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八城参考人 石油備蓄の
増強の
必要性につきましては、
石油危機が起きました七三年十月以前においても世界の
消費国の中では一部においてすでに論ぜられた問題でありますが、特に
石油危機を契機にいたしまして
消費国としては
消費の
相当部分を
備蓄として持たなければならぬという声が高まってきたことは御
承知のとおりであります。特に
国際エネルギー機関において、各国間で
緊急事態が起きたときには融通し合うという原則から出発いたしまして
備蓄の
増強が論ぜられているわけでありますけれども、
わが国といたしましても
備蓄を
増強することは、
石油の
危機が再び起きたときに、それを完全に回避できるような十分な
条件にはなりませんけれども、どうしても必要な
条件だろうと私は考えます。
しかしながら、現在
政府が考えておられます
備蓄法によって義務づけられます
備蓄の
増強は、多大の
資金を要することは言うまでもありません。私
ども自身の
計算によりましても、一九八〇年に九十日の
備蓄を持つ場合に、
タンクの新しい能力として
日本全体で約二千五百万キロの
タンクを必要といたします。その場合に
土地、
タンク、
受け入れ設備の
投資としては約七千億円、さらに
タンクの中に必要な
原油をためるための
費用がございます。これは、
運転資金に対する金利、さらには
タンクのありますターミナルの
運転のために必要な
経費、それから
投資に対する
私的企業としての適正なリターンといったものを考えなければなりません。全体を足してみますと、約七千円ぐらい、新たに追加して設けられます
タンクについての
経費がかかってまいります。これは当然
追加分でありますから、根っこにあります全体の
需要に平均して
経費としてかかってくるわけでありますから、大ざっぱに言いましても少なくとも五百円
程度の
経費増になるわけであります。ところが、昨年の三月十八日に通産省が決められました
行政指導価格の
値上げ幅であります八千九百四十六円の
計算根拠にあります
石油企業が許される
利益として考えられておりました数字は、私の記憶にもし誤りがないといたしますと、税引き前で約二百五十円
利益を認めてやろうということであったと思います。したがって、現在
石油企業が非常に苦しい
状態にある。
企業によって格差がございますけれども、大ざっぱに申すならば恐らく
キロリットル当たり千円
程度の逆ざやになっているかと思います。それに加えて、さらに五百円の
経費増ということになりますと、これは
石油企業の
経営基盤を著しく脅かすことになろうかと思います。そういう
意味におきまして、
備蓄をするためには国の抜本的な
財政金融上の措置が必要と考えます。
先ほど
向坂参考人からもお話がございましたけれども、
石油企業の
正味資産は、全体の総
資産の中で現在ではことしの三月期におきまして四・六%であります。諸
外国における
私的企業の
正味資産の
比率は、恐らくアメリカにおいては大体七割
程度が
正味の
資産として
自己資本であります。それに対してこれほど重要な
エネルギー産業であります
石油の
正味資産の
比率がわずか五%を切っているということで、果たして安定した
経営ができるかどうかということは非常に疑問があります。そこにさらに
備蓄の
費用を
負担しなければならぬということは、非常に大きな
負担になりますので、その点
政府としても十分お考えいただきたいと思います。
もう
一つは、
土地の取得でありますけれども、御
承知のように
備蓄のために必要な
土地を
確保することは、
地域住民との間に理解を得、さらに立地問題につきましても適当な
土地がなかなか得られないということから言いまして、
私的企業ができる範囲はかなり限られておると思います。そういう
意味で、
備蓄の
土地の手当て、
地域住民との話し合いにつきましても国が積極的な
役割りを果たすべきではないかと存じます。
これらをまとめて申しますと、
備蓄問題は
私的企業の問題のみならず国家の
安全保障との
関連が非常に深いわけでありますから、当然国の
役割りはきわめて大きいと思います。
民間側におきましても、
石油企業だけが責任を持つということでなしに、たとえば
大口需要家であります電力などにおいても、当然
需要家としての
立場から
備蓄についても協力をしていただければ幸いかと思います。
一応そういった
日本の現状を踏まえまして、それでは諸
外国においてどういう
状態にあるかということを私どもの得ております情報から
参考までに申し上げたいと思いますが、西欧においては現在七十五日から八十日の
備蓄を持っております。そして、ことしの初めから目標といたしましては九十日に引き上げるということが、西欧諸国の
政府の決定されたことでありますけれども、実際には恐らく二年
程度おくれるであろう、国によってはさらに一年、二年の猶予を設けることがあるかもしれないと聞いております。それからもう
一つは、ヨーロッパの場合でありますけれども、西ドイツ、フランス、オランダなどにおいては、三国間において自国の
備蓄を他国に預ける、つまり立地問題その他の理由から
備蓄の融通制度を各国の
政府間協定において認めていると理解しております。
日本は
原油の
輸入のみならず
製品の
輸入もいたしておりますので、たとえばシンガポールなど
日本に対して重要な
供給源であります地域において
土地が得られるならば、そういうところにおきます
備蓄も
日本の
備蓄として考えられるよう
政府としても御
努力を願いたいと存ずるわけであります。
結論的には、
備蓄問題は国全体の問題でありますので、
政府の
役割りがきわめて大きいと思います。そういう
意味では、すでに考えておられると理解しておるのですが、半官半民の
備蓄会社の構想であるとか、
石油開発公団の積極的な利用等を考えていただければ幸いかと思います。
最後に、これはすでにIEAにおいて話が出ていると理解しておりますけれども、
原油を運んでおりますタンカーが
日本に向かって走っておるときには、すでに
日本に来ることはわかっておるわけであります。特に
日本の場合には邦船の
比率、つまり
日本船籍の船が全体の
比率の中で非常に高いわけでありますから、諸
外国に比べますとその点は
日本についてはある
程度安心できる面もあるわけでありますから、海上を動いております
原油についても国際的な話し合いの上で
備蓄の中に入れるような考慮ができないものかと考えるわけであります。特に邦船
比率の高い
日本の場合には、
供給の安定という
意味ではタンカーが
日本船籍のものが多いことはプラスの材料でありますので、その点もあわせて今後の国際的な話し合いの上にお出しいただければ幸いかと存じます。
以上でございます。