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1975-06-05 第75回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月五日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大野  明君    理事 菅波  茂君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君    理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       加藤 紘一君    瓦   力君       田川 誠一君    高橋 千寿君       羽生田 進君    橋本龍太郎君       山口 敏夫君    金子 みつ君       川俣健二郎君    島本 虎三君       田口 一男君    森井 忠良君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       岡本 富夫君    小宮 武喜君       和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         文部省体育局長 諸沢 正道君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 福田  勉君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 宮嶋  剛君         厚生省児童家庭         局長      上村  一君         厚生省保険局長 北川 力夫君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  能勢 安雄君         国土庁水資源局         水資源政策課長 鶴  哲夫君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         文部省初等中等         教育局特殊教育         課長      国松 治男君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    弓削田英一君         自治省財政局公         営企業第二課長 吉本  準君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   瓦   力君     粕谷  茂君   金子 みつ君     江田 三郎君   田中美智子君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     瓦   力君   江田 三郎君     金子 みつ君   金子 満広君     田中美智子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本富夫君。
  3. 岡本富夫

    岡本委員 去る四月十八日、文部省体育局長の名前で、沖縄県を除く各都道府県教育委員会教育長に対して、学校給食用パンリジン添加する、こういうような通達が出ておりますけれども、私は、次代を背負うところの青少年、この人たちの健康ということを考えまして、二、三ただしていきたいと思っております。  そこで、厚生大臣は、本年の予算委員会でわが党の渡部一郎君の質問に対して、食品添加物、これに対しては徹底的に調査をして、そして国民の健康を守るというお約束をなさっております。この文部省体育局長通達を見ますと、食品衛生法による食品添加物等規格基準、三十四年十二月二十八日厚生省告示三百七十号の中にLリジンが合格した、こういうように出ております。事務当局からで結構ですから、このLリジン食品添加物として大丈夫なのかどうか。なお、「栄養学研究では必須アミノ酸のうちL−リジンは」というような研究が出ておりますけれども、これについての御意見を承りたい。
  4. 石丸隆治

    石丸政府委員 まず、リジン毒性問題について御説明申し上げたいと思います。  先生指摘のように、Lリジン必須アミノ酸でございまして、われわれ人間の生命の維持のためには必要なアミノ酸でございます。ただ、Lリジンそのものにつきましては天然品でございまして、いわゆる化学的合成品としての食品添加物の取り扱いをしていないわけでございますが、一般に使われています製品は、天然に存在いたしておりますLリジン塩酸塩あるいはグルタミン酸塩あるいはアスパラギン酸塩、こういう塩類に製剤をしておるわけでございまして、塩酸塩につきましては昭和三十三年二月二十一日、グルタミン酸塩につきましては三十五年九月十日、アスパラギン酸塩につきましては三十六年六月一日に、いわゆる化学的合成品である食品添加物としてそれぞれ指定をいたしておるわけでございます。  その毒性の問題でございますが、先生指摘のように必須アミノ酸でございまして、ある一定量まではこれは必要なものでございます。ただ、これが毒性という問題は、やはり量的な関係があろうかと思うわけでございますが、一般的に食品添加物として考えました場合には、非常に毒性の少ないものと認められておるわけでございまして、アメリカFDAにおきましても、Lリジンのいろいろな塩類につきましては、いわゆるグラースリストと申しておりますが、一般的に安全と認められる物質として掲載されておるわけでございます。ただ、これに対しまして大量投与と申し上げましょうか、動物実験等意見も出ておるわけでございますが、われわれの集めておりますデータでは、鶏の飼料に四%添加をいたして鶏を飼ってまいりますと、全身衰弱とかあるいは脱毛等の現象が見られるという報告がございます。それから妊娠ラットに一〇%及び二五%添加いたしますと胎児の死亡率が増加している、こういう報告がございます。さらに受精鶏胚、鶏の受精卵の胚に直接一%のリジンを接触せしめたところ、足及び指に奇形の発生が見られた、かような報告がございますが、一般的には非常に毒性の少ない物質考えられております。
  5. 岡本富夫

    岡本委員 五月十三日の文部省資料によりますと、「L−リジン急性経口試験結果を他の食品と比較してみれば砂糖、食塩とほぼ同一である。」急性経口試験、これはあなたのおっしゃったような状態でありますけれども、さて一番問題は、何と申しましても慢性毒性、これが一番問題になるわけであります。やはり六年間給食を受けるわけでありますから、その状態について試験が全部終わっておるのかどうか、これが私は非常に問題だと思うのですが、この点についていかがですか。
  6. 石丸隆治

    石丸政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、これはアメリカFDAのリストによりますと、慢性試験を含めまして一般的に安全と認めている物質になっておるわけでございます。普通の意味の慢性毒性試験等につきましては、そういったことで急性毒性と同じような考えに立ってよかろうかと思うわけでございますが、なお今後の問題といたしましては、新しい試験方法等につきましても今後検討してまいりたいと思っております。
  7. 岡本富夫

    岡本委員 いまお聞きしますと、やはり今後の検討にまたなければならぬという厚生省見解でございます。  そこで、この栄養価値リジンを入れるのは、アミノ酸たん白が有効に体内に吸収される、こういうことによって体力をふやすというように考えておるようでありますけれども、しからばどれだけの量を摂取すればどういうように体力が増進するのか、どれだけ摂取すれば害があるのか、こういう確たるところの科学的の、あるいはまた実験例というものが非常に少ないのではないかと私は思うのです。この社団法人必須アミノ酸協会が発行しておるところの「エネルギー蛋白質必要量」こういう本を見ましても、どうもまだ根拠もあいまいである、こういうことであります。  そこで、文部省体育局長にお聞きいたしますけれども全国都道府県教育委員会教育長にこの通達をし、しかも学校給食用小麦粉日本学校給食会、ここで一括購入して全部配給しておるわけですね。これについて、リジン成人に比較して成長期にある児童にはどれほどの量が必要なのか、必須摂取量はどれぐらいだということをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  8. 諸沢正道

    諸沢政府委員 日本学校給食会給食用小麦粉を一括購入して各都道府県学校給食会に配給するというシステムは、これは学校給食用パンの品質について、文部省としてもこの給食会を通じて全国一律に良質な品をできるだけ合理的な価格で供給しようという趣旨で実施をいたしておるものでございます。そこで、今回のリジン混入に当たりましては、パン一個につきまして小麦粉の重量に比し〇・二%のりジン混入する、こういうことで実施をすることとしておるわけでございます。
  9. 岡本富夫

    岡本委員 この一九七三年の世界保健機構すなわちWHOあるいは国連食糧農業機関FAOエネルギー及びたん白質要求量に関する報告によると、十ないし十二歳の男子体重一キロ当たり一日〇・〇六グラムのリジンを要し、同年齢の女子はその量またはこれ以下で十分であるとしておる。これから計算すると、小学校高学年児童では一日に二ないし二・二グラムのリジン摂取すればよいということになってくる。  それで、東京都はこれに対して、学校給食リジンを拒否しておりますね。またきょうの新聞を見ますと、神奈川県も拒否をしておりますね。これはどういうわけで拒否しておるのか、ひとつ局長からお聞きしたい。
  10. 諸沢正道

    諸沢政府委員 まず前段のFAOWHO合同特別専門委員会報告の中で、ただいま先生のおっしゃった十歳から十二歳の少年少女アミノ酸摂取量からすれば、そうたくさんとらせる必要はないんじゃないかという御指摘でございまして、その点につきましては実は新聞等にも投書がございまして、私どもこの報告書をよく検討いたし、かつ専門先生方の御意見も伺ったのでありますが、この報告書にございますように、先生指摘の量は、少年少女が正の出納を維持できるアミノ酸摂取量だということでございまして、それは砕いて申せば、要するに生存するために必要なアミノ酸の量がこれだけだということであって、この報告にもございますように、特に成長期にあります子供アミノ酸につきましては、一般成人よりも多量にとる必要があるのだということを、試案ではありますけれども示しておるわけでありまして、そういう観点からいたしまして、私どもはいまりジン添加を必要というふうに判断をいたしておるわけでございます。  なお、東京都と神奈川県の問題でございますが、その前に、確かに御指摘のように、リジン小麦粉添加するということは、食事全体を見ました場合に、リジンというものが魚や肉のような動物性たん白質には比較的多く含まれておる、こういうことでございますから、食事全体としてそのような動物性たん白質をよけいとればリジンをそう添加する必要はないという、いわば相関関係にあるであろうと思われるわけでございます。  ところで、学校給食は一日一食であり、また各人各様食事内容というものは、都市農漁村において相当違いもあることも事実でございます。そこで、東京都につきましては、リジンそのもの有効性必要性ということは認めておるわけでございますが、ただ一般的に言って、東京都の場合は、その児童生徒食事内容からしまして、あえてリジン添加しなくても必要なアミノ酸摂取できるのではないか、こういうようなことで、さしあたってリジン添加小麦粉を使うということはしないが、その必要性についてはなお検討をしたい、こういうような御意向でございますので、規格から東京都は外したわけでございます。  また、昨日神奈川県におきまして発表がございまして、神奈川県としましては実は五月一日からすでに添加した小麦粉を使っておるわけでありますが、その後一部の関係者から疑問が生じておりまして、なかなか理解が得られないのだ、しかしリジン必要性については文部省及び学識経験者必要性ありとしており、県も必要性ありと認める、また安全性については県衛生部と協議した結果でも全く問題がないと認める、こういう見解でございますが、さきに申し上げましたように一部の方に疑問があるといたしますならば、これはやはり食物のことでございますから強制してまでやらせるというのはどうであろうか、そこで県独自の立場でもう少し検討をしたいので、その間リジン添加を中止したい、こういうような意向のように伺っておるわけでございます。
  11. 岡本富夫

    岡本委員 これは私の方で、全国学校給食リジンが必要な量、これを計算しますと、大体金額にして五億円内外になるのですよね。こういうものは全部父兄負担になるのです。しかも、必須アミノ酸研究委員会が一九六七年に、あなたの方から資料をもらったのですけれども、その示した学校給食用パンリジン強化に関する実験報告によると、農山村地区の山梨県ではリジン摂取量が一日に約三グラム、東京では男子が三・九グラムから六・九グラム、女子では三・五グラムから五・七、大阪では四・〇から四・八グラム摂取をしておる。これは十年ですでにあなたのおっしゃる摂取量の二倍は摂取しているわけですね、またそれ以上に。現在十年たって、さらに食事内容が変わっておるわけですよ。ということは、どうも不必要なんではないか。この実験はあなたの方ではどういうふうに評価していますか。
  12. 諸沢正道

    諸沢政府委員 この全国的な調査の結果から見ますれば、確かに都道府県によって評価に多少の違いはあることは事実でございますけれども、全般的に見まするならば、やはりこのリジン添加ということは、それなりに効果があったというふうに考えられるわけでございまして、また、先ほど申しましたFAOWHO試案にいたしましても、試案ではございますけれどもアミノ酸のうちリジン摂取量につきましては、一九五七年のパターンでは四十二ミリグラムとなっておりますのを、七三年の試案では七十五ミリグラムというふうにそれをふやすことを必要というふうに判断しておるわけでございまして、そういうことから考えますれば、私どもはこの添加は有効というふうに考えるわけでございます。
  13. 岡本富夫

    岡本委員 どうもあなたの答弁、有効だと判断したから——しかもこれは日本学校給食会理事長からの要請なんですね。要するに小麦粉を配給する方の要求なんですよ。この小麦粉を配給する方の要求であって、一般都道府県学校給食のため、また都道府県がどうしても、その配給する根本でリジン添加してくれという要求ではないのです。いまあなたの、ただ判断したというだけであって、またこの実験報告によると、いままで六年間やりまして、農村部では効果があったとされているが、比較的栄養の高い都市部では、それほど効果がなかった。東京地区では、心身発育においては、男女ともリジン群対照群を凌駕したが、しかし、体重胸囲座高発育においては、その両群の差は見られなかった。男子握力の発達ではリジン群の方がむしろ劣る結果を得た、こういうような報告もしておるわけですね。握力、すなわち握る力ですね、これは児童体力を示す上に重要な指標なんです。これが劣り、体重胸囲座高に差がなく、わずかに身長が高くなったということは、これはちょうどリジン強化によってもやしの子供をつくったみたいなものですね。こういう報告も出ているわけです。であるのに、文部省体育局長から全都道府県に、リジンを強化する、こういう一方的な通達が出ておりますけれども、これは私は、いまあなたが考えておる、あるいは判断したという判断基準において、どうもあいまいである。しかも、どれだけ入れればどれだけの栄養価が増進するとか、あるいはどれだけ入れたらだめだというような確たるところの結果を、聞いてみると厚生省の方も出していない。これについてどういうようにお考えですか。
  14. 諸沢正道

    諸沢政府委員 私ども添加必要ありと判断いたしましたのは、もちろん事務的に独断的な判断をいたしたわけではないのでございまして、日本学校給食会からそのような規格改定をしたいという要望がありましたそれにこたえまして、文部大臣諮問機関でありますところの学校給食分科審議会に御相談をしたわけでございます。この分科審議会には、当時国立栄養研究所長であられました大磯先生委員長になられまして、そのほか、厚生省栄養審議会委員長をしておられました東京医科大学の島薗先生など小委員に入っていただきまして、そこで検討をしていただきました結果、必要ありと、こういうことでこの改定に踏み切ったわけでございます。  なお、ただいま先生の御指摘がございましたように、リジンをとればどれだけ体によろしいのかということは、確かに現在の栄養学をもってしても、具体的に数値をもって示すようなことはむずかしいのではなかろうかというふうに私ども考えます。しかしながら、ただいま、たとえば子供握力が低下したというような御指摘でございますけれども、この握力のような子供運動能力ないしは体力にかかわる問題になりますと、実は文部省で毎年、子供のそういう能力について調査をいたしておりますけれども昭和三十九年と四十九年の十年を比較いたしますと、身長等はかなり伸びており、体重も向上いたしておりますが、全般的に見て、走るとか跳ぶとかいう運動能力になりますと多少伸びておるけれども、懸垂のようないわば筋力を使うがんばる力というようなものは伸び悩みになっておるという状況でございまして、それは、学校給食を受ける子供、受けない子供にかかわらず、おしなべてそういう傾向が出てきておるわけでございまして、それに対してこの原因は何であるかという点につきましては、目下私どもも各面から検討をいたしておるわけでございますが、あるいは食事の面も一面を持つかもしれませんけれども、全般的に見まするならば、今日の子供を取り囲む社会環境なり学校生活等において、まだまだ鍛練の機会が十分でないというようなことが主な原因ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 岡本富夫

    岡本委員 これは必須アミノ酸研究委員会アミノ酸強化に関する小委員会という、一九六七年一月ですから、研究したのは十年ぐらい前からのあれですけれども、こういうのを見ましても、どうもその根拠が乏しい。先ほどの一食について〇・一二グラムの添加、これはどれほどの効果を期待しておるのか、こういう科学的根拠が出てこないわけですよ。しかも、先ほど厚生省の方から、少しならいいけれども、多く食べさせるとぐあいが悪い、しかも慢性毒性についてはまだ検討ができていないというときに、あなたの方が一方的に通達をいたしまして、しかもこの日本学校給食会というのはものすごい力を持っておるのです。これはこの給食会法によってできたのでしょうけれども補助金からあるいはいろいろな貸付金から、各都道府県教育委員会に対してはすごい力を持っておるわけですね。そこで一方的に決められてしまったら、神奈川やあるいは東京のように相当勇気がなければ、これを拒否することはできないようになっておるのですよ。しかも、各都道府県教育委員会には父兄から、確かにそれは毒性でないのですか、あるいは相乗作用はどうですか、こういう質問を受けますと答えるのに困っておるわけですよ。そのお金を負担するのは父兄ですから、これは当然聞くのが普通です。  したがって、局長さん、もう一遍慢性毒性とかいろいろなところを検討して、神奈川東京はもうしばらく辞退したいということですが、ほかの県でもそういう説明をできないところがある。これに対して今後どういうようにあなたは手を打つつもりにしておりますか、それを聞きたい。
  16. 諸沢正道

    諸沢政府委員 必要性毒性その他弊害の検討と二つあるわけでございますが、必要性につきましては、もう少し説明をさせていただきますならば、実は文部省におきましては、学校給食現実給食内容パターンというものを、四十八例をとりまして、その食事内容に含まれますところのアミノ酸含有量を分析検討いたしたわけでございますが、御承知のように必須アミノ酸と言われるスレオニンやリジンなどのうちでリジンが第一制限アミノ酸となっておる。つまり、一番量の少ないという例が非常に多いわけでございまして、ただいま申しましたように〇・二%の混入をいたしたとしましても、四十八例のうち二十九例はなおかつリジンが第一制限アミノ酸になっておる。こういうようなことでございますので、体内に有効なたん白質摂取するためにはこの程度アミノ酸リジン摂取は当然必要であろうというのが、先ほど申しましたように、審議会の御意見でもあったわけでございます。  なお、この際、審議会には県の教育長代表等も入っておられるわけでございますから、言ってみますれば文部省の方あるいは日本学校給食会が一方的にこれだけのものを混入したものでなければ売らないというようなことではないのでありまして、十分その辺の御意見は反映し得たものでございますし、また現実にいまの基準改定をするに当たりましては、すでに現実に四十三道府県においては実施をしているわけでございますから、他の四県については個別に御意見を事前に伺いました上で、それで東京都のように有効性は認めるけれども都の特殊事情としてしばらく検討したいということでありますので、それは除外をいたしたわけでございまして、神奈川ほか三県につきましては、その段階混入することを必要と認めて御賛成をいただいておったわけでございます。ただ、現実実施段階になりまして、一部の方が非常に心配をされたということで今回のような事態になったわけでございますから、その辺は私どもとしましては十分御意向を伺った上で踏み切ったというふうに考えておるわけでございます。  なお、その有害性の問題につきましては、先ほど厚生省の方からもお話がございましたけれども、なるほど日本では慢性実験とか催奇性の実験というようなものは私の聞いておるところでもないようでございますけれども、しかし、専門家の御意見を承りますと、外国の実験例等に照らしましても、この問題はいま程度添加をするということであれば問題がない、こういうことでございますので、そのような専門家判断を信頼いたしまして私どもは踏み切ったわけでございます。
  17. 岡本富夫

    岡本委員 審議会の中には各都道府県代表教育委員会の方が入っておるとあなたは言いますけれども、それならば、都道府県教育委員会からだれか一人代表が入っておるからといって、これは全部の県の意見というものが全部通ったのではないわけですよ。一つ一つあなたの方から聞いてみたという話でありますけれども、先ほど申しましたように、日本学校給食会ですか、これはものすごい力を持っておるわけですから、そこから圧力がかかれば表面はやはりはいはいと言いますよ。陰ではみなぐずぐず言っているわけですよ、これはどう言って説明したらいいでしょうと。各父兄からはリジンお金を徴収するわけですから、各都道府県父兄の皆様からお金を取っているわけですから、もっと明確な、きちっと答弁ができるような、そういう科学的な根拠ができなければならない。  それからもう一つは、各県によって私は事情が違うと思うのですね。それを全部一律に中央の日本給食会小麦粉を配給するところにほうり込んで金だけ出せというやり方は、ちょっと半強制的ではないかと私は思うのです。  したがって、この問題ばかりやっているわけにいきませんから、要求としては、Lリジン研究、これは厚生省の方ももう少し力を入れてやってもらわなければならぬ。  それから、各教育委員会の方からこれはお断りだ、お金を出しておる父兄の方に説明できないような商品をどうして売れますか。そうでしょう。しかも、これは大事な子供の将来の健康ですからね。県によっては、これはぜひひとつお願いしたいというところもあるでしょう。しかし、県によってはうちの方では栄養が足りていますから、ひとつリジン添加しないようなものを送ってもらいたい。しかも、リジンを入れると表面の焼きが非常にいいのですね。きれいに上がる。だから、製パンするときに中まで焼けずにでき上がる場合もあるかわからぬ。生焼きというとおかしいですけれども、極端に言えばそうなんです。そういう心配も製パン工場ではしているわけです。なお、これは相乗作用、こういうことについて私は検討を要すると思うのですが、厚生省の方からひとつ。文部省厚生省もこれは国の機関ですから、やはりそうした検討をする、試験をしなければならぬと思うのですよ。文部省ではそんな試験をする機関がありませんから、これはひとつ厚生省でやってもらいたい。  それからもう一つは、先ほど申しましたように、文部省の方では、辞退する県に対しては強制的にやらない。すでに神奈川もこうして、辞退をしてきたか知りませんけれども、発表しておる、こういうことですから、半強制的なことはやらないという答弁だけを承っておきたいと思うのです。いかがですか。厚生省の方からまず。
  18. 石丸隆治

    石丸政府委員 このLリジンのいろいろな塩類につきましての慢性毒性あるいはそのほかの毒性試験でございますが、昭和三十七年以来われわれといたしましては各種の添加物につきましていろいろな毒性の再点検を行っておるわけでございまして、その一環といたしまして、本物質につきましても今後研究を続行してまいりたいと思っております。
  19. 諸沢正道

    諸沢政府委員 いまの毒性の問題等につきましては、いままで申し上げましたように、私ども判断根拠一つとして、厚生省の法令その他の上に取り扱いもあるわけでございますから、十分に今後も厚生省意見を聞いてまいりたいと思います。ただ文部省といたしましては、従来、すでに四十三年より今日まで実施をしておりまして何ら支障を聞いておらないわけでございますから、現段階におきましては引き続きこれを実施してまいりたい、かように思うわけでございます。  ただ御指摘のように、現実子供に食べさせる親等の心配があるというようなことで県の方からお話がございました場合、いまの東京都や神奈川県の場合は、県あるいは都としてはリジン有効性あるいは毒性がないという点については十分これを確信しておられると思うのでございますが、ただ末端の父兄等からの心配を考えました場合に、その一時中止というようなことを要請されておるわけでございますから、今後そのような時点に、またそのような事態がほかの県等でも起こりました場合につきましては、私ども関係者と十分お話し合いをいたしまして、御理解を持っていただくように努力をしたい、かように思うわけでございます。
  20. 岡本富夫

    岡本委員 局長さん、御理解いただく、いただくと言ったって、これは科学的な根拠を示せないのですよね。しかも相乗作用、他の添加物もありますから、そういうものとの安全性あるいは慢性への安全性、こういうものがあなたの方で全部が全部きちんと解明されてないのです。しかも何ぼ入れたからどういうふうになっているということも解明されてないのです。それを御理解いただくなんて、これは半強制的になるのです。じゃなぜ東京都も御理解いただかなかったのですか。東京都やあるいは神奈川県のように力の強い県はこれはもうお断りだ、こういう言い方に対しては、まあ、じゃということになりますけれども、ほかの力の弱い県、中にはさまっているところの教育委員会教育長どうするのですか。そういうところに対しては、東京都やあるいは神奈川県のように御配慮するというのであれば話はわかりますけれども、説得しますというのだったら半強制的ですよ。いかがですか。
  21. 諸沢正道

    諸沢政府委員 御指摘のように第三、第四の県にそういうような事態があったらどうするかということ、私は御理解をいただくという意味は、国として今日まで実施をしてまいったわけでありますから、そのような心配は私ども専門家から伺ったところでは絶対ないんだという意味で理解をいただきたいと思うわけでございますが、なおかつ現場の方から神奈川のように理解を得られないということになりました場合は、これは御指摘のように食べ物のことでもございますし、私どもその時点において十分考えてまいりたい、かように思うわけでございます。
  22. 岡本富夫

    岡本委員 時間があと十五分になりましたから、リジンの問題はひとつそういうことで、理解いただく根拠が非常に薄弱なんですから、それが明らかになったわけですから、それを使用する子供たちあるいは学校あるいは父兄の皆さんの意見、これらが納得するだけの資料というものをやはりあなたの方で用意をする必要があると私は思います。それができない場合は、拒否した場合はこれはストップして、そしていままでどおりやっていく、こういうふうにすることを要求しておきます。  次に、厚生省から母乳のPCBの汚染についての発表がされております。これは五月二十八日ですね、汚染状況が非常に少なくなってきた、漸減の傾向だということでありますけれども、PCBは全国で約七万五千トンくらいあるのですね、あるいは七万二千トンとも言われておる。そのPCBの生産がストップしたからといってもう安全なんだというわけにはなかなかまいらないと思うのです。それで、厚生省の検体、要するに母乳中のPCBの検査を見ますと全国で五百五十六件ですね。大阪府だけでも百検体以上やっているわけですね。こういうようなわずかな検体での物の判断はちょっとおかしいのではないか、私はこういうように考えるわけですが、もっと検体をふやす、すなわち都道府県ともっと連携をとって、そして母乳中のPCBの濃度、これを調べるのでなければ、こんなわずかなものではお話にならぬと私は思うのですよ、統計としては。この点についてひとつ厚生省の担当の局長さん。
  23. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりましたように、PCBの母乳汚染の調査、四十七年、四十八年、四十九年と行ってまいっておりまして、四十九年の場合先般発表したわけでございますが、大阪府、大阪市を除きました五十四都道府県、市の百十六地区五百五十六例というものをとりまして、その産婦と乳児が対象になったわけでございます。四十七年から四十九年までの委託した検体数、平均いたしますと各県なり各政令指定都市で大体十くらいになるわけでございます。検体を十くらいにしぼっておりますのは、一つは限られた期間で調査するものでございますから、地方の衛生研究所の処理能力の問題もございますし、それから母乳を採取するということが非常にむずかしいということ、それから同時に統計処理が可能である範囲において考えるということでございます。この四十七年からやっております調査と申しますのは、母乳汚染が全国的にどういう傾向にあるかということを目的としたものでございますから、今回の調査報告一つの県あるいは一つの市で大体十件くらいであっても十分に必要とする資料が得られておる、この検体数で支障はないものだというふうに考えておるわけでございます。なお、県によりましては独自に年を追った母乳の汚染の調査をしておるところがあるわけでございますが、今後もこれらの調査結果も参考にいただきながら分析していきたいというふうに考えております。
  24. 岡本富夫

    岡本委員 厚生省の方で基準を決めておりますね、牛乳は〇・一ppmですか。ところが食品からの大人のPCBの暫定摂取許容量、これが一日体重一キログラム当たり五マイクログラムですから〇・〇三ppmということになるのではないでしょうか。この牛乳の許容量というのはちょっとおかしいと私は思うのですがね。これはまた後でお聞きしますけれども、神戸商大の生物学の三尾という先生研究したところによると、PCBは疲労したときには非常に肝臓に移動する、しかも平常時の十倍くらいになるのだということをマウス試験でやっておりますが、この許容量についてももう一遍洗い直しをする必要があると思うのですがいかがですか。これはどこの担当になるのでしょうか。
  25. 上村一

    ○上村政府委員 母乳につきましてPCBの基準というのは現在ございません。ある学者の試算によりますと、幾つかの条件を前提にして、いまお話しになりましたように〇・〇三三ppmというふうに言われておるわけでございます。基準というものはございません。
  26. 岡本富夫

    岡本委員 これは大人のものですが、子供のだとどうなるかということですね。しかも採取して、あなたは何ppmだ、それを子供に飲ましていいか悪いか、こういうことになってくると、これは非常に不安なことですね。ただお乳をとって検査だけしてもらって、後は指示も何もないんだというのが妊産婦の皆さんの御意見なんですね。そこらあたりから、検体というのは、ただお乳をもらうだけで後の指導がないから、出てこないんじゃないかと思うのですよ。そしていまのところはあなたの方で母乳のPCBの試験をしているけれども、ただ全国五百何カ所でこういう状態だった、これは発表するだけですね。国民の健康のために何がプラスになるのでしょうか。この点は、ぼくはおかしくて仕方がないのです。
  27. 上村一

    ○上村政府委員 この母乳汚染の調査の際には、母乳の中のPCBの濃度のほかに産婦と乳児の健康状態調査をしておるわけでございます。問診をし、さらに精密検査をするということでございますが、今回もそのすべての産婦と乳児について健康診査いたしました結果、四十八年の健康診査の場合と同じように、母乳の中のPCBに関連すると思われるような所見が認められなかった。そういった健康診査をして異常がなかったということを申し上げることもやっておるわけでございます。同時に、母乳中のPCBの濃度がどのくらいであるかというふうなことから、母乳による育児について心配なさることはございませんというふうなことを申し上げておるわけでございます。
  28. 岡本富夫

    岡本委員 そうしますと、たとえば〇・一、何か大阪では〇・一五というのが出ておるわけですね。それから〇・〇九、〇・〇八、こういうようなお乳は飲ましても大丈夫だということを妊産婦の皆さんに話しているわけですか。そのために検査をしているのですか。どうもそういうふうに聞こえますね、いかがですか。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  29. 上村一

    ○上村政府委員 二つの目的がございまして、一つはPCBによって母乳が汚染されているかどうかということを調べていき、そのデータによって母子保健上必要な措置をとらなければならない。あくまでも行政上の調査でございますから、行政目的に役立てるというところにねらいがあるわけであります。
  30. 岡本富夫

    岡本委員 それではお乳の検体は出てこないのです。お乳を出す人は、自分の健康とか乳を子供に飲ましていいか悪いか、あるいはまた食事をどう変えねばいかぬとか、そういうことによってこそ、どうぞ私のを検査してくださいということになる。行政目的に使うからちょっと出せ、これはちょっと無理ですよ。だからこんなわずかしか出てこない。やはりそういった面から、妊婦の皆さんの健康とか、またそのお乳を飲まして大丈夫だとか、あるいはまたあなたの食事方法はこうしなければならぬ、こういう親切なやり方をしなければ本当のデータではないし、またそれは役立たない、こういうふうに考えるわけです。  そこでもう時間が余りありませんから、次に、通産省の公害局の方から来ていますね。——このPCBは三菱モンサント、それから鐘淵化学、二こに開放性のものは集めているわけですね。それがそのままになって残っているわけですよ。通産政務次官の、あれはだれだったかちょっと名前は忘れたけれども、これは国の方でPPPの原則だからどうにかせいというので押しつけたんではだめだ、だから、これは国の方で許可をしたんだからひとつ国の方でちゃんと研究をして、この焼却する方法、なくする方法を明示してもらいたいということで要求してあったのですが、これがいまどうなっておるか。  もう一つは、厚生省の環境衛生局と通産省と共管しておると思いますが、ノーカーボン紙、これがまだそのままになっておるのです。相当散乱しておる。これも処理基準というものがないわけで、各地方自治体では困っておるわけです。こういうものは全部処理してしまわないと、いかに母乳のPCBを検査しましても、まだ散乱してあるわけですからね。また閉鎖性の方でトランスとかあるいは大型のコンデンサー、こういうものの処理基準がまだない。電機ピーシービー処理協会がつくってあるけれども、どうしていいかさっぱりわからない。それから家電の方、テレビ、冷蔵庫、レンジ、そういう小さな家電の処理、これも基準がはっきりしてないものだから、もうそのままほうってある。PCBは製造は中止されたけれども、これからそういうのがどんどん市場に出回ってくるわけですね。この処理についてどういうようにやっておるのか。またどういうように指示しておるのか。これをひとつ通産省の方からお聞きしておきたいと思うのです。
  31. 弓削田英一

    ○弓削田説明員 まず技術開発の現状でございますが、これまでいろいろPCBの処理に関しまして研究発表が出ておりますけれども、当通産省といたしましては公害資源研究所におきまして、四十八年、四十九年の二年にわたりまして、燃焼試験によりますPCBの分解実験を行っております。これによりますと、ほぼ千三百度Cの高温でPCBは完全に分解するという事実がわかっております。それで当省といたしましては、この技術、もちろん二次公害を防ぐ必要があるわけでありますが、近々環境庁におきましていわゆる燃焼した場合の処理基準というのが発表されることになっておりますが、私どもで開発いたしました燃焼方式によります分解は、現在環境庁で検討中の処理基準を大幅に下回るということで、われわれはこの方式に大いに自信を持っているわけでございまして、今後PCBの処理に関しましてはこの方式を主体にして実施してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから重電、家電、ノーカーボン紙等の回収状況でございますが、重電用トランス並びにコンデンサー等につきましては、これらは御承知かと思いますが閉鎖型でございまして、耐用年数も長いということもございまして、直ちに回収をする必要があるという事態にはなってないわけでございますが、なお使用済みのものもございまして、これらをそのまま放置しますと問題でございますので、ユーザーに対しまして、メーカーと協力してこの保管、回収を行うように指導いたしますと同時に、使用中のものにつきましては、まずこれが使用後にその所在が不明確になるということが非常に問題でございますので、その所在を明確にする必要があるということで、私どもの方としては、機械の設置個所あるいは使用台数等を記載いたしました、われわれで申しますと戸籍簿と申しますか、管理台帳というものを作成中でございます。重電関係につきましては、三月時点で七〇%の所在を確認しておりまして、必ずしもいまの時点で一〇〇%いっていないわけでございますけれども、さらに完璧を期していくためにこの調査を継続したいというふうに考えているわけでございます。  それから家電関係のPCBでございますが、この処理に関しましては厚生省と協議をいたしまして、通達によりまして、まず市町村で最終的に処理される前にメーカーがPCBを含みます部品を取りはずしをして、これを回収保管をするということを指導しております。各メーカーにおきましては、取り外しましたPCB使用部品に関しましては、これをドラムかん等の容器に入れて現在保管をしているということでございます。  それから回収PCBの処理の問題でございますけれども先生指摘のように、昨年の八月に電機ピーシービー処理協会というものを発足いたしまして、ここにおきまして重電、家電を含めましてPCBの処理をいたす計画でございます。さっき御説明に申し上げましたとおり、公害資源研究所におきます燃焼によります分解試験も完了しておりますので、この方式によって処理を実施させるということで、現在処理工場の用地買収その他の準備を進めているという段階でございます。  それから製紙関係のノーカーボン紙でございますけれども、御承知のように、これを生産している会社が四社ございまして、四十六年三月以降にはこの使用が全面的に停止になっているわけでございます。現在メーカーにおきまして、及び関係官庁におきまして、ノーカーボン紙二千六百トン余りを封印して保管しております。さらにこのノーカーボン紙はちり紙その他回収業者が回収いたしまして、さらに再生をするということがございますので、これらの業者に対しましては、故紙の選別を一層厳重にやるように指導を進めているわけでございます。  さらにこの処理に関しましては、最近通産省にPCB入りのノーカーボン紙処理対策委員会というのを発足させまして、ここで処理対策について検討を行うということにしております。他方、業界におきましてもノーカーボン紙の処理を行います協会を設立させまして、ただいまその処理方策等の具体策につきまして検討実施させている段階でございます。
  32. 岡本富夫

    岡本委員 もう時間ですからこれで終わりますが、厚生大臣、こういったカーボン紙だとかくずになって各市町村の処理場へ来るのですね。こういうものの処理基準というものを厚生省の方がはっきりしてくれないから非常に困っているというのが現実の問題です。ですから、ひとつ通産省あるいは環境庁ともよく相談をして、早くその処理基準を示していくように要求をいたしておきます。  きょうは、時間ですから、これで終わります。
  33. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、小宮武喜君。
  34. 小宮武喜

    ○小宮委員 自治省が昨年十月五日取りまとめた四十八年度の地方公営企業の決算状況を拝見しますと、全国の水道事業数一千六百六十六カ所のうち、累積欠損金を抱える事業体が約三分の一の四百七十二事業所に達しております。そして累積欠損金も前年度の二百四十四億から四百二十五億へと大幅に増加しているのです。  この水道事業というのは、このように非常に財政危機をもたらした。これはもう最大の原因は、いまさら繰り返すまでもなく、各水道事業体が、急増する水需要に対して、拡張に次ぐ拡張をやってきた結果でありまして、それが勢い、資本費の増高が給水原価の方にはね返ってきておるというようなことで、現行の水道法ではこれはもうやむを得ないことかもしれませんが、今日のこの社会情勢からいって、また市民生活に不可欠のこの水道料金を値上げするということは、きわめてむずかしい情勢にあります。したがって、今後の水資源の確保というのがこれまた大きな問題でございまして、もはや一地方公共団体の力ではどうにもならないというのが現在の水道事業の実態なんです。  そこで、やはり水源の確保あるいは水道料金の問題等々を含めて、これはもう国の責任と負担によって水資源を開発する以外にないというようなところまで来ておりますが、ひとつ国土庁の水資源開発に対する今後の取り組み方について、まず国土庁からお答えを願いたい。
  35. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 急増いたします水需要に対応いたしまして、長期的な水需給の安定を図るということは、健康で文化的な生活環境を確保し国土の均衡ある発展を図る上におきましても基本的な課題でありまして、国土庁といたしましては、今後の水問題の解決に最大限の努力を傾けてまいりたいと考えております。  このためには、従来各省でばらばらに作成しておられました水需給の計画等につきまして、これを長期的な総合的な水需給政策あるいは計画というものを国土庁において策定し、この中で水需給の需要の見通しを的確に行いまして、必要な水供給を確保するため水資源の開発を各省庁協力のもとに積極的に促進してまいりたいと考えております。  しかしながら、水資源開発は、御指摘のようないろいろな事情によりまして、次第に困難となってきております。国がその解決に努力すべきは当然でございますけれども、国のみならず、水源県と下流需要県とがともに協力し合いまして、国及び地方公共団体が一体となってこれに当たることが必要でありまして、国土庁といたしましては、水関係の各省庁及び関係の各地方公共団体が一体的な協力ができますよう、今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  36. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま非常に前向きの御答弁をいただいたわけでございますが、ただ検討するとか、いまから研究するとかということだけではもう間に合わなくなっておるというのが今日の実態なんです。したがって、私も、水資源の開発を国の責任と負担においてやりなさいということを主張はするものの、やはり現実にはすぐということについては問題もあるかと思いますので、現行法の中でいまの赤字財政を、破産寸前の水道事業体を何とか救済するという立場から、それでは今度は自治省の方にちょっとお伺いします。  先ほども申し上げましたように、結局いまのような破産寸前の水道事業体をこのまま放置するということはできない問題ですから、したがって、さしあたり、破産寸前にある当面の危機をどうして救済するかという問題でございますが、そのためには、私の考え方は、やはり今後新たな水資源の開発をやる場合は、当然国の責任と負担によって開発をやってもらうということと、現在までにこの水資源の開発をやってきたいわゆる建設費については、これは国が肩がわり負担をしていただくということを真剣に考えていただかぬと、ただ、いまの現行法の中での助成の枠をちょっぴりぐらい上げてみてもどうにもならないという状態なんです。  参考までに長崎市を例にとってみましても、昭和四十二年から実施した拡張事業で四十八年度までに投資した建設費が約四十九億四千万円になっております。そのうち国庫補助は約四億九千六百万円で、全体の十分の一程度です。残りの四十四億六千万はすべて企業債によって賄われておりますために、その元利償還がまた水道財政を極度に圧迫しているわけです。したがって、こうした破産寸前をどうして食いとめるかというのが焦眉の急でありまして、そのためには強力な国の財政援助以外にありません。この地方公共団体がこれまで水資源開発に投資した建設費について、国が肩がわり負担することについてのお考えをひとつ自治省にお伺いします。
  37. 吉本準

    ○吉本説明員 水道の決算状況につきましては、まさに先ほど御指摘のとおりでございまして、四十九年度以降なお悪化するという感じは実は持っておるわけでございます。そういう意味で、今後水道の会計を立て直していかなければならないというのは大きな問題であろうかと思います。その中の水源開発費あるいは施設費というのが非常に大きな比重を占めておりますことは御指摘のとおりでございまして、これは将来に向かいましては、水道法の基本的問題として検討すべきことであろうかと思いますけれども、当面の問題といたしましては、すでに厚生省からもこの点について国庫補助制度が創設されております。自治省といたしましては、この水源費に対します補助につきまして、補助率あるいは補助対象について今後うんと広げていただきたいということで、建設省に予算のたびにお願いをいたしておりますし、また、われわれとしてできる努力は今後とも続けていきたいというふうに考えております。これによりまして、今後の水源費の負担が企業に及ぼす影響をできる限り食いとめていきたいという基本姿勢でございます。  それから過去の問題につきましては、確かに御指摘のように問題があるわけでございますが、現在のところ、過去の企業債の元利償還、特に利息の問題でございますけれども、これが収入の大体二六、七%という額で推移してまいっております。そういう意味で、これが料金に及ぼす影響というのは軽視できないと思います。私どもといたしましては、これを具体的に解決するために現在、高料金対策と言っておりますけれども、資本費が非常に高い、そのために水道料金が高くなるという企業につきましては、地方財政計画及び交付税で財源の措置をいたしまして、できるだけ全国平均以上にならないように財源手当てをいたしておるところでございまして、これは今後とも増強してまいりたいというふうに考えております。
  38. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は順序立てて言っておるわけですからね。いわゆる今後の水資源開発に要する建設費については当然国の責任と負担によってやってもらいたい。それについては、さっきの国土庁の答弁では、ひとつ各省庁とも十分協力して検討したいということですけれども、それではいままでの既存の建設費について、これに対してひとつ肩がわりをしてもらいたいということについて、いまの答弁は、現行の補助制度の中で、その補助制度の引き上げをひとつやっていきたいというふうに受け取れる答弁だったと私は思うのですが、いままでの建設費の肩がわりの問題についてはどう考えておるかということを明確にちょっと言ってください。
  39. 吉本準

    ○吉本説明員 過去の建設の負担につきましては、現在、結論としましては料金によってこれを償却いたしておるわけでございます。そこで、その結果として水道料金が資本費の影響で非常に高くなるという団体につきましては、地方財政計画及び交付税におきまして、値下げをできるように財源措置をいたして解決を図っておる。と同時に、この努力は将来とも継続してやってまいりたい、こういうことでございます。
  40. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、いまの建設費の投資が結局、現在の水道法から言えばこれは当然独算制になっておりますから、水道料金にはね返らざるを得ない。したがって、そのためにはね返った分がやはり高いので、それに対する高水道料金対策をやっていくという考え方ですか。
  41. 吉本準

    ○吉本説明員 御承知のように、水道の料金は、資本費それから人件費、物件費等の全体で成り立っておるわけでございます。したがいまして、企業によりましては、資本費が高くても、企業努力によりまして資本費の高いのをカバーしてやっておるところもございます。そういう状態でございますので、一律に全部ということではございませんで、現実の料金が全国平均より以上に高くなる団体で、これを引き下げるために一般会計がある程度負担をしておるというようなものにつきまして、その財源手当てを交付税でやっておる、こういうことでございます。
  42. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの水道料金が高いのを、現行制度の中で高料金対策だけをやっていくというふうに考えられるわけですが、それでは具体的に、現行制度の中でわれわれが考えてもらいたいことをいまから質問します。  いわゆる水道事業財政における企業債の元利償還金が、毎年料金収入の四〇%以上を占めておる現状でございます。したがって、現行の起債利率、政府債が八%、それから公庫債が八・二%になっていますね。それをそれではひとつ五%まで、それぞれ下げてもらいたい。償還期限についても、政府債が三十年、公庫債が二十八年となっておるのをそれぞれ四十年にひとつ延長してもらいたい。これは水不足に非常に悩んでおる全国の市が促進協議会をつくっておりますが、そういったところでは、もう本当にどうにもならぬというところまできているわけです。したがって、この問題は私がここで初めて言うんじゃなくて、私も昨年の予算委員会でもやったわけですけれども、少しは手直ししてくるけれども、なかなかそういうようにぴっちりは——ますます赤字がふえていくという状態でございますので、自治省、これは私は具体的な提案ですから、ひとつ前向きで、はい、そうしますということを答弁してください。
  43. 吉本準

    ○吉本説明員 起債の条件につきましては、いま先生指摘のとおりでございます。私どもといたしましても、過去から御承知のように利率の引き下げと償還期限の延伸は努力を続けてまいりまして、現在公庫資金あるいは政府資金の水道の起債の利率というのは、これは最低でございます。企業関係債の中で最低の利率、それから償還期限も一番長い三十年と二十八年というのを採用いたしておるわけでございます。  ただ今後ともこの償還期限の延伸の問題はぜひ努力を続けていきたいと思っております。それから利率の問題につきましても、自治省としてはもちろん努力をいたすべき問題と考えております。ただ、これは原資との関係がございまして、自治省限りでどうなるという問題でもございませんので、ひとつ各省ともよく協議をさしていただきたい、前向きの努力は続けるつもりでございます。
  44. 小宮武喜

    ○小宮委員 やはり既存の法体系の中ではなかなかむずかしい問題が出てくるのです。だから私は、水道問題については、何か特別立法措置くらいでやらぬと、現行措置の中でほかの金利体系だとか、ほかの法律体系を考えながらやっていったのでは、それはもう間に合わないというような感じを持っておりますし、これは最後にまた国土庁に質問しますけれども、そういうようなことで、この問題は現行制度の中でやはり最大限の助成策をしていくと同時に、やはり抜本的な対策を考えていただかぬとどうにもならぬということでございます。  それから、現在の水道施設のうち国庫補助の対象となっているのは浄水場排水処理施設だけです。したがって浄水施設、送水施設、配水施設等の改良、拡張工事も補助対象として拡大してもらいたいということと、この浄水場排水処理施設に対する補助率を、現行は四分の一になっていますね、これを二分の一にひとつ引き上げてもらいたいということと、この送水、配水施設についても補助対象として拡大してもらうと同時に、やはり二分の一の補助をひとつ行うべきじゃないかというように考えますが、これに対する自治省の所見はどうですか。
  45. 吉本準

    ○吉本説明員 現在厚生省から出されております補助は、水源対策それから広域化のための水道の補助、それからいま御指摘の浄水場関係の補助ということでございまして、そういう意味で水源あるいは広域化のための配管等の補助は現在もあるわけでございます。補助率の問題につきましては、私どももぜひこれは上げていただきたいと思っております。  そういう意味で今後この範囲の拡大、あるいは補助率の引き上げにつきましては、厚生省とよく協議をしていきたいというふうに考えております。
  46. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから企業債の支払い利息が料金収入の一定額を超える場合の財政援助の問題です。  現在のように起債の元利償還金が料金収入の五〇%を占めておる現状からして、この支払い利息が料金収入の、先ほど言われた二五%以上の場合ですね、その起債額について補助金の交付、地方債の特別扱いなどの援助措置をひとつ考えるべきではないかと思いますが、その点いかがですか。
  47. 吉本準

    ○吉本説明員 起債の利息の問題でございますが、これが料金に影響を及ぼします時点におきましては、先ほど申し上げました高料金対策で救助していきたいというふうに考えております。  それから、非常に高い利率の問題でございますが、これは過去にも水道企業債のうちで利率の高いものを借りかえ措置を行った例もございます。今後利息の負担の軽減という意味では借りかえ措置、利率の低い資金に借りかえをするというような措置もあわせて検討をしてまいりたいと考えております。
  48. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど申しました水道料金が全国平均を上回る場合の援助の問題ですが、現在の全国の水道料金は十立方メートル当たり最低百円、最高千五百円と格差が十倍になっていますね。これは水に対する根本的な物の考え方だと私は思うのですが、これはたとえば各県ごと、各地方自治体ごとに、そこに降ってきた雨はおれのものだ、だから、川があったり、雨がよけい降るところは非常に豊富な水を使って料金が安い、そうでないところは非常に料金が高くて水不足にいつも悩まされておる。これは水というものは全国民の共有物だというような発想に立たぬと、この問題の解決はなかなかむずかしいのだと思います。そういうような意味で、この格差是正のためにこれは確かに高料金対策として一部援助がなされておりますけれども、その算定基準額が非常に大幅に引き上げられておるために、なかなか財政援助が受けられにくい実態になっておるのです。  そこで、私はひとつ提案したいのは、水道料金の格差是正と、また水道料金の高騰を抑えるために、資本費が一立方メートル当たり単価が十二円以上であるとき、また水道料金が全国平均を上回るときは、基準額を超える金額に相当する補助金の交付、地方債の特別扱い等の何か特別措置をひとつ考慮すべきではないかというふうに考えますが、どうですか。
  49. 吉本準

    ○吉本説明員 この企業の問題につきましては、ただいまお話のございましたように、水の利用という意味で全国民的な問題であろうと思います。  ただ逆に考えますと、現在住んでおられるところに遠距離をかけまして高い施設をかけて水を引いてくるという意味におきましては、やはり料金に多少の差が出るということも、これは常識的にやむを得ないのではないかという考え方もあろうかと思います。そういう意味で、ただいま先生の御提案のところをずばりやれるかどうかというのは非常に疑問でございますけれども、御提案の趣旨をよく検討いたしまして、資本費なり、あるいは全国平均料金というもののあり方をよく検討いたしまして、高料金対策について今後の改善策は考えてまいりたいと思っております。  ただ、申しわけございませんが、ただいまおっしゃいましたように、一律に平均を超えるものを直ちに全額というわけにはちょっといま一挙にはまいらないと思いますし、今後の検討をひとつさせていただきたいというふうに考えます。
  50. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから国は水道広域化の施設整備について料金格差の是正を図るために四分の一の助成を行っておりますね。これらの広域化施設整備については、これは全額ひとつ補助してもらいたい。もし一歩譲ったとしても、いまの補助率四分の一では余りにも低過ぎる。だから、補助率を全額と言うた手前、三分の二か四分の三まで言いたいけれども、少なくとも二分の一くらいまでは引き上げてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  51. 福田勉

    ○福田政府委員 水道広域化施設整備の問題は、いま御指摘のとおり非常に大事な問題でございまして、先ほどからお尋ねがございましたように、今後の水道の経営の合理化あるいは料金格差の是正あるいは水源の統一的な手当てというような角度から見ましても、広域化の問題はきわめて重要な問題だというふうに認識しております。  したがいまして、厚生省におきましても昭和四十二年以来水道水源の開発の補助金と同時に、広域化補助金制度を設けまして、御承知のように、昭和五十年度予算におきましては百七十七億円、対前年度比を見ますと一四〇%の増というような予算措置を講じているところでございます。  今後ともそれの取り組み方は前向きに持ってまいりたいというふうに考えておりますが、御承知のように、先ほどからのお話のとおり、非常に大きないろいろ問題を抱えております。水資源開発あるいは浄水場の排水処理というような一連の問題の中で、広域化の位置づけ等もさらに行いまして、予算制度等についても考えてまいりたいというふうに存じております。
  52. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは各省とも非常に前向きに取り組んでおられることは私も百も承知しておるのです。しかしもう一つ、この水道事業が独立採算制になっておるということに問題があるのですね。水道の普及率が大体八四%にもなっておるという今日、水道が苦みたいに特定の人だけに利用されていた時代はもう過ぎ去っているのですよ。  そこで、水道事業の経営と建設とを分離して、経営の方は独立採算制度も一応やむを得ぬと思いますけれども、いまの独立採算制の中にもうすべて、建設費も入る、人件費も入るというようなことでは、各事業体もそれぞれ合理化も一生懸命やっておりながら、これこそどうにもならぬ、破産寸前だというような実態になっておりますので、その意味では、建設費だとか施設の拡張だとか配水の送水とか整備事業については独算制の枠外にして、建設費が直接水道料金にはね返らないような措置を検討すべきではないか、こういうふうに考えますが、自治省はどうですか。
  53. 吉本準

    ○吉本説明員 ただいまの先生の御提案でございますが、自治省としましてこの問題はかねてからいろいろ検討いたしてまいっております。ただ、水道というものはまさに個人の家庭の門口まで配給をいたしまして、受益の関係がまことに明らかな事業でございます。そういう意味でまさに独立採算で運用すべき事業と考えております。ただ、先ほど来問題がございましたように、水源の開発の問題でございますとかあるいは広域化の問題等のように、非常にコストが高くなる、こういう問題につきましては、国庫補助の増額その他の措置によって具体的に財政措置をすることによりまして、低料金の維持あるいは経営の健全性を確保する、こういう方向で進めてまいりたいというふうに考えております。
  54. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま言われたように、確かに各地方公共団体においてそれぞればらばらであることはやむを得ないと思うのですよ。しかし、もう現在ではやはり水需要の増加によって自分の行政区域から水を求めるということはなかなかむずかしくなっている。したがって他の行政区域から水源を求めなければならぬというようになってくる、そうすると、まず用地の買収だ、補償だ、何だかんだと言って、皆さん方がこのいまの現行法の中で全然考えられておらないような実態がもうどんどん出ております。そういう状況ですから、確かに——全国一律ということはぼくは何も言っておらぬですよ。だから全国平均から上回っておるところの水道事業体については、ひとつ水道料金の平準化を考えなさい。下は百円でもいいわけですよ、しかし千五百円というところもあるんだから、それを平準化してたとえば七百五十円くらいにして、百円のところはそれでいいし、七百五十円を上回っているところは国が高料金対策としてそれくらいにおさまるように何か考えてやらぬと、やはり人件費は毎年上がっていくわけですね。しかし、いまのような状態であれば、仮に人件費の上がる分だけでも水道料金を上げざるを得ないのですよ。それは皆さん方が人件費はそのままにしろと言ったって、そのままにするわけにはまいりません。やはり人件費は毎年上がっていくわけですから、結局その分だけでも水道料金にはね返らざるを得ないのですよ。そうすると、いま言ったような問題が出てくる、でこぼこは出てくる、やはりこれをなくするような方途を国として検討してもらいたいと私は思う。そうするためには、たとえばいまの独立採算制をやるにしても、私が先ほどからいろいろな質問をした内容、それを私が言うたように皆さん方が助成策をやってもらえばいいわけですよ。しかしながら、現実にはなかなかそうはいかぬでしょう。だからあらゆる面で検討していただかぬと、さあ、じゃ独算制は堅持するんだと言うてみたって、なかなかそれはできるものじゃないのです。だからそれは真剣に——いまの答弁でもかなりまじめに、前向きで非常に誠実さを持って答弁しておられるので私も期待をするわけですけれども、そう一挙に私が言っておるようなことまでいかないにしても、十分前向きに取り組んでこの問題は考えていただきたいと思うのです。  それから、現行の水道法が制定されたのは昭和三十二年です。その間、かなり社会情勢の変化もあっておるし、環境の激変もあっておるわけですから、現在の実情とはなかなかそぐわなくなっていることも事実なんですね。厚生省は、現行法ではやれ清浄だ、豊富だ、あるいは値段が安いということの三つが原則になっていると言うが、しかし、現実には、水がきれいだ、豊富だ、安いんだというような実態じゃないでしょう。実態じゃないからこういう問題が起きてきておるわけですから、その意味ではいまの水道法自体がもう形骸化していると私は思うのですよ。だから、そのために生活環境審議会からもこれからの水道の未来像について答申が出ていますね。ちょっとその答申の内容を簡単でいいですから、ひとつ説明してください。
  55. 福田勉

    ○福田政府委員 いま先生お尋ねのとおり、水道法自体が相当新しい角度から見直されなければいけないということは事実だと思います。水源確保の問題あるいは水質の問題あるいは広域化の方策等を取り上げてみましても、昭和三十二年、できました当時は、いわゆる水道事業法でございました。これではやはりいまの水需要あるいは水のあるべき姿にこたえる体系ではなかろうということで、現在鋭意検討は詰めているわけでございます。  いまお尋ねの生活環境審議会、これが昭和四十八年十月に答申を出しておりまして、水道のあるべき姿、いわゆるそれのアプローチ方策ということで答申を出しておりますが、その内容の主なものは、まず第一に、水道用水は国民のナショナルミニマムである、いわゆる水道施設は生活環境整備の上ではナショナルミニマムとして考えるべきであるということが思想的に載っておりまして、さらに水源の確保というものをもっと系統的に図るべきである、それからそれに対する法体系というものを整えるべきであるというようなことが主要な問題点になっていたと存じております。
  56. 小宮武喜

    ○小宮委員 審議会の答申を受けて厚生省でもこの水道法の全面改正に取り組んでおられると私は伺っておるわけですが、この改正作業はどの程度まで進んでおられるのか、そしてまた改正作業は大体いつごろ終了するのか。漏れ承るところによれば、大体今国会にでも提案したいというようなことをちょっと聞いていたわけですが、今度の国会では出てないので、その改正作業は大体いつごろ終わるのか、それで次期通常国会ぐらいにでも提案できるところまで行っているのかどうか、その点ひとついかがですか。
  57. 福田勉

    ○福田政府委員 いまお尋ねのように、非常に幅広い水道法の改正を企画しなければいけないと思っております。水源一つとりましても各省ございますし、それから水利権の問題等、いわゆる利水各省にわたる問題、非常に多々ございまして、従来以上に水道というものを単なる事業ではなくて、いわゆる基本法的な性格をしっかりと持たせるということで、幅広い検討を進めております。目下鋭意検討中でございますが、関係各省等の協議等も経まして、いつということをまだこの場で申し上げられませんけれども、できるだけ速やかに取り計らってまいりたいという考え方で作業を進めておるところでございます。
  58. 小宮武喜

    ○小宮委員 水道法を改正しただけでは、私がいまるる指摘したような、いまの水道事業体の破産寸前の状態が解消できるということにはならぬのじゃないですか。その点いかがですか。
  59. 福田勉

    ○福田政府委員 おっしゃるとおり、水道法の改正だけではそれは完全ではないと思います。たとえば地方公営企業法の問題等もございますし、あるいは水資源開発促進法等の問題もございます。そういう一連のものは関係省庁の御協力を得なければならないと思っております。
  60. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの答弁にもありましたように、この水道法の改正だけではいま破産寸前にあるところの水道事業体の危機を解消するということにならぬと私は思いますね。したがって、そこで本当に各水道事業体が危機に直面しているこの問題を根本的に救済または解消するためには、やはり特別法の制定が必要ではないかということです。そういうような特殊な、パンク寸前にあるところの水道事業体を救済するために、たとえば水道事業指定都市特別措置法というような仮称のものでも何か制定しないと、これは現状のままでは、いまの助成制度をちょっと手直しするぐらいではどうにもならぬのじゃないか。  そこで、こういった非常な水不足あるいは水道事業体が非常に危機に瀕しておるというところの各地方公共団体がいま一緒に特別法の制定をするための協議会をつくって、もう待っておれぬ、早くひとつ何とかしてくれということでかなり運動も続けられているわけですが、この点について、これはいま言う自治省とか厚生省とかという問題でなくて、国土庁としてこういった特別法の制定を何かひとつ考えてもらいたいというふうに考えておりますが、そういうような意思があるのかどうか、これは国土庁はひとつ前向きに御答弁を願いたい。
  61. 鶴哲夫

    ○鶴説明員 水問題の窮迫に伴いまして、国土庁に水資源局が設置されましたことは御承知のとおりでございます。従来経済企画庁が所管しておりました五大水系にかかわります水資源の開発の問題のみならず、全国的な長期的な政策あるいは計画を立案することになっております。当水資源局といたしましては、水資源の基本問題につきまして、たとえば水資源開発の隘路の打開策とかあるいは水使用の合理化の問題あるいは料金体系等をも含みます経費の負担の問題等々、基本的な問題について目下検討を続けておる段階でございます。先生指摘の特別の都市について特別の措置をする法律が必要ではないかという問題等につきましては、いろいろ地域的な実情もございますので、第一次的な所管省でございます厚生省はもちろん、関係の各省庁と十分協議をしてまいりたいと考えております。
  62. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは最後に、この問題は非常に重要な問題で、水問題というものは華々しい問題ではないので、案外国会でも大きな問題になっておりませんけれども、こういうような各関係地域の住民を含めて実態が非常に深刻な問題ですから、そういうような意味で、この問題を国土庁あるいは厚生省あるいは自治省あたりで十分ひとつ検討していただきたいということをお願いしますが、ひとつそこで厚生大臣からもこの問題について特段の御努力をお願いしたいと思うのですが、所見を一言お聞かせ願いたいと思います。
  63. 田中正巳

    田中国務大臣 水道の問題につきましては、投下資本、資本費の非常な高騰、人口の急激な社会的移動等々をめぐりましていろいろな問題が出ている。特にまた水道料金のアンバランスの問題も出ているということで、非常な問題意識を私は持っておることは事実でございます。現行水道法並びに水道の仕組みというものにも、先生さっきおっしゃったようにいろいろと時代離れしたものが出てまいりまして、その面から水道のあり方の基本についても考えていかなければならぬというふうに思っております。しかし、水道はまた水資源の問題と絡みまして単に上水道だけの問題で解決するものでもございません。いろいろな水の使い方をめぐりまして各省庁と協議をいたさなければならないと思っておりますが、当面、私は水道はある程度広域化をしていかなければならぬ問題であろう、個々の事業体がそれぞれ狭いセクションで、あるいは狭い範囲でやっているということは、もうすでに許されなくなってきたというふうに思っております。  ただ、いろいろな問題意識から地方公共団体等におきましては水道事業に一般会計から援助を求めるという声が相当強いことは私も聞いておりますが、今日の財政状況をにらんでみまして、この種のものについて余り多く一般会計から期待されることは、期待することは結構ですが、現実問題として近い将来それができるとお考えになって対策を立てられたのでは、私は期待倒れになりはしないかというふうに思っているわけであります。このことを申し上げることは、決して水道事業についての問題意識が薄いとか、あるいは解決をなおざりにするという意味ではございませんが、現実の将来を見通しての問題として、急激に水道事業についての一般会計からの援助というものを余り大きく期待し、それに基づいて対策を立てるということになるとそごを来すという、まじめな意味で私は申し上げているわけであります。かような意味で、各省庁の間において総合的な対策を立てて何とかこの問題の解決のためにできるだけアプローチをいたしたいというふうに思って、せっかく腐心をし、いま関係部局を督励をいたしておるところでございます。
  64. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで質問を終わります。
  65. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、島本虎三君。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 前回に引き続いて、五月の十四日に国立コロニーを私ども調査いたしました。調査した人たちは、村山富市議員、田口一男議員、森井忠良議員、それに山口鶴男議員であります。参議院からは片山甚市議員、それから茜ケ久保重光議員、それに私を加えて七名、これでいろいろ調査し、前回五月二十九日には質問をいろいろ展開したわけでありますが、具体的な問題について積み残しがございました。その件について同志の皆さんの愛情ある取り計らいによって、きょう四十分間の制限はございますが、その中で膨大な具体的な問題を詰めたい、こう思うわけであります。もし、皆さん方の方でくだらない答弁を長くされたら一回で時間がなくなりますから、この点含んでおいて簡明率直に答弁を願いたいと思います。  その第一、最後になりましたけれども、五月二十九日の質問の中で、治療訓練棟の問題に言及いたしました。私どもの方では、これは治療訓練を強行し、園生、職員にいろいろなしわ寄せをしてきているのじゃないか、しかも生活自立に必要な居住区における訓練をおろそかにしているのじゃないか、したがって、実態に沿わない点があるのだ、この点を指摘しました。そしてその専門性というものについては、もっとこれを考える必要があるのじゃないかということに対して、これは十分だと考える、熱意を持ってやっておると思うのだ、こういうようなところで終わっているのであります。いまでもそういうふうにお思いですか、どうか。
  67. 上村一

    ○上村政府委員 前回御答弁したとおりでございます。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 実際われわれが行って、この点では唖然としているものの一つであります。というのは、具体的な例として、雨の日でも風の日でも九時三十分の訓練開始までに園生を引率して職員が訓練棟まで行かなければならないわけです。そうなっているでしょう。そしてこの西の一というファミリー、ここでは園生を朝五時に起こすことまでやらなければならないのです。なぜ五時に起こさなければならないのか。九時半までに訓練棟に行くためには八時半までに食事を終わらせなければならないわけでしょう。それを逆算すると、着がえ、トイレ、洗面、歯みがき、これを全部八時半までに完了させるためには、一人の夜勤者では五時に園生を起こさないと、七時からの早出が一人来ても間に合わない、こういうような実態があるわけなんです。したがって、これは三つに分けてこの点ははっきり言わなければならないと思うのであります。  行った先の訓練、これは専門性があるからりっぱだというお話のようでございましたけれども、われわれが見た範囲においては、九時半と言うが、園生を連れていくと遅い人では十時ころになるのだ。この訓練は一単位四十分でありますから、一時限はもう終わってしまう。そうすると十時十分から十一時までの第二時限、これには二グループ十人だから一人当たり五分程度の訓練しかできない。これでは余りに官僚的、形式的なやり方に堕しているのじゃないか、こういうように感じてきたのです。  二十二ファミリーから二十二グループ百十名が来る。しかし訓練棟の職員は実質九名で、受け持ちのパートがありますから、十一班掛ける二時限のすべてにはつけない。したがって、実際には二十二班のうち十三班くらいは引率していった居住区の職員がこれに当たるということになるわけです。  しかも教室内の運動具は、見てまいりましたが、マット、ボール遊び、自転車、ゴーカート、平均台、こういうものが中心になっております。これが居住区にあれば、それまでの手数が省けて十分に効果を上げることができるのじゃないか。まして歩行困難な人、こういうような人のために必要な歩行訓練の器具——歩行困難な人は連れてこなくてもよろしいという考えがあるようであります。これでは何のためにあるのかわからない。これを使っている人は現に歩ける人たちだ、こういうようなことになる。  次に、音楽、絵画、これは感覚訓練としていろいろやっておられるようで、ビーズ通しであるとか絵を見せることなんかやっているようであります。これらを心理判定、医学診断なしにやっているようであります。これは効果判定基準それから治療仮説、こういうものもあえてない。これなら居住区にステレオだとか絵画、こういうものを用意した方がよほど効果が上がるのじゃないか。居住区には遊具というのですか遊び道具、こういうものは一つもないというのが実態でしょう。これは生活が軽視されている。居住区は治療訓練のための補助施設みたいになっておるし、治療訓練が生活居住区を振り回していっている、こういうような実態であります。ファミリーは園生の寝るスペースだけで、あとは外に出て遊んでいなさい、こういうような設計のようであります。しかも職員の側は休息とか年休、生休、こういうようなものも十分とれない仕組みになっているのじゃないか。なぜなら、とったら回転しなくなってしまう。したがって職員には机もいすもない。あるものはほんの形式的なもの、こういうことであります。  こういうようなことからして、三番目には、前理事長の姿勢も問題になったようであります。ちょっと伺ってまいりましたが、これには深く触れませんでした。しかし問題があったようであります。毎日毎日休まずに多くの園生を連れて行くほどよい主任であり指導員である、こういうわけであります。そうして、前述のようなやり方に対する他の専門家や医師、判定員、現場職員、こういうような人が、再三にわたって実情に合わないという意見を出しても、何らそれには触れない。そして自分の意のとおりにこれを強行してきた、こういうような実態もあります。コロニー混乱の原因はここにもあったわけであります。  こういうようなことからして、私どもはもっとこの問題は考えなければならない問題じゃないか。実際それを指摘してきたのです。あなたの方では、専門性は十分である、熱意も十分持ってこれに当たるからこれを変える必要はない、こういう考えのようですが、実際はこういうような運営です。実際と考えとはちょっとギャップがあるじゃありませんか。この点で前回はちょっと積み残しがありましたから、具体的な問題に触れて皆さんにはっきり反省を促すわけであります。御答弁を願いたい。
  69. 上村一

    ○上村政府委員 前回も申し上げたわけでございますが、治療訓練棟というものは、精神薄弱について造詣の深かった菅先生が、こういったものは生活部門から独立さしてやるのが一番効果的であるというふうな判断でつくられたものでございます。それで、私前回それほど硬直したお答えをしたつもりはございません。コロニーと申しますのは、御案内のように居住部門それから治療訓練部門、作業治療部門、評価部門というのがそれぞれ専門性を持って、それが総合して行なわれるところにコロニーの意義があるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、いまお話しになりましたように、治療訓練に振り回されておるというふうなのが実情であるというお話でございました。先生方が御視察の当時は、治療訓練というのはボイコットされておったと思うわけでございますが、私ども国立コロニーにおける園生の療育というのは、居住区の生活指導というのが一つの基盤になる、これはそのとおりだと思います。そういった生活指導の上に立って、治療訓練部門での機能訓練、それから治療教育なり作業治療部の治療作業なり授産作業、そういったものが専門的な分野で行われるべき筋合いのものである。そして、そういった部門の指導なり訓練というものは、各園生の処遇方針、これは評価部が主として担当するような仕事になるわけでございますが、各園生の処遇方針に即して個別的あるいは集団的に行われるもので、どこが主体である、つまり治療訓練部門が主体であるとかあるいは居住部門が主体であるとかというふうに割り切ってしまうことは適切ではないと思うわけでございます。御指摘のように、そういったそれぞれの専門分野の連係がきわめて緊密に行われておらないということであるならば、それは園生の処遇にとってもよろしくないというふうに考えておるわけでございます。ただ、これらの問題につきましては、目下コロニーの理事者の方で鋭意検討中であるというふうに聞いておるわけでございます。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 検討中であるということですが、これはやはり一つの実態で、どのように皆さんがお考えになっても、この中には菅修先生ですか、この人の発想が強く働いておる。しかも皆さんは、これは絶対的なものであるというような考え方の上に立って指導されておられる、こういうように見受けられる。しかしやはり試行錯誤もあり得るのです。したがって、それは進んで直した方がいい。  たとえば、われわれの行ったときに、おっしゃるとおりボイコットしていました。しかしその後、ボイコットしてどういうような成果と現象があらわれているのか、これを調査してみたのです。しかし、労働条件としてその面から見ると、治療訓練部へ園生を連れていくために、二十五人の園生に対して職員一人が朝五時から起こして一日の日課を進めなければならなかった、こういうふうなことが、ボイコットされた後は午前七時に起床できるようになり、職員二名で二十五名の園生をどうにか見れるようになった、そういうような結果も報告されている。それと同時に、第二番目としては、午前午後、一日二回の引率のため休憩時間がとれなかった、しかし現在、ボイコット後には、昼食を初めとして食事がとれるようになり、また休憩もとれるようになりましたと報告が来ております。それと同時に、職員一人で園生五人から八人ぐらい同時に引率するために、肉体的にももちろん神経的にも疲れた、しかしボイコット後にはむだな引率がなくて、遊び場がすなわちファミリーであるためにこの点ではもう少し楽になった。それと四番目には、居住地と治療訓練部との距離が、重症、重度の園生にとっては非常に長い、したがって職員の方も非常に疲れる、しかしボイコット後には、寮内指導ができるために園生を抱えたり車いすを押すことがなくなり、この点ではいま進行中の職業病、こういうような人たちにとってはとても楽になったという報告がある。  それと同時に、今度処遇面においてもこれは逆に効果が上がっている。こういう点を私は意外に思って注視している。自転車に乗れなかった人が、逆に訓練棟に行かないで乗れるようになった。介護を必要とする人が、一人で歩く意欲と自発性を持つようになった。はっきり名前を挙げてもいいですよ。この場では遠慮しますが、後からお知らせします。第三番目に、自発的な言語応答が全くできなかった人がしゃべれるようになった、こういうような事例が挙がって、報告されております。  これは過去四年間の無意味な、無効な、こういう結果ではなかったか。これは専門家が言うからこれによって妥当だという考え方、これは発想の転換が必要じゃないのか、こういうふうにも考えられるわけです。十把一からげの強制された、本人との関係のないような押しつけた処遇、こういうようなものには果たして合理性があったのかどうか、もう一回考え直さなければならないのじゃありませんか。それと同時に、園生の診断や治療仮説がないままにしていままで処遇されておったわけでしょう。やはりこういうような点を考える場合には、園生の生活の主体性であるとか自立性、こういうようなものが疎外されておったという結果だ、これはやはり厳然と反省しなければならない問題点じゃなかろうかと私は思います。見てきたのです。そしてボイコットされておった。これを視察した後にまた報告を求めた。具体的にこういうふうにあらわれているのであります。やはり発想の転換も必要な時期じゃないか。そうでなければ試行錯誤を改めるべきじゃないか。この辺を重点に指導すべきではないかと思いますが、この具体的な例についてどのように思いますか。
  71. 上村一

    ○上村政府委員 私はその具体的な事例については承知いたしておりません。ただ、前回も申し上げましたように、従前の精薄者の施設というものは、そこで居住をさせて日常生活の指導をするのに終わっておった。あくまでもこれからの精神薄弱者の施設というのは、その人たちの精神能力を高めるところにねらいがあって、そこに治療訓練等の意義があるわけでございます。同時に、精神薄弱者の治療訓練というのは相当長い目で見ていかないとその効果があらわれないわけでございまして、(島本委員「短くてもあらわれた」と呼ぶ)それが私にもよくわかりません。(島本委員研究すべきです」と呼ぶ)これはまた、そういった話はコロニーの方から聴取してみたいというふうに思います。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 その点ではひとつ大いに参考にして、善処してもらいたいということを強く要請しておきます。これは大臣も聞いておいてもらいたい。  次に、これもちょっと触れたままで素通りしてしまった問題の一つとして、いま施設で働いている職員の厚生施設の配慮、これは本当にゼロに近いのじゃないか。これはなくてもいいというのであるか、あるべきだというのか、これの基本的な考え方の問題についてひとつ伺わなければならないと思うのであります。  近ごろの公立のコロニーでは必ず職員のための部屋や執務のための机やいす、こういうようなものは職員の分だけそろっておる。これは新潟の例として挙げられておりました。ところが国立の場合、われわれが行って現に見てまいりましたが、九名の人に対して二台の机しかない。組合の交渉で区長の部屋を女子の更衣室にさせた。依然として職員室がない状態、こういうようなことでは本当にどっちの方が主体なのか。なくてもいいのか、あるべきなのか、基本的な考え方に私は疑問を持つわけです。全く、これは夜勤のときの仮眠室がない。デールームなどに長いすを並べて寝る。ベッドはあるがこれはもうスペースがない。こういうような状態では夜勤は寝ないのが本来で、仮眠はいけない、こういうような考えだとすると、これは十四時間連続勤務ということになってしまうわけでしょう。それに、女子の専用のトイレがないのはこれはどういうわけでしょう。まして化粧室や洗面所もないわけであります。いま国際婦人年ですよ。国際婦人年にこういうようなことが国立のコロニーでやっているとしたら、これは世界の一つの笑われ物。職員が気分が悪くなって横になるとしても園生のベッドに寝かしてもらう状態。これではもう常に園生や職員がどういうようなことになるのか。まして休憩室がないということ、現在居住区には休憩場所はない。まして入所者のベッドに横になる、こういうようなことを繰り返している。男子女子ともに更衣室がないのだ。通勤者も家庭から労働着で通っている。入浴介助の場合の着がえ、これは静養室や物置やトイレの中で着がえる。これが国立コロニーの実態としてどうでしょうか。やはり考えるべきじゃありませんか。大臣、こういうような実態なんですよ。
  73. 上村一

    ○上村政府委員 職員の厚生施設につきましては、先般は職員の厚生寮をつくったわけでございますが、なおこういった施設で働く人たちのための職場環境の整備というものはこれからも必要であると思いますし、いま十分でない点につきましては今後十分整備するように努めてまいりたいと考えております。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 いまこれはきわめて具体的に申し上げました。これはやはり整備しなければなりません。まして基本的に、なくてもいいのかあるべきなのかということは、基本的な考え方はどうなんですか。新潟の方の公立のコロニーでは職員室があり、机やいすも職員の分だけそろっているが、高崎の国立コロニーには九名に対して二台の机しかない。これはないのが本当なんですか、あるべきなんですか、この基本的な考え方はどうなんですか。これはもう私に教えてもらいたい。
  75. 上村一

    ○上村政府委員 職員の厚生のための個々の設備についてはそれぞれの施設の態様にもよると思うわけでございますが、私自身はやはり職員の厚生施設というものはあるべきであるというふうに考えております。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、これは改正を要するということに相なろうかと思います。これはむだを省いてやるとこういうふうに進行が早いのであります。  次に、地域社会との関係強化に対して意見の相違がぴたっとありました。これは閉鎖性の解消が必要だ、これは徐々に考えたいということであったようであります。しかし大規模、分類、隔離、これはやめる必要があるのじゃないか。ことに地域社会との結びつきの強化、これはやはり必要じゃないか。現在の場合はずっと四キロも離れたところにあります。この間、これは園生は水準まで達していないから、こういうようなお答えがあったようであります。これは、できる園生には授産的な仕事を地域産業との関連で生かす必要があるのじゃないか、こうも考えられます。戸締まり的な監護をやめて、地域のいろいろな団体、婦人団体もある、老人クラブなんかもありますが、それとの交流であるとかボランティア、奉仕ですね、こういうようなものも必要だと思いますが、現在は立入禁止の表示がある。一体これは犯罪人か、またはさわってはならない人か。立入禁止というのは少し、これはどうなんでしょう。まして芝生の中に入ってはならないという。芝生は見るためにあるものではありません。やはりそういうような点、立入禁止の表示、こういうのはやめるべきじゃないかと思うのです。職員の増員の上に立って通園部門を当然設けて、地元の人たちとの理解を促進すべきじゃないかと思うのです。高崎の子供は入らないようなことになってはいないと思うのです、全国ですから。しかし、やはり地域的に高崎周辺の人も入れるように配慮すべきじゃないかと思うのです。  ことにコロニーの職員の独身寮、あれは何畳なんですか。三畳ですよ。これはちょっと私狭いと思います。少なくとも六畳くらいは必要じゃありませんか。いまあなた何畳間に住んでいますか。やはり職員の独身寮はもう少し大きくしてやるほかに、高崎の市街地に設けてやるというような配慮も必要だと思います。     〔竹内(黎)委員長代理退席、住委員長代理着席〕  やはり地域的なものも加えていくという流れがございますから、全国から園生を入れるというようなことからして、群馬県の中からもこれは入れるようにしてやってもいいのじゃなかろうかと思いました。そこに地域性が出てくる、地域との関係が出てくる、こういうようなことになりはせぬかと思います。  そういうような点からして、分類にこだわらないで、多様な人間関係を保障して、異常行動の克服のためにも処遇などの典型を目標にするなり、園生の生活の拡充とあわせてこの特徴を明確にすべきじゃないか。何か特徴というのがぼけてきているような感じがしたのです。同時に悪い特徴が目立ってきているような気もしました。  私、要望を数点にわたって言いました。これは私ども考えですが、再度この点に対して、どうでしょう。
  77. 上村一

    ○上村政府委員 国立コロニーをつくりました当時は、やはり障害者の問題について、ことに大きくなってから、ことに保護者がいなくなってからどうするかという問いが投げかけられたわけでございます。そこで、そういった人たちに大ぜい住んでもらって、そこで生活でき、そこで指導もできるような施設が必要であるということで、高崎に初めてコロニーをつくったわけでございます。したがって、いまお話しになりましたように、そういう施設というのは地域社会とのつながりというのを持たなければならないのは当然だろうと思うわけでございます。  ただ従前、入園している人の安全の配慮から積極的に地域に開放するという点については慎重であったというふうに思うわけでございますけれども、ことにこれからの社会福祉施設というのは地域社会とのつながりを持っていかなければならないということは私もよく承知しておりますので、今後もそういった点で検討が行われるように、コロニーとも話してまいりたいというふうに思っております。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 次に、これは国立コロニーの病院体系の中でも往々にして問題になったのですが、ここでも依然として夜間勤務体制、これが考えられたようです。どうかすると労働基準法に触れる問題があるのじゃないか、こうさえ思っておる。それと複数夜勤と夜勤手当の問題でどうなっているのか、この点も私はこの際きちっとした方がいいのじゃないかと思ってまいりました。  夜勤は一時間仮眠ということになっていましょう。しかし仮眠中に無断で外出したり、または実際にはいろいろ気をつけてやらなければならないので寝られない。中には奇声を発したり、不安定や失禁処理並びに無断外出防止、こういうようなことなんかは、仕事の中ですからはっきりしておかないとだめなわけです。就寝は九時だとしても、夜尿症の者は起こしてやったり、十二時、五時と毛布がけをしてやったり、一時間置きに検温してやったり検脈してやったり、指導員がやるわけでしょう。二十八名にこれは一人ずつですか、そういうようなのがいないと、これはまた検温器を食べてしまうような患者もあるかのようにも聞いたのです。これだったら、やはり大変じゃないかと思うのです。一回の検温に一時間もかかった例もある、こういうようなことを聞いてまいりました。  早出は午前七時から三時三十分まで、平常は八時三十分から六時まで、遅出二、遅二というのですか、これは九時三十分から午後の七時まで、遅一は午後一時三十分から午後の九時まで、夜勤は七時から翌朝の九時まで十四時間、こういうようになるようであります。この手当はゼロのようでありますが、労働基準法による深夜割り増し百分の二十五、これはどうなっているのか。ことに都内の島田や東村山、これは約二千円程度出ているようでありますが、この辺との関連なんかもこれは考えなければいけないのじゃないかと思いますが、この点はどうなっていましょうか。
  79. 上村一

    ○上村政府委員 私、どういう形で夜勤がされておるかにつきまして承知しております範囲は、いま御指摘になったような時間割りである。したがいまして、夜勤については一つのファミリーで一人というふうになっておるというふうに聞いておるわけでございます。  夜勤手当の方は、給与の支払い方だと思うのでございますけれども、定額のものはございませんで、超勤手当と同じような形で支払われておるというふうに聞いております。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 なおこの点についてはよく調査して、少なくとも労働基準法に触れないようにしてこれは指導すべきだ、こう思います。ただそれだけじゃないのです。島田療育園ですか、それだとかまた東村山、これらとの間にもやはり相当の差がある。これは差があってはならないじゃないかと私ども考えておるのですが、この点もひとつ十分調べた上でこれは是正するなり検討するなりしておいてもらいたい、こう思うのであります。  それと、病院体制がないために措置変更——付添料がないために他の精神病院へ措置変更した、こういうような例もあったようでありますが、こういうようなのはやはり医療棟をつくって——地域病院を強化する、こういうようなのは確かにいいかもしれませんけれども、中に病院をつくって医療を充実させるということはいまや必要なんじゃないですか、こういうようなことであります。この点については、その方向で検討するようでありますが、現実の問題としてやはりこの問題はおろそかにできない問題です。  ことに、看護婦でなくても保母でよろしいという考えのようでございました。しかし私ども、やはりこれはもう現在のように保母だけの段階ではやっていけない、看護婦の段階が必要だ、こういうふうに主張したわけでありますが、保母、指導員で大丈夫だ、こういうようなことであります。私はもう専属の看護婦が必要だということを大いに強調したのですが、あなたは反対の意見、現在でよろしい、こういうようなことのようであります。  しかし、私どもとしても、よくこの事態を調べてみましたが、ある例として西一寮です、投薬者十三名、診療所への通院八名、外部医院への通院が二名、自傷行為三名、てんかん発作毎日平均二名、そのほか情緒不安定者八名、異常行為者四名、こういうような中で、お医者さんからの指示に対処し切れないで投薬違いもあったということも聞いているわけです。やはり専属看護婦がこういうような場合には必要じゃないですか。それでも保母でよろしいというこの考え方、少し実態に沿わない、こういうふうに思うわけであります。  なお、ある例としては東二寮、昭和四十九年六月十八日の例ですが、ガラスを左手でたたき割って十五針も縫う外傷があった、市内の松岡病院で処置した、連日の通院を行うのに常に職員が一人とられる、ファミリー内の人手不足を招いてファミリー運営に支障を及ぼした、通院三カ月、依然として続いている、こういうようなことのようであります。  そのほかずうっと例があるのでありますけれども、こういうような例は、やはりこれは看護婦並びに専門のこういうような看護対策が必要だ、保母では少しこれでは困るのではないか、こういうようなことの例であります。  国立のコロニー、これは職員不足で手が回らない。心因性の症状がとれなかった。これが国立コロニーから——腎盂炎を慢性的に起こしている人、昭和四十九年四月に国立高崎病院に入院して、十一月に退院した、この人を猿島の更生病院の精神科にやろうとしたところが父兄の同意が得られないで、コロニーよりいい施設をということで、本年四月一日、茨城のコロニー「あすなろ」に移った、そこには看護婦がおった、入所者六名に対して看護婦七名、指導員七名、こういう状態の中で健康体を取り戻した。腎盂炎、この人であります。やはり看護婦体制がこういうふうにしてしかれているということはいいじゃないか、効果もはっきりあったじゃないか、こういうようなことなんですが、これでもまだ保母でよろしいんだ、こういうようなことはどうも私は自分の心の中に残って、いまの考えは余りに形式的な考え方だと思う。また、どなたかがこれでいいんだと言えば、単に、これが絶対なんだ、こういうような考え方のために現実に対する対処が間違っている、こういうふうなことになっているのではないかと思うわけです。やはりこれは措置変更なんかを含めて、看護婦のいるところ、それと指導員、こういうようなところでは効果が上がったけれども、これは逆に国立のコロニーから措置変更された人であった。こういうようなことになったらもっと少し考えなければいけないのではないかと思うのです。これはやはり私は考えていただきたいし、考えなければいけないぞという指摘であります。これは率直に受け入れますか、やはり保母でがんばるんですか。
  81. 上村一

    ○上村政府委員 先ほど島田等の例をお挙げになりましたけれども、国立コロニーの性格というのはあくまでも精神薄弱者の施設でございます。島田というのは重症心身障害児施設というふうになっておりまして、全体が病院でございます。重症心身障害児施設というのは病院でございます。それから国立「のぞみの園」というのは精神薄弱者の援護施設に類するものであるわけでございます。したがいまして、そこに入ってくる人たちも、本来その施設になじむ人であるというのが普通であるわけでございます。それで、さっき例に挙げられましたのも、お話がありましたので私も若干聞いてみましたけれども、それはやはり重症心身障害児として茨城の方の重症心身障害児の施設に入ったというふうに聞いているわけでございます。  それから看護婦のお話。先般申し上げましたのは、定期的に薬を投与する必要のある患者さんについて看護婦が各寮に要るじゃないかというふうな御指摘があったわけでございます。投薬は診療所で行われるわけでございますから、診療所で行われた投薬、その薬を飲ませるのは生活指導に当たっておる人たちでいいのではないかというふうに申し上げたわけでございます。と申しますのは、やはり日常精神薄弱者に接触をしておる人が精神薄弱者の処遇について専門性があると考えたからでございます。ただ、基本的に国立コロニーの医療体制を整備する点については、前回申し上げたところと変わりございません。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 時間が残り少なくなったので、二つ、職業病関係と不当労働行為の関係を一緒に——労働省も来ておりますか。労働省を中心にしてその処置を伺います。また同時に、これは厚生省の方でも十分この実態に対して対処をしてもらいたい。  まず職業病の問題でありますが、居住区の介護職員二百名中九十七名、四八・五%に当たる人が体に異常を訴えておる。一ファミリー九名中四・三名の高率。西の三では九名中五名が腰痛症になっている。国立のコロニーとしては、これはいただけません。ことし五月の組合の実態調査の結果、二百九十五名の職員中、居住区の二百名中九十七名が何らかの形で身体に異常を訴えた、こういうようなことであります。     〔住委員長代理退席、戸井田委員長代理着席〕 こういうようなことからして、腰痛症に対してははっきりと対処をしなければなりませんし、その予防を真剣にやらなければならないと思うのであります。これが一つ。  もう一つは不当労働行為の一掃。こういうようなことに対して、やはりきちっとしておかなければならないと思うのですが、私ども調べたところによりましても、人事権の乱用と不当労働行為、こういうような実態があったわけであります。これは御存じですか。そして、この人は自分で閥をつくって公私ともにコロニーを牛耳っていた。自分が関係している関係者を優先的に就職させる。独身寮の職員の恋愛関係まで調べて介入している。人事権を乱用して、一カ月置きにファミリーの職員を勝手に入れかえをするようなこともやってきた。組合が結成されたその翌日、寮長を通じて、主任それから寮長、非組合員を動員して会議を開かせて、そして居住区として組合にどう対処するかという組合敵視的な相談をやっている最中、組合側に現場を押さえられたという例があったようでありますが、こういうようなことを知っていますか、知っていませんか。こういうようなことに対して、長尾何がしという人は、組合に対して過去三回にわたって始末書を提出して、自分で署名捺印してやっている。こういうようなことを許してはいけません。例もあります。なぜこういうようなことをさしておくのですか。これでは運営も暗くなります。この例は具体的にありますから、こういうようなことを再び起こさせてはならないんです。  腰痛症の問題を含めて、夜勤を一人でやらせるということ。これでは休憩休息もとれない。したがって基準法の通達にも違反する。二人以上いないと、これは無理だ。二十五名のファミリーに対して、現在のように責任者一人を除いても八名、九名でやるということは、これでは少し人が不足だ。したがって、これはもう二十五名を減らすか、九名をふやすか、いずれかにしなければならないということになるわけです。これは重大な問題です。したがって、労働省の方では、これに対してはっきり対処しておるのかどうか、これはまとめてはっきり答弁をしてもらいたい。  いまのような事態がありますけれども、高崎の国立コロニー「のぞみの園」、この病棟職員百八十名のうち四十名程度が腰痛を訴えておる者が出ております。労災の申請をしていると聞いているのですが、受け付け並びに認定件数は、どうなっておるのか。  それと、コロニーの特に病棟職員は、障害者二十五人に対して九人配置されて、そのうち五人が腰痛を訴えておる。入院、自宅療養者もいるわけです。このような現状にかんがみて、代替要員の補充がなくて労働の内容にしわ寄せが来ている。この問題からして、二交代制も十分やられておらない。休憩時間、生理休暇、これもとれない。そして腰痛というようなものは腰痛症となって悪化する原因になっておる。労働省としても、こういうようなものは予防的見地から監督指導は十分すべきだ、中へ入っていってすべきじゃないか、こういうようにさえ思うわけです。  三つ目、コロニーでは労働組合ができておって、私の聞いたところによると、まだいろいろな事態が十分じゃなくて、夏期手当の問題で五月の十日にまたストをやるかもしれないという状態だそうじやございませんか。そんなのは全部承知しておられるのですか。コロニーの組合は四十九年八月に設立されて、理事者側も正常な労使交渉のあり方を十分のみ込んでおらない。少しのことでも、スト、そしてビラを配る、こういうようなことでもめるし、初期のケースが見られるようです。正常な労使関係ではないということ。また、いま言ったように不当労働行為的なものも見られる、こういうようなことも訴えられているのです。労働省はこれは十分指導しないとだめだ。まして、こういうようなことが現在あるということはいけないことです。  三つ、四つ、五つ、一回に質問しましたが、この点、労働省含めて、まとめて答弁願いたい。
  83. 上村一

    ○上村政府委員 いま個人の名前を挙げてお話しになりましたけれども、私どもはそういったことにつきましてはつまびらかにいたしません。ただ私ども承知しておりますのは、勤務時間中にその人が相当威圧を加えられて辞表を書かされたことがあるという事例があったということは承知いたしております。  それから不当労働行為云々のお話がございましたけれども、冒頭申し上げましたように、本件はいまコロニーの理事者と組合側でいろいろ話をしておる最中でございまして、私承知しておりますのはこの不当労働行為については理事者側は否定しておるというふうに聞いております。
  84. 中西正雄

    ○中西政府委員 社会福祉施設に働く保母さん等の労働条件につきましては、従来から監督指導の重点といたしまして労働時間とか、御指摘の休憩等の労働条件の改善を図ってまいっておりますが、特にコロニーに働く人たちの間の腰痛の問題がきわめて重大でございます。この予防についてもかねてから努力をしておりますが、特に本年二月に策定いたしました「重症心身障害児施設における腰痛予防対策指針」、これによりまして、一般社会福祉施設における腰痛の予防につきましてもこの指針をもとにして監督を指導し、その予防を図っているところでございます。  なお、この「のぞみ園」の腰痛につきましては、現在までに、御指摘の「のぞみ園」において介護の業務等に従事している方々から、災害性の腰痛等について昭和二十七年以降十二件の労災申請がされておりまして、そのすべてを業務上として認定し、所要の労災保険給付を行っているところでございます。  また、この「のぞみ園」についてさらに監督を強化すべきではないかという御指摘はそのとおりでございまして、現地の監督署で去る五月の下旬に監督をいたしまして、その際腰痛の予防等について指導を行っております。今後とも一層これらの施設における労働条件の確保はもとより、この腰痛の予防につきまして指導を強化してまいりたい、かように考えております。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、基発第七十一号、昭和五十年二月十二日に出している通達、これはもうすでにお手元にあろうかと思うのですが、この中でやはり具体的な指導があります。「介護の方法」、この中で「体重の多い入所児の介護にあたり、その者の体位の変換、移動等を必要とする場合は、複数の介護者で行うこと。」これははっきりやらないといけない、これが具体的に指摘されております。それと「休憩室の設置等」というところで「職員の数及び勤務体制を考慮し、利用に便利で、かつ、くつろげる休憩室を設けること。」これも具体的に指摘されております。それと「労働条件の改善等」というところで「労働時間は、全般的に短縮のすう勢にあることを踏まえ、これを短縮することが望ましいので、所定労働時間は一週四十四時間以内を目標とするよう努めること。また、時間外労働は臨時的あるいは止むを得ない場合に限定するよう努めること。」「深夜業を含む夜勤回数は、逐次減少をせしめるとともに、この勤務においては休憩の確保等を考慮した勤務体制をとること。」「休日はもとより、年次有給休暇等の確保を図ること。」以上が、ずっと指摘されておることの一部です。この問題に対して具体的に指導しているのですが、これと相反している行動があるようですが、厚生省、これは改善すべきだと思いますが、いかがですか。
  86. 上村一

    ○上村政府委員 二月十二日の労働基準局長から県の基準局長に出されました通知、私どもの方でもちょうだいしておるわけでございます。国立コロニーに限らず、全体的な心身障害児施設について、私ども腰痛の防止のためにこの線に従った指導をしていかなければならないというふうに考えております。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 それで、大体この線に従ったようにやるとするなら結構です。夜勤は一人ではだめだから、休憩、休息をとれるようにすべきであり、二人以上でないとこれは無理だ、こういうようなことの指摘に対しても、この中にあるというならば、それで結構。それから二十五人に対して九人ではちょっと少ないだろう、この点も考慮したらどうだ、これも考慮するというなら結構。その他、休憩室その他ここに具体的に指摘されていますから、このとおりやるなら結構であります。この点を十分考えて今後善処されるように。組合との関係等についても、これは皆さんの方でどうするか知りませんけれども、まだぎすぎすしている。こういうようなことがないように指導すべきだ、こう思うのです。それに対して反対の意見があるのならば答弁してください。
  88. 上村一

    ○上村政府委員 特に反対ではございませんが、最後に一言申し上げておきたいわけでございます。  国立コロニー等は主として措置費の収入で賄われ、それに一般会計から補てんをしておる。したがいまして、こういった労働基準局長の通知も、基本的には措置費をどうするかという問題と絡んでまいるわけでございます。したがって、この線に従って私どもできる限り努力をするということを申し上げるわけでございます。  それから労使の関係、ぎすぎすしているというお話でございます。私も聞きましたところ、ぎすぎすしておる。しかし、そのぎすぎすするのはどちらもぎすぎすするからぎすぎすするんじゃないかというふうに思うわけでございまして、今後ともいい労使関係ができるように望んでおる次第でございます。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 時間不足でありますけれども、これでやめます。  どうもありがとうございました。
  90. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 次に、金子みつ君。
  91. 金子みつ

    金子(み)委員 実は先般の予算委員会のときにも取り上げて一部質問をさせていただきました問題でございますが、大変に関心を持っておりますので、実態が知りたいと思って実態を見てまいりました。そのことを中心にして、きょうは少し実態の説明と、私がいろいろと発見いたしました問題点につきまして質問をさせていただきたいと私は思います。  厚生大臣は、厚生大臣におなりになる前から厚生問題に非常に造詣が深くていらっしゃるし、いろいろとおわかりのことだと思うのですけれども一つ一つの施設の問題まで、あるいは一つ一つの政策の中身まで細かく承知なさるということも困難かしらんと思います。それでいまから私が申し上げます点は、日本といたしましては比較的新しい医療とでもいいますでしょうか、腎臓疾患に関する人工透析の問題でございますが、どのような実態で行われているのかということを御承知いただきたいと思いまして少し申し上げてみたいと思うわけでございます。それをお聞きいただきまして、後ほど御方針など伺わせていただければありがたい、そんなふうに考えているわけです。  実は私は、厚生省が御計画として進めていらっしゃる人工腎臓透析のセンターになっている国立王子病院の透析センターというものを見てまいりました。その透析センターの実態からいろんなことがわかったのでございますが、いま透析センターの実態を簡単に、見てきたままを説明させていただきたいと思うのでございます。  実は、国立王子病院に設置されております透析センターと申しますと、患者は四十四人おるのでございますが、毎週大体一人の患者は二回ないし三回透析を受けております。そして曜日を決めてセットされているわけですね、月、木組とか火、金組とかいうふうにして。大体主として二回。三回の人もありました。そういうふうにセットされているということがわかりました。機械を持っているベッドは二十四床ございましたが、毎日使われているベッドは大体二十床です。あとの使っていないベッドは遊んでいるんじゃなくて、スペアのために用意しておくんだというお話でございました。ですから二十床がフル回転をしているわけです。  そこで、どういう人たちが仕事をしているかということですけれども、お医者さんはたった一名です。専門医がたった一人です。そして一人でどうにもなりません。ですから、この病院の中の内科の医師が応援をしておりました。内科の医師が二名ないし三名応援するという状態で常に動いている、こういうことでございます。専門医ではございません。  それから、看護婦の体制はどうなっているかと申しますと、透析センターでありながら、普通の病室とちっとも変わらない基準で決められた数しか持っていません。国が決めていらっしゃる基準は、医療法施行規則の十九条で言っている入院患者四人について看護婦一人。センターもこの基準で決められたままの数字でございました。しかし、それではあのセンターではどうにも仕事にならない、絶体絶命。そこで病院の中で考えたことは、センターだけに看護婦を集中するという計画を立てて、センターは二人に一人という数字で看護婦を持ち込んできたわけです。したがって、その結果は他の病室に非常にしわ寄せが行くわけですね。そういう実情でございます。  そしてセンターの中の看護婦は何をしているかと言えば、この二十床のベッドが毎日フル回転をしているのですから二十人透析を受けている患者さんがいるわけなんですけれども、この人たちの世話と、ほかに透析センターの機械の操作、それから円滑に動いているかどうかというチェック、それからいろいろなものの後始末、準備、そういった雑用、そんなことで全部看護婦にしわ寄せが来ておりますから、とても看護婦は休む暇がない、年休はとれない、お正月休みもとれない、こういうふうにこぼしておりました。しかし、看護婦たちは非常に献身的に働いておりました。しかし長続きがしない。センターの勤務は早くやめさしてください、しょっちゅうこの訴えが総婦長のところに来ているという、無理もないことだと思います。そういう勤務交代の要求がしょっちゅう来ているという話でした。本当に涙ぐましいと思いました。  二十床の患者さんは、私が参りました時点では、三分の一は東京以外の人でした。群馬、栃木、山梨、千葉、こういうところから通ってきておられました。それで、大体関東全域から来ているというふうに病院側では説明してくださいました。そんな、わざわざこんなところまで来ないでも近くにないんですかとお尋ねしましたら、あることはあるけれども十分でなくて、患者さんとしては安心して行かれないんだ、そこでやはりここまで来てしまうのだ、こういうお話でございました。それで遠くから来ている人たちは泊まりがけで来ているわけですよ、とても一日で来られませんから。前の晩に来て旅館に泊まって、翌朝お弁当持ちで病院へ来て、大体八時間かかりますから、またその日夕方終わってから帰って、疲れて帰れない日はもう一遍旅館に泊まる、こういうような状態で患者は通っています。  そこでまた病院の問題は、こんなことをしてフル回転をしながら、なお毎週大体一人ないし二人の新しいケースはお断りしなければならない状態だ、それほどさように新しいケースが要求してくるそうです。ところが、それをお断りしなければならないのは大変につらいんだという話でした。しかも、なおかつこの病院では、二十床のフル回転している透析のベッドのほかに、一般内科の病室の中で腹膜灌流を受けながらこのセンターへ移してもらうのを待っている七人の患者さんがある、こういう状態でございました。こういうような状態が、大変簡単ですが、センターのあらましでございます。  センター自体問題があるんですけれども、このセンターが設置されている母体である国立王子病院はどういう状態にあるんだろうかということがやはりどうしても問題になりますので、国立王子病院の実態を私が知り得ました範囲で申し上げて、いろいろとお考えもいただきたいと思っています。  王子病院は、私が申し上げる必要はありませんが、最近非常にきれいになっておりました。私は大変にびっくりいたしたわけでございますが、きれいな病院になっておりました。元の砲兵工廠でございますか、それが陸軍病院になり、療養所になり、また病院に戻りというようなことで、現在の病院があるようでございます。  この病院ではベッドは二百四十六床でございました。これは訓令定員です。医療法定員というのはもっとたくさんあるのです。医療法定員は三百四十九床ですが、訓令定員は二百四十六床。それでこの二百四十六床の中で差額徴収をしている部屋があったのです。これは五千円の部屋が三室、三千円の部屋が三室——この差額徴収の問題はまた別の問題ではございますけれども、とにかくそういうような部屋があったということでございます。  それから、この病院は医療法で言うところの総合病院になっています。ですから、この病院の標榜しております診療科目は、内科、消化器科、循環器科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科、麻酔科と、いっぱいそろっております。これは確かに総合病院として標榜されておる病院なんですけれども、実態が総合病院となっていないという事実がございます。その実態はどういうことかと申しましたら、医師が不足です。眼科に医師がおりません、歯科におりません、皮膚科におりません、放射線科におりません、検査科におりません、病理検査におりませんと、こういうわけでございます。そういう実態で、現状は大変に貧しい。  そこで、私は、これはことしの三月三十日現在の数字を病院でいただいたのですが、医師の総数二十二名、院長も含めております。ですけれども、これは医療法の施行規則の計算でいきますと、医師は二十四名ぐらいいなければならないことになるのですね。それで数が足りないということもございます。それから、この医師は 院長、副院長、医長、ここまでで二十二名のうち十四名なんですね。スタッフの医師は八名しかいない。これは逆三角形ですね。頭でっかちというような形になっております。これが実態でございます。  それから病室は、未開棟、未開棟、未開棟とここにいっぱい書いてあるのでびっくりしたのですけれども、循環器科が未開棟、外科のICUが未開棟、泌尿器科が未開棟、眼科未開棟、耳鼻咽喉科未開棟、歯科未開棟、そして皮膚科未開棟、こういうふうに書いてあるわけですね。要するに未開棟になっているのは医者がいないところですね。ですから、総合病院といううたい出しをしておっても総合病院の形態をなしていない。これは厳しく言うならば医療法違反とかいうことになるのじゃないかというふうに考えられたわけでございます。  そして看護体制はどうなっているかと申しますと、看護体制の方は基準看護で特類をとっております。特類ですから四人に一人でございますね。医療法施行規則の数のままでございます。そして現在八十四名おりますが、この方は逆三角形でなくて、婦長、総婦長十一名です。しかし、この八十四名の中に賃金ナースがたくさん入っておるということが問題でした。総婦長の苦心で、賃金ナースは外来とか中材とかいうところへ配属して、そうして何とかやっているようですが、夜勤体制が大変問題になっていまして、二・八はできません。二人夜勤を実施するためには十日はもうできない。十一日夜勤になるそうです。ところが、看護体制はこれでぎりぎりでございますから、一人休んだら夜勤はたちまち十二、十三というふうにはね上がっていってしまう。国立病院全体の平均夜勤の日数は九・四日でございますね。ですから、国立全体の平均よりも上回っているという実態でございました。  それから産科病棟は全くひどいと思いましたね。助産婦の資格を持っている人は五人いるのです。ところが一人が産休に今度入るのです。そこで四人になってしまう。それで、総婦長どうしましょう、どうしましょうと言うだけで本当に困っているというのですね。ベッドが四十六あるわけです。お産の数は大体年間九百九十から千の間だ。そういたしますと、大体一日三件はお産がありますね。それを四人の助産婦がどうやってこなしていくかということなんです。夜間は医師はいらっしゃらないということでございますから、この四人だけになってしまって、一体これから先、産科病棟どうしようかという問題で非常に頭を悩めておりました。  そこで、ことしの五十年度の予算で新しく定員がふえるということで大変に期待をして喜んでいたんだそうです。いままで未開棟である内科の循環器科だと思いますが、五十床を新設するために十四名要求したところが、九名いただけだそうです。ところが九名のうちの五人までは賃金職員だったそうです。そうしますとあと四人で、その四人のうちの半分が学院の先生なんですね。そうなると、全然この五十床の新病棟を開設するなんということはできっこない、とうてい不可能ということで、これは開設しないことにいたしましたということでございます。だから、そのつもりだったのができなくなっているわけですね。したがって病棟はあいていない、その分だけはあけられない、こういう話でございました。  これくらいの問題をもとにいたしまして少しお尋ねをしたいのでございますが、いまのような実態でございますね。こういう病院をやはり国立総合病院として存在させ、運営していらっしゃるその意義の問題と、しかもここに、余りあちこちにはつくられていない、しかも非常に重要な役割りを持つ透析センターをつけておおきになるという、そこら辺がどうも矛盾している感じがするのでございますが、何か御方針があってなさったには違いないというふうには私どもは思います。ですからそこら辺をまず聞かせていただきたいと思うわけでございます。どうして、充足されていないと申しますか完備されていない国立王子病院に透析センターを設置なさることになさったのかということが、まず私の一つの疑問になっているわけでございます。それをぜひ聞かせていただきたい。
  92. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 王子病院を御視察いただきまして、その具体的な内容をお示しいただいたわけでございますが、先生も先ほど触れられましたように、王子病院というのが国立療養所時代もございましたり、都内の国立病院の中では歴史的に見まして最もいろいろの変転をしてきた病院の一つでございます。したがいまして、これは一般的な国立療養所から病院へ転換した場合の病院の育成の問題につながるわけでございますが、どうしても根っこの療養所時代からの定数その他の機能を基盤にしながらそこへ積み上げていくものですから、十分な育成というものは確かにできていない。したがって診療科名の上では、総合病院の形はとっておりますけれども、その実態、備えておりますところの力においては、おっしゃるとおり総合病院的な機能に欠けるものがあるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、王子病院というものが、地域的に見ましても、われわれが長い間検討した結果あの王子地区に、王子という名称と王子という駅名とは合いませんけれども、いずれにいたしましてもあの地区に国立の存在することが非常に住民の要望が強いので病院転換をしたわけでございますが、その病院転換ということで時間を経過した中から、これは国立施設全般の最近から今後の問題でございますけれども、都内におけるただ一般病院という機能はほかにも多々あるので、国立として存在する以上、何か一つのやはり専門性、特性を持たせる必要があるということがここ数年来、将来にわたっての問題でございますが、議論もされまして、その一環として実は東京第一病院、いま国立病院医療センターになりましたが、これとの関連を非常に深く考えながら、腎センター的機能を東一につけるのは東一の全体の機能の問題等考えまして、一応活用の機能としては王子がよかろう、これは今後育てなければならぬということと、考え方との間にまだギャップがあるということでございますけれども、王子病院は東一との関連において将来腎移植の際の型合わせなどの機能を持って、腎センター的な情報というものをむしろ東一にやってもらいたいと考えながらその実施のそのものは別途王子を考えたい、こういうことの考え方の一つのあらわれとして王子病院に一応——センターというふうに言えるかどうか、現状御指摘のような職員の状況、あるいは新しい患者を受け入れる——これはもう腎透析の基本的な問題でございますけれども、ある機能が患者さんでいっぱいになってしまいますと新しい患者さんを受け入れることが非常にむずかしい、こういう非常に腎透析の基本問題に触れてまいる問題でございますが、どうしても腎移植の促進ということと絡んでこれを検討いたしたいということで、医療センターの機能の中へその腎の移植のできるような、いわゆる提供しようとする人とこれを受けたいという人とのコンピュータによる型合わせ等の機能を持たせたい。そういうことでスタートして、当面、社会の需要の高い透析の方に先行させたというのが王子病院の実態でございまして、その内容あるいは職員の充実のぐあい、あるいは本体の王子病院に対する影響、こういうものを考えますと、われわれの現状の配慮というものは必ずしも十分でないということは御指摘のとおりでございますので、この点について、先ほど五十年度の定員配付の問題も御指摘がございましたが、実は現実に配付をやってみますと、現在のたとえば二人夜勤のところの回数の改善、たとえば十六人でほぼ計算上二・八になりますが、十三人でやっておるところをできるだけ十六人に近づけたい、こういうようなことを中心に各施設に配付してみましたところ、焼け石に水というほどではございませんが、非常に改善の度合いというものは十分でない。したがって王子が希望した開棟という問題は、この二・八体制の国立病院、療養所の改善に充てられた定員の配付で、開棟には定員の配付上、手が回らなかったということでございます。これは言い方によってはおしかりを受けるかもしれませんが、やはりわれわれが全体の国立病院の労働条件の改善ということを考慮する段階にしかまだ定員の配付がいただけておりませんので、そういう専門性の問題の充実ということには手が及んでいないというのが実態でございまして、今後、国立病院の専門性を持たせる問題と絡めましてこの定員の問題を確保して、この充実を図らなければならないというふうに思っておる次第でございます。
  93. 金子みつ

    金子(み)委員 確かに私も、王子病院はあの辺の地域病院として非常に重要な役割りを持っているということはわかりました。そういう意味では大変になくちゃならない病院だと思います。私は、自分の持論としては国立病院は総合病院である必要はない、国立病院というのは特殊病院でなければならないので、総合病院は別の設置主体が持てばよろしいというふうに日ごろから考えております。しかし王子病院に関する限りは、あの場所では大変に総合病院としての役割りは大きいというふうに考えて拝見してまいりましたから、それだったならば、いま局長の御説明であそこにセンターが設けられることになった事情はわかりましたけれども、それなればやはりあそこを総合病院として充実させていくという方向に向けていただく必要があるのじゃないだろうかというふうに考えるわけです。センターはあれ以上大きくできるかできないかは別の問題といたしましても、センターの母体である病院の方がいま御報告申し上げたような実態では、総合病院としてはいささかどうかと思うということですから、これを何とかして充実するような方向へ、たくさん国立病院をかかえていらっしゃるから大変だということはわかりますけれども専門性を持っている病院というのは国立病院の中でもそうたくさんはないはずです。しかもいまお話しのように、将来は専門性に重点を入れたい、あるいは専門性を強めていきたいというお気持ちがあるとするならば、私はあそこの病院の実態そのものを充実なさる必要があるのじゃないかと思いますが、その御方針はおありになるでしょうか。
  94. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 全く先生と同一意見でございまして、地域医療の中で王子病院の果たしておる役割りの重要性は認識いたしておりますので、総合病院の機能というものを決して損なってまで専門性だけを充実するというふうに当面は考えておりません。しかし地域医療の全体の進展の状況を見ましては、いよいよもって深く専門性を持つべきだ、広く持つべきだという時代が来ることもそれは考えられますけれども、当面の判断といたしましては、先生のおっしゃるとおり総合病院としての機能を充実しながら、とりあえず腎センターとしての現状以上のセンター機能というものは王子病院には当面は考えておらずに、あの腎センターの充実を図りたい、こういうふうに考えております。
  95. 金子みつ

    金子(み)委員 いろいろ問題はあるかと思いますけれども、私はやはり一番問題の重点になるところと申しますか、中心をなすのは病院の職員の問題だと思うのですね。これはやはりいろいろな問題のもとになっているというふうに考えられると思うのです。  そこで、職員もいろいろ種類はございますけれども、いまのような性格を持っている病院として考えられる問題は、まずその問題点としてのその職員の中から、取り上げられなければならない人たちというのがございます。その人たちがなぜ充足できないのかという問題と、そしてそれを充足する方針としてはどうなさるかということなどを伺いたいのですが、その一つは医師でございますね。いま申し上げたように、医師がいない、医師がいないと幾つも幾つもございました。ですから、総合病院の形態をなしていない、医療法違反にもなるじゃないかというようなことになるのでして、この医師の充足ということを当面おやりになる御方針がおありになるかどうかなんです。透析センターはたった一名しか専門医がおりません。専門医をおふやしになるということとあわせて、医師の充足ということを考えていらっしゃるのかどうかということです。
  96. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医師の充足は当然考えなければならぬのですが、やや世話話的になりますが、わが国の病院がやはり学閥的な問題とかいろいろ一つの古い形の中でアフィリエート、関連病院的な機能を持っておる面がございまして、その点、王子病院というのはどちらかというとそういう色合いの明確でない、ある意味では施設の直接責任者なりあるいはわれわれ関係者が相当努力しませんと、医師の確保というものが日本のいまの医療界の体質ではなかなかむずかしい問題がございまして、そういう一つの歴史的に見ましても、王子病院というものがややそういうアフィリエートした大学関係者との関連などに十分なものがなかった。そのよしあしはともかくとして、そういうことが医師の充足にもやや欠ける面があった。したがって、特徴を持った病院というようなこと、たとえば整形外科の系統は、王子病院は私は総合病院の一部の部門としては特徴のあるものだと思っておりまして、リハビリテーションの機能なども充実したいと思っておりますが、そういうふうな特性との関連においての医師の確保ということが一面大事でございます。しかし、基本的な先ほどの耳鼻科が欠けておるというような、いわゆる医師の幅の面の不足という問題も一つあろうかと思いますが、この点はいま申し上げたような一つの施設長以下の長い歴史の関係、病院の育ってきた性格、こういうものとの関連がございますので、魅力のある病院というような育て方をすることによって医師の確保にも及んでいきたい、こういうふうにも思っておりますので、前のように医師をただ学閥的な学校のつながりでお願いするというような古い形を脱していかないと、王子病院というものは確保できない。したがって、それは病院そのものにある程度特徴を持たした総合病院として充実しなければならぬ、率直に言ってこういうふうな判断に立っておるわけでございます。
  97. 金子みつ

    金子(み)委員 医師の学閥というのは大変問題があるということは伺っております。ですから学閥で医師が集まったり集まらなかったりというようなことがあることはまことに不都合な話だと思うわけです。ですから、その問題を破って、そしていまお話しのような形で王子病院を整備していくということは大変結構だと思いますが、それだから医師がなかなか集まらないで困るんだということもわからないではありませんが、しかし、それだからといってそれがいいというわけではもちろんありません。総合病院としての基本的なものがまずできた上で、特殊病院としての魅力を持たせるということはやはり大事なので、特殊の方が先行して、土台になる総合病院としての価値が満たされていないというのでは、やはりしっかりした土台がないということになりますので、私は、やはり病院としては不十分なあり方だというふうに言わざるを得ないと思うのです。ですから、いまのお話はよくわかります。整形も専門性を持たせられたというふうなお話も伺いましたし、透析もあるんだしということでございますけれども、基本となる他の診療科が空っぽだというのはやはり問題だと思いますから、その辺をとりあえず基本的なものでも——その方が私は医師を獲得しやすい方法じゃないかと思いますね。ですからそれを充実させるということをまず努力していただきたいということ、これはもう強く要望しておきたいと思うのです。  それから、二つ目の職員は看護婦でございます。これはいまお話ししたような体制できりきり舞いをして働いておる人たちなんですけれども、私は医務局、厚生省の御方針として考えを聞かしていただきたいと思うことがあります。  いまこの時代に、四人に一人の医療法施行規則のあの標準のままでいまの病院の中の看護体制が賄い切れるということは考えていらっしゃらないと思うのです、医務局長も。そのことは十分わかっていらっしゃるはずだと思います。もうこの問題は何遍となく話し合ったことでありますから、ここで議論しようと思いませんけれども、いつまでたったらそれを直しなさるのかということなんです。いまは二・八体制の問題も問題に挙がってきております。それから基準看護の類別も特二類まで伸びてまいりました。特二類は一丁五人に一人でございますので、二・五人に一人がいいという意味ではございませんけれども、いまの時点では、もし理想的にというのでありますならば医療法施行規則の基準を二人に一人という線に持っていくのが看護体制としては一応充足する形になると思うわけです。ですから、その方向へ向けていらっしゃるお考えがおありになるのかどうかなんです。もう何年この話をしているかわかりません。なぜ四人に一人かなんという話をする必要はない。もう医務局長は御存じで、厚生省はよく御存じでいらっしゃいますから、私はそれを言いたいのではなくて、いまの時点でとてもやれるはずのない実態をそのままにいつまでしておおきになるのかということを伺いたいわけなんです。  なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、国立病院の中でも超一流と言われるほどの病院が幾つかございますね。特に名前を挙げなくてもいいのだと思いますけれども、その超一流と言われるような国立病院ですら、ここは基準看護特二類をとっております。特二類をとっているような病院ですら、職業付添婦がついているのです。少ないところは数名ですが、多いところは五十名以上ついております。それをどう考えてくださるかということなんです。それですから、看護体制の看護婦の数の基準をどこへ持っていくかということを私は真剣に考えていただきたいんです。厚生省では看護婦の需給計画というものを立てていらっしゃると思いますし、その需給計画の基礎をどこに置かれておるかということも伺っておりますけれども、しかしそれは計画だけであって、一つも実行に移っていかれないという残念さがあるわけです。ことに国立病院では、その充足の状態が、他の自治体病院やあるいは一部の民間病院に比べればはるかに成績がよくないという事実も厚生省は御存じだと思います。それはそれなりの理由があるということも伺ってはおりますけれども、そういう実態ですから、私は別の機会にこの問題は取り上げたいと思いますけれども、いまは私の伺いたいのは、厚生省はこの問題をいつまでほうっておくつもりかということを伺いたいんです。どこかに線を引いて、そうしてきちっと医療法施行規則の改正をなさるお考えがおありになるかどうか、それを伺わせていただきたいのです。
  98. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 これは金子先生前々からの御主張でございまして、確かに医療内容の方からいきますと、あるいは看護の内容からいきますと、四人に一人という基準は低いという御主張は全く私もそのとおりだと思います。したがいまして、保険の支払いの看護基準には、御指摘のように三人、二・五人というような数字が現実に設けられているわけであります。ただ医療法の施行規則は、ある人が一つの病院を始めようとするときに、病院というものはこの基準の職員を確保してくださいということで、医師と看護婦と薬剤師と栄養士を一人置くというような、具体的に規則の中に数字を挙げた例が——薬剤師は必要なだけという、あるいは八十調剤に一人というような基準があるわけでございまして、これは最低に守って、病院を開設する以上これをもってやってくださいということでございまして、そういう意味で、現実には先生おっしゃるような医療需要にこたえた看護体制というものが逐次四人に一人を突破して三人、二・五人となる。それでわが国全体の看護婦の数字は、精神、結核の六人という特例の問題も含めましてトータルで大体四人に一人という計算で、二・八体制とか何かを別にした計算でいきますと、ほぼ患者数と看護婦の数が合うような形になっておるわけでございますけれども、それは御存じのように二・八体制という労働条件の改善あるいは医療需要、看護の需要の必要性から二・五あるいは三・〇というような数字が生まれてくる。したがって、自治体の方は二・八体制が八割というような態勢に進んでまいりますと、まだ五割、六割というところにあります国立と比較いたしますと、百ベッド当たりの看護婦職員その他の職員数にしても、地方自治体の病院の方が多くて国立が低いという点は御指摘のとおりでございます。  そういう意味で、先生の、具体的にこの細則を改正する方向かということは、まさに改正を必要とする方向はいずれ来ると思いますが、現状の看護婦の需給体制の上から言って、わが国病院の開設の一つの守るべき基準としての四人に一人を三人に一人なりに移すことは、現状では単なる規則の改正に終わって実態は守られないというようなことになりますし、私は、趣旨は先生の御質問の趣旨も方向も全く同じだろうと思うのでございますけれども、具体的な事柄の性格上これを変更する時期は将来にまたなければ困難であろうというふうに思っているわけでございます。
  99. 金子みつ

    金子(み)委員 その問題はいま続けて討議することはやめます。大変時間がかかると思いますので保留にいたしまして、先へ進みたいと思います。それだけ伺いましたから一応とめます。  続いてもう一つの職員の問題ですけれども、基本的な職員は医師と看護婦でございますが、この医師と看護婦を助ける人たちというのがございます。その問題で、特に私が王子病院で注目いたしましたのは、あのセンターの中に機械を操作する専門職の人をどうして入れてないのだろうということを考えました。もし一人でも機械を操作する人が入れば、看護婦が一々二十台の機械をチェックし、そして運転を見きわめ、そしてまた患者さんの世話をしということをしないで済むわけですね。どんなにか仕事が違ってくるであろう、円滑に行くであろうというふうに考えられることです。そしてあとは雑用をする助手が入っておればなんです。たいしたことないと思うのです。一人ずつを入れればあのセンターが大変に円滑に運転できるということが考えられるわけなんですけれども、それがおできになるか、そういうことをお考えになっていらっしゃるかどうかというのです。専門技術職員というものを、まあ身分法がどうのこうのというむずかしいことを言わなくていいと思うのですけれども、そういう人を採用してセンターの中に入れて、そして協力して仕事をするという体制を、チームワークをとらせるという考え方をお持ちになるかどうかなんです。
  100. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題は実施に当たっている病院側から実は強い要望のある問題でございますし、われわれも管理上必要と思っておるわけでございます。したがいまして、現在腎センターの医師と看護婦の現任訓練と申しますか研修のコースはございますが、これに臨床検査技師ないしは機械設備等を理解してこのメンテナンスに当たる職員の講習会を実施したいという考え方を持っております。  もう一つさらに進めますと、やはりMEの関係の職員を、いわゆる物理系、電気系等の大学その他の専門学校の卒業者の方を医療関係の職種の中に導入すべきだ。これは基本的に大きな問題でございまして、国立施設の中には、医の(二)の定員の枠内で実はそのような能力を持った人を現実に採用している施設もあるように承知いたしておるわけでございますが、ただ王子病院の場合は、恐らく定員の関係その他をこちらが配慮しませんとそのようなことが実行上できない。少なくともセンターという機能を持たせている以上、この点は検討いたしたいというふうに思っております。
  101. 金子みつ

    金子(み)委員 そこで、私は今度は行管の方にお尋ねしたいことがございます。  先ほど来国立病院の職員の定員の問題の話し合いをしているわけでございますが、その国立病院に勤務する職員の定数その他については行管の御方針がおありになるというふうにも伺っておりますけれども、ここで伺いたいことは、定員の枠をお決めになったり、あるいは毎年第何次削減というのをやっていらっしゃいますね、定員の削減をなさる。そういうときの基準が何かおありになるかどうかという問題なんです。ということは、国家公務員もいろいろな職種があると思うのです、そして働く場もいろいろあると思います。たとえば、デスクワークをしている事務の職員の人たちもおりますし、それから病院のように現場で仕事をする人たちもいるわけなんですけれども、事務系の人と実務系の人たちとを区分した枠を何かお決めになっていらっしゃるか、あるいは基準のようなものがおありになるかということが実は知りたいわけです。全く配慮しないで画一的にやっていらっしゃるのかどうかということをまずひとつお尋ねしたい。
  102. 能勢安雄

    ○能勢説明員 定員削減に何か基準があるかというような御質問でございますが、定員削減計画に当たりましては、従来からも業務の能率化あるいは機械化による定員削減等の難易等につきまして十分配慮して定員削減を行っていくということでございますが、特にその際、職種による削減の難易等につきまして基準を設けておりまして、これに一定の基準率を掛けまして、その上で必要な調整を行った上で定員削減を行うというふうなことで進めてまいっている次第でございます。  なお参考までに申し上げますと、今回の第三次削減計画に当たりましては、特に国立病院、療養所の医師、看護婦、薬剤師あるいは各種技師等医療関係職員につきましては、その職務の性質上合理化の余地がきわめて乏しいというふうなことも考慮いたしまして実質的に削減をゼロといたしたというふうなことにつきましては、すでに御承知のことかと思います。
  103. 金子みつ

    金子(み)委員 いま御説明ありましたように、医師、看護婦、薬剤師その他医療関係者はゼロになさったのは承知いたしております。大変結構だと思って、これはよかったと思っているのですけれども、私はそこでもう一つ考えを及ぼしていただきたいことがございます。  それはいま厚生省ともお話し合いをいたしましたとおり、医師、看護婦、薬剤師などというものは基本的な人たちなんです、職種なんですね。この職種を助ける人の問題なんです。特に数の少ない看護婦の場合、看護婦は四人に一人の線で行管もやっていらっしゃると思います。ですから、四人に一人ではとても仕事ができないということは重々わかっていることなんでして、それを助ける助手というものを考えているわけです。その看護助手の定員も削減しないでいらっしゃるのか、あるいはそれは削減していらっしゃるのか、それを聞かせてください。
  104. 能勢安雄

    ○能勢説明員 医師、看護婦、薬剤師あるいは各種技師等以外の一般の医療職員でございますが、これにつきましては、定員削減に当たりまして、削減する要素を定める際にその基準率につきまして格別の配慮をいたしておりますが、個々の削減につきましては、これは私の方の行政管理庁といたしましては全体の削減の目標数を定めまして、その目標数の範囲内におきましてそれぞれの機関あるいは職種別の削減につきましては厚生省が自主的に御判断なさいまして削減をなされておるところでございまして、行政管理庁といたしましては、あくまで削減目標数を定める際の一つの目安として基準を持っておるというふうな次第でございます。
  105. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、いまのお話ですと、看護助手に関しては行管が直接なさるのじゃなくて、それぞれの省がやる、こういうふうに理解していいのですね。
  106. 能勢安雄

    ○能勢説明員 そのとおりでございます。
  107. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると今度は厚生省にお尋ねいたしますが、看護助手は削減していらっしゃいますか、いらっしゃいませんか。
  108. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 いま御説明のございましたように、看護助手は行(二)という形の中に入るものですから一応削減の計算上の中には入れられておると思います。  実行上われわれが一番必要なのは看護助手でございますので、この点については看護助手——高齢とか経験の問題とかいろいろございますけれども、原則的な考えとしてはむしろ看護助手を欲しいわけでございますから、他の職種からでも看護助手の方に可能な場合は回っていただきたいと思うぐらいでございますので、具体的な削減の対象として基礎の計算には入れてあるということは否定できませんけれども、これを実行する場合については、看護助手というものはわれわれはむしろ必要性の方を認識いたしておりますので、具体的な削減というものについて対象が個々のケースになりますとどういうふうな形になっておりますか、私いま資料はございませんけれども、看護助手に対する考え方は基本的にはそういうことでございます。したがって、削減しない方向を原則として考えております。
  109. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは、時間も来ておりますので中断になりますけれども厚生省とそれから行管にお願いがございます。いまの医務局長のお話だと、はっきり聞いていないとわからなくなりそうな御返事だったのですけれども、削減していらっしゃるようにも聞こえますし、削減していらっしゃらないようにも聞こえました。それで、看護助手は最も大事だとおっしゃったそのお考えをどこまでも徹底していただきますならば、看護助手の削減は将来やらない、過去のことはいまさら問うてもしようがないのですけれども、この年からはもうしないという、どの場合でも個々の実例に当たった場合になさらないということを強く要望しておきたいと思います。  過去並びに五十年度の分についての実態は、後ほど資料でいただきたいと思います。  行管にお願いしたいことは、細かいことは行管でなさらないということはわかったわけでございますが、日本の病院の職員の数というのは、世界に比べたら五分の一ぐらいなんですね。世界の国々では、大体患者一人に五人ないし六人、これは全職員数ですよ。日本では一が切れるのです。国立病院の一番いいところでもたしか〇・九ですね。それぐらいにしかなっていないのですね。日本では一を超える病院は本当に片手に入るぐらいしかない。民間病院です。そういうような実態で、まことに劣悪だと考えますから、この点はぜひ行管でも今後病院という現場の職員の実態を考えながら、定員のことをお考えいただきたい。  せっかく大臣に最後までいていただきましたので、大臣にも一言お願いしたいと思いますのは、いまの定員の関係などはもう重々御承知のところだと思いますけれども、大臣が今後どういうふうに考えていこうとなさっているか、あるいは対行管との折衝などのことにつきましても、お考えを一言お聞かせいただければ幸いでございます。
  110. 田中正巳

    田中国務大臣 いま金子先生からまことに広範な御質問がありまして、これの締めくくりにどう答えていいかよくわかりませんけれども、病院の職員につきましてはなお不十分でございまして、いま行管からお話がありましたが、行(二)について削減率が若干かかっているわけでございます。いまおっしゃった補助職についてはなるべくこれを減らさないという方針ですが、そうすればやはりまた他に影響が出てくるわけでございますので、そうしたことを踏まえて今後折衝をいたしたい、こういうふうに思っております。
  111. 金子みつ

    金子(み)委員 ありがとうございました。
  112. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 この際、休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開することといたします。     午後一時五十四分休憩      ————◇—————     午後三時三十六分開議
  113. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  東北新幹線建設工事における労働安全衛生対策等の実情調査のため、議長に対し委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、派遣委員の人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  116. 大野明

    大野委員長 厚生関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。村山富市君。
  117. 村山富市

    ○村山(富)委員 先般この委員会で、スモンの薬害関係についての参考人を呼んでの質疑が行われました。薬害がどれくらい人間に大きな被害を与え、同時に、被害を受けた本人だけではなくて、家族全体を引き込んだ苦しい状況に追い込んでおるかということもよく皆さん御存じのとおりであります。  そこで、きょうは主として薬の問題についてお尋ねを申し上げたいと思うのですが、あのスモンの裁判の中でも明らかになっておりますが、言うならば、厚生省はメーカーが提出した資料だけを参考にしながらいろんな委員会の経過を経て許可をしておる、こういうことが大変問題になっております。私はいまのメーカー全部がそうだとは申し上げませんけれども、しかしメーカーが支出しておる経費の中を見ますと、研究開発費と宣伝広告費との割合を比較してみますと、宣伝広告費には圧倒的額を支出しておる、にもかかわらず、研究開発費はそれに比較して少ない、こういう状態から判断をするならば、単にメーカーから提出された書類審査だけで決めるのではなくて、私は、厚生省自体が独自でやはり動物実験をするなりそういう調査をする必要があるのではないかと思われますが、その点をどういうふうにお考えか、まずお尋ねをいたします。
  118. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 ただいま先生指摘のように、新薬の使用に当たりましては、その申請に係ります諸実験のデータあるいはその他のデータにつきましては業者の方から材料を出して、そしてわが厚生省の審査を受けるというふうな仕掛けになっております。おっしゃいますように、できるだけ客観的公正な材料をつかんで判断することが大事でございます。そういう意味合いでは、先生おっしゃいますように国なら国の手で実験をやり、あるいはまたその他の分析もやるというのが好ましいという気持ちはわかるわけでございますけれども、何さま新薬の承認の件数は年間二十件ないし三十件、四十件と、こういう多数の新成分が出てまいります。品目にして五十品目とかあるいは七十、八十品目とかが出てまいりまして、しかもまた個々の品目に係ります動物実験とかあるいはヒト試験とか、こういう関係の材料は膨大なものでございます。先生も御存じかと思いますが、メーカーサイドではこの研究に五年ないし七年かかる、しかもまた、そういう数億にわたる金をつぎ込むというふうな、実は膨大な実験に伴う膨大な量の作業でございまして、これにつきまして国が一々やることはなかなかできません。要は、客観的しかも公正な材料によってわれわれが審査をするということが大事であろうかと思います。そういう意味合いにおきまして、今日の製薬申請に当たりましての新薬承認の手続におきましては、主な資料につきましては必ず医学会で発表され公認されたもの、あるいはまた医学会雑誌に収載されまして、それで世間の批判の目をくぐったもの、そういった客観的、公正な資料をつけるように指導しております。  具体的には、特に新薬承認段階で大事でございます一つには、毒性試験関係、これは急性、亜急性あるいは慢性を問わず、すべてそういうことを求めておりますし、また薬理作用、吸収、排せつ、あるいはまた効能薬理とか、こういう面につきましての資料、あるいは最も大事でございます臨床試験のデータというものの主なものにつきましては、必ずそういう学会関係の目を通ったもの、公認されたものを出させることによりまして、きわめて厳正かつ客観的にやっておるわけでございます。  そういう意味で、この薬の承認の手続におきましては、できるだけ慎重に、しかも客観的、公正な線からやるということを通じて、医薬品の安全対策に寄与したい、こういうことでやっております。
  119. 村山富市

    ○村山(富)委員 毎年申請をされる量が大変多い、したがって、なかなかその作業も大変で、現実的には不可能である、こういうお話でありますけれども、私はすべてのものについてやる必要はないと思うのですね。しかし、特に慢性毒性等が心配されるようなものについては、やはり厚生省は、この新薬はよろしい、こういって許可をするわけですから、承認をするわけですから、したがって、やはり国民に対して責任がある。こういう立場からするならば、もっと責任ある処置をすることの方が当然ではないかというふうに思いますから、その点はひとつ今後の研究課題として十分御検討いただきたいと思うのです。  そこで、次にお尋ねしたいのですが、たとえばメーカーが申請する場合に、動物実験あるいは臨床試験等の書類を添付して出しますね。その場合に、特に臨床試験をどういう形でやられているかということについて聞きたいのですけれども、メーカーが大学やあるいは大学病院の医師に、研究者にお願いをして研究をさせて、そしてその医師が臨床試験をやることになるわけですけれども、しかしこの臨床試験は、私の聞くところによるとほとんど野放しにやられておる。言うならば、相手に対して承認を求めて確認書をもらうとかなんとかいう手続をとらずに、やる方はメーカーと協定をしてやるけれども、やられる方は全然関知しない、こういう状態でやられることについては問題があるのではないか。あるいは、これはまた別の面からすれば人権問題にも関係するというふうに思われますから、やはり本人の承認を得て、承諾書を交わすとか、あるいはまた国が野放しではなくて何らかの形でチェックする、こういう手続をとる必要があるのではないかというふうに思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  120. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 先生おっしゃいますように、特にヒト試験問題につきましては、人権問題あるいはまた倫理問題、道徳問題にも関連いたしまして種々論議があり、またきわめて慎重に扱わなければならない問題だというふうに思います。そういう意味合いにおきまして、いま先生おっしゃいますように、特に病院等におきまして実験をやります場合に、相手方に対してどういうアプローチをするかということが最も基礎的に大事な問題ではなかろうかと思います。そういう意味合いでは、昭和三十九年に世界医師連盟のヘルシンキ宣言というようなものがございまして、いまや世界的にも確立された一つ考え方として、特にヒト試験における倫理綱領とでも申しますか、そういう面での大事な柱が三つほど挙げられております。一つは、当該試験に関する趣旨の説明、十分その趣旨を理解してもらう、そのことの意味というものを知ってもらうということ。第二には、この試験をやるについてその前の段階として動物実験等があるわけでございますが、安全性について十分相手方に説明をする、理解をさせるということでございます。第三には、先生おっしゃいますように相手方の同意を得る。この面が最も大事な問題でございますが、その三つの柱がやられておりまして、私ども、特にヒト試験関係ではこの三つの柱について関係者が十分認識する、当該病院におきましてヒト試験をやる場合におきましても、単に個々の医師がやるということだけではなしに、病院全体が何らかの組織を通じてやる、責任を持つ、責任を持つ中でいまの三つの柱を十分わきまえてやる、こういう指導が必要であるかと思います。  私どもが聞くところによりますと、大学病院あるいは国立病院等におきましては、薬剤委員会あるいはまた治験薬小委員会、こういうような組織を持たれまして、あるいは副院長がヘッドになられる、その中に何人かの医師がグループで入られまして、お互いにディスカッションしながらやられる、また治験薬のいろいろな計画を持たれてやられるというふうに聞いておりますけれども、そういう組織づくりあるいはまた適正な計画づくりというようなことも指導しなければならないと思います。  とにかく本問題きわめて重要でございますので、私ども実はかねて薬務局内におきましてもいろいろ検討を進めておりますけれども、当面は、先ほど申しました三つの倫理的な綱領と申しますか、そういう面につきまして早急にひとつ関係方面に対して周知徹底するという面での具体的な施策の進め方というものを決めまして徹底したいと思います。  なお、先生おっしゃいますように、ヒト試験全体について国が何らかのチェックをすべきではないかという仰せでございますが、現にアメリカあるいはイギリスではフェーズワン、フェーズツーのヒト試験段階におきましてチェックをしております。その他の国は実はやっておりませんが、わが国では昭和二十七年に、特殊の薬、すなわちワクチン類とかあるいは結核薬、らい薬とかあるいはまたその他の大事な薬につきましては、実は治験計画につきまして事前の届け出をさせまして、その内容について現在私ども薬務局の専門家がすべて目を通しております。年間おおむね五十件程度のものが出てまいりますが、その中身につきまして吟味をする。もし、その見ておる中身でどうも物について疑問がある、安全について問題があるというような場合には、衛生試験所あるいは予研を通じて鑑定をしてもらうということもやりますし、またこの治験を行います場所がどうも適当でないという場合は、場所の変更を命ずるというふうな指導もやるたてまえになっておりまして、そういう指導をいたしておりますけれども、なお、今後の検討課題といたしまして、さらにこのヒト試験を慎重にやるという面から私ども検討したいと思っております。
  121. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間が余りありませんから、話は簡単に要点だけ答えていただければいいのですけれども、いま三つの倫理綱領ということを言われましたね。私が質問しておるのは、それは大学の中ではあるいは病院の中ではいろいろ慎重な扱いをされると思うのです。だけれども、臨床試験をする場合に、相手のされる方の側が十分承知をしてやるのかやらないのか、あるいは承諾書をとるのかとらないのか、こういう問題ですね。  それから臨床試験をする場合に、いま何か年間に五十件くらい事前に届け出があるというお話がございましたけれども、これは国が行政指導でやっておるのか、何でやっておるのか、そこらの点はもう少し検討する必要があるのじゃないかということを聞いているわけです。
  122. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 前段の相手の患者さん方の了承、これは当然とるべきものでございます。それは文書であれ口頭であれ、当然了承をとるべきである、もちろんそういうことでございます。そういう面で関係の業者も十分わきまえておるはずでございます。また病院当局もそういうことについての十分な御理解があると思います。  それから第二の、現在やっております昭和二十七年からの措置は行政指導でございます。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕
  123. 村山富市

    ○村山(富)委員 とるべきであるというのではなくて、とっておるのですかどうですか。現在はどうやっておるのか。
  124. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 全部とっておると思います。
  125. 村山富市

    ○村山(富)委員 それでは次にお尋ねしますが、これまた後で私が事実をいろいろ出しますから、そのときにまたはっきりしたいと思うのです。  次に、新薬が承認をされて出回りますね、そうした場合に、その新薬の副作用の問題あるいはその薬効の問題等々について国はどのような追跡調査をされておるかという点についてお答え願います。
  126. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 新薬につきましては、その後三年間のモニター期間と申しまして、その間重度の障害が出るとかあるいは予期した以上の頻度で副作用が出るとか、こういった場合におきましては、三年間は必ず厚生省報告するというようなことをやっております。また、その他の医薬品につきましても、特に重篤なものあるいはまた特別なものにつきましては、その都度報告するようにしております。  それからまたいま一つ、モニター病院というのを全国に二百六十四、全国の国公立大学あるいはまた国公立の病院あるいは大学病院というところにつきましてモニター病院を持っておりまして、そちらの方から、おおむね年間三百件ぐらいでございますが、毎年副作用情報に接しております。  そのほかWHOの国際的なモニターシステムもございまして、その関係WHOからわが方には常時情報が参っております。そのほかにも特にアメリカ政府の方から、FDAから連絡が来るというものもございますが、以上のようなモニタリングシステムを持っておりまして、それによって情報をつかむ、必ずそれをすぐフィードバックする、こういう制度になっております。
  127. 村山富市

    ○村山(富)委員 会社、メーカーに対しては、承認した場合には三年間の追跡調査をさせると義務づけているのですね。これは承認の条件としてさせるわけですね。たとえば、慢性毒性なんかの場合には三年間くらいで本当にわかるかどうかという問題があるでしょう。同時にまた、相乗作用で複合された副作用というものも起こり得る可能性があるわけですよ。その点はどういう扱いをされているか、三年でいいと思っているかどうなのかということが一つ。  それからもう一つはモニタリングシステムですけれども、たとえば、あるモニター病院から情報が入ってくる、こういう副作用があったというふうな形で報告がなされた場合に、それに対して厚生省はどういう対応と処置をしているのかということですね。その二点についてお伺いします。
  128. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 ただいま答弁しましたように、まず三年間の問題でございますが、一応全国的なサイドでこの薬が使用される、多数の医師が使われる、こういう状況のもとでは大体三年間見ればまあいいだろうということで三年にしたわけでございますが、実は三年以外に、メーカーに対するわれわれの要請といたしまして、その他の新薬以外の一般的な薬につきましても、三年過ぎても重篤な副作用あるいはまたきわめて頻度の多い副作用、こういうものが出た場合には、必ず随時厚生省報告するようにということを申しておるわけでございまして、そういう情報もわが方に参っております。  第二に、副作用情報を得た場合に今度はどういうふうに対応しておるかというお話でございますが、こういう諸情報につきましては、私どもフィードバックという観点から医薬品副作用情報というものをつくりまして、特に二百六十四のモニター病院を中心といたしましてその情報を細かにフィードバックしております。そのほか同時に、この医薬品副作用情報につきましては、医学関係専門誌がいろいろございますけれども、その中にみんな収載してもらうという形で、多くの医家の方がそれを通じて知っていただくというふうにいたしております。そのほか、実はこの四十九年度から始めたのでございますけれども、全部の医師、診療所及び病院に対しましてドクターレターの形で、特に大きい副作用情報につきましてわが方から直にこれを伝達するということを始めました。第一回のものをこの前出したばかりでございまして、第二回目のものを現在編集中でございますが、そういうことを実は四十九年度から新たに始めたりしております。
  129. 村山富市

    ○村山(富)委員 この追跡調査の情報を集める仕事に、いま厚生省の中で何人携わっていますか。  それからもう一つは、たとえば大腿四頭筋短縮症ですね、こんな問題でも、山梨県で出た、保健所から連絡があった、そうした場合にすぐ対応できるような措置が講ぜられれば私はもっと未然に打つ手があったんじゃないかと思うのですね。しかし、相当全国的に蔓延をしてから、問題になって後から追っかけていく、こういうかっこうになっていることはもう否定できない事実だと思うのです。その点についてはどういうふうにお考えですか。
  130. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 実は薬務局に安全課という課がございます。これができましたのは昨年の春でございますが、この安全課のねらいは、そもそもが安全対策、特に副作用情報の収集とフィードバック及び分析というものに主体を置いた課でございまして、実は新しくつくった課でございます。いま安全課の人数は約十数名でございますが、言いますならば、課長をヘッドといたしましてそのメンバーが全体としてこれに取り組んでおるということであろうかと思います。  なお、この副作用情報が入ってまいりましたら、私どもの方では実は毎月一回この副作用に関します調査会が薬事審議会の中にございまして、必ずそこにすべての材料を提供するということをいたしております。そこで情報の中身を分析していただきまして、特に重要であると思うものは直ちに薬事審議会の中の専門家が集まって分析を続ける、それからまた、これについて行政的にすぐ何かほかのことで対応するというものは、たとえば使用上の注意をつくるとかあるいはまた要指示薬にするとか、いろいろな面で振り分けていくというふうなことを私どもやっております。ですから現在のところ、われわれとしては、安全課を中心にできるだけ早目に対策を打つという観点から、それに注意しながら対応しているつもりでございます。
  131. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいま大腿四頭筋のことが例に挙げられましたが、これは薬剤が原因であるという意見もございますけれども、むしろ医療そのものの問題でございまして、先生の情報の問題は、これは実は率直に申しまして医療の事故と申しますか、医療にまつわるこのような情報の仕組みというものは、現在十分なものはございません。したがいまして、この問題は、われわれ、国際医療情報センターというのがございまして、そこに予算措置を若干して資料を集めてみましたところが一ある問題が新聞などあるいはその他の学会などに提起されまして、それにまつわる事件が国内にどのくらい過去に報告されているかというようなことをコンピューターではじき出してもらう仕組みはできております。それをやりましても、これを実際に医療関係者にどのように周知をさせるか、あるいはその内容が本当に周知させるだけで済む問題か、医療の個々の問題に触れて一般論として出すには困難だというようなことか、この辺のところを検討するような権威のある仕組みも考えなければなりません。これは結論から申しますと、予算措置も必要でございますし、大腿四頭筋は二十七年、最初に学会で発表されて以来、医療関係者にその十分な注意が至っておらなかったということを反省いたしまして、われわれ医務局の行政の一環として、いまの薬務のような仕組み等を十分参考にしながら、この医療にまつわる情報というものの医療関係者への周知の仕方について検討いたしておるわけでございます。
  132. 村山富市

    ○村山(富)委員 医療事故にしても薬害にしても、現実にいろいろな問題が起こってくる可能性があるわけです。だから、そういう点は十分踏まえて、慎重に、そういうことのないような対策と対応策を考えておく必要があるのではないかということを強く要望しておきます。  さらに、いままで申し上げましたのは新薬だけですけれども、しかし、その新薬以外に、四十二年以前の薬については四十六年から何か再評価して洗い直しをしている、そういう話を聞きましたけれども、現在までどの程度の洗い直しができておるのか、どういう方法でやっておるのかということが一つ。  それからもう一つは、その中で具体的に例を挙げて申し上げたいと思うのですが、たとえばビタミン剤のB1、特にアリナミンなどの洗い直しは終わっておるというふうに聞いておりますが、その中で、妊産婦なんかはもう飲んでも構わない、こういうような意味の発表があっておるというふうにも聞いておりますが、薬効の洗い直しをする際、催奇形性については全然問題にならなかったのかどうかということが一つ。  それから、最近、ウニの実験によればアリナミンが大変影響があるというようなことも言われておりますが、こういうことについては洗い直しの際に全然問題にならなかったかなったかということについてお尋ねします。これはもういろいろ説明せずに、なったかならぬかということだけで結構ですから。
  133. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 当面、再評価につきましては、四十二年九月以前に承認されました医薬品につきましてやっております。現在、医家向きの単味の薬について再評価をやっておりますが、全部でこれが成分にしまして九百成分ございます。そのうちこれまでに四回実は再評価を終えまして発表をいたしましたし、所要の措置をとりましたが、それが全体で百三十ぐらいでございまして、一五%程度のものがこれまで再評価を受けました。今後スピードを上げまして、実は近くまた第五次出しますが、五十一年の終わりぐらいまでには何とかしたいと思って実は薬事審議会でがんばってもらっております。  それから第二の、ビタミンの話を中心にいたしまして催奇形性の問題についてやっておるか——やっております。  また、ビタミンB1に関します再評価の段階におきまして、当然、先生いま御指摘のございました慶応大学におけるウニについての研究というようなものも頭に置き、同時にまた、催奇形性の資料について点検なさいまして十分御吟味があったと聞いております。
  134. 村山富市

    ○村山(富)委員 その洗い直しの際にそうした問題については十分議論になった、問題になったというふうに確認していいですね。  その次にまたお尋ねいたしますが、いままで申し上げましたようなことから関連をして、これからもやはりいろいろ起こってくる可能性があるし、同時に、薬というものは、これはもう必ず効く薬には副作用があるというふうに考えてもいいのではないか。したがって、その服用の方法を誤れば、これまた事故が起こる可能性もある。ですから、慎重の上にも慎重に扱う必要があると思うのです。ただ私は、いまの薬事法を見ますと、その五十六条に販売、製造等の禁止に関する規定がありますね。この規定の中に——たとえば薬効が全然ないという薬もあるでしょう、同時に、全然予想しなかったような副作用がこれから起こってくる可能性もある薬もあるかもしれません。そういう場合に、そういう薬を禁止するような規定は全然ないわけなんですね。したがって、私はこの際、そういう規定をやはりこの五十六条の中に加える必要があるのではないかというように思いますが、その点はどうですか。
  135. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 先生のおっしゃいますように、そういう場合における禁止の規定はございません。その点、ございません。ただ、現在薬事法のもとにおきましては、たとえば最近の例で申しますと、コラルジルという薬がございまして、問題であるというので四十五年に製造打ち切り、回収する、それで、具体的には承認の撤回——、従来承認いただいておるものにつきまして役所の方にお話があって、承認いただいたものをないことにしてください——承認撤回と申しておりますが、そういう行為、その他の行為によりまして、実体上は問題ございません。ただ、おっしゃいますように、法律のこの規定の仕方としまして、今後改正の機会がございましたら、その点は検討しなければならぬと思っております。
  136. 村山富市

    ○村山(富)委員 そこで、最後にこれは大臣にちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、大臣は、参議院の予算委員会の際にこういう答弁をされています。会社の利益や秘密よりも国民の生命健康を優先することは当然である、したがって、そういう基本的な考え方に立って、これから薬の問題等についても考えていきたい、こういう意味の答弁があったように聞いておりますが、それは当然の話だけれども、しかし、やはりメーカーにはそれぞれ秘密があると思うのですね。製薬についての、製造過程についての秘密がある。したがって、その秘密が余りにも尊重されるためにベールに隠されて、そして本当のことがつかめなかったというようなことも起こり得るのではないかというように思うのです。したがって、学会等で問題になったら、少しでも副作用について疑念があるというようなものについては、これは全部とは言わないまでも、それに関する部分だけはやはり公開するとかなんとかするような措置をとってもいいのではないか。したがって、会社の利益や会社の秘密や、そういうものよりも国民の健康を優先する、生命を優先する、やはりこういう考え方に立って今後扱っていく必要があるのじゃないかと思いますが、この点については大臣、どういうふうにお考えですか。
  137. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 先生のおっしゃる気持ちはよくわかるわけでございます。私ども、現在いろいろな会社からの申請書とか、あるいはまた再評価に関する分析の内容とか、いろいろ持っておりますが、そういう御疑問の向きにつきましては、これはできる限り薬事審議会先生方ともお話し合いいたしまして、そしてその状況を御説明申し上げるというふうにしたいと思っております。もちろん企業の秘密が中にございますから、その考慮もしなければいけませんけれども、片や薬をお使いになる国民の側の立場もございますので、できるだけそういう見地から、薬事審議会ともよく話しまして、そういう措置をとりたいと思っております。
  138. 田中正巳

    田中国務大臣 先般申し上げたとおり、基本の方針としては、やはり国民の生命、健康を守るというのが基本の態度でなければならぬ、しかし、やはり製薬企業といえども企業でございますので、これがある程度の企業機密というものを全然没却しては成り立たぬということでございまして、要はその調和をうまく図るということであろうと思いますが、その調和を図る上において、やはり国民の生命、健康を守るというところに主眼を置いて事を処理すべきものであるというふうに考えております。
  139. 村山富市

    ○村山(富)委員 その調和を図るという意味が私にはよく理解できないのですが、調和を図るなんというふうな問題ではなくて、やはり国民の生命や健康に副作用があるというふうに疑われた、あるいは疑念が持たれたというふうなものについては公開して明らかにする、そして、何よりもかによりもやはり生命と健康を優先する、こういう考え方で当たるべきであって、何か秘密と国民の健康と命と調和を保ってやるような考え方では危ないと思うのですよ。これはどうですか。
  140. 田中正巳

    田中国務大臣 調和を図るというのがちょっと誤解をされたようでございますが、私としては、企業の機密を全く没却するということも不可能かということを気持ちの上で申し述べただけでございます。
  141. 村山富市

    ○村山(富)委員 いずれにいたしましても、少なくとも薬害の患者が生まれてこないように、自分の体をよくしようと思って飲んだ薬でさらにまた病気を起こすというようなことになったのでは、これは救いようがありませんからね。厳しい上にも厳しくやって、そうしてやはり手続に問題があれば是正をして、本当に国民が安心して療養ができる、薬も飲めるというようになるような厳しい考え方でこの問題については取り組んでもらいたいということを最後に要望いたしておきます。  次に中医協の問題について若干お尋ねをしたいと思うのですが、現在中医協は、これはもう周知の事実ですが、医療側の委員辞任届を出して会議に出席をしない、そのために中医協が開かれない、こういう状態なことはもう周知の事実ですね。そこで医療側の委員がなぜ辞任届を出して出席しないのかということについてはよく理解がされておらないわけです。これだけ国民皆保険の中で医療費が問題になっている、莫大な医療費が支払われておるという現状であるだけに、私はその理由を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  142. 北川力夫

    ○北川政府委員 中医協の診療側委員が現在辞任届を出しておられますことは事実でございます。その理由は、それぞれの団体、すなわち日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会によってそれぞれ異なっております。日本医師会の場合には審議会についての御批判があるようでありまするし、また日本歯科医師会の場合には非常に広範多岐にわたる歯科医療行政についての声明をお出しになりまして、その声明をもって辞任の理由としておられます。また薬剤師会は医療行政の基本の問題に触れながら審議会の批判をしておられます。いま申し上げましたように、それぞれ違った理由で辞任届を提出しているというのが現状でございます。
  143. 村山富市

    ○村山(富)委員 いまの答弁では何を言っているのかさっぱりわからないのですが、たとえば日本医師会が審議会に対して疑問を持っておると言ったのですかね。批判を持っておる、だから出席をしない。どういう意味でどういう内容の批判を持っておるのか、それで出席しないのか、そこらの点を、もし言えるのなら、ざっくばらんに言ってもらいたいと思うのです。
  144. 北川力夫

    ○北川政府委員 私が申し上げましたのは、現在提出をされております辞任届に書いてありますことを簡略にして申し上げたわけでございまして、医師会の場合でございますと、最近の政治というものについていろいろなプレッシャーによって動かされている場合がある、また特に学問の精神との関係で、厚生行政の面でも各種の審議会とか協議会が必ずしもそういう学問の精神に沿ったような状況になってないということがある、したがって、そういう理由で委員を辞して制度の改善を待つ、こう言っておりますから、そのことを簡単に申し上げますと先ほど申し上げたとおりで、書いてあるとおり詳しく申し上げますと、いま申し上げたとおりでございます。
  145. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうなりますと、これは制度の改善があるまでは出席しないわけですね。いままで医師会との話し合いというのは全然してないわけですか。それはもう書面をもらったら、その書面のとおりで、ああそうですかというだけの話である、そこらはどうなのですか。
  146. 田中正巳

    田中国務大臣 非常にデリケートな問題でございます。私が最近最も腐心をしている問題でございます。いま保険局長から申したとおりの状況でございますが、辞任の理由についてはそれぞれいろいろに書いております。ひとつこの辞任届のコピーを先生に差し上げますので、後ほどよく読んでいただきたいというふうに思います。これにつきましては、私どもも何とかひとつさようなことのないように、中医協が重要な機関であり——また中医協だけを辞任したわけではございません、各種の審議会等すべてを辞任いたしているわけでございますので、こうしたことのないように、何とか復帰をするように説得にこれ努めておりますが、今日のところまで、いろいろな理由でこれについて復帰をしておらないというのが現状でございます。
  147. 村山富市

    ○村山(富)委員 その中に立って厚生大臣が大変御苦労されていることはよく私も知っていますからそれ以上申し上げませんが、ただその中身について一、二具体的にお尋ねをしてみたいと思うのです。  これは新聞なんかにも報道されておりますが、事実のほどはわかりませんが、たとえば新しく開発された医療技術についての処置ができれば復帰をしてもいい、出席してもいい、こういうようなことが新聞に出されておりますね。これは局長の依命通達か何かで点数の中に入れたわけです。そこで、これで復帰ができるかなと思っておったらまだ復帰をしないわけですね。そこらの関連というのはどういうふうになっておるわけですか。
  148. 田中正巳

    田中国務大臣 いわゆる新開発医療技術について、これを点数化していただきたいという話は、実はこの問題とは別に出てきたわけでございまして、決して新開発技術を評価するならばこの問題は解消するという約束事の上にこれを発展させたわけではございません。しかし、私といたしましては、こうしたものについてはやはり速やかに評価をするということが患者のために必要であり、また社会保険診療の発展のためにも必要であるということでいろいろ苦慮をいたしまして、これを点数化したことはすでに先生御案内のとおりであります。しかし、これをやれば帰るというようなお話ではございません。私どもとしては、これだけの誠意を示すならばあるいは先方の方でいろいろとまたお考えもあろうかというふうな淡い期待を持っていたことは事実でございますが、約束があってギブ・アンド・テークというかっこうでやったものではございません。
  149. 村山富市

    ○村山(富)委員 正直にいま言われたと思うのですが、こういう措置をすればあるいは復帰をしてくれるのじゃなかろうか、こういう期待を持ってやった。同時に、医師会の方も、これは新聞報道ですけれども、それができるならば帰ってもいいのじゃないか、こういうような記事が出たこともありますね。しかし、現実には帰ってこないわけです。  そこで、私は次にお尋ねしたいのですが、これは本当の中身がやはり国民の前に明らかにされないといろいろな疑念を持たれるわけですね。私がいまから申し上げるのも、あるいはそういう意味の邪推かもしれませんよ。しかし現実に租税特別措置法による七二%の経費の軽減というものが問題になっていることは否定し得ない事実です。こういうものが問題になるようではわれわれは協力できぬ、こういう医師会の態度があるのではないかというふうに見られている向きもあることは否定し得ない事実です。  そこで、私はその問題については余り深く掘り下げませんけれども、しかしその問題と関連をしてお尋ねをしたいことは、言われておりますように、いまの診療報酬のつくり方はその七二%との関連があってつくられておるのか。この診療報酬を改定する際に七二%というものを廃止するならば、その部分も含んで診療報酬を改定をさるべきである、こういう意見もありますが、その絡み合いは一体どうなっておるのか。
  150. 北川力夫

    ○北川政府委員 お尋ねの七二%問題はいわゆる税制上の問題でございまして、御承知のとおり租税特別措置法によって社会保険診療報酬課税の特別措置が、二十九年でございましたか、議員提案によって実現をしたところでございます。この趣旨は、当時の大蔵委員会における附帯決議等にも明らかなように、社会保険診療報酬の適正化が実現されるまでの間の暫定的な措置であるというようなこととわれわれは承知しております。そういうことでございますけれども、それじゃこの問題と診療報酬とが全面的に直接に絡み合っておるのかといいますと、私どもはそういうふうには考えてはおりませんので、診療報酬の適正化というものは、その後診療報酬の適正化としてあるいは医学技術の進歩に対応するなりあるいは社会経済情勢の変動に対応するなり、そのときどきの改定の性格はかなりバラエティーはありますけれども、そういう方面で努力をしてまいりましたし、また今後もそういう方向で努力をしてまいるつもりでございます。
  151. 田中正巳

    田中国務大臣 本件については歴史的経緯があるわけでございまして、昭和二十七、八年ごろ、最初、議員立法で租税特別措置が行われました。その背景には、私どもが当時のいろいろな記録等あるいは当時の関係者に承っておるところによりますれば、診療報酬が低い、これを十分に上げられないといったような背景もございまして租税特別措置を起こしたものというふうに——当時の議員立法の提案者等の理解は私は事実だったと思うのでございます。その後、診療報酬はしばしばにわたって改定をされました。しかし、この租税特別措置を廃止するような改定は行われていないというのが医師会側の主張であるようでございまして、したがいまして、これにつきましては物の見方だろうと思っておりますが、現在のところ、この問題について少なくとも医療側はあの租税特別措置を改廃するだけの診療報酬の改定が行われてないというふうに認識していることだけは事実のようでございます。
  152. 村山富市

    ○村山(富)委員 七二%の租税特別措置法が議員立法でできたときの経緯を考えた場合に、いまの診療報酬、いまの局長が言われたように全面的にそれだけで決められておるとは思いませんけれども、それが重要な要素になっていることは私は否定し得ない事実だと思います。これはいま大臣からもお話がございました。とするならば、開業医の場合には七二%は関係があるわけです。だけれども、大学病院とかあるいは国立病院とか自治体病院とか、そういう病院関係の場合には余り関係がないわけです。そうしますと、診療報酬の中で、これは点数が非常に低い、したがってこれだけの減税を考えてやる必要があるという意味でつくられた、ところが、それでもって関係のある開業医を主体としたものについてはいいかもしれませんけれども、しかしそれがないところは依然として低診療報酬で医療をやっているわけですから、それだけ苦しいわけですよ。——意味がわかりますか。——いま大臣から答弁がありましたように診療報酬は非常に低い、低医療だ。これではやはり営業が苦しかろう、そこで特別に七二%の租税特別措置法の中に入れて検討してやる必要があるのではないか、こういう意味で議員立法でつくられた、こういう経緯があるわけですよ。したがって、その後改定はされているけれども、しかし七二%というものは依然として残ってきているわけですよ。したがって、いまの診療報酬の中にはその分も含まれて考えられておるということは当然言えると思うのです。とするならば、その七二%の租税特別措置法の恩恵——恩恵と言っては失礼かもしれませんけれども関係のある開業医等はいいとして、そうでない、関係のない国立病院やらあるいは自治体病院やらあるいは一般の病院やら、そういうところは低い診療報酬でやられておるわけですから苦しいと思うのですよ。わかりますか。そこらの絡み合いというものはどういうふうに考えていますか。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 この社会保険診療の租税特別措置の及ばない範囲というものは、実はこれは所得税法にもありますが法人税法にもあるわけでございまして、したがってカバレージはほとんどすべての医療機関に及んでいるわけであります。ただ及ばないのは、経費率が七二%以上になった場合には及ばないという問題が一つあるわけでございまして、いま一つ先生のおっしゃる公的医療機関でございますが、これはもともと税がございませんから、したがってこれより悪いという傾向にはなるわけではございません。したがいまして、そういったような対比では問題がない。一部自由診療等に問題を波及するといろいろとまた問題があろうと思いますが、総じて申しますれば、こうした問題についてのカバレージは十分に私は医療機関には及んでいるものというふうに思っております。
  154. 村山富市

    ○村山(富)委員 いずれにいたしましても、もう時間もございませんから余り掘り下げませんけれども、最近の物価の上昇やらあるいはことしの春闘で賃金も上がったという状況の中で、七二%の問題も問題になっておる。したがって、それとの絡みの中で診療報酬の改定もしなければならぬでしょう。しなければ、いま言ったような病院なんか大変な苦しい状況にあるわけですから、したがって当然問題にされると思うのであります。ただ中医協が開かれないからなかなか問題の解決ができないというところに大きな問題があると思うのです。  そこで最後に、中医協はいいごろ機能を回復して再開される見通しなのか、そこらの情勢についてちょっとお答え願います。
  155. 田中正巳

    田中国務大臣 いまのところ、冒頭議論になりました辞任問題をめぐりまして、中医協が開催される見込みというのは立ちません。ただ、中医協そのものに是が非でも復帰せよというような法的担保がないというのがこの制度の実態でございまして、私どもとしては関係者がそうしたことを踏まえて復帰をしていただくことを切に説得をいたし、またこいねがう以外に方法がないというところに私の苦慮するところがあるわけであります。しかし、先生おっしゃるように診療報酬改定ということも、常識的に考えまして今後考えられないわけでもございませんので、そうしたことを踏まえて、さらにひとつ中医協が正常に活動するように今後根強く、また真摯に、これについて関係者の御理解とお考え直しをいただくようにさらに一段と努力を払うつもりでございます。
  156. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは見通しがあればいいですけれども見通しがないわけですから、もし中医協がずっと見通しを持たず、また中医協そのものの改善がなされなければ復帰しないとかなんとかの問題になりますと、これは法律の改正をする必要があるという問題にもかかってくるわけです。そうしますと、いま申し上げましたように病院というものは大変苦しい状況にある。特に自治体病院は相当数赤字を抱えて困っている病院がたくさんあるわけです。そういう事態に対していつまでもそのままでいいかと言えば、それも困ると思うのです。そういう場合の対策というのは考えていますか。
  157. 田中正巳

    田中国務大臣 この診療報酬は、中医協に諮問して答申をいただかない限りできないことになっておりますものですから、そのような措置は私はとれない。かつてそれに類したことをやって問題になったこともございますから、さようなことはできません。したがいまして、中医協に復帰をしていただく、そのことをやる以外に方法がないということですから、私がいろいろと努力もし、悩んでもいるということでございます。
  158. 村山富市

    ○村山(富)委員 お苦しみや悩みはよくわかりますけれども、しかし、お苦しみや悩みだけではいまの病院の、特に自治体病院なんかの苦しい現状は打開されないわけですよ。したがって、それはやむを得ないというふうに見過ごすのか、あるいはそういう場合には何らかの対策を考える必要があるというふうに思われておるのか、そこらはどうなんですか。
  159. 田中正巳

    田中国務大臣 ただいまのところ、中医協の仕組みなり機能というものは立法事項でございます。したがいまして、現行法がある限りにおいてはあの中医協のルールにのっとってやる以外に方法がございません。したがって、いま中医協が不正常な姿になっているからといって直ちに中医協のあり方なり機能というものをこの際改定するような措置というものは、現在のところは考えておりません。しかし、診療報酬の改定という問題がいつまでも遷延をしているということは医療の当事者にとっても困りますし、また国民の健康あるいは診療に大きく影響をいたしますものですから、したがって、われわれとしてはできるだけ早い機会においてそういう支障のないようにいたさなければならない、それだけしか申し上げられないのが現状でございます。
  160. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは掘り下げてもなかなか具体的な回答がもらえないわけです。それはむずかしいからそうだと思いますけれども、ただ何か見通しがあって答弁されるならいいのです。いろいろ悩み苦しんでおるけれども、いつ開かれるかわからない、見通しが立たない、こういう現状にあるだけに、特に例を挙げて申し上げましたが、自治体病院なんか相当赤字を抱えてみんな困っておる、こういう現状です。それを、だからといって放置するわけにはいかぬじゃないですか。これは国民の医療に対して大変大きな影響が生まれてくる可能性もある。そこで、そういう病院等に対しては何らかの助成をするとか補助を考えるとか手を打つとかいうようなことをお考えになりますかどうですかということを聞いているわけです。
  161. 田中正巳

    田中国務大臣 自治体病院等のお話がございましたが、これ等につきましては別途助成の措置を予算で講じておるわけでございますが、基本的には診療報酬の改定ということを実施しなければ問題は解決をしないということになりますので、単なる助成等々では問題は解決いたしませんから、診療報酬の改定というものができるだけ速やかに円滑に行われるようにしなければならないというのがこの問題の焦点だろうと思います。
  162. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは繰り返しになるから申し上げませんが、見通しがあればいいですよ。あなたも言われましたように、いつになったら出てくるかわからぬのでしょうが。だからやっぱりその間の対策というものは——それは中医協の組織の改善もできない、これは法律事項だからできませんよ。同時に、それができなければ医師会は帰ってこない、こういうあちこちに壁がある。だから大変むずかしい。だけれども現状の病院関係というものは相当苦しい現状にある。だからといってそういうものをそのまま放置することはできぬのじゃないですか。その場合にはやっぱり何らかの適当な手を打っていくということを考える必要が当然あるのではないかということを言っているわけですが、もうそれ以上答弁を求めません。そういうことについても今後十分お考えをいただいて、適当な助成措置を考えるなり、する必要があるのではないかということを強く私は訴えておくし、要望しておきたいと思います。  次に、ベッド規制の問題について若干お尋ねをしておきたいと思うのです。  いま厚生省は各県に対して地域医療計画を策定しろ、こういう指導をいたしております。地域医療計画を策定するに当たっては地域住民の要望に十分こたえてやるような計画をつくりなさい、こういう指導もしておるわけです。これは当然のことだと思うのです。ただその際に、住民の期待というものは、地域医療計画の中核になる病院は公的病院がなるべきである、こういう要望が非常に強いです。したがって、これからつくられる地域医療計画は公的病院を中核病院としてつくっていく、こういう考えがあるかどうか聞きたいと思うのです。
  163. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 地域医療計画は、先生おっしゃるように住民の期待する医療に対応するということが必要でございますが、それぞれの地域の自然、社会的な条件等がございますので、それに対応した医療計画が必要で、たとえば高血圧患者が多いというような地域の問題等もございます。おっしゃるように地域医療計画でございますから、わが国の医療制度では民間の病院もあり、個人の開業の先生もおられ、開業の先生の中には耳鼻科がおられるけれども病院には耳鼻科がないというような実態もあるわけでございまして、公私を問わず総合的に医療計画というものは検討する必要がございます。  ただ、医療計画をだんだん積み上げてまいりますと、たとえば広域市町村圏を一つの医療圏と設定して、その中である程度の疾病は完結しよう、特殊な非常にむずかしい疾病以外はここで完結するというのを医療計画の一つの基本に考えますならば、これを下から積み上げてまいりますと、かなり特殊な専門的な医療というようなものも請け負う病院も必要だという積み上げになってこようと思います。そういうときに、仮に私がいま申し上げましたように、かなり地域のむずかしい医療あるいは必要な医療の提供が、いまはその地域にはないけれども計画としてはぜひ必要があるというようなときに、これを果たす役割りは国公立等が中心になる。まして数の上で、あるいは地域的な条件からいって、市町村、県を含めた広い意味の自治体病院あるいは——国立というものはこれは計画的にやったものではございませんので、陸海軍病院等を引き受けたものですから、配置その他に計画性がございません。しかしこれももう戦後三十年医療機関として運営してきておりますから、地域医療計画の一環としてその地域で国立はこうあってもらいたい、また国立のサイドとしてはこうしたいという両方からの医療計画に当然国立も参加する形の中で、国公立がそのような中核的な医療の体制を整え、これに国が助成措置を講じていくというような考え方に立つのが地域医療計画であるわけでございます
  164. 村山富市

    ○村山(富)委員 一定の医療圏を設定して、その医療圏内における地域の医療計画を立てていく。その医療圏の中に占める配置といいますか、そういうものについてはやはり公的病院が中核なら中核になってやってもらいたい、こういう地域住民のニーズは私は非常に強いと思うのです。  どういう意味で強いかと申しますと、たとえば僻地医療あるいは救急医療、夜間医療、難病対策、いろいろな問題がたくさん出てきているわけです。言うならば採算に合わない、不採算医療部面というものが大変ふえてきておる。これはやはり一般の開業医にしてもらうことは実際無理なんですよ。やはりどうしても公的病院なら公的病院がその任務を負わなければならぬ。そういうものをやはり中心として考えた場合に、中核病院は公的病院がなるべきであるというような期待というものがあるのは、ある意味では当然だと思うんですね。そういう意味で私は申し上げているわけでありますが、ただその場合、いまある医療法の第七条第二項のベッド規制、病床規制の問題がそれを非常に阻んでおる、足かせになっているということは否定し得ない事実だと思うんですよね。その点はどう思いますか。
  165. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の先ほどからのお話の中の地域計画を立てますときに、いま病床不足の地域というものもあるわけでございます。病床不足の地域に対する積極的な援助というようなものが従来不十分であったことは私も認識いたしておるわけでございます。先生がおっしゃるように公的病院、国公立——公的というのは日赤、済生会、あれを公的と言い、公立と呼び国立と呼びという、まあ国公立と仮にこういうふうに略称させていただきますと、そういう形のものが、いま先生のおっしゃるような不採算というものは必ずしもイコールではございませんが、不採算というのはやはり高度の医療機械その他のものも絡まってくるむずかしい医療ということになりますので、おっしゃるとおり資金を投入していくたてまえからいっても、公的病院、国公立病院等が中心になるということが言えると思います。  ただこの場合、患者を中心に考えたときには、やはりその医療に患者がいきなり、自分の病気の重さを知っていて行くわけじゃございませんで、まず身寄りの医療機関に行き、そこでいわゆる医療機関が連係して、本当に患者のための医療の対策ができるようにすることがむしろ地域医療計画の最終の目的でなければいけないのでございまして、建物を建てるとか大きくするとかいうだけが目的ではございません。したがって、この加算制度があることが——おっしゃるように病床規制があるということに対する気持ちの上での、何と申しますか、過去の立法の当時のいきさつはともかく、現状には合わないというお気持ちはわかりますけれども、それに対応して、必要な公的病院が果たすべき病床については加算制度が設けられておりますので、この運用について、先生が過去の委員会等でこれらの都道府県の医療機関整備審議会における取り扱いが少し問題があるという御指摘がございましたので、医務主管課長会議等でこの点について、ただ規制するための審議会にかけるという趣旨ではないんだ、みんながやはり理解して、言うならば地域医療計画というような観点に立っても理解した上で、その加算というものを承認して結構だというような空気になるような整備審議会であるように期待することを会議の席上もはっきり申し上げてあるわけでございまして、そういう意味から加算制度を活用し、その加算に、いまは一部にしか補助金がございませんけれども、できるだけそういう特殊な加算をしていく機能に対する補助金の設定というものを今後の課題にしたいというふうに考えておるわけでございます。
  166. 村山富市

    ○村山(富)委員 たとえば公的病院、国公立病院があって、そして開業医がこうある。そのチームワークをとりながら、それぞれの持っている目的と任務というものを振り分けて、そしてそれぞれの目的、任務を果たしていく、そして全体の医療に対する期待にこたえていく、こういうことが大事だと思うんですよ。思うのだけれども現実にたとえばベッド規制がある、あるいは加算ももちろんありますけれども、しかしそれがうまくいっているかといえば、現実にはいっていないんですよ。そしてあなたは、いま建物をつくったりベッドをふやしたりするだけが能ではないというお話もありましたけれども、しかし、現実にはやはりベッドをふやしてくれという地域住民の要求も強いんですよ。  私は具体的に申し上げたいと思うのですが、たとえば日赤の場合、こういう例がありますよ。これは規制数値の範囲内でベッドをふやしてもらいたい、ふやす計画を持っておるというのが十病院はある。実際にできたのはわずかで、未実施が九あるわけです。計画を十病院も持っておりながら、できずにおる病院が九あるわけです。ほとんどできていないんですね。それから転床したい、こういう希望を持っておる病院が十三ある。その中で八つの病院は未実施ですよ。できないんですよ。それからいま言われた加算病床についても、六病院が増床の計画を持っておる。できないのが四つあるのです。転床の場合も、二の病院が転床したいという希望を持っておるけれども、全然できていない、できないのです。これは日赤の場合ですよ。自治体病院の場合を見ますと、規制数値の範囲内で増床したいという希望、計画を持っておる病院が十六ある。未実施が四。転床計画を持っておるのが十四病院、半分は実施ができない。加算病床による計画を持っておる病院が十二ある。できない病院が十一あるわけです。一病院しかできていないのです。あるいは転床したい、これは加算病床ですよ、八つの病院が計画を持っておるけれども、七つの病院ができないのです。  こういう増床計画、転床計画がなぜ必要なのかという調査をしてみますと、入院者が多く病床が不足しておる、老人医療の需要に対応するために必要である、救急医療のために必要である。これはもう日赤の場合も自治体病院の場合も、こういう理由が圧倒的に多いわけですよ。なぜできないのかということを聞いてみますと、これは自治体病院、日赤の場合も同じですが、地元の医師会が反対する、県の医師会が反対する、だから、どうしてもこの規制にひっかかって認めてもらえない、できないのだ、こう言っているわけですよ。  しかも、福島のある市立病院からはこういう訴えが来ていますよ。これはちょっと読んでみますけれども、   この病院は福島市の郊外、宮城県と境を接する伊達郡に所在する二四五床を有する総合病院である。   昭和四十四年五月移転改築完了後、年々医療需要が増加して一般病床の不足が顕著となり、現在においては一部予約入院制等も実施している。   かくては地域医療の確保に重大な支障を来すこととなるので、目下一般病床一五〇床の増床計画を進めているが、おおむね二〇〇床以上の一般病床を有する総合病院云々の医療法令の規定により、県北ブロックの計数によることとなったので、近年続々と私立病院の新設されている福島市が含まれる結果、大きな病床超過ブロックとなっていることは、まことに遺憾なことである。   何故に人口一〇万を有する伊達郡に二〇〇床以上の一般病床を有する総合病院があってはいけないのか、何故に二重の枠をはめて制限しなければならないのか、全く理解に苦しむところである。  こういう訴えも来ていますよ。これは私のところに来ているわけです。ですから、いまあなたが言われたようなお話ではなくて、現実にはやはり各地域の医療機関というものは大変困っておるわけですよ。言うならば、地域の住民のニーズにこたえていないわけですよ。こたえられないのです。それだけこの病床規制が足かせになっておるということは言えると私は思うのです。そこらの実態というものはどういうふうにお考えですか。
  167. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 必ずしも数字の上で先生いま例に挙げられたような個々の具体的な例を持っておるわけではございませんが、いま具体的に福島県の伊達郡の問題を例に引かれましたが、     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕  これが福島市まで入っているというのは、病床の計算の関係等も踏まえて少し検討してみませんとわかりませんが、総合病院であるということで二保健所以上の関係があるいはあるかもしれません。しかしながら、医療圏の関係からいきまして患者の一部は福島市も活用するでしょうけれども、十万という診療圏が実際にどのように医療機関を要求している実態というものがあるかどうか、このようなことが恐らく地元の医師会あるいは医療機関整備審議会等にかかれば議論される問題であろうと思いますが、お答えとしては、事務的にこのような例がございましたので調べさせていただきたいということと、この医療需要の関係の達成が、例を挙げられた数からいろいろございますけれども、その時期なりあるいは判断なりによっては施設側の計画そのものの変更等も含まれている事例もあろうと思うのでございまして、私たち医療審議会にも医師会関係者も出ておりますけれども、特に加算制度等については、積極的にこれを地元医師会が反対するというふうなことがあったならば、日本医師会にそのような実態を知らせてもらってもいいというようなことで、地元医師会に対するこの医療機関整備審議会あるいは病床規制の制度の理解の問題について、日本医師会としても各都道府県医師会、関係医師会の理解を進めるよう努力することを発言しておられますので、具体的な事例の中心になったものにはそれぞれの理由もあるいはあるかもしれませんが、かなり広範な日赤、自治体等の事例でございますので、具体的な日赤あるいは自治体病院協議会等で事例がございますればそれに対応するような措置を講じてまいりたいというふうに思っております。
  168. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間がありませんから残念ですけれども、いろいろ具体的な事実を私知っていますよ。承知しています。だから申し上げたいと思うのだけれども時間がございませんから申し上げません。ただ、あなたの方から出された通達だって、本来ならば不許可になる増床については審議会にかけなさい、こうなっているけれども通達はそうでなくて、不許可、許可にかかわらずかけなさい、こうなっているでしょう。ですから必要以上にその審議会、病床規制がやっぱり足かせになっておる。壁になっておる。ですから、もう書類を出す前に保健所に問い合わせると、それは無理です、やめてください、こう言って断られる例もあるわけです。それくらいやっぱり一つの大きな壁になっておるということは否定し得ない事実です。ですから私はこの際やっぱりこの規制というものは撤廃する必要があるのではないかというふうに考えているわけです。  同時に、これはこの委員会でも問題になりましたが、薬事法の改正もなされました。最高裁の判決もあって、薬局の距離制限は憲法違反である、こういう事例もあるわけです。私は厳密に言えばこのベッド規制も憲法違反にやっぱりかかる疑いがあると思うのです。したがって、ここらで十分検討を加えていただいて、本当に医療計画を立てるならば、そんなベッド規制によって縛られて医療計画を立てられるのではなくて、もっと白紙になって、そして地域住民のニードにこたえるだけの医療機関が整備されていく、充実されていく、こういうことが必要ではないかというように思うのです。そこらに対する最終的な考え方を大臣から聞いて終わりたいと思います。
  169. 田中正巳

    田中国務大臣 医療法七条の規定でございますが、これはもともと議員立法でやられたものでございます。私議員のときにこの制度については非常に疑問に思っておりましたが、これを一番強く主張したのは実は当時の社会労働委員会の野党の方でございましたことを私ははっきり記憶をしているわけでございます。これが憲法違反であるかどうかにつきましては、私は薬局等の場合とはいささか違っておって、直ちに憲法違反にはなるものではないというふうに思っております。  その理由等を申し上げる時間がございませんが、しかし、やはりこの病床規制が地方における医療のニードと合致をしてないということは、お互いに選挙区を持っているわれわれが一番知っているわけであります。この病床基準が一体地方の医療需要の実態にマッチしているかどうか、あるいはあれは一万対何床ということでございますが、人口の量については考えておりますが、人口の質について考えておらない。たとえば若年労働層を他に出しているような地域では罹患率が多いというようなことについてもネグっておるわけでございまして、そうしたところにも問題があろうと思います。  要は、公的医療機関と私的医療機関とが同じ機能を持って同じように競合状態にあるというところから発想が出た問題でございますので、これはそうした公的医療機関と私的医療機関の機能の分化というものをあわせ備えて配慮いたさなければならないと思いますし、また制度、たとえば老人医療とかなんとかいう制度の問題、あるいは社会事情、診療圏等々の問題とあわせて医療事情の変化に対応し、実態として地方の医療ニードに背馳することのないようにしなければならないという時代が来ているというふうに私は思っております。しかしこれについては実際問題として、やはり制度がある以上関係の医療機関、特に県医師会等との間に十分理解と納得を得るように最大の努力を払って理解を得るようにするのが当面の第一の手段だろうというふうに思っております。問題のあることは私もよく知っております。
  170. 村山富市

    ○村山(富)委員 問題があるわけですから、私はもうこの際病床規制なんかは撤廃して、そして本当に地域の住民のニードにこたえ得るような医療計画というものをしっかりつくっていく、そのためにはそれがやはり必要であるというふうに思いますから、そのことを強く訴えて十分御検討いただくことをお願い申し上げまして終わります。
  171. 大野明

    大野委員長 次に、寺前巖君。
  172. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうは、五月の二十五日に京都で開かれました重症心身障害児(者)を守る会の全国大会にお招きをいただきまして参加したわけですが、厚生大臣も御参加くださっておられました。せっかく全国的な皆さんのお話を聞いたことでございますので、この際、国政の分野においても明確に審議しておくことが大事だと私は思いますので、その一つについてお聞きをしたいというふうに思います。  この大会に参加いたしまして私が一番印象に残ったことは、あるお母さんが、結婚式や法事に参加しようと思ったけれども、自分には二人の重症心身の障害児がおる。これを連れていくということになったら、その結婚式にしても法事にしても雰囲気を崩してしまう。また社会の人から親戚の人を含めて何となく疎遠な目でもって見られてしまう。行くことも困難だし、また行ったとしても後々大変な思いをしなければならない。せめてそういうときに一時預かりをしてくれないものだろうか、これは二、三の方から大会でもお述べになっておられました。  私はこういう問題で何人かの人からも持ち込まれております。京都で私と一緒に仕事をしている西谷君という人がおりますが、この人の奥さんのきょうだい、いま三十三歳になりますが、重症の人です。あの戦争中に病気にかかって、一歳になるかならないときに京都大学の病院に入れた。そのときは本当に治ってくれということを期待した。だけれども学校にやれるような姿にはならなかった。それから今日まで三十数年たつわけだけれども、ちょっとした買い物にいくためにも目を離すわけにいかない。私も直接会いましたが、おとなしい子だけれども、親がおらない間に高いところのものを取ろうとしてひっくり返して事故を起こすということが何度かあった。だから、ちょっとした外出もできない。ところが、最近胃潰瘍だという診断をお母さんが受けた。私はそのときにぞっとした、私が入院したら、一体この子をだれがめんどうを見るのか、入院する自由すら私にはないんだ、まして年がいってきたから、私が死んだときにどうなるのだろうか、聞くとこのごろは安楽死させるところの注射もあるそうだから、寺前さん頼みますよ、安楽死させてやってくださいよ、この子にとまで大変なことを聞かされる始末です。  私は、この分野の親御さんは本当に五体満足で生活をしておられる多くの国民をうらやましがっておられるだろうと思います。何とか人さん並みにみんなが楽しく生活できるようにしようとするならば、そこは政治の力でやらなければならない問題だと思います。やらなければならないことはたくさんある。だけれども、せめて一時お預かりをすることくらいの措置はできないものだろうか、私は率直に言って、まずここからでも手をつけるべきだと思います。従来からも問題になっていながら、なぜそれができなかったのだろうか、私は不思議でかないません。この際に私は大臣から率直に、すぐにでもこのことからでも手をつけるようにやってもらえないだろうか、お願いかたがた御意見を聞きたいと思います。
  173. 田中正巳

    田中国務大臣 先生も私も京都における重症心身障害児(者)を守る会に出ました。実は、私はいま厚生大臣ですが、議員の時代から重症心身障害児者の対策についてはいろいろと微力を尽くしてまいりました。お子さん自身のためにもまたああしたお子さんを持っている親御さんのためにも、できるだけのことをやってやらなければならないと思って施策を積み重ねてまいりました。当初ベッドをつくっていただきたいということでございましたものですから、したがって国立療養所あるいは私的な病院等にベッドをつくることに狂奔をいたしました。実は今日かなりの病床は整備をしてまいりました。そのころから在宅対策というのを今度は強化をしてもらいたいという話がほうはいとして出てまいりました。これに手を染め始めたところでございますが、先般、やはりこの在宅対策の一環だろうと思いますが、緊急一時保護入院制度というものをやってもらいたいという声がありました。聞いておりますと、まことにごもっとものようでございます。したがいまして、  いろいろと今日検討をいたしております。しかし、これを一遍に制度として全国的に実施できるかどうかということについては、いろいろ技術的に検討しなければならない点があるようでございますし、事実これを要望している当事者の皆さんについても若干の危惧の念があるようでございます。何分にもああした特殊なお子さんでございますので、これを手がけてなれておるようなお医者様やあるいは看護婦さんのところでお預かりするならば別でございますが、どうもそうでない方のところへやってうまくいくものであろうかという危惧の念を当事者の親御さんさえ持っておるような状況でございまして、こうした問題を踏まえて、私どもはこうした問題を乗り越えて、何とかあのような要望にこたえてまいりたいというふうに実はいま考えておるわけであります。  したがいまして、まだ固まったわけではございませんが、ああした切実な声を受けて、私どもとしては何とか明年度これについては一部テストケースでもよろしいから制度化をしたいというか、実施をいたしたい、そのための予算要求を起こしたいものであるというふうに考えて、今日いろいろ検討しているというのが現状でございます。
  174. 寺前巖

    ○寺前委員 すでに東京でも部分的に行われている経験もあります。児童福祉法の法律を見ましても、一時収容をすることのできる条項もあります。ですから、法的、制度的にはできないことにはなっていない。実践の経験もある。お金を準備するという問題は、それは当然伴う問題です。だけれども、べらぼうな金がかかるという相談事でもないと思います。そうすると、問題は、いま大臣がおっしゃったように、ともかくやるのだという立場からものを見なかったら進まないであろう、やった経験があるし、そこではよかったという声も出ているのだし、少なくとも緊急に警察に一一〇番をかけたりあるいは消防署に一一九をかけたりするのと同じように、たとえば一〇八をかけたならば相談に乗ってもらえるという体制をそれなりにも出発させるということが私は今日きわめて重大だと思いますので、より積極的に大臣お進めくださることを改めてもう一度私は要望したいと思います。  第二に、どの親御さんも小さいときには何とか育てたいと思ってみんな一生懸命です。ところが、大きくなってきた段階にくたびれてしまうというのがいまの大体の姿です。ところが、大きくなった段階、くたびれてきた段階に、児童相談所にそれじゃ預かってくれる施設がないかと言って相談を持ち込んだら、そのときには実は私の方ではもうお預かりするだけの能力を持っていませんという現状になってきているところがたくさんあるわけなんです。国立の療養所でずいぶんお世話を願っております。定数は決まっておる、だけれども、実際はそれだけの定数をお預かりできないような姿のままにいまなっておるところがたくさんあると思います。そこでは厚生省の方からは指示はしていないかもしれませんけれども、一定の運営をやっていく必要性から、疲れた段階に持ち込んだときには受け入れてもらえないという姿が生まれているというのが実態だと私は思うのです。また、あの施設の中に入っている子供たちも年々大きくなってきます。そうすると、子供のときのベッドと大人になってきたときのベッド、あるいはめんどうの見方、負担は大きくなってくると思います。それを子供のときに預かった姿のままで運営せいと言っても、運営することがむずかしいという事態にどの療養所もやはり直面をしていると思うのです。  ですから、そういう意味から言うならば、私は本当に重症のこの子たちを預からなければならない、親の側から言うならば、疲れ切ってしまうこの成人段階子供たちをどのようにして施設の分野においても受け入れてやるかということについて特別に手を打つということが、私は新たな問題に直面していると思いますが、この問題について厚生省としてどのように受け入れようとしているのか、御見解を聞きたいと思います。
  175. 上村一

    ○上村政府委員 まず、重症心身障害児が大きくなりますと、だんだんと在宅での処遇がむずかしくなってくる、子供のときから施設に入れることについては、親御さんはむしろ自分の手元に置きたい、いまお話しになったとおりだと思うわけでございます。そこで、四十二年に児童福祉法を改正いたしましたときに、十八歳以上の、子供という言葉を使えば少々おかしゅうございますけれども、十八歳以上でございましても新しく重症心身障害児施設なり国立療養所に入れられる、そういう立法措置を講じたわけでございます。そういたしまして、現在そういった大きな障害児それから小さな障害児含めまして、できるだけいま家庭にあって入ることを待っておる人たちが入れられるベッドの整備を急いでおるわけであります。しかし、実際問題といたしまして、重症心身障害児施設として整備してまいりましたので、大きくなったり重くなった子供が施設に入るのについていろいろむずかしい点があるという事情も承知しておるわけでございます。そこで、そういった実態を考えて、措置権者——措置権者といいますのは、都道府県知事ということになるわけでございますが、都道府県知事とその施設が十分に話し合うようにしてもらいたいというふうにお願いしておるわけでございます。  重症心身障害児の施設を整備しましてもう何年にもなるわけでございますが、年がたつに従いまして年長化に対応する方策に取り組まなければならないわけでございまして、目下それをどういう形でやるか検討しておるところでございます。問題意識は持っておるつもりでございますが、その対応策についてはいま検討中ということでございます。
  176. 寺前巖

    ○寺前委員 そこに問題があるということは御理解いただいた。私はそれは非常に大事なことだと思うのです。  それで、私はこの席上で言いがたいことがあるのです。  私の選挙区であります、加悦町というところがありますが、ここは丹後のちりめんの織り屋の地帯なんですね。ある家の子なんですが、お父さんが病院へ入ってしまった。奥さんが機織りをやりながら仕事をしていく上で、たまらない、何とかこの子を収容してもらえぬだろうかということで持ち込んだけれども、どこも相手にしてくれない。しかしこのままでいったら、自分のだんなさんの世話にも行かなければならないし、生活のための賃織りもしなければならない。もうたまらないということになって、どうしたかというと、精神病院に預けてしまうという措置をやってしまった。私は深刻だと思います。田舎では精神病人扱いにされて、牛小屋にほうり込まれたりしておる人がいまだにおるのですよ。社会的な目というのは、そういう扱い方になってしまうのですよ。私はどうしたって、この成人化しつつある子供たちに対して、やはり将来にわたって生きていくという立場にある人たちに対しての取り扱いは、どうしなければならないかという積極策を打って出ることを問題意識として、必ず次の国会に向かって準備していただくということを問題提起として、この問題については要望で終わっておきたいと思います。これは必ず、ぜひとも次の国会までに準備をしていただきたいということを強く要望したいと思います。後で大臣の御答弁をいただきたいと思います。  その次に、同じく最近一連の精薄とか筋ジストロフィーの障害者の集会に、この間また私は御招待を受けて、行きました。きょうは、その一つの筋ジストロフィー症の人たちの問題について二、三聞いていただきたいと思います。  京都に国立の療養所の宇多野病院というのがあります。ここに筋ジストロフィー症の子供たちが入っております。入院の定数は八十床ですけれども現実に入っているのは半分余りの四十二床です。ところが、この療養所に対して早く入れてくれという要望が十二人の方から出ているのです。定数から言うならば受け入れることのできる定数だけれども現実には入れてもらえない。この十二人のうち、九人までは学齢の子供たちです。どうしているかと言えば、学校にも行けない状態で家におるわけです。その中から二人の子供は、この宇多野の療養所に最近養護学校の小学部、中学部を設けていただいたから、そこで、通学をやっているわけです。一年生、二年生を一つにしたクラス、六人のクラスがありますが、一年生の子、そのうちで三人おって、一人を除いて二人は通学をしているというのが、その養護学校の実態なんです。この待っている十二人の子供たち、親御さんたちはみんな早く入れていただきたいと言うのだけれども、私は宇多野だけかいなと思って、全国聞いてみたら、至るところで同じ問題に直面をしております。筋ジスの子供たちというのは、いま、将来にどのように生きていくごとができるかということで、その根本的な治療を一方では待っております。一方では、さえた頭脳を人さん並みにみがいていきたいという要求を持っています。この両面を生かしていかなければならないというのが、国の施策だろうと私は思うのです。  この二十前後あるところの全国の国立療養所、そこでみんな待っている十数名ずつの子供さんたち、何はさておいても早く受け入れてやれるという条件を積極的につくれないものだろうか。いまの医学の水準では、二十前後でもって命が奪われるという状況下に進んでいるこの人たちです。私たちはせめて、早く、その短い生涯を生き生きとして生活さしてやるための根治療法とその病院生活の保障の手を打ってやってもらえぬだろうかということをつくづく思うのです。この問題についてどのように解決しようとしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  177. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 宇多野療養所の問題でございますが、先生おっしゃるとおり八十床ございますけれども、養護学校ができるまでその四十床を教室に使っておったのでございますが、養護学校ができましたので、ただいまは四十床二つの中に、二十三、十八、半分ずつ収容いたしておるわけでございます。したがって、病床の数から申しますと、あと約三十数名収容できるベッド数が用意できておるはずであるわけでございます。  この問題につきましては、宇多野以外の国立の施設で、やはり重症心身あるいは筋ジス施設で十分の収容ができていない理由の中に、看護婦の不足が大きな影響を与えておりまして、宇多野の学院は、実は付属学院があるわけでございますが、ことし二十五名卒業して宇多野病院に七名就職してくれました。他の卒業生を四名確保することができまして、四月末までに十一名確保したのですが、同じ一月から四月までの間に六名退職しておるというような実態でございまして、この施設は、十二名の待機患者の中、特に学齢期で養護学校ができたこととの関連で、希望が一層強いことは推察できるわけでございますが、ここにどのような対応を、この十二名の方の診察なりあるいは病状なりによって優先順位なりその配慮は、院長以下関係者判断にまつといたしまして、基本的には、病院側の判断といたしましては、現在のお世話できる職員数に対応した以上のものは無理ができないという基本線から、やはり職員の確保に最大限の努力をすることによって、一名でも二名でも収容するように努力いたしたいというのが宇多野の病院当局の現状の判断でございますので、われわれといたしましても、看護婦が最も不足する近畿地区の病院でございまして、困難な程度もわかるわけでございますけれども、極力努力させまして、養護学校との関連の、筋ジス患者という特殊の事情にもかんがみても、最大の努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  178. 寺前巖

    ○寺前委員 私はそれは病院任せにせずして積極的に手を打っていただきたいというのは、これは重心の子供のめんどうを見る看護婦さんも大変なんです。ところが、筋ジスのめんどうを見る看護婦さんの大変さとは意味が違う。重心の子供をめんどう見る場合にはそれなりに未来にわたって変化が見えるわけなんですよ。希望がそこにあるのですよ、訓練さしたらさしただけのことが。はしを持ったとか、そういう育てる希望が出てくるわけです。ところが、残念ながら筋ジスの子供の場合は頭脳は人さん並みだ、りっぱな子がおる。ところが刻々と弱っていくのが見えていくから、そこには看護婦さんにはつらさばかりが残ってくるわけなんです。健康上のつらさだけじゃなくして、生きがいというか、育てがいという意味におけるつらさがあるわけです。それだけにこの分野で働く看護婦さんを初めとする人々に対する世話をしてやらなかったならば、私は別な意味で大変だと思う。だから、それは一病院に任すのじゃなくて、国として積極的にこういう分野で働く人たちに手を差し伸べて、積極的に送っていく、積極的にその人たちの仕事を激励してやるのだということを国としても考えていく必要があるのじゃないだろうか。  そのことが一つと、もう一つは、ところがこの通学している子供が養護学校でお昼に御飯を食べます。初めのうちは職員の皆さん、学校先生、親御さん、一緒になって、この子供も寮の中におる子供も、一緒に食事をしておったのです。ところが、あなたは通学者だから違いますといってほうり出されちゃった、食事が。私は、せめて収容できないんだったら食事ぐらいは一緒に同じものをつくってあげて、昼の生活ぐらいは一緒にすることぐらいの温かい措置はできないものだろうか。そんな形式論は打ち破るべきじゃないだろうか。ちょっとしたところにこの子らの問題はいっぱい含んでおる。私は直ちにそれは改善してほしいと思うのです。いかがなものでしょう。
  179. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生がただいま御質問の中で触れられた看護婦さんの問題は、重症心身、筋ジスの姿を心髄から表現された重要な問題であると思うわけでございます。特に、筋ジスについて、かえって看護婦さんがつらいということについては、全くわれわれもその理解を持たなければならないわけでございますが、わずかながらの救いとしては、国立施設は看護婦さんの勤務を交代できる場所を持っておるということが唯一の——民間の専門施設に比べては、そういう交代ができる場があるということが一つあるわけでございまして、そういう意味で筋ジスはわが国では国立の療養所関係だけでございまして、重心は民間の施設があり、そこでは交代という場がないということも一つ大変勤務のつらさの上に影響しています。  したがいまして、国立だけであって、なおかつその勤務の交代の場があるということの上に、さらに先生の主張は、もっと一病院だけの範囲で考えずに、地方局なりあるいは全国的な視野から看護婦の勤務の充実を図るようにして、筋ジスの看護の場を設けたらどうかという御提案なり御質問と理解するわけでございますが、この点につきましては、少なくともブロック単位に地方医務局がございますので、これらの問題は、卒業直後の資格を取ったばかりの看護婦さんあるいは経験ある看護婦さん、これらの方々の組み合わせ等も考えまして、単なる病院だけの定員確保という観点でなく、地方医務局単位にも少なくとも努力させるように、ただいまの御意見を生かしていきたいというふうに思います。  それから、通学児の食事の問題は、養護学校というものの性格が、私宇多野の実態を必ずしも理解しておるわけではございませんが、将来国立に併設した養護学校ができる場合には、県立が多いのでございますが、その場合は、病院サイドから学校に通う子供と、その養護学校に寄宿舎を持って、入院するほどじゃないけれども病弱でそこから学校へ来る、こういう二つがあるわけでございますが、これは筋ジスという限定した場合であって、しかも大部分が病院に入院しているために、教育委員会が養護学校を設置した、こうなりますと、そこに通学している子供に病院が給食している子供と一緒に配慮しないという御指摘は、私は初めていま具体的にはお聞きしまして、この程度の配慮を教育の場なり療養の場としてやらないということは、これはまずいという感じを率直に言って受けましたので、この点については、全国的な筋ジス施設の問題にも関連いたしますので、調べまして改善させたいというふうに思います。
  180. 寺前巖

    ○寺前委員 なお私は、この際に、子供の教育の問題になるわけですが、今度は少し育ってきている子がおります。それから、年齢が大きくなって筋ジスにずっと変化が生まれてきて入院してきている子がおります。そこでは、小中学部の養護学校から高校部という段階の問題が問題になってくるわけです。ここにはいま高校部はありません。そこで、一部の子供は通信教育を受けているのです。ところが、通信教育ということになったら、スクーリングというのですか、ここでは朱雀高校というところにスクーリングに行かなければならぬのです。それは大変だというので、月一回先生がわざわざここへ来てくれるわけです。それは自発的な御努力で、私は大変だと思うのです。ところが、月一回ということでは、実際上は人さんよりもうんと時間がかかるわけですね、卒業するまでに。積極的にこういう分野の通信教育というものを、これは本当にその高等学校の好意でいまそこまで手を打ってくれているのだと私は想像するのですが、もっと積極的に文部省としてこの分野の人々に対する通信教育を援助するという措置はとれないものなんだろうか。というのは、学校ヘスクーリングに行ったら、体がもともと血の通いが悪いというか、普通の条件下じゃないのです。やっぱり特殊に保護されたところで勉強しなければ続けられないという条件下にある子供たちに対する通信教育を受けて立つ場合の措置というのを研究する必要があるのではないか。これが一つ。  もう一つは、これはたしか養護学校が小中学校分校という形で存在していると思うのです。高校部を設けてほしいという場合に、厚生省として、京都市当局からそういう申し出があった場合には受けて立って、土地を提供して、そうしてその子らの高校教育を保障してやってもらえるかどうか。  この二点について聞きたいと思います。
  181. 国松治男

    ○国松説明員 病弱の養護学校子供の特に高等部の教育につきましては、基本的には先生がおっしゃいますように、高等部の充実ということを私ども考えておりますが、御承知いただいておりますように、養護学校全体がまだ不足しておりまして、そこをいま大いに督励をしておるところでございます。その中でだんだん高等部の方もふえてきておるというふうに見ておりまして、国の方でも施設費につきましては高等部も二分の一の補助をするというふうなことで対応いたしておりますので、今後ともその方はふやしてまいりたいと思います。  ただ、おっしゃいましたスクーリングの持ち方、あるいはそのほか在宅しておる子供に対してどういうふうに教育をすればいいかというふうな問題につきましては、通信教育という以外に訪問指導というふうなこともぼつぼつやられておりまして、小中学部の段階ではかなりの数になってきておりますが、高等部につきましては、高等部のカリキュラムをどういうふうに考えるかというふうなこととの関係もありまして、まだまだ研究すべきことが多いというふうなことになっておりまして、いまおっしゃいました在宅の子供に対する教育、それから通信教育というふうな場合のスクーリングの持ち方というふうなことも含めて今後の研究課題と私どもも承知をいたしておりますので、今後さらにその子供にとって一番よい教育方法というのはどういう形なのか、現場の方の意見も聞きながら検討をしてまいりたい、こう考えております。
  182. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 高等部設置ということに伴う敷地の必要が生じますれば、ただいままで宇多野療養所等に敷地の貸付をいたしておりますと同様に優先的に、国有財産特別措置法の趣旨にのっとりましても、優先的に配慮いたしたいというふうに考えております。
  183. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくは、文部省はもっと積極的に、これらの高校教育を期待する諸君たちに対する手だてというのは早く方向を出さなければいけないと思います。先ほど、残酷な話ですけれども、本当に二十歳過ぎぐらい、どこまで生きられるかというこの子供たちですよ。頭脳だけはりっぱに育っている子供たちなんです。その子供たちにより積極的にこたえる方向として、早く検討して措置を進めていただきたい。繰り返して要望したいと思います。  そこで、私は同時に、高校部から今度は成人化してきている子供たちがこの療養所でもおります。これは、全国的に早くから筋ジスをやり出したところはいま成人化してきている人たちがたくさんおります。この人たちを見ると、みんなでハムの研究をやって、そしてハムの資格を取ったということで喜びに燃えているところがあります。たとえば新潟県の柏崎の療養所ですか、六人の子供が、みんながみんなハムの試験を受けてそして取ったのだ。残念ながら一人の子供は亡くなってしまいました。しかし、そのことで本当に生きがいを感じているわけです。みんなは裁縫を勉強してあるいは簿記を勉強してと、本当にあと、先が世間的には知られている、本人たちも自覚している中で、毎日毎日そういう希望に燃えて勉強し、また作業をしている子供たちで成人化しつつある子供たちがおるわけですよ。これは小学校、中学校段階子供を病床で育てる育て方とは違った性格を持ってきていると思うのです。私は、筋ジスの病棟が、そういう成人化しつつある、違った段階にふさわしい人たちは分けて育てるという対策を打って出るべきではないか。このことについてどういうふうにされようとしておられるのか。その見解を聞きたいと思います。仙台にある西多賀ですか、ここの場合にはワークキャンパスという形でやられております。私はこういう措置が必要だと思う。しかも、たとえば宇多野の場合でも、普通の子供と同じように、晩の八時になったら、この成人化しつつある人たちが消灯時間にやはり入れられてしまうのです。扱い方はやはり別にしなかったら、大人にふさわしいやり方をしなかったら、本当に育ちゆく人たちに対してはやはり済まないのじゃないか。成人に対する措置を別途にやる、そのためのあり方というのは全面的に再検討してみる必要があるということを私はつくづく思うのですが、その点いかがなものでしょうか、お聞きしたいと思います。
  184. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほど来の御質問のように、筋ジスそのものの本質から申しまして、確かに単なる医療機関としての収容ベッドを提供し医療を提供しておればいいというだけで済まない問題があることはわれわれも十分理解しながら、先生御提案の成人病対策ということの一環といたしまして、四カ所のワークショップ、作業棟の予算を五十年度計上いたしております。これを進めてみたいと思うわけでございますが、またその運営の上でいま御発言のようにたとえば消灯時間の問題、他の幼少の児童との関連、こういうような運営上の問題について新たな対応が必要ならば、これらの問題もこの検討の中に含めまして考えたいというふうに思っている次第でございます。
  185. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もあれですからやめたいと思いますが、なお一、二私が直接受けた要望をここでお伝えをして御検討を願いたいと思うのですが、宇多野のこの子供たちが昨年のあの寒いときにどういう実態にあったかというと、四十数名のうち十名ぐらいの子供たちがしもやけにかかって、そして洗面器に足をつけてそのしもやけを治す努力をしているのです。それは、部屋の温度そのものはちゃんと考えてくれております。廊下が寒い、トイレが寒いということはあるとしても、全体としては非常によく配慮してくれているのですが、何しろ普通の体ではないということが前提なんです。  そこで出てきている要望の一つは、電気毛布をかぶせてやってもらえないだろうか。これが要望の一つです。  もう一つは、電動機つきの車いすがあります。これは非常に喜ばれています。あの筋ジスの方々の「集い」という文集ですか、これを読ましていただいても、この中に電動機いすの喜びが出ておりました。あるいは私どもの党の庄司議員が西多賀の療養所へ行かれたときにも、電動機つきのいすの問題の喜びが伝わっておりました。本当にそうなんです。あの電動機つきのいすに乗って一歩病棟から外へ出たら世の中が開けた思いをするということを子供たちが言うのです。私は非常に大事だと思う。そこで、力がない子供が宇多野の場合五人おるわけです。そこで現在配置されている二台だけだったら、あのいすに座れる者は、もう次はあれやでということで、少ない場合には残酷物語になるいすになってしまうわけです。だから力の弱い子等はみんな座れるのだということで車が配置されておったら、それは明るい未来を与える車いすになるわけだけれども、少ないと、限定されると、限定のいすに座る順番はという話になったときには深刻な思いをしなければならない。だから積極的にそれぞれの療養所を調べていただいて、この車をつけてやってもらいたいというのが第二の要望です。  まだいろいろありますが、時間もあれでございますので、この二点についての御見解局長さんからお聞きをし、総括的に最後に大臣のお話をいただいたら私はこれで質問を終わりたいと思います。
  186. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 電気毛布、具体的な御要望でございますが、実はこの点について担当医の主治医の御意見等も徴してみたわけでございますが、実は筋ジスの子供の健康管理の上で一番必要なことは全身の代謝の問題を余りに無理させますと命の長短にも影響してくるというような微妙な問題もございまして、一方また血行の障害があるために冷えやすい。したがって何か暖房をとらなければならぬ。しかし、その暖房のとる程度と、全身に何か毛布でこの暖房をとることがいいのか。必要な部分をどういうふうに暖房にすればいいのか。この辺について、電気毛布そのものがいいのだという結論がすぐ出ない面もございますが、一応その暖房というものが、ましてそれによる障害が実際に起こってくるということでございますと、これに対応する対策は考えたいというふうに思います。  それから電動車いすは、私もこの予算を四十九年から認めていただいて非常にいい予算だと思いますが、先生のおっしゃるように何かあの車が少ないから使える者はもう相当重症の者なんだというようなことがあるならば、これは非常に痛ましい問題だと思うのです。ただ、一面やはり余りに車いすの台数が仮に積極的に普及することによる児童、患者の積極的な自分の活動の問題との関連も出てまいろうと思います。その辺を調和いたしましてことし九十三台いただきまして、四十九年も九十三台、これで大体五カ年画計で四百六十台程度当面用意する計画にしておりますので、これは実際にそのような研究的な面からも見ながらいまの先生のような子供の御要望にこたえるだけでいいのか、医療の面との関連をどうしたらいいのか、そのようなことを十分研究班も設けてありますので検討いたしまして、この予算は引き続き充実するように努力いたしたい、このように考えております。
  187. 田中正巳

    田中国務大臣 寺前先生、重症心身障害者対策と筋ジスの対策に非常に御熱心で私も大変心強く思っているわけであります。実は私、長い間この問題を両方とも手がけてきた私としては、友達を見出したような気持ちがいたすわけであります。どうぞよろしく御支援を賜りたいというふうに思います。  しかし問題は、一応ベッド数の充足は進んでまいりましたが、この両者についてそれぞれ成人化をしてきたということ、それと在宅対策について新しいニードが出てきたこと等々を踏まえまして、さらにきめの細かい配慮をしなければならない段階に来ているだろうと思います。いままではもういけいけといってベッド数をふやすことに狂奔をしてきたというのが実態でございました。今後はそうしたことを、ある種の曲がり角に来たということを考えつつ、こうしたことについて看護婦充足対策等々を含めましていろいろと今後きめ細かく配慮をしていきたい。そしてこういう気の毒なお子さんに対する配慮というものをひとつ充実をしていきたいものであるというふうにさらに決意を新たにしているわけであります。
  188. 寺前巖

    ○寺前委員 私これで終わりますが、研究所の問題というのが前から問題になっておりました。調査費を組んでもう二年になりました。ですからこの研究所問題というのは、特に日本の大学は閉鎖的に研究するところから、一日も早く根治療法をつくってもらいたいという希望をかなえるためには閉鎖的なそれぞれの研究研究所という形態を通じて全力を早く集中してほしいという要望がこれらの関係者の中にあることをお伝えして、ぜひとも研究体制が一日も早く実ることを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 大野明

    大野委員長 次に、石母田達君。
  190. 石母田達

    ○石母田委員 私は、きょう無認可保育所の問題について質問したいと思います。  特に無認可の中には御承知のように特定の保育をやっているために認可を得られないものと、認可の基準に施設等が達しないということのためにやむなく無認可というふうになっているのと大別して二つあるといわれております。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 私は、後者のいわゆる施設が認可の基準に達していないために無認可保育所といわれている保育所について質問したいと思います。  私は、昨日こうした無認可保育所の幾つかを視察いたしまして、また関係者ともいろいろ話し合ってまいりました。と申しますのは、いまこの無認可の保育所が非常に深刻な事態に置かれているわけであります。それは前々からこうしたところの経営が非常に困難になってきているということは言われておりましたけれども、最近の物価高、諸経費の値上がりあるいは人件費等の値上がりというようなことで、いわゆる保育料を大幅に上げなければ経営自体がやっていけない、こういう問題にぶつかっているわけであります。  このために無認可保育所に子供を預けたくても収入の関係で高い保育料を払うことはできない、そうして保育を断念しなければならないという人が非常にふえております。したがってこういう子供たちは、特に乳児に多いのですけれども、母親が働きに行っている場合は祖母あるいは家族を田舎から呼んで預けるとか、あるいは二時間も三時間も二歳、三歳の子供を母親なし、家族なしで放置している、こういう話も聞いて私は慄然といたしました。  預ける子供が減るわけですから、経営上では一層困難になっている。たとえば一つ、二つ実例を申し上げますと、横浜の無認可保育所の中にみどり保育園というのがございます。これは定員が二十五名ですが、四月からは八名に減っているわけです。これはいま保育料が四万五千円であります。これでも毎月四十万円の赤字になっているわけです。したがって保母さんがいままで七人いたのですが、給料を取らないで休むという形で、給料を下げているわけです。こうなってきますと、経営自体はもちろんやっていけない。また四万五千円の保育料を払うということもこれまた大変だということで、こうした大幅の人員、入園する人が減っている、こういう事態になっているわけであります。  この中で申し込みを中止したお母さんに会いまして事情を聞きました。この方の御主人は調理師をやっておられます。そして奥さんは時給三百円七時間、ですから日給二千百円で約五万円の収入があったというのです。ところがこういう高い保育料ではとてもやっていけないということで、子供の入園を断念しまして、そのために職をやめたという事態にまでなっているわけであります。先ほども言いましたけれども、ここには十名の申込者が四月中に来て、全部キャンセルしているわけですけれども、そのキャンセルの中には、赤ん坊と三歳と二歳の、これは年子に近い方ですけれども、三人子供がいて、とても三人を預けるだけの保育料を払えないので、赤ん坊だけ預かってほしい、そして三歳、二歳を二時間の間ですけれども、母親もいない、父親もいないという中に放置しておくというような状態になっている。赤ん坊だけの保育料についても非常に払うのが困難になったというので結局は断念したということであります。  またわかば乳児園というところでは、これは十年来乳児だけを入れているところでございますけれども、定員二十名に対しまして四月から十名、つまり四月の入園はゼロなんです。そこでこれは保育料を当初五万三千円にしなければどうしても経営がやっていけないというものですから、毎晩のように父兄の方とも討議して四万八千円と決めた。それでも入園希望者がなくて保育料を現在四万円にしております。このために従業員の方々、保母さんたちがみずからいろいろ倹約をして、たとえば健康保険に加入するのをやめるとかあるいはまた賃上げを大幅に引き下げるとかいろいろなことでひねり出して、やっと四万円ということで、これまた赤字は若干減ったのですけれども、赤字の経営であることを承知してやったけれども、いまのところ希望者がない。もちろん、四月というのは公立の保育園の入園時期でもありますけれども、主たる理由が、こうした高い保育料で、来ても断念される方があるということですね。  こうした実態というのは、結局子供たちは、保育に欠けるどころか、非常に困難なところに置かれている。そしてまた、無認可保育所が長年の間苦労しているところでも、経営自体が存続していけないような深刻な事態になっている。このような無認可保育所の実態、あるいはまた、ここにも預けることができなくて非常に困難な状況で行われている子供たちの実態について、厚生省としてはどのように把握しているか、まず最初にお伺いしたいと思います。
  191. 上村一

    ○上村政府委員 まず、無認可保育所がどのくらいあるかということになるわけでございますけれども、一体無認可保育所というものはどういうものを……(石母田委員「もうとにかく、よけいなことは、それは後で聞きますから、非常に時間が短いから、私の言ったことについてつかんでいるのかつかんでないのか言ってください」と呼ぶ)正確な数字はつかんでおりません。
  192. 石母田達

    ○石母田委員 それじゃちょっと簡単過ぎるんだな。いま言うような深刻な状態にある状況をつかんでいるかどうか、どうですか。
  193. 上村一

    ○上村政府委員 私、具体的に拝見したことはございませんけれども、そういう話は伺っております。
  194. 石母田達

    ○石母田委員 具体的な数字もわからぬと言うのですけれども、こういう調査はやったことがあるのですか。
  195. 上村一

    ○上村政府委員 数年前に、認可を受けていない保育施設がどのくらいあるか調べたことはございます。ただ、さっきちょっと申し上げましたように、何を無認可の保育所というかということについては、必ずしも明確ではございません。
  196. 石母田達

    ○石母田委員 その数年前というのは、四十二年に全国的に要保育児童の施設を調査していますね。そのときですか、それともその後ですか。
  197. 上村一

    ○上村政府委員 四十四年の五月ごろでございます。
  198. 石母田達

    ○石母田委員 今後そうした調査をやる意思がありますか。
  199. 上村一

    ○上村政府委員 私ども、乳幼児の保育に対する需要が高うございますので、そういった需要の実態調査はしてみる必要があるのではないかと考えておりますが、無認可保育所そのものについての調査ということまでは考えておりません。
  200. 石母田達

    ○石母田委員 大臣、これは公立の保育所を早急につくっていけば一番いいことなんですけれども、毎回言われて、実際にはこれはなかなか大変なことなんですね。したがって、やむを得ずそうした無認可の保育所というところができ、また、そこに子供を預ける人もたくさんふえている。また、そこで経営したり働いている人たちもいろいろな苦労をされている。こういう実態の中で、どこの保育所にいようとも、やはり国、自治体はこうした保育に欠ける児童に対し、子供たちに対しての共同の責任がある。そういう立場から、ぜひこの無認可保育所というものについての実態を調査していただきたい。この点について、大臣に私はお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
  201. 田中正巳

    田中国務大臣 無認可保育所、この態様はいろいろなように私は聞いております。したがって、これを完全に把握できるかどうかは別でございますが、こうしたものの社会的な問題があることは私も知っておりますので、無認可保育所の実態についていろいろと調べてみることについてはやぶさかではございません。
  202. 石母田達

    ○石母田委員 さて、先ほどからいろいろこの無認可の解釈について言われておりますけれども、この無認可保育所というものについて政府は一体どのように評価しているのか、位置づけているのかということについてお伺いしたいと思うのです。
  203. 上村一

    ○上村政府委員 少し長くなりますが……(石母田委員「いや、短くしてください」と呼ぶ)  御説明するのは非常にむずかしいと思いますが、まず、児童福祉の仕事の中で保育所の関係の仕事というのは、私ども、一番市町村に密着をした、市町村自治体に一番なじむ行政であるというふうに判断をしておるわけでございます。  したがいまして、この保育行政についての国の取り組み方というものは、その正規の保育所を整備する、それが一番ポイントでございます。そうして、できる限り認可保育所の要件を備えるように指導をするというふうなところを考えておるわけでございまして、現在保育所が足らないために保育所でないところに預けておられる問題については、そういった実態があることを承知し、それも、どう申しますか、社会的に役に立っておるというふうにも思うわけでございますけれども、国としてこれに対してどうこうするというところまでは考えておらないということでございます。
  204. 石母田達

    ○石母田委員 あなたは、六十六国会での小笠原参議院議員に対する政府の答弁というものは知っていますか。その政府の答弁によりますと、こうしたところで非常に苦労されているということを評価しているわけですよ。そうして、それは社会的なニードがあるのだ、こういうこともはっきり言っているのです。こういう問題について、いまの答弁は、国がやるとかやらないとか、そんなことを闘いちゃいないのだ。公立の保育所をつくって、そこですべてがやれれば一番いい、それに越したことはない。しかしそれができないという状況のもとで、やむなくこの社会的ニードの中で無認可保育所というものができていろいろ苦労してやっているのだ、そういう無認可の保育所に対してどのように評価しているかということを私は聞いているのです。参議院で言われたことのとおりなのかどうか、もう一回その点だけ確認したいと思います。
  205. 上村一

    ○上村政府委員 保育所がないために無認可の保育所がそれなりの役割りを果たしておることについては、認めるのにやぶさかではございません。
  206. 石母田達

    ○石母田委員 この無認可の保育所に対していま助成とか国としてめんどうを見るつもりはないというようなことを局長が言われたけれども、私は納得できません。いま無認可の保育所に対する助成あるいは補助、いろいろな形での援助ということを行っているのが東京、埼玉、千葉、静岡、長野、愛知、三重、岐阜、京都、大阪、島根と、十一都道府県になっております。また、九つの政令都市はすべてそうした援助を行っております。この事実については知っていますか。
  207. 上村一

    ○上村政府委員 東京都の例等につきましては承知いたしております。
  208. 石母田達

    ○石母田委員 いまこれだけやっているんですよ。これはあなた、いわゆる革新自治体というようなものだけじゃないのですよ、いま読んだところは。これの助成をしているあるいは援助しているという理由を全部調べてみたんです。  時間がないから、私はこれを一々読み上げませんが、そういう中で言っていることは、市町村の認可保育所が非常に不足している。やむを得ずこの無認可の助成を行っている。大阪府などは、直接これは市町村がやっているのだけれども、それに対して府としても助成しているわけですね。この中で、こういう根拠を持っている都府県があるのです。それは第二十四条のただし書きの中に、保育所という施設以外のただし書きがありますね。これに該当するというふうにみなして援助しているところもあるのです。ところが政府はあのただし書きは無認可保育所は含まないというような見解を持っておりますけれども、このような形で援助していることについてどういうふうに考えますか。
  209. 上村一

    ○上村政府委員 さっきも申し上げましたように、児童福祉の仕事の中で、国が受け持つべき分野、県が受け持つべき分野、市町村が受け持つべき分野、いろいろあると思うのです。そこで、その保育行政について国が受け持つべき分野というのは、きちんとした保育所を整備してそこでお母さん方が子供が預けられるようにしていくということ、それからそれに対する運営費の助成をするというのが国の仕事であろう。先ほど来お話に出ておりますような重い障害のような子供の施設は、市町村におやりになってくださいと申し上げるわけにいかないから、国が積極的に取り組むというふうに、それぞれの分野でそれぞれの責任を果たしていくべきだと考えておるわけでございますので、自治体が、保育所が整備されるまでの間保育所にかわるものについていろいろ助成される措置というのはそれは評価いたしますけれども、それについて国までが手を出すということまでは考えておらない、先ほど申し上げたとおりでございます。
  210. 石母田達

    ○石母田委員 大臣に今度。このときはちょうど齋藤厚生大臣なんですがね、大臣、そうでしょう。それでその齋藤厚生大臣は、こういう自治体がどんどん助成するということについては非常に好ましいことであるからぜひ、まあ応援するというような言葉じゃないけれども進めてやりたいというような趣旨の答弁をしております。この点については田中厚生大臣はどうでしょうか。
  211. 田中正巳

    田中国務大臣 無認可保育所というものの存在、これが社会的に出てきたということはやはりそれだけの必要があって、ニードがあって出てきたものと思うのですが、国の保育行政の基本的な立場は、一定の認可基準を持ったちゃんとしたものをつくっていくというのが、やはりその線は堅持をしなければなるまいというふうに私は思っているわけであります。したがって、現在あるさまざまなパターンの無認可保育所と称せられるもの、これをすべて、言うなれば国の助成の対象にしたり、あるいはこれをそのままの姿で認可するとか認めるという姿というものは保育行政の実態としていかがか、私はかように思うわけであります。  問題は認可保育所というものが、社会のニードに十分こたえられるような姿にすべきものだというふうに私は思うわけであります。それが地域によってあるいは時間帯によっていろいろとそれに対応し得ないような実態があるならば、認可保育所の実態というものをバラエティーをいろいろに考えて認可保育所のカテゴリーの中でもってやはりそうしたものを充実させるという方向でいくべきものであるというふうに私は思っているわけであります。いわゆる小規模の保育所まがいのものについてこれを制度化すべくいろいろと今日まで知恵をしぼりましたけれども、なお十分にこれが制度化しないという悩みを持っていることは過去の予算要求においても見られたところであることは先生御存じのとおりであります。
  212. 石母田達

    ○石母田委員 こうした要保育児童でありながらやむを得ず公立等そうしたものに入所できないで無認可に入っているという人たちの保護者や児童の福祉のために一定の助成や援助を行っている、こういうものについては先ほど局長も評価している、都道府県とか自治体の。これは齋藤前厚生大臣もそう言っておりますし、田中厚生大臣もそうだろうと思います。  そこで、時間がありませんので、いま小規模保育所の設置の問題出ましたから、この問題については、いわゆる児童福祉施設最低基準の五十八条には、十五人未満を入所させる保育所、あるいは五十一条に三十人未満を入所させる保育所というものがありますね。これはいろいろ論議はあったけれども、まだ改正にはなってませんね。このままですね。その事実だけ。
  213. 上村一

    ○上村政府委員 そのままでございます。
  214. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、いまこうした小規模保育所を、設置の認可についていろいろな対策を立てて、そして田中厚生大臣が言われたようにできるだけ認可を促進さしていくという点での努力は非常に大切だと思うのです。  そこで私ども聞いておるのは、三十人、まあ国の基準は人数から言えば六十人、これは小規模で三十人というところまで、昭和四十六年の三月二十九日ですか、各都道府県知事と各指定都市の市長あての厚生省児童家庭局長通知というもので通知されているわけですが、実際の運用としては二十人規模にまで、この人員について設置認可についての二十人ぐらいのところでも認可という基準に合致していればこれを認可しよう、こういうふうなことを聞いているのですが、それはそうですか。
  215. 上村一

    ○上村政府委員 そういうようにいたしております。  ただ場所に限定がございまして、やはり過疎地域とか過密地域、容易に土地が得られないようなところとか容易に子供が集まらない地域に限っております。
  216. 石母田達

    ○石母田委員 それも二十人というようなものは何か文書で出ているのですか。実はこれは神奈川県に聞いたら、そういうものが文書で出ていないために実際にそうなっているのかどうかということが運用についてはよくわからぬ、こういうことなんで、その点確かめておきたいと思います。
  217. 上村一

    ○上村政府委員 特に文書で指示をしたことはございません。  ただ社会福祉事業法という法律がございまして、これがすべての基本になるわけでございますが、二十人以上でないと社会福祉事業にならないというふうな規定があるわけでございます。保育所のような通所の施設につきまして。
  218. 石母田達

    ○石母田委員 これはいまの小規模の認可については非常に大切なことなんですね。三十人でも先ほど言ったような形でなかなかむずかしいというところから、実情に合わせるために二十人という問題は出たのだと思います。もしそういういいことを前進させるためには、ぜひ私、大臣、やはり一定の基準ですからね、関係都道府県知事又は指定都市の市長が、小規模保育所の設置認可を行なう場合には、」ということで、「別紙様式によりあらかじめ当省に協議し、」ということで出されて、いまの人口が、要保育児童が多い地域で「特に三歳未満児の保育を要する度合が高く、かつ、用地の取得難等の事情があるため、定員六〇人以上の保育所を設置することが著しく困難又は適切でない地域」こういうことが恐らく該当になるのだと思いますので、そういうところにはいまのような趣旨をできるだけ文書できちんとした方が運用上非常にいいのじゃないかと思いますが、この点についてはぜひ検討していただきたいと思います。
  219. 上村一

    ○上村政府委員 検討いたしますが、大体もう皆さん御承知のことだと思っております。
  220. 石母田達

    ○石母田委員 御承知してないから、私は神奈川県に直接聞いて言っているのだから、余り主観的にならないでください。  それから時間がございませんで、非常に残念なんですけれども、この五十八条あるいは五十一条という法律が現にあるわけですから、この問題についていろいろ運用上皆さん見解があるらしいですけれども、この法律がある以上こうした問題についての検討を、やはり十五人未満という問題についても私はその省令の趣旨に準じて運用していただきたい、こういうふうに思いますけれども、どうですか。
  221. 上村一

    ○上村政府委員 御質問の趣旨がよくわからないわけでございますが、ただ社会福祉施設としてはさっき申し上げましたような社会福祉事業法で二十人という最低限の制約があるということでございます。
  222. 石母田達

    ○石母田委員 この小規模保育所の問題について、もう一つ私は、ぜひこの方から認可を促進させるための具体的な援助として、資金融資の援助だとかそういうものが三十七年の中央児童福祉審議会の中間報告に出ています。これはもちろん小規模だけじゃございませんけれども、無認可保育所という問題でですね、こういう問題については実際にこうしたことは行われているのですか、融資とか資金の援助というようなものは。
  223. 上村一

    ○上村政府委員 昭和四十二年の児童福祉法改正の際に、こういった施設を創設するというような場合に助成できるような措置を講じ、現に公費による助成も行っておりますし、それから公益事業の益金の配分等によっても助成をしておるという例がございます。
  224. 石母田達

    ○石母田委員 この点は今後も強化してもらいたい。  特に、いま大蔵省の方、来ておられますか。
  225. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 見えております。
  226. 石母田達

    ○石母田委員 一言聞きたいのですが、厚生省が家庭保育室ということで、四十九年度の予算で概算要求で一億三千六百万要求したことがありますけれども、この際これが大蔵省によって削られたわけですね。削った理由の中に、制度上の問題でこういうことは相ならぬということで削ったのか、それとも何か政策上の問題で、重点というような問題で削ったのか、そのことを簡単にちょっとお答え願いたいと思います。
  227. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいま御質問の点でございますけれども一般論といたしまして、予算折衝の過程の問題は政府部内の問題でございますので、そのやりとりの御説明という形ではなくて、ただいま委員の御質問は、たとえば厚生省の四十九年度要求のような形でのいわゆる無認可保育所に対する国庫助成について財政当局としてはどう考えるかという趣旨の御質問としてお答え申し上げたいと思うのであります。  結論から申しまして、国の補助事業の対象として取り上げるのは適当ではないということでございます。幾つかの問題があるわけでございますけれども、まず基本論といたしましては、先ほど来議論になっておりますように、保育所に対する国庫補助と申しますのは、いわゆる認可保育所につきまして、児童福祉法に基づきまして国庫補助の制度があるわけでございまして、そういう児童福祉法上の保育所じゃない施設に予算補助としてそういうものをやるのはいかがかという国庫補助制度としての基本的な問題がございます。それから実際論といたしまして、これは先ほど厚生大臣もお述べになったわけでございますけれども、私どもが承知しております範囲でも、いわゆる無認可保育所につきましては、その運営の実態あるいは態様がまちまちでございまして、そういうものにつきまして一律に国庫補助をするということは適当でもないし、非常に問題がある。あるいは四十九年度の厚生省の御要求のように、そのうちある部分を限りまして、つまり一般の御家庭で小規模に子供さんを預っておられるというような事業に予算補助をしてはいかがかという問題でございますが、これもそういうものだけに限定して一体適当なのかどうか。それから先ほど委員がお述べになりましたように、実際問題として地方公共団体でいろいろな助成が行われておる、ということは、むしろこの種の事業は地域社会の福祉施策といいますか、福祉ニードに応じて取り上げられるべき事業でございまして、国庫補助の対象とするということにはいささか問題がある。むしろ基本的には厚生省が現在力を入れておられます社会福祉施設整備計画の中でも、重症施設とともに保育所に非常に重点を置かれまして、財源面でもその裏づけがあるわけでございますから、本来の保育所の助成を充実していくべき問題でありまして、そういう形での対応をすべきではないかというのが私ども考えであります。
  228. 石母田達

    ○石母田委員 もう時間がありません、二つだけ。  一つは大臣に、そういうことですけれども、かつてそういうふうに概算要求したこともありますし、それから今後、一律にどうのこうのという問題がいま出ましたけれども、やはりこの無認可の中には、非常に認可に近いまでのところで若干の基準が足りないというようなところがあります。そういう意味で、この認可を促進させるという点での援助という問題を資金的にもいろいろな点で予算措置について考えるということをぜひこの来年度の予算の中で検討していただきたいということが、大臣に対する要望でございます。  もう一つ局長の方に、認可基準を出す場合に、たとえばいま横浜のポポというところで、法人に切りかえるための地主の承諾書が得られないというだけで申請が受け付けられないのですよ。こういう問題については、実態はもう見てもらえばほとんど認可にできるようなものですから、申請を受け付けて認可を促進させる、その中でいろいろな基準についてやるならいいけれども、受け付けないという態度は、これはちょっと余りにも機械的だと思うので、ぜひこれは善処して指導していただきたいという、この二点について簡単にお答え願って、私の質問を終わります。
  229. 上村一

    ○上村政府委員 いまのお話は、社会福祉法人としての認可のお話だと思うわけでございますが、保育事業にだけ他の社会福祉事業よりも低い水準でというわけにはなかなかいかないと思いますが、若干検討さしていただきたいと考えております。
  230. 田中正巳

    田中国務大臣 やはり私は保育所は認可基準にマッチをしたものでいきたい。ただし、認可基準については地域の実態に合致したものにして、地域の要望と合わせていくようなことをいたさなければならぬ、かように思っております。
  231. 石母田達

    ○石母田委員 だから、その認可基準に合わせるように援助するということを指導しなければならぬということになっているのだから、その点はぜひそういう点で検討していただきたい。大臣、これは認可基準に合うようにさせるということなんだから、させるように援助しなければならぬでしょう。
  232. 田中正巳

    田中国務大臣 どういう援助をいたしますか、これについては、指導をするということならば、私はそういうことをやってよろしいと、こういうふうに思います。
  233. 石母田達

    ○石母田委員 質問を終わります。
  234. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会