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1975-06-25 第75回国会 衆議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月二十五日(水曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       加藤 紘一君    坂本三十次君       住  栄作君    田中  覚君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       福永 一臣君    井上  泉君       江田 三郎君    土井たか子君       三宅 正一君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         法務省民事局長 川島 一郎君         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         水産庁長官   内村 良英君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         海上保安庁長官 寺井 久美君  委員外出席者         運輸省海運局総         務課長     犬井 圭介君         海上保安庁警備         救難部参事官  只野  暢君         海上保安庁警備         救難部救難課長 福島  弘君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 六月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     菅野和太郎君 同日  辞任         補欠選任   菅野和太郎君     加藤 紘一君 同月二十五日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     井上  泉君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     川崎 寛治君     ————————————— 六月二十日  漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会  主義共和国連邦政府との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一五号) 同月十九日  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(和田耕作紹介)(第三八六九号)  同(三枝三郎紹介)(第三八九二号)  同(林義郎紹介)(第三八九三号)  同(福田篤泰紹介)(第三八九四号) 同月二十三日  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(小山省二紹介)(第四〇三一号) 同月二十五日  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(山村新治郎君紹介)(第四〇八三号)  同(大久保直彦紹介)(第四一二七号)  同(山田久就君紹介)(第四一二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会  主義共和国連邦政府との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一五号)  海上航行船舶所有者責任制限に関する国  際条約締結について承認を求めるの件(条約  第九号)  油による汚染損害についての民事責任に関する  国際条約締結について承認を求めるの件(条  約第一〇号)  油による汚染損害補償のための国際基金の設  立に関する国際条約(千九百六十九年の油によ  る汚染損害についての民事責任に関する国際条  約の補足)の締結について承認を求めるの件  (条約第一一号)      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告いたします。  去る六月二十日、久住参考人から「十七日の委員会において、渡部一郎委員質疑に対するお答えの中で、「イラン」と申し述べましたのは「南アフリカ」の誤りでありましたので、訂正方お願いたします。」との文書が提出されましたので、御報告いたします。      ————◇—————
  3. 栗原祐幸

  4. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 ただいま議題となりました漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、近年わが国沿岸の水域におけるソ連漁船団操業に伴い、わが国沿岸漁民との間で事故が生じている事態にかんがみ、事故未然防止事故発生の場合の紛争の迅速かつ円滑な処理を図ることを目的として、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間で漁業操業に関する協定締結するため、本年三月以来モスクワで交渉を行ってまいりました結果、去る六月七日に東京において、わが方外務大臣先方イシコフ漁業大臣との間でこの協定の署名が行われた次第であります。  この協定は、本文十五カ条及び四つの付属書から成っており、漁船及び漁具に関する事故未然防止のために、漁船標識及び信号並びに漁具標識等に関する規定漁業操業の規則の設定と遵守に関する規定、情報の交換等に関する規定等を定めるとともに、漁業紛争処理を促進するための漁業損害賠償請求処理委員会設置による紛争処理手続等に関する事項について定めております。  この協定締結によりまして、特に近年わが国沿岸におけるソ連漁船団操業の結果問題を生じていた日ソ両国漁船操業一定ルールが課されることになる結果、漁船及び漁具に関する事故未然防止が図られることとなり、また、不幸にして事故発生した場合には、事故から発生する損害賠償請求処理につき迅速かつ円滑な解決が促進されることになることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長 ただいま議題となりました本件とあわせて、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件及び油による汚染損害補償のための国際基金設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件、以上各件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 漁船操業に関するソヴェト政府との協定について若干質問をいたしたいと思うわけですが、ただいま政府提案理由説明にもありましたように、こういう協定をつくらなければならなくなった原因というのは、ソビエトの漁船が、不法とは言えないかもしれませんけれども無謀にもわが沿岸におきまして日本漁業者に対し非常な損害を与えて、そうして国民の間においても、こうしたソ連無謀操業に対する大きないわば怒りの声というものが高まってきたという状態の中でこの協定が結ばれたものであるということ、このことを政府十分理解をし、認識をしておったのであろうかどうか、外務当局に私はまずその点についてお伺いしたいと思います。
  8. 橘正忠

    橘政府委員 日本近海におきまするソ連漁船操業はかねて散発的に起こっておりまして、昭和四十六年ごろからかなり活発となりまして、事故の件数もふえてまいりました。そこで、昭和四十七年に当時の赤城農林大臣ソ連政府と話をされまして、こういう問題の起こらないよう事故未然に防ごうということ、あるいはそういう紛争解決を促進する方途を検討しようではないかという話し合いを始められました。その結果、その年にまず専門家会議を開いて具体的な問題を検討し、さらに昨年末第二回の専門家会議が行われました。こうした検討を重ねた結果、操業についての事故未然防止するための措置、それから紛争が起こった場合、その解決を促進するための措置というものについての協定交渉しようではないかという話になりました。かねてからのこういう問題を十分水産庁あるいは外務省当局におきましても認識しておりまして、本年三月から鋭意この協定交渉に努めました結果、先ほど政務次官からの趣旨説明にございましたように、六月にようやく調印の運びとなった次第でございます。  なお、それ以前におけるいろいろな事故発生については、その都度水産庁からの連絡を受けてソ連側には申し入れを重ねてまいっておった次第でございます。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 前に農林水産委員会でもこの問題を取り上げて外務当局の見解をただしたことがあるわけですが、この交渉をするに当たって、日本漁業者が受けた被害額というものは昭和四十九年度まで一体どれくらいあったと外務省は掌握をして臨まれたのか、その点御報告願いたいと思います。
  10. 橘正忠

    橘政府委員 私どもの方が水産庁を通じまして関係方面から承知しております漁具等について被害は、ただいま計数として持っておりますのは昭和四十六年以降でございまして、四十六、四十七、四十八、四十九、五十年の三月末、今年三月末までの累計で被害の隻数が千二百三十一、被害金額は四億四千五十九万円という数字になっております。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 それでこの被害額に対して、ソ連当局はこれに対する補償ということについては、この協定書をつくるに当たって当然議題になったと思うわけですが、これについてはどういうふうになっておりますか。
  12. 橘正忠

    橘政府委員 この協定自体はそういう損害につきましての損害請求処理委員会設置という手続ルールをつくりますのが目的でございますが、その際に、こうした過去における被害につきましても日本側からも強い要求を出しまして先方と折衝いたしました結果、協定が発効するとき、それからさかのぼって二年前のそういう事故にかかわるものは対象として検討されるということになりました。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 それは四十八年、四十九年の分は対象になるけれども、それ以前の分については対象にならない、こういうことになるわけでありますが、そこでまず水産庁にお伺いしておきたいのですが、今日までこれらの被害漁民に対して日本政府としてとった措置等につきまして御説明を願いたいと思います。
  14. 内村良英

    内村政府委員 ただいま欧亜局長から御答弁がございましたように、被害があった額につきましては水産庁から外務省に通報いたしまして、外務省からソ連政府に通知してもらう、こういうことをやってきたわけでございます。  そこで先生御案内のように、この種の損害が非常にふえてまいりましたのは去年からことしにかけてでございます。そこでことしの春以降の被害につきましては、ソ連請求することとは別に、何らかの国内対策をとらなきゃならぬというところまで被害が増加いたしましたので、水産庁といたしましては次のような措置をとることといたしまして、近く関係者に通達をすることになっております。  どういう措置かと申しますと、第一は緊急の融資措置でございます。ソ連漁船操業によって漁具が切られたとか、あるいはその間操業できなくて生活に困ったということがございますので、まず漁具購入資金とその借りかえ資金も含むわけでございますが、生活資金及び経営資金緊急融資貸し付ける、その貸し付け対象となる者は、昭和四十九年度においてソ連船により漁具の損傷を受けた者及びソ連漁船操業の結果漁獲の減少した者でございます。貸し付け条件金利三分五厘、経営資金は五分五厘、償還期限は五年以内、据え置き期間一年以内、こういう措置でございます。このため国といたしましては、基準金利末端金利との金利差につき、都道府県が利子補給した場合にその三分の二を補助する、経営資金は二分の一でございますが、そういう国の補助をするということで融資枠といたしましては九億円を用意しているわけでございます。  この融資措置のほかに緊急対策事業といたしまして、被害道府県漁業協同組合連合会対策基金を設けた場合に、その基金に対しまして次の事業の中からメニュー方式により実施されるものに対して補助するということをやるわけでございます。  一つ漁具貸与事業と申しまして、昭和四十九年にソ連漁船操業により漁具被害を受け、代替漁具を調達しようとする者に対しまして漁具一定の料金で貸し付けるという制度をつくった場合に、それに対して補助する。それから漁場が、網が非常に沈んでいるとかその他で汚れておりますので、そういうものを復旧する整備作業をやる場合に、それに対して補助する。それからソ連漁船警告用放送施設を設けるというようなことをやる場合に、それに対して補助する。その他各県の事情によって、いろいろ特殊事情がありまして、いろいろな事業をやりたいということも考えられますので、そういう事業につきまして、水産庁長官が認めた場合にはそういう事業もよろしいということで、そういった補助措置もあわせてやるということを考えまして、近く通達することになっております。その額は、助成の方は総額一億五千万円でございます。
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 これは、金額としてはいままでの被害額外務省では四億四千万、しかもそれがこの協定の調停の委員会議題となる、いわゆる補償対象交渉になる金額というものは非常に少なくなると思うわけですが、このいわゆる協定が発効して、仮に協定が七月一日に発効するとした場合に、それ以前二年といいますと非常に少ない金額になると思うわけですが、数字的にソ連側にこの補償を要求する金額がおわかりになっておれば、外務当局から御説明願いたいと思います。
  16. 橘正忠

    橘政府委員 私ども水産庁から御連絡を受けております数字では、御参考までに申し上げますと、五十年の三月までが金額からいって二億三十五万円、それから四十九年、昨年が一億九千二百六万円、なお四十八年は千三百四十五万円という計数になっております。  なお、これは水産庁経由都道府県等からの報告という数字になっておりますので、これがそのまま今度の協定に基づく請求になるかどうかという問題は別個の問題でございます。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 この漁業損害賠償請求処理委員会を設けて、そうして過去二年に及ぶところの被害額についての損害賠償金額をこの処理委員会で検討する、こういうことになっておるでしょう。そうなりますならば、勢いその処理委員会で検討するいわば金額というものは、いま示された二億三十五万円あるいは一億九千何ぽ、つまり四十九年から五十年で三億九千万、約四億に近い金が、外務当局としては水産庁からの報告に基づいて交渉対象になるということになるわけですが、恐らくこういう協定書をつくるに当たっては、そうした金額についてもソ連側話し合いもなされたと思うわけですが、それに対するソ連側態度といいますか方針というものも、白紙ということではなしに、こういう補償委員会をつくるということになって、そこで決めましょう、いまあなた方でこれだけの損害があるということは、話は聞いておきますというくらいの了解を与えておるのかどうか、その点……。
  18. 橘正忠

    橘政府委員 このたびの交渉は、損害賠償請求処理委員会に関しましては、その手続というルールをつくることが主たる目的でございまして、その結果お手元にありますような協定上の手続が決まったわけでございます。したがいまして、この協定手続に従って請求さるべき、あるいは申請が出てくるべき具体的な損害とかそういうものについての話し合いというのは、今度の交渉機会には行われておりません。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 その交渉機会に行われてないということも、これも私は納得いかないですけれども、要するにこの協定を結ぶ趣旨というものは、これは日本政府の非常な努力、特に農林省の水産関係担当者がいわばたまりかねて、外務省に強く要請をしてやってきたというように私は承知をしておるのであります。  要するにソ連側無謀操業によって日本漁業者が非常な被害を受けた、こういう被害をいつまでも繰り返すようなことであったならば日ソ友好関係にひびが入るから、これはもう沿岸漁業協定を結んで日ソ友好関係というものを揺るぎないものにしようというのが、私はこの協定を結ぶに至ったところの日本側態度ではないかと思うのです。その日本側態度である以上は、外務省当局交渉の過程の中で、現実にこれだけの被害も受けておるのだから、この被害に対してもこの協定を結んでから後でどうこうではなしに、この協定を結ぶに当たっては、これだけの被害があるからこの被害に対しても何とかすべきではないか、これくらいの交渉はするのが理の当然だと私は思うわけですけれども、そういう被害に対しては、これはほおかぶりをして話をしたのですか。
  20. 橘正忠

    橘政府委員 従来起こりました事故に伴う被害につきましては、今回の交渉と別途にその都度ソ連側申し入れてある次第でございます。  この協定自体は、そうした損害賠償請求についての処理を促進するための手続をつくる。その手続ができましたらその手続にのっとって具体的なそういう問題の処理を図る、こういう今回の交渉の性質であったわけでございます。  なお今回の交渉につきましては、実際上も外務省のみならず、水産庁関係者も参画して交渉をしておったことを申し添えさせていただきます。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 それは水産関係者交渉の中に入るのは当然だと思うわけですが、しかしやはり国と国との関係でありますので、外務省がいわば責任を負った協定をしなければいかぬ。だから外務省のあなたの方でも、こういう協定を結ばなければならなかったところの原因というものを、これは政務次官説明の中にもあるとおり、ソ連側無謀操業のもとにおいて起こったことだから、その無謀操業というものによってどれだけ日本漁民被害を受けたのか、過去の被害について申し入れをしたとあなたは言いますけれども、どういう申し入れをしたのですか。こういう被害がありましたという申し入れですか、こういう被害があったから、これに対してはあなたのところ補償しなさいよと、こういう申し入れであったのですか。どっちですか。申し入れ申し入れと言ってもわからぬですよ。
  22. 橘正忠

    橘政府委員 被害あるいは損害につきましては、これの賠償請求というものは法的に言えば第一次的には当事者間の問題でございますが、(井上(泉)委員「いや、申し入れ内容を言ってください」と呼ぶ)具体的な事故内容を示して、損害金額ソ連側申し入れを重ねておった次第でございます。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 それは申し入れじゃない。報告じゃないですか。具体的な損害金額をなにして、それを補償しなさいということを言えば申し入れということになるけれどもあなたの言うとおりだと、報告じゃないですか。どっちですか。報告ですか、申し入れですか。
  24. 橘正忠

    橘政府委員 損害賠償請求につきましては、当然当事者損害賠償請求という形でソ連側政府としてこれを伝えて申し入れておるという形でございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 申し入れておるという形とかいうその形は余分です。申し入れをした、それなら申し入れしたことに対してソ連側から今日具体的に回答があったのですか。
  26. 橘正忠

    橘政府委員 従来の重ね重ねの申し入れに対して、ソ連側からは具体的な回答は参っておりません。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 その具体的な回答がないということは申し入れを無視されてきた、だからこれではたまらぬということで騒ぎ出してこの沿岸漁業協定を結ぶ、こういう運びになってきたのと違うのですか。
  28. 橘正忠

    橘政府委員 先ほど申し上げましたように、従来起こりました損害についての申し入れを何度もソ連側に重ねてまいります一方において、やはりこういう損害賠償請求処理を促進する手続というものを確定することが必要であるということが強く認識されたので、この協定交渉締結いたしまして、その手続をここに決めて、これが発効したならば、この協定手続に従って過去の損害賠償をも含めた解決の促進を図りたい、こういう趣旨でございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 時間がないので詳しく質疑をすることはできぬわけですが、それで私は後で大臣にも質問いたすわけですが、いままで外務省申し入れをして、これこれの被害があったと言うてその都度申し入れたと言うのですが、その都度申し入れたものを件別に、つまり事件別に年別に、後刻の私の大臣への質問までに資料として提出をしていただくことを要望して私の質問を終わります。
  30. 栗原祐幸

  31. 河上民雄

    河上委員 いま漁業操業協定に関する御質問がありましたが、私は油濁関係の三条約につきまして質問をさしていただきます。  まず船主責任制限条約の方でございますけれども、この御趣旨を拝見いたしますと、船主責任制限制度におきまして従来の免責委付主義を捨てて今度は金額責任主義をとったということでございますが、こういうように原則を変えること、つまり金額責任主義をとる場合のメリットというのは具体的にはどういう点にあるのか、まずお伺いいたします。
  32. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  わが国現行法令上は委付主義ということでございまして、金額主義というものはとっておらないところでございますが、委付主義と申しますと、船価の変動でございますとか、それから船の新しさ、古さ、それによりまして賠償額に不公平な差異をもたらすという点で、被害者に対する補償という面で非常に妥当と言えない面があるのではないか。また船主にとりましても、船舶を委付いたしますことは営業活動に支障を来すばかりではなく、場合によっては収益の道を閉ざされるというようなことにもなりかねないわけでございます。したがいまして、この条約の採用いたします金額主義というものによってこのような問題を解決することができるということが一つの御質問の点に関しますメリットであろうと考えます。
  33. 河上民雄

    河上委員 いま、船舶所有者責任制限に関する条約と油濁の二条約審議に供せられておりますが、この三条約に入らぬ場合、日本として、また日本籍の船として具体的に当面どういうふうな困った問題が起こるのか。たとえば外国の港へ行ったときにどうとかする、非常に困った事態になるとか、事故が起った場合に日本として責任を負えないような状態を生むとか、そういうような何か具体的な入らぬ場合のデメリットというのはあるのですか。それとも世界の大勢だからともかく入っておこう、こういうことでございますか。
  34. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  第一番目の船主責任の五七年条約に関しましては、これは船主責任制限することを一般的に決めた条約でございまして、そして委付主義ではなく、金額主義を採用しているということでございまして、これは、この条約に入ることにより、あわせて国内法を改正することによりまして、何と申しますか、より合理的な事故の場合の責任方式に変わり得るということでございます。そしてこの金額主義を踏まえまして、油濁の民事責任に関します六九年条約とそれから油濁基金設立に関します七一年条約があるわけでございますけれども、この条約、特に六九年の条約では油濁損害発生せしめた場合における船主責任というものを無過失責任とし、かつまた、船主というものに責任を集中し、そして船主に対して強制的な保険を義務づけているというような面がございます。  それから基金条約におきましては、さらに油濁基金というものから、船主等が払えないような場合には補償をする、ないしは船主の負った補償の一部分を肩がわりをして補てんをするということになっておりますので、被害者の損失に対する補償というものの道がより確保されているということが申し上げられると思います。  そこで、お尋ねの件について、この条約に入らなければどのようなデメリットがあるかということでございますれば、ただいま御説明申し上げたところでおわかりいただけますように、そのような船主責任の明確化、それから被害者に対する補償の確保のより一層の増大というような点が確保されなくなるということがございますが、さらにこの強制保険ということに関しまして、各締約国がその保険が十分なものであることを証明する証明書を発給するということになっております。この条約、特に六九年の補償責任民事責任条約でございますが、そこでは、その証明書を持ってこない船については入域を許さないということが、非締約国の船についても適用するという関係になっておりますので、日本が入らない場合には、日本政府日本船に対して出します証明書というものを、まだ日本は締約国でございませんので、他の締約国政府がそれを認めない。したがって、日本は非締約国の扱いとなって、日本政府の証明書ではそれらの締約国の港に入ることができなくなる。もちろんこれは全く不可能な、何と申しますか、絶対に行けなくなるというものではございませんで、締約国の政府の証明書というものを入手する道はございます。したがいまして、行けないという物理的なインポッシブルな状態は現出しないわけでございますけれども日本が非締約国であります限り、締約国政府のいずれかの政府の証明書をもらって出かけなければならないという不便が生ずるということがございます。
  35. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、やはりこれに入っておらぬといろいろ不便があるということでございますが、いま最後におっしゃった場合、まあこれは入れば問題なくなるわけですが、最後に言及されたケースは、日本が非締約国の場合——現に日本は非締約国でありますけれども日本政府が、他の締約国政府に対して日本国籍の船についてそういう証明書を発給してくれるように、日本政府責任において頼むという形になるわけですか。
  36. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  直ちに日本政府責任においてということではなく、船舶所有者ないしは運航者といたしましては、当然のことながら、この条約の他の締約国に船を回します場合に、実際上その国に入れないということでございますので、やはりその国に保険を掛けるなりいたしまして、その国から証明書をもらうということによって、船の運航に支障なからしめるであろうと思います。  ただし、もしそういうことをしたにもかかわらず、この証明書がその締約国政府から出ないということになりますれば、非常な支障を生ずるわけでございますので、日本政府といたしましても、相手国政府交渉いたしまして、そのような証明書が発給できるように処理したいというふうに考えております。
  37. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、あと余り時間もございませんので、ややアトランダムに次々鴨尋ねしたいと思いますが、最近における日本船舶の海難事故発生件数の中で、タンカー以外の船舶関係の件数が何%ぐらいで、タンカーに関係あるものは何%ぐらい、どのくらいの比率になっておりますか。油濁関係条約でございますので、一応の概念を得る意味で伺いたいと思います。
  38. 只野暢

    ○只野説明員 お答えいたします。  昭和四十九年中に救助を必要といたしましたタンカーの海難事故は百四十八でございます。これは全海難発生件数の五・九%を占めております。なお、漁船を除きました一般船舶の中では一〇・八%という比率になっております。
  39. 河上民雄

    河上委員 この前新聞でちょっと拝見いたしましたけれども、過密の東京湾の船舶事故防止するために東京湾海上交通情報機構というものを建設中であるということでありますが、その情報機構というのはどういうものでありますか。またこれから努力されるようでありますけれども、大体いつごろ完成するのか。これは新聞報道でございますので、私どもよくわからないのでありますけれども、これをやるには、そういうセンターを設けると同時に、それぞれの船に受信体制が整わないといけないというようなことも報道されておりますが、この見通しについて伺いたいと思います。
  40. 只野暢

    ○只野説明員 お答えいたします。  最初に東京湾海上交通情報機構の仕組みでございますけれども、これは大別いたしまして、二つに分かれるかと存じます。  一つは、横浜港、それから川崎港、東京港と東京湾にそれぞれの港がございまして、ここで港則法という法律が適用されまして、船舶の航行の安全を保障さしております。この港則法を完全に適用させまして、船舶の流れを整流いたしますために管制信号所というのがございます。この管制信号所を無人化いたしまして、テレビそれからレーダー、そういうものを有機的に結合いたしまして、港の中の交通の安全を図るという仕組みが一つございます。  そのほかに、東京湾全体の交通の流れ、その辺の航行の安全を確保いたしますために、東京湾にレーダー局を、現在の計画では三カ所でございますが設けまして、陸上から船舶の航行の状態を見ながら船舶に適当なアドバイスをする、あるいは航行の管制を行うというような仕組みになっております。  それから、現在の計画でございますけれども、横浜港、川崎港におきます港域の管制システムにつきましては、すでに完成いたしまして運用いたしております。  それから、湾全体のレーダーのシステムでございますが、これはセンターとなります観音崎の整備が昭和五十一年までかかる予定でございますので、実際の運用は昭和五十二年の年頭もしくは五十二年度に入ってからかと考えております。
  41. 河上民雄

    河上委員 新聞などによりますと、航路管制を受ける船舶側の受信体制が整わない限り十分な効果は期待できないということが書いてありますけれども、それぞれの船舶にそういう施設を義務づけるような法律的な根拠とか、そういうものはもうできておるのですか。
  42. 只野暢

    ○只野説明員 現在、そのような法律的な施行をいかようにすればよいかということを研究しておる段階でございます。
  43. 河上民雄

    河上委員 センターをつくって五十二年度までにということですけれども、それを機能させるためのいろいろな準備というものはまだ十分でないというように判断せざるを得ないのですけれども、これはまた、東京湾でこの前大きな事故が起きておりますので、やはりそういうようなことまで十分考えてやっていただかないと、非常にむずかしいのじゃないかと私は思います。  きょうは余り時間がございませんので、問題の指摘にとどまるようなかっこうでございますが、ひとつその点は、そういう法律的な整備も含めて考えていく、ただ、そういうレーダーを設置すればいいということではなしに、そういう点をもう少し考えていただきたいと私は思うのでございますが、これはまた日を改めて別な機会にやらしていただきます。  それから今度の三条約で、われわれ非常に関心を持っておりますのは、一体これで被害補償が十分できるような体制がとれるのかどうかということです。たとえば、ことし一月のマラッカ海峡で座礁した太平洋海運のタンカー祥和丸の事故につきまして、この補償としてインドネシアが二千四百万ドル、マレーシアが一千万ドル、シンガポールが三百万ドル、合計三千七百万ドル、日本のお金にいたしまして約百十一億円ぐらいになろうかと思いますけれども、こういう要求が来ておりますが、こういう金額は一体どういう算定基準で来たのか、私ども根拠はよくわかりませんが、まず、この金額を今回の新しい条約に基づく保険で十分カバーできるのかどうか。また船主責任制限条約に基づく金額責任主義でこれはもちろんカバーできないんじゃないかと思うのでございますけれども、そういう船主責任制限条約における金額責任主義による負担できる範囲と、それから今度の国際基金による補償能力と、それから実際の被害が起こった場合に被害者から出てまいります補償要求と、この三つが完全に一致するということはちょっと考えられないのでありますが、こういうような点につきましては政府はどういうようにお考えになっておられるか、伺いたいと思うのです。
  44. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ただいまお話がございましたマラッカ海峡における祥和丸の事故のことでございますけれども、私ども承知しておりますのは、シンガポールについて正式な要求が参ったということを聞いておりますけれども、インドネシアとマレーシアについては、実は一部新聞報道など行われておりますけれども政府としては、実は正確な賠償額の要求について承知しておらないのでございます。  現在は日本のPI保険の弁護士が現地で各国と折衝に当たっておるということでございますので、何分これは民間の補償の問題でございますから、そういったルートを通じて日本側も誠意をもってお話し合いをするということになって、金額がいずれはっきりしてくると思います。それで、大体事故はインドネシアの領海内ということが言われておりますので、裁判になりますとインドネシアの裁判になるということは考えられるのでございます。  それから今度できます油濁関係条約との関連でございますけれども、遺憾ながらマラッカ海峡関係の三国が油濁関係の二条約に入ろうという動きはいまのところちょっとまだ見られないのでございます。したがって、あの海峡におきます油濁関係の法律関係というのは依然として従来のままで考えなければいかぬということでございますので、先ほども申し上げましたようにそれぞれの国の国内法によって賠償関係の裁判が行われたりするということを考えていかなければならぬと思います。  それで、実際この祥和丸は幾ら保険にかけていたかという現状を申し上げますと、PI保険で二千万ドル、約六十億円、それからTOVALOPで一千万ドル、約三十億円、それからCRISTAL協定によります、石油会社が払おうという金額は三千万ドル、約九十億円ということが用意されておるのでございますが、先ほどから申し上げましたような今後の訴訟関係の進展によって金額がいかように決まるかというのは、これからの問題でございます。
  45. 河上民雄

    河上委員 いま私、このマラッカ海峡事件を一つのケースとして伺ったわけですけれども、いまのお話を承りますと、この関係国が、沿岸諸国が入っていない場合というのが今後とも考えられるわけですね。それからもう一つは、裁判は領海ということでインドネシアで行われる、そういう場合には、この審議をしておる新しい条約によらず、従来のそれぞれの国内法なり従来の国際法を参考にしながら進めるということでございますね。そして、もし仮にこの船主責任制限条約に基づく金額責任主義をとりました場合、祥和丸の場合は船主は最低限どのくらい払えばいいということになりますか。
  46. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は資料を持っておりますからいま正確に調べてみますけれども、トン数が十三万トンぐらいでありまして、それで今度の条約条約トンに直すと、八割ぐらいになりますので多分十万トンぐらいではないか。そういたしますと、トン当たり四万八千円の制限額を十万トンに掛けますと四十八億円ということになります。それ以上は、百八億円までは、今度は国際基金から補償をしようという制度になるということでございます。
  47. 河上民雄

    河上委員 そうすると、もしこの三国の補償要求が、これで言いまするとまず船主責任制限条約による四十八億円をもうはるかに突破するわけですね。四十八億円というのは、最低限それだけは払わなければいかぬということですか。そしてまず、これを払わぬ場合はどういう罰則が出てくるのか。それからもう一つは、国際基金の助けをかりてもなお補償額に達しない場合、これは従来のいわゆる保険会社の保険で賄えればそれでいい、賄えない場合はどうするのか、そういうような問題についてちょっとお伺いしたい。
  48. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 まず訂正をさせていただきたいのですが、いま正確な資料を出しましたら、総トン数で十一万六千トンでございます。したがいまして、条約トンで大体それに八掛けをいたしまして、それに四万八千円を乗じますと、推定の限度額は四十四億六千万円ということに相なります。これは先ほどもちょっとお断りいたしましたように六九年条約が働いた場合でございますが、あの地方ではさしあたって六九年条約は働くことができないということでございますので、現状で申しますと、船主がかけております二千万ドルのPI保険と一千万ドルのTOVALOPとを合わせまして三千万ドル、したがって九十億円の範囲内でおさまればPIとTOVALOPの現行制度を利用して賠償責任請求に応ずるということになります。それから、仮に六九年条約、七一年条約が適用される地域ということに祥和丸の事件を置きかえてみましたら、実は、責任制限をしようと思いますと四十四億六千万円で一応船側の責任制限をすることができる。それを超えまして百八億円まで、四億五千万フランまでは基金にその補償被害者が求めることができるということになります。それからさらに百八億円で足りない場合には、基金の総会の議決によりましてその倍額である九億フランまで、したがって二百十六億円程度までその金額を将来上げることができるような基金規定になっているということでございます。
  49. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、条約が発効し、適用せられる範囲の場合は大体これで賄えるというような御判断でございますね。ただ、いまえらくマラッカ海峡の祥和丸にこだわるようですけれども、祥和丸の船籍がこの条約でカバーできるとしても、事故を起こした地域が条約でカバーできない場合には従来のやり方で処理するほかはない、こういうことでございますね。つまりこの三条約が有効に働くためには、船籍がこの三条約でカバーできるということと事故発生した地域がこの三条約でカバーされているという、この二つの条件を兼ね備えたときのみそれが発揮できる、有効になる、こういうふうに理解してよろしいわけでございますか。
  50. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から船籍それから地域が両方とも二条約の締約国でなければいけないのじゃないかというお話がございましたが、実はこの条約の適用関係につきましてはもっぱら地域によっているわけでございます。したがいまして、外国船が来て日本の領海の中で油濁損害を起こした場合には、この法律が働いて日本被害者船主に対して、この条約なり法律に基づく請求ができますし、それから国際基金に対しても補償を求めることができるということでございます。ただ、その外国船が基金条約に入っていない国の船である場合には、その船主基金に対して補てんを求めることができないということがございます。
  51. 河上民雄

    河上委員 じゃこれでもうやめますけれども、そうしますと、結局、やはり日本近海事故が起きた場合、相手の船籍がこの条約でカバーされてない場合には全部作動しないおそれがあるということになりますか。それだけ聞いて私の質問を終わります。
  52. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  ただいま明確にお答え申し上げないで申しわけなかったと思いますが、外国船が日本の領海の中で事故を起こした場合には、その船が二条約の締約国の船であると否とを問わず、日本被害者はこの条約なり法律に基づいて請求ができますし、それから国際基金に対して補償を求めることができるわけでございます。
  53. 河上民雄

    河上委員 終わります。
  54. 栗原祐幸

  55. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まず私は、漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定につきお伺いをしたいと思います。  まず、「ソヴィエト社会主義共和国連邦漁業大臣ア・ア・イシコフの日本国訪問について 昭和五〇年六月八日」という文書をここにいただいております。この共同発表の文書を拝見いたしますと、「両大臣は、日本沿岸の地先沖合の公海における漁業操業に関し意見を交換し、一九七五年六月七日に宮澤外務大臣とイシコフ漁業大臣により署名された漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定を高く評価した。上記協定の実施に関連し、双方は、同協定規定に基づき、かつ、日本国において有効である漁業規制措置を考慮に入れ、日本沿岸の地先沖合の公海における漁業操業に当たって紛争発生の可能性を除去するため、方策を講ずることに合意した。」と記されております。いまは引用して一部を読み上げたわけでありますが、その中において、日本国において有効である漁業規制措置を考慮に入れることが双方の名において書かれております。これは、その後イシコフ漁業相が紛争の多発する原因がトロール漁船であるということを考慮に入れて、トロール船の自主規制を示唆されたかのごとく私たちは間接的に伺っているわけであります。この問題に関し、ソヴェト側の立場、またイシコフ言明は一体どのようなものと理解されておるか。その辺の一番関心の集まっている問題について、詳細な、正確な、率直な御説明を仰ぎたいと思います。
  56. 内村良英

    内村政府委員 お答え申し上げます。  現在ソ連操業は、わが国の領海が三海里である関係上、三海里の外の公海において行われておるわけでございます。ところが、三海里の外におきましてもわが国の定置の漁具がございますし、それからさらにわが国のいろいろの漁業がそこにあるわけでございます。  そこで、国内におきましても先生御案内のように、いわゆる底びき漁業と他の漁業というものにおきましてはいろいろ紛争が各地であるわけでございまして、そういったことを考慮いたしまして、漁業法に基づきまして国内措置として各県とも底びき禁止区域というものを大体つくっております。それが大体七海里から、遠いところは十五海里ぐらいの海域にわたりまして、わが国漁船が底びきをやってはいけないという海域があるわけでございます。ソ連漁船は、トロール以外にその他まき網等の漁船も来ておりますけれども、何と言いましてもソ連操業の主体はトロールでございます。そこでわが国の底びき船も操業できないようなところで、いかに公海とはいえソ連漁船操業するということは、これはわが国漁民感情を非常に刺激するわけでございます。特に今年の春、北海道の襟裳岬の西から噴火湾にかけての海域でソ連の大々的な操業があったわけでございますが、その海域は歴史的に底びきと他の漁法との非常な紛争がございまして、長い間時間をかけて底びき禁止区域をつくったようなところでございます。そこでソ連漁船が底びきをやった関係上、漁民が非常に激高したということもあったわけでございまして、私どもといたしましては、そういった点を考えに入れてくれということをイシコフ漁業大臣に申したわけでございます。  それ以外に、静岡の沖の方に銭州というサバの産卵場がございます。ここはわが国は一本釣りしか認めなくて、他の漁法は認めておりません。ここで昨年の春、ソ連がまき網の操業その他をやって、これも非常に問題を起こしたことがございますので、昨年の秋、第二回の操業協定話し合いをしたときにソ連に厳重に抗議したわけでございます。ことしの春は幸いにして銭州付近では余り大規模なソ連操業はなかったわけでございますが、いずれにいたしましても、そういった国内措置がございますので、公海といえども、少なくともわが国がやっている漁業規制は守ってほしい。それは国際法上は問題があるにしても、私たちの言葉で言いますと、いわば漁師の仁義みたいなものじゃないかというようなことを申しまして、そこでイシコフもやはり漁業担当の大臣でございますから、そういうことはわかるということで、漁業規制措置を考慮に入れてソ連操業パターンを決めよう、その問題につきましては、漁期が始まるのが大体九月の末でございますから、専門家会議をやって、なお詳細に日本の規制措置を聞きたいというようなことを言っておりますので、それまでに専門家会議でわが方の規制措置を詳細に説明する。そうなりますと、向こうが現場で操業する船団に対して、こことここはやめた方がいい、やめろというようなことを指示することになるだろうと思います。
  57. 渡部一郎

    渡部(一)委員 率直なお話をしていただきましたので、ある意味では安心をし、ある意味ではなおかつ不満を持っておるわけでありますが、少なくともわが国漁民が鋭意開発をしたそうした魚礁、あるいは産卵場を守り続けてきた。そういう漁場に対して、ソビエト船の乱獲あるいは乱暴な、従来のいきさつをわきまえぬ操業というものに関して強い不満を表明するのは当然のことだし、その不満を生かしていかなければいけないと私は思うわけであります。  そこで、率直にもう一回重ねて伺うわけでありますが、いま述べられたようなトロール船によるところの大規模な操業ぶりというのは、先日当委員会理事も、海上保安庁の飛行機によって犬吠崎の東方海上においてこれを自分たちの目で拝見して帰ってきたわけであります。そこで特に申し上げるのですが、こういう日本側の底びき禁止区域はほとんど守られるようにできるのかどうか、それはまだ交渉次第とおっしゃるのかどうか、ある程度の見通しができているのかどうか、これはまさに漁民にとっては生死にかかわる問題だと言って差し支えない。そのところを、ある程度希望を持てるような交渉ができるのかどうか、いま全く交渉が緒についたぐらいの程度なのか、その辺の手かげんというか、交渉の様子というものを全国の漁民のためにお話しをいただきたいと思います。
  58. 内村良英

    内村政府委員 イシコフと話し合いました際に、わが国漁業規制につきましては、海図をもってこことここの海域であるということを示してございます。なおそのときは専門家が一人しか来ておりませんでしたので、近く専門家会議を開いてなお詳細な説明をする、こういうことになると思います。私どもといたしましてはそれは遵守されるのではないかと、ただソ連のことでございますからどうなるかわかりませんけれども、それを非常に強く期待しているわけでございます。
  59. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ソ連のことですから強く期待しているというのは、ちょっとよくわからないのですけれどもソ連のことだから言うことを聞かないだろうということは想像できるけれども、強く希望を述べたのだ、こういう意味ですか。その最後のところがよくわかりません。
  60. 内村良英

    内村政府委員 私どものやる行政措置でございますと、遵守すると言えば当然遵守するわけでございますけれどもソ連がやることでございますから、まあ私どもにはいまのところわからないけれども、この前のイシコフの口ぶりからいけば、遵守されるであろう、私どもの方も遵守することを期待している、こういうわけでございます。
  61. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから銭州のことをおっしゃいましたが、静岡の地先でありまして、この銭州のところへ踏み込んできたなんというのは、これは気違いを通り越しているわけでありますが、ここのところなんかは絶対確保できる見通しはございますか。
  62. 内村良英

    内村政府委員 ソ連の大々的な操業が銭州で行われたのは昨年の春でございます。そこで昨年の秋にソ連といろいろ話し合ったときに、銭州の問題はわが方から厳しく言ったわけでございます。その結果、ことしの春はソ連が銭州でほとんど操業しなかった。銭州のちょっと外でサバ以外の魚をちょっととっておるということがありますので、なお詳細説明すれば、銭州についても昨年の春起こったようなことは起こらないのではないかと思っております。
  63. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、この問題については今後交渉を進めていただいて、ぜひとも確実なお話にしていただきたい。もちろんこの協定においていろいろなことが行われておるのはわかっておるわけでありますけれども、少なくとも、もう少し話を詰めていただけないかという感じがするわけであります。それは恐らく水産庁の権威の皆様方も同じ考えでいらっしゃるのでしょうけれども、どうしてももう少し進めていただかなければ、日本漁民はやっていけない、こんないいかげんな話では。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  私、もう一つ申し上げるのですが、この協定の中で、また例によって非常にあいまいなところが多過ぎますから少し伺うのですけれども、この第一条の中で「この協定は、日本沿岸の地先沖合の公海水域について適用する。」となっております。この「日本沿岸の地先沖合の公海水域」というのは、一体どの程度のところまでを指すのか、これを述べていただきたいと思います。  と申しますのは、こうした考え方は漁業権の問題、漁業専管区域の設定の問題あるいは海洋法の交渉の関連において当然問題になるところだから、非常に重要な主張ポイントであろうかと思いますから、お話しをいただきたいと思います。
  64. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  「地先沖合」という言葉は必ずしも距岸何マイルと範囲を明確に限定したものではございませんで、沖合いの水域といいますものを、その地元の地域との関連において観念した言葉であるというふうにお考えくださればいいんではないかと思うのでございます。つまり領海の範囲内にとどまるものでは当然ございませんで、「地先沖合」といいますのは、その地元の沖合いの、また領海を越えた公海の方面に向かっての沖合いという意味で「地先沖合」という言葉を使っているわけでございまして、漁業の実態から申しますと、確かに距岸何マイルというふうに決まったものではございませんけれども、太平洋の真ん中でございますとか、さらにそれより延びてハワイからアメリカの領海の方まで延びるというような観念でないということは申し上げられますが、何マイルというような正確な数字で申し上げられる概念ではないということでございます。そしていま先生もおっしゃいましたように、専管水域ですとか領海というものとの関連においてはこの言葉はあいまいではないかという御指摘だろうと思うのでございますが、この条約は、どの地域においてどの国が漁業の権利を有するか否かということとはかかわりない、操業事故未然防止、それから事故が起こった場合の紛争処理ということを目的としてつくりました条約でございますので、その意味におきまして、この条約では「地先沖合」というような言葉を使っているわけでございます。
  65. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは私は、外務省の方の側とすれば、専管水域を設けたり、あるいは漁業管轄権をある意味で認めたりすることは慎重に避けてこられた表現があらわれているのだろうと思うのです。ところが、日ソ間の漁業関係においては、ソビエト沿岸の地先沖合いの公海水域において大々的な区域が設けられ、それによってわが国のサケ・マスあるいはカニ等の漁業資源に対する採取権が大幅に規制されておる、こういうことは公然と言えると思うのですね。だから私は、非常にバランスを失しているのではないかという感じを抑えることができない。つまり日本沿岸の方は、つい目の前までおいでになっても、紛争が起こったとき片づける条約がやっとできた程度である。ところが、ソビエト政府沿岸地先沖合いの公海水域については、それこそ無制限に近いと考えられるほどの大きなところを堂々と確保してしまう。そしてわが国の漁獲高に対して頭からブレーキをかける。これをバランスがとれているとお思いかどうか伺いたい、そういう結論に対して。まず認識の問題なんです。あれは仕方がないというふうに認めるかどうかは別として、まずその立場として、日本近海沿岸における漁業資源確保について、こうまで弱い立場をとらざるを得ないという事情は御説明くだすって結構なんですけれども、そのもう一つ前に、私の言うのは、ソビエト側の沿岸漁業に対する態度と余りにも違い過ぎてはいないか、そしてわが国漁業は余りにも追い詰められていないか、その辺はどうお考えなんですか。
  66. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生から御指摘がございました日ソ漁業関係でございますが、いわゆる日ソ漁業条約に基づきましてわが国漁業はいろいろ制限されております。しかし、考え方といたしましては、ソ連の領海外の漁業は、ソ連の沖合いでございましても日本は自由にやれるわけでございます。ところが、サケ・マス、カニその他、資源状態によってわが国漁業を抑制している。これはあくまで資源問題としてやっているわけでございます。ところが、この操業協定操業の調整についての協定でございまして、現在のところ、ソ連の沖合いでわが国漁業が盛んにやっているわけでございますけれども、向こうに余り零細な沿岸漁業がない。多少ございますけれども日本のように零細な漁民沿岸に非常にいるという地域と違いまして、余り操業調整をやらなければならぬような必要性がないということもございまして、ソ連の沖合いについては操業協定をやってないわけでございますけれどもわが国の沖合いにつきましては、非常に沿岸漁民が多いというようなところから、こういった操業協定の必要性が起こっておるわけでございます。
  67. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、水産庁長官は、操業協定についてはわが国の零細漁民を救うためにここまで厳格につくることができたが、サケ・マスのような資源問題については、ソビエト側の資源を保護するたてまえの取り決めができているのであって、わが国の側ではそうした資源保護の観点からの交渉はしていない、こういう意味ですね。
  68. 内村良英

    内村政府委員 サケ・マスその他カニにつきましては日ソ間で話し合いをやりまして、そこでこういう資源保護措置が必要だということでわが方も同意しているわけでございまして、向こうの措置を一方的に受け入れているわけではございません。毎年日ソ共同委員会審議をいたしまして、その結果公海における規制措置を決めているわけでございます。
  69. 渡部一郎

    渡部(一)委員 水産庁の方にこんなことを何回も言って申しわけないのですけれどもわが国の周りの近海漁業漁業資源保護については、こうやって拝見すると余り熱心でないようですが、これは私の素人目のひがみかどうか、御説明いただきたい。私は沿岸漁民の立場からいったら、日本水産庁はわれわれの漁業を保護してくれないというニュアンスが強く出ると思うのですね。その辺どう説明されますか。
  70. 内村良英

    内村政府委員 もちろん、われわれとしては沿岸の資源を守っていくことは当然でございまして、わが沿岸の資源を守らない、あるいはないがしろにすることは全然考えておりません。ところが、現在わが国沿岸で行われておりますソ連漁業の規模から見まして、いまだ資源保護措置をとる必要はないというふうに考えているわけでございます。一例を申しますと、たとえばサバの漁獲量というものはソ連日本の漁獲量は百対一ぐらい違いがあるわけでございます。そこでサバについて共同規制措置をとって漁獲量を決めるということになりますと、率直に言いまして、わが国漁業の活動を抑えなければならぬような面も出てくるわけでございます。したがいまして、現状ではその必要はないというふうな判断をとっておりまして、むしろ共同規制措置をとってソ連側と話し合うということは、まだ不適当であるというふうに思っておるわけでございます。
  71. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、お話を伺っておると、日本の周りの資源をある程度ソビエトの漁船がとって、百対一というのがたとえば七十対三十というグレードになってくれば考える、こういうふうに受け取れるんですね。そうするとまさにそういう御答弁は、ソビエト側はそういう答弁を聞いたら私は喜ぶだろうと思うのです。非常に挑発的に聞こえますからね。もうちょっとほかの言い回しをなさいませんか。そうしなければ、ソビエトにもっともっと日本の近海でサバをとれ、まだ余っておるのだと言わんばかりに聞こえる。私はただいまの御説明は、日本漁民生活感覚から言うとちょっと乱暴な御意見ではないかと思いますよ。それはどうです。
  72. 内村良英

    内村政府委員 公海における共同規制措置ということになりますと、一方の国を締めるだけではなしに、原則的には双務的に漁業の調整を行うわけでございます。そうなりますと、現在自由に行っているわが国のサバ漁業についても、何らかの規制がかかってくる可能性がございます。その必要は現在のサバの資源その他から見てまだないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  73. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、理屈はわかりますよ。ただ、日本近海で零細にやっている漁民に対して、言い回しようがもう少しあるだろうということを申し上げたのです。その点を十分お気にとめていただかなければ将来問題になるであろうということだけ予言しておきますよ。これは外務省もいいですね。いますごいことを言われたのだから、水産庁説明は。これは後たたる答弁であると銘記していただきたい。  さて、第七条において、漁業損害賠償請求処理委員会というものができることになっております。しかしこれは権威ある委員会というよりも、一つの諮問機関のような形で行われるように見えます。実際紛争が起きた場合にどういう段取りになるか、御説明をいただきたい。いま両者の漁船紛争を起こした、そうした場合にこの委員会はどういうふうに活躍して、どういう権限があって、どこまでできて、どれぐらい以上の紛争になるとできないのか。また損害賠償のある程度の指定とか、あるいは損害金の決定とか、そういったことができるのかできないのか、あるいは原状回復措置に対する法的措置をとれるのかとれないのか、あるいは裁判所でやる原状回復命令みたいなものは出せるのか出せないのか、単なる家庭裁判所の調停裁判のもう一つ前のお話し合いのような状態であるのか、その点判然といたしません。実際運用に当たっての具体的措置を恐らく取り決められているだろうと思いますから、お話しをいただきたい。
  74. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  一口に申しまして、委員会の権限と、それから審査の仕方ということでございますが、最初に審査の仕方から簡単に御説明申し上げますと、条約の第九条からがその手続関係規定でございまして、まず事故が起こりますと、この場合、日本漁民被害者である場合には、日本漁民日本にございます——処理委員会——処理委員会は二つできまして、ソ連日本一つずつできるわけでございますけれども、その日本にある委員会を通じまして、先方の国にある、つまりソビエトにある委員会に申請が付託されるということになります。そして、その事件の性質、事実確認等々の審査は、ソ連におきます日本側委員二名とソ連側委員二名とが出た委員会において審査をされまして、その結果一つの認定を下すわけでございます。この認定と申しますのは、ただいま先生も御指摘になりましたように、法的な効果というものを持つものではなく、単に両者間の、つまり被害者と加害者との間の損害賠償額についての調停と申しますか、これくらいの損害賠償でいかがであろうかということの認定をするわけでございます。これはもちろん委員会におきます全員一致の議決と申しますか、決定によってその認定が下るわけでございまして、全員一致のあれができません場合には、報告書をそれぞれの政府に出すことになっておりまして、その場合には、それぞれの委員の意見もそこに併記して出すということでございますが、認定が出る場合を考えまして言うと、認定が出ますと、それを請求者及び被請求者、つまり被害者、加害者がこの委員会の認定に従った解決を受諾するかどうかということを返事をする、それは委員会の認定が下って、その通告を受理しましてから三十日以内にする、そして不服であれば三十日以内にさらに再審査の請求をする、そして再審査の請求につきましては、委員会は再審査する価値があるかどうか、それを認定いたしまして、再審査するとした場合にはまた再審査の手続に移りますけれども、再審査がだめであるということになりますれば、これは再審査しないということになります。  いずれにしましても、この第十条、特に第十条の二項に「請求者及び被請求者と接触し、和解の仲介を行う。」ということでございまして、いわゆる両者間の和解の仲介ということが委員会の任務でございまして、これ以上に法的に強制力を持った決定を下すというようなことにはなっておりません。
  75. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それではこの漁業の方はちょっとさておきまして、油の方の条約を少しあれしたいと思います。  まず、三菱石油の水島製油所の油流出事故によりまして、油の防除に関するさまざまな措置がとられたのは、私も現場に参りまして拝見もいたしてまいったわけでございますが、その損害額というものは一体どれくらいあったものであるか、また補償額というのはどれくらい払われたものであるか、その損害補てん額はどれくらいの割合に及んでいるのか、また油の流出事故に対する防除資材は一体足りているのか足りていないのか、そういったことに対してはなはだ疑問であります。  特に、私が参りましたときにはひどい話ばかり伺ったのでありますけれども、オイルフェンスというものが工場側に設置が義務づけられていない、おまけにC重油が漏れた場合に、そのオイルフェンスは、実際に敷かれてもひっくり返ってしまった、浮き上がってしまった場合、倒された場合両方ありますけれども、そういう程度のものだった、しかも全部伸ばしても実際は全く足らなかった、こうしたような非常に愚かな油濁防除体制であったように見えるわけであります。こうした体制、そうしたものを少しずつ伺いたいわけでありますけれども、御指定の時間がどうも詰まっているようでございますから、私の第一次の質問はそろそろこの辺で終わりにしておきまして、あと全部留保させていただきますが、さてそこで、まずこの油の防除の問題に対して基礎的なことから伺います。まず最初に、いま御質問申し上げたことを総括的にお答えをいただきたい。
  76. 福島弘

    ○福島説明員 お答えいたします。  水島の事故におきまして損害額がどれくらいであったか、あるいは補償額はどれくらいであったかということにつきましては、承知いたしておりません。  御質問の後段の方のオイルフェンスにつきましては、水島におきましては二万六千メートルに及ぶオイルフェンスを使ったわけでございますが、やはり御承知のようにオイルフェンスは風とか波の影響を受けまして、期待するどおりには機能してくれておりません。したがいましてあのような事故になったわけでございます。それで、資機材は足りておるかどうかということにつきましても、やはり必ずしも十分とは申せませんので、整備につきまして一層の努力をいたしておる次第でございます。
  77. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どうも熱意のない答弁だな。驚いたな。これでは質問をやるわけにはいかないですから、油はどれくらい流出したのか、費用はどれくらいかかったのか、その補てんはどうするのか、そうしたことについて、後ほどまた質問をするときまでに御調査の上、御答弁いただけますか。
  78. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私ちょっと横から出てまいりまして、先生に恐縮なんでございますけれども、実は海上保安庁は海上面の防除をやっておりますが、石油会社の方の陸上の面からする行政というのは、海上保安庁ではなくて、恐らく通産行政の面からではないかと思うので、そこでいま、被害額がはっきりしないとか、陸上の工場のオイルフェンスがどうであったかということを明確に海上保安庁お答えしなかったのは、そういうことがあると思いますので、ちょっと横から口をはさんで悪いのですが、一言だけお話しをさせていただきたいと思ったのであります。
  79. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大変恐縮なんですが、質問と答えが全く別のことでありまして、お答えいただいたことにならぬです。油濁三条約のことに関して、三菱石油の水島製油所の問題から話を始めているのは、油の防除あるいは損害賠償の件については、当条約がいかに結ばれても、全くナンセンスな側面があることをいま私は論じようとしておるわけですね。だけれども、何にもお調べいただかないのでは質問のしようもないのですがね。これは留保して、一週間ぐらい先にやりましょうか。
  80. 福島弘

    ○福島説明員 海上の面からの補償額は約百四十億と聞いております。
  81. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その数字は何の数字で、だれが勘定してどうなったのか言わなければ、そんな突然言われたって信用ならない。どこから持ってきたのか。
  82. 福島弘

    ○福島説明員 漁民に対する補償額でございます。
  83. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはだれが判断したもので、いつそういうように御決定になったのですか。いま委員会で思いついたのですか。
  84. 内村良英

    内村政府委員 三菱石油と関係の漁連と話し合った結果の補償額でございまして、岡山県が二十三億一千五百万円、香川県が七十二億円、徳島県が二十七億円、兵庫県が十二億六千万円、これ以外に岡山県の児島漁連に対して約六億円が支払われております。
  85. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この沿岸漁民に対する補償額は漁連から出たものだけであって、その漁業に関する関連の業界に対する補償はまだこれからのはずです。私がなぜこんなことを言うかというと、油の防除に対して全く熱意がないのではないか、したがって東京湾や伊勢湾で事故なんか起きたらもう収拾がつかないのではないか、油の防除の資材は十分かと聞きたかったからです。そうすると、その次に数字が出てくるはずです。そうすると、その次に私が、全国主要各地における流出油防除資材、機材の備蓄状況は現在どの程度であるか、こう聞く。それにあなた方が答える。それでは、本条約が結ばれ、本条約規定する内容の防除体制は一体いつになったらできるのかと私は聞こうとしているのです。ところが何もかも返事をしないじゃないか。これでは質問できないのですよ。恐らくあとの数字は全部わからないのでしょう。答えられないでしょう。答えられないなら無理して答えなくていいし、海上保安庁から救難課長しかお見えになってないのだから説明も恐らく無理かと思うのです。  私の指定の時間も来ているようですから、私の第一回目の質問はこれにて終わらしていただきます。
  86. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  87. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  正森成二君。
  88. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず、油濁三法関係から先に伺いたいと思います。  今回の海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約が成立する前に、たしか一九二四年だったと思いますが、海上航行船舶所有者責任制限に関するある規則を統一する国際条約というのがありまして、わが国は署名だけはしたけれども批准は行っていなかったと思います。この条約内容及び批准しなかった理由についてごく簡単に説明してください。
  89. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、一九二四年に海上航行船舶所有者責任制限に関するある規則を統一するための国際条約というものが作成されまして、わが国もそれに署名をしたわけでございますが、これは船舶所有者責任というものにつきましては、各国とも伝統的に責任制限制度というものを採用してまいったわけでございますが、その方式が国により異なっていたために、統一的な条約をつくろうという趣旨からこの会議が招集されて条約ができたわけでございます。  ところが、この条約で定められた制度は、船価責任主義とそれから金額主義というものが併用してございまして、責任制限の方式が複雑であるというようなことがございまして、それは日本のみならず各国ともその欠陥というものを認識していたわけでございます。わが国は、この条約に署名はいたしましたが加入できなかったといいますのは、そのような欠陥、かつまた日本といたしましては、国内法上、委付主義をとっているので、直ちに金額主義に移ることも併用とはいいながらできないということで、その時点においては参加しなかったということでございます。ちなみに、これは主要海運国がフランスしか入っておりません。十一カ国署名国がございますが、その中で主要海運国はフランスだけでございまして、イギリス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アメリカ等の本当の主要海運国というのはこの条約に入っていないというようなこともございまして、日本がこの条約には参加しなかったということでございます。
  90. 正森成二

    ○正森委員 責任制限方法には、免責主義とか執行主義とか船価主義とか金額責任主義とかいろいろあるようです。それぞれの利点や欠陥についても伺いたいと思いますが、それをやっておりますと海商法の講義みたいになりますから全部省略さしていただきます。それを当然前提にして質問をさしていただきたいと思います。  ところで、今回の責任制限条約がブラッセルでたしか一九五七年に成立したときに、わが国は棄権して署名しなかったんじゃないかと思うのですが、それはどういう理由によるものですか。
  91. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  五七年条約の際に、わが国は御指摘のように棄権いたしましたわけでございますが、わが国といたしましては、海事法の統一という見地からいたしますれば、この条約趣旨には基本的には妥当なもので賛成ではあったわけでございます。ただ、当時のわが国の海運界が戦争によって壊滅的な状態になっておりましてまだ完全には立ち直っておらず、船主がいろいろな高い利息の借入金で造船しているというような当時の事情がございまして、またそれから先ほど申し上げました国内制度委付主義というものがその当時まだ行われ、現在も行われておるわけでございますが、金額主義との関連もございまして、直ちにこれに加入する国内情勢はないという判断のもとに署名もしなかったということでございます。
  92. 正森成二

    ○正森委員 ここに小町谷操三先生の「海事条約の研究」という本がありますが、それを拝見しますと、当時、日本海法学会では金額責任主義に移行することに対しては賛成だったけれども日本船主協会が経済的負担が大き過ぎるということで反対を表明したので、政府は棄権したというように要約してございますが、あなたの答弁も非常にえんきょくには言うてはおられましたが、まずまずそういうことですね。
  93. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答えいたします。  五七年条約の採択に当たりまして、どういう態度をとるべきかということにつきましては、当時官民の間でいろいろな議論が行われました。そして、ただいま先生がお話しになりましたように、確かに海法学会では前向きの態度をとっていたはずでございます。海運界がそのときに消極的な態度をとって、両者の間にかなり議論が行われたというのは事実でございます。
  94. 正森成二

    ○正森委員 ところで、その後十七年間もこれが放置されて、国会に上程されるには至らなかった、つまり十七年間放置されていたというのはどういうわけか。それがいまになって非常に急いで批准を求めておるのはどういうわけですか。
  95. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お答えいたします。  この条約が五七年、昭和三十二年に成立いたしまして、今日まで十数年間たっておるわけでございますが、わが国といたしまては、当初ただいま御質問のあったような事情もあって、直ちに批准するというところまでは行っていなかったわけでございますが、その後、海運界の状況も変わってまいりましたし、海上保険も発達してきたというような情勢の変化がございまして、昭和四十年代の初めになりましてから、これを批准した方がいいという声が出てきたわけでございます。  批准するにつきましては、御承知のように国内法の整理が必要でございます。国内法の整備は商法改正を伴う問題でございますので、法務省で法制審議会にかけてこれを決定するという慣例がございます。そこで、法制審議会に問題を移したわけでございますが、法制審議会の商法部会が会社法の改正などでいろいろ多忙でございました。その関係で若干おくれたわけでございますが、四十六、七年ごろ精力的に審議をいたしまして、四十八年に法制審議会の答申が出たわけでございます。その結果今回の提案を見るに至った、こういう経過でございます。
  96. 正森成二

    ○正森委員 この条約を見ますと、物損千フラン、人損二千百フラン、金フランですが、両方合わせた場合は三千百フランというふうに上限制度があるわけですが、それに至った由来を考えてみますと、これは私どもの考えですが、この条約は、成立過程で、条約草案をイギリス海法会議がイギリスの金額責任主義に基づいて作成したもののようですね。そしてイギリスは、一九六二年、商船法改正によって金額責任主義を取り入れたときに、当時のイギリス船の平均船価を標準として物損は八ポンド、人損は十五ポンドと決めていた、こういうように言われております。そして、この条約草案の作成に当たっては、貨幣価値の下落を考慮して、同時に大戦後、人的損害に対して各国の裁判所が非常に重い責任を課せられている点から、これを約三倍に引き上げまして、物損は二十四ポンド、人損は五十ポンド、こういうぐあいになった。それを金フランに換算したものが物損千フラン、人損二千百フランである。しかもこの草案では、人損について五十ポンドでは賄えないときには、さらにトン当たり二十四ポンド増額しなければならないことになっていたから、これを勘案して最高は七十四ポンド、すなわち三千百フランになったというように説明されているのですね。もしこの説明で誤りがないとすれば、当時の平均船価制限額がどういう関係にあったのか、また現在の船価はどれくらい上がっておるのかということをもしおわかりなら伺いたいと思います。
  97. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話しございましたように、五七年条約における責任限度額を定めますときに、イギリスの金額責任主義における限度額が一つの基準になったということは事実でございます。なぜ各国がそれで納得したかということにつきましては、当時の議事録を見ましても必ずしも明確ではございません。しかし、会議のコンセンサスとして、当時の船舶関係事故の実情から見て、この程度の限度額ならばまず妥当なものではないかという判断があったということかと思います。  船価との関係につきましては余りつまびらかにいたしませんが、この限度額を最近の日本のPIクラブ、船主相互保険組合で扱いました事故の実例等と比較して考えてみますと、現在でもこの責任限度額というものは一般的に言えば妥当なものではないかというふうに考えております。
  98. 正森成二

    ○正森委員 いま政府委員は、イギリスの金額責任主義の考え方及び当時の新造船の価格というものを参考にして決められたという大筋は認めたと思うんですね。そうしますと、私の方の調べでは、一九五七年、つまり前のとき、そのときの日本の建造船価を見ますと、百トンから五百トンはトン当たり十一万三千円、千トンから二千トンの場合は十四万九千円、それから一万トンから一万五千トンになるとぐっと下がりまして九万一千円、こうなっておるんですね。それが現在、四十九年度を見ますと、大体一万トンから一万五千トンの船の建造価格は、物価の上昇に伴って非常に上がりまして、十四万円から十五万円ということになっておるんですね。少なくとも六割以上値上がりになっておる、こういうように言えると思うのですね。そうだとすると、一九五七年当時の建造船価の考えで上限額を決めますと、三千百金フランというように、これは相対的に船舶所有者責任が非常に低くなるということになるのじゃないでしょうか。そして、それが被害者救済に一定の好ましくない影響を与えるのではないかというように思いますが、いかがですか。
  99. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  先生が申されましたように、当時建造船価というものが条約上の限度額を決める際の一つ参考資料になったということは事実でございますが、建造船価そのものがこの限度額にそっくりそのままはね返っておるということではないと思います。海難というのは、船が新しいときにも起こりますし、古いときにも起こります。ですから、損害の限度額を船価と直接結びつけて考えるというのは、絶対に正しいこととは言えないのではないか。むしろ一般的なそういう事故損害額、そういったものとの関連で見て、限度額というものがおおむねそういう損害額に適応したものであるかどうかというところから判断すべきじゃないかというふうに考えます。  そうしますと、先ほど申し上げましたように、日本のPI保険で扱った過去の事例等から見て、この限度額をオーバーしている例というものはきわめて少ないわけでございます。そういう観点から、われわれとしては、一般的に言えば妥当なものではないかというふうに考えると申し上げたわけでございます。
  100. 正森成二

    ○正森委員 いま一応の御説明があったわけですが、最初にイギリスを例にして決めたときも、当時は新船の建造価格を参考にしたのですけれども、そのときも事故としては新造船の事故もあれば中古船の事故もあったと思うのです。それはやはり現在と変わっていない。ということは、建造船価を一応の基準にするというのが損害額全体の大きさから考えても一定の合理性があったということは言えると思うのですね。それで、この三千百金フランというのは、必ずしも現在のものの値段からして妥当ではないという声は国際的にもあると思うのですね。それをどういうぐあいにしようかということは国際的にもいろいろ考えられていると思いますが、もしおわかりでございましたら、その大まかな傾向だけを聞かしていただきたい、こう思います。
  101. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  先ほど私が申し上げましたように、一般的に言えば妥当な金額であるというのが従来の共通の認識だったと思いますが、最近特に物価が上がるというようなことがあって、世界的にこの限度額で将来もいいのかという反省は起きております。そういう反省を受けまして、ことしの初めからIMCO、政府間海事機構ですね、そこにおきまして、この条約の再検討の機運が起きております。現在まですでに二回会議が行われまして、つい最近も六月にそのための委員会、IMCOの法律委員会が開かれました。十一月にさらに次回の法律委員会が開かれまして、そこでこの条約の修正につきまして最終的な素案をつくるということになっております。そして現在の予定では、来年、一九七六年中に条約採択会議を開いてこの条約の修正を行うというのが目下のスケジュールでございます。
  102. 正森成二

    ○正森委員 責任金額の上限については、近く条約の修正も行われる機運であるというように承っておきたいと思います。  そこで法務省に若干伺いますが、この条約が批准されると商法六百九十条の免責委付制度ですね、これが金額責任主義に改まることになると思うのですが、商法六百九十条というのは、私どもが大学で習いましたときも、明治三十二年商法施行以来今日まで存在しておる制度で、学者の間では若干時代おくれであるというように言われていたものだ、こう承知しているのです、大分前のことで忘れましたが。それで、法務省の資料によりましても、昭和三十五年から四十九年の委付登記の件数というのは、どうも年平均一件以下のようです。なぜこんなに委付件数が少ないのか。この委付が行われている事例はどういう内容なのか、また委付できる船舶事故はどのくらいあるのか、これらの事故はどのように補償されているのか、四つですが、順番にお答えいただいてもよろしいが、ごく簡単にお答えください。
  103. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 委付の件数が非常に少ない、お説のとおりでございます。どういう場合に行われておるかという点でございますが、全部調べたわけではございませんけれども、私どもが二、三、登記の上で調べたところによりますと、比較的小さい船舶、大体百トン以下の木船について委付が行われておる、こういう事例が若干あるようでございます。大きな船について委付が行われたということは聞いておりません。  それから損害の補てん状況等につきましては、私ども具体的にその事実を調査いたしておりませんし、調査の方法も私どもの方ではちょっとございませんので、その点はつまびらかにいたしておりません。
  104. 正森成二

    ○正森委員 船主にとって委付を行うのがよいと判断できるのは、結局船舶が大破したとかあるいは沈没してしまった場合に限られるようで、その船価以上の損害が出なければ委付は行わない、船価以下の場合には保険でてん補した方がよいということだったんじゃないか、これは推察でございますが。そういたしますと、保険制度というものが非常に重要になってくる、こういうように思われるのです。  そこでこれは保険関係に聞きたいのですが、船舶保険にはどういうものがあって、特に相手船に対する損害補償のてん補、人身事故に対する補償のてん補は、どういう保険でどういうぐあいに補充が行われておるのか、簡単に説明してください。
  105. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  船舶関係の保険につきましては、船体保険というものがまずございます。これは船主が、通常の損保会社を相手にして契約を結んでいるということでございます。そのほか、通常船主でございますが、これは船舶の運航に伴って第三者に与えた損害につきまして、保険契約をカバーするために保険契約を結んでおります。これがいわゆるPI保険というものでございまして、日本では日本船主責任相互保険組合というものが、この保険を取り扱っております。  そのほかに、荷主が自分の貨物に対して掛けているという保険がございます。そうしまして、日本の船で言いますと、千トン以上の船はほとんど日本のPI保険、船主責任相互保険組合が扱う保険に入りまして、第三者に与えた損害をカバーしているということでございます。そして千トン未満の船舶についてもかなりの程度の船がPI保険に入っております。  ちなみに申し上げますと、昭和四十四年から四十八年度までに日本PIでは七千二十七件の事件を扱いました。第三者に与えた損害に関する事件でございます。その支払い額は八十一億二千六百万円でございまして、項目はいろいろございますが、平均しますと一件当たり大体百十五万円程度の支払い額になっております。
  106. 正森成二

    ○正森委員 少し細かくなりますけれども、現実の船舶保険の付保状況といいますか、それをお伺いしますが、たとえば五千トンの新造貨物船あるいは一万トンの新造貨物船では、平均船価を基準としてどれくらいの保険を掛けていることになりますか。
  107. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  船舶自身の保険につきまして船主がどのくらい保険を掛けているかということについてのデータは、いまここに持ち合わしておりませんけれども、通常船主は保険会社と相談いたしまして、その船舶の現在の価格というものを計算いたしまして、その価格を保険金額として保険を掛けているのが通常であるというふうに考えます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 私も専門でないからよくわかりませんけれども船舶に対する保険では、五千トンの貨物船の場合は平均約九億円、一万トンの場合は約十五億円くらい掛けているというように言われるのですね。それからまたPI保険といいますか、その場合には、私ども日本船主責任相互保険組合に提出してもらった資料によりますと、四十九年度では、三千トンから六千トン未満の船舶では三億五千万円の保険が一番で、約三四・八%、次が十七億五千万円で一四・六%、これ以外では七億円以上無制限までというのが三五・二%で合計八四・六%、つまり約八五%が条約で定める人損制限額をはるかに上回る額を掛けておる。残りの一五%についても、三千トンを含むものですから三千トンの制限額の一億五千万円、今度の条約ではですね。これを下回るものはわずか六・四%で、ほとんどすべて圧倒的多くは制限額以上の保険を掛けておるということになるのですね。私どもの問い合わせでは大体そうなっておる。  そういたしますと、これは船主の過失の場合もてん補されることになっておりますけれども、この条約を批准した場合で被害者損害制限額以上でこの保険金額以内である場合に、制限額以上についても保険会社は一体てん補するのですか。もう条約で決まっておるのだからてん補する必要はないというように保険約款なり何なりで締めてくるんじゃないのですか。
  109. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  日本船舶所有者、海運業者のPIへの付保状況はいま先生がおっしゃったとおりでございます。つまり非常に高額な保険を掛けているということでございます。まずそういう高額の保険を掛ける状況が新しい制度のもとで続くかどうかということでございますが、いまちょっとお話がありましたように、船舶所有者自身に過失のある場合には責任制限ができないということはございますし、それから共同海損に基づく債務とかあるいは雇用契約に基づく債務は制限できないことになっております。また、五七年条約の非締約国で事故を起こした場合には制限できないという問題があり得るということでございます。そういうことがあるために、今後とも船主がその責任限度額を超える高額な責任保険を掛けるという状況は変わることなく続くだろうということでございまして、これは現在までに五七年条約を批准した国の実例を見てもそのとおりでございます。  第二番目に、船主がそういう保険を掛けていても、実際に限度額を上回る損害が起きたときに保険会社が責任制限を求めるのではないかというお話がございますが、その点につきましては、現在新しい制度に対してどう対応するかということで、日本のPI保険においても検討中でございます。しかしわれわれといたしましては、この責任制限制度を運用することによって、その結果損害賠償額が社会的に見てきわめて妥当性を欠くものであるというようなものになるようなことのないように、そういう場合には責任制限をPI保険側からは求めないというようにしていただきたいということで、PI保険の監督官庁である大蔵省に対してもお話を申し上げておりますし、大蔵省でもそのような方針で行政指導をしたいということを申し上げております。  また、先日衆議院の法務委員会にPI保険の代表の方が参考人として参られまして発言されましたが、その席上でも、そういう社会的に見て妥当と考えられないような結果になる責任制限は、相手が日本人である場合には、国内問題である場合には行わない、そういうことは申し上げてもよいという趣旨の発言をしておられました。
  110. 正森成二

    ○正森委員 非常に慎重な発言をされたのですけれども、結局約款には、保険会社は被保険者の法律上の責任の範囲のみでしかその損害補償をてん補しないことになっているようですね。そして船主責任制度をすることを主張すればこの条約は適用されますし、保険会社は利益追求の立場から責任制限を主張することが多く、制限を主張しないのはきわめてまれじゃなかろうか。現にあなたは、衆議院の法務委員会での参考人の言葉を引用されましたが、私もその参考人の発言内容を検討してみましたけれども、北原参考人だったと思いますが、北原参考人はこう言っているのですね。現に日本船主責任相互保険組合では、日本船であればともかく、外国船に対しては責任制限を行う、こう言うているのですね。つまり日本の場合は身内同士だからあんまりあこぎなことはできないけれども、外国船の場合は遠慮なく権利は主張させてもらう、こう言うているのでしょう。そうすると、これは国際的に見て必ずしも好ましくないあれじゃないか、つまり保険は掛けておるけれども、衝突したのは外国船であれば、日本船の場合はそうあこぎなことはできないけれども、外国船の場合は条約いっぱいの権利は主張させてもらう、責任制限する、こういうことを現に北原参考人が言うているのですからね。だからそういうことになると、保険は幾ら掛けておっても保険関係のところは払わない、こういうことに実際上はなるのじゃないですか。
  111. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  まず船舶所有者責任制限するかどうかということでございますが、これは責任制限をするかどうかということは船舶所有者の判断にかかっているということでございます。船舶所有者につきましては運輸省が行政上の監督をいたしておりますので、この制度ができました暁には、われわれといたしましても責任制限を援用する結果、非常に妥当性を欠く結果になるような場合には責任制限をすべきではないというラインで行政指導するということを考えております。  また、北原参考人が申しましたのは、少なくとも日本人に関する事故の場合には、船主責任制限を援用しない場合には、われわれとしては援用するようなことを求めませんということを申し上げましたので、それをひっくり返せば外国に対しては求めることになるんではないかということですが、それは必ず求めるというふうに発言されたのではないというふうに考えております。
  112. 正森成二

    ○正森委員 それでは数学なり幾何学の、逆は必ずしも真ならずという答弁を信用して、しかるべく行政指導されるように希望したいと思います。  ただ、行政指導という言葉が出てきましたので、法務委員会でもわが常の議員が具体的例を挙げて質問をしましたけれども、もう一度ここで行政指導の内容を少しはっきりさせていただきたいと思うのですね。わが党の議員が例を挙げて質問したと思いますが、わが国の唯一の外航旅客船の関釜フェリーですか、これは三千八百七十五トンで定員は旅客四百六十五人らしいですね。これに一万トンの貨物船が衝突してこの船を沈没させて仮に四百人が死亡したとしますと、今度の条約では一人当たり百二十万円補償されてそれで責任が免れる、仮に五〇%の二百三十人が死亡したとすれば一人当たり約二百万円の補償責任が免れる、こうなっているのですね。運輸省、おたくの方ですが、行政指導で対処する、こう言うておられるのですけれども、具体的に伺いますとどうなりますか、たとえば自分の船が過失の場合はどうなりますか。
  113. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  旅客船のうち国内旅客船につきましては、この条約を受けた国内法におきまして、旅客の受けた損害につきましては責任制限できないというふうに手当てがしてございます。したがいまして、問題は外航旅客船でございますが、わが国で外航旅客船を経営している会社は一社でございまして、それはいま御指摘のありました関釜フェリーでございます。関釜フェリーにつきましていま先生が申された数字はまさにそのとおりでございます。そこでわれわれとしては関釜フェリーにつきましても、人損については責任制限できないのだということにしたかったわけですが、それは条約を批准するという関係でできないということでございますので、これは相手が一社でございますから、行政指導で何とかしようということにしたわけでございます。  行政指導の内容でございますが、運送約款が届け出事項になっております。したがいまして、運送約款に一人当たり幾らという責任限度額を書かせます。それに基づいて運送する、そこまで保険を掛けさせるようにしたいと思います。そうしておきますれば、船主事故が起きましたときに責任制限はできないわけでございまして、その責任を負い、そして保険でこれをカバーするということになるわけでございます。  最後に、全然旅客船側に無過失の場合にどうかという問題は、関釜フェリーばかりでなく、国内旅客船の場合でも当然問題になることでございますが、実際上過去の海難審判の例を見ましても、旅客船側に全然過失がなかったというケースは非常に少のうございます。また、海難審判で旅客船の側に過失がなかったというふうに判断されましても、実際に民事上の争いになりますと、やはりある程度の過失は認めざるを得ないという結果になるのが通常の例だというふうに聞いております。したがいまして、理論的に言いますと、過失がある場合にはその責任を負わないということになりますが、民事上の損害賠償の場合には無過失だということで主張することは非常にむずかしいということで、実際上はそういう御心配は余りないのではないかというふうに考えます。
  114. 正森成二

    ○正森委員 いま非常にじゅんじゅんと説明していただいてありがたいと思っておりますが、加害船主が外国の条約批准国の貨物船である場合、この場合は向こうは責任制限してくるのじゃないでしょうか。その場合には、行政指導は、他国ですから、もちろんできませんから、要望するということだけになりますか。
  115. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  旅客船に外国の貨物船が当たった場合で向こうに過失があった場合に、責任制限されるので困るのではないかという御質問かと思いますが、いま申し上げましたように、通常、旅客船側にも過失があるはずでございますから、その場合には旅客は、旅客船の船主でも相手の貨物船の船主でも、損害賠償請求できるわけでございます。実際には旅客は旅客船の会社に対して請求をしまして、旅客船の会社がこれを保険で払うということでございます。そしてその後で保険会社なりあるいは旅客船の会社が相手の外国の貨物船に対して損害賠償請求をするということでございまして、その場合に責任制限をされるということはやむを得ないということかと思います。
  116. 正森成二

    ○正森委員 よくわかりましたけれども、何かあなたのお話を伺っていると、自分の乗っている船が過失をしなければどうも金がもらえない。だから、事故が起こる以上は自分の乗っている船に何らかの過失がなければかえって困るというように聞こえるのですが、ちょっといやな聞き方かもしれませんが、そうなんですね、結局。
  117. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  端的に申し上げればそういうことでございますが、それは理論的にはあり得ても実際上はほとんどないというふうに考えておると申し上げておるわけでございます。
  118. 正森成二

    ○正森委員 次に、この条約が批准されたとしてということに質問を移したいと思いますが、この条約が批准をされて、日本国内法が改正され実施されますと、船主の掛ける保険料は変わらないでしょうか。それとも高くなりますか、低くなりますか。お見込みはいかがですか。その理由は。
  119. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  この制度が実施された場合に保険料をどうするかという問題については、現在PI保険の方で検討中でございます。いずれその保険料の修正その他が行われるかもしれません。しかし、これはPIの方たちの説明を聞いた上でのことですが、大体保険料はそう大きく変わることはないであろうということでございます。なぜならば、現在PI保険が扱っております事件について見ますと、実際上、この条約で定める責任限度額を上回るような事故はほとんどない。したがって、責任制限のケースというのは、われわれの行政指導も加わるわけですが、実際上は余りないんじゃないかということでございます。したがいまして、実態的には前と同じような状態が続きますから、保険料も大きく変わるという要素はないということかと思います。
  120. 正森成二

    ○正森委員 時間が大分たってまいりましたからこの関係はぼつぼつ終わりたいと思いますが、この条約は採択はされると思いますが、念のために伺っておきますと、かりにわが国がこの条約を批准承認しなかった場合ですね、どういう不都合が起こってまいりますか。端的におっしゃってください。
  121. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  二つの点があるかと思います。一つは、わが国は世界有数の海運国でございますし、現在この条約は二十六カ国の批准を得まして発効して、主要海運国の間のルールとして作用しているわけでございます。したがいまして、わが国は有数の海運国としてこの条約を批准して、そして国内法を整備して、国際的なルールにのっとった行動をする必要があるというのが一つございます。  それからもう一つ、六九年条約及び七一年条約を批准し、それとともに国内法を整備して、油濁損害賠償に対する体制を整備するという問題がございますが、御承知のように、六九年条約と七一年条約というものは、五七年条約の定めた金額主義の上に乗っている内容を持つ条約でございます。それを反映しまして、国内法の方も、法務省から提出されております船舶所有者等の責任制限に関する法律で、一般的に委付を金額主義に改めまして、そしてその上に乗って油濁損害賠償保障法というものを制定するという立場に立っているわけでございます。したがいまして、第二番目には、油濁損害賠償関係の体制を整備するためにもこの条約を批准する必要がある、そして国内法を改める必要があるということかと思います。
  122. 正森成二

    ○正森委員 宮澤外務大臣に伺いたいと思いますが、この三条約について政府委員にいろいろ細かい質問をしてまいりましたが、大臣としては、この条約を批准することの意義、万一国会で承認されなかった場合にどういう不都合が起こるというようにお考えでございますか。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど以来、政府委員、事務当局からいろいろお答えを申し上げておりますように、やはりこのような国際的なルール、先進海運国でありますわが国といたしましても、それに従いましてやってまいりたい。そのような意味で御承認を得たいというふうに考えるわけでございます。
  124. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、残されたわずかな時間、日ソ漁業操業協定質問をしたいと思います。  この漁業操業に関する協定は、大きく言いますと結局どういうことを規制しているんでしょうか。つまり私が聞いております意味は、先般来ソ連漁船団が沿海にやってまいりまして、いろいろなトラブルと見られるものが起こりました。われわれも海上保安庁の飛行機に乗せてもらって現場を見てきたわけですが、この条約を拝見しますと、わが国沿海での操業そのものを規制するわけではないようですね。操業をする場合に、一定の、漁船標識とか、夜の場合に漁具の存在を明らかにするとか、ルールをこしらえる。そして被害発生した場合及び過去二年間に発生した被害について、双方が責任あると思われるものに対して損害賠償請求手続をする一定の枠組みをこしらえたということに大体尽きるのではないかと思いますが、そう理解してよろしいですか。
  125. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生が、この条約操業そのものを規制するものではないとおっしゃったわけでございますが、おっしゃる意味のところは、その操業そのものというところは、つまり漁業権の問題を規制したものではないという意味だといたしますればそのとおりでございます。この条約は、事故防止をするための標識でございますとか、つまり操業する際の事故防止措置をそう決めたもの、かつまた事故が起こった場合には、その事故処理するための両国の政府が任命いたします委員会での処理の枠組みを定めたもの、そのように先生に御了解いただいて結構でございます。
  126. 正森成二

    ○正森委員 六月八日の、宮澤外務大臣とイシコフ漁業大臣との会談の結果のコミュニケというのですか、それを拝見しますと、「双方は、同協定規定に基づき、かつ、日本国において有効である漁業規制措置を考慮に入れ、」云々とこう書いてあるのですね。これは非常に重要かつ微妙な意味合いを持っておるかと思います。なぜかと言えば、日本国において有効である漁業規制措置ソ連側も守ってくれれば、これはトラブルというものは根本的にといいますか、防ぐことが可能になるわけですから。そこで、相手も主権国でありますから、漁業規制措置を守るとは書いてありませんが、「漁業規制措置を考慮に入れ、」というように書いてありますその意味合いですね、もし国会でおっしゃっていただければどの程度の了解になっておるのかについてお話しを願いたいと思います。
  127. 内村良英

    内村政府委員 先生御案内のように、ソ連漁業は一種の国営企業でございまして、各地区に公社みたいなものがあって漁業をやっているわけでございます。極東地区につきましてもそのような公社のような存在がございます。そこで、その公社のような形態の漁業操業のパターンを毎年漁期前に決めるわけでございますが、イシコフ大臣の話によりますと、その際日本漁業規則、特に底びきの禁止海域については日本漁業規則を尊重して操業のパターンを決めたいというようなことを言ったわけでございます。
  128. 正森成二

    ○正森委員 ここに私は水産庁から日本漁業規制の概要ということで近海図をいただいております。これを見ますと、赤い部分が沖合い底びき網漁業禁止区域、それから斜線の部分が銭州周辺でのまき網禁止区域というようになっておりますが、そうすると、こういう地図を含めて相手方に通報して、そのうちの沖合い底びき網漁業禁止区域については、日本側漁業規制についてこれを尊重したい、つまりそれは禁止区域についても尊重したいという意味を含んでおるのですか。
  129. 内村良英

    内村政府委員 私どもはその海図をイシコフ大臣に渡してございます。そこで、その底びき禁止区域については底びきをやらないようにする、それからまき網の、前述の一本釣りしかやっていないところにつきましても極力それを尊重してもらうようにわが方から要請してございます。それからさらに細かいことにつきましては、向こうの操業が始まるのが大体九月の末からでございますので、操業開始前に専門家会議をやってもう一度話し合いをするということになると思います。
  130. 正森成二

    ○正森委員 四十八年、四十九年について、これは前にも資料をいただいたと思いますが、わが方から見てソ連漁船団によって被害をこうむった件数及び金額について概略説明してください。
  131. 橘正忠

    橘政府委員 水産庁を通じまして、私どもが承知しております被害額として挙げられておりますものは、四十九年、件数にして三百九十五件、金額にして一億九千二百六万円。それから四十八年度が三十三件、千三百四十五万円。なお五十年は三月末までで七百四十九件、二億三十五万円という数字になっております。
  132. 正森成二

    ○正森委員 私がいただいている資料と大部分字が違うようですね。私がいただいておりますのは、昭和四十八年九月から五十年三月の間のソ連漁船による漁具等被害状況で、これはもっとも漁期は十月から翌年三月までを漁期というようですが、それによりますと、昭和四十八年の漁期におきましては被害件数が百二十三件、被害額が六千四百三十三万円。昭和四十九年度は千四十二件、三億四千十八万円。合計一千百六十五件、四億四百五十一万円、こうなっておりますが、大分違うようですね。これは水産庁から私がきのういただいた資料ですよ。
  133. 橘正忠

    橘政府委員 先先御指摘の数字は漁期による区分でございまして、私が申し上げました計数は暦年によって集計したものでございます。
  134. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、私がいま読み上げましたのも合っておる、こういうことですか。あなたのも合っているし、私の読み上げた資料も合っておる、ただ期間のとり方が違っておるだけだ、こう伺ってよろしいか。
  135. 橘正忠

    橘政府委員 さようでございます。
  136. 正森成二

    ○正森委員 ソ連漁船と競合する漁業漁船数及び水揚げ量ですね、それが今度の漁業操業協定によって一定の利益を得るということになると思われますが、それは大体漁船数で何隻くらいで、水揚げ量で約何万トンですか。
  137. 内村良英

    内村政府委員 漁船数で約七千隻、漁獲量で六十万トンでごごいます。
  138. 正森成二

    ○正森委員 今度の操業協定によりますと、問題が起こりましたときに処理委員会ですか、それをモスクワと東京の双方に置く。条約文を読んで見ますと、日本漁船被害を受けた場合にはまず東京に出して、そして実際に審査をするのはお金を払わなければならないモスクワでやる、逆の場合はその逆であるというようになっておるようですが、これと同じような漁業損害賠償請求処理委員会というようなものは米ソの間でも結ばれておると承知しておりますが、実際に結ばれておりますか、そうしてそれが実際に有効に動いて何件か救済された件数がございますか。
  139. 橘正忠

    橘政府委員 この協定とやや類似の協定というのは、ソ連がいま御指摘のアメリカのみならず、ノルウェーとかカナダとも結んでおりますが、アメリカとの間でできました協定に基づいて類似の賠償請求に関する委員会が昨年から活動を開始しておりますが、私どもの聞いているところでは、これは米側から聞いたところでございますが、昨年二十五件申請があった。それから和解が勧告されたものが五件。それから証拠が不十分というのが一件。それから十九件は現在審査中ということでございます。
  140. 正森成二

    ○正森委員 最後に伺いたいと思いますが、今度の損害が生じました場合の処理はいわゆる船体とか漁具であって、損害が起こったために休業した被害とかあるいは関連業者の被害というのは条約文から見ると含まれないというように思うのですね。それはわが国内において手当てをしなければならない、こう思いますが、それについてはソ連漁船操業被害対策でお考えになっていると思いますが、緊急融資措置緊急対策事業の両面について、ごく簡単で結構ですからお答えいただいて、私の質問を終わります。
  141. 内村良英

    内村政府委員 四十九年において、ソ連漁船による漁具の損傷を受けたもの及びソ連漁船の影響によって漁獲の減少したものに対しては、融資措置と助成措置をとったわけでございます。融資措置漁具購入資金生活改善資金及び経営資金でございまして、金利は、経営資金以外は三分五厘、経営資金は五分五厘でございます。償還期限は五年以内で、猶予期間は一年以内、今年の枠は九億でございまして、国は、基準金利末端金利との差につきまして都道府県が利子補給した場合に三分の二を補助することになっております。助成措置につきましては、各関係県の漁業協同組合連合会対策基金を設けまして、それに対して補助金を出す。どういう事業をやるかと申しますと、漁具貸与事業被害漁場の整備事業その他ソ連漁船警告用放送施設の整備とか、これは県によっていろいろ特殊事情がございますから、特に水産庁長官の認めた事業も認めるということで総額一億五千万円ということになっております。
  142. 正森成二

    ○正森委員 わが国の領海を十二海里と主張せずに三海里というままで漁業操業協定というのをつくり上げたというについては、いろいろその他の問題についての御配慮がおありだったのではないかと拝察しております。外務大臣にそれについても伺いたいと思いますが、それを伺っておりますと今度はまた安保条約のいろいろな問題に入るというようなことで、きょうはその場所でもないようでございますから、そういう問題があるであろうとお察し申し上げておるということだけ指摘して、私の質問を終わらしていただきます。
  143. 伊達宗起

    伊達政府委員 恐れ入りますが一言補足させていただきます。  ただいま先生が、損害には船体が事故を起こして修理中の間の逸失利益、そういうものは入らないのではないかとおっしゃいましたが、第二条に決めてございます損害の中には、つまり「漁船又は漁具の間の事故に関連して生じた損害」ということでございます。そのような損害もこの「損害」の中に含むというのが私どもの解釈でございまして、かつまた、その点はソ連側との間にも了解されているところでございます。
  144. 正森成二

    ○正森委員 それなら非常に結構です。私の質問を終わります。
  145. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末英一君。
  146. 永末英一

    ○永末委員 最初に、日ソ漁業協定について質問をいたしたいと思います。  三月十二日でしたか、わが外務委員会は、YS11に搭乗いたしまして、折しも外房州に押しかけておりましたソ連漁船団が何をしておるかということを実地に視察をいたしました。  さて、この協定が結ばれますとああいう事態も起こらぬのですか。
  147. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この条約は、日本沿岸の地先沖合いにおきまして、日ソ両国漁船漁業をいたします場合のの操業の規制、すなわち、その事故防止というものの措置を決めたことと、第二点といたしまして、不幸にして事故が起こった場合には、その事故処理をいかにして円滑に処理するかの枠組みを決めたものでございまして、ただいまの御質問ソ連漁船がどこのところで漁業できるかどうかという漁業権の問題に関しましては、この条約の取り扱うところではないわけでございます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 現在までソ連漁船団がわが方の領海近所まで出かけてまいって、いろいろわが方の漁船漁具等損害を与えた場合には、その損害補償申し入れておるという報告は当委員会にもございましたが、当然この漁業協定を結ぶに当たってはそういう種類の問題も話し合われたと思うのですが、いかがですか。
  149. 橘正忠

    橘政府委員 この協定交渉を実際に最後の詰めまでやりましたのはことしの三月以降でございますけれども、これは協定そのものの交渉でございまして、したがいまして、事故未然防止ということと、それから先ほど御説明ありましたように、紛争が起こった場合の損害処理の枠組み、損害賠償請求処理を促進するための枠組みというルールをつくることが目的でございまして、具体的に起こった損害のケースにつきましては、御承知のとおり、別途その都度ソ連側にも申し入れを重ねてきておったということでございます。
  150. 永末英一

    ○永末委員 この視察が行われました後の当委員会で、外務大臣の十二海里に領海をいたしたい旨の御発言がございましたが、まだ宣言されたわけではございませんね。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いつぞやも申し上げましたとおり、閣議におきまして、この点では関係閣僚の間に了解がございまして、ジュネーブの海洋法会議がもし結論を出し得ないときには、この問題について関係各省庁改めて相談をしようということでございました。海洋法会議がなお結論を出すことがいまの段階ではできませんでした。関係各省庁、すなわち、ただいま御審議になっておられますところの関係で農林省、水産庁、あるいは防衛庁、法務省、外務省、運輸省、多数の関係省庁がございまして、慎重に考えなければならないと思っております。まだ結論を出しておりません。
  152. 永末英一

    ○永末委員 このイシコフ漁業大臣日本国訪問についてという昭和五十年六月八日付のプリントに、「両大臣は、共通の関心を有する海洋法の諸問題について意見を交換し、日ソ間の漁業の分野における関係を、両国間の諸協定に基づき話し合いにより今後とも発展させることが適当であることに意見の一致をみた。」というようなことが書いてあるのでありますけれども、問題は、ジュネーブにおける海洋法会議は単一草案を最後に配っただけで、何ら具体的な決定を見ずに終わっております。来年またニューヨークでこの種の海洋法会議が開かれるようでございますけれども、それまでの間に政府は十二海里領海というものを発表せられる心組みでございますか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はジュネーブの会議の最終段階におきまして、これは御承知のようにかなりいいところまでまいりまして、ニューヨークの会議ではまとめられるのではないかという期待は私ども持っておりますし、また、それなりの理由があるわけでございますが、議長から、そういう現状でもあるので、ワンパッケージの大きな合意をするために、この会議でいろいろ出た話あるいはほぼ大勢となりつつある問題にしても、各国都合のいいところだけをいわば先に実施をするということは、大きなパッケージをつくるのにおのおのの利害を調整するわけでございますので、差しさわりがあるので控えてほしいという要請がございました。そういうことも一つ考えておかなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、関係各省庁でよく協議をいたしたいと思っておりまして、ただいまのところ、永末委員の御質問にイエスというふうにお答えいたしますのには、実は各省庁の協議がまだその段階に至っておりません。
  154. 永末英一

    ○永末委員 そういたしますと、その十二海里領海宣言が出るまでは、ことしの三月と似たような状況がまた起こる、こういうことですか。
  155. 内村良英

    内村政府委員 操業協定は領海の幅員とは関係がないわけでございまして、操業の調整に関する協定でございます。したがいまして、私どもといたしましては、一応操業ルールができましたら、従来以上紛争が減るだろうと期待しております。さらに現在のところ、先方日本漁業規則を尊重すると言っておりますから、その点から見ましても、従来以上紛争は減るということは確実だと思います。ただ、絶無になるかどうかという点は、ちょっとわからないというところでございます。
  156. 永末英一

    ○永末委員 相手方からいたしますと、別に紛争が起こったのではないのであって、彼らからすれば、日本側が領海と思っておる日本沿岸の近くまで来て、彼らの操業をやっているわけですね。それが、わが方にとってみれば、たとえば漁具が破壊されたとかなんとかで紛争になりますが、破壊されない限りは、彼らは正常な操業をやっておる、そういう状態が続いておる。ただ、われわれ日本国民といたしましては、なるほど国際法的に言えば合法かもしれないけれども、目と鼻のところまでやってこられるのなら何らかの措置はあるまいか、こう思ってきたわけでありますから、だから同じような状態がまた起こるのか、そういう意味で聞いているわけです。
  157. 内村良英

    内村政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたように、ことしの場合には、そういう操業ルールがはっきりしておりませんから、わが国の定置の網があるところに向こうが入ってきて、その網を切るとか、いろんなことが起こったわけでございます。その辺のところを今度の操業協定ではっきりするわけでございまして、向こうも当然その規定を遵守してやるわけでございますから、紛争といいますか、わが国の網を切るとか、あるいはその他の紛争が相当減ることは確実でございます。  ただ夜間等、いろいろな問題がございますので、絶対にわが国漁民の網が切られることは今後起こらないのだろうかということになりますと、その点につきましては、絶無になるかどうかはわからないということでございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 この協定が批准されますと、この内容に従って、両国、ことに日本近海におきましてはソ連側の漁法が行われると思いますが、いままでの被害についてわが方の請求権があるということは認めたのですか、認めないのですか。
  159. 橘正忠

    橘政府委員 漁具漁船等に生じました損害は、第一次的には当事者間の損害賠償請求という性質のものでございますが、それを過去においても、累次にわたって水産庁からの御連絡を受けて、ソ連側には申し入れをしております。それに対してはソ連側は、いままでは具体的な回答はよこしておりません。ただ、この新しい協定では、損害についての定義とか損害処理委員会とかいうことの枠組みができたわけでございますので、今後はこの協定に基づいての処理が促進されるというふうに期待されるわけでございます。
  160. 永末英一

    ○永末委員 いままでの分については、わが方はなお請求を続けておる。こういう状況ですか。
  161. 橘正忠

    橘政府委員 この協定との関連では、この協定が発効したときからさかのぼって二年間、その間に生じた事故による損害賠償のケースというものは、この協定でできました損害賠償処理委員会手続にのせるように申請することができるという仕組みが今度できた次第でございます。
  162. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、非常に被害が目立ちました四十八年、四十九年漁期のものについては請求せられる準備をしておられますね。
  163. 橘正忠

    橘政府委員 この協定が発効いたしましときに備えて、関係方面で準備を進めておられることと承知しております。
  164. 永末英一

    ○永末委員 おられることというのは、だれが責任をもってやるのですか。欧亜局長おられることと言うが、おられる方の対象はどこですか。
  165. 内村良英

    内村政府委員 被害を受けました当事者請求するわけでございまして、具体的には漁業者でございます。
  166. 永末英一

    ○永末委員 協定政府間の協定ですから、被害者の方に政府としてはそういうことはちゃんと知らして、請求をやるようにやられますね。
  167. 内村良英

    内村政府委員 その点につきましては十分指導いたしたいと思っております。さらに、今後の問題につきましても、いろいろ協定手続が決まっておりますから、そういう点も十分関係者に周知徹底するように指導したいと思っております。
  168. 永末英一

    ○永末委員 先ほど読み上げました、両大臣日ソ間の漁業の分野における関係、海洋法の諸問題について関連せしめて話し合ったというのは、経済水域の問題も話し合ったのでしょうか。
  169. 内村良英

    内村政府委員 この問題につきましては、安倍農林大臣とイシコフ漁業大臣の間で話されたわけでございます。  そこで、先生御案内のように、今日世界の二大遠洋漁業国は日本ソ連でございます。そこで、二百海里の経済水域ができました場合に、日本の立場とソ連の立場と非常に共通したものがございます。そういった問題も含めてもちろん話し合いをしたと同時に、さらに北洋における日ソ間のいろいろな漁業問題も、海洋法の帰結いかんによっては非常に影響を受けますので、その場合においても、北洋の問題を両国の話し合いでいろいろ進めようじゃないかということについて話し合ったわけでございます。
  170. 永末英一

    ○永末委員 油濁三法について御質問をいたしたいと思います。  便宜置籍船が非常に多いのでございますが、わが国の船会社で用船しております便宜置籍船は隻数、トン数どのくらいになりますか。
  171. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 わが国が自国船だけで安定輸送できませんので、どうしても外国用船に頼らざるを得ない。その外国用船のうちでいわゆる仕組み船と言われておるものがありまして、日本の造船所の船台をあっせんして外国の船主に船をつくらせる、それを日本船主が雇いまして日本の物資を運ぶというような意味での仕組み船と言われておるのがございます。その他、その仕組み船の多くが、香港の船主でございますけれども、香港に船籍を置かないで、便宜籍国と言われるようなパナマ、リベリアに船籍を置いておるというのがいわゆる便宜置籍船と言われておるもの、それから日本の船会社が外国に子会社を置いて、その子会社がリベリア、パナマに籍を置いておるというのがございますが、そういった意味で、日本船主の勢力下にあるような仕組み船、便宜置籍船というものをとりますと、大体日本の全体の支配している船腹のうちの一二%くらいというのがそういった船腹でございます。
  172. 永末英一

    ○永末委員 昨年東京湾で第十雄洋丸とパシフィックアリス号が衝突、爆発事故を起こしましたが、このパシフィックアリス号はリベリア船籍で、いわゆる置籍船ですね。
  173. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 リベリアの船籍の船でございます。
  174. 永末英一

    ○永末委員 こういう種類の便宜置籍船に対する安全対策とか、あるいはまた海洋汚染に対する措置というのはどうなっておるのですか。
  175. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 世界じゅうで便宜置籍船というものがだんだんふえてきた、その便宜置籍船に対する安全管理がどうも行き届かなくて、世界じゅうで事故を起こす例がほかの純粋な意味の海運国に比べて多いのじゃないかということが実は問題になっておりますが、IMCOという海事機構でその問題を取り上げていろいろと論議をする、あるいはOECDの委員会でその問題を論議するという動きが出ております。わが国としても、そういった世界じゅうの動きに応じて、積極的にその会議に参加していこうという動きはとっております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 これはわが国だけでやれることではございませんから、IMCO等を活用されまして、ひとつこれによる事故が海を汚すことのないように、日本政府としても促進方に努められたいと思います。  去る四月十七日にマラッカ海峡で土佐丸とカクタス・クイーン号が衝突、海洋汚染が発生をいたしました。これの事故の後どういう安全対策を講ぜられましたか。
  177. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 マラッカを通航する船舶事故が、先般の祥和丸と重なって、今度の土佐丸、カクタス・クイーン号の衝突事故というのが頻発いたしましたので、私ども船主協会に、自主的にどういった安全対策をとればマラッカ、シンガポールが通れるかということを検討を命じまして、速力をできるだけ落とすとか、夜間の航行をできるだけ避けるようにするとか、見張りを十分に置くとかということで気をつけさせるように指示を与えました。それからまた、カクタス・クイーン号というのはやはり日本の支配力の及ぶ便宜置籍船でございましたので、純粋な外国船として入ってくる便宜置籍船についてはこれはちょっとなかなか直接手が出ないのですけれども日本の船会社の支配下にありますカクタス・クイーン号のような便宜置籍船には、日本船と同様な注意を与えるように関係の船会社に指示をいたしました。
  178. 永末英一

    ○永末委員 マラッカ海峡というのは、現状からしまして、どのくらいの重量トン以下の船まで通航可能であり、それ以上は危ないとお考えですか。
  179. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在マラッカ海峡を外国の船はかなり大きい船が通っておる実績がございます。しかし、日本船としては、非常に大きい船はロンボクを回るということで、現在日本船であったりあるいは日本が用船関係にあって支配力を及ぼすような船は、たしか三隻ロンボクを通っておるという実態でございます。ただ、マラッカ、シンガポール海峡については、もうすでに海図の調査をここ数年間にわたって日本も技術的にまた金銭的に協力をいたしまして、かなり詳しい海図の調査をちょうどこの春終わりました。したがって、その海図によって、いまどこまでの船が安全に通れるか、また航行分離方式などをやるとすればどういう方法が可能かということを、これは外国のことでございますので日本がやるということではございません。その三国で考えてもらうということにいたしまして、恐らく適当なIMCO等の国際機関にかけて、そういう議論を早急にやっていただくようにということで、わが方は努力をしているところでございます。     〔石井委員長代理退席、水野委員長代理     着席〕
  180. 永末英一

    ○永末委員 わが政府としては、わが国の船籍のあるそういう大きな油船に対しては、ロンボク海峡を通れというような指示はしておられるのですか。
  181. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 二十万トンを超えるような船は、マラッカを通らないでロンボクを回れということは一般的に言われるのですが、実は私先ほど申し上げましたように、マラッカとシンガポールの方の調査は、精密な海図の測量が行き届いたという現状になっておりますが、一方ロンボクの方は、去年の秋にインドネシアと日本で、ロンボクの調査をインドネシア側がやるのに日本側が協力しようという約束ができまして、ことしの五月から百余日の予定で第一次の測量を始めるということになっております。ロンボクの方は広い、それから深いということが一般に言われておるのですが、広くても深くても、その中に海底からの突起の状況がどういうふうにあるかということが、現在実は海図の上ではかなり古い海図しかなくてつまびらかになっておりませんので、とにかくその第一次の調査を、先ほど申し上げましたような計画で、インドネシア側がやるのに日本側が協力するということの結果を待ってでなければ、いまいきなりロンボクへ回れというようなことがより安全であるということを、だれも言い切れないという現状にございます。
  182. 永末英一

    ○永末委員 先週用事がございまして呉へ参りました。私が乗っておりました大和をつくったドックを見ましたところ、大きな油船がおりまして、四十七万トンだそうでございます。ところが、船はほとんど完成しているようでございますけれども引き出し得ない。油の需給関係も変わってきたのでしょうが、大きな油船ばかりつくっても、通るところがだんだん少なくなってくると使えないわけですね。したがって、油船の大きさについての指示とかなんとかいうことを政府がやられるつもりはございますか。
  183. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は百万トンタンカーが出現するのじゃないかというようなことで、そのための技術的解明を行うべきだというのが、恐らくここ二年ほど前までは言われておったと思います。ところが、国際的にいろいろな場で、大型タンカーが一度事故を起こしたら大変な惨事を引き起こすのではないかという懸念が世界的にいろいろ論議されまして、技術的に申しますと、事故を起こしても、大型のタンカーの全部が油の流出というような惨事を招かないように、適当な大きさにタンクを小刻みに分離いたしますとか、あるいは技術的に、ある種の衝撃が加わっても、一定の量の流出しかしないように防止するというようなタンクの構造を考えるとか、むしろそういった意味で油濁の災害を防止するようにタンカーをつくっていこうじゃないかという動きの方が最近は顕著でございまして、百万トンタンカーができるというような事態にはならないと思います。  また、先ほどお話がございましたようにタンカーの船腹の過剰状態というものが、ここ半年間ぐらいに急激に世界じゅうの状態となってあらわれてまいっておりますので、いま大きなタンカーをつくって、その合理化のメリットを上げようというようなことは、そういった船腹需給の面からいっても、ちょっと遠のいたというふうに私は考えております。
  184. 永末英一

    ○永末委員 国会におきましては、全政党一致して独占禁止法の改正案が通過するようなことでございますので、大きければよろしいという時代は過ぎ去ったように思います。特に、一たん被害があった場合の措置というものを考えずに、大きければよいという時代はもう過ぎ去っておるのだ。だといたしますと、十分大きさにつきましても考えて指導せられたいと思います。  さて、今回の条約案にございます汚染損害賠償額の限度額というのは、実際にいままで起こっております被害の実額に照らしました場合に、大体相応しているものですか。
  185. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 ごく最近の例で、昭和四十九年に日本のPI保険に加入している船舶の油濁事故の例をとってみたのでございます。解決済みのものが四十九年中に百二十三件ございましたが、その平均の賠償額が二百十九万六千円、それから最高の賠償額で七千九百万円でございます。今度ただいま御審議をいただいております責任条約責任限度額、条約トン当たり四万八千円というものを過去の事件を起こしました船についてトン数を掛けてみましたら、その限度額を超すものはこの実績から見る限りわずか一件でございましたので、これをごらんになっていただきましても、国際基金補償限度で十分カバーできるのではないか。御承知のとおり国際基金は百八億円まで、四億五千万金フランまで補償できるようになっておりますので、これでは大丈夫だと思います。  それから過去の大きな油濁事故日本と外国との例でとってみましたら、日本沿岸発生した油濁事故のうち、一番大きかったのは御承知のとおり新潟のジュリアナ号でございます。これは流出の重油が七千二百キロリットルございましたが、そのときの損害賠償額が二億七千万円くらいでございまして、これも先ほど申し上げました責任限度額、あるいはさらにそれを上回った場合の国際基金補償額というものに比べるとわずかでございます。  それから小さい船でもかなり被害を起こしたものが、伊良湖岬で日聖丸七百九十一トンが事故を起こしまして、重油が九百キロリットルくらい流出したのでございますが、この損害賠償額は約四億六千万円でございます。これは船が小そうございますので、先ほどの計算で責任限度額を計算してみますと三千万円ということでございますので、とうていこの実際の損害賠償額の四億六千万円には及びません。しかし、一方、国際基金補償限度額の総額百八億円に比べますとこれは十分補償できると思います。  さらに、外国で一番大きかったのは、しかもこの一九六九年条約の世界じゅうでつくられる発端となりましたトリー・キャニオン号事件でございますが、これが世界じゅうで一番大きくて、損害賠償額が約二十一億円でございます。これも今度の基金で用意する百八億円に比べると十分間に合うということを私どもは考えております。
  186. 永末英一

    ○永末委員 わが方の国内法でございます公害健康被害補償法によりますと、民事上の責任が確定するまでは都道府県賠償額をてん補するということになっておりますが、この条約案では、国際基金をつくりましても民事上の責任が確定するまでは支払わぬのだ、こういうことになっていますと、被害者にとって非常に酷ではないかと思います。国内法のアナロギーがそこに通用するわけではございませんが、国際的にも何らか迅速な支払い方法はないものかと思いますが、いかがですか。
  187. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 この国際基金制度を論議するときにもそのお話が出まして、そういったことについて考えるべきじゃないかということは論議をされております。それからPI保険でも、ケースによりましてどうしても補償を急ぐという場合には、一部保険金を内払いするというようなことをケースによって行っているようでございます。
  188. 永末英一

    ○永末委員 またわが国内法では、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律によって刑事罰を認めておりますが、これは国際的には刑事責任がない。人に被害を与えて金を払えばいいのだというのでは、これは何かの方法で刑事責任を問うことが必要ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  189. 犬井圭介

    ○犬井説明員 この条約は、民事上の責任についてどのようなカバーを行うかという観点から定められている条約でございまして、刑事責任は別個のものでございます。したがいまして、たとえばわが国で外国のタンカーが事故を起こした場合に、そのタンカーに過失があれば当然刑事責任を問われるということは別にあるわけでございます。
  190. 永末英一

    ○永末委員 この条約でやれというのではなくて、それは各国各国のものであるでしょう。条約であるのではございませんでしょう。
  191. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  それは各国の国内法、各国の刑法にゆだねられているということでございまして、それについての国際的な統一した条約はございません。
  192. 永末英一

    ○永末委員 公海上においてこういう被害を起こしたものについて、海洋法会議においても問題となって取り上げられておると思うのです。日本政府はその点についてどう考えますか。
  193. 伊達宗起

    伊達政府委員 公海上で起こった油濁損害というものについて、それを刑事罰の対象とするかどうかということを海洋法会議で問題にしていることは、私も会議をつまびらかにはしておりませんが、当然その話は出ているものだと思います。ただ、それについては、汚染の問題につきましてはまだ第三委員会でそれほど詰めた議論は行われておりませんので、その点を具体的にどうするかという議論はまだ活発に行われておりません。したがいまして、これが今後どういう方向へ行くかということについては、ただいま私から先生に詳細に申し上げることはできないというのが現状でございます。  ただ公海条約がございまして、公海条約の十一条では、このような公海上の船舶の衝突その他航行上の事故が生じた場合には、刑事上または懲戒上の責任を船長が問われる。そして問われるような場合には、当該船舶の旗国、それからこれらの者が所属する国の司法当局ないしは行政当局においてのみとることができるという、旗国主義の原則を明瞭に定めているということは、一般論として申し上げられると思います。
  194. 永末英一

    ○永末委員 いままではそうでございますけれども、新たな経済水域の議論が出てまいると、その沿岸国ということを主張している国もあるわけです。わが方はもし油船を全世界にうろうろ動かすといたしますと、もし事故が起こった場合に、旗国主義ならわが国だけれども沿岸国主義が通れば、その沿岸国もなかなか判定がむずかしいでしょうが、そこに裁判管轄権が移るということになる。日本政府としては研究をして、次期海洋法会議に臨まるべき問題だと思いますから、せっかく御研究を願いたい。
  195. 伊達宗起

    伊達政府委員 海洋を航行する船舶による汚染の問題は、ただいま先生も御指摘になりましたように、いろいろと汚染問題として第三委員会で議論されているところでございます。したがいまして、沿岸国がどの程度まで取り締まりができるかという点については、わが国といたしましても、島国である海洋国としての立場から、海洋を航行する船舶の自由航行を不当に妨げるものでない限り、これは沿岸国の権限にしてよろしいのではないか。もちろん、沿岸国の権限と言いますものも国際的な基準に基づく沿岸国の権限——汚染防止の基準でございますが、そういうものに基づいた沿岸国の権限である限りよろしいのではないかという方向でこの会議のために検討中でございます。
  196. 永末英一

    ○永末委員 最後に外務大臣に伺っておきたいのでございますが、海洋法会議は近年きわめてスピードアップされてまいりました。昨年のカラカス会議などは、わが国政府は魚の話ぐらいの気持ちで臨まれたと思いますが、やはり経済水域二百海里の問題が具体化してまいり、米ソ両国は安全保障上の問題としてこれをとらえておる等々の問題がございまして、海洋国家としてのわが国としての非常に重要な関連のある問題点もたくさん持っておると思います。現在外務省も準備中であろうと思いますけれども、陣容を強化して——海洋法会議に臨む国は千差万別、沿岸国でない国もたくさんあるのでございまして、現在の世界の構図から見ますと、まちまちの意見が、やはり収斂されるところに収斂されていくだろうと思うのです。旧来の海洋国家としての既得権の上にあぐらをかいておられなくなると思いますので、積極的に取り組んで準備をされるべき問題だと思います。外務大臣のお気持ちをお聞かせ願いたい。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、この問題は、いままでわれわれがやっておりましたことを場合によっては基本的に新しくする程度の大きな出来事であるというふうに考えております。私ども、いままで専門家をかなり層を厚くそろえましてこの会議に対処してきたつもりでございますけれども、最終的な合意の可能性が相当高まった状態で、いよいよニューヨークの会議を来年迎えることになります。もちろんその間にも関係国間でいろいろな接触はいたしておりますが、遺憾のない体制で進んでまいりたいと考えております。
  198. 永末英一

    ○永末委員 質問を終わります。
  199. 水野清

    ○水野委員長代理 井上泉君。
  200. 井上泉

    井上(泉)委員 日ソ漁業協定について、賠償請求協定の効力発生直前から二年の間ということになっておるわけですが、二年以前に発生したものは漁民が泣き寝入りせねばならないのか、あるいは政府としては、何らかの救済措置を考えるべきであるという考え方の上に立って、この協定における二年というものを認めたのかどうか、外務大臣政府としての見解を聞きたいと思います。
  201. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この協定発効以前の二年の間の紛争といいますか事故につきましては、その解決促進のために、この協定でつくられました委員会による解決促進の枠組みに乗るということでございまして、この協定発効前二年よりもさらに以前の事故と申しますか、それによってこうむった損害につきましては、この委員会の枠組みに乗らないというだけでございます。当然のことながら、この損害につきましてはソ連側申し入れをし、妥当な解決を図っていくということになると思います。
  202. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、ソ連側申し入れをしてとかいうようなことを言うたって、昭和四十四年から起こっておるでしょう。昭和四十四年から起こっておって、外務省はたびたび申し入れをしておるけれども、何ら話がない。そこでいよいよ昨年あたり非常にやかましくなって、沿岸漁業協定を結ばねばならぬということからこの協定が結ばれた。結ばれた結果、この協定の効力が発生する二年前までということになったものですから、きょうこの委員会で二年前までのものを協議する。そうすると、二年以前のものは別に申し入れをするなんて言ったところで、これはソ連がおいそれと話を受けるわけはないでしょう。だから、そういうことについてソ連申し入れをして交渉する、その結果が得られるまで漁民としては泣き寝入りをせねばならないのか。政府としては何らかの救済措置を考えておるのかどうか。この点について私は政府態度をお聞きしておるわけです。事務当局においてそういうことについてはっきり言えないとするならば、国務大臣としての外務大臣の見解を承っておきたいと思います。
  203. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 不法行為が行われた場合には、不法行為を行ったものがそれに対して措置をとるのが第一義であると私は思います。交渉は、先方がおいそれとそれに応じないといったような事実は確かにあろうと思いますけれども、その際に、今度は日本政府が救済の措置に当たるということになりますと、何か特段の、そういう政府としての決定が要るのではないであろうか。その意味では、私は所管大臣ではございませんけれども、現在政府においてそのような決定をしておる事実はないと思います。
  204. 井上泉

    井上(泉)委員 決定してなければなおさらのこと、二年以前にさかのぼって被害者に対しては適当な救済策を講ずるのが国の政治として当然の行為だと思うので、そのことを私は申し上げておるわけであります。この私の考え方は間達っておるでしょうか。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が救済措置を講ずるといたしますと、これは当然納税者の負担においてなさなければならないわけでございますので、何らかの政府としての方針の決定がその前段階においてなされていなければならないと思いますが、これは実は、正確に申しますと私の所管ではございませんが、そのような決定がなされておるとは承知しておりません。
  206. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう決定がなされていないとするなら、なおさらそういう決定をするべく努力するのが政治としての務めではないかということを私は言っておるわけです。このことについてはまだ農林委員会等で審議をいたしたいと思います。  外務大臣はことしの二月二十六日の外務委員会で、海洋法会議の結論がどうあろうとも、もう領海十二海里にせねばならぬというような意味の発言をなされておるし、予算委員会の分科会でも、そしてまた農林水産委員会でも安倍農林大臣は、海洋法会議の決定がどうあろうとも、領海十二海里を宣言せねばならぬ、日本の水産業の情勢から見てもやらねばならぬということを言っておるのでありますが、ずいぶん日も経過し、海洋法会議も終わったわけです。この際、領海十二海里を宣言されるような段取りになっておっても不都合はない、当然なさねばならない、こういうように私は思うわけですが、その点についてどう考えておりますか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 海洋法会議がジュネーブで行われることになりましたに際しまして、先ほども申し上げましたが、閣議におきまして、この点について関係閣僚の間で了解事項がございます。それは、本件については関係各省庁が御承知のように非常に多うございます。運輸省、水産庁、防衛庁、法務省、外務省等々非常に関係が多うございまするので、海洋法会議の結論として、これが国際法規として生まれるということになりますれば問題が少ないわけでございますけれども、そうでない場合には改めて取り扱いを協議しようということに政府の統一見解、方針を定めておりまして、ジュネーブの海洋法会議が結論を得るに至りませんでしたので、現在の時点に立って、政府としてどのような方針を決定すべきかということを実は協議をしつつございます。現在のところ、まだ結論を得ておりませんで、慎重に協議を進めておるところでございます。
  208. 井上泉

    井上(泉)委員 関係省庁があるということはわかっておるわけですけれども、あなたは、二月の段階で、この海洋法会議の結論が出ない場合でも領海十二海里を決断せねばならぬ、こういう見解を言われておる。そうしてまた安倍農林大臣もそのことを強く主張されておる。あなたとしても十二海里はもうやらなければならぬ、いわゆる外務大臣としては、全体の閣僚の合意は得られてないけれども、もう十二海里を宣言しなけなばならぬ、こういう考え方を持っておることには間違いないですか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、先ほど申しましたように、閣議におきまして政府の基本方針を、ただいま御紹介いたしましたように決定いたしましたので、それに従って処置をいたさなければならないと思います。
  210. 井上泉

    井上(泉)委員 閣議、閣議といいましても、それぞれ閣僚が意見を出すでしょう。だから、外務大臣としてはもうその十二海里を宣言せねばならぬという意見であるのかどうか。あなたは何も言わないが、全体が合意ができなければ自分の、外務大臣としての見解を表明できない、こういう考え方に立っていまのような答弁をされておるのですか。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 関係各省庁がたくさんございますので、基本的な統一方針はやはり閣議において決定をいたさなければなりませんので、したがいまして一閣僚としてこう思うということは申し上げるべきでなく、そういう閣議了解がございますので、その決するところに従わなければならないと思います。
  212. 井上泉

    井上(泉)委員 それではあなたの、海洋法会議の結論が出ずとも十二海里の宣言をせねばならぬと外務委員会で言われたことは、あれはもう現在ではその気持ちというものはなくなっておる、こういう理解をせざるを得ないわけですが、そう理解をしておっていいですか。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点はその後に当委員会では実は申し上げてございますが、その後に、そのような閣議了解がございましたので、私といたしましては閣議の一致した決定する方針に従うということでございますということを申し上げております。
  214. 井上泉

    井上(泉)委員 この協定は、つまり日本沿岸漁民としては、これほどソ連無謀操業をやられてはたまらぬ、早く十二海里にしてもらいたい、こういう強い要求というものがこの三月時点にはかなり世論として広まっておったわけです。広がっておったけれども、そのことはやらずに、いま日本沿岸を荒らしておるのはソ連漁船が中心ですから、その協定を結んだことによって領海十二海里説を宣言をするということ、表現としては悪いかもしれぬけれども、これでもう十二海里をやれという国民世論に対して、漁民の世論に対して事済ます、そういう意図というものが内在をしておるというようなことはないですか。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうことはございませんと思います。
  216. 井上泉

    井上(泉)委員 ところで、それではなぜ十二海里説がとれないのかということを私あなたにこれは問うても、いまの答弁の仕方で、はっきりした答弁を得られないと思うわけですが、そこで私はお伺いするわけですけれども、この十二海里にするということはどこも問題ない。日本のたとえば対馬海峡だとかあるいは津軽海峡、まあ対馬海峡になれば両方から十二海里とっても十分潜水艦も通る。ところが津軽海峡で日本が十二海里説をとると、これは両方からいくと全然、海峡全体が日本の領海になる。日本の領海になるということは、ソ連の潜水艦も、アメリカの潜水艦も、その下を行き来することができない。つまり、日米安保条約やあるいはソ連との関係の中でこの十二海里説を日本がとれないという、そこに大きな原因が私はありはしないかと思うわけですが、そういう点における問題はないですか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり海洋法会議で現在考えられておりますことは、十二海里というものは国際的に多数の賛成するところとなる可能性が高い。その場合に、ただいまおっしゃいましたような問題でありますとか、あるいは今度は海運国としてのわが国のタンカーが他国の海峡を通るといったような場合は、こちらが今度は通る側でございますけれども、そのような場合に、そのような海峡をどのような国際法的な位置づけをするか、つまりこれが国際海峡という問題になるわけでございましょうが、そこが生まれてまいりませんと、わが国はいろんな意味で影響を受ける立場にございますので、したがいまして十二海里というものが大勢になって決まっていくとしますれば、そのような、今度新たにできますいわゆる国際海峡というものの国際的な位置づけをはっきりしておきませんと、わが国自身はある意味で国益に反する場合がある。こういうことなどを実は考えておるわけでございます。
  218. 井上泉

    井上(泉)委員 十二海里をとることが国益に反する場合もある、いままで三海里にしておるのを十二海里にすることによって得る利益と、その失う利益、こう考えた場合に、得る利益というものがはるかに大きいじゃないですか。仮にあなたが農林大臣であったならば、今日の日本の水産資源の状態からいっても、だんだん遠洋の漁業が狭められておる、そういう中でやはり日本は、近海漁業沿岸漁業というものを振興させなければいかぬ。その中で十二海里というものと三海里というもので、沿岸漁業を振興させる政策の上で、そして日本の水産資源を獲得する上において、どれだけ大きな違いがあるのか。こう考えてみますと、広い意味において日本の国益から考えても、十二海里というものが私はこの国益に合致すると思うわけですけれども、どういう点が十二海里をとることによって国益上マイナスがあると考えるのか。水産資源という点も含めて、外務大臣の見解を承りたいと思います。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 農林大臣のお立場をそんたくいたしますと、農林行政、水産行政の立場からは、恐らくは領海十二海里ということが得るところが大きいというふうに御判断でいらっしゃいましょうと思います。しかし、たとえば、これは関係する省庁が多うございますから、全部包括的に私から申し上げられませんけれども、今度は海運国としてのわが国でございますが、大型タンカーがある海峡を、従来公海であったところを通っておって、それが十二海里の結果いわば領海になってしまうという場合には、航行者の立場としてはいろいろ不便なことがあり得るわけでございます。その航行が無害航行であるのか自由航行であるのか、どういう種類の性格を帯びるかということは、ただ十二海里にしただけでははっきりいたしませんので、そこで国際海峡というものの問題が出てまいって、十二海里にした場合にそのような国際海峡にどういう世界の普遍的な法的地位を与えるかということをはっきりいたしておきませんと、そのような海運の部門ではわが国の国益に反する場合があり得るであろう。各省庁おのおのそのような問題を持っておりますので、恐らく水産庁のお立場からは、いま井上委員の言われたとおりであろうと私は存じますが、したがいまして、その辺を閣議において決定しようというのが了解事項であるわけでございます。
  220. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう海運の関係において領海三海里をいまとっておる国というものはそうないでしょう。そうして、仮にタンカーの通航にいたしましても、私は潜水艦が通るのとは大分違うと思うのです。だからよく問題になる、たとえば原子兵器を積んだ潜水艦が日本の津軽海峡を通っても、いまの場合は公海の中だから日本はどうともできないでしょう。それを十二海里という領海の中でちゃんと位置づければ、これは上を通れば無害通航ということで、そうしてまた潜水艦から発射できないような装置をするとかいろんなことによって無害通航ということは確認できるし、タンカーの場合には、これを有害通航だからといって、領海が三海里であるからといって、国際法的にこれが拒否されるという理由はないと思うのです。世界の国で、日本のほかに海運関係の深い国で、三海里をとっておる国というものは一体どこがあるのですか。外務省の方で答えてください。シンガポールだけだというふうに私は承知しておるけれども
  221. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私どもが承知しております範囲で申し上げますと、アジアにおきましては、日本のほかにバーレーン、ヨルダン、カタール、シンガポール、アラブ首長国、これはいま変わっているかもしれませんが、従来のベトナム。それから、大洋州におきましてはオーストラリア、フィジー、ニュージーランド。それから北米に参りますと、アメリカ、キューバ、バルバドス。それから、南米におきましては、ガイアナ。それから、ヨーロッパに参りますと、ベルギー、デンマーク、西ドイツ、東ドイツ、アイルランド、モナコ、オランダ、イギリス、ポーランド、そういった国々でございます。
  222. 井上泉

    井上(泉)委員 私はそれらの国々にいたしましても、無害通航ということで、日本が領海三海里を十二海里にすることによって、それらの国から日本の船の航行に障害を与えられるとかいうようなことはない、こういうふうに思うわけでありますけれども外務当局はどうお考えになられておるのか、そのことをただす時間がないので省略をするわけでありますけれども、要は日ソ漁業協定が生まれた背景というのは、きょうの委員会の冒頭で政務次官説明されたように、いわゆる日本の近海をソ連が非常に荒らすということから今日これに対して秩序を設けなければいかぬということから発生をした協定であって、十二海里にせよという世論というものは、今日、漁民の間はもちろんのこと、私は日本国民の大多数が要請をしておると思うわけです。  そこで、ソ連との漁業協定を結んだことによって十二海里論が立ち消えになったりすることのないように、あくまでも十二海里を早く宣言すべきであるということと同時に、この問題につきましては、農林水産委員会でずいぶんソ連漁業関係については論議をされたわけでありますから、本来なら農林水産委員会との合同審査ぐらいはやってしかるべき案件だと私は思うわけであります。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、今日ではその時間的なものもないようでありますので、そのことの要求は引っ込めるといたしましても、私は外務大臣に最後に見解を承っておきたいと思うわけですが、ソ連との漁業協定というものは、日本が十二海里を宣言することの一つの隠れみのとしてやったものではないということと、さらには十二海里をとらない理由の一つとしては、対馬における外国の、ソ連とかアメリカの潜水艦のいわゆる自由通航を認めるための布石であるとかということであってはならないと思うわけなので、その点についての外務大臣の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、この操業協定を結ぶことによって、十二海里の問題をすりかえてしまおうという意図は私ども全然持っておりません。むしろそうでなく、恐らく十二海里というのは、海洋法会議の趨勢を見ておりましても、世界の大勢になってまいることは私はほぼ明らかであろうと存じます。先ほど申しましたように、その際、その結果生まれますところの海峡、いわゆる国際海峡なるものの法的な地位を国際的に普遍化したものにしておきたい、こういうのが政府の願いでございまして、十二海里そのものになることをこの際断念してしまおう、あるいは反対しようというのではなく、むしろそれは大勢になりつつあるというふうに私ども考えております。
  224. 栗原祐幸

  225. 土井たか子

    ○土井委員 今回、日ソ漁業協定が調印されたわけでありますが、この協定の第一条で規定をされておりますように、この協定の適用海域というのは「公海水域」ということになっているわけです。これはあくまで漁業操業に関しての取り決めでございまして、水産業の安定を図っていくという協定からすると、これは基本的には一番大事な点がどの程度これで解決をされていくかという面も含めまして、本来的に解決をされていない問題をはらみながら、漁民の願いからするとほど遠い課題を背負っての協定だということを言わざるを得ないわけです。記してありますとおり、単に日本沿岸漁民が耐えられない急激な環境変化を避けようという応急対策ということになるわけでありますが、この協定締結することを契機として、政府とされては、日ソ間の漁業関係の基礎づくりをこれからどのように展開しようというふうにお考えになっていらっしゃるかをまずお聞かせいただきたいのです。
  226. 内村良英

    内村政府委員 わが国の漁獲高は、先生御案内のように、約一千万トンでございます。そのうち三百五十万トンは北洋でとっておりまして、その意味からもソ連との漁業上の関係というのは非常に重要な関係でございます。そこで、御案内のように、日ソ漁業条約というものをつくりまして、資源保護を要するサケ・マス、カニ等につきましては規制措置をとっておりますし、その他のものにつきましてもソ連と話し合って漁業をやっておるわけでございます。  そこで問題は、今後の海洋法の動向いかんによりましては、経済水域二百海里というものまでできてくる。そうすると、現在のわが国の北洋漁業の漁場の大部分がソ連の経済水域の中に入ってしまうわけでございます。そこで、一部の開発途上国が主張しておりますように、完全に排他的な管轄権を持って、外国の非沿岸国の漁業を追い出すというようなことになりますと非常に重大なる影響が、単に漁業だけでなくて、動物性たん白質の供給は半分が水産業でございますから、国民経済に及ぼす影響も非常に甚大なものがあるわけでございます。したがいまして、私どもは将来のことも考えまして、ソ連とはそういったことについて話し合っておりますし、今般イシコフ大臣が参りましたときも、安倍大臣はその点について非常に話し合ったわけでございます。  結論的なことを申し上げますと、ソ連としてはそういった日ソの間における漁業問題の重要性というのはよくわかっておるので、経済水域ができた後においても日ソ間の問題は話し合いでやっていこうということを言っております。したがいまして、わが国漁業が北洋から全面的に排除されるというようなことは起り得ないし、私どももそういうことが起こらないようにソ連とは十分話し合ってやっていかなければならない。と同時に、漁業でございますから、やはり資源の保護ということが大事なわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、とりあえずサケ・マス資源につきまして共同増殖をやろうじゃないかということを申し入れ、向こうもそれに同意いたしまして、来年か再来年からはサケ・マスの共同増殖を始めることになっておりまして、そういった面についても大いに協力して、資源保護を図りながらわが国の漁場確保ということに大いに努力していかなければならぬ、こういうふうに思っているわけでございます。
  227. 土井たか子

    ○土井委員 話し合いでということをいまおっしゃいましたが、今回のこの協定が円滑に運用されるということも含めて、定期的な何らかの話し合いでお互いがしていこうじゃないかという、何らかの取り決めをなすっているかどうか、その辺はいかがですか。
  228. 内村良英

    内村政府委員 先生御案内のように日ソ間には日ソ漁業条約がございまして、その共同委員会は毎年開かれているわけでございます。これも期間が二カ月ぐらいやっておりまして、その間、両国の漁業関係者がいろいろ話し合っております。さらに今度イシコフ大臣の見えましたときに、今後原則として一年に一回担当大臣の協議をやろうじゃないかということを提案いたしまして、向こうもそれに同意したということになっておりますので、これまでも農林大臣と向こうの漁業大臣話し合いというのは何回か行われておりますが、今後定期的にそれを行うということが同意されております。
  229. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど、経済水域の二百海里ということが決まるとすればというふうなことでのお話し合いで、御答弁もそうだったわけですが、海洋法会議が何とかこの領海の問題についても経済水域の問題についても決定をしなければどうにもならないという問題が実はありますね。ところが、この海洋法会議の決定が早急に決まらない現在の状況ではございますけれども、世界の動向を見ますと、やはり領海は十二海里、経済水域は二百海里ということを強く指向しているという現実は認めざるを得ません。そういうことを考えていくと、もしこれが決定したならば、わが国の水産業は恐らくは遠洋漁業から転換を余儀なくされるであろうということも予期しておいていいと私は思うのです。これは予期せざるを得ないだろうと思うのです。こういうことに対しての対応策はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、その辺いかがですか。
  230. 内村良英

    内村政府委員 経済水域二百海里がいつ決まるかという問題はございますけれども、ただいま先生から御指摘があったように、これは世界の大勢になりつつあるということは避けられないというふうに私ども考えております。したがいまして、こういった事態に対応して今後遠洋漁業をどうするかという問題でございますが、一つには、一番大事な漁場はただいまも申し上げましたけれども北洋でございますので、関係国であるソ連さらにアメリカ、カナダ等と話し合いましてわが国の実績と申しますか、現在やっております漁場を確保していくということが一番大事でございます。  さらに、次に大事な漁場は東海黄海でございまして、これにつきましては日中の政府間の漁業協定について原則的な同意ができましたので、近く協定ができるものと思います。  そこで、関係国と話し合いまして、関係国の経済水域の中におけるわが国の漁獲実績というものの確保に努めなければならないことが第一でございます。  それから第二は開発途上国の関係の漁場でございます。ここでとっている数量はまだ大したものではございませんけれども、今後入漁料とかいろいろな協力問題が要請されてくると思います。したがいまして私どもといたしましては、そういった開発途上国の要請にこたえながら、開発途上国の沖合いにおける漁場も確保していかなければならぬというふうに考えている次第でございます。
  231. 土井たか子

    ○土井委員 確保しなければならないという御趣旨のほどをいま御答弁なすったのですが、それについての一定話し合いということを現に実行されつつありますか、いかがですか。
  232. 内村良英

    内村政府委員 現にアメリカ、カナダ、ソ連とは漁業問題について話し合っておりますし、今後のことも考えながらいろいろ話しておるわけでございます。  それから開発途上国につきましては、現在いろいろな資金援助等も与えておりますし、それからさらに民間の合弁等もできておりまして、かなりの実績は上がっております。しかし、今後そういった面を一層拡充していかなければならないというふうに考えております。
  233. 土井たか子

    ○土井委員 その実績を上げているとおっしゃる具体的な中身も問題になってくるわけですが、一つどうしても早晩考えておかなければならない問題にオーストラリアとの漁業協定がございます。  御承知だと思いますが、この漁業協定の中身を見ますと、第一条のAというところで「千九百七十五年十一月二十七日までの期間」と書いてある、つまりことしであります。これはやはり領海三海里ということで決められてきた協定でございますが、これに対しての取り扱いを、ことしは期限切れでございますから、どのようにお考えになるかということも聞かせていただきたい、いかがですか。
  234. 内村良英

    内村政府委員 オーストラリアとの漁業協定は、オーストラリアが漁業専管水域十二海里を宣言いたしましたときに、その三海里と十二海里との間におけるわが国漁業実績を確保するということを主として協定をつくったわけでございます。その期限がことしの秋に切れるわけでございまして、昨年の暮れからオーストラリアといろいろ話し合っております。その結果、一年間とりあえず延長しよう、と申しますのは、オーストラリアはやはり海洋法会議の動き等もいろいろ考えているのではないかということと、それからオーストラリアの国内において漁業者がいろいろなことを言っているというようなこともございまして、一年間とりあえず延長しようということで大体合意ができております。したがいまして、今後の問題はそれから後ということになるのではないかと思います。
  235. 土井たか子

    ○土井委員 本条約を見ますとどうも気にかかる個所がどうしても大きなところで二カ所出てくるわけです。  一つは、第一条の二項に、先ほどからの御質疑の中にもございましたけれども、「領海の範囲及び漁業管轄権の問題に関する」云々とございます。この漁業管轄権というのは中身をどういうふうに考られているのか。基本的なことは、この領海の問題についても、漁業管轄権の問題についても、何ら解決されないままこの協定締結することが関係漁民を初めとして国民の不安を解消することにもなり、期待にもこたえることになるというふうにお考えでいらっしゃるかということもひとつあわせてお聞かせいただきたいのです。
  236. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  先ほども他の先生の御質問にお答え申した中で申したことでございますが、この協定漁業権ないしは漁業管轄権の問題を取り扱うものではございませんで、日ソ両国漁業が行われる海域において、事故防止をするにはどのような措置をとったらよいか、したがってどのような操業規制をしたらよいかということと、不幸にして事故が起こった際にはどうやって解決を促進していくか、この場合には委員会をつくって解決を促進するということでございますけれども、その二点を主たる骨子としてでき上がった条約でございまして、その限りにおきまして、この条約をつくるという目的からは、漁業ないしは領海の問題を論じる必要は全くないわけでございます。また、念のためにこの条約の第一条二項においてもその趣旨をはっきりと明文で決めてあるわけでございます。  これが日本国民の要望にこたえるものであるかどうかということは、究極的な問題ではございますが、その点につきましては先ほど来大臣がお答え申しているとおりでございまして、この協定目的とするところは、先ほど私が申し上げた二点を目的として交渉をしてソ連と妥結をした、そういうことでございます。
  237. 土井たか子

    ○土井委員 ソ連との間での話し合いをさらに具体的に進めることによって円滑に事を進めたいという御趣旨のほどが、きょうは一日いろいろな答弁の合い間を通じてここで述べられているわけでありますが、いただいた資料から見ましても、四十九年にはソ連漁船による漁具等被害状況というのは、被害隻数を述べただけでも一千件を超える大変な事故発生してきているわけです。これは恐らくのところ、ソビエト側のトロール船の無謀操業原因であるということ。これはいままでにあらゆる場所でるる述べられてきているわけで、そういう点からすると、何といってもソビエト側の操業の自粛が事故防止のかなめということになるわけですね。  今回、この協定に対して調印をされた日ソ会談を終えての共同声明の席で、イシコフ漁業相が、紛争原因がここにあることがわかれば、トロール漁をやめるようひとつ措置をするということも述べられているようであります。そういうことを考えていきますと、まずはソビエト側の態度に期待をしなければいけないわけですが、この協定の中の第七条にあるところの漁業損害賠償請求処理委員会というものの権限が、先ほどの御答弁で明らかになっておりますように、仲介、あっせんという機能しかないわけなんです。しかも、これは洋上でいろいろあるところの具体的な事故について挙証責任ということが問題になってまいります場合には、こちら側は、操業しているのは、規模から言うと多くの場合は、中小も含めて、民間のそう大きくない漁船団でありますソビエト側は、トロール漁船については、政府直轄の漁船団ということを言わなければならない。  こういう点から言いますと、この漁業損害賠償請求処理委員会処理されていく途上においても、いろいろ、損害賠償の問題について、いずれが具体的により発言力を持ち得るか、いずれがより具体的にこの挙証責任についての中身というものを押していくかというふうな、いわば力関係というものが、具体的な事例を通してどうしても出てこようと私は思うのです。日本側から二名、ソビエト側から二名出られるところのこの漁業損害賠償請求処理委員会にかけられるということを考えていきますと、よりこのトロール船のいままでになされてきた無謀操業というふうなことが気にかかる。ひとつ政府とされては、イシコフ発言もこれあり、こういうソ連側態度に対して、これからどういうふうな態度で臨まれるかということをお聞かせいただきたいと思います。
  238. 内村良英

    内村政府委員 今後、損害賠償請求につきまして委員会ができる。そこでの審議の際に、日本側から十分な資料が出せないのではないか、そうなると、向こう側に反論されて、実際上損害賠償が取れないのではないかという御質問かと思います。  この点につきましては、先生御指摘のとおり、非常に重要な問題でございます。すなわち、今後損害賠償請求していく場合に、原因となった事故についての記述、当該事故関係者関係団体及び関係船舶の列挙、請求する賠償の額、それから証人というようなことが必要になるわけでございます。いわばこれは民事上の請求でございますから、そういったことが当然必要になるわけでございます。  そこで、今日までの経緯を見ますと、実はその辺におきましてわが方欠けるといいますか、当然零細漁民でございますから、十分なことがなされていないことは事実でございます。  一例を挙げますと、私どもが、漁民からこういう被害があった、その被害を与えた船はこういう名前であるということでもらいまして、それをソ連大使館に持っていきますと、これはロシア語ではない、かっこうは似ているけれども、ロシア語ではないというようなことで、向こうから反論を食うというようなこともあったわけでございます。したがいまして、水産庁といたしましては、そういったことについての十分なる準備をしなければならぬということで、関係漁民に、少なくともロシア語のアルファベットぐらいは覚えさせなければなりませんし、それから関係の者に、できたらカメラ等を持たせまして、これはことしの春の噴火湾のいろいろな事故につきましては、大分こちらも写真等を撮りましたけれども、そういったことをする。それから水産庁といたしましても取り締まり船等を出しまして、十分事故の確認をしなければならぬ。そういう面につきましては、今後この協定の発効とともにいろいろな準備をし、必要があれば、助成措置をとってそのような体制をつくらなければならないというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、そういったような十分な請求の要件が整えば、これはまあ五分五分に十分話ができるのではないかと思っております。
  239. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうな措置を講じられた後、なかなか解消できない問題が出てきた場合には、そのときに話し合いでこの解決をしていく努力を払おうではないかというお気持ちでいまの御答弁だったと思うのです。  きょうは時間の制約がありますから、これはまたいずれかの機会に展開をしていきたいと思いますが、最後に、一つの問題についての確認をしておきたいことは、先ほど一年延期ということをおっしゃいましたオーストラリアとの漁業協定なんですが、一年延期ということの含みには、領海十二海里ということがこの一年を延期する範囲内で恐らく確定するのではないか、海洋法会議で恐らくは決められるのではないかというふうな読みも持って一年延期ということをお考えになったかどうか、その辺の含みがあるのではないかということを考えておりますので、ひとつそのことに対するお答えをいただきたいと思います。
  240. 内村良英

    内村政府委員 豪州側が一年延長しようと言ってきた背景には、やはり海洋法会議の動向その他がわからないということもあるかとも思いますし、また、私どもの聞いているところでは、豪州の国内にも、水産業者が合弁でなければならないとかいろいろなことを言っていて、国内的に調整のつかない問題もたくさんあるというふうに聞いているわけでございます。
  241. 土井たか子

    ○土井委員 さて、本日もう一つここで問題にされております海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約と、それから油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約等について、簡単に質問を展開したいと思うのです。  この油による汚染損害についての民事責任を問題にした国際条約の第七条というところを見ますと、強制保険制度がここで実施されなければならなくなります。第七条によりまして強制保険制度が実施されますと、外航タンカーにとっては現在より負担加重になるのではないかと思われます。したがって、それが運賃に加算をされ、したがって石油価格自身も引き上げられるという結果になる、こういうことが大変気にかかるわけですが、この点はいかが相なりましょう。
  242. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生いま御質問いただいたとおりの御心配はごもっともだと思うのですが、現在外航タンカーはもうすでにPI保険に全部加入しております。したがって、この強制保険の制度によりまして新たに保険に入らなければならぬという事態は実は発生しないのでございます。  これは五十年の四月からちょっと制度が変わりましたので多少高くなったと思いますが、四十九年までの例で申しますと、七万一千三百総トンの船がアンリミテッド、無制限の保険契約額でPI保険を掛けましたときの年間の保険料は五百二十万四千円、その船の年間の経費が、船を動かさなくても固定的にかかる船費ということで申しますと、年間の船費が十六億一千万円かかるということでございますので、船費に対するPI保険の保険料の負担は〇・三二%ということで、わずかでございます。この固定費の船費だけではなくて、燃料費その他の運航費を加えますと、さらにその比率は〇・二、三%ということで、もっと小さくなるはずでございます。これは五十年の三月三十一日までの実績で申しました。ことしの四月から多少高くなっているのでございますが、それでも先ほど申しました船費に対する割合というものは、〇・三二%が〇・五%ないし〇・六%ということで、年間にかかる船舶の経費からするとPIの保険は大したことはない。すでにそういう負担はかけておるというのが例でございます。
  243. 土井たか子

    ○土井委員 いまの強制保険の責任額というのは、トン当たり二千金フランまたは総額二億一千万金フランのいずれか低い額ということになっております。この二億一千万フランの責任限度額で、先ほどのあの審議の途上はっきりしたように、大変なタカンーの大型化が進んでいるわけですが、極度に大型化される今後のタンカー事故について、この二億一千万フランの責任限度額で十分に賠償問題というのが解決できるというふうに見越していらっしゃいますか。いかがです。
  244. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私ども、四十九年中の日本のPIが支払った実績をとってみましたら、平均の賠償額が二百十九万六千円でございまして、最高の賠償額は七千九百万円ということで、先ほどお話がございましたトン当たり四万八千円という責任限度額を超えているのはわずかに一件ということでございまして、これは大丈夫だと思う実績が出ております。さらに、責任限度額を超えるような実例も過去においてはございます。伊良湖岬で発生しました四十八年の日聖丸ということで、船のトン数が小さい場合に、事故で流出した油の分量がかなり多いというときに、責任限度額の四万八千円を掛けますもとのトン数が小さくなるものですから、どうしても責任限度額を上回って、実際の賠償請求額ないしは賠償を行わなければならない実額が出てくるということでございますが、これも過去の日本近海で見た例に見て、ジュリアナ号で二億七千万円であったし、日聖丸の例で四億六千万円でございましたので、今度仮にトン当たり二千金フラン、それから総額で二億一千万金フランということを超えました場合に、四億五千万金フランまで基金が賠償をするという制度がございますので、百八億円の例の中には十分入り得ることだと思います。かなりタンカーが大型になりましても、この金額では十分だと思います。しかも、この基金が発足しまして、世界的に見てどうしても百八億円で足りない、二億一千万金フランで足りないというような実際の事故が起こってさましたら、基金の総会の規定で、そのほぼ倍額であるところの四億五千万金フランまでその金額を上げるという用意をしてございますので、それは十分世界的に耐え得る数字であるというふうに考えております。
  245. 土井たか子

    ○土井委員 大型化していくということで大変気にかかる話がここに出てくるのですが、この条約では、領海を含む締約国の領域において生じた汚染損害についてのみ適用するということになっておりますね。たとえば公海上でタンカーが衝突事故を起こす、タンカー同士が衝突事故を起こす、一方が沈没したけれども、油の汚染についてはいかなる国にも影響を及ぼさなかったような場合、この条約との関係はそれでどうなるのでしょう。また、沈没したタンカーの補償ということになってくると一体どういうことになるのでしょう。これは公海上のできごとであって、何ら条約関係がないとすり変えるかもしれませんけれども、世界の海洋汚染という観点から考えたらゆゆしい問題だろうと思うのです、大型化すればするほど。いかがです。
  246. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  公海上で二隻のタンカーが衝突して一方が沈没し、油の汚濁損害が流れたというような場合に、この条約がどう働いてくるかという問題は、実はこの民事責任条約と申しますのは公海上の汚染損害につきまして働く条約ではございませんで、締約国の領域の中で生じた汚染損害についてこの条約が働いてくるということで、公海上のものはこの条約とは関係がないということでございます。  ただ、公海上と申しましても、領海に近い公海上で行われた衝突事故によって発生した汚染状態というものにつきましては、その沿岸国が領海よりは外に出て公海上で防止措置を講ずる場合がございます。つまり、領海に油が流れてくるのを防ぐために、公海上でとる防止措置というものは、この条約に言う汚染損害の中に含まれるというふうに定義がありまして、そのような沿岸国が払った損害というものについてはこの条約補償が働いてくるというふうに解釈されます。
  247. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど、海洋法会議船舶による海洋汚染の問題が論議をされた途次、旗国主義が崩れようとしているという問題についての取り上げがございました。汚染防止というふうな点から考えていくと、すでに起こってしまった油濁関係に対しての補償よりも、油濁を起こさないというふうな防止対策こそ肝要ということになってくるわけであります。そういう点から考えていくと、いろいろな方法がこれは考えられていいと私は思うのです。たとえば、いま考えられているハーバーパイロットだけでなしに、水先人制度というものを沿岸について考えるとか、狭水道について考えるとかいうふうなことがあってもいいのじゃないか。それからまた、タンカーについては、大型化すればするほど一たん事故が起こりますと影響が大きいわけですから、したがって、船舶でそのときに応急対策がとれるように自分でオイルフェンスを備えているとか、あるいは油回収船をタンカー自身が備えているとかいうふうなこと等々の問題について考えられていっていいのじゃないかと思います。そういうふうなことに対しての国際的な何らかの取り決めをやっていこう、統一的にこれを締約国に対して話し合いで決めていこうというふうなことがお考えの中にないのかどうか、ひとつその辺をお聞かせくださいませんか。
  248. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま先生御指摘の、いわゆる公海上と申しますか、かなり離れたところで油の流出を防止することを国際的に考えるということはないかという点でございますが、これは油による海水の汚濁の防止のための国際条約というものが実は一九五四年にできておりまして、その後、六九年にこれが改正され、七三年にさらに改正をされております。国際的にはこうした条約でお互いに汚染の防止をしようという動きがございます。  わが国といたしましてもこうした条約に加盟をし、その国際的な規格に基づいた取り締まりなり指導をしていこう、こういう考えでございます。
  249. 土井たか子

    ○土井委員 今回の条約の二十一条というところを見ますと、正文と公定訳文がございますね。これは法的に違うのでしょうか同じなんでしょうか、どうなんです。
  250. 伊達宗起

    伊達政府委員 確かに法的にも違うものでございます。正文と申しますれば、この条約の解釈に際しての準拠するテクストになるわけでございますが、公定訳文と申しますのは、単に便宜上つくった訳文ということでございまして、何か解釈について紛争が起こった場合の準拠になるものではない、その意味において両者の間に違いがあると思います。
  251. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、公定訳文というのは便宜上つくられた訳文にしかすぎないというふうに考えていいわけですね。そして、特にロシア語とスペイン語に限られているというのはどういうところに理由があるのでしょう。
  252. 伊達宗起

    伊達政府委員 英語、フランス語が正文になりまして、たまたまロシア語とスペイン語とが公定訳文になったということでございまして、その他の言語がなぜ公定訳文にならなかったのかという御質問でございますれば、実は私もその間の事情はつまびらかにしておりません。条約によりまして訳文をつくるということは、公定訳文というのはそれほど多い例ではないと思いますが、間々少しはあるものでございます。ロシア語、スペイン語というものがやはりその会議での重要性を認められたがゆえに、正文ではないけれども公定訳文が採択されたということだろうと想像する以外に御返事の申し上げようがないわけでございます。
  253. 土井たか子

    ○土井委員 もうあと一間聞いて、私は終わります。  世界の海洋国であるアメリカが海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約に対して加盟をしていない理由はどの辺にあるとお考えですか。
  254. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生のお尋ね、いまお答えさせます。  ちょっとその前に、私先ほど言い間違えた点がございますので……。基金の現在決まっております補償限度額炉二億一千万金フランであって、総会の決定を経てその倍額の四億五千万金フランにふやすことができるということを申し上げましたのは間違いでございまして、現在は四億五千万金フランと決まっておるのを、総会の決定においてその倍額の九億フランまで、したがって、日本円に直せば約二百十六億円まで総会の決定においてふやし得るということでございますので、ちょっと間違いましたので訂正させていただきます。
  255. 犬井圭介

    ○犬井説明員 お答え申し上げます。  米国におきましても一九五七年を批准すべきかいなかということについていろいろ議論が行われておるようでありますが、現在までのところ、たとえば同じトン数であっても船価の低い中古船もあれば、船価の高い優秀船もあるというような議論があって、国内的にこの条約どおりに制度を改めるというところまでコンセンサスが得られていないということで、五七年条約を批准するまでには至っていないということでございます。  アメリカで現在どういう制度がとられているかといいますと、船価主義と金額主義とを併用した制度がとられておりまして、原則として船価主義による。しかし船価が著しく低い場合は人損についてだけトン当たり六十ドル、約一万八千円でございますが、そこまで引き上げることができるという制度が行われている由でございます。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 この条約締結した場合のメリット、それからさらに締結していない場合の非常に不便な問題等についてはすでに審議の途上明らかになっていますから、アメリカの場合も同じように考えていいというふうに理解をして、私は終わります。
  257. 栗原祐幸

  258. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは時間も遅いことですから、スピードでてきぱき質疑を済むようにいたしたいと存じておりますが、まず大臣が御不在中にお話が出ておりましたので、ひとつ確認のために日ソ漁業操業協定のことに関しまして御質問をいたしたいと存じます。  今回の日ソ漁業操業協定につきましては、両者の間に一番宿命的とも言うべきたん白資源の供給安定のために、両者が漁業に対して大きな関心を持つことは現実の実態であり、それに対してお互いに民族の生存をかけて漁業問題に対し両者が打ち込んでいることもまた事実でありまして、この交渉の中で両民族の共存の道をうまく見出すことができて、善隣外交のスタートの一つになることができれば大変結構なことだろうと思うわけであります。  お話の途中で私は先ほど御質問いたしたわけでありますが、一番紛争原因になっていたトロール漁法について先方は、その漁法そのもの、あるいは日本側沿岸の地先の公有水面において行われている漁業資源の保護に関して、今後日本側の規制と同じようなものを取り上げる可能性のあることを示唆しつつ帰られたと聞いておるわけであります。したがって、日ソ漁業関係は、下手な扱いをすれば幾らでももめる種になると思いますとともに、うまくいけば日ソ関係の安定のための一つのいい引き金となり得る条約でもあろうかと思うわけであります。したがって、この問題は協定文の中身が大事といいますよりも、現在の政府の決断と、そして外務省の方針と、またそれに対応するソビエト側のそれがどういうふうに組み合わされるかが非常に大きな内容を含むものであると考えるわけであります。したがって、漁業操業協定締結するに当っての外務省の今後の日ソ関係の取り組み、その辺をひとつ明快にお示しをいただきたい、こう思っておるわけであります。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、このたびイシコフ漁業相の来日、安倍農林大臣、私も話をいたしましたけれども、それから、その中からこの操業協定が生まれました経緯、また主として農林大臣とのお話などを承ってみますと、ソ連として、ことに昨年から今年にかけましてのわが国沿岸漁業わが国民の非常な関心を集めたということ、そのことは日ソ両国の友好に決していい影響を持つものでないということについては、かなり認識が生まれているのではないかというふうに感じておる次第でございます。  この問題はおっしゃいますように、両国、ことに漁民にとりまして、国民全体でございますが、非常に大きな生存にかかわる問題でございますから、お互いの関心が強い、したがって事をまずい方に運びますと、のっぴきならない性格になる種を持っておりますが、今回そのような理解が生まれたらしく感じられますことは喜ばしいことに思っております。そういう意味で、われわれもまたお互いの立場を尊重するということから、この漁業を両国の友好の一つのきずなとでも申しますか、そういうものにしていきたいというふうに考えております。  まあ、ソ連にはまたソ連事情がございましょうから、実績を見守っていくという必要がどうしてもございますけれども、今回あらわれた兆は、私はソ連においてかなり日本国民の、ことに漁民の感情について理解が深まっておるのではないかというふうに考えまして、こういう機運は醸成いたすべきものと考えております。
  260. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは次に、三案件まとめられて審議をされております油濁関係の三条約につきお伺いをするわけでありますが、この条約は、事故発生の場合の被害の賠償補てんという性格の条約でありますが、問題は、事故発生の場合にどういうふうに補償するかよりも、むしろ事故そのものの発生というものをどういうように防止するか、そういう観点がどうなっているかという点が確かに残されているのではないかと思います。つまり、被害が起きてからお医者さんにかかるより、被害が起きる前に予防措置を講ずるということと匹敵するものであります。IMCOにおきまして事故発生防止するためにどういう論議あるいはどういう作業が行われているか、その辺をひとつ御説明にあずかりたいと存じます。
  261. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 IMCOでは、船舶の大型化に伴いまして、油流出の事故防止するように、一定のタンクの規制を行いましたり、また事故発生のときに、タンクからの流出量を一定に防ぐような技術の検討が行われております。また一方、事故が起こったときには、海洋汚染を防止するための条件を世界各国でつくりまして、それによって各国が汚染の事故防止をするようにということをやっておるのが現状でございます。
  262. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまお話を伺っていて、余り明確でないのですけれども、素人目で見ても、最近非常に日本船の事故が多い、タンカーの事故も非常に多い、接触事故も多い、特に日本近海における事故発生というのは、非常に私たちの心を痛ませているものでありますけれども、これは船舶往来量が大きいからそうなっているのか、あるいは労働過重に原因があるのか、あるいは法規上に問題があるのか、その辺ひとつ御説明にあずかりたい。
  263. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 タンカーの安全対策については、まず航行面における安全対策がございます。船舶航行の特にふくそういたします東京湾、伊勢湾、瀬戸内海につきましては、海上交通安全法によりまして、浦賀水道等十一の航路を設けまして、特別の交通ルールを定めて、巨大タンカー等の安全な航路通航を図るということになっております。  また、一定呈以上の原油等の危険物を積載したタンカー等が航路を通航するに対しましては、海上保安庁への事前通報を義務づけまして、また進路警戒船を配備するというような特別な指示をするなど、事故防止をやっておるわけでございます。  また行政指導として、外国船に対して水先人の乗船勧奨等を行うというような措置もとっております。また浦賀水道の航路、中ノ瀬の航路を含めまして、東京湾を強制水先区にするために、現在所要の措置をとっておるわけでございます。  それから、東京湾については、特に二十二万トン以上のタンカーが入湾する場合には見張りの強化、航路内における他船追い越しの制限、離着時のタグボートの使用等の安全対策をとっておるわけでございます。  それから次には、タンカーによるところの油濁の損害防止対策で、事前に予防する対策がございます。これは船舶所有者に対しまして、海洋汚染防止法に基づいて油濁管理者の選任、油記録簿の備えつけ、それからビルジ排出防止装置の備えつけというものを義務づけております。  それから、一たん事故が起こりました場合の防除措置でありますが、これも海洋汚染防止法によりまして、船舶所有者等に対しまして、オイルフェンス、油処理剤等の資材の備えつけを義務づける、また油流出事故に対して適切な防除措置を講ずるように義務づけておるわけでございます。
  264. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長、なるべく質問に答えるように、ひとつ答弁者によく御注意いただきたい。  一九七二年十一月にロンドンで開催されました国連主宰会議におきまして、海洋投棄規制条約が採択されましたが、この条約の経緯、発効の見通し、主な内容わが国の立場等につき、外務省から承っておきたいと存じます。これは現在審議中の三条約ときわめて密接な関係があるわけですから、よろしくお願いします。
  265. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この海洋投棄規制条約、通常ダンピング条約とも言っておりますけれども、この条約は、内容を申し上げますと、人間の健康に害をもたらし、あるいは生物資源及び海洋生物に被害を与え、海洋の快適な環境を損なったり、あるいは海洋のその他の正当な利用を妨害するおそれのある廃棄物及びその他の物質の投棄による海洋汚染を防止することを、この条約目的といたしておりまして、そのために、各国がとるべき共同措置等について定めておるわけでございます。  この条約は、十五カ国が批准書を寄託した後、三十日後に効力を発生することになっておりますが、現在十二カ国が批准書を寄託しておりますが、いまだ三カ国が足りないということで発効いたしておりません。  わが国のこの条約に対する態度でございますけれどもわが国は一九七三年の六月二十二日に署名はいたしております。その後、関係国内法の改正手続につきまして、鋭意関係省庁の検討をわが国としては要望しております。かつ、それも相当程度進捗しておるというふうに了解しておりますが、できるだけ早急に国内法の手当てを済ませて、批准したいというふうに考えております。
  266. 渡部一郎

    渡部(一)委員 同じく、一九七三年IMCOにおきまして、海洋汚染防止条約が採択されておるわけでありますが、この発効の見通し、わが国態度等につき、あわせましてここのところで御説明をいただきたい。
  267. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま御指摘のありました一九七三年の汚染防止条約でございますが、この発効の見通しでございますけれども条約に定めております発効要件としまして、世界の商船総トン数の五〇%を占める十五カ国の批准が必要になっております。現在のところまだ二カ国のみが締約国であります。したがって発効いたしておりません。わが国としましてはこの条約に早期加入する方向で検討中でございますが、この条約には汚染を規制するため、将来IMCOが設定する基準によるという規定がございます。その基準は目下IMC ○で作業中でございますので、これらの基準の確定を見ながら検討いたしたいというふうに考えております。
  268. 渡部一郎

    渡部(一)委員 油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約についてでございますが、この条約の中で第二条に「この条約は、締約国の領域(領海を含む。)において生ずる汚染損害及びそのような損害防止し又は最小限にするためにとられる防止措置についてのみ適用する。」となっておりまして、一番私たち民衆の側から言えば気に入らないことは、締約国の領海についてのみ汚染防止の対策をとろうということを決められていることであります。もちろん、公海上にわたる広範な範囲につきまして責任体制をとることの非常にむずかしい問題は明らかにわかりますけれども、この条約の冒頭に「ばら積みの油の全世界にわたる海上輸送がもたらす汚染の危険を認め、」とありますとおりに、ばら積み油の海上輸送は、そのバラスト水の交換等何も領海内で作業が行われるとは限っていない。むしろ率直に言うならば公海上において油の流出その他の事故が最も多いわけであります。したがって、この条約は油汚染を食いとめるための重大なポイントが抜けていると言わなければなりません。したがって、この条約一つの一里塚としては認められますけれども、次の公海上の油汚染の防止に対して、わが国は世界最大のばら積み油輸送国家として態度をとるべきではないか、またそれにかわる対案というのを当然持ち出してしかるべきではないか、こう思うわけであります。その点をいかがお考えですか。
  269. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  第二条に規定されておりますとおりでございまして、先生も御指摘のように、公海上の汚染というものについてはこの条約は適用にならないということになっております。これはこの条約をつくりますときにも、いかなる基準でこの条約の適用範囲を決めるかということについては議論がございまして、その場合に、この汚染の起こる場所でありますとか、それから汚染をもたらした船舶の旗国でございますとか、あるいはその汚染をもたらした船の所有者の住所でございますとか、そういうようなものをどのような基準を用いてこの条約の適用範囲を決めるかという議論はございました。しかし、ワーキンググループでいろいろ検討した結果、当面はやはり締約国の領域での汚染損害にしぼって、それを対象とした条約をつくろうということに決まったわけでございます。したがいまして、これは各国、特にカナダ等におきましては非常に強く公海上の汚染も含めろというような主張をしたこともございまして、この条約のときにはその主張は認められなかったということでございますが、世界の世論の中にはそのような公海上の汚染損害も含めて規制の対象とすべきであるという議論もあるわけでございまして、先生もおっしゃいましたように、いわばこれは第一歩と申しますか第二歩と申しますか、まだまだこれによってすべての世界の海上における汚染損害をカバーして、これをもってよしとするものではない、そのように考えております。
  270. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だから私が聞いたのは、そこまであなたのお答えと私の言っておるのは同じなんですから、じゃ今後それをもう一歩前進さして、公海上の油汚染を食いとめるために、日本政府は何らかの努力あるいは新しい条約締結、提案、相談、何でも結構ですけれども、何かをする用意がありますかと聞いているのです。努力の方向を伺っておるのです。
  271. 寺井久美

    ○寺井政府委員 先生御指摘の公海上で油を流すということをいかに防止するか規制するとかいう点につきまして、油による海水汚濁の防止のための国際条約というのがございます。これは六九年、七三年と二つございますが、まずこの条約に対する加盟国をふやすということが先決であろうかと存じます。これによりますと、距岸五十海里以内で一定量以上の油分を含んだものを出してはいけないということになっておりまして、これが励行され、各国で十分その取り締まりができるようになりますと、かなりの効果を上げていくというふうに考えております。
  272. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣、こういうのがお役人の答弁なんだろうと思うのですけれども、まさにふてぶてしいというか進歩性がないというか、いまの案に対して以外に何も答えないというか、あきれちゃうのだな、そういうことを言うようでしたら。油は現に流されておる。だから問題になっておる。領海が汚染されないように、いまお話が出ておる。それは結構だ。ところが日本は世界最大の油濁加害国として世界に疑われておるものだから、公海上においても油を流さないような何らかの問題について努力するくらいの一言くらい言えないのでしょうかね。役人の構造というのはああいうものなのか。特に保安庁の長官の頭脳というのはあの程度のものなのか。あの程度の人が取り締まりに当たっているのだとしたら、全然論外じゃないかと私は思う。私はこんな言い方はないと思うのですね。もうこれはあっちの長官なんかに聞いてもだめなので、議員御出身である外務大臣に私は伺いたい。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは渡部委員が政治家としての一つの前途を指し示しておられるそういう御主張に対して、政府の官吏としましては、そういう理想はわかっておりますけれども、そこへ到達する道をいろいろ考えた上でないとお答えを申し上げられないということは私は無理からぬことと思います。ただいま海上保安庁長官が言われましたように、まず距岸五十海里というところを世界各国にひとつ実行してもらおうではないか、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。その条約に加盟をしてもらおうではないか。これは確かに渡部委員の言われることへの一つのステップでございますから、むろんそれがみんなで守られるようになれば、さらにそれを推し進めていこうということは、これはもう方向としては出ております。私ども政治の方向としては、当然渡部委員のおっしゃるように考えます。
  274. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣の御答弁ですからその方向を信じまして次へ行くとしまして、この条約の署名欄を見ますと、百三十四カ国が挙げられておりますが、この条約の署名欄を見ておりますといろいろな問題点を感じるわけであります。署名国の中にスイスのような内陸国がある。こういう国の国内手続というか、加盟によるところの何らかの意味合いというのはどういうものなのか。  もう一つは、この条約には台湾の代表者が出席して署名をいたしておるわけであります。そうして中華民国の代表として参与いたしておるわけでありますが、こういう問題に対する中華人民共和国側の態度はどういうものであるか、またそういうものを見ているわが国側の態度はどういうものであるか、また東独、北鮮、北越等の条約に対する態度はどういうものか、そういったものもあわせてお考えをいただいておかないと将来禍根を残すのではなかろうか、こう思うわけであります。その辺いかがでしょうか。
  275. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  まずスイスが内陸国であるのにこの条約に入っているのはというお尋ねでございますが、内陸国ではございますが、スイスも船を持っているそうでございまして、船を持っている限りにおきましてはやはり油濁の関係も生じてくるということで、この条約に入っているものと考えられます。  それからこの条約の署名欄には中華人民共和国とそれから中華民国政府と両方の署名欄がございまして、中華民国政府の署名がここにあるわけでございますが、——失礼いたしました。七一年条約ではございませんで、六九年条約には中華人民共和国政府の署名欄はございません。中華民国政府のためだけでございますが、これは当時におきましては、御承知のように、やはり中華民国というものがIMCOのメンバーでございましたので、そのような関係になっているものでございます。  ところが、七一年の基金条約というのが三番目の条約でございますが、そこでは両方の署名欄が出ております。しかし、これらのことは、ちょうど七一年のこの会議は十一月の二十九日から十二月の十八日まで開催されたものでございますが、同年の十月二十五日に第二十六回国連総会の決議によりまして、中華人民共和国政府が国連において中国を代表することが認められました。そしてこの種のIMCOの国際会議におきましては、IMCO総会の決定によりまして国際連合専門機関、国際原子力機関の加盟国並びに国際司法裁判所規程の当事国、またオブザーバーとしてIMC ○主催の国際会議に通常出席している政府機関及び非政府機関に対して参加が招請されたということでございまして、先ほど申し述べました国連総会決議に基づきまして、国連において中国を代表することとなった中華人民共和国政府、それから当時専門機関でございますIMCOにおいて、なお中国を代表していた中華民国政府のそれぞれに参加招請が行われた。これが七一年の条約の署名欄が二つ出ている理由でございます。もっとも七一年にはいずれの国も、両方からも代表は出席はございませんでした。  IMCOにおきます中国代表権の変更は七二年の五月二十三日にIMCOの第二十八回理事会で採択、決定されまして、中華人民共和国政府をIMCOにおける中国を代表する権利を有する唯一の政府と認めるということが、現在では七二年の五月二十三日以来確定しておりますので、現在においてはこのような混乱はないということでございます。
  276. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは最後に、油濁損害賠償保障法ともからみまして、油濁損害賠償のための現行の責任保険制度について伺いたい。  まずPI保険の概要、保険金支払い状況等について伺いたい。また本条約との関連につきましてどういう形になるのか、簡単に御説明を承りたいと思います。
  277. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在油濁損害賠償に関します制度としては三つございます。  まず初めにPI保険でございますが、これは船舶の運航に対して第三者に与えた損害を支払うということになっておりまして、日本では日本船主責任相互保険組合というものがこの事務を行っております。保険金額は最低契約金額が千百万円から無制限までのランクがございます。それでてん補限度としては、油濁に関しましてはこれは二千五百万ドルが限度となっております。これは本年の四月からでございます。従来は二千万ドルでございました。  それから二番目にTOVALOPというものがございます。これは一九六九年にできました各国のタンカーの自主協定でございまして、自分が油濁防除作業をいたしましたり、政府が防除作業をいたしましたりした場合の防除費用を払うというためのものでございます。これは油につきましては一総トン当たり百ドル、最高一千万ドルというものを支払う協定になっております。  それから三番目にCRISTALという制度がございます。これは一九七一年にできまして、各国の石油会社が入っている自主的な協定でございます。これはPIとTOVALOPとを補完する目的でつくられた補償制度でございまして、三千万ドルを限度としてやるということでございまして、PI等が、船主に従来の法令による責任がない場合、あるいは補てん限度を超した場合というようなことで、PIだけでは補てんができなかったときにそれを補充するということになっております。  それで三条約ができましたら、CRISTALは国際基金に吸収されるということに条約上はなっておりますけれども、実は世界じゅうが全部一遍にCRISTALに入ってしまうという現状ではないと思いますので、ある程度CRISTALと国際ファンドというものとが並行して行われるというような、経過措置が行われるのじゃないかと思いますが、われわれとしては六九年条約がすでに六月十九日に発効いたしましたし、基金条約の方もわが国が世界の受け取り量として一番多いものですから、日本がそれに加盟することによって世界じゅうの促進になる。そこで各国ともできるだけ早く入ってもらって、国際ファンドに統一するようになるということが望ましいと考えております。
  278. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この油濁損害賠償について私たちが非常に不安を持っておりますのは、先ほども質問いたしました三菱石油の水島製油所の重油流出事故あるいはそれに対する対応の仕方であります。先ほどは質問をしかかったところが、お話がもう全くできない状況になりましたので、質問を中絶しておりますので、それを改めて申し上げるわけでありますが、この水島製油所事故の際に、油濁防除のための措置が適確であったかどうか、適当な費用が出たのであるかどうか、その点が非常に疑わしいわけであります。  私もちらっとではありますけれども、現場へ行ってみたところが、オイルフェンス自体がそろっていない、会社に義務づけられているオイルフェンスの量は少な過ぎる、油の吸着材というのは大体ほとんど間に合わない、投下されたものは二次汚染を起こす大きな材料となって、まだ不満をかき立てておる。欠点の方だけを言えば、そういう形でいろいろ問題が多いわけであります。  そこで私は伺うわけでありますが、損害賠償というよりも、わが近海で起こるものあるいは工場、コンビナートの周辺あるいは一般漁民の接している海面等においては、むしろ油濁損害賠償ではなく油濁損害を食いとめるための施策というものが十分でなければならないのではないかという観点から、海上保安庁長官お見えですから、お伺いをしたい。  特に私がちょっとおもしろくなく思っておりますのは、オイルフェンス一つをとっても、この間の水島事故ではオイルフェンスが倒れてしまった。油が、C重油が押し出してきましたので倒れてしまった。あるいは上へ持ち上げられてだっと出てしまった。長さが全然足らなかった。そして会社に対する海上保安庁の指導としては、会社側はそれを充足しておったというひいきであります。これはもう指令が大体間違っております。そしてそのオイルフェンスの研究がなっていない。またそれにかわるものが考えられていない。いろいろな問題が累積しているわけであります。もちろん公害等の特別委員会等におきましてもこうした問題はすでに論じられておると思いますが、いまだ明快に事後処理がなされているやには伺っておりません。私は当委員会で油濁関係を扱うに当たって、そういう新しい姿勢、新しい方向というものをひとつ論じていただきたい。もし法案が悪いというなら、われわれ立法府のメンバーとしてそれを直さなければならない。直す用意もあるわけですから、いまの限界内でうまくいっておりますという答弁ではなく、どういうことがしてほしいのか、率直に述べていただきたいし、むしろ相談する、相談にあずかる姿勢で私は伺いたい、こう思っておるわけであります。したがって、ただいまの日本の油濁防止措置に関する施策がうまくいっているかどうか、その辺、実態を明快にひとつ述べていただきたいと存じます。
  279. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま水島の流出事故に関連いたしまして先生から御指摘がございました。油の防除作業の考え方といたしまして、私どもはオイルフェンスの展張によりまして油の拡散を防ぎ、その間に油の回収船で油を回収する。また拡散を始めた油につきましては油処理剤あるいは吸着材を使用してこれを吸収あるいは中和させるということで対策を考えており、またその準備を進めておったわけでございます。  事故の当時、水島地区にございました、たとえばオイルフェンスというものは約一万五千メーターございました。三菱石油が所有いたしておりましたオイルフェンスは千四百八十メーター、これは海洋汚染防止法によりまして義務づけました千四百メーターを充足しておる。この意味で先生の御指摘があったかと存じます。オイルフェンスは、御承知のようにある条件のもとでは非常に油を食いとめる性能が十分でないということは事実でございます。一定の速さ以上に海水が流れるあるいは風が起こるといった場合に、オイルフェンスのスカートの下からあるいは上を越えて油が拡散するということも事実でございます。したがいまして、オイルフェンスのみが油を防ぐ万能なものであるというふうにわれわれは考えておりませんし、また事実そうでもないわけでございます。  また油回収船につきましてもいろいろな形式がございますが、油の状態によりまして非常に効率のいい場合と効率の悪い場合といったものがございます。  それから先生御指摘のように中和剤の二次公害についていろいろ懸念がある。私どもは中和剤の改良を進めておりまして、現在の中和剤というのは過去に使われたものに比べますと非常に毒性の少ないものだというふうに考えておりますけれども、まあ一般にはそういう疑念がございます。したがいまして、こうした三つの防除資機材というものを組み合わせまして有効に活用していくことが現在残されておりますといいますか、現在われわれが利用し得る最大の方法であろうかというふうに考えております。また、こうした資機材の改善、開発というものも積極的に行わなければならないというふうに考えておりまして、これは関係団体に研究開発を依頼して現在進めております。いずれにいたしましても、現在のこうしたいろいろな資機材というものが完全に十分に能力を発揮するものであるというふうにはわれわれまだ考えておらない状態でございます。
  280. 渡部一郎

    渡部(一)委員 率直に伺うのでありますけれども、いまの流出油の防除という体制それ自体も問題でしょうし、研究も不足だろうし、いろいろ言うことはできると思うのですけれども、研究費、そうした体制を研究する費用というのはいまどのぐらい使っておられるのか、それは十分であるのかどうか、その辺率直にひとつ伺いたいと思います。
  281. 寺井久美

    ○寺井政府委員 先生御質問の具体的な金額につきまして私現在つまびらかでございません。もし必要でございますれば後刻調べて御報告したいと思いますが、いずれにいたしましても、これは関係業界もいろいろと研究いたしております。したがいまして、そうした研究費が十分であるかどうかという点につきましてはさらに調査をしなければ、この場でお答えできないというふうに考えております。
  282. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、お伺いしたいのですけれども、結局この油濁関係条約を結びましても、実際に国内法措置がそれに伴っていかなければならない。これはもうあたりまえのことだと思うのです。法制的にはこれに見合ういろいろなものが今回つくられ、関係委員会審議がされ、もう通過したのも御承知のとおりです。ところがいま保安庁長官は非常にじみな答弁をなさったというか、あれでありますが、実際上言いますと、いまの答弁の中でじみには言われましたけれども、いまのやり方で油の汚染を防除するやり方というのはまずないということを現実に認めておられるわけであります。したがってそれに対する対策を立てなければならない。瀬戸内海の汚染がものすごくなり、大きな日本の近海の漁業が次から次へ崩壊していく。そういったことを見るにつけましても、この問題はちょっと重大だと思います。しかしその重大性が私は感じられていないのではないかという不満を感じて申し上げているわけであります。  したがって大臣にぜひお願いしたいのは、国務大臣として、また内閣の閣僚として、私はぜひとも油防除に対する体制とその研究のシステム、そしてそれに伴う十分な費用を来期予算の中で組み上げられてしかるべきではないか、こう思っているわけでありまして、その点の御判断というか、御見解を承りたいと存じます。
  283. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど海上保安庁長官から現在持っておるいろいろな資材、機材、資機材をいろいろな方法で組み合わせる、そのコンビネーションをうまくやっていくことが必要だという答弁があったわけでございますが、おっしゃいますように、国内の法制としては国会で御審議を願ったものもあって整備をされてきているようでありますが、それを実際に実行いたしますための予算であるとかあるいはむしろ研究開発のための予算、国ばかりではありません、これは国においても民間においてもそうであると思いますが、そういうことが十分でない。何分にもわれわれにとっては比較的新しい種類の問題でございますから、十分に対処できる体制になっているとは言いがたいと存じます、法制の問題はともかくといたしまして。それに対する従来の研究開発が十分でないということは、とりもなおさず、行政の姿勢であるとかあるいは予算であるとか研究のためのスタッフであるとかそういう問題になろうと思います。政府といたしましても、この条約のねらいますところが十分に達成できますように、そういう方面で努力を重ねてまいらなければならないと思っております。
  284. 渡部一郎

    渡部(一)委員 以上のただいまの大臣の御答弁のとおりに、今後十分の努力をしていただくように私は強く重ねて要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  285. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて各件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  286. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  287. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立多数。よって本件承認すべきものと決しました。  次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  288. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって本件承認すべきものと決しました。  次に、油による汚染損害補償のための国際基金設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  289. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  290. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  291. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————報告書は附録に掲載〕     —————————————
  292. 栗原祐幸

    栗原委員長 次回は、来る二十七日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十二分散会      ————◇—————