運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-04-23 第75回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月二十三日(水曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 小林 正巳君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 正森 成二君       加藤 紘一君    塩谷 一夫君       正示啓次郎君    福永 一臣君       細田 吉藏君   三ツ林弥太郎君       綿貫 民輔君    渡部 一郎君       安里積千代君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         警察庁刑事局国         際刑事課長   金子 仁洋君         法務省刑事局参         事官      根來 泰周君         郵政大臣官房郵         政参事官    橋口  守君         郵政省電波監理         局周波数課長  松元  守君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     綿貫 民輔君   竹内 黎一君    三ツ林弥太郎君   福田 篤泰君     塩谷 一夫君   永末 英一君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     福田 篤泰君  三ツ林弥太郎君     竹内 黎一君   綿貫 民輔君     宇野 宗佑君   安里積千代君     永末 英一君     ――――――――――――― 四月二十三日  ILO港湾労働条約第百三十七号の批准等に関  する請願(枝村要作君外三名紹介)(第二五四  五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件を議題とし審査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま提案されております国際電気通信条約について若干の質問を行いたいと思うのであります。  本条約は一九三二年に生まれまして、自来数年ごと全権委員会議が開かれて、その会議ごと全面改正の形式をとっておるのでありますが、基本的な規定については憲章化することはできないのかどうか、会議ごとにそうした全面改正をせずにできないものだろうか。今回の会議でもそういうようなことが論議されたと聞いておるのであるが、わが国態度はどうであったのでありますか、まずこの点について伺っておきたい、こう思います。
  4. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいまの御質問の点は、今回の全権委員会議におきましても討議の大きな点であったということをまず申し上げたいと思います。ITU基本憲章という恒久的性格のものにするか、あるいは現在のような条約の形で今後も存続するかということが実は一つの大きな争点になったわけでございます。わが国憲章化すべきであるという考え方で、他の憲章化賛成の国とともに積極的にその討議参加したわけでございますが、ただ会議それ自体としましては、時間の関係もございまして、今回の会議では憲章化の問題を決めることがむずかしいという判断が支配的になりました結果、この問題は引き続き次回の全権委員会議討議するということになりました。ただ、今回の条約の一部改正がございまして、つまり基本文章構成上一部、二部と分けまして、第一部に基本的な性格規定を設ける、第二部に連合のいろんな運用規定、つまり科学技術の進歩によって、ときにあるいは改正することが必要であるというような部分については第二部というかっこう構成を変化いたしました。これはいずれやはり憲章化に至る第一歩となるというふうに考えてもよいのではないかと思います。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの答弁でよくわかるのでありますが、将来やはりそのような方向に行く方が合理的ではないだろうか、こういうふうに考えているのであります。今後の御努力を願いたい、こう思います。  次でありますが、本条約加盟国は現在何カ国あって、現在まで何カ国がこの条約を批准しておるのでございますか、この点も伺っておきたいと思います。
  6. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  本条約批准国批准書を寄託いたしまして本条約締約国となりました国は、本年四月二十一日現在で十五カ国でございます。これは電気通信条約についての批准国でございまして、なお、紛争の義務的解決に関する国際電気通信条約選択追加議定書というものが御審議を願っているわけでございますが、それも同じ四月二十一日現在で寄託国は七ヵ国ということになっております。この電気通信条約のメンバーである連合員の数は現在百四十三カ国であると承知いたしております。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 批准しておる十五カ国でありますか、四月現在で、どことどこでございますか。
  8. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  バーレーン、南アフリカ共和国、それから連合王国、モーリシャス、シンガポール共和国、デンマーク、オランダ王国、モルジブ、スワジランド、カナダ、エクアドル、マルタ、コロンビア、トリニダードトバゴ、フィジー、以上の十五ヵ国でございます。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 この非加盟国は主として分裂国家である、こういうふうにいま私は聞いておるのでありますが、これらの国が加盟していないのは、連合が拒否をしておるのか、その理由を御説明願いたい、こう思います。
  10. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答え申し上げます。  分裂国家と一般的に言われるものの中で、まだ正式の国家として独立していないものにつきましては、つまりこのITU政府間機関でございますから、その場合にはまずその加盟資格がないということが言えると思います。それから、通常言われる分裂国家につきましては、たとえば東独でございますが、東独はすでにこの加盟国になっております。それから、北朝鮮加盟申請をいたしております。したがいまして、通常国家という資格を持つ場合には加盟申請をし、その申請を受けて加盟国賛否を問うというかっこうでこの加入の可否が決まるわけでございます。したがいまして、特に連合の方の理由加盟が進まないということではございません。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 それではさらにお尋ねしますが、北朝鮮ですね、朝鮮民主主義人民共和国はまだ加盟していないのであるが、従来日本反対的な態度を続けてきたというふうに聞いておるのでありますが、いまもあなたの説明では、北朝鮮加盟申請を出しておる。しからば、従来まで反対的な態度をとってきたわが国は、この北朝鮮加盟に対して、申請をしておるというが、反対なのか賛成なのか、これも承っておきたいと思います。
  12. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 北朝鮮連合への加盟申請を最初にしましたのは一九七一年でございます。当時、連合会議が開かれませんために、郵便投票ということで加盟国賛否を問うたわけでございますが、当時日本は、その当時の国際情勢にかんがみまして、これに反対意思表示をしたというふうに了解しております。  現在、また北朝鮮からの加盟申請が来ておりまして、これも郵便投票の形で各国賛否事務局長から照会を受けておるわけでございますが、それ以後の、特に朝鮮半島における対話が進みましたという状況の変化にもかんがみまして、特に北と南が国連のこういう専門機関に入るということは、やはり対話機会を増大させるいい機会わが国としては終局的には朝鮮半島の平和的な統一に資するという考えから、これに対しては基本的に賛成する方向で現在検討いたしております。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 いまの局長答弁は、私、当然だと思うのでありまして、元来この条約は技術的な条約であって、普遍的な参加が望ましいということは条約目的にもちゃんと明記しておるのでありまして、あくまでも北朝鮮もこれに加盟してくるように、積極的にわが国努力すべきだと、こういうふうに思うのであります。  比較的アジア地域に未加盟国が多いが、この未加盟国との間においては電信電話等業務上の問題、電波周波数割り当て等の問題で支障はないのかどうかということを承っておきたいと思います。
  14. 橋口守

    橋口説明員 御説明申し上げます。  わが国北朝鮮あるいは北ベトナムとの電気通信関係について御説明したいと思いますが、現在北朝鮮日本との間には国際電報国際通話二つの種類の通信が取り扱われておりまして、直通回線はございませんけれども電報などは上海経由とかあるいは香港経由モスクワ経由によって行われております。それから国際通話につきましては、北京経由国際通話ができるようになっておりまして、実際上は支障なく通話が行われております。しかしながら、私どもといたしましては、北朝鮮との間にぜひ直通回線を持ちたいということで、昭和四十七年以来、電気通信事業を担当している国際電電の方から、北朝鮮の方へ直通回線をつくろうじゃないかということを申し込んでおりますけれども北朝鮮当局からはまだ回答がないような状況になっております。  それからベトナムでございますけれども北ベトナムにつきましては、現在は国際電報だけの通信路が開かれているわけでございます。これは上海経由香港経由二つルートを経由いたしまして国際電報取り扱いが行われておりまして、電報につきましては通信が行われているわけでございます。日本といたしましては、このベトナムにつきましても、直通の何か短波回線のようなものでもつくったらどうだろうかということで、先方と外交ルートを通じまして、あるいはまた、国際通信事業の担当であるところの国際電電から北ベトナムの方へ申し入れをしておりますけれども、向こうから回答がございませんので、現在は国際電報だけが取り扱われております。  なお、この条約との関係におきましては、実際上はそういうように一応通信路が開かれておりまして、通信ができるようになっておりますので、実際上の支障はございません。  電波につきましては、電波監理局の方から説明してもらいます。
  15. 松元守

    松元説明員 電波関係につきまして御説明をさせていただきます。  連合の未加盟国につきましては、当然条約及びその付属規則の拘束を受けないということになっておりますけれども現実の問題といたしましては、電波は非常に国際性を持っておりますので、それらの国が各国と違う周波数を使うというふうなことになりますと、混信等の問題で自国も不利益を受けるというふうなこともございますので、大筋といたしましては、未加盟国につきましても、条約及びその付属規則の線に従いまして運用されておるというふうに理解をいたしております。  したがいまして、未加盟だということによって、わが国電波利用につきまして特段支障があるというふうには考えておりませんが、最近の動向といたしましては、ITUの場におきまして、いろいろ周波数の使用の調整等を行うというケースがございますので、未加盟国につきましても、できるだけ参加をする方向が望ましいというふうに考えております。
  16. 堂森芳夫

    堂森委員 いまの答弁で、直接この条約加盟していなくても通信業務については別に差し支えない、こういうことでございますね。  そこで、国連局長にお尋ねしますが、しかし、わが国としては、北朝鮮あるいは北ベトナム、これは当然近い将来に国交が回復されるわけでありますから、加盟国になるのに賛成、こういう態度で臨んでいかれる、こういうことでございますね、もう一遍お尋ねしておきたいと思います。
  17. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 北朝鮮及び北ベトナムについても、同じように、基本的には賛成する方向で検討したいと考えております。
  18. 堂森芳夫

    堂森委員 今回の主な改正点一つに、従来の準連合員制を廃止したということが一つ改正点になっております。また、領域集合連合員から削除しておるが、ねらいは何であったのか。特に何か政治的な意味があったのかどうか。わが国はこの改正反対したと言われておるが、その反対理由は何であったのか、承っておきたい、こう思います。
  19. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいま御質問のありました二点、一つ領域集合という制度削除した、それからもう一つは、準連合員制度というものを削除した、この二つの点であろうかと思いますが、このいずれにつきましても削除考え方を打ち出しましたのは、アフリカ、アラブあるいは東ヨーロッパ諸国でございまして、領域集合とか、あるいは準連合員制度というのは、植民地主義の名残をとどめる制度であると思う、したがってこれを削除すべきであるというのが基本的な考え方だったと思います。  同時に、これに対しまして、これは政治的な意味合いからとるべきではなくして、こういう制度をとることによって実は連合の活動に協力してきた地域があるのであって、それはやはり残すべきであるという考え方があったわけでございますが、結局、表決に入りまして、領域集合の点につきましては六十一対五十一という表決削除の提案が採択されたわけでございます。この領域集合削除に関する表決におきまして、わが国はこれに対して反対いたしました。  この理由は、いまちょっと触れましたように、植民地主義の問題と、領域集合連合員になり得るかどうかという問題は別問題である、こういう技術的性格の濃い会合に、政治的な問題を取り上げるのは適当でないという考え方から、わが国としてはこれに反対いたしたわけでございます。  それからもう一つ、準連合員制度につきましても、最後に表決がありまして、これも多数でその廃止が決定されたわけでございますが、わが国はこれに対して棄権いたしました。  その理由は、実は先ほど申しました領域集合削除するかどうかという取り扱いの問題が未定の段階で、この準連合員制度をどうするかという表決に入りましたので、両方がなくなった場合に、後で討議される準連合員制度、つまり現実にはパプア・ニューギニアはこの資格を持っておるわけでありますが、それが入る道を全部閉ざしてしまうおそれがあり得るので、したがって、この表決段階では、そのパプア・ニューギニア取り扱いについてのある程度の余地を残すためのそういう考慮からこれに棄権した。その場合に、わが国はその理由をある程度表明いたした上で棄権いたしたわけでございます。若干、表決態度が違ったということを申し上げたいと思います。
  20. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、このパプア・ニューギニアが準連合員であった、また領域集合というものがなくなっていく、これは、実際的な今後のこの条約の運営について、この改正によって何ら支障はないのでありますか。
  21. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま、二つ決議が採択されたことによりまして、パプア・ニューギニアはどうなったのだということを私御説明申すべきだったかと思いますが、パプア・ニューギニアにつきましては、準連合員という形での存続は認められなくなりましたので、これに対しては特別な議定書をつくりまして、従来どおり、パプア・ニューギニアについては準連合員であったと同じ資格でこの会議に参画できるということで、この地位を救ったわけでございます。  それから、この二つ決議の結果、若干従来と制度が変わりましたけれども、これによってITU業務について支障があるかどうかということは、郵政当局とも検討しました結果、特にそのために支障が起こることはないという判断でございます。
  22. 堂森芳夫

    堂森委員 第三十二条に地域的取り決め締結することができるということになっておりますが、わが国との関係でこれに該当する取り決めがあるのかないのか。また、今後そのような計画はないのかどうか、この点も承っておきたいと思います。
  23. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  三十二条に関係いたします地域的取り決めというものは、わが国に関してはございません。将来につきましても、その必要性というものは郵政当局の方で検討いたしておると思いますけれども、現在のところ、私どもといたしましては、その必要性がまだ出てこないものだというように考えております。
  24. 堂森芳夫

    堂森委員 わかりました。  この条約最終議定書というものが、各国の膨大な留保宣言を掲げておるのでありますが、内容的に大別してどのような留保なのか、またこれらの留保法的効力というものはどうなのかという点であります。日本留保宣言をつけていないが、日本にはそういう必要はないという考え留保をしていないのかということを承っておきたいと思います。
  25. 伊達宗起

    伊達政府委員 確かにこの電気通信条約には、伝統的に最終議定書各国から多くの留保がなされております。この条約におきましても、百五に上る各国留保最終議定書に盛られているわけでございますが、これはやはり全世界的な電気通信という業務取り扱います技術的な性格条約であるということ、かつはまた、なるべく多くの国に入ってもらいたいということで、留保を認めないという立場をとりますと、必然的に技術的な理由によりまして、加盟国というものがどうしても少なくならざるを得ない、したがって、ある程度の留保は認めた上で加盟国の数を多くして、実際上この電気通信連合というものを全世界的なものにしていこうという考えから留保が認められているものだと存じております。  この百五にわたる留保の内容を大別いたしますと、大体四つぐらいになるのではないかと考えております。一つは、政治的な留保でございます。二番目は、業務規則というもの、この条約下部機構でございます主管庁会議によってつくられる業務規則というものがございますが、その規則に関する留保というものがございます。三番目には、全体に電気通信業務運用に関しての留保というものがございます。第四番目には、連合経費負担分担金に関する留保というようなものがございます。  第一番目のカテゴリーでございます政治的な留保といたしましては、代表権関係する留保と申し上げてよいかと思いますが、そういうもの。つまり南ベトナムでございますとか、北朝鮮に関しましてとか、あるいはカンボジア等に関しまして、それらの国の存在というものを認めていない国からそれぞれ留保がなされておるということで、これは非常に政治的なものでございます。  それからこれも同様に、国家承認にかかわります留保がございまして、これは主としてイスラエルアラブ諸国との間で相互に行われておる。特にアラブ諸国イスラエル存在について留保をしておる。また南アフリカ共和国に関しての留保もございます。  それからさらに領土権と申しますか、それに関する留保、たとえばアルゼンチン大西洋岸フォークランド諸島というのがございますが、これは伝統的にアルゼンチンは英国の領有権に対して留保をしておりまして、そういうものをこの条約留保においてもしているわけでございます。  二番目の業務規則に関する留保と申しますものは、主として技術的な理由に基づきまして、業務規則の中で、技術的に自国の実情に合致しないので、部分的に留保したい、ないしは全面的に留保したいというものがございます。  その次に、電気通信業務運用に関する留保といたしましては、これは他国が業務規則規定を守らないような場合に、それによって被害をこうむるような場合は、自分もその国に対しては業務規則の適用を留保するという性質の留保をいたしております。  四番目に、経費分担に関する留保でございますが、これはある国が分担金について留保をしている、その結果、その分担金留保に基づいて分担金が支払われないような場合に、その分だけ自分たち分担金がふえるようなことは困るという立場からの留保が行われているわけでございます。  日本といたしましては、この条約につきましては一切留保をつけておりません。特に現状において、日本としてこの条約規定留保をつける必要を認めなかったものでございます。
  26. 堂森芳夫

    堂森委員 次の質問は、条約とは直接関係ありませんが、本年三月に、日本通信協力株式会社というのが、イランとの間に三十億円の電気事業技術的援助をするということが報道されておりましたが、これは全く民間ベースなんでございますか、政府は何ら関与していないのでございますか、あわせて質問をしておきたい、こう思います。
  27. 橋口守

    橋口説明員 御説明いたします。  先生のおっしゃるとおり、イランテヘラン市内で現在電話拡張計画がございますが、この拡張計画に関しまして、電話線路網の設計とか入札審査工事管理あるいは検査等に関しまして、日本通信協力株式会社がこれを受注しておりますけれども、これは民間ベースでございまして、政府ベースのものではないわけでございます。
  28. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、郵政省は、開発途上国に対して電気通信関係国際協力に積極的な努力をしておる、こういうふうに聞いておるのでありますが、この種の技術援助について、何か具体的なプログラムを持って開発途上国に対してそういう援助を進めておるのでありますか、この点もあわせて承っておきたいと思います。
  29. 橋口守

    橋口説明員 御説明いたします。  電気通信は、開発途上国の政治、経済社会基盤強化などに非常に不可欠なものであろうと考えております。したがいまして、郵政省といたし  ましては、開発途上国におけるところの電気通信網整備拡充計画に対しましては、技術協力、  あるいは経済協力につきましては外務省とか大蔵省とかといろいろ御相談いたしまして、積極的に推進していきたいと考えております。先ほど申し上げましたイランにつきましても、現在イラン電気通信研究センターがございますけれども、ここにも日本から八名ぐらいの専門家を派遣いたしまして、イラン電話網拡充に協力しているような次第でございます。  しかしながら、郵政省といたしましては、従来こういうような国際協力面が少しなお不十分であったというような反省の上に立ちまして、もう少し電気通信面国際協力を今後充実させていこう、そういうような角度から、新しい組織といたしまして、ことしの七月から官房国際協力室というものをつくりまして、そして電気通信面におけるところの国際協力拡充強化に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。  しかしながら、具体的なプロジェクトといたしましては、これは開発途上国からの要請に基づいて行うわけでございますので、現在継続中のものはいろいろありますけれども、今後の、日本が独自に立てている計画というものはございません。
  30. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  31. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  32. 正森成二

    ○正森委員 国際電気通信条約の第一条を見ますと、「連合構成」で、「国際電気通信連合は、普遍性原則を考慮し、かつ、連合への普遍的な参加が望ましいことを考慮して、次の国から成る連合員構成する。」、こういうぐあいに規定されておりまして、(a)(b)(c)とありますが、大きく分けますと、国際連合加盟国申請すればよろしい、それ以外の場合には、連合員の三分の二の賛成があった場合には加入を認められるということになっていると思うのですね。これは審議の過程で、過半数賛成でいいんではないかという意見が出たと思うのですが、普遍性原則を考慮すれば、過半数賛成があればITU加盟を認めてもいいと思うのですが、わが国はどういう態度をとりましたか、またその理由はどういうわけですか。
  33. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいま御指摘のとおり、このITUという国際機関が、ITUの分野における国際協力体制の確立という観点から、まさにできるだけ多数の国が参加することが望ましいことは申すまでもないことだと思います。同時に、この機関に加盟申請があります場合に、この機関自身が政府機関であります関係上、果たして申請する国が加盟国となるにふさわしい資格を持っているかどうかということを、ITUそれ自身がある程度判断する機会を持つことも必要かと思います。その判断の際に、いま申されました第一条の基本目的というものを十分勘案することもまたこれ当然かと思います。  現実の問題としまして、ITU加盟につきまして三分の二の要件を創立以来一つの要件といたしておるわけでございます。今度の会議では、それを過半数にしたらいいではないか、あるいは全然そういう要件なしに、希望があれば入れたらいいではないかという意見も確かに出たわけでございますけれども日本としてのその問題に対する考え方は、もちろん普遍性原則が望ましいことは言うまでもないけれども、同時に、加盟した後に、加盟国としてふさわしい協力活動ができるかどうかという観点から、その資格があるかどうかという判断も必要であると同時に、できるだけ多数の国の賛成を得て、いわば祝福を得て入るという現在の三分の二の要件というものを、現在特に変えなければならないという理由はないのではなかろうかという考え方から、この過半数という表決に変えるべきではないかという考え方に対しては消極的な態度をとった次第でございます。
  34. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御説明でありますけれども、しかし、一定の目的、資格があるかどうかということは、これはその国が言えばそれをそのまま認めるというんじゃなしに、加盟国過半数が一応目的にかない、資格があると認めればそれで十分であって、それを三分の二にしなければいけないというものではないと思うのですね。そして三分の二のように要件を厳しくすればするほど、多くの人から祝福されて入ってくるというような言い方をするとすれば、全会一致なら全員から祝福されて入って、これほど結構なことはないということになるので、そういうことになればごく少数が反対しても加入できず、普遍性原則は確保されないわけですね。ですからこそ、ITUというのはいままで「領域又は領域集合」という、一つ国家とは認められないものについても、国際電気通信の非政治的な普遍的なあり方から考えてそういう条文があったわけでしょう。そしてわが国は、この「領域又は領域集合」というものを削除することについて、あるいはその後南アフリカ、ポルトガルが追放されるという場合には、普遍性原則に反するからといって反対したわけでしょう。そうすると、そういう態度を貫くとすれば、当然過半数という要件に賛成してしかるべきだ、こういうように思うのですけれども、それはいかがですか。
  35. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 実はITUは、国連の他の専門機関加入の要件と比較してみますと、私の承知している限りでは、WHOを除きましてはすべて三分の二の要件を課しているかと思います。ITUもその例にならいまして三分の二の要件を課しておるわけでございますが、確かに御指摘のとおり、普遍性原則をもう少し重視すべきではないかという考え方もわかりますけれども、これは同時に機関が決めることでございまして、今度の会議における表決の結果を見ましても、やはり三分の二という要件を維持すべきであるというのが加盟国多数の意見であったということでございます。  それから、普遍性原則との関連で、ポルトガルあるいは南アフリカの追放の決議に対して日本反対したのが、どうも平仄が合わないのではないかという意味の御指摘があったかと思いますけれども、南ア、ポルトガルは、すでに加盟国である国に対する追放の問題につきましては、元来、ITUが非常に技術的な専門的な性格を持つ機構である以上、やはり、政治的な理由からこれに対して追放というような非常に激しい措置をとることは適当でないという判断から、われわれはこれに反対したわけでございまして、新しい国がこれに加盟する場合の問題とは若干異なるのではないかというふうに考えております。
  36. 正森成二

    ○正森委員 私は必ずしも納得はいたしませんが、次のことを少し伺ってからこの問題をもう一度申し上げたいと思います。  この会議では、公用語をどうするかということについても議論が行われたようであります。この連合の公用語というのは十六条で「英語、中国語、スペイン語、フランス語及びロシア語」ということになっておるようであります。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 それに対して、アラビア語をつけ加えたらどうかという意見が出たようであります。それに対してはどういう議論が行われ、わが国はどういう態度をとりましたか。
  37. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 アラビア語使用の問題につきましては、その使用が若干ふえるであろうかという観点からの議論があったようでございますけれどもわが国はこれに対して賛成態度をとりました。
  38. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は伺いたいのですが、昭和四十九年五月に国際電気通信連合ITU全権委員会議報告書というものが外務省国際連合専門機関課から出ております。これは確かに専門機関課から出したものに間違いありませんか。
  39. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 そのとおりでございます。
  40. 正森成二

    ○正森委員 私は委員長に申し上げますが、これは審議のために当然国会議員に提出さるべきであるということで、わが党の外交部会が提出を要求したものであります。しかし、これは提出することができない、こう言って提出しませんでした。しかしこれは国会図書館など、公に入手し得るところに行っているのですね。ですから、私はそこでリコピーをつくって、その内容に基づいてこれは質問するわけです。  まず最初に、国会図書館等に公然とあるものを、しかも国際電気通信審議に一番関係がある全権委員会議報告書のようなものを、なぜ国会議員に審議の参考のために出さないのか、そのことを伺いたい。
  41. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この報告書は執務参考用として部内参考というかっこうでつくったものでございまして、秘の指定はしてございませんけれども、そういう性格を持っておるものでございます。これはそういう意味で郵政省ほか関係のところに一応配付はいたしております。実は立木委員からこの資料を提出して欲しいという要望がかつてございました。これに対しましては文書の性格から申しまして、そのままの形で出すのは、われわれとしてはできるだけ差し控えたい。しかし、事実関係その他につきまして御要望があれば、できるだけそれに応ずるということでお答えした経緯がございます。
  42. 正森成二

    ○正森委員 いま答弁がありましたけれども、参議院議員の立木議員というのはわが党の外交部会の責任者であります。それで、いまお話しになりましたように、秘文書ではないんですね。しかも庁内の執務用につくられたと言いますけれども、表題が「全権委員会議報告書」なんですね。ですから国会で審議をする場合に、われわれが読んで参考にすべきが当然だと思うのですね。それをあえて出さないというようなことは非常に遺憾であると思うのですね。このことは委員長に御留意願いたいと思います。
  43. 水野清

    ○水野委員長代理 委員長から申し上げますが、国会審議を迅速に進める意味においても、各党になるべく公平に資料を提供していただきたい。いまのお話を聞けば、国会図書館にすでにあるようなものまで、いろいろな御説明がありましたけれども、各党の審議の過程上、スムーズにいく点においても、進んでこういう資料は事前に各党に配付をしていただきたい。これは要望をしておきます。正森委員、よろしゅうございますか。
  44. 正森成二

    ○正森委員 はい、結構です。私は入手いたしましたから結構です。  そこで、そういうぐあいに出さないとおっしゃられるとますます読みたくなるのが人情というものでありまして、私も熟読いたしましたが、数点、なるほどこういうことが書いてあるから出さなかったんだなということがあるわけですね。外務大臣は非常にお忙しいでしょうから、こういう細かな文書までお読みになる機会がないと思いますので、そのうちのさわりの部分を何カ所か申しますので、こういう姿勢でいいのだろうかという頂門の一針になりますかどうか聞いていただきたい、こう思うのですね。  ここでは、先ほど私が質問いたしました三分の二の表決の問題及びアラビア語の公用語の問題についてこう書いてあるんですね。「この種の会議として一国一票方式の採決権はとも角とられなければならないが、単純過半数による表決は、新らしい事態を引き起すのである。領域領域集合という二つの言葉が植民地主義の嗅がするとして抹殺したのも単純過半数表決の結果なのである。国連加盟していない国の連合加盟の決定方法として三分の二の過半数表決を単純過半数表決方法に決めようと会議委員会で決めたものを、本会議においてそれを否決し、三分の二の過半数により表決するという現方式を維持できたことは良識を守り得たとも言い得よう。」こうなっているんですね。  つまり、これを見ますと、領域とか領域集合とか、植民地主義を思わせるような言葉はいけないというのは世界の大勢だと思うのですけれども、それを削除したのは単純過半数という方式だったからだ。これはいけない。それに対して、三分の二の表決を必要とする現方式を維持できたのは良識を守り得たんだ。つまり、だから三分の二の過半数を支持しない者は良識がないんだ、こういう言い方なんですね。だから、ある制度を支持するかどうかというのは、それぞれが国益によって決めることであって、それを自分の意見に賛成するものは良識であり、賛成しないものは良識でないというような考え方というのは、非常に他国に対して思い上がった態度なんですね。  私は、これが一カ所だけなら、そうも言わないのですけれども、アラビア公用語のところでこれよりもまだひどい表現が見受けられるわけです。  どういうことを言うておるかというと、こう書いてあるのです。英語の部分は略しますが、たとえばアラビア語を公用語にするという提案に対して「オランダが「公用語、会議用語となるべき規準は何かという一般原則をまず考えなければならないのではないか」という発言をしている。(ついでながらイギリスはこの考えをその後に審議されたドイツ語の問題に援用している。)リージョナルオフィス問題についてもこのような必ずしも後進国におもねることのない強い発言が委員会段階で一度は採択された案件を否決させ、会議の理性をわずかながら示したといえる。アラビア語問題について我が方はこれに賛成したが票決の結果は賛成六十三、反対三、棄権四十一で英米仏独という先進国のほかタイ、シンガポール、モーリシャスという後進国に多く棄権がみうけられた。この点我が方の読みが甘かったこと、アラビア圏に対するおもねりがあったことを反省しなければならない。」こう書いております。  つまり、どういうことかというと、アラビア語を公用語にしろということについて、オランダなどが反対をして、そして委員会段階で一度は採択された案件を否決させたのは、会議の理性をわずかながら示したものだ、だからアラビア語を公用語と採択されておればこれは会議の理性はなかったのだ、そしてわが方は、一たんはアラビア語の公用語に賛成したけれども表決の結果から見てみれば、これは英、米、独、仏などという先進国などは棄権しておる、棄権が案外多かったところを見ると、何もアラビア圏の諸国に対しておもねる必要はなかったので、これは反対だということで理性を示しておればよかったのだ、こういう意味であります。  つまり、こういう考え方は、開発途上国を非常にべっ視して、開発途上国の意見が通るというのは、これは理性に背くとかあるいは良識を守り得ない、こういう考えを代表団の――これはイニシアルが書いてありますから個人の意見かもしれませんが、それが国際連合専門機関課というところをちゃんと通って報告書になっておるところを見ると、やはりこういう考え外務省にあると言わなければならない。石油危機のときには、アラブ諸国へ総理大臣が出かけて、言ってみれば三拝九拝するような態度をとる。そして会議では一応はアラビア語を公用語にすることには賛成するけれども表決を見て、ああ、これならおれも棄権か反対に回っておればよかった、おもねる必要はなかった、これが公用語にならなかったのはわずかながら理性が示された。こんな態度であなたら、どうしますか。  私は、事務当局の答弁だけでなしに、外務大臣に対して、こういうようなことを公文書の中に載せて、これが外務省態度であるということは決して好ましいことではない、ITU条約審議そのもの以上にこういう態度が問題だというように思いますが、いかがです。
  45. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この代表団の報告書は、当然のことながら、この代表団を構成する個人が、今後の参考というようなことで個人的な見解を披瀝し、それを収録したというかっこうのものであろうと思います。したがいまして、この報告書の中に、外務省として同感し得る部分と、そうでない部分とが入っております。いずれにしましても、ただ参考意見という形でわれわれは受け取っているわけでございます。必ずしも外務省の意見を代表するというものではございません。
  46. 正森成二

    ○正森委員 外務省の意見を代表するものではないということだけ言われましたが、こういう見解の表明に対して、それでは外務省はどう考えておるのか。非常に結構だと思っておるのか、あるいはこういうことは好ましくないと思っておるのか、これはこういう場で明らかにする必要がある。そうでなければ、アラブ諸国に対してもあるいは発展途上国に対しても、決して好ましい印象を与えないです。
  47. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 どうも代表団の報告の中に収録されております見解とか所見とかというものの中に、適切でないものがあるということは認めざるを得ないと思います。
  48. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣にわざわざ聞くのもどうかと思いますが、やはり外務省の省内でこういう意見を持ち、発表しているということは遺憾だと思うのです。これでは三木総理や宮澤外相が非常に御苦労なさっている、そして、開発途上国アラブ諸国との協調ということでいろいろ御努力をなさって、たとえばアメリカとも若干の意見のニュアンスの違いがあるということもあえて出して御努力なさっているのが水のあわになりかねないと思うのです。外務大臣としての御所見を一応承っておきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らく執筆者が申したかったことは、高度に技術的な会議の場合に、植民地主義反対であるとかあるいは発展途上国の主張という政治的な問題を持ち込まれるということが困る場合があるということを言いたかったのであろうと思いますけれども、しかし、いま正森委員が御紹介になりました表現は、明らかに価値判断を含んでおるので、それは私は適当なことでないと存じます。
  50. 正森成二

    ○正森委員 結構でございます。そうおっしゃいましたから、それ以上余り伺いませんが、この中でこういう表現もあるのです。との会議では何か私は存じませんでしたが、それぞれ贈答品の応答をやるようですね。それについてこういう表現があるのです。「切手帳等の贈答品が代表団間に多数やりとりされたが我が方のみやげものは、桁外れに豪華であった。次回以降においては平均を少し上廻る程度の贈答品を考えるべきである。」こうなっているのですね。  私は、外務省の予算というのはそう十分でもないと思っておりましたが、ITU会議で、よその国に比べてけた外れに豪華なものを贈った、これはちょっと行き過ぎであったということを代表団が書くようなことをやっておるとなると、国会の審議外務省の予算を削らなければならぬかと思いますけれども、一方では、文化関係の予算などは非常に少ない、こうなっておるのですね。ですから、一体どんなものを持っていったのか、けた外れに豪華だなんということを代表団が書くのはよくよくだと思うのです。一体どんなことをやってきたんですか。それでまた、そういうことのないように願いたいですね。そして、同じ使うお金があるなら、文化交流だとかあるいは留学生をたくさん出すとか、もっと正確な情報を集めるとか、いろいろやることがあると思うのです。いかがです。
  51. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ITUの全権会議は、もちろん政府会議という性格のほかに、実際に業務を行う事業体間の会議という性格もありまして、従来から親善のために記念品を交換するという風習があったそうでございます。  それから、この予算は外務省の予算ではございません。  それから、細かい点につきましては、あるいは郵政省の方からお答えいただいた方が結構だと思います。
  52. 橋口守

    橋口説明員 ただいま外務省の方から御説明がございましたように、このITUは百数年の長い歴史を有する会議でございまして、従来から政府だけではなくて、日本でいいますと電電公社とかあるいは国際電電とかNHKとか民間放送連盟とか、そういうところも参加しているような機構でございます。したがいまして、こういう通信事業者の親善を含めた会議というような意味合いもございまして、従来から記念品を交換するということが何か慣習になっているようでございます。  そこで、この前の会議には、私代表団に加わっておりませんのでよくわかりませんけれども、個人的にいろいろ昔からの友人がおりまして、個人的に調達していったものもあると思いますし、また電電公社とか国際電電などで少し調達いたしまして持っていったものもあるように聞いております。
  53. 正森成二

    ○正森委員 必ずしも十分なお答えにはなっておりませんけれども、しかしこういう細かい問題でいろいろ言うのもなんですから、これ以上この全権委員会議報告書に書いてある――まだおもしろいことが書いてあるのですよ。しかしもうこれでやめますけれども、贈答品を交換するということは、これは会議で、結構なことだと思います。しかし、受け取った方にけた外れなものだということは、同時に相手方がわが方にプレゼントしたものがけた外れに価値の少ないものだったかなという卑下の心を起こさせるということもありますから、贈答品というものはそれぞれが相互に見合ったものということがやはり必要なんですね。それが国際礼儀というものです。ですから、げすなことわざで言えば、札束で横面を張るようなそういう贈答品の交換というものはかえって礼儀に反するという面がありますから、代表団みずからが指摘していることですから、今度は注意するようにしていただきたいと思います。  それからなおそのほかの問題について伺いますが、十五条で「連合の会計」ということがございます。これを見ますと、三十単位から二分の一単位等級までに分かれておるようですが、私どもの伺ったところによりますと、わが国は二十単位等級というのを選択されたそうであります。それで、こういうのを選択された根拠と、それからこれと国連の普通の財政分担とはどういうような比率になっておるか、おわかりになったら簡単にお答えく、ださい。
  54. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 日本が二十単位を選択しました理由でございますけれども、米、ソ、英、仏でございますか、これが最高の単位を選択しているわけでございますが、日本ITUにおける地位、それから今後の協力との関連で、やはりできるだけこれに近い単位を占めるべきではないかという考慮と、それから同時に、日本といろいろな意味で似たような国と考えられている国がどういう選択をしたか、たとえばドイツ、これは二十でございますが、そういうことを勘案しまして、一応二十単位ということになったわけでございます。  それから国連との関係でございますけれども国連分担金で最高、つまりITUで申しますと米、ソ、仏、英が占めております分担金は百分率にしますと七・二二%になりますが、国連の場におきましてはアメリカは二五%の分担金を負担しておるわけでございます。したがいまして国連ITUと比較いたしますと、ITUにおける大国の分担率は相対的に低くなっているということが言えるかと思います。
  55. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうお答えがございましたが、私の方で計算いたしますと、三十単位をとっているアメリカ、ソ連、イギリス、フランス等で、百分比にしますといまおっしゃったとおり、繰り上げまして七・二二%である。この四カ国が国連ではどういうぐあいに分担しているかというと、アメリカが二五%、ソ連が一五%、英、仏がそれぞれ六%弱ということになっている。この四カ国で五〇%を優に超えている。ところがITUの場合にはこの四カ国で三〇%に満たない、こういうことになっているのです。そして小国と思われている国々はどうかといいますと、ITUの一番低い単位である二分の一単位等級をとりましても、百分比に直しますと〇・一二%負担する国が約六十九カ国であります。それに対して国連では、一番低いパーセンテージ〇・〇二%を負担する国が七十数カ国あります。つまりこの比率から単純に見ますと、ざっと国連の分担の十倍近く、少なくとも六、七倍を負担しておるということで、大国が本来五〇%以上負担するべきものを三〇%弱にしておるために、その分、小国が国連分担金にして大体六倍ないし十倍ということになっておるのですね。しかもこの会計のところなどを見ますと、これを二年以上怠ったような場合には投票権を奪われかねないということになっておるのですね。これは普遍性原則から見ても、また開発途上国あるいは小国の中には、財政事情が非常に苦しいという国がある点から見ても、必ずしも適正な財政負担の割合ではない、私はこう思うのです。少なくとも大きな国が、三十単位とる国がもっとあるとか、あるいは三十単位の上限を四十、五十に引き上げるとかしなければ、これは実質的な公平、エクイタブルな公平ということは実現されない、こう思うのですが、いかがですか。将来何とかされる気持ちはありませんか。
  56. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 開発途上国といいますか小国といいますか、にとっての分担が特に国連に比較しまして相対的に高いということはただいま御指摘のとおりだと思います。この分担金の割合を、分担率をどのような割合に持っていくかということは、これはいろいろ問題があろうかと思いますけれどもITUの場におきましては、より実質的な意味の負担の公平を図る、特に国連との関係考えます場合には、やはり分担の割合を国連と同じようにするとか、あるいは開発途上国にとってはもう少し軽い分担率にするとかいろいろな案があろうかと思います。私たちも関係省との間でこの点について、いま言ったような方式が可能であるかどうかということを真剣に検討していきたいというふうに考えております。
  57. 正森成二

    ○正森委員 いま公平という言葉が出ましたので、ついでに文字上のことを伺いますが、第十条に国際周波数登録委員会についての規定がございます。この国際周波数登録委員会の訳文を見ますと、1のところでは「世界の地域に衡平に配分されることが確保されるように選挙する。」このコウヘイというのは公の平じゃなしに衡平法の衡平という字を使っております。そして三項の(c)を見ますと、「有害な混信を生ずるおそれがある周波数スペクトルの部分におけるできる限り多数の無線通信路運用及び対地静止衛星軌道の公平、効果的かつ経済的な利用のため、連合員に対して意見を提出すること。」と訳されておりますが、ここでのコウヘイというのは公の平という字を使っております。明らかに日本語の訳文は違うわけであります。ところが、お手元にいただきました英文を見ますと、アーティクル10のところで、初めの方の文字も「エクイタブルディストリビューション」となって、エクイタブルという言葉が使ってあるのですね。それから後の方のも「ツー ジ エクイタブルイ フェクティブ アンド エコノミカルユース」となっておって、やはりエクイタブルという言葉になっております。エクイタブルという言葉は、これはフェアというのとは若干意味合いが違って、たとえば十個のお菓子を五人に分けるのは二つずつがフェアあるいは公平だと言えるけれども、その五人の中身を調べてみると、三人が食べ盛りの子供であって、二人は赤ちゃんであるという場合には、その三人の食べ盛りの子供に三つずつやって、赤ちゃんには二人で一つやるというのがエクイタブルだということで、法制上もコモンローの修正原理として出てきているのですね。ですから、公平と訳さずに前のほうの衡平、そういうように訳すのが正訳じゃないか、こういうように思うのですけれども、いかがですか。
  58. 伊達宗起

    伊達政府委員 御指摘のように、第十条の一項でございますが、それは衡平を使っておるわけでございます。これは確かに地域的にバランスがとれたようにやれという意味でもって、この場合、つり合いがとれておるという意味においてこの衡平がいいのではないかという考えから衡平を使ったわけでございますが、この三十三条での公平と申しますのは、この場合、いろいろと私どもも議論したのでございますが、公平の意味で、単純なバランスということを考えているものではなかろうという解釈からこの公平を使うこととしたわけでございます。これは技術的な、物事の性格からこういうふうになってきているものでございますが、ただいまのは一つの理論的な説明として申し上げたわけでございますけれども、辞書によりますと、どうもその辺のところは必ずしも明瞭でなく、衡平の意味のところにも公平という解釈をつけている広辞林などもございますし、公平のものにつきましてもへんぱなく平等なことというような解釈もございます。私どもがここで第三十三条において公平を使いましたのは、実は先例といたしましてインテルサットの条約がございまして、その前文で全く同文のものがございまして、その際に公平を使っておりますものですから、それにならって、先例どおりにひとつここは公平にいたしましょうということで公平を使った次第でございます。
  59. 正森成二

    ○正森委員 いずれにせよ紛議がある場合には、この条約によるとフランス語で決すると、こうなっておりますから、日本語で公平にしようと衡平にしようと、これはどちらでもよろしいということになるわけですが、しかし訳文としては、通常使われているのは衡平と使うのですね。それがまたコモンロー以来の沿革から見ても条理があるというように思います。しかもそれが不用意に使ったのではなしに、こちらの場合は衡平、こちらの場合は公平の方がいいというようにわざわざ考えて使ったということになると、それは若干、訳語の問題についてもよく考えてみなければならない問題があるのじゃないか。後でよくまたフランス文などをお考えになるといいと思うのです。  そこで、インテルサットの問題が出ましたのでお伺いいたしますが、インタースプートニク協定というのが七一年に発効しておるようでございますが、わが国はインテルサットには加入しておるようですが、インタースプートニクには加入しないのですか。
  60. 橋口守

    橋口説明員 御説明いたします。  先生がおっしゃいましたように、現在ソ連圏を中心といたしまして九カ国がインタースプートニクに加入しておりますけれども日本はこれには加入しておりません。
  61. 正森成二

    ○正森委員 加入しないでも十分に支障なくやっていけるからですか。それともほかに理由があるからですか。
  62. 橋口守

    橋口説明員 御説明します。  現在インタースプートニクに加盟している国は、ブルガリア、ソ連、ルーマニア、ハンガリー、東ドイツ、キューバ、モンゴル、ポーランド、チェコスロバキアの九カ国でございます。これらの加盟国との間の通信は現在どういうふうにしてやっているかと申しますと、日本とソビエトとの間を日本海海底ケーブルでつないでおりまして、ソ連の陸線を経由してソ連の方へ行っております。この陸線を経由いたしまして接続する方法が一つございます。それからインテルサット経由の地球局が、ロンドン、チューリッヒ、オークランドなどにございますので、このインテルサット系の地球局を経由いたしまして、陸線あるいは海底ケーブルを使いましてこれらの諸国とアクセスする方法が現在行われておりまして、実際の通信におきましては支障はないわけでございます。
  63. 正森成二

    ○正森委員 そろそろ時間でございますので、最後の質問として、国際電気通信条約最終議定書留保がずっとつけられておりますね。これを見ますと、アメリカの部分を見ますと、アメリカ合衆国のために、条約の四十二条及び一般規則第八十二条に掲げる電話規則または追加無線通信規則に関するいかなる義務をも受諾しないことを正式に宣言する、こうなっているのですね。そうしますと、四十二条の業務規則や一般規則電話規則というようなものを一切義務を受諾しないということになれば、実質上この国際電気通信条約を批准してもアメリカは一体どんな義務を負うのでしょうか。そして権利だけは主張するのではないでしょうか。その点はいかがです。
  64. 橋口守

    橋口説明員 御説明します。  先生がおっしゃいましたように、アメリカはこの電話規則と追加無線通信規則の受諾を留保しているわけでございますが、なぜこれを留保しているかという点につきましては、若干憶測になるわけでございますけれども、この電話規則ができた当時は非常にヨーロッパ的な色彩が強かったようでございます。と申しますのは、もともと万国電信連合はヨーロッパを中心としてできた組織でございましたので、その残滓が残っておりまして、若干ヨーロッパ的な色彩が強かった。それに対しまして、アメリカとかカナダとかあるいはキューバとかそういうところの間では、いわば国際通信ではあっても国内通信に似たような取り扱いをするとかというような点がございまして、アメリカといたしましては、この電話規則に若干の不満があったようでございまして、いままで留保してきているようでございます。しかしながら、重要な点につきましては条約規定されておりまして、たとえば公衆の権利だとか、あるいは秘密の確保とか、人命の安全に関する電気通信の優先順位とか、そういうような非常に重要な事項は条約の方で規定されておりますので、アメリカがこの電話規則留保いたしましても、この条約の趣旨そのものは守られていくというふうに考えられるわけでございます。
  65. 正森成二

    ○正森委員 非常に苦しい御答弁で、私は条約の趣旨は認めておっても、それを実際上運用していく業務規則や一般規則について、無条件にそれは適用されないというように宣言しているような国は、付属の留保条項を見てもないのですね。大抵のところは経費分担金についてどうこうとか、政治的な問題についてどうこうとか言っているだけであって、アメリカのように断言的に、こんな業務規則は一切おれは適用せぬと言っているような、いわば不遜なと言っていいか、そういう国はまずないのですね。私はこういう留保の仕方というのは、条約に対する加入そのものを非常に疑わしめるものだ。これは恐らくITTというのですか、あれが民間の業務団体ですから、これに対していささかの拘束もさせないというような観点から見送られたのかもしれませんけれども、こういう態度はいかがかなというように私は思います。  最後に一言わが党の立場を申し上げておきますが、これを見ますと「ヴィエトナム共和国のために」という留保がつけられております。これを見ますとこういうようなことが書いてある。「あらゆる手段により恐怖、死、破滅及び荒廃をまき散らすことを専らの業とする一握りの少数者で構成された政府であるいわゆる南ヴィエトナム臨時革命政府に有利な議論を行うためにパリ協定を引用することは誤りである。」あるいは「民族解放戦線又は臨時革命政府と名乗るこの組織は、ハノイの手先にすぎず、北ヴィエトナムの遠征軍によって支えられた全くの人為的創造物である。」というようなことを留保の中に書いております。しかし、現在のベトナムにおける情勢の発展が明らかに示しておるように、こういうように言った人そのものが人為的創造物であって、民族自決の原則によって人民の支持を得た南ベトナム臨時革命政府が、いまや南ベトナムで全人民の支持を得ようとしていることは明らかであります。したがってわれわれは、答弁は要りませんけれども日本共産党は、こういう南ベトナム政府留保というのには全く賛成できないということを申し上げて、私の質問を終わります。
  66. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  67. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間が詰まっているようでございますから、国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件に関し、まず御説明を求めたいと思います。  この国際電気通信条約に関しては種々の改正点があるやに承っておりますし、ここに提出されております関係議定書についても、その意味合いが問題になるかと思いますけれども、まず政府側の方で、どういう部分が改正され、特にどういう部分に力を入れてこの関係協定ができたかということについて、具体的に御説明をいただきたいと存じます。
  68. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  改正点についての御質問でございますが、膨大な厚い条約の中でいろいろ細かい改正がなされておりますので、全部を申し上げるのもなんでございますので、主な点だけを申し上げたいと思います。  条約の条文で申しますと、ちょっと条文のページ数が多くなりますので、お手元にございます電気通信条約の、条文ではなく、漢数字で上に書いてある、号と称しておりますが、便宜上そのために号をつけたわけでございますので、この号によって申し上げたいと思います。  この二号、三号、四号のところで、先ほども議論になりましたように、準連合員制というものを廃止いたしまして、また、従来の連合員であった領域集合というようなものがなくなっているというのが新しい改正でございます。  それから一七号でございますが、宇宙技術を使用する電気通信の発達について、この一七号は新規定でございます。  それから二九号で「定期的に、かつ、通常五年ことに招集する。」ということで、全権委員会議の開催期間の五年ごとという通常の期間でございますが、それを新しく明記したという点が改正点になっております。  それから三七号で、これは新しい規定でございまして、国際周波数登録委員会の選挙が新たに全権委員会議の任務として定められたということでございます。  四八号では、これは改正されまして、管理理事会の理事国の数をふやしたというものでございます。  五八号でございますが、五八号から六〇号までは新規なものでございまして、事務総局長の職、事務総局次長の職が空席となった場合の措置を規定しております。  六三号は、これは改正でございまして、国際周波数登録委員会の選挙母体を全権委員会議というふうに定めたものでございます。  六六号から六八号までは、新規のものを加え、かつ改正を加えたものでございますが、対地静止衛星の位置の記録でございますとか、それから静止衛星軌道の公平かつ有効な利用のために連合員に意見を出すことを決めました。  それから八六号でございますが、これは改正でございます。事務総局長や次長それから国際諮問委員会委員長は、それぞれ国籍を異にしていなければならないのでございますが、それに新しく国際周波数登録委員会委員も国籍を異にすることを決めたものでございます。  それから九三号でございますが、九二号の分担金の等級の中で新しく最後から三番目に「二分の三」という単位をつけ加えました。  その次に九七号でございますが、これは新しい規定でございまして、連合分担金未払いのものについては投票権を失わせるという制裁規定を設けたものでございます。  次は一〇六号でございますが、これは会議、会合においては五つの公用語によって相互に通訳を行うということにいたしました、また五つの公用語とアラビア語との通訳は、全権委員会議主管庁会議で行うということを決めてございます。  一〇七号も、これは新しいものでございますが、連合の法律上の能力を新規に規定いたしましたし  それから一三一号でございますが、これも新たに対地宇宙通信関係規定をここに設けたものでございます。  その次には一四六号でございますが、これは今度新しく第一部と第二部というふうに、基本規定、一般規則というふうに分けたのでございますが、その場合に、一部の規定と二部の規定との間に矛盾がある場合には、一部の規定が優先するということを新たに決めたものでございます。  その次に、多少飛びまして三〇二号、五十三条でございますが、これは全権委員会議は、必ずしも次回の会議の期日及び場所を定めなくてもよいというふうに改正をいたしました。  二四四号でございますが、ここでは連合の年次予算を決定する際に、将来の作業計画でございますとか、連合の主要活動の費用の便益の分析を考慮するというような規定を入れまして、若干改正しております。  二五四号でございますが、これは連合の常設機関の作業計画それからその作業計画の進展、運営方法等について審査し、調整し、適当な措置をとるという内部的な規定を新しく加えたものでございます。  二五五号、二五六号、これは改正点でございまして、委員長ないし事務総局長、事務総局次長の空席の場合の措置を定めたものでございます。  それから二六九号でございますが、これは新しく職員を臨時に配置移管することができるという事務総局長の権限を新しく定めたものでございます。  その次に二九四号でございますが、これは周波数登録委員会の選挙手続は、全権委員会議が定めるということをここにはっきりと明記したものでございます。この点は改正でございます、  二九七号もこれも改正でございまして、国際周波数登録委員会委員が空席となった場合の補充の方法を定めたものでございます。  以上が今回の条約のモントルー条約と異なった改正点ないしは新しい規定の入った点でございます。
  69. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではまずこの条約につきましていろいろな点がございますが、関係委員からも御質問があったことでありますから、私は基本的なことで二、三お伺いしたいと思うのです。  一つ目は、この条約の最後のところ、五七一号、つまり第八十二条の業務規則の後ろに「以上の証拠として、各全権委員は、英語、中国語、スペイン語、フランス語及びロシア語により本書一通を作成してこの条約に署名した。紛議がある場合には、フランス文による。この原本は、国際電気通信連合に寄託保存する。国際電気通信連合は、その謄本一通を各署名国に交付する。」となっております。ということは、原本がフランス文の原本であるということであります。当委員会に提出された国際電気通信条約のわれわれがいま議論いたしておりますのは日本文であります。あなたはこの和文の文とフランス文の原本と、これが差がなければ問題がないのですが、いま当委員会審議するものはどっちを審議しているのか。この翻訳された和文の方を審議しているのか、この原本の方を審議しているのか、その辺をきちんと明快にしていただきたい。
  70. 伊達宗起

    伊達政府委員 国会に御承認を仰いでおりますのは、この条約締結について御承認を仰いでいるわけでございまして、その場合に、原本、原語でございますフランス語と、さらに法制局で審議をいたしました日本語とを添えて御審議をお願いしているわけでございまして、どちらの審議をしているのかという御質問に対しては、両方であるというふうにお答え申し上げざるを得ないのでございます。ただ、私どもといたしましては、原本と申しますか、原語のフランス語と日本語との間には乖離はないものというふうに確信をもって申し上げられます。
  71. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃ、みっともないあれをちょっと申し上げましょうか。  この日本文の署名しているところがあります。百八十六ページ、「ジャマイカのために C・Aウッドストック V・A・パントン」と書いて、その次に「日本国ために 佐藤正二」と書いてある。これは何ですか。こんな日本語はないよ。「日本国ために」と書いてある。こんなものでこれと原本とが異同がないと言えるか。こんなお粗末きわまる日本文が堂々と登場してくるじゃないか。間違ったとか、エラーとかは私は許さない。乖離はないと言った。乖離がないなら、私はこんなものは承認することはできない。何ですかこれ。これは何を意味するものであるか。この日本語はフランス文に訳したらどうなるのか、御説明いただきたい。
  72. 伊達宗起

    伊達政府委員 先生の御指摘の点は、私どもも気がつきまして、印刷のミスということで、実は、内閣官房長官に外務省の方から訂正方、正誤をお願いしている点の一部でございます。したがいまして、これは正誤の手続がとられたものというふうに私どもは了解しておりますので、何とぞそのように御了承いただきたいと思います。
  73. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 当委員会としては了承してないですよ、そんなことは。私どもは何にも御説明を仰いでいない。
  74. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  先ほどの外務省から内閣官房長官にお願いいたしましたのが三月一日でございまして、三月四日に訂正の正誤が配付されているそうでございます。どうぞそのように御了承くださいまし。
  75. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 訂正の正誤を私はいただいていないのですが、どういうことなんですか。
  76. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  77. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。
  78. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃその次に、話が前後いたしますが、との留保をつけてあるたくさんの留保の中で、わが国が全く留保をつけていない理由はどこにあるのかをお伺いしたいと思います。  というのは、少なくともこの留保を見る限り、わが国においても留保をつけた方がよいのではないかと思われる節があります。というのは、似た立場にある「ドイツ連邦共和国のために」の留保を見ますときに、明らかにわが国の利益を保護するために必要と認める措置をとる権利というものを留保しておかなければ、電気通信関係では明らかにわが国が大きな不利益をこうむる可能性というのを否定できないからでありますが、なぜにこのような留保を一切つけず、まる腰でサインをなさったのか、伺いたい。
  79. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この留保は、先ほども説明申し上げましたように、政治的な留保というものがあるわけでございまして、それがほとんど大部分を占めているものでございます。私どもといたしましては、このような技術的な問題を処理する条約の中で、政治的な問題について、国家承認の問題でございますとか領有権の問題について、わざわざ留保する必要もないという判断のもとに、そのような性質の留保はやらないということで、そういう性質の留保はしておりません。また、技術的な留保、つまり業務規則でございますとか、ないしはその運用に関します留保というものもあるわけでございますが、それについても、わが国業務規則を適用していく所存でございますので、それらについての留保をしない、する必要もないわけでございます。  ただ、このドイツ連邦共和国の中にもございますように、連合経費分担に関する留保というものが、このドイツ連邦共和国の留保の中にも含まれておりますが、これはわが国も実は、モントルー条約の前にジュネーブ条約というのがございましたが、そのときには、この経費分担に関する留保をいたしておったわけでございます。ところがその後、この条約運用というものを見てまいりますと、経費分担について、このドイツ連邦共和国のように留保した国々も、結局実際上においては自分のところに割り当てられた分担金を払っておって、一度も問題となったことがないという事実を勘案いたしまして、モントルー条約以来、日本側は、そのような経費分担について留保をしないという方針で臨んでおりますので、今回もその経費分担についての留保もしなかった。そういうことで、全般的に申しまして、わが国といたしまして、これらの各種の留保わが国について必要ないというふうに判断いたしたわけでございます。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 参事官の御説明は、ちょっといまの件に関しては少し荒っぽいのじゃないかと思うので、私ちょっと申し上げておきたい。  それは昭和四十二年の審議の際の御説明の中で留保を八種類に分けて、一つ自国代表権に関する留保、二は国家承認に関する留保、三は領土権に関する留保、四は業務規則に関する留保、それから他国留保による分担金増加に関する留保、それから六番目に条約もしくは業務規則を遵守しない場合、または他国の留保によって自国業務が良好な運用を害される場合の自国権益の保護に関する留保、七番目は、ポルトガルと南アフリカについての決議に関する留保、それから八番目は地域的会合に、関係地域に属さない国が投票権を持って参加するという原則は受諾することはできないという南米諸国留保というように当時分析が行われております。私がいま指摘した部分は、その分の第六番目の留保であります。すなわち「他国が条約もしくは業務規則規定を順守しない場合または他国の留保によって、自国電気通信業務の良好な運用が害される場合に、自国の権利を保護するために必要な措置をとるための権利、」これは今日当然考えなければいけない留保であろうと私は思うわけでありまして、いまあなたはそれに対して別の項目を答えられた。五項目と四項目に関して答えられたのです。だから、それは質問と答えが違っています。私の指摘したこの部分に関しては、これは留保をつけるのが当然です。  その具体的例を一つ申し上げておきたい。  日本と中国との間の海底ケーブルが来秋開通される予定になっておりまして、熊本県天草郡苓北町というところから、中国の上海のそばのところにこれが上がるようになっております。ところが、日本と台湾との間、沖縄と台湾とを結ぶケーブルがすでにございます。また日本と韓国との関係のケーブルもございます。こうしたものに対して故障が起こったりした場合の協定というのは、現在実務的なものがあるわけでありますが、こうしたものがそれらの国々の紛争のためにもし事故が起こった場合に、わが方は、日本電気通信業務の良好な運用を他国のそうした紛争によって侵された場合には、当然留保をつけておかなければならないと考えるわけであります。  また、こういう場合もあろうと思います。いま大陸だな周辺でボーリング等が行われておる。こうしたものでひっかけた、そうした場合にも、私どもとしてはこれは明快な留保をつけておく必要があると思うわけであります。もっとめんどうなのは、アメリカのボーリング船によってひっかけられたような場合にはもっとめんどうなことになろうかと思います。そうしますと、留保をつけないでやってきたということはかなり乱暴なやり方ではなかったのか。少なくとも、通常の外交ルートで交渉して交渉できないことはないかもしれないけれども、あえてそうしたまる腰、留保なしでやったことがよかったかどうかについては十分の疑問が残る。この点はいかがですか。
  81. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  確かに、先生のおっしゃいましたように、具体的にそのような問題が起こり得る可能性というのは存在している、起こらないという保証はないわけでございまして、そのような場合に日本国の利益が保護されるように、そのような趣旨の留保をしておいた方がいいではないかという御趣旨だと承るわけでございますが、私もそのようにできるのであれば留保しても差し支えなかろうというふうに考えます。ただ、この通信業務運用に関する留保では、相手国が条約業務規則規定を守らない、それによって自国電気通信業務の良好な運用が侵されるような場合には、自国の権利を留保するということでございまして、この場合、言っておった方がいいのかもしれませんが、言わなくとも、当然のことながら相手国が条約規定を守らないような場合には、日本側としてその条約、その当該国に対して、一般国際法上の対応措置というものはとれるものであろうと考えます。
  82. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま確かに留保をつけておいた方がベターである旨の御発言がありましたから、私の質問の趣旨は理解していただいたのだと了解するわけでありますが、こうしたわが国権益を保護するために必要な措置を細かくとることが重要ではないかと私は思う立場から申し上げました。この点を理解していただきたいと思うのです。  もう一つは、この留保の中で「中華人民共和国のために」として、中華人民共和国の代表団がこの領土権その他について数々の留保を行っております。まず、ロン・ノル一派は全面的に違法なものである。という項目がございます。これに対していま外務省はどういうお考えであられるのか。「裏切者ロン・ノル一派は、カンボディア人民のほんの一部を代表する一握りの少数者にすぎず、全面的に違法なものである。」こう明示しておるわけでございます。こうした見解に対しては現在時点ではどうお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  83. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  わが国といたしましては、かつてのプノンペンにおりました政府をつい先ほどまではカンボジアの政府として認めていたわけでございまして、これをわが国といたしまして裏切り者と呼ぶような立場にはないものと心得ております。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 裏切り者でなくて正統な政府であるといまも認めているわけですか。いまのことを伺っているのですよ。
  85. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな経緯がございまして、現在王国連合政府日本承認いたしておるわけでございまして、日本にとりましてのカンボジアにおける正統政府というのは、現在におきましては王国連合政府であることは疑いもないところでございます。ただ、その王国連合政府と、日本がかつて承認しておりましたロン・ノル大統領以下の政権というものが、相互間にどのような言葉でお互いに呼び合うかどうかは、日本国の関知したところではないというふうに心得ております。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ、南ベトナム二つ政府存在しているという認識、南ベトナム共和国臨時革命政府及びサイゴン政府存在しておる。二つ存在しておる。そしてベトナムに三つの政治勢力があるんだ、こういう表現がパリで行われているわけでありますが、南ベトナム状況については現在どういう認識であられるか、これを伺っておきたい。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 南ベトナムにおきましては、サイゴン政府が現在存在しておりまして、いわゆる中華人民共和国の留保にございます南ベトナム共和国臨時革命政府というものを、わが国としては承認をいたしておりません。御指摘のように、パリ協定におきましてこれが協定の一方の当事者である、パーティーであるということは、わが国も承知をいたしておる、こういう状況でございます。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その問題はしかるべきときにもう少しきちんと詰めてお伺いしたいと思います。  先ほどフランス文と日本文との間の問題として御説明のありました、誤植の個所が全部で七カ所ある旨の配付されたという印刷物を拝見いたしました。ところで、この配布された電気通信条約と、このフランス文の方のこの部分と乖離がないと先ほど仰せになりましたが、乖離があった場合に、今後われわれとしてはどちらをとるのですか。本日審議されているのがどちらかと伺いましたら、両方だというお話でした。二つの違ったものを審議したとしたら、どちらを正文として認めますか。
  89. 伊達宗起

    伊達政府委員 先ほども申し上げましたように、乖離はないということに確信を持ち、かつ、十分念を入れて乖離がないことを確かめた上で御提出申し上げているわけでございますので、乖離があった場合ということは考えておらない問題でございます。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから関係議定書というのは、これ一通かどうかお伺いしたい。関係する議定書はほかにもありますでしょう。
  91. 伊達宗起

    伊達政府委員 この御承認を求めます件の中に関係議定書と書いてございますのは、紛争の義務的解決に関する議定書を指しているものと御了解いただきたいと思います。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、この関係議定書という言い方自体も、たくさんの議定書がある中で一つ議定書をいま取り上げたわけですね。これは非常にあいまいな表現です。事態を非常に間違わせる表現である。そしていま私はさっぱりわからないけれども、もう一回大臣聞きますが、これは大臣のお言葉をいただいておいてあとの議論の対象にしたいのですけれども、こちらの日本文の方をいま審議をするのか、このフランス文の方をいま審議しておるのか、これを伺いたい。もし日本文の方を審議しているというなら、わが国の協定に関する審査案件は、フランス文を正文とする条約審議していないことになるでありましょうし、フランス文の方を審議したというのであるならば、この日本文の方に非常に多くの誤解があることは、これは関係資料として提出されたと承るしかない。これは今後において条約審議の間で非常にめんどうな議論になる。どちらでおとりになるか、その点明解していただかなければならぬと私は思うのであります。
  93. 伊達宗起

    伊達政府委員 これは先ほども申し上げましたとおり、関係資料というお言葉を御使用になりますと、いずれも、この承認を求める件につきましては、フランス文も、国際電気通信条約日本文も関係資科であるというふうになるわけでございます。ただ関係資料と申しましても、決して重要性がないわけではございませんので、このような条約の御承認を求める際に、やはり条約がいかなるものであるかということを示すためのもので、重要性はきわめて重要なものであります。そして日本語とフランス語といずれを審議しているのかということになりますと、私どもといたしましては、両方同程度の重要さを持って御審議いただいている、このように考えておるわけでございます。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ニュアンスの違う二つのものを持ってこられて、両方とも関係資料だと言うのであったら、われわれどっちを審議していいかわからない。あなたは両方全く乖離してないという立場をとろうとされている。それは乖離してないことが望ましいが、先ほどの同僚議員の質問でも、「衡平」という言葉一つでさえもあれほどの意見の差がある。かなりの説明と注釈をつけなければならない。そうすると条約文の正文としてあなた方が提示されるのはどれかと、もう一回聞かなければならぬ。条約文の正文はどれなんです。あなた、向こうへ帰るとフランス文のを正文として、こっちに帰ってくると二つにするのですか。
  95. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  電気通信条約におきましては明文の規定がございまして、条約の正文はどれであるかということの御質問に対しましては、条約文の正文はフランス語であるということが条約にも明記されているわけでございます。  ただ、御審議を願う際には、私ども日本語はこれはやはり公布すべきものでございますし、日本文をつくって公布しなければなりませんので、そのフランス文から日本文をつくります際には周到なる準備を行いまして、慎重なる審議も行いまして、法制局との間で乖離がないように努めているわけでございます。ただ最後に、印刷の際に若干の誤植等のために七カ所の誤りがあったことはおわびしなければならないと思いますが、それも改めて訂正方を御了承をお願いしているわけでございますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、もう一回聞きますけれども、当委員会に出された本協定の正文はどっちなんですか。日本語の方なんですか、フランス語の方なんですか、どっちなんですか。あなた、そうやってさっきからくるくる逃げるけれども、じゃ、われわれは何が正文なのか、わからないじゃないですか。どっちなんですか、一言で言ってごらんなさい。
  97. 伊達宗起

    伊達政府委員 御審議をお願いしておりますのは両方であると申し上げざるを得ないと思います。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 正文はどっちなんですか。
  99. 伊達宗起

    伊達政府委員 条約の正文はフランス語でございます。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、承認を求めているのはフランス語の方ですね。
  101. 伊達宗起

    伊達政府委員 承認を求めておりますのは条約締結についてでございまして、フランス文も、それとの乖離のないものと私どもが確信をしております日本文も、同様に御参考に供しているわけでございます。
  102. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
  103. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  104. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  105. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  106. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後二時半より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十八分開議
  107. 栗原祐幸

    栗原委員長 長休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  108. 石井一

    ○石井委員 日中平和友好条約締結が、最後の段階で、一つの曲がり角に直面をいたしておるわけでございます。この打開のために、高島アジア局長が昨日、中国を訪問してお帰りになった、こういうことでございますが、今回の訪問で何か具体的な進展があったかどうか、あったとすればどういう点であるか、その経過その他について、まず当委員会に簡単に御報告をいただきたいと思います。
  109. 高島益郎

    ○高島政府委員 今般、訪中いたしました主目的は二つございまして、一つは、いままで東京におきまして続けられてきましたいわゆる予備交渉を終わりまして、これから相互の条文案をもとにして、条文の交渉を始めるということについて、具体的な段取りをつけることでございます。  この点につきましては、北京において、わが方の秋山参事官と先方の王暁雲アジア局次長とこの二人の間で交渉を続けるということが一つでございます。  それから第二点は、これまで行われてまいりました意見交換をもとにいたしまして、日本側の条約交渉についての立場を、総理大臣並びに宮澤外務大臣の意向を受けまして先方によく徹底するように説明し、かつまた、先方の本条約交渉についての基本的な考え方を直接、この関係の担当者からよく聞くということが目的であったわけでございまして、その点につきまして、わが方も十分に意見を述べ、また先方の立場もよく聞き、双方が双方の立場をよく理解し得たという点は一つの成果であったと思います。  それで、このような具体的な話し合いに基づきまして、これからいよいよ正式の交渉に入るわけでございまして、先ほど何か大詰めというようなお話がございましたけれども、実はいままでが予備交渉で、これからが本交渉というふうに考えておりまして、私どもこれからの本交渉に備えまして、それぞれの立場についてそれぞれ理解を深めたという点は、一つの訪中の目的であっただけに成果であったというふうに思っております。  内容につきましてはこの場でいろいろお話し申し上げるわけにまいりませんが、そういうことでございますので、これから東京並びに北京におきまして正式な交渉を始めさせていただくということになるわけでございます。
  110. 石井一

    ○石井委員 私たちが伺っております段階では、いわゆる覇権問題、このクローズが一番問題になっておるというふうに伺っているわけですが、両国はすでに条文を交換いたしておりますけれども、これ以外の問題では余り双方の意見の違いはない、こういうふうに理解していいのでございましょうか。
  111. 高島益郎

    ○高島政府委員 すでに交換されました条文の内容につきまして、断定的にこうであるという意見を申し述べることは、今後の交渉上必ずしも得策ではないと私ども考えております。しかし一般的に申しまして、要するに日中共同声明を基礎として平和友好条約をつくるわけでございますので、日中共同声明そのものを変えるわけではございませんし、この内容について平和友好条約をつくるという構想からいたしますと、そう基本的な問題は私どもとしては起きないのではないかというふうに考えております。いずれにしましても、この点は断定的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  112. 石井一

    ○石井委員 いまの御答弁、それから先ほどの相手の立場を理解したということ、この両方をわきまえて御質問するわけですけれども、そうすると、やはり一番問題になっておる覇権のクローズに関しては、相手側はきわめて厳しい、厳粛な態度で臨んでおる、そういうふうにとるべきなのか、それとも今後の交渉の余地によってはいろいろと道が開けてくると考えられるのか、この点は非常に重要な点ですからお答えをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  113. 高島益郎

    ○高島政府委員 いわゆる覇権条項の問題はすでに日中共同声明第七項に明記されてございますし、こういうことを踏まえまして、中国側としてはこのことを平和友好条約の中に盛り込みたいという希望を述べていることは先生御承知のとおりであります。これはいわゆる超大国の覇権主義反対という、中国がここ数年来、国際問題を説明いたします際によく述べている立場、この立場を主張しているわけでございますので、実は中国自体の対外政策の基本にかかわる問題である点が多分にあると私ども心得ております。  そういう背景のもとに日中共同声明第七項に規定され、それを今度さらに平和友好条約にもというのが先方の態度でありますだけに、この点に関しましての中国側の立場というのはきわめて確固たるものがある。それに対し、それにつきましての考え方の背景、こういったものをわれわれとしては、中国の立場としては十分理解できないわけではないということでございます。
  114. 石井一

    ○石井委員 そうすると、この覇権クローズに関しては中国側の態度は非常にかたい。そうなってくると、わが方としてのこれに対する考え方はどうかということでございますが、わが方としてもなかなか譲りがたい問題があるということでございますけれども、宮澤外務大臣におかれては、中国側の態度がそれほどきついのであれば、わが方としては何らかの形で妥協する道を模索していこうというふうなお考えで臨まれるのか、あるいは、そういうものであれば、これは非常に歴史的かつ外交的に重要な問題であるから、一時はスローダウンしなければいかぬ、今回の訪問を通じてそういうふうな結論を得られておるのか、この辺を、外務大臣の感触は新聞でも報道されておるとおりでございますけれども、大臣の口から、このことに対してどういうお考えを持っておられるかちょっと聞かしていただきたいと思います。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま政府委員が申し上げましたように、この考え方は中国の外交政策の非常に重要な部分のようでございます。今年制定されました憲法の前文にも出ておりますし、今年一月の人民大会における周恩来首相の政情報告にも出ておりますし、先般中国を訪問いたしました北鮮の金日成氏の歓迎会において、鄧小平氏が述べました演説の中にも出ておりましたところから判断いたしますと、私としては、わが国条約起案上の、交渉上の立場というものを崩さない範囲で、何とか窮通の道を見つけたいとは考えておりまして、その交渉は、東京で従来どおり東郷外務次官と陳楚大使との間で行っていくつもりでございますが、交渉の前途はなかなか容易ならずというふうに考えております。
  116. 石井一

    ○石井委員 局長は、三木内閣総理大臣に今回の問題についてじかに御報告をなさったかどうか、また三木総理のこれに対する感触、決意はどういうものであったか、お伺いしたいと思います。
  117. 高島益郎

    ○高島政府委員 三木総理大臣に対しましては、けさ訪中の結果につきまして御報告をいたしますと同時に、御指示も仰ぎました。三木総理大臣からは、何とか早期妥結のために今後ともいろいろ知恵をしぼって交渉を促進するようにということでございました。
  118. 石井一

    ○石井委員 もうこれ以上申し上げませんが、たとえば、ただいまの御答弁の中でも多少感じますことは、宮澤外務大臣の御答弁では、相手のそのかたい立場に直面して非常にむずかしい段階に入っている、こういうお立場であろうかと思うのであります。その反面外務当局としては、相手側の熱意は十分にある、まだまだ余地がある、何かそこに多少の食い違いがあるような感じもいたすわけでございますけれども、われわれといたしましては、非常に大きな問題になっておりますし、なおかつ、国会のこの会期中にこの問題がまとまるのかどうか、これは非常に重大な関心のあるところでございますが、今回の交渉の報告を聞いた結果としては、やや悲観的にならざるを得ないという感触を持っておるわけでございますけれども、大臣、この点はいかがでしょう。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先方もできるだけ早くまとめたいと考えておるようでございますし、わが方はもとよりさようでございます。できますならば、この国会において御審議を仰ぎたいと考えておるわけでございます。ただ、おのおのが自分の持っております条件の上でというようなことがそこへついてまいりますので、その辺のところが、お互い熱意は持ちながらも、しかし自分の持っておる基本的な立場は崩すわけにはいかない、こういうことでございますから、まあ交渉事でございますので、最後のところまで詰めていきませんと、案外そこで窮通の道が開けるかもしれない。こういうことはしばしば経験上もございますので、全力を挙げてできるだけ早くこの点についての交渉をやっていきたいと考えておるわけでございます。その点では総理大臣も、私も、事務当局も、同じような考えを持っております。ただ、前途について楽観的な見方をするということは、どうも環境からして恐らく許されないのではないだろうか。私の申しておりますことも、高島アジア局長の申しておりますことも同じことを言っておるわけでございますけれども、物事の両面をどういうふうにとるかという、お聞きようによってニュアンスが出てまいるかもしれませんが、大体認識はただいま申し上げたようなことに尽きようと存じます。
  120. 石井一

    ○石井委員 局面打開のために大臣御自身が中国を訪問される、そういうふうなお決意はございませんか。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま具体的には考えておりませんけれども、しかし最終段階になりました場合に、あるいは政治的な処理というものが必要であるかもしれない。ただ、そのような最終段階に持って行けるかどうかということでございまして、これはいましばらく、と言ってもそう長い時間があるわけではございませんが、東郷・陳楚会談において見きわめてみたいと考えておるわけでございます。
  122. 石井一

    ○石井委員 最近のインドネシア情勢などを見ておりますと、急激な激動が起こっておるわけでございますが、したがって、ソ連のインドシナ半島に対する関心というものもさらに高まってきておると思うのでございます。そういうところがやはりこのいま問題にしております日中の友好平和条約に関しても微妙に絡んできておる、そういう考え方もできる。このことによって、さらに場合によってはこれが促進される材料になるのか、あるいは後退する材料になるのか、こういうこともあると思いますけれどもベトナムにおける政権の交代、その他カンボジアにおける情勢というふうなものが、日中平和条約に関して何らかの影響を与えておるというふうに、今後与えるだろうというふうにお考えでしょうか。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的に、かつ、正確には事の性質上申し上げることはできませんけれども、中国としましては、現在、東南アジア、あるいはアジアと申した方がよろしいかもしれません、各地に起こっておりますこの情勢の変化というものに当然無関心ではあり得ないと存じますし、この条約考え立場にそれが反映されるということは、むしろ私はそれが当然であろうというふうに考えますので、ただいまの石井委員の御質問に対しては、ほぼ私も肯定的な見方をいたしております。
  124. 石井一

    ○石井委員 それではその次に、多少問題を変えたいと思うのでございますけれどもベトナムの、あるいはカンボジアの情勢ということ、またアメリカの議会におけるいわゆる軍事援助の否決というふうなこと、これはアメリカのアジア政策というものの、ひいては日本の外交政策というものに関して非常に大きな意味を持っておるというふうに考えるわけですけれども、その場合に、この間大臣はアメリカへ行かれて、キッシンジャー長官といろいろと約束事、確認事、了解事項というふうなものを取りつけてこられたわけですけれども、最近のこの事態がいわゆる日米安保体制の上にさらに大きな影響を与えるのではなかろうか、あるいはその口頭事項というものに対して、今後総理の訪米ということもあるわけでありますけれども、もう少し具体的な内容について再検討をしなければいけない、そういう問題を含んでおるのではなかろうかと考えるわけですが、この点はいかがでしょう。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般、私とキッシンジャー米国国務長官、あるいはフォード大統領との話の席上で、日米安保条約日本の安全についていろいろ話し合われましたことは御報告を申し上げたとおりでございます。このことは、ことにアジア情勢が変動しつつある中にあって、日米両国お互いにとりましてしかるべきことであろうというふうに考えておりますが、しかし、その結果として、わが国に安保条約上の何らかの新しい義務が課せられるということは別段話にも出ておりませんし、そのようなことではないと考えております。ただ両国とも、この条約上の義務を誠実に履行することを再確認をいたしたというふうにお考えをいただきたいと存じます。
  126. 石井一

    ○石井委員 政府が決定をいたしましても議会がなかなか言うことを聞かぬ、そういう情勢がいわゆるインドシナにおいて起こっておる。したがって、要は米国の世論なり、米国のいわゆる、ただ単に行政府のみならず、全体的な大きな流れというもの、これをやはり見きわめていかなければいかぬという問題があると思うのであります。  そこで、具体的に最近核防条約に関連をいたして問題になってきておりますことは、御承知のように、いわゆる核兵器の持ち込みについて事前協議の解釈というものが非常に内閣ごとに変わってきておるのではないかという、そういう指摘がわが党内にもございますけれども、この事前協議の解釈、運用について、両国がもう少し意見を調整しなければいかぬ、こういうことはどういうふうにお考えになりますか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 純粋に軍事的な立場だけから申しますれば、事前協議という制度は、その立場から申せばアメリカとしては一種の制約でございますから、純粋な軍事的な立場からはそう考えるであろうと存じますけれども、いわゆるシビリアンコントロールの両国間の大きな国交、信頼関係ということから申しますれば、米国としてもわが国の国民感情なり考え方をよく知っておりますので、多少制約ではあっても、この事前協議制度というものをアメリカとしても了承をし、受諾をいたしておるわけでございますので、今回のこういう情勢にかんがみて、特にこの制度運用が問題になっておるということはございません。
  128. 石井一

    ○石井委員 いわゆる安保条約の交換公文に基づく場合の事前協議の条項でございますけれども、当初は核兵器の持ち込みという問題についてはイエスもあればノーもある、こういう見解であったようでありますけれども、最近の政府の統一見解ば、緊急時においても、非常事態が起こっても常にノーである、こういうふうに事前協議の拡大解釈が行われておる。ところが昨今問題になっております問題点は、それだと核防条約のような不平等条約加入をした場合にわが国の安全はどうなるのか、こういう矛盾が、非核三原則と、それから安保条約のいわゆる事前協議と、核防という問題で、どうしてもこの三つの方程式が解けないという問題が提起されておるわけであって、そういう意味で日米間においては、もちろん考え方はわかりましても、両国お互いに平和と安全を守るための善意の協議はあるにしても、やはり時によって解釈が変わってくるということでは非常に大きな問題でもあるし、この場合、こういう問題を一応整理しなければいかぬという議論が最近非常に強く出ておることは御存じのとおりでありますが、この点については、大臣の御所見はいかがですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 石井委員がただいま前段で御指摘になりましたような答弁を総理大臣としては今国会においてもしておられることは、私も承知いたしております。  この点は、私考えますのに、総理大臣として非常に高度の政治的な判断の上に立たれまして、ああいう答弁をしておられると存じますし、また、われわれが通常考えるような状態で思いますと、ああいうふうに答弁をされることが十分に理由のあることであるというふうに私は考えております。  他方で、しかし事前協議という制度そのものは厳存をしておるわけでございますから、これがいかなる場合にも答えがノーであれば、この制度の意味合いというものはなくなってしまうわけでございます。したがって、そういう条約上、法律上の解釈というものは、これはもうそのとおりはっきりしておると考えておりまして、総理大臣が国会という場で一億の国民に向かって答弁をされるときには、いろいろなことをお考えの上で、高度に政治的な答弁、政治的という意味は決してふまじめなという意味ではありませんで、自分答弁が国民に与えるであろういろいろな影響、反響等を十分考慮の上でしておられる答弁であろうというふうに私は解釈をいたしております。
  130. 石井一

    ○石井委員 そういたしますと、一点だけ確認をしておきたいと思うのでありますが、総理大臣の対世論に対する最高方針の表明というのは非常に政治的であり、重要でありますが、具体的な事前協議という問題におりて考えた場合には、常にノーであるということであれば事前協議は必要はないわけであって、事前協議制度自体要らない。したがって、安保条約にうたい込まれておる事前協議制度というのは、やはり原点に返って、政府の統一見解としてはノーと言う場合もあり得るし、イエスと言う場合もあり得る、ただ、あらゆる機会においてノーと言いたい、こういう意思表明だ、こういうふうに本当は訂正しなければいかぬのじゃないかというふうにも考えるのですが、いかがですか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この事前協議制度は、日米間で条約に基づきます交換公文をもって約束をしておりますいわば両国を拘束するところの制度でございまして、この制度そのものは厳存をしておるというふうに考えております。
  132. 石井一

    ○石井委員 それでは、この問題に関しましてはいずれ別の機会にもう少し議論をしたいと思います。  あと具体的な問題について一、二点まとめてお答えをいただいて、私の質問を終えたいと思います。  ハノイの大使館の設置、これは今月半ばごろにでも開かれるということでありましたが、最近の情勢の変化というものは非常に激動いたしておりますが、これの見通しはどうかということと、第二点、カンボジア、南ベトナムヘの難民救済のための援助を、いまこういう状態になってきた場合に、わが国はどういうふうに示そうとしておるのか、この二点をお答えをいただきたいと思います。
  133. 高島益郎

    ○高島政府委員 ベトナム民主共和国の首府でありますハノイにわが方大使館を設置する問題につきましては、先方政府との間で四月に開設するという原則的な合意ができておりまして、現在、先方政府の受け入れ体制が整い次第通報を受けて、それに応じてわが方が所要の要員をハノイに派遣するという段取りになっております。まだそのような連絡を受けておりませんので、いまの段階でいつということを申し上げることはできませんが、われわれといたしましては、できるだけ早い機会にそういう情勢になることを期待いたしております。  それから、ベトナム及びカンボジアの難民の救済の問題につきましては、先般来政府答弁いたしてきておりますとおり、国際機関を通じて、特に赤十字国際委員会及びこれを中心といたします赤十字関係の諸機関のインドシナ救援活動、これを舞台にいたしまして、六億円の拠出をいたしまして、この機関を通じて難民の救済に使ってもらうということになっております。今後も、当面は国際機関を通じての援助という点に重点をしほりまして、もし国連の機関からのそういうような要請等がありました場合には、これも将来検討するということでございます。
  134. 栗原祐幸

  135. 堂森芳夫

    堂森委員 まず高島アジア局長に、重要な外交の交渉過程でありますから、答えられぬ場合は結構でありますが、できるだけ誠意をもってお答えしてもらいたいと思います。  局長が北京へ行かれまして受けられました印象として、これは私、新聞報道で読んでおるのでありますが、向こう側は日中平和友好条約をできるだけ早く結びたいという熱意を大いに持っておった、こういうことも新聞にはあなた発表しておられると思うのだが、当然であると思うのであります。ところが、覇権問題については、いまも御説明があったように非常に強い、かたい態度である、それからわが国の覇権問題に対する考え方もあなたは伝えた、ところが、この会談によって改めてはっきりしたことは、両国の間における覇権問題についての態度は、かなり対立というか、なかなか話し合いがむずかしいのじゃないかという印象を受けたというふうになっておりますが、そのようでございましょうか。
  136. 高島益郎

    ○高島政府委員 今回訪中いたしまして、政府の責任者と、いま堂森先生の御指摘になりました問題についてわが方の意見も言い、かつ先方の意見もよく聞き、なぜそういう主張をするかというゆえんのものも十分に説明し合いました。  その得た印象といたしましては、先ほど大臣からもお話がありましたとおり、中国にとっては、つまり中国の外交姿勢の基本にかかわる問題でありまして、そういう観点から非常にかたい主張をいたしておりますし、またわが方といたしましても、わが国の外交姿勢そのものに関連する問題でもございますので、対立と申しますか、そういう基本的な考え方については双方の立場はいわば対峙しておる、対立しておるということは認めざるを得ないと思います。
  137. 堂森芳夫

    堂森委員 それから、新聞報道を見ておりますと、外務大臣が北京を訪問されるというようなことについての向こうからの打診等はなかった、こういうことも言っておられる。――言っておられるかどうか、新聞には出ておるのでありますが、そのようでございますか。あなたの方から答弁できるかどうか、これはあなたに任せますが、日本の外務大臣が北京へ来て何か話をするとかというような話は出なかったのでありますか。何もなかったのですか。
  138. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほど大臣から御答弁ありましたのが実情でございまして、そういう状況でございますので、私の方から、具体的にそういう大臣の訪中という問題は取り上げることはいたしませんでした。
  139. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、前回の委員会のときにも私の質問に対して答弁になっておられるのであります。中国側が、日中平和友好条約締結については急がないでもいいではないかというような感触をあなたは持っておる、そういう意味の答弁をしておられるのであります。そしてその後も、きのう高島局長が帰られて記者会見のときに、向こうは急いでおる、こういう話だということを高島局長は言っておるが、大臣の方は、どうも向こう側は急がなくてもというような気持ちでおるのではないか、これは言葉は違うかもしれませんが、あなたはそういうような感触を持っておられるというようなことを記者会見でも言っておられる。私は、これは、両国のそういう重要な条約を結ぼうとしておる当の政府の責任者である外務大臣がそういうことを言われるということはいかがなものであろうかと思いますが、どうでありましょうか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 仮定の問題といたしまして、仮に片方が、自分はこの話に非常に熱心でぜひ急いでやりたい、ただし、この点は譲れませんよと言ったといたします。他方が、私もこの点は非常に熱心で急ぎたい、しかしこの点は譲れませんよと言ったといたしました場合に、前半分をとりますと、両方とも熱心で大変に急いでいる、それなら早くいくだろうという見方もできますし、後の半分をとりますと、それにもかかわらずなかなか実際には時間がかかるであろうという見方もできるわけでございます。いまの状況は、あたかもそのような状況であろうと思うのでございます。  でございますから、私は、中国が熱意がないというふうに申したことはございませんので、中国の持っておる条件でこの話を非常に早く片づけることができるかということになりますと、わが国立場から判断いたしますと、それは相当のやはり窮通の道を見つけなければ、ある程度の時間がかからざるを得ないであろう、こういう見方を私としては申したわけでございます。
  141. 堂森芳夫

    堂森委員 たとえば外務大臣は、中国側がそう急がなくてもやむを得ないというような態度でおるのではないかという意味で、そういう理由として、お互いに両国が交換し合おうといって約束した事務的なレベルの案文の交換も一カ月もおくれてしまったとか、そういう理由も挙げておられるのでありますが、いまのような説明、あなた非常に頭のいい説明をしておられますが、私は外務大臣としてはやはり適当でない、あるいはそういう感触があったとしても、外務大臣としてはおっしゃらぬ方がいいのではないか、こういうふうに思うのであります。  そこで、私どもの党はいろいろ議論がありまして、覇権の条項はこの条約に入れるべきである、こういうはっきりした決定をしておるのであります。そして、これは理由は申さなくても、日中共同声明で見ましても、周恩来氏と田中元総理との間の交換公文であるとかいろいろなことを理由にしてそう言っておるのでありますが、われわれとしては、一日も早く外務大臣がみずから出かけられまして、もちろん事務レベルの交渉は精力的にやってもらうことは当然であるが、あなたが出かけてそうした問題を政治的に解決しようという考え方、意図を持ってもらいたいと思うのでありますが、もう一遍御答弁を願いたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 仮にお互いがお互いの立場を一歩も譲らない、全部自分立場に相手方に合意をしてもらいたい、こういうふうに最後まで考えますならば、この問題についてのいわゆる妥協、妥結というものはないわけでございますが、しかし、お互いがある程度相手の立場に歩み寄ろうというような考えが仮にございますと、これは妥結の可能性があるということになります。そのような可能性が発見できると考えるに至りましたら、これはやはり政治的な解決をしなければならないと存じておりますけれども、そのような道が、可能性が発見できるかどうかにつきまして、今明日からでも、と申しますのはできるだけ早く、東郷、陳楚の両者において交渉を始めてもらいたい。それを見ました上で、ただいま堂森委員が言われましたような可能性を私が感じ取りましたら、それはその次の政治的な解決の方法を考えたい、こう思っておるわけでございます。
  143. 堂森芳夫

    堂森委員 もう一遍念を押しておきますが、今国会で批准をしたいという全幅的な、全幅的というか何というか、強い熱意を持っておられるということだけは、この委員会にもう一遍御答弁を願いたい、こう思います。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましては、両国の歩み寄りによって条約交渉を完結いたしまして、この国会に御審議を仰ぎたいといまなお強く希望いたしております。
  145. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、この問題はまた他の議員に譲りまして、インドシナ半島の問題について二、三お尋ねしたいのであります。  シアヌーク政権のプノンペン解放と今度のチュー南ベトナム大統領の辞任というのは、もう決定的にアメリカのアジア政策の挫折であるということが言えると思うのでありまして、ベトナム戦争というものは新しい段階に入った、こう言えるのでありますが、大臣は、このチュー南ベトナム大統領の辞任をどのように受けとめておられますか、改めて御答弁を願っておきたい、こう思います。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 チュー大統領自身の考えとして、自分が職を退くことによって、国内の団結が一層強固になるように、またアメリカの援助がもたらされるように、そういうような希望のもとに、チュー大統領としては職を引くということであったというふうに考えておるわけでございます。
  147. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、従来七三年のパリ和平協定の実施については、これは三つの条件があると思う。一つは、アメリカの軍の駐留、それから内政干渉をやめろ、こういうことを臨時革命政府は言っています。それから第二番目は、チュー政権の崩壊、チュー政権はやめろということ、これが第二であったと思うのです。そしてもう一つは、このチュー政権が倒れた後、交渉を真剣に行うような、パリ協定を尊重する新政権をつくること。これが南ベトナムに平和が来る三つの重要な条件である、こう臨時革命政府等は言ってきた。  こういうようなことで、二つはもう確かに条件が備わったと思うのです。チュー政権は倒れた。フォン後継政権ができましたけれども、これも私はそう長続きできるような情勢ではないだろうと思う。そしてアメリカ軍はもう撤退をする。内政も干渉しないということに当然なるでありましょう。そうすると、あとはパリ和平協定を熱心に実行しようという政権ができるかどうかということが、南ベトナムに和平が本当に来るところの条件であると思う。そこで、これらの情勢を踏まえて、大臣は南ベトナムはどうなっていくであろうかという、やはり大臣として見通しを持っておられると思うのでありますが、どのようにお考えでありますか、これを承っておきたい、こう思います。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお挙げになりました三つの条件のうちで、パリ協定を守るという第三の点でございますが、これについては、お互いに守らなければならないということがあろうと存じます。片側だけが守るというわけにはいかない、お互いが守らなければならないということであろうと存じます。  問題は、恐らく第二の点に現在あるのではないだろうか。すなわちチュー政権では話し合い手にならぬと書っておったやにも聞きますし、チュー及びその一味ではいかぬと言ったようにも聞くわけでございます。その一味ということになりますと、一味とは何であるかということは当然にあるわけでございまして、そこのところが実は現在の段階ではっきりいたさない。確かにおっしゃいますとおり、チュー政権は引いたわけでございますので、第二の条件がこれで成就をしたはずだというふうに先ほども仰せられました。そうであろうかとも思いますが、しかし、その一味と言っているようなふうにも聞きますので、そうであると、一味とは何であるかということで、問題は第二の点が片づいていないのかもしれない。これは何ともはっきりいたしません。しかしいずれにいたしましても、これはパリその他で、当事者あるいは関係各国がいろいろな接触をいたしまして、その結果そういう場へ話が導かれるということに、やはりこれは若干の希望的な気持ちを含むわけでございますけれども、そういう形で解決されることが一番望ましいのでありますし、また当事者が賢明であって、そのように持っていって、いわゆるパリ協定の精神による解決というものを私どもとしては期待をいたすわけでございます。
  149. 堂森芳夫

    堂森委員 いまの御答弁は、承っておりますと、外務大臣あるいは外務省日本政府ははっきりした見通しを持つことはきわめて困難である、こういうような立場と解釈してようございますか。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少し時間を、先を見ましての話でありますれば、私はいまのような落ちつき方をするという見通しは多分狂うまいと存じますけれども、そこに至ります過程において、さらに戦争、殺戮が行われる、激化するのであるかどうかということにつきましては、ちょっと余り期近なことでございますので、何とも申し上げがたいということでございます。
  151. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは言葉をかえて申し上げてお尋ねしてみたいと思うのでありますが、チュー大統領の辞任というものは、私がさっきも申しましたように、アメリカのアジア政策の重大な挫折である、こういうことはもうはっきりしてきたと思うのでありますが、そこで、やはりわが国も今後、新しいアジアの秩序を模索していかなければ、日本政府は、これは日本のことでない、われわれ国民も人のことのようにわれ関せずえんという立場でおることはできない、こう思うのであります。しかし今日の事態になれば、インドシナ半島はやはり北、ハノイの影響力というものは強くなってくることは私は自然の道であろう、こう思うのでありますが、それに絡んで、ソ連と中国との競合関係が、どんな形としてこの全インドシナ半島の地域で顕在化してくるであろうかという問題も私はあると思うのです。  それからまた、隣のタイ国を初め、ASEAN諸国、またビルマというような国等に、インドシナ半島の今回の事態がどんな影響を及ぼしてくるであろうかという予測といいますか、そうしたこともわが国政府はよく考えてみなければならぬ。そうしなければ、新しい外交政策も出てこないと思うのでありますが、大臣はどういうような影響が出てくるであろうとお考えになりますか、これも承っておきたいと思います。これは、むずかしいと言えばむずかしいかもしれません。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いずれの国であれ、この戦争に対して新たな軍事援助、武器援助をいたすことは、パリ協定の精神に違反をいたすわけであるのみならず、私どもが、今回の出来事を民族による、いわゆる民族のための運動として歴史の流れの中でとらえているという観点からいたしますと、それに対して他国がいろいろな干渉をするということは好ましくないことである、私は、考え方原則はそういうことでなければならないというふうに存じます。
  153. 堂森芳夫

    堂森委員 干渉するとかしないとかは別にしまして、また反対とか賛成とかこれは別にしまして、どのような影響が出てくるであろうか、そういうことのお考えを承りたい、こういうわけであります。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 不幸にして、中ソの関係というのは必ずしも円滑でございませんので、このたびの東南アジア地域におけるあのような変動に際しましても、両国とも無関心であり得ない。お互いが、お互いの勢力がこれによって拡大していくということにはきわめて警戒的であろう。そういう環境の中での変化を予想するしかないのではないかと存じます。
  155. 堂森芳夫

    堂森委員 私、外務大臣、大変答弁しにくいのではないだろうかと思いますが、これはいろいろな問題について、付近の諸国にどういうような影響が出てくるだろうかという予測というものは、外務大臣は、やはり大臣として一つ考え方をお持ちにならなければ、私は外交というものは出てこない、こう思うのであります。御答弁が何かはっきりしませんのでやむを得ないのですが、時間がありません。  そこで、カンボジアの新政権に対する承認問題についてお尋ねしておきたいのですが、十九日にわが国はカンボジアの新政権を承認した、こういうふうに伝えられておりますが、日本政府としては政府承認のための外交手続はどのようにして取り運ばれたのでありますか。すなわち日本政府は、新政府承認の口上書を北京においてカンボジア王国民族連合政府のだれに伝達きれたのでありますか。それから日本政府が伝達した新政府承認の口上書に対し、新政権としては受け取ったという口上書を伝達してくるのが通例であるが、これはどうなっておりますのか。それから、外交関係の設定の時期はいつごろと考えておられるのでありますか、これも承っておきます。
  156. 高島益郎

    ○高島政府委員 カンボジアの新政府承認の手続でございますが、十九日に国内手続といたしまして閣議で了承を得まして、これを受けまして、在中国の先方の大使館にわが方の大使館の館員が口上書によりまして、日本政府が本日付、つまり十九日付をもって新政府承認するという意思を伝達いたしました。  国際法的に申しまして、これによって日本の新政府承認の法的効果は発生するわけでございまして、この口上書に対する返事がある、ないということとは関係はございません。  承認というのは、いずれにいたしましても政府の一方的行為でございまして、そういう意思表示をしたその瞬間において、承認という国際法上の効果が発生するというふうに解釈いたしております。このことと外交関係の設定とは別の問題でございまして、外交関係の設定は相手国政府の同意がなければできません。したがって、この点につきましては、新政府との間で今後どのようなやりとりが行われるかということによりまして見通しができるわけでございまして、現在の段階で、いつからそのような外交関係が開設されるかという見通しをまだ申し述べ得る段階にございません。
  157. 堂森芳夫

    堂森委員 私がさっきお尋ねしましたのは、承認しますという口上書を向こうに渡したわけでしょう。それに対して、受け取りましたという口上書が来るのが通例と聞いておりますが、来ておるのですか、来ていないのですか。
  158. 高島益郎

    ○高島政府委員 まだそのような口上書に対する返答を受け取ったという通報を受けておりません。
  159. 堂森芳夫

    堂森委員 そういうものは、短期間の間に受け取ったという口上書が来るのが通例ではないですか、どうですか。私、外交の通例を知らぬものですからお尋ねするのですが、いかがですか。
  160. 高島益郎

    ○高島政府委員 各国各国それぞれまたケースごとにいろいろ違いますので、一概に期間がどれくらいという定まりは別にございませんので、私どもとしては、先ほど申しましたとおり、現在の段階ではまだそういう趣旨の返書を受けておりませんけれども、国際法的に申しまして、先方にそういう通報をしたその時点におきまして、日本政府は新政府承認したという法的効果は発生しておるということでございます。
  161. 堂森芳夫

    堂森委員 新聞報道を見ておりますと、タイ国の承認を拒否したというようなことが報道されております。それから新聞報道でありますが、創価学会の池田会長ですか、北京でシアヌーク殿下と会見されたときに、日本は余りにロン・ノル政権を長く何か云々というようなことで、外交関係ができるのは数年後であろうというようなことを話したというようなことが新聞に書かれておりますが、そういうふうなことについてはどのようにお考えでございますか。
  162. 高島益郎

    ○高島政府委員 私どもも新聞でただいま堂森先生のおっしゃったようなことを承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては、いままでカンボジア政府との関係におきまして日本のとってきた行動ということについて一言申し上げますと、日本は、特定の人物あるいは特定の政権を支持するために、いろいろ国際連合その他で行動してきたということではなくて、本当に流血の惨を一日も早くなくして、話し合いによるカンボジア人同士の平和解決ということを重点に、国際連合その他でやってきたわけでございまして、先般来のカンボジアにおけるわが方大使、並びにASEAN諸国の大使のいろいろな行動も、まさにそういう気持ちからやってきたわけでございます。そういうことでございますので、日本政府のそういう真意がよく理解していただければ、将来の日本と新政府との関係も、問題がそれほど出てくるというふうに私ども考えておりません。
  163. 堂森芳夫

    堂森委員 日本外務省はあるいは政府は、ロン・ノル政権のために国連でどういうことをしたかということは、それはあなたのおっしゃるような受けとめ方をしておるかどうか、これは私は大いに議論があるところだと思うのであります。あなたのおっしゃるような受け取り方を、特にシアヌーク殿下を元首としておるこの新政権の諸君が、そういうふうな受け取り方をしておるなんということは、私はそんなことは考えられぬと思うのであります。  そこで、しからば、こちらが承認をした、一つの政権を承認したという文書を向こうに伝えた場合にも、外交関係が長い間できてこなかったという例はあると思うのですが、ないのですか。日本もそういう場合にそういうようなことになる危険はないのでございますか。いかがでございますか。
  164. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほど申しましたとおり、新政府承認という行為と、その新政府との間の外交関係の設定という問題とは、おのずから別個の問題で、後者の方は新政府との間に合意が必要であるということでございますので、理論的に申しますと、相手国政府の合意がなければ、日本が大使館をあそこに従来どおり置いて外交活動を行うということは、理論的にはできないわけでございます。しかし、このことは、そういうことでございますので、いままで国際的に例があるかどうかという点は必ずしもつまびからかにいたしませんけれども、全然ないわけではないと思います。いろいろな理由に基づいて、承認関係にはあっても、大使館が置かれない、したがって外交関係が置かれないという例は、私はあろうかと思います。現に日本の場合で言いますと、たしかアルバニアとの関係でそういう関係ではないかと思います。これはしかし全然別な理由でございまして、そういうのは通常は正常な関係ではないと思います。  カンボジアにつきましては、これはもっぱら日本政府の方針というよりは、先方、新政府の方針いかんにかかるものでございまして、今後の新政府の出方その他をよく注意して見てまいる必要があると思います。したがいまして、現在の段階で、いつごろそういう外交関係を再開できるかという点につきましての見通しを申し上げることはできません。
  165. 堂森芳夫

    堂森委員 私が知っておるのでは、かつて北京政府をユーゴスラビアが承認をして、外交関係が長い間できてこなかったという場合があったことを記憶しておるのですが、しかし、そういうふうな答弁局長はされますが、アジアの日本国として、外交関係がいつまでもできないというようなこと、それはそれでやむを得ないと言えばやむを得ないのでしょうが、私は、それはわが国の従来のインドシナ政策の結果であることは明らかでありまして、それでは済まされぬ問題ではないか、こう思うのであります。  時間がありませんからこれ以上申しませんが、外務大臣、御意見を聞いておきたいのですが、それでやむを得ないでいいんでございますか。カンボジアの新政権に口上書を渡して、承認します、しかし外交関係はいつできるかわからぬというようなことで、それでいいのでありますか。日本の外交としてそれは何も言うことはないのでございますか。外務大臣いかがでございますか。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 承認そのものは一方行為でございますので、すでになされておる。シアヌーク氏が語ったと伝えられておりますことは、私どもの観点では、シアヌーク氏が新政府において実態的にどのような地位に立たれるのか、現にまたプノンペンにいる人々とどのように密接な連絡があるあるいはない、プノンペンの考え方をどのように反映しておられるかというようなことについて必ずしも明確でございません。いろいろどうであろうかと考えられる点もございますので、いまの段階でそのようなお話が仮にシアヌーク氏から伝えられたといたしましても、私ども、さしてそれをどうというふうには考えておりません。  先ほど堂森委員が言われました、前政権の終末段階における栗野大使の努力につきましては、当時この委員会でも申し上げたと存じますが、無事の殺傷をやめて、そしてクメール人によってクメールのことを処理すべきであるということを求めに応じて建言をいたしたわけでありまして、その当時からすれば、クメール・ルージュからいたしますと、それはいわば敵国の国民の殺傷を防ごうとしたということになりましょうが、政権が変わりますと、一晩たちますとそれは新政権にとっては自分の国の国民でございますから、その無意味な、無益な殺傷を防ぐための努力というものは、これはそれとして評価をせらるべきである、これは私にはそうとしか考えられないわけでございますので、そのゆえに、われわれが新政権から不興を買うあるいは敵視されるという理由は、これはどう考えましてもあるべきことでない。この辺の事情は、やがて新政権が少し落ちついてまいりますとおのずからわかってくることではないだろうかと私ども考えております。
  167. 堂森芳夫

    堂森委員 時間でございますので……。
  168. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上民雄君。
  169. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま日中平和友好条約あるいはインドシナ半島における新しい情勢に対する政府態度について、いろいろ御質問なり論議がございました。私、少し角度を変えまして、このいわゆる連休の間に、第三次海洋法会議一つの結論を見出す方向にくるのではないかと思いますので、そういうスケジュールの意味からいいましても、ここでちょっと伺っておきたいと思うのであります。  ジュネーブにおける第三次海洋法会議の推移と今後の見通しについて、まず初めに政府の報告をいただきたいと思います。
  170. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 現在ジュネーブで開かれております第三次海洋法会議状況について御報告申し上げます。  当初、会議事務局、議長団等の主たる意向といたしましては、できる限りいろいろな問題点については公式の会議委員会を開いて論議することなく、非公式な協議を通じて問題点を詰めて、できる限りいろいろな案を整理して簡単な案に、できれば単一の案にした上で、四月中旬ごろから正式の会議運営に入りたいということで始まったわけでございます。  この非公式協議は連日各委員会ごとにそれぞれの問題別に行われましたけれども、なかなか各国の主張、見解が調整されるに至らずに今日に至っております。したがいまして、現在のところ、まだ正式の委員会を開催してどんどん議事を進行させるという状況に至っておりません。これは、当初みんなが考えておりましたところとは若干実は状況が異なってきたわけでございまして、したがって、残ります会期の五月十日の期限までにいろいろな問題についての結論が出そろって、会議が決着するという見通しは、実はいまのところやや悲観的な状況になっております。各国の代表団の感触もほぼ同様でございまして、今回のジュネーブ会議の予定されております会期の間に、諸問題について取りまとめが行われるという見通しは、現在の段階ではきわめて困難ではないかというふうに考えております。
  171. 河上民雄

    ○河上委員 いま局長から御報告がございまして、いろいろ領海とかあるいは経済水域等多くの問題が論議されるということでございましたが、大筋の合意すら期待できないような状況であるというような悲観的なお話でございました。そういたしますと、わが国にとりまして、特にわが国の国益にとりまして非常に関心の的であります領海の幅も決まるということは残念ながら期待できないではないか、こんなふうに思いますが、いかがでございますか。
  172. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 前にも申し上げたと思いますが、領海の幅員については十二海里にするということ自体についての異論、反対意見というものはほとんどないわけでございます。したがって領海の幅員を十二海里にするということ自体については、今度の現在開かれております海洋法会議においても、各国の意見、見解というものはほぼまとまってはいるわけでございます。ただ、これと関連いたしまして、経済水域あるいは国際海峡の問題が取りまとまっていないというのが現在の状況でありますので、領海の幅員だけを単一の合意事項として取り上げて会議をまとめるということには恐らくならないだろうと思います。
  173. 河上民雄

    ○河上委員 去る二月二十六日の当委員会で、鯨岡委員の御質問に答えて、宮澤外務大臣は、会議において領海の幅が決まらないというようなことが仮にあっても、私一存では申し上げかねるけれどもわが国としては十二海里宣言をしてもよいのではないか、せざるを得ないのではないかという御答弁をなすっておられました。さらに二月二十八日予算委員会第四分科会におきまして、これは私が安倍農林大臣に質問いたしましたところ、より明確に、会議の結論がどうなろうとも、十二海里を日本政府としては宣言をしたい、このように考えているというふうにはっきりと答えられたのでございますが、ジュネーブ会議で、いまお話がございましたように一応の合意があるけれども、それが宣言という形ではっきり結論が出ない場合には、わが国としてはこれまでの両大臣の言明から見て、十二海里を宣言するお考えがあるかどうか、それを伺いたい。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はそのような答弁を申し上げました後に、これは当委員会にもたしか御報告を申し上げたと存じますけれども、新たに閣議の了解がなされまして、これは今回のジュネーブ海洋法会議に臨みますわが国の基本方針を決定いたしました閣議においてでございますが、万一このたびの会議がまとまらずに、したがって、領海に関するいわゆる十二海里等々の問題が妥結をいたしませんでしたときには、わが国がこの問題にいかに対処すべきかはその時点において改めて検討する、こういう閣議の了解がなされております。と申しますのは、この問題につきましては、農林省ばかりでなく、関係各省庁、非常に多数関係をいたしておりますので、したがいまして、その閣議の了解に従いまして、もしジュネーブ会議で結論を得ませんときには、その時点においてわが国態度をどうすべきかを改めて閣僚間で議論をいたしまして、その上で決定をいたしたいというのが政府の正式の態度でございます。
  175. 河上民雄

    ○河上委員 その場合は、従来の三海里説を堅持するということを含んでおるのですか。そういうことはもう考えられないということでございますか。
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、実はただいま申し上げることが困難でございます。海洋法会議が仮にまとまりませんでも、どのような全体の帰趨であったかというようなことも重要な参考になろうと思いますし、また、従来の立場を変更することから来るわが国にとりましての得失、いろいろあろうと存じますので、その点もあわせまして、その段階で検討するというふうに御了解をお願いを申し上げます。
  177. 河上民雄

    ○河上委員 十二海里宣言をちゅうちょさせる一つの原因に、国際海峡の自由航行という原則が確認されないということがやはり入っておりましょうか。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはやはり一つの要素であろうと存じます。
  179. 河上民雄

    ○河上委員 もし領海十二海里ということになりますと、津軽、宗谷、対馬の三海峡が問題になるのは御承知のとおりでございますが、対馬海峡は、この前新聞にも出ておりましたけれども、ちょうど真ん中に一海里ほどの公海部分が残るそうでありますけれども、他の二海峡についてはわが国の領海になってしまいます。そういたしますと、もし国際会議の自由航行という制度が実現を見ない場合に、十二海里を宣言するといたしますと、外国の軍艦、商船等の船舶はいわゆる無害通航権によって航行することになると思うのでありますけれども、この点は条約局長いかがでございますか。
  180. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ただいまお挙げになりました三つの海峡のうち、宗谷海峡は、御承知のとおりわが国とソ連との間で二十四海里で埋まる海峡ということになってまいります。仮に十二海里に領海の幅員が拡張されるという措置がとられた場合に、わが国領域によって囲まれますそういった海峡について、国際的な航行の自由という制度がなくなった場合にどうなるかという御質問かと思いますが、まさしく私ども、そういう立場をとりますと、日本の船舶のほかの地域、世界各地におきます国際海峡における自由航行がどうなってくるかという点が実は非常に大きな関心を持っているわけでございまして、具体的に申しますると、たとえばマラッカ海峡のようなところで無害航行しか認められなくなるという状況になりますと、わが国のタンカーその他の航行がどういうふうに規制されてくるか、その辺が実は私どもとしては非常に重大な関心を持たざるを得ないわけでございます。でございますから、先ほど大臣が言われましたように、この国際海洋法会議が終わりました時点において、それまでに行われます会議におけるいろいろな論議、それから各国考え方といったようなものも勘案した上で、政府としての方針を決定すべきではないかというふうに考えているわけでございます。
  181. 河上民雄

    ○河上委員 そういう問題もございますけれども政府は、これまで非核三原則を貫くために核を積んだ艦船の領海通航は有害であるという考え方に立って、これを認めない、アメリカの核積載艦の領海通航についても、日米安保に基づく事前協議の対象となるという見解をとってきたはずでございます。そうなりますと、もし国際海峡の自由通航という新しい国際法概念ができない限り、アメリカの核積載艦の領海通航ができなくなる。その場合に、安保条約を長期的に維持するという考え方に立っている日本政府として、安保条約の効果的な運用支障を来すというような考え方を持っておられるかどうか、伺いたいと思います。
  182. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 この段階では一般論としてのお答えしかできないことを御了承をいただきたいと存じますけれども日本の領海の幅員が広がることによって、日米安保条約の実施ないし運用支障が出てくるということがあっては、政府としては困るということが基本的な立場だろうと思います。ただ、その場合に具体的にどういうことをするのかということになってまいりますと、いまお尋ねの国際海峡について日本政府としてどういう立場をとるかということだろうと思うのでございますが、その点は、さっきも申し上げましたように、いろいろな考え方でありますとか、各国のとる態度であるとか論議の模様であるとかということをもあわせまして考えた上で決定しなければならないだろうというふうに考えておるわけでございます。
  183. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、第三次海洋法会議の結論を待って十二海里宣言をどうするかという問題について政府態度を決めるというお考えの背後には、単にマラッカ海峡のような国際海峡において、日本のタンカーなどの通航がどうなるかという問題だけではなしに、むしろ、いま言ったような日米安保条約運用を損なうかどうかということの方か――方かどうか知りませんが、そういうことの関心が非常に強いというふうに私は判断せざるを得ないのでありますけれども、外務大臣、先日外務大臣はキッシンジャー長官との間で口頭了解として、核のかさの抑止力、それからアメリカの日本への防衛義務について再確認の合意をされたというようなことでございますけれども、その合意を損なわないためには、核の積載艦の通航を認めざるを得ないというふうにお考えになっておられるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は両者の間に全く連関がございません。
  185. 河上民雄

    ○河上委員 アメリカに日本の防衛義務を遵守させるということには、わが方が安保条約の義務を履行するという約束をしてきたのではないかと思いますけれども、その中には核積載艦の通航をさせるということを含んでいるかどうか。日本政府としては、国際海峡における自由通航という新しい概念が誕生しないと、領海を十二海里に幅を広げるという要求と、それから安保条約の義務を守るという要求との間に調和がどうしても出てこないというふうに考えるのではないかと思うのでありますが、そういう点はいかがでございますか。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お答えといたしましては、そうではないというお答えになるわけでございますが、すなわち、キッシンジャー氏とそのような話し合いをいたしてまいりましたが、それは、わが国の現在安保条約上負っております義務に何ら新しい義務を追加するものではございません。  なお、別途、将来いわゆる国際海峡が国際的な合意としてできてまいりましたときに、いまの問題をどのように扱うかということは、これは先般来御議論になっておりますように、そこに一つの問題がございますけれども、そのことは、先般キッシンジャー氏との間で私が話してまいりましたことと関連がございません。すなわち、私どもとして何か新しい義務を負う約束をしたということはないということでございます。
  187. 河上民雄

    ○河上委員 この問題については、もう水かけ論のような形でやりとりしてもどうかと思いますけれども、論理的には恐らく日本政府にとっては十二海里宣言をする、同時にその条件として、国際海峡における自由通航という新しい概念が生まれてくれることが一番望ましいのではないか、私はそう思うのでありますけれども、大臣はいかがでございますか。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその辺が、先ほどわが国の国益に照らして得失を考えましてと申し上げたことの内容にあるわけでございます。  国際海洋法会議が、先ほど条約局長から申し上げましたように、十二海里、あるいは十二海里そのものについてはほぼ各国に異論がない状況ではありますが、それが国際海峡を設定するか否かという問題、あるいは経済水域の問題と、いわば一括のディールになっておるということを先ほど条約局長が申し上げましたので、そのとおりでございます。その辺のところを全部の国益から見ての利害得失を判断するということになろうと思うわけでございます。
  189. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、最近のような国際情勢の中で、アメリカの核のかさのもとにおいてわが国の安全を確保して、核攻撃に対して日本を防衛してくれるという、安保条約のいわば神話のようなものをもう一度確認するということは、私ども立場から見るとこれは全く無意味なことではないかと思うのでありますが、いまの御答弁で大臣のお考えが漠然と大体察せられるような感じがいたしますので、この問題はここで打ち切りまして、インドシナ半島の問題にちょっと触れたいと思うのであります。  カンボジアにつきましては一方的に民族連合王国の政権を承認をしました。そして日本の大使館を一たん引き揚げて、またもう一度大使館をもとへ戻せばそれでいいんだというようなお考えでございますが、そういうのを仮にカンボジア方式と名づけた場合、今後南ベトナムの、恐らく予想されるような情勢の中で、同じような承認方式をとるお考えかどうか。
  190. 高島益郎

    ○高島政府委員 南ベトナムのサイゴンにおきまして、最終的にどういう形でもって現在の事態が収拾されるかということによりまして、いろいろ外交関係の維持の仕方が違ってくると思います。  たとえばの話でございますが、もし仮に、サイゴンから大使及び大使館員が引き揚げることなく、そのままの形でもって事態が収拾される、そうしてそこに何らかの新しい政府ができるということになった場合には、いままでの国際慣例から申しますと、外交関係を継続することによって、事実上承認という形になるという手続を通常踏んでおります。  今回のカンボジアの場合は、大使及び館員すべて引き揚げた後でございまして、そういう形式を踏むことができませんで、特別に承認という行為を踏んだわけでございますけれども、通常私ども政府承認する場合は、事実上の承認ということで外交関係を継続することをもって、そういう意思表示をするという形をとってきているのがむしろ日本だけでなくて各国間の一つの国際的な慣例になっておりますので、サイゴンの場合、事態がどういう形でもって解決するかということで、それによってわが方の対策も変わってくるのではないかと考えております。
  191. 河上民雄

    ○河上委員 日本大使館は仮に引き揚げずにそこに残っておった場合、そういうことができるというお話でございましたけれども、たとえばカンボジアの大使館の場合、日本に駐在している大使館の場合は、もはやカンボジアを代表しているものとは日本政府は認めていないと思うのですが、こちら側はそのままでいいと言うけれども、向こう側はそのままでいいということにはならぬですね。その点は一体どういうふうにお考えになりますか。
  192. 高島益郎

    ○高島政府委員 これまで東京にございましたクメール共和国の大使及び大使館員は、日本が新政府承認したことによって、現在の政府を代表するものでございませんので、法律的に申しますと、大使としての機能は果たし得なくなっているわけでございます。で、大使は、大使自身の発言といたしまして、新政府に忠誠を誓うということを申したそうでございますが、近い機会に従来からの計画に従ってパリに行かれるというふうに伺っております。
  193. 河上民雄

    ○河上委員 その問題はカンボジアの場合、日本政府が一方的な承認をすればいいということでありますけれども、外交関係の樹立ということになりますと、そういう問題を処理しなければならない、こういうふうにわれわれは理解せざるを得ないのですが、そういう問題は将来南ベトナムの場合にも同じようなことが起こると考えてよろしいわけですね。
  194. 高島益郎

    ○高島政府委員 南ベトナムの場合どういう事態が起きるかという点につきましては、先ほど申しましたとおり、どういうふうに収束するかということによりましてわが方の対策は変わってくるのではないかというふうに申し上げておきます。
  195. 河上民雄

    ○河上委員 大臣に一言。日本政府はアメリカの東南アジア政策に非常に協力をしてこられたわけでございますが、今日のような事態を迎えて、この事態の受けとめ方として、これはまことに遺憾なことであるというふうに受けとめられるのか、それとも、まさに来るべきものが来たという、非常にさめた目で見ておられるのか、それとも、これによって長年にわたる戦火が収束して、東南アジアが政治的に安定するという、その時期の始まりとして歓迎をされるのか、その三つのうちのどの態度をとられますか。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私自身は、いま仮にカンボジアについて申し上げます。と申しますのは、ベトナムの事態というのはまだああいう状況でありまして、私が公の席で不用意なことを申しますと、現実にたくさんの人の命に関係する場合があり得ますので、したがいまして、すでに事態が終息したと思われますカンボジアについてのみ申し上げますが、全体として、これはちょっと矛盾するような表現になっていけませんが、アメリカがインドシナ半島で善意であり、たくさんの同胞を失ってまで軍事行動に出たということ、そうしてそれが挫折しつつあるということは、善意であったと思われますだけに気の毒なことであって、アメリカとしてはさぞかしいろいろな悩みを持っておるであろうという理解は、これは持っております。  他方で、翻って考えますと、われわれ日本人として、アメリカの掲げておった理想が、本来、実現可能なものであるかどうかについて、正直のところ、何がしかの疑問を持っておったわけでございますから、善意ではあってもそういう努力が実を結ばなかったということとして、直接の当事者でないだけに、多少そのような客観的な見方もしておるわけであります。  すなわち、アメリカの場合不幸でありましたのは、フランスの植民地政策が瓦解いたしましたその後を、つまり民族主義運動として植民者を追放しようとしたグループが、結局二つに分かれてしまったわけでありまして、片一方がやや共産主義的な陣営に入り、片一方がそうでない陣営になった。その場合、アメリカとしては、非共産主義の陣営を応援した結果になったわけですけれども、その結果、あたかも民族運動そのものを相手にするような形になってしまった、今回の出来事はそういうことであったのではないか。大きな歴史の流れの中で、やはり民族自決という運動が高まってきて、そうして、それに対してあたかも立ち向かうかのごとき沿革、いきさつになってしまった。それはアメリカにとって気の毒なことであったし、不幸なことであった、そんな理解をいたしておるわけであります。
  197. 河上民雄

    ○河上委員 大臣からそういう御感想をいただきましたので、もう時間が参りました。実はもう一つ、日韓司法共助協定の問題を伺おうと思いましたけれども、時間が余りございませんので、時間を守る意味で、私はこれで終わります。
  198. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  199. 正森成二

    ○正森委員 ただいま河上議員がお尋ねになった続きのようなかっこうになりますが、カンボジアあるいはベトナムで、民族解放あるいは民族自決というものが非常に大きな流れになって、カンボジアではすでに事は決着したというように見てもいいと思います。その問題について、宮澤外務大臣がいま河上議員の最後の質問に対してお答えになりましたが、それとほぼ同じようなことは、外相がアメリカへ行かれたときにも新聞の報道で出ております。そこで、その問題を私は繰り返しませんけれども、米国のべトナムヘの介入は、自由主義社会を守ろうという米国の善意なり理想による動機からだと理解しているが、その米国の理想はりっぱだったが、インドシナのような地域ではそうした理想の達成はむずかしいと考えていたという意味のことを言われているわけであります。私どもは、当事者の国へ行かれての発言でありますから、外交的配慮もあってそう言われたのだろうと思いますが、そもそも根本的に、カンボジア解放戦線あるいは南ベトナム解放戦線の民族自決、民族解放を求める動きに不用意に介入したということ自体が誤りであった、それは決して善意というだけでは済まされない問題であったというように考えております。  しかし、これについては、先ほどお答えもあったようですから、これ以上申しませんが、私は、その後で外相が、ベトナム戦争は安保との関連で日米間の摩擦要因となっていたが、それがなくなることになるというように発言されたことに注目しております。  そこでこのことは、私は端的に伺いますが、ベトナム戦争が始まりましたときに、それまでおおむねフィリピン以北というように言っていたのを、フィリピンより南であっても、そこで起こったことがフィリピン以北の極東の問題に関係があるという場合には、なお安保の対象地域になるという意味の拡大解釈が行われました。しかも、その介入自体が、いま言われたように、民族解放の流れに逆らうものであったという点から、わが国で非常に論戦が行われたことは事実であります。そこで、宮澤外務大臣のこの発言は、それらのことを踏まえて、安保をフィリピン以南において適用するというような場合、あるいはアジアにおける民族解放運動に経過からして逆らうように見られるような形で関係づけていくということは、やはり日本立場からして好ましくない、少なくとも国内の摩擦要因になるという見解を表明したものだと思いますが、そう受け取ってよろしいか。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、失礼でございますけれども、私の本意とは違っておるように思います。正森委員のお立場からしますと、そのようにごらんになることは理解はできますけれども、私の腹に持って申しました意味は、第一に、少なくとも正森委員のような御議論も相当ございまして、長年国会においても国内においても、そのような議論がなされてまいりましたその結果、国内的にいろいろな摩擦があったという点が一つでございます。  それからもう一つは、日米間におきまして、恐らく、この戦争のために必死になっておりました時代のアメリカから見ますと、わが国の協力というものが必ずしも十分でなかったという批判を、アメリカ政府あるいはアメリカ国民は持っておったと思うのでございます。これは理由があるにせよないにせよ持っておったと思いますが、そういう問題がこれで恐らく解消するであろう、これを第二に考えておったわけでございます。
  201. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣の御理解はそうであったかもしれませんけれども、私としては、私がいま申し上げたような解釈にお立ちになることが、現在のアジアの大きな変化に対してわが国の外交が誤りなく対処し得るゆえんである、そうして、外務大臣の言葉の端々にも、そういう方向にできるだけかじを向けようというのが私には看取されるような気もする。ですから、やはりそういう方向を勇気を持って進めていくということが非常に大事じゃないかと思います。  その関連で一つ伺いますと、他の議員がお聞きになったことと重複しないように申し上げますが、ベトナム民主共和国への無償援助というのは、私の承知しておりますところでは、三千九百万ドル・プラス・アルファ、そうしますと大体百二十億円ぐらいになりますが、そのうち、五十億円については予算化されて、三月段階ベトナム民主共和国の代表が来られましたが、時期の点やいろいろの問題があって具体化せずに済んだというように理解しております。  民族解放の流れというものを直視するならば、これは現在、ベトナム民主共和国に賠償にかわるものとして考えられた無償援助というのを実施するということには、何ら支障がないはずでありまして、そのことによって、民族解放の流れというものにわが国政府賛成である、少なくとも反対ではないという態度を明らかにすべきであると思います。そのことと、ベトナム民主共和国への大使館の交換の問題も含めて、この問題をどのように早急に解決されるのか、伺いたいと思います。
  202. 高島益郎

    ○高島政府委員 ベトナム民主共和国から先般経済使節団が参りまして、私、直接話し合いをいろいろしたわけでございますが、結局のところ最終的な詰めにまで至りませんで、先方はハノイにお帰りになりました。今後の進め方につきまして、ハノイに帰ってから政府に報告し、その結果わが方のビエンチャンの大使館を通じて、今後の進め方について連絡をするという約束をいたしまして別れた次第であります。したがって、私どもといたしましてはその連絡を待ちまして、今後ビエンチャンないしはハノイでさらに最終的な詰めを行いまして、そしてこの五十億円にわたる無償援助の実施を行っていきたい、こう考えておりまして、現在向こう側からの連絡を待っているというのが現状でございます。  それから大使館の開設につきましては、先般ここで答弁いたしましたけれども、四月に開設するということにつきまして先方政府との間に合意がございまして、ただいまのところ、先方政府の受け入れ体制についてこれも先方から連絡があることになっておりまして、それを待って、現在ビエンチャンに待機している二名の館員をハノイに派遣することになっております。  申しおくれましたけれども、東京での会談の内容につきましてはずいぶんいろいろ相互に意見を述べ合いまして、かなりもう一歩というところまでいっておりますが、ただ、先方はやはりハノイに帰って最終的に政府の了承を得た上で今後のことを進める必要があるということでお帰りになったわけでございまして、何らその間において双方の問題の認識に誤解はないと私ども考えております。
  203. 正森成二

    ○正森委員 それでは次に、日韓司法共助協定の問題について伺いたいと思います。  たしか私が三月末に質問いたしましたときに、政府委員から、韓国側から司法共助協定の申し出があるという意味のことを少しお漏らしになりままして、その翌日のある新聞には、韓国側の申し出により、司法共助協定の是非を検討しているというのが相当大きく出ました。現在司法共助協定、特に刑事関係の司法共助協定をやるということになりますと、反共法とか国家保安法とかあるいは国家冒涜法のように、わが国の法制にはなはだなじまない法律がある。そういうところと軽々に司法共助協定を結ぶというようなことは非常に重大な問題であると思うのですね。そこで、実際に椎名メモ以後に韓国側から司法共助協定を締結したいという申し入れがあり、その進行が行われているのかどうか、あるいはそうではなしに、誤って伝えられているのかどうか、そこら辺を明確にお聞きしたいと思います。
  204. 高島益郎

    ○高島政府委員 日韓間の司法共助に関する取り決めについての話は、昭和四十一年以来実はございまして、ただいま先生から御指摘の椎名特使訪韓以後、特別に先方からそういう申し入れば全然ございません。     〔委員長退席、石井委員長代理着席〕 ただ、四十九年にわが方がいろいろ検討した結果といたしまして、民事については司法共助取り決めをする用意があるということを先方に回答いたしましたのに対して、先方から特別の反応はございません。ただいま先生御指摘の刑事についてこれをどうするかという点につきましては、私の方の所管ではございませんが、やはりいろいろな問題があるということで慎重に扱っていきたいと思っております。
  205. 正森成二

    ○正森委員 外務省から、特に刑事の司法共助について、椎名訪韓以後新たに申し入れがあったわけではないという話がありましたが、法務省に念のために、四十一年ごろいろいろ話があったということでありますが、法務省としてはどういう態度をとっておるのか伺いたいと思います。
  206. 根來泰周

    根來説明員 私どもの方は、民事の方はともかくといたしまして、刑事について過去そういう問題について検討したことがございます。その検討の結果は、仰せのようにいろいろ法制上の問題がございますので、いまのところ共助を求めるのは適当ではないという結論を一応出しまして、大臣もそれを了承しておる状況でございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 それではわかりましたが、民事の問題については昭和四十九年に、場合によっては交渉してもよいという意思表示をしたということでありますが、しかしこれも場合によったら非常に危険な問題を含んでおるのですね。  御承知のように、司法共助についてのヨーロッパの協定というのがございまして、これが一つの模範にされております。それを見ますと、刑事の場合にはもちろん政治的犯罪については拒否し得るということがございますが、証人やあるいは鑑定人事等について呼び出された場合に、その呼び出された者が、呼び出されるまで以前のことについて、向こうの国へ行った場合に拘禁されるようなことが絶対にあってはならぬという意味の取り決めがあります。民事の場合でも、注意をいたしませんと、民事の証人だとかあるいは鑑定人として召喚を受けましてのこのこ帰った、ところが、おまえは日本在住中に国家冒涜法に触れるようなことをやったではないかというようなことで、身柄を拘束されるということになりますと大変でございますから、民事の場合だからこれは司法共助をやってもいいというようにはなかなかならないと思うのですね。韓国は現在わが国に非常になじまない法律が多うございますから、その点を特に御留意願いたい、こう思っております。外務大臣に一言その点についての御意見を承りたいと思います。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 慎重に対処いたしてまいりたいと思います。
  209. 正森成二

    ○正森委員 時間が残り少なになりましたが、私は、この間の沖縄での二少女の暴行事件について伺いたいと思います。  十九日の真っ昼間に発生したかくのごときけしからぬ事件について、警察当局は犯人の名前、暴行の態様等についてどういうように事実を把握しておるか、それから米側に対してどういうように申し入れておるか、まず簡単に説明してください。
  210. 金子仁洋

    ○金子説明員 御質問の事件の概要でございますが、今月の十九日午後四時三十分ごろ、沖縄県国頭郡金武村の海岸におきまして、海水浴に来ていた女子中学生二名、これは十三歳と十五歳でありますが、米軍人から長さ十五センチ厚さ六センチくらいの石のかたまりで頭部をなぐられまして、意識不明の状態で乱暴された事件でございます。  これの捜査の概要でございますが、沖縄県警におきましては、今月の十九日午後五時十五分ごろ、石川警察署の金武幹部派出所がございますが、そこで外人に乱暴されたという女子中学生二名が血だらけになっているという届け出を受けました。その際事件を認知したわけでありますが、そこで直ちに全島に対する緊急配備、それから被害者からの事情聴取、現場付近の聞き込み、検索等、一連の初動捜査を実施いたしました結果、たまたま現場近くの海岸でパーティーを開いていた米海兵隊員の証言から、同事件の犯人は米国軍人である、そして同海兵隊員らが取り押さえまして、金武村にある在沖縄の米海兵隊キャンプ・ハンセンの米軍捜査機関に身柄を引き渡しておるということが判明したのであります。よって、キャンプ・ハンセンに捜査幹部を派遣しましたところが、被疑者は同キャンプの上等兵アローレス・サミー、二十一歳の青年でありますが、現場付近でパーティーを開いていた米海兵隊員から、身柄の引き渡しを受けた米軍当局が拘束中であるということがその際確認されました次第であります。  そこで、沖縄県警におきましては、同日、所轄の石川警察署幹部が米軍当局に被疑者の身柄引き渡しを要請するとともに、目撃者であるところの米海兵隊員、また被害者等の証言を得まして、また現場の検分結果等を資料にいたしまして、翌四月二十日、被疑者について逮捕状の発布を受けたわけであります。  米軍当局でありますが、これに対する被疑者の引き渡し要請については、県警の刑事部長等から現在までに四回行っておりますが、米軍当局は身柄の引き渡しには応じられないが、捜査に支障を来たさないよう全面的に協力するという態度をとってきているのであります。そこで県警としましては、四月二十二日から被疑者の出頭を求めて令状による身体検査、血液、それから体毛等の採取をいたしました。また任意取り調べを行っております。  被疑者はアメリカ軍第三海兵師団第四連隊第三大隊第一中隊というところにおりまして、現在身柄を拘束している場所は北谷村桑江にある米海兵隊の収容所であります。被疑者は昨年九月にカリフォルニアのサンジエゴの米海兵隊に入隊いたしまして、本年三月十七日沖縄に配属になったばかりであります。  以上であります。
  211. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きになりましたように、三月に沖縄へ来たばかりの二十一歳の上等兵が白昼に、子供を持つ親であるならば、あるいは子供を持つ親でなくても許しがたいようなことを、日本国民、日本の中学生にやっておる、こういう状況なんですね。しかも米側は、伝えられるところによると、地位協定の十七条5の(c)、それを主張して身柄を引き渡さないということを言うているようですね。それは事実ですか。
  212. 金子仁洋

    ○金子説明員 そのとおりでございます。
  213. 正森成二

    ○正森委員 第一、第十七条の5の(c)というのがおかしいので、「日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする」、つまり拘束をですね。ところが、法務省の方も来ておられますからあえて申しますけれどもわが国の法制によれば、まさに起訴するまでが身柄が一番大事なんですね。起訴をすれば、これはもう取り調べが一応終わった後でありますから保釈もできるという関係になっており、起訴してからのある意味での調書作成なんというのは、厳格な裁判官の場合は証拠保持上採用できないという裁判官さえおるのですね。ですから起訴するまでに身柄を確保していろいろ調べるということが大事なのであって、起訴してから身柄を渡してもらっても、それは裁判所への出頭、あるいは刑の執行のためには必要かもしれませんけれども、本来ならば犯罪の性質によって保釈にしてもいいことになっておるのですね。これはわが国の法制との関係からいっても非常に屈辱的な法律であるというように思うのですけれども、その後の方のことは外務省に聞くとして、まず法務省が来ておりますから、わが国の刑事訴訟法の体系から見ても、こういう規定の仕方は通例ではないのではないですか。
  214. 根來泰周

    根來説明員 捜査という見地からのみ考えました場合に、日本の司法官憲のもとにおきまして、その身柄を確保するということは必要だと思いますけれども、国際間の問題とか、あるいは米軍側から言わせれば自国民の保護とか、いろいろの問題があってそういう規定があるものと思いますので、私ども捜査の立場から一方的に結論を出すことは差し控えたい、こういうふうに思うわけです。
  215. 正森成二

    ○正森委員 非常に遠慮した言い方でしたけれども、捜査のたてまえからいうと身柄は必要だという意味のことを答えたと思うのですね。  そこで外務省に伺いたいと思いますが、自国民の保護のためにこういう規定をアメリカは置いておるのだろうと言いますけれども自国民の保護もよりけりでありまして、わが国の国民に対してこういう凶悪なことをやっており、しかもそれがほとんど明々白々であるという場合に、これは明らかに身柄をわが方に引き渡すということが当然であると思うのですね。十七条関係の条文を見ても「相互に援助しなければならない」という規定を各所に設けております。今回のような事件の場合には、速やかに身柄を引き渡すように外務省みずからも米側に申し入れるべきではないか、そういうように思いますが、どうですか。
  216. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点に関しましては、正森委員から御指摘がございましたように、地位協定の十七条の五項の(c)に規定がございまして、その者の身柄が米側の手中にあるときは、日本側によって公訴が提起されるまでの間、アメリカ側がこれを引き続き拘禁する権利があることになっております。この点は、日本に米軍の駐留を認めております以上、こういう事件が起こりましたときは日本が相協力して事件の解決に当たる必要がございまして、またこういう事件が起こったときには、いわば裁判権の競合の問題があるわけでございます。日本側はもちろんこの問題については第一次の裁判権があると考えておりますけれども、裁判権の競合の可能性は常にあるわけでございますので、向こうがそういうものとして一応身柄を拘束するという理由もあるわけでございます。また、これは日本だけの制度ではございませんで、NATOにおきます同種の協定におきましてもこういうふうな規定の仕方になっておりまして、日本だけがそういうふうな屈辱的な取り扱いになっておるということではないわけでございます。  ただ、本件に関して申し上げますれば、確かに公務外の事件であるということはほとんど明白であると思いますので、警察側としても身柄を速やかに引き渡してほしいということを申し出られたのだと思いますが、これはいわば米側の地位協定に基づく権利の放棄を要請されたものだと思います。しかし、それに応ずるかどうかということは先方の判断にゆだねざるを得ない次第でございます。これは地位協定の規定上そうなるわけでございます。また先ほどの警察側の御説明によりましても、捜査はすでに順調に行われておりまして、米側も十分協力しているようでございますから、本件について日本側が起訴をすれば、われわれは当然身柄を引き渡されるものと期待しております。
  217. 正森成二

    ○正森委員 これで終わりますが、起訴すれば身柄が引き渡されるのは地位協定からいってもあたりまえのことであって、それでも引き渡さないなんというようなことは言語道断であります。  しかし、私は外務大臣に一言申し上げておきたいと思うのです。日米安保条約は一体何のためにあるたてまえになっているのか。そのために来ておる米軍が日本の少女を、しかも白昼、後ろからサンゴ礁の石でぶんなぐって、そして暴行をするというようなことを行い、公務外であることが明らかであるにもかかわらず、なかなか身柄も引き渡さないというような場合には、それがいかに安保条約の地位協定に基づいてやっておるんだというようなことを言いましても、国民は、そのような安保条約、地位協定ならこれが一体日本国民の安全に何の関係があるのか、こんなものはない方がいいんじゃないかというようになるのは必然であるというように私は思います。そのことをぜひとも御注意なさるようにあえて指摘して、私の質問を終わります。
  218. 石井一

    ○石井委員長代理 渡部一郎君。
  219. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、ただいま問題になっております日中友好平和条約の問題につきましてお伺いをしたいと存じます。     〔石井委員長代理退席、毛利委員長代理着     席〕この問題は交渉中の案件でもありますので、お答えになりにくい点もあることは了解をいたしております。  今回、この問題の両国代表によるお話し合いの中で最も話し合いの進めにくいのは覇権の問題である、覇権条項の問題であると承っておるわけであります。この覇権という言葉が事実認識の上において、あるいは条約文の用語としてどういう意味合いを持つものであるか、またこれまでどういう場合に使われてきたか、そういう基礎的なことに関する認識をまずお伺いしたいと存じます。
  220. 高島益郎

    ○高島政府委員 国際的な文書で使われました最初は、七二年二月の米中間の上海共同コミュニケ、これが初めてであろうかと思います。その中では、現在日中共同声明第七項にございますいわゆる覇権条項、これと全く同文でございまして、双方で覇権を求めないというくだりと、さらに第三国あるいはいかなる第三国の集団による覇権の試みにも反対する、この二つの項目から成るいわゆる覇権条項、これが米中間とそれから日中間に共同声明の中であるわけでございます。その後、たしかマレーシアと中国との国交正常化、外交関係設定に当たりまして、やはり共同声明の中で覇権反対という言葉を使っているように思います。  いずれにいたしましても、ここ数年来、中国側が中国の一つの基本的な国策として外交政策として使っている言葉でございまして、それ以外に国際間で余りなじみのある言葉ではないのが実情であろうかと思います。  その意味につきまして、特に中国との間で具体的な議論をしたことはございませんが、中国側のいろいろな説明によりますと、軍事的、政治的、経済的、その他いかような方法によるとを問わず、権力を拡張するとかあるいは支配するとかいうふうな意味で使っておるようでございまして、一般的に申しますと、超大国の覇権主義反対ということが、中国政府が一貫して国際情勢についての中国の見解を標榜する場合の一つの用語になっておりまして、そういう点から言いまして、ソ連あるいは米国の活動を間接的に問題にしているというように私どもは解釈しておりまして、ソ連あるいは米国がどう考えているかは別としまして、中国の方から見た国際関係の分析という点からいたしまして、こういう言葉を使っておるというように私ども考えております。
  221. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この覇権という語は、事実関係においてどういうような状態があらわれたときに、ある国が覇権を確立したというふうに言うのであるか。その辺の中国側の認識、あるいは日本側の認識はいかがなものでございますか。
  222. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほど申しましたようなことで、実際上国際法上と申しますか、あるいは国際政治的に申しましても厳格な定義づけのある言葉ではございませんし、かなり中国なら中国の解釈によって実態を考えているという面がございますので、どういう事態になったらこれが覇権だというような、国際的に一致した見方ということは私は不可能だと思います。いずれにいたしましても、いい意味に使っているのではございませんで、何か力を背景とした勢力の拡張というような漠然としたそういう観念でとらえておりまして、特別に申しますと、やはりソ連の現在の政策についての中国の認識というものが、こういう言葉にあらわれているというふうに私ども考えておりまして、特に中国の場合は、先ほど大臣からもお話がありましたとおり、新しい憲法の前文にそういう超大国の覇権反対ということを明記しているぐらいでございますので、おのずからそういうところから、どういう事態が覇権であるかという点についての認識は得られるのではないかと考えております。
  223. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 素人臭く質問をするわけでありますが、日中共同声明の中においてこの言葉を使う点においては、わが国は非常にたやすく中国側に同調したにもかかわらず、今回、平和友好条約審議に当たって日本側が難色を示す、譲れないというこの間の矛盾した印象というものがあるわけであり、中国側が数々意見を表明している中でも、それは大きく喧伝されているわけであります。この関係をいかに説明なさいますか。
  224. 高島益郎

    ○高島政府委員 共同声明の中で覇権条項があるにもかかわらず、条約の中になぜそれを繰り返すことができないのかという御質問のように承りました。これは、そういう観点から日本態度は矛盾しているではないかというように言われる向きもあるかと思いますけれども、私どもはそういうことではなくて、矛盾しているとは思っておりませんで、共同声明の中で、日中両国がともに覇権を求めない、それからまたアジア・太平洋地域におけるいかなるそういう試みにも反対であるという一つの政策宣言といいますか、政府の政策を表明することは一向に差し支えないことであって、日本としてまさにそういう立場でおるわけでございます。  したがいまして、そういう実質には私ども現在といえどもまた将来といえども、少しも変わりないわけでございます。ただ、この内容と同じことを、法律的な権利義務関係を設定する、非常に重い形の、しかも平和友好条約という中で繰り返すことの意味、これはやはり慎重に検討せざるを得ない。法律的な意味を持たせるということになりますと、たとえば覇権ということにつきましても、そういう政治的な宣言であるところの共同声明で言った場合とはおのずから違ってまいりますし、そういう点もいろいろな角度から検討した上で適否を判断しなければいけないということでございますが、わが国といたしましては、こういう表現を条約の中に書くことについては反対である、適当でない、したがって反対であるという考え方でございまして、その間、先ほど申しましたような意味で矛盾はないというふうに考えております。
  225. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日中友好国民協議会第三次訪中団に対する紀登全副首相の説明の中で、中国側は一、中国は日中国交正常化の際に明示された共同声明の原則を重視する。この点はいまの御答弁に照らして問題はないと存じますが、二、平和友好条約の内容が共同声明より後退するならば、むしろ結ばぬ方がよい。三、平和友好条約に覇権条項を入れなければ逆に覇権を求めることになる。四、ソ連は覇権条項に反対しているが、それはソ連自身が覇権を求めているからだ。こういう趣旨の表現をいたしております。この点、覇権条項を入れなければ覇権を求めることになる、あるいは共同声明からの後退であると向こうが見ておることについてどうお考えですか。交渉の内容に触れ始めますから、そこのところは十分御配慮あって結構であります。
  226. 高島益郎

    ○高島政府委員 紀登奎副総理が日本の訪中使節団に対しましてそういう趣旨の発言をなさったことは、私も新聞で承知いたしております。具体的にどういう表現でそういうふうに申されたかは詳しくは知りませんが、ただそういう趣旨のことを言われたということでございます。  それで先ほど申しましたとおり、私ども共同声明に書くことについて同意した経緯もありまして、しかも共同声明の一つの重要な原則でございますので、これはいままでもそういう立場でおりますし、将来もその立場を維持するという点についてはいささかも誤解はないわけでありまして、そのことと、それを同じとおり条約の中に書き込まなければ日本立場が後退したとか、あるいは日本が覇権を求めることになるというのは論理の飛躍であろうかと思います。そういうことではないという点は、私今回訪中に当たりまして先方に十分わかるように説明をしてまいったつもりでございます。これは論理の問題として、そういうことを容易におっしゃる向きがあることは私も承知いたしておりますけれども、これは何と申しますか、少し飛躍した論理であろうかと思います。
  227. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この覇権の問題、覇権というよりむしろ用語にしぼられた感があるわけですが、この覇権の用語の使い方について、中国側は必ずしも条項の中に入れてやるとがんばっているだけではなさそうであります。  中国を訪問していた創価学会の池田大作会長の報告によりますと、鄧小平副首相は、覇権条項に関して原則論を踏んまえて前進させるべきだ、ただし覇権条項の記載方法については研究の余地があると述べておるようであります。研究の余地があると言われたことについて、池田氏はこれを説明しておりまして、研究の余地があるというのは、覇権以外の言葉ではだめだという感じだが、総括的な前文にするか、本文にするかという点では研究の余地があるというようなことを述べているようであります。この点はいかがお考えになりますか。
  228. 高島益郎

    ○高島政府委員 これこそまさに現在交渉している条約の内容そのものにかかわる問題でございますので、いまのそういう先方政府の御意見は承っておきますけれども、わが方がこれに対してどう対処するかということは、これからの交渉の内容そのものにかかわる問題でございますので、発言を控えさせていただきます。
  229. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私どもは、日本の外交の大きな意味の選択を一つは問われているんだろうとこの問題についでは思うわけであります。つまり、日本外交のこれからの骨格は、戦後約三十年にわたってアメリカとだけやってきたという骨組みではなくて、日本が自主的に選択した日中友好関係というものを大きな一つの柱にしようとしているかどうかの境目に立っているんだろうと思います。すべての国々と友好でありたいという日本の国民的な願望にこたえることが大事であると同時に、パワーポリティックスの中にある日本外交が、日中関係をどういうふうに意義づけるかということは非常に大きな意味合いを持つし、これに対していろいろな障害あるいは抵抗を計量した上、明快な線を政治的に決定する必要があろうかと存じます。その意味で私は、外交関係の事務当局が交渉し抜いて、結論を煮詰めた上で、政治的な判断が必要とされるのであろうと思います。  すなわち、覇権の覇の字も入ったら日中条約は結ばないと決断する方向に行くのか、それとも覇権という条項について何らかの妥協、何らかの両国間の合意を取りつけてこの条約を結ぶという方向に行くのか、これはまさに政治的な決断の問題になろうかと私は考えるわけであります。その点をいかにお考えになりますか。これは局長でも大臣でも結構でございます。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国といたしまして、もとよりわが国自身が、その覇権ということの意味ようはいかにあれ、いわゆる覇権と申し上げておきましょう、それを求めるという方針はございませんし、またそれだけの力もないことも明らかであろうと存じます。それに関する限り、したがいまして別段の問題はございません。ただ、先ほど渡部委員も言われましたように、わが国としては中国との友好関係は最も大切なものの一つでありますけれども、それがわが国の外交の全部ではございません。できる限り世界各国、ことに周辺の国とは友好関係を結びたいという考えでございますから、条約の中において、そのような、わが国の真意を他の第三国から疑いを抱かれるような条約を結びますことは、わが国の国益に沿ったものとは考えられません。それがいわば政府原則的な立場でございまして、この原則は譲るわけにはまいらない。しかしそのような原則の上に立ってであれば先方において話し合う用意があると言われるのであれば、これはやはり話し合いをしてみまして、そうしてできるならば早く条約を結びまして国会の御審議を仰ぎたい、先ほども申し上げたとおりでございます。  そこで先ほども申し上げましたが、そのような話を煮詰めていく可能性があるかないかということは、これは東郷外務事務次官と陳楚駐日大使との間でただいまから交渉をいたしてみたいと思うのであります。その結果、そのような可能性ありと判断をいたしましたならば、そこで政治的な一つの決断を必要とするであろう、大体そのように考えております。
  231. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に総括されてきちっとお答えになりましたから、大臣にもう一つ伺いますが、わが方の侵してならぬ原則的な立場がある、中国側には中国側の侵すべからざる原則がある、その原則原則の両者の間で話し合う余地があり、妥協の余地があるか、条文という形において妥協なり話し合う余地があるか、まとまる余地があるかということを、いままでの交渉及びこのたびの東郷、陳楚両氏の話し合いによってその可能性を模索する、こういう立場であるという意味でございますか。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり、わが国にはただいま申し述べましたような原則がございます。中国には中国の原則があろうと存じますので、お互いにその原則は崩すことができないものであろう、そういう崩しがたい二つ原則の間を結ぶものがあるであろうかどうであろうか、こういうことをさしづめ可能性の問題として東郷・陳楚交渉において詰めてみたい、こういうことでございます。
  233. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はこの問題について、政府のこの問題に対する立場、交渉の前途を傷つけないためにも妙な質問は差し控えてきたつもりでありますし、ただいまの質問においてもかなり配慮をいたしたつもりでございますが、日中間の平和友好という大きな基礎づくりをいましようとするときに当たって、外交当局の一段の努力をお願いするとともに、いまや問題は、政治的な決断を迫られつつある段階である。陳楚、東郷両氏の話し合いの次に来るべきものは、まさに三木総理及び宮澤外務大臣の歴史的な決断にあろうかと私は思います。その意味で、御両氏の日本外交の将来を決定する判断に対し、平和の観点から一歩前進をお願いしたい。私は、特に日中平和友好条約締結することが日本外交の大きな骨格づくりに役に立つという立場からそれを要望したい、こう思っている次第でございます。大臣、答弁を……。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御趣旨はよく了承いたしました。
  235. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 安里君。
  236. 安里積千代

    ○安里委員 先ほど正森君から質問がありました、四月十九日の沖縄におきまする米海兵隊によって起こりました女子中学生に対する暴行事件は、これは安保条約や地位協定にも関連する、その根幹にも触れる問題でございまして、現地におきましてはまさに怒りのるつぼに燃えておるような状況であり、国民の一人としても憤りを禁じ得ないものでございます。  そこで、このことについて、事件の経過、現状につきまして警察当局からお答えがあったわけであり、身柄を 地位協定を盾にいたしてアメリカがまだ引き渡しをしない、こういう状況だということの御説明がございました。  そこで、このことは結局アメリカの、特に海兵隊の常駐を許しておるという安保条約に関連がある問題であり、国民がこのような平和時に被害を受けるということは、これは結局そのような条約からくる問題でございます。したがいまして私は、こういう条約から起こる問題は政府自体としても責任があり、当然外務当局も責任を感じ、この問題の処理について何らかの措置に出るべきものだ、こう考えるわけでございまするが、この問題に対しまして、外務当局といたしましてはアメリカに対してどういう措置をとられたか、どういう折衝を申し出をされたかお聞きしたいと思います。
  237. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省といたしましても、本件はまことに遺憾な事件であると存じます。それで昨日、四月二十二日、在京米大使館に対しまして、この事件が発生したことはまことに遺憾であるということを強く指摘いたしますとともに、さらに軍紀の粛正に努力を払って、こういう事件が再び起こらないようにあらゆる措置をとるように強く要請いたしました。さらに、日本側の当局の捜査に対しても積極的に協力するように申し入れた次第でございます。  これに対しましてアメリカ側からは、こういう事件が発生したことは非常に遺憾であるということの意向の表明がございまして、日本側の御指摘のとおり、軍紀の粛正にはさらに十分に努力して、こういう事件が再発しないように早速措置をする、また、日本側の当局の捜査には十分協力するということを申し述べた次第でございます。またさらに、現地の第三海兵師団の司令官も昨日、二十二日に同様の趣旨の声明を発出しております。さらにわれわれといたしましては、明日、定例の日米合同委員会が開催されることになっておりますので、私が代表を務めておりますこの合同委員会におきまして、さらにアメリカ側に対して強く申し入れる所存でございます。
  238. 安里積千代

    ○安里委員 幾ら三度と起こらぬようにと言っても、それは事件のたびごとにありますが、詳しくは申し上げませんけれども、この種の犯罪というものは後を絶っておりません、特に、殺人を含む、ことに婦女子に対するところの暴行事件は、復帰しました四十七年に四件もあります。四十八年には六件、四十九年には七件も、これは凶悪な、ことに婦女子に対する暴行とかあるいは殺人という犯罪があります。二度と起こらぬようにと申しましても、今度の事件でもまたかと思うような気持ちが実はするわけです。  そこで、いまのアメリカに対するお話はわかりましたが、問題になっておりますのは犯人の引き渡しという問題でございますが、その問題については外務当局といたしましては、配慮するようなことは要求されておられませんか。それとも、あしたの日米合同委員会においてそのことをも含めて折衝される考えでありますか。
  239. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点に関しましては、先ほども説明申し上げた次第でございますが、地位協定の十七条五項の(c)によりますと、その者の身柄がアメリカ側の手中にありますときは、日本側が起訴するまでの間は、アメリカ側がその身柄を引き続き拘禁しておる権利を持っておるわけでございます。これは日本における例だけではございませんで、NATO諸国においても同様の制度になっておる次第でございます。この点は、アメリカの軍隊を置いておる国々としては、そういう裁判権の競合のある問題について一つの措置として決められておるものでございます。  したがいまして、現地の警察当局から捜査の関係上、身柄の引き渡しが望ましいとして申し入れられた点は十分わかるのでありますが、これはいわばそういうアメリカ側の身柄を拘束する権利の放棄を要請したものと解釈しておりまして、米側がもちろん自発的にそれを放棄してくれればいいわけでございますけれども、向こう側としてもそれを引き続き手元に置いておくということを主張する以上は、これをわれわれの方から権利として主張することは困難かと思います。したがいまして、この事件の速やかなる解決のためには、やはり警察当局及び検察当局が取り調べを迅速にやっていただいて、起訴に持ち込んでいただくことが最も妥当な、かつ実際的な解決方法ではないかと存じます。またその取り調べの段階におきましては、警察庁からお聞きしたところでも米側は十分協力しておるようでございまして、また現地の司令官も、できるだけの協力はして取り調べを迅速に終了させるようにしたいと申しておる次第でございます。
  240. 安里積千代

    ○安里委員 協定の解釈につきましては、私はまた異なった考えを持っております。これは協定の明文がどうであろうと、日本の国民を保護する立場において、もっと外務当局はこの条文というものを解釈していいのじゃないか、こう思いますけれども、この問題については後で触れます。  検察当局にお聞きするのですが、先ほど御説明がございましたが、そうしますと、被疑者に対する尋問、それから逮捕した証人あるいは被害者に対する調べ、それから現場の状況、こういった一連の調査はすでに捜査はなされた、こういうふうに見てよろしゅうございますか。
  241. 金子仁洋

    ○金子説明員 お尋ねの件でございますが、その点の捜査は滞りなく進行しております。被疑者の取り調べもすでにやっておりますが、その過程におきまして自供も一部得られております。その点につきましては順調に進行していると判断しております。
  242. 安里積千代

    ○安里委員 検察当局とされましては、いまの警察のことに対しましてどの程度関与しておられましょうか。
  243. 根來泰周

    根來説明員 通常の事件は警察から送致を受けまして、その送致によりまして捜査を開始するわけでございますけれども、本件の特殊性にかんがみまして、警察と並行いたしまして捜査をいたしております。もちろん事実を早急に確定いたしまして、事実が確定次第、早急に処分する予定でございます。
  244. 安里積千代

    ○安里委員 そういたしますならば、いまの地位協定の問題の存在を前提といたしましても、犯人の自白があるし、関係証人の調べもできておるということでありまするならば、速やかに公訴を提起するところの手続をされて、そして身柄を引き取るということもすぐ可能である、そういう状態にあると私は見るわけでございますが、それらの日本側におきまする手続の進行、これは速やかになされる、あるいはなされる状況にございますか。やってもしかるべきじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  245. 金子仁洋

    ○金子説明員 警察の捜査は、先ほど申し上げましたように順調に進行しておりまして、通常の事件よりも、むしろ沖縄県警といたしましてはスピードアップして事案を早く検察庁に送致するという基本方針のもとに現在活動いたしております。
  246. 安里積千代

    ○安里委員 そこで、いまの地位協定の問題でございまするけれども、なるほど十七条の5(c)項によりまして、被疑者の拘禁は、その者が合衆国の手中にあるときは、公訴が提起されるまでは合衆国が引き続き行うものとする、こういう規定がございます。これを盾にとりまして、公訴の提起あるまでは身柄は渡さない、こういうようなことを申しておるわけであり、外務省の御解釈では、この権利を放棄すればというようなことでございまするけれども、他の条文の趣旨からいきまするならば、たとえば五項の(a)によりましても、これらの逮捕及び裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引き渡しについて、相互に援助しなければならない。あるいは必要な捜査の実施並びに証拠の収集など、これは協力しなければならない、こういう義務づけがなされております。しかもこれは公務外のことであるということは、まさに明らかであります。それでありますから、身柄を引き取るということ自体は、捜査の段階におきまして最も有力なことであります。そういうことから考えてきますならば、公訴の提起されるまではアメリカが引き続き拘禁するというこの規定は、私は、向こう側の権利として認めておるとは考えません。先ほど局長は、アメリカ側が権利を放棄すればというようなお話でございましたけれども、そうじゃない。アメリカの手中にある者が、公訴を提起するまでに逃亡するとかあるいはまたよそに移動せしめるとかそういうことのないように、この協力の趣旨から、早く言えば、アメリカは公訴を提起されるまではこの被疑者を逃がさないようにとめおけ、こういう義務づけた、彼らの権利というよりは、第一次裁判権のある日本の裁判所に協力する立場において、逃げないように拘禁を続けておけ、こういった趣旨にわれわれは主張し、解すべきものだと思うのです。したがって、第一次裁判権がありますところの日本側におきまして、捜査の必要から引き渡せということがありますならば、この条文にかかわらず、本当に捜査に協力するならば当然アメリカはそうやるべきであり、そうすることがこうした犯罪に対するアメリカの一つの反省と申しますか、アメリカ自身の本当に悪かったという気持ちもあらわれると思う。そういう配慮というものは当然なさるべきものだ。公訴が提起されるまでは自分たちがとめおくのが権利だ、こういうような立場でアメリカ軍が解釈するということは誤りである。むしろ、拘束しておることが裁判権を行使するために必要なんだ、だから義務づけておるのだ、こう解すべきものだと私は考えるのです。そうしてこそ初めて、相互に捜査に協力するということも、犯人の引き渡しについての協定の内容というのも私は意味をなしてくるのだと思う。そういうことで、今後もあってはなりませんけれども、あり得るであろうところの問題に対して、もう少し積極的に、外務当局はこの協定を国民のために解釈していく考えがあってしかるべきものだと思う。日米合同委員会においてもし問題が提起されるならば、その点は私は強く要求していただきたいと思いますが、いかがですか。
  247. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 御趣旨も十分わかる次第でございます。また確かに十七条五項(c)で、アメリカがとめおくのもある意味で逃亡を防止するためであるという観点もあるかと存じます。ただ、この刑事事件の取り扱いに関しましては、この十七条をごらんいただきましてもわかりますように、非常に詳しく書かれておるわけでございまして、これは米軍の軍人が犯した犯罪については、本質的に米国側と日本側の裁判権が競合する問題でございますので、それをどういうふうにお互いに振り分けていくかという問題でございます。したがいまして、今回のような事件の場合には、第一次の裁判権が日本側にあることは明白であると存じますけれども、そうでない場合もあるわけでございまして、そういう場合に、アメリカ側としてもいろいろと本人を調べるということもあるわけでございます。したがいまして、その裁判権の問題がいろいろと問題になるケースもあり得ることも考慮し、まずアメリカ軍人である以上、それを一応アメリカ側が手中にその身柄を持っておるときは、公訴提起まではアメリカの方で預らして欲しいと言っておる次第でございまして、またそういうふうないわば取り決め日本側としても認めたわけであり、またこれはNATOにおいても先例となっておるわけでございます。  今回のような明白な事例の場合には、県民の感情として、早く身柄を日本の警察当局に渡して欲しいという気持ちも十分理解し得る点でございますし、また警察当局がそういう要請をされたことも事実のようでございますけれども、やはりこれは一つのルールでございますので、向こう側がその身柄を一応預りたいということを言った場合には、われわれとしてはそれを絶対にこちらに引き渡せということは言えない次第でございます。したがいまして、先ほどから申し上げますように、この問題はわが方の捜査と起訴の手続をできるだけスピードアップして、起訴をして、そして身柄を引き受けることが最も実際的な解決法ではないかと存ずる次第でございます。
  248. 安里積千代

    ○安里委員 時間がございませんので私はこれ以上あれしませんけれども局長、何だかおかしいですよ。預りたいからということを言うから、こちらでは条約があるから、協定があるから言い出しにくいような、遠慮がちなお話をなさっていますけれども、私は、めったなことでは怒りませんだけの人間修業を多少積んだと思いますけれども、こういう問題が起こったときに、本当にしゃくにさわるといいますか、怒り心頭に発すると申しますか、たまらないのですよ。それで現地におきましても、いま本当に怒りのるつぼに燃えているのですよ。それでどうしてもできなければアメリカに帰れ、特に海兵隊なんという、外国に上陸するところの部隊の訓練を沖縄でやっている。これが一万九千人もおる。ほとんど半数が海兵隊だ、これが一番乱暴だ、こうした戦争に直結する、しかも日本の防衛には関係ない上陸作戦部隊がおるということ自体の基本に私は触れたいのです。沖縄におきまして、海兵隊帰れ、特に基地の撤去、アメリカ帰れの運動というものが恐らく熾烈になるでありましょう。そういうことも覚悟の上でアメリカ自身本当に反省するならば、この問題に取っ組まなければならない。さもなければ、もう協定があるからというなら協定を廃棄してもらえ、こういう立場に置かれております。  私は、日米間においてけんかが起こるということを好みません。友好を促進するということを私はいささかも否定するものじゃございませんけれども、こういうことをしながらなお友好関係を維持するということは、これはできるものじゃありません。そうして現地だけの問題じゃなくして、日本国民に対する大きな侮辱だ私はそういう感じがしてしようがありません。どうぞひとつ外務当局もアメリカに対して強い反省を求めて、本当に協力するならば、こういうことに対してもっと被害者の立場になって考えていただきたい。まさか婦女に暴行するものを公務と考える者はありますまい。第一次裁判権が日本にあるということはもうはっきりしていることですよ。はっきりしている問題でどうして協力ができないか。権利があるから――権利じゃありませんよ。逃げないように義務づけておるというふうに解すれば問題が解決すると思うのです。少なくともこういう国民感情というものを考え、アメリカ自身が起こした事件でアメリカ自身が刺激するようなことがあってはならぬと思う。そういう点において、私は政府といたしましてもどういう機関がアメリカ当局に当たるか知りませんけれども、やっていただきたいと思いますし、警察当局、法務当局も速やかにこの問題が処理されるように処置を願いたい、こう申し上げまして質問を終わります。
  249. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来る五月七日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時二十五分散会