○勝田
政府委員 去る二月一日付で
警察庁交通局長を命ぜられました勝田でございます。何とぞよろしく御
指導いただきますようお願いいたします。
昨年中の
交通事故は、お手元に配付しました資料にもありますとおり、
発生件数、
死者数、
負傷者数とも大幅に
減少し、史上最高の
減少数を記録しました。特に
死者は、
昭和四十六年以降四年連続して
減少してまいりましたが、特に昨年は約三千百人も
減少し、
昭和三十七年と同じ一万一千人台にとどめることができたのであります。
このような
成果を上げ得ました要因には、種々あると思われますが、
関係行政機関、団体を初め
国民各層の方々による長年にわたる総合的な
交通安全対策の積み重ねがようやく実を結びつつあることを示していると考えております。
申すまでもなく、
交通事故は直接人命を損傷するほか、平和な家庭生活を一瞬にして崩壊させるものであるだけに、最近における
交通事故の大幅な
減少は、
国民生活の安全と福祉に大きく寄与するものであり、その社会的意義ははかり知れないものがあります。
しかしながら、
交通事故の実態を分析してみますと、なお問題点が残っているのであります。
その一つは、
交通事故全体の中で、
歩行者、
自転車利用者と
老人、子供の
死者の占める割合がきわめて高いことであります。
死者の中で、
歩行者が三六%、
自転車利用者が一一%で、合わせて四七%にもなり、欧米各国における
歩行者の
死者の割合が、イギリスを除いていずれも
わが国より低く二〇%前後にとどまっていることに比し、問題であります。また、十五歳以下の子供の
死者は一三%、六十歳以上の高齢者の
死者は二三%であり、合わせて三六%となっております。
次は、都道府県間や
都市間といった地域間の
事故率の格差が大きいことであります。たとえば昨年中の人口十万人当たりの
死者数は、都道府県では、一番少ない東京都の三・八人に対し、一番多い茨城県は二一・四人であり、また
都市別に見ると、同様に都下東村山市の
死者ゼロに対し、山口市の二八・四人となっており、このような大きな地域間の格差を解消していくことが今後の課題であります。
これらの問題のほか、
都市を中心とする
交通渋滞の激化、
自動車排出ガス、
騒音等による
生活環境の悪化などの問題も次第に深刻化しつつあります。
このような諸問題を抱え、また史上最高の
死者減少率を記録した昨年の後を受けて、今後引き続き
死者の
減少傾向を持続させていくためには格段の
努力が必要であると考えております。
道路交通問題は、きわめてむずかしい時期に差しかかっているといえますが、警察といたしましては、最近の
交通事故の
減少傾向を長期的に定着させ、
死者数を過去の最高であった
昭和四十五年の一万六千七百六十五人の半分以下にすることを目標に諸
施策を結集し、ここ二、三年のうちに一万人以下に抑えることを目指しております。
本年においては、この目標を達成するため、
歩行者と
自転車利用者の
保護を最
重点に
関係機関との
連絡を密にし、
都市総合交通規制の
推進、
交通安全施設の
計画的
整備、街頭における
交通指導取り締まり活動の
充実、
交通安全思想の
普及徹底などの諸
施策のほか、ただいま大臣の
あいさつにもありました
自動車安全運転センターを軸とする
運転者対策の
強化など新たな
施策を取り入れて、総合的な
交通対策を展開してまいる
所存であります。
以下、これらの
対策の主な点について申し上げたいと思います。
第一に、
都市総合交通規制でありますが、人口十万人以上の
都市を中心に、種々の規制を組み合わせた総合的な
交通規制を、昨年から三年を目途に進めておりますが、今年も引き続き
重点施策として進めることにしております。住宅地、商店街等の
日常生活の営まれるいわゆる生活ゾーンについては、
歩行者天国、遊戯
道路を設けるなど、
自動車の
通行禁止、一方
通行、あるいは最高速度の大幅制限、駐車禁止等の規制を面的に
実施し、通過
交通を初め
自動車を裏通りから締め出し、安全で静かな
生活環境の
確保を図りたいと考えております。
また、大量輸送機関であるバスについては、バス専用レーンの大幅な拡大を図るとともに、バスの近接を感知するバス優先信号の
設置もさらに進めるなど、バスの優先
対策を大幅に
強化することにいたしております。
駐車
対策としては、
都市中心部を中心に広域にわたる駐車禁止規制を
強化するとともに、駐車需要の大きい
業務地域等については、パーキングメーターを
設置して駐車時間制限の規制を
推進する考えであります。
なお、五十一年規制の延期に伴う
排出ガスによる公害
防止についても、先に申し上げました生活ゾーン
対策、バス優先
対策、広域駐車規制などの間接的な方策を通じて、大
都市については
自動車交通量のおおむね一割を目標として
交通総量の削減を図るとともに、
信号機の調整などによって
交通の流れをよくし、停止回数を少なくすることにより、一酸化炭素、窒素酸化物等の
排出ガスの
減少に努めてまいりたいと考えております。
また、速度規制については、単に
事故防止のためのみでなく、
排出ガス、騒音、振動といった
交通公害の削減を図り、またガソリンの消費節約にも資するといった観点から、
都市においては原則として四十キロメートル毎時の規制を進めているところであります。
なお、自転車の安全利用の促進を図るため、自転車専用
通行帯、自転車
歩道通行可などの
交通規制を、自転車安全利用モデル
都市はもちろん、その他の地域についても積極的に
推進し、連続的に組み合わさった
自転車道路網の
整備に資してまいりたいと考えております。
第二の
交通安全施設の
計画的
整備については、
都市総合交通規制とうらはらの
関係にあるものであり、
交通規制の
推進と相まって、
信号機、
道路標識等の
交通安全施設の早急な
整備を図る必要があります。
特に、先に申しました都道府県間や
都市間における地域格差を是正するためにも、地方
都市における
交通安全施設の
整備が急務とされるところでありますので、公共
事業抑制方針の中においても、人命にかかる緊急度の高い
事業であることにかんがみまして、投資規模を落とさないよう
関係機関に特段の配慮をお願いしている次第であります。
第三に、
運転者対策の
充実強化を進める一環として、
自動車安全運転センターの設立を進めてまいりたいと考えております。
この
自動車安全運転センターは、
警察庁が持っております
運転者に関する資料を活用して、
交通違反等により行政処分を受けることとなる直前の
運転者に対しあらかじめ注意を喚起すること、無
事故、無違反
運転者等に対して
運転経歴を証明すること、
交通事故の証明をすることなどの資料
提供を行うほか、
安全運転のための研修、
交通事故防止のための
調査研究等を
推進し、
交通事故の
防止と
運転者に対する利便の増進を図ろうとするものであります。
以上は、本年
推進しようとする
対策のうちの主なものでありますが、その他の
対策につきましては、お手元に配付の資料により御理解くださるようお願いいたしたいと思います。