運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-07-01 第75回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年七月一日(火曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 田中 六助君 理事 萩原 幸雄君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    浦野 幸男君       越智 通雄君    田中 榮一君       橋口  隆君    深谷 隆司君       山崎  拓君    板川 正吾君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    野間 友一君       米原  昶君    松尾 信人君       玉置 一徳君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         消防庁次長   森岡  敞君  委員外出席者         運輸省港湾局機         材課公害対策室         長       御巫 清泰君         海上保安庁警備         救難部長    山本 了三君         参  考  人         (日本エネルギ         ー経済研究所所         長)      向坂 正男君         参  考  人         (共同石油株式         会社会長)  長谷川隆太郎君         参  考  人         (エッソ・スタン         ダード石油株式         会社取締役社         長)      八城 政基君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月一日  辞任         補欠選任   藤井 勝志君     田中 榮一君     ――――――――――――― 六月二十七日  地熱資源開発促進法制定に関する請願外六件  (内海英男紹介)(第四六七一号)  同外十五件(渡海元三郎紹介)(第四六七二  号)  同(山本幸雄紹介)(第四六七三号)  同外十九件(江藤隆美紹介)(第四七七〇  号)  同外五件(越智通雄紹介)(第四七七一号)  同(佐藤孝行紹介)(第四七七二号)  同外百十件(地崎宇三郎紹介)(第四七七三  号)  同(野原正勝紹介)(第四七七四号)  同外五件(原田憲紹介)(第四七七五号)  中小業者経営安定に関する請願外一件(石田  幸四郎君紹介)(第四六七四号)  中小企業信用保険法に基づく保険限度額引上  げ等に関する請願神崎敏雄紹介)(第四六  七五号)  同(林百郎君紹介)(第四六七六号)  伝統的工芸品産業及び中小企業性業種等保護の  ための輸入制限に関する請願神崎敏雄君紹  介)(第四六七七号)  同(林百郎君紹介)(第四六七八号)  同(神崎敏雄紹介)(第四七七六号)  大規模小売店舗進出規制に関する請願神崎  敏雄紹介)(第四六七九号)  同(林百郎君紹介)(第四六八〇号)  官公需についての中小企業者受注確保に関  する法律改正に関する請願神崎敏雄君紹  介)(第四六八一号)  同(林百郎君紹介)(第四六八二号)  石油販売業者資格制度法制化に関する請願  (有田喜一紹介)(第四六八三号)  同外三件(河野洋平紹介)(第四六八四号)  同(小林正巳紹介)(第四六八五号)  同(田川誠一紹介)(第四六八六号)  同(谷垣專一君紹介)(第四六八七号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第四六八八  号)  同(中山正暉紹介)(第四六八九号)  同(天野光晴紹介)(第四七八〇号)  同(江藤隆美紹介)(第四七八一号)  同外一件(小此木彦三郎紹介)(第四七八二  号)  同(越智通雄紹介)(第四七八三号)  同(大竹太郎紹介)(第四七八四号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第四七八五号)  同(仮谷忠男紹介)(第四七八六号)  同(木村俊夫紹介)(第四七八七号)  同(小山長規紹介)(第四七八八号)  同(塩崎潤紹介)(第四七八九号)  同(地崎宇三郎紹介)(第四七九〇号)  同(萩原幸雄紹介)(第四七九一号)  同(原健三郎紹介)(第四七九二号)  同外二件(藤山愛一郎紹介)(第四七九三  号)  同(古屋亨紹介)(第四七九四号)  同(三塚博紹介)(第四七九五号)  同(武藤嘉文紹介)(第四七九六号)  同外二件(村上勇紹介)(第四七九七号)  同(山崎拓紹介)(第四七九八号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正強化に関する請願石母田達紹介)  (第四七七七号)  同(中路雅弘紹介)(第四七七八号)  同(増本一彦紹介)(第四七七九号) 同月二十八日  地熱資源開発促進法制定に関する請願外五件  (河野洋平紹介)(第五〇九三号)  同(木村武千代紹介)(第五〇九四号)  同(倉成正紹介)(第五〇九五号)  同外五件(小泉純一郎紹介)(第五〇九六  号)  同外四十八件(白浜仁吉紹介)(第五〇九七  号)  同外二件(田中榮一紹介)(第五〇九八号)  同外十一件(増岡博之紹介)(第五〇九九  号)  同外六十七件(床次徳二紹介)(第五一〇〇  号)  同(佐藤文生紹介)(第五二三五号)  中小企業信用保険法に基づく保険限度額引上  げ等に関する請願金子満広紹介)(第五一  〇一号)  同(柴田睦夫紹介)(第五一〇二号)  同(瀬崎博義紹介)(第五一〇三号)  同(津川武一紹介)(第五一〇四号)  同(中川利三郎紹介)(第五一〇五号)  同(林百郎君紹介)(第五一〇六号)  同外一件(平田藤吉紹介)(第五一〇七号)  同(不破哲三紹介)(第五一〇八号)  伝統的工芸品産業及び中小企業性業種等保護の  ための輸入制限に関する請願瀬崎博義君紹  介)(第五一〇九号)  同(津川武一紹介)(第五一一〇号)  同(中川利三郎紹介)(第五一一一号)  同(林百郎君紹介)(第五一一二号)  同外一件(平田藤吉紹介)(第五一一三号)  同(不破哲三紹介)(第五一一四号)  同(米原昶紹介)(第五一一五号)  同(金子満広紹介)(第五二三四号)  大規模小売店舗進出規制に関する請願金子  満広紹介)(第五一一六号)  同(瀬崎博義紹介)(第五一一七号)  同(津川武一紹介)(第五一一八号)  同(中川利三郎紹介)(第五一一九号)  同(林百郎君紹介)(第五一二〇号)  同外一件(平田藤吉紹介)(第五一二一号)  同(不破哲三紹介)(第五一二二号)  官公需についての中小企業者受注確保に関  する法律改正に関する請願金子満広君紹  介)(第五一二三号)  同(柴田睦夫紹介)(第五一二四号)  同(瀬崎博義紹介)(第五一二五号)  同(津川武一紹介)(第五一二六号)  同(中川利三郎紹介)(第五一二七号)  同外一件(平田藤吉紹介)(第五一二八号)  同(不破哲三紹介)(第五一二九号)  同(林百郎君紹介)(第五二三三号)  石油販売業者資格制度法制化に関する請願(  内田常雄紹介)(第五一三〇号)  同(金子一平紹介)(第五一三一号)  同(木村武千代紹介)(第五一三二号)  同(倉成正紹介)(第五一三三号)  同(黒金泰美紹介)(第五一三四号)  同(小坂善太郎紹介)(第五一三五号)  同(小泉純一郎紹介)(第五一三六号)  同(佐藤文生紹介)(第五一三七号)  同外一件(染谷誠紹介)(第五一三八号)  同(竹中修一紹介)(第五一三九号)  同(西村英一紹介)(第五一四〇号)  同(羽田野忠文紹介)(第五一四一号)  同(橋本登美三郎紹介)(第五一四二号)  同(長谷川峻紹介)(第五一四三号)  同(原田憲紹介)(第五一四四号)  同(廣瀬正雄紹介)(第五一四五号)  同外一件(福永健司紹介)(第五一四六号)  同(保利茂紹介)(第五一四七号)  同(湊徹郎紹介)(第五一四八号)  同(渡辺栄一紹介)(第五一四九号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の強化改正に関する請願野間友一紹介)  (第五一五〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月二十八日  中小企業救済に関する陳情書外十九件  (第四一九号)  中小企業危機打開に関する陳情書  (第四二〇号)  中小企業事業分野確保に関する陳情書外五件  (第四二一  号)  繊維産業等不況対策に関する陳情書  (第四二二号)  鉱業政策確立に関する陳情書外一件  (第四二  三号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正強化に関する陳情書外一件  (第四二四号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正に関する陳情書  (第四二五号)  合成洗剤の製造・販売使用禁止等に関する陳  情書外一件  (第四二六号)  大島つむぎの振興対策に関する陳情書  (第四二七号)  家庭用プロパンガスメーター制に関する陳情  書(第四二八号)  家庭用燈油供給及び価格安定等に関する陳情  書外一件(  第四二九号)  地熱資源開発促進法制定反対に関する陳情書  (第四三〇号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石油備蓄法案内閣提出第六二号)      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石油備蓄法案を議題といたします。  本日は、参考人として日本エネルギー経済研究所所長向坂正男君、共同石油株式会社会長谷川隆太郎君、エッソ・スタンダード石油株式会社取締役社長八城政基君、以上三名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  参考人各位におかれましては、目下本委員会審査中の石油備蓄法案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見をそれぞれ七分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言する際は、委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  初めに、向坂参考人にお願いいたします。
  3. 向坂正男

    向坂参考人 わが国の一次エネルギー供給輸入に非常に大きく依存しておりまして、また特にその中でも外国石油に依存する度合いが非常に高くて、日本経済安全保障といいますか、きわめて脆弱な基盤に立っているということは、改めて申し上げるまでもないことであろうと思います。エネルギー調査会の試算によりましても、輸入依存度は現在九〇%程度、今後国内エネルギー資源をできるだけ活用しましても、それからまた、原子力を十分な安全性のもとにできるだけ開発を促進するというような方策をとりましても、将来の日本エネルギー需要増加を考えますと、昭和六十年度でも輸入依存度は八五%内外を占めることが予想されます。その中でも、石油だけとりましても、現在エネルギー消費の七五%以上を石油に依存しておりますけれども、昭和六十年度、先ほどのような方針でエネルギー開発を進めたとしましても、石油への輸入依存度は六五%程度を下回ることは困難であるというような状況でございます。  大量の石油輸入をしますから、その供給源もできるだけ分散化する努力をしなければならないことは確かでございますが、しかしそれにしても、中東原油への依存度を現在より大幅に引き下げるということはなかなか困難な状況でございます。中東における不安定な政治情勢を考えますと、石油備蓄相当程度保有するという必要性が生まれるわけでございます。もちろんこういった備蓄は自国の安全のためにやるべきものでございますが、石油のような国際的商品の性格から考えましても、現在国際エネルギー機関で討議されているように、緊急事態における相互融通制日本が参加しておくということも必要かと思われますので、そういった国際的な協調の面からも相当程度備蓄を保有するという必要性があるように思えます。  備蓄法律化必要性があるかどうかということですが、備蓄はそれぞれの石油関連業者にとっていろいろな意味負担になりますから、公平な負担ということから考えましても、義務づけをするという必要性は生まれると思いますし、同時にこの法律によって備蓄された原油を封鎖しておくといいますか、自由に販売に使えないということを強制することによって、いわば在庫過剰による石油市況の圧迫、石油会社の収支が非常に困難になるというような状況を防ぐ意味においても、備蓄をやるならば義務づけをし、したがって法律をつくり、それに違反した者に対する適当なる罰則というものも考える必要が出てくるかと思います。  しかし、法律を定めて備蓄の義務づけをする以上、その備蓄が円滑に実施されるような条件整備が必要だと思いますし、その中で政府の果たすべき役割りというものは重要だと思われます。御承知のように、備蓄のためには巨額のコストと、また貯油基地をつくるための用地の確保ということも必要でございますから、それらのことの中に政府が果たすべき役割りは重要だと考えます。  まず第一に政府の果たすべき役割りとしては、備蓄必要性について国民コンセンサスを得るように努力をするということであろうと思います。  それから第二には、政府備蓄に対して助成策を十分に考える。一定限度以上の備蓄については、国が相当なる負担をするということが必要なのではないか。西ドイツのように一定部分を国が直接するというような方策がございますが、このよしあし、日本においてこれを採用すべきか否かは別問題としましても、備蓄問題に関してそういった方法も一つあろうかと思いますが、しかし民間会社に義務づける以上、それに対する政府の相当なる助成策が必要であろうと思います。  第三には、その備蓄民間にやらせる以上、民間がそれを実施できるような条件整備も必要であろうと思います。政府企業負担の一部を助成するということが行われておりますけれども、現在考えられている助成ではあるいは不十分であるということもあり得ると思います。  それから、現在何よりも石油会社、特に民族系企業は大変膨大な赤字を抱え、自己資本は総使用資本のわずか五%以下というような状況に追い込まれ、最近一年余にわたって非常に大きな赤字を抱え、その見返りに大変な借金をしているというような状況でございます。今後備蓄コストをいろいろ負担していくという力がいまの石油会社企業体質にあるかどうかということは、十分考えておかなければならない。したがって、今後のいろいろな備蓄コスト増加を、企業ができるだけの合理化により吸収すべきことはもちろんでございますけれども、しかし御承知のように石油産業における国内における付加価値というものはキロリットル当たりにしても非常に少ないものでございますから、やはりその備蓄コスト増加価格に転嫁して、国民全体が負担するというような方向十分政府としても考えていく必要があるのではないかと考える次第でございます。  以上で終わります。
  4. 山村新治郎

    山村委員長 次に、長谷川参考人にお願いいたします。
  5. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 長谷川です。  ただいま向坂さんからるる備蓄に必要な理由をお話ありましたが、私は現在自分が原油を買ってきて精製して売るというようなことをやっておる業者でありますので、より具体的に話をしたいと思います。  それは、御承知のように現在の石油精製会社体質から言えば、全くこの一、二年の間ですっかり弱りまして、ことしの三月の決算期に表面上約六百十五億の赤字になっておりますが、いろいろなあの手この手、財産の処分その他をやりまして、実質は千億を超えておる赤字を出しておるような状態で、この次の決算のときには恐らくその手ももう尽きてしまって、大変困難な状態に追い込まれておるような状態です。  このたび、備蓄法案に関して私らがお願いしたいことは、これをわれわれに義務づけられることは非常に結構ですが、民間にこれを義務づける場合には、これに要する金融面とそれからどこに備蓄するかという土地の問題と、二つの大きな問題があるわけですが、この問題をぜひ解決していただきたい。  それで私自身、昨年石油国有化の提言をやりましたくらいで、日本ではほとんど産出しない石油で、しかも現代は石油物質文明といわれる世の中で、これをわれわれだけに任しておくんじゃなしに、国民全体で考える。政府だけでもなしに、国民全体で石油政策をどうすべきかという根本を考えるという、その観点から一つ備蓄という問題は当然起きてくる問題でありまして、五十四年度までにIEA関係から九十日備蓄ということを言われておりますが、私は非常事態が起きた場合に急速にその融通関係がうまくいくかどうかということも非常に疑問を持っておりますので、むしろ半年、百八十日の貯蔵を政府が考えていただければ非常にいいんじゃないか。そのためには、われわれとしての体質その他からいって、どうしても六十日以上持てる体質ではございませんので、あとの百二十日分は政府でぜひ持つようにしていただきたい。それから、石油基地もぜひ政府で——われわれも探しますが、強力にこれを援助していただいて、地域住民コンセンサスを得、そしていかに石油が不足したときには困るかということをよくPRして、そしてぜひ日本国内にそれだけを貯蔵することを考えていただきたいと思います。  御承知のように、私は石油化学から石油に入ってきたものでございますが、石油をただ単なるエネルギーとしてとらえるんじゃなしに、石油生活物資原料になる。たとえば石油一次製品から五次製品まで合わせますと、約一万種類石油製品ができております。これは一万種類生活製品と申しますと、われわれは石油製品の中で生活しておると言っても過言でないくらいでないかと思っておりますが、これがその原料であるナフサが上がれば、すぐ次へ次へと一万種類生活物資が上がっていくというようなことになりますので、その根本を押さえれば私はそういう生活物資のインフレをとどめることができるんじゃないか、こう考えますので、あらゆる点からいっても石油はぜひ政府で統制なり、進んで国営化までいってもらえば結構ですけれども、あらゆる面を考慮しまして、せめて備蓄それから統制という点まで進んでいただきたい、私はこう考える次第であります。  なお、もう一つ特に申し上げておきたいことは、いま向坂参考人は隔離して備蓄するから価格に影響ないと言われましたが、備蓄ということは石油を常に供給過剰の状態に置いておくわけですから、そのためにどうしても石油製品の値は上がらない、常に下落の方向に向いていくということになるのが通例でありますので、これを実行するためには、将来ぜひ石油製品最低価格まで決めていただきたいと私は考えます。
  6. 山村新治郎

    山村委員長 次に、八城参考人にお願いいたします。
  7. 八城政基

    八城参考人 石油備蓄増強必要性につきましては、石油危機が起きました七三年十月以前においても世界の消費国の中では一部においてすでに論ぜられた問題でありますが、特に石油危機を契機にいたしまして消費国としては消費相当部分備蓄として持たなければならぬという声が高まってきたことは御承知のとおりであります。特に国際エネルギー機関において、各国間で緊急事態が起きたときには融通し合うという原則から出発いたしまして備蓄増強が論ぜられているわけでありますけれども、わが国といたしましても備蓄増強することは、石油危機が再び起きたときに、それを完全に回避できるような十分な条件にはなりませんけれども、どうしても必要な条件だろうと私は考えます。  しかしながら、現在政府が考えておられます備蓄法によって義務づけられます備蓄増強は、多大の資金を要することは言うまでもありません。私ども自身計算によりましても、一九八〇年に九十日の備蓄を持つ場合に、タンクの新しい能力として日本全体で約二千五百万キロのタンクを必要といたします。その場合に土地タンク受け入れ設備投資としては約七千億円、さらにタンクの中に必要な原油をためるための費用がございます。これは、運転資金に対する金利、さらにはタンクのありますターミナルの運転のために必要な経費、それから投資に対する私的企業としての適正なリターンといったものを考えなければなりません。全体を足してみますと、約七千円ぐらい、新たに追加して設けられますタンクについての経費がかかってまいります。これは当然追加分でありますから、根っこにあります全体の需要に平均して経費としてかかってくるわけでありますから、大ざっぱに言いましても少なくとも五百円程度経費増になるわけであります。ところが、昨年の三月十八日に通産省が決められました行政指導価格値上げ幅であります八千九百四十六円の計算根拠にあります石油企業が許される利益として考えられておりました数字は、私の記憶にもし誤りがないといたしますと、税引き前で約二百五十円利益を認めてやろうということであったと思います。したがって、現在石油企業が非常に苦しい状態にある。企業によって格差がございますけれども、大ざっぱに申すならば恐らくキロリットル当たり千円程度の逆ざやになっているかと思います。それに加えて、さらに五百円の経費増ということになりますと、これは石油企業経営基盤を著しく脅かすことになろうかと思います。そういう意味におきまして、備蓄をするためには国の抜本的な財政金融上の措置が必要と考えます。  先ほど向坂参考人からもお話がございましたけれども、石油企業正味資産は、全体の総資産の中で現在ではことしの三月期におきまして四・六%であります。諸外国における私的企業正味資産比率は、恐らくアメリカにおいては大体七割程度正味資産として自己資本であります。それに対してこれほど重要なエネルギー産業であります石油正味資産比率がわずか五%を切っているということで、果たして安定した経営ができるかどうかということは非常に疑問があります。そこにさらに備蓄費用負担しなければならぬということは、非常に大きな負担になりますので、その点政府としても十分お考えいただきたいと思います。  もう一つは、土地の取得でありますけれども、御承知のように備蓄のために必要な土地確保することは、地域住民との間に理解を得、さらに立地問題につきましても適当な土地がなかなか得られないということから言いまして、私的企業ができる範囲はかなり限られておると思います。そういう意味で、備蓄土地の手当て、地域住民との話し合いにつきましても国が積極的な役割りを果たすべきではないかと存じます。  これらをまとめて申しますと、備蓄問題は私的企業の問題のみならず国家の安全保障との関連が非常に深いわけでありますから、当然国の役割りはきわめて大きいと思います。民間側におきましても、石油企業だけが責任を持つということでなしに、たとえば大口需要家であります電力などにおいても、当然需要家としての立場から備蓄についても協力をしていただければ幸いかと思います。  一応そういった日本の現状を踏まえまして、それでは諸外国においてどういう状態にあるかということを私どもの得ております情報から参考までに申し上げたいと思いますが、西欧においては現在七十五日から八十日の備蓄を持っております。そして、ことしの初めから目標といたしましては九十日に引き上げるということが、西欧諸国の政府の決定されたことでありますけれども、実際には恐らく二年程度おくれるであろう、国によってはさらに一年、二年の猶予を設けることがあるかもしれないと聞いております。それからもう一つは、ヨーロッパの場合でありますけれども、西ドイツ、フランス、オランダなどにおいては、三国間において自国の備蓄を他国に預ける、つまり立地問題その他の理由から備蓄の融通制度を各国の政府間協定において認めていると理解しております。日本原油輸入のみならず製品輸入もいたしておりますので、たとえばシンガポールなど日本に対して重要な供給源であります地域において土地が得られるならば、そういうところにおきます備蓄日本備蓄として考えられるよう政府としても御努力を願いたいと存ずるわけであります。  結論的には、備蓄問題は国全体の問題でありますので、政府役割りがきわめて大きいと思います。そういう意味では、すでに考えておられると理解しておるのですが、半官半民の備蓄会社の構想であるとか、石油開発公団の積極的な利用等を考えていただければ幸いかと思います。  最後に、これはすでにIEAにおいて話が出ていると理解しておりますけれども、原油を運んでおりますタンカーが日本に向かって走っておるときには、すでに日本に来ることはわかっておるわけであります。特に日本の場合には邦船の比率、つまり日本船籍の船が全体の比率の中で非常に高いわけでありますから、諸外国に比べますとその点は日本についてはある程度安心できる面もあるわけでありますから、海上を動いております原油についても国際的な話し合いの上で備蓄の中に入れるような考慮ができないものかと考えるわけであります。特に邦船比率の高い日本の場合には、供給の安定という意味ではタンカーが日本船籍のものが多いことはプラスの材料でありますので、その点もあわせて今後の国際的な話し合いの上にお出しいただければ幸いかと存じます。  以上でございます。
  8. 山村新治郎

    山村委員長 以上で、参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 山村新治郎

    山村委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  質疑の際は、まず参考人の氏名をお示し願いたいと存じます。  板川正吾君。
  10. 板川正吾

    ○板川委員 まず、長谷川参考人にお伺いいたしますが、きょうの名簿を見ますと、共同石油株式会社会長という資格でありますが、私ども備蓄関、係で御意見を承りたいというのは、販売会社ということよりも精製を含んだ民族系企業——代表とは申しません、その一員としての意見を聞きたい、こういうことでございますから、長谷川さんはアジア石油の会長もやっておるそうです。そういう民族系の精製を含む会社という気持ちで私は伺いたいと思います。  先ほど長谷川さん、この一、二年民族系赤字が続いておる、これは自分を含めておっしゃるのでしょうが、五十年三月で六百十五億円程度赤字であり、実際これは一千億くらいの赤字である、これはアジア石油じゃなくて民族系全体の数字ですか、その点ちょっとまず伺っておきたいと思います。
  11. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 ただいま申しました数字は、石油十九社、そのうち十三社が年二回の決算で、それからあとの六社が年一回の決算で、それを合わせた赤字が約六百十五億になりますが、それはあらゆる手を尽くした後のものでありまして、そのほかに、出ておりませんが、たとえばアジア共石とかそれから東亜共石というような精製会社、いわゆる共同石油と合同の会社赤字が約五十億を超えておりますが、それを入れますとまたふえるというような次第であります。
  12. 板川正吾

    ○板川委員 これはいずれにしても精製業界全体ということで推算した、こういうことだろうと理解をいたしますが、長谷川さん、石油国営化を主張をされたとおっしゃいますが、国営化の主張の骨子はどういう、たとえばどういうところを国営にしたらいいのか、あるいは公有でもいいですよ、公的管理でもいいのですが、どういう構想なのか、その点をひとつ簡単に説明してください。
  13. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 私、昨年国有化の提言をさせていただいて、必ずしも国有化にせいというわけではありませんけれども、そういうことをたたき台にして、ひとつ根本的な石油政策を確立していただきたい、こういうわけであります。そのためには、御承知のように石油業界はメジャー系とそれから民族系とに分かれておりますが、いまやその輸入原油の格差は大体縮まってきておりますが、元来極端な時期に来ますと一ドル以上も違うようなことがございまして、とてもメジャーとの太刀打ちができないということが一つと、それから日本には石油はほとんど出ない、それで全部外国に依存しておる、そして先ほどもちょっと申しましたが、石油製品の第一次から第五次製品まで合わせると一万種類以上ある、そうすると、原油が上がると、一万種類製品がなだれを打ったようにどんどん値上がりをしていくというようなことになれば、われわれの生活そのものが破壊されていく、それでどうしても何らかの形で政府が統制して、抑えてこれをやっていただきたいというのが私の一つの大きな趣旨で、その上に、石油精製といいますけれども、これは設備事業の企業のようでありますが、実質は商業的色彩が非常に強い。なぜかというと、原料代がほとんど、いわゆる卸値段に対する八〇%が原料代で、それのいわゆる輸送費その他を一〇%引きますと、残り一〇%の中から償却その他一切をやっていかなければならぬ企業で、金利負担から人件費その他を支払いまして、一〇%の中でやっていけるはずがありません。そしてしかも、石油というものはエネルギーその他いわゆる生活物資原料で、国民にもうなくてはならぬ重要なものですから、ぜひ政府で統制していただきたい、こういうことをお願いするわけです。
  14. 板川正吾

    ○板川委員 向坂参考人に伺いますが、この石油政策エネルギー政策は、一つの曲がり角といいますか、転換せざるを得ない事態に今日あると思います。しかし、将来どうあるかということが実は私どもなかなか構想がつかみにくい、暗中模索の状態のところでありますが、向坂さんはエネルギー調査会のメンバーでもあります。昨年中間答申を出されておって、近々本答申が出されるように承っておりますが、OPECの台頭、それから将来やはり政府間購入、GG原油、こういうものがふえてくる、国内の引き取り体制というのも、したがってどこでどういうふうに引き取るかという問題等もありますし、いまお話しの長谷川さんの国営化というような、国がもっと公的な介入をせよ、こういう要望等もありますが、原子力の安全性も含めて結構ですが、こういう将来のエネルギー政策というものを目下のところどういうふうに考えておられるのか、ひとつ承っておきたいと思います。
  15. 向坂正男

    向坂参考人 大変広範な問題で、簡単にお答えしにくいのでございますが、まず第一に、エネルギー政策の基本にすべきものは、いま委員からも発言がありましたように、国際的にエネルギー情勢が新しい段階を迎えつつあるという認識に立つことが重要であろうかと思います。それは、産油国の石油産業に対するコントロールをする力を強めようという方向に展開され、その具体的な内容は、将来の石油生産について需要家のための生産よりは自国の国益のために必要なように石油資源を活用していくという方向に展開し、したがって生産もその意味でコントロールすると同時に、石油価格についても自国のコントロール下に置こう、そのためには漸進的に石油産業国有化を進めようという状況にあると思われます。こういった歴史的な変化はおそらく逆転することはない、それにいかに対応するかということを考えるべきだと思います。  そのためには、まず第一に、総合エネルギー調査会の中間答申にもありますように、国内エネルギー資源をある一定の経済性の範囲内、ということは、ある安全コストから  輸入よりは幾らか割り高であっても、その割り高さを安全コストとみなして、その資源の活用をできるだけ進めるということであろうと思います。と同時に、原子力を純粋の国産資源と言えるかどうかは問題ですけれども、原子力を含めまして、できるだけ国内エネルギー供給を増大していくという方向に考えるべきだと思います。  それからさらに、それにしましても先ほど申し上げたように、将来のエネルギー需要増加を考えますと、原子力を含めた国内でのエネルギー供給の占める比率は、ある大変限定された、昭和六十年度でも多分一五%内外という程度にとどまる。そこで、したがって輸入エネルギーに頼らざるを得ない、その輸入エネルギーもできるだけ供給源を多様化する、供給先を分散化するという努力が必要であろうと思います。そのためには、国内の環境問題から言いましても、できるだけ天然ガスの活用を図る、それから石炭についても鉄鋼用の原料炭だけではなくて発電用の一般炭の輸入も考えていくという方向が必要だろうと思いますが、さらにそれにしましても輸入石油への依存度は、全体のエネルギー消費の、六十年度において多分三分の二程度を占めるに違いない。その輸入石油をできるだけ供給源を分散し、また可能な限り長期契約というような形で原油確保していくということが重要であろうと思います。その輸入エネルギーの分散化については、政府間協定という形もあり得ましょうし、それから民間石油業界、関連業界と相手の国営会社との長期契約という形もあり得ると思います。それは長期安定のためには政府間協定がすべていいのだというふうに判断するのは早過ぎることであって、相手国の事情に応じて、政府間協定なりあるいは民間石油関連グループの長期協定というような形で進めていくことが必要だろうと思いますが、またさらに政府間協定におきましても、これは石油供給者及び需要業界とは十分その契約の仕方、量についても了解をとった上で、つまり引き取りにできるだけ問題の生じないような形で初めから取り組む必要があるのじゃないかというように思います。したがって、長期協定をする以上、その引き取り体制をあらかじめ十分整えておくということが必要で、場合によっては将来共同輸入会社という構想もあり得ましょうし、また民間石油業界の共同の組合というような、あるいは輸入協定をするための協議会というような形で当初からその意見を聞いておけば、その引き取りに問題が生じる場合が少ないというようないろいろなやり方を考えるべきだと思います。  それから、最後にちょっと一言つけ加えたいことは、長期的な方向として産油国国営会社が直接自分の手で原油販売する、その能力を拡大していこうという方向は間違いないと思いますけれども、産油国の世界市場、原油の市場の開拓能力から言いますと、急速にそれに移ることは、一〇〇%にしていくことは問題がございますので、やはり今後の石油の安定輸入のためには、国際的に供給源を広く持っている国際石油会社からの輸入ということも十分考慮していく必要があろうかと思います。
  16. 板川正吾

    ○板川委員 今度の備蓄計画が計画どおり進みますと、五年間で一兆二千八百億程度資金が必要とされる。そのうちの七割は国の何らかの援助、直接援助もありますし、融資もありますし、政府保証もありますが、そういう形で支出されるわけです。一兆二千八百億というのは、一年平均にいたしますと二千五、六百億になるのですね。確かに当面備蓄というのも大切ですが、やはり日本が新しい供給源開発するということも、実はある意味では自主的な備蓄になるわけですね。そういう意味で、私は、備蓄だけに一兆三千億近い金を使うというなら、たとえば東シナ海の海底油田の開発とか、こういうものに国家的な投資をして安定供給を図るべきだ、こう考えますが、こういう構想についてはどうお考えですか。
  17. 向坂正男

    向坂参考人 将来国際的な観点から、東シナ海のような巨大な石油賦存の地質構造があるようなところで開発を進めるということは、重要なことであろうと思います。したがって、備蓄よりもそちらにもつと金を使えということですが、備蓄はやはり最低限やる必要がある。しかし、同時に中南米その他、いまの中東、アフリカ以外のいろいろな地域で石油開発を進めていくということが必要であろうと思います。今後の日本石油を依然として大量に輸入する必要があるならば、日本も国際的な石油開発を進めるために応分の貢献をすべきではないか、それにはいろいろな開発のための資金を提供する、あるいは持っている技術を提供する、その意味で、単に日本に持ってくるというだけではなくて、国際的な石油供給の増大に日本も応分の貢献をすべきではないかということで、東シナ海の問題も、もしそういう条件が整えば、日本も当然相当な資金を提供して協力すべきだと思います。
  18. 板川正吾

    ○板川委員 私も当面備蓄で万事解決するという意味ではないのですし、また備蓄を軽視している意味じゃないのですけれども、九十日を百八十日にすればいいということではいわば安定供給ではない。やはりそういう石油開発について国がもっと積極的な対策をとって、いまおっしゃられたような趣旨で海外における開発等に日本も応分の力をいたす、それが一つの安定供給の大きな柱である、備蓄はいわばその補助的なものである、こういうふうに考えたいと思うので、この趣旨はそう違わないと思いますから。  長谷川さんにもう一つ伺います。あと六、七分しかありませんが、長谷川さんは中国石油輸入協会の会長もやっておられると承っておりますが、中国における石油開発状況、中国側の考え方、向こうへ行って要人に会われてきたようでありますが、そういう点の感触をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  19. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 私、昨年の三月から中国の輸入をやっておりますが、中国は量的に非常な自信を持っておられるのと、それから開発していけばどんどん開発ができる、そしてそれを売るためにではなくして、まず自分の国の供給を満足させて、その後余ったものを輸出して、その代金でいろいろな資材を買い、また貿易に役立てるという気持ちが非常に強いようです。ただ、私の感触から言えば、日本の考え次第で、中国は幾らでも石油を——幾らでもと申しますと語弊がありますが、相当量の石油日本に出してくれるんじゃないかと、こう考えております。
  20. 板川正吾

    ○板川委員 エッソの八城参考人に伺いますが、ヨーロッパ諸国では備蓄が、先ほど参考人は五十年で九十日ぐらいである、しかしこれは二年ぐらいおくれるんじゃないだろうかという向こうの状況を説明されたのでございますが、私ども伺っておりますと、ヨーロッパの国では非常に備蓄が進んでおって、イギリスでは百日分、西ドイツが七十九日、ベルギーが九十日、フランスが百五日から百二十日分と、こんなふうに実は私ども承っておるのですが、あるいはこういった資料の方が間違いでしょうか。そちらも専門ですから、どちらが本当かなという点についてひとつまず承ります。
  21. 八城政基

    八城参考人 私が先ほど申し上げました数字は、昨年の十一月に私どもの親会社でありますエクソンを通じて得た数字でございます。  私の想像いたしますのに、備蓄計算をいたします場合に原油製品という二つのものがございますので、製品で持つものを原油で持った場合には、ある程度のディスカウントと申しますか、値引きをして日にちの計算をする場合が国によってあるように聞いております。ですから、計算の基礎はいろいろございますので、必ずしも私が申し上げた数字が的確であるということではないと思いますが、それは根拠のある数字ではあります。     〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕
  22. 板川正吾

    ○板川委員 今度の備蓄法では国内で三十日分の備蓄増加しよう、それが大体三千万キロリットルに相当するそうでございますが、土地が五百万坪という予定で、国内でこういった膨大な備蓄の適地というのは一体どの方向にあるとお考えでしょうか。実は承るところによりますと、五百万坪の中ですでに企業側が所有しておるものが百三十万坪、現在交渉中のものが二百二十万坪相当に当たる、三百五十万坪は何とか確保できるという説もあるようですが、今後こういう適地というのが一体日本のどういう地方にあると思われますか、ひとつ参考に承りたいと思います。八城参考人に伺います。
  23. 八城政基

    八城参考人 私はエッソ・スタンダード石油の社長をいたしておりますが、エッソ・スタンダードは販売会社でございます。私どもは東亜燃料から製品を引き取っておりますので、具体的にはそういった土地の選定その他につきましては、関連企業といたしましては東亜燃料がやっておるわけでございます。したがいまして、私が承知しておりますのはあくまで間接的でございますが、土地については物理的にはあるということを聞いておりますが、しかし実際にそういう土地が適地としてありましても地元住民の理解が得られない、したがって備蓄のための基地をつくることが非常にむずかしいという場合が多々あるように聞いております。
  24. 板川正吾

    ○板川委員 きょうは精製会社じゃなくて販売会社という資格でお二人の参考人に来ていただいておったのですから、失礼いたしました。  私の持ち時間の二十五分になりましたから、これで私の質問は一応終わります。
  25. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 加藤清二君。
  26. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私の与えられた時間も二十五分だそうでございます。時間が限られておりまするので、恐れ入りますけれども端的に承りますから御答弁の方もひとつ簡潔にお願いいたします。  最初に向坂先生にお尋ねいたしますが、私どもは社会党でございます。社会党は何でも反対と、こういうふうに言われておりますけれども、この備蓄に関する限りは別に反対ではございません。戦前では海軍燃料廠、陸軍燃料廠等々が、それに必要な二年間分の備蓄をしておった前例もこれあり、三カ月をいま政府が規定したからと言ったって別に私は長いとは思っておりません。ただ、一体備蓄はだれのためにこれが行われるかということを考えてみました場合に、国民にしわが寄る、先ほど先生のお説の中にもありましたが、国民にしわが寄って、国民消費価格、これがいたずらに値上がりされるということになると、われわれは考えざるを得ない。  そこで、お尋ねしますが、備蓄を世界の先進国で一番上手にやっている国はどこでございましょうか。それから、その場合の備蓄にかかわる費用国民負担であるのか企業負担であるのか、あるいは国家負担であるのか等々のことをお教え願いたいのです。  なぜ、こんなことを承るかというと、私は西部劇のふるさとを一週間ばかりアメリカのプロフェッサーの御案内で回ったことがあります。アメリカは試掘はします、オイルの場合でも。しかし、掘り出さないんですね。なぜ掘り出さないかと聞いたら、あそこへ備蓄をしておくんだと、こう言うのです。安い油がOPECやOAPECから来ればドル札で買っておけばいい、それがなくなったころに自分のところから掘り出せばいいのだ、こういう考え方。いわんやタールサンドやオイルシェールになりますと、タールサンドだけでも石油埋蔵量の二百倍余あると、こう言う。それがほとんどアメリカ南北に集中していると、こう言う。ですから、備蓄の一番上手なのはアメリカではないか。しかし、その試掘した場合の投資はどう減価償却するのだと聞いたら、それは国家がやるんだと、こういう話です。  以上のような関係で、ひとつこの備蓄を一番上手にやっている国はどこか、その負担はだれが負担しているか。
  27. 向坂正男

    向坂参考人 各国の備蓄状況を私は詳細に存じておりませんので、第一の御質問については私、お答えするだけの用意がございません。ただ、一体、こういった備蓄コスト、もっと広く言えば国の安全保障のためのコストをだれが負担するかということになりますと、直接間接いろいろな形態はあれ、結局国民負担する以外にないというふうに考えます。ヨーロッパの場合には、ガソリン消費税ももちろんですが、こういった備蓄コスト価格に転嫁するということは当然のこととして認められている。石油価格に対して統制をしていない西ドイツにおいても、そういう観念は政府国民の中に十分存在していると思いますし、フランスのような最高価格制をとっているところは、そういうコスト増加価格引き上げに転嫁していくということをやっているわけでございます。日本の場合には、とかく安全に対するコストを十分負担するという認識は、国民の間に少ないのではないか。もちろんそういったコスト増加は、まず第一段階は企業ができるだけ合理化によって吸収すべきものだとは思いますけれども、しかし石油産業における付加価値というものは大変少ない、精製費で多分三千円前後、それから輸送費を加えましても五千円か六千円、その中へ実際の費用もかかっておりますから、付加価値部分というのは非常に少ない。つまり合理化の余地というものは非常に少ない。その意味で、原則的にはこういった特別の安全コストというものは価格に転嫁して、消費者が間接的に負担するというふうに考えざるを得ないと思います。
  28. 加藤清二

    加藤(清二)委員 引き続いて、向坂先生にお尋ねしますが、この備蓄の問題につきましては、石油の問題が国会で論議されるたびに、日本は一たん緩急の場合にどうするのだということで、備蓄せい、備蓄せいという意見が、ここでもう二十何年来出ているのですよ。高碕達之助というりっぱな通産大臣がみえたころからずっと引き続き行われている。ところが、にわかに日本政府が九十日を云々と言い出した裏には、あのインターナショナル・エネルギー・プログラムですね、これのサゼスチョンが大きにあったではないか、こういうふうに言われておりますが、このIEPなるものが、果たして一たん緩急の場合に有無相通ずる機能を発揮することができるでございましょうか、いかがでございましょう。
  29. 向坂正男

    向坂参考人 IEPの相互融通協定が実際に発動された場合に、日本のような孤立した地域にあるものにとって、その機能が十分働くのかどうかということは、私も幾らか疑問を持っております。しかし、この備蓄問題は、別に国際エネルギー機関がつくられてから問題になったのでないことは御承知のとおりでございまして、その意味では、従前から日本では、こういった石油依存の高い国では備蓄をもっと増強すべきだということは論ぜられ、エネルギー調査会の答申にもあったわけで、私は、相互融通協定がどの程度日本を援助してくれるかはよくわかりませんけれども、まず安全についてはみずからの力でその備えをしていくということでこの備蓄を進めるべきだと思います。
  30. 加藤清二

    加藤(清二)委員 備蓄安全はみずからの力でと、私も確かにそうだと思います。ところが、このみずからの力で石油確保し、備蓄しようとした場合に、果たしてメジャー系がそれを許すか許さないかという問題がでざいます。  そこで、これはメジャー系のエッソ・スタンダードさんの八城さんに承りたい。このメジャー系は、日本が独自の力で確保する市場を開拓したり、必要量を仕入れる場合に、いま今日ではどのような状況になっているか。なぜそういうことを聞くかと言いますと、かつてソ連から原油を六百万トン輸入したことがございます。私は高碕先生の使いでソ連へ何度も行きました。これはうまくいきました。そうして出光がこれを一括処理をいたしました。国民にも非常に喜ばれました。引き続いて、シベリアに油送管をつくろうということで、これもうまくいきました。しかし、それはさたやみになりました。なぜか、それはメジャー系が圧力を加えたからです。同時に、出光が飛行場に供給するところの航空機用のガソリンも中止させるというところまで追い込んだ。したがって、油送管の問題は立ち消えになりました。今日になって、ようやくまた中国油であるとか、あるいはソ連油をという声があちらにもこちらにも出てまいりました。今日この段階で、一体メジャー系は、日本石油をみずからの手で守ろうとする場合にどういう態度に出られますか。
  31. 八城政基

    八城参考人 お答えいたします。  世界の石油情勢は、過去数年来非常に変わっております。御承知のように、一九七二年十二月末に決定されました中東産油国と石油会社との間の協定によりまして、七三年一月一日から経営参加が行われております。そうして、その最初の経営参加の比率は二五%でありますが、その後、昨年の一月二十九日、クウェート政府が六〇%の経営参加を要求して以後、ほとんどの国において石油会社側の持ち分は四〇%になっております。ということは、産油国が自身販売する原油の量が非常にふえております。しかしながら、実際には産油国が販売組織を持たない、あるいはすでに需要が非常に落ちておるということから、産油国自身がみずからの原油販売している量はきわめて少ない量であります。五%であります。  私どもは、そうした国際情勢の非常に大きな変化を踏まえて、将来の原油供給については、民間会社としてのエクソンが日本の——第三者と呼んでおりますが、民族系石油会社に対して、現在あります契約が切れた時点においてさらに改めて既存の契約を更新することができるかどうかわからない、したがって、どうぞ産油国側の国営会社から直接お買いになることもお考えいただきたいということを、私どもの関係会社でありますところから申し上げてあります。
  32. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私の質問しているのは、メジャー系が、ソ連油であるとか中国油を日本が求めようとした場合に今日はどういう態度に出るかということで、いまのOPECやOAPECの関係のことは当方もよく承知しておりますから、その解説を承っているのではない。まあ、それがお答えできないということであれば、後で書面で結構でございます。  それじゃ、引き続いて答えられる問題をお答え願いたい。  メジャーが日本石油精製会社に油を供給した場合——これは長谷川さんにも承りたい。民族系はいま幾らで輸入しておられますか。それから、メジャー系は幾らで仕切っておられますか。公示価格を聞いておるのじゃありません。OPECやOAPECの公示価格とかDDオイルとかGGオイルの値段を聞いているのではございません。
  33. 八城政基

    八城参考人 先ほど御質問がございました中国原油についてでありますが、私どもは直接中国原油を買っておりませんが、関連会社が中国原油を仕入れております。これについては私どもとしては何も反対を申し上げたことはございません。  第二点の原油価格でありますけれども、過去においては、六〇年代を通じまして原油価格というものは、民族系に対する価格の方が、平均いたしますと約十セントから十五セント程度安かった時代が五年近く続いております。その後いろいろな変化がありますが、私どもに関する限りは、七四年の一月一日から八ドル三十二でありますが、民族系に対する価格は十セント程度の差はございました。しかしながら、世間に言われております一ドルのような差は一切ございません。現在は同じ価格でございます。  以上でございます。
  34. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 エクソンに対しては、いま八城さんの言われたとおり、間違いありません。私の方は約八年の長期契約をやっておりますが、そのようなひどい差はありません。しかし、他のモービルについては、石油ショックのときに、従来モービルの子会社と同じ値段で売るという契約で、十五年間の契約をやっておりますが、あのときには、おまえの方は第三パーティーであるから、こういう状況になってはとても子会社並みには売れない、だから大協さんと同じか、それから少し安い程度まで値上げせよということを言ってまいりましたのですが、私は強硬に突っぱねて、いまだにその差金は払っておりません。
  35. 加藤清二

    加藤(清二)委員 なぜこういうことを承るかと申しますと、去年の十一月に世界の石油会議がございました。私は日本代表でその席へ参りました。アメリカ代表も参加しておりますが、六十六カ国。その席で問題になりましたのが、いまの点です。なぜメジャーは自分の子会社には安く売り、系列外の会社には高く売るのか。産油国のOPEC並びにOAPECはそのようなつもりでメジャーに提供しておるのではない。これは明らかに差別待遇である。それが今日なお許されるということは、石油業界の恥のみならず世界の民族を差別することにもなりかねない。したがって、このようなことは一日も早く解消されるべきであるということが宣言決議の中に盛り込まれているのです。それで、ことしの正月あたりから徐々にその差が縮んできていることは先刻承知しております。しかし、いま日本民族系が仕入れる油とメジャー系が仕入れる油とに相違がございますと、備蓄をした場合の政府の援助も、平等にするためにはこれは考えざるを得ないことなんです。したがって、値段を聞いているわけなんです。本当の値段が聞きたい。これは、ここでは企業機密に属するとおっしゃられるかもしれませんから、公表はいたしません。ぜひ後で書面でもって知らせていただきたい。なぜかならば、その後の実績を踏まえて次の世界会議に臨むことになっておるからでございます。そう  いうかたい約束が行われておるからでございます。長谷川さんは、きょうは共石の代表ということでございますが、私はメジャー系ではなくて民族系の代表だと思って承っている。それから、八城さんの方は、これはメジャー系の代表だと思って承っている。それなるがゆえに、お二方をお招きしたわけでございます。これは後で書面で結構でございますから、ひとつ……。  それからもう一点、引き続いてお尋ねしたいことは、もし一カ月分の備蓄を今日上乗せしたとしますると、それは一キロに対してどのくらいの値上がりを要請しなければならぬことに相なるでございましょうか。これの計算につきましては、いろいろの計算の仕方があることも承知しております。が、いずれにしてもお二方の御自由な御発言を承りたい。
  36. 八城政基

    八城参考人 先ほども申し上げましたように、備蓄をした結果として製品の原価が幾ら上がるかというのにはいろいろな変数がございます。第一は、将来の需要がどの程度伸びるかによってこれは大きく変わります。投資に対する影響がございます。しかしながら、大ざっぱに申しますと、幾つかの前提条件を置きますが、私的企業として適正な利潤を確保するためには、新たに追加すべき販売量に対する——九十日でございますから、一キロリットルの販売に対して九十キロリットルのタンクをつくる必要があります。その中にそれだけのものを入れる必要がございます。これをキロリットルに直しますと約六千円から七千円という数字が私どもの試算であります。しかしながら、それは追加分に対する原価の値上がりでありますから、もとの根っこの量がございます。したがって、全体の中での原価の値上がりということになりますと、恐らく五百円から七百円程度ではないかというふうに思います。
  37. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 これは計算の仕方によって多少の相違はあると思いますが、われわれの考え方では、一キロリットル五千五百円の見当であるということに考えております。これを取り扱い量といいますか、年の販売量で割りますと、大体一キロリットル当たり三百円から四百円だということの計算になります。しかし、これを絶対量に直しますと約一千億、三百円とすれば一年間七百五十億高くなるということになります。
  38. 加藤清二

    加藤(清二)委員 総販売量のたてまえからすると、三、四百円、しかし備蓄上乗せのそれだけでいくと、五、六千円、大体わかりました。  それでは、共同石油さんは一体いま備蓄は何日分の倉庫がございますか。それから、エッソさんの親元の方は一体何日分ございますか、いまの備蓄能力は。
  39. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 共同石油は、御承知のように五社入っておりますので、それ全体を合わして正確な数字は、よそさんのこともありますのでよくわかりませんが、約四十五日から五十日分ぐらいがあると思います。  これは追加になりますが、先ほどモービルの値段の話になりましたが、あれはアジア石油だけの話で、ほかの方の話ではありませんので、誤解のないように……。
  40. 八城政基

    八城参考人 私ども東燃と取引関係がございますので、東燃の持っておりますタンクとエッソ・スタンダード石油が持っておりますタンクを両方合わせまして、ことしで、私どものこれは計算値でありますけれども、六十七日持っております。
  41. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私が社会党の政審の方で調査をした結果によりますと、どちらかと申しますると、共同石油系統それから出光系統はいままでわりあいに備蓄の設備が多いようでございます。しかし、メジャー系の関係は備蓄の設備は、国内における設備ですよ、シンガポールあたりは別として、わりあいに少ないようでございます。これを一斉に九十日と指定した場合には、出発点が違いますからおのずからかかる費用その他にもいろいろ参差錯雑なものが出てくるおそれが十二分にあるからお尋ねしたわけでございます。したがって、この分も恐れ入りまするが、書面でお答え願いたい。共同石油さん全部、八城さんにメジャー系全部と言ったってそれは無理ですから、あなたの親会社はどこにどのくらいあるかという、いまあなたが六十七日とおっしゃられましたが、その分の内訳をひとつ後でぜひお示し願いたいと思います。  まだたくさん質問したいことがありますが、時間が参りましたのでこれで失礼いたします。
  42. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 私、四十五日から五十日と申しましたけれども、これは設備の完成したもの、完成しないものといろいろありまして、それに対する関係その他を申しますと、いろいろ取り方で違うのですが、六十日分ということに訂正させていただきたいと思います。
  43. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 佐野進君。
  44. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あと八分しか私の持ち時間がありませんので、質問する条項は大体一つぐらいとなろうかと思うわけでありまするが、実はこの法案の審議に当たりまして私どもいろいろの面から検討をいたしました。この前、長官ないし大臣に質問をいたしたわけでありまするが、問題は安全性の問題、それからいわゆる資金的な、財政的な問題、私はこの二つに質問の要点をしぼってただしたわけでありまするけれども、安全の問題につきましてはきょうは時間がございませんので一応触れないで、財政的な面でそれぞれの参考人に御質問をしてみたいと思うわけであります。  向坂参考人は、先ほどいわゆる民族系は大幅な赤字であり、この状態の中で民間が実施し得る条件としては、国民コンセンサスを初め政府の大きな助成策が必要だ、このようにお話しになっておられたわけでありまするけれども、この助成策という範囲でございますね、いま法案に示されているような内容の助成策をもって、今日置かれている石油業界の実態に即して備蓄九十日を達成することが可能であるかどうか、財政的な面からひとつ御見解をお聞きいたしたいと思います。
  45. 向坂正男

    向坂参考人 現在の助成策では石油企業体質から言ってなかなか困難であろうと思いますが、しかし、そうかといって現在の法案に基づいて一〇〇%全部政府が見るというのもなかなか大変だと思います。ですから、石油開発公団の融資条件あるいは開銀の融資条件などなお再検討して、強化することができればそういう方が望ましいと思います。  ただしかし、同時に、この備蓄を実施するためには、たびたび申し上げますけれども、石油企業が平常の状態で採算がとれる状態ということでなければ実施できないと思います。その条件をどうやってつくるかはいろいろむずかしいことがございますし、一挙に国有化まで進むかどうかは私は疑問に思いますので、少なくとも価格政策として、単に物価抑制という観点だけではなくて、長期的なエネルギーの安定供給のためにエネルギー価格政策はどうあるべきか、そういった面からエネルギー価格政策、これは石油製品価格と同時に石炭あるいは電力料金の問題になろうかと思いますが、そういった観点から検討し直すという必要があると思います。石油危機以来の価格政策として無理に原油価格の高騰の転嫁を抑えたという点と、経済が大変不況であるという両方が重なって、現在の石油企業の混乱、困難を来しておりますから、今後エネルギー価格政策として安定供給体制にどうマッチさせるかという観点が必要かと思います。
  46. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長谷川参考人にお尋ねしますが、先ほどの御見解をつぶさに聞いておるわけでございまするけれども、結局強力な統制ないし国有化に進む以外、石油問題、備蓄問題を含めて解決の方法は現段階としては考えられないという御見解のようでありました。追い詰められたというような立場の中での必死の発言であるというように受けとめておるわけでありまするが、といたしますると、国有化という形が一気に、いま向坂参考人のお話のように今日の日本の経済情勢の中において無理であるとするならば、それに至る経過としてどのような体制というか体系というか、そういうものをお考えか。たとえば電力、ガスというような公益事業的な面をお考えであるのか、あるいは一気に国鉄や電電公社のような形にまで進むようなお考えなのか。追い詰められたという段階を認識した上で、その見解をひとつお示しいただきたいと思います。
  47. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 ただいまの質問に対して、私も一気に国有化まで持っていくというわけではありませんので、たとえば輸入会社というものをこさえて、そこでまず原油を一手に輸入して、そしてそれをプールしてわれわれに回してもらえる、それからその原油をある一定の値段で売らしていただくということで、それでもだめだということになれば、政府原油輸入していただいてそれをわれわれに委託精製をさしていただいて、そして委託精製ですからそれを政府の方でもう一度買い上げていただくなりして、政府にいまの専売局と同じような立場で売っていただくというような形にすれば、いまのスタンドがたばこ屋と同じような立場で売っていけるというようなことになり、委託精製ということでわれわれ民間企業も生きていけるというようなことで、さらに、それでも手ぬるいということになれば一歩進んで国有化をやっていただいて、それも予算その他の関係があるでしょうから、炭鉱を整理していったみたいに、今年度はA社の精製設備を買い上げていく、それからB社の設備を買い上げていくということになる。順序としてそう考えていいのじゃないか。  御参考までに申し上げますと、台湾はほとんど国営で成功しておりまして、現在日本国内の油より安い油を国内供給しております。メキシコもそれに近いです。ブラジルが最近始めております。それから、ポルトガルもやろうとしております。
  48. 佐野進

    ○佐野(進)委員 八城参考人に、いま長谷川参考人にお聞きしたことと同じような意味において、あなたの方では半官半民の会社設立、開発公団ということでございますから、一言でよろしゅうございますから、私の質問の真意を理解した上で御見解をお示しいただきたい。
  49. 八城政基

    八城参考人 半官半民あるいは開発公団からの融資ということを申し上げましたのは、備蓄についてであります。  先ほど長谷川参考人からお話がございました国有化の問題につきましては、私は、多くの場合、一般論でありますが、国有化というものは経営上非常に非能率である。まあ、国鉄、米の問題、食管会計でも同じでありますが、どうしても能率が落ちるというのが一般的な姿だろうと思います。さらに、原油を買い入れたときと売るときの値段を変えるということは、当然最終的には国民の税金によって支払われることになりますので、これは反対であります。
  50. 佐野進

    ○佐野(進)委員 終わります。
  51. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 神崎敏雄君。
  52. 神崎敏雄

    神崎委員 各参考人の方々、本日はまことに御苦労さまでございました。  私、共産党・革新共同の神崎敏雄でございますが、先ほどからのお話に関連いたしまして、各参考人の方々にそれぞれ二問ずつ簡単な質問をさせていただきたい、かように思います。  まず初めに、エネルギー研究所長の向坂さんからお尋ねいたしますが、第一問は、九十日備蓄という場合、日本の場合はヨーロッパ諸国と同じように九十日分の備蓄をすると、その量はヨーロッパ諸国の倍以上になるのではありませんか。このように、石油への過度依存の日本経済の現状で九十日備蓄を義務づけることは、経済的負担から言っても日本の経済を国際競争上不利にするのではないか、かように思いますが、御意見はいかが  でしょう。
  53. 向坂正男

    向坂参考人 確かに石油消費量が大量なので、九十日分の備蓄は、そのコストを考えますと、国民負担がかなり大きいということは否定できません。しかし、それにもかかわらず、やはり九十日分の備蓄はしていく必要があろうと思います。  ただ、備蓄だけに頼ればいいかということになりますと、平常の石油の安定供給源の分散なり、エネルギー資源の多様化なり、そういった方向に進む必要がある。と同時に、アジア地域において適当な個所に中間貯油基地のようなものを考えていく、これは日本だけではなくて、アジア諸国の国際的な共同の貯油基地というような構想も将来はやはり進めでいくべきじゃないか。そういう意味で、石油供給のバッファーをいろいろなところにつくっておく必要があるのじゃないか。それからもう一つは、フランスでやっていることですけれども、エネルギーの緊急状態が起きた場合に、エネルギー消費をどの分野でどう節約すれば比較的日本経済あるいは国民負担が少なくて済むか、エネルギーがどういうふうに使われているかの実態調査を平生からよくやっておいて、それで消費規制のやり方を準備しておくということも必要かと思います。  それから、御質問がありました国際競争力に関しては、備蓄負担が大きいと言っても、その金額は、いままでお話が出たように、わずかなものでございますから、これは国際競争力に響くというような程度のものではないと私は思います。
  54. 神崎敏雄

    神崎委員 第二問は、九十日備蓄の水準にあるヨーロッパの国々でも、一昨年秋の石油危機の際には一様に打撃を受け、混乱に陥っておりますね。六十日ではだめで、九十日なら大丈夫だという根拠があるのでしょうか。幾ら備蓄をしても、石油供給削減の対象国となる以上は混乱は免れない、備蓄が問題の根本的解決にならないことは明らかである、私はかように思います。アラブ産油国などの資源保有国としての主張には、一定の道理があり、これを支持する立場に立つことが必要だと思うのです。だから、アラブ産油国やOPECなどが敵対的な組織とみなしているIEAなどに参加することは、日本経済利益にならず、石油問題の真の解決にはならないというふうに思うのですが、この点はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  55. 向坂正男

    向坂参考人 備蓄だけで問題が解決するものでないことは御指摘のとおりでございますけれども、石油流通のための最低ストックが四十日分前後ということを考えますと、六十日分の場合でわずか二十日の食いつぶし分があるか、あるいはそれにさらに三十日分つけ加えることができるかどうかは、国民に心理的にも相当な影響を与えるということがありますので、一〇〇%これで不安を除けるということではございませんけれども、やはり三十日分をふやすことは意義のあることではないかと思います。  それから、アラブの産油国との敵対の問題ですけれども、こういう緊急事態は果たしてアラブだけに原因があるかどうかわかりません。したがってまた、アラブ諸国もこういう備蓄をすることについては反対の意向はないというふうに私どもは情報を得ております。  ただ、IEAへの参加の問題は、これは備蓄の問題もございますけれども、その他の長期のエネルギー政策、石油依存をいかにして切り下げていくかということは、必ずしも産油国との敵対の問題ではなくて、産油国自身石油を余り浪費されては困る、長期的に大事に使ってほしいという希望を持っておりますから、IEAで長期プログラムとして石油依存を特に工業国中心に切り下げていこうという政策は、必ずしもIEAが産油国に対して、特にアラブに対して敵対的だということではないように私は思います。しかし、IEAに参加すると同時に、それぞれの工業諸国がアラブ諸国と相互理解を深めるということをないがしろにしてはいけないというように思います。
  56. 神崎敏雄

    神崎委員 どうもありがとうございました。  次に、エッソの八城社長さんにお伺いいたします。  八城さんも二問でございますが、まず第一問は、報道によりますと、日本石油は五十三年度中に備蓄八十五日分を達成するめどであり、また出光興産もことしの十月に八十日分の実現ということであります。あなたのところでは、現在備蓄コスト製品価格の関係はどうなっておりますかということ。それから、九十日備蓄になった場合、製品価格の高騰にどういうような影響を及ぼすかということですね。この一点をまずお尋ねいたします。
  57. 八城政基

    八城参考人 私どもの場合には、精製会社が東亜燃料でございますので、東亜燃料から製品を引き取りまして、私どもの販売会社の移送基地に製品を入れます。したがいまして、両方の貯蓄能力が幾らあるかということで他の企業との比較ができるわけでありますけれども、その場合に、貯蔵のためのコストが幾らかかっているかというのは、私は現在その数字は持っておりませんので、計算すればすぐ出てくることでございますけれども、ちょっとお答えいたしかねます。ただし、今後六十日から九十日に上がった場合、三十日分については、先ほど御説明いたしましたように、追加分については五千円か七千円程度の追加費用になります。しかし、これを全体にならしますとやはり十分の一程度のものにおさまるのではないかと考えております。
  58. 神崎敏雄

    神崎委員 さいぜんの備蓄コストのことは、いま数字はないが、お帰りになったらわかるというふうに感じたのですが、後で先ほどの委員のように、それは書類か何かで教えていただけますか。
  59. 八城政基

    八城参考人 わかりました。
  60. 神崎敏雄

    神崎委員 第二問は、いわゆる企業独自で備蓄を達成できる企業はどのくらいありますか。本来、社会的に必要な備蓄は、別に九十日と決まっているものではないでしょう。先ほどもちょっとお話がありましたが、社会的といいますか、国民石油供給する企業や電力などの大口消費者である大企業が自主的に備蓄を実施すべきだと私は思うのですね。この点はどうでしょうか。また、備蓄コストは一般の小口の消費者に転嫁すべきではないと思うのですが、この点もあわせてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  61. 八城政基

    八城参考人 後の方の問題につきまして、転嫁すべきでないということでございますけれども、これは先ほどもお話がございましたように、通常の状態であれば四十五日ぐらいが企業として必要な備蓄の量でありますから、それでいいわけであります。従来はそれプラス十五日ぐらいを持っておったわけでありますけれども、現在九十日が出ております背景には、石油問題について国際的に非常な不安感があるといったことから、七三年の暮れに起きましたような供給途絶あるいは供給不安が出た場合に、それを心理的に少しでも緩和するという趣旨があったのだろうと思います。そういう意味では、これは国民全体あるいは国民経済全体の負担すべきものであって、私的企業がそれを全部吸収するということは、原則的には無理な話ではないかと私は思います。  その前提に立ちまして、第一問にございました御質問にお答えしたいと思うのですが、現在、新たに九十日備蓄するために必要な資金企業が出し、そして投資をして、企業としてやっていけるかどうか、そういう企業はあるんだろうかというお話でございますけれども、個別企業については私がお答え申すべき点ではないと思いますが、一般論といたしまして、日本石油企業自己資本比率がことしの三月末で五%を切っておるというのは、技術的に申しますと破産状態であります。ですから、そういった企業がこれから非常に膨大な金額の投資をすることは、たとえ政府が多少の利子補給をいたしましても、企業そのものの立場から言いますと非常に無理な話であると思います。そういう意味で、冒頭にも申し上げましたように、できる限り、政府助成策あるいは政府自身に相当の役割りを果たしていただくことが必要ではないかと考えるわけであります。
  62. 神崎敏雄

    神崎委員 本日は、あくまでも参考人としておいでをいただき、私も参考人に対する姿勢で伺っておりますので、それに対する一々の反論的意見を申す筋合いではないと思いますので、お聞きをしておく程度にとどめておきます。  最後に、共同石油長谷川会長さんに二問お尋ねいたします。  第一問は、九十日備蓄法律によって義務づけられれば、いやおうなしに、新たな備蓄基地を探して備蓄しなければ法律によって罰せられるということになります。ところが、先ほどもお話があったが、現状は、公害、それから安全上の問題が多くて、住民の反対が強力でなかなかコンセンサスを得られない。そこで、新たに九十日備蓄増強のための立地は困難と思われます。あなたの会社としてはどうされるつもりなのか、九十日備蓄に対応する備蓄基地の増強計画や立地のめどはついておるのかどうか、この点、まず第一問としてお聞きしたい。
  63. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 いまの時点で、はっきりめどがついておるということは、確言は申しかねます。けれども、やはり九十日ないしそれ以上の備蓄国民経済にとって必要であるという立場からどうしても探したい。そして、地域住民コンセンサスを得て、政府の援助を得て、備蓄が本当に必要であるということを説いて、備蓄基地をこしらえたい。二、三当たっております。
  64. 神崎敏雄

    神崎委員 第二問は、膨大な備蓄は過剰な在庫と経済的には同じなわけで、重大な市況圧迫要因となり、企業経営に大きな負担となり、正常な市場経済に重圧を与えることとなるおそれはないでしょうか。
  65. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 確かに、おっしゃるとおり重大なる圧迫材料でございます。けれども、御承知のとおり、国民経済といいますか、エネルギー源、生活物資源の根本をなす原料です。これがなかったら今日日本の経済活動は一切できないと断言してもいいようなものでありますし、ちょっと石油生産削減というような問題が起きますとあのような狂乱物価を来すので、できることなら政府でぜひひとつこれをやっていただきたい。  御承知のように、石油から直接、間接税として取っておられる税金というのは一兆三千億あります。それは石油に対してはほとんど使われておりません。その一兆三千億という毎年取られておる分は全部ほかの事業に出ております。そういう点を考慮して、そのうち何ぼかでも石油備蓄の方に回していただいて、ひとつ国民が安心しておれるような状態備蓄量を確保していただきたいと思います。
  66. 神崎敏雄

    神崎委員 いままでにお三方への質疑を通じて明らかになりましたが、今回の九十日備蓄は、ヨーロッパなどと違って、わが国の経済の特質から言っても大きな負担であります。また、備蓄を義務づけられる企業にとっても、先ほど申しましたように、安全、公害問題、コストの面その他で問題が多いということです。ましてや、これはIEAなどの緊急融通制度の前提となる国際的制約のもとでの備蓄であり、自主的でつり合いのとれた国民利益中心の経済の発展に反するものである、こういうふうに私は強調しておきたいと思います。     〔武藤一嘉一委員長代理退席、委員長着席〕  それぞれ、参考人のいま位置されている立場かちいろいろ御意見を伺いまして、今後のこの法案の審議にきわめて参考になりました。ありがとうございました。  終わります。
  67. 山村新治郎

    山村委員長 松尾信人君。
  68. 松尾信人

    ○松尾委員 最初に、長谷川さんと八城さんにお尋ねしますが、この備蓄に要する土地の問題であります。五百万坪要る、現在皆様の手持ちが百三十万坪ぐらいある、このような答弁を聞いておるわけでありますけれども、それはそれといたしまして、長谷川さんの会社で今後手持ちの土地の中で備蓄の設備ができるかどうか、そういう余力があるのかどうか。そして、八城さんの方も同じくそのお答えを願いたいのであります。
  69. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 余力は、五社全部あるわけではありません。そのうちの二社は、ある程度あると思います。共同石油関係の五社のうちの二社でございます。あとの三社は、ほとんどないと言っていいと思います。
  70. 八城政基

    八城参考人 お答えいたします。  私どもエッソ・スタン石油が関係のあります企業は四社ございますが、そのうちの二社は恐らく達成することができるだろうと思いますが、残りの二社についてはかなりの問題がございます。したがいまして、備蓄の九十日を達成することが法律で決められた場合には、グループの中の企業間の融通あるいは助け合いということが必要になるかと思います。そういう意味で、法律の運用についてはそういった融通性をひとつお認め願いたいというふうに考えております。
  71. 松尾信人

    ○松尾委員 一部分は自分の手持ちの土地でできるけれども、やはり相当の部分につきましては新たにこれを設定しなくちゃできない。いろいろお考えがありまして、この基地の問題等はそれぞれ会社としても真剣に考慮されております。特に共同石油におかれましてもいろいろプランがあったわけでありますけれども、地域の反対が中心になりまして実現ができない、こういう問題があなた方にもありますし、各社に共通的にあるだろうと思うのであります。それで、自分でやってみてどうもうまくいかなかったというようなことが現実にあったであろうと思うのでありますが、その一つの具体例を長谷川さんからおっしゃっていただいて、そして、であるならば、この備蓄のための土地の取得について皆様方のお力の限界があるだろう、それを突破するだけのものがなくちゃいけませんから、どのように政府とそれを話し合って進めていったらいいのか、その点、御両所はそれぞれどのようにお考えでありますか。
  72. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 現在、手をつけておるところは二カ所ございます。それは鹿児島県と長崎県でございます。しかし、目下進行中なので、これについてはエネ庁さんの方に協力方をお願いしながら、経過を報告し、いろいろお知恵を拝借しながらやっております。
  73. 八城政基

    八城参考人 私ども直接関係あります地域について一つございますけれども、この地域につきましては土地の取得について地元の理解を高めたいということで、この一年来何回かの会合を持っております。基本的には、やはり備蓄をするということは国民全体の利益につながるという観点に立ちますならば、最終的には理解していただけると思うのでありますけれども、やはり私的企業の限界がございまして、非常にむずかしい問題がたくさんございます。そういう意味において、政府が場合によりましては半官半民の備蓄会社をつくる、そして土地の取得については、政府に、国全体の立場から、そのための交渉あるいは地元住民の理解という点についての御努力をさらにしていただきたいというふうに私は存ずる次第であります。
  74. 松尾信人

    ○松尾委員 引き続きお尋ねするのは、共同備蓄会社のことになってまいります。  いまも半官半民というようなお答えがありましたが、今回政府がつくろうとするこの共同備蓄会社、これは公的な機関であると思っていらっしゃるか、それとも純然たる民間の機関と思っていらっしゃるか。そして、共同備蓄会社の設立構想がございますが、これは長谷川さんなり八城さんの方におきましては、それぞれそういうものを現在お考えになっておるのかどうか、この二点。現在考えられておる共同備蓄会社という性格の問題が一つ、そして御両所の共同備蓄会社に対する考え方、それをやっていきたいとか、必要だとか、いまそういうことを考えておるとか、この点についてお尋ねいたします。
  75. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 私は公的機関になるようにお願いしたいと思っております。そして、われわれは現実に町なり県なりに備蓄の基地をお願いしておりますが、それがもし許可になるとすれば、そういう公的な備蓄会社に全部提供して、そこで経営をしていただきたい、こういうぐあいに考えております。
  76. 八城政基

    八城参考人 お答えいたします。  たびたび申し上げますように、私の会社販売会社でございますので、備蓄問題については直接の関係はございません。ただし、資本関係がございます企業が幾つかございます。その意味において、間接的にはこの問題についても重要な関心を持っております。しかしながら、共同備蓄会社につきましては現在そういう案が出ておるという段階でございますので、具体的な問題として企業としての立場を決めておるわけではございません。  ただし、一般論といたしましては、備蓄を九十日にすることが法律で定められた場合には、私どもといたしましては幾つかの案があろうかと思います。一つは、みずからやること、もう一つは、関連企業のグループ内での調整をし、お互いに助け合う方法があるかどうか。場合によりましては、企業グループを超えて、他の企業でも、十分な備蓄能力を持っているところのそういったタンク能力を拝借するというような形もあろうかと思います。それらを全部勘案した上において、最終的な結論を出すことになろうかと思います。
  77. 松尾信人

    ○松尾委員 向坂さんにお尋ねいたしますが、何といたしましても、わが国におきましては総合エネルギー政策というものが速急に確立されていかなければなりません。いろいろの審議会の答申もあるわけでありますけれども、先ほどおっしゃった中で、国のエネルギー資源開発ということも当然必要であり、考えていかなくちゃいけない、割り高であってもこれはやっていかなくちゃいけないというような御発言でございました。まことに私もそのとおりであろうと思うのでありますが、国内エネルギー資源開発のときに、価格が非常に問題となってまいります。これを政策としてどのように考えていくかというわけでありますけれども、たとえば石炭に例をとりますと、国内炭は非常に割り高であります。輸入炭というものに比べても割り高でございますし、また油との関係におきましても、これは一時ややその格差が縮まりましたけれども、値段の高いということは免れがたい。でありますから、どうも言葉では国内炭の開発も必要だということでありますけれども、具体的に掘っても炭鉱は赤字だし、そしてその石炭というものがなかなか石炭企業において思ったような値段というもので売れないわけですよ、高いというわけですね。ですから、ある程度価格差の補給金も現在やっておりますけれども、こういうことでは日本国内エネルギー資源開発、特に石炭の開発というものは思いも寄らぬのではないかというような考えを持ちます。ですから、高い国内炭を政策的にどのようにしていくべきであろうか。そして、国内炭の二千万トン確保という、これは炭鉱企業にとっての大きな使命でございますが、それを確保して、これはより以上、少しでも増産に向かっていかなければできませんが、閉山をとめまして、そして少しでも増産していくという方向は、これは一にかかって炭価がどのように決められていくかということが大きな問題であろうと思うのであります。この点につきまして何かお考えがあれば伺っておきたい。そして、そういう示唆を受けまして、私は石炭対策特別委員会委員でもありますので、何としてもこの国内資源の開発、特に石炭の問題につきましては、何らかの施策をしなければいけないであろう、国が思い切った炭価の決定というものを新たな発想のもとにやっていかなければいかぬのではないか、こういうことから聞いておるわけでありますが、いかがでありましょう。ひとつこの点は十分あなたの御意見を聞いておきたいのであります。
  78. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のように、二千万トン以上の石炭生産を今後十年間確保するためには、炭価の問題が大きなかぎになると思います。現状は、国内炭は必ずしも輸入炭に比べて割り高であるとは言えないと思います。特に国内炭の品質の問題を考えますと、原料需要家としての鉄鋼業にとって、それほど大きな負担になっているというふうには私は考えません。それから、一般炭に関しましては、現在は石油火力に比べて石炭火力の方が幾らか割り安であるという状況であろうと思います。  石炭価格は、国内炭の生産コストは、今後賃金の上昇と一般物価の上昇によってだんだん上がっていくだろうということは当然予想されますし、したがって、もし石油価格が現在のバレル当たり十ドル四十六セント、ほぼ十ドル見当に将来とも安定したとしますと、何年か後には、国内価格が再び割り高になるという可能性は出てくると思います。また、そのときにどうするかも、政府ないし関連業界は考えておかなければならない問題であろうと思います。価格問題に関しては、現在もそうですけれども、今後も石炭鉱業審議会でいろいろ介入し、政府もその価格についてはあっせんを続けるべきだと思いますが、その場合に、石炭コストの上昇分を需要家の間で公平に負担するという原則をまず立てる必要があるのではないかと思います。ただ、鉄鋼業界の方は、原料炭の需要家としては、国内炭の占める比率が比較的小さいのと、それから品質的に国内炭の有用な役割りがございますから、石炭生産コストの上昇分を負担するのは比較的やりやすいわけですが、一般炭になりますと、電力料金制度があって、石炭価格が上昇した分をすぐ料金制度にははね返せないという問題がございますので、一般炭の今後の引き取り価格という問題については、電力料金にそれを織り込むというような制度をだんだん確立していく必要があるのではないかと思うのです。  石炭は、今後二千万トン以上生産を続けようという場合に、現在の石炭価格で余り海外炭に比べて割り高でない程度の将来の採掘可能量を計算いたしますと、それがほぼ十億トンの埋蔵量が考えられるわけで、それをもとにして二千万トンないしそれ以上掘っていこうということでございます。しかし、それにしても今後コスト増加ということがございます。それからさらに、石炭企業はこの何年来赤字を続けておりまして、企業体質としても大変弱化してくるので、依然として少なくとも従来程度政府助成を続ける。その上で、コストのカバーできない部分は需要家負担していくということを考える必要があると思います。将来において石炭価格が再び輸入炭よりも非常に割り高になるとか、あるいは一般炭について石油火力よりも非常に割り高になったという場合には、また改めて政府はこれに対して新たなどういう助成をするかということも問題になるかと思います。  いずれにしましても、石炭産業二千万トン維持のためには、政府助成を続けるということと、それから需要家が生産コストのアップの負担について理解ある協力をするということが、新しい石炭政策の前提条件であろうと思います。そして、結局電力料金を上げれば国民負担にもなりますから、それについての国民の理解を深めるという必要があるかと思います。
  79. 松尾信人

    ○松尾委員 終わります。
  80. 山村新治郎

    山村委員長 玉置一徳君。
  81. 玉置一徳

    ○玉置委員 時間がありませんので、簡潔に御質問申し上げますので、お答えをいただきたいと思います。  まず、長谷川参考人にお伺いいたしたいのですが、わが国備蓄を九十日分やらざるを得ない世界的な環境にありますし、わが国エネルギーとしてもそのようなことが必要であることはもとよりでございます。  そこで、あなたの御意見にもございましたが、六十日から九十日分に備蓄をふやす、このお互いの義務と申しますか、国民的課題をこなしていこうと思えば、先ほどもお話がございましたが、非常に多額の資本投下が要るわりに、企業そのものが非常に複雑な技術的な要素がなくて、ほとんど一律的なものになっておるような関係もありまして、利益の計上が非常にむずかしい問題である。利益の非常に乏しいこの産業の中で、それだけの設備、国も大幅な援助をするとはいいながら、果たしてこの多額な資金を充足する御自信があるかどうかということを、まず第一点お伺いしておきたいと思います。
  82. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 端的に申しまして、自信はありません。それは、こういう企業に対して金融機関もなかなか貸してくれぬのではないかと思います。けれども、石油日本経済のあらゆるものの根源をなす原料ですから、これに耐えてわれわれはどうしてもこれを確保し、そうしてこういう企業をやっていかなければならぬ運命を負わされておる、ほとんど国内では産しないのですから。だから、自信があるかないかと聞かれると、ないと言わざるを得ませんけれども、何とかしてこれはやり遂げなければ日本経済が成り立たぬのじゃないかという前提で努力したいと思います。
  83. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、さらにお伺いをしたいのですが、六十日分の備蓄当時の皆さんのお商売に必要な本当の備蓄はそのうちの何日分くらいだろうか、四十日なのか、五十日なのか、これをひとつきちっとじゃなくてもいいですから、おおよそお考えになることをお伺いしたいのですが。
  84. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 常識的から言えば、四十五日です。経営者の立場から言えば、それが三十日であった方がよりベターです。極端なときには、例の海運ストがあったときには、本当にわれわれは薄氷を踏む思いでしたけれども、七日しかありませんでした。それで、ちょうどストが終わったので助かりましたけれども……。
  85. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、私が言わんとすることは、向坂参考人さんにもこれはお伺いしたいと思うのですが、九十日分を備蓄するのは、日本の現状においては絶対的な命題である。しかも、企業だけに任そうと言ったって、先ほどのお話のように、地点を求めることも非常に困難ならば、金を集めることももっと困難である。政府が、金を借りるところを探してきてくれということに結論としてなるんじゃないだろうか、こういう感じがいたします。  そこで、私は、四十五日なら四十五日以上の分、まあ三十日でもよろしいですが、それは国民経済として必要なことでありますので、国民経済として国が備蓄公団その他をつくってそれに備えることの方がベターである、こういうように感じるのですが、長谷川参考人並びに向坂参考人から御意見をそれぞれお伺いしたいと思います。
  86. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 全く同意見であります。
  87. 向坂正男

    向坂参考人 どういう具体的な方策がいいかは、よく検討しておりませんので私にはよくわかりません。ただ、全国を一括して備蓄公団という方法でやった方がいいか、あるいは現在までにいろいろな会社が用地の獲得のために地元との話し合いその他をいろいろ進めておりますから、そのケース、ケースによって政府出資の共同備蓄会社というようなものをそれぞれの地域につくるという方法もあり得るかと思いますので、基本的には資金面や用地の獲得について政府のバックアップなしにはできないことは事実でありますが、それを実現する方式としては、必ずしも全国一本の公団の方が適当であるというふうには私には考えられません。
  88. 玉置一徳

    ○玉置委員 備蓄公団のやり方にもいろいろな、直接全部を引き受ける方法もあれば、資金その他を全部自分の責任においてあれすることによって各企業に場所その他、それを委託をしていただく形、委託料を幾らという形もあると思いますが、石油のようなものは、物すごい金が要りまして、そうして利益としては本当は、きょうもお話のように、私も調べております。そう上がるものじゃない。一時国民の皆さんが錯覚を起こしたのは、石油ショックのときにいろいろな問題がありまして、ごつうもうけておるような感じを持たしておる向きもありますけれども、そういう意味では、私は国が、これは民族のエネルギーの戦略として絶対必要なものは国が持つんだ、国がそれだけのものは持つが、そのかわりにやり方は民間の方々を悪く言えばうまく利用、よく言えば活用いたしまして、このことをやっていくことが一番スムーズに物をなし得るのじゃないかと思うがゆえにこう言うのであります。  そこで、そういう意味では、先ほども長谷川さんからお話がありましたが、値段を決めていただきたい、あからさまにいろいろなものを見せましょう、こういう意味です、と同じような意味で、電気やガスのような事業法のようなものをこしらえて、政府がある程度チェックできる、したがってそれだけの必要な資金は遠慮なしにそちらの方へ投入いたしましょうというような体制の方が、これから複雑多岐な海外の情勢にも生産国の情勢にもより応じ得るのじゃないだろうかという感じがするのですが、長谷川さんからひとつお答えをいただきたいと思います。
  89. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 やり方についてはいろいろ先ほど向坂参考人からもお話はありますし、また先生からもお話がありますとおりですが、そういうものを基本的には先生のおっしゃるように国家で把握して、われわれに下請させていただくということが、一番日本の現状に合っておるのじゃないかと私は考えております。
  90. 玉置一徳

    ○玉置委員 時間もありませんので、最後締めくくりまして長谷川向坂参考人さんにお伺いしておきたいのですが、これほど大事な日本の産業と生活の基盤でありますエネルギー、わけても石油、こういうものについての関心が、公害の関心だけはいや増しに進んでおりますけれども、その他の必要確保というような点につきましては、まだ石油ショックがさめやらぬと言いながらも、狂乱物価とカルテルというようなことだけが頭に残りまして、その必要さを痛感していないと思います。幸い、幸か不幸か日本だけじゃなしに、世界じゅうが総需要抑制のような非常な不況のどん底におりますからさしたる問題も起こりませんが、資源ナショナリズムで完全に中東等は掌握されておる今日、これが前のような景気、こんなものは通常来ないだろうと思いますけれども、それにしてもいまの不況のどん底を脱出しましたら、また必要確保のためには大騒ぎをせなければいかぬ。それについては、また値段はどんどん上げられる可能性がそのときには生ずるわけであります。こういうことを国民コンセンサスを得さすような何らかのPRあるいは施策を常時不断、しかもいまでないとそのことができないのじゃないだろうか、こう思いますのと、もう一つは、これは一に石油だけじゃございません、あらゆる産業がこの不況のどん底で構造改善をやり、将来に向かっての体制を立て直すことをいまやらないと、追っつかないような感じがするのであります。  そういう意味で、エネルギー政策の確立が一日も早く必要なんですが、国会の重要法案、会期末を控えましてどろんこになってやっておるのもこういうものとほど遠いというところに一抹のさびしさを感ずるのですが、これに対して御両人から御所見をいただきまして、私の質問は時間でありますので、終わりたいと思います。
  91. 向坂正男

    向坂参考人 お説ごもっともと私も考えます。  これまでは日本経済は伸びるだけ伸びて、それに必要なエネルギーは海外から石油を持ってくれば解決できたという状況でございますけれども、これからは私は総合エネルギー政策として、その中心の柱はエネルギー消費の節約計画を立てて、その具体化を推進していくということが第一。それから第二点は、将来日本が適切な経済成長、国民生活の向上を図るために必要だと思われるエネルギー消費量、これはもちろん節約をした後の必要量でございますが、その必要量を確保するために、こういうエネルギー種類の組み合わせでこういう量を確保したい、そういう目標をはっきり立てて、その中で政府がどういう役割りを果たすか、あるいはいろいろな産業体制をどういうふうに持っていったらいいかということを考えていくことが、これからのエネルギー政策として大事な点であって、いわば将来の需給合わせというような仕事から、節約計画と供給目標の達成ということを政府エネルギー政策の中心の柱に据えて具体化を図っていくべきではないかというように考えます。
  92. 長谷川隆太郎

    長谷川参考人 いま向坂参考人がおっしゃったようなことにさらに私つけ加えたいのは、日本石油を一トンも産しないと言ってもいいくらいな状態のときに、あらゆる産業、企業、生活の根源をなす原料石油であるので、この資源外交を、本当に日本のためを思うのなら、強烈に展開していただきたい。そうして、私は先ほど六カ月の石油を持っていただきたいと言ったんですけれども、なるほど六カ月分の備蓄というものは、日本に六カ月分の油田をつくることと同じでありまして、これは非常に小さい量なのかもしらぬけれども、そこに本当に資源外交を展開すれば、その油田は世界の油田につながると思います。中国の油田にも近いし、インドネシアもありますし、さらに先ほど申しましたソ連もありますし、中東もありますから、この資源外交の展開ということは非常に大切であるんじゃないかと思います。それで、フランスあたりは大統領みずから飛んで行って石油確保努力してやっておるというような状態ですから、日本でもむしろエネルギー庁という通産省内の外庁ではなしに、石油省、資源省というものをこさえていただいて、有力な大臣をこさえて、極力資源外交を展開していただきたいと私は思います。
  93. 玉置一徳

    ○玉置委員 私もそう思います。それを申し上げて終わります。
  94. 山村新治郎

    山村委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後三時五分開議
  95. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより政府に対する質疑を行います。質議の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  96. 板川正吾

    ○板川委員 政府提案の石油備蓄法案について質問をいたします。  この石油備蓄法の目的はどういうことにありますか、これからまず承っていきたいと思います。
  97. 増田実

    ○増田政府委員 石油備蓄法の目的についてお答え申し上げます。  一昨年の秋に石油危機が起こりまして、その影響は、国民経済あるいは国民生活に対しましてはかり知れない影響を与えたわけでございますが、こういうように万一今後も石油供給が削減されましたりあるいは停止されるという場合に備えまして、一定の備蓄を備えてただいま申し上げましたような国民経済における混乱を防ぎたい、こういうことでございます。  このために、今回御審議をいただいております石油備蓄法は、石油備蓄を計画的に行う、また備蓄されました石油を保持するということの義務づけを行う、こういうことで、石油備蓄につきましてこれを計画的に行いますとともに、また、その実効あらしめるための法案でございます。  これ以外に、予算措置その他ございまして、石油開発公団を通じます備蓄のための財政金融援助資金というものは、石油開発公団法によりまして先般御審議をいただきまして本院で可決された内容でございますが、ただいま申し上げましたように、備蓄法の方は計画的に備蓄を推進する、こういう目的のためにできておる法律でございます。
  98. 板川正吾

    ○板川委員 備蓄をする目的は、いわば非常の場合に備えてある程度の予備を保有しておることによって、非常の場合はそれによって供給の閉ざされた場合の打撃をできるだけ少なくしよう、こういうことにあるのだろうと実は思っておったのですが、この目的の第一条を読みますと、非常の事態が生じた場合という意味のことは書いてない。そして、「石油の安定的な供給確保」することだというようなことが強調されておる。備蓄を九十日ためてもこれは石油の安定的な供給ではない。非常の場合の準備ということならわかるのですが、「石油の安定的な供給確保」するという文句の方にウエートがあるこの備蓄の目的というのは、今の説明と若干違う感じがするものですから、その点で承っておきたいのです。もう一度答弁してください。
  99. 増田実

    ○増田政府委員 石油備蓄法案の第一条におきまして、「我が国への石油供給が不足する事態が生じた場合において」と規定されておりますが、これが先ほどお答え申し上げました石油供給につきまして削減されたり、またいろいろな事由によって日本におきます石油の到着が不足する、こういう非常の事態というものをここに規定したのでございます。それからその後、「石油の安定的な供給確保し、」ということを書いてございますのは、この不足する事態が生じました場合に備えて、それにもかかわらず備蓄を放出することによりまして石油の安定的な供給を行う、こういう趣旨でございます。つきましては、やはり石油備蓄法はただいま板川先生がおっしゃられましたように、万一の場合に備えて石油備蓄し、そうしてその万一の事態が生じましても安定的な供給を行えるようにいたす、これが目的になっております。
  100. 板川正吾

    ○板川委員 こだわるわけではないのですが、非常の事態が生じた場合に、その衝撃をできるだけ吸収をして対策を打つ、そういう用意のためにあらかじめ一定量を備蓄しておこう、石油の安定的な供給という、長期的な、安定的な供給を図るというなら、とても九十日分くらいでは賄えるものじゃないので、そういう点でこの一条の目的にはやや説明の趣旨と違った規定があるのじゃないかという感じがしたわけですが、この点でそうこだわることはありませんが、そういうふうに読み取られる感じがいたします。  この第三条で、国の施策として、国は備蓄必要性について国民の理解を深めるように努力する、こういうことが規定をされておりますが、一体国民の理解を深めるために国は何を努力するのですか、どういうことをやろうとするのですか。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
  101. 増田実

    ○増田政府委員 法案第三条に「石油備蓄確保必要性について国民の理解を深めるよう努めなければならない。」という規定がございます。これにつきまして具体的には石油備蓄の重要性につきまして国民の理解を得るように努める、こういうことでございます。  先ほど申し上げましたように、石油供給が不足いたしますときには、これは国民経済上にも非常に大きな影響を与えますし、ひいては国民生活に非常な混乱を及ぼすおそれがあるわけでございます。そういう意味で、石油というものがいかに大切な産業の基礎であり、また石油備蓄がそういう中にありましてどうしても必要だということにつきまして、やはり国民一人一人の理解、協力を求めたい、こういうことでございます。そういう意味で、私どもとしては石油備蓄の重要性を広く国民に理解を求めることに努めていきたい、こういうふうに思っております。
  102. 板川正吾

    ○板川委員 日本エネルギーの大半を石油に仰いでおりますし、その石油の九九・七%は輸入をしておることだし、それが途絶するようなことになれば、日本の経済、産業にとって重大である、こういう意味国民の理解というのは今日すでに成立をしておると私は思うのですね。  そこで、備蓄をする場合に国民の理解を求めるには、私は安全の問題、水島事故のようなことのない安全あるいは環境の保全、こういうことが国民の理解を受けなければ、いかに石油備蓄は大切だと言っても、それはわかっていても国民の理解というのは深められないのじゃないだろうか、安全と環境保全というものについて国がどうするかということを明白にしない限りは、国民は幾ら必要だということがわかっていても理解を深めるという気持ちにはならない、こう思いますが、いかがですか。
  103. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生の御質問にありましたように、石油備蓄確保するということを行いますためには、安全、環境対策というものについて万全の措置をいたすということが必要でございますし、またそれにつきまして国民一人一人がこの備蓄に関します安全性について信頼するということでなければ、この備蓄計画は、先生のおっしゃられるとおり、遂行できないと私どもも思っております。  こういうことで、今回石油備蓄法案を御審議いただいておりますが、この保安、環境保全の問題につきましては、別途コンビナート等災害防止法案が現在参議院の方で審議をされておるわけでございますが、この法案によりまして保安対策の強化が図られる予定になっております。この法案によりまして、さらに消防法につきましてもその強化改善が行われるという規定が入っております。そういうことで、今回の備蓄の問題につきましては、石油コンビナート等災害防止法案並びにこの中に含まれております消防法の改定というものがこの保安対策というものについての措置というふうになっております。  それから、それ以外に予算面におきましては、石油備蓄施設安全対策調査費等の補助金を今回の備蓄政策の中に取り込んでおりまして、これによりまして都道府県その他が安全対策を行う、こういうことになっております。
  104. 板川正吾

    ○板川委員 石油コンビナート法が成立をすれば、それによって安全対策が一歩進む、あるいは消防法が同時に附則によって改定をされるから、消防法の規定を強化することによって安全が確保される、こういうお話でありますが、私はその点についてははなはだ不満な結論を持っているわけです。  じゃ、その前にひとつ次の質問をいたしますが、ことしから五年間で備蓄日数を六十日から九十日にまで引き上げるというこの計画が実施されれば、三千万キロリットルを貯蔵するということになりますが、そのためにタンクはどのくらい増設をされる予定でありますか、そのタンクの設置される数、所要の用地の坪数、どの程度であるか、とりあえず伺います。
  105. 増田実

    ○増田政府委員 九十日備蓄数量を今後五年間で達成いたしますための所要タンクの数が幾らかということでございますが、これにつきましては一応昭和五十四年度の需要を想定いたしまして、それを基準にいたしましてはじきました数字で、九十日を達成いたしますためには、今後三千万キロリットルの積み増しが要るわけでございます。そのために要するタンクでございますが、十万キロリットル入りのタンクを三百七十五基建設する必要があります。  それから、それに要する土地でございますが、ただいま申し上げました十万キロリットルタンクを一基建設いたしますのに必要な土地面積は、大体一万三千坪という計算になっております。それによりまして、三百七十五基を建設いたしますのに必要な面積は四百九十万坪、平米で言いますと千六百万平方メートル、こういう土地が要るという計算になります。
  106. 板川正吾

    ○板川委員 三千万キロリットルを備蓄するためには、十万トンタンクを三百七十五基、そして所要の用地が約五百万坪というふうに伺っておりますが、この五百万坪の土地確保する計画というのはどういうふうに予定されておりますか。
  107. 増田実

    ○増田政府委員 今後のタンク用地として約五百万坪要るということで申し上げましたが、この土地につきましては、石油企業がすでにタンク用地として土地を取得しております面積が、現在約百五十万ないし百七十万坪ございます。これは今後、計画の変更その他も起こり得ると思いますが、一応タンク用として取得しております土地が、百五十万ないし百七十万坪ございます。つきましては、全部の、先ほど五百万坪と申しましたが、これは四百九十万坪で計算しておりますが、その差三百二十万ないし三百四十万坪が追加取得を必要とする土地になるわけでございます。  これの取得につきまして、現在大ざっぱに私どもの方で考えておりますのは、個別石油企業が取得するものとして大体二百万ないし二百二十万坪、そういたしますと、残り百二十万坪でございますが、これにつきましては、共同備蓄会社ということで複数の石油会社が共同して取得し、そこに共同備蓄の施設を設ける、こういうことで考えております。  ただ、この両方の割り振りにつきましては、石油企業分というものが二百万ないし二百二十万坪と一応想定をしておりますが、これがそれだけ獲得できない場合には、共同備蓄会社分がその分だけふえる、こういう計算になっておりますが、大ざっぱに言って、大体いま申し上げたようなことを考えております。
  108. 板川正吾

    ○板川委員 そうしますと、既設のコンビナートに設置をされる、増設をされるものと、新しく地域を求めて新設をされるもの、これはいずれもコンビナート内ですが、それから石油備蓄だけの基地とするもの、こういうふうにこの五百万坪を割り振ってみてもらうとどういうことになりますか。
  109. 増田実

    ○増田政府委員 総体で約四百九十万坪でございますが、そのうち先ほど申し上げました既取得土地でございますが、この百五十万ないし百七十万坪ということで先ほどお答え申し上げました分につきましては、大体製油所近辺あるいは製油所に隣接してタンクが設けられるわけでございます。ですから、先生のお尋ねの新しい基地、新しい土地というものの対象になるのは、いまの分を引きました三百二十万ないし三百四十万坪でございますが、そのうち一部は、やはり隣接土地の拡張によってタンクが据えられるものも出てくると思います。ただ、先ほど御答弁申し上げました共同備蓄会社の百二十万坪分、これは完全ないわゆる石油基地ということで考えております。  それから、個別石油企業分として二百ないし二百二十万坪と申しました分には、一部は完全な石油基地もありますし、一部は先ほど申し上げましたように土地の拡張でそこに建設するというものもあります。  そういう意味で、共同備蓄会社の百二十万坪については、これは全く新設の石油基地、こういうふうに考えております。
  110. 板川正吾

    ○板川委員 この新設の石油基地、それから新しいコンビナートをつくると予定されておるところ、大体どういう地域ですか。たとえば、恐らく海辺僻地だろう、まさか山間僻地まで備蓄基地を設けることはないだろう、海辺の地域だろうと私は思うのですが、大体どういう地域に新しい基地が設けられるのですか。
  111. 増田実

    ○増田政府委員 新しい基地の建設場所でございますが、現在御存じのように日本石油が喜入に基地を持っておりますが、大体ああいう形で相当都市から遠いところで海岸に建設する、こういうことで考えておるわけでございます。
  112. 板川正吾

    ○板川委員 わかりました。いずれにしても、海辺僻地というところをねらわざるを得ないだろう、こう思います。それはまた後で伺います。  この備蓄目標が計画どおり実施された場合に、製品コストに三百円ないし四百円ぐらい影響するだろう、こう言われておりますが、この製品コストに及ぼす影響をもう少し具体的にひとつ説明しておいてください、将来実施をする場合のこともありますから。どういう計算で三百三十円見当なり四百円見当というのが出たのか、その推算の基礎を明らかにしていただきたいと思う。
  113. 増田実

    ○増田政府委員 今後五年間に九十日備蓄まで持っていきますに当たりまして、その備蓄に要します費用、これがキロリットル当たり三百円ないし四百円、コストとして増加要素になるということにつきまして、一応計算の根拠を申し上げます。  私どもの方の計算でございますが、この五年間の備蓄のための所要資金、これはよく申しておりますように一兆二千八百億円要するわけでございます。それに対しまして、いわゆる備蓄コストというものを別途計算いたしておりますが、これは負担します金利、それから施設の償却費、それからタンク基地の運営経費、その他の費用というものを計算しております。これがいわゆる備蓄コストに当たるわけでございますが、その合計が四千四百六十七億円の計算になっております。これを五十年から五十四年の内需総量で計算割り振りをいたしますと、私どもの計算ではキロリットル当たり三百三十二円という計算になっております。ただ、この三百三十二円につきましても、その一部は国が財政援助、それから金融についての措置その他によりまして助成を受けるわけでございますから、普通の金利であれば一〇%のところを、原油につきましては四%の利子補給を受ける、これらの金額が大体二割ぐらいに計算されます。それを引きますと、先ほど申し上げました三百二十二円に対して、二割引きぐらいになるということで、二百七十円ぐらいという計算になっております。
  114. 板川正吾

    ○板川委員 こういうことですか。三千万キロリットルを貯油するために、もちろん五年間で一兆二千八百億円ほどの所要資金が要ります。そして、そういう施設をつくるために金利や償却費や運営費がかかります。それが四千四百六十七億円ぐらいかかります。政府のいろいろの助成があるから、それが四千百四十七億円ぐらいになる。そして、その五年間の平均した総需要量という内需が十三億四千六百万キロリットル、これがこの五年間に使われるだろう。その五年間の総需要量で割ると、助成がない場合に一キロリットル当たり三百三十二円かかる。そして、助成があった場合には二百七十円見当である、こういうふうに言っておることですね、いまのことは。
  115. 増田実

    ○増田政府委員 私どもで計算いたしました三百三十二円、それから助成後の二百七十円の計算基礎は、ただいま先生からおっしゃいましたとおりでございます。
  116. 板川正吾

    ○板川委員 先へ進みますが、消防庁おりますか。——消防庁に伺いますが、水島の例の三菱石油の二百七十号タンクの破裂事故の原因、これはもうその後解明をされましたか。それから、いままでに判明しておる損害の額といいますか、どのくらいに見ておられますか、その点を消防庁から伺っておきます。
  117. 森岡敞

    ○森岡政府委員 三菱石油の水島製油所の重油流出事故につきましては、本年に入りまして、御承知のように、事故原因調査委員会を設け、鋭意その原因究明を行ってまいりました。  しばしば御説明してまいりましたように、最終的な原因の明確な追求をいたしますためには、破断部分を含めました底板あるいはアニュラプレート、側板、そういうものを全部切り出しまして、それぞれの組成状況とかそういうものを全部調べませんと、破断の始まった個所及びそれがどういうふうに推移していったかということが、徹底的に調査できません。そのようなことから、現段階でほぼその切り出しまで完了いたしましたけれども、なおその調査なり実験に若干の時間を要します。そのようなことから、私どもといたしましては、ぜひ今後の保安安全対策の確保を図りますために、中間報告を出していただきたいということで、いろいろな問題点を、流動的でありますけれども、できるだけしぼっていただきまして、三月三十一日に中間報告を出していただきました。すでにごらんいただいておると思います。基礎の問題、構造の問題あるいは防油提を含めましたその他のいろいろな問題につきまして御指摘をいただきました。最終的な実験結果に基づく報告は、やはり八月ないし九月ということにならざるを得ないか、かように考えます。  なお、損害額につきましては、私ども完全に掌握しておりませんけれども、漁業補償等で約二百億、それからその他の清掃あるいは事後措置で百億程度というふうに、当該会社から聞いて承知いたしております。それからなお、そのほか、会社自体の業務停止によります損失、これは別途あるわけでございますが、そのような状況承知いたしております。
  118. 板川正吾

    ○板川委員 ちょっとこれは通産大臣に伺いますが、この水島の三菱石油の操業を何か近々開始するやに新聞報道がありましたが、これは開始についてはいわばどこがオーケーをするんですか。消防庁ですか、それとも通産省ですか。
  119. 森岡敞

    ○森岡政府委員 現在、使用停止を命じておりますのは、倉敷消防長の消防法に基づく権限によりまして、使用停止を命じております。御指摘のように、先月の下旬に倉敷市に対しまして三菱石油の方から、操業再開についての申請が出ました。倉敷市といたしましては、今後あのような事故を再び生じさせないため、いろいろな防災協定でありますとか防災計画でありますとか、そういうふうなものをぜひ適確に定めたいということで、種々当該会社と折衝いたしたわけであります。また、岡山県も大変この問題につきましては重大な関心を持っております。先般、岡山県から政府に対しまして、取り扱いについての指示を求めてまいりました。私どもといたしましては、政府部内でいろいろ御相談をした上で、その回答を出したいと考えておりますが、まだ結論を得ておりません。しかし、使用停止解除の権限は、消防法に基づきまして倉敷消防長に権限がある、こういうことでございます。
  120. 板川正吾

    ○板川委員 この三菱石油の工場再開ということは結局、地元の倉敷消防署、ここが法律的には認可するかしないかの権限を持っている、こういうことですか。
  121. 森岡敞

    ○森岡政府委員 正確に申しますと、倉敷市長でございます。それで、消防長は、実質的にその内容の審査その他の職務をいたす、かようなことでございます。
  122. 板川正吾

    ○板川委員 わかりました。  そこで伺いますが、この水島のタンクの破裂事故の行政責任というのは一体どこが負うのですか。企業は何百億かの損害を受けた、これは企業は、企業の責任を社会的に負うわけですが、行政的責任はどこが負うのでしょうか。
  123. 森岡敞

    ○森岡政府委員 消防法及び地方自治法によりまして、御承知のように、危険物に関する規制事務は地方公共団体に対する機関委任事務ということになっております。申し上げるまでもないことでございますが、地方公共団体の場合、いわゆる固有事務と機関委任事務がございます。その機関委任事務を倉敷市に委任いたしておるわけでございますので、やはり行政的な権限なり責任は第一次的には倉敷市に属する、かように考えます。しかしながら、政府といたしましては、機関委任をしておるわけでございますので、その機関委任事務が適切に処理されますような指揮監督権を、地方自治法上百五十条において設けておるわけでございます。その指揮監督の権限は消防庁に属しておる、かように考えております。
  124. 板川正吾

    ○板川委員 この消防組織法の第六条によりますと、市町村の消防責任として、「市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果すべき責任を有する。」こういう規定があります。第七条では、市町村消防の管理として、「市町村の消防は、条例に従い、市町村長がこれを管理する。」ですから、最終的には消防の責任というのは市町村長にある。それから、第十九条に、市町村消防の自主性ということで、「市町村の消防は、消防庁長官又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することはない。」こういうことで、市町村の消防責任者、首長は、消防庁長官あるいは都道府県知事、こういう者の干渉によらないで自主的に消防を行う、こういう規定になっておることは御承知と思いますが、これは間違いありませんね。
  125. 森岡敞

    ○森岡政府委員 消防組織法六条、七条及び十九条の規定は御指摘のとおりでございます。ただ、補足して申し上げたいと思いますが、この規定の意味しておりますところは、先ほど申しました市町村の固有事務としての消防業務についての規定だというふうに解されております。
  126. 板川正吾

    ○板川委員 先ほどエネルギー庁長官も言いましたように、コンビナート防災法が衆議院を通過して成立をしようという過程にあるわけでありますが、先ほど言いましたような石油備蓄基地、これは精製なりを含んでいないのですが、この石油備蓄基地の安全性についての責任はどなたが負うことになりますか。
  127. 森岡敞

    ○森岡政府委員 石油備蓄地区に貯蔵されます石油等はまさしく消防法上で定めております危険物でございますから、先ほど来申し上げておりますように、危険物行政は国の事務でございますが市町村長に機関委任いたしておりますので、第一次的には市町村長が権限を持ち、責任を持つ、かように考えております。政府といたしましては、それに対して業務なり、あるいは規制事務の適切な運用を指導監督してまいる、かように考えております。
  128. 板川正吾

    ○板川委員 政府は間接的にはその責任あり、こういうことになっておりますが、実務的には市町村長が消防の責任を負うたてまえから、その安全性については市町村長が責任を負う、こういうことになっておるわけですね。十万トンの石油タンクが、それも一地区に何十というふうに置かれるというような場合、高度の安全の技術とかあるいは力学上の問題とか工学上の問題というものを市町村長に責任を一切負わせて監督してもらうという形で、果たして安全というのが守れるでしょうか。この点を御答弁願います。
  129. 森岡敞

    ○森岡政府委員 備蓄施設の増強を図ってまいります際に安全を確保しなければならない、これはもう当然のことでございますが、その際にその安全を確保いたしますためには、政府といたしまして位置なり構造なり設備につきましての各般の技術基準を的確に示してまいらなければならぬと思います。水島事故以来私どもしばしばおしかりをこうむっているわけでございますけれども、その技術基準について申しますれば、たとえばタンクの基礎工事についての十分なる基準あるいはタンクの構造についての十分なる基準、防油提についての基準、そういうものについてさらに私どもは思い切った強化をいたしまして、その基準に合致したような建設が進められなければならないと考えております。これはやはり政府の責任としてぜひやらなければならないと思います。また、市町村におきましては、その基準に従いまして各種の施設の検査を的確に行っていくということが必要だと思います。同時にまた、都道府県は、機関委任事務についての指揮監督権があるわけでございますので、都道府県の担当部局におきましても、これに対して適切な指導監督を行ってまいらなければならない、政府なり県市町村が一体となりまして安全を確保する対策を講じていかなければならぬと思います。問題は、市町村の場合に、大都市のような能力なり職員の質が大変高いところは別といたしまして、町村部に参りますとなかなか十分な人が得られないではないか、技術者につきましてもそういう点が非常に問題があるわけでございます。私どもといたしましては、やはりこの際、市町村の技術職員の充足とそのレベルアップをまず第一にぜひ考えたい。第二に、その教育訓練を的確にやっていきたい。第三に、またそれだけではどうしてもできないという地域も当然予想されますので、政府といたしまして、たとえば技術援助のための学識経験者によるチームと申しますか、そういう指導チームを編成いたしまして、的確に市町村が事務を遂行していけますように十分な援助なり指導を与えてまいりたい。そういうことによって安全対策の確保を図ってまいりたい、かように考えているわけでございます。
  130. 板川正吾

    ○板川委員 市町村長が責任を負う、そのために消防庁としては教育をしたりあるいは技術水準のレベルアップを考えたり学識経験者の知恵を借りる、こういう意味のことをおっしゃっておるようであります。国が何かすると言っておるのですが、国がするというのはどこがやるのですか。国がそういう指導なりを行うというのは、国のどこがやるのですか。自治大臣ですか、消防庁ですか。
  131. 森岡敞

    ○森岡政府委員 消防法に基づきます危険物の規制でありますので、消防庁において行います。
  132. 板川正吾

    ○板川委員 消防庁がやる。消防法を読みますと、消防法の第一条では、「この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害に困る被害を軽減し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。」という目的がありますが、後の条章を見ていきますと、火災の予防、危険物、消防の設備、消防用機械器具の検定あるいは火災の警戒、消火の活動、火災の調査、救急業務、こういうような条章に消防法はなっておりますね。具体的に消防庁というのは一体どういう役割りをやりますか、その場合に。たとえば、この前も私は取り上げましたけれども、あの水島事故の前に、昭和四十三年七月八日に千葉県の市原市にある極東石油では水張り試験ですでに事故を起こしておる、続いて二年後の昭和四十五年四月八日には山口県の小野田市において西部石油がやはりタンクに水張り試験をやった結果、これが事故を起こしておる。そういう現地の市町村の消防が担当しておる地域で事故があっても、消防庁にはそういう事故が報告もされてなかった、こうあなたはこの前言われておる。私に言われて、あるはずだと言って、ようやく資料を捜して持ってきたわけですが、そういうような地元の消防責任者に対して一体消防庁というのはどういう指揮監督権といいますか、そういうものがあるんですか。
  133. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御指摘の消防法の第一条の目的規定でございますが、これは申し上げるまでもなく火災予防、警戒、鎮圧その他およそ災害から国民の生命なり財産を守るという消防の包括的な任務を規定しておるわけでございます。第三章で先ほど御指摘のありました危険物に関する章がございますが、ここの章のところでは先ほど来御説明申しておりますように市町村長の機関委任事務という形で危険物の規定をずっと設けておるわけでございますが、たとえばその第十条の第三項なり第四項におきまして、危険物の取り扱いないし貯蔵に関する基準を政令で定める、あるいはまた製造所、貯蔵所及び取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準を定めるというふうな仕事、任務が私どもは消防庁の基本的な任務だと考えます。別途、指揮監督につきましての一般的な規定は、先ほど来申し上げました地方自治法の百五十条に基づきましてあるわけでございます。  極東石油なり西部石油の問題につきましては、これまたたびたびおしかりをいただいておるわけでございますが、私どもといたしましては、当時水張り試験中の事故でございましたので、その後それを補正して適切な安全なタンクができたということで理解をしておったということでございまして、いまから率直に申しますと、その時点において現在私どもがやっておりますような徹底的な調査なり勉強をいたしまして、市町村の指導にさらに早く着手すべきであったということを反省いたしておるわけでございます。
  134. 板川正吾

    ○板川委員 基準は定めるんですよ。しかし、その基準がどういうように現地において運用されておるのか、そういうことになると機関委任事務だからといって市町村長に一切を任せてしまう、こういうところから現在のコンビナートや石油タンクなどの安全性というものに、実質的には、国が責任を負うと言いながら、それは市町村長に任せるということになって余り身を入れてない、ここに私は国民の不安というのがあると思うのです。私は今度の石油コンビナート防災法というあの法律の内容は、独禁法の最中だったものですから質問できなかったのですが、あのままで通ることは実は私は反対であったわけなんでありますが、しかし一応全会一致で通ったということもありますからいたし方ありませんが、通産大臣に伺うんです。  いずれにしましても、この石油タンク、しかも大型のタンク安全性というものに対しては、いまの消防法による管理監督という態度では十分じゃないと思います。しかし、この法律で、通産大臣、第五条にこういうことが書いてありますね。(石油備蓄実施計画)というところに、石油精製業者は、通産省令の定めるところにより、「次年度以降の四年間についての石油備蓄に関する計画を作成し、これを通商産業大臣に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。」そして三項で、通産大臣は、「石油備蓄目標を達成するため特に必要があると認めるときは、当該石油精製業者等に対し、その石油備蓄実施計画を変更すべきことを勧告することができる。」こういうふうに第五条であります。わかりますか、通産大臣。今後はこの石油備蓄を実行しょう、新たに三千万キロリットル、三百七十五基の十万トンタンクをつくろう、こういう業者は通産大臣に四年前から届け出をすることになります。第五条です。この届け出をすることになりますが、ここで第五条の二項に、「石油備蓄計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」と言って、「一 備蓄の数量」「二 新たに設置しようとする石油貯蔵施設に関する事項」ということがありますが、この一の「備蓄の数量」は、タンクの数量、容量全体だろうと思いますが、「石油貯蔵施設に関する事項」というのは、どういうことを石油備蓄計画書に記載するのでありますか、この点を御説明を願いたい。
  135. 増田実

    ○増田政府委員 第五条第二項の記載する事項でございますが、いま先生のお尋ねの「新たに設置しようとする石油貯蔵施設に関する事項」ということについて、具体的にどういうことを記載するかということにつきましては、これは石油タンクの能力と申しますか、これは貯油率の問題がございますので、備蓄する数量をまず第二項の一号で記載いたしまして、それを入れるために必要といたしますタンク、これは貯油率がたとえば八割ですと、八で割り直しまして、タンクの能力がここへ出てくるということでございます。ですから、ちょっと不明確な御答弁を申し上げましたが、ここに書かれますのはタンクの貯油能力をキロリットルで出す、こういうことになります。
  136. 板川正吾

    ○板川委員 それじゃ、新たに石油貯蔵施設をつくるときには、普通いかなる手順で行われるのか、これを通産省で説明してください。その場合、消防法が介入する時期はどの段階か。新たな基地をつくる、その基地をつくる場合、どういう手順で通常行われているか、そして消防法がどの段階で介入してくるのか、それを明らかにしてください。
  137. 増田実

    ○増田政府委員 新しい石油基地を建設いたします手順でございますが、一応場所を決めまして、決めるに当たりましては、これはいろいろ地域との間の交渉、了解その他が要るわけですが、土地が決まりましたらその土地を取得しまして、そしてその土地の造成を行う。それから、いろいろな地質の調査その他も必要だと思いますが、そういうことをいたしまして、その上でいよいよタンクを建設するというときに、そのタンクを建設します前に、消防署の方にタンクの建設許可を申請する、こういう手順になるわけでございます。
  138. 板川正吾

    ○板川委員 こういうことになるのですか。土地の取得をまず第一にします。もちろん公害や環境の問題は解決されたものとして、土地の取得を行う。もちろん取得する前には、大体その地域が適当であるか下調べをして白羽の矢を立てて、そこの土地を買収するということになるでしょう。そして二番目には、土地の造成をする。三番目には、地盤の精密な調査をして、そこに十万トンなら十万トンのタンクが乗っても大丈夫だという精密調査をする。そして、その上に立って、今度は地盤補強の工事をする。そういう後に基地全体のタンクの配置計画、もちろんタンクの容量とか構造とか、そういうものを含めて計画を決定する。計画を決定した上で、今度は消防署に、市町村長にタンクの設置の許可申請をする。許可申請をするときには、地盤の精密調査の資料とか、地盤補強工事の仕様書とか、基地全体の配置決定、タンクの容量、構造、こういうものを申請書につけて出すということになる。そうしますと、消防法によって市町村長が介入する場合は、許可申請があってからですね。それ以前は消防法は介入しないわけですね。この点はどうですか。
  139. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生のおっしゃられましたとおり、いよいよタンクを建設しようとするときに消防署に設置の許可の申請をするわけでございますから、その前にはこれは消防署の許可権限その他は発動されないわけでございます。ただ、これはあるいは消防庁の方で御答弁されることだと思いますが、消防法に基づきましてタンクの設置基準、これは今後強化されるわけでございますが、どういう配置あるいはどういう防油提を設けるかということが規定されて基準があるわけでございますから、そういう意味で、この土地の造成をしましたり、先ほど先生のおっしゃられた地盤の強化その他をいたすときには、やはり消防法に基づく基準というものを頭に置きながら、申請すれば必ず許可を得られるという準備をする、こういうことになるのではないかと思います。
  140. 板川正吾

    ○板川委員 消防庁に伺いますが、そういう段階を経て許可申請が消防署に出された場合に、市町村長に出された場合に、市町村長はどういう手順を踏んで結論を出されますか。たとえば実地調査はしない、いずれも書面審査をする、こういうことのようでありますが、一体市町村では、こういう申請を出された場合にはどういう扱いをするのですか、そのむずかしい構造上の問題や技術上の問題は。それは基準は消防法で定めてある。しかし、消防法で定めてあるものが、このタンク安全性が完全に大丈夫だなんということは、市町村長では判断はできないと思いますが、この場合どうされるのですか。
  141. 森岡敞

    ○森岡政府委員 市町村にタンク等の設置許可申請がありました場合の手順でございますが、もちろん実地調査もいたしますし、また事業計画あるいは工事計画についての書面審査もいたすわけでございます。その場合の基準は、先ほど来申しております法律及び政省令で定められております技術基準、さらにはまた通達によって指導しております基準に即して判断をするわけでございます。  ただ、ここで申し上げたいことは、市町村の場合に大変能力に格差があることは否めません。何度も繰り返して申すようでございますが、指定市のような大変専門の技術職員を備えたところと、それから町村部の場合には格差があることは否めないわけでございます。したがいまして、そういうふうな場合に、やはり私どもといたしましては、今後、的確なかつ綿密な審査ができますような手だてを考えていかなければならない、それが先ほど来申し上げたことでございます。  さらにもう一つの問題といたしまして、行政ベースでやりますことにはやはり限界があるかもしれないという感じもいたしております。先ほど触れました事故原因調査委員会の中間報告におきましては、技術的な専門の方々をプールした、検査のための、あるいは審査のための第三者機関的なものを設置して、そこが技術的な審査なり検査を完全に行って、それでもっていわば規制業務の徹底を期するということも考えるべきだという御指摘もいただいておりますので、そういう点も含めまして設置許可あるいは完成検査の際の適切な運用を期したい、かように考えておるわけでございます。
  142. 板川正吾

    ○板川委員 先ほども説明があったように、これからタンクを増設する地域というのは、政令都市とかなんとかという都市じゃないでしょう。だから、さっき聞いたわけですが、いわば海辺僻地というような村か町ぐらいのところへつくろうというのが今後の計画じゃないですか。その場合に、小さい町や村の建設課長か何か知りませんが、そういう程度の知識では、この新しい科学的な、技術的な、工学的な高度の判断を必要とする安全性の問題は判断できないでしょう。実地に行ってみたって、どろの上にタンクがあるだけであって、その地下までどうこうということを調べる能力なんというものもないんじゃないですか。いまのお話ですと、第三者の学識経験者による機関をつくって、そこで見てもらうということを考えているというのですが、考えているだけですか、本当にやる気があるのですか。まだあやふやな答弁ですから、その辺は明らかにしてください。
  143. 森岡敞

    ○森岡政府委員 御承知のように、市町村に常備消防がある場合とない場合がございますが、常備消防がない場合には都道府県知事が危険物に関する規制事務を行うことになっております。しかし、率直に申しまして、その場合に都道府県が十分なる技術職員をいま備えているかといいますと、これもやはり県間にかなりの格差がございます。そのようなことから、私どもといたしましては、しかしそうは申しましても、コンビナートが形成されました場合にその地域の市町村がやはり現場に一番近いわけでございますので、一たん災害が起こりました場合にそれについて責任が持てる体制というのはどうしてもとってもらわなければいけない、そのためには教育、訓練あるいは技術職員の充足という大変困難な問題がございますけれども、しかしそれはどうしてもやらなければいけないと思います。  それと、いま一つの問題は、御指摘のありました、また私が先ほど申しました第三者機関、技術者をプールいたしました検査機関を設けるということでございますが、これは私どもは明年度消防法を改正いたしましてそのような措置をとりたい、かように考えております。
  144. 板川正吾

    ○板川委員 第三者機関を消防法を改正してつくるというのですか。はっきり言ってくださいよ。じゃ、その第三者機関はたとえばどういう責任を負われるのですか、これも聞きたいです。たとえばいつかの放射能の検査の機関みたいに勝手な調査を出してごまかすという場合もありますし、どこかの非破壊検査所なんかもまともな検査を出さなかったという場合もありますね。だから、この第三者機関は、その第三者機関が万一、不正なことをやった場合には法律に基づいて国が責任を負うとか、もうちょっとその辺明確にしたらいいんじゃないですか。何かつくるかつくらないかわからないような、あるいはそのときになって適当な学識経験者、大学のぽんこつ教授みたいな者を持ってきて、それで調査さしていいだろうというようなぐあいでごまかされていったのじゃ困るのじゃないですか。この点はどういうふうに消防庁は考えているのですか。
  145. 森岡敞

    ○森岡政府委員 まさに御指摘のような点が種々あるわけでございます。したがいまして、第三者機関をつくるといたします場合に、その持つべき権限あるいは責任あるいはまたその構成をどうするか、あるいはまた予算をどうするかといういろいろきわめてむずかしい問題がございますけれども、しかし私どもはやはりそういう措置をとらなければ危険物施設の安全を確保する、特に石油コンビナート、石油備蓄地区におきまして安全を確保することがなかなかむずかしかろう、こういう気持ちを強く持っておりますので、内容につきましていま鋭意勉強いたしておるところでございますけれども、ぜひそういう形のものを設立して安全を確保したい。(板川委員「いつ設置する」と呼ぶ)明年度からその措置をとりたい、かように考えておるわけでございます。
  146. 板川正吾

    ○板川委員 法律に基づいた的確な機関でなければ、その辺の適当な人を呼んできて適当な結論を出されたのでは住民の方が承知しませんよ。その辺は私の方であらかじめ言っておきましょう。  とにかく市町村が実地調査をしない、書面審査でやるというようなことだけで、書面審査じゃよくわからぬからだれかに知恵をかりる、ところが業者の方では先回りしていろいろ資料を出して大丈夫だ、こういう形になっておったのじゃ、地域の住民は備蓄基地をつくる、石油タンクをつくるということにはもう絶対反対ですよ。そういう意味では、備蓄政策というのは一歩も進まなくなる、私はこう思います。  通産大臣、横道にそれてしまったのですが、伺いますが、四年前からとにかく申請があるわけですね、今後新たに設置しようというときには実施計画を通産大臣に出す。四年前から首を出すわけですよ。ところが、消防法が介入するのは、後になって一定の段階になって八分どおりでき上がって、いよいよタンクを据えつけようというときに申請をして初めて——申請をする前からも多少接触はあるでしょうけれども、申請をしてから初めて消防法が介入をする、市町村の消防責任者が介入するという形になるわけですね。しかし、四年前からその消防法が介入するまでの間は、通産大臣は、さっき言ったように必要に応じて勧告することができる、こうあるわけですね。この間に通産省として石油タンク安全性を含めた、あるいは環境保全を含めた——環境保全は通産大臣でないかもしれません。たとえば安全については通産大臣、あるいは環境については環境庁長官、あるいは海の交通ということになればこれは運輸大臣、こういうものから、タンク安全性を消防署が入って認める前に、とにかくそういう問題について国として何らかの対策を事前に打つ必要があるのではないだろうかと私は思うのです。  ここにこういう新聞記事があるのです。五十年三月四日の朝日新聞ですが、水島の重油タンクの事故の疑問点として、タンクをつくる工期を十分の一に短縮した。その十分の一に短縮したことが——工期というのは地固めしてタンクを乗せるまでの話のようですが、短縮したことが不等沈下を促進した原因の一端をなしたのじゃないだろうかという意味の新聞記事がございます。三月四日ですから、もう中間報告の出る前、ある程度資料が集まっての結論なんですね。ですから、工期をある程度以上早めることはいかぬという注意なんかも通産大臣はする必要があるんじゃないですか。これは消防法が介入する性質のものじゃないですね、四年前に実施計画は通産大臣に出されるのですから。そして、消防法が介入するまでの間、通産大臣なり環境庁長官なり運輸大臣なり、こういうものがタンク安全性あるいは備蓄基地の交通あるいは環境上の問題、こういう問題について地元の市町村長に一切任せるんじゃ、基準だけを出して後は大して責任を負わない、消防庁に任しておるんじゃだめですよ。こういうときに、通産大臣はせめて自分の所管の安全性の問題、タンクの安全、構造、こういう問題について何がしかの指導なり発言なりがあっていいんじゃないですか。この点、通産大臣どうお考えですか。
  147. 増田実

    ○増田政府委員 この備蓄の達成のためには、先ほど申し上げましたように保安、防災の問題が最も大切でございますし、また通産省といたしましても、この備蓄基地の建設につきましては、石油業者がこの建設をするわけでございますから、それを所管する立場からこの防災、保安の問題につきましても十分指導その他を行っていく必要があるわけでございます。そういう意味で、今後基地を建設するに当たりましては、私どもも基地の建設者、つまり石油業者に対しまして、十分保安について留意し、またタンクの建設に当たりましては、これは基準は消防法に基づく政省令その他であるわけでございますが、これにつきまして十分研究し、それに合うようにやる、それからさらには防災その他の体制の整備その他につきましても、十分これを指導していくという立場にあるわけでございます。ですから、その意味で、石油基地の保安、防災問題につきましても、これはやはりその業種の所管官庁といたしまして十分その指導監督その他を行うわけでございます。  ただ、この法案にあります第五条の法律に基づく勧告は、この法律石油備蓄の計画的な促進、それから石油タンクに保持する義務を課している法律でございますので、先ほど先生おっしゃいました第五条の勧告はそういう立場の勧告でございますので、私が先ほど申し上げましたのはむしろ所管官庁として保安、防災その他の問題につきましていろいろな指導その他を図らなければならない、これと第五条の問題とはやはり分けて考えるべきじゃないか、こういうふうに思っております。
  148. 板川正吾

    ○板川委員 通産大臣は石油の主務大臣ですよね。この石油備蓄政策が進むのには、通産省としては安全問題が解決しなければ私は絶対に進まないと思います。これはもうこの法案が通っても、各地域で、新しく備蓄基地を設けようという地域では、安全性にちょっとの不安でもあったら住民に反対運動が起こって、私は備蓄政策は進まない、そう思います。だから、それじゃ主務大臣としての責任が果たせないでしょう。だから、主務大臣としての責任を果たすためには、四年前からこうやって備蓄に対する実施計画を出させる。そうすると、ある地域で備蓄計画が姿をあらわしてくる、一年たてばもっと明らかになり、二年たてばさらに明らかになる、そうして時期的に言いますと、四年目に入って消防署に申請を出すというような段階じゃないでしょうか。そうすると、この三年間に通産大臣が漫然としてその書類を受け付けているというのじゃなくて、この間に通産大臣は安全について十分なタンクの工学上のことやいろいろなことをやっていく。設置の申請を出されれば、消防署に行けばそれは消防法が介入してきますから、その先は頼りにならないけれども、いまの法律では市町村の消防に渡しても仕方がないでしょう。しかし、市町村消防に渡す前に、通産省として安全の問題も含めて配置の計画というのもあるでしょうが、配置問題というのはいままでの法律の中に姿を余り出してない。そういうものを含めて、もっと安全の問題に通産大臣としても配慮をすべきじゃないですか。根本的には、いまの機関委任事務で市町村に任せてある、市町村にこういう近代科学的な工学的な判断能力はない、そうして消防庁は指揮監督権もない、基準だけ出しておけばいい、そうしてそのうちに基準が時代に合わなくなって事故を起こせば、事故が起こってから考えればいい、これがいままでの消防庁の態度ですよ。だから、そういうものでは国民が安心して——いざというときのために、それは石油をためておくことは国民も賛成ですよ。われわれも賛成です。反対する者はないでしょう。しかし、安全の問題がはっきりしなければ、備蓄することにその地域の住民は反対です。だから、通産大臣もこの安全の問題を消防庁や市町村長に任せてないで、この間に何がしかの努力をする。そうして、消防法で介入するときが来たらば、それは市町村に渡しても仕方がない。いま法律がそうなっていますから、これはいたし方がないです。そういうふうに努力をすべきじゃないでしょうか。いかがですか。
  149. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 通産大臣は、石油業法に基づきまして石油全体を監督指導し、同時に石油政策を進めていくわけでございますが、その石油政策の中におきましても今回の備蓄対策というのはこれからの最大の政策の柱であろうと私は思います。でありますから、備蓄問題がうまく進展しなければならぬわけでありますが、備蓄問題がうまく進展するということは、即御指摘のように安全問題が解決するということだと思います。第五条にある「勧告」という文字の意味は先ほどエネルギー庁の長官が説明しておりましたが、仮にその勧告ということから直接安全という仕事を通産大臣が指示することができなくとも、石油業全体を監督し、そうして備蓄という問題がこれからの一番大きな課題であるということであるならば、そしてそれが安全ということによって解決されるということであるならば、私はそういう広い立場から安全問題を最大の課題として検討していかなければならぬ、こう思います。  それにつきまして、先ほど来質疑応答を通じまして幾多の問題点を指摘されたわけでございます。その問題点はやはり中心の課題だと私は思いますので、御指摘いただきました点につきましては十分参考といたしまして、今後の備蓄政策に反映をさせていきたい、かように考えます。
  150. 板川正吾

    ○板川委員 時間がありませんからいたし方ありません、先へ進みますが、消防庁に伺います。  水島事故の教訓の結果、石油コンビナート防災法ができて対策を強化したと言われますが、今後タンク安全性というものについでどういうように強化されてまいりますか、この点を伺います。
  151. 森岡敞

    ○森岡政府委員 タンクの安全の確保につきましては、まず消防法に基づきます政省令、これは技術上の基準を定めておりますが、これを思い切って強化をいたしたいと考えております。  その内容につきましては、まず第一がタンクの基礎に関する事項でございます。先ほども御指摘がございました工事期間の問題が若干ございましたが、要するに、いままでのタンクの基礎につきましては十分な締め固めが行われないままに、たとえば水を張って沈下をさしていくというふうなやり方が一般的にとられているということでございますが、やはりこれでは不等沈下が生じてまいり、それに基づくタンクの危険が生ずるわけでございますので、相当の期間をかけて十分な基礎の締め固めをやった上でタンクを建設させる、そういう基礎工法についての徹底的な強化をまず第一にやりたい。  それから第二に、タンクの構造の問題でございますが、まずタンクの高さにつきましては、一たん火災が起こりましたときのことを考えますと、たとえば二十メートルというふうな制限をいたしませんと、現在開発されております消防機器ではなかなか消火が困難でございます。したがいまして、やはり高さの制限というものを考えてまいらなければならない。それから、これは先ほども申したことでございますが、側板なりアニュラプレートなり底板なりというものの肉厚でございますとか、あるいは腐食に対する措置でございますとか、そういうふうな点も精緻に決めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。そのほか、タンクにいろいろな散水設備をつけますとか消火設備をつけるとか、そういうふうな一たん火災が起こりました場合の措置というものを考えてまいりたい。  次に、保安物件に対する保安距離とタンク間の保安空地の問題でございます。これも、いままでよりもかなり思い切った間隔をとりたい、かように考えております。  さらに、これはコンビナート防災法でも書いておることでございますけれども、一たん重油等の流出がありました場合に、現在の防油提ではその容量が十分ではございませんので、防油提の容量を増加させたいと考えております。と同時に、第二次防油提、これはコンビナート防災法では流出油等防止堤という名称を用いておりますが、これを事業所の周囲にめぐらしまして、二段構えの流出油防止対策を講じてまいりたいというふうなことをいろいろ検討いたしておるわけでございます。  それらを政省令の改正をもちましてやってまいりたい。ただ、タンクの基礎なり構造につきましてかなり技術的な問題がございますので、その辺の措置の政省令改正が若干時間が延びるかもしれません。その場合には暫定基準を示しまして指導してまいりたい、かように考えております。
  152. 板川正吾

    ○板川委員 非破壊検査なんかも実施する、あるいは防油提を二段構えにする。この前私が提案した趣旨が取り入れられたようでありますが、それはそれとして、じゃ次に移ります。  海上保安庁と運輸省港湾局に伺います。  水島事故に引き続いて、相次いでタンカー事故などが起こっております。こういう重油、原油流出事故の場合のわが国のこれに対応する装備能力といいますか、機動力といいますか、こういうものの現状は一体どういう程度のものなのかということを伺いたいのです。  時間の関係もありますから申し上げてみますと、二月二十四日の読売新聞にはこういうことが書いてあります。外国の例です。「マラッカ海峡で一月六日に起きた祥和丸(二三七、〇〇〇重量トン)の座礁事故でも、大量の流出油を食い止める手だてはなかった。祥和丸の油抜き取りに活躍したのは、なんと太平洋の向こうからやってきた米沿岸警備隊だった。ヒュー・ウィリアムズ隊長ら十人の隊員は、一分間にドラムかん二十本分の石油をくみ出し、水中でも働く特殊ポンプ四台を使って油を抜き取った。米沿岸警備隊はこうした緊急出動隊員を太平洋岸、大西洋岸、メキシコ湾岸の三か所に配置している。タンカー事故の連絡を受けると、輸送機が現場に急行してポンプとゴム袋を洋上に投下、同時に支援作業をするヘリコプターと小型艦艇が現場に急行する。隊員もパラシュートで降下するか、船で現場に着く。事故発生から四時間以内に油回収作業が始まる。投下されたポンプをタンカーに引き揚げ、船内のタンクに押し込んでエンジンをかけると油が抜き取れる。そのホースの先端は、洋上で自動的にふくらんだゴム袋につながれている。あとはゴム袋をそのままえい航すればいいわけだ。アダプツと呼ばれるこのシステムは最大風速二十メートル、波高三・六メートルの荒海でも抜き取り作業が可能で、ポンプ数台を使えば二十四時間以内に二万キロ・リットルの原油をゴム袋に移せる。新潟沖のジュリアナ号のときには、一万五千キロ・リットルの油を抜き取るのに五十二日もかかっている。たいへんな差だ。」こう言っているのです。  これはアメリカの海上保安関係者の油の流出事故の場合の対応の一つ紹介でありますが、わが国ではどの程度のことが現在あるのですか、装備されておるのですか。これをひとつ両方の関係者から、ありったけの資料を言ってもらいたい。
  153. 山本了三

    山本説明員 お答えいたします。  大量の油が海上に流出いたしました場合には、この大量流出油を処理する方式というのは、先生御承知のとおり、まず流れました油の拡散を防止するということが第一点でございます。次ぎまして、その拡散を防止しました油を機械的な処理方法で回収する。回収ができなくなった分については油処理剤等で処理するというのが私ども海上保安庁が考えておる方式でございます。  この方式にのっとりまして必要な資機材を備蓄いたしておるわけでございますけれども、海上保安庁、民間等で現在備蓄されております資機材の量は、これは三月三十一日現在でございますが、海上保安庁はオイルフェンス一万九千三百八十メートル、民間と合わせますと約七十四万メートル程度あります。それから、油吸着材につきましては、海上保安庁が持っておりますのは約四千五百キログラム、民間を合わせますと六百九十四トンほどになります。油回収船につきましては、海上保安庁で現有しておりますのは二隻、それから本年度中に一隻入って三隻になります。それから、港湾局において回収船三隻、したがいまして国の機関としては六隻になろうかと思います。地方自治体が四隻、民間は六十二隻、合計しますと七十一隻ということになっております。  先生いま御指摘のアダプトの件でございますが、これは先生の御指摘のとおり、事故を起こしましたタンカーのタンクにあります油をほかのタンクに移送するという装置でございます。海上保安庁といいますか、日本にはそういう移送用のポンプは残念ながらまだございません。したがいまして、祥和丸等の事故を契機といたしまして、海上保安庁においても早急にそういった移送用のポンプを装備したい、そういうふうに考えております。そういうことで予算要求もいたしたい。  また、アダプトに付属いたしておりますその処理チームでございますが、これは一チーム十名であったと記憶いたします。アメリカではナショナル・ストライク・チームという呼び名をいたしておりますが、それに類似した人員を擁してこういった機器の運用を円滑にいたしたい、そういうふうにも考えております。  なお、わが国におきますオイルフェンスあるいは油吸着材あるいは回収機等のいわゆる流出油処理に要します資機材の開発でございますけれども、科学技術庁、運輸省、関係省庁でここ数年来鋭意開発努力いたしております。しかし、まだ決め手になるような機器は残念ながら開発されておりません。外国においてはどうかと申しますと、いろいろ私ども資料を集めておりますけれども、外国におきましてもこれがいいというふうなのはまだまだ開発されていないというのが現状であります。海上保安庁が装備いたしております油回収機は、御承知のとおりこれはアメリカのコーストガードが研究いたしまして最も能率がいいというのをロッキード社につくらしたものでございますけれども、こういったものも、海上保安庁といたしましても国内のみならず世界のレベルで最も能率のいいものをということで整備努力いたしておる次第であります。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 御巫清泰

    ○御巫説明員 現在、港湾管理者の方で装備しておりますオイルフェンスは約三十一キロメートル・油処理剤は約八十六キロリットル、油吸着材は三千四百キロリットル、油回収船は四隻を保有しております。なお、オイルフェンスにつきましては、このほかに五十年度におきまして補助事業といたしまして約四十六キロの整備を行うことといたしております。
  155. 板川正吾

    ○板川委員 ちょっとお伺いしますが、オイルフェンスの波高に対する効力ですね。アメリカの方では、さっきも申し上げましたが三・六メートルですか、そういうものでも大丈夫だ、日本の方では三十センチぐらい。だから、ちょっと波風が立てばもうオイルフェンスの役割りを果たさぬ、こういうことがこの間の水島事故でも報道されておったわけですね。なるほど海上保安庁では七十四万メートルも用意してあるし、あるいは港湾管理者の方では三万一千だけれども、五十年度はさらに広げる、四万六千ぐらいふやすと言っているのですね。長さばかり自慢にしても、波高に対する防御力がなければ役割りを果たさないと思うのですが、どの程度の能力をいまあるものは持っているのですか。
  156. 山本了三

    山本説明員 オイルフェンスの波に対します能力の問題でございますが、わが国のオイルフェンスも直径三十センチのもの、それからスカートが四十センチという規格になっております。これはB型と称します。これはビニール製のいわゆる波に順応するような材質でできております。したが  いまして、三十センチではございますけれども、二メートルあるいは二メートル半くらいの波には十分にその効力を発揮する。そういうふうになっております。ただ、アメリカにおきます三メートルとか、いま先生御指摘のものは恐らくアダプトのところで紹介された波高だと思います。それは移送用のポンプでございますので、波が幾らあろうとそれは支障がないというふうなものであろうと私は考えます。  なお、オイルフェンスの性能でございますけれども、アメリカにおいては、その記事にございますが、二メートルぐらいの潮流といいますか流れがあっても阻止できるというふうな記事が載っております。なるほどそこに記載されておりますオイルフェンスは非常に大型でございます。われわれがいま日本で使用いたしておりますものの約三倍ぐらいの大きさでございます。取り扱いに非常に問題があろうかと思いますけれども、大型にすればある程度の潮流にも抵抗ができるというものができるという実証になろうかと思います。わが国におきましても、オイルフェンスの潮流に対する能力というのは現在のところ約一ノット程度でございますので、一ノットの流れがあれば油が逃げる可能性があります。したがいまして、これをどうすればさらに流れの早いところで使えるかといったような研究を、現在鋭意関係者で進めているという事情でございます。
  157. 板川正吾

    ○板川委員 海上保安庁、機動力の方はどうですか。もっと適切な防除措置がとれるような機動力を整備するということは考えられないですか。将来考えてないのですか。ヘリコプターを使うとかもっと大型の船で大事故の場合は大々的にやれるような体制を組まなければ、せっかく備蓄したってやはり住民が安心しませんね。そういう計画はございませんか。
  158. 山本了三

    山本説明員 海上保安庁が指導いたしております現在の流出油の防除体制でございますけれども、私どもは東京湾あるいは大阪湾、瀬戸内海というふうな湾あるいは内海を単位に防除体制を構成いたしております。たとえば東京湾でございますと、東京湾のどこかで油が流れました場合には、東京湾の中でいわゆる防除の実力のある部隊あるいは実力のある資機材、これを極力早く現場に集める、そういう手はずになっております。特に水島の流出油事故以降におきましては、大型のタンクが林立いたしておりますコンビナートあるいは石油備蓄基地、こういったところから相当の油が流出いたした、その場合最も悪い条件で出た、その場合にはどういうふうにして防除するかという、具体的なマニュアルを作成いたしております。どこのオイルフェンスをだれがどういう形に張る、そういうものです。これは何重にも張って、たとえば川崎の運河からは絶対に外へ出さないように、五重にでも六重にでも張る、そういう実戦的な防除体制というものをいま形づくっております。  それから、湾を単位と申し上げましたけれども、東京湾にあります防除資機材というのは相当膨大な量になりますけれども、なおかつ他の地区から運ぶ必要があるという場合には、そういう資機材の運搬といいますか機動力、このために海上保安庁は現在スカイバンという機種の飛行機を購入いたしております。これはジープ程度のものは機体の中に収納して飛べるという、そう大型ではございませんけれどもきわめて有能な飛行機も用意いたしております。先生おっしゃるとおり、機動力には十分に配慮して防除体制を組んでおる、そういうように考えております。
  159. 板川正吾

    ○板川委員 こういうことはできませんか。ヘリコプターを十分用意するというわけにはいかないけれども、自衛隊には災害防止のための出動というのがあるのですから、そういう災害が起こった場合には自衛隊のヘリコプターを利用して防災体制を強化する、こういうことは考えられませんか。
  160. 山本了三

    山本説明員 防衛庁と海上保安庁の間には災害の場合の派遣協定がございます。したがいまして、防衛庁の飛行機あるいは機材は、海上保安庁の長官の要請があれば即刻出るという体制にございます。
  161. 板川正吾

    ○板川委員 時間がありませんから、それはそれで一応終わって先にまいりましょう。  備蓄に対して、政府の援助というのはどういう計画になっておりますか。
  162. 増田実

    ○増田政府委員 備蓄に対しましての政府の援助、具体的には財政金融面の援助が昭和五十年度予算で一応計上されておりますので、その内容を簡単に申し上げたいと思います。  まず、その備蓄に要します原油でございますが、この原油は非常に多額の購入資金を要します。これにつきまして予算では、原油代金の九割を政府の保証がつきまして石油開発公団を通じて借りられるということで、原油の購入代金につきまして九割を政府がめんどう見る、こういう形になっております。それからさらに、この原油につきましては四%の利子補給を行っております。ですから、現在大体一〇%の市中金利になっておりますが、これにつきまして四%の利子補給で実質六%の金利になる、こういう形になっております。  それから、個別企業石油備蓄施設というものを設けますに当たりまして、その施設の融資につきまして開銀資金の対象といたしまして、融資比率が七割、それから特利八分、こういう制度になっております。  それから、それ以外に共同備蓄会社につきましては、出資が公団を通じまして半額行われるということになっておりまして、三十億が用意されている。それ以外に共同備蓄会社の施設等の融資を、これも石油開発公団が行うことになっておりますが、これは財投から資金が出ておりまして、融資比率八割ということになっております。  以上が、この備蓄を進めるに当たりましての予算措置でございまして、合計いたしますと今年度の予算では、ただいま申し上げました政府保証つきの資金も入れまして八百八十五億円というものが財政金融的な援助措置になっています。  それ以外に、先ほども申し上げました都道府県の行います安全対策のための調査費というものが五億円計上されております。
  163. 板川正吾

    ○板川委員 時間がありませんので、もう一問で終わります。  外国の例を見ますと、備蓄に対して政府助成政策というのはほとんどないのですね。日本ではそういう手厚い補助が行われることになるのですが、外国では補助をしなくても備蓄が非常に進んでおるというのは一体どういうことなのか。それから、政府備蓄に対してそういう財政援助をすることは、たとえば石油化学もそれで利益を受けることですし、石油化学製品は海外輸出もされておる、で、ガットの規定などからとかく注意をされるおそれはないのか、こういう点を伺っておきます。
  164. 増田実

    ○増田政府委員 二点お答え申しますが、外国におきましては備蓄につきましては財政資金の援助は行っておりません。ただ、スエズの動乱以降相当備蓄が進んでおりまして、当時の外国会社利益率も相当高くてそれだけの余裕があったという点が一つと、それから、たとえばフランスとかイタリアにおきましては標準価格とか最高価格という制度がありますが、これを政府が定めますに当たりまして、備蓄費用を一応算入して、その分だけ高く定めておるということで、消費者に転嫁できるような制度を設けておった、こういうことでございます。  それから第二点、備蓄財政金融の補助を行うことによって、これが輸出の促進になり、ひいてはガットで問題になるかどうかということでございますが、備蓄につきましてはこれはマイナスにかかる分でございますので、私は、この問題によりましてガットで輸出促進ということで問題になるということはないと思っております。
  165. 板川正吾

    ○板川委員 石油政策なども聞きたいと思ったのですが、時間が参りましたから、以上で私の質問を終わります。
  166. 山村新治郎

  167. 野間友一

    野間委員 最初に備蓄安全性の問題について、これは主として消防庁にお聞きしたいと思います。  先ほどからの論議でも九十日備蓄についての安全性が非常に問題にされておる。先日衆議院を通過しましたコンビナート法、あれによっても非常に不十分であるということが明らかになりましたけれども、私は最初にちょっと具体的なケースを挙げまして、これでいいのかという観点から質問をしたいと思います。  和歌山県の下津に富士興産株式会社があります。これが原油基地の建設を四十七年に行いまして、現在十万キロリットルのタンク三基が山を削った敷地に設置されております。下津町といいますと、御承知だろうと思いますが、万葉の昔からうたわれた非常に風光明媚なところであり、また紀ノ国屋文左衛門がミカンを運び出した有数の港でもあるわけですね。ここはいまではもうミカンの町から石油の町に化してしまったというのが実態であります。つまり丸善石油それから東亜燃料そしていま申し上げた富士興産、これが景観を全く破壊してしまったというのが現状であります。  まずそこで、この富士興産の原油基地の設置についてお尋ねをしてみたいと思いますが、十万キロリットルのタンク三基が同じところに並んで建設されるということになりますと、いわゆる防油堤の堤内容量、これは最低どれだけ必要なのか、これは事前に言っておりますので、すぐお答えが出ると思いますから、端的にお答え願いたいと思います。
  168. 森岡敞

    ○森岡政府委員 現在の政省令で定めております防油提の容量基準は、最大タンクの五〇%と他のタンクの一〇%との総和ということになっておりますので、いまの富士興産の例で申しますと七万キロリットルということに相なります。しかし、補足して申し上げたいと思いますが、それでは不十分だと私ども考えておりますので、早急にこれを最大タンクの一〇〇%まで手直しをいたしたい、かように考えております。
  169. 野間友一

    野間委員 先に御指摘になりましたけれども、確かに十万キロリットルが三基で三十万もあるわけですね。それで、七万キロリットルでいいということでは、これは全く用をなしていないというのが事実で、いま一〇〇%という話もありましたが、一応いまある基準に従って質問を申し上げるわけですが、そうしますと、危険物の規制に関する規則、この二十二条にそういう基準がありますが、防油提堤内の容量が基準値を満たさない場合、この場合にはタンクの設置は許可になるのかならないのか、いかがですか。
  170. 森岡敞

    ○森岡政府委員 防油提の容量は政省令で定める技術上の基準に該当いたしますので、それに適格でない場合には設置許可は行われません。
  171. 野間友一

    野間委員 それじゃ、つくった後でこれがその基準を満たしていないということが明らかになった場合にはどういう措置をとるのですか。
  172. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま申し上げましたように、設置許可の際に防油提の容量についてのチェックをいたしますので、つくってしまった後で足りないという事例はまずないと私ども思いますが、仮にそういうものが出ました場合には、当然改善命令を出します。
  173. 野間友一

    野間委員 改善の中身は、変更させてその基準に合致するようにということだろうと思いますが、最初は書類審査なんですね。虚偽の計算をして設置の申請を出した場合には、これは消防法では罰則等行政上の措置もあると思いますけれども、この点いかがですか。
  174. 森岡敞

    ○森岡政府委員 完成検査をいたしますので、その際は実測をいたします。したがいまして、防油堤の容量が基準に合致するかどうかはその時点においてきちんと計算をいたしておるわけでございます。
  175. 野間友一

    野間委員 いや、私が聞いておるのは、虚偽の計算をして申請をした場合にはどういう行政上の措置と、それから罰則の適用はあるのかないのか、その点であります。
  176. 森岡敞

    ○森岡政府委員 虚偽の申請によりまして適格でないものをつくりました場合には改善命令を出し、それに基づく措置をいたしません場合には使用停止命令をかけます。そういうことで担保をいたすわけであります。
  177. 野間友一

    野間委員 罰則の有無については別にまたあるのですけれども、それはまた後で時間があればお伺いします。  この手続ですが、つくる場合企業から申請が出される、この場合に、私の知っておる範囲では書類審査をして基準に合致しておるかどうか、それを調べるということ、それからざらに、これが建設されるという段階でチェック検査をして満たしておるかどうかの有無を調べる、その場合に、基準に合致していない場合にはいま言われたような措置をとられるというふうに理解しておりますけれども、間違いありませんか。
  178. 森岡敞

    ○森岡政府委員 そのとおりでございます。
  179. 野間友一

    野間委員 それじゃ、具体的にお聞きするわけですが、いま申し上げた富士興産の三基の十万キロリットルのタンクの設置について、これは書面審査及びその後のできたものについての検査をやったかどうか。やった場合に、これが基準に合致しておったかどうか。この点についていかがであったか、お答え願います。
  180. 森岡敞

    ○森岡政府委員 富士興産の下津の貯油所につきましては、私どもの調べました範囲内では書面審査及び実測調査をし、防油提の容量自体は基準に合致いたしておると、かように聞いております。
  181. 野間友一

    野間委員 これは一つの問題は書面審査、本件の場合この期間は一体どうなのかということが問題になると思うのですね。このケースの場合、四十七年の五月二十二日にこの許可申請、これは屋外危険物貯蔵所設置の許可申請を出して、下津町では二日後の五月二十四日に許可をしておる。このこと自体、町そのものがいかに企業寄りであるかということが明らかであるわけですね。二日でどれだけの調査ができるか。これはかなり精密な調査をしなければならぬと思うのですね。つまり住民側の安全性にとってこれは非常に重大な問題でありますから精密にやらなければならぬのに、実際にはやっていないというのが実態なんです。これは消防庁としてどうお考えかということと同時に、時間の関係で次に進みますが、四十八年の七月十三日にこの富士興産は、三基のタンクのうち百三のタンク、この位置を変更する旨の申請を出しております。これはすでに通告しておきましたからお調べになっておると思いますが、四十八年七月二十三日、町からこの変更の許可を受けておるのです。ところで、書類を調べてみますと、このときの変更許可申請書、これに添付されて出されました防油提容量計算書、これがあります。これを見てみますと、防油提堤内の容量は、これはでたらめなんてすね。——でたらめかとうか、あなたはでたらめでなかったとおっしゃると思いますけれども、まずその点から確認を求めます。
  182. 森岡敞

    ○森岡政府委員 四十八年の位置の変更につきましては、私どもは詳細に承知いたしておりません。  それから、防油提の容量につきましては、私どもの調査をいたしました範囲内、昨日からでございますけれども、十五万キロリットルということで防油提の容量計算が行われておると、かように聞いております。
  183. 野間友一

    野間委員 それが間違いなんです。町に出した申請書、これを私持っていますけれども、これで実態を私調べてみたのです。実はこれは訴訟ざたにして、私、代理人の一人で、いま和歌山の地裁でやっておるのですけれども、これはけしからぬと思うのです。これによりますと、一つはコンクリート防油提に囲まれていない空き地、これは一万八千四百六十一・二九立米、それから二つ目はコンクリート防油堀の外と道路との間の空き地、これは三千八十三・六九立米、それからもう一つの問題はタンクの基礎が三十センチあるのです。これは最低ですね。ところが、防油堀容量計算書、これを見ますと二十センチとして計算してあるのです。それで、容量の水増し、これが二万二千九百八十・七八立米、これは計数上そうなりますし、出てきますね。こういうことで提出しておるのです。こういう事実を御存じかどうか。
  184. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御指摘の容量計算の詳細につきましては、私ども十分な資料を持ち合わせておりません。
  185. 野間友一

    野間委員 十分なものでなくても、簡単なものでもお持ち合わせじゃないと思うのです。これば通告しておいたんですが、どうですか。これは本当の話、ペテンなんです。囲まれていない空き地まで計算の基礎に使っておる。それから、防油堀と道路との間に空閑地があります。これも容量計算の基礎に入れておる。また、いま申し上げたようにタンクの基礎が実際はかれば三十センチあるのです。この点では、その意味での基準を満たしておると思うのですね。ところが、計算は二十センチで計算しておるいごまかしなんです。一体どういう調査をしたのかということですね。書面調査をして、建設した場合にはこういう調査をした、どうもなかったといま言われました。書面がありますが、最初のこの計画書、これには三十センチとはっきり書いてある。これは書かなければ通りませんからね。そうでしょう。ところが、後で変更許可申請書、これでもうだまくらかしておる。いろいろ計算がされておりますけれども、この中では二十センチとして計算してある。こういうでたらめをやっておるわけですね。あなたは先ほどの話では、どうもなかった、異常がなかった、基準値と合致しておる、こう言われておる。これはまさに虚偽の申請なんです。これで計算しますと、非常に大きな違いが出てくるのです。計算の詳細は省略しますけれども、提出された容量は七万九百九十八・五五立米、こうなっておるのです。いま申し上げたように計算しますと、計数上はそうなるのです。しかも、どの範囲かどうか、これは見ればわかるんですね。防油堀の高さも、これは子供でもはかれますよね。メートル尺を持っていけば二十センチか三十センチか、十センチも違うわけですから、これはすぐわかります。これすらやってない。検査をやったとしたら、これは一体どういうことになるのか。これは町の消防署がやっておると思うのです。そうですね。実際にそういうものを現実に即して、実態に即して計算してみますと、四万八千十七・七七立米、これだけなのです、私が冒頭にお聞きしたのは七万立米、これが最低の基準だと、こういうふうにおっしゃった。会社が出しておるこの書類ですね、いま申し上げた変更申請書、これには確かに七万を超えております。ところが、いま申し上げたように実態はそうでない、四万八千十七立米しかない。こんなでたらめな申請で許可をして、しかもこれが検査を通っておる。これが事実であれば私は十一条ですか、これに違反すると思いますが、いかがですか。
  186. 森岡敞

    ○森岡政府委員 私ども昨日から草々の間でございましたので、御指摘のような的確な調査が率直に申してできておりません。したがいまして、いま伺っております範囲内では私どもとして非常に不都合だと考えます。したがいまして、早急に十分調べてまいりたい、適切な措置をとるように、必要な改善命令は出すべきものは出し、きちんとやらしたいと考えます。また、その場合、当然そういうことでございますれば十一条に違反をする、こういうことに相なると考えます。
  187. 野間友一

    野間委員 十一条に違反すると、どういう制裁がございますか。
  188. 森岡敞

    ○森岡政府委員 先ほども申し上げましたように、改善命令を出し、それに従わない場合には使用停止命令を出し、それによって措置を担保する、こういう措置を講ずるわけでございます。
  189. 野間友一

    野間委員 それは厳重に、早急にこれを調査した上でしかるべくそういう適正な措置をとられるかどうか、もう一度。
  190. 森岡敞

    ○森岡政府委員 早急に十分調査をいたしまして、適切な措置をとりたいと思います。
  191. 野間友一

    野間委員 こういうふうに結局安全、防災上の問題ですが、あれこれあれこれ口でいいことを言われても、またこの基準そのものは非常に不十分ですね、いま認められましたけれども。それにしても、あるものすら、結局通謀したのかごまかしたのか、これはよくわかりません。しかし、こういうことすらやっておるのですよ。これは住民が騒ぐのはあたりまえなんです。これは十分調査して適正な措置をとっていただきたい。  同時にもう一つの問題は、これはよく問題にされておりますけれども、こういうものを本当に保安上監視をし、そしてこれらの万全の措置をとることが消防署にできるかどうかということが問題なんですね、体制の問題。ここをけさ電話で消防庁に聞いたのですが、いま申し上げたようにこの基準以下であるということだけではなしに、雨が降れば堤内に雨水がたまって水はけが非常に悪い。たまり水がずっとあるわけですね。これは写真も持っておりますけれども、実態はそうなんです。だから、会社自身が保安面でも非常に不十分だ。  同時に、消防署の構成を調べてみますと、署員がわずか二十名なんです。常時勤務するのが、昼間は十一名、夜は九名なんです。消防車はわずか一台、化学車が一台、こういうのが下津町の消防署の実態なんです。ところが、いま申し上げた下津町そのものは石油の町に化しております。もうあそこの下津港湾は住友などの鉄と関西電力などの電力、それからいまの石油、鉄と電力とコンクリート、全く物騒な、背中と腹に爆弾を抱えて毎日暮らさなければならぬというようなひどい状況なんです。この石油タンクだけを見てみましても一万トン以上のタンクが三十九基、これは丸善が十三基、富士興産が三基、東燃が二十三基、それから五千トンから一万トンまでのタンクが五基、これだけあるのです。これだけのものをいま申し上げた小さな町の消防署、これが監督するのですから大変なことなんです。できようはずがないのです。民家等は、町内の人が一生懸命気をもんであれこれ考えておりますけれども、これはこれだけの規模のものがある以上とうていどうしようもないというのがいまの実態なんですね。だから、体制そのものがそういうことであるし、中は中で、いま申し上げたようなことを富士興産がやっておる。これではもう本当にたまったものではない。こういう現状を、これは本当に事実であるか、私はこれは調べた上で言っているのですけれども、ぜひ調査して、しかるべく厳正な措置ということを答えられたわけですが、これは一体どうしたらいいかということですね。  通産省はこういうものについては調査費として五億円ばかり計上しておる、これは全体ですね。そういうことも私聞いておりますけれども、通産省は一体こういうような実態をどう考えるのかということと同時に、所轄の消防庁、この防災面について地方にすべて権利義務を課するということについてどう考え、どう措置をしようとするのか、その点についてひとつお答えを願いたい。
  192. 増田実

    ○増田政府委員 富士興産につきましていま先生から御指摘のような事実につきましては私どもも早速調べまして、これに対して自治省とも相談いたしまして、一緒になって適切な措置をとるようにいたしたいと思います。
  193. 森岡敞

    ○森岡政府委員 コンビナート地域におきまして市町村の危険物行政を担当いたしております部局が十分でない向きがあるということ、私ども大変問題があると考えております。ただ、率直に申しまして、市町村によりましてかなり格差があるということは否めないわけでございまして、一定の規模以上の都市になりますと、相当な職員を配置して適切な措置を講じ得る体制が整っております。いま御指摘の下津町のような場合になりますと、それがなかなか十分でないということでございますので、私どもといたしましては、まず第一に、そうは申しましても、現地の市町村当局の体制が整いませんと、いかに周囲の体制が整いましてもこれは不十分でございますので、やはり市町村の当局の充実を図ってまいりたい。第二に、それに対する技術援助、そういう形でのことを十分整備してまいりたい。第三に、先ほど申し上げたことでございますが、やはり行政ベースだけで全部をこなしていくということには、これはやはり限度があろうかということもございますので、第三者機関的なもの、検査機関を設けまして、そこで十分検査機能を発揮するというふうなシステムも考えてまいりたい。しかし、いずれにいたしましても、市町村、都道府県、政府が一体となりましてお互いに十分連絡し合ってやってまいりませんと、これは安全対策の十分な確保はできないと思いますので、そういう方向努力してまいりたい、かように思います。
  194. 野間友一

    野間委員 口では大阪城も建つということわざがありますけれども、口では何とでも言えるわけですね。しかし、現実は、いま申し上げたように、  これだけ大きなたくさんのタンクがありましても、二十名で十一名と九名、消防車が一台と化学車が一台、どうしようもないんですよ。どうしたらいいんでしょうかね、こういう場合。いま総論的にはお答えいただいたんですが、どうされますか。
  195. 森岡敞

    ○森岡政府委員 先般衆議院を通過させていただきましたコンビナート防災法におきましても、やはり基本的に企業の防災施設でありますとか、防災組織あるいは共同防災組織というものをかなり今後充実、整備していただきたいという気持ちを強く持っておるわけでございます。それとあわせまして、市町村の消防当局の拡充、充実を進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。同時に、政府といたしましても、それに対する思い切った援助措置をあらゆる面から考えてまいりたい。たとえば地方交付税の基準財政需要額において消防費を算定いたしておりますけれども、コンビナート地域等につきましては、当然通常の消防の基準財政需要額よりも大きなものが必要でございますので、それらについては的確に算入をして財源措置も十分講じてまいる、かようなことをもって措置をしてまいりたいと考えております。
  196. 野間友一

    野間委員 いつでもそう言われるのだけれども、ちっともその実が上がらない。本当にやる気があるのか、私は非常に危惧します。このように非常に防災面での不備がありながら、問題がありながら、今度の備蓄法によりますと、五十四年度まであと三千万キロリットルですか、石油備蓄をふやすということになるわけですね。そうしますと、タンク設備も当然それに即応してふやさなければならない。しかしながら、これまで頻繁に起こっている水島を初めとする石油流出の事故、それからタンカー事故、これらに対する抜本的な対策も全くないままに、あのコンビナート法におきましても本当にあらゆる点から指摘をされたわけですが、公害あるいは災害拡散、こういう抜本的な対策がない限り、こういうものを規制することはできませんし、住民の要求やあるいは暮らし、これからいたしましても、これはもう不安で、暮らすことがとうてい苦痛で耐えられないというのが実態だと思うのです。政府はこれらの事故防止と保安体制の強化、この安全性確保を図ることが一番いま差し迫って求められておるというふうに考えるわけですけれども、その点について早急にそれらのしかるべき措置をとるべしということを申し上げて、最後に通産大臣の所見を求めて、この問題については終わりたいと思います。
  197. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般の石油コンビナートの防災法が衆議院を通過いたします際にいろいろと附帯決議もつけられておりますが、市町村の防災体制をもっと強化しなければならぬ、こういう御注意もいただいておりますが、同時にあわせて、先ほど消防庁から答弁がございましたように、コンビナート防災法の一つの大きな柱はやはり企業の防災体制の強化、ここにあるわけでございますので、いろいろな対策というものを総合的に考えまして、先ほど来私が繰り返し申し上げておりますように、今後の石油政策の基本というものはやはり防災ということにあるんだということにつきまして認識を新たにいたしまして、十分注意をしていかなければならぬ、こう考えます。
  198. 野間友一

    野間委員 消防庁、それではこれを一遍調べていただいて、その結果としかるべくとられた措置、これを委員会で報告していただけますか。
  199. 森岡敞

    ○森岡政府委員 早急に調査をいたしまして、御趣旨のとおり措置いたしたいと思います。
  200. 野間友一

    野間委員 次に、エネルギーの国際的な問題について、これはエネルギー庁長官にお伺いしていきたいと思いますが、石油開発公団のときもかなりIEAの関係でお尋ねしたわけですが、四十九年二月に石油消費国会議、ここで設置を決めましたエネルギー調整グループですね、いわゆるECG、これが去年の七月末のブラッセルでの第八回会合で、緊急時の相互石油融通スキーム設立構想、これについて基本的に合意をしたということが、これは物の本にも書かれておりますし、これは間違いのない事実ですが、このECGの作業に対応して日本でも九十日備蓄、これが急がれてきた。それから、IEAのIEP、ここの緊急融通制度、九十日備蓄、これが決まって、日本も当然ながらこれには参加しているというのがいままでの経過だと思うのです。  そこで、今度の法案による九十日の備蓄、これは日本も参加した石油消費国会議やECGあるいはIEA、こういうところの方針に基づいて、またそれに制約されるものである、こういうように私は考えるのですね。経過から言いましても、四十九年二月の消費国会議、七月のECG、中間報告は、石油部からですか、出ておりますけれども、ここでも九十日備蓄は論議されておりますね。そして、四十九年十一月のIEPと一連の経過の中で、これは単に日本だけの問題でなくて、いま申し上げた消費国会議とかあるいはECG、それからIEA、こういうところで九十日備蓄の問題が国際的な問題になって、これによって日本の九十日備蓄、本法案ですね、この中身がつくられたと、こういうふうに私は一連の流れの中で考えざるを得ないと思うのです。これはいろんな本にもそう書いてありますけれども、この点についてまず答弁を求めます。
  201. 増田実

    ○増田政府委員 日本の九十日備蓄政策が、このIEPあるいはIEAの政策を実行するために行われているかどうかというのが御質問の趣旨だと思いますが、私どもは、このIEAあるいはIEPというものとは全く切り離して考えておるわけでございます。この備蓄につきましては、この前のときにも申し上げましたが、昭和四十二年の石油開発公団法の商工委員会採決のときにも、備蓄についての増強を図れという附帯決議をいただいておりますし、また四十七年の石油開発公団法の一部改正のときにも「当面の目標である六十日分の達成を期するとともに、引続きその増強を図るよう指導助成を行なうこと。」と、当商工委員会の、これも附帯決議でございます。そういうことで、私どもといたしましては六十日備蓄というものをまず達成し、さらにこれを九十日に持っていくということにつきましては、これは前々から考えておったわけでございます。それから、九十日という数字は何もIEAで急に出てきたのではございませんで、先般も御答弁で申し上げましたが、昭和四十七年にOECDの中でヨーロッパ諸国に対しまして九十日の備蓄を持つようにという勧告が行われておりますし、またEC、欧州共同体におきましても、加盟国に対しまして九十日の備蓄を持つようにということの勧告がやはり同年十月に行われております。そういうことで、大体先進消費国におきましては九十日備蓄一つの目標にするということになっておるわけでございまして、このIEPで突如九十日という目標が出てきて、そして日本がそれに従うということではございません。  それから、IEAあるいはIEPにつきましては、これはただいま野間先生がおっしゃられましたように昨年の十一月十五日から発足いたしたわけでございますが、その前の二月にワシントンで消費国会議が、これはアメリカのイニシアチブで行われたわけですが、しかし、それだからといって直ちに十一月に発足いたしましたIEAというものがアメリカ主導型であるというふうには私どもはとっておりません。もちろん二月の消費国会議一つの発端となっておりますが、その後、先生からもいまお話ありましたように、ブラッセルでECGという、これは一応参加を予定されます各国が何回もブラッセルで討議いたしまして、その上で各国の合意のもとにこのIEAができたわけでございます。ただ、この問題と先ほどの九十日備蓄とはまた私は直接関係ないということで、これもたびたび御答弁申し上げているわけですが、日本として一昨年の石油危機を経験して、六十日備蓄ではどうしても足りない。そのために相当時間がかかり、またいろいろの膨大な資金も要するけれども、この五年間で何としてでも九十日備蓄を備えて、もし石油がとまった場合の社会的混乱というものを防ぎたい、そして国民生活の安定ということで、いわゆる経済的な安全保障という立場で九十日備蓄目標を掲げておるわけでございまして、何もIEA、IEPでこれが決定されているので日本がそれに従って無理やりにやっている、こういうふうには思っていません。日本の自発的な意思でやっておる制度でございます。
  202. 野間友一

    野間委員 その点については前々から論議をしたけれども、長官は私の主張になかなか同調されない。それは立場上そうかもわかりませんけれども、九十日備蓄というのは全く何の根拠もない。八十日でいけないのか、七十日はどうなのか、八十五日はどうなのか。一つずつとっていきましても、これは理論的な根拠と申しますか、こういうものはないわけですね、これについては後でまた論議を進めていきますけれども。いずれにしても、そういう立場をとるにしても、日本がIEAに加盟している、参加している、そのIEAのIEPにおいて、この九十日の備蓄が義務づけられておるということになる以上、この制約を日本も受けざるを得ないということになろうかと思いますが、この点については否定はされないと思いますがね。
  203. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生からIEAの義務で九十日が規定されるというお話がございましたが、これにつきましては、国際エネルギー計画に関する協定、これをIEPと言っておりますが、その第二条にもございますように、六十日が緊急備蓄義務数量となっておりまして、九十日はこの義務数量にはなっておりません。実現するという一つ努力目標でございます。それから、いつまでにこの努力目標を達成するかにつきましては、これは協定では七月一日までに決定するということになっておりますが、きょう現在まだ決まっておりません。
  204. 野間友一

    野間委員 私の義務づけと言うのは、法律上あるいは条約上のそういう問題で言っているのではなくて、ここで決まり——努力目標にしても、この中に加盟しておるという以上、ここのIEAの方針に従ってやらなければならぬ、そういうことを言っているわけです。そういう制約は否定することができない、こういう趣旨です。  そこで、質問を続けたいのは、前にもお伺いしたのですが、IEAとアラブ産油国との関係についてであります。政府は、説明では、これは決して敵対するのではないのだということを言われました。しかし、IEAにかけますアメリカの意図、これは一体どうなのかということが問題になると思うのですね。アメリカは、アラブ産油国などに対抗する消費国の組織として位置づけ、その方針で運営しょうとしておるというふうに私は理解しておりますけれども、これは間違いでしょうか。
  205. 増田実

    ○増田政府委員 アメリカの石油政策にはいろいろの面がございますが、しかしながらこのIEA、国際エネルギー機関を設立いたしました十一月十五日までの討議、これはもちろんアメリカも含まれておるわけでございますが、各国がいろいろ意見を出し合って、決して産油国に対決する機関をつくるべきではないという意見もいろいろ出まして、この前も先生に御答弁申し上げましたが、国際エネルギー計画に関する協定、IEPの前文に、消費国、産油国間でよりよき理解を得る機会を促進するため云々ということで、これは産油国と消費国との対話というものが重要だということでこれを促進するという規定が入っておるわけでございます。これから見ましても、つまりIEAというものが産油国との間のいわゆる対決の機関ということにつきましては、日本も初めから反対でございますし、ほかの国々もいろいろの意見がございました。それによりまして、IEAというのは決して産油国に対決すべきものではない、むしろ将来はいろいろ産油国との間の対話を促進するのだ、こういうことで日本も参加いたしたわけでございます。ですから、その意味で、このIEAというのはアメリカの機関ということではございませんで、この参加国が相当な時間をかけていろいろ十分討議し、またその結論でこれが設立された、こういうことでございまして、日本は一貫して産油国との間の対話、協調が必要であるという立場に立っております。ですから、その意見日本を初め数カ国から出まして、その上でこのIEAができた、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  206. 野間友一

    野間委員 お話を伺いまして、増田長官は善人かあるいは腹黒いかどちらかだと思うのですけれども、石油の節約の問題について考えてみましても、これはIEAでも検討されて、日本も基本的にはこれに合意していますね。私は、節約そのものについてとやかく言うことは考えていないわけですが、問題は、IEAのここで計画しておる節約、これなんです。これは米原議員も当委員会で指摘をしましたが、アラブ産油国に圧力をかける手段にこの節約問題を利用しておるというのが、これはアメリカの実態だと思うのですね。これも引用されたと思いますが、例の二月三日のキッシンジャーのナショナルプレスでの演説、IEAに対する提案としてこういうように言っていますね。「IEAの目標として、七五年に二百万バーレル/日、七七年に少くとも四百万バーレル/日の節約を提案する。これが達成されれば、景気が回復した後にでもOPECの生産削減が困難となり、価格引下げと供給増加への圧力が高まろう。また一九七七年までに産油国の中に国際収支赤字に転ずる国が出、この結果産油国同士の輸出競争が高まり、禁輸や価格を武器として使う力が弱まることになろう。」こういうふうにキッシンジャーは提起し、これをIEAの中で提案する、こう言っていますね。IEAはこのアメリカの提案に基づいて節約の方針を決めた。  このように、節約の問題一つとってみましても、アメリカの対アラブ政策、これは明らかで、IEAも、またそれに参加している日本、これもそれに基づいて動かなければならぬし、動くということになろうかと思う。これはキッシンジャーがはっきり言っておるわけですからね。これは否めない事実なんです。このことはとりもなおさず、アメリカの対アラブ政策、これはどうなのかということが、この提案の中にはっきり出ておると思うのですね。こういうのを一体どういうように認識あるいは評価されるのか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  207. 増田実

    ○増田政府委員 節約の問題につきまして、これは産油国に対して強圧を与え、あるいは敵対するための一つの戦略手段というとらえ方も一部にありますが、節約につきましては、たとえばイランのパーレビ皇帝その他産油国の首脳者も、世界はもっと節約を行うべきだということを公式の場で説いておるわけでございます。石油は人類の貴重な資源であり、またそれは有限のものである、従来は石油というものが余りにもむだに使われている、これをもっと節約すべきだ、ことに消費国、大消費国は、従来の使い方について反省すべきだということをしきりに説いておるわけでございます。そういう意味で、私どもは日本が節約に努めることが直ちに産油国から敵対だということにとられることは、これは全くないと確信しております。  それから、キッシンジャーの演説につきまして、これはいろいろの演説があります。ニューズウィークで、どういうようにキッシンジャー国務長官が言ったとか、そういうのが出ております。ただ、私どもが節約というものに努めているというのは、むしろ世界的な立場に立ちまして貴重な石油を節約するということでやっておるつもりでございます。
  208. 野間友一

    野間委員 私は総論的なお答えを求めておるのじゃなくて、いま指摘したキッシンジャーの演説の内容、これはずばりそういうことを言っておるでしょう。ですから、私は、あなたは善人か腹黒いかどちらかだと言ったのですがね。「これが達成されれば、景気が回復した後にでもOPECの生産削減が困難となり、価格引下げと供給増加への圧力が高まろう。また一九七七年までに産油国の中に国際収支赤字に転ずる国が出、この結果産油国同士の輸出競争が高まり、禁輸や価格を武器として使う力が弱まることになろう。」とはっきり言っておるでしょう。ですから、これはキッシンジャー、とりもなおさずアメリカが、この節約の問題についてどういう基本的な観点からとらえておるかということが出ておりますね。いま読み上げたところ、これはまさにアラブに対する敵視政策、こういう節約を一つの戦略としてアラブに圧力を加えるということ以外にないですね、「圧力が高まろう。」とまで書いておるわけですから。ですから、IEAの中の親分であるアメリカがこういうような方針で提案し、これに従って、IEAがこれを受け入れてやっていくということになりますと、とりもなおさず、いま申し上げたような形で、IEAそのもののアラブ産油国に対する敵視というふうに考えざるを得ないと思うのですね。長官は盛んにアメリカを弁解されますけれども、こういうのを聞いたら、私が仮にOPECの一員であれば、とんでもないことだ、大変なことだということで腹を立てるのはあたりまえなんです。あなたがもしOPECの一員であって、キッシンジャーのこの話を聞いたら、あの人はりっぱな人だ、いい人だというふうに考えますか、それともやはりけしからぬ男だというふうに考えますか、どちらでしょうか。
  209. 増田実

    ○増田政府委員 私個人として、キッシンジャー演説、いま野間先生の読み上げられた演説の内容については、賛成しがたい立場であります。やはり今後日本エネルギーの安定供給確保いたしますためには、産油国と敵対をし、それを押しつけて解決するということは、私は不可能だと思います。むしろ産油国と十分話し合って、そしてエネルギーの世界における安定的な確保というものを図るべきだと思います。先般、キッシンジャーの知恵袋だと言われますエンダース国務次官補が日本に来たわけでございますが、そのときにも大臣がお会いしまして、エンダース国務次官補に対して、やはり日本立場としては産油国、消費国が十分に話し合って、そして今後の価格問題あるいは安定供給の問題を話し合うべきで、敵対関係でこの問題を解決すべきではないということをはっきり大臣から言われたわけでございますが、私どもは常にそういう立場に立っておるわけでございます。ただ、節約につきましては、これはアメリカのしり馬に乗ってということではなくて、やはり日本立場としても、また石油の性格からいいましても、日本が自主的にみずからの判断でこの節約は努めるべきものだ、こういうふうに思っております。
  210. 野間友一

    野間委員 公式に演説をやっておるわけですから、大臣とどういう話し合いをされたか、これはもう定かでありませんが、はっきりこういうことを言って提起して、しかもこの方針でやるということになりますと、その機構の中におる日本としては、結局それに従って動くということにしかならないと思うのですね。アラブがこういうのを聞きますと、腹を立てるのはあたりまえのことなんです。  だから、この発端をずっといろいろ考えてみますと、アラブ諸国が石油を武器に使う理由は一体何なのか、どこにあるのかということに返ってくると思うのですが、これは私から申し上げるまでもないことで、いわゆるイスラエルの侵略、これの張本人であり、またこれに加担しているということ、それからメジャーなどの国際石油資本の資源支配、これに対抗する天然資源の恒久主権、これの確立のために、一つの戦略としてアラブがいろいろ措置をするというのは私はよくわかるわけですね。それに対してまた強圧的な圧力をかける。しかも、これが自分のところだけでなしに、いわゆる同盟諸国を皆引っ張って、皆IEAの中に引き入れて、こういう政策を提案して、そしてこういう方針でやるということになりますと、これはとんでもないことだと思うのですね。ですから、長官はすぐ国内のいろいろな事情に問題をすりかえて答弁されますけれども、やはり国際的なエネルギー問題、特にアラブに対するいろいろな問題、これを考えて、本当に正確に位置づけて考えなければ、私は誤ると思うのですね。ですから、この前も大分論議したのですけれども、天然資源の恒久主権、こういう主張を認める、イスラエルなどの侵略、これに対して毅然とした態度をとるというような道をとるのかどうか、それともアラブに圧力をかけてこれを屈服させようというのかどうか。これは、私の考えでは二つに一つしかないと思うのです。中間の道はないと思うのです。後の立場に立つ限り、再び石油供給削減、こういうことに見舞われてもこれはいたし方ない、こういうことを私は考えざるを得ないと思うのです。  政府は、一方では親アラブ政策をとっておるのだ、こういうように言われておる。ところが、一方ではメジャーとかアメリカなどとも協調して、この共通問題としてこれを考えるのはあたりまえなんだということを言われる。ところが、後の場合にはいま申し上げたようないろいろな問題があって、長官がどう考えられようと、アラブ諸国が、これは敵対するものであるという認識、こういう位置づけをしておるということからいたしますと、いまの親アラブ政策、これは私は括弧づきだろうと思いますけれども、本当にアラブに対する政策をきちっとやられるなら、このキッシンジャー構想を中心としたこういうものをきちっと踏まえて対処しなければ、とんでもないことになるのではないか。いまの九十日備蓄の問題にしても、こういうような政策を日本がとり続ける限り、供給削減等々、こういうものに見舞われたときに弁解の余地もないのではないか。私も石油が欲しいから言うわけです。そういう点で、これは長官も百も承知の上で、ここでは適当にというと怒られますけれども、答弁されておりますけれども、この点についていかがでしょうか、これは大臣にひとつ答弁を求めたいと思います。
  211. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず、日本石油政一策の一番の目標は何かといいますと、これは安定的に石油供給を受ける安定供給確保、こういうことであると思います。それから第二が、価格の問題、できるだけ低廉な油を入手するということ、こういう基本方針が日本にあると私は思うわけでございます。  翻って、IEAの構成を見ますと、いま十八カ国加盟しておるわけでございますが、それぞれの国の事情が私は非常に違うと思うのです。アメリカの立場、ヨーロッパ各国の立場、ヨーロッパ各国におきましても、それぞれの国の立場が非常に違う。日本立場ももちろん非常にアメリカと違っておるわけでございます。特にアメリカの場合は、相当量の油を輸入しておりますけれども、その大部分はベネズエラとカナダ、近隣諸国から輸入しておるわけでございまして、中近東、特にアラブ諸国からの輸入というものはきわめて少ない。でありますから、仮にアラブからの石油がストップいたしましても、アメリカはさして痛痒を感じない。ところが、日本は御案内のように中近東諸国から八割の油を入れておる、こういうことでございまして、根本的にアメリカと日本の事情は違っておると思うのです。でありますから、一昨年の石油危機以来、アメリカ国内石油についての大統領やあるいはまた国務長官のいろいろな演説がございましたが、どうも首尾一貫していない、しょっちゅう変わっておる、こういうふうに私どもは考えるのです。アメリカの石油政策というものはどうももう一つ首尾一貫していない、そういうふうに考えまして、キッシンジャーがどう言おうと、フォードがどう言おうと、やはり日本日本立場から石油問題と取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに考えます。先ほどのお話を伺っておりますと、IEAの親分はアメリカだから、それに入ると日本もそれに引きずられるのじゃないか、そういうようなお話がございましたが、私は大分事情が違っておると思います。決してアメリカに引きずられておるわけじゃございませんで、先般も、先ほど長官が言いましたように、エンダースが参りましたときも、アメリカの考え方と日本の考え方の違う点等を明確に指摘をいたしまして、必ずしもアメリカの現在の考え方に同調しかねる、そうして当面の世界における石油政策の焦点は何であるか、必ずしもアメリカが考えておるようなことではない、こういう点も明確に話をいたしまして、エンダースも理解をいたしまして帰ったわけでございますが、決してアメリカに引きずられてすべての石油政策をやっておる、こういうことではございません。日本の事情が全然アメリカと違いますから、IEAには入っておりますけれども、そしてIEAの中におきましては同調的に行動することもありますけれども、必ずしもアメリカの立場とは同一ではない、違っておる点は明確にして、常に日本立場というものを明らかにしておる、こういうふうに御理解していただきたいと思います。
  212. 野間友一

    野間委員 アメリカと日本のそういうエネルギー、特に石油についての立場というのは違うという、これは事実そのとおりだと思うんですね。特にアメリカに比べて日本の場合の方がアラブとのかかわり合いと申しますか、関係が深いわけで、一たん事があると大変な打撃を受ける、これはそのとおりだと思うんですね。だからこそよけいに神経を使わなければならぬ。私は、主観的にいかに日本が善意であっても、あるいはいかに親アラブと言っておっても、やはり先ほどから申し上げておりますように、アメリカを先頭とするいま申し上げたような石油戦略、これを中心とした方針をもってやりますところのIEA、こういうところに入っている以上、やはりアラブからいろいろな冷たい見方をされるということは、私は無理もないことだと思うのです。その点について私は政府の認識は非常に甘い、これは非常に主観主義的じゃなかろうか、こう言わざるを得ないと思うんですね。去年の一月十一日付の、クウェートの「アル・ライ・アラム」という新聞がありますね、この主張を見ますと、こういうようなことが書いてあります。アメリカの提案した石油消費国外相会議出席を表明した国に対してアラブ産油国は非友好国として石油の積み出し禁止をとる、こういうのがあります。また、ことしの一月開かれましたOPECの特別閣僚会議、ここではアブデッサラム・アルジェリアの工業相が、OPECが国際経済の息の根をとめようとしているという主張は間違っており、IEAの創設はOPEC諸国に対する敵対行為として非難されるべきである、こう報告して、あげくの果てにはIEAの解体まで呼びかけている、これは御承知のとおりですね。ですから、IEAを産油国が敵対組織としてとらえ、これを非難していることは、このことから明らかだと思うんですね。いま大臣もいろいろ言われましたけれども、確かに大臣の言われることも私、わからぬことはない。しかし、いま申し上げたようにこういうIEAをどうとらえておるのか、IEAに加盟しておる日本をどうとらえておるのか、この点になりますと非常にシビアにアラブは考えているということもこれまた事実なんですね。そういう点から考えますと、私はやはりIEA、これについては相当大きな問題があるのじゃないか、こう言わざるを得ないと思うのです。この点について、いま申し上げたようにクウェートとかあるいはアルジェリアの例を引用しましたけれども、こういうふうに見ておるんだという認識はあるのでしょうか。そして、その上に立ってこれらの主張なりあるいは見解、このIEAの解体まで唱えておる、こういうものについて一体大臣はどういうふうに考えられているのか、お述べいただきたいと思います。
  213. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の初めにアメリカが消費国会議を呼びかけました当時におきましては、まだ、第四次中東戦争が終わって石油問題で世界が一大衝撃を受けたその直後でもありますから、消費国会議の呼びかけに対して、私は、いろいろな見方がOPECの諸国からも出たと思います。しかし、それからもうすでに一年半も経過いたしまして、事態も鎮静をいたしておりますので、この三月には御案内のようにパリで産油国、消費国の予備会議等も開かれました。不幸にいたしまして、本会議で取り上げるべき議題につきまして、OPEC諸国を代表するアルジェリア等から、一次産品問題等を取り上げるべきである、こういう議題についての意見が出されまして、それについての合意ができなかったために、あの予備会議は直ちに本会議へつながるという成果は得られなかったわけでありますが、引き続いて本会議を開くための努力を継続いたしましょう、こういうことで散会したことも御案内のとおりであります。  したがいまして、昨年の暮れにIEAができましたけれども、私はそのことがいま非常に大きなOPEC諸国との対立になっておるとは思いません。だんだんとやはり消費国側の立場も理解をされつつあるのではないか、こういうふうに考えておりますし、しかも英国を中心とするヨーロッパ諸国、それからアメリカ、日本におきましても、三月のパリ会議では第一次産品問題を取り上げるべきではないかという意見でありましたけれども、その後各国ともやはり一次産品問題を取り上げよう、こういうことに態度がすっかり変わりました。でありますから、私は産油国、消費国会議の開催ということも案外早いのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。アメリカ側に対しましても、日本といたしましてはアメリカの主張するフロアプライスなどを議論するよりも、やはり産油国、消費国会議の対話の場を早く持つべきである、そういうことを強調したわけでありますが、それに対してもアメリカは理解を示しまして、やはり対話の場を早く持とうという了解の上で積極的に動こう、こういうことで先方も帰ったわけでございます。そういうことでございますから、やはり月日のたつに従いましてだんだんとお互いの立場が理解されるようになりまして、おっしゃるようにIEAができたからといってすべてそれを敵対視する、そういうことは現在はだんだんなくなりつつあるのではないか、私はこう思います。  それから、やはり一昨年の秋のようなあれだけの一大衝撃を世界の全経済が受けたわけでありますから、そういう場合には消費国同士が寄り合ってやはり今後のいろいろな問題について議論をしていく、たとえば消費をどうするか、あるいは備蓄をどうするか、あるいはまた代替エネルギー開発をどうするか、こういうエネルギー全般の問題について討議を続けていくということは当然のことでなかろうか、 私はこう思います。それについての理解がOPEC諸国にできつつあればこそ、先ほど申し上げましたような産油国、消費国会議、こういうものも開かれる準備がいま進められつつあるのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでございまして、御指摘のように、すべてOPECとの対立という立場から議論を展開されるのはやや実情とは離れておるのではないか、こういうふうに考えております。
  214. 野間友一

    野間委員 いや、私はすでに出されておる資料に基づいてこれを分析し、組み立てたわけです。これはもうここでは繰り返しはしませんけれども、やはり私は大臣とは見方が違うと言わざるを得ないと思うのですね。特にこの備蓄の問題を考えてみましても、やはり国際的な舞台で議論になり、そして九十日が決まったということ、しかも考えてみますと、本当にアラブの問題について、これは国際的にも問題がなければ、何も九十日備蓄というものをとりたてていま考える必要はない。これはもう長官も言われたけれども、以前から備蓄の問題が確かに議論になったことは私も承知をしておりますけれども、しかし当面九十日という問題が出てきた背景について、これは国際的なそういう諸情勢を無視して考えることはできない。これは事実だと思うのですね。しかも、それについてはアメリカの意図あるいはIEAの意図、これは私は公式の文書で申し上げたわけですが、それに対するアラブの見方、これもアルジェリアの工業大臣等々、これは正式に文書で出たもの、こういうものを引用して申し上げたわけですが、そういう点から考えて、大臣のおっしゃることは私とは違うというふうに指摘せざるを得ないと思うのです。私は、そういう点から考えまして、果たして九十日にふやすということ自体が石油の安定供給に即したものであるかどうか非常に疑問に思うわけです。いまのそういうような外交政策の中で進めるということは、安定供給にむしろ逆行するのじゃないか、こうも思わざるを得ないと思うのです。IEAに参加している以上、九十日備蓄は、客観的にはやはりキッシンジャー構想などに結びついた産油国に敵対する行動になってしまうのじゃなかろうか、こう思うわけであります。  そこで、この矛盾ですね、先ほど大臣から矛盾でないんだ、産油国と消費国会議は、いま産油国も非常に理解の度合いが進んでおる、決して敵対するものじゃないんだという話もありましたけれども、私はやはり矛盾だと思うのです。特にエネルギー政策について言いましても、基本的にはアメリカとかメジャー依存からやはり日本は転換しなければならぬというように思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  215. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 OPEC諸国の動きといたしまして、六〇%のパーティシペーションあるいは一部の国の一〇〇%のパーティシペーション等がいま決まりつつあるわけでございますが、同時にあわせて、これまで非常に有利な立場にありましたメジャーの立場というものがさほど差がなくなった、これまでの有利性がなくなった、こういうふうな状態でございますから、今後は日本といたしましてもやはりできるだけメジャー以外のルート、DD原油あるいはGG取引というふうなことをやっていくということは非常に必要だと思います。ただしかし、過去何十年の間に世界全体に張りめぐらしておりますメジャーの力というものは一依然として非常に強大なものがありますので、そこらあたりとの兼ね合いを十分考えながらこの政策を変えていきませんと、トラブルが起こる可能性等もありますので、そういう点は十分考慮しなければなりませんが、方向といたしましては、メジャー依存から順次抜け出していく、脱却していくという方向で進めていかなければならぬ、こう思います。
  216. 野間友一

    野間委員 次に進みますが、いわゆる石油最低価格の問題でありますが、アメリカがIEAに提案していますね。ちょっと時間の関係で端的にお答え願いたいと思うのですけれども、この趣旨はどういうもので、日本はどういう評価をしているのか、お答え願いたい。
  217. 増田実

    ○増田政府委員 最低価格制度につきましては、石油依存を減らす、そのために石油にかわる燃料を開発したい、ただその燃料につきましても、価格が、わりに割り高でありますので、もし石油価格が大幅に下がりますと、その投資その他が全部失われてしまうわけでございます。そのために、つまり代替燃料の開発を促進するために、石油価格につきましてある一定の価格以下には下がらないという保証を得ようという考えでございます。  ただ、これは構想としては確かに一つ成り立つ考え方でございますが、各国の事情が非常に違います。代替燃料開発の可能性のある国、ない国、あるいは石油につきましても、たとえばイギリスのように、北海の開発で自給自足ができるようになる国の立場と、日本のように、いかに努力をいたしましても半分をさらに大幅に上回るパーセンテージの石油依存を続けなければならない国というものがあります。それからまた、具体的にフロアプライスを決めるに当たりましても、幾らの価格が適当かどうかということについてもいろいろ議論があります。  そういう意味で、フロアプライスという思想は、先ほど申し上げましたような考えで成り立っておりますが、これを現実に動かすためには、各国の立場も非常に違いますし、また具体的な価格を決めるについてはいろいろの議論もございまして、私はなかなかそう簡単に決まらない、むしろこの制度はなかなか動かないものというふうに思っております。
  218. 野間友一

    野間委員 石油が高くて困ると言いながら、他方では価格を引き下げられると困るということになろうかと思うのですね。キッシンジャーとしては非常に頭がいいというふうに私、この演説を読んで感じたのですが、一バレル十一ドルの石油価格は一九八五年に輸入ゼロをもたらすが、一バレル七ドルの石油価格では一日当たり五百六十万バレルの輸入が必要となる、こう言っていますね。これはいま言われた代替エネルギー開発の問題に絡んで言っておるのですけれども、アメリカの国内の代替エネルギー開発、これによるエネルギーの自立計画は、こういうキッシンジャーの発想から言いますと非常に利益あるいは打算ですね、これによるものではなかろうか、こう思うわけですね。とにかく十一ドルであれば、これはもう高いからタールサンドなりオイルシェールを開発するんだ、安ければ買うんだ、しかし安くなると国内開発はできないんだ、こういうことで言っておるわけですが、日本も西ヨーロッパ諸国も、石油の値下がりが起きないための防波堤づくりに協力しなければならぬというようなことになるのではなかろうか、こう思うわけです。IEA関税などの提案さえも行われておりますね。これは私はもう大変なことになるのじゃないかと思いますけれども、この点についてはいかがですか。
  219. 増田実

    ○増田政府委員 このフロアプライス制度につきましては、先ほど申し上げましたように非常に問題点を含んでおるわけでございまして、これは先生からも御指摘がありますように、この制度につきましては、日本日本立場でこの問題を考えなければならないと思います。ただ、石油というものに対しましてアメリカその他各消費国がみんなで取り合いをするということでなくて、新しい代替燃料の開発は、世界の燃料の需給を緩和いたしますためにも、やはりその開発が必要だと私どもも思っております。ただ、それを開発するのに果たしてフロアプライスという制度がいいのかどうか、もし相当金がかかり技術投資その他が多いのなら、やはりその国がそれに対する補助金を出して解決すべきじゃないかとか、いろいろ議論がございます。そういう意味で、フロアプライスの問題につきまして、確かに日本立場は慎重な態度をもってこれに対処しなければならないと私どもも思っております。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
  220. 野間友一

    野間委員 キッシンジャーという人は、非常に正直な人かどうか知りませんが、非常に露骨で、これを読むとかちんとくるのは当然だと思うのですね。  この備蓄関連してもう少し進めますが、主要先進国の全エネルギーの海外への依存度、これは日本が八〇%強、それからイギリス、西独が四〇%台、アメリカが一〇%、これは国連資料のワールド・エネルギー・サプライズに出ておりますが、その中で特に石油の海外依存度を見てみますと、アメリカが三〇%、これを除きますと先進諸国ではいずれも一〇〇%近い、わが国とは差がないように一見思われるわけですが、問題は石油輸入の数量ですね。量で考えてみますと、わが国輸入数量とほぼ近いのはアメリカなんです。イギリスや西独、イタリア、フランス、これはわが国の約六〇%前後というのが実態だと思うのです。こういう数量から考えましても、日本の場合は石油の海外依存度はむちゃくちゃなんですね。  ところで、IEPによりますと、石油備蓄義務量は石油輸入量からはじき出していこうということになっておるようですね。そうしますと、九十日備蓄ということを考えてみますと、日本の場合は各国に比べて最も重い経済的な負担を担うことになるんではないか。これでは大変なことになるとよく言われておりますけれども、私も事実そのとおりだと思うのです。この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  221. 増田実

    ○増田政府委員 日本が非常に石油依存率が高いということは、ただいま先生から数字をもって御指摘のありましたとおりでございまして、現在七七%を超えているということで、これが総エネルギーの中の比率でございます。さらに、その七七・四%の石油をほとんど全部海外から輸入をしている。そうなりますと、その石油の一日当たりの輸入量を基準にいたしまして九十日の備蓄を図るということになりますと、相当大きな数量でございますし、そのための投資額も非常に大きくなるというのは、やはり御指摘のとおりだと思います。  ただ、今後日本石油の依存率を大幅に下げられるのなら問題ないわけですが、私どももいまいろいろ計算しております。今月の半ばぐらいには十年後のエネルギーの需給表というものをつくろうということで、現在作業中ですが、それの中間的な結論を見ましても、石油の依存率は十年後になっても六二、三%であろう、こういう状況でございます。そうなりますと、これは日本立場で考えますと、石油には相当大幅に依存せざるを得ない。石油がとまるという事態がいつ起こるかわからない。これは先ほど先生から中東の輸出禁止ということでいろいろ問題点を指摘されました。しかし、そういうことだけでなくて、いろいろな意味石油がとまるおそれというのはあるわけです。昭和四十七年四月十四日ですから、石油危機の一年半前に、「六十日分の達成を期するとともに、引続きその増強を図るよう指導助成を行なうこと。」という本会議の附帯決議もあるわけでございますが、いろいろな理由によってとまる危険というものはあると私は思います。日本石油に相当大幅に依存し、それからとまる可能性というのはいろいろな理由であるということになりますと、日本立場としては備蓄をやらざるを得ない。ですから、負担が諸外国に比して非常に大きいではないかという御指摘もありましたが、それはそのとおりでございます。ただ、これは日本エネルギー構造から言いましてそうせざるを得ない、こういうふうに私どもは考えております。
  222. 野間友一

    野間委員 しかも、その日本のリスクというか負担が非常に高いということ、しかもIEPの融通、これとリンクすると、これは本当に日本は何のメリットもないということにつながっていくと思うのです。先ほどからの論議でも、IEA、IEPの九十日備蓄、それとは関係ないんだ、日本の場合には日本独自の安定供給を考えてやったんだ、こういうように言われますけれども、しかしこのIEPの中での相互融通ということを考えてみますと、九十日備蓄が義務づけということになりまして、しかもその輸入量によって、それの九十日ということになりますと、日本が一番えらい目に遭わされる。メリットなしに、たくさん金をかけて備蓄して全部それを融通しなければならぬ、こういうことになるわけですね。ですから、そういう意味で、いままでの話を聞いておりましても国内の事情だけにしぼって答弁をされますけれども、IEAに入っておることが果たしていいのかどうかということになりますと、義務ばかりあってこれは全くメリットのないものになるのじゃなかろうかというふうに私は思わざるを得ないのです。  このエネルギーの問題は、非常にむずかしい複雑な問題は確かにあろうかと思いますが、日本の場合には、石油について言いましても多消費型の構造をとっておる。しかも、海外依存度が類例のないほど高いということ、こういう点から考えまして、本当にずっと論議になりますけれども、自主的なエネルギー政策をどうしてもとらなければ、アメリカのしり馬に乗ってやるとかメジャーに依存して——先ほどDDオイルの問題もありましたが、これをやらなければ大変なことになるのは事実だと思うのですね。価格が安いからということで石炭をつぶした。いまに至るも、石炭はあれだけ豊富な埋蔵量を持ちながら宝の持ち腐れで、そしてメジャーを中心とする石油に依存しておったけれども、あの石油ショックの中でひどい目に遭わされた。しかも、今後もこのIEAにとどまってこの中であれこれやりますと、国際的な関係の中でリンクして考えますと、これは特に中東との関係でどうなるかわからない。一たん事があった場合でも、日本の場合にはメリットがないということになる危険性が十分あるのじゃないかと思うのです。そういう点を踏まえて、九十日備蓄を急ぐということが私はどうも合点がいかぬわけです。  それから、冒頭に消防庁にも質問いたしましたけれども、この防災あるいは公害の問題、こういうものについての手だてが非常に不十分なままで、九十日備蓄だけを急いでやるということは、私はやはり問題だろうと思うのです。しかも、これにはずいぶん金がかかるわけですからね。だから、あれこれエネルギー計画について私も物の本を読んでおりますけれども、しかし本当にまじめに自主的なエネルギー計画、これはアメリカですら立てておるわけですからね。アメリカですらと言ってはなんですけれども、彼は彼なりに国益という観点からこういう露骨な演説までしてやっておるわけですね。私はこれはけしからぬと思いますけれども、それはそれとしても、日本独自の自主的なそういうエネルギー政策を本当に抜本的に早急にやらなければ、近い将来、供給安定どころか逆の結果を生む場合だって十分予測できるというふうに思えてしょうがないわけです。その点について、もう時間が来ましたので、私のいろいろな主張とかいろいろな論議を踏まえた上で、最後に大臣の所見を承りまして質問を終わりたいと思います。
  223. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 一昨年の石油ショックのときには、御案内のように国内におけるいろいろな不安から経済が大混乱をいたしまして、いわゆる狂乱物価という状態にまでなったわけでございますが、あのときに、もう少し日本備蓄量が多い、当分の間心配が要らない、こういうことであれば、当時の経済混乱の事情もおのずから変わった、こういうふうに私どもは理解をしておるわけでございます。そういうことから、石油企業としてのストックという点から言えば四十五日から六十日くらいのものだと思いますが、やはり国民経済全体という立場から考えまして、今後混乱を起こさない、そういう観点に立ちまして、どうしても最低九十日の備蓄は今後欲しい、こういうふうに考えておるわけでございます。資金も相当要るわけでありますけれども、先ほど来長官が言っておりますように、現在の資金に直しまして約一兆二千八百億、若干ふえるかもわかりませんが、この負担を全石油消費量にかけましていろいろ計算をいたしますと、大体一%前後石油価格が上がる、こういう程度のことでございますし、そのことによって日本の経済の基礎というものがしっかりしてくる、こういうことになるということであるならば、私はさして大きな負担であるとは思いません。そういう意味で、この九十日の備蓄政策だけは、日本のこれからの大きな経済政策の柱といたしましてぜひ実現をしたい、かように考えておるわけでございます。  なお、OPEC諸国との問題につきましていろいろ御議論がございました。日本はIEAに加盟をいたしましてIEAとしての立場からも行動しておりますけれども、しかし日本には日本の特殊的な事情というものがございますので、OPEC諸国とは特別のやはり経済関係というものを維持しなければならぬ、こういう立場から別個にいろいろな経済協力あるいはまた貿易の拡大、こういう面でいろいろ積極的に話し合いを進め、現にどんどんと仕事もやっていっておる、こういう状態でございます。決して、アメリカだけに同調していく、こういう立場ではございませんで、日本の独自の立場ということを考えまして、日本の国益とは何であるかということを考えながら十分これに対処してまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  224. 野間友一

    野間委員 ちょっと忘れていました。  もう一問だけ、法案の中身についてひとつ聞いておきたいと思いますが、この七条と九条ですね、これが場合によればずっと川下に全部備蓄をしわ寄せするというおそれがあるのではないかと思うわけですね。川上が力でもって下の方におろしていく。そこで、時間がありませんのでまとめて数点お伺いしたいので、ひとつお答え願いたいと思う。  一つは、定義のところですが、二条の四項ですね。石油販売業者の定義がありますが、ここで「石油販売量及び石油精製業者との取引関係について通商産業省令で定める要件に該当するものをいう。」こういうようにありますが、省令が欲しいわけですが、これまた時間があれば次回にということで、きょうは口頭でも結構ですから、石油販売業者の範囲ですね、これは一体どういうふうに考えておるのかということが一つです。  それから次に、七条の関係、それから九条の関係で、先ほども申し上げたように、常に保有しなければならぬという義務規定ですね、これに違反した場合には勧告、命令という措置がとられるということになりますが、この場合には先ほど申し上げたように、精製から川下に至るまで流通過程があるわけですが、いまの定義の二条四項の「石油販売業者」、これは省令で定める、これいかんによってはずっと下の方に基準備蓄量の保有を圧力で上からさせるということも十分私は考えられると思うのです。この場合、この七条に言う省令、この中身は一体どうであるかということが二点目です。  それから、九条についてですが、この場合も同じような意味におきまして、省令の中身はどうであるか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。
  225. 増田実

    ○増田政府委員 御質問の第一点の定義のところでございますが、石油販売業者というものにつきまして、これは「通商産業省令で定める要件に該当する」、これはどういう省令を出すのか、こういうことでございますが、これにつきましては、私どもが販売業者と考えておりますのは、いわゆる石油の元売りを考えております。ですから、いわゆる二次問屋とかあるいはその先というものは考えておりません。いま私どもの方で用意しております省令の案は、年間に三百万キロリットル以上を取り扱う販売業者、いわゆる元売りを想定しております。そうなりますと、具体的には大体元売りのうちの六社がこれに該当するということになります。この元売りには、ほかに精製と兼業しているものもありますが、これは精製業者で読みますから、そういたしますと、販売業者は非常に大きな数量を扱いますいわゆる一次の元売りということでございます。  それから、その次に七条の関係で、保有につきまして通産省令で定めるというところがありますが、これは保有形態を示す、つまりタンクの中にどういう形で保有するか、これをカウントする、こういうことで、いわゆる手続をこの規定で定める、こういうことでございます。  それから、九条の二項の御質問だったと思いますが、この取引関係のある分について行うということでございますが、これはいわゆる系列と申しますか、いわゆるグループ化しております。たとえばシェルグループということになりますとシェル石油昭和石油昭和四日市、こういうものを一グループと認めまして、その間の融通を図るということでございます。  先生から御質問のありました、いわゆる大きなところが下の小さいものにしわ寄せして、そこへ備蓄を押しつけるということは、これは私ども考えておりません。全部いわゆる精製、元売り、その段階で備蓄を持ってもらおう、こういうふうに考えております。
  226. 野間友一

    野間委員 終わります。
  227. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、明二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。   午後六時二十八分散会