運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-03-28 第75回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十八日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 萩原 幸雄君    理事 前田治一郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 佐野  進君 理事 中村 重光君       天野 公義君   稻村左近四郎君       今井  勇君    内田 常雄君       浦野 幸男君    小川 平二君       片岡 清一君    近藤 鉄雄君       塩崎  潤君    葉梨 信行君       橋口  隆君    深谷 隆司君       森下 元晴君    保岡 興治君       綿貫 民輔君    板川 正吾君       加藤 清政君    栗田  翠君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         文部政務次官  山崎平八郎君         水産庁次長   松下 友成君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業政務次         官       嶋崎  均君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 斎藤 太一君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   鎌倉  節君         警察庁刑事局保         安部保安課長  四方  修君         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         参  考  人         (石油開発公団         理事)     楠岡  豪君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 同月二十八日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     今井  勇君   粕谷  茂君     葉梨 信行君   八田 貞義君     保岡 興治君   深谷 隆司君     片岡 清一君   山崎  拓君     綿貫 民輔君   米原  昶君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     越智 通雄君   片岡 清一君     深谷 隆司君   葉梨 信行君     粕谷  茂君   保岡 興治君     八田 貞義君   綿貫 民輔君     山崎  拓君   栗田  翠君     米原  昶君     ――――――――――――― 三月二十七日  中小企業不況対策の強化に関する陳情書外十件  (第二  八〇号)  中小企業事業分野確保に関する陳情書外一件  (第二  八一号)  繊維染織業危機打開に関する陳情書外三件  (第二八二  号)  韓国産大島つむぎの輸入阻止に関する陳情書  (第二八三号)  公営電気料金算定等に関する陳情書  (第二八四号)  農事用電力料金引下げに関する陳情書  (第二八五号)  既設水力発電地域に対する発電用施設周辺地域  整備法の適用に関する陳情書  (第二八六号)  液化石油ガス供給設備改善等に関する陳情書  (第二八七号)  液化石油ガス販売事業ガス事業との調整に関  する陳情書(  第二八八号)  家庭用燈油価格引下げ等に関する陳情書  (第二八九号)  商工会経営指導員等待遇改善に関する陳情書  (第二九〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石油開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第四三号)  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  私的独占の禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石油開発公団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 増田長官お尋ねをいたしますが、「海外における石油等探鉱をする権利その他これに類する権利取得」というようにありますね。「その他これに類する権利取得」とあるのは、開発権利と、開発は当然探鉱に伴って出てくるわけだけれども、「これに類する権利」というのはどういうことでしょうか。
  4. 増田実

    増田政府委員 「探鉱等」といいますものに開発する権利が入っているかどうかというお尋ねでございますが、これにつきましては、開発する権利を含む場合があり得るということで、「探鉱等」にいたしたわけですが、ただ開発する権利だけを対象にしてはいたさないことになっております。つまり探鉱開発の両方が一緒になった場合を想定いたしまして「探鉱等」と、こういうふうにしておるわけでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 探鉱開発一緒になっているということだと、探鉱をする権利というのに入るんだろうと思う。そうすると、「その他これに類する権利取得」というのは何か、「これに類する」ということは何かということになる。
  6. 増田実

    増田政府委員 最近の開発形態がいろいろ変わってきておりますので、たとえば請負契約とかあるいはPSコントラクト、これは請負契約一つの形式でございますが、生産物分与方式請負契約、こういうものがいろいろ新しく出て、むしろそれが最近の石油開発の新しい方式となってきておるわけでございます。「これに類する権利」というのは、そういうものを含むということをはっきりさすために掲げたわけでございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 この法律案審議を通じて同僚委員から特に強調されたのは、資源保有国恒久主権尊重、こういうことですが、鉱区取得する権利の場合に、その大前提となるものは資源保有国のいわゆる資源恒久主権尊重、こういうことになるわけですが、法の運用に当たってこの点をどう留意していかれるのか、明らかにしておいてもらいたいと思います。
  8. 増田実

    増田政府委員 産油国資源主権という立場をわが国としても尊重すべきことは当然でございます。それで、資源主権という内容につきましては、資源の探査、開発処分のすべてに及ぶものということでございます。  ただ、これにつきましては、たとえば産油国外国資本を導入して開発するとか、あるいは外国操業者、いわゆるオペレーターに請負をさせまして探鉱開発をするということはこれに含まれておるわけでございますが、いずれにしましても資源主権に関する基本的な決議と言われております一九六二年の国連決議その他があるわけでございますが、これらを尊重して、具体的に言いますと、産油国自分みずから必要または望ましいと考える規則と条件に従って、先ほど申しました外国資本を導入したり、あるいは外部操業者といろいろな契約を結ぶわけでありまして、現実にはこの契約内容というのは資源主権というものを尊重しながら、また産油国がみずからの選択によりまして操業者あるいは外国資本を入れるということでございます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 この点は大変重要な問題でありますから大臣からお答えをいただきたいのですが、御承知のとおり国連決議でもって権利取得というものは望ましくない、そういうことですが、国連決議精神尊重するということからいきますならば、今回の改正案の中にあります鉱区取得する権利を持つということについては、これは非常に重要な問題であろう。したがって、この法律運用するに当たって資源保有国恒久主権をいかに尊重していくのかという問題は、事務的な問題ではなくて国連決議尊重という観点からよほど慎重な態度をもって対処していくのでなければ、産油国との間のトラブルも起こってくるであろうし、また政府が考えているところの石油自主開発ということも円滑にいきにくいというようなことにも私はなっていくのであろうと思います。抽象的ではなくて具体的に国連決議精神尊重するという面から、実際の法の運用に当たってはこういう点はこういうようなことでやっていきたいというような政府考え方大臣から明らかにしていただくのでなければ、私どももこの法律案成立をさせるということをちゅうちょするわけですが、その点いかがでしょうか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話しの問題はきわめて重大な問題でございまして、開発を進めていきます場合に相手国恒久主権を害さないということは当然気をつけなければならぬ問題でございます。ただ、個々の問題につきましては具体的にこうします、ああしますということは、いま一概に申し上げることはできませんけれども、その基本的な精神十分配慮をいたしまして、そういうことの起こらないように具体的問題に対処していきたいと考えております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 増田長官同僚委員質問に対して、石油開発については古い型の権利取得はあり得ないんだ、そのようにお答えになっていらっしゃるわけですが、観念的にはわかるわけですけれども、古い型と新しい型の具体的形態ということに対するあなたの認識はどういうことになりますか。
  12. 増田実

    増田政府委員 私が先般商工委員会で古い型の利権方式と申し上げましたのは、かつてありましたいわゆるコンセッション方式ということでございまして、鉱区取得いたしますと、あとすべてのこれの操業権あるいは生産されます油の処分権コンセッションを受けました外国企業が行う、こういう形が古い型の利権契約、こういうふうに申し上げたわけでございますが、こういう形は今後はあり得ないということで、ただ鉱区付与という形のものは、たとえて言いますとイランは二十年以上前から国有化を行っているわけですが、合同方式利権を付与するということでやっております。むしろ、先生のおっしゃられております資源主権についてはイランは早くから強い態度をとってきたわけでございますが、その場合は共同して開発する、現在のイラン石油開発がそういうことでやっております。いろいろな方式が実際の石油開発にあるわけでございますが、先ほど先生お答え申し上げましたように、いずれの石油開発もかつてのいわゆるコンセッション型ではなくて、産油国資源国資源主権というものを尊重し、また資源国条件を決めた内容開発が行われる、こういうことになっていることを先般御答弁申し上げた次第でございます。
  13. 河本敏夫

    河本国務大臣 古い型ということを重ねて長官が明確にしたわけでございますが、私も同じ考えでございます。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 島田総裁参考人として出席されて述べられたことでも明らかになっているわけですが、公団は今日まで民間権利取得について大変苦労はあったようですけれども、それなりの役割りを果たしているわけです。ところが、それでも政府は不十分であるという考え方であろうと思うのですけれども公団が直接権利取得しなければならない、それを必要とする積極的理由というものはどういうところにあるわけですか。
  15. 増田実

    増田政府委員 現在の石油開発推進体制及び石油開発公団法のあり方というものは、基本的には企業開発をいたしますのに対しまして石油開発公団が出資または融資の形で援助をするというのが基本になっております。ところが、いま先生お尋ねのように、公団が直接石油探鉱あるいはそれに類する権利取得するというのはどういう場合に出てくるかということでございますが、いま申し上げました探鉱する権利あるいはそれに類する権利契約をいたしますときに、企業が行いますのに対しまして先方の国または石油機関契約公団にやってもらいたいということを要望する場合があるわけでございます。それが直接に権利取得する必要がある場合の一つの例でございます。  それからもう一つは、実際には企業契約をいたすべきでありますが、この前参考人でありました島田総裁が御説明申し上げましたように、会社を設立するのに相当時間がかかる、ところが先方あと一月以内とかあるいは二週間以内に契約を結ばなければほかの国に与えるというような例がいろいろ出てきておるわけでございます。そういう場合には、会社ができます前に契約するのに当たりまして、石油開発公団がみずから契約当事者になる。ただ、このいずれにつきましても、将来はその企業探鉱する権利及びそれに類する権利を譲り渡すということが条件になっております。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 産油国が、民間というものに対しては余り知名度も高くはないし、ということは信用度というものがわからない、そういった民間との交渉ということよりも、政府機関を非常に望むというケースというものが相当あるようにも感じられるわけですが、そうした点は積極的な理由ということの中心的なものではないのかどうか。やはり私ども権利取得という国連決議尊重するという観点から、その点を非常に重視するわけです。先ほど来大臣も明確にその点をお答えになりましたものの、要は今後具体的に公団がどう進めていくかという点にあるわけですから、その場合、私どもがこの法律案成立をさせるということになってまいりますと、やはり相手国意向というものが政府機関との話し合いを望むのだ、そういうケースが非常に多いのだということになってくると、そうした相手国意向というものが満たされるという方向で私どもは対処していかなければならないということになるわけですから、その点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  17. 増田実

    増田政府委員 相手国意思をできるだけ尊重するというのが、先ほどの資源主権尊重でもあるわけでございますが、産油国石油開発外国企業にやらせる場合に、まずその基本的な契約は、従来からの経験もあり、また世界的に知名度もあり、また技術陣も相当そろっている石油開発公団と専門的にまず詰めたい、そこで契約をいたした後に、初めて日本側民間企業がその契約に基づいて開発事業を行う、こういう形態が相当多くなってきておるわけでございます。その場合には、石油開発公団がまず契約当事者になるということでございますが、ただそれなら石油開発公団契約をするだけでなく、さらに探鉱もすべきではないかという御議論も、いままでこの委員会でいろいろ御質問があったわけでございますが、この前もお答え申し上げましたように、現在の石油開発公団状況から言いますと、探鉱までは現状ではできないということで、相手国政府にも十分説明しまして、契約をした後、これは民間企業自分の方が譲るんだ、しかしそれについては契約当事者として自分の方で責任を負って、十分この契約内容が実行されるようにするということで、そういう話し合いに基づきまして、石油開発公団相手国政府、あるいは相手国政府機関との間の契約が行われる、こういう形で、今後の開発が新しい形で進んでいくということでございます。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 長官は、政府目標であった六十年度三〇%達成ということはむずかしいというお答えがあったのです。今回の直接利権取得ということは、この自主開発の促進という点にも関連してくるのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  19. 増田実

    増田政府委員 自主開発わが国の総石油輸入量の三〇%を目標とするということは、私どもの従来からの念願であったわけですが、最近の情勢から言いますと、ただいま先生から御指摘のありましたように、三〇%を達成するのは、いろいろな意味でなかなか困難があると思います。ただ、できるだけ自主開発を進めていきたいということで、しかもいろいろ情勢が新しく変わっておりますので、そういう新しい情勢に適応して業務の拡張をお願いいたしておるわけでございますが、これによりまして、三〇%はむずかしくても、三〇%にできるだけ近づけていく努力を重ねていきたいというのが趣旨でございます。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 この点は政府中長期エネルギー政策という点から重要な問題点でありますから、大臣からお答えをいただきたいのですが、六十年度に自主開発はどの程度見込まれるのかという点と、新しいエネルギー政策を策定するに当たっては、自主開発を何年度にどの程度するかという計画というものが当然出てこなければならないというように私は考えるわけですが、新しい自主開発計画を策定する意思があるのかどうかという、その二点についてお答えをいただきたい。
  21. 増田実

    増田政府委員 大臣が御答弁申し上げます前に、私から若干事実関係について御説明申し上げたいと思いますが、現在の自主開発原油というものは大体九%ないし一〇%になっておるわけでございます。それから言いますと、昭和四十二年に三〇%の目標を立てたわけでございますが、それが現在に至ってもまだ一〇%に達してないというのが現状でございます。  六十年度にどれくらいに達するかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、三〇%は、現在の情勢では、私どもは非常に困難だと思っております。ただ、その努力をさらに傾けまして、できるだけ三〇%に近づけたいということで、今回の改正もお願いいたしておるわけでございますが、今後の石油輸入状況といたしまして、自主開発以外に、たとえば長期の直接取引、いわゆるDD取引長期契約に基づいて行う、これも非常に安定した供給源になるということでございます。それからまた、いわゆる政府間取引、この前イラクと行いまして、十億ドルの経済協力を行う、それと引きかえにイラク政府長期にわたって石油を供給するという、長期石油引き取り契約を伴います経済協力政府間協定でやる、私どもGGベース取引と言っておりますが、こういう長期DD取引あるいはいま申し上げましたようなGG取引というものを加えまして、安定供給の率をできるだけ高める。ですから、自主開発と先ほど言いましたものを合計いたしまして、これは三〇%ということでなくて、日本石油輸入の中でいま言いましたようなものをできるだけ多くするという努力を重ねていきたいということが、私どものいま石油輸入政策ということで掲げておることでございます。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 大体のアウトラインは長官が言ったとおりでございますが、昨年混乱をきわめておりました世界の石油事情も、方向がほぼ見当がついてまいりました。そこで、来月の中旬には政府としてのエネルギー政策についての基本的な考え方についての方向を決めたい、こう思っておるわけでございますが、その中では、やはり当分の間は石油が依然として大きな役割りを果たすわけでございますし、同時に、その石油の中において占める自主開発原油というものも、三〇%見当のものを目標とする、その目標は変えませんが、しかし何分にもこれにはむずかしい事情等がございますので、これはあくまで流動的に考えていかなければいかぬのじゃないだろうか。目標を掲げながら流動的に考えつつ、そしてそれにかわるべき方法も、いま長官がるる申し上げましたが、あわせて並行的に進めていく、こういう考え方でやっていきたい、かように考えております。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 取得した権利民間譲渡するということが前提になっているわけですが、どういう方法譲渡をしていかれますか。
  24. 増田実

    増田政府委員 先ほど申し上げましたように、産油国の方の希望により、石油開発公団探鉱する権利及びそれに類する権利取得する、あるいは会社の設立が間に合わないために、まず契約石油開発公団が結ぶというわけでございますが、その後企業にこの権利譲渡するわけでございます。  その譲渡はどういう方法でやるかというお尋ねでございますが、現在私どもの考えておりますのは、公団契約いたしまして、一年以内にこの開発に当たる企業譲渡する。それで、譲渡するに当たりましては、これは当然の対価を要求するわけでございますが、それまで公団が、たとえば交渉費、あるいはサインボーナスということで契約のときに払いました費用、それから契約を結びます前に、いろいろの資料というものを購入いたさなければなりません、これも相当金額が大きいものでございますが、これらの金額の実費を全部企業に請求いたしまして、それを徴収いたしましてから譲渡するということを考えておるわけでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 その譲渡を受けたいという会社が複数の場合もあり得るであろう。それから、公団産油国との間に折衝をいたしまして、そこで協定ができ上がるわけですね。ところが、協定を結んだその内容に対して、採算面から譲渡を受ける会社との間に必ずしも条件が整わないということだってあり得るであろう。その場合にどうするかということは当然考えておかなければ、私は混乱をするような感じがいたします。その点をどうするか。あらかじめこの鉱区A会社ならA会社譲渡するのだということで、一緒連絡をとりながら交渉をするというようなこと、そういう方式をとっていくのかどうかという点、明確でありませんから、その点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  26. 増田実

    増田政府委員 公団契約いたしました開発権利というものは、先ほど申し上げましたように、一年以内に必ず譲渡するということになっておりますので、契約いたします前からいろいろ準備を進めて、これを引き受ける会社、あるいは会社が設立されなくても、これを引き受けることを予定される会社群、つまり新会社はできなくても、それの株主となるべき企業十分相談をし、また契約のときには一緒に行くということで、この譲渡につきましては、大体譲渡すべき企業あるいは企業予定者というものが、あらかじめ決まっておるわけでございます。そういう意味で、公団が何らそういう相談なしに契約をして、そして一年以内に相手を探すということは、これは私どもはできないと思っております。ただ、会社がまだできておりませんから、その意味では先生の御心配になられますような、その後いろいろの話し合いというものが必要になってくると思いますが、しかしいずれにいたしましても、公団十分調査をして、有望なところを契約いたすわけでございますから、公団が譲り渡すことができないような心配は私どもはないと思っておりますし、それからまた公団が獲得いたしましたものを後から公開入礼をして、そして企業選択をするというようなケースは、私どもは出てこない、むしろ冒頭に申し上げましたように、契約いたしますときには、譲り渡すべき企業あるいは企業となるべきものと十分相談をした上で、そして契約に当たる、こういう形でやっていきたいと思っております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 この点は大変重要でして、私が心配をしておるということよりも、政府自体が明確な方針を確立しておかなければならない。ですから、いまのあなたのお答えからは一公団相手国との間の交渉をする、条件が整う、探鉱開発という形に進んでまいるわけでありますが、その場合に、そういう協定が締結をされた後ではなくて、あらかじめA会社ならA会社というものを決めて、それと緊密に連絡をとってやっていくのだというお答えでございますから、この点は大臣からはっきり方針をお示し願っておいたほうが私はよろしいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 私もいま長官が言ったような手続になると思います。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 周辺大陸だなにおける探鉱公団の投融資の対象とするというようにあるわけですが、「周辺」の範囲はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  30. 増田実

    増田政府委員 「本邦周辺の海域」ということでございますが、これは範囲につきましては、領海内の海域と領海外の大陸だな、両方を含んでおるわけでございます。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 領海は三海里から十二海里を政府も認めるという方針を明らかにしてまいったわけですが、ところが経済水域ということは二百海里ということなんですね。本法の運用に当たっては、解釈はどういうことになるのか。十二海里という領海、あるいは経済水域の二百海里というものを政府が考えている領海というようなことで運営をしていくのか、その点いかがですか。
  32. 増田実

    増田政府委員 先ほど申し上げました領海外の大陸だなの範囲がどういうようになっているかということでございますが、これは日本は大陸だな条約に入っておりませんが、一応大陸だな条約が大陸だなの定義を決めておりますので、大体水深二百メートルまでの大陸だな及びそれに加えまして開発可能なところまで、ですから二百メートルより深くても開発可能であれば、その大陸だなの延長としてやはり大陸だなと考えるということでございます。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 日韓大陸だな共同開発協定を結ぼうとしておられるわけですが、政府がいま協定をしようと考えている日韓大陸だなの協定は、この改正案政府が考えている周辺の概念に入るのかどうか。
  34. 増田実

    増田政府委員 日韓大陸だなの共同作業というものは、現在協定が韓国政府との間に結ばれたわけでございますが、私どもは、先ほど申し上げました領海外の大陸だなに含まれるという解釈でございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 そうなってまいりますと、日韓大陸だな共同開発というものと今回の改正案との関係というものはどのように解釈をしているのかということを明確にしておいていただきたい。
  36. 増田実

    増田政府委員 お尋ねの趣旨は、今回の改正で本邦周辺の海域というものの対象を広げる、それであるなら、現在問題となっております日韓大陸だなの共同開発をこれによって推進するのではないかという御趣旨だと思いますが、これにつきましてお答え申し上げますが、そういう趣旨ではございません。  それで、これにつきましてその理由を御説明いたしたいと思いますが、今回の改正に当たります対象ですが、これは本邦周辺の海域ということになっておりますが、先ほど御説明いたしましたように、これは二つに分けられると思います。一つは領海、それからもう一つは領海外の大陸だなということでございますが、領海外の大陸だなにつきましては、これは昭和四十六年度以降、実績としても、領海外の本邦大陸だなの探鉱事業につきましては、石油開発公団法の目的達成業務として投融資をすでに実施してきております。ですから、この分野の業務は、今回の改正によって新たに加えられたものではございません。  それでは、なぜ今回のような規定を設け改正をするのかということにつきましては、今回の改正の実質的な意味は、公団の目的が海外における探鉱促進にあるため、従来目的達成業務としては実施困難でありました領海内における探鉱事業に対する投融資業務を行えるようにすることであります。領海は従来三海里であったわけですが、現在世界の大勢といたしましても、また日本も近くこれを十二海里に広げる可能性が非常に高まっております。そういたしますと、この拡大されました領海内に相当有望な構造が存在することは予想されておりますので、それに対応して今回の改正をいたしたわけでございます。  以上のごとく、領海外の大陸だなの探鉱事業につきましては、公団の助成対象としてきておったわけでございまして、今回の改正のねらいというものは、繰り返しになりますが、領海幅拡大に備えて、目的達成業務としては実施しがたい領海内における探鉱事業を公団の助成対象にするということでございます。  それでございますから、領海外の大陸だなを対象としている日韓大陸だなの共同開発協定と今回の改正とは直接には関係がございませんし、また先ほど申しましたように、この日韓大陸だなの共同開発を推進する意図を持っておるものではありません。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 この点はきわめて重要であります。したがって、改めて大臣から考え方を具体的にお示しいただくか、あるいはいま増田長官が答えられたことを大臣が確認をされるか、明確にしておいていただきたいと思います。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま増田長官が詳細説明をいたしましたが、そのとおりでございます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 ただ、私がいまの増田長官お答えでやはり疑念を持ちますのは、大陸だなにおける探鉱公団の本来業務の中に明確化し、領海内における探鉱とあわせて公団の投融資の対象とするものでありますと、こう説明しておるわけです。いまのお答えの中で、現行法の十九条七号に目的達成条項というものがあるわけですね、これで従来もやってきたのだ、またやれるのだ、したがって今回の改正と日韓大陸だなの協約の問題は関係がないのだから、これを推進するものではない、こうなっておる。大体このように重要な問題を、付随事項ともいわれる目的達成業務条項でやれるという考え方自体が、私はやはり拡大解釈であると思っているわけです。政府としては、このような重要な大陸だなの開発というものを目的達成業務でやれるというようなことは、どうしてそういうような無理な解釈をおとりになったのか、その点どうなんですか。そして、具体的にいままで目的達成条項でもって開発に対する投融資をやってきたという事例はどの程度あるのか、またどこにやったのかということも明確にしておいていただきたいと思います。
  40. 増田実

    増田政府委員 目的達成業務で読みました趣旨は、石油開発公団は海外における開発事業を推進するための機関である。ところが、海外の解釈につきまして、いわゆる大陸だなは、領海ではございませんが、いわゆる公海でありますので、この公海を海外と読めるのか、あるいは海外の中に含まれてないのではないかということがいろいろ議論されたわけでございます。それで、私どもは海外における石油開発事業は、当然領海から外へ出たものにつきましては、これは読めるのではないかということで、いろいろ法制局とかその他と相談いたしたわけでございますが、これは海外の解釈がいろいろなケースで相当違うものですから、むしろ目的達成業務ということでこれを読める。それで、石油開発公団の目的になっている海外においての開発をするという条項でなくて、いまの目的達成業務の方で、しかも海外に準ずる公海の開発事業だ、こういう解釈でやったわけです。これらにつきましては、私どもは法制局その他とも十分相談をいたしまして、むしろ目的達成業務で読んだ方が、いろいろの解釈があった場合に、この方がいいのではないかというお勧めもあって、目的達成業務で処理したというのが従来の経緯でございます。  それから、もう一つの御質問でございます大陸だなプロジェクトに対して、公団がどういうように投融資をしてきたかということでございますが、これは一つは、阿賀沖で現在、日本海洋石油資源株式会社と出光日本石油株式会社の共同事業で開発をいたしております。これは領海外の大陸だなの作業でございますが、これに対しまして、日本海洋石油資源株式会社に対しましては二十四億六千九百万円の出資をいたしております。それから、出光日本石油に対しましては十九億七千四百万円の出資を行っております。次の例といたしましては、新潟沖で探鉱中でございます北日本大陸棚石油株式会社に対しまして十億の出資をすでに行っております。また、いわゆる常磐沖、これはエッソと帝石とそれから東日本石油開発、この三社の共同事業でやっております。これも領海外の大陸だなでやっておるわけでございますが、これに対しまして七億二千八百万円の融資をすでに行っております。これらを合計いたしますと、出資、融資の実績としては六十一億八千万円がすでに行われておるわけでございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 いまお答えになりましたようなことは、もちろん石油開発公団を通じてやっておられますね。
  42. 増田実

    増田政府委員 いま申し上げました六十一億八千万円の投融資の実績は、これは公団の投資、融資の合計でございまして、それ以外にこの各会社には別途の投融資を行っておるわけでございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 それは当然であるわけです。ところが、あなたもお聞きになっていらっしゃいましたが、私が島田総裁に対して、目的達成業務で公団が業務を行っている事実についてお尋ねをいたしました。ところが、総裁は答弁できませんでした。あなたのところに歩み寄っていって、何かあなたに尋ねて答えるというようなことでありました。少なくともあれほど長い間公団の総裁として業務を遂行してきた者は、これは目的達成業務による問題であるかどうかということを十分理解をしてやっていくということでなければならないと私は思う。知らないというようなことであっては、私は、総裁としてきわめて怠慢であるというか無責任であるというか、許せない態度であるというふうに思います。少なくともその点に対しては、大臣並びに長官はどのようにお考えになりますか。
  44. 増田実

    増田政府委員 この前島田総裁参考人として当委員会に出ておりまして、そのときに、直接利権取得について、目的達成業務ですでに行った実績があるかどうかという御質問に対しまして、私に聞いて、この実績はないということで答弁いたしたわけでございます。直接利権取得は現在までないわけでございますが、それに非常に近い形でバングラデシュ及びビルマ沖の契約があるわけでございますが、これは直接利権取得の寸前までいきましたが、ようやく会社の設立が間に合いまして、むしろ設立を急がせまして、最後の段階で会社とビルマ政府との間に契約させたわけでございます。このときに非常に無理がありましたし、また総裁から御説明いたしましたように、これだけ待たせるならほかの国へ譲ってしまうぞということを言われたわけでございますが、あのときには幸いにして会社設立が間に合ったわけでございます。  ただ、先生がおっしゃられますように、公団総裁は、直接利権取得というものの実績があるかどうかは、私は、この法律改正が非常に大きな問題点となっているので、御自分が当然知っておるべきことであるということは、そのとおりだと思います。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 目的達成業務で私が指摘をいたしましたようなことがやれるということになってまいりますと、私は何でもやれると言うのです。石油開発公団として石油及び可燃性天然ガスの探鉱に必要な行為は、どこまでも広がってまいります。やはり従来の解釈に私は無理があったというように思います。  今回の本来業務の中に明確化するということは、もっと早くやるべきであった。少なくとも目的達成業務ということであるから、目的を達成するためには大陸だなに対するところの開発利権取得、投融資というものができるのだというようなことでありますと、このこと自体が大変重要な問題でありますから、もっと広範囲にわたって政府が勝手にやれる。私は、そのことは少なくとも立法府を軽視するという態度にもつながっていくような感じがしてなりません。七十二回国会におきましても、今回出しておるような改正内容というものは行われていないのです。今回特にこれを改正しようとしておられるのは、日韓大陸だなの共同開発というような問題がここへ出てまいっておりますので、やはりそれとの関連というものがあるのではないかというような疑念というものが当然起こってくるということは、無理もないことだというふうに感じます。しかし、その点に対しては、また後でお尋ねすることもありますけれども大臣からも長官からも明確にお答えがあったわけでありますから、その点は議事録にもはっきり載っているわけですし、私はそれを疑おうとは考えていないわけです。しかし、少なくともいままで目的達成業務でやれるという考え方で来たということ自体、また現にこれを行ってきたということ自体、大変拡大解釈であり、立法機関に対するところの軽視という批判を免れないというように思います。その点に対しては、大臣、どのようにお考えになりますか。
  46. 増田実

    増田政府委員 先ほど本邦の大陸だなの実績を申し上げ、これを目的達成業務で処理したということを御説明申し上げたわけでございますが、目的達成業務でこれを非常に拡大解釈していろいろのものをやるというのは、法律精神に照らしてもおかしいではないかという御指摘でございますが、私どもの解釈といたしましては、従来の石油開発公団法の業務の中に、今回この点も改正をお願いいたしておるわけでございますが、海外における石油等探鉱に必要な資金を供給するための出資及び融資の業務を行う、こう規定されておりますが、この「海外」には当然領海外の大陸だなを含むべきだというのが私どもの解釈だったわけです。  ただ、これにつきまして、先ほど御説明申し上げましたように、法制局といろいろ御相談いたしましたが、公海について「海外」と読むかどうかについていろいろ解釈があるので、むしろ目的達成業務の方で処理した方が安全ではないかということであったわけです。ですから、その意味では、この「海外」の解釈につきまして、公海を入れるか入れないかにつきまして、おそらくこれは国際法上いろいろ問題があるのだろうと思います。そういう意味で、この立法のときに当たりましては、むしろ「海外」に当然領海外の大陸だなも含むものと私どもは解釈いたしておったわけでございますが、処理としては、法制局の御注意もありまして、そういうようにいたしたわけでございます。  以上申し上げましたのは、この大陸だなの開発につきましては、これは先般の改正のときにも、大陸だなの開発を大いに行うべきだという商工委員会の附帯決議もあったわけでございまして、私どもは大陸だなの開発の推進をいたしたい、これが「海外」ということでいろいろの解釈があるのなら、目的達成業務で読むということでやったわけでございまして、この御審議を受けましたいままでの石油開発公団法の趣旨を逸脱して、目的達成業務で勝手にやったというふうには、私どもは考えておらない次第でございます。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 日韓大陸だな共同開発協定に対しては、中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国から異議が出ていることは御承知のとおりであります。先ほどの答弁に関連をしてまいるわけでありますけれども、このように国際紛争が起きているとき、あるいは起こるおそれがあるという地域の探鉱開発事業に対する公団の投融資というものは当然行うべきではない、このように考えますが、大臣、この点をどうお考えになりますか。
  48. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは私も当然そうしなければならぬと思います。  繰り返して申し上げますと、紛争のある地域及び紛争のおそれのある地域、そこでは開発業務、投融資というものは見合わせるということにしなければいかぬ、こういうことでございます。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、これは行わない、こういうことになりますね。
  50. 河本敏夫

    河本国務大臣 紛争を生じておるところ、または紛争を生ずるおそれのあるところ、その間は行わない、こういうことであります。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 共同備蓄会社に対する公団の投融資は、プロジェクトごとに設立された会社に出資をする、こうしてあるわけですが、出資予算は三十億、融資は五十億にすぎないわけですね。この程度だと、余り多くの会社には投融資はできないように思うのですが、どの程度の会社数を予定をいたしておりますか。
  52. 増田実

    増田政府委員 共同備蓄会社につきまして出資金が三十億、先生のおっしゃられる予算が現在審議を受けておるわけでございますが、私どもが考えておりますのは、一つ会社に五億ないし十億の出資を考えております。それから言いますと、数といたしましては三社ないし四社くらいというものを共同備蓄会社で考えていきたいと思っております。  それから、それに対する融資が非常に少ないじゃないかという御指摘でございますが、これは会社を設立いたしまして、いろいろ計画を立て、それから建設に入るわけでございますので、初年度でございますので、初年度の事業としては五十億で十分ではないかというふうに考えておりますが、これはタンクの建設その他が進捗いたしますと、相当大きな金額を要するということになっていくと思います。これは第一年度の融資規模でございますので、第一年度としては五十億の融資で十分ではないかと考えた次第でございます。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 原油融資は五百八十五億、九十日分の計画をしておるようでございますが、実際問題として、九十日備蓄というものが可能なのかどうか、また具体的には陸上、海上を含めて備蓄をしようとしておられるのか、後で備蓄関係の法律案もお出しになるわけでございますが、本改正法案の中にもその点に対する内容が含まれているわけですから、ただ観念的に国際的な石油消費国会議で九十日備蓄というものが決定をしたから、これは日本政府としても九十日というものを表に出さなければならないということであっては、私はいけないんだと思うのです。公害問題等の関連等々から、九十日備蓄というものは可能である、具体的にはこうするんだということをこの際明確にしておいていただきたい。
  54. 増田実

    増田政府委員 現在の備蓄水準は、設備面から言いますと大体六十日前後になっておるわけでございますが、これを来年度、つまり昭和五十年を初年度といたしまして昭和五十四年度末までに九十日に持っていきたいというのが、今回の新しい備蓄増強計画でございます。  先生お尋ねの、九十日の備蓄を達成するのは非常にむずかしいんじゃないかという御指摘でございますが、私どもも非常にむずかしい点があると思っております。ただ、一昨年の石油危機を経験いたしまして、わが国においてやはりどうしても九十日備蓄というものを持っておりませんと、石油の供給が削減された場合、これは国民生活に非常に大きな影響を与えるということを身をもって私どもは経験いたしたわけでございます。これの達成にあらゆる努力を傾けたいと思っております。  ただ、これを行いますに当たりましては、備蓄基地の建設その他につきまして、十分保安の問題に留意をいたさなければならないわけでございますし、また地域の住民の方々の理解と協力を得なければ、この九十日備蓄を達成することは困難だというふうに思っております。そういう意味で、保安面につきまして万全な対策を行う、それから地域の方々の理解と協力を得るためのあらゆる努力を行う、これによりまして九十日備蓄というものを達成していきたいと考えております。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 この備蓄関係の法律案成立をしなければ、附則九条の三は働かないんだというように私は思うのでございますが、この点いかがですか。
  56. 増田実

    増田政府委員 今回の石油開発公団法の一部改正案で追加することとなっております附則第九条の三の規定は、公団に共同備蓄会社に対します出資及び融資の権能を与えておるわけでございます。それで、現在想定されております共同備蓄会社は、石油精製会社等の共同出資によりまして設立される商法上の株式会社でございまして、法律に基づく特殊法人ではございません。ですから、その意味では備蓄法がなくても、公団は共同備蓄会社に対して出資、融資を行うことができるわけでございます。こういう例は、たとえば日本開発銀行法あるいは北海道東北開発公庫法などにも見られますが、他の実体法がなくても融資、出資の機関が出資を行っている例があるわけでございます。  ただ、備蓄のための助成とは結びつくものではございませんが、備蓄増強のための施策の一環として、備蓄法の制定についても、現在政府部内でいろいろ検討を行っておりまして、成案を得次第、御審議をお願いするということになっておりますが、先生お尋ねの備蓄法がなければこれが動かないかどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、備蓄法がありませんでも、共同備蓄会社に対する出資、融資はできるということで解釈しております。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 今回の改正案の業務の範囲の中に四つあるわけですね。本邦周辺の海域における石油等探鉱資金の投融資、それからオイルサンド及びオイルシェールを本法の石油等に含めるという問題外国政府機関に対する石油等探鉱開発資金の融資、これは融資買油ということになるんだろうと思うのです。それから、海外における石油等探鉱をする権利その他これに類する権利取得といったようなことになっているわけですが、この中でいずれに重点を置いて運営をしていこうとお考えになっていらっしゃいますか。
  58. 増田実

    増田政府委員 開発関係につきましては、いま先生が御指摘になりました四点の改正があるわけでございますが、これについてどれに重点を置くかというお尋ねでございます。  私どもといたしましては、それぞれに重点を置いておるつもりでございますが、ただこの中のオイルサンドとオイルシェールは、いろいろ技術上の問題がございます。それで、現在でもアメリカ及びカナダにおけるオイルサンド、オイルシェールを代替燃料として開発しようという事業につきましては、将来のリスク負担その他いろいろの問題がございますとともに、また技術上の問題、それから環境上の問題、いろいろございまして、まだはっきりとこれについて見通しが立っておらない状況でございます。オイルシェール、オイルサンドの事業につきましては、若干将来の問題になる、こういうふうに思いますが、ただ先生も御存じのように、石油の数倍の埋蔵量が、それぞれオイルサンド、オイルシェールとしてございますので、有限なる石油にかわる一つの大きな燃料源だというふうに考えております。先ほども申し上げましたように、他の三つについては、私どもはそれぞれ同じような重点をもって当たりたい、こういうふうに思っております。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 私があえてこの点をお尋ねしておることは、御提案になったんだから、いずれも重点を置くんだということはわかる。しかし、この委員会において、直接利権取得ということは、産油国恒久主権という点から問題があるんだということを申し上げているわけです。これに重点を置いていこうとするのか、また外国政府機関に対する石油等探鉱開発資金の融資ということは、これは融資買油なんだから、相手国の主権を侵害するといったようなことはこの点からは起こり得ない、こう私は理解してもよろしいのではないかと思うが、こういうことに相当ウエートを持っていくという考え方があるのかどうかということを、政府の姿勢として私どもが聞いておくということは、これは当然でなければならないと私は思うのです。それで、あえて私はその点について触れたわけでして、四つ出しているからどうなんだ、四つとも同じでありますというようなことは、おざなりの答弁ということになる。やはりあなた方が質問に対してお答えになる場合には、改正法案としては一応認めるけれども、どういう点を立法府としては懸念を持っておるか、こういう点はやはり特に慎重でなければならないとかいうことを当然頭に置いて今後の運営に当たっていかなければならないと私は考えるから、あえてこの点に対する一ただ改正案に対してどうかということよりも、いままで私どもが数日にわたって質疑をし、どういう点を一番懸念をしておるかということも理解されたと私は思う。したがって、私の質問に対しては、いままで各委員から質問をし問題にしたという点を頭に置きながら、今後の運営についてどう対処しなければならないかという観点からお答えというものが当然出てこなければならない、そういう考え方お尋ねをしているわけです。改めてもう一度お答えをいただきます。
  60. 増田実

    増田政府委員 今度、四つの業務の追加について御審議を受けておるわけでございますが、これに対する優先度をどういうふうに考えるかにつきまして、先ほど私が申し上げました答弁が非常に不明確でおわびいたします。  四つのうちで、先ほど申し上げましたように、オイルサンド、オイルシェールの方は将来の問題ということでございますので、残りの三つについて申し上げるわけでございますが、恐らく相当大きく出てくるのは、先ほど先生もおっしゃられた融資買油の問題、これは金額も相当大きいので、これが一つの重点であろうと思います。  それから、本邦の大陸だなの開発につきまして、これは韓国の共同作業の問題につきましては先ほど大臣から御答弁があったわけでございますが、つまり日本の新潟沖とかあるいは常磐沖その他、ここに良質の石油が発見されれば、これは安定確保にとっては非常に大きな効果が上がりますので、これは金額的には先ほど申しました融資買油に比べると少ないと思いますが、やはり一つの別の意味の重点を置きたいと思っております。  それから、直接利権取得につきましては、これはたびたび本委員会で私からも申し上げておりますが、産油国のいわゆる資源主権というものは十分尊重するというもとにこれを行うということでございますが、ただこれにつきましては、公団先方から求められる、あるいは会社の設立が間に合わないということで一年以内に引き渡すことを前提としておりますので、金額的にも少ないと思いますし、またケースとしてもそう多数は出てこないというふうに考えておりますが、ただこれも先方産油国の方の要望でぜひ公団がやれということであれば、私どもはやはり資源を持っております国の意思尊重してこれを行いたいということで考えておるわけでございます。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 日韓大陸だな協定等に基づく国際紛争の起こる可能性のある地域に対するところの投融資は行わないということ、あるいはその他重要な点に対して大臣並びに長官から明確なお答えがありました。したがって、私どもは賛成という態度をもって臨みたいというように考えております。円滑に本法の目的が達成されるような運用について、十分ひとつ留意をしていただくように期待をいたしまして、私の質問を終わります。
  62. 山村新治郎

  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 大陸だな等の周辺海域の開発につきましてお伺いしたいと思っておりますが、わが国周辺大陸だなの開発を促進することは、最も確実な安定供給源を持つことになるわけでありまして、これは非常に重要な課題であろうかと思います。今回の法改正で、領海内の探鉱事業に対しても公団から投融資できることになるわけでありますが、現在の領海三海里以内で、また今後領海が十二海里となった場合に、それぞれの探鉱事業の現状探鉱事業を実施すべき有望床の賦存状況につきましてお伺いしたいと思います。
  64. 増田実

    増田政府委員 わが国周辺大陸だなにおきまして、石油及び可燃性天然ガスが存在しておる可能性が相当高いわけでございまして、現在私どもが実施しております大陸だなの基礎調査の結果におきましても、わが国周辺大陸だなには、堆積盆地が発達しており、また構造が相当数あるということが判明しております。  それで、いまお尋ねのどれくらいの数があるかということでございますが、先ほど申し上げました大陸だな基礎調査の結果では、現在の領海三海里内には十ぐらいの構造があるということが報告されております。それから、今後十二海里になった場合に、この三海里と十二海里の間にどれくらいの構造があるかということでございますが、これにつきましては六十数個の構造が一応報告されております。そういたしますと、十二海里まででは合計約八十個の構造が領海内に含まれるということになるわけでございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 領海内の鉱区の設定状況及び各社の探鉱事業計画をどのように把握されておりますか。
  66. 増田実

    増田政府委員 御質問鉱区数につきましては、領海の内外いかんにかかわらず設定及び出願を認めておりますので、これが三海里以内、十二海里以内にどういうようになっておるかということは、いままだ私ども区別してその数字を把握しておりませんので、ここでお答えをすることは困難でございますが、領海とそれから大陸だなを含めまして、つまり領海外の大陸だなを含めまして、石油、天然ガスの鉱業権の設定の合計は四千八百二十二件でございます。面積にいたしまして一万六千八百七十七平方キロメートルでございます。それから、出願につきましては、三十五万九千九百八十四件で、これの面積は百十六万五千四百四十四平方キロメートルでございます。  それから、領海内におきます探鉱開発状況はどうかということでございますが、現在まで三海里以内の領海内での探鉱投資の額は、まだきわめて少ないわけでございまして、むしろ調査その他をやっておりますが、昭和四十四年から四十八年の合計で私どもの把握しております範囲内では、大体八億五千万円というのが合計でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 この三海里なり十二海里——十二海里というのは、大体世界の大勢と思いますが、やはり通産省は常にそういう点を把握しておく必要がある、このように思います。いま整理できないならやむを得ませんが、今後しっかりやってもらいたいと思います。  それから、領海外の周辺大陸だなの探査につきまして、実施したことがあるかどうか、ないとすれば、今後実施する計画があるかどうか。その場合わが国独自でできる範囲と技術力の現状について説明をお聞きしたいと思います。
  68. 増田実

    増田政府委員 国がやっております大陸だなの基礎調査でございますが、これは四十五年から実施しております。四十九年までの合計が大体二十四億、正確に言いますと、二十三億八千万円を投入して基礎的な物理探査というものを、国が石油開発公団に委託いたしまして実施いたしておるわけでございます。  技術力につきまして、わが国が独自でできる範囲及びその技術力の現状はどうかということでございますが、現在までのところは、これは先生御存じのように、非常に残念ではございますが、大体外国会社と共同方式をとりまして、これらの大陸だなの探鉱を行っておるわけでございます。  例を申し上げますと、たとえば常磐沖でやっておりますのが帝石とエクソンとの共同開発でございますし、阿賀沖におきましてもアモコという米国の会社と共同事業でやっております。これは外国の新しい技術も入れまして、そしてわが国開発会社もそれを勉強しながら共同事業でやっておるというのが現状でございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 現段階で最も有望と見られるのはどこか、この点についてお伺いしたいと思うのです。その場合、日韓大陸だな共同開発協定で規定する地域というものは入っておるのかどうか、以上の点、お伺いします。
  70. 増田実

    増田政府委員 現在すでに着手しておりまして、本邦周辺の大陸だなでやっております中で、どれが有望かということでございますが、阿賀沖につきましては、これは石油でなくて可燃性天然ガスの相当大きな構造が発見されたわけでございまして、現在ではすでに生産段階に移る準備を行っております。これによりまして、本年の末かあるいは来年早々にはこれが実際に生産されて供給される態勢になるということで、現在着々準備中でございます。  それから、常盤沖につきましては、これも天然ガスでございますが、二井は相当有望な構造を見つけたわけでございますが、ただ非常に陸地から遠いものですから、これを直ちに生産段階に移し得るかどうかにつきまして、その技術的な検討が行われておるわけでございます。  これ以外にも、たとえば秋田県あるいは山形県の沖、それから島根、鳥取沖というものが相当有望だということで、いろいろ作業が行われておりますが、現在までのところではまだ有望な構造は発見されていないというのが実情でございます。  それから、日本周辺でどこが一番有望かということでございますが、これは南シナ海から東シナ海にかけまして相当の堆積盆地があるということが言われております。日韓の共同作業をいたす地域もそのうちの一部でございますが、いまの地域の中でどこが一番有望かということについては、これはまだわからないわけでございますが、南の方の堆積盆地というものが相当有望だということがエカフェの調査で報告されておるわけでございます。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 有望な海域として、いま長官がお話しになったわけですが、その中で、現在進めようとしておりますこの日韓大陸だな共同開発協定で規定する地域というのをいまお話しになったわけでございますが、この区域におきまして、日本側あるいは韓国側でどういう企業探鉱開発をしようとしておるのか、また日本側探鉱開発企業のうち、石油開発公団の投融資を希望することが予想されるものがあるかどうか、この見通しについてお伺いしたいと思います。
  72. 増田実

    増田政府委員 日韓共同地域で現在出願しておりますのが三社でございまして、日本石油開発と西日本石油開発、それから帝国石油、この三社が鉱業権の出願をいたしておるわけでございます。  公団の投融資の希望については、現在まだ何も聞いておりません。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、この地域につきましては、今後海洋法会議で二百海里の経済水域が決まったとしましても、わが国と韓国だけではなく、中国とも一部錯綜する地域じゃないかと思うわけです。そういう点で、日韓両国だけで決めるべきではないと思うわけですが、この点についての考え方はどうですか。
  74. 増田実

    増田政府委員 今回の協定で共同作業地域に入っております地域につきましては、一応韓国と中国、それから日本と中国との間の中間線よりは日本側あるいは韓国側ということで、その地域を対象といたしておるわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、二百海里というものが認められるということになりますと、日本からあるいは韓国から、それから中国からの二百海里というものがそれぞれオーバーラップするということにはなるわけでございます。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうなってきますと、少なくともこういうような国際政治上問題を起こす可能性のある地域に対しましては、国の機関である公団から投融資をすべきじゃない、このように思うわけですが、これについて長官大臣からお伺いしたいと思います。
  76. 増田実

    増田政府委員 石油開発を行いますときに、これが国際的ないろいろの紛争のもとになるということは、望ましくないわけでございまして、そういう立場に立ちまして、石油開発公団という政府機関が投資、融資を行いますに当たりましては、これらについて十分配慮しなければならない。そういうことに基づきまして、紛争があるのにもかかわらず、個々の企業に対しまして投融資をするということをいたさないということは、先ほど大臣から申し上げましたとおりでございます。
  77. 河本敏夫

    河本国務大臣 わが国の周辺では、二百海里という経済水域の問題と大陸だなという二つの問題からオーバーラップするところが若干あるわけでございます。したがいまして、基本的な原則といたしましては、繰り返し申し上げるようでございますが、国際紛争を現に生じておるところ、また生ずるおそれのあるところは、そこに対する開発あるいは投融資、これはそういうおそれのある間はやらない、こういう基本方針を堅持すべきである、かように考えております。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣から明確に行わないというお話があったわけですが、この点は非常に大事な問題でございますので、今後必ずそれを守っていただきたい、このことを申し上げて終わります。
  79. 山村新治郎

    山村委員長 佐野進君。
  80. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、石油開発公団法の一部を改正する法律案について、過日、大臣が出席をしている時間だということで質問をしたわけですが、たまたまその日大臣が全時間、私の質問時間中在席していなかったので、そういう点について約束が違うではないか、こういう抗議を言ったんでありますが、参議院の関係等もあって、質問を留保しておいた事項がございますので、それらの問題を中心にして質問をしてみたいと思います。  まず第一に、今回の法律改正に当たって幾つかの問題点が提起されておるわけでありますが、それはすでにいままで各委員から質問をしてこられたわけであります。したがって、私は重複を避けてと申し上げたいのですが、重複せざるを得ない面がたくさんあるわけでございますけれども大臣に以下の点について質問をしてみたいと思います。  その一つは、今日のエネルギー資源としての石油開発に対して、政府が積極的に取り組んでおる、こういう点については評価をするにやぶさかではございませんが、その実績というものはきわめて低いということも、これまた否めない事実であろうと思うのであります。特に一昨日、公団総裁の出席を求めて参考人としての意見を聞いたわけでありますけれども、その際、いわゆる十を投資して八はむだになる、二がかろうじて効果のあるものとして開発される、これがわれわれの社会における常識である、こういうような参考人見解が述べられておるわけであります。しかも、その状態が出てくる基本的な条件としては、いわゆる資金量が不足である、技術者が足りない、体制が不備である等々、幾多の欠陥が指摘された。これは長官もそのように指摘をしておるわけでありますけれども、そういう条件の中で今回石油開発公団法の一部改正が行われ、業務の追加が行われようとしておるわけでありますが、この業務の追加の中でいわゆる統括会社の果たす役割り公団の投融資対象としての各プロジェクトを統括する会社の果たす役割りというのが非常に大きいと思うのであります。しかるに、この統括会社の内部的な体制その他はきわめて不備である、不十分である。特に石油問題については素人であると思われるような方がこの統括会社の社長となって、いわゆる財界の有名人であるという形の中において公団の投融資対象の各プロジェクトに対する指導を行っておる。こういうような状況の中においては、開発事業に対してきわめて不十分なものではないか、いわゆる成果が上がらない、いままでと同じような状況が続くのではないか、こういう点を指摘をいたしたわけでありますが、大臣も私の質問については聞いておると思うのでありますが、この私の見解に対してどうお考えになっておられるか、この際ひとつ見解を明らかにしていただきたいと思います。
  81. 河本敏夫

    河本国務大臣 お話の点は、私も全く同意見であります。したがいまして、今後石油開発公団が有効に事業を進めていきます上におきましては、御指摘にありました幾多の点について、よほど十分配慮をしていきませんと効果は上がらない、私もかように考えます。
  82. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、その次に大臣に御質問をしたいのは、この公団改正法が成立いたしますれば、政府資金がことしは去年に比べて二百億円ふえる、それに付随するいろいろな形の中における業務の追加等によって、本年度だけでなく、さらに持続して相当大幅な資金が投ぜられる形になろうと思うのであります。したがって、公団業務の持つ責任というものがこの法律改正においてきわめて拡大されていく、こういうような点が考えられるわけであります。そういたしますと、公団自体の体制の整備ということが非常に大きな問題になってくると思うのであります。この法律改正公団内部の整備という形の中で、業務の追加に伴う目的の改正、役員の増員その他所要の改正を行う、こういうことになっておるわけでありますけれども、実際上の問題といたしまして、役員の増員は、結局特定の人が特定の条件の中で天下るのか天上がるのかわかりませんが、そういう形の中で一つないし二つのポストがふえたということで、そのポスト増に対して役員が追加される、こういうことになると思うのであります。それを私は何も否定するわけじゃないですが、それだけでなく、これに伴う諸般の体制の整備ということに対して、いままでと違った角度における体制の整備を図っていかなければならないのではないか。いわゆる技術者の養成等々、総裁も言っておりましたけれども、その養成というものも単に現状を把握した上に立っての平均的な配置というような形の中においてそれを行おうとする。私は総裁の意見なり公団理事なりの答弁を聞いて、政府が意図している今回の法律改正を、それ以上の効果を上げてこれを行おうとするにはきわめて熱意不足である、こういうように感じられる面があるわけでありますが、これらに対して大臣基本的な考え方長官の具体的な取り組み方、これについて答弁を求めたいと思います。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 幾ら法律を整備しましても、会社をたくさんつくりましても、人を得ず、運営よろしきを得なければ、これは何にもならないということでございます。したがいまして、いまのお話は全く核心をついた話だと思います。そこで、せっかくこうして法律改正が行われようとしており、さらにまたそれに伴って公団の出資金等もふえる、扱う金もふえるわけでございますので、その貴重な資金を有効に使わなければいかぬ。したがって、有効に使うためには一体どうしたらいいのか。やはり有効に使えるような体制をつくらなければいかぬ。幾ら人を集めましても無能な連中ばかり集めたのでは、これは何にもならない。金を有効に使えるような体制をつくっていく、それが一番の先決問題である、こういうふうに考えます。
  84. 増田実

    増田政府委員 基本的な方向につきましてただいま大臣が申し上げましたので、私から具体的な問題について申し上げたいと思いますが、先生からお話ありましたように、石油開発につきましては技術という問題が最も重要な問題でございます。そういう意味で、石油開発公団における技術の推進の業務というのは非常に重要視されなければなりませんし、またこれを中心といたしまして日本における石油開発の技術の向上を期したい、こういうふうに考えておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、石油開発公団の中に昭和四十七年七月から石油開発技術センターを設けまして、ここで石油開発技術に関する研究開発あるいは技術者の訓練、養成あるいは技術的サービスというものを実施するということで、この技術向上の業務を担当いたさせておるわけでございます。それにさらに加えまして、昭和五十年度における事業といたしまして、海外に派遣され、海外で石油開発事業に当たるべき技術者の方々の再訓練と申しますか、日本の中で秋田とか新潟で相当な腕を持ってこの技術の担当をしておられます方々も、海外に行きまして、いろいろ外国人を使うとか折衝する、あるいは専門用語で渡り合うということにつきましては不十分な点がございますので、技術訓練センターというものを新たに発足させよう、それでここには各石油開発会社の技術者に出向してもらいまして、そして石油開発公団の中で再訓練するのみならず、世界におきます石油開発を担当いたしております会社、これはいわゆる国際石油資本のメジャーも含めてです、そこに出向させる、これは石油開発公団先方交渉いたしまして、そしてその技術者を見習いに出して、そこでいろいろ海外における開発事業を具体的に行うのにはいかなるやり方があるかということを現場で訓練していただく、こういうことでやっております。今後発足することで、まだ準備中でございますが、これによりまして、先ほど先生から御指摘ありましたように、石油開発における技術の向上というものを期していきたいというふうに考えております。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、私は公団の内部的体制の整備ということが必要であるということをいま強調したわけですが、同時に、この法律改正によって開発が効果を上げるために幾つかの問題点があろうと思うのです。それらについてもうすでに多く触れられている面もございますので、私は一点にしぼって質問してみたいと思うのでありますが、いま八つの統括会社、五十のプロジェクト、こういうぐあいに一般的に言われておるわけでございますけれども、それぞれがそれぞれの条件の中で競合することはいいのでありますけれども、その競合という形が、外国の巨大資本といいますか、国際石油資本のその巨大なる力の前においてはきわめて弱い力しか発揮されないということは指摘され続けてきたわけであります。そこで、それらに対抗——対抗という言葉が適当かどうかわかりませんが、そういう意味において石油開発公団の果たす役割りは非常に大きい、こう思うわけでありますが、今日の石油開発公団の業務の内容は、結局各プロジェクトに対してあるいは統括会社に対して指導を強化するとともに、投融資ないし利権の確保等に対して積極的に協力をするということになっておるわけです。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、そういうような状況の中で、いま現にその事業を行っておる八つの統括会社、五十のプロジェクトチーム等に対する指導性というか、政府としての指導性というものは、どういうような形の中においてこの法律改正と同時に強化をしていかれるお考えであるか、あるいはまた、これは長官が御答弁になって、大臣の考えを聞いてもよろしゅうございますが、その具体的な指導方針についてお伺いしたいと思います。  それから、これに関連して、公団がこの法改正に基づくところの巨額なる投融資を行う形になるわけでありますが、そういうことに関して、これらのプロジェクトないし統括会社に対して、ただ金をやりますよ、成功は八、二ですよ、うまくいかなくてもこれはあたりまえですよ、こういうような無責任な態度は許されないと思うわけであります。したがって、公団として法律の範囲内においてどのような具体的な指導というものが行われるのか、さらにその投資した資金がどのように活用されるかということに対して積極的に取り組む考えがあるのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  86. 増田実

    増田政府委員 日本石油開発企業が、諸外国に比較して非常に弱体ではないかという御指摘がございました。私どもも率直に言いまして、そのとおりだと思っております。現在、先生が御指摘になりましたように、開発会社としては五十社前後のいわゆるワンプロジェクト・ワンカンパニーという形でいろいろの開発事業を、これは各社非常に苦心をし、また努力をしながらやっておりますが、しかしながらその実態が、たとえば技術力あるいは経験力からいっても弱いということで、たとえばアメリカのメジャーズが数千人の技術者を持ちながら豊富な資金力でやっておるのに対抗してやるのには余りにも弱体ではないかという問題点はおっしゃられるとおりだと思います。そういう意味で、私どももこの石油開発企業の体制問題につきまして、やはり政府が大きく指導して、石油開発の中核的企業の育成というものをやっていかなければならないというふうに思っております。また、昨年の総合エネルギー調査会の石油部会の答申にもその問題点が指摘されておるわけでございます。  また、統括会社につきましても御指摘がございましたが、統括会社、現在八社ございますが、これらにつきましては、確かに資金のパイプ役としては相当な効果を発揮いたしておるわけではございますが、しかしその実態を見ますと、技術力それから経験というようなものにつきまして、このままではやはり非常にむずかしい石油開発、しかもリスクを伴い、また膨大な資金を要します石油開発というものについて、果たしてそれが担当するのに適当かどうかにつきましてもっと検討しなければならない点がいろいろあると私どもも考えております。そういう意味で、この前、統括会社一つであります三井石油開発が帝国石油と業務提携を行ったわけでございますが、これは統括会社の資金力、それから帝国石油日本では石油資源開発と並びまして相当な経験とそれから技術力を持っておるわけでございますが、この二つが業務提携を行いまして、そして今後の石油開発に当たろうというのも一つ方向だと思います。まだそれでも不十分だと思いますが、こういう方向を進めて、技術力、資金力それから経験というものをいろいろ総合した中核的な企業に成長させていくということが必要だということで、私ども石油開発企業の体制問題に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  87. 河本敏夫

    河本国務大臣 長官が答えたとおりでございますが、わが国開発会社がきわめて弱体で、しかも非常に乱立をしておる、やはり中核的な役割りを果たす会社を強化していかなければならぬわけでありますが、これは民間会社でありますから、直接事業に介入するというわけにはいかぬでしょうが、やはり資金を融資するというふうな場合には、その資金が有効に使われるように十分なる監督をしなければいかぬと私は思います。でありますから、そういう面を通じましてやはり強化を図っていく、こういう形でやっていく必要があろうかと思います。
  88. 楠岡豪

    ○楠岡参考人 先ほど佐野先生の御指摘の点は、私どももふだん痛感しておる点でございまして、国からお預かりいたしましたお金をできるだけ有効に使うということを精いっぱい心がけておるつもりでございます。  具体的に会社と私どもの関係を申し上げますと、まずプロジェクトを会社なりあるいは私どものところに持ってこられまして、そのプロジェクトができるだけ有望なものであるかどうかということを判断しなければならないわけでございまして、従来も直接、間接に私どもに持ち込まれたプロジェクトのうち八割はお断りしているというような状況でございます。しかし、それでもなお、総裁が申しましたように、打率が上がらないという点は、私ども非常に残念に存じております。  そういうことで、まずいいものを見つけるため、やはり技術者の資質の向上が必要でございますので、技術者の内部的な訓練の方法といたしまして、外国会社とか政府機関等ともお話をいたしまして、短期あるいは長期の研修という制度を取り入れて、できるだけ技術者の質の向上を図ってまいりたいといま具体的に話を進めておる段階でございます。  それから、プロジェクトが始まりまして、年々あるいはその都度計画を立てるわけでございますが、その場合にも私ども相談にあずかりまして、また必要がございましたならば、民間の技術者の足りないところを私どもの技術者が直接先方と会って、いろいろ交渉をいたしまして、納得のいくような計画を立ててもらっておる次第でございます。  それから、一番むずかしい点は、油がまだ出ませんで計画を進めていくというときに、どこでこれを打ち切るべきかという問題がございます。こういった点につきましても、会社側としましては、もう一本掘る、あるいはもう一本というようなことでプロジェクトを続けたがるのは人情の常でございますけれども、こういった場合、私どもの技術者が直接、たとえば先方のパートナーと交渉をいたしまして、じかに資料も見まして、今後ププロジェクトを続けるべきか、あるいはこの辺で思い切って打ち切るべきかというような判断をするというようなことで、できるだけむだのないように心がけておる所存でございます。それで、私ども今回の法律改正を機にいたしまして、心を新たにしまして、国からの石油開発に対する御期待に沿いたい、そういうように万全の努力をしたい、かように考えております。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、そういうような体制をつくる中で、それぞれのこの改正に基づいたところの業務の追加の仕事をやっていかれるわけでありまするが、私は、もうこの業務の改正内容については、それぞれ審議がありましたので、全般的に触れることはやめたいと思うのでありますが、ただ一つ、この業務の追加の第二番目にある「外国政府機関(これに準ずる法人を含む。)であって石油等探鉱及び採取の事業を自国内で行うものに対する石油等の採取(これに附属する精製を含む。)に必要な資金を供給するための資金の貸付け」、この問題についても、すでにたびたび議論が行われておりまするが、外国政府機関及びこれに準ずる法人、こういうものの範囲について、いま一度長官からひとつ説明していただきたいと思います。
  90. 増田実

    増田政府委員 いまの政府機関の問題でございますが、産油国政府機関は、いろいろな形があります。産油国の国営の石油会社という形が一番多いのではないかと思っておりますが、これへの直接融資業務を新たに石油開発公団の業務として追加するということを今回の改正でお願いいたしておるわけでございます。  これを追加いたします趣旨を申し上げますと、近年産油国資源主権の立場から、有望鉱区が国内にありましたとき、これをいわゆるナショナルリザーブとして確保いたしまして、そしてそれをみずからの手で開発するというのが時代の趨勢となっておるわけでございます。そういう産油国からの要請に応じまして、産油国の国営の石油会社自主開発に協力することによりまして、わが国石油安定供給の確保を図ろうとするのが今回の趣旨でございます。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういたしますと、この趣旨は、いま言われたような意味でそのまま解釈いたしますと、産油国の領海と大陸だな、この二つがあるわけでありますが、この領海ないし大陸だなはどのように判断したらよろしいのか。
  92. 増田実

    増田政府委員 先ほど申し上げましたように、産油国がナショナルリザーブとして自分鉱区を保持するわけでございますが、その鉱区のある場所は、陸地、それから領海、それからその国の大陸だな、これをすべて含んでおるわけでございます。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その含むという形の中で、先ほど来たびたび議論がありましたが、産油国の陸地あるいは領海、こういうものはともかくといたしまして、大陸だなというものの解釈は、先ほど来の質問で、非常に微妙であろうと思うのであります。したがって、これらについては、第十九条に関連する質問にもありましたように、国際紛争の発生のおそれのあるように地域についてはこれを行わない、こういうようなぐあいに解釈していいかどうか。これはひとつ大臣にその見解をお聞かせいただきたいと思います。
  94. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど来何回か申し上げましたが、石油開発公団が新たに事業を起こしたり、あるいはまた融資をいたします場合には、紛争を現に生じておるところ、紛争のおそれのあるところは対象として取り上げない、こういうことでございますから、いまの御質問に対しても、同じようにそういうところとは仕事はやらない、こういうことでございます。
  95. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は質問を続けてまいりましたが、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思うのでありますが、いま連絡がありまして、質問をさらに留保しておけという連絡等もございましたので、私はいまここで質問を一応終わりまして、近江委員から関連質問を若干してもらって、私としては以上をもって質問を一応留保して、いまの質問を終わりたいと思います。むずかしい表現になりますけれども……。
  96. 山村新治郎

  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど約束の時間が来まして佐野委員質問を譲ったわけですが、そういうことで、一点だけ大臣にお聞きしておきたいと思うのですが、この法案によりましても、備蓄をするための融資を公団が行う、こういうことになっておるわけであります。大臣も御承知のように、水島地区におきますタンクのああした事故によりまして、瀬戸内海が大変な汚染を起こし、大問題になっておるわけであります。政府としては、関係省庁力を合わせて、コンビナート法案の提出については検討なさっておるようでございますが、本委員会におきましては、この公団法、さらに石油備蓄法案等も予定されておられるわけでございますし、そういう点におきまして最も大事なことは、やはり保安の問題じゃないかと思うのです。こういう点で、このコンビナート法につきましては、三木総理大臣も早急にこれをつくるようにという指示もお出しになっております。三木さんは総論あって実行なしというような批判も最近は出かけてきておりますし、やはり国民のそうした信頼にこたえるためにおきましても、この法案は少なくとも今国会で成立できるように提出をする必要があろうかと思います。また、中身につきましても、完璧な、そういう保安が確保できるような中身を持ったものにしなければならない、このように思うわけであります。  そこで、このコンビナート法の提出につきましての大臣の決意をお伺いしたいと思うわけであります。
  98. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま自治省が中心になりましてまとめておられますが、作業の模様をお聞きしますと、大体大詰めのようであります。まだ一、二の問題で各省間で調整の残されておる点があるようでございますが、それの仕上げについて連日懸命にやっておるというのが実情のようでございますので、これは総理も非常に強い決意を持っておられるわけでございますが、私どももやはりこれができませんと、防災体制、保安体制ということに対して機動的な一元的な強力な運営もできませんし、かつまた地方の住民の方々にも安心をしていただけない、こういうことでございますので、ぜひともまとめ上げたいということで、いま最後の仕上げをしておるところでございます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、大臣の御答弁によりますと、最後の仕上げに全力を挙げておるという状況からしますと、間違いなく今国会で成立でざる、いわゆるそのタイミング等もあるわけでございますし、間違いなく今国会には提出し、それを成立させるようになさるおつもりですね。もう一度確認しておきます。
  100. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは自治省が責任を持って作業を進めておられますが、私どもはぜひ一刻も早くまとめてもらいたい、こういう強い希望のもとに協力をしておるわけでございます。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、しばらく留保しまして、ちょっと置いておきます。
  102. 山村新治郎

    山村委員長 佐野進君。
  103. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私の質問は先ほど留保しておりましたが、なお板川委員の方から私に関連質問の申し出がありますので、板川委員質問をひとつ……。
  104. 山村新治郎

    山村委員長 板川正吾君。
  105. 板川正吾

    ○板川委員 通産大臣、いま近江委員からも質疑がありましたように、コンビナートにおけるタンクの安全性、保安上の問題、これは大臣は、自治省でいまやっておると、こう言っておられるのですけれども、私は前の委員会でも言いましたように、どうも自治省が担当されるというのは、結局は消防庁、消防組織法、消防法、こういうたてまえでコンビナートの石油タンクの安全性というのを考えておるように思われるのです。消防組織法なり消防法の目的を見ればわかりますように、そういうものの安全について消防庁なりというものは実は責任を持っていないのです。たとえば自治体消防に対して指揮命令権というのがないんですよ。いまのこの消防組織法と消防法から言いますと、消防上の保安や安全の責任というのは自治体消防が負っておるのです。ですから、自治体消防という、たとえば三万や五万やあるいは十万程度の町の市町村長が責任を負い、消防署長が具体的に責任を負う、こういう形の中で、膨大な量の石油タンク、安全問題あるいは近代的な科学的な知識がなければこの安全性というのについて十分な検査ができない、予防ができない、こういうものを自治体に責任を一切任しておるという体制の中では、コンビナートの安全性というのは確保できないだろう、こう私は申し上げたわけなんです。どうもそういう点で、通産大臣、余り責任を負おうとしない、消防庁に任しておけばいいという感じがいたします。独禁法では、これは産業政策にかかわる問題だからと言って、総理大臣とじきじき談判するというだけの責任を産業政策にお持ちであるならば、総理が自治省にその案をつくれということだけでは十分じゃありませんぞ、だからこれは通産省と自治省、消防庁との共管であるか知りませんが、私は、たとえば保安上の問題は通産省が責任持つようになるべきじゃないだろうか、防災については、これは消防庁がタッチしてくるのは当然でありますが、その災害が起こる前の保安上の問題は、高圧ガスと同じように通産省が責任を持つべきじゃないだろうか、こう申し上げておるのですが、先ほどの近江委員に対する答弁や何か見ますと、自治省、消防庁でやっているからと言って、対岸の火事のごとく感じているのは問題だと私は思うのです。そういう態度では、このコンビナートの防災上の責任を市町村に任せて、産業官庁がこれに対して何も積極的に安全を守ろうという姿勢を示さないなら、備蓄問題なんていうのは一歩も進みませんし、備蓄法なんか出てもそれはもう通るはずはないのですよ。国民の理解がなくては通らない。だから、国民の理解が得られるように、私は通産省がこの石油コンビナートの保安上の責任を負うべきである、こう申し上げておったのですが、どうも大臣の感覚はまだそうでないように思われる。この点についてひとつ御意見を承りたい。
  106. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は先ほど、法案は最後の段階に来ておるけれども、まだ一、二の問題点が残っておって、それについては関係者が連月調整をしておるということを申し上げましたが、いま板川さんお話しのような点に実は問題が残っておるわけでございます。具体的には言わなかったわけでありますが、現在の消防の施設能力、それからその命令系統、それとコンビナート地区における非常に高度のいろんな新しい工場の施設、こういうことを考えましたどきに、形だけ整えましても実が伴わないということになりますと困りますので、それを一体どうすべきかということが最大の課題でありまして、その問題についていろいろ調整をしておるということでございまして、具体的に言わなかったからといって決して等閑視しておるわけでございませんで、最大の課題としていま取り組んでおるわけでございます。
  107. 板川正吾

    ○板川委員 ただし、いまの消防上の実際の活動部隊というのは地方自治体における消防組織なんです。その地方自治体の消防組織が近隣の消防組織とお互いに協定を結んで、自分の部署では手に負えない事態があったら助け合おうという形になっておるのですけれども、水島における事故、一つのタンクがああいう事故を起こしただけでもあれだけの損害を広範に与えるということになりますと、全国で何千とある石油タンク、あれがもし一個でなくてさらに爆発をして他の一、二のタンクにそれが累を及ぼして、同じように重油が漏れたということにでもなれば、これはとても自治体消防というものじゃ私はそれを防災する能力というのはないと思うのですね。ですから、たとえば海上保安庁もあるいは陸海空の機動部隊を擁して、国家消防隊的な、自治体消防と別にもっと高度の機械力を持ち、機動力を持つ高度の消防組織、国家消防組織というようなものも考えていかないと、法律はできたけれども実際はそれを担当する部署がないということもあります。ですから、いま消防庁関係といろいろ詰めておるそうですが、それは法律だけでは十分じゃない。防災の組織というのもある意味では必要ではないか、こう思います。  関連質問ですからその程度にいたしますが、それについて御意見を大臣から承りたい。
  108. 河本敏夫

    河本国務大臣 今度のコンビナート防災基本法の一番の重要な問題点をいま御指摘になったわけでございますが、その点は十分心にとめまして最後の仕上げに当たりたい、こういうふうに考えております。
  109. 板川正吾

    ○板川委員 以上で終わります。
  110. 山村新治郎

    山村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  111. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  他に質疑の申し出もありませんので、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  112. 山村新治郎

    山村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  石油開発公団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  113. 山村新治郎

    山村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  114. 山村新治郎

    山村委員長 本法案に対し、塩川正十郎君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。塩川正十郎君。
  115. 塩川正十郎

    ○塩川委員 石油開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表し、提案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   石油開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、最近における国際石油情勢の推移と石油資源開発の一層の重要性にかんがみ、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 石油開発公団の投融資規模の拡大及び機構・人員の充実を図るため、安定した財源の確保に努めること。  二 石油開発公団の機能を強化するため、探鉱の実施、石油開発統括会社に対する助成、石油技術者のプール制等について検討すること。  三 産油国との直接販売原油の合理的な取引とその円滑な処理を図るため、引取体制を整備すること。  四 国際紛争のおそれがある地域の探鉱事業に対する石油開発公団の投融資については、これを行わないこと。  五 石油開発公団が海外における探鉱をする権利その他これに類する権利取得するに当たつては、資源保有国の天然資源に関する恒久主権を害することのないよう十分配慮すること。  六 石油備蓄の増強を図るための石油開発公団の投融資については、石油備蓄施設の保安の確保に関し十分配慮のうえ実施すること。 以上であります。  本決議案の各項目の詳細につきましては、当委員会における質疑の過程を通じ十分御理解願えるものと存じますが、そのうち第四項の趣旨は、特に韓国等近隣諸国との共同開発地域における業務の実施について指摘したものであります。 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  116. 山村新治郎

    山村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 山村新治郎

    山村委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。河本通産大臣
  118. 河本敏夫

    河本国務大臣 ただいま議決をいただきました法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を尊重いたしまして万全を期する所存でございます。     —————————————
  119. 山村新治郎

    山村委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  121. 山村新治郎

    山村委員長 通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤嘉文君。
  122. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 余り時間がございませんので、できるだけ答弁も簡潔にお願い申し上げたいと思います。  きょうは繊維の問題をひとつ取り上げて、いろいろと大臣及び関係者にお聞きをしてみたいと思います。  御承知のとおり、繊維は現在非常に不況でございまして、言ってみれば戦後初めての不況であり、また戦前と比べても、昭和に入りましては初めてぐらいの不況ではないか、こう言われておるわけでございますが、その繊維というのは全国的に非常に地場産業が広がっておりますし、また従業員は二百万以上を抱えております。そういう繊維業界がこのまま不況から脱却ができなければ大きな社会不安を起こすことは必定であります。ところが、この繊維というのはほかの産業と違いまして、現在の総需要抑制、物価安定のための抑制策がとられてきたということもありますけれども、それ以外に構造的な問題あるいは国際的な問題、そういう問題からこの不況というものは起きておると私は思います。そこで、一般産業のいわゆる総需要抑制策のことはまず別におきまして、きょうは繊維産業に特有のものだけにしぼっていろいろ御質問をしてみたいと思います。     〔委員長退席、前田(治)委員長代理着席〕  まず、最近いろいろと新聞をにぎわしておりますのは繊維の輸入制限の問題でございます。繊維業界は、繊維産業連盟をつくって、その中に小委員会を設けて、ぜひ繊維の輸入を規制することを考えてほしい、こういうことでみずからもいろいろ検討されておりますし、またあちらこちらの産地あるいは中央の大会でも、業界からはこぞってこの輸入制限に取り組んでほしいという声が出されておりますが、政府の姿勢は依然としてかたい姿勢であります。そこで、私は、かたい姿勢というのはなぜそうかたくなければならないのか、正直、そう聞くと、これは自由貿易をたてまえとしておるわが国からいって、なかなか輸入制限というのは踏み切れない、こういうことでございますけれども、それならば、世界の先進国で日本のように輸入を全く自由にしておるという国はあるかと言えば、これは皆無と言っていいのではなかろうか。アメリカを初めECあるいはその他の国々は、それぞれ輸入枠を設定したりいろいろやっておるわけでございます。あるいはまた、それでは関税率はどうか、これも日本は諸外国と比べて関税率は低いんであって、諸外国の方が関税率は高いわけであります。  こういうように見てくると、諸外国、少なくとも自由貿易をたてまえとする自由主義陣営の先進国でさえ輸入制限を結果的にやっておる。なぜ日本だけがそれができないのか。この辺私は理解に苦しむのでございますけれども、まず大臣からひとつその辺の考え方を承らしていただきたいと思います。
  123. 河本敏夫

    河本国務大臣 繊維の輸入規制あるいは輸入制限という問題でありますが、問題になる国はわが国の近隣諸国でありまして、近隣諸国からの輸入がふえておりますので、そういう問題が起こっておるわけでありますが、近隣諸国との貿易を調べてみますると、やはりわが国からの大幅な出超になっておるわけであります。繊維関係では輸入超過ではありますが、貿易全体としては大幅な出超になっておる。そういうところに一つの大きな問題があって、にわかに輸入規制ということには踏み切れない。  それから、繊維品全体について見ましても、これは製品でございますけれども、最近は大体ほぼ倍の輸出になっておる。輸入よりも輸出の方がほぼ倍になっておる、これは製品だけでございますが。そういうこともさることながら、近隣諸国との特殊な貿易、そういうことから近隣諸国に対して輸入規制ということに踏み切れない、こういう実情があるわけでございます。
  124. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そういうお言葉でございますけれども、それは認めるといたしまして、私、それでは一つ例を挙げますと、毛織りでございます。毛織りは決して近隣諸国から入ってきていないわけでございます。これはほとんどが先進国から入ってきておるわけでございまして、たしか四十八年度は前年度と比べて倍の数量が入ってきておったと思います。それから、四十九年度においても、たしか八割ぐらいの増加を来しておると私は承知をいたしております。そういう面からいって、これがどうかということ。  それからもう一つ、時間もありませんので、ほかの問題とからめて申し上げますが、近隣諸国というお話でございますが、たとえば御承知のとおり生糸の輸入は一元化をいたしまして、いま生糸は国内の基準価格が一万円である。最一近、ここ二、三日うちに決定をする予定でございますけれども、この基準価格が一割以上上がることは大体確実だと言われております。そうすると、基準価格が一万一千幾らになれば、一万一千幾らの生糸を国内の絹織物業者は結局買わなければならない。そういうときに外国の生糸、特に近隣諸国でございます中国、韓国はどうかと言えば、中国が約七千円、韓国は八千円、こういうことになっておるわけでございます。そうすると、そこでつくられる、中国で七千円、あるいは韓国で八千円の生糸を使用してつくられる絹織物の輸入は自由であり、そうして日本がつくる国内の絹織物業者は一万一千幾らの原料の生糸を使わなければならない。そうして、それで国際競争をやれと言ったって、これはもう初めから全く無理な競争だと思います。特に人件費その他を考えれば、完全に競争が立ち行かなくなるということははっきりしておるわけでございまして、その辺、それならばどうしても輸入制限ができないならば、こういう政府の施策によって不当な形で高い原料を買わされてやらなければならない業者、こういうものに対して、それでは一体どういうお考えなのか、毛織物は先ほど申し上げましたように先進諸国から入っております。それからもう一つ、絹織物は、そういう原料の生糸が明らかに高いものをいわゆる国の施策で買わされてつくらなければならない、そういう不当な形でやっていかなければならない業者に対して、政府は何ら施策をしないのかどうか、こういう二点についてお聞かせいただきたいと思います。
  125. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般アメリカの新しい通商法も決まりまして、それを機会といたしまして自由貿易を中心とする新国際ラウンドについていまいろいろ話を進めておるという、そういう世界的な規模での話し合いの進行状態、こういうこともひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、繊維品全体の製品関係では、先ほど申し上げましたように輸出が三十数億ドル、輸入はほぼその半分、全体としての数字もそういうことになっておりまして、なかなな制限ということに踏み切れない、こういう深刻な事情もございます。  それから、関税の水準等につきましては、いまお話がございましたが、これは局長から後で高いか安いかということに対しては数字をもって御説明させたいと思います。  それから、生糸の輸入は一元化しておるにかかわらず、織物は入っておるではないか、それでは競争ができないじゃないか、こういう御質問でございますが、私も全くそのとおりだと思うのです。実はその点で大変頭を悩ましておるわけでございまして、といってこれは輸入制限をするというわけにもいかない、大変困った状態だ、何か対策はないものかということを考えておるわけでございますが、しかしただいまのところは輸入制限をもって対抗するという結論を出すのはやはり全体の貿易状態から見てちょっと早い、こういう感じもいたしますので、目下総合的に一体どうしたらいいのかということについて検討中でございます。  いま考えておりますことは、とにかく二国間の話し合いをひとつ近隣諸国とやってみよう。韓国は韓国と問題を整理してみよう、中国も中国と話し合いをやってみよう。絹織物のいまお話しの関係は中国だと思いますが、そういうことで、二国間でひとつ貿易全体のことを考えながら秩序ある輸入体制の確立ということはできないかどうか、それに当分全力を挙げてみたい、その結果を見た上でまた次を考える、こういうことでやってみたいと考えております。
  126. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生御指摘の毛織物の件でございます。確かに毛織物につきましては、近隣諸国ではなくて先進国、特にヨーロッパからの輸入が問題でございます。綿織物その他労賃の低いところのものがたくさんふえるのはわかるが、労賃も高いであろう先進国特にヨーロッパからの輸入がふえているのはどういうわけかという問題でございますし、私どもその点は検討しようというふうに思っているわけでございます。一つには、やはりこの数年来の高度成長に伴いまして消費が高度化した、あるいは個性化したというようなことを踏んまえまして、イタリアあるいはフランスのかなりハイセンスのものを消費者が欲するようになったということも影響してふえてきたのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。それが二、三年来からの過剰流動性その他の問題に絡みまして急増したわけでございます。確かに昨年の毛織物の輸入の状況は、ほかの織物が比較的落ちついたのに比べますると依然として高い水準にございまして、数量あるいは金額で見ましても五、六割の増加という数字を示しておるわけでございますが、しかし昨年の夏以来の不況の深化に伴いまして、実は毛織物につきましても輸入減退の徴候は出てきております。この一、二月の平均数字ですと、大体前年同期の半分くらいというような数字になっておりまして、毛織物につきましても、時期的にはおくれましたけれども、輸入の鎮静化という事態はあらわれてきているかと思うわけでございます。ただ、相手は先進国でございますので、この点につきましては毛織物業界の品質、デザインあるいは素材の使い方等、やや長期観点になるかと思いますけれども、体質改善と需要者に好まれる新製品、新企画を生み出すというような企業努力もあわせて私どもとしてはお願いいたしたいところでございます。  先生の御質問でございますが、関税率が高いか安いかというのは、これを比較するのは非常にむずかしいと思います。関税率というのは、御存じのように個々の品目で決まっているわけでございますが、一般的に繊維製品の関税率はどうだということになりますと、非常に答えにくいわけでございますし、これの計算の方法等も実ははっきり決まったものもございませんが、ただKRの作業のときに各国がひとつ横並びで比較してみようということで試算をした数字はございます。これによりますると、日本の繊維品の関税率というものは、確かに高い方ではございません。大体一般的に言えば、EC並みと申してよろしいのでございましょうか、そのくらいの水準になっておりますが、他の工業製品に比べますると、繊維品のグループといたしましてはやや低い方に属するものかというふうに考えておるわけでございます。  それで、先生御指摘の毛織物の関税率はどうかということになりますると、大体いま言ったような感じがやはり出てきておりまして、日本の毛織物は大体関税率が八%から一これは計算の方法がありますけれども、大体一四、五%ぐらいのところに分布するわけでございますが、これに対しまして、米国の場合ですと一七%から一〇〇%というものもございます。ECの場合ですと一三%から一八%というようなことでございますので、毛織物の関税は、先進諸国に比べると日本の方がやや低いところにあるというふうに言えるかと思います。
  127. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 いまのお話でございますが、私どもの調べておるのでは、たとえば毛織物だけを見ましても、日本が一二%ぐらいまで、それからECが一三、四%、アメリカになれば、現在は三八%加わっておって四八・二%、こういう数字が出ておるわけでございまして、相当これは高いんじゃないかと思います。また、繊維品全体の関税を見ましても、平均をいたしますれば確かに日本とECは大体似ておりますけれども、イギリスあるいはアメリカ、カナダその他の先進国と比べれば日本の方がはるかに低い。これは通産省も認められると思うのでございます。これは認められますね。——それは認められたといたしまして、そこで大臣に、先ほどお話しのように新しい国際ラウンド、これからいろいろ交渉が始まると思うのでございますが、そういうように日本は平均よりも総体的に見れば関税は低い。しかも、クォータというものは日本は全くないわけでございまして、外国は先進国といえどもいまのお話で関税もやや高い、それに加えてクォータがある。こういう状態のときに、先ほど来輸出と輸入の総トータルからいくと、なかなかむずかしいというお話はございますけれども、少なくとも先進諸国のそういうことに対して、たとえばECあるいはアメリカ、いま一応協定が結ばれておりますけれども、この新国際ラウンドに基づいて何とか日本の実情を訴えて、もう少し向こうのクォータ、日本に対するクォータは外すということに対して、日本政府として、今後そういう新国際ラウンドを進められるに当たってがんばっていただけるかどうか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  128. 野口一郎

    ○野口政府委員 大臣にかわりまして答弁させていただきますが、まさに先生が御指摘になりましたように、実は昨年の一月からガットに基づく国際繊維取り決めが発効いたしました。それに基づきましてバイラテラルな二国間の取り決めを見直すことになっておるわけでございまして、現在そのためにカナダとの交渉、あるいはいま先生の御指摘のECとの交渉を開始したわけでございます。私ども基本的立場はあくまでも相手方にできるだけ自由化を進めてもらう、直ちには無理であっても三年なら三年以内に自由化をしてもらうということで相手方に強く追っているわけでございます。先生の御方針のとおり今後もさらに進めるつもりでございます。
  129. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そういうこともぜひ御努力をいただきたいが、先ほどのお話の繰り返しになりますから、どうもこちらとは平行線であって、大臣からも政府からも輸入制限をいたしますという答弁はとても引き出せないことは私も理解できます。しかし、現実の繊維の状態は、大臣を初め政府の皆さんよくおわかりのとおりでありますし、全体ではそういうお話かもしれませんけれども、内部的に見れば本当に瀕死の重傷になっておる業界はたくさんあるわけでございまして、今後何らかの措置をとっていただかなければならない。たとえば先ほどの絹織物にいたしましても、もちろんいま韓国なり中国と御努力いただく方向で協議をしていただいていることは承知をしております。しかし、それがうまくいけばいいのでありますけれども、万が一それがうまくいかない場合は、先ほど大臣もおっしゃいましたように、生糸が一元化の輸入で非常に高いものになっておる、そして絹織物は依然としてフリーである、それで競争しろと言っても無理であることは大臣も御承知いただいたとおりでありますから、たとえば韓国なり中国と話し合いをしてうまくいけば大変結構なことなので、それはぜひ私どもも側面的に応援させていただきたいと思っておりますが、うまくいかなかった場合はぜひ何らかの輸入規制の措置をとっていただかないと、日本の繊維業界特に絹織物業界は全く立ち行かなくなる、こういうことでございますので、これは予測でございますけれども、万が一うまくいかなかったときは何らかの規制措置をとるということに対してはいかがでございましょうか。
  130. 河本敏夫

    河本国務大臣 繊維業界の現状の認識につきましては、武藤さんと全く一致いたしております。したがいまして、中国、韓国、その他近隣各国と具体的に話し合いを進めるわけでございますが、特に私どもは国内における繊維関係業者が非常に多いという点を強調いたしまして、両国間の親善関係、友好関係を確立するためにはどうしても繊維製品に関しては秩序ある貿易ということが根本であるということ等について誠意を持って話し合いをしたい、全力を挙げてこの解決に当たりたい、こういうふうに考えております。それがうまくいかなかったらどうするのかということについては、いま私から答弁するのは適当でないと思いますので申し上げませんが、とにかくいましばらくの間は全力を挙げてみたい、かように考えております。
  131. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 これは答弁を引き出すことはなかなかむずかしそうでございますので、きょうのところはあきらめておきますけれども、ぜひひとつお考えをいただきたいということだけお願いをいたしておきます。  それから、いまのようなことで相手国とわりあいうまく話がいった場合、向こう側はどちらかと言うと、日本と違いまして全くの統制経済でございますから、輸出の方はある程度チェックができると思うのでございますけれども日本側は全く自由でございますから、いま現在はたしかそういう品種別のしっかりした輸入の統計はできていないと私は承知をいたしておるわけでございます。たとえばクォータを設けるとかいうようなことができない場合は、行政的に相手の国と話をしていただくとともに、秩序ある輸入をしていただくために、いま現在も行われておりますけれども、今後とも相当行政指導はやっていただきたいと思うのでございます。輸入制限をやらないかわりにそれくらいのことはやっていただけると思うのでございますが、それをやっていただけるかどうか、そしてやっていただけるとすれば、現在のような輸入統計では全く不備な点が多過ぎてなかなか実効が上がらないと思います。また、逆に業者の方といたしましても、どうしてもそういうことで輸入制限ができなくてクォータができないとなれば、生産する場合には自分たちも今度自主調整を考えていかなければならない。そのときに品種別の輸入統計で、たとえば一月は何が幾ら入った、二月は何が幾ら入ったという統計がはっきりしておれば、これから四月、五月、六月の生産を幾らにするかという計画が立つわけでございます。ところが、日本の場合は、従来は繊維製品というのはどちらかと言うと輸出産業であって、余り輸入のことまで考えなかったからかもしれませんけれども、そういう輸入統計がはっきりしていないわけです。だから、そういう行政指導を今後ともやって、ある程度秩序ある輸入を進めていくということはどうか、これを確認させていただいて、それはやるというときには輸入統計についても、少なくとも品種別の輸入統計をしっかりとすぐにでもつくり上げるということをここでお約束できるかどうか、御質問させていただきます。
  132. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かにお話しのように、輸入統計につきましては不備な点がございまして、正確な数字を掌握するということはなかなか困難でございます。そのために正確な対策も立てにくいということはよく承知しております。でありますから、相手国話し合いをしながら、わが方におきましても、秩序ある輸入を実現するための具体的な方法、いまお話しになりましたようなことも含めまして、やれることは全部やっていきたい、こういうふうに思います。
  133. 野口一郎

    ○野口政府委員 大臣の答弁を補足させていただきます。  まさに先生の御指摘のとおり、輸入面の数字の把握というのは不十分でございます。一番頼りになる、あるいは権威があるのは税関の通関統計でございますけれども、一例を挙げますと、一番問題になるであろう絹織物でございますけれども、実はこれがしぼり、紋織り、その他絹織物、この三つの分類しかございません。いま問題になっておるのは、たとえば羽二重とかいうものなんですけれども、それはその他絹織物の中に入る。ですから、通関統計上正確に羽二重が幾ら入っているかというのはわからないというのが偽らざるところでございます。ですから、大臣の申しましたようないろいろな行政指導をきめ細かく、あるいは強力にやっていくにいたしましても、確かにその前提になるのはそういう統計類をしっかりと把握することであると思います。ただ、税関の統計でございますので、これは大蔵省ということになるのでございますが、先ほどの先生の御趣旨を踏んまえまして、われわれの方は強く大蔵省に従来も要求しておったということを聞いておりますけれども、今後も要求いたしたいと思っております。  それから、私どもの手で整備できる統計につきましては力を入れているところでございまして、先生御存じのようにインボイス統計もことしから始めまして緒についておるわけでございますし、あるいは直接の行政指導の材料に使われるべき、将来どれだけ入るだろうかということの目安になる契約面の統計につきましても、現在着々整備中でございます。
  134. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そういう方向にあることは承知しておりますが、早くやっていただかないと本当に大変だと思いますので、少なくとも一カ月以内ぐらいにぜひやっていただきたいと思います。  私に与えられた時間も余りございませんので、きょうはこの問題はこの程度にさせていただきまして、もう一つの繊維の問題で、最近、ある業界の団体でございますけれども、そこで大型店舗との繊維の取引につきましていろいろアンケートをとったわけでございます。そうすると、私どもから見れば、現在の独禁法の不公正取引に当たるようなことが行われておるという感じでございます。たとえば、これはたしか通産省にもお届けしてある、お手元には入っておると思いますが、たとえば十二月の支払いの総額が約千五百万円あった。ところが、十二月の支払いを千五百万円もらえると思っておったら、もらえたのはわずか三百万円であった。千二百万円は保留になってしまった。それじゃ一月になったらもらえるかと思っておったら、一月になってもまたもらえなくて七割ばかりが保留になってしまった。こういう百貨店がある。あるいは締め切り日以前の品代金ですが、仕入れがあれば当然それだけ支払わなければならないのに、それが一部仕入れに計上されていない。そして、勝手に向こうでおまえのところはこれだけだと言って支払われておる、こういうケースの百貨店がある。その他いろいろありますが、一カ月据え置きで現金でやるといういままでの契約といいますか、慣習で行われておったものが、突然に百二十日の手形に変えられてしまった。これはあるスーパーということでございます。あるいはそれ以外に、たとえば協賛金などを強要するというようなものは明らかに不公正な取引ではないか、こう思うのでございますけれども、こういうものを、通産省あるいは公取も来ていただいておりますけれども、承知をしておられるのかどうか、ちょっと承らせていただきたい。
  135. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 大型店舗のうち特に百貨店は非常に古い業界でございまして、歴史が古うございますので、その間にいろいろな古い商慣習あるいはやや古い商業道徳というものが累積いたしておるわけでございます。余り好ましくない不合理な商慣習と現代に適切でないような商慣習等が独禁法の不公正という範囲まで逸脱しておりますならば、これは独禁法をもって厳正に取り締まられるべき種類のものであるというふうに考えます。ところが、独禁法の不公正まではいかない、しかし不合理であるというような商取引、これがいま先生御指摘いただきましたように少なからずあるということはよく承知をいたしております。こういうものを一体どうすればいいのかということは非常にむずかしい問題、流通行政の根本の問題であろうかと存ずる次第でございますが、これにつきましてはよく実情を調査し、個々のケースにつきましては行政指導をするほか、一般的に契約条件等を合理化するように関係者、関係業界を指導していくつもりでございます。
  136. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 百貨店あるいは大型スーパー等が、繊維の問屋そのほかの一般の納入問屋との関係で大型店舗の力が強いということのために、問屋さんの方に不当に不利益な条件を押しつけるということは、不公正な取引方法の優越した地位の乱用ということで、私どもの一般的な取り締まりの対象になっております。と同時に、百貨店につきましては、現在特殊指定ということでもって具体的に不当返品とか不当値引さとかいうような点についての不公正な取引方法の指定がございまして、それを通じて取り締まりに当たっているところでございます。先生御指摘のような調査あるいはそういう事例がございますことは、私どもも耳にすることがございまして、具体的にどの百貨店、どのスーパーでどの問屋との間にそういうことがあったのかということがわかれば、その都度百貨店の特殊指定あるいはまた一般指定の先ほど申しました優越した地位の乱用の行為として是正をさせております。ただ、力関係の状況がございますので、なかなかこういう実態は私どもには入りにくいという事情がございますので、できるだけそういう実態をつかまえて、いま申し上げましたような法律に基づいて是正に努めてまいりたいと思っております。
  137. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そうすると、こういうことは、具体的な事例があれば取り締まれるわけでございます。いまの取引部長のお話のとおりで、私自身ある程度はこれを知っておりますけれども、これを私が、たとえばここで具体的に正直に言えば、すぐ取引を停止させられてしまう。明らかに仕入れ先は決まっているわけですから、おまえのところはもう要らないよ、おまえのところは変なことを漏らしたから絶対におまえのところからは品物をとらない、それで片方からまたどんどん仕入れる、こういうことになるわけでございますね。しかし、そういうことで泣き寝入りをしておったのでは、いつまでたってもこの商習慣は直らないのじゃないか。これは通産省の産業政策局で百貨店を指導していただいている、あるいはスーパーを指導していただいている、また納入をしておる繊維業者の方は生活産業局でいろいろ指導していただいているわけなので、やはりこの辺、もう少し解明を早くしていただきたい。こういう業界が不況で繊維業界が泣いておるときに、百貨店やスーパーが潤っておるというのでは余りにも不公正なことではないかと私は思うのです。社会的な公正ということならば、その辺もっと取引を明朗化してきちんとした形にすべきだと思うのでございますけれども、時間もないようでございますから……。  私は、きょう公正取引委員会委員長なり事務局長に来ていただきたかったのでございますけれども、通産省として、そういう不公正なあり方というものが明らかに存在するときに、しかも片方は、先ほど言ったように好況のときならば結構でございますけれども非常に不況な繊維業界、その中でまたこういう不当なことで泣き寝入りをさせられておるということに対しては、毅然たる態度でやはり役所がこういうことを排除していく方向で臨んでいただかなければいかぬのじゃなかろうか。いまの法律でこれを取り締まることはできるけれども、それをやろうと思うと今度は取引に影響するからなかなか実際にできないというのが実態だろうと思いますので、何かその辺をもっと自主的に彼らが反省をするような形に持っていけないのか、ひとつ通産省として御努力が願えるかどうかについて大臣の御決意を承って、私は質問を終わらせていただきたいと思います。
  138. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど政府委員が答弁をいたしましたように、実情を調査いたしまして、そして不公正な取引があればそういうことのないように行政指導しなければなりませんが、取引というものは非常にデリケートであるというお話もいまございましたが、結局そういう行政指導をすることによって取引全体にまた傷がついてもいけない、こういうこと等もありますので、実情を調査する段階から十分注意をいたしまして、実効が上がるような行政指導をしてまいりたいと思います。
  139. 野口一郎

    ○野口政府委員 私ども生活産業局の立場といたしまして、大臣の答弁を補足させていただきますが、いま大臣が触れましたように、私どもの方では、先生御存じだと思いますけれども、昨年の繊維の構造改善臨時措置法ができますときの衆参両院の附帯決議にもありましたように、まさに流通の改善大いにやれという趣旨を受けまして、取引改善委員会を発足させた次第でございます。これは昨年の十二月から発足して現在まで五回会合を重ねておりまして、まさに現在、問題点の摘出をやっております。そこで、どこにどういう問題があるのだ、それでどういう不都合が起きているのだということを調べ上げまして、それをもとにしながら私どもこれは産業政策局とも協力をしながら、どうあるべきかというガイドポストと申しますかガイドラインというものをつくって、それができました上は、役所はもちろん、業界の協力を得て打って一丸となってそれの実現、実施に当たりたいと考えております。
  140. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 一言、いまたまたま出ましたので。  私ども附帯決議をつけたわけでございますし、さっきの輸入統計の話と同じであって、私はこのごろの低成長時代で利益が上がらないときには、業界としてはどの業界も大変困っていると思うのです。それに対してどうも通産省の理解が昔と同じような気持ちで、何かテンポが遅いように私は思うのですよ。だから、輸入統計にしたってあるいは取引改善委員会にしたって、そういうことをやりますやりますとはおっしゃるのだけれども、一向にそれが実現するのを私ども見ないわけなのですね。だから、やりますと言う以上は、ひとついついつまでにやるんだということでやはり早急にやる、この姿勢だけはひとつきちんとしていただきたいということをお願いしておいて、私、質問を終わります。
  141. 前田治一郎

    ○前田(治)委員長代理 次に、質問通告順によりまして、佐野進君を指名いたします。
  142. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、当面した中小企業対策を中心にして質問をしてみたいと思うのですが、まず最初に大臣に、いわゆる不況対策を打ち出されておりますが、その状況について、簡単で結構でございますから、ひとつ認識について御見解を表明していただきたいと思います。
  143. 河本敏夫

    河本国務大臣 三月の初旬から中旬にかけまして約二十近い業界、中小企業と懇談をいたしまして、実態の掌握に努めたわけでございますが、一月の調査に比べまして、まずおよそのことを申し上げますと、ほぼ半分の業界は大底をついた、ただし鉄、非鉄等を初め半分の業界は一月の状態よりも悪くなっておる、こういう実情であったと思います。例外的に一業界だけいくらかよくなっておるというふうな気配もありましたけれども、これは例外だと思います。  大体そういう実情をもとにいたしまして、先般二十四日に第二次の部分的な不況対策というものをつくったわけでございますが、これは十二項目ばかりありますけれども一つは、五十年度の予算運営は、上半期にできるだけ多くの公共事業を一般会計、公団ともやっていこう、さらに住宅等についても大幅に進めていこう、こういう需要喚起という面での対策が一つと、それからもう一つは金融面で、金融緩和ということを直接はうたってはおりませんけれども、たとえば大企業に対しては社債の枠を広げるとか、あるいは中小企業に対しては年度末の枠はもちろんでございますが、第丁四半期の枠等についても十分配慮するとか、そういう金融面での配慮、それから需要喚起の面ての配慮、この二つを——それからこの需要喚起では、四十八年から続けておりました設備投資、建築等に対する個別審査ということも、枠は残しますが、実質上廃止する、こういうこと等も含まれております。それをやりまして、二カ月ばかり様子を見てみよう、その結果を見て、なおぐあいが悪いようであれば、また次の手を打っていく、そういう順序で考えております。
  144. 佐野進

    ○佐野(進)委員 中小企業庁長官、当面する情勢はどう判断しておられるか、さらにどういう対策をとっておるか、質問します。
  145. 斎藤太一

    ○斎藤(太)政府委員 総需要抑制が非常に長引いておりますので、中小企業に対する影響も非常に深刻でございます。たとえば一月の生産を見ますと、中小企業の一月の生産は、生産指数で申しまして、昭和四十五年を一〇〇といたしました指数が九八でございます。つまり昭和四十五年の生産水準まで落ち込んでいる、こういう状況でございます。  それから、価格の方を見てみますと、中小企業の工業製品価格は、ことしの一月の価格が前年同月比でマイナスの三%でございまして、この資材なり人件費が上がっております中で、すでに前年の一月の水準以下の価格水準までことしの一月は落ち込んでいる、こういう状況でございますので、経営も非常に苦しい面がいろいろ出ておるわけでございます。  また、下請等の調査の結果を見ましても、受注高は大体三割二、三分減少を見ておりまして、受注単価も同じく一月で前年同月の受注単価よりも下回るというような状況にございます。  こういう状態に対しまして、従来からまず金融面の措置を講ずるということで、御承知のように政府系の三機関につきまして、昨年の暮れに七千億の追加をいたしました。また先般の、この三月に五百億の追加をいたしたわけでございます。それから、民間の特別救済融資制度につきましても、昨年中に大体千三百億の融資を行いまして、ただいま七百億の追加を計画いたしまして、業種を指定して申し込みを受理して審査をいたしておる段階でございます。そのほかに信用保険の面でいわゆる不況業種の指定制度というものがございますけれども、先般来四回にわたりまして指定をいたしまして、その結果大体六十七くらいの業種が現在指定を終わっております。これを細かく数えますと、製造業で申しますと、大体製造業の事業所数の約半分をカバーする業種を現在指定をしておる、こういう状態でございます。こういうことで金融面ではいろいろな対策を講じておるわけでございますが、そのためにと申しますか、倒産等も年を越しましてからやや落ちつきぎみの傾向が見られます。ただ、最近の中小企業は減産率も三割、四割に及び、いま申し上げましたように価格も下がっておるという状況でございますので、金融でつなぐにも限度がございまして、むしろ仕事が欲しいというのがいまの中小企業の非常に切実な声かと存じます。  そこで、先般来の政府が決めました不況対策に、おきましても、仕事の確保という面に特に力点を置きまして、たとえば四十九年度の公共事業の完全実施、あるいは五十年度の公共事業につきましての契約率を上半期になるべく高めるとか、あるいは住宅ローンの確保の問題でございますとか、社債の発行をふやしまして大型の発電工事、送配電、変電等の工事をふやすとか、いわゆるもろもろの工事をふやす方の対策に特に力を入れまして、これによりまして中小企業の不況をなるべく早く救済いたしたい、こういうことを進めておる次第でございます。
  146. 佐野進

    ○佐野(進)委員 不況対策についてそれぞれ取り組んでおられることについては承知をいたしましたが、しかしいま大臣長官ともお話しになりましたように、情勢はきわめて深刻であり、かっこの深刻な情勢は一応の対策の中で当面を切り抜けている、そういうような形で表へあらわれていない、そういう状況も多々あろうかと思うわけであります。     〔前田(治)委員長代理退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 昔ならば不況だ、不渡りが出た、倒産だ、関連企業も倒産だ、こういうような形の中で連鎖的にその被害が拡大して、社会的な問題になってきておるわけでありますが、いまは政府の施策もある程度きめ細かくその対策が行われるというような形の中で、その倒産が連鎖的に行われるということを防ぎとめる役割りも果たしているように私どもは認識するわけでありますが、そういう面について、産業政策局としてこれら倒産防止に対してどのような対策を立て、かつ処置をしておられるか、ひとつ報告を求めたいと思います。
  147. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 中小企業につきましては、中小企業庁の方でいろいろ施策を講じておられますので、産業政策局の方といたしましては、特に中規模クラス、いわゆる中堅企業等が、大企業とそれから中小企業の谷間にありまして、この不況の風に吹き飛ばされるというようなことがないように注意いたしておるところでございます。今度の閣僚協におきましても、この中規模の企業等に対しまして特別の配慮をするようにということが言われておるわけでございます。この趣旨に沿いまして、通産省の原局を動員いたしまして、個別の企業でそういう困難に遭遇しているものにつきましては、事前に情報をキャッチし、これを大蔵省あるいは日銀等に連絡をいたしまして、民間の金融機関においてこの種の企業に対して特別の配慮をするようにという依頼をいたしておるわけでございます。あるいはまた、現在の経済状況のもとにおきまして特に困難の度合いが大きいと推定される業種、これは十三業種を監視業種として指定いたしまして、この業種に属する企業につきましては、特に通産局等も動員いたしまして監視体制を強化いたしておるわけでございます。こういうふうな措置によりまして、先生御指摘になりましたような問題に対処いたしたいと存じておるわけでございます。
  148. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、いま審議官がお話しになりました十三業種について、その業種別に、指定されておる業種を発表していただきたいと思いますが、いますぐわかりますか。
  149. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 十三業種は、第一グループが一般機械器具製造業でございます。この中が今度は八つに細かく分かれております。第二が電気機械器具製造業で、中が二つに分かれております。第三が金属製品製造業で、中が三つに分かれております。四番目が平電炉製鋼圧延業、五番目電線ケーブル製造業、六番目紡績業、七番目染色整理業、八番目レース製造業、九番目板紙製造業、十番目用紙製造業(新聞用紙、印刷用紙を主とする企業を除く)、十一番目建築用ボード製造業、十二番目ガラス繊維製造業、十三番目ゴム製履物製造業、以上でございます。
  150. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はこれから具体的な問題について、その例を二つ挙げながら質問してみたいと思うのでありますが、その二つはいずれもいま審議官が発表された業種に属していない業種だと思うのであります。ただ、具体的に名前を挙げることは反響が大きいわけでありますので、具体的な固有名詞は挙げないで抽象的な名詞で質問をしてみたいと思うわけであります。  ある企業、中堅企業であります。商社があります。その商社から品物を受けて、それを小売店に、小売というか、下に流しておるわけであります。その企業が金詰まりになって、いま五億程度の緊急融資を受けない限り倒産の危機にさらされるという状態が発生したといたします。発生しておるわけですが、仮定の話として質問します、具体的な例でありますから。そうした場合、この企業がそういう状況の中で倒産した場合、約五十億の負債が発生して数百社に及ぶ関連企業が同じような状況に陥る可能性があり、ある特定の一地域が非常に困難な情勢に地域ぐるみ陥る可能性を持つ深刻な段階がいま来つつあるという報告を私は受けておるわけであります。このことを大臣が、あるいは中小企業庁長官がお話しになったそういう状況と相対比いたした場合、この事態を防ぎとめることは大臣長官が説明している意味においてもきわめて重要であろうと思うのでありますが、この事態を防ぎとめる第一の方法としては、その関係する商社がこれに対する緊急融資を行うか、あるいはそのメーンバンクである銀行がこれに対して融資を行うかによってこの事態を防ぎとめることの可能な状況にある、こういうような状態がある地域において発生しているわけであります。このような状況は、単にこれだけでなくたくさんあろうと思うのでありますが、この種事態が発生したとき——貿易局長来ておりまするが、これは国内の問題でありますから、国内の問題は産業政策局が商社に関係するということでやるのであろうと思いますので、審議官にお尋ねするわけでございまするが、商社ないしメーンバンク、銀行に対して、このような問題発生に対して適切な処置をとるよう勧告することができるのかどうか、あるいはこのような状態が、これはいままでもあったと思うのでありますが、発生しそうになったとき、政府としてどのような措置をおとりになったことがあるのか、この二点にわたってひとつお答えいただきたい。
  151. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いまお話しになりました件につきましては、具体的な名前をお教えいただきましたならば、直ちに実情をよく調査いたしまして、関係の商社それから金融機関、大蔵当局、日銀当局等と相談をいたしまして、いかなる施策をとるべきか、よく検討いたしたいと思います。  ただ、いま先生、勧告とおっしゃいましたけれども、勧告をする権限はございませんので、関係者とよく相談をし、知恵を出し合って、なるべく穏当な解決策が出るようにいたしたいというふうに存じておるわけでございます。  なお、これまでそういうことをやってきたかどうかというお話でございますが、これまでのところ六十二の中堅企業につきまして、これはいずれも経営の失態とかそういうことではなくして、現在の不況のため思わざる苦況に立ち至った企業六十二につきまして、大蔵省、日銀等とよく相談をし、金融当局も金融機関の協力を依頼しておるというような状況がございます。
  152. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、退席されるそうですから、大臣にここでいまの件についてお尋ねをしておきたいと思います。  六十二の中堅企業に対して対策を立てることによって、相当広範な中小企業者に対していわゆる連鎖的な被害を及ぼさないで済む状態を続けておられる、こういうような答弁がいま審議官からあったわけでございまするが、この種対策はきわめて重要でありまして、中小企業が倒産する場合、中堅企業の倒産によって引き起こされる例が非常に多いわけでありまするが、このことは、私はまたほかの例についてほかの局長にも聞いてみたいと思うわけでありますが、大臣、退席をされるということでありますので、この種対策について積極的に——いま勧告することができないということはそのとおりだと思うのでございまするけれども、強い決意を持って倒産防止、中小企業救済のために通産大臣として取り組むその姿勢を、ひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  153. 河本敏夫

    河本国務大臣 非常に長期間の厳しい総需要の抑制を続けておりますので、先ほどお話をいたしましたように非常に深刻な状態が続いておりまして、特にひずみ現象、摩擦現象が相当各方面に出ておるわけでございます。そこで、大企業であるとか中小企業はそれぞれ相当な対策が立てられておるわけでありますが、比較的手薄なところが中堅企業でございます。そこで、中堅企業、私どもが考えております中堅企業約八千ばかりございますが、そういうところに対してもできるだけ詳細な動向を掌握いたしまして、トラブルの起こらないように、経営の行き詰まらないようにいろいろ配慮をしておるわけでございます。  いまのお話の件でございますが、具体的にお聞きしませんと何とも言えないわけでありますが、一生懸命に仕事をしておる、にもかかわらず大変困った状態になっておるというふうな場合には、これはもう政府としても全力を挙げていろいろめんどうを見てあげなければいかぬ、こう思いますす。でありますから、話をお聞きいたしまして、いま政府委員が答弁をいたしましたように、必要とあらば日本銀行、大蔵省あるいはまた主力の銀行等とも話し合いをいたしまして、十分あっせんをする用意はございます。
  154. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、いま大臣の答弁があったわけですが、私は中堅企業対策というのは非常にむずかしいと思うのですね。中堅企業というと一定の資本力と人員を擁しておりますし、さらに資産もあるわけであります。したがって、中堅企業そのものは倒産によってそれほど大きな痛手を受け得ない、あるいは財産保全を図る措置等も行って後必要な状態に立ち入る、そういうことをすることも不可能ではないと思うのです。そんなことは、みんながそうだと申し上げておるのではないのですが、しかし、その波をもろにかぶるのは中小企業だと思うのです。中堅企業が倒産する、連鎖的な反応で手形が不渡りになる、あるいはその他納めた製品の代金がもらえない、こういうような状況の中で深刻な問題が発生していくと思うのです。それでは、中堅企業そのものを無原則的に、中小企業を助けるために、助けなきゃならぬかということになると、いま答弁されたような形になるわけでありますが、ここには一定の、やはりそれぞれ関連業界に対する指導を通じて、きめ細かな対策を立てないと、なかなか目的を達成することができないと思うのです。したがって、審議官のいまの答弁は、問題を具体的に把握する、あるいは通産局を通じて実情を調査する、こういうことでありますから、答弁の限りにおいては、それがいけないということではございませんが、私はその取り扱いという面において、温かみはあるというか、厳しく追及する、しかし追及するかわり、それをつぶさない、この両面を持っていかなければならないのじゃないかと思うのです。これはだめだよと投げられたのでは、投げられた企業は財産保全その他の対策の中で自分たちは生き残るかもしれないけれども、関連中小企業はだめになってしまう。こういうようなことがありますので、そういう点については、産業資金課長ですか、あるいは通産局のそれぞれの担当官がもっと積極的な意味において取り扱うべきではないか、こういうようなことを感ずるわけでありますが、この点ひとつ審議官の見解を聞いておきたいと思います。
  155. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 行政には厳しさと温かさと両面なければならぬ、その均衡を保ってやらなければならぬというお教えでございまして、まことにそのとおりだと存じますので、そういう方向で、産業資金課あるいは通産局等を指導していきたいと存じます。
  156. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、いま一つの例ですが、基礎産業局長、お見えになっておられますので、お尋ねしたいと思うのです。  いまのは商社の関連する企業、いわゆる中堅企業さらに下請という関係でありますが、今度はメーカーという関係があるわけです。メーカーには基礎産業局に関連する鉄鋼その他の多くの企業があるわけでありますが、これまた私はきょうの段階では具体的な名前を挙げないで質問してみたいと思うのでありますが、メーカーにも問屋があり、一次問屋、二次問屋、さらにそれに関連する各企業が存在しているわけであります。したがって、その段階的な状態の中で一次問屋、二次問屋あるいはその下のメーカー、さらにその下請、こういうふうに、鉄鋼は基礎産業の一つの中心でありますから、系列がずっと続いていくわけです。その段階における一つが苦況に陥るという形の中で、関連業界に対して非常に大きな影響を与えるわけであります。  そこで、苦況に陥り、倒産の直前の状況になった企業は、結果的にそのしわ寄せを下の段階へ及ぼす、上の段階へは及ぼさない。ある段階、段階における状況は結局下にしわ寄せされる形の中において下の系列だけが苦しい状況になり、上の方はそれに対して資材の供給を差しとめる、資金的な手当てをしない、こういう形の中で打ち切るという非情な体制をとることができるわけであります。  今日、そういう状況の中で苦しんでおる企業は、鉄鋼業も、いまあなたが御存じのとおりの状況の中で、そういう状況があらわれているわけです。したがって、私は大企業、大メーカーの果たさなければならぬ責任は、関連中小企業に対して常に系列的な指導をしておるわけでありますから、そういう面においては温かみのある措置、いわゆるおれは知らないよ、おれだけ残ればいいのだよという形であってはならない、こう思うわけでありますが、その点について、あなたの御見解をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  157. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 いま先生の御例示をいただきまして、実態は実情を明らかにしていただければ具体的にまた取り上げたいと思いますが、私どもはいまの一つの仮説の上で申しますと、一番のもとのメーカーに対して十分そういったいわば下請、関連に響かないような積極的な指導をするという体制をとっております。  実例を申し上げますと、最近新日鉄も三割減産で非常に苦しくなりまして、北九州の八幡におきましては、従来外注をしておりましたのはオールキャシュでございましたが、四月から二割は手形にしてほしいというふうなことで、大分下請、関連が私どもの方に参りまして、私どもは早速新日鉄の役員を呼びまして、その点で中小企業あるいは零細企業に響かぬように、それからあくまでもこういうものをやるとしても十分相手の方の納得を受けてやれという指示をいたしました。これは向こうが了承しておりまして、大口の業者には御協力を求めるけれども、小口零細中小企業にはすぐに及ぼさぬ、こういう約束もしてございます。私どもの行政姿勢は常にそういうことで進めていきたい、こう考えております。
  158. 佐野進

    ○佐野(進)委員 基礎産業局は大メーカーの監督、と言うと言い過ぎになるかわかりませんが、これに関係する業務を取り扱っておるわけでありますので、この種業種は、いまお話しのように鉄鋼業の状況が悪化するに伴い、一段と深刻な状態になってまいると思いますので、この点についてはひとついまお話のありましたような措置を厳重におとりになっていただくよう要望しておきたいと思います。  そこで、時間が参りましたので、最後に中小企業庁の長官にお伺いいたしたいのでありますが、あなたは金融面の対策は十分やってきた、しかし実際上の問題として、仕事が欲しいというにもかかわらず仕事がなかなかないということで、対策に苦慮しておるのだ、こういうようなお話がいまあったわけであります。中小企業庁が中小企業問題に対していま果たさなければならぬ課題は、大変深刻であり、かつ多いと思うのであります。  そこで、新しい発想というようなものは、いまの状況の中では、いままでも新しい新しいということでいろいろ問題を取り上げてきておるわけですから、ここでいま目の前がばっと明るくなるような新しい対策というものはないと思うのでありますが、ただ中小企業者がより状態が深刻になるに従って、その存立に対して、みずから立っている企業の基盤に対して不安を持ち、これからどうやって抜け出そうかということすら考えなければならぬという状況にまでいま追い込まれてきていると思うのです、各業種を見てまいりますと。  そこで、何としても自分たちの仕事だけは確保したい、この仕事の範囲だけは大企業に入ってきてもらいたくない、こういう願いが切実な願いとして、どこへ行ってもそう言われるわけであります。こういう点についてあなたは、私ども事業分野確保の問題について質問すると、現行法の中で、現行法の中でとよくお答えになられるわけでありますけれども、今日の状況の中で、われわれもいま議員提案として出しておりますけれども、これを五党提案として一定の前向きの条件の中で一つ法律を出さないかという話も進められつつある段階の中で、中小企業庁長官としては、そういう状況に対して、事業分野確保という中小企業を守る法律というものに対してどう認識しておられるか、その後の情勢の変化に対応してその決意をひとつ述べていただきたいと思うのです。
  159. 斎藤太一

    ○斎藤(太)政府委員 非常に不況が深刻でございますので、先ほど来申し上げましたように、中小企業の経営も大変苦しさを増しております。やはり当面の対策といたしましては、まず公共事業その他財政面の仕事をふやしまして、一日も早くこの不況から脱却することが抜本的な対策であろうというふうに考えておるわけでございます。特に不況が深刻な折でもございますので、いわゆる大企業中小企業性の業種への進出問題につきましていろいろと摩擦が起こっておりますことは私ども十分承知をいたしております。こういった摩擦につきましては、基本的な私ども考え方としましては、まず当事者でよく話し合いをしていただきまして円満な解決ができれば、それが最善の策だと考えております。ただ、話し合いがつきません場合には地方の官公署なり会議所なり、あるいは非常に全国的な問題でございますれば中央のそれぞれの原局なり私どもなり所管の省庁が親切にこの話を、特に中小企業者の訴えを聞きまして適切な対応策を講じて、中小企業が対応できるような対策を現実に打っていくということが望ましいのじゃないかと考えておりますが、中小企業性分野というものの判定がなかなか実際問題として線引きが困難な面もございますので、法律をもちましてこの中小企業性分野を決めてそこへの大企業の進出を原則として抑えるというような方法は、この流動する経済の大勢、特に物価への影響とか消費者の要望あるいは技術革新の動向等々を考えます場合には、いろいろ問題が多くて、立法につきましてはやはり相当慎重に多角的に検討する必要があるのじゃないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  160. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この問題については、当然中小企業近代化促進法の改正問題の方の審議等もありますので十分にやります。あなたもむずかしいむずかしいといつも言っているのだけれども、むずかしいから中小企業庁長官があり、中小企業庁があるのだから、もう少しひとつ、この問題が今日置かれている中小企業問題の中心であるというぐらいに認識して積極的に取り組んで欲しいということを要望して、私の質問を終わります。
  161. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 栗田君。
  162. 栗田翠

    栗田委員 私は、きょうはマグロ、カツオ漁業をめぐりまして、特にこれに関して輸入の問題などでいま大変大きな問題になっておりますので、こういうことを質問させていただきたいと思います。  先日も、たしか三月十四日でございましたけれども、清水港で外国船水揚げ阻止全国カツオ・マグロ漁業者大会というのが開かれております。また、きょうも日鰹連の主催で同趣旨の全国の総決起大会が開かれているわけです。いま韓国それからパナマの籍を持ちましたいわゆる外国船、これがカツオ、マグロの輸入を非常にしていまして、このことが問題になっているわけです。  そこで、まず水産庁に伺います。外国人漁業規制法の第一条を見ますと、「わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがある事態に対処して、」規制の措置をとっていくといったようなことが書かれております。この「わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがある事態」というのは一体どういう事態を指すわけでしょうか、また現在のこの事態はこれに当てはまるでしょうかどうでしょう、その辺を伺いたいと思います。
  163. 松下友成

    ○松下政府委員 先生ただいま御指摘のわが国の漁業の正常な運営に支障を来たすという点でございますけれども、この点につきましてはいろいろ解釈上問題があろうかと思います。現在の情勢、この情勢に適合するかどうかという先生の御質問でございますけれども、極力、政府といたしましては、政府間の話し合いによりましてこういった事態を回避すべく全力を挙げていくというふうな状況でございます。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、この事態になっているかどうかということについて、はっきりした御意見というものはまだないわけですか。
  165. 松下友成

    ○松下政府委員 そのとおりでございます。
  166. 栗田翠

    栗田委員 いま、この遠洋マグロ漁業をめぐりまして起きている事態は大変深刻だ、これは私の調査の中でもつくづく感じているわけです。  たとえば幾つかの例がございますけれども、三重県のカツオ船が七十二日の航海を終えまして先日帰ってまいりました。この船は最高の水揚げをしてきたそうで、言ってみれば大漁だったわけなんです。ところが、この航海が終わって乗組員に渡されました賃金と言いますか、手当というのは、一人当たり二十万円そこそこでございました。七十二日といえば二カ月以上、しかも多少は休む期間もありますから三カ月にもわたるような期間、ずいぶん大変な仕事をしてきながら二十万円そこそこしか手渡されない。豊漁でありながらそういう実態にいまなっております。  それからまた、「水産週報」の四十九年の三月二十五日号に、日鰹連の増田会長に聞くという形でいろいろ対談をしておるものがありますけれども、「航海で三千万円から四千万円の赤字になる状態で、みんな中小企業ですから、一年この状態が続くとすれば、千三百隻の全船が借入金についてお互いに保証し合っているんですから、まさにつぎからつぎへ連鎖倒産してしまいます。」こういうことを日鰹連の会長が言っておられるわけです。千三百隻、次から次に連鎖倒産するということを言われているこの事態は、さっき言ったようなわが国の漁業の正常な秩序の維持に実に重大な支障を来たす事態だと私は思うのですけれども、こういうことは御存じの上でいまの御見解をおっしゃっていらっしゃるのでしょうか。
  167. 松下友成

    ○松下政府委員 現在のマグロ漁業がきわめて経営の状況が悪化しているという点につきましては、先生御指摘のとおりでございます。ただ、その原因につきましては、石油等の資材の値上げでございますとか、あるいは釣獲率の低下に伴います航海日数の増加とか、あるいは魚価の低迷、そういったむしろどちらかといいますと構造的な原因によってこれが起こっているのではないかというふうに判断しているわけでございます。この点につきましては、水産庁といたしましても緊急措置といたしまして、漁業経営に必要な低利資金の融通措置その他を講じてきているところでございます。
  168. 栗田翠

    栗田委員 特にこの魚価の低迷は何から起こっているとお考えですか。
  169. 松下友成

    ○松下政府委員 これはカツオ、マグロに限りませず、全般的に最近の傾向といたしまして魚価の低迷が見られるわけでございますけれども、これはやはり最近におきますわが国のいわゆる消費生活の変化とか、そういったこともかなり影響があるのではなかろうかというふうに判断しているわけでございます。
  170. 栗田翠

    栗田委員 それでは伺いますけれども、そのカツオ、マグロ、カジキ類の総輸入量が最近どうなっているかということです。四十五年から四十九年まで年次別に何トンであったかということを教えていただきたいと思います。
  171. 松下友成

    ○松下政府委員 ただいま手元にございますのは四十七年からでございますけれども、最近三カ年のカツオ、マグロの輸入状況を申し上げますと、四十七年が約五万二千トン、四十八年が五万五千トン、四十九年が六万四千トンということになっております。
  172. 栗田翠

    栗田委員 年々、大層ふえてきているわけですね。特にこの中で韓国、パナマからの輸入はどうなっておりますか。
  173. 松下友成

    ○松下政府委員 このうち韓国からの輸入につきましては、昭和四十七年が約二万一千トン、四十八年二万五千トン、四十九年三万七千トンということになっております。また、パナマからの輸入につきましては、四十七年が約八百トン、四十八年約四千七百トン、四十九年二千六百トンということになっております。
  174. 栗田翠

    栗田委員 いま四十八年が四千七百トン、いいですか。合計したら輸入量より多いみたいですね。——韓国とパナマからの輸入というのは、全体の輸入量の中で大層多うございますね。特に多いのですけれども、いま国内で、私も漁民の方からいろいろ伺っておりますが、たとえば自給率が一〇〇%をわずかに超える、一割超えただけでも、供給過剰になった場合、魚価は二、三割下がってしまうということが言われておりますが、いまこのようにたくさんのものが輸入されていまして、実際には需要、供給の国内での関係というのはどんなふうになっているのでしょうか。
  175. 松下友成

    ○松下政府委員 マグロ類の生産地価格でございますけれども、四十九年の前半は、不況によります消費の減退もございまして、若干停滞ぎみであったわけでございますけれども、四十九年後半に至りまして回復いたしまして、四十九年の年間を通じて見ますと、冷凍キハダで前年比約一二四%、それから冷凍のメバチで一二六%ということになっております。  また、先生御指摘の輸入の数量と価格の点でございますけれども、マグロ類の輸入量と産地価格との関係につきましては必ずしも明確ではございませんけれども、冷凍キハダについて見まして、ごく大まかに見ますと、国内の水揚げが集中しておるような時期には産地価格はむしろ停滞傾向にございまして、そのときには輸入量も少ないというふうに見られます。それから、国内の水揚げが少ないときには、これは当然でございますけれども、産地価格は高いということで、そのときには輸入もふえているわけでございます。  こういった状況から見ますというと、マグロの輸入が原因となって産地価格が低下しているというふうには必ずしも思われません。しかし、マグロの輸入というものが大なり小なり産地価格に影響を与えているということは否定できないというふうに思うわけでございます。
  176. 栗田翠

    栗田委員 いま私伺ったのは需要、供給の関係でして、特に自給率ですね。国内での消費に対しまして、国内の生産と輸入数とを合計したもののその自給率がどうなっているか、供給が過剰ではないだろうか、こういうことを伺ったわけなんです。
  177. 松下友成

    ○松下政府委員 昭和四十八年の数字を見ますと、カツオ、マグロ合計で国内生産量が六十五万トンでございますが、そのうち、これは冷凍、かん詰め合わせてでございますけれども、輸出は約二十二万トン。それから輸入が五万五千トンということでございまして、差し引き、国内の供給量といたしましては約四十八万トン強ということになるわけでございます。
  178. 栗田翠

    栗田委員 自給率はどうかということです。どのくらいが国内で生産されているかとかいうことでなくて、国内の需要に対してどうなのかということを伺っているわけです。
  179. 松下友成

    ○松下政府委員 先ほど数字で御説明いたしましたように、国内の供給量が約四十八万トンで、国内の生産量が六十五万トンでございますから、自給率を見ますと、当然一〇〇%よりかなり大きく上回っておるわけでございます。
  180. 栗田翠

    栗田委員 つまり国内生産と消費を見ますと、非常に国内生産が上回っているにもかかわらず、またかなり大量の輸入がされているということは事実ですね。そして、その中で、さっきそちらからもお答えがありましたように、韓国、パナマからの輸入量が非常に多いということ、これはお認めになると思います。  さて、ここで通産省に伺いますけれども、韓国やパナマ船からの輸入にかかわっている商社、これはどことどこなのでしょうか、全部挙げてほしいと思います。
  181. 岸田文武

    ○岸田政府委員 韓国の漁業とわが国商社の関係につきましては、なかなか全貌がつかみにくい面がございますが、私どもいろいろ聞きました範囲でお答えをさせていただきます。  関係商社の数は非常に多いようでございますが、主な商社が大体十社程度あろうかと思っております。具体的には、三井物産、三菱商事、丸紅それから大洋、東食、伊藤忠、兼松江商、安宅、ニチモウ、日商岩井、この中には厳密な意味で商社でないものも入っておるかと思いますが、これらのところがほぼ主力をなしておるというふうに理解をいたしております。
  182. 栗田翠

    栗田委員 いま挙げられました十の商社などですね、ここで輸入されているものが全体の扱い量のほとんどだと思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  183. 岸田文武

    ○岸田政府委員 恐らくほとんどと言って差し支えないのではないかと思っております。
  184. 栗田翠

    栗田委員 その商社がいまやっていますいろいろな輸入の実態というのが問題になっているわけなんです。  そこで、その前に伺いますけれども、いま便宜置籍船というのが大層問題になっていまして、日本の商社、大企業などが資本を出しながら、外国籍の船という形で漁業をやらせている。そして、実際には一緒に操業をして、日本の港に入ってきて漁獲物を陸揚げしているという実態があるというふうに聞いておりますが、そういうことは実際ありますね。
  185. 岸田文武

    ○岸田政府委員 船舶の輸出に際しましては、輸出貿易管理令による輸出の承認を要することになっております。この承認を行うに際しましては、運輸省の方で建造許可を出したか、あるいは譲渡許可を出したか、これらの事情を確認いたしました上で、支払い条件等について特に問題がなければ輸出をするというような処理方法をとっております。なお、念のために申し上げますと、漁船につきましては、それに加えまして水産庁との協議も行っております。  以上のような処理の方式をとっておりますので、相手先が便宜置籍船であるかどうかということは私どもとしては知りがたい状況でございますが、数多くの輸出の中にいわゆる便宜置籍船に該当するものも含まれておるだろうということは言えると思います。
  186. 栗田翠

    栗田委員 中古船の輸出というのが非常に盛んにやられましたが、この輸出されたもので、パナマとか韓国へ向けて輸出されたのは何隻ぐらいあるでしょうか。
  187. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ここ数年のカツオ、マグロ漁船の輸出状況を御報告いたしますと、韓国向けにつきましては、四十六年度で四十五隻、それから四十七年度で四十二隻、四十八年度で四十九隻、それから四十九年度の上期で三十四隻ということでございます。それから、パナマにつきましては、四十六年度で二十五隻、それから四十七年度で四十五隻、四十八年度で九十五隻、それから四十九年度上期で八隻でございます。いま申し上げました数字は、新船、中古船を含めました数字でございますので、念のために御報告をさしていただきます。
  188. 栗田翠

    栗田委員 私が日鰹連に調査に行きまして、それからまた静岡県の焼津などの漁業関係者の間でいろいろ聞いて調査をしたことによりますと、いま韓国、パナマに置かれている便宜置籍船は五百五十八隻であるということ、これはどちらでも同じことを言っておりました。その中で、パナマが百数十隻ですから、その差になりますものが韓国ですから、韓国は四百数十隻ぐらいになると思います。こういうふうになっているのだということが日鰹連の調査などでははっきりしているわけなんですけれども、ここらは余りつかんでいらっしゃらないというお話なんですね。いま便宜置籍船というのは大層問題になっているわけですから、これは本気で調べようと思えば、先の会社がどういう会社であるか調査できると思うのですけれども、これは必ずお調べになっていただきたい、こういうふうに思います。このうちで独航船と言っていて特に日本向け専門の船が百六十隻もあるという実態が私の調査でわかっております。  次に、こういうふうないわば外国籍を持ちながら日本の資本をもらっていろいろ操業したりしている船がどんなことをやっているか、これはたとえばアフリカのガーナ国にありますテマ基地の例、「水産界」という雑誌がございますが、昭和五十年の二月号に出ていますのを見まして大変なことになっているなと思います。これはたとえば「テマ基地への韓国船の進出である。」これは「(パナマ籍)」となっておりまして、籍はパナマなのだけれども実際には韓国船である、こういう実態になっているようです。「昭和四十七年五月に韓国船二隻のテマ基地進出を皮切りに(これには日本人七−八名乗船し技術指導に当っており、日本の某商社が扱っている)その後漸次増強され、現在は十隻となり更に一月には二隻の増強があり、また現地合弁設立の動きもあると聞いており韓国船の進出には目をみはるものがある。」こういうふうに書かれているわけです。そして、実際にはこういうふうにどんどんふえてまいりまして日本の船などがここから駆逐される形になっている。すでにいままでサモア基地とかラスパルマス基地などでは日本が操業していたけれども、最近は同じ実態の中でできなくなっている、こういうことが言われているわけです。  それからまた、韓国に直接乗り込んで日本向けの漁獲物を冷凍などにしまして直送している商社があるはずですが、それはどんなところでしょうか、つかんでいらっしゃいますか。
  189. 岸田文武

    ○岸田政府委員 その辺の詳細につきましては、まだ私どもつかんでおりませんが、いま農林省の方でも現地に人を派遣し、実情の調査などもしておられるかと思いますので、それらの報告を待って私どももさらに勉強してみたいと思います。
  190. 栗田翠

    栗田委員 調査の結果が出ましたら早速その資料をいただきたいと思いますが、私がいまここに持っています資料では、「週刊東洋経済」臨時増刊七四年版、兼松江商が韓国に直接出ておりまして、冷凍魚、活鮮魚の直送という仕事をやっております。これはこれ一つでは恐らくないだろう、最近はかなりたくさんのものが出ているのではないか、こういうふうに思うわけです。  それでは、続いて伺いますけれども、いまケニアに冷蔵倉庫を持っている商社などがあります。これはどんなところか御存じでしょうか。
  191. 岸田文武

    ○岸田政府委員 その辺につきましてはまだ統計もございませんし、私ども実情を把握いたしておりません。
  192. 栗田翠

    栗田委員 伺いますと御存じないことが大層多くて、ずいぶんのんきにやっていらっしゃるのだなと私思うのですけれども政府にわからなくて民間の私たちがわかるというのは一体どういうことなのだろうか。これは外務省の経済協力局で出しておりますアフリカ地域の経済協力効果測定調査団の報告書というのがあります。これを見ましても、ケニアに冷蔵倉庫を持っている商社というのはずいぶんあります。安宅産業、大洋漁業などですね。これはガーナで操業している、またアフリカ一帯で操業している台湾や韓国船からの漁獲物を入れておくために日本の商社がそこに冷蔵庫をつくっているわけです。こういう実態があるわけなんです。結局は商社ぐるみで、韓国だのパナマだのと言いながら、実際は日本の商社がそこへ進出して一切の仕事を取り仕切っているということが、こういう中からもずいぶんはっきりするじゃありませんか。しかも、三、四年前は韓国船などはハワイの総領事館からライセンスを出してもらっていたけれども、最近は釜山でそれを持って出てきて、操業するとそのまま日本に冷凍運搬船として入ってくる、そのために釜山ですぐに手に入れてくるということまで言われているわけなんです。特にいま漁業権の問題それから生産過剰の問題、いろいろ大きな問題になっております。  水産庁にちょっと伺いますけれども、普通漁業権は許可制度になっておりまして、やたらに幾らでもとってしまって、船をふやしていいということにはなっていないと思いますが、これはどういう立場からそうなっているのでしょうか、どういうお考えからそうなっていますか。
  193. 松下友成

    ○松下政府委員 カツオ、マグロに限りませんけれどもわが国の漁業の経営の安定を図り、安定的に漁獲物を国民の食料として供給するという観点からいたしまして、これが無制限にふえるということは、経営の不安あるいは資源的な問題も引き起こすおそれがございますので、そういった観点から許可隻数を定めて制限している次第でございます。
  194. 栗田翠

    栗田委員 おっしゃるとおりだと思います、無制限にふえたら大変なことになるわけですから。ところが、便宜置籍船といわれている実際には日本の商社がやっている船、これは許可の対象にならないわけですから、許可なしにどんどんどんどん漁獲量をふやして日本に輸入する、こういうことになるわけで、さっき言った魚価の安定とか漁業の安定の状態を大変乱している、これが実際じゃないかと思います。しかも、固定資産税もかかりませんし、それから幾らとったかわからないから所得税もかからない、大変都合のいい実態になっているわけです。大商社は、中古船の輸出をやってもうけて、それから漁業をやってもうけて、また輸入をやってもうける、二重三重にこれではぼろもうけをしているとしか言えないと思います。先ほどから日本漁業が危機に陥っているかどうか、さっき言いました外国人漁業規制法の一条に言う事態になっているかどうかということで、水産庁ははっきりおっしゃいませんけれども、この大変な事態の中に外国籍を持った便宜置籍船が輸入をふやしているということは事実あると私は思うのですね。大もうけをしながら日本の漁業を乱しているというこの実態について通産省はどうお考えになりますか。また、水産庁はどうお考えになりますか。
  195. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも水産業の経営の安定ということについては十分な配慮を払っておくことの必要性は十分理解しておるつもりでございます。この意味におきまして、外国水産物の輸入が秩序ある形で行われるということは望ましいことでございまして、このような配慮は今後とも持ち続けてまいりたいと思っております。
  196. 松下友成

    ○松下政府委員 水産庁といたしましても、やはりわが国のカツオ、マグロ漁業の経営の安定を図る上からいたしまして、わが国の漁業の正常な秩序の維持に悪影響を与えるような行動というものは自粛するように関係の商社その他に指導しているところでございまして、今後ともそういった点には十分注意してまいりたいというふうに思っております。
  197. 栗田翠

    栗田委員 いま、ともに配慮をしていくというふうにおっしゃっておりましたけれども、その配慮の具体的な中身を伺いたいと思います。  通産省、どういうふうに配慮なさるおつもりですか。商社を規制していらっしゃいますか。その内容について伺いたいと思います。
  198. 岸田文武

    ○岸田政府委員 この問題が起こりましてから、私どもも関係の商社を呼びましていま実情の調査をいたしております。さらにまた、水産庁でも別途調査を進めておられるように聞いておりますので、それらの調査の結果を待って今後の考え方を固めてまいりたいと思っておるところでございますが、いずれにいたしましても秩序のある輸入を進めてまいるという考え方基本に置きながら、今後商社を指導してまいりたいと思います。
  199. 栗田翠

    栗田委員 たとえば日鰹連などの漁業者団体は、輸入をせめて二万トンぐらいまでに抑えてほしいと言っております。この輸入制限などという問題については通産省はどうお考えでしょうか。  また、これは漁業に関する、漁獲物に関するものですから直接は水産庁が担当していらっしゃると思いますけれども、両方のお考え方を伺いたいと思います。特に通産省は漁業ばかりでなく、国内で産業が危機に陥れられている場合の輸入制限という問題についての基本的なお考え、これを聞かせていただきたいと思います。
  200. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいま御承知のとおりわが国は不況でございまして、各種の物資につきまして輸入制限を考える必要があるのではないかという声は、私どもの耳にもいろいろの方面から入ってきておるところでございますが、私どももそれぞれの実情をお伺いし、できるだけのお手伝いをするという考え方でおりますものの、それが輸入制限の形をとるということについてはおのずから慎重にならざるを得ないという事情にございます。  一つには、いま世界各国が非常な国際収支の逆調と不況に悩んでおりまして、これらがほうっておきますとお互いに輸入制限をし合い、世界の貿易量が縮小し、世界の景気の回復がおくれる、こういうことになることをお互いに警戒をいたしまして、OECDあるいはIMFその他の場におきましてお互いに新しい輸入制限はしないようにしようという約束が行われておりますこと、また第二には、日本は、いまさら申し上げるまでもなく貿易で立っておる国でございまして、世界の貿易が自由であるということが日本の輸出を確保し、また必要な物資を確保するという道にもつながってまいるわけでございまして、やはり日本としては率先して貿易の自由を守っていくということが必要でございます。  さらにまた、日本の貿易相手国との関係につきましても、相手国もやはり非常にいま困っておる事情にございまして、それぞれの国との間の関係も頭に置いておかなければならないという事情もございます。これらの点につきましては、私どもも今後さらにいろいろの事態に対して勉強してまいるつもりでございますが、極力輸入制限という方法は避けながら、しかし業界の安定を図るにはどうしたらいいのかという意味で積極的に対策を考えていく必要がある、こう考えておるところでございます。
  201. 栗田翠

    栗田委員 アメリカなどは最近マグロのかん詰めの輸入制限をやって、それがまた日本の漁業に大きく響いているというふうに聞いております。片方でそういうことをやられながら、日本の方は野放しにしてある。ここのところは大層大きな問題じゃないかと思いますし、国内産業がどんな状態に置かれても、まずたてまえとして制限していかないというふうにおっしゃるあたりですね、大変ここはこれから論議をしていかなければならないことではないかというふうに思いますが、きょうは通産省からのその点でのお答えはこのままにしておきます。  じゃ、水産庁に続いて伺いますけれども、さっき行政指導とおっしゃいましたが、具体的にどうしていらっしゃるのか。特に責任官庁としましてこのいまの事態に対して具体的な対処の方法をどう考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  202. 松下友成

    ○松下政府委員 水産庁といたしましては、この問題が起こりますと同時に関係の商社を呼びましろ種々指導をいたしたわけでございますけれども、さらに現在では漁政部長を韓国に派遣いたしまして、韓国の政府政府間のベースでこの問題の打開のために現在話し合いを進めている段階でございます。この話し合いの結果に基づきまして、今後さらにこの問題の解決のために努力してまいりたいと思っておるわけでございますけれども、やはり基本的には輸入制限とかそういうことではなしに、あくまで話し合いによりまして円満な解決が図られるよう努力してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  203. 栗田翠

    栗田委員 次に、外務省に伺います。  日韓条約に基づく経済協力というのがいまやられておりますけれども、その中で対韓協力のさまざまな実態を見てまいりますと、水産関係のものがかなりあるわけなんです。五十年の二月五日に出された外務省の経済協力局の資料を拝見しますと、まず請求権協定に基づく無償資金協力というのがありまして、その中に水産振興計画というのがあります。これは実態はどういうことになっているのでしょうか。
  204. 菊地清明

    ○菊地説明員 ただいまの御質問でございますが、四十年の六月二十二日に締結されました請求権協定のうちのさらに無償協力に基づくものが三億ドルございますが、その中に御説のとおり農業用水源開発、灌漑対策それから水産振興計画というものがございます。  ただいまの御質問の具体的内容につきましては持ち合わせておりませんので、いま電話で聞きまして御説明いたしたいと思います。
  205. 栗田翠

    栗田委員 それでは、最初に大まかなことを伺いますが、その韓国に対する漁業振興の名目のうち、カツオ、マグロ漁業について全体としてはどのようにやっていらっしゃるわけですか。
  206. 菊地清明

    ○菊地説明員 問題をマグロだけにしぼりますと、一九六五年、昭和四十年に漁業協力のための民間信用供与が九千万ドルございます。この九千万ドルのうちの三千万ドルが沿岸漁業用でございまして、六千万ドルが遠洋漁業用、この遠洋漁業の中でマグロ関係といたしましては九百四十七万二千ドルでございまして、その内訳は船五件、約八百万ドル、それから資材二件といたしまして百四十九万二千ドルというふうになっております。
  207. 栗田翠

    栗田委員 民間信用供与だというふうにおっしゃっておりましたが、それじゃあとちょっと細かいことを少し先に調べておいていただきたいのですが、民間ベースの経済協力、先ほどの資料で漁業協力それから船舶輸出というのがありますが、これはいま中身はおわかりになりますか。いまおっしゃった中身ですか。  それから、もう一つ伺っておきますが、有償経済協力の項で農水産業近代化というのがあります。これらの中身を全部伺いたいわけですが。
  208. 菊地清明

    ○菊地説明員 その問題は後から資料で差し上げることでございますか、それともここで申し上げる……(栗田委員「ここでお話しいただければいただきたいのです」と呼ぶ)そうでございますか。九千万ドルの民間信用供与と申し上げましたのは、請求権解決のときに無償三億ドル、有償二億ドルそれから民間信用三億ドルを下らざる金額というのがございまして、先ほど申し上げました九千万ドルというのはその中の、その三億ドルの中の一部でございます。  それから、同じく請求権協定に基づきます有償協力の分がございますけれども、この中におきましては、この手元の資料によりますと、農水産関係は入っておりません。  それからさらに、四十六年の六月二十九日に輸出産業育成という借款がございます。百八億円。これに若干農水産関係が入っております。  それから、一番大きなのが第二次の輸出産業育成のための借款六十二億円、四十八年十二月二十四日に締結いたしまして、この中に底びき漁船——これはマグロ船ではございませんが、底ひき漁船が一件入っております。この遠洋底びき漁船というのは中古船でございまして、三百五十トン、金額にいたしまして一億七千五百万円というふうになっております。  もし、答弁漏れがございましたら後から、これ以上の資料を持ち合わせておりませんので、よろしく。
  209. 栗田翠

    栗田委員 それでは、細かいものは後で資料としていただきたいと思います。  ところで、この民間ベースの経済協力に関与しているところですね、これはどんなところでしょうか。
  210. 菊地清明

    ○菊地説明員 この点は外務省では必ずしも把握しておりませんので、おそらく通産省だと思いますけれども、これも後刻御報告いたしたいと思います。
  211. 栗田翠

    栗田委員 通産省にお伺いします。おわかりになりますか。
  212. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんので、帰りまして整理をいたしてみたいと思います。
  213. 栗田翠

    栗田委員 いま資料が出ないので大層残念なのですが、おそらくこれは商社が関与しているはずだと思います。基金とかそれから輸銀などから出されていますから、言ってみれば政府資金が使われているということ、政府承認のもとでやられているということ、細かい一つ一つが全部カツオ、マグロに関係があるかどうかわかりませんけれども、こういう中でカツオ、マグロ関係というものもかなりありますね。いかがですか。
  214. 岸田文武

    ○岸田政府委員 おそらくその中に若干含まれているのではないかと思います。
  215. 栗田翠

    栗田委員 私が問題にしたいのは、結局日本の漁業が危機に陥れられる状態になりながら、政府資金なども出されて韓国などのカツオ、マグロ漁を盛んにさせていく、こういうところに協力がされているという事態、ここのところが問題でございます。ここのところをやはり直していっていただきませんと、日本の漁業は守られない、こういう実態になっていくのではないかと思います。ここについて、その姿勢を正していただきたいと思うのですが、通産省それから水産庁のお考えを一言ずつ伺いたいと思います。
  216. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これは経済協力全般について言えることでございますが、援助をしまして相手国の経済の安定あるいは民生の安定に貢献し、それが翻って日本として喜んでもらえる、こういうような形が基本になって進むことかと思います。したがいまして、今後の進め方につきましてもよく相手国の事情も踏まえ、さらにまた日本としての立場も考えながら運営をしてまいりたいと思います。
  217. 松下友成

    ○松下政府委員 わが国のカツオ、マグロ漁業の立場も踏まえながら、また同時に相手国側の事情も十分考慮に入れて、双方円満にこの問題が解決できるように水産庁としても全力を挙げてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  218. 栗田翠

    栗田委員 通産省にお伺いいたしますが、各商社ごとのカツオ、マグロの輸入量はいまどうなっていますか、つかんでいらっしゃいますか。
  219. 岸田文武

    ○岸田政府委員 商社ごとの資料というのはございません。
  220. 栗田翠

    栗田委員 それでは、商社ごとに資本が投下されている実態、それから水揚げについてのもうけ、それから便宜置籍船の実態は御存じないとさっきおっしゃいましたが、これらを必ず調査していただきたいと思います。一日も早くこの実態を明らかにしませんと、やはりこの状態を救えないと思いますが、これをお願いしたいと思います。いかがでございますか。
  221. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま御指摘のような諸点につきまして、私どもも心当たりのところにつきましてそれぞれ実情の調査をいたしたいと思いますが、ただ個別の企業内容にわたる部分については公表を差し控えざるを得ない部分も出てくるかと思っております。
  222. 栗田翠

    栗田委員 つまり企業秘密だということかもしれませんけれども企業秘密が余り優先しますと産業が守られない、ここのところをよく考えてやっていただきたい、こう思います。  次に伺いますけれども、今度は地中海での漁が禁止されるようになるらしいということを聞いております。こういう経過はどんなふうにして出てきたんでしょうか。
  223. 松下友成

    ○松下政府委員 最近におきます大西洋のマグロ漁業の状況からいたしまして、ここ一、二年でございますが、地中海にマグロの有望な資源があるということで、急激に地中海に入って操業する漁船がふえてまいりまして、将来そういった状況が続きますと、地中海のマグロ資源にも悪影響を与えますと同時に関係諸国にも好ましくない影響を与えるということで、今回の措置に踏み切ったわけでございます。
  224. 栗田翠

    栗田委員 これはいつごろからこういう話が出ていたでしょうか。
  225. 松下友成

    ○松下政府委員 この話が出てまいりましたのは、本年の二月ごろからだというふうに記憶しております。
  226. 栗田翠

    栗田委員 私の調査では、去年のICCATのマドリッドの理事会でクロマグロの規制の問題が最初持ち上がって、小型のクロマグロの漁獲、陸揚げの禁止などが話題になり始めてきた、そして各国の郵便投票でこれが決められたというふうに聞いておりますが、そうですね。
  227. 松下友成

    ○松下政府委員 ことしの二月に大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約に基づきまして、この委員会の方からクロマグロの漁獲規制の勧告がなされたわけでございます。
  228. 栗田翠

    栗田委員 それでは、勧告が出たのは二月八日だというふうに私の調査でなっておりますが、このことが問題になっていたのは去年からではありませんが。その中でいろいろ討議をされて、勧告という結果になったんだと思いますが、いかがですか。
  229. 松下友成

    ○松下政府委員 そのとおりでございます。昨年の十一月のマドリッドにおきます大西洋マグロ漁業委員会で討議されたことは明らかでございます。
  230. 栗田翠

    栗田委員 水産庁も去年からの動きはつかんでいらっしゃるようですが、実はこのことの情報が流されるのがおそかったために、たとえばいま七十二隻がすでに地中海に向かって行ってしまっているわけです。ことしの二月になって出ていった船もあるというわけですね。地中海で漁獲をするために、わざわざ地中海用の漁具をそろえて大層な資金を投入して行きましたけれども、行った先で、どうもだめになるらしいという話で、いま百十隻ぐらいがラスパルマス付近に固まってしまっているという、こういう実態が出ているわけです。こういうことをやはり早く流さなければ、こういう大変な犠牲、損害が出てくると私は思います。いまこういう損害について補償すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  231. 松下友成

    ○松下政府委員 委員会の勧告が出ましたのは、先ほど申し上げましたとおり本年の二月でございますけれども委員会審議をされましたのは昨年の十一月でございまして、その当時から水産庁といたしましては関係業界にこの情報を流してございます。  それから、ただいまの補償の問題でございますが、この点につきましては、私どもとしては非常にむずかしいというふうにいま考えておるわけでございます。
  232. 栗田翠

    栗田委員 知っていれば出漁などはしないだろうと思うんですね。ですから、そうなりましたら、流していたにもかかわらず知らずに出ていった、それはそういう情報を徹底させて漁民の損害を少なくさせるために、もっと行政指導を今後徹底させていくべきだという問題になるかと思います。いかがでしょうか。
  233. 松下友成

    ○松下政府委員 この点につきましては、水産庁としても今後一層そういった情報の周知徹底、迅速な徹底方を努力してまいりたいというふうに思っております。
  234. 栗田翠

    栗田委員 それでは、これで終わりますけれども、いまずっと述べてまいりましたような大変な事態の中で、単に貿易は自由であるからという立場ではなく、本当に日本の漁業、日本の産業全体を守っていく立場で通産省も水産庁も対処していくべきであり、そうしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わりにいたします。
  235. 山村新治郎

  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、最近問題になっておりますマルチ商法の問題についてお伺いしたいと思っております。  近年、ネズミ講的な特殊な販売組織を持つマルチ商法等の特殊販売が急速に拡大をしてきております。消費者または販売組織への加盟者から多大な犠牲者が続出いたしております。さらには、相互の間に種々のトラブルが起きておるわけでございます。中でもマルチ商法をしておると言われておりますエー・ピー・オー・ジャパン社と被害者との交渉の際、被害者代表が会社側に拉致されるという事件も出ております。この種の商法が常に社会問題に発展しておることを見ましても、もはや事態をこのまま放置することはできないと思うわけでございます。  そこで、まずお聞きしたいわけでございますが、通産省としまして、今回のエー・ピー・オー・ジャパン社の問題をどのように認識されておられるか。  私の手元には被害者からのアンケートがあるわけでございますが、この内容を見てまいりますと、きわめて深刻な中身になっております。ちなみに二、三申し上げてみますと、学生の十九歳の人からでございますが、説明会ではどのような説明を受けましたか。出資して入会し、一日三時間のエー・ピー・オーの仕事をすれば二カ月から四カ月の後には確実に月収百万円以上かせぐことができる、こう言われた。出資金額とその期日及びそれによって得た地位を段階的に記入してください、こういう質問に対しまして、四十九年の九月九日にディーラーとして六万六千円、四十九年の九月三十日、マネジャーとして二万三千円、昭和四十九年の十月十一日、卸元として百二十四万三千円、合計百三十三万二千円払っているわけです。それで、出資金の出所はどのようになっていますか、こういうことに対しまして、友人、知人、親類、肉親からの借り入れが百二十万円。出資後の経過と問題点として、商品は売れましたかという問いに対しまして、実際に直売できたものは一つもない、書類上は三つ売ったことになっている。MKIIをつけたためにマフラーの腐食が早くなっておるというようなこととか——これも十九歳の学生ですが、この説明会では、出資額は安く、一日三時間働くだけで三カ月で毎月コンスタントに百万円が入ると言われた。この人は出資額が六万六千円、二万三千円、卸元になるために百二十三万四千円、合計百三十二万三千円払っております。商品は売れましたか。全然売れなかった。出資金の出所につきましては、友人、知人、親類、肉親等の借り入れが百三十万円、本人が六万六千円、合計百三十六万六千円と、こうした額になっております。  それから、三十四歳の人ですが、説明会において自動車公害の減少により社会に貢献できる、パワーアップする、そうして収入がふえる、こういうことで、マネジャーになるために五万円、卸元になるために百万円、百五万円払っておるわけですね。そのうち自己資金が二十五万、友人から七十五万、合計八十万円借金しておるわけです。商品は売れましたか。全く売れない。そうして効果がない。  次の人は、三カ月したらやはり百万円が必ずもうかる。一日三時間、週三日、三カ月でたやすく金がもうかる、こう言われた。この人も百三十万円払っております。自己資金が三十万円で借金が百万円。売れましたかということに対して、二個売れたけれどもあとは全然売れない、効果がない、こういうような中身であります。  その次の人は、お金を百九十八万九千円払っております。これは全部借金ですね。二百万借金しております。全く売れない。弟の車に、新車につけたけれども、かえってエンジンがかからなくなった。  こういうようなアンケートがたくさん出ておるわけです。こういう状態なんですが、政務次官の率直な御見解をひとつお伺いしたいと思うのです。
  237. 嶋崎均

    ○嶋崎政府委員 ただいまお聞きした事例からも明らかなように、マルチ商法と一口に言われ、また実際のその販売商品の内容あるいはその販売方法等から見まして、社会的な常識というか、そういうものを離れた不正な不公正な取引であるというように思うわけでございます。したがって、そういうものにつきましては、それぞれの立場から今後よく取り締まり、指導をしていかなければならないと考えておるわけでございます。
  238. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 ちょっと補足させていただきます。  エー・ピー・オー・ジャパンの商法につきましては、すでに一、二年前から問題視されておったところでございます。このエー・ピー・オー・ジャパンの商法につきましては二点ばかり問題があるかと存じます。  第一点は、商品そのものの性能に関する問題でございます。それから第二番目は、販売員の射幸心を過度に刺激するような販売方法をとっているということに関する問題でございます。  第一点の問題につきましては、一年ほど前に通産省で公正な検査機関に依頼いたしまして検査を行っておるわけでございます。その結果としては、効果があるとは認められないという結論になっておりまして、そういう結論でございましたので、もう一度公正な第三者機関にテストしていただくということになっており、その効果がはっきりするまでは販売は自粛するようにという勧告をやっております。  それから、販売方法でございますが、射幸心を著しく刺激するこのマルチという商法は、アメリカで発明されまして世界各地に広がって、日本にもこれが波及してきておる。それからなお日本では、熊本地方におきましてネズミ講という、これは商売を伴わなくて、ただ金もうけだけを目的にする方法でございますが、親ネズミが子ネズミを集めると親ネズミに金が入ってくるという式のことが行われまして、これが脱税事件として取り上げられたことは御承知のとおりでございまして、本質的には、マルチ商法はネズミ講ときわめて類似した点がございます。  こういうマルチ商法なるものが果たして妥当であるかどうかということにつきましては、非常に微妙な問題がございます。これが不公正取引ということでありますならば、独禁法上の取り締まりということが必要であろうかと存じます。ただ、このマルチ商法と独禁法との関係につきまして、公取委の見解が明らかでございませんでしたために、通産省といたしましては審議会を開きまして一昨年の暮れに諮問いたしまして、この問題を審議いたしてまいり、昨年は答申を得ておるというようなわけで、いまその答申に従いまして立法の作業を進めておる。ただ、立法作業を進めるにつきましては、独禁法との関係、民商法との関係等いろいろな問題がございますので、そういう問題を詰めた上で立法化を進めていきたい、こういうような状況でございます。
  239. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま天谷さんずっとお答えになったわけですが、あと追って聞いていきますから、私がお聞きした点について答えてもらいたいと思うのです。  そこで、アンケートを出しましたこの回答を見ましても、出資金の状況、百三十三名来ておりますが、三百万円以上出した人が一名、二百万円以上が三十名、百五十万円以上が十一名、百万円以上が五十六名、五十万円以上が三十二名、十万円以上が三名、こういうようになっております。出資金の内訳にいたしましても、完全自己資金はそのうち八名です。自己資金が五十二名、借入金が八十名、完全借入金が二十七名。この借入金の内訳を見ましても、二百万円以上が十六名、百五十万円以上が十六名、百万円以上が十二名、五十万円以上が三十四名、十万円以上が一名、こういう中身になっております。効果につきましても、効果なしと答えておりますのが百十二名、八六%、不明が十七名、一三%、効果ありが一名で一%。販売の実態を見ますと、売れるというのが〇%、無理に売ったが三十四名、二六%、売れない九十六名、七四%、こういうようなアンケートの結果が出ておるわけでございます。  このエー・ピー・オー・ジャパン社から売り出しておりますMKIIペーパーインジェクターなる自動車部品ですね、私、委員長の許可を得ましてここに持ち込んでおります。また、私ここにパンフレットも持っておりますが、会社側としまして、公害防止に非常に有効等の宣伝をしてあるわけでございます。通産省としては、機器についてのテストもしておられますが、私がこれから読み上げるこの項目につきまして、その効力についてどのように判定をされておられるかお伺いしたいと思うのです。  第一点は、エンジンの回転性能を円滑にするかどうか。第二点は、ガソリンエンジンの燃焼効率を高めるかどうか。第三点は、排気ガスを少なくするかどうか。以上の点についてお答えいただきたいと思うのですが、その前に、委員長の御許可をいただきまして、ちょっとこのパンフレットをお見せしたいと思います。——以上の点、お答えいただきたいと思います。
  240. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 通産省では、四十八年の十月に、工業技術院の機械技術研究所及び日本車両検査協会に委託いたしまして、排気ガスの試験、燃料消費率等について試験を行っております。この一昨年の試験の結果によりますと、エー・ピー・オーのペーパーインジェクターを取りつけ後は、CO、HC、NOxともに、取りつけ前に比べまして増加している場合が多い。二十四データを調べましたうち十五データが、かえって増加をしておるという結果が出ております。また、燃料消費率につきましても、このインジェクターを取りつけて後、八データ中六データが燃料消費率が悪化いたしておる。それから、本排気ガスから結局そういうデータを得ておりますので、このデータを専門家に、中立の学者等にもいろいろ見せました結果、結論といたしましては、本装置は、排気ガス及び燃料消費については効果があるとは言えない、こういう結論になっており、当時、その旨新聞にも発表いたしておるところでございます。
  241. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま天谷さんから効果が全く認められないという御答弁があったわけでございます。  そういたしますと、いま嶋崎政務次官にお見せしましたように、そのパンフレットにおきましては、宣伝内容というものはいろいろ書いてあるわけでございます。「エンジンに付着するカーボンを少なくします」とか「アンチノック性を高めます」「パワーアップします」「オイルの汚損を少なくします」「エンジンの回転性能を円滑にします」「エンジン寿命を延ばします」「ガソリンエンジンの燃焼効率を高めます」「排気ガスを少なくします」、こういうようにいろいろ出ておるわけです。通産省のテスト結果はいま御答弁あったとおりといたしますと、この宣伝パンフレットのここのところは誇大広告と言えるのではないか、うその宣伝をしておることになるのではないか。少なくとも景表法違反の疑いがあると思うのですが、このことにつきまして公正取引委員会はどういう御見解をお持ちでございますか。パンフレットを一応ごらんになってください。
  242. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 これは、ただいまのお話で直ちに判断を申し上げるわけにまいりませんけれども、表示の仕方が実態を誤認させるような表示の仕方であるということになりますと、これは景品表示法に違反する疑いもあるというふうに考えます。
  243. 近江巳記夫

    ○近江委員 法違反の疑いがあるということをおっしゃったわけでございます。そういう点からも、これは非常に問題だと思います。  それから、警察庁にお伺いしたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、こうしたマルチ商法につきまして、警察庁としてはどのような認識をお持ちかお伺いしたいと思うのです。まず、この点について警察庁からお答えいただきたいと思います。
  244. 四方修

    ○四方説明員 警察におきましても、先生御指摘のとおりに、マルチ商法は、人を勧誘することによりまして得る収益が商品販売による収益よりも大きいということから、非常に無理な勧誘等をいたすところのきわめて好ましくない不健全な営業であると考えております。したがいまして、この種の営業に伴いまして犯罪が発生しないか、発生すれば直ちに適宜、適切な措置をとる必要があるということで、すでに全国の都道府県警察に指示をいたしまして、十分な監視をして、犯罪があれば検挙いたしますし、犯罪がなくても非常にそれに近い状態があれば、適切な警告等の措置をとっていくという方針のもとに対処いたしておるところでございます。
  245. 近江巳記夫

    ○近江委員 この被害例は成人にとどまらず、高校生やはなはだしいのは小学生にも及んでおる。こういう実態を見ますと、警察庁としてこうした未成年の被害についてどのように対処なさるか、もう一度ひとつお伺いしたいと思います。
  246. 四方修

    ○四方説明員 ただいま御指摘の青少年に対する問題でございますけれども、私たちの方に全国から入っております報告によりますと、昨年から本年の三月二十七日、つまり昨日までの間に、マルチ商法に関係をいたしました少年の数が三十六名に及んでおりまして、その三十六名のうち、三十一名までが高校生でございまして、事案によりましては、親に依頼をして百万以上の大金をつぎ込んでおる例もございまして、青少年の健全育成にまことに好ましくないものであるというふうに考えておりますので、先ほどお答えいたしましたような方針に基づきまして取り締まりをやるという方針のもとに監視活動を続けると同時に、これら青少年問題としての補導活動あるいは関係機関への連絡等につきましても、並行いたしまして配意をいたしておるところでございます。
  247. 近江巳記夫

    ○近江委員 すでにマスコミの報道でも明らかなように、三月十九日、エー・ピー・オー・ジャパン社と被害者の代表との間にトラブルが起きまして、被害者代表が拉致されるという事件が発生しておりますが、この事件の背景とてんまつについて説明をお聞きしたいと思うのです。
  248. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 お尋ねの事件は、三月十九日に都内のホテルグランドパレスで行われましたマルチ商法のエー・ピー・オー・ジャパン社と被害者同盟との補償問題についての会談が決裂いたしまして、その際、被害者同盟の役員等二名が乗用車に無理やりに押し込まれるというような暴行が加えられまして、傷害を負わされたというものでございます。  この事件の背景でございますが、エー・ピー・オー・ジャパン社のマルチ商法をめぐる問題に関連しまして損害を受けたと主張する人たちが、被害者同盟を結成いたしまして、かねてから会社側に出資金の返済などを求めておったのでございますが、話し合いがつきませんので、今月の十九日に、都内のホテルグランドパレスにおきまして双方十五名ずつが会談をしたのでございます。ところが、この会談の交渉の途中でこの事件が発生したというふうに認められるのでございます。  捜査の状況につきましては、当日、被疑者三名を逮捕、監禁、致傷ということで検挙いたしますとともに、被害者一名を救出いたしまして、少年を除きます二名の被疑者を引き続き取り調べ中でございます。また、他の一名の被害者同盟の会長は、乗用車で連れ去られて所在不明になっておりましたけれども、翌二十日に所轄署の方に出頭してまいりましたので事情を聴取しました結果、連れ去りました方に逮捕、監禁あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律の違反容疑がございますので、目下被疑者の割り出しなど捜査を厳正に行っておる最中でございます。
  249. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした問題はやはり話し合いでやっていくというのがあたりまえでありまして、こういう暴力事件ということは、これはもうほんとうに社会的にも非常に許すことのできない問題であろうかと思います。そういう点で、警察庁としてもさらにこの問題についてもよく調査をし、対処をしていただきたい、このように思うわけであります。これはもう一般消費者に対しましても非常に大きな問題でございますし、こういう法治国家において、警察庁もがんばっておられるのに、こういうことがまかり通るというようなことは、非常に大きな問題であろうかと思います。この点を重ねて要望しておきたいと思います。  それから、文部政務次官にお伺いしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、青少年、なかんずく未成年に被害が出ておりまして、中でも特に大学生が多いわけです。高校生もおります。先ほどお話があったように。全体の掌握もまだできておらないと思うのですが、それでもああした数字が出ております。これから新学期を迎え、被害者が広がることも考えられるわけですが、文部省として何らかの措置を講ぜられる必要があるのじゃないか、このように思うわけです。  そこで、一例を私、示してみたいと思うのですが、ここに手紙が来ておるわけです。これは慶応大学のH君という人からの手紙でございます。四十九年の九月九日、その中のポイントのところを読み上げたいと思いますが、六万六千円を出資した、当時十八歳、それでこの販売につきまして自信をつけさせ、ほめたりするのは、エー・ピー・オーの一つの技術であり、卸元以上になるとこういったことをやる技術を教えられる、まさに集団詐欺と言えよう、こう書いてあります。それから、その中で、おれの言うことさえ聞けたら間違いなく月収三百万円ずつとれるよ、ただしおれの言うことを少しでも疑問に思ったら一円もかせげないぞ、百三十万円つくってこいよ、こういうことで、十月十一日に、卸元昇格のため必要な金百二十四万三千円の不足分二十万円を私の十人の友人より借り集め、金を払い込みました。その後しばらくはこの仕事を続けたが、自分も集団詐欺の一員をしているように思え、やめようと決意する。目的のためには手段を選ばないグループリーダーたちは、自分に課せられた本社からの毎月のノルマを達成するためには、たとえ相手が未成年であろうと学生であろうと、予備校生であろうとお構いなしに、詐欺行為をもって卸元、総卸元に昇格させようとしています。二十四人のディーラーをつくるよりも、二十三人のディーラーに計画的な詐欺行為を用いて彼らを一人でも卸元に昇格させられたらその方が本社はもうかるわけです。まあ、綿々と訴えております。  それから、女子高校生、十八歳、これも手記でございますが、これは福島県の子です。私を誘ったのはクラスメートだ、六万六千円ですかの出資金だけで百万円ものお金が毎月コンスタントに入ってくる話を聞いて、いいなと思ったのも事実です。この説明会場に連れていくとき、あらかじめ何も知らないことにしてと言われました。なぜなら、この内容は人に言ってはいけないらしいのです。私は六万五千円をつくるのに苦労したのにやめようと思いましたが、お金を払った後でしたので、おそかったのです。後悔をしておることがずっと書いてあります。  次に、新聞配達をしながら東京で二部の大学に通っておる学生、二十歳の手紙です。大学のクラスの友人から電話があり、話があるので国電千駄ケ谷駅で待ち合わせようとありました。その友達は私と同じく新聞配達をしながら学校に行っておる人です。連れていかれたのは日本青年館でした。こういう有名な会場をどんどん使っておるわけです。そしてその後、説明会が終わってから喫茶店に連れていかれた。そして、周りの雰囲気にのまれ、あれよあれよという間に販売店申請及び同意書に印を押してしまった。それで、帰ってからいろいろと考え、断ることにして、契約をキャンセルしてください、キャンセル料を持ってきましたと言いましたが、それはこのエー・ピー・オー・グループでは認められない、六万五千円を払い、品物を持って帰れと言われました。キャンセルをさせないわけですね。私は友達を信じ、六万五千円を出してしまいました。私にとって六万五千円は、一年間新聞配達をしながらこつこつと蓄えたものでした。友達は、彼自身がいやな思いをし、困ったことを私に移しかえたということです。私は裏切られたような気持ちでいっぱいです。友人関係をこのように破壊していっておるわけですね。  次は、北海道の大学生の手紙ですが、北海道に学ぶ一学生です。相手が同じクラスの友人だし、信用して行ったのです。説得で私はついに入会することに決めて、入会金、商品購入のための六万六千円を借金して集めた。最初の一カ月は借金返済のために一生懸命努力しましたが、ことごとく失敗に終わり、ついにあきらめました。でも、いま考えれば、他の人をリクルートしなくてよかったと思っています。自分と同じように苦しむ人がふえることを考えたらというようなことで、この人も非常に反省のそれを書いておるわけです。  こういう手紙を読み上げたわけでございますが、文部省として、こういう学生、大学生や高校生が巻き込まれておるこういう問題に対しまして、何らかの処置を講ずる必要があるんじゃないかと思いますが、その点につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  250. 山崎平八郎

    山崎(平)政府委員 ただいまの近江先生のマルチ商法に対する御質疑でございますが、特に私、実例につきましては初めて伺った次第でございますが、先ほどお示しのとおり、去る三月二十日、また二十六日に、サンケイ及び日経にこの記事が載りまして、私もいろいろ勉強さしていただいた次第でございますが、特にこの商法はネズミ講式に商品をからませた非常な詐欺行為であるわけでございますが、こういう詐欺行為の中に純真無垢な学生、生徒がやむなく引きずり込まれるということは、文教をあずかります文部省の立場として大変憂慮にたえない次第でございます。  そこで、かねて文部省といたしましては、先ほどからお話に出ます学生、生徒を見ておりますと、大学生の方もありますが、高校生あたりの方も非常に数が多いようでございまして、特に年端のいかない高校生のアルバイトにつきましては、その就労につきまして、前々から生徒の健康とか学業への影響等を十分に留意するように、特に労働基準法を正しく認識して適正な労働条件のもとで就労できますように都道府県あてに指導をしてまいったところでございます。ところが、今回の報道によりますところのいわゆるマルチ商法によりまして、先ほどの警察庁の御指摘にもありましたように、昨年から三月二十七日までの三十六名の被害者と申しますか該当者のうち、三十一名が高校生であった、こういったような事実を承知したわけでございますが、今回のことにつきましてはまだ個々に実は詳しく存じておりません。しかし、去る四十八年の末ごろに同じようなことがございまして、これはパンクの防止液というものを商品といたしましたいわゆるマルチ商法が東京都内の高校生に被害を与えた事実がございました。このときは東京都では校長会とかあるいは生徒指導主任等に対しまして、高校生がなるべく被害を受けないように、直接文部省が指導した例がございます。  そこで、今回の問題は、全国的にかなり広い分野で被害者も多いことと思いますので、先ほどの警察庁の資料、あるいはまた通産省、公取あたりとも十分に連携をとりまして、特に高等学校の生徒の指導連絡協議会というものもございますので、そういう機関を通じましてぜひとも都道府県の指導を強化してまいりたい、かように考える次第でございます。
  251. 近江巳記夫

    ○近江委員 まだまだ掌握していきますと、私、もっと被害が出ておると思うのです。そういう点、いま政務次官から連絡協議会等を通じて徹底させてそういう被害が起きないように今後やっていくというお話がございましたが、特にこういう高校生、未成年のそういう問題というものは非常に大きな問題でございますし、文部省としましてもさらにこの問題の把握に努めていただいて、広がらないように十分な対策をとっていただきたい、このように思うわけです。  それから、公取委員会にお聞きしたいと思うのですが、公取委員会としてこのマルチ商法に対してどういう角度から取っ組んでおられますか、この点についてお聞きしたいと思います。
  252. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 マルチ商法につきましては、独禁法上の問題と、先ほどの景品表示法上の問題と、両方あるかと思いますが、景品表示法上は、果たして一般消費者というふうにとらえることができるかどうかというところに問題がございます。独禁法では、これは不公正な取引方法、一般指定の六号に、不当な顧客誘引行為という条項がございますが、この条項に該当することになるのではないか、こういう観点から検討をいたしておりました。その結果、最近におきまして、 マルチ商法を行っておると思われます、これはホリディ・マジックという会社でございますが、これに対しまして二月七日に立ち入り検査を行いまして、ただいま審査を続けておる状況でございます。
  253. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在個別的な調査中ということでありますので、内容等については明かすことが非常にむずかしい問題もあろうかと思いますが、ホリディ・マジックは大分やり方を変えてきておるようにも聞いておるわけですが、もしそういうことで勧告するに至らないようなことになった場合、独禁法二十五条によります会社の無過失賠償責任は発生しなくなるケースもあると思うのですが、この点についてはどうですか。
  254. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 先生おっしゃいますように、まだこれは審査の結果を待ちませんと判断ができないわけでございますが、もしも不公正な取引方法に該当しないということになりますと、おっしゃいますように独禁法上これを問題にすることがむずかしくなるということでございまして、三十五条では無過失損害賠償責任の規定がございますけれども、これは二十六条によりまして審決が確定しませんと援用ができないということになっておりまして、そういう点から無過失損害賠償請求ができなくなる場合もあると思います。
  255. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、勧告を省略して早く審判開始ができる規定のいわゆる第四十九条というものがあるわけですが、この四十九条でやればどうかと思うのですが、この点についてはどうですか。
  256. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 四十八条によりまして通常は勧告をいたしまして、そうして勧告が通常は三十日後に審決として確定をする。これは審決として確定をするわけでございまして、その確定をしました段階で二十五条によります無過失損害賠償請求ができる、こういう形になるわけでございます。もちろん勧告のほかに正式の審決が出まして、そしてそれが確定して二十五条による援用ができる、こういう場合もあるわけでございます。
  257. 近江巳記夫

    ○近江委員 マルチ商法に対しまして独禁法によって迫っていくのは非常に重要な対策の一つであるわけですが、先ほど申し上げたようなケースになった場合、過去に生じたマルチ商法による被害者の損害の救済はできなくなる、そういう非常に限定された効果しか持たない現行独禁法の限界性というものがあると思うのです。この点公取当局としてはどのようにお考えですか。
  258. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 この点は先生のおっしゃるとおりだと思います。
  259. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしましても、公取委員会としてはホリディ・マジック社のこの件について調査なさっておられるわけですし、これは一日も早く結論を出す必要があろうかと思うのです。そういう点につきまして、公取さんも非常にまじめに真剣にやっておられると思うのですが、非常に遅いじゃないかというもっぱらの声なんですよ。この点についてはどういう反省をなさっておりますか。
  260. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 非常に審査案件を多く抱えておりまして、そういう点から若干おくれておるという点もあるかと思いますけれども、本件はできるだけ審査を急ぎたいというふうに考えております。
  261. 近江巳記夫

    ○近江委員 独禁法の限界性につきましては、先ほど御答弁あったように非常に問題があるわけです。このことを見ましても独禁法と両立しましてマルチ商法規制の立法がどうしても必要である、このように思うわけです。この点につきまして通産政務次官はどのようにお考えですか。——その前に局長からお伺いしたいと思います。
  262. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、産業構造審議会流通部会に通産大臣が諮問をいたしまして、マルチ商法に対する対策の検討を行ってきたわけでございますが、その答申によりますと実質的にマルチ商法的な商売を禁止するような方向で立法を検討すべしということでございまして、通産省としましてもその方向で検討いたしておるわけでございます。ただ、立法をするに当たりましては、一つの行政対象に二つの法律がありまして、それが競合したり矛盾したり重なり合ったりしてはいけませんので、そこのところは明確にする必要があるかと存じております。  それで、まず現在独禁法という法律がございまして、この法律で不公正なマルチ商法につきましては取り締まれるという方向でいま公取委員会が御検討だということでございますので、どの範囲まで取り締まれるのか、そこのところが明確になりませんと、新しい立法の前提条件が整わないということが言えるわけでございます。  それから、民法、商法との関係がございますので、この点につきましては法務省との調整が必要でございますが、そういう調整がつきまして、そしてなおかつ独禁法だけでは不十分であるということが明確になりますれば立法を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  263. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど申し上げましたように、公取の審決を一日も早く出してもらいたい、通産省もこのように言っているわけですが、公取のホリディ・マジック社に対する審決が出ないと踏み切りがつかないというのは、公取がマルチ商法における不公正取引の認定基準とでも言えるこの取り締まりのガイドラインを出すだろうから、それと立法する案との整合性の問題があるということであるのかどうか、その点についてもう一度お伺いしたいと思います。
  264. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほども申し上げましたように、公取委員会で取り締まれる範囲が明確になりました場合に、その取り締まり範囲だけではマルチ商法の弊害を除去できないということが明らかでありますれば、積極的に通産省として取り締まり立法をつくりたいというふうに思います。
  265. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取事務局長にお伺いしますが、そうした認定基準といいますか、そういうものは出されるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  266. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 このホリディ・マジックの審査を待ちませんと、その点もいまの段階でははっきり申し上げるわけにまいりませんけれども、不公正な取引方法に当たるということがもしもはっきりしてまいりますと、これはマルチ商法そのものにつきまして不公正な取引方法についての認定基準と申しますか、解釈基準と申しますか、そういうようなものの作成を検討しなければならない、こういうふうに考えております。
  267. 近江巳記夫

    ○近江委員 産業構造審議会の答申もありますし、現在通産省として立案中の法案の骨子について説明してもらいたいと思うのです。特に説明会の規則、被害者救済方法、業者に対する罰則などにつきましては特に具体的にお答えいただきたいと思います。
  268. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 産業構造審議会の答申の線に沿って法律案の立案を検討いたしておるわけでございますが、最初にちょっとお断わりいたしておきますが、産業構造審議会の答申を作成する段階におきましては、独禁法はマルチ商法取り締まりには適用されないというような見解がございましたので、その見解を前提とした作業を行っております。ところが、その後二月になりましてホリディ・マジックの調査があり、現在公取委員会で独禁法をマルチ商法に適用するという方向で御検討になっておりますので、前提条件が若干違ってきておりますから、これから御説明いたします答申の概要がそのまま現在でも適用可能かどうかは若干留保する必要があると思いますが、そのことを事前に申し上げた上で答申の概要を御説明いたします。  まず第一番目に、マルチ商法をやる人が販売員を勧誘する際に、投資金に関すること等一定の事項の開示を義務づけるとともに、行き過ぎがないように不当な勧誘方法を禁止するということでございます。  それから、第二番目に、契約の締結等に際しまして契約内容を明らかにした書面の交付を義務づけ、加盟後一定期間のクーリングオフ制度を導入する。これは、まず書面で明確にいたしませんと契約内容が不明になりまして後で紛議が起こるということ、それから一たん納得して書面もつくり契約をいたしましても、後でどうもだまされたらしいといって気がつくこともございますので、一定期間は契約を無条件で解除する制度、これをクーリングオフと言っておりますが、こういう制度を導入するということであります。それから、クーリングオフ期間が経過した後におきましても物品の引き取り、リクルート料の相当割合の返還等を認めるようにするということであります。  それから第三点に、以上申し上げましたような規制につきましては、その実効性を確保するために、必要な場合には罰則で担保する、行為者のみならずマルチ商法を企画、推進している本部組織に該当するものに対しましても法的な責任を負わせる、大体以上が答申の概要でございます。
  269. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま御説明を聞いたわけでありますが、独禁法的な見方でとらえる以前のいわゆる予防的措置なども含み、公取の認定基準の決定待ちでなくても、少し緩い概念規定ででも早急に立法に踏み切るべきではないか、このように思うわけです。立法の目的さえ明確にしておけば、相当広範なものを網羅した書き方をしてもいいのではないかと思うわけです。そして、この立法目的に沿って行政運用で固めていけばよいと思うわけでありますが、この点につきまして局長はどのようにお考えでございますか。
  270. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 やはり取り締まりで二つの法律がある場合に、その関係が明確になるということはぜひとも必要かと存じますので、まず独禁法によって取り締まりが可能な範囲が明確化するということはどうしても立法に必要な前提条件であろうかと存じます。  それから、目的を広くとって行政運用でというお話があったわけでございますが、これにつきましては立法技術の問題であり、そういう行き方につきましては法制局等となかなか込み入った相談が必要かと存じますので、なお検討させていただきたいと存じます。
  271. 近江巳記夫

    ○近江委員 検討させていただきたいということはよくわかるわけですが、このように現在でも被害がどんどん拡大していっておるわけであります。そういう点におきまして、政府としてはやはり速やかにこれに対処する必要があると思うのです。そういう点におきまして、公正取引委員会の調査待ちというようなことではいつまでかかるかわからぬわけです。公取さんも一生懸命やるとおっしゃっておられますが、これは公取さんも一体となって速やかにやってもらわなければいけませんし、また立法につきましても、通産当局は速やかに立法したいということも公約なさっているわけですね。そういう背景がありながら遅々として進まない、こういうことでは非常にまずいと思います。ですから、公取さんもがんばっていただくし、通産当局としても速やかに立法規制ができるように全力を挙げていただきたいと思うのです。その辺の決意につきまして、政務次官からお答えいただきたいと思います。
  272. 嶋崎均

    ○嶋崎政府委員 ただいままでの御質疑で明らかになりましたように、通産省としましてはさきに産業構造審議会の流通部会からこの種マルチ商法の取り締まりにつきましての答申を得ておるわけでございまして、実態的に何らかの取り締まりのための必要な立法を考えたいという基本的な姿勢においては御指摘のとおり前向きに考えておるわけでございます。ただ、いままでの審議でもだんだん明らかになりましたように、これを具体的に立法していく場合に、独禁法との関係とか民法、商法等との関係あるいは契約自由という原則のもとで本当にこの取り締まりの対象になるものをどうして規定をし、取り締まっていくかということが立法技術的な問題になってきておると私は思っております。したがって、事務当局を督励してできる限りそれら関係各省間の調整を進めまして、立法の早急な具体化について努力をしてみたいと考えておる次第でございます。
  273. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、約束の時間が来ましたので終わりたいと思いますが、いま政務次官も御答弁になりましたように、これは本当に緊急を要する問題でございますし、力を入れて速やかに立法規制ができますように努力していただきたいと思います。重ねて要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  274. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会