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増岡委員 ただいま
大臣のお話のように、われわれはすべて憲法によって法のもとで平等を保障されておるわけでございます。しかしながら、合理的な理由がある場合、社会的に認められる場合には差別が可能であろうと思う。そういう意味合いから、いまなお特別な状態にあるというそのことに着目されてこの
特別措置法ができたわけでありますし、また
特別措置法ができます過程におきましての国会の議論を顧みましても、援護法という要求に対して、ただいま
大臣が言われたような理由から
特別措置法に相なっておるわけでございます。したがいまして議論としてはもう済んでおるような気持ちがするわけでありますけれ
ども、しかし実態といたしましては依然として被爆者の間にそういう強い声があります。これは、私自体被爆者の団体にしょっちゅう接触をいたしておりますので、なぜそういうことになるのか、被害者の団体の中には、援護法というものを直ちに
適用するということが無理だということはよくよく
承知しておるけれ
ども、何か国に対して物を言わなければならぬ、そういう気持ちがあるのだろうと思うのです。それをいろいろ話し合ってみますと、その
人たちの心理的な状況というものは、まず被爆の際のあの悲惨な状態、それから昭和二十七年ごろまでをピークといたします白血病の後遺症、そういう時期に国が何らの手を差し伸べてくれなかった。後になって医療法や
特別措置ができた。そうして、先ほど
局長から話がありましたように、
特別措置法ができてから、毎年改善されてきた。人数にしましても、健康管理手当
一つにしましても、一万人足らずから五万人、六万人というふうになってきておるわけであります。これは
一つには、
厚生省の努力とわれわれは見なければならないと思いますけれ
ども、被爆者の方から見ますと、できるものを一寸ずりにずって、じりじり小出しをしてきたではないかというような気持ちもあろうかと思うわけであります。私はそのことに同意をしていま言っておるわけではありませんけれ
ども、そういう気持ちになるということは当然考えられるわけでありまして、ある被団協の幹部にも会いました。援護法と言っておりますけれ
ども、これは物質的なものを求めるのではないのです、そういうふうな、われわれが長年にわたっていわゆる陰にこもった怨念と申しますか恨みといいますか、そういうものに対して、精神的な意味での慰労といいますか慰めといいますか、そういうものがなかった、そこでそれが爆発して具体的になると援護法になるのだ、
年金を少したくさん下さいということになるのです、という言い方をしておるわけであります。これは私は、一人、二人のことではございませんで、実は故郷では毎年、各郡部ごとの被爆者団体と会合をいたしておりますし、
全国大会へも何回も出ております。そういう私と団体との話し合いの成果を踏まえて、そういうふうな感じがするという気持ちがしておるわけであります。
そこで、現在それではどういうことが象徴的に残っておるかといいますと、まず私が感じますのは、いまなお特別な状態にある人々の中で一番気の毒なのは、原爆病院に入院しておる方々だろうと思うのです。ところが原爆病院へ行ってみますと、これは
厚生省の方で早く建物をお建ていただいたせいか知りませんけれ
ども、いまや老朽化しまして、壁は真っ黒になっておるし、それから床もがたがたになっておるというところへ、個室ではなくして大人数の部屋に大ぜいのベッドで入れられておる。ただむなしく千羽ヅルが飾られておるというような状況であります。そういうのを見ますと、被爆者たらずとも、先ほどから申しましたようなそういう気持ち、そういう精神状態に同情の意を覚えて、そうして援護法というような飛躍した話が出てくるのではないかというふうに思うわけでございます。
したがいまして、まず原爆病院、それが見かけがそういう老朽化し環境が悪いというだけじゃなくして、赤字でございます。その赤字の原因も、いろいろ考えてみますと、入院患者は
老人が多い、下のお手伝いもしなければならぬから看護婦がよけい要る、そういうことから赤字になっておろうと思うのです。そうかと言って、看護婦を減らしますと、
老人に対する介護が十分でなくなってまいります。そういう意味から、原爆病院の、これは
設備をすっかり建て直してくれということではございませんで、少なくとも見かけはきれいにして、安息できるような、あるいは見舞いに行った人が、なるほどきれいにしてやってくれておるというぐらいのことはやってやらなくてはならないと思いますし、また病院が赤字であって将来ぶつつぶれるかもしれぬというようなところに入院して、安心しておれるわけではございませんから、そういう意味で、人件費の補助を行うことによって赤字を防いで、安心して入院できるような、そういうふうな一番気の毒な人に対しての象徴的なものを行うということが、原爆被爆者全体に対しての心理的な影響というものも非常に大きかろうと思うわけでございます。その点御答弁願いたいと思います。