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1974-12-19 第74回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月十九日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 栗原 祐幸君    理事 櫻内 義雄君 理事 細田 吉藏君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君      稻村佐近四郎君    植木庚子郎君       小澤 太郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       竹下  登君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       前田 正男君    松浦周太郎君       渡辺 栄一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    赤松  勇君       岡田 春夫君    多賀谷真稔君       辻原 弘市君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    八木 一男君       湯山  勇君    田代 文久君       津金 佑近君    松本 善明君       村上  弘君    岡本 富夫君       坂井 弘一君    安里積千代君       小平  忠君    竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         国土庁長官官房         長       粟屋 敏信君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         大蔵省証券局長 田辺 博通君         大蔵省銀行局長 高橋 英明君         国税庁長官   安川 七郎君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 曾根日郁夫君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省畜産局長 澤邊  守君         通商産業大臣官         房長      濃野  滋君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    佐藤淳一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省船舶局長 内田  守君         労働省労働基準         局長      東村金之助君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省河川局長 増岡 康治君         自治省行政局長 林  忠雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ―――――――――――――  委員の異動 十二月十九日  辞任         補欠選任   田代 文久君     村上  弘君   矢野 絢也君     坂井 弘一君   安里積千代君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   村上  弘君     田代 文久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 社会党を代表いたしまして、総括の質問を行ないますが、最初三木総理注意を喚起したい。  きょうは、インフレ不況下のこの重大な段階の中で最初委員会をやるわけでございますが、その際に、時計を見ますともう六分もおくれているわけであります。きょうの十時から始まりますことについては十分御存じでございますので、あなたは偽りのなき政治をおやりになるということならば、こういう点からひとつまず御注意をいただきたい。そういう点について、ひとつ注意を喚起したいと思います。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 以後、その点は十分注意いたします。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の質問の柱は、大体三つにいたしたいと思います。第一の柱は、金脈、金権問題を中心とする政府政治姿勢について。第二の点は、日本が今後進めていく国際的な進路の問題について。第三は、インフレ不況の諸問題とあなたのおっしゃる社会的不公正の是正の問題について。この三つ中心に御質問をいたしてまいりますが、三木総理に重ねてお願いをいたしておきますけれども、どうもあなたの御答弁はきわめて御丁寧でございまして、丁重でございまして、あまり丁重過ぎますと、時間に制限がございますので、簡単明瞭にひとつお答えをいただきたい。  そこで、政府基本姿勢についてまず第一に伺ってまいりますが、三木総理施政方針演説の中でも、今日の内外情勢はきわめて深刻である、このように述べられましたが、この深刻な情勢を、昭和初年における日本情勢と対比する人が少なくありません。確かに、昭和四年の世界経済恐慌のもとに、日本国民の多くは経済危機の中に苦しみました。そしてまた他方、総理もよく御存じのように、当時の政財界の上層部においては、売勲事件鉄道疑獄朝鮮疑獄というような政治の腐敗が相次いだのであります。  その当時は濱口民政党内閣でありましたけれども、濱口首相東京駅頭に倒れまして、そのあと若槻内閣になり、続いて反対党である政友会犬養内閣ができたのであります。しかしながら、この情勢の中においても国民政治に対する不信は高まるばかり、その結果において、御存じのように五・一五事件が起こり二・二六事件が起こって、政党政治は崩壊して、軍閥ファッショの手に権力が握られたのであります。  私がこういう昭和初年の情勢を長々とあえて申し上げましたことは、次の二点について私は指摘をしたいからであります。  第一点は、今日の政治不信の行く先を暗示しているのではないか、これが第一点。第二の点は、当時の帝国憲法のもとでさえ、議会制民主主義ルール政権交代原則というものがともかくもつくられておった。  そこで、三十七年間の議会政治政治家として自負されておる総理に伺いたい第一点は、当時二百七十三名という国会の過半数を握る民政党内閣であっても、党が二つに割れて内閣が倒れた場合、政権たらい回しを行なうのではなくて、わずか百七十名の政友会に対していさぎよく政権を譲り渡している。これが政権交代原則である。三木総理がほんとうの意味での議会政治家であるとするならば、なぜこの際に政権交代原則を確立しなかったか。いたずらに密室の取引によって政権を握るということは恥ずべきことではないか。まず、この点について総理の見解を伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も岡田議員と同じように、議会制民主主義の大きな特徴は、政権交代できるという基盤議会政治が持つことだと思っています。しかし、そのためには、政権交代のできる政治基盤というものが必要であります。今回の場合も、御指摘のとおり、野党政権がいくということが、議会制民主主義からいえば、それが一つルールでありましょう。しかし、国民の間からその声が起こらなかったことも事実であります。だから政権交代は、やはり国民の納得のいく形で政権交代ルール日本議会政治にできなければならぬ。私は、自民党総裁として政権担当責任を持つと同時に、長らく議席を持った一人として、政権交代基盤日本政党政治につくりたい、これが私の使命一つであります。  だからこそ私は、先般も、選挙法改正でも、少なくとも野党の第一党が同意しない選挙法改正はやらないと言った。党首会談もしばしば行ないたいと私は言ったわけであります。それは、私はやはり議会政治家としての一つ使命を私自身が感じておるからであります。この点については与野党とも――自民党としても考えるものがありましょう。しかし、野党側においても、やはり政権交代が円滑にできるという政党政治基盤をつくらなければならぬ。それには政策継続性といいますか、少なくとも国政の基本的な政策について、やはり現実的に考えるという基盤政党政治には要る。政権交代によって国の基本的な政策が根底から変わるという政権交代が行なわれておる国は、どこの国においてもないのであります。だからこういう点、これは私は野党側のみを責めようとは思わない。自民党考えなければならぬが、日本のこの政党政治は、世界のどこにもない異例の政党政治が行なわれておる。このことに対して与野党反省は私は要ると思う。  そういう点から、政権交代には政策継続性が要るのだ、このことが政権交代を各国において可能にしておるのだ、この点について野党側においても十分にお考えを願いたいのでございます。自民党もこれは反省をいたします。そういうことで、お互い与野党ともに、日本議会制民主主義政権交代ルールを確立するために協力をしたい。これはやはり私の自民党総裁としての一つ使命の側面である、こう考えておる次第でございます。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの総理の御意見には、私は非常に別な意見を持っております。特にいま総理が最後の段階で、政策継承性という点を言われましたが、それならば政党政治意味をなさないのであります。イギリスの場合をごらんください。保守党と労働党は政策は全く違うのであります。しかもこれは政権交代が行なわれているのであります。その場合に、政策継承性というのは必ずしもあり得ないのであります。これが議会主義なのであります。政策継承性ということならば、二つ保守党二つ社会党あるいは革新政党、これとの間の政権交代であって、政策継承性ということはそれ以外にあり得ません。そういう点からお考えになっても、あなたの御意見については、私は非常に意見がございます。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はそうは思わない。イギリスでも、あるいはまたその他においても、政権交代が円滑に行なわれておる国は、少なくとも国の基本的な政策について非常に根本的に考えが違う政権交代というものは、私はそういう例はあまり見ない。先般も五月に私はフランスに行った。ミッテランジスカールデスタン大統領選挙を私は自分の目で見た。ミッテランは御承知のように共産党と社会党とが共同した候補者であります。ジスカールデスタンは御承知のように保守的な立場である。それでも、国防であるとか、あるいはまた外交政策基本が、大きな選挙の争いの中心になっていないということです。彼らが争っておるものは、国民生活中心としたお互い立場である。それは違いがあってもいい。しかし、国防とか、あるいはまた外交政策が、政権がかわるごとに根本的にかわるという政権交代というものは行なわれてはいない。  この点、でありますから、どの政策についても違いがあってならぬと言っておるのではないのです。少なくとも国の基本的な政策に対しては継続性を持たなければ、国際的にもやはり日本の国の信頼をつなぎとめることはできない、これが私の基本的な考えであります。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点については私はまだ意見がございますけれども、これだけやっておりますと時間がなくなりますので、続いて進めます。  第二の点であります。今日の政治不信が続くならば、その行き先を暗示する、こういうことを私は昭和初年の例を通じて申し上げた。すなわち、このままでいくならばファシズム体制に進む危険性がある。この点は、われわれ社会党のみでなく、自民党総裁である三木さんの場合も、当然厳重にお考えにならなければならない問題だと思う。ところが、今日のわが国においては、すでに私はファシズムの端緒的な形があらわれていると思う。それは、国家権力によるところの強力な管理社会の形というものが次第にあらわれつつある。まさかあなたは、軍隊がないから、軍部がないから、いまファッショ軍閥政治は起こりませんなどと言うはずはないと思う。すなわち、国家権力によるところの管理社会の問題からいって、官僚体制、それから警察、自衛隊権力の力、あるいは財界のそれに対する癒着によって、戦後における新しいファシズムの台頭の危険性が今日ある。  たとえば、例をあげて私、申し上げますと、フォード大統領日本に参りました際のあの警備状態は一体どうですか。延べ十六万人という警察官動員。しかも十六万の警察官動員は、北は北海道から南は九州、沖繩に至るまでの警察官動員した。しかも都内において、あなたは御存じないかもしれないが、私は現実にあっている。あの警備の際において、一般の都民に対して、警職法を無視して、所持品の中をあけてまで捜査をしている。こういうことが一体許されますか。都内は事実上交通は麻痺状態におちいった。このような状態は、私は思い出すのだが、二・二六事件のときのような、まさに一種の戒厳状態ともいわれるべきものであります。そればかりじゃございません。そのあとに行なわれた自衛隊房総沖における十一雄洋丸実弾砲撃演習、あれは何ですか。あれはまさに海上における実戦じゃないですか。あのようなことまで行なわれている。  しかも、今度の政権交代にあたって、三木内閣の実態を見ると、私は非常に懸念を感ずる。党の幹部の諸君を見てごらんなさい。たいへん失礼だが、椎名さん、中曽根さん、灘尾さん、松野さん、世間、巷間に伝えられているタカ派の人ばかりじゃないか。失礼ですが、閣内においても福田総理というタカ派がいるじゃないですか。三木さんはこのままでいくと近衛内閣になる危険性がありますよ。近衛内閣になる危険性があるこの段階において、あなたはファシズムに対してどういうことをお考えになっているか、この点をはっきり御答弁をいただいておきたい。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も議員として、日本政党政治が崩壊する姿を私の目で見ておるわけです。私が一番懸念をすることは、政治不信というもので、国民日本議会政治というものを見放してくるような事態をつくってはならない。それは左にせよ右にせよ、全体主義的な政府日本政治をゆだねてはならぬという強い信念であります。また私も、今日までの私の経歴はいろいろなことはあっても、私は終始一貫してきておるつもりであります。  したがって、いわゆる反動的な方向に行く内閣というものは、総裁責任において、総理責任において、断じてそういう方向日本政治を持っていくようなことのないように、私は全力を尽くす決意であります。私は、議会政治に対して愛着を持ち、責任を感じておる政治家であるということは、どうか御信用願いたいと思うのでございます。
  11. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、ただいま三木総理に対して注意を喚起したいのであります。近衛さんのような姿で、近衛内閣のときの新人として、ホープとして言われたのは風見章である。その風見章役割りを、そこにいる永井文部大臣がいま引き受けざるを得ない状態にまでなろうとしている。こういう状態であるだけに、あなた、総理責任は重大であるということを痛感していただきたい。  そこで、金脈問題に入らしていただきます。  田中金脈の問題というのは、あなたの御答弁を伺っておると、何か田中角榮個人の問題であるかのごとくおっしゃっておられる。しかし、これは自民党の本質から生まれたものであるということを忘れてはならないと思う。その証拠に、あなたは党の改革をこの機会にやらなければならぬとおっしゃっているじゃありませんか。  そこで、これは総理よりも大蔵担当の方に伺いたいのでありますが、この間から、衆参両院において、田中金脈問題が追及されておりますが、それに基づいて国税庁は、田中問題について再調査をするという約束をいたしております。それでは現在その再調査がどのように行なわれているのか。会社あるいは事情聴取をした人物、こういうことについて、ひとつこの機会大蔵当局から御答弁をいただきたいと思います。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いわゆる田中金脈問題に対する私の基本的考え方を述べておきたいと思います。  一つには、私は逃げておるわけでもないわけです。私自身田中氏の経済活動に対しては、いろいろ詳細に知っておるわけではないのです。一番知っておる者は田中個人でありますから、本人も、国民の理解を得るために、もう全貌を明らかにしたいということを言われて、それをいま準備をされておるわけで、この問題は、田中自身国民の前に、自分の疑惑を持たれておる点について釈明をされることが、一番この問題を理解する上において大切であると思う。  第二点は、国会の機能においてこの真相を究明されるということであるならば、法律のワク内において、政府としてできる限りの協力はいたします。  第三番目は、もし違法なことがあるとするならば、これは三権分立の原則に従って公正に処理さるべきものである、これは私の基本的考えでございます。
  13. 安川七郎

    安川政府委員 お答え申し上げます。  現在、田中角榮氏並びにその関連企業に対します見直し調査を鋭意続けております。この種の調査は、できるだけ早期に終わりますように努力をいたしておりますけれども、まだ現在終結はいたしておりません。
  14. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、現在の御答弁を伺うと、田中角榮氏に対しても直接事情を聴取されたという意味ですか。
  15. 安川七郎

    安川政府委員 田中角榮氏の申告その他につきまして、各種資料を総合いたしまして調査はいたしております。御本人自身に面接はいたしておりません。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 問題の目白の田中邸に対する立ち入り調査はおやりになりましたか。
  17. 安川七郎

    安川政府委員 まだ立ち入り調査段階に至っておりません。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 立ち入り調査はおやりになりますか。
  19. 安川七郎

    安川政府委員 調査が進行いたしまして、その必要があると考えましたらいたします。
  20. 岡田春夫

    岡田(春)委員 田中角榮氏に対する事情聴取はどうしますか。
  21. 安川七郎

    安川政府委員 必要がございましたらいたします。
  22. 岡田春夫

    岡田(春)委員 必要ということを再三言われるが、その判断の基準は何ですか。
  23. 安川七郎

    安川政府委員 各種資料を総合いたしまして、御本人に直接お伺いできなければ明らかにならない、そういう点がございましたら調査をいたす、こういう意味でございます。
  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、田中角榮氏に直接聴取することもあり得る、このように理解してもよろしいか。
  25. 安川七郎

    安川政府委員 必要がございましたら調査をいたします。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、その調査事情聴取並び立ち入り調査を、大体いつまでにめどをおつけになりますか。
  27. 安川七郎

    安川政府委員 当初は年内あたりめどをつける予定でございましたが、各方面からいろいろ提起されました事項が多くなってまいりましたので、関連企業等も含めまして、ただいまのところのおおよその見通しは、三月末までには終結はいたしたい、かように考えております。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは終結であって、いわゆる事情聴取並び立ち入り調査、これについてのめどはいつですか。
  29. 安川七郎

    安川政府委員 調査はいろいろの段階がございまして、一つ一つ事実を追ってまいるわけでございますから、いろいろな段階があるわけでございます。したがいまして、途中にいろいろの必要がございましたら、立ち入り調査等もいたす考え方でございます。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも御答弁がはっきりしないが、私はめどはいつなんだと聞いているのです。三月というのは完了のめどです。それ以前に、そういうことをおやりになるめどはいつなんですかと伺っている。
  31. 安川七郎

    安川政府委員 三月におおむねまとめたいと思っておりますので、それ以前に立ち入り調査する場合はあろうかと思います。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 事情聴取は……。
  33. 安川七郎

    安川政府委員 必要がございますれば、当然三月以前にそういうこともあり得るかと思います。
  34. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連企業とおっしゃったが、その企業名をあげていただきたいと思います。
  35. 安川七郎

    安川政府委員 目下いろいろ調査を進めておりますので、調査対象の名前はごかんべん願いたいと思います、いろいろ調査に支障が出る関係もございますので。(「会計検査院で名前をあげているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  36. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ずいぶん出ているじゃありませんか。それが役所の官僚主義というものです。いまも話があったように、会計検査院では名前をあげているじゃありませんか。名前をおあげください。
  37. 安川七郎

    安川政府委員 室町産業その他相当の数になります。具体的な名前はごかんべん願いたいと思います。
  38. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その他相当のとおっしゃるが、何社ですか、それでは。
  39. 安川七郎

    安川政府委員 ただいまのところ、直接の会社は五社でございますが、いろいろ取引関係もございますから、実際に調査が及びます会社の数は、五社をこえまして十社程度になろうかと思います。
  40. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは室町産業だけはおあげになったが、そのほかはあげないというのはどういうことですか。会計検査院も全部あげていますよ。それでは、そのほかの名前を特別に守らなければならない事情があるのでございますか。室町だけは犠牲にしてもよろしい、それ以外はあげられないのだという利害関係があるのですか。
  41. 安川七郎

    安川政府委員 関連企業一つの例として申し上げたわけでございまして、この調査の進行状況におきまして、どれを対象に調査するというような具体的な段階に入っておりますので、調査対象の会社の名前はごかんべん願いたいと思います。
  42. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おかしいじゃありませんか、だれが聞いても。みんな知っているのですよ。知っているのに、あなたがおっしゃらないというのは、かえって何かことさら大蔵省、国税庁はそれをかばうのですか。そこら辺は一体どうなんですか。国民が聞いたらおかしいと思いますよ。新聞あるいは週刊誌にもどんどん出ているし、会計検査院もはっきり言っているじゃありませんか。特別にかばわなければならない事情があるのですか。
  43. 安川七郎

    安川政府委員 私どもは、税務の調査の際には、いかなる会社につきましても、特別な差別等はいたさないわけでございます。したがいまして、いま御質問の、何か関連企業をかばうのではないか、こういう御質問がございましたけれども、私は毛頭そういうような気持ちを持っておりません。ただ、調査の手順の関係から、今後具体的な調査に入ってまいりますので、どういう会社があがってくるかということは、名前は調査技術上ごかんべん願いたい、こう申し上げている次第でございます。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうしてもおっしゃらないようですが、しかし、これはみんなわかっていることですから、あまり追及をそれだけにしぼっておるわけにまいりませんが、三月に完了するとなると、先ほど三木総理は、国会の審議に協力をする、こういうお話でございましたので、その内容については御報告があると理解してもよろしいですね。
  45. 安川七郎

    安川政府委員 ただいま調査中でございまして、これから調査を進めてまいりまして、どういう結果が出てまいりますか、そのような結果を見て、私どもは判断いたさなければなりませんので、ただいまのところ、どういう調査の内容になりまして、それをどういう形で御報告できるか、こういうことを私どもまだ判断する段階ではないというふうに考えております。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう答弁では、私は納得しません。  総理、いまの国税庁長官答弁は、報告しないがごとくするがごとく、これでは民主政治ではないですね。やはりこれは、あなたがおっしゃったように、あなたの命令に従っていないのですよ。あなたは国会協力するとおっしゃったのに、国税庁長官はしない場合もある、これは一体どうですか。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の申したのは、法律の範囲内と申したわけです。したがって、国家公務員法の規定等もございますから、そういう法律の範囲内において国会の審議に対して政府協力することは当然のことだと思います。したがって、そういう政府の態度で、この問題に対処してまいりたいと考えております。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ総理に伺いますが、その調査の結果を御報告いただくとして、その以前か、あるいは時期はそのときか、それはわかりませんけれども、田中角榮氏を国会に喚問する場合には、自民党として御協力いただけますね。
  49. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その問題は、田中自身の判断にまつよりほかにはありません。
  50. 岡田春夫

    岡田(春)委員 判断とおっしゃるが、国会による喚問という手続ですよ。これに対して、その喚問に応じないということならば、国会議員としてたいへん問題があります。あなたは自民党総裁として、党員である田中角榮氏に対して、これは出なさいとおっしゃるのがあたりまえじゃありませんか。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 成規の手続を得られたときは、当然に手続に従うべきであります。
  52. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうですね。成規の手続に基づてい喚問を要求した場合には、当然喚問に応ずべきである、そうですね。間違いありませんね。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは国会の問題でございます。
  54. 岡田春夫

    岡田(春)委員 自民党がその方針でいかれるならば、喚問は間違いありません。自民党総裁として、それに御協力いただけますね。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、国会の問題につきましては、国会自身の自主的な判断もございまして、したがって、国会がどういうふうな手続をとるかということが予測できないときに、自民党総裁といえども、私自身が予測をいたすことは適当でないと思います。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まさか、国会の喚問の際に自民党が反対をして、事実上喚問できないようなことにされるという意図で、そういう御答弁をされたのではないと私は思いたいが、どうですか。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国会は国権の最高機関でございますし、国会の決定に従うことはもう申すまでもないわけであります。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題については、今後とも各委員会においてわれわれは徹底的に追及いたします。  続いて、新内閣金脈問題についてこれから御質問いたしますが、まず第一に、あなた御自身、あなたの派閥あるいはあなたの内閣の閣僚の中に、このような黒い霧の事件といいますか、こういうものが起こりました場合には、あなたは断固として責任をおとりになると思いますが、どうですか。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、内閣責任を持っておる者として、仮定のいろいろな御質問にはお答えいたすことはできません。私は政治家としての良心に従って行動するつもりでありますが、いろいろ仮定をあげられて、その場合に私の判断を求められることに、私が答えることは適当でないと思います。
  60. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一定の伏線をもって、そういう場合には責任を回避するという意味での仮定に対する答弁はできない、こういう意味で御答弁になったのではないかと国民は感じる。そういうことはないでしょうね。責任を負ってくださいよ。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は責任を回避しようと思いませんが、ああいう場合、こういう場合と、いろいろな岡田議員の御発想のもとに、そういう場合を仮定されて、私に一々どうするこうするということは、やはりここでお答えすることは適当でない、そのときの情勢に従って、政治家としての良心に従って行動するということで、国民の皆さんも納得してくれると私は信じておるのでございます。
  62. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは国民はなかなか簡単に納得いたしません。なぜならば、これは個人の名前をあげてたいへん失礼でございますが、すでに新聞紙上においてもいろいろ報道されている。たとえば、たいへん失礼ですが、 河本通産大臣の場合、それから小沢さんの場合、福田さんの場合、大平さんの場合、あるいはあなたが幹事長に指名された前通産大臣中曽根さんなどは、大きな話題の一人である。こういう問題をあなたはかかえておられる。これらの問題の個別の問題は、きょう私はやりません。他の委員からこの問題を明らかにいたしますが、ただ一点だけ私、伺っておきたい点がある。  それは、記者会見でも新聞記者の諸君がたいへん重視されました河本通産大臣のケースであります。私が調べた限り、河本通産大臣は、通産大臣に就任と同時に三光汽船の社長を辞任されました。しかし、有価証券報告書によって調べてみますと、三光汽船の株式所有の中で河本氏は大株主になっている。その株の所有は二千六百七十九万株。しかも河本さんのおにいさんが社長になっておられるといわれる東光商船、あるいは同じ系列といわれる新光海運その他を含めるならば、全株式の大体二〇%は少なくともこえている。こういう点を見ますと、たとえば河本さんが社長をおやめになりましても、事実上の会社の支配権が河本さんのもとに握られていると見ざるを得ないではありませんか。それにもかかわらず、総理はこの間の記者会見で、今後河本氏は事業に復帰させない――事業に復帰させなくたって、支配権を握っているんですよ。こういう状態に対して、あなたはどういうように思われますか。今後政治家として河本氏にはがんばってもらう、こういうことばであなたは言っておられる。これはしかし、政治家としてもがんばるかもしれないが、事業家として会社の支配権を握っているということじゃありませんか。これでは社長をやめて――しかもその社長は空席です。これでは意味をなさないと思うが、これについてどう思いますか。
  63. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大臣に就任すると同時に、自分の持ち株を全部処分しなければならない、二〇%以上の株式はこれを処分しなければならないということは、もし日本がそういうふうな一つの制度をとるならば、私は法律の規制が要ると思います。道義的な責任として、河本君は信頼のできる人物でありますから、したがって政治家として専念をするということでございますので、道義的に河本君の行動というものが、政治家としての責任というもの一筋に、今後国家のために御努力に相なるものと考えますが、二〇%以上の株を持っておる者があるとするならば、大臣の就任と同時にその株の処分をしなければならぬということ、そのことが国会の意思であるならば、私は立法事項だと思います。
  64. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理どうですか。あなた、その問題は道義的な問題だ、こういうことを先ほどから言っておられますね。道義的な問題だとおっしゃるのならば、政治的な制限、法律的にそれをきめる、そういうことよりも、道義的にそれを決定すべきではありませんか。法律の制限がないからそれはやってもいいのだということでは、道義上これは許しませんよ。直ちにこれを放さないにしても、そういう株についてはみずから整理をするという道義的な方針を、総理としては指示されるべきだと思うが、どうですか。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 道義的責任というものは、やはり個人としての自覚に出発すべきで、いかに総理といえども、道義的責任に立ち入って、私がいろいろと申し上げることは適当ではないということでございます。
  66. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、あなたが指名された国務大臣ですよ。いわゆる大臣としてそのようなことは適当とは思えない、総理大臣の指揮に基づいて、道義的にこれは解決すべきであると、あなたは指示されるのがあたりまえではありませんか。そんなことはおれは知らないよというようなことを言っているのでは、国民は納得しませんよ。
  67. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 道義的責任というのは、本人が国務大臣という重責につき、しかも難局の通産大臣という地位は決して軽いものではないわけです。その責任を遂行するために全力をあげる、そういう決意で彼は就任を承諾したのですから、それ以上、君の持っておる株式は二〇%以上処分せよ、これはたいへんな証券界にも問題を起こすでありましょうし、そこまでは彼に要求をすることは適当でない。  しかし、忘れてはならないことは、大臣に就任以来、実業家としての河本君でなくして、政治家としての責任国民に負わなければならぬ、その自覚がなければ大臣の就任を承諾すべきではない。その自覚のもとに、社長のごときも直ちに――社長はいまかわっておるわけで、新しい社長ができておるわけでございます。その他関連会社の社長というような地位も全部辞任をして、この難局に――しかも彼は国際経済の面においても実際に経験を持っておるわけでありますから、河本君は、いまの日本のような、こういう日本だけで解決できない国際的な問題、こういうふうな広範な困難な問題をかかえておる日本の産業経済に対して、その経験を生かして全力をあげて国のために尽くしてもらうということで、私はこれは適当な人選である、こう考えて彼の就任を要請しました。  と同時に、私が言ったことは、これからの河本君は実業家としての河本ではない、政治家としての河本の再出発である、それだけの覚悟を持って大臣に君は就任をするかということを念を押した。これからは政治家として再出発をするという誓約を立てて、大臣の就任を承諾したわけでございますから、これ以上私が立ち入って、株の二〇%以上は直ちに処分せよというようなことは、もしそういうことをするならば、私はやはり大臣の就任の条件として立法的な処置が要るという考えであって、私のとった処置というものは、現在の法律国家として適当な処置である、こう考えておるわけであります。
  68. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題については、まだまだ追及する点はたくさんありますが、これはあとで楢崎委員からこの問題を明らかにいたしてまいります。  そこで、法律問題を盛んに云々おっしゃっておりますが、総理は資産の公開をする、こういうことを再三また御答弁になっておられる。いつまでにおやりになるのですか。
  69. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は日本の慣習の中になじんでいないし、まだ各国とも制度としてはこれは取り入れられてないわけでございますから、非常にむずかしい。私は早くしたいのです。むずかしいというのは、私の財産の公開をする、これは原則です。財産の公開をするが、それを一体どこへ提出するかということで、私は議長の手元にこれを提出したらどうかと思ったのだが、そういう新しい、なじんでいない慣習でありますから、議長としてもそれをもらっても困るということであろうと思うのです、議運等とも話をしておりますと。そういうことで、私はこれをあるいは記者会見などにおいて、印刷をして公開する形式をとるのがいいのではないか。  公開をする方法についても、新しいことだけに、やはり非常にいろいろ検討を要しますが、これは年内であることはもちろん、年内よりもできるだけ早い機会に、私は財産の公開をいたします。しかしこれはまだ制度としてできていないので、総理大臣としての姿勢を示す意味において私はやるのであって、制度としてできていないのでありますから、いろいろそういうふうな発表のしかたについても問題があるということは御理解を願いたい。しかし約束することは、私の財産は公開するという約束でございます。
  70. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま御答弁を伺いますと、年内のしかも早い機会に公開をする。しかし私は単に公開だけではいけないと思う。これは週刊誌でアンケートをとって、あなたがお答えになっておる例もありますからね。やはりあなたがおっしゃるように、何らかの審査をするべき機関が必要だと思う。そこで、あなたが先ほどおっしゃったように、国会議長に対してこれを提出する、こういうことは私は当然だと思います。まさか会計検査院にこれを提出するなんて、そんなばかな話はないと思う。国権の最高機関である国会に対してこれを提出し、国会はこれを適当な方法で審査すべきであると思う。そういうことのためには、当然これは法律化が必要です。あなたは世界に法律はないとおっしゃっているが、アメリカの大統領、副大統領は法律上の規定によってやられている。こういう点を見ても、そういう――いや、あります。吉國さん、そんなことはない。アメリカの公務員に対する規定の中で、大統領の問題がある。こういう点からいって、私は、規定はないとおっしゃっているが、しかし規定がなくたって、日本でつくっちゃ悪いのですか、悪くないでしょう。そういう点からいったら、あなたは審査を受けるべきだと思うが、この点についてはどうですか。
  71. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 よその国になくても日本でやればいいということ、それはそのとおりですが、いま、外国の例については法制局長官のほうが詳しいと思いますが、これはやはりまだよその国にもあまり例がないということは、制度的になじんでないということです。アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、政治家の道義の追及というのはきびしいわけです。そのきびしい国においてもまだこれが制度化されてないということは、日本が先に立ってやることはけっこうでございますけれども、なかなか制度としてなじんでいないというところに、これは日本がやるにしても、いろいろ検討を要する点がございましょう。これは立法化を岡田議員が必要であるとするならば、国会の御審議にゆだねるよりほかはないわけです。  私が今度やろうとするのは、総理大臣としての政治姿勢としてやろうというのですから、それはそれなりに評価してもらいたいと思う。これをまた、私の報告に対して、国会一つ委員会をつくって審査をするということは、そこまでいくと、やはり制度化しなければ――私の政治姿勢として進んで公開をやろうというわけですから、それをまた国会で審査会を設けて御審議を願うということならば、これはもう法律として制度化していただかないといけないが、そんなお手数をかける問題とは私は思わないで、自分立場を明らかにしようというのでございますから、それが国会で特別委員会をおつくりになったりというようなお手数をかけるようなことならば、どうか制度としてそれを取り上げていただきたいということでございます。
  72. 岡田春夫

    岡田(春)委員 三木さんが資産公開をみずからするということについては、私も評価するにやぶさかでありません。決して私は、野党だからといって、そういうことまで反対しているとか、そんなことではありません。その評価をするべき資産公開について、あなたがほんとうに偽りなき政治家であるとするならば、国会において審査をしてもいいじゃないか、そういうことのために法律をつくったらいいじゃないかということで、あえて偽りなき政治国民の前に明らかにするのが私はほんとうだと思う。  そこで、われわれ社会党は、おまえのほうで案をつくれ、こうおっしゃるなら、この前、石橋君の質問に対してもあなたはそうおっしゃったが、もうすでに法律案要綱ができて発表いたしております。その要点を申し上げますと、資産公開の対象になるべき人は、とりあえず総理大臣、そして各大臣、就任三カ月以内に国会に対して資産公開の報告を行なう。国権の最高機関たる国会は衆参合同の審査機関を設ける。これは裁判官訴追委員会と同じ性格です。そしてここで審査をして、その結果を衆参両院議長に対して報告する。しかし、この報告に偽りがある場合においては、これは刑罰的なものとしてはそう厳重でなくて、むしろ道義的な問題ですから、これに対しては、たとえば罰金幾らとかいうような程度の刑罰を設ける、そういう法律案の要綱をすでにつくっております。今度の国会において間に合わなければ、通常国会段階においてもこれは提出したいと思っております。  こういう制度上の問題は、私ここで申し上げたいのは、むしろ超党派でやるべき問題ではないか。野党だけでやるとか、自民党がそれに反対するとかというのではなくて、超党派的にきめるべきだと思うが、こういう制度化の場合に、超党派でやってまいりますことを、あなたのほうは賛成されますかどうですか。
  73. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 社会党立場としてその法案を御用意くださるということは、それは社会党立場として御自由でございますが、これを超党派――法案の場合は超党派みたいなものですね。国会で超党派でおやりになろうというような場合には、各党にも呼びかけなければならぬし、だから超党派というのがどういう意味か私はよくわかりませんが、それはもう国会の場でそういう問題は論じて、そして要するに国会の場でそういう法案が提出されれば、その審議をされるわけでありますから、私は総裁という地位が国会を代表してこうするということは適当でないと思うのですよ。国会でいろいろ御審議を願うようなことに対して、総裁といえども、自民党に対して全部審議を拘束するということは適当でないので、その問題が社会党立場で必要であるとお考えならば、どうか国会の審議によって、それに対する国会の意思決定をしていただきたい、こう思うのでございます。
  74. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理の御意見を伺っていると、どうも歯切れが悪いですな。田中金脈問題についても、あなたが野にあったときの態度とはずいぶん違う。二歩も三歩も後退している。それから三木内閣の場合に、みずからの問題にしても、何か弁解に終始しておられる、そういう印象を国民に与える。私はこういう点がきわめて遺憾であります。資産公開をやるというまでの決断を下されたその勇気に、私は敬意を表するけれども、しかしそれ以外のことについては、だんだんだんだんあいまいにしてしまうという意図が感じられる。そうでないならばたいへんけっこうでございますけれども、断固としておやりになるという決意を、今後の行動で私は見守ってまいりたいと思います。これは今後国会その他において、何回も重複して質問することになるでしょう。  続いて、私は次の問題に入ってまいります。次は、先ほど申し上げた第二の柱である日本の今後の国際進路の問題について入ります。時間がありません。  総理は、再三、国際協調ということを言っておられる。しかし、国際協調といっても、無原則な国際協調では、今日の複雑な国際情勢の中で、二つの大国と第三世界の間にもみくちゃにされて、ピエロの役割りになってしまう。三木さんがハムレットになることを私は期待しないのだが、少なくともこういう点については、原則を持った国際協調でなければならぬと思う。  そこで、エネルギー問題について具体的に伺いたい。  中近東の情勢というのは非常に深刻になっています。来年の七、八月ごろには第五次の中近東戦争があるのじゃないかとまでいわれている。こういう状況の中で、石油危機の問題が日本で再発する危険性がある。そこで、私の言いたいのは、こういう石油危機に対処するためには、国内におけるエネルギーの自給体制を確立することがまず先決ではないか。そういうためには、資源の乏しい日本においては、石炭の見直しというものがこの際非常に重要だと思う。去年の石油危機の際に、石炭の見直しといって大騒ぎになった。五十年度の予算にはこれを組みたいということを、石炭鉱業審議会でも実は中間答申をやっている。ところが、前中曽根通産大臣は初めはそう言っておったが、その後は投げてしまった。そして来年度、五十年度の予算の中には、石炭の見直しについてはほとんど具体的な考えがない状態です。これじゃ問題になりません。  しかも河本通産大臣の方針では、石油についても一日十五万バーレルの節約をするという。そうなると、石炭特別会計というものは石油関税ですから、当然石炭の政策自身が崩壊しちゃう。こういう危険な状態の中で、まず国内炭の完全な、有効な開発をはかる。そういうことのための具体的な財政措置をとる必要がある。また石炭産業の場合には、労働力の問題が非常に重要です。これを確保するために労働条件の改善をはかる、こういうことがまず行なわれなければならないと思うのだが、総理はどうですか。
  75. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外交の基本姿勢といいますか、そういうものに対してお触れになりましたが、この機会に申し上げておきたい。  私は、やはり日本外交というものは、国益を守るということが中心だと思う。その国益をあまり狭い範囲内で私は考えたくないのです。やはり長期的に、全世界的に国益を守るということを考えたい。そうでなければ日本の国益は守れるものじゃない。そこにいま御指摘の国際協力というものが起こってくる。その国際協力というものは、申すまでもなく、エネルギーでも食糧でも、いろいろなその他の資源でも、もう日本一国だけでこれは処理できる問題ではないわけですから、どうしたって、いやおうなしに日本民族の生存の条件は、国際協力の中に生きていくよりほかない。だから、日本は平和と繁栄のために世界に寄与するけれども、その世界の平和と繁栄の中に、日本の今後の発展をはかるという以外には生きようがないのですから、国際協調ということが外交の大きな柱であることは、これは申すまでもないわけです。  その国際協調という中で石油の問題というものを御指摘になりましたが、それは国内の資源で活用できるものはできるだけ活用したがいいと思う。しかし、活用する石炭についても、私よりもあなたのほうがずっと詳しいんだが、労働力からいっても、なかなか石炭産業というものはこれを活用するといっても限度があって、どうしてもやはり石油というものがエネルギーの中心になる時代は相当に続くと思う。原子力の時代も来るのでしょうけれども、これは今日においては、当分やはり石油というものにエネルギーの源を求めざるを得ない。  そうなってくれば、石油の供給を日本は八〇%を中東地方に仰いでおるわけですから、どうしても中東の動向というものには大きな関心を持たなければならぬ。だから、私が去年の十二月にアラブに石油特使で行ったときも、直ちにアメリカに行った理由は、これはワンセットである、アラブの旅行とアメリカ訪問はワンセットであるということで私は行って、キッシンジャー国務長官にも、中東の平和的ないままでの紛争の解決ということに対して、アメリカの努力を要請したわけです。何としても中東の和平が達成できるということが石油の供給を確保できる一番の基礎ですからね。そういう点で、アメリカはやはりイスラエルとの間に、イスラエルを説得しなければならぬ面が多分にありますから、アメリカにも参ったのはそういう理由であります。  われわれは、国内で自給体制をはかれとおっしゃっても、これは石油を除いても自給体制というものは不可能に近い。だから、一九六七年以来、中東の問題は解決されていないのですから、中東和平というものを一日もすみやかに達成して、そして中東を安定さすために、日本がやれることは限りがありますが、しかし限りのある中で、和平的な中東問題の解決に全力を尽くす。そしてまた、一方においては中東地域との間に、日本の経済的な、技術的な協力も進めて、そして中東地域の安定をはかるということが、エネルギー問題の私は中心だと思う。そういうことに日本の外交というものを考えておる。  石炭については、できるだけ活用のできるものは当然に活用する。国内のエネルギー源を活用するということは、これはもう当然のことでありますが、これにはいまの客観情勢がございますから、そう幻想を抱くことはできない。これはやはり、いわゆる通産当局のいろんな努力にまつよりほかはありません。
  76. 岡田春夫

    岡田(春)委員 中東問題についても、いろいろ質問したいことはたくさんあります。しかし、時間の関係もありますので、続いてまいりますが、日中関係についてひとつ伺いましょう。  総理施政方針演説の中で、日中共同声明の諸原則を誠実に履行する、こういうことを演説された。日中問題については日中平和友好条約を積極的に進める、こういうように私は理解したいと思うわけですが、御存じのように、日中平和友好条約は十一月に第一回の交渉に入りました。それは外務省の東郷事務次官、中国の韓念竜外務部次長、この間に第一回の交渉を行なった。その際に合意されている事項として、この条約の締結は可及的すみやかに行なう、それから交渉にあたっては特別困難な事項はない、こういっている。ところが総理は、締結を促進するというお話で、急いでやるという、可及的すみやかにという点については触れておられない。特に外務大臣宮澤さんの場合には、ある新聞によると、時間をかけて、じみにやってまいりますと、こういう御答弁をされた。これは合意事項に私は沿わないと思う。  こういう点は、総理からばかり先ほどから御答弁いただいておりますので、やはりこの合意事項に基づいて、できるだけすみやかにこれは妥結をする方向に持っていくべきだし、そういう方向でいった場合に、いつごろまでに妥結ができるか、たとえば次の通常国会にこれが提出できるというめどをお持ちになっているのかどうか、こういう点を外務大臣から伺いたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のとおり、中国の外務次官が見えまして、平和友好条約の締結のための作業を進めようではないかとなりましたことは、御指摘のとおりでございます。私どもとしましては、今後日中両国が末長くつき合ってまいりますための基本的な心がまえといったようなことを、この条約の中に盛り込みたいと考えておるわけでございまして、私があまり表立ったことをせずにと申し上げましたのは、将来を律する大事な条約でございますので、両国の外交ルートを通じて、まずどういうことを盛り込むべきかということに合意をいたしまして、その後にそれをどのような条文にするかという相談をしていこう、こういうふうに考えておりまして、はでにならないようにと申し上げましたのは、外交ルートを通じてという意味で申し上げたわけでございます。  ただいまの段階で、あまり極端にむずかしい問題があるとは思いませんけれども、話をしてまいりますれば、またそれなりにお互い考え方に幾らかの違いもあろうかと思います。そういうことは、無理をせずに、将来のことに関係いたしますから、よく相談をしていこうという意味でありまして、仕事をスローダウンさせようという気持ちは、私は全然持っておりません。事務的に、すなおに、できるだけ早くやろうというに尽きますので、その時間につきましては、来たるべき通常国会中ということをはっきりただいまお約束申し上げるわけにはまいりませんけれども、できるだけ急いでまいりたいという気持ちに変わりはございません。
  78. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日中問題で、これは総理に伺いたい。  いま、できるだけ早くという意味での外務大臣からの御答弁があった。ところが、これに関連しましても、私ここに自由新聞という新聞を持っていますが、十月末に、灘尾総務会長が自民党の訪台議員団長として、台北で到着のあとステートメントを発表しているが、そのステートメントがここに出ている。このステートメントを見ると、こう言っている。全体を読むわけにまいりませんから要点だけ言いますが、「今回のわれわれ日本会議員多数がそろって、貴国を訪問致しましたことも、日華両国民の友情のきずなの強さを如実に示す」云々。そして記者会見では、そのあとに「大多数の日本人が両国の国交回復を非常に望んでいることを指摘したい。」これは台湾との国交回復をやろう、国民はそれを望んでいる、灘尾会長がこう言っている。  これは一体何ですか。共同声明に明らかに反するじゃないですか。あなたの施政方針演説にも明らかに反するじゃないですか。中華民国などという亡霊的国家と国交回復をしたいと言っている。共同声明に反するという事実をあなたはお認めになって、こういう点については、灘尾総務会長にあなたは御注意をなさい。取り消しをなさい。はっきりしてもらいたい。
  79. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はその自由新聞というものは読んでいないわけでございます。(「これは自由だから自由民主党に近い」と呼ぶ者あり)これは自由民主党の新聞ではなくして、ほかの自由新聞というので、名前はよく似ておりますけれども、しかし、これは自民党の党報でもなく、ただ自由新聞というこの新聞の記事に対して私にコメントを求められましても、これはやはり、この新聞というものがどういう新聞かもよく承知しない、その新聞に出た記事で私に答弁を求められましても、ただ言えることは、私は、施政方針演説でも申しましたごとく、一昨年の日中共同声明の精神は、諸原則を誠実に履行することを内外に明らかにしたい、それに従って今後日中関係というものを進めていきたい、私のこれはもう当然に政権を担当するものとしての責任である。やはり、一たんあれだけの共同声明で国交回復をしておいて、いささかもその諸原則に反することは絶対に許されないということは当然のことだと思っております。
  80. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは新聞のことを盛んに言いますが、これはステートメントですから、文章なんです。ただその文章がそのまま載っているから、私は使ったのであって、この自由新聞というのは自民党の新聞じゃない。これは台湾華僑の機関紙です。だから間違いありません。いいですか、文章によるところのステートメントの中にそう書いてある。あなたはそういう点を十分御理解いただいて、だからあなたに言ったでしょう。タカ派が右の方向に進みつつありますよ。近衛さんになってはいけませんよ、こう申し上げているでしょう。その点はあなたはしっかりしてもらわないと困るということです。間違いありませんね。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、自民党総裁総理として、政治に対する全責任を負うものであることを明らかにいたします。
  82. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その次に、大国の関係について若干伺ってまいります。大国というのは米ソ二つです。  まず、アメリカの関係、この点は非常に重大な問題がありますので、ひとつお答えをいただきたい。  先般フォード大統領が来日の際に、当時の中曽根通産大臣がキッシンジャー国務長官と会見したことは御存じのとおりです。そのときの通訳に防衛研修所の桃井真氏が当たったはずだが、この事実はどうですか。これは総理はおわかりにならないかもしれない。防衛庁長官なり外務大臣なり……。
  83. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私、こういうことを委員の各位にお願いしておきたい。できるだけ私は答弁したいと思いますが、私は国の、三木内閣基本的な政治の諸問題についてお答えをして、個々の問題は各省大臣にお答えをしていただかないと、私も至らぬものでございますから、諸般の問題について私が答弁をすることは、質問された方にも御満足がいくようなことにならぬかもしれませんので、今後は政治の内政、外交の基本的な問題について私が答弁をして、各種の具体的な問題については各省大臣が答える、こういうシステムでこの予算委員会を運営することをお許し願いたい。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中曽根通産大臣とキッシンジャー国務長官が会談をされたことは存じておりますけれども、その内容、通訳がいたのかいないのか、それがだれであったか存じておりません。
  85. 岡田春夫

    岡田(春)委員 通産大臣ですから、これは通産省で御存じのはずだし、あるいはまた、防衛研修所の桃井真氏が行っているのですから、防衛庁でも御存じのはずだ。これは間違いない。どなたか、これは総理大臣ではありません。総理大臣が先ほどおっしゃった点はそのとおりなんで、具体的な問題を、その関係に対して伺いたい。
  86. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 中曽根前大臣がキッシンジャーと会見されたということは承知いたしておりますが、その際事務局のほうではタッチしておりませんので、どなたがその間において通訳をつとめられたかは、私から答える能力がございません。
  87. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはきわめて重要なんですが、すぐお調べいただきたい。というのは、これは委員長にもぜひ聞いていただきたい。桃井真氏はそのときに鹿児島県に公務で出張中でありました。ところが、突然、中曽根通産大臣からの呼び出しによって、公務を放棄して、急遽、自衛隊の飛行機にP2Vというのがありますが、この飛行機によって鹿屋基地から下総基地に戻った。そして中曽根通産大臣の通訳をやったわけです。公務を中止したということ、これは公務員として非常に重要な問題です。わざわざ通産大臣が防衛研修所の桃井氏を呼んでやったということならば、通産省あるいは外務省には通訳の人がいないのでしょうか。ことさら桃井氏を呼んだということについては非常に問題があると思う。なぜ桃井真氏をこのように使ったのか、これは早急に調べてもらいたい。これは間違いありません。  しかも、そこで判断のできることは、一つは通産行政についてのキッシンジャー氏との会見の内容であったのか、防衛問題に関係する問題であったのか。あるいは通産行政でも、防衛に関連する、具体的に言うならば軍事産業に関係する問題で桃井氏を呼んだのではないか、こういう点が考えられるのだが、このことを確認されないそうですが、これは防衛庁でもすぐわかるはずだ。電話をかけたらすぐわかります。桃井氏が出ておったかどうかということは調べればすぐわかる。これはぜひ委員長から早急に調べさせていただきたい。
  88. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡田君のただいまの御発言、午後までに防衛庁長官、ひとつお調べ願いたいと思います。
  89. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は承知いたしておりませんが、調査をいたしまして、御報告を申し上げたいと思います。
  90. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題は非常に重大なんで、午後では困るのです、なるべく早くでないと。
  91. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 なるべく早くお願いします。すぐ電話で聞いてくれ。
  92. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、いま電話でお返事をいただく前に、少し進めます。  フォード大統領の訪日、訪韓の重要課題の一つは、アメリカの議会において対韓軍事援助の削減という情勢が出てきている。したがって、アメリカの肩がわりとして、日本の軍需品援助を民間協力の形で行なわせることについて打診をする、これが非常に大きな任務の一つであったといわれている。このことについては、九月に前山中防衛庁長官もアメリカに参りました際に、この問題についていろいろ打ち合わせをやっている。こういうのを固めるという意味でキッシンジャーが中曽根氏に会っていると思われる。具体的に言うと、韓国にノックダウン方式による軍需工場をつくる、そして日本の軍需品の部品を送る。当初は修理から始めるが、ノックダウン方式でやる。これは、アメリカの下院の財政委員会報告においても、その点は相当はっきり出てきております。  もっと具体的に申し上げましょう。具体的には、小松製作所の兵員輸送車、日本油脂の火薬その他ロケット推進薬、神戸製鋼の火砲、豊和工業のライフル、この部品を韓国のノックダウン工場に送ることによって向こうで組み立てる、そういう形でやっていこうとしている。これを裏づけるものとして、近いうちに韓国の軍隊の兵器が日本規格に切りかえられるということがいわれている。こういう点はまだまだ裏づけになることがあります。  たとえば今度のフォード訪韓による米韓共同声明を見ますと、これに該当すると思われるような問題がある。たとえばこの共同声明の中に、「フォード大統領は、米国が韓国のかかる諸般の努力を引続き支持することを確約し、すべての関係国が韓国の建設的なイニシアティヴに応えるようにとの希望を表明した。」これなども一つであります。これは軍事面における共同声明の部分です。  またもう一つは、民間協力についてもこう書いている。「アメリカおよびその他の外国から」――「その他」というのは日本です。日本も含む。「外国からの継続的な対韓民間投資が望ましいということに合意した。」もちろん米韓共同声明の中に、先ほど言った小松製作所の何々なんて書くわけがありません。これを裏づけるものとしてこういう形で書かれている。  私は、フォード来日を機会に、中曽根・キッシンジャー会談の中で、この問題が重要な討議議題として行なわれただけに、桃井真氏が参加をしたのだと思わざるを得ない。もちろん公式に防衛庁長官も一緒に入るなどという形はとれないと思います。日本政府の方針がまだきまっていないからです。こういう密談が、密約といいますか、陰における話し合いが行なわれたのではないかということが、これは一つ重要な問題でございます。  通産大臣、先ほど総理から、個別の問題は各大臣に聞きなさいというお話ですが、通産大臣あるいは防衛庁長官、この問題についてどういうように、引き継ぎの中にお話があったのですか、この点を伺いたい。
  93. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その問題につきましては承知いたしておりません。
  94. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点につきましての引き継ぎはございません。
  95. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は相当具体的にはっきり事態を明らかにした。引き継ぎがございません、とこういうお話で、それだけで、ああそうですがで終わるわけにまいりません。この問題はきわめて重大な問題です。  そこで、こういう事実があったということ、あるいはまたそれに関連しなくとも、韓国に対して武器輸出を行なうおつもりですか。行なわないおつもりですか。これは通産大臣どうですか。
  96. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 武器の輸出は行なわない、私はかように承知しております。
  97. 岡田春夫

    岡田(春)委員 韓国に対する武器の輸出は行なわない、それでよろしいのですね。
  98. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 正式にはまだそのことについては聴取いたしておりませんが、原則的に、日本は平和国家でございますので、外国に対しては武器の輸出は行なわない、こういう基本方針があると承知しております。
  99. 岡田春夫

    岡田(春)委員 就任早々ですから、あまり詰めることを申し上げるのはどうかと思いますが、必要があれば、担当局長でもけっこうです。  観点を変えて伺いますが、日本の武器輸出は、輸出貿易管理令に基づいて武器輸出の三原則がつくられている。これに該当するものは武器の輸出ができないということになっている。しかし該当しないものは、武器輸出は必ずしもできないわけではない。これはかっての佐藤総理大臣が在任中においてもそういう答弁をいたしております。まず、この三原則の関係で武器輸出に関する問題について、貿易担当の局長でけっこうでございますからお答えをいただきたい。三原則の条項も明らかにしてください。
  100. 岸田文武

    ○岸田政府委員 武器の輸出につきましては、ただいま通産大臣からお答えがございましたとおり、輸出の承認制にかけまして、承認を行なわないということを基本原則といたしております。
  101. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの答弁では納得いたしません。その承認を行なわない場合の原則があるはずです。その原則はどういう原則ですかということを伺っている。三原則をはっきり話してください。
  102. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私、三原則の内容は承知をいたしておりませんが、先ほど申し上げましたように、原則として禁止ということがたてまえになっておるわけでございます。
  103. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは困りますね。武器輸出の三原則というのは、国会で再三問題になっておりまして、貿易局長がそれを御存じないというのは困るのですが、これは委員長どうなんですか。それではもう一度私のほうで言いましょう。  三原則の第一はココム禁輸令による共産国、第二は対ローデシア武器輸出禁止など国連決議で禁止されている地域、紛争当事国またはその当事国となるおそれのある国、これに対しては武器の輸出はできません。こういうことははっきりしておりまして、しかもそれ以外の場合には、たてまえとして武器の輸出はしてはならないということにはなっておらない。この三原則が堅持されている。これはもういままで国会で再三やっている問題であります。これは間違いありませんね。どうですか、局長
  104. 岸田文武

    ○岸田政府委員 さっそく調べまして、御報告をいたします。
  105. 岡田春夫

    岡田(春)委員 進行できない。委員長、これでは話になりません。これでは質問を進められません。――これもありますから、これを調べてごらんなさい。ここに出ているから。貿易局長、これを見せます。貿易管理令、これを見せます。話にならないよ。
  106. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岸田貿易局長、しっかりしろ。だめだよ。
  107. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたように、武器は輸出承認品目になっております。承認品目の運用の内規というもの、あるいはいまお話のございました原則があるのかもしれません。その辺の内容はいまチェックをいたしておりますので、至急に御報告をいたします。
  108. 岡田春夫

    岡田(春)委員 三原則については国会で再三答弁しているのですから、そんなことを言われても、実際問題として困るわけです。たとえば……(「貿管令にあるのだから、それを知らぬというようなことじゃ困るよ」と呼ぶ者あり)ちょっと待ってください、資料をごらんにいれてもいいです。――大平さんは御存じだ。大平通産大臣、「武器の輸出につきましては、」「三つ原則に抵触する場合は輸出を認めないことにいたしております。すなわち、共産圏諸国向けの場合、国連決議によりまして武器等の輸出が禁止されておる国に向けた場合、さらに、国際紛争の当事国またはその当事国になるおそれのある国に向けた場合、」云々。これは一九六九年二月十二日の大平通産大臣の答弁。はっきりしているじゃありませんか。そんなことがわからないのですか。通産大臣、どうですか。これではひどいじゃありませんか。
  109. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 さっそく調べまして、御返事をいたします。
  110. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいま確認をいたしました。  三原則、お示しのような原則に従って処理をいたしております。
  111. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これではちょっと困りますね。三原則に基づいて兵器の輸出問題がきめられている。そうすると、韓国に対して武器の輸出をしないというのは、この三原則に基づいてやっているものですか。どうですか。これは当然該当すると思う。その場合にどの条項に該当するんですか。この点を通産大臣に伺いたい。
  112. 岸田文武

    ○岸田政府委員 おそらく、韓国向けの武器の取り扱いにつきましては、ここに盛られた三原則以外のルールの問題かと思います。
  113. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはどういうことですか。答弁になりません。
  114. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 貿易局長、おそらくとはどういうことだ。
  115. 岡田春夫

    岡田(春)委員 委員長から注意してください。
  116. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これはわけのわかるような説明をしてください、はっきり。
  117. 岸田文武

    ○岸田政府委員 韓国に関する武器輸出の取り扱いについては三原則の適用外の問題である、こう考えられます。
  118. 岡田春夫

    岡田(春)委員 適用外というならば、輸出できるわけでしょう。違いますか。どういうことなんですか。
  119. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いずれの場合にも、武器は輸出承認品目になっております。この承認をおろすかどうかということが問題になるわけでございますが、これにつきましては、三原則ということではなくて、その案件の是非ということで別個に判断すべきものではないか、こう考えます。
  120. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何のことだか私にはわかりません。それでは三原則は何のためにつくったんだかわからない。
  121. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。いまの説明、もう一ぺん……。
  122. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たとえばここに資料がありますが、管理令のうしろに付録がついている。これは三原則に基づいて並べられている。これですから、管理令の承認事項というのはこれに基づいてやるわけです。これ以外に何かありますか。何かあるんなら言ってくださいよ。何かあるのですか。
  123. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。   〔発言する者あり〕
  124. 岡田春夫

    岡田(春)委員 話にならないですよ。答弁はまとめてからしてください。
  125. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 元通産大臣の大平さん、どうです。知ってるんなら言ってください。  岸田貿易局長。ゆっくりでいいから説明しなさい、わかるように。
  126. 岸田文武

    ○岸田政府委員 繰り返しお答え申しておりますように、武器は輸出貿易管理令による承認品目になっておるわけでございます。その承認をおろすかどうかの是非につきまして、一つ原則として、先ほどお示しの三原則があるわけでございますが、それがすべてではないわけでございます。これらの三つの事項に直接該当する国につきましては、まさにこの原則が適用になりますが、それ以外の場合のルールにつきましては、いわば外国為替及び外国貿易管理法の目的に照らし運用していくということになろうかと思います。したがいまして、国際的な環境というものを判断しながら承認をおろしていくということになるわけでございまして、個々のケースで判断をして決せられるべきものである、こう考えております。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはしかし政治方針ですね。閣議の決定でもない限りは、三原則以外にやりませんということはないですよ。それはどういうことなんですか。三原則に基づいて管理令の付録にすべて具体的に書いてある。それ以外に韓国には出しません、そういうことが言える根拠はどこにあるのですか。そういう政策を決定しているのならば、いつの政策でおきめになりましたか。どういう政策があるのですか。韓国には出しませんという政策があるのですか。はっきりしてくださいい。これは局長の問題よりむしろ政策の問題です。通産大臣だけではなくて、こういう問題になると、新しい政策ですから閣議を必要とする。そういう新しい政策をもうおきめになったんですか。どうなんですか。そういう点を含めて御答弁いただきたい。
  128. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本は平和国家でございますから、原則的には外国へ武器の輸出などをしてはいけない、こういう基本的な考えを私は持っておるわけでございます。しかし、これまでのことは詳細承知いたしておりませんし、それから、お話しのその法律等のことにつきましても、なお詳細承知いたしておりませんので、よく検討いたしまして、後刻御返事を申し上げたいと思います。
  129. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ具体的に、平和国家として兵器は輸出しませんというならば、過去の実績を申し上げましょう。  昭和三十三年、銃弾、南ベトナム。三十四年、射撃管制装器、インドネシア。三十五年、インドネシアに機銃部品、並びにインドには訓練用機雷。三十六年、インドネシア、機銃部品。三十七年、ピストル、アメリカ。三十八年、ピストル、アメリカ。機銃部品、インドネシア。三十九年、アメリカ、ピストル。四十年、タイ、ライフル。同じように、タイ、銃弾。四十一年、タイ、ライフル。アメリカ、ピストル。四十二年、アメリカ、ピストル。四十三年、銃弾プラント、フィリピン。こういうように出ています。平和国家としてお出しにならないとおっしゃるけれども、こういうように、これだけ出ているんですよ。まだこのほかに四十四年以降もありますが、ここで一応やめますが、そうすると、これは全部平和国家の方針に反するわけですね。
  130. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は原則論を申し上げたわけでございまして、あるいはそういうこともあったのかもわかりませんが、武器の輸出等は極力避けなければならぬ、こういう考え方から申し上げたわけでございます。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう答弁では、私は納得しかねる。
  132. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください、岡田さん。
  133. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 法律的な問題もいま含んでおるようでありますから、法制局長官が最初にお答えいたします。
  134. 吉國一郎

    吉國政府委員 政策の問題は別にいたしまして、法律的な側面について的確に申し上げたいと思います。  外国為替及び外国貿易管理法第四十八条で、「特定の種類の」「貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」という規定がございまして、これに基づきまして輸出貿易管理令に規定がございまして、その第一条で、「貨物を輸出しようとする者は、左の各号の一に該当するときは、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業大臣の書面による承認を受けなければならない。」とございます。その第一号に、「別表第一中欄に掲げる貨物を同表下欄に掲げる地域を仕向地として輸出しようとするとき。」というのがございまして、別表第一に数百の品目が並んでおりますが、その第一九七号以下に武器と思われるものが並んでおります。たとえば第一九七号には、「銃砲及びこれに用いる銃砲弾(発光又は発煙のために用いるものを含む。)並びにこれらの部分品及び附属品(ライフルスコープを除く。)」という規定がございまして、この中欄に掲げる貨物を、下欄には「全地域」とございます。したがって、銃砲のたぐいを地球上のどこの地域に輸出する場合も、輸出の承認を受けなければならない。同様に第一九八号には、「爆発物及びこれを投下し又は発射する装置並びにこれらの部分品及び附属品」等々、二〇五号まで軍用のものがいろいろ並んでおります。  これを輸出する場合に、通商産業大臣が外国為替管理法の精神に基づきまして判定をして、輸出するかしないかを決するわけでございますが、その通商産業大臣の輸出の承認をするかしないかの運用方針の一つといたしまして、先ほど岡田委員がおあげになりました武器輸出の三原則、これは国会の審議を通じておのずから煮詰まってまいりまして、このような、たとえば紛争当事国であるとか、国連によって輸出を禁止する旨の決議があった国であるとかいうものに対しては、輸出をしないほうがいいではないかという国会の御議論にこたえまして、通商産業省で武器輸出の三原則というものを打ち立てまして、それに従って処理をいたしておるわけでございます。したがって、三原則に該当する場合には、絶対輸出承認をいたさないということば確定しているわけでございます。それ以外の場合については個別の判断をいたすわけでございますが、その個別の判断につきましても、佐藤内閣時代に佐藤総理から国会ではっきり答弁をいたしておりまして、たとえば国内の武器産業のコストを低下をするために輸出をはかる、これは国内の販売価格を低下さすために輸出の分量をふやして、それによってコストを下げようというようなことはいたさないということははっきり答弁いたしておりますが、それ以外の個々の場合につきましては、外国為替及び外国貿易管理法の精神に徴して個々に判断をする。その判断をする裁量は通商産業大臣の裁量権にございますので、その範囲内において処理をいたしておる。法律的な側面はそういうことでございます。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、お聞きのような状態ですが、三原則があって、これには絶対認めない。ところが、それ以外の、該当しない場合の例として、私、先ほど申し上げた、こういうように輸出されている。しかし、その中で、韓国には武器輸出はしないということを通産大臣は言われた。それじゃ韓国には絶対出さないということは間違いないんですね。――いや、これは総理大臣、政治問題ですから……。
  136. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、先ほど来原則論を申し上げておるわけでございまして、とにかく、できるだけ武器輸出などは避けたい、こういう基本方針を堅持していきたい。個々の問題につきましては、そのつど検討していきたいと思います。  なお、先ほどお尋ねの中曽根前通産大臣の通訳の問題につきまして、中曽根前大臣から連絡がございましたので、お話しをいたします。  キッシンジャー長官との会談に桃井氏を使ったのは、同人がハーバード大学の出身で、キッシンジャーの弟子であり、語学にたんのうであるから使った、同人は防衛研究所の教官である、それから中曽根氏とキッシンジャー長官との会談は、当時、会談後、通産省で記者会見をした際に、石油、エネルギー問題について話をしたのであって、対韓援助について話をしたことは一切ない、こういう連絡でございます。
  137. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま二つの問題があるのですが、順次一つ一つやりましょう。  一つは、桃井真氏を使ったという事実をお認めになりました。記者会見で石油問題について話し合ったという。私は石油問題もやったと思いますよ。通産大臣なのに石油問題をキッシンジャーとやらないなどとは、私は言っておりません。しかし同時に、この問題が話し合われたことは間違いない。こういう点について、まだこれからいろいろ伺ってまいりますが……。  もう一つ、今度は第二点です。たてまえとして出さない、こうおっしゃったわけです。いや、たてまえで、それじゃ出す場合も、韓国に武器輸出をする場合もあるんですね。先ほどは具体的に私は伺っているのです。こういう問題について、お出しになるのですか、お出しにならないのですかということを伺っている。それをたてまえ論だけで御答弁にされたのでは、私は納得するわけにはまいりませんよ。たてまえとしてやりませんが、そのときで相談しましょう、こんな話では問題になりません。出すのか出さないのか、そういう事実はどうなんだ。これは政策の問題ですから、はっきり総理大臣からお答えいただきたい。
  138. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 韓国につきましては、これまで武器を出したことはないそうであります。今後のことにつきましては、先ほど申し上げました私の原則等に従いまして、具体的に検討してまいりたいと思います。
  139. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、原則に従いましてというと、そうするとあなた、三原則以外にあなたの原則があるということですよ。三原則以外の原則というのはどういう原則ですか。それは閣議できめているのですか。――ちょっと待ってください。あなた個人の主観によって通産行政をやられても困るのですよ。原則をはっきりして、その原則に基づいて、それ以外のものがあるとおっしゃるなら、その原則は隣、韓国との問題ですから、これは原則として――たてまえとしてという意味ではなく、原則ですよ。韓国には出さない原則ですという原則があるなら、それを出してくださいと言っているのですよ。たてまえとしては出したくないが、そのときの事情で相談しましょうというのでは、これは三原則というものが意味をなさないことになる。その点をはっきりしてくださいと、先ほどから言っているわけです。
  140. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げておりますように、これまで、韓国に対しては武器を輸出したことはありません。したがいまして、今後具体的な問題が起こりましたときには、そのつど具体的に処理いたしますけれども、私の基本的な考え方を申し上げますならば、わが国は平和国家でございますから、武器の輸出等はできるだけ避けたい、そういう基本方針のもとに運用していきたい、かように考えておるわけでございますが、ただ、具体的に今後この国に対してはこうするというふうな決定的なことをいまこの席で申し上げるのは、ちょっと御遠慮さしていただきたいと思います。
  141. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃもう一点伺いますが、河本さん、三原則の中にも、韓国に該当するような事項があるじゃないですか。どうしてこれをおお使いにならないのですか。「紛争の当事国またはその当事国になるおそれのある国」、これに該当するのでしょう。違うのですか。該当するのでしょう。
  142. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 それに該当するかどうか等につきましては、私の一存ではきめかねることでございまして、やはり、外務大臣等の意見も聞きましてきめたいと思います。
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください、三木内閣総理大臣から答弁がありますから。
  144. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それを明確にしてください、いまの第三項も。
  145. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、貿易管理令等に関連して、政府の方針にも関係をいたします。韓国には従来も武器を輸出していない。この方針は三木内閣においても踏襲をいたします。(岡田(春)委員「もう一度。よく聞こえなかった」と呼ぶ)従来も韓国には武器輸出をいたしていない。この方針は三木内閣においても踏襲をいたします。
  146. 岡田春夫

    岡田(春)委員 踏襲して、やらない。とすれば、もう一つ、三原則の第三項、紛争当事国または紛争のおそれある国、これに該当するのですね。これを伺っている。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 韓国に武器輸出をしたことはないし、今後もしないということは、総理が方針としてお示しになりました。  それから、三原則の最後の「紛争当事国あるいは紛争当事国となるおそれのある国」というのは、貿管令の主管大臣が有権的に行政の上でおきめになることであると思いますが、私の行政をしておりましたときの経験から申しますと、おそれのある国というのは、現実に国際法上の紛争当事国でなくても、現実にそういう公算が非常に大であるという場合に、あれに該当する、こういうふうに私は承知をしておりました。
  148. 岡田春夫

    岡田(春)委員 具体的に伺いますが、それでは韓国の場合はそれに該当しますかと伺っておるのです。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 貿管令を主管される大臣が御判断をされることであると思います。
  150. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、通産大臣、貿管令を担当されておりますが、いかがでしょう。
  151. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、かつて韓国へ武器を出したことはありませんし、今後も、先ほどの総理のお話のように、武器は出さない、こういう基本方針がここで確立されたわけでございますから、その方針に従って、私も今後やっていきたいと思います。  ただ、お話しのように、その第三項に該当するかどうかということについての、この場所における判断につきましては、もう少し考えさせていただきたいと思います。
  152. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だめですよ、それは。貿管令に関連する武器輸出の三原則に該当するのでしょう。該当するから出せないのでしょう。あなたの管理のことで、いまちょっと答えられないなんという話は――それじゃ答弁をお待ちしましょう。何時間でもお待ちしましょう。そんなこと、話になりませんよ。だめですよ、そんなことは。
  153. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 岡田議員の御質問の主たる点は、武器輸出を韓国にやるかやらぬかということが一番の御質問の……(岡田(春)委員「その原則は何かと聞いているのです」と呼ぶ)そこで、慎重な答弁を各大臣がいたしますのは、国際的に見ても、紛争のおそれあるとか紛争当事国というものについては、これは日本自身が貿管令によっていろいろ判断をする場合の日本政府の判断でございまして、ここでいろいろ言うことに対して非常に慎重な態度をとられることは、私はよくわかる。私が、今後もいままでの方針を踏襲して、韓国へ武器輸出はいたしませんと、あなたの御質問の一番主たる点にお答えをしておるのでありますから、このことに対しては、各大臣が貿管令のときに、日本政府が判断するときに、いろいろ判断の材料になるのであって、この席上で言うことに対して、いろいろ慎重な態度を持されるということはよくわかるわけでございまして、武器輸出はやらぬということですから、その点で、その結論を私は申しておるわけでございますから、御了解を願いたい。
  154. 岡田春夫

    岡田(春)委員 了解できません。これは何のために武器輸出の三原則をつくっているのですか。しかも、それに該当すべき第三項があるのに、それは該当しませんけれどもやりません、あるいは逆に言うと、該当しますけれどもやりませんと、その原則をはっきりしない限りには、通産行政としては意味をなさないわけですよ。私はいまの総理答弁でも納得はいたしません。  また、このあと伺おうと思うのは、ノックダウン方式で部分品で輸出する場合はいいのか。あるいはプラントならばどうなのだ。その例として、フィリピンにはプラント輸出をしているのですから、ここまで韓国に対してはっきり伺っておかなければならない。そのためには、輸出三原則の第三項が適用されるかどうかということがはっきりならない限りは、これは質問ができないわけです。この点をはっきり御答弁いただかないと、私は納得いたしません。  なお、関連で動議がございますから、私はその点を問題として提起いたしておきます。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。  いま、岡田委員から、いろいろとこの次に出る問題をも含めて申し上げました。先ほど来聞いておりますと、必ずしも閣内で統一した意見があるようにも思えません。そこで、ちょうど時間となりましたので、正午ですから、ここで休憩をする、その間にひとつ内閣の統一見解を協議してやっていただく、そのように、委員長お取り計らいを願います。
  156. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの田中武夫君の動議のとおり休憩をいたしまして、一時再開をすることにいたしますが、ただいまの質疑に対しまして、内閣の統一見解を一時までにどうぞお願いをいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ――――◇―――――    午後一時開議
  157. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  岡田君の質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  158. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほどの統一見解を、政府のほうできまっているはずでございますので、お願いいたします。
  159. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、河本通産大臣から、先ほどの発言について、政府の統一見解を発表いたします。河本君。
  160. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 懸案の問題につきまして御答弁を申し上げますが、韓国は三原則に該当するものとは考えていない。外国為替及び外国貿易管理法第四十八条第二項の「外国貿易及び国民経済の健全な発展」をはかる見地から、従来も承認をした例はありませんし、今後も承認するつもりはありません。
  161. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは最後に、統一見解について総理大臣に伺っておきたいと思いますが、少なくとも三木内閣が続く限り、先ほども御答弁のあったように、統一見解にもあるように、韓国には武器の輸出は行なわない、このように理解して間違いございませんか。
  162. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 さように御理解願ってけっこうでございます。
  163. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題については、実はまだいろいろ伺いたい点があるわけであります。しかし、ほかの問題に入らなければならない関係もありまして、これ以上の点は、別の委員会においていたしたいと思いますので、留保いたします。  続いて、外交問題の若干の点を御質問いたして、次に入りたいのでございますが、宮澤外務大臣は来月訪ソされる、こういうことがすでに国会答弁にも参議院において行なわれました。そこで、総理大臣の施政方針演説を見ますと、日ソ平和条約を締結するために努力するという意味のことがありますが、これはどういうわけかわかりませんが、北方領土の問題については一言も書いてない。北方領土の問題は国民の悲願でございますだけに、北方領土については、これは放棄をされるみたいな、書いてないだけに、理解はいろいろあるわけでございますが、北方領土の問題についての努力をされるわけだと、私はもちろん考えておりますけれども、この際、この機会に明確にしておいていただきたい。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の田中総理大臣が訪ソされまして、日ソ首脳の会談がございました結果、日ソ間にはただいま第二次大戦終了後未解決の問題がいろいろあって、そのおもなものはむろん領土問題でございますが、そういうことを解決するために平和条約を締結する交渉を行なおうという合意がございました。それで、できれば一九七四年中にということであったわけでございますけれども、政変などがございまして、したがって、私としてはできるだけ早く訪ソをいたしまして、平和条約の第一回の話し合いに入りたいと考えておりますが、ただいまのところ、まだ日程のすり合わせが終了しておりませんので、できるだけ一月に参れますことをただいま希望しておるわけでございます。  そのような平和条約交渉の最大の問題は、もとより御指摘の北方領土問題でございまして、この問題が私どもの満足する形で解決いたしません限り、平和条約というものは締結できない、それが最大の前提であり要件である、かように考えておるわけであります。
  165. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一点、外務大臣に伺いますが、ソ連におけるアジア集団安全保障構想なるものがありますが、この前提としても、領土の画定なしにはこの問題は解決できないと思いますが、この点はいかがですか。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さように考えております。
  167. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まだ、ソ連との問題についてはいろいろ質問もあるのですが、あと経済問題がありますので、はしょってまいりたいと思います。  その前に、日本の国連外交について若干伺いたい。  国際協調と、総理は再三おっしゃるけれども、今日の日本の国連外交はまことに一貫性がない。これでは世界の各国の信頼を得ることは絶対にできないと思います。そういう点で幾つかの資料を実は私持っているのでありますが、これも幾つかはしょりまして、重要な点だけを申し上げたい。  第一点。十一月の二十七日に、御存じのように国連でカンボジアの代表権の採決が行なわれました。総理大臣も御存じのように、これは賛成五十六、反対五十四、棄権二十四ということで、からくもロン・ノル政権なるものの支持が成立をした。この二票の勝利ということには、日本が非常に猛烈な活動をしてこれを成立さしたといわれています。実は、たいへん遺憾なことですが、このときに、私、これはあまりはっきり言えないことが残念なんですけれども、日本の代表がロビーにおいて買収活動をやったという話が定説になっております。相手の国を私は知っております。しかし、これは国際的な名誉に関することですから、私は国の名前を申し上げることはできません。そしてこういう金品の買収によって棄権をさして、これを成立さしたといわれております。これでは、田中金脈どころか、金脈問題は国連の舞台にまで及んでいるといわざるを得ないじゃありませんか。こういう買収行為までをやるという、これはもう国連のロビーストの中では定説であります。こういう問題は、清潔を旨とされる総理大臣であるならば、徹底的に調査して究明しなくてはいかぬと思う。こういう事実は御存じかどうか知りませんけれども、この点については、国際的信用の問題でございますので、総理大臣から明確な御答弁をいただきたいと思います。
  168. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国連外交に対する三木内閣基本的な考え方を簡単に申し上げておきたいと思います。  どうも国連外交というものは、従来、東西関係というものが中心であったわけであります。ところが最近は、やはり南北問題に移ってきておる。国連百三十八カ国の加盟の中においても、二十四カ国が先進工業国で、百五カ国はやはり発展途上国ですから、しかも問題はその先進工業国と発展途上国の考え方が非常に根本的に違いがある。だから、これからは国連の場でいわゆる南北が相互の理解を増進して、共通の認識をどうして持つか。エネルギーあるいは食糧、人口、すべて南北問題というものに根底があるわけですから、そういう意味において、われわれは今後、国連の重点が移ってきた。すなわち、この南北問題が調整されなければ、世界平和を維持するという国連の目的は達成できない、したがって南北問題というものの関係を調整するということに国連外交は重点を置くということが基本方針でございます。  具体的な問題については、私存じておりませんので、外務大臣からお答えをいたします。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 カンボジアの問題につきましてわが国が非常な外交努力をいたしましたことは御指摘のとおりでございますが、ただいまの後段に御指摘のようなことは、私ども一切聞いておりませんし、また考えられないことでございます。  ただ、こういう公の席上で御指摘がございましたので、恐縮でございますが、後刻でも、どのようなことでありましたか御教示をいただければ、それに従いまして直ちに調べたいと存じます。
  170. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私に御教示とおっしゃいますけれども、あなたのほうで国連代表部をお調べになればわかることであります。しかも外務省に報償費というものもあるわけですから。そういう点で私も協力することにやぶさかではありません。しかしそういう事実がもはや定説になっておりますから。これは私は、ある外国の、ヨーロッパ系の記者に聞いているわけです。これは定説ですよ、あなた知らないのですかとまで言われたのですから。こんな金権問題を国連の舞台でまで日本がやるなどということは、絶対に許すべきことではない。  それからもう一つ、国連問題で伺いますが、十月の二十四日に、国連総会を記念して、国連の本会議場において日本の小沢征爾氏が指揮するコンサートを行なった。国連本会議の議場でコンサートをやったときに、いわば日本デーみたいな観を呈して、外国の元首ほか二千名の人が集まって、たいへんな盛況でありました。これに対して約一億円のお金がかかっております。これに対して国連が出したお金は四百五十万円。日本の外務省が出したのは国際交流基金から三千二百万円。ところが、残余約七千万円、これは結局どこから出したか。日本デーとしてこれはたいへん評判であっただけに――実はこの前、これについては外務省で調べているのですが、わからない、こういうお話です。これはその後お調べになって、どこから出ているか、外務省の担当局は調べていると思うが、お答えをいただきたい。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐縮でございますが、すぐに調べまして、後刻お答えを申し上げます。
  172. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも私は、大臣の場合は、まだなったばかりですから、おわかりにならないことも相当あろうと思うけれども、この政局の動揺の中で、各役所の部局は非常にたるんでいるのじゃないかと思うのです。こういう問題を前から言ってあるのに調べてない。話にならないです。総理大臣、少し厳重なあれをしてもらいたいと思う。これはやはり民主主義を軽視する傾向としてあらわれてきているのだと思う。  そこで私のほうで言いましょう。残りの七千万円は、問題の糸山英太郎氏のおじさんの笹川良一さんが出している。お調べください。その証拠に、いいですか、日本デーといわれたこの国連総会のコンサートに配付された音楽のプログラムがある。そのプログラムを私はここに持っている。これをなぜ持っているかというと、アメリカの私の友人から送ってきた。あまりにもひどいではないかと言ってきた。見てごらんなさい、総理大臣。最初のところに笹川良一さんが出ている。そしてその次に、ごらんください、田中総理大臣、木村外務大臣が出ている。いいですか。そして私のアメリカの友人はいわく、これは日本デーではありませんね、笹川デーですね、こう書いている。こういうことを一体外務省が許していいのですか。いかにコンサートとはいいながら、国連の本会議の議場で、各国の音楽、各国一回ずつやるのですが、まだ四回か五回しかやってない。日本がその際にやるときに、笹川さんが一番先に出ているような、こういうプログラムを配付しているということは、総理大臣、これはどうですか。国連外交として適当ですか。私は実は驚きました。またアメリカの友人に対しても、私たいへん恥ずかしいと思いました。日本が一億の金を出せないのですか。そしてこういうことをやらしていいんですか。総理大臣、この点については国際信用の問題ですから、ひとつ明確にしていただきたいと思う。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのコンサートはどのような性格のものでございましたか、あるいはこれが配られました唯一のプログラムであったかどうかというような事実関係を調査いたしまして、後刻お答えを申し上げます。
  174. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう事務的な答弁では、国際信用は明らかになりません。やはり三木さん、こういうことはやめるべきですが、これは総理大臣からも見解を伺っておきたい。事実関係よりも何よりも、現実にそうなんですから、基本的な、道義的な問題としてやってください。
  175. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは私も初めて拝見をしたのですけれども、この内閣は従来の惰性を断ち切っていこうという決意のもとに出発をいたしたわけでございますから、官庁に対しても、その内閣の精神を体して、そうしていやしくも世の疑惑を招くようなことのないように、十分注意をいたします。
  176. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まだ、いまの御答弁では私は納得いたしませんけれども、続いて私伺ってまいります。  これは通産省だと思いますが、原子力委員会でもけっこうです。政府が決定した原子力発電計画によりますと、昭和六十年に原子力発電量は六千万キロワット。それに必要なウラン鉱、原石ですね。原石は、昨年末までにすでに八〇%の手当てができている。それはすべて日本の電気事業者と海外生産者との間で、長期、短期の購入契約が結ばれている。  そこで、これも通産省に調べるように先に言ってありますが、今度は御答弁できると思いますけれども、南アフリカ共和国との購入契約数量、特にその中で、きょうの新聞にも問題になっているナミビア、そのナミビア産出のウラン鉱の購入契約数量は幾らになっておりますか。しかもそれは輸出されておりますか、どうでございますか。
  177. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 エネルギー庁長官から答弁をさせます。
  178. 増田実

    ○増田政府委員 お答え申し上げます。  日本の原子力発電に必要なウランの確保ということにつきましては、長期な見通しを持って各国との間の契約を進めておるわけでございますが、これにつきましては、各電力会社が各国のウラン鉱石につきましての一応手当てをしておる、こういうことでございます。私どものほうには、これは実際に輸入のときの許可申請で出てきておりますので、まだ正式には連絡を受けておりませんが、私どもが調べて知っておる範囲では、南アフリカからの輸入量、これは来年から昭和六十年度までの約十年間の長期契約でございますが、南アから入れる予定にしておりますのが大体二万トンということになっています。それからいま御指摘になりました南西アフリカの分につきまして、私どもが情報として聞いておりますのは、大体八千二百トン、こういうことになっております。
  179. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまエネルギー庁長官答弁では、情報として聞いておりますと、こういうお話ですが、こういう「鉱山」という雑誌がありますが、この「鉱山」の中で、エネルギー庁の原子力産業室の青木信也という人がはっきり書いております。八千二百トン、ナミビアから輸入する――南西アフリカということばをあなたは使われましたが、これは御注意ください。お取り消しください。国連ではナミビアということに統一しておりますから。ナミビアから八千二百トン買っているのですが、しかしこの購入契約をしましても、その契約は無効であります。それから、たとえばこれを契約したことによって損害賠償をさせられることもあるかもしれません。なぜならば、これは国連決議違反だからであります。エネルギー庁として知っていますか。これは国連決議の違反であるという事実に基づいて買ったのですか。
  180. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生のおっしゃられましたナミビア、先ほどの発言は訂正いたします。  これにつきましては、八千二百トンの契約があるということでございますが、国連決議との関係について申し上げますと、国連決議では、このナミビアにつきまして、いろいろ御存じのような問題がありまして、現在南アフリカ政府がこれを統治いたしておるわけでございますが、それとのことで、直接の援助あるいは海外投資、これは国連決議でやらないということになっております。  ただいま問題になっておりますウラン鉱石の輸入につきましては、これは援助、投資でございませんで、通常の貿易ということで、国連決議には違反しない、こういうように私どもは解釈しております。
  181. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、もう少しこっちのほうへすわってください。  あなたは決議をそういうように理解しておりますと言うが、何に基づいておっしゃっているのですか。ここにいま配付した資料がありますが、それをごらんください。ことしきまった国連決議の中で、(1)の二枚目に、いいですか、あなたのおっしゃるように、「天然資源を探したり、試掘したり、踏査したり、入手したり、採取したり、採掘したり、加工処理したり、精製したり、使用したり、売ったり、輸出したり」――一般商契約も全部含むのですよ。「分配したりしてはならない」、こうまでなっているのですよ。これでも国連決議違反ではないわけですか。しかも(5)のほうをごらんください。天然資源を輸送する場合の車両、船舶、コンテナを含んで、これらのものは、その事実があれば没収する、収納する、こうまでなっているのですよ。そして六番目では、二行目に「損害賠償の責任を問われることがあり得る、」こうまでなっているのですよ。それなのに、国連決議違反ではないと、あなたおっしゃるのですか。いかがです。
  182. 増田実

    ○増田政府委員 この国連決議につきましては、いま先生のお示しは私初めて見ましたので、この決議に基づきましてやはり判断しなければならない、こういうふうに思います。ただ現実に申し上げたいのは、このナミビアからのウラン鉱石の輸入につきましては、これは将来輸入申請が出てくるわけでございまして、現在のところは、通産省との間には正式には何ら手続は行なわれておらない、こういうことでございます。
  183. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた知らないで国連決議違反ではないとおっしゃったのは取り消しますね。はっきりしてください。
  184. 増田実

    ○増田政府委員 私の知識が不十分でございまして、このとおりでございましたら、これは先ほどの発言は取り消しいたします。
  185. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃもう一度念のために伺っておきますが、この条約は何も私がつくったのじゃないんだ。原文もあります、ここに。お見せしましょう。原文もありますから。これもありますが、これは国連で正式にきまった決議ですよ。法律ですよ、しかも。あなたはさっきからだいぶ認識が違う。ナミビアというのは独立するまで国連が直接管理をすることになっている。国連が直接管理する場合の法律、法令はナミビア理事会で全部きめる。これに反しておるということなんです。その法律というのがこれなんです。この法律を現実とするならば違反ですね。これは間違いありませんね。これははっきりしてください。
  186. 増田実

    ○増田政府委員 この問題につきまして、私もいま初めてこれ見ましたわけでございますので、よく外務省と内容をあれいたしまして、これを検討いたしたいと思います。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国連局、だれか来ていますね。局長おりますか。どこにおります。これ、どうなんですか。国連局でこういうことは全部知っているはずだ。それなのに、いまのエネルギー長官の話はもう全くでたらめな話じゃありませんか。明らかにこれは違反だとなっているのに。外務省の見解はどうなんですか。
  188. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のありましたナミビア理事会の公布しました天然資源に関する布告の件でございますが、この布告の性格は、安保理における決定のような法的拘束力は持たないと解しております。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国連局長ともあろう人がひどいことを言いますね。いいですか。ナミビア理事会設立の決議に基づいて、これは外務省で出した資料ですよ、ここにあります。いいですか。外務省の「主要国際機関の概要」、この中にナミビア理事会の権限、権能が全部書いてある。これは特にナミビア理事会設立決議二二四八、これによると、(a)(b)があって、(b)には「普通選挙により立法議会が設置されるまで同地域施政に必要な法律、命令及び行政規則を制定する等の権限を委託し」云々、こうなっている。これは実行することはナミビア理事会で法律で全部やることになっている。安保理事会のように拘束いたしませんといったら、国連ではナミビア理事会はどういうことをやるのですか。いまの国連局長答弁、国際的な問題としても非常に重大なので、いまのをお取り消しになるなら、いまお取り消しになってもいいし、取り消さないで、あくまでもそうだとおっしやるなら、それでもいいですよ。これは問題にしましょう。国際的にも問題にしましょう。いいですか、国連局長、こうまできまっているのですよ。これに書いてありますよ、外務省の資料に。だめですよ。これじゃ話になりませんよ。
  190. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 ただいま申し上げましたとおり、ナミビア理事会の出しました布告の性格については、安保理事会の決定のごとき法的拘束力を持っておりません。そういうふうに解釈いたしております。
  191. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どういうことなんです。
  192. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっともう少しよくわかるようにはっきり……。   〔私語する者あり〕
  193. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお静かに願います。
  194. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 ナミビア理事会の出しました布告は、安全保障理事会の決定のごとき法的拘束力は持たないものと解しております。
  195. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはどういうことですか。私にはわからない、あなたの御答弁が。ここにはっきり書いてあるじゃありませんか。あなた、外務省の中で――安保理事会と同じだなんて、私、言ってませんよ。法律的な効果を持っているということは事実じゃありませんか。法律的な効果もないのですか。ないのならないとおっしゃってください。法律効果がないのなら、ないから何をやってもいいのだ、こういう理解になるのだろうと思いますが、法律的効果はないのですね、それでは。大臣これをはっきり……。局長じゃだめです。
  196. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 鈴木国連局長、ちょっと大臣と打ち合わせてみてください。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 局長の申し上げた申し上げ方が、必ずしも適当でなかったように思います。申し上げたかったことは、この決議を強制する強制力というものはないという意味で申し上げたかったそうでありまして、拘束力と強制力とはおのずから違いますので、そういう意味で、この決議はやはり拘束されると考えるべきものと思います。
  198. 岡田春夫

    岡田(春)委員 拘束されるとするならば、大臣、先ほどの契約は民間契約かもしれませんが、その民間契約はこの法律の拘束に基づいて、認めることはできない、当然そういうことになってくると思いますが、そうでございましょう。
  199. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この決議が拘束力を持つに至りまして以後なされますそのような契約については、わが国の国連協力というたてまえから申しますと、そのような契約が成立することは好ましいことではないと考えます。先ほどエネルギー庁長官が申し上げたとおりと思います。
  200. 岡田春夫

    岡田(春)委員 好ましいことということではなくて、これは違反ですよ。拘束力に反するのだから違反じゃありませんか。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政治的に考えますと、国連に協力をするという政府基本の方針がございますから、したがって民間のそのような契約も政府の方針に協力をしてもらうべきだ、もらいたい、こういう考えでございます。
  202. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題ばかりやっていると経済問題に入れないものですから、これも実は留保いたします。というのは、民間の協力云々とおっしゃいましても、この民間契約はこれに基づいて無効です。損害の賠償を問われることもあります。そればかりじゃない。これはなぜ私が重要に言っているかというと、総理大臣、人種差別問題なんです。アパルトヘイトの問題なんです。アパルトヘイトの立場からいって、こういうものを認めさしてはいけないのです。それは国連協力の、国連中心の外交ということならば、こういうことは認めさしてはいけません。総理大臣、いいですね、認めさせないと御答弁ください。
  203. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、先ほどエネルギー庁長官答弁をしておられますし、私も申し上げておることでございますが、つまり国連で一つの決議が成立したというときに、わが国が国連協力立場からそれに協力をする、これは当然でございますけれども、それがすぐに法律的に違反であるとおっしゃいますためには、それを履行するための国内的な法律措置がどうなっているかというようなことを実は議論をいたさなければなりません。しかし、そこまで申し上げることは私どもの本意でないので、やはりそういう決議は、国としても、またわが国の民間においても、尊重をしてもらいたい、行政の問題としてそういうふうにあってほしい、あるべきだと考えておるわけでございます。
  204. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私これで終わって、経済問題に入りたいのですが、一言だけ意見を申し上げて次へ入ります。  ここに国連に対する正式なナミビア理事会の報告書があるのです。この報告書には、調査団が日本に参りまして、当時の木村外務大臣に会見をして、この問題もはっきりさしている問題です。だから宮澤さん、いまになってそういうことは通用しないのです。だから、これはやっぱり認めないとはっきりおっしゃらないと、三木内閣の姿勢の問題にかかわるのです。総理大臣、はっきり御答弁を。一言でいいです。
  205. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ個々のケースにはいろいろの問題があるんでしょうが、方針として、国連決議に従って今後は処理するということです。
  206. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃわかりました。  まだ幾つかの点もありますが、続いて第三の柱、インフレ不況の諸問題と社会的不公正の問題、この点でもいろいろ伺いたい点もございますが、時間がなくなってまいりましたので、残余は小林委員からまた御質問をいただくことになっています。  まず第一は、これは福田総理に伺いたいんですが、四十九年の経済見通しを、実質成長マイナス一%ないし二%、その場合のことしの物価上昇を年平均二二%と見る。それで来年度の経済見通しについては、福田長官の記者会見では、経済成長率大体五%、その場合における物価の上昇は大体どれぐらいに見ておられるか、その点が一つ。  第二点は、こういう安定成長方式に切りかえられた場合に、当然高度成長政策の産物であるべきものは、やはりここですべて白紙に返して洗い直してみる必要がある。そういう意味では、新全総、経済社会基本計画をもう一度洗い直す、根本的に再検討する、こういうことが必要じゃないかと私は思うのですが、この点はいかがでございますか。
  207. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず昭和五十年度の成長率でございますが、まだきめておりません。ただ、いずれにいたしましてもこの物価、これは年間の上昇率を消費者物価としてはまあ一けた台にしたい。(岡田(春)委員「五十年ですか」と呼ぶ)そう、五十年。そういう念願を持っておるわけです。そのための作業をしておる、かように御了承を願います。  それから高度成長時代の諸計画、基本となる諸計画、経済社会発展計画、新全総、これらは根本的に、全面的に洗い直す、そういうふうにはっきり考えております。
  208. 岡田春夫

    岡田(春)委員 全面的に洗い直すという御答弁ですが、そこで関連をして出てまいります、きょうも新聞紙面で問題になっておりますが、公共料金の問題。これについては、福田総理と大平大蔵大臣、このお二人に、公共料金の今後の見通しについて御意見を伺いたい。
  209. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 結論を言いますと、二人の間に意見の相違はありません。予算の編成の過程で最終的にはきめる、こういうことでございます。で、財政論としますと、公共料金といえども、人件費が上がった、あるいは諸物価が上がったというのに伴いましてこれを改定する、こういう議論が出てくるわけです。ただ、いま物価が非常にデリケートな段階です。これは、国民が非常な待望をしておる、この物価問題に取り組む、この基本姿勢に立ちまして公共料金を考えるときに、財政論だけで言えるか、こういう考え方もまた出てくるのでありまして、その辺の意見調整をいたしまして、これを昭和五十年度予算編成の過程で最終的に結論を得たい、かように考えています。
  210. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、福田長官は二年間公共料金はストップするというお考え方を放棄された、こういうふうに理解してもいいわけですか。
  211. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま白紙で検討しておる。いままで新聞にいろいろ書いてあります。しかし、ああいうことにはとらわれないで白紙で検討し、予算編成の過程において結論を出す、こういう考え方で、二年間公共料金ストップということは、まだ私も言っておらないわけですから、それを放棄したとか放棄しないとかいう問題も起こらないわけであります。
  212. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、そういうことは言っておらないのなら、まあそれでいいですが、それじゃ、公共料金は五十年度においても上げるという可能性があるというように理解していいんですね。
  213. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その辺が非常にむずかしいところなんです。財政論から言いますと、どうも上げなければならぬ。これを上げないでおきますと、そのきしみ、しこりというものがあとに長く残る、そういう問題があるんです。しかし物価が非常にデリケートな重大な段階です。その際に、あの料金もこの料金も上げますということにした場合に、それが物価対策としてどうだ、こういう問題もあるんです。その辺を財政的にどういうふうに詰め得るか、その辺はつぶさにいま検討しておる。そうして、予算編成の過程において最終的な結論を得る。私の気持ちとしては、物価問題のほうを非常に心配しておる、かように御理解願います。
  214. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国民の感じは、こういう感じなんですよ。四十九年度の三月の末までは公共料金は上げないだろう、五十年度になったら、公共料金を四月以降ざあっと軒並みに上げてくる。四月でないかもしれませんよ。しかし物価の問題は国民にとっては一番大きな問題ですからね。そういう感じを持っているという状態の中で、もしあなたが二年ということを言ったことがないにしても、少なくとも来年一年、五十年度一年間は上げませんと、こういうことを言うならば、いやあ救われたという感じがする。その点は福田さん、物価担当の長官ならば、私は上げませんと、副総理ならば、大平大蔵大臣とも相談して上げないようにしますと、一言言ったらどうですか。
  215. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が、新聞にあの料金も上がります、この料金も上がりますというふうに書いてある、そういう際に、白紙で検討いたしますと、こういうふうに言っているんです。それで私の気持ちはよく御理解いただけるんじゃないかと思うのですが、いずれにいたしましても、物価問題は非常に重大な問題である。これに取り組むことば三木内閣の最大の課題である、そういうふうに考えております。しかし、さらばといって、今日のこの段階では、公共料金を全部ここでストップしますとも言い切れない。と申しますのは、財政当局ともよく相談しなければならぬ。私は前の大蔵大臣として、財政の事情、非常に窮迫しておる、これもよくわかっておりますから、大平大蔵大臣の御理解も得て、何とかしてこの物価問題を国民の期待する方向で処理したい、こういうふうに考えております。
  216. 岡田春夫

    岡田(春)委員 白紙で考えるということだから私の腹をわかってくれと言われても、わからないですよ。そんなことはわからない。白紙というのはどっちともつかないのだから。  しかも、私ここで言いたいのは、五十年度の物価の上昇率は一けたにしたい。その場合に、公共料金を上げたら、一けたなんかで終わるもんですか。これははっきり申し上げておきますよ。  しかしこの問題ばかりにかかわっていけませんので、続いて入りますけれども、少なくとも、それでは公共料金は一年間塩づけにするぐらいのお考えでない限りは、物価は一けた台に押えるわけにまいりません。これだけははっきり申し上げておきます。  そこで、予算の問題で三木総理は、特に社会的不公正の是正、インフレの対策を盛んに言っておられる。しかし、アドバルーンだけ上げて、具体的な政策がなくちゃ話になりません。しかもいままでいろいろ言われている問題は、五十年度の予算の中の問題です。いま福田さんのおっしゃったとおり。ところが国民にとっては問題は何か。インフレのことしの年の瀬をどうして過ごすかという問題なんです。この問題をどうするのだという問題です。それなのに、この補正予算を見てごらんなさい。インフレ問題に対する、インフレ被害を救済する政策は、予算としてはほとんどないじゃありませんか。あなたの内閣は来年の四月から行政を発足するのじゃないんですから、この十二月から三月までの、国民がこのインフレの年の瀬を越す問題をどう解決するかという問題は、補正予算の中に組まれなければならない。これを組んでない。この点について、大蔵大臣、一体どういうようになさるのですか、この年の瀬を越すためのインフレ対策は。
  217. 大平正芳

    ○大平国務大臣 補正予算につきましては、提案の理由にも申し上げましたとおり、緊要にしてやむを得ないものだけに限ってお願いをいたしてあるわけでございます。  インフレ対策といたしまして、最小限度必要なものは本予算に計上いたしてありますけれども、しかし、その後、御案内のように米価が上がりました等の都合もございまして、生活保護世帯等に対する措置は、六月にも十月にもさしていただいておるわけでございまして、今日の物価高の状況に応じまして、その犠牲になられておる恵まれない方々に対する処置は、政府としては必要最小限度のことはいたしておるつもりでございますので、補正予算また本予算に計上されました予備費の使用等、全体を通じて御判断をいただきたいと思います。
  218. 岡田春夫

    岡田(春)委員 本予算というのは当初予算のことだと思いますが、あれで足りないから補正予算を組んでいるのであって、物価のその後における上昇に見合った補正を組まなければならないわけであります。  そこで、社会党の方針を含めて、具体的なことを提案し、かつ御質問したいと思うが、まず第一に税金の問題です。  国税庁の発表によると、税金の年末調整では、従来は御承知のように税金の幾らかお返しがあったわけです。ところが、ことしの場合には、年収三百万の標準世帯の場合には、年末調整では、お返しではなくて、逆に一万三千四百円を追徴することになっている。この物価高の中で、税金をあらためて追加して取られるという、こういう状態です。これではあまりにもひどいではありませんか。こういう点については特別の措置を講ずる必要がある。私たち社会党としては、源泉徴収を受ける人々、これは源泉徴収ですから逃げようがないのですから。その人の場合でも、特に、年収四百万以下の所得税を払っている人、この人に対して三万円の減税を行なってはどうか。  この三万円の減税の財源並びにその総額を調べてみました。大体三万円をこの対象にしてやるならば、減税総額は六千八百億円である。この六千八百億円というものは税の自然増収で当然まかない得ると思う。いいですか、ことしのこの補正予算の中では、税の自然増収は一兆六千百二十億円見込んでおります。しかし、ことしの自然増収というのは一兆六千百二十億なんかじゃありません。おそらく二兆四千億円に達するでしょう。なぜならば、経済不況ではあるけれども、一方において物価が上がる、給与が上がる、そういう中で、税の自然増収は当然多く見積もるべきであります。私はその実績を調べてみました。昨年、四十八年の場合には、第一次補正後において、決算剰余額、これは七千七百八十九億円であります。四十七年の場合には六千三百九十六億円が決算剰余額であります。  こうすると、税金の自然増収というのは、一兆六千億円なんということはありません。まだまだふえます。これを引き当てにして、年末調整で税金をもっと取られるなんという気の毒な人々、所得税を払っていてもわりあいに貧しい状態にある人々のための三万円減税をやれないわけはない。六千八百億円の財源はここにはっきりあるじゃありませんか。こういう点について、政府は思い切った措置をここでお考えになったらどうですか。そういう点についての御意見を伺いたい。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 所得のあるところから税金をちょうだいしなければならないわけでございます。所得がふえますと、税制がそのままである限りにおきまして、税金がふえるのは当然なのでございます。ことしの場合、おかげさまでたいへん大幅の所得税減税が実行されましたことは、岡田さんも御案内のとおりでございまして、この改正税法の施行によりまして、物価高以上の課税最低限の引き上げが実行されておりますことも、あなた御案内のとおりでございます。それからまた、春には大きなベアがございまして、これによって名目所得の非常な増加がありました以上、それに応じて税金がふえてまいるのは当然なのでございまして、その場合、そのふえた税金を所得から引きまして、可処分所得がどれだけ手元に残るかということも御計算いただきますと、相当大幅な可処分所得が手元に残ることになるわけでございますので、私は、あなたが言われるように、年末調整ではき出す部分があるから、特にこの際特別の措置を講じなければならぬとは考えません。  それから第二の問題でございますが、ことしの自然増収の見積もりが過小ではないか、自分が見るところ六千億や七千億は優に読めるのではないかというあなたの御見解でございます。私はそう見ていないわけでございます。今日一兆六千二百億の税収の増を計上させていただいたわけでございまして、これには、われわれが持っておりまする専門家の推定を信頼いたしまして、計上させていただいたわけでございます。しかし、私から見ましても、なるほどあなたが御指摘のように、所得税におきましては相当大幅の増収が見込まれると思いますが、法人税は、御案内のように景気の状況たいへんさえない状況でございまするし、また、所得税、法人税以外の税目の税収を見ておりましても、伸び悩みあるいは予定どおりの収入が得られないような状況も勘案せざるを得ないわけでございまして、いま私どもが見積もっておるところに、相当サバを読んで過小の見積もりをしているという御判断でございますけれども、私どもはそういうふまじめなことはいたしていないつもりでございます。
  220. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、私がふまじめだ、こうおっしゃるのですか。そうじゃないんでしょう。そうじゃないんですね。
  221. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは岡田さんは岡田さんの御見解でございましょう。しかし私は、いま六千億、七千億も私自身が見積もるということはまじめさを欠く、私の立場からそういわざるを得ないと思います。
  222. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私のことじゃないと思うので進めますが、それじゃあなた、大平大蔵大臣、三月の末で見てみましょうじゃありませんか。何より証拠だ。私は二〇%ずつのアップというのを大体計算に置いてやっている。これはふまじめでないですよ。三月の末にどうなるか。そのときにもまだ大蔵大臣やっているはずですから、そのときにはっきりいたしましょう。  続いて、最も気の毒な人々に対する対策、生活保護者、老齢年金、障害年金受給者、母子世帯、交通遺児、その他一般低所得の人、税金も納めていない人々に対するあたたかい手を差し伸べる問題、これに対してどういう政策をとっていますか。  われわれ社会党としては、こういう人々は大体一千万ぐらいあるだろうと見ている。一千万に対して一時金で三万円を上げたらどうだ。三千億じゃないか。その三千億ぐらいの財源が出ないというはずはないだろう。具体的に言う。防衛費の中で発注をしてない分が残っている。軍艦――軍艦と言って悪ければ艦船でもいい。飛行機、戦車、この未発注分が十月末に二千二百四十六億円ある。公共事業費の来年度繰り越し分、これも予算削減をなさい。そうしたら四千億円は出ますよ。気の毒な人にこういうことをやろうじゃありませんか。社会党としてはこれをやろう、何も自民党だからこれはできませんということはないはずだ。これぐらいのことを、ほんとうに困っている気の毒な人々のためにお金を出すような措置を、この際考えてはどうですか。大蔵大臣どうですか。
  223. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、ことしの当初予算で、いまおあげになられた方々に対しまして二〇%の給付の引き上げをいたしておりますことは、岡田さんも御案内のとおりでございます。また、私が先ほど申しましたように、六月、十二月、二回におきましてさらに九%の引き上げをいたしまして、物価の高騰に伴う措置を講じてまいりました。  年末でございますけれども、年末は生活保護世帯に対しまして二千六百五十円、金額は決して大きいとは言えませんけれども、去年の二千円に比べましてこれを増額して支給する措置を講じたわけでございますので、いろいろこれでは不十分であるというお気持ちは私わかりますけれども、政府として、物価の上昇に見合いまして可能な限りの措置は講じてございますので、この際特別な措置をさらに上積みしてとる意思があるかどうかということを問われるならば、残念ながら、そういう気持ちはございませんとお答えせざるを得ないのであります。
  224. 岡田春夫

    岡田(春)委員 六百五十円上げたからそれでがまんしろなんて言われたって、国民は納得しません。三木内閣は血も涙もないといわざるを得ないじゃありませんか。一時金三万円ぐらいのお金が出せないはずはないのです。軍艦の契約をしてない分や飛行機の契約をしてない分をやめたらいいじゃありませんか。契約してないのですよ。  そればかりじゃありません。時間がありませんから言いますが、中小業者に対しても、年の瀬を越すためにどうしたらいいのか。これは予算を動かさなくてもやれる問題がある。税金の延納制度を考えてあげなさい。国税通則法の四十六条、法人税法の七十八条で延納制度を考えてあげるならば、中小業者はこの際は非常に救われるのです。こういう点は補正予算を動かさなくともやれます。こういう点御研究になって、思い切っておやりになるお考えはありますか、どうですか。
  225. 大平正芳

    ○大平国務大臣 六百五十円ふやしたから能事終われりと考えているわけでないことは、先ほど私が御答弁申し上げたように、全体としての措置を評価していただきたいと思うのであります。  それから、延納制度でございますけれども、税金が、今日のような不況の深刻化の際に、予定どおり納められない方々がおられることも事実でございまして、延滞納の処理につきましては、実態に即してケース・バイ・ケースで、税務当局側に考えておっていただいておるわけでございまして、制度として、延納制度を一般に取り上げて施行をするというつもりはありません。
  226. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう時間がありませんので、まとめますけれども、たとえば延納制度の場合の利子税の問題なんかありますね。利子をもう少し下げてあげる、こういうことなんかも、やはりほんとうにこまかいことまで、総理、ひとつ考える必要があると思うのです。こういうことを中小業者のためにもやってもらいたい。  もう一つ、ことしの倒産件数は一万五千だといわれておる。その多くは下請業者ですよ。この下請業者に対して、公正取引委員会では、下請代金支払遅延等防止法、これは公正取引委員会の担当ですが、この法律を発動して、この遅延問題について促進をさせることによって下請業者を救ってやる、こういうこともひとつ思い切ってやったらどうですか。これは公正取引委員会おりませんから、総理、思い切ってこういうことを考えます、ひとつそういう明快な答弁を聞かせてください。どうも全体として、具体的になると歯切れが悪いので、はっきり……。
  227. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、こういうインフレの進行下、総需用抑制政策は当分継続していかなければならぬ。そのしわ寄せの影響が、中小企業、ことに下請業者の弱い人々に行くことを非常に心配しておる。倒産の件数などを注目しておるわけですから。ことに、下請などに対する支払いの遅延に対する防止には、行政指導その他の方法で最善を尽くします。
  228. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国連デーのときの笹川良一氏の問題について、宮澤外務大臣から答弁をしたいというお話ですから、もう時間はないんですけれども、要点だけお話しください。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどお約束を申し上げましたので、お答えいたします。  このオーケストラ演奏は、わが国が関係したものではありませんで、国連と国際的指揮者としての小沢征爾氏との契約だそうでございます。小沢氏はこれに新日本フィルハーモニーと桐朋学園を率いてまいったわけでありますが、その際、国際交流基金に対して補助金の申請がございました。国際交流基金はこれに対しまして、新日本フィル及び桐朋学園に、合わせまして三千百万円の補助をいたしております。しかるべきことと思われます。当初の予算は六千万円でございましたが、その後この演奏楽団が欧州旅行した等の事情がございまして、実際の支出は九千万円かかった由であります。したがいまして、その三千万円について、小沢氏、新日本フィルなどが中心に、ただいま金を集めることに努力をしておる由でございます。  なお、笹川良一氏との関係でございますが、このプログラムを拝見いたしますと、最初にワルトハイム事務総長の新日本フィルに対する感謝の文書がございまして、その次に新日本フィルの名誉会長としての笹川氏が写真とともに文章を載せておる。こういう構成のようで、このプログラムはむろん政府がつくったものではございませんが、国連の了解を得て当日配付されたものと思われます。
  230. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間がありませんからあれしますが、笹川良一さんは、お金を出したことによって、これは総裁になったんですよ。日付を知っていますか。調べてありますよ。ことしの五月ですよ。お金を出す約束で総裁になったんですよ。しかもあなたは、日本は関係ありませんと言っておすましになれますか。日本デーとまでいわれた、外国の元首がたくさん集まった会合で、これは私の関係じゃありませんといって、笹川デーをやるなんというのは、われわれは納得できませんよ。なぜこれに対して外務省が金がないのですか。金は幾らでもあるじゃありませんか。カンボジア代表権についても使っているし、報償費はあるし、金権問題、幾らでもあるじゃないですか。そういう点からいっても、いまの御答弁では満足いたしません。  しかし、時間がありませんので、最後に総理、この際、税金問題についてもやはり抜本的に考えなくちゃいけない。そこでまた恵まれない人々に対する措置を考えなくちゃいけない。この点は先ほども、やりますというお話でしたから期待しておりますが、一時金の支給ぐらい考えたらどうですか。この気の毒な人。あなたがこの間記者会見の際に話されましたね。あなた、投書があって、おれはほんとうに気の毒に思ったのだという。そこまでお感じになったら、一人三万円の一時金ぐらい出してあげるお金がないわけじゃないのです、さっきから言っておるように。防衛費の契約分の未発注分をやったらいいじゃありませんか。そこまで思い切っておやりになるおつもりがあるのかどうか、この点もう一ぺん伺っておきたいと思います。
  231. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 五十年度の予算編成の時期でもございますし、やはり恵まれない人々のことについては、いままで申し上げたように、私もたいへんに心を痛めておるわけですから、方法論はいろいろございましょうが、できるだけのことをいたします、こういうことで、具体的には財政当局の意見もございます。したがって、内閣の姿勢として申し上げるということで、御理解を願いたいと思います。
  232. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わります。私まだいろいろ質問したい点がありますけれども、時間になりましたので終わりますが、三木さん、ひとつがんばってくださいよ。タカ派に囲まれてへなへなになるようなことでは困りますよ。だいじょうぶですか。
  233. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 だいじょうぶです。
  234. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しっかりやってください。いいことならば、野党だって支持するにやぶさかではないのです。しかし、タカ派の行動で右路線をどんどんとるのなら、絶対許しませんよ。この点ははっきりしておきますから。この点はほんとうに念を押しておきますから。いまや曲がりかどに私は立っておると思う。かつてのいわゆる満州事変以来のあのような危険を感じるだけに、あなたに強く要求しておきますから、最後に御感想でもあれば、一言伺って終わりにいたします。
  235. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 三木内閣が発足をいたしまして最初の論戦にあたって、実は三木内閣政治姿勢について触れなければならないことは、たいへん私も愉快なことではないと思うわけです。  実は三木内閣が組閣されるにあたりまして、河本敏夫氏をどのように処遇されるか注目しておったわけであります。しかし通産大臣に起用されました。重要なポストであります。私は、せっかくの三木内閣が新しい門出にあたって、飛行機は飛び立ったけれども、三木内閣のうしろには、ブラックターゲットのような、黒い標的のような形であなたは引きずっていかなければいけない。率直に私は言います。たいへん残念ですよ。それで、私は河本通産大臣にもちろん個人的な怨念はありません。しかし政治の姿勢を正すという意味で真相を解明したい、こういう点で、まず三木内閣政治姿勢から入ってまいりたいと思います。  私は、河本通産大臣の起用を見まして、やはりあなたもPPMにおかされておる。結局、PPMの数値がほかの領袖の方よりも少ないかもしれないという相対的な問題だけである。しかし、その数値が許容限度の中に入っておるかどうか、これはいまからお互い考えてみたいと思うのです。  そこで、昨年二月末、三月初めの予算委員会あるいは一般質問、予算分科会で、河本氏が社長をされております三光汽船の問題を取り上げたことは、三木総理も御承知のとおりであります。それで、三木総理総理の座につかれる前に、田中金脈の問題のときに、あなたはおっしゃったわけですよ。政治家というものは疑惑を持たれるだけでだめである。ということは、事実のいかんということは問われない、むしろ疑惑を持たれること自身が問題であるとあなたはおっしゃいました。そういう点から考えて、私は、河本通産大臣の起用について疑惑がありますので、そういう点をいまから明らかにしていきたいと思うわけです。  それで河本さんは、言うならば三木総理のグループの方でございますね。この関係、自分のグループの関係ぐらいを断ち得ずして、どうして自民党自体と財界の癒着を断ち切ることができますか、それを私は申し上げたいのです。そのくらいは出発にあたってお考えになっておったほうがよかったのではないか。くどいようですけれども、たいへん残念です。  そこで、それらの疑惑があるにもかかわらず、これはもう一般の常識ですが、なぜ河本さんを起用されたか。ほかに人はなかったのか。しかも重要なポストである通産大臣に起用されたか。なぜか。官房長官が組閣名簿を発表されるとき、そのときにすら、河本さんについては弁解をされました。総理も冒頭の記者会見でやっぱり弁解をせざるを得なかった。なぜ起用されたのですか、そのことを最初にお伺いをいたします。
  237. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政治家が疑惑を持たれるということに対して責任を感じなければならぬけれども、また政治家もその疑惑はやはり解明されなければならない。疑惑を持たれただけで――政治家はいろいろな疑惑を持たれることがあるでしょう。その疑惑に対して、その国民の疑惑を解明する権利をやはり持っているわけですから、疑惑だけで、いかない、こういうわけにはいかぬ。  それで、河本通産大臣を私が選任いたしましたのは、こういう理由がある。  私は、通産行政というものは非常に大きな曲がりかどに来ておる。これはやはり、実業界の経験というものが生かされなければ、日本のこの非常な難局、しかもその難局というものは日本だけで切り開いていくことはできない。そういう点で、河本君の長い間の国際経済における一つの実際的な経験というものを私は高く評価する。  もう一つは、海運の集約化のときに、河本君一人が国の助成を断わって、みずから今日の地位を開拓した。えてすれば日本の経済界が政府に依存したがる中で、彼一人が海運の集約化に対して、みずからの力で、政府の恩恵を得ずして、今日の事業の基礎を築かれたという、一つの独創的と申しますか、その素質というものは、私は高く評価するわけでございます。  また、河本君が今日相当の産をなしておることは事実でありますから、財界の政治献金を必要としない政治家である。一つも他人の資金によって政治をやらんならぬという、まあ献金が悪いというんじゃないけれども、そういう点は必要としない。それで私は、就任を彼に要請しますときに言ったわけです。これからの君の人生は政治家としての人生である、したがって実業家と二足のわらじをはくならばやめてもらいたい。だから、彼の持っておる株式に対しても、株式は凍結すべきである、株主権を行使してはいけない、株式は凍結する、そしてやはり君の通産大臣としての影響力が会社の経営の中に入らないようにしなければならぬ。彼はそういうことを承諾をして、そしてやってみようということで、私も、長い政治生活で、これは最後の国家に対しての御奉公でありますから、簡単に、私の同志であるからといって、重要なポストを提供するようなけちな考えは持っていない、こういう点は御了承を願いたいのでございます。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし、説明のできない、あるいは解明のできないような疑問点が残ったり、あるいは不当な商法のあり方等が明白になった場合は、いまのおことばでいくと、たとえ同志であっても、おやめさせになる決意があるかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  239. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは当然のことでございます。やはり国民の信頼につながらなければ政治はできぬというのが私の信念でございますから、そういうことに対しては、その場合に、私が一番適当と考える処置をいたすことは当然でございます。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっき、独特の商法で、国の援助を断わったような英断のある方だという称賛をなさいましたが、しかし、海運行政において集約化の方針というのは、自民党政府の方針じゃないんですか。その集約化の方針に抵抗される、あるいは反対をされて、独自の道を歩かれておる。それは、そのことだけでも、海運行政に対する閣内不統一ということにならないのですか。
  241. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、経済人としての河本氏が、やはり国の補助金ですからね、国民の税金ですからね、いわゆる海運の助成金をもらわないということは――もらわなければならぬということはないのですよ。できれば、国民の税金ですからね、国の助成はもらわないでひとつやってみようという態度というものが、あなたの言うように、大きな国の方針に反してけしからぬ経済人だとは、私は思っていないのです。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は集約化方針がいいと言っているんじゃないですよ。ただ、自民党政府は集約化方針で行ったんでしょう、海運政策は。運輸大臣、どうですか、違いますか。だから、そこはどうなのかということを聞いているのですよ。私は、その集約化方針がいいとは言っていませんよ。それはずいぶん批判がありますよ。しかし、自民党政府はその集約化方針を持っておるのですから、その国民の税金を補助に回すということが悪いのなら、集約化方針をやめたらいいんじゃないですか。どっちなんですか。
  243. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、やはり経済人として、三光汽船の社長として、自民党員といっても、それは社長としての地位を持っているわけですから、社長が、国の助成をもらわないでやってみようということはけしからぬ、おまえは国の方針に従っていないからけしからぬという非難を、私はしなくてもいいのではないか。経済人として、社長としての方針でやったんですからね。そのことが政治家としての道義というものを非常に問われることじゃないんじゃないか。国民から見れば、それでやれるならばみな海運界にやってもらったほうがいいんだけれども、国としてはそうはいかないということでああいう方針をきめたのだけれども、一会社の社長としてそういう営業方針をきめたことが、おまえは自民党員だからけしからぬ、国策の方向に反しているというふうには私は考えないんですが、楢崎さんは、それはけしからぬという立場かもしれませんが、私はそういうふうに思うんです。これはよく知りませんけれども。客観的に見れば、そういうふうに私は考えるのでございます。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 運輸大臣はいかがですか。
  245. 木村睦男

    ○木村国務大臣 お答えいたします。  海運の集約化は、海運企業の非常に弱い企業に対しまして、借り入れ金の返済あるいは償却の不足、こういうものを早く解消をして健全な経営に立ち直るために、開銀並びに市中銀行の利子のたな上げ等の措置を講じて、健全化をはかるということでやっておりますので、これは、海運企業でその必要のあるものについてはそれをやりますけれども、強制したりあるいは義務づけたりというふうな性質のものではございません。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど総理からお話のありました点は、実は非常に私は重大だと思っているんです。つまり、田中総理の場合も、自分政治家のほかに経済人としての活動をやっているということが、一つ問題になりましたね。経済人だけならいいんですよ、総理。いま大臣になられたけれども、国会に議席を置く議員としても、それは平議員であればいいという問題ではない。それは私どもの政党だって、小企業なり零細企業の社長もいます。だから、その辺の政治家としての立場経済活動というもののあり方は、これはお互い考えなければならぬところだと思います。しかし政治家で経済人の場合は、一般経済人とは違うモラルが要求される。それはどこに求められるか。わかりやすい点をいえば、政治的な地位を利用して経済活動をすることはよろしくない、あるいは政治的バック、圧力を利用してその利益をあげたりしちゃいけない、そんなことはすぐ出てくる課題です。だから問題はどこに限度があるか。政治家としてやる場合と経済人としてやる場合の区別はたいへんむずかしいと思うんですが、そこは私どもも考えなくちゃいかぬ。そういう立場で私は進めたいと思うんです。  そこで、河本通産大臣が非常に問題があると私は思う点は、田中総理はいわゆる幽霊会社を使って、そしてつまり土地ころがしをしながら土地の値を上げていって、その膨大な差益をあげた、これが一つの問題点であったわけです。ところが河本通産大臣の場合は、私は幽霊会社と言いたいのだけれども、三光汽船の子会社を使いながら、田中さんの場合は土地であったけれども、河本さんの場合は、今度は土地じゃなしに株、船、それをころがしながら利益をあげる、こういう点が非常に似通っておるんです。  まず、三光汽船と新光海運、かつての東光商船、瑞星海運との関係をお聞きしてみたいと思うのです。  現在、四月一日に、どういう理由か知りませんが、東光商船と瑞星海運は合併して瑞東海運になっておりますけれども、その以前の東光商船と瑞星海運、それから新光海運と三光汽船の関係について、河本通産大臣にお伺いをしたい。
  247. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど御指摘の両社の株は、三光汽船は株は持っておりませんが、新光海運からは数隻の船を用船し、瑞東海運からは二十隻ばかりの船を用船しております。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな簡単な仲じゃないでしょう。それらの子会社の役員を見てごらんなさい。全部関係があるじゃないですか、元三光汽船におった方。人的にもこれから明らかにしますけれども、資本の問題においても、株の持ち合いの点においても、たいへんなつながりがありますよ。そういういまの御答弁のような簡単なつながりじゃないんですよね。  そこで私は、まず、新光海運、それから瑞東海運がどういう会社であるか、私が調べた実態をここで明らかにしてみたいと思うのです。  新光海運は資本金四千五百万、それから東光商船は八億です。それから瑞星海運はやっぱり四千五百万。このくらいの資本の会社が、二百億、三百億の金を動かしておるのですね。だから相当りっぱな会社だろうと私は思ったんです。現地に行って調べてみたんです。いいですか。登記に載っております新光海運の住所には何もないし、いまあき地になっている。ところが調べていったら、何とまあ東光と瑞星が合併して瑞東になったんですが、今度はその瑞東があるはずの住所に行ってみたら、新光海運の表札がかかっているんですね。ここに写真があります。  そこで、この大阪の西区の住所でございますけれども、そこに宮本ビルというのがあって、見てみたら、入口に宮本ビル御案内というのがあって、五階のところに、新光海運株式会社とちゃんと表札がある。ところが、五階に上がっていってみたら、表札がどこの部屋にもないんです。そこで掃除婦のおばちゃんに聞いたら、いや、あそこの部屋ですよと言われる。のぞいてみたら女事務員の方が二人と男の方が一人、この会社が三光汽船の筆頭株主ですよ。財産でいったらどうなるんですかね。目の玉の飛び出るような財産を持っておることになっておるんですけどね。三光汽船の筆頭株主は五千五百四十六万株持っておられるんです。八・八%ですよ、三光汽船の株式総数の。そして十二月現在のその株を時価に換算してやると四百四十一億円になるんですよ。そして、海運会社でしょうけれども、株で一体何をやっておるのですか、これだけの株をかかえて。  それは大阪の営業所のようですけれども、登記簿にいま登記されておるところへ行ったら、これは姫路市なんですね。姫路市の新在家町にあるのですね。行ってみたらそこは二階建ての民家で、表札が戸田となっている。そこの主人は戸田須耐巳という方です。ところがこの人は、この問題の瑞東海運の役員をされておるわけです。いまこの方は、数年前に三光汽船から河本さんの事務所へ行かれて、後援会の責任者か何かをなさっていらっしゃるのじゃないですか。
  249. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 新光海運のほうにわずかの社員しかいないというお話でございますが、あるいは数名の社員かもわかりませんけれども、たとえばノルウェーなど、海運会社で五十隻も七十隻も船を動かしておるような会社でも、オーナーの場合は、自分が直接その船をオペレートするのではなくして、船を持っておるだけである、そういうふうな場合には、それだけの数がありましても、せいぜい数名の者が運用しておる、こういう例が非常に多いのです。そういうところにノルウェーの海運会社の競争力があるわけでございます。でありますから、数隻の船を持っておる、株を持っておる、そういう場合にやはり数人の者で運営をしておるというふうなことがありましても、私は、外国に比べてそれが特に少ないとか多いとか、そういうことは言えないのではないか、こう思います。  なお、戸田という人物についてのお話がございましたが、そのとおりでございます。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たいへんなつながりじゃありませんか。  イースタン・シッピング株式会社というのがありますが、それはどういう関係にありますか。
  251. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 取引関係はございますが、株式は持っておりません。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっき申し上げたとおり、この宮本ビルの五階に行くと表札はない。ところがまた一階におりてきて郵便物入れを見てみたら、郵便物入れに会社の名前が書いてあるのですね。そこに新光海運とイースタン・シッピングが一緒になっておるのですね。だから、とにかく私ども常識で考えて、こんな会社が四百億も持っておる会社であろうかとすぐ感ずるのですね。  それで、瑞東海運の事務所はどこにあるのですか。
  253. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 イースタン・シッピングの話が出ましたが、イースタン・シッピングの本社は東京でございまして、百名ほどの社員がおる、私はこういうふうに承知をしております。  瑞東海運の事務所は、先ほどお話しのところからやや南のほうにございます。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがわからなかったのですよ。  そこで、瑞東海運は三光汽船の株を二千六百九十三万株、三光汽船の全持ち株の四・三%、現在第三位の株主である。間違いありませんか。
  255. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 株数のことははっきり承知しておりませんが、大体その程度であろうと思います。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どれだけこういうえたいの知れない会社が株を持っておるか、もう少し資料で明確にいたしたいと思うのですが、私が昨年問題にしました、ジャパンラインの株をどんどん三光汽船が買われた、その時分の資料でいきますと、新光海運は長期借り入れ百六十八億、短期借り入れ十二億、計百八十億。有価証券勘定でいって、これはほとんど三光汽船の株ですが、六十七億四千万円になっています。それで、これを計算してみますと、ここもおかしいのですね。大体、資本金四千五百万円、株主が四人しかいない、こういう会社に、どこの銀行が百八十億円も貸すのですかね。そして今度は、有価証券勘定はさっき言ったとおり六十七億四千万円になっておるけれども、持ち株から計算しますと、三光汽船の株を四千百六十七万株持っておるから、低目に押えて、一株五百円とすると二百八億三千五百万円。ところが有価証券勘定のほうでは六十七億になっている。これも合わないのですね。全然わかりませんよ。どんなに計算しても合わない。非常にえたいの知れない会社である。  そこで、一体この新光海運が百八十億も借りておる借り入れ先はどこの銀行ですか、おわかりだったら明らかにしていただきたい。
  257. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 新光海運のことについてのお話でございますが、先ほども申し上げましたように、相当の船を数隻持っておるのです。たしか三万トン前後の船だったと思いますが、五、六ぱい持っておるはずです。  それから瑞東海運のほうは、これは三光汽船のほうが、先ほども申し上げましたように、約二十隻の船をそこから用船をしておるわけでございます。隻数ははっきりしておりませんが、そういう非常に密接な業務関係、取引関係はございます。そしてなお瑞東海運は、私は社員は六、七十名おると承知しております。そういう関係でございますが、ただ、その会社の内容等につきましては、詳細、私は存じておりません。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは三光汽船の筆頭株主ですが、長期、短期合わせて昨年の時点で百八十億、一体どこの銀行から借りておるか、ひとつ明白にしてお答えをいただきたいと思います。ここにも三光汽船から担保を提供されておるのじゃないですか。
  259. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 それはいま資料もございませんから、何とも申し上げかねます。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 三光汽船の有価証券報告書を見ますと、膨大な担保を提供されておりますよ、東光商船に対しても、新光海運に対しても、瑞星海運に対しても。ここにゼロックスでとったやつがありますよ。ですから、現在の時点における長期、短期の借り入れ金を明白にするということ、それから融資先を明白にすること、何が担保になっておるかということを明白にしてもらいたい。これは宿題として残しておきます。  それで、私はこの際、とにかくえたいの知れない会社ですから、新光海運、それから瑞東海運、この社長さんはどっちも佐々木治という方でしょう、参考人としてぜひ招致する機会を与えていただきたい。これは理事会で御検討いただきたいと思います。  次に、河本大臣自身の所得申告の問題についてお伺いをしたいと思うのです。  私が昨年質問をいたしました段階で、三光汽船の高瀬という方が私の部屋に来られて、四十六年度の所得申告について説明をされました。それをここで申し上げます。そして確認してください。  この高瀬という人はいまどういう立場にある人か。それで、四十六年度のあなたの所得申告についての説明は、高瀬氏によると、こうなっております。株買いの借り入れ金の利子が七千三百八十五万六千五百二十六円、配当利子が七千六百三十六万五百二十一円、結局、税法によって、この差額の二百五十万三千九百九十五円が申告配当所得になっておる。申告所得は二千六百八十八万六千八百九十二円、控除が九十二万円あって、結局四十六年度の確定所得は二千五百九十六万七千円、そう説明されたのです。間違いありませんか。
  261. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 先ほど楢崎君の要求のありました件につきましては、理事会で検討いたします。
  262. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私の過去の所得につきましては、ただいま正確な数字を記憶しておりません。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 高瀬氏はどういうお方ですか。
  264. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 当時は三光汽船の取締役で、企画室長であったと思います。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 企画室長があなたのことで来られました。そして四十六年度の河本大臣の申告所得の問題についてこう説明されたのですよ。自分は知らぬとおっしゃるから、これもはっきりしてください。残しておきます。  この高瀬氏の説明によりますと、逆算していくと、株買いの借り入れ金は七億六千三百六十万円になる。こまかいところはともかくとして、七億円の借金をあなたが株買いのためになさっていらっしゃる。間違いありませんね。
  266. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 若干の借り入れ金があったことは事実でありますが、その金額はいま記憶しておりません。
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、いまの申告所得の内訳から逆算していくと、だれが計算しても、こういうことになるのです。あなたは七億円借りておられる。この七億円は四十六年の時点ですから。有配が始まったのは四十二年度ですから、三光は。それで、四十二年から四十五年まで少しずつ銀行から借りていかれて、結局そのトータルが七億円になったのだと思うのですが、その借り入れ金の推移について、これも明らかにしてもらいたい。  それから、どこからその金を借りられたか、その保証人は一体だれか、担保は何か、借り入れ金の返済条件はどうなっておったか、これも明白にしていただきたい。  現在はその金は返されておりますか、どうでしょうか。
  268. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在はその当時の借り入れ金はありません。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それが四十七年度に出てくるわけですね。四十七年度の申告所得は、芦屋税務署の発表によると一億五百二十四万円。ところが、四十二年から四十六年までの五年間のあなたの申告所得、合計してみても七千八百九万円にしかならないのですよ。ところが四十七年度の申告所得は、一年だけで一億五百二十四万円です。たった一年間で五年間分の二倍になっておるのです。それはなぜか。わかるのです。つまりその借金を返されたから、株の配当所得は全部申告に出してこなければいけませんから、急にそうなったのだと思います。  そこで、いまの御答弁によっても、その借り入れ金を返済されたわけですから、その返済の原資は一体どうされたのでしょうか。河本さんの申告所得を見てみると、四十二年から四十七年まで六年間で、一億八千三百三十三万円しかないのですね。一億八千万円しかない。どうして七億の金が返せたのですか。何か株を売られたのですか。あるいは持っておる土地を売られたのですか。私が調べたところでは、株を売られた形跡はない、不動産を売られた形跡もない。どこから一体その原資が来たか、これも明白にしてください。以上、どうですか。
  270. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 過去数年間の所得が非常に少なくて、一挙に四十七年に所得がふえておるではないか、こういう御質問でございますが、御案内のように、わが国には、株式を借り入れ金で取得した場合には、配当金とその借り入れ金の利息が相殺される、そういう制度がございます。したがいまして、数年間は借り入れ金の利息に配当を充当しておったわけでございますが、その後資産を処分いたしまして、先ほど申し上げましたように、借り入れ金は返済をしたわけであります。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その原資はどうされたのですかと、いま聞いておるのです。その返済の原資は一体どうされたのですか。私の調査によると、株を売った形跡もないし、土地を売られた、不動産を売られた形跡もないが、一体その七億という金はどこから来たのでしょうか。
  272. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は資産を処分して返済をしたということを申し上げましたが、この問題につきましては、根本的にはこういう問題があるんですね。資産の公開をするかどうかという問題との関連がございまして、資産の公開をせよ、その資料を出せ、こういうふうなお話もあったわけでございますが、資産の公開等につきましては、いまどうしたらいいか検討しておりまして、まだ結論を私も出しておりません。いずれそういう問題との関連におきまして明らかになると思いますが、いまの段階では、資産の処分によって借り入れ金は返済をした、それだけ申し上げておきたいと思います。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはいずれ出てくる資料で明確になると思います。  そこで、三木総理大臣は、この河本通産大臣の銀行、金融機関からの借り入れについて、保証人になられたことがございますか。
  274. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は河本君の経済人の活動には、相談にあずかったこともなければ、保証もしたこともなければ、全然無関係でございます。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは念のために申し上げておきますが、芦屋税務署の署長は、この河本氏の株買い入れ金について、これは銀行から借りられておる、その保証人は自民党の有力者がなられておりますと、こう言っておるようでありますから、芦屋の税務署長さんにも、その点はっきりされたほうが、三木総理の名誉のためにもいいと思います。三木総理個人は清潔な方でしょうから、そう資産があるとも思えません。まあ土地と家は持たれておるようですが……。だから、あなたは保証力がないのですよ、幾ら実力者でも。(笑声)そうでしょう。おかしいですかね。銀行というのはコマーシャルベースでしか見ないですから、保証力がないから保証人になられるはずはない。もしなられておったら、その担保は何かというふうにまたこうなっていきますから、これは明白に御自身でなさったほうがいいと思います。  そこで、問題がどんどん宿題として残っているのは、委員長もおわかりのとおりだと思いますが、私はきのう……
  276. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、税務署長にこう言えという、そんな考えはありません。こうやってテレビを前にして、(「いま映っていない」と呼ぶ者あり)税務署長にまで私が交渉して、そういうことを言う考えはありません。こうやって国民の前に、経済人として私以上の知識を持っているのですから、私は一切の相談にもあずかったこともなければ、営業に何らの関係も持ったことはない、これを明らかにしておくだけで、私が税務署長まで申すことはお許しを願いたい。そういうことまですべきものじゃないと思います。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはいずれ資料が出てまいりますから、はっきりすると思います。  私は昨日、政府委員の方に、河本敏夫氏の申告所得及び関連事項、各年度にわたってこれを報告してください、その関連事項とは何か、四十二年から四十八年度まで各年度にわたっての申告所得、それからその所得の内訳、三番目に河本氏の持ち株数、これは期別に、四番目に株買い借り入れ金及びその手取り額、利息は幾らでということも含めて、五番目にその借り入れ先の金融機関、六番目にその借り入れ金の年間利息金、それから七番目に手取りの配当所得、最後に申告配当所得、これをこういう表でお渡ししておったのですが、間に合わないということでありました。これもひとつ早急に出していただきたい。たびたびの記者会見その他で、あなたは、国会質問されれば直ちにすべてを解明する自信があるとおっしゃったが、なかなか解明される自信がきょうはおありでないような感じがしますが、それは待ちますから、ひとつその資料を明白にしてもらいたい。  次に、私はこの点に触れて、大和銀行と三光汽船の関係について非常に疑義がありますから、お伺いをしてみたいと思うのです。  四十七年十月一日に、大和銀行は一対一の増資をやりました。増資額は二百四十億円。これはほかの銀行と比べて全く非常識な大幅増資ですよね。それで、たとえばその前に、四十七年十月一日大和銀行が一対一の増資をする前に、前の一年間ぐらいずっとほかの都市銀行もやっています。それを見てみますと、ほとんどが一対〇・四、大和銀行だけが一対一で、そして二百四十億の増資。大和銀行というのは、都市銀行の中でどのくらいのクラスになるのですか、大蔵大臣。
  278. 大平正芳

    ○大平国務大臣 都市銀行の有力銀行の一つと心得ておりますけれども、どのくらいのシェアを持っておりますか、いまとっさにお答えできませんが、必要に応じて、調べよといえば調べてお答えいたします。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どのくらいのクラスかということは、預金高で大体わかるわけでしょう。これは決して上位の銀行じゃありませんよね。それがこんな一対一という二百四十億の増資をやっている。どうして非常識と思われるこれほど膨大な増資を四十七年十月の時点でやらなければならなかったのか、それが非常を疑問があるわけです。  そこで、大和銀行は三光汽船の株をずっと買っていますね。いま大和銀行はどのくらい持っているのですか。そして大和がそれに対して払った買い取り金額は幾らに達しておるか、明らかにしていただきたい。
  280. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 大和銀行のことを申し上げます前に、ちょっとお答えしておきますが、先ほどちょっと申し上げましたように、資産全部の公開であるとか、あるいはまた税務署へ出したような書類を公表するとか、そういうふうなことが適当であるかどうか、そういう問題につきましては、もう少し検討さしていただきたいと思います。もちろん、毎年の所得の合計につきましては、これはもう千万以上の所得者に対しては国税局のほうから発表があるところでございますから、それは当然御存じと思いますけれども、それ以上の分野につきましては、なお若干の日をかしていただきまして、検討さしていただきたいと思います。  それから大和銀行の件でございますが、大体約四千万株くらいいま持っておると思います。あるいは若干の端数があったかもわかりません。それに対してどれだけの原資を大和銀行が使ったかということでございますが、常に大和銀行は、三光汽船が四十年前に創立されましたから、四十年間の主力銀行でございますので、大体七、八%くらいな株式はずっと保有しておったと思います。でありますから、ずっと古い株式は、当然払い込み金で取得したわけでありますから、五十円で取得したのだと思いますし、それから三年ばかり前から、一年に二割の無償交付をしております。それをずっと続けておるわけでございますから、そういうふうに無償交付でふえたものも相当あるのではないかと思います。しかし、時価発行増資で持ったものも若干ありますので、その間の割合がはっきりいたしませんので、その金額はどれくらいか、具体的にいま数字はわかりません。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまおっしゃったこと、私は全部こまかく調べているのです。四十二年の段階では、たかだか二百二十五万株しか大和銀行は持たなかった。九位ですよ。ところが、四十七年九月期で時価発行引き受けをやっておりますから、その段階ですでに三千五百万株、第二位ですね。それで、結局、いまおっしゃったような無償の分も含めて計算してみますと、買い入れ原資は四十二年から四十六年までが七億円をこしておる。それから四十七年三月期の段階で二十五億、そして今度は時価発行の四十七年九月期の原資が八十五億をこしておる。合計、私の計算でいけば、百二十億ぐらいに達しているわけですね、三光汽船の株を買うために大和銀行は。その百二十億ぐらいのうち百十一億が四十七年です。  いま一つお伺いをしておきたいと思いますが、その四十七年の段階で、大和銀行から三光汽船はどれだけ融資を受けられましたか。
  282. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 融資の金額は、いまはっきり記憶しておりません。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何もかもわからないわけですよ。私が調べたところでは、百五十一億借りられておる。だから、三光汽船の買い代金が百十五億ぐらいですから、結局これを合計すると、二百六十五億という金が大和銀行から三光への資金供与になっておる。だからこれはたいへんだということで、四十七年十月の段階で二百四十億という非常識な大幅増資をされたのです。二百六十億を三光へ資金供与しておりますから、この金利を九.六四ぐらいにしてみますと二十五億になりますから、二百六十五億から二十五億引いたら、ちょうど二百四十億になりますね。ふしぎな数字の合致ですよ。つまり三光汽船に大量の二百四、五十億の金を供与したから、これじゃ株主総会が通らぬということで、急遽一対一の緊急増資をやった、二百四十億の。この辺は大和銀行と三光汽船の関係について非常に疑問があります。この点も、いまお答えにならなかった分も含めて、さっきの参考人の招致の問題とともに、大和銀行の頭取を参考人として招致をしていただきたい。これも理事会でひとつおはかりをいただきたい。
  284. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会でよく研究いたします。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、これは常識ですから、言っておきますよ。どうして株価操作の疑いが三光汽船にあるか。浮動株が非常に少ないのですよ。安定株主と称して動かない株が多過ぎて、浮動株は三%ないし四%。だから自由になるわけです、株価操作が。そしてあなたは子会社をつくられておる。  株価操作をして大もうけをする方法は、代表的なやつは二つあるでしょう。一つは何かというと、子会社が信用取引の買い注文を出す、そしてどんどん株価をつり上げる、そして適当なところで手じまっておる、売買益をそれで上げる、これが一つの方法でしょう。もう株屋さんぐらいにお詳しいから、おわかりのとおりです。もう一つの方法は、今度は子会社の一つが持ち株を手放す、同時に今度は別の子会社が引き取る。クロス商いです。つまり、私が、株を子会社でころがしながらもうけるというのは、そこを言っているのです。これらの疑いがあるのです。だから、以上申し上げた資料が出た段階で、もう一ぺんこの点は明白にしたいと思います。これは残しておきます。  そこで、核安保の問題に移りたいと思う。  私は、まず冒頭に、宮澤大臣は英語がごたんのうだと聞いておりますので、英文の解釈も含めて、いまからお伺いをしたいと思うわけです、第六条の交換公文に関連をして。   「装備における重要な変更」というのがありますね。これは米軍の一般的な装備ではなしに、日本に配置された米軍の装備のことをいうのでしょう、さすのでしょう、対象は。どうですか。
  286. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの仰せのことは、つまり核弾頭であるとか、中長距離ミサイルであるとか、それらの基地の建設、こういうことでございますね。――さよう思います。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 はっきりしたと思いますね。これは  「条約第六条の実施に関する交換公文」、日本語では、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更」云々、こうなっています。英文のほうが非常にわかりやすいのですね。英文ではどうなっておるかというと、ちょっと私は読み方がへたですが、聞いておってください。「メージャー チェンジズ イン ザ デプロイメント インツー ジャパン オブ ユナイテッド ステーツ アームド フォーセス メージャー チェンジズ イン ゼア エクイプメント」。この「ゼア」というのは、つまりその前段の日本に配置された米軍のことをさす。これは当然ですね。
  288. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 「ゼア」というのが何をさすかというお尋ねでございましたと思いますが、英文で恐縮ですが、「ユナイテッド ステーツ アームド フォーセス」と思います。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違いますよ。一般的な米軍だったら、装備は何を持ったっていいじゃないですか。事前協議の対象になるのは、日本に配置された米軍の装備を対象にしておるのでしょう。それをさっきから言っておるのです。あなたは、そうだと言ったじゃないですか。それが正しいのですよ。そこを触れられると困る点が出てくるから、いま急遽答弁を変えたのじゃないですか。だれに読ましたって、これはそうですよ。一般的な米軍は何を装備しようと関係ない。日本に入ってくる米軍、つまり条約の文章でいえば、デプロイメントされた米軍、日本へのですね。こう解釈せざるを得ぬじゃないですか、これはだれが解釈したって。まだほかにも出しますよ、そこにこだわられるなら。
  290. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は和文でも英文でもはっきりしておるように思いますのは、和文では、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更」でございますから、「同軍隊」と申しますのは合衆国軍隊ということでございます。これは英文でも同じに――そうでありませんと、この「同軍隊」というものの同は、そういうふうにしか日本文は読めないように思います。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないです。それじゃ大臣、米軍の装備は全部事前協議の対象になるのですか。逆に聞きましょう。
  292. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 お答え申し上げます。  ここに「同軍隊の装備における重要な変更」と申しますのは、安保条約の適用を受けます合衆国軍隊、すなわち日本に配置されている軍隊のみならず、わが国の施設、区域を一時的に使用している軍隊、及び領海、領空を通過する等、わが国の領域にある軍隊をいうわけでございます。ただ、この交換公文は、安保条約六条の実施に関する交換公文でございます。その意味におきまして、アメリカ本土にある米軍が含まれるわけじゃございませんが、日本の領域に入る限りは、配置された軍隊のみならず、一時的に施設、区域を使用しておるものでも、通過しておるものでも、この条約中に含まれるわけでございます。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では大臣、答弁を訂正してください。
  294. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 訂正をする必要はございません。つまり、日本に配置された軍隊を意味するのか、それに限るかとおっしゃいますから、そうではございませんと。日本の領海を通ったり、いわゆる配置でない、しかしこの安保条約と関係を持つ米軍というのはあるわけでございますから、配置されたものには限らないわけです。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点は非常に大事なところなんですよ。そこにごまかしがあるかどうかですよ。われわれはいままでごまかされておった。この第六条交換公文から言う限りは、出てくることばはデプロイメントされた軍隊だけですよ。一般的に入ってくる軍隊なんというのは、ここにはないじゃないか。この文章でいく限り、どこにあるのです。
  296. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう一度初めから申し上げたほうがはっきりすると思いますけれども、もともと安保条約というものは、御承知のように条約でございますから、日本に全く関係のないアメリカの軍隊の構成について、この条約がものをきめているはずはないわけでございまして、まずそれを前提にして、そこで、この六条の交換公文というのは、ですから、楢崎委員日本に配置されている軍隊のことをいっているのかとおっしゃいますので、それには限りません、一時通過するものもありましょうし、一時寄港するものもございましょう、日本に関する限りその米軍、そういう意味です。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。そうすると範囲が広くなったわけですね。配置された軍隊も、一時通過のやつも、一時寄港のやつも全部入る。間違いありませんね、それは。あとで訂正されたら困るのですよ。間違いありませんね。  そこで、これははっきりしているのです。私が二年前に岩国の問題をやったときに、米軍から回答が来ている。その中にもあるのです、英文で。在日米軍の装備に関する重要な変更と、はっきりあるのですね。英文でいけば、「ユナイテッド ステーツ アームド フォーセス イン ジャパン」、こうなっている。だから最後の御答弁がそうでしょう。  そこで、ここに私は重大な日米の食い違いがあると思っているのです。どうしてかと申しますと、一体どういう米軍の装備が事前協議の対象になるのであろうか。アメリカの上院外交委員会筋の言明として、領海通過とか一時寄港というのは、これは装備の重要な変更に入らない、だから事前協議の対象ではないという見解をとっているという報道がありました。問題はここなんですよ。もし、配置された軍隊ならば、いままでやりとりしておったとおり、デプロイメントの中には一時通過、領海通過あるいは一時寄港は入らないという見解でございましたね。そうでしょう。それをまず確かめておきましょう。
  298. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 配置という概念と、一時通過、そういう概念とは別でございまして、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、ここに規定しております軍隊を考えます場合は、配置された米軍のみならず、一時的に日本の基地を使用しておる米軍、及び日本の領域内を通過する米軍を含む、こういうわけでございます。したがいまして、配置という概念と一時通過という概念は別でございます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方のその見解は、米側と了解一点に達しておる解釈ですか。もう一度言います一が、この交換公文にいう文字として出てきておるこの装備の重要な変更の対象となる米軍とは、この文章でいう限り、条文上は日本にデプロイメントされた軍隊しかないのですよ。だから米側は、デプロイメントされた米軍というふうに解釈しているに違いない。そうすると、配置された軍隊だから、配置された米軍だけが、その装備にもし重要な変更があったら事前協議の対象になる。ところが、配置された米軍ということになると、その中に一時寄港なりあるいは領海通過は含まない、こうなっておるから、横須賀にたとえば核装備した軍艦が一時寄港しても、それは日本に配置された軍隊ではない。したがって事前協議の対象にならない、こういう理屈になるのです。これがアメリカの議会筋からの言明なんですね。  私どもはいままで、核持ち込みということのことばを中心にしてものを考えておった。ところが米側はそうじゃないんですよ。装備の重要な変更の対象とは一体何か、そこに重点がある。そうすると、日本に配置された米軍をいうのだ、一般的な米軍じゃなしに。じゃ、日本に配置された軍隊とは何か。これはエンタープライズが入ったときにやり合いましたね。つまり一時通過じゃなしに、あるいは一時寄港じゃなしに、配置とはたとえば母港化する場合だという論議をしましたね。だから一時通過なりあるいは領海を通過するのは、配置された軍隊にならない。だから自由なんですね。だから事前協議にかからない、かけようがないのですね、アメリカの理解によると、事前協議にかからないから、かけてこないから、核は入っていないなどのごとき形式論理は通用しないのですね。もともと、一時寄港で入ってくる艦船が核兵器を積んでおっても、それは事前協議の対象にならないのだから、事前協議の申し出をするわけはないでしょう。私はここは非常に解釈の分かれ目だと思うのです。いまのあなたのような、一般にちょっと入ってくるやつも含むなどという解釈は、この交換公文の文言にあらわれた限りは出てこないのですね。しかもアメリカとの約束がこの交換公文なんです。だから、一般の艦船も含むなどという解釈は、いつ、どこで、どのような会議で、だれとだれが確認されましたか。
  300. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう疑問がおありであろうと思いましたので、先ほどから詳しく申し上げておるわけでありまして、もう一度申し上げますと、交換公文によりますと、「合衆国軍隊の」、これが主語でございます。「日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における」云々でございますから、配置された軍隊ばかりを言うわけではないわけでございます。したがいまして、ただ、いま御指摘のように、日本国に一時寄港する、あるいは領海を通るというような軍隊について、装備の重要な変更があれば、これは当然事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問に答えていないじゃないですか。そういう解釈は、いつ、どこで、だれとだれがどういう形式で確認されましたか、日米双方。
  302. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはもう交換公文にはっきり「同軍隊の」とあるわけでございますから、それ以外の解釈は成り立たないと思います。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 アメリカの議会のほうはそう解釈していないのですね、残念ながら。どうなるのですか、これは。
  304. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 この点につきましては、安保国会当時にすでに議論がございまして、この「同軍隊」とは日本の領域にある合衆国軍隊全部を含むということは、政府はもう答弁いたしておるわけでございます。そしてこの解釈は一貫してとっておりまして、アメリカ側としても、それに対して何ら異議ははさんでおりません。また英文の解釈としても、ただいま大臣がおっしゃったように、それ以外の読みようはないと存じます。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ラテンアメリカの非核武装地帯条約、この中で実はデプロイメントが問題になって、一時通過が問題になって、そしてアメリカはそれを確認するためにずっと批准を延ばしたのですよ。ここはそれほど重要な問題です。  いいですか。ここにありますけれども、ラテンアメリカ非核武装地帯条約の補足議定書二というやつ、これの三十ページです。ここに、スパークマン委員が、通過の定義をめぐって、統合参謀本部ムーラー議長といろいろとやっております。この中でスパークマン委員は、核搭載艦船がある国の領海に入った場合に、この条約にいう核兵器の配備を構成するのか。これに対してムーラー議長は、通過が寄港の形であるなら配備とはならない。いいですか。配置とはならない。配備でも配置でもいいですが……。ただしそこに基地を建設すると配備になる、したがって同条約に違反する。ここまでシビアに、核兵器搭載艦との関係においてこの通過の問題を煮詰めているのですよ。これほど時間かけて。  ところが、日米安保条約について例外であるということはあり得ない。だからアメリカは、装備の重要な変更の対象になる米軍とは、日本に配置された米軍のことであるという解釈で一貫しておる。だから事前協議の対象にならないんだ、こういつておりますから、私は、これはアメリカが黙っておるからそれでいいんだなどというようなあいまいなことじゃなしに……。  お答えがないようですので、もう一ぺん言いますが、この解釈については日米双方が煮詰めてはいない。そうですね。ただ日本の解釈について向こうが黙っておるだけである、それでいいですね。煮詰めてはいない。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは大事な問題でございますから、誤解がないように申し上げておかなければなりませんが、もし楢崎委員の御指摘のようなお話になりますと、一時寄港の場合には事前協議なしに核兵器を持ち込み得るということになる筋合いでございますから、それはもうアメリカにとって重大問題であるばかりでなく、われわれにとってもたいへんに重大な問題でございます。したがって、この交換公文の読み方は非常にはっきりしておって、これを煮詰めるとか煮詰めないとかいう問題は起こらない、これに疑義をアメリカから差しはさまれたことは、われわれはないわけでございます。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ところがアメリカの上院の外交委員会は、そう解釈しておるのですよ。私が言っているとおり解釈しておるのですね。一体これはどうなるのです。もしこれでこのような議論をするのだったら、後ほどの問題も含めて、私はひとつこれは委員長にぜひ御考慮いただきたい。つまり日米両議会の解釈が食い違っておる。そしてしかも日米の両政府と議会レベルで、言うならば解釈についてまた対立関係にある。したがって私は、この安保条約関係の日米両議員の、この問題を含めて問題点を煮詰めるための懇談会をぜひ持っていただくように。こちらからアメリカに行ってもよろしかろうし、向こうからおいでになってもよろしかろうし、そのようなことをしないと、この問題は明白にならない。そこまでやらないと明白にならない。  しかもサイミントン委員長は、このラロック証言をめぐる日米政府のやりとりについて全然発言していないんですね。しかも安川大使のごときは、ラロック証言は非常に疑わしい。そのために、ラロック元提督自身の人物は一体どういう人物であるか、いかにもつまらぬ人物であるように印象づけるような動きをしておるじゃないですか。そういうことをするということは、サイミントン委員会に対する侮辱であると私は思いますよ。ラロック証言がうそならば、サイミントン委員会はそのうそを見過ごしておることになるじゃありませんか。日本国会ではそういうことは許されないです。すぐ懲罰でしょう。私もその目にあおうとしたことがありますよ。そうでしょう。もしラロック証言がうそならば、サイミントン委員会が黙っておるはずはないです。それを安川大使がさもうそのように言っておるということは、サイミントン委員会を侮辱しておることになるじゃありませんか。そういう点も含めて、先ほど要望した点については、ひとつ真剣に理事会のほうで御検討いただきたい。これ以外に、私は問題の煮詰めようはないと思うのです。政府を信頼できないのだから、日米両議会でこの点は明らかにする以外にない。
  308. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 先ほど上院外交委員会筋でそういう解釈をしておるというお話がございましたが、われわれも、そういう報道が流れましたので、当時アメリカ側にも問い合わせました。しかし、上院外交委員会筋のそういう責任ある人々にも聞いてみましたが、自分たちのほうでそういうふうな解釈を公にしたこともしゃべったこともないということでございます。  それから第二に、中南米核兵器禁止条約に関しまして、アメリカ側はムーラー統幕議長がそういう証言をしておるということでございますが、これは議会における話でございまして、アメリカが中南米核兵器禁止条約についてやっておりますのは、いわゆる解釈宣言でございまして、それは非常に一般的な形で書かれております。そしていまその点は読み上げてもようございますけれども、要するに非常に一般的な形で書かれておりまして、そういうふうな、通過は問題でないんだというふうなことは一切書かれておらないのであります。したがいまして、この点はアメリカ側とラ米諸国との間の問題でございまして、われわれとしては、それについて有権的な解釈を云々する立場にはございません。
  309. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 先ほどの楢崎君の申し出の件につきましては、後ほど理事会において協議をいたします。御了承くださいませ。
  310. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひ真剣にその点討議していただきたいと思うのです。われわれとしては信用できないのですから。  それで、いまの、あなた、何局長ですかね。アメリカ局長、ちょっとこれがありますから、訳してください。そんなことは答弁していないとおっしゃるが、ここを訳してみてくださいよ、ここへ来て。わずかですから、いいですよ、大事なところですから、これは。
  311. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 とっさでございますのでうまく訳せるか、わかりませんが、条約の第一条及び第三項に関連してあなたは配置というものをどういうふうに定義するか。ラテンアメリカ諸国の領海または領空において何が配置を構成するか。たとえば核兵器を搭載した海軍艦艇がある国の領海内にいることは、条約の第一条の意味における配置を構成しないということは正確であろうか。これに対する答えが、ムーラー統幕議長の答えでありますが、もしそれが通過、トランジットまたはビジット、訪問のステータスにあるならばその解釈は正しい。それは配置を構成しない。ですから、私が申し上げたいのは、これはう米諸国とアメリカとの間の問題である。第二に、こういうふうなことをアメリカは解釈宣言ではっきり言っておるわけではございません。  私のほうから、それでは申し上げさしていただきますが、その解釈宣言はきわめて抽象的な言い方でございまして、「最終議事録に述べられている準備委員会の解釈のとおり、この条約の締約国は、条約の規定に関係なく、国際法の原則にしたがい、非締約国に核兵器の通過権および運搬権を許容し、もしくは、拒絶する固有の権利および法的権限を有するものと理解する。」これがアメリカの解釈宣言であります。この解釈宣言を中南米諸国がほんとうにどういうふうに理解しているかは、われわれは知らないのであります。
  312. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局、本文はいまのような文章になっている。ところが内容はこれなんですよ。そういう点も含めて、ぜひ与党の諸君も協力してください、アメリカの議会筋と解釈について徹底的に意思を疎通することを。  それで総理総理が外務大臣のときに、私は領海の通過の問題でずいぶんやりとりしましたね。ここに、当時の三木外務大臣の答弁に非常に微妙なところがあるんです。領海を通過することは、核を持ち回っていることになるかもしれないが、持ち込みではないと答弁されているんです。これは非常に微妙な答弁ですよ。領海を通過することは核の持ち回りであって、持ち込みじゃない、これはアメリカの上院外交委の解釈と同じなんですよ。これは四十三年三月十二日、衆議院予算分科会、私とあなたのやりとりの中です。まさにアメリカの上院の外交委員会の解釈と一緒です。領海を通過することは持ち回りであって、持ち込みではない、あなたの答弁です。ところが、それ以降、たとえば一番新しいところでは、江崎防衛庁長官は、いや領海を通過するときだってこれは持ち込みだと答弁したんですね。三木元外務大臣の答弁と違うんです。ひとつこの辺の統一見解はどうなっておるのですか、はっきりしてください。
  313. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 持ち回り、持ち込み、いろいろな言い方があろうと思いますけれども、いずれも事前協議の対象になるということでございます。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしたら、当時の三木外務大臣の答弁は食言であった、そうなりますね。どうですか。
  315. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その後いろいろな経過を経て、今日の解釈は、やはり通過であっても持ち込みの中に入るという解釈をいたしておりますから、私も今日の解釈にも従うものでございます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いいですか、さっき外務大臣も局長も、一貫してこういう解釈をとってきましたと言いましたね。一貫しておらなかったじゃないですか。一貫していないんですよ。いろんな経過があって、結局こうなったということでしょう。だから結局これも、私がアメリカの議会の安保関係の議員とどうしても詰めなくてはいかぬと言うのは、そこなんですよ。一貫していないでしょう。――もういいですよ。  それでもう一つ、アメリカが一時寄港する場合あるいは領海通過の場合は、核艦船であっても事前協議の対象にならないというアメリカの解釈を裏づける二、三の問題を出してみたいと思うのです。  それは、このサイミントン委員会の議事録、この中で事前協議の対象になる一番明白な例は何か。ワン・クリアカット・ケースということばを使っている。つまり、それは日本の基地を使って直接出撃するときである、これが一番明白な事前協議の対象になる、一つのワン・クリアカット・ケースだと言ったんですね。それで、じゃ核の問題はどうだと聞かれたときに、むにゃむにゃむにゃと言って、ああ、それも入るようですねと、こうなっているんですね、答弁は。その辺も実に微妙ですよ。  それから、同じくこのサイミントン委員会の中に、横須賀に入ってくる艦船で、その修理その他に日本の熟練工を使っている、ただし核関係の仕事には日本人は使わないのだということばがあります。ニュークリアワーク、これに対して、いや、それは核兵器じゃなしに原子力推進の問題だと。どういう仕事があるんですか。いま「むつ」の問題で安全性等が非常に問題になっている。アメリカの艦船であれば、そういう原子力関係の仕事はかってに何でもやっていいんですか。どうなっているんですか。
  317. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは何でしたら政府委員が補足をいたしますが、そのニュークリアワークというのは、確かめましたところ、原子力機関、推進力としての原子力、それについての修理等々はこれは、という意味でございます。つまり、核兵器という意味ではございません。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから聞いているんでしょう、もしそうなら、かってに何でもやっていいんですかと。原子力推進の機関をいじること、いろいろなことをやることを――「むつ」の場合は事故等が出て問題になりましたね。そういう原子力に関するいろいろなことは、何によってできるんですかね。
  319. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問意味が必ずしも明確ではございませんけれども、事前協議の対象になっておりますのは、御承知のように核弾頭、中、長距離のミサイルとその建設でございまして、エンジンとして原子力が推進するもの、その修理等々を行ないますことは、これはもう事前協議の対象でございませんし、いわゆる基地、地域、施設を利用しておりますことから生じますごくルーチンの作業である、こう考えます。
  320. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これもたいへん苦しい答弁ですよね。  それから、同じくこの議事録の一四五二ページにあります。つまり、横須賀のいろいろな基地関係の報告がペンタゴンから出されている。その中のナンバー(2)のところですね。これも新聞にも問題が指摘されておりましたけれども、これを訳してみると、海軍軍需品施設隊はあらゆる種類の弾薬を受領し、貯蔵し、修理し、監視体制をしき、またそれらを供給する。機雷の点検、調整、組み立て、保持をする。音響魚雷型の修理、分解修理、保持、いつでも供給できるようにしておく。指示されたとおりに基本的な在庫を維持する。そしてその次に、船から船への積みかえ、あるいは貯蔵庫への一時保管。何をそうするのかはデリーテッド、削除になっている。そしてその次に不要危険弾薬の処理をする。それから船舶修理施設隊用の船のために爆発物軍需品の一時的保管をする等々になっているんですね。このデリーテッド、削除されたところの以外のものは対象が明確になっているのです。たとえば、あらゆる種類の弾薬、それから機雷、音響魚雷、不要危険弾薬、爆発物軍需品、対象物が全部はっきりしている。ところがこのくだりだけが対象物が削除になっている。つまり船から船へ一時積みかえる。あるいは一時貯蔵する。何を船から船へ積みかえるのか、何を一時貯蔵するのか、ここだけがデリーテッドになっている。だからその対象が何かということを明白にしてもらいたい。いま言われておるとおり、フォー・ニュークリア・ウェポンしかないですよ、文脈からいっても。ここだけが対象物が削除になっているわけでしょう。ほかは全部対象物が明確になっている、爆弾の種類等々が。
  321. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 この削除されております文につきましては、これはアメリカの行政府といわば議会とのお話で削除をした問題でございまして、この問題に関しましては、われわれとしては知り得る立場にはない次第でございます。  それから、いまニュークリアワークということばをおっしゃいましたが、これはサイミントンの聴聞会の議事録の関係で申しますと、横須賀の労働力は非常に熟練度が高くて、原子力関係工事を除く艦船に対するあらゆる工事を処理することができる、原子力関係工事のほうはやる能力はないという、それだけのことでございまして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、原子力推進の機関を修理したりオーバーホールしたりする能力はないということを申しておる次第でございます。
  322. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点もわれわれの解釈と違いますから、ひとつ両国の議員レベルの懇談会ではっきりさしていきたいと思います。  それから核のかさですね。核のかさ、核抑止力、いまでもきいていると思っていらっしゃいますか、日本の安全保障について。アメリカの核抑止力が働いておると御理解になっていますか。
  323. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国もそうでございますし、全世界的に考えまして、アメリカの強大な核の力というものが大きな戦争の勃発を防いでおる、デタントとしての役割りを果たしておる、かように思っております。
  324. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このアメリカの核抑止力というのは、これは日本を守るためにあるんじゃないのです。アメリカ自身が核戦争に生き残るための戦略なんですよ。もし核戦争になったら、もし米ソの間で行なわれたら、膨大な一億前後の人口が死ぬんですよ。それほどの犠牲があるのを、他の国を守るためにそれほどの犠牲をアメリカが負うと考えたら大間違いなんです。これはアメリカ自身が生き残る戦略なんです。  それから特に、米ソの核不使用協定が提示されましたね。そうすると、これはいよいよアメリカの核抑止力というものは働かなくなるんですね。これが大体専門家の意見なんですね。たくさん文献を持っておりますが、もう核の効果はほとんど期待できない。とにかく何か起こったら、ソ連と、どうするかということを話し合いするんですから。だから、これはストックホルムの国際平和研究所の結論もそうですね。この点は、私はそういうことだけを申し上げておきたいと思います、時間がございませんから。  そこで、自衛隊は一体日本の核装備についてどのような考え方を持っておるか、それをお伺いしたいと思うのです、防衛庁長官
  325. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国の防衛は、米国との安全保障体制を基調といたしまして、わが国みずからわが国の平和と独立を守り国の安全を保つために、必要最小限度の自衛力を保持しつつ侵略を未然に防止し、核の脅威に対しては米国の抑止力に依存することを基本といたしております。わが国が保持し得る防衛力について、憲法の解釈といたしましては、自衛の目的を達成する限度にとどまる純粋に防御的なものであれば、そのような核兵器を保有することは禁じられていないが、わが国は非核三原則政策を堅持しておりますので、憲法上その保有が許されておる核兵器であっても、自衛隊は一切の核兵器を保有しない所存でございます。
  326. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官としては、核防条約批准の問題をどう考えておられますか。
  327. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この核防条約は、われわれといたしましても、早く批准してもらいたい、早くきめてもらいたいと思っております。
  328. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。防衛庁長官としては早くきめてもらいたい、早く批准してもらいたいという意味ですね、ちょっと声が小さく、自信がないようでありましたが。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、しかし自衛隊の研究としては、たとえそうであっても、潜在的な核装備能力というものは持っておって、一たん決意をしたらいつでも核装備ができる体制にしておくことが好ましいと考えておるのではないか。そういう事実はありませんか。
  329. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それは考えておりません。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 雑誌「世界」の十一月号に座談会の記事が載っておる。その中で、ある人がこういうことを言っておりますよ。ある資料によりますと、自衛隊日本防衛のための選択肢として三点をあげておる。まず第一は、日本は核武装すべきであるという考え方。これは核を持つことによって相手に使わせない、すなわち核抑止力として持つべきである。そしてその持つ場合の核弾頭は何であるかというと、IRBMあるいは衛星あるいはBMEWS。第二番目の選択肢としては、対米依存による核の保障。これは今日とっておる選択肢ですね、つまり現行安保体制の維持ということでありましょう。ただ、この場合も、核の製造能力、運搬能力は潜在保有をしておって、それを背景にして国際的な発言力を強化することが前提である、こういう考え方。第三番目の選択肢としては、スイスのような軍備を保有した中立構想。この三つをあげておる。二番目に言った選択をいま日本はとっておる。ただし、この三つに共通するのは何かというと、いつでも核兵器を持てる体制にしておくことである。こういうあれが防衛庁の資料の中にあるというのですが、こういう資料はありますかね。
  331. 丸山昴

    ○丸山政府委員 私どもの関知いたします限りにおいて、先生ただいま御指摘のような資料は見ておりません。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 陸幕の中に自主研究グループがありますかね。
  333. 丸山昴

    ○丸山政府委員 自主研究グループと言われますと、ちょっとよく私わかりませんが、ただいま申されたような意味におけるグループでございましたら、私どもないと思います。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがあるんですね。こういう日本の安全保障というものをいろいろ研究するのはいいでしょうが、まさか、日本政治方向はどういうふうにあるとか、おのおのの政党が今後はこういうふうになるであろうとかいうような研究はしておらぬでしょうね、どうですか。
  335. 丸山昴

    ○丸山政府委員 シビリアンコントロールの趣旨を十分体しまして、私どもよく各幕の実態を監督しておるつもりでございますので、先生御指摘のようなことは万々が一ないと存じております。
  336. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがあるんですね、万々一が。  まず自民党です。戦後一貫した自民党政治国民が飽きてきた、どうしても変わらぬ保守政治への反作用、こういう指摘です。よく知っておってください。自衛隊の制服の諸君はそういう見方をしている。そして自民党がだんだん自覚をしてヤング化していく。社会党のことだけ言わなかったら悪いから言いますけれども、社会党にもあいそをつかし始めた。社共共闘は完全に共産の勝利。今度は日本共産党ですけれども――これは私が言うのじゃないですよ。だんだん議席がふえるにつれて党内団結は不一致になってくる。議員の質が低下してくる。国民がたいへん不安感を持つようになる。  もしこういう研究をしておるとすれば、これはどう考えられますか、防衛庁長官
  337. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま防衛局長から申し上げましたとおり、万が一ないと思っておるわけでございまして、ただ個人的にいろいろ考えを持つということは、これは当然なことだと私は思うので、自衛隊員といえども、いろいろの政党を批判する自由を持っておると私は思います。
  338. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自衛隊自衛隊法によって律せられているわけでしょう。それが勤務としてこういう研究をもししておるとすれば、これはたいへんな問題ですね。どうですか。
  339. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私が申し上げましたのは、個人として政党に対するいろいろの考え方を持っておるということそれ自体はとがむべきことではない。しかしながら、自衛隊の中においてそういう訓練を、まあ何といいますか、教育をやっているとかなんとかいうようなことがもしあるとするならば、それは好ましいことではないと思います。
  340. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このある資料というのをぜひ明白にしてください。私のほうから出しませんから、自衛隊責任あるいは防衛庁の責任で明白にしてください。  それから次に、市谷の幹部学校に兵法研究会というものがありますか。
  341. 丸山昴

    ○丸山政府委員 まことに恐縮でございますが、ただいまの先生の御発言、よく聞き取れませんでしたので……。刑法でございますか。
  342. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 兵法……。
  343. 丸山昴

    ○丸山政府委員 兵法研究会でございますか、幹部学校でございますか、ちょっと私存じておりません。
  344. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはぜひ調べてください。そして「兵法研究」という印刷物を出しておるはずです。その「兵法研究」のナンバー・シックス、昭和四十六年度の分です。これを資料としてぜひ出していただきたい。なぜならば、この中に、自衛隊は任務として、もし現体制がかわったらもとの体制に返す、これが任務の一つになっておるようでありますから、ぜひこの資料を出してください。まさにクーデターじゃありませんか。よろしゅうございますか、防衛庁長官
  345. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのようなものがございましたら提出いたします。
  346. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはひとつ、理事会の責任においても出させるように努力をしていただきたいと思います。これはたいへんな問題であろうと思います。
  347. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと楢崎君、あるかないかわからないのを出せということはどういうことですか。あるというのなら出させますよ。
  348. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうです。だからそれを調査をしてくださいと、理事会のほうからも厳重に言ってください。
  349. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君にお答えします。  あるかないかわかりません。がしかし、あれば、出すか出さないかを理事会で研究いたします。
  350. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 出すか出さないかを検討されるのですか。あったら出すということでしょう。
  351. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 あるかないかも含めて、理事会で検討をいたします。おわかりですか。
  352. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あまりよくわからぬのですよ。
  353. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 私もよくわかりません。
  354. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 言っておられる方がわからぬのに、聞いておるほうがわかるわけがないじゃないですか。
  355. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 私もわかりません。
  356. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、その問題を残しまして先へ……。  私は、この臨時国会が始まって冒頭、十日の日に、核拡散防止条約に関する質問主意書を衆議院議長に提出いたしました。その内容を一応言っておきます。  一 非核三原則の「核」とは何か。  二 核兵器とは具体的に何を指すか、核兵器の定義についての政府の見解を問う。  三 核拡散防止条約について以下の問題に関する政府の見解を明らかにされたい。   1次期通常国会でその批准を求める予定か、批准の時期を明確にされたい。   2 核防条約に参加することによって核保有国となる可能性を否認するのか、また同条約に参加しても核への選択の道を残せるのか。   3 核防条約に参加し、あるいは参加しないことによって、我が国の安全保障はどのような影響を受けるのか、安全保障は核兵器の所有によって増強されるのか、減退するのか、特に、大国や敵対的近隣諸国との関係はどうなるのか、日本政府としての見解を問う。   4 我が国は潜在的核保有国といわれているが、我が国の潜在核装備能力を具体的に明らかにされたい。(憲法及び非核三原則とは関係なく、純科学的分析として)    イ 日本が核装備を決意した場合、初歩の原子爆弾を製造するのに何年を要するか。    ロ その算出の根拠となる年間生産プルトニウム量、原発その他の核施設、ウラン資源、予算、運搬手段など具体的数字を明らかにされたい。   右質問する。 これが質問主意書であります。国会法によって、これは一週間以内に答弁をされなければなりません。十七日に三木総理大臣から前尾議長に答弁書が出されております。こういう答弁書であります。   さきに送付を受けた貴院議員楢崎弥之助君提出「核拡散防止条約に関する質問」に対しては、国会法第七十五条第二項に規定する期間内に答弁することができないので、同項後段の規定によってその理由及び答弁をすることができる期限を別紙のとおり通知するから、よろしくお取り計らい願います。  一、所定の期限までに答弁できない理由各項目について慎重に検討すべき必要があり、これに日時を要するため。  二、答弁することができる期限    昭和五十年一月十六日 これは私の質問書の中のどの点がそれほど慎重に検討する点でございますか。総理にお伺いします。これは総理の名前で来ているのですから。
  357. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 便宜私からお答えいたしますが、たとえば核兵器とは何であるかというような非常にむずかしい御質問もございますし、また、将来わが国が潜在的に核兵器を製造するとすれば、どのぐらいの能力があって、どのぐらいの時間がかかるかというような、ちょっと政府としてはいままで研究をしていない種類の問題のお尋ねでございますから、全般に作業が簡単に進まない、ですから私から便宜お答えを申し上げておるわけでございます。
  358. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまお答えのとおり、たとえば「非核三原則の「核」とは何か。」もしその「核」が核兵器であれば、核兵器の定義とは一体何か、それについて答えるのに非常に時間がかかるほどこの問題をあいまいにしたまま、われわれは、やれ非核三原則とかやれ核の持ち込みとかいうことをやっておったんですよ。いまの答弁でわかったでしょう。この点は非常にあいまいなんです。だからずっとごまかしが続いた。核兵器が日本に持ち込まれておるかどうかということのわれわれの論争が、政府との間に不毛に終わってきた、すれ違いに終わってきた。一体なぜか。それは核というものを核弾頭に限定してきたからです。  核弾頭というのは、いま総理の目の前に私がこれが核弾頭ですよと言ったって、いやこれはダミーだとおっしゃれば、証明の方法はありますか。爆発させてみて、キノコ雲が出た、ああこれぞ核兵器である、そんなことできますか。本来、証明のできないような核弾頭に核というものを限定していったところに、政府のごまかしがあったんですよ。だから、すれ違いに終わった。幾ら何ぼ言ったって、幾らわれわれが状況証拠を出したって、核部隊がある、あるいは核訓練が行なわれておると幾らわれわれがやったって、核弾頭を問題にするから、そういうものがあったって、核弾頭があるかどうかわかりませんと、こうなってしまうのです。そうでしょう。だからこの核兵器とは一体何なんだということなんです。  いまどうして私がこれを言うかというと、いまはかつてと違って、核兵器は、長崎あるいは広島のときの原子爆弾だと単純で、あれがそうだと言えるけれども、いまはMIRVとかMARVとか出てきておる。どういう兵器かというと、それは問題は核弾頭じゃないのです。いろいろな障害を排除しながら飛んでいくんです。MIRVのほうは多頭核弾頭でしょう。そうして幾つかの目的に確実に行くように誘導してやる。MARVのほうは何かというと、向こうが今度はABMでじゃまをしてくる、そのじゃまを排除しながら目標のものに到達する。つまりそれは誘導機関も一緒でなくてはMIRVとかMARVとかは語られない。つまりシステムとして考えなければ、いまは核兵器を物語れないのです。それほど核兵器というものは発達しているんですよ。だから、核兵器というものは核兵器システムとして考えなければならないというのが、わが党の一貫した主張であった。それを単に核弾頭だけに問題をしぼってきたところに、私はあいまいさがあったと思うのです。だから、この核兵器の定義というのは、簡単なようでむずかしいですよ。さすがに、時間を下さいとおっしゃったのはわかるんですよ。  それから、以下の質問書の中の質問について、これも私は述べられる理由はわかるんですよ。この答弁いかんは、国際的に非常に日本の核防条約に対する考え方を明らかにする。だからそれはわかります。待ちます。ただ、一月十六日というのは、どういうことで十六日になったんですか、何か根拠はあるんですか。
  359. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも便宜私から申し上げることでございますけれども、たとえば核兵器とは何かとおっしゃれば、それは核分裂あるいは核融合によって生じたエネルギーを殺傷または破壊の目的に使う、そういうものをいうと、かりに私が申し上げましても、私が有権的にそういうことを申し上げるのは、実は政府部内としてはおかしいことでございまして、核兵器というものを所管している役所はございませんので、だれが何を言うかということも実はわかりません。そういうようなこともございまして、少し時間をちょうだいして、できるだけ早くやれるだけのことをやってみます、そういう意味でございましょうと思います。
  360. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は私どもも含めて反省しているのです。核兵器とは何かということをわからぬまま、非核三原則とか核持ち込みとか言っておったんですね。だから、そういう点は私どもは反省しておるのです。だから、これはその場限りの答弁ではなしに、現代の発達した核兵器システムに合わした、国際的にも通用する正確な定義を出していただきたい。そうすることによって、非核三原則とは一体何かということがもう一ぺん明確になると思うのです。  そこで私は、結局、核が持ち込まれておるか、持ち込まれていないかなんていうのは、この問題は実はそれを乗り越えるより大事な問題があると思うのです。つまり非核三原則というものを明確にするためには、まず日本が核兵器を持たないんだということを明確な形で宣言をする、それが一つ。いま一つは、アジア・太平洋地域に非核武装地帯設置の条約をもう考える時期である。それは前木村外相が演説をされた中にも入っております。そのアジア・太平洋というと範囲が広いから、まずとりあえずは日本と朝鮮半島に非核武装地帯をつくるというような具体的な努力をすることによって、初めて一方においては核防条約で不安な点が解消されていく、それを私は提言したいと思うのです。つまり、核時代に生きていくための平和外交の荒筋というものは、そういう具体的なところから始めなければいけない。日本みずからがそうすることによって、初めてあなた方のおっしゃっている核政策の中のあの核軍縮、核兵器全廃を国連で堂々と主張し得る、私はそう思うのです。  この点については、ひとつ三木総理大臣の御見解を最後に承っておきまして、保留した問題は理事会におまかせをしたいと思います。
  361. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府が、いろいろ広範な質問に対してできるだけ現在の段階で答え得る詳細なお答えをいたしまして、これを国際的にも明らかにすることになるでありましょうから、非核三原則を堅持する日本の意図というものをより明確にするように努力をいたします。  また、もう一つの、このアジア地帯に非核武装地帯を設けよという、そのお考え方は私どもよくわかりますけれども、アジア各国にはいろいろ核保有国もございまして、各国の利害、いろいろ国際的立場もございますので、そういう非核武装地帯がアジアという地域にできるかどうかということは、理想としてはそういうことが理想でございましょうが、それは希望としてはわかりますけれども、これは、アジアというものを舞台にして、御承知のように、各国の国際関係なかなか複雑ですから、日本の理想としてはそれはよくわかりますが、にわかにそのことがアジアに実現するかどうかということは、私は多少の危惧の念を持つわけでございますが、日本としては、そういう理想を持つことは、私は好ましいことだと思っております。
  362. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで終わります。
  363. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、村上弘君。
  364. 村上弘

    村上(弘)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、三木内閣政治姿勢、それから民主主義、とりわけ暴力一掃の問題、暮らしと経済の問題などについて御質問いたします。  本題に入る前に、けさ方のニュースで御承知のように、昨夜、三菱石油の水島の製油所において、二七〇番タンクからC重油が流出して、これはいままでの最大の流出量で、瀬戸内海全体に広がる量であるようです。これは私の郷里瀬戸内海のことでもあるわけですが、この問題について通産大臣に緊急にお尋ねしたいのですが、政府はどのような措置をとられたか、この点をまずお聞したいと思います。
  365. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 詳細につきましては、エネルギー庁の長官及び立地公害局長から答弁をさせます。
  366. 左近友三郎

    ○左近政府委員 昨日の事故はまことに遺憾な事故でございますが、現在政府でやっておりますことは、とりあえず油の流出がとまりましたので、これについて、あとはこの油を処理するということでございます。現地に問い合わせながら、その処理が円滑にいくようにやってまいりたいと思いますし、また、あとの被害が出てまいりました場合には、迅速に処理いたしたいということで、目下実情を調査中でございます。
  367. 村上弘

    村上(弘)委員 流出はとまったかもしれませんが、それが広がると火災になるというたいへんな危険があるわけです。政府は原油の備蓄を三カ月分ふやすという計画を打ち出しているわけですが、この流出防止という対策はたいへん重要な問題だと思うのです。今後どのような措置をとるのか、安全確保のために、既存のタンクの総点検を緊急にやる必要があるのじゃないか、この点をお尋ねしたいと思います。
  368. 左近友三郎

    ○左近政府委員 仰せのとおり、タンクの保安というものは今後ますます重要になってまいります。したがいまして、その保安について、今回の実情をよく調査した上で、全国のタンクの事情も十分調査いたしたいというふうに考えております。(「調査だけでなくて、対策だよ」と呼ぶ者あり)緊急にやりたいと思います。
  369. 村上弘

    村上(弘)委員 対策をやるんですね。
  370. 左近友三郎

    ○左近政府委員 対策を実施いたします。
  371. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 左近石油部長、聞いていることとあなたの答弁と食い違っているよ。
  372. 左近友三郎

    ○左近政府委員 緊急に対策を実施いたします。
  373. 村上弘

    村上(弘)委員 すぐ緊急の措置をとり、抜本的にこういう安全策をとることを強く要求しておきたいと思います。  さて、第一の政治姿勢の問題でありますが、田中前首相の金脈問題がなぜこれほどまでに重大な政治問題になってきたかといいますと、それはつまり彼が大蔵大臣あるいは通産大臣、自民党幹事長などの地位を利用して、幽霊会社を使いながら、あるいは脱税の疑惑まで引き起こしながら、ばく大な政治資金をつくり出して、とうとう最後には総理大臣の座まで金で買い占める、こういうところまで行ったところにあるわけです。自民党総裁日本の首相になるというのが今日までの政治状況であるわけですから、この首相の座をやりとりするために、自民党総裁選挙で巨額の金がばらまかれるということは、それ自体が日本政治のあり方の根本にもかかわる、一自民党だけの問題ではない、こういうふうに思うわけです。そういう意味で、自民党総裁である三木さんは、この国会でこういう問題について責任をもって自民党総裁選挙の実態を明らかにする態度を示したらどうか、この点をまず第一にお聞きします。
  374. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党総裁選挙がいろいろと社会の疑惑を生じておることは、私も、これはいま御指摘のとおり、総理大臣の地位にもつながるわけでございますので、この機会に、総裁選挙のあり方というものを根本的に再検討をいたす決心でございます。
  375. 村上弘

    村上(弘)委員 文芸春秋のことしの十一月特別号によりますと、昭和四十七年の総裁選挙で、田中前首相は三十億円から五十億円もの資金を使ったということが書かれてあるわけです。確かに、三木総理、あなたの言っておられるように、総裁選挙が諸悪の根源の一つであるわけですが、この総裁選挙のあった昭和四十七年の三木派、あなたの派閥の政治資金は、自治省に届け出されたものだけでも、過去最高の十四億二千万円以上になっておるわけです。あなた自身は、昭和四十七年の総裁選挙では一体幾ら使われたのか、諸悪の根源を洗い清めるために、国民の前にここで明らかにされてはどうでしょうか。
  376. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三回総裁選挙に挑戦をいたしまして、私は破れた候補者でございまして、総裁選挙に私が金を使って、金で総裁選挙をやったものではないということを明らかにしておきます。
  377. 村上弘

    村上(弘)委員 それでは、福田総理にもお聞きしておきますが、あなたは、総裁選挙のあった昭和四十七年の九月号の文芸春秋の中でこう言っていますね。「こんどの総裁選挙の途中で、やめてしまおうかと思った時期があるんです。」「あまりにいやらしい選挙になってきちゃったんでね、」「いろんな噂が出たでしょう。“実弾”が飛ぶという話ね。大事な党首決定がカネや権力で左右されるということになると、これは大変なことじゃないか。」「それもだんだん激しくなりそうな様相だ。ある程度こちらも対抗措置をとらなきゃならないし、」「眠れない日が続きましたよ。」こう書いてある。いま三木総理は、政治献金はあるが総裁選挙で一文も使わなかったというふうなことをしゃあしゃあと言われたわけですが、あなたの場合は、「ある程度こちらも対抗措置をとらなきやならないし、」こういうふうに言っておるわけですが、どれくらい対抗措置をとられたか、これをはっきり言ってください。
  378. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政治資金は、私が集めて私が使うわけではない。そこで、私の後援団体が総裁選挙にある程度の金を投入した、こういうことは想像されますが、どのくらいの金が投入されましたか、私は存じておりませんです。
  379. 村上弘

    村上(弘)委員 まあどちらもどちら、しゃあしゃあとしているという気がしますが、結局、総裁選挙の実態を国民の前に明らかにしようとしないというのが、今日の自民党総裁、副総理の態度でもあるわけですね。清潔を三木総理は売りものにして出てきたはずであるのに、これはどうかとまず最初に思うわけです。  私たちが清潔ということを問題にする場合に、やはり、大企業との癒着、これを断ち切ることだということを言うのは当然だと思うのです。だから、どうしても私たちは、今度の国会において、調査特別委員会というものを国会につくって、あの田中金脈問題について、これを徹底的に明らかにする必要があるということを第一に強く主張しておるし、また今後の措置については、大企業の献金について、これをはっきり断ち切るための政治資金規正法の改正、こういうこともやる必要がある、こういうふうに思っておるわけです。  しかし、それと同時にあわせて大事なことは、閣僚の紀律をしっかりと確立するということ、これが非常に重要だ。地位を利用して公の情報を私的に利用するというようなことを禁止するということ、それから、閣僚の資産を公開するということ、こういうことがますます必要になっていると思うわけです。  私は次にお聞きしたいのですが、三木内閣でも、現職の大蔵大臣がもし大企業と特別に深い関係があるということになると、これは三木内閣政治姿勢にとっても重大問題になると思うわけです。  で、大平蔵相にお聞きしたいのですが、神奈川県の相模原市渕野辺二の二五の一二に本社のある株式会社オーインという企業は、あなたとどのような関係にありますか。
  380. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この会社は私の親類の者が関係しておりまして、なかなかうまくまいりませんで、途中で私に援助を求めてまいりましたので、私も若干の資金的援助をして、何とか経営をつないでおる会社でございます。
  381. 村上弘

    村上(弘)委員 親戚の方、つまりおいの大平勇さんがこの会社を始められたわけですが、今日まであなたはその会社にどれくらいの株をお持ちでしょうか。
  382. 大平正芳

    ○大平国務大臣 途中で蔵相をいたしましたので、正確には覚えておりませんけれども、私が一番大きな株主だと思っております。
  383. 村上弘

    村上(弘)委員 まあ、現在の資本金約一億円の中で一番大きな株主だといえば、相当な出資だということになると思うのですが、これがその会社ですか。この会社は、三菱商事や三菱化成とはどのような関係にあるでしょうか。
  384. 大平正芳

    ○大平国務大臣 原料の仕入れあるいは製品の販売において関係があると思いますし、若干の出資関係を持っておると思います。
  385. 村上弘

    村上(弘)委員 このオーインの現在の代表取締役をしている人は、篠本遼一という方であります。取締役が中村章という人ですね。取引関係にあるというわけですが、この人たちはどのようないきさつでオーインの役員になったか御存じだろうと思うのですが、どうでしょうか。この人たちは、三菱商事でどんな役職をしておった人たちでしょうか。
  386. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三菱商事の社員をしておったと承知しております。
  387. 村上弘

    村上(弘)委員 私たちの調査では、篠本遼一氏は三菱商事の大阪支社の合成樹脂部長、中村章氏は三菱商事の合成樹脂第一部製品課長をしておられたわけですが、あなたがこの会社がうまくなかったときに若干助けをしたという話がありましたが、確かに、三年前の昭和四十六年の夏のころに、この株式会社オーインが経営不振で倒産寸前におちいったときに、三菱商事と三菱化成にあなたが援助を求めて、当時資本金四千万円の会社に数億円もの融資を受けたということがありますね。つまりあなたはオーインの経済的な困難を三菱商事に助けてもらった、その結果オーインは三菱商事の系列会社になったわけです。そのとき、先ほど言いました三菱商事の合成樹脂部長であった篠本遼一氏がオーインの代表取締役に、また合成樹脂第一部製品課長であった中村章氏が取締役になった、こういう事実は、あなたは認められますか。
  388. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大体そのように承知しております。
  389. 村上弘

    村上(弘)委員 そうしますと、あなたが田中内閣の蔵相であったとき、つまり三年前に、あなたはそういう関係にあったわけですが、それだけじゃなしに、ことしの八月二十八日、つまり前田中内閣の蔵相のころですが、このオーインの増資にあたって、新たに二万株を引き受けておる、一千万円を三菱銀行の相模原支店に払い込んでおるわけですが、この事実も認められますか。
  390. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その後若干増資がございまして、払い込んだと思います。けれども、どのくらいでございましたか、記録を見てみないと、ただいま正確なことはお答えできません。
  391. 村上弘

    村上(弘)委員 ここには新株申し込みの証書の写しもあるのですよ。これにはあなたの判も押してある。だれか判を押したのかどうか知りませんが、一千万円も投資するのに、そういうことはまさかないだろうと思うのです。これはたいへん重大問題だと思うわけです。第一に、あなたは現職の大蔵大臣であったときに、三菱商事や三菱化成などと深い関係を持つその系列会社の増資にあたって投資までしておる、こういうことになるわけです。  御承知のように、三菱コンツェルンは、わが国の軍需産業でも中心であるわけですね。防衛庁からの受注をはじめ、国の財政、金融とも深い結びつきがあるわけです。また、御承知のように、商品投機や物価狂乱のときの悪徳商法などでも非常に大きな役割りを果たしておるわけです。日本の経済を大きく攪乱してきた張本人一つでもあるということがいえるわけです。あなたはそういう三菱商事からオーインに対して融資を受けておる。またあなた自身もそのオーインに資金を相当多額に出しておる大株主である、こういう状態であるわけです。しかも話によると、三菱商事に対して、あなたは、オーストラリアでの塩田開発権や道路建設をすることについて、いろいろな利権を、その見返りとしてあっせんしておるという疑惑やうわさまで出ておるわけです。こういう大企業とのくされ縁があってはならないというのが、清潔な政治というものの中心眼目でしょう。どうですか、こういう問題について、あなたはこれでもよいと思いますか。どう考えていますか。
  392. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まあ、この世の中というのは、間違いなく物事が計画どおり運んでまいるということであれば望ましいわけでございますけれども、いろいろ事業関係におきましても、当初もくろみましたことがうまくいかないケースが必ずしも少なくないわけでございまして、この会社の場合におきましても、たまたま私の親類の者が関係をいたして、不幸にしてうまくいかないということで、世間さまに御迷惑をかけるというようなことになってはいけないと存じまして、私といたしましては、この会社で利得を得ようとかいうような気持ちは毛頭ございませんで、世間さまに御迷惑をかけないように、何とか経営が維持されて、従業員が失業に至らないようにありたいと念願いたしまして、若干の助けをいたしたわけでございます。また、この取引関係にある三菱系統の会社に対しましても、応分の御協力を願えればしあわせであると、それを期待いたしたことも事実でございます。しかし、この代償といたしまして、三菱商事あるいは三菱系統の会社に対しまして、特別の利権をあっせんするというようなことをいたしました覚えは毛頭ありません。
  393. 村上弘

    村上(弘)委員 三菱商事に応分の応援を頼んだということはいま言われたわけですが、それでどれくらいの応援をしてもらったのですか。それもついでにはっきりしてもらったらいいと思います。
  394. 大平正芳

    ○大平国務大臣 どのくらいの金額になっておりますか、記憶にございませんが、三菱商事を中心にいたしまして、鋭意再建に努力しておると承知いたしております。
  395. 村上弘

    村上(弘)委員 普通の会社に何か協力しておるというような話とはわけが違うわけですよ。三菱商事、三菱化成、三菱コンツェルンと非常に重要な取引関係にある系列会社になっておる。そこから取締役はいまでも出向だといわれておるんですよ。これはもう明白な系列会社、そういうところの大株主でもあるわけですよ。こういう関係を閣僚であるあなたが、しかもすぐ最近に、ことしの八月に一千万円も出資しておるわけでしょう。こういうことがいま言われたようなことで済む関係だと思うのですか。こういう問題については、これはもっとはっきり考える必要があるんじゃないですか。  私は、三木総理が近く資産公開をやるということを言っておられることに対して、あなた自身も、こういう問題については、はっきりと公開して、身ぎれいになったらどうかということを思うのですが、どうですか。
  396. 大平正芳

    ○大平国務大臣 会社がうまくいかないという場合に、身ぎれいになりたいのはやまやまでございますけれども、そういうことは社会的な信用をこわすことになりますので、つらくても、会社が何とか再建に相なりまして、従業員並びに取引先等に不都合が起こらぬようにしてまいることこそが、私は人間としてのつとめじゃないかと考えております。
  397. 村上弘

    村上(弘)委員 もとはあなたのおいが代表取締役をやっておったわけですね。しかしいまは社長がかわっておるわけでしょう。あなたとは直接何の関係もないはずなんですよ。そうでしょう。しかし、にもかかわらず、篠本社長が三菱商事から天下ってきたそのあとに、しかもことしの夏に一千万円出資をしておる。これはどういう社会的な義理があるのですか。あなたが閣僚の重要な位置にありながらそういうことをやるのは、世間から疑惑を受けるのはあたりまえじゃないですか。  この問題に関連して、次に聞きたいことは、去年、四十八年度のあなたの申告所得の金額は三千五十六万円、税引きの可処分所得は一千万円前後になるだろうと思います。ところが、ことしの八月の二十八日のこの株式二万株の取得、合計一千万円の出資ですよ。こういうことになると、これは当然資金の出所に疑いが出てくるわけです。  三木総理は、本会議の代表質問答弁で、いろいろ資料提出を要求すると、大平大蔵大臣の判断にまかせると、こういうことを言っているわけです。あなたは、この守秘義務と国政調査権の関係についてはケース・バイ・ケースだと、こういうことを言ってきておるわけです。われわれはもちろん、この国政調査権に対するあなた方のこういう態度を絶対に認めることはできないわけですが、しかし、あなた自身が言っておることについて即していえば、あなた自身のケース、これは一体どう扱うか。私はあなた自身の財産負債明細書やその他必要な資料を提出することを要求します。どうですか。
  398. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは私の判断でいたすことでございまして、あなたの御要望でいたすいたさないときめるわけにはまいりません。  いま現内閣といたしましても、こういう閣僚の財産公開制度が慣熟していないときにおいてどのように考えたらいいか、内閣としても考慮中と聞いておるわけでございまして、私も、これは日本のデモクラシーのあり方といたしまして、非常に重大な問題だと思うのでございまして、とくとその問題についてはみずから検討してみなければいかぬと思いまして、今日ここでお答えすることはできません。
  399. 村上弘

    村上(弘)委員 あなた自身が判断することに違いないわけです、一つの面としては。あなた自身はケース・バイ・ケースで考えると、こう言っているわけです。事があなた自身にかかわる問題です。これは国益にかかわる問題でもなければ、この問題を発表したからといって、他の人にどういう損害を与える問題でもないわけです。しかしながら、あなたの去年の可処分所得と出資額との関係を見ると、当然申告所得に疑惑が出てくる。したがって、そういう問題についての資料は出すべきじゃないか、こういうことを私はここであなたに求めておるわけです。そのことについてあなたが判断する。どういうふうに判断しておるのか、それを聞かしてください。
  400. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私も公人といたしまして国務大臣の職にございますけれども、それより前に、一納税者でございまして、納税者といたしまして、誠実に申告をいたしておるつもりでございます。そして、いまあなたの言われた可処分所得の中でどのようにこれを消費いたしておりますかということと、それからまた既往における蓄積の中でこれをどのように運用いたしておるか、そういうものを、一納税者といたしまして、それなりのことをいたしておるつもりでございます。  いまこれを、どういうところから出た金でどうしたかということについて解明をする用意はございますけれども、そういうものを、この場であなたの御質疑に応じてやるべきかどうかということにつきましては、考えてみなければならぬ問題があることは、先ほど申しましたとおりでございます。
  401. 村上弘

    村上(弘)委員 田中前首相に関する資料要求については、ケース・バイ・ケース、いろんなことを言ってこられたわけです。しかし問題は、あなた自身にかかわる問題です。しかも、あなたがほんとうに公明正大にやろうという考えがあるならば、どこにでも明らかにすることができるはずなんです。  この問題については、引き続いて究明していきたいと思いますが、このように現職の閣僚の中にも大企業とのかかわりがある。またその地位をめぐって、地位利用の疑い、利権をめぐる疑惑、こういうものが現にあるわけですよ。ですから私たちは、この閣僚の規律を確立するということはきわめて重大だと思っておるわけです。そういう意味では、政府が今日までやってきた兼職禁止の申し合わせだけでなしに、共産党が提案しておるところの閣僚の規律の項目は非常に重要であるし、この問題について、私は国会が決議をする必要があるんじゃないかというふうに思っているんです。というのは、議院内閣制のもとにおけるわが国の政府は、当然国会責任を負うわけですから、国会が決議をするということが、最も閣僚の規律をしっかり確立し、主権者である国民の前でこれをはっきりと守っていくということを保障する、あるいは監視していくということが可能になると思うのですよ。  私たちが提案しているこの閣僚の規律の第一は、「大臣は、自己の私的利害関係のために、その地位や権限を利用してはならない。」第二に、「大臣は、職務上知り得た情報を自己の私的利害関係のために利用してはならない。」第三は、「大臣は、就任の日より一カ月以内に自己の所有する財産を公表すること。」この三項であるわけです。それで、同時にこの第四として、「閣僚に規律に反する疑いが生じたときは、内閣はすみやかにその疑惑を究明し、必要な措置をとるとともに、その結果を本院に報告すること。」これが決議案のおもな内容であるわけです。  このような閣僚の規律は、御承知のように、すでにイギリスでは一九一三年にアスキスの命題ということで実行してきておるわけです。だから、わが国でもできないわけはないわけです。わが党は、この閣僚の規律を国会で議決する、そうしてこれをしっかりと将来の保障にしていくということを強く提案していきたいと思うわけですが、三木総理は、この閣僚の規律を確立するという問題について賛成か反対か、どう考えるか、これをお聞きしておきたいと思います。
  402. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣は、いずれの内閣の場合もそうでありますが、最初の閣議において、御指摘のようなことの申し合わせをいたすわけでございます。そして兼職禁止のごときも、それが実行されておるわけです。ただ申し合わせだけして、いままで確実に実行されておるので、私は立法化の必要はないと考えております。国会でそういうような議決を必要とするという国会の意思ならば、国会の意思に従うのは当然ですけれども、現状においては、そういうことを立法化する必要がないくらい、これは実際に実行されておるということでございます。
  403. 村上弘

    村上(弘)委員 兼職禁止の問題だけで事を済まそうというような考え方が、現にいまのような問題を許しておるわけですね。ですから、そういう地位を利用したり、そういうことについて知り得た情報を利用してはいかぬし、私的利害関係のためにその地位を利用してはいけないという問題も含めて、はっきりすべきだということを私は言っておるわけです。それについてあなたに意見がありますか。
  404. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは当然のことですよ。閣僚の地位を自分権力自分の利益のために利用したり、閣僚で知り得た情報を自分の利益のために利用するというようなことは、これはもう法律以前の問題です。政治家として当然のことでございます。
  405. 村上弘

    村上(弘)委員 当然のことであれば、なおさらそれをしっかりと確認をし、確立する。院が決議をすれば、それを当然行なうというだけでなしに、総理としても、首相としても、そういうことをむしろイニシアチブをとってやる姿勢こそが必要なんじゃないですか。
  406. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう決議を国会でしなければならぬことは、私は恥ずかしいことだと思う。だから私は、政治家としてそれは当然のことです。国務大臣がもしそういうふうな、いろいろ閣僚の権限とか知り得た秘密を自己のために使うということは、もう政治家の風上にも置けないことだと思う。そういうことで、私は立法化の必要はないと思いますが、国会でその決議が必要であるという国会の御意思であるならば、それはどうぞ国会で決議をしてくださってけっこうでございます。
  407. 村上弘

    村上(弘)委員 それは、ことばを左右にしておるということとあわせて、たとえばそれはイギリスを侮辱すると言ってもいいでしょう。アスキスの命題でそういう命題が確立してすでにやってきておる。当然のことをやっておる。恥ずかしいことをやっておると、あなたは批判することにもなるわけです。これはたいへん恥ずかしい態度だと、むしろ言わなくちゃならぬと思うのです。  そこで私は、次の問題に入っていきたいと思うのです。民主主義、とりわけ暴力一掃の問題であるわけですが、暴力に対する態度の問題は、言うまでもなく民主主義と人権の根本にかかわる問題であります。本会議などでも取り上げられました兵庫県の八鹿高校事件に対する態度の問題は、それゆえにきわめて重要である。同時にこの問題は、教育の自主性や中立性、あるいは地方自治の根幹にもかかわる問題でもあるわけです。そこで私は、この問題をなぜこの予算委員会の場で取り上げるのかという点について、幾つかのことを最初明らかにしておきたいと思う。  第一は、この事件がそれ自体たいへん異常であるということ。被害者の人たちが高校の先生で、数がたいへん多いし、その被害も重いということです。場所は白昼の路上で起こっておるということ。それから学校の中でたいへんな集団リンチが行なわれて、やり方が残忍であるということ。しかも、延々十三時間、まさに教育史上前例がないできごとであるわけです。  第二に、この問題について、学校や地方自治体などの公的機関が、この暴力に屈服させられ、後にはこれを容認し、加担しさえしてきておるということです。  第三は、マスコミがこの問題をほとんど報道しておらないということ。真相がほとんど伝えられてこなかったということです。  第四は、残念ながら政党の一部がこれを公然と支持したり激励をしてきておるということがあるわけです。  第五は、そういう状況のために、この重大な暴力や蛮行が依然として温存されておるあるいは再発する可能性があるということです。  最後に、部落並びに部落の解放運動、この運動自体にも非常に大きな損害を与えつつあるということです。  私がこれから言います団体名、部落解放同盟という場合、朝田善之助氏を委員長とする解同朝田派、それからこの暴力行為を行なったその地域組織である、丸尾という者が支部長をやっておる組織、丸尾派ということで呼びますが、この部落に関する組織には、部落解放同盟正常化の連絡会もありますし、それから同和会もありますし、その他たくさんの組織がありますから、この点ははっきり前置きをしておきたいと思うのです。部落解放同盟朝田派をここで解同と言いますが、こういう蛮行のために、部落解放運動そのものが非常にゆがめられている、大きな損害をこうむってきているということからも、この問題はどうしても明らかにし、取り上げる必要がある、こういうふうに思っているわけです。  そこで、まず、事実問題について最初少し触れておきたいわけですが、すでに福田公安委員長が述べられておりますけれども、負傷者の数だけでなくて、負傷の状況、それからリンチのやり方ですね。使用した武具、凶器、これは一体どんなものであったか、ちょっとお話をしていただきたいと思います。
  408. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  先般、本会議におきまして、私がいささか報告をさしていただいたのでありますが、この事件は、御案内のように、ただいま実は捜査並びに逮捕をいたしまして取り調べをいたしておる段階でございまして、その内容自体について私が誤ったことを申し上げますと、それは非常に影響するところが大きい。同時に、そういうことでありますから、この説明は政府委員をしてするようにさせたいと思っております。事実でございますから、事実問題については。その上で、もしまた御質問があればお答えをさせていただきます。
  409. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 負傷者は全員で五十八名、そのうち十三名が重傷ということになっております。現在入院中がまだ十名ということになっておりますが、負傷の部位はいろいろございまして、一番重いのは骨折ということになっております。それから凶器、この点はいろいろと現在取り調べ中でございますが、凶器はやはり捜査上の一番のポイントになるものですから、このことは、この機会に言明することを避けたいというふうに考えております。
  410. 村上弘

    村上(弘)委員 負傷の状況しか述べられなかったわけですが、私のほうから簡単に述べておきたいと思います。  この骨折は、肋骨、腰椎、横突起などの骨折が十三名になっています。予ての他全身打撲。これは、やけどなどいっぱいありますが、特に失神した人がたくさんいるというのが特徴です。  それからリンチのやり方ですね。この点では、頭に対しては飛びけり、それからほうきの柄でなぐる。電柱や机、壁にぶつける。それから毛髪を引っぱる。顔に対しては、ほおをひねって、単にひねるんじゃない、ちぎり取るように引っぱるわけです。長ぐつでなぐる。それからつばをはきかける。このつばも、流れるほどつばをはきかける。それから水の入ったバケツやたらいの中に顔を突っ込む。たばこの火を顔や首に押しつける。胸や腹や腰に対しては、金具のついた半長靴でける。手足に対しては、靴やいすの足で踏んづける。指の関節の部分にボールペンをはさんで、そして強く握る。頭から全身に水をぶっかける。婦人教師を裸にする。これはもう破廉恥きわまりないです。片山先生などは、水をかけて裸にして、それに扇風機をかけて冷却する。耳にハンドマイクをあてがい大声でわめく。汚水を無理やりに飲ませる。鼻の中に水を入れる。それから二、三人がかりでかかえ上げて地面にたたきつける。ありとあらゆる蛮行を尽くしてきたわけです。  それで、武具、凶器については、証拠になるからということを言っていましたが、牛乳びん、青竹、腰かけ、ハンドマイク、たばこの火、メリケンサック、びょうのついた半長靴、南京錠、鉄製のバール、こういうふうなものを使ってやっておるわけです。  この際、ついでにちょっと聞いておきたいわけですが、十一名を逮捕するときに、警察はどれくらい動員しましたか。これは公安委員長
  411. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 十二月二日に四名を逮捕する際は約五千名、十二月十二日にあと七名を逮捕するとき約二千名ということになっております。
  412. 村上弘

    村上(弘)委員 二回目は……。
  413. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 二回目は但馬地区は二千名でございます。
  414. 村上弘

    村上(弘)委員 連合赤軍と浅間山荘で銃撃戦をやったときの警官の動員が、新聞報道ですが、実動員大体千二百人ですね。これは十一名逮捕。最初は四名です。四名逮捕するのに五千人を動員しておるのですよ。いかに凶悪犯であったかということです。  私は、この暴行や集団リンチがどのように行なわれたかということを、ごく簡潔に最初に述べておきたいと思うのですが、路上の場面で最初暴行をふるった。次は学校の中で三カ所。第二体育館に最初全員を連れ込む。そこで話し合いに応じようということで、話し合いをさせるための暴力。それから次は、話し合いだと称して、本館の会議室や解放研のクラブの部屋、部室に連れていく。これが学校の中の第二現場なんです。第三回目は、第一体育館というところに連れていって、ここで全部を糾弾し尽くして、それで勝利式みたいなセレモニーをやっているわけなんです。  こういうことになるわけですが、路上の模様について、きょうは現地の方も来ておられますが、簡単に申してみますと、稲津先生という先生が告訴状の供述書に次のようなことを書いております。これは校門から約三百メートルの、商店街の幅四メートルの三叉路なんですね。ここで丸尾らにはさみ打ちになるわけですが、そこでは、「スクラムに対して、左右の腕を力一ぱい数回けり、こぶしで頭を数回なぐり、くつでからだのあちこちをける。ショルダーバッグはちぎれ、防水ジャンパーは脱がされ、めがねはどこかへ、バンドも同様、運動ぐつも脱がされ、くつ下も取られ、はだしだ。このころ頭はぼうっとしていた。両手足を持たれ、付近を通りかかったトラックの荷台にほうり込まれる。そのときトラックにはすでに数人の教職員がおって、井上先生は鼻血を流した。私は苦しくてうつぶせになっていた。そのトラックの運転手は病院に運ぶものと勘違いしたらしく、学校を通り過ぎて走る。そうすると、運転手の窓ガラスがこわされて、丸尾らが運転手をなぐる。そして運転手はおろされ、荷台にやはりほうり上げられた」、こういうようなことが起こっておるのですね。通りかかったトラックがこういうことのために使われ、運転手までがリンチにあっている。  そういうふうにして、第二体育館に全員が連れ込まれるわけですが、ここの状況について藤村先生の供述書ではこういうふうになっていますね。「一人ずつバラバラにされ、私は一〇人位の、顔を見たこともない男達に取り囲まれ、「お前らなんで解放研と話をしないか」「差別教育をするのか」等と目の前でどなったり、耳の横で携帯マイクのスピーカーで大声を出され、更に、後から髪をつかまれ、「上を向け」と言いながら、坐ったままの私の顔を無理に上に向けさせ、横から手拳で殴ったり、皮グツで蹴られたりしました。」飛ばしますが、「黙っていると一層ひどく殴る、蹴る。誰かが「水をくんで来い」と言い、私は着ていたコートとブレザーを脱がされ、バケツの水を後頭部から背中にかけて、シャツの中にかけられ、更にくり返し殴る、蹴る、水をかける等をされ、結局三回もバケツの水をかけられ、痛みと寒さで気が遠くなりそうでした。」こういうふうに言っております。  それから、この校内の第二現場の状況について、片山先生の供述を見ますと、この先生は教員組合の支部長さんで、最も残忍なリンチを受けたわけですが、三時までは第二体育館で糾弾され、それから解放研の部室に連れてこられたわけです。「椅子に坐らせ」このガキ、しぶとい野郎だ」とどなりながら顔面を手拳で往復ビンタのように数十回殴りつづけ、さらにみぞおちを三回位立て続けに蹴とばしたため嘔吐し、気を失いそうになった。この暴力を振った男はプロの暴力団のような強力なパンチの持主であった。」「その後、タバコの灰の入ったぞうきんバケツの汚水を無理矢理口に注ぎこみ、その上鼻にもバケツで水を注ぎこみ、呼吸を著しく困難にした。「お前は片山か」「お前みたいなものは死んでしまえ」「しぶとい野郎だ」などと罵声を浴びせた。さらにメリケンサックを手拳にはめた男が、その手拳で十数回顔面を殴りつけた。このような状態は同夜九時すぎまで続いた。」十時過ぎから――もうすでに晩の九時になっておるが、その後さらに会議室に連れ込んで、「同和教育について自己批判し、「確認書」を書くように強要したが、同告訴人がこの要求を拒否したところ、傍にいた男が同告訴人の手の指を反対側にねじり、鉄のバールで脇腹を数回にわたり突いた。」さらに休養室に連れていって、「被告訴人らは、殆ど意識を失いかけている同告訴人を休養室に連れ込み、着がえさせるという名目で裸にし、扇風機をかけて、冷風を直接濡れた身体に吹きつけた。同夜十時頃、それでも屈しないでかすかに生き長らえている同告訴人に対して最後の止めをさす目的で、同告訴人の腰部に対して集中的に力一杯蹴りあげてきた。この為、同人はついに力尽き、全ての抵抗力を失って意識朦朧となった。」こういうふうに供述しているわけです。  私はお断わりをしておきますけれども、このとき、この学校に動員されていた部落の人たちが、みんなそういう人たちであったんじゃないということです。もうやるなと涙を流してとめておった人もあるということですね、先生などの供述では。それからけんかをしているのですね。つまり、やってはいかぬという人に対して、やるべきだといって、この幹部たちが押しつけるわけですね。それで内部でけんか状態が起こっているということも、先生方はそのとき話をしています。  それで、糾弾し尽くして最後の場面になるのですが、この模様について、米田先生という方が次のように言っています。ここの場面は、最後の勝利の祝賀会みたいなものであって、十六ミリのフィルムを丸尾らはとっておるわけですね。ここの場面を特に一番クローズアップしているのですが、「丸尾支部長が「今から糾弾会を行う」と言って、教員を二列に並ばせ、同盟員数百名が並びました。その上で、一人一人に職名と名前を言わされ、丸尾が「自己批判書」を片山に示し、「これは君が書いたものだな」と言っておりました。又、丸尾は、「八鹿高校の職員室へ入って来たら、お茶の一杯も出してくれるやろな」。これはもうほんとうにファシストの態度ですね。やっつけて瀕死の状態の者に対して、今度職員室へ来たら、わしにお茶の一ぱいも飲ましてくれるやろうなと、こういうことを言うておるわけです。そうして、そのもう倒れかかっておる先生方の前をハンストの生徒が行進したということになっている。「そして、「糾弾会」が終わり、その後、全員職員室へ連れて行かれ、後から校長も入って来ました。」というふうに言われております。  そこで、そのときの負傷の状態がいかにひどかったかということを片山先生の写真で――これもまあ相当あとの写真であるわけですが、この写真を見ていただくとわかりますように、この先生は細面の方なんです。こちらの写真が現在の状態で、まあどちらかというと細面ですね。ところがこのときはもうまさにフットボールみたいに顔がふくれ上がっておるというような状態であるわけです。リンチの状態がいろいろな写真でとられておって、そのときの直後の状態ではありませんけれども、これはまあ皆さんのほうに、事実を知っていただくためにちょっと回して見ていただきたいと思うのです。  そこで私は、以上の事実に立って、文部大臣に最初にお尋ねしたいと思うわけですが、このような暴行や集団リンチで、話し合いだとか確認会だとか糾弾会とそれを呼んでおるわけですが、そういうことをやるために学校を使用しているわけですね。校長は使用さしておるわけです。このことはよいことか悪いことか、どうですか。
  415. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、この県立八鹿高校の事件を聞きまして、学校教育には絶対に暴力というものがあってはならないと思います。校長の問題につきましては、校長先生は、私の理解しておりますところでは、この事件が起こるまで指導に当たってこられたわけですが、防ぎ切れなかった、しかし加担したのではないというふうに承知いたしております。
  416. 村上弘

    村上(弘)委員 まあ、防ぎ切れなかったということは、やりたくないことをやったという意味かと思いますが、私が聞いておるのは、こういう集団リンチ、暴力をする、そういう行動をやるために学校を使用させるということについてどう思うか、こういうことに学校を使用さしてはならないということは明らかにしておくべきじゃないか、これをお尋ねしておるわけです。
  417. 永井道雄

    永井国務大臣 学校が話し合いの場所であるのは当然でありますけれども、暴力をもって糾弾をするような場所じゃないということは、申し上げるまでもないことであります。
  418. 村上弘

    村上(弘)委員 この糾弾闘争の現地闘争本部、つまり八鹿高校差別教育糾弾闘争共闘会議なる団体が、この丸尾らの暴力と脅迫でいわばデッチ上げられておるわけですが、この共闘会議の現地闘争本部が校長室の隣の応接室に設置されておったのですね。こういうことも、管理者である校長は許してはならぬことだと思うのですが、どうですか。
  419. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまのような事実につきましては、私はまず、この直接の教育行政の担当は兵庫県教育委員会でございますから、兵庫県教育委員会と連絡をとりながら、すでに進んできておりますが、いまの問題については、兵庫県教育委員会からの詳細な報告というものを受けなければならないと思っております。
  420. 村上弘

    村上(弘)委員 はっきりとこういう行動が行なわれ、そしてその結果、逮捕もされておるわけですね。現地では、その解放車なんかがどんどん学校の中に出入りしておって、彼らが学校の中で暴力をふるって、これだけの負傷者が出ておるということもはっきりしておるわけです。その行動の闘争本部が校長室の隣の応接室に置いてあるわけですね。こういうことについて、いいことか悪いことか、こういうことがあってはならぬことかということを聞いておるのですよ。
  421. 永井道雄

    永井国務大臣 暴力が発生するおそれがあるような闘争本部が学校内にできるということは、悪いことでございます。そこで、これにつきまして兵庫県の教育委員会は、事件が起こる前から職員を派遣いたしまして、そういうおそれがあるというので、指導に当たっていたというふうに私は承知いたしております。しかるに事件が起こりました。事件が起こりましたので、これは文部省としてもまた責任がありますから、そこで文部省は、山崎政務次官に現地の兵庫県におもむいていただきまして、これは当然悪いことでありますから、したがいまして、兵庫県の教育委員会委員長、教育長、副知事にお目にかかって、そして指導助言の立場で、学校の中で暴力が行なわれることは絶対に排除しなければいけない、そして授業が再開されなければいけない、さらに教育が正常化されなければいけないという点にわたって、指導助言に当たったわけでございます。
  422. 村上弘

    村上(弘)委員 問題にはっきり答えていないわけですが、校長は、八鹿警察署長が内部の状況を問い合わせ、警察力の発動をしようかという話が五回あったわけですが、そのつど、平穏に話し合っておると言って、この警察力の発動をいわば事実上拒否して、そして丸尾らが学校の中でこの残虐なリンチをやり尽くし、彼らの目的を達するようにこれを保障する、こういうような行動をやっておるわけですね。  それからこの校長は、教頭に次のような指示をしておるわけです。第二体育館に行って、最初入ってきた学校の先生方に対して、だれが来ておるか、だれが来ておらないか、この名前を調べてこいということをやって、そしてそこにいなかった先生方に対して電報を打っておる。業務命令ということで、学校に出てこいという電報を打っているんですよ。この電文を見ると、「事態収拾のため、学校におけるすべての校務運営並びに教育活動について校長の指揮監督に従うことを命ずる。直ちに学校に復帰せよ。」こういうまさに半死半生のような状態に追い込むための場所に、おらぬ先生にまで電報を打って、そうして職務命令だ、命ずる、出てこい、こういうふうなことをやっているわけです。これが正当な職務命令と言えますか。どうですか。
  423. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、先ほどから申し上げましたように、この問題に関しましては、非常に重大な事態でありますから、文部省に当然責任があるのです。しかしながら、非常に重大な事態であって、その責任者というものは、当然に文部省とともに兵庫県教育委員会にあります。そうして暴力が発生したということは、これはやはり絶対に悪いことです。その事態について詳細に調査をしなければいけないということで、その調査が進んで、そして文部省が報告を得ようという立場にありますので、いまそういう方針によって調査を進めているということを申し上げます。  繰り返し申し上げますが、暴力が行なわれる、そしてそういうことのために教育委員会あるいは教育行政の立場というものが暴力を助けるというようなことがありましたらば、これは悪いということは、もう申すまでもございません。
  424. 村上弘

    村上(弘)委員 具体的な問題は兵庫県教育委員会ということを言っておられるわけですが、その兵庫県教育委員会が、実はこういう集団リンチ、暴力行為に事実上加担し、共謀しておる。これはもうちゃんと事実がある。この事件の前日、但馬教育事務所の緊急指示というのがありまして、但馬一市十八町の教育長と教育委員に緊急合同会議を招集しておる。ここには県教育委員会の杢谷次長も参加しておる。そうして八鹿高校問題については、解同、つまり部落解放同盟朝田・丸尾派らを支持する、こういう決議を採択しておるのです。そうしてその当日はどういう状況かというと、数日前から杢谷教育次長らが八鹿へ出ており、山岡主任指導主事、それから畑中同和教育指導室参事、喜始、植田、芦田、こういう教育委員会関係の者を現地に派遣しておる。そして、上田平雄但馬教育事務所長が赤はち巻きを締めて終日現場におったじゃないですか。また、前田昭一社会教育主事は、この第二体育館の現場で、連れてこられた先生方に対して、「前もってこんなことになると言っておったじゃないか」というふうなことまで、そこで言うておるわけです。つまり、教育委員会自身がこういう暴力行為をやっておる朝田・丸尾らの行動を支持する、そしてこの糾弾行動に実際に参加して、はち巻きを締めて現場に入っておるのです。その教育委員会に、あなたは報告を待つ、どういう状況か言えと――。大体、兵庫県の教育委員会関係の当事者はみんな、こういう事実はなかった、あるいは、あったかどうかわからない、こういう態度を、口裏を合わせるようにとっておるわけです。  この問題について、これは八鹿町のある同和地域の人からの手紙なんですが、こういうふうなことが言われています。これは養父町解放研加入中学生を持つ一母親です。丸尾らが暴力で脅迫してつくり上げさしたこの解放研という組織の中に入れられておった生徒の母親なんですね。長いですから途中だけにしますが、「いままでの確認、糾弾とは一方的な罵倒であり、かりにも民主的とはいえないものです。八鹿町民はじめ各町で暴力に対して一斉に立ち上がろうと団結しつつあり、また全国各地から調査団が続々と町へ来られるというのに、暴力集団は、いま、十一月二十二日の道路上の「解同」朝田・丸尾派の行動を証言したりすると家に火をつけてやるとか言って、それぞれ脅迫をしたり、おどして回っているので、またふるえ上がっている始末です。その上、町長は、道路上で暴力のあった商店街目撃者の家を一軒一軒回って、「暴力はなかったですね、見なかったですね、そのとおりに証言してくださいね」と言っています。こういう事実を日本全国の皆さんはほんとうのことと信じられますか。しかし事実なのです、このおそるべき状態が。あの二十二日、冷雨降る川原に勇気をふるい起こして立ち上がった千人近い八鹿高校生は、いま歯ぎしりをして、おとなたちのふがいなさを嘆いています。きょうも高校生自治会の役員たちは、連日二時、三時まで、めぼを出し、睡眠不足でくたくたになって、このことに取り組んでいると聞いています。暴力に屈することなく、ほんとうの差別をなくすることでは、部落の中でも理解あるまじめな話し合いで解決しようという人は一ぱいいます。これを妨げているのは、利権にくらんだほんの一部の暴力分子たちです。これらを排除して、真の差別のない地域づくりを考えるにはどうすればよいか、皆さん、手を取り合ってこのことを訴えましょう。名前を書いて出したいが、事情を察知してください。」こういうふうに書いてあります。  ここにあるように、町も学校もまだ自由にものが言えないわけですね。逮捕されて少しは空気が変わってきておるけれども、まだ、政府がどういう姿勢を示すか、文部省がどういう姿勢を示すか、この姿を見ておるわけですよ。ですから、あなたが、県教育委員会のことだとか、学校長がどうであったか、闘争本部があったかなかったかわからぬからなどという態度をとっておる限り、このおかあさん方は、ああ、ほんとうに三木内閣は暴力に対してしっかりした態度をとっておるんだ、そういう問題は許さないんだ、そういう教育政策をとらないんだということを見るか見ないか、これを注目しておるわけです。  もう一度、そういう、学校の中に闘争本部を置くというようなこと、職務命令を出してリンチの場に引き戻そうとするような残虐な態度をとったことがいいことか悪いことか、そういうことは今後許しちゃならぬということをはっきり言ったらどうですか。
  425. 永井道雄

    永井国務大臣 繰り返し申し上げますが、文部省のこの問題に対する立場は非常にはっきりしております。といいますのは、まず第一に、学校教育の中で絶対に暴力というものがあってはならないということであります。第二は、同和教育の原則といたしましては、これはもう同和対策審議会の原則が答申に示されておりますが、教育の中立性というものを守っていかなきゃいけないということでございます。  そこで、では、教育委員会というようなことを一々言わないで、文部省はひとつやらなければいけないじゃないかという意味にも、御発言がとれますけれども、私はそうではないと考えておりますのは、やはり、教育の場合に、文部省がすべてのものに当たるというのではなくて、わが国の場合に、地方自治というものを尊重するという原則があり、さらにまた、地方自治の中で一般行政と協力しながら、特に教育につきましては教育委員会が当たっていくという、そういう非常に重要な原則というものがあるわけでございます。  ところで、それでは兵庫県教育委員会あるいは文部省は、いままでの経過の中において何事もなしてこなかったかというと、決してそうではありませんでした。まず、兵庫県教育委員会は職員を事前に送っておりまして、しかし、それが事前に送られていたにもかかわらず事件が起こったということは、御指摘のとおりであります。そこで今度は十二月三日に、文部省は山崎政務次官を兵庫県教育委員会に送ったわけであります。そしてその結果どういうことが起こったかというと、ともかく現段階におきましては授業が再開されるに至りました。しかし、授業が再開ということだけでは不十分であって、ほんとうに和気あいあいの中に教育というものが行なわれるべきものであることは申すまでもございません。兵庫県教育委員会は、これは兵庫県教育委員会において同和教育基本方針というものを出しているのですが、その原則というのは、先ほど申し上げました、文部省における同和教育の中立性の原則というものを確認しているものであります。そこで、文部省が先ほどのような指導助言を行なったのに対応いたしまして、兵庫県教育委育会も同じ立場に立ったと思われますのは、十二月十四日に予定されておりましたところの現地を中心とする大会です。これはその事前に状況がわかりましたために、兵庫県教育委員会の十三日の指示によって、十四日は中止されるに至りましたから、授業再開、それから十四日の大会中止というふうに、少しずつ事態が進んできているという、兵庫県教育委員会の努力というものが見られるものというふうに私は了解いたしております。
  426. 村上弘

    村上(弘)委員 その十四日の集会を県教育委員会がやめた理由は何ですか。
  427. 永井道雄

    永井国務大臣 理由は、先ほどから申し上げました二つ原則でございます。それは私たち文部省の立場として申し上げた原則でありまして、暴力の排除、そうしてまた教育の中立性というのでありますし、また兵庫県教育委員会の同和教育基本方針というものが示されておりますから、私はそれに沿って指示が行なわれたものと了解いたしております。
  428. 村上弘

    村上(弘)委員 ということは、十四日の集会は教育の中立性に反しておる、そのために中止をした、こうとっていきたいと思うのですが、あなたがそういうことを言っているというふうに理解いたしますが、解放同盟と連帯するとか提携するということは、同和教育の中立性とどういう関係になるか、この点についてはどう考えますか。
  429. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、先ほどすでに御指摘がございましたように、同和教育に当たっております団体というのは、解放同盟を中心にしたものだけではなく、他のものもあるわけでございます。そうした諸団体というものの存在、そうしてまたそれが教育というものに関心を持っているということは当然尊重すべきことであって、それらの協力を得ながら学校教育を充実するように、教育委員会というものは活動していかなければならないと思いますが、党派的であってはならないと思います。
  430. 村上弘

    村上(弘)委員 そこはわかりましたが、それまでの間に、実はそれに反する行動がたくさん行なわれておる。そして、この問題の発端だとよくいわれておる、解放研と話し合わないからとか、解放研を認めよだとか、解放研を認めないのはそれは差別であるというふうなことを学校の先生方に押しつけるということが、それ以前のすべての問題を貫いておるわけですね。で、ハンストをやっておる、ハンストをやっておるのに話し合いをしない、だからこういうことが起こったんだというふうなことを言う者もあるわけです。しかしながら、ハンストをやる、これはビフテキを食わしてやっておるわけですが、このハンストをやる以前にどういうことが出されてきておるかといえば、この解放研を認めよ、これに三人の顧問を置け、この顧問は自分たちが指名する者をやれ、話し合いをやれ、自分たちの同和教育が間違っておることを認めよとか、こういうふうな内容を持っておるわけですね。それに従わなければ、これは無限の話し合いが要求される。これは普通だったら・話し合いというのは、相互の意見を自由に述べ合うわけですね。そうして一致する場合もあるし、一致しない場合もあるわけです。ところが、この解同丸尾らの言う話し合いというのは、屈服をするまでやるわけですね。彼らの意思に従うまでやるわけです。これは八鹿高校事件そのものなんですね。結局、それ以前の段階は、彼らの意思に思うようにならない、そこでだんだん威圧を加えてくる。これがずうっとエスカレートしてきて、解放車が入ってくる、学校に投光器が据えつけられる、こういうふうな状態が生まれて、いよいよ身の危険を感じて、先生方はきょうはもう集団でやられるかもしれぬということを察知して、それでもうみんな身を守るためにスクラムを組んで帰っていくわけです。  先生方は、自分たちは圧力や暴力で良心を変えることはできない、こういうことを言っているわけですね。それに対して、ハンストという道具立てを背景に、暴力をもって話し合えと言う。そうしてその話し合いの中身は、自分たちへの屈服、差別を認めよ、差別者であることを認めよ。これを一たん認めたら、それを自己批判せい、そして行動で示せ。そして新たな糾弾闘争にどんどん参加させられて、あれほどの大量の人間が動員される状態がすでにできておるわけです。  こういう話し合いに応じないということは、教育の中立性、教師の良心を守る上に当然のことだと私は思うんですが、あなたはどう思いますか。
  431. 永井道雄

    永井国務大臣 私は繰り返し申し上げますが、文部省の方針は不動であります。教育というものに暴力というものはあってはなりません。次に、教育というものを推進していく上には、教育の中立性というものが必要であります。しかし、それは方針でありますから、それを実現していくためにはさまざまな努力が必要でありますが、それは、先ほどから申しましたように、中央にあります文部省、それから地方にあります教育委員会というものが、それぞれ果たすべき役割りがあって、そしてそのレールの上に乗せながら、申し上げた方針というものを推進していくのが文教行政の立場だと思います。しかしながら、さらに文教行政だけで処理し得ない問題が起こります場合には、学校内といえども、治安当局というものが活動しなければならないということ、これもまた申すまでもない、当然、文教行政として連携、協力しなければならないものと考えております。
  432. 村上弘

    村上(弘)委員 どうも的はずれのことを、それ自身は間違っていないことでありますけれども、私が聞いておる具体的なことには答えていないわけです。学校の先生が、自分の良心を守る、教育は中立でなくちゃならない、彼らの支配に服するか、それでなかったら残虐なリンチを受けるか、どちらかにしかならないような話し合いですね。この話し合いに応じないからといって、校長は職務命令まで出しているのですよ。こんなことが同和教育の正しいあり方ですか。同和教育以外であるどんな教育だって、こんなものは正しくないことは明白じゃないですか。こういう具体的な事実に対する文部大臣の判断を聞いておるわけです。  同和教育それ自体についてもお聞きしたいと思うのですが、ここの学校の先生方の同和教育がよく行なわれていなかったためにこういうことが起こったというようなことも、一部ではいわれておるわけです。事実はどうか、一体どこが間違っておるのか、これは具体的に指摘しているものはだれもいないのです。それはそのはずなんであって、ここの先生方は、もう五年前から、どこの学校よりも早く同和教育に取り組み、部落研も組織し、寝た子を起こすなといわれておるような状況のときから、生徒と一緒に部落にも入っていって、そして実態もよく知って、差別がなぜ生まれるか、どうしてなくさなくちゃならぬかというようなことについても学習をする。同時に、この同和教育というものと解放運動というものとは区別しなくちゃいかぬ、教育と運動とはこれは別なんだ、こういう県教育委員会の教師用の「同和教育の手引」ですね、手引きどおりに、運動と教育は厳密に区別するという立場も、これまた貫いてきておるわけです。ところが、この朝田派らが言うのは、丸尾らが言うのは、解放研の言うのは、同和教育は行動なんだと、まさに教育と行動を一体のものにし、しかも、自分たちの行動に服さなければすべて差別者なんだ、こういうことを押しつけて、その手段として話し合いというものを押しつけてきておるわけでしょう。  こういう具体的な内容をもってきているわけですが、この同対審答申は、御承知のように、「同和教育と政治運動や社会運動の関係を明確に区別し、それらの運動そのものも教育であるといったような考え方はさけられなければならない。」とこういっているわけです。県教育委員会は、その解同と連帯するあるいは解同を支持するまさにたくさんな団体の中の一つだけを支持し、その運動と連帯し、しかも彼らの非常に間違った理論と方針、それをまるまる支持する、こういうふうな態度をとってきておるわけです。どちらが正しい同和教育をやっておったのか。県教育委員会自身が、自分がきめた同和教育の方針、県教育委員会が出しておる同和教育の教師用の手引き、これを自分でかなぐり捨ててしまって、そうしてまるで解同の丸尾らの運動を支持する、それと連帯してやる、こういうことをやっておるじゃないですか。これはもう、ちゃんと県議会における教育長の答弁でも出ているじゃないですか。だから、こういう状態からいえば、どちらが正しい同和教育の立場に立っておったのか、こういう問題についてどう判断するかということと、文部省は同和教育に対して、解同丸尾やら朝田が言っているような、運動と教育は一体だとして、自分たちの考え方を押しつける、こういうやり方が正しいかどうか、どちらが正しいか、このことについての見解もあわせてお聞きしたいと思うのです。
  433. 永井道雄

    永井国務大臣 私、文部省の方針というのは申し上げたとおりでありますが、さらに政治活動というもの、あるいは政治運動というものを学校教育の場面に入れ込んでくるということは、教育と政治活動の混同でありますから、これは絶対にいけないものである、さような立場をとっております。
  434. 村上弘

    村上(弘)委員 そのことに関連して、いま文部大臣が、ある特定の集団だとか、特に政治に対して、政治を教育に持ち込んではならない、あるいは特定の政治と結びついてはならぬ、こういう趣旨のことを言われたわけですが、学校の生徒をこういう糾弾行動に連れていくというふうなことについて、あなたはどう考えるか。  たとえば狭山差別裁判糾弾闘争というのが全国的にやられてきておる。裁判そのものは、刑事事件については公正にやる、事実に基づいてやる、これが一番大事なわけです。疑わしきは罰せず、これ必要です。しかし、差別裁判というふうに頭からきめつけてしまって、それに対してどんどん子供を動員していく、それに学校の生徒まで連れていく。たとえば和田山中学校では、校長先生まで一緒に、この糾弾闘争に子供を連れて、これも結局丸尾派らの圧力によってではありますけれども、参加しておる。あるいは大阪でも松原三中などは、やはり子供を、裁判に対する糾弾闘争、こういうことに動員しておるわけです。そういう状況はもう一ぱいあるわけです。こういうことについて、こういうことは今後やっちゃいかぬということを、はっきりここで言明されたらどうですか。
  435. 永井道雄

    永井国務大臣 私は先ほどからはっきりと言明しているつもりでございます。政治運動というものを教育の場と混同して、そして政治活動によって教育を左右しては絶対にいけないということを申し上げております。
  436. 村上弘

    村上(弘)委員 その一般論が現実にどのように適用されるのかということが、いま問題なわけですよ。ですから、具体的に起こったこういう事態について、あなたは、それは政治活動に子供を動員していることだからよくないことだ、こうはっきり認めるのか、いや、それはどうかわからぬということなのか、やってもよろしいことになるのか、その判断がはっきりしないわけです。いまのような糾弾闘争に学生、生徒を動員する、これはあとでも触れたいけれども、橋本先生糾弾闘争というのがある。ここにはこの写真がありますが、こんなに生徒をたくさん動員して、そしてその家を包囲して、そして糾弾をやっておるんですよ。こういうことに生徒を参加させること自体が、あなたの言う教育の中立の趣旨に合うかどうか、このことをはっきり言うてください。
  437. 永井道雄

    永井国務大臣 私が申し上げておりますのは――これはよく見ました。大学で長く教えておりましたし、非常に私よくわかるのです。どの党派に限らず、政治活動というものを教育と混同するのは絶対にいけない、そういうことです。そして、しかしながら具体的に事態が生じた場合、兵庫県八鹿高校のケースについて申し上げましたが、それについて、今度は文部省はどういうふうにやっていくか、そのやり方については、それぞれのケースがあります。そしてそのケースに応じて、それはまた、わが国の法律に基づいたところの組織でございますから、でき得る限りこの原則というものを貫徹すべく努力するという、そういう決意であります。
  438. 村上弘

    村上(弘)委員 そのケースはどうですか。
  439. 永井道雄

    永井国務大臣 これは、政治活動というものが教育というものの中に混同されているというケースであるというふうに認定いたしますならば、これはいけないということでございます。
  440. 村上弘

    村上(弘)委員 学校の先生の糾弾行動ですよ。そういう問題に対する一つ一つの教育行政というものを、ほんとうに正確に、厳密に、厳正にやるということが非常に重要だと思うわけです。今日までこういう問題に対する文部省や教育委員会の態度がきわめてあいまいであったり、あるいは事実上それを許しておる、こういうことがあるために、教育の中の荒廃というものが非常な状態になってきておる。この問題を少し私は指摘したいと思うのです。  たとえば、大阪の浪速区の難波中学校というところがあります。ここの学校では、大阪の場合は、朝田、上田、こういうメンバーが解同の幹部であるわけですが、朝田・上田派、彼らの支配というものは非常なものですよ。その結果、学校の先生方が、部落解放同盟あるいは同和地域の生徒に対しては、もう何か間違ったことをやっておっても、それについて正当な指摘ができないわけです。もしそれを指摘して差別者だと言われたら、もうその先生はたいへんなことになるからです。ですから、もうここでは生徒がどんな行動も自由自在にやっておるわけです。この浪速区の難波中学校の場合は、教室で生徒がタコ焼きを焼きおる。それから教室の中に爆竹を投げ込む。授業時間中に自由に出歩くわけです。しかも、その生徒が自由に出歩いている地域の解同の幹部からは、子供が自由に出歩くのを先生が見のがしておるのは差別だ、こういう批判を受ける。そうすると、これはもうほっとけないから、出歩くのについてくる。ついていっても帰らないですね。そうすると、帰れば糾弾されるから、その生徒のあとについておるほかない。引き戻すことができない。一日じゅうその生徒のあとについておる、そのクラス委員なんかもついていく、こういうような状態であって、十月二日以来一週間授業ができなかった、こういうふうなことも起こっておるわけです。これは非常な教育の荒廃ではないか。朝来でも、不法集会に先ほど言ったように生徒を動員して行っておる。  こういう教育の荒廃が生まれるような状態、これに対して、文部大臣はもっと現地を実際に見て、それを調査してこれをただす、もっと具体的な事実に即してあなたの一般論を適用する、こういう措置をとる必要があるのじゃないか。どうですか。
  441. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの問題も、まず文部大臣が現地をよく視察して、そしてその原則ということだけではいけない、よく調べろ、それは全く調べるということは必要であると思っております。  そこで、大阪の問題についても、私は非常に重大であると考えましたので、いままで調べたことを申しますと、おっしゃいますように、十月二日時点において授業が行なわれておりませんでしたので、学校側が学年集会を開催して注意をいたしました。ところがなかなか簡単に解決いたしませんでしたけれども、幸いにして十月十一日から通常の時間割りでもって授業が行なわれるようになりました。そこで学校側では、学年集会のために欠けた授業時間をどうやって補充するかという問題がございますために、冬季休業期間中に、その一年生のみを対象として三日間補習授業を行なうという段階に到達いたしましたので、御報告をいたしたいと思います。  かように一つ一つケースがございますが、私はただ原則を申し上げているのでなく、そのケースにあたって原則の貫徹というものをはからなければ教育の荒廃が救えないという点において、非常に重要なポイントであると考えております。
  442. 村上弘

    村上(弘)委員 次は、自治体が八鹿高校事件の問題でとった態度の問題についてお聞きしたいと思うのですが、同和予算の性格や目的はどういうところにあるか、これは総務長官にお聞きしておきましょう。
  443. 植木光教

    植木国務大臣 同和問題は、憲法の人権の基本的な保障にかかわる重大な問題でございますから、同和対策審議会の答申があり、四十四年から同和対策事業特別措置法ができましたし、また長期計画が立てられまして、今年は後期の第二年に当たっている状況でございます。  現在まで、四十四年度には二十七億円の予算でございましたけれども、四十九年度には二百四十八億円というふうにたいへん大きな予算をとっておるわけでございます。私どもといたしましては、ことし同和対策室が総理府の中にできましたので、各官庁において行なわれます行政を総合的に調整いたしているのでございまして、地方に対しまして……(村上(弘)委員「あなたのところが何をしているか聞いているのじゃないのです。同和予算の性格と目的を聞いている」と呼ぶ)その予算を各地方の実情に応じて即応して使用していただくというのが、これは本来のひとつのたてまえでございます。同時にまた、地域住民がひとしく公平にその恩恵にあずかるということが、私どもがいまとっております諸施策の理念でございます。
  444. 村上弘

    村上(弘)委員 同和予算の性格、目的とは的はずれのことを言っているわけですが、この八鹿町その他但馬一帯の自治体が同和財政というものをいろいろ組んでいるわけですね。たとえば先ほどのような八鹿高校のリンチを行なう場合のはち巻きだとかゼッケンだとか、こういうものも全部この同和予算で出ておるわけです。いわゆる糾弾行動、それから青年行動隊の制服、解放車という名の自動車、それから八ミリのフィルム、それからその現像費、彼らが行動するものはすべて自治体が保障しているわけですよ。このひどい蛮行、暴力の行動を、全部自治体が予算で保障していっているわけです。こういうような予算は、一体同和予算の性格からいっていいのかどうか。ゼッケンやはち巻きが同和予算の性格や目的に合致しておるのかどうか。これはひとつ福田自治大臣、どうですか。
  445. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま御指摘になったようなものがその目的のみに使う意味で購買されておったとしたら、私は若干同和予算の使い方としては間違いであると思っております。
  446. 村上弘

    村上(弘)委員 これはあとでも触れますが、その目的のために先に出して、もうこの予算化する前に使っておるのですよ。こういうようなひどい状態になっているわけですが、財政面だけでなく、人の動員も町当局が実際上加担している。  糾弾会へ町の職員を動員する。また町の保健婦、看護婦も現場へ行かして、リンチで失神した人たちにカンフル注射して、そしてそれで意識が回復したらまた糾弾する。こういうふうなことにまで町が実際上協力しているわけです。また、この地方自治体の事務所の中に、こういう彼らのいろんなたむろができていく。また事務の中にもそういう仕事が一ぱい含まれている。こういうふうな行動に地方自治体が参加するということは、これは地方自治体の本来の姿からいってどういうことになるか。どうでしょうか。
  447. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、この同和行政ということについては非常に理解をいたしておるつもりでございまして、従来恵まれなかった立場にある人たちを救うということは政治の目的である。私も同和問題には大いに協力をいたしております。しかし、いまお話しのようなことがあったことはまことに悲しむべきことだ、そういうことで、ほんとうの意味での同和の人たちの境遇をよくすることができるかどうかということを、実は私としては残念に思っております。
  448. 村上弘

    村上(弘)委員 地方財政が丸尾らによって支配されて、彼らの蛮行のために自由自在に使われておる。先ほどの集団リンチの全体の状況がフィルムにも撮影される、それの現像費まで払わされる、こういうことがはたして同和予算といえるのかどうか。あるいは自治体がやっていいことかどうかということになるわけですが、そういうことのために、他方この地域住民は非常に大きなしわ寄せを受けておるわけですね。  たとえば八鹿町は、九月議会で同和対策費六百六十万円、十二月議会で九百四十一万円、これは計上見込みですが、合計して二千万円、先ほど言いましたように議決する前に支出しておるわけです。事後承認です。これはむちゃくちゃじゃないですか。近くの山東町は九月の補正予算二千九百三十万円のうち二千万円が同和予算です。解同らの要求で組まされているのです。こういうことはこの南但馬すべての町で起こっているわけです。全郷の予算規模は大体十億程度ですよ。ところが彼らは、七町から、四月から十一月までの間にざっと一億一千三百万円、彼らのための金を出さしておるわけです。こういうために町財政は全く破綻してしまっておる。朝来町では九億円の借金の上にさらに借金なする。  これは兵庫県だけじゃないですね。大阪はどうかというと、大阪府の同和予算は衛星都市を含めて五百七十三億円、これは政府の同和予算五百七十五億円と全く同額ですよ。大阪府だけで五百七十三億円も出しておるわけです。これは好きこのんで出している状態じゃないですよ。もう全く暴力、脅迫、彼らの押しつけでそうなっているのですよ。その結果、たとえば泉南市というところは、同和予算が泉南市の総予算の四九・七%を占めておる。ここの同和人口は、全人口の六・一八%です。六%のために四九%の財政が支出されておる。大阪市は、民生費の中の建設事業費は、たとえば保育所とか老人ホーム、この事業費のうちで同和対策事業費が七七%。あまり大きいので、ちょっと数字が間違いじゃないかと、私自身が思ったくらいです。こんなにひどい状態になっておる。大阪市の同和人口は二・二%です。民生費の中の建設事業費の七七%がそのために使用されておる。  大阪の学校の建設、これは大阪のほとんどの人が知らぬ人はないような状態にいまなってきております。たとえば、同和地域の学校にはたいへんな要求が出され、彼らがそのための利権を一人占めにし、そして建てられる学校というのはまさに、ここに奥野さんおられますが、あなたがこの前質問されて、夢のような話だといって、大阪ではもうたいへんよく知られているわけですが、栄小学校の建設総額五十億五千万円です。普通の学校は一校大体五億円くらいですよ、大阪の場合。これは広さ三万平方メートルです。三十二教室です。特別教室が二十あるのです。プールが二つあるのです。プラネタリウムの教室まであるんです。そうして矢田南小学校というのは四十六億七千万円、こういうのがどんどん要求されておるんです。そうして他方プレハブ教室でどうにもならぬ学校がいっぱいありますよ。緊急整備を要する小中学校が三百七十九校もあるんです。彼らはむちゃくちゃなんですね。暴力と脅迫のもとに屈服させられた地方自治体が、おちいり、しかも彼らと結びついて、いまやその罪の意識すらなくなっている、そういうところもあるのです。  そういう形で、住民は全く腹に据えかねる思いをしているわけです。しかしながら、いままであれだけの残忍な、残虐な行動が行なわれるときに、やっと十一人逮捕される。いま初めてこうして大問題になりつつあるというようなことになってきておるわけです。  もう一つ、私ここで言っておきたいのは、これほどたくさん同和予算を引き出しておる。それではさぞや同和地域の内部はみんな非常によくなっておると思われるかもしれない。しかしそうじゃないのです。そうではなくて、解同朝田・丸尾らが窓口一本化と称して、自分らだけを相手にせよ、その他の組織、同和会だとか、あるいは部落解放同盟正常化連絡会議だとか、こういう組織は相手にするな、部落差別を撤廃する運動はわしらが正しいんだ、わしらの言うことを聞け、こういうやり方で窓口一本化を押しつけて、そのために同じ同和地域の人も、こんな膨大な資金を出させながら、差別をされて、適用されていないのです。  たとえば同和住宅の家賃まで差別されておるのですよ。大阪市の浪速区の三島同和住宅では、朝田、上田らの組織に入っておる者は家賃を上げない。その他の者は全部家賃を上げておるのです。四倍以上上げていますよ。三DKで、いままで千百円だったものが、四千七百円払わされておるのです。  これは大阪だけじゃないです。あるいは但馬だけじゃないです。東京もそうですよ。ひざもとの東京も。東京では、御承知のように、美濃部都政のもとで、生業資金の貸し付けの問題について、この朝田派らの研修を受けなければ金を貸さない。この年の瀬を迎えて、いまだに生業資金を貸し付けないのです。朝田派らの研修を受けて、彼らの言うことを認めたら金を貸してやる、こんなやり方がありますか。これは明らかに、憲法や地方自治法、つまり法のもとの平等、あるいはひとしく役務を受ける権利がある、こういう憲法や地方自治法の重大な逸脱じゃないですか。この問題について、私は、自治大臣と三木総理考えをお聞きしたいと思うのです。
  449. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘されましたことの内容につきましては、私はそうであるということはここで申し上げることはいたしませんが、しかし、そのような差別が行なわれておるといういささかの事実は、私も聞いております。実はそういうことも聞いております。したがって、これからの地方自治体に対する態度としては、そういうような疑義を生ずるような予算の使い方というものは慎むべきであるということを私は指示をするようにしたいと思っております。それかといって、じゃあいままでのはどうするかというおことばもあるいはあるかもしれませんが、私はいままでのことは、ちょっとこれですぐ、いまあなたが言われたような大きなりっぱな学校ができたから、それをつぶしてなんというわけにはいきません。そういうわけにはいきませんから、とにかくこれからはそういうことがないようにして、そして何とか部落の関係の方が仲よくしていただきたい、私は、ほんとうのことを言うと。そしてほんとうにその人たちの利益が守られるように、ぜひ私はお願いをいたしたいと思います。すべて、差別が行なわれておるということのために使っておる予算がまた差別のために使われておるということは、まことに悲しむべきことである、かように私は考えておる次第でありまして、今後はそのことがないようにひとつできるだけ努力をさしていただきたい。これが自治大臣、というと失礼ですが、私の考え方であり、その方針で臨んでいきたいと思っております。
  450. 村上弘

    村上(弘)委員 もう一言。福田自治大臣の基本的なお考えは、それとしてわかるわけですが、いまこの際、もう一つ私はあなたにはっきりここで述べていただきたいと思うのは、部落の人たちが仲よくしてほしい、こう言われたが、部落の人たちと部落でない人たちも仲よくしなくちゃならぬ。この問題の、いま非常なひどい状態が起こっておるこの一番のかなめになっておるのは、部落解放同盟の朝田派が、自分たちだけを認めよ、自分たちだけを交渉の相手にせよ、自分たちだけに、この同和予算だとか同和教育についてものを言わせよ、そして自分たちの言うことだけを聞け、こういうふうな態度をとっているわけですね。これは窓口一本化といっていますよ。こういう窓口一本化というものは誤りであるということ、これを明らかにする必要があると思うのです。三木内閣、新たに社会正義をいい、社会的公正ということをいって、ここで皆さんが責任を持ってやろうという限り――いままでこういう問題があいまいにされたために、こんなにひどい状態が起こっておるのです。こんなことが続いていいとは、よもやあなた方も思っておらぬと私も思うのです。であるならば、こういうまさに不公正な同和行政の、彼らの旗じるしになっておる窓口一本化というのは間違いだということを、この際ぜひはっきりしていただきたいと思うのです。
  451. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、部落と一般とがほんとうに平等な立場になるためのこの部落予算といいますか、部落解放に対する施政をやっておるわけでありますから、そういう意味では、いまあなたが私にただされたことについては同意をいたしております。そこで、あなたのおっしゃるのは、その何とか一派というものと――私は名前を言うことは、それさえもいま差し控えたいと思う。私は仲よくしてもらいたいというのが目的であります。だから、あなたのおっしゃることが正しいことであれば、何とかそれをよく、いまここでそういうお話がございましたから、ひとつそういうことを踏まえて、部落の方たちが手を握って、そしてほんとうの部落の幸福を願う態度をとっていただくようにお願いをいたしたい、こういうことでございます。
  452. 村上弘

    村上(弘)委員 もう一言。じゃ逆の面からお伺いしますが、仲よくと言うあなたは、どなたに対しても、どれかを差別するということはもちろんお考えでないと思う。ということは自治大臣は、この部落解放同盟朝田派であろうと、部落解放同盟正常化連であろうと、全日本同和会であろうと、その他どんな団体であろうと、あなた方は対等に当然つき合いもするし、交渉もするし、予算の支出についても、それは当然公正に相手にする、こういうふうに理解していいですか。どうですか。
  453. 福田一

    福田(一)国務大臣 私の申し上げたことばの意味を、どういうふうにおとりになろうと御自由でございます。私はいま申し上げたような態度で政治に当たってまいりたい、かように考えております。
  454. 村上弘

    村上(弘)委員 やはりこういう問題に対して、非常に奥歯にもののはさまったような、だれが考えてもどうしてそんなことがはっきりできないのだろうかと思うような感じのことを言っておられますが、いま私が問題にした点について、三木総理の、どういう組織に対しても、どういう地域の人であろうとも、公正に民主的に対処するという問題を含めて、今日までの地方自治体の状況、これに対するお考えをお聞きしたいと思うのです。
  455. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま村上議員からいろいろお話を承って、本問題の深刻さというものの認識を深めたわけでございます。政府は、同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画に基づいて、同法の趣旨にのっとって、総合的に同和問題の解決に一そう努力をいたす決意でございます。
  456. 村上弘

    村上(弘)委員 警察のとった措置について、やはりお聞きしておきたいと思うのですが、路上の問題で、一体警察はどうしていたのだろうかということが町の人たちの疑問です。一体どうしておりましたか。なぜ逮捕しなかったか。
  457. 福田一

    福田(一)国務大臣 その問題については、政府委員から答弁をいたさせます。
  458. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  警察がこの事件を認知いたしましたのは、当日九時五十七分ごろ、一一〇番によって、この路上でけんかがあるということでございましたので、署長以下直ちにパトカーで現場に急行いたしたわけです。そうしますと、狭い通りに共闘会議の人たちが百五十名ぐらいおる、それから群衆もいるということで、なかなか近づけない。さらに署員が応援に行きまして、大体二十名ぐらい、小さな署でございますので、直ちに応援できるのはそのくらいの部隊ですが、これも近づこうとしたけれどもなかなか近づけない、押し戻されるというような状況のうちに、先生、学校の教職員の人たち数十名が学校の中に連れ去られたという状況で、何とか救い出そうとしたのですが、物理的にできないという状況であったわけです。したがいまして、署長としては直ちに隣接署の応援を求める、さらに神戸の兵庫県警察本部のほうに応援を求めるという形で、いろいろと時間の経過はございますが、最終的には、部隊を編成してその救出に当たったということになりますが、最初の現場の状況は、そういうことでいろいろとやったのだけれども、現場で逮捕するという事態に至らなかったという状況でございます。
  459. 村上弘

    村上(弘)委員 じゃ、学校で、十時過ぎから夜の十一時ごろまで長時間のリンチが行なわれておったわけですが、なぜ学校には救出に入らず、また現行犯逮捕をやらなかったか、この点はどうですか。
  460. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 この点については、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、十時過ぎから、署長としては、学校の当局者その他関係の当局のほうに、学校の中はどういうことになっているのだということを聞いたところ、いま平和に、平穏に話し合いが行なわれているのだ、学校の内部の問題だ、教育問題である、そこに警察が出てぐるといろいろ紛淆を起こすので、ぜひこれはやめてもらいたい、そういうことを、再三にわたって確かめたところ、言ったわけです。御承知のところ、十回にわたってそういったことがあったわけです。それからまた共闘会議のほうにも二度にわたって、どうなんだ、あまり時間が長いじゃないかという申し入れをしたわけですが、なかなかそういうことで、当局の、いわば当面の相手の責任者がそういうことを言うので、しばらく事態を見守らざるを得ない。そしてその間に部隊が逐次出てきたので、その部隊の力をもって強制的に中に入るという経緯になるわけでございます。
  461. 村上弘

    村上(弘)委員 路上では動くことができなかった、こういうことを言っているわけですね。学校の中では校長が十回にわたって、入れば一そう紛糾するから、こう言ったから入らなかった、こう言っているわけです。これは非常に奇怪な態度だと思うんですね。事実もまたそういうものでなかったわけです。路上では集団があって警官が近寄れなかったとか、そんな状況じゃないのです。現に先生方の証言では、これは宮谷という先生ですが、一人の警官の足とピストルのバンドにつかまって、無理に引っぱられようとするのを警官につかまって、何とか引っぱられていかれぬようにがんばっていた。ところがその警官は、その丸尾らの暴徒に対して、やめとけやめとけ、こう言った。それで実際には連れて行かれた。もう一人の先生は、やはり警官のバンドにつかまったわけですが、今度は、つかまったらそれをはずされた、警官から離された、こういうことを言っているわけです。ですから警官は、目の前で暴徒も見ており、リンチを受けて無理やりにけられながら連れていかれる先生につかまられながら、それをふりほどいておる、こういう状況があるわけですよ。  それから学校の状態についていえば、校長が、平穏に話し合っておるとか、あるいは入れば一そう紛糾するとか――入れば一そう紛糾するというのは、それまでに紛糾しておることを認めておることにもなるわけですが、第一に、この路上でこれだけのむちゃくちゃなことをやって学校に連れていったわけですから、何が起こっておるかは、当然警察は判断できるわけですよ。第二は、救急車が午前十時ごろから十回にわたって出入りして、八鹿病院にどんどん負傷者を運んでおるわけでしょう。それから、家族や生徒や保護者から保護願いが来ておる。生徒たちは泣いて、警察署の前へ来て、先生が殺される、先生を助けてくれ、とこう言って訴えておるわけです。これはもう全くひどいじゃないですか。そうして八鹿病院にどんどん負傷者が入っておることを、警察官も病院に行って、それは現認しておるわけですよ。しかも学校の中から、体育館やそれから本館から悲鳴が聞こえておることが、その側の道路に聞こえてきておるのです。町の人はそれを聞いているのです。その上に、平松先生、これは婦人の先生ですが、その御主人は、奥さんが呼んでおるからといって電話で呼び出されて、そうして呼び出された学校で、この奥さんが言うことを聞かぬのはおまえが悪いのだということで、一緒に糾弾を受けて、そしてまたリンチの場に連れていかれた。その強行連行するところも、自動車に押し込んで連れていくところも、その出るときに、警官をこの先生は現に見ておるわけです。こういうふうな状態があるのですから、これはもうその警察力を発動する判断ができなかったとか、あるいはそういうことはわからなかったなどというようなことは絶対に言えないわけです。  しかも、学校の校長の判断をかりにたてとしたとするならば、一番最後に学校に入ったのは、一体だれと話し合うて入ったのですか。運動側の二人と話し合うて、もう入ってもええか、もう入ってもよろしい、こういう話し合いがついて入っておるじゃないですか。学校側の了解を得られないからといって入らなかった警察が、どうして最後のときには運動側の了解を得て入ることになったのか。この運動側の了解で入ったということは、これは兵庫県警本部長も確認しておるんですよ。これについてどういうことをあなた方は言えるのですか。どうですか。
  462. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 最後に入ったときはどういう状況であるかということでございますが、こちらの聞いておりますことによりますと、そういうことで部隊の編成が成って、そしてやはり長時間にわたって相変わらず不穏な状況があるのじゃないかという独自の判断で、最後には入ったというふうに聞いております。
  463. 村上弘

    村上(弘)委員 もう万事リンチが終わって、丸尾らがもう彼らの目的を達成した、全部にまさに瀕死の重傷を負わせて、そうして無理やりに自己批判書なるものを書かせた。だからこれは、入ってもよろしいという状態を確認して、自己の判断で入ったという以外の何ものでもないわけですよ。事実の状況はそうなんです。学校の校長は、そのときには運動側の二人と話し合うて入りました、こういうふうな状況になっておるわけです。さらに百歩譲って、学校長がそういうようなことを――これは県警本部長あとで、こんなたくさんの重傷者が出たじゃないか、結果からいえば、校長が平穏に話し合っておると言ったのはうそだったということになるじゃないか、それはそうだ、うそだった、それじゃ、学校長のとった態度はどういうことになるのだ、けしからぬことだと思っておる、こう言うのです。じゃ、けしからぬことだと思っておるのなら、この先生方は、学校長も教頭も、またそのときはち巻きを巻いておった教育委員会の当事者も、全部告訴しておるのです。これは共犯者じゃないかということで告訴しておるのです。じゃ、この校長や教頭に対して、いま警察当局は、どういう捜査をし、どういう取り調べをしておるか、これを聞きたいのです。
  464. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 警察本部といたしましては、事件の起きました翌日、二十三日から特別捜査本部を設けて、多数の捜査員を専従させて捜査をいたしております。その過程で、そういういま御質問のあったほうの問題についても十分捜査をしておりますので、事実がはっきりすれば、具体的な処置をとるものというふうに考えております。(村上(弘)委員「取り調べをやっておるわけですか」と呼ぶ)まだ取り調べをするという段階に至っておりませんけれども、いろいろとそういう方面をも兼ねて、捜査を進めておるというふうに聞いております。
  465. 村上弘

    村上(弘)委員 この警察のとっている態度というのはきわめて奇怪だと思いますよ。三木総理もほんとうにそうだとうなずいておられるわけですが、だれが聞いても、こんなことを、ああそうか、わかった、と思うような者はおらぬわけですよ。大体警察は、現地の町民の非常な憤りと告訴によって、放置できなくなって、やっと十一名までは逮捕したわけです。しかしながら、こういう状態を許し、警察を入れないたてとなった校長を、県警本部長に言わせれば、けしからぬと――実はこれは責任を他に転嫁しておるということに、先ほどの状況からいったらなるわけですが、それじゃ、その校長がそういう態度をとったからだというのであれば、なぜ校長を調べないのか。まだ調べていないわけですよ。こんなことは、世間が、そうですかと納得できることですか。  しかも、現在十一名逮捕しておりますけれども、この負傷した人たちは五十八名いるわけですよ。五十八名に十一名でこんな重傷を負わしたわけじゃないのです。数百名が入った中でやっており、もうそれこそ意識もうろうで、現認できる人の数は限られておったけれども、それでもちゃんと特定の人を指定して告訴しておるんですよ。その数は相当たくさんの人を告訴していますよ。なぜ十一名にとどめているのか。なぜいまでもこういう暴徒に対して放置しているのか。学校の校長や教育委員会の当事者に対する取り調べ、それから逮捕の問題、同時に、この丸尾らの集団暴行に加わって、現認しておって告訴している者に対してなぜ早く逮捕しないのか、このことをお聞きしたいと思うのです。
  466. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  告訴、告発も多数、この事件の起こる前の朝来関係を兼ねて、出ておることは承知いたしております。この全貌をはっきりさせるために、いま鋭意捜査を広範にわたってやっておるわけでございまして、十一名の逮捕者でこれで終わりというのではございません。その関連についてはさらに徹底的な捜査をして、この事実を解明して適正な措置をとる、そういう所存でございます。
  467. 村上弘

    村上(弘)委員 そういうことをいま言っておるわけですが、しかし、事ここに至るまでに、兵庫県警あるいは現地の警察がとった態度の問題、これも非常に重大だと思うわけです。まさに無法状態に南但馬一帯はなっておったわけですね。これは去年の十一月ごろからで、それ以前はあそこには部落解放の運動はいわば普通の状態であったし、それから有志連合会というのがありまして、非常に正しい態度でいこうという運動もあったわけです。ところが、この丸尾らが地方の部落解放同盟朝田派の指導と組織のもとで行動を始めてから、急速にこの丸尾らの力が大きくなっていくわけです。そのてこは、先ほど言ったような糾弾ですよ、暴力、脅迫ですよ。そうしてもう自治体も教育も教育当局も学校も全部ずうっと屈服させられていくわけです。  こういうことはもう枚挙にいとまないのです。昨年十一月以来南但地域で、確認会、糾弾会、これはもう無数と言ってもよいでしょう。そうしてことしの五月段階になると、すべての自治体を彼らは制圧するのです。みんな屈服させられてしまう。そうしてすべての学校に解放研という組織がつくられていくわけです。そうしてことしの十月には、この朝来中学校の橋本先生宅を――この先生はそういう彼らの集団的な威圧に屈服せずに、正しい態度を守り抜いておったわけですね。これがおるからけしからぬということで、この橋本先生宅を、十月二十日から一週間、連日三百名から、最後には三千人を動員して、ここには先ほど見せた生徒、女子の生徒まで動員して、そうして連日朝から晩まで――朝の四時も夜中も投光器で照らしつけて、マイクでがなり立てる。この家族は八十九歳のおばあさんと六十一歳のおかあさん、小学校一年生、三歳と一歳八カ月の子供さん。子供さんはもう一日じゅう泣き詰め、こういうふうな状態を続けて、裁判所がこれはもう排除すべきだという仮処分をやっても、なおかつ続ける。毎日毎日糾弾行動をそういうふうにむちゃくちゃにやっておるのに、機動隊はおるんですが、おってもそれに手を出さない。こういうふうな状態が続いてきておるわけです。つまり、この八鹿高校事件一つだけをとってみると、全く想像もできないような状態が起こっておるし、世間から見ると、そんなことはうそだろう、まさかそんなことはないだろうと思うような状態になっておるわけです。しかし、去年の十一月からずっと積み上げられてきた糾弾行動、暴力行動、その間、橋本先生事件では百名からの負傷者が出ておるわけです。この問題でも告訴、告発しておるわけです。負傷者がたくさん出てきておって、相当たくさんの告訴をやっておるにもかかわらず、警察はそれに対して全く手を出してこなかった。こういうことが今日八鹿高校事件をつくり出したのだというように事態はなっておるわけです。  そこで警察は、あのときは手が出せなかったとか、あるいは校長が平穏に話し合っておるからだとか、そんなことを言って、それでいろんな逃げ口上を言っているわけですが、結局のところ、これは警察が、事ここまで大きな猛威をたくましくしたあの状態のもとで、よう手を出さなかったというのが実情じゃないのか。こわかったというのが実情じゃないのか。実際にこの問題に対しては、現地の生徒たちが警察署に抗議に行ったんですよ。先生を早く助けてくれと言ったら、五十人の人が一人の人を殺そうとしておっても、こちらの数が少なかったら見ているほかないのだ、殺されてもしかたがないのだ、こんなことを言ったというんですよ。こんな警察があるか、警察はこんなことを言うものかといって、生徒は作文集に書いていますよ。ですから、一つ一つの暴力を見のがして、泳がしてきた結果が、結局こういう事態をつくり出し、その事態に直面した警官は、それに対して逃げ口上をもうけて手を出さない、これが事の真相なんですよ。  だから私は、最後に公安委員長にお聞きしたいのだけれども、こういう一つ一つの暴力のあらわれに対して、ほんとうに厳正な態度で立ち向かうか、取り締まるか、これをはっきり聞いておきたいと思うのです。
  468. 福田一

    福田(一)国務大臣 本会議でも申し上げましたが、これははっきり申し上げておきます。実は、いままでの経緯においていささか手ぬるいところがあったと言われますが、私といたしましては、国家公安委員長になってから、暴力は断じて許さない、どういう種類の暴力であろうと、どういう階級に属する者であろうと、民主主義というものは暴力を認めてはできません。議会政治もできません。でありますから、暴力は断じて許さないという態度で、これから対処してまいりたいと考えております。
  469. 村上弘

    村上(弘)委員 最後に総理にお聞きしたいのですが、こういうひどい状態の中で、しかし町の人たちや、それから学校の生徒、先生方は、こういう暴力に対して雄々しく立ち向かい、自分たちの自由を守り、安全を守るために立ち上がっていっておるということです。特に十二月十日、八鹿高校の生徒自治会総会は、次のような決議をやっています。「八鹿高等学校生徒自治会綱領」「学園の自由と平和を我々の自治活動の中で確立しよう。」「我々は、本校の教育、自治へのいっさいの外部団体の介入に反対する。」「我々は、いかなる困難な状況においても学生の本文である勉学に励む。」「我々は、真の民主主義、民主教育を確立するために、団結していくことをここに確認する。」「生徒、職員の手で、今後より積極的に民主的同和教育を進めていく。」こういうふうに生徒たちは、あの中で、おとなたちのふがいなさや警察に対する憤りを胸に深く抱きながら、しかし自分たちで、自分たちこそが学校、自分たちの教育の場を守っていこう、それで勉学にほんとうに一生懸命になろう、こういうような決議をやっておるわけです。地方自治体やそういう方面でも、また新しい動きも出ております。近くの大屋町の区長協議会でも、「一切の暴力を否定し「明るい真の民主社会の実現を目ざしての部落解放であることを確認されたい」、町当局にこういう要望書を出しております。いままでこういうことをやったら、もうそれだけでも糾弾されておったのです。ひどいリンチを受けておったのです。しかし、いまやほうはいとしてこういう団結の動きが起こってきておるわけですが、こういう一つ一つの暴力に立ち向かいながらも、自由と民主主義、暴力を一掃する、自由にものが言える社会、自由にものが言える町を、職場を、学校をということでがんばっておる人たちに対して、公正な、民主的な同和行政、教育の自治と中立、それから地方自治を守るという問題について、いまの朝来町の皆さんに対して、総理からひとつあいさつをしてあげてください。
  470. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 同和問題に限らず、福田国家公安委員長の申されるように、民主主義の社会と暴力とは絶対に相いれないものでありますから、今後暴力事犯が起こりますならば、必要な捜査を行なって、厳正な措置をとって、法秩序の維持をはかる決意でございます。
  471. 村上弘

    村上(弘)委員 爆弾事件から暴力学生の殺し合い、それからいまの解同朝田派の暴力問題、とにかく一切の暴力を一掃するということについて、ひとつ三木内閣も、総理も、公安委員長も、決意を新たにして厳正な態度で臨んでいただきたいというふうに思うのです。  そこで、第三のテーマの、暮らしの問題、この問題に入っていきたいと思うのです。  第一に、社会的な不公正をなくする、このことは、国民生活を安定させていく上で非常に大事な問題であるわけです。三木総理は所信表明で社会的公正ということを強調されたわけですが、この社会的公正とは何かということが非常に大事だと思うわけです。インフレ不況のこの経済危機の中で、大企業が大もうけを続け、国民が生活の破壊で苦しんでおる、これこそが最大の不公正だと思います。現にこの九月期の決算で、大企業三百八十三社の利益は、和光証券の調査では三月期に比べて一五%ふえておる。金額にして八千六百億円、これは一社当たりにすると二十二億五千万円もの利益をあげておるわけです。他方、中小企業は年間一万二千件もの倒産をしておる。労働者は八十万人近い完全失業者が出ておる。国民インフレの中で生活の破壊に苦しめられておるわけです。特に許しがたいことは、赤字を理由に値上げをした鉄鋼や電力や石油や私鉄などが、そろいもそろって大幅に引き当て金を積み増しをしておるわけです。不況の中で大企業が大もうけを続けられるのは、大企業ほど実際に負担する税率が低い逆累進の税制である、大企業に安い利子で大量の資金を流す、大企業本位の高度成長型財政金融政策の結果であるわけです。このような不公正な仕組みを変える、高度成長であろうと低成長であろうと、この大企業本位の不公正な仕組みを変える、大企業から取り立てた財源を国民福祉に回す、これこそが真の社会的公正を保障していく道ではないか。総理大臣が社会的公正ということを言う場合、どういうことを考えているのか。社会的公正を強調されるあなたは、この大企業本位のやり方、大企業の横暴を押え、大企業が優遇されるというこの仕組み、これを改善する決意があるかどうか、まずこの点をお聞きしたいと思うのです。
  472. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が所信表明で不公正是正と言ったのは、当面の問題としては、インフレの進行の途上において一番深刻に打撃を受ける弱い人たち、たとえば生活保護者、老人、心身障害者あるいは母子家庭、年金所得者もそうでしょう、そういう人々のことを第一番に頭に入れて申し上げたわけでございますが、それは当面の課題であって、国政全般について、公平という、社会的公正という見地から、全般の問題も、私の内閣の時代を通じて、見直してみたいという考えでございます。
  473. 村上弘

    村上(弘)委員 三木総理の社会的公正感というのは、非常に一面的な、犠牲者だけがあって犠牲をかける者がおらぬ、これじゃ直しようがない、そういうふうな考え方であることが、いまの答弁でも明らかになっておると思うのです。大企業の横暴を押える、大企業本位の仕組みを変える、そうすることなしには、お年寄りだとか、それから身障者だとか、こういう弱い人たちの状態を解決することはできない。ここが一番大事だと思うのです。  私は、そういう点で、いま一番きびしい犠牲をしいられておる下請中小企業の問題、この問題をまず最初に取り上げたいと思うのです。  河本通産大臣にお聞きしますが、あなたは先日の本会議で、中小企業の仕事の確保は大事なことだ、こういうふうに答えた。下請中小企業は、いま仕事がなくて非常に苦労しておるわけです。三木総理も、年末を控えて中小企業にしわ寄せが来ないようにする、こういうふうに言われたわけですが、いま仕事がなくて困っておる下請の業者に親企業の仕事をあっせんするということ。まあ融資その他も必要ですけれども、何よりもいま必要なのは仕事ですね。この仕事をあっせんするということが必要だと思うのですが、そういう制度があるかどうか、これをまず聞いておきたいと思います。
  474. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 下請に仕事をあっせんするという制度がございまして、現在三十一都道府県におきまして、そのあっせんの協会ができておます。政府のほうでも、いろいろの行政指導を通じまして、下請のほうへ仕事が回りますように、いろいろ指導をいたしております。
  475. 村上弘

    村上(弘)委員 協会というのは、下請中小企業振興法に基づく下請企業振興協会のことだと思うのですが、この協会の職員は一体どれくらいおるか。現在全国の下請企業は約七十万ですね。相当数の職員が必要だと思うわけですが、どれくらいおりますか。
  476. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業庁の長官から答弁をさせます。
  477. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 下請振興協会は全国に三十一協会ございまして、その職員は四十九年度現在では、指導員が百二十二名、補助員が六十四名、合計百八十六名でございます。
  478. 村上弘

    村上(弘)委員 百八十六名といいますと、職員一人当たりの業者が一体どれぐらいになるか。これはまあ千や二千じゃないですね。職員一人で四千近い企業の数になるわけです。こういう状態で仕事のあっせんや確保がやれるかどうか。業界の話を聞きますと、川崎の人がこういうことを言っている。振興協会に仕事のあっせんを申し入れてもナシのつぶてだ、川崎の場合四千五百の下請業者に対して担当職員はただの一人だ、これじゃもう全然あっせんどころじゃないですね。これは一体どういうことですか。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  479. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 振興協会におきましては、その職員が県あるいは市等の自治体と一緒になりまして、親事業者との懇談会を持ちましたり、あるいは文書等によりまして発注の要請をいたしましたり、あるいは使節団と申しますか、個々の企業を訪問いたしまして、仕事を出してもらうように要請する、こういうふうなことによりまして仕事を回してもらいまして、それをこの協会に登録しております仕事を求めておる下請企業に紹介をいたしてあっせんする、こういうふうな仕事をいたしておりまして、四十八年度のあっせん件数が……
  480. 村上弘

    村上(弘)委員 さっきの数でやれるかということを聞いているのです。
  481. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 人員的には決して十分ではございませんので、私どもとしては、さらに増員をはかってまいりたいと考えております。
  482. 村上弘

    村上(弘)委員 東京の場合、登録企業が二千から現在は九千三百に、こうふえてきているわけです。ところがあっせん担当者はいまでもたったの五人です。ですから、一日二軒回っても十三年に一回しか回れない。申し込んでも返事がもらえぬ、これはもうあたりまえだと思うのです。通産大臣は、大きな企業のほうはいろいろ関心があるかもしれないが、こういう下請の零細企業に仕事をあっせんするという問題について、こんな状態にあるということを知っていますか。
  483. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この方面の政府の補助金というものが非常に少ないということは承知しております。そこで、来年度の予算編成でございますが、ほぼ倍近い予算をいま要求しておるわけでございます。  なお、仕事のあっせんということにつきましては、下請関係も重要でございますが、官公需の仕事をできるだけたくさん回しますとか、その他いろいろなことを考えておりまして、総合的に進めておるわけでございます。
  484. 村上弘

    村上(弘)委員 いま官公需の話がありましたが、これはあとで聞きたいと思うのです。それがまたたいへんひどい状態になっておるわけであって、いまの、徐々にふやしていきたい、予算は倍にしたいと言っていますが、一体どれぐらい人数をふやすことになっておるのか、これをお聞きしたいと思うのです。
  485. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 五十年度の増員の要求は、指導員が三十四名、それから補助員が十二名の合計四十六名でございます。
  486. 村上弘

    村上(弘)委員 それでは、いまのたいへんな仕事の要求と、それをあっせんしていくというこの実態とは、かみ合わないと思うのですね。もっとこういう下請企業に対するあっせんの対象を強化する必要があるのじゃないか。東京のあっせん協会の職員は、いままで一日二軒行っておったところを四軒回るようにした、そうしたらあっせんの成立件数もふえていっている、こういうことを言っているわけですよ。いままでは、あっせんの申し入れをしても解決しないから、ナシのつぶてが多いから、もうあきらめている、こういう状況が多いわけですが、職員をふやせば、それぞれ下請に発注したいところも現にあるわけです。それから仕事を受けたいという企業があるわけですから、これをどんどん結びつけていくことができるわけですね。あっせん所の職員は、それこそもう毎日毎日くたくたになって、企業に行って相談をしておるわけです。こういう人たちの数をもっと思い切ってふやすということについて積極的な態度を示していただきたい。この点をもう一度お聞きしたいと思います。
  487. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 人をふやすことにつきましては、これは極力やっていきたいと思います。
  488. 村上弘

    村上(弘)委員 前田中内閣のときに、価格を安定させるための価格安定調査官、これが兼職であって、実際上は何もしていなかったということがここで問題になって、直ちに兼職から専任にし、専任も含めて大幅に調査官をふやした。前内閣でもあの程度のことはやったのですよ。いま全く有名無実、十二年に一回しかたずねられないような状態になっておる下請企業振興協会の職員をふやす、これはぜひふやそう、補助金もふやそうということについて、三木総理、ひとつ積極的な態度を示してもらいたいと思います。
  489. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 社会的公正の維持の中に、中小企業下請業者も当然に入るべきであります。それはインフレのもとで一番しわ寄せを受けやすい立場でありますから、したがって、いま申されたような振興協会の強化をいたす考えでございます。
  490. 村上弘

    村上(弘)委員 ぜひ強化をしていただきたいと思います。  そこで通産大臣、先ほど、官公需の発注も含めて総合的に考えるということを言っておりましたが、中小企業の受注に対する官公需の全体の割合ですね、これは一体どれくらいになっているか。官公需発注が中小企業の面でどれくらいの割合を占めているか、これをちょっと言ってください。
  491. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年は約二七%でございましたが、ことしはほぼ二九%にいくように、いま指導しております。
  492. 村上弘

    村上(弘)委員 国の場合は、基準を二七・七%、こういうふうな低い水準に置いておる。しかしながら、これをもっと思い切って引き上げるということが必要じゃないかと思うのです。都道府県の場合は、昭和四十六年度の中小企業向け発注は、この発注総ワクの中の六八%を占めているわけです。ところが国の場合は、同じ年度で二六・六%、四十八年度が二七・七%。いま大臣は二九%、こう言っていますが、徐々に高めるということじゃなくて、もっと思い切って引き上げていくということが必要じゃないか。これは何も予算をふやす必要はないのです。あなたがおっしゃるように、弱いところへ助けをする、弱いところを助けようと思えば、どっちか減らさなければいかぬ。大企業に対する発注を減らして中小企業のほうに回す。中小企業でやれる分野というのはたくさんあるのですよ。そういう点で、わが党は、五〇%以上中小企業に向けるべきだということを主張しておるわけですが、社会的公正ということを非常に強調している三木総理は、この面についても思い切って官公需の発注を中小企業のほうに傾斜していく、このことについてどう考えるかということを述べていただきたい。
  493. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が通産大臣の当時、官公需について、いわゆる中小企業に対する発注をふやすように努力しなければならぬという立法を、私自身国会に提案をいたしたものでございますから、今後とも、単に振興協会の機能を強化するばかりでなしに、行政指導等を通じてそういうことに努力をいたします。しかしそのパーセンテージは、地方の場合は、立法の趣旨に沿うてその後非常にやはり発注がふえておる。国の場合は、まだ五〇%というのには相当の距離があるわけでございますが、できる限りそういうふうに努力をいたすわけでございます。
  494. 村上弘

    村上(弘)委員 仕事を中小企業がどんどんつくれるようにしていく、これが一番積極的な措置だと思うのですが、同時に融資も大事です。そこで、中小企業向けの政府系の金融機関、これは総理は、七千億円年末融資する、若干追加もする、こういうことを言っているわけですが、これ自身は了としても、まだまだ不十分です。もっと思い切ったことが必要ですが、ここで私が言いたいのは、融資をしても、借りられない、借りたくても借りられない、つまり利子すら払えない、これほどひどい状態がいまは各所に起こっているわけです。私どもの調べでは、たとえば繊維の小規模零細業者、これは愛知県でも福井でも大阪の泉州でも、たいへんな状態になっておるわけです。  たとえば、愛知県の一宮市の賃機業者の方から手紙が来ておるわけですが、この方は結局利子が払えない。ことしに入ってから仕事が激減して、工賃も昨年の半分だ、七月以後は仕事は三分の一になった、経費八万円で工賃収入十一万円、結局収入は三万円、こういうことで、生活費だけでも十万円かかるわけですから、これは全く借金、こうなるわけですが、こうなってくると、担保力はないし、借金ができても、仕事のめどが立たない以上利子の支払いもできないということで、先ほど言ったように、仕事を保障するということがまずありますが、同時に、それをやるためのお金を借りることもできない、こういう状態があるわけです。そういう意味で、この利子も払えないような零細企業に対して、一〇〇%利子補給、つまり無利子ですが、こういうふうな制度、措置を新たにやる必要があるのじゃないかと思うのですが、この点について総理、どうですか。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕
  495. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 零細な企業に対しましては、無担保無保証、こういう制度はもう現にございます。この制度は十分拡張していきたいと思っておりますが、ただ無利子ということは、これは考えておりません。
  496. 村上弘

    村上(弘)委員 考えておらないということですが、やっておるところがあるのじゃないですか。地方自治体で、こういう零細企業に対して無利子で融資する、仕事の再起ができていけるように、そういう措置をとるというふうなことをやっておるところはないですか。
  497. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 小規模企業向けに、府県によりましては、府県の資金を金融機関に預託いたしまして、いわゆる制度金融と申しまして、零細融資をいたしますと同時に利子補給等を行ないまして、通常の金利よりも安く融資をしておる例は若干あるようでございます。
  498. 村上弘

    村上(弘)委員 的はずれなことしかあなたは言わぬですね。私が聞いておるのは、無利子で融資をするような制度をやっておる自治体を知らぬかということを聞いておるわけです。通産大臣は、融資ワクをふやすとか、あるいは金利を下げるとか、そういうことは考えても、無利子ということは考えていないということを言うわけですが、金を借りるにも借りられない、こういう状態にこそ救済の手を打つべきじゃないか。現に私どもの調査では愛知県の一宮市、ここではつなぎ融資、限度額七十五万円、一年間据え置きで、据え置き期間中は市が一〇〇%利子補給する、こういうことを新たに始めておるわけです。また同じく尾西市でも、限度額五十万円まで一年間据え置き、据え置き期間中、市が一〇〇%利子補給する、こういうふうな措置をとっておるのです。非常に財政力の弱い地方自治体ですらこういう措置をとっておるわけですから、国が全国のこの零細な企業に対してこういうような新たな措置をとる、あるいは新たな制度をつくるということを考えてみる必要があるのじゃないかというのが私の質問ですが、どうですか。
  499. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように、もうすでに無担保無保証という制度が相当いま進んでおるわけです。そこへ、いまお話しのように無利子の制度を国がやるかどうか、これはよく考えてみないと、私はなかなか決断ができないと思います。各国の例とか、地方自治団体の例とか、いろいろ参考にしまして、よく検討してみたいと思います。
  500. 村上弘

    村上(弘)委員 ぜひ検討し、具体化していただきたいと思います。  農業の面の問題で、社会的不公正の一つの著しい問題で、共通の非常に切実な問題になっていることに、御承知の相続税の問題があります。この点について総理にお聞きしたいわけですが、とにかく何千万円あるいは何億円という相続税がかかって、そうしてもうとても農業なんか続けられない。私のところに高槻市の津田和一郎さんという人からこういう手紙が来ています。この人は去年の一月におとうさんがなくなったわけですが、「父の死とともに訪れたのが相続税でした。私にとっては、父の死のほかに農民殺しといわれる相続税がかぶさり、二重の不幸でした。泣く泣く一反歩を売り払いどうにか税金を払ったものの、何のために農地を守ってきたのかと思うと無念でなりません。」省略しますが、「昔のどんな悪代官でも、米を根こそぎ持っていきこそすれ、土地まで取り上げることはなかったと思います。いまの政府は悪代官以下ではないか。」こういうふうに憤りの手紙をよこしているわけです。  農家の人に希望を与えるということをあなたたちは言っておるわけですが、これがもし、から文句でないのなら、土地を売らずに農業を続けられるような課税をする、相続税のいまのひどい状態を改めて、農業が続けられるような、そういう課税に改めるということを、抽象的なことでなくて、明確にここで答えていただきたいと思うのです。農林大臣、どうですか。
  501. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農地の相続税につきましては、最近の地価がたいへん値上がりをしておりまして、そのために、農家が農地を相続する場合におきまして、相続税の負担が重いために土地を手放さなければならぬというふうな状況も起こっておるわけでございまして、農地の保全をし農家経営を維持していく上におきましては、農地の相続税を軽減すべきであると私は考えております。現在、政府部内で検討いたしておりますが、何とか適切な軽減措置がとられるように努力してまいりたいと思います。
  502. 村上弘

    村上(弘)委員 それでは次に、社会福祉関係のことについてお尋ねをいたします。  老齢福祉年金の所得制限を撤廃する問題について、厚生大臣にお聞きしたいのですが、東京都目黒区にお住まいの高橋清助さんという人が、こういうことを訴えてきている。八十四歳です。この人は学校の用務員を八十四歳になるまでやってこられて、学校をやめて、老齢福祉年金をもらって、内職でもやりながら、こう思っていた。奥さんは七千五百円の老齢福祉年金が出されておるわけですが、御本人には一文も出ない、こういうことになったわけです。区役所で聞くと、本人は昨年毎月五万円一収入がある、年収が七十七万八千円という本人の所得制限にひっかかる、こういうわけで、八十六歳になる奥さんは病弱ながら、四十二歳の娘さんの扶養家族になっておるので福祉年金が出ておるけれども、御本人のほうは、月五万円の収入があったということで福祉年金が出ない、こういうことになっておるわけです。こういうような状態で、六十万円ほど退職金が入ったわけですが、古ぼけた家を若干手入れしただけでもう相当お金も出しておる。そういうわけで、六十万円の収入があるということだけで生活保護の対象にもなっていない、こういう状態で、全くお金がすっからかんにならなければ相手にしないというような状態に、いまの老齢福祉年金の所得制限は実際上なっておる。前の年に月五万円の収入があったからということで老齢福祉年金をもらえないということは、あまりにもむごい話ではないか。高橋さんは少なくとも夫婦で月四万円はかかる。もう朝は菜っぱのみそ汁、こういう状態で続けても、それでぎりぎりだ。わずかに期待した七千五百円すらもらえない、こういうことでほんとうに切々たる訴えをしてきておるわけです。  社会的公正の主軸は厚生省だと、あなたは記者会見でも言っておられるわけですけれども、こういう現実に即さない所得制限というものは撤廃されるべきじゃないですか。どうですか。
  503. 田中正巳

    田中国務大臣 福祉年金の所得制限については、いままでも順次改善をいたし緩和をいたしてきたところであります。しかし、やはり国の一般会計、国民の税金から支払う福祉年金でございますので、あまり高額の所得を持っている人にこれを支給するということはいかがか、また社会的公正の見地からも問題があろうと思います。  一般的に申しまして、いままでのこの所得制限の緩和の歩みを見ますと、所得制限には二通りございまして、扶養親族の所得制限と本人所得制限がございまして、扶養親族の所得制限は、実はかなり緩和をされまして、ほとんどの方が受給をされるような状態に相なってまいりましたが、本人所得制限について、どうもいままできびし過ぎたというふうに私ども反省いたしておりますので、明年度におきましては、この本人の所得について相当の緩和を思い切ってやりたいということで、予算要求中でございますし、これについては大いに努力をし、この予算要求が実現するように最大の努力をしようと思います。お説の点については、全く問題だと思っておりますので、さような方向で努力いたします。
  504. 村上弘

    村上(弘)委員 年度内に何とかできないですか。
  505. 田中正巳

    田中国務大臣 これにつきましては、予算で毎年やることになっておりますので、予算の節にやりたいと思いますので、いま直ちにやることについては、どうも、可能であるとはお答えができないと思います。
  506. 村上弘

    村上(弘)委員 そういうことができないような補正予算、田中内閣のものをそのまま引き継いで出したところに、そもそも問題があると思うのですが、総理大臣はこの問題について一体どう考えておるか。  特に、私がここで聞きたいのは、支給額の問題であるわけですが、総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会、それから老人問題懇談会、これが、来年度は福祉年金を一万円までにするということを政府考えておることに対して、一万円では低過ぎる、再検討せよ、こういうことを早くから言っておるわけですね。こういう意見や建議に対してどう考えるか、このことをお聞きしたいと思います。
  507. 田中正巳

    田中国務大臣 老齢福祉年金五千円から七千五百円、一万円といういままでの一応のスケジュールがございまして、ただいま予算要求は明年度については一万円ということになっております。しかし、御高承のような議論がございますので、これをどう扱うか、いませっかく私としては苦慮いたしておるところでございますので、暫時お待ちを願いたいと思います。
  508. 村上弘

    村上(弘)委員 あなたが苦慮する以上に、お年寄りはたいへん切実な思いをしておるわけですよ。それで、いまさら働けといってもどうにもならない、いわば明治、大正、昭和三つの時代を乗り越えて社会に貢献されてきた方々、それから障害者、交通事故で残された母子の方々、こういう方々に対して、財源がかかるということだけで放置するとか、予算がないからというような通り一ぺんの態度では許されないと思うのです。人の命というものは金にかえられないわけですから、金で片がつくなら、せめてそれだけでもやっていく、これこそが血の通った政治じゃないかというふうに思うわけです。社会的公正ということを、単なる美しいスローガンに終わらすのではなく、実行する必要があるんじゃないか。せめて老齢福祉年金は二万円、障害福祉年金は一級で二万五千円、これを来年の一月から三月まで三カ月分、これだけでもすぐ措置をする。それだけで一体どのくらい金がかかるか。どうですか。
  509. 田中正巳

    田中国務大臣 一般的にいいまして、福祉年金を一万円上げるのには六千億かかるといわれておるわけでございまして、この金額について、二万円、もちろんいままで支給している金額の上に乗せるわけでございますから、それだけかかるわけではございませんが、福祉年金に関して、もし二万円支給すると一兆二千億の金がかかるわけでありまして、一省分の予算に該当する程度の予算になるわけでございまして、なかなか簡単にはいかないと思いますが、できるだけの努力はいたしたいと思っております。  なお、お説の、一月からこの年金額を上げるということになると幾らかかるかということについては、数字はつまびらかにいたしませんが、今年度の予算――あるいは一月から始めますと五月支給でございますので、したがいまして、今年度予算には計上しないというかっこうになろうかと思いますが、数字については、もし必要があれば、政府委員をして答弁をさせます。
  510. 村上弘

    村上(弘)委員 一月から三月ぐらいの間で二千五百億ぐらいだというふうに概算されるわけですが、一兆円の先ほどの話にしろ、確かに安い話ではないということをいわれるかもしれぬ。しかし、それだけ人の命は重いわけですよ。ですから、こういう面に対してもっと思い切って力を注ぐ必要があると思うのです。  次に、世帯更生資金貸付制度の資金ワクの拡大のことについてお聞きしたいのですが、大阪府の方々が、世帯更生資金を借りたいという切実な要求で、いまどんどん申し込んでおるわけですが、なかなかもらえないということです。低所得層の人が、わらをもつかむ思いでこの資金の貸し出しを待っておるわけです。大阪の社会福祉協議会に聞くと、現在一億一千万円ばかりの原資があるけれども、約三百人が生業資金約七十万円の貸し出しを求めておる。七十万円の三百人、大体二億一千万円、これはとても足りない、こういうことで、応じ切れない、こういっておるわけです。これは全国各地の社会福祉協議会も、十二月の十七日に厚生省に対して資金ワクの大幅拡大を切望しておるわけです。低所得の人々、母子、障害者の人々、こういう人たちの自立を促進するために、このワクを拡大する措置をすぐとるべきじゃないか。厚生大臣どうですか。
  511. 田中正巳

    田中国務大臣 世帯更生資金につきましては、本年度の大体の需要見通しで実は予算を計上したわけでありまして、各都道府県に対しても、大体各都道府県と協議をいたし、その見通しのもとに、実は今年度の予算も配分をいたしたわけでありますが、どうも地方によっておっしゃるような向きがあるようでございます。これにつきましては、できるだけ還流した償還金等を充ててやっていきたいと思います。当面はそういたしたいと思いますが、五十年度予算につきましては、原資をさらに計上いたしまして、これは御案内だと思いますが、国が二計上しますと県が一計上するということで、三になって働くわけでございますので、そういったようなことで、来年度の予算計上については、さらに一段と努力をいたしたいというふうに存じております。
  512. 村上弘

    村上(弘)委員 長崎、山口、秋田、北海道、東京など、全国でこの希望がたくさん出ておるわけです。これにいま全部こたえても、全国で七億か八億ぐらいじゃないかといわれているわけですから、社会的公正、弱い人を救うという三木内閣は、こういうできることはどんどん手を打つべきじゃないかということを、重ねて言っておきたいと思うのです。  次に、労働大臣にお聞きしたいのですが、未払い賃金の問題です。  あなたは記者会見で、労働省は金や数字をいじる官庁じゃないんだ、生きて働いている人を相手とするところだ、こういうことを言っているわけですが、私のところに、亀戸に本社、工場のあったオフセット印刷機メーカーの浜田精機鉄工所につとめておられた労働者の方から訴えが来ているわけです。時間がありませんから、手紙を読むのは省略いたしますけれども、要するに、この浜田精機鉄工所はこの七月二十五日に閉鎖しているわけです。そうしてもう七月、八月、九月とずっと給料はもちろん未払いです。そして退職金ももちろんゼロ。いままでそこの工場で一生懸命働いてきて、いまになって三十八歳でこういう形だ、一人前の世帯を持っておりながら世間づき合いもできない、親戚との交際もできない、こういうことでいいのかということを訴えてきておるわけです。こういう状態に対して、仕事を保障するということが当然一つ必要なわけですが、同時に、こういう賃金が未払いになって、それに対して措置がとれないというような企業に対して、未払いの賃金を支払いができるように、基金をつくる、そういう制度をつくってはどうかと思うのですが、どうですか。
  513. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 いまのような事件が最近非常にふえておりますので、労働省としては、地方の監督署長、そういう諸君を督励して、各事業所にそんなことのないようにやっていると同時に、ただいまお話のありました賃金債権につきましては、強力な先取り特権を付与してはどうか、あるいはまた国が保証するような制度を設けるべきではないかというような議論があることも承知しております。しかし、この問題につきましては、賃金不払いの実態の分析とか、公租公課や、その他私法上の債権との関係、あるいは事業主責任と国の責任との関係で、非常に検討する問題は多くありますので、今後十分に検討してまいりたい、こう思っております。
  514. 村上弘

    村上(弘)委員 未払い賃金、労働債権、これはいずれば清算されるわけですから、その過程で、基金をつくっておいて支払いすれば、これはその間、月給がもらえない状態、賃金が受け取れない状態を救うことができるわけじゃないですか。倒産した中小企業の労働者が、その会社の処分の片がつくまではいつになったらもらえるかわからぬ、いずれ片がついてもらえる、そういう状態があるわけですから、その間お金を支払う、その基金をつくればいいわけです。政府が幾ばくかの出資をして資金をつくっておけば、そのお金によって支払いができるわけでしょう。そしてあとで清算すればいいわけですから、それくらいのことは当然やったらどうか。そういう制度をつくったらどうか。いろいろしかけがむずかしいとか、法規との関係がむずかしいとか、それは当然そういうことがあるでしょう。そういうことを言っているんじゃなくて、やるかやらぬか、やる気があったらそれで解決できるわけですから。どうですか。
  515. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 役所としても、そういうことを考えております。
  516. 村上弘

    村上(弘)委員 いまのお答えはたいへんけっこうです。ぜひ早く具体化してほしいと思うのです。  最後に、身体障害者の雇用問題、特に身体障害者を雇用する率をもっと高める必要があるんじゃないか。御承知のように、身体障害者雇用促進法によって、一定数の障害者は雇用するということが定められておるわけです。ところが現在はそれがなかなか実行されておらない。一体どれぐらい大企業が障害者を雇用しておるか、その雇用率はどのぐらいあるか、そのことをお答え願いたいと思います。
  517. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 身体障害者の雇用率につきましては、民間事業所では一・三%、官公庁では現業部門で一・六%、こういうふうにきめられておりますけれども、いまお話のありました大企業、五百人以上の民間事業所について見ますと、未達成事業所が四四・五%に及んでおります。産業別に見ますと、金融、保険、不動産業がその半数をこえておる、こういうことであります。
  518. 村上弘

    村上(弘)委員 身体障害者を雇用するということは、企業の側がよほど積極的にやる必要があるわけですね。いまもお答えのように、大企業、五百人以上のところは雇用の基準に達しないところが非常に多い、五割近くある、こういうお話です。基準に照らしても達成率が非常に低いわけですね。たとえば、三百人未満の企業だったら一.四の達成率です。ところが、五百人以上は平均して一・一と、こういうふうな低い状況。しかも、いまお聞きする金融関係だとか保険関係だとか、日ごろ社会福祉だとかいうようなことを口では言いながら、非常に大企業の利益を守る、そういう立場にまた大きな役割りを果たしておる、そういうところが一番弱い身体障害者に対して一番冷酷な態度をとっておる。こういう仕事は、身体障害者でもできるような性質のところなんです、職場としては。ところがそれを積極的にやろうとしない。  御承知のように身体障害者の雇用審議会というのがあります。これは労働大臣の諮問機関ですが、昭和四十八年の十二月十三日に、次のような意見具申をしていますね。第一は大企業中心に雇用の強化をはかれ、第二は雇い入れ計画作成命令などの措置をとれ、計画をつくれ、そういう命令を出せ、それから第三は消極的な事業所を公表せよ、こういうことをいっておるわけですね。この身体障害者の雇用促進の法律は、一定の基準は示しておるけれども、そうしてそういうことがやられなかった場合公表するということをいっているけれども、やらなかった場合にこれを処罰する、こういう強制力がないわけですね。それで、こういうような切々とした建議をあなたの諮問機関がしておるわけですね。これに対してどういうふうにあなた方は対処するつもりか。もっと思い切った強制的な措置をとってでも、雇用させる必要があるのじゃないか、このことをあなたにお聞きすると同時に、三木総理は、公害問題の本会議の石橋議員質問に対して、私はあなたよりも民主的です、審議会の意見に私は従うのであります、私自身がどうこうしようとは思いません、こういうことをあのときは言ったわけですが、こういう審議会が、大企業中心に雇用の強化をはかれ、雇い入れの計画作成の命令を出せ、消極的な事業所は公表してもっと促進せよ、ほんとうに切実にいっていることについて、民主主義であると言っておられるあなたは、これについてはどういう態度をとられるか、お答えを聞いて、質問を終わりたいと思います。
  519. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 身体障害者は、つとめているところでは非常に熱心です。そしてその職場にしっかりと食らいついて一生懸命です。そういう方方が失業しないように、私のほうは注意しております。  なお、いまのような事業所で非常に雇用率の悪いところは、近いうちに公表いたします。それと同時に、身体障害者の方々に対しましては、組合の皆さん方にお目にかかったときも、私のほうからもいろいろ御推進方をお願いしておるわけであります。
  520. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石橋君への私の答弁は、中央公害対策審議会というのは各方面の人が寄ってやっておるわけですから、それが国民的な立場で一ぺん大気部会というのできめて、それを告示を、私はすぐにすることは承認しないで、もう一ぺん総会に差し戻して、しかも構成のメンバーというのは各方面からの人たちが入っておるのですから、その審議会がきめたことを、私がそういうものを全然無視して、そうして私自身の判断で排気ガスの問題を処理することは民主的ではない、という考え方を申し述べたわけでございます。審議会の構成というものが片寄らないで、各方面の意見が吸収できるような審議会の構成をあらゆる審議会がとらなければならぬと思います。中公審に対しては、私はそういう態度でございます。
  521. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて村上君の質疑は終了いたしました。  明二十日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時十六分