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1975-07-22 第75回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年七月二十二日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 菅波  茂君 理事 田中 六助君    理事 岡田 春夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 多田 光雄君       愛野興一郎君    三原 朝雄君       上坂  昇君    細谷 治嘉君       吉田 法晴君    渡辺 惣蔵君       鬼木 勝利君    松尾 信人君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         労 働 大 臣 長谷川 峻君  委員外出席者         厚生大臣官房審         議官      中野 徹雄君         通商産業省立地         公害局長    佐藤淳一郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省職業安定         局失業対策部長 石井 甲二君         建設省住宅局住         環境整備室長  高橋  徹君         自治大臣官房地         域政策課長   久世 公堯君         参  考  人         (石炭鉱業審議         会専門員)   向坂 正男君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭鉱業審議会答申に  関する問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  まず、今回、北海道炭砿汽船株式会社夕張炭鉱ガス突出事故実情調査及び石炭鉱山等実情調査を行いました派遣委員から報告聴取いたします。田中六助君。
  3. 田中六助

    田中(六)委員 北炭夕張炭鉱災害実情調査並びに石炭鉱山等実情調査に関する報告書。  去る七月六日、北炭夕張炭鉱で発生した災害現地調査並び北海道地区石炭鉱山等実情調査の概要を御報告申し上げます。  報告に先立ち、今回の災害で死亡された五名の犠牲者並びに御遺族の方々に対し、衷心より哀悼の意を表明する次第であります。  本調査のため、派遣されました委員は、委員長田代文久君、田中六助、多賀谷真稔君、松尾信人君の四名でありますが、このほか、篠田弘作君、岡田春夫君、渡辺惣蔵君、多田光雄君が現地参加されました。  本調査の日程は、七月十七日から二泊三日でありまして、この間、北炭夕張炭鉱災害実情調査空知炭砿露天掘り地域振興整備公団美唄東明団地現地調査及び関係当局並びに関係地方公共団体労働組合職員組合等の代表より、それぞれ説明を聴取、あわせて要望等を受けてまいった次第であります。  まず、北炭夕張炭鉱災害について申し上げます。  当鉱は、昭和四十五年十月開坑し、本年六月から営業出炭を開始した新坑でありまして、本邦では初めてのマイナス六百レベルからの深部操業区域とする鉱山として、その成否が注目されておりました。当鉱の総開発費は三百六億円でありますが、このうち、石炭鉱業合理化事業団から、本年度に予定されているものを含めて百二十六億五千万円が融資されております。当鉱の実収炭量は八千百万トン、原料炭得率は八三・八%、硫黄分も少なく優秀な原料炭であります。本年七月五日現在の従業員数は、常用実働労務者九百六十三名、臨時夫四十名、請負夫百三十二名、職員百七十三名、計千三百八名であります。  災害の概況は、去る七月六日、午前零時五十五分ごろ、集中監視室において坑内のガス自動警報器の作動を感知し、直ちに調査したところ、北第二十尺上層ロング上添坑道掘進個所からの応答がなく、付近作業中の係員に探検させた結果、同所で異常が発見されたのであります。当時は、三番方二百六十七名が入坑しておりましたが、全員に一斉退避を指令する一方、救護隊により、ガス排除を行った後、係員一名、鉱員四名、計五名の罹災者を午前四時二十五分までに、全員遺体で収容したのであります。  本災害の種類は、ガス突出であります。  政府は、災害後、担当係官を派遣するほか、伊木東大名誉教授を団長とする保安技術調査団を編成し、七月八日より十日まで現地調査を行いましたが、突出物を取りあけた後、なお検討を進め、原因を究明することにしております。  死亡者遺族に対する労災保険による遺族補償は、遺族年金は、対象人員支給率で差がありますが、最低六十五万円、最高百八十三万七千円であります。葬祭料平均三十万円余となっております。このほか、労使の協定による弔慰金が一人当たり千百万円でありますが、今後の遺族生活には万全の措置を講ぜられるよう、会社並びに関係政府機関に強く要請するものであります。  現地における要望事項は、会社側から、今後、十分、保安確保に努める旨の反省と決意が述べられたほか、労働組合職員組合から、各炭鉱保安確保に強い行政指導措置をとられたい。各種保安基準の再検討中心とした現行保安法規抜本的改正を行われたい。深部開発による作業環境悪化に対応した近代的な防災体制を確立し、保安確保政策助成を充実されたい。保安技術研究開発を推進するため、産炭地に国立の鉱山保安技術開発センターを設置されたい等の要望がありました。  次に、今回の災害調査に当たり、感じました点を二、三申し上げます。  第一は、伊木調査団も指摘しているように、深部採炭に対応した十分なガス抜きが行われていなかったように思われます。ガス突出事前予知は、現状では、技術的にもまだ困難であり、特にガスの多い深部では、従来のデータにとらわれず、新たな観点から、徹底的にガス抜きを行う必要があると思われます。また、防災体制において、現場からの意見が十分反映されるよう、抜本的に考え方を改める必要があると思われます。  第二に、保安設備改善についてであります。今回の災害では、退避所ビニールハウス)が、すぐ付近にありながら活用されておりません。これがなぜ利用されなかったか、その原因を徹底的に究明し、設備構造等を再検討する必要があると思われます。また、かる測定器についても、現在は係員のみが携帯しておりますが、保安意識向上観点からも、携帯する者を増加させ、また測定機能を向上するなど、保安設備の技術的な開発を促進する必要があると思われます。  第三に、以上の観点から、深部開発にも十分対応し得るよう、各種安全基準の再検討管理監督体制強化中心とした現行保安関係法規の適切な改正を行う必要があると思われます。  北炭夕張炭鉱は、わが国でも未経験の深部から稼行を始める炭鉱であり、今後、各炭鉱とも深部稼行増加する傾向の中で、試金石となるもので、これからの展開が期待されている時期に災害を起こしたことは、まことに遺憾であると言わざるを得ません。七月十五日には、赤平炭鉱においても落盤により一名が死亡するという災害が発生しております。今後、石炭関係者はもとより、政府においても、保安確保について、総合的に考え方を再検討し、万全を期して取り組むよう強く要請いたします。  次に、石炭鉱山等実情について御報告申し上げます。  北海道石炭鉱業は、昭和五十年六月末現在、大手十、中小十、このうち露天掘りが七で、合計二十炭鉱稼行しており、全従業員は約二万三千人であります。昭和四十九年度の生産は、千二百三十六万一千トンであり、全国の六〇・九%を占めております。また、道内における産炭地域の面積並びに人口は、それぞれ約一八%を占め、北海道経済社会における地位は依然として高いのであります。  今後の生産も、自然条件に著しい変化のない限り、政策努力と相まって比較的順調に推移するものと思われますが、特に、これからは、空知天北、白糠などに賦存する露頭炭開発が大きな課題となってきております。露天掘りについては、大規模開発を行えば、相当量生産が見込まれますが、地上権者との権利の調整、跡地の復元と利用方法公鉱害対策など、解決すべき問題も多いのであります。しかしながら、反面、危険が少ない。大型機械導入により能率もよく、生産コストが安いなどのメリットもあり、空知炭砿では、当初、地表から三十メートル程度採掘にとどまっていたものが、最近では、技術的にも採算の面からも百三十メートル程度まで可能になってきており、今後、前向きに検討すべき問題と思われるのであります。  北海道地区需給動向については、石油危機以来、引き合いが活発になっておりますが、昭和四十九年度では千三百万トンの需給実績で、前年に比べ百十五万トンの減少となっております。これは災害自然条件悪化原料炭得率低下等による生産減によるものであります。本年は、千三百九十五万トンの需要が見込まれ、原料炭一般炭とも順調に出荷されております。  労務状況は、これまでの著しい流出がとまり、昭和五十年三月末では、全従業員数が二万二千八百三十二人と、昭和三十三年以来初めて、前年を四百十九人増加いたしました。年齢的にも平均四十二・三歳と、前年と同じであり、上昇傾向がとまっております。しかし、人員増加については、請負夫の四百七十四人増加原因であり、内容的には問題を残しているように思われます。  今後とも、作業環境生活環境改善を図り、強力な労働力確保対策を講じる必要があります。  産炭地域振興対策につきましては、美唄東明団地を視察いたしましたが、全道で地域振興整備公団が造成した工業団地は、完成分十三団地、四百十九万六千平方メートル、その譲渡率は五三%、現在まで約五十二企業が進出しておりますが、全般的に立地条件に恵まれず、その上、最近の経済事情関係もあって、必ずしも順調に行われておりません。今後とも、中核的企業導入中心に一層、強力に推進する必要があります。  最後に、関係団体からの要望事項について申し上げます。  まず、地方公共団体からは、現行出炭規模を大幅に上回る拡大生産を目指し、具体的な計画数字を示されたいこと。経営体制私企業体制では不安定であり、国の責任による体制に変革されたいこと。炭鉱保安確保は、採掘現場深部移行に伴い、ますます自然条件悪化が予想されるので、国による保安技術開発研究体制の確立を図られたいこと。労働力確保を図るため、労働条件改善することはもとより、生活環境、特に医師不足に難渋しており、これが対策を積極的に推進されたいこと。新鉱開発について地方公共団体も参加する第三セクター方式が予定されているが、国が直接責任を持つようにされたいこと。産炭地域振興対策もより具体的な対策を示し、積極的に推進されたいこと。石炭財源も、原重油関税だけでなく、一般会計からも繰り入れることを配慮されたいこと。石炭価格の引き上げについて、改定のルールを設定されたいこと等の要望がありました。  日本石炭協会北海道支部からは、経営を安定するため、炭価安定補給金を引き上げ、経営改善資金増枠運転資金確保されたいこと。生産体制を確立するため、骨格構造保安確保工事近代化工事等融資限度を引き上げ、技術開発への助成強化技術者確保配慮されたいこと。労働力確保対策としての生活環境改善に積極的な助成措置を講じられたいこと。一般炭の引き取り体制を確立するため、石炭専焼火力発電所の建設を促進されたいこと等が要望されました。  次いで、労働組合職員組合等からは、第六次答申については、生産規模を拡大する方向で具体的な数字を示されたいこと。経営体制については、現在の私企業体制では安定せず、特に新鉱開発に当たっての第三セクター方式は反対であり、国の責任による方式検討されたいこと。保安対策について、具体的な方針を示し、多額の国費を投入した新鉱等には、一定期間保安監督官を常駐させるなど、国の積極的な監督指導を行うこと。産炭地域生活環境改善についても、国の責任を明示し、政府産炭地域生活環境改善調査団を派遣し、一元的に産炭地福祉事業を行う機関を設置されたいこと。また、医師不足で難渋しているので、医療体制についても検討されたいこと。石炭財源を大幅に増額されたいこと。閉山地域を三ヵ年計画で再建されたいこと。労働力確保するため、労働条件改善災害のない炭鉱環境改善文化施設を充実して、若い婦人の定着を図られたいこと。炭鉱離職者が再就職した後、再失業した場合にも、炭鉱離職者臨時措置法の精神にかんがみ善処されたいこと。また、開発就労緊急就労事業などについても配慮されたいこと。労働者意見が反映する石炭鉱業審議会に改組されたいこと。また、企業資金繰りが賃金にしわ寄せされ、労働金庫からの融資で賄われている事実があるので、善処されたいことなどが要望されました。  以上、今回の国政調査において提起された問題点は、多岐にわたっておりますが、本委員会はもとより一関係政府機関においても、すべての要望事項について十分な検討を加え、速やかに適切な措置を講ずるよう要請し、報告を終わります。
  4. 田代文久

    田代委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。      ————◇—————
  5. 田代文久

    田代委員長 次に、本日は、石炭鉱業審議会答申に関する問題について、参考人として石炭鉱業審議会専門員向坂正男君に御出席をいただいております。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  6. 田中六助

    田中(六)委員 向坂参考人にお願いしたいのですが、今回の第六次答申は、非常に御苦心をなさって、ユニークな面もありますし、第三者がいろいろ言えば、いろいろな批判もあると思います。しかし、その過程を顧みますときに、非常に御苦労をなさったということは、私どももその点、非常に評価したいと思っております。  ただ、この答申をずっと読んでみますと、何か総花的に一応、羅列はしておるが、具体的なことが検討事項になって、検討答申と悪口を言っている人もおります。答申はそういうような性格を持つ点もございますが、何か具体性が非常に欠けておるようでございますが、この答申について全般的な参考人の御意見を、まずお聞きしたいと思います。
  7. 向坂正男

    向坂参考人 お答え申します。  この石炭政策に関しましては、直接、間接に政府の支出と関係するところが多いわけでございまして、したがって、この答申を提出しました段階では、財政当局と具体的な詰めが事務的に十分、行われていない段階で、答申を出さざるを得ない状況でございましたので、ただいま御批判のように抽象的に過ぎるということが言われるのではないかと思います。  全体としましては、この審議に当たりまして、専門委員会の態度としては、今後の国際的なエネルギー情勢を考えた場合に、国内石炭資源をできるだけ有効に活用するということ、それから同時に、海外の石炭についてもこれを活用して、石油への依存度を下げるという必要があるということ、こういった考え方で進めたわけでございます。  国内石炭開発の問題につきましては、現状のような企業収支赤字状態では、現在の生産水準を維持することも困難でございますし、またさらに増産することは一層、困難であるという認識をもちまして、一定政府補助のもとに、できるだけ早期に現在の生産を維持するための企業収支を黒字にする、そのためには石炭価格を妥当な水準に引き上げていくという必要があるように思います。したがって、原料炭及び一般炭について、それぞれ需要家協力を強く期待する必要があるという考え方で進めたわけでございます。  それが第一の前提条件になると私は思いますけれども、将来の石炭生産目標につきましては、現在のいろいろな炭鉱別調査に基づきまして、いろいろ検討した上で、少なくとも二千万トンの生産を維持するという目標を立てたわけでございます。  以上でございます。
  8. 田中六助

    田中(六)委員 財政的な詰めというものがないから、抽象的にならざるを得なかった、確かにそういう面があると思いますが、この答申が新しいことを盛り込んだと言われながら、実は新しくない、旧態依然たるものだという強い批判現地にもあるし、一般にもあるわけですが、それはどこからきたかということをよく考えますと、やはり体制問題に問題が一つあるのですね。つまり私企業体制を維持する、まだそうなのか、その体制メスを入れてなくて、そのままいっておるということが、新しい、古いという仕分けになっておるのではないかと思うのですが、これほど手厚い保護を受けておりながら、まだ私企業と言っておる。きのう円城寺参考人は、言葉は従来どおりだが内容が実は違っているのだ、それから、これはもう国有国管と言わなくても、はっきりそう言わないのですが、実質的にはそれに似たようなものだというようなことをおっしゃっておったのです。それならば、実質的にそういうような見解を、もしも向坂参考人も持っておられるならば、私企業というものではない、つまり何か変わった体制メスを入れた方がよかったのじゃないか。これは必ずしも私個人のあれではありませんが、わが党でもそうですけれども、そういう批判が非常にあるのですが、その私企業との関係、そういう一つのライトの浴びせ方が、この答申に大きくなされておるわけですが、この点について、どういうふうなお考えでしょうか。
  9. 向坂正男

    向坂参考人 この新しい政策検討した間に、各方面の御意見を伺いまして、特に生産関係された方面の側からは、あるいは労働組合その他の側からは、ぜひこの体制問題を変えろという御意見もございまして、その点については私どもも十分、検討いたしましたけれども公団など新しい体制に切りかえたときに、果たして現在、石炭産業が当面している困難を容易に解決できるのかどうか。特に膨大な税金による政府資金を使用する場合に、その有効な活用ということも、十分できるのかどうかというようなことも検討いたしまして、つまり国有化でなくても、公社、公団というような形であったとしましても、果たして現在の体制以上に、新しい石炭政策方向を実現するのに有効な体制であるかどうかということを検討いたしまして、その点からは、専門委員としては、現在の稼働している炭鉱について、現在の私企業体制を維持することが望ましいという結論に達した次第でございます。
  10. 田中六助

    田中(六)委員 まあ私企業体制がいいのだ。しかし石油石炭特別会計という特別会計から、新鉱開発の場合でも、しかも無利子の長期の金が、この石炭業界には非常に出されておるわけですが、国民の意識が非常にレベルアップしているときに、やはり私企業ということはどんなものか。普通、私企業といえば、一つ市場機能が作用して、需要供給によって価格が決まるとかいうようなことが原則でございますね。しかし、それが一つ政策的あるいは政治的な配慮、そういうもので価格が決まっていく。最近はだんだん時代とともに、そういうふうになっていく傾向があるのですが、私企業というものを貫く限り、やはりこの答申の中でも、私企業とそれからそういう一つ私企業らしからぬ価格の決まり方、そういう観点からすると非常に矛盾したものを共存させるために、この答申案そのものが非常に無理がいくわけですね。したがって一本の線がすらっといっていないものだから、いろいろなことが考えられるわけです。特に企業家、つまり経営者意識資本家企業責任というもの、そういうものが石炭業界に最近は何か薄れて、まあ四次ごろまでの答申のときには、それにこたえての経営者経営責任あるいは経営意識、そういうものが非常にあったような気がするのですが、このごろは何かただ要求することばかり。つまり国有国管親方日の丸では能率が悪いからということを、経営者の方、資本家の方は言うのですが、それをそのままそういう人たちにも当てはめていいような、つまり石炭については、エネルギーの全体的な観点から、どんなことでもできるのだという、もしも、そういう意識があったら大変なのですが、こういう意識があるような、なれというか当然になったというような意識で、非常に反発を抱かせているのじゃないかという気がするのですね。したがってこの答申でも、私は二千万トンの問題は後からまたお聞きしたいのですが、やはり消費者の何かに対する意見があらわされるようなことを少なくとも配慮する時代になっておる。そうしなければ石炭に対する理解、これはもう需要供給による価格決め方はできないのですから、今後とも政策的な、あるいは政治的な価格しか決められないでしょう。まるでそれは国有国管に等しいような価格決め方ですね。そういうことになると、たとえば一九四六年のフランスの国有化、一九四七年のイギリス国有化のとき、特にイギリスの場合は消費者懇談会を設けているのです。そして、やはり民意をそういうものに反映させるというようなことをやっているのですね。そういうところまで答申にきめの細かい配慮がなされておって初めて、この炭価の問題とかトン数に対する理解とか、それから全体の石炭問題が、総合エネルギーの中の重要な日本の唯一の資源だというような表現よりも、まだまだ一つの政治的な手としては成り立つのですね。そういう点の配慮は全然なされなかったのか、したのか、そういう点をちょっとお聞きしたいと思う。
  11. 向坂正男

    向坂参考人 私、専門委員会では、現有炭鉱については私企業体制の維持を考えました。その前提としては、いま御批判、御指摘がございましたように、石炭企業家の自立的な意識というものが前提になっております。自立的な意識を強めてもらわなければ、この新しい政策の実現は困難であろうと思います。で、その自立意識というものを考える場合に、過去のいろいろな事情がございますから、当分の間、石炭に対するいろいろな形での政府補助助成というものが必要になろうと思いますけれども、それを前提にいたしまして、できるだけ企業家が自立的な意識を持って、石炭生産を維持し、あるいは増産を図っていくということが必要になると思うのです。私、過去の石炭政策に十分タッチしておりませんから、十分よく事情を承知してない面があるかと思いますけれども自立意識に欠けるという御批判があるとすれば、これまで企業経営が常に資金繰りあるいは赤字など、非常に困難な立場にあって、それで価格から、あるいは政府補助金その他、いわば、がんじがらめに支えた上で、やっと生きてきたというような状態であったかと思うのです。したがって今後の政策としては、企業経営が成り立つように需要家協力を得る。主として鉄鋼業界あるいは電力業界その他の需要家協力を得て、それで石炭企業採算のとれる状態にするということによって、石炭企業家自立意識を強めることが可能ではないか。その価格については、現状需要家生産者関係では、なかなか生産者要求どおり価格自由取引によって実現することが困難であろうと思いますから、その点は今後とも石炭鉱業審議会あるいは政府が関与いたしまして、需要家との間の価格設定については、なお、いままでのような体制を続ける必要があるというふうに考えているわけでございます。
  12. 田中六助

    田中(六)委員 価格の問題が出ておりますので、価格につながる問題から先にしますが、この価格決め方を、毎年、毎年あるいはその必要な場において、ユーザーとこうするというような決め方よりも、これは私は、いつも食管会計の米の問題と関連する発想がどうしても浮かぶのですが、米の場合、生産費所得補償方式というものがあるのですね。これはときどき変わっておりますけれども、しかし一つ方式というものを科学的に検討して、そうして米価というものを一応決めて、それに政治的な加算がありますけれども、しかし余り小理屈の言えないようなやり方というものをやっておるわけですね。だから石炭価格も、ある程度そういうような一つ方式というものを科学的に決めておれば、今度は石炭価格から、さらに賃金にいくわけでしょうけれども、賃金をもらう人も賃金の交渉も非常にやりやすくなる。だから炭価決め方をその場その場でやっていかなくて、ひとつ米式な、あるいはそれと違ってもいいのですが、一定の定義といいますか、そういう方式を考えてみたらどうかというふうに思うのですが、その点いかがでしょう。
  13. 向坂正男

    向坂参考人 価格問題に関しましては、まず、どういう基本的な考え方をとるべきかということでございましたが、それはやはり競合エネルギーとの相対価格ということを基本に置くべきだろうということを考えました。それはまず第一には、石油火力との対比であり、あるいは原料炭については海外の輸入炭との対比であろうと思います。ただ国内炭につきましては、安定供給の上の重要な役割りを考えて、そういった相対価格から出るものよりも、安定供給コストとして幾らか割り高であっても、これは維持すべきであろうという考え方に立ったわけでございます。  御指摘は、価格設定方式をあらかじめ決めておけという御意見だと思いますけれども、その点につきましては、今度の新政策で三ヵ年のローリングプランを、政府責任で需給計画をつくる、その需給計画のもとで需要者と生産者が十分、話し合って三年程度、この程度生産について責任を持ち、この程度需要については引き取りの責任を持つというような、協定というと少し行き過ぎかと思いますけれども、そういった需要生産業界の合意を取りつけておこうという方式を新しく考えたわけでございます。その場合には当然、生産あるいは需要その他、地域別のこともいろいろやるわけですけれども、その場合に価格を入れるかどうかという点については、価格については三年間の一定方式で決めていく。価格そのものを設定し、あるいは方式を決めるということは、変化の非常に多い時期なので、現状ですぐその方式を決めることは時期尚早ではないか。国際的な石油価格についてもどうなるかわかりませんし、それから石炭について排煙脱硫、脱硝など、特に脱硝のコストなども十分わかりませんし、したがって、そういったまだ変動要因の多い時期なので、そういう価格決定方式を決めるということは時期尚早ではないかというように考えまして、御意見のような方向はとらなかったわけでございます。  価格については、その需給計画の中で、年々、審議会を経て需要業界と生産者の間の引き取り価格について決めていこうという従来の方式でやる。また価格問題を論議しましたときに、方式のいかんによりますけれども価格をあらかじめ設定することが、逆に労使の自主的な交渉であるべき賃金について、あらかじめ何か決定要因を決めておくというようなことはすべきではないという考え方もございました。  以上でございます。
  14. 田中六助

    田中(六)委員 ローリングプランはありますが、さらに突っ込んだ方式をというふうな考えで、一つの提案をしてみたわけでございます。  それから、石炭部長にちょっとお聞きしたいのだが、この答申で「新規炭鉱開発」のところで、「国内開発可能性調査の結果をまって結論を得る」、その「開発の進め方についてとりあえずの考え方を示す」云々とあるのだが、国内炭の開発可能性調査の結果いかんでは、二千万トンにかなりやっぱり影響すると思うのだね。したがって、この結果というのはいつ出るのだろうかという疑問があるのですが、これはどうなのです。いつごろを予定しているのかね。
  15. 高木俊介

    ○高木説明員 本年度から当初予算は六億要求いたしまして、二億五千万いただいておりますので、本年度から始める予定で、いま計画を組んでおりまして、ごく近いうちに開始ができると思います。  なお、引き続き来年も予算要求いたしまして、できるならばここ数年、続けてやっていきたいというふうに考えておりますので、その途中、途中におきまして調査の結果は出てまいります。出てまいりますと、今度の審議会にお諮りいたしまして、その結果、開発すべきであるという結論が出ましたならば、それをベースにいたしまして、現在までの開発計画あるいは地域指定、あるいは地域指定をいたします前には、いま問題になっております第三セクター的な、いわゆる関係者のいろいろな御意向も聞きながら、地域指定をし、それをベースにいたしまして、今度は事業団に事業計画を策定さそうというような考えも持っております。その点も今度の答申には、事業団の役割りのところに書いてあるつもりでございますけれども、事業団の方で事業計画をつくりまして、それをベースにいたしまして、今度は第三者の入りましたいわゆる第三セクターの設立というようなことになろうと思います。  また、それに現在でも事業団を通じまして融資や相当な金額をやっておるわけでございますけれども、当然そういう金も事業団から投入するという考えには変わりございませんので、ここで一つ問題になりますのは、いままでの制度と違いまして、今回の新政策のもとにおきます新鉱開発につきましては、先ほど申し上げましたような調査の結果によりまして、地域指定をやるというようなことでございますけれども開発事業者の資格につきまして、何らかの制限が必要ではないか。これは現在まで、たとえばA社がもう放棄したところの鉱区も、今回は対象になりますので、そういう点から開発事業者の資格については、何らかの制限を設ける必要があろうというふうに考えております。  また、事業団から当事者に、当開発事業体に対する出資といいますか、この点につきましては、現在まだ最終的な結論を得ておりません。しかし、いずれにいたしましても開発資金については、現在までどおりの財政の援助は強く行う予定でございます。
  16. 田中六助

    田中(六)委員 それから、もう一つ聞いておきたいが、経営の黒字はいつごろを予定しているわけですか。
  17. 高木俊介

    ○高木説明員 私などは、できるだけ早い機会にやりたいというふうに考えておりますけれども、幾ら遅くても三年目をめどにしてやりたいという考えでございまして、これにはコスト、炭価というものが当然関係してくるわけでございますけれども、いま私などの方でいろいろ作業さしていただきました数字によりますと、生産量とコストあるいは炭価というものが決まってくるわけでございますけれども生産量につきましては、現在の二千二十九万トン、これは四十九年度の実績でございますけれども、これを生産増強群あるいは生産現状維持群あるいは中小の短命のもの、いわゆる炭量がなくて消滅せざるを得ぬもの、あるいは露天掘りで消滅するような山、こういうものをふるい分けいたしまして、たとえば生産増強群におきましては現在、三百三十七万トンの山を選定しておりまして、これが五十五年には七百三十万トン、六十年には八百十万トンになるであろうというような試算もやっております。これには当然、鉱区調整の問題、現在の制度における鉱区調整でございますけれども、そういうようなことを入れまして個別に積み上げた数字でございます。  なお、生産現状の維持グループというのが現在千四百十八万トンございます。これが維持、ある程度の減少というグループでございまして、五十五年度には千百五十万トン、六十年度には千七十万トンくらいになるのではなかろうか。これは山別に積み上げた数字でございます。  それに三つに分けました最後のグループでございますけれども、いわゆる生産の大幅減少グループ、先ほど申し上げました露天掘り、あるいは中小の炭策枯渇の山でございます。これが二百七十四万トンでございまして、これは五十五年度までしか生産はないだろうというようなことで、五十五年度は九十万トンを入れております。  こういうことでいきますと、四十九年度の二千二十九万トンというものは五十五年度に千九百七十万トン、六十年度で千八百八十万トンというような数字になるわけでございます。これに新鉱関係生産ということで、一応、図上で調べております五地域十五地点というところの新鉱開発関係生産量がどうなるかというようなことも年次別に、これはまだ調査結果も必要でございますので、一応、図上の計算でございますけれども、こういうものが仮に全部がうまいぐあいに生産されたとした場合、約五百万トンくらいの生産が可能であったと思います。このうちの半分というようなことを一応、安全的に見まして、半分ということで二百万トンあるいは二百五十万トンというようなことを入れまして、六十年度も二千万トン以上は可能であるということで、二千万トン以上という数字を出した次第でございます。  これらの炭鉱の原価というものも、現在をベースにいたしまして、いろいろ試算いたしております。そういう原価と将来の炭価という問題でございますけれども炭価問題につきましては、先ほど向坂先生の方からいろいろ説明のあったとおりでございますけれども、一応、試算といたしましては幾通りかの計算をやっております。また可能であろうと思われる炭価もそれに織り込んでおります。そういうことで仮に本年度あるいは本年以降の炭価が可能であると、大体、見通しもあるのじゃなかろうかというふうに、強い気持ちを持っておりますけれども、そういうことが可能であるならば、これはできるだけ早い機会に黒字になるということは確信が持てるのじゃなかろうかと思います。  なお、本年度の炭価交渉は、現在、四千円、あるいは一般炭関係におきましては二千七百円あるいは二千円ということで交渉をいたしておりますので、これも近いうちに、このとおりでまとまるかどうかは別でございますけれども、例の三千円強の赤字に対しまして、相当な赤字が減額されるような状態に、本年度じゅうにはなるのじゃなかろうかというのが見通しでございます。
  18. 田中六助

    田中(六)委員 向坂参考人に聞くよりも、下の方の地下にもぐっている数字をよく知っておるから、犯人はだれだというようなことになると、やっぱり裏にいろいろやっておるのじゃないかという気がするのですが、それでそれほど具体的にしても、これは行政指導のうまみかもしれないが、三年たてば黒字になるというようなことが、果たして机上プランで言えるかどうかということに懸念を持つのですね。それでもう少し私企業ということに藉口して言うならば、経営者意見あるいは経営者がどう考えておるかということです。やっぱりそれは経営者は、いまこれほど手厚い保護を受けてという悪口を言われていますけれども石炭に関する限りは専門家であり、技術も持っておるのですからね、そういう点の意見をもう少し聞くこと、それが一つ。  それからもう一つ、ユーザー側が、きのうも鉄鋼も電力も言っておったけれども、この答申、結構です。しかし私どもには協力に限界がございますということを言っているわけです。それはまさしく向こうも私企業ですから、そこに価格に転嫁されると、どうしても電力料金、鉄鋼の値上げにならざるを得ない、あるいはまた値上げするときに材料にするし、それがまた消費者物価に、鉄鋼とか電力というのは基幹産業ですから、非常に影響力が大きい。だから簡単に石炭炭価をユーザーと交渉して、こうするのだ、ああするのだということなのですが、あと何か政治的な配慮政策的なことを考えてほしい。つまり格差の是正についてはそういうことと、あらゆるところにそういう文言が出てくるのですが、あとは政府が何とかしろというような印象を受けるのですが、もう少し経営者それからユーザー側、そういうものと対峙するのじゃなくて、常にそういうのを中心にして、まあ自分たちが、監督官庁は外側で見ていくというような態度が欲しいと思うのですが、今後ユーザー側とか、あるいは経営者に対する態度について、どういうふうに持っていきたいか。いままでどおりだったら、私は大した変革はないと思うのだが、そういう点、ちょっと石炭部長から聞いておきたい。
  19. 高木俊介

    ○高木説明員 お答え申し上げます。  結局、需要業界と石炭業界の相互理解のもとに石炭鉱業というものが成り立つのじゃなかろうかと思います。現在までの石炭供給者側と需要者側の不信というものが物のすごく強いというのは、初めて今度、理解したような次第でございますけれども、この辺が今後いわゆる審議会の場でも、そのために現在の審議会を改組いたしまして、政策部会、経営部会あるいは需給・価格部会というような三つの部会を中心に動かせばどうかというように考えておりまして、特にこの需給・価格部会を中心にいたしまして、今後、需要業界と石炭業界の密接な話し合いをしてもらい、相互理解のもとで今後、炭価交渉なり、あるいは引き取りの量の問題なり十分、詰めていっていただくということが基本方針にあるわけでございます。
  20. 田中六助

    田中(六)委員 通産大臣にお聞きするのですが、この答申で十年間つまり昭和六十年も二千万トンです。いまからも二千万トンらしいのですが、それで結局、総合エネルギーの中で二千万トン以上ということにしておけば危なくない。非常に石橋をたたいていったような数字の出し方なのです。それで石炭を掘るのは労働者、労務者ですね。労務者の不安は、十年たってもまだ二千万トンか、来年も二千万トン、再来年も二千万トン。いままでで五千万トンと言ったときもあります。三千五百万トンあるいは二千五百万トン、そういうようなことがあるのだが、大事な大事なエネルギーだといって、新鉱開発もこうあって、いまちょっと三年間の黒字の数字を言いまして、大体二千万トンの維持と石炭部長は説明しましたが、そういうことに対して、将来十年たっても二千万トンではどうか、というのは、埋蔵量は非常に多いのですよ。可採炭量も非常に多いのです。だから技術とかそういうものが進展していくならば——本当はきょう、いっぱい聞きたいことがあるのですが、時間の制約がありますから聞かれないのですが、そういうような客観情勢があっても、十年たっても二千万トン、そして、その労務者が不安を持っていますね。それから実はユーザーも、鉄鋼業界も電力業者もやはりそこに不安があるのですね。安定した供給ができるのか。何かこう同じ、来年も再来年も十年たっても二千万トン。両方に不安があるのです。これははっきりユーザーの方は言いませんけれども、私はそう思うのですよ。だからそういう二千万体制というものがずっとある。来る年も来る年も二千万トン、こういうことはどういうことだろうかというふうに思うのです。が、この答申一つの疑問点は、そういうところにもあるのですが、その点、大臣はどういうふうにお感じでしょうか、ちょっと大臣の感触をお聞きしたいと思います。
  21. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 基本的に申し上げますと、今度の答申をいただいたわけでございますが、別に総合エネルギー対策閣僚会議というのがございまして、総合エネルギー対策において占める石炭の役割りはどうか、こういうことも検討中でございます。  そこで私どもの基本的な考え方でございますが、当分の間やはり日本エネルギー中心石油である。石油のシェアは十年後には全エネルギーに占める比率は若干減りますけれども、それにしてもやはり主役は石油に頼らざるを得ないわけでございますが、それに次ぐものとして、いろいろ検討いたしましたけれども、やはり石炭と原子力しかない。これからの十年はこの二つしかもうない。新しいエネルギー開発といいましても、なかなかむずかしい。そういうことを考えますと、日本エネルギーを安定的に確保していく上におきまして、石炭の果たす役割りというのは非常に大きいわけでございます。でありますので、われわれ関係者も石炭をできるだけ日本にたくさん掘らせたいという強い希望はありますけれども、先ほど石炭部長が申し上げましたように、いろいろな積み上げから二千万トン以上と、こういうことしかいまのところは言えない。ただしかし、技術の進歩等もいろいろありますし、世界のエネルギー事情もこれは十年間、当然、変わると思います。そういう場合には、あるいはさらにふえるというふうな場合もあろうかと思いますが、現時点では大体十年間を通じて二千万トン以上、しかし、石炭が果たす役割りというものは非常に大きいので、きることならばチャンスを見てふやすようなことはできないだろうかということを、常に念頭に持ちながら進めていきたいというのが、現在の心境でございます。
  22. 田中六助

    田中(六)委員 最後の問題ですが、この石炭の財源は石炭石油特別会計から出せというふうに答申にうたっておるわけです。つまり原重油関税から持ってくるわけですね。しかし、その率とかそういうものについては触れていない。前は実はあったのですが、これがなくなっておるのです。しかも十二分の十というのは、その数字は消えたのですけれども、必ずそういうふうにしよう、石炭関係には十二分の十を振り向けようという言質は、国会で残しておる政府であったのですが、五十年度予算については十二分の十になってないのです。それはだんだん減っておるわけです。今後もこれは減るかもわからない。減る可能性がある。こういう点について、つまりこれはやはり金が問題ですから、その金について抽象的にこの特別会計によるべきだというようなことでおさめているわけですが、やはりここもまた一つ突っ込みが足らない。この点はどういうふうにお考えですか。向坂参考人石炭部長でも、どっちでもいいのですが。
  23. 向坂正男

    向坂参考人 さっき冒頭に申し上げましたように、財政的な詰めは、現在の段階では十分、行った上での答申ではございません。その点については、この答申に当たっては十分詰めておりません。ただ、専門委員会考え方としては、やはりこういつた特別な財源によって、新政策に必要な支出を賄う必要があるということだけでございました。
  24. 高木俊介

    ○高木説明員 財源問題でございますけれども、今回のいわゆる前向きの石炭部門の生産部門につきましては、将来の、ここ三年ぐらいでございますけれども炭価のアップあるいはコストの状態、そういうことをいろいろ検討いたしまして、おおよその予算はこれぐらいではなかろうかということははじいております。そのほか、石炭関係といたしましては、鉱害予算あるいは産炭地予算について、当然、鉱害問題につきましては一応、増というような関係が出てくるわけでございますけれども、そういう予算を全部、積み上げまして、大体これぐらいであるというようなことは、財政当局の方にも一応、御了承を得ておるわけでございます。しかし、ここにまだ本年度の炭価も決定しておりませんので、実際の来年度の予算支出はどうなるかとかいうようなことは、今後の問題として残されているわけでございますけれども、ここ数年の分につきましては、そういう試算はいたしております。  なお、その財源を確保するためには、少なくとも石炭関係といたしましては、現在の石特会計を残していただきたいというようなことで、審議会の方も答申をいただいたわけでございますけれども資源エネルギー庁全般としまして、これは石油問題とか、そういうものとの関係もございますので、私、いまここでお答えできませんけれども、少なくとも石炭部といたしましては、現在の石特会計を続けていただきたいというようなことで、答申をいただいたような次第でございます。
  25. 田中六助

    田中(六)委員 時間も少しオーバーしますけれども、もう一問ですから、よろしくお願いします。  この石炭特別会計に関連してですが、つまり筑豊地帯の産炭地で非常に心配しておるのは、産炭地振興費あるいは鉱害対策費、離職者対策費というもの、つまりこの答申の最後に書かれているように、検討はしなかったけれども、しかし、従来どおりこれはやっていくのだということでお茶を濁しているわけですが、本当は石炭特別会計それからいろいろな石炭関係の法律では、こういうものをちゃんと見ることになっておる。たとえば福岡県の田川郡の糸田という町、金田という町、離職者対策は行われてなくて、二・八軒に一軒ぐらい生活保護者が現実におるのです。その町に。その数字日本一だと私は思うのです。ひいては世界一じゃないかと、いつも思うのですが、やはりつめ跡というものは非常に深い。そういうものを手当てせずして、石炭対策をやるといっても、これが総合エネルギー一つの位置づけだといっておっても、北海道でまた同じことをやられるのじゃないかという気がするのです。北海道は鉱害の方は少ないようですが、離職者対策とか、あるいは産炭地振興対策というものは前向きの予算じゃないから、石炭プロパーじゃないから、これをネグレクトするというような発想法が審議会の中にあったのではないかという心配があるわけです。それからまた、これは山ものだから、どこか一般会計の労働省その他に任しておけばいいのだというような発想法から、この特別会計の財源を、石炭プロパーなら求めたいのだが、その他はもう無視する、そういうような観点から、別に十二分の十もうたってない。ただ石炭の鉱害対策の財源は特別会計に求めるのだというようなことでいっているのじゃないかというような勘ぐり方をされて、違ってないということが言えるかどうか。やはり石炭対策というものは、石炭プロパーとそういうほかの三つの対策が伴っていくのであって、そういう点をすっかり忘れて、第三セクターで地方の協力を得て、どうとかこうとか言っても、地方自治体の連中は、それでなくても赤字なのですから、いろいろなことで協力できない。やはり協力させるには、させるだけの周辺の大衆とか民衆、国民の意識というものを常に頭に置いた政策をやらなければいけない時代になっておるということが欠けておるのではないか。こういう点について、通産大臣は担当の大胆でございますので、いかがにお考えですか。
  26. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石炭政策を進めていきます上におきましては、どうしても総合的に進めなければならぬわけでございまして、いま御指摘のようなことは十分、配慮いたしまして、今後やっていきたいと思います。
  27. 田中六助

    田中(六)委員 これで質問は終わります。
  28. 田代文久

  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず、向坂参考人にお尋ねいたします。大変、御苦労さまでございました。  われわれは、この新しい答申について、いろいろ各界の意見を聞いておるわけですけれども、私が一つ奇異に思いますのは、労働者の方が出炭規模の拡大を言っているわけです。経営者の方は余りそういうことをおっしゃらない。かつては労働者中心になって出炭規模のことを言いました。これは解雇につながるわけであります。今日、解雇につながらないのに、労働者は出炭規模のことを要請をしておる。どうもいままでの答申をめぐって、いろいろ各界の動きを見ると、一番、労働者日本炭鉱を守ろうとしてきたのじゃないかという感じがしてならないのです。それで、いま見直しと言われるのに、やはり二千万トン維持では元気が出ないというのが労働者意見でありますし、それをくむ、ことに北海道中心とする自治体の意見でもあります。こういうことについてどういうようにお考えであるのか、お聞かせ願いたい、かように思うわけです。
  30. 向坂正男

    向坂参考人 この出炭規模目標を決めるに当たって、いろいろな点を考慮いたしました。  まず第一には、主として通産省の資料ですけれども、地域別の出炭可能性、炭鉱別の出炭可能性を十分、検討したつもりでございます。全体として増産をしないでは元気が出ないというお話は、よく了解できますけれども、たとえば私ども、こういう石炭問題について世界的な視野が必要ですから、ヨーロッパはどういう政策をとっているかということにも関心を持ち、調べてみたわけでございます。アメリカは別としまして、ヨーロッパ大陸及びイギリスは大体、現在の水準維持、つまり、これまでの減産方針を改めて、現在の水準を維持するというような政策を続けるということであります。ただ、ドイツだけは褐炭についてはやや増産ということでございます。その意味で、日本資源状況を考えましても、少なくとも二千万トンを維持するという目標で出発すべきじゃないかと考えたわけでございます。  といいますのは、今後、日本炭鉱自然条件が非常に悪くなり、深部掘削による保安の危険性の増大、また労働力が、特に採炭条件が悪くなる、あるいは技術が進歩するだけに、若手の労働力をどこまで補充できるかというようなことを考えますと、ここで一挙に二千五百万トンあるいは三千万トンへ増産するという方針を立てることは、やや見通しがむずかしいのではないかというふうに専一委員会では考えたわけでございます。  また、新鉱の開発をしなければ、現在の炭鉱だけでは二千万トンの維持も困難であろう。新鉱の開発の可能性がどの程度あるか。これは今後、埋蔵量の調査などによって、さらに明らかにされていくと思いますけれども、当面の段階での期待量を考えますと、つまり現在の稼行している炭鉱の減産傾向と、それから新鉱の開発の可能性を合わせますと、当面、二千万トン以上の生産確保するという方針が妥当ではないかと考えたわけでございます。  ただ、労働力確保あるいは保安の確保、あるいは先ほど来、問題になっている企業の自立的な意識強化、いろいろな条件を考えた上で、もし増産の可能性があるならば、三年間の需給計画、これは年々、見直すローリングプランでございますから、その中で、増産の可能性を探求し、その可能性があれば実現する方向に持っていくという考え方をとるべきであろうというのが、専門委員会の結論でございました。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わざわざ「現行私企業体制を維持することが適切であると考える。」こういう指摘があっておるわけです。いままで第五次にわたる答申の推移を見ますると、一体、その反省の上に立って、こういう文言が使われるであろうかと私は疑わざるを得ないのです。すなわち、第一次答申の失敗というのは、これは当時、昭和三十七年九月に十七万九千人おりました労働者を、五年計画で十二万人にする、こういう答申が、わずか一年少しで十二万人になったわけです。これは私企業でありますから、バスに乗りおくれまいとして閉山をしたわけです。これで第一次答申はもう根本から瓦解したわけです。そうして、それは計画をつくられたけれども、保障が何らなかった。歯どめがなかった。そこで、倒産をしたから今度は退職金が要ったわけです。退職金が要りましたから、今度は企業が累積赤字になった。そこで二次、三次と続いたのは、要するに企業の既往債務に対する補てんをやらざるを得なくなった。そうして第四次に入りまして、結局、第四次政策というのは企業形態について論議をされた。当時、御存じのように西ドイツでは、ルール炭田株式会社一社案が出て、ついに一社になって、そうして八割の出炭量を持つ炭鉱が参加した。こういう、いわば資本主義国においても企業形態の変革があったわけですよ。それで御存じのように植村構想とか、あるいは国有公社論とか、あるいは三社案とか一社案とか、ずいぶん出ましたけれども、結局、議論があったけれども答申私企業体制を維持する。かくかくの条件を出すから、その条件に合わないものは企業みずからが出処進退を決すべきである、こういう答申が出たことは御存じのとおりです。  ですから、その経緯をずうっと見ますると、結局、政策的な保障がなかった。その保障のなかった原因は、私企業の判断にゆだねたからである。今日、再開発をするという休眠鉱区、封鎖鉱区等につきましては、この大部分が御存じのように、あの山は惜しいけれどもつぶさざるを得ないという、企業の実態からきておるわけです。円城寺先生は、私企業であったから残った炭鉱もあるとおっしゃいましたが、私もゼロではないと思うのです。借金でどうにもならないから、普通ならばつぶれた炭鉱が、それしかありませんから、やってきた炭鉱もあるだろうと思うのです。それはごくわずかある。それは内容も知っております。しかし、全体から見ますると、かなり上ランクの炭鉱をつぶしているのですよ。そこで、これは企業経営の内容からきているわけですよ。日本経済のエネルギー全体の問題としては、ぜひ残しておかなければならない炭鉱をつぶしておる。鉱量もある、そして採算も、他の残った炭鉱から比べるとかなりいい炭鉱もある。たとえば奔別がそうですね。ですから、そういう全体的に物を見て閉山を決定する仕組みが私企業にはないのですよ。ですから私は、そういうものを踏まえて、この新しい答申ができて、現行の私企業体制が適切であるとわざわざ書かれたところに、一体、過去の答申をどう見られておるのか、こういうように思わざるを得ないわけです。  それから、他の国の状態を見ても現状維持と言われますけれども、戦後から他の国の出炭の推移を見ていただくとわかるのです。日本のようにドラスチックに、五千五百万トンあるいは六千万トンぐらいの規模が二千万トンになった国はないのですよ。フランスだって、日本よりも炭質もよくないですよ。しかし、日本よりも若干上の、二千五百万トン程度だと思いますが、維持しているのですよ。  ですから私は、そういう点を考えると、日本のように総崩れになったというのは、これは何らか企業形態にやはりメスを入れなければいけなかったのじゃないか、こういうように思うのですが、その点、どう考えられますか。  それが証拠には、企業としてはもう退却する準備を大部分の炭鉱が全部整えてしまったのです。御存じのように炭鉱は第二会社にした。そうして、いつ炭鉱会社がつぶれても、その本体は残るような仕組みに全部してしまったわけですよ。政府はおやりにならなかった。それから答申も出なかったけれども企業みずからがそれを判断したわけですね。いま、ほとんどの会社がそういう形態をとっておるし、あるいは逆に他の企業を分離した会社もある。ですから私は円城寺先生にも言ったわけですけれども、有明炭鉱の場合でも、これが炭鉱だけを事業としてやっておる会社なら、いまでもやっておるかもしれない。しかし、他の兼業部門を持っておったわけです。私は率直に言って、よく内容を知っておりますけれども、大東亜戦争に入って、敗戦しそうだという気持ちで、あの有明炭鉱を休止したわけです。ですから、それは本体まで崩れて、本体まで倒産するという危惧が関係者にはあったわけですよ。  ですから私は、そういう意味においては、いまの状態で、ただ私企業体制の方が適切であるというのは、どこからも出てこない。ただ、自民党政府はそういう公有、公社というものを好まないからという、そういういまの政権下の判断はわかるけれども答申が物を判断する場合に、そういうものは出てこないのじゃないか。現実に御存じのようにイギリスだって 保守党政権のもとにいろいろな炭鉱に対する委員会がつくられたとき、第二次世界大戦前ですよ、国有案というものが出ておるのです。それは、鉱区の統合がぜひ必要だ、近代化が必要だという面から出ているわけですね。ですから私は、答申というものは、そういう政治のいまの現状というものを抜きにして、それは政治家が判断するのですから、答申を出してもらいたかった、こういうように思うのですが、その点どういうようにお考えですか。
  32. 向坂正男

    向坂参考人 私は残念ながら、多賀谷先生ほど石炭政策のこれまでのいきさつについて十分、存じていないことは、もう自認するわけでございますが、ただ私はここで、国際的なエネルギー情勢が大きく変わって、政府も、あるいは国民の合意を得て、石炭政策を、これまでのスクラップ化政策から維持ないし、できれば増産政策へ転換をするという大きな方向転換をしたという事実を、私たちは認める必要があると考えたわけでございます。  そのための政策的な保障としては、この新しい答申も、これまでと革新的に、画期的に変わったものではないかもしれませんけれども、しかし、それぞれが持つ必要な政策について、審議会で三年間の需給計画の中で十分検討され、また、それを政府責任を持って実施するということになれば、私は、現在の私企業体制でも二千万トン以上の生産を続けるということは可能だと判断したわけでございます。  閉山のことが指摘されましたけれども、その点も、情勢が変わっているということから、閉山についても、もちろん審議会が認めない限りは、勝手に企業が閉山するということを許さないという体制で進むべきだと思いますし、そうなると思いますので、閉山の不安についても、これまでの五次政策までの段階とは変わってきているというふうに判断したわけでございます。  それなら、私企業体制の方がいいとまで書かなくてもいいじゃないかという御意見でございますが、ごもっともな点もあると思いますけれども専門委員会としての考え方は、先ほど申し上げましたように、現在、石油より石炭の方が割り安でございますから、できるだけ企業の自立のための、まあ一定政府助成のもとで採算がとれるような、そういう条件をつくり出す方が、生産を維持するについても効率的、経営としても効率的になるのではないかという点でございます。  同時に将来、原油価格の上昇率いかんによっては、国内石炭が割り高になるという可能性も、私どもとしてはないとは言えないという判断でございまして、そういった場合には、確かに需要者に国内生産コスト増加分を、すべて負担してもらうということは困難な状態になるかもしれません。そのときには、安全供給コストとして、何らかの形で特別な負担を考えざるを得ない。それは、電力料金などの改定によって、果たして需要者がどこまで負担できるのかという問題があると同時に、政府の負担を考える、べきだと思いますが、そういうような状態がいつ出現するかは、現在のところ、全く見通しが困難であろうと思います。その意味では、何らかの形で、そういう状態になったときは、特別な負担をすべきだということを指摘するにとどまっていることは事実でございます。  そういう状態にいくまでについても、確かに、これまで先生方からの御指摘のように、需要家が容易にそれをのむ、だろうかという問題もあろうかと思いますけれども、その点は、われわれの判、断としては、やはり石炭企業の自立を軸にした方が、需要家も説得しやすいというふうに考えたわけでございますし、同時に、特にその需要家が負担する問題は、原料炭より一般炭にあると思いますけれども一般炭価格上昇に関しては、その負担を、電力料金の引き上げなどを通じて、国民に負担してもらう方が、たとえば公団赤字を埋めるということよりも合理的ではなかろうかという判断に立ったわけでございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまおっしゃいました、現在は石油価格に比べて割り安であるから、企業の意欲も違うだろう、こういう物の考え方をしておりますと、私は、エネルギーの安全保障も、あるいはまた安定的供給もできないと思うのですよ。そういう現在価格が安いから掘るのだということは、高ければ、それは逆に掘らないのだということに通ずるわけなのです。ですから私は、そういう繰り返しは失敗であったという反省の上に立って、やはり新しい答申というものがつくられてしかるべきではなかったかと思うのですよ。ですから、いま安いからといいましても、私は長期的に見ると、それは深部開発にいきますと、国内炭が高いというのは、これはもう当然だろうと思うのですよ。いま、いろいろな面で経費の削減をし、そしてあるべき労働者の賃金を抑えておりますから、たまたま、いまはいわば安いわけです。しかし、これが普通の企業のようにいくとするならば、当然、現在においても割り高になる、私はこれはあたりまえだろうと思うのですよ。  ですから、そういうことを前提にこの答申がなされないと、いまは安いけれども、将来、高くなった場合にはこうこうこう、だという、いろいろなことが書いてありますが、それは皆検討事項になっておる。私はその出発点がそもそも違うのじゃないかと思うのです。ですから私から申し上げますと、これは検討答申だと私は言ったわけですけれども、大事なところが全部検討になっておるわけですね。  ことに石炭価格について言いますと、一般炭については、「電力料金との関係を考慮しつつ割高分を吸収する方策を検討すべきである。」原料炭についても、「その割高分を吸収する方策を検討すべきである。」こういうように書かれておるわけですが、これは審議会の方では、一体どういう方策をもって割り痛分を吸収するのだという考え方でしょうか。
  34. 向坂正男

    向坂参考人 割り安だから二千万トン以上の生産を維持するというふうに判断したわけではございません。エネルギーの安定供給上の役割りを考えて、六十年度まで二千万トン以上の生産を維持するという判断でございます。したがって、割り高になった場合の方策も検討しなければならないということで、この数行が考えられたわけでございます。  ただ、その割り高分について、そのときの情勢によりまして、その幾分かは、あるいは料金を通じて電力の消費者に負担してもらうということもございましょうし、また財政的な、たとえば安定補給金のようなものを増額する、何らかの形の政府助成をふやすということも考えざるを得ないかもしれません。そこのところは、もっとそういう情勢に入ってみませんと、どういう具体的な助成策をとるかということは、判断が困難だと思いまして、このような表現にとどまったわけでございます。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さらに「国内価格は、競合財価格の一時的変動の如何にかかわらず、安定的に推移させるものとする。」これも方法が書いてないわけですね。問題は、やはり政策手段というのが、いま一番求められておるのじゃないでしょうかね。しかも割り安であるから、割り高の場合の政策がいまできるのじゃないでしょうかね。私企業同士ですから、割り高になって需要業界にいろいろお願いをしても、むずかしいですよ。政策をやる場合に、いわば炭鉱側から言うと条件のいいときに、やはり次のことを想定をして、常に安定的に供給のできるような、こういう仕組みというものが一番欲しいのじゃないでしょうか。ですから率直に言いますと、いままでの答申というのは、そのときに間に合わないで、次の谷に間に合うというような、これは日本の産業政策全体にそういうことが言えるわけですけれども、残念ながら、そういう点が十分、考えられた政策手段がないのじゃないか、こういうように思うのです。かね。  それから時間もありませんから、ついでに申しますが、日本には余りにも政策手段が多いわけです。要するに石炭政策に関して突っかい棒が物すごく多いわけですよ。法律だけでも人がびっくりするぐらい、これは一体どういう法律ですかと、外国に行って聞かれるぐらい、電力用炭株式会社法などという珍しい法律がある。しかし、突っかい棒が多いだけでバックボーンがないのですよ。ですから、一括して政策手段のとれるようなものが考えられないものなのだろうか。たとえば、かつて要求がずっとありました流通機構の一元化、その一元化というのには炭価のプール制がある。後から申し上げますが、格差の是正、こういう問題ですね。これはいままでになく「格差の是正」のところはよく的確に書いてございます。いままでは格差の是正については、怠け者が得をするじゃないか、経営努力が足らないのだということで、十分な把握ができていなかった。この点は今度の答申では、格差の是正に対して条件がずっと書いてある、あるいは一般炭原料炭の本来の価格のあり方も書いてある。この点、問題提起は私はよくできておると思うのです。しかし、内容的に言いますと、政策手段が書いてないというのは非常に残念に思うわけですね。そうすると先生方の一つ一つの個別政策に手段を入れますと、大変な政策手段が要るのですよそこにどうも私どもは納得できないものがある。これだけ各界の知恵者が集まってつくったものが、もう個別的に政策手段の要るような方法をなぜ考えられるのか。一歩進んで、それらの政策手段を統括してやられるようなものが、どうして考えられなかったろうか、こういうように思うのです。それは、先ほど申しましたように、割り高の問題、格差の問題、輸入炭と国内炭の問題、あるいは今度は競合エネルギーの問題、これらのものを統合して解決する方法は考えられないものであるか、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  36. 向坂正男

    向坂参考人 専門委員といたしましても、そういうふうに大きく割り切って、すべて考えられれば、それは非常に望ましいことだろうと思うのです。ただ私どもは、実際にもう来年度からスタートしなければならない、その新しい政策については、実現の可能性をやはり十分、配慮せざるを得ない。すぐ実現の可能性のない答案であれば、もっといろいろ書くことがあったかもしれませんし、あるいはここで総決算して、いろいろ書くということも可能であったかもしれませんけれども、ともかく実行可能な政策を続けていくということになりますと、どうしてもこれまでのいろいろな制度を改善し、特にその政策手段の運営の姿勢を変えていくということが、この際、二千万トン以上の維持に対して重要なことではないかということでやったわけでございます。確かに日本の特有なことかもしれませんけれども、いろいろな政策を合わせて目的の実現をするという体制になっていることは御指摘のとおりかと思います。しかし、この新しい状況政策の転換の方向に応じて、政府がその政策の実現について責任を持ち、また需要者など国民の協力を期待して、この答案を書いたというところでございます。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題の指摘をして、あとの手段は国会や政府がやれ、こういう答申になっておるようです。いままでの答申は具体的にぴしっと、たとえば既往債務のような場合、こういうのが書かれておったのです。今度は、いわゆる政策手段は全部後に残されておる。ですから中間答申なら私はりっぱだと思うのです。これが最終答申であるとするならば、問題の指摘にとどまったという感じを受けざるを得ないわけです。  そこでもう一つお聞きいたしますが、例の新鉱開発の問題で、たびたび議論になっておるのですが、まず第一に、個別的な開発事業体を設けるということは、どうも新鉱のようなリスクの多い、あるいは露天のようにわりあいにやりやすい、こういうものを全部、統一におやりになっているというところに、一つ問題点があると思うのです。ですから、採算に乗るものはその新鉱開発ができるだろうけれども、かなりリスクのかかるものは、だれも手をつけないのじゃないかという点が一つあります。これは私企業体制というものとわりあいに関連のある関係です。  それから、自治省にも来ていただいておりますけれども、共同開発体というものですね、これは一体どういうものを想定されておるのですか。そして聞くところによりますと、自治体の方は金は出さないのだ、こうおっしゃると、出資をしない者がそういう開発体の中に入ってくる要素がなくなるのじゃないか。協力を願う、これはわかりますが、協力を願うなら協力を願う方法として、何も事業体のいわゆる主体になる必要はないのじゃないか、こういうように私は思うのです。ですから、それは一体、何々公社というようなことでお考えになっておるのか、株式会社でお考えになっておるのか、これはどういう考え方を持っておられるのかという点が一つです。そういう場合に、政府というものは一体どういう形で入ってくるのか。  それから自治省にお尋ねしますが、これは品物を生産する、いわば私企業の中における競争場裏にある一つの事業体なのです。いままでこういう事業体というもの、第三セクターというものがあったかどうか、それに自治体が参加したかどうか、この点にもお答えを願いたい、かように思います。
  38. 向坂正男

    向坂参考人 新鉱開発については、ケース・バイ・ケースに考えているというのが、この答申の内容だと考えます。  いま御指摘の採算のとれるものは、石炭企業あるいはその需要家協力を得、また地域開発関係がございますから、地方自治体も何らかの形で参加した、そういう共同事業体でやることが望ましいし、また、それで十分やれるのではないかというふうに考えます。リスクの多い、あるいはコストの割り高が予見されるようなものの新鉱開発ないし再開発をどうするかということは、これは十分な調査を経て、いわば国民の判断すべきものではないかと思うのです。それは国民といいましても抽象的ですけれども政府なり審議会でその計画を十分、審議した上で、その開発をすべきかどうかということを決め、開発をすべきだという結論であれば、適当な石炭企業体あるいは自治体の参加などを得て、需要家協力を得て、そういう企業体をつくっていくということでやるべきではないかと思うわけです。  その場合に、政府が一体どう参画するのかという御質問だと思いますけれども専門委員会答申を考えましたときには、新鉱開発について政府主導型でなければやれないだろうというふうには考えております。それは審議会で決定し、その答申を尊重して政府が新鉱開発を推進し、石炭合理化事業団は将来改組されるかもしれませんけれども、何らかの形の石炭に関する事業団の出資なり、あるいはいろいろな開発資金の供与を通じて、政府がやはり主導的にこの開発事業を進めていくという考え方をとったつもりでございますし、ただ事業団につきましては、どういうふうに改組して、出資するのかどうかというようなことは、この答申段階までには十分、詰められませんので、御批判はあろうかと思いますけれども検討するという答申にとどまったわけでございます。  それは一体、株式会社なのか公社なのかという御質問に対しては、地方自治体あるいは事業団の参画の仕方いかんによって変わってくると思いますけれども、どういう形であるかは、私どもは株式会社よりは、いわゆる第三セクターといいますか、公社のような形を考えたつもりでございます。
  39. 久世公堯

    ○久世説明員 ただいまの御質問の点でございますが、この問題につきましては、私どもといたしまして通産省から、まだ何も相談を受けておりませんので、この問題につきましては答えにくいわけでございますが、ただ一般論といたしまして第三セクターにつきましては、これまた第三セクターは地域開発に関するものが多いようでございますが、ケース・バイ・ケースでございますものの、一般的には私どもとしては、その第三セクターが地方公共団体の総合的な計画に適合しており、また地域の住民の福祉の向上に資するものであれば、そういうものに対して、この地域開発の一端を担わせるということも考えられるというふうに従来、判断をいたしております。したがいまして、この問題につきまして、もし通産省の方から具体的な相談があれば、私どもといたしましては慎重に検討してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし、これは自治省に何も相談をしないで出したのでしょうか。これは自治省にはかなり打診をして出されたものじゃないのですか、どうなのですか。
  41. 高木俊介

    ○高木説明員 第三セクターの構想でございますけれども、特に炭鉱開発につきましては、鉱害問題あるいは跡地の利用問題等々ございますので、北海道庁にも御相談いたしまして、道庁としてはいろいろ御意見はございますけれども、最終的には、場合によっては協力するというようなお話もいただいたわけでございまして、なおまた本日は、稚内の方から市長さん方お見えになりまして、ぜひ開発に持っていくように努力してくれというようなお話もあったような次第でございます。  なお、そのほか露天掘りの小さなものもございますけれども、そういうところからも、話は地方自治体の方からきておりますので、まだ最終的に自治省の方に御相談したわけではございませんけれども、そういうような形で新鉱開発はやるべきではないかということを、事務局として向坂先生の方にいろいろ御相談したことは事実でございます。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、これは自治体としては、やはり出資はするのでしょう、何か事業体をつくったときに。それは額は多いとか少ないとかは別として。それから事業団も出資をするわけでしょう。
  43. 向坂正男

    向坂参考人 地方自治体には当然、出資を期待したわけです。しかし、それは石炭生産の主力ではございませんから、決して多額というふうには考えませんし、したがって、地方自治体が主導した開発事業体では決してないと思います。事業団が出資するか、あるいは融資にとどめるか、その点は、先ほど申し上げたように、ここの段階では方向を決めていないということでございます。しかし、必要な開発資金の調達については、政府が主導力を持ってやらなければならないという認識に立っているわけでございます。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはやはり事業団として共同体なら共同体に入るということは明確にすべきじゃないですか。それ以上、私どもは、ちょっと個別のこういう第三セクターというものに、どうも総合政策から言って、さっきおっしゃっておられましたけれども、かなりリスクがかかるという問題については、それは政策決定だとおっしゃるけれども、そういう政策決定のような問題を、自治体まで入れてやることはどうか、こういうように思うのですよ。ですから私は、簡単に掘れるような、率直に言いますと露天のようなものはできるでしょうけれども、いまからかなりリスクのかかる深部開発に向かうものに、こういう共同体というような状態ではできないのじゃないか、こういうように思うわけです。ですから、そういう意味においては、どうも容易に採掘のできるものだけが、いま頭の中にあるのじゃないか、あとは隣接鉱区から開発するという、どうもそういうようにしか受け取れない。そこで二千万トンという数字がおのずから出てこざるを得なかったというように類推するわけですが、そういう意味において、私は率直に言いますと、大きな見直し論ではない、抜本的な見直し論ではない、いわば小手先と言ったらなんですけれども、きわめて安易な供給体制の確立じゃないか、こういうように考えざるを得ないのです。もう一度、御答弁を願いたい。
  45. 向坂正男

    向坂参考人 先ほど来、申し上げているように、二千万トン以上を、現在、稼行している炭鉱生産と、それから新鉱の開発によって維持するという方針に立っていることは、申し上げたとおりでございます。比較的容易に取り組めるといいますか、埋蔵量あるいはその生産コストの予想から言って採算のとりやすい炭鉱については、すぐ取り組む方針が必要であろうと思いますが、非常にリスクの多い、あるいは場合によっては大変、投資コストが大きく、コストの高くなる可能性のあるようなものについては、それは十分、調査した上で取り組むという必要があるのであって、二千万トン以上にふやすために、非常に割り高だと予想されるものまで、すぐ手をつけるかどうかは、この専門委員会としては、十分、慎重に調査の上、決定すべきものだというふうに考えました。そういう新鉱開発全体を一括して、ある組織であちらこちらやる方が望ましいのか、あるいはそれぞれのケースに応じてやり方を考えたらいいのか、その点は、この答申では後の方の考えをとったつもりでございます。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも「大規模炭鉱」という表現を使われておりますけれども、その点については、私どもの予想した大規模炭鉱のことは余り対象になっていないような感じがする。かなり面積は広いけれども、それはかなり容易に掘れるというものが対象になっての、この第三セクターの問題じゃないかというように考えざるを得ないのですけ秘ども、そういう状態でしょうかどうか。  これは時間がありませんから続いて質問をいたしますが、産炭地振興とか鉱害問題とか離職者問題というのは、審議会では検討されなかったのでしょうか。通産省としては、これらについて一回いままでの政策の見直しと、今後の政策の確立のために、近い将来こういうものの答申を求める方針がありますか。
  47. 高木俊介

    ○高木説明員 今回は新エネルギー政策の中での石炭政策ということで、鉱害問題あるいは産炭地問題は、審議会も違いまますので取り上げておりませんですけれども、当然いま先生御指摘のような鉱害問題あるいは産炭地問題ということにつきましては、今後、審議会の場でいろいろ御検討していただかなくてはならぬ時期がくるというふうに判断いたしております。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に今度、北海道にわれわれが調査に参りましたときに、歌志内の空知炭砿の病院で、外科の、しかも整形外科の先生が一人、内科の先生が全然いないというのに出くわしまして、ちょっと慄然として委員の皆さんは帰ってこられたわけです。  そこで厚生省にお尋ねしたいのですが、医者が足らないというのは全国的な状態、しかも特に過疎地帯はそういう状態です。炭鉱労働者を集める場合に、厚生省として何かあっせん願えないものだろうかという点が第一点です。  それから第二点は、炭鉱の健康保険組合が皆赤字なのですね。それでその理由は、一つは、先ほどからお話がありましたように高齢者であるということ、それから神経痛疾病が非常に多いわけですね。これが労災でない。なかなか神経痛は労災と言わないのです。腰痛は労災として認めない。そこでいわば私病になっている。ですから組合保険の財政を圧迫しておる、こういう問題がある。しかも、二番方、三番方と続きますから、消化器系統も他の労働者に比べて非常に病気が多いわけです。そこで結局、外科だけでなくて他の内科等も多い。  そこで、時間がありませんから簡単に申し上げますが、何か健康保険組合の救済をする道はないか。たとえば炭鉱の健康保険組合を企業別でなくて全部一本に産業別に統合する、こういう方法か、どうしても認められなければ、全部、政府管掌に落としてしまうか、そういう状態まできておるのですが、厚生省としてはどういう指導をされておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  49. 中野徹雄

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  まず、後段の方の健康保険組合の状況でございますが、これは先生の御指摘のとおりに、主として労務構成の高齢化ということが影響いたしまして、収支の面で非常に大きな赤字を出しております。これに対しましては現在、健康保険組合に対する一般的ないわば赤字補助補助金の枠がございまして、従前はそれで、いわば一般的な枠内で問題の解決を図ってまいったわけでございますが、最近の情勢は、いよいよ石炭の健康保険組合の経営状況悪化してまいりまして、たとえば四十八年の決算では、経常収支で約八億円の赤字を計上しておるというふうな状況になっております。  そこで、ただいま先生御指摘のありましたような、石炭関係の健保組合を一本化して、それに対する特別な助成の方法を考えるか、あるいはやはりこれも先生の御指摘のありました、非常にドラスチックな方法になりますが、解散によって政府管掌健康保険に吸収をいたしまして、そういう形で間接的に赤字の解消を、既存の赤字も含めまして解消するという方法も一つあるわけでございます。いずれにいたしましても、問題は非常に困難な問題、たとえば労働側の考え方あるいは使用者側の考え方が、この件については必ずしも一致しない面がございまして、われわれ現在その方法を模索中でございますが、いずれにいたしましても、既存の枠内ではなかなか片づかない。そこで、先生御指摘のような方法も含めまして、ひとつ解決策を何とか早い時期に見出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  前段の病院関係人員充足の関係、これは一般的な医務行政の範疇に属しますけれども実情調査いたしまして、できる限りの努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産、労働両大臣とも、いま退席をされておりますので、これは別の機会に大臣への質問は留保いたしまして、一応終わりたい、かように思います。
  51. 田代文久

    田代委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  52. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)委員 通産大臣、近いうちに北海道へおいでになるようでございますから、現地の生の声を、ひとつこの答申問題について、ぜひともお聞きをいただきたい。  私たちも実は先週、三日間にわたりまして北海道へ参りまして、この委員会としての調査を行ったわけでございます。ここに専門委員向坂さんもおられますけれども、せっかくの御努力にもかかわらず、この答申に対しては非常な失望の念が強く出ております。賛成と言い切ったのは、わずかに石炭協会だけ、それ以外のところは、北海道の知事を初めとして市町村会あるいは市町村長、これらの人々もこれに反対、労働組合は言うまでもありません。こういう状態でございますので、ひとつ現地の生の声を大臣に聞いていただきたいと思うのでありますが、そういう中で、この答申をひとつ政府が行政として行う場合における政策として手直しをして、そういう形でこの政策を決めてもらいたい、こういう点を、まず私は強く希望いたしておきたいと思います。  そこで大体、新政策政府として決定をいたしまして、当然、閣議決定という手続をとるわけですが、その時期は大体いつごろをめどにしておられるのか、こういう点をます通産大臣から伺ってまいりたいと思います。
  54. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この春以降、内閣に総合エネルギー対策閣僚会議をつくりまして、一昨年の秋以降、激変をいたしましたわが国の総合エネルギー政策というものはどうあるべきかということについて、いま検討を重ねておるところでございます。これまで四回、会合を開きまして、近く第五回目の会合があるわけでありますが、あと引き続いてずっと続くと思います。多分この秋ごろには、およその方向が決まるのではないかと思いますが、そういう関係もありますので、石炭対策だけを独走させまして先行して決めるということもいかがかと思います。そこで、この答申は七月の十六日に受けたわけでございますが、その間、この答申を十分、検討いたしますと同時に、総合エネルギー対策閣僚会議における研究の進行と相まちまして、できれば相前後して決めたい、こう思っておりますので、少し先になろうかと思います。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただ、これは予算の問題がありますから、やはり来月中には新政策として閣議の決定をしませんと、具体的に大蔵省との折衝の問題その他が出てくるのだと思うのです。ですから、やはりエネルギーの全体の計画という中における政策ということは、大臣のおっしゃるとおりだと私は思いますけれども、そういう大蔵省との関係上、秋あるいは九月、十月というように新政策の閣議決定を延ばすわけにはいかないだろうと思うのですが、ここら辺の関係はどういうことになりますか。
  56. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 もう来月あたりから、ぼちぼち予算折衝の事務的な段階が始まるわけでございまして、予算の面から言いいますと、確かに御指摘のような点があるわけでございますが、これはエネルギー全体を総合的に決めるわけでございまして、エネルギー政策が動きませんと日本の産業政策が動かない、こういうことも言えると思うのです。でありますから、若干エネルギー政策全体についての閣議決定あるいはまた石炭についての閣議決定がおくれましても、大体の見当はついておりますので、事前に十分、根回しをしておきまして、予算折衝には支障を来さないように、十分、必要な予算が獲得できるように手配をしてまいりたいと思います。
  57. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、石炭の新政策が決まるのは大分後になる。先ほどお話しのように秋というようなことで、それまでには具体的な内容を詰めていく。その具体的な内容は、そうすると、政策が決まらないのに何に基づいておやりになるのですか。答申に基づいておやりになるのですか。答申に基づいてやるということになると、事実上、答申を決めたということになってしまうのですが、そこら辺、大臣よりも担当の部長の方がよろしいかと思いますが、お答えをいただきたい。
  58. 高木俊介

    ○高木説明員 新政策を実行しますには、当然、予算がついてまいるわけでございますけれども、予算問題につきましては、財政当局の方と大綱については了承をいただいております。しかし、先ほども申し上げましたように、来年度、単年度の予算といたしましては、今後の炭価アップの問題もございますし、そういうものとの詰めによりまして、あと要求の詳細な金額を詰めていくことになろうと思います。  一方、今回は法律改正を必要といたしますので、法律問題につきましては法制局の方とも一応、事務ベースではいろいろ話をしている最中でございまして、次の通常国会のときには、新しい法律を御審議いただくことになろうという段取りで、いま、いろいろ作業を進めているわけでございます。
  59. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると部長に伺っておきますが、この答申に基づく石炭の新政策、これはそういう法律等が整った後、すなわち相当、後ですね、通常国会にそれを出すというわけですから、秋と言ってももう十一月とか十月とか、そのころに答申に基づく新政策が決定される、大体こういうように理解してもよろしいわけですか。
  60. 高木俊介

    ○高木説明員 新政策の真の実施と申しますのは、法律を通していただいた後ということになりまして、これは五十一年度、来年度から新政策でやるという気持ちを持っておりまして、当初、第五次策は五十一年度まで一応、継続されるわけでございますけれども、これを今回は、五十一年度から新しい政策で実施していきたいというのが当局の考えでございます。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間が余りないように言ってきましたので、こういう点も、後で時間があれば、もっと詰めてまいりますが、先ほどから皆さんが問題として取り上げているのは、これは大臣お聞きいただきたいけれども生産規模の問題あるいは体制問題、こういう問題がやはり問題の焦点になっております。それから時間の関係で、皆さん、まだお触れになっておらない点が、その他にもあるわけです。保安の問題あるいはまた産炭地の振興問題、これも先ほど若干お話がありました。財政問題、こういうような幾つかの問題があるわけですが、いろいろ伺ってまいりますと、とても四十分の時間で質問を終われと言われても、これは無理ですが、一つは事業団を改組するということが出ているのだが、特にこの事業団の中で「重要な実施機関として自主的・効率的に機能」できるようなそういうことをやりなさい。これは具体的にどういうことをやる、改組をしようという考えなのですか。特に管理委員会を再検討しろということまで含んでいるのですが、この点について、石炭部として何か考え方があれば、ここでひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  62. 高木俊介

    ○高木説明員 今回の新政策に基づきます。通産省としましての直接管轄いたします法律関係といたしましては、現在の合理化臨時措置法、もう一つは電力用炭販売株式会社法、この二つになるのではなかろうかと思います。合理化事業団そのものは、合理化法の中でいろいろ規制されているところでございまして、当然、今度、法律を改正するときに、合理化事業団の内容というものにも相当、立ち入った検討を加えなければならぬのではなかろうかというように考えております。  なお、ここにもちょっと書いてございますように、新鉱開発に対する合理化事業団の姿勢の問題、あるいは現在ございます管理委員会の問題。管理委員会問題につきましては、これは管理委員会の先生方も、現在の管理委員会のあり方というものに対しまして大分、疑問も一お持ちになっております。そういう点もございますので、今後の改組の場合の例の審議会の点ともあわせて、十分これは検討しなければならぬ問題ではなかろうかというふうに考えております。  なお、合理化事業団の問題といたしましては、現在、海外問題については全然、合理化事業団としての事業はできぬような形になっておりますので、海外の開発に対する援助問題、これも合理化事業団としての一つの改組になるのではなかろうかと思います。  なお、電力用炭株式会社につきましても、いろいろ今後の海外炭の効率的あるいは安定的な輸入問題、あるいは国内炭と輸入炭との混合利用の問題、こういうようなこともあわせ考えましての電力用炭株式会社のあり方ということも十分、検討いたさなければならぬというふうに考えております。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは臨時措置法の改正でいくのですか。この前、私に、あなたは新しい法律をつくりたい、こういうことを言っておられたのですが、合理化事業団の部分は臨時措置法の改正でいくのか、新しい法律に全部切りかえてしまうのか、そこら辺の点はどうなりますか。
  64. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいまの合理化臨時措置法は、どちらかといいますとスクラップ政策を対象にした、いろいろな労働問題あるいは地域問題に対する社会政策的な政策体系になるのではなかろうかと思います。もちろん、いまの合理化臨時措置法の中にも前向きの姿勢の問題も相当、組み入れておるわけではございますけれども、そういう体系になっておりますので、今回はできたら、これは確定ではございませんけれども、いわゆる石炭鉱業安定措置という趣旨に基づきまして、目的その他を改正し、なお、それに伴うそれぞれの実施項目というようなことで改正しなければならぬというように考えております。ただし、現在の合理化臨時措置法の中での継続して実施されるような、たとえば閉山問題とか特閉問題とか、いろいろなこういう今後、一定期間の間は存続させなければならぬような項目もございますので、この辺の整理を、新しい法律とどういう形でかみ合わせるかというのが、一つの問題になっている点でございまして、まだその辺、最終的に法制局の方と、どうすべきだという結論が出ているわけではございません。(岡田(春)委員「事業団の方はどっちですか」と呼ぶ)合理化事業団は当然、現在の臨時措置法の中に入っているわけでございますので、そういう形で今度の安定法なりの中に入れて考えていいのではないかというように考えておりまして、合理化事業団そのものを単独で法律化しようという気持ちは、現在のところは持っておりません。
  65. 岡田春夫

    岡田(春)委員 本論に入る前に、こういう問題で時間をとりたくないのですが、合理化事業団というのは、臨時措置法ならば合理化ということはなるほどスクラップだ、そういう感じを非常に受けるのだが、やはりあなたの言うように安定化を図るという事業団であるとするならば、これは形式問題と言えばそれまでですけれども、名前もひとつ再検討いただきたい。そういう点で思い切った安定化を図るような、その事業の主体になるような、そういう点を考えてもらいたい。  それから、先ほどの御答弁の中に出てまいりました審議会の問題がありますが、北海道に参りましても、審議会の委員がいままで十数年もそのままでいる。そして、その政策が成功しているなら別だけれども、ことごとく失敗しているじゃないか、ここで全部入れかえるべきだ、幸いに審議会の機構を改革すると言っているのだから、ここで人事の問題も思い切ってやり直したらいいという声が強い。通産大臣、こういう点について、ひとつ思い切ってやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  66. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 十分、検討いたします。
  67. 岡田春夫

    岡田(春)委員 十分、検討だけではあれですが、若干、保安の問題に入っていきたいと思います。  ことしの保安問題に関する予算を見ても、一千百億円の中で、保安対策の直接の費用は三十分の一ぐらいですね。ボタ山の災害関係を除いた直接の保安関係は、わずか三十一億です。去年と比べれば八億ばかりふえているからということにもなろうと思うのだが、こんな程度では、実は深部開発に入る保安問題は私は解決できないと思う。特に調べてみると、保安技術調査としては、わずか五千万円しか予算が組まれていない。これほど災害が頻発するという危険のある状態の中で、保安技術調査委託費がわずか五千万円、こんな程度では、国が責任を持って保安問題に対して万全を尽くしますというわけにはまいらないと思う。  そこで私は、時間の関係もありますので、三点ばかり続いて御意見を伺いますが、まず第一点は、深部開発に伴って、やはり現行の保安法規というものを抜本的に改正しなければいかぬだろう。こういうことが必要であるという点が第一点であります。  当然、それに基づいて予算の裏づけその他の問題も必要になってまいります。それは保安監督行政というものをもっと強化する、少なくとも危険であるという山については常駐制を施行するというようなことを含めて、予算上の措置も必要であると私は考えております。こういう点が第二点。  第三点は、自由保安体制と言っているけれども、これは大臣ぜひお聞きをいただきたいの、だが、現在の保安の責任というのは会社側にある。これは確かに会社にある。そればそうだと思いますが、この間、夕張の新炭鉱現地で、われわれ、労働組合にもいろいろ質問したのでありますが、自民党の議員の諸君から、危険な状態労働組合でわかっているのに、なぜ入坑するのだ、入坑を拒否すればいいじゃないか、こういう厳しい話が、与党の方からまで出ているわけであります。ところが、いわゆる作業拒否権というものがないわけです。労働者に対して。危険だという状態に対して、人命に関する問題ですから、労働組合として、何も労働組合一般でなくても、保安担当者において、これは危険である、だからこれを拒否できるという一定の権限を付与して命を守るということぐらいは、ひとつ考える必要があるのだと私は思う。こういう点は決して会社側の保安の自主権、自律権を侵害するものではないと私は思うのです。そういう上に立って会社と交渉するということが必要なのですから、そこら辺は非常に重要な問題なので、この点は保安法規の改正に当たって、ぜひとも検討をいただきたいし、実行してもらいたいと私は思う、命の問題ですから。こういう点をひとつ明確にしていただきたい。  それからもう一点。四点になりますが、北海道では、国立で鉱山保安技術開発センターというものをつくってくれ、これは現在、岩見沢に保安センターというのがあるのです。そうじゃなくて、もっと技術開発中心にした保安センターを、しかも石炭の山のある産炭地につくってくれ、こういうことを実は言っているわけですね。こういう点等について、来年度の予算に思い切って組んでもらいたいと思うのですが、これは通産大臣、今後の政策方針として、いま申し上げた幾つかの問題について、特に後の二点は大臣から御意見を伺い、残りの点は、また関係の部長で結構でございますから、御意見を伺いたいと思います。
  68. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 若干、事務的な問題もございますので、大臣の先にちょっとお答えさせていただきたいと思います。  今後、石炭を安定的に出炭させるためには、保安を第一に優先して考えていかなければならないということは、御趣旨のとおりでございますが、御指摘のとおり、今後の生産を担いますところの現場を考えてみますと、非常に深い、むずかしい個所になってまいっておりますので、こういう実態面に即した保安法規の見直しということは、われわれも十分、痛感いたしておりまして、中央鉱山保安協議会の中に、こういう改正検討する場を設けまして、前向きに検討してまいりたい、こう考えております。これには学識経験者のみならず労働者の方々もお入りになる会議でございますので、その場に、働く労務者の方々の御意見も十分に反映できるようにいろいろ工夫してみたい、こう考えております。  それから監督強化の問題でございますけれども、これは山も大分減った関係もございまして、監督密度も、従来に比べますと格段に上がってきております。それから九州の山が減りましたために、九州の監督局から北海道に大分、異動させたりして、できるだけむずかしい山に重点的に密度を上げる工夫をやっておるわけでございますが、これにつきましては、今後ともそのように工夫するように努力を進めていくということを申し上げておきたいと思います。  それから、先ほども申し上げましたが、先ほど先生が御指摘になった中の、自主保安体制と労務者の方々の考え方の相違が起きた場合の処置の問題が一つあるわけでございますが、保安問題といいますのは、若干、会社経営の基盤と関係があるわけでございまして、労使が保安問題で対立をいたしまして、それが作業拒否という形に入りますことは非常に問題でございますので、われわれとしては、こういうふうな保安問題について労使が対立するようなことのないように、その事前に十分に御意見が伺えて、問題点が那辺にあり、どうすれば解決するかということを、監督局も仲に入るような形で十分に考えてみたいと思います。現行法規の中でも、労務者からの申告制度がございまして、問題があるときは、どしどし監督局なり監督部に労働者の方から御意見を賜って、その御意見をわれわれとしてはチェックしまして、どちらが正しいのかということも十分、見きわめる制度もございます。ただ、いままで余りそれも使っておりませんでしたが、こういう方式も十分に活用いたしまして、こういう問題が発生しないように考えてまいりたいと思っております。  それから最後に、国立の鉱山保安技術開発センターの……(岡田(春)委員「それは政策問題だから大臣から答えてもらいましょう、あなたは先に事務的な問題だけ言うというから、あなたを認めたのだから、大臣に答えてもらいましょう」と呼ぶ)これにつきましては、実は岩見沢に保安センターがございますので、この面の活用によりまして、訓練の面につきましては、できるだけ今後とも強化してまいりますし、特に新規の係員の養成等については、新たに業務として取り入れていくというようなこともいまいろいろ考えております。それから技術開発そのものにつきましては、果たして現場産炭地がいいのかどうかという問題がございます。これはなぜかといいますと、保安技術開発というものは今後、マイニングエンジニアリングのみならず、電子技術とか相当広い学問の分野を取り入れた形の新しい解明を行っていかなければならないということになりますと、境界区域の学問の分野にまで広がってまいります。そういたしますと、われわれの工業技術院の試験所の参加とか、あるいは大学の参加とか、そういう多角的な面に立ってこれを検討するのも、一つ考え方ではなかろうかということでございますが、いずれにいたしましても、御趣旨のほどはよくわかりますので、総合的に考えてみたい、こう思っております。
  69. 岡田春夫

    岡田(春)委員 佐藤さんはまじめにやっておる人だと思ったが、官僚の悪いくせを出すね。先にレールを敷いて後から大臣に答えさせる、そういう悪いしきたりはおやめなさい。私、大臣に敬意を表して言っているのだから、そういう悪いくせはおやめなさい。今後、質問のときにそういうことを言ったら、私は質問を拒否しますよ。大臣どうぞ。
  70. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石炭政策を一言で言えば、保安をいかにして確保していくか、この一言に尽きるのじゃないかと思います。それくらい保安というものは石炭の上にとって重要な課題だと思うのでございますが、そういう観点に立ちまして、この答申も御案内のように非常に詳細かつ具体的な内容が盛ってあるわけでございます。この答申の内容をよく検討し、あわせて、いま御質問の御趣旨等もございますし、政府委員から答弁をいたしましたが、ある程度、具体的に答弁をいたしておりますが、とにかく総合的に十分、保安対策確保できますように、今後とも十分な配慮を払っていく所存でございます。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 現場の保安問題については、さっきき局長が答弁したにもかかわらず、局長自身がその現場におったのですが、労働組合会社側との意見の一致ができなかったのです。そういう状態の中で事故が起こっておるのですから、こういう点はこういう道もあるのだなどという程度で、とうとい一生が奪われるようなことがないように、強く希望いたしておきます。  それから、もう時間がなくなってしまって、あれですが、産炭地振興の問題では、ここで先ほど多賀谷君の質問に答えて、高木部長から産炭地審議会をやりたいということだった。しかし、その前に政府が実態調査をする必要があると私は思うのです。ここで通産省が中心になって関係の各省と連合した大型の政府調査団を派遣する、派遣されて、その上で地域再開発計画をお立てになる、こういうことを審議会で並行しておやりになった方がいいと思うのですが、これについて大臣または部長から御意見を伺っておきたい。
  72. 高木俊介

    ○高木説明員 産炭地振興問題につきましては、特に北海道でございますけれども、今回の不況に見舞われまして、倒産、その他の中小企業が出てまいりましたので、その現状把握という意味で、いろいろ指導も兼ねまして、実は四月にも調査団を出したところでございます。今後も、こういう調査団は引き続き時期を見まして、産炭地中心に、中小企業庁等々とも連絡をとりつつ実施したいというふうに考えております。なお、そういうことによりまして、せっかく産炭地団地企業に来ていただいたわけでございますので、地域振興のために十分、役立つような形に持っていきたいというように考えておりますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  73. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もうあと十五分ばかりになりましたから、肝心のこの第三セクター並びに生産規模の問題を、向坂さんに若干、伺ってまいりたい。  さっき御答弁を伺っていると、経営者自立意識を持たして、それによって私企業体制をもう一度、強化して、黒字にするというような考え方の御答弁があった。しかし、きのうの円城寺部会長の話を聞くと、今日の石炭企業というのは事実上、国の管理、国家管理じゃないか、こういう御意見があった。これは聞いていると私は何か非常にちぐはぐな感じがするのだが、これが実態だと思う。あなたも学者の御一家の方であるだけに、これこそが国家独占資本の実態であるということを明らかにしているのだと思う。しかも、もう一つ悪いことは、この答申で見ると、私企業という体制を存立させるということで、国の方の責任は全部、私企業の方へかぶせる、そうでしょう。国の方がこうやったのだが私企業が思うようにやってくれなかったのだ、だから相当、莫大な国の資金を出す、あるいは国の指導を行う、そういう場合の責任というものは私企業がないと困る、役所は責任をとるということは困るのだ、そういううまい逃れ道を考えているという答申のような内容に感じる。  そこで向坂さんに伺いたいのは、私企業としての経済活動が、現在の石炭産業にどれだけ認められておりますか。たとえば生産面においても目標はもう決まっている。生産現場に対しては、いろいろ補助金という形で、骨格構造をこうしなさい、ああしなさい、こうなる。保安の問題についても、先ほど問題があったけれども、いろいろな指導監督がある。経営の面を見ても、今度は答申では収支についてもいろいろな干渉をする。それから今度は販売の面においても、石炭価格まで決める。これでは、石炭産業私企業でとおっしゃるが、現在の私企業、現在のいわゆる現有炭鉱ですね、一体どこに経営活動としての自主性なり自由な面があるのですか。そういう点はどういうように検討されましたか。
  74. 向坂正男

    向坂参考人 いま御指摘のとおり、石炭企業が置かれている状況は、いろいろな面で国の援助を得、また審議会などのサポートを得ていることは事実だろうと思います。しかし今後の行き方を考えた場合に、そういう支持、サポートが直ちに外せない。ある私企業が自立していく条件を整えていくまでは、なかなかサポートを外せない。特に価格決定の面や、あるいは需給の調整の面においても、審議会などの介入、関与を必要とするという状況はよくわかると思います。したがって、現状までの状況において、私企業がそれほど自己の合理化その他の努力をあらわす場面は少ないかもしれませんけれども、これから石炭生産を維持し、できれば増産も図ろう、しかも需要家にコストの増加分を負担してもらうという方向にいった場合に、やはり企業経営としてできるだけ生産経営その他の面において合理的にやり、コストの節減の努力をする必要はあろうかと思うのです。それがありませんと、なかなか需要家の負担を要求する場合にも困難であろうと思います。確かに、一般私企業に比べればそういう自主的な活動の範囲というものは狭いかもしれません。しかし、一定の国家の、あるいは審議会その他の関与のもとに、やはりできるだけ私企業の効率化の努力というものを生かす方法を考えた方が現実的ではないかという判断でございます。
  75. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこから見解が違ってくるのですがね。私企業というものが、あなたもお認めになったように国のサポートというものなしには現在やっていけない、私は国のサポートをおやめなさいと言っているのじゃないのです。ここまで現状としてきているじゃないか、私企業として自由にやれなくなっているじゃないか、これはもう限度ですよと言っている。限度を超えていますよ。それならなぜ私企業というものを固執なさるのだ、それなら公共性を持たせるべきじゃありませんか。その公共性の一つのあらわれとして、第三セクターというような形が出てきているわけでしょう。これはまさに私企業の限界を超えているということをあらわしていることですよ。それなら、なぜ私企業に黒字にさせるように三年以内にやりますというようなことを、ここでおっしゃるのだろう。これは向坂さん、私は三年以内に現有炭鉱が全部、黒字になるなんて思いませんよ。あなたはここまで大胆にお書きになったのでしょうが、三年目に、もう一度ここの場で御意見を伺いたいと思いますが、たとえば累積赤字でさえ、肩がわりの後、四十九年までに七百四十二億ですか、これだけの赤字があるのですよ。これを三年間で解消できますか。こういう点一つとりましても、私は解決できないと思う。恐らくあなたは、三年以内にもう私企業が黒字になって、うまくなってというようなときを期待なさるかもしれないけれども、私はそれは逆の結果になって、もう一度、審議会を開かざるを得ない時期がくるような感じがする。ここで、どうしても私企業をもう一度あれしなければならないという理由について、先ほども若干ほかの委員の質問に答えられましたが、あの御答弁だけでは私は納得できない。経営というのはもはや限度にきてしまっているのだから、ここで思い切ってやる、そういう中で経営表のいわゆる能力というものをどう活用するかという考え方に変えるべきだと私ば思う。そうでないと、石炭産業、また間違いを犯すと思いますので、もう一度この点についての御意見を伺っておきたいと思います。
  76. 向坂正男

    向坂参考人 いまの御指摘の中に、累積赤字の話がございましたけれども専門委員会として、できるだけ早い機会に、少なくとも三年以内に黒字にしたい、採算のとれるような状態にしたいということは、経常収支を考えているということは、ここで申し上げました。(岡田(春)委員「たな上げするのですな、累積は」と呼ぶ)ともかく、あの答申では、経常収支において黒字化を図るという意味に私どもは考えたわけです。  それから私企業の問題ですが、あるいは私企業の自立を図るということが最善であるかどうかは、いろいろ議論のあるところ、問題のあるところだろうと思います。私も別に一〇〇%の自信を持って、そう言っているわけではないのですけれども、ただ相対的な問題として、たとえば公団、公社というような、一種の国がまる抱えするような形に持っていったときの経営効率、この点もやはり十分、考慮しなければならない。特に政府がいろいろ関与し、特に多額の補助金も出し、あるいは開発資金なども出していくという場合に、やはりそれらの資金の効率的な使用ということも十分、考慮していかなければならない。その意味では、現在までの実績においては、必ずしも公社や公団にした方が経営効率がいいかどうかということには、やはりわれわれ専門委員会としても疑問がございましたので、いろいろ御議論のあるところかと思いますけれども、相対的というかレラティブには、やはりまだ私企業体制でいった方がベターではないかという判断にあるわけでございます。
  77. 岡田春夫

    岡田(春)委員 実は、いろいろ御質問したいのですが、私、二十四分までしか質問の時間がないので残念ですけれども、累積赤字の問題にしても、その利子の問題は経常の中に入るわけでしょう。七百億円の中の利子をどうするかという問題だってありますよ。ですから、ここら辺については黒字のための一つの大きなエレメントとしてお考えにならなければならない。それから、かつて片山内閣のときの炭鉱国家管理法案のときに、私、議員だったのです。それだけにあの管理法の内容も知っています。あれは国家管理というより官僚統制ですよ。われわれは公団法と言っている場合に、官僚統制がいいということを言っているのじゃないですよ。いかに民主的な管理ができるかの問題、そういう面では、あなたの効率の問題のチェックなどという問題は、当然やり得る道はあると思う。そういう場合における経営者の能力をどういうように使うかという問題だってあると思う。そこまで抜本的な政策をとらないと、本当の見直しということにならぬと私は思う。  それからもう一つ、実は私企業方式がいいとおっしゃるなら、どうして新鉱開発に第三セクターをとるのですか。それならば私企業でやったらいいじゃないですか。国の資金は何も第三セクターでなくたって、いままでどおり入りますよ。これは経営限界炭鉱であって、もうやれないからでしょう。いままで採算が合うなら、みんな私企業がやっていますよ。採算の合わないところが残されているのですよ。そういうところに対して第三セクターでやりますというが、第三セクターでやりますという場合に、国の資金がどの程度出るかどうかまだわからない。しかも、この答申を見ていると、「例えば」という形で、きのう吉田夕張市長も言ったけれども、「需要者」というのは今度、落ちて、「地方公共団体」と「石炭企業」と二つ書いてある。事業体というのは、その第三セクターは事業体別につくるのだとおっしゃるなら、場合によっては地方公共団体は参加しない、石炭企業だけでやるというような場合だって、この例を見るとあり得るわけでしょう。しかも事業別にやると、いわゆる経済的な全体の保障の問題から言って、それこそ非常に非効率になると思う。むしろ第三セクター方式をおやりになるということは、必ずしも私はそれについて賛成というわけではありません。しかしおやりになるのならば一本にして、全国的な全体の第三セクター方式をとるか、あるいはせめて北海道だけにしてやるかという大きなあれでないと、資金的な意味においても、これは非常に困難があると思う。ここら辺で、第三セクターを今後やる場合に、非常に検討を要すべき点が少なくないと思う。そこまでやるぐらいなら、なぜ公団をやらないのだ。もう実態的に変わりがないのじゃないか。そういう場合における経営者の能力というものをどう活用するか、労働者の要求というものをどう発揮させるか、そういう体制をむしろつくることの方がいいのじゃないかというのが私たちの考え方です。  これは意見になりましたが、最後に一点だけ伺っておきたいのですが、事業団の手持ち鉱区といいますか消滅鉱区、こういうものを再開発する場合には第三セクターでおやりになるのですかどうですか、この点だけを伺っておきたいのです。というのは、石炭部長の答弁を聞いていると、よく鉱害問題とかそういう問題を考えて第三セクターを考えております。そういう場合に地方公共団体が入ってもらった方がいいからです。こう言う。ははあこれは天北のことを考えているなと思うのですよ。事業団手持ちの問題、消滅鉱区の問題についてはどうなるのだということについて、第三セクターの方がいいという論拠は、われわれまだ聞いていない。そういう点、時間がないのであれしませんが、向坂さんあるいはまた部長でも結構です。ひとつ論拠を明確にしてください。どっちみち今度の答申ははっきりしないですよ。何か先ほど多賀谷君も言ったように、解説記事を拝見したのであって、何をやるかというのはこれからの問題だという感じで、そこら辺の論拠を明確にしていただきたい、そうお願いします。
  78. 高木俊介

    ○高木説明員 事業団の保有しております鉱区あるいは消滅した鉱区の再開発でございますけれども、現在は隣接しているところに操業している炭鉱がございますれば、そこの隣のところは鉱区調整という形で掘れるわけでございます。それは現にやっておりますし、今後も強化したいというふうに考えております。ただし周りに全然山がなくて、事業団が買い上げた、あるいは消滅した鉱区につきましては、まず鉱業権の取得をしなければなりません。鉱業権の取得は、これは恐らく事業団にとるようにさせたらいいのじゃなかろうか。これは現在、考えておるところでございまして、これを今度、事業主体としてどこがやるかという問題でございますけれども、小型の場合と大型の場合と二つあるのじゃなかろうかと思います。大型につきましては、第三セクター的な思想ということが当然、入ってくると思います。また小型の問題につきましても、いわゆる小型の露天掘りとかそういうものにつきましても、当然、地元の御了承は得た上で十分、納得のいくような採掘をやらすべきだろうというように考えております。また、こういうような事業団の保有鉱区あるいは消滅鉱区に対しまして、特に大口、小口ともに現在、私の方には早くやらしてくれという要請も数件きておるわけでございますけれども、これは法律改正の点もあるものですから、現在はとめておるというのが実態でございます。
  79. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わりますが、事業団手持ち鉱区あるいは消滅鉱区の場合、そういう形で第三セクターでやるというような場合は、三菱なら三菱がそれを売ったわけでしょう。そこをもう一度、再開発をする。三菱は売って金をもらった。その上で自分がやる。これでは国の金だけとってあれするという、これは余りにも独占資本本位のやり方ではないかということで、第三セクターなどということをお考えつきになったのかもしれぬ。しかし、これは隠れみのであって、新石炭政策を実施するのに、審議会という隠れみのをつくって政府、通産省の政策を実行したように、これもまた隠れみのとして、実態的には独占資本にやらせるというねらい、そこら辺を第三セクターという形でカバーしていくというようなねらいが多分に感じられるし、そういうことなら、いっそのこと私企業でやりますと言った方が正直でよろしいかと思うのですが、まあ何にせよ、こういうことでは、私は新しい開発というものはなかなか思うようにいかないと思う。これは多賀谷君が先ほど言われたように、だからこそ二千万トンという数しか出てこないのだと思う。そういう点で、われわれはこの案については、残念ながら賛成するわけにはまいりません。この点、意見として申し上げまして、私の質問を終わります。
  80. 田代文久

  81. 多田光雄

    多田委員 冒頭、大臣に伺いたいのですが、河本通産大臣が当委員会で、さきにこういうことを述べておられるのです。石炭政策について過去三十年と全然、違った石炭政策を進める、こういうことを同僚議員の質問に答えておられるのですが、今回の答申をごらんになっていて、新しいものがあるとお考えになるのか、あるとすればどういう点が新しいのか、簡潔にお答え願いたいと思います。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今度の答申案を拝見をいたしまして、これまでの石炭政策と一番、違っております点は、一昨年の秋の石油危機、これを契機といたしまして、石油はもちろん今後、主役としての役割りを果たすわけでありますけれども、しかし、わが国がなめました苦い経験から考えまして、何とかエネルギーのソースとしての石油の分散化を図りたい、それには何があるかといいますと、結局、原子力あるいはまた石炭、LNG等、考えられるわけでありますが、特に石炭というものを今後、新しい角度から新情勢に即応して重視していかなければならぬ。そういう意味において、二千万トン以上という毎年の生産量というものを積極的に維持していく、ほっておけばあるいは減るかもしれませんが、減らさないように、いろいろな工夫をして、努力してこれを維持していく、そして日本エネルギーにおいて石炭に相当な役割りを果たさせる。これまでのむしろ消極的な石炭政策から積極的な石炭政策に変わっておる、この点が一番の違いではなかろうか、私はこう思います。
  83. 多田光雄

    多田委員 今度の答申を見ていて、それに対する意見はさまざまなのです。しかし大別しますと、きのうの参考人意見を聞いても、政府は大変これを支持しておられる、支持というのはもちろん事務当局ですから。それから石炭業界電力業界鉄鋼業界は賛成しております。しかしながら、残念なことに多くの地方自治体、この地方自治体の中には与党の方もおられるところですが、あるいはまた産炭地の住民、労働組合、こういう人たちは失望をし、中にははっきりと反対という立場をとっておられる。つまり若干の色分けは違いますけれども、明らかに政府も含めて企業サイドの方は賛成、そして石炭に最も命と暮らしをかけている地方自治体や住民関係は反対、そして北海道の知事のごときは元気がなくなった、こうまで私どもに述べていたわけです。つまり石油危機政府の学んだのと若干、違うのじゃないかと私は思うのです。  石油危機で一番大きな問題であったのは、産業の根幹であるエネルギーが対外依存が大半であった、私どもに言わせれば、その大宗はむしろアメリカ依存と言っていいでしょう。原子力にしてもそうだし、石油はもとよりメジャーを通じてそうなのです。だからセキュリティーという言葉が使われて、国の安全のためにエネルギーの自立を訴えていたのです。だから今度のエネルギー需給計画、これは総合エネ調の中間報告の中でも国産エネルギーについてはこう言っているのです。「供給中断などに対する安全保障として最後の拠りどころとなる」こう言わざるを得なくなっているのです。為政者として、これを第一に考えるべきであったと私は思う。しかし残念なことに結果を見れば、むしろ外国依存ははるかに大きいのです。原子力は準国産と言っているけれども、確かに国内にはあるけれども、原料の濃縮ウランから機械の果てまで一〇〇%アメリカ依存なのです。LNGしかり。しかも今度は電力用に使う一般炭まで、国内産以上に外国から入れるという。だから、国内産炭の比重は三・八%から一・九%、こういう状況なのです。私はそこに一つ問題があると思う。  もう一つの問題は、これは少々長くなりますが。価格を見ていると、いろいろないざこざはあるけれども、電力、鉄鋼、ここがやはり中心になっている。石炭産業はどうかといえば大手八社、これの今度は私企業だ、三年間に黒字だ、こうなるのですね。そして肝心の国民サイドはどうかといえば、鉱害問題を見ても労働者の保安、賃金を見ても、一向に具体性がない。これでは国の行く末を考えても、いまの当面する生活、これを見たって、国民ががっかりするのはあたりまえだと思うのです。  そこで私、大臣にお伺いしたいのですが、昨年の暮れ、党首会談がありました。そのときわが党の宮本委員長は当面する緊急問題として、当面というのは一年や二年じゃありません、やはり数年かかります。あるいは数年以上かかるでしょうが、日本国内石炭を四千万トン以上出すべきであるということを申し入れた。もっともその後、政府から、それに対する科学的な根拠あるいは財政問題について、私ども一度も聞かれたことはない。しかし大臣、こういう一国の重要な問題について申し入れたことに対して、御検討されたのでしょうか。検討された結果、どういう御判断をされたのでしょうか。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本の産業政策の上で大切な問題はたくさんありますけれども、最大の課題はやはりエネルギー政策だと思います。そこでこの春以降、政府の方では総合エネルギー対策閣僚会議というものをつくりまして、今後の日本エネルギー政策を総合的にどう判断すべきかということにつきまして、いまずっと作業しておるわけでございます。これまでに四回作業を行いましたが、近く第五回目があります。なお数回継続するわけでありますが、いずれにいたしましても、いまエネルギー問題と懸命に取り組んでおるというのが現状でございまして、この秋までには、今後の日本エネルギーのあるべき姿というものに対して、およその方向が打ち出されるのではないか、こう思います。  その中におきまして、今度の石炭審議会の答申を受けまして、石炭のあるべき位置、果たすべき役割りというものを決めるわけでございますが、いまお話がございまして、そういう場合に二千万トンという石炭の出炭量を四千万トンにすべきである、こういうお話でございますが、これはできれば大変、結構でございますが、いろいろ検討いたしました結果、なかなかそれはむずかしい。そこで答申も二千万トン以上ということになっておりまして、それじゃ二千万トンの根拠いかん、なぜできないのか、こういう御質問がたびたびあるわけでございまして、それに対して石炭部長が、どういう根拠で二千万トン以上という数字になっておるかということについて御説明をしておるわけでございます。そういうことでございまして、多ければ多いにこしたことはないのですけれども、残念ながら日本の場合は、二千万トン以上という目標を、いまおっしゃったように四千万トンにすることは不可能である、こういう判断のもとに、今回の答申も出たものだと私ども判断をいたしております。これを最終的に政府政策として決めたわけじゃありませんけれども、この答申を有力なる参考といたしまして、これからの石炭政策を決めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  85. 多田光雄

    多田委員 どういう点でむずかしいのか私は伺っているのです。簡潔に答えてください。
  86. 高木俊介

    ○高木説明員 生産量の点につきましては、午前中も御説明したところでございますけれども、まず第一は、現有を中心にいたしましていろいろな分析をいたしております。数量につきましては午前中申し上げましたので、あるいは重複するかもしれませんけれども、A、B、Cの三つのグループに分けまして、いわゆる山別に、増産できる山と、それから現状生産を維持するであろう山と、あるいは、けさほども申し上げましたとおり、露天掘りだとか、あるいは炭量的に中小炭鉱のために閉山せざるを得ない山というような三つのグループに分けて、いろいろ検討しておるわけでございます。なおそのほかに、図上で一応考えられます五地域十六地点というところの炭量をとりまして、本新鉱区域から仮に全部がうまいぐあい開発できたらどうなるか、五百数十万トンということもけさ申し上げたと思いますけれども、これもいろいろな条件がございます。これは地元の御了承も得なければなりませんし、そういう点、あるいは労働の確保、そういうようなことも考えまして、一応、安全を見て半分とした場合、けさほど申し上げましたように二千万トン以上の数字が出てきたというのが実態でございます。  なお、個々の山につきましても、いろいろ御批判があろうと思いますけれども、たとえば百万トンの山をすぐ百五十万トンというわけにはまいりません。保安上の問題もございますし、当然、百万トンの山というのは百万トンの規模で設計し、百万トンに見合うような設備投資あるいは保安上の対策というようなこともやっておりますので、これがすぐ百五十万トンとか、そういうことにはとても無理でございますので、現在、私なんかといたしましては、かたい数字といたしまして二千万トン以上ということでございまして、今後ローリングプランの中で十分、見直しつつ、出れば、私なんかはこれはむしろ喜ぶべきことでございまして、できるだけ量としてはたくさん確保したいという気持ちではございますけれども、現在の見通しとしては、二千万トン以上という数字しか、残念ながらとれないというのが実態でございます。
  87. 多田光雄

    多田委員 ことし二億五千万の調査費がついたのだけれども、そこには釧路の米町炭鉱計画に入っておりますか。
  88. 高木俊介

    ○高木説明員 ことしの二億五千万の予算につきましては、米町区域は入っておりませんけれども、釧路の他の部分で、すでに消滅したところと現有の、これはいま採掘はいたしておりませんけれども、そこの地域の対象ということでは入れております。米町そのものは入れておりません。
  89. 多田光雄

    多田委員 通産省は一昨年、四十八年十一月十九日から二十一日にかけて「石炭生産確保に対する検討の基礎方針」という、これを通産省の指導のもとで北海道通産局とやられたことがあるでしょう。そしてそこに通産省は説明しておりますね、「昭和四十九年度生産増強の問題点」というのを。四十八年十一月二十一日、全然ありませんか。
  90. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいま先生、御指摘の資料、ちょっと私、記憶ございません。どういう資料か、申しわけございませんけれども……。
  91. 多田光雄

    多田委員 では後でお見せしましよう。これは北海道通産局がつくった資料なのです。そこに各山別にずっと調査して、ここにこういうことが書いてあるのです。「米町は、可能であるが、閉山後余りに間近いため、政策上好ましくない。」この米町炭鉱昭和四十八年九月三十日閉山しているのです。当時、出炭量が二十五万五千トン、これはオーミステークじゃないのですよ。新聞にも出ておるように、できるだけ政府生産をなるべく抑えようとしているのです。米町は悪い山じゃなかったです。だから、この一事に見られるように、本当に石炭を積極的に増産していくという姿勢じゃないのです。時間がないので私はこの程度にしておきたいが、そこで、私は部長にお伺いするが、部長からいつか伺った、これから一般炭新規開発、これは消滅鉱区と新区域あるのだが、そこでの三百九十万トン、それから百七十万トン、約五百万トン、これを掘っていく上での企業投資が約二千七百九十億というふうにわれわれは伺っているのですが、これはいいですか、若干の違いはあるでしょうけれども
  92. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいまの先生の数字でございますけれども、消滅区域からは、仮に六十年度というベースをとってみますと百七十一万トン、それから新地域から三百九十万トンというようなことで、この半分というようなことで二百万トンあるいは二百五十万トンというようなことで申し上げているわけでございまして、投資でございますけれども、四十九年度及び六十年度間におきます。仮にこれが全部開発されたとした場合は千五百億という金でございます。
  93. 多田光雄

    多田委員 大臣、お聞きのとおりなのです。つまり現有炭鉱は、いま私企業がやっています。だから、私どもは四千万トンを言うときに、これから開発するのは私企業では大変なのだと、だから国が積極的にお金を出しなさいと言っているのです。私ども、一年や二年で四千万トン掘れるなんて、そんなことを言っているのじゃないのです。この四千万トンも、相当な専門家と、財政の分析と炭価も含めて検討した。結果は、皆さんも大体四千万トンぐらいと、私らの四千万トンの需給計画は、くしくも大体ほぼ一致してきておるけれども、しかも金は、これから二千万トン維持するための不足分の二百数十万トン掘るのに、向こう十年間で千何百億です。一年間にすれば百五十億です。もちろんそのとおりいかぬでしょう。私どもが積極的に国はやりなさいとと言うように、もし、この答申で新鉱や閉じた山を国が再開発するのだとなったら、これはどんなに国民に勇気を与えることでしょうか。その姿勢こそが、本当に経済の自立の問題や、量は大した量じゃなくても、足りないものは外国から入れるにしても、その姿勢こそは、政治姿勢だけじゃなくて、私は大事な問題だったと思っているのです。私どもは、一遍に一千万トン、二千万トンをあす、あさって掘れるなんて、そんなことを言っているのじゃないのです。そういう姿勢さえないから、下部の札幌通産局は、米町はつぶしたばっかりだから掘る対象に抜かしているのです。私は、一応それだけ言っておいて、次に保安の問題に移りたいと思います。  これは局長、保安関係に伺いますが、北炭新鉱が、この春の事故で札幌通産局から処分を受けている、あの厳重な警告処分を受けているのを御存じですか。その内容をちょっと言ってください。
  94. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 ことしの春の問題については存じておりません。
  95. 多田光雄

    多田委員 だから、企業責任であると同時に国の責任だというのは、そこなのです。ことしの二月六日、これは北炭新鉱の報告によりますと、これは私この間、皆さんと一緒に行って、もらったものです。二月六日にガス事故を起こしているのです。ところが、それを保安監督局に報告もしない。ところが、同じ二月の二十日、これは同じ場所のマイナス六百五十レベルの中央第一縦入れです。ここでもガスの異常湧出を起こして、たまたま、そのとき保安監督官が入っていた。そして、これが地元の共産党の指摘によって保安監督官が調べたら、二月六日の事故も出てきたのです。これはたしか三月ですが訓告を受けているのです。訓告か警告かどっちかです。昨年、私がここでやっぱり北炭新鉱の重大なガス事故について隠蔽している事実を言って、確かにこれは当局から注意を受けているはずです。問題はこの姿勢なんですよ。しかも、その処分を受けたことを一度も労働者に発表してない。今度、事故が起きて、その翌日、三番方でみんなから追及されて、そういう処分などを受けたということを会社幹部は渋々、述べている。それから今度、調査に行って私、資料をずいぶん請求したけれども、的確な資料を出さないのです。  そこで私、ここで大臣に前回、保安の問題でも、これからの石炭見直し、仮に二千万トン以上としても、最大のポイントは労働力なのだ。この労働力が本当に確保されて、希望を持って働くような炭鉱でなければならないのだ。そこで保安法規の抜本的な改正をやりなさいと言ったら、大臣はそのとき何と言ったでしょうか。法改正検討を含めて万全を期すとおっしゃってから、もう半年たっているのです。先ほどの局長は、中央協議会でいま審議中だと言う。しかも今度の深部の事故は、労働組合が指摘していたことなのですよ、ボーリングの問題にしても。そこで私、局長に伺うが、このガス抜きボーリングは詳細な規定はどこで決めるのですか。
  96. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 保安基準につきましては、一般的、普遍的なものにつきましては省令に決めております。それから北炭新鉱のように非常に特殊なガスの多い山につきましては、省令ベースだけでは不十分でございますので、保安規程の中に織り込ませまして、これは監督局長の認可事項でございまして、その認可事項の中に織り込ませて実施させておるわけでございます。
  97. 多田光雄

    多田委員 いまの保安規程というのは、まだこんな深く入らないころの昭和二十四年八月の制定なのです。そして、その後二、三度、省令が改正された程度のものであって、最後は省令の第六十八号で、先進さく孔、ガス抜きその他ガス突出による危険の防止は保安規程に定める。その保安規程は会社なんです。つまり、営利を目的とする企業が、その肝心の、たとえばガス湧出の量をどれだけにするのか、ガスの自噴圧をどれだけにするのかというその数値は、基本的には会社が決めるのだ。だから労働組合労働者から、危険だからボーリングをたくさんやりなさいと言っても、自分の決めた規程でやっているから、今度のような事故が起きる。通産大臣、あの北炭新鉱で大事故がこれから起きないという保障はさらさらない。そのとき一体どうなることなのか。そこで私は言いたいことは、大臣にお願いしたいのは、保安法規をいつまでに改正されるのか、それを私は伺いたいと思う。もう半年おくれれば、労働者が何人か死んでいくのです。それに何十倍する労働者が重軽傷、微傷を負っていっているのです。何年聞いても、改正検討しますですよ。いつまでに改定されるのか、それをひとつ回答ください。
  98. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 年度内に改正する方向で進めております。
  99. 多田光雄

    多田委員 年度内というのは、昭和五十年度内ということですか。どうせまた暮れになれば臨時国会から通常国会あるでしょう、予定としては。それまでにひとつ間に合わせていただけないのか。相当もう論議になっているのです。中央鉱山保安協議会においても、学者、研究者の中でもかなりのものが出ている。おやりにならないのは政府がやってないだけのことなのです。どうでしょうか。五十年度といえば、国会はもう終わってしまうのです。今度の次の国会にそれをお出しになるほどのテンポでおやりにならないでしょうか、どうでしょうか。
  100. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 せっかくの御指摘でございますから、なおどの程度、早められるか、関係者寄りまして相談をいたします。
  101. 多田光雄

    多田委員 ともかく最低、五十年度内に出すということで、次の国会までにぜひひとつ努力していただきたい、こう思うのです。そうでなければ、どんなに二千万トン掘るなどと言ってみたって、それはぬかにくぎを打つようなものだということなのです。  次に、私お伺いしたいのは体制問題なのです。体制問題については同僚議員がいろいろお伺いしておりますし、私も前回ここで基本的な点をお話し申し上げました。そこで、ここに地方自治体を入れるということがどういうものなのかということを、ひとつ実例でお話し申し上げたいと思います。  建設省に伺いますが、住宅地区改良法による住宅は、市が所有管理することになっているが、それはいいですね。よろしいですね。その場合、現在、入居している人は、本人の同意なしに第三者の強制で転居はあり得ないと思うが、それは間違いありませんね。
  102. 高橋徹

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。  改良住宅にお入りになった方々が退去を求められるということは、法律上は改良住宅の明け渡しにつきましては、住宅地区改良法の第二十九条において準用しております公営住宅法の第二十二条の規定に基づく場合に限るわけでございますが、この場合、事業主体の長が明け渡しを請求することができるというのは五号ございまして、第一号が「不正の行為によって入居したとき。」第二号が「家賃又は割増賃料を三月以上滞納したとき。」第三号として「公営住宅又は共同施設を故意にき損したとき。」第四号として公営住宅法「第二十一条の規定に違反したとき。」これは入居者の保管義務のことを言っているわけでございます。それから第五号といたしまして、「第二十五条第一項の規定に基く条例に違反したとき。」これは管理条例でございますが、この五号に限られており、入居者がそのほかのことで請求が行われるというようなことはないもの、そのようなことは適当でないと考えております。
  103. 多田光雄

    多田委員 それから、もう一つ伺うけれども、家賃は、これは公営住宅法を適用して市の条例をつくって、つまり市が管理者であれば市が条例をつくって、その条例に基づかない限り、これは家賃は取りませんな。そうですね。
  104. 高橋徹

    ○高橋説明員 家賃の決定につきましても、住宅地区改良法第二十九条において準用いたします公営住宅法の第十二条の規定により決定をいたすことになっており、その第三項に「前二項に規定する家賃に関する事項は、条例で定めなければならない。」と規定しておりますので、おっしゃるとおりでございます。
  105. 多田光雄

    多田委員 大臣、ひとつ聞いてもらいたいと思うのです。私は、しばしば北炭の例を出すので恐縮なのですけれども、夕張市は今度の北炭新鉱開発のため、国から三分の二の助成、市が三分の一を出して改良住宅をつくったのです。そしてこれは夕張炭鉱、この新鉱に勤める鉱員住宅、現在までに七百四十戸つくって、本年さらにこれを三百九十四戸、ほぼこれは千二百戸くらいになって、新鉱の従業員に見合うものなのです。ところがこれを昭和四十六年以来つくったときに、この新鉱開発で数名の人が死んでいる下請の三井建設それから北新建設の労働者が百八十八戸入居していた。ところが着炭したと同時に北炭は——北炭ですよ、この住宅を持っている市じゃありません。その北炭の下請が、今度は平和炭鉱から直轄が来るから、おまえらは出ていけとなった。それだけじゃないのです。いま言ったように、これについては市には家賃徴収の条例がないのです。ところが実際は、下請が四千五百円の金を取っている。金を取っているどころか、出稼条件において家賃の額を変えている。まさに非近代的な雇用権の乱用なのです。そして、その一部が北炭に入って、北炭から市の納めた三分の一に匹敵する額を市にやっておる。そして二十年後には北炭のものだという。そして現在は、三井建設の数十名の労働者はほとんど出されてしまっておる。これは私のところに投書も来ておるし、陳情も来ておる。この間、行ったとき私は見てきました。本来は、改良住宅は二DKなんです。それを三DKにして、一DK分は北炭が金を出していることは事実なんです。つまり管理者でない。仮に北炭の下請であろうが、そういう追い出しが一体、可能なのか。これは建設省に伺いますが、これは詳細あなたの方には話しておるはずだ。あなたはこういう問題はどうですか。これは夕張だけじゃないのです。産炭地関係にはかなりあることだ。こういうものは妥当とお思いになりますか。もう一つお願いしたいことは、全道的に調査していただけるか、ちょっと御答弁願いたいと思う。
  106. 高橋徹

    ○高橋説明員 御指摘のことにつきましては、私ども現在、実態がつまびらかでございませんので、北海道庁を通じて調査を行います。
  107. 多田光雄

    多田委員 大臣、これは違法なのです。私は北炭の専務を呼んで、専務もあわてていた。つまり、地方自治体にやむを得ず違法行為をせざるを得ないように追い込んでしまっておる。きのうの参考人意見によれば、これは夕張ですが、十億程度の市の予算の中で四億が投資である、そのうちの二億が石炭関係だと言っておるのです。また夕張の市長は、全道の石炭関係の市町村会の会長をしておるのですが、超過負担は、炭鉱関係でも全道で十億に達するだろうと言っておる。私はもっと多いと思う。道路、学校から浴場から公衆施設。もちろん市民だからつくるのはいいでしょう。ですから城下町なんです。これが第三セクターに、仮に地方自治体はお金を出さなくてもよろしい、名前だけ貸してくれと入って、一体それで済むのか。さっき自治省とも相談しないというお話でした。これは自治法の精神にも反するのですよ。自治法によれば、そういう企業の鉱害やさまざまな被害から住民を守っていくというのが地方自治体なのです。ところが積極的に参加したら、どういうことになりますか。せいぜい企業の鉱害問題やその他のいわばつい立ての役割りを果たさせられて、そして道路だ、公衆施設だ、その他で、膨大な出費をさせられていく、城下町なんだから。こういう実態を知らないで、地方自治体に迷惑をかけませんなんて言っておる方がよほどどうかしておるのです。そういう意味で、私どもは、第三セクターそのものの是非はともかくとして、地方自治体は抜くべきだと思う。やるなら私企業にやらせなさい。これは理が通っておるのですよ。大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  108. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 第三セクターについての答申は受けておりますが、これを最終的にどういうふうにするかということにつきましては、なおいろいろな意見がありまして、まだ政府でも、もちろん決定をいたしておりません。今後あらゆる意見を参考にいたしまして、どういう方法が最終的に一番いいかということについて、なお若干の時間もございますので、十分検討する所存でございます。
  109. 多田光雄

    多田委員 そこで私は通産大臣にお願いしたいのですが、先ほど私が挙げた改良住宅の問題は、小さい問題じゃないのです。こういう問題に、企業もさることながら、法のたてまえから言っても政府が断固とした処置をとるのかどうなのか。そのことをあいまいにしておいて、石炭を掘ります、二千万トンを維持します。軽視じゃありませんなどと言ったって、一体だれが信用するのですか。地方自治体や産炭地の住民や、そこの商店街や労働組合が支持をしないで、一体どうやって石炭産業を守るのですか。しかも直轄と組夫と、はっきりした社会的な差別をつけている。この点で私は、夕張市にもこういう迷惑をかけている北炭に対して、これは通産省の責任ですから、そういう事実を調査されて、不当な問題、不法な問題があるならば、北炭に対してそういうことをやめろというふうにおやりになるかどうか。ささやかなことではあるけれども、そういうことができるかどうかが、政府石炭政策に対する住民の期待と関心を裏切るかどうかの問題なのです。だから私は言っているのです。どうでしょうか。
  110. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 住宅の問題は、先ほど建設省も道庁を通じて詳細、具体的に調べる、こういうお話でございましたが、通産省もそれに協力いたしまして、とにかく正確な実情を掌握をいたしまして、そしてそれによって適当な対策を立てることにいたします。
  111. 多田光雄

    多田委員 それはひとつ、ぜひ後でまたお願いしたいと思うのです。  そこで、これは部長にお伺いしたいのですが、三年間黒字ということを再三言われて、質問を受けている。これはちょっと古いのですけれども、四十九年度末で石炭企業に対する国の債務負担行為は、第一次、第二次、第三次を合わせて二千四百九十五億です。これだけねんごろな援助を受けた企業はまずないでしょう。四十九年度末で残額は千三百九十三億、これはその後幾らか返っているでしょうけれども、しかし、これも四十八年以降の累積赤字については、まだ額に入っていない。十数年でこれだけの巨額の金をもらって、しかも赤字でございますと言っている企業が、三年間で黒字に転化していくのだ。よほどの国の財政投資か、あるいは炭価アップか、もう一つ労働条件、保安の問題を余り改善しないでいかない限りはできないことなのです。企業の常識では考えられないことなのです。  私はそこで伺いたいのだが、その黒字論を積極的に言っているあなたは、その段階で、炭鉱労働者の賃金条件、保安は一体どのように改善されるのか、水準はどうあるべきだと考えるのか。そういう基礎的な、コストの中心を占めるものをはっきりさせないでおいて、ただ金を入れます。炭価を上げますなどと言ったって、それこそ企業を甘やかすばかりなのです。それはどうなのでしょう。どういう見通しを持っておりますか。
  112. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいま先生から御指摘のございました一次、二次、三次の肩がわりでございますけれども、これは企業が存続いたします限りにおいては、肩がわりを継続する予定でございまして、これは当然、現在の予算の中にも、大体、年間二百億というようなことで計上されているわけでございます。私なんかがいま申し上げますのは、いわゆる経常収支で黒字ということでございまして、この点は、本年度の関係で見ますと、答申の中にも書いてございますように、先ほどの賃金アップ、なお、資材の本年度のある程度のアップというようなことを見込みますと、恐らく三千円前後の赤字になるのではなかろうかというようなことでございます。いま、その赤字を解消すべく、いわゆる鉄鋼業界に対しまして、これは原料炭関係でございますけれども、四千円の要求をしておられる。なお、電気に対しましては、二千七百円、二千円というようなことで、生産者側と需要者側の方で炭価交渉をやっている状態でございます。恐らく近いうちにある程度のめどがつくと思いますけれども、その金額にもよりますけれども、ことしのいわゆる赤字千五百円というものは大分、減少される金額になろうと思います。  なお、来年以降の問題でございますけれども、これについてははなはだ勝手でございますけれども、具体的な数字をもって、ここでいま説明するわけにはまいりませんけれども、私どもといたしましては、一定のコストのアップ、それから一定炭価の想定ということもやりまして、いろいろ需要業界とも協力方をお願いし、ある程度のめどは立てているわけでございます。そういうものの中に、いま金額的に炭価が幾らアップするということになりますと、当然その中のコストあるいはコストの中に占める賃金というような問題もいろいろ出てまいりますので、この炭価問題だけにつきましては、失礼ではございますけれども数字として申し上げるわけにはまいりませんけれども、一応のめどといたしまして、将来の需要業界との間における炭価アップの想定というようなことでいきますと、ことしの炭価アップが仮に要求どおりいきますと、すでに、要求どおりいってくれるならば赤字はゼロになると思います。しかし、それはいかんとも恐らく需要業界と生産者側のいろいろな交渉によるわけでございますので、仮にこのとおりにいかないにしましても、来年あるいは再来年までには赤字は解消できるという見込みでございます。
  113. 多田光雄

    多田委員 私は、そういう見通しでは、労働者は本当に入ってきはしないと思うのです。現在でも炭鉱の賃金がコストに占めるのは約六〇%と言われているわけであります。しかし私は繰り返し言いますけれども、そういう姿勢では本当に労働者を大事にしていくという姿勢ではないと思う。  そこで私は、赤字論に関係して申し上げますが、これは大臣、大臣は企業家として私はお伺いするのですが、いま炭鉱赤字赤字だと大騒ぎしている。無理ないですよ。かつては炭鉱が栄えて資本を蓄積してきた。石炭が斜陽になってくると、間接部門から販売部門から、炭鉱労働者の血とあぶらで築いてきた山林原野を不動産会社をつくって、赤字の生まれる生産部門だけつくってしまった、三井でも三菱でも。北炭の三井観光、典型的なものです。太平洋炭砿の太平洋興発、典型的なものです。かつては親会社であった炭鉱が子会社になってしまった。そうしていま赤字赤字だといって労働者を締めている。そして国の財政を取っていっている。私はこの苦い経験を踏むべきではないと思う。幸いに幾らか炭鉱は上向いてきている。私は炭鉱経営が全く赤字でいっていいと言ってくるのじゃないのです。鉄鋼と電力の谷間にはさまつて、ある意味では犠牲にされてきた企業と言ってもいいでしょう。そこで今後、黒字にしていこうとするなら、次の条件ぐらい守らしたらどうか。それは国の助成を受ける企業が、その助成目的以外に資金を流さない、貸し出しだとか債務負担行為だとか。そういうふうにして、本当に石炭産業が自立できる体制を、いままでのように企業を分割していくのでなくて、石炭産業自身につくらしていくべきだ。非常に巧妙でずるいやり方だった。国が炭鉱に入れたのは、いろいろな諸掛かりを入れれば一兆円という金でしょう。しかも不動産会社をつくって、炭鉱時代にもうけたその土地を全部、別会社に移してしまう。そして、赤字でございます。最近、幾らか株が上がってきた。三年後の上場株のこの改正を前にして、何とかして景気を盛り上げようとしている。これは目に見えているのです。そうだとすれば、たとえば国の許可がない場合は、石炭の事業以外に投資しない、あるいはまた助成目的に反して助成金や融資などをしたときには、石炭企業に対する援助を取り消す、こういう処置をやるということは、これは私企業に対するむちゃなことではなくして、国策としてでも石炭を伸ばしていく、それこそ私企業を本当に伸ばしていく道だと私は思う、そういうことをお考えになっていただけませんでしょうか。
  114. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの御質問は産業政策の基本に関する問題だと思います。国の補助金を受けておる産業が、本来の目的と違う仕事をやる、そういうことのために資産が減る、あるいはまた危険負担を伴う、こういうことは、これはもう当然、私は避けなければならぬと思います。そこで、いま御指摘がございましたように、国の補助を受ける産業は、これは当然、一定の条件でなければその資産の処分はできないとか、あるいは何か相当シビアな条件を当然つけるべきである、こういうふうに私は考えております。
  115. 多田光雄

    多田委員 私は、大事な石炭産業のためにそういう処置を、これはぜひ、ひとつ検討していただきたいというふうに思います。  そこで、最後に産炭地の問題ですが、これはもう時間がなくなりました。今度の答申を見ますと、産炭地は、皆さん言ったように三行程度でとめられている。しかし国の施策、これによって産炭地が今日のように惨たんたる状況に置かれているのです。そこでお伺いしますが、産炭地振興の審議会は最近開かれていますか。
  116. 高木俊介

    ○高木説明員 連絡会議は開いておりますけれども産炭地審議会の方は開催いたしておりません。
  117. 多田光雄

    多田委員 そのとおりなんです。四十七年以来、開いていないのです。事務当局で鉱害の問題や産炭地振興の問題や雇用促進の問題が扱われているだけなのです。そして今回のこういう扱いだから、産炭地の人が頭にくるのはあたりまえのことなのです。今度の答申の中に、部会を整理して鉱害関係の部会はなくなっております。ですから、ぜひ、ひとつ私はお願いしたいことは、やはり鉱害問題の部会をつくっていく、産炭地振興の審議会を開いて、真剣にこの問題は扱っていくというふうにしないと、これまた国の信用を失うばかりなのです。そういう処置をとっていただけるかどうか、御答弁願いたいと思います。
  118. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいまの鉱害関係でございますけれども、鉱害問題につきましては、合理化法に基づきます石炭鉱業審議会の中で鉱害部会というのを実施いたしておりまして、鉱害部会は当然、今後も継続しなくてはならぬということで、答申の中に三部会というのは、これは新政策面に関する三部会でございまして、鉱害部会は当然、残すということでございます。なお、いずれ将来、鉱害の臨鉱法の改正がございました場合は、そちらの方に鉱害の審議会ということを移していいのじゃなかろうか、これは私、個人的には考えております。  なお、産炭地審議会は、産炭法によりまして審議会がございますので、今後これの運用という点については御指摘のとおりでございますので、十分、時期を見て検討いたし、なお開催もいたしたいというふうに考えております。
  119. 多田光雄

    多田委員 あと数分残っておりますが、これは労働大臣が来たときに私は保留しておきたいと思います。  ただ、通産大臣にお願いしたいことは、エネルギーの問題というのは、ただ産業面だけじゃなくて、まさに国の百年の大計を考える上での政治姿勢の根本だと私は思うのです。そういう意味で石炭を幾ら掘ったって、それは四〇%、五〇%にならないことは、だれが見たってわかるのです。しかしながら、貴重な資源を全面的に活用していくという、この政治姿勢と、そのことに対する国民の期待というものは大きいのだ。それなくして本当のエネルギーの自立性はないのだ。仮に石油はやはり四六時中入れざるを得ないでしょう。そういう自立性のなさが、たとえば油の問題の直接取引もメジャーの圧力でおろそかになってしまう。一般炭までが外国にお預けということになってしまうのです。われわれは五年、十年生きるわけじゃないのです。住むわけじゃないのですよ。本当に将来を見通して、わが国のエネルギーの正しいあり方というものを問われている最大のポイントは石炭の問題なんだということを、心から大臣に申し上げて、また別の機会にお伺いすることにして、一応、終わっておきたいと思います。
  120. 田代文久

  121. 松尾信人

    松尾委員 いよいよ石鉱審の答申が出たわけでありますが、いままで五次の答申を通じて、どうも石炭はもう邪魔者だ、非常に迷惑であるという考え方でまいりました。それから閉山に次ぐ閉山で、地域に非常に大きな問題を起こしておる。そのような問題を解決することに主力を注いでまいりましたというのが第五次までの答申であります。しかし、一昨年秋の石油危機を契機に見直しましょう。そして今回の答申は、総合エネルギー政策の一環として石炭を見直す、このような答申になっております。  ここで言えますことは、まあ答申はいろいろ書いてございますけれども、これは設計図のようなものである。いまから、この答申を受けてどのようにやっていくかということは、政府の施策にすべてかかっておる、このように認識するものであります。土台をどのようにつくるのか、その上にはバラックをつくるのか、鉄筋で建てていくのか。そして中には、保安の問題はどのようにするのか、働きやすい環境にしていくか、そして石炭企業というものの体質をどのように変えていくのか、需要者にどのように協力を求めるか、その限界は一体どこかということで、答申を受けられた政府としては、新しい意味の石炭政策の確立で非常に困っておるのじゃないか、一つのジレンマに立っておるのじゃなかろうかというような感じも受けるものであります。答申自体が非常に抽象的である。そして、答申では書けないだろうけれども政府責任というものが明確になってない。でありますから、やはり基本的に政府責任というものを明確にしていくようにされたい、こういうことを中心に、きょうは時間のある限り、私は大臣に質問をしていきたいのであります。  この前の石油ショックのときの日本の混乱。交通もとまりました、国民の生活必需物資も輸送に非常に困りました。輸出入の貿易にも大きな影響がありました。石油の暴騰で、すべての価格が上がりまして、原材料が隠されました。中小企業はどのくらい大きな打撃を受けたか。もう値段じゃない、物が欲しいというところまでいったのでありますけれども、そのような石油危機の実態。わずか六十日ぐらいしかない日本の備蓄で、どうしてこの日本の自由経済、ここまできた産業機構というものを維持していこうかということを、真剣に考えられたであろうと私は思うのでありますが、今回の答申にはそのようなものは無理でありましょうけれども、受けとめる政府側の考えとしましては、まさか、そのようなことをお忘れではあるまいな、こう思うのでありますが、大臣、いかがですか。
  122. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話がございましたように、一昨年の石油ショックによる大影響を受けまして、日本エネルギー政策は、これまでのような状態では将来も大変、危険である、何とかこの経験を生かして、できるだけ日本総合エネルギーというものを安定化の方向に持っていかなければならぬというのが、いま最大の課題になっておるわけでございます。そういうことで、いま政府の方でも、内閣の最重要課題といたしまして、総合エネルギー政策に取り組んでおるわけでございまして、同時にあわせて、石炭政策もその一環として進めておるわけでございます。そういう角度から、石炭審議会にお願いいたしまして、昨年の秋以降ずっと作業を続けてもらったわけでございますが、今回の答申をいただいたわけでございます。  これを参考といたしまして、これから、いよいよ政府石炭政策を決めるわけでございますが、たびたび私が申し上げておりますように、石油がやはり今後もエネルギーの最重要なソースであることには間違いありませんが、その次はやはり原子力と石炭であるという観点に立って、いま取り組んでおるわけでございまして、そういう意味から、私ども石炭政策を非常に重要に考えて、いま作業を進めておるところでございます。
  123. 松尾信人

    松尾委員 もちろん、そのとおりでなくては、できませんですね。  昨年五月に、わが石炭対策特別委員会におきまして、新石炭政策の確立に関する決議を通産大臣に出しまして、通産大臣は、この趣旨に沿ってしっかり実現してまいりますという答えがあります。そのわれわれの考え方の基本というものは、一次エネルギー供給源の安易な、かつ過度にわたる海外への依存に重大な反省をいたしなさい、そして国内資源の見直しから、国産エネルギー源、特に石炭供給力を積極的に拡大しなさい、そしてわが国経済と国民生活の安定が保障される水準確保すべきであるとの基本的な立場で決議を出したわけでありまして、これを守っていく、このようなお答えであったわけであります。大臣、かわられましたが、変わりはないと思うのでありますが、新通産大臣の覚悟はいかがですか。
  124. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しのとおりでございまして、そういう方向で努力をいたしております。
  125. 松尾信人

    松尾委員 それで、答申の内容を受けて、今後政府一つ一つやっていかなくてはならない、もしも政府が真剣にやらなければ、過去の傾向というものがまた繰り返されるであろうという心配のもとに、私はいまから一つ一つ具体的な問題に絡めながら、質問をしていくわけでございます。  まず、いままで閉山に次ぐ閉山、これはやはり私企業の限界がある、経済的に行き詰まる、経済的な炭量の枯渇と言いますけれども私企業がもうからないで損を重ねてきて、もうこれ以上こたえられない、こういうことによりまして炭鉱が閉山になる。閉山になれば、そこの埋蔵量というものは、一億トンの埋蔵量があって五千万トン掘った、そのときに経済的に行き詰まってやめたとすれば、五千万トンの埋蔵量というか、日本資源がそこで喪失になっていくわけですね。過去、閉山に伴って、このような傾向から日本石炭資源というものが消滅した、喪失した、われわれ国民が石炭資源を失ったその炭量というものが約六十二億トンある、このように言われるわけでありますけれども、いかがですか。
  126. 高木俊介

    ○高木説明員 閉山炭鉱の埋蔵量でございますけれども、これは事業団から閉山した山に、いろいろな後始末のために閉山交付金という交付金を出す一つの基準といたしまして、炭量計算をしたものでございまして、これがただいま先生御指摘の六十二億トンという数量になっております。これは日本工業規格炭量計算基準というものに従いまして、採掘できる、できないということの有無にかかわりませず、炭丈の三十センチ以上の炭層を深度二百メーターまで算入いたしまして計算したものでございまして、実際の経済的可採炭量とは大幅な相違があるわけでございます。閉山いたしました炭鉱は坑内が水没しておりまして、坑道もほとんど崩壊し、炭層も崩壊しているのではなかろうかというふうに考えられます。また、これが普通であろうと思います。これらの炭鉱の再開発につきましては、保安上の問題もございますし、あるいは経済上の問題もございますので、相当困難であろうということが推定されるわけでございますけれども、一応、事業団が持っておりますこういう資料をベースにいたしまして、一万五千円以内で掘れる炭量は幾らあるかというのを昨年、計算いたしました結果は、三億六千万トンぐらいは掘れるのではなかろうかということで、例の現有炭鉱の一万五千円以内という炭量と合わせまして、十億トンということを申し上げている次第でございます。
  127. 松尾信人

    松尾委員 なぜ閉山するか。会社がもうこれ以上、経営できない、それで会社が勝手に閉山するわけでありますが、自然とそういうことで何年か経過して、今度は炭価が上がった。そこから見直せば、おっしゃるとおり一万五千円だったら、これだけ掘れたとか、二万円だったらこれだけ掘れたとか、こういうことでありまして、一度、掘った跡をさらに掘り返すということは、露天と違うわけでありますから、やはりこれは国民の資源の喪失につながる。露天掘りでありますけれども露天掘りでも採算がとれませんからといってやめた、いわゆる閉山ですよね。炭価が上がった、また掘りました。そして、炭価が上がって掘ったけれども、もうこれ以上はやれませんといってやめた、また値段が上がったら、また掘りますといって、露天掘りの方は年に二回も掘ってますというのは、あなたも今度は目に見たとおりでありますが、坑内掘りはそういうわけにはいかないわけでありますね。ですから、資源の問題は、私企業が勝手に自分が限界だといってやめる、このような仕組みを変えませんと、いままでどおりの二千万トン以上を維持すると言うけれども、やはりやめていくのは私企業である。石鉱審の方で、それは承認制にいたしますと言いますけれども、石鉱審から政府にどうしますかと相談を受けた場合に、ここは閉山がよかろうとか閉山はいかぬぞという、いずれにしても結論を出さなくてはいけない。閉山というものが認められないとするならば、思い切った政府の施策が要るわけでしょう。そういうときに、今後どうするつもりですか。
  128. 高木俊介

    ○高木説明員 各山では、自然条件なり、あるいはいままでの労使関係なり、それぞれ違った形で経営がなされておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、現在の私企業ベースでいった方がいいのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  なお、閉山問題につきましてのお話でございますけれども、これは、いままでは企業ベースで安易に閉山していたという点がございますので、この点は今度、石炭鉱業審議会の中に経営部会という部会を設けまして、いわゆる労使関係一緒に審議会の場で、今後の持っていき方ということも検討しつつ閉山問題を慎重に取り扱いたいというふうに考えております。
  129. 松尾信人

    松尾委員 石鉱審が仲に入りましょうとも、どのように慎重に取り計らおうとも、要は、そのように行き詰まった炭鉱をどうするかという金の問題になるわけですよ。政府が思い切って金を出すならば、やりましょう、炭価がここまで上がれば、やりましょう、これ以上だめなら、やめましょう、やはりそういうものは私企業に任せられておるわけであります。それをやめるというならば、政府がそこに思い切った助成をするか干渉する。おまえやめろ、このような形態で別にやる、そういうようなかっこうになっていくかどうかでなくては、問題は一つクッションを、石鉱審を通す、政府に相談にきたというだけでございまして、ぐずぐずするだけが精いっぱいでありまして、その間、また炭鉱赤字がふえていく。そうすると、債務は重なり、賃金は払いにくいというような過去のパターンを繰り返すばかりじゃないか。ですから、答申があるわけでありますから、答申を受けてやるあなたの方は、今度はどういう土台をつくって、どのように設計をして、設計に基づいて今度、鉄筋でつくるのかバラックでつくるのかという分かれ道は、そういうところにあるわけであります。本当に相談を受けてやりますというだけでは不十分ですよ。思い切ってやるのかどうか。うんと金を出すか出さぬかということは、大臣はいかがですか。これはもう部長が答える段階でないような気がしますがね。
  130. 高木俊介

    ○高木説明員 現在までも不幸にいたしまして一、二の閉山鉱が、中小でございますけれども、あったわけでございます。これに対しまして役所が全然関与してなかったかと申しますと、そうではございませんで、できるだけの助成は事業団を通じてやっておりましたし、なお需要の拡大、炭価問題、いろいろ役所も指導していたわけでございます。なお需要業界の方にもお願いいたしまして引き取り要請、それぞれのことを十分努力したつもりでございます。しかし、コストが幾らでもいいから助成できる、これにはおのずと限度があると思います。そういう点で、いままでの閉山炭鉱に関しましても、少なくとも石炭部といたしましては最善の努力は払ってきたつもりでございます。今後これを審議会の場で、皆さんの御納得のいくような形で十分、検討していただいてやるべきではないかということで、今後の不幸にして、そういう問題が出てきた場合の取り扱いという点におきましては、石炭鉱業審議会の中で、皆さん方に御納得いただく、ような形でやるべきではないかというのが、今回の答申の趣旨になっておるような次第でございます。
  131. 松尾信人

    松尾委員 今後ともに、要するに海外の石油の値段または海外の石炭の値段、こういうものにリンクして日本炭価が決められていく。残念ながら自主的な炭価決め方でありません。石油が上がれば日本国内炭も上がる、海外炭が上がれば日本原料炭も上がるというようなかっこうでございまして、すでにその企業の収支というものは赤字である。五十年度は三千円の赤字が見込まれる。そういうものをどうするか。いま需要者側といろいろ折衝中であるというようなことになるわけでありますけれども、すでに五十年度で三千円の赤字が見込まれておる。そしていま閉山もできるだけ食いとめるとすれば、金も要る。いまから先、金の要ることをどんどん私、言うわけでありますけれども、そのような海外の燃料とのリンク、価格のリンクということからいけば、上がったときは上がる。しかし、それで抑えればいいと置いておいて、そして行き詰まる、そして石鉱審で取り上げる、政府側と相談するというけれども、そこには予算的な素地がなければ、今後ともに自動的に閉山というものは行われるであろうという心配、これはくどくなりますから、これ以上申しませんけれども、予算等はしっかり考えていきませんと、そのようなときに自然とまた閉山がなされる。ということは、第五次の答申を、やはりそのとおり踏襲していくのじゃないかという心配でございます。  なお、炭鉱が次々と深部移行になる。いろいろ保安の問題等で金が要る。もう日本国内炭のコストというものはどんどん上がる。こういうことが当然、予想されております。この点は大臣、しっかり考えて、今後の政府の施策の中に反映するように努力を願いたいと思うのであります。  次に、論点を移しますけれども、保安と災害であります。過去五年、十年間、日本炭鉱災害というものは非常に減ってきた。これは政府の統計もあります。われわれも現場で、その炭鉱実情も聞いてまいりましたが、なぜそのようになったかといえば、労使がやはり共同責任のもとで話し合いをして、そして保安のために一生懸命で技術の開発もする、思い切った金も使うということで災害が減ってきているわけであります。  ところが今回、残念ながら北炭の新夕張の方で、あのような事故が起こりました。そして現場でわれわれが聞いたところでは、どうもその保安対策が、ガス抜きというものが組合側が主張したようなやり方ではなくて、わずか二本抜かれただけである。その二本も、発破をかける炭層のところにガス抜きされたのではなくて、そのわきの方にガス抜きが二本やられただけだ。これを五本、六本とやって、そして発破をかけるそのところの炭層の中にガス抜きをちゃんとやっておるならば、このような事故は起こらなかったであろう、こう言われるわけであります。これはもっともだと思うのでありますが、それには金が要るわけですね。そして採炭、採炭と急いでおる、そんなことをやっておるとおくれる、いろいろ会社側事情があるわけですよ。思い切ってこの炭鉱災害を防ぐ、保安をやるとすれば金が要る。その金は現在の私企業経営者では出せない。どうしても安く掘りまして、そして自分の経営というものを、少しでも赤字を少なくしたい。こういう現状から、多くのことを望むということが、責任会社にありますけれども、現実にそれを回避しまして、現実に事故を起こしている。これはもう明らかに金がないための、会社経営が行き詰まっておるための事故なのです。こういう事故というものを絶滅するために、保安の問題等も答申にありますけれども、今後はどのような考えでこれを受けて政府は立たれますか。
  132. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 われわれといたしましては、二千万トンの出炭の要請はございますけれども、何といいましても基盤となります保安の確保というものの上に立っての生産ということを、強く生産者側には求めてまいりたいと思っておりますし、現実にわれわれ助成の面におきましても、昨年とことしの予算から言いますと、絶対額としては少ないかもしれませんが、伸び率としては五〇%以上に今年度も増額いたしてまいっておりますし、それから先生が特に御指摘になりましたガス抜きのボーリングにつきましては、現在、七五%の補助金を支出いたしておりますが、われわれは限られた予算ではございますけれども、この保安対策費の国の助成の中身といたしましては、できるだけ骨格的な、しかも企業としては余り採算上望ましくない、しかし保安上、重要であるというような問題について、重点的に補助対象に持っていきまして、そういう面からも、あわせて保安の万全を期してまいりたい、こう考えております。
  133. 松尾信人

    松尾委員 結局、政府助成七五%、そしていろいろ補助の対象も広げていくというような手厚いことを言いながらも、やはりそこに災害が絶えないということは、もう一つそこに労使の話し合いの中から、それを実現するためのいろいろの問題が、企業というそこの壁で突き当たって実現できないからであろう、こう思うのです。そこを、基本は炭価の問題ですね、現在、赤字だ、こういうところにありますから、その点はもう炭鉱災害というものを絶滅するというような前提のもとに、思い切った施策をやらない限りは、しまった、本当に申しわけないと言いながらも、とうとい人命を次から次に失っていく、この心配がありますので、思い切った施策を政府に私は強く要請するものでございます。  なお、企業側がいろいろいま政府に対する要望をしておりますけれども、諸補給金の引き上げ、資金の枠を広げなさい、そしてその運用を緩和いたしなさい、運転資金をもう少し確保するようにしなさい、保安上の技術開発指導の政府への要請、労働力確保につきましても、もうわれわれは限界でございます。その助成を、政府を当てにしておりますというようなことで、要するに諸財源の確保というものに特段の配慮政府にお願いしたい、このようなことが本心でございます。現状は期末手当、賃金支払いのための労金からの多額の借入金、これは企業が弱体であるということ、現在もう困っておるという、その体質というものがそこに出ておる。期末手当も払えない、賃金も払えないというような状態、これが日本炭鉱現状でありましょう。医療設備も不十分、これも現状でございましょう。指摘をされたとおりであります。累積赤字の整理も、その炭鉱が存続する限りはめんどう見ますというけれども、そのようなものを政府がしょい込まなければならない現状、至れり尽くせりの現状。新鉱開発企業側が出すお金がありますか。第三セクター、全部これは政府資金でめんどうを見てあげる以外にないのじゃないですか。新鉱開発、もうかるか、もうからぬかわからぬというようなものに、いまの弱体の会社がどのようにして資金を調達して出すのですか。会社がこのようにいろいろの現状で問題が山積しておる、そしてそこで働いている人が全部苦しんでいる、災害も絶えない、賃金もろくろくもらえない、医療も満足にいかない、こういう状態現状でしょう。  それを思い切って変えていくのだ、企業も黒字にするのだ、早くしたいというなら、思い切って三千円を五千円も一万円も炭価を上げなければいけないでしょう。そういう決心もない。だから私は、いま政府日本石炭を非常に大事にして、しっかりやっていこうと思うけれども金が要って困ったな、どないしていったらいいかなと。これは需要者の方に協力を求めるというけれども電力業界でも限界があるじゃありませんか。鉄鋼業界もおいそれと認めることはないでありましょう。毎年、毎年それで困っておるじゃないですか。政府は真ん中に立って一生懸命あっせんして買うてください、このくらいの値段だったらいいでしょうといって、頭を下げて買ってもらっているじゃありませんか。そういう炭価決め方がいいかというのですよ。そして日本石炭を頼りにしています。石油ショックのあのことは忘れませんとおっしゃるけれども、忘れないということと、本当に困ったということから、現実にこの石炭というものを政府責任を持ってやっていくことになりまして、言ったとおりに保安の問題いろいろございましょう。困っているのじゃないですか、よくよくこれは金が要るぞと。こういうものは出っこない。では、石油石炭特別会計にしましても、ふえるという自信は大臣にもないのじゃないかな。ましてや一般予算をふやしていこうという、その確信もないのじゃないですか。そういう中から答申が出て、その答申を受けて政策一つ一つ実施していくという政府責任というものは、よくよく私はこの重大な段階に直面したと思うのですよ。大臣、感じはいかがですか。
  134. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 答申を受けまして、それを具体的に最終どういう形で政府が決定をいたしますか、未確定でございますが、しかし、二千万トンのこれまでの実績を、少なくとも二千万トン以上維持していく、こういう程度の内容でございますから、予算が激増するということでもありません。したがいまして私は、どういう内容に最終的に落ちつくかは別といたしまして、この程度石炭の財源であれば確保できる、こういうように考えております。
  135. 松尾信人

    松尾委員 このくらいのとおっしゃいますけれども災害はもうなくさぬといけません。私企業の限界ということを私は表面に申しませんけれども、限界、そこから出る現在のいろいろの問題点というものを私は指摘しておるわけであります。新鉱の開発もできるはずはない。これ以上、保安の方に多くの金を入れようとしましても、政府助成する以外にない。そのようなものに、重大なる日本の安全保障というものがかかっておる石炭というものを任せっ放しにしていいかどうかですよ。ずるずるといくのじゃないですか。そのずるずるというのをとめようとするならば、よくよくの腹構えがなければ、この審議会で指摘しておるいろいろの問題というものが、がっちり受けとめられることはない。そこには全部お金の要ることばかりなのです。需要者の限界があります。やがて引き上げられた炭価は鉄鋼価格に響くでありましょう。電力料金にかかってきまして、全部、日本の国民が負担するわけであります。政府資金で出すのか、国民がかぶるか、そういう問題もありまして、どうとかして大きな社会問題にならないように、電力料金も政府で見てくれ。少し上げたい、大部分、政府で見てくれ、このような考え方じゃないですか。鉄鋼も同じですよ。それで、いつの間にやら値段が上がるじゃないですか。電力料金は国会の承認が要るものだから、この前も非常にもめました。六二%の電力料金の引き上げの申請、それがそのままいきませんでしたけれども、落ちつくまでには、ずいぶんの論議が闘わされました。そういうことをやりたくないから、政府で見なさいというわけですよ、電力会社は。そういうものをもろにかぶって今度は通産大臣がこれをしっかりやっていかなくてはいけない立場なんです。これはよくよくの決意がなくては、やっていけないと思うのですよ。  それで、もう時間の関係で私は最終的に申しますけれども炭鉱石炭鉱業にはこのようなたくさんの問題がある。その問題は、一にかかってやはり私企業の行き詰まりにある。その行き詰まりを打開するとするならば、大きな金が要る、炭価を上げるということを中心に。そういうものが前途にある。そして、現在も手厚い助成措置というものを政府がしておる。今後ともに、それはうんと増加をしていくことは明らかである、減ることはないといえば、これは本当にもう実質上は政府管理の炭鉱には間違いない。実質上はもう政府の管理下にありますよ。それを私企業にゆだねていくという考え方は何としても納得できない。ゆだねていいでしょう、形式的には。しかし全部めんどうは政府が見ていかなくてはどうしようもないのが、現在のこの炭鉱経営者の実態ではありませんか。それをいまさらどうして強化する。強化するにしても、全部、金が要るわけでありましょう。そういう観点から、私は、新しい石炭政策資源エネルギー政策の一環としての国内石炭政策に対して、企業としては、そういうものを使命として感じて、しっかりやっていこうという考え方が毛頭ない。その中からどうかしてもうかっていきたいという、これ以外に彼らは使命感はない。そういうものに、いま政府が任せておる。自民党政府がそういう中に任せておるということ自体は、私は、時というものを知らないではないか。時がもうきていますよ。思い切ってこれはどこからか手をつけて、せめて新鉱開発の方から手をつけていくか。やがて閉山というものを申し込んでくる。そういうところから何かの手をかけていくか。そうして政府がすべて一次、二次、三次と肩がわりしてきたとおりに、経営というものも何かの方法で肩がわりを考えていかない限りは、従来どおりのことを答申を受けながらも繰り返していくのじゃないかということを非常に心配するものであります。  それから一言、石炭格差の問題。これは非常に炭鉱炭鉱によって違います。九州、特に高島炭砿なんかは、うんともう坑内が深くなってまいりましたし、これは格差が非常に大きいと思うのでありますけれども、この格差の問題をどうするかということは、ひとつ石炭部長から。私がいろいろこの石炭界の現状から問題を提起しておる。政府の覚悟というものを促しておるわけでありますが、そういう点については、最後に大臣からお答え願って、私の質問を終わりたいと思うのです。まず格差是正の問題。
  136. 高木俊介

    ○高木説明員 格差問題につきましては、現在、一律と申しますか、平均的に五百五十円の安定補給金を交付しておるわけでございますけれども、こういう金を格差是正の方に使うべきではないかという考えを持っておるわけであります。格差是正と申しますと、炭鉱自然条件ガスの多い山、少ない山、いろいろ条件も違いますし、急傾斜、緩傾斜等によっても違いますし、原料炭一般炭の問題あるいは山の立地条件によっても、いろいろ価格に影響してくる点があるわけでございますので、現在の安定補給金を格差是正という方に使ったらどうかということと、もう一つは、例の坑道の補助金関係でございますけれども、これもグループ化して交付金みたいな形で助成していったらどうかというようなことを、いま考えておる次第でございまして、この二点をもちまして、助成関係の格差に利用さしていただきたいと考えております。
  137. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最後にお話しになりました点は、大きな点が二点あったと思うのですが、一つは、石炭経営の場合に価格の問題でありますが、石油が一昨年四倍にも上がった、そういうことのために、需要者との価格交渉はある程度やりやすくなっておる、こういうことが言えると思います。  第二の問題は、ここまで国が補助するのだから、私企業としての経営は成り立たぬではないか、むしろこの際、経営形態を根本的に検討すべきである、こういう御趣旨であったと思いますが、私どもは、私企業の方がやはり効率的な点が多い、こういうことを考えておるわけでございます。答中にも、その趣旨のことが盛られておりますので、やはり私企業であるという認識の上に立って、今後の石炭政策というものを進めていきたいというふうに考えております。
  138. 田代文久

  139. 愛野興一郎

    ○愛野委員 政府の第六次新石炭政策答申を受けられたときに当たりまして、新しいエネルギー事情の変化から、二千万トン以上の石炭を新たに見直しをしようという前向きの姿勢に対しては、私は敬意を表するわけであります。二千万トンと申しますと大体、昭和三十年代の前半には、九州地区だけで受け持っておった量でありますから、体制の問題その他、いろいろと論議がありましょうとも、そういうことを政府ががっちりと受けとめて、新しい石炭政策の見直し、手直しをはっきりと打ち出していただきたいと思うわけであります。ただ、この答申に当たりまして、先ほど共産党の多田議員も御指摘になっておりましたが、10の「鉱害対策産炭地域振興対策及び離職者対策」これはたった三行しか書いてない答申でありまして、先ほどもお話が出ておりましたように、まるっきり閉山してしまった地域については、今後、新しい石炭政策の見直し、手直しによって、いままでの鉱害復旧対策あるいは産炭地域対策等が陰に隠れて、薄れていくのではないか、こういう心配を、先般の県議会等々でも論議があったやに聞いておるわけでありますが、もちろん答申でありますから、新しい政策を遂行すると同時に、この鉱害対策等々はもっともっと活発にやっていくというおつもりであるのかどうか、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  140. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回の答申は、総合エネルギー政策の一環として、エネルギー源としての石炭についての対策、そういう意味で御審議をしていただきまして、答申を受けたわけでございますが、いま、お話がございましたように、産炭地振興と鉱害の問題でございますけれども、これは一番終わりに、これまでの政策に対して念を押すという商味におきまして、「従来の対策の趣旨を尊重し、」産炭地の「実情に即し引き続き必要な対策を講ずべきである。」ということを述べられております。政府の方におきましても、この答申の趣旨を受けまして、万全の措置を今後とも講じていきたいと考えておる次第でございます。
  141. 愛野興一郎

    ○愛野委員 先ほどの石炭部長の答弁を聞いておりますと、産炭地域振興審議会は四十七年以来開かれておらぬ、連絡会議を行っておるということでありますが、それが開かれてないという理由は、いま順調に鉱害復旧あるいは産炭地振興が行われておるから開かれておらぬ、こういうわけでございましょうか。
  142. 高木俊介

    ○高木説明員 先ほども申し上げましたとおり、産炭地振興の方の審議会は現在、開いておりませんけれども、今回も審議の途上におきまして、いろいろ話は出たのでございます。今回の石炭政策は、エネルギー政策としての石炭の見直しということでございましたので、昔みたいないわゆる縮小の体制の中ならば、これは当然産炭地問題、鉱害問題が入ってくるわけでございましたが、そういう観点から、今回は審議会を開いておりませんけれども、今後、生産していくのに二千万トン以上の体制を整えるにいたしましても、前向きの産炭地振興という問題も一つあるのではなかろうかと思います。なお、閉山した後の産炭地振興、これは二つに性質が分かれるのではないかと思いますけれども、こういう点も含めまして今後、産炭地問題に前向きに取り組むべく、審議会もいずれ時期を見て開催したいと考えております。  なお、鉱害問題につきましては、合理化法によります鉱害部会というのがあるわけでございますけれども、現在は開いておりません。しかし、これもいずれ必要な時期がきましたら開催するという考えでおります。
  143. 愛野興一郎

    ○愛野委員 いまのは、これから始まると申しますか、前向きの産炭地振興、それからいままでの産炭地振興、こういった問題も含めて、新たに近く開くという意味だと思います。また鉱害の方は、これまた部会もいままで開かれてなかった。そういう状況の中で、今回の新たな答申にたった三行ばかりしか出てないということで、非常な不安感を覚えておるわけであります。と申しますのは、国の財政の都合もあって、鉱害復旧にいたしましても産炭地振興にいたしましても、必ずしも今日まで思うようにいっておらぬ。そういうやさきに新たな見直し、手直しが出てくるわけでありますから、結局は新たな政策の陰に隠れて、それがなおざりにされはしないかという県や市町村の懸念が生ずる、こういうふうに思うわけでありますが、その点はひとつ政策決定の御当局において、十分お考えをいただきたいと思います。  ただ、ちょっと石炭部長さんにお伺いをいたしておきたいと思うわけでありますけれども、先ほど質問を聞いておりますと、閉山の炭鉱の埋蔵量が六十二億トン、開発可能が三億六千万トン、こういうお話であります。たとえば佐賀県に例をとってみますと、まさに三十年の末期から四十年代の後半にかけて、大資本であろうと中小であろうと軒並みに、あっという間に崩れ去ってしまったわけであります。ところが、これまた必ずしも佐賀県は明治以来の古いあれではないわけでありまして、戦時中また戦後の、言うならば国策に沿って炭鉱が栄えてきた、こういうわけであります。     〔委員長退席、多田委員長代理着席〕 こういうことから考えますと、何か先ほどの御質問ではありませんが、過去において一つでも残しておくような方法はなかったものかどうか。過去における政府石炭政策がいいとか悪いとかという問題ではなしに、何か過去における、これだけの埋蔵量の炭鉱が閉山したということについての御見解をお伺いしたいと思います。
  144. 高木俊介

    ○高木説明員 過去の閉山の山が当時、何らかの条件で残されなかったかという御質問だろうと思いますけれども、残すにつきましても、たとえば奔別の閉山のとき、いろいろ検討いたしました。維持するための管理上の問題、あるいは保安上の問題、あるいはそれに要する労働の問題、こういう点も検討したわけでありますけれども、当時としては残念ながら閉山せざるを得なかったというような状態になっておるというふうに記憶いたしております。
  145. 愛野興一郎

    ○愛野委員 私が開いておりますのは、当時としてはじゃなくて、いま考えれば何か方法はなかったかという問題です。
  146. 高木俊介

    ○高木説明員 いま直ちにいい知恵が浮かばぬわけでありますけれども、いずれにせよ残すということになりますと、いまから考えましても相当な金を、どこが負担するかというような問題もあったのじゃなかろうかと思います。いろいろ困難な問題ではなかろうかというふうに考えられます。
  147. 愛野興一郎

    ○愛野委員 恐らくは御答弁もそういう御答弁であろうと思って、私はお聞きしたわけでありますが、しかし、よく考えてみますと、資源エネルギーの国際的な事情の変化によって、また石炭が見直されてきた。同時にまた閉山に追い込まれた佐賀県の石炭情勢というものも、やはりこれは石油中心エネルギー時代ではない場合において、国の方針、あるいはまたマッカーサー、GHQの方針によって石炭が根本的に見直された時代の後遺症がいま残っておる、こういうわけであります。     〔多田委員長代理退席、委員長着席〕 そういうわけでありますから、やはり二千万トン以上の新しいひとつ石炭の見直し、手直しをやっていただくと同時に、こういった前の日本資源エネルギーとして活躍をしたと申しますか、あるいはまた犠牲を強いられたと申しますか、そういった地域の問題については、やはりひとつ根本的な温かい手を差し伸べていただかなければいかぬ、こういうふうに思うわけであります。  そこで鉱害復旧事業についてでありますが、五十六年度までに、これを完了するということになっておるわけでありますけれども、それが五十六年度までにできない場合は、どういうことになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  148. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府昭和四十七年十二月に鉱害復旧長期計画を策定いたしまして、臨時石炭鉱害復旧法の有効期限、五十七年七月三十一日、いま御指摘のとおりでございますが、この十年間に、残存鉱害、四十七年度当初価格表示でその総額は千七百五億円の鉱害量になっておりますが、これの完全な処理を図ることを基本方針として決めたわけでございます。この方針に沿いまして、今後とも最大限の努力を払っていく所存でございます。仮定の話でありますけれども、万が一御指摘のような事態が発生いたしました場合には、五十七年で期限が切れるわけでございますので、法の延長、こういうことにつきまして当然、検討すべきである、こういうふうに考えております。  それから鉱害復旧対策の財源につきましては、従来の対策の趣旨を十分尊重いたしまして、鉱害の実情に即した対策を引き続き行うために、その確保に万全の努力を払っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  149. 愛野興一郎

    ○愛野委員 この今回の答申にかかわらず、いままでより以上に鉱害復旧に対しては積極的にやっていただくという御答弁をいただきましたので、鉱害復旧の問題については、この辺で質問を終わりたいと思いますけれども、ただ私が申し上げたいのは、この鉱害地の未認定とか、あるいはまた樹園地の鉱害地の認定というようなものが、きわめて長期にわたって結論が出されない、こういう問題もございます。そこで、こういった問題をできるだけ期間を早く早急に認定できるような御工夫はないものかどうか、この点ひとつ鉱害担当の方からお伺いしたいと思います。
  150. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいま先生の御指摘の鉱害認定でございますけれども、科学認定調査という制度をもちまして調査をやっておるわけでございますので、いまの先生の御趣旨に沿うように極力、早期に解決するように努めたいというふうに考えております。
  151. 愛野興一郎

    ○愛野委員 いま申し上げました三点のみならず、この鉱害復旧の問題あるいはまた産炭地振興のためにとられた政策が、その後の国の経済等の事情にもよって、さっぱり産炭地振興になっていないというような向きも、いろいろあるわけでありますけれども、とにかく過去において本当に日本石炭産業のために一番苦しい時代を乗り切ってきた地域の鉱害復旧等々も、ひとつ十分、政策に取り入れていただいて、そうして新たな総合エネルギー資源としての石炭政策を確立をしていただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  152. 田代文久

    田代委員長 古田法暗君。
  153. 吉田法晴

    ○吉田委員 私は時間も限られておりますし、しかも向坂さんは退席をされましたから、新政策について通産大臣初め通産省、労働大臣が間もなく入られるそうですから労働省の関係者にお尋ねをするしかございません。それも労働者対策保安対策、人の関係にしぼってお尋ねをいたしますが、第一に新政策の中の労働者対策、幾つか書いてございます。あるいは労働者労働条件については「労働時間、職場環境、生活環境等の要素を総合し、かつ他産業とのバランスを考慮して地下労働の特殊性が十分配慮された適正な水準とすべきである。」こう書いてございます。聞きますと、かつては石炭局の中にも労務課がございました。それだけではございません。各通産局にも労務課がございましたが、いまでは班があるだけのようでございますが、新政策の中で労働者対策についてどういう対策を立てられるおつもりであるか、承りたいと思います。  ちなみに私が地元の西日本新聞で拝見をしますと、新政策に関連をして、現地は相当の関心を持っておりますが、幾らか不安を持っておることも、これまた事実であります。新石炭政策答申案が決まったという記事に「福祉切り捨ての恐れ」という見出しを書いて、これは住民に対するきめの細かい配慮もということですから、あるいは産炭地振興等も含んで「福祉切り捨ての恐れ」があると受け取ったのだと思いますが、私は新政策の中に、かつての炭政あるいは石炭経営の中でもございました労働者に対する愛情あるいは配慮がなくなっているのではないかと考えますので、ひとつ第一に、新政策の中での労働者対策答申にも書いてございますが、これについてどういうぐあいに考えられておるのか、労働省それから通産省、両方にお尋ねをいたしたいと思います。
  154. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えします。  このたびの答申を私もずっと拝見しながら、また前回、皆さんから労働省は答申に当たってしっかりと相談にあずかるようにというお話などもありましたので、できてきたこの答申をよく読んでいるわけでありまして、おっしゃるような御懸念がないように、私たちは何といたしましても二千万トン程度というものを確保するためには、魅力のある職場、そのためには保安も大事でございますし、安全も大事ですし、さらにまた環境整備、こういう考えで、この中に盛られたものを従来以上に御心配のないような形で推進してまいりたい、こう思っているわけであります。
  155. 吉田法晴

    ○吉田委員 心構えだけ、いま言われましたが、そこにございます。先ほど引き合いにも出しましたが、労働時間、職場環境あるいは生活環境等について「他産業とのバランスを考慮して地下労働の特殊性が十分配慮された適正な水準」としたい、こう書いてございますが、この間も多賀谷さんから御質問がありましたが、戦後、引き揚げ者の大部分が炭鉱に相当、流入をいたしました。そのときの事情は、住宅があり、それから米の特配も含めまして食糧が十分ある、それから服や作業用具等の貸与制度もあって、炭鉱に入ったら翌日から仕事ができる、生活ができるということが、大ぜいの引き揚げ者が炭鉱に入ったゆえんだとも思うのでありますが、二千万トン以上の石炭確保するについては、この間から言われましたように、新しい若手の労働力確保が必要でございますが、賃金については全産業の何割増しぐらいを考えておられるのか。  住宅について言いますと、二間の従来の社宅を二つくっつけて、四間になっているところもあるそうでありますが、答申にも書いてございます都会生活との格差を解消するとすれば、もう当然二DKではなしに三DKで、それぞれの住宅に便所はもちろんのこと、ふろがついているのが常識だと思われますが、そういう住宅対策について、住宅についてはこの内閣は大分、力を入れておられるようでありますが、特に炭鉱の住宅について、どういう方向を持っておられるのか、承りたい。  それから病院のことも書いてございます。それから、先ほどお尋ねもございました都市生活との格差の解消というのは、これは大きな問題だと思いますが、何か夜勤の労働者の昼間の安眠施設について云々という点について尋ねましたら、昼間、安眠を確保するために仮眠施設を考えておるという話でございましたが、その昼間の仮眠の施設のごときは、何十年か前に、私ども炭鉱におりますときに、これは考えられた方法でございます。いまさらそういうことで、新しい都会の生活との格差を解消するということは困難だと思いますが、これらの点について、ひとつ通産省、労働省、両方から承りたいと思います。
  156. 高木俊介

    ○高木説明員 初めに住宅関係を申し上げます。  これは四十九年の九月末、大手八社の住宅関係の総戸数でございますけれども、四万二千三百三十一ございます。このうち一間のものが四十二、二間のものが九千四百十、いわゆる三間のものが一万九千五百七ございます。なお、四間のものが一万三百六十九、五間のものが千百九十三、あるいは六間以上が千八戸十というようなことで、トータルで四万二千三百三十一を天手八社で所有しておるわけでございます。  これに対します使用でございますけれども、一間のもの四十二に対して十一、二問のものが九千四百十に対しまして七千百七十八、三間の二万九千五百七に対しまして一万四千四百三十八、四間の一万三百六十九に対しまして九千百七十二、五間が千百九十三に対しまして千六十四、六間以上が千八百十に対しまして千七百三十五ということで、総戸数の四万二千三百三十一に対しまして、使用されておりますのが三万三千五百九十八ということになっておりまして、使用率は七九・四%というようなことになっております。  なお、鉄筋のもの、あるいは木造のものというような数字もございますけれども、詳細を省かせていただきまして、現在このようになっておりますので、今後、先生の御指摘のいわゆる三LDKというようなものに対します通産省の態度といたしましては、例の近代化資金という制度がございまして、この資金を年間約十億、住宅関係の改良あるいはそういうものに使っておりますので、今後とも環境整備の方には力を入れていきたいというふうに考えております。  なお、深夜労働に対する配慮でございますけれども、いろいろこれには問題があろうと思いますけれども、少なくともクーラーその他を入れまして、深夜労働された方々がゆっくり休まれるような状態をつくるべきではないかというようなことで、ここに答申に書いてあるような次第でございます。
  157. 吉田法晴

    ○吉田委員 労働省から御答弁ございますか。
  158. 石井甲二

    ○石井説明員 お答えいたします。  労働力確保対策の問題に関連しまして申し上げますと、やはり生活環境改善とかあるいは保安の確保というのが基本的な一つ体制整備であろうと思います。ただいま先生、御指摘がありました、特に住宅対策について、いまもお話がありましたが、労働省といたしましても、全体の問題としては建設省の所管でございますけれども、雇用促進事業団が行っております雇用促進住宅あるいは雇用促進の住宅の融資を行っておりますが、これらにつきましても、炭鉱労働者確保という観点から、今後ともさらに有効な活用を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございましす。
  159. 吉田法晴

    ○吉田委員 細かい数字を挙げていただきましたが、実は途中でそれぞれから、その細かい数字は承っております。で、数字でなしに、先ほど私が申し上げましたけれども、戦後引き揚げ者の中からは、住宅がある、あるいは食糧がある、あるいはその翌日から生活ができるということで、たくさんの引き揚げ者が炭鉱に入った。そこで、二千万トン以上の石炭の見直しをするに当たって、労務対策としてばどういう政策を持っておりますかということを尋ねたのです。いまのは現状の説明であって、何も新しい政策はなかったと私は思うのです。  ついでに申し上げますが、昼間、安眠ができるようにどういうことを考えておられますかと言って、あなたのところの班長さんに尋ねましたら、仮眠施設を考えているという話でしたから、仮眠施設のごときは三、四十年前、私ども炭鉱におります当時に高松炭鉱で考えた施設でございまして、そういうのは新しい時代の、五十年ほどたって一九七五年、昭和五十年の新しい政策として出す政策としては誇り得るものではなかろうと私は思います。  そこで、ついでに申し上げますけれども、私は昭和十二年に、その当時の福岡鉱山監督局の労務課長をしておりました佐久さんという人や、「石に咲く花」だとかあるいは「忘れられた子ら」を書いた、近江学園の田村一二さんという、いまも近江学園の先生をしながら一麦寮を経営しておられる人から、知恵おくれの子供に対する教育に示された愛情を通じて、炭鉱労働者に対する愛情を教わったことがあります。そういうものがいま新政策の中でどういうところにありますか、その具体策を承りたいと申し上げておるわけであります。  なお、都市生活との格差解消ということは、「総合的な都市計画事業の一環として各種施設」とか書いてございますけれども、具体策は何も出ておりません。だからお尋ねをするわけです。  それからもう一つ大事なことは教育の問題ですが、十七ページに「現在、公立高校で石炭鉱業に関連した科を設けているのは全国で10校、1学年の定員約400名であるが、その卒業生の大部分は、石炭産業に就職していない状況である。」こう書いてあります。これはいまでもそうだと思いますが、炭鉱で働いておる諸君が、自分は炭鉱で働いておるけれども、子供は何としても炭鉱以外で就職させたい、教育は大学までやりたい、これはみんなが考えていることです。その炭鉱石炭産業を魅力あるものとすることによって吸引することができると書いてありますけれども、言葉はそうでしょう。言葉はそうでしょうけれども、具体的に対策政策がなければ、これは定着をする、あるいは学校を卒業して炭鉱に帰る者はおりません。炭鉱の中で教育をした者が、中学に相当する工業学校でも育てましたけれども、そのほとんどが他に就職をいたしました。高松炭鉱でも最後まで残りましたのは数十名のうち三名ぐらいでしょう。そこで、口で言うのはやすいけれども、その「石炭産業を魅力あるものとする」ということは、実際にはどういうことなのか。いま、時間や、あるいは賃金や住宅や病院や都市生活との格差云々ということを申し上げましたが、そのそれぞれについて、ひとつ具体策をお示しいただきたい。あるいは具体策を立てるについて審議会でも考えなければならぬかという話がございますが、とにかくそれについての政策を、もし下の方でなければ、ひとつ大臣から御答弁をいただきたい。
  160. 高木俊介

    ○高木説明員 炭鉱労働者確保するということが、一つの大きな課題でございますけれども、これは、第一は炭鉱のいわゆるビジョンと申しますか、将来性というものを確立しなくてはならぬと思います。こういういわゆる将来性のある、希望の持てるという炭鉱にすることが第一だと思います。そのためには、先ほどからも何回も御指示ございますような二千万トン以上の山ということで、国としてはしっかり守りたいというふうに考えております。  また、その次にまいりますのが、いわゆる賃金問題とか労働時間その他の問題、あるいは環境問題とか、いろいろな問題があろうと思いますけれども、賃金問題につきましては、これは答申にも出ておりますように、もともとは労使の話し合いによる性質のものだとは思います。しかし、私どもといたしましては、できるだけ使の方から労の方に金が出せるような状態にするということで、いわゆる黒字の山に早くなしたいというのが念願でございまして、それには炭価問題も当然、入ってくるわけでございまして、そういう点に努力いたしたいということでございます。  なお、労働時間問題につきましては、これはほかの産業との関係もございますので、むしろ労働省の方からお話しになるべき性質のものではなかろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、少なくとも炭鉱労働者の応問につきましては、現状よりも長くならぬような形で、労使閥で今後いろいろ話していただきたい。しかし、それもいろいろ問題ございますので、場合によっては審議会の場で、そういうことをいろいろ御検討いただいていいのではないかという考えで、答申をいただいているわけでございます。
  161. 藤繩正勝

    藤繩説明員 ただいま通産省からお話がございましたが、賃金、労働時間の問題につきましては、元来が労使関係で決まるべき性質のものでございます。ただ、私ども、この答申に関連いたしまして感想を申し上げますと、まず賃金につきましては、一昨年の賃上げ等でかなり追いついてはまいりましたけれども一般の産業に比べて、坑内労働の特殊性というようなことを十分、考慮に置いた場合に、これで十分、満足すべき状態だというふうにはなかなか言えないのではなかろうかというふうに思っております。私ども、ちなみに諸外国の例と比較いたしまして、石炭産業と製造業のバランスを見てみますと、やはりなお諸外国との間に少し格差があるというふうに思っております。しかしながら、これは労使が決定をすべき問題であると思っておりますが、なお、御承知の最低賃金につきましては、石炭について全国一本の最低賃金を決定いたしております。この最低賃金は現在、一日三千二百五十円という数字を持っておるわけでございますが、同じ産業別の最賃、これはいろいろな最賃がございますが、これについては中位数が二千五十二円になっておる。したがって最低賃金という決定機構の中では、一般のものに比べて一番高い産業別最賃ができておるというのが、これもまた事実でございます。そういういろいろな事実を踏まえて、今後労使で努力をなさる必要があるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  それから、労働時間につきましては、かねがね御議論がございましたが、特に時間外が他の産業に比べて非常に長いという点で、全体としてほかの産業に比べて長いという問題があろうかと思いますので これはそこに特に力点を置いて、今後われわれも監督指導を進めてまいりたいし、それから労使の関係者におかれましても、その圧縮に努められるという努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
  162. 吉田法晴

    ○吉田委員 基準局長は基準局長らしく、賃金、労働時間その他について御説明をいただきましたが、実は私も四十九年、五十年のベースアップの額あるいは率等もいただきました。四十九年は全産業が三二・九%のアップに対して石炭は五五・四%、この答申の中にも、そのことが炭鉱に新しい労働力が幾らかふえるようになった原因ではないかと書いてありますが、外国に比べると、まだいまだしという正直な話をされましたが、私はその話を聞いていて、もう十年近く前になりますが、ルール地方に日本炭鉱から相当行っておりました。やめられました、たしか石黒さんだったと思いますが、ルール地帯に駐在をしておられました。そして三ヵ所の宿舎を回りました。そして懇談をいたしました。そのときには坑内には入りませんでしたけれども炭鉱労働者日本炭鉱労働者と比べて、ルール地方ですから製鉄所もあります。鉄鋼労働者に比べても何ら遜色がない、むしろ賃金、時間等は条件がいいと見ました。炭鉱労働者には、あれだけの誇りと、それから生活のゆとりがある程度の待遇をしなければ、製鉄所もある、炭鉱もあるというときに、炭鉱に入る人間を十分、確保するには、あれだけの待遇をしなければならぬのじゃなかろうかと、実は食事をしながらも考えたところです。石炭がこの間からの合理化政策で多少、前向きになっておるときに、新しい政策として二千万トン以上確保しようとすれば、時も時ですし、情勢も情勢ですから、やはりそれだけの思い切った労働者の優遇——優遇じゃない、当然の待遇をしなければ、労働者確保できないのじゃなかろうか。三DKの家が何戸ある、あるいは四部屋の家もあると言われましたけれども、大半はあいた社宅を二つくっつけて四間ありますぞというだけです。それから、北海道で雇用促進事業団がつくられました三DKなり四DKの住宅のことも聞きました。しかし、依然として炭鉱労働者の住宅にはふろがないのですよ、北海道の雇用促進野業団がおつくりになった住宅にしても。いまごろとにかくふろのない住宅はありません。私も二DKの県公社住宅に八年住んでおりました。二DKでもやはりふろ場がある。キッチンはキッチンでちゃんとある。それば最低の住宅ですよ、最低の住宅ですけれども、やはりふろはある。ふろのない住宅など問題外です。あるいはいま労働時間のことも言われましたが、この間、多賀谷さんも言われたけれども、世間並みに旗日も休まぬ、それから週休二日制というのに、労働時間は普通よりも長い、これでは少し変わったとしても、本質的には変わりないと言えるのではなかろうか。それを根本的に変えて、炭鉱にも新しい世代の人がき得るような炭鉱にするには、どうしたらよかろうかということをお尋ねしておるわけであります。基準局長は基準局長らしく御答弁をいただきましたが、さらに具体的にひとつ考慮をいただきたい。石炭部長からは審議会でも云々というようなお話がございましたが、そこでひとつ先ほど昔の先輩、これは石炭関係のお役人さんではありますけれども、私どもやはり教えてくれた先輩の名も挙げました。  そこで、具体的に今度は人一人の命の問題について、関連をしてあれしますが、保安対策は挙げてはございます。挙げてはございますが、それも本当によくなるだろうかという不安を持つのは、ひとり私だけではなかろうと思います。この間、新夕張炭鉱ガスの突出事故があって五名の人が亡くなられた、とうとい犠牲を出しましたが、あの新夕張炭鉱ガス事故で、あれだけ新しい設備をやっても、なおああいう突出事故を防ぐことができなかったという意味で、新政策にも影響がある。新政策にも影響があるのじゃないかというのは、やはり炭鉱には災害がつきものだ、こういう感じがあって、新政策にも影響があるのではないかと報ぜられたのだと思います。新しい設備で万全を期したと言われますけれども、先ほどの報告を聞いてみても、やはり欠陥が感ぜられます。ガス抜きをしたけれども、そのガス抜き作業現場からガスがなくなったのを確かめて、作業に移させるという余裕がなかった。あるいは保安官を常駐させたらどうかという提案も報告の中にもございましたが、炭鉱においては、まだ人一人の命が地球よりも重いということが、実際に確保されていないのではなかろうか。どんなに金をかけても、新しい炭鉱では人の命の危険はない、こういうところまでどうしてできないだろうか。何遍も災害に遭うたびに自分で考えました。どうして炭鉱にはこう災害がつきものなのだろう。この人一人の命を救うための、地球よりも重いという命を大事にするためには、どんな保安設備をしたらいいのだろうか、どういう採炭方法をとったらいいのだろうか。もし、どうしても災害炭鉱からなくならぬならば、そういう炭鉱はやめてもしようがないじゃないか、炭鉱をつぶしてもしようがないじゃないかとまで思いました。ところが、それだけの感じが炭鉱の中にはまだ確立されていないのではなかろうか。殉職のたびに、君の殉職徒事ならずと弔詞では読みますけれども、しかし、根本的に保安対策を立てて心配をなくすることは、私の炭鉱におる間においては、とうとう経験することができませんでした。  新しい石炭政策の中では、本当に保安対策に万全を期して、炭鉱にはもう大きい災害はないのだ、心配はないのだというところまでいかなければならぬのじゃなかろうかと思うのですが、まだ依然として「労働者各人の保安意識の浸透」だとか、あるいは「教育」だとか書かれておるのを見ますと、不安を感じてしょうがありません。保安教育に精を出して、保安の点で表彰を受けたような、もうなくなりましたけれども大辻炭鉱で、最後には坑長も亡くなるような大きい災害が起こりました。教育には限界があります。あるいは個人の責任に転嫁をするような時代はもう過ぎたと思うのです。  ところが、このごろ、これはもう十年ぐらい前に起こりました山野炭鉱の坑内事故について、これは二百四十何名か死なせたと思いますが、会社責任が問われました。これは三井の子会社ですけれども、山野鉱業と、それから四人の鉱長や保安の責任者等について罰金刑が下されましたけれども、それに対して控訴がなされております。控訴がなされて、個人にその爆発の責任があるのではなかろうかということを争おうと思い、また三池炭鉱について言っても、不起訴になったについては、やはりあれがあるのではなかろうかと思っておりましたが、果たせるかな、このごろの新聞によりますと、「三井地獄からはい上がれ」という毒物を増子さんという、これはどういう人か知りませんけれども、起訴間違いないと言われた三池炭鉱の事故を不起訴にするには、人の名前を挙げて恐縮ですけれども、前に採鉱学をやられました山田元九大教授に調査を願って、「集積炭じんは爆発しない」という上中書を、三井鉱山の弁護人を通じて福岡地検に提示をし、起訴に自信を持っていた検事正以下捜査当局が総入れかえになり、この大事故は不起訴になったという、いわば「被害者圧殺を告発する」書物がごく最近出たということを新聞で知りました。こういうのを見ると、山野炭鉱で二百数十名の死者を出し、あるいは三池で四百数十名の死者を出し、千人を超すCO患者を出しておっても、なおそれを不起訴にする、あるいはその責任を争う、こういうものがあることが、現実の鉱山の実態ではないか。そういうものがある以上、新夕張の鉱山事故についても、経営者なら経営者の本当の責任を感ずる体制、あるいは保安に万全を期する体制ができるかどうかについては、大きな疑問があると思いますが、このことは通産大臣からお答えをいただきたいと思う。保安局長から答弁をいただく前に、通産大臣として、新しい政策の中で人の命には心配がないのだ、万全の保安を確立するというならば、それだけの覚悟があると思いますから、通産大臣に承りたいと思います。
  163. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これからの石炭政策は、この保安問題の解決なくして進展はないと私は思います。新石炭政策は即保安問題である、こういう角度から答申にもいろいろ書いてありますが、十分その趣旨を尊重いたしまして取り上げてまいりたい、かように考えております。
  164. 吉田法晴

    ○吉田委員 時間がだんだんなくなってまいりますから、簡単にいたします。私はほかの事例はここで挙げません。挙げませんが、ごく最近、飛騨川事件で、道路管理に過失があったということで、国の責任が問われました、これは民事訴訟上ではありますけれども。人一人の命は本当に地球より重いという、実際に裁判例を通じて国の責任を問うという事態がだんだん起こってきたわけでありますが、保安局長、この事態に対してどう考えられますか、承りたい。
  165. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 炭鉱の保安の問題につきましては、たてまえとしては自主保安ということで、上は経営者から下は末端の従業員に至るまで、労使一体となって保安に責任を持っていただくということがたてまえでございます。しかし、これだけ石炭政策として国家資金が投入され、いろいろな問題で政府が介入いたしておりますので、保安問題につきましても、われわれ監督する立場にある者は、やはりその責任の一端を担いまして、保安問題に手抜かりのないように十分に対処していくというのが、われわれの考え方でございます。
  166. 吉田法晴

    ○吉田委員 具体的に山野の事件について控訴をするような事態について、あるいは三池の問題については、もう長々と申し上げませんけれども、不起訴にするような経営者の姿勢で、果たして炭鉱の保安に万全を期することができるだろうか、私は大きな疑問を持ちますが、保安局長、どうですか。
  167. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 非常に重大災害につながるような問題につきましては、刑事責任は司法問題でございますけれども、少なくとも社会的な責任は私は免れないというふうに感じております。
  168. 吉田法晴

    ○吉田委員 最後に労働省にお尋ねをいたしますが、炭鉱は特に人の命を軽く評価をしておりますが、保安問題にしても、ともすればコストの問題に解消されようとしていると思います。自衛隊の飛行機が全日空機を目標にして訓練をやり、全日空機を雫石の上で落とした。あのときから弔慰金は二千万円を超しました。現在ではすでに交通事故による保険についても千五百万円に上がろうとしたか上がったかですが、聞きますと、もうすでに人の命の評価は労災法上の一千日分以上になっておると思います。外国で交通事故で人身事故を起こしますと、その人が一生かかってやっと賠償できるかどうかといったような、これは民事上の責任ですけれども、科しております。労災法上の補償の基準というものが、現状からして安くなり過ぎている、再検討の要がある時期にきておるのではないかと考えますが、労働大臣、労働華準監督局でどう考えられますか、承りたい。
  169. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答えを申し上げます。  いま雫石のお話も出ましたが、よく言われますのは、自賠責が現在千五百万になっておる。それに対して千日分ではせいぜい四、五百万ぐらいにしかならぬじゃないかというたとえ話で、お話が出るわけでございますが、先生、御承知のように労災の場合は、一家をなして生活をしておりまして、突如、主人公が労災に遭われて、いまの場合ですと亡くなられるというような事態が普通でございますので、その場合に、できるだけその後の生活に大きな影響を与えないようにするということが主眼でございまして、そのためには、やはり一時金よりも年金で支払うということが適当である。国際的にも、そういうことが常識になっております。そこで、最近は労災は年金中心改正を重ねてきておるわけでございます。  そこで年金の場合でございますと、御承知のように、扶養関係のある遺族の場合には、本人の平均賃金の三五ないし六七%の範囲で毎年毎年、年金が出るという仕組みになっておりまして、そのほかに遺族特別支給金というので一時金百万円が出るということになっておるわけでございます。ただ、ごく例外的に扶養関係のない遺族という場合がございまして、その場合に千日分の一時金が出る。それがいかにも低いではないか、こういうようなお話になるわけで、年金の場合でございますと、これは比較はいろいろございますけれども、い衣の平均賃金、それから通常、奥さんの場合のその後の平均余命というものを換算いたしますと、必ずしも労災の方が低いというふうにはならないと思います。その比較は非常にむずかしいのでございますが、そういう問題があることを御了解願いたいと思います。  しかし、いずれにしましても一時金への御要望は非常に強いわけでございます。そこで昨年末の法改正に際しまして、一般のそういう年金の引き上げとあわせまして、いま申し上げました遺族特別支給金という定額の一時金を支給することにいたしましたので、今後とも、そういった遺族実情に即して、十分、保護を考えたいというふうに思っているわけでございます。
  170. 吉田法晴

    ○吉田委員 時間がなくなりましたから、最後にもう一つ。  いま基準局長は、後、残された遺族生活ができるようにということを主に考えられて答弁されました。私が先ほどから申し上げておりますのは、炭鉱における災害あるいは人身事故をなくすためにはどうしたらよかろうか。それに外国では、人身事故を起こしたら一生かかっても償えるか償えぬかの補償を科している。それを炭鉱の場合に、人身事故はもう炭鉱ではなくなったのだと言わせるためには、もっと責任経営者も感ずべきだろうし、また、亡くなった人に対する弔慰金についても考えるべきではないか。これは私は残された遺族生活できるかどうかという問題でなしに、炭鉱の保安問題として取り上げてお尋ねをしたわけでありますから、これは労働省よりも通産大臣から、最後に御答弁をいただきたいと思います。
  171. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 重大な問題でございますので、十分、考慮してまいりまいと思います。
  172. 田代文久

    田代委員長 細谷治嘉君。
  173. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間も大分、遅くなっておりますから、二点についてお尋ねしたいと思います。  第一点は昨日、参考人意見聴取したわけでありますけれども、その質疑応答の際に、里谷炭労委員長から次のようなお答えがございました。それはどういうことかといいますと、例の昭和三十五年の三池争議以来、組合が二つに分かれました。分かれまして後、今日まで、三池労組の子弟なり関係者は一人も炭鉱に採用されておらない、こういうお答えでございました。これは事実かどうか、労働大臣お答えいただきます。
  174. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなたが、きのう組合の方々から初めてお伺いになったという話、私はいま、あなたから初めてお伺いしましたので、どういういきさつか一遍調べさしてもらいたい、こう思います。
  175. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣はまあ御存じないわけであって、実は昨日、里谷委員長から委員の質問に対して答えた中に、そういうお答えがあったのですけれども現地の方で私は聞いておるのです。知っております。大臣、御存じなければ、労働省担当の方、御存じですか。
  176. 石井甲二

    ○石井説明員 実はそのような話につきましては、私どもも初めてお伺いすることでございまして、実情を十分に把握いたしておりません。
  177. 細谷治嘉

    ○細谷委員 失業対策部長の答弁というのも、またちょっとおかしな話だね。労政局の人いらっしゃいますか。問題点は言ってあるのだから。
  178. 石井甲二

    ○石井説明員 ただいま労政の話ではないかというお話でございましたが、この問題は、私どもはむしろ採用の問題あるいは雇用の問題だと思います。したがいまして、労政というよりは職業安定機関の問題ではなかろうかというふうに考えますが。
  179. 細谷治嘉

    ○細谷委員 雇用の問題は失業対策部長がやっているのですか。安定局長はやっているでしょうけれども、あなたはやっているのですか。  とにかく十何年間、一人も採ってないというのです。そして里谷委員、長の言葉を聞きますと、いまや第二組合が四分の三以上になっているから、労働協約上、一切の相談がないのだということなのです。そうなってまいりますと、あなたが知らぬのはわかるわけだけど、失対部長ですから。しかし、雇用問題ということになりますと、いや全然、存じません、いま初めて聞きました、これではもう全く無責任のそしりを免れないと思うのですよ。いかがですか。企画課長御存じかね。
  180. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 きょうは労政関係なり、あるいは職安関係の者が来ておりませんから、先生の御質問に対して的確な御答弁ができないことは残念に思いますけれども、まあ三十五年以来という話でございますから、私たちの方の耳なり、あるいは出先の耳に入っておったものが、私たちの方にそれが通知がないのか、あるいは問題を私などが知らないでおったがために、向こうの方にその実情調査するチャンスがなかった、こういうことでございまして、おっしゃるような三十五年以来のそういういきさつということでありますと、私の方で、どういう関係であるか一遍、早速調べさしてみたい、こう思っております。その間に、また先生の方から、その間の事情についておわかりのことがありましたら、御指摘いただくことは参考になる、こう思っております。
  181. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は前々からこのことを聞いておりましたので、きのうの里谷委員長委員の質問に対する答弁で、あなた、いつ知っておったのだ、こういうふうに、けさ聞きました。いや、これはもう前からわかっておったのだ、わかっておったけれども一顧だにされないものだから、ちょうど今度の答申の中に、毎年千名以上の労働者の補充を必要とする、こういう具体的な答申内容があるので、今度はこういう答申が出たのだから問題にされるだろう、改めていただけるだろう、こういうふうに私どもは思っております。けさ私が里谷委員長に会って問いただしたときに、そういう答えでした。大臣初めてですが、私はこの問題は大変、重要な問題だと思うのですよ。これは労働基準法以前の問題でしょう。差別問題というのがずいぶん大きな問題になっておりますけれども、てんからとにかく三池労組の関係者については、全国的にどこの企業でもいやがるのですよ。これは間違いありません。親がどこにおった。三池労組。三池労組の第一組合か第二組合か。第一組合。それでは、もう私のところ雇いません。これが全国的な風潮。しかもこの地元だ。地元の炭鉱で親子二代勤めてきた、息子もひとつ入れようや、こういうことになっても、一切もう全然、話にならない。こういうことは許されないと思うのでありますけれども、大臣の善処をいただくことにして、ここではひとつ大臣の基本的な姿勢を明らかにしていただきたいと思うのです。
  182. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 先ほど古田先生の御質問にもあったように二千万トン、その場合に千名ずつ労務者を新しく入ってもらう。なかなか親子二代入らない、こういうお話もありました。そういうときに、親子二代か三代の方々が、昭和三十五年といえば、いまから十五年前のことです。どういう内容か、どういう経過かわかりませんが、一般的には大いに再考も三考もすべき事件だと思いますので、私の方で調査させてもらいたい、こう思います。
  183. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあ親が三池労組におったからといって、息子は新労に、第二組合に入ってはいかぬということは何もないでしょう。あるいはおやじが新労だからといって、第二組合だからといって、息子が三池労組に行きたいというならば、これはだれも拘束するのはおかしいわけですね。しかし、現実には截然とした区別をして、差別をしてやってきたことは事実でありまして、今度の答申を契機に、この政策が具体的に推進できるかできないか、重要な土台の一つは、やっぱり労働力確保の問題です。そういう意味において、ひとつ労働省として十分、調査していただいて、間違いなく事実でありますから、善処していただきたい、こう思います。  労働省の問題はこの程度にいたしまして、通産省にお尋ねしたいのでありますけれども、昨年私どもがこの特別委員会で九州を視察をした際に、長崎県の方からは坑内骨格構造についての問題が強く陳情されました。三池の方からは、とにかく三十八度も坑内の温度があるのだ、この高温対策を何とかしてもらわなければならぬ、こういう強い要請、陳情がございました。これはきょうやるからと言って、あすできるわけではございませんけれども、現在この三池炭鉱における高温対策、御承知のように昨年の春、人気、排気系統が全く変わったわけでありますから、大変な高温、三十八度、こういうような事態になっておるわけですから、この高温対策について具体的にどういうふうに進められておるのか、お聞かせいただきたい。
  184. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 三池の高温対策につきましては、炭労からも強い要請が私の方に常にございまして、われわれとしては、三池の出炭が非常にウエートが高いということもございまして、重点的にこの問題に取り組んでおります。  具体的にその後とった措置といたしましては、クーラーを増設いたしました。これは近代化資金の助成措置の中に入っておりますので、そういうことで増設いたしましたし、それから何といいましても根本的対策といたしましては、有効通気量を増大させるということで、そういう措置もとりました。大体そういうことで対処いたしまして、大分、改善されておりますけれども、しかし今後とも、あの山につきましては高温対策というのは宿命的な問題でございますので、さらに涼しくなって快適な労働環境になりますように、いろいろな面から助成措置も含めて対処してまいりたい、こう考えております。
  185. 細谷治嘉

    ○細谷委員 言葉じりをつかまえるわけではありませんけれども、あの山について宿命的という、その宿命的というのはどういうことですか。
  186. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 これは三池のみならず、今後二千万トン体制を維持するためには、逐年、深部に移行してまいりますと、それだけ温度が上がるという、これは自然条件の宿命でございまして、これは単に三池だけではございませんけれども、三池の場合はさらに地熱の問題がございますので、そういうものを克服してまいらなければならないということを申し上げたわけでございます。
  187. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこまで議論がいくと、また一言、言わなければならない。地熱というのは何ですか。だんだん深くなるに従って、百メートル下がれば三度ぐらい温度が上がるという、その問題ですか。そのほかの地熱ということをあなたはおっしゃっているのですか。
  188. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 一般的な、深度が下がるに従って一度上がるというのは、いわゆる増温率と称しているわけでございますが、三池の場合は平均的な増温率よりも深部移行に伴う上がり方が高いという実態もございますので、それだけ高温対策には注意しなければならないということを申し上げておるわけでございます。
  189. 細谷治嘉

    ○細谷委員 三池の深部移行の速度というのは、他の炭鉱と比べてはるかに低いでしょう、傾斜は。北海道深部移行などというのは、年間三十メートルとか五十メートルとか下がっていっているというのですけれども、三池はそんなものじゃないでしょう。浅いですよ、他の炭鉱と比べれば。深部の問題じゃないですよ。宿命的というのはどういうことなんですか。自然条件でどうにもならないというのが宿命的ですよ。人為的なものでしょう。そうじゃないですか。
  190. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 私の説明、非常に不十分で申しわけなかったわけでございますが、私の申し上げたいのは、そういう自然条件の中にあるということを申し上げたわけでございます。
  191. 細谷治嘉

    ○細谷委員 宿命的という言葉を取り消していただきたい。そんな不可抗力のような、宿命的などという言葉でこの問題は済まされない。取り消していただきたい。そうでないと、話は進まぬ。
  192. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 私の申し上げた宿命的という言葉は、取り消さしていただきます。
  193. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま私のところにあります。払いの深部移行状況などというのは、どこを見ても三池が一番フラットなんですよ。北海道の砂川とかなんとか見てごらんなさい、急激に深部に移行しているのですよ。三池はほとんど変わりません。マイナスの五百メートルから、最近は上がっているのです。そういう状態ですよ。ですから、宿命的などとおっしゃらないで、人為的なもの。その人為的なものだとするならば、去年あれだけ私どもはやかましく陳情を受けたわけですが、ことしの夏はどうなるのか。そして普通の炭鉱ぐらいの温度にはいつなるのか、それをひとつ明らかにしていただきたい。
  194. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 昨年御指摘を受けましてから、いろいろの手だてをやったわけでございますけれども、まだ十分とは私たちも考えておりませんので、さらにクーラーの増設等々あるいは有効風量の拡大ということについて、積極的に指導してまいりたい、こう思います。
  195. 細谷治嘉

    ○細谷委員 相当、大規模な冷凍機等を導入するわけですから、去年がことし、よくなると、だれも思っていないわけだ。私が質問したいことは、去年のああいう状態から、この夏は一体どうなるのか、来年の夏はどうなるのか、再来年の夏はどうなるのか。そして普通の炭鉱並みに、大体、法で規定しておるような坑内条件になるのは一体、何年先になるのか。これを言葉じゃなくて、ひとつきちんとした資料として提出していただきたい。いかがですか。たとえば現に冷凍機は、この程度の能力の冷凍機を発注している、それはいつ据えつけられて、そうすると坑内条件はこういうふうに変わってくる、それがきちんと素人にもわかりやすいような資料を出していただきたい。
  196. 佐藤淳一郎

    ○佐藤説明員 可能な限りの内容を詰めまして、御提出いたしたいと思います。
  197. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わっておきます。
  198. 田代文久

  199. 多田光雄

    多田委員 労働大臣に二、三質問したいと思います。  当委員会で目下、新しい石炭政策の問題について審議をしているわけですが、この新しい石炭政策の大きな問題は、やはり労働力確保という問題で、その労働力確保で非常に大きな要素になりますのは、当然これは賃金の問題、労働条件、それともう一つ炭鉱の保安の問題ということなのです。実はそういうやさきに、また夕張の新鉱の事故が起きたわけです。私の手元に石炭企業家のつくっている日本石炭協会の雑誌があるのですが、これを見ますと、日本の保安の事故というのは大変なのです。三十万人当たりの死亡者数を見ますと、たとえば日本は二・二八、それに対してフランスは〇・七六、それからイギリス、これは二十何万人労働者がいるわけですが、〇・四三ですよ。それから西ドイツは〇・八六です。これは昭和四十五年で、ちょっと古い資料になりますけれども、ことしの五月のものなのです。このように労働災害が非常に有数である。しかも労働の能率というのが、また非常に最高だという状況なのですね。そこで、これまでの炭鉱災害について、労働大臣として通産省に対して改善勧告をしたことがあるかどうか。ここ数年、私は聞いておらないのですけれども、それを伺いたいと思うのです。
  200. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 このたび夕張新炭鉱の事故の場合には、私は、衆議院の公報を拝見している間に、多賀谷さん初め皆さん方が向こうに調査に行かれるという話を知りまして、その後どういうふうなことになるかと思って、先ほども報告を聞いたわけであります。  一方、あれほどすばらしい、コンピューターつきだと言われたものがガス突出によって事故を起こした。これはちょうど二千万トンという新政策を出すときですから、大変なショックじゃなかろうかということを感じて、何としてでもやはり保安というものが大事だ、こういうふうな感じ方を持っております。  勧告の話が出ましたが、私の知っている限りにおいては、労働省としますと通産省に対して過去六回ほど勧告をしておる、労働大臣として勧告したのは一回である、こういうふうに承知しております。
  201. 多田光雄

    多田委員 あの北炭新鉱の事故というのは、一般に考えられるより以上、日本石炭政策、それから保安問題にとって重大な内容を実ははらんでいるわけなのです。この問題について労働大臣として通産省に勧告されたかどうか、あるいは労働省としてやられたかどうか、これを伺っておきたい。
  202. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 まだ検討中で、そういう勧告はしておりません。
  203. 多田光雄

    多田委員 ちょっと調べてみますと、戦前は今日の鉱山保安法がなくて鉱業警察規則というのだけがあったのですね。戦後二十三年から二十四年にかけて現行の鉱山保安法の制定が行われて、御承知のとおりこの間、この所管をめぐって当時の商工省と労働省の間にいろいろないきさつがあった。しかし、ここへGHQが乗り込んできて、その仲介によって一応商工省ということになった。ただこの場合、問題がある場合は労働省が通産省に改善勧告をする、そして通産省はこれを受け入れることにして、今日の産業型の保安法ができた、こういう経過があるわけですね。ですからこの経過から見ても、やはり大事な基幹産業の一つでございますから、とりわけあれほど世界一の事故が起きている問題については、労働省として積極的に改善勧告をすべきである、私はこういうふうに考えているわけです。  そこで、あと一、二点、大臣に見解を伺っておきたいのですが、先ほど保安法の抜本改正の問題につきまして担当の通産大臣から、五十年度中に改正するというふうな、期限を切っての御答弁があったのです。五十年度中といっても、次期通常国会中だと、五月だということで間に合わないので、できれば通常国会早々に出してもらいたいという希望を、私は持っているわけですけれども、労働大臣として、そういう積極的なことで御努力願えるかどうか、これが一つです。  それから第二番目は、やはり人命に関する問題ですから、保安関係というのは本来、労働省に所管がえした方が妥当ではないかというふうに私は考えるのです。これについてどうお考えになるか。  それから三点目は、少なくとも労働大臣の場合は、こういう重大災害の都度、あってはならないことですけれども、絶えず、少なくとも改善勧告を厳しく言って、それを公表するという程度のことはやる必要があるのじゃないかと思いますが、この三点を伺いたいと思います。
  204. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 勧告の問題、あるいはまた、いま通産大臣がすでにお答えになったそうでございますが、そういう問題については相協力しながら、保安を守めるために積極的な前向きの姿勢でやりたい。  最後に、労働省が保安行政をやるべきじゃないかというお話などがありましたが、私の方、加勢してもらってありがたいのですが、これはどうも、よその国の例を見ましても、労働省というところがわざわざやっているような、そういうことでないようなところが多いようでございます。国際的に。御趣旨は、保安というものを大事にしろ、こういうたてまえからの御質問だと思いますが、いずれにいたしましても、これだけの、いまからの見直しの時期においての保安行政というものは、労働者を守る立場からおいても、通産省と積極的に提携しながら、しかも、今度のような事故をきっかけにして、いろいろまた問題を改めて見直すという姿勢でまいりたい、こう思っております。
  205. 多田光雄

    多田委員 時間がありませんが、これは失対関係ですけれども、労働大臣も御存じだと思いますけれども北海道には一般失対外、緊就、開就はもとより例の特開ですね、これはないのですよ。もし地方自治体から中高年層の雇用を対象にした特開の要求があれば、それを実施されるお気持ちかどうか、これを伺って終わりたいと思います。
  206. 石井甲二

    ○石井説明員 北海道におきましては、いろいろな自然的な条件もございますので、その事業につきましてはなかなか問題がございますけれども、地方自治体がそういう御要望が非常に強いという場合には、さらに御相談しながら検討してまいりたい、こういうように考えております。
  207. 多田光雄

    多田委員 終わります。     〔委員長退席、多田委員長代理着席〕
  208. 多田光雄

    多田委員長代理 田代文久君。
  209. 田代文久

    田代委員長 私は通産、労働両大臣に一曹、所信を伺いたいと思うのです。  本委員会は、すでに昨年、四十九年五月二十三日に、新石炭政策の確立につきまして全会一致で決議を採択いたしたことは御承知のとおりであります。この採択に当たりましては、通産、労働両大臣とも、当然でありますけれども、これは本委員会の決議でありますから、権威の高いものとして、この決議を尊重し、前向きに善処されるという答弁がありました。この発言というのは、私どもとしましては、非常に重味のある重大な大臣の委員会に対する約束だ、このように受け取っておる次第でございます。  ところが、このたびの第六次答申は、この昨年五月二十三日の委員会の決議に十分こたえておるというふうに、私は考えられません。過ぐる七月十七、十八、十九日、当委員会北海道現地調査に参りました。それからまた昨日と本日、この委員会で各委員が、この答申に対して真摯な質問をなさいましたが、その内容によりましてもこれは非常に明確になっておる、このように私は思うわけであります。  すなわち、  一、生産すべき石炭の量の目標及び一般炭の積極的な利用について、  二、再開発を含む新鉱開発方式、  三、優秀な労働力確保保安対策、  四、石炭企業経営改善、  五、電力用炭の輸入の量及び組織、  六、就労事業を含む産炭地域振興、鉱害復旧対策強化、  そういう点では、なお一層、具体的な検討と明示が必要であるという点では、各委員の認識が一致しておるというふうに思われるわけであります。  なお、通産大臣は、昭和四十九年十一月二十日付の日本学術会議の総会の決議に基づく「資源エネルギー関係の研究体制について」という勧告を受けられておるはずでありますが、本委員会の総意を十分尊重し、今後の法体系の整備、予算の措置、今後の政策の具体化等について、断固たる積極姿勢、炭鉱労働者、地方自治体などが前途に明るく希望と確信を持てるようなそういう方向で、施策を実施されることを強く要望するものでありますが、両大臣の所信を伺いたいと思います。
  210. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいまのお話でございますが、答申案には大体いまのお話の点は盛られておると思います。ただしかし、なお個々の具体的な問題につきまして、強調して御説明がございましたので、十分にお話の点は尊重いたしまして、今後の政府の施策に反映をしてまいりたいと存じます。
  211. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 前の「新石炭政策の確立に関する件」という決議、私も拝見しております。その中で特に労働省所管は、五番目の労働者確保するための賃金問題あるいは十番目の産炭地振興、鉱害復旧等の強化炭鉱離職者対策強化等でございます。  このたびの答申案を私ずっと拝見しておりますが、おっしゃられるように賃金の問題とか、いろいろな問題は、いまから先、答申のものを私たちが胸に含め、さらに決議の内容というものを自分たちの心の中に入れて、強力に推進していくべきだ、こういうふうな感じで、いまから対処したい、こう思っております。
  212. 多田光雄

    多田委員長代理 これにて質疑は終わりました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会