といたしまして、やはり輸出伸びる範囲で輸入するということでできるだけがんばっていきたいという気持ちがあるように思います。その意味で、先進国がふるわない、したがって一次産品の輸出伸びない、したがって工業品輸入伸びないというようなパターンを描いておるのではないかと思います。  それから、米ソ貿易協定の問題でございますが、これもあるいは関税局長からの方が適当かもしれませんけれども、私の理解しておりますところでは、あの協定は実はまだ発効していなかった協定である、発効待ちであったところが、御指摘のようにユダヤ人問題がございまして、ソ連の方からこの協定をこのまま発効させるわけにいかないよということを言ってきた。したがって、現実にいままであった協定がなくなったということではないんで、いままでの状態が続いてしまっておるということのように理解しております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 発効していないけれども、いままで、小麦輸入アメリカとの交易関係というものをソ連は拡大しつつあったわけですね。それが、あのユダヤ人問題をめぐって協定そのもの発効がパアになった。そのことがやはりアメリカ輸出というものの伸びかなり影響を与えるのではなかろうか。そういうのは数字的にはほんの微々たるものでしょうか。
  12. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 米ソ関係見込みにつきましてはむしろこれからの問題でございまして、アメリカ世界貿易全体に占めるウェートは非常に大きいわけでございますが、当面われわれとしては、おっしゃいます米ソ小麦の問題とかについては、どちらかというと非常に微々たるものじゃないかという感じを持っておりますが、これはあくまで感じでございます。  なお、ついでに世界貿易について申しますと、これはIMFのインターナショナル・フィナンシャル・スタティスティックスである程度数字まであるわけでございますが、かなり前から申しますと、一九七〇年は世界輸出額、計で申しますと二千八百二億ドルでございまして、それが七三年には五千百八十三億ドルになり、七四年は七千六百八十億ドルというぐあいに大体三倍近くになってきております。それと、特に七三年から七四年につきましては、御案内のように、この数字で見ますと大体四〇%くらい上がっているわけですけれども、恐らくこれは油の関係かなり輸出額がふえたのだと思います。  七五年はこの統計はないのですが、ブルックリン研究所その他、こちらの日本経済研究所あたりで推定しているところですと八千七百億ドルくらいではないか、これでございますと約一四%くらいしか伸びていないわけでして、対前年から見ると少しスローダウンしているわけでございます。  七六年以降の数字はないわけでございますが、しかし、とにかくこれまではある程度長期的レンジで見ますと、KR等影響もございまして、貿易自身は確実なテンポ伸びてきている。七〇年から七五年までのこの数字を見ますと、約三倍以上伸びてきている。ちなみに一九六〇年のこの同じ数字は千百三十四億ドルでございまして、十年間で大体倍になったというふうなことでございます。もちろんこれは名目でございますので、インフレ的なものも入っているとは思いますが、御参考までに申し上げておきます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 一九七〇年から七四年、わずか四年間で三倍、これは価格がインフレによって引き上がったということで、量そのものの移動というものはさほど飛躍的な増大はないのじゃなかろうか、こう思うのでありますが、いずれにしてもこういう状態の中で、大倉さん、ことしの日本経済見通し、特に国際収支問題をめぐる見通しというものは、年の後半からそう心配するほどの問題はない、一応そう断定してよろしいか、それともエコノミストがいろいろ心配しているような、ことしの後半からは外貨事情問題が日本経済かなり大きな制約要因になるだろう、こういう見通しなどがございますが、日本における最も最高の担当頭脳として、後半からの国際収支問題についてはそういう心配をする懸念はない、こう断定してよろしいかどうか。
  14. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように非常に不透明な要素が多い。また、ある意味で純粋の経済問題以前の、非常に動揺しかねない要因がたくさんあるという時代でございますので、確たる見通しをつけるのは非常にむずかしいわけではございますが、いまの段階では、私は、年度間を通じての政府見通し数字は、幅といたしましてはまだこれを変えるほどの要因は出てきていないと思っております。  後半に非常にむずかしい局面が出るかもしれないという御指摘でございまして、まさしくおっしゃいますように、二つ要因からそういうことが言われておるように思います。  一つは、輸出伸び率鈍化しておる。これは確かに伸び率鈍化が目立ってきております。特に先行指標で見ます限り、かなり顕著に輸出伸び率鈍化してきておる。ただ、これは対前年比で考えます場合には、たとえば昨年の同期がそのもう一つ前に比べて四〇%ふえておる、五〇%ふえておるという月にいまや重なって出てき始めるわけでございますから、伸び率自体が、昨年がおととしに対して四割伸びた上にことしがまた四割伸びるというようなことはなかなかないわけでございますから、伸び率鈍化ということは必ずしも絶対額の減少意味しているわけではない。おととしに比べれば相当な絶対額の増加であるというふうに考えておいていいんだろうと思います。  ただ、その伸び率鈍化の背後にございます事情が、工業国における実質的な経済成長がなかなか期待したほど出てこないという点にある。これはかなり構造的な要因があるとすれば、今後注意をしなければいけない。ただ、時期のずれであるとすれば、その面はむしろことしの後半によくなってくるはずであるというふうに思われます。  それから、開発途上国外貨準備の問題は、確かに先進国伸びない、そのために彼らの輸出伸びない、そのために彼らの輸入余力がつかないという点の心配はあるわけでございますけれども外貨準備そのものにつきましては、御承知のとおり国際間でいろいろな話し合いが進んでおりまして、IMFのオイルファシリティーも昨年の使い残しを入れますと約七十億ドルを用意しようということになっておりますし、それから産油国からの開発途上国への援助も予想外に大きなオーダーになっていると思われますので、現金がないので買えないという点については、何とかみんなで力を合わせて手を打っていくということで解決の道を見出したい、そのように考えておるわけでございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、去年の九月でしたか、銀行局長大蔵大臣に、オイルダラーの問題の処理いかんによっては一九七五年度はかなり不況局面世界経済は味わうだろう、実はそういう質問をいたしたいのでありますが、最近この私の考え方は修正しなければならぬかなという感じを持ちつつあります。  それはこの間、前国際金融局長柏木さんがアラブを一回りずっと歩いた状況を対談で詳しく述べておるのを読んで、これはアラブに集まる年間約一千億のドルキッシンジャー先進国家大変心配をして、いかに還流策を図るか、このオイルダラー管理世界的にどう行うか、それが成功するか不成功に終わるかによって一九七五年の世界経済は大変な事態をも予想できると実は思っていたのでありますが、柏木さんのアラブ見聞記を読んでみると、アラブは約一千億ドルの金をユーロダラーとして流さずに、国内建設に全額回しても回し切れぬほど国内開発テンポが急である、そういう報告を聞いて、これは輸入資金にほとんど使われていくのかなという感じを実は持ったのでありますが、国際金融の衝に当たる大倉局長としては、このアラブオイルダラーの問題と世界経済に及ぼす影響、それをどのように認識されておるのか、その辺を少々ひとつあなたの認識のほどを伺いたいと思います。
  16. 大倉眞隆

    大倉政府委員 昨年の早い時期には、これは大変な勢いで余剰ドルということで産油国側ドルがたまってしまう。一部の予測では、一九八〇年には一兆ドルを超える余剰になるであろうというような予測がございました。それ以後いろいろの機関予測をやり直してきておりまして、最近ではモーガンのやっております予測などは、ここを非常に楽観的に見ておるということは事実でございます。一九七八年がピークであって、それ以降はむしろドルはたまらない。しかもそのピークというのは、一九七八年が残高のピークであって、経常収支の面でも一九七八年ごろに黒から赤に移るという動きが出るんだというような予測もしております。  その最大要因は、いまの御質問の中にございました、産油国側開発輸入が当初の予測よりも非常に急ピッチで進むであろうという点にあるように思います。おっしゃいました柏木調査団の受けてまいりました印象も、各産油国が現在持っております経済開発計画から見まして、これは相当なピッチで開発輸入が進むという印象を持って帰られたように私も聞いております。  当初言われましたことは、結局いまの予測に比べて相当大きな余剰が出てしまうので、この基礎的不均衡を直すためには、石油価格が下がるか、石油消費が下がるか、工業品価格が上がるか、それしかない。最後の手段は、石油価格を再引き上げに追い込む。そのために、やはり一番目と二番目のところに焦点を当てて基礎的な解決を図っていくよりしようがない。その間は、たまるドルをどうやってうまく還流させるかということを考えない限り、国際金融秩序は破壊されるであろうという認識であったと思います。  いまの時点で考えまして、しかし私は本質はさほど変わっていないと思います。確かに、開発輸入は今後相当ふえ得ると思いますけれども、いろいろなボトルネックが存在しておるように思います。計画上の金額は膨大でございますけれども、それを運営するだけの労働力があるか、技術力があるかという問題は、これから解決されなければなりません。また、持っております計画自身が果たして整合性のある、かなり具体性のあるものであるかというと、まだまだそこまでは行っておらないという面もあるように思います。  ただ、数量的に申し上げますと、確かに七四年中の産油国輸入量は、前年に比べまして大体倍近くふえておるということは言えるように思います。日本のこれら諸国に対します輸出も、大体八割以上ふえております。したがって、この傾向が続くことは、基礎的な不均衡を解消する一つ市場メカニズムによる合理的な方法として、私どもも大いに歓迎をいたしたい。しかし、これで問題がすべて片づくかというと、決してそうではないというふうに私は考えておりまして、依然としてリサイクリングの問題というのは、つなぎ措置ではあるけれども、ここ数年の国際金融秩序を維持するためにはきわめて重大な問題である。何もしないでほうっておいていいということには絶対にならないであろう、そのように考えております。  特にイラン、インドネシア、ベネズエラ、場合によってナイジェリアというような国は、これは開発のポテンシャルがございまするし、人口もおりますから、いま申し上げたような方向での解決が、ペースのいかんはあれ、徐々に行い得る国だと思いますけれども、クウェートのように過去十年以上も余剰国として生きてきた。今後は、もう大学はできてしまったし、道路はできてしまったし、国内でやることはないんだ、あとは余るだけだという国がティピカルにあるわけでありまして、これに似たような国情の国が幾つか想定されますので、そういう国に入っていく余剰資金というものがいかにうまく世界経済の中にリサイクルされるかという問題は、依然として非常に大きな問題として残るであろう、そのように考えております。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、その還流策をうまく確立しようというねらいでキッシンジャー構想による消費国同盟、さらにフランスを中心にする産油国との対等の会議、それぞれの処方せんはいろいろ考えられているようでありますが、日本としてはこの問題についてどういう態度で対処することが一番賢明なのか。  特にまた、昨日サウジアラビアの王様が暗殺されるというような事態が起こり、またキッシンジャーの中近東における和平交渉努力も、水泡とまでいかないにしても、結局挫折をしてしまった。あるいはカンボジアやインドシナにおける戦闘状態も、アメリカ威信にかけて守り続けたこれらの戦略もついに地に落ちる。このこと自体アメリカ威信そのものを全体的に低下をさせ、世界をリードする発言力というものもかなりここでダウンをしたと見なければならぬと思うのであります。  それやこれやを勘案して、近く開かれるであろうオイルダラーをめぐる産油国消費国との会議というようなものはどんなぐあいに推移するだろうか。特に日本は大口の石油消費国である立場から大変関心の持たれる問題でありますが、国際金融局長としては、その辺の感融はどのように考えているか。これも科学じゃなくて、感じが入ると思いますが、その辺をちょっとお聞かせをいただきたい。
  18. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問の第一点でございますけれども、いままでのところアメリカの財務省の推計によりますと、産油国余剰資金は、大体三割五分程度ユーロ市場に行っておる、二割近くがアメリカ市場に返ってきておる、約八分の一程度イギリスポンド保有の形で残っておる、一〇%弱の金額ヨーロッパ大陸諸国日本などに向けて公的なパイプで流れておる、開発途上国へは国際機関を通じ、あるいは二国間の約束によりまして大体一割ぐらい流れておる、残り一割五分ぐらいが一般的な各国の国内市場に向けて流れておる。つまり、たとえばイギリスで不動産を買ったとか、ドイツで株を買ったとか、日本で債券を買ったとか、アメリカで株を買っておるとか、そういうふうに流れておるのではないか、そう推定されておるわけでございます。  今後この動きは、各項目ごとにかなりの動きがあるだろうと考えております。特に短期金融市場に向けて流れる金のウエートというものは漸次減らざるを得ないであろう、むしろ中期的な運用がふえざるを得ないであろうと思っておりますが、日本といたしましては、やはりこういういろいろな還流のパイプができるだけたくさんあることが一番望ましい。どこか一つに大きなパイプをつくってしまって、そこにしか金がこない、金の欲しい人はみんなそこに集まっていかなければどうにもならないというのは、それはぐあいが悪いのではないかという点が一つ。  もう一つは、やはり日本の主要な貿易相手国にうまく金が流れるような工夫をどうしてもしなければならぬ。その意味では、日本の主要な貿易国には、自分ではかなり経済力を持ちながら、なかなか民間市場にはまだ行けないという国があるように私は思っておりますので、そういう国のためにはやはり国際機関を通じての、あるいは国際的な約束によって多国間で約束をした金の流れ、それがうまく中心国と申しますか、われわれの主要な貿易相手国に流れていくという仕組みはぜひ必要だと考えております。  そういう考え方の組み合わせをもちましていろいろな会議に臨んでおりまするので、たとえばIMFのオイルファシリティーにつきましても、金額が非常に大きくなることには反対だけれども、ある程度の所要資金IMFを通じて、いま申し上げましたようなタイプの国に流していくということはぜひ必要だ。また、いわゆる最貧困国につきましては、国際連合なり世界銀行を通じまして、かなりソフトな条件でオイルマネーが流れていくということ、これもぜひ必要だ。しかし、中心国の上の方の部類、市場に接近し得る国、また先進国、それはやはり自分の努力がまず先決であるし、自分で市場機能を十分に活用してリサイクルができるように考えるのがまず先決であろう。そういう考え方によりまして、いままでのところ、一言にして申しますれば、日本の主張は、還流のパイプの多様化であるということで応対してきておりまするし、今後ともその態度で臨んでいいのではないかということを私としては考えております。  なお、御質問の最後の部分は、これは実は非常に大きな外交問題でありまするので、私からお答えするのは適当でないかもしれません。ファクトだけ申し上げて御勘弁いただきたいと思いますが、いまのところ、四月七日に産油国消費国会議の準備会議を開こうということになっております。この準備会議は大臣レベルではございませんで、高級官僚レベルで、六月以降に予想される本会議の際にどういうメンバーにするか、何を話し合うかということにつきまして先進国側の意思統一を図っておこう、そして産油国との間で議題とメンバーについて準備的な会合で一応の取り決めを行おうということで現在動いております。  やはり中心課題は、石油の需給と石油価格というところにならざるを得ないと思いますけれども産油国側の一部、特にいわゆる急進派と言われております国々は、この会合で一次産品問題全体を取り上げようとかあるいはインデクセーションを取り上げようとかということも言っておりまするし、先進国の一部では、この会議で金融問題も取り上げよう、産油国資金投資の配分の問題も取り上げよう、あるいは産油国以外の開発途上国に対して産油国先進国が一緒になって助けていくという問題も取り上げようというようなことでございまして、まだいろいろの国のいろいろな思惑が錯綜いたしておりまするので、やはり一度四月の会議があってみないと、どの辺におさまっていくのか、必ずしもはっきりしない。  それに対しまして、昨夜からけさにかけましてのいろいろな外電の中では、この事情変更のために、場合によっては四月七日の会議が若干おくれざるを得ないのではないかという報道もすでに出ておりますが、その辺は後一週間か十日してみませんと、ちょっと動きがわからないのではないか、そう思っております。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは吉田関税局長あるいは外務省経済局に尋ねるべきなのか。日本輸出の状況を見ましても、四十九年一月、まあ一月は特に少ないのが恒例のようでありますが、輸出が二十五億五千五百万ドル、二月が三十三億三千八百万ドル、四月が四十二億一千百万ドル、この昨年四月以降ずっと四十億台に乗って、七月からがちょっとまたふえて五十億ドル台に乗る、十、十一、十二月、大体五十億ドルを突破する、こういう輸出の状況とアラブに対する輸出の状況というのは対応してふえていっているのか。アラブに対する、石油産油国に対する日本輸出量というのはどういう推移をたどっておりますか、ちょっと参考までに。
  20. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 最初の日本全体の輸出の月別め推移の問題でございますけれども、これはおっしゃいますように五十億ドルを切ったり切らなかったりしておりますが、やはりかなり月別の輸出の波がございますので、むしろ対前年比でごらんいただきますと、大体四〇%から六〇%の波を打っておりますが、この御指摘の期間については、まあまあ五割から六割のオーダーで対前年比としては来ております。むしろ心配なのは、先ほど国際金融局長も申しましたけれども、十一月、十二月の方にだんだんと対前年比が落ちてきておりまして、それからむしろ先行きとしてほかのファクターで見られます将来の見通しとして、造船等についてかなりの先行きの不安がある、鉄鋼もあるというような点が、日本全体の月別の流れだと思います。  二番目の御指摘アラブの方の輸出入でございますが、これは実は、ちょっと手元に細かい月別の数字がございませんが、むしろ大きく年別にごらんいただきますと、中近東という分類で見ますと、四十九年は、輸入の方は百五十九億ドルでございまして、当然、原粗油、油がそのうちの百四十二億ドルほどございます。片一方、輸出の方は三十七億ドルでございまして、一番大きいのは鉄鋼の十二億ドル、自動車が三億ドル、合成繊維が二億ドルというような、これは両方とも通関ベースでございますので、輸入の方はCIF、輸出はFOBでございます。したがいまして、赤字が大きく出るのですが、赤字といたしましては、日本は百二十二億ドルを四十九年中に中近東の方に出しているというかっこうになっております。輸出が三十七億ドル輸入が百五十九億ドルでございまして、差額が百二十二億ドルということでございます。  これは、一年前の四十八年を見ますと、この赤字が三十二億ドルにすぎなかったわけでございまして、これは輸入が四十九億ドル、そのうち油が四十三億ドルでございます。それから輸出の方は十八億ドルでございます。四十八年は、輸入が四十九億ドルで、輸出が十八億ドルでございまして、十八億ドルの一番大きいアイテムは、やはり鉄鋼が約四億ドルで、合成繊維が二億ドル、自動車が二億ドル、ラジオ受信機、船舶、こういう順序になっておりまして、輸出入の差額は三十二億ドルでございます。  これは、もうちょっと前の四十五年をごらんいただきますと、輸入が二十三億ドル輸出が六億ドル赤字は十七億ドルだった。日本へ出す出超が十七億ドルだった。このように対アラブ関係では、先ほど国際金融局長が申しましたように、日本からの輸出もふえておりますが、何と申しましてもやはり油の関係で、赤字が四十八年の三十二億ドルから四十九年の百二十二億ドルと約四倍にふえているということになっております。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 アラブとの貿易をさらにさらに拡大をしなければならない、また拡大できる要素もかなりある、こういうことを柏木さんなども報告しているわけでありますが、ただ、日本の産業構造と申しますか、輸出される商品、プラントというものの生産が日本の場合はちょっとヨーロッパと比較して大変おくれている。単品ではかなりすぐれたものがあるのだけれども、そういうプラントとなると、日本の生産体制というようなものか、あるいは企業間の協力というか、そういうようなものがどうもECと比較してもかなりまだおくれていると指摘されているわけでありますが、いずれにしても、赤字幅が百二十二億ドルという状態はやむを得ないものなのか、今後これを縮めるようなプラント輸出というものにもつと日本は力を入れるべきなのか。これは貿易政策上の問題でありますから、ここでの議論の外でありますが、いずれにしても、オイルをめぐるいろいろ処理しなければならぬ多くの問題が山積をしているということを物語っていると思うのであります。  時間に制約がありますから、国際金融あるいは国際収支動向、こればかりに時間をつぶすわけにいきませんから、先へ進みます。  次に、世界の国で、この原油に対する関税というのはどうなっているのか。輸入の際に、一体、原油に対する関税ゼロの国あるいは日本程度の関税を賦課している国、そういう類別に分けてみるとどんな状況になっているのか。
  22. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 御案内のように、発展途上国にはいろいろ関税を中心の財源にしている国が多うございますのですが、主要先進国について見ますと、極端に申しますと、関税をかけているのは日本アメリカだけだと言っていいと思います。しかも、そのアメリカというのは、昔は関税というような名前でしたが、最近は輸入手数料、日本で言うと、一つの関税割り当てみたいに割り当て制がございまして、しかもそれが、だんだん国内の油の生産が増加してくるにつれてその額を上げていくという輸入手数料のかっこうで取っておりますので、正式に関税という名前で原油から税金を取っておりますのは日本だけでございます。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 原油から関税を取っている国は先進工業国家にはない、こういう状況だというのでありますが、日本の場合は、一キロリットル当たり五百三十円の基本税率を暫定税率で六百四十円、これはかけているだけではなくてさらに重い関税を賦課しておる。こういう関税率というのは、昭和四十八年末の原油価格の引き上げを契機にして、私はもう完全に洗い直してやめべきではないかと思うのです。アメリカの場合は、国内かなり油田があり、産業が競合するという事情がありますから、手数料を賦課するということも理解できるのでありますが、日本のように資源のない国で、ほとんどもう一〇〇%近く輸入に依存している、しかも重要なエネルギー資源、これに重い関税をかけるということは、どうも時代逆行であるという感じがしてならぬのであります。  いろいろ石炭対策あるいは石油開発公団の試掘費用、そういうようなものを捻出しなければならぬという理由で関税を重くかけておくということは、もう早急に洗い直してやめべきである。もちろん石炭対策あるいは石油試掘費用などは重要でありますから、これは当然、国が一般会計から支出をすべきなのであって、関税という税でその財源を埋め合わせるという方法は、もはや時代感覚に合わない、こういう感じがしてならぬのでありますが、私のそういう感じ方は間違いであるのかどうなのか、その辺ひとつ関税局長に御見解を聞きたいのであります。
  24. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 先生のおっしゃいますような御意見はかなり広くございまして、政府にあります関税率審議会におきましても、その線の御意見は非常に強いわけでございます。エネルギーの資源としては、関税だけではなくて、関税も入れた広い意味消費税をかけるべきではないんじゃないかという御議論もございます。  ただ、先ほど関税というお話でございましたので、諸外国について関税だけ申しましたが、消費税も含めました原油に対する税負担割合ということになりますと、これはECを中心にいたしまして非常に高い消費税がかかっておりまして、御案内のように、付加価値税、あるいはドイツの鉱油税という形式で、日本の関税あるいはガソリン税を総合したよりもかなり高い税負担を原油にかけております。ある意味では、これは非常にOPEC諸国としてはやはり気になるところだと思っております。  そういう意味で、消費税ということになりますと、理論的には、やはりできるだけ関税も含めました消費税負担はかけるべきでないという議論があるわけですけれども、現実問題としましては、これはアメリカ、ECを含めまして、かなりの税負担がかかっておるという点が現実でございます。  それから、第二の石炭対策の財源問題としてのお話しでございまして、これもいろいろな議論があろうと思うのでございます。関税局長の立場というよりはもう少し高い、財政の立場としてのいろいろな御議論があろうかと思いますし、一般財源あるいは目的税というような議論もあると思いますが、とにかく先生御案内のように、これは非常に長いいままでの経緯がございまして、最初は原油に対する関税はゼロであったわけですが、それが二%という従価税になりまして、それが六%とだんだん上がってまいりまして、それが今度は従量税に切り変わりまして、御案内のように三十六年からは五百三十円ということで、実行三百二十円がまた五百三十円に上がりました。それが六百四十円に三十八年に百十円乗っかったときの経緯は、かなり関税率審議会でもいろいろ批判的な御意見があったところでございます。それから、四十二年には石炭特会ということで特別会計に結びつきが行われまして、さらにそれが石油特会まで広がりまして現在に至っているわけでございまして、かなりいろいろな長い経緯がございます。  すっきり割り切った先生のような御議論が関税率審議会でかなり強くございまして、一昨年の暮れに根本的に見直すように、引き下げを前提といたしまして消費税負担、原油の税負担をどう考えるかという点、あるいは石炭エネルギー対策の財源をどう考えるかという点、そういうことを政府としては十分に検討した上で速やかに関税率審議会で議論しようということでございまして、昨年一年関税率審議会を五回ほど開きましていろいろ御議論いたしたわけでございますか、御案内のように、石油も含めましてエネルギー問題、資源問題というものは最近特に非常にいろいろ問題が多うございまして、日本のエネルギー資源のあり方をどうするか、特に石炭のあり方をどうするか、これまではどちらかというと石炭につきましてはだんだんと閉山といいますか、合理化で能率のいい鉱山以外はだんだん閉めていくという方向で歩いてきたわけですけれども、現在のエネルギーの問題からむしろ石炭についてもある程度の生産維持を行うべきだというような御議論がございまして、たしか去年の十月に石炭鉱業審議会の方で新しくこれからの石炭のあり方というものについての諮問が通産大臣からございまして、これが約一年弱で答申というかっこうで出てまいりますので、それをよく話を聞いてからこちらの考えをやろうということで、関税率審議会といたしましても、それまでもう一年延長した上で結論を出したいということに答申がございましたので、私どもとしてもその線に沿って勉強を続けていきたいと考えております。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 勉強勉強はいいのですけれども、いつも時期を失する、ちぐはぐになってしまう。たとえば田中内閣の誕生のころ、外貨準備がどんどん積み増されていく、そこで関税率もだぁっといじって、福祉、消費のための輸入増大の方向に関税をいじる、そういうようなことを急遽年の終わりころにやった経験もある。ああいう迅速果敢にやれば国民もなるほどという効果が感じられるのですが、石油が四倍にもなった時点から二年も過ぎてから、まだこれから石炭対策の審議会の答えが出なければ関税率の方はいじれないのだということでは、いかにも役所仕事というのはマンマンデーで時期を失するような決定で、決定が出たころは経済情勢がまた変わってくるというようなことで、せっかく審議したことも意味がないというようなこともあり得る。こういうような点がぼくら見ておって大変歯がゆく、そんなに時間をかけて一年も一年半も会議をしていなければ答えが出せないのか、こういう歯がゆさを感じるわけでありますけれども、現在原油関税というのは年間収入どのくらいありますか。
  26. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 四十九年度は千三百六十三億でございまして、五十年度予算では千四百十三億と見込んでおります。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 千四百十三億、大変な金額になるわけでありますが、石炭の今日の採掘状況というのは、私ども昭和三十六年でしたか、七年でしたか、石炭政策転換要求闘争というのをやりまして、全国の石炭山の労働者が中央に押し寄せて、政策転換を求めて、当時五千万トン石炭を掘れ、こういう強い要求があって、政府かなり真剣に取り上げ、さらに三千五百万トンくらいは維持できるだろうというような話だったと思うのでありますが、現在石炭は日本でどのくらい掘っているのですか、年間の量は。
  28. 高瀬郁弥

    ○高瀬説明員 四十九年度大体二千万トン強であります。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 五千万トンも掘ろうという最初の話、あるいは三千五百万トンにダウンをさせ、現在は二千万トン、大変少なくなってしまったわけでありますが、日本全体の石炭の埋蔵量というのはどのくらいあるのですか。
  30. 高瀬郁弥

    ○高瀬説明員 埋蔵量計算はいろいろな計算方式があるのですが、現在のフィールドで掘れる、ある一定の経済限界で掘れるというのは約十億トン強であります。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 十億トン強というと、いまの二千万トンのペースでいくと何年掘れることになりますか。
  32. 高瀬郁弥

    ○高瀬説明員 五十年です。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 現在、石炭のエネルギーについて、たとえば電力にした場合を例にして、石炭で電力をつくる場合と重油で電力をつくる場合の価格を比較すると、石炭の方がまだかなり割り高なんですか。石油との比較ではどうですか。
  34. 平林勉

    ○平林説明員 最近御承知のように価格かなり騰貴しておりまして、正確なところをつかんでおりませんけれども、重油をたきます火力では大体一キロワットアワー当たり八円ないし九円でございます。石炭につきましては九円程度というふうに承知しております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうしてみると、石炭と石油と原価においてはさほど差がなくなってきているわけですね、石油が四倍になったことによって。そういたしますと、国内の資源、十億トンもある石炭というものをやはり有効に活用する、そして石油輸入量というものをできるだけ節約をして減らしていく、こういう産業政策というのは当然今日国民的な要請ではないか、こう思うのですね。  そこで、資源エネルギー庁では石炭の位置づけというものをどのように考え、石油との関係において将来の展望はどうしようということなんですか。あなたの方の青写真があったらちょっと説明してください。
  36. 平林勉

    ○平林説明員 現在、昭和六十年度及び昭和五十五年度の二年度をとりまして、日本のエネルギーの需給のあり方等につきまして検討中でございます。石炭につきましては、先ほど御指摘のように、最近炭量が非常に減っておりまして、大体昭和六十年度におきまして年間の出炭規模二千万トンを何とか維持したいということで、現在そのために必要な対策を検討中でございます。ただ、この二千万トンといたしました場合でも、日本全体のエネルギーの中に占めます石炭のウエートというのはどうしてもそう多くは期待できませんで、大体三%くらいということであろうかと思います。  したがいまして、石炭対策のあり方、それから石油のあり方等々につきまして非常にむずかしい問題がございますけれども、御承知のように、石炭といいますのは日本の持っております唯一のといいますか、非常に貴重な国内資源でございまして、エネルギーにつきましては日本は外国に依存度が非常に高うございますので、石炭につきましてはできるだけ出炭規模を維持したいということでございます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 出炭規模を維持するというだけでなく、積極的に二千万トンをさらにふやしていこうとか、あの政策転換要求が行われたころのような三千五百万トンベースに持っていこうとか、これを拡大するという積極的な計画というものはないのですか。
  38. 平林勉

    ○平林説明員 石炭につきましては、先ほど来お話のございますように、石炭鉱業審議会で現在検討中でございまして、ただいま先生御指摘のようなできるだけ出炭量を維持するとした場合どこまで維持できるか、その点につきまして検討を続けておりますが、保安問題、労務者問題あるいは石油との競合問題等々を考えますと、やはりわが国としては六十年度におきまして二千万トンを維持するということをさしあたり当面の目標と考えざるを得ない状況でございます。     〔委員長退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 この関税を賦課してかなりの収入を上げる、五十年度は千四百十三億円の収入、それを石炭対策にかなり使うわけでありますね。公害対策が二百九十二億円、ビルド対策が六百四億円、離職者対策七十一億円、産炭地振興四十二億円等々そうすると、前向きに生産出荷体制に補助助成するというんではなくて、いま使っている金はみんな、どちらかというと後追いの対策ですね。石炭が採算割れをし、商業ベースに乗らぬ、石油の方が極端に安い、そういう事態だったので閉山を行い、政府としていろいろ資金的な援助を行う、こういう時代に生まれたいまの制度をそのまま残して、関税から吸い上げた金を補てんしていくというやり方は、当時の状況と比較して現状でも必要なのかどうか、それはいかがなんですか。
  40. 平林勉

    ○平林説明員 現在の石炭対策は約一千百億円の中で、先生御指摘のように、従来は後ろ向きと申しますか、石油との競合に伴いまして経済性の失われていく炭鉱の整理の促進というようなことに重点が置かれておりましたけれども、先ほど来御説明しておりますような石炭鉱業審議会の討議等におきまして、今後はやはり国内資源をいかに維持するかという角度から前向きの石炭企業の体制の整備、石炭産業の合理化の促進というところに重点を置くように、そういうことで現在検討しております。この一千百億円のうち、前向きの生産対策というのは大体六百億円程度現在見込んでおります。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、そういう後ろ向き資金よりも今後は積極的に石炭をいかに掘り出すか、そして日本国内エネルギー資源というものを大切にするか、そういう方向に方針を変えていく、その方針は五十年度からですか五十一年度からですか。
  42. 平林勉

    ○平林説明員 現在、昭和四十八年度から五十一年度までの第五次石炭対策が進行中でございます。先ほど関税局長からも御指摘がございましたように、石炭鉱業審議会の答申が本年六、七月ないし秋ごろまでに私どもちょうだいできると考えておりますが、その段階で、いま申しておりますように前向き対策にどれだけ具体的にいろいろと施策を進めるか検討中でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたの方はやはり従来どおりの一千百億円ベースぐらいのお金が国から出ないと困るのですか。それともこの辺で、石炭と石油の値段というものはインフレの結果そう違わなくなってきた。カロリー計算すると大体同じような価格だということになれば、もうそういう国家的な援助をする必要はなくなってきたと見ていいのか、従来どおりの援助というものをずっと続けるべきだという意見なのか、その辺はどうですか。
  44. 平林勉

    ○平林説明員 石油価格が高騰いたしまして、石炭は石油との競合では比較的採算性がとれるというような考え方で、私どもも実はいろいろ計算いたしておりますのですが、先ほどの石炭鉱業審議会で各方面の御意見等々も現在整理中でございますが、現時点で石油火力と比べて石炭はまだ千数百円赤字である、つまり千数百円の値上げないし手数百円の財政負担がなければ、現時点ではまだ石油と競合できないというような意見が現在大勢でございまして、今後の石油価格いかん、あるいは石炭の合理化の促進の度合い等々によりますが、現時点で必ずしもまだ石炭は石油と比べて競合できる立場になっておりません。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、依然として従来のような国庫からの援助というものは必要である、こういう見解なんですね。一課長に余り国家的見地からの大きな問題を質問しても酷だと思いますが、政務次官は石炭のことは何もわからない政務次官ですから、聞いても意味がないと思いますので……。  次に、やはり日本のエネルギー問題について、もう小学生から中学生、高校生に至るまで、皆日本の将来について不安を持っていますね。新聞やテレビや週刊誌やいろいろなもので「日本沈没」なんというテレビなどもあるものですから、油がなくなっちゃう、電気が消えてしまう、日本は暗やみになるという、何とはなしの不安というものは国民の子供の層にまでいま浸透しているわけですね。やはり人生というものは、生きがいを感ずる、あるいは働きがいを感ずるような社会、それが本当の幸せな社会なんであって、何か一つでもそういう大きな不安が常に頭の中にあるという人間の生き方というのは、本当の幸せを感ずるという状況ではないわけですね。  したがって、政治に参加する者、行政を担当する者は、そういう不安をできる限り取り除く、こういう努力と識見とさらにそういうものに対する見通しというようなものを常に国民の前に提示する責務があると私は考える。私は自然科学者でないからその能力がない。しかし、自分なりにいろいろ感ずることは、何とかこのエネルギー資源というものを新たに開発をする、たとえば日本のように周りが海に囲まれ海水は何ぼでもある、この海水の中からナトリウムを取り出し、あるいはいろいろな物質を取り出して、それに何らかの他の物質を融合させると爆発的なエネルギーができる。そのエネルギーを蓄電して発電に使えるというような、太陽熱なんという言葉もあるけれども日本のように赤道直下でなくて、太陽がさんさんと降り注ぐような日が毎日続かない日本では、太陽熱をとるということもこれは無理かなと、素人なりにいろいろあれやこれやを考えるわけでありますが、専門家のエネルギー庁として、そう悲観したことはない、日本の海の周囲には、韓国との大陸だなや台湾と鹿児島を結ぶ線あたりの海底にこんなにもあるのだという、探知をした結果、日本の周囲に石油が出そうなところというのはあるのかないのか、どうですか、そこらの研究の結果は。
  46. 平林勉

    ○平林説明員 先ほどお話のございました、海水をいかに利用するか、海の資源をどのように使うかということでございますが、現在サンシャイン計画というのがございまして、これはかなり先の長い話でございますけれども、紀元二〇〇〇年ぐらいに何とか日本がエネルギーに関しまして新しい太陽資源あるいは海の資源等々をどこまで活用できるかということで、昨年度からこのサンシャイン計画という新しいエネルギー計画を通産省では検討し、また財政当局に予算もいろいろとお願いしております。  それで海でございますが、たとえば海からウランをとる。日本は原子力発電を現在推進中でございますが、そのウランは全部外国から輸入しておりますが、現在進めております施策の中で、海からウランをとるということはすでに実験的に可能でございまして、今年度から具体的にこの作業に着手するということになっております。  それから、深海ではマンガンノジュールという新しい鉱物がございまして、これの開発いかんによりましては将来のエネルギー事情は一変するというような大きな計画にもなり得るということで、その研究も現在進めております。  ただ、ここ十年、二十年程度の中、長期を見ますと、やはり日本石油に依存せざるを得ないわけでございまして、しかも日本の周りの石油につきましては、いろいろな調査もございますけれども、やはり日本全体のエネルギー、日本全体が必要な石油日本の周りだけからとるということは、現在のところまだそこまで埋蔵量があるというような調査結果は出ておりません。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、日本全体の消費量までなくてもいいんだけれども日本の近海でも調査をした結果やや可能性があるのだという場所はあるのですか。
  48. 平林勉

    ○平林説明員 現在まで調査されております石油に関しましては東シナ海、これがエカフェの調査によりまして相当の埋蔵量があるという調査結果は出ております。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは尖閣列島からずっと沖繩に通じたあの辺の大陸だなのことですか。
  50. 平林勉

    ○平林説明員 仰せのとおりでございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 その問題について科学技術庁は外務省といまどういうことを折衝しているかわかりませんが、私たち素人が聞いている点では、日本は大陸だな条約に入っていない、そのためにあの東シナ海あるいは尖閣列島付近の石油の問題をめぐってかなり不利な立場に追い込まれるのではないか、こういうことも耳にするのですが、これはあなたの方じゃなくて外務省でないとわかりませんか。
  52. 平林勉

    ○平林説明員 科学技術庁とおっしゃっておられますが、通産省資源エネルギー庁でございます。  ただいま御指摘の大陸だなの資源の開発に関しまして、御承知のように、日本と韓国との間の協定問題がございまして、通産省といたしましては、この協定が批准されます場合に、探鉱開発ということになりますと現在の鉱業法の特例ということで、その法案を準備中でございます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 その大陸だなにある石油埋蔵量、日本の資本で掘り得る可能性というのはあるのですか。
  54. 平林勉

    ○平林説明員 現在の鉱業法の特別措置で考えられております中身といたしましては、先ほど申しますように、これは当然日韓協定の中身に関連するわけでございますので、韓国と日本と共同で事業をする、その果実は共同で折半するという構想でございます。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 それを掘り出すことは現在の技術段階でそうむずかしくないわけですね。可能なわけですね。
  56. 平林勉

    ○平林説明員 比較的浅い海でございますので、技術的にはもちろん問題はないと思います。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 そんないい宝がすぐ近くにちらついているのに、なぜ今日もっと早くこれに着手できないのですか。もし着手できるとしたら政府としてはいつごろ採掘が始まるという見通しですか。
  58. 平林勉

    ○平林説明員 現在までに着手しておりません理由は、先ほど先生も御指摘のように、大陸だなに関しまして、特に境界線の引き方等に関しまして、国際的な合意がまだできておりません。特に御指摘の地域に関しましては、日本と韓国との関係がペンディングでございまして、そのために開発にまだ着手していない状況でございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはあなたたち専門家の見通しで、外務省、外務大臣、総理大臣、みんな総動員して、日本は資源がないのですから、何はさておいて最重点事業としてやるべきであるし、やらねばならぬ重大問題だと思うのです。そういうものがいま言った条約締結、協定締結がちょっと暗礁に乗り上げているとか、いろいろなネックがあってできないということで延び延びになるということは大変もったいない話でありまして、そういうネックが全部解消していよいよ掘り出すというのは、目鼻としては何年先ぐらいですか。  それからもう一つ、いま韓国の話が出ましたが、中国との問題はどうですか、尖閣列島付近にもかなりあるような話ですが。いまのあなたの話は韓国との関係にある大陸だなのことですが、中国との関係にあるところには石油はあるのかないのかも、あわせてちょっと教えてください。
  60. 平林勉

    ○平林説明員 申しわけございませんが、私実はそういう探鉱開発に関しましては専門家ではございません。中国との国境といいますか中国と関係する地域におきましても、相当量の石油資源が埋蔵されている可能性があるという現在までの調査でございますが、いま申し上げましたのは韓国との大陸だな水域でございます。中国との問題等につきましては、外務当局から御答弁する方がよろしいかと思います。
  61. 苅田吉夫

    ○苅田説明員 中国と日本との間の大陸だなの問題は、現在のところまだ話し合いがそこまで進んでおりませんで、現在のところでは、ちょっとそれ以上お答えできなと存じます。
  62. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がなくなりますから最後に法案に関係すること——いままでやったことも法案に関係が間接的には皆あるのですが、一応賛成法案でありますから、いろいろ関連のことをお尋ねしたわけです。  そこで、新国際ラウンド、かつてケネディ大統領が提唱したケネディラウンドの問題でありますが、一九七三年九月十二日から三日間、東京で閣僚会議がありまして、これには百二カ国が参加したということですから、大変大きな会議だったわけでありますが、ここで一括関税率を引き下げようというこれからのスケジュールを決めようということで、東京宣言なるものが発せられたわけであります。それがいよいよことしから会議に入るのではないか、こういう感じでありますが、ことしの何月ごろからこのガットの一括関税引き下げ交渉の会議というのは持たれるのですか。
  63. 宇川秀幸

    ○宇川説明員 先生御指摘の東京の閣僚会議で、一応こういう交渉を開始しようということが政治的に申し合わされたわけでございますが、その後アメリカの通商法案のおくれなどがございまして、かなりずれ込みましたけれども、ことしの二月十一日に行われました貿易交渉委員会で、これから実質的な交渉に入ろうということが申し合わされまして、三月の初めから現在までのところいろいろ各種の会議が行われまして、今後の交渉をどういうふうに組織していくかという話し合いが行われております。これで一たん交渉の組織の方の話が終わりまして、四月の中ごろから七月にかけまして、具体的にこれをどういうふうに進めてまいるかという話し合いがこれから始まろうという段階でございます。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 日本の外務省としては、ガットの場で、これだけは日本は主張し、世界に向かって実現を迫ろう、そういう基本線というのはどういうところに置いているのですか。
  65. 宇川秀幸

    ○宇川説明員 やや一般的なお答えになるかと思いますけれども、私どもとしては、こういうむずかしい経済情勢であるがゆえに、世界貿易を今後ともますます拡大してまいらなければならないというふうに認識いたしておりますので、そのためには、特に現在の自由貿易体制を支えておりますガットの体制強化、維持ということを中心に今後主張を展開したいと思っております。  最初に先生が言及されました関税分野につきましては、できる限り単純な方式で実質的な引き下げが実現できるというような方向を重視したいと存じますし、今後、最近新しく問題になっております輸出サイドでの規制の問題等につきましても、国際的に合意されるルールに従って対処していけるような体制に向かって進んでまいりたいと考えております。
  66. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 この点は関税局もある程度——ある程度と申しますか、積極的に外務省、関係各省といろいろ御協議してやっておる立場でございますので、一言つけ加えさせていただきますと、先ほど来先生御指摘のように、日本は資源のない国であるし、また、どうしても貿易立国でこれからもやっていかなければならない国である。いろいろ現在は不況の問題その他がございますが、やはり新国際ラウンドはある程度長期的な目で日本の行き方を考えていかなければならないと考えておりますので、われわれといたしましては、やはり従来からのガットあるいは新ラウンドの大きな目的であります世界貿易の拡大と自由化ということを中心にいたしまして、資源の有効利用あるいは世界各国の生活水準の向上と福祉の増進ということを中心に、積極的に各国に呼びかけてやっていくという立場をとっていきたいと考えております。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 このガットには社会主義国家も全部含まれておるわけですか。ソ連や中国、中近東の諸国、こういう国も全部ガットには入っていますか。
  68. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 原則的には共産国は入っておりませんが、ポーランドその他一部の東欧国が加入しているという状態でございます。
  69. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、ガットで一律に、たとえばケネディは一律五〇%関税率引き下げ、こういう大きな目標を掲げて世界に向かってリードしようとしたわけでしょうが、資本主義、自由主義国家間でガットの協定がぴちっとできて税率が下がった場合には、最恵国待遇か何かで、二国間の協定で社会主義国家とも同じ税率が適用になるという、そういうシステムですか。
  70. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 中国のように貿易協定がある場合、あるいはソ連とのようにやはり最恵国待遇が適用になるような規定がある場合には、日本の場合には原則として最恵国待遇で共産国の方にも恩恵がいくということになります。ただ、御案内のように、アメリカのこの前の通商法におきましては、その点はかなり神経質に最恵国待遇の適用の対象を区分して書いてあるケースもございます。
  71. 武藤山治

    武藤(山)委員 これからの新国際ラウンドにおける関税率引き下げ交渉というのは大変長丁場です。しかし、日本のように貿易に依存して国の富をふやす以外に手だてのない、資源のない国は、やはりこの関税交渉というのは国益に大変関係の深い重大な問題であります。それぞれの集団のエゴ、あるいは産業界の横車、そういうようなものに押し流されて、この関税率というようなものがゆがんだ形になることを大変私は恐れるのであります。日本は特にそういう点で、今後の新国際ラウンドではかなり大担に思い切った世界協調という立場を貫くべきである、そういう強い希望を最後に申し上げて、ちょうど十二時五分前になりましたから、私の質問は終わりたいと思います。
  72. 山本幸雄

    山本(幸雄)委員長代理 村山喜一君。
  73. 村山喜一

    村山(喜)委員 関税関係の問題について若干の質問をいたしてみたいと思うのですが、まず第一に、公正取引委員会の後藤部長にお尋ねをいたします。  きのうの夕刊に、韓国産の大島つむぎ全国七業者に対しまして公取委員会が立ち入り調査をしたという記事を見たのでございますが、これはどういう違反の疑いで調査をされたものか、また、その調査の対象から見て、どういうような内容的なものになっているのか、この席で明らかにできる点についてお伺いをしておきたいと思います。
  74. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 韓国で織られましたつむぎが通関いたしました後に、国内においてこれがいかにも国産の本場のつむぎであるかのような表示を何らかの方法でもってなされて国内に売られておる、そのために消費者が国産品との誤認をするという問題がございました。  この問題につきましては、公正取引委員会の所管しております不当景品類及び不当表示防止法の四条の三号でもって、原産国についての不当表示の告示が昨年の五月一日から施行になっておりまして、この告示に触れる問題があるのではないかということで調査をいたしておりまして、初めは任意の調査をいたしておりましたのですが、こういう品物の流通の経路、その段階、どの段階でもってそういうような不当な誤認をさせるような表示があるかということについては、なかなか調査がむずかしいということがわかりましたので、独禁法四十六条の強制調査権限を使いまして、立ち入り検査によってその事実を明らかにしたいということで、昨日と本日も引き続き関係業者について事情を調査しているということでございます。  問題は、通関段階におきまして、関税法の七十一条でもって、原産国についての表示に問題があるものについては国内に入ってこれないのでございますけれども、入る際には関税法の規定は通っておる。しかし、それが国内に入ったいずれかの段階でもってその原産国を表示した部分が消されたり、何かして、国内産と同じような表示がなされているというようなケース、それから通関段階においては無表示で入ってくるために、これでは関税法では押さえられない、そのものが国内に入ってきて一般のデパートその他の専門店等で売られるまでの段階において、国産品と紛らわしいような本場つむぎとかいうような表示がなされているというようなケース、こういうようなケースが問題として挙げられているわけでございます。  現在調査いたしましたのは、昨日発表いたしましたような鹿児島及び九州久留米、都城の業者、それから京都の業者、それから東京の業者の七業者でございまして、本日さらに二業者と昨日の調査以降の補足調査を現にやっておるという段階でございます。     〔山本(幸雄)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 村山喜一

    村山(喜)委員 調査の内容は、きのうから始められたわけですから、これからそれを証拠物件等を押さえながらやられるわけでございますが、その二業者を追加された程度で実態は大体把握ができ、これを不当景品類及び不当表示防止法の違反として調べていく、証拠物件等をそろえることができるという自信をお持ちでございますかどうですか。
  76. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 一応強制調査の対象として挙げるものでございますので、ある程度違反についての疑いをかけるに足るような事案についてということでございますので、現在のところ私どもの任意調査の段階、それから申告された内容等から見まして七業者、さらに本日の二業者ということにしぼっておりますけれども、調査する過程におきまして、実際にそのような表示をしている業者の名前等が明らかになれば逐次追加いたして、調査を十分にいたしてまいりたいと思っておりますけれども、だれがそういうような不当表示を行ったのかという追跡調査というのはなかなか困難なことがあって、従来の調査でもございますので、できるだけ綿密な調査をいたしたいと思ってはおりますけれども、そのためにはある程度若干の時間等もなおかかるのではなかろうかと思っております。
  77. 村山喜一

    村山(喜)委員 きのうの夕刊に出ている七業者の名前はわかっておりますが、本日二業者を追加されたその業者の名前と所在地はわかりますか。
  78. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 本日は鹿児島にございます関高雄商店それから関先富、この二業者を現在調査しているところでございます。
  79. 村山喜一

    村山(喜)委員 その業者の中でそういうような不当な表示をやって、従来から原科を輸出したり技術を持ち込んだりして、向こうの安い賃金を利用いたしまして逆輸入をしているというのが一部におるということは業界の中でも指摘をされてきたわけですがそういうようなことから鹿児島・だけでも二万名の関係の業界の中で大変困った問題だというので、先般来からこれについて何らかの規制措置を講じてもらいたいという強い要請がございました。わが党といたしましては、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部改正ということで法案の改正要綱案をつくりまして、いろいろ準備を進めているところでございます。  そこで、ちょっとこの場合に明らかにしておきたい点は、いわゆるガット九条の問題でございますが、これは無表示物の場合には罰則その他の規定というものから見まして、なかなか不当表示防止法の取り締まりの対象にならない、こういうふうに解釈をされるわけでございますが、その無表示物についてはこれはどういうような措置がとられますか。
  80. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 御案内のように、関税法におきまして表示がある場合あるいは紛らわしい場合には、税関を通りますときにそのチェックをしているわけでございますが、無表示につきましては先ほどお話しのガットの関係がございまして、積極的に原産地の方で輸出業者あるいはこちらの方で輸入業者にその義務を課するというのは、むしろ日本としても反対している立場に立っております。したがいまして、現在では税関におきましては韓国製と書いてある場合、あるいは大島つむぎと書いてあるという場合には通しております。その逆に、本場大島あるいは奄美大島という表示があります場合にはこれを削除させる、カットさせる、あるいは大島つむぎとだけ書いてある場合には、それに韓国製という表示を内側に表示させるということをいたしております。
  81. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、そういうような紛らわしい名前であるとか明らかに偽りであるとか、そういうものに対するいわゆる強制措置はこの法律によってできるのだが、ガットの九条から見ますと、無表示物というものはこれは脱法ではないんだ、こういうような考え方に立っておるようでございますが、その点については無表示物が入ってきた場合には押さえることができない、そういうふうな解釈を現行の法律体系の中ではせざるを得ないというふうに考えるのですが、その点はいかがでございますか。
  82. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、現行の関税法の方では、無表示物は税関では処理できないということになっております。
  83. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、この問題について通産省の後藤審議官が二月の中旬に韓国に参りまして、日本側の要求、特に表示の問題等について、これは明らかに韓国産であるというように表示を明確にしてもらいたいというような要請をしたり、あるいは秩序ある輸出をしてもらいたいというようなことや、あるいはセマウル運動の中軸に据えてもらっては困るというような問題について対韓交渉をやったという話を聞いているのでございますが、その内容はいかがなっておるのでしょうか。
  84. 黒田真

    ○黒田説明員 お答えいたします。  通産省でございますが、ただいま先生御指摘のとおり、二月の中旬に私どもの大臣官房審議官が韓国へ参りまして、数日間の話し合いをしてまいりました。  第一の表示の問題でございますが、従来とかく誤認、虚偽表示があるという点から、私どもからははっきりした韓国産の旨の表示をしてほしいということを申してまいりました。ただ、それに対しまして先方は、もともと韓国としてはそういう原産を偽るつもりはないけれども日本側の業者の御要望で実はつけていないケースがあったと思う、しかしその結果いろいろ問題が起こっておるようであるから一今後は輸出する際に必ず韓国産という表示を反物の端に織り込むことにしましょうという約束をして、すでに実施に移したというふうに聞いております。  ただ、これは従来の仕掛かり品等、向こうにある品もございますから、それを実施したと申しましても、直ちに翌日からそのとおり実施されるということは期待し得ないわけでございまして、若干の時日をかして見守ってみる必要があると思いますが、少なくともそういう話をし、先方も必要な国内的な措置をとるというふうに聞いております。  それから、秩序ある輸出という点につきましても、基本的なラインとしては先方も十分国内の問題を理解いたしまして、今後とも話を続けていくということになっております。  それからまた、長期的な問題といたしましては、先方のセマウル運動の中心的な目玉としてつむぎを取り上げるようなことはしない。それから、七五年以降当分の間絹織物の織機の増設をすることはしないというような点も約束されたというふうに報告されております。
  85. 村山喜一

    村山(喜)委員 話し合いによります両国間の政府の協議というものについては、いまお伺いをしたところでございます。  そこで、問題は、われわれが法律をつくっていきます場合に、伝統的工芸品の指定表示というのは国内的な措置でできるわけでございますし、輸入品についての原産地の表示というものはガットがそういうような規定になっておりますので、原産地表示をしなかったものに対して国内法の中におきましてそういうようなことを表示をしたものでなければ陳列をしたり販売をしたりしてはならないという条項をつくりました場合に、協定というのは国際法の立場に立つわけでございますが、この問題についてどういうような見解をお持ちなのか。これは大蔵省の関税当局から聞いておかなければならない点だと思いますので、この点について見解を明らかにしていただきたい。
  86. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ガット条約上は、国内で表示をつける場合にはこれは許されております。ただ一般論といたしまして、原産地表示につきましては、御案内のように、非関税障壁として比較的各国で問題にしておりますので、そのやり方が非常にきついという場合には非関税障壁のサイドから問題になることもあり得ると思いますが、ガットの規定自体から見ましたならば、それは許されていると了解しております。
  87. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま吉田関税局長からお話がありました点については、確認をしておきたいと思います。  そこで、輸入品について公正取引委員会が不当表示の疑いでいま調査をされている段階にありまするし、また、そういうような偽りの形で本場大島つむぎとか手織り本場つむぎであるとかというような形で販売をしていく中で、国内産業が非常に打撃を受けて深刻な問題がいま出ているわけでございます。そういうような意味において、この伝統的工芸品産業の振興に関する法律は超党派的に議員立法として制定をしたものでございますから、その中できちっと位置づけるように輸入品の原産地表示というものをやらなければならない点に立っているんだと考えているわけでございまして、ほかの各党の御了解をいただいて、この点については明確に規定づけていきたいと考えております。  そこで、一番の問題は輸入品との関係の調整の問題でございますが、きょうの朝日新聞を見ておりましたら、繊維業界と自民党の繊維関係の議員との間にきのう懇談会が持たれて、いまの日本の繊維産業の状態から見て何らかの輸入制限についての措置を講じない限り、日本の繊維産業というものはどうにもならない段階に来ているようだということで、その制限についての方向づけの合意が大体できたという報道が出ております。その場合にいろいろな方法があるわけでございまして、次の点についてお尋ねをいたしてみたいと思うのです。  それは、十九条の緊急関税による措置の問題が方法としては一つとられるだろうと思うのでございます。そこで、国内法的な定率法の九条の二によりまして政令で引き上げられることに法的にはなっておりますが、その問題の処理は何らかの代償措置を伴う問題が一つ出てくるであろうと考えるわけでございます。この点について、緊急関税としての措置をする場合の方法等について、どういう考え方をお持ちであるのかという点を第一点としてお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、通産省の側にありますが、外為法によります輸入貿易管理令によりまして、数量制限、割り当て等の問題ができるわけでございますが、これらに対するところの措置をどういうふうに考えておられるのかという点でございます。  それから、ガットの二十八条によりましていまの協定税率の改定の交渉が相手方とできる、こういうような考え方も成り立ち得るわけでございますが、これらについての見解はどういう見解をお持ちであるのか。大島つむぎの輸入の問題に関連をして、考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  88. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 最初に第一点の緊急関税の問題でございますが、御案内のように関税定率法の第九条の二と、それを裏づけますガットの十九条の規定とあります。それでまず第一に、特定の貨物、この場合としては繊維の輸入が非常に増加したという前提がございまして、そしてその輸入が競合する国内の産業に重大な損害を与える、あるいは与えるおそれがあるという場合に、国民経済上緊急に必要があると認めるときに緊急関税を発動するというぐあいに前提条件がなっております。  私どもが現在考えておりますのは、繊維につきましては、確かに四十八年は非常な増加でございましたが、四十九年の上期に至りまして、あるものは少しずつ増加の程度が減っておりまして、下期になりましてからはほとんどの商品が非常に落ち込んできております。数字的に見ますと、毛織物が下期におきましてもかなり増加しておりますが、それ以外のものは下期についてかなり輸入量が減ってきております。この緊急関税というのはあくまでも緊急でございまして、本来ならばほかの手続がいろいろある、先ほどお話のガットで交渉するとか、あるいは国会で税率を改定するとかいう時間がないときの緊急の問題でございますので、短期的にその増減を見た場合に、現在はまだ緊急関税を発動するまでの繊維の増加がないというぐあいに私ども考えております。  それからもう一つは、これは一番最後にお尋ねの二十八条の交渉の問題とも絡むわけでございますけれども、御指摘のとおり代償の問題というのが非常に大きな問題でございます。各国と協議いたしまして、こちらの方の関税率を引き上げますのに影響されます輸入量あるいは関税額に対応する引き下げます代償を要求されるのが国際的なルールでございます。繊維といたしましては非常に大きな代償を要求されることははっきりしております。国内的にも非常に大きな問題であるというのが第二点でございます。  さらに第三点といたしましては、御案内のように繊維の輸出先というのは韓国とか中国とかあるいは台湾とか香港とか、比較的東南アジアの近隣国が多うございます。もちろん一部のものはイタリアとかフランスとかEC国等もございますか、概して東南アジアの各国が多うございまして、それらの国は日本との貿易関係を見ますとほとんどが日本からの出超でございまして、四十九年では韓国で十一億ドルあるいは台湾でもたしか十一億ドル日本の方が黒になっております。そういうような段階におきまして、こういう代償の問題を話し合う、あるいは緊急関税の問題あるいはガットの二十八条の交渉ということをやることは国際的にいろいろな問題があるということでございますので、私どもとしては現在はこういうものの発動は適当ではないと考えております。
  89. 黒田真

    ○黒田説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、外国貿易管理法に基づきます輸入貿易管理令で輸入数量の制限をするという規定はございますが、国際的な約束に伴いますと、ただいま関税局長から御説明のございましたガットの規定等に準拠しなければいけない。そこでは輸入の増加ということが大きな要件になっておりますが、繊維全体の輸入の状況を申し上げますと、先ほど関税局長が申しましたとおり、四十八年という年は非常に高い、特に下期が月平均二億ドル近い繊維製品の輸入が行われたという事情がございますが、その後四十九年中を通じまして次第に下がってまいりまして、最近では昨年の十一月ごろから一億ドルを切るという水準です。したがいまして、一番ピークに比べますと半分ぐらいまで下回った水準に落ち込んでおります。  そういうようなこともございまして、私どもといたしましては、もちろん繊維産業界というものが現在の困難の中で、不況ということで非常に苦しんでおりますが、直ちに輸入制限という手段を講ずることは適当ではないという考えから、それを講じないで、輸入制限に訴えることなく問題を解決するという方向をいろいろと模索をしておるというのが現状でございます。
  90. 村山喜一

    村山(喜)委員 関税による措置もむずかしい、それから外為法によりますそういう輸入数量制限割り当ても現実の問題としては困難である。何らかの方法ということになれば、結局はアメリカがやりましたように、もしそういうようなことを不当に続けていくならば、われわれとしては発動をして日本の繊維品はボイコットをするぞというような、力を背景にしながら相手側と話し合いをして、その中で秩序ある輸出をさせるようにしむけていく、そういうような話し合いによる方向だけしか方法としてはとれない、こういうふうに受けとめられるわけでございますが、通産省の方はそういう考え方ですか。
  91. 黒田真

    ○黒田説明員 私どもといたしましては、先ほど申しましたように四十八年あたりに非常に異常に輸入が増加いたしまして、四十九年には急速にそれが落ち込みました。日本国内でもいろいろな問題が発生いたしましたと同時に、相手の輸出国側でも日本から大量に買い付けに来た、場合によって設備もふやしてみた。ところが、一転して今度は注文がさっぱりこないということで、そういう非常に急激な変動ということはお互いのために不幸なことであるというような前提に立ちまして、すでに韓国ともそういう基本的なベースでの理解を求めるという話し合いを行っておりますし、また近隣の関係諸国ともそういうラインでの話をしていくということが最も適当なのではないだろうかというふうに考えております。  もちろん、相手国と話すだけではございませんで、国内的にも輸入業者に対しまして、四十八年の異常な増加ということが再発しないように、あの時期にはいろいろな要因が重なり合った特殊事情だとは思いますけれども、商社の合理的な行動を期待する旨の自粛要請ということも、私ども繰り返し実施しておるところでございます。
  92. 村山喜一

    村山(喜)委員 今回の関税改正の中で例のスキーぐつの問題がありますが、これはやはりガット二十八条によります改定交渉の内容として税率を引き上げるということで当事者間の改定についての協議、そういうようなことの中から今度の改定案が出てきたものだと思うのですが、そのとおりですか。
  93. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、御案内のようにスキーぐつにつきましては昔は革でございましたが、現在はプラスチックのスキーぐつにほとんど全部変わってしまっております。その際に、最初はまだまだ国産の方が多かったわけでございますが、四十九年から国産と輸入とがほぼ半ば、あるいは場合によれば輸入の方が多いというような見込みになりまして、そのためにジュネーブにおいて二十八条の交渉を行いました。向こうからの入ってくる先はイタリアが一番多うございまして、あとフランスその他ECが中心でございますので、ECを中心にしていろいろ代償交渉を行って、非常に困難な交渉が続いたわけでございますが、最近に至りましてほぼ妥結の見込みがついたという段階になっております。
  94. 村山喜一

    村山(喜)委員 くつは、生計費統計の調査品目の内容ではたしか衣服類の中に入っておったと思うのですが、そういうような内容についても個別的な品目についての交渉はガットの二十八条によって行うことができるわけでございます。ただ、代償措置をどうするかという問題が出てくるわけでございまして、そういう意味においては輸入品、との関係の調整というものは、現在あります法律、関税あるいは外為法あるいはガットの協定の中で幾らかの措置がとれるわけでありますが、それを伝産法の法律体系の中でも調整をするための措置としてそういうようなものをやることができるような規定づけをいたしたいと私たちは考えているわけでございます。これには対外的な問題がございますので、果たしてそういうような表現の方法がいろいろ問題になろうかと思いますが、それらについては専門家の意見も聞きながら法律案をまとめてまいりたいと考えておりますので、皆さん方の方でもそういうような立場から、いろいろありましょうが、協力を要請申し上げておきたいと思います。  そこで、私はこの際、日本の立場から経済主権という立場で見てまいりましたときに、四十七年の十二月に関税率審議会の答申がなされておりますが、その十二ページに次のようなことが書いてありました。いわゆる「特殊関税を発動しうるよう、制度ないしその運用について」——これは相殺関税の発動手続の政令は、そういうのがまだできていない、それから緊急関税についても、政令はあるけれども関税率審議会に対する諮問の手続だけが規定がしてあって、そういう緊急な事態に適応するところの体制が十分にできていないじゃないか、だから、そういうような特殊関税の迅速な発動に支障を来すおそれがあるので、早急に整備を図るとともに、海外の市場動向の調査機能を充実する必要があるという指摘をされておるわけでございますが、それらの運用の手続の問題まで含めまして、この問題はその後一体どういうふうに処理がされてきたのか、この点についてお伺いをしておきたいのでございます。  これらの措置がとられておったとするならば、いま国内においていろいろなトラブルが発生している大島つむぎの問題等も、ある程度それらの措置によって緊急な措置がとられたかもしれないわけであります。これが四十七年十二月以降、指摘をされましてからどのように改正をされているのか、お伺いしておきたい点はそこにありますので、内容についてどのようになされたか、説明を願いたいのです。
  95. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 相殺関税あるいは緊急関税の手続的な問題といたしましては、これはわれわれいろいろ研究いたしましたが、その結論といたしまして、まず相殺関税の方から申しますと、その実体が決まればすぐやり得るという規定でございますので、たとえば関税率審議会に意見を聞くとかあるいはそちらに報告するとかいう程度の規定を書けばよろしゅうございますので、実体さえ決まれば手続的には比較的楽であるとい、う結論が出ております。  緊急関税の方につきましては、御案内のように、関税率審議会への諮問の規定はすでにできておりますので、あとさしてつけ加えることはない。したがいまして、手続的に若干の補正は必要ではございますが、それは緊急関税あるいは相殺関税をやるべきときに、政令でございますので、同時にやり得るというぐあいに私どもは考えております。
  96. 村山喜一

    村山(喜)委員 こういうふうに指摘をされたことは事実として受けとめて、たとえば相殺関税の場合には発動手続に関する政令が制定をされていない、これは事実ですか。
  97. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 事実でございまして、発動する場合にも、手続的に、たとえば関税率審議会にかけるかかけないかというような点については現在規定はございません。したがいまして、発動する場合にはたとえば関税率審議会にかけるというような政令を書くということは、これは実体が決まりました場合には、政令でございますので、すぐに可能であるとわれわれは考えております。
  98. 村山喜一

    村山(喜)委員 緊急関税の発動については、制定をされていても関税率審議会への諮問に関する規定だけである、こういうふうに指摘をされているわけですが、そういうような法令上の手続規定の不備がそのままになっておるわけですね。  いまのお話は、諮問に関する規定があるからそれで結構だというふうにも吉田さんの答弁では受けとめられるわけでございますが、しかし法令上の手続の規定の不備というものは、当時指摘をされたものが依然として残っている、話を聞いてみるとこういうようなことに結論づけられるわけですが、そういうふうに考えていいんですか。
  99. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 前段の相殺関税につきましては、全くおっしゃるとおりに、手続上どこの審議会にかかるかどうかも政令が決まっておりませんので、手続上の不備がございます。したがいまして、われわれとしては、その後の関税率審議会に御相談いたしまして、仮に実体としての相殺関税を発動しなければならないというときには、関税率審議会にかけて御相談してやりたいと思っておって、関税率審議会もぜひかけてほしいという実体的な手当てはしてございますが、これを政令というかっこうでやっていないという点は、おっしゃいますように、答申が出ましてからかなり時間がたちますのに、私どもとしては手落ちだったと思います。  ただ、私どもの気持ちとしましては、これは非常に微妙なときだものでございますから、発動の実態にかかわらず相殺関税のその政令の部分だけ直すということにつきましては、またいろいろな憶測も飛ぶといけないと考えまして、そういう実体的な勉強はしておきましたですが、政令でございますので、まず実態の方が、実態というのは相殺関税を発動するというような事態が起こるような場合には、すぐ政令の手当てはできるという準備はしてございます。
  100. 村山喜一

    村山(喜)委員 緊急関税の方はその諮問の手続だけしかないじゃないかということが言われていますが、それはどうなんですか。
  101. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 いま経緯をちょっと聞いていたわけですが、この当時、答申のときには、ここに書いてありますように、発動する際に単に審議会にかけるという手続的なものだけじゃなくて、もう少し発動についての細かいいろいろな要件的なことを政令に盛り込むかどうかということで、あるいはそれに関連する手続ということについて盛り込むかどうかということでかなり議論があって、あるいはその方がいいだろうという話もあってこういう答申になったようでございますが、その後さらに答申を受けましていろいろ勉強いたしてみましたところが、まあいろいろ対外的な問題もあって、しかもニューラウンドでこの緊急関税につきましては、いろいろな国がいろいろな立場で現在主張している段階でございます。  御案内のように、アメリカは緊急関税はすぐ発動できるようにしたらどうか、ほかの国は緊急関税を余り乱用してはいけないからもっとそれをチェックする方法を考えたらどうかというようなことで、その実体の発動の要件につきましては非常に微妙な段階国際的に入ってまいりましたので、現在は、勉強はしておりますけれども、むしろ政令の手続までいくのはいかがか。実態として、もし発動しなければならないという事態が起こった場合には、現在政令で関税率審議会にかけろという手続が書いてございますので、あと発動要件について仮に政令がなくとも、それはむしろガットの条約の解釈の問題として十分に発動はできる、そういうぐあいに結論がなっておりまして、現在手当てはしていないということになっております。
  102. 村山喜一

    村山(喜)委員 なるほどガットの十九条を受けまして、国内法の定率法の九条の二によりまして政令で引き上げられる要件というものも明示はしてありますが、しかし関税率審議会に対して諮問をするという手続だけが規定づけられて、そういうような緊急関税については微妙な段階だからということで、指摘をされてももう二年余りも放置をしたまま今日に至っている。いざというときには大丈夫でございますと言っても、運用の手続なりあるいはその内容的なものがどういうような要件を満たした場合には発動し得るのか、そこら辺が具体化されていないわけでございますから、経済主権という立場に立って考えるならば、明らかにこれは関税当局の怠慢ではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。  やはり間髪を入れずそれらに対応する措置をとらないところに、いまの大島つむぎのように長い間問題が出て、そして関係の業者が東京にわざわざ何百名も押しかけてきて、そして上へ下への大騒ぎをやる中からようやく公正取引委員会が動き出すという程度になってしまって、そして現実に生活にもう非常に困難をしている状態に対しても機敏に対応できない、こういうような状態がいわゆる関税行政の中で生まれてきたのではなかろうかと思いますが、この点については森政務次官、あなたは政令をつくる場合には政務次官として大臣を補佐する立場にあります。明らかに関税率審議会の答申が四十七年の十二月に出ているわけでございまして、そういうような不備な点については早急に整備を図って、そうして海外の動向に対応しなさいということが指摘をされている。そういうような意味から、私はこの点についてはあなたから責任を持って答弁をしていただくことが必要ではないだろうかと考えますので、あなたの見解をお尋ねしておきます。
  103. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この問題に関しましては、新国際ラウンドの問題もございますし、先ほど局長が、怠慢という言葉は使わなかったんですが、多少そごがあったことは認めておりますが、ともかく国際ラウンドとにらみ合わせましてはっきりした態度に出たいと思います。  なお、一言つけ加えますと、大島つむぎの問題につきましては、私も奄美大島に行って大分いろいろ研究もしたのでございますが、やはり一番の問題は、関税で処置するということよりも、日本の業者の態度について私もいささか不満を持っております。
  104. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題についてはどうも明確になりませんが、そういうような新ラウンドの交渉の問題もあり、国際的な影響もありということですが、政令をおつくりになるのは、これは法律に基づいて政令を定めるべきだということで規定づけられておるとするならば、やはり国民の権利との関係において明確にしておかないと、それらの点を一々法律に盛るわけにはいかぬわけですから、それをしゃくし定規で、自分たちの勝手なベースでやれるんだということになったら、行政権が優先をして、そういうような根拠がないのにやれるというようなことになったら、これはたまらぬわけですよ。ですから、やはりやるべきことはやって、そしてそれが国際的にどういうような影響をもたらすからこれについてはいまのところできないならできないということを、われわれ立法府の方に報告をなさってしかるべきではございませんか。その点について森政務次官の見解を再度お尋ねいたします。
  105. 森美秀

    ○森(美)政府委員 その点に関しまして十分先生のいまの御意見をしんしゃくいたしまして、はっきりした態度をとるつもりでございます。
  106. 村山喜一

    村山(喜)委員 これらの問題は、いま森政務次官もおっしゃいますように、日本国内の業者に不届きな者がおりまして、自分さえもうければよろしいという考え方で多くの人たちを泣かせてきた事実は、これはあなたが言われるまでもなく、われわれも憤慨にたえません。したがいまして、そういうような者がないように、業界内部が自主的な公正取引の規約等をつくりまして措置するのが私は正しいと思うのですが、いわゆる公取が二月一日に明快にそういうような指導通達を出されまして、公正取引規約を業者につくらせるんだということでおやりになっているように聞いているんですが、その点はいかがでございますか。
  107. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 原産地等の不当表示の問題を景表法違反で取り上げるだけではなく、むしろ積極的に、本場の伝統品をつくっておられる業者の人たちが、自分たちのものについて自信のあるものをつくり、それについて表示のルールを定めるという公正競争規約の制度で積極的な業界の姿勢を示すべきじゃなかろうかということで、業界の方とも話し、また、通産省あるいはこれは県の当局ともお話しいたしまして、現在県もそれから通産省の方も話を進めようということで、これは幾つかの組合が一緒になって話を進めなければならない事柄でございますので、現在その調整をしながら、そういう積極的な、むしろ正しい方向で指導いたしております。
  108. 村山喜一

    村山(喜)委員 先ほどから申し上げますように、そういうような公正取引規約を業者につくらせるということは、業者が納得をしなければ規約はできないわけでございますから、そういう指導をお願いすると同時に、やはり議員立法としてつくりました伝産法の中に伝統工芸品であるという表示や、あるいは先ほどから支障はないということになっております原産地表示の問題、それに加えて、多少問題がありますが、輸入品との調整という問題について何らかの規定を置いて私たちはこの問題について処理をしたいと思います。  そこで、これらは大蔵委員会の所管事項ではございませんで、通産の委員会の所管事項でございますから、そちらの方で詰めていかなければならない問題でございますので、この点について森政務次官からここで見解を求めようとは思いませんが、やはり政治家という立場から、自由民主党の方におかれてもいろいろと御検討をされるように要請を申し上げておきたいと思います。  以上でつむぎの問題については終わります。  次に、引き続いて生糸の問題についてでございます。この内容についてはもうすでにいろいろ論議がなされておりますが、話を聞きますと、近いうちに繭糸価格部会の答申を得て、政府としてのこの価格についての基準価格を設定するという段階にきているようでございます。  そこで、農林省の現在の状態はどういう段階にきているのかということについてお尋ねをしておきたいのでございますが、蚕糸事業団が、需給関係を考慮に入れ、価格の維持を図るために、この五月まで一元輸入で外国からの輸入は事業団の方で処理をして、そして市中の在庫の調整を図りながらある程度の買い上げをいたしまして、その現物の取引価格を安定的に維持をしようということでやられていることは承っております。  そこで、資材、生産費が上昇をしてまいっておりまするし、もうこういうような低価格では養蚕というものに対してわれわれとして放棄したいというような、そういう養蚕農家の声も非常に強くなってきているわけでございまして、いま生糸をキロ当たり一万三千円にしてもらいたいという業界団体の要求も出てきているようでございます。そういうふうになってまいりますと、これらの問題は単に農業政策の問題だけではなくて、この関税の問題、輸入制限の問題等にも関係をしてまいりまするのでお尋ねをしておきたいと思うのでございますが、基準価格の決定はいつになろうとしているのか、この点について状況を説明を願いたい。  その次に、第二点は、一元輸入の問題については政令で五十年の五月までということになりますが、市況の状況等から見ましても、あるいは需給関係から見まして、この政令は、ここの段階で打ち切るだけではなくて、延長をせざるを得ないという状態にあると私たちは状況から見た場合には思うのでございますが、それに対する考え方はどういうことになっておるのか、この点について説明を願いたいのでございます。  これと同時に、いま畜産物価格安定の価格安定ラインが、きょうの新聞あたりにも、豚肉については上限価格を七%にするのだ、こういうような線が事務当局から示されているようでございまして、これもえさの値上がり等に伴うコストの上昇に対応して、果たしてそれがそういうようなことで生産が成り立つかどうかという点についても問題を感じているわけでございますが、畜産物価格安定法に定める安定価格の問題についてはいつごろ処理をされようとしているのか。それとの関連においてこの繭、生糸の価格の決定との関係はどういうふうになさろうとしていらっしゃるのか。新聞によれば、春闘を低く押さえるために労働者には一五%以下の賃上げ率で押さえて、一方、農民の方にも低い線で押さえていくんだというのが政府の方針だ、こういうふうにも書いてございます。そういうような点から私たちも非常に大きな関心を持っているわけでございますが、以上申し上げました点について、農林省の見解をお尋ねしておきたいと思います。
  109. 泉孝健

    ○泉説明員 生糸の関係につきまして私からお答えをいたしたいと存じます。  第一点の基準市価の決定の方針と決定時期の問題についてでございますが、生糸の価格安定の基準になります基準市価は、繭糸価格安定法の定めるところによりまして、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て適正な水準に生糸の価格を安定させるということを旨として定めることになっているわけでございます。この六月から始まります五十生糸年度に適用されます基準市価、この決定をめぐります蚕糸の情勢につきましては、先生御指摘のとおり、非常に厳しい情勢にあるわけでございます。生産費の増高もございますし、またかたがた需給事情は非常に悪い、こういうような情勢もございますので、この法律に基づきまして生産費、需給事情、こういった条件というものを十分に考慮いたしまして、二十八日に一応予定しております蚕糸業振興審議会の繭糸価格部会、この意見を十分にお伺いいたしまして適正な水準に決定してまいりたいというふうに考えております。その決定の時期は今月末ということで予定をいたしておる次第でございます。  それから次に、一元輸入の問題でございますが、昨年の非常な需給の不均衡輸入の増大に伴います市況の低迷に対処いたしまして繭糸価格安定法に基づきます一元輸入措置をこの五月三十一日までということで講じたわけでございますが、今後の問題といたしましても、現在の需給事情等から考えますると、何らかの輸入調整措置は必要であるというふうに考えておる次第でございます。一元輸入措置を継続するかどうかというような問題につきましては、今後の需給の状況と国際的な問題点等も考慮いたしまして十分に検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。  なお、畜産物価格との関係につきましては、従来この三月に決まりますものが畜産物価格と私どもの繭糸、生糸の価格ということでございまして、時期的には一致しておりますが、それぞれの法律の規定に基づきましてそれぞれの品目の事情に基づいてこの価格水準を決定いたしておるというのが実情でございます。
  110. 村山喜一

    村山(喜)委員 課長の立場ではそれ以上の答弁を求めるのは無理だと考えますので、あえて追及はいたしませんが、生糸にしても絹糸にしても絹織物にいたしましても、これは自由化品目ですね。そこで基本税率が生糸と絹糸の場合には一五%、協定税率で七・五。そこで絹糸の場合には二割カットが働いておりますから、これは六%、絹織物は基本税率が二〇%に協定税率が一〇%、それの二割カットが働きますから八%、こういうふうに承っているのですが、そのとおりですか。
  111. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 間違いございません。おっしゃるとおりでございます。
  112. 村山喜一

    村山(喜)委員 とするならば、一元輸入という形をとるのは、ガットの上ではこれはいわゆる十七条の適用によりまする国家貿易で、いわゆる非関税障壁の一種だというふうに見てよろしいのですね。
  113. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、ガット上は国家貿易ということで認められております。非関税障壁の問題につきましては、これは各国各国の立場から、自分の国として非関税障壁と認めると非常に困るというような場合には、それぞれ今度のニューラウンドの貿易交渉委員会の方に設けられております非関税障壁の部会の方に申し出まして、これが各国からいま大体八百ほど来ておるわけでございますが、さらにそれを追加してもいいということでお互いに申し入れをいたしまして、そこで議論するわけでございますが、現在のところは国家貿易ということで生糸について言われたことはございません。  わが国では塩が専売になっているということで、塩について問題にされたことがございます。しかし、これにつきましては各国各国の立場からさらに追加して申し出ることが許されておりますので、これからどのような話が出てくるかわかりませんが、現在のところでは、日本では塩についての専売が国家貿易との関係で問題になっているだけでございます。
  114. 村山喜一

    村山(喜)委員 国家貿易十七条によりまして一応そういうようなことで切り抜けてはおるわけですが、いまの自由化品目であるという点から考え、なおこれが今後どういうところまで持ちこたえができるのか、中国、韓国、ブラジル、それらの産出国の態度も出てくるでありましょうし、非常に困難な輸入制限の問題も背景にしながら、しかも絹織物は自由化されておるわけでございまして、その点からいうならば、今度は機屋の方の関係の利害も出てくる、あるいは織物の輸入業者の関係の問題も出てくるというような背景がありますし、片一方においては国内の養蚕農家の生活がこの価格の決定にかかわっているという問題がございます。それだけに国内の需給が旺盛になればまた市況も回復をするという見込みもあるわけでございますが、いまのような景気の状態の中では非常に厳しいものがあるのではないだろうか。  そういうように考えてまいりますと、生産と需要との関係あるいは海外の価格関係、こういうようなものに左右をされながら生産費は上昇をたどっていく。そういうような需給事情を考慮しながら生産費を旨として価格を決定するという場合に、一体どこにウェートを置いてやろうと農林省は考えているのか。この点については、日本農業というもの全体の見直しとの関係もありますので、昨年は上げ率が非常に高かったわけでございますが、ことしは一体どういう方向で決まろうとしているのか。  この前も養蚕振興大会に私たちも出てみましたら、自由民主党の国会議員の方々はきわめて意気軒高たる線をお示しになりまして、昨年並みぐらいは当然上げることを約束いたしますという大きなことを言われたわけでございますが、昨年は二五%たしか基準価格は上がったと思うのでございます。そしていま一万円という生糸の基準価格が決まっておりますが、それを二五%上げるというこことになると、一万二千五百円ということになります。そういうようなもので果たして期待どおりにいけるかどうか。私たちは野党という立場で今日の現状を踏まえながらもっと要求をしたい気持ちでございますが、与党の自由民主党のそうそうたる国会議員の方々が昨年並みは上げてあげますということで約束をされる。そのとおりわれわれは信じていいかどうかということについて、いろいろな、これは関税当局の方にも関係がありまするし、農林省にも関係があるし、通産省にも関係がある問題でございますので、一体どういうふうにこれは考えていけばいいのか、森政務次官の見解をお尋ねしたいと思います。
  115. 森美秀

    ○森(美)政府委員 率直に申し上げまして、二五%というのは、ことしの日本経済事情から申しましてなかなか厳しい線だ、むずかしい線だと考えておるわけでございます。これについては、私はいまここで何も言うべき立場にございませんので、これ以上のことは差し控えさせていただきたいと思います。
  116. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がだんだん迫ってまいりましたのでしぼってまいりますが、この際、関税定率法の十二条の第四項、これが制定をされましたのはごく最近、去年でしたか、生活関連物資ですが、「食料品、衣料品その他の国民生活との関連性が高い貨物」の輸入、これについて「政令で定めるところにより、貨物及び期間を指定し、その関税を軽減し、又は免除することができる。」この政令はどういうふうになったのですか。できておりますか。
  117. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 これは御指摘のように去年の三月末に改正が行われました規定でございまして、その当時はいわゆる狂乱物価で、かなり国内の物価に対する批判が強い時代でございまして、国民生活安定緊急措置法ということで標準価格の設定が行われる、そういう事態でございまして、ちょうどこの法律が通りました前後からは、むしろこの標準価格の設定された物資がだんだんと外れていく段階でございまして、結果的には、緊急措置法による標準価格が設定された物資についてこの弾力関税を適用するということを基本的な考えにしており、また、その際、この法案が通りますときに、弾力関税の運用についてはできるだけ国内産業のことを考えて慎重にやってほしいという附帯決議もついてございまして、その後私どもが見てまいりましたならば、狂乱物価が漸次おさまる方向に来ておりましたので、現在の段階ではまだその物資を指定して政令をつくるという段階に至っておりません。
  118. 村山喜一

    村山(喜)委員 今日はそういうような海外の輸入品も価格が下がり問題がないので、政令の発動、その準備もしていないようでございますが、やはり生活関連物資の、そういうような国民生活の安定の上から、いま吉田局長が言われたように、本邦の産業に損害を与えるおそれがないと認められるときには、政令で定めるところによってそういうような緊急的な措置をすることができるということになっているのですから、やはり原油の輸入価格が大幅に引き上げられたようなときに、こういうようなものが発動されて関税上の減免措置をとられるようなことが必要なのではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけですが、そういうような意味から、「食料品、衣料品その他の国民生活との関連性が高い貨物」とは一体何を指しているのか、こういうような内容に——その例示してあるものは別にいたしまして、あなた方がお考えになっていたものは一体何だったのか、この点について説明をしてもらわなければ、政令がないわけですから、その品目が明らかにならない場合には論議ができない、そういうことになりかねませんので、二項で豚肉の問題、三項で砂糖の問題が処理されるようになっていると同様に、四項の場合にも具体的にはどういうような物資を考えていたのか、その点について明らかにしておきたいと思いますので、お答えいただきます。
  119. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 これは前回御審議のときにもいろいろ御議論があったかと思いますが、現在私どもが考えておりますのは食料品、それから繊維関係の衣料品あるいは灯油というようなものがこの対象になるのじゃないかと考えております。  なお、ちなみに、いま御指摘のように、二項の豚肉は三月十三日から今月いっぱい、三項の砂糖につきましては去年の二月から引き続いて十二条の適用で減免をしてその政令を出しております。
  120. 村山喜一

    村山(喜)委員 二項、三項はわかっていますよ。四項の「食料品、衣料品その他」の「その他」というのには灯油が入っているのだ、こういうことですが、灯油は国内の原油の精製過程の中で出てくるわけですから、そういうようなので灯油の配分率を多くとる方法などもあり得るわけで、また、国内において価格の操作をすることによって灯油を低い値段に抑えることもできるでしょう。しかし、私はそれ以外に、やはりもっとその内容の枠をいろいろ御検討いただいて、そうしてこれから物価騰貴にならないようにする、国民の生活を守る意味においてもっと品目等を、他の官庁との関係もありますので、いろいろ協議を願いましてこれらの整備をやっておいていただいた方が、そのときになってからでは間に合いませんので、準備を要請しておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  121. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 私どもとしては、先生の御趣旨で検討していきたいと思いますが、先ほどちょっと申しましたように、基本的には、前回の御審議のときに御説明いたしましたように、国民生活安定緊急措置法によって標準価格が設定されるというような事態の際に、そういう標準価格が設定される物資について、これをまず第一義的に考えるということで従来からも考えておりますし、これからも検討の中心にはしていきたいと考えております。
  122. 村山喜一

    村山(喜)委員 その点はよろしゅうございますが、次に、今度の改正の中で、トウモロコシのいわゆる改定の内容がございます。これは国内のでん粉と競合しないものについて無税の措置をするという新しい条項が入っておるわけですが、この措置によりまして、従来のものは国内産のでん粉との抱き合わせ販売という形の中で処理がされてまいったわけでございますが、こういうような新たな措置をとりましても、国内のいわゆる芋でん粉あるいはバレイショでん粉等について、国内産業の政策上においては何ら支障がないのかどうか、この点について実効性がその規制の上において生まれてくるかどうか、いわゆる割り当て制裁の問題や監督の問題やいろいろあるだろうと思いますが、それらについての見通しを説明願っておきたいのでございます。  と申し上げますのは、農産物の価格の決定の中で、従来はサツマイモなどの場合には一俵当たり低い値段で抑えられておったのですが、ことしは——去年ですが、一俵千円というような価格にまで上昇をいたしました。そうなってくると、国際的な競争力はそれだけ失われたとも思われるわけですが、その段階の中で、一番競合関係にありますトウモロコシの場合に、無税の措置をそういう三種の品目についてとるということが考えられておるとするならば、国内産業におけるところの影響というものをどういうふうに判断をしておられるかということをお尋ねしておきたいと思います。  それから、もう時間の関係で、みんな腹をすかしていらっしゃるでしょうからまとめて質問をしておきますが、いわゆる各種減免還付制度の改正の中で重油脱硫減税制度についての措置でございますが、この中で日本の国が環境の保全の立場から低硫黄の原油を入れてきた場合にキロリットル当たり五百三十円ですか、それから原油をキロリットル当たり六百四十円の税金を払って入れて、その後脱硫等をやりましてなにした場合は五百円の減税をやる、こういう戻しの形になってまいりますと、そういうような高い硫黄分の入った原油を入れて国内で精製をして処理する場合と、それから低硫黄分の原油を輸入する場合との間の金額の開きが、硫黄分の多いものを入れた場合の方がメリットが大きくて、低硫黄分の原油を入れた場合にはその利益分が少ないという結果に今度の場合でもなっているのではないか。  とするならば、これはやはり消費地精製主義という従来からの通産省の考え方というものを、関税の中でもそれを踏襲していくというものになっているのではないかと思いますので、その内容はどういうふうに還元制度の改正の中で今度是正をされたものなのか、この点について説明を願っておきたいわけです。以上二点です。
  123. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 最初のトウモロコシの関税の問題でございますが、先生御指摘のように、国産の芋でん粉というものをわれわれとしては十分に保護するために、コーンスターチ、これがそれと競合関係にございますので、関税を割り当てによりましていろいろ操作をしているわけでございますが、抱き合わせと先生おっしゃいましたのは、そのうちの砂糖にする糖化用のものだけを抱き合わせで無税にしておりまして、その他は抱き合わせではございませんで、そのかわりこれまでは一〇%の関税をかけて割り当てをさらにやっていたということでございます。その際に、本来の競合するコーンスターチじゃなくて、コーンスターチに横流れすると困るという、さらにもう一歩先の方まで防衛するために、現在いろいろなものにつきまして割り当てでさらにプラス一〇%ということになっておるわけでございますが、その中にはたとえばコーングリッツ用であるとか、あるいは飼料、えさ用であるとか、あるいは糖化ミール用であるとかいろいろなものがございますが、その中のごく一部、今度横流れすることは税関としては絶対ないという自信のある四種類についてだけ取り出しまして、一〇%の免税をして関税割り当ての枠の中で一〇%の税率を無税にするという措置をとったわけでございます。  と申しますのは、まず第一のエチルアルコールと蒸留酒用につきましては、これは御案内のように税務署の方で厳しく監督しておりまして、それにさらに税関の方もあわせて、いろいろな手続におきまして書類その他のチェックをやっております。従来は、税関につきましてはとかく人手不足でございましたので、ほとんど税務署の方にそれをお任せしていたわけでございますが、最近は税関の仕事も手を抜くべきところは手を抜いて、重点的にやるべきところはやるというぐあいに調査機能がだんだん充実してまいりましたので、とりあえず、ただいま申しましたエチルアルコール及び蒸留酒用、それからあと二つ、コーンフレーク用とポップコーン用、この二つとも業者数が非常に少のうございまして、税関としても比較的把握が簡単であるということと、それからポップコーン用につきましては、しかも特別にはねる、別な非常な値段の高いトウモロコシの品種だけに限りましたので、横流れの方は大丈夫だと思います。  しかも、今度新しく手続的にもいろいろなきちっとしたものを出さして、その使用します工場につきましては帳簿をきちっとつくらせるようにいたしまして、先ほど申しました税関の実地調査班がだんだんと力がついてまいりますので、そちらの方を特に念入りに見たいと考えております。万一横流しした場合には追徴するほか、罰則の規定も用意してございます。したがいまして、御心配の点につきましては、私どもとしてはとりあえず税関として自信の持てるというものを第一次に選びまして、それだけを今度無税としてお願いしているという点でございます。  それから第二の点でございますが、低硫黄の方が百十円でございまして、脱硫の方は五百円、これは原油ベースに直しますと、ちょっと正確にはあれですが、二百五十円程度の換算になります。それにいたしましても百十円と二百五十円の差はございますが、脱硫につきましては、やはりいろいろの設備等も経費がかかっておりますので、この差で考えております。これは、今回の改正でこの点を直したわけではございませんで、従来からこういう格差でやってきております。  今回改正をお願いしておりますのは、むしろ技術的に脱硫のやり方が進歩してまいりまして、これまでは脱硫の方に回すことのできなかった油につきましても、これは残油でございますが、脱硫の方に回すことができるというので、それを一つ加えるということと、もう一つは、これまでは一たん低硫黄燃料をつくりまして、それをピッチ等を入れまして、間接脱硫の場合ですが、重油をつくっていたわけですが、一部は直接FCCと申しますものでガソリンに分解いたしまして、それからさらに低硫黄が出てくるという二つのやり方をやっていたのですか、後に申しました部分が、これまでは硫黄のあるままでFCCにかけていた、ところかそれが公害の問題か起こったので——ちょっと失礼いたしました。低硫黄燃料で一ぺん出しまして、それからFCCにかけます場合にガソリン分が取れまして、それから一部が低硫黄燃料に回るものも出てきましたので、そこの技術的な進歩によりまして、そこをはっきりと分けるということにいたしまして範囲をしぼった。  したがいまして、今回の改正でお願いしております二点につきましては、いずれも低硫黄の油を最近の新しい情勢に応じてつくり出すということに対応して改正したという点だけでございまして、金額の点については従来どおりでお願いしてございます。
  124. 村山喜一

    村山(喜)委員 最後に森政務次官に。四十七年の十二月に関税率審議会の答申が出ました。そのときの背景は、日本の外貨蓄積が非常に高くて、そしてこれからさらに貿易の自由化等をやり、国際分業論の立場に立って、そして日本の産業構造というものを効率化していくんだ、こういう考え方に立った段階での答申でございました。  時が移りまして、今日、石油の危機の中から、そして食糧の危機が問題になってきている状態の中で、三木総理大臣も国内の農業については見直しをしなければならない、日本の産業構造についても見直しをしなければならない、こういうようなことを言われている段階を迎えているわけでございます。とするならば、先ほど武藤君の質問に答えまして、新ラウンドの話が、アメリカの通商法の通過によりまして大統領権限として集約をされました結果、いまジュネーブでグループ別に検討を進められているというふうに聞いたのでございますが、これからやはり長期的なそういう関税政策のあり方の問題については、いろいろなそれらの世界的な情勢の転換等も踏まえながら、あるいは国内におけるそういうようなものも考えながら、この関税率審議会の答申が長期答申として出されましたその時点と今日とは若干の違いがあるし、また新しい方向に日本が向かっていかなければならない、いわゆる高度経済成長路線から安定的な成長路線へ向かわなければならない、そういうようなことを考えてまいりますると、食糧の自給率等が際立って日本の場合には低いわけでございまして、そういうような意味において関税政策も、それらの国際的な話をしていく上において、もう一回今日の段階における日本状態というものを政策的にも考えて、見直しをしながら問題に取り組んでいくべきではないかと私は考えておるのですが、森政務次官はそれらの答申はもうすでにお読みになっていらっしゃるだろうと思いますし、またこれからどういうふうに関税政策というものは持っていくべきだという考え方もお持ちであろうと思いますが、それに対する所信をお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思う次第です。
  125. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この問題が論議されるにつきまして私も私なりに勉強いたしまして、昨年の村山先生と福田大蔵大臣のいろいろな質疑応答その他についても拝見させていただいたわけでございます。ともかく当時の福田大蔵大臣にしても、一年間でみっちり研究するというようなことも答弁されておりますが、私といたしますと、やはり高度成長過程におきまして私どもの食糧自給というものがいささか等閑に付されていた、安定成長を今後迎える場合にこの問題を最重点に考えていかなければならないのじゃないか、そういう点で関税のあり方についても今後方向をそちらの方に向けていくべきだと私は考えております。
  126. 上村千一郎

    ○上村委員長 午後四時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十四分休憩      ————◇—————     午後四時五分開議
  127. 伊藤宗一郎

    ○伊藤委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。荒木宏君。
  128. 荒木宏

    ○荒木委員 特恵関税を中心にお尋ねをしたいのでありますが、総需要抑制のもとで、不況のために国内の中小企業が大変深刻な状態になっている。たとえば、特に繊維業者の人たちなどは綿布、綿織物などにつきまして輸入規制の要求がここ二、三年、ずいぶん強く出されました。これは政府の皆さんもよく御承知と思いますが、初めに政務次官にお尋ねをしたいのでありますけれども、昨年あるいは一昨年、こういった業者の皆さんが大会を開かれて、業界を挙げて政府にも要望があったと思います。私どもも陳情は伺ったのですが、大蔵省としてこの陳情をどういうふうに受けとめていらっしゃるか。業者の要望の内容あるいはその根拠などについてどのような理解をしていらっしゃるかということを、まずお尋ねしたいと思います。
  129. 森美秀

    ○森(美)政府委員 その問題につきましてだけ局長の方から一言……。
  130. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 繊維の業界の皆さまからお話がありますのは、大きく分けまして、お話として二つのグループとして私ども承っております。  一つは、大島つむぎを中心といたしました奄美大島、鹿児島県を中心とした皆さんのお話、もう一つは、大きく繊維業界全体としていろいろ協会等がございますが、こちらの方の皆さんのお話と、こう二つに分けて伺っておりますので、二つに分けてお話ししたいと思いますが、最初の奄美大島の問題は、皆様御案内のとおりの事態でありますので、政府としても何らかのとるべき措置を、これは大蔵省だけではございませんが、むしろ所管は通産省でございますけれども、通産省を中心にいたしまして、大蔵省なり公取なりそれぞれでやれるものはやってほしい。そして御要望としては、御案内のように、一つは表示の問題がございます。表示も輸入サイドの表示の問題と国内の方の表示の問題とがございまして、それも主として伝産法を中心にいたしまして、それをどう考えるかという点でお話を承っておりまして、これについては、私どもとしては、むしろ通関の問題よりもガットの問題もございますので、国内の問題として公取あるいは通産省の方に伝産法の問題としていろいろ御相談している。通産も応分の御協力をしたいというような線で現在お話ししております。  それからもう一つは、さらに大きく、輸入制限あるいは緊急関税というような線でやることができないかという話もございますが、これはきょうの朝以来のお話で、国際問題等もございますし、代償の問題もございますので、むしろお互いに話し合いの問題としてやってはどうかということでお答えをしており、また、現に通産省の方から韓国へお話をして、輸出の自主的な規制をやってほしいということで問題を進めております。  あと、さらにいろいろ細かい問題もございますが、たとえば税関の段階で、いまは絹織物ということでございますが、もう少し細かく分けていろいろなことができないかというようなお話もございまして、なかなかこれは技術的にいろいろ問題があるということを御納得いただいているわけですが、そういう技術的な若干の問題もございますが、大きく分けて表示の問題とそれから輸入制限、ないし関税の措置という問題についてお話がございまして、そのようにお答えしている段階でございます。  それからもう一つは、もっと広く、およそ繊維業界全体といたしまして類似の問題が起こってきている。これにつきましては、もちろん繊維全体としましては輸出の方が現在まだ多いわけでございまして、輸出輸入との両方の問題があるけれども輸入についてもいろいろと問題が最近多くなってきているので、輸入制限なり緊急関税的なものが一体どの程度可能かというようなお話がございました。これは特に繊維全体となりますと、金額もたしか五千億か何かの輸入量になりまして非常に大きな問題でございますし、それから関係国も非常に多くなるわけでございますから、国際的な問題からして非常にむずかしい問題ということは御認識いただいておると思います。やはりわれわれとしては、しんぼう強く主な輸出国、関係国と話し合いで、それぞれの道を見出していくというのが一番いいのではないかという態度で臨んでおります。  なお、それとの関連で、少なくとも繊維全体としましては、現在のいろいろな通関統計と申しますか、われわれのやっています統計が、BTNあるいは関税を取るためあるいは国連に統計を報告するためいろいろの統計分類をやっておりますために、なかなか細かくこの繊維についてどうかというようなときに、どうしても分類の関係できちっとした統計がとれないので、できたらその統計の数字をもう少し輸入の実態がわかるように細かく分けてもらえないかというお話がございまして、これについては、われわれといたしましては、いま大体四百五十ぐらいに繊維関係の統計が分かれているわけでありますが、御要望は千ぐらいにしてほしいということで、千までいかないかもしれませんが、事態はよくわかりますので、できるだけその辺は勉強してみましょうということでお話ししてありますのが一つ。  もう一つは、現在の統計自身においても、通関統計をできるだけ早く知りたいというお話もございますので、これは第一線の税関の処理能力の問題等もございますが、許される範囲内において、できるだけ現在ある統計を早く活用できるようにしましょうという点は、かなり具体的にお話ししております。
  131. 森美秀

    ○森(美)政府委員 先ほどのお話でございますが、政府といたしますと、いわゆる繊維問題というのは大変国内で大きな問題になっております。それにつきまして、ガットに加入していて、そのためになかなか隔靴掻痒の感があるという苦しい立場にいることは御理解いただきたいと思います。
  132. 荒木宏

    ○荒木委員 通産省、課長に来ていただいておるわけですが、所管の官庁としてこの業者の皆さんの要望をどのように受けとめていらっしゃるか、これを御説明いただきたいと思います。  いま政務次官から、隔靴掻痒というお話があったんですが、業者の皆さんの話を聞きますと、とても隔靴掻痒のようなものではなくて、むしろ、よその子をかわいがってわが子を痛めるといったような、激しい主張や言葉も間々聞かれるわけなんであります。その辺も含めてひとつ通産省の方から御説明願いたいと思います。
  133. 黒田真

    ○黒田説明員 お答えいたします。  現在、繊維産業が大変に困難に直面しておるということにつきましては、私どもも十分承知をいたしております。この原因にはいろいろな要因が考えられるわけでございますが、四十八年当時に大変なある意味の活況を呈しまして、その時期に非常に大量の輸入が行われた。しかも、それまでのわが国の繊維産業というものは輸出国でございまして、ほとんど輸入の経験がなかったところへ、為替の問題もございましようし、その他いろいろな要因が重なりまして、繊維品というものがそこで異常とも思えるほど多く輸入されたわけでございます。  その後石油危機以後急転換いたしまして、国内の繊維の状況というのはさま変わりになって、それ以後さっぱり回復の兆しが見えない。輸入の方は四十九年に入りましてから上期ぐらいまで比較的高い水準が続いておりました。ようやく最近は相当落ちついた姿になっておるわけでございまして、こういう状況を踏まえまして、繊維業界の中からは早急に輸入の制限をしろ、あるいは極端な場合には禁止をしてはどうかという御意見のあることを十分承知しているわけでございますが、私どもといたしましては、大きくは自由貿易という立場もございますし、国際的にいろいろ微妙な時期であるほか、やはり従来繊維の輸出国として繊維産業自身としても自由貿易ということを主張し、なおかつ現在でも、いまお話がございましたように、四十八年という年だけは繊維全体をとってみますと輸入の方がふえたように見えておりますが、原料を除いた製品ではなお輸出国でございますし、四十九年を通じて見ますと、輸入が十七億数千万ドルに対しまして三十五億ドル近い繊維製品の輸出をしておるというような事態から考えましても、なおやはり輸出国という立場も実際問題としてあるわけでございまして、その辺ドラスチックな措置をとることは適当でない。  しかしながら、急激な輸入の増加ということはわれわれにとっても問題がありますし、また近隣の諸国も非常に多くの輸出日本にして、その翌年さっぱり買ってくれないということになりますとそれぞれ問題があるわけでございますので、そういう点を十分相手に説明しつつ理解を求めるというかっこうで現在努力をしておる。他方、国内的にも多くの商社が大変な輸入を四十八年当時にいたしまして、現在苦境にあるものも少なくないと聞いておりますが、再びそういう事態が繰り返されないように、役所の方でも強力な指導をしておるというようなことでおこたえをしておる。  他方、不況の問題につきましては、必要な金融措置等別途講ずるというようなかっこうでこの問題に取り組んでおる次第でございます。
  134. 荒木宏

    ○荒木委員 いまお話しの、四十八年に大変な輸入の増加があった。四十九年にかけても傾向は続いたのですけれども、過去のことだけをあれこれあげつらうわけではないのですけれども、しかし、そのときにどういう手だてがなされたか。措置に万遺漏はなかったか。現在こういった問題については単に数量的な規制という問題だけでなくて、関税上のさまざまな仕組みがあります。その仕組みの運用、発動について問題はなかったか。そのことがこれからの関税政策なりあるいは輸入規制の問題に対処する上でも非常に重要ではないか、こう思うのです。  そこでお尋ねをしたいのですが、まず特恵関税の取り扱いについて、一定の要件を満たした場合には特恵の停止、こういうふうな扱いになっておりますけれども、たてまえとしてはどのような場合に特恵が停止をされるか、この点を局長に御説明をいただきたいと思います。
  135. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 特恵の仕組みにつきましては、御案内のように、農業はポジでございますが、この繊維等の工業品につきましては、大部分がいわゆるSP品目ということでやっており、あるいは例外品目も若干ございますが、原則として工業品としては無税でやっているわけです。その際に、一定のシーリングがございまして、そのシーリングを超えた場合に原則としてとめる。また一ヵ国から五〇%以上なら原則としてとめるということにやっておるわけでございますが、国内産業に損害を与えない場合には、そのシーリングについても弾力化をやっているわけでございます。  御案内のようにシーリングの枠につきまして、毎年毎年先進国の前々年度の輸入量の一〇%を足してシーリング枠を設定しているわけでございますが、特に問題がある品目につきましてはシーリングの枠内で事前割り当てをし、あるいはシーリングを日別管理しておりまして、これをとめるべきときには、弾力化にかかわらずこれをとめる、あるいは場合によれば月別管理をやっているということでございます。  それでは、そういう意味の枠を停止するのはどういうシステムでやっているかと申しますと、まず、輸入の数量につきまして枠に達したかどうかの判断が必要なわけでございますから、これについては各税関から関税局の方に数字が参りまして、これを物資所管庁の、繊維であれば通産省の方に随時御連絡いたします。そして枠を超えた段階から通産省の方としてはこれをにらんでおられまして、もちろん非弾力的な品目についてはシーリングを超えたと同時にとめるわけでございますが、弾力化の品目につきましては、通産省の方の御判断で、もうこれは枠をとめるべきだという御連絡を受けましたならば、こちらで直ちに告示をする、こういう手続でやっております。
  136. 荒木宏

    ○荒木委員 いまお話しの弾力条項の運用ですけれども、具体的なことを申し上げないと話が進みませんからなにですが、たとえばワイシャツの例を見ますと、昨年は四月一日で枠に達した。ところが、実際にとめられたのは六月の十二日だというふうに聞いているのです。いまの局長のお話ですと、産業に損害を与えるおそれがないとき、こういうことなんですが、その前にいまのワイシャツの例は、いつ枠に達して、いつとめたか、日にちを申し上げたのですが、間違いないですか。
  137. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ワイシャツでございますので、恐らく男子用下着、税番で六一・〇三でございますが、四十九年につきましては限度額が九千四百九十七万円でございまして、これが枠を設定された四月一日にすでに四億九百万円になりましたので、その日から限度を超えているわけでございます。しかし、これは日別管理の弾力化の項目でございますので、直ちにこちらはその日に通産省に御連絡いたしました。それで、現実に適用停止を告示いたしました日は四十九年六月十一日でございまして、そのときの最終的な輸入額は六億七千九百万円ということになっております。
  138. 荒木宏

    ○荒木委員 いまお話しのように四月一日にすでに枠の四倍ほどになっておる。日別管理と言いながら、六月の十一日にならなければ現実の停止がされない。その間に二億円もどっと入ってきておる。もちろん特恵だけで全体が律しられるというのではありませんけれども、少なくとも設けられた制度趣旨のたてまえから言いますと、産業に損害を与えるおそれがないとき、このときでなければ延長、猶予ということがないというたてまえになっております。  ですから、局長に伺いたいのですが、その時期にこの関連産業にそのような状態が起こって、なおかつ損害を与えるおそれがなかったかどうか、その点はいかがですか。
  139. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 先ほど申しましたように、私ども大蔵省といたしましては個々の業界すべてを判断できませんので、まず、枠を超えた以後は、枠を超えた時日とそのときどきの輸入数量を物資所管庁に御連絡いたしまして、物資所管庁の方でいろいろ御検討いただきまして、そこで事業所管官庁としまして、やはりこれは枠をとめるべきだという判断が出てきた場合に、私どもと相談をいたしまして告示をするというかっこうになっております。  この個別案件につきましては、通産省としての御判断を尊重いたしまして、私どもといたしましては懇談をいたしまして——一般論といたしましては、何と申しましても特恵は後進国にかかわる問題でございますので、国内産業に影響が少ない場合にはできるだけ特恵は継続したいという気持ちはわれわれ大蔵省関税局として当然持っておりまして、しかるがゆえに弾力化もそういう制度を新しくつくりまして、消費者の物価のことも考えましてやっているわけでございまして、一般論として、関税局の立場は、どちらかと言えば、やはりできるだけ消費者サイドのことも考えてほしいという態度でございますが、その最終的な判断はやはり物資所管庁の方でお願いしているということでございます。
  140. 荒木宏

    ○荒木委員 物資所管庁だ、こういうふうなお話ですから通産省の方に伺ってみたいと思うのですが、これは、昨年二ヵ月以上もおくれてなおかつ国内産業に損害を与えるおそれがなかった、こう見ておられるのか。この点はどうですか。
  141. 黒田真

    ○黒田説明員 ただいまの例でございますと、四月一日にシーリング枠の四倍程度の四億円が入った、その後六月何日かまで放置されてさらに二億円入ったということでございますが、この四億円が六億円になったことによってそれなりの国内への影響がなかったとは私申しませんわけでございますけれども、こういった日別管理のものを非常に厳密に適用いたしますならば、かえってそれば期の当初にラッシュさせることにもなりかねない。本関係品目の全体の輸入というものははるかに大きな数字でございまして、その中で特恵で入ったものは機敏に早く手を打てば四億円で済んだ、それが少し時間があったために六億円になったという程度でありますならば、それが決定的なものだとは必ずしも考えておらないわけでありまして、余りに厳密な運用をやることによって、期初の特定の日に、暦の上の制度上の決まった日に一遍に入るということはかえっていかがなものであろうかということも考えられるわけでございますので、いろいろな事柄を勘案いたしまして私の方から大蔵省の方にお願いをする、かような仕組みになっておるわけでございます。
  142. 荒木宏

    ○荒木委員 いや、その取り扱いのたてまえを聞いているんじゃないのです。去年のその当時に業界の実態はどうであったか、実態に対しておそれはどうか、こう聞いているんです。あなたがおっしゃるように、関連業界は平常な状態でしたか。それは皆さんおっしゃるように、あちらを立てこちらを立て、両方立つような業界の実態であったかどうか、この点どうですか。
  143. 黒田真

    ○黒田説明員 昨年の春ごろから、早いものでは一昨年の秋あたりから、そして総じて繊維産業全般の状況は、昨年の春ごろは非常に厳しい状況下にすでにあったというふうに考えております。
  144. 荒木宏

    ○荒木委員 皆さんの方からいただいた昨年の春の業界見通し、関連業界はたくさんありますが、たとえばメリヤス業界では受注は約四〇%減っている。それから在庫は約六割ふえている。そうして工賃も二分の一以下に減っている。注文はどんどん減るわ、在庫はふえるわ、工賃は半分以下、こういう状態でしょう。これは並みの状態じゃないでしょう。だとしたら、あれを考え、これを思いという一般的ななにはいいですけれども、少なくとも特恵が設けられた当初に政府の皆さんは、これにはいろいろな仕組みがありまして、そしてそれらを「機を失せず」運用して、「国内産業対策もきめこまかく配慮をしてまいりたい」と、四十六年の討議のときには、こういう仕組み、こういう仕組みということでずいぶんおっしゃっているわけです。  ところが、さあいよいよ困ったときの処置がこれでは、実際に、絵は書いたけれども実が十分ではないと言わざるを得ないのではないかと思うのです。まあ関税局長の方は、日々管理を細かくなされて通産省の方へ言う。ところが通産省の方では、業界の実態がわかっておりながら適切な処置をすぐにとろうとされなかった。これは最初の、四年前の本委員会でのお約束にもずいぶん反するわけです。「機を失せず」速やかにと、こうおっしゃっているんですからね。ですから、どちらがどちらというよりも、この点は通産省の方は、今後はこういうことのないようにもっと速やかに処置をとるということについて、ひとつお考えを伺いたいと思うのです。
  145. 黒田真

    ○黒田説明員 今後につきまして、来年、間もなくまた新しい時期が来るわけでございますから、その時の情勢を踏まえまして、適時適切の行動をとるようにいたしたいと思います。
  146. 荒木宏

    ○荒木委員 いま時期の点を言いましたけれども金額もずいぶんと特恵のままで枠を超えた事例が多い。たとえば女性用のはだ着でありますと、枠は昨年約四億円余りであります。ところが、実際はこれが十五億円。三倍以上そのままで入っている。こういう状態ですから、適時適切というふうなことではなくて、今後はこういうふうな事態は繰り返さない、このことをはっきり言っていただきたいのです。  通産省の方は課長さんしかお見えになっておりませんから、この点はひとつ政務次官の方で、いまの経過はお聞きのとおりでありますから、今後の処置について、時期の点、それから決められた枠の点、当初のお約束のとおり機敏に厳しく処置をして、こういった事態は繰り返さないということをはっきりとお話しをいただきたい。
  147. 森美秀

    ○森(美)政府委員 自由主義経済というものは、行政の府にある者がよほど配慮しないと、こういうことが間々起こってくると思います。御指摘のとおりと思います。その点につきまして十分に気をつけて善処していきたい。ことに昨年の四、五月ごろに繊維の状態が悪くなったというのは、私ども十分承知しております。今後も起こり得ることについて対処していきたいと考えております。
  148. 荒木宏

    ○荒木委員 次官からそういう御答弁をいただきましたので、厳格に実行していただきたいと思います。  つきましては、その一つの方法として、たとえば通産省の方では大蔵省から即日連絡があったわけですから、関係業界に、こういう事態になっておる、皆さんの意見はどうかということで、保護の対象になるべき関係業界、たとえば日本綿スフ織物工業連合会などもありますが、こういったところへすぐに意見を求めるといった処置も行政実務の上で考えていただきたいと思いますが、課長さん、いかがですか。
  149. 黒田真

    ○黒田説明員 今後の私どもの判断をいたす際に、業界等とどういうふうな相談、連絡をすればいいかということは、ただいま先生の御示唆も十分踏まえまして、至急検討をしてみたいと思います。
  150. 荒木宏

    ○荒木委員 今度は割り当ての問題でございます。  特恵の割り当てにつきましては先ほど話がありましたが、月別、日別あるいは上、下区別だとか事前の割り当てとか、いろいろ関税局の方で工夫もしておられるようです。しかし、結果として枠を超えておる事例がこの分野ではずいぶんと多い。法律上のたてまえを伺っておきたいのですけれども、法律的には枠を全部満たすことが義務になっておるか、それとも諸般の事情を考慮して枠を満たさない割り当てということも法律的には可能なのか、この点はいかがでしょうか。
  151. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 特恵制度自体につきましては、御案内のように、国際的に合意に達してやっているわけでございます。しかし、その性格としましては、理論的に申しましたならば、一方的に発展途上国にこちらが恩恵として与えるという性格のものでございます。しかし、現在の国際情勢を見ますと、実際の政治的な動きと申しますか力と申しますか、そういうものでは、御案内のように、資源保有国あるいは発展途上国の力がUNCTADを中心にして非常に強くなってきておりまして、特に先般の東京宣言におきましては、発展途上国については相互主義を要求しない、特恵のマージンについて関税を一般的に下げたならば差額の特恵としてのメリットが減るから、それは何か別に補償してほしいというぐあいな要求が出るように、あらゆる国際会議におきまして御案内のように発展途上国の力が非常に強くなってきておりますので、一方的な恩恵とは申しましても、実際的な国際政治の場におきます特恵の性格自体は、今後また徐々に性格としては変わっていくかと思いますが、一応理論的にはそういうことでございます。  それから、いまの枠の問題でございますが、シーリング枠については、それぞれの国によって、シーリング枠を設けていない国もございますし、再シーリング枠をつけている日本とかECのような国もございますが、日本といたしましては、御案内のように、発展途上国から一九六八年に輸入されたその金額プラス前々年度の先進国グループの一割ということを一つの枠にしております。したがいまして、その枠自体日本国際的に約束したという性格のものでございます。  現在問題になっておりますのは、その一九六八年時点はかなり古いのじゃないか、その後日本はだんだんと輸入がふえてきているのだから、たとえば一九七一年とか七二年とか、できたら七三年とか、できるだけ統計のとれる一番新しい年度の枠に切りかえてくれないか。現にECは現在は七一年基準でやっておりますものですから、日本が六八年というのは少し枠としては小さ過ぎるという議論はかなり国際的にはやっております。私どもといたしましては現在ニューラウンドを控えておりまして、そういうものは一切ニューラウンドの交渉の場において、あらゆる多角的な交渉の一つとして議論しようじゃないか、それまではとにかく現行の方の枠でやりたいということで言っておりますが、国際的にはかなり強い批判を受けております。  大体、枠あるいは特恵の性格自体については、現段階ではそのように私どもとしては理解しております。
  152. 荒木宏

    ○荒木委員 私がいま伺っているのは、その枠の運用であります。同時にその運用の基本的な観点でございます。それなしに新ラウンドに臨んでも、これは右を見、左を見、右顧左べんするばかりであって、適切な経済の発展を国民本位に図っていくということはかなりむずかしい面もあろうかと思うのです。  そこで、枠の運用について法律を見ますと、暫定措置法の八条の四の五項に、この場合繊維ですから、「当該物品の需給の状況その他国民経済上の必要な考慮」と、こうあります。需給の状況と国民経済上の必要な考慮、こうあるのですけれども、この需給状況はいまどう見ていらっしゃるか。所管庁には後で伺いますが、大蔵省の方はどうですか。関税局の方ではいま繊維の需給状況をどうごらんになっているか。
  153. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ただいま先生御指摘の八条の四の五項は、先ほど申しました事前割り当ての枠の問題だと思いますが、これは仕事としてはそれぞれ物資所管庁で実体的にやっていただいております。  いま御質問の繊維の需給状況自体につきましては、先ほど来通産省の物資所管庁の方からお話がありましたように、全般的にはまず最近は不況で、かなり需要が落ちてきているというのははっきりしておると思います。そこに輸入量としては、特恵というよりはむしろ特恵以外のものも含めました近隣の発展途上国からの日本に対する輸入かなりふえてきておりますので、一時はかなりの在庫がございました。去年の秋あたりは、その点につきまして在庫融資その他につきましてもかなりの苦労がございました。繊維はどちらかと申しますとわれわれの見ているほかの物資から見まして在庫調整が比較的早く行われ、最近はむしろほかの物資の方に非常なそういう在庫がふえてきて、在庫調整を必要とする物資が出てきておるということにわれわれとしては考えております。
  154. 荒木宏

    ○荒木委員 局長さんのお話は、どうも業界や業者の立場に立った話ではなくて、こういう言い方をしますとあるいは語弊があるかもしれませんけれども、少し第三者的な、しかもきわめて一般的なごらんになり方のような感じがするのです。お立場がいろいろありますから物は見方ですけれども、しかし、ここに設けられた通商上の特恵という制度に対して、国内産業保護ということでいろいろな歯どめがあると再三当委員会の審議で繰り返しておっしゃっておるわけですから、歯どめ活用は、やはりその立場に立って十分実態をごらんいただく必要がある。  ですから、先ほど来のお話ですと、特恵停止の方もそれから割り当ての方も、やはり所管庁の判断というものが一つかなり重要な要素になっている、こういうことでありますから、通産省の方に伺いたいのですけれども、いま需給状況をどう見ておられますか。在庫調整は進んできた、こういうようなお話ですけれども、生産の状態、それから在庫の状態、それから価格状態、それらを含めて需給状態はどうごらんになっていますか。
  155. 黒田真

    ○黒田説明員 繊維につきまして、特に綿の関係、綿糸、紡績につきましては、現在不況カルテルをなお実施いたして、自主的な生産制限を行っております。その結果、一ころの非常に膨大な在庫の水準はある程度下向いたかと思いますけれども、なお平時に比べますならば高い水準にある。値段につきましても、一番底を打った異常安値からはやや回復の兆しは見えておりますが、なお採算価格と見られる水準よりは下回っておるのではないかというような評価をいたしておる次第でございます。
  156. 荒木宏

    ○荒木委員 通産省の方からいただいた速報によりますと、生産指数は、四十五年を一〇〇としていま八〇を割っていますね。価格は、たとえばこれは二〇〇三の金巾ですが、これも四十八年、四十九年と価格が低落してきている。しかも、中小業者の中では、産地によっては営業が成り立たないというので、倒産やまた自殺者が出たというのも新聞報道で御案内のとおりと思うのです。つまり、業界全体がいわばもうへたり切っている。そういう中でこの事前割り当てということでありますから、外の関係局長先ほどおっしゃったようないろいろな向きがあると思います。しかし、同時に、割り当てに当たってもそういった業者の実態を十分踏まえて、たてまえとしての枠の上下にかかわらず割り当て制限を実施していく。  また、その時期につきましても、証明書の期限が一応法律あるいは政令の上で決まっておりますけれども、必要がある場合にはそれを限定することができる、こういうようになっているわけですから、たとえば保税のままで置いておいて相場の思惑に使われるといった事例も業界の中では耳にすることが決してまれではありません。ですから、この事前割り当ての実施とそれからその証明書の有効期限といったようなことについても、いまの実態を踏まえて厳格に、いまよりも一層厳しく実施をされるべきだと思うのです。  その点について、いまの割り当ての運用に対する反省も含めて、今後一層厳格に実施していくという点についてひとつ通産省の御意見を聞かせていただいて、それを受けて関税局長の方からこの問題の処理について御意見を伺いたいと思います。
  157. 黒田真

    ○黒田説明員 ただいま御指摘のように、事前割り当てにつきましてはいわゆる暦の上での日の管理に比べてより厳しい条件がかかっておることも事実でございますし、また先ほど申しましたように、暦の上だけの限定というものが逆に輸入をそこへラッシュさせるかもしれない。しかし、他方、いま御指摘のように、保税に置いておいて投機に使われるということが逆の意味であり得るかもしれませんが、その辺等をよくにらみまして、その制度の存在自身が市況をさらに悪くするという働きのないように、あるいは最小限度にとどめるように、今後とも運営に当たっては力を用いていきたいと思っております。
  158. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 事前割り当て制度あるいは日別管理というものを含めまして特恵制度運用全体につきまして、よく物資所管庁の考え方あるいは業界の考え方を物資所管庁を通しまして十分に慎重に配慮して、先生の御趣旨に沿うように運用していきたいと考えております。
  159. 荒木宏

    ○荒木委員 入ってくる相手はいろいろあるわけですが、出ていくところもいろいろあります。その中で、相手によって、品目によって特に問題が出てくる場合の処置はいかがか、これをひとつお聞きしたいわけです。  この特恵の処理につきまして、たとえばある特定特恵受益国、そしてその中での特定品目ですね、これについては成り行きを見て場合によっては外しちゃう、こういったことがいまの法律の制度の上で可能かどうか、この点は局長いかがですか。
  160. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃいます枠の中の問題であれば、先ほど申しましたように、特定の国から五〇%以上ということは、原則として——もちろん弾力条項がございますが、原則として外すということになっております。
  161. 荒木宏

    ○荒木委員 暫定措置法の八条の二の二項に、地域それから品目を指定して特恵を適用する、こういうことになっておりますが、この一項の方のUNCTADの方の関係はともかくとしまして、二項の規定によって特定の地域、特定の品目について除外するという処置は法律的に可能なのではないですか。
  162. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 これは、御案内のように、最初国際的にいろいろ決めますときに、香港が特に地域としては問題になりまして、香港例外を処置するために設けられた規定でございまして、その意味では可能でございます。
  163. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、たとえばある特定の地域、いま香港という話がありましたけれども、台湾にしましても韓国にしましても、繊維の合計で見ますと、輸出よりも輸入の方がはるかに多い。しかもその度合いがどんどんふえてきている。うんとふえてきている。こういった事態で、この八条の二の二項の適用で推移によってこの品目について外す、こういうことは可能なんではないでしょうか。
  164. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 台湾をどう見るか、私専門ではございませんが、恐らく一つの地域と考えれば、この条文上は可能でございますが、国際的にはこの条文ができました経緯は先ほど申しました香港を除外するということで考えておりますので、やはり国際的にはいろいろな問題が多いと思います。  特に台湾についてお触れになりましたが、台湾は御案内のように日本から輸出する金額の方が台湾から輸入する金額よりも十一億ドルも多いというぐあいに、非常に日本に対して赤字の国でございます。しかも、繊維としてはその中で大体二億ドルくらいが日本に対して輸出されておりますので、もしこれが何らかのかっこうで仮にゼロということになると、さらに赤字が二億ふえるわけでございまして、ゼロということはないと思いますが、そういう意味国際的にはかなりいろいろな問題があるということでございます。
  165. 荒木宏

    ○荒木委員 まず、たてまえの方ですけれども、四十六年の三月十一日の当委員会で、当時大蔵大臣は福田さんですが、地域を特定し、品目を特定して、特恵除外ということができるのではないかという質問に対しては、それはそのとおりであります。こう答えていらっしゃる。つまり、たてまえとしてはできるわけですね。しかも実情は、たとえば韓国、台湾あるいは香港、こう見ますと、この品目についての出入りは、入る方がはるかにどんどんふえてきておる。  いまのお話は全商品についてのトータルの話ですけれども、その面はあると思いますけれども、それじゃ国内の繊維の中小業者は全く犠牲といいますか、いけにえといいますか、踏み台といいますか、そういう扱いになっておるわけで、この法律のたてまえとそれからそのときの論議の趣旨から言いまして、国内の産業、中小企業に特に重大な影響を与えるときには期を失せず発動し、万遺漏なきを期する、こういう話でありますから、いまのように、その方はトータルの話であり、しかも国際的に非常にむずかしい問題があるから考えないということになりますと、初めのお約束にも違うし、法律のたてまえにも沿わないことになってくる。  ですから、この点はひとつ、この品目についての出入りの状況と関係国内業界、中小業界のいまの実態を総合的に見て、そうして地域を除外する、あるいはこの品目について除外するということもぜひ検討されるべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  166. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 先ほどの福田大臣の御答弁のとおりでございまして、法律的には可能でございます。ですから、問題はむしろ実態の問題でございまして、国際的な問題あるいはいろいろの外交上の問題というものにからんできておりますので、この点については私どもだけではなかなか判断し切れない問題だと思います。
  167. 荒木宏

    ○荒木委員 所管の関税局長なり大蔵省の方だけで判断ということは言っておりませんけれども、しかし、皆さんを除外してそういう相談があるわけじゃないでしょう。ですから、その中で皆さんとしての考えは、初めの四十六年の再々の論議では、それはもう大丈夫です。機を失せずやります。法律のたてまえもこうなっております。特定品目について出入りを見て、どんどんふえてくる、国内の業界が圧迫される、そのときにはこういう構えでいくんですから大丈夫ですとおっしゃっていますけれども、その後四年間の経過はちっともそうなっていないし、事態はますますその方向へ進むし、業界はへたり切っている。だとしたら、いまやはり局長として考えの一端は示していただかなければ、一人じゃ決められないから何とも言えぬということだけでは、これは話は進まぬと思うのです。
  168. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 特恵の運用といたしましては、国際的に大きな波紋の起こるそこまで行くかどうか、あるいは先ほど私どもが申しましたように、当面はやはり特定の国から五〇%以上のときの弾力化を厳しく適用するとか、あるいは日別管理あるいは事前割り当ての態度をもう一遍われわれとしていろいろ検討し直す、そういう問題をまずやるべきではないかと考えております。
  169. 荒木宏

    ○荒木委員 だけれども、まずやられるとおっしゃるそのことすらできなくて、それはこれから厳格にやる、こういうお話なんだけれども、しかし、そのことだけじゃ、それこそ、先ほどの政務次官の言葉をかりれば、くつを隔ててかゆきをかくというようなことでして、ですから、これからもう一歩進んで外すということだって検討する必要があるのではないか。いろんな関係の向きはもちろんあります。国際的な関係もあるのだけれども、初めにそういうふうに皆さんは言っているのだから、四年前に言っていて、そのとおりの事態が来ていて、それでまたもとへ戻って、国際的な関係があるからその点は何とも言いかねるというのでは、前の言葉にも反するではないか、私はこう言っているわけです。局長、どうですか、これは検討されますか。
  170. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 先生も御指摘のように、当面まず特恵関税の運用自体をもう少し先ほど御指摘の線にやるべきではないか。さらに飛んで非常に——飛んでといいますか、次の非常に大きな問題をお話しでございますが、とりあえずわれわれといたしましては、当面の特恵の運営の問題、現行の特恵の運営の問題をきちっとやることが第一だと考えております。
  171. 荒木宏

    ○荒木委員 では、話の成り行きがありますから、それは大いにやってください。厳格に、二度とああいうことのないようにきっちりやっていただく。そしてこれは一月、二月見ますね。やって、なおかつ、もうそれこそ牛の歩み程度の前進しか見られぬ、事態は変わらぬということになったら、これはやはり当然検討するべきでしょう。それでもなお検討されないということになったら、これはもう前の論議のときに、国会をその場限りの答弁で一時を過したというふうにも見られかねないことですから、どうですか、それをまずやって——私は同時にやるべきだと思うのですが、一月、二月やって、それでいまの業界の様子、輸入との関連、それが変わらぬとなったら当然除外条項、八条の二の二項の活用もこれは検討されるべきと思いますが、その時点ではどうですか。
  172. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 当面やるべきことについてわれわれとしてはいろいろ検討した上で実行してみまして、その結果を見た上で、まだいろんな問題が出てくるかもしれません、恐らくそのころになりますと、いろいろニューラウンドの問題で特恵のことにつきましてもいろいろ議論がございますので、そういうものも含めて総合的な検討の一環として考えてみたいと思います。
  173. 荒木宏

    ○荒木委員 関連して特殊関税の問題をお尋ねしたいのですが、いままず総合的ないろいろな手だてというお話がありましたから、これもそのうちの一つになろうかと思いますが、午前中この点については同僚委員からいろいろ質疑がありました。いままで相殺関税、緊急関税あるいは不当廉売の問題で発動されたことは一度もありませんね。
  174. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 いままでございません。
  175. 荒木宏

    ○荒木委員 たとえば相殺関税については政令もできていないということの指摘が午前中ありました。審議会の答申があるのにかかわらず、いまだに何だ、こういう話だったのですけれども、四十六年の三月十日に本委員会でこの点の質疑がありまして、当時の谷川局長は、すでに準備は整っております。関税率審議会にかけまして政令は出します。こういう答弁をされておるのですが、その答弁のときから本日まで四年を経過しています。局長の午前中の答弁ですと、手続はなんだけれども正味の構えばもうちゃんとできておるのだ、心配無用だと言わぬばかりの御答弁があったのですけれども、しかし、政令は出すと四年前にはっきり約束しておられるでしょう。約束をしておりながら四年たっていまだに履行されない。中身の構えができているかどうか、これはまた後で伺いますが、この点はどうですか。  これは前任の方の御答弁ですから、現局長にお尋ねするのはなんですけれども、あなたはその立場を引き継いでいらっしゃるのですから、四年前に出すとおっしゃっている、余り時日がたち過ぎている、事態は御案内のとおりだ、この点はどうですか。
  176. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 きょう午前中に御指摘がございましたのは、四十七年の長期答申に絡みまして、相殺関税の手続的な改定の政令を策定する必要があるということで長期答申があったわけでございます。それで、私もその際にも申し上げましたが、そういう手続的にな規定としては一番大きい、たとえば緊急関税等手続的な規定を並べてみまして、一定の書類をつくってそして関税率審議会の審議にかけるという手続でございますが、その手続の実体につきましては、午前中申しましたが、関税率審議会にも諮りまして、自分たちにかけてもらっていいというぐあいな御内諾を得ているわけでございます。  そこで、そういう手続について政令を書くか書かないかでございますが、その当時の経緯を見ますと、意識的に相殺関税の手続的な規定を政令で書くということ自体が、これは緊急関税も含めてでございますが、国際的にいろいろ問題があるということで、実体的には準備はしておいても、もう少しニューラウンドのやり方を見て、それからやっていったらどうかというぐあいの議論がございまして、現在準備はしていたけれども見合わせておる、近々ニューラウンドにおきまして、こういうセーフガード全体につきましてかなり議論があると思いますので、その際の一環として、できたら政令が決まった上で出すのが一番国際的にいいんじゃないかと考えておりますが、なお、きょう午前中申しましたように、手続的に余り刺激的でないものはその段階を待たずにやることができるかどうか、なお勉強してみたいと考えております。
  177. 荒木宏

    ○荒木委員 私が言っておりますのは、六十五国会で本委員会の議事録の十七号の四十四ページで、はっきり出すと、準備万端オーケーと、こう言っているのですよ。いまのお話を伺っていると、その後の国際的な話の推移もありますけれども、どうも皆さん二つの顔を持っていらっしゃるのではないか。国会では、先ほどの緊急関税のことにしても、機を失せず発動します。準備はできている、だから政令も出すのだと、こうおっしゃるのですね。ところが、機を失せずに緊急関税の発動どころか、シーリング枠満杯の場合の停止の措置すら先ほどのような事態になっておる。そして一方では、次のニューラウンドの会議が済んでからとこういう話ですと、これは国会の質疑ということがありましても、どうもその場だけのことに終わるのではないか。  現局長がそういうおつもりで御答弁になっているとは思いませんけれども、しかし、国内の中小企業の保護ということが同時に今度のニューラウンドの主要なテーマの一つにある。農産品の問題等、それから非関税障壁とセーフガードをどうする、こういうことですから、こっちの腹も決めずに出ていって、一体どういう話をなさるのかということにもなってくるわけですね。前に国会で約束もされている、実態もそのとおりと、行くについても腹をくくらなければならぬということでありますから、政令を出すなら出すでいつだと、これは前に約束されているのですから、ひとつはっきりさせていただかなければならぬ、私はこう思うのですが、いかがでしょう。
  178. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、国際会議に臨むについても、セーフガードについて一体どっちの腹を持つかということは、実は非常に議論をやっておるところでございまして、午前中申しましたが、緊急関税を非常に楽に発動できるように、機敏に発動できるようにという、これはアメリカ等がそういう考えを持っていますが、もし仮に国際的に、そういうものが現在のガットの規定以上にかなり緩くなりました場合には、日本としてもあるいはその他の国としても、かなりいろいろ問題が起こるのではないか。しかし逆に、非常に動きにくいように乱用防止を中心にやりますと、今度こちらが本当にやるときにいろんな問題が起こるのではないかということがございますので、長短でいろいろ議論をしておりまして、われわれといたしましては、その辺の調整についていろいろ苦労しているところでございます。  したがいまして、緊急関税あるいはセーフガードのあり方につきましては、これからニューラウンド自身関税率をどの程度下げるかという問題とも非常に密接に絡んでおる問題でございまして、いわばニューラウンドを柱の一つと考えているわけでございます。したがいまして、関係の業界の皆さんあるいは関係各省の皆さんと十分御相談して、国益を損じないようにしたいと考えております。
  179. 荒木宏

    ○荒木委員 どうも、ことさらに責め立てるわけではないのですよね。どうもこれからというようなお話で、もちろん勉強はずいぶんとお続けだと思うのですけれども、しかし、こういった論議になりました緊急関税の発動については、当時の質疑でも、特に要件も緩和をしてやりやすいようにもしてありますと、歯どめの一つに挙げておられるのですね。暫定措置法の八条の六の三項で使いやすいようにしてある、そういうふうにおっしゃるにかかわらず、一遍も使われていないし、手順すらまだ整備をされていないし、腹も決まっていないと、こうなっているわけですよ。ですから、午前中の御答弁も伺っておりますから、いまの実態としては、政府の皆さんの対応がそれ以上は進まぬのかもしれませんが、しかし、実情の把握は十分になされているだろうか。  この点はいかがでしょうかね、たとえば相殺関税の場合に、日本に関連のある品目について補助金が出されておるわが国への輸出国、それからその品目、これは実情はどういうことになっておりますか。
  180. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 相殺関税におきましては、おっしゃいますような補助金の問題、あるいは輸入価格自体の問題、あるいは国内産業への影響の問題があるわけでございますが、そういう海外調査につきましては、私どもとしてはやはり原則的には在外公館を通じてお願いします。しかし、在外公館だけでは手が回らない場合には、その他いろいろ関係業界あるいは関係の諸官庁にもお願いをいたしますが、たてまえといたしましては、在外公館を通じていろいろお願いをしている。国内産業への影響は各産業諸官庁を中心にして調査を、お願いしている。輸入価格あるいは輸入自体については通関統計によって、私どもが中心になってやっている。そういう調査の体制でやっております。
  181. 荒木宏

    ○荒木委員 これはそれぞれ所掌事務がある性質上やむを得ないかもしれませんが、仕組みだけはいろいろ御説明をいただいているのですが、それが使われずに物置の中へ入っている、もうほこりをかぶっている、しかも大分がたがきているということですから、これはやはり大蔵省としても、前の御答弁のたてまえから言えば把握をされて、そしてそれを活用する、こういうことが筋ではないかと思いますね。  そのおっしゃる主管の外務省経済局、お見えいただいていると思いますが、これは調査して実情をつかんでいらっしゃるかどうか、この点だけ簡単に答えてください、内容は別として。
  182. 宇川秀幸

    ○宇川説明員 お答えいたします。  具体的な調査というものはやっておりません。その理由といたしましては、相殺関税の賦課の対象になる場合には、御案内のとおり、相殺関税の対象になるような補助金の有無それに加えまして、国内における損害要件を必要といたします。そういう事態になった場合に、関係各省とも打ち合わせして種々の調査をやるというたてまえをとっているために、そういうことは通常いたしておりません。最近の事例では、大島つむぎ等においてそういう補助金等の実例等があるかないかということで調査の照会をやったことはございますけれども、一般的にはやっておりません。
  183. 荒木宏

    ○荒木委員 これはなかなか、外国に手足を持ってやっておるような立場、組織がなければ、民間の業界で外国政府の補助金だとか、そういったことはとても調べられるものじゃないと思うのです。さればこそそういった政府の組織があるわけでして、局長のおっしゃるようにそれは外務省と、外務省はやっていませんと、民間から言うてきたときに問題になって照会をするという程度では、これは前にあれほど、この歯どめさえありますればと振りかざされた経過から言いますと、少しお粗末な運用の仕方ではないか。  ですから、たとえばアメリカなどはダンピングの場合の処置も、私も十分には知りませんが、非常に厳しいものがありますし、あるいはASPの処置のようなことすらやられておって、よそはそれなりにきっちりやっておるのに、どうも皆さんのお話を伺っていますと、所管省はいろいろあるけれども、みんなもたれ合いで、肝心なことがつかまれていない。これでは局長、なんでしょう、申し立てばもちろんあれでしょうけれども、職権で発動するという法律のたてまえなんですから、言うてくる、こぬにかかわらず、これでは午前中おっしゃった実態がつかまれて、いつでも用意どん、準備オーケーというわけには私はいかぬと思うのですよ。その点はさらに特殊関税の発動についての実態調査、手続上の政令だとかこういう整備はそれとして、実態の把握に一層留意をして努められたいと思いますが、いかがですか。
  184. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、なかなか外国の調査自体は、それはほかの国でも非常にむずかしい、困っておりますが、日本といたしましても同様でございまして、なお御指摘の点はよくわかりますので、関係のそれぞれの所管省となおよく相談して、御趣旨に沿う方向にできるだけ持っていきたいと考えております。
  185. 荒木宏

    ○荒木委員 この実態調査の一つとしまして、輸入統計の統計整備ということも非常に大事な仕事の一つだろうと思うのです。局長も一番最初の答弁で触れておられましたが、四十九年十月十八日の商工委員会の質疑で、わが党の神崎委員質問をしておるのですが、通産省の橋本生活産業局長が、現在「輸入統計が輸出統計に比べますとまだ十分整備されておらない」、そこで輸入の成約統計の準備もしておる、輸入組合の協力も得ながら統計の整備を図る、こういうふうに答弁されておるのですが、通産省どうですか。この準備はいまどの段階まで進んでいますか。
  186. 黒田真

    ○黒田説明員 ただいま御指摘の成約統計と申しますのは、いわゆる通関、物が実際に日本に入ってまいります前に、実際に契約された段階での情報を集めようという趣旨で考えられたものでございまして、先ほど申しましたように、四十八年当時の異常な急増というものがやや手探り、盲貿易であったというような反省もございまして、業界の総意もそれに協力をしようということが見えましたので、昨年の十二月から正式な予算もつけていただきまして、実施の緒についております。  ただ、実際問題として任意の調査でございまして、相当多数にわたる輸入業者を相手にいたしますし、初めての試みでございますので、最初はいささかもたつきがございましたが、最近では相当回収率も上がりまして、二月分等までほぼまとまりつつありますので、できるだけ早い機会に発表いたしまして、今後定期的な発表の姿というようなことを考えてみたい、かように考えております。
  187. 荒木宏

    ○荒木委員 関税局長、これは先ほどからお尋ねをしております輸入の実態調査、統計の整備ですね、そして実情の把握、それから特殊関税発動のための手続上の整備と、そのための現状把握といいますか、これを今度ニューラウンドに行かれるまでにある程度やって、きちっとつかんでいかなければ、これは事にならぬじゃないかと思うのですよ。ですから、政令も国際的な寄り合いに行って帰ってきてからというようなこともありますけれども、行く前にこれは腹づもりして行っていただかなければならぬと思うのですが、それはそういう準備をきちっとやって、それで新ラウンドに臨まれるかどうか、その点ひとつはっきり答えてください。
  188. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 新ラウンド自身はすでに二月から本格的に始まっておりまして、具体的な作業は、きょう午前中お話しのように、四月ぐらいから始まるわけでございますが、私どもそこで議論いたします際には、むしろもう少し何と申しますか、一般的な議論からスタートしてやっていくわけでございまして、いろいろな方式その他についても一般的な議論からやっていくわけでございます。  ただいま先生の御指摘のいろいろな問題につきましては、私どもとしてはニューラウンドに関係ないもの、たとえば統計の整備等につきましては、間接的には関係がございますが、そういうものについてはできるだけ業界の方の御要望、あるいは通産省の方の統計との調整の問題、あるいはこれは国連統計との調整の問題等を踏まえまして、できるだけ片づけていきたいと思いますし、ニューラウンドとの関係で絡むものにつきましては、ニューラウンドの成り行きを見ながら処理していきたいと考えております。
  189. 荒木宏

    ○荒木委員 いままで関税に関して伺ってきましたが、今度は関連をして数量規制ですね、これを一言お尋ねしておきたいと思うのですが、時間が大分迫ってきましたので簡潔にお答えを願いたいのですが、たとえば繊維についてみますと、政府協定があります日米の関係、これで数量規制ということもある。それから自主規制という話が先進国との間である。これは前に通産省の方からも繊維の日本と諸外国との間の自主規制の関係の資料をいただきましたが、ずいぶんたくさんある。それから、途上国の方では輸入規制という措置もある。  問題はこういった交渉について、四十六年三月九日の当委員会での審議で、外務省の経済局長が原則はやはりインジュリーだ、「インジュリーなきところに規制なし」、その「おそれなきところに規制なしという立場を政府ではずっと貫いた」、こう答弁をされておるのですが、外務省に伺いたいのですけれども、これらのアメリカを初めECあるいはオーストラリアその他途上国、これはインジュリーがあるのでしょうか、こういう措置をとっておるということは。その点はいかがですか。
  190. 宇川秀幸

    ○宇川説明員 具体的な事例について見る必要があると思いますが、たとえばアメリカ等で、いま繊維の話をされましたが、十九条歩処置、あるいは豪州につきましても最近十九条処置等をとられております。そういうものに対しましてはガット十九条に基づいて早急に協議をいたしたいということを申し入れると同時に、こういう処置が蔓延するということは非常に困ることであるという抗議もやっておりますし、それから近々実質的な話し合いに入るという予定となっております。したがいまして、前に経済局長からも答弁がございますように、原則としてはその意味ではインジュリーのないところに規制があってはならないというのが私どものたてまえでございます。  いま申し上げたような協議に入るということは、まず果たしてそういう処置がとられたことが正当化されるようなインジュリーがあったのかないのかという点から議論を始めないといけないと存じます。
  191. 荒木宏

    ○荒木委員 しかし、過去の経過を見ますと、いま外務省の課長の答弁のように、それでは具体的にどんなインジュリーがあったのだ、現に措置をとっているところがもうたくさんある、それは何ですかと、こう聞いたら、はっきりしたお答えがない。政治的にはアメリカの内部でもいろいろ動きはあるでしょうけれども、一方、国内の側について申しますと、先ほどいろいろ説明がありましたように、輸入がずっとふえてきて、そのために関係業界のダメージということが起こっている。そうすると、何ですか、ほかからははっきりしたインジュリーがなくてもどんどん言われる、こっちはかなり出ているのにはっきり物が言えない、こういうふうな関係になっているのじゃないでしょうか。  ですから、この点はひとつ関係各省にまたがりますので、政務次官から伺いたいのですが、申し入れなり交渉なり、こういったことはよそがどんどんやっているわけですからね。周りぐるっと東西南北見渡してみて、やっているわけですよ。しかも国内の業者からは非常に強い要望がある。ですから、そういう意味で、綿製品の一般的な取り決めもあり、ガットもありますが、その中で申し入れをし、交渉をし、前の答弁をされた趣旨を生かして、国内中小産業の保護という、こういった通商関係に伴う一つの柱を履行していかれるかどうか、これをひとつお伺いしたいと思うのです。
  192. 森美秀

    ○森(美)政府委員 国内の繊維業者のいろいろな悩みについては聞いております。したがいまして、いま御指摘のようなことにつきまして、私どもも真剣にこれを取り上げて、やはり形にあらわしていかなければならない、こう考えておりますが、先ほどから局長が申しておりますように、いろいろな問題もございますので、速やかに処置をしたいと思いますが、その点で四年間も御指摘のような状態でおりましたことは、行政とすると決して怠慢のあれで今日まで来たわけじゃないということだけは御了解いただきたいと思います。検討してみます。
  193. 荒木宏

    ○荒木委員 この輸入の数量制限、これを真剣に取り上げて形にあらわしていく、政務次官はこうおっしゃった。関税局長にもぜひいまの次官の答弁を確認しておいていただきたいのです。国内では、税金を出して臨繊、特繊ということで織機の買い上げもやっている、無籍の整理もやっている、構造改善もやっている。業者にずいぶん犠牲をしわ寄せし、金もつぎ込んでやっているにかかわらず、どんどん入ってくるということでは、これはさいの河原になる。しかも、よその方の関係はいま申し上げたとおりですが、そういう中で輸入の規制という声が起こっているわけですから、いま局長も聞いておられたと思いますが、次官の、繊維の輸入の数量制限について真剣に取り上げて形にあらわしていく、このことをひとつ確認してください。
  194. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 当初申しましたように、輸入制限につきましては国際的にいろいろ問題がございますし、そこまで至る間にいろいろな手があるのじゃないか。私どもは、最初に申し上げましたように、むしろ相手国とよく話をして、できたら相手国の輸出自粛とかいろいろな方法もあると思います。十九条によります輸入規制とかあるいは関税の引き上げというものはむしろ最後の手段で、しかも非常に代償等の問題もありますし、国際的なフリクションもございますが、ただいま政務次官がおっしゃいました線もございますし、各省とよく相談してやっていきたいといま政務次官はおっしゃいましたので、先ほど申しました当初の考え方も、なお私といたしましては非常に大事なポイントだと思いますので、それも含めながら各省とよく相談していきたいと考えております。
  195. 荒木宏

    ○荒木委員 これは四年前の答弁のように、おっしゃるだけで実が伴わぬということがないようにしていただきたいと思う。  最後になりましたが、こういった税関業務を遂行しておる職員の皆さん、税関労働者の皆さんの問題について、かねてから懸案の事例がありますので、その処置をお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、これは昭和三十六年に神戸税関で起こりました中田さんほか二名の方に対する懲戒処分、その後、この懲戒処分取り消しの運動がずいぶん広がりまして、四十万署名ということで取り組まれ、地裁、高裁の判決があったことは御承知のとおりです。  そこで、人事院の公平局長、お見えいただいておると思いますが、ずいぶん結論が出るのが提訴の時期から見ますとおくれている。途中いろいろな経過があったと思います。私も伺っておりますので、そのことをいまおくれてけしからぬじゃないかということを申し上げるよりも、一体いまの時期にいつ結論をお出しになるか、従来の経過、それからここまでおくれてきておることも含めていつ結論を出されるか、そのめどをひとつ伺いたいと思うのです。
  196. 今村久明

    ○今村説明員 ただいまお話のございました神戸税関の事案につきましては、ただいま先生からもお話がございましたような大変紆余曲折がありました経緯がございまして、非常に判定がおくれておるという状況でございます。  そこで、税関の関係の方々から再三私どもの方に申し入れがございまして、私も一昨年の十二月とそれから昨年の十二月とお会いしまして、いろいろ経過等の説明をいたしたわけでございます。実は一昨年の十二月でございますけれども、前々から税関の職員の方が申し入れてまいりましたことを非常に強く私どもに要望がございましたので、私もそのときにできるだけ早く判定を出したいのだ、ただ、この事案は非常にむずかしい問題を抱えた事案であるし、慎重な検討をしたい、できるだけ早く出したいので、早ければ来年の三月くらいには出るであろうというようなお話をいたしましたのですが、またその線に沿いまして非常に努力したわけでございますけれども、実はその後若干作業の進捗状況が予想よりおくれたというようなこともございますし、それからまた、春ごろから御承知のように私どもの前総裁が御病気になりまして、それで入院がちというような状況がございまして、九月には御逝去になるというような不測の事態がございました。私としては前総裁の在任中にこれはぜひとも出したいということで進めておったわけでございますけれども、そういうような不測の状態がございましたので、その見通しが大いに違ってきたということが一つございます。  その後、新総裁が任命されるまで若干の期間がございましたけれども、この事案は非常に重要な事案でございますから、私としましては、新総裁を迎えて正規の人事院の構成になりましてから、そこで慎重に御検討いただくのがよかろうということで、昨年の間は上の方にも持ち上げませんで、私のところに置いておったわけでございます。  現在は、もう新総裁が任命されまして、業務も活発に活動しておりますので、現在では人事院会議で検討中ということでございます。私としましては、できるだけ早く出していただくように努力をしておるつもりでございます。  ただ、いま先生おっしゃいましたように、めどがいつかということになりますと、実は私一昨年でございますか、早ければ三月というようなことをお話しいたしまして、それが結果的にはそのとおりいかないで、非常に期待を裏切ったというような苦い経験もございますので、いま私がここであと一月とかあと何週間ということを申し上げるのは適当でないというふうに考えております。ただ現在の段階は、もう大詰めに近い段階だということは申し上げられると思います。
  197. 荒木宏

    ○荒木委員 これが提訴されまして一年二年ですと、また話もあれだと思うのですけれども、もう十数年でしょう。大体判定が出る平均というのは六カ月から一年じゃないのでしょうか。さっき担当の方に聞きますと、そんなようなお話でしたから、仮に短い方をとって六ヵ月としますと、普通の事案の実に三十倍ほどの期間がかかっておる。これは事情はあるにしても、かなり異常ではないかと思うのです。  ですから、経過の説明はいま伺いましたが、最初おととしですか、三月というお話があって、新総裁になられるという経過があったものですからおくれてきているのですけれども、しかし、十年でも二十年でもおしまいの歯どめがなくていいということでは決してないと思うのです。たてまえから言いましても、速やかに被害救済を図らなければならない。それが人事院の皆さんの大事なお仕事ですから、遅くともいつごろまでにはという皆さんの努力目標、これはやはり示していただきませんと、大詰めで速やかにというだけでは、これはちょっときのうきょうの話ではありませんから、ですから、よんどころのない事情でどういったことになるかもわかりません、それは別として、努力目標でいつということは、これはやはり局長として衝に当たっておられるのですから、これをひとつおっしゃってください。
  198. 今村久明

    ○今村説明員 ただいま先生から、大変、本事案が普通の事案の三十倍もかかっておるというようなお話がございまして、私、先ほどちょっと説明を省略いたしましたけれども、御承知のように、この事案は三十六年の事案で、三十七年に一回審理をいたしたわけでございます。ところが、そのときには、その審理の進行に関連しまして、非常に残念なことですが、紛糾がございまして、そこで一回審理が打ち切られるということがあったわけでございます。  その後、先ほどもお話がございましたように、神戸地裁、大阪高裁と第一審、第二審の判決がございまして、四十四年に第二審の判決が出まして、その直後に私どもの方に審理の再開の話が非常に強くございまして、そこで審理を再開いたしまして、実は審理が実際に結審したのは四十七年の九月でございます。そういう意味で、普通の事案と非常に違った状況であるということはひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、ただいま判定発出の時期について明言していただきたいという話でございましたけれども、私としては自分なりの心づもりを持っておりますけれども、なかなかいままでの経過から見ますと、必ずしも私の思ったようにも進まない状況が過去にございましたので、私としては、もうできるだけ早い機会に出したいということで、先ほど申し上げましたように、大詰めに近い段階であるということでお察しいただきたいというふうに申し上げたわけでございます。
  199. 荒木宏

    ○荒木委員 そうすると、大体一、二ヵ月ぐらいですか。
  200. 今村久明

    ○今村説明員 私としての努力目標としては、そういうふうに考えております。ただ、それは私としてのあれでございますので、そこはひとつ……。
  201. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは、努力目標でひとつ早期に、内容ももちろんでありますが、いままでの経過を踏まえて御勉強いただくとして、大蔵省に最後に伺っておきたいのですが、この人事院の判定が出ますね。いま局長としては一、二ヵ月でというお話ですが、大詰めですからもう間もなく出ます。出た段階で、原処分が取り消させるか、あるいは修正されるか、あるいはまた別の結論が出るか、これはわかりませんが、取り消しなり修正ということになったときに、大蔵省はその判定に従って、判定どおりのことを直ちに実行なさるかどうか、これが一つですね。  それから、実行されるとして、あと最高裁判所に一つかかっておりますが、あれを、それでもなおかつ引き続き争われるかどうか、この二つのことを伺っておきたいのです。     〔伊藤委員長代理退席、委員長着席〕
  202. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ただいま御指摘のように、片一方では人事院の公平審理にかかっておりまして、その判定が出るわけでございます。片一方では、四十七年の三月一日に最高裁にわれわれから上告をいたしております。それの判決が出るわけでございます。私どもといたしましては、いずれか早い方の判決ないし判定に従って処置したいと考えております。
  203. 荒木宏

    ○荒木委員 それで、その後、一つ残った方を争うかどうかということ。
  204. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 果たして人事院の方が先に出るか、あるいは最高裁の方が先に出るか、そのときによっていろいろな組み合わせがあると思いますので、われわれとしては、いろいろそこにまた法律論があるようでございます。仮に人事院の判定の方が先に出てきたときに、一体、最高裁の方の効果はどうなのか。さらに継続するのかあるいはそれは棄却処理をするのか。下級審にはいろいろ判例があるようでございますが、中央審ではまだその辺は判例がございませんし、逆の場合のケースもあると思いますが、なお私ども、その辺は十分勉強していきたいと思いますが、いずれにしても、早い方の判決ないし判定に従っていきたいと考えております。したがって、もし人事院の判定が先に出ましたならば、それに従ってまいりたいと思います。
  205. 荒木宏

    ○荒木委員 人事院の判定が出ましたら、あと最高裁が残ってもそれは争わないと、さっき審議官が来て、どなたでしたかね、そんな意見を言っておられたのですよ。そのことをひとつ確認していただきたいのと、判定で取り消し、修正になると、これは当然、ずっと続いて職員であったことになりますね。そうすると、昇給もある、それから賞与も払わなければならない。その間のもう長年にわたるいろいろな各種の被害といいますか、関係の補てんということもあろうかと思うのですが、それに従って大蔵省も、原処分と違った結論が出るなら、その点については反省をされて、そうして誠実に履行なさる、このことをひとつはっきり伺って、これで質問を終わりたいと思います。
  206. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、原処分と異なる判定が出ました場合には、その方が先に出ました場合には、それに従います。  ただ、先ほどお話しのように、どちらが先に出るかわかりませんので、その逆の場合、いろいろなケースがございますので、その先につきましては、われわれは顧問弁護士ともいろいろ法律的に詰めて議論してみたいと思いますが、いずれにしましても、人事院の判定が先に出ましたならば、それに従うことをお約束いたします。
  207. 荒木宏

    ○荒木委員 もう一つの、いまお聞きした、反省して誠実に回復の措置をなさるかどうか、これをひとつ。
  208. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 人事院の判定を、私、余り様式はつまびらかでないのですが、仮に私どもの方がよろしいとなればそれでおしまいだと思いますし、もしそうでない場合、われわれの方が正しくないという場合には、恐らく復職させろ、それでその間の実損といいますか、いろいろ月給をもらわなかった分がありますから、それは幾らであるか、それを与えろという、こういう判定じゃないかと思うのですが、そういうケースが出ましたならば、それに従うということを申し上げたわけであります。
  209. 荒木宏

    ○荒木委員 それで、反省をして誠実に回復の措置をなさるかどうか。
  210. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 私どもが、どちらの判定が出るかわからないところでこちらがどうと言うこともあれだと思いますが、もし私どもが正しくないという判定が出ましたならば、それは私どもとしては反省いたしまして、誠実にそれを実施いたします。
  211. 荒木宏

    ○荒木委員 終わります。
  212. 上村千一郎

    ○上村委員長 広沢直樹君。
  213. 広沢直樹

    ○広沢委員 まず最初に、政務次官に基本的なことを伺っておきたいと思いますが、今回の関税暫定措置法の一部を改正する法律案は、従来の関税定率法だとかあるいはそれに付随した二、三の法律の改正と違って、今回は非常にミニ改正と、こう言われておりますが、それはいま行われております新国際ラウンドの関係が控えているということでこういうような一部の部分的な改正になった、こういうことでございます。  そこで、基本的に伺っておきたいことは、今後の関税政策のあり方について、とかく関税問題を検討する場合においては、これまでは産業の保護政策的な色彩が非常に強い、産業保護偏重ではないか、こういうふうに言われてまいったわけでありますが、だんだん経済が拡大するに従って、四十年代に入れば、これは物価問題だとかあるいは発展途上国の問題、あるいはまた公害問題等々、今日改正を見ておりますと、ウエートはむしろそちらに置かれてきておる、そして、すでに関税負担率も相当低下をしてきておりますから、そういう面は如実にいま申し上げました数字の上からでもわかるわけでありますが、とはいうものの、やはり国内産業の保護的なものも考えていかなければならない。今回の改正の中に部分的にそういった問題も取り上げられているわけであります。したがって、今後の関税政策の基本的なあり方をどこにウエートを置いていくのか、そういった点からまず伺ってみたいと思います。
  214. 森美秀

    ○森(美)政府委員 昭和四十七年の十二月の関税率審議会会長の長期答申、このことをおっしゃっておられるのだと思いますけれども、そのときの大きな眼目というのは、協調的通商関係の樹立と産業と福祉の調和、こういう長期答申でございました。現今、資源問題とかあるいは物価問題あるいは世界経済の停滞等々いろいろ情勢は変わってきております。おりますが、やはりこの長期答申の精神というのは今日も生き続けていると思います。  しかしながら、資源ナショナリズムといったことで世界貿易の発展が非常に阻害されているという面がございます。したがいまして、私どもといたしますと、ガットの場で新国際ラウンドに積極的な貢献をして、そしてその中で生きていくべきだ、こう考えております。しかし、かつての産業優先をやはりいわゆる消費者サイドに立った物の考えをしていかなければならない、これが私は今後のわれわれの道だ、こう考えております。
  215. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま次官から消費者サイドに立った方向にウエートを置く、こういうようなお話でございました。後にいろいろな細かい問題を二、三聞く場合にまた重ねて伺いたいと思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、今回の改正が新国際ラウンドにおける関税交渉の本格化を迎えておるので比較的小幅なものになった、こういうことなんでございますが、しからばそのジュネーブで開かれる新国際ラウンドに臨むわが国の方針といいますか、それからその見通しというものはどうなっているのか。私はこういった面について非常にむずかしい問題が山積しておりますから簡単にそれができるとは思いませんけれども、今次、食糧問題あるいは資源などの輸出規制等の問題も非常に大きな問題として取り上げられてきておりますので、それに臨むわが国の基本的な方針はどうなっているのか、その点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  216. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 新国際ラウンドは御案内のように四十八年の九月に東京閣僚会議で始まったわけですが、アメリカの通商法等の成立がずれましたためにことしの二月から本格的な審議に入りまして、四月からはいよいよ具体的な交渉に入るわけでございます。  見通しというお話でございますが、まず時期的な問題を申し上げますと、東京閣僚会議におきましては今年中を目途としてやるということでございまして、私どももまずそれを目途として努力はいたしますが、現実の問題といたしましては、いろいろむずかしい国際的な情勢の中でこの問題を進めていくわけでございますので、かなりあるいは若干は延びるかと思いますが、とにかくそれを目途にしてやっている。  それで、しからば日本としてどういう態度で臨むかということでございますが、これは今度の新国際ラウンドはいろいろ分野が広うございまして、この前のKRのときには主として関税率の引き下げの問題が中心でございました。それ以外に非関税障壁もございましたが、今度はむしろ関税率の引き下げはその一つでございまして、それ以外に非常に大きな問題を抱えております。  したがいまして、個別にいろいろ申し上げると時間の関係がございますので、私どもといたしましては、基本的には先ほど政務次官がお話しのように、長期答申の線、それからさらにそれを受けまして四十八年の八月末に新国際ラウンドに参加する閣議決定というのがございまして、これによって東京ラウンドを生んだわけですが、この線を中心にいたしまして、適宜各国との協調を図りながら、国益を損じないようにやっていきたいというのが基本の考えでございます。
  217. 広沢直樹

    ○広沢委員 次に、今回の改正の中で、原重油関税の問題について若干伺っておきたいと思うわけでありますけれども、この問題につきましては、審議会の中でも、伝えられるところによりますと、いろいろ関税をかけるのは好ましくないのではないか、撤廃すべきではないか、こういうようなお話もあったやに聞いておるわけであります。しかしながら、これもすでに周知のことでございますが、いわゆる石炭対策の関係上、まずこういった問題についても早急にそういう形をとっていくことはできない、こういうことになっているわけであります。  そこで、きょうはもう余り時間がありませんから、わざわざおいでをいただいております通産省の方にお伺いしたいのですが、確かに最近の事情から考えてまいりますと、石炭に対する考え方はむしろあの石油危機以後は大きく変わってきているわけでございますね。したがって、石炭の審議会における今後のあり方を見てこういった面も検討していかなければならぬ、非常に深い関連を持ってきているわけですね。ですから、それに対する見通しは今後どういうふうになっているのか、まずそこからお伺いしたいと思います。
  218. 高木俊介

    ○高木政府委員 石炭の見直しにつきましては、昨年の十月一日に通商産業大臣から石炭鉱業審議会の方に、新しい総合エネルギー政策のもとにおける石炭対策はいかにあるべきかということにつきまして諮問をいたしております。その後審議会の中の総合部会のもとで、需給問題あるいは価格問題等諸般の問題につきまして、現在審議が行われておるところでございます。  現在まで、昨年の十一月の総会に続きまして十一月の二十八日及びことしの二月二十一日にそれぞれ総合部会を開催いたしまして、二十一日には政策の基本的方向ということを総合部会で御承認いただいたところでございます。なお、その間におきましては専門委員会という委員会を設けておりまして、専門委員会が需要業界あるいは石炭業界、それから労働組合等々からすでに二十数回意見を聴取いたしまして、今後も六月の答申ということを目標にいたしまして、いま審議会の方で十分審議をいただいておるところでございます。
  219. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、関税局長にお伺いしますけれども、そういうことになりますと、いまの石炭鉱業審議会の答申が出れば、やはり基本的にもうこの原重油に対する関税のあり方を考え直していくことになるのか。石油ショックであれだけ問題が起こり、そして原油が相当大幅な値上がりをしたというときに、やはり国内の諸製品に対する物価問題等の関係があって、関税の関係も大きな問題として取り上げられたわけですね。  ところが、いま言うような関係があるので、いまのお話によりますと、大体六月ごろにその結論が出てくるのではないかということでございますが、そういう関係も踏まえて、今回の場合は一年間延長、こういう処置をとられているのですが、その方向によって関税は、先ほど申し上げました議論の中にあったように、なくしていく方向でいくのか。あるいはやはり今後また財源的に必要な面もあろうかということなのか。後からまた備蓄の問題で若干伺っておきたいと思うんですが、まずその点、関税局長はどういうふうにお考えになっておられるのか。  大体、世界でいわゆる原油に関税をかけているというのはまずないわけですね。アメリカに一部、ちょっと形は違いますがあるやに聞いておりますけれども、ほかの国にはありませんね。特にわが国はそういうエネルギー源というものについてはほとんど諸外国にそれを依存していかなければならないという観点から考えていっても、これは基本的に見直していかなければならない問題ではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  220. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 私どもといたしましては、先ほどお話しの石炭鉱業審議会の方の御答申が出ました後、石炭の総合エネルギーにおける地位というものを考え、また片っ方でいまおっしゃいましたような備蓄問題とか、あるいは油自身の開発問題とか、諸般の問題を考えまして、関税率審議会に御審議をさらにお願いすることになっております。  関税率審議会におきましては、二つ大きな問題点がございまして、一つはいまおっしゃいました財源対策として果たしてどうあったらいいのかという問題。もう一つは税負担として、一体関税あるいは国内消費税も含めた広い意味消費税だと思いますが、適当な税負担はどうあったらいいのかという二つの論点で、ことし石炭鉱業審議会の答申があってから御議論いただくことになっております。この二点から十分御議論いただきたいと思います。現在、私自身の立場といたしましては全く白紙でございます。
  221. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで次に、いまの問題と関連いたしますから石油の備蓄の問題について通産省の方にまず最初に伺っておきたいのですが、一応先ほど申しましたような背景から、九十日備蓄ということ、これは消費国間ではアメリカが主体になってそれを推進しているようなんですが、そういうことでわが国においてもそういったことが一つの大きな問題として取り上げられているわけであります。そうした場合に、これはどういう見通しになるのかということが一つ。  それから、いまの六十日間備蓄ではどうにもならない、消費国間のいろいろな調整の上においてももっと備蓄していかなければならない、こういう傾向にあることはわかるのですが、そうなった場合、民間ベースでそれを考えていくのか、それとも政府ベースで考えるのか。つまり、これから上積みになる三十日分なりあるいは何日分なりを政府で考えるのか、民間で考えるのか。それによって、先ほどちょっと触れておきましたが、財源としての輸入関税を考えるのか、あるいは別個にその他のものを考えていくのか、こういうことにもなるわけですね。その点はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  222. 山本雅司

    山本説明員 ただいまの石油備蓄問題につきましては、私どもといたしましてはこれを五年計画で、現在の六十日から九十日に引き上げるということで、来年度を初年度として改めてスタートするということを考えております。  その方向といたしましては、現在のところやはり石油企業がタンクを持っておりますし、そういうところに持たせるのが一番効率的にできるというところから、基本的には石油企業にこれを持ってもらうということを考えております。しかし、いま先生から御指摘もございましたように、そのためには広大な土地も要りますし、さらに現在の非常に問題になっております安全対策、防災対策、これも非常に重要な問題でございます。したがいまして、政府といたしましてもこれについて資金面を初めとして、あらゆる面でいろいろの施策をとっていきたいということを考えておりまして、現在御審議願っております石油開発公団法の改正でも、共同備蓄会社というのをつくりまして、これは民間が半額、政府が半額出してそれで備蓄基地をつくっていきたいということをいま提案している段階でございます。  将来の財源対策につきましては、実は本年度も政府部内でいろいろ検討いたしましたけれども、本年度は石炭、石油対策特別会計の中から五十億円ほど支出することで一応予算案として現在提出しておるわけでございますが、これが来年度以降非常に膨大な金額になってくると思われます。したがいまして、その財源措置をどういうやり方でやるかというのは今後も引き続き検討をして、次年度以降それぞれ必要な段階にまた提案をしたいというように考えております。
  223. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、関税局長、いま申したように、仮に先ほどの石炭問題が一応終わったとして、次の財源を輸入関税という形で考えるということはいまお考えになっていないだろうと思うのですが、その点いかがですか。
  224. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 現在、先ほど申しましたように全く白紙でございまして、むしろ備蓄問題自身は関税率審議会でもまだ御議論がないような段階でございます。しかし、われわれ事務当局といたしましては、今回の備蓄問題につきましていろんな議論に参画したわけでございまして、基本的には先ほど通産省がおっしゃいましたように、やはり業界負担であろうと思いますが、ある程度以上の面につきましては何らかの助成が必要かどうか。その際に果たして課徴金的なものでやるのかあるいは国家資金でやるのかという問題が一つございますし、国家資金でやるといたしましても、一般財源的なものでやるのかあるいは最終的には消費者が負担する消費税的なものでやるのかという議論がございまして、どちらかと言いますと、やはり備蓄は最終的に油を使う消費者が何らかのかっこうで負担するべきではないかという議論が強かったわけでございます。  その際にも、果たして国内消費税でやるのか、あるいはおっしゃいます輸入だけの関税でやるのかという問題がございますし、輸入の関税でやる場合には、一番問題としましては先ほど来おっしゃったように、OPECといたしましては日本だけがそれでやるのはいかがかという問題もございますし、国内産の油を使う人も輸入の油を使う人も消費者負担であれば立場は同じではないか。したがいまして、輸入の物にだけ消費税をかけるのはどうかという議論もございます。そういう議論がいろいろあったわけでございますが、その辺なおまた新しい問題といたしまして、私ども白紙でいろいろ議論をしていきたいと考えております。
  225. 広沢直樹

    ○広沢委員 通産省の方、結構です。  それから少し細かくなりますが、今回の改正で出ている問題について伺います。  そこで、今回通関の手続をできるだけ簡素化する、そしてスピードアップを図るための改正として、たとえば従来エビ、これは生で冷凍にしたもの、あるいは手を加えたもの、水たきですか、そういったものは関税率が非常に大きく開いておったのですが、今度低い方にこれをまとめた、その他いろいろ調整したのが十九品目、こういうことになっていますね。これはいまこういうような簡素化ということで手続がとられておりますけれども、いままで一方において、なまものについては非常に低い、そして水たきしたものについては非常に高い。こういう開いておった理由というのは何だろうか。そしていままたこういうふうに低い方に合致できるんだったら、いままでにおいてもこれはできたんじゃなかろうかと思うのですが、その点については私はちょっと疑問に感じますものですから、ひとつ明確にお答えいただきたいと思うのであります。  それから、時間の関係もありますので、続いて二、三伺っておきたいと思いますが、パインのかん詰めにつきましては、これは沖繩の地場産業として盛んであるわけでありますが、そのかん詰めが非常に滞貨してきた、売れないということで、冷凍パイナップルについての税率を今度は高くする、引き上げる、こういうことになっていますね。その問題については、沖繩におけるパインかん詰めというものが大体幾らぐらいしているのか、それから冷凍パイナップルを国内に持って来て、それを今度はかん詰めにしたものが大体どれくらいになっているのか。実際そこでいま沖繩関係のこういう産業の不振を打開するためにこういう処置をとられたということであるならば、実際に三五%になるわけでありますが、無糖が一五%引き上げて三五%、加糖、糖を加えたものについては七%引き上げて同じく三五%、こうなるのですが、こういうことによってこの所期の目的が達成できるような形になっているのかどうか。その点についてひとつ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  226. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 最初に、通関簡素化のための項目整理による関税率の引き下げについてお話しいたします。  ただいま先生が例に挙げられましたとおりに、たとえばエビでございますと、生のエビを冷凍いたしますと現在五%、ところがそれを加工いたしますと、加工といいましても塩とか普通の水で煮ますと一二%になっております。なぜそうなっているかと申しますと、これはやはり分類が国際的に決まっておりまして、ベルギーのブラッセルの分類によりまして、加工のものは非常に高くなるように分類もしてございます。しかし、実情を見てみますと、大部分のものが生で入って五%でございまして、それを税官吏が一々あけて、これは一体生から冷凍したのか、ゆでて冷凍したのかというような点をやるのは非常に手数でございますし、さらに、煮てから冷凍したというものは現実問題としてほとんど入らないということがはっきりしてまいりましたので、これを低い方の五%に合わせた方が合理的であろうということで、五%に合わせたわけでございます。  それでは、なぜこういうことを今回やって、もっと前からやらなかったかというお話でございますが、これは実は二、三年前からこういう作業をずっと続けてきておりまして、いろいろ輸入量輸入価格、その他見まして、合わせても弊害がないという自信がついたものから歴年やってきておりまして、現在わかっているところではこれが最後でございますが、現在新国際ラウンドも控えておりますので、その点はできるだけ全部問題点を整理いたしまして、懸案のものは全部今度処理したということでございます。なおまた問題が起これば、またそのとき処理いたすといたしまして、われわれのわかっている範囲内では、この際全部整理してしまって新国際ラウンドに臨みたいということで、今度お願いしてあるわけでございます。  第二点の冷凍パインの問題でございますが、まず冷凍パインの小売価格のお尋ねでございます。沖繩のパイナップルかん詰めば百八十円から二百六十円でございます。それから冷凍パインを輸入いたしまして、それを国内でかん詰めにして出しましたものは百五十円から百六十円程度でございます。  それで果たして十分に沖繩のパイナップルかん詰めが大丈夫かという御質問でございますが、これにつきましては、私どもこういう考えを持っております。関税だけでカバーするというのは国際的にも非常に問題がございまして、できるだけ他の措置でお願いしたい。冷凍表示の問題でありますとか、あるいは合理化の問題でありますとか、農林省を中心にいたしましていろいろな措置をやっていただいております。それの一環といたしまして関税も三五%に引き上げるということにいたしまして、もちろん三五で、関税だけではいろいろ問題があると思いますが、総合政策の一環としては十分ではないかと考えております。
  227. 広沢直樹

    ○広沢委員 この法につきましては、一部改正でありますからわが党は賛成であります。ただ、これだけについてはそうでありますけれども、関税全体につきましてはいろいろ問題が多くありますし、今後の問題も検討しなければいけない問題がたくさんございますが、大蔵大臣が予算委員会に出席されるために時間がないそうでありますので、一応これに関した問題はこれで質問を終わりにしたいと思います。
  228. 上村千一郎

    ○上村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  229. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  230. 上村千一郎

    ○上村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 上村千一郎

    ○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  232. 上村千一郎

    ○上村委員長 次回は、来る二十八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会