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1975-05-07 第75回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月七日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       小坂善太郎君    坂本三十次君       正示啓次郎君    竹内 黎一君       福永 一臣君    細田 吉藏君       江田 三郎君    勝間田清一君       土井たか子君    金子 満広君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アジア局         次長      中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     大高 時男君         法務省刑事局総         務課長     筧  榮一君         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         運輸省航空局飛         行場部管理課長 服部 経治君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 四月三十日  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正  し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉  の結果に関する文書の締結について承認を求め  るの件(条約第一三号) 五月六日  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(条約第一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 インドシナ情勢の新しい展開の中で、日本政府の新しい外交の方向について伺いたいと思うのであります。  まず南ベトナム革命政府承認をいつごろなさるおつもりでございますか。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 南ベトナム臨時革命政権南越地域において実効的支配を確立したと認められるに至りましたので、今朝の閣議におきまして承認につきまして了解を得ました。したがいまして、その旨を先方に今日通報をするつもりでございます。
  5. 河上民雄

    河上委員 先方といいますのは、どういうルートを通じて通告をされるおつもりでございますか。
  6. 高島益郎

    高島政府委員 いろいろなルート考えられるわけでございますけれども、いま一番早い、直接のルートといたしまして、ハノイを通じまして、ハノイに直接電報を打つという方法考えております。
  7. 河上民雄

    河上委員 カンボジアの場合もそうでございましたが、政権承認外交関係樹立とは別でありますけれども外交関係樹立についてはどういう努力をされるおつもりでございますか。
  8. 高島益郎

    高島政府委員 仰せのとおり、新政府承認の問題とこの政府との外交関係の問題は別個の問題でございます。現在サイゴン日本大使館のほかにフランス、ベルギー、バチカン等大使館が残っておりまして、新政府との関係について、新しい情勢の動きを見ているところでございまして、いままで大使ほか館員が新しい政府のしかるべき責任ある者との接触をまだ行っておりません。行い得ない状態でございまして、いままで警備士官等との連絡はございますけれども、その程度でございまして、もう少し情勢を見た上でないと、この大使館先方政府との外交関係がどうなるかということについてのはっきりした見きわめはつかない状況であります。  ただ一般に、新しい政府布告等によりまして外国人身体生命財産の保障がなされておりますし、また外国人一般活動についても、活動と申しましても市内での普通の行動でございますけれども、そういった点で特別な障害もないという情報も受けております。しかるべき時期に新政府との間に何らかの接触ができるように努力したいと考えております。
  9. 河上民雄

    河上委員 それでは重ねて伺いますが、きょうの閣議南ベトナム革命政府承認するという方針を決定して、それに基づいてハノイを通じてそれを通告する、具体的な外交関係樹立のための努力は、いままで南ベトナムに派遣しておった人見大使を通じてやるのではなくて、ハノイを通じてやるということでございますか。
  10. 高島益郎

    高島政府委員 現在サイゴンでは平静に戻りつつありますけれども、新政府が通常の活動をできるような状態にまだなっていないように見受けますし、大使館としてもそのような行動を認められておりませんので、直接接触するということはできない状態でございます。したがいまして、従来北ベトナムを通じましていろいろ連絡をしていたビエンチャン、あるいはいま申しましたようなハノイ面接コンタクトをするという方法が一番的確じゃないかというふうに考えまして、これはかなり早い時期でございましたけれどもサイゴンに残りました日本人の生命財産の保証について、ハノイを通じてPRG側善処方を要望してきましたところ、これに対しましても非常に好意的な回答がございました。ビエンチャンを通じてそういう回答がございましたので、当面そのようなルートを通じて、なるべく近い将来に、サイゴンにおいて人見大使先方の新政府と直接接触ができるように努力したいと考えております。
  11. 河上民雄

    河上委員 それでは、この新政権承認ということになりますと、旧政権承認は当然消滅したという前提に立っておると思うのでありますが、旧政権承認の消滅はいつであったというふうに理解しておられますか。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 新政府と旧政府が並立して存在した時期はないわけでございまして、旧政府は四月三十日に完全に新政府にすべての権限を移譲したわけでございますので、日本はこの旧政府と従来関係はございましたけれども、四月三十日以降今日までの間は、特別の関係は旧政府そのものにはないわけでございますので関係ないわけでございます。したがいまして、サイゴン、つまり南越との関係においては法的にはどことも関係なかったという状態がこの四月三十日以来今日までの状態でございまして、きょうからは新政府承認関係に立ったというふうに法的には解釈できます。
  13. 河上民雄

    河上委員 御承知のとおり、ミン政権無条件降伏したのは四月三十日の日本時間午前十一時、ベトナム時間午前十時でございますが、その時点で法的な関係はなくなったというふうに判断していいわけでございますか。
  14. 松永信雄

    松永(信)政府委員 わが国と旧政府との関係につきましては、その政府が存在しなくなったという事実をもって関係が消滅したというふうに考えるべきであろうと考えております。
  15. 河上民雄

    河上委員 四月三十日の日本時間午前十一時をもって旧政府日本政府との関係がなくなったというふうに判断いたしますとすれば、当然旧政府を代表している日本における南ベトナム政府のいわゆる在外公館も、その資格を失ったというふうに判断してよろしいわけでございますか。
  16. 松永信雄

    松永(信)政府委員 四月三十日をもって在京大使館南ベトナムを代表する資格を失い、その行動についての能力を喪失したというふうに考えております。
  17. 河上民雄

    河上委員 そこで外務省にお伺いいたしますが、四月三十日の午後十時でしょうか、ミン政権無条件降伏をいたしまして、南ベトナム政府が事実上消滅いたしましてから約十二時間近くたちましたその時点で、東京における在日南ベトナム政府大使館構内におきまして、ベトナムに真の平和が訪れたということを喜び合うために集まりましたベトナム留学生に対して、日本警察がこれを逮捕しておる。こういう事件が起きておりますけれども、まず、この事件が起きた時点は、承認に関しては全く空白時点であるというふうに外務省は理解をせられるかどうか、伺いたいと思います。
  18. 松永信雄

    松永(信)政府委員 その侵入——侵入と申しますか、事件が起こりました時点においては、わが国が新しい政権承認していない時点でございますから、承認関係から申しますれば、いまおっしゃいましたように空白状態にあった、その間に起こった事態であると言えると思います。
  19. 河上民雄

    河上委員 この事件はつまり、先ほどの条約局長お話のように、在日南ベトナム大使館というものが全く能力を失った後起こった事件でございまして、これは新政権承認する場合、特に今後外交関係樹立する場合に、ここでとった処置というのは非常に大きな問題となると思うのです。したがってここでもう一度確認さしていただきますけれども、この事件は、在日ベトナム大使館というものが日本における外交特権を全く持っていない時点で起こったということであるかどうかをまず……。
  20. 松永信雄

    松永(信)政府委員 先ほど私が、四月三十日をもって在京大使館はその資格ないし地位を失ったと申し上げましたけれども、それはいわゆる外交活動に関してでございまして、いまお話のございました事件は、大使館建物に人が入ってきた、そのときに管理能力を持っていた人が警察に依頼をして、その入ってきた人の排除をしてもらったということであろうと思います。そこで問題は、前の政府在京大使ないし大使館員というものが、その大使館についての管理能力を正当に持っていたかどうかということであろうと思います。  この点について申しますと、政府が消滅したからといって在外公館がすべて消滅してしまうということではなくて、在外公館はその属する国の財産であることは申すまでもないわけでございます。では空白の間、その建物についての管理はどうなるかということを考えますと、新政府によって指定をされた人がその建物管理を合法的に取得するに至るまでは、在来の管理者が当然その建物管理すべき地位にあったと考えるのが、私どもは常識的な考え方ではないだろうかと思っております。この点は、五月一日に臨時革命政府の発表におきましても、従来のサイゴン政権在外公館はその財産管理すべきであるという趣旨のことを布告の形で出しております。したがって、臨時革命政府意図といたしましても、その建物管理というのは、正当な引き継ぎが行われるまでの間、現在いる者が責任を持って管理すべきであるという意思を持っていたものと推定しております。
  21. 河上民雄

    河上委員 それでは、このベトナム留学生に対する逮捕事件について、警察庁はこの事件がどういうようにして起こったか、どういうように理解しているかということをまず御報告をいただきたいと思います。簡単にお願いします。
  22. 大高時男

    大高説明員 お尋ねの件につきましては、本年の四月三十日午後十時ごろ、南ベトナム大使館正門の前、これは渋谷区の元代々木にございますけれども、この前に、ベトナムの平和と統一のために闘う在日ベトナム人の会、通称ベ平闘と申しておりますが、このメンバーの方を中心とする約五十人のベトナム留学生の方が集まりまして、正門の前で、サイゴン政府はすでに解放された、駐日大使館も解放せよ、あるいはまた南ベトナム政府は崩壊した、大使館ベトナム人民財産である、こういうようなことを叫びまして大使館の中になだれ込もうというような形になったわけでございます。当時、この大使館には所轄の代々木警察署並びに増強の機動隊員等十二人の警察官がおりまして、中に侵入されるのを防ぐために努力したわけでございますけれども、このうち十人ぐらいが警察官制止を振り切りまして、正門の鉄のとびらあるいは横の土手を乗り越えまして大使館内に入りました。そのうち一人が、ちょうどたまたまそこに来合わせました大使館女子職員、これがかぎを持っておったわけでございますが、このかぎを取り上げまして、正門の鉄のとびらの施錠を外して開いたわけでございます。この際に、正門の外におりました約二十人ぐらいのベトナム留学生が、警察官制止を無視いたしまして、これを突破して正門からさらに館内に入って邸内に座り込むというような形でございまして、ここでベトナム解放戦線の旗とかあるいはホー・チ・ミン大統領写真等を掲げて気勢を上げるというような状況であったわけでございます。  警察庁といたしましては、この事案が発生しまして直ちに百八十人の警察官現場に急行させたわけでございまして、現場に到着しましてから、代々木警察署長が同大使館のチーという一等書記官から排除要請を受けまして、日本語で侵入者に対しまして三回にわたって出るようにという警告を行ったわけでございますけれども、全然これに応じないということで、十時二十分ごろから二十九名、このうち女性の方は三人でございましたが、建造物侵入罪で現行犯逮捕した。なお、その際、一人病人と思われる者を保護いたしまして、病院の方に持っていったというのがございます。なお、外に残りました五、六十人のベトナム留学生あるいは若干やじ馬もまじっておったと思われますけれども、これについては部隊でもって小田急代々木八幡駅の方に規制をしたという形でございます。  さらに、午後十時五十五分ごろ、新宿区内国際学生会館に居住しているベトナム人留学生が八十人ぐらい現場にやってまいりまして、これについては途中で制止をいたしまして、翌日の午前一時半ごろ全員が解散したという状況でございます。  なお、身柄を拘束しました二十九人につきましては、所要の取り調べを行いまして、五月二日の午後四時三十分までには全員を釈放したということでございまして、事件につきましては近く検察庁の方に送致する考えております。  以上が事案の概要でございます。
  23. 河上民雄

    河上委員 いま警察庁からそういう報告がございましたけれども留学生立場から見ますと非常に証言に食い違いがあるわけでございます。  まず第一に、この日、ベトナムは三十年にわたる戦争が終結して、真の平和を取り戻したという喜びを分かち合うために、集まる場所として大使館にみんな留学生が訪れた。かつまた、その日、四月三十日の午後、南ベトナム大使館の方からベトナム留学生を呼び出して、パスポートを五年間延長する、だから来いという通達があって、これはまあもらいたい人もあったかもしれませんが、おかしいというようなことで、それを問いただすために集まったということでございます。事実、大使館に一部は制止を振り切って入ったということがあるかもしれませんけれども、ともかく門が開いて、そして入っているわけですね。そしてその後、門を閉じて中にいる者を逮捕したということが実情のようでございます。  そこで、そういうことが一体必要なのかどうか。同じ事件西ドイツのボンでも起こっておるわけですけれども西ドイツの場合は、警察がもとの大使館員ベトナム留学生との間に立って話し合い仲介者の役を演じて、平和裏に話が済んでおる。にもかかわらず、日本警察の場合は、一方的に元大使館員である一等書記官要請に基づいて直ちに出動している。そしてベトナム留学生がきわめて自然な感情として、小旗を振って喜び合いたいといっている状況、ギターなども持っていっているようでございますけれども、そういうような状況の中で、一方的に大使館一等書記官要請に基づいて行動するというのは、一体どういうことなんですか。こういう問題について外務省は一体どのように考えられるのですか。この処置が適当であったと思っておられるのか、またこういう、もはや外交的能力を失った大使館員が発行するパスポートを受理するお考えがあるのかどうか。  また、この事件の際に、革命政権国旗日本警察官が破ったという証言もあるわけですけれども、もしそれが事実といたしますと、これは今後の承認問題について非常に重大な問題になる。いま証言は食い違っているわけですけれども、後でもしこういう事実があったということになりますと、これは外交上非常に大きな問題になります。外務省はその点について一体どういうように考えられるか。  第一点は、こういうベトナム留学生が自然な感情として集まった、また特にそういう疑義を生ずるような通達があって、呼び出された形で集まっている留学生に対して、いきなり大使館一等書記官要請に基づいて警察行動して、一網打尽逮捕して、しかも四月三十日から五月二日まで非常に長期間勾留しておる、こういうような事実が一体許されるのかどうか。しかも、学生側証言によれば、取り調べ中ある一学生については明らかに暴力と言っていいような行動が加えられておる。これは杉並警察署の場合であります。しかもその後も、ベトナム留学生に対してはその周辺の聞き込み捜査を行っておるというような事実も出ているんです。こういうようなことは一体許されるのかどうか。それから第二点としては、国旗を破ったという事実が伝えられておりますけれども、もしこれが事実であるとするならば、外務省としては一体どうするつもりか、この二点を伺いたい。
  24. 高島益郎

    高島政府委員 私ども外務省としまして詳しい事情を承知いたしておりませんが、いまお話のような大使館側要請と、これに基づいて警察がどう判断し、どう行動するかということはもっぱら警察の判断の問題でございまして、外務省がこれに対してとやかく言う立場に私はないと思います。  それから国旗の問題につきまして私は全然承知いたしておりませんが、よく調査した上で検討してみたいと思います。
  25. 河上民雄

    河上委員 条約局長国旗を破った場合、これは外交問題になり得るというふうにお考えになっておりますか。
  26. 松永信雄

    松永(信)政府委員 仮にそういう事実があったといたしますと、それはやはり問題になる性質のものであろうとは思います。ただし、その事実があったということを私どもは全然承知していないことは、いまアジア局長が申し上げたとおりでございます。
  27. 河上民雄

    河上委員 留学生が小旗を振って喜び合っているところへ一網打尽逮捕が行われたわけですから、小旗を破るというような事態は当然起こる蓋然性があると思うのです。現に一方においては、そういう証言をしているわけですね。もしこれが事実であるということになりますと、いま冒頭外務大臣が言われたように、外交関係樹立したいという日本政府努力に非常に大きな障害になると私は思うのですが、その点、もしそういうような事態になっては大変であると考えられるならば、早急にその事実の有無を調べられますか。
  28. 大高時男

    大高説明員 河上先生お尋ね国旗の問題でございますけれども、当日出動いたしました代々木署員あるいは機動隊員におきまして、そういう旗を破ったというような行為は一切ございません。  それから、なお、先ほど旗を振って集まったところを警察が一斉にということでございますけれども、最初に配置されておりました警察官は十二名の少数でございまして、そこに五十名が一斉にやってきた。十二人の少数でございますけれども、一生懸命とめようとしたのですが、力及ばず、先ほど申し上げましたように、鉄のとびらあるいは土手等を乗り越えて十人くらいが先に中へ入る。それから後、そのうちの一人がかぎ女子職員から取り上げて門をあける。その門をあけた際におきましても、外におりました警察官はこれが入るのを一生懸命制止をやっておりますので、やや私の御説明が足らなかったと思いますが、補足さしていただきます。
  29. 河上民雄

    河上委員 外務大臣にお伺いいたしますが、明治以来、日本には外国留学生がたくさん来た歴史があるわけですけれども、このように多数の留学生逮捕せられたという事実は余りないように私は思うのです。これから日本インドシナ政策外交政策というものが大きく問われておって、ここで新たな出発をしなければならないというときに、こういうようなかって前例を見ないような大量の逮捕事件が起きておる、こういう事実について——しかもこれはベトナム留学生としては、三十年にわたる戦争が終わったといういわば喜びが爆発したときだと思う。本当に体がじっとしていられないような状態であって、どこか一カ所集まりたい。しかもいま外務省の方の御見解によっても、全くその権限を失っているはずのものが、パスポートを発行するというような不当な通達がなされていることについて、当然疑問を持って集まっておるわけです。そういう人に対して、こういうようなことをすることが不当であり、少なくとも軽率であったというふうにお考えになりませんか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの警察当局説明を私もここで伺っておったわけでありますけれども、つまり警察側が何かの政治的な動機あるいは理由によって警察力を発動したということであれば、これは問題があろうと思いますけれども、ただいま聞いております限りでは、建物についての不法侵入があったということ、そしてその建物管理者から排除要請があったということ、非常につづめて申しますとそういうことのように、ただいまの話を聞いておったわけであります。  その建物管理者なるものが正当な管理者であったかどうかということにつきましては、先ほど条約局長から申し上げましたように、少なくとも五月一日のPRG側通告によって、一種の暫定の期間従来の者が建物管理する、そのような義務というかあるいは権限といいますか、それを課したわけでございますから、建物の正当な管理者であったとやはり考えるのが至当であろう。そういたしますと、正当な管理者から不法侵入に対して排除要請があったというときに、最小限度不法侵入排除するということは、これは警察としては私は当然なことではなかったか。河上委員の言われますように、そのようないわゆる不法侵入者政権の交代によって非常に興奮をしておった、あるいはそれを喜んでおったというようなことは、これは十分に考えられますけれども、しかし不法侵入があったということ自身はそれとしてやはり認識をしなければならない。むしろ警察として、いわゆる不法侵入を企てた人々が政治的な満足感あるいは喜びを表示するためであったがゆえに、不法侵入を大目に見るというようなことになりますと、これはむしろそのこと自身警察力が政治的な動機によって動いたということになるのでありましょうから、やはり純粋に警察力が、政治的な意図でなく、法に従って働いたということでありますと、それ自体私は、むしろそのこと自身当然のことであったと考える方が適当ではないであろうか。もちろん、その後その人々を非常に長い間身体を、自由を拘束しておくというようなことでありますと、これはまた別の問題があろうかと思いますが、ともかくそういういっとき起こりました不法な状態排除するという形で警察力が動いたといたしますと、私はそれ自身は問題とするに当たらないのではないか。  パスポート云々につきましては、これは別個の問題のように存じます。私そのことを詳しく存じませんので、御質問の主な部分にお答えをいたした次第であります。
  31. 河上民雄

    河上委員 大臣は、いまお話がありましたように、よく承知してない。その事件の内容というものを承知してないで、警察の一方的な報告に基づいてそう言っておるわけですけれども逮捕に至るまでの経緯を見ますと、留学生に対して退去の通告がきちんとされておらない。留学生が要求した責任者との話し合いにも応じないで、門を閉ざしてから、閉じ込めた状態の中で逮捕行動に移っているわけです。そういう点から見ましても、これはごく一般の私人の要請に是づいた行動であるとしても、かなり不当な、バランスを欠いた行動であったと私は言わざるを得ないのですが、その上、留学生に対して機動隊員——わずか三十人や五十人の留学生が訪れているのに対して、百五十人もの機動隊員を派遣する必要が一体あったかどうか。そういういろいろ周囲の状況考えましても、この逮捕が非常に不当であるということ、そして、これは革命政権に対する認識が基本的に友好関係をつくろうという形になっていないところから起きた事件と言わざるを得ないのですけれども大臣はいまパスポートの件は知らないと言いますけれども留学生の中には、そういう呼び出しに応じて行った人もかなりいるわけです。ないしは呼び出しが不当であると思って行った人もあるわけでして、不法侵入であるかどうかということも、本当のことを言えばわからないはずですが、そういう非常に微妙な段階において、一方的にこういうベトナム留学生に対し暴行を加え、逮捕というような強行措置に出たということは、いかにも不当である、一般事件としても不当であるし、外交的な取り扱いとしても不当であったと私は言わざるを得ないのです。  もう余り時間がないので、また後ほどいろいろお話をしたいと思いますけれども大臣、いまのような態度で果たして本当にいいのかどうか。今後外交関係樹立する段階において、いまの大臣の御答弁が大変な問題になる危険さえ私は感じていたし方ないのでありますけれども、もう少し、わからない状況の中でこういったことをやった。もっと率直に、政権の交代があったにもかかわらず従来のような考え方でついいってしまったということをはっきり認めて、誤りを認めた方が、私は今後の南ベトナム革命政権との外交関係樹立する上においても、アジア諸民族との友好関係樹立する上においても、これはどうしても必要なことではないかと思うのでありますけれども大臣いかがでございますか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからのお尋ね警察力の行使についての適否についてのお尋ねでありまして、いわゆる外交問題としてのお尋ねではなかったわけで、私は、したがって、国務大臣として警察力の行使が妥当であったかどうかということをお答えをしなければならない、そういう種類の御質問であったわけであります。外交関係から申せば、それはまたいろいろな見方ができようと思いますが、そのためにはもう少し事実関係を知らなければなりません。  ただいまのお尋ねの中で、たとえば、これはやはり警察的な観点からのお答えになりますけれども、仮に不法侵入の事実がなかったというときに警察力が発動されたとすれば、それは恐らく適当な警察力の発動ではない。他方、不法侵入の事実が認められた。しかし、これは今後われわれが友好的な関係を持つべき人々による行為であるから、そこは見逃しておこうというようなことの判断は、これは警察がすべき判断ではないというふうに私は思います。しかし、これは外交的な観点からのお答えではありませんで、先ほども河上委員もおっしゃっていらっしゃいましたように、事実関係がもう少しはっきりいたしませんと、外交的な立場からのお答えをすることはちょっとむずかしいと存じます。
  33. 河上民雄

    河上委員 所定の時間が参りまして、私は非常に残念ですが、これは大臣、もう少しお話をしないと、非常に重要な問題を招くおそれがあると思っております。  ただ、いま一つ明らかなことだけ申しますが、もはや外交特権を失った南ベトナム大使館一等書記官要請に基づいて警察が動いたということ、そういう事実がもういまの答弁でも明らかになっておりますだけに、不法侵入かどうかということはどうも意見が食い違いましたけれども、しかし、その点から考えましてもこれはきわめてすぐれて外交的な問題であるということだけを御注意いたしたいと思います。
  34. 栗原祐幸

  35. 土井たか子

    ○土井委員 簡明に御質問いたしますから、簡単に明確にお答えをいただきたいと思います。  まず、この十日に国際海洋法会議が終わるわけでありますが、今回のこの国際海洋法会議では何も決まらないで閉会するというふうに政府自身はごらんになっていらっしゃるのかどうか。また、何かの取り決めができるというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか。  実は、これは言うまでもございませんが、宮澤外務大臣、安倍農林大臣は、従来領海十二海里については決断せざるを得ないというふうに見ておられたことを私たちは承知いたしております。したがいまして、その問題は現在ではどうなさるおつもりでいらっしゃるかということもあわせてお伺いしたいのです。いかがでございますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に私から申し上げておきますが、これは前にも申し上げましたが、その後に政府がジュネーブの会議に臨みます方針を決定いたしますときに、万一、いわゆる国際海狭についての合意が成立いたさないときに、領海の問題はどうするかということは、その時点において改めて閣議において検討をしょう、こういうことになっておりまして、これが政府のただいまの立場でございますので、過去にもこの委員会でそのことは申し上げましたが、念のため申し上げておきます。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、そうはおっしゃいましても、その段階になって急に考えるということじゃなかろうと思うのです。現在も検討を進めていらっしゃるはずであります。慎重に検討を進めていらっしゃるはずであります。その検討の方向は、領海十二海里宣言に向けての検討であるか、領海十二海里見送りへの検討であるかということぐらいは、この場でお答えできるはずであると考えて、私は再度質問いたしますが、いかがでございますか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、ただ外務省あるいは農林省だけの問題ではありませんで、非常にたくさんの各省庁が関係をいたします。したがいまして、これはその時点において改めて内閣で検討いたすべきものであります。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 要は、アメリカ核艦船が通航できないということが非常に問題になって、いまおっしゃっている、いろいろ自民党の党内での論議の焦点もその辺におおよそ向いているということを私たちは聞かされているわけでありますが、この点について、断念をするという方向が非常に強く動いているとも私たちは聞かされているわけであります。これについて外務大臣はどういうふうなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから繰り返して申し上げておりますとおり、それは関係各省庁が閣議を中心にその時点において検討を開始すべき問題であります。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 私は関係各省庁の考えをただしているわけではございません。当委員会は外務委員会であります。したがって、その関係各省庁の会議に臨まれる外務大臣の姿勢そのものを問題にしなければならない。外務大臣としてはお考えがおありになるはずです。しかも国際海洋法会議において、農林だって水産だって、あるいはその他の省庁、防衛庁だって関係があるでしょう。関係があるでしょうけれども外務省としてどうお考えになるかというのは、これは主軸であります。外務大臣のお考えを再度ただしますよ。いかがですか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国際海洋法会議あるいはそこから生じてまいりますであろう将来の条約、これは当然に国務大臣としての外務大臣の所管に属しますから、その場合、外務省だけの立場というようなものはあり得ないので、内閣においてどのような方針を決定するか、その討議に私どもは参画をいたしまして、内閣の決定に従ってこれに対処をしていくべきものであります。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 まことに主体的ではありません。そういう主体的な態度ではなくていろいろな問題に対処なさるから、混乱に混乱を重ねる問題が次々と出てくると私は判断いたします。  そこで、そういうふうに主体的でない外務大臣に何を聞いてもこれはしようがないわけでありますけれども、一つだけ、これは確認をしておきたい問題があるので引き続き申し上げたいと思うのですが、経済水域二百海里というものは大体コンセンサスが得られているやに私たちは了解しております。そこで、そうなってまいりますと、わが国を取り巻く島々に大変問題点がたくさん出てまいります。  そのうちで一つ気にかかるのは、竹島の問題でございます。この竹島の問題は現在どういうふうになっておりますか。
  44. 高島益郎

    高島政府委員 竹島につきましては、日韓国交正常化の際に結論が得られませんで、依然として両国の主張が対立しております。日本は、これは当然日本の古来からの領土であるという立場でございまして、随時この竹島周辺を海上保安庁の船によって巡視すると同時に、韓国に対しまして、これは日本の領土であるからそこにいる韓国の警察その他の人を撤去するようにという申し入れをいたしておりますが、韓国はこれに対しまして、韓国の領土であるということで、依然として両国の主張が対立したままでございますが、わが国といたしましては、これを外交的に解決したい、そのために調停という手段も考え得るという立場でございまして、現在のところは遺憾ながら両国の主張が対立したままの状態でございます。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 韓国の警備隊がいまいるということの事実をお認めになっていらっしゃるわけですね。それに対して、韓国にいろいろと撤去するような要請もなすっているやにいま御返答なすったわけです。  お伺いしますが、具体的には韓国に対してどういうふうな申し入れを、どういう形で、いつ、何回おやりになったわけでありますか。
  46. 高島益郎

    高島政府委員 いま手元にいつ、どういう形でという資料を差し上げるものを持っておりませんけれども、大体におきまして毎年一回程度、その手続は口上書という形でございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 いま国際海洋法会議で、恐らくは経済水域二百海里というふうなことが大体の国の常識ともなっている状態の中で、日本の経済水域に属する島であるということをはっきり確認しながら、その島に韓国の警備隊がいるという事実も認識し、しかもなおかつ、一年に一回ぐらい単なる形式的な韓国に対する申し入れで事が済むとお考えでありますか。先ほどの外務大臣の御答弁からしても、私は外務省の毅然たる態度というのはいつも見えないのです。各省での討議を待ってというふうなことをしきりにおっしゃる。外務省としてどうですかということをお尋ねしても、それに対してしかとしたお答えを聞いたためしがありません。一体これからこの竹島の問題についてどういう対処をなさろうというのか、ひとつお考えをお聞かせくださいませ。
  48. 高島益郎

    高島政府委員 われわれとしても決してこのような状態が本意であることはないわけで、その点は何としてでもこの問題を外交的に解決したい。毅然とした態度というお話でございましたけれども、武力によって奪回するということは不可能でございます。何としてでも外交的に解決したいということで忍耐強くそのような手続をとっているわけでございまして、現在のところ非常に遺憾な状態であるということでございます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 遺憾な状態だとか、外交的に慎重に解決したいとかおっしゃって、黙って、黙して座しているということが唯一の方法じゃないと私は思うのです。外交外交的とおっしゃるけれども、その中身は具体的に言うとどういう措置を講ずるということが、おっしゃる外交的に当たるのですか、お聞かせください。
  50. 高島益郎

    高島政府委員 外交的と申しますのは話し合いということでございまして、話し合い方法には、第三者を加えた調停という手段も考え得るということでございます。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 調停の用意があるということでありますね。いかなる調停の用意をお考えになっていらっしゃるわけですか。
  52. 高島益郎

    高島政府委員 これは日韓両国が合意しなければできない問題でございますので、現在の段階でいかなる調停という形式は考えておりません。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 出任せをおっしゃっちゃ困りますよ。やはり問題は、これは慎重に検討なさるという表現をよくおとりになりますが、慎重に常時検討なすっていらっしゃるのであろうから、その一つの検討された成果を持ってこの場にお臨みになるのが私は答弁の中身だと考えているのです。ここで出任せおっしゃって、調停を考えたい、調停の中身は何ですかと言ったら、日韓間がこれに対して合意しなければできないことだから、それについてはしかと答えられない、こんなわけのわからない返答なら初めからしない方がいいんです。そうすると具体的には、韓国に対してこの竹島の問題は、慎重に外交の中身で何とか解決のめどを見出したいということに理解をしておいていいわけでありますか。そしてそれの努力というのをなさるわけですね。
  54. 高島益郎

    高島政府委員 仰せのとおりでございます。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 この海洋法の問題についてはもうこの程度で終えますが、外務大臣、決まった段階で各省との間でいろいろと討議をしてから領海十二海里についての態度は決定したいとおっしゃいますが、それは一体いつごろになりますか。海洋法会議は十日で終了しますね。いつごろになります。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 海洋法会議が不幸にして今回最終的に妥結をいたさなかったということに仮になりますと、この問題をめぐりましては、しかし、各種の委員会において公的、私的にいろいろ議論をなされた過去における今回の会議の実績がございますから、それを見ながら将来、次回の会議がどのように進むであろうかといったようなことも検討してみなければなりません。それらのことをその時点で総合的に考えまして、そして何もこの問題について一、二日を争って政府は態度を決めなければならないという性格のものではございませんから、将来の展望なども考えながら、各省庁の意見の調整をいたしてみたい、かように思っております。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 宮澤外務大臣は先ごろアメリカを訪問された後、日米安保条約の事前協議制については、有事の際はアメリカの核持ち込みに対して前向きに検討することもあり得るんだという趣旨の発言をされているわけであります。昨日の衆議院の本会議場でも、有事という言葉について、これはもうたびたび使われているわけでありますが、内閣総理大臣は文学的表現だというふうなことも答弁の中で述べられております。私はいま外務省見解をお伺いしたいのですが、有事の際と言われる中身は、有事というのは一体どういうふうな状態を指しておっしゃっているのでしょうか、よく私にはわかりません。有事というのは一体どういう状態なんです。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず前段で私がそういうことを申したように仰せられましたが、そういうことを申した事実はございません。  次に、有事ということでありますが、私どもそういうことを正式に定義をして使うことはいかがなものであろうか。はっきり問題を、有事という場合を定義をして議論をいたしませんと議論はしばしば誤解を招くおそれがございますから、もし議論をするならば有事というものの定義を決めてからいたさなければならないと思いますが、実際はその定義は非常にむずかしいであろう。つまりいわゆる平時の場合、ただいまのような場合でございますが、そういうときに有事と称する場合をいろいろ議論をするということが果たしてどれだけの意義があるであろうか、そういうことから考えますと、有事というものを具体的に定義をせずに問題を議論するということは、私は余り有益ではない、むしろ誤解を招くおそれすらあるのではないかというふうに私は思います。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 有事という言葉が適切であるか適切でないか、この言葉を使うことによって誤解を招くおそれがあるというふうな注釈についてはよくわかります。ただしかし、ときどき答弁の中にも有事という言葉が出るのですよ したがって、有事とは一体何ぞやということをただいまお伺いしているわけでありまして、外務大臣は有事ということに対してどういうふうに御理解なすっていらっしゃいますか。それをひとつお聞かせください。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らくその言葉が使われるときの、どのようなコンテクストにおいて使われるかによってきわめて幅の広い言葉であろう、一元的に定義をいたす用意は私にございません。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 私がお伺いしているのは、先日、事前協議の問題について、安保条約考えていくと、核持ち込みについても事前協議の段階でイエスと言い得る場合もあると考えていい、これは条約上ですよ。そういうことが一応具体的に明らかにされているわけですね。ところが、いまたまたま外務大臣がおっしゃった平時の際、平常時ということを表現としてお使いになったわけでありますが、そのイエスと言い得るような状態というのは、一体どういうふうな場合にイエスと言い得るのですか。これをひとつ確認しておきませんと、安保条約上イエスと言い得る場合もあるということは、私は今後非常に重要な一つの課題になるであろうポイントであると思うわけでありまして、イエスと言い得る場合があり得ると言われる条約上の根拠をひとつここでお聞かせいただきたいのです。いかがでございますか。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと御質問の意味がはっきりいたしませんけれども、日米安保条約及びその交換公文によりまして、事前協議という制度が定められておるわけでありますから、その制度の趣旨から言えば、条約の解釈としてはイエスと言うこともノーと言うこともある。そうでなければ、事前協議という制度そのものを定めたことが無意味になる、条約論といたしましてはこれだけのことでございます。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  それならば、いまのそういうお答えに従って、私は確かめておきたいことがあるのです。  条約上見ていくと、事前協議の問題の中身を見た場合に、イエスと言う場合もあればノーと言う場合もある。これは条約を見た場合におのずと明らかだというふうなお答えですね。条約第六条の実施に関する交換公文というのがございますね。これを見てまいりますと、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」、その次に括弧書きで「条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。」ということがございます。つまり、条約第五条の規定に基づいて行われるものは一切事前協議の対象から外されるということを交換公文が認めているわけなんですね。このことは御確認願えますね。交換公文でそれを認めているわけです。そうしますと、第五条という条文に当てはまる、つまり「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」という場合は事前協議から除かれるというふうに考えなければならない。こういうふうな状態の場合にはイエスもノーもへっちゃくれもあったものじゃないですね、事前協議なしでありますから。しかも、日本の施政下にある領域における一方に対する武力攻撃が自分の国の平和と安全を危うくするものであるかどうかという判断は、お互いが、つまり日本とアメリカの政府が協議をして決めるものじゃないはずであります。アメリカが危ないと思えば、すなわち事前協議から外されて、したがってイエスもノーもないままに、日本にあるところのアメリカ軍の軍事基地は十二分に活用され得るという体制にあるわけですね。いかがです。このことをひとつお伺いしましょう。
  64. 松永信雄

    松永(信)政府委員 御指摘のとおり、交換公文で言っておりますように、日本国から行われる戦闘作戦行動につきましては、第五条に該当いたします場合は事前協議の対象から外されております。したがいまして、第五条に掲げられております事態が発生いたしましたときに事前協議の問題は起こらないわけでございます。  そこで、第五条の規定を見ますと、「いずれか一方に対する武力攻撃が」云々と書いてございます。ここで申しております武力攻撃というのは、これはもう客観的に非常に明らかな事態であろうと思います。したがっで、武力攻撃が行われているか行われていないかがわからないという事態はあり得ないというふうに私ども考えております。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 それはおっしゃるとおりだと思うのです。  そこでお伺いしたい。韓国は日本の施政のもとにある領域でございますか。
  66. 松永信雄

    松永(信)政府委員 韓国は日本国の施政のもとにある領域ではございません。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、韓国について考えた場合、韓国にもし武力攻撃が行われた場合において、極東における平和及び安全を維持するために、アメリカ合衆国軍隊が日本において施設及び区域を使用するということは、これは第六条で認められるわけでありますけれども、しかしながら、第五条の場合のイエスもノーもあり得ない、事前協議の対象から外されるような状態のもとで韓国における武力攻撃に対処するということはない。つまり、韓国に対して武力攻撃がある、何らか緊急事態が発生した、しかもそれは極東における国際の平和及び安全というものを維持していくことのために非常に重要な問題であるというふうな場合は、必ず事前協議というものが考えられるというふうに理解しておいていいわけでありますか。
  68. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまおっしゃいましたように、第六条におきましては施設、区域を使用する目的が掲げられているわけでございます。韓国においてある事態が発生いたしまして、そのために米国の軍隊が施設、区域を使用するということは十分あり得るわけでございますけれども、交換公文におきまして、日本国から行われる戦闘作戦行動についてはすべて事前協議の対象になるということが書いてございますから、韓国において発生いたしました事態に対して、アメリカの軍隊が日本国の施設、区域を使用して戦闘作戦行動に出るという場合には、必ず事前協議が行われるものと考えております。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 さて、事前協議が行われた結果、場合によったらイエスもあり得る、これは安保条約の条文を読むとおのずと明らかだというふうなぐあいに先ほど外務大臣言われたわけでありますけれども日本においては日本国憲法というのがあるわけです。日本国憲法の第九条という条文の立場からいたしますと、非核三原則という、あの国是であるという中身からすると、いかなる核兵器といえどもこれをつくってはならない、持ってはならない、当然でありますが、持ち込ますことも認められないはずであります。あらゆる戦力を放棄している、国の交戦権もこれを認めないというあの憲法第九条から考えたら一体これはどうなるのですか。ひとつ外務大臣の御見解をお伺いしたいです。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはどうなるという最後の、これがまたしてもはっきりいたしませんけれども、憲法第九条といまの問題との関連は、これは幾たびか国会において議論され、そうして政府側の統一した答弁があるはずでございます。ただいま政府委員が知っておりますかどうかわかりませんが、知っておりましたら申し上げます。
  71. 松永信雄

    松永(信)政府委員 いまの御質問は、恐らく憲法第九条があるから、核兵器を使用してアメリカの軍隊が日本を防衛するというようなことは起こり得ないのじゃないかという御質問じゃないかと存じます。これにつきましては、従来政府が申し上げておりますのは、憲法第九条の規定は、自衛権の発動として日本日本の国を守らなければならないときに核を使うこと、核を使用して防衛することを禁止しているものではない。しかし、日本みずからが持つことはまた別個の問題であるということであろうと思います。先ほど御質問がありましたのは、戦闘作戦行動についての御質問でございまして、これについてはすべてが事前協議の主題になる。ですから、韓国における事態が発生しましたときに事前協議の主題になるのだということを申し上げていたわけでございますけれども、核の問題についてはその交換公文にあります装備の重要な変更というカテゴリーに属する問題でございまして、戦闘作戦行動の問題ではございませんので、そのことを念のために申し上げておきます。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 憲法第九条についての問題は、いまの局長答弁を伺っておいて、次回にまた私は蒸し返しをいたします。いまの答弁というのは大変問題がありますよ。  さて、もうあとわずかの時間ですから、これだけはひとつ聞いておきたいことを申し上げます。  四十九年、昨年の八月に、参議院の外務委員会で、外務省は、朝鮮半島における韓国に対する北からの脅威はないという見解を明らかにされました。続いて九月五日、当外務委員会で私の質問に答えまして、外務省は韓国政府は朝鮮半島における唯一合法の政府とは見ないとの見解を明らかにされました。  ところで、先ごろ金日成朝鮮民主主義人民共和国主席が中国を訪問されて、四月二十八日に中国北朝鮮共同声明が出されております。またインドシナにおいては、北ベトナムの全面勝利というものが現実の問題となりました。こういうふうな状態を踏まえて、こういう新たな国際情勢を踏まえて、韓国に対する北からの脅威は増大したというふうに日本政府はお考えになっていらっしゃるのか、それとも昨年の八月から九月にかけての段階で外務省が明らかにされた見解をそのまま現在に至ってもとり続けて、考え続けていらっしゃるのか、その辺をまずお伺いしたいのです。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題が二つございますので、一つずつ分けて申し上げますが、韓国の政府地位の認識につきましての外務省の答弁は、韓国との基本関係条約第三条に基づく答弁でありますことは明らかでございます。すなわち、国際連合総会決議第一九五号に明らかにされているとおり云々ということでございます。  それからもう一つの問題は、この問題についての昨年の政府答弁はいろいろの背景のもとになされておるわけですが、かつて昭和二十五年以来韓国においてありました動乱といったようなものはその後長い年月とともにおさまって、現在あのような大きな動乱が起こり得る危険はない。しかしながら、もともと脅威というものはそれを感じる側における相対的な、主観的なものであるから、それについてわれわれが見解を述べるということは適当なことではあるまい。ただ、一九七二年でございますか、南北間の対話が一遍開けるやに見えた。そのときには最も両国の関係が緩和された状態であったと思いますが、それが必ずしも思うように進展せず、最近においては多少の局地的な衝突、紛争のようなものがある。もとより、であるからといってかつての朝鮮動乱のような大きな危険を直ちにはらんでおるものとは考えませんけれども、そのような認識でおると存じます。すなわち、そういう意味では、ここ数年の間にいわゆる一進一退がございますから、そのときどきで多少ずつ情勢が変わりますから、見方が変わってまいるのは当然であろうと思いますが、基本的に申しますならば、恐らくかつてのような大きな動乱というものが再現するということではないであろうとは思うものの、完全な平和が回復された状態ではなく、局地的な争いが最近においてもしばしば起こっておる、このような状態であろうと思います。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 明確にお答えをいただきたいのです。それならば、結論は一体どういうことになるのかということがさっぱりわかりません。  さて、私はあと、時間の節約という点で三つの事柄を一括して質問して終えますから、それに対して明確に御答弁をいただいて時間を終えましょう。  一九六九年十一月二十一日に、御承知のとおりいわゆる佐藤・ニクソン共同声明がございます。この共同声明の中に韓国条項があって「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」ということが述べられている。昨日の本会議答弁で、内閣総理大臣は安保条約を堅持するという大前提で答弁を展開なさいました。安保条約を堅持するという基本的立場というものは、この問題を考えたときに、この韓国条項における「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」という部分の韓国の安全は、その後、昨年の八月から九月段階の外務省認識によって、朝鮮の安全は日本自身の安全にとって緊要であるというふうに考え直されてもいいやに私たちは理解をしていたわけであります。その点が現実いまどういうふうに考えられているかということ。  したがって、二問目です。そういうことであるならば、これは日米間においての共同声明でそのように韓国条項が考えられたわけでありますから、朝鮮の安全が日本自身の安全にとって緊要であるならば、韓国に対して日本としては一体防衛にどのように力をかすのか、日韓間において一体何をしようとするのか、これは非常に大事な問題であろうと思いますが、具体的には一体この問題がどのように考えられ、具体的に何が取り決められているのか、この点がよくわかりません。これが二問目です。  三問目、八日に金鍾泌首相が来日されますが、この金鍾泌首相の来日についても、いま一問目、二問目に対してお答えになる認識をもって会談に臨まれるのであるとわれわれは理解しますから、そのことも三問目にお答えいただけたら結構でありますが、そういう意味を踏まえて一問、二問についてお答えをいただきたいと思います。  以上で終わります。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の情勢が安定をしていること、韓国が平和であるということ、それはわが国の平和と安定に重大な関係のある問題である、そういう認識を政府は持っております。そのことと朝鮮半島云々との関連でございますけれども、韓国が非常に不安定な状態になるということは朝鮮半島自身が不安定な状態になるということでありますから、私は両方のことが別のことだとは考えません。  次に、わが国が韓国の安定のために何をなし得るかということであれば、それはやはりわが国としては、御承知のように軍備の面であるいは武力の面で何らなすところはないわけでありますから、両国の関係が、お互いに理解をし合い、そしてわれわれとして韓国の民生の向上と安定のためにできるだけの貢献をしていく、このことがやはり韓国の安定に資するゆえんであろう。もとより韓国の政治のあり方について、われわれとして本来いろいろ望ましいこと、あるいはかくあってほしいということ、これは全くないわけではございません。が、これはやはり主権国としてわれわれが申し得ることにはおのずからの限度があるということはわきまえておらなければなりませんので、私どもとしましては、一般に韓国の民生が安定をし、さらに増進されるということのために力を尽くすことが安定に資するゆえんであろう、このように考えておるわけでございます。
  76. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後三時三十九分開議
  77. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。水野清君。
  78. 水野清

    ○水野委員 ただいまこの外務委員会理事会が隣の別室において開催されておりまして、その理事会の後、沖繩県議会からの陳情を受けたわけであります。陳情の内容は、御承知の、沖繩駐留の米兵による女子中学生暴行傷害事件に関する意見書でございますが、この事件に関して、ただいま、これは沖繩県議会の方々のお話でございますが、外務省のアメリカ局長が、駐留軍のある限りある程度こういう犯罪事件というのは発生する可能性があるのだというような発言を、どういう場所でされたのか私はつまびらかにしませんが、言われた、これは非常に不穏当な発言であるということを言われましたが、最初に、この問題についてアメリカ局長から簡単に釈明をお願いをしたいわけであります。
  79. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 最初に、私はこの沖繩の二少女に対する暴行事件報告を受けましたときに、私自身といたしまして非常なショックを受けまして、非常に大きな憤りと深い悲しみを覚えたのでございます。  私は、この事件を知りました後に、直ちに在京大使館のピートリー参事官に対しまして深く遺憾の意を表しますとともに、こういう事件が今後決して起こることのないように、米軍の軍紀を厳正にしてもらいたいということを強く申し入れました。  さらに、四月二十四日に日米合同委員会の会合の機会に、再びこのことをアメリカ側に対して正式に自分で申し入れる考えでございました。ただ、たまたま当日参議院の外務委員会が開かれまして、私の出席も求められておりましたので、私が出席できずに、代理の者にアメリカ側に対して強い申し入れを行わしめた次第でございます。  したがいまして、私としましては、このような不祥事件が多少起こってもやむを得ないというような感覚でこの問題に対処していることは決してございません。私としましては、このようなことは起こってはならないことであり、また許すことのできない行為であるというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、このような忌まわしい事件が今後決して起こらないように、厳正に軍紀を保ってもらいたいということをアメリカ側に対しても強く、またたびたび申し入れている次第でございます。  このような次第でございまして、この四月二十四日の参議院外務委員会において私の行いました発言が適切でなかったということは事実でございますので、この点は深く反省いたしております。心からおわび申し上げる次第でございます。
  80. 水野清

    ○水野委員 たまたまそういう陳情がありまして、アメリカ局長の発言が問題になりましたので御注意を申し上げたわけでありますが、当時者というものは、事件の取り扱いに際して比較的事務的にものを考えるという可能性がありますが、どうかひとつ、国民一般感情というものを背景に、こういう問題のときには発言その他については十分気をつけていただきたいと思うわけです。  実はきょうは、これも沖繩の問題でありますが、昨年伊江島で起こった発砲事件、基地周辺の住民が薬きょうを拾いに入っていて、それを制止に入ったか何か、アメリカ兵が傷害を与えたという事件であります。この事件について伺いたいわけでありますが、その後の日米間の折衝の状況を、私の持ち時間が余りありませんので、ひとつかいつまんで御説明いただきたいと思います。
  81. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 昨年の七月十日に伊江島で発生いたしました米兵の発砲事件につきましては、同年七月二十九日にアメリカ側が公務証明書を発給いたしまして、同日、日本側がこれに反証がある旨をアメリカ側に通報して以来、第一次裁判管轄権の帰属をめぐりまして日米間で長い間協議が行われてまいりました。すなわち、昨年七月三十日、問題はまず日米合同委員会にかけられまして、合同委員会は、同日、本件の法律的問題の検討を同委員会の補助機関である刑事裁判管轄権分科委員会に付託しまして、以来、同委員会において慎重な検討が行われました。  同委員会におきましては、日本側は事件地位協定十七条三項の(a)の(ii)にいう公務執行中に発生したものではなく、したがって、第一次裁判管轄権は、地位協定の同条の規定に基づいて日本側が有するという旨を主張してまいりましたが、米側は事件は公務執行中に発生したものであり、第一次裁判権は米側にある旨を主張しまして、双方の見解が対立し、たびたびの会合における審議の結果、この点をめぐる双方の立場の対立を最終的に解決することができなかったのであります。したがいまして、同分科委員会は昭和五十年、本年の四月十七日に合同委員会に対しまして、第一次裁判管轄権の帰属について双方の対立した見解を併記した報告書を提出いたしました。  合同委員会は、刑事裁判管轄権分科委員会よりのこの報告書を検討いたしました結果、本件裁判管轄権の帰属に関する日米双方の法的立場の相違を合同委員会の場で解決することは不可能であるという結論に達しまして、四月二十四日、この点に関する日米の双方の法的立場を害することなく、地位協定第二十五条第三項に基づき、問題解決を両政府間の交渉にゆだねる旨の決定を行いました。  政府は、合同委員会から問題が移されました次第にかんがみまして、アメリカ政府と協議を重ねました結果、五月六日、昨日、わが方としましては最終的に次の諸点を考慮して、この事件の裁判管轄権の帰属に関する日本側の法的立場を維持しつつも、本件の早期解決を図るという実際的見地から、本事件については日本側は裁判権を行使しない旨をアメリカ側に通報した次第であります。  すなわち、第一に、本事件をいつまでも未解決のままにしておくことは、加害者の処罰、被害者救済の観点から問題である。第二に、本事件における加害者の行為はさほど悪質なものとは認められない。第三に、米国政府は次に述べるとおり、本事件についてその立場をわが方に説明をしており、本件につき適正な措置がとられるものと判断される。すなわち、  一、米側はかかる事件の発生を遺憾とするものであり、将来の同様な事件の再発防止のため万全の措置をとった。  二、本事件発生直後米側は、非公式にではあるが、公務証明書を発給しない旨の意向を表明したにかかわらず、その後公務証明書を発給し、誤解を招いた点は遺憾である。  三、米側は加害者に対し速やかに刑事あるいは懲戒の手続、すなわち処罰のための手続をとり、その結果は日本側に通報する。  四、被害者に対しては補償する。  以上が米側がわが方に説明をしておる諸点であります。  最後に第四として、本事件の解決をさらに遷延せしめることは、日米友好関係を維持する見地からも好ましくないと判断される。  以上の次第でございまして、この問題について決着をつけた次第でございます。
  82. 水野清

    ○水野委員 要するに、いまアメリカ局長お話によると、この日米合同委員会の分科会ある刑事分科会ですか、刑事分科委員会で双方で討議をしたけれども、第一次裁判権の帰属については全く意見が並行して、その決定ができなかった、そこで上部委員会の合同委員会に上げたけれども、ここでも、もちろん専門委員会の決定がそういうことであるから決定をすることに至らなかった、そこで地位協定の二十五条の規定によって、日米両国の外交折衝に任せる、言ってみれば外務省在日アメリカ大使館との間でいろいろ話し合いをした結果、いろいろな双方の意見はあったけれども、この際は日米の友好のために、第一次裁判権をアメリカ側に譲ることにした、簡単に言えばこういうことですね。  そこで承りたいのですが、最初にアメリカの基地の司令官の方から、この米兵の行為は公務ではありません、公務証明書を発給しないつもりですというような非公式な通知があった。それにもかかわらず、その後には公務証明を向こうはつけてきたという、向こう側に大変不備な点がありますね。この点について、日本側は折衝の最中にアメリカ側にどういう追及をされたかということを明らかにしていただきたいわけです。合意に至らなかったという結果はわかっておりますが、その点についてはどういう追及をされたか。これは刑事分科委員会の席上であります。その関係の方は法務省ですか、法務省の方に……。
  83. 筧榮一

    ○筧説明員 私、刑事局の総務課長といたしまして、ただいまお話しの刑事裁判管轄権分科委員会日本委員長を任命されておるわけでございます。その関係で、いまお話しのありましたように、昨年八月五日に第一回の公式の分科委員会を開きまして以来、本年四月十一日までの間、八回、正式のものは八回でございますが、八回にわたり公式の委員会を開き、なおかつその間、先方、米側の委員長と私と非公式に数回会合を持ちまして、いろいろ議論をし、論点を煮詰めた次第でございます。  ただいま先生お尋ねの米側の方の、最初の、非公式ではございますが、公務証明書は出さないということを言っておりながら、途中でといいますか、二十九日に公務証明書を出したという点も分科委員会におきましては、当然論議と申しますか私どもの方からその点についてもいろいろ追及したわけでございますけれども先方の方は、当初の非公式な見解、それは後に正式に公式なものとしては公務証明、公務中であるという判断に達したので、正式には公務中、公務証明書を出したという、それ以上に詳しい説明は得られませんでした。
  84. 水野清

    ○水野委員 この事件の実は詳しい内容は私はわからないのですが、要するに演習が終わった、それで演習の際に機関銃か小銃かわからぬけれども、撃った弾の薬きょうがこぼれていて、それを基地周辺の住民が墓地の中に入って取りに行った、簡単に言えばこういう事件ですね。要するに、その取りに行ったところへ、アメリカの一等兵のキャロル・E・ロックという軍人が地元民に信号銃を発砲して、これがその腕に当たって傷害を与えた、こういうことなんで、確かに公務と公務でないとの境の非常に不分明な事件であるということは私はわかるわけです。  そこで、地位協定が締結された以降、これと似たような事件というものは起こったことがありますか。あればどういう事件があって、それはどういう結果であったかということをちょっと簡単に、時間がないものですから……。
  85. 筧榮一

    ○筧説明員 公務中か公務外であるかという点が争いになった本件のような事例は、現行の地位協定施行後は本件が初めてでございます。ただ、昭和三十二、三年と思いますが、旧行政協定時代に、御存じの群馬県でございましたか、いわゆるジラード事件というのがございまして、これは薬きょう拾いに入っておりました日本婦人を、そこで歩哨に立っておりました米兵が招き寄せてこれを射殺したという事件でございます。この点につきまして、当時同じように米側は公務中と主張し、日本側は公務外と主張いたしますと同じように、分科合同委員会、さらに刑事裁判管轄権分科委員会で審議が続けられました。その結果は、米側の方が第一次裁判権の不行使を日本側に通告してまいりまして、日本側の方は被疑者を起訴いたしまして有罪の判決が確定しております。それ一件でございます。
  86. 水野清

    ○水野委員 いまのお話のように、ジラード事件では向こう側は日本側に第一次裁判権を譲っているわけですね。今回は逆にこっちが譲ったわけですね。その点で刑事分科委員会の折衝の際に、そういう前例というものも提示をしてお話しになりましたか。時間がないので、そのことをひとつお答えいただきたいと思います。  それから、これは引き続いて外務省から承りたいのですが、地位協定二十五条の運用で、外交折衝にこの結論を任したということになったわけですけれども、こういうことは今回が初めてだというお話ですが、こういうことが何度か重なってきますと、地位協定自身が無意味な存在になるという可能性が出てくるわけですね。これについてどう考えておられるか。あるいはさらに、この地位協定の十七条の規定、いわゆる公務執行中の行動であるかどうかというような点自身がどうも不備なんじゃないか。この点において、もう少し細目をきちっと規定をしておく必要があるのじゃないかという問題も出てくると私は思うのです。この点についても時間がないのですが、お答えをいただきたいと思います。最初に法務省の方、簡単にやってください。
  87. 筧榮一

    ○筧説明員 本件の交渉の過程におきましては、特にジラード事件の前例があって、それがどうということは提示されてはございません。あくまで本件自体の事実に基づきまして公務中、公務外の主張を繰り返したわけでございますし、その後の折衝におきましても、特にジラード事件があったからというようなことが提示され、あるいはその内容をなしたというようなことはないわけでございます。
  88. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 地位協定の二十五条三項によりますと、問題が両国政府の考慮に移されました場合、両政府は通常の外交折衝としてこの問題の解決を図ることになるわけでございますけれども、二十五条の三項という規定は、合同委員会地位協定のほかの条項に基づいて問題を解決することがどうしてもできない場合を前提としておりまして、こういう場合は、理論的に考えましても実際的に考えてもきわめてまれなケースであると思います。普通ならばもちろん十七条の関係規定で全部解決できるわけでございますが、ただいま法務省の方からもお話がありましたように、公務中であるかないかが非常に争われ、しかも今回のようなボーダーラインケースの場合には非常にその判定がむずかしく、刑事裁判管轄権分科委員会でも長い間折衝を重ねていただいたわけでございますが、どうしても意見が一致を見ないということでございまして、さらにそれが合同委員会に上がってまいりまして、私はその合同委員会日本側の代表を務めておりますが、そこでもいろいろ議論を重ねましたが、結局は両者の意見が一致いたしませんで、わが方はやはり公務中であると主張し、先方は公務外であるということを主張したために、このままいつまでも、この対立を続けるということは両国関係の大局的見地から見ても望ましくないということで、先ほど申し上げましたように、事件自体がさほど悪質なものではないということをも考慮し、また、その他アメリカ側が種々の保障を与えましたので、われわれも大局的見地に立って、第一次裁判権をアメリカ側に譲ることといたした次第でございます。したがいまして、二十五条三項というのはやはり地位協定の一部をなしておるわけでございまして、関係の規定によってどうしても解決できない場合には外交折衝があり得るということを予想しておるわけでございますから、この地位協定全体が不備であるということは申せないと思います。
  89. 水野清

    ○水野委員 大臣に伺いたいのですが、先ほども山崎アメリカ局長の御説明の中に、アメリカ側が今回のこの事件の発生を遺憾とするということを意思表示をしている、こういう話があります。実際、遺憾とするということはその当事者同士の話し合いてあって、実は私ども——私は自由民主党の代議士でありますから、大臣も御承知のように、日米安保条約というものの存在、これは日本の防衛上に必要なもので、少なくとも当面日本国の安全のためには不可欠なものだというふうに認識をしております。しかし、実際問題として、先ほど冒頭に申し上げた女子中学生に対する暴行傷害事件とか、こういった事件がたびたび発生をしてきますと、要するに、アメリカ側はその都度遺憾の意を表するということでありますけれども、遺憾の意を表したその行為というものは、比較的報道やいろいろなもので実際問題は伝えられておりません。そうすると、何となく国民全般に、向こうは犯罪のやりっ放しである、それから、アメリカ局長は折衝で大変御苦労なすっているのに失礼ですけれども、外務当局は、外交折衝にまで持ち上げられたこういう一次裁判権の帰属問題を簡単にアメリカ側に譲ったのではないか、こういうふうな印象に取られがちであります。これは先ほどの沖繩県議会の陳情にもありましたように、小さなことは日常毎日毎日起こっております、こういうお話ですが、そういうものの累積は意外に日本の国民全体の反米感情につながるわけでありますし、そのことがかえって日本の安全のために駐留しているアメリカ軍の効果を大きく減殺していく、むしろマイナス面が出てくるというふうに私は認識をするわけです。そしてどちらかと言うと、いままでのわが党の歴代内閣の姿勢というものは、こういうものに対してアメリカ政府に対するものの申し方がどうも不十分であった。私がこういう席で言うべきじゃないのかもしれませんが、私はそういう認識をしております。大臣はこういう点についてどう御判断をなすっておられるかということを承りたいわけでございます。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま水野委員が言われましたこと及び、言葉には出されませんでしたが、その含意には私も十分共鳴をするところが多うございます。  このたびのこの事件日本関係者もずいぶん苦労をいたしましたし、また、水野委員の言われましたようなこともかなり意識をしつつ処理をしようとしたようでございますが、昨年の七月以来のことで、もうぼつぼつ一年に近くなってまいります。関係者の処罰等々の問題もございますので、アメリカ側が幾つかの点で遺憾の意を表明したということで裁判管轄権を先方に譲るということになったわけでありますが、このことは決して、今後こういうことが安易に起こり得て、そうして裁判管轄権も日本が譲るということのいわゆる先例をなすものではなく、われわれとして主張すべきは十分主張をいたして、そしてこういうことが起こることを未然に防ぐという努力をいたさなければならない種類の事件だと思います。  確かにこういうことは、いわゆる安保体制そのものについてすら国民の支持を失わしめる結果になりやすい出来事でありますので、私どもも十分注意をいたしますし、また、アメリカ側もその趣旨においては当然同感をしてくれるはずのことでございますので、これからも私ども考えていることを十分に周知徹底し、また理解をしてもらう努力を怠ってはならないと考えております。
  91. 水野清

    ○水野委員 ひとつ内閣としても、こういう問題はもう少し考え方を変えて、積極的にアメリカ側に抗議をする。アメリカ側の遺憾の意の表明もいわゆる当事者間だけでなくて、私は彼らもメンツがあると思いますけれども、そういう問題に終わると思いません。さらにもっと重大な問題に波及をしていくと思いますが、ひとつ外交折衝においてもその点をしっかりやっていただきたいと思います。  時間がありませんが、残された時間にもう一つ沖繩の問題について承りたいのです。  那覇空港にこれまで対潜哨戒機のP3が駐留しておりました。外務大臣は、たしか三月の国会のことでありますが、五月に入ったならば那覇空港のP3は嘉手納基地に移駐をするはずであるというようなお話をなすったことがあります。また最近の新聞報道によると、五月十五日ごろ移駐というようなこともすでに載っておりますが、その後の経過を承りたいと思います。  さらに、これは運輸省の航空局の方に、P3がどいた後の空港の使用方法ということを承りたいと思います。一部の方々からは、この際、自衛隊の那覇空港使用まで阻止しようというような動きがありますが、これについてはどういう計画を持っておられるかというお話をしていただきたい。外務省からお願いします。
  92. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 現在、沖繩県の那覇空港に駐留いたしておりますP3等の米国海軍及び海兵隊の航空機の嘉手納飛行場への移転につきましては、一昨年の第十四回日米安保協議委員会におきまして、嘉手納飛行場における代替施設の提供と普天間飛行場における改良措置の実施を待って行われる旨、日米間で原則的な合意を見た次第でありますが、先般必要な諸工事が完了いたしましたことに伴いまして、昨六日、在京大使館より外務省に対しまして、P3等のこれらの航空機は五月七日に嘉手納飛行場への移駐を行うという旨の連絡があったわけでございます。完全に完了いたしましたかどうか、まだ確かめておりませんけれども、恐らくきょうじゅうにはこの移駐が終わるのではないかと存じます。
  93. 服部経治

    ○服部説明員 P3の跡地の利用につきましては、先生も御承知と思いますけれども、那覇空港は非常なその特殊な経緯からしまして、私ども、民間航空機のための使用という点に関しまして、非常にエプロン地区等が手狭で不便を感じておりましたので、今回返還されることになりますあのP3の跡地を、民間航空機のためのエプロン地域中ということで活用できれば非常にありがたい、ぜひそうあって欲しいというふうに考えておるところでございまして、たまたまあのP3の跡地の一部につきまして使用の御希望を持っておられます防衛庁さんとの間で、今日まで鋭意その具体的な利用の仕方等につきましてお話し合いを続けさせていただいてきておるという状況でございます。私どもとしましては、すぐ間近に迫っております国際海洋博時の民航機の就航便数の増加というようなことも念頭に置きまして、何とか民航機のために必要にしてかつ十分なエプロン地区の確保をお願いしたいというような線で、お話を進めておるような次第でございます。
  94. 水野清

    ○水野委員 以上です。
  95. 栗原祐幸

    栗原委員長 金子満広君。
  96. 金子満広

    ○金子(満)委員 最初に、外務大臣に沖繩問題で一言だけ質問しておきたいと思います。  本日、沖繩県議会の代表が県議会の総意として意見書を持ってまいりました。ここに四項目出ております。米兵による女子中学生暴行傷害事件に関する意見書です。これについて、「上記のような極悪非道な犯罪を起こし、又は起こすような部隊を即時撤去すること。」「2被疑者を直ちに沖繩県警察に引き渡すこと。」これはなされましたが、三番目「被害者及びその家族に対し完全な補償をすること。」「4被疑者の属する第三海兵師団司令官等責任ある者をすべて解任し、犯罪を根絶するため軍紀を粛正すること。」  以上の四項目については私も全く同意いたしますが、このことを完全に実施することが、同じような事件を二度と再び起さないという当面の保証になると思うのです。この点について、外務大臣、その意見書の方向に沿って完全に早急にやる意思があるかどうか、その点を一言承っておきたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 容疑者についての処罰及び被害を受けられた方についての補償、この点については御要望のことはまさしくそのとおりであると思いますので、事は司法事件に属しますけれども、そのようにとり行われるべきものであるというように考えております。  それから、軍紀を厳正にしてもらわなければ困るという点につきましては、すでに先ほど政府委員が申し上げましたように、米国に対しまして正式にそのことを申し入れ、そうして米国からも、極力注意する旨の遺憾の意を添えまして回答を受けております。  ただ、この場合、このような人間が属する部隊ということでありますが、この容疑者はわが国に到着いたしまして非常に日が浅かった由でございます。部隊全体の軍紀が乱れている、綱紀が乱れていると考えることが必ずしもすぐに適当であるかどうかということもございます。それからまた、その司令官を解任云々ということでありますが、この二つのこと、つまり部隊の責任、司令官の責任ということになりますと、ここで大事なことは、この出来事は公務として起こった、公務中に起こったということになりますと、再び裁判権の問題になり得るわけでありますが、私どもはこれは公務中の出来事ではないという考えをとっておりますので、したがって、それがすぐに部隊の問題になるあるいは司令官の解任の問題につながるということを主張することと、これは公務中のことでないということとには多少の関係がございます。したがって、その部隊あるいは司令官云々ということについては、すぐに政府としても同意をいたしますということは申し上げかねると思います。
  98. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、1と4ですね。「極悪非道な犯罪を起こし、」というこの部隊は、第三海兵師団であることは天下周知の事実なんです。沖縄で起こしている米軍の犯罪の八割がこの部隊に属するものだと言われているわけなんです。さらに、公務であるとか否とかそういう問題にかかわりなく、こうした部隊が犯罪を現に起こしている、それが日本の主権にかかわる重大問題だというときに、日本政府とすれば、単に申し入れをするとかあるいは実情がどうかというのじゃなくて、こういう問題については明確に要求すべきだ。いまの大臣の言葉で言いますと、沖繩県議会はこういう総意だけれども——これは沖繩の自由民主党も賛成しているわけですから。沖繩の県議会はそういうものであるけれども大臣としてはこの1と4には同意しかねる、こういう点を明確にいま申したわけですが、そのとおり解釈してよろしいですか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直ちには政府として同意をするわけにはまいりませんと申しました意味は、おっしゃっていらっしゃる意味をよく検討することは検討いたします、しかし、今日そういう御要望があって、今日どう考えるかということでございましたから、公務でない行為についてその司令官の責任を問うということになれば、それはどのような論理のもとに行うか、また、どのような考え方のもとにそのような要望が出されたかということもよく私ども考えませんと、うっかりしましてこれは公務に属するというようなことに話が飛んでいってしまえば、これは恐らく要望を出された方の本意ではないわけでございますから、その辺のこともよく検討しなければならないと思います。
  100. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、再度、公務であると否とにかかわらず、こういう問題については沖繩県議会が総意をもって決めた方向で当然政府努力すべきである、そこにいろいろの実情とかなんとかそういうものをはさまないでやることを要求して、この問題は後日また追及をしていきたいと思います。  そこで、次にベトナムの問題について若干伺いたいと思います。  最初に、政府はきょうの閣議南ベトナム臨時革命政府承認し、その通告を行ったということが伝えられておりますが、その点について実際はどうだったか、この点を承っておきたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお述べになりましたとおりでございます。
  102. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、前々からよく政府閣僚の中から出ている言葉でありますが、実効的支配が確立した場合ということを言っておったわけですが、南ベトナム臨時革命政府の実効的な支配は南ベトナム全土に及んだ、当然、そういう確認の上になされたと思いますが、さてそこで今後、外交関係樹立するということになると思いますが、どんな方法でこれを行おうとしているか、その点について質問をしたいと思います。
  103. 中江要介

    ○中江政府委員 けさ日本政府が決定いたしました南ベトナム臨時革命政府承認と申しますのは、理論的には、南ベトナムにおける前の政権が崩壊した後に新しく政権の座についたこの政府承認したということでございまして「この政府のもとにある南ベトナムの共和国と日本国との間の外交関係をどうするかということは、この新しい政権が前政権の時代にあった外交関係の処理をどういうふうに認識するかということが、第一義的に問題になろうかと思います。その点につきましては、現在までのところ、まだ正式のコミュニケーションも確立しておりませんし、その意図ははっきりいたしません。ただ、日本政府といたしましては、新しい政府を通じて、南ベトナムとの間に友好関係を深めていきたいという希望を持って、先方の出方を見守っているというのが現状でございます。それで、先方の認識に応じまして、できるだけ速やかに外交関係の設定に進みたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  104. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、臨時革命政府の出方を注目しているということであって、こちらは、つまり日本政府の側は、承認はしたけれども外交関係の確立については、こちらから接触をするというようなことは考えていない、こういうように理解していいのですか。
  105. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま申し上げましたように、新しい政府承認とともに、この新しい政府のもとで日本南ベトナムとの間の友好関係を深めたいという希望を申し述べているというのが現状でございまして、通常の場合、政権の交代が即、外交関係の設定について新たな合意が要るということには、必ずしもなっておらないということがございますので、そこのところは、こちらから押しつけるというのではなくて、新しいベトナム政府となった南ベトナム臨時革命政府の主張というものをまず考慮に入れていきたい、こういうことでございまして、外交関係の設定を急がないという意味ではございません。
  106. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこで、臨時革命政府承認した、それから外交関係の確立ということについてもそうした希望を持っている、できるだけ早い方がいい、こういうように聞き取れたわけですが、これは当然のことですが、そこで、南ベトナム臨時革命政府との外交関係樹立されるということになれば、当然、大使日本駐在とかまたは代表部の設置ということを考えなければならぬと思います。こういう点についてはどのように考えていますか。
  107. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほども申し上げました外交関係の設定ということは、具体的には、いま御指摘の外交使節の派遣、接受ということになるわけでございまして、、外交関係は、日本の通常の例でございますと、政権交代でも、国と国との関係外交関係でございますので、これは継続している。そうすると、外交使節としていままで接受していた外交使節をそのまま接受するのかどうかというのは、これは通例の場合ですと、そのまま接受されるのが多いわけでございますが、今度のような事態の後どうなるかということは、承認したばかりでございますけれども、この承認した政府日本政府との間でもし話し合いが行われてくれば、その中で解決されていくだろう、こう思います。
  108. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、臨時革命政府日本に代表部あるいはまた大使の駐在ということを欲した場合には、その方向で肯定的に解決をする、こういうことになりますか。
  109. 中江要介

    ○中江政府委員 通例、これは相互主義によってやるわけでございますので、わが方が希望していると同時に先方が希望すれば、これは当然のこととして、その大使館なり何なりの設置を歓迎するということになろうかと思います。
  110. 金子満広

    ○金子(満)委員 次に、臨時革命政府承認した、これは本日やったわけですから、そうしますと、日本政府の意思というものはここで確立したわけです。そこで、具体的な問題になりますが、南ベトナム臨時革命政府発行のパスポートを持参した南ベトナムの国民が、日本に入国を希望する場合には、当然、ビザは発行する、こういうことになると思いますが、そのように解釈してよろしいですか。
  111. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいまの前段のところは、これは実は、入国管理局の所管事項でございますが、この入管令にいいます日本国政府承認した旅券というものの中には、本日承認いたしました政府の発給した旅券は当然入るわけでございますので、通常の承認国の旅券を所持した者としての扱いを入管当局はすることと思います。したがいまして、その旅券に対する査証の発給ということは当然あり得る、こういうふうに思います。
  112. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、現在、在日本朝鮮人総連合会から、南ベトナムのアジア・アフリカ連帯委員会の代表二名の招待がされているようでありますが、この入国は何の障害もなく実現する、このように解釈してよろしいわけですね。
  113. 中江要介

    ○中江政府委員 この問題は、第一義的に法務省の所管事項でございますので、ちょっと外務省からは御判断を申し上げる立場にはない、こういうことですが、一般的に承認国の旅券を所持した人間の入国申請という扱いになるということは申し上げられる、こういうことでございます。
  114. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこで、今後の外交関係の確立の問題ですが、当然、日本政府臨時革命政府との関係は、平和五原則に基づいて対等、平等、内部問題は不干渉という立場で行うのがあたりまえだと思いますが、この点はそのとおり解釈してよろしいですか。
  115. 中江要介

    ○中江政府委員 これはどの国でありましても、日本政府としては同じ立場で、平和を愛する立場から相手国との友好を図っていくということでございまして、相手国がどういう原則に立っているかということとは無関係に対処しているということでございます。
  116. 金子満広

    ○金子(満)委員 次は、これは外務大臣に質問をいたしますが、民族の自決、それから民族の独立ということは、今度のベトナムにおける事態を見ても、もはや避けることのできない世界の流れであるということははっきりしていると思います。これはベトナムの人民が長期にわたる戦いの中でかち取った大きな成果である。しかし同時に、アメリカの軍事介入、それから他民族支配の政策というものは、結局は失敗し、敗北したということを実証したと思うのです。  外務大臣に見解をお聞きしたいのは、民族の独立ということをどのような方法で達成するか、それからまた、いかなる政治体制を選ぶかということは、その国の国民自身の問題であって、他国が干渉すべきでない、こういうように考えますが、外務大臣の見解はいかがですか。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えます。
  118. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこで問題は、宮澤外務大臣の四月三十日の記者会見での発言です。これはテレビで放映されまして、私も外務大臣の言葉をそのまま聞き、正確に記録をいたしましたが、その中で大臣は、今度の事態について、わが国としては、確かに他の民族が共産主義のもとに隷属するということは不幸なことであろうという、そういう考え方ではアメリカ側と似たような気持ちを持っていた、そうしてさらに、アメリカ側の動機の邪悪でないことは信じておった、こう言い切っているわけです。さらに、日本はアメリカの戦争目的に協力してきたということをみずから述べているわけです。私は、アメリカのベトナムに対する戦争というものは侵略であり、やり方は介入であったということを思っているわけですが、日本政府はアメリカのベトナムに対する侵略戦争に、そして内部問題についての干渉に対して協力をしてきた、そしてアメリカの戦争目的というものは邪悪でないんだということを外務大臣みずから述べているわけですが、こうしたことを考えると、アメリカのベトナム侵略戦争の単に協力者だけでなく、共犯者というようにもなりかねないし、現に共犯的立場にある、こういうように思いますが、その点はいかがですか。
  119. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げたかったことは、一つの民族が共産主義を自分の自由な意志で選ぶのであれば、先ほど金子委員ががまさに言われましたような物の考え方に立って、それは自由である。私の申したかったことは、その隷属という意味であります。隷属というのは、自由な意思によってでない何かの力によって行うことでありますから、そういうことであるとすれば、それは私の考えていることと違う。  次に、アメリカが邪悪な意思を持っていなかったという意味は、領土的な野心等を持っていなかったと私は考えるという意味であります。しかし、アメリカが干渉したであろうということについては、これはやはり干渉をしたと考えるべきであろうと思います。もとよりその干渉はアメリカだけがしたのではないと思いますけれども、干渉したということは、これはやはり認めるべきであろう。しかし、その干渉が領土的野心等の目的を持って行われたのではないというふうに考えています。
  120. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は大変重大な発言だと思うのですね。つまり、邪悪な意図というのは、領土的野心があったかなかったかの問題ではない。私は、最初に平和五原則の立場に立つかどうか、それからもう一つは、民族の独立ということは、その国の国民がみずから自由な意思によって、どのような方法であってもその国の国民が決めるべきである、他国からいろいろの干渉や介入は行うべきでない、このことを申し上げたら、外務大臣はそれに同意したわけです。ところが、いまの言葉は全くこれに反している。そして、共産主義に隷属ということを言われました。私は、南ベトナムの人民はみずからの意思に基づいてやったのであって、もし、外務大臣は隷属したとすればということで、若干仮定の問題であるかのようなアクセントををつけています。隷属したと思っていますか、そうでなくてみずからの力で選んだと思っていますか。これは今後の外交問題もあり、日本政府責任ある地位にいる外務大臣でありますから、その発言は明確にしてもらいたいと思うのです。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二つの物の考え方が、思想の問題として平和な方法で争わずに、武力を用いて争われたということは明らかであったというふうに私は思います。どっちがいい、どっちが悪いということはいま申しませんけれども。これは民族が平和な方法で一つの主義を選ぶという経過をとったのでないことは明らかであります。
  122. 金子満広

    ○金子(満)委員 大臣は、アメリカの介入ということはきょう初めて認めました。つまり、この介入は内部問題に対する介入であり、介入の方法は軍事介入であったことは天下周知の事実です。しかも、その介入に日本が協力してきたということは大臣みずからが記者会見でも述べていることだと私は思います。  その記者会見の中で大臣はさらにこういうことを言っています。米国はベトナムに民主主義を確立するという善意のもとに五万五千の米兵の血を流した。しかしその崇高な意図は、国土や人情の違いから必ずしも受け入れられず、あたかも民族独立運動に立ち向かったようなかっこうになったことは米国にとって不幸だった、こういうふうに言うと同時に、さらに大臣は記者会見の中では、こういうまあ一種の悲劇の中で幾らか申しづらい点はあるけれどもと、こう前提にしておいて、南ベトナム臨時革命政府承認する、こういう意味のことを言っているのですね。そうしますと、今日ベトナムで起こったあの事態というのは、大臣の見解で言えば悲劇である、そしてアメリカは不幸だった、しかしその意図は邪悪ではなかった。これはもう支離滅裂になってしまうのですね。こういうことが、時間差があっても、あちこち出てくる。こういうことを考えると大変なことだと思うのです。  そこで、端的に四点質問します。  一つは、アメリカのベトナムに対して行った行為は、いまでも正しいと思っているかどうか。これが第一です。これはイエスかノーで答えてください。  第二は、日本がアメリカのベトナムに対する軍事介入に協力し加担してきたことは正しかったかどうか。いまでも正しいと思っているかどうか。これが二番目です。  三番目は、民族の自決権を闘い取ったベトナム人民を、現在でも不幸な出来事であるとあなたは思っているかどうか。これが三点。  第四番目は、南ベトナム人民の自決権の確立という明々白々たるこの事実を、共産主義への屈服、隷属とみなしているかどうか。これは今後の外交関係を進めていく上でも、それから日本政府ベトナムに対していまこの瞬間で何を考えているかという基調をなすものでありますから、明確にイエスかノーで答えていただきたいと思うのです。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国は、南ベトナム臨時革命政府承認いたしました。これから外交関係も結びたいと考えております。そういう立場から、ただいまのお尋ねにお答えをいたしますことは不適当と思います。
  124. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、いままで大臣がいろいろの立場で発言してきたことの真意というのは、時により場所によって違うわけでありますけれども、たとえばきのうの衆議院の本会議での共産党の松本議員の質問に対して、あなたは次のように述べています。「私の申しますのは、何々主義にかかわらず、力によってその主義に隷属させられるというようなことがあれば、それは不幸なことである、そう申しておるのであります。」こういうふうに言っています。そこで、「隷属させられるというようなことがあれは」——「あれば」と言うのですから、あったのですか、なかったのですか。ここだけ聞きたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ことがあれば不幸なことであると申しておるのであります。あったかなかったかというのは、どこにあったかなかったかというお尋ねでありますか。一般の仮定として、そういうことは不幸なことであると申しておるのであります。
  126. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は要領を得ない答弁だと思うのですが、あなたはベトナムに起こった事態は不幸だと一つは述べているのです。もう一つは、一種の悲劇だと言っているのです。そしてきのうは、「隷属させられるというようなことがあれば」と言っているのです。一体何を言わんとしているのだということだと思うのです。ですから、今日、南ベトナム全土に対して臨時革命政府の統治がくまなく及んだ、こういうことは明白であると思うのです、だからこそ承認ということになったのですから。そうしますと、あれは何か隷属してああいうことになったのか、そうでなくて南ベトナム人民自身の力でああいうことになったのか、その点を明白にしてもらいたいと思うのです。  それは外務大臣、せんだってあなたはキッシンジャー国務長官とも会ったわけですが、そのキッシンジャー氏は、五日の日にアメリカのテレビで次のように言っているわけですね。ベトナムを米国の政策の実験台にしたのは誤りであった、米軍をベトナムへ派遣すべきでなかった、こう述べ、さらに国内的な勢力による政権転覆を防ごうとして米国が軍事介入するのは一番悪い方法だと思う、米軍介入は国際的な要因を絡ませることになるからだ、こういうようにはっきり言っているのですから、明白に何々に隷属することがあればというこの外務大臣の発言というのは、私は正してもらいたいと思うのです。そうでないと、何かそこにあったようななかったような、しかし本当の腹はそういうものがあったととられるようなことでありますから、その点は再度明確に答弁をしてもらいたいと思うのです、仮定の問題でなくて。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮定の問題として、隷属するということは人間にとって不幸なことと思います。  次に、私はこの委員会でもしばしば申し上げておりますように、主権国家のあり方、政治のあり方についてとやかく私どもが申すべきでないということは一貫したわれわれの考え方であります。われわれは南ベトナム臨時革命政府を主権国家として承認をいたしたのでありますから、そのあり方についてとやかく申すべきでないというふうに考えます。
  128. 金子満広

    ○金子(満)委員 最後に一言。いま主権国家として認めるということですから、そうしますと四月三十日の記者会見、あるいはきのうの本会議での答弁の中には正しくない部分があった、あるいは不正確なところがあった、あるいはまた誤解を招く点があった。こういうような点について大臣はどのように思いますか。あれが全部正しかったと思っていますか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 主権国家としてこの国が誕生いたしましたいま、同じことを繰り返して申し上げるつもりはございません。
  130. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末英一君。
  131. 永末英一

    ○永末委員 五月一日の夜、アメリカ国防長官シュレジンジャー氏が予告なしの記者会見を行いまして、ベトナム後のアメリカの戦略について話をいたしました。そのことについて、外務大臣の御認識をひとつ伺っておきたいと思います。  その中で、前進防衛地域ないしは前方防衛地域という言葉を使いまして、その地域に該当する場所として西欧、ウエスタンヨーロッパと韓国この二つを挙げました。そしてわれわれ日本の国は間接的に前進防衛地域である、こう言う。この表現を聞かれた場合、あなたは一体、アメリカの国防の責任者が前進防衛地域という名前で何を考えているとお受け取りになりましたか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はその演説を実はテキストで読むのは読んだわけでございますけれども、国防長官の言われることでありますので、政治的あるいは外交的な意味合いで言われたのではないであろう。恐らくは軍事的に見まして、アメリカがアジア及びヨーロッパに持っておりますところの、つまり軍事的なコミットメントの最前線という言葉が使ってあったと思いますが、それをどのように軍事的に把握しているか、こういう考えを述べられたものであろう。実は聞いてみたわけではないのでありますけれども、それを読みましてそのように感じました。
  133. 永末英一

    ○永末委員 この国防長官の記者会見というのは、インドシナからの撤退後、アメリカが自分のいわば同盟国とでも申しますか、条約上コミットしている国々に対して、その条件に基づく遂行能力について疑いを持たれているかもしれない、それを払拭するために自分たちの決意、確固さ、こういうものを訴えたいという趣旨だと私は思います。また彼もそう言っておったと思うのです。したがってその場合に、これは国務長官の言っている言葉ではなくて、国防長官の言っていることですから、いざとなれば軍事的にコミットするのだ、こういうことがその背景にあるからこそ言われるのではないか。  その後の物語も、アメリカ軍が世界各国に駐留しているその配置の問題であるとか、いろんな問題が出ているわけですね。したがって、いま西欧のことはどうでもいいのでありますが、わが国と韓国のこの二つがアメリカにとって、片方の韓国の方は直接的な前進防衛地域であり、われわれは間接的な防衛地域であると彼が規定したこと、そのことについて外務大臣はどう受け取っておられるか、伺っておきたいと思います。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私、その方の専門家でございませんので正確には申し上げられませんけれども、恐らくは軍事的な立場から見まして、いわゆる彼らのよく使いますアドバーサリーと直接に接触する地点を前線というふうに表現したのではないであろうか、そういうふうに考えます。
  135. 永末英一

    ○永末委員 この言葉の由来は私もまだ経緯を調べたわけではありませんが、いわゆるフォワードストラテジーというのは、前かちアメリカの国防長官が何べんも使った言葉でございます。そういう意味合いで、私がいま伺っておりますのは、そういう一連の流れの中でなぜ韓国と日本とを区別したか、その区別のところを日本外交責任者であるあなたはどう受け取られておるか、そこを伺いたいわけです。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点でただいま私が専門家でないということをもう一ぺん繰り返さしていただきますが、ただいま申しましたようにそのアドバーサリー、あるいは相手方というのでありましょうか、それと直接に接触している部分をいわゆるフォワード・ディフェンス・エリアスと呼んでおるのではないだろうか、そういう意味で西においては西ヨーロッパ、東においては韓国、こう言ったのではなかろうか。そう思われますのは、その次にチャレンジというような言葉が出ておりますので、幾らかそういう意味合いがあるのではなかろうか、これは想像にすぎませんが、そういうふうに想像いたします。
  137. 永末英一

    ○永末委員 そのチャレンジの部分は、そういうチャレンジがあるとは国防長官はまだ判断してないという答弁も続いていると思いますが、私が伺いたいのは、あなたがこの前この委員会でもはっきりされたように、佐藤・ニクソン共同声明で日本の安全自身が韓国の安全と緊要な関係にある——逆の言葉が正しいのでありますが、つまり緊要ということは英文ではたしかバイタルになっておったと思いますね。バイタルという言葉はきわめて緊要度の強い言葉である。当時、台湾と韓国とについて言葉の使い分けがあったことが問題になりました。それを思い起こしますと、アメリカの戦略上、韓国が西ヨーロッパと並んで直接的な前進防衛地域であって、われわれが間接的であるというのは、アメリカと韓国との関係、アメリカと日本との関係を言っておるのではなくて、もしあなたが言われましたようにアドバーサリーに対しておる第一線が韓国である、こういう意味であるならば、韓国と日本との関係についてもその言葉は意味があるのではないか。それはちょうどあなたがこの委員会報告されましたように、一度は死んでおったあの佐藤・ニクソン会談のいわゆる韓国条項というものを復活された意味を、国防長官側からすればそういうぐあいに出てきておる、こう思われるのですがいかがでしょう。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも私は、一度は死んでおったというふうにいま永末委員が言われましたし、そのようにときどき御指摘を受けるわけですけれども、私は死んでおったということには実はその点を考えていないわけでございます。もとより朝鮮半島におけるこの緊張の度合いによりまして、そのことの持っているいわゆる緊要さの意味というのは多少ずつ強弱があろうと思いますけれども、基本的に韓国の安全、安定というものがわが国にとりまして、エッセンシャルという言葉が使ってあったそうでございますけれども、そういうことであることはやはり変わりがないのではないか、途中で一遍それが消えたものを私がまた掘り起こしたというような感じは、私は実は持っておらないわけでございます。
  139. 永末英一

    ○永末委員 先ほど同僚議員から、キッシンジャー国務長官のインドシナに関するテレビ放送の話が出ましたけれども、アメリカが軍事的なコミットメントをやるというケースはきわめてまれになってきておると外国としては判断せざるを得ない。ところがニクソンが第二期の大統領に就任しました後で出ましたいわゆるニクソン・ドクトリンというのは、にもかかわらず軍事的コミットをやるんだという信頼感を与国に与えようとしておったものだと思います。しかし、そのことが結局ベトナムにおいてその方針を変えたのでありますから、インドシナにおける情勢が一変をした。われわれの問題はいま朝鮮半島でありまして、わが国の政策は、韓国がアメリカの軍事的な後援を頼んでおる、そのことに対して、なおしり押しをしていくのか、われわれの朝鮮半島に対する政策はアメリカのしり押しをするのではなくて、なお独自の立場に立つ朝鮮外交というものをするのか、その辺が知りたいわけなんですね。したがって、いままででございますと、韓国の安全を日本自身の安全にとって緊要であるというような言い方だけをとり、そしてあのときの、佐藤・ニクソン共同声明のときですが、台湾に対するわが国の表現との違いということになりますと、アメリカの韓国政策を支持しておる、こういうように映ったわけである、だから問題になる。それが前の外務大臣のときに大分ぼけた表現になりましたので、変わったのは、強く言えば死んだということになるのでありますが、いま使いますと、死んだはずだよお富さんではございませんけれども、死んでなかった。死んでなかったけれども、アメリカの先ほど申しましたような軍事的なコミットを背景に置いたアジア政策は変わったと見ざるを得ない。そうしますと、いままで佐藤・ニクソン会談のときのアメリカの政策の中に含まれておったような状態からも変わらざるを得ないのではないか、その変化というものはあなたは意識をしておられるかどうか伺いたい。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国が安定をし、そして平和であるということは、わが国にとりましてごく普通に考えましてもきわめてわれわれの関心事であるというふうに考えるわけでございますが、一つには永末委員の言われましたように、そういうアメリカとの同盟、安全保障関係というものの直接の結果であろう、そのことは否定できないと思いますが、そういう観点からばかりでなく、わが国の隣国として、たとえそこにそのような軍事的なコミットメントがありましょうと、あるいはありませんとにかかわらず、隣国が平和であり、繁栄をしていってくれるということは、どのような場合にももう一つの隣国にとっては大切なことでございますし、ことに韓国とわが国とはきわめて近い隣国でございますから、そのようなアメリカのコミットメントがあるないにかかわらず、やはり韓国が平和で安定しているということは、われわれにとって大切なことではないか。したがいまして、アメリカのコミットメントの有無にかかわらず、われわれとして隣国が安定し繁栄するためになし得ることはなさなければならないというふうに考えるべきだと思うのであります。
  141. 永末英一

    ○永末委員 いま隣国という言葉で韓国のことを申されましたが、われわれにとっては北朝鮮地域にある政権もまた隣国ですか、やはり隣にあるグループでございますね。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題は確かにございます。私どもとしては単に韓国が安定をしてくれるのみならず、朝鮮半島全体が安定し繁栄をしてくれるということが、確かに北側もわれわれに近い地域でございますから、われわれとしてはやはりそれも望ましいということは、これはもう間違いのないことであろうと存じます。
  143. 永末英一

    ○永末委員 アメリカはやはりああいう力、大きな軍事力を持った国でございますから、ベトナムの、彼らの言葉を使えば失敗、というのはその軍事力に依存し過ぎた。そのアメリカのアジア政策の変化というのは、軍事力にのみ依存しない政策に変えざるを得ないだろうと私は思います。したがって日本政府としましても、ベトナム戦争のときにはどうもわれわれから見ておりましても、そのアメリカの軍事力を使う政策に非常に加担をしておったと思われる数々の行動がありました。たとえば安保条約の解釈をベトナム地域まで広げてみたり、いろいろなことがありました。しかし、いま朝鮮半島の問題はわれわれのすぐ隣の問題でございますから、わが国がたとい安保条約があってもアメリカの軍事政策には一〇〇%ついていきませんよということをアメリカに知らせることが、アメリカの朝鮮半島政策を変えさせることになるのではなかろうか、私どもはそう思うのです。あなたはどう思われますか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねになりましたことは一つ一つよく伺っておったつもりですが、全体としてどのようなお尋ねになるのでしょうか、ちょっと恐れ入りますが……。
  145. 永末英一

    ○永末委員 対韓国外交、あるいは北に対しましてもいろいろな交渉をやるというような総理大臣の答弁でございますから、そういうわが国の対朝鮮外交というものはアメリカと離れて、そしてアメリカには、軍事偏重のアメリカ外交の支援はいたしませんよ、もっと違う朝鮮の問題に対する解決を目指しつつわが国外交は行われる、そういう路線を踏まれるべきだと私は思いますが、いかがですか。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに軍事的な強さだけで国の安定というものは来せるわけのものではない、これは言われるとおりでございます。やはりそこには民生の安定あるいは進歩というものがあり、その支持の上に政権が立っておるということがございませんと安定というものは期しがたいのでございますから、その点は永末委員の言われるとおりと存じます。  なおアメリカ自身も、やはりそういうことについてかなりの反省を実は始めつつあるのではないかというふうにも見られます。
  147. 永末英一

    ○永末委員 同じ太平洋圏の別の地域のことをひとつ伺っておきたいのですが、外務大臣は五月の初め豪州に行かれまして、日本と豪州との閣僚会議に臨まれました。この中で、豪州の労働党政権がウランに関して国有化をやろうという方針を持っているので、わが国の原子力の平和利用をやる面について、きわめて阻害される要因が出てきたのではないかと心配される向きがございますが、この機会にこの日本と豪州との閣僚会議で受けられました一番大きな印象と、そしてこのウラン問題についてひとつ御報告を願いたい。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日豪の閣僚会議におきましてどのような印象を受けたかということでございますが、確かに資源、第一次産品につきましては、いわゆる資源保有国としての国権による保護と申しますかコントロールと申しますか、そういう考え方がかなり強い。このことは労働党政権という特定の政権であるがゆえにと申しますよりは、やはりいま広く世界に起こっております資源問題についての流れを反映しておるものではないかというふうに存ぜられました。それに対して、わが国は、従来、開発にしましても投資にしましても、自由経済の上に、市場法則のもとにという考え方をしてまいったわけでございますけれども、どうもそれ一本やりではなかなか両国の関係というものは今後十分にはやっていけないところがある。やはり豪州側のそのような考え方、これが一つの政権考え方に限るということではないように思われますだけに、われわれとしてもそういう立場を理解しながら、その中でお互いの互恵というものを考えていかなければならないのではないか。そういう点についての理解というものは、やはり私にとりまして一つの収獲であったように存じます。  なお、ウランのことにつきまして、実は私、自分でその問題を詳しく直接に話しておりませんので、関係者、事務当局から補足して説明を申し上げたいと思います。
  149. 木内昭胤

    ○木内説明員 ウランの対日供給の問題でございますけれども、さしあたりの問題としまして、豪州との間に一万五百ショートトンのウランの供給の問題がございまして、そのうち九千ショートトンはすでに既契約済みでございます。労働党政権が発足しましてから、新たに残量の千五百ショートトンについて契約いたしております。ウラン資源の開発については、現在の労働党政権は外資を入れてやらないと言っておりますけれども、この豪州との間に契約しましたウランの供給については保証するということを言っておりますので、さしあたりの問題はないというふうに了解いたしております。
  150. 永末英一

    ○永末委員 先年、日本で日豪閣僚会議が行われましたときには、パプア・ニューギニアの自治政府外務大臣が同席をいたしておりました。昨年わが国の田中首相が豪州を訪問いたしましたときもパプア・ニューギニアの首席大臣が列席をしておったと伝えられております。今回の閣僚会議にはパプア・ニューギニアのミニスターはだれも出席していなかったようでございますが、その理由について外務大臣は何かお聞きになりましたか。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、特別にそのことをただしはいたしませんでしたが、ただ、先般来この委員会におきまして、永末委員からパプア・ニューギニアにつきましてしばしば御質問もございまして、私としましては関心を持っておったわけでございますが、独立の時期が迫ってきておる。九月ごろではないかと考えておるようでございましたけれども、そうして、まずまず多少のことはあっても独立に向かっていけるのではないかというふうに見ておりますし、豪州政府としてもそれを支援するという立場にあるようでございましたので、聞いてはみませんでしたが、もうすでにそういういわば独立に向かっておる国としての考え方、そういうことが反映しておったのではないかと思いましたが、実は尋ねてはみませんでした。
  152. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  153. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる九日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時五分散会