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吉田参考人 ただいま御
紹介いただきました
税経新人会の
吉田でございます。私は税理士、公認会計士でございまして、中小企業の相談相手として日常実務に従事いたしておりますので、現場実務の面から今回の
改正三法について
意見を述べ、皆様の御参考に供したいと存じます。
まず、
所得税法の
改正について
意見を述べさしていただきますと、第一点は、
昭和五十年分の今回の
改正で際立つことは、
改正附則二条が全面的に適用になったという点であります。これは
納税者の長年の
要求が本年度
改正で実現したわけで、
税金計算の簡素化の面では画期的なものだというふうに評価できると思います。
ところが、せっかくこの
改正法の適用が一月一日にさかのぼるということになっても、この
改正法によって利益を受けるのは、申告しております予定
納税者と
退職所得者であって、
納税者の絶対多数を占める
給与所得者についてはこの恩恵がないということなんでございます。
すなわち、
給与所得者は本年の一月、二月、三月分については旧法で高い源泉税を取られ、その分の払い戻しは十二月の年末
調整までお預けということになっております。
退職所得者については、附則七条で利息をつけて返すということになっているんですから、
給与所得者については年末までお預けということを言わずに、せめて四月以降の給料から
徴収する
税額に充当するようにしてもらいたい。百歩譲って、遅くとも夏のボーナスの
徴収税額に充当するくらいのことをやっていただきたいというふうに思っているわけでございます。
この計算は簡単でございますし、
昭和五十年度の予算年度内のことでございますから、予算の税収額には全く響かないわけでございます。計算実務はすべて給与支払い側、すなわち
源泉徴収義務者が行うのですから、これはすぐ実施できることです。条文についても、附則第何条、括弧開く、施行日前に支払われた
給与所得に係る
源泉徴収税額の充当、括弧閉ずとして条文を一つ入れていただくだけでよいわけです。
本日御列席の
委員の皆さんは、お顔を拝見しても私
どもが日常新聞紙上でちょいちょいお目にかかるお偉い先生が非常に多いようなんで、ぜひ皆様の御努力によって、先ほ
ども高橋さんが言われましたけれ
ども、非常に痛めつけられている
給与所得者に、ひとつ皆さんのお力でこの
措置によってボーナスを与えていただきたいというふうに思っているわけで、こういう
措置が講ぜられれば、
国会の権威というのは一段と高まることは間違いないというふうに私は思っております。
それから第二点でございますが、福祉政策から来る
障害者控除等の特別な人的控除のことでありますが、これは御
承知のとおり、
昭和四十二年分の
所得税法改正で、計算簡易化の
見地から税
額控除を所得控除に切りかえたわけでございます。これは所得控除よりも税
額控除の方が実際に効果があるということは、私ちょっと読ましていただきましたけれ
ども、前年、前々年の
参考人の
意見陳述の中にもしばしば出ておることでございまして、今回の
改正で申し上げれば、老年者控除の適用要件としての所得限度額が現行五百万円から一千万円にアップいたしましたけれ
ども、こういうようなアップよりも、税
額控除に切りかえていただいた方がはるかに福祉政策に合致するということでございます。
仮に本年度を税
額控除としますと、所得五百万円ぐらいのところは
税率が二〇%ですから、本年度の障害者等の所得控除額の二割を税
額控除にしていただければ、低所得の障害者等の皆さんに大変喜ばれる。これは予算
措置を伴うことですから、来年ということになるかもしれませんが、この点、税
額控除の点をお
考え願いたいと思います。
それから第三点でございますが、白色申告者の事業専従者控除の件でございます。この専従者控除の基準としては、私は
給与所得の最低控除額五十万円に合致させるのが妥当じゃないかというように思います。また、青色申告者に事業主報酬
制度が実施されておりますので、これに関連して、白色申告の事業主にも少なくとも事業専従者控除と同額の控除を認めていただきたいと思っております。
ついでに申し上げますと、青色事業主報酬
制度というものは非常に制限がきつい。毎年十二月末までに翌年の事業主報酬を決めて届け出せよ、一たん決めたものは変更まかりならぬということになっているわけで、これは青色申告の専従者給与に対する届け出より格段に厳しくなっております。収益見込みというのは、前年度の決算を
検討してある
程度見込みが立つわけですから、青色専従者の給与の届け出と同様に、事業主報酬の届け出も三月十五日までにしていただくと、大分事業主報酬というものが生きてくると思います。
それから第四点として、
医療費控除でございますが、足切り限度というものを撤廃していただきたいということでございます。体のぐあいが悪くても、家族の
生活のために、健康保険には入っているにかかわらず医者にも行かないで、くしゃみ三回ルル三錠というのですか、薬を買って済ましているという例は非常に多いわけでございます。低所得の
勤労者にはこういう例は非常に多いことで、
社会保険料というのは御
承知のとおり全額所得控除になっておりますし、売薬で済ませることはその分だけ、それ以上に
社会保険診療支出を少なくするという意味にもつながっておりますので、
医療費支出については足切り限度を撤廃して、全
額控除をするというようにお願いしたいと思っております。
医療費が全
額控除となると、
医療費支出についてお医者さんなり薬局から領収書を受け取るという慣習が
国民に定着するようになります。
税務行政上手間がかかるということについては、
医療費控除を年末
調整で行えるようにすれば、大
部分は片づけられることになって、大変喜ばれて、福祉ということに非常に大きくつながるのじゃないかと思います。
それから第五点でございますが、今回、
給与所得者が
確定申告を要しない限度額として、給与以外のその他の所得が
引き上げられました。ところが、同族会社の役員及び特別
関係者がその同族会社から受けるその他の所得については、たとえ一円あっても全額合算申告しなければいけないことになっているわけです。どうしてこう同族会社ばかりをいじめるのか。要するに、中小企業の法人のほそんど全部は同族会社ですから、私は、同族会社をいじめる制限規定をついでに撤廃していただきたいと、これもお願いしたいことでございます。
最後に、これに関連して申し上げたいのは、
給与所得に関する現物給与の
課税規定でございますけれ
ども、これは御
承知のとおり、現物給与については月々の免税点は七百円、これは基本通達に入っております。この免税点は、
昭和二十五年までは百円で、二十六年から二百円、二十七年から五百円、二十九年から七百円、そのまま今日まで変更がないわけです。二十年変更がないのですが、現在昼飯を食べても五百円という時代で、現物給与の七百円免税点は余りにも低過ぎる。通勤費については、御
承知のとおり、四十一年
改正で非
課税所得に組み入れられて、毎年のように政令でアップして、今日九千円になっているわけです。
昭和二十九年当時の通勤定期の控除額は五百円でしたから、今日の現物給与の免税点の七百円は余りにも低いということが言えると思います。ぜひこの際に現物給与の免税点は通勤費の控除並みにアップをいたしていただきたい、こういうふうに思います。
次は、法人税の
改正についで申し上げますと、まず第一に、同族会社の留保金
課税、これはもうそろそろ撤廃の時期が来ているのじゃないかというふうにはっきり申し上げられると思います。留保金
課税については所得
課税に吸収して撤廃すすべきだ。
第二点は、法人税の累進
税率の導入でございますが、大企業の超過所得について担税力相当分の累進制をとる。私は所得十億円以上の
部分について五〇%の
課税をやってもいいのじゃないかというふうに
考えております。ただ、ここで大事なのは、大企業のそういう法人税が転嫁されないように別途法的な
措置をとりませんと、力が強いですから、法人税も転嫁する可能性があるという点はは申し上げたいと思います。
第三点は、大会社に対する受取配当の益金不算入、配当軽課というものは、これは現在の時点ではもう廃止する時期が来ている。いわゆる法人擬制説というような実態は、中小企業の同族法人にその実態があるわけでございまして、これは
税制調査会にお願いしたいのですが、ひとつとことん審議していただきたいというふうに思っております。
第三番目に、
租税特別措置法について、時間がございませんので簡単に申し上げます。
土地譲渡所得課税の
適正化でございますが、今度の
改正は
土地成金を目のかたきにし過ぎたという感じがございます。説明で見ますと、単純に
総合課税にすると、低額の
譲渡益四千三百万円以下については現行の分離
課税よりも
課税額が低くなるので、従来の施策を継続するということで二〇%の
税率を据え置いておりますが、これはちょっと私はいただけない。ということは、低額の譲渡ということは非常に
土地の供給の促進にも役立つことでございますから、当然低額の
譲渡益については
軽減措置を講ずべきだというふうに
考えます。
第二点は、
譲渡所得の
特別控除、収用の例だとか
土地区画とかいろいろな控除の恩典がございますが、地方自治体の
課税担当者の方がこういうような控除条件についてもっとわかるようなPR、これは国税庁ということになるのかもしれませんけれ
ども、実際にそういう施行している自治体の課説課に聞いてみると、適用になるかどうか、チンプンカンプンで全くわからないわけです。こういうようなものは日常の実務では非常に大きな困難を来たしておるわけでございます。実際に収用でも本当に控除になるということがはっきりしているのだったら、また収用とか
土地区画の事業がスムーズにいくということにもつながるので、ぜひ地方自治体の職員がこういう特別
措置の
内容について具体的に知るような
措置を講じていただきたい。
それから第三点、
農地に対する
相続税の
納税猶予制度の創設でございますが、今回の農業投資価格にとどめるという
課税措置、これは大変結構なことでございます。ただ、これについては、
農地の固定資産税についても、農業投資価格というものを固定資産税の
課税標準とする。実際に農業をやっている者、これについてはそういうような配慮をしていただきたい。
農地が
地価を高めたわけではございませんので、実際に農業をやっている者については、固定資産税についてもそういう都市並みの追い出しの高額の
課税をするのではなくて、先ほど
青木先生も言われましたけれ
ども、今日は高度成長政策ではなくて食糧自給時代になっているわけなので、これは発想の転換を行っていただいて、固定資産税の
軽減を図っていただきたい。
中小企業の事業引き継ぎの
贈与税についても、お医者さんも同じことですけれ
ども、この事業引き継ぎについて
農地の
贈与税並みの配慮を願いたい。
時間があと一分でございますので、その他さっと申し上げますと、直間比率の問題については、どれが直接税でどれが
間接税だという公的な解釈がはっきりしておりません。これをはっきりしていただいて、その上で転嫁の問題を
考えて直間比率を
考えていただきたい。
それから医者の問題ですけれ
ども、大分医者がやられておりますが、これは憲法二十五条の、健康にして文化的なのこの
原則からもう一回洗い直してみたらどうかと私は
考えております。医者が医療施設を
改善するということについては
国民の願いなんですから、医者が収益を医療施設の
改善に投じる限り
税金はかけない、これは憲法二十五条と合っているので、そういう面でひとつお
考え願いたい。
それから、
税金が特別、政策的に高い安いということになった場合に、もっと積極的にPRをしていただきたい。こういうことをすると高くなりますよ、こういうことをすると安くなりますよということで、こういうPRを
政府の方で積極的にやっていただきたいというふうに思います。
以上、簡単でございますが、
意見を終わります。
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