○吉永
委員 その戦略核の問題でございますが、御
承知のように、昨年の十一月に
アメリカとロシアがウラジオストックでSALTの第二回目の協定に入って、現在はたしかジュネーブで第三回目の協定を実施中である。しさいの報道は受けておりませんけれ
ども、その第二回目の協定においては、ICBM大陸間弾道弾、SLBM
潜水艦弾道弾、いずれも二千四百基ずつに限定をしようという協定ができ上がった。ところが第三番目のMIRV、先ほどの誘導弾でございますが、このことで、
アメリカの提案でロシアがのんだのが千三百二十基ずつということであったように記憶をしております。その時点においてはロシアはMIRVというものをほとんどゼロに近い状態であった、研究には入っておったけれ
ども保有をしていなかった、そういう状態においてそれぞれ、いま一番先端を行くと申しますか、激しい、救いようがないというくらいの爆弾でございますが、MIRVをそれぞれ千三百二十基ずつに協定をした。その後の協定は今日ジュネーブでは続いておるという状態だと私聞いておりますが、そのような
状況を見ております反面に、これははっきり私たち情報を得ておるわけではございませんが、今日、いままでの核保有国六カ国に加えて、新たに核を持ちたい、持とう、あるいは実質的な交渉に入ってある程度準備をしておるという国が十二カ国、お隣の
韓国もそうでございます。あるいは台湾もそのうちに入りましょう。それから、特に
注意しなければならぬと思いますのは、イスラエルとアラビアがそのような状態になってきておる。パキスタンもアルゼンチンもその範疇に入るわけでございますが、その十二カ国のあとにまた四カ国、その希望ということで動き出しておるというような情報を得ておりますが、このような
状況が続きますということは、あるいはカナダが、あるいはフランスが、平気で——平気でやっておるわけではありますまいけれ
ども、売っておる、移出しておるというような状態でございますが、そうした
意味においては核保有の米ソ二大国は非常に頭痛の種でございましょうけれ
ども、実際問題とすると、この核拡散防止
条約というものがいわゆる国際
条約のざる法化しつつあるということが言えると思うわけでございます。
これは大変な問題だと思っております。北朝鮮においてもその動きがあるということを聞いておりますが、イスラエルとアラビアが両方備えた場合、あるいは朝鮮の南北がそれを備えたような場合に、これは小国だからどうということじゃございませんけれ
ども、非常に感情が激越してきた後進国の、いわゆる争いをずっと続けてきたというその過程においての興奮状態においてこのようなことが出来していくということは、私は恐るべき一番大きな事態じゃなかろうか、そのように考えておるわけでございます。
そういったことを考えますと、かつて冷戦緩和ということを言いました、緊張緩和ということを言いましたけれ
ども、実質的には私は、別の次元で緊張の要因というものが、この宇宙の上で、世界の上で一日一日醸成されていっておる恐るべき事態だというように感じる次第でございます。核時代の冷厳なる国際関係と平和主義的な幻想あたりが吹っ飛ぶような、非常に何かいやな予感もするわけでございます。
そういう状態のいろんな世界の底流が、潮流が流れておる、そういう時期に
日本としてどうあるべきか、どのような
態度をとるべきか、これはすでに国防国策として決まったことでございますが、八月に総理が
アメリカにいらっしゃる、十一月に
防衛庁長官が
アメリカにおいでになる。これでは、今日煮詰めておられると思いますが、
日米安保条約を基本として精密なお話があることと思いますし、今日の時点におきましては
日米安保条約を維持強化していくということ、
自衛隊を自衛の限度内において精強なものに仕上げていくということ、今日の世界の情勢を見て、
日本の安全と平和というものはどうしてもこの二つ以外にないという確信を、私たちはまたさらに深くするわけでございます。
しかしながら、両国の
政府首脳当事者たちの話し合い、あるいは世界の舞台での話し合いにおきまして、もう一歩先に進んだ話し合いが今日なされなければ、人類が取り返しのつかない、本当に後悔先に立たざる悲惨を味わうようなことになりはしないか。今日、六カ国の核保有国がありますけれ
ども、あの非常に貧窮したインドがこれに走ったときに、私は、しまった、これは本当に大変なことだということを実は感じたわけでございます。それが波及してこのようなことで、どうかしますと二十カ国に近いものが核保有するという事態が、ここ三年、五年将来に起きるかもわからない。このような状態で推移いたしますと、恐らく起きるだろうと思います。その状態のまま放てきをする、放置をするということは、人間の、政治の英知が許してはいけないということを私は感じておるわけでございます。
ここで申し上げたいことは、総理にいたされましても
長官にいたされましても、できるならば現在の核保有国が、核を分けてほしい、分譲を受けたいという国に分譲しない
条約をしてほしい。分けてやらない、新しい核開発の国をその開発の
意味で
援助をしないということを徹底をしてほしい。それと同時に、現在、先ほどお話がありましたSALTの
会議でいわゆるICBM、SLBM、MIRVの協定はできたようなものの、その内実は、MIRVに対しましてICBMやSLBMの陰の転化作用が行われております。移出でございます。そういうことを考えてみますと、米ソ両大国は国力のあらん限りを尽くして核軍拡競争に突っ走っておるというのが現況だと私は見ております。悲しむべき事態であろうかと思っております。そのような
状況におきまして、米ソ両核保有大国とともに、ほかの四カ国の現在の核保有国も、現時点の核で一応凍結する、つくらない。廃棄するとかなんとか言いますとまたとてもむずかしくなりましょうから、次善の策として、その第一段目の策として、一応その核を凍結をしてもらう。米ソ両大国がいま持っておる、ほかのインドや中共やイギリスやフランスが持っておる現時点の状態で凍結をしてもらう。その状態で、後は国際
会議に訴えて、本当に人間の英知で話し合って大きな人類の惨禍を未然に防止する。そういう挙措、
日本の提言がここは一番なくてはならない、あってしかるべしだというような気がしております。非常に大まかなことで恐縮でございますが、
長官の御意向を承りとうございます。