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1975-05-23 第75回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月二十三日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       浦野 幸男君    小川 平二君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       橋口  隆君    八田 貞義君       森下 元晴君    山崎  拓君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       荒木  宏君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         外務省アジア局         次長      中江 要介君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業大臣官         房審議官    宮本 四郎君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君  委員外出席者         議     員 多賀谷真稔君         議     員 荒木  宏君         環境庁水質保全         局水質管理課長 山村 勝美君         大蔵省主税局税         制第二課長   島崎 晴夫君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         海上保安庁水路         部海象課長   堀  定清君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   田中 榮一君     藤井 勝志君   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 同月十五日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     佐々木良作君 同月二十三日  辞任         補欠選任   米原  昶君     荒木  宏君   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     米原  昶君     ————————————— 五月八日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第六五  号) 同月十五日  石油備蓄法案内閣提出第六二号) 同月十六日  合成洗剤の製造・販売使用禁止等に関する請  願(岡本富夫紹介)(第二八六四号)  同(沖本泰幸紹介)(第二八六五号)  同(北側義一紹介)(第二八七八号)  同(小濱新次紹介)(第二八七九号)  同(坂口力紹介)(第二八九五号)  同(田中昭二紹介)(第二八九六号)  同外一件(土井たか子紹介)(第二八九七  号)  同外二件(土井たか子紹介)(第二九二七  号)  中小企業事業分野調整確保に関する請願(  宇野宗佑紹介)(第二八七七号)  中小企業経営危機打開に関する請願加藤清  政君紹介)(第二八九四号) 同月十九日  中小企業経営危機打開に関する請願板川正  吾君紹介)(第三〇五七号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三〇五八号)  同(小川省吾紹介)(第三〇五九号)  同(大出俊紹介)(第三〇六〇号)  同(勝澤芳雄紹介)(第三〇六一号) 同月二十日  中小企業経営危機打開に関する請願久保等  君紹介)(第三一四八号)  同(兒玉末男紹介)(第三三四二号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正強化に関する請願荒木宏紹介)(  第三三四三号)  地熱資源開発促進法制定に関する請願足立篤  郎君紹介)(第三三四四号)  同外五件(黒金泰美紹介)(第三三四五号)  同外十九件(佐々木秀世紹介)(第三三四六  号)  同外二十四件(三枝三郎紹介)(第三三四七  号)  同外十四件(床次徳二紹介)(第三三四八  号)  同外二件(西村英一紹介)(第三三四九号)  同(三池信紹介)(第三三五〇号)  同(石井一紹介)(第三三八九号)  同(菅野和太郎紹介)(第三三九〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第三三九一号)  同外二件(志賀節紹介)(第三三九二号)  同(千葉三郎紹介)(第三三九三号)  同外四十九件(床次徳二紹介)(第三三九四  号)  同外十七件(楢橋進紹介)(第三三九五号)  同外二十五件(廣瀬正雄紹介)(第三三九六  号)  同外七件(松浦周太郎紹介)(第三三九七  号)  同(村上勇紹介)(第三三九八号)  同外十九件(中馬辰猪紹介)(第三四一七  号)  同外九件(松永光紹介)(第三四一八号) は本委員会に付託された。     —————————————本日の会議に付した案件  商品取引所法の一部を改正する法律案内閣提  出第五三号)  石油備蓄法案内閣提出第六二号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第六五  号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案多賀谷真稔君外十  九名提出衆法第一七号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案荒木宏君外二名提  出、衆法第三号)  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商品取引所法の一部を改正する法律案及び石油備蓄法案の両案を議題とし、政府より順次提案理由説明を聴取いたします。河本通商産業大臣。     —————————————  商品取引所法の一部を改正する法律案  石油備蓄法案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 商品取引所法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  商品取引所制度は、商品の公正な価格形成及び価格変動に対するヘッジングの場を提供することにより商品生産、流通の円滑化を図ることを目的としておりますが、近年における大衆参加増大等に伴い、制度の正常な機能を阻害する種々の問題点も生じております。すなわち、商品取引員営業姿勢財務内容に必ずしも十分ではないところがあり、委託者との間の紛議の発生委託者資産自己資産への不当流用、さらには商品取引員倒産による委託者債権の返還不能といった不測の事態が生ずる場合があることであります。また、過当投機等により取引所価格が乱高下し、制度目的である需給実態を反映した公正価格形成に支障を来す場合も生じております。  政府といたしましては、こうした事態を改善し、商品取引所制度の健全な運営確保するための方策について、産業構造審議会を中心に、種々検討してまいった次第であります。  この法律案は、こうした背景のもとに、昨年四月十七日の産業構造審議会の答申の趣旨に沿い、現在の商品取引所制度における弊害を防止し、その改善を図るための措置として取りまとめたものであります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、商品取引員受託業務の許可を四年ごとの更新制としたことであります。これにより、商品取引員営業姿勢財務内容を定期的に審査し、その資質の向上を図ることといたしました。これとあわせて、商品取引員兼業業務等についての届け出勧告制度の導入、外務員行為についての商品取引員責任明確化を図ること、委託者資産管理方法を定めること等により商品取引員受託業務適正化を図ることといたしております。  第二は、商品取引員に対する委託者債権保全措置強化したことであります。すなわち、受託業務保証金制度強化し、商品取引員が分離預託すべき預かり委託証拠金の額を引き上げることといたしました。これとともに、指定弁済機関商品取引員受託債務を代位弁済する制度を設け、委託者商品取引員倒産等の場合に指定弁済機関から弁済を受けることができることにいたしております。  第三は、商品市場における売買取引についての監督を強化したことであります。すなわち、大口の売買取引について取引所から主務大臣報告させるとともに、過当投機等が生ずるおそれがある場合にも主務大臣売買取引制限を行い得ることといたしました。  以上のほか、この法律案では、今後の商品取引所制度の健全な運営に資するため、商品の上場及びその廃止を政令により行うこととし、また脱退会員の持ち分の払戻額を定款で制限し得るものとする等の改正を行っております。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださるようお願いを申し上げます。  次に、石油備蓄法案について御説明を申し上げます。  わが国は、国民生活国民経済を支える重要なエネルギー源である石油のほとんど全量を輸入に依存しており、一昨年の石油危機の経験に照らしても明らかなように、石油供給の削減や途絶といった事態が生じた場合、きわめて大きな影響を受けることとなります。  世界の主要先進国は、このような石油の供給不安に対処するため、すでにかなりの水準石油備蓄確保しておりますが、わが国としても、緊急時における石油安定供給確保するため石油備蓄増強を図ることが、国民生活国民経済の安定を確保する上で不可欠であります。  このため、新たに昭和五十四年度末を目標とする九十日石油備蓄増強計画を発足させることとし、このために大量の資金負担が必要となることから所要財政金融上の措置を講ずることといたしておりますが、今回の石油備蓄法案は、こうした財政金融措置とあわせて所要石油備蓄量確保するための備蓄水準計画的な引き上げとその水準の維持に必要な法律上の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律要旨について御説明を申し上げます。  まず第一に、石油備蓄増強計画的に実現するための措置として、石油備蓄目標の策定、石油備蓄実施計画届け出等に関する規定を設けております。すなわち、通商産業大臣は、毎年度石油審議会の意見を聞いて次年度以降四年間についての石油備蓄目標を定めることとし、これを受けて石油精製業者石油販売業者または石油輸入業者のうち一定要件に該当する者は、毎年度、それぞれ次年度以降四年間についての石油備蓄実施計画を作成し、通商産業大臣提出することとなります。この場合において、通商産業大臣石油備蓄目標の達成のため特に必要があるときは、届け出のあった石油備蓄実施計画変更勧告を行うことができることといたしております。  第二に、増強された備蓄水準を維持するための規定であります。すなわち、石油精製業者等は、毎年度通商産業大臣が通知する基準備蓄量以上の石油を常時保有しなければならないものといたしております。  この基準備蓄量は、石油精製業者等の前年の石油製品生産量販売量輸入量等基礎として、その総量が、わが国の前年の石油消費量の七十日分から九十日分に相当する範囲内に入るよう算定されることといたしております。  また、この基準備蓄量以上の石油保有を担保するために、通商産業大臣は、石油精製業者等が、正当な理由なく基準備蓄量石油保有していないと認めるときは、基準備蓄量以上の石油保有すべきことを勧告し、また一定要件に該当するときは命令することができることといたしております。  以上のほか、本法では基準備蓄量変更石油保有量等帳簿記載石油需給適正化法に基づく対策実施告示期間における本法規定適用除外等について必要な規定を定めることといたしております。  なお、石油備蓄確保を進めるに当たっては、安全、環境対策上遺漏のないよう万全の配慮を払う必要があることは言うまでもないことであり、この点に関しては、関係法令の厳格な運用整備等により万全を期してまいりたいと考えております。  以上が石油備蓄法案趣旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 山村新治郎

    山村委員長 以上で両案についての提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 山村新治郎

    山村委員長 次に、内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案多賀谷真稔君外十九名提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案、及び荒木宏君外二名提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の三案を議題とし、政府及び提出者より順次提案理由説明を聴取いたします。植木総理府総務長官。     —————————————  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  6. 植木光教

    植木国務大臣 ただいま議題となりました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  独占禁止法については、昭和二十八年以来、実質的な改正は行われておりません。この間のわが国経済は、競争の中に生かされた民間経済活力に支えられ、目覚ましい発展を遂げてまいりましたが、最近における経済を取り巻く環境は著しい変貌を遂げるに至りました。したがって、今後のわが国経済の一層の発展を図るためには、情勢の変化に適応し、国民の理解の得られるルールを確立して、公正かつ自由な競争を促進し、自由経済に新しい活力を与えることが必要となったのであります。このような背景のもとに、今回、政府独占禁止法改正しようとするものであります。  この法律案は、以上の観点から、不当な取引制限等について課徴金納付を命ずる制度及び独占的状態が生じた場合における競争回復のための措置に関する制度を新設するほか、会社株式保有制限違反行為に対する排除措置等強化する等により、公正かつ自由な競争を促進しようとするものであります。  次に、この法律案概要を御説明いたします。  第一に、不当な取引制限等について課徴金を国庫に納付することを命ずる制度を新設することとしております。これは、いわゆる違法カルテル発生状況等にかんがみ、禁止規定実効性確保するための行政上の措置として、違法カルテルにより得られた経済上の利得について、その納付を命じようどするものであります。課徴金の額は、違反行為実行期間における売上額に、業種等に応じ、一定の率を乗じて得た額の二分の一に相当する金額とし、十万円未満の場合は、その納付を命じないこととしております。  第二に、独占的状態が生じた場合における競争回復のための措置に関する制度を新設することとしております。すなわち、一定規模以上の事業分野において、一定市場構造があり、価格利益等の面での弊害があらわれているという独占的状態があるときは、競争を回復させるための最後の手段として、営業の一部の譲渡その他必要な措置を命ずることができることとしております。これは、競争経済運営基本に置こうとするものであります。なお、この措置重要性等にかんがみ、その要件手続等につき配慮を加えております。  第三に、大規模会社及び金融会社株式保有制限強化することとしております。すなわち、大規模会社に対しては、その資本の額または純資産の額を超えて他の会社株式保有してはならないようにするとともに、金融会社に対しては、他の会社株式保有することができる限度を現行よりも厳しくすることといたしております。なお、規制強化するに当たっては、株式保有制限国策的見地等からの例外を設けることとするほか、証券市場中小企業への影響等を考慮して、所要経過措置を置くこととしております。  第四に、高度に寡占的な業種におけるいわゆる同調的な価格引き上げについて、その理由報告を求めるとともに、その概要を国会に報告する制度を新設することといたしております。  第五に、違反行為に対する排除措置内容強化することとしております。事業者事業者団体の行う不当な取引制限に対して、単にその排除を求めるだけではなく、違反行為影響排除するためにとることとなる具体的措置内容届け出等に関する措置を命ずることができるものとするほか、既往の違反行為に対する措置、不公正な取引方法に対する排除措置についても、その強化を図っております。  第六に、違反行為に対する罰則を強化することとしております。すなわち、他の経済関係法律との均衡をも考慮し、たとえば、違法カルテルに対する罰金最高額引き上げる等の所要措置を講ずることとするほか、違反行為者が法人である場合は、その最高責任者である代表者に対しても罰金を科することができるようにすることにより、責任の所在を明確にすることといたしております。  このほか、違反事実についての報告者に対する通知に関する規定を設けることとするとともに、所要整備を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 山村新治郎

  8. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 私は、ただいま議題となりました日本社会党提案私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、提案者を代表し、提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。  最近、独占寡占企業市場支配力による寡占価格形成カルテルの横行によって狂乱物価情勢がつくられ、企業行動のあり方、企業社会的責任が論議され、独占禁止法改正が叫ばれてきたのであります。  まず、現行独占禁止法の欠陥と問題点を述べたいと存じます。  第一は、市場構造規制についてであります。  わが国独禁政策は、独占禁止法過度経済力集中排除法との二本立てで出発し、集中排除法は、経済独占禁止法の番人に引き渡すための外科手術でありました。原始独禁法といわれる昭和二十二年法は、不当な事業能力格差排除事業会社株式保有原則的禁止等経済力集中を初期の段階で防止するよう規定していたのであります。しかるに、昭和二十四年、昭和二十八年と相次ぐ改正により、独禁政策は後退し続け、これらの規定は全く弱体化、無力化してきたのであります。  その後、政府高度成長国際競争力強化等を主軸とする経済政策産業政策の中で企業大型化及び合併が推進され、高度の寡占体制が成立してきたのであります。  昭和四十年代から上位企業生産集中度が急速に高まり、ことに八幡、富士製鉄会社合併以降、それまで熾烈な設備、販売競争を展開していた各産業界は一変して協調体制へ転換し、寡占価格形成し、狂乱物価への素地をつくったのであります。  現行独占禁止法は、すでに高度に寡占化したわが国経済においては十分機能し得なくなっており、独占・寡占化した企業に対しては単に表面にあらわれた行為規制だけではなく市場構造そのもの規制することが最も緊要であります。  第二は、企業集団規制についてであります。独禁政策後退の中で、株式保有と融資の組み合わせをてこにして、企業間の結びつきが強くなり、銀行と商社を核として巨大な企業集団形成されてきました。  公正取引委員会は、再度にわたり総合商社に関する調査報告を発表し、巨大な六大企業集団が八千以上の会社を傘下に抱え、その持ち株率一〇%以上の会社は、電力、ガス事業を除き、わが国会社資本金の四一%、総資産の三一%を占めている実態を明らかにし、経済の秩序を損なう危険について警告しているのであります。  企業集団法的基礎株式相互持ち合いであります。株式相互持ち合いは何ら資金の裏づけのない、単なる紙のやりとりにすぎないのであって、株式会社の原理に反するものであり、かつ株主総会が事実上社長会支配にゆだねられることになり、経済民主化を阻害するものであります。ゆえにイタリア、フランス、西ドイツにおいてそれぞれ民法または会社法禁止または規制しているのであって、最も相互持ち合いが行われ弊害の出ているわが国においてこれ以上放置することはできません。この際独占禁止法において株式相互持ち合い規制する必要があると思います。  第三は、カルテル規制についてであります。カルテル現代経済犯罪の典型ともいうべきものであります。  しかるにわが国においてはカルテルがはんらんし、昭和四十八年度独占禁止法違反排除措置勧告を受けたものは、六十六件のうち六十四件が値上げカルテル事件であり、それらは基礎資材であり、かつ全国規模において行われ、しかも累犯事件が多く、そのほとんどが一流会社であります。  まず、政府財界の癒着と非難されている勧告操短をやめさせ、財界カルテルマインドを払拭するため、カルテルは悪であり、やり得にならないよう、法の改正をしなければなりません。  第四は、消費者権利の拡大と公正取引委員会機構強化についてであります。  独占禁止法違反行為排除は、公正取引委員会の専権にゆだねられ、公正取引委員会の活動が停滞すれば、国民一般は法の保護を受けられない仕組みになっているのであります。国民積極的参加があって初めて法は有効な機能を発揮するのであって、公正取引委員会機構強化とともに消費者権利を拡大し、独占禁止法民主的運用を進めるべきであります。  以上、改正必要性を主要な四つの柱について述べましたが、今日、独占禁止法強化ひとりわが国のみならず、欧米先進諸国においても進められており、独禁政策強化こそ現代資本主義国における共通の重要課題であると言わなければなりません。  わが党は、独占禁止法が本来の目的を達成するよう改正案を作成し提出した次第であります。  次に、本法案の概要を御説明申し上げます。  第一に、一定事業分野において独占的状態があり、他の方法によっては競争を回復することが著しく困難であるときは、独占的状態排除措置として会社の分割、営業の一部譲渡等を命ずることができることといたしております。  なお、会社の分割または営業の一部譲渡の実施については、会社株主総会の決議を要しない旨を規定しております。  第二に、寡占商品であって市場占拠率一五%以上を占める事業者価格引き上げるときは、事前に公正取引委員会届け出るものとしております。なお、この場合その価格が不当に高いときは、引き上げ理由、原価等を公表することといたしております。  第三に、事業者価格の決定、生産数量等の制限、販路の制限などを共同して行う場合、すなわちカルテル行為は原則として禁止することを明示し、カルテルは悪であるという観念を明確にいたしております。  さらに、カルテル規制の実質的効果を上げるため価格カルテル以前に引き戻すよう命ずることができるようにいたしております。しかし、原状回復命令を受けた者が、六ヵ月以内にその価格引き上げざるを得なくなった場合は、その事由等を公正取引委員会届け出引き上げができることとし、なお届け出は、公表することとしております。  また、不況カルテルを認可した場合は必要な限度において価格構成、経理内容を公表するものとしております。  第四に、株式保有制限強化することとしております。  金融機関の株式保有制限の枠を現行の一〇%から五%に改めることとし、資本金百億円または総資産二千億円以上の大規模会社は、純資産の二分の一または資本金のいずれか大きい額を超えて、国内の他の会社株式を所有することを禁止することといたしております。  これらの株式保有制限のほかに、企業集団の紐帯となっている株式相互持ち合い規制いたしております。すなわち、資本金五十億円以上の会社で持ち合い株のうち同じ株数部分の合算が自己発行株式数の一五%を超えてはならないと規定しております。  第五に、現行法では合併営業の譲り受け、株式保有、役員の兼任は一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合に禁止することになっておりますが、この「制限する」を「減殺する」に改め、規制強化を図っております。  第六に、再販売価格維持契約行為は、いわば縦のカルテルとも言うべきものであり、流通段階の競争を失わせ物価上昇の一因とも言えるため、著作物を除きこれを認めないことといたしております。  第七に、独占禁止法違反行為者に対する制裁措置を厳格にし、これを強化することとしております。数多くの違反行為を繰り返す企業のやり得を防止するため、課徴金制度を設け、違反行為により、対価の引き上げを行った場合は、引き上げによる利得分を国庫に納付させることとしております。  また、不公正な取引方法を用いたものにも罰則を設けるとともに、法人の代表者にも責任罰を新設し、罰金の額を引き上げることとしております。  第八に、独占禁止法違反の事実があったときは何人も公正取引委員会に告発を請求できるとともに、無過失損害賠償の請求を地方裁判所に訴えることができる旨を規定いたしております。公正取引委員会違反の審決を確定した場合は、その審決に基づき違反行為があったものと推定して請求できるなど、消費者権利の拡大を図ることとしております。  第九に、独占禁止法違反者の累犯を防止するため、違反行為がすでになくなった場合でも必要な排除措置を命ずることができるようにいたしております。  第十に、公正取引委員会委員の増員、審判局の新設など、事務局機構の強化を図るとともに、公正取引委員会は、他の行政機関の措置がこの法律目的に照らして適切でないと認めるときは、その措置の是正について勧告できるよう権限を拡大することとしております。  以上が本法案の概要でありますが、最後に、今日わが党が独禁法強化に取り組んでいる態度について申し上げます。  独占禁止法は、巨大な企業の不当な市場支配力排除し、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することに目的があります。それゆえ、国民生活優先の経済への転換及び経済民主化政策の推進に当たって欠くことのできないものであります。独占禁止法強化することはさきにわが党が発表した国民連合政府基本政策に明示したところであり、本法案は近い将来、わが党の政権となっても実行し得るとの確信のもとに提出したことを明らかにしておきたいと思います。  本独占禁止法改正案につき何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことを御願い申し上げます。
  9. 山村新治郎

  10. 荒木宏

    荒木議員 ただいま議題となりました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由並びに概要提案者を代表して御説明申し上げます。  第二次大戦直後の財閥解体、経済力集中排除が実施されて以来三十年近くに及んでおりますが、この間の「高度成長」を通じて、わが国では、世界的な巨大企業、世界に類例を見ない総合商社、巨大な資本力を持った三菱、三井、住友など旧財閥系を初めとする独占企業集団、メジャーなど幾つかの重要産業を掌握している多国籍企業などが出現し、独占資本は急速に復活、強化して、重要産業はもとより、経済のすみずみまで支配するようになっています。たとえば、三菱、三井など六大独占企業集団は、わが国の全法人企業に対して、資本金で四一%、総資産で三一%を占めております。これらの独占資本は、巨大な資本支配力に物を言わせ、利潤追求に明け暮れ、カルテルや投機による価格のつり上げ、利益隠しなど横暴な反社会的経済撹乱行為を繰り返し、国民をこの上なく苦しめ、また国民経済に大きなゆがみをつくり出しています。しかも、巨大企業独占企業集団の横暴な反社会的行為が、経済危機の深まりにつれていよいよつのる状態にあることは、「石油危機」などの中で、やみカルテル、買い占め売り惜しみ、先取り便乗値上げなどに明確にあらわれたところであります。今日のこのような経済実態に照らして、従来の独占禁止法一定の取引分野での競争制限規制する、こういうたてまえだけでは、最大の独占体の重圧から国民の利益を守るには、はなはだ無力だということも明らかになりました。こういう中で、国民は、大企業の横暴な反社会的行為規制するため、独禁法の抜本的な改正を強く求めております。この改正要求は、狂乱物価、物隠しなどで苦しめられた国民が、その苦々しい体験を通じて発展させてきたものであり、当然の要求であります。  こういう状況の中で、いま必要なことは、現実の経済構造に対応した法律改正国民の要求にこたえる法改正を実現することであります。  本法律案は、以上の観点から、違法なカルテル価格の現状回復命令、やみカルテルによる超過利益を吸収する課徴金制度を初め、巨大企業独占企業集団、多国籍企業の反社会的経済撹乱行為規制するための原価、経理内容の系統的な公開、独占的状態に対する企業分割命令の制度を設けるほか、株式保有制限強化公正取引委員会の民主的な強化等により、経済民主主義を打ち立て、国民経済の健全な発展を図るものであります。  次に、この法律案概要を御説明いたします。  第一に、目的に、巨大企業独占企業集団、多国籍企業の反社会的経済撹乱行為禁止することを加えることにしております。  価格競争を含む市場競争によって消費者の利益を確保するため独禁法が運用されねばならないのは当然ですが、前に述べたごとく、わが国経済実態は、過去の自由競争の段階には引き戻せない少数の独占企業集団等の支配する段階にあり、独占禁止法自身もこの経済実態に対応するものに前進させる必要があります。  この点にかんがみ、巨大企業等が、不当に高い価格による販売、不当な土地・商品投機、農業・中小企業分野への不当な進出等の反社会的経済撹乱を行うことを禁止し、公正取引委員会がこれらの行為排除する措置及びこれら行為の防止のために必要な措置をとれることとしております。  第二に、巨大企業等の原価、資金運用等経理内容を系統的に公開させる制度を新設することとしております。  これは、寡占業種における価格の同調的引き上げや、巨大企業等の系列企業やグループ内企業に対する強大な支配力を利用した価格のつり上げに対し、民主的な規制を図るものであります。  第三に、違法な価格カルテルに対し価格の原状回復命令を出せることとしております。  すなわち、公正取引委員会は、違法な価格カルテルを行った事業者に対し、六月以内の期間を定めて、カルテル前の価格に引き下げることを命ずることができるとしております。これは、従来、カルテル排除されても価格は不当につり上げられたままとなっていた点を是正するものであります。  第四に、カルテルによる不当な超過利益を吸収する課徴金制度を新設することとしております。  すなわち、公正取引委員会は、カルテルによる価格引き上げを行った事業者に対し、当該引き上げ額にカルテル実行期間の当該商品等の販売数量を乗じて得た額を限度とする課徴金を国庫に納付すべきことを命ずることができることとしております。これは、いわゆるやみカルテルのやり得を許さないためのものであります。  第五に、独占的状態排除措置強化しております。  すなわち、公正取引委員会は、一定事業分野において独占的状態があり、他の方法では競争を回復することが困難と認められるときは、事業者に対し、会社の分割、営業の譲渡等の措置を命ずることができることにいたしております。  第六に、巨大企業及び金融会社株式保有制限強化することにいたしております。  すなわち、巨大企業に対しては、その純資産の額の二分の一または資本の額を超えて他の会社株式保有してはならないこととし、金融会社に対しては、国内の会社株式をその発行済み株式の総数の百分の五を超えて保有してはならないことといたしております。これは、巨大企業による系列支配規制を図るものですが、この目的達成のため、巨大企業会社の役員兼任の禁止も設けております。  第七に、公正取引委員会の専属告発権を廃し、国民のだれでも、直接、違反に関する刑事上の告発ができることとしております。  その他、巨大企業等の合併制限強化を初め、いわゆる証拠なきカルテルと言われる価格の同調的引き上げに対し、裁判所が当該価格の一時引き下げを命ずることができることとし、国民の利益擁護を図るほか、違反行為に対する罰則の強化カルテル適用除外の縮小等を規定しております。  なお、この法律の円滑な実施を図るため、政府公正取引委員会の機構の拡充及び職員の定員の増加を図るよう必要な措置を講ずることにしております。  以上が私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨でございます。  委員各位の速やかな御審議と御賛同をお願い申し上げます。
  11. 山村新治郎

    山村委員長 以上で内閣提出案、日本社会党提出案、日本共産党・革新共同提出案についての提案理由説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  なお、この際申し添えます。  公明党の独禁法改正案につきましては、現在参議院の商工委員会において継続審査となっております。—————————————————————委員会に予備付託になりましたならば、追って提案理由説明を聴取いたしたいと存じますので、御了承願います。      ————◇—————
  12. 山村新治郎

    山村委員長 通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  13. 佐野進

    ○佐野(進)委員 まず第一、通産大臣に、かねて質問を続けてきておる問題でありますが、機会が与えられましたので、さらに引き続き質問をしてみたいと思います。  通産大臣は、景気の回復については、積極的に総需要抑制の中においてもこれに取り組んできた、そういう意味において第一次、第二次の不況対策を行い、いままさに第三次の対策をとりつつある、こういうことをかねて内外において説明を行ってきておるわけでありますが、その後における経済情勢の急変と申しましょうか、変化に伴い、かねてから総需要抑制の最も強い主張者である福田副総理もその見解にやや柔軟性を見せてきておる、このように新聞紙等では報ぜられておるわけでありますが、通産当局として、現段階におけるそれら諸問題についてどのような認識をもって対処されておるか。特に事務次官の新聞記者会見における発表等々、いろいろな情報が錯綜して出されておりますので、この際、総合的な立場から大臣の見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近の経済の動きを見まするのに、一言で申し上げますと不況はほぼ底をついた、こういうことが言えると思います。特にごく最近の指標は、三月の数字でございますが、この三月の数字を見ましても大体底をついた、こういうことが言えると思うのでございます。しかし、何分にも石油ショックの起こりましたほぼ一年半前の水準に比べますと、鉱工業生産は約二割落ち込んでおるわけでありまして、こういうことを考えますと、なお基本的には景気の落ち込みが非常にひどい、こういうことが言えると思うのであります。  そういうことを勘案いたしまして、現在はさらに最近の数字を集計中でございますが、この数字を基礎といたしまして、六月の中旬には相当思い切った第三次の景気対策を打ち出す必要があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。幸い、現在の景気の認識及びこれに対する一連の対策が必要である、こういうことにつきましては、大体政府部内のコンセンサスも得られたように私は思いますので、目下関係の各省におきまして具体的にこれをどう進めていくかということについて調整中でございます。  どういう点で調整しておるかと言いますと、一つは需要の喚起ということでございますが、需要の喚起につきましてはやはり財政が中心になると思います。公共事業の繰り上げ実施等につきましては、第二次対策で若干行いましたけれども、第二次対策の内容は、御案内のように平年度並みの契約をするということでございますから、別に積極的な景気対策であるとは思いませんので、さらにこれを景気対策上必要とする限度まで実行していくということ、あるいはまた住宅であるとか公害関係の仕事を増加させていく、こういうふうな需要の喚起の面の調整が一つあると思います。  第二は、海外における金利水準が最近は非常に低下をしておりまして、特にアメリカの公定歩合も最近のうちに五回連続引き下げになりまして、現在は六%になっておりますが、ドイツも数回の引き下げを行いまして、四・五%というきわめて低水準でございます。  日本の金利水準が二年前に比べましてほぼ倍に近い、こういうことを考慮し、海外の金利の動向を考えますならば、日本の産業にとって現在の金利水準というものが非常に大きな負担になっている、こういうことが痛感されますので、これに対する対策をどうするかということにつきましても調整が行われておるわけでございます。  さらにまた、最近の貿易の動向でありますが、輸出、輸入、この面の数字を調べてみますと、輸出も、ことしの初めに想定をいたしました伸び率というものはとうてい確保できそうもありません。当初の目標よりも相当落ち込むのではないか、こういう感じでございますが、さらにひどいのは、輸入が大変落ち込んでおる。近隣諸国、第一次産品を生産している国々に対して、このために大変迷惑をかけておるわけでありますが、こういうことを勘案いたしまして、貿易対策をどう進めるか、こういうことについても目下調整が行われておるわけでございまして、以上のような諸点につきまして、各省間の調整が来月の中旬までにはできると思いますので、中旬までには相当思い切った景気対策が発表できる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、大臣に、これから質問する上に必要な事項として私はお伺いしておきたいのです。  この委員会で五十年度の予算等の問題を中心にして審議が行われた際、通産大臣と福田経済企画庁長官とがそこに並んでおられて、私が相当長時間にわたって質問したことを覚えておるわけですが、その際、経済企画庁長官である福田副総理は、総需要抑制の枠組みを取り崩すとか撤回するということは五十年度においては絶対考えていない、さらにいわゆる景気刺激という形の中における日本経済の将来の展望というものも、相当抑制した形の中で対処しなければいけない、こういうことを、私どもがもう総需要抑制策は形骸化したのではないかという点を中心にしながら追及した際、繰り返し繰り返し述べておったわけであります。  その中で際立って私が印象的だったことは、いわゆる経済成長率について、経済企画庁の方針の中に示されておる今年度の予測の中において、四・五%ないしそれ以下に成長を抑えるということが好ましい姿である、こういうような表現があったと確かに記憶をしておりますので、その線を追及いたしたわけであります。  前年度はいわゆるゼロ成長でありましたから、四・五%は、それを出発点とすると、その前年対比にいたしますと相当の落ち込みになるわけでありますが、それが今日のいわゆるエネルギー節減というか、石油価格の高騰に対処する上においてもやむを得ざる措置である、こういうように言われておったわけであります。  しかし、近時その見解が逐次変わりつつあるということは、先ほど私が申し上げたとおりなんでありますが、そうすると、いま通産大臣のお考えになっているその考え方は、一年半前、前々年度、まだ成長の過程にあったときの日本経済に対して二〇%程度の落ち込みである。前年度はそれがマイナス成長であるということを計算いたしますと、一体どの程度にこの景気刺激の目標を置かれ、景気回復の目標を置かれ、物価対策その他の関連の中で経済の立て直しを図ることが必要であると判断されておるのか、そのためにどのような対策をおとりにならなければならないと考えておるのか、この点ひとついま一度見解を示していただきたいと思うのであります。
  16. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済の現状から判断をいたしまして、相当思い切った第三次の不況対策が必要である、こういうことにつきましては、おおよその合意というものが得られておるわけでありますが、さてしからば具体的にこれをどうするかということにつきましては、私が先ほど大筋だけを申し上げましたけれども、その線に沿いまして、いま関係各省の間で細かい詰めを進めておるというのが現状でございます。  そういう段階でございますから、いま、さらに突き進んだことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、一年半前に比べまして二〇%の落ち込みになり、さらに一年前、つまり前年同月比にいたしましても一六%強の落ち込みになっておる、こういうひどい状態でございますから、相当思い切った対策が必要であるということだけは私は申し上げられると思います。
  17. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、現段階でなかなか具体的にお答えにくいということで、きわめて簡単な答弁に終わったと思うのでありますが、私ども心配することは、いわゆる景気の落ち込みが非常に激しいと思われた今年初頭におけるところの質問の中では、景気の落ち込みがひどくなることによって、いわゆるオーバーキルと申しましょうか、一般的に経済が冷え込み過ぎないような配慮のもとに経済運営を行っていかれることが必要ではないかという意味における質問をしたわけであります。  今日なお経済の落ち込みがきわめて大きいということは私も否定いたさないのでありますが、巷間そのことが逆に拡大解釈をされて、投機的な面、思惑あるいはその他の情勢がつくり上げられ、結果的にその期待が外れることによって、より大きなマイナス、そういうものが発生する危険性をはらみつつあるのではないかという危惧の念もまたあるわけであります。五ヵ月前における質問と今日同じことを聞きながら、その内容にニュアンスの差があるのはそういう点にあろうかと思うのです。  私は、いま大臣が言われたそういう第三次不況対策をとるということについて反対であるということを申し上げておるのではなくして、その不況対策を行う際におけるところのきめ細かな配慮、そういう配慮のもとにその対策を立てなければ、現在世上に行われておる一般的な風潮の中で、まじめに努力する企業ないしまじめに物事に取り組もうとする人たちに不測の損害を与え、投機的な形の中で物事に対処しようとする人たちに不当な利益を与える可能性、そういうものがやはりあるのではないか、そういう条件ができつつあるのではないか、こういうことを懸念するがゆえにいま質問しておるわけでありますが、特に近時の株式市場における動向あるいは商品市況、その他いろいろな段階におけるところの情勢等に対して、これらについての配慮、行政指導と申しましょうか、現状に適し、さらに将来の発展に即応した健全なる経済運営をしない限り、この暮れにおいてさらに思わざる物価高騰というような形、これは公共料金の問題とも関連いたしまするが、そういうような懸念を持つわけでございますが、こういう点についての大臣の考えをこの際聞いておきたいという意味で、私は前段の質問をしたわけであります。いまひとつ大臣の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  18. 河本敏夫

    河本国務大臣 この景気対策を進める上におきまして、いろいろ注意しなければならぬ点がたくさんあると思います。     〔委員長退席、前田(治)委員長代理着席〕 そういう点につきまして御指摘があったわけでございますが、ただ生産の動向が幾らか明るさを増しておりますけれども、在庫の水準というものはまだ非常に高い水準でありまして、在庫が非常に多いということ、それからさらにまた稼働率が七六%見当でありまして、これは平均でありますが、そういう状態を考えますと、物不足のために物価が上昇する、そういうことは考えられないわけであります。  ただ、私どもが心配をいたしておりますのは、企業がいまほとんど全部赤字経営になっております。赤字経営になっております理由といたしましては、原材料が非常に上がったということ、あるいはまた昨年の大幅なベースアップが合理化あるいは価格の修正によって吸収されていないということ、そういうこともありますが、やはり何と申しましても現在稼働率が非常に低いということ、そのためのコスト高になっておるということ、それから先ほど申し上げましたように金利の水準が高いということ、そういうことからほとんどの企業が赤字経営になっておるわけでありまして、チャンスがあればこの赤字経営を修正したい、こういう動きに対して私どもも十分警戒をしているわけでございます。  そこで、値上げの機運のある業種などに対しましては、来月第三次の景気対策をやる予定であるから、それによってどの程度稼働率が回復するか、さらにまた金利水準が低下をするか、あるいはまた貿易上の伸びがどの程度期待されるか、そういうことについてよく新しい見通しを立てて、その上で企業の原価計算、採算をとり直すように——現在は一番悪い状態でありますから、この一番悪い状態で採算をとり、原価計算をする、そして値上げをしたい、こういう動きに対しては私どもも厳に警戒をしているわけでございます。そういうふうな動きに対しても十分注意をしながらやっていきたい。  いずれにいたしましても、物価は小康状態を得ておりますけれども、これは単に小康状態を得ているというだけでありまして、本当に物価問題が解決したというわけではありませんので、十分そういう点を配慮しながら進めていきたい、かように思います。
  19. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は大臣にいまその点についてお伺いをしたい、こう思っておったわけですが、大臣から答弁がありましたので、前提の質問を省略しながら本論に入ってまいりたいと思いますが、結果的に景気対策、それに基づくところの在庫の調整、さらに生産の向上、そしてそれに基づいて物価をさらに上げないで済む、済ませる、非常にむずかしいかじ取りがいま通産行政に要請されていると思うわけであります。いわゆる恨まれなければならないし、喜ばれなければならない、幾多の相矛盾した点をとらえながら行政を進めていくわけでありまするが、景気刺激対策をとることによって諸物価の高騰を招く、その引き金を通産行政が行うということになったのでは大変なことになるのではないか、また再び大企業優先のそしりを免れない、こういう心配があるということで質問を申し上げたわけです。神戸製鋼が鋼材の値上げに踏み切ったとか、あるいはその他幾つかの大企業の製品値上げに対して、特に石油製品を初めとする製品値上げはやむを得ざる措置として当然これをしなければならないという空気が景気対策の中で認められつつあるというような印象を深くいたしておるわけでありまするが、これはあげて通産当局がこれに対してすでに行政的な指導をしておられるわけでありますから、今後これに対する取り組みというものはきわめて微妙な問題として解決をしなければならない、こういうことになろうと思いますが、景気対策との関連の中でいま一度ひとつ大臣の見解を明らかにしておいていただきたいと思います。
  20. 河本敏夫

    河本国務大臣 御指摘の点は今後景気対策を進めていきます上におきまして最大の課題でございまして、いま鉄のお話が出ましたが、鉄などはたとえば昨年の秋までは年率に換算をいたしまして一億二千万トンの生産でございましたが、現在は一億トンの生産に落ち込んでいるわけであります。それから、輸出貿易の状態も昨年の年末までは非常に好調でございましたが、一月以降急転直下落ち込んでおるというのが実情でございます。さらにまた、原料炭を中心とする原料の値上げが続いておる。こういうことから、このまま推移すれば非常に大幅な赤字になるということは明らかでございますが、来月の景気対策によりまして操業率も相当上がると思うのです。それからまた、貿易対策によりまして輸出貿易も現在のようなひどい姿からある程度修正されると思います。そういうことがございますので慎重に取り扱うように、こういうふうに期待をしておるわけでございまして、全部の産業にわたりまして十分注意をいたしまして、便乗値上げというようなことのないようにやっていきたい、こう思います。
  21. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この種の問題で質疑をいたしますと何時間を要しても終わらないわけでありますから、私は、いままで質問した事項はこれから質問する上において必要な最小限度の事項であるという問題に限って質問をしてきたわけであります。  そこでもう一つ、締めくくりとして大臣にお聞きしておかなければならぬことは、そういうようにいわゆる便乗値上げというか、景気刺激によって物価の上昇の要因をさらにつくり上げていくとか、あるいはアンバランスが発生することによって恵まれない業種、恵まれた業種等々の格差がますます増大していくとか、そういう点については第三次不況対策あるいはこれからの景気対策において十分なる配慮をしていただかなければならぬわけでありまするが、同時にここで最も大きな問題として考えなければならぬことは、いわゆる倒産あるいは倒産にまでいかない企業閉鎖その他による失業者の発生、あるいはその他いままでの経済政策の犠牲になっておられる人々、経営者と働いている人を含めてそういう人たちはすでに百万人を突破し、労働省の発表によっては景気対策が若干功を奏してこれがあるいは減るのではないかといわれる発表もありまするけれども、しかしおおむねの予測ではさらにこの失業者の数はふえるのではないか、そういう見通しもまたあるわけであります。企業倒産にいたしましても、現在小康を保ちつつあるとはいいながら、果たしてこのままの状況が続き得るのかどうか非常に大きな懸念が持たれておる。  こういうように、一方には物価の値上がりに関連するような動きがあると同時に、一方には悲惨な状況下に置かれざるを得ないような層、人たち、企業等々の存在することも否定することができ得ない現況であります。でありますがゆえに、このかじ取りというのは大変むずかしいと再三申し上げておるわけでありますが、これらに対して通産当局として、これは労働省の問題だ、あるいは他の問題だということでなくして、どのような倒産対策あるいは失業者対策等をお考えになっておられるか、大臣の総括的な答弁をいただいて、あと具体的に長官ないし各局長に質問をしてみたいと思うわけであります。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま御指摘のように倒産も小康状態にはなっておりますが、やはり毎月千件近いという数字が続いておりまして、水準としては私は決して低いとは言えない、依然として高い水準倒産が続いておる、こう思います。失業も、二月末現在で完全失業者が百十二万になっておる、こういう状態でございますが、いずれにいたしましても、この二つは経済活動が沈滞をしておるということから起こっておるわけでありまして、基本的にはやはり経済活動を活発にするということが根本だと思いますが、しかしながら経済活動が回復するのには相当時間がかかりますから、その間、特に中小企業関係に対しましては、金融上あるいはその他仕事の量の確保という面から十分な配慮を払っていかなければならぬ、こういうことできめの細かい対策を続けながら、全体としては景気の回復を図っていく、こういう方策をとっておるわけでございます。
  23. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、逐次具体的な質問に入ってまいりたいと思うわけでありますが、まず総括的な質問をしてみたいわけであります。  これは大臣でなくて、産業政策局長さんがお見えですからお伺いをしてみたいと思うわけでありますが、いま大臣の答弁の中に、景気の落ち込みは予想以上にひどかったけれども、やや底を打って、これから上昇の方向に向かうであろう、だがしかし輸出の延び悩みが深刻な状態としてとらえられるし、あるいは輸入単価の高騰ということによって日本経済に圧迫を加える等々、海外要因についての説明もこの対策の中で明らかにされておるわけであります。  そこで、私は、海外におけるところの経済情勢の把握がどう行われておるのか、このことが日本経済に対して、当面する現在の日本経済、将来の日本経済に対してどういうような影響力を与えるのか、これらの問題打開のために、いま積極的に経済協力という方向でその処置が行われておるわけでありまするが、その経済協力の情勢がいまどうあるのか、これは通産省だけで結構ですから、そういう意味においての現在の情勢についてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  24. 和田敏信

    ○和田政府委員 わが国の景気の動向と関連いたしまして、対外経済関係をどう考えておるかという御質問だと了解をさせていただきます。  御承知のように、本年度におきまして物の流れを見ましても、わが国の輸出入の合計は、年間ほぼ千三百億ドルになるのではなかろうかというふうに判断をいたしております。千三百億ドルの輸出入をいたすと申しますことは、これはわが国の近隣諸国に対しまして非常に大きな経済的な影響力を持つものでございます。また、海外投資に関しましては、現在までのところ、累計約百三十億ドルの投資をいたしております。これらの投資、ことに近隣諸国に対しましては、製造業等において、あるいは天然資源の開発等において大きなシェアが見られるところでございます。ただいま大臣から答弁申し上げましたように、近年わが国の、ことに近隣諸国からの輸入に関しましては非常に大きな縮小傾向が見られます。わが国の景気の動向にして、もしこれら諸国からの対日輸出というものに十分こたえられないということが長期に及びます場合には、これら諸国に与えますところの影響はかなり深刻なものとなるのではなかろうかというふうに考えます。  また、わが国の産業構造の持っていき方でございますが、これはわが国自体が省資源あるいは知識集約型の産業に、このような狭い国でもございますし、また知識の高い国民、勤勉な国民によって構成されておりますので、わが国自体の産業構造を何とか知識集約型のものに持っていきたいというふうにわれわれ念願いたしておりますが、その場合に、同時に世界の資源の最適配分という観点もございまして、これら近隣諸国との間の調和のとれた国際分業体制の樹立ということがぜひとも肝要ではなかろうかと考える次第でございます。  すでに五十年度予算におきまして御審議を賜って御承認を得たわけでございますが、ASEAN諸国を中心にいたしまして世界の六ヵ国に、相手国政府国民の立てられるところの経済計画に従いまして、わが国企業進出、海外投資が効率的に行われるように、それらの国々の真の経済発展あるいは民生の安定に寄与するような形での配慮を予算的にはさせていただいたわけでございます。総額は七千万円程度でございますが、わが国とこれらわが国企業がお世話になる地域との間のフリクションがミニマムになるように配慮をいたしていく所存でございます。  以上申し上げましたように、わが国の今後の経済運営に当たりましては、わが国と深い経済関係にあられるこれら海外諸国との間の協調関係というものを十分に維持し、日本とおつき合いすることによって当該国の経済発展も可能であるというふうな確信と申しますか、コンフィデンス、自信というようなものを相手国政府国民に抱いていただくことが、今後のわが国経済発展のためには必要不可欠の要件かと思います。また、出てまいります企業あるいは物の流れ等に関しましては、常時不断の国民的な努力を重ねまして、長くおつき合い願えるようなビヘービアを今後確定、確立していくことが肝要ではなかろうか、かように考えるものでございます。
  25. 佐野進

    ○佐野(進)委員 経済協力の問題についてはたくさん質問をしなければならない内容があるわけでありますが、きょうはその問題が主でありませんので、質問は省略いたしたいと思います。  ただ、いま私がお聞きしているのは、局長の御答弁にもありましたように、海外経済の動向というのは日本経済のこれからの発展にとっては欠くべからざる重要な要件になっていく。そうした場合、そういうような情勢に対して低開発国の——低開発国というと言葉が適切でないかわかりませんが、いわゆる先進国とそれに対比される国々との関係の中で、わが国経済的に発展を続ける上に積極的に取り組むべき要件、そういうものが今日の経済、いわゆる景気刺激策の中においてどういうように対処し、措置されていかなければならないのか。いまいろいろな数字を挙げての説明がございましたが、そういう点についてさらに突っ込んでお聞きをしたかったわけであります。  しかし、この面については時間的に余裕がございませんので、私は一応省略をいたしまして、いわゆる日本経済の現状に対して、海外における経済情勢の分析、ポストベトナムあるいは中東紛争その他各般の世界における動向を把握しながら、産業政策局としては取り組んでいかれるであろうと思うのでありますが、そういう点についていま一つ、簡潔で結構でありまするが、決意を披瀝して答弁していただきたい、こう思うわけです。
  26. 和田敏信

    ○和田政府委員 今後のわが国経済発展を考えます場合に、先生御指摘のように海外との関係の改善、推進ということが基本になるわけでございます。ことにわが国産業構造が省資源あるいは識集型に向かう新しい産業構造を考えます場合に、それが実際に効率的に回転し得るか否かということは、一つにはただいま先生から御指摘のございました中近東諸国との関係の改善、わが国が必要とする燃料に関しまして効率的にこれを入手できかつ先方も喜んでそうするという事態の確定が肝要であろうかと思います。また同時に、そのような燃料を使用いたしましてわが国経済運営をさせるわけでございますが、その結果産出いたしましたところの商品の対外輸出の円滑化、あるいはそのような商品を産出いたしますために必要な原材料の購入ということに関しまして、長期的かつ安定的、効率的にこれを入手できるような方途を、海外諸国の動向を常時不断に観察いたしまして、そのようなことを可能にならしめるような努力が最大限に必要ではなかろうかと考えるものでございます。
  27. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大蔵省の方来ておりますね。——いままで私が質問をしたことによって、私の質問をせんとする意図というか考え方、こういうことについては聞いておられて大体おわかりになったと思うのであります。  いわゆる日本経済の現況の中で景気対策をこれからとり続ける、そういう形の中で犠牲者を少なくし、安定した経済発展を図っていかなければならない。その意味において、物価の上昇も抑えなければならないし、製品価格の便乗値上げも抑制しなければならない、そういうようなことになっていくと思うのでありますが、そういう情勢下において一番懸念されることは、結果的に不況の深刻化に伴い税収の落ち込みが必然的に発生してきているわけです。したがって、この税収の落ち込みをどうやってカバーして経済運営を図っていくかということが大蔵当局として緊急の課題になっておると思うのです。  そういうような情勢の中で、財政危機に対処する大蔵省の方針として、物品税率を一律二〇%上げる形の中で増収を図りたいとか、付加価値税を導入する形の中において増収を図りたいとか、いろいろな新しい試みがなされているやに報道されておるわけであります。しかし、これらの措置は一歩誤るならば物価の上昇をもたらし、あるいはこれに関連する大多数の企業、経営者あるいは消費者にその負担がかかっていく、こういうような心配が大変多くて、これらの問題については多年の懸案になっておりますから、論議も盛んであります。現在の情勢の中で、大蔵当局としてはこの二つの問題についてどのように対処をせんとしておられるのか、将来の予想も含めてひとつ見解を示していただきたいと思うわけであります。
  28. 島崎晴夫

    ○島崎説明員 まず、物品税から申し上げます。  物品税につきましては、先生御指摘のような、恐らく新聞報道で御存じのことと思いますけれども、まだここで申し上げますような内容の検討というのはいたしておりません。ただ、物品税につきましてはいろいろな問題がございます。物品税は御承知のように高級な奢侈品、それから便益品、それから趣味嗜好品、そういった物にかけるのがたてまえになっておりますけれども、法律に特定の物品の名前を書きまして、それを対象とするというたてまえになっておりますために、いろいろと取りこぼれが生じております。最近の消費の多様化、高級化に伴いまして、デパート等に参りましても相当高額の商品が出てまいっておりますけれども、これについて課税が行われていない。それが果たして妥当であろうか。高級品に対する消費、その消費の態様に示されるところの担税力というものに着目しまして物品税というものは課税するわけでございますので、そういった物品税課税の根本趣旨から考えまして、いまのような状況というのが妥当かどうかということは検討しなければいかぬと思っております。しかし、それにいたしましても、現状ではまだここで先生に御報告なり申し上げられるような状況には検討は進んでおりません。  それから次に、付加価値税について申し上げますが、付加価値税の問題につきましては、酒、たばこの審議の際に大蔵委員会におきましていろいろ御質疑のあったところでございます。付加価値税につきましては、今後社会保障の充実も必要でございますので、そういった財政面からの需要と、それから今後の経済成長の状況というものを考えますと、いままでのわが国の税制の構造でございますところの直接税にウエートを置いてきたという方式では限界があるのではないだろうかと思っております。したがいまして、直接税にのみこういった財政需要を求めるということには限界がございまして、間接税の充実を図っていくことも必要であろうと考えております。そのための方策として付加価値税、一般消費税の導入ということも検討に値する問題だとは思っております。ただ、この付加価値税導入につきましてはいろいろ問題がございます。先生御指摘のような物価の問題もそうでございますし、その他もろもろの検討を要する事項がございます。わが国に入れたときの影響というものは大きいわけでございますから、そういった問題を含めまして慎重に検討していかなければいけないと思っております。したがいまして、将来の検討課題としまして、今後検討を進めていくということになろうかと思います。
  29. 佐野進

    ○佐野(進)委員 もう一回課長さんに質問をしてみたいと思うのです。  そうすると、物品税率一律二〇%引き上げということは考えの対象にない、個々の物品について、いわゆる奢侈品その他一般庶民生活に関係のない部面について検討しておる、そういうように解釈していいということですね。  それから、付加価値税の導入については与える影響が大きいので慎重な配慮のもとに対処しておるが、この問題についても当面即これを導入しどうこうするという考えはない、こういうぐあいに理解していいわけですね。
  30. 島崎晴夫

    ○島崎説明員 物品税の改正をやりますときには、いままでの経緯をごらんになればおわかりになると思いますけれども、税率なら税率だけをいじくるとか、あるいは免税点だけを引き下げるとか、あるいは掲名物品に新たな物を加えるとか、特定の一つのことだけをやるという仕組みにはなっておりません。税率も手直しすれば新規物品も入れる、それから免税点もそれに対応しまして検討するということで、物品税の体系全般にわたりまして包括的に再検討をやっていくということでございます。ですから、税率だけを二〇%上げるということがないのかとおっしゃられますと、それは絶対にないということも申し上げかねますが、いままでの経緯から見ると、新規物品を探したり、それから消費の態様に応じて税率をどうするのかというようなこともあわせて検討するのが常でございます。そういった意味での物品税の全面的な見直しというものはやらなければいけない時期にはなっておると思っております。  それから、付加価値税につきましては、先生いま御質問のようにいつからやるのか、それからさしあたって、たとえば五十一年度はやらないのかというようなことにつきましては、まだ何とも決まっておりませんので、まことに申しわけございませんけれども、いまここで御答弁できかねる状況でございます。
  31. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、次の質問に入ります。  そこで、中小企業庁長官お見えになっておられますからこの際お聞きをしておきたいと思うわけでありまするが、先ほど来質問をしておる中で、倒産問題あるいは失業者問題あるいは景気の落ち込みが中小企業関係に与える影響というものはきわめて大きい、こういうようなことで、再三にわたって本委員会においても論議が展開されておるわけですから、私その点を繰り返しまたここで質問をしてみようとは思わないわけでありまするが、ただ倒産という事態発生したそのときにおける取り組み、あるいは発生せんとする前における取り組み、そういうことについて、これからは景気対策の進行に伴い、そういういわゆる倒産防止に対する取り組みもきわめて進んでいる状況の中で発生してくる諸問題でありまするから、いろいろな面で非常にきめ細かな配慮をしていかなければならないと思うわけであります。  そういう面について二、三質問してみたいと思うわけでありまするが、まず第一に、倒産の現況と将来の見通し、これについてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  32. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 倒産の現況でございますが、昨年の十、十一、十二月と毎月千百件台の倒産が出まして、非常に高水準でございまして、私どもも憂慮をいたしておりましたが、今年に入りましてからは若干件数が減りまして、一月、二月が八百件台でございます。三月はまた千件台になりまして、千二十件でございまして、昨年の三月が千五十件でございましたので、昨年の三月よりやや低い水準にございます。四月は九百二十九件でございまして、三月より減っております。昨年の四月の水準よりも少ない件数でございまして、そういう意味では、ことしに入りましてから倒産の状況はやや小康を保っておる、こういう状態かと思いますが、ただ一件当たりの倒産の金額が非常に大口化いたしておりまして、たとえば一昨年は一件当たりの負債額が、倒産分につきましては約九千万円ぐらいでございましたが、四十九年度は大体一件当たりが一億五千万円ぐらいの金額になっておりまして、一口一口が非常に大口になっておるというのが特徴でございます。  それから、業種別に非常に広い業種にまんべんなく及んできておるということがもう一つの特徴でございます。  それから、倒産の原因といたしまして、昨年の前半は、過去の金融緩和期に非常に急激に業績を拡張いたしましたり、あるいはボーリング場とか不動産とか、そういった本職でない副業的な分野に手を出された向きが、金融引き締めによりまして倒産に陥る、こういう例が多かったのでございますけれども、昨年の後半からは売り上げの不振、受注高の減少といったいわゆる不況型の倒産がずっとふえておるのが特徴でございます。  今後の見通しでございますが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、中小企業に関しましても大体景気が底を打った、生産は反転してやや上昇に向かっておりますし、出荷もふえまして在庫が減少傾向に向かい始めております。そういう意味からいたしますと、この小康状態を保っております倒産が今後急激にふえるという懸念はやや薄らいだかという気もいたしますけれども、一面景気回復期にかえってまた金融機関の選別が強まるといったような過去の傾向もございまして、今後の倒産の動向につきましては依然注意を必要とするのじゃないかというふうに考えております。
  33. 佐野進

    ○佐野(進)委員 第二点目としては、いま長官から説明がありましたように、いわゆる倒産規模が大きくなっておる。件数は少なくなっておるが、規模が大きくなっておる。したがって、その規模が大きくなることによって与える社会的な影響は大きくなっておる。これは私どもよく耳にすることであります。四十億、五十億の負債を抱えて倒産しておる例も相当多いわけであります。  そこで、倒産した企業の幾つかを私も実地に調査をいたしまして、その内容がどういう内容によって倒産しているのかということについて追跡してみた経験というか経過があるわけです。その一つ、二つを実はここで具体的に答弁を求めたいと思っておったわけですが、時間がございませんので省略いたしますが、一つだけその内容について、長官のこれから取り組む心構えを伺っておきたいわけであります。  大体四十億、五十億という負債を抱えて倒産をいたしまする場合、それに関連する大企業として、必ずと言っていいほど一社ないし二社が介在しておるわけです。そして、その大企業に見放されたとき倒産という現象が起きるわけです。したがって、大企業が、倒産直前におけるその企業に対してどのようにてこ入れをするか、あるいはその企業倒産に至る経過の中でどういう取り組みをするかということが倒産件数を減らす最大の要件のような気がしておるわけです。  そこで、近時、中小企業庁初め各省庁が連携をとって、産業政策局なども課を設けて倒産防止に対して取り組みをされておるようでありまするが、その果たしてきた役割りは大変大きいと思うのであります。これは私は高く評価しておるわけでありますが、しかしその果たしてきた役割りの網をくぐるような形の中で倒産が行われる。それはさっき申し上げたように、大企業の身勝手な取り組み、結果的に大企業は最小限の犠牲にとどめるが、関連する多くの中小企業者は、その企業にとっては破滅的な大きな打撃を受ける例がたくさんあるわけであります。したがって、そういう点についての配慮、これからの景気刺激なり景気回復への過程の中でそういう配慮をせざる限り、倒産件数が少なくなったと表向き言いながら、倒産金額が多くなり、その悪い波及効果は大きい、こういうような点がはっきりしておるわけでありますので、中小企業庁長官産業政策局長お二人から、これらの状態に対する積極的な取り組みについての決意をひとつお述べ願いたい。具体的な問題が発生したとき積極的にこれに対処していくという決意を込めてその答弁をいただいておきたいと思うわけであります。
  34. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業倒産防止対策といたしましては、信用保険法に基づきまして、一つは不況の度合いの強い業種を不況業種として指定をいたします。そういたしますと、信用保証の面で通常の場合の倍額まで信用保証が受けられる、こういう制度があるわけでございまして、先般来すでに製造業の約半分に当たる業種を不況業種に指定いたしまして、金融面から倒産に陥ることのないよう資金の手当ての面でいろいろ配慮いたしておるところでございます。不幸にしまして企業倒産に至りました場合に、まず私ども考えておりますのは、そこに債権を持っております中小企業が関連倒産に陥ることを避けなければならないということでございまして、そのために一つは倒産企業自体を指定いたしますと、その倒産企業に債権を持っておる中小企業の場合に、いま申しました倍額までの信用保証を受けられるという制度がございます。昨年来の不況で倒産が非常に多かったわけでございますが、現在までに、五月九日現在でございますが、連鎖倒産を防止いたしますために、倒産いたしました親企業を信用保険法で指定いたしました件数がすでに八十企業ございまして、この企業に対して債権を持っておる中小企業は信用保証の面で特例措置が受けられておる、こういう形に相なっておるわけでございます。倒産いたしますと、そういう手で関連中小企業の救済を図っておるわけでございますけれども、それより前にその下請等を非常に抱えております企業倒産をしないということで危機を突破してくれますことが一番望ましいわけでございます。それにつきましては、中堅企業等の場合にはそれぞれの原局におきまして監視制度をとっておりまして、非常に資金繰りが困難になったという場合には直ちにその実情を聞きまして、関係の取引銀行等にいろいろ通産省から話をいたしまして、何とか倒産しないでやっていくような方法がないかどうか、これは関係金融機関にも十分連絡をとりまして、必要な救済策をとるように実際上いたしておるところでございます。  なお、倒産いたしました場合の債権に対する倒産企業資産の配分等につきましては、私どもとしては、大体大企業の場合にはいろいろ抵当権その他の措置をとっておるわけでございますけれども、そういったものを持っていない中小企業が非常に債権の回収に困難をするという面がございますので、極力中小企業にはそういう場合に債権回収の面で配慮をしてもらうように、大口債権者等にはいろいろ指導をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  35. 和田敏信

    ○和田政府委員 中小企業の問題でございますので、中小企業庁が、中小企業倒産あるいは倒産の前夜というような事情がございました場合には責任を持ってこれの処理に当たっておられるところでございますが、御承知のように通産省におきましては資源エネルギー庁を含めましていわゆる四原局というものがございます。これらの四原局は中小企業という名称は冠しておりませんが、その日常とり行います業務の大部分と申しても過言でないと思いますが、それは中小企業問題であるわけでございます。ことに生活産業局等におきましては、大企業ももちろんございますが、中小企業問題というのは非常に大きな問題ではなかろうかと思います。このように、通商産業省全体といたしまして中小企業問題には日夜取り組んでいるところでございますが、御指摘のような状態が発生するという場合には、あるいは発生するおそれがあるという場合におきましては、中小企業、大企業、両方補完し合って初めて経済活動が可能になるわけでございますので、そのような事態の把握がわれわれとしましては最大の任務と心得ており、また把握いたしましたら直そのとき以降、ただいま中小企業庁長官の方から答弁もございましたが、関係金融機関あるいは関連する大企業等と連絡をとりまして、いわゆる行政指導という形におきまして何とかこれが最悪の事態になるような事態を回避するために万般の努力を通産省の任務として実施をいたしておるところでございます。
  36. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この問題についてはさらに幾つかの課題があるわけでありまして、また改めて質問したいと思うのでありますが、先ほど質問申し上げましたようなことについて通産当局としてひとつ積極的な対処をしていただきたいと思います。  そこで、私は、この景気対策の中で幾つかの業種、先ほど大臣の答弁ではもう特定の業種ということでなくてあらゆる業種に悪い影響があらわれている、こういうことであったわけでありますが、その中の一つである繊維産業の問題について質問をしてみたいと思うわけであります。  繊維問題の対策については、不況が始まるとともに不況対策の最も重要な柱としてこの対策がとられてきたわけでありますが、先ほどの大臣、中小企業庁長官のお答えにもあるように、景気は底をついて上向きに転じつつある、こういうようにお話しになっておられますが、繊維の状況もそのように判断していいのか、そしてそのような判断の中で第三次の不況対策というものはどのような処置を考えておられるのか、この点について生活産業局長の答弁を求めます。
  37. 野口一郎

    ○野口政府委員 繊維産業のことにつきましてお答え申し上げます。  ただいま先生が申されましたように、繊維産業は非常な不況の底に苦しんでおったわけでございますが、ほかの産業に先駆けて、非常に早く不況に突入したというようなこと等もございまして、したがって在庫整理の関係から申しますと、他の産業に先駆けて昨年の秋から冬にかけましたときが在庫のピークでございました。その後全般的な立ち直りの状況等にも支えられまして、在庫は減ってきております。そういうような関係から申しまして、先ほど大臣が言いましたような大底を打ったという点につきましては、繊維産業も同様でございます。  最近の指標、まだ四月の指標は手にしておりませんけれども、三月までのマクロ的な指標あるいは各産地から入っております情報等を総合して考えまするに、二月、三月、四月と景気は上向いてきておりまして、回復の兆しがあるというふうに見ておるわけでございます。しかしながら、問題は、この回復の兆しが一体本物と申しますか、本格的なものであるのか、あるいは一時的なものにすぎないのか、したがっていまやや上向いたところが再び反動的に落ち込むと申しますか、上向きの傾向が横ばいなり下降というようなことになるのかどうかというような点につきましては、さらによく実態をきわめる必要があろうかと思います。また、回復の兆しがあると申しましても、それが一体最終需要で、つまりユーザーあるいは消費者が繊維製品について買いに回っているのか、あるいは中間需要、いわゆる仮需と申しますか、在庫増になっているのかどうか。特に繊維産業はいわゆる市況産業といわれておりますものですから、非常に景気の動きに敏感でございます。そういうようなことで、仮需要によってこの明るさが出てきているのか、その辺等やはり慎重に見きわめる必要があろうかと思いますけれども、全般的にあるいは概論的に申しますれば、回復の兆しがあり、明るさが見えてきた、こういうふうに考えてよろしいのではないか、こういうふうに考えております。
  38. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、非常に明るい見通しだということでありますし、私どもも一般的にそのようにも見ておるわけでありますけれども、しかしまだまだそうではないという話も私どもは聞いておるわけです。  そこで、それらの問題について私が調査した内容を細かに列挙しながら質問するにはもう時間がなくなりましたので質問することはできませんが、幾つかの点、この点だけについてはどうなっているのかということをひとつ聞いてみたいと思います。  いわゆる繊維の不況対策が打ち出されたとき、第一番目に、その在庫整理のために当時の中曽根大臣は、海外援助物資については繊維製品を最優先に取り扱う、特にその場合においてはバングラデシュを初めとする世界の各地域に対してこれを行うというような、そういう答弁を私どもの質問に対して答えておることを記憶しておるわけでありますが、この海外商品援助としての繊維品の活用の実績はどのような形になっているのか、この点をひとつこの際明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  39. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生いまおっしゃいましたように、需要喚起の一方策として、海外の商品援助をやる際にできるだけ繊維製品を中に加えてほしいということでございまして、その方向でいろいろ努力をしてきたわけでございます。  端的には、ただいま先生がお述べになりましたようにバングラデシュの商品援助でございまして、昨年の段階におきまして有償十五億円、無償十五億円というのがバングラデシュに対します商品援助でございましたけれども、その無償援助と有償援助の進行状況につきまして詳しい情報を私ただいま入手してございませんけれども、一応無償援助につきましては、昨年の十二月末に業界のミッションが現地に参りましていろいろ相談をいたしたわけでございます。内容といたしましては、一応綿織物と化合繊織物というものを中心といたしましてこの援助を行おうというような話し合いができたと聞いております。ただ、具体的に業界がどのようにいま商品を出しているかということにつきましては、その後の状況は詳しくは私ただいまは聞いておりません。それから、有償援助の方でございますけれども、これはやはり協定を結びまして、その協定ができたところで実行に入るわけでございます。予定によりますと、交換公文の話はすでに済んでおるということになっておりますけれども、それが現実にどうなったかは私まだ詳細は聞いておりません。
  40. 佐野進

    ○佐野(進)委員 これについては、ことしの大臣に対する一般質問の際にも私の方から質問して大臣の答弁も聞いておるわけですが、これはひとつ後でまたその内容等を検討して報告をしていただきたいと思います。  第二番目の問題としては、輸入規制の問題です。これは大変大きな問題でありまして、輸入規制しろということは本委員会においてもたびたび議論になった問題でありますが、この問題については大臣初め通産当局は、終始そのようなことは行い得ないというような答弁をされておったようであります。しかし、その後各国との話し合いによっていろいろな成果があらわれておるようでありますが、時間の関係もございまして、これまた私は四点にわたって一つ一つ質問しようと思ったのですができませんが、当局としてこの輸入規制問題に対してどういうような状況になっているといまここで報告でき得るのか、その内容について説明を求めたいと思います。
  41. 野口一郎

    ○野口政府委員 いまの先生の御質問にお答えする前に、ちょっと先ほどのバングラデシュのことでございます。  ただいま聞きましたところ、順調に援助は進行しておるようでございますけれども、ただどういうものがどれだけ出たかということは現在集計中なものですから、はっきりした数字はいまのところつかんでおりません。  それから、いま先生の御指摘の輸入規制問題でございます。そもそも論を申すのは避けたいと思うわけでございますが、ただ現在の輸入状況でございますけれども、これを最初に一言申し上げさしていただきますと、この五十年の一−三月の状況は、繊維製品全体、大体月平均九千万ドルぐらいというふうに御了解いただきたいと思います。この九千万ドルというレベルは、昨年の一−三月の大体半分でございます。さらに一年前の四十八年の一−三月、輸入が非常にふえ始めたのは四十八年のほぼ五、六月ごろから急増したわけでございますので、その輸入が急増する前の状況に対比いたしますと、私の記憶に誤りなければ、四十八年の一−三月が月平均で大体七千四、五百万ドルぐらいじゃないかと思います。したがいまして、その四十八年の一−三月の水準から見ますれば確かに高い、二割以上高い水準ではございますけれども、昨年の一−三月に比べれば半分である、こういう全般の状況であることを御認識いただきたいと思っております。  そこで、個々の物を見ますと、簡単に申しますと、絹織物を除きますと、現段階におきまして輸入問題というものは大体においてさっき言ったような全体のレベルから申しまして鎮静している、落ちついているというふうに考えてよろしいのじゃないかと思います。絹織物は先生御存じのように、確かに十二月ごろから特に中国からのものを中心にふえてきております。ふえたと申しましても、四十八年の非常にふえたピークから比べればもちろん低いわけでございますけれども、ともかく昨年の夏ぐらいの状況に比べれば確かにふえている。  そこで、いろいろな措置を講じてきたことは先生御存じのとおりでございますけれども、特に最近力を入れてやりましたのは、中国及び韓国、特に中国からの輸入が多いわけでございますので、中国に対しましては、たまたま日中の混合委員会第一回が開かれたわけでございますので、その席上の主要なテーマといたしまして日本の絹織物業界の現状を詳細に説明し、問題点につきましても説明し、相手方の理解を求めたわけでございます。中国といたしますと、日中貿易の現状が日本が著しい出超であるというような現状を踏んまえ、かつ貿易を拡大していきたいという国の方針からいって、日本の要求に対して直ちに応ずるということではない姿勢を堅持したわけでございますけれども、ともかく非公式ではございますが、日本の絹織物業界に迷惑をかけるようなことはしないというような趣旨、あるいは中国の国内の需給の問題から見まして、国内の需要も非常に広い、したがってそう輸出余力もないというようないろいろな点を申し、結論的にはさらに話し合いを続けよう、こういうことになっておるわけでございます。時たまたま広州交易会が開かれておりました。私どもも実はその交易会でどういうふうな出方を中国がするのか見ているわけでございます。まだ不幸にして数字の集計ができておりませんので、どういうふうであるのかは定かにはつかんでおりませんけれども、幾分かは中国側の方針が広州交易会に臨む向こう側の態度にはあらわれているというような話を断片的には聞いておる次第でございます。  したがいまして、絹織物につきましては、私どもは、われわれの話し合いを続けてきた結果等を踏んまえましてウォッチを続けてまいりたいと思っておりますが、状況に応じて適切な手を今後とも打つつもりでおります。
  42. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、この輸入規制問題についてはたびたび議論をしておるのであなたもよく御承知の問題でありますが、中国問題あるいは韓国の問題等については、それぞれ、いま局長の答弁にもありましたように、対策を立てることによって明るい見通しが立てられておる。他の地域に対してもそれぞれ具体的な折衝の中で秩序ある輸出を要請し、輸入も逐次平常の状態に入っている、こう言われております。しかし、一歩間違えば再びかつてのような状況になる懸念もあるので、この際一挙に輸入規制の法制化を図っておくことが必要ではないかという要望もまだ業界その他では非常に多いということを私ども聞いておるわけですが、大臣の現段階における御見解はどのようなものか、この際ひとつ明らかにしておいていただきたい。     〔前田(治)委員長代理退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕
  43. 河本敏夫

    河本国務大臣 依然として繊維の輸入規制をせよという声は強いのでありますが、何分にもわが国は自由貿易をたてまえとしておるわけでございますし、新国際ラウンドの話し合いもいま始まっておるわけでございますので、輸入規制はやらない。そのかわり相手国との話し合いによりまして秩序ある貿易に持っていく、同時に輸入業者等を指導いたしまして、統計等も正確なものをおくれないようにとりながらできるだけ指導していく、こういう形で秩序ある貿易に持っていきたい、こういう方針で臨んでいきたいと思います。
  44. 佐野進

    ○佐野(進)委員 これは改善されつつあるということでありますから、きょうのところはこの程度で質問を終わらせていただきたいと思いますが、大きな問題でありますので、いずれ機会を見て、さらに私も調査しながら質問をしてみたいと思います。  次の問題ですが、結果的に繊維産業は底を打って、いまやや向上しつつある状況の中にあるということで報告があるわけですが、問題点といたしましては、こういう機会でありますからさらに新構造改善の事業を推進する、あるいはまた思い切った抜本的な改善策をとる、かつてのイギリスのような思いを再びしないように対策をとる。小康を保ち、改善のきざしが見えてきておる、さらに底を打った形で上昇しようとしておる、こういうときにこそそのようなことが必要ではないかと考えるわけでありますが、これらの点について当局としてはどのような措置をしておるかということが一つであります。  二つ目は、過剰織機の問題については、すでに設備廃棄その他の措置あるいは転廃業についての措置等々がたびたびここで議論になっておるのでありますが、それらの問題が現在どのように進行しておるかということを聞いておきたいと思います。  関連いたしまして、公取には、繊維関係の不況カルテルの問題がいまどのような状況になっておるか、このことの説明を求めたいと思います。
  45. 野口一郎

    ○野口政府委員 過剰織機処理問題あるいは一般的に広く過剰設備処理の問題というのは、繊維産業の体質改善のために必要な事項かというふうに考えておるわけでございます。ただ、過剰織機につきましては、私どもの方はその前に、無籍織機処理のための特別の法律が昨年できましたので、それに基づいての処理がまず先行すべきであるという考え方で進んでおるわけでございます。一応四年間にわたりまして約四万六千台ぐらいの織機を処理するということで進んでおるわけでございますが、最近の不況の状況等にかんがみまして、各関係業界とも廃棄のスピードアップを心がけていると聞いておるわけでございますので、繰り上げ廃棄が行われるのではないかと考えております。  もう一つは、撚糸業界の仮より機の過剰設備の処理の問題でございますが、これは一応共同廃棄事業ということで、中小企業振興事業団の金融的な支援を受けながら計画が決まりまして、現在実施に移されておるというふうに聞いております。
  46. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 繊維の不況カルテルの状況でございますが、綿紡その他短繊維につきましてはこの一月からすでに四次にわたりまして延長いたしておりまして、先ほどからの通産省の業界についての見通しという点を考慮いたしましても、また私どもが把握をしております綿紡その他短繊維の業界の市況の上向き状況あるいは在庫の状況を考えましても、もちろん今後の問題というのは現在の段階で明確なことを申し上げるわけにまいりませんけれども、私どもの感触といたしましては、こういう不況カルテル制度は緊急避難の制度でもございますし、そういう趣旨から申しましても、また業界の状況から申しましても、そういつまでも続けるべきものでないというふうに判断をいたしております。
  47. 佐野進

    ○佐野(進)委員 まだ質問事項はたくさんありまして、私は一時間三十分の予定をもらっておったわけでありますが、趣旨説明が長引いたために、時間がないからやめろやめろと委員長がさっきからサインをしておりますので、大変迷惑をいたしております。しかし、協力をする意味において、まだ天谷審議官に大規模小売店舗法に関係する問題について質問をしたいと思っておりましたが、きょうはやめておきたいと思います。  いずれにいたしましても、大臣に冒頭質問申し上げましたとおり、景気対策の第三次不況対策を含めた経済情勢の中で、各業界における影響は大臣が楽観的に説明されている以上に深刻な状態にあると私も判断いたしておりますので、通産当局の積極的な取り組みを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  48. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 先刻委員長から、公明党の独禁法改正案についての発言で、党の手続上の点まで申し上げましたので、その部分は削除いたします。  この際、念のため改めて申し上げます。  公明党の独禁法改正案につきましては、現在参議院の商工委員会において継続審査となっております。本委員会に予備付託となりました場合には、提案理由説明を聴取いたしたいと存じますので、御了承願います。  以上であります。  午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時二十三分開議
  49. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。板川正吾君。
  50. 板川正吾

    板川委員 通産省と公取委に若干質問をいたしたいと思うのですが、まず第一に公取委に伺います。  きのうの夕刊を見ますと「焦点となっている鋼材値上げについて神戸製鋼所は二十二日、高炉大手のトップを切って線材、条綱の価格をトン当たり平均一万二千円強引き上げる方針を決め、二次製品メーカーなどの需要家と値上げ交渉に入ったことを明らかにした。値上げ時期は、交渉がまとまり次第実施したい意向で、六月中をメドにしている。」こういう報道がございました。神戸製鋼は線材なり条鋼なりを非常に中心的に生産をしておるわけでありますが、大手高炉メーカーのトップを切って値上げをする。数日前の新聞には稲山新日本製鉄の会長の、いずれ値上げをしないといけない、場合によったらば原価を公表してもよろしい、こういう発言なども出ておるわけでありますが、神戸製鋼は高炉メーカーの中でいえば一番下のクラスであります。Cクラスでありますが、この神戸製鋼がまず下の方のところで値上げをトップに出す、やがてその他の同業者もこれに追従して値上げをする、こういうことになりますと、独禁法上こういう行動に対していかなる措置がとれるのか。これはあと数週間たてばわかるわけでありますが、神戸製鋼が上げあるいはそのうちに大同が上げあるいは新日鉄も上げる、住金も上げる、日本鋼管も上げる、こういう形になってきた場合に、公正取引委員会としてはこういう措置については拱手傍観をするほかに打つ手はないのか、あるいは独禁法上、場合によっては打つ手があるのか、こういう点をひとつ伺っておきたいと思います。これは法制上の解釈であって、いまこの問題で直ちにどうこうせいという意味ではございません。しかし、予想されるように、各社がこの数週間のうちに軒並み値上げをするという状態になった場合に、独禁法というのは場合によったら機能するのかしないのか、こういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  51. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいまの神戸製鋼の問題でございますが、これからどういうふうな鉄鋼業界の値上げになっていくかということは、いまの段階ではわからないわけであります。したがいまして、この具体的な問題について独禁法上どういう問題があるかということも、いまの段階では何とも申し上げかねるわけでございます。  なお、一般的に同調的な値上げという問題があった場合にどうかということでございますけれども、現在の独禁法では、ただ同調的な値上げがあったからといいまして独禁法上問題にする規定はないわけでございます。
  52. 板川正吾

    板川委員 同調的値上げに対する規定というのは明確ではないことは事実なんです。しかし、独禁法二条の5にこういう規定があるわけであります。「この法律において私的独占とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法を以てするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」こういう規定がある。そして、第三条では、御承知のように「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」こういう明確な禁止規定がある。問題は二条の5の私的独占とはこういうものである、こういう規定がいわば解釈の根拠になり得ると私は思う。たとえばここで「結合し、若しくは通謀し、」これは一つの例を言っていると思います。「その他いかなる方法を以てするかを問わず、」、結合または通謀に類することかあるいはそのほか何らかの方法によって相手方と意思を通じ合うか、ここは問わないけれども、しかしそういう方法によって「他の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」こういうことになり得ると思うのです。ですから、「その他いかなる方法を以て」したかしないか、これは調べてみなければわからないわけですね。確かにいま各社が全然他との意思の通謀もしない、何もしないで、どうしてもこれはやっていかなければならぬから私のところは値上げをします、同じ状況が同業者にもあるから私のところでもやろう、こういう形で値上げをした場合に、あるいは独禁法が機能しない余地もあり得るかもしれない。しかし、「その他いかなる方法」、通謀か結合かそのほか何かの方法で意思を通じ合ってやる場合もあり得る。こういうことになれば、四十条の一般的な調査権に基づいて調査をしてみる必要がある。調査をしてみた結果そういうことがないということであれば、それはそれでいいが、調査ができるのではないか、こう思いますが、その点はどうお考えですか。
  53. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 この四十条発動の問題でございますが、四十条には御承知のように公正取引委員会がその職務を行うために必要があるときは調査ができる、こういうふうに規定をしておるわけでございます。四十条を発動いたします場合には、職務を行うために必要があるかないかという観点をケース・バイ・ケースにその都度公取として判断をいたしまして適用をいたしておるわけでございます。
  54. 板川正吾

    板川委員 もちろん、その四十条では「公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。」こう書いてあります。ですから、二条の5の「その他いかなる方法を以て」したかどうか、場合によっては意思を通じ合って、通謀し合ってやったかどうかわかりませんよ。だから、場合によっては——私はこの場合に、あるから入れ、そのことをいま強調しようという気持ちじゃない。それはいずれ事実が判明してから後の問題になります。ただ、法律の解釈上「いかなる方法を以てするかを問わず」こういうことをやってはいけないということが私的独占という規定になっている。だから、「結合し」「通謀し」以外の何らかの方法でやっていると思われる場合には四十条が発動できる、私はこう思います。この点についてはいずれ独禁法の問題の審議の際にもっと突っ込んで質問いたしたいと思いますが、いずれにしましても将来そういう疑いもあり得る。神戸製鋼ばかりでなく、各製鉄会社がどんどん値上げしてくればそういうこともあり得るということをひとつ念頭に置いて今後の対処をしてもらいたい、こう思います。四十条の解釈あるいは二条の解釈については、またいずれ後で十分質問をいたします。  次に、公取と通産関係ですが、下請関係法の運用状況というものについてこの際若干ただしておきたい、こう思います。  総需要抑制で昨年来非常ななべ底不況のもとにあるわけでありますが、こういう不況のもとで一番犠牲になるのは下請中小企業で、こういうところに犠牲がしわ寄せされるわけでありますが、最近における下請代金の支払い状況というのはどうであるか、調査をしておったならばその実態を明らかにしていただきたい。
  55. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 四十九年度の下請法の運用状況について申し上げたいと思います。  公正取引委員会は四十九年度におきまして、まず書面調査を親企業と下請事業者と両方に対して行っております。親事業者に対しましては一万四十五事業者、それから下請事業者に対しましては三千八百八事業、合わせまして一万三千八百五十三件の書面調査をまずいたしております。その書面調査によりまして違反の疑いのあるもの、これに対しまして立入調査をいたしておるわけでございますが、その書面調査によりますほかに、中小企業庁長官からの措置請求のありましたもの、これが五件ございます。それから、下請事業者から申し出があったもの、これが五件ございます。そういうようなものを総合いたしまして、立入調査をいたしましたのが八百四十二件でございます。この立入調査をいたしました結果、措置をいたしました件数でございますが、勧告をいたしましたもの、これは四件でございます。それから、行政指導によりまして是正をさせましたもの、これが八百三十八件でございます。  以上でございます。
  56. 板川正吾

    板川委員 私が質問したのは、そういう点もありますが、下請代金の支払い状況、こういう点の調査はどうかということでしたが、この点はどういうふうな調査の結果がありますか。
  57. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 まず、手形で支払っておりますその手形の期間でございます。これは通常交付しておりますものの手形期間百二十日以内のものの割合は次第にふえてきておりまして、四十八年の四月現在では製造業の平均で四八%であったものが、五十年の一月現在では六八%というふうにふえてきております。  それから、下請代金の支払い状況でございまして、滞留月数、滞っております月数でございますが、これは大体横ばいから若干低下の傾向といいますか、ほぼ横ばいでございますが、四十八年の四月現在で製造業平均で〇・八一ヵ月、それが五十年の一月では〇・七八ヵ月ということになっております。  それから、現金で払うか手形で払うかという現金支払いの割合でございますが、これは製造業の平均で四十八年四月が現金で払ったものが五四%、五十年一月で五三%と、これもほぼ横ばいか若干下回っている、こういう状況でございます。
  58. 板川正吾

    板川委員 私の調べた範囲といいますか、最近のあれがないのですが、四十九年四月の調査と四十九年十月のそれと半年間の動きを見ますと、現金で下請代金を支払っておるのが単純平均で四十九年四月が四八%、加重平均しますと三八%、それが十月になりますと単純平均が五一%になり、加重平均が四四%になっている、こういう状況でありますから、これを補外をすれば今日ではあるいは若干ずつ好転をしつつあるという状況かもしれません。ただ、こういう調査資料を見ますと、単純平均の場合よりも加重平均の方が現金支払いの率が低いということは、いわば大口の下請代金の方が支払い率が悪い、こういう傾向を示しておるのですね。ですから、小さい企業同士の下請よりもかえって大企業からの支払いの状況の方が逆に悪いというふうに資料から推定されるわけでありますが、こういう点はどう公取は考えておられますか。
  59. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいま先生おっしゃいましたような状況でございますが、これは内容をさらに検討いたしませんと、必ずしも大企業の支払いが悪いと言い切るわけにはまいらないかと思いますけれども、しかし全体として考えますと、そういうような傾向が出ておるということは言えると思います。
  60. 板川正吾

    板川委員 これは公取が調査したものを基礎にして実は言ったのですが、この現金支払い率の平均というのは、単純平均というのは件数の平均でしょう。それから、加重平均というのはウエートをかけた平均でしょう。だから、加重平均の方が単純平均よりも現金支払いの率が低いということは、大口の方が低いからそういうふうに変わったことだと思う。調べてみなくちゃわからぬという理屈じゃなくて、数学が真理である限りそういう計算になる、こう思いますが、その点はどうですか。
  61. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいま先生のおっしゃったとおりでございます。
  62. 板川正吾

    板川委員 この調査の中には、たとえば中小企業でない——法律中小企業というのは一億円以下の資本金ということになっておりますが、たとえば何十億か何百億かの大企業が一億円をちょっと超えたものに対する下請代金というのはこの中には入っていないわけですね。
  63. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 入っておりません。
  64. 板川正吾

    板川委員 中小企業庁長官に伺いますが、下請代金の支払いの実態として、一億円を超えている企業、一億十万でも百万でもいいのですが、法律中小企業の定義に入らないもの、しかも中小企業の上限と紙一重の企業ですね、それは中堅企業というかもしれません。これに対する大企業、大手企業からの下請代金の支払い状況というのは調査したことがございますか。
  65. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 私どもの方で大体毎月三千六百社に調査票を送りまして現金支払い比率でございますとか手形の日数とか、そういったものを調査いたしておりますが、これはいずれも大企業と申しますか、中小企業以外のものから中小企業への支払いといったような関係の調査でございまして、中小企業以外の企業同士の間の支払いにつきましての調査はいたしておりません。
  66. 板川正吾

    板川委員 中小企業同士じゃなくて、いわば中小企業でない範囲の一億円を超えているもの、たとえば三百億の大きい会社から一億をわずか超えた中堅企業に対する下請という関係は調査をしたことはございませんか。
  67. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 下請代金支払遅延防止法によりますと、大企業と下請である中小企業との間の代金関係ということになっておりますので、中小企業でない、つまり大企業と申しますか、大企業相互の間の下請取引につきましての支払い条件等の調査はいたしたことがございません。
  68. 板川正吾

    板川委員 下請代金支払遅延防止法は通産省と共管になっていますが、しかしこれは主として公取が中心になってやっておるわけですね。ですから、下請代金支払遅延防止法によればそういうことになっていますから、私は公取が調査をしてないというのはわかると思うのです。しかし、中小企業庁あるいは通産省、こういう産業官庁として、たとえば三百億の自動車メーカーの、一億を若干超えた中堅企業に対する下請取引の関係とかこういうのは、これは公取でなくて中小企業庁として調査をしてみる必要があると思うので、そういう点を調査したことはないかと質問しているわけです。ないのですか。
  69. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 定期的な調査としてはいたしておりませんが、最近そういった数字を業界から聴取したことはございます。
  70. 板川正吾

    板川委員 その調査によって、これは中小企業以外のもの同士の取引関係の下請状況ですが、これの下請代金の現金比率や手形サイトなどの状況はどうなっておりますか。
  71. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 自動車のいわゆるシャシーメーカーから自動車の部品業界への支払いでございますが、この部品業界も一次下請でございますので、大体資本金十億円前後のいわゆる中堅企業クラスでございますが、それに対する支払い状況を最近の三月あたりで見てみますと、非常にまちまちでございまして、七〇%以上も支払っている会社もございますし、五割前後の会社もございますし、全く現金を払わないで手形だけで払っておるという親企業もございましたり、あるいは四五%ぐらい払っておるという企業もございましたり、いわゆる親企業側の資金繰りの状況によりましてこの支払い状況は、現金比率は非常にまちまちでございます。
  72. 板川正吾

    板川委員 自動車に例をとってみれば、一番いい支払いをしておる企業では現金比率が七五%、手形サイトが六十日。その次にいいのが現金比率が大体五〇から六〇近く、手形が九十日。三番目にいいのが現金比率が四五、手形が九十日。この三社ぐらいまではまあまあいいが、そのほかになりますと、ほとんど現金支払いというのはなくて、手形払いで百二十日、長いのは百九十五日と、非常に支払い条件が悪くなっておるようです。  最近、新聞にこういう主張があるわけです。会社の嘱託の何がしというのが、下請代金一部現金化の法案について、ある新聞に投書してこういう趣旨を言っております。  「小企業、お得意なくす危険も。私の関係している会社は、資本金一千万円以下の小さな下請企業である。このたび、自民党は下請代金支払遅延防止法を改正して、支払い代金の四〇%を現金で支払うように義務づけるという。下請企業にとっては、手形より現金で受け取ることが大きなプラスであることには違いないが、これを朗報などと喜ぶのははなはだ危険である。これには多分にデメリットの要素を含んでいるばかりでなく、むしろ大企業救済ともとられかねない改悪である。まず、予想されることは、資本金一千万円以下の中小企業は、親企業より敬遠され、せっかく築いてきた取引関係を断たれるおそれがある。というのは、現金取引という親企業にとってはありがたくない相手に変わるからである。第二に、製品価格の値下げの口実を与えることになる。現金で受け取ることにより、製品原価の一部である金利が軽減するからで、その分だけ値下げを余儀なくされるおそれがある。いずれにせよ、親企業には有利、中小企業にはますます不利という逆効果が待っている。これでは弱者救済、中小企業救済の政治スローガンは「粉飾」にすぎないことになる。」  こんなことを言っておるわけでありますが、こういう中小企業の心配というものを、中小企業庁長官はどういうふうに考えておられますか。
  73. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 親事業者の準拠すべきモラルと申しますか、それを定めましたものが御承知のように下請振興法に基づきます振興基準という形で告示をされておりますが、それによりますと、親事業者は「下請代金はできる限り現金で支払うものとし、少なくとも賃金に相当する金額については、全額を現金で支払うものとする。」こういうふうに定めておりまして、実はこの振興基準に従いまして親事業者の方を指導いたしておるところでございます。  ただ、最近の長い不況で親事業者自体もなかなか資金繰りが困難でございますので、だんだん現金で払われる比率が下がってくる傾向にございます。手形がふえますと、手形の割引枠の問題で金融機関の窓口で締められるとか、あるいは金利負担の問題等もございまして、中小企業庁としましては、親事業者資金繰りの許す範囲におきまして現金の比率を高めていただくように希望をいたしておる次第でございます。  これを法制化するかどうかということにつきましては、また別のリアクションと申しますか、それに伴う経過的なデメリット等もあろうかとは存じますが、この趣旨中小企業資金繰りを救済する、特に労働基準法に基づきまして賃金は現金で払わなければならないことになっておりますので、その趣旨を親事業者に十分了解していただきまして、現金で払うことによって別途単価をたたくとか、あるいは仕事を減らしてむしろ自分でつくってしまうとか、そういう逆行的なことのないように私どもとしては期待をいたしたいと考えておるわけでございます。
  74. 板川正吾

    板川委員 余り答弁になってないのだけれども、たとえばこういうことはありませんか。要するに、いま自動車の例で言うならば、日産とかトヨタとかという大企業、まあ日産、トヨタは支払い条件がいいからそういう心配はないかもしれませんが、そのほかのメーカーになりますと、現金支払いゼロという状況があるわけです。そういう会社は、今度一億円以下の中小企業に発注する場合には少なくとも四〇%は絶対現金で払わなくちゃいけないということになれば、それを敬遠して一億円以上の企業に注文を出そう、こういうことになる可能性がある。そうすると、一億円以下の中小企業には注文が来なくなって不安だ、こういうことをこの新聞の投書者は言っているわけでありますが、こういう点の心配はありませんかといって聞いているわけです。
  75. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 現在は現金比率は法律で強制される項目でございませんで、支払い期日を受領後六十日以内ということと、手形で支払います場合には割り引くことのできる手形で支払うことということが法律の強制規定になっておるわけでございます。  現金で払う割合を法定するかどうかということにつきましては、そのメリット、デメリット、いろいろあろうかと存じます。デメリットとしましては、いま先生御指摘のように現金支払いを強制されるとすれば、極力下請に出さないでむしろ自分でつくってしまおうとか、あるいは下請側としては金利負担の関係が要らなくなりますので、その分だけこの際単価を安くさせようとか、そういったことを考える親企業があるいは出てくることは否定はできないかと存じます。
  76. 板川正吾

    板川委員 もう一つ問題があるのは、これも新聞に出たのですが、いまお話がありましたように下請代金を四〇%現金払い、まあ趣旨はわれわれも賛成でありまして、少なくとも下請関係が現金払いがゼロだとか百何十日だなんという取引は好ましい状態じゃない。ですから、給与相当分ぐらいは絶対に現金で払うべきだ、こういう主張も私どもわかりますが、先ほど言いましたように、自動車メーカーのA、B、C、一、二、三位、ここまでは四〇%以上の現金払いをしておりますから問題はない、しかしその他の数社はほとんど現金払いしてない。こういうものが、たとえば一億円以上の、若干一億円に毛が生えた中堅企業に下請に出しておる。その企業が今度は一億円以下の中小企業に下請に出す。一億円以上の中堅企業に対しては現金比率がゼロだというのが続いており、その現金払いがゼロであるのが、それを下請に出す場合には、現金払い四〇%払えということになると、その一億円に毛が生えた中堅企業というのが上と下との関係でなかなか厳しい状況になる。だから、下請代金の支払い方法については、建設業法じゃありませんけれども、大きい会社が小さい会社に下請する場合には、とにかくどういう場合でも四〇%以上現金で払え、こういう形の方がその問題が解決されると思うのです。これは議員立法らしいが、政府から出すわけじゃないでしょうが、たとえばそういう問題があるんじゃないか、こう思って、その意見を伺っておきたいと思うのです。
  77. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 自動車の場合には、先生御指摘のように一次下請、それからその一次の下に二次下請がおり、場合によりましては三次下請までございまして、数千の下請が一つのピラミッドをなしておるわけでございます。その一次下請と申しますのは、大体におきまして資本金十億前後の中堅企業が多うございます。この中堅企業が第二次の下請に仕事を出します場合には、いまの下請代金法の規制がかぶってくるわけでございますけれども、一番根元の親事業者でありますいわゆる自動車の組み立て業者と申しますか、シャシーメーカーと一次下請である中堅企業との間の取引につきましては、いずれもこれは資本金一億円以上の会社間の取引でございますので、下請代金支払遅延等防止法は適用になりません。もし、中堅企業と下請の、つまり二次と三次あるいは一次と二次の間の下請関係を、現金の比率につきまして法律で、ある比率の支払いを強制するというようなことを考えるといたしますと、根元の親事業者が、自動車で申しますならばそのシャシーメーカーがまずある程度現金払いをしてくれることが、それ以下の現金による支払いを容易にすることになるわけでございますので、そういった方向で指導する必要があろうかと存じます。ただ、親企業と申しますか、大企業同士の取引を、現金比率等につきまして法律で強制するかいなかは立法論としていろいろ議論のあるところかと存じますが、いずれにいたしましても、下請関係についてそういうことを法定するといたしますならば、それの適用にならない部分の大企業同士の取引につきましても、それに即した現金支払いが行われるような指導が別途行われないと、下の方の支払いも同じように困難になってくるのじゃないか、かように考える次第でございます。
  78. 板川正吾

    板川委員 法制化するしないは別としまして、そういうところにも問題がある。もし、将来法制化するような場合には、そういう点も実現可能な状態にすることが必要だろう、こう思います。いずれにしましても、下請代金は現金化を強制するということがあらゆる企業に適用されることが望ましいことでありますから、そういう問題点もひとつ考慮に置いていただきたい、こう思います。  次に、公取に伺いますが、この下請代金支払遅延等防止法によると、支払いを遅延した場合には延滞利子を払え、公取が規則で定めた利子を払え、こういう規定がございます。こういう規定が実際に働いておるんですか。こういう延滞利子を払った例が、たとえば昨年一年間どういう程度にあるのか、どういうケースでどういう程度にあるのか、その点を伺っておきます。
  79. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 この例はございません。
  80. 板川正吾

    板川委員 この下請代金支払遅延等防止法というのは、四条の二に「親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかったときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。」こういうふうに親事業者に義務づけをしております。こういう点は、実際を調査しておくれておった場合には延滞利子を払うべきだというような指導なり勧告なりをした例があるのですか。
  81. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 その例はないわけでございます。
  82. 板川正吾

    板川委員 これは通産省も公取も関係、共管の事項になるわけだと思うのですが、この現金化は、たとえば法律で決めたといっても、現にある法律すら働いていない。こういう状況では、法律をつくっても何らの意義がないわけじゃないですか。これは指導したという事実もない。下請代金支払遅延等防止法でいう納付をした日から六十日以内に代金を支払え、その支払い代金というのは現金が好ましいが、たとえ手形であっても六十日以内に割引可能な手形で払うべし、こういうふうに法律は書かれておるわけでありますが、この六十日以内に実際換金できないような手形が、百九十日とか二百日とかいうのも支払われておるんじゃないですか。一体公取なり中小企業庁は、こういう下請代金の支払い状況というのをどう把握して、これをどう指導されようとしておるのですか。
  83. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この下請代金支払遅延等防止法によります取り締まりは、公取と中小企業庁で共同でやっております。分担をいたしてやっておりまして、私どもが昨年度、四十九年度中に調査をいたしました数が約二万二千件でございます。一応違反容疑のございましたものが、昨年の四月から十二月までで二千三百件ございます。そのうちいま先生のお話しの長期手形、つまり割れないような長いサイトの手形を出したものというのが三百件強ございます。これにつきましては立ち入り検査をいたしましたり、中小企業庁なり通産局に呼びまして、割引可能な手形に差しかえるように指導をいたしております。また、六十日たっても支払いが行われていなかったというものが、二万二千件の中で約三百件ございまして、これも直ちに支払いをするように指導をいたしまして、大体行政指導によりまして是正はされておりますが、結局是正がされなかったものにつきましては、公正取引委員会の方に案件を送致をいたしまして、公取の方から勧告等を出していただく、こういうふうなことをいたしておりまして、四十九年度にすでに五件公取へ送りまして、あと三件現在手続中でございます。  なお、ただいま御質問のございました、支払いが遅延をしておる場合の延滞利息はちゃんと払われておるかということでございますけれども、期限が来ましても払っていないもの、あるいは非常に長い期間の手形を出しておるものにつきまして、要するに支払いをするように指導することに当面のところ精いっぱいでございまして、なかなか親事業者に向かって、延滞利息まで支払うように言うところまで実は手が回っていないというのが実情でございます。
  84. 板川正吾

    板川委員 せっかくこの法律でちゃんと決めてある。ですから、支払いをどうしても延ばしてくれという場合には、原則として延滞利子を払うのですよ、こういう指導をしなくちゃいけないと思うのですね。ただ、どうも百万円支払いが延滞しておった、三ヵ月延ばした、百万円を三ヵ月先になって払えばいい、こういうだけでは——当然この下請業者は、三ヵ月前に百万円もらえばそれが流用できる、しかしできない場合には、その間金を借りて利子を払って仕事をするわけでしょうから、そういう場合には、ただおくれているのを払えばいいというだけではなくて、法律上では公正取引委員会が決めた利子、日歩何銭なりというものを払うべきですと、指導する際には延滞利子も払うように指導するのが本当じゃないでしょうか。この点どうお考えになりますか。
  85. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 支払い等が遅延いたしております場合の事情を聞きますと、やはり資金繰りがつかないために支払いができない、こういうケースが多いわけでございまして、こういう場合には、親事業者が同じく中小企業でございます場合には、いろいろ政府資金のあっせん等をいたしまして支払いができるように援助をするというふうなことによりまして、この法律が守られるようにいたしておるわけでございますが、ただいまの延滞利息の点につきましては、先生のお話のとおりでございますので、十分今後気をつけたいと思います。
  86. 板川正吾

    板川委員 それから、これは法律で定めがあるのですから、指導されるときに——何ヵ月か前のものを、金繰りの関係でしょう、あるいはその企業も、上から支払われるものがちょっとおくれた、じゃそれが入るまで待ってくださいということなんです。だから、上の方もおくれた場合には払うという、せっかく法律で決めてありますから、そういう指導をされて、そして払うという原則を徹底させる必要がある、私はそう思います。現金が四〇%、五〇%、結構でありますが、現在ある法律が守られなければいけませんから、そういう点はひとつ守らせるように積極的な指導をしてもらいたいと思います。  それから、たとえばこれは名前は伏せますけれども、大手の大会社が四ヵ月据え置き、そして四ヵ月据え置いた後に払います、一〇〇%現金払い、こういうことなんかもあるそうですね。これなんかも実際は、じゃ四ヵ月間利子を払っておるのかどうかということも私は問題になると思います。書面で注文書を出す場合にその支払い条件が書かれておる。支払い条件が書かれておるが、どうもその書面交付をする注文書の中の支払い条件が不明確なものが非常に多いそうでありますが、こういう点も明確にして、据え置くんなら据え置き期間中何がしかの利子は払いますというような形でもなくちゃいけないんじゃないかと思いますが、いずれにしましても、この下請代金支払遅延等防止法が、いわばざる法といいますか、あっても、訓示規定的な法律で実際余り運用されていない。罰則もないということもあるいは原因の一つかもしれませんが、これはできれば罰則なしでもそういう法律趣旨に従って働くようにしなくちゃいけないんじゃないか。いつまでも罰則がなければ、これは訓示規定だから、そういうことがあるということを承知して、あとはやらなくてもいいんだというなら、将来罰則も考慮せざるを得ないんじゃないかと思います。  公取は勧告をして聞かなかった場合に、罰則的措置として公表するという規定がありますが、この公表というのがどのくらい活用されておりますか。
  87. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 いままでにまだ一件も例はございません。
  88. 板川正吾

    板川委員 いま言ったように、どんなに書面交付でしろといっても、その内容が手抜きをされて完全に書面で記載事項が書かれていかない場合も多い、延滞利子を払えという法律があってもやらない、あるいは悪質なものについては公取は公表という制裁方式をとっておりますが、これまた実際は運用されていない。こういう状況じゃ、いわば本当に中小企業、下請企業、弱者を救済するという形が政府や公取の中にないということになるんじゃないですか。  時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、ひとりきょうのわれわれの発言というのを念頭に置いて、今後法の運用を厳正にやってもらいたいということを要望して、質問を終わります。
  89. 山村新治郎

    山村委員長 神崎委員
  90. 神崎敏雄

    ○神崎委員 初めに、日韓経済協力の問題について質問いたします。  南ベトナムの解放に象徴されるインドシナ、アジアの新しい今日の情勢のもとで、最近の韓国政府要人の相次ぐ来日は、時局柄国民の多くが重大な関心を持っております。五月九日には金首相が来日し、五月十九日には丁韓国議長が来ました。そうして、三木総理や宮澤外務大臣とそれぞれの会談が行われております。  そこで、私が伺いたいのは、閣僚の一人として、当然会談内容を承知しておられると思う通産大臣から、この会談の中身について明らかにしていただきたいと思うのであります。
  91. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は会談の内容は知りません。
  92. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま申しましたように、一国の首相が来る、その国会の議長が来る、そうして主として経済協力問題で話し合うというような状態の背景がある中で、閣僚の一人である通産大臣にはその中身も教えないのがいまの三木内閣のあり方なのかどうか。また、通産大臣は積極的にその問題については本当に話し合いの中に出ていかれないのかどうか。全然知りませんということで済むような問題ではないと私は思うのですが、発表できないのか、本当に知らないのか、いわゆる関与させてもらえないのか、こういう問題もありますので、その点もう一回重ねて伺いたいと思います。
  93. 河本敏夫

    河本国務大臣 私の方には会談の内容の連絡はないわけであります。
  94. 神崎敏雄

    ○神崎委員 外務省来ていますか——少し私の時間が早目になったのでありますが、いま通産大臣に伺ったのですが、前段は省略しますが、五月九日韓国の金首相が来られた。そうして、十九日には丁韓国議長が来られた。そうして、今日の情勢から見て、特に南ベトナムの解放後のインドシナ、アジア情勢とも絡んだ中で、急遽来日してくる。その中で、主としてその中身は経済援助の問題であるというふうに私どもは思っているのですが、そこで閣僚の一人である通産大臣にその中身について伺ったのですが、御存じない、こういうことですので、外務省からこの中身について発表してください。
  95. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の韓国の金鍾泌国務総理と丁一権議長の来日の件でございますが、両者とも海外旅行の帰途日本に立ち寄るという希望がございまして、金鍾泌国務総理はサウジアラビアに行かれた帰り、丁一権議長はアメリカを回ってこられた帰りということで立ち寄られたわけでございます。  その趣旨は、いまおっしゃいましたように、この両者とも海外旅行中にインドシナ情勢の急展開があったわけでございまして、そのインドシナ情勢の急展開というものがアジア全体にどういう影響を及ぼすであろうかということについて、ホットなところで日本の政府指導者との間で意見を交換したいということでありまして、特定の議題とか討議項目というものは事前に設定なしに行われたわけでございます。  日本では、三木総理、外務大臣その他主要な方と時間の都合のつく限りで会談されましたが、この内容は、聞いて私どもが承知しておりますところでは、いま先生のおっしゃいましたような経済協力問題とかあるいは具体的な案件とか、そういったものには一切言及はなかった。むしろもう少し次元の異なった、アジア情勢の展開をどういうふうに受けとめるべきだろうかというような話に終始して、日本にとって韓国、あるいは韓国にとって日本というものをそれぞれ安全と平和を確保する上においてどういうふうに認識するかということの意見交換があったようでございまして、いずれにしろ韓国にとっての対日外交、日本にとっての対韓外交は国民の支持を受けた上で行うようにしなければならぬという点については両者の間に意見の相違はなかったというように聞いておりまして、具体的な経済援助あるいは経済協力という問題は話題にならなかったというふうに聞いております。
  96. 神崎敏雄

    ○神崎委員 たまたま外国からの帰りに金首相が寄られたと、スケジュールはそういうふうに私も知っておりますが、まあぶらっと来て、そうしてインドシナ情勢についての話し合いをする、そして帰られた。それで、日韓の友好は国民合意の上でやらなければならぬ、そういうことだけで帰られたという、この一件だけであればそういうこともあり得るだろうと思いますが、では十日間たった後に改めて議会の議長である丁議長がなぜまた来たのですか。それもやはりアジア情勢の話だけであったのか、あるいは首相が来ていろいろ話をした中での何か日本との統一のとれない話のために、国民代表という形をとっている議会——あえてこういう表現をしますが、そこの議長が改めて来たのですか。これもやはり一般情勢分析の茶飲み話のような形で訪れたのですか。
  97. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど申し上げましたように、二人の方の海外旅行はそれぞれ独立に行われておりまして、私どもの承知しておりますところでは、金鍾泌国務総理が日本に立ち寄られて話を聞かれた内容を聴取して、その中から新たな問題がありということで丁一権議長が日本に寄られるように考えられたというふうには了解しておらないわけでございまして、一方は行政府責任者、他方は立法府の責任者ということで、それぞれの立場は違っておりますし、日本に寄られたときの会談の内容を私どもが聞きましても、その間、いま先生が言われたような意味でさらに何かを問いただすために国会議長が寄られたということではない、こういうふうに思っております。
  98. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それはまた後の質問の中で裏づけていきたいと思います。  では次に、今日の韓国は政治的にも非常に反動的であって、いわゆる反国民的路線をとっております。そこで、経済的にもきわめて深刻な不況に見舞われて不安定な事態にあることは、いろいろな情報を総合しましても国際的にはっきりしている現実であります。また事態であります。この中で朴政権は、経済打開のためにも一層わが国経済援助を強力に求めてくると私は思います。  そこで、お尋ねしたいことは、従来進めてきた請求権に基づく援助もことしで完了することになりますが、政府は従来どおり経済援助政策をなおこのまま続けていくのか、それともここで再検討する時期である、こういうふうに考えておられるのか。通産大臣と外務省当局両方から、この考えについて聞かせていただきたいと思うのであります。
  99. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済協力につきましては、ケース・バイ・ケースで処理したいと考えております。
  100. 中江要介

    ○中江政府委員 政府の対韓経済協力の基本的な考え方は、日本の直接の隣国で国交正常化十年、友好関係を深めるためにいろいろの交流があったわけでございますが、その一環といたしまして、隣国韓国の民生安定と経済の向上というものに有益だと思われるものはこれを前向きに検討して経済協力を行うということで一貫しておりますわけで、この方針には今後とも変わりはないというふうに考えております。
  101. 神崎敏雄

    ○神崎委員 通産大臣に伺いたいのですが、ケース・バイ・ケースというその中身を私は聞きたいのです。いまの情勢から見て、特にかつての南ベトナムの援助から見て、そうして現状がこういう現状の中でなお従来どおりなことをやるのかどうかと言えば、ケース・バイ・ケースだというふうにお答えになりましたが、そのケース・バイ・ケースの中身というものは、どういう場合はこういうケースでいくのだ、こういう場合はこういうケースでいくのだというそこのところを聞きたいと思うのですが、どうですか。
  102. 中江要介

    ○中江政府委員 まさしく通産大臣が言われましたケース・バイ・ケースのそのケースについてどういう考慮をするかという点は、私が先ほど申しました韓国における民生の安定と経済発展に寄与するようなものであればこれを前向きに考えていく、こういうことでございまして、一つ一つの具体的なプロジェクトにつきまして、きわめて慎重に事前に調査をし、協議を重ねまして、その経済協力の効果が本当に韓国の国民の民生を安定向上させるのに役に立つものであればこれを行うということが隣国韓国との関係で大事なことである、こういう判断でケース・バイ・ケースでやっている、こういうことでございます。
  103. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま外務省の方から答弁されたとおりでございます。
  104. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それでは、一九七三年十二月に東京で行われた日韓定期閣僚会議共同コミュニケには、「第三次経済開発五ヵ年計画が終了する時期、すなわち一九七六年においては、日韓経済協力が政府ベースの協力から民間ベースの協力を主体とする段階に移る」こう明記してあります。しかし、私が独自に得た情報等によりますと、民間大企業の幾つかは韓国からの撤退を始めているということであります。事実昨年度は、日本の企業の韓国への直接投資は激減しております。その理由は主として、先ほども言いましたように、朴政権が不安定であり危険が伴う、こういうことからきているのであります。こういう状況のもとでなお韓国に対して経済援助を行うとすれば、政府ベースを重点にするということにならざるを得ません。このことは、日韓閣僚会議の確認事項を御破算にするということでもあります。そこで、これは政府の韓国に対する援助政策の破綻を意味すると思うのでありますが、この点はどういうことになりますか。
  105. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、韓国から一部の企業が撤退している、あるいは昨年の日本からの投資が減ったということでございますが、昨年の投資が減った原因としてはいろいろあろうかと思いますが、果たして御指摘のように政情不安あるいは景気不振からくるのか、あるいは御承知のように七四年、昨年一年は日本の経済自体が非常な不況に陥っておった。特に金融の引き締め等がございまして、御承知のように国内でみずからやる設備投資ですら非常に縮小されておるといったような時点でございましたので、海外へ直接投資をする資金的余裕もなかったということもまた大きな原因の一つになっておるのではなかろうかと考えるわけでございます。  それから、コミュニケとの関係でございますが、それは第三次計画が終わる段階以降の問題として、政府の直接援助から民間に移っていく。その意味は、どちらかと申しますと輸銀等の活用によって民間に主体性を持った投資をやっていただこう、こういうことでございまして、将来どうなるかということはその情勢のいかんによって判断せざるを得ないかと思いますが、だからといってそのコミュニケに逆らってと申しますか、それに反して、そのかわりに政府援助がふえていくというものではない性格のものと考えております。
  106. 神崎敏雄

    ○神崎委員 外務省はどうですか。
  107. 中江要介

    ○中江政府委員 具体的な経済情勢の進展あるいは現状につきましては、いま通産省の方からお答えになったとおりでございますが、外務省としては一昨年の暮れの閣僚会議のコミュニケというものは、これは毎年そうでございますが、その時点における情勢について分析し、両者で話し合ったことをコミュニケとして発表するということで、その時点における見通しということであったかと思います。その後は御承知のようにまだ閣僚会議が開かれておりません。その後国際情勢は、特にアジアにおいても大きく動いておりますので、そのときそのときの国際情勢を踏まえた上で誤りのない方向で日韓関係を発展させていきたいというのが基本姿勢でございます。
  108. 神崎敏雄

    ○神崎委員 共同コミュニケはそのときの情勢、政治背景経済背景、そういうものに具体的にはかかわり合いはなく、この中で言われている九項目の中には「両国の閣僚は、第三次経済開発五ヵ年計画が終了する時期においては、日韓経済協力が政府ベースの協力から民間ベースの協力を主体とする段階に移るであろうことに意見の一致をみた。」こうなっておりますね。したがって、政府ベースから極力民間ベースになっていくのだ。その民間ベースがいわゆる国際情勢、特にアジア情勢あるいは経済的、政治的、軍事的、なかんずく経済的な問題やら朴政権の反動性、そういうような問題からどんどんと危機的な様相が出て、そうしていま民間ベースの方が先ほども指摘したように激減している。そのときにこの共同コミュニケは民間ベースを進めるというのですよ。そうすると、従来どおりのことでやっていこうということになれば、政府ベースのほうに移行しなければならない。ということは、共同コミュニケが破綻したことになる、こういうことを指摘しているのです。そういうことでいいんですか、外務省。
  109. 中江要介

    ○中江政府委員 一昨年の暮れの閣僚会議の時点では、将来はそういうことで民間が主体のものになるであろうという見通しで意見が一致したということが述べられておるわけでございまして、そのことと、今後はこういうふうに必ずやるのだという約束とは必ずしも同じでない。つまり当時における見通しとしてはそういうことであったということで、今後どうするかというのはこれからいろいろの事情をしんしゃくしながら考えていくということになる、こういうふうに思っております。
  110. 神崎敏雄

    ○神崎委員 だから、冒頭に、金首相や丁議長が続々来日されている背景は、その中身はこういうことも包含されておるのかどうかということを聞いたのです。そこで、路線変更をやるか、いろいろなことがいまの時点で当面起こり得る、そういうアジア情勢である。きょうは大臣は外務委員会がある、次官もだめだということで、別にあなただから役不足だというわけじゃないのですが、私はやはり最終的、最高的な答弁が欲しいのです、これはわが国にとっても韓国にとっても、両国の国民にとっては重大な問題ですから。しかし、なおそういう答弁をされるなら、では私は問題を変えて伺いましょう。  韓国の第二次経済開発五ヵ年計画の最終年度すなわち一九七一年における米の生産目標は何トンだったでしょう。また、第三次経済開発五ヵ年計画の最終年度すなわち一九七六年、来年の米の生産目標は何トンになっておりますか。
  111. 中江要介

    ○中江政府委員 韓国の米の生産目標と実績については、別途資料として先生の方に御提出したと思っておりますが、そこにございますように、第一次五ヵ年計画では二百九万一千トン、第二次年度の一九六七年では四百八十五万八千トン、第三次五ヵ年計画といいますか、第三次の一九七六年では四百八十六万トン、こういうふうになっております。
  112. 神崎敏雄

    ○神崎委員 問題は計画じゃなしにそれの実績なんです。実績はどうですか。これに書いてあるのを見て、この実績を見てどう思いますか。
  113. 中江要介

    ○中江政府委員 この表にあるとおりでございまして、どうかと言われますと、一九六六年では百九十万トン上回っている、六七年では九十万トンくらい下回っているということで、七六年では四十二万トンくらい下回っている、こういうことになろうかと思います。
  114. 神崎敏雄

    ○神崎委員 韓国政府は、第一次、第二次の経済開発五ヵ年計画で重農政策を強調してきました。その成功を自画自賛してきたのですが、しかし米の生産量で見るとき、果たしてその評価は妥当なのかどうか。一九七二年から始まった第三次計画の重点目標の第一に、食糧を増産して主穀を自給する、これを強調していた。第三次計画の最終年度、すなわち一九七六年の米の生産目標は、五年前の第二次計画の最終年度、一九七一年と同じ数量になっている。このことは経済開発計画の大きな破綻を意味しているというべきです。要するに、常に農業重視の政策を掲げながら、一方では急速な重化学工業建設を外国資本の導入を通じて推し進めている。食糧輸入は増大しているのです。すなわち、経済の自立からますます遠ざかっているのが今日の韓国の現実の姿なんです。また、このことも明白なんです。このように思うのですが、政府の見解はどうですが。
  115. 中江要介

    ○中江政府委員 米の生産計画よりもあるいは下回り、あるいは必ずしも所期の目的を達していないじゃないかということ、数字の上でそういう面があらわれておりますが、そのことと先生がおっしゃいますような他の、たとえば重工業を志向したためだとか、あるいは外国資本の導入について云々ということとの因果関係については、必ずしも私ども完全にその関連性があるというふうにも思われませんし、韓国側の事情については韓国自身のいろいろの要素も絡みますと同時に、国際的なオイルクライシスの問題その他から生ずる国際経済の動きというものも影響があるわけでございまして、私どもといたしましては、韓国が引き続きセマウル運動その他を通じて農業の開発、発展に努力していくという政策については理解を持って臨んでいきたい、こういうふうに思います。
  116. 神崎敏雄

    ○神崎委員 余り無理して韓国側のサイドに立って答弁をする必要はないと私は思うのです。われわれはいわゆる他国に援助するということ、そのことが平和的で民主的でそして自主的な、両国民がそのことによって幸福を得る、こういうようなものならば歓迎するものです。しかし、いま私が指摘している問題は、現状はそうではないんだ。そういう現状ではないという背景の中でやられるそのあり方について、私は問題点を明らかにしながら意見なりこれからの方針、方策を伺っているわけなんです。それはわが国国民にとっても重大問題なんです。したがって、その点を質問しているのですから、余り推測的に考えられないで、現実を見て、余り買弁的な立場やら追随的な推理から御答弁されたら、私は国民はまた間違った理解に立ち至ると思うのです。事はきわめて重大なんです。  というのは、政府はこれまで旧南ベトナム政府に対して二百億円以上の国家予算を投入してきました。また、韓国に対しては実に二千四百億円以上の国家予算を投入してきたのです。南ベトナムの解放という歴史的事実は、政府がいかに強弁しようとも、政府のベトナム政策の破綻は明白であります。この教訓から学ぼうとしないばかりか、韓国国民を弾圧する軍事独裁政権としていま隠れもない事実として国際的にも明らかになっているものに対して、さらに国家予算を投入して経済的てこ入れを強化しようということは、朝鮮半島と日本、そしてアジアの平和にまさしく逆行する行為である。韓国と日本の両国民にとって何ら利益のない侵略的経済協力は、速やかに中止すべきである。そして、一部新聞報道に伝えられているように、韓国国会の丁議長に対して三木総理が、日韓経済協力について国民の深い理解が前提であると語ったことが真意であるならば、政府国民の意見を広く聞く機会を設け、国民の総意に基づいて対韓政策を進めるべきである、こう思うのです。この点何らかの措置を検討すべきであると思いますが、これはどうですか。また、少なくとも国会に報告するなど何らかの方法で国民の前に政府の見解を明らかにして、国民の意見を聞き、その不安などを解明しない以上は、日韓経済関係を新しい段階に進める政府交渉は行わない、こういうふうに約束をしてほしいと私は思うのですが、また約束をすべきであると思うのですが、この点通産、外務両省から伺いたい。特に通産大臣おられますから、通産大臣からもこのことについては意見を聞きたい。
  117. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先生も御指摘になっておりますように、国際政治情勢というのは非常に流動的であるわけでございます。しかし、また一面経済協力というものは相手国の民生の安定あるいは福祉の向上、そうして国民生活水準を上げていくという方向で行われておるものでございますので、国際情勢の変化ということもさることながら、本来の経済協力の趣旨に即しまして、ケース・バイ・ケースに判断していくべきものではなかろうかと考えております。
  118. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもはいままでの経済協力が、先生がおっしゃいますように侵略的なものであるとは全く考えておらないわけでございまして、いま通産省の方からも御答弁がありましたが、本当にその国にとって有益なものであるかどうかということについては、従来と同様、今後とも慎重に検討してやってまいりたい。  それから、三木総理が言われておりますように、特に重要な隣国でございますので、国民の理解のもとに慎重に政策を遂行しなければならぬということは常々私どもの心がけておるところでございますが、今後の日韓関係については、これが極東の平和と安全に影響するところが大きいわけでございますので、一層慎重にやっていきたい、こういうふうに思っております。
  119. 神崎敏雄

    ○神崎委員 一般的常識論を伺っているんじゃないのです。  それでは、先ほど挙げた旧南ベトナム政府に対して二百億円の援助をしてきたことも、これについてはその国が発展する、非常に妥当なものである、こういう見解からやってきたんですか。それについてはいまどういう心境におられるのですか。あれは決して侵略的なものでない——われわれは侵略的なものであり、アジアの平和を乱すものであるから中止しなさいということを一貫して主張してきた。にもかかわらず、自民党政府はそれをやってきた。結果が今日こうなった。日本と韓国の経済援助問題は、協力を含めて、旧南ベトナムの教訓をいまこそ踏まえてやらなければならぬのと違うのか、こういうふうにわれわれは言っているんですね。ところが、あのときもいまと同じような態度、姿勢で政府はこられた。それについては一片の反省もないのですか。旧南ベトナム政府に対してやってこられたことを教訓にして、何ら一片の反省もないのか。  重ねて聞きますが、いま指摘したように現状の日韓関係の問題について国民の前に明らかにする機構とか、あるいは国会に報告するとか、そういう用意があるかどうかということを私は特に通産大臣にお伺いしたら、通産大臣が手を挙げて答えようとされると、後ろから通産大臣の発言を妨害されるのか援助されるのか知らないが、かわってすぐ答弁されるのですが、通産大臣、どうですか。もう後ろから手を挙げぬようにね。
  120. 河本敏夫

    河本国務大臣 常に日本の経済協力というものは、相手国の経済発展と民生の安定向上、こういうことを主眼にして行われてきたものでございまして、南ベトナムにおいてもその原則に従ってやってきたものだと確信をしております。したがいまして、今後韓国におきましてもその趣旨に沿いましてケース・バイ・ケースで経済協力をやっていく、こういう考え方でございます。  なお、国会の方から資料を求められました場合には報告をするつもりでございます。
  121. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうしたら、ひとつ違う角度から聞きますが、韓国への経済協力、経済進出と公害の問題であります。  わが国の大企業の韓国進出の増加に伴いまして、韓国における大気や河川、海の汚染が進みまして、そうして人体や漁業、農業に大きな被害を与えています。  政府は、わが国の大企業の進出など、わが国の援助をてこにした韓国の重化学工業の育成がどのように韓国の公害問題を深刻なものにしているか、その実態をどのように掌握されておるか、これを聞かしてください。
  122. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいまお話のございましたように、韓国におきましても、経済発展のために重化学工業化を進めております。先ほど来お話が出ております第三次計画の最終年度である七六年におきましては、四〇%強まで重化学工業化率を高めていきたいという計画を持っておるように承知いたしております。  これに関連いたしまして、私たちの承知しておるところでは、韓国政府におきましても公害防止法を強化する。たとえば業種別、地域別に排出基準を設定し、これをさらに強化していく、あるいは公害発生産業につきましては限定的に立地させるといったような、それぞれ対応する措置をとっておるように聞いております。  これは韓国の内政の問題でございますが、わが国から進出する企業につきましても、公害輸出といったような非難を受けないように、当然事前に十分の措置をとる必要があるかと思いますし、われわれの承知しておるところでは、たとえば廃棄物については燃焼処理をする、あるいは再生利用する、あるいは排水につきましては沈降処理をするとか、いろいろな手を打ちながら公害の未然防止に対する措置を講じておる、あるケースにおきましては、生産設備よりもむしろ公害防止設備に多額の資金を投下しておるといったような例も聞いております。  さように企業としてもそれぞれの立場に立って、公害を引き起こさないように留意しておるようでございます。われわれといたしましても、さらにそういった方向で指導していくつもりでおります。
  123. 神崎敏雄

    ○神崎委員 わが国の民間企業の直接投資が、一九七〇年代に入って四年間に六百六十九件と激増するに伴いまして、韓国の新聞に掲載された公害問題件数は、たとえば一九六六年には三十七件であった。ところが、七〇年には百九十六件、七一年には二百五十三件、こういうように約八倍にも急増しておるのです。  そこで、その汚染の実態を海湾の汚染だけに限定して、韓国の新聞から若干拾い出してみますとどういうことになるかというと、浦項総合製鉄所からは毎日四十六万トンの排水が流されておる。浦項港での五万トン級の日本船舶からは、一ヵ月にドラムかんで二百本以上の廃油がたれ流されている。油類汚染では、許容限界値一〇PPmに対して、蔚山湾では三六OPPm、光陽湾では六九一五PPm、釜山、馬山で二三二一PPmに達しておる。さらに、長項製錬所前の海では、許容限界値〇・〇一PPmに対して四三四PPmの銅が検出されておる。その他、韓国水産振興院の発表によりますと、水銀、鉛、アンモニア、クローム、ニッケル、カドミウム、亜鉛などが大量にたれ流されている現状にあるということです。その被害は、海水浴場の閉鎖、ノリ養殖の破滅や減産、これは毎年二〇%ずつの漁獲量の減少等々、数えれば切りがないほど問題がどんどんいま出てきている。  政府は、韓国のこうした汚染の実態を承知しておられるのかどうか、重ねて伺いたいと思います。
  124. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま数字を挙げてお話しになったような事態につきましては、われわれとしても十分統計的に、あるいは調査結果として把握いたしておりません。  ただ、昨年の五月時点の、これも韓国の新聞報道でございますが、韓国政府としては、馬山なり蔚山地区において全従業員の〇・一%がいろいろな病気にかかっておる、必ずしも公害病患者が多いとは言えないといったようなことも言っておるようでございます。いま先生の御指摘になった点と非常に違った新聞報道ではございますが、先ほど申し上げましたように、われわれといたしましては、一つにはそういった実態をさらに見きわめる必要があるかと思いますが、一つにはやはり韓国の国内における公害行政の一環であるということが一つ、それから日本から出ておるいわゆる日系企業がさような影響を及ぼしておるとするならば、さらに一段と公害予防措置を講じ得るよう指導する必要があるかと思いますし、また四十八年の六月に関係団体でつくりました投資活動の基準の中でも、受け入れ国の環境を保全するようにとお互いに戒め合っておるわけでございますので、そういった方向で一段と指導を強化してまいりたい、かように考えております。
  125. 神崎敏雄

    ○神崎委員 環境庁はどうですか。
  126. 山村勝美

    山村説明員 ただいま先生から韓国の事情についてのお話がございましたが、われわれといたしましては、主として国内問題に対応いたしておりまして、海外の情報には——国際課がございますが、私、水質保全局の方でございまして、むしろ日本国内を対象といたしておりますので、情報をつかんでおりません。
  127. 神崎敏雄

    ○神崎委員 厚生省どうですか。
  128. 三浦大助

    ○三浦説明員 韓国の国内の公害問題につきましては、厚生省といたしましてもその実情をつかんでおりません。
  129. 神崎敏雄

    ○神崎委員 先ほど、何か私の言うておることと違うようなことが報道されている、こう言われたですね。私は当てずっぽうを言うておるんじゃないのです。韓国の新聞の公害取り扱い件数、これは大韓商工会議所韓国経済研究センターから出ている「公害の経済的接近」の中に発表してあるんですが、そういうものは皆さんの中では、お読みになったり研究されたりせられないのですか。
  130. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘の報道紙は見ておりません。
  131. 神崎敏雄

    ○神崎委員 見てませんなら、ひとつすぐ見てもらってから反論をしていただきたい。見もせぬといて、私の挙げた数字が何か違ったような形に答弁されることはきわめて遺憾である。自分の方では掌握はしない、勉強はしない、そしてこちらがそれを出すと、そういうものでは逆だというような意見を出されることは私は慎んでいただきたいと思う。同時に、この問題については、これは国内のことではなしに外国のことでございますからという答弁も厚生省なり環境庁からありましたが、これが国内の問題であるということをこれから私は立証したいからこの問題を挙げているわけです。  そこで、この問題は韓国への公害の輸出という点でも重大でありますが、従来国会でもこのことはしばしば論議されております。私はそれと同時に、もっと直接的に日本国民の生活に影響を及ぼす問題であると考えております。先ほども明らかにしましたように、韓国の海はわが国の海湾と同じように、あるいはもっと深刻に汚染されています。そうして、一九七二年六月十七日付のソウル経済新聞が報道しましたが、韓国産アオノリから一・四三PPmの水銀が検出された事例があります。わずかな輸入量とはいえ、わが国は韓国からアオノリを約五十トンほど輸入しております。韓国の海湾汚染は、単に公害の輸出という問題だけではなく、公害の逆輸入として、わが国国民生活に、また国民の食生活の安全性に直結する問題であるということであります。私はこういうふうに考えます。  そこで、お聞きしますが、わが国の韓国からの海産物の輸入量は年間どれくらいにいまなっておりますか。
  132. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 四十九年、昨年の一−十二月の実績でございますが、金額にいたしまして六百二十七億六千三百万円でございます。数量にいたしますと約十五万一千トンでございます。
  133. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、これに関連して次に厚生省に聞きますが、食品衛生法に基づくところの輸入品のチェックという体制がありますが、輸入品のチェック体制はどうなっていますか。
  134. 三浦大助

    ○三浦説明員 食品を輸入しようとする者は、食品衛生法の第十六条の規定によりまして、厚生大臣に届けるということになっております。で、厚生省におきましては、現在十三の港で四十名の監視員を配置いたしまして、輸入品のチェックをしておるわけでございます。
  135. 神崎敏雄

    ○神崎委員 十三の港で四十名と言われたが、四十七名じゃないですか。
  136. 三浦大助

    ○三浦説明員 監視員の数は四十名で、四十七名というのは事務職員も含まれておるわけでございます。
  137. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうしますと、十三の港で四十名で、七名は事務員ですね。そうすると、一つの港で三名弱ですか。こういう一つの港に監視員が三名弱ということであったら、一体どういう方法でチェックをされておるのか、その方法をひとつ教えてください。
  138. 三浦大助

    ○三浦説明員 各港で検査設備を整備いたしまして、現在年間、届け出件数にいたしまして二十四万件ぐらいの届け出がございます。数量にして二千三百万トンぐらいのものでございます。したがって、平均いたしますと、一日一つの場所で五、六十件という計算になるわけでございますが、これは監視員が、先生いまおっしゃいましたように非常に足りないわけでございます。したがって、私どもこの数年間の違反率の多い物を重点的品目に定めまして、また重点検査項目を設けまして、そういう物を重点的に検査をするという方向で対処しておるわけでございます。
  139. 神崎敏雄

    ○神崎委員 二十四万件の届け出るものがあって、それを三人弱でおやりになるのですね。ただ重点的におやりになるのですが、魚もあればノリもあり、いろいろな物が入ってくるのですが、いままで重点的におやりになっているというのは、何を基礎にそれが重点の対象になったのか。そして、それはいわゆる先ほどから挙げられておるような危険物質、有害物質が含まれておる、そういう立場からのチェックに重点が置かれたのか、あるいはどういうような物に重点を持っておられるのか。たとえば横浜といったら日本一の貿易の入ってくる量の多いところですね。その次は神戸港ですね。横浜港のような世界的にも非常に高いランクに入る輸入港、そこは三名じゃないでしょうが、十三の港で四十名ですから一人もおらないところもあるかもわからないし、そういうようなことから、もう少し具体的に、どこの港には何人ぐらいの監視員がおってどういうことをやっているのだ、一体その港に入ってくる輸入の飲食物といいますか生鮮物、一般の物はどのくらいの点検が可能なのか。恐らく、十三の港に四十名ですから、仕事をやるにしたってこれはもう本当に形式的なものだと私は思うのです。  そこで、もうついでに言いますが、いま重点的に行っているとおっしゃったから、ではやっている検査の中で何を検出されたのか、あるいは過去に有害物質を検出された事例があったらどんな物があったのか、そしていま人手不足で十三の港で四十名ですから、全然監視員がだれもおられない、そういう港はどことどこなのか、これを具体的に発表してください。
  140. 三浦大助

    ○三浦説明員 十三の港でだれもおらない港というのはありません。一人はおるわけでございます。特に、いま先生のおっしゃった横浜には検査官が六名、事務職員一名、それからたとえば神戸港には検査官が五名、事務職員が一人というふうに、輸入量に応じて配置の人員にはばらつきがございます。  それから、先ほど二十四万件と申し上げましたのは、年間の十三港で取り扱う量でございます。  そこで、御質問の重点検査品目ですが、二十四万件全部をすべての項目についてチェックするわけにはまいりません。実際チェックする量と申しますと約七%ぐらいの量でございますが、中には見ただけでも通しているようなものもございます。特に先生さっき御指摘の魚介類などの生鮮食料品につきましては、現場における感応検査とかあるいは必要に応じて細菌検査あるいは化学検査を実施しているわけでございます。  重点検査品目でございますが、これはその二、三年間の、あるいはもう少しさかのぼりまして四、五年間の違反率の多いものが、各港から私どもの方に報告がございます。そういうものを重点的にやっておるわけでございまして、品目といたしましては、たとえば植物性の油脂、それから加工果実、調味料、冷凍エビ、フグ、それから乾製の水産物、貝類、馬肉、食鳥肉、肉製品、粉乳、水産びん詰め、清涼飲料、菓子類、こういうものを重点的にやっておるわけでございまして、やっております中身は主として細菌検査等、それから防腐剤とか保存料、漂白剤、そういった添加物の検査を主としてやっております。
  141. 神崎敏雄

    ○神崎委員 チェックされているのは七%というと、あとの九三%はノーチェックということですか。
  142. 三浦大助

    ○三浦説明員 食品衛生法に基づきまして届け出がございますが、いろいろ経験上違反の多いもの、こういうものは全部検査にも回しておりますが、そのほかのものは届け出のときに向こうにいろいろな証明書がございます。そういう中身をチェックする。それから、表示のチェック、いろいろなチェックの仕方がございますので、全部フリーパスで通すわけではございません。届け出のときに中身の事情を聞いて、どうもこれはやっておく必要があるという判断に基づきまして検査しているわけでございます。
  143. 神崎敏雄

    ○神崎委員 先ほど言ったその中で、いままでチェックされた中で、全部はやれないが七%をチェックされたということになって、そうするとその中でいわゆる先ほど挙げた有害物質ですね、そういうものが発見されたようなことはありませんか。
  144. 三浦大助

    ○三浦説明員 七%というものは検査に回した量でございます。それから、その中で有害物質という御質問でございますけれども、細菌とか添加物の方を主体にやっておりまして、現在有害物質の方は、何かその国で問題が起こったものが日本に来るという疑いのあるような場合には私ども指示をいたします。たとえばベトナムで一時ダイオキシンの問題がございました。そういうときには港に全部指示いたしましてダイオキシンの検査をしろという場合はございますけれども、主として細菌検査と添加物の検査でございます。
  145. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いまのアオノリではどうですか。
  146. 三浦大助

    ○三浦説明員 アオノリにつきましては、重金属等の検査はやっておりません。
  147. 神崎敏雄

    ○神崎委員 先ほどアオノリの問題を出したのですが、食品衛生法第四条二項では「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。」は輸入販売禁止する、こういうふうになっておりますね。私先ほどPPmで事例を挙げました。こういうようなものが法律でちゃんと規制されているのですね。これは守られているのですか。もしもこういうものに該当したものを発見された場合は、どういう処置をおとりになっているのか。恐らく十三の港に四十人ではここまで手が回らないと思うのですが、これは野放しなのか。野放しにしてあるということになれば、この法律は死文化しておるということになるのです。そうなると事はきわめて重大で、国民の命にかかわる問題がやはり含まれているのです。そういうことで、十三の港で四十人しか監視員がおらないということについて、あなたの方ではどれくらいの人員があればそのことも安全になるのか。その人員をふやしてくれなどと関係当局と交渉をされたことがあるのかないのか。やっても結果はこうなのかどうか。こういう問題も含めて、この三点について答えていただきたい。
  148. 三浦大助

    ○三浦説明員 確かに検査官は不足をしております。そこで、私ども毎年増員要求は行っておるわけでして、毎年四名ずつの増員はいただいております。ふえております。そのほかに、かなり輸入量がふえてまいりましたので、昭和五十年度は四名の増員とそれから重点検査機械の整備、たとえばガスクロあるいは分光光度計、そういった種類の機械の整備、それから福岡空港にそういう輸入食品がかなりふえてまいりましたので、福岡空港食品衛生監視員事務所の新設、そういうチェック体制の拡充強化は毎年図ってきておるわけでございまして、もちろん今後ともなお一層増員を含めて港の監視というものを厳重にやっていきたいというふうに考えております。
  149. 神崎敏雄

    ○神崎委員 時間が大分迫ってまいりましたので、次に海上保安庁にお聞きしますが、日本海側の海流の実態と海流調査の今後の計画について簡単に説明をしてください。
  150. 堀定清

    ○堀説明員 海流の実態について口頭で申し上げるのはむずかしいことでございますけれども、現在までの調査で明らかにされております日本海の海流の実態は概略次のとおりでございます。  すなわち、日本海には寒流であるリマン海流と暖流である対馬海流の二つの海流系がございまして、この二つが日本海の中部で接触して複雑な混合水系をつくっております。リマン海流は北から沿海州に沿って南下しまして、朝鮮半島北部に達しております。対馬海流は対馬海峡から日本海に入りまして、その後二、三の分枝に分かれて日本海南部を北上しております。これらの分枝は、東北地方の沖合いで再び合流するような形で北に向かいまして、一部は津軽海峡から太平洋へ、一部は宗谷海峡からオホーツク海に流出しているような形になっております。  日本海の北部では寒流系の水が、南部では暖流系の水がそれぞれ卓越して存在しております。北から南下してきますリマン海流の変動につきましては、資料が少なくて明らかでございませんが、南から北上する対馬海流の分枝につきましては不規則な変動があり、その位置を模式的に示すことは困難でございます。現在まで何人かの研究者によりまして海流図がつくられておりますけれども、細かいところではそれぞれ差異がございまして、これは海流図をつくるために使用した資料の得られた時期が違うとか資料の数が違うとかによるものと考えられます。  海流の速さは、強い風が吹いたとかいう特異な場合を除きますと、速いところで大体一ノット前後で、比較的弱い海流であると言えます。  今後の調査でございますが、従来、現在も含めまして、海上保安庁、気象庁、水産庁それから沿岸各県が、年に二ないし四回定期的に海洋観測を行っておりまして、これは今後も続けることになっております。  海流の変動につきましては規則性がないために、現在の知識では変動を予測することができませんので、このような調査を定期的に行うことによってその都度の実態を把握しているということでございます。
  151. 神崎敏雄

    ○神崎委員 続いて環境庁にも聞きますが、日本海の汚染実態の調査の現状と五十年度計画、これを簡単に説明してください。
  152. 山村勝美

    山村説明員 日本海関係の水質につきましては、ごく沿岸部分につきましてはかなり前から当該地先県が調べておりますが、日本海全体の水質についてはまだ十分な調査ができておりません。したがいまして、近年の国際的な動向からそういう海洋調査を促進しようという動きがございますので、環境庁といたしまして五十年度から新たに日本海を含む日本周辺海域の調査に入ることにいたしております。日本海につきましてはまだ具体的な実施計画ができておりませんが、二測線ばかりを予定いたしておりまして、一つの線は、北九州の工業地帯から響灘を経て日本海の北西部に至る一本の線を引きます。そこで十数点の測点を設けて調査することにいたしております。また、北の方では津軽海峡を真西に向う測線を一本引きまして、そこで数点の測点を設けて調査をする。そのほか水産庁なり海上保安庁等で若干の調査もありますので、それらを含めて一応基礎的なデータの積み上げの一つにしていこうというふうに、汚染機構の究明とか、まだそういう高度な次元ではございませんが、初年度としてまず実態把握に重点を置いて調査することにいたしております。
  153. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま委員長にこの資料を配ることをお許しを願いまして、これを見ていただいたらいいのですが、先ほどからずっとお尋ねしているのは、質問の後半は、いわゆる有害物資が逆輸入される、それから起こる問題を取り上げた中で、主として海流によって、わが国の海湾だけではなしに韓国から潮流によってもたらされるわが国国民に対する公害の問題、こういう問題ともからんでこれをずっと究明しているんですが、韓国の重化学工業基地の現状と計画を見ると、はっきり目につくことは、海岸部に集中しているということですね。そして、実際に海の汚染は着々と進行しておる。このことはわが国と韓国との距離、海流の現状から見てきわめて重大な問題だと私は思うのです。  そこで、海上保安庁の見解で、海流の正確な実態は風の日もあればいろいろなことがあってまだ完全に究明されているということではない、しかし基本的には大体見通しはつけておられる。私お手元へ出した海流地図は、ある百科事典に掲載されているものです。この図によりますと、東鮮暖流という海流が朝鮮海峡を経て釜山沖をかすめ、そして日本海中部及び能登半島沖に達しておるのです。常にこのように流れておると断定することはできないかもしれませんけれども、しかしこの海流はないという断定もまたできない。この海流の存在についてあり得ると認めざるを得ないと思うのですけれども、こういう海流が存在するんだ、私はこれを見ながらこういうふうに思うのですが、海上保安庁ではどうですか。
  154. 堀定清

    ○堀説明員 先ほど申し上げましたように、模式的に示すことは困難な変動がございます。したがいまして、これはある時期の資料に基づいてつくられたものでこういう形になったと思いますが、いつもこう流れているというわけではないけれども、海流の形態はほぼこのようになっておると言うことはできると思います。
  155. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私もいま言うたようにいつもそうだとは思わないが、基本的にはこういうことになる、こういうことでございまして、そういうふうに認められたのですが、こういうような海流が存在するということは、日本の公害大企業の韓国への進出が、韓国の海湾汚染のみならず早晩日本海汚染を進行させる危険がある。このように海流を通じての公害の逆輸入という事態は、これを見ても理論的にもあり得るということだと思うのです。  そこで、環境庁、海上保安庁はこれに対してどういうふうに考えられておるのか、また通産省は公害の逆輸入という問題についてはどう対処されるのか、わが国企業の進出の段階でこれを規制することも含めて、最後に三省の見解を聞いて質問を終わりたいと思うのです。
  156. 山村勝美

    山村説明員 五十年度の調査計画のごく概要を申し上げたわけでございますが、現状レベルではまだ沿岸でも非常にきれいだというデータを持っておりますが、ただいま御指摘のように海流等の関係で韓国、特に南岸、東岸の何らかの影響は恐らく避けられないであろうと理解することができます。したがいまして、五十年度以降において行うその基礎調査をもとにいたしまして、少し蓄積することによって、韓国あるいはそのほかの沿岸国の汚染排出と汚染レベル等との関係のメカニズムを解明した上で、共同して問題の解決に当たっていかなければいかぬと理解をいたしておりまして、ここ数年、日本国がかなりの面積を占めておるわけでございますし、その辺のデータの蓄積を図っていきたいと考えております。
  157. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先生先刻御承知のとおり、わが国の対外直接投資はOECDの自由化コードに基づいて原則的に自由化されております。しかし反面、公害の輸出あるいは逆輸入といったような事態はあってはならないことでございますので、先ほども御答弁いたしましたような方向に即しまして十分指導してまいりたいと考えております。
  158. 堀定清

    ○堀説明員 海洋調査関係の政府機関としまして、従来油の監視はやってまいりましたのですが、今後重金属も含めて水質の監視を計画しております。
  159. 神崎敏雄

    ○神崎委員 きょう質問をさせてもらった要点についてはもう一回くどくどは申しませんが、一貫して申していることは、現在のアジア情勢からそれを基礎にした日韓経済援助、これの問題点と、そして日韓問題に関する援助の問題と絡んで起こるいろいろな問題、それと逆に韓国からわが国の方へ逆輸入されてくるその一つの問題点としての公害の問題を取り上げましたが、このように日本と韓国との両国民にとって政治的にも経済的にもあるいは公害の一つの問題を取り上げてもきわめて身近な問題でありますから、一つ誤れば大変なことになる。よくよくそのことを考えに置いてもらって、今後の方針を両国人民が歓迎するような政治的交流、経済的交流、そして友好の方向に積極的にやっていきたい、またやってもらいたい、このことを強く要求して質問を終わります。
  160. 山村新治郎

  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 経企庁長官がまだお見えになっておりませんので、通産大臣と共通の問題はお見えになってから後に回したいと思います。  まず初めに、通産大臣にお伺いしたいと思いますが、インドシナ半島におきます戦火の終息に伴いまして、わが国のアジア外交の展開につきまして各国の関心が集まっておるわけであります。いままでいろいろな形でこの経済協力というものが行われてきたわけでございますが、政府としては今後の経済協力政策をどのように展開をなさっていかれるか、基本的なお考えをお聞きしたいと思います。
  162. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済協力というものは、原則的に申し上げまして相手国の経済発展と民生の安定、こういうことを主眼として行うものでございますが、アジア地区におきましてもそういう趣旨で行ってまいったわけでございます。したがいまして、インドシナ情勢が変わりましても、この基本原則に沿って今後とも経済協力を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 従来わが国がとってまいりましたこうした経済協力というものは、いろいろな形で批判があったように私は思うわけであります。わが国が今後経済協力政策を推進していく上におきまして、このインドシナ地域におきましては、従来のようなそういう援助姿勢ではこれを受け入れられるということは非常にむずかしいのではないか、こういうことで政府としては自信を持っておられるか、またどういう従来と違う認識を持っておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  164. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどは海外経済協力の原則を申し上げたわけでございますが、インドシナ、特にインドシナ半島というふうに限定をいたしますと、事はおのずからまた別の問題になると思います。すなわち、今後の国交がどういうふうに回復されるか、あるいはまたどういうふうな政治形態のもとにインドシナ半島が進んでいくのか、こういうふうなこと等をよく見きわめまして、それからの問題だと思います。現時点におきましては、具体的なことは申し上げる段階ではないと思います。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうしたインドシナ戦争の終息に伴いまして、人道的な難民救済等の援助につきましては政府としても強調しておられるように私は思うわけですが、こういう問題について具体的にどういう援助をお考えになっているのか、あるいはまた人道的な配慮を加えた無償援助やあるいは借款の返済期限や利子など援助条件を大幅に緩和し、しかもできるだけひもつきでない資金協力を実現していくべきではないか、そうした声が関係者の中におきましても強いわけでございますが、大臣としてはどのようにお考えですか。
  166. 河本敏夫

    河本国務大臣 きわめて具体的な問題でございますので政府委員から答弁をさせますが、もうすぐ来ると思いますから、しばらくお待ちになっていただきたいと思います。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府委員の人はすぐ来るのですか。——そうしたら、お見えになるまで次の問題をやりたいと思います。  小売業の資本自由化の問題でありますが、資本自由化の例外業種として残してまいりました小売業につきまして、一〇〇%の完全資本自由化に踏み切る方針に政府は腹を決めまして、六月一日から実施される予定ということを聞いておりますが、この自由化による国内への影響についてどのようにお考えになっているか、答弁を簡潔にお願いしたいと思うのです。  それから、これまで小売業については、一企業について十一店舗までは外資比率五〇%までの自動認可としておったわけですが、これまでの外資の進出の状況あるいはその影響はどうであったか、ポイントをひとつお答えいただきたいと思います。
  168. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まず、これまで五〇%、十一店舗というルールのもとで進出してまいりました状況について御説明を申し上げます。  小売業への外資の進出は昭和四十七年くらいから始まりまして、店舗所有の小売業は、四十七年から本年三月までに四十九社に及んでおります。  外資の母国別の分布でございますが、アメリカが十三社で最も多くなっておりまして、次いでインドが六社、スイス、台湾各五社というふうになっております。  事業の内容別分布でございますが、四十九社のうち、総合小売店は二社でございまして、多いのは繊維製品、衣服を扱うものが十五社、それから美術品、装飾品を扱うものが十四社というふうになっております。  資本金規模別分布で申し上げますと、資本金が一千万円以下のものが二十五社で過半を占めており、一億円を超えるものは七社でございます。  次に、外資の比率別の分布でございますが、外資比率が一〇〇%のものは十三社、五〇%超一〇〇%未満が十一社、それから五〇%ジャストが十四社、それから五〇%未満が十一社というふうな分布でございます。  これまでのところ、以上のような進出によりまして日本の小売業が特に大きな影響を受けたということはございません。全般的に申し上げますと、外国資本の小売業に対する進出状況は余りふるわないという、一言にして言えばそういう状況でございます。  それから次に、今回の六月一日からの一〇〇%資本自由化による本邦小売業に対する影響の見通しについて簡単に御説明を申し上げます。  昭和四十八年四月の外資審議会の答申に基づく五月からのいわゆる第五次自由化に際しましては、もし一〇〇%自由化いたしましたならば相当大規模の外国資本の進出が起こり、ために日本の小売業界が混乱するというおそれがかなり強く抱かれておったわけでございます。他方、当時におきましては日米間の貿易収支が大幅に日本の黒字であり、その他日本の諸外国に対する貿易収支がおおむね大幅な出超ということでございまして、この出超、黒字の原因の一つは日本側が外国の小売店の進出を阻んでいるからである、OECDの規約もあることだし、もっと大幅に自由化してくれという外国側の要請があったわけでございますが、日本側といたしましては、なお国内体制が不備であるというようなことでちゅうちょいたしておったわけであります。  その際、一つの問題は百貨店法でございましたが、この百貨店法によりますと、百貨店の規制はできるわけでございますが、百貨店以外の大規模店舗につきまして必ずしも十分な調整措置が国内でできていないということもあり、いわゆる大規模店舗法の整備それから小売商業振興法の整備等を待つ必要があるということを考えておったわけでございます。その後二年たちましてこの二つの法律は成立いたしました。それからまた、二年間の外国資本の進出状況、五〇%、十一店舗のルールのもとにおける進出状況は、先ほど御報告いたしましたようにそう大した問題は起こっていない。それから、一〇〇%の資本進出につきましても、個別に申請があれば前向きに処理する、審査するという方針でございましたが、現実には一〇〇%で進出したいというような申請は一件もないという実情でございました。  したがいまして、そういう状況を踏まえまして今回一〇〇%自由化という方針に切りかえられたわけでございますけれども、いま申し上げましたような状況、すなわち外国側で積極的な進出意図がないということでございますので、そう大きな影響が起こるというふうには考えておりません。万一、進出の計画が具体化いたしましたとしましても、そのケースにつきましては大規模小売店舗法の網によりまして調整をされる。ですから、日本側のスーパー等、大規模店舗等が進出する場合と全く同じ条件のもとに調整をされるはずでございますので、わが国の小売商業に重大な影響を及ぼすというようなことはあり得ないであろうというふうに考えております。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままでの五〇%の場合におきます現状報告なり今後一〇〇%になってからの見通し等について御答弁があったわけですが、外国企業わが国になじまないというような、そういう感じのニュアンスを受け取ったわけでありますが、しかしそうだからと言って、いつも問題になっております小売業界の近代化、これを進めていく施策において力を抜くようなことがあってはならぬと私は思うのです。政府としては大規模小売店舗法あるいは中小小売商業振興法、こうした法律を踏まえて、そう心配ないのだというような御答弁であったわけですが、まだまだ、政府のやっておりますことは中身が充実しておらぬ、このように私は思うわけです。ですから、小売業におきます近代化はやはり強力に進めていかなければならない。こういう意味におきまして、今後の方針あるいは助成策の強化等につきまして、時間の関係もありますから、長々と答弁するのではなく、簡潔にひとつポイントをお答えいただきたいと思うのです。
  170. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 小売商業の合理化につきましては中小企業庁長官の方からお答えいたすかと思いますので、私の方はそれ以外の分野について御説明を申し上げたいと思います。  まず第一番目に、日本の流通業、特に小売業を近代化していく場合におきまして最大の問題は、大規模店舗とそれから零細小売商との利害の調整をいかに合理的に行うかということであろうかと存じます。この間の競争を余りにも制限いたしますと、小売商業の合理化が阻害されるという問題が生じてまいりますし、他方、大企業と零細企業との間の競争を放任いたしまして過当競争的な状況にいたしますと、これまた社会的な摩擦等が激増いたしまして社会的な弊害がふえてくるというふうに存じます。したがいまして、余りに競争が過度にわたらないこと、他方、余りにも競争制限的にならないように注意いたしまして、その中間のところで妥当な合理的な競争が行われるように誘導をしていくということが大規模小売店舗法の基本でもあり、その方向で施策を進めていきたいというふうに存じております。  それから、卸の分野でございますが、卸の分野につきましては、これまでも卸の分野の状況の把握が非常に不徹底でございまして、かつ流通経路が長過ぎるというようなことが言われておりますので、状況をよく調査いたしまして、正しい政策を検討していきたいというふうに存じます。  それから、流通というのはきわめて複雑なシステムでございますが、このシステム工学的な分析と合理化ということが不徹底でございますので、通産省といたしましても物流面であるとかあるいは流通情報面等でシステム化のための施策を推進しておるところでございます。  簡単でございますが……。
  171. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 国内の大規模小売店舗、つまりスーパー、百貨店あるいは日本へ進出してきた外国資本の小売商業、こういうものに対抗いたしまして中小の小売商業を振興する施策といたしまして、一つは商店街の整備を進めておるところでございまして、そのために高度化資金から非常に低利の資金を融資いたしております。もう一つは、中小企業者がスーパーマーケットあるいは寄り合いの百貨店を建設する場合に、同じく低利ないしは内容によりましては無利子で総所要資金の八割の融資を行うということによりまして、中小企業者みずからが店舗の共同化を図ることを促進いたしております。  もう一つは、ボランタリーチェーンの育成でございまして、大量に仕入れて、しかも中の卸を省くことによりまして流通コストを低減して安い商品消費者に提供する、こういうボランタリーチェーンにつきましても各種の助成措置を講じております。  こういうことを通じまして、中小小売商業が大企業あるいは外資と対抗して十分にやっていけるようにさらに助成を強化してまいりたい、かように考えております。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 福田長官がお見えになりましたので、参議院の方の関係もあろうかと思いますので、問題をお聞きしたいと思っております。  まず、景気の先行きにつきましては、日銀では自律回復する、こういうふうな見方であるということを伝えられておるわけですが、一方通産省では底割れの可能性もある、こういう見方であるということも伝えられておるわけですが、大臣もおられるわけでありますから通産省の考え方を通産大臣に、また経企庁長官はどのように見ておられるか、お二人からお聞きしたいと思います。
  173. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 景気情勢につきましては、大体底に来た、こういうふうに判断しております。在庫状態を見ましても、最近の生産活動指数を見ましても、底に来たという判断です。  ただ、それじゃ底に来たからすぐ立ち直り現象というふうになってくるかといいますと、そういうふうな見通しはなかなか困難かと思うのです。つまり、金融を緩和いたしましても設備投資が起こるという一般的な情勢ではない。ボトルネック産業等は例外でございましょう。あるいは公害投資もそういうことではありましょうが、一般的に生産設備を拡大するという、そういう企業側の動きは考えられない。それから、国民経済の中で重要な地位を占める消費活動、これにつきましては、どうも物価は鎮静の傾向ではあるけれども、しかし何分高いなという高値に対する拒絶反応、これがかなり浸透している、こういうふうに見ておるわけであります。したがって、国民消費が景気誘導の役割りを担うかというと、それも期待できない、そういう状態で、ほうっておきますとなべ底の状態がかなり続くのじゃないか。いずれは自律反転というようなことはあるかもしれませんけれども、とにかく時間がかかりそうだ。しかし、昨年一年間がかなり景気後退、ことに昨年の下半期は非常にひどかったのですが、それが余り長くずっと続いておるということになりますことは、また企業の大勢として好ましくない、こういうふうに考えまして、第二・四半期、夏ごろから景気上昇の足取りに向かう、そういうことを考うべきじゃないか。そういう展望、そういう目標を持ちまして、これからの景気の推移を見守ってまいりたい。  そこで、そういう展望を持ちながら、そういう目標を実現するために、もし必要があれば第三次景気対策もこれを採用する必要がある、こういう考え方です。五月中の経済各方面の動きをずっと幅広く、またつぶさに検討いたしまして、そして第三次景気対策をとる必要があるかどうか、また、とるならばどの程度のものが必要かということを判断してみたい、こういう考えでございます。
  174. 河本敏夫

    河本国務大臣 ただいま副総理からお答えがございましたように、景気が底をついたという判断では、私も同じであります。ただ、落ち込みが何分ひどいものですから、一昨年の十一月に比べまして鉱工業生産が二割も低下しておる、一年前に比べまして二八%強も低下しておる、非常な落ち込みでございます。そういう大変落ち込んだ状態のもとで幾らか底をついて上昇に転じたというわけでありますから、これが正常な経済活動に復するのはなかなか容易なことではないと思います。そこで、やはりこの大変落ち込んだいまの経済の姿、これをできるだけ早く活力あるものに持っていくということが当面の大きな課題であろう、こういうふうに考えております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 福田長官も五月の動向を見て——五月ももう下旬に入っておるわけでありまして、長官としてもほぼ全貌はおつかみになっておられるのじゃないか、このように思うわけですが、そこで、第三次の対策も打ち出したい、こういう御意見をおっしゃっておるわけですが、そうなってきますと、たとえば公定歩合の第二次の引き下げ、あるいは公共事業の追加と早期発注、住宅金融公庫を初めとする中小三機関、開銀あるいは道路公団、公害防止事業団その他の財投追加等についてはどういうようにあるべきであるかということをお考えになっているか、まずこの点についてお聞きしたいと思います。
  176. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたように、五月中の経済全局の動きを見まして、第三次対策をとる必要があるかどうか、また、とるならばどの程度のものを必要とするかという判断を下す、その時期は六月中旬でございます。  ただ、そういう状態で、いま具体的にどういう対策をとるのだということは申し上げられない段階でございますが、抽象的に申し上げられることは、何といっても金融政策は、量的な金融緩和をしてみましても、先ほど申し上げましたように、それがすぐ一般の産業設備投資というところにつながっていかない。そこで、多くを期待することはできないのです。ただ、お話しのように、公害投資でありますとかあるいはボトルネック産業でありますとか、そういう方面への影響、これはあると思いますが、主力は何といっても財政です。財政につきましては、これは一般のプロパーの財政部面におきましては、租税収入の収納状況の悪化というようなことがありますので、これに多くを期待することができない。結局財政投融資、こういうことにならざるを得ないのじゃないか、こういうふうに思うのです。財政が全然その役割りを演じないというわけではございませんが、主力は財政投融資である。幸い郵便貯金の伸び等はよろしゅうございますので、この方面は活用し得る余力を持っておる、こういうふうに思うわけであります。  金融方面におきましては、量的問題以外に金利の問題があるわけであります。昨日ドイツが公定歩合を〇・五%下げまして、わが国の公定歩合との開きが四%、そういうところに来たわけであります。これからわが国といたしましては、ドイツの水準なんかに比べますと割り高な水準でございますので、これは引き下げを行うという余力を持っておるわけでありまして、こういう方面もまた考えなければならぬだろう、こういうふうに考えますが、いずれにいたしましても、五月中の経済の動きをよく見まして、そして六月中旬に対策を決めたい、かように考えております。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 財投等につきましては、特に中心としてはどうした面の項目を考えておられますか。
  178. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 どんな項目というところまでいかないのです。まだ第三次対策をとるかどうかということまで含めて検討しよう、こういうことでありまして、それを採用する場合の具体的な打ち出し方、そういうことにつきましてはまだ相談をいたしておらぬわけですが、まあぼつぼつそういう具体的な問題も相談に移らなければならぬだろう、そういう過程でございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、この第三次不況対策というものは、ただいまのそうした感触からいきますと、おとりになるということはきわめて強いと、こういうことですか。
  180. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 第三次対策をとる必要があるかどうかを含めまして検討する、とる必要があるという際にどういう内容のものにするか、これももとより同時に決めていきたい、かように考えております。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府は、昨年の三月から今年の三月、一五%以内にする、一応公約は果たされたわけですが、来年の三月までに一けたに抑え込む、こういうことからいきますと、この引き締め政策の緩和とも関連しまして今後の物価の動向というものがきわめて大きな問題になるわけであります。ところが、御承知のように酒、たばこあるいは郵便の値上げ、各種公共料金の引き上げがこのように予定されておりますし、現在値上げを言われております鉄鋼、特に神戸製鋼等はすでに数値も明らかにしておるわけですが、紡績あるいは紙・パルプ等のそうした中間製品の値上げ等の動きというものが非常に強いものになってきておるわけであります。そのほか私鉄であるとか、そうした一連の公共料金が引き上げをねらっておるということがいろいろと取りざたされておるわけでございます。こういうような一連の公共料金の引き上げ、さらにまたこうした製品の引き上げというものから考えていきますと、本当に政府が言うように一けたに抑えられるかどうかという問題でありますが、私はもう絶対に無理だと思うのです。そうなってきますと、公共料金はどうしても抑えなければならないし、また大企業の製品を中心としたこうした引き上げ問題に対しまして強い姿勢で政府は臨まなければ、国民に対する公約を果たすことができないと私は思うのです。  そこで、ひとつ長官の強い決意、お考えをお聞きしたいと思うわけです。
  182. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 何しろ、とにかくあれだけの大やけどをしたのでありまして、これから回復するためにはそう簡単にはまいりません。私は、三年ぐらいはどうしてもかかる、こういうふうに見ておるのです。まあ、一年目が経過した、この一年目が経過をいたしますと、狂乱状態は克服したわけです。そして、コストインフレ的段階にいま入っておる。その段階におきまして一番問題になりますのは賃金と物価の関係でございますが、賃金の方はどうやらなだらかな解決ということに終わりそうな段階に来ておるわけであります。その賃金がとにかくこういう形で決定されようとしておる。そういう背景というものは何であるかというと、一つは四十九年度の物価上昇、これが一四%にとどまった。一五%と言っておったのが、それを割り込んで一四%だということ。それから、政府がとにかく五十年度におきましては一けた台の消費者物価水準というものを実現する、こう言っておる。それが大きく背景にあると思うのです。  そういうことを考えますと、私は今回の春闘の結末を見まして感想といいますか感懐を述べますれば、これは政府としては責任が非常に重くなった、こういう一語に尽きるのです。物価は一四%でいってよかったなあ、賃金もなだらかでよかったなあという、そんな感じではない。いよいよこれから、三年にわたる手術の第一年度が過ぎたのだから、まだこの治療というものは重大な第二年度に入るわけでありまして、これから特に一けた台消費者物価水準目標という、これを達成できるかどうかということは、これはもう非常に重大な問題である。そういう段階におきまして、私が非常に注意していかなければならぬという問題が二つあるわけです。  一つは、ただいま近江さん御指摘の企業における値上げの動きであります。企業におきましてそういう動きを示す、それは無理からぬところもあるのです。企業の収益状態が非常に悪い。それから脱出しなければならぬ。それには値上げだということになるのは、これは自然の動きだ、こういうふうに思いますが、そういう動きが活発になってきたら物価対策も何も、これはめちゃくちゃになる。そこで、企業に対しましていま物価が非常に重大な段階に入るということの注意を強く喚起しておるのです。経済団体におきましても来年三月時点における物価の推移がどういうふうになるかということにつきまして、その意義の重大さを認識しておるのでありまして、したがって経済団体の動きといたしましても物価鎮静化への協力ということにつきましては相当強い動きを示しておるわけであります。この企業の動き、これは私はぜひともそういう方向で固まっていくということを念願し、なおこれからもその努力を続けたいというふうに考えております。同時に、政府におきましても総需要管理の姿勢、これを崩してはならない、こういうふうに考えます。同時に、個別の物資の価格並びに需給、これにもよほど細心の注意を払いながら行政を行ってまいらなければならぬだろう、こういうふうに考えております。  それから、第二の関心事は景気対策なんです。企業の収益状態が非常に悪化する。これに対して景気対策を場合によったらとらなければならぬということは先ほど申し上げたとおりでございますが、このとり方がまた問題なんです。物価対策と矛盾しないような配意を十分しながらやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、そのようにいたしたいと存じます。  それからさらに、私鉄なんかのお話がございましたが、それは、そういう動きは現在ありません。それから、国鉄に対しましては、これは大変な財政状態でありますが、五十年度においてその料金を改定するというようなことは考えない。米価、麦価。いずれ六月になりますれば生産者麦価の決定が行われるわけです。また、七月になりますれば生産者米価の決定が行われる。そういう際に消費者麦価、消費者米価をどうするか、こういう問題がありますが、これも物価政策との整合が得られるように十分配慮しながら決定をいたしたい、そういう考えでございます。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 企業に対しましては、今後値上げを自粛するように努力をしていくということをおっしゃっておりますが、具体的にたとえば政府に呼びつけ、それを強く要請する。田中内閣のときに一度やりましたね。財界人を呼んで狂乱物価のさなかに引き上げをしないようにと政府は強い要請をしたわけですが、これから非常にむずかしい段階を迎えるわけですし、企業は軒並みに引き上げをやろうとしておるわけです。ですから、ただ今後努力をしていくというような抽象的なことではだめだと思います。今後どういう強い姿勢で企業に当たっていかれるか。  また、政府はこの公共料金の問題等につきましては責任を持って対処できるわけです。そこで、たとえば私鉄等はそういう動きがないとおっしゃっておりますが、現実にあるわけですよね。経企庁の長官のところに正式に運輸省のコンタクトがあったかどうかは別としまして、動きは歴然としてあるわけですから。私鉄なんというのは、御承知のようにあれは昨年でしたか、七月に二七%引き上げをやっているわけです。ですから、私鉄や、また麦等は国際価格におきましても非常に安くなってきておりますし、これはもうこういう今日の物価対策から考えますと絶対に抑えるべきであると私は思います。具体的に公共料金につきまして、これとこれは絶対に抑えると長官としては腹をお決めになっているものがやはりあろうかと思うのですが、ひとつそうした腹のうちをお聞かせいただきたいと思うのです。
  184. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 政府の認可する公共料金につきましては、厳に抑制方針で対処していく、こういう考えでございます。  この公共料金の問題もありまするけれども、物価を動かす要因というのはそればかりじゃないのです。一番大きな要素は海外の動きでございますが、昨年は海外の商品が軒並みずっと上昇し続けたわけでございます。本年に入りましてからこの様相が一変いたしまして、特に農作物のごときはこの半年間に半値になる、あるいは半値以下になるというものまで出てくるような状態で、底値になりました国際商品がだんだん夏ごろから入着をしてくる、こういう要素もあるわけであります。  それから、先ほどお話がありましたが、金利水準が高い、金利水準を下げる幅というものをいま持っておるわけであります。これもまた物価政策上はプラスに働く、そういうようなこともあります。暗い方面ばかりじゃないので、そういうことを総合いたしまして来年の三月、つまり昭和五十年度末における物価上昇率は何が何でもこれは一〇%以内に抑える、これは政府経済政策の目玉というか、かなめでございますので、これは何が何でも実現する、そういう決意でございます。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 何回も申し上げますが、一けたに抑え込むということからいきますと、こういうような公共料金あるいはまた企業の製品の引き上げを安易に見守っておりますと、そんなものはとうてい達成することができないわけですね。ですから、もう御承知のように春闘において一五%以下に抑え込まれて非常に低い賃上げになったわけでありまして、政府が一けたに抑え込むことができないということになってまいりますと大変な問題になってくると思いますし、そういう点におきまして公共料金の引き上げ、これについては断固引き上げをさせない、またそうした企業製品の引き上げについても強い姿勢で臨んでいただきたいと思うのです。——福田長官結構です。  具体的に、たとえばいま神戸製鋼が鉄鋼一七%引き上げを表明しているわけですが、この問題につきまして通産省としては傍観しているような空気があるわけです。鉄鋼というものは、御承知のように波及するところはきわめて大きいわけでございますし、いま具体的なこういう神戸製鋼の引き上げの問題が出ておる段階におきまして、通産大臣といたしましては——いま経企庁長官経済閣僚会議のトップでもあるわけですし、その方が企業のこういう値上げについては極力抑え込んでいくということをおっしゃっているわけですし、通産大臣も経済閣僚の大黒柱としまして、私は経企庁長官と同じ決意であろうかと思いますし、具体的にこういう通知も出ておるわけですから、今後どのようになさいますか、それをひとつお聞きしたいと思います。
  186. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず初めに、先ほど来お話しになっております消費者物価の問題でございますが、これに影響するものといたしましては、工業製品のほかに農産物、それからサービス分野、こういういろいろ複雑な要素があるわけでございますから、工業製品だけ抑え込んだら直ちにそれが全般的な消費者物価の抑制につながるかというと、私はそれだけではなかなかむずかしいと思う。やはり全般的な政策が必要だ、こういう意味で先ほど長官がお答えになったのだと思います。  次に、鉄鋼の問題でありますけれども、鉄鋼のいまの生産の状況を見ますと、昨年の秋までは大体年率に換算をいたしまして一億二千万トンぐらいの生産でございましたが、現在は国内の不況と貿易が思わしくない、こういうことから生産は非常に落ち込みまして、約一億トンの水準だと思います。そういうことで操業率が大変低下したということ、さらにまた貿易事情がことしになりましてから急転直下悪化した、そういうことから、鉄鋼の経営状態というものは一月以降非常に悪化をしておるわけでございます。そこで、値段を上げたいという非常に強い動きがあるわけでございますけれども、通産省といたしましては現在は最悪の事態である、その最悪の事態におきまして原価計算をしてコストが幾らかかる、そういうことで値上げをやるというのは、それは時期尚早である。来月には第三次の不況対策も実施する予定でありますし、それには当然貿易対策等も含まれる予定でありますので、将来の貿易状態がどうなるか、あるいはまた景気の動向いかんによって鉄鋼の生産がどう変わるか、こういうこと等も考慮して、将来の原価計算、採算のとり方を、現時点ではなくて第三次不況対策がスタートした後においてもう一回再検討すべきである、それまでは軽々に値上げを言うべきではない、こういうふうに強い意思を表明しておるわけでございます。鉄鋼側におかれましてもその趣旨を了解をしていただきまして自重した態度をとっていただいておると思います。  神戸製鋼の問題につきましては、新聞にああいうことが出ましたので、神戸製鋼の社長に直接確かめさせましたところ、若干事情が違うようであります。そこで、昨日の報道は誤報である、こういうことで否定をさせる、こういう手続をとっておるはずでございます。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 鉄の問題等は波及というものが非常に大きいわけでございますし、大臣も非常に苦慮されておることは私もわかるわけでありますが、ひとついまおっしゃったように値上げを抑える姿勢は強く堅持をしていただきたいと思うのです。  それから、石油業界の問題でございます。灯油価格につきましては標準価格が設定されておるわけですが、これを廃止を含めて灯油価格引き上げを検討しているんじゃないかということもちらほらうわさされておるわけでございますが、これもきわめて影響というものは大きいわけでございますし、この点についてどういうお考えでおられるのか、これについてひとつお伺いしたいと思います。
  188. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま近江先生からお尋ねがありました灯油価格の問題でございますが、灯油価格につきましては去年の六月に一応指導価格というものを設けまして、元売りから販売に出します価格につきまして二万五千三百円ということで抑えさせまして、一冬これをもって灯油の安定的供給確保を行ったわけでございます。ただ、この価格につきましてはほかの油種の価格と比較いたしまして非常なアンバランスになっておる。そのために灯油の生産につきまして若干減少ぎみである。このまま推移いたしますと、この冬の灯油の供給確保が十分に図れないんではないかということで、現在この二万五千三百円についてこれを改定するかあるいはこれを解除するかということでまだ検討中でございます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官からいま検討しておるというお話がございましたが、長官のお話はいわゆる業界サイドに立った御答弁であり、先ほどから福田長官なり通産大臣は、国民生活の安定という点から極力それを押さえ込むんだ、そういうお話があったわけですが、長官のお話ではないわけです。     〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 ですから、石油業界の状態がこうだから、それでは私として納得できないのですね。これがまた大きな影響を与えるわけでありますから、国民生活の立場からどのようにお考えか、もう一度お聞きしたいと思うのです。
  190. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま御指摘のありましたように、灯油は国民生活に直結する物資でございますし、また先ほど福田副総理から今後の物価問題についての政府の方針の宣明があったわけでございます。私どもも灯油の価格につきまして、ただ安易にこれを引き上げるということではなくて、先ほど申し上げましたようにこの灯油の供給の確保を図るのにはいかにすることが最もいいかということで、先ほど申し上げましたようにこの灯油の昨年六月の時点で決めました二万五千三百円について再検討をしておる、こういうことでございます。物価の問題につきましても、また灯油が国民生活にきわめて重要な物資であり、その影響が非常に大きいということを十分頭に入れながらこの問題に対処していきたい、こういうふうに思っております。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、業界としてはどれだけにしてもらいたいと言っておるのか、またエネルギー庁としてはどのようにそれに対して考えておられるのか、もう少し具体的にお答えいただきたいと思います。
  192. 増田実

    ○増田政府委員 業界から統一した意見でこういうようにしてくれというのはございませんが、いずれにいたしましても現在の二万五千三百円では灯油の供給確保についていろいろの面で支障があるという問題が提起されております。そういう意味で、私どもも灯油につきましてやはりこれを確保するということで、そのためにはこの価格をいかにするかということで考えておるわけでございます。具体的に幾らにするということについては、まだ何ら結論は出ておりません。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 何回も申し上げますが、春闘ではあれだけしか賃金は上がってないわけです。そういう中で、政府が約束した一けたも——こういうような公共料金も引き上げの動き、あるいは企業製品の引き上げも行われようとしておるわけですし、そういう中でまた灯油も引き上げよう、こういうことでは国民生活はむちゃくちゃになるわけでありますから、断固、企業がそれを言うなら経理も全部明らかにして、本当に徹底した調査もして、そして抑えていく、ひとつこういうあくまでも国民生活の守り手としての長官の立場であっていただきたい、これを特に要望しておきます。  それから、先ほど御答弁が抜けておったのですが、インドシナ戦争の終息に伴いましていわゆる今後の経済協力につきまして具体的にどういうようにお考えになっているか。基本的なことは大臣がお答えになったわけですが、それについてひとつお伺いしたいと思います。
  194. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 インドシナの情勢は確かに御指摘のように変化を来しているわけでございますが、本来の経済協力の趣旨といたしましては大臣からお答えいたしたと思いますが、受け入れ国における民生の安定、福祉の向上あるいはこれを実現するための経済開発に対して協力していくというたてまえになっております。さような基本的な経済協力に対する考え方は、インドシナ情勢の変化の後といえども変わるべきものではないと思っております。  ただ、御承知のようにまだ事態が流動的でございまして、たとえばカンボジア王国民族連合政府に対しては四月十九日、それから南ベトナム共和国臨時革命政府に対しては五月七日、それぞれ閣議決定を経てわが国としてはこの国を、新政府を承認いたしておるわけでございますが、いまのところ正式にまだそのレスポンスがないというふうに承知いたしております。したがいまして、私たちといたしましては、これら新しい政府がそれぞれ具体的な要請を持ってわが国経済協力を求めてきた場合に、それに応じて前向きに検討してまいりたい、かように考えるわけでございますが、ただわれわれの推測といたしましては、こういう事態に即しましてはとりあえず食糧あるいは医療資材といったような緊急物資あるいは復旧資材といったような物の面での協力依頼がまず来るのではなかろうか。その後情勢の落ちつきを待ってプロジェクト的な協力要請が出てくるのではなかろうかと思っております。  いずれにいたしましても、相手国の立場に立って、相手国の要請を具体的に受けて検討してまいりたいと考えております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 わが党としましても、中小企業問題の中におきまして分野調整に関する法律を出しておるわけであります。さらに、私自身も予算委員会等におきまして下請代金支払遅延防止法の改正を迫ってきておるわけでございますが、自民党におきましてはこうした法案も用意しておる。まあ中身さえ合えばぜひ議員立法でということも私たちも考えておるわけですが、政府はこの両法案につきましてどういうようにそれに前向きで対処なさろうとなさっておるのか、その辺についてひとつお伺いしたいと思います。
  196. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 下請代金につきましては、現在下請代金支払遅延防止法によります規制は、受領後六十日以内に支払うことということと、それからその場合に手形でもよいわけですけれども、手形は割り引くことのできる手形であること、こういう規制になっております。一方下請振興法に基づきます振興基準によりますと、できるだけ現金で支払うように親企業は努めることと、それから特に賃金相当部分は現金をもって払うようにすること、こういうことを定めておるわけでございまして、金利負担等々から考えましても、親企業資金繰りの許す限りにおきましてなるべく現金で払う比率が高いことを私どもとしては期待をいたしておるわけでございます。  ただ、これを法律で強制するという問題になりますと、現在非常に不況下でございますので、親企業資金繰りの問題もございます。特に親企業と申しましても、下請代金法の場合には資本金一千万以上の企業が親企業になるわけでございますので、親企業中小企業という場合も非常に多いわけでございまして、そういう意味での親企業資金繰りの問題、それからそれを強制することに伴いまして、たとえば一方で内製化が出てくるかもしれないとか、その率の決め方によりましては、従来もっと高い比率で出しておったものがその比率が下がる場合もあり得るとか、いろいろな問題もございます。そういう意味合いにおきまして、慎重に内容を検討する必要があろうとは考えておりますが、でき得れば、これは中小企業者にとっては非常に望ましい法案であろうというふうに考えておる次第でございます。  それから、もう一つの分野調整の法律の問題でございますけれども、大企業が急速に進出をすることによりまして中小企業に非常に倒産等が続出をする、こういう事態は避けなければならないと思います。これは資源のロスでもございますし、中小企業の就業の機会の確保ということは大事な問題でございます。ただ、これを法律で、たとえば中小企業性の分野というものを法定をいたしまして、その分野に大企業が入ってくることを規制する、こういう形をとることになりますと、これはまた非常にいろいろと問題が多いかと存じます。やはり競争はある程度必要でございまして、競争によりまして技術革新も進みますし、価格の引き下げといったような消費者利益も生まれてくるわけでございます。余りに過保護に過ぎるということは中小企業自体の切磋琢磨、将来の発展への希望をしぼませる場合もあり得るわけでございまして、そういう意味で、これは単に中小企業者の利益だけではなく、消費者利益の問題、物価の問題、それから中小企業自体がさらに発展をしようという問題、そういった問題を相当多角的に検討をいたしまして慎重に答えを出すべきものというふうに実は考えておる次第でございまして、そういう意味合いでは立法化の問題は慎重な検討が必要ではなかろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官もその長所は認めつつも、非常にいろいろ問題もあるということもおっしゃっておるわけです。自民党さんも非常に積極的にやっておられますし、わが党も法案を出しておりますし、各党、力を合わせましてこの法律はぜひとも成立をさせたい、こういう気持ちでおりますので、政府の方におきましても十分な効果が発揮できるように、いまからひとつしっかり準備をなさって検討していただきたいと申し上げておきたいと思います。  それから、問題はたくさんあるわけですが、増田長官にひとつお聞きをしたいと思うのです。  あなたはこの間、二十一日ですか、総合エネルギー対策閣僚会議、この席上におきまして、今後のエネルギー見通しについて発表なさったわけでございますが、今後さらに原子力に依存する体制が強まるであろうと、こういうことをおっしゃっておるわけですが、御承知のようにわが国の原子力の状況というものは「むつ」に象徴されるごとく、また美浜をはじめとした各発電所等におきましても燃料棒のああした事故も起きておりますし、安全性の問題、環境汚染の問題、非常にいろいろな問題があるわけです。政府は六十年六千万キロワットの目標もお立てになっているわけですが、現在の進捗状況からいきましてもとうてい達成できない。そういうことの中で、さらに今後は原子力であると、こういう状況はわかっておられるわけですか。当然、政府のそうした計画につきまして、長期見通しについて、これはもう改定をしなければならない時期に来ておるわけです。非常に相反するような感じなんですが、あなた自身はこの原子力の問題についてはどのようにお考えですか。
  198. 増田実

    ○増田政府委員 二十一日の総合エネルギー対策閣僚会議におきまして、議題の一つであった今後の世界のエネルギーの需給がどうなるか、あるいは石油価格についてどういう見方があるかということにつきまして、事務当局を代表いたしまして私からこの見方につきまして御説明をいたしたわけでございますが、そのときに、自由世界におきます今後のエネルギー、特に一九八五年、昭和六十年度におきますエネルギー構成がどういうようになっていくかということについて、一応の試算と申しますか考え方というものを紹介いたしたわけでございます。これは日本での考え方と申しますよりOECDとかあるいは各主要国がどういう見方をしているか、あるいは産油国の方も将来のエネルギー構造につきましていろいろな見通しをいたしておりますので、それを集大成いたしまして、また日本側の考え方を入れまして御説明いたしたわけでございます。  そのときに、今後のエネルギー構成におきまして、現在非常に石油が大きなシェアを占めている、しかし石油につきましては、これは御存じのように有限な貴重な資源でございます。また、これにつきまして一昨年の大幅値上げ以後いろいろの問題、たとえば非常に高価格であるとかあるいは供給の不安定性があるということで、この依存度をできるだけ下げたいというのが少なくとも消費国側の考え方でございます。これにつきまして、今後この石油依存度を下げるための方策といたしましては、いろいろほかのエネルギー源もございますが、その中で一番大きいシェアを占めるのは原子力だということで、今後の石油の依存度というものが各国の努力によって下がっていくわけでございますが、それにかわるものとしてはやはり原子力というものに大幅に依存せざるを得ないということで御説明いたしたわけでございます。  ただ、この原子力につきましては、ただいま先生からもお話しございましたように、特に安全性の問題、またいろいろの信頼性と申しますか、地域住民の納得、理解というようないろいろな問題がございます。これらにつきまして十分な安全性の確保、それから地域住民の理解というもとに進めなければ、この原子力への大幅な依存はむずかしいという問題があるわけでございます。そういう意味で、今後石油依存度というものを、特に日本が大幅に高いわけでございますが、これを下げる努力をいたしますときには、原子力がそれにかわる非常に大きな要素になるし、またこの原子力を進めるためには、先ほど申し上げましたような安全の確保というものが最も大事であるということで、エネルギー政策の今後の方向について御説明をいたしたわけでございます。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは皆様もお待ちでございますし、もう終わりたいと思いますが、いずれにしてもそれだけ安全性なり種々の問題につきまして力を入れなければならぬということの認識はお持ちであるわけですね。認識は持っておられるけれども現実は動いておらぬということでありますので、これはひとつエネルギー庁としましても、所管は通産省、科学技術庁になっておりますが、これはもう全力を挙げまして安全性の問題等を中心に力を入れていただきたい。そうしないと非常にいろいろな問題が山積いたしておりますから、きょうはもう時間もありませんのでこの次にしたいと思っておりますが、全力を挙げてこの安全対策、また国民の信頼を取り戻すようにやっていただきたいと思うのです。  それから、私はきのうも科学技術委員会でも申し上げたのですが、各電力会社のPR等にしましても、一回も事故を起こしておらぬとか、実にいいかげんなPRが行われております。科学技術庁は厳重にそれを改めさせるということを言っておりましたが、最高の長官として、エネルギー全般の長官として、こうした点も誤ったそういうPRをしないように、また各電力会社、原子力施設等にも通達をしていただきたい、このように思うわけです。これは重ねてこの場におきましても表明しておきたいと思います。  最後に長官の決意を聞いて私の質問を終わります。
  200. 増田実

    ○増田政府委員 原子力の安全確保につきましては、ただいまおっしゃられましたように、私どもは全力をもってその安全の確保に対して努力をいたしたいと思います。     〔塩川委員長代理退席、田中(六)委員長代理着席〕 また、この原子力問題につきましての説明の仕方、また国民一般に対するこれにつきましての理解を深めるためのやり方につきましても、先生のいま御指摘になった問題を十分頭に置きながらやっていきたいと思います。
  201. 田中六助

    田中(六)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会      ————◇—————