○竹本
委員 参考人の御三方、きょうは大変御苦労さまでした。
櫻田参考人を
中心に、きわめて簡単に、二つばかりお伺いいたします。
その前に、
櫻田さんが最近いろいろと労作を発表していらっしゃるのを拝見させていただいておりますが、特に、石油の確保の量を二億五千万キロリッターに一応抑えて、それを
中心に
日本経済の総合計画というものを立てたらどうか、そしてまた、ある
程度、石油だけではなくて、消費
抑制についても真剣に取り組まなければならぬではないかという御提言がありましたけれども、私はこの点は非常に高く評価をいたしております。最近いろいろの
経済論策を私も目を通しておりますけれども、このくらいまとまって御提案をいただいておるものは余りない、そういう点は私は党派を超えて、またイデオロギーを超えて評価をいたしております。
「「安心のいく世の中」を作るために」というのは新しい御提言でございまして、この中にも数多く教えられるところもあるし、また若干は御賛同できない問題もありますけれども、しかし、
経営者は
経営者の立場において積極的にこうした御提言をいただくということは非常にいい傾向だと思って歓迎をいたしております。
そこで、まず
一つ二つお伺いしたいのでございますが、その第一は、いままでのやり方は非常な錯覚に
国民全体が立っておったという御
意見が出ておるようでありますけれども、私もそのとおりだと思います。その中で特に錯覚の大きかったものは、グレートイリュージョンを持っていたものは、私は
日本の
政府だと思うのですね。次には
経営者の方々である。その点についての反省をこれから本当に厳しくやらないことには、新しい取り組みができないのではないかというふうに思うわけであります。
いわゆる
高度成長の問題でございますけれども、こんなに毎年毎年一〇%ずつ
高度成長が続けられると思ったこと自体に大きなイリュージョンがあった。
アメリカ等の評論、批評等を見れば、まず第一に、
日本の
経済はランニング・ツー・ファースト、余りに早く走り過ぎるということを言っておりました。またある評論家は、こんなに毎年一〇%ずつ伸ばしていって
日本はどこへ行くつもりだろうかということで、天井まで行ったならばまあ
高度成長が押さえられるであろうと思っていたら、とうとう
日本経済は天井も突き抜けて上へ出ちゃったというような批評をした人もあります。いずれにしましても、これは大きなグレートイリュージョンであったと思うのですが、どうでしょうか。
私は、佐藤さんが大蔵大臣のときであるか
総理になってからか覚えておりませんけれども、佐藤さんに、第一、安定
成長なんという言葉がけしからぬ、安定というのはある
程度チェックをしコントロールをすることだ、
成長というのは伸びるということだ、佐藤さんにおわかりいただくように言うならば、汽車には上り下りというのがあるけれども、上りと下りは違うのだ、それを上り下り列車みたいなことを言うて安定
成長なんて言うのは、それこそ大きな錯覚である。特にドイツの安定
成長論というものを
日本は翻訳してわいわい言っているわけですけれども、あの原文を見ると、安定そして
成長と書いてある。スタビリテート・ウント・バクスツームと書いてある。安定が根本なんです。だから佐藤さんに私が言ったのは、もうこの
段階になれば、すべての
経済の基本は安定ということに
中心を置くべきだ、それがまた本当の意味の
成長の基礎になるんだということを言ったこともあります。
ところがそれを間違えて、わけのわからない安定
成長論でいまだにみんなわいわい言っているが、私は安定なら安定ということに重心を置き、そして石油が二億五千万キロリッターなら二億五千万キロリッターを
中心にして、四%伸びるかどうかは別にしまして、それを大きな
経済政策の根本目標にしてすべてを総合
調整するということが一番根本ではないか、また、そういう形にならなければ本当の安定はできないと思うがどうかということが
一つ。
それから第二番目の
質問は、
日本の
政治もあるいは労使
関係も、これは私反省して申し上げるわけですが、余りにホットイデオロギー、イデオロギーが過熱し過ぎている面がどうもある。そういう点については、もう少しお互いが落ちついて冷静にものごとを見ていかなければならぬのではないかという意味で、私は御
質問というよりもむしろ御提言をしたいのでありますが、大体、
経済の
先ほどの
高度成長、ランニング・ツー・ファーストの問題もそうですけれども、いままでは金本位なら金本位制度という大きな歯どめがかかっておる、また一時は
為替レートは固定相場制という
一つの歯どめがかかっておった。それが金本位を離れる、固定相場はフロートする、こういうことになると、
日本の
経済、
日本の物の
考え方というものに、
抑制し歯どめをかけるものが一体何があるかということをわれわれは
考えなきゃならぬと思うのですね。
そういう意味から申しますと、ヨーロッパの諸国にはあるいは宗教というものがある、あるいは
政治家にステーツマンシップというものがある、
国民に愛国心もあれば良心もある。ところが
日本では、それこそ
櫻田さんの御提言の中にも書いてあるように、安心がいかないような面がたくさんある。そういうことを
考えると、これからの
日本の
経済社会全般についての歯どめをどこに求めるかということについて真剣に
考えて、これはひとつ科学的なデータというものをお互いに集めて、そしてまた、情報は世界的な
規模において各国の
あり方、各国の動きというものをもう少し科学的に全面的に収集して、その広い情報の上に立ち、科学的なデータの上に立って議論をすれば、議論がイデオロギーに引っ張り回されないで、じみな堅実な基礎の上に立ってできるのではないかというふうに思うのです。
そういう意味で、たとえばいま私がそういうデータがひとつ必要だと思いますのは、
先ほど来御議論がありました賃上げの問題にしても、一体、賃上げの波及
効果がどうなるかということについて、
経営者は
経営者、労働組合は労働組合それぞれ自分の立場で議論をしておる。しかしながら、客観的には何とか
調整をしなければならぬと思うけれども、
調整する話し合いの場を持ってもデータがない。たとえば
大蔵委員会では法人税という問題もありますけれども、法人税の負担率が幾らであるかということについても、いまだにみんなが納得する、四〇%がいいか、
先ほどの五五%が多いか、それらについて、その数字自身についてお互いに異論があるのです。けれども、これは四〇なら四〇、四二なら四二ということについては科学的なデータを出して、それが高いとか低いとかいうことはそれぞれの立場で批判する、データそのものは、みんなが共通の基盤の上に立って議論をするというような努力をしなければならぬと私は思うのです。
そういう意味で、財界にはいまいろいろのシンクタンク等もできつつあるようでございますから、賃上げの問題にしても、あるいはそのはね返りの問題にしても、あるいは賃金
コストと
金融コストの比較の問題にしても、
先ほどまた
櫻田さんから
タイトマネーポリシーの
お話がありましたけれども、そういう総
需要抑制の
抑制の仕方についても、また
抑制でいけるものの限界についても、海外的
要因がどの
程度あるかということについても、非常にまた
意見が分かれております。これもデータはある意味においてはない。そういうデータも探さなければならぬ。さらにまた、低
成長下の労使
関係をスムーズに持っていくためにはどうすればよいかということについても、それぞれ勝手な演説をしているだけではいけないので、やはり話し合いの場と話し合いの根拠になるデータがなければならぬ、こういうふうに私は思う。
この点については、
大槻さんと
大木さんにあとで、低
成長下の労使
関係をスムーズにするための
経営参加というものについてどういうふうにお
考えか、
結論だけ一口お伺いをいたしたい。
さらに、いまの
福祉国家の問題についても、悪平等は国を滅ぼすというような御提言がありましたけれども、私は悪平等は困ると思いますけれども、しかし、その
高度成長のメカニズムを全部そのままにしておいて、間接
金融もあるいは
金利の
あり方もすべての
税制も、いままでの
高度成長を支えた柱をそのままにしておいて、それで一遍に
福祉国家の建設というものができるものかどうか。御提言の中には産業構造の改革というのがありますが、産業構造の改革にしろ、あるいは精神構造の改革ももっと大事だと思いますが、そういう問題に取り組むにしろ、やはり世界的な情報を集め、そうして科学的なデータを出して、イデオロギー議論するのはその次にして、前
段階で科学的な情報とデータを集めるという努力をする。そういう意味のシンクタンクを、ひとつ財界においても、それこそ
労働者の代表も含めて、
国民的な基礎におけるデータを集め情報を集約する場をつくったらどうかと思いますが、どうでございますか。
以上、きわめて簡単に御答弁だけいただけば結構でございます。