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1975-06-03 第75回国会 衆議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月三日(火曜日)     午前十時十九分 開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 唐沢俊二郎君 理事 森下 元晴君    理事 吉永 治市君 理事 綿貫 民輔君    理事 原   茂君 理事 庄司 幸助君       赤澤 正道君    石田 博英君       大石 武一君    三池  信君       浅井 美幸君    坂井 弘一君       塚本 三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房長     長岡  實君         経済企画庁長官         官房会計課長  白井 和徳君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   大来佐武郎君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十七年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十七年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十七年度政府関係機関決算書  昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管経済企画庁)〕      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として海外経済協力基金総裁大佐武郎君の御出席を願い、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井原岸高

    井原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承願います。
  4. 井原岸高

  5. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和四十七年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  経済企画庁歳出予算現額は四百億二千八百七十八万円余でありまして、支出済歳出額は三百七十五億一千八百八十三万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比べますと、二十五億九百九十五万円余の差額を生じますが、これは翌年度へ繰り越した額十九億二千八百五十七万円余と、不用となった額五億八千百三十七万円余であります。  歳出予算現額につきましては、当初予算額は六百四十二億四千百七十五万円余でありますが、関係各省所管へ移しかえた額三百三十億五千九十七万円余を差し引き、予算補正追加額七十一億九千二百十六万円余と、前年度より繰り越した額十六億四千五百八十四万円余を加えまして四百億二千八百七十八万円余が歳出予算現額となっております。  支出済歳出額の主な内訳は、離島振興対策事業費百六十八億四千三百九十二万円余、水資源開発事業費百二億八百七十三万円余、国土総合開発事業調整費四十二億一千四百十万円、国土調査費二十七億九千四百二十四万円余、経済企画庁一般経費二十八億一千六百四十七万円余等であります。  次に、翌年度へ繰り越した額は、水資源開発事業費十九億二千三百五十七万円余、消費者啓発費補助金五百万円であります。  不用額は五億八千百三十七万円余戸ありまして、その主なものは、水資源開発事業において補償交渉難航等により治水特別会計へ繰り入れを要することが少なかったためであります。  以上、昭和四十七年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  6. 井原岸高

    井原委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。高橋会計検査院第一局長
  7. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 昭和四十七年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 井原岸高

    井原委員長 これにて説明聴取を終わります。
  9. 井原岸高

    井原委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 質問申し上げる前に、偉大な政治家の佐藤さんの御他界になりましたことに深く弔意を表します。特に、福田副総理には心からお悔やみを申し上げたいと思います。  何か大来さんに時間の都合がおありだそうですから、ベトナム援助問題、海外経済協力基金のいままで出ております問題と今後について、先にお伺いをしたいと思います。  ベトナム共和国が終えんを告げたといいますか、ベトナム民主共和国になりましたのが四月の二十日前後だったと思います。その一月前、三月の二十八日に、新たな基金の九十億円の支出についての取り決めベトナム共和国と行っておいでになります。今日までずいぶん基金支出されてまいりましたが、その九十億の取り決めができますまでのベトナムに対する経済援助年度別概要だけ先にお聞かせをいただきたい。
  11. 大来佐武郎

    ○大来参考人 基金は、一九七二年七月以降、プロジェクトローン三件、商品援助一件、合計四件の借款供与しております。一九七五年四月末日現在におきます債権額貸付残高合計百四十二億五千四百万円になっております。  この項目としましては、カントー火力発送電事業ダラトーカムラン間送電線事業サイゴン首都圏電話網拡充事業、それから商品援助と、この四件になっておるわけでございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 その取り決めが決定して供与額が決定いたしておりますが、それがまだ実行されていないものはどのくらいありますか。
  13. 大来佐武郎

    ○大来参考人 本年三、四月に行いましたものが十二億三千万円ございまして、残額二十二億になります。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 取り決めを七二年の二月に行って、供与額が二十億三千万円、サイゴン電話拡充施設援助がございます。これは四十七年に取り決めを行って、実行に移されておりますのは四億四千万、これが残っております一番大きなものだと思うのですが、これは今後どうするつもりでございますか。
  15. 大来佐武郎

    ○大来参考人 これは四十七年の二月二十六日に交換公文が締結されまして、約四億円の支払いをしておりますけれども、その工事に着手する直前に今次の政変が発生いたしまして、受注者は全部引き揚げておりますので、そのままの状態になっておるわけでございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 冒頭申し上げた、四月の二十日に共和国外務大臣が来日して打ち合わせしたときに、この問題に関しては何ら話し合いはしていないんですか。
  17. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 御質問の趣旨は、いまのサイゴン電話継続について話し合いが行われたかということでございますか。——政府間ではまだ話し合いが行われてございません。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、大来さん、あれですか、七二年に二十億三千万取り決めができていて、四億四千万実行されていた残りが、現在引き揚げてきているからそのままでございますと、四億四千万実行したままでこのことが打ち切られる可能性もあるわけですか。
  19. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 このサイゴン電話以外にも継続中の案件があったわけでございますけれども、これは現在、南におきます政府との間の外交関係が軌道に乗った上で話し合うということになっておのます。しかし、いまのところ、まだ、サイゴンにおきます先方政府は十分な外交機能を発揮する段階になっでおりませんので、そういう段階になったら、日本としてはこの種の案件について話し合いたいというふうに考えておるわけでございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 ユエの陥落したのがたしか三月十八日ごろですね。そうして十日後の二十八日に外務大臣が来て、いわゆる南ベトナムとの間でこの海外経済援助に対する話し合いが行われている。九十億の援助問題がそこで取り決めをされている。そういう新たな九十億というものの取り決めをするときに、少なくともその前に、すでに七二年に取り決めができて実行に移された途中で、ほとんど手のついていない状況で中止になっているこの問題に対してどうするかという話し合いをしないままに新しい九十億の話に入るということは、不見識じゃないですか。
  21. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 先生指摘の九十億の商品援助、いわゆる商品援助に関します交換公文は、ただいま御指摘のありましたとおり、三月二十八日に政府間で署名を見たわけでございます。そのときの情勢先生御承知のとおりの状況でございまして、プロジェクトを遂行するには適当な状況ではないという判断がございましたために、商品援助を提供することを決めたわけでございますけれども、もちろん、継続中のサイゴン電話その他のプロジェクト案件につきましても、情勢が改善すれば継続して行うということを前提として、新たな商品援助について取り決めをしたわけでございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、この四億四千万を実行したのは、一番最終期限はいつですか。
  23. 大来佐武郎

    ○大来参考人 三月十四日のようでございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 ことしのですか。
  25. 大来佐武郎

    ○大来参考人 本年でございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 本年の三月二十日にユエ陥落という、ほとんどもう決定的なベトナム共和国政権の崩壊がまずまず予測されていたあの時期に、数日前に実行した四億四千万、これも、いま鹿取さんのお話があったように、政情不安定だから、プロジェクトその他の問題については安定した政権ができてから考えようというような配慮をしなければいけない時期に、四億四千万の実行をしたということになる。そういうことになりませんか。
  27. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私の申し上げましたのは、その状態では、新たなプロジェクト協力というのは一応情勢を見てからということで、新たな援助といたしましては非プロジェクト、すなわち商品援助を考えたわけでございます。サイゴン電話につきましては、これはサイゴン市の住民の安寧、民生関係することでございますので、可能な範囲内で続けたいというのが当時の政府考え方であったわけでございまして、したがいまして、この使用期限はたしか一九七七年まであるプロジェクトでございますが、まずその準備として、ああいう状態でも差し支えない範囲の四億の範囲内においての使用ということをその当時考えたわけでございます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 われわれ常識的に言って、三月二十日にユエが陥落する、その四日前に四億四千万の実行を行う、しかも、その先の問題あるいはいままで残っているプロジェクト問題等については政情が安定してからやろうと考えているその時期に、二十億三千万の取り決めの中の四億四千万の実行というのは、どうしても——普通、そのような状況になったときには、一応も二応もストップをかける。われわれの方に、ある意味では国民に対する当然の義務があるわけですから。そこで四億四千万の実行をしたということには、とてもじゃありませんが、不用意というよりは、何か特別な政治的な配慮があって、何とかしてベトナム共和国援助したいというようなことからしゃにむにこの種のものまで実行に移したというような感じすら受けるわけです。普通、民間でこんなことをできるはずがない。一カ月後には少なくとも政権交代状況、だれでも当時予測ができている状況があって、あの大混乱している状況の中でなお、取り決めしたんだからというので実行を、多少の金額であろうと行うというのは、どうしてもふに落ちないような、人の金を扱うという軽い気持ちに余りになり過ぎているような、そんな感じがするんです。  大臣どうですかね、こんなばかな考え方は。私は、国民の金を少し軽く考え過ぎているという感じがしてならない。大臣は、この種の問題がやはり困難な問題だと考えられて、関係各官庁でいろいろと海外に対する援助問題を取り決めてはいけないというので、閣僚協議会なるものを近く設定して、この協議会に五閣僚が出て、そこで万全を期して海外援助に当たりたいというような構想を打ち出されて、すでにその準備をされていると聞いているんですが、私は、そのような考え方をお持ちになるきっかけの一つとしても、この実行額四億四千万ではあっても、あのどさくさ紛れのときにやられたというのは、いまにして反省すべき問題ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  29. 大来佐武郎

    ○大来参考人 私から先にお答え申し上げますが、基金は、各借款契約の規定に基づきまして融資実行を行ってまいりましたが、御指摘のございました時期では融資実行を停止すべき状態にあるとは考えられなかったということで継続してまいった次第でございます。  なお、御指摘の九十億、第二次の商品援助につきましては、基金といたしてはローンアグリーメントを締結いたしておりません。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 対外経済協力につきましては相当いろいろ考え直す必要のある時期に来ておる、こういうふうに思うのです。いまわが国国際収支全体をみますと、貿易収支ではやや黒字の状態になってきております。ただ、その内容を分析しますと、いわゆる産油国に対しましては非常な赤字で、四十九年度でも百三十億ドルを超えるような赤字です。その赤字をほかの非産油国でカバーしなければならぬというから、非産油国に対する輸出はえらい勢いで伸びざるを得ないし、またそれらの国との間でアンバランスを生ずる、とういう状態になりまして、そういうようなことを考えると対外経済協力全体——ほかにもいろいろ問題があります。特にアジア情勢が流動化しておるというようなことがあるので考え直したいというので、閣僚会議を設定いたしましてそれらの諸問題をつぶさに検討しよう、こういうふうに考えておりますが、いま御指摘と問題につきましては、大来総裁からお話しのように、当時の情勢としてはどうもやむを得なかった、こういうように申されておるわけでありますが、今後十分気をつけまして誤りなきを期してまいりたい、かように考えます。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣、今後気をつけるとおっしゃるのでやむを得ないと思いますが、これはこのときに十分な配慮をすべき時期ですよ。あのときだれだって、一カ月後の事態というものはもっと早く来るんじゃないかと予想していたときですから、注意をしなければいけないだろうと思います。  そこで、ベトナムに対するいまの九十億の問題ですが、北ベトナムすなわちベトナム民主共和国との交渉がその後行われたときに九十億の問題で折衝をした、その経緯を、結果も一緒に……。
  32. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 北ベトナムとの間の経済協力の問題につきましては、初めにわが方の兼轄公館でありますラオスの在ビエソチャン大使先方交渉をいたしました結果、大体内容が固まりましたので、先方の代表をことしの三月こちらに呼びまして、案文内容それから案文の形、特に案文内容につきましては品目などにつきまして詰めを行ったわけでございます。もうほとんど固まったわけででございますけれども、最終的に政府間で正式に調印するという段階には至りませんで先方東京を去って帰ったわけでございますけれども、いつにでも交渉を再開するというところで一時中断ということだったわけでございます。この交渉につきましては今後またビエンチャンを主として、場合によっては東京またはハノイというような場所でさらに詰めていくことになっております。  交渉内容につきましては、いま始まりかかっておりますので差し控えさせていただきますけれども、われわれとしては、初めこの交渉金額として考えておりました五十億円につきましては、近ぐ妥結に達すると考えております。  実はこの問題と南ベトナムに対します九十億円の円借款の問題とは、全く別の問題でございまして、たまたま、先ほどの商品援助でございますけれども円借款交渉がまとまりました結果、政府間協定を結んだわけでございます。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 九十億の円借款とは別だと言っていながら、周りから見ていて完全に別だというふうにはとれませんが、そう言わざるを得ないし、そういうたてまえだろうと思います。  ただ、一点念を押しておきたいのは、いわゆる南ベトナムベトナム共和国に対して商品借款番行う品目内容、かつて援助をしてまいりました品目内容が、今後再開されるであろう北ベトナムベトナム民主共和国との話し合いの中でも、たとえば商品援助にするなら、商品品目については全く同じものが北に対しても出せるというたてまえで理解してよろしいのでしょうね。
  34. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 経済協力、特に商品援助につ身ましては、先方要請に対しましてわが方がこれにこたえるという形でございます。現実問題といたしまして、いま御指摘になりました北ベトナムとの間の無償経済協力の中で北ベトナムが要黄しておりました品目と、南ベトナムに対しまして調印いたしました九十億円の円借款におきまして当時先方が要求していた品目とは違うわけでございますけれども、もし先方が希望する場合国に上って区別をするかどうかという御質問と承りますけれども、これはわが方として提供する品目について、原則的にはもちろん何の差別もない、民生の安定、経済建設に資するものであればいい。ただ、わが方の供給能力の問題もございますし、また、品目によってはわが国よりほかの国から求めた方がかえって有利であろうという品目もございますので、わが国として提供するにふさわしい経済協力の効果を上げる品目を選んで行う。しかし、その場合あくまでも相手要請に基づくということだと考えております。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 私の質問したことにそのままずばりとお答えいただきたい。要するに南に供与した、あるいは援助をした商品、その品目、それはそのまま北が要求したときには同じものが出せるか出せないか、それだけ。
  36. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 考え方としてはそういうことでございますけれども、現実に要求する時点と状況が違いますので、形式的に全く同じであるということは私ここでお答えできないわけでございますけれども考え方としては先ほど申したとおりでございます。
  37. 原茂

    ○原(茂)委員 どうしてこだわるのか知らないのですが、確かに状況の変化によって、国内でそういうものをいま生産できないとかいろいろな状況もある。あるには違いないのですが、国内生産状況がもし可能であるというなら、原則としては南ベトナムと同様の品目北ベトナムには出せる、こういう解釈でいいのでしょうね。
  38. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 原則的にはそのとおりだと思います。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、いまの商品借款の九十億ですが、これは二十八日に取り決めをして、償還期限二十年になっているのですが、あのような状況のときに償還期限二十年目ほかのものは御存じのように期限十年——十年というのもあるわけですね、同じベトナムに対して。ああいう状況になってくると、あの状況判断の中から言うと、できるだけ短くしようというような配慮も出なかったですか。
  40. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 九十億円の円借款償還期限の問題でございますけれども、私どもとしては、考え方といたしましては、こういう円借款であれあるいは無償経済協力であれ、国ベースの二国間の経済協力ベトナムという国に対して行うという考え方でございます。それで、住民の福祉の向上、経済建設ということを考えますけれども相手方としてはあくまで国が相手でございます。したがいまして、私どもは、南ベトナムにありました政府に対して債権を持っているという考え方でございませんで、南ベトナムという国に対して債権を持っている。したがいまして、先ほど経基総裁から残高があるという御説明がございましたけれども、この残高につきましても、国際法上は南ベトナムの国に対してわれわれは債権を持っているという考え方でございます。そういう考え方でございますので、あのときの状況として、南ベトナムという発展途上国、パーキャピタの国民所得国民生産の低い国に対しては、やはり国際的なルールに従って緩和された条件で行うということにしたわけでございます。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 南ベトナムという国に対して行うのは原則として当然なんですが、しかし、国を代表して折衝に当たっているのは政権なんですから、その政権が危険な状態になっている状況の中では、当然窓口のぐらついている状況判断して配慮をしていかなければ、この種の海外援助というものは、その窓口である政権がどんなふうな状況に、あしたつぶれようとどういうことになろうと——普通、民主主義国家における政変による、わが国でわかりますような状況であるならばともかく、戦争という事態の中で、政権の質が変わってくる危険のある状況はとく予想されていたあの状況の中で、なおかつ、国が相手なんだからというようないまの御答弁は、私は詭弁だろうと思う。  長期、ある意味では安定しているように見える韓国政権に対してやはりいろいろな援助を行っていますが、この援助も、韓国という国に対する援助なんだというたてまえが、現状、ベトナムよりは通りやすいと私は思う。そうである韓国に対してですら、あの金大中事件を中心にして——当然、長期の計画に基づけばもっと頻繁に会合を開き、援助額を増大し、いまのような額でない、長期プロジェクトを幾つか組んだものを全部前提としていわゆる提供がされていなければいけない問題も、金大中事件のいわゆる原状に復すということが実行されない限りという前提で、一年半以上延びてきたり延ばしたりということをわが国はやっているわけです。また、やるのがあたりまえだった。いまだに金大中事件は解決していないと思う。日本政府韓国に対するあの状況を、当時金鍾泌首相との間に話し合いを進めてきた状況から言うなら、実行されていない状況では一切の韓国に対する援助供与は打ち切るべきだ、してはいけないと思いますけれども、やっている。わずかではあってもやっている。これには不満があります。ありますが、韓国に関しては、戦争を通じてあの政権があしたにどうなるかという感じを、私も持っていない、皆さんもお持ちにならない。私も皆さんも、ベトナムに関しては、政権の質が変わる、戦争を通じての大きな変革が目の前にあると予想されているときに、やはり何らの配慮も加えずにこの種のことが行われているということは、海外援助の基本的なわが国の態度としては少しく慎重を欠き、配慮を欠いた、あるいは政治的に過ぎたというふうに考えざるを得ないのですが、もう一度御答弁をいただきます。
  42. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 いろいろな情勢を勘案して政策を考えるのは当然のことでございますけれども経済協力につきましては、発展途上国相手とする仕事でございますので、余りに過度にいろいろ相手事情によって当方の条件を変えるということは、われわれとしては果たしていい経済協力かどうか、疑問に思うわけでございます。したがいまして、先生指摘された九十億円の借款にいたしましても、一応、履行して継続する場合には、あれだけの緩和された条件で行う。国際ルールに従って行う。しかし、情勢が急転いたしましたので、先ほど基金総裁から御説明ありましたとおり、基金融資契約をやめた次第でございます。したがいまして、その反応の仕方を、恐らく先生はもっときめ細かくやれという御指摘かと思います。そのやり方はいろいろございますけれども、私どもといたしましては、経済協力というものは相手の出方や事情によってそう細かくわが方の条件などを変えるべきものではないというふうに考えております。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの答弁の中で、余り過度の政情に対する判断を云々という言葉があったのですが、あんなベトナム事態なんかは、そう過度の政情に対する判断云々だという範疇に入るものじゃない。これはもう国際歴史の上から言っても大変大きな質的な、まれに見る変化があった。過度の政情に対する判断なんて、過度なんというものの中に入る部類のものじゃない。しかも一カ月前後の間のことなんですから。  このような、いままでやってまいりました援助、いまの二十年の商品援助九十億にしても、これから実施に移されるわけですが、新しい政権がやはりこの債務は継承してその償還の任には当たるというようなことにさせるのですか、なるのですか。どういう配慮を持っているのですか。
  44. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私どもといたしましては、先ほど御説明いたしましたとおり、南越に対する日本債権は南越という国に対する債権であるから、一般国際法上はこれは生きているという考え方でございます。しかし、具体的な取り扱いにつきましては、先方の外交が軌道に乗り、交渉ができるようになってから交渉いたしたいという考え方でございます。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、この約二百二十億前後の現在持っております債権に対しては、新政権のもとでやはり返済、償還に当たってもらうという確信のもとに現在も進めているのだ、こういう理解でよろしゅうございますね。
  46. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 そのとおりでございます。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 大来さんに最後にお願いしておきますが、せっかく大臣が新しい構想を持って、海外援助等に対しては慎重な配慮を加えていきたいという反省をされているのですが、私も全く同感なんです。この種の経済援助の問題が、どうも今回のいきさつを見ると、軽々しく行われ過ぎているというきらいがどうしてもぬぐえない。当時の判断としてはそう政情不安定と思わなかった、こういう判断のもとに九十億の商品援助の問題も交換公文を行ったということに、せんじ詰めるとなるわけですが、そういう判断は、どうも当時の状況判断としては甘過ぎていけない、もうちょっと慎重にやるべきだ。少なくとも、振り返ってみて、この三月の二十日ユニ陥落以来、四月の二十日、新しいベトナム民主共和国の出現という一ヵ月の間に歴史的な大きな質的な変化を遂げた、こういう状況をあの当時わからないとは言えない。ある程度の予想ができていたり、あるいは反対に希望的な観測があってそうはならないという期待もあったかもしれません。しかし、どちらにしても冷静な判断をするなら、私はもうちょっと慎重な態度がいろいろな面で欲しかったと思いますし、今後はこの種の問題に対する慎重な配慮をぜひともやっていただかないといけないのじゃないかと思いますが、最後にその観点だけをお伺いして終わります。
  48. 大来佐武郎

    ○大来参考人 ただいま御指摘のとおり情勢判断につきまして、非常に急激に起こってまいりました点があったと思いますけれども、私どもの方といたしましてもさらにもう少し的確な予想をすべきであったかと思います。  基金の性格といたしまして、政府間で取り決められましたことを実施するという形になっておりまして、このローンアグリーメントができますと、正当な要請、要求がありましたときに、これを拒否するということが、特別の場合でありませんとできないような事情もございますけれども、非常に大きな情勢の変化がございますようなときに十分注意して今後行うべきであるということは、今回の経験に徴しまして十分考えてまいりたいと思います。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 大来さん、どうぞお引き取りください。  続いて、国民生活センターの業務について、少し細かい問題ですがお伺いをしておきたいと思うのです。  これは具体的な事例があった方がいいと思います。この間、五月の三日の新聞に出ていましたが、国民生活センターが二日に、夜食や手軽な食事として人気のあるカップ入りの即席めんだとか、七、八歳用の男児のズボンでございますとかいうようなものの商品テストを行った結果を発表された。非常にいいことをしたと思いますが、その結果、もう言わなくても御存じだろうと思いますが、植物の種が中に入っていたり、ガの乾燥した、粉になったのが入っていたりというようなことがあったり、ズポンの値段の安いのと高いのとを比べてみると高い方が必ずしもよくなくて、やはり縫製が非常に粗雑でぱらぱらとすぐ破れてしまうようなものがあったりというようなことを、全体十四点にわたって検査したことを発表しています。  この種のことは何回もやっていないのですが、幸いに実行に移されたわけですが、こういう問題があったときに、メーカーに対してどういう処置をとっていますか。
  50. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 国民生活センターの商品テストの場合でございますが、テストをやりまして御指摘のように商品に問題があったという場合には、メーカーに対しましても、こういう問題があったということを知らせているわけでございます。  なお、それについてメーカーがどういう処置をとったかということは、後でアフターケアとしてはやっておりますけれども、メーカーに対してこういうことをしなさいというような指示は特にやっておりません。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 最後のところちょっとわからないのですが、メーカーに対してこうこう、こうしなさいという指示はできないと言ったのですか、しないと言ったのですか。
  52. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 メーカーに対して指示をする権限はございませんので、指示はしておりません。ただ、別途通産省とか農林省とか物資所管官庁にもそういうことは報告しておりますので、大きな問題につきましては、所管官庁からそういうことを言ってほしいというようなことを申すことはございます。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 所管官庁からそういうことを言ってもらうように通告をした、その結果がどうなっているかをチェックするようなところまではいかないのですか。
  54. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 その後のアフターケアはやっております。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの問題に関してのアフターケアとは、いま私とあなたのやりとりした中のどの部分のどういうことを言うのですか。
  56. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 今度の場合のカップラーメンであるとかあるいは子供用のズボンであるとか、これは結果をごらんいただきますとわかりますように、特に大きな問題点、たとえて言えば食品衛生上問題があるとかというような問題はございませんので、これについて特に厚生省その他にこういうことをやってほしいということを申したことはございません。したがって、いまのところ、特別のアフターケアをやっているわけではございません。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 あなた方の発表しただけでも、A、B、C、D、×、こういうふうになっている中に、×がいっぱいあるのですよ。かやくの量が少ないとか、油が変質しちゃっているとか、異物が混入しているとか、その異物だって、いま言ったように植物の種が入っているとか、ガが入っているとか。これほど普及されているカップヌードルみたいな食い物に対して、そういうものが入っていても大したことはございません。——これはあなた、食べないからそう言うのかもしれないけれども、ずいぶん食べるのですよ。国民の衛生という観点から言っても、この種のものを大したことございませんでしたと言う感覚が、まずいのじゃないかと思うのですよ。そんな感覚で、それ以上しようがないのならそれでいいですが、少なくともあなた方の部下に対しては、あなたのような感覚でない、もっと真剣な一この種の問題、どんなささいなことでも、やはり変質があり、違うものが入り、入っていると書いてあるものが入っていなかったというようなものに対しては目の色を変える程度の指導性が発揮できるように指導してもらわなければ困ると思うのです。通産省その他の関係官庁には通知をして、そこからは言ってくれたかどうかわからないままで、そうしていまのは大した問題じゃないからアフターケアはやらなかった。そのアフターケアとは何ですかと聞いたのですが、それをお答え願いたい。
  58. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 アフターケアと申しますのはいままで余り事例はないわけでございますけれども、このテストは先生御承知のように、たとえば食品衛生法に基づいて欠陥があるとかというようなテストではなくて、いわゆる比較テストでございます。したがって、どちらが使いやすいかとかあるいは破れがちであるとかいうようなことを一般の消費者の方によく知っていただく、そうして商品選択の情報として活用していただくというのが本来の目的でございます。ただ、その中で、もし食品衛生法その他法律的なものに基づいた基準を下回っているとかそういうような問題がありますと、これは役所の指導その他にも関連してまいりますので、その都度厚生省なり通産省なりというようなところに、こういう事例がありましたよということを申し上げているということでございます。したがって、もしそういうような問題が起こりました場合には、その後物資官庁がどういう指導をやったかということをセンターの方で聞きまして、それをたとえば「国民生活」というような雑誌、そういうところに商品テストの結果序発表しておりますけれども、そういうところで、その後政府の指導でこういうことになったというような発表をいたしまして、それをアフターケアと申しているわけでございます。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題は、関係官庁に通達した以上は、いまおっしゃったようなアフターケアはやらなければいけないと思いますよ。こういうものをやりっ放しで、通知しただけで終わっているのじゃいけないと思うのです。やはり後ぴしっとつかまなければ意味ないですよ、せっかくやられても。単なる商品の各メーカーの比較をしているだけだという感覚も、ちょっと間違いだと思うのですね。せっかくおやりになるからには、食品衛生上の見地からも、問題があったらその見地に立ち返って、この問題はもっと深く関係官庁に通達をしていく、その結果がどうなっているかチェックを行うというふうにすべきでしょうね。せっかくセンターがあって、こういうテストをおやりになるのですから、やるべきですよ。  センターの事業の相当大きな部分として、たとえばTBSなんかを通じてテレビによる放送をやっていますね。これは国民に、悪貨を駆逐する意味で、いいものを知らせる意味、あるいは品物の比較選択ができるような知恵を与えるという意味で、非常にいいことだと思います。あるいはいろんな商品に対する苦情があったら言ってこい、どんどん言っていいんじゃないか、こういうような意味からいっても、私は大変いいことをやっていると思う。したがって、四十七年度の収支を見ましても、支出の一番大きなものはやはり放送になっていますね。ラジオはわずかで、テレビが多いですね。これはいいことだと思うのです。私は、この種のテストをしたら、テストをした結果をこそテレビの放送に乗っけるべきではないかと思う。事業目録見てもわかりませんし、四十七年その他にはやっていないのですが、幸いにこの種のテストをおやりになったらテストの結果を、しかも関係官庁がどういう手当てまでしたということまでテレビで放送をすることの方が、消費者も非常にすっきりすると思いますし、新しい自信もわこうと思いますし、なるほど、こういう問題があったらどんどん言っていいんだなというような気持ちを持たせれば、相談所へ来る苦情なり相談というものはうんと多くなるだろう。いまのところ少な過ぎますよね、センターに対して。全国的に見ると各県でやってるものがずいぶんありますけれども、センターに対する相談の持ち込みなんというのは大変少な過ぎます。これはリストがございますけれども、少な過ぎます。やはりこういうテストをやったら、そのテストの結果をテレビに乗っけてやるということをおやりになる必要があるだろう、こう思うのですが、それが一つ。  それからもう一つは、TBSでおやりになっているのですが、NHKはこの種の問題では使えないものなんですかね。この二つをちょっとお答え願いたい。
  60. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 商品テストの結果でございますが、現在までのところは一般の新聞発表をいたしまして、新聞発表の場合に、今度の場合もそうでございますが、NHKでもかなり時間をとって紹介をしていただいております。  それから、そのほか生活センターが出しております印刷物では紹介しておりますけれども、今後テレビその他でもそういう問題を放送してまいりたいというように思っております。  それからなお、NHKでございますが、これは生活センターだけに限りませず、政府の広報番組につきましても、従来から、NHKで時間を買いまして放送するというのはどうも例がないようでございまして、もっぱら民放を利用しているというのが現状でございます。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 ビデオテープでやるのは民放だけだ、従来の慣習がそうだった、こう言うのですが、私はやはり、周知徹底をするという意味からいうなら、民放も一つ、同時にNHKも行うという努力をすべきだと思うのですね。従来この種のものはTBSだけだ、あるいは民放だけだ、だからそのままNHKに対しては特別の折衝もしない。私は、NHKだって、この種の問題ならば、一ヵ月に一回なり二回なり一定の時間にこういうものをちゃんと取り上げてやりますという時間があっていいんじゃないかと思いますし、そういう意味ではNHKなんか大いに活用すべきものだと思うのですが、その折衝をすぐにやってみたらどうですかね。
  62. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 大分前に、実はそういうことは検討したことがございます。先生御承知のように、イギリスのBBC放送などではそうした番組があるわけでございますので、日本もぜひそういうことをやってみたらどうかということで、NHKと大分前でございますが交渉したことがございますが、そのときは、どうも前例がないということで実現をいたしませんでしたけれども、なおこれからも一度交渉してみたいと思っております。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣、ひとつNHKにこの種のものを放送してもらおうという、悪いことじゃないんですから、まさに公共放送なんですから、そういう努力を大臣もされてみたらいかがですか。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま原さんから二点についてお話しで、一つは、国民生活センターに対する苦情でありますとか、あるいは国民生活センターの入手した情報でありますとか、そういうものに対するアフターケア、これはやはり最後まで追跡、フォローいたしまして、これを国民にも知っていただく必要がある、こういうふうに思います。そういう努力をします。  それからNHKの問題も、これはごもっともな話なんで、まさにNHKはそういうような仕事をしてくださるというのも、これは私は当然の仕事じゃないかという感じもするんですが、何せいろいろ放送関係、むずかしいことがあるわけなんです。しかし、これは改めてひとつ交渉してみることにいたします。せっかくの御指摘、ありがとうございます。
  65. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に、この問題で一つお伺いしておきたいんですが、この間、これは五十年四月らしいんですが、国民生活審議会の特別委員会で消費者被害の救済に関する報告書というのが出された。これは恐らく御存じだろうと思うのですが、この中で、細かいことを言う時間はありませんが、事業者に対して原則として無過失責任をぴしっと負わせるということが筋だと言い切っているのですね。無過失責任というものは、いまの公害問題がこんなにうるさくなる間にずいぶん論議されてまいりました。いまだにはっきりとしたけじめがついていない。その状況の中で、少なくとも消費者被害の救済に関する特別委員会の報告書の中では、やはり無過失責任というものをぴしっとやるべきだ、負わせるべきだ、こういうことを言っているんですね。  これは非常に重要な問題なんですが、この報告書どおり、私がお伺いしたい第一の問題として、この無過失責任というものをぴしっと負わせる、そういう筋を通しますということにお考えかどうかが一つ。  それから、問題があったときに、無過失責任の有無に関していろいろとやがてむずかしくなってきたときの問題の一つとしては、立証しなければいけないという問題がいつでも起きてくる。その立証については、消費者というのは事業者に比べて非常に力が弱い。いろいろな機関を持っていない。したがって、なかなか太刀打ちできないで、今日まで立証というものがなかなかむずかしい。そういう意味では消費者の立証責任というものを非常に緩和すべきだ。いままでのような、公害問題を訴えた側の立証責任というものを、ぴしっと整わなければいけないというようなやり方ではいけない。少額の、あるいは消費者がこういうことが自由にできる、楽にできる。そうして多数の者に迷惑をかける事業者に対してはぴしっと無過失責任を負わせるのだ、こういうたてまえをとる限り、この無過失責任の立証責任というものを消費者の側に余り厳しく言わない、非常にゆるく緩和した形でこれは決めておくべきだ、こういうことが二つ目の大きな指摘になっている。  それから三つ目に、被害者が何がしかの被害ホ受けるわけですから、この被害を救済するといろこともやはり考えなければ本当の消費者保護で片ないということになりますと、その救済というのは簡便で、しかも迅速で、かつ費用は非常に安く上がるというようなことでないと、無過失責任を問う問わないと言ってやっている間に、それ裁判だ何だというのでべらぼうな費用がかかるようですと、消費者が勝ったって実際には損をするというようなばかげたことにならないようにしなければいけないだろうというので、そこで被害者の全員あるいは被害者全体を対象とする。これはもう一々その関係者をよく調べてどうのこうのというのじゃなくて、被害者全員を対象とするものでなければだめだ、補償するとき。おまえは何だ、こういうことがあるからというのでなくて、その商品なら商品を買ったということだけで、簡単にその人に対する救済措置が講じられるようなものにすべきだというのが、三つ目の大きな柱になっている。  そうして四つ目に、いま言った訴訟ができなきゃいけない。訴訟をするときでも、クラスアクションと言っているのですが、いわゆる集団訴訟、代表者によってその集団を代表させて訴訟ができるというようなことを、やはり外国の例にあるようにやるべきではないかというようなことが実は指摘をされています。これはいろいろな問題があるのですが、大変貴重だと思いますのは、最後の、この種の問題は、一々裁判という前に、公正な第三者機関を構成しておいてここで判断を下して、裁判の一歩手前のところで納得するなら両者が納得するようにしたらどうかという、第三者機関の設立もやるべきではないか、こういうふうなところが主な問題だと私は思う。  その特別委員会の報告について、センターの責任者としてどうお考えになっているか。
  66. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 四月の末に出ました消費者救済特別研究委員会報告の柱は、先生指摘のとおりでございます。  最初に御指摘になりました、被害の救済に当たってのいわば基本的な理念として、一つは無過失の責任主義というもので考えるべきではないか。それから、こういう複雑な製造工程とか流通過程という中から被害が出てくるわけでございますから、因果関係の立証責任というものを緩和をすべきではないか。こういう考え方につきましては、私どももこれから地方の消費生活センターあるいは国民生活センター等で、御承知のようにいろいろの苦情処理をやっておりますけれども、そういう苦情処理のやり方について、こうした無過失責任的なものの考え方あるいは立証責任の緩和をしたような形で被害者の救済なり苦情処理をやるという考え方を今後も徹底をしてまいりたいと思っております。  なお、将来は法的に無過失責任とか立証責任の緩和というものをはっきりさせる必要もあるかと思いますが、こうした点については今後法務省その他と十分検討してまいりたいというように考えております。  それから具体的な被害者の救済の手段といたしまして、御指摘のクラスアクション的な、いわば多数被害救済のための新しい救済制度というものを検討してはどうかというような点を指摘をしておりますし、また公平中立な第三者機関、いわば仲裁あっせん機関を設けるということも検討してみてはどうかと、こういう指摘をされているわけでございますが、この点につきましては、この研究会の報告を受けまして、これから国民生活審議会の消費者保護部会で、その具体的なあり方あるいは具体的な組織をどうするかということを御検討いただくということになっております。  また、特に裁判制度につきましては、日本の裁判制度全体の観点から検討していただくということも必要でございますので、これは法務省その他にも御検討をお願いをしたいということで、できるだけ早い機会に具体化を図ってまいりたいと思っております。
  67. 原茂

    ○原(茂)委員 生活センターの問題はそれで終わります。  次いで、大臣にお伺いしますが、ずいぶん古くから、インフレによる目減り補償の問題が取りざたされてまいりました。これに対して、つい先日、福祉預金ということで一応のけりをつけるところへ落ちついたようです。これはやらないよりはやった方がいい。しかし不満足ではございますが……。この福祉預金というもののできますのに、その一番きっかけをつくったのは大臣ですからお伺いしますが、来年三月、前年度に比較して一けた台で抑えるのだと言って必死になっておやりになってきたのは、いまの段階ではどうやら一けた台に抑え込めそうな、まあ大臣、平たく言うと、よくやったなという感じがします。まあいろいろな弊害も、私たちから言うと意見もあるところですが、とにかく一けた台に抑え込もうとしている努力というものは、私たちの反対するようないろいろなやり方もあったにしても、できそうな段階に、まあいまのところという意味では、功罪のうちの功だと思うのですね。同じように、福祉預金をおやりになったということも、これは、一番最後には三木さんがどうしてもやりたいというので、衆議院の三月のときですか委員会で、必ずやるのだ、こう言ったことがきっかけになって、大臣の言ったそれが結果的には生きてきて、福祉預金という形になったのだと思うのですが、これで目減り補償という問題のけりをまあつけたことにする、つけたことになるというようなことにすりかえられるとお考えでしょうか。問題がまだ解決していないとお考えでしょうか、どうでしょうか。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いわゆる目減り問題に対する対策ですね、これは補償というような考え方では対処し切れない、こういうふうに思うのです。やはり目減り問題に対する対策のかなめは、何といってもこれはインフレをとめることだ、そして物価水準を預金金利以下の水準に早く持っていくことである、それ以外にないということをずっと力説してきたわけです。その方を一生懸命やります。  ただしかし、現実の問題として、さあ、インフレがそう早期に解決できるか、私の見当ではまだまあ二年の歳月は要する、こういうふうに思っておるのです。そうすると、その間の政治的な配慮というものを何とかしなければならぬだろう、こういう考え方に立つわけであります。  いまお話しのように、物価はかなり落ちつきの基調になってまいりました。まあ本年度中には何とか一けた台に持っていく、来年度中にはこれを定期預金金利以下の水準に持っていく、こういうことを目標にしておりますが、これは何としても実現をしたいと思っています。そういう展望ができるような段階になりますと、いわゆる目減り問題という問題も、多少これは環境が変わってきたような感じもしますけれども、しかしよく考えてみますると、やはり定期預金の金利、これといえども、これから企業の収益の状態を考えましても、また、この金利というものが物価政策そのものの中におきましてコストとして重要な役割りを占める、こういうようなことを考えましても、やはり貸出金利水準というものを下げていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけなんですが、それとの関連において一般の預金水準をどうするかという問題も出てくるわけです。いま預金金利の水準を引き下げるという決意はしておりませんけれども、しかし、そういういろいろな情勢のあるその中で、やはり目減り問題について何らかの処置をしていくことは必要である、こういう見解をとるに至ったわけであります。  そこで、一般の預金に対しまして定期をどうするとか、いろいろ預金の種別につきまして特利をつけるということは、貸し出し金利のことを考えますととてもできません。しかし、その間貸し出し金利と預金金利との調整を、多少ともまだインフレが進行する段階においてどうするかということを考えますと、いま提案されておる福祉預金というような考え方は、私はまことに妥当な考え方ではあるまいか、そういうふうに考えております。そういう考え方がとにかく金融機関の中でも盛り上がってまいりまして、大蔵省に対してそういう意見具申がある。意見具申をもとにいたしまして大蔵省は一案をつくりまして、いま日銀に対しまして提議をいたしておる、こういう段階でありまして、一刻も早くこれが実現することを期待しておるわけでございます。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 具体的な内容を一つだけお伺いしたいのですが、今度お決めになるのは各種年金の受給者に対して一口五十万円、期限一年で一割の特利をつける、そういうことで実施されるようですが、どうして五十万円に切るのですか。
  70. 岩田幸基

    ○岩田(幸)政府委員 いま大蔵省が日銀政策委員会に対しまして大蔵大臣から発議をしております原案は、いま先生指摘のように、預け入れ期間が一年、対象預金者一人につき五十万円。利率につきましては、現行定期預金の利率の最高限度を上回る利率ということで、何%ということは特に決めてはおりません。  預け入れ限度を五十万円にいたしました理由につきましては、大蔵省で検討したことでございますので定かに承知してはおりませんけれども、私どもが昨年の十一月に国民生活審議会で、いわば低所得者層あるいは老人層に対する預金について特別の金利をつけたらどうかという提案をいたしましたけれども、そのときの考え方は、いま低所得者層、いわゆる第一分位の層でございますが、第一分位、第二分位くらいの層の預金の蓄積額、ストックでございますが、これが通貨性預金、定期性預金合わせまして五十万円弱でございますので、ほぼそれくらいの金額があれば間に合うのではないかという感じを当時持ったことはございます。今回の五十万円がどういう経緯で出てまいりましたかは、私ども詳しくは存じません。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 経済閣僚会議か何かの責任者は福田さんですから、そういう弱者とは言いませんが、受給者の零細な預金に特利をつけてやろう、そうすべきではないかという大臣の発言が実を結んだ当の責任者として、私はそういうことに対して、大蔵省がどういう理由でその五十万円という限度にしたかわからないなんというようなことにもしなるとするなら、大臣もいいかげんに口から出任せを言っておいて、後は野となれ山となれで、どうなっても大した関心を持っていないのだということになるので、私は、福田大臣がそれでもよくやった、実はこういう評価の前提で冒頭から言っているのですが、五十万円というのはいろいろな預金その他の平均を見てとおっしゃるのですが、受給者は全人口の約二十分の一、数にしても大したことありませんし、これをせめて百万円にするくらいな配慮をする。へそくりと言っては何ですが、たんす預金と言っては何ですが、お年寄りほど実は変な金、と言ってはいけないのですが、現金で持っている金がずいぶんあるのですよ。これがみんな、表面に出ている預金の平均値だけで大蔵省が五十万円というものをとったのだと言うなら、私は少しきめの細かい配慮が足らないのじゃないか。せっかくここまで思いやりをするなら、思いやりをもう一歩進めて、現実に合わせて、もし大ざっぱに額を言うなら百万程度のもの。たまたまこれは、私どもの政審会長の堀君が試案として百万円という限度を発表したそうですけれども、これは単に堀君の試案ではなくて、私どもが考えても、せっかく思いやりのある考え方を実施するなら、五十万というのはいまの状況からいってちょっと低過ぎるのじゃないか、百万ぐらいにする、あるいはできないにしても、閣僚会議の責任者としてはそういう努力をもう一歩して、ここで有終の美といいますか、せっかく発案者なんですから、大蔵省に任せっぱなしで、いまの局長の御答弁にあるような、どうも大蔵省がなぜ五十万の限度にしたかわからないというような、言い出した大臣が知らないような状況のままに五十万が決められてしまうことのないようにすべきではないか、もうちょっと配慮をして金額は百万程度に伸ばすというような努力を大臣がしてしかるべきだ、最後まで締めくくりをなさったらどうだろう、こう思うのですが、いかがですか。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題は、議論が起こりましてから相当の時間を経過しているのです。その上これが具体化というか具体的な議論になってからも、もう一年たつ問題です。  その間どうしてそんなに時間がかかったのかと言いますと、これはなかなか考え方としてむずか率である、特殊な階層に対しましては高い利率である、これで一体公正な行き方として理解されるであろうか、こういうような議論があるわけです。それからもう一つは、こういう特利制度を設けますれば、それはそれだけ貸し出し金利にも影響をするわけです。その貸し出し金利との関連をどうするか、こういうことで、私も最初の段階では、せめて百万円ぐらいというようなことも考えてみたのです。しかし、そういうむずかしい議論からの調整、そういうようなことをひとつ考えますと、これはそう多額の預金限度ということもまたむずかしいんじゃないか、そういう有力なる意見も出てくる、そういうことになります。  ただ、金額と金利という問題が関連するわけですが、金利の問題につきましては当時、一年ぐらい前は一割、一割と、こういうふうに言われておりました。しかし、そのときの情勢に比べると、物価水準というものはかなり落ちつき方向になってきておるわけであります。それにもかかわらず金利の方におきましては、大蔵省の発議といたしましてはこれはまだ特定はしておりませんけれども、私の見通しといたしましては、これは日銀の政策委員会はかなり高いものをつけてくるんではないか、そういうような観測を私はしておるのです。  そういうようなことから考えまして、諸般の状況から、まあ百万円とも考えましたけれども、この際五十万円といえどもこれをスタートする、これが妥当なことではあるまいか、そういうふうに考えまして、この発議に対しましてはこれを了承しましょう、とにかくやってくださいという結論に到達したわけであります。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、先ほどから一けた台に抑えるということ、私も、いままでの段階ではどうやら抑え込みそうなところまでよくがんばってこられたなという感じを持っていたのですが、ここでメジロ押しに公共料金を上げるような気配が政府自体にあるのですね。けさもラジオで聞くと、うとか、あるいは私鉄もいわゆる公共の運輸機関の値上げにきびすを接して上げるだろうというようなことが公然と言われて、しかも政府の雰囲気としてはそれを認めざるを得ないだろうということが、るる新聞等を通じて報道されているのですが、一けた台というのを何としても抑え込んでいく、がんばってやるんだ、そういう状況の中でまだ自信をお持ちになっている理由をひとつ……。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昨年は、とにかく一四%の消費者物価の上昇です。しかし、それは時期的に見ていきますと、その一四%の多くは昨年の十一月ごろまでに実現をされておる、こういう状態であり、十二月、一月、二月、三月、この状況をとってみますと、年率にして七%くらいの上昇になるのです。それから四月にちょっと大幅に上がりました。それを考慮いたしますと、年率九%くらいの上昇になるわけです。  それを踏まえて五十年度はどうなるか、こういう問題ですが、四十九年度のそういう状態と五十年度のこの一けた台という見方、目標、この問題の背景ですね、それを考えてみますと、四十九年度は、大体四十九年二月ごろを境といたしまして、需給インフレの状態はまず終わったわけです。そして三月、四月ごろからコストインフレ、こういう段階に入っておるわけです。これは御承知のとおりでございますが。  コストを上げる要因といたしまして、まず第一に、何としても原材料ですね。この原材料で大きな影響、流動的要素がありますのは外国からの原材料等の輸入であります。外国からの原材料、これは昨年はずっと、ほとんど軒並みというくらい上がり続けたわけなのです。ところが、本年になりますとこの関係はどうなるかというと大体頭打ち。しかもその中で農作物なんかになりますと、この半年間で半値あるいは半値以下になる。そういう海外の物資がいままだ入ってきておりませんけれども、これは夏ごろからだんだんと入着するような状態になる。これは非常に違う点です。第二の重要コストである人件費はどうだというと、昨年は三二・九%の上昇だった。ことしはおかげによりましてこれが一三、四%の水準に落ちつこうとしておる。これも非常に大きな変化であります。  それから第三の要素は御指摘の公共料金でありますが、去年は六月の電気料金の大幅引き上げですね。これは営業用はたしか七〇%以上の引き上げをしたと思います。それから家庭用につきましても五〇%くらいな引き上げをしたように記憶しておりますが、そういう大幅な引き上げがある。それからガス料金もこれに準ずるというような状態。それから私鉄も国鉄もかなりの値上げをいたす。また、全国のバスでありますとかあるいはトラックでありますとかあるいはタクシーでありますとか、これも大幅な上昇をいたしたわけです。そこへもっていって米価は三二%の上昇である。こういうようなこと、その他細々したもの、公共料金の引き上げというものが本当に言葉どおりにメジロ押しだったのです。それにもかかわらず、とにかく下半期の物価情勢というのは非常に鎮静し得た。ことしはどうかといいますと、公共料金につきましては、いま予定しておるのはたばこ、それから公共料金ではありませんけれども、税の関係で酒の値段が上がらざるを得ない。郵政料金。そのほか目ぼしいものをとってみますと、米価をどうするか、麦価をどうするかという問題があると思うのです。昨年の場合におきましては、公共料金の引き上げの影響が、これは理論数字で実際どういう影響になったか定かにし得ない問題ですが、三%というのです。ことしはいま申し上げたようなものを入れましても一%そこそこだ、こういうような状態、これも非常に変わっておるのです。  それから第四の要素といたしましては金利、これは昨年の物価情勢では、一昨年の暮れに公定歩合の二%引き上げをしておる、その影響というものは昨年ずっと出ておるわけですが、これも今日の段階では引き下げの時期に来ておる。  そういう非常に改善された背景のもとにおいて、昨年一四%、しかも十二月、一月、二月、三月、年率七%の上昇にとどまったというその後を受けてのいわば五十年度の物価水準が、一けた台におさまらないというはずはない、こういうふうに考えているのです。  しかし、いい要素ばかりでなくて、悪い要素もあるのです。それの一番大きな問題は、企業が不況状態である、そういう状態の中で収支の改善を図る、そのために商品の価格の引き上げをしたい、機会があればそれを実現したいという希望を多くのものが持っておる、こういう問題でございますが、これに対しましては、私はいまは非常に大事な段階である、そういうことを踏まえて、企業の協力をいま要請をいたしておるわけであります。  私は、物価全体としては三年かかると思ったのです。第一年度は、とにかく物価は一四%、賃金も一三、四%。第一段階、第一年度のこの結果というものは大変なだらかにいったと思うのですが、問題は第二年度の一けた台、この問題がもし実現されないということになれば、賃金、物価の関係を主軸といたしまして非常な混乱にまたなってくる、日本経済は再び安定しない、こういうことになる。そこで、企業も苦しい中でありましょうけれども、ひとつ協力してもらいたい、こういう要請をいたしておるのですが、これを実現をする。企業も協力をすると言っておりますが、そういうことになれば、私は本年の一けた台実現というものにつきましてそう悲観視する必要はない、自信を持ってこれを推進できる立場にある、こういうふうに考えておるわけであります。  四月の消費者物価が二・二%上がりました。これは調べてみると、年度のかわり目に際しまして授業料のつけかえ、これなんか非常に大きく響いておるのです。昨年の四月は三%上がったのですが、ことしはそれが二・二%にとどまった。五月はどうか、こういうことになりますと、五月は一%の上がり、しかしこれは東京の区部なんです。東京は特殊事情がありまして、これはふろの代金が七十五円から百円になったというようなことが強く響いております。それからレモンが消費者物価推計ではわりあいに重要なウエートを占めるのですが、これが五倍の値段になってしまったのです。東京都民なんかレモンを非常に使用する、そういうようなことで、東京区部の物価水準にはこれが大きく響いております。しかし、私は五月末でも、全国平均は東京区部のような状態ではないというふうに見ておりますが、いずれにしても、そういう特殊要因で上がったので、物価安定の基調についてはいささかも変化はない、そういうふうに見ておりますので、勇気を持って、また自信を持ってひとつ一けた台の実現に取り組んでいきたい、こういう考えでございます。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣の自信を必ず実現させることがいまの国民の念願だと思いますから、がんばっていただきたい。私、非常な懸念を持っていますから、これはまたその時期になりまして、ほめるのか、だめじゃないかと言うのか知りませんが、とにかく一度またお会いします。  そこで最後に、現在の経済全体を考えたときに、大蔵省がすでに何か活動を始めたと聞いております付加価値税ですね、これは目的税ではございませんが、付加価値税というものをやはり最終的には、たとえば一〇%、それ以内の税率でやるのだという付加価値税をやることで、たとえば一〇%にすれば、現在の国民の消費の全体からいって、約八十兆ですから、その一〇%で約八兆円の新しい税源が求められる。すでに五十年度は財源不足だというようなことが予想されているということになりますと、下手に増税という形で従来と同じようなカテゴリーではなかなかできないということになると、付加価値税が、いま諸外国の多くの国でやっている例を見ても、やはりいま日本でこれをとらえなければいけない時期が来ているのではないかという考え方、私も大蔵省の考え方を一部理解できるわけですが、やはり経済閣僚会議の責任者として付加価値税というものは考えていこうとなさっているのか、その場合の一体時期なり構想はどうなんだろう。  もう一つは、これは大臣もつい先日の記者会見などでも一番最後に発言しているのですが、時期によっては資産再評価というものが問題になるだろう。検討の時期に来ているのじゃないか。この問題については、昨年、大蔵大臣の当時にすでに、資産再評価に対する検討を大臣として正式に命じられていた経緯があります。今日の段階になると、大臣は、資産再評価を、数日前の発言で「土地だけに限る、ただし」というようなことをおっしゃっておりましたが、これは土地による、インフレによる大きな、異常な利得に対する課税というものが中心、あるいは特別税を取るかわりというような考え方があったので、土地だけだよというようなお話があったのだろうと思うのですが、私は、再評価をやるとすれば、やはり一般設備なり証券に対しても再評価をやる時期が来ている。その意味は、現在企業が非常に停滞して困っていることは間違いない。これに対する対策として、公定歩合を引き下げるのだ、何だかんだというようなことをいま一生懸命やっていますが、かといって、あまり企業にだけ減税なんということができるはずがないということになりますと、私は、ある意味で中小企業なり設備の老朽化したものに対する再評価税を、思い切って率を下げながら、やはりこれを再評価をさせて、償却という形での減税にかわる企業に対する援助というようなものも考えられる一環としての資産再評価というものが、いまこそ考えられていいんじゃないか。単なる、土地だけですよと大臣が四日前ごろに記者会見で言ったような考え方はどうかな。資産再評価が必要な時期であるとするなら、これはやはり機械設備その他一般に関してもやりながら、しかも税率等再評価税の問題で考えてやって、初めて企業に対するある種の、特に中小企業に対する手当てができるという観点から、その時期に来ていると私は思うのです。  そのほかの理由からも資産再評価は必要だと思いますが、時間がなくて、細かくそのことを申しげる時間がありません。しかし、付加価値税による新たな税収を考えるということは、国家財政全体の見地から言って、いまの一けたに抑え込もうというときに、これはその逆の結果を招来する一因にもなりますが、しかし、万が一この一〇%程度の付加価値税をやるとするなら、私は物価全体に響いてくるあれから言うと、わずかに一、二%で済むのではないかというような感じもしますので、現在の国家のいわゆる財政全体を考えたときの付加価値税の実施を大蔵省が考え始めているように聞いていますが、これは必要な時期に来ているのではないか。もう一つは、資産再評価に対してどのようにお考えになっているか、二つ最後にお伺いして終わります。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 付加価値税論は、諸外国の中でも付加価値税的なものをやっている国もある。わが国においてそういう議論が出てきますのは、これはいま税が高い、高いという重税感を国民の間から訴えられるのです。ところが、いま実際の国民の租税負担はどうかというと、大体国民所得の二〇%程度のものでありまして、諸外国に比べると圧倒的にここは低いのです。それにもかかわらず、なぜ重税感というものに対する苦情が多いかというと、これは直接税が非常に多くなってきた。それで、ある程度間接税への振りかえを考えるべきではないか。これから将来の国家需要を考えてまいっても、福祉財源とかなんとかいろいろあります。そういう際にこれ以上直接税を強化する、こういうことはまた非常に国民の抵抗が多いのではないか。新たなる財源、その際、付加価値税、そういう種類のものを考えたらどうかというのが付加価値税論の論拠になってくるわけですが、私もそういう考え方、これはよく理解もでき、勉強もしております。しかし、いま今日の問題としてこれを考えるときに、この付加価値税をやりますれば、これは企業の製品のコスト要因としてもう直撃的に働くわけですから、いま物価を鎮静しよう、しようというそのときに、企業の製品価格を高めるような付加価値税をやるということを考えることは、これは私はもう絶対できない、こういうふうに考えておるのであります。もしそういうふうな議論が出ましても、私はこれには賛成しがたい、そういう考え方でございます。  それから資産再評価の問題ですが、経済が非常な大混乱をする、そういう際におきましては、これは戦後処理というかそういう処置が必要なのです。たとえば、敗戦直後、財産税という問題がありました。それからさらに追っかけて昭和二十七、八年にはまた、いわゆる資産再評価というようなことがあったわけですが、あの敗戦直後の状態に比べますと、今回の混乱、これは比ぶべくもありませんけれども、それにしても、平時とすると大変な大混乱です。私はそれを狂乱だと言ったくらいな大混乱であったわけです。その大混乱、大インフレの中で、国民の間で富の不公平というものが非常に拡大をしておる。それからまた、企業におきましてもいろいろ経理内容等においてゆがみが出てきておる、こういう問題があるわけなんです。私はそういう事態に対しまして、ある時点になりますと、今回もいわゆる戦後処理的ないろいろな処置を考えなければならぬだろう、こういうふうに考えておるのですが、それはひとり税の問題ばかりではないのです。歳出その他の方法により所得の再配分というようなこと、これは非常に重要なことである、こういうふうに思いますが、税制面においても何か考えられるところがあるかどうかということももちろんあるわけでありますが、いま私は、この資産再評価に関連する課税方式の変更ということについては、具体的な考え方を持っておりません。おりませんが、いずれの時期かに税も含めて、とにかく、あのインフレが醸し出した国民の資産の非常なアンバランス、これに対しましては歳出によるあれが主軸になると思いまするけれども、そういうことを意識に置いた対策を講じなければならぬだろうと、こういうふうに考えておるのです。  いま原さんのお話によりますと、企業について償却資産の再評価をすれば、それは減税になって、この際いいんじゃないかというようなお話がありますが、いま償却資産の再評価だけして土地の方の再評価をほっておく、こういうことも片手落ちになるわけで、さあ土地の方の再評価をするということになると、これはまた再評価税を取るということも大変なことでありますので、まあ当面の処置とすると再評価税的な考え方は私は妥当じゃないんじゃないか、もう少し先へ行って、歳出を含めていろいろな角度から総合的に検討すべき問題である、そういう見解でございます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  78. 井原岸高

    井原委員長 庄司幸助君。
  79. 庄司幸助

    ○庄司委員 先ほどの原委員質問に関連して、私、日韓経済協力問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  何か伝えられるところによると、この間、金鍾泌首相が来日していろいろ話し合った結果、今国会終了後の七月ごろ日韓定期閣僚会議を開催するというふうに伝えられておりますが、その辺は事実かどうか、これだけひとつお伺いしておきます。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日韓経済協力関係につきましては、過去のこれまでの経過については御承知のとおりと思いますが、これからもいろいろの問題が起こってくるであろうと、こういうふうにも思います。思いますが、この間、金鍾泌首相日本に参りまして、そして私も首相にお目にかかりましたが、経済協力問題につきましては、私には何らの話はありません。また外務大臣等からも、そういう話があったという趣は聞いておりませんでございます。
  81. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、これもまあ伝えられるところですが、この閣僚会議で朴政権に対する援助政策を再検討する。この間、金大中事件が発生しまして、その後この決算委員会で、対韓援助の実態について集中審議がやられたわけです。この経済援助のあり方自体について相当深まったわけですが、その辺も踏まえて、これまでの政府ベースの援助はだんだんやめて民間ベースでやるという方向が出てきたわけですが、何か今度の閣僚会議ではまた来年度以降政府ベースでやっていこうというような機運があったやに伝えられておるのですが、その辺は大臣、何も聞いておりませんか。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ日韓閣僚会議をやるという決定はいたしておらないのですが、やることにあるいはなるかもしれませんけれども、まだ正式に決定していないのです。そういう状態ですから、その日韓閣僚会議をやった場合にどういう話題が議論になるかというようなことにつきましても、まだ話も出ておらぬというような状態でありまして、まあ閣僚会議をやるとなれば、その際どういう課題について話し合うかということを決めるということになろうかと思いますが、まだそこまでいっておらぬと、こういうふうに御了承願います。
  83. 庄司幸助

    ○庄司委員 実は私も大変懸念しておりますもので、四十八年の決算委員会の集中審議で大分問題が出たわけです。その辺を政府で踏まえられているのかどうか。これは四月中の朝日新聞に出たあれですが、韓国国際収支の問題が解説されております。大まかに言うと、韓国では、いままでの借款の元利償還が非常にふえてきた、この元利償還を果たすためにまた金を借りる、こういう動向がこれにも出ているわけです。韓国政府としては十二億五千万ドルの外資導入計画を持っている、これは日本側にも相当要請されるだろうというような記事があるわけですが、この間の決算委員会の集中審議でも、いわゆる借金を返すためにまた借金をするという、世俗の言葉で言えば自転車操業で、上り坂でもう自転車がとまりそうだというような事態が論ぜられたわけです。しかも、いま韓国経済情勢がこういう情勢にあるとなれば、この閣僚会議では必ず経済援助問題が議題にのることは、これは間違いないだろうと思います。  その点で私は老婆心ながら申し上げておきたいのは、この間、外務省のアジア局で出した、この膨大な、韓国における不実企業の実態という文書がありますね、これは大臣もお読みになったかどうかわかりませんが、もしお読みになったとすればどういう感想をこれについてお持ちになったか。お読みになってなければこれは仕方ありませんが、こういった不実企業が存在する、これが韓国経済を非常に腐敗、堕落さしておるという実態があるわけですが、その辺、今後の日韓経済協力に当たって踏まえておられるのかどうか、大臣から所信を聞かしてもらいたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 対韓経済協力、これはまあ過去、広範に行われてきたわけです。ところが、その援助、協力をした企業がうまくいっておらぬ、非常に多くのものがどうも立ち行きも困難になってきたというようなことから、一体、対韓援助、それが本当に適正に使われたのであろうかどうかというような議論まで発展してきたわけなんです。そこで、その当時は、そういうことをめぐって韓国国内でもいろいろ議論があったようでございます。しかし、その後そういう企業が、私も詳しいことは存じませんけれども、ほとんどのものが立ち直りを見まして、内容のない不実の企業だというような状態は実はなくなってきた、こういうふうに承知をいたしております。一昨年十一月の石油ショック、これで韓国経済は相当大きな打撃を受けて、今日、一昨年に比べるとなかなか困難な経済情勢にある、こういうふうには見ておりまするけれども、まあ不実企業問題といって騒がれたその問題、これは大方、不実企業じゃなかった、有実企業であった、そういう立ち直りを見ておる、こういうふうに承知しております。
  85. 庄司幸助

    ○庄司委員 ほとんどが有実企業であったと大臣おっしゃっていますが、これは青瓦台というのですか、韓国政府の重要な場所ですが、青瓦台の調査班が調べた結果、それが不実企業の実態に載っているわけです。これは相当多いのですね。日本借款建設した企業二百社、大体八〇%が不実化している。これにてこ入れその他調査をやって、いろいろ肩がわりや何かやったのですが、しかし、まだ内容が健全でないのが相当あると書いてあるのですね。私は、日韓経済協力を進める場合はこの実態を踏まえてかからなくちゃうまくないのじゃないか、こう思っているわけです。  それからもう一つ、大臣にお伺いしておきたいのは、例の金大中事件がまだ解決しておりませんね。それから金東雲一等書記官の問題もまだ未解決です。早川、太刀川君は釈放されましたが、こういう未解決の問題がある。そういう中で、きのうの新聞を見ますと、済州島に観光旅行に行っていた日本人の観光客が、キーセンパーティーの席上、酒に酔って、それで何か北朝鮮をほめた、朝鮮民主主義人民共和国のことをほめた、それで逮捕された、これは後で釈放にはなっていますが。そういう日本人の観光客の言動にも、しかも酒の席上での言動でもこういう弾圧がきている。最近の韓国状態を見ますと、弾圧に次ぐ弾圧ですね。国民が口も聞けないような状況になって、アメリカの議会の中でも、まれに見る軍事独裁政権である、こういうことも論議されているわけですね。こういう事態の中でいま日韓定期閣僚会議を開いて、もし向こう側から再び援助問題が提供されてくるということになると、一体、日本はすっかりなめられてしまっているのじゃないかという感じを与えざるを得ないだろうと思うのですね。もし定期閣僚会議が開かれるとすれば、この開催にいまの時点で賛成すべきなのか、いや、いまはその時期じゃないというべきなのか、その辺、大臣の所信を聞かせてもらいたいと思います。
  86. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金大中問題、金東雲氏の問題ですね。その両氏の問題がまだ最終的な解決になっておらぬということは、私も承知しております。しかしながら、いま極東の情勢ですね、非常に流動的な段階に入ってきておる。それから石油ショック、これによる世界的混乱の時代である。そういう際に、わが国と非常に関係の深い韓国との間には、随時意見の交換をいたしまして、そして両国の対処、こういうことにつきましておのおの参考にするということは、これは私は必要だと思うのです。ですから定期閣僚会議という制度もある、そういうことでありますので、その時期はどうかというようなことは別といたしまして、両国の都合のいい時期に両国の会議を行う、こういうことは妥当なことであろう、私はこういうふうに考えております。
  87. 庄司幸助

    ○庄司委員 この問題は、いずれ日韓定期閣僚会議が開かれ、そして援助が具体化する、そういう時期が来ないとも限りませんから、その時点でまた、この決算委員会で集中的な審議をやりたいと私は思っております。大変問題があります。  次の問題に移りますが、ひとつ簡単な問題から伺っていきます。  それは、経企庁の宮崎事務次官いらっしゃいますね、この方が、五月十九日の次官会議が終わった後記者会見をなさったわけですが、その席上、「生産者米価引き上げが問題化してくるが、据え置きは無理としても従来のようにドンドン上げるわけにはいかない。バランスのとれたものとする必要がある」、第一点にこういうことをおっしゃっているのです。それから第二点目として、「米作奨励の動きがあることについて「生産調整はいまも続けられており、増産は自らの立場を自らが崩すことになる。つまり大幅増産は米価の据え置きにつながるというわけだ」」こういうような趣旨の発言をなさったということなんです。  そこでお伺いしたいのは、生産者米価の引き上げ問題というのは、これは食管法の第三条に従っていろいろな計数を用いて論ぜられなければならない問題だろうと思うのです。これは当然農林大臣の所管の事項なんですね。食管法の第三条には「生産者及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スル」この旨で生産者米価が決められるわけです。それを経企庁の事務次官が「据え置きは無理としても従来のようにドンドン上げるわけにはいかない。」などという発言を、まだ生産者米価が米審にもかかっていない段階で、農林省でさえもまだこの点について何の発言もしていないという段階で、経企庁の事務次官が生産者米価について発言している。消費者米価を抑える発言をするならば、これはまだわかりますよ。これは私は解せないことだと思うのです。その辺これは、事務次官の上は大臣でありますから、大臣、この事務次官の発言、どういうふうにお考えになりますか。
  88. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生産者価格につきましては、これは従来から方式があるのです。生産費所得補償方式、こういう方式でずっと決められておる。これは庄司さん御指摘のとおりであります。そういう中で宮崎次官が何か米価についての発言をされた、これが多少まあ、いろいろ議論を呼んでおるというような話を聞きましたので、宮崎次官に聞いてみたのです。どういう発言かと言ったら、生産費所得補償方式のあることはよく承知しております。しかし、いま物価、物価と言って物価に頭が来ておる、そういう際に、まあ消費者米価、その問題を考えても、生産者米価がどうなるか、こういうことが基盤になるわけでありますので、とにかく生産者米価も低くおさまればいいなという願望を込めての発言だ、こういうふうに申しておりますので、まあ、そのような願望も申すことは、私は、企画庁事務次官として当然のことだろう、こういうふうに思いますので、そういう意味であるというふうに御理解を願います。
  89. 庄司幸助

    ○庄司委員 もしそういう願望がおありなら、生産者米価を構成しているいわゆる生産費、これはもちろん農家の労働力の手間賃もありますし、いろいろありますが、農機具が上がっていますね、それから肥料が今度全農に、二〇ないし三〇%の値上げをしてくれというのがいま提示されそうになっている、あるいは農業用のその他の資材、電力であるとか重油であるとかガソリンであるとか、こういうものの値上げを据え置くというなら話はわかるのですよ。そうじゃなくて、農民の気持ちを逆なでするように、生産者米価を余り上げるべきじゃない、据え置きは無理としてもなんて、こんなことまで言っているわけですね。これは私は非常に遺憾な発言だと思うのです。事務次官が本当に心配するなら、いま言ったような農機具や肥料やあるいは生産資材、それからその他の諸物価、こういうものを値上げしないようにがんばって、そして生産者米価を何分値上げしないで済むような措置、これを一生懸命経企庁は考えるべきだと思うのですが、大臣どうでしょう。
  90. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話はそのとおりで、そのとおり、諸物価の安定することについては全力を傾けているわけです。しかし、生産者米価の決定の最大の要因は、これはいろいろな資材とかそういうものにつきましての要素もありますけれども、これはもう人件費なんですよ。人件費を一体どういうふうに見られるかというところに問題があるわけなんで、人件費につきましては春闘、その結果はなだらかな形に落ちつきそうだというような情勢もありますので、その辺を頭に置いていろいろ発言をされておるのじゃないか、そういうふうに思いますが、いずれにしても資材でありますとか肥料でありますとか、そういう他の要素につきましても、とにかく全力を挙げてこれを努力をいたします。これは事務次官が何と言おうと、私がそう言うのですから、私を御信頼願います。
  91. 庄司幸助

    ○庄司委員 ひとつこれは、事務次官に厳重注意してもらいたいと思います。  それからもう一つ、米作奨励の動きがあるが、増産をやると自分の立場を自分で崩すようになるのだ、大幅増産は生産者米価の据え置きにつながってくるのだ一これは経済企画庁で食糧の自給率の向上その他も検討されていらっしゃるだろうと思うのです。この米作奨励の動きがあったって、これは部分的でもありますし、また量においても大した量じゃないのです。現に米の自給率は、せいぜい一〇〇%超えること一%ぐらいでしょう。これはおたくの数字によってもそうなんです。しかも世界的な食糧危機が叫ばれて、日本の食糧問題をどうするのだ、自給問題は非常に大事な論議になっているわけです。そういう折も折、事務次官がまたこうやって、農民の増産意欲をそぐような発言をなさる。これは私はやはり事務次官が、何か大臣の気持ちとかみ合わないようなものを持っていらっしゃるのじゃないかと思うのですよ。だから、庁内の意思がそういう点で十分統一されているのかどうかはなはだ疑わしいわけでありますが、こういう増産意欲に水差すような発言は、ぜひやめてもらいたいと思うのです。米の問題は農水の委員会で相当論議もされている最中でありますし、その他の食糧の自給率の問題もやられております。それから例の米の備蓄量の問題についてもいろいろ、何年分がいいかとかあるいは何カ月分でいいのだとか、まだこれは論議が尽くされておらないわけです。そういう最中に増産意欲に水差すような発言は厳重注意してもらいたいと思うのですが、大臣、この点、簡単でいいですから一言。
  92. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまわが国の食糧事情といたしますと、やはり食糧自給力、これの向上に努力しなければならぬ、これはもう論を待たないと思うのです。ただ、自給力向上の方向を一体どういうふうにするかというと、やはり米なんかは一〇〇%自給体制にあるわけなんであります。ところが、麦だとか大豆だとかそういうものになりますと、十年前ぐらいになりますか、一時は四〇%も自給しておった、それが今日四、五%というようなことになった。そういうところには相当自給力増強努力をしなければならぬだろう、こういうふうに考えますが、米につきましては、やはり能率よく生産性を向上する、こういう方向への努力、これが主軸にならなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。いま米の方は自給度は一〇〇%だ、こういうような状態ですが、あれは生産調整というような措置をした結果そういうふうになっておるわけです。これが米をむやみに増産させたということになると、この処置を一体どうするのだということになりまして、大変むずかしい問題になりますが、その辺をにらみながら、農家が能率よく生産性を上げつつ米の適正な生産に従事する、こういうことは十分考えていかなければならぬ問題である、同時にそういう方向でいろいろ努力をいたしておるわけであります。
  93. 庄司幸助

    ○庄司委員 現在農村で、いまもう後継者はどんどんいなくなる、跡継ぎがいなくて老齢化がどんどん進んでいるわけでしょう。ですから、日本の農業力と言えばやはり生産者、これが一つの農業力の要素でありますから、こういう生産者の意欲を逆なでするような発言を軽々にやってもらっては困ると思うのです。これはひとつ注意してもらいたいと思います。  それで、先ほどの物価の年度内一けた論、この問題をお伺いしたいと思います。いま大体、大臣がきのうの記者クラブで御発言なさった趣の点はお話しになったようですから、その点、少し個々の点でお伺いしたいと思うのです。  酒、たばこ、郵便料金、これが、たばこの場合は〇・六%の消費者物価につながる、押し上げ要因になる、あるいは郵便料が〇・一ですか、お酒が〇・一とか〇・二とかとおっしゃっていますが、今度生産者米価あるいは麦価の問題と絡めて同時諮問で消費者米価、麦価が諮問される。この値上げ幅、これによってはやはり消費者物価に相当の影響を与えるだろうと思いますが、これは事務当局で結構ですから、米、麦、それぞれ消費者価格が一〇%上がったら消費者米価に何%影響するのか、これをちょっと簡単に……。
  94. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 消費者米価、清費者麦価が今後どうなるのかわかりませんけれども、仮にこれが一〇%引き上げられるという計算をいたしてみますと、米につきましては大体〇・四弱というところでございますし、麦につきましては〇・〇五程度でございます。
  95. 庄司幸助

    ○庄司委員 この間、当委員会で電電公社当局に伺ったら、何か四十九年度決算が二千億円くらいの赤字になる見通しだということで、電信電話料の値上げをほのめかしているわけですが、これは大臣いないと、ちょっと——これは大臣に聞かないとわからない問題ですから、後から伺います。  政府主導型の公共料金、これも政府主導型と言って極言ではないだろうと思いますが地方公共団体の公共料金、これは何々年度内に値上げが予定されているかあるいは値上げの要請があるか、これをひとつお知らせ願いたいと思います。
  96. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 どのような公共料金が申請されているかについて十分な調査をしておるわけではございませんけれども、羅列的に申し上げますならば、中小のガス、それから地方のバス、地方中小私鉄、それから水道料、清掃料、入浴料につき若干の市町村について値上げ申請が出ておる、こういうことでございます。
  97. 庄司幸助

    ○庄司委員 その辺の消費者物価押し上げの係数といいますか、何%くらいになりますか。
  98. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 これは個々の値上げ率がどの程度であるかということにもよりますので、十分な計算はできませんけれども、仮にいま申請されておるものを素直にと申しますか、そのまま値上げに反映してくる、こういうことになりますれば、私どもで知っております範囲内におきましての公共料金のCPIに及ぼす影響は、大体〇・五くらいではないかと推測いたします。
  99. 庄司幸助

    ○庄司委員 では、細かいことをちょっと伺っておきます。  上水道の料金、これは何自治体から値上げの要請がありますか。
  100. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 これは私どもで、現在どの程度の地方公共団体が値上げをしようとしているか、十分な把握はいたしておりません。この事業をやっておりますのが二万程度ございますけれども、一々それは議会の承認事項になっておりますから、これにつきましては十分把握はいたしておりません。
  101. 庄司幸助

    ○庄司委員 実は五月十六日に出された自治省の事務次官通達が各都道府県知事に行っているのですね。それを見ますと、公営企業の適正な料金収入の確保ということで、こういうことを書いてあります。「全般的にはなお適正化が遅れ、又は改定幅が十分でないものがあり、このことが経営悪化の重大な要因となりてきているので、適時適切に料金改定を実施するよう格段の努力を傾注されたい。」水道事業については特別に一項目設けて、「適時適切な料金改定により、経営の健全性を確保するよう努められたい。」こういう通達が行っておるのです。  もちろん、この通達をまつまでもなく、各地方の上水道事業、軒並み赤字であります。そのため何か沖繩から北海道までほとんど、水道料金の値上げをいま計画中であるという話も聞いているわけです。私の住んでおります仙台市なんかは七四%の値上げをいま計算中だ。もちろん、まだ議会にはかかっていませんよ。これは普遍的にあることだと思うのですが、もし水道が七四%値上げになったら、物価にどれくらい影響しますか、全国平均ですよ。
  102. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 いまお示しになりました仙台市の値上げ分が全国にどの程度響くかという計算は、ちょっとできかねますが……
  103. 庄司幸助

    ○庄司委員 平均七四とすれば……
  104. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 全部の市町村につきましていまお示しのような七割五分程度のものが上がると仮定いたしますと、これは〇・二強程度CPIに影響してまいります。
  105. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、先ほど局長の方からガスの問題が出ましたが、都市ガスあるいは中小ガス、これは原料はいろいろありますけれども、ナフサの値上げをやらしてくれというのが石油会社から、ガス会社あるいは地方公共団体のガス事業に対していま申し入れがされているわけです。こうやってガスも上がってまいります。それから公共企業体がやっておるバス、これも上がります。それから自治省通達では、各種手数料、使用料の値上げもやりなさい、こう言っております。それから国民健康保険税の値上げもやりなさい、こう言っております。そしてまた高校授業料の値上げ、これもやはり自治省通達の趣旨からいくと当然考えなければならない。  ですから、この自治省通達に基づく地方公共団体の値上げ、これもやはり消費者物価押し上げの重要なファクターになるのではないかと私は思いますけれども大臣、この辺、地方公共団体のこの公共料金の値上げを軽視してはならないだろうと思うのですが、それに対して自治省はこうやって、いわゆる地方自治体財政の健全化と称してどんどん値上げの指導をやっている。大臣の方は大臣の方で、とにかく国の主導型の公共料金はできるだけ抑えるとやっているけれども、権兵衛が種まきゃカラスがほじくる、地方自治体の方でどんどん上げれば、結局大臣のこの努力目標、足元を崩されるのではないかと思いますが、どう思われますか。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、いまお話しの自治省通達というのが出たことを事後に知りまして、実はびっくりしたのです。そこで、直ちに事務次官を通じて、これをどういうふうに実行するかについてよく話し合った上やってもらいたい、こういうふうにいたしておるわけですが、いずれにしても、軒並みに地方自治団体が公共料金の引き上げをするということになれば相当影響がありますから、その辺につきましてはよく話し合いをさせてみたい。もとより、郵便料金につきまして値上げをいたします。あるいは酒につきましても値上げが必要となる。こういうような財政上の理由というものもあるわけでございますので、一概にこれを差し押え、こういうわけにはまいりませんけれども、これは物価政策と整合する、調和がとれるというところでなければならぬ、こういうふうに考えますので、そういう方向で十分話し合いをいたしまして、そして誤りなきを期してまいりたい、かように考えております。
  107. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで、話し合いは結構なんですが、やはりないそでは振れないという側面も自治体にとってはあるわけです。  私、大臣に上水道問題、これは水資源関係の問題もありますので、対策を伺っておきたいのですが、たとえば仙台市の場合——自分の地元だけ例に申し上げて申しわけありませんが、これは全国共通だろうと思うのです。値上げせざるを得ないというのは、人口急増で水の需要が相当ふえてくる。ダムをどんどんつくるわけですね。そのつくるダムが全部いわゆる多目的ダムで抱き合わせでつくられて、工業用水道がそこから取られていく。仙台にいま二つダムを持っております。大倉ダムと釜房ダムと二つあるのですが、大倉ダムの方は大分前にできたのですが、これも工業用水道が十万トン取られています。それから釜房ダム、最近できたのですが、これも工業用水道が十万トン取られている。合わせて二十万トンなんですね。これだけあれば大体仙台市が、これから十万人ぐらい人口がふえても間に合うだろうと言われているのですが、しかし、それはがっちり工業用水で握っている。それで足りなくて仕方がなくて、今度ははるか五十キロぐらい離れたところへ——五十キロですよ、ここに白石川のダムをつくって、これも多目的ダムで、工業用水もやはり一緒に引っ張る、それから上水道も引っ張る。こういうダム配置といいますか、あるいは取水の分担といいますか、非常にむだがあるんじゃないかと思うのです。だから、上水道は一本で二つあるダムから取って、あとのをそんなに遠いところから持ってくれば、これは導水管の設備やらその他ダム施設のお金、こういうものを含めてまた莫大な料金値上げの要素になってくるわけです。  現在でさえそのとおりなんですから、将来そういうダムが出れば、またそこから不十分な水をもらって工業用水と抱き合わせ、しかも工業用水は、これは浄水はいたしませんけれども、殺菌や何かをやりませんが、一トン九円五十銭なんです。上水の方は五十円近くですね。それをまた値上げせざるを得ない。その辺で水の再配分といいますか、これはやはり合理的に考える必要があるのじゃないかと思うのです。せっかく上水ダムが二つもありながら、工業用水で二十万トン取られているために、また遠隔の五十キロもあるところに水源を求めなくちゃならない。この辺はやはりもっと合理的に改善すべきじゃないか。そうすれば、初めてこの料金を余り値上げしなくて済むのだという対策になると思うのです。これは私の考えの一つですが、大臣どう思われるか、ひとつ聞かせていただきたいのです。これは公共料金値上げ問題の対策ですから。
  108. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公営企業というのは大体受益者負担で、これでいくべきだと思うのです。長い将来にわたってはそれを実現をするという構えでなければならぬと思いますが、物価問題がむずかしい段階でありましたので、ここ当分の間その料金の値上げを抑えられてきておる。そこで、その抑えられた状態で一体これからずっといっていいのかという問題がありまして、逐時この公共料金問題の是正、これをやっていかなければならぬ段階に来ておるというので、国におきましても電力、電話だとか電信だとかあるいは塩だ、国鉄だ、みんな抑えておるわけですが、ごく少数のものにつきましてとにかくこの際是正をする、こういうふうにしたわけでございますが、地方公共団体につきましても同じだろうと思うのです。やはり長い目で見れば、受益者負担、この原則で企業会計のバランスをとらなければならぬ、こういう状態にあると思いますが、それでやっていけないという事業につきましては何らかの処置を講じなければならぬというのが現状だろうと思いますが、庄司さんのいま非常に基本的な、工業用水と飲料用水との関係についての発言でございますが、その御発言の趣旨につきましては、私もよくその判断がいたしかねます。これは建設省当局に庄司さんの御意見をよく申し伝えて、御検討願うことにいたします。
  109. 庄司幸助

    ○庄司委員 これはひとつぜひ御検討願いたいと思います。私もこの点では大分長い間研究したのですが、やはり工業用水用のダムを一本つくって、そういうもので流していく。とにかく、工業用水と上水の抱き合わせがあると必ず料金改定につながっていくのです。その辺がやはり不合理ですね。これはこれからはもう検討の段階に入っている、こう思いますので、あえて申し上げたわけです。  それで、大臣、ちょっと中座されたので中途半端になったのですが、電信電話料金の問題ですが、これは四十九年度二千億円の赤字が見込まれた、それで値上げをほのめかしている。ところが、これも分析してみますと、設備料と称して加入者から取っている五万円の金が積み立てられて、もう残高が八千億円くらいになっているのですが、これを損益勘定に入れないで、資本勘定に入れて赤字が二千億出たなどという電信電話公社の態度があるわけです。  それはともかく、電信電話料金値上げの申請なり話し合いがいずれあるだろうと思うのですが、これは年度内は絶対上げないというふうに先ほど御答弁があったようですが、そういうふうに理解していいのか。  それから二番目は、国鉄運賃の改定です。これも年度内は絶対上げない。  それから三番目は私鉄運賃ですね。これは話を聞きますと、七月には、あるいは遅くても秋には値上げの申請をやると伝えられております。これもこの年度内は絶対値上げを認めないという態度なのかどうか。それから私鉄の経営につきましても、これは後で運輸委員会で論じたいと思いますが、私は、やはりこの私鉄の赤字の問題も分析してみないと、どこまでが本当の赤字なのか、この辺やはり不明朗な問題があると思っております。  それはいずれにしても、私鉄、国鉄、電信電話、これは年度内絶対上げないとここで明言できるのかどうか、ひとつお伺いします。
  110. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 電信電話、それから国鉄、これは政府自身の公共料金です。これにつきましては、本年度内においてこれを引き上げすることはいたしません。これは関係大臣ともよく打ち合わせをいたしております。  それから、私鉄の問題につきましていろいろお話ですが、私鉄につきましては、まだ何らの話も受けておりません。どういう意向を持っているのか、新聞でちらちら、そういう意向を持っているやの話を聞いておりますが、政府として何らの意思表示を受けておりませんから、これはもう論外の問題であると、かように御了承願います。
  111. 庄司幸助

    ○庄司委員 続いて、これは大臣も御発言あった、いわゆる大企業製品の製品価格の問題です。これも伝えられるところによると、鉄鋼関係、一万円から一万二千円、トン当たり値上げさしてもらいたい。それから自動車は、鋼材の値上げあるいは排ガス規制の関係の問題で一五%ぐらい値上げさしてもらいたい。それから石油製品ですね、これは灯油の指導価格が六月一日から撤廃になりますが、それで灯油一キロリッター当たり五千円ぐらい、これは二〇%ぐらいになると思いますが、値上げの意向だ。それから電力も、何かまた値上げの意向があるやに聞いております。それから石油化学、これは高圧ポリエチレン、塩ビ、一二%から一五%の値上げ。それから板ガラス、これが平均一八%ぐらいの値上げをしてもらいたい。それから染料、これが大手の分が二〇%から三〇%。それから電線、これは住友電線の場合ですと一〇%ぐらい値上げしたい。それから塗料、関西ペイントなんかの場合は七、八%。それから紙パが一〇%。それからビールは御存じのとおり、二〇%。大臣おっしゃるとおりサンマかニシンとキャベツだけ食っておれば、これは物価値上げにならないかもしれませんが、ビールもどんどん上がる。国民は飲まないわけにはまいりませんからね。  こういったいわゆる大手の製品がメジロ押しに値上げ含みの意向を持っている。おそらく国会が終わった段階、七月当たりからもうぞろぞろと動き出すのじゃないかと国民は心配しているわけです。その辺は大臣、これはまあ値上げはある程度認めざるを得ないと思っていらっしゃるのでしょうけれども、値上げを認められるのか、あるいは特に年度内一けたを守るためにどの辺で抑えられようとしているのか、その辺、具体的にひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  112. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま庄司さんの御指摘商品ですね、これは自由価格でありまして、政府でどうこうというわけにはいかないのです。いかないのでありますが、政府としては財界に対しまして、いま物価が非常に重大な段階であるので、この政府考え方、これに協力せられたいと、また経済団体の方では協力をいたしますと、こう言っておるのです。ですから、各企業一つ一つとってみますと、いまはまあ収支が非常に苦しい。それですから、値上げをしたいというその動意はある、そういうふうには思いますけれども、まあとにかく自粛体制で極力値上げを抑制するというふうな考え方をとる、こういうふうに私は見ております。  と同時に、万一そういうような動きがあっちゃ困るのですから、そこで政府におきましては総需要の管理体制、これは堅持してまいります。値を上げてもそうそう売れませんよという情勢をつくっておく。  同時に、主要な物資につきましては、所管官庁である通産省だとか農林省でありますとか、そういうところで、一つ一つの物資につきまして、その需給はどうなるか、需給が緊迫するということになれば値上げが実現をするわけですから、そういう状態にならないように需給、それから価格が不当に上がっても困る、そこで価格、そういうものについてきめ細かな行政指導の体制、これはとっていくつもりでありまして、まあ率直に申しまして、多くの企業が値上げしたいしたいという動きはあるのですが、これが実現をするという可能性というものは非常に少ない、こういうふうな見解でございます。
  113. 庄司幸助

    ○庄司委員 大臣、大変楽観的なようでありますが、国民の方はこの点では大分悲観的であります。果たしてこの一けたが——一けたでいいとは私ども申し上げませんよ、それは値上げしないにこしたことはありませんから。ただ、一けたがどうも危しくなってきたんじゃないかというのが国民の偽らざる感情じゃないか、こう思います。  最後にお伺いしたいのは、いわゆる物価値上げのもう一つの原因になるインフレの問題、財政インフレの問題、この点でひとつ具体的に伺っておきたいのです。  これも五月七日に先ほどの事務次官が、近代化協会の経済問題懇話会で講演なすったんですね。そのとき次のような趣旨のことをお話しになっているのです。景気は予想以上に冷え、企業収益が悪化しているため、景気浮揚をやらなくちゃならない、そのために増税や歳出削減は容易でないので、財政の赤字を補うには国債発行を積極的に展開すべきだ、これは個人の見解としてお述べになったと承っております。しかし、これは福田副総理が、昨年でございますか、国債発行はゼロに持っていきたい、こういうふうにお話しになったのを私も覚えております。そうすると、これは宮崎次官の全然個人的な見解なのか、あるいはまた副総理の方針転換をほのめかす観測気球なのかという感じが出てくるんですね。しかも副総理が昨年、国債発行はゼロに持っていきたい、こうおっしゃっているにもかかわらず、おひざ元の事務次官が、こういう逆行するような発言を個人見解と言いながらもなすっておる。しかもまた、河本通産大臣が連休前の通産省の省内討議の中で、四十年に実施した不況の際の建設国債、これを上回る赤字国債の発行が必要だ、その規模は、大体アメリカが十五兆ですから、その三分の一ぐらいは日本で妥当じゃないか、こういうことを、これは省内の討議でなさったようですが、こういう見解があるとすると、私は、再び財政インフレが巻き起こって、大臣のおっしゃる年度内一けた論は粉砕されてしまうんじゃないか、こういう感じさえ持つのですが、この辺、いわゆる庁内の意思が不統一なのかどうなのか、あるいは大臣もそういうふうに思われ始めたのか、最近の歳入欠陥がありますから。その辺ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  114. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、私が昨年、公債の発行をゼロにしたいと、こういうことを申し上げたというのですが、いつどういう機会に申し上げたのか。私は、四十年度、四十一年度のとき公債を発行するときの大蔵大臣なんです。しかし、あのとき、公債を発行するけれども、いずれは公債は漸減をする。そして確かに四十三年度、四十四年度、四十五年度とだんだん少なくなりまして、さあ四十六年度になったらゼロになるかという状態になったんですが、そのときの私の考え方は、ゼロまで持っていくのは大変適当でない。いつ何どき公債を発行するという経済情勢、そういうものが出てくるかもしらぬ。そういうことを考えると、ごくわずかな公債というものを出しておく。そして有事の際に公債を発行するというための地ならしということも考えておかなければならぬ。——そうしたら、国会の方じゃ公債火種論だと、こういうふうなことを承ったことがありますが、そういう考え方です。公債は出しても、だんだんとそれは漸減をしていく、そして公債に多くを依存しないという財政状態が一番好ましい、こういうふうに考えていること、それは今日もなお変わりはございませんです。  宮崎事務次官が赤字公債発行論ということを言われたという話ですが、赤字公債を安易に発行するというような考え方は、断じて排斥しなければならぬ考え方だ、こういうふうに考えます。今後の経済情勢の推移いかんによっていろいろな変化はあろうと思いますけれども考え方として、赤字公債を発行する、しかもそれが日銀のしょい込みになるというようなことになれば、御指摘のようにこれは財政インフレの根源になるわけですから、そういう事態は断じて避けなければならぬ、かように考えております。
  115. 庄司幸助

    ○庄司委員 これで終わりますが、どうも大臣、事務次官と大臣が意思疎通していないような感じがあるのですね。その辺はひとつ十分事務次官にも、あなたは統制力がないなどと言われますから、これは厳重に注意してもらう。いやしくもあなたの趣旨に反するような発言を方々でこうやる、こういうのは非常にまずいです。厳重に注意してもらって、ひとつ惑わせないようにしていただきたい、このことを御要望しまして、終わります。
  116. 井原岸高

    井原委員長 坂井弘一君。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 福田長官に副総理としての立場でお答えいただきたいと思いますが、きょうから独占禁止法改正の審議に入っております。政府は当然この成立を期しておるとは思いますが、政府案の内容でありますと、われわれはとうていこれは認めるわけには相ならぬ。つまり、この修正の内容いかんによっては前向きに検討してもよろしい、こう思っております。  そこで、審議の日程を繰ってみますと、恐らくや衆議院の段階におきまして二十日くらいがめどじゃなかろうか。つまり、二十日で通過しなければこれは成立は危ぶまれるというようなことであろうと思います。  そこで、副総理としての福田さんに、私は率直な意見としてまずお伺いしておきたいと思います。少なくともこの内容を見ますと、ある部分においては、非常に重要な部分について政府は修正に応ずるという少なくとも態度は示すべきである、こう考えるわけでありますが、副総理は率直に、この独禁法の修正についてどのような見解をお持ちであるか、まず伺っておきたいと思います。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独禁法につきましては、これが改正が言われてからずいぶん時間がたっているわけです。その間慎重審議を行いまして、各方面の意見まで聞きまして、そして政府案というものができ上がっておる次第でございまして、政府として公式に見解を求められますれば、ぜひともこの政府案の成立に御協力願いたい、こう言うほかはないわけでございますが、しかし、今国会においてこれは御了承を得なければならぬ問題でございますので、十分御審議を願いまして、政府の意のあるところをおくみ取りくだいまして成立に御協力くださいますようにということを、この席としては申し上げるほかございません。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかくの副総理の御答弁でありますが、政府の意のあるところは、国民のサイドからは全く了解できない。  そこで、長官の経済企画庁関係のある独禁法の問題につきまして若干お伺いしたいと思いますが、今回の独禁法改正の政府案、これが物価問題との絡みにおいてどのような関係を持ち、あるいは今後の物価の動向に対してどういう影響をもたらすとお考えであるか、これまた率直な御答弁をいただきたい。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独禁法自体が直接物価に何%の影響があるとか、そういう直接的な関係はないと思うのです。思うのですが、企業が姿勢を正すという上におきましてはこれは非常に大きな影響があるだろう。たとえばカルテル、こういうものにつきましても罰則が強化されております。こういうようなことにかんがみまして、みだりにやみカルテルを行うというようなことにつきましては、これは非常に企業側は慎重な態度をとるであろう、そういうようなことを考えますと、全体といたしましてこの独占禁止法の改正というものは物価問題にはいい影響がある、こういうふうに判断しております。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 昭和四十九年度経済白書を見ますと、四十五年度のころから企業の利潤形成というものが量的拡大から価格の上昇という方向にウエートが置かれてきた、これが今日の物価高騰に非常に大きな影響をもたらしておるというようなことを、この経済白書の中で述べているわけでありますけれども、今日の物価の動向を見ますときに、確かにこの指摘は、一面において私は正しいと思うわけであります。そういう観点から見た場合に、段々の質問ではありますけれども、いまの長官の御答弁をなおひとつ明快に御答弁をいただきたい、そういう観点から。
  122. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十五年度というお話でございますが、あのころは、物価といたしますと、かなり落ちついた時期じゃないでしょうか。四十七年度ごろから物価の足行きが怪しくなってきた、こういうふうに私は見ておりますが、四十七年ごろまではとにかく卸売物価は大体横ばいですから、あれだけの高賃金でありましたにもかかわらず卸売物価は横ばいである、こういうような情勢で推移したわけです。ただ、四十七年度ごろから、先行きの経済は非常に活発になるだろうというような動きになり、四十七年の下半期から卸売物価も初めて上昇に転ずるという状態になり、四十八年には非常な高騰をする、四十九年の二月ごろになると実に一年間で三七%も上がるという状態になってきた。その時期になりますと、企業製品がコストを度外視して、コストという関係を離れて、需給というか思惑の関係で上がったという要素はかなりある。私は当時その状態を、水ぶくれの物価だ、こういうふうに申し上げたのだが、そういう状態だったと思いますが、四十七年上半期ごろまでの間は、いまお話しのような状態はそう顕著にはあらわれておらぬ、こう見ております。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 少なくとも、量的拡大から価格上昇へという方向に移行してきたということは否めないだろう、まさに経済白書に言われるとおりだろう、私はそう理解しておるわけであります。  具体的な問題についてお伺いしたいと思いますが、今度の独占法攻正の中で一つの重要な柱は消費者保護の問題であろう、この消費者の条項につきまして十分な配慮がされていない。つまり、改正案で唯一の消費者条項といわれます消費者への応答義務の問題がありますが、この応答義務につきまして単に結果だけを報告をするということにとどめた。こういうことでありますと実際的な消費者保護にはならない。これはいろいろな議論がございますけれども、単なる結果だけの報告、つまり、なぜそういう結果を得たかという理由等につきましては一切消費者には知らされないというようなことになりますと、極言すれば、これは形式を追ったにすぎないということになりかねないのではないか、こう思うわけであります。福田長官もこの問題につきましてはいささか御不満があるかのごとく私は伺っているわけでございますが、この際、長官として、消費者保護の条項、応答義務の問題につきまして率直に御見解を承っておきたいと思います。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 消費者保護という問題を独占禁止法で処置をするということ自体が非常に無理であろう、私はこういうふうに思うのです。先ほど申し上げましたように消費者が間接的に保護を受ける。これは、一番大きな問題はやみカルテルです。そこで物価のつり上げが行われる。そういうことに対しまして今度は規制を厳重にする、こういう措置をとるわけですが、これなんかは回り回って消費者の保護になるわけですが、消費者保護を直接のねらいとして独占禁止法の法体系の中でこれを実現をするということ自体が、相当困難な問題であろう、こういうふうに考えるのです。消費者保護について何か名案があるか、こういうことについて公正取引委員会ともずいぶん論議も尽くしたわけでありますが、公正取引委員会としても、不当な価格について消費者が指摘をする、その指摘に対しまして、いままでは指摘を聞きっ放しであったのです。それに対して一々応答をする、これが精いっぱいじゃないか、厳しい公取委員会までがそう言うのです。そういう状態で、いまの提案はあの程度でやむを得ないんじゃないか、そういう見解であります。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 長官、事本心といささか異なるような、きわめて慎重に言葉を選んでいらっしゃるんだろうと思いますが、そうでありますと、重ねてお伺いいたしますけれども、今回の改正案の条文の中には入っていない問題で集団代表訴訟、つまりクラスアクションの問題につきましては、私たち公明党ではクラスアクションに関する法律を提出いたしました。つまり、こうした集団代表訴訟制度ということを完備することによって消費者保護は一面において全うされるのではないか、守られるのではないか、このように考えるわけでございますけれども、このクラスアクションにつきまして、同じく長官の率直な御意見を承っておきたい。
  126. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 クラスアクション論があるわけですが、しかしこれを実施に移しておる国はほとんどないんじゃないですか。わが国においてそれを取り入れるか、こういうことになると相当慎重な配慮を要するということで、これはかなり広範な見地、特に法的な立場においてもよほどの検討を要するというので、いま国民生活審議会の法制部門、加藤一郎先生を長としておりますが、そこに委嘱をいたしまして、クラスアクションを含め消費者保護の法制諸問題を検討していただいておりますが、何せこれは非常にむずかしい、また実際問題としても非常に影響のある問題でありますので、問題を放置しておるわけじゃございませんが、これもなお検討をお願いをいたしておる、こういう段階でございます。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 この検討は、全く前向きに検討なさった方がよろしいと思う。少なくとも消費者救済特別研究委員会におきましてもクラスアクションということについての提言がなされておりますし、確かに諸外国を見まして、クラスアクション自体が制度化されるということについては今日はなはだむずかしい状態にあるということはよく承知しておりますけれどもわが国の現状から見まして、むしろ今日まで十分慎重な検討がなされてきた段階でなお消費者保護ということ、これは側面的に見てどうしても独禁法改正の中で検討しなければならぬ問題であろうという意見が非常に高まりつつある中で、そうした消費者救済特別研究委員会においてもクラスアクションの提言がなされたというような経緯を踏まえて、これは全く前向きに検討なさるべきものではなかろうかと思いますので、強く要請をしておきたいと思います。  と同時に、消費者の参加ということを認めるために公正取引調査会をつくりまして、そこに消費者の団体も入れて独占禁止法の運用を図るべきではないか、こう思うわけでありますけれども、消費者の代表を入れるかどうかについては、長官はどうお考えになりますか。
  128. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 世の中が大衆消費社会というか、そういう性格のものへと移行しつつあるわけでありますから、経済問題を論ずる場合におきまして消費者の意向というものが十分反映されるということは必要だ、こういうふうに私は考えまして、企画庁を初め経済関係の審議会等におきましては消費者を代表するという方々の御参加をお願いをすることにいたしておりますし、今後も配意してまいりたい、かように考えます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 独禁法の改正問題につきましては、所管の委員会におきましてきょうから審議が始まるわけでございますので、そこで十分な審議を行うということにいたしまして、ただいままで基本的な考え方について長官の御意見を承ったわけであります。  問題を変えまして、経済見通しについてお伺いしたいと思いますが、政府経済見通しを公表するようになりましてからもはや二十年になるわけであります。この二十年の経済見通しの実績をずっとながめてみますと、全くはずれの歴史であります。つまり、昭和四十四年度までは実績の方が見積もりに比べまして非常に大きかった、四十五年度からは今度は逆になりまして、過大見積もりというような形に微妙に変化が生じておる。そういう中で長官が大蔵大臣に就任されておりました四十九年度、この予算編成につきましては当然この経済見通しのもとで予算を編成された、それが今日言われるところの歳入欠陥という事態を生じておるということに相なりますと、福田副総理、当時大蔵大臣、今日またこの経済見通しの所管の経済企画庁長官という立場から、今後の経済見通しについて、従来のはずれの歴史の実績を謙虚に反省する中で、さらに福田さんが言われる安定成長路線という将来の方向を展望したときに、経済見通しのあり方そのものについて何なりか腹中にお考えが、いままでの経緯を踏まえながら今後のあり方としてのお考えがおありではなかろうか、こう思いますので、長官として何らかの具体的なものをお考えであるならば、ひとつこの際お聞かせをいただきたいと思います。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済見通しは、御指摘のように、過去ずっと振り返ってみますとこれが合ったためしがないというような実績でありまして、その点は非常に残念に思いますが、だんだんと経験も積んでまいりましたので、経済見通しと実績が大体合うような経済運営をしていかなければならない、こういうふうに考えるのです。  ただ、経済見通しそのものでございますけれども昭和五十年度につきましては四・三%、こういうふうになっておる。そのコンマ以下の数字までが出ることが一体いいものかどうだろうか。四・三%だから、その四・三%に合わなければこれはおかしいというようなことにはなるわけですが、実際はそうはいきかねると思うのです。とにかく、自由主義社会第二の経済規模のわが日本経済でございます。それを、見通しが立ったからその上にぴしゃっと乗っけるなどということは、とうていできない問題です。私としては、経済見通し、これはもとより大事ですが、やはり傾向判断、そういう性格のものでなければならぬ、こういうふうに思うのです。したがいまして、三%だ四%だ、あるいは四・三%だというような、そういうきちんとしたものである必要があるかどうか、これは非常に私は疑問に思うのです。やはり幅を持たせた方がいいのじゃないか、来年は何%ないし何%である、長期見通しとしてもそういう弾力的な見方、傾向判断が大体国民にわかる、そこに私は重要な経済見通しの役割りというものがある、こういうふうに思いますので、何らかそういう方向で工夫はできないものかということをいま考えているのですが、いずれにしてもこれは経済審議会において御論議を願う問題で、私がそうするのだというわけにはいかないのです。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 五十年度におきましては、物価の安定ということが政府の最大課題である。ところで一方、景気の回復の時期がずれ込んできて、いま長官の御答弁になっております実質成長率四・三%、一体これが確保できるのかどうなのか、達成できるのかどうかという点については、非常に大きな危惧を実は持つわけであります。物価問題特別委員会におきましても長官の非常に微妙な発言がおありのようでございますが、ずばりお聞きいたしまして、四・三%という実質成長率、これは確保するのだという御決意でしょうか。また、見通しにつきましては、必ずこれは達成できる方向にあるという御判断でしょうか。
  132. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四・三%というと、きちんとわが国経済成長の実績をそこへそろえるということは、私は自信はありませんし、また、その必要もないと思うのです。ただ、この見通しは、昭和五十年度になりますれば徐々に景気は上昇過程に転ずる、そして年末ころにはかなりの水準に到達する、その総平均が四・三%だ、こういうことなんですが、その傾向につきましてはどうしても実現しなければならぬ、私はこういうふうに考えておるのです。その傾向が実現されるかされないかというところにこそ問題があるのであって、それがびしっと四・三%にいくかいかないか、これはそう重要な要素じゃない、私はこういうふうに考えております。  実際問題として、年度初めころから徐々に景気回復というふうに見ておったのですが、多少これがずれております。そこで四・三、こういうような数字よりあるいは多少低目なことになると思いますが、傾向として、多少のおくれはありますけれども、徐々に景気は回復過程に入る、そしてそれが持続していく、こういう見方につきましてはそういうふうに考えておりますし、ぜひそういうふうにいたしたい、こういう政策誘導をいたしたいと考えております。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 物価との相対関係から見まして、きょうのこの委員会におきましても、さきの委員質問等の中でも、長官がるる、年度末九・九%、一けた台を確保する、つまり物価安定に対するきわめて強い意欲を示していらっしゃったわけでございますが、物価安定のために、かつまた年度末一けたを達成するためには、実質成長率四・三%、これは一応見込み、この四・三%は犠牲にしても物価安定に力点を置きたい、言うなれば四・三%をかなり下回る、時によっては三%あるいは三%台もっといくかというようなことも、いまの長官の非常に柔軟な御答弁の含みの中にある、こう判断してよろしゅうございましょうか。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これからの政策運営の課題としては、とにかく物価を安定基調に持っていかなければならぬ、そのためには年度内一けた目標を達成しなければならぬ、これを非常に重要視しております。しかし同時に、いま日本の企業が非常に苦しい立場にある、そういうことを考えますときに、景気対策もまたとらなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。そうしないと、ただいま申し上げましたような、なだらかに日本経済が上昇過程に転ずるということにつきまして、それができるかできないかという問題もあるわけなんです。ですから、私のいまの考え方は、景気は徐々に上昇過程に転ぜしめる、しかしながら物価作戦の目標、これは必ず達成しなければならぬ、こういうふうに考えておるので、多少いまの状態では、景気の方は回復過程がずれておるのです。ずれておりますけれども、多少そちらの方はしょうがない、多少のことがあってもしようがない、物価の方は何が何でも実現しなければならぬ、物価か景気かという選択、そういう選択には追い込まれたくない、こういうふうに思っておりますけれども、もし万一そういう事態に当面いたしますれば、物価安定を優先的に考える、こういう考え方でやっていきたいと思います。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 大変むずかしいところだろうと思うのです。長官としては、それは腹中なかなか、一方において確かに言われる景気対策、不況からの脱出という要請があるし、片や物価の安定、とりわけ年度末の一けた台、これを何としても死守したいという、この両者の関係から見まして、これはなかなかいま微妙な、非常にむずかしい段階に来た。したがって、長官としてはこの辺の選択、あるいはまた今後の具体的な経済政策については、これは非常に慎重な中で、かつまた、いま現実にあらわれてきた不況の問題、あるいはまた歳入欠陥等々に早急に対応していかなければならぬという要請もある、そういう中で政策の選択を誤ってはならぬ、まことにむずかしい、厳しい事態にあると思います。  なお、率直にお尋ねいたしたいと思いますが、実質成長率にこだわるわけではございませんが、少なくとも四・三%というものを見込んだ、この見通しの上に立ちまして予算の編成が行われた。少なくともこれは尊重されたであろう。いまのような非常にむずかしい段階の中で、時によってはこの成長率を犠牲にせざるを得ないという事態も起こりかねないとした場合に、果たして歳入欠陥はその場合一体どうなるのか。逆に言えば、四・三%の成長率を確保することができるならば歳入欠陥は生じないのだ、こういう御判断に立たれておるのかどうなのか、その辺のところを率直にひとつお伺いいたしたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四・三%、つまり経済見通しのとおり経済が動いていくという場合、一体財政はどうなるのかと言いますと、四・三%成長が実現されても、私は歳入方面には相当問題が起こってくる、こういうふうに見ておるのです。何となれば、五十年度の税収見積もりは四十九年度を基礎として算出しておる、ところが四十九年度におきまして税収において約八千億円の減収を来しておる、こういう問題があるわけなんです。この四十九年度の税収欠陥、これは景気に全部関係があるというふうにも考えられないのです。たとえばその中で一番大きな要素である二千五百億円、これは土地売買が停滞した、見積もりよりも低かったというような関係がありますので、これは景気情勢と直結する法人税でありますとかあるいは申告所得税でありますとか、そういうのとはちょっと異質のものでありますが、それにしても、とにかく税収欠陥が四十九年度に相当のものがあったということは事実なんですから、それが基礎になって算出された五十年度は、それだけの影響が、成長率に異同がなくとも、あるであろう、こういうふうに一応私は観察するわけであります。しかし、五十年度の税収が四十九年度の影響以外の要因でどうなるかということは今後の問題なんです。あるいは四・三%でなくてもっと伸びるというようなことがあるかもしれませんし、いろいろな変化があるだろうと思いますから、五十年度で幾ばくの税収欠陥が出るか、そういうようなことは、予測はちょっと困難でありますけれども、四十九年度の欠陥がかなり大きく五十年度に響くであろう、こういうことは、私はそうであろう、かように見ております。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 要約いたしまして、かなり大きく響いてかなり大きな歳入欠陥ということになりますと、これに具体的には一体どのような方策をもって対応しようとしておるのか、ずばりとお聞かせをいただきたい。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず歳出要因を考えなければならぬと思うのです。歳出でとにかく追加補正を要するというような要素をなるべく減らすということを考える、これは財政当局の当然の考え方になるだろうと思うのです。それから既定の予算につきましても、景気対策のことを考えると、公共事業だとかそういうようなものをなかなか減らすわけにはいかぬ。しかしながら、五十年度でなくともいいじゃないかというような施策につきまして、そういうものの繰り延べだとか、あるいは節減とか、これは額はそう大したことはないと思いますけれども、そういう努力もしなければならぬだろう、こういうふうに思います。また一方、歳入面につきましては、これからの景気動向が一体どうなるか、その辺が相当問題であります。ことしは例の土地税制が本年末をもって終わる。駆け込みの土地売買なんというのがどの程度になりますか、こういうようなことにつきましても、いろいろの変化が出てくるであろう。そういうような歳出、歳入両面を見回しまして、そして大体本年度の財政の収支はどうなるか、それを見当をつけ得る段階になりまして、もし生じまするところの財源欠陥、それがありとすれば、その対策をどうするかということを考えるべきであって、いま財源欠陥が出そうだ、その始末をどうするかということを考えるのはまだその時期ではない、こういうふうに考えております。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 いまの議論につきましてはまた別の機会に譲るといたしまして、一方、この物価の問題、年度末の一けたということで、この前、非常に重大決意でもって臨まれるということでありますけれども、先ほどからも議論がございましたが、やはりまず第一に公共料金の問題があると思うのですね。酒が〇・一%、たばこで〇・六%、それから郵便料金が〇・二%で、これだけでも〇・九%というようなこと、これらはやはり抑制していくという方向を考えなければ、物価安定、九・九%ということは無理じゃないかという感じが実はいたします。  公共料金というのはいろいろな意味で大事な要素を占めると思うわけでありますが、ところで経済企画庁におきまして、公共料金の抑制というものは短期的なショック療法としては確かに効果はある、しかし長期にわたって抑制を続けるということになるとまた将来において大きな弊害をもたらす、こういう考え方を持っておられるようであります。同時にまた、通産省におきましても九・九%というのは絶対目標でないというような発言がある。こういう考え方ないし発言に対して長官はどうお考えになっていらっしゃるのか、御意見を伺いたいと思います。
  140. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共料金につきましては、本年度の予算の編成の際、相当厳しい議論をして、そしていま予算案に盛り込んでおるような結論にしたわけなんです。非常に物価問題のむずかしい際でありまするから、すべて公共料金の凍結をする、こういう考え方も一案です。私はむしろそういう考え方がこの際は妥当じゃないかという考え方であったわけですが、しかし他方、財政事情を考えてみますと、これは非常に苦しい状態で、そういう中においてどういう選択をするか、こういうことになったわけですが、結局、国鉄だとか電信だとか電話だとか塩だとか、そういう特に重要な公共料金についてはこれを本年度は据え置く、しかし財政上も直接的に非常に大きな影響のある酒あるいはたばこ、郵政料金、こういうものにつきましては、これは本年度においてこれを解決しなければならぬ、特に郵政料金につきましては郵政会計の秩序維持また業務運営の秩序維持というような見地からも必要であるという見解に到達いたしまして、ごくわずかではありますけれども、選択的にその三者につきましては引き上げを決定し、御審議をお願いをいたしておる、こういうことが率直なところなんです。いろいろ御議論はあるところでございましょうが、それは予算に見込み、それを前提といたしまして九九%という目標を立てておりまするので、この点につきましては、御議論はありましょうが、ぜひともひとつ御協力を願いたい、こういうふうに考えております。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間がございませんので十分な審議ができません。非常に残念でございますが、ただ、結論的に私の意見を申し上げ、かつ一問だけ御答弁いただきたいと思いますが、物価安定、年度末一けたにつきましては、非常に無理じゃないか、むずかしい、これはちょっと誤るのじゃないかという感じを実は率直に持っております。公共料金の一連の値上げ、それから最近におきます鉄鋼業界、鉄鋼各社がトン当たり一万二千円前後、すでに川崎製鉄あたりは一万四千円八月出荷分からどいうようなことを言っておりますね、そういう動き。そうなりますと、当然造船あるいは自動車、あるいはまた電気機械メーカー、これは軒並みに値上げということになるでしょう。  同時に、長官かなり楽観的なことをおっしゃっておったようですが、民間各企業に対して、これは協力を願いたい、また、協力いたしましょう、物価安定のために、ということだということでございますけれども、少なくとも日本の企業の大体六割ないし七割ぐらいはすでに値上げに踏み切らざるを得ないというようなことが伝えられてもおりますし、また、いまのいろいろな情勢、客観的な条件を総合的に判断しまして、私なりの感触からしましても、これは値上げに踏み切らざるを得ないような客観情勢が生まれつつあるのではないか。つまり、私鉄あるいはまた国鉄、麦価政府売り渡し価格の問題あるいは消費者米価の問題、地方におきます公共料金の値上げの問題、医療保険の問題等々メジロ押しの感じがする。そういう中で、物価安定ということは最大の課題であるのには違いない。したがって重大な決意をもってやっていただきたいし、同時に具体的な物価安定に対するただ単なる協力要請とかどうとかということじゃなくて、何かがなければいかぬ。その何かは一体何だろうかということを、実はきょうは率直にお伺いしたかったわけでありますけれども、時間がございません。非常に残念であります。  ただ一点お聞きしますが、いま総需要抑制策を堅持する中で、将来において物不足という事態が起こるのじゃないか。つまり供給力が弱まる。そうなりますと、これは将来の方向、たとえば二年とか三年先になりますと供給力不足、品不足から再び物価騰貴というような形がもたげてくるのではないかという心配が一方にはある。そういうことに対して十分な御検討、御研究がされているのかどうなのかという点について、実ははなはだ危惧するものでございますけれども、そういう点について、簡単で結構でございますが、何かお考えをお持ち合わせかどうかお尋ねいたしたいと思います。
  142. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御心配はごもっともだと思うのです。総需要抑制政策、それは財政は緊縮体制を堅持する、また金融、これも同様な考え方で臨むというのですけれども、お話しのように少し長期で見た場合においては、いわゆるボトルネック産業というのがあるわけです。いまはいい、しかし二年、三年先には需給が不足する、そのための設備はその際になったのじゃ間に合わない、いま手をつけていかなければいかぬ、こういうものもあるのです。そういうものはつぶさに検討いたしまして、そうしてそのための施策、これは十分とっておるわけであります。先ほど、各物資ごとにその需給についてよく見詰めておると申し上げたのは、そういう趣旨でございます。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 本会議の時間になりますので、これで終わります。
  144. 井原岸高

    井原委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十九分散会