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1975-02-21 第75回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十一日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 伊藤宗一郎君 理事 浜田 幸一君    理事 村山 達雄君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       越智 伊平君    大石 千八君       奥田 敬和君    鴨田 宗一君       瓦   力君    小泉純一郎君       齋藤 邦吉君    塩谷 一夫君       中川 一郎君    野田  毅君       坊  秀男君    宮崎 茂一君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山中 貞則君    綿貫 民輔君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    坂口  力君       広沢 直樹君    玉置 一徳君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         国税庁税部長 横井 正美君         国税庁徴収部長 熊谷 文雄君         自治大臣官房審         議官      山本 成美君  委員外出席者         農林省畜産局競         馬監督課長   三井 嗣郎君         通商産業省機械         情報産業局車両         課長      石丸 博己君         運輸省船舶局監         理課長     山本  長君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   金子 一平君     綿貫 民輔君   内海  清君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     金子 一平君   玉置 一徳君     内海  清君     ————————————— 本日の会議に付した案件  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処  理の特例に関する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより会議を開きます。  入場税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 最初に、入場税の今度の改正をめぐって税収がどのように推移するかという具体的な金額を、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。  政府の今回の改正案によりますと、前年度の百十億円の入場税税収見込みから、今度は三十億円程度減収になる。約八十億円の減収ということに相なるわけでありますから、このこと自体には私どもも大賛成であります。長年当委員会において、入場税抜本的減税をやりなさい、映画演劇、芸術、文化、スポーツ、こういう入場については税金がかからないようにすきべだという主張をわが党も続けてきたわけであります。そういう視点に立つならば、今回の改正は大変結構な改正であると賛意を表明するわけであります。  そこで、その八十億円減収になる今回の改正案でいきますと、映画の場合税収はどのくらいになるのか、演劇がどう、それから演芸等音楽スポーツ競馬、こういう分類になって大蔵省資料が出ておりますが、五十年度はこの区分別にどのように見積もられているか、ちょっと明らかにしてください。
  4. 旦弘昌

    旦政府委員 五十年度の改正後の税収見込みはおっしゃるとおり三十億円でございますが、これは十億単位にまるめてございますので、その内訳を詳しく申し上げますと、映画が八億円、それから演劇等のなまものが十四億円、それから競馬等が六億円、過年度分が一億、合わせまして二十九億円でございますが、これを十億円単位にまるめまして三十億円ということにいたしております。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや旦さん、いまそういう質問をしているのじゃないのだよ。映画税収として幾ら見込めるか、たとえば四十八年度の実績をあなたの方の税調資料に基づいてちょっと読んでみますと、四十八年度が映画が五十七億一千百万、演劇が十一億七千万、演芸等が十六億一千九百万、音楽が十三億八千二百万、スポーツが七億九千三百万、競馬等が六億三千九百万、こうなっておりますね。これが今度の五十年度の税収見込みではどうなるか、それに対応した数字をちょっと明らかにしていただきたい、こういう質問です。
  6. 旦弘昌

    旦政府委員 現行法ベースで五十年度どういう見込みかという御質問でございますか。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 違う、違う。今度の改正案で。
  8. 旦弘昌

    旦政府委員 改正後でございますか。改正後につきましては、先ほど申し上げましたように非常に大減税でございますので、くくりまして演劇等のなまもの幾ら、それから競馬等幾らということで推計をいたしております。したがいまして、競馬等で申し上げますと、くくりまして六億円という見込みにしておるわけでございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局、中の区分はしておらぬ、たとえばスポーツ音楽演劇演芸等という従来の区分の見積もりはしておらぬ、トータルで大体二十九億ぐらいになる、こういうことで、中身区分できない、こういうことなんですか。
  10. 旦弘昌

    旦政府委員 非常に大幅な減税でございましたので、くくりましてそういう推計をいたしております。おっしゃるとおりでございます。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、一番減収になるのは映画ですか、率から言ったら。映画が八億になるわけですね。そうすると、映画が一番減収で、音楽スポーツなどはどうですか。
  12. 旦弘昌

    旦政府委員 初年度の減収で申し上げますと、映画は六十三億円の減収でございます。それから音楽等のなまものが五十億円でございますので、映画等が一番大きな減収でございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 そちらに資料がないのじゃ仕方がありませんが、せっかくいままでの資料区分されて出ておるわけでありますから、できれば区分された状況でどの項目が一番どういうぐあいに減収になるか、それを知りたかったわけでありますが、もし後でそういう資料が作成できたら、手元にひとついただきたいと思います。
  14. 旦弘昌

    旦政府委員 検討いたしてみますが、この五十年度の税収見込みをつくります際に、細かな従来の区分けでいたしますと数字が非常に小さくなるものでございますので、したがいまして、締めてそういうことでいたしましたから、検討はいたしてみますが、なかなかむずかしいのではないか、かように考えております。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 入場税の中の競馬収入についてはほとんど異同がなくて六億程度、四十八年度が六億三千九百万、競馬等ギャンブル関係税収というのはほとんど変動がない、こういう数字でありますが、そこできょうは競馬、競輪、競艇、これらの公営企業と言われるものについて二、三伺ってみたいと思うわけであります。  最初に、農林省競馬の問題でちょっとお尋ねいたします。競馬というのは何が目的で許可をされ行われているのか、明らかにしてください。
  16. 三井嗣郎

    三井説明員 競馬につきましては、かねがね私ども競馬目的として考えておりますものは、一つ畜産振興、従来でございますと馬匹改良その他を申しておりますが、そういう畜産振興に寄与すること。それから国民に健全な娯楽を提供すること。第三には、国、地方公共団体財政収入等に寄与する、かように考えております。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいま農林省は、三つの目的競馬をやっておるのだ、第一が、従来はという言葉を使っておるのですが馬匹改良。従来はということは、いまは馬匹改良については余り重点がないという意味ですか。
  18. 三井嗣郎

    三井説明員 御承知のとおり、これらは戦争中まで軍馬関係に非常に大きな需要がございました。ただいまは農耕馬も数が相当減少してまいっておりまして、競馬関係の馬が全体の中の大きなウエートを占めております。したがいまして、農林省といたしましては、もちろん馬関係のその馬匹改良等にも努力をいたしますけれども、もう少し幅広に畜産振興全体につきましても、競馬の益金その他を通じまして寄与する、そういうふうに考えている次第です。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 畜産振興に寄与する、さらに馬匹改良にも貢献する、こういうことでありますが、現在、馬匹改良なり畜産振興支出をしている補助と申しますか、そういうものはどのくらいになるのですか。
  20. 三井嗣郎

    三井説明員 国庫補助に基づきます直接の助成事業といたしましては、統計的に正確には掌握いたしておりませんが、現在、額としてはさほど大きなものではないと考えております。  どちらかと申しますと、現在、馬関係生産に非常に寄与をいたしておりますのは、地方競馬全国協会によります馬関係への助成金でございますとか、それからいわゆる競馬開催そのものにつきましては、戦後競走馬不足等もございましたので、競馬賞金を逐次引き上げるというようなことで、賞金が馬の生産、飼育につきまして非常に大きな役割りを果たしておると考えております。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 サラブレッドとかアラブもつくるのでありましょうが、昔のような運送馬や軍隊で使うような物を運ぶ駄馬ですね、そういう馬の改良にはいま全然力を入れていないわけでしょう。結局サラブレッドなりアラブの、純血のいいものをつくるための競馬用馬匹改良に一切使っておるのじゃないですか。  四十七年度は地方競馬全国協会への交付金として四十八億円出ていますね。これは年々かなり金額が恐らく出ているのだと思いますが、この四十八億円というのは具体的にはどういうところに、何に使っているのですか。
  22. 三井嗣郎

    三井説明員 地方競馬全国協会助成金といたしましては、ただいまお尋ねございましたところの数字は、たとえば四十九年で申しますと六十五億円になっております。  この明細につきましては、現在細かい数字を持ち合わせませんが、畜産関係といたしましては肉牛、豚、乳牛、鶏等、その種のいわば国民食糧生産に寄与する面により多く支出をされていることは事実でございます。  馬につきましては、たとえば農耕馬関係は、最近トラクター、耕うん機普及等もございまして、その方の需要かなり減少してまいっております。北海道などにつきましては若干農耕馬なり運送用馬等がございますが、全国的にはその種の需要が少ないということもございまして、細かい数値はただいま持ち合わせませんが、現在のところさほど大きな額ではないと考えております。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 後で全国協会に交付している馬匹改良関係の一号交付金、四十九年は六十五億、四十七年が四十八億、四十八年がちょっとわかりませんが、この過去五年間くらいの交付金額をどういう形に使っているか、そういう中身資料にして私の手元に欲しいと思いますが、委員長よろしゅうございますか。——それではぜひお願いをいたします。  その次の中央競馬会もそうでありますが、中央競馬の場合、四十七年度一年間で五百五十八億、地方競馬が七百二十二億の開催経費というのがありますが、中央競馬の場合でも結構ですから、ちょっとその内訳を明らかにしてください。
  24. 三井嗣郎

    三井説明員 中央競馬の四十八年度につきまして、開催経費内訳を申し上げます。  これは全体の仕組みといたしましては、御承知のとおり、売り上げの約四分の三に当たりますものが払戻金としてファンへの還元に使われております。したがいまして、四十八年度で申しますと、残りのいわゆる広い意味開催費用の中には、国庫納付金がいわゆる一号納付金と二号納付金と二つございます。一号は売り上げの一割でございまして、第二納付金はいわゆる利益剰余金の半分を出しておりますが、それらを合算して四十八年度は約八百億円でございます。  その他業務管理費としてはいろいろ細かいものがありますが、たとえば競馬賞金に二百六十二億、営繕費に百八十億、その他業務管理費に百十二億等いろいろございまして非常に細かくなりますので、そのような内容でひとつ御理解いただきたいと思います。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま私の手元にある資料は四十七年度の中央競馬会資料でありますが、開催費が五百五十八億、うち賞金が二百三十七億ということになっておりますね。約半分は賞金である。  私がいま聞きたいのは、人件費それから広告宣伝費というのがどのくらいを占めておるのか。ポスターを列車の中に張ったりあるいはテレビ宣伝をしたり、いろいろやっていますね。そういう場合の広告宣伝費というのはどんなぐあいに使っているのですか。
  26. 三井嗣郎

    三井説明員 ちょっと明細の数字をただいま持ち合わせませんが、広告関係といたしましては、競馬開催日程等を周知させる、その他競馬の健全な考え方と申しますか、競馬に対する正しい理解を深めるということのために広報室を設けまして支出をいたしておりますが、もし数字に間違いございましたら後ほど訂正させていただきますが、たしか五億円前後と記憶いたしております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 この広告宣伝というのは、立て看板を立てたりポスターを張ったり、そういうのはどこかの広告社に委託しているのですか。それとも競馬協力会というようなものがあって、そういう協力会に一括してお金を渡してそういうポスター貼付や何かをやっているのですか。その方法はどうなっていますか。
  28. 三井嗣郎

    三井説明員 広告という形では現在行っておりませんが、あえて申しますと、中央競馬の、いわば競馬につきましてのレース実況放送等がございます。そういうものが広い意味では競馬の外部に対するPRということになろうかと思いますが、一般的には競馬広報活動といたしましてはたとえば中央競馬会から「優駿」という雑誌を出しておりますが、馬に関します各種の記事なり競馬の過去のいろいろな話など出しておりまして、いわゆる営業的な意味での広告と申しますものは原則として考えていないわけでございます。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたは地方競馬のことはあんまりよくわからないのかどうか。これは地方競馬自治省ですか。あなたでわかるのですか。
  30. 三井嗣郎

    三井説明員 地方競馬監督につきましては農林省でございます。それから市町村、都道府県などの競馬開催に関します開催権につきましては、自治省としてもその面を担当しておられると思います。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 中央競馬会の方は比較的宣伝をしない、テレビ程度あるいは雑誌だけで、ポスターはあまりべたべた張らぬ、こういう説明でありますが、地方競馬の場合はそういうポスターや何かをかなり張っておるわけですね。  特に地方競馬の場合は開催費が四十七年ベースで七百二十二億円、賞金は二百七十三億円でありますから、賞金を除いても開催費かなり多いわけであります。四百億以上ですね。そのうち、いま言ったポスターや何かを張る手間は、各県によっては大変不合理な方法が行なわれている。たとえば競馬協力会という団体をつくって、その団体競馬開催日に一週間分の五百万とか六百万とかそういうつかみ銭的な金を渡してポスターを張ったりなんかしてきた例があるのですが、現在はそういうことは全くないと言い切れるかどうか。特にこれが暴力団的なものや町のごろつき的なもの、そういうものが請け負ってやっている、こういう県が見受けられたのでありますが、現在は全くそういうことはない、広告宣伝はもっと公的な機関がきちっとやっておる、こういうことなのかどうか。
  32. 三井嗣郎

    三井説明員 地方競馬の個々の実態につきましては、私どもも十分承知していない面もございますが、もしその種の広告につきまして、御指摘のような点で私どもも十分注意するべき面がございましたら、行政指導の面でも今後さらに努力してまいりたいと考えております。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 その点は後で実態調査をして報告を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。  次に、いま競馬会が四分の三を払戻金としてお客に戻す。国庫納付金が大体一二、三%。この例でいくと、四十七年度では六百二十四億円。開催費を引き最後に残ったのが施行者収入ということになってくる。中央競馬会の場合四十七年の数字は出ているのですが、四十七年は百二十九億円。四十八年、四十九年はどうなっていますか。
  34. 三井嗣郎

    三井説明員 恐縮でございますが、御質問は、業務管理費のうちのただいま百二十九億とお話のございましたのは、いわゆる賞金等を外した狭いものでございますね。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうです。
  36. 三井嗣郎

    三井説明員 四十九年度については予算はございますけれども決算書数字がまだ十分ございませんので、四十八年度について申し上げますと、先ほどお答えしたことに若干関連をいたしますが、全体といたしまして業務管理費の百十二億、それから競馬事業費の二百二十億、営繕費の百八十億、これらがただいまお話のございました数字にほぼ見合うものかと思います。したがいまして、約五百億というふうに考えております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、ちょっとその答弁違うんじゃないかな。私が聞いているのは、最後収入から支出項目を全部引いた、残ったものが施行者収入となって、中央競馬の場合は中央競馬会積立金になるんでしょう。それを聞いているわけです。
  38. 三井嗣郎

    三井説明員 それでは、実額よりむしろパーセンテージで申し上げました方がおわかりいただきやすいかと思いますが、中央競馬収入につきましては、売り上げのほかにもこまごま収入がございます。一番大きいものは売り上げでございますので売り上げの中の比率で申し上げますと、七五%ほどが払戻金でございます。したがいまして残り二五%。ただ雑収入等ございますから売り上げと対比しますと二六、七%になりますが、そのうちの約半分に当たります一二%前後が国庫納付金でございます。  それから残ります一四%ないし一五%、これが国庫納付を外しました幾分狭い意味開催費用でございます。その中から毎年いわゆる利益剰余金と申しますか、四十九年度見込みなどでは約四百億くらいになりますけれども利益と申しましても損益計算上の利益でございます。したがいまして、固定資産に値しておるようなものもございますが、そういうような損益計算上の利益約四百億円ございますと、その二分の一がいわゆる第二国庫納付金ということで、たとえば二百億国庫に納付いたします。これが現金として国庫に納付されますもので、いわゆる売り上げの一割に当たります第一納付金と合算いたしまして、先ほど申しました一二、三%というパーセンテージになります。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が質問しておるのはその残りの分を言っておるわけだ。二分の一は第二種で国庫納付金になる。二分の一さらに残りますね。残ったものが幾らになっておるかというのを四十七、八、九年と明らかにせい、四十七年は百二十九億でわかっておる、こういう質問なんです。
  40. 三井嗣郎

    三井説明員 ただいまお尋ねの点はいわゆる利益剰余金お話かと思います。それにつきまして四十七年が二百五十九億の半分でございますから、ただいまお話があった数字に見合うかと思いますが、四十八年はそれに見合いますものが、いわゆる特別積立金といたしまして固定資産等の形で競馬会内部に留保されるもの、それが約二百八億円でございます。  四十九年度につきましては、まだ形としてはこれからでございますが、約二百二十億円というふうに推定をいたしております。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 かなり金額中央競馬会に、固定資産になる部分もあるだろうし、積立金流動資産となっておるものもあるだろうし、伏魔殿と言われている競馬会内容ですね、私らも大変興味を持っているのですよ。現在、積立金累積は全部で幾らくらいあるのですか。
  42. 三井嗣郎

    三井説明員 いわゆる特別積立金累積額は四十八年度で集計いたしまして七百九億円ほどでございます。  なお、特別積立金につきましてはすべて現金で保有しているわけではございませんで、先ほど申し上げた損益決算利益でございますので、現実には厩舎、スタンドその他の固定資産として競馬施行上、より役立つ形で利用されているものが大方でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 あとで中央競馬会収支内容についても貸借対照表損益計算書、そういうものをひとつお出し願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。——では委員長、これも第三の資料として提出を願いたいと思います。  中央競馬会は第一種売得金、それから第二種毎事業年度剰余金の二分の一、こういうものを国庫に納入をしております。ですから、中央競馬会の場合は、わりあいと国民全体のためにその収益というものが利用されておる、配分の仕方においては公正である、そういうことがやや言えると思うのでありますが、地方競馬の場合、必ずしも中央競馬会のようなすっきり理解できる状態にないという感じが私はするわけであります。  その前に中央競馬会の問題でもう一つ、この間私どものところへ舞い込んできた新聞、なかなか膨大な競馬会中身を掲載した新聞が、国会議員全員の会館や宿舎に投入されておるわけでありますが、それを読むと、いろいろ馬主の要求や不満というものも出ておって、馬主賞金が低過ぎるんじゃないかという疑問や、いやいや、それは馬主のエゴだという反論やいろいろ出ておりますが、農林省としては現時点で賞金をいじるような考え方があるのかないのか、それと賞金で、いま上位十位くらいまでのランクをつけると、一番賞金の高いダービーですかは幾ら、それから五、六位までの賞金額をちょっと参考のために発表してくださいませんか。
  44. 三井嗣郎

    三井説明員 初めの方のお尋ねでございますけれども中央競馬賞金問題につきましては、戦後競走馬不足関係もございまして、いわゆる生産を刺激すると申しますか、そういう観点から昭和三十年代でございますけれども売り上げ予算の六%を賞金に充てるという仕組み予算上の扱いとしてとるようにいたしまして、最近まで若干いろいろ手直しはございますが、たとえば当初予算の六%にするとか、そのような手直しをいたしておりますが、ほぼ売り上げ比例という方式でまいってきたわけであります。  ところが、最近売り上げが比較的伸びが順調でございました関係で、賞金額につきまして、かなり高い水準になってまいっております。たとえば、昭和四十年に比べますと、中央競馬賞金は、総額にいたしまして約五・五倍ほどになっております。この間の物価の伸びあるいは賃金指数伸びなどを見ますと、それぞれ二倍弱なり三倍といった数字でございますので、賞金につきましてはかなり高い水準ということが、世間でもいろいろ言われるような状況になってまいっております。  一方、中央競馬賞金が高水準化することに伴いまして、いわゆる競走馬生産過剰化と申しますか、そういう傾向が出てまいりましたことと、それから入厩希望馬と申しますか、中央競馬に入りたい馬が増大してまいりまして、その関係厩舎関係などでもとかくのうわさが出る、こういう問題もございます。したがいまして、中央競馬会といたしましては、賞金水準につきましては、今後、より新しい、望ましい算定方式というものを検討してまいりたいということでございましたが、五十年度につきましては、とりあえずやはり六%比例というものにつきましては考え直す必要があるということで、いわば積み上げのような形で従来のやり方を変更した算定方式をとることといたしております。  それから、第二のお尋ねにつきましては、昭和四十九年時点におきまして、ダービー最高賞金でございますが、そのほかダービーに準じまして天皇賞とかいわゆるクラシックレースというものがございます。恐縮ながらちょっと細かい数字を持ちませんが、ダービー賞金につきましては、昭和五十年度につきましては四千六百万円ということにいたしております。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 その次は幾らぐらいになりますか。たとえば目黒記念とかいろいろありますね。大きなレースだけの五位までくらいわかりますか。わからなければいいけれども……。
  46. 三井嗣郎

    三井説明員 ダービーに次ぎまして菊花賞などございますが、これが四千百万円でございます。若干百万円程度の開きがございますが、四千万を超えるものがクラシックレースで五つほどあったと記憶しております。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、この四千六百万なり四千百万円の賞金についての税金はどういう課税になっておりますか、所得税は。
  48. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 馬主に対します賞金につきましては、その段階で一定額を控除いたしまして源泉徴収をいたします。それからもちろん、確定申告で一時所得なりあるいは雑所得として申告の段階で総合課税をいたします。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 その場合に、競馬の場合は賞金の支払い金額掛ける二〇%プラス六十万円、それの一〇%の税率ですね。  この二〇%というのは何の根拠ですか。たとえば四千万賞金をもらうと、賞金の八百万プラス六十万、そうすると八百六十万に対して税金は一割ですね。これは普通の勤労性所得やほかの所得と比較して権衡がとれているのかどうか。これはどうですか。
  50. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 馬主賞金につきましては、源泉徴収を始めましたのはいまから数年前でございますが、そのときにいろいろ問題になりまして議論をいたしました。馬主賞金は、その当時はいまおっしゃったようなそんなに高い金額ではございませんでしたが、賞金は一たん馬主なら馬主に入るわけでございますけれども馬主はそれから調教師でございまするとか騎手でございまするとか厩舎の世話をする人、つまり馬手とかいう人にいろいろ分配するということになっております。それが大体調教師で一〇%、騎手で五%、馬手で五%ということになっておりますので、そういうものは当然確定申告の段階でも経費として落ちるわけでございますので、源泉徴収の段階からそれはすでに源泉徴収対象額から外したわけでございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、経費八〇%ですね、二 〇%ですから。賞金の支払い金額掛ける二〇%プラス六十万円が引けるわけですね。馬主はちゃんと馬を競馬場に出すと牽付手当、それから騎手は騎乗手当、いろいろ競馬に馬を出すことによってちゃんと手当を出すわけですね。それはいまどうなっていますか。一頭について幾らずつ出てているか、経費はそういうので出ているわけだ。
  52. 三井嗣郎

    三井説明員 ただいまお尋ねのいわゆる賞金でございますが、中央競馬につきましては、賞金内容といたしましては、たとえば昭和五十年度予算で申し上げますと三百六十五億円の賞金が出ることになっております。この賞金の中には、細かくは、たとえば騎手の方に参ります騎乗料と申しますかそういう細かいものもございますけれども、大方は馬主さんの手に落ちるわけでございます。  ただ、競馬関係の慣行といたしまして、賞金の中の二割は——そのうちの一割は調教師、五%は騎手、五%は厩務員と申しますか馬手でありますが、そういうところに参りますので、そういう関係で、実質上は馬主に落ちる賞金のうちおおむね八割見当まで目減りがございますけれども、それらを財源といたしまして預託料などに充当するわけでございまして、細々とは騎手その他もございますけれども、おしなべては馬主さんの手に落ちる。なお、進上金というものをそれから差し引きます。こういう次第でございます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま馬主の牽付料は幾らですか。
  54. 三井嗣郎

    三井説明員 ただいまお尋ねの牽付料は、中央競馬には最近そのような区分がございません。地方競馬でございます。  そこで、地方競馬につきましては、御指摘のとおり、牽付料という名前での手当が出ていることは事実でございますが、かなり区々でございまして、大変恐縮ながら私ども手元にまとまった統計を持っておりませんので、水準などにつきましては別途また資料などで差し上げます。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 四番目ですよ、資料が。メモしてください。  それから、中央競馬の場合の入場料は、いい席と一般席とあるでしょうが、入場料はどういうことになっていますか。
  56. 三井嗣郎

    三井説明員 入場料は、現在大きな競馬場につきましては百円でございまして、いわゆるローカル場につきましては五十円ということになっております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 五十円、それは中央競馬だけですね。地方競馬の場合はどうですか。
  58. 三井嗣郎

    三井説明員 地方競馬は非常に区々でございまして、一番低いところでは二十円のところもございますが、最近は入場料はかなり上がってまいりましたので、いわば二十円から百円の幅の中に中央、地方を通じまして入場料の各水準があると御理解いただけばよろしいと思います。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 競輪の場合入場料はどうなっているか。競輪は運輸省ですか、通産省ですか。
  60. 石丸博己

    ○石丸説明員 競輪場は五十場ございまして、入場料金が五十円というものが十四場、三十円というものが四場、二十五円というのが一場、二十円というのが三十一場でございます。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 委員長、いま説明のように、五十競輪開催場があって、三十一場は入場料二十円だ。二十円の入場料というのは、いまの貨幣価値から言って、それからギャンブルという性格から言って——先ほど農林省は健全なる娯楽、こう言っておりますが、われわれはこれは一応ギャンブル、こう呼んでおるわけですが、そういうギャンブルの入場料として二十円というのはいかがなものか。これは委員長どうですか。委員長は政治家として、お聞きになっていて、二十円の入場料が三十一会場もあるというのです。  これは政務次官、こういうものを妥当と思われるかどうか。それともやっぱりギャンブルの入場料はもうとにかく最低を五十円ぐらいにしよう、中央競馬の場合は百円ぐらいはもうすそにしよう、そこらの改善はいまのギャンブル性から見たら私は当然ではないかと思うのです。政務次官どうですか、常識的な判断としてあなたの御見解はいかがですか。
  62. 森美秀

    ○森(美)政府委員 現在までのところは、整理券的性格であったものでございます。この点について検討してみたいと思います。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 政務次官は、いま検討してみたいという発言をされましたが、これを現実に直せる権能を持っている窓口はどこですか。競輪の場合、競艇の場合、競馬の場合、これはだれが直そうやということを決めれば直せるのですか。
  64. 三井嗣郎

    三井説明員 競馬から申し上げますと、中央競馬につきましては日本中央競馬会、それから地方につきましては、主催者たる地方公共団体でございます。
  65. 石丸博己

    ○石丸説明員 競輪で申し上げますと、法律に最低の入場料を決めなければならないということが書いてございますので、そこで命令で最低二十円ということになっております。これを五十円というふうに上げれば、これが全施行者に行き渡っていくであろうということであります。
  66. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産省はそれは通達ですね。
  67. 石丸博己

    ○石丸説明員 いえ、規則でございます。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、これは局長でできるのか、大臣ですか。
  69. 石丸博己

    ○石丸説明員 大臣でございます。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは通産大臣ですね。  運輸省の方の競艇はだれが直せますか。
  71. 山本成美

    山本説明員 これはモーターボート競走法に基づきまして、施行者が決める、こうなっております。施行者が決めますときに、運輸省令で定める額以上の入場料を微収しなければならない、こうなっております。最低限は運輸省令でございます。
  72. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、これもやはり運輸大臣ですね。
  73. 山本成美

    山本説明員 省令で最低限を改正いたしますと、それ以上を取らなければならない、こういうことになるわけでございます。
  74. 武藤山治

    武藤(山)委員 現在の省令は三十円以上となっているのですか、二十円以上となっているのですか。
  75. 山本成美

    山本説明員 現在の省令は二十円以上ということになっております。
  76. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたは、それは低過ぎると思いませんか。当然だと思いますか。
  77. 山本成美

    山本説明員 この省令は三十七年に二十円ということで定められまして、その後変えていないのが実情でございます。その間、物価そのほかいろいろ社会情勢の変化がございまして、見直すべき時期に来ておる、こういうふうに考えます。
  78. 武藤山治

    武藤(山)委員 運輸省も通産省も見直すような見解を上司に伝えると約束できますか。
  79. 山本成美

    山本説明員 上司に伝えます。
  80. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは本来なら大臣の決断で、よし改善をしようという答えをとりたいところでありますが、実力のある政務次官が先ほど検討するという答えを出しましたので、これは森政務次官、運輸省も通産省も、いまの物価水準から見ると二十円という最低限度は妥当ではないような答えが出たわけでありますから、ひとつ各省との連絡を十分とってこれらの検討を早急にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  81. 森美秀

    ○森(美)政府委員 承知しました。
  82. 武藤山治

    武藤(山)委員 競輪、競艇は中央競馬会の経理状況とは少々中身が違うわけですね。  そこで、まず競輪の方からお尋ねいたしますが、競輪の売得金というのは競馬よりも多い。中央競馬が四十七年度は四千九百四十六億円、競輪は七千百八十七億円、競艇が六千五百四十三億円。競輪が最高の売り上げを占めている。最近、四十八年度、四十九年度もこの傾向は同じですか。
  83. 石丸博己

    ○石丸説明員 競輪は四十八年度までは確かに売り上げが一位でございましたが、四十九年度はまだ終わっておりませんのでわかりませんけれども、ボートの方が上回ったのではないかと思います。
  84. 武藤山治

    武藤(山)委員 競輪の場合は国庫納付金というのはありませんね。
  85. 石丸博己

    ○石丸説明員 国庫納付金というものはございません。
  86. 武藤山治

    武藤(山)委員 国庫納付金がないというのが中央競馬会と基本的に違う点ですね。支出項目の中を見ると、払戻金が大体七四・三%というのが四十七年実績、四十八年も大体七五ぐらいじゃなかろうかと想像いたします。  その支出項目の中で振興会寄付金、これは自転車振興会かそれとも競輪振興会かわからぬが、振興会に対して一号、二号と二つ出している。一号の方が百二十二億、二号の方が百十九億、三号というのもありまして、三号が二十億、競技会交付金が六十八億、こういう形に出ている金というものは一体何にどんなぐあいに使われているのだろうか。  まず、振興会の機構と、振興会に出ていく年々の交付金、過去五年間ぐらいの数字がわかったら、ちょっと明らかにしてください。
  87. 石丸博己

    ○石丸説明員 日本自転車振興会と申しますのは「競輪の公正かつ円滑な実施を図るとともに、自転車その他の機械に関する事業及び体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に資する」ということを目的として設立されております。  それで、実際の役割りと申しますのは「競輪の審判員及び競輪に出場する選手の検定及び登録並びに競輪に使用する自転車の種類及び規格の登録を行う 選手及び自転車の競走前の検査の方法、審判の方法その他競輪の実施方法に関し、自転車競技会を指導する 選手の出場のあっせんを行う 審判員、選手その他の競輪の実施に必要な者を養成し、又は訓練する 自転車その他の機械に関する事業の振興に必要な資金の融通のため、銀行その他の金融機関に対し、資金の貸し付けを行う 自転車その他の機械に関する事業の振興のための事業を補助する 体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興のための事業を補助する」ということになっております。  それで、自転車振興会に対して交付された金額でございますが、この第一号交付金としましては……
  88. 上村千一郎

    ○上村委員長 石丸課長にちょっと申し上げますが、発言者の声が低くて聞こえませんからまことに恐縮ですがという速記の方からの要請ですから、もうちょっと大きい声で。
  89. 石丸博己

    ○石丸説明員 それでは申し上げます。  第一号交付金、第二号交付金、第三号交付金と三つに分かれております。  この第一号交付金の方は、自転車その他機械の産業の振興に資するための補助を行う、こういうお金でございます。  それから、第二号交付金でございますが、これは公益の増進に資する事業に補助する交付金でございます。  それから、第三号交付金と申しますのは、これは日本自転車振興会がその業務を行うに必要な経費に充てる費用でございます。  それで、第一号交付金昭和四十五年度で九十二億、四十六年度で百七億、四十七年度で百二十二億、四十八年度で百五十五億、こういうことになっております。  それから、第二号交付金でございますが、これは四十五年度で八十七億、四十六年度で百三億、四十七年度で百十九億、四十八年度で百五十四億、こういうような数字になっております。  それから、第三号交付金でございますが、これは四十五年度で十五億、四十六年度で十七億、四十七年度で二十億、四十八年度で二十五億、こういうような数字でございます。
  90. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体百億単位交付金がずっと出ているわけですね。これもここで質問するには、中身の分析には時間がかかりますから、どういうところにこの金が貸し付けられるとか、補助されているとか、いろいろ社会福祉事業などにも出していると思いますが、後でそういう中身を書類にしてひとつ御提出を願いたいと思います。よろしゅうございますね。
  91. 石丸博己

    ○石丸説明員 はい。
  92. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、競輪、競艇の場合は各市町村自治団体に最終的な利益が還元されるわけですね。その金額をちょっと見ますと、競輪の場合四十七年度が九百七十億円、競艇の場合九百十三億円、オートレースが百三十九億円、これが施行者の純収入ということで各市町村に配分をされるわけですが、全国の各市町村というのは幾つあって、これらの催し物を開催している市町村は幾つあるのか、パーセントで何%になるのか、それをちょっと明らかにしてください。
  93. 石丸博己

    ○石丸説明員 競輪で申し上げますと、施行者の数は二百六十四地方公共団体でございます。
  94. 武藤山治

    武藤(山)委員 競艇は。
  95. 山本成美

    山本説明員 モーターボート競走の施行をやっております地方公共団体は、県が一つございますので百三十八県市町村でございます。
  96. 武藤山治

    武藤(山)委員 オートレースはどうした。来ていないか。わからないか。——では自治省、いま市町村というのは全国に幾つあるのですか。
  97. 山本成美

    山本(成)政府委員 市町村の数は全国で、ことしの二月一日現在でございますが、三千二百六十二でございます。
  98. 武藤山治

    武藤(山)委員 全国の市町村が三千二百六十二あって、競輪を開催している市町村は二百六十四、全国の市町村の一割ない。それから競艇の方は百三十八市町村、これも五%ない。全国的な市町村の数から行くと、開催している市町村の数の方がはるかに少ないですね。ということは、ごく限られた市町村が競輪、競艇をやってかなり収入の恩恵が行く。中央競馬会のように、もうけを国が吸い上げ国庫納付金で取り上げるという制度と、開催された市町村に利益が還元される制度と、どちらがよりすぐれた制度と思うか。いる人それぞれ各省一人ずつ、担当者は見解を述べてください。
  99. 石丸博己

    ○石丸説明員 競輪で申し上げますと、先ほど申し上げました一号交付金及び二号交付金、これが全国的な形で社会に還元されることになっております。それからまた、そのほかに地方公営企業金融公庫納付金というのがございまして、これが売り上げの〇・五%でございます。そういうものを全部もちまして、競輪を開催していない府県、地方公共団体に対しまして、その競輪の収益の中からある程度の配分をする、こういう状況でございます。
  100. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の聞いたことはそういうことじゃなかったのですね。どちらがより合理的な、なるほどと国民に納得のいく制度かという、制度を聞いているわけです。ちょっと大臣でないと無理かね。余り役人いじめは悪いですから、そういう細かい決断の必要とするものについては後回しにしましょう。重要は重要なんですが。  そこで、いまあなたは、私が聞かない公営企業金融公庫に納付金として納めていると言うが、幾ら納めているのか。年別に五カ年間ずっと、公営企業金融公庫へ出している金というのは幾らなのか、ちょっと明らかにしてください。微々たるものですよ。
  101. 石丸博己

    ○石丸説明員 これは四十八年度の数字で申し上げますが、四十一億円でございます。
  102. 武藤山治

    武藤(山)委員 それ以外はわからないか、四十七年、六年は。
  103. 山本成美

    山本(成)政府委員 いま通産省の方からお話がございましたけれども、この制度の特性といたしまして、競輪であろうと競馬であろうと、あるいは重複してやっていましょうとも、要するにやっておる団体が得ました収益なり売上金というというものに着目しておるわけでございますので、そういうことで各省からあるいはお答えしにくい問題かと思いますから、私がかわって申し上げたいと思います。  四十五年度からこの制度は始まっておりますが、四十五年度は、丸い数字で申し上げますが五十四億、四十六年度が七十一億、四十七年度が八十二億、四十八年度が百十四億、四十九年度はまだわかりませんが、大体百三十億ぐらいではないか、かような感じで見ております。
  104. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの公営企業金融公庫に納付をしている金額は大体純収入の一割に満たないですね。だから、これが全国家的に、全国民的に利用されるという見地に改善をしなければならぬという、これは私の理論です。皆さんの方は、各市町村に配分してあって、市町村の方が土地を持っておるところの領土でやるんだから、そこへ実入りがあっていいじゃないかとおっしゃるかもしらぬが、やはり公正、公平という見地からいくならば——かつては戦災都市復興のために競輪を認める、競馬を認めるという形から始まっているのですが、もう戦災復興なんていうのは古い古いですからね。もう戦後三十年経過して、そういうことで行われているのじゃないのでありますから、もし財源調達のために認めておくというならば、その財源はより公平に公正に、全国的に配分をされる仕組みに改めてしかるべきではないか、これが私の理論なんです。  だけど、皆さんに聞いてその決断をさせるのは無理があると言うから聞かずにおるのですが、実際はどうでしょうか。いま、私のこの質疑応答を聞きながら、いまのように開催している市町村というのは全国の市町村の一割だ、一割以下なんだ、あとの九割のところは、隣接でも組合に入っていない市町村はだめなんですね。だから、そこらをやはり、もう戦後三十年たったら、一回この辺で改善する必要があるのじゃないでしょうか。三木内閣は洗い直し洗い直しということで、皆見直しをいまやろうとしておるのだから、ギャンブルもこの辺で見直しをしなければいかぬだろう、こう感ずるのですが、政務次官、どうでしょうか。
  105. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この問題に関しましては、実は四十七年、四十八年の税制改正のときに、税制調査会から、新規の課税をしたらどうか、しかしながらなかなかむずかしい問題があるので、引き続いて検討を加えるべきであるというような答申をもらっておるわけでございます。  この問題は、のみ行為を助長しはしないかとか、あるいは地方財政を圧迫しはしないかとか、そういった問題が数多くあるわけでございますが、関係各省と協議しまして検討したいと考えております。
  106. 武藤山治

    武藤(山)委員 先ほど前防衛庁長官から、いまどき自転車振興というのはなぜ必要なのか、答えたらどうだという野次と質問を兼ねた発言があったのでありますが、自転車振興というために金を出さなければならぬという積極的な理由はどういうことなんですか。
  107. 石丸博己

    ○石丸説明員 現在、法律で書いておりますのは、自転車の振興と、それからその他機械工業の振興でございまして、自転車の振興補助しております比率というものは非常に少なくなっております。  それから一つ、最近非常にバイコロジーということで、自転車を国民的に乗っていこうじゃないかというような運動ができておりますが、このためにはやはり国民の乗りやすい自転車というものを今後また改良していく必要があろうかと存じます。
  108. 武藤山治

    武藤(山)委員 資料要求を幾つかしておかなければいけませんが、競輪の方は、先ほどの振興交付金中身ね、いままでの累積したものがどういう補助金に出ておるか。  それから、競艇の方も、振興交付金一号、二号とこう出ていますね。四十七年のベースで言うと、一号が百十一億円、二号の方が九十九億円、二号の方は公益目的にこの金を使っているんだ、こう言うのですが、中身がわからぬ、これの五カ年間ぐらいの、どういうぐあいにこの金が使われていたかを資料で明らかにしていただきたい。  それから、公営企業金融公庫にもうちょっと拠出していいのではなかろうか、納付金をもっとふやしていいのではなかろうか、こういう感じがするのですが、これは何か法律で決まっておるのですか。純収益の何%を公営企業金融公庫に納付しなければならないというのは法律ですか、通達ですか、命令ですか、何で決まっていますか。
  109. 山本成美

    山本(成)政府委員 これは地方財政法の規定がございまして、売上高から五億を引いた残りの一%以内で政令で定める率で納付をさせる、こういうふうな仕組みになっております。
  110. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、一%というのは地方財政法で決まっておるのですか。そうすると、法律を直さぬことにはこれの引き上げは不可能だという見解ですか。
  111. 山本成美

    山本(成)政府委員 いま申し上げましたとおり、一%という上限が法律で定まっておりまして、具体的に当該年度を幾らすにるかということは政令で定めるようになっております。現在四十五年度から四十九年度までの間は〇・五%ということで政令で定めてまいりましたので、五十年度以降につきましては新たにまた定め直さねばならない、こういう状態でございます。
  112. 武藤山治

    武藤(山)委員 この点は自治省としても、ギャンブルの性格から言って十分各省との連携をとって、改むべきものはこの際改める方がいい、そういう点をもう一回洗い直して検討をする意思はないかどうか。
  113. 山本成美

    山本(成)政府委員 法律の規定そのものにつきましては、将来どうするかということはまだ考えておりませんけれども、さしあたっては〇・五%というものをどうするか、政令で定めておりますが、これをどうするかという点に焦点を当てて各省と相談をしてまいりたい、かように考えております。
  114. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、大体一時間ずっと質疑応答をやったお話を聞いていただいたのでありますが、中央競馬入場人員は年間千四百七十五万五千人、千四百万を突破していますね。地方競馬が二千四百四十六万六千人、まあ二千五百万人。これは古い資料ですからね、恐らく現在はもっと伸びているのではなかろうか。それから競艇、競輪、これも先ほどちょっと内容を見てわかりますように、二十円、三十円以下が圧倒的に多いわけですね。だから、わざわざ税金がかからないように、入場税がかからない三十円を限度にして、手数のかかる入場税を納めなくも済むような料金になっておるのだ、悪意に解釈すれば。入場税なんかめんどうくさい。そんな一々計算して納めるのはということで三十円以下、これが圧倒的に多い。これをもし全部最低五十円にしたら税収幾らふえますか。
  115. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 仮に、競馬競輪等への入場料金を五十円にするといたしますと、しかも免税点を現在のように三十円に据え置くといたしますと、約一億五千万円入場税として増収が考えられます。
  116. 武藤山治

    武藤(山)委員 一億五千万円、微々たるものですね五十円にしたのでは。  そこで、入場税をいじったぐらいでは幾ら税収にならぬからということで、これはギャンブル税の方向を前向きに検討する——いや、高木さんだよ、あなたじゃないのだ。前の主税局長はここで再三、われわれの質問に、ギャンブルについては何か考えなければならぬ、とにかく前向きで検討をいたします、そういう答弁を繰り返してきたのです。それで、その検討の結果が今国会に出ていないのですよ。どういうむずかしさがあって、なぜギャンブルに対する税金の問題が検討できなかったのか、その辺ひとつ新名主税局長の努力の苦心の跡を明らかにしてください。
  117. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 確かに数年前から当委員会におきましてギャンブル課税の御意見があったことは承知をいたしておりますし、主税局といたしましても、十分これまでも検討してきたわけでございます。そのときに逢着をしましたものは、実は二つの壁があったわけでございます。  一つは、前回の当委員会におきまして広瀬委員からいろいろお話がございましたときに申し上げましたように、ギャンブル税をひとつ考えますときには、払戻金率、現在大体七五%というものに食い込むという方向を考えるわけでございますけれども、そのときにはどうしましてもいわゆるのみ行為というのが、現在も残念ながら存在いたしますが、これはかなりそれに対応しますところの施設を設けましたり対策を講じなければ、やはり非常にふえてくるのではないかという危惧がございます。そうしましたときには、せっかくギャンブル税というようなものを考えまして、一般の人は払戻金率が七五%を切るというふうなことになりましても、のみ行為でもってそれを撹乱されるという心配があるわけでございます。  それからもう一つ、それでは払戻金率というのは現在の水準を保ちながら、今度はきょう武藤委員がいろいろ御指摘になりましたような点、たとえばいま売得金の中で払戻金とならない部分について、一つは経費になっております。一つは国なり地方公共団体の財政そのものに寄与しているものがございます。それからもう一つは、振興会を通じまして公益事業等に流れておるものがございます。それからもう一つは、振興会等を通じまして、先ほど御指摘のように、畜産業でございますとか、自動車、自転車というようなそれぞれの業界に対して、そういう産業を振興するという経費に流れておるわけでございます。しかも、それがここ二十年以上そういった形態としてずっとでき上がってきたわけでございます。  そこのどれかに、たとえば国税としてその分の分与を受けるということになりますと、従来そういう仕組みで出てきておりましたもののどこかを削りまして、いわば国税として国庫に取ってこなければならぬわけでございます。私はまた、それは決して無意味であるとも思っておりません。あるいはそういうことを考えなければならないのではないかと思いますけれども、何しろそれぞれの地方公共団体、あるいはそれぞれの振興会、また振興会を通じてそういう資金をかつてずっと得ておりました各種の団体がございまするから、それに一挙にそういう変動を加えるということは、なかなか担当の省庁としても一方的には踏み切れない事情もございますことは、十分了解するわけでございます。  それは私は、すべて過去二十年を越えますところの今日のギャンブルのいろいろな制度というものを見直すことが基本的に必要ではないかと実は思っております。それは全くいま武藤委員が御指摘のように、入場料金につきましても過去長い間その金額を存続してきたこと、あるいはいまのいろんな地方団体の歳入というのが、過去発足しましたときには戦災復旧のための財源を確保するということから、今日はその所在地の市町村でありますとか、過去の実績を持っておる市町村にかなり収入が偏っておること、それから公益事業に流れますあるいは地方公共団体の財政に入りますと言いましても、その率が実はかつての率にほとんど変動がなかったのではないかということはあります。  今日ギャンブルに対しますところの売得金は、いまや三兆を超えております。それからまた、先ほど御指摘のような競馬の一レースに対しますところの売り上げが、たとえば百億円を超えるというような例もあるわけでございまして、そういった事態というのは、この率を創設した二十数年前とはかなり格段の相違があると思っております。  それから、もう一つは、そういうギャンブル全体に対する物の考え方を、一体その当時と今日とでどういうふうに考えていったらいいのか。確かにギャンブルというのはある程度規制はしなければなりませんけれども、今日この程度に盛んになってきて多くの人の生活に入っておるならば、それはそれとして、またそういうことを前提としながらのいろんな対策を講じていったらいいのではないかという気が実はするわけでございます。  実はいまから十何年か前に、こういったギャンブルに対して一体どういう施策を講じたらいいのかということで、内閣で審議会を設けられましていろいろ御議論になったものがございます。それはその後十何年間そのままになっておるわけでございますけれども、それは今日の事態として、もう一遍再考していただいてもいいのではないか。そうしてまた、先ほど私が申しました二つの壁を、ギャンブル税というようなものを考える場合にはどうしてもどこかで見直さなければならない時期があるのではないかと思います。  そういうことはやはり私どもだけでなかなかまいりませんで、関係の各省庁の御協力を得ながら実はやっていかなければならないと思っております。それで申しわけございませんけれども、今回はそういう問題としまして、氷山が水の上にはほとんど出ませんでしたけれども、今日まで実はそういう検討は重ねてまいったわけでございます。
  118. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体時間でありますからやめますが、先ほど各課長、担当者にいろいろ資料要求した問題は、ひとつ早急に資料提出願って、その資料に基づいて、また今後これをどう改善したらいいかということを一般質問で詰めてみたいと思います。  私が指摘した点は、全国の市町村の数から言って、実際に施行している市町村との収入アンバランスというものを国家的見地からどうすべきか、もっと財源を均てんするような方策を考えるべきではないかというのが第一点。  第二点は、入場料の二十円、三十円というのは実情に沿わない。これはもう現状に即して入場料金の改定を図るべきである、これが第二の私の要望であります。  第三点は、各市町村に均てんするようにできないならば、当面できるだけ全体に公平に使える資金に純収入というものを使うべきである。すなわち、公営企業金融公庫などにはもっと多額の金を納付すべきである。その金が各市町村の公営事業の利子補給に回るわけでありますから、間接的にはこれは市町村の財政に公平に寄与するということになると思うのであります。当面、そういうできる問題から一つ一つ解決をしていくという姿勢が行政になければならぬ。  そういう観点から、本日は入場税に直接かかわり合いがない問題かもしらぬけれども、基本的には国の経済財政を担当する本委員会としては、当然そういう方向に今後検討し直すべきである、こういう提言をいたしたわけでありますから、政務次官もせっかく各省庁との連絡を十分とって検討するという約束をしたわけでありますから、きょう御出席の課長あるいは審議官の皆さんには十分ひとつ御検討いただきたい。強い希望を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 この際、三井馬監督課長、石丸車両課長山本理課長に申し上げます。  ただいま武藤委員から要求されました資料は、早急に提出されるようお願いをいたしておきます。  松浦利尚君。
  120. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 本会議が二時からあるそうですから、できるだけ簡潔に質問しますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  この相続税法の一部改正に関する法律でありますが、これをいろいろ調べてまいりますと、そしてまた税調に出された資料等を調査いたしますと、今回の改正のねらいが、実は物価上昇に伴う追認的要素が強い。ですから、物価上昇に名をかりた資産者優遇対策になるのではないか。ですから、物価が余り上がり過ぎた、この物価が上がったことを理由にして資産優遇対策としてこの相続税法の一部改正を提案する。裏を返せば、簡単に言えば、そういうことではないかというふうに思うのでありますが、私の見解に対する政府当局の御答弁をいただきたいと思います。
  121. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 簡単に結論を申せば、ただいま松浦委員がおっしゃったとおりでございまして、過去におきます地価の上昇というものが一番主となりまして、今日相続税というのは、大きく改正をしました四十一年から見ますとかなり広範囲の課税になり、またかなり課税も強化されてきておるということでありますので、今回はそういう地価と申しますか、物価と申しますか、そういうものに対する調整を主として考えておるわけでございます。
  122. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま局長から御答弁がありましたように、これは明らかに物価上昇に伴う税制改正だということになれば、相当たくさんの資産を持った者を優遇するということを前提に作業に入ったと思うのですよね。資産を持っている者が優遇される。内容的にはまた後から議論してまいりますが、同時にもう一つ改正の理由としての柱、これは税制調査会でも議論されたようでありますが、「国税総額に対する相続税の地位と諸外国との比較」これを見ますと、日本では四十一年に一・五%であったものが三%に上昇しておる。世界各国に比べて相当国税に占める相続税の割合が高くなってきたから、これをできるだけ諸外国並みに抑えたいというねらいがまたその背景にあったというふうに私はこのデータから承知をするのですが、そのこともまた改正一つの柱でございましょう。
  123. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 確かに相続税が国税全体の中に占めます地位というものも私どもは常に見ておるわけでございまして、先ほど御指摘のような地価、物価の上昇を主因にいたしまして、相続税の納税者も非常にふえ、その税額もふえてまいりましたから、したがって、国税総額の中に占めます相続税の地位も上がってきたわけでございます。  ただ、私どもといたしましても、それが上がってくるのは、いわば国民の富が漸次増加してくるにつれまして上がってきてしかるべきものだと思っておりますから、一概に、たとえば四十一年におきましてわが国の国税の中で相続税が一・五%しか占めなかったものでございますから、今日におきましてもその程度にしなければならないという気持ちは毛頭持っておりません。  それからまた、それとうらはらの考え方でございますけれども、相続税が課税される人というのが一体死亡した人の中でどの程度あってしかるべきかということも同じように考えるわけでございまして、それは結局は税収のウエートの高さというものにも反映をいたしますけれども、それも私どもは、たとえば四十一年に百人の中で一・四人の人が相続税の課税を受けるような財産を持っておったということで、今日それを一・四人にしなければならないという気持ちは毛頭持っていないわけでございますけれども、やはりこの十年足らずの間に約五人くらいにそれがなってきたというのは少し急激に過ぎるのではないか。それはやはり地価の上昇、物価の上昇が大いに寄与しておりますから、それに対する調整というのは考えなければならないのではないかというような考え方をとったわけでございます。
  124. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま御説明の二つがこの相続税改正の要点だということがわかったわけです。ただ問題は、この相続税というものもある意味で資産の再配分というものだと思うのです。ということになれば、何も物価が上がったとかあるいは土地の上昇が急激だったからということを理由にして、それを地ならしするという必要はないのではないか。やはり原則は、そういったものに対してもある意味では税を厳しく取るのだという発想が私はあってしかるべきだと思うのですね。  そこで、局長にお尋ねをしておくのですが、この相続税を抜本的に改正することによって、国税収入全体に占める比率、これはどれくらいになると想定しておられますか、五十一年、五十二年で。
  125. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 今回お願いをいたしております改正がもしなかりせば、五十年度におきますところの相続税収は、国税の中において二・八%程度を占めることになります。それが今回の改正後でございますれば、二・四%になると見込まれます。
  126. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、その二つの問題についてまずお尋ねをしておきたいのでありますが、先ほど言われたように、この税調に出された資料を見ましてもこれは明らかでありますが、土地価格の比率が圧倒的に高くなってきておるということだと思うのです。これは御説明のあったとおりでありますが、このことは、逆に言うと、異常な地価の高騰による必然的な結果であって、必ずしも異常なものではない。極端に言うと、土地税制その他を緩めるといった一つの政策的な手段として行われた税制というものがある。一方には、そういったものに対し優遇をして土地を取得さす、そういう政策的なものもあった。そのことが、逆に言うと、地価の高騰というものにある意味で相当大きな影響を与えたという側面もあったわけですね。それは悪かった面として批判されておる点。  ですから、そのことから言えば、地価が上がったからそのことで冷やすのではなくて、その上がった分に対して高率課税というのは当然だ。われわれ野党としては、御承知のように、土地の再評価税ということについても再三にわたって本委員会で議論をしておるのですけれども、地価が上がったものに対して高率課税をするのは当然だ。だから、この相続税を一部改正するというその発想そのものが、要するに政府の失策から来た後追い的な、さっき冒頭に言ったように追認的なものであって、一つも前進を意味する相続税の一部改正ではないんじゃないかというふうに基本的に私は考えるのですがね。そうでしょう。そうだということをお答えしにくいでしょうが、実際私たちはそう思うのですが、こういった国民の声にどのように政府としては反論をされますか。
  127. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、今回の相続税の改正の大部分といいますのは、この十年近くの間におきますところの地価の上昇を主としての課税額の伸びというものを考えて、それに対して調整をするということはいま御指摘のとおりでございます。  ただ、おっしゃいますように、もちろん相続税といいますのは資産の再配分を目的とした税金でございまするけれども、その際に、私どもとして考えなければならない点が二点あると思います。  それは一つには、確かに財産の再分配を企図した税金でございますけれども、一体どの程度の人たち、どの程度の財産からそういう再分配をやらなければならないかという問題でございます。それに対しましては課税最低限というものがございますが、これをたとえば四十一年の一千万円というような相続人五人の場合のものをそのまま置いておくと仮定いたしまして、それを超えて相続税を課税される死亡者というものがだんだんふえてくる、あるいは相続人がふえてくるというのも、それをそのまま放置しておいていいかということでございます。  確かに土地の値段が上がりましたことにつきましてはいろいろな要因があったと思いますし、それはもちろん一つには、ここ六年間とってまいりました供給促進という、土地の譲渡所得の特例というものもそれに対しての一つの原因になっていることは、私も否定をいたしません。しかし、そうは言いましても、やはりいろいろな要因で地価が上がってまいりまして、どれくらいの人数の人から財産の再分配をやったらいいのか、どのくらいの財産家から再分配をやったらいいかということを判断いたしますときには、現実として上がってまいりました地価というものをどうしても頭に置きながら調整を加えなければならないものだと思っております。  それから、もう一つ考えなければなりませんことは、それではどの程度財産の再分配をやらなければならないかという問題でございます。これは累進税率の問題だろうと思いますが、これもやはり何が何でもある程度でき上がっておった累進構造というものを、そのまま維持しなければならないのか。その後に起きましたところの地価の上昇、物価の上昇を反映しまして、いわば十年前程度に考えました累進度というものと、今日そのままの税率を適用しました場合の累進度というものとを比較いたしまして、それが地価、物価の上昇によって非常にきつくなっておるという場合に、やはりこれは調整の必要があるのだろうと思います。そういう意味で課税最低限なり税率なりにつきまして、やはり御指摘のような後追いと申しますか追認と申しますか、調整措置はある時期には必要になったのだと思っております。
  128. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 局長の言われることも私はわかりますね。だから、金額だけでは律せられない面があるのですね。それはまた後でいろいろ御議論をお願いしたいと思うのですが、しかし、その地価の高騰によって利益を得た者が課税を受ける、これは当然でしょう。地価の高騰によって利益を得た者は課税の対象になるのだ、この原則はどうですか。私の言っていることは正しいでしょう。
  129. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 地価の高騰によってそのときに利益を受けた者は、全部そのまま過去におきます同じ相続税を課税していいのかという問題でございます。  それで、今回、たとえば平均的に宅地が四十一年から今日まで約四倍になっておるというふうに数字が示しておりますから、課税最低限を約四倍にしていただこうという提案をいたしておりますが、それは実は平均的な数字でございます。したがいまして、そういう平均的な調整措置を考えます場合には、あるいは非常に有利に土地を取得して何倍という地価上昇になっておれば、これはもう四倍という課税最低限の引き上げを上回って課税を受けるわけでございますので、おっしゃいますような点というのは、今回の課税最低限でもやはり完全には調整し切れていないのではないかというふうに思います。     〔浜田委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕
  130. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは非常にむずかしい議論で、それでは具体的に四千万円の基礎控除というものが妥当かどうかという問題、あるいは税率の問題等々いろいろあると思うのですね。しかし、こういった問題については、後から詳しくほかの委員から御質問があると思うので私は省略しますが、基礎控除の四千万円というのは一体どういうものなのか、どういうものを数字的に四千万と規定づけたのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  131. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 四千万円と言いますのは、一つは先ほど御説明申し上げましたように、今回の改正の一応基準の年というふうに考えております昭和四十一年におきまして、配偶者と相続人四人の場合の課税最低限が一千万円でありましたことをベースにいたしまして、その後におきますところの地価の上昇が約四倍でございますから、四千万円というのを一つ頭に置いたわけでございます。
  132. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、この四千万円というのは、想定が土地だけではないと私は思うのですよ。その説明を聞いておるのだから、それはそのとおりそれだけです、土地だけです、こう言われればいいのです。
  133. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 なお説明を続けさしていただきたかったのでございますが、地価の上昇は約四倍でございます。それから国民所得一人当たりが、四十一年に比べまして五十年で三・九倍になるわけでございます。約四倍という数字を示しております。  それから、課税最低限を考えます場合には、大体この辺くらいの財産を持っておられる方、その財産の保有形態もいろいろございますけれども、自分の住んでおる余り大きくないこの程度の宅地、またその上にあるこの程度の家屋、それからそれにパラレルに考えられますところのその他の資産、こういうものを持っておられる方以下の方については相続税を納めてもらわなくてもいいのではないかというようなことを目安に持っておるわけでございますが、そういうものもその後どういう事情の変更を加えてまいりましたかということをいろいろ勘案いたしまして、大体先ほど申しましたような四千万円ということでございますれば、ほぼ四十一年に考えておった程度の方々以下の人については相続税の課税が起こらないということで、四千万円をお願いしておるわけでございます。
  134. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それではさらにもう一つお聞きしておきますが、税率を緩和したという理由は何ですか。上の方の七〇%から七五%と、五億円を超える金額についてはわかりました。しかし問題は、この税率表で税率を実際に緩和されておりますね。控除を四千万円した、さらにその上に課税する税率の緩和に踏み切った理由は何ですか。
  135. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 それは相続税を考えます場合の二つの問題として、一つには、どの程度の財産の人から相続税を課税し、財産の再配分を行わなければならないかということのほかに、もう一つは、それではどの程度再配分をやるというか、その程度の問題として考えなければならないと思います。  それで、四十一年ごろにございました税率というものをそのまま置いておきまして、一方、今日の地価、物価の上昇というものがそのままありますれば、累進度というものは当時に予測しましたものよりもかなりきつくなるわけでございます。それを調整しなくてもいいというお考えも成り立ち得ると思いますけれども、先ほど来申しましたように、追認というおしかりを受けましたけれども、調整という措置をとるということになりますれば、やはり税率についても同じような調整が必要なわけでございます。  しかし、そのときにも、先ほど来いろいろ御指摘の点がございます。財産の再配分というものをこの地価の上昇下においてもう少し考え直してもいいのではないかというお考えもございますから、私どもといたしましても、課税最低限は四倍に上げていただきますけれども、税率の緩和はそんな程度に考えておりません。たとえば、一番下の税率一〇%がかかります階層の幅を広げるにつきましては約三・三倍ということで四倍を下回った数字をとっておりますし、それから漸次上の財産階層に至るにつれましてその倍率というものを引き下げてまいりまして、上のほうでは一・七倍にとどめておるわけでございます。  それからもう一つ、だんだん上に緩和してまいりますから、いまお話しのように、最高税率七〇%といいますのを七五%まで引き上げるという措置も、あわせてさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  136. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この表でいきますと、資産を持っておる人は相当大幅な税率緩和を受けるのですね。だから私は、こんなにまでして資産を持った者に対して優遇する必要はないのじゃないかと言うのです。四千万円の控除をしてやった上にさらに税率で緩和してやるのだから、それは大変なもうけ、と言っては言葉が悪いですが、いままでに比べれば、資産家は大変に優遇されるという形になることは間違いないと私は思うのです。われわれから見ればそういう感じです。  しかし私は、それを全部が全部悪いと言うのじゃないのです。いわゆる水平相続、ずばり言って奥さんが相続するときには、極端な言い方をすると私はただでいいと思うのです、二分二乗方式というのがあるわけですからね。ただ問題は、奥さんが相続する場合の金額の問題がまた一つありますね。だから、原則としては西ドイツがとっているような方式、これは私が調べてみた範囲ですからよくはわかりませんけれども、妻の相続財産については、死別の場合には相続財産の四分の一について婚約中の付加利得の精算として生存配偶者の法定相続分に含める、さらに潜在的持ち分として四分の一が加わって、遺産の二分の一は無税という一つの原則が西ドイツでは立てられておるのですね。  と同時に親子の関係ですね、垂直相続の場合、これは私は控除をある意味で広げることもいいけれども、しかし税率はもっとうんと高くしていいんじゃないか、もっと高くすべきじゃないかというふうに思うのですよ。  特に水平相続の場合については、わが党の委員から本委員会では再三にわたって議論をされておることだと思うのです。だから、そういった問題について将来の方向としては、相続税として全体のそういうあり方について基本的に議論をされるという方向づけがあるのかないのか。ただ単に追認というかっこうで、いまある法律そのものを改正していくにとどめるのか、それともそういった方向に発展をさせて改めていこうとするのか、そういう点をひとつこの際基本的な問題としてお聞かせいただきたいと思います。
  137. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いま御指摘の第一点、水平相続と申しますか同世代の相続、特に配偶者への相続の場合について相続税を非常に配慮すべきであるという御意見、これは私ども全く同意見でございます。それで今回、そういう観点から、現行法にございますような金額制限を撤廃いたしまして、いわば青天井にしていただこうということを考えておるわけでございますが、その場合にも完全に配偶者への相続については税金はかけなくていいんではないかという御意見ももちろんございます。また、そういうことをやろうとしている国、たとえばイギリスの現在の改正案でございますが、そういう国もございますが、これは現にやっておる国はございません。それから、二分の一まで配偶者への非課税というものをやっておる国がございますけれども、これは民法の夫婦財産制度というものがいわば共有財産というものにかなり原因を持っておるようでございます。  いまお示しの西独につきましては、確かに配偶者の相続税につきましての配慮は、わが国の現行法のように限度を設けていたわけでございまするけれども、今回改正されまして、いわば婚姻中に増加しました財産につきましては二分の一は課税対象から除こうということになったようでございます。今回わが国で御提案申し上げてやっていただこうとしておりますのは、まだ夫婦財産制度というものがそこまでいっておりませんから、いわば普通の家族形態におきますところの配偶者の法定相続分三分の一までというのは、全部そこまで取得なされば相続税を課税しないという制度をとったわけでございます。  それから、御指摘の第二点は、いわゆる垂直相続についてはもっと重くしたらいいんではないかという点でございます。現在でも、今回提案いたしますように配偶者についてそういう制度を導入していただきますれば、いわば相対的には垂直相続については重くなるわけでございます。  それからもう一つ現行法におきましては、垂直相続でございますけれども通常考えられる相続の流れに従っての相続の場合でなしに、いわば一親等の血族以外に相続財産がいってしまうという場合につきましては、現在、普通の税額のほかに二〇%加算をしておる制度を持っております。したがいまして、その点につきましては、おそらく垂直相続について重くしろというお話は、子供の垂直相続というお話ではございませんでしょうから、大体通常の流れ以外のところにいったというものについてはすでに現行法にございますので、いまお示しの水平相続についての配慮、これは今回提案をいたしましたものは、現在の民法の夫婦財産制度のもとにおきましてはかなり考えたつもりでございますし、垂直相続につきまして重くするということはすでに現行法でございまして、程度の差はございますが、これ以上さらに進めるということはちょっとむずかしいんじゃないかなというふうに考えております。
  138. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ちょっと答弁が長かったので私の聞き違いかもしれませんが、まず水平相続の場合、特に妻というものの地位がこの税制から見るとちょっとやっぱり問題があるんじゃないか。これは正確な言葉ではありませんが、財産の潜在的持ち分といいますか、そういうものに対する立場がまだ確立されておらないからこうだというお話がよくあったのですが、これは本委員会に小林さんという女性の委員がおられますから、政党は違うが女性の立場で相当議論をしてもらいたいところなんですが、そういうところから見て、逆に言うと、配偶者に対する贈与——相続と違って今度は贈与する場合、これにやっぱり格差が出てくるわけですね。ですから、妻が相続した場合に初めてある程度重く見られるので、相続人という枠の中で重要視されるのであって、現実的に生存中の贈与というものに対しては非常に低く見られておる。私はここは問題だと思うのです。  本委員会でも再三議論をされておるところでありまして、やはり妻の潜在的持ち分というものをわが国も認めるべきじゃないか。少なくとも認めていかなければ、憲法上解放され、また平等の地位にある婦人というものが税制面では若干下に見られておる。非常に矛盾が起こってくると私は思うのですよ。そういう問題について、ここで幾ら議論してみても、出されておるのですからどうにもならぬことですが、一体、大蔵省ではまじめに議論をしておられるのか。将来そういった方向に前進をしようと思っておられるのか、その点をひとつ明確にこの際お聞かせいただきたいと思うのです。
  139. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いわゆる配偶者の財産承継につきましての地位については私ども非常に真剣に考えてきたつもりでございますし、今回、いろいろ御批判がございます中であえて制限なしに三分の一の相続税についての配慮を配偶者について行いましたということは、ひとつお認めいただきたいのでございます。  そこで、贈与につきまして一体そういう考え方がとれないのかということでございまするけれども、私どもは、贈与につきましては現在の民法の夫婦財産制度というものが今日の形のままでございますれば、なかなかそこは割り切りがたいのではないかというふうに思っておるわけでございます。われわれはむしろ、配偶者の地位は財産承継についてあるいは財産制度について非常に進んでおると思いますけれども、問題は民法でございまして、民法の考え方をまず改めていただかないと、われわれは今後これ以上配偶者の地位というものを財産承継上考えるということは非常に困難でございます。もちろん、それは非常に考えて今日やってきましたけれども、やっぱり何と言いましてもその前提となりますところの夫婦財産制度というものが基本にございまするので、むしろそういうところから夫婦というものの問題を考えていただくというのが、私どもとしても今後のこういう問題の展開については一番やりやすいのじゃないかというふうに考えております。
  140. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それは民法上の問題もあるでしょう。しかし問題は、そういったものが恩恵的な制度として行われておる。しかも、これが恩恵的な制度としては限度だというところを言っておられると思うのですよ、率直に言って。民法上のたてまえがあるからこれ以上云々ということですよね。となれば、やはりそういう原則に立ち返って、民法なら民法を見直す必要があるんじゃないか。大蔵当局でもそういうお考えなんだから、もう限界だということになれば、やはり一つの内閣なら内閣としての判断をすべきときだと思うのですね。この際、政務次官がおられるのですが、政務次官、そういうものについてどのようにお考えになりますか。
  141. 森美秀

    ○森(美)政府委員 ただいまこの問題に関しまして法制審議会で審議をされておりますので、それを待って私ども考えたいと思います。
  142. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 法制審議会を待って云々じゃなくて、法制審議会というのは内閣なら内閣の意思というものについてどうかということを判断するのも審議会なんですよ。隠れみのです、それは。だから私が聞いているのは、内閣の意思はどうなのか、そういう方向で検討することが可能なのかということを質問しておるのですよ。それを審議会にかけるくらいなら、何も私は質問しなくたっていいじゃないですか。審議会を隠れみのに使えばいいんだから。政府側が態度を決めて、どうなのか、間違っておるか、正しいかという判定を求めるべきなんですよ。だから、そういう答弁は私は納得できないですね。——政務次官ですよ。大臣のかわりに来ておられるんだから。
  143. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 法務省のことでございますので、私どもよく承知をいたしておりませんけれども、民法、刑法、その他の法律につきましては、法務省の今日までのいろいろな改正案の審議につきましては、法制審議会の審議というのを非常に前提に置きましてやっておられるようでございまするので、もちろんいま御指摘のような夫婦財産制というのは、いろいろ両論あって御議論をやられておるそうでございます。したがって、政府のほうでこうだということを決める前に、何といいましても法制審議会の御議論をまとめていただくということが、従来の例から申しますと必要になるんじゃないかというふうに思っております。
  144. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 あなたがさっきから話しておるように、率直に言って恩恵的制度としてはもうこれが限界なんだ、あとはもう民法上のたてまえがあるからむずかしいんだということを言われるでしょう。ということになれば、その民法というものに対してどうかということを決めなければいかぬ。そうすると、大蔵省当局としてはもう民法にいかざるを得ないんだということをあなたは言っておられるんだから、ということになれば、民法の改正という問題について、特に妻のこういう財産の問題等については政府が具体的に議論をして、そしてそういうことについては法制審議会の方にどうだろうかと言う、そういうことはあってしかるべきなんですよ。法制審議会に任せ切りなんじゃなくて、刑法改正試案だって、あれは政府の意見はだいぶ入っているんだからね。任せっ放しじゃないのですよ。だから、そういう点が非常に消極的なんですよ。  ことしはしかも国際婦人年でしょう。にもかかわらず、日本の大蔵省はそういう問題についてすら議論をさせようとしない。逃げようとする。私は決定的に、そうしますなんという答弁を求めておるんじゃないですよ。もっと内閣でこういう問題について議論をして、法制審議会なり何なりにお諮りになる意思はありませんか、こう聞いているのだから、なければないで結構です。なければないと言ってもらった方がかえっていいんですがね。
  145. 森美秀

    ○森(美)政府委員 いまの松浦先生のお話、よく承っておきます。
  146. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 しかし、実は私はこの点だけに焦点をしぼってきたんですよ、余り簡単な法律なものですから。承っておきますというんでは、それは私たちが幾ら質問したって、承っておくぐらいなら何も質問しない方がいいんじゃないか、飯の時間まで割いて。  きのうもぼくは大蔵政務次官の御答弁をほかの委員会でお聞きをしておりましたが、御答弁そのものは私はよくわかるんですよ。しかし、それだけで一つも前に進まないんですね。承っておきます、それじゃ私は政治じゃないと思うのです。だから、そういう点はもっと前向きに御答弁できないでしょうかね。だったら、もう一切ここで質問を打ち切って、大蔵大臣と打ち合わせをしていただいて、本会議後に自後の質問を続行するということで、委員長に休憩していただいてもいいですよ。あなたの方が承っておくというなら、私の方も議事運営についてこのような提案をしたいと思うのです。
  147. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 民法の分野は、申しわけございませんけれども、法務省でございますので、私どもの方でとやかく申し上げるわけにはまいりませんが、われわれとすれば、現在の民法のもとにおきます夫婦財産制度を基本には置きながらも、相続税なり贈与税につきまして配偶者への承継制度をできるだけ配慮してまいるということを今日までとってきたわけでございます。  もちろん、いま松浦先生がおっしゃいましたように、恩恵というふうには私ども考えておりません。これはやはり同世代間における相続、財産移転であるということとか、配偶者がその財産形成につきましてあるいは維持につきましてかなりの寄与をしておるというようなことを考えた上のことでございます。しかし、決してそれは女性なるがゆえにそれに対する相続税の恩恵をするというようなことでの問題でございませんで、むしろやはり相続税制として考えているわけでございます。  ただ、その場合におきましても、やはり今回御提案申し上げておりますように、一体三分の一というのが相続税におきますところの配偶者への配慮として適当であるのかどうかというような問題は、なお残っておると思います。その場合に、通常の夫婦財産の共有制度を持っておる国の例にもならいますし、またいま、さっきからいろいろお話しのように、夫婦というのはやはり一対一でございますから、二というのがそもそも当てはまる数字ではないかという考え方ももちろん基本にはあるわけでございます。そういう点は、なおわれわれとしても、今後の民法の改正案に対する御議論というものも考えながら進めてまいらなければなりませんけれども、それでは直ちに、夫婦は一対一でございまするから、すべて財産というのは共有的に考える、あるいは二分の一というものは常に相続においても贈与におきましても非課税にするというところまで割り切るには、なかなかまいらぬわけでございます。  たとえば、私どもが三分の一ということで御提案をいたしましても、やはりそれには何か制限をつけるべきではないかという強い反論がございます。私はもちろんその反論というのも、今日のわが国の状態からすれば当然のことと思います。しかし、それでもなお私どもは、配偶者の地位というものから考えれば、今日までわれわれがとってまいりましたような金額の限度というのを設けるのは余り適当ではないのじゃないかということで御提案を申し上げておりますから、私どもは、いまの日本の現状におきますところの夫婦財産に対する考え方というものから見れば、かなり進んでおる措置をお願いしておると思っておるわけでございます。  今後ともなお、そういった民法をめぐりましてあるいは夫婦財産のあり方をめぐりましての御議論を考えながら、相続税、贈与税の配偶者への承継問題というのを検討してまいりたいと思っております。
  148. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 松浦君御質疑を……。
  149. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は議事運営の提案をしておるのです。私は運営についての提案をしたはずですよ。
  150. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 ちょっと速記をとめて。
  151. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 速記を始めて。  森政務次官。
  152. 森美秀

    ○森(美)政府委員 ただいまのお話につきまして私どもからよく法務省当局に話をしまして、法制審議会でこの議論をしてもらうようにいたしたいと思います。
  153. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そういうことについてはまたほかの委員からも御質問があるでしょうから、私は以上でとめておきます。  続いて、一番問題になります農地相続の関係についてお尋ねをしておきたいのであります。それからまた、農地相続に関連をして、生活基盤に関する生存権的財産についての問題、二つだけを最後質問して終わらせていただきたいのでありますが、この農地相続については、納税猶予制度を特別措置で設けるということで、これは租税三法の議論のときにまたされるのでありましょうが、一応相続税との関連でお尋ねをしておきたいと思うのです。  そこで、農地の相続のあり方について、私がいろいろ質問することよりも、どういうふうなことを考えておられるのか、しかも納税猶予制度というものの仕組みがどんなものかをひとつ簡単に御説明をいただきたいと思います。
  154. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 これはいずれ御審議を願います租税特別措置法の一部を改正する法律案の中に予定をいたしておる問題でございます。今日の相続税の課税を見てみまして、何といいましても、先ほど来御説明申し上げておりますように、土地のウエートというものが非常に高くなってきております。それは一つには、地価の上昇ということが大きな要因になっておることも先ほど来御説明申し上げたところでございますが、そういうことになってまいりますと、生産手段として非常に広大な土地を持っております農家の相続税の問題というのが、そこで出てまいるわけでございます。  この場合に、それはもちろん農家に限りませず、住宅としあるいは事業用財産として土地を大きく持っておる人たちにつきましては、同じような地価上昇によりますところの相続税の負担ということが強く出てまいるわけでございまするけれども、農地につきましては、私は特殊の要因があると思っております。  それは実は大きくは都市化の現象であります。もちろんそういう事態に対処いたしまして、農地につきましては、いわゆる土地の利用についての相当の制限がございます。農地法その他にございますが、そういう農地に対する線引きということが漸次行われてまいりましたし、またその後におきましては、市街化区域、市街化調整区域というようなものも設けられ、いろいろそういったものの整備が行われてまいりましたけれども、何と申しましても、いわゆる農地に対する利用の線引きといいますものがまだまだ浮動的のようでございます。と申しますのは、現に農地から宅地になって住宅地になるというものがかなりあります。  そういたしますと、相続税を課税いたします場合には、農地の評価をいたします場合にも、近傍類地の農地の売買実例等を参酌して評価をいたさなければなりませんが、近傍類地の農地の中で、都市化の現象に伴いまして、たとえば道路になる、たとえば宅地として売られるというようなものとしてかなり高い譲渡価格を持っておるものがずいぶん出てまいるわけでございます。特にそれは、大都市圏周辺に一番大きくあらわれるわけでございます。  それは本来、考えてまいりますれば、農地に対する線引きというのが確固不動のものとして維持せられます限りにおいては、いわゆる農地の宅地化という現象がなくなる地域があるはずでございます。そういたしますと、今日行っておりますような農地に対する評価として、近傍類地の宅地になるものとしての売買実例の評価というのも、そういう線引き内にありますところの農地については存在し得なくなるわけでございます。  ところが、現在の実情を見てみますと、そういう線引きのいかんにかかわりませず、現に農家の意思によりまして宅地化する、売れば売れるというような状況が非常に多うございまするから、勢いやはり近傍類地でそういった売買実例を参酌した評価をとらざるを得ないわけでございます。  それに対しまして、そんな高い評価というのは、われわれ真に農業を今後とも永続しようという者にとっては酷過ぎるのではないかという声が出てきたわけでございます。もちろん私どもも、そういう御意見について十分検討をいたしました。確かに本当に農業を永続される方については、近傍類地といえども宅地になるとしての値段をそのまま評価としてとるのはなかなか無理でございましょう。  そういうことで、本当に農業を永続するという人についての農地に対する相続税の問題を何か考える余地はないかということで検討いたしましたけれども、現実には農地の評価としますれば、近傍類地の評価を持ってまいりまして時価を評定するより手はないわけでございます。しかし、その中で本当に農業を永続してやる、いわばみずからが線引きをするというような形の方につきましては、近傍類地で宅地になるような価格を前提といたしましての相続税をそのままそこで取るのはいかがなものであろうか、納税猶予の制度というのがそこに考えられないものかということを、今日の農地の生前一括制度とあわせて考えてみたわけでございます。  そういうことにいたしまして、自分は農業を永続してやるという人につきましては、それでは宅地並みの評価の部分につきましては相続税の納税を猶予いたします、ずっと農業をやっていただければ、その部分につきましてはそのまま納めていただく必要もなくいたしましょう、ということを考え出したのがこの制度の発想でございます。現実には、もちろん次の相続あるいは二十年たつという期限を設けましたけれども、大体基本的にはそういった構想で今回御提案を申し上げておるわけでございます。
  155. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これはまた後で議論しますから、余り深くは質問いたしませんが、この農業投資価格という言葉、これは私は非常に問題があるのじゃないかと思うのですよ。この農業投資価格というのはどういう解釈で成り立つのですか。  そこで、もうずばりお尋ねをしておきたいのですが、農家の人が端的に知る方法一つしかないと思うのですよ。仮に農地を相続した場合、農業を継続しようとする人はもう税金はかかりません、もう全然税金はかからぬのだ、これが今度のこの相続税の一部改正の目玉だ、だから農家の方は安心してくれということが言えるのかどうかですね。  私は率直に申し上げて、農地というのは生産手段だと思います。だから、農業収益というものを基準にして決められるべきものだと思うのですよ。農業収益以上のものをかけていったら、農家は土地を放す以外にないわけですから、少なくとも農業収益というものを基準に置いていくべきだと思う。ということになれば、そういったものを全体的に判断して農業投資価格ということを言っておるのか。と同時に、いま農業をしておる人たちは、このことによってもう一切相続税もあるいは贈与に関しても農地で農業を継続する限りは税金はかかりませんということを、ここで明確に言っていただくことができるのかどうか。また改めて議論はいたしますが、その点だけきょうはお聞きしておきたいと思います。
  156. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 生産手段として土地を持っているからということで相続税をかけないというわけにはまいりませんし、農家がそういう大きな土地を持って生産を営んでおるから、今回の制度でもって相続税がかからなくなりますということももちろん言えないわけでございます。  そういう判断をいたします場合には、先ほどいろいろ御説明いたしましたように、やはり課税最低限を仮に超えれば相続税を納めていただかなければなりませんし、今回御提案をいたしますような猶予制度が導入されました暁におきましても、課税最低限を超える部分があれば、その部分はまずその相続のときに納税をしていただかなければなりませんし、それからいま御指摘のような、いわゆる農業投資価格を上回る部分に対応する相続税につきましては納税の猶予をいたしますけれども、やはりそれは農業を継続してやっていただかなければならない、そういう条件をずっと満たしていただかなければならない。その間におきまして、途中でもう農業をやめたという方も出てくるわけでございますから、その人たちについては、やはりその上の部分の相続税も納めていただかなければなりません。したがいまして、今回の改正によって農家の相続税はもう納めなくてもよくなったと言うわけにはまいらぬわけでございます。  しかし、今回御提案いたしておりますような、たとえば配偶者と相続人四人の場合の課税最低限四千万円ということが実現をいたしますれば、かなり程度の農家については相続税の問題ということは起こらなくなると思いますし、その上に相続税の納税猶予制度というものが実現をいたしますれば、ますますそういったことになると思います。
  157. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 聞いておると大体そういうことでわかるのですが、しかし、事実問題として、私は農業を継続する場合ということを聞いておるわけです、農業を中断した場合は当然いただくわけですから。一番問題になるのは都市近郊だと思うのですが、都市近郊農家といえども、農業を継続する限りは税金はかからぬのか、その猶予も含めてですよ。猶予というのは、一応納めることを猶予するだけだけれども、猶予をするということによって実質的に手出しはないわけだから、それを続ける限りは大丈夫ですよという、そういう方向をとっておるのか。それとも、一定限度以上の規模の人とはやはりかかりますよということを言っておるのか、その点をひとつはっきりさせてくれませんか。
  158. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いまお話しのように、農業をずっとやるという例につきまして申し上げますと、農業投資価格というもので評価をしまして、課税最低限を超えない限りはもちろんかからないわけでございます。しかも課税最低限というのは、四千万円という数字をとっていただきますれば、かなりの農家というのはもちろん課税の問題というのは生じないと思います。
  159. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 また後で議論しますが、かなりの部分ということではやはりちょっとわかりませんから、今度一遍、農林省の方からもおいでていただいて農地関係については議論したいと思います。  そこで、これと類似したことがやはりあると思うのです。先ほどもちょっとお話をしたのですが、生存権的財産あるいは生活的な資本、たとえば個人住宅とかあるいは零細事業者とか、そういったものについても、農地同様に考えてやるべきじゃないだろうか。  たとえば、これはこの前説明に来られた方にちょっとお話ししたのですが、下町で細々と手焼きせんべいを焼いておる。今後もやはり手焼きせんべいを焼きたい。しかし、実際に相続していった場合には相当莫大な相続税になるといった場合には、やれなくなるわけですね。それを無制限にせよと言うのではないですが、そういった意味金額的のものから、一定の基準ですね、個人住宅とかあるいは零細企業規模とか、そういったものについても、土地と同様にこういった方法を考慮する余地はあるのかないのか、将来の方向として御議論いただく意思があるのかないのか、その点もひとつお聞かせいただきたい。
  160. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いまおっしゃいましたように、生活の基盤となっております生活用の財産あるいは生活を支えます基盤となっております事業用の財産というものについて相続税をかけないようにするというのは、私は課税最低限の高さの問題として考えていただきたいのでございます。したがいまして、おっしゃいますように細々とやっておる事業の財産というのは、それがかかるようでは課税最低限の高さというのがあるいは低過ぎるのかもしれません。どういった事情で課税になるかということをやはり考えてみなければならないと思いますけれども、いずれにしましても、それは課税最低限の高さということでお考えをいただきたいのでございます。  ただそこで、今回措置法でお願いをいたそうと思っております農地についての相続税の猶予制度というものが導入をされますと、同じような考え方が中小企業についても行われないのか、あるいは一般の住宅財産についても行われないのかという御議論が直ちに出てまいっておることはよく承知をいたしております。しかしそれは、先ほど御説明をいたしましたように、実は基本的にかみ合わない議論だと思っております。なぜ農家について今回の特例が行われたのかというのは、それはもちろん農業というものが大変大切であります、あるいは農地というものが大切でありますという気持ちは持っておりますけれども、相続税の側から申せば、農業も大切でございますれば中小企業も大切でございますし、勤労者の居住用財産ということも大切なわけでございまして、それはやはり一律に考えなければならないと思っております。  そこで違いますのは、先ほど来申し上げておりますように、農地の評価につきまして、その利用制限というのが本当に確立をいたしますれば生じないというような評価が、いまそこが非常に浮動的なものでございますので、近傍類地の都市化の現象によってそういう評価を余儀なくされる、それを避けがたいというのがこの農地にあるわけでございます。中小企業の事業用地につきましては、そういった問題はないわけでございます。また、私どもが住んでおる住宅用地についても、そういうことはないわけでございます。  そこで、今回特例としてお願いをいたしておりますのは、いわば農地についての線引きというものを税制上だけではっきりとつけていただければ、それに沿ったような課税ができるような仕組みというので考えたわけでございますので、こういう制度ができましたから、それではほかの土地についてもすぐ適用できるなということにはなかなかまいらない。したがいまして、そういうことは、この制度を認めていただきましても、ちょっとすぐさま類推適用というのはむずかしいのだろうと思っております。
  161. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は決していま言っておることを否定するつもりはないのです。ただ、将来の税制のあり方として、金額的なものだけで基準を求めるのではなくて、控除部分を金額だけを高めることによってきめるのではなくて、生存権を守るための財産として、一定規模とか一定面積というようなもので控除をしていくということも一つ方法ではないだろうか、余り金額だけでいくと、青空になって非常に矛盾が起こってくるわけです。だから、そういったものを改めるために、一定規模、一定面積というものを認めていくというような、これは極端に言うと、抜本的な改正のあり方ですね。そういった生存権を認めた財産課税というか、そういったものについてやはり方向づけとしては将来の問題として議論をしてもらいたい。  そういう点について政務次官なり大蔵当局の御意見を承って私の質問は終わりますが、これは簡単な法律ですけれども、しかし、もし答弁がおかしければまたここに座り込みますから、明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  162. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 今日のわが国のように非常に都市化現象が盛んでございますと、いまおっしゃっておりますような問題が確かにございます。私どもが課税最低限を考えます場合にも、先ほど申しましたように、生活上の基盤としての居住用財産、あるいはそれを支えておりますような事業用財産というものをどの程度から課税したらいいかということを考えるわけでございまするが、それがたとえば東京の中におきますものと、地方の非常に端っこにおきますものとではかなり違うことは確かでございます。ですから、そういうものを同じように考えるためには、実物的に課税最低限を考えたらいいのではないかという御議論もあることも確かでございます。  その場合に私どもが考えなければなりませんのは、一体、たとえば相続税の課税を受ける人がどういうような財産形態でもってその遺産というものを持っておるのかということを、税法は余り干渉しないというのが一番いい姿であろうと思っております。  また、もろもろの人でございますから、自分は借家に住んで、しかし動産にいい物を持つという方もございましょうし、いや自分は宅地としてりっぱなものを持ちたいという人もございましょうし、借地の上にりっぱな家を持ちたいという人もございましょう、あるいは宝石に非常に選好を持つ人もございましょうから、いろんな財産形態に対する選好というものは相続税の上では余り配慮しないということを考えますれば、やはりどうしても金額ということにならざるを得ないのでございます。  金額の中でお好きな財産をお持ちいただいて支障がございませんが、東京におきますところの同じ二百平米と、地方におきますところの二百平米でございますけれども、そこは値段の違いというものはのみ込んでいただきまして、課税最低限を超えれば、やはりそれは売れる値段でございますから、東京で高ければ東京で売って、地方で買えばもう少し広いところが買えるのでございますから、そういう処分時価ということで一律に考えさしていただいて、しかし、そこは全体として課税最低限の高さで考えるということにどうもならざるを得ないのでございます。
  163. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ちょっといまの局長の御答弁は不用意だと思うのですよね。高ければ土地を売って、どこかでまた生活をしてもらわなければしようがないという言い方に聞こえますよ。あなた、そんなひどい言い方はないでしょう。東京の二百坪が控除最低額の四千万を超えた、だから税がかかってくる、家を売ってあなたは地方の土地を買ってそっちに住んだらいいじゃないか、そういう言い方は私はちょっと暴言だと思いますよ。極端な言い方をすると、本当にもう橋の下にでも生活せよと言うことと一緒ですよ。  だから、金額でいくと、あなたがいみじくも答弁しなければならぬような矛盾が起こるわけですよ。だから私が言っているように、将来の方向として、そういったものも検討を加える余地はないんですかと、こう聞いたわけです。現在そうせよと言っているのじゃないんですよ。にもかかわらず、いまあなたはせぬせぬと言っているのですよ。これはちょっと問題がある。いまの答弁はそういう意味にみんなとっておりますよ。間違っておったらいま訂正したらいいです。
  164. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 そういうふうにおとりいただきますと私の真意と違うのでございまして、私の申しましたのは、同じ二百平米を持っておりましても、いまは相続税の評価は処分時価でございますから、東京都ではやはりいまおっしゃいましたように四千万円の評価がつくかもしれません。それから、地方におきましては同じ二百平米でも二百万円で済むかもしれません。しかし、四千万円のものを持っておられればやはり四千万円のものとして相続税の課税を受けていただかなければ、これはしようがありませんということでございます。  それから、今後それではそういう実物的な課税最低限を考える余地はあるのかというお話でございますけれども、それは今日まで十分そういう御議論のあることも承知しながら、私どもとすれば、ただいまるる申しましたように、実物的な課税最低限ということでなしに、やはり金銭評価をもとにしましたところの課税最低限にどうしても帰着せざるを得ないという経緯がございますので、いまここでまた、もちろん検討は常にやっておるわけでございますけれども、そういう方向をとり得る余地があるということは、実はこれまでの研究から言いますとなかなかむずかしいということを申し上げたわけでございます。
  165. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうもやはり生存権の問題ですからね。金額でいくと、都市部に住んでおる人たちの評価額というのは高いですよね、田舎に行けば行くほど緩やかなんですから。ということになれば、田舎に行けば行くほど生存権的財産はだあっとふえていくわけです。都市部におる人たちは縮小されていくわけですね。その矛盾というものは非常に大きく出てくるわけですよ。だから、そういう矛盾が出てきているにかかわらず、なおかつ課税すればいいのだ、課税すればいいのだという言い方は、私は問題があると思う。  だから、さっきから言うように、さらに生存権的財産というものについての議論をしていく考えはありますかと聞いておる。将来にもないというようにあなたは言っておるでしょう。それでは矛盾が拡大するだけだから、そういうことを将来に向かってさらに検討してくれませんかと、こう聞いておる。それでもせぬせぬと言うならそれでもいいですよ。  もう政務次官の方がいいのじゃないですか。
  166. 森美秀

    ○森(美)政府委員 現在の社会構造からいきまして、課税最低限という金でもってすべてを律するということは、やはりこれはわれわれ反省しなければならないことだと思います。いま松浦先生の御提案はよくわかりますが、そういう意味におきまして、私ども、金だけがすべてでないのだという気持ちで今後やっていかなければならないということを心に感ずるものでございます。どうか、現在のところはとりあえず課税最低限で律していることは御了承いただきたい、こう考えます。
  167. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 終わります。      ————◇—————
  168. 上村千一郎

    ○上村委員長 次に、昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案を議題といたします。  本案は、去る十四日質疑を終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  169. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案に対し、反対の意見を表明するものであります。  私どもが本案に反対する第一の理由は、剰余金の処理に対する政府の姿勢がきわめて安易であり、国の財政の健全均衡を保障していく原則規定である財政法を便宜主義的に取り扱っている政府の政治姿勢に、深い危惧を感ずるからであります。  現在の減債制度の中におきまして、財政法第六条の規定による剰余金の二分の一の繰り入れが、補完的な役割りを担うものと位置づけられているとしても、原則として公債発行を制限し、健全財政主義を表明している今日の財政法の立場からすれば、剰余金はまずこれを減債基金に充てるべき性格のものであって、それゆえにこそ、財政処理の基本法たる財政法に剰余金の使途制限規定が設けられていると解すべきであります。  このように考えてみますと、当面の財政事情によって安易に特別措置を講ずることは、きわめて便宜主義的な施策であり、減債制度の意義や効果をゆがめるものであると言わざるを得ません。  第二は、今回の特例措置が国債の個人消化を促進するという面において悪影響を与えることが避けられないという点であります。  現在、国債の消化は、そのほとんどが市中金融機関によってなされ、それが一年経過すれば日銀の買いオペの対象となっております。このことは、成長通貨の供給方式一つであって、すぐれて金融政策上の問題であるとはいいながら、これが通貨の過度の増発を招き、インフレ助長要因として働くのではないかと強く懸念されているのであります。  したがいまして、国債発行については、真の意味における市中消化の原則を貫くことが必要であり、個人消化の促進を図ることが望ましいことは言うまでもありません。  そのためには、何といっても、政府は国債政策の運営に当たって、常に公正で節度ある態度で臨み、国民の理解を得ることが大切であり、また、そのことが個人消化の促進策の礎石となっていなければなりません。  今回の特例措置は、このような国債政策についても、国民の信頼を高めるという方向に逆行するものであることを、政府は強く認識しなければならないのであります。  第三は、国債管理政策上からも国債整理基金の財源を充実させておくことが肝要であるという点であります。  現在、いわゆる建設国債の残高は約十兆円に達し、利子支払い額も数千億に上っております。このような現状を顧みますれば、国債の発行量を圧縮することはもちろん、累積している国債について、償還資金に余裕を生じた場合には、金融情勢等の推移に即応しながら、できるだけ繰り上げ償還等の措置をとり、財政負担の軽減を図るべき時期に来ていることは間違いなく判断されるのであります。  このやり方こそが、将来にわたり財政の弾力性を保持し、問題となっている財政硬直化の打開にもつながるものであることを厳しく指摘しなければなりません。こうした点から見まして、今回の特例措置は、長期的な視点を欠いた場当たり的なものであることを明らかに指摘しておきたいと思います。  以上、本案に対する反対の理由の一端を申し述べて、私の反対討論を終わります。(拍手)
  170. 上村千一郎

    ○上村委員長 荒木宏君。
  171. 荒木宏

    ○荒木委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案について反対の態度を表明して討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案はインフレ抑制に全く役立たないばかりか、多額の長期国債の発行というインフレ政策に根本的メスを入れることになっていない点にあります。  インフレ抑制のための公債政策は、わが党がかねてから主張しておりますように、長期国債の発行についてこれを大幅に縮減することにあります。ところが、昭和五十年度政府予算では、二兆円という膨大な長期国債発行が予定されており、その規模は戦後第三番目の巨額なものに達しています。実質GNPがマイナスに落ち込んでいるとき、このような多額の長期国債の発行を行いつつ、しかも剰余金を原則どおり国債整理基金に繰り入れず、その五分の四を一般会計に入れるということ自体、政府にはインフレ抑制の意思が全くないものと言わざるを得ないのであります。  こういう点から見れば、本法案は、広範な国民が要求している物価安定、インフレ抑制の実現の方向とは全く相入れないものと言わざるを得ません。  反対の第二の理由は、本法案が財政硬直化打開に役立たないばかりか、むしろ膨大な長期国債発行と合わせて見るなら、財政硬直化を一層促進するものになっているからであります。  すなわち、長期国債発行残高は五十年度末には十兆円にもなろうとしており、この膨大な公債償還と利払いのための公債費は、五十年度予算では、四十九年度対比で約千八百億円増加し一兆円を超え、軍事費や大企業のための産業基盤整備を中心とする公共投資などと並んで、財政硬直化の大きな要因となっております。  しかるに、すでに述べましたように、多額の国債の新規発行を予定するばかりか、旧債の償還すら原則以下に抑制し、その結果公債費を増加させるということは、財政硬直化を一層促進するということは明らかであります。  第三の理由は、かかる膨大な剰余金が発生する根本原因である重税政策を放置したまま、その点にメスを入れるものになっていないことにあります。  高度成長を促進した急激な財政膨張を歳入面から支えてきたのが、自然増収という名の増税政策にあり、しかもその大宗は所得税に置かれ、国民収奪を強化することにあったのであります。このことは、昭和四十八年度の所得税減税は約三千億に過ぎず、しかもその前年には所得税減税を実施しなかったことからも明白な事実であります。この経過からしますならば、当然のこととして、この剰余金の処理に特例を設けようとするとき、所得税減税を実施して国民に返すべきものだと言わなくてはなりません。  しかるに政府は、それを一般財源に投入し、一兆円を超える軍事費や繰り延べ分も含めて三兆二千億を超える産業基盤中心の公共事業など、従来の大企業本位、対米従属の財政の仕組みを維持し続けようとしているのであり、わが党の絶対認めることのできないところであります。  以上の理由を述べて、反対討論を終わります。(拍手)
  172. 上村千一郎

    ○上村委員長 広沢直樹君。
  173. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案に反対の討論を行います。  政府は、この法律案の提案理由を、土地の譲渡所得税等が大幅に増加したことにより予想外の自然増収が生じたこと、また昭和五十年度予算については当面の財政事情を勘案する必要がある等といたしております。  しかしながら、財政制度審議会の報告によれば、公債発行下の財政では剰余金の発生は少なく、四十八年のように異常に多額の剰余金が発生することは、全く予想外のことであると言っています。これは言うまでもなく、土地を初め物価高騰の原因である異常なインフレ促進政策の失敗を証明するものであります。  また、政府は四十八年度の当初及び補正予算において、公明党を初め野党四党の共同提案による勤労者、中小零細企業の大幅減税、土地税制の強化、国債の発行縮小、歳出面でも、物価の安定、社会保障の充実等、国民生活の実情から要求した組み替え案を財政難を理由に無視して、歳入予算を過小見積もりした政府予算案を強行したのであります。政府はみずからの予算編成の失敗を財政法の変更によって他に転嫁しようとするものであり、認めるわけにはいきません。  さらに、現在、五十年度発行予定額を含めて国債発行高が十兆円を超えていることからも、種々の問題があるとしても、財政の赤字を縮小するため、四十九年度に行ったように買い入れ消却を行うべきであり、そのことが政府の言う引き締め型予算に通ずるものと考えるものであります。  また、百歩譲って、特別措置を講ずるとしても、予算の憲法ともいうべき財政法の変更等の重要事項については、予算案を提出した後などというきわめて審議期間の限られたときに提出すべきではなく、予算編成前の臨時国会等で十分審議を尽くすべきではなかったかと思うのであります。この点からも、こういったあり方には納得できません。  最後に、政府の提案理由による当面の財政事情、すなわち、景気が不況で歳入の伸びが期待できないとか、財源があるとかないとか、そのときの御都合主義で財政運営を行うことは、財政法の精神を踏みにじるものであり、認めるわけにはいかないのであります。  以上、簡単でありますが申し述べました理由により、政府案に反対するものであります。(拍手)
  174. 上村千一郎

    ○上村委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  175. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより採決に入ります。  昭和四十八年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  176. 上村千一郎

    ○上村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  177. 上村千一郎

    ○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  178. 上村千一郎

    ○上村委員長 暫時休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ————◇—————     午後四時九分開議
  179. 上村千一郎

    ○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  入場税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。増本一彦君。
  180. 増本一彦

    ○増本委員 初めに入場税からお伺いいたします。  五十年度の入場税税収見込みは一応三十億円ということになっておりますね。これは国税収入十八兆二千億円の何%になるのですか。
  181. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 〇・〇二%程度でございます。
  182. 増本一彦

    ○増本委員 〇・〇二ではなくて、〇・〇〇二でしょう。
  183. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 四十八年度が〇・一%でございまして、四十九年度も〇・一%、五十年度は〇・ ○二%になります。
  184. 増本一彦

    ○増本委員 わずか〇・〇二%という状況になっているのに、このこと自身はそれなりに評価できるとしまして、それならばいっそのこと入場税は廃止した方がいいんじゃないか。なぜ廃止できないのか、この理由をひとつ聞かせてください。
  185. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 確かに入場税の五十年度の収入見込みは約三十億円でございますし、その国税総額のうちに占めるウエートは、先ほど御説明しましたように非常に小さなものでございます。ただ、税収から言いますれば、すでにその程度のものも一つの税目として存在をしておるものもございます。  しかし、ここで私どもが考えなければなりませんのは、わが国のように個別消費税の税制を持っておりますものとしましては、個別消費税の中でもやはりサービス課税というものにつきましても、国税、地方税を通じてある程度の課税が行われるのは至当ではないかと思っております。すでに国税におきまして入場税、地方税におきまして料理飲食等消費税、娯楽施設利用税というようなものがございます。確かに入場税は、その二税に比べますと、サービス課税としての範囲が実はいままで非常に広範囲でございましたけれども、今回提案いたしますように、その中でもより高級のものと見込まれますものについてのみ課税をするということになりましたから、税収は従来に比べまして約四分の一になるのでございますけれども、やはりサービス課税という観点から申せば一つの重要な税目であるということでございまして、廃止するのは適当ではないと思っております。
  186. 増本一彦

    ○増本委員 サービスに対する課税としての税目だから残しておく、これがわからないのですよね。つまり入場税などという税を、競輪や競馬はとりあえず議論があるから除きましょう。ほかのものについて考えてみますと、これはサービスにもいろいろな種類があります。しかし、事文化にかかわるサービスを供給したりあるいはそれを享受する、この享受する側にあくまでもサービスを受けるからということで税目を残しておくという、ここのところのいわば政策の選択の問題だと思うのですね。  だから、税だけで見るのじゃなくて、全体の文化政策なりあるいはそれに関連するポリシーとして考えれば、もうすでに国庫収入全体から見てもほとんど比重を失っているものを、それ自身は前進であるし、当然のことなんですが、それはあくまでも三十億円、〇・〇二%であろうとも、必要なあるいは重要な税目だから残しておかなくちやならない、これで政府国民を納得させることができると思っておるのですか。もう一度そこのところを含めてお話を伺いたい。
  187. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 この点に関しましてはこれまでもしばしば御説明をしましたと思いますが、やっております催し物自体の文化の高さというものについて私どもは税金をかけるものではございません。そういう文化、芸術の催し物に対しまして、ある程度の料金を払って入場をする人の担税力に課税をいたすわけでございます。  そうした場合に、たとえば通行税におきましても、移動しなければならないといういろいろな事由がございますけれども、その中でも一般的な人から見まして、上等のクラスに乗って移動をする人あるいは上等の交通手段を用いて移動する人については、何がしかの担税力というのを推定いたしまして課税をしてしかるべきものだと考えております。  入場税につきましても同じことでございまして、今回御提案をいたしております程度の免税点でございますれば、映画を見ますについてまず千五百円を超えて入る人というのは、およそ映画館の入場者としましてはかなり上等の部類に属すると思います。映画を見ますについてその程度金額を払い得る人、あるいは音楽会、演劇等に対して三千円を超えて入り得る人——大部分の人、九八%ぐらいの人というのはもっと低廉な料金でもってその文化にあずかるわけでございますけれども、それを超えて、あえて高い金高を負担してまでそういうところに入るという人につきましては、何がしかの税負担をしてもらってもいい、担税力があるというふうに推定をするわけでございます。  したがいまして、文化的な催し物でございますけれども、そういうものへ参加し得る、上等の席に参加し得る、一般の人よりもかなり高い水準の料金を負担し得るという人の税源を推定しまして課税をするというのは、やはり税制の上から言いましては至当ではないかと思っております。
  188. 増本一彦

    ○増本委員 通行税の場合には、A寝台のようにサービスが具体的でかつ物質的な面がありますね。ところが、入場税で観覧という場合に、それは確かに前の方のしかも真ん中のいい席で、シートもいいかもしれない。しかし問題は、そのサービスというのはそれだけじゃないでしょう。寝台で運ばれていく、その間にA寝台のふわふわしたところで寝て行ける、それはもうきわめて即物的だけれども、しかし文化を享受するという場合との間に、全く同じ性質のものだというぐあいに考えて、通行税のようなものもあるから、入場税についても上等の場合には税は負担すべしというぐあいに一概にいくものだろうかということに、私は大変疑念を持つのです。  むしろそのサービスというのは、文化的なもの、芸能なり映画なり、そういういわば精神に直接かかわったものですよ。そうでしょう。そういうものを享受するところで税をかけていくということ自身に、この入場税の一番本質的な問題があるんだというように思うのですよ。そういうぐあいに考えれば、この入場税はすべて廃止しても私は至当だと思うのですが、考慮の余地というものは全然ないものですかね。  たとえばこういうことなんですよ。いい席だから入場料金が高いという場合ももちろんある。しかし、もう一つは、その受けられるサービスである芸能なりあるいは芸術そのものの価値が高いがゆえに料金が高いという場合もあるわけですね。そういうものに対してもそれを見る人に対して担税力があるからということだけで課税していくというのは、文化とのかかわり合いでどういうことになるのだ。これは同じように文化の振興というような面から見ても私は問題があるという意味で議論をしているのですが、いかがですか。
  189. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 担税力と申しますのは、いまおっしゃいましたように、非常に文化の程度の高い、芸術の香りの高い催し物に参加をする、あるいはその催し物を享受するということではございませんで、一般的な水準から見てその程度金額を投じて見得るというのは、何がしかの所得がある、あるいは財産があるからこそそういう高い金を投じて見に行けるわけでございます。それはもちろんその中には、いや三度の飯を一回やめても見に行く人もおるというお話もございましょうけれども、概括的な話をするとすれば、ある程度金額、しかもかなり高い免税点以上の金額を投じてそういう文化的な催し物に入り得るという人は、やはり担税力があると推定せざるを得ないわけでございます。  そういう催し物の質を私どもは云々しているわけではございませんで、いまの一般の水準から見まして、相当高い程度入場料金を払い得るという人の背後に存する所得なり財産という税源、それを担税力として課税をしてしかるべきだろうというふうに思うわけでございます。また、そういう観点というのは、およそ間接税については基本的なものでございますし、各国の入場料金に対する課税を見てみましても、そういうような観点から課税をしている国が非常に多いわけでございます。
  190. 増本一彦

    ○増本委員 担税力のお話がありましたので、それと関連して、税率の問題も含めてお考えを伺いたいと思います。  いままで現行法では、映画の場合には千円以下五%、それを超える場合一〇%、なまものが二千円以下五%、それから二千円を超える場合が一〇%。今度ずっと課税最低限が引き上がって、いきなり一〇%ですね。この税率は私は高いというように思うのです。むしろ税率はそのまま据え置いちゃっているわけですね。少なくとも芸術関係あるいは芸能関係入場税について非常に関心を持っていらっしゃる一般の人たちは、これはむしろ半分ぐらいにしてもらいたいという切実な要求がある。税率を半分の五%にすることはできないのですか。
  191. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 税率が一〇%で絶対的に正しいと私ども思っておりません。これはやはり相対的なものでございますから、そのときそのときの他の税制の仕組みというものとあわせて考えなければならないと思っております。  その場合に、一つには、いまおっしゃったように、現行のもとにおきまして五%、一〇%という二段税率をとっておりますが、今回五%適用部分を上回るところの免税点を設定しましたから、五%という課税はそこに吸収をされたというふうにまず見まして、五%という部分の税率をやめたわけでございます。  それからまた、先ほど来御指摘のございますサービス課税につきましての、国税、地方税を通じまして大体一〇%というのが一つの目安になった課税率でございますので、その一〇%というのをそのまま今回の改正後の税率としてもとったわけでございます。
  192. 増本一彦

    ○増本委員 サービスに対する課税としてこの税目は残しておきたい、しかも税率は一〇%で据え置きにしておく。ここでこれまでの大蔵省主税局などの、あるいは政府のそれぞれの発言などを見てみますと、どうも一般消費税とかあるいは付加価値税の導入ということを一応予定しておって、そうしてそのときにそれに移行するためには、入場税という税目は残しておかなくちゃいかぬ。そのときに、たとえば付加価値税の税率が六%とか七%、あるいは五%というような水準になる場合、いまここで下げると上げなくちゃならないので、一〇%の階段はそのままにしておいて、将来を見越しているというように私は考えざるを得ないのですよ。  いま本会議で、私も付加価値税あるいは一般消費税の導入をどう思っているのだということで総理の意見も伺いました。いま考えていないというお話もありましたけれども、しかし検討をしているという立場で見ていくと、将来採用される可能性も少なくとも五〇%はあるわけですね。やらないという可能性も五〇%。そのときに、たとえば西ヨーロッパなどを見ましても、結局入場税がなくなって、それが付加価値税という形に移行して、現在もそういう形で続いているわけですね。同じようなことを政府はやはり考えているのじゃないだろうかというように思うのですが、いかがですか。
  193. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いま付加価値税のお話がありましたけれども、私どもは付加価値税の問題というのは、あるいは一般消費税の問題というのは、わが国の税制の今後を考えます場合には、やはり重要な検討課題であると思っております。特に今後経済の安定成長というようなものを目指し、しかも社会福祉その他の施策を進めてまいるということになりましたときに、一体そういうものの財源をどこに求めるべきかということは、今後わが国にとっての大きな研究課題だろうと思っております。  そのときには、もちろん国民の選択でございまして、どういう税制をとるかということは、恐らく非常に熱烈なる御論議が行われると思いますけれども、目を外国に転じてみましてそういった部面を考えてみますと、やはり一般的な消費税というもののウエートがかなり高いわけでございます。しかもいまおっしゃいましたように、入場税がそういうものに移行したというよりは、私はむしろ各国の一般消費税の歴史を振り返ってみますと、第一次大戦なり第二次大戦の後におきますところの戦後財政というものから、いわゆる売上税という形で逐次入ってまいりましたものがだんだん馴化をされまして、今日の付加価値税というような形になっておるものだと思っております。  今日、先進国の中で一般的な消費税を持っていない国と言いますのは、アメリカは連邦税としては持っておりませんけれども、州税で持っておりますから、わが国だけということになっております。もちろん、それでもって財政が賄えるという段階であればそれでも結構なんでございますけれども、将来の問題として福祉を考え、財源を考えるという場合には、経済の成長ということとも関連をいたしまして、どうしてもそういう問題は非常に熱心に検討しなければならない問題だと思っております。  しかし、それはまた今後の研究課題の問題でございまして、今日入場税を持っておりまして、今回御提案しお願いをしております免税点によれば、いままで入場税を納めておった人の九八%とか九九%の人というものは入場税から縁がなくなるわけでございます。そういう人たちにやがていつの日にか一般的消費税をかけるから、残りの一%、二%の人に入場税を納めてもらっておると言っても、それは論理的に合わない話でございます。私は、むしろわが国の中でウエートが低いと言われている間接税、その中でもサービス課税に対する間接税の地位ということを考えますれば、この程度のものは残しておいてもいいのだというそれだけの考えから、今回免税点を大幅に引き上げていただくとともに、なお一般的な入場料金の水準から見まして、一割程度国庫へ対する寄与をやっていただいてもしかるべきだという観点から、入場税を残していただこうと思っておるわけでございます。
  194. 増本一彦

    ○増本委員 政務次官、わずか三十億円ですよね、国庫に収納されるものは。しかもこれはサービス課税として重要な税目だから、あくまでも残しておくのだといういまの事務当局のお話ですね。  では、サービス課税として仮に免税点がいま三千円あるいは千五百円というように上がったとしても、あなたはこの一〇%、というのは税率として適当だと思いますか、あるいはもっと下げるというお考えはないですか。いかがですか。
  195. 森美秀

    ○森(美)政府委員 これは実は御承知のように、四十八年度に五%に税率を引き下げたわけでございます。それは、大衆の負担を少しでも軽減しようというような意味で引き下げたわけでございますが、今回のこの改正は、もうほとんどの部分がなくなってしまうので、相当ぜいたくと言われるくらい高級なものでなければ税がつかないということ、そういうためにこの際一〇%ぐらいならいいじゃないかという、むしろ一〇%というのは昔からの、御承知のようにある意味で原則的な税率だと私ども心得ておるわけでございます。その意味で御理解いただきたい、こう考えておる次第でございます。
  196. 増本一彦

    ○増本委員 一〇%というのは計算はしやすいのですよ。しかし、五%だって計算しやすいわけです。だから、そういう意味での徴税上の煩瑣ということは、下げてもないわけですよね。ゼロにするのが私は一番いいと思いますけれども、それはともかくとして、段階的に考えるとしましても、ここのところはこれからの文化その他を考える方向として、私は政府として十分検討してしかるべき問題だというふうに思うのです。  実は先ほど局長の方は、これは御自分の御意見なんですかね、付加価値税とか一般消費税はこれからの中では十分検討しなければならない課題だと言われたのは。あるいはそのことが政府の方針なんですかね。どちらにしても、そういうものとの兼ね合いで、この入場税の税目がどんなに国庫収入の比率が小さくなろうとも、あるいは収入額そのものも小さくなろうとも、あくまでもかじりついていくのだということであれば、私の方はますますそういう疑惑を持たざるを得なくなる。そのことを、そうではないのだということをはっきりおっしゃるならば、せめてこの国民の文化に対する要求、その中でいま中心になっている一つの問題が、入場税を廃止するなりもっと大幅に軽減してもらいたい、そしてもっと高級なすばらしい芸術、芸能に接する機会も与えるようにしてほしい、この要求にもこたえることになると思います。そういう意味からも十分検討されてしかるべきだと思うのですが、その将来に向かってのお話は、どうも政務次官から伺えないのですが、その点はいかがなんですか。
  197. 森美秀

    ○森(美)政府委員 先ほど主税局長も答えましたように、一〇%が何でもかんでもいいのだ、五%は悪いのだという議論とは、私いささか違うと思うのです。その意味におきまして、今回は一〇%で御理解いただきたい、こういうことでございまして、将来のことを……(増本委員「考えるのですか」と呼ぶ)その付加価値税のことその他につきましては、これから先やはり問題を将来につないで考えたいと思っております。
  198. 増本一彦

    ○増本委員 これから将来にわたって議論をしていかなくちゃならない、そのために整理をしておくのですが、いま付加価値税とか一般消費税というものは十分検討しなくちゃならない課題だという趣旨のことをおっしゃいましたが、これは局長自身のお考えなんですか、それとも政府当局のお考えなんですか、その点はどうなんです。
  199. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 これは、私も税制当局の一員でございますから、あらゆる問題について研究をしなければならない責務を負っております。その者としての考えでもございますけれども、それは別といたしまして、長い間、税制調査会におきましても一般消費税の問題というのは御討議があり、何回も答申があるわけでございます。しかし、もちろんそれは、早急にこれを実施しろというよりは、むしろいま申しましたような税体系の問題、歳出の問題をあわせまして国民の選択の問題であるということで、十分御論議を早い時期からやってもらった方がいいのではないかという答申でございます。  したがいまして、政府としてまだそういうことをどうするというような統一的な見解を持ったわけではございませんけれども、内閣総理大臣に対しますところの税制調査会の答申の中には、しばしばそのことが言われております。
  200. 増本一彦

    ○増本委員 一般消費税とか付加価値税の導入については、再三再四私たちも反対だという主張をしています。これは詰めた議論はまた別の機会に譲りたいと思います。  そこで、相続税の問題ですが、今回の相続税法改正案の中で、土地評価審議会というのが今度できることになっているわけです。この中身を見てみますと、一つは、関係行政機関の職員が構成メンバーの中に入るということになっています。この関係行政機関の職員というのは一体どういう範疇の人たちを指すのか、まずお答えいただきたい。
  201. 横井正美

    ○横井政府委員 制度の趣旨は御案内のように土地の評価、こういうことでございますので、それに関連いたします行政機関ということで、たとえば農林省の地方農政局あるいは大蔵省の財務局等を考えておるわけでございます。
  202. 増本一彦

    ○増本委員 これはすべて国税局長が任命するというたてまえになっていますね。任命する場合の基準というものは、すでに内部では明らかになっているのですか。その資格、構成要素等々、どういう人が適当なのか、どういう人を選ぶべきなのかという基準は明らかになっているのですか。
  203. 横井正美

    ○横井政府委員 委員の選任につきましては、相続税法改正案が成立をいたしましてから各国税局で行うことになるわけでございまして、現在の段階におきましては、関係行政機関あるいは地方公共団体、学識経験者、それぞれどういう範疇の方が入るのが適当かということを内部的に検討しておる段階でございまして、具体的に人選等まで進んでおるということではございません。
  204. 増本一彦

    ○増本委員 いま相続税の問題が国民の中でも深刻になっている。その階層を見てみますと、農民のための農業用資産をいかに保全するか、それから中小零細業者の営業用資産を含めていかにそれを保全するか、あるいは勤労者の居住用資産をどうしたらいいか、ここのところで非常に深刻な問題になっているわけです。  そこで、この土地評価審議会の中にこれらの農民の代表とか中小零細業者の代表とかあるいは勤労者の代表を入れるべきではないかと私は思うのですが、そういうお考えというのは全然ないのですか。
  205. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 今回御提案をいたしております土地評価審議会は、土地の評価に関する事項でいろいろ国税局長にアドバイスをしていただこうというねらいのものでございます。御承知のように、土地の評価というのは非常にむずかしい問題をはらんでおりまして、やはりその道の権威者が一番必要なわけでございます。しかも、その権威者の中でもまた見解が多々分かれておるわけでございますので、今回はその権威者としまして地方公共団体で長らくそういう評価の事務に習熟しておられる方とか、あるいは農業関係団体としてそういう農地のあっせんというようなことから農地の評価について御経験の深い方とかいうような方を一応主な内容として考えておるわけでございます。  もちろん、おっしゃいますように、相続税というのはある程度の財産を持っておられる人、農地であれ事業用資産であれ住宅用資産であれ、そういうものを持っておる人と縁が深いわけですけれども、その課税を受ける人が必ずしもその評価について深い学識経験を持っているというわけにはまいりませんので、むしろやはりこのところは適正な公正な評価というものをいかに実現したらいいかというような問題を審議していただきますので、納税に当たって非常に御縁の深い方というよりは、先ほど申しましたような評価についての経験の深い方という意味におきまして、いまお示しのように、納税者代表という意味でそういう方々にお入りいただくということは実は考えておりません。
  206. 増本一彦

    ○増本委員 この土地評価審議会は、後に審議される租税特別措置法では、農業投資価格の基準ですか、これについても審議することになるわけですね。  相続税については、もう一つの問題は、課税最低限とのかかわり合いで、結局、相続を受ける人たちのそれぞれの適正な資産はできるだけ確保するようにしたいという意味が含まれていますね。たとえば適正な規模の農業用資産だけは、これはやはりきちっと確保してあげなければならぬという意味は当然あるだろうと思うのですよ、政策的に見たって。営業用資産だって、それが相続によって一代限りでつぶれてしまうということのないように保全してあげようという社会的な要請、あるいは社会政策的な要請というものも加味しなければならないはずです。そういうような一定の規模等を考慮するというようなことまで含めて、土地についての——資産というのは特に土地が問題ですから、そういう点を見てみますと、やはり私はこういうような人たちの意見も十分反映されるようにしていくということが、実際の具体的な相続財産の評価にかかわる問題だけれども、これはしかし重要な問題ではないかというように思うのです。だから、その点では政府説明には私は納得できないのですが、そういう点はこの土地評価審議会の中でもやはり十分な考慮というものをすべきだと思うのですが、その点はいかがなんですか。
  207. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 ただいま適正な事業用資産、適正な生活用財産というお話がございましたけれども、大体結論としては私どもの考えているのと同じことを言っておられましょうけれども、私どもはその適正という意味は、ある程度水準までの方というふうに言いたいのでございます。適正なあるいは従来ずっと使ってこられた事業用財産といえども、その時代時代の水準から見まして大規模であるというふうに思った場合には、やはりそれは財産の再配分という相続税を受けていただかなければならないと思っております。  そうしますと、その場合には、何といいましてもやはり課税最低限の水準というものが一番大きな問題になると思います。課税最低限を考えます場合には、もちろん、たとえばこの程度、通常の農家であれば建物のほかに農地をどれくらい持っておっても課税最低限で救われるなとか、あるいは通常の勤労者であれば、通常の中小企業者であれば、この程度の宅地なり事業用地を持っておりましても課税最低限以下になるなという判断をする必要があるわけでございまするが、それはむしろ私はこの場と申しますか、国会で御審議いただくのが一番至当ではないかと思っております。  それで、それに至りますまでの評価として、積み上げてまいりまして課税最低限になるのかならないのかというような問題、それから一個一個の財産をどういうふうに評価していったらいいのかというようないわば技術的な観点の問題、土地評価審議会というのはむしろそういう技術的な委員会というふうにおとりをいただきまして、それはやはりそういう技術に習熟しておる経験の深い人でもって構成するのが一番妥当ではないかというふうに思っておる次第でございます。
  208. 増本一彦

    ○増本委員 それはひとつ実際の運営を見た上で、さらに一般質問等で議論をしてまいりたいと思います。  そこで、実は私ちっょと来週いっぱい委員会の方に出席できない関係もございますので、あるいは租税特別措置との関係にずっとまたがると思いますけれども、実は今度の改正案の施行によって特に農地の相続については一定の軽減と配慮が加えられるようになった。しかし、改正案が仮に施行されたとしましても、それ以前の、現に相続をして、そして、一応延納の手続もとっているけれども、莫大な相続税額を抱えて苦しんでいる特に農家の人たちがいるわけですね。この人たちに対してどうするのかという点についても、一定の配慮や措置というものが必要ではないかというように実は考えます。というのは、現実が余りにも深刻で悲惨だからです。  まず初めに伺いたいのは、農地を中心にした相続の場合に、これが特に相続税で苦しむようになった原因は何だというように政府の方ではお考えになっているのか、この点をまずお伺いしておきましょう。
  209. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 農家といいますのは、その仕事の性質上かなり広い土地を持っておるのが通例でございます。それで、特に都市化現象の激しい地域におきましては、いわば農地というものが宅地化する。現にそういう売買が行われ、かなり高い価格で取引されておるのが実情でございます。そういたしますと、やはり農家に相続の問題が起こりますれば、近隣の類似の農地の評価額、売買実例というものが評価の基本になりますから、どうしてもそういうふうな高い相続財産というふうになるわけでございます。それが主な原因だろうと思っています。
  210. 増本一彦

    ○増本委員 そういう事態を招いたことについての政府の責任というものはどうなんでしょう。これは政務次官にひとつお伺いしましょう。
  211. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この問題は非常に複雑ないろいろなファクターが重なっておる。たとえば土地の値上がりの問題とかいろいろな問題があります。もちろん政府の行政上の責任もございましょうし、社会的な大きな情勢の変化もございましょうし、一言では片づかない問題だと思いますが、一部確かにおっしゃるとおり、政府の責任という点も十分あると思います。
  212. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、前回の改正以降の都市近郊農家の相続の実態というのはどうなっているのか。特に多額の納税額を抱えて苦しんでいる人たちの状態というものを、国税庁等では調べたことがありますか。あるいは主税局で今回の法案の作成の中でそういう実態を調査されたことがありますか。ありましたら、その調査の結果をひとつ報告してください。
  213. 横井正美

    ○横井政府委員 ただいま御指摘のように、特に都市周辺におきます農地の価格が高騰しておるというふうなことからいたしまして、農家の課税事例がふえてまいっておるということは事実であろうと思うわけであります。ただ、相続税の課税事例は職業別にとってございませんので、御質問の農家分だけの課税事例はわからないということでございます。
  214. 増本一彦

    ○増本委員 昨年、神奈川県の農業協同組合中央会が、実は任意に県内の四十四件の相続の実態を調べました。その結果を見てみますと、一件当たりの平均税額が四千八百六十八万円、この相続税額を払うために農地を売った人が八二%、売らなかった人はわずか八件の一八%にすぎない。しかも、全体として見てみますと、所有している土地の二八%を売ってしまうという状態。  具体的な事例を見てみますと、東京の隣の神奈川県の相模原市の上鶴間というところに住んでおられる農家の方ですが、これは相続人が六人で、相続財産が田が一千百平米、畑が一万一千七百二十三平米、山林が七千五百七十四平米、宅地が三千二十一平米というような状態で、実は相続税額が三億五百六十万二千五百円という状態ですね。  納付状況を見てみますと、相続が発生したのが四十八年の七月なんですが、そのときに一千五百万ぐらいを払って、残りの二億九千万を実は延納するということになっておる。そうしますと、現在一日当たり利子税だけで四万円、つまり一年間に、たとえば四十九年の七月三十日には利子税だけで一千五百六十七万九千六百円を払う。本税の方が二千六百十三万二千八百円を払う。こういうことが毎年繰り返されるわけですね。  ですから、この人は私に手紙をくれまして、ちょっと長くなりますけれども、皆さんに見解を伺う上で前提となるので、読ませてください。  私のところは特別の財産もなく、こつこつと働いてきた。近所でもかたい人という評判である。現に、まだわら屋根の家に住んでいます。土地しかないのに、この土地を売ったら何もなくなってしまいます。いまでは土地も売れないで困っています。毎日悪夢にうなされて、生きた心地もありません。いっそのこと、死んだ方がましだと思っています。  私は病弱で働くことができず、妻が野菜栽培の畑仕事で毎日一生懸命働いていますが、もうどうしようもない状態です。一日に利子だけで四万円も払っており、これを返すのに一日四万円かせげるところはこの世の中でどこにありましょうか。しかも、税金の支払いで売った土地代金にまでまた税金をかけるなんて、余りに不公平ではないでしょうか。もういまは夢も希望もありません。  こういうことを言っておられる。  問題は、相続を発生するというのは、これは全くいわば偶然のことですね。ことしの五十年一月一日以前に被相続人であるお父さんなりがたまたま亡くなられたということだけで、こういういまの農家の農業所得などから見たらとてつもない税を課せられる。それだからこそ今回のような改正が出たんだということになるわけですが、その間の橋渡しというものを考えるということも必要なんではないかということで、実は私は問題を提示するのです。  こういう問題について、たとえばすでに支払った分は、これはまあ返せというぐあいにはいかないでしょう。しかし、まだこれから払う分については、少なくともこれからのおそらく新法になるであろうそれと同様な手だてというものが考えられないだろうか。そういうところまで配慮をするということが、実は農業の振興の基盤を保全していくという上でも非常に重要なことだと思いますし、それが現在の農業振興の政策全体の要請にも私は沿うことになるというように思うのですが、その点、政府はどのようにお考えになるでしょうか。
  215. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 今回御提案を申し上げております相続税法改正あるいは近く御審議をいただきます租税特別措置法の改正によりまして、今年一月一日以後の相続開始の分についての相続税が、それ以前に比べまして軽減になることは確かでございます。その場合に、これはいつも生ずることでございまするけれども、一体そういう負担の差異があっていいのかどうかという問題がございます。  しかし、これは一体いつまでさかのぼっていきましても、ある段階には常につきまとう問題でございます。それが所得税でございますれば、歴年の課税でございまするから、おっしゃいますように、そう大きなインパクトにならないということはございましょう。ただ、相続といいますのは恐らく何十年に一遍しか起こらない問題でございまするから、そういう負担の差異というのがよけいに強く認識をされる。特に今回のように調整措置が非常に大きいとか、あるいは新しい農地の納税猶予制度が導入をされるというような場合に、そういうことを痛感されることもよくわかるわけでございます。  しかし、これは常にこういった改正を行いますにはつきまとった、避けがたい難点でございまして、これを避けますためには、おっしゃいますように、さかのぼっていく、あるいはいま御提案のように、少なくとも今後納めるものについて遡及をするような効果を及ぼすというようなこともあり得ますけれども、それとてもやはりどこかの限界に突き当たるわけでございます。それよりもっと前あるいはすでに完納しておる人について見れば、さらにもっと早くこの改正が行われればあの税金は納める必要はなかったのではないかということで、切りがなくなるわけでございます。  そういうことを避けるために、もう一つには、それでは改正というのをそんな大幅なものにしないで済ますかということもありますけれども、今回はあえてそういう負担の変動がかなりありますけれども、やはり最近におきますところの土地、物価の上昇というようなことを調整する意味におきまして、思い切って大幅にやっていただく。また、そうせざるを得ないということで御提案を申し上げておる次第でございます。  ただ、今後それではこういった事情が不幸にしてなお続くというようなときには、これまでのように相続税はある期間にまとめて改正をするというようなことよりも、やはりある程度のインターバルを置きながらでも、ときどきは見直しをしていただくということも必要ではないかというふうには思っておりますけれども、従来から相続税につきましては、何十年に一遍という相続がぽつぽつと起こる、それについての課税が起こるということでございますので、そんなに年々の変動をしないのがむしろ理想であるということでやってまいりましたその結果が、いま御指摘のような御批判になるのだろうと思いますけれども、これを救うということはなかなかむずかしいわけでございます。  それから、いまお示しのような確かに多額の税金を納めあるいは延納しておられる方があると思いますけれども、農地の評価につきましても、実は近傍類地の売買実例をそのままとっておりませんで、相当のしんしゃくはしておるわけでございます。いまの時価から申せば、かなり低い水準のものをとっております。  そこで、いまお示しのように、相当の金高に評価額がなる、納税額が相当の金高になるということは、実はかなり広い農地を持っておられる農家の事例ではないかと思っております。これは、その負担が改正の前後で相当変わるということについては、いまなかなか救済する道はないと申しましたけれども、相続税の評価が実はそんなに過酷であったから今回の改正をお願いするというよりは、むしろ私は、先ほども松浦委員の御質問にお答えしましたように、いわば農業の問題を考えます場合の農地の利用制限、いわゆる線引きというものと評価というものを今回改めて考え直す、しかもそれを土地評価審議会という権威あるいろいろなしんしゃくを経ながら考え直してみようということから発足をしたものでございますので、改正前後の負担の変動というものはやむを得ないということで御了承いただきたいのでございます。
  216. 増本一彦

    ○増本委員 了承できるくらいだったら質問しないですよ。  いまの農業所得というのは、金額で言って平均どのぐらいなんですか。最近の年間の統計はどうですか。
  217. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 田で申しまして、反、年間三万円程度でございます。
  218. 増本一彦

    ○増本委員 そういう農業所得がほかの所得と比べて決して高いものではない、むしろ低いというところに問題があるわけです。  そういう人が、いまここでこの改正案がそのまま施行されれば、これから税の大幅な軽減を受けて負担が軽くなるのに、現行法では、一日、利子税だけで四万円ぐらいは負担していかなければならない。これは納付期限が来れば待ったなしの問題になるわけですね。しかも、延納期間中ですよ。農家の場合には特にその大部分を延納していかなければならない。  大体、農協などの調査によりましても、おじいさんがなくなって、四十代の後半から五十代にかけて相続する人が非常に多いという実態を見てみますと、自分の働いていける間は、おじいさんのその資産を相続したがために、本当に大変な金額を毎年毎年負担しなければならない、こういう状態ですよ。  だから、ほかの場合に、それはそれぞれ改善されればその前との間では不公平があるけれども、ここに特に極端にこういう事態があらわれているというところが実は問題なんではないかということを言っているんですよ。そのこと自身は救いようのない、全く考慮の余地もないというぐあいに考えておられるのかどうか。これはひとつ政治判断として、まず政務次官からお伺いした方がいいと思います。
  219. 森美秀

    ○森(美)政府委員 いまのお手紙の話、本当にお気の毒なことだと思いますが、やはりどうしても改正以前と以後との問題は、私どもの力ではどうにもならない問題でございます。そのお気の毒だという気持ちと現実との食い違いが明らかにあるわけでございまして、やむを得ないことと御理解いただきたい、こう考えております。
  220. 増本一彦

    ○増本委員 本当にやむを得ないと言うのは、救済の手だてが考えつかないという場合に私は言うべきだと思うんです。  たとえば、まだこの延納で今後も払っていかなければならない人を考えた場合に、これからの農地相続の場合には農業投資価格どの差額についてだけが問題になって、措置法では農業投資価格の出っ張りの部分を除いた部分だけが、二十年間あるいは一括生前相続で、いわば延納の対象になるという仕組みになりますね。そうでしたね。そうすると、そこのところで、改正法に基準があるわけですから、いま負担している税額について、まだ今後払っていかなければならない未済の納税部分については、その基準と同じような適用ができる余地というのは、これは徴税の特例ということで、いま租税特別措置にもう幾つかのそういう手だてをとれば私は可能なんじゃないだろうかというように思うんです。そのこと自身が理屈の上ではできないことなのかどうかということなんです。  現に負担している納税義務について、それを履行していく手だてを改善すれば、それで私は法理論上もその徴税の関係では矛盾なく解決ができるというように思うのですが、その点はどうなんですか。
  221. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いま増本委員のおっしゃいましたように、仮に法文を設けましたときには、そのとき相続税債務を残しておる人については何らかの手だてができますけれども、たまたま同じ日に相続をした人で相続税債務を完済しておる人については、非常な不公平を招来するわけでございます。そういうことについての手だてをどうしてもやらなければなりません。そうするとまた、それより前にすでに完納しておる人についてもやらなければなりません。ついには切りがなくなるわけでございます。そこで、遡及ということはなかなかむずかしくなるわけであります。
  222. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、現行のものよりも、少なくともそれ以上の範囲の人に、あなた方も認めている不公平の枠を縮めていくということにはなるでしょう。現に苦しんでいる人たちをできるだけ解決してあげるという姿勢があるかないかという問題だと私は思うんですがね。  もうそろそろ時間なんで、それではいま私が具体的な例で挙げた場合ですが、速記録だけの数字で計算ができないのだったら、私どもで具体的な資料をさらに提供しますから、これがこの改正法になった場合にはどのくらいの相続税額で済むのか、そしてまた延納になればどういう状態にとどまるのか、その点をひとつ計算して資料としてこの委員会に出していただきたいと思います。そのことを委員長にもひとつ配慮していただいて、その上で比較考量あるいはその他を検討して、この委員会でもできるだけの救済策を検討していただきたいというように思うのです。  なお、四十八年に一度改正があったわけですが、しかしそれ以降も地価が上がって問題になってきているわけです。だから、一番地価が上がってきて深刻な事態になったその時点というものをある時点でとらえるということも政策的には私は可能だと思いますし、そういう農地の価格を含めた、四十八年の改正以降の地価の変動の急激なあらわれ方についても、これは国税庁で評価額等から割り出して資料として出していただいて、ひとつ多角的な検討を私はぜひ要求したいと思うのですが、この点は政府とそれから委員長においていかがでしょうか。
  223. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いま増本委員から御要求の資料でございますけれども、実は非常にむずかしい点がございます。と申しますのは、いまお示しの、仮に具体的な何村何番地の農家ということの御指定がございまして、そのときの相続財産というものがわかりましたとしまして、そのときの評価額を昭和五十年の某月某日の評価に直さなければならないわけでございます。仮にそれを直したとしまして、それから今度の措置法の農業投資価格というものをそこに当てはめて考えてみなければなりません。ところが、この農業投資価格なるものは——実は今後できるだけ早く相続税法の一部を改正する法律案の御成立を願えれば審議会の発足を早くいたしまして、そして真っ先にはこの問題を審議していただかなければならないわけでございますが、具体的にいまお示しの神奈川県何村何番地というところについての農業投資価格が一体幾ばくになるのかということは、実はその発足を待ってしかわからないわけでございます。  したがって、いまここで、仮に神奈川県何村何番地というふうにおっしゃっていただきましても、新しい租税特別措置法の納税猶予制度を適用したならば幾ばくが一定の条件のもとに納税猶予になるかという数字は、ちょっと出しがたいのでございます。
  224. 増本一彦

    ○増本委員 前から委員の質疑もありましたけれども、この農業投資価格についての実態も基準もまだよくわからない。しかし、これについては資料を出さなければ、少なくともこれらの基準なり目安というものをはっきりさせてもらわなければ、租税特別措置法のこの面についての審議というものはできないと思うのですよ。  こういう土地の高騰という点には、現に政府に責任があるということは、少なくとも一部については政務次官もお認めになったわけですね。いわばその被害者ですよ。しかも農業所得自身が非常に低い、こういう農業の荒廃をもたらしているこのことも、やはりいまの政府に責任があるわけですね、農政そのものがそういうぐあいになっていなかった結果だから。  だとすれば、これは切りがないということじゃなくて、現に苦しんでいる人たちを幾分でも救っていこう、そして不公正の差を少しでも縮めていこうということで努力をすべきだというように私は思うのですが、最後にもう一度、そういう面での前向きの検討が本当に可能なのかどうかをお伺いして、私の質問を終わります。
  225. 森美秀

    ○森(美)政府委員 この件に関しましては、私どもがいまお話を申し上げているのは、相続税法改正につきまして、改正以前、改正以後という問題について、以前のものに遡及するわけにいかない、こういう立場でお話を申し上げておるわけでございます。
  226. 増本一彦

    ○増本委員 終わると言ったのですが、納税義務の発生と、それを今度完済していくための徴収との関係では、それは理屈は違うでしょう。残っているものについて後どういう手だてをとるかということは、これはまた別途新たに法律をつくってそれを適用するということは可能なんじゃないですか、理屈の上でも。
  227. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 それは先ほどもお答えしましたように、たまたま完納しなくて延納しておる、租税債務を残しておる人について遡及的効果を及ぼすということでは、また一つの不公平を招くわけでございます。完済しておる人についてもやはり同じような効果を及ぼさなければなりません。そういうところに新たなる不公平が生ずるわけでございます。したがって、改正前後で取り扱いが違う、負担が違うということはもうやむを得ない災難でございます。
  228. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、たとえば固定資産税について宅地並み課税が施行されたときに、それに見合う分を今度は地方自治体の方で生産緑地とかあるいはその他の手だてで還元していくというやり方もありましたよね。これは一時は政府の方で必ずしも歓迎しなかったという点もありました。しかし、別の手だてというものは、これは別の政策的な関係で考え得る余地がさらにあるわけですね。  だから、いま私は税の面だけ言っているのですが、それがほかの手だてを含めてその不公正の幅を縮めていくということは十分可能だと思うのです。しかし、政府の方でやる気がないという話ですから、これ以上やっていても切りがないので、またひとつ別の機会に譲っていきたいと思います。ひとつ委員長においても十分御検討をいただきたい、強く要求いたします。
  229. 上村千一郎

    ○上村委員長 次回は、来る二十五日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会