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金子(み)
委員 実は先般の
予算委員会のときにも取り上げて一部
質問をさせていただきました問題でございますが、大変に関心を持っておりますので、実態が知りたいと思って実態を見てまいりました。そのことを中心にして、きょうは少し実態の
説明と、私がいろいろと発見いたしました問題点につきまして
質問をさせていただきたいと私は思います。
厚生大臣は、
厚生大臣におなりになる前から厚生問題に非常に造詣が深くていらっしゃるし、いろいろとおわかりのことだと思うのですけれ
ども、
一つ一つの施設の問題まで、あるいは
一つ一つの政策の中身まで細かく承知なさるということも困難かしらんと思います。それでいまから私が申し上げます点は、
日本といたしましては比較的新しい医療とでもいいますでしょうか、腎臓疾患に関する人工透析の問題でございますが、どのような実態で行われているのかということを御承知いただきたいと思いまして少し申し上げてみたいと思うわけでございます。それをお聞きいただきまして、後ほど御方針など伺わせていただければありがたい、そんなふうに
考えているわけです。
実は私は、
厚生省が御計画として進めていらっしゃる人工腎臓透析のセンターになっている国立王子病院の透析センターというものを見てまいりました。その透析センターの実態からいろんなことがわかったのでございますが、いま透析センターの実態を簡単に、見てきたままを
説明させていただきたいと思うのでございます。
実は、国立王子病院に設置されております透析センターと申しますと、患者は四十四人おるのでございますが、毎週大体一人の患者は二回ないし三回透析を受けております。そして曜日を決めてセットされているわけですね、月、木組とか火、金組とかいうふうにして。大体主として二回。三回の人もありました。そういうふうにセットされているということがわかりました。機械を持っているベッドは二十四床ございましたが、毎日使われているベッドは大体二十床です。あとの使っていないベッドは遊んでいるんじゃなくて、スペアのために用意しておくんだというお話でございました。ですから二十床がフル回転をしているわけです。
そこで、どういう
人たちが仕事をしているかということですけれ
ども、お医者さんはたった一名です。
専門医がたった一人です。そして一人でどうにもなりません。ですから、この病院の中の内科の医師が応援をしておりました。内科の医師が二名ないし三名応援するという
状態で常に動いている、こういうことでございます。
専門医ではございません。
それから、看護婦の体制はどうなっているかと申しますと、透析センターでありながら、普通の病室とちっとも変わらない基準で決められた数しか持っていません。国が決めていらっしゃる基準は、医療法施行規則の十九条で言っている入院患者四人について看護婦一人。センターもこの基準で決められたままの数字でございました。しかし、それではあのセンターではどうにも仕事にならない、絶体絶命。そこで病院の中で
考えたことは、センターだけに看護婦を集中するという計画を立てて、センターは二人に一人という数字で看護婦を持ち込んできたわけです。したがって、その結果は他の病室に非常にしわ寄せが行くわけですね。そういう実情でございます。
そしてセンターの中の看護婦は何をしているかと言えば、この二十床のベッドが毎日フル回転をしているのですから二十人透析を受けている患者さんがいるわけなんですけれ
ども、この
人たちの世話と、ほかに透析センターの機械の操作、それから円滑に動いているかどうかというチェック、それからいろいろなものの後始末、準備、そういった雑用、そんなことで全部看護婦にしわ寄せが来ておりますから、とても看護婦は休む暇がない、年休はとれない、お正月休みもとれない、こういうふうにこぼしておりました。しかし、看護婦たちは非常に献身的に働いておりました。しかし長続きがしない。センターの勤務は早くやめさしてください、しょっちゅうこの訴えが総婦長のところに来ているという、無理もないことだと思います。そういう勤務交代の
要求がしょっちゅう来ているという話でした。本当に涙ぐましいと思いました。
二十床の患者さんは、私が参りました時点では、三分の一は
東京以外の人でした。群馬、栃木、山梨、千葉、こういうところから通ってきておられました。それで、大体関東全域から来ているというふうに病院側では
説明してくださいました。そんな、わざわざこんなところまで来ないでも近くにないんですかとお尋ねしましたら、あることはあるけれ
ども十分でなくて、患者さんとしては安心して行かれないんだ、そこでやはりここまで来てしまうのだ、こういうお話でございました。それで遠くから来ている
人たちは泊まりがけで来ているわけですよ、とても一日で来られませんから。前の晩に来て旅館に泊まって、翌朝お弁当持ちで病院へ来て、大体八時間かかりますから、またその日夕方終わってから帰って、疲れて帰れない日はもう一遍旅館に泊まる、こういうような
状態で患者は通っています。
そこでまた病院の問題は、こんなことをしてフル回転をしながら、なお毎週大体一人ないし二人の新しいケースはお断りしなければならない
状態だ、それほどさように新しいケースが
要求してくるそうです。ところが、それをお断りしなければならないのは大変につらいんだという話でした。しかも、なおかつこの病院では、二十床のフル回転している透析のベッドのほかに、
一般内科の病室の中で腹膜灌流を受けながらこのセンターへ移してもらうのを待っている七人の患者さんがある、こういう
状態でございました。こういうような
状態が、大変簡単ですが、センターのあらましでございます。
センター自体問題があるんですけれ
ども、このセンターが設置されている母体である国立王子病院はどういう
状態にあるんだろうかということがやはりどうしても問題になりますので、国立王子病院の実態を私が知り得ました範囲で申し上げて、いろいろとお
考えもいただきたいと思っています。
王子病院は、私が申し上げる必要はありませんが、最近非常にきれいになっておりました。私は大変にびっくりいたしたわけでございますが、きれいな病院になっておりました。元の砲兵工廠でございますか、それが陸軍病院になり、療養所になり、また病院に戻りというようなことで、現在の病院があるようでございます。
この病院ではベッドは二百四十六床でございました。これは訓令定員です。医療法定員というのはもっとたくさんあるのです。医療法定員は三百四十九床ですが、訓令定員は二百四十六床。それでこの二百四十六床の中で差額徴収をしている部屋があったのです。これは五千円の部屋が三室、三千円の部屋が三室——この差額徴収の問題はまた別の問題ではございますけれ
ども、とにかくそういうような部屋があったということでございます。
それから、この病院は医療法で言うところの総合病院になっています。ですから、この病院の標榜しております診療科目は、内科、消化器科、循環器科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科、麻酔科と、いっぱいそろっております。これは確かに総合病院として標榜されておる病院なんですけれ
ども、実態が総合病院となっていないという事実がございます。その実態はどういうことかと申しましたら、医師が不足です。眼科に医師がおりません、歯科におりません、皮膚科におりません、放射線科におりません、検査科におりません、病理検査におりませんと、こういうわけでございます。そういう実態で、現状は大変に貧しい。
そこで、私は、これはことしの三月三十日現在の数字を病院でいただいたのですが、医師の総数二十二名、院長も含めております。ですけれ
ども、これは医療法の施行規則の計算でいきますと、医師は二十四名ぐらいいなければならないことになるのですね。それで数が足りないということもございます。それから、この医師は 院長、副院長、医長、ここまでで二十二名のうち十四名なんですね。スタッフの医師は八名しかいない。これは逆三角形ですね。頭でっかちというような形になっております。これが実態でございます。
それから病室は、未開棟、未開棟、未開棟とここにいっぱい書いてあるのでびっくりしたのですけれ
ども、循環器科が未開棟、外科のICUが未開棟、泌尿器科が未開棟、眼科未開棟、耳鼻咽喉科未開棟、歯科未開棟、そして皮膚科未開棟、こういうふうに書いてあるわけですね。要するに未開棟になっているのは医者がいないところですね。ですから、総合病院といううたい出しをしておっても総合病院の形態をなしていない。これは厳しく言うならば医療法違反とかいうことになるのじゃないかというふうに
考えられたわけでございます。
そして看護体制はどうなっているかと申しますと、看護体制の方は基準看護で特類をとっております。特類ですから四人に一人でございますね。医療法施行規則の数のままでございます。そして現在八十四名おりますが、この方は逆三角形でなくて、婦長、総婦長十一名です。しかし、この八十四名の中に賃金ナースがたくさん入っておるということが問題でした。総婦長の苦心で、賃金ナースは外来とか中材とかいうところへ配属して、そうして何とかやっているようですが、夜勤体制が大変問題になっていまして、二・八はできません。二人夜勤を
実施するためには十日はもうできない。十一日夜勤になるそうです。ところが、看護体制はこれでぎりぎりでございますから、一人休んだら夜勤はたちまち十二、十三というふうにはね上がっていってしまう。国立病院全体の平均夜勤の日数は九・四日でございますね。ですから、国立全体の平均よりも上回っているという実態でございました。
それから産科病棟は全くひどいと思いましたね。助産婦の資格を持っている人は五人いるのです。ところが一人が産休に今度入るのです。そこで四人になってしまう。それで、総婦長どうしましょう、どうしましょうと言うだけで本当に困っているというのですね。ベッドが四十六あるわけです。お産の数は大体年間九百九十から千の間だ。そういたしますと、大体一日三件はお産がありますね。それを四人の助産婦がどうやってこなしていくかということなんです。夜間は医師はいらっしゃらないということでございますから、この四人だけになってしまって、一体これから先、産科病棟どうしようかという問題で非常に頭を悩めておりました。
そこで、ことしの五十年度の予算で新しく定員がふえるということで大変に期待をして喜んでいたんだそうです。いままで未開棟である内科の循環器科だと思いますが、五十床を新設するために十四名
要求したところが、九名いただけだそうです。ところが九名のうちの五人までは賃金職員だったそうです。そうしますとあと四人で、その四人のうちの半分が学院の
先生なんですね。そうなると、全然この五十床の新病棟を開設するなんということはできっこない、とうてい不可能ということで、これは開設しないことにいたしましたということでございます。だから、そのつもりだったのができなくなっているわけですね。したがって病棟はあいていない、その分だけはあけられない、こういう話でございました。
これくらいの問題をもとにいたしまして少しお尋ねをしたいのでございますが、いまのような実態でございますね。こういう病院をやはり国立総合病院として存在させ、運営していらっしゃるその意義の問題と、しかもここに、余りあちこちにはつくられていない、しかも非常に重要な役割りを持つ透析センターをつけておおきになるという、そこら辺がどうも矛盾している感じがするのでございますが、何か御方針があってなさったには違いないというふうには私
どもは思います。ですからそこら辺をまず聞かせていただきたいと思うわけでございます。どうして、充足されていないと申しますか完備されていない国立王子病院に透析センターを設置なさることになさったのかということが、まず私の
一つの疑問になっているわけでございます。それをぜひ聞かせていただきたい。