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1975-03-11 第75回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十一日(火曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 伊藤宗一郎君 理事 村山 達雄君    理事 山下 元利君 理事 山本 幸雄君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       越智 伊平君    大石 千八君       奥田 敬和君    金子 一平君       鴨田 宗一君    瓦   力君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       塩谷 一夫君    野田  毅君       原田  憲君    坊  秀男君       毛利 松平君    山中 貞則君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    横路 孝弘君       荒木  宏君    小林 政子君       坂口  力君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         国税庁次長   磯辺 律男君         国税庁税部長 横井 正美君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 三月六日  企業組合に対する課税適正化に関する請願外  三件(内田常雄紹介)(第一一八四号)  同外四件(竹本孫一紹介)(第一一八五号)  相続税の軽減に関する請願外四件(小沢貞孝君  紹介)(第一一八六号)  桐たんすに対する物品税に関する請願椎名悦  三郎君紹介)(第一一八七号)  音楽・舞踊・演劇・演芸等入場税撤廃に関す  る請願安里積千代紹介)(第一一八八号)  同(竹本孫一紹介)(第一一八九号)  同(松尾信人紹介)(第一一九〇号)  同(山田太郎紹介)(第一一九一号)  同(有島重武君紹介)(第一二二九号)  同(青柳盛雄紹介)(第一二八五号)  同(諫山博紹介)(第一二八六号)  同(内海清紹介)(第一二八七号)  同(大野潔紹介)(第一二八八号)  同(平林剛君外一名紹介)(第一二八九号)  同(勝間田清一紹介)(第一二九〇号)  同(勝澤芳雄紹介)(第一二九一号)  同(小沢貞孝紹介)(第一二九二号)  同(小宮武喜紹介)(第一二九三号)  同(坂口力紹介)(第一二九四号)  同(坂本恭一紹介)(第一二九五号)  同(柴田健治紹介)(第一二九六号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一二九七号)  同(竹村幸雄紹介)(第一二九八号)  同(津金佑近君紹介)(第一二九九号)  同(塚田庄平紹介)(第一三〇〇号)  同(津川武一紹介)(第一三〇一号)  同(土橋一吉紹介)(第一三〇二号)  同(成田知巳紹介)(第一三〇三号)  同(中路雅弘紹介)(第一三〇四号)  同(古川喜一紹介)(第一三〇五号)  同(松本忠助紹介)(第一三〇六号)  同(三谷秀治紹介)(第一三〇七号)  同(村上弘紹介)(第一三〇八号)  同(矢野絢也君紹介)(第一三〇九号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第一三一〇号)  同(山本弥之助紹介)(第一三一一号)  同(湯山勇紹介)(第一三一二号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第一三一三号)  中小企業に対する減税措置等に関する請願(三  谷秀治紹介)(第一二三〇号)  国民金融公庫郡山支店設置に関する請願荒木  宏君紹介)(第一二三一号)  大和基地跡地公共的利用に関する請願土橋  一吉紹介)(第一二八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  八号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第二二号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております各案について、来る十三日木曜日午前十時三十分、参考人出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  3. 上村千一郎

    上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 上村千一郎

    上村委員長 質疑を続行いたします。武藤山治君。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは所得税の問題についてお伺いをいたしたいのでありますが、冒頭に、大蔵委員会は長い間ずっと連続をして質疑が生きていると思うわけでありますが、そういう意味で、新しい主税局長になって初めての通常国会でございます。いままでの主税局長がどういうことをどう答弁したかということも、主税局長かなり部分承知しているのだろうと思います。それは、昨年高木主税局長が、明年は前向きで検討したい、勉強したい、十分討議を尽くしたい等々の答弁をした項目については、具体的に後刻質問をしてみたいと思います。  まず最初に、昨年六月、主税局長に、就任されて以来、五十年度予算の中の歳入を見積もる上において、特にこの点が主税局長として大変苦慮した、苦悩した、ここはちょっと努力不足だった、ここはまあまあ九十五点ぐらいのところへいった等々の、税目別に、あなたの主税局長就任後の予算編成の衝に当たって感じたことを簡単にひとつ意思を御披瀝願いたいと思います。
  6. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 昨年主税局長を拝命して以後、五十年度の税制改正を目指していろいろ勉強したわけでございまするが、第一に、何といいましても四十九年度に所得税法人税につきましてかなり大幅な減税が行われたということが前提になったわけでございます。特に所得税につきましては、いわば二年分の減税をやったぐらいの規模の減税が行われたわけでございますし、法人税につきましては、これもまたかねての懸案の国際的な法人企業税負担実現できたわけでございます。  その後で五十年度に一体何を行うかというのが一番問題になったわけでございますが、特にかねて、いまも武藤委員から御指摘のように、当委員会で長い間税制についての御論議がございました。そういうものについてもいろいろ私どもは毎年の税制改正について配慮をし、実現できるものは逐次実現をしてきたつもりでございますけれども、そういうものもあわせ考えまして、一体来年度にどの程度のことができるかということだったわけでございます。  ところで、もう一方、経済動向から言いまして、四十九年度を控えましてかなり早い時期にあのいわゆる二兆円減税を打ち出せたころとは違いまして、経済情勢から言いますと非常に厳しい動向が看取されまして、したがいまして、税制についてもそう大きく期待はできないのではないかというような見通しでございました。  そこで、まず所得税でございまするけれども、いわゆる物価に対してどういうような対策を立てるかという観点と、物価に対してどういうように調整をするかという観点の二つの命題をいかに調整するかということが第一の問題になったわけでございます。そこは今回の御論議にも大分御批判をいただいておりますけれども、私どもは、昨年度の所得税の大改正の平年度化といいますのがかなりあるということを踏まえまして、しかも物価動向が、政府経済見通しによりましても消費者物価がやはり一一・八%程度伸びるということにかんがみまして、それに加えまして二千五百億円程度所得税減税を行うということで、この物価に対する調整と、それから物価に対する対策というものとを一応はそこで答えを出したつもりでございます。  それからもう一つ、これはもう前々から予測をせられておりましたけれども昭和五十年といいまするのは、かねて非常に御批判の強かった利子配当に対する課税特例と、土地譲渡所得に対する課税特例というものの期限切れを控えておりました。それから、なおこれに加えて、三つ一つとして世の中の批判を急速に浴びてまいりました社会保険診療報酬に対する課税特例というものが、もう二十年になってくるわけでございます。そこで、折しも社会的な不公正是正というような要望が非常に強くなってまいりましたことも勘案いたしまして、ぜひともこの三つ課税特例措置につきましては、私どもも何とか一歩でも二歩でも前進をすることをやってみたいというふうに思ったわけでございます。今回の租税特別措置法改正案の中で、利子配当土地譲渡所得につきましての一応私どもの当面の対策というのを出して、またいろいろ御論議を仰いでおる次第でございます。  社会保険診療報酬課税特例につきましても、昨年秋にこれは税制調査会といたしましても初めて具体的な案というのを考えていただきまして、これも完全なものとは私どもも考え得ないわけでございまするけれども、当面の策としましては一歩二歩前進をし得るものではないかということで、この実現について努力をいたしておるわけでございます。私どもとしましては、今回の改正案の中にこれも織り込みたかったわけでございまするけれども、いずれこれは次回の社会保険診療報酬の改定と同時に実施をし得るというめども立ったわけでございまするので、一日も早くその実現を期したいと思っておるわけでございます。  それから、四十九年度の所得税法人税の大改正におきまして、ややそのときに積み残しましたという感じのございました相続税がございました。これも四十一年からちょうど十年近くたっておるわけでございまするので、この問題はぜひ解決をさしていただきたい。しかもその際には、かねて当委員会におきますいろいろな御論議も踏まえまして、またこれも物価、地価の調整という面も兼ねてかなりのことをやらしていただければいいなということで勉強をさしていただきましたのが今回の改正案でございます。  それから、先ほど申しましたように税収見通しがそういいというときでございませんから、金額は大きな減税額を期待できないとしましても、これもかなりの御論議がございました入場税の問題、これは私はかねて、やはりこの前もお答えしましたように、サービス課税の中ではかなり全般的な課税部分を残してきたというふうに思っておりまするので、さきに本会議までの御討議を経ました案を御論議にかけさしていただいたということを非常に喜んでおる次第でございます。  しかし、何といいましても、やはり税制といいまするのは長い間の積み重ねでございますし、今後またやはりそういったものを将来に向かって、税制が果たさなければならない公正という実現に向かってつないでいかなければならないものでございますので、今回の改正だけではございません、将来ともそういった努力を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体、主税局長になられて、四十九年度と五十年度の予算編成では大変経済状態さま変わりをしてきている、特に五十年度の見通しについてはなかなか不確定要因が多くて、見通し現実のものとなるかどうか、大変心配の種がございます。たとえばアラブの戦争が六、七月ごろ起こるか、食いとめることが可能か、あるいはオイルダラー還流政策が完全に世界的に管理されるか、これらの不確定要因がどう展開されるかによって日本経済自体も大きな影響を受け、経済見通し自体が狂ってくる。そういう不安定要因があることを私も十分承知をいたしております。  ただ、ただいま主税局長のお話を聞いて不満に思うのは、あなたの不作為を責めたい点は、やはりインフレ利得というものについての捕捉、いわゆるインフレによる膨大な利益を上げた土地あるいは大企業、そういうようなものに対して富の再分配機能をもっと働かせる必要があったのではないか。現実にある制度そのものを、いま主税局長の言をかりるならば、一歩でも二歩でも前進をさせたと思う——その点はやや評価をするにやぶさかでありませんが、同時に、他の面でもっと取り得べきものを取ってそれを公正な分配に使う、そういう面の洗い直しが大変不十分である。  もちろんそれは、主税局長になられたのは六月でありますから、もう予算編成のいろいろな資料集めが八月ごろ始まるわけでありますから、なかなか短期間に、すなわち五十年度予算にそういう大きな新税の問題を考えるということは容易ならざることであることは十分理解はいたしておるつもりでありますが、それにいたしましても、三木内閣の不公正是正という一大看板に対して国民が期待するものは富の公平なる分配、それを実現するのは税制をもってやる以外に他に方法はなかなかない。  そういうことからいくならば、いま上場法人土地資産というものがいかにこのインフレによってふくれているか、現実公示価格帳簿価額との乖離というものは一層大きくなっている。どれが真実であるかわかりませんが、昭和四十五年ごろの上場法人不動産簿価は約四十一兆円程度ではなかろうかという数字などが発表されておるわけでありますが、それが現在八十二兆円に達している。四十五年から四年間で倍の価格現実公示価格というものはふくれ上がっている。だとすると、わずか四年間でこういう大企業なり資産を持てる者は倍の財産を保有したことになる。  一方、低収入の、しかも勤労性所得というのはその人一代限りで、その人が死んでしまえば全く所得を生まない、資産所得やそういう所得とは基本的に性格を異にする、そういう低所得者インフレによってますます被害を受けている。その権衡の問題ですね。この権衡というものをどう図るかというところに税制の私は大きな眼目がなければならぬと思うのであります。  そういう点において、先ほどの、物価調整は二千五百億ばかりやった、利子配当土地課税については一歩前進をして少々強化をした、相続税かなり減税入場税手直しをした——これらの手直しについては私も評価をするにやぶさかでないんでありますが、なぜもっとやるべき土地評価なりあるいは富裕税なり、あるいは西ドイツ経済安定法で断行したような高額所得者に対する所得税の一%上積み課税とか、そういうようなインフレにもっと機敏に対応できる税制というものに手をつけなかったか。これは不作為だね。そういうことをも私は重大な問題として取り上げざるを得ない。  就任したばかりであるから、ことしはひとつそういう問題も一回徹底的に洗い直しをしてみようという答えがいただけるならこれは大変結構でありますが、これらの不作為についての主税局長の御見解、心境をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 もちろんただいま武藤委員からいろいろ御指摘のございます点については、私ども常々勉強をしていかなければならないことでございます。ただ、もちろんその際にも、われわれとしては、先ほど冒頭におっしゃっていただきましたように、何といいましても現行所得税制ならば、その中でなお努力はすべき点は真っ先に取り上げていかなければならないということが、今回の五十年度税制改正に当たっての私ども基本的態度でございました。  さらに加えまして、たとえば土地によりましてのいわゆるインフレ利得を巨額に得ておるものについて、一体どういうような課税を行えばよろしいかという問題でございまするが、これはもちろん私どもとして十分関心のあるところでございます。ただ、それを実現いたしますためには、従来申し上げておりますように、まず、その言われております非常に価格の上昇した土地の用途というものについて、一体、分別をできるかどうかという問題がございます。いわゆる空閑地的なものを取り出し得るならば、私どももそれに対する課税を強化するという道を容易にとりやすいのでございまするが、現に事業用に使っておるものあるいは居住用に使っておるもの、そういったものと、将来売買を予定して保有しておるものとの分別ということを一体どういうふうに実現したらよろしいかということが、一番難点になるわけでございます。  もちろんそれに対応しまして、言われておりますように、再評価でそういったものについての利得を一度に吸収をするという案も可能でございます。しかし、それにつきましては、これも前々から申し上げておりますように、そういう税制を仮にとったとしましたときに、一番得をするのは、将来の売買を予定して土地を買っておった人についての税負担がむしろ安くなって、現に必要やむを得ず使わざるを得ない人について税負担が重くなるという難点をどういうふうに克服したらよろしいかという非常に大きな問題がございます。私はそれに対しましては、やはり保有課税を恒常的に考えるというような方法がよろしいのではないかというふうに考えますけれども、もちろんそれについての新しい措置を今年度にとったわけでもございません。なお今度の研究課題であるというふうに思っております。  それから、たとえば非常にインフレ状況がありましたときに、いま御指摘のように、ヨーロッパの国のように機に応じまして所得税なり法人税についての増税措置を講じ得る体制をとれないかという問題、これも確かに私ども常々考えておるわけでございます。そういった経済情勢のために、たとえばドイツがやっておりますように、いわば凍結をする、あるいは将来返すというような前提のもとにおいて所得税法人税増税するという道もございますが、何しろ今日のわが国情勢では、増税ということは例も余りなかったものでございますから、非常にむずかしいのではないか。やはり機敏にそういった体制をやるという環境づくりがまず第一には必要でないかという気がいたすわけでございます。しかも、アメリカでもヨーロッパでも、そういったことについて増税をいたしました場合には、私どもから見ますと、かなり低い所得階層から所得税について増税をしておるというようなふうに感ぜられます。  そういうことにつきましても、やはり多年減税減税でやってこれたわが国経済情勢が、これからはそういった事態がなかなか容易に可能ではないということも勘案いたしますれば、やはりある程度所得階層からはそういう事態も必要になるというような気持ちをお互いに持たなければならないわけでございまして、またそういう必要のありますときに、増税ということについてもまた御論議をいただかなければならない時期があるかもしれませんが、私どもとしますれば、やはり現行の税率をそのまま置くという、いますでにございます累進構造のいわば自動調節作用というものに今回は依存するということにとどめたわけでございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはよくわかる。現在の手直ししやすいものだけいじった、イージーゴーイングなんだよ。だから、私が言っている不作為を責めざるを得ないというのは、もっと前向きな努力——インフレ利得に対する課税なり、あるいはこの前一時為替問題、円の切り上げ問題が起こったときに、経済安定法をつくろうという意見大蔵省の中にかなり強かった。その経済安定法も、昭和四十八年の段階で速やかにあのときつくっておけばまた違った形に、日本租税収入というものの凍結もあるいは国債発行金額凍結も、別な意味経済的効果をあらわすようなことができた。それがいつの間には消え去っちゃった。  現在はどうなんですか、その経済安定法的な西ドイツのそういうような考え方というものを恒常的なものとしてつくっておこうという空気が大蔵省の中にあるのかないのか。これは副大臣ですな、副大臣、その経済安定法的、西ドイツ的な発想というものはもう大蔵省の中から消えちゃったのか、それともまだ検討に値するというので研究課題になっているのか、その辺ちょっと聞かしてください。
  10. 森美秀

    ○森(美)政府委員 ただいまの経済安定法の問題でございますが、これは御承知のとおり、二、三年前に大分研究された問題でございますが、いまのところはいろいろまだ問題がございまして、まだ研究段階でございます。いずれいろいろのことを研究しまして検討したい、こう考えておるわけでございます。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体一時間の時間でいろいろ聞きたい問題がたくさんあるものですから、徹底的な議論まで掘り下げて論争できませんが、次に税収伸びの問題であります。  主税局提出をした税収見込みによりますと、五十年度の源泉所得見込みは四兆六千四百二十億円、去年の四十九年度の補正後の金額と比較して七千八百七十億の増収ですね。間違いないですな。申告所得は前年度と比較して二千七百六十億円の伸び法人税は三千八百六十億円の増、こういう見積もりになっているわけであります。  私は自分で税収の積算をしたりなんかする専門家でありませんから、細かい問題についてよくわかりませんけれども素人考えでぱっとこの数字を見たところ、源泉所得増収を期待し過ぎている、あるいはその裏を言うならば、法人税収入増というものが低く見積もられ過ぎている。どちらかに原因がある。これはどちらがより事実に近い観測になりますか。源泉は七千八百七十億の増収で、土台は四兆六千四百二十億、法人税の方は、土台は六兆一千四百十億円の予算に対して三千八百六十億円増、源泉の半分ですね。どうも源泉所得の方にウエートがさあっとかかり過ぎている感じがしてならぬのでありますが、これについてはどういう説明をいたしますか。
  12. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 経済情勢が今日のようなことになりますれば、私はやはりこういう事態は避けがたいのではないかというふうに思います。と申しますのは、源泉所得税の中でも大部分給与に対する源泉所得税でございますが、これにつきましては、五十年度は一人当たりの雇用者所得は一七%、それから雇用の増を一%伸びるというふうにいたしておりますので、総じまして一八%程度伸びるという事態のもとに給与所得に対する源泉所得税を見積もっております。それから利子なんかにつきましても、これはある程度伸びが期待されるわけでございます。  これに対しまして、一番端的に経済状況反映いたします企業利益でございますが、これはいわば収入が仮にふえましても利益がそんなにふえないという事態がいつも景気停滞時期には見られるわけでございます。しかも、その停滞の度合いが一番限界部分でございまするから、利益伸びが低くなる、増収で減益というような事態がすぐ起こるわけでございます。  しかも法人税では一応六カ月決算法人かなりございますが、一年決算法人はなおさらのこと、税収にあらわれてまいりますのは、その景気反映というものが実勢よりも半年なりそれ以上おくれてあらわれてくるわけでございます。御承知のように、いまの日本経済というのは昨年の後半から非常に冷たくなってきております。そういうものを反映をいたしまして、今年の上半期には税収が非常に伸び悩む、法人税伸び悩むという事態が予測されるわけでございます。政府経済見通しのようにゆるやかに上昇過程を回復するということになりまして、ようやく私ども見通しのような税収が期待されるということでございますので、いま御指摘のような源泉所得税増加額法人税増加額というものについて差異が見られるわけでございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 差異が見られるのはよろしい。わかっておるのですよ。問題は、私はその差異があり過ぎるという感じ法人税は前年度と比較して、何%の伸びですか、三千八百六十億円の増というのは。それから源泉の七千八百七十億円の増収というのは何%の伸びですか。
  14. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 源泉所得税は、四十九年度の補正に対しまして二〇・四%の伸びでございます。法人税は、四十九年度の補正額に対しまして六・七%の増でございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 その積算の基礎が、生産が九九%、物価が一一二%、所得率等による調整が九五、総合で一〇五、こうなっていますね、皆さんの説明書によると。私は、ことしの経済はこういう状態に推移しないと見ているのです。いまの不況の落ち込みはもう現在が完全な底で、これ以上日本経済は不況の谷底がさらに深くなるということはあり得ない。それは大蔵省もわれわれ野党の主張というものをかなり取り入れて、この前大平さんとここでやった一月二十九日以後、公共事業費の八%を年度内に徹底的に使おう、住宅ローンも大幅に広げようといった二月一日の経済閣僚会議で決めた六項目にわたる施策にかなりここで議論されたことが現実問題としてあらわれてきている。さらに加えて、四、五、六の公共事業費の予算かなり部分先に使おう、こういう方針も福田副総理などもちらつかせている。  そういういろいろな要因を勘案してみると、経済はもう二月の終わりから三月の初めが底で、日本経済停滞局面から成長局面への転換が目下着々と進んでいる、私はそう見るわけであります。この主税局税収見積もりというのは、そういう意味でこれよりも税収かなりふえる、そういう見通しが事実に近いのではないだろうか、私はそんな感じがするのであります。これは結果になればわかりますけれども、この六・七%増はぎりぎりの収入になるだろうか、それよりもやはり年度を終わってみると、いやこの見積もりは過小だった、法人税はもっとふえた、こういう結果になるだろうか、このかけはどうですか。
  16. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 五十年度の法人税収を見込みますにつきましては、ちょうどその税収が入ります事業年度に対応しましての生産、物価というものを、対応する時期に応じまして、四十九年度におきます経済の実績それからその後におきますところの見通し、五十年度におきますところの政府経済見通しというものによってつくるわけでございます。そうして、それによりまして私どもは各事業年度の該当期について、一体、生産、物価がどのくらいに伸びるのか、それに対しましての税収が一体どの程度に期待できるのかということで積算をいたします。  特に、先ほども申しましたように、法人税といいまするのは、経済の実勢よりは少なくとも半年はずれてくるわけでございます。果たしていまが経済の一番底で、すぐV字型に回復いたしますのか、かなり緩やかにといいますか、底を長くはって回復過程に入るのかというところもいろいろ論議のあるところでございますけれども、むしろ五十年度の法人税収と申せば、その前半期のものは、もう済んでおります四十九年度の下半期の経済反映いたしましたものが入ってくるわけでございます。そうしますと、今日のようなかなり冷え切った経済情勢反映した税収というのが半分を占めるというような概略の計算になるわけでございまするので、私どもとすれば、そういう政府経済見通しを基盤としながら、それに対応しての税収を今日の状況におきましてはできるだけ適正に見積もったつもりでございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 まあ適正だったかどうだったかは、すぐこれは六カ月もたてば実績で化けの皮があらわれるのでありまして、私は、これはもっと増収になるだろう、こう見ているわけであります。  法人の方はそういうような低い見方をしておきながら、一方、申告所得の営業は、一七%伸びると見ているのはどういうわけですか、これも事業ですから。
  18. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 申告所得税の営業の税収を見積もります場合には、大体個人の消費支出に対応する営業者が大部分でございまするから、私ども従来とも個人の消費支出が一体どの程度伸びるかというような指標を基礎にいたしまして判断をいたしておるわけでございます。それで、五十年度の政府経済見通しによりますと、個人消費支出は四十九年度に比べまして一八・四%伸びるということになっております。それに対応いたしまして、営業所得につきましては一七%伸びるということで積算をいたしております。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこらがどうも首尾一貫していないという感じがしてならぬのであります。では法人の所得だって、そういうインフレ時期になれば、やはり個人申告の営業と同じようにその価格を引き上げていって、名目的な収入増というものを期して、恐らく配当を全くしないなんという会社はないだろうと思うのですよ。やはり一割配当ぐらいは出す。そういうことになると、法人税——きょうは法人税の質問の時間じゃなくて所得税で、比較の上で法人税に入っておるので、いまのは刺身のつまなんですが、そこで所得税の問題です。  給与所得一八%増というこの積算が狂う、恐らくことしの春闘で二〇%は間違いない、大体二五%ぐらいのところにいくのではなかろうかと思いますね。そうすると、いまの主税局の積算の一八%給与総額の増、その場合、いまの税収見込みが、二〇%になったら税収はあと幾ら伸びるか、二五%になったら税収は実額でどのくらいになりますか、二〇%と二五%の場合。
  20. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私どもの見積もりによりますと、一八%給与伸びるということで、もちろん利子配当もその中に入っておるわけでございますけれども、大数の傾向といたしまして、そういうもとにおいて九千七百億円の増収が見込まれるというふうに思っております。したがいまして、仮に一八というふうに見込んでおりました給与の増が二%ふえまして二〇%になるという計算を正確にはやっておりませんけれども、概略でございますが、約千億ふえるというような計算が出るわけでございます。もっとも、それにつきましてまた減税部分がややふえますから、正味千億というわけにまいりません。まあ概数で千億というふうにおとり願えば結構でございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 去年高木局長も、給与が一%上がることによって税収は五百億移動する、こういう答弁をしているわけですね。そうすると、仮に二五%の春闘妥結となると、七%皆さんの見込みよりもふえる。そうすると、三千五百億これよりも収入増になる、こういう計算に相なるわけであります。いずれにしても、この一八%で果たして現実に近いのかどうかというのは、また年の途中でかなり議論になると思います。  そこで、私は、出ないお化けを先に、来年のことを言うと鬼が笑うという言葉がありますが、ことしのことで、年の途中で、これは給与伸びから見て、弾性値からいって、これはどうしても所得税伸びが大きい、取り過ぎる、こういう傾向があらわれたときには年度内減税を検討する、そういう姿勢がほしいのでありますが、現在の主税局長はどういうお気持ちをお持ちですか。
  22. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 仮に給与が私どもの当初見積もりよりもふえまして、税収源泉所得税において増加するという事態のもとにおきまして、その増加しましたものを一体どういうふうに処理するかという問題は、なかなかここで一概には決められないと思います。特に私は、五十年度の税収全体につきましても、今後の景況がどういうふうに伸展をいたしていくのかというものともあわせて考えなければならないと思っております。過去におきますように、毎年毎年多額の自然増収が出てまいったようなことというのは、なかなか今後そう期待もできないのではないかというふうに思われるわけでございまするが、仮に過去におきますような多額の自然増収が出ましたときに、それでは年内減税、年度内減税をやるかというお話としましても、そのときの歳出の状況を別にいたしまして税制だけに問題を限ってみましても、すぐさまそういうふうにやってよろしいのかどうか、やはりその時点にならなければ私からはお答えをできないものでございます。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは高度の政治的判断を必要とする問題でありますから、総理大臣か大蔵大臣でないと、森政務次官にも少々無理な注文かと思いますが、せっかくいるのでありますから、一応副大臣の所見をも伺っておきたいと思いますが、いかがですか。
  24. 森美秀

    ○森(美)政府委員 私は、根本的には、今後の情勢からいきまして、いままでのように年度内減税が起こり得る事態というのが少なくなりつつあるのじゃないかと思います。しかしながら、起こった場合という御質問については、それはそれといたしまして、根本的には、今後の日本経済情勢というものは年度内減税というものがなかなか起こらない、もっと厳しいものになると理解しております。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは後で総理が出席をし、大蔵大臣出席をした席で少し詰めたいと思います。  次に、若年労働者と国税負担の問題でありますが、昭和四十八年のこの大蔵委員会において田中前総理大臣と、未成年者から税金を取らないようにすべきだ、こういう議論をかなり詰めてやった記憶がございます。田中さんはそのときに、それはなるほど検討に値する、ひとつ十分考えてみたい、こういう答弁の結果、四十九年度から五十万円のとにかく勤労者控除の最低限を認めた。そういう意味ではかなり前進した改革をやったわけであります。しかし、現実の姿は、名目所得がどんどん上昇しておりますから、現在の制度ではまだ過酷に思われる節がある、私はこういう感じがいたすわけであります。  現在の国家公務員の高卒の初任給は幾らになっておりますか。現在の公務員の高卒の初任給は、大蔵省からいただいた資料によりますと、調整手当も含めて六万三千九百三十六円ですね。民間五百人以上規植の高校率、一般事務の場合、これが五万九千三百六十九円、技術者の場合、実業関係の高校卒六万一千九百八十円、こういうことになっているようであります。昨日大蔵省からいただいた資料に基づいての数字であります。  この数字を見て感じますことは、現在大体三カ月の賞与をもらう、十五カ月で計算をしてみますと、公務員の場合、年間、初任給で未成年で九十五万九千四十円、大体九十六万円ですね。それから民間の技術者で初任給九十二万九千七百円、賞与を含めてこういう金額になりますね。そういう計算をしてみますと、やはり選挙権もない、高校卒で直ちに実社会に出て、世のため人のため国家のために生産に励む、仕事に励む、そういう未成年労働者に国税を負担させるということは過酷ではないか、こう感ずるわけであります。  したがって、独身未成年労働者について、平均的に月十万円、年百万円、その程度のやはり課税最低限が実行されるような配慮をまたこの段階ですべきではないか。この二年間の物価上昇というのはまことに異常でありまして、卸売物価を合計すると五〇%以上も上がって、上がったものはなかなか下がらない、結局高値安定しておる、そういう状態でありますから、四十九年度で思い切ってやったじゃないか、こういう反論をするかもしらぬけれども、いまの公務員の初任給、民間の初任給の実情から比較して、独身者、未成年若年労働者に対する税の取り方が少々過酷ではないかと思う。この点について検討してしかるべきではないかと思いますが、これは政務次官の政治的判断をお聞きしてもよろしい問題だと思いますけれども、いかがですか。
  26. 森美秀

    ○森(美)政府委員 年齢がたとえ未成年者であろうとも、社会的責任というか、給与をもらっている以上、当然税は負担してしかるべきものと私は考えております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 そんな木で鼻をくくったような答弁をいつもするから、あなたに質問する気にならなくなるのです。いままでの総理大臣や大蔵大臣だってそんな答弁をしていませんよ。だから、やっぱり聞かない方がよかったんだな。これは主税局長と論争する方が楽しかったなあ。  森さん、あなたは昔のことを思い出していただければおわかりのように、昔、国税、所得税を納めるというのは本当のわずかですね。昭和十四、五年ごろは全国六十万人、それが現在は二千五百万、三千万人というようにふえておる。いま、これから背広もつくらなきゃならぬ、くつも買わなきゃならぬ、自分の身の回りの物もいろいろ買わなきゃならぬという、就職をしたばっかりの独身の高校卒業生に国税を賦課するということは、私はやはり過酷だと思うのですよ。やはりそういう若年労働者にはかからない程度までの配慮をしてしかるべきだ、もっと取れるところがあるんですから。担税力もあり、不公平な税制でまけているところもいっぱいあるんだから。やはり全体を考えて、整合性のあるそういうものを考えていかなきゃいかぬですよ。そういう意味で片方のものを——たとえば医者の診療報酬にしたって、結局最後は政治的に、総理大臣の判断か何か知りませんけれども、武見太郎にぎゅうぎゅうやられたら、せっかく税調でつくった案までどっかへ吹っ飛んでしまう。こういう不公平がまかり通っている。そういうものを見たら未成年労働者は、高校を卒業してすぐ勤めたらその年にもう税金がかかるなんていう日本の政治に対しては恨みを持っていますよ。世の中というのはこんなにちぐはぐな不公平なことがまかり通っているのかという、悪の気持ちを持つ温床ですよ。そういうものの罪滅ぼしから、やはり若年未成年労働者には税金がかからないぐらいな配慮をするのが、それはやはり憲法の命ずるところであるし、それは富の再分配機能を果たす税のたてまえでもある。まあ、いますぐやるとは言えぬけれども、検討はしてみたいぐらいなことが政治家として出ないというのでは、あなたは庶民の政治家じゃないな。財界擁護の政治家だな。言いたくはないけれども、あなたの発想というのは私はいただけない。  主税局長は私が申し上げたいまの数字を見て、このまま、いまの課税低限というものを検討しなくともいい、来年度は検討しなくともいい、もう八十万になったんだからいいではないか、こう居直るつもりですか、また来年度に向かって八十万も検討してしかるべきだなあというお考えか。初任給で九十五万九千円ももらえるのか、こういうことを見て何か感ずるところありますか。
  28. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 最近のわが国雇用者の給与水準を見てみますと、何といいましても初任給の上昇というのが一番大きいわけでございます。ということは、やはり家族を持っておる人の給与との格差が縮まってきておるわけでございますので、いまおっしゃいましたように、四十九年度の税制改正におきましてはその点も配慮いたしまして、独身者の課税最低限というのは六割伸びたものでございます。  なお、今後とももちろんそういう配慮をしてまいらなければなりませんけれども、それでは、おっしゃいますように新卒者の所得税というのをできるだけ課税しないような方向をとるのか、特におっしゃいましたように未成年という観点からそういうふうな趣旨をとるのかということになりますと、何といいましても給与の構造が変わっておる今日におきますと、今後家族持ちに所得税の負担をかけてまいるのか、あるいは給与のある程度高い水準の人にかけてまいるのかという問題になりますれば、一概に独身者あるいはその年齢あるいは新卒者というような地位だけについて所得税減税を行うわけにはまいらないと思います。  確かにおっしゃいますように、戦前、特に昭和九−十一年ごろの課税最低限を見てみますと、独身者の千五百円という課税最低限に対しまして、夫帰子供二人で千七百五十円でございますから、そこにはほとんど今日私どもが家族構成について考えておるほどの配慮というのはやらなくても済んだわけでございます。なぜ済んだかということは、一つにはやはり当時の税制の構造がそれを可能ならしめたのではないかというふうに思います。九−十一年の税収を振り返ってみましても、所得税といいますのは国税収入の中で一一%しか占めていませんでした。それが今日税収の中で三分の一を占める。今日、わが国は世界の中でもかなり高く直接税に依存しておる国になっておるということは、やはり担税力に非常に着目をいたしました所得税制によっておるということでございます。  そういう観点から申し上げれば、担税力ということをこの初任者につきても当てはめますれば、今後とも、もちろん初任給の水準というものを頭に置きなからも、これがかなり高くなっておる段階におきまして、どうしても昭和九−十一年程度に、独身者であるがゆえにあるいは未成年者であるがゆえに所得税を納めないように配慮をするというわけにはなかなかまいらない。むしろやはり担保力という観点から申しますれば、今日家族構成について私どもが配慮しておるようなことは、一番大きな要素になるわけではないかというふうに考えております。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 大変不満ですね。  主税局長はサラリーマン訴訟の大島裁判の判決を読みましたか。
  30. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 判決の全文については読んでおりませんが、その要旨についてはもちろん承知をいたしております。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 森政務次官はこの判決全文を読んでみましたか。
  32. 森美秀

    ○森(美)政府委員 大変不勉強でございますが、概略読ましていただきました。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 この判決は、サラリーマン側から見れば不満な判決であります。しかし、これはいろいろ専門家が読んでみると、裁判官としてずいぶん苦労して、いろんな角度から税のあるべき姿あるいは経費とは何か、そういうものを大変考えさせられる判決文ですね。私はこれをゆうべずっと一読してみて、きょうは時間があればこの一つ一つについて、たとえば必要経費とは何かからずっと論争したかったのでありますが、時間がもうありませんからやめますけれども、こういうものをずっと一般の人が読んでみて感じますことは、やはり自分たちの税金が余りにも不公平に取り扱われているんじゃないかという感じを持ちますよね。  そういうものからくる税に対する反感、重税感、そういうようなものが一層未成年者の場合などは、学校を出たらすぐ途端に税金かかっているんだというような国が果たして——アメリカ、西ドイツはどうですか、初任給に税金かかっていますか。
  34. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私どもの持っております数字によりますと、たとえばアメリカの課税最低限を独身者について見てみますと、所得税につきましては二千五十ドルでございまするから、邦貨換算六十一万七千円ぐらいでございます。西ドイツについて見ますと、五千二百五十三マルクでございますから、邦貨換算六十六万七千円。課税最低限につきましては、諸外国の考え方というのは私はかなり低い水準にあるように思っております。  残念でございますけれども、これに対する初任給の正確なものは持っておりませんけれども、ちょっと古い資料でございまするが、たとえば一九七〇年の高校卒業のアメリカの男子の初任給でございまするが二十六万四千九百九十円、西ドイツで同じく高校卒業の男子で十万三千五百七十円という数字を持っております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 そんな七〇年の数字なんというのは、過去二年間の日本インフレと比較したら全然問題にならぬのですよね、少なくとも一年のずれくらいでやらぬと。まあいい。いずれにしても、私は若年、未成年労働者に課税をするなという論者でありますから、この問題については今後とも執拗に要求をし、議論を展開していきたいと思います。  次の第三番目の問題は、住宅関係の控除の問題でありますが、現在、住宅取得控除は税額控除で最高三万円まで控除を認める、それを三年間認めるという制度ですから、九万円ですね。昭和四十七年一月一日から五十年十二月三十一日までの間に一戸家を建てるとこの法律が適用になる、こういう住宅取得控除があります。この取得控除の中で私はもう改善をしなければならぬなと思う点は、三・三平方メートル当たりの標準取得価格は十万円ということになっておる。この十万円はいつ決めた単価ですか。
  36. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 この制度をつくりました昭和四十七年の金額でございます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 四十七年と現在、五十年あるいは四十九年とでは、建築単価はべらぼうに上がりました。これはセメントも木材も、あらゆる資材がいまはもう倍の値段になっておる。家をつくるのに、昭和四十七年といまと比較すると約倍近い。もう坪単価が二十万はざらです。ちゃちな家で坪単価二十万ですよ。いまはちょっといいなと思うともう二十三万、二十五万です。そういう時代にこの標準取得価格はこのまま十万円でよろしいのか、もう直すべきじゃないか、どう思いますか。
  38. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 住宅取得控除をつくりましたときに、仰せのように三・三平方メートルの建築価格というものももちろん書いたわけでございまするが、そのときの基本的な考え方は、むしろ住宅を現実に建てましたときに要する経費というものを頭に置いたわけでございませんで、こういう住宅取得控除を当てはめましたときに、およそどの程度の人にそういう取得控除を与えればよろしいかということから判断をいたしたわけでございます。  それで、まず住宅取得控除を適用いたします場合には、申告制度でございまするし、余り広くない住宅ということで、およそ二十坪程度の家までという限界を置いたわけでございます。それから住宅取得控除をいたしますについては、やはり自分で家を建てた人との権衡としまして、借家に住んでおる人について何ら配慮をしないのに、むしろそれよりも恵まれたというふうに言われる自分の家を建てた人についての控除でございまするから、いわば普通の借家に住んでおる人が負担するような部分というものをこの控除として与えてはいかぬということも考えたわけでございます。  そういう観点から、大体二十坪の人が住宅取得控除として国から幾ら還付されるかということで、当時、大体その程度の住宅の人でありますれば一人一年二万円ということを決めたわけでございます。ただ、二十坪の人でそういう二万円でございまするから、ある程度の広さということでございまするので、それよりも小さな家をつくっておる人についてはもちろんそれに比例してその金額を減額するということから、控除の制度としまして坪当たりの取得価格というものを置いたわけでございます。したがいまして、おっしゃいますようにその後の建築単価というのはもちろん十万円よりも問題なく伸びておりまするし、当時におきましても、十万円というのは現実に住宅を建てる場合の単価とはかなりかけ離れておりました。むしろ現実所得税の控除額に観点を置きまして、そして与えられる住宅の広さをそれにスライドして減額をするという制度としてとったわけでございます。その後、昨年からこの金額を、むしろ控除線の方を三万円に上げたわけでございます。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、私の質問に答えておらぬのですよ。標準取得価格十万円という現実に全く合わぬような数字をいろいろ税務署が出す資料の中に書いてあるわけだから、そんな現実に合わないものを納税者に印刷して配ることはもうやめなさい、現実に合うように取得価格というものを直したらどうだ。ところが、あなたの方は、いやそれよりも三万円という税額控除の方にウエートを置いているので中身なんかどうだっていいのだ、こう言いたいと思うのだよ。しかし、現実公から出る書類が、国税庁から出る書類が、そんな現実と遊離した数字を説明書きの中に入れておくなんというのは実情に合わぬ、だから、もしあなたたちが三万円で何とか抑えようとするなら百分の一の方をいじればいいので、価格はやっぱり現実に合うようなものにしなければ、こんなことで家できるわけがないのですよ、いまどき。そのことを私は言っているわけだ。だから、現実の問題にこれを直したらどうだ。
  40. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 確かにあの制度をつくりましたときには、控除額として与えられる絶対額を頭に置きまして、しかもそのある程度の面積というのに応じてスライドすることを考えましたものですから、おっしゃいますように坪当たりの建築単価というような現実にございますものが、たとえば十万円というので非常にかけ離れた制度である、かけ離れた金額であるということでございますれば、たとえば三万円というものを頭に置きまして住宅の面積をスライドするように制度を組みかえてもよろしいわけでございまするが、やはり端的にその計算を住宅の面積に応じてスライドさせますためには、いわばそういう金額が一番便利がいいのでやったわけでございます。その点はなお検討をいたしたいと思います。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうですよ、検討するのは当然だよ。標準取得価格十万円なんというのはもうないよ。検討すると言ったから、これはこれでよろしい。  次は、住宅貯蓄控除です。財形貯蓄というのが中心でありますが、七年以上の貯蓄についてはその年間の預金額の一〇%税額控除で、最高五万円、これは大変なメリットがあるわけですね。その他のものは八%で四万円、一般住宅貯蓄は六%で三万円、こういうことになっておる。その他とか一般住宅貯蓄とか、幾つにも分けてあって、税務署の資料を見るとごちゃごちゃいっぱい書いてあったけれども、この一般住宅貯蓄というのは、どこへどう積んでもいいのですか。郵便局でも銀行でも労働金庫でも、これは住宅貯金ですよという契約だけ結んで貯金すれば、この一般住宅貯蓄というのは六%、三万円引けるのですか。
  42. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 この制度をつくりましたときにも、持ち家を期待しておる人たちが住宅貯蓄をやりまして、そしてある程度金額を積み上げたときに、またそこからいわゆる住宅ローンを借りて家を建て得る、そういう段階を想定したものでございますので、住宅貯蓄控除を受け得る場合といいますのは、住宅ローンを与え得る金融機関に対しまして貯蓄をするというのが原則でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 一般住宅貯蓄の場合は、期間はないのですか。
  44. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 三年以上ということになっております。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 三年以上で、何年間毎年六%ずつ引けるのですか。三年限りですか。
  46. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 一番長い期間で七年でございます。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはわかっているんだ、そうじゃなくて一般を聞いているんだ。七年の方はまだ聞いていないんだよ。これから聞くんだ。七年との権衡が問題なんだから。いま一般住宅貯蓄だけをずっと浮き彫りにして、七年にいくのはその次なんだ。聞いていないことを答えなくてもいいんだよ。
  48. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 住宅貯蓄をやっていただく期間は、何年やっていただいてもよろしいわけでございます。それに対応しまして住宅貯蓄控除をやりますのが最長七年間でございます。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、一般住宅貯蓄というのは企業を通じなくても、勤務先の会社を通じなくても、個人がこれは住宅貯蓄ですよと言って貯金をし、三年以上積みますという約束があれば、全部これは預金の証明書をくっつけていけば税務署は認めるのですか。
  50. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いわゆる住宅ローンをつけていただいておる金融機関に対します貯蓄であればやれるわけでございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 この一般住宅貯蓄はすでに家ができてしまってからでもいいわけですか。たとえば十五年間の住宅ローンで借りた、それはだめなんでしょう。だけど、いまの局長の答弁でいくと、住宅ローンをやっている人というと、借りちゃった人でしょう。これはまだ借りちゃわない人でしょう。これから家をつくりたい、しかし、あなた、住宅ローン何年なんということは、貯金するときに決めていないのですよ。あれは金を借りるときに、十年ものにするか、十五年ものにするか、十八年ものにするかは決まるのだから。  そこで、要するに一般住宅貯蓄というのは七年間はずっと三万円ずつ引ける。一年に六%だから五十万すると三万円引けるわけですね。これは一般の長期の貯蓄なら、何も会社を通じなくても個人が直接積んでもいいわけですね。そういうものは、法人を通じないで直接自分で預金をするからということで三万円、ところが会社を通じて団体で財形貯蓄に入った場合には一〇%、五万円、こういう差をつけたわけですが、この差をつけた理由は何ですか。
  52. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 財形貯蓄といいますのは、やはり勤労者の財産形成という目的をもちまして始めた制度でございます。その財形として貯蓄をいたしまして、しかもその貯蓄によって持ち家を取得しようというのを促進するために、財形貯蓄を通ずる住宅貯蓄については、一般の人が住宅貯蓄をやります以上のメリットをつけたわけでございます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは金融機関サイドから見れば、財形の場合、企業がまとめて貯金をしてくれるんだから、契約が破棄になったり途中でやめるなんということはごく少ない、そういうメリットがある、だから余分に恩恵も与えてやろう、五万円にしてやろう、こういうことなのかね。どういうことなんです、その五万と四万、三万と区切ったのは。
  54. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 一つは、勤労者か毎月毎月得ます給与の中からいわゆる天引き的に貯蓄をしまして、そういったものをいろんな金融資産の形でふやしていくのもよろしいのですが、そういうものをやがて持ち家に進めるということについて私どもは非常にメリットを与えて、そういうことによりまして勤労者が財産形成、しかも住宅貯蓄というものを通じまして持ち家に進んでいくということを目的としたものでございます。したがいまして、貯蓄を集めます金融機関の方の立場ではございませんで、いわば財形貯蓄といいまするのは新しいしかも継続的な貯蓄を勤労者が進んでやるわけでございまするから、それについてのメリットを一般の住宅貯蓄よりも重くするということで推進をしたいと考えております。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、一般住宅貯蓄というのは会社を通じて貯金をするわけじゃないんだよね、個々ばらばらに銀行と契約して貯金をしていくわけだね。この人は勤労者じゃないという前提ですか。それじゃ一般貯蓄の場合は勤労者じゃない者がまじっている、だからこの人たちには六%、三万円。財形貯蓄は全部勤労者で限られていて企業が毎月月給から集めて貯金をするからメリットが大きいという差をつけているのですか。その差をつけている原因は何だということを聞いているわけだ。
  56. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 財形貯蓄は、先ほど申しましたように、毎月毎月の給与から新しく貯蓄をするわけでございます。しかも定期的にそれをやっていくということは、やはり勤労者の財産形成としては非常にメリットがある制度だと私ども考えております。一般の人が住宅貯蓄をやります場合には、残念でございますけれども、その貯蓄の資金というのは一体どこから出てきておるかは実はわかりません。新しい貯蓄なのでございまするか、あるいはいろいろ節約をして積み立ててきました財産の中からそれを定期的にまた住宅貯蓄に振りかえておるかということはわからないわけでございます。そこで、私どもはやはり勤労者財産形成というのが、そういう新しい貯蓄をしかも長期的に継続的にやるというところに非常にメリットを感じておるわけでございます。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 一般住宅貯蓄だって長期的に十年あるいは七年積もうという、その積立金が少なきゃ長期に積まなければ家はできないから長期になる。しかもまじめな人で、毎月欠かさずに銀行へ積み立てしておる。銀行へ行く金は財形と全く変わらない。しかも、雰細企業、財形貯蓄をやっていない四人、五人の零細企業に働く勤労者。大体目下財形をやっているのは大きいところだけですよ。小さいところはまだほとんどやっていませんよ。零細企業は財形貯蓄をやっていませんよ。  そうすると、零細企業に働く勤労者は五万の方の恩恵を受けないで、三万の方しか入れない、その区別がおかしいと思うのだ。これは一般の住宅貯蓄というのは、会社の重役とか代議士とか医者とか、そういう人じゃないんだよ。大体貯金をしてとにかく長期間で家をつくろうというのはサラリーマンなんだ。そういうのに差が——私は三万円を五万円にしたっていいじゃないかという論者なんだ。五万円を三万円にしろというのじゃないのだよ。三万円を五万円にしろという論者なんだ。そこで少し理屈を詰めてみないと、どうもこれはおかしい。だけれども時間がなくなるからいい、ここまでわかってきたから。一般住宅貯蓄というものと七年以上の財形貯蓄というものの差をそんなに置く必要がないというのが私の理論だということを知ってもらえばいい。  そこで、局長、住宅ローンで自分の家を建てた。銀行の借金だ。逆に言えば銀行へまた貯金をするのだ、借金を返すわけだから。金を持っていくわけですよ。行為そのものは借りを返すということで、先に金を出してもらっているか積んでから後から借りるかという違いだけだ。そういう自分の家をローンで建てた者には何にも恩恵がないのだよ。この前の住宅取得控除が坪数三十坪以下ならば当てはまる。ちょっといい家をつくって三十五坪、三十二坪、そういうものをつくった場合には何も恩恵がないのだな、この人たちが住宅ローンで自己の家を建てた場合には、やっぱり五年なり七年間その金利くらい所得税控除をしてやることは考えてしかるべきじゃないのだろうか。この間山田耻目さんに質問されて、山田さんは四、五年前に家を建てた、おれは利息を一生懸命払って銀行に奉仕しているのだが何もメリットがないなと言って笑ったのですが、そういう人はいっぱいいると思うのですね。こういう住宅ローンに対する金利の所得税控除を少し五年間なら五年間、財形貯蓄にならわせるなら七年間なら七年間、一定の限度を設けてできないのかね。
  58. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 これも住宅貯蓄の制度を創設しましたときに考えた点でございます。仮にあのときにも住宅を自分で建てる人について所得税からどういうような応援ができるかという場合に、おっしゃるように一つはとにかく借金をして建てる人について応援をしなければならない。自前の資金でもって建てる人については考える必要がないということは明らかでございます。そうしますときに、借金をして建てた後でその支払い利子所得税で何らかの応援をするということももちろん可能でございますけれども、借金をするということ自体いろいろな形態がございます。一時に借金をし得るという人はいわばある程度有利な態勢にあるという人とあのときに判断をしたわけでございます。むしろそれよりは、当時ございましたいろいろ積み立て制度ということである程度金額を年々積み立てる、それが予定の時期に達し、予定の金額に達したときに初めて金融機関から住宅ローンを借りられるという人は、一気に金を借り得る人よりは、所得税の方で応援をするとすれば優先的に考えてもしかるべきではないかということから、ある程度の貯蓄をするということを一つ前提条件にしたわけでございます。  いずれにしましても、その場合にも所得税で何がしかの控除額があればこれは支払い金利の応援になることは、一挙に金を借りた人につきましても、ある程度の住宅積み立てをやって金を借りる人についても同じ効果を及ぼすことはおっしゃるとおりでございます。しかし、そのときにより優先的に所得税の方で考えるべき人はどちらかと言えば、やはりこのごろの事情でございますから、毎年毎年ある程度金額を積み立てていかなければならない人こそ所得税で応援をしなければならないということで判断をしたわけでございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはおかしい。それは金融機関に貯金を集めさせて預金獲得をさせてやるという金融政策上の配慮がやはり一つある。もちろん労働省が財形貯蓄というものは言い出しあことだから、それは西ドイツなどでやっていることだから日本もやろうやということで労働省が大変熱心に始めたことはよく承知していますよ。しかし、いまの説明を聞く限りでは、後で議事録をずっと読んでみてもう一回やりますけれども、どうも納得いかぬですね。  いま秘書が迎えに来たようだからやめますけれども、最後に、国税庁、いま無記名預金というのは、総額でいいが何ぼくらいあると思いますか。銀行局ですか。
  60. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私の方からお答え申し上げます。  都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、この数字のトータルでございますが、四十九年の三月末におきまして一兆二千三百七十一億となっております。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまのは四十九年三月の数字のようでありますが、日本銀行のこの統計資料によりますと、十二月が出ていますね。この十二月を見ると、都市銀行だけで五千五百八十二億、口数にして四十四万七千口。地銀三千五十九億円、二十六万六千口。信託銀行二十四億。相銀が一千七百六十七億、十七万一千口。信用金庫二千四十四億、十九万九千口。トータルで一兆二千五、六百億。あなたは三月だから、十二月はちょっとふえている。この問題について、議事録を読むと、中橋主税局長は大変苦しい答弁を予算委員会でやられている。堀さんにも質問をされ、阿部君にもやられ、まあどう答えようかという苦心の作があの議事録ににじみ出ているのでありますが、きょうはもう時間がないから、その問題について、銀行局長と国税庁長官の覚書の中身について議論はいたしませんが、これらの問題について大蔵大臣は、これは総合課税に持っていけるようにやはり検討しなければならないと思うということを、最後に大平さん答えているんですよ。大臣答えというのは法律に匹敵するのですから、これはやらなければいけませんぜ。  そこで、この無記名預金の一兆二千五百億円をどう処理していくかというこれからの処理の手だて、私は一挙にばちっとやれなんと言うのはむずかしいと思うのですよ。大体、無記名というのは、なぜ無記名にしなければならないか。主税局長と後藤さん、普通の人なら、正しくまじめにやっている人なら無記名預金なんかしないと私は思うのですよ「堂々と自分の月給の範囲内で貯金できる人、自分の事業で堂々とできる貯金は無記名なんてしないと思うのですが、無記名預金が行われるのはなぜでしょうか。お二人の感じ方をちょっとお聞かせください。
  62. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 先生御案内のように、この無記名預金の方の制度は昭和二十二年からほぼ二十数年続いてまいっているのでございまして、それをつくりましたときに、やはり預金者心理、これは脱税というようなことではなくて、自分の資産内容を知られたくないというような心理に着目して、貯蓄増強ということでやってまいったと承をいたしております。ただ、当初できましたときには、定期預金の総額の半分以上が無記名預金、こういうようなことがございましたが、現在は、いま数字を先生からもお示しいただきましたように、総預金の一%ちょっとというようなことに相なっております。これはほかに、やはり有価証券というものは原則として無記名でございます。あるいは貸付信託の受益証券というのも有価証券という制度、法制になっておりまして、無記名でございます。こういう他の無記名の金融資産というようなこととの兼ね合いということがあろうかと存じます。  当面、私どもは、いまお話が出ました中で、無記名預金よりも架空名義という方が一番ぐあいが悪いことではないかということで、これはなかなかむずかしい問題がございますけれども、極力それをなくすように努力をいたしたい、金融機関に対しましても指導をいたしたい、こう思っております。  ただ、無記名預金の方は、制度的に大分長くやってまいったものでございます。(武藤(山)委員「無記名を認めておるのは法律か、省令か、何かな」と呼ぶ)通達でございます。(武藤(山)委員「そんなものは簡単に直せる。その通達も後で貸してくれ」と呼ぶ)はい。昭和二十二年に特別定期預金という名前で出しております。これはただいま申し上げましたような他の金融資産との兼ね合いというようなこともございます。  それからもう一つ、私どもは、現在のところ架空名義の方を極力なくしたいと思っておりますので、それが無記名預金もなくしますと、むしろ架空名義がふえるというようなことは大変いやなことでございます。したがいまして、そのあたりを、やはり今後の課題だと思っておりますので、これから慎重に検討してまいりたい、こう思っております。
  63. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私ども利子課税の問題を考えております場合に、御指摘のような無記名預金の問題と架空名義預金の問題がございます。いずれも、私どもとしますれば何らかの打開をいたさなければならない制度だと思っております。そのうち架空名義預金につきましては実行上でき上がってくる問題でございますので、それにつきましては、預金を受け入れる側と預け入れる側と、それからまたわれわれれの税務官庁側でいろいろな問題を考えなければならないと思っておりますが、無記名預金の問題は、いま御指摘のように終戦後の特異な事情のものにでき上がりましたものでございますし、こういういわば国が認めた制度でございまするから、そういう制度としてそういう存在をなお今後続けていくのがそんなに必要があるのかどうかという観点から、むしろ大蔵省としても考えていかなければならない問題だと私は思っております。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 後藤さん、二十二年ころは日本は税金摘発旋風の激しいころなんです。やみが横行し、やみ成金でもうけるやつがいっぱい出て、そういう連中が——銀行は銀行で、日本の産業資本をいかに再建するかというときなんだ。預金を集めなければとにかく産業復興ができない、そういう時代なんだ、そういう時代の産物なんだ、これは。税金をごまかすやつがそういうときにはみんな無記名や匿名で貯金をして、やみ成金ができたんですよ。だから私は、こういうものを通達で許しておくなんという大蔵省の姿勢自体がおかしい。こんな通達はやめるべきである。よく大臣とも局長とも相談してください。  それから、国税庁長官と交わした四十五年六月六日の覚書も、これは変更する必要がある。文書の中身を十分これは検討して変更する必要がある。変更する必要ありと感じているか感じていないか、国税庁長官代理と銀行局長代理にこれは意見を聞かしてもらいたい。これは中身を変更する必要があると思うか。
  65. 横井正美

    ○横井政府委員 お答え申し上げます。  前回の予算委員会におきまして主税局長から御答弁申し上げましたように、覚書そのものが違法である……(武藤(山)委員「違法とか聞いているんじゃないんだよ。中身を変更する必要があるかどうかを聞いている」と呼ぶ)現在の時点におきまして若干検討すべき問題もあるように存じますので、銀行局とも相談いたしまして検討いたしたいと考えております。
  66. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 いまの先生御指摘の覚書は、当時国税庁と銀行局との間で内部的に打ち合わせをいたしましたものでございまして、源泉選択制度等の導入に伴いまして、この制度の実施を円滑にいたしたいということが本旨でございますが、ただ御指摘のように、中の表現その他、実は内部の資料だったものでございますから、いま読んでみますと必ずしも穏当でないというところもあるように感じます。国税庁の御答弁にもございましたように、国税庁と相談をして検討させていただきたいと存じております。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 最後に。いずれにしても予算委員会でこの問題は大きな問題として議論されて、大臣も、総合課税ができる方向で検討する、こういう答弁をしているわけですから、ひとつ主税局、銀行局、国税局は、この総合課税ができるような支払い調書をきちっと取り集める方法、あるいは一挙にやるのが大変ならば、三年ぐらいの期限を切って、初年度の一年目に裏預金なり匿名を全部正規の自分の名前に書きかえた場合には一切税務署は追求しない、二年目について転換したものについてはその五〇%を、脱税ならば調査するぞというぐらいの何かメリットをつくって、一斉にこれが表へすんなり出せる手だてはどうしたらできるか、そういうものを十分やはり大蔵省は検討すべきじゃないか。そういうひとつ解消していく処方せんを、来年の国会には堂々と胸を張ってここで答弁できるように、一年間検討願いたいと思います。  私は、以上で質問を終わります。
  68. 上村千一郎

    上村委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時三十六分開議
  69. 山本幸雄

    山本幸雄委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林政子君。
  70. 小林政子

    ○小林(政)委員 所得税の納税人員がずっとここのところ一貫して伸びてきておりますし、特にその中でも給与所得者の納税人員の伸びが顕著にずっとここ一貫して続いてきています。たとえば三十年に給与所得者の場合は五百十三万八千人であったものが、それが三十五年には八百八十二万六千人、さらにその五年後の四十年には千四百五十九万九千人、四十五年には二千二百三十九万四千人、引き続きまして四十九年度には二千五百七十四万人、五十年度には二千七百五十一万人という形で、ずっと納税人口が伸びてきているわけですけれども、特に四十九年、五十年のこの伸び状況を見てみますと百七十七万人の増、これは四十九年度若干訂正もされたようですけれども、一応税制改正要綱で見てみますと百七十七万人の増ということになっておりますけれどども、この間の、いわゆる四十九年度、五十年度の雇用者総数ですね、これは経済見通しによる雇用者総数、これを大体どのくらいにごらんになっているのか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  71. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 雇用者数としまして、五十年度には三千六百五十万人見込んでおります。
  72. 小林政子

    ○小林(政)委員 経済見通しのもとで四十九年には雇用者総数三千六百十万人、五十年度には三千六百五十万人、一・一%の伸びで、人員にして四十万人の伸びということになっておりますけれども、この雇用者総数の伸びとそれから給与所得者の納税人員、この伸びとが相当やはりここに食い違いが出てきている。たとえば納税人員の増加は、雇用者総数四十万ということで見てみますと、百七十七万人ですから約四倍というような増加になるわけですけれども、このことはやはり一層大衆課税というものが進行してきている、こういうことを示しているものではないかというふうに考えられます。また一面、なぜこういう事態が起きるのだろうか。年々納税人員が伸びるということは、課税最低限、いわゆる人的控除の引き上げがやはりいかに低いかということを一つには物語っているのではないか、その結果こういう形が出てくるんではないかというふうに思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
  73. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 雇用者総数は、先ほど申しましたように、三千六百十万人から三千六百五十万人にふえるわけでございますが、それに対応しますところの給与所得者のうちの納税者数は四十九年度の見込みの二千七百十四万人から、今回御提案申し上げておる改正法によりますれば二千七百五十一万人になるわけでございますから、その増加は両方ともほぼ四十万人程度でございます。ただ、それは改正後そういうふうになるわけでございまして、これを今回の所得税改正を行わないという場合には、二千八百七万人になるというふうに見込んでおりますから、約九十万人くらい納税者がふえる勘定になるということで今回の改正をお願いいたしておるわけでございます。  その主な理由は、何と申しましても給与の増加がございまして、それがやはり課税最低限のところで非常に数が多うございますから、そこでふえてくる。しかも、そこのところは、午前中もいろいろ御論議がございましたけれどもかなり初任者の給与伸びるというようなところから、納税者数はそういうふうにふえてまいるということでございますけれども、結論として申せば、今回の改正案によりますれば、雇用者総数の伸び給与の納税者の伸びも約四十万人程度の増加にとどまるわけでございます。
  74. 小林政子

    ○小林(政)委員 四十九年度二千七百十四万人を見込んでいたのだけれども、今回の改正を行えば二千七百五十一万人という御説明でしたけれども、やはり私は、五十年度も相当この見込み額よりも納税人員というのは伸びていくのじゃないだろうか、こういうことが当然予想されるわけです。確かに、おっしゃるとおり、今回の改正ということで訂正をした数字で見てみますと、雇用者総数の伸びている人員と給与所得者の納税人員の増加している数というのはほぼとんとんということになるわけですけれども、しかしこれは、恐らくやはり五十年度の納税人員というものは、四十九年度のときにも見通しが狂ってきたと同じように、五十年度も相当狂ってくるんではないか。  このことは、いま局長もおっしゃったとおり、確かに給与所得の初任給といいますか、この層が一つの問題になってきていふということが言えると思います。雇用者総数の増加の数にして約四十万人の納税者、これはほとんど新しく職につくといいますか、こういう人たちが主要な部分を占めているんであろうというふうに思われますけれども、この内容についてはどのような内容になっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  75. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 それは、おっしゃいますように、大体初任給の高さからいいまして、新しく給与所得者になった人で納税者となってふえてくる人が大部分だろうと思います。
  76. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、そこでどうしても、いまのこのように異常に納税人員が伸びるという点から考えても、また、初任給の、新しい中卒あるいは高卒の人たちがもう学校を出てすぐに課税されるというような、こういう状態を本当に解決していくためにも、もっと課税最低限を思い切って上げていくことが必要ではないだろうかというふうに考えています。  そこでお伺いいたしますけれども、いろいろと課税最低限問題は論議が毎年行われるわけでございますけれども、まず、基礎控除というものは一体何なのかということなんです。この点についてお答え願いたいと思います。
  77. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 これも前にも御議論がございましたが、基礎控除と申しますのは、一人の世帯におきましてどれだけ所得税課税されないで済むかということを判断いたします場合の、その一人世帯におきますところの標準的な生計費をもとにしましてそういうものを判断する、そういうことによって所得税のかからない金額として算出したものでございます。
  78. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、基礎控除というのは、いろいろな控除などとあわせて、諸控除としての根幹をなすものですけれども、基礎控除それ自体の機能としては、扶養親族というものを持たない納税者の控除ということでございますけれども、そうすすと基礎控除というのは、独身者の場合の最低の生活費といいますか、そこに中心が置かれているというふうに政府は考えて基礎控除というものを設けているんだと、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  79. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 大体そのような考え方でございます。
  80. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは、一応先に人的控除について一つずつまずお伺いをいたしてしまいたいと思いますけれども、配偶者控除並びに扶養控除というのは何を基準にこの額を決めていられるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  81. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 配偶者控除も、夫婦世帯におきますところの所得税課税がされない限度としまして、一体どれくらいの生計費を考えたらいいのかという点から判断をいたしまして、そうして基礎控除でカバーされない部分を配偶者の控除として考えるのが原則であったわけでございます。そういうことにいたしますと、実は、夫婦世帯におきますところのそういった標準的な生計費が独身世帯におきましてのそういった標準的な生計費を上回る部分といいますのは、理論的には基礎控除として与えられるような金額よりは下回るはずでございます。現に、配偶者控除という制度をとりません前におきましては、夫婦世帯とすれば恐らく配偶者が当たります扶養控除につきまして、そういった金額を想定してやってきたわけでございますけれども、三十六年に配偶者控除というものを設けましたときには、そういう純粋に生計費という観点に加えまして、いわゆる妻の座ということで表現せられておりますようなものも加味いたしまして、基礎控除と同額の控除を与えられたわけでございます。その後、一時点におきましてはやや下回ったときがございますけれども、大体原則的には基礎控除と同額のものを配偶者控除というふうに考えて今日に至っております。  それから、扶養控除でございますけれども、それも配偶者について申しました前段階と同じような考え方で、三人世帯になりました場合、四人世帯になりました場合の生計費の増加部分に対応して所得税のかからない限度というのをふやすために、扶養控除というものでその金額を足していったわけでございます。  ほとんどそういう考え方でずっとやってまいりましたが、昨年に至りまして、余裕もございましたので、扶養控除というものも基礎控除と同額にいたしましたから、かなりそこにおきましては、初めの段階におきますところの純粋の標準的な生計費の増加部分に対応するものという考え方が発展をいたしまして、配偶者控除と同じような観点で、しかも簡便ということも加味いたしまして、基礎控除も配偶者控除も扶養控除も同額になっております。
  82. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま一応基礎控除、配偶者控除、扶養控除というその控除の考え方というものについてはお話を伺ったわけですけれども、それではことし二十四万が二十六万に二万円上げられた、それも配偶者控除も基礎控除も扶養控除も一律に二万を引き上げたということが、具体的に何を基準にして——生計費の何というのですか、増加部分といいますか、そういうもの等も十分加味してとおっしゃいますけれども、それは三万でもよかったし、一万でもよかったし、一体具体的に何を基準に今回の措置がとられたのか、この点について明確にしていただきたいと思います。
  83. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 さらに先ほど御説明しました早い時期におきましては、特にいわゆる標準的な生計費というものもかなり厳密に考えまして、しかもそれに対応する各種の控除額というもので、そういう生計費を課税除外の線にしておったわけでございます。十何年前には、御記憶と思いますけれども、そういうものをテストします意味におきまして、大蔵省におきましても所要されるカロリーを与えるためには一日どういうような献立が必要であるか、そういう献立を実現しますためにはどのくらいの食料費というのが要るのかという、いわゆるマーケットバスケット方式によりまして算定した時期もございます。その後は、幸いにしましてそういうものよりは私どもとすればかなり上回った課税最低限を設定できたと思っております。  しかも、その後におきまして、毎年毎年消費者物価は上昇をしてまいりましたけれども、その消費者物価の上昇に見合って課税最低限はどの程度伸ばし得るか、また伸ばさなければならないかということを検討しながら、ずっとこの十年間やってまいったわけでございます。もちろん消費者物価はずっとその間におきましてもかなり上昇をしましたけれども課税最低限はある一年を除いて、昭和四十八年でございますけれども消費者物価が一一・七伸びたにつきまして夫婦子供二人の給与所得者においての課税最低限の上昇八・一%という年を除きますれば、毎年毎年課税最低限の伸びというのは消費者物価の上昇率を上回ってやってこれたわけでございます。  そういうふうに夫婦子供二人の給与所得者というのを常に頭に置きながらやってまいりまして、そこで昭和四十年代の当初におきましては、金額が違っておりましたから、基礎控除、配偶者控除について幾ばくを設定したらよいか、扶養控除について幾ばくを設定したらよいかということで、毎年の控除額なり課税最低限が考えられたわけでございます。  そういう同じような考え方で、昭和五十年におきましても消費者物価が一一・八%伸びるということでございまするので、そういうものを頭に置きながら課税最低限、それを構成しますところの各種の控除は今度は同額にそれぞれなっておりますから、そういうものをどの程度引き上げればこの消費者物価の上昇にも耐え得るかという観点から、それぞれを二万円引き上げるということにいたした次第でございます。
  84. 小林政子

    ○小林(政)委員 物価上昇率というものも勘案しながらということですけれども、御承知のとおり、四十八年から四十九年にかけて狂乱物価と言われるような状態がずっと続き、現在も三月段階で対前年比一五%で何とか抑えるという目標だということでございますけれども、しかし、それらも勘案していろいろ見てみますと、四十八年の初めから五十年の一月までに消費者物価はすでに四四・五%も上がっているのですね、この二年間で。     〔山本幸雄委員長代理退席、山下(元)委     員長代理着席〕私はそういう点を考えますと、実際にいまのこの課税最低限と言いますか、人的控除というもので本当に生活費の中に食い込まない課税だということが言えるかどうか。先ほど基礎控除については、独身の人の場合、いわゆる扶養家族のいない場合の人的控除的な性格を有するということですし、また配偶者控除、扶養控除についても伺いましたけれども、私は本来やはり生活費には課税するな、生活費に食い込む税金ということはやめるべきだということは、これはもう国民的なコンセンサスと言いますか、大部分の、ほとんどと言っても言い過ぎではないと思いますけれども、国民の総意にまで達しているのではないか、このように考えております。  したがって、本当に基礎控除あるいはまた人的控除と言われるこの控除が生活費という問題を十分保障して、そして若干ゆとりのあるというところにこそ課税最低限という問題が起こってくるのであって、給与所得控除という問題をこの中に加えて、そしてことしは四人家族で給与所得者の課税最低限は百八十三万円だと言うことは、私はこれはなじまないのじゃないかと思うのです。給与所得控除というものは、これは何回も耳にたこができるほど同じことを聞いておりますけれども、必要経費の概算払い的な性格のものであるということが何回もいままで言われておりますね。私はやはり課税最低限と言う以上は、生活費には課税しないというこの限界というものを、給与所得控除を含めた額で計算するのではなくして、これはやはり人的控除、ここにこそ基準を置いて決めていくということが当然正しいのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  85. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま所得税は生活費に食い込むべきでないというふうにおっしゃいましだが、私どもはすべての生活費に所得税は食い込んではならないというふうには考えないわけでございます。現に、その支出しました生活費の高さによりましては、所得税課税最低限を上回るということもあるというふうに考えております。やはりある程度の生活費、私が先ほど申しましたような標準的な生活費というものを設定いたしまして、そういうものについては所得税課税にならないように考えるということでございます。  したがいまして、だんだん生活が向上をし、質がよくなってまいりますれば、恐らくそれに投ぜられておる生活費というものの高さと課税最低限の高さというものは乖離を生じてくる、これもまたやむを得ないというふうに思っております。  それから、給与所得控除というものがいわゆる給与所得者の必要経費であるというふうに言っておられまして、まさに私もその要素を含んでおるということは毎々申し上げたものでございまするが、したがって、いわゆる課税最低限に給与所得控除の金額を含めるのは論理的ではないではないかというお考えには同調しがたいのでございます。  と申しますのは、毎々申し上げておりますように、私は、給与所得控除というのは全部が全部必要経費であるとは思っておりません。個別に計算をいたしましても、それよりはるかに上回った金額が概括的に与えられておるのが給与所得控除でございます。もちろんそれについては給与所得という要素に着目をいたしましてのいろいろな配慮がそこにあるわけでございます。そういう給与所得控除というものに、先ほど来御説明をいたしました基礎控除、配偶者控除、扶養控除というものを組み合わせましたもの、それはまさに家計で申せば消費支出に当たるものでございます。そういうものとの高さで比べるものでございますれば、やはり給与所得控除というものも含めてもよろしいし、またそういうもので収入が幾らであるか、その人は所得税がかからないということを納税者にもわかりやすく理解してもらうという意味からも、従来どおりそういった方式をとっておるわけでございます。
  86. 小林政子

    ○小林(政)委員 所得税はいろいろな種類もございまして、いわゆる給与所得控除というのは給与生活をしている人たちに対して認めている控除でありますし、特殊なそういう立場から、標準的な生計費ですか、人的控除によってカバーしていく、そういうものがいろいろと所得者によって所得税という構造の中でやられている。さまざまな所得の中で、給与所得者だけには給与所得控除というこれを含めて限度を示すということは、私はこれはやはりちょっとおかしいんじゃないか。やはり人的控除というのは、給与所得者だけじゃなくてすべての所得税の場合に、事業所得その他でも一律に認めているわけですから、私はむしろそこに標準生計費的なものの基準をきちっと置いていくべきであって、給与所得控除を含めて課税最低限というものを決めていくということは、何か課税最低限という問題を考える場合には私はむしろなじまないというふうに思います。
  87. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 その問題は結局、給与所得控除というものが一体どういう要素から組み立てられておるかということによるものと思います。私は先ほど来申し上げておりますように、これは単にわれわれが給与を得るために必要な経費だけではない。むしろその要素というのは、算定をいたしますればそんなに大きくはないと思います。むしろ給与所得に伴いますところの担税力の弱さと申しますか、資産性の所得と勤労性の所得との権衡の問題というものも配慮しますし、あるいは源泉徴収の問題も配慮いたしますし、また肉体の減耗というものも配慮いたしますし、そういったものが渾然一体となって認められておるものだと思っております。  よく給与所得者については必要経費が控除されていないと言われておりますが、これは私は誤解であると思いますけれども、むしろそう言っておられる方々は、給与所得控除というのは給与収入に伴いますところの当然の控除であるというふうに思っておられまして、必要経費とは全然関係がないと思っておられるところは誤りでございますけれども、私が申し上げておるそのほかの要素ということについての認識を持っていただければ、恐らく給与所得控除の意義というのも出てくると思いますし、またそういう観点に立てば、課税最低限というものを考えますときの消費支出あるいは生計費というようなものを比較する場合におきましては、やはりこういった給与所得控除というのを入れてもしかるべきものだというふうに思っております。
  88. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまのお話ですと、給与所得者の場合には担税力が弱いとか、あるいはまた他の所得に比べて所得そのものの捕捉が大変きついとか、こういうことなども加味されているんだということですけれども、私は昨年、減税問題がここで取り上げられましたときにも、一体給与所得とは何なんだということで大分この委員会でも論議しました。そういう中で、むしろ要求としては、重役減税などと言われるようなこういう人たちの方から、自分たちの給与所得控除をもっと上げてほしいというような要望が相当強く出たということも新聞などにも報道されていましたけれども、私はむしろそれこそおかしいと思うんですね。ところが、政府はいろいろな理由をつけて青天井ということで、実際には高額所得者になればなるほど給与所得控除が一段と優遇されるというふうな、実際に額の上で減税が及んでいくというようなこういうやり方をおとりになったわけですけれども、私は、本年生計費といいますか、それを基準にして、本当にそこまではもう人間の最低生活というものをきちっと保障もし、その中には税金は食い込まない、こういう問題を決める基準というのは、こういう非常にあいまいな給与所得控除などというものを加算するのではなくて、むしろ人的控除のところで、本当にさらにそれを上回るところに線を引いていくということこそが非常に大切ではないだろうか。それでは人的控除も実際にこの物価高の中で生活が十分維持できるようなところに現在来ているかどうかということも、これも私は重要な問題だと思います。  これは人事院等の、あるいはまたいろいろな学者の人たちなんかも社会保障関係の雑誌とかさまざまなものにもいろいろと書かれておりますし、また総理府の家計調査報告の中にもいろいろ書かれておりますけれども、その中でも、まず東京の十八歳の独身の男子の場合の標準生計費四万四千二百円、これはカロリーが二千八百二十カロリーで、私はこれも非常に低く押えてあると思います。もっともこれは昨年の九月の数字ですけれども、一日当たり食料費が五百九十三円六十八銭というんですから、これはずいぶん低いなというふうに思います。それからこれを一カ月に直しますと一万八千六十円、それから住居・光熱費が八千九百三十円、被服費が二千九百六十円、雑費が一万四千二百五十円、総計四万四千二百円、これが一カ月の東京での十八歳の独身の男子の生活費というふうに言われているわけですけれども、これは一カ月ですから機械的に十二を掛けて一年分を出してみますと、五十三万四百円になるわけです。  そうしますと、政府が今度税制改正によって出しております課税最低限、いわゆる給与所得控除を含めればこれは五十三万を上回る、八十万ということになるわけですけれども、これから五十万を——五十万が妥当かどうかわかりませんけれども、一応定額の五十万を給与所得控除として八十万から引けば残り三十万、こういう数字が出てくるわけです。私は、この問題は、いま独身の男子の例を一つ出しただけですけれども、いまの標準生計費一日の食費が五百九十三円なんというので、三食本当にどうやって食べるのかなと実は思うくらい非常に低い数字で抑えていてすらこのような数字が出てくるという点を見れば、先ほど言われた課税最低限あるいは基礎控除、これが果たしてそれに見合った、十分これで生活を保障するということが言えるのかどうか、この点について明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  89. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 やはりそういう独身者が給与所得者でございますれば八十万円までは所得税はかからぬわけでございます。それで、年間八十万給与収入があるとしましたときに、それでは一体、その八十万円という給与を得るためにどれだけの経費をかけておるかということで、それは確かにおっしゃいますように引かなければならないかもしれませんけれども、実はその五十万円という基礎的な給与所得控除につきまして、そんなにたくさん必要経費がかからないわけでございます。それはむしろ何かと言えば、先ほど来いろいろ申し上げておるような、勤労性の所得に対する配慮として所得税はかけないということにいたしておりますから、やはりそういうものを含めたものとしていまの数字を御比較願いたいのでございます。
  90. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、結果としては、別にお金に色がついているわけじゃございませんから、この八十万円のうち五十万円だけは違う貨幣で使えないというものではありませんので、それは融通しながら生活の中に使っていると思いますけれども、しかし実際に、少しくどいようですけれども、十八歳の独身の男子の場合に、驚くほどの安い食費で計算しても四万四千二百円かかる。だとすれば、これに見合ったいわゆる基礎控除、こういうものこそが必要ではないかということなんです。給与所得控除を入れれば云々ということじゃなくて、むしろこれに見合ったところに線を引く、そういう人的控除、こういうものこそ課税最低限として、標準生計費というものをカバーしていけるだけのところに線を引いていくべきではないだろうか。  これは独身の例ですけれども、四人家族の場合についても私はやはり同じようなことが言えると思うのです。実際に、給与所得者の場合には給与所得控除が入って計算をされておりますので、これは課税最低限が百八十三万になりますけれども、事業者の場合は四人家族で人的控除は百四万ですね。そうしますと、私、年間収入の五分位階級別の収入支出という総理府の数字も調べてみましたが、これは課税最低限をいわゆる標準生計費としてこの五分位の中で一体どの辺を政府は見ているのですか。第一分位、第二分位というふうに五つに分かれておりますけれども、どの程度のところを見ているのですか。
  91. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私どもは、それぞれの家族構成に応じまして課税最低限というのがいろいろ組み立てられるわけでございますので、特に第何分位をカバーするということで考えておりません。ただ、やはり第一分位というようなところであれば、独身の人たちとか若い夫婦世帯とかいうものがおそらく主要な部分を占めておりましょうし、漸次家族構成が多くなるにつれて所得者の年齢も高くなってまいりましょうから、高い分位の方に移るということがございましょうが、私どもとすれば、そういう具体的な家族構成によって課税最低限がおのずと出てくるというふうに考えております。
  92. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、これは第二分位というところでひとつ見てみますと、百三十二万九千八百十六円、これが一応消費支出として出てまいります。そうしますと、四人家族の課税最低限でこれを見ますと、給与所得者の場合には百八十三万ですからこれを上回りますけれども、いわゆる事業所得の白色申告をされている方の場合には百四万ですから、はるかに低いところに課税最低限というものが置かれているということが言えると思います。  私は東京などの生活保護世帯も調べてみました。大体四人家族でどのくらいのところに水準を置いているか。生活保護世帯の場合には、私は常にこのことは早く直さなければいけないというふうに思っておりますけれども、二、三年前までは一般の消費支出の五二%くらいのところの支出しかしていないというふうに言われておりました。きわめて低いところに水準が置かれている、こういう実態でありますけれども、しかし、今回五十年度の予算で、一応二三%ですか二三・五%ですか引き上がりましたけれども、それでも計算で出てまいりますと、これは四人家族で百二十七万六千五百四十四円です。ですから、真っ黒になって働いている四人家族の事業所得者のいわゆる課税最低限といいますか人的控除の百四万の方が、同じ四人家族の生活保護世帯をはるかに下回るというふうな数字が出てまいります。私は、こういうことでもっていいのかどうか。やはりちゃんと生活費非課税の原則を、最低生活費には課税しないという基準を、はっきりと人的控除でもって押さえて決めていくということが当然じゃないだろうか、このように思いますけれども、ひとつこれは政務次官に御答弁をいただきたいと思います。
  93. 森美秀

    ○森(美)政府委員 その配慮は十分にしておるつもりでございますが、今後もその点につきまして検討してみたいと思います。
  94. 小林政子

    ○小林(政)委員 ぜひこの点については十分御検討をいただきたいというふうに思います。  次に、私は、ただいま事業所得者の白色申告者の立場から課税最低限などいろいろお伺いをいたしてまいりましたけれども、専従者控除が現在三十万円から今度四十万円に上がったわけですが、これは何を根拠といいますか基準にして上げたのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  95. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 白色の専従者控除につきましては、いわば私どもの立場からすれば、家計と企業とが分離をいたしておりませんから、どうしてもそこには普通の企業的な給与というのが現出していないというふうに考えざるを得ないのでございます。ただ、そういう場合でありましても、やはり所得税課税の計算上ある程度の配慮をしようというのが白色専従者控除の趣旨でございますが、そうしましたときに、一つの目安としましては、農家の家族労働報酬が一体どういうようなことになっておるのかというのを私どもはいつも考えております。それによりますと、農家の家族一人当たりの年間労働報酬というものを農家経済調査などでいろいろ検討いたしまして、大体四十万円という数字がございますので、今回その数字を基礎にいたしまして、白色専従者の控除を三十万円から四十万円に引き上げようということに御提案申し上げておる次第でございます。
  96. 小林政子

    ○小林(政)委員 根拠というよりも、農家経済の家族一人当たりというお話でございますけれども、私は農家も非常に御苦労されていると思いますが、特に婦人の立場として、婦人の権利といいますか、婦人の地位の問題としても、現在零細な商店あるいはまた小さな下請工場などの自営業者の妻たちが、本当に朝早くから夜遅くまで、それこそ夜九時、十時まで立ち働いている姿を、私も東京の下町で零細な企業が私の地域の周りにもびっしりございますのでいつも見て、そのことを実はしみじみと痛感しているわけなんです。これはもう長時間労働であると同時に、店員としてお客様にももちろん接しますし、また仕入れもやりますし、資金繰りにも飛び歩くというような、まさに家内企業といいますか、こういう中で、その合間を縫って家事の問題や子供の世話をやっている。本当に夫と妻とが共同経営という形を一体になってとっているというような実態を私どもの地域の中でも見ておりますし、非常に痛感しております。しかも所得がこういう零細な業者は非常に低いものですから、非常に先行きの不安などにも悩まされながら、妻が倒れれば休業、夫が倒れれば倒産と言われるような中で、いろいろと苦労しながら辛うじてやっているというのが現状なんです。  しかも、今度の専従者控除四十万円は、一体これは一時間当たりにすると幾らになるとお考えでしょうか。
  97. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 白色専従者控除の金額は、先ほども申しましたように、純粋に企業として支払います給与というような観点ででき上がっていないわけでございます。小林委員のおっしゃいますように、そういう零細なる企業におきましての家族専従者の寄与というものは、確かに大きいかもしれませんが、そこは残念ながら、やはり所得といいますものは、この前の贈与税のときの御論議でも申し上げましたように、何と申しましても企業主の所得になるわけでございます。そこで、企業主の所得といいますものについて所得税をかけます場合に、そういった家族専従者の寄与というものをある程度しんしゃくしようというのがこの制度の趣旨でございます。  そこで、いわば企業と家計とが重複しておる場合につきまして、その企業で得られました所得というものを、いわば家計に持っていきますときに若干のしんしゃくをするというのがこの制度でございます。それを、先ほど御質問にございましたように、本来の給与と同じように扱うべきであるということでございますれば、やはりそこには企業と家計との明確なる区分ということをやっていただかないと、その企業で通常の場合に得られる所得から給与という形態で家計に持ってまいれないわけでございます。それを実現しますためには、明確に企業と家計というものを分離しなければなりません。そのためには、現在ございます青色申告ということでそういう経理を分別していただかないと、いまおっしゃったような一時間当たりの労働に対する報酬と申しますか、あるいは非常に似通った業種においての報酬というものとの比肩はなかなかできないものでございます。
  98. 小林政子

    ○小林(政)委員 企業と家計とが区分がしてないとおっしゃるわけですけれども、ただ、いま自営業者の主婦の労働というものは、その実態からつかんでもっと高く評価してもいいのではないか。その区分云々の問題はさておきましても、実際に朝から晩まで本当に一緒になって仕事もしておりますし、こういう妻の労働というものを本当にもっと高く評価してもいいのではないか。これを一時間当たりで計算してみました。そうしますと、大体百円程度なんです。いまパートでも一時間二百五十円ですよ。ですから、夜遅くまで、本当にあすの準備をしたりしながら九時、十時まで立ち働いているこの労働の実態、業者夫人の労働をどう見ていくのか、確かに区分云々という、税法の上からはそういういろいろな問題があるのかもしれませんけれども、こういう中で働いている奥さんの労働について、その実態を踏まえて税法がどうこの問題を受けとめていったらいいのかということは、私はやはり一つの大きな問題だと思います。  それだったら青色申告にすれば給与として認められます、こういうふうに言われているわけですけれども、ただ、伝票をきちんとそろえ、そして間違いなく申告をしていくという自主申告制度を白色の申告者といえどもとっているわけですし、確かにきちんと記帳をしていない、帳簿をつけていないというようなことだけで、こういう貴重な労働というものが全く高く評価されない、そこに差が出てくるというようなことがこのままで果たしてよいのだろうかどうだろうか。この点については今後非常に大きな社会問題になっていくのではないかというふうに考えています。  いま実際に社会的な実態というのは、私、この間も浅草の税務署へ視察に行きましたけれども、業者の夫人であろうと思いますが、そういう方々が何人か御主人にかわっていろいろと税金の問題で申告に見えておりましたし、あるいはまた、具体的に夫人が家の中での非常にきちょうめんさといいますか、御主人の方はまっ黒になって働くけど、奥さんの方はその上に家の中の問題も取り締まってきちんとやっていくということで、財布なんかみんな奥さんが握っているのですよ。こういう中で、なぜ女というものがこんな差別にも似た、税法の上では全くべっ視されなければならないのか。労働の実態というものがありながら、社会的な実態というものは評価すべき問題だというふうに言われながら、その実態が税法の中には生かされない。私は、このことを今後解決をしていくために、具体的にどのような御努力をされようとしているのか、そういう点も含めてぜひお答えをいただきたいと思います。
  99. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いまおっしゃいましたような実態というものを、私は否定するものではございません。まさにだんなさんと奥さんとが相ともに共同して仕事をやられる、しかも、それは、いわば企業もない、家計もない、もう渾然一体としてやっておられるのがそのおうちの実情であると思います。そこが実は私ども、税金というドライな世界から割り切ってみますと、余りにもウェットなものであるというところに悩みがあるわけでございます。税金の方が一生懸命やっておられる奥さんの労働を十分に評価しないというよりは、むしろだんなさんの方の企業の方で奥さんの労働を十分評価し、それに対する報酬を出されるというふうに、そこのところをドライに割り切られればこの問題は解決するわけでございます。  しかもそれをドライに割り切るためには、そんなに手数は要らないと思います。非常にむずかしい青色申告の制度というものも、最近は簡易な帳簿で認めることもやっておりますし、また現金主義で記帳をしていただいてもいいということですから、むしろ税金の方はかなりウェットな面に進んでおるのではないかと思いますから、渾然一体となっておる企業と家計、奥さんとだんなさんの労働というものを、そこを企業サイドからむしろ割り切っていただければ、おのずとこの問題は解決をいたしますし、その奥さんの労働に対する評価というのもそこで十分行えるのではないかと、むしろ私はそちらの方の御努力を十分やっていただきたいのでございます。
  100. 小林政子

    ○小林(政)委員 労働の実態については局長もお認めでございますけれども給与所得控除の五十万円よりも十万低いのですね、いわゆる専従者控除は。そしてまた、あるいはその家の妻がともかくパートにでも出てしばらく働くという場合には、これはもう七十万円までは配偶者控除の対象になるのですね。なぜこんなに苦労しながら働いている妻の専従者控除については、全く四十万こっきりであって配偶者控除も受けられないのか、そして給与所得控除の最低の五十万円よりも低いのか。こういうところに実際には税制の中で労働の評価という問題、対価という問題がとどまっているという点は、確かに青色、白色の問題ともに私は今後いろいろと論議をしなければならないと思いますけれども、現在こういう点から見ても不合理ではないか。パートで働く人は七十万円までは配偶者控除も受けられる。しかし、業者夫人の場合には四十万円の専従者控除しか受けられない。あるいはまた、給与所得者の給与所得控除の五十万円までもいかない低い額に抑えられている。こういう問題について、本当に労働の実態というものを事実としてお認めになるなら、これらの問題も含めて私は検討をぜひしてほしいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  101. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 給与所得控除の問題、それから配偶者控除と白色専従者などとの関係というような問題も、実は家計と企業という問題に関連いたしておるのでございます。  給与所得控除につきましては、先ほど来私は、それが認められるゆえんは、必要経費というほかに勤労性の所得という点があるということを申し上げましたが、さらに、いま御指摘の点につきましては、家計と企業という点をあわせてお考え願いたいのでございます。  独身者が外に働きに行きまして、給与としてもらうときに五十万円の給与所得控除は最低あるということは、その独身者が住んでおりますいわば家計というものと全然離れた企業から給与を受けるわけでございます。それから、パートとして奥さんが外に働きに出る、その場合にも配偶者控除を受け得るのは、給与収入とすれば二十万円プラス五十万円の七十万円あるではないかと言います場合にも、それは所得者たる御主人と、そこに住んでおる奥さんが守っておる家計、そこにその家計の中における分与、分け与えるということではございませんで、奥さんが外に出ていって所得を得て、ほかの企業から自分の家計に給与という形で持ち帰るという場合に、初めて給与所得控除というものがあるわけでございます。  それと違って、いまの白色の事業者の場合には、私が先ほど申しますように、企業と家計というのが完全に重複、渾然一体となっておるわけでございます。そういう場合に、いわゆる企業計算である御主人の所得から、今度はまた御主人の家計に金を持ってまいりますということを擬制しますためにはそのままでよろしいわけでございます。しかし、そこを四十万円というのは、奥さんの白色専従者という形を借りまして、企業から家計に持ってまいります場合に課税上の配慮として除外をいたすわけでございます。そこに、本来ならば企業と家計とは渾然一体となって分別しがたいものについてそういう配慮をしておるということでありますので、ほかの例として挙げられました、家計と完全に分離しておる企業からパートタイマーとして、あるいは普通の給与所得者として持ってまいります給与についての配慮とは、おのずと違ったものがあってしかるべきものだというふうに考えております。
  102. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、青色申告で給与で落としている事業者もよく知っております。そこの妻の場合も、これはやはり白色申告の小さな事業所の妻と同じに、朝早くから夜遅くまで同じような状態で働きながら、その合い間を見て子供の世話とかあるいは買い物とか家計の問題を実際にはやっている、本当に私、大変だなというふうに思っておりますけれども、そういう青、白ということじゃなく、小さな事業所の場合の実態というものは、そんなに大きな違いということじゃなくて、そこで働いている家内専従者あるいは妻の労働の状態というのは、帳面を記帳しているからこれは明らかに家計と企業とが区分されている、そういうたてまえをとっていますけれども、白色も青色も、大変なものだということを強調したいのですよね。  ですから、そういう点から考えますと、やはり社会的な実態から見ても、当然妻の労働に対する対価という問題は、今後税制の上でもこれを正当に評価していく、対価として認めていくという方向をやはりとっていくべきであろうというふうに私は思いますし、当面三十万円を四十万円にされたわけですから、これをさらに今後実態に即して引き上げていくべきではないかというふうに考えますけれども、この点についていかがでしょうか。
  103. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、そういう奥さんの労働に対する評価は、むしろそこの企業におきますところでまず正確にやっていただくというのが、もう解決の唯一の道であろうと思いますが、どうしても青色をおとりいただけない場合の白色の専従者の問題につきましては、もちろん今後とも、今日の白色専従の金額に固執するわけではございません。いろいろな観点から判断をいたさなければなりません。今回御提案申し上げております四十万円も、実は一昨年に比べれば倍額に上げるわけでございますし、数年前に比べれば二倍以上に上げるということでございますので、ここ二、三年においてはかなりの引き上げになっておると思います。しかし、しょせんこれは擬制の擬制ということにしかすぎませんので、やはり青色申告という道をとっていただければ、これも私は一つの擬制にとどまると思いますけれども、税金の上ではかなり割り切った評価ができるというふうに思っております。
  104. 小林政子

    ○小林(政)委員 もう一点だけ質問して終わりたいと思います。  医療費控除の問題について、一点お伺いをいたしたいと思いますが、今回の改正は、現行の百万円を二百万円に最高限度額を引き上げて、足切り限度の基準を現行の十万から五万に引き下げたわけですから、したがって控除の枠という点は非常に広がって、これはまあよいことだというふうに思っておりますけれども、やはりいま低所得の人たちの場合、いわゆる所得百万ぐらいで家族二人ないし世帯三人と言われるような人たちの場合には、今回のこの恩典といいますか、改善といますか、こういうものが何のメリットも実際にはないわけなんです。  私は、本当にこの医療費に対して、税制の中でこれを見ていくということは、一つの福祉の面も含まれているんだろうというふうに思いますけれども、たとえば所得三百万の人が二十万円の医療費がかかった場合などは、いままでは五%の十五万円か十万円の低い方、つまり十万を差し引いて、そのあと残った十万を控除してもらうことができたわけですね。ところが、百万以下の人たちにはそういうメリットというのは一つもないのですね、今後改正されても。私はむしろ、医者に払ってしまって、実際には自分の所得でないところに所得として課税されるということも、地域の人たちはいろいろと問題にもされているようですけれども、この問題については、低額の所得の人たちにもこれに見合ったメリットが当然与えられるような措置というものが何らかの形で講じられないのかどうか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  105. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 医療費控除であらゆる医療費についてカバーをするかということは、本来いわゆる課税最低限でもってかなりカバーしている部分がございまするので、異常な医療費の出費がありましたときに、所得減殺要素としてこれを勘案しようというのが今日の医療費控除の制度でございます。先ほど来いろいろ申し上げておりますように、私どもの見方からすれば、今日かなり課税最低限というのが上がってきておりますから、それでもって賄われる消費支出、その中に含まれる医療費の支出というものもかなりあるわけでございます。通常支払われる金額というものは、やはりこの中で賄っていただくというのが原則でございます。  総理府の家計調査によりましても、大体年間、いわゆる保健医療費としては三万五千円から四万七千円ぐらいというのが今日の金額でございますので、まあ大体このぐらいの金額、しかもこの中には、ちょっとかぜを引いた、ちょっとおなかをこわしたというときに薬屋で薬を買う代金も入っておりますから、実際にこの医療費控除で見るような金額というのは大体今日の課税最低限で賄われておりますので、やはり足切りの限度額を引き下げるといたしましても、私どもが御提案申し上げておるような五万円という程度でお考えいただければ、まずまずこの医療費控除制度としての役割りは果たし得るのではないかというふうに考えて、五%または五万円のいずれか低い金額という足切り限度で御審議を願っておるわけでございます。
  106. 小林政子

    ○小林(政)委員 要望だけしておきます。  私は、せっかくこういうふうに控除枠を広げて、本当に病気になった場合の不幸な状態を解決されていくということはよかったと思いますけれども、むしろ三万円あるいは二万五千円というような医療費にも非常に負担を重く感ずるような所得の低い人たちにもこのような恩典が平等に行き渡るような、たとえば五万円という限度額をもっと下げて、一万円なり二万円にというような形をとるなりして、少所得の人たちに対する配慮という問題を今後ひとつ十分検討してもらいたいというふうに思います。  以上で質問を終わりたいと思います。
  107. 上村千一郎

    上村委員長 広沢直樹君。
  108. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は若干の時間をいただきまして、所得税法の一部改正について御質問申し上げたいと思います。  そこで、五十年度の税制改正の基本的な考え方について、政務次官にまず最初にお尋ねいたしたいと思いますが、特に今日の情勢というのは、いわゆるインフレとかあるいは不況、こういうような状況にありまして、きわめて厳しい社会経済情勢下にあるわけでありますが、国民生活もそういう関係の影響を受けて非常に困窮いたしておるわけであります。こういう現状のもとで政府はどういう基本的な考え方で今回の税制改正に取り組んでいるのか、こういうことをまず基本的にお尋ねしたいわけであります。  先般、大臣から所得税の一部改正に対する提案理由の説明がありました。この内容並びにその提出された法案を見てみますと、いままでと同じ所要の一部改正をやっているだけ、こういう程度のものなんですね。ですから、やはり今日の社会情勢で求められている不公正の是正だとか、あるいは不平等を是正していくだとか、そういった基本的な社会的要請にこたえられるような税制改正というものがこの五十年度の税制改正の基本的な考え方になければならない。確かに、福祉政策的な見地からいままでとは違った、控除の金額を倍にしたとかという配慮は少しはなされているかなという感じはしないでもないのでありますけれども、しかしながら、今日のいわゆる経済の変動に基づいてこれからのひずみ是正をしていかなければならぬ、それに対する税制の大きな役割りというものがあるわけでありますから、そういう見地に立って基本的な考え方を変えていかなければならぬのじゃないか。その点については、今回の改正の中では余り明確に出ていないように思うわけでありますが、その点の基本的な考え方をまず次官にお尋ねしておきたいと思います。
  109. 森美秀

    ○森(美)政府委員 おっしゃるとおり、ことしは、いろいろな意味で大変むずかしい問題が多うございます。ことに第一の問題は、物価の抑制という大きな課題があり、また四十九年度の大幅減税の平年度化という問題、こういった大きな二つの柱を結び合わせまして、今回は大幅な減税ではなしにやっていこうというのが基本的な姿勢でございます。  なお、後段のお尋ねの社会的不公正の問題でございますが、これはたとえば富裕税の問題などにしましても、財産の把握の方法その他について研究はしておりますが、いまだに確たる成果も上がっていない状態でございますが、これも慎重に検討していかなければならない課題だと考えておるわけでございます。
  110. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、今後の税制改正の基本的な方向といたしまして、いままでのような高度経済成長に基づいて、所得税におきましては超累進税率をとっております関係上、所得がふえていけばいわゆる税負担がふえていく、したがって税収がふえる、こういう形になるわけでありますね。しかしながら、今日、経済の転換ということが言われておる。その中で、先ほども申し上げましたとおり、不公平の是正あるいは今日の不平等をいかにして是正していくか、こういう社会的要請にこたえていくためには、やはりこれからはストックの面にウエートを置いた税制のあり方にしていかなければならないのではないか。  後に触れていきますけれども課税最低限の問題にしましても、その他の税の軽減にしましても、いずれにしましてもそういう方向に基本的な概念を置いてこれからの税制改正は持っていかなければいかぬのじゃないか、そういうふうに思うわけです。特に恵まれない立場にある者あるいは福祉、そういった面にウエートを置いていかなければならないということが今日の社会的要請でありますから、そういう意味から考えても、所得間の格差も大きく開いておりますから、もちろんフローの面の是正ということもこれはないがしろにしてはいけない問題でありますが、それに加えてやはりストック面を今後はどう考えていくか、特に低所得層におけるそういう面を配慮した税制改正というものが求められるのではないかと思うのですが、その点について当局のお考えを伺いたいと思います。
  111. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 確かにおっしゃいますように、税制といいますものは公平を念といたさなければなりません。そのためには担税力に即応した課税を行わなければなりませんから、担税力ということになりますれば、所得と財産という税源を十分把握しまして、これに沿った課税をしなければならないことは御指摘のとおりでございます。  それで、いわば今日の税制がそういう観点からいろいろ税目を持っておりますけれども、御指摘のように、ストックの面についての課税というのが、いわばフローの課税ということに比べれば、ウエートはわが国においてもまたよその国においてもかなり少ないことは確かでございます。特に、今日にような事態になれば、ストック面に一層の着眼をしなければならないということも御指摘のとおりでございます。  ただ今日、なぜそれでは各国ともストックに対する課税というものについてむずかしさを感じているのだろうかということは、今後の私ども研究課題でございますが、やはりフローという段階になりますれば、何らかの意味において動的な要素がございますので、それを契機としましての課税が端的に行いやすいということはあると思います。それを端的に所得の動きでとらえますのか、あるいは収入という動きでとらえますのか、あるいは消費という面でとらえますのか、それは別といたしましても、何らかの動きがあることは確かでございます。  それからまた、今日われわれがやっております財産に対する課税としての相続税におきましても、相続というやはりある種の動きをとらえて課税をいたしております。そういうことから言いますと、一般的にストックに対する課税というのはいわば静的なものでございますので、かなり体制を整えませんと、本来余り動きのない静かな課税対象といいますものを的確に掘り起こして、そうして十分これを公平に把握をし、課税をするというところに、私はなお今後非常にわれわれが打開しなければならない問題を持っておるのではないかというふうに思います。それが今日でもなかなか純然たる静的なストックに対する課税ということに多くを頼り得ない一つの理由ではないかと思いますけれども、これはなおわれわれの今後の重要な研究課題でございます。
  112. 広沢直樹

    ○広沢委員 将来の研究課題だとこうおっしゃるわけでありますが、確かに、今日までのように高度経済成長で、経済成長が実質的にも一〇%を超えている、したがって、それぞれの所得も相当な伸びを示してきた、こういうパターンでやってきたのを、これからは安定経済成長に変えていかなければいけない。そうなりますと、果たして、物価等の関係もありますけれども、今後いままでのような大きな所得伸びが考えられるだろうか。いわゆる財政的に考えても、そういう伸びを基本として財政が組まれてきておりますから、今後財政運営の上におきましても、これは考えていかなければならない問題でありますし、さらに今日の不平等というか、不公正というか、不公平といいますか、そういった開きの中に、資産所得者と勤労所得者との開きといったものが出てきているといういろいろな要素から考えてまいりますと、いままではいわゆる給与所得者の所得税税収伸びがぐんぐん伸びてきているわけですが、それに求められるかどうかということになると、なかなかいままでのとおりにはいかないということになりますね。  そうなってまいりますと、後で触れるわけでありますけれども、今後の給与所得者のいわゆる税の軽減の問題についても、過去に考えられたようにはいかなくなってくるのではなかろうか。そういうふうに、あらゆる面から考えてここに大きくパターンを変えていかなければならぬということになりますと、一方では、いわゆる給与所得者の減税の要求は、現実におきましても非常に強いわけであります。また、将来においてもこれは相当強いものがあろうかと思うのです。それはあながち現実に重い云々というよりも、不公正の問題もあるかもしれない、あるいはやはりストックの問題を考えた上で重税感というものがあるとも考えられる。いずれにしても給与所得者の減税に対する要望というものはまだ強いわけであります。それにやはり今後こたえていかなければならない。  これまでの税調答申や政府のあり方を見ておりましても、課税最低限も相当上がり、免税点も上がってきているけれども、今日のそういう所得伸びに比例して、累進構造でありますから、当然税負担も大きくなってくるから、やはり毎年毎年減税していかなければならぬという方向で参っておりますし、昨年の税調答申を見ましても、大幅にこれは軽減すべきであるという答申が出ているわけですね。それに応じて昨年二兆円減税ということで大幅におやりになったんじゃないかと思いますけれども、では自後のことについては今後どうなるのかという問題になってまいりますと、先ほど言ったような経済情勢から考えていくと、はなはだこれは将来にとっては疑問が出てくるのじゃないかと思うのです。  そういう観点から、やはりストックに対する課税のあり方というものを今後考えていかなければならなくなるんじゃないか。先ほど次官も申されておりましたように、富裕税という考え方、それと、低所得の方あるいはストックの少ない方についてはストックができるような、あるいは貯蓄がどんどんできていくようなそういう面を配慮した税制のあり方、課税最低限にしましても、税の軽減にしましても、それができる方向に持っていってあげるというようなやり方に持っていかなければならぬと思うのですが、その点についてもう一度御見解を承りたいと思います。
  113. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 わが国が毎年毎年のGNPのかなりの上昇にもかかわりませず、まだまだストック面で欧米先進国に劣っておるということは各方面で言われておるとおりでございます。これをどういうふうにストックをふやすようにしていくのかということにつきましては、もちろん可処分所得がふえればおのずとストックがふえてまいるわけでございますけれども、それではどんどん減税ということによってこの可処分所得をふやし得るのか、あるいは今日までのように、毎年毎年の給与伸びによってこれをふやしていけるのかということになりますれば、おのずと今後の経済成長をどの程度に見るかということにかかってまいるわけでございますので、私は一概に、これまでのような所得税減税ということをやりながら、なお増加いたします公経済を賄っていけるとは思えないのでございまして、今後の重要な転換問題ではないかというふうに思っております。ましてや、さらに今後いわゆる福祉のための財源というのがどの程度、どのようなスピードでふえていくのかどうかという点をあわせて考えますれば、かなり財政面におきますところのこうした問題についての検討がなされなければならないと思います。  そういった場合に、一つには、やはり税という問題が大きくクローズアップするわけでありますし、あるいはまた一方、保険負担というものが俎上に上がってまいるわけでございます。そのときに、税として一体それでは今後どういうふうなことを考えるのかということになりますれば、一つには、まず今日までのような減税が常時行われなければ負担が常に重いというふうに感じるのか、そういうことを公経済に注ぎ込んで福祉をふやすというのがいいのかという点の判断を、これは納税者としてまずやってもらわなければならないと思います。  そうしましたときにも、その次には、今日の税制それぞれについてまだまだいわば詰めていかなければならない問題を多々持っておると思います。たとえば、所得税制におきましてもかなり累進構造は持っておりますが、かねがね御指摘のような点で、総合課税の実が上がっていないという点もございます。こういう点をだんだんそういう方向に持ってまいる必要があるのではないか。その場合に、もちろん資産性の所得と勤労性の所得とのバランスというものをどういうふうに考えていったらいいのかということで、先ほどの広沢委員の御指摘の点もここでひとつ考えてみなければならないと思います。  それからその次には、先ほど申されました、端的にストックに対するあるいは財産に対する課税というもののシェアをもう少しふやし得るかどうかという問題、これもいろいろ申し上げましたようなむずかしさがございますが、一つ研究課題でございましょう。  それから三番目には、所得とかあるいは財産とかというものについて直接に課税をいたします今日の税目のほかに、やはり間接的にそういった担税力に合ったような税目、いわゆる間接税でございますけれども、そういったものについてなお研究する余地がないのかという点についての検討でございます。  こういった三つのことを研究しながら、しかもそれによって賄われる歳出というのが、一体国民全体からそういう負担を冒してまであえて進めるのがいいのかどうかという判断も交えながら、総合的に検討を加えていくのが今日の課題であろうと思います。
  114. 広沢直樹

    ○広沢委員 その判断につきましては、これはやはり大蔵大臣並びにまた総理に聞いてまいりたいと思いますので、具体的な問題に入っていきたいと思います。  そこで、所得税負担の現状といいますか、それと基本的な方向からまず伺っておきたいのでありますが、いずれにしましても、経済がある程度の成長を続けていく、そういうことが前提に立って所得税累進構造を通じてかなりの自然増収が出てくるだろう、こういうことを予測して今日の所得税のあり方というのは考えられておるわけであります。そこで、その累進構造によって相当負担が重くなるということですから、ある程度それを是正するためには減税をやっていかなければいけない。これが今日までの考え方です。税調におきましても、今日までの答申は、そういう意味での所得減税ということをうたっているわけであります。  そこで、四十六年の税調の長期答申によりますと、わが国の個人所得が毎年今後一三・五%程度——ということは、この四十六年は大体個人所得伸びが前年に比べて一三・五%程度であったわけです——増加するものとして、その場合の所得税収を個人所得弾性値を用いて推計して、そして自然増収の三分の一相当を仮に減税するとした場合においても、四年間、ということは、四十六年から四年間でありますから昭和五十年ですね、ことし大体〇・七%の上昇となる結果になる。ということは、その当時の負担割合が、いろいろな計算の方法がありますけれども、この税調の推計によりますと四・六%であったわけです。所得税税負担割合ですね。それがこの推計によりますと、五十年の試算では五・二%になるだろう。これはあくまでも自然増収の三分の一相当を減税に充てるとした場合にこうなっていくだろう、こういう推計になっているわけであります。  そこで、この個人所得に対する所得税負担率をずっと過去にさかのぼって見てまいりますと、戦前は非常に低いわけでありますから戦前の話は別として、戦後におきましても、大体三十年代の二%ないし三%程度から、四十七年あたりから大体五%、四十九年が四・八六%、五十年度予想では四・九二ですから、大体五%というふうにふえてきているわけであります。この点の基本的な考え方はどういうふうに考えておられるのか。大体五%程度というものをその負担率として考えていくものなのか、あるいはもっとふえるべきだと考えているのか、あるいは三十年代のように三%程度の負担にとどめ、そして、それからふえていくものについては減税を図っていこうという考え方に立つのか、こういった点をひとつ御説明いただきたいと思うのであります。
  115. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま御質問の点は、私はやはり歳出と非常に関連をいたしておる問題だと思います。今日、改定作業に入っておると言われております経済社会基本計画におきましても、たとえば五十二年度までに租税及び税外負担において三ポイントふやすというようなことが言われておりましたが、やはりそれの基本になります財政需要というようなものと関連をいたす必要があるわけでございます。  ただ、そういうことを一応別にいたしまして、それでは仮に先ほど御指摘のような自然増収の三分の一を今後とも減税に回していくということが、ある時代においての一応の機能的な数字としては出るかもしれませんけれども、今後、それでは三分の一というのは適当なのかどうかという点は、やはりその時点時点において判断をしなければならないと思います。  それから一方、やはりだんだん所得水準というのは上がってまいりましたから、いまおっしゃいましたように、たとえば三十年代から四十年代にかけましての個人所得の負担率三%台というものは漸次高まってまいるということは、諸外国の同じものを比べてみましても漸増していってもしかるべきであるというふうに思います。それは、先ほど申しましたような財政の長期的な見通し、一体それがどういうふうなものにどういうふうなスピードで進んでいくかということと、それから所得税が果たす役割りが、一体その場合にどの程度占めなければならないかということでこの負担率というのは判断をされるものというふうに思っております。
  116. 広沢直樹

    ○広沢委員 おっしゃることはわからぬでもありませんが、自然増収に対する減税額の割合の状況を見ますと、いま申された自然増収の大体三分の一相当を仮に減税に充てるとして、いわゆる累進構造をとっておりますから、なだらかに負担が増加していくということで、大体、今度発展計画は直しているのでしょうけれども、いままでの発展計画の考え方によると、ああいう高度経済成長の中でも三%負担がアップするだろう、そういうなだらかな考え方であったわけです。ですから、今日のこの自然増収に対する減税額の割合を見ますと、四十一年あたりには相当大きな減税をやっているわけですけれども、平年度で見ましても、四十九年度も二兆円減税をやったと言いますけれども、自然増収の三分の一足らずなんですね。それから四十八年も二七・五%ですから、三分の一足らず、こういうような状況で、五十年は結局一一・五%ということで、これは非常に低いわけですね。  そうすると、こういうどかっと一遍にあったから五十年はこれでいいのだという考え方になるのかもしれませんが、少なくとも五十一年、五十二年となっていきますと、これは経済の成長の度合いにもよります、あるいは所得伸びにもよりますけれども、一三・六%の伸びで仮定してこの税調の試算はなされているわけでありますが、実際の伸びはそんな小さいものではなくて、もっと伸びてきていますね。来年の五十一年にしても、そんな所得伸びが低いとは考えられないということになりますと、こういう基本的な考え方を見ますと、やはり所得税減税というものは今後も相当図っていかなければならぬじゃないか、そうでなければ、いま言うようななだらかというよりも、累進構造の関係でやはり負担が大きくかかってくることになるのではないか、こういうふうに考えられるのですが、その点をどういうふうに考えられますか。
  117. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 確かに個人所得が今日までのような状態に近い伸びを示しますれば、所得税累進構造からしましてかなり高い弾性値をもって伸びていくと思います。その場合には、もちろんかなり程度減税は可能だと思っております。ただ、その場合にも、一体、総体的に財政需要がどうなるのか、他の税目の伸びが一体どういうふうになるのかという点もあわせて考えなければならないと思いますけれどもかなり高いそういう個人所得の増加が期待できる場合には、それ相応に累進構造というものを緩和し得る余地は出てくると思っております。
  118. 広沢直樹

    ○広沢委員 そういうことで、個別な問題はこれから触れていきますけれども、総体的には、やはり所得税累進構造をとっている以上は、所得伸びに応じて所得弾性値は、所得が一伸びれば弾性値は一・五、GNPに対しては二ぐらいですか、倍ぐらいになりますね、そういうようなことでありますから、相当な負担増になってくるということは事実なんですよ。だから、所得がふえればそれだけの納税の負担がふえてくるというのは、そういう累進構造の制度をとっているのですから当然でありますけれども、それが余り急激になっていくということ自体については、先ほど申し上げたような重税感とかいろいろな問題がありますし、税調におきましてもあるいは当局におきましても、そういうことがあるので毎年所得税減税というものは考えましょう、もちろん物価の問題もあります、ということで考えましょうということでありますから、そういう総体的な伸びの中で、やっぱりこの所得税減税というものは考えていかなければならないのじゃないかと思うわけです。  そういうことで、基本的な発展計画のなにが示されていないから、これから改定しなければならないわけですから、余りこの問題ばかりにこだわっているわけにいきませんけれども、少なくともやはりこういう基本的な線を引いた上で負担の増加になっていくのを是正していく、そういう面からの減税も考えていくということでなければならないと思うわけです。  その次に、課税最低限の問題に触れておきたいわけでありますけれども、この問題についてはいろいろ論議がなされております。そこで、税調の答申を前からずっといろいろ読んでみますと、大体具体的に課税最低限の機能を四つの点を挙げて明確にしている。これは四十一年の税制改正の答申の中に明確に出ています。  まずその一つは、そのときどきの国民生活水準から見て、通常必要とされる生計費に対応する部分課税外に置くこと。最低生活という言い方もあるでしょうが、だんだんそうではなくて、多少貯蓄ができる、そういう限度まで生計費というものは考えていくべきである。それは当然のことで、そういうことでありますから、通常必要とされる生計費に対する部分課税外に置く。  それから第二番目には、納税者数を税務行政上処理可能な程度以内に保つ。これが第二番目に考えられておることです。  第三番目には、税率とともに所得税累進構造を形成し、所得の低い階層の累進度を大きく緩和する。こういう意味で免税点が上がっていくわけですね。  それから四番目には、家族の構成内容、家族数等に応じて税負担の差等を設け、そして応能負担に適合せしめる。こういうふうになっています。  そこで、税調の長期答申の審査の過程とそれから論議の中で見てみますと、まず第二番目の納税者数を税務行政上処理可能な程度以内に保つ。そこで所得税の納税人員を有業人口の五割程度に縮減することを目途に課税最低限の引き上げをはかるべきではないか、こう言っているのです。それはいま現状はどうなっているか、ひとつ御説明いただきたいですね。
  119. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 有業人口に対する納税者の割合でございますが、四十八年におきましては六四・五%でありまして、四十九年の見込みでは六三・二%でございまして、五十年におきましては六三・四%程度になるものというふうに見込んでおります。
  120. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは所得全部ですが、給与所得者についてはもっと率が高くなっていると思いますが、給与所得者の比率でひとつ……。
  121. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 ただいまの給与所得者について申し上げますと、四十八年におきましては給与所得者のうちの納税者数の割合は七八・〇%、これが四十九年におきましては七五・二%、五十年におきましては七五・四%と見込んでおります。
  122. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いまこの税調の論議の中でも、この答申の中に盛られておりますけれども、四十六年以降の長期答申というのはまだ出ていないわけですね、単年度は検討されておりますけれども。そこで、この問題に触れたところというのは、その後に余りないわけです。この税調の長期答申の中に、いま申し上げましたように、課税最低限を考える場合において、いわゆる有業人口の五十%程度に縮減することを目途にした方がいいんじゃないか、こう出ているわけなんですが、これ全体を見ましても、いま局長が答弁なさったように、六〇%台なんです。それから、給与所得者のみについては七五・六%台、こういうことになっているわけでありますけれども、この点について当局としてはどの辺にウエートを置いて考えているのか。この税調が申しているように、五割程度に縮減する方向なのかあるいは五十年度は所得者全部の合計で考えたら六三・四%ですか、大体その辺を考えているのか、その点についてはいかがでしょうか。
  123. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま御指摘のように、有業者の中で納税者が一体どの程度の割合になっているかということを申し上げますと、先ほど示しましたように、わが国では六三・四%でございます。これをアメリカの七三・一%とかイギリスの七九・七%というふうに比較をしてまいりますと、いわゆる有業者の中での納税者の割合というのは、私はかなり低いのではないかというふうに考えております。ただ、給与所得者について見ますと、先ほどお答え申し上げましたように、大体七五%前後でございますので、これをたとえばアメリカの七五%から八〇%ぐらいあるいはイギリスの八〇%程度というものと比べてまいりますと、この方は直接税にかなり依存をしている国としましては、まずまず相当の水準であると思っております。  そこで、先ほど御指摘のように、有業人口の中の納税者の割合を五〇%程度に下げるということは、今日の問題としてはやや再検討を要するのではないかというふうに私は思っております。たとえばフランスにおきましては、有業人口の中での納税者割合は五〇%をちょっと超えるか、割った程度でございますが、これは申し上げるまでもなくかなり間接税に依存をしておる国柄でございますから、わが国税制を今日のような体系のままにしておきまして、有業人口の五割程度を納税者とすることはやや問題があるのではないかというふうに思っております。  しかし、給与所得に関します限りはかなりの線にまいっておりますから、この程度の目安を頭に置きながら、しかも物価動向等をしんしゃくしながら課税最低限の問題を今後考えていくのが今日としては妥当ではないかというふうに思います。
  124. 広沢直樹

    ○広沢委員 この税調の答申も、当然、この当時から考えてみますと、直接税の比率というのは非常に高かったわけですね。決して間接税の比率が高いわけじゃないわけですね。四十六年といいますと、大体六、四か七、三の割合になってきておるはずなんです。その中でやはり課税最低限を考える場合に、納税人員を有業人口の五割程度に縮減するという方向を論議されておるということでありますから、それは一応考えてみるべきじゃないだろうかと思うのです。  それからもう一つは、今後、それでは直接税をいまのような形の中心に置いて物を考えていくということになれば、いま局長がおっしゃったような、現在のような状況に基準を置いて物を考えるということなのか、それともある程度、これはだんだんだんだん税制の改革に基づいて下げていく考え方であるのか。これが基準なのか、あるいはそれからまだ下げる考えであるのか、この点だけをここでは明確にしておいていただきたいのです。
  125. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 今日の財政制度、税制も含めましてそのままの形で推移いたしますれば、いまのおおよそ七五対二五程度の直接税、間接税の比率というのは、やはり直接税にウエートをかけながらそういうシフトが行われていくのではないかというふうに思われます。ただ、問題は、そういう財政制度を今後そのままにしてまいるのが可能であるのかどうか。今日予定されておりますような財政硬直化の打開という問題も歳出面でいろいろ行われましょうし、またそれに対応しての歳入面の検討というものも行われるわけでございますが、相当財政規模がふえるといいます場合に、一体今日の七五%程度を占めておる直接税というもので、ますますそのウエートを高めながら、それを賄うことができるのかというふうになりますれば、やはりその段階になって一度見直しをする必要があるのではないか。大きく財政需要を要します場合には、先ほど来御議論のございましたような、所得税のなだらかな上昇というものを前提にいたしますれば、なかなかそんなに多くの財源を期待するわけにもまいりません。それからまた、経済の安定成長ということを前提にいたしますれば、法人企業からの課税というものもそんなに急激に伸びるわけにはまいりません。そうしましたときに、一体増加する歳出というものをどういうことで賄わなければならないのかという点に立ち至りますれば、やはり私は、間接税という問題については、どうしても一度検討してみなければならない時期に逢着するのではないかというふうに思っております。
  126. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで次には、課税最低限のいわゆる生計費の問題でありますけれども、これは先ほどからも議論がありましたけれども、この答申の中には、課税最低限は最低生活費ではなく標準的な生計費に見合った水準に定めるべしとする考え方が強まっているということで、いわゆるその長期答申の指摘した内容というのは「貯蓄のためにゆとりのある合理的な」課税最低限の水準、こういうことになってきているわけであります。  そこで、そうなっていきますと、今回、課税最低限が百八十三万円になっていますね。まあ四十九年度は大幅にこれが上がってきているわけでありますが、四十九年度のあのような狂乱的な物価の上昇、そういうような消費支出の増大というようなことから考えていきますと、やはりその百八十三万円の課税最低限というものが果たして適切であるかどうかということは一つの問題であろうかと思うのです。当局はすぐ国際比較をお出しになりますけれども、これはまあ単純にそんなものを比べてみたって何の役にも立たないのでありまして、当然、やはりわが国のいろいろな情勢の中から判断して、その税負担のあり方というものは割り出して考えるべきである。したがって、百八十三万円というのが適正だと考えているのか、あるいは将来、先ほどからいろいろ議論してきましたけれども、まだそういうことで是正をしていかなきゃならぬというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点はひとつどういうふうなお考えでしょうか。
  127. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 これもいま御指摘のように、課税最低限の問題は、かなり前の時期におきますぎりぎりの、いわゆる最低生活費論争のときに比べれば相当ゆとりのある課税最低限を現出し、またそれを伸ばし得たと思っております。したがいまして、今日の百八十三万円という課税最低限は、私はそんなに低いものではない。今日、私どもの手元にございます家計調査から見ましても、私どもは、全部を課税最低限でカバーする必要はないというふうに思っておりますが、かなり程度カバーいたしております点からも、この水準というのは、そんなにすぐさま直さなければならないものとは考えておりません。
  128. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、これはちょっと私、資料が古いのでありますけれども、四十七年の総理府の家計調査、これから推計してお伺いしたいと思うのですが、標準家庭の消費支出はそれによりますと百十九万円、その当時の課税最低限は百三万円だったわけです。しかし、標準の支出の月平均の内訳を見ますと、これは総理府の家計調査の統計ですよ、食費が大体三万円。それで、これは標準家庭ですから、一人に直しますと、この当時で言えば、一人一食当たり八十三円になるのです。それから、住居費の考え方はどうなっておるかと見てみますと、その当時で公団住宅に入っている住宅家賃が三万円程度になっているときに、内容はやはり一万一千円、こういうようになっています。  そういう内容で割り出されてきて、いま言う消費支出か百十九万円、こうなっているのですが、その中に貯金とか保険とかあるいは月賦の支払いとか、そういったものは含まれていないのです。こういうものを推計して全部合わせますと、四十七年当時でもすでに百七十万円近くになるのです。それから四十八年、そして四十九年のあの異常な物価の上昇と、こう考えてまいりますと、当然、これはいまもう二百万円をはるかに超えているわけです。まあそれは各組合とかあるいは方々で、いわゆる標準的な消費支出を計算しているのを見てみますと、大体もう二百七、八十万円のところまで、ある程度貯金とかあるいは保険とかいうものを加えて、この税調が言っております、いわゆる貯蓄のためにゆとりのある合理的な課税最低限の水準ということを常識的に判断しますと、そういうことになるわけであります。したがって、わが党も今回、課税最低限はその実勢に合わせて、いわゆる二百八十万円にしろという要求を出しているわけであります。  したがって、これは毎年毎年ただ上げていけばいいというものではないと思うのですけれども、いまこういう税の中で論議されている課税最低限のあり方、専門家論議した中においても、最低というよりも、今日の情勢というのはいわゆるあの戦後の生計費に食い込んでいるというような時代と違ってきまして、憲法二十五条に言う「健康で文化的な最低限度の生活を營む權利」というものを、厳格に言うかどうかは別問題としても、この税調答申の中でも、多少ゆとりのある、貯蓄もできる、こういう面を考えていくことになっているわけです。そこで、私が当初申し上げたように、ある程度そういう面で金融資産も持てるという体制までは標準的に考えてあげる、そこまではやはり課税対象外に置くという考え方で今後は考えていかなければならないんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。  そうすると、当局の議論といつもすれ違うのは、財政の全体の中から割り出して皆さんは考えていらっしゃいますから、そういう面でそこまでなかなか行けないんだということをおっしゃる。われわれの方は、この税調の答申の中でも問題になっておりますそれぞれの納税者のいわゆる生計の実態の中から割り出して、ここまでは課税対象外にすべきである、こういうことで申し上げているわけなんです。ですから、当初申し上げたように、この所得税の負担の状況についても、どこまで税負担を直接税の所得税の中で求めていくのか、それをなだらかにしていくのであればこういったことも当然考えられるではないかと私は思うのですが、その点どうなんですか。先ほど百八十三万円は別に適当だともおっしゃらないし、まあまあ財政の中から言えばこの辺じゃなかろうかなんというふうなあいまいな答弁をなさっていらっしゃるわけですが、その点どうですか。
  129. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私は、百八十三万円の課税最低限というのはかなりの水準であると申しましたのは、そもそも昭和の四十年代の初めにおきまして、あの当時、いわゆる標準生計費というものをカバーして余りある程度課税最低限にいたしまして、それから毎年、消費者物価の上昇率を上回る伸びを示しまして今日に至ったそういう水準でございますから、かなり程度であるというふうに申し上げたわけでございます。  それから、いまお示しのように、家計調査の消費支出と比較をしてみまして、それでは一体どのような水準になるのかというのも、確かに一つのテストでございます。そういう観点から申しますと、昭和四十年におきましては、家計調査におきますところの消費支出と課税最低限の割合は、もちろん消費支出の方が高いのですけれども、八〇%ぐらいでございました。それが、いまお示しの数字は四十七年でございますから、四十七年の数字をとってみますと、八七・一%まで上がっておるわけでございます。さらにこれが四十八年には七九・九と一応落ちましたけれども、四十九年、先ほど来速報値が出たものでございますから、それで調べてみますと、消費支出が百七十万六千円に対しまして、課税最低限はいつものとおりの金額で百五十万七千円でございますから、八八・三%に当たるわけでございます。これをさらに五十年に延ばしてみまして、一応私どもの推計で個人消費支出の伸びが一八・四%でございますから、それでもって延ばしました消費支出の見込み二百一万九千円に対しまして百八十三万円というのは、九〇・六%に当たるわけでございます。したがって、そういう家計調査におきますところの消費支出との乖離というのも、一応かなり縮まっておるわけでございます。  なお、それでは消費支出について差があるのではないかという御指摘があろうかと思いますが、消費支出は、いわば今日あるがままの消費支出でございます。私は、それを全部課税最低限でカバーする必要はないということはかねて申し上げておるところでございます。しかも、かなり水準が上がってまいりました消費支出でございまして、その内容を見てみましても、たとえば先ほど広沢委員が御指摘の四十七年の数字で見ましても、いわゆる雑費が五十一万円入っておるわけでございます。その中で一番大きなウエートを占めますのは、教養娯楽費でございますとか、交際費でございますとか、自動車関係費でございますとかいうものが大部分数字でございます。これが四十八年にもかなり伸びておりますし、四十九年におきましてはさらに伸びておるということでございまして、相当程度の高い家計消費がここに反映をいたしておると見ざるを得ないわけでございます。  しかも、この消費を可能ならしめておりますのは平均世帯人員が三・八人というようなことになっておりますから、やはりそれとの乖離は今日やむを得ない。しかもその乖離は、先ほど御説明申しましたように、九〇%程度にいまなってきておるわけでございますので、百八十三万円という水準は今日の所得税状況から相当の水準である、こう申し上げた次第でございます。
  130. 広沢直樹

    ○広沢委員 いずれにしましても、これはいろいろなとらえ方や考え方で多少違ってくる向きもあろうかと思うのですね。  そこで、これは過去に大蔵省大蔵省メニューをお出しになって、そんなことがあるかということで相当論議になってしまったわけですが、それ以後それをお引っ込めになって、こういう論議をしている中でお出しになりません。やはりこれは、総理府の統計だとかあるいは人事院のそういう発表になっている数字だとか、あるいはそれぞれの組合とか方々でこういうものをとっているものを一応突き合わして、そういう面で議論しておく必要があるのではなかろうかと思うのですよ。いかがでしょうか。  マーケットバスケット方式、そんなものはもう考える必要はない、それはもう凌駕して出てきている。やはり最低食べるだけの生計費云々の問題については、これは私も、それを大きく上回ってきていることは認めます。それはもう認めないんじゃない。だから、マーケットバスケット方式をいまここで出せとは私は言いません。だけれども、いま言うようにゆとりのある生活というのはどこまでを考えるかというのは、これは議論のあるところでございますから、その面に関してはやはり一遍いろいろな方面から出ている資料を出して、大蔵省も大体この辺であるというところを一遍お出しになったらいかがかと思うのですよ。でなければ、これは議論がすれ違って、いつまでたっても議論にならないと思うのです。その点ひとつ考慮してみたらいかがですか。
  131. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 課税最低限をあらゆる角度からチェックするという必要は、もちろん私どもも痛感をいたしております。先ほどお示しの家計調査あるいは人事院の生計費調査、その他いろいろな数字をもとといたしまして、今後もいろいろな角度から検討をいたしてみたいと思います。  ただその際、十年ぐらい前にやりましたように、われわれのところで標準的なマーケットバスケット方式によりますところの家計というものを設定いたしますことは、あの当時のいろいろな論議も反省もいたしましたし、それから今日の、先ほど来いろいろ御説明申しております課税最低限の水準ということから申しまして、特にそれをつくってまでチェックをすることも必要ないのではないかというふうに考えておりますが、なお今後ともできるだけの資料を集めながら課税最低限の問題は勉強を続けたいと思っております。
  132. 広沢直樹

    ○広沢委員 次に、これは一点だけ簡単に伺っておきたいのですが、給与所得控除の問題なんです、これも先ほど論議しておりましたけれども。  ただ、この給与所得控除についても税調の答申がいろいろ出ておるわけなんです。いろいろななにがございますけれども、四十六年の長期答申の中でこれを拾ってみますと、勤務に伴う支出のうち必要経費部分の控除である、それから担税力の弱いことについての配慮である。それ以前にはほかの関係とのにらみ合いとかあるいは源泉徴収という関係で前取りだということも考えたと、かあるいは捕捉率の高い云々といういろいろな問題があるわけです。  そこで、給与所得控除も年々改正して上げてきておるわけなんですが、やはりこの内容が非常に漠然としてあいまいなんですよ。私は、いろいろな考えもありますけれども、ここで端的に申し上げたいのは、やはりこれは自主的な、申告も選択的にして認めたらどうかということなんです。  今日、御存じのように、確定申告の期限がもう迫っております関係上、税務署も相当繁忙をきわめておると思うのですが、近年、個人所得あるいは給与所得者でも税務署に対して確定申告をお出しになる方もだんだんふえてきておる現状にあるわけですね。それは何を意味しておるかというと、やはり自分たちの主張を正確に認めてほしい、そういう要望もあるわけなんですよ。よろしいでしょうか。  ですから、それをまた給与所得控除とは一体何ぞやということになれば、過去の論議のように、非常に線の引くところがむずかしい。ですから、いまいろいろな論議の末、今日の基礎控除を置いて、それからあとは所得に応じての率を掛けて給与所得控除という額を決めていくことになっているわけです。そこで自分が計算して、実際はこれはもう必要経費なんだ、これは当然必要に絡めてかかった経費なんだから、これを超えると認められるものについての申告は認めていく、そういう両方の選択ができる制度というものを開いてあげることが、まずこれは給与所得者に対する税の配慮のあり方ではないか、こう思うのです。この問題については、その点だけ伺っておきたいのですが、いかがですか。
  133. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 給与所得控除は今日の概算控除を一応の基本としながら実額控除を選択制度として認めるべきじゃないかという御議論は、確かに一つ方法であると思っております。ただその場合に、その必要性が一体どの程度あるかという問題でございまして、一般に言われておりますように、これが必要経費であるのに認めていないと言われている費目は、大体は選択制度の実額控除になりましてもおよそ認められない性質のものが非常に多いと私は思います。  そうしました場合に、いわゆる所得の処分として出さなければならないものを給与所得控除の実額として引けると思って出してみて、引けない場合におけるいろいろなトラブルというものが非常に多く起こることが予想される事態におきましては、かなり高い程度に今日のような概括控除の制度を設けておきまして、むしろそういうトラブルをなくした方がお互いに円滑な納税ができるのじゃないかというのが基本的な考え方でございます。  それから、そういう基本的な考え方のもとになりますのは、もちろんかなり高い給与所得控除ということが前提になります。今日、たとえばドイツにおきましては、おっしゃいますように、一般的に、概括的に引きます控除と実額控除との選択を認めておりますが、その場合には、かなり低い概括控除と、それを上回る人については選択適用を認めて実額控除をいたしておるのが実情でございます。  そういたしますと、今日の四〇%から一〇%に至ります給与所得控除というものは、先ほど来申し上げておりますように、実際にそれではそれに当たるものを一々引いてまいりますれば、ほとんどそういう数値を満たさないものではなかろうかと思います。それを上回って引けるか引けないかという論議、しかもそれを税務署に提出するについて、そういう説明が一番うまくいった人は引けるし、どうもそれが十分果たせない人にはそういう控除が認められないというようなおそれがある問題でございまするので、私は、今日のような概括的な控除で一般に終始するのがいいと思っておりますけれども、非常にそれを上回るような事態については、おっしゃるようなことも研究する必要もございますので、なおドイツなりフランスなりのそういった制度の実情というものもあわせながら勉強してみたいと思います。
  134. 広沢直樹

    ○広沢委員 前向きに勉強するということですからいいのですが、ただ、こういうことを言うのはどうかと思うのですけれども、やはり税というのは自分で納める、取られるというのでなくて、納税ですから納めなければならないわけですね。ですから、やはりそれぞれの自分の意思に基づいて納めるという、こういう基本的な考え方は残しておかなければならぬと思うのです。しかし、この三千万になんなんとするいわゆる所得納税者、みんなが税務署へ押しかけていって納税するなんて、これは大変なことですから、いま言うように源泉選択という制度も生まれてきたし、そういうことで包括的に取り扱うことも考えられるのですけれども、やはり基本的な考え方としては、そういうふうに納税はみずから行うんだという形は残しておく、そういう方法でどっちでも選択をしてやっていくという姿勢を残しておくということがやはりこれは必要なことになってくるのじゃないか。  いま主税局長がおっしゃるように、確かに計算していけば、最高四〇%ですから、その中では厳密に計算した必要経費がそれ以下の人もあるかもしれません。それはそうでしょう、概算でやっているのですから、これ自体が正確に計算してつくった率じゃないのですから、それは当然です。しかし、自分で計算してそれをはみ出している分については、諸外国でもそういう理論があって採用している制度もあるわけですから、当然考えていただきたい。これは前向きに検討しましょうということですから、十分検討していただきたいと思います。  それから次に、課税単位の問題について若干伺っておきたいと思うのです。これは課税単位の問題というのは非常に大きな問題であって、これを変えるとか変えないとかということになりますと、税全体をひっくり返さなければならないという問題になるかもしれませんが、やはり今日までの税制のあり方というものも、経済の大きな変革の中で見直そうということになってまいりますれば、課税単位というものも一遍ここで見直してみる必要があるのではないか、こう思うのです。  そこで、その課税単位の問題のことですけれどもわが国においては、現行所得稼得者単位課税方式をとっているわけですね。アメリカにしてもイギリスにしても、フランスでも西ドイツでも、先進諸国においては、いわゆる夫婦単位課税方式といいますか、消費単位課税方式ですか、そういう方式をとっているわけなんです。これは御存じのように、先般も問題になりましたいわゆる相続税の関係で、夫婦という関係はどう考えるかという問題で、主税局長もその点についてはそこで盛んに答えておられたように、一体であるという概念に立っていく。確かに民法上ではそれは多少違いますし、いろいろな面では違いますけれども、先ほどの課税最低限を考える中でのいわゆる配偶者控除の問題についても、妻の貢献度ということを考えていけば、それは同じように考えていこうということに変わってきていますしね。それから相続税の関係におきましても、先般の論議の中でも、いま申し上げたように、まあこれは同じだという考え方で今度はああいう妻の座優遇という処置をとっているわけですね。  ですから、やはり今時においてはわが国においてもそういう考え方がだんだん定着していくんであれば、この所得稼得者単位の課税方式から、いわゆる消費単位課税方式の方に考えを移していくべきではなかろうか、そういうときがぼつぼつ来ておるのではないか、こういうふうに考えるわけなんですが、どういうふうに基本的にお考えになっているか、まずその点から伺っておきたいと思います。
  135. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 先日来、いろいろ相続税の問題のときに御討議をいただきまして、私は、配偶者に対する相続の問題で、三分の一の相続分についての非課税を御討議いただきました理由として、同じ世帯間における相続でありますとかあるいは財産の維持形成についての配偶者の寄与という問題にあわせまして、夫婦というものの共同生活の意義というものを申し上げました。ただそのときにも、所得なり財産が今日の民法のもとにおきましては夫婦一体として共通のものであるというのはとり得ないということは申し上げたつもりでございます。  ただ、その場合にも、共同生活を営んでおる夫婦の一方が死んだというときには、ある程度に限りまして、この場合でございますと三分の一という限度でございますけれども、そのいままで営んでいた共同生活というものをしばらくそのままの形で凍結するということが、夫婦の共同生活の観点から言ってより望ましいのではないかということは申し上げたつもりでございます。  それで、所得税の問題を考えます場合にも、一方の所得が夫婦の共通のものであるという観点は、まだ今日のわが民法のもとにおいてはとりがたいのでございます。したがいまして、どうしても、いま御指摘のように、所得を得てきた者、その単位で課税をするか、あるいはもう一歩進みまして、いまお示しのように、世帯と申しますか家計と申しますか、そういう単位で課税をするか、いずれかの場合になるわけでございます。  そこで、世帯単位あるいは共通の家計単位で課税をするということ、これをかつてわが国においてもしばらくの間やったことがございますが、そうしましたときに一番問題は、どうしても合算課税制度というのが必然的に生じてまいるわけでございます。同じ家計の中に入っておる未婦、子供、それぞれが得てくる所得についてこれを合算して課税しなければならないというわけでございます。確かに家計というものを一つの単位にとり世帯というものを消費の根拠といたしますれば、それは非常に重要な、所得税としてはむしろそれにふさわしい課税単位であるというふうに考えられますが、そこにはまた合算に伴いますいろいろなフリクションというものがあるわけでございます。そういうこともわが国としては経験もしましたので、今日のような個別の所得者単位の課税でずっとやってまいりましたので、おっしゃいますように非常に一つの見方としては有力であり、いま言われたような国々でも合算課税制度というものをとっておりますけれどもわが国所得税制を今後考える場合に大きくそういう方向に変更する必要がありますればともかく、今日の所得者の単位で課税をしましてもそう不都合はないし、またむしろ一面から言われておりますように、夫婦が共働きをする、あるいは子供も外に出て働くといったような世帯にとりましては相対的に有利な課税制度でございまするので、やはりこれを続けていってはいかがかというふうに考えております。
  136. 広沢直樹

    ○広沢委員 確かにメリットもあればデメリットもある。これはいかなる方法をとっても多少の問題は出てくると思うのです。しかしながら、そこにやはり政治的な配慮を加えて、行き過ぎは押さえ、足らざるは補うという政策が必要になってくるわけですが、やはり相続税の中で——これは所得税の最終的な補完的な税制であると言われてい、る相続税でありますから、あれだけ相続税の中で夫婦間の問題が問題になり、今後は妻の貢献度というものを最大に考えてこれはもう一つだという考え方に立つ。ですから、いままで結婚何年という期限があったものもゼロにしてしまう。そうしてまた、財産も民法に従って三分の一を取得した者については青天井で、それは非課税で幾らでも相続できる、税金は一銭もかからないというような措置を講じたその背景というものは、財産というものは夫婦間においは、水平の間においては、これはもう税をかけなくていいじゃないか。それはすぐ次の世代に、年代の考え方からいったら移るかもしれないという配慮もあるとおっしゃったけれども、それじゃ結婚の年数をゼロにしたということも理由が立たなくなってくるわけですから、私もずっと相続税論議を聞いておりまして、それなら当然この所得税におきましても、いま言うような夫婦の間においてはやはり均分の課税方式というものを考える方向へ行くべきではなかろうか。だんだんそういうふうな理論の方にわが国も片寄りつつあるのではなかろうか、こう思うわけですよ。  片一方の相続税の方はそういうふうにしてしまっておいて、こちらはそれは違います、税法によって全部基本的な理念がばらばらでありますなんというのはちょっとおかしいのじゃないか。確かにいまおっしゃるように、私はメリット、デメリットはあると思いますよ。税調の答申の中なんかにも具体的に、たとえばそれを現行制度のまま二分二乗課税方式にした場合どこにメリットがあるかという試算もなされております。  それから共かせぎと、それから夫婦のどちらか一方が所得を得ている場合との違いはどうなるかという問題もあろうかと思うのですが、それはまた政策の上で税率を見直し、あるいは制度を見直し、控除制度のすべてを見直していく中で是正できるわけだ。ですから、基本的な考え方の中にはそういうこともそろそろ考えてもいいのではなかろうか、こう思うわけなんですが、その点いかがですか。もう一遍お伺いしておきます。
  137. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 ただいま二分二乗課税を導入してはいかがかというお話がございました。確かに税制調査会においても検討せられた時期がございます。ただ、その場合に、私が先ほど申しましたように、二分二乗方式を導入いたしますれば、世帯の所得者の合算課税ということが必然的に相伴うわけでございます。ドイツにおいて夫婦の二分二乗課税が導入せられましたのは、まさに夫婦の所得が合算をされるということに対応してとられた制度でございます。したがいまして、所得者が夫婦その他家計の中におれば常に合算をされるということが前提になるわけでございます。  そうしますと、一番そういうことなしに税負担が大きく変動いたしますのは、夫婦のいずれかが所得者であって、他の配偶者は全然所得を持っていない人というのが一番大きな変動を受け、またその変動たるや高額所得者ほど大きく減税の恩典に浴するわけでございます。そういうことをしてまで二分二乗方式を導入するのがよろしいのかということになりますれば、私どもはあのときに否定的な態度をとらざるを得ませんで、むしろそれが所期しております効果というのは、一つにはだんだん高くなってまいりました累進構造改正すれば相当程度果たし得るわけでございますし、また高額のところはどの程度に下げればよろしいのか、中のところはどの程度かという判断もおのずとし得るわけでございますから、あえて二分二乗という形をとって税率を緩和するという方策よりも、税率改正を端的に御議論願った方がよろしいということで、その後に御議論をいただきましたような税率改正という問題を提起いたしたわけでございます。  したがいまして、二分二乗方式を導入すると、先ほども触れましたように、夫婦で共かせぎをしておる人がむしろ相対的に不利になる。それから夫婦の一方だけが所得を得ておる人は非常に大きなメリットを高額所得者ほど受ける。そういうことになりますれば、またおのずと、これはアメリカが同じような経過をたどりましたけれども、独身者について、あるいは寡婦になった場合についてそれ相応の別の税負担、税率表を必要とするわけでございます。そうすると、非常に複雑な税率表をもってそれぞれの構成に応じての負担をやるということでございまするから、勢い結果としますれば大きな税率改正をするということにほかならないわけでございますので、二分二乗方式をとるよりは、むしろその必要がございますれば、これまで私どもがお願いをしてまいりましたような税率改正そのものを御提案をし、御議論をしていただくという方がいいのではないかと思います。  ちなみに、スウェーデンにおきましてもかって二分二乗方式というのをとっておりました。しかし、やはりそういった問題もございましたのか、最近になりまして、むしろ日本流に所得者の単位で課税をする、特に共働きが多い国柄でございまするからやったようでございまするので、やはり私どもは二分二乗方式の導入は少なくとも所得税につきまして必要はないのではないかというふうに考えております。
  138. 広沢直樹

    ○広沢委員 御指摘の点は税調の答申の中にも論議されておりますし、私どももよく理解はしているわけです。したがって、これは先ほど申し上げたような基本的な税の考え方の中に立って夫婦間というものをどう考えるのだということの論議なんでして、二分二乗方式そのものがいいとは思っておりません。  それからまた、いま仮に、三分三乗方式なんというものもあるようなんですが、それぞれのやり方はあろうかと思うのですが、仮にそういうことで行われるとしても、控除だとか税率の根本的な見直しをやっていく過程において、高額所得者に有利になるものは是正できるし、あるいは共働きをしている者についてもそれはそれとしての別の控除方式だとか恩典を設けていけば是正できるわけですね。ですから、やはり私は、税の基本的な一貫性のある体系を考えでいく場合においては、相続税において夫婦というものは一体なんだという論議によってああいう特別の形が今後とられることになったということになれば、その前提である所得税におきましても、夫婦というものはいかに考えて課税をすべきかということを考える必要があるのではないか、こういうふうに申し上げたかったわけであります。  大分時間も経過しましたので、あと残った御質問を二、三点申し上げて終わりにしたいと思うのですが、今度の所得税法の一部改正の中の特別の人的控除、先ほどはいわゆる人的控除の引き上げの問題でお話がありましたから、私は特別人的控除の引き上げの問題についてちょっと申し上げておきたいのです。  いまここに述べられている改正案によりますと、大体四万円控除の引き上げが行われております。障害者控除、特別障害者控除、老年者控除、寡婦控除、勤労学生控除、老人扶養控除、それぞれ四万円ずつ引き上げられておる。この意味も、そういう福祉政策の上に配慮をした、あるいはそういう意味から設けられたということはわかるのです。ですが、それがたとえば障害者控除で現行の十六万円が二十万円に引き上げられたということにどれだけの効果があるのかと私は考えるわけなんです。  そこで、私は、この福祉政策の上から考えていくならば、これは所得控除ではなくて税額控除をやってはどうか。その税額控除というのは、実質的にこういう福祉的な見地には税をかけない、税をほとんど軽減しようという見地から考えるべきであって、税金がかかってきたものについてそれは全部免税しますというふうな観点から考える。ところが、それが全部それでいいのかというと、やはり所得の多い少ないというものはありますから、それにはやはりおのずと限定されたものが生まれてこようかと思うのです。したがって、そういうことで税額控除というものを考えるべきではないか、こう思うのですが、その点どうでしょう。
  139. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 こういった特別の人的控除に限りませんで、すべての人的控除を税額控除で行うべきか所得控除で行うべきかということは、確かに基本的な問題でございます。わが国におきます所得税の歴史におきましても、今日全く通説となっております扶養控除についても、ある時期におきましては税額控除にした時代もございます。そこの一つのメリットは、御指摘のように、税額控除でございますれば相対的に低額所得者に非常に有利になる、高額所得者についてのメリットを制限し得るというところだろうと思います。  そこで、いま御指摘の障害者控除などの特別人的控除について、これは実は創設いたしました昭和二十六年のときから税額控除でずっとやってまいったわけでございます。ただ、税額控除でやってまいりましたけれども、これも一部控除を具体的にやられる納税者にとっては非常にわかりにくいという批判がございました。基礎控除、配偶者控除、扶養控除というのはその当時から一律に所得控除でございましたから、課税除外としてこの分は置かれますというときに、いわばそれの上積みとして特別の経費がかかるからということで、たとえば障害者控除というものを考えましたときに、第一次の段階においてはその金額が考えられなくて、一番最後の納税額の段階で考えられるということは非常に理解に困難を感じられたようでございます。  それからもう一つ、だんだん所得税減税をしてまいりますと、同じ何万円という税額控除をしておりましても、その金額は相対的に実は大きくなってくるわけでございます。したがって、毎年毎年減税をしますが、特別人的控除たる税額控除は金額を据え置いているわけでございます。しかし、実質は非常にそのメリットは増大をしておりまするのに、受け取る側の人にとっては全然配慮が新しく加えられていないという批判もあったわけでございます。そこで、簡便に御理解をいただくということと、それから毎年毎年の改正によってそういった特別の人的控除についてもどの程度配慮をされておるのかということをはっきりとわからせる意味におきまして、所得控除に四十二年に改めたわけでございます。  したがいまして、おっしゃいます税額控除でないとその効果が非常に薄いということでございませんで、そのときそのときにおきます特別人的控除の金高というものを注意深く見守っておれば、おっしゃるような効果はそれぞれの時期に実現できるものと考えて、今日もやはり所得控除のまま金額を引き上げました。四万円という金額は、もちろん厳密に基礎があるわけでございません。一般の人的控除が二万円上がったということが大きく影響をいたしておることは事実でございます。
  140. 広沢直樹

    ○広沢委員 その経緯はわかりますけれども、いまおっしゃるように、今次ここに大きく見出しには「福祉政策等の見地から」こういうふうに四万円ずつ各控除を上げましたとありますね。しかし別にこうという根拠はないんだ、そういうあいまいなものじゃ、これはすっきりしないわけですよ。やはりこういう老年者控除にいたしましても、これは社会制度の大きなおくれから、当然税制の上でも見ていこうということにもなっているはずなんですね。ですから、こういうような特殊な福祉面に対する控除というものについては、税がかかってきたものについて、それを非課税にしてあげる、あるいは税額控除をしていったら明確じゃないかと思うんですね。  そういう意味では、やはりいま言うように、今度四万円上がって控除が二十万円になった、その二十万円を引いた、それだけでどれだけの効果があるか。配慮はしていないとは言いません、配慮はしているんですよ。では三十万円が適当なのか、二十五万円が適当なのか、それがはっきりしないわけでしょう、四万円上げた根拠というものがあいまいであるということになれば。大体毎年二万円ずつ上がってきているんだが、今回は特にそういうことだから倍にしました。その意図的なことは、姿勢的なことはわかるんだけれども、実態的にどれだけの配慮がなされたのか、本当にわれわれのこういう立場を理解してくれてこれだけのことをやってくれたという、実感として税制の恩典を受けていることを喜んでいるかどうかという問題があるわけですよ。実際にはこういうことで制度がおくれているけれども、税法の方で今度は免除してあげましょうという形をとっていく方がはっきりしているんじゃないかと私は思うんですが、よろしいでしょうか。  それからその次に、「中小所得者所得税負担を軽減するため、人的控除を次のとおり引上げる。」として、御承知のように基礎控除、配偶者控除、扶養控除を引き上げているわけなんです。これはその引き上げによって多少免税点が上がりますから、中小所得者所得税負担が軽減されているということはわかるんですけれども、相対的にそれを明確にしていくために、私はやはり税額控除方式ということを考えるべきではないか、そうした方がこれまたやはり明確になるんではないか、こう思うわけです。特にこういう緊急的な場合においては、税額控除方式ということによって税を免除してあげるという形の方が、その効果というものは非常に大きなものがある、こう考えるので、その点をどういうふうに考えているのか、簡単に答えてください。
  141. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 一般の人的控除につきましては、先ほど来いろいろ課税最低限のレベルの問題として御議論がございました。いわば、たとえば家計調査の消費支出と比べて課税最低限がどうだというようなときには、私はむしろ所得控除の方が比較しやすいと思います。税額控除であればそれで端的な効果がわかるではないかと言われますが、一面そういう点もございますけれども、それでは数額の問題として税額控除であれば非常に的確な金額が出るかということになりますれば、やはり一般の人的控除を二万円上げる、特別の人的控除を四万円上げると同じような程度に、税額控除で何万円上げるということになるわけでございまして、その点に関する長短というのは、私はいずれにも軍配を上げることはできないのではないかというふうに考えます。  過去におきますいろいろそういう税額控除、所得控除の変遷がございますから研究問題ではございますけれども、私どももそういう観点からむしろ所得控除にずっと統一をしてきました経緯もございますので、なおしばらくはこういう方向で推移したいというふうに思っておりますが、今後の研究課題としたいと思います。
  142. 広沢直樹

    ○広沢委員 相当時間も経過いたしましたので、まだまだこの問題については申し上げたいことはたくさんございますが、またこの機会に論議したいと思います。  そこで、最後にお伺いしておきたいことは、五十年度の税制改正に当たって、わが党としても、新しく控除制度を設けたらどうかということで大蔵当局に要求を出してあったので、この二点について申し上げたいと思うのです。  それは、一つは教育費控除、それからもう一つは住宅家賃控除を設けたらどうかということです。ということは、これはいまに始まった問題ではなく、これも四十六年の長期答申の中で論議されている問題であります。その中で、寒冷地控除だとかあるいは老人扶養控除、これはもう現実に採用されてやっていますね。そういうふうにして時代の要求に合わせてこの控除というものを考えるべきではないだろうか。  これは、先ほどの必要経費だとか家計のいろいろな問題とも関連してくるし、特に今日教育費の負担というものは、幼稚園から始まって大学に至るまで大変なんですね。これはもう御存じのとおりです。毎日の新聞をにぎわしているとおりでおわかりだと思います。  それから、住宅費控除の問題につきましては、先ほども武藤委員の方からお話がありましたように、住宅を新しく取得する場合については、税額控除として最高三万円ですか、三年間というものは税額を控除してもらうことになっているのです。これは住宅政策の推進のために設けられたものだ。それから住宅貯蓄控除にしても、いまは家を持ていないけれども将来持つという者に対してはそれなりの税の配慮をやっている。そういうふうに家を将来持てる人はいいんですよ。  一方、住宅政策の中でも、大体公的な住宅という中にも家が持てない低所得の方については安い家賃の住宅を提供したりしていますね。それから公団の住宅にしても賃貸住宅というのもあるわけです。ですから、そういうふうに皆が皆土地つきの家を持てるとは限らないわけですから、そちらの方にはこういう税額の恩典を与えているのであれば、片方のそうしたくてもできない、アパート住まいだとか賃貸住宅に入っている方とかについてはやはり住宅費控除というものを政策として考えてあげるべきではないだろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  143. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 教育費控除の問題につきましては、かねてお答えしておりますように、いわば一般の家計で賄われておるものでございまして、それは所得税法上は課税最低限として配慮をいたしておるわけでございます。確かに今日の教育費、特に私立学校に子供を出しておる家庭におきましての教育費というのは非常にふえておりますが、やはりそれはバラエティーのある問題でございまして、私どもとしては、いわゆる課税最低限の中で相当程度の教育費というのも考えられておるわけでございますから、それ以上のものを特別に教育費控除として配慮することは適当ではないんじゃないかという考えは、依然として持っておるわけでございます。  それから、住宅取得控除制度を採用いたしましたときに、もちろんそういう議論がございました。あの当時の政策としまして、持ち家をふやすということから住宅取得控除という制度を設けたわけでございますが、そのときにも、午前中に御議論がございましたように、一応新しい家を取得します標準費ということでの坪当たり十万円という数値が非常にかけ離れておるということは、結局、家をつくりました人についての所得税からの応援としましても、おのずと限度があるわけでございます。その限度を考えます場合には、当然一方においては家賃の負担をしておる人があるわけでございますから、そういう人との権衡上おのずと制限を受けざるを得ないという立場から金額の限度を切ったわけでございます。  それからまた、家賃といいますのはもちろん家計から支出をせられておりまして、これも一般的な程度のものとしましては課税最低限の中に入るものでございますので、特別に家賃控除というものも所得税で配慮をするのは適当でないというふうに考えております。
  144. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこがおかしいのですね。課税最低限のああいう中へ皆ぶち込んで入っているとおっしゃるのですが、それだったら、結局新しく住宅を求める人も同じことで入っているのですよ。そうじゃないですか。それから、住宅を建てようと思って財形の貯蓄をやっておられる方も、ちゃんと課税最低限の中に全部入っているわけですよ。そういう理論になってしまうわけですね。  ですから、家を持ちたいという者、持ちたくても持てない者という、住宅を求めるのに、二通りの種類があるわけですよ。いま直ちに持てる者については、家を取得した場合については税金をまけてあげましょう。将来持ちたい人には税金をまけてあげましょう。そうして、今日のように持ちたくても持てなくて、こんなに開いてきて、結局マイホームの夢が破られて、アパート住まいだとかあるいは賃貸のところに入っておらなければならないという層だってたくさんあるわけなんですよ。そうでしょう。そっちの方は課税最低限の中に入っているからいいですよって、そんな合わない理論というのはないと思うのです。矛盾していると思うのですよ、そんなことを言い始めると。  私は当然住宅政策は進めなければいけない、こう思います。そのためには、いまの、新しく取得した方に対する税額控除、結構です、私は賛成ですから。それから将来持ちたいという方に対する財形貯蓄に対する税の配慮、これも結構です。また、それについても現状に合わない、適正でないという指摘もあったぐらいですね。ですから、いまの制度を残していく以上は、当然、賃貸住宅で過ごさなければならないというこちらの方にもやはりその期間だけでも配慮する、あるいは住宅政策がきちっと体制ができるまでは、それは一時的な控除になるのか知りませんが、配慮していくというぐらいのことは検討していかなければこれは理屈に合いませんよ。そうじゃありませんか。どうでしょう。
  145. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 住宅取得控除と申しますのは、通常の家賃を上回って金利負担をしながら家を持つ、それがまた国の持ち家政策に合っておるという観点から、所得税法上配慮をするということでございますので、一般のいわば家賃水準を超えてという人の場合を想定いたしておりますので、特別の配慮としていわばそういう金利に対する、かなりの水準の人に応援をする、こういう制度でございます。
  146. 広沢直樹

    ○広沢委員 その意味はわからぬじゃないのですよ。だけれども、いまの財形貯蓄の問題にしてもそうなんですよ。金利を負担してやっていこう、それは持ちたい人ですからね、自己資金が少ないわけですから、当然銀行から借りたりほかから借りたりしてやっていくのですから、その負担が大変だろう、住宅政策を進める上でそれをやっていきましょう、こういうことですね。みんながみんなそうしたいわけですけれども、そうはいかないわけですね。  ですから、そういう住宅政策の中では、低い所得の方にはそれでは公営住宅一種、二種を建てて安い家賃にしてあげるからそこに入りなさい。ということは、結局自分の将来の、いま言う高い土地を買い、高い建築費をかけて家を建てる能力をいまあきらめざるを得ない方なんです。しかし、その方が全然家を持ちたくないかと言えば、そうじゃないと思うのです。やはり将来においては、できる限りにおいて皆平等に家を持ちたい。ですから、いわゆる住宅政策の一環として税を配慮するのであれば、こういう高い家賃でアパートなり賃貸住宅に入っておらなければならないというような状況にある方々に対しては、控除を考えていくということで検討すべきではないかと思うのですよ。  これで終わりますけれども、先ほどからいろいろ議論してまいりまして、とにかく夫婦間の問題にしても、片方では都合のいい説明をなさるけれども、片方にくると、いや、あれが問題だ、これが問題だとすぐ曲げてしまわれる。いまの住宅政策の一環としてということになれば、両方を見ているのかと思うと、片方にはウエートを置いているけれども、片方はしようがないですよという物の見方をなさる。これはどうも理論的に合わないと思うのですね。もう一遍そういう面で見直し、検討してみるべきじゃないかと思うのですが、そのことを最後に政務次官にお答えいただいて終わりにしたいと思います。
  147. 森美秀

    ○森(美)政府委員 広沢委員のお話、ある意味では非常にわかりますが、ただ問題は、いま所得税の中に教育費の問題あるいは住宅費の問題を入れることについては、そういう見地よりも、むしろ住宅政策あるいは文教政策といったところで行うことが妥当だと私どもは考えておるわけでございます。
  148. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは最後に一言申し上げておきますが、要するにこうやって話を進めていきますと、先ほどの課税最低限あるいは生計費という問題にはね返ってくるわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、大蔵省がそういうお答えをなさるようであるならば、現実はどうなんだというメニューといいますか、マーケットバスケットの食品のメニューを出せとは言いませんが、いわゆるゆとりのある課税最低限、生計費というものはどうあるべきなんだというそれを一遍出してくださいよ、それでなければ、何を言ったってそこに皆話が返っちゃうわけですから。その点を要望して終わりにいたします。
  149. 上村千一郎

    上村委員長 松浦利尚君。
  150. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、まず冒頭に、大蔵当局にお尋ねをしておきたいのですが、相続税法の一部改正の議論のときに、基本的な問題として生存権的な財産について将来検討を加える必要があるというふうにいろいろ質問をしたら、あなたの方は、いろいろ抽象的な議論ばかりしておられまして、正確な御答弁がなかったわけですよ。ところが、同じ問題について大臣がおるときに質問をしたら、大臣が前向きの答弁をしておられるわけですね。だから、もっと具体的に言うと、ここに大臣がおらなければ議論できないじゃないかということなんですよ、私が言うのは。大臣がおるときに同じ質問をすれば、そのことは明確に答えが出るけれども大臣がおらぬときには、前向きの答弁どころかただ時間かせぎの答弁でおしまい。それでは何のためにこの大蔵委員会で議論をしているのか私たちわからないわけですよ。大臣がおらぬということは、少なくともおられる人が責任を持って答弁するということでなければならぬはずですよ。非常に不愉快ですよ、こういうやり方は。正確に答弁してください。答弁できますか。
  151. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 相続税の御議論のときに、いわば物的に課税最低限のようなものを考えてはどうかという御議論がありました。それに対しまして私は、松浦委員からもお尋ねがございましたのに答えましたことを、同じようにまた別の機会にも答えました。一部新聞報道では、確かに非常に大きく取り上げられまして、あたかも課税最低限をそういう方向でとるということについて検討を約したというふうに伝えられておりますけれども、それはそういう趣旨ではございません。前に松浦委員にお答えをしましたように、課税最低限を考えます場合には、そういうある程度の物的なものもチェックの資料としては考えますけれども、それで表現することはなかなかむずかしいということで、同じようにお答えをいたしております。
  152. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は内容を聞いておるんじゃないのですよ。大臣がおったときは正確に答えられるけれども大臣がおらぬときには答えられない。大蔵大臣が正確に答弁をしておるわけだから。だから逆に言うと、大蔵大臣がここにおらなければ審議できないじゃないか。日切れ法案だから野党の方も協力して審議に応じておるでしょう。法案の技術的な問題じゃないのですよ。私たちは税の基本に触れて議論をしておるはずなんですよ。この法案だけの問題じゃなくて、五十一年度のことも考えて議論をするわけでしょう。その中には当然政策が入ってくるわけでしょう。そういう政策について的確な答弁ができないじゃないですか。そのことを私は指摘しておるのです。必ず答弁できると約束できますか。ここで前段として、大臣がおらなくても明確に答えられる、その約束を得た上で私はこれからの質問に入ります。
  153. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 もちろん大臣の答弁に私はかわることはできませんけれども大臣がおられようとおられまいと、私としては的確にお答えをいたします。
  154. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは的確に答えてくださいね。  第一点は、守秘義務についてお尋ねをいたします。  新聞の報ずるところによると、田中前総理の追徴金が一億三千万と当初言われておったですね。ところが、最近五億円だといううわさが流れておるのです。これは国税庁なりあるいは大蔵省筋からすでにそういう情報を流したのですか。
  155. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 国税庁大蔵省ももちろんでありますけれども、われわれの方からその数字を出したものでは決してありません。
  156. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、田中前総理のものについて発表するという意思はあるのですか。
  157. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 調査の結果の数字について発表するということはお許し願いたいと思っております。
  158. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 結果の数字については発表しないということですが、実際に、それではなぜそういう状態になったかということについても発表しないということでしょう。
  159. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 国会の方から御要請がありましたら、調査が一応全部われわれの手で終了いたしました事実を御報告するということはあろうかと思いますけれども、その内容がどういった内容であり、それからまた、どういった数字になったということを発表するということは、私どもはお許し願いたいと思っております。
  160. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 脱税じゃないわけですか。調査した結果、これは脱税じゃないのですか。
  161. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 脱税という言葉は、非常にまたむずかしい言葉でありまして、当初申告いたしました税額と国税当局で調査いたしました税額との差が、すべてこれは脱税につながるというふうに言えば、差があるということであれば、これはきわめて広い意味においていわゆる脱税ということになるかもしれませんけれども、通常私たちが脱税と言いますのは、法人税法で罰則の対象になる、つまり仮装隠蔽等によって不正に納めるべき税額を免れた場合、こういった場合で検察庁に対して告発する、そういった場合に狭義の脱税という言葉を使っておりますけれども、脱税と言った場合には、普通私たちはそういった問題に限定して考えております。
  162. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまの話を聞いておりますと、いま三月十五日、確定申告でしょう。中小零細企業は厳しい税務署のチェックを受けて計算をして申告をしておる。ところが、田中総理のやつは結局そんなことはしなかったわけですね。通常行っておる税務署の手続による申告といったことはやらなかった。逆に言うと税務署が怠慢だった、こういうことですか。
  163. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 御承知のように、現在の確定申告の処理に当たりましては、昨年から納税者が各自計算されたその所得額を申告していただきまして、税務署の方としてはそれをそのまま受け取りまして、事後の処理において、事後の調査をする必要があると思われた対象者について調査をするというやり方をとっております。その前におきましては、先生御指摘のように、一応事前にある程度の調査をサンプル的にいたしまして、それによって納税者の方が申告書をお出しになった場合に、一般の水準から見て非常に低いのではないでしょうかとか、あるいはあなたについては事前に調査をしてこういった数字になっておるがどうですかとか、あるいはあなたについてはこういった資料がありますけれども、それは的確にこの所得の申告の中に反映されておりますかといったようなかっこうで、いわゆる申告指導というのをやってきたというのが事実でございます。  ただ、この場合におきましても、そういった申告指導をいたします対象者というのは、営業もしくは庶業、われわれの言葉で言う営庶業者あるいは大きな譲渡事案のあったその他所得のあるような人たちを中心にしてやっておりまして、もっぱら歳費であるとかあるいは給与であるとか配当であるとか、そういったふうな所得だけの方については、事前にそういった申告についてのいろいろな指導をするということはやっていなかったわけであります。  それでは、田中角榮さんについて実際いままで税務署としてはずさんであったのではないかということを御指摘になったわけでありますけれども、これは、私はっきり申しまして、今回の調査によって、それだけ当初申告額とそれから今回の国税当局の綿密な調査によって得た所得との間に差額が出てきたという事実をもってすれば、確かにいままで国税当局というのはきわめて手ぬるい処理しかしていなかったというおしかりを受けてもいたし方ないと思っております。やはり数多い納税者の中には、いろいろと意識的に脱税をされるあるいは過少申告されるということではないけれども、税法上の解釈の違いあるいは計算違いであるとか評価の違い、そういったことによって、御本人の申告額と税務当局の調査いたしました調査額との間に差額が出てくるという例があるということは認めざるを得ないと思っております。
  164. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 次長にお尋ねしますが、高額所得者については非常になまぬるいということではないのですか。所得の少ない者については非常に厳しいけれども高額所得者についてはきわめて緩やかであるということの裏返しが、いま田中前総理の問題にあらわれてきておるのじゃないですか。そういうふうには思われませんか。
  165. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 私としてはむしろ逆ではないかと思っております。たまたまこのたびは田中角榮氏のことが問題になりましたけれども、税務署の方で調査いたしますときには、各税務署の中で営庶業者について、われわれが言うところの高額所得者、これは所得額が一定の額以上の方を言っておりますけれども、そういった高額所得者についての事後調査をやっておりまして、その高額所得者と言われる人以下の人についてはほとんど事後の調査をやっていない、いわば申告を是認しているというのが実態でございます。
  166. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 所得の少ない人は税務署で初めから調べますからね。現に私も申告してきた一人ですけれども、行ってみたらずらっと並んでどんどんチェックするのですよ。だから、もうそういう必要がないのですよ。  問題は、私はこれからの税務行政のあり方だと思うのですが、こういうことがありますと徴税に対する国民の忌避反応というのが出てくるのですよ。何だ、金持ちばかり優遇して、こうなるわけでしょう。そのことは決定的なマイナスになるのですね。だから今度の問題は、そういう意味では脱税だとかいうことは次長さんは言っておられないけれども、田中前総理が仮に追徴金としてこれだけの金額を納めるというようなことになった場合に、一般の国民に与える影響というのはどういうふうに思っておられますか。このことが一般国民に与える影響は非常に大きなものがあると思うのですね。その点について、森政務次官あるいは次長でも結構です、どう思われますか。
  167. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 私たちは、今回、田中角榮氏並びにその関連企業につきまして、これほど大々的にもう一度見直し調査をしなければならなかった。その結果、その内容は特に先ほど申しましたような脱税という定義に当てはまるような問題ではなかったにしろ、当初申告額とこのたび調査によって得た調査額との間に差があったということ、そのことについてははなはだ遺憾に思っております。ですから、私たちとしましては、こういったことを機会に、今後のわれわれの税務調査のやり方、それからいろいろと対象者の選定といったことについては十分考えていきたいと思っております。
  168. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そのことはいいのですが、このことが与える影響はどれくらいあるというふうに見ておられますかと言うのですよ。国民に対してこのことが決定的な問題点になっておると思う、徴税に対する信用を失墜させておるわけですから。私はそう思うのです。そういうふうにはお考えになりませんかと聞いておるのです。前向きであることはいいですよ。このことが与える影響です。
  169. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 やはり納税者の方はいろいろなお気持ちを持ってこの問題をながめておられると思います。それからまた、いろいろなお考えを持っておられると思います。しかし、同時にまた、私たちの今後の仕事の進め方というものについても、これは非常にプラスになっておるところでありますので、もし国民あるいは納税者の方に、そういった税務に対する不信とかあるいは納税意欲に対して悪い影響があったとすれば、私たちのこのたびの処理並びに今後の税務行政のやり方を通してそういったことのないように努めてまいりたいと考えております。
  170. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから、これはいま調査中の事件でまだ最終的にこの大蔵委員会でやる内容のものではありませんけれども、実は大阪の阪本紡績の土地謄本を取り寄せたのです。その中に国税庁が、昭和四十九年十月二十八日受け付けで、債権者は大蔵省で参加差し押さえをしておるわけですね。これはどういう内容ですか、こうお聞きをしたら、それは守秘義務で言うことはできませんということだったのですよ。それは守秘義務で言えないわけでしょう。
  171. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 やはり納税者の方の財産を差し押さえするといったような場合には、どういった滞納があるかとか、あるいはどういった財産を押さえているかとか、非常に突っ込んだ深刻な問題に発展することにもなりますし、いろいろとこの阪本紡の資産内容あるいは滞納の状況、そういったことに触れる問題でありますので、先生から御照会のあったときには、当該関係局の方で御返事するのを御容赦願ったものと思っております。
  172. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 田中総理の場合も守秘義務で内容は発表できない。阪本紡績もしかり。  そこで、これは前に塚田委員も質問したのですが、例の太平洋テレビの清水昭さんの問題ですね。これは三十五年九月から三十六年の八月、脱税容疑で調査をして、三十七年の四月十七日に東京地検へ告発いたしましたね。そうしたら東京地検は、外国為替管理法違反で起訴をした。そして、法人税法違反事件というのは実は起訴対象にならなかったのですね。そういう経過は御承知ですか。
  173. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 いわゆる太平洋テレビ事件の問題でありますけれども、太平洋テレビ株式会社に関しまして、昭和三十七年四月十七日に東京国税局で法人税法違反嫌疑事件として強制調査に着手したということは事実でございます。それからその後、東京地検に三十九年の二月二十六日に告発いたしまして、同年九月十六日に起訴になっております。そこは事実でございますが、ただいま先生おっしゃいましたけれども、これは法人税法の違反嫌疑事件として起訴になったと承知いたしております。
  174. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それで、三十九年の二月四日に実は外国為替管理法違反で判決があったのですよ。調査を始めたのは三十七年四月十七日ですよ、法人税法違反で東京国税局が調べに入ったのは。いいですか。そして、実際に東京地検の方に対してもすでにその事実は知らされておる。ところが、実際に調べてみたが、法人税法違反については起訴しておらぬわけですよ。そして、三十九年二月四日、東京地裁で判決があった途端に、三十九年の二月二十六日に国税庁がその脱税内容を公表したでしょう。こういう事実があるということを新聞社に発表したのですね。公表したわけですよ。しかも、英字新聞にも発表したわけですね、国税庁がわざわざ。これは東京国税局ですけれども、そしてそのために、清水さんという人は、外国のフィルムを入れて国内で代理業務をしておる人だったのですが、そのことが契機となって完全に信用を失墜してしまいましたね。  結果的にこの人は、四十六年の十二月二十一日東京地裁、四十九年三月二十九日東京高裁、いずれも無罪ですよ、法人税脱税の事実なしと。ところが、この人は二百四十三条あるいは百六十三条の守秘義務というものから完全に疎外されたわけですね。逆に言うと、国税庁がみずから新聞社に発表したわけだ。英字新聞にまで発表した。このことと田中総理との関係はどうなんですか。  権力を握った者に対しては守秘義務で守られるのですね。権力を持っておらないこの清水さんという人は、あの法人税法違反については起訴されなかった、無罪になった。しかし、実際に外為法違反で判決があったその直後にばっと発表する、これが平等だと思いますか、守秘義務について。しかもこの人は決定的にダメージを受けているのです。もう社会復帰ができない。どう思われますか。あたりまえだと思われますか。田中総理の方は守秘義務、あるいは阪本紡は守秘義務、清水さんの方はわざわざ告発までする、内容をわざわざ新聞記者を集めて発表までする、明らかにこれは不公平だと私は思いますね。こういうことについてどう思われますか。
  175. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 若干この太平洋テレビ事件の関連の事実を申し上げたいと思います。  先生御指摘のように、株式会社太平洋テレビにつきましては、法人税法違反の嫌疑がございまして、国税犯則取締法の規定によりまして裁判所の令状を交付してもらい、国税犯則取締法に基づく法人税法違反嫌疑事件として昭和三十七年四月十七日東京国税局査察部の方でこの事件に着手をいたしました。その後、昭和三十九年二月二十六日に、東京地方検察庁特捜部の方に対しましてこの事件を法人税法違反嫌疑として告発いたしました。同年九月十六日に起訴になり刑事裁判として裁判が行われたわけでありますけれども、四十六年十二月二十一日に、法人税法につきましては無罪の判決があり、同時に、控訴審におきましても、四十九年、つまり昨年の三月二十九日に無罪の判決があって確定したわけであります。東京国税局の方で着手いたしましたのは、外為法といった関係ではございませんで、法人税法プロパーの問題として事件に着手したわけであります。  ただ一般の課税問題とこの査察事件と違いますことは、御承知のように、査察事件といいますのは、法人税法の規定による調査ではございませんで、一種の犯罪捜査をいたしまして、国税犯則取締法の規定によって捜査をするわけであります。御承知のように、国犯法の第一条、これは質問、検査、領置の任意調査の権限規定、それから第二条におきましては臨検、捜索、差押の規定が与えられております。そういった意味におきまして、国犯法による調査というものは準司法的な処分であると言われておりまして、これは告発並びに刑事訴追を前提とした調査でございます。  したがいまして、一斉に査察官が関係方面あるいはある時間を期して本社に立ち入って強制捜査をするというふうなことで、どうしてもこれは世間の目にとらえられ、また新聞社等もこの問題については取材活動が活発になるというふうなことがございます。そういった査察事件については、対外的に国税当局の方から積極的に発表するということはしないまでも、これはどうしてもそういう事実があったということについては、対外的にかなり知られるということがあるわけでございます。その場合に、新聞記者並びに報道関係者が参りまして、一体どういった事件だというふうな質問が必ずございますので、これはたとえが悪うございますけれども、たとえば警察当局が一定の会社に対しまして強制捜査をするとか、あるいはある人を逮捕するといったような場合に、その事実がわりあいに新聞の社会面で報道されますように、この国税の査察事件についてもわりあいに報道機関を通じてその事実が新聞紙上に載る、ニュース面に載るということは事実であります。  ただ、そういった場合におきましても、私たちは、やはり積極的にこちらの方から細かい事実を発表するとか、あるいは本人の名誉を傷つけたり今後の営業にいろいろ妨害になるといったようなことのないように、その取材に応じる態度については十分気をつけて応接するようにということはかねがね注意しているところでありますけれども、この太平洋テレビ事件につきましては、いろいろとむずかしい問題がございまして、これはもうすでに発表になったことでございますから申し上げてもいいと思いますけれども、御本人が三十七年四月十七日に東京地検に身柄を逮捕されるといったようなことで、かなり世の中を騒がした事件でございます。そういったことで、普通の査察事件以上に世の中で騒がれた事件であるというふうに考えております。
  176. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは田中総理の問題はどうなんですか。田中総理の問題も大変世間を騒がしたわけでしょう。私は、結果だからもうとやかく言うつもりはないが、なぜそれを言っておるかというと、守秘義務というのは、結果的に世間を騒がしたから、だからこそ守秘義務があるのでしょう。東京地検に告発したから、あるいは特捜部が起訴したから、だから大蔵省に来ていろいろ取材活動をしていったのでしょう。だからそれが出たのでしょう。その当時どうだったか、私は状況はわかりません。しかし、片一方では守秘義務が守られなかったケースとしてこれがあることは事実なんです。しかも、完全に世の中から葬り去られているわけです。この人はもう立ち直れない。  ところが、片一方では、守秘義務守秘義務ということで完全に保護され、ガードがかたくて保護されるでしょう。明らかにこれは政治的に見て問題がある。不平等ではありませんか。そのことを私は一つのテーマとしていま指摘してをしておるのですよ。この点についてどう思われますか。このことは森政務次官でもいいと思うのですよ。政治家としてどう思われますか。
  177. 森美秀

    ○森(美)政府委員 太平洋テレビの問題は、私詳しく知らないわけでございますが、やはり守秘義務というのは、権力のあるために守られるということは私はないと信じております。ただ、先ほどお話のございました、そのことによって世の中に徴税についていろいろ疑問点が出てくるだろうということについては、私もまことに遺憾なことだと考えております。
  178. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま言ったように、徴税の事務そのもの、あるいは守秘義務についても、現実にそういう不公正、不平等が結果的に起こってきておるのですね。それはいろいろ国税庁の方は理屈はあると思う。しかし、単純に国民が受け取った場合には、そういう形があらわれてきておるじゃないかという不満があるのですね。  そこで、今度は局長にお尋ねをいたしておきますが、一体、いま税制の中に不公正な税制と思われるものが存在すると思っておられますか。
  179. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 現在、所得税制の中で、基本はもちろん総合課税が原則でございまするが、いろいろ特別措置としてこの原則を外れたものがございます。これはまたそれぞれ政策目的を持ってやっておる理由がございますけれども所得税本来の姿から言えば、公正さを欠くという点ではやはりそういう批判は免れがたいと思います。この点はまた法人税につきましても同様でございまして、特別措置をいろいろやっております。またそれについては、それが果たす役割りというのもあるわけでございますが、一面から申せば、本来の原則から言えば、やはり負担の公平を損なうという批判も免れがたいというふうに考えております。
  180. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう端的に言えば、不公正なもの、不公平なものがあるということは、局長自身も認めておられる。  それでは、そういうものをなくすようにしていかなければならぬですね。そうしなければ、国民がやはり納税意欲というものを——もちろん納税することに意欲のある人はないでしょうけれども、平等でないということはあまり喜ばないですね。だから、それをなくしていってもらわなければ、私はいつまでたったって国民の不平というものはなくならないと思うんですよ。ということは、不公正をなくさなければいかぬということでしょう。その点はどうですか。不公正な税制はなくさなければいかぬ、こういうことじゃないですか。
  181. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 公正を欠いておるという程度と、それから公正を欠きながらも果たさなければならないという政策の効果と、その判断であろうと思います。原則としまして所得税は公正さを一番信条といたしておる税制でございまするから、できるだけそういうものは排除しなければなりませんけれども、たとえば貯蓄を推進するという政策をとろうとするときに、どうしてもまず税金面からのいろいろな配慮というものが要請されるわけでございます。それなしに、もう単純に、一般的な控除と一般的な税率とであればそれでよろしいかということでございますが、やはりそこに果たさなければならないまた別の要請があります。したがって私どもは、その要請と公正さを損なう程度というのを常々判断しながら、所得税の持つ公正さを維持し、納税者が所得税に対する信頼を失わないようにしなければならないと思っておる次第でございます。
  182. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 磯辺次長さんは、確定申告の時期でお忙しいでしょうからもう結構です。また改めてしますから、どうぞ。  それで、これは数字的に若干正確ではないかもしれませんが、配当所得課税の最低限が三百八十四万円にアップなりましたね。これが仮にサラリーマンであった場合には幾ら税金がかかりますか。
  183. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 配当だけの所得者について所得税がかからない限度額は、五十年分につきましては、丸い数字で申しまして四百五万円でございます。それで、仮にそれが給与収入であるとしました場合に、いずれも夫婦子供二人の場合でございますけれども所得税は十九万一千円かかるということになります。
  184. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま言われたとおり、不公平だというふうに思われませんか。同じ四人家族で、片一方は四百五万円まで税金がかからない。ところが一方、額に汗して働く勤労国民の側は十九万一千円の税金を払うわけでしょう。同じ所得ですよ。片一方は働いて得た所得ですよ。片一方は働かずに配当だけで得た所得ですよ。あなた自身、不公平だと思わないのですか。局長は不公平だとは思いませんか。あたりまえだというふうに思われますか。あたりまえならあたりまえで結構なんです。どう思われますか。
  185. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 この問題は法人税の問題と関連するわけでございまして……(松浦(利)委員「いや、理屈はいいですよ」と呼ぶ)そういうことを前提にいたしますれば、私は、現在の法人税とそれから配当に対する調整の問題という意味から言えば、この点はやむを得ない体系であると思っております。現に、法人の段階でいま四百五万円の配当というものについては二百二十九万円の法人税をすでに納めておりますから、全然税金がかかっていないという問題でもございません。その二百二十九万円法人の段階で納めました法人税というものを、所得税段階調整しようという制度を前提にしております以上は、こういうことはやむを得ないと思っております。
  186. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 結局、法人擬制説をとっておるから、もうやむを得ぬのだ、あたりまえだ、不平を言う方がおかしいんだ、こういうことですね。当然なんだ、だからそういうことについて不平を言う国民の側がおかしいんだ、こういうことでしょう。あなたの言うことはそういうことですな。
  187. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いまのそういった税制についての意見というのはまたいろいろあるわけでございますが、こういう税制のもとにおいては、当然こういうことになるわけでございます。
  188. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いや、だから当然だということは、国民の側がこれはおかしい、同じ所得でおかしいじゃないか、こう言うわけだから、そのことを私が質問しておるのです。そのことは、そんなことを言う方がおかしいんだということでしょう。もういろいろ理屈は抜きですよ。そういうことを言っている方がおかしい、そういう感覚でしょう。その点、どうですか。簡単でいいですよ
  189. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 法人の段階で納めました法人税二百二十八万円というものを全然関連させないでいいかというと、これは私はやはりある程度しんしゃくをしなければならない問題を含んでおると思います。しかし、法人の段階で納めました法人税所得で配慮する必要がないという態度をおとりになる立場で言っておられることは、私はおかしいとは思いませんが、それは一つ税制に対する考え方でございまして、この法人税の二百二十八万円を個人の段階調整しなければならないという立場もまた税制上の一つの立場でございます。
  190. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 言われることはよくわかるのですよ。だから、もっと簡単でいいと思うのです。いろいろ修飾する言葉を使わなくてもいいですよ。端的に答弁されればいいと思うのです。だからそういうことを言う方がおかしいんですねと、こう聞いているわけです。そう言う国民の方がおかしいんだ、そういうことをあなたは言っているんでしょう。そういうことを言うこと自体がおかしいんだ、そうなるじゃないですか。だから、そのことを聞いているのです。簡単に言ってください、一言で済むでしょう。
  191. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 この問題は税制の基本に触れることでございまして、全然調整を要しないという立場も私はそれ相応に理屈があると思っております。しかしまた、逆に、完全に調整をしなければならないという意見一つの立場として十分成り立ち得るわけでございまして、いずれをおかしいと決めつけるわけにはまいりません。しかし、いまの税制の立場から申せば、所得税でそういう法人税の二百二十八万円というものを調整するという立場も決しておかしくはないと思っております。
  192. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そういうことを言うこと自体もおかしくはない、そういうことを言うこともまあ当然だということを言っておられるのですが、そう言う国民が多いということは、少なくとも改めていかなければならぬという、あるいは税制そのものを変えていかなければならぬという発想にはならぬわけですか。そういう発想になりませんか。国民の側が、そういうものについては非常に不公平じゃないかと言うこと自体もおかしくはないと、さっきあなたは言ったわけだから、ということになれば、そういう国民の声に向かって税制を洗い直す、改める、法体系そのものを整備するという方向が出てきていいんじゃないですか。出てこなければおかしいんじゃないですか。その点どうですか。
  193. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 その前提といたしまして、非常にむずかしい問題——全然税金を納めていないからおかしいと言う国民が、果たして法人税を法人の段階で配当の原資につきまして二百二十八万円納めておるということをどういうふうに理解しておるのか、また、どういうふうにそれを考えているのかということを十分議論してみなければならないと思います。私はもちろん、完全に調整する必要がない、絶対調整する必要がないという立場も一つの立場と思っておりますし、完全に調整しなければならないという立場も一つの立場と思っております。私自身はまた別の、私見でございますけれども、そういう意見を持っておりますが、わが国税制としますれば、この二十五年の間には、調整をしなければならないという立場に立ちながらも、また国民のそういった批判にも対応しまして、調整の度合いを少なくしてきたというのも事実でございます。  また、外国におきましては、調整を要しないという立場から完全に調整すべきであるというふうな方向に動いておる国もございますし、逆の方に動いておる国もございます。したがって、一律に必ず一方が誤りであるということは一概に申し上げられないわけでございます。
  194. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 その議論はまた大臣が来られたときにわが党の方からもするでしょうから、局長のお考えだけはわかりました。  そこで、さらにお尋ねをしておきたいのですが、税調に出した四十八年度の資料「所得税所得階層別の税負担率」、これはもうすでにどなたか質問があったと思うのですが、二千万円を分岐点にして累進が逆累進になっていますね。これは明らかに総合課税方式のギャップが高額所得者ほど大きくなっている。利子配当土地譲渡所得などの資産所得の比重が少ない所得層には恩恵がないのですね。この不公平税制というものが累増的に作用して大きな不公平を生み出しておるのですよ。これが私は税調に出された四十七年の結果だと思うのですがね。こういうことに対して国民が非常に不満を持っておる。けしからぬじゃないかという不満がある。国民の側がそういうことを言うこと自体がこれまたおかしいですか。現在の累進でいけばこれは当然なんだ、当然なことをおかしいと言う国民の方がおかしい、というふうにあなたはおとりになりますか。おかしいと思われますか、どうですか。
  195. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いまお示しの、階層別に所得税の総合的な負担を示しましたものが、高額所得者について率が低くなっておるということについて批判があることは決しておかしくはございません。それは一にかかりまして譲渡所得の分離課税の影響が大きな作用をしておるものでございます。したがいまして、これに対する批判というものはそういう形であらわれておると思います。
  196. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ということになれば、こういった国民の不満をなくすためにも調整していかなければならぬでしょう。改めていかなければいかぬですね。そういうふうに思われますか。
  197. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 したがいまして、今回の租税特別措置法改正案におきまして、土地譲渡所得課税については一つの御提案を申し上げております。これによりますればかなり改善されると思います。
  198. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 かなり改善されるじゃなくて、もっとスピードを速めなければいかぬですよ。極端に言うと、そういう特別措置その他によって逆累進的なものが生まれてきておるわけでしょう。高額所得者ほど税負担が少ないなんというのは、これはだれが考えてみてもちょっとおかしいのですよ。だから、そういうものを早くなくすようにするためには、いま言われたように、土地をどうだこうだという部分的なことではなくて——ですから、私があなたに聞きたいのは、もっと端的に聞けば、抜本的な改正をいつやるのかということなんですよ。こういう矛盾をなくすためにも抜本的に見直しします、整理をしますというのはいつかということです。
  199. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いまお示しの四十七年の負担率なるものを、いわゆる土地譲渡所得を除いたもので見てみますと、おっしゃるほどのものではございません。たとえば言われております数字、一番上の階層が一九・五%にとまっておるじゃないかというところは、土地譲渡所得を除けば五二・二%ということで、一番低い階層、二百万円以下の所得階層が四・九%に対しまして、これは相当の所得税累進構造をあらわしておるわけでございます。その上に加えまして、今度土地譲渡所得課税改正を行いますが、これは本則でございますれば土地の譲渡益の二分の一を総合するということでございます。二分の一といいますのは長期のものを考える原則でございまするが、今回御提案申し上げておるのは四分の三を総合するということでございまするから、この率というのがもっと累進構造を高めることになるわけでございます。
  200. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間が五時半になりますので、きょうはそのことで余り数字的な議論を私はしたくないですから、この問題では改めてさしていただきます。  そこで、税負担の配分における公平の原則というのがありますね。一つは、所得の額に応じた垂直的公平ですね。これは累進課税の原則ですよね。もう一つは、所得の種類に応じた水平的な公平。同一所得に対しては同一の課税をするという水平的な公平。この垂直的な公平と水平的な公平が保たれておらないところに、今日の国民の税に対する不満がうっせきしておると私は思うのですよ。それに早く手をつけないと、国民の国税庁に対する信用といいますか、そういったものはますます遠のくし、税は取られるもの、こういう意識になってしまうと私は思うのですね。ですから、納めただけ損だ、いかにして脱税するか、うまくやったやつは得だというようなものに私は発展をしてきていると思うのですよ。  この際、大蔵大臣がおられませんから政務次官にお尋ねをしておきますが、そういった公平の原則、垂直的公平、水平的公平というものについて正確に洗い直しをしてみる、国民の要望にこたえるということを明確に断言していただけますか。
  201. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この点につきましては、当然私ども前向きに検討しなければならないと考えております。
  202. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大蔵大臣がおるとそんな答えになるでしょうかね。
  203. 森美秀

    ○森(美)政府委員 なると思います。
  204. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 政務次官が、副大臣が言われたのですから、ぜひ期待をしたいと思います。責任をもってやっていただきたいと思うのです。  そこで、局長にお尋ねをいたしますが、こうした公平の原則が洗い直されておらない上に、突然付加価値税の導入という問題が言われ出しましたね。これは具体的に付加価値税の導入について、何か新聞の発表によると、税調に資料を出すとかあるいはどうだこうだという議論がありますが、そういうことは大蔵省内部ではもう具体的に検討されておるのですか。
  205. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 付加価値税の導入ということではございません。前々、当委員会においても大臣もお答えしましたし、私もお答えをしましたが、付加価値税の検討ということでございます。  それで、付加価値税の検討問題につきましては、実は前々税制調査会におきましても答申が出ております。一般消費税の採用という問題につきましてかなりいろいろな問題を指摘されながらも、それはむしろ歳出の問題とも相関連することでございますし、一体、国民が選択としてそういう税制をとり、またそれに対応する歳出を選ぶかという問題であるというふうに言われておりますから、税制調査会としては、かねていろいろそういう問題について研究はしております。そういう状態でございます。
  206. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この付加価値税というものについては、いろいろな方法がありますね。俗に言うEC型とかあるいは製造段階付加価値税、あるいは卸段階までしかせぬとか、完全に小売段階までやってしまうというような、いろいろなやり方があると思うのですね。こういったものについてはオープンで、仮にそういうことを皆さん方が導入を始めようとする段階では、国民に向かってこうした問題について示す、こういう方向でやりたい、あるいはこういうことで研究をしてみたいというような、付加価値税の内容等について国民に事前に知らすというような方法をおとりになる気持ちがありますか。
  207. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 仮に導入の前段階ということに至れば、非常に精力的にそういうことをPRしなければならないと思っております。しかし、まだそこまで実は至っておりません。むしろ今後におきますところの財政需要とそれから歳入構造とがどういうふうに、またどういうテンポで推移していくかというのが一番の問題でございますし、また、今日ございます税制というものを、先ほど来いろいろ言っておられますように、そこにあるなお解決しなければならない問題をどういうふうに持っていくかということも、前段階においていろいろ考慮しなければならないことでございます。しかし、仮にそういうことでかなりの大きな歳出需要があって、歳入として何らかのことを考えなければならないというときには、またおっしゃるような方法を講じながら、国民にフランクに検討してもらわなければならないと思っております。
  208. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この付加価値税の導入ということは、私は大変な大きな問題だと思うのですね。ですから、少なくとも結果が出てしまってからこうだという発表じゃなくて、要するにその事前の段階ですね、こういう方法でやりたいと思うがという、そういった内容について明らかにしていくということについて、いま局長は約束をしてくれたわけですね。仮にそういう段階になったときには、あるいは研究する段階になったときには、その内容等について国民の前にオープンにしていく、フランクに示していく、そういうことを約束してくれたというふうに理解していいですね。
  209. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 そういう段階が、いまはまだそういうことでもございませんし、近い将来に起こるかということもわかりませんけれども、もちろんそういう必要があれば、そういうふうにしなければならないと思っております。
  210. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、委員長にお願いをしておきたいのですが、いままで大蔵当局で付加価値税について議論をなさっておるのです。そういった付加価値税について議論なさった内容等について示していただきたい、出していただきたい、そういう点についてお約束してもらえますか。
  211. 上村千一郎

    上村委員長 資料要求ですか。
  212. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうです。
  213. 上村千一郎

    上村委員長 資料要求につきましては、また理事会で御相談してから……。
  214. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 あなたはいまフランクに示すと言ったのだから、それを出せるわけでしょう。
  215. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 まだそういう段階にもちろんございませんし、われわれとしてまだどういうことをやるのかということすら議論をしたことはございません。もちろんわれわれの仕事でございまするから、特にヨーロッパの国々がどういった制度を持っておるかという勉強はしておりますから、諸外国の制度はどういうものであるかというようなことでございますれば、概要の資料は提出することはできます。
  216. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間ですから、あと一つだけお聞きをしておきます。  話は飛びますが、給与所得源泉徴収、この問題について大島訴訟が退けられたという経過はあるのですけれども、先ほども広沢委員の方から質問がありましたが、給与所得者については自分の納税を自分で計算できないわけですね。しかも源泉徴収によって早目に税を徴収されるわけですね。三十七年二月二十八日の大法廷によって源泉徴収制度の合理性あるいは合憲性については一応確認されたという形になっておりますけれども、立法論的にはこうした問題はやはり改善されるべきじゃないかというふうに私は思うのです。  結局、徴収緩和措置、要するにサラリーマンの側の事情によって天引きを猶予するとか、あるいは年末調整を受けるかどうかは納税者の選択とするとか、そういった納税者に対する、特に給与所得者に対する措置といったものについてはもうこれから一切考えないのか、あるいはもっと端的に言えば申告ですね、これを立法論的に改善するといったことについてはもう一切今後は考える余地はないのか、あるいは考えてみる余地はあるのか、その点だけお聞かせいただきたいと思います。
  217. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 源泉徴収制度そのものにつきまして、これを申告制度に切りかえるということについては考えるつもりはございません。しかし、今日の源泉徴収制度について何らかの改善策がありとするならば、検討するにやぶさかでございませんけれども、今日のわが国源泉徴収制度といいますのは、非常に精緻にできておりまして、むしろ各国もだんだん概括的な源泉徴収制度から、できるだけそのときそのときに応じました金額わが国のように徴収しようという国がふえてきておることも事実でございます。したがいまして、大筋としては私は、今日の源泉徴収制度というのはそのまま続けてまいってもよろしいのではないかというふうに考えております。
  218. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 原則論をまずちょっとお聞きしておきますが、納税者が私は税を納めておるのだという意識が希薄であった方が税務署はいいというふうにお考えになるのか。それとも、私が税金を納めておるのだという意識が強い方がいいのか。希薄であればあるほどいいというふうに思っておられますか。どっちですか。
  219. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 自分の納税額を常に認識するということは、納税者としては一番望ましいことでございますけれども、全部そのときに意識することがまた完全に期待できるとも限りません。これは直接税、間接税の兼ね合いでもございますし、また直接税の中でも、ただいまのように源泉徴収をせられる税額というものについて認識が足りないことも事実でございますけれども、それはまた別途の方法で十分認識をしていただく道もあるわけでございます。
  220. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 別な方法と言われますけれども、実質的に先ほど言ったように徴収緩和措置もないでしょう。あるいは年末調整についても納税者が選択をする、年末調整を受け入れるか断わるか、それはもう納税者の選択だ。極端に言うと、給与所得者の納税に対する発言というものを認める方向を考える余地はないですか。
  221. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 どういう場合に給与所得者たる納税者の発言を認めるべききという問題がございます。ただ、おっしゃいますように、年末調整を受けざるべきかどうかというような判断で納付額の意識を高め得るかどうかという問題は、私ははなはだ問題ではないかと思います。むしろ毎月毎月の月給の支払い、それに対する源泉徴収税額というのを認識してもらう必要があるわけでございまして、その制度は二十五年前にシャウプが勧告をいたしまして、毎月毎月の給与の支払いには、幾ら税金を取られておるかということを月給袋に入れろということまでやっておりますし、今日実行されておるはずでございます。  しかし、私自身にとりましても、それじゃおまえ毎月幾ら月給から税金を引かれておるかということになりますれば、なかなか努力が足りませんでその認識はございませんが、そういうことは、やはりそういったシステムで十分果たせるのじゃないかというふうに思っております。
  222. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 あなた自身も希薄だということを言っておられるのですね、局長自身が毎月毎月が。ですから、逆に言うと、そういったものをもっと意識させる意味で、納税者特に給与所得者の発言というものをもっと強めてやることが必要ではないかということを私は感ずるのですよ。  そのことはもう水かけ論ですから、ここで議論をしても始まらぬのですが、いずれにいたしましても、今日の税制の仕組みというものが国民にとっては非常に理解がむずかしいし、不公平が多過ぎる。ですから、税金というものは納めるものじゃなくて取られるもの、もっと言葉を悪く言えば、一方的にふんだくられるもの、こういうことになってきておると思うのです。私はこれは重大な問題だと思うのです。やはり納税者自身の意識が、自分は国のために税金を納めておるのだ、そういう発想の転換、そういう方向に進むような税の仕組みあるいは法律の整備、こういったことをやるべきだというふうに思います。しかしきょうはこれで……。
  223. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっと一問だけ関連。給与所得者の確定申告権という問題は、いま局長自身が御存じのように大変な問題になってきて、給与所得者が確定申告をし、それが税務署に受け入れられなくて、国税不服審判所に山と積まれているわけですね。大変な問題になってきている。この問題についていま松浦委員の方から若干の指摘がありましたけれども、明日村山委員の方から本格的にこの確定申告権というものについて論議をいたします。本格的な論議はあしたしますが、きょう広沢委員の質問に対して局長は、つまり源泉徴収がいいのか、確定申告をしたいという人は確定申告をした方がいいのか、選択権を前向きに考えるというように、私はここの席で答弁を先ほど聞いたのですが、違うのですか。
  224. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 広沢委員にお答えしましたのは、給与所得控除につきまして、概括的に今日のような控除をそのままやるのがよろしいか、場合によりますれば、それを突き出た人については、実額控除の給与所得控除を選択し得る道を開いてはどうかというお話でございまして、源泉徴収をされる人が、確定申告をするかあるいは年末調整だけで終わるかというような、選択について御議論になったわけではございません。
  225. 広沢直樹

    ○広沢委員 関連。それは確かに私が聞いたのは、給与所得控除の分について率が最高四〇%までですから、それを越える分については、必要経費としてこれだけ経費がかかったということを認めてもらえるかどうか、そういう申告をするということになれば、年末調整もあるかもしれませんけれども、三月十五日に確定申告をするということになるのですよ。だから、それを認めるということは、確定申告、自主申告を認めるということになるんじゃないですか。
  226. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 そのときに私、たしかお答えしましたように、いまの概括的給与所得控除というのはかなり高い控除になっております、現実に御自分はなお余分に引けると思われておるものの大部分は、自分の所得の処分として払われておるものでございますから、つけ足してこられたもの、それが全部そのまま給与所得控除の実額分として認めるわけにはまいりません、恐らく大多数の人にとっては現在の概括的な給与所得控除以下でございます、それを越えるものはほとんどないと思いますから、そういう点についても勉強いたしましょうということを申し上げましたので、概括控除と実額控除とを認めれば、みんなの人が申告をしまして、なおさらに今日の給与所得控除を上回る控除ができるというふうにお考えいただくと、それは非常に誤解を招くと思います。
  227. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これで終わります。
  228. 上村千一郎

    上村委員長 次回は、明十二日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会