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1974-12-24 第74回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月二十四日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員     委員長 伊能繁次郎君    理事 高鳥  修君 理事 中山 利生君    理事 村田敬次郎君 理事 佐藤 敬治君    理事 山本弥之助君 理事 三谷 秀治君       愛野興一郎君    片岡 清一君       亀山 孝一君    島田 安夫君       谷垣 專一君    渡辺 紘三君       岩垂寿喜男君    小川 省吾君       細谷 治嘉君    山田 芳治君       和田 貞夫君    多田 光雄君       林  百郎君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     福田  一君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       下稲葉耕吉君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         文部政務次官  山崎平八郎君         自治大臣官房長 山本  悟君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君         自治省税務局長 首藤  堯君        消防庁長官   佐々木喜久治君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房同和対策室長 山縣 習作君         環境庁長官官房         参事官     宇野  佐君         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         法務省人権擁護         局総務課長   森   保君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    柴沼  晉君         厚生省環境衛生         局環境整備課長 吉崎 正義君         農林省構造改善         局建設部防災課         長       棚橋 正治君         林野庁指導部治         山課長     鈴木 郁雄君         水産庁研究開発         部長      佐々木輝夫君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         海上保安庁警備         救難部長    山本 了三君         建設省都市局街         路課長     中野 三男君         建設省都市局下         水道部下水道事         業課長     井前 勝人君         建設省住宅局住         宅総務課長   吉田 公二君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 十二月二十四日  辞任         補欠選任   井岡 大治君     和田 貞夫君 同日  辞任         補欠選任   和田 貞夫君     井岡 大治君     ————————————— 十二月二十日  地方財政充実に関する請願三谷秀治君紹  介)(第一四〇二号)  同(折小野良一紹介)(第一七六七号)  同(野間友一紹介)(第一七六八号)  事業税事業主報酬制度創設に関する請願(北  澤直吉紹介)(第一四〇三号)  同外一件(天野公義紹介)(第一四〇四号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一四〇五号)  同(野呂恭一紹介)(第一四〇六号)  同外一件(藤井勝志紹介)(第一四〇七号)  同(村田敬次郎紹介)(第一四〇八号)  同(江崎真澄紹介)(第一七六九号)  同(河野洋平紹介)(第一七七〇号)  同(鴨田宗一紹介)(第一七七一号)  同外三件(笠岡喬紹介)(第一七七二号)  同(近藤鉄雄紹介)(第一七七三号)  同(住栄作紹介)(第一七七四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第一七七五号)  松江市立病院に対する財政援助等に関する請願  (和田耕作紹介)(第一四六四号) 同月二十一日  事業税事業主報酬制度創設に関する請願(加  藤六月紹介)(第二一五九号)  同(河村勝紹介)(第二一六〇号)  同(澁谷直藏紹介)(第二一六一号)  同(園田直紹介)(第二一六二号)  同外八件(田中榮一紹介)(第二一六三号)  同(田中六助紹介)(第二一六四号)  同(羽田孜紹介)(第二一六五号)  同外四件(横山利秋紹介)(第二一六六号)  同(佐々木義武紹介)(第二五四〇号)  地方財政充実に関する請願外二件(小川省吾  君紹介)(第二一六七号)  同(梅田勝紹介)(第二一六八号)  同外二件(竹村幸雄紹介)(第二一六九号)  同(細谷治嘉紹介)(第二一七〇号)  同(山田芳治紹介)(第二一七一号)  同(山本弥之助紹介)(第二一七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件  請 願   一 地方財政確立に関する請願平田藤吉     君紹介)(第三一五号)   二 地方自治体超過負担解消に関する請願     (中山利生紹介)(第五二九号)   三 同(丹羽喬四郎紹介)(第五三〇号)   四 同外一件(葉梨信行君外一名紹介)(第     五三一号)   五 同(丹羽喬四郎紹介)(第七一四号)   六 自治体病院に対する財政援助等に関する     請願鈴木善幸紹介)(第五三二号)   七 地方公務員給与改定完全実施に関する     請願鈴木善幸紹介)(第五三三号)   八 事業税事業主報酬制度創設に関する請     願(臼井莊一君紹介)(第五三四号)   九 同(金子一平紹介)(第五三五号)  一〇 同(鈴木善幸紹介)(第五三六号)  一一 同外一件(西村英一紹介)(第五三七     号)  一二 同(森喜朗紹介)(第五三八号)  一三 同(山本幸雄紹介)(第五三九号)  一四 同(井原岸高紹介)(第七〇六号)  一五 同(加藤紘一紹介)(第七〇七号)  二八 同外一件(粕谷茂紹介)(第七〇八     号)  一七 同(塩谷一夫紹介)(第七〇九号)  一八 同(羽田野忠文紹介)(第七一〇号)  一九 同(福田篤泰紹介)(第七一一号)  二〇 同外一件(宮澤喜一紹介)(第七一二     号)  二一 同(武藤嘉文紹介)(第七一三号)  二二 地方財政確立に関する請願柴田睦夫君     紹介(第七一五号)  二三 地方財政充実に関する請願(紺野与次     郎君紹介)(第八六五号)  二四 同(寺前巖紹介)(第八六六号)  二五 同(坂口力紹介)(第八六九号)  二六 同外三件(小川省吾紹介)(第一〇二     八号)  二七 同外一件(竹村幸雄紹介)(第一〇二     九号)  二八 同(山田芳治紹介)(第一〇三〇号)  二九 事業税事業主報酬制度創設に関する請     願(木村俊夫紹介)(第八七〇号)  三〇 同(石原慎太郎紹介)(第一〇一八     号)  三一 同(江藤隆美紹介)(第一〇一九号)  三二 同外二件(佐々木秀世紹介)(第一〇     二〇号)  三三 同(萩原幸雄紹介)(第一〇二一号)  三四 同外一件(廣瀬正雄紹介)(第一〇二     二号)  三五 同(松浦周太郎紹介)(第一〇二三     号)  三六 同(毛利松平紹介)(第一〇二四号)  三七 同(安田貴六君紹介)(第一〇二五号)  三八 同(山本幸雄紹介)(第一〇二六号)  三九 同(渡辺栄一紹介)(第一〇二七号)  四〇 地方自治体超過負担解消に関する請願     外八件(北澤直吉紹介)(第一〇三一     号)  四一 地方財政充実に関する請願三谷秀治     君紹介)(第一四〇二号)  四二 同(折小野良一紹介)(第一七六七     号)  四三 同(野間友一紹介)(第一七六八号)  四四 事業税事業主報酬制度創設に関する請     願(北澤直吉紹介)(第一四〇三号)  四五 同外一件(天野公義紹介)(第一四〇     四号)  四六 同(伊藤宗一郎紹介)(第一四〇五     号)  四七 同(野呂恭一紹介)(第一四〇六号)  四八 同外一件(藤井勝志紹介)(第一四〇     七号)  四九 同(村田敬次郎紹介)(第一四〇八     号)  五〇 同(江崎真澄紹介)(第一七六九号)  五一 同(河野洋平紹介)(第一七七〇号)  五二 同(鴨田宗一紹介)(第一七七一号)  五三 同外三件(笠岡喬紹介)(第一七七二     号)  五四 同(近藤鉄雄紹介)(第一七七三号)  五五 同(住栄作紹介)(第一七七四号)  五六 同(渡辺美智雄紹介)(第一七七五     号)  五七 松江市立病院に対する財政援助等に関す     る請願和田耕作紹介)(第一四六四     号)  五八 事業税事業主報酬制度創設に関する請     願(加藤六月紹介)(第二一五九号)  五九 同(河村勝紹介)(第二一六〇号)  六〇 同(澁谷直藏紹介)(第二一六一号)  六一 同(園田直紹介)(第二一六二号)  六二 同外八件(田中榮一紹介)(第二一六     三号)  六三 同(田中六助紹介)(第二一六四号)  六四 同(羽田孜紹介)(第二一六五号)  六五 同外四件(横山利秋紹介)(第二一六     六号)  六六 同(佐々木義武紹介)(第二五四〇     号)  六七 地方財政充実に関する請願外二件(小     川省吾紹介)(第二一六七号)  六八 同(梅田勝紹介)(第二一六八号)  六九 同外二件(竹村幸雄紹介)(第二一六     九号)  七〇 同(細谷治嘉紹介)(第二一七〇号)  七一 同(山田芳治紹介)(第二一七一号)  七二 同(山本弥之助紹介)(第二一七二     号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  これより請願審査入ります。  請願日程第一から第七二までを一括して議題といたします。  まず、審査の方法についておはかりいたします。  各請願の内容については、文書表等ですでに御承知のことでありまするし、また理事会で十分御検討を願いましたので、各請願について紹介議員説明等はこの際省略し、直ちに採否決定入りたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  本日の請願日程中、第二ないし第六、第四〇及び第五七、以上の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、残余の請願は、いずれも採否決定を保留いたしたいと存じますので、御了承願います。  この際、おはかりいたします。  ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 今国会におきまして、本委員会参考のため送付されました陳情書は、お手元に配付いたしておりますとおり、地方財源の確保に関する陳情書外十四件であります。念のために御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 伊能繁次郎

    伊能委員長 地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  この際、警察庁から、一連爆破事件等捜査状況について、消防庁から、三菱石油水島製油所タンク漏洩事故について、それぞれ報告を求めます。下稲葉官房長
  8. 下稲葉耕吉

    下稲葉政府委員 警視庁管下におきます一連爆破事件等捜査状況について申し上げます。  去る八月三十日発生丸の内ビル街爆破事件をはじめ、十月十四日発生三井物産館内爆破事件、十一月二十五日発生帝人中央研究所爆破事件、十二月十日発生大成建設ビル爆破事件等一連爆破事件につきましては、警視庁はもとより、全国警察がこれに協力して鋭意捜査に当たっているところでございますが、以下、現在までの捜査状況につきまして、その概要を御説明申し上げたいと存じます。  まず最初に、丸の内ビル街爆破事件についてでございますが、八月三十日の事件発生以来、現場から採取された爆発物組成物に関する捜査現場中心とした周辺地域の聞き込み捜査、さらには一般から寄せられました情報の掘り下げ捜査等を強力に実施してまいりました結果、現在までにおおむね次のような事実が判明するに至っております。  一、本件に使われました爆発物は、ダイナマイト十キログラム以上をペールかんと称する円筒型の金属製かん二個に詰め、これに九ボルトの積層乾電池トラベルウォッチ二個を用いて、時限式起爆装置を施した上、薄茶色クラフト紙と白いビニールひもで包装したものであること。  二、事件当日の午前九時十分ごろ、地下鉄丸の内線茗荷谷駅から二名の若い男が、他の一名の見送りを受け、爆発物と思われる円筒型の荷物二個を持って電車に乗り込み、同九時十六分ごろ御茶ノ水駅で下車したこと。  三、さらに同日午後零時十六分ごろ、地下鉄千代田線御茶ノ水駅近くの聖橋ビル前から、二名の若い男が、爆発物と思われる円筒型の荷物二個を持ってタクシーに乗車して三菱重工本社前に至り、そこで一名が荷物二個とともに下車し、他の一名は東京駅北口まで行って下車したこと。  以上の状況から見まして、犯人グループ茗荷谷駅及び新御茶ノ水駅を中心とする地区に何らかの関係を有するものではないかと思われますので、この地域に大量の捜査員を投入して聞き込み捜査に当たっているほか、爆発物組成物であるトラベルウォッチペールかん捜査にも引き続き全力をあげているところであります。  なお、本件犯行には、十キログラム以上と推定される大量のダイナマイトが使われておりまするところから、その出所を解明するため、全国警察を動員して、火薬類取り扱い場所等に対する捜査を続行している状況でございます。  次に、三井物産館内爆破事件関係でございますが、これにつきましても、十月十四日の事件発生以来、現場採取資料鑑定に基づく爆発物組成物捜査現場周辺地域の聞き込み捜査等全力をあげてまいりました結果、これまでにおおむね次のようなことが判明いたしております。  まず、爆発物構造等につきましては、二・六リットル入り金属製湯たんぽ塩素酸ナトリウム主剤とした混合爆薬を詰め、これに九ボルトの積層乾電池トラベルウォッチを用いて時限式起爆装置を施した上、ダンボール箱茶色ハトロン紙白色ビニールひも等で角型の小包にしたものと推定されております。  一方、犯人像等につきましては、若干の目撃情報もございますが、いまのところ具体的な犯人像行動経路を推定できる資料は得られておりませんので、引き続き基礎的な捜査を強力に推進しているところでございます。  次に、帝人中央研究所爆破事件についてでございますが、これにつきましても同様の捜査を行なってまいりました結果、爆発物構造は二リットル入りぐらいの消火器の本体に塩素酸ナトリウム主剤とした混合爆薬を詰め、これに九ボルトの積層乾電池トラベルウォッチを用いて時限式起爆装置を施したものであることが判明いたしておりますものの、犯人像等につきましては、いまのところほとんど資料が得られていない状況でございまして、引き続き聞き込み捜査に力を注いでおります。  最後に、大成建設ビルに対する爆破事件捜査状況でございますが、この事件は十二月十日の発生以来まだ日が浅いこともありまして、あまり捜査は進展いたしておりませんが、ただ爆発物につきましては、塩素酸ナトリウム主剤とした混合爆薬を使用したと認められること、積層乾電池トラベルウォッチを使用した時限式起爆装置と推定されること等の結果が出ております。  現在、不審者目撃情報等が五十件前後寄せられておりますので、これらの掘り下げ捜査全力をあげている状況でございます。  さらに、以上いずれの事件につきましても、事件発生後、東アジア反日武装戦線「狼」あるいは「大地の牙」と名乗って、犯行を自認する声明文が新聞社等に送られており、これが犯行と何らかの関係があるのではないかとも見られますので、これらの組織の実体解明にも力を注いでいるところでございます。  なお、昨二十三日午前三時過ぎ、東京都内江東区東陽二丁目にあります鹿島建設建築本部構内内装センター入口前で小規模の爆発が起こりまして、付近の建物の窓ガラス二枚が破損するという事件発生いたしました。  この事件につきましては、いままでの捜査によりますと、現場トラベルウォッチ破片ナショナル乾電池破片針金片白色角型ポリ容器などが遺留されておりましたほか、これらのものからガソリンか灯油と思われる油類及び塩素酸系火薬の反応が検出されておりまして、これまでに発生した他の一連事件と比較いたしますと、爆発物構造や威力にかなりの相違がありますし、事件発生の時間帯とか爆発物をしかけた場所等にも差異が見られますので、現時点では関連性の有無は明らかでありませんが、引き続き鑑定及び捜査を続行いたしております。  以上、警視庁管下一連爆破事件について捜査概要を申し上げたのでございまするが、この種事件は社会的に大きな不安を与えるものであり、何としても検挙しなければならない性質のものでありますので、警察としては今後とも総力をあげて捜査に取り組んでまいる所存であります。  次に、爆破予告事件捜査状況について申し上げます。  最近、一連爆破事件発生に便乗したと思われる電話等による爆破予告事件が激増の一途をたどっており、国民の日常生活に大きな不安を与え、地域住民の方々や企業等の業務の正常な運営を阻害しておりますことはまことに憂慮にたえないところでございます。  本年十二月十七日現在における爆破予告事件発生件数は、本年当初以来二千五百五十五件でありまして、そのうち八〇%に当たる二千九十五件は丸の内ビル街爆破事件以後に発生したものであります。この種事件模倣性が強く、連鎖的に発生する傾向が見られますので、警察といたしましては犯人を的確に検挙することが続発防止上有効な手段であるとの考えに立ちまして、鋭意努力しているところでございまするが、事件性質上、証拠資料が乏しいため、ことしのこれまでの検挙件数は百四十件にとどまっており、この種事件捜査の困難さを痛感いたしております。  ちなみに、これまでに検挙した事例から見ますと、少年による犯行が三〇%以上を占めており、また犯行の動機といたしましては、世間を騒がすための単純ないたずらや、金銭をおどしとるための手段として行なわれているものが多数を占めている状況でございます。今後、電話発信元の確認や証拠収集活動強化等に一そうの努力をいたし、検挙の向上をはかるとともに、厳正な処罰を求めるように処置してまいりたいと考えておる次第でございます。  以上で、報告を終わらせていただきます。
  9. 伊能繁次郎

  10. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 お手元資料によりまして、三菱石油水島製油所タンク漏洩事故概要を御説明申し上げます。  発生場所は、倉敷水島海岸通り四丁目二番地三菱石油水島製油所でございます。  消防機関がこの事故を覚知いたしましたのが十二月十八日二十一時十三分でございまして、水島製油所より救急車出動要請がございました。救急車水島製油所に到着いたしまして、その事故油漏れ事故であるということを確認いたしまして、消防本部報告をいたしましたのが二十一時三十四分でございます。これにより直ちに消防隊出動したということになっておるわけでございます。  事故概要でございますが、事故タンクは直接脱硫装置に直接つながっております貯油タンクでございまして、脱硫後の重油を脱硫装置から受け入れる貯油タンクでございます。その容量はいわゆる五万キロリットルタンクでございまして、消防法上の許可数量は四万八千キロリットルでございまして、高張力鋼によってつくられておるものでございます。直径が五十二・三メートル、高さが二十三・六七メートル、昨昭和四十八年十二月十五日に倉敷消防本部完成検査を受け、合格いたしております。  この事故の発見の状況でございますが、十二月十八日二十時四十分ごろにパトロール中の作業員が二百七十番タンクからの油の漏洩を発見いたしまして、直ちに隣接の二百七十一番タンクなどに油の移送等緊急措置を講じているうちに、二十一時十分ごろ異常音とともに多量の油が急激に流出をしたということでございます。そうしてその時点において救急車要請があったわけでございます。  漏洩状況でございますが、二百七十番タンク及び隣接の二百七十一番タンクに当時収容されておりました油のうち約四万四千キロリットルの油が流出をいたしまして、そのうち二万八千キロリットルが防油堤内にとどまっておりまして、その残りの約一万六千キロリットルの油が防油堤外流出をし、工場構内約八万平方メートルの範囲に拡大するとともに、海上相当量の油が流出をしたということでございます。この防油堤収容能力は約五万キロリットルでございまして、特に事故がなければ四万四千キロリットルの油は全量この防油堤内に収容可能であったわけでございますけれども、二百七十番タンクに設置されておりました独立階段タンクからの流出油のために倒壊をし、その独立階段の基礎が防油堤の一部を破損をし、その破損個所から防油堤外に、いま申しました多量の油が溢流をしたというわけでございます。そして二百七十番タンクの油は、タンクの側板と底板との溶接部付近に生じました亀裂から流出をしたというふうに考えられます。  これに対する応急措置といたしましては、海上への流出油三菱石油と川崎製鉄の間のいわゆる切り込み港湾部分流出をいたしましたので、その入り口にオイルフェンスを展張して拡大を防いだのでありますけれども、一部の油は湾内に拡大をし、次第にこれが瀬戸内海全体に広がるというような状況になっているわけでございます。また湾口にオイルフェンスを展張して湾外への油の流出を防止いたしますとともに、沈降剤による処理を行なうほか、さらに坂出、徳山、大阪などから大型油回収船を回航いたしまして、油の回収につとめているのが現状でございます。  消防庁といたしましては、十二月十九日専門係官現地派遣をいたしまして、事故状況の把握につとめますとともに、安全対策を樹立いたしますため、その原因究明につとめておるのでありまして、さらに昨二十三日に安全救急課長ほか一名の担当係官原因究明のために現地派遣をいたしておるところでございます。  なお、参考といたしまして消防隊出動状況を記載しておりますが、先ほど御説明申し上げましたように二十一時十三分に救急車要請がございまして、救急車一台が出動をいたしました。同じく三十四分に救急車より油漏れ報告がございまして、直ちに警戒のための消防ポンプ車出動を指令するとともに消防隊出動を逐次指令をしたわけでございます。  総出動台数は、倉敷消防本部からポンプ車化学車その他を含めまして二十五台、それから隣接企業からの応援出動が七台、市役所から二台、消防団が四台、三菱石油の自衛消防隊が四台、合計四十二台となっております。  倉敷消防本部出動車両の内訳は、資料に記載してございますように化学消防車四台、あわ放射砲三台、普通ポンプ車五台、タンク車二台、指揮車六台、消防艇一隻、救急車一台、あわ薬剤運搬車二台、トラック一台、合計二十五台というふうになってございます。  なお、事故タンク昭和四十八年九月六日に設置許可をしたものでございまして、同じく十二月十五日に完成検査に合格をしております。  それから流出の油はC重油類似品でございまして、脱硫装置から出てまいります温度が約九十度以上でございますが、タンク内におきましては液温八十度に保温されておるものでございます。なお、この油の引火点は百二十度以上というふうに考えております。  それから、先ほど申しました防油堤の内容量は約四万八千キロリットルで、高さ一・五メートルでございます。その階段の倒壊によりまして幅約六メートルにわたりまして九十センチ程度の高さのものが破壊をされたということになっております。  なお、参考のために、この二百七十番タンク中心にした図面並びに貯蔵タンク構造概要をあわせて参考資料として添付してございますのでごらんいただきたいと思います。  以上でございます。
  11. 伊能繁次郎

    伊能委員長 以上で報告は終わりました。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  12. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣見えていらっしゃいますが、自治大臣、引き続いて自治大臣に就任されたことについて心からおめでとうと申し上げたいと思います。(拍手)  そこで、質問に入らしていただきますけれども、昨日、参議院におきまして、地方交付税特例法の野党修正案が地方行政委員会で可決されて、遺憾ながら、残念ながら、参議院本会議でわずかの差で否決された。十七年ぶりのことが参議院で起こったということがけさの新聞に報道されております。  そこで、参議院における修正内容というのは、新聞紙上に報じてありますように、一つは、スタグフレーション下において地方団体の税は伸びておらない、しかし、こういうインフレ下において給与の改定をしなければならない。その財源の措置をするということで、補正予算案で五千五百億に及ぶ給与改定財源を交付税を通じて措置することになったわけでありますけれども、これでは不十分である、そこで千五百二十億円程度を交付税に積み上げようということであります。その千五百二十億円というものは五十年度以降の予算の中において、国の財政においてそれを三カ年にわたって補てんしていただきたい、そうしてその配り方については、こういう時期でありますから、単純に人口割りに基づいて新しい測定単位を設定して配分する、こういう内容のように伺っております。  ところが、けさの新聞を見ますと、こういうことが書かれてございます。「この修正案は予算の裏付けが行われていないというわけで、自治省幹部は「執行不可能だ。この法律がたとえ通ったとしても我々は予算の執行権を与えられていない。社会党は無責任きわまる」こういうふうに書いてございます。これは事実ですか。事実であるとすれば、その根拠をまずお聞かせいただきたい。
  13. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御質問がありましたように、きのうの参議院の地方行政委員会におきましては、社会党と公明党からの修正案が提出されました。また、共産党からも修正案が提出されたわけでありますが、その結果は、本会議において原案が可決された、こういうことになっておるのでありますが、そのことに関連して、いまの御質問は、われわれあるいはわれわれの中において、非常に無責任なことを野党がやっておるじゃないか、それはけしからぬ、こういう趣旨だと思うのでございますが、私としては、そういうような発言をした覚えはございません。ただ、こういうことがどういう実際的な効果があるかということについては事務から説明をさせることにいたしますが、まあ新聞ではいろいろやはりちょっと言ったことを非常にもじって書いてみたり、そういうこともあり得るのですから、そこいらはどういうのが筋合いであるかということを解明することがまず第一である、かように思いますので、事務のほうから答弁を……
  14. 細谷治嘉

    細谷委員 ちょっとその前に、予算というのは、あるいは法案というのは、政府から見れば原案どおり通るということがあれでしょうけれども、議会制民主主義という原則に基づいて国会が運営されておる、その場合に修正というのはあり得ますし、当然法律の根拠に基づいて法律案の修正、予算案の修正というものが出されるわけである。それを、これは重大な問題ですよ、国会の運営の基本にかかわる問題です。その修正案がたまたま委員会では可決されましたけれども、本会議で可決しなかったということでありますが、本会議で可決したらこれは法律になります。衆議院に返らなければなりませんが、法律になります。そこに議会制民主主義の根幹にかかわる問題があるわけであって、しかも、この内容を見ますと、いま申し上げたように、「我々は予算の執行権を与えられていない。」しかも、特定の政党をつかまえて「社会党は無責任きわまる」最終的には野党は全部賛成したのですから、これは社会党と書いてありますけれども、野党は無責任きわまる、こういうふうに言ったということになりますね。これは重大な問題ですよ。こういうふうに言ったのか言わないのか、はっきりしていただきたい。
  15. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は野党のほうから修正案が出て、そしてそれが採決され、またそれが法律になるということは決して悪いことではないと思っております、そのこと自体は。それについて、われわれがそういうような社会党を誹謗するような発言をしたかということになれば、われわれはそういうようなことはしておらないと思っております。
  16. 細谷治嘉

    細谷委員 この新聞に書いてあるところによりますと「自治省幹部は」とこう言っているのですから、新聞はうそを言ってないと思うのですよ。新聞が誤りなんですか。こういうことをおっしゃったのですか。
  17. 福田一

    福田(一)国務大臣 私としては承知いたしておりません。
  18. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと大臣、大臣が承知しておらないということは、こういうことはないということですね。こういう新聞の記事は誤りだと、ここで確認してよろしいですか。
  19. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はもちろんそういうことは発言もいたしておりませんし、自治省の幹部がどういう発言をしたかもつまびらかにいたしておりません。  ただ、なぜそういうことが新聞に出たかということになると、法案を修正いたしましたときに、政府の法案によれば、今度の補正予算の中身においてこれを実行ができるような法律を提出いたしておると思うのであります。ところが、いま社会党、公明党からお出しになったような案を実行するということになると、予算の裏づけがなければいけないのじゃないかという問題が起きるんじゃないか。私、どういうことを言ったかは知りませんけれども、原則として考えますと、その関係がどういうふうになっておるかということが問題ではなかろうかと思うのであります。
  20. 細谷治嘉

    細谷委員 いま私が申し上げましたように、政府資金、いわゆる財投資金、そういうものから一千億円を特別会計に借り入れなさい、その借り入れたものをこうやって配りなさい、交付税の総額、政府案に千五百二十億円を加えて配りなさい、その配り方はこうですよ、そして、借り入れたものについては来年度以降、まだ来年度以降の予算は編成されておらぬわけですから、五十年度以降三カ年間で均等償還を原則として返す、こういう内容なんですよ。どこに予算の裏づけがないというのですか。ですから、大臣はその辺知らないと言うのですが、大臣が知らないということじゃ困るのですよ、原則的なことを。どこに一体問題があるのですか。
  21. 松浦功

    松浦政府委員 かりに修正案が成立いたしました場合にどうなるかと申しますと、特別会計の予算の修正がなされておらないわけでございます。特別会計の歳出がないわけでございますから、私どもとしては法案の命ずるところに従うべきか、予算の範囲内で執行すべきか、私どもはどうにもならない。おそらく予算として歳出予算がございませんから執行できないと私どもは思います。したがって国会の御意思が、予算と法律案のどちらをとるべきかということは、国会の御意思としてもう一度予算案を修正するか、そういう方策がとられないとわれわれとしてはどうにも動きがとれないわけであります。
  22. 細谷治嘉

    細谷委員 交付税譲与税特別会計の入金、入れるというその法律の部分が不足ということでしょう。
  23. 松浦功

    松浦政府委員 歳出がないのです。予算を修正しなければだめなのです。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 予算措置というのはいまの特別会計の問題でしょう。これは地方行政委員会における法案でありまして、いまあなたがおっしゃっておるのは大蔵委員会でやればいいわけですよ。まだ国会の会期があるわけですよ。大蔵委員会の問題ですよ。地方行政委員会では人のほうの法律はやれませんよ。そうでしょう。ですから、これは無責任だということはそれこそおかしいです。地方行政委員会の多数できまったものが本会議で可決されれば、大蔵委員会のほうで特別会計に財政資金を、政府資金を借り入れます、そしてこれを支出しますと、譲与税会計の法律を大蔵委員会で処理すればいいわけですよ。これは大臣、地方においてもありますよ。自治法のたてまえは、財源が要る場合には財源をつけて条例を出さなければならない、法律も条例も出さなければならぬ、しかし同時に、同じ時刻に出さなくても、正確にその財源の裏づけというのが保障されておればいいという、自治法なり法律の便法というか、そういうあれもあるわけです。でありますから、これを受けて、開かれておる国会において特別会計に関する予算措置を講ずればいいわけです。何が無責任なんですか、何が乱暴なんですか、もう一度お答えいただきたい。
  25. 松浦功

    松浦政府委員 今回の予算案の中で、予算案がすでに成立をしておった後の修正の問題でございますから、特別会計自体が直らない限りは、われわれとしては執行ができないんじゃないかという疑問を持ったということでございます。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、財政局長は特別会計の問題だと言う。特別会計の問題は、それは予算は議決しても、かりにこの法案が参議院を通りますと、衆議院に戻ってくるわけですよ、戻ってきたらその予算の修正をしなければならぬ、特別会計の部分をですね。これはできないことじゃないのですよ、不可能なことじゃないのですよ。それは当然やらなければならぬです、参議院の本会議できまったことですから。衆議院で否決されるかもしれませんよ、しかし一院で可決したということであれば、その対策は当然国会の意思を受けて政府当局がやるなり、事務的な問題は協力をしなければならぬ。それをここで「執行不可能だ。この法律がたとえ通ったとしても我々は予算の執行権を与えられていない。」ストレートじゃないでしょう、措置をしなければならぬ。しかも後段で「社会党は無責任きわまる」と、社会党と書いてありますが、野党は無責任きわまる、こういうことですよ。いまの財政局長のことばからいっても、無責任きわまるなんということばは出ていないのですよ。これはどうなんですか、はっきりしていただきたい。しろうとが見ますと、一般の国民が見ますと、なるほど野党というのは斉合性もへったくれもない、めちゃくちゃな法律案を出して政府をいじめているなんという誤解が生まれるかもしれませんよ。これはすっきりしていただきたい、今後の議会運営の基本にかかわる問題ですから。
  27. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、こういうことは御案内のように初めてのケースでありまして、今度こういう参議院の与野党の数が非常に近接したということから、従来とは違った形の議事の運営というか、参議院において議事が行なわれることになると思うのであります。それの第一の、初めてのケースが今度のケースであると思うのでありますが、いまあなたのおっしゃった意味は、私は何も間違っておるとは思いません。それはできることであります。ただ、もしそういうことでありますれば、会期ももう二日ぐらいしかございませんし、できるならば、今後のあれとしては、大蔵委員会のほうへ、これが通ったらすぐにこの法案のあれをせいとか、あるいは政府に対してこういう措置をせいというような御注意があれば私はよかったんじゃないか。そうすればそういう意思の、これは私はそういうことを言ったということを肯定して申し上げておるんじゃありませんよ。無責任とかなんとかと言ったということを肯定しているんじゃありませんが、これからはそういう場合においては、政府に対して、この修正案を出すけれども、もし通った場合にはこういうふうに措置をしたらいいだろう、あるいはほかの委員会においてもこういうことをしたらいいだろうというような御注意をしていただければ、今度そういうことはなかったと思うので、今度は初めてのケースですから、しかももう二日しか会期がないような段階でありましたから、そういう意味では何かちょっとそこに不自然さを感じさせるものがあったかもしれませんね。しかし、原則として、野党の提出された修正案であろうと何であろうと、これが成規の手続を経て議決されれば、それに対応して他の委員会あるいは衆議院あるいはまた政府において、それに対応する策を考えることは、これは当然なことだと思います。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 多くを申し上げませんけれども、年末も迫っておりますので、私は端的に申しますと、これだけのかってない膨大な補正予算、それは今日の経済とどういう連関を持つのか、これは掘り下げた議論が必要でありますけれども、こういうインフレ下における国民生活、こういうものを考えて野党も全面的な協力をして、きわめて短時日の間に補正予算と関連法案を処理しよう、こういうかっこうになっているわけです。そういう点で大蔵委員会等から同じようなものが出てないということについては、これはまだやろうとすれば会期はあすまであるわけですから、やれないことでもないわけでありまして、私は、大臣なり財政局長のことばからいって、この新聞に、社会党及び野党は無責任きわまるということは大臣も言ってないし、これは新聞が、どこから出たかしれませんけれども「無責任きわまる」なんということばは自治省としては毛頭考えておらない、そういうふうにお答えいただかなければ、これは先へ進めません。どうですか。
  29. 福田一

    福田(一)国務大臣 今後の問題として厳重に注意をいたします。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ厳重に注意ではちょっと不満ですけれども、無責任なんということは大臣は考えておらない、こういうふうに理解をして、先へ進ましていただきたいと思います。  大臣、来年度の国の予算規模はどのくらいになる見込みですか、お答えいただきたいと思います。
  31. 福田一

    福田(一)国務大臣 大体今年度予算の二五%前後のところで落ちつくことに相なろうかと考えております。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 大体二五%程度といいますと、二十一兆円を上回る、こういうことになりますね。そうなってまいりますと、地方財政計画の規模はどのくらいになるお見通しですか。
  33. 松浦功

    松浦政府委員 先生御承知の、四十八年度の実態調査に基づきまする計画と決算との人員の乖離、御承知の規模是正を来年やりたいと思っております。まだそれの十分な詰めが終わっておりませんので、歳入歳出等、まだ国のほうも明確にならないこととあわせて、あまり明確なことを申し上げられないのを残念に思いますが、ある程度規模是正を、先生からも御指摘をいただいておりますので、やりたいと思っております。そういったことを前提に置きますと、本年度で国と地方財政の規模の相違が約三千億弱でございます。この三千億ぐらいの開きがもうちょっと開くのではなかろうかという推測をいたしておる程度でございます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣の諮問機関である財政審議会まで、地方財政計画と決算の乖離という問題が取り上げられております。いま財政局長から答えられましたように、昭和四十六年から地方財政計画はその決算との乖離を埋めていこう、こういう方向で、国の予算規模を上回るようになっております。  ところで、私はお尋ねいたしたいわけでありますけれども、その乖離の問題に入る前に、いま財政局長は、地方公務員の規模是正の問題を言われました。その前に私は、自治省が要求しております五十年度の地方債計画、従来のワク外債をワク内に組み入れましたね、その金額が一兆百六十九億円。このワク外債一兆百六十九億円をワク内に入れた重大な要因の一つは、おたくのほうで発行しているこの「地方財政」の十一月号に「第一の理由は、毎年度の地方財政計画額と決算額との間に枠外債が存在することによる乖離がある」のだ、いわゆる地方財政計画と決算との乖離の重要な原因の一つがワク外債にあった。そのとおりです。重要な原因だと思っている。それを今度一兆百六十九億円ワク内に入れるわけでありますから、これはいままでの国の予算を数千億円上回るということよりも、かなり大きく上回ってくるんじゃないか。言ってみますと、二十一兆三千億円ぐらいと二五%のアップで予想されるワクよりも、地方財政計画というのは、それよりも一兆円をこす規模、いわゆる二十四兆か二十五兆ぐらいの間に落ちつくのではないか。いまのワク外債一兆円を取り込むと、こういうことからも考えられますが、間違いですか、当たらずといえども遠からずですか、どっちですか。
  35. 松浦功

    松浦政府委員 ワク外債を全部ワク内に組み込んで地方債計画の中に計上するというのは自治省の要求でございまして、これから大蔵省とその基本問題について詰めなければならないわけでございます。  それで、私ども理解をいたしておりますのは、ワク外債の中でどうしても取り込まなければどうにもならないというたぐいのものが若干ございますが、ワク外債から中に入れようとしている大きな部分は土地の問題でございます。したがって、地方財政の規模がいたずらにふくらむという形になって、それが心理的に現在の経済にいろいろの影響を与えるということになりますれば、将来の方向といたしましてこの方向を実現していくにいたしましても、本年度はほんとうに必要な部分のごく一部をワク内に組み入れるという対策で済ませざるを得ないという場合もあろうかと考えておりますので、その問題は、右に行くか左に行くかによって、先生のおっしゃるとおり、規模が変わってまいると思います。そういう問題は、大蔵省ともこれから折衝の問題があるので、一応度外視してわれわれとしてやるべきことをやった場合には、いままでの格差よりも格差が開くだろうということを申し上げたわけでございます。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの財政局長の答弁はそのとおりでしょうけれども、頭隠してしり隠さずの感がある。土地の問題とおっしゃいました。あなたのほうの計画の中で、五十年度には従来のワク外であったものを計画に組み入れる、公共用地先行取得事業に五千七百八十億円、公共用地、そのうちの公共用地先行取得事業三千八十億円、それから水田債二千七百億円、こういうものを取り込んでいくわけでしょう。一兆円の相当部分というのは、あなたがおっしゃった部分なんですよ。私も水田債なんという、これはもう地方債計画の中に、ワク外であって備考の脚注にしか入っておらないのを、ちゃんとワク内に入れて、資金計画、財政計画をきちんとすることはけっこうなことだと思う。前向きに賛成です。ところが要求中でありますからどうなるかわからない。それはそのとおりでありますけれども、土地の問題について手配すれば、一兆円のうちの大部分というのはこれはワク外からワク内に入っていくわけであります。これはかなり大きく地方財政計画の規模を引き上げる、そのことが初めて計画と決算との乖離を埋める、こういうことになるわけです。簡単にお答えいただきたい。
  37. 松浦功

    松浦政府委員 ワク内に繰り入れたいといって要求をしておりますものの大部分が土地だと申し上げたわけでございます。土地というのはきわめて歳入歳出も明白なので、規模がいたずらにふくらんで経済に心理的な影響を与えるという判断が政府としてされて、あまり規模を伸ばしたくないということであれば、本年度の土地だけはワク外において、それ以外はワク内に入れたい、二段組みの気持ちでこれから折衝をしていきたいと思っておることを申し上げたわけでございます。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、あなたも常に言っておることですし、自治省の担当者もそう言っていることでありますが、今度は一兆円にのぼるようなものを地方債計画の中に入れていく。その場合に問題なのは、年々歳々若干の凹凸はありますけれども、地方債の質の問題が問われているわけです。政府資金の比率、今度のを見ますと、従来のベースによる計画額についての政府資金の割合、こういうものについても前進がありません。このワク外債についての政府資金がどうなるか、そういうことも一向この計画の中に書いてありません。私は心配しております。自治省が地方債の質の向上をはかるのだという以上は、かつては八〇%ぐらいが地方債であったこともあるわけですが、現在わずか五七、八%、せいぜい六〇%、こういうものを大幅に引き上げていくという決意が必要であろうと思うのでありますが、大臣、いかがですか。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま御質問のございましたように、政府資金の割合は順次高めていくような方針で臨んでいきたいと思っております。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 順次では適当にごまかされる。大幅にというお答えができませんか。
  41. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは、希望としては大幅でありますが、相手のあることですから、われわれとしてはそういうふうに交渉をする、こう申し上げたわけであります。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 相手があることはわかっております。わかっておりますけれども、大臣、よほどの決意を固めませんとだめなんですよ。ですから、これは強く要望しておきます。  そこで大臣、次にお尋ねしたいことは、こういう問題に関連して、大蔵大臣の諮問機関である財政審議会が、地方財政計画と決算についての乖離をとらえて、それが公務員給与をべらぼうに上げたから、それが乖離の最大の原因だ、そういうふうに指摘をしております。そして大蔵大臣の諮問機関があなたの領分にものを言っておりますよ。検討することはけっこうでありますが、公式の文書でものを言っております。これは現在の政府の縦割り行政の問題について、私は自治省は一体何しているんだいという気がしてなりません。検討することは拒否してはいかぬけれども、財政審議会が、地方財政審議会というのをちゃんとたくさんの給料を払って持っているんでしょう、そこまでものを申す、こういうことも問題がありますが、こういう問題について大蔵省のなすがままにまかせているこの姿、これは私は問題があろうと思うのです。  それともう一つは、その乖離というのは、実は公務員の給与で乖離というよりもっと大きな原因が、いまの地方債の計画と決算のそご、あるいは諸収入、諸支出金の計画と決算の乖離、こういうところに決定的な原因があるわけです。当然人事院勧告によって処理されるわけですから、当初の計画と決算の違いというのが起こるのはあたりまえです。一〇%から二〇%ぐらいの乖離が起こることはあたりまえです。こういうことでありますから、財政審議会の、誤ったとは言いませんけれども、自治省の領分にまで入り込んでやや政治的なものの言い方には問題があると思うのですが、いかがですか。
  43. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、審議会の意見というものを必ずしもそのまま尊重するつもりもございません。あれは、審議会は審議会でございまして、自治大臣は自治大臣の権限で処理いたしてまいる。また自治省の審議会が大蔵省の財政計画等にくちばしを入れても、私はそれは何も違法だとは思いません。これはお互いに相関関係で、外から批判し合うほうがいいのじゃないか。山に入って山を見ずというようなことがないような意味で、ある意味ではいいんじゃないかとさえ思うのであります。そういうことが出たからといってわれわれの権限を縮小されたとも思わなければ、何も私は大蔵大臣に遠慮してものを言おうともちっとも思っておりませんから、その点は御心配ないようにしてお願いしたい。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 冒頭申し上げたように、私は、練達の士、しかもいってみますと時の政府与党の幹事長といううわさが出たくらいの大ものの大臣でありますから、大蔵省がものをいうことはけっこうでありますけれども、私はそれを否定しませんけれども、断々固としてやはり自治大臣としのて本務を守り抜いていただきたい、これを強く要請しておきたいと思います。  そこで大臣、お尋ねしたいのですけれども、けさの新聞にも出ておりました国の機関委任事務について、こういう形ではどうにもならない、超過負担の問題がたいへんな問題になっておりますけれども、それについて自治省も努力いただいて今度の補正予算で一部前進したことは、私は自治省の努力も評価いたしますけれども、この超過負担の問題というのは、広義の超過負担、いわゆる本来地方財政法からいきますと国が一〇〇%負担しなければいかぬものを機関委任して、そして大部分を地方財政に転嫁しておる、こういう姿がございます。  そこでお尋ねしたいのですが、一体国から都道府県へ、市町村に機関委任事務をしておる件数はどのくらいあるのか、それに基づく経費はどのくらいなのか、国が負担しているのはどのくらいの割合なのか。けさの新聞によりますと、横浜市の国からの機関委任事務は児童福祉、生活保護など民生関係中心に全部で六十五ある。その業務に専従しておる職員は、全職員約二万人のうち一割をこえる約二千三百人に達し、一部手伝っている職員も含めると約七千五百人に及ぶ。これに対し国からの補助は必要経費の三〇%程度しかなく、市財政が圧迫されており、必要な事業もやりにくくなっているのが実情である。こういうふうに新聞は報道しております。これは横浜市の例を申し上げましたけれども、全体の問題であって、地方六団体も、農業委員会の経費などその例でありますけれども、こういうようなことでは機関委任事務は返上である、一部返上だ、こういう声が強く起こっておることも御承知のとおりであります。そこで、都道府県、指定市にどのくらいの経費がかかって、どのくらいの人員が必要で、そして国はどのくらいそれを負担しているのか、これをひとつ教えていただきたい。
  45. 松浦功

    松浦政府委員 手元資料も持っておりませんし、そういう角度から特に地方公共団体でどれだけそれらの経費に使っているかという調査は、いたしたことはございません。資料はございません。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 私がこういう質問を突然いたしましたので、いま即答できないことはやむを得ないと思いますが、大臣、これはたいへん重要な問題であって、地方財政法に基づく責任区分というのを明確にする、こういうことからいきましても、超過負担の問題がこれだけ問題になり、国の機関委任事務の問題がこれだけ問題になっておるやさきでありますから、いま私が申し上げたような線の資料をこの委員会に早急に出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  47. 松浦功

    松浦政府委員 どういう調査のしかたをするか、それから府県を通じて各市町村の資料をとるということになりますと、相当の時間を必要とすることは先生御承知のとおりでございます。しかもこれはよほどよく説明をして、コメントをして調査をいたしませんと、団体ごとに基準のとり方がばらばらの数字が出てきた場合には、集計したものに価値がないことになります。そういう意味で、私どものほうも十分努力いたしますが、相当の時間がかかるということを御了承いただきたいと思います。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 相当の時間がかかるでありましょうけれども、これはぜひやらなければいかぬことであります。  そこで委員長、時間がありませんからお願いしますが、来年の休会明け国会でこの委員会の審議が始まるまでに、ひとついま私が申し上げました資料を提出していただきたい、こう思いますがいかがでしょう。
  49. 伊能繁次郎

    伊能委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  50. 伊能繁次郎

    伊能委員長 速記を始めて。
  51. 細谷治嘉

    細谷委員 困難である、だから出せない…、
  52. 松浦功

    松浦政府委員 御承知のように、これから予算の折衝をいたしまして、予算がまとまればすぐ財政計画のほうに私どものほうは全員かかるわけでございます。一人も手があいている者はおりません。財政計画がおくれればまた先生におしかりを受けるわけでございます。交付税の単位費用も全部計算しなければなりません。自治省の職員をもう少しふやしていただかない限りは、とても無理でございます。死人を出すことになります。御了承願います。
  53. 細谷治嘉

    細谷委員 忙しいことはわかります。文芸春秋に書いておるように、自治省のあれを私はそうは見ておりませんけれども、しかしこれは出していただかないといかぬことでありますので、私が要求したそのとおりでなくても、ひとつ来年の休会明けの審議の際に、大体こういう姿であるということくらい、もうろうでは困りますけれども、代表的な例でもあげていただいて、そして資料の一部として提出していただきたい。これはどうしてもやっていただかなければいけませんから。
  54. 松浦功

    松浦政府委員 先生ともよく打ち合わせしなければいけないと思いますが、機関委任事務なのか委託費なのか、その辺のところは十分御相談をいたして、そしてそれに対する国庫補助がどうなっているのか、その程度のことまでは私のほうでつくれると思います。地方の実態がどうなっているかというのは、先生御承知のように三千の市町村のものを各地方課に集計させて、それをこちらに持ってきてまた全部集計しなければならぬわけでございます。ひとつ先生、人道上の問題でございますので、私どものほうで死人が出るようなことになりますから、御了承願います。
  55. 細谷治嘉

    細谷委員 委員長、私も忙しいことはわかりますから、それであまりこだわっていないのですよ。しかしどうしてもその姿、実態をある程度的確につかめるものがなければ、これはもう地方財政計画の本格的な審議もできない。これはさっきの規模是正の問題にも関係します。そういうようなことでございますので、私と話し合ってというような、一委員細谷ではなくて、ひとつ私が申し上げたことについて委員長中心とする理事会において、この問題は自治省から資料を出していただくように、理事会の責任において、委員長個人でなくて委員会として、この問題についての資料の作成方を推進していただきたい。いかがでしょうか。
  56. 伊能繁次郎

    伊能委員長 本件につきましては、私も非常に重要であることはよくお話でわかりますが、時日の問題、それから非常に広範な問題にわたっておりますので、理事会でひとつとくと御相談をいたしまして、できるだけ御期待に沿うような、ただ、いま財政局長の言っている趣旨もおわかりのようでございますが、理事会でよく相談いたしたいと思います。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 よくわかっておるということではなくて、事情を知ってまあしょうがないなということで、不満でありますけれどもそうしてくれという要請をしているわけですから、ひとつお願いしたい。  大臣に一つお聞きしておきたいわけです。せんだって地方税法の改正をやりました。そこで、地方税法についてはとりあえず電気料金がアップした分において、あまり前例のない年度内減税というのをおやりになったわけです。ところが電気税については幾多の問題点があることは、この春の通常国会におきまして電源立地促進についての交付金という問題をめぐって、いろいろと議論されたところであります。  そこで、二点だけお聞きしたいのです。いま五%以上コストの中に電気料金が占めておるものについては、自動的に非課税品目になっております。そして自治省が地方制度調査会に出した資料によりますと、五%から一〇%までで値上げ後四百四十二億円の減税が行なわれる。一〇%から二〇%までは百八億円の減税が行われておる。二〇%以上は二百二十七億円の減税が行なわれておる。合計七百七十七億、全くセブン・セブン・セブンというので、飛行機が飛んでいるよりもっとひどい形でこの非課税規定がまかり通っておるわけですよ。今度の四十九年度の予算編成の際に、自治省は二〇%以下の非課税品目を全部整理しよう、こういうことでありましたけれども、要求はしたように新聞では伝えられておりますけれども、それが実現いたしませんでした。そうして今度の電気料金値上げにおいて、大衆課税の分についてだけの珍しい年度内の減税が行なわれたわけでありますけれども、これの抜本的な整理をしなければこれはたいへんな問題です。  私は、ある地方紙でありますけれども、こういう新聞記事を見ております。ちょっと読みます。四十九年度の場合、電気税収入は一億三百十万二千円しか見込めない、ところが電気を大量に使用する大手は全部非課税になっておりますから、この非課税規定で八億六千九百九十万三千円が非課税になっている。言ってみますと産業用電気というものは一〇%ぐらいしか課税されてないというのですよ。九〇%は非課税になっている。たった一億円の税収しか入らぬで、この非課税規定がまかり通って八億六千九百万というものは非課税になっているのです。こういう措置が許されるでしょうか、不自然でしょう、大臣、どうお思いですか。
  58. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘をいただきましたように、電気税につきましては産業用の非課税制度がございまして、これは重要基礎資材等を製造いたします場合の原料に対する課税を慎む、こういう考え方から前々からとられておる措置であることは御承知のとおりでございますが、現在は御指摘のように製品コストの中に占める電気代のウエートが五%以上である品目につきまして、具体的に百二十九品目でございますが、非課税の措置がとられております。その金額が、ただいま御指摘をいただきましたように、今回の電気代の値上がり等によりましてふえてまいりまして、七百七十七億になる見込みであることは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、できるだけこういった各種の非課税措置を整理していくということで前々から当委員会の附帯決議等もいただいておりますし、その線に沿ってぜひ実行いたしていきたいもの、こういうことで努力をしておるわけでございます。  最近の状況では物価の問題でございますとか、あるいは電気代の値上げの問題でございますとか、いろいろ問題点は多々あるわけでございますが、できるだけ私どもとしてはこの措置を推進していきたいもの、こう考えて努力中でございます。
  59. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、いかがですか。
  60. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま政府委員が答弁しましたとおり、いささかわれわれとしても考えてみなければならない面が多いと思いますから、今後努力をいたしたいと思います。
  61. 細谷治嘉

    細谷委員 こういうことでは、これは九億ぐらい入るものがたった一億しか税金がなくて、一〇%しか税金がかからぬで、そして残りは非課税になってしまうというのは不自然です。私は福岡県のある市の市長をやっておりました。そのときしみじみ感じました。私の住んでいるところは産業用電気が多いのです。毎月毎月入ってくる電気料金、特別徴収義務者ではなくて、別ワクで、普通徴収という形で入ってくる税金というのが八%しか課税対象がないのです、九二%は非課税なんです。こういう不合理が許されるだろうかと思っておりましたが、今日依然としてそうなっております。ですからひとつよほどの決意でやっていただくと同時に、この委員会でも従来から問題になりました政府の産業政策、政府がこの産業政策をとっておることも、事ここに至りますと憲法の平等という原則からいっても問題があると私は思うのです。けれどもそこは問わないにしても、あなたも通産大臣をやっておられた、あなたには炭鉱爆発のときたいへんお世話になりました、そういう実態御存じなんですから、通産大臣という当時のあれですけれども、今日自治大臣でありますから、通産行政もよくわかっているのですから、こういう産業用のものが適度に必要だというのならばそれは国の政策であって、地方税との間でやはり、遮断すべきである、これが委員会の長い間の主張ですよ。これをひとつ貫いていただかなければならぬと思いますが、もう一度大臣のかたい決意のほどをお聞かせていただきたい。
  62. 福田一

    福田(一)国務大臣 日本が、ことばが適当であるかどうか知りませんが、いわゆる高度成長しなければならないときに、産業に対していろいろの配慮をいたしたことは事実でございます。それが今日の段階においてどうあるべきかということは、ただいま細谷先生が御発言になったところで十分明らかになっておると思いますので、先ほども私が申し上げましたようにこれについては十分考えていきたい、かように申し上げたわけでございます。
  63. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題に関連して大臣、もう一点伺いたい。  この春の通常国会におきまして、電源開発に重点を置くというエネルギー政策で促進交付金という制度ができました。そういう問題に関連して地方税法の一部の改正が行なわれました。言ってみますと、新営の発電所が五十年度以降、法律制定後できた場合には、従来はできてから五年間は三分の一、できてから六年から十年の間は三分の二、十年以降になりますと全額、こういうことです。十年になりますとだんだん簿価が減っていきますから、発電所をつくったらいつでも三割ぐらいしか税金を納めなくてもいいということに実際はなっているのですよ。それが改められました。それはけっこうであります。ところがいままでのものはだめだぞということであります。法律の原則は改めたんです。新しい発電所ができた場合にも固定資産税は取りましょう、一〇〇%取りましょう、こうなりました。過去のものはだめだというのですよ。過去のものを救う道はないのでしょうか。あるのですよ。少なくともそういう実態でありますから、たとえば基準財政交付税で対処するとか特別交付税で対処するとか、そういう方法があります。そういうことで穴埋めしてやるというお考えはございませんか。これはたいへんな問題です。
  64. 松浦功

    松浦政府委員 法律制定の際にもいろいろ問題がございました。われわれとしてはいま先生からお話があったようなことを胸の中にたたみながら、特別交付税等で当該団体の財政事情を見ながら措置をいたしてまいりたいと考えております。
  65. 細谷治嘉

    細谷委員 基準財政の中では見にくいでしょうから、特別交付税千四、五百億という膨大なあれになったわけですから、若干の弾力性もあるわけでありますから、ひとつお考えをいただきたい、こう思います。  もう一つ大臣にお聞きしたいのです。きょうから国土利用計画法というのが施行になったんですよ。これもまたたいへんな問題です、さっきの機関委任と関係しますけれども。ところが自治省の財政局が書いたこの本を見ますと、都道府県の標準団体で十七人要求している。その補助を三分の二出しましょうということでありますが、ものの本を専門的な人が分析しますと、たとえば埼玉県の実態、それからその他のいろいろなものを見ておりますと、知事に相当の権限が移っておりますから、とてもじゃないが十七人ではどうにもなりません。十七人では必ず地方財政計画の決算と計画との乖離を促進いたします。同時に地方財政のたいへんな負担が起こってまいります。埼玉県も、新聞に書いてあるところによりますと、必要人員のたった十五分の一しか見られない、こういうふうにいっております。東京都に至っては一〇〇分の一ぐらいにしか当たらない、こういっております。これではどうにもなりません。国土庁にやかましく自治省が言った努力は認めますけれども、これではどうにもなりません。いわゆる広義の超過負担が起こる。これは必然でありますから、こういうことについてあらためて国土庁なりに新しい自治大臣は、——要求のときは別の大臣でしたから、御検討し直して要求する御意思はありませんか。
  66. 松浦功

    松浦政府委員 従来から土地対策の人員というものは交付税の中である程度ずつ見てきております。それからまた今度の国土法自体の仕事が国の仕事であるのか、地方に非常に密接な関連がある仕事であるのか、その辺は非常に判断のむずかしいところでございます。したがって私どもとしては、国土庁にできるだけ地方団体が納得しやすいように、人件費を含めて多額の補助金、しかも高率に出してくれということをお願いをして、国土庁が清水の舞台から飛びおりるような気持ちであれだけのものを要求しておられると思うのですが、その要求自体がはたして大蔵省でどのぐらい認められるかということについてわれわれも非常に危惧の念を持っておる。もちろん大蔵省には、もしこういうものがうまくいかないということになると、国土法の事務は、国の部分に関するものは返上するぞという問題にもなりかねないから、きちんと補助金を見てくれよということを再々申し入ればいたしております。なお、あくまでこれからの問題はどれだけの規制をやるかやらないかということとも関連をいたしますし、買い上げの請求があるやらないやら、その辺もわかりません。ともかくできるだけ大きな補助金を取っていただくというかっこうに国土庁にお願いをして、そしてほんとうに実態が食い違うということであればさらに要求をし直してもらうということをお願いをし続けていかざるを得まい。自治省が予算要求するのでございましたらあんな予算要求はいたさないつもりでございます。その辺のところは御理解いただきたい。
  67. 細谷治嘉

    細谷委員 大体自治省、いまの財政局長が、たった十七人を国土庁が要求して、これをまた自治省が清水の舞台から飛びおりるなんという理解をしているのに問題がある。十七人、あたりまえですよ、これは。石段を一つ飛び越えたくらいの値打ちしかないですよ。あなた、自治省が清水の舞台から飛びおりると理解しているところに根本的な姿勢の誤りがある。ことばじりをつかまえるわけではありません。私は基本姿勢を申し上げておるわけです。  与えられた時間になりました。  最後に、いろいろありますけれども一点だけ。大臣、いまこういうインフレで、所得税は一兆四千五百億の四十九年度の減税をいたしましたけれども、過酷なこのインフレで、超過累進課税でありますから減税になっておらぬじゃないかという批判がございます。けれども、それ以上にいま国民の怨嗟の声は住民税の過酷さであります。それに輪をかけておるのが国民健康保険税の過酷さであります。国民健康保険の問題についても言及したいのでありますけれども、時間がありませんからそこへいきませんけれども、所得税は現在課税最低限、標準世帯で百五十万円、来年度は平年度化して百七十万円、ところが住民税はどうかといいますと現在百一万円ですよ。自治省は従来所得税の課税最低限と住民税の課税最低限を接近させるために努力して、いまようやく九〇%になった、こういうふうにいわれておりますけれども、九〇%を守り抜くということになりますと住民税の課税最低限の相当の引き上げを行なわなければなりません。この課税最低限の引き上げについて自治省も御検討いただいておるようでありますけれども、それがどうなのか。世間では、新聞等によりますと、百二十五万円ぐらいまで持っていきたい、こういうことを自治省はお考えのようでありますけれども、ところで私は、住民税の過酷さからいって、減税をしなければならぬということはもう間違いなくしなければならぬと思うのでありますけれども、残念なことには、そうなりますと市町村の住民税はなくなってしまう。自治省の資料によりますと、四十八年度を例にとりますと、三〇%以下のところが大部分で、所得割を納めている納税者が三〇%以上こえているところは七百九十しかないというのですよ。住民登録者の人数に対して三〇%をこえている団体は、三千数百のうち七百九十しかないということになります。これを百二十五万円まで上げたら、地方税、特に市町村の重要な税の柱である住民税というのはなくなってしまいます。どうするのでしょうか。お答えいただきたい。
  68. 首藤堯

    ○首藤政府委員 住民税の課税最低限の問題でございますが、一方におきましては住民の負担を軽減合理化をしますためにできるだけ課税最低限を適当な額まで引き上げて減税を進めていくという要請がございますが、他方におきましては、ただいま先生御指摘をいただきましたとおりの事態がございまして、地方財政、特に市町村財政の状況、それからさらにまた住民税のその性格から考えまして、住民税は地方自治をささえる一番基盤的な税であるにかかわらず、あまりに課税最低限を引き上げますと、いなかの市町村において住民税の所得割を納める人がいなくなってしまう、こういった問題もあるわけでございます。そこで私どもといたしましては、住民税の課税最低限はいわば生活最低経費と申しますか、そういったところに課税をする体制になってはなりませんけれども、やはり納税義務者の全国的な数、それからその分布の状況、それから地方財政状況、こういったことを考えながら地方自治の基盤である税としての性格を持ち続け得る程度にやはりとどめるべきである、このように考えておるわけでございます。したがいまして住民税減税の要請によりできるだけ課税最低限を引き上げていく、しかしそのような様相をよく見きわめた上で適正な額をきめていく、こういう態度でなければならぬと考えておるわけでございます。
  69. 細谷治嘉

    細谷委員 大げさに言えば、憲法では国民の快適な最低生活を保障するということになっている。したがって、最低生活に食い込むような住民税の過酷な現状は改められなければならぬことは申すに及びません。ですから住民税をやはり減税しなければならぬ、所得税の課税最低限に接近さしていかなければならぬ、現在それは九〇%である、これは貫かなければなりません。ところが一方地方の税財源というのはなくなってしまうわけでありますから、それについて想を新たにして考え直さなければならぬところに現在来ているのじゃないでしょうか。それはどうすることですか。これは申すまでもありません。国の税財源と地方税財源というものを一体のものとしてとらえて、そして必要な国の税財源、所得税というものを地方のほうに移譲していく、こういう基本的な構想を持たない限りはこの問題は解決しない、憲法違反と思われるような問題が引き続いて起こってくる、こういうことになると思うのです。  でありますから、これこそ大臣、財政局長が言った、自治大臣としては清水の舞台から飛びおりるぐらいの決意をしてこの問題に取り組まなければならぬと思うのでありますが、いかがですか。
  70. 福田一

    福田(一)国務大臣 十分検討をさせていただきます。
  71. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  72. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、午後一時十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時九分休憩      ————◇—————    午後一時十四分開議
  73. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林百郎君。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 税務局長にお尋ねしますが、私、昨日資料要求しておきました長野県の軽井沢町における前総理の田中角榮氏の所有しておる土地並びに家屋、何筆の土地で何筆の家屋があるかおわかりですか。
  75. 首藤堯

    ○首藤政府委員 長野県の軽井沢において田中角榮前総理が所有されております不動産でございますが、土地が八筆ほどでございます、それから家屋が一筆でございますが、土地は大体一万五千平米程度、それから家屋が百九十二平米程度、このように報告を受けております。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 東京ニューハウス名義の家屋があるかどうか調べられましたか。
  77. 首藤堯

    ○首藤政府委員 東京ニューハウス名義のものもございます。現在土地が三筆ございまして約一万九千平米、それから家屋が二筆ございまして約四百平米であります。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとその取得月日は、私のほうで見ますと四十七年の七月から八月にかけてが多いのです。これは田中前総理が総理大臣になったのが四十七年七月七日ですが、総理大臣になった直後が多いようですが、そちらのほうではその取得した土地、家屋の年月日がわかりますか。
  79. 首藤堯

    ○首藤政府委員 私どものほうでは取得年月日はよく調べておりません。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 念のために申しますと、田中角榮氏の名義の土地が七つありますが、そのほとんど、五筆が四十七年七月から八月、総理大臣になるとすぐに土地を取得しているわけですが、これに対する土地取得税はかけたかどうか問い合わせましたか。
  81. 首藤堯

    ○首藤政府委員 私どもが問い合わせましたところでは取得税、それから固定資産税、いずれも適正に徴収をしておるという報告を受けております。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 では念のために幾らの土地取得税をかけ、幾らの固定資産税を徴収されたか説明してください。
  83. 首藤堯

    ○首藤政府委員 土地の評価額でございますとかあるいは税額でございますとか、こういったものはいわゆる税法上の調査によって知り得た秘密事項に該当すると思いますので、ここで公表することは避けさせていただきたいと思います。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 さて、いまあなたは適正にかけられているという応答があったというのだから、適正かどうかというのは具体的にここで説明できるはずでしょう。国会ではそれが適正であったかどうか調べたいのであなたに聞いているわけなんで、適正だと言いながら具体的な内容が説明できないんじゃ、国会としての判断ができないじゃないですか。
  85. 首藤堯

    ○首藤政府委員 先ほども申し上げましたように、適正に課税をいたしておるという地元の市町村の報告を受けておる、こういうことでございます。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 私がきのう自治省に要求したのは、その取得した土地の土地取得税が幾らで、そしてその土地を幾らに評価して、固定資産税は幾ら納めておるか、それを念のために長野県に問い合わせて、前総理大臣の、ことに金脈問題が国会で重要な問題になっているんだから知らしてもらいたいということをたしか自治省に、あなたに直接言ったのですね。そのことは第一問い合わせしたのですか、しないのですか。
  87. 首藤堯

    ○首藤政府委員 地元の市町村に対しましては、課税の状況等、適正にやっておるかどうかといったようなことを問い合わせをいたしました。しかし先ほども申し上げておりますように、個々の納税者の具体的な評価額とか税額等につきましては、これは秘密事項に該当すると思いますので、公にすることは適当でないと考えます。したがってここで公表することはお許しをいただきたいと思います。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、自治省は軽井沢町から報告を受けているのですか。田中角榮氏の所有地を幾らに評価されて、それは土地取得税が幾らかかって、固定資産税は幾らかかっているかということは自治省はつかんでいるが、その自治省が国会のここで発表できないというのですか。それとも自治省は国家公務員の秘密に関することあるいは徴税の秘密に関することだからもう聞かなかったというのですか。どっちなんですか。
  89. 首藤堯

    ○首藤政府委員 自治省といたしましては、課税を適正にやっておるかどうかということを問い合わせましただけで、個別のこまかい数字等については調査をいたしておりません。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 それはおかしいと思うのですね。そうすると、同じ公務員の地方公務員が税務上知り得たことを自治省も聞くことができないのですか。そんなばかなことがありますか、それじゃ、あなた監督できないじゃないですか。自治法に監督権がちゃんとあるでしょう。自治大臣は地方自治体に対して、財務執行が適正になされているかどうかの監督権もあるわけでしょう。では監督権行使できないじゃないですか、田中角榮氏に関する限り。それでいいのですか。
  91. 首藤堯

    ○首藤政府委員 自治省といたしましては、事務上の手続としてはもちろん金額等を問い合わせして回答を受けることはできると思います。しかし、いずれにいたしましても、このような個々の内容につきましては公表することは避けさせていただきたい、このように考えております。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、私の聞いていることは、自治省は知っておるが発表しないというのか、自治省がもうそういうことは問い合わせをしなかったというのか、どっちかというのですよ。  御承知のとおり、自治大臣は財務監視権も持っているわけですから、適正な財務の処理がなされているかどうか、あるいは課税の処置がなされているかどうか、自治法の二百四十五条には、言うまでもなく助言も勧告もできるようになっているわけですから、それを調べられたのかどうかと聞いているわけです。
  93. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ものによりましては調べておるものもございますが、現在全部まとめてその数字を私どものほうで調べて持っておるというわけではございません。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 国会議員の私があなたに、この田中角榮氏の軽井沢町における所有土地の筆数、価格、課税を調べてもらって、きょうの国会で公表してもらいたいということに対して、一部は調べ、一部は調べない、どうしてそういう態度をとられたのですか。一部調べたなら、それじゃ一部調べたものだけでもここで発表してください。
  95. 首藤堯

    ○首藤政府委員 前々から事務上の都合がございまして調べておったものもございます。それから、御指摘がございましたので、これから問い合わして調べることももちろんできるわけでございますが、いずれにいたしましても、その具体的な評価額とか税額等々の内容につきましては、公表することは避けさせていただきたいと申し上げておるわけでございます。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 自治省官房総務課の監修した自治六法の、自治法の百条に関する地方議会からの要請に基づく理事者の納税上の資料要求に対してはこういう解説がついているわけですね。第一には、議会から要請された場合、町長はこれに応ずべきこと、また正当の理由のない限り応じないことは違法、こういう行政実例があるわけですね。  また、昭和三十三年の自治庁の回答には、滞納額だけでなく、地方税にかかわる資料の提出一般は差しつかえない、こういうように書いてあるじゃないですか。どうして田中角榮氏の場合ばっかりそんなにかたくなに自治省は発表しないのですか。地方議会ですらできるんだ。それの首長に、理事者に。国会議員が国政調査権に基づいて自治省に尋ねているのに、どうして自治省は国会議員にそのことがはっきりできないのですか。これはおたくのほうの官房総務課で監修した自治六法の百条説明にちゃんとあるんですよ。それはどういうわけですか。
  97. 首藤堯

    ○首藤政府委員 先生も御案内のように、税務行政上、その税務調査によって知り得ました事項、これは御案内の、地方税法二十二条によります秘密といたしまして、この秘密を守るようにという規定がございますし、それから地方公務員が一般的に業務に関しまして知り得ました秘密は、地方公務員法の第三十四条の秘密ということでこれを保護されておる規定もあるわけでございまして、これらの秘密事項が、ただいま御指摘のように、たとえば地方自治法百条の規定に基づいて議会から開示を求められたといったような場合におきましては、この秘密を守るということと、それから地方自治法百条の調査権との両方の要求が相競合することになるわけでございますが、このような場合には、議会における審議の必要性とかあるいは納税者の利益の保護とか、行政の円滑な運営の確保の必要性とか、こういったようなものを総合的に勘案をした結果、そこの首長が要請に応じて公表すべきもの、こういう判断をした場合を除きましては、これを開示することは適当でない、このように考えておるわけでございます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたのほうはそういう場合に、議会が要求をされた場合には、理事者としては正当の理由のない限り応じないことは違法だと言っているわけなんですよ。これはもちろん地方税法あるいは地方公務員法のそういう条文を踏まえての説明なんです。だからそれはたとえば百条の五項でかりに声明を理事者が出すという場合、公共の利益とどういう関係になるのですか。田中角榮氏の納めておる固定資産税を国会で、あるいは最初は地方議会としましょう。地方議会で公表することが何で公の利益に反することになるのですか。もし議会が、そこの理事者が正しい税務行政を執行しているかどうかということをただしたいと思って理事者に聞いた場合に、それを答えない、田中角榮氏の場合は答えないという場合は、何でそれが公の利益に反するのですか。
  99. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ちょっと設例があれでございますが、地方議会において地方税法の第二十二条の秘密に該当いたしますような事項を百条調査権等に基づいて正式に議決をいただいて資料の提出を求められる、こういう事態が起こりました場合には、そこの団体の長が各種の総合的な判断を加えましてこれを開示すべきものかどうかきめる、その結果開示すべきものだ、こうきめた場合には、その秘密事項であっても、そこにおいて秘密を守るという面の違法性が阻却をされると申しますか、開示をされると申しますか、そういうかっこうで開示をしてよろしい、こういうことになるわけでございまして、そのような判断がない限りにおいては、原則として開示すべきものではない、こう申し上げておるわけでございます。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 では私が国会議員として、国政上重要な問題があるということで、憲法で規定されている国会議員の国政調査権に基づいてそのことを自治省に求めた場合、自治省はどうするのですか。
  101. 首藤堯

    ○首藤政府委員 われわれといたしましては、自治大臣と申しますか、内閣と申しますか、そこの御判断によりまして、そういった秘密事項であることは明らかでございますので、それを開示すべきかどうか、この総合的御判断をいただいた結果、出すべきだということに相なりますれば、もちろん開示をすることは可能なわけでございます。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、昨日私があなたに求めているのを、きょう出せないのはどういうことなんですか。開示できないという結論なんですか。昨日私はあなたに、きょうこういうことを地方行政委員会で尋ねるから明らかにしてもらいたいというのに、あなたは答えられないというのは、それはどういう根拠でここで答えられないのですか。
  103. 首藤堯

    ○首藤政府委員 先ほどからも申し上げておりますように、個別の方々の課税標準でございますとか、税額でございますとか、これはいわゆる税法上守られております秘密事項に該当することは明らかでございます。私どもといたしましては、それを国会審議権との関係におきまして開示しても差しつかえがないという大臣の御許可をいただきません限りにおいては、開示をすることは控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 自治大臣がいないからしかたがないのですが、あなたは昨日自治大臣の裁決を求めたら、自治大臣は公表してはいけないと言ったのですか。それともこれから自治大臣に聞いてみるのですか。
  105. 首藤堯

    ○首藤政府委員 直接にきのう、ゆうべ承ったわけではございませんが、前々からこういう事項につきましては特にお許しを得ておりませんので、ただいま開示をすることができないわけでございます。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 こういう事項とはどういう事項ですか。
  107. 首藤堯

    ○首藤政府委員 地方税法上秘密に当たると思われる事項でございます。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは十一月十九日に「地方税に関する事務に従事する職員の守秘義務について」という通知を特別に出しましたね。これを十一月十九日に特にお出しになったのはどういう理由ですか。しかも従来は滞納者名並びに滞納税額の一覧表などは公表されていたわけでしょう。それからさっきも私が言いますように、この自治六法の説明によりますと、地方議会ですら、正当の理由のない限り、議会が理事者に求めた場合にはこれに応じなければ違法である、応じないほうが違法である。このことば、滞納額でなく、地方税にかかわる資料の提出一般も差しつかえない、要求して出すべきである、こう答えているのですよ。だから自治省の態度が、事田中角榮氏の金脈問題が問題になってから急にそういうように変わってきたのはどういうわけなんですか。具体的に聞きますと、四十九年十一月十九日、まだこれは田中内閣があるころですが、金脈問題が非常にホットになっているころ、特に自治省がこういう通知を出したのはどういうわけなんですか。
  109. 首藤堯

    ○首藤政府委員 十一月の十九日に「地方税に関する事務に従事する職員の守秘義務について」という通知を出しましたのは御指摘のとおりでございます。これを出しましたいきさつでございますが、これはただいま御指摘の最近のいわゆる金脈問題等々との問題とは全然無関係でございまして、先生も御案内のように当の地方行政委員会におきまして、前国会の終わりごろでございましたか、四月か五月ごろだったと思います。ちょっと月を忘れましたが、この守秘義務の扱いにつきまして御議論がございまして、ただいま御指摘をいただいておりますような自治省の従前の通達では、どうも国税における扱いと扱い方が違うような誤解を受けるおそれがあるのではないか、こういう指摘を受けたのでございます。その際には、政府として大蔵省、自治省それから法制局、こういった三者を合わせてその点について明確な判断を、統一見解と申しますか、そういった判断をきめて、これを地方団体に通知をして指導すべきである、こういう御趣旨の御質問をいただき、私どももまた、そのように努力をいたしますとお答えを申し上げたわけでございます。そのことに基づきまして、その後大蔵省、法制局等と内容の詰めをいたしまして、それが秋口になって詰めができ上がりましたものですから、十一月の十九日にその内容を通達をした、こういうことでございます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 どういう点が国税徴収の問題と地方税徴収の問題との間に誤解を受ける問題が介在したというように考えられるのですか。
  111. 首藤堯

    ○首藤政府委員 当時御指摘をいただきましたのは、昭和三十三年の六月に出しております行政実例におきまして、個人別の滞納金額一覧表、これを提出をいたしますことについて、これが秘密漏洩に該当するかどうかといった問い合わせがあったのでございます。これは岐阜県からでございますが、それに対します自治省の実例といたしまして、「「秘密漏えい」には該当しない。」こういう答えをいたしました。ただそのあとに「なお、徴税の政策上、個人別の滞納状況を積極的に外部に公表することを不適当とする場合においては、当該事項を取扱いの上で秘密とし、地方公務員法第三十四条の規定に係らしめることができることはいうまでもない。」こういう通達があったのでございます。この点について、「「秘密漏えい」には該当しない。」という書き方、これは真意といたしましては、地方税法二十二条の秘密には該当しない、しかし地方公務員法三十四条の秘密には該当するぞ、こういう意味だったろうと思うのでございますが、いま申し上げましたような書き方であって、非常に内容が舌足らずでございまして、これを誤解をされて、秘密漏洩に該当しないから公表してもいいのではないかというような動きが地方団体に若干あったようでございます。そういった点におきまして、国税における非常に厳格な秘密漏洩防止の取り扱い方とずいぶん違うではないか、そこをともかく両方で統一をすべきだ、こういう御指摘を当委員会でいただいたわけでございます。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、あなたのほうが監修しておる自治六法の百条のところの説明に「本条の議会の調査権の行使については強い権限が認められている」「官公署といえども職務上の秘密に属することのみをもって所属職員の証言又は記録の提出の承認を拒むことができず、その証言又は記録の提出が公の利益を害する重大なものである場合に限り、この承認を拒否することを認められる。」要するに記録の提出あるいは証言が公の利益を害する重大なものである場合に限り、この承認を拒否することを認められる、こう書いてあるわけです。これは間違いないのですが。これでも、何でものべつまくなしにみんな徴税のこと、個人の納税のこと、税務関係のことは言わないというのですか。
  113. 首藤堯

    ○首藤政府委員 自治法におきます議会の百条調査権の権限は強いものでございますから、ただいまお読み上げいただきましたような解釈がとられておるわけでございます。  しかし、その場合におきましても、別に税法二十二条あるいは公務員法三十四条等の秘密を守れという条項もあるわけでございまして、それをお求めに応じて開示をいたします場合には、比較権衡上開示をしてよろしいというそこの長の判断と申しますか、それに基づきます許可と申しますか、そういうことが要る、このように考えておるわけでございます。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた詭弁を弄しちゃいけませんよ。こう書いてあるのですよ。「官公署といえども職務上の秘密に属することのみをもって」これは地方税法の二十二条ですよ。「のみをもって所属職員の証言又は記録の提出の承認を拒むことができず」とあるのです。二十二条をちゃんと踏んで、百条による議会の要求に対しては、一般的にはできないのだ。「その証言又は記録の提出が公の利益を害する重大なものである場合に限り、この承認を拒否することを認められる。」こう書いてあるだけですよ。だから原則としては拒むことはできないとあるのです。それが変わったかどうかということです。  ましてや、われわれは国会議員として国政調査としてあなたに求めているのだから、これは憲法で保障されているのですよ。あなた方はかつて地方議会にすらこれだけの権限を認めているのに、いま国会議員が国政調査上自治省に田中角榮氏、前総理大臣ですよ、この人の所有地がどのように評価されてどれだけの土地取得税が納められ、どれだけの固定資産税が納められているかということは、むしろそのことを聞くことのほうが公の利益なんですよ。秘密にすることのほうが公の利益を害することになる、国民の疑惑を自治省が一生懸命になって隠していることになるんじゃないですか、どうなんですか、あなた。自治大臣、あなたの留守にこう言っているのですよ。自治大臣にお尋ねしたら、それは別にお許しを得なかったから言えませんと言う。自治大臣はそういう態度ですか。あなたは三木総理の閣僚として社会的公正を期する行政をやるというのでしょう。そうしたら、疑惑を持たれている前総理の田中角榮氏が、総理大臣になると同時に、七筆も八筆もの土地を昭和四十七年の七月軽井沢に取得をしている。別荘が四つもあるのですよ。旧水戸の徳川家の別荘を買い取ってみたり……。それが一体どのように評価されて、どのように取得税がかけられ、どのように固定資産税がかけられているかということを聞くことは、国民の疑惑に答える国会の重大な任務なんですよ。それこそが国家の重大な利益なんですよ。それを隠すことのほうが国家の重大な利益だという理由でこれを言わせないということはどういうことなんですか、税務局長と自治大臣。私は、福田さんは三木内閣の閣僚の一人なんですから、あなたがそういう指示を下僚にしたかどうかをはっきりさせてもらいたいと思うのです。
  115. 福田一

    福田(一)国務大臣 このことについては、御案内のように、衆参両院の予算委員会等においてもしばしば野党の皆さまから御質問がありまして、政府といたしましては、すでに統一見解を出しておるところでございます。すなわち、国政調査権の問題と守秘義務とどちらが重いかということについては、それぞれの個々のケースについて当該の長が判断をして行なうべきである、こういう統  一見解を出しておるわけでございます。  私は、いまあなたが御質問になったことは、田中総理の問題について御質問になったと理解をいたしておるのでありますけれども、こういうものは、一ぺん一つの堤に穴をあけますと、もうそれは際限なくどんなことでも、田中総理のことでさえ言ったじゃないか、なぜこのことについて言わないかというふうに、守秘義務といういわゆる徴税上の非常に大事な一つの問題と、個人のいわゆる自由を守るという問題とが、非常にクロスする問題が出てくると思うのであります。こういう意味で、われわれとしては、ケース・バイ・ケースといいますか、それぞれの場合において、どうしても必要であるかどうかということを判断をしてそうして対処してまいりたい、かように申し上げておるわけでございます。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ、税務局長それから福田大臣にお尋ねしますが、問題は、地方行政委員会なものですから、地方議会と地方の理事者との関係地方自治法にきめられておる地方公務員の秘密の順守の問題あるいは地方税法の秘密の順守の問題と議会の権能の問題が一つあるわけです。私は同時に国会議員として、国政調査権に基づいてここで自治省に、田中総理の長野県の軽井沢に所有されている土地と家屋についての評価並びにこれに対する取得税、固定資産税が適正に課税されているかどうかということを聞いている。この二つの分野は一応分けて考えなければならないと思うわけですね。  いずれにしても、たとえば地方議会の場合にしても、その議会の要求が理事者から拒否される場合は、この自治省官房総務課の説明によりましても、「証言又は記録の提出が公の利益を害する重大なものである場合に限り、この承認を拒否することを認められる。」こう書いてあるわけですね。ましてや国会議員の憲法に基づく国政調査権については、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律で、これを拒否できるのは国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣声明を出したときだけである、こう書いてあるわけですね。  だから、国家の重大な利益あるいは公の利益を害する重大なものと——いまここで国民の疑問に答える、要するに、国の徴税行政においてもあるいは地方自治体の徴税行政においても公正に行なわれているんだ、その人がかりにどういう身分の人であろうと公正に行なわれているんだということを、国会なりあるいは地方議会で国民の前に明らかにすることこそが、国の重大な利益を守ることになるんじゃないですか。それをいま福田さんの言われているような、詭弁と言わせてもらいますよ。詭弁を弄して必死になって、事田中角榮氏に関する限りは、納税問題については、地方に持っておる土地の取得税あるいは国定資産税までを国会で問いただそうとするのにこれを拒否しているという態度は、これこそ国の利益を害することになるんじゃないですか。ここで明らかにすることこそが国の重大な利益を守ることになり、ここであなたが私に対する答えを拒否することこそが、国家の重大な利益に悪影響を及ぼすことになるんじゃないですか。その点をよく考えてください。  そうでなければ、国民は、何だ、田中さんのことならあんなにだれも言わないなら、おれのことだってもうどうでもいいわということになるんじゃないですか。やはり正しい徴税が行なわれていないということになればどこでもそれがただされる、それからまた自治大臣は自治法にきめられている地方自治体に対する財務の行政に関する監視権を厳正に行使しているということが示されなかったら、それは幾らでも隠すこともできるし、あるいは議会で明らかにすることを拒否することもできることになるんじゃないですか。それこそ重大なことになるんじゃないですか。どうなんですか。三木内閣の閣僚としての福田さんに申し上げたいのですが、社会的公正ということは、そういう国民全体が持っておる疑惑に正々堂々と答えることが、社会的公正じゃないでしょうか。この点をまず自治大臣と、それから税務局長にもう一度お尋ねします。
  117. 福田一

    福田(一)国務大臣 林先生のおっしゃっておる意味はよくわかります。しかし社会的に公正というものを守らなければいかぬということももちろん大事なことでございます。しかしまた徴税に関する守秘義務を守るということも非常に重大な問題だと思っておるわけであります。  いまあなたは、田中総理だから隠すとかなんとかいうようなことはおかしいじゃないかということですが、だれでも一人でもそういう原則をくずしてしまいますと、そういうことになれば、どんなケースの場合でも守秘義務ということは全然意味がなくなるわけです。私はそういう意味合いでどちらをとるかということになった場合においては、確かに国民は知りたい面もあるであろうけれども、私はこの場合においては守秘義務のほうを重しとしてとるという見解を明らかにしておるわけでございます。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと重大なことですが、そうすると国政調査権よりは納税者に対する守秘義務のほうを上位に置く、こういう答弁を福田自治大臣はした、こう聞いておいていいんですね。
  119. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういう意味ではございません。総理も言っておるように、国政調査権というものは非常に大事なものであるから、できるだけ御協力を申し上げることが必要であるけれども、同時に、政府としては行政を行なうという一つの重大な責任がある。その行政のうちで徴税ということは非常に大事な問題である。その徴税の問題と比較した場合において、これを個々の問題に適用した場合において、どちらが大事かということを判断せざるを得ないんだが、この場合においてはそういう見解をとります、こう言っておるわけです。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 結局いろいろ言っておりますけれども、この際私たちが国民にかわって国会で明らかにしたいと思う——前総理田中角榮氏が、総理大臣になると早々、長野県の軽井沢で数筆の土地を買い占め、自分のファミリー会社も含めて四つの別荘を持っておる。総理大臣になったからといって、一体何で軽井沢に四つもの別荘が必要なのか、だれでも国民は疑惑を持つのはあたりまえですよ。四十七年の七月七日に総理大臣になった、そして四十七年の七月から八月にかけて軽井沢に六筆から七筆の土地を買い占めた、そして別荘を四つも持っておる、こういうことに対して疑惑を持つのはあたりまえですよ。これは週刊誌にも四つ出ております。もし福田大臣見たことがなかったら見てください。そういう国民の重大な疑惑、総理大臣になれば軽井沢に別荘を四つも持てるのか、一体それに対して総理大臣に税金は適正にかけられておるのかどうか、それがいいかげんに済むならばわれわれだってまじめに税金を納める気になるかという、それを解くことのほうが大事ですよ。  そこで、納税に関することは秘密だと言っておりますが、税務局長にお尋ねしますが、あなたが十一月の十九日に出した通達、これには「したがって、滞納者名及び滞納税額の一覧であっても、納税者等の利益を保護し、行政の円滑な運営を確保するため、一般に公表すべきでないことば勿論であるが」と書いてありますが、これは、滞納者名及び滞納税額の一覧はいままで公表したことがあるのですか。あるから念のために今度はそういう点を注意しろと言ったのですか。
  121. 首藤堯

    ○首藤政府委員 この通達に言っておりますことは、秘密にまず二つございまして、滞納者名とか一覧表とか、こういうたぐいのものはいわゆる地方税法二十二条の秘密、つまり税務の調査によって知り得た秘密ということには該当しないけれども、地方公務員法三十四条、これには該当する、こういうことを言っておるわけであります。したがって、あと守秘義務との関係で、その取り扱いについて二番目でいろいろ述べておるわけでございます。  御指摘がありましたように、滞納者名簿の取り扱いにつきましては、幾つかの団体において、過去、出し方はいろいろございますが、議会の委員会等の席上でこれを出しておる団体があるわけでございます。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣も首藤さんもよく聞いておいてください。自治六法の解説の中には「地方税に係る資料の公表ならびに閲覧等について」「問一 市会議員等より公式の会議の席上個人または法人の地方税の評価額、税額等について質問があった場合これに対する回答してさしつかえないか。」その二として「自己に非ざる(他人)個人または法人の地方税の評価額、税額等につき閲覧または証明の請求があった場合、これに応じてさしつかえないか。」これに対して「答一 地方税に係る資料の提出をすることはさしつかえないものと解する。」こうあるのですよ。原則はこうだということをちゃんと書いてある。その次に「自己に非ざる(他人)個人または法人の地方税の評価額、税額」云々については、「土地台帳または家屋台帳の登録事項のごとくなん人も知ることができる事項について閲覧または証明の請求があった場合においては、これに応じてさしつかえないものと解する。」こうも書いてあるわけですね。だから「市町村の議会または常任委員会地方自治法第九十九条第一項もしくは第百条または第百九条第三項の規定によって、当該市町村の事務について調査する場合においては、その要求によって地方税に係る資料の提出をすることはさしつかえないものと解する。」こうあるのですよ。ただ念のために「ただし、その調査に従事した議員等が調査内容を他にもらした場合においては、地方税法第十三条(現行第二十二条)の規定に該当する場合があるので念のため。」これはありますよ。しかし、原則として差しつかえないと書いてあるのです。このことを念頭に置け、こう書いてありますよ。これは変わったのですか。
  123. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいまも御指摘がございましたように、そのあとにその内容等について現行法第二十二条、つまり税法上の秘密、これの「規定に該当する場合があるので念のため。」こう書いてあるわけでございます。そのどちらを強く出しておるかというニュアンスの差はあろうかと思いますが、いわゆる議会における調査権の問題とそれから守秘義務との問題、これとの競合がやはり起こり得るわけでございまして、この競合が起こりました場合には両方の法益を検討いたしまして、発表して差しつかえがないというように長が判断をする、それで初めて職員としては守秘義務の厳守規定から解放される、こういう段取りになるのではないかと考えておるわけであります。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題は幾ら聞いていっても並行になると思いますが、そうするとあなたが十一月十九日に出した通達は、いままで滞納者名及び滞納税額の一覧を公表したこともあったけれども、こういうようなものは今後すべきでない、こういうようにいままでの禁止の範囲を特にこれで注意した、あるいは広げていった、こういう意味に解していいのですか。要するに、いままでは滞納者名及び滞納税額の一覧は明らかにしていたわけでしょう。これはどうなんですか。だから、四十九年十一月十九日に、田中内閣の当時のときで田中総理の納税問題について守秘義務が問題になっているときに、自治省までがこの問題で特に地方自治体に通達を出さなければならなかった理由を私はお聞きしたいのです。
  125. 首藤堯

    ○首藤政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたように、この問題につきましては三十三年六月の自治省通達に端を発しまして、当委員会におきましてこれの扱いを大蔵及び法制局等との間で明確にして、それで地方を指導すべきである、こういうお話があり、私どももそういう方向に向かって前向きに検討いたしますというお約束を申し上げた次第がございまして、その後ずっと大蔵省及び法制局と打ち合わせをし、最終的に成文を得ましたのでこれを地方団体に連絡をした、こういう段取りでございまして、先ほど申し上げましたように、いわゆる金脈問題の発生等とは無関係にスタートをいたしておりましたし、また、結論が出たところで無関係にこれを地方団体に通知をいたしたものであります。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 念のために自治大臣に聞いておきますが、三木内閣で発表した政府の統一見解というものは、要約すればどういうものなんですか。どうだというのですか。たとえば国会の国政調査権、国会議員が持っている、あるいは院が持っている、あるいは国会自身が持っている国政調査権、それと個人の納税の義務との関係、特に国民全体が疑惑を持っておる、総理大臣の地位にあった者、そういう人の財産を公にするというような場合は、むしろ国民の疑惑に答えることのほうが国の重大な利益にこたえることになるのに、それもケース・バイ・ケースで断わるというのですか。あるいは、適当な時期を見てそれは公にするという意味なんですか。どういうことなんですか。
  127. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御質問の御趣旨でございますが、いまあなたのおっしゃったのは、田中前総理のそういうようなものを発表しなさい、こういう意味で御質問を続けておられたわけですね。そういうことでございますれば、この守秘義務との関係についてといって統一見解を出しておるのは、読んでいただければ大体その趣旨がわかっていただけると思うのでありますが、私が先ほど御答弁申し上げたように、国政調査権というものは非常に重大なあれであるから、できるだけ政府としては御協力を申し上げる必要がある。しかし同時にまた、行政を担当しておる政府といたしましては、いわゆる徴税という問題について、これを秘密を明らかにするというようなことは、かえっていわゆる個人の自由を侵害することになったり、あるいは将来はそういうことをされるならばというような意味の非常な不平不満がかえって出る場合も起こり得るし、いろいろな弊害が起きるという観点から、これはひとつ差し控えさせていただきたい、こういう趣旨だと思っております。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この統一見解の中にある第三の項目ですね。「個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。」こういうことがありますけれども、きょう私が自治大臣並びに自治省の税務当局に問い合わせていることを見れば、守秘義務のほうが前面に出てしまって、国政調査権について、こういう点では協力いたします、こういう事態になれば協力いたします、こういう場合は協力しますなんということは一言も出てないじゃないですか。そうすると、この統一見解、政府がかっこうのいいようなものは出したけれども、「政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。」という点は、具体的にどういうことになるのですか。
  129. 福田一

    福田(一)国務大臣 この三項には「個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、」避け得ないという大前提が先に出てきておるわけであります。そういうことが起こり得る可能性があります、そういうことが起こり得る可能性はあるけれども、しかし政府としては国政調査権というものを非常に重要に考えておるので、最大限の協力をすべきであるという注意事項を付したものと考えております。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、第三項は単なる注意事項なんですか。統一見解の第三項目になっているわけですよ。それでいま国会では野党全体が、田中前総理の納税に対して、適正に行なわれているかどうかということを明らかにしたいという熱願を持っておる。これはまた同時に国民の疑惑を代表してのものなんですね。そういう国会の要求に対して、政府はできるだけ協力するというこの第三項を具体的にどう適用するのですか。田中前総理の場合についてはもう一貫してずっと守秘義務で、何を聞かれても答えないということなんですか。あるいは統一見解の第三項がありますからこういう場合にはお答えします、こういうことなんですか、はっきり言ってくださいよ。
  131. 福田一

    福田(一)国務大臣 第三項において、先ほども申し上げましたが、「国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが」……(林(百)委員「現に生じているのですよ」と呼ぶ)だから、ときに生じておるんだから……(林(百)委員「どう協力するのですか」と呼ぶ)それは生じた場合にはなかなか協力はむずかしいでしょう。事情変更の原則でも起きれば別ですがね。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 福田さんともあろう方があまり詭弁を弄されるとおかしいことになるわけなんですよ。いま政府と国会との間に見解が異なった状態にあるわけなんですよ。しかしそういう場合は「政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう」いいですか「十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。」こう書いてあるのですよ。十分国政調査権の目的が達成されるよう、政府は許される最大限の協力をすると言っているのだから、田中前総理の資産問題についてあるいは納税問題について、いま政府と国会との間に見解が異なる場合が生じておるけれども、政府側の最大限の協力、それから国政調査権が十分目的が達せられるようにするということは、具体的にどうするおつもりなんですか。三木内閣の閣僚の一人として福田自治大臣にお聞きしたいのです。
  133. 福田一

    福田(一)国務大臣 それは、最初にこの書き方をごらんくださればわかるので、「個々の事案について右の判断をする場合において」右の判断というのは、どっちのほうが重いかという判断ですね。その「判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろう」それが前段に書いてあるのです。だから、その前段が中心になるのでありまして、それに対して、しかしそういうようなにべないことではやはりいけないから、ひとつその点を十分御了承ください、われわれとしては国政調査権は非常に尊重しておりますということを強調する意味で、この後段を加えたものと御判断を願いたいと思います。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。りっぱなことが書いてある。あなたは政府と国会との間に見解が異なる場合がときに生ずる、そこばかり言っている。われわれはその後段の「政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。」これは何かと聞いているのに何も答えない。結局三木内閣というのは、ことばではきれいなことを言うけれども、実際は何もやらないということがきょうもここで明らかになったという結論で次の質問に移ります。こればかりやっていると時間が来てしまいます。まだ二つほど質問があります。  次のは、もう簡単にいたしますが、実はこれは自治大臣、刑事問題として、国家公安委員長として関与されていますが、但馬の問題で二つだけ聞いておきます。  実は、自治体がこの暴力事犯に予算を非常に流出しているわけです。これは私がかつて資料を持って福田さんのところに行きました。たとえば、八鹿町の同和対策予算の計上見込み、十二月議会の補正を見ましても、ゼッケン、はち巻き、腕章五十二万とか、それからワイヤレスマイク二十五万とか、青年部のユニホームが三十五万とか、マイクロバスが三百四十六万とか、あるいは支部活動費が二百七十五万とか、こういう予算が組まれているわけなんですね。それからさらに但馬の十町に対して、山田某なる人の糾弾闘争分担金というのが四千五百八十三万円も割り当てになってきているわけですよ。同和問題を取り扱う一党一派の、しかも暴力犯としていま警察捜査の対象になっている、こういうところへ自治体が予算をストレートで、しかもその闘争のために予算を流す、こういうようなことは、これは正すべきである。自治大臣としても、地方行政の執行について、正しく執行されるかどうかについては監視権もありますし、また勧告権もあるわけなんですから、こういうことは私は正すべきであると思う。同和というような問題は、三木総理も言っているように、非常に深刻な問題でありますし、不幸にして差別の取り扱いを受けている人には公平に行政的な恩恵がいくようにしなければならないのに、一党一派だけに、しかも暴力の費用まで分担している、それを自治体が率先して負担をしているというようなことは、これはやはり自治省としても適切な行政の勧告をすべきものである、こういうように考えますが、どうでしょう。
  135. 福田一

    福田(一)国務大臣 この同和問題で、同和関係の部落の間にいろいろの対立が生じておるところもあり、生じておらないところもございます。いろいろそれは種類がございますが、どちらの側がどうされたにいたしましても、一応自治体というものが国から同和予算を預ってそれを使うというような場合においても、相なるべくは一党一派に偏するようなことがないようにしてもらいたいというのがわれわれとしての希望でございます。  いままでは、そういうようなことも若干あったように聞いておりますが、私もまだ監査したわけじゃないからわかりませんけれども、しかしこれからはそういうふうにしてもらいたい。たとえばいま暴力を使ってないほうの団体が今度は逆にそういうことをされるということも考えられないわけではないので、要するに私が非常に残念に思っていることは、大体何とかして差をなくしよう、いわゆる部落というような問題が解消するようにという差別の解消を願っている立場で考えてみますと、私の言うのはどちらの場合でも、その予算を使うときに自治体が姿の違ったというか、正しい運営のしかたでなく使われておるとすれば、これは改めていただきたいというのが私の態度でございます。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 局長、どうですか。局長のところに私は幾度か実情を言って、地方自治体の自主性を守るために、さっき大臣も言っているように一党一派に偏した同和行政が行なわれるということは好ましくないのだ、要するに差別という不幸な立場にある人たちに平等に、どういう立場の人であろうと自治体の同和行政というものは公正に民主的に行なわれるべきであるということをしばしばあなたのところに行き、そして実情もあなたに訴え、あなたもわかってもらえたと思いますが、大体どうですか、あなたの考えは。直接監督の地方行政に対して、監督というかいろいろと助言をしておる立場の行政局長の態度を聞いておきたい。
  137. 林忠雄

    ○林政府委員 ただいま大臣が申し上げたと同じ趣旨のことでございますが、われわれの願いは、およそ関係の方が一致協力してこの行政の推進に当たっていただきたいと思います。現在そこの間に争いのあるということはどうも周知の事実のようでございますけれども、できるだけそういう争いをなくして一致協力して同和行政の推進につとめていただきたい、こう思っておるわけでございますので、自治体はそれぞれ御自身の自主的判断でいろいろな同和行政の進め方をやっていらっしゃると思いますけれども、われわれも県を通じ、よく同和行政の目的が達しますよう、今後とも助言もしてまいりたいと考えております。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 警備局長にお尋ねしますが、いま警察のほうも一応捜査入りまして、十一名逮捕して鋭意十一月二十二日の八鹿高校に起きた事案について捜査をされているようですが、いまの逮捕されている人たちを見ますと、何かどこかの行動隊長とかどこかの支部長とか、非常に末端のところであって、その上にそういうことを指揮していたようないろいろの連合組織の責任者とか、あるいはそこに出入りしていた教育関係者とか自治体の責任者とかいう人が、不幸にしてこの問題に積極的に関与しているわけですね、その動機がどういうことであったかはわかりませんが。こういうところまでやはり捜査を鋭意進めていって、そして再びああいう事態が起こらないように、そしてあの但馬地域で自由にものが言え、そして大事な子供、ことに受験期を控えた高等学校の教育が、先生方の良心に従った教育ができるように治安の確保を警察としてはしなければならないと思いますが、いまの範囲ではそれが保障されないと思うのです。その後またいろいろぼつぼつと起きています。だからこれはやはりそういう暴力というようなことに対しては徹底的に捜査をして、その立場がどういう立場の人であろうと警察としては厳正な措置をとるということが重要だと思いますが、このことについてはどうお考えになりますか。
  139. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 但馬一帯に起きたこういう暴力事案、これについては現在八鹿高校事件ということで特別捜査本部で捜査しておりますが、いまお話にあったように、現在逮捕されております十一名に限ったわけではございません。その背後関係あるいはその取り調べからいろいろな関係が出てくる可能性もございます。そういう面についても徹底した捜査を進めて厳正な結論を得たい、このように考えて捜査をしている、こういう報告を聞いております。
  140. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃもう一つ、十月二十日に橋本という教授が約一週間にわたって、これは朝来町の中学の教師ですが、不法監禁されまして、告訴もされまして、私もこの地方行政委員会で質問をいたしました。当然これも捜査の対象として進められていかなければならない、これから端を発してだんだんエスカレートをしていりたわけですから。それは捜査当局としてはお考えになっているわけですか。
  141. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 当然この事件も含めて現在捜査をしております。
  142. 林百郎

    ○林(百)委員 厳正な捜査を行なって地域の住民の期待に警察当局がこたえて、再びああいう不幸な事態があの地域で起きないような措置をやっていただきたい、こういうように思うわけです。警察関係はそれではけっこうです。  次に、消防関係で一言だけお聞きしますが、三菱石油の貯蔵タンクの問題なんですが、これは一体ここにタンクは何基あるのですか。私のほうで水島のこの写真などを見ますと、こういう写真があるのですが、三菱の石油タンクは一体幾つあるのですか、この水島のコンビナートのところに。
  143. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 水島製油所にありますタンクの基数は総数で三百十基でございます。その内訳といたしまして、原油タンクが十七基、半製品タンクが百二十九基、製品タンクが百四十九基、それ以外のタンクが十五基ということで三百十基でございます。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 全国ではこういうタンクは幾つあるのですか。
  145. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 全国の屋外タンクの総数は約九万一千五百でございます。そのうち石油精製工場関係の会社が持っておりますいわゆる大規模タンクといわれておりますものが、三万キロリットルから五万キロリットルの能力を持つものが二百二十八基、五万キロリットルから十万キロリットルの能力を持つものが三百六十基、十万キロリットルをこえるものが百四十一基ということになっております。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので要点だけ聞いておきますが、溶接部に七、八メートルの亀裂が入ったというのですね。そしてこのような漁民にも非常に大きな被害を与えておりますし、地域住民にも非常に大きな不安を与えておるわけなんですが、一体このタンクにそういう亀裂が生じてC重油が流れ出したというこの原因は、その亀裂が生じた原因はどこにあるのか、そのような責任はどこが一体負うのですか、そういうことを生じさせてしまったということについて。
  147. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 このタンクが、ただいま御指摘のように、側板と底板との溶接部分に近いところが破れて油が漏れたということは大体事実のようでございます。ただその場合に、その破れた原因が溶接による鋼板の変質によって弱体化したためにそこが破れたのか、あるいはそこが破れた原因はいろいろな操作のミスによって非常に大きい力が加わったためにその部分がこわれたのか、この辺はもう少し専門的な検討をしてみなければならないというふうに私ども考えております。したがいまして、いま早急にこの事故調査委員会的なものを設置いたしたいというふうに考えまして、溶接学の専門家あるいは金属材料関係の専門家あるいは地質等に関する専門家等を委嘱いたしまして、早急にその原因を確かめて恒久対策を考えていきたいというふうに思っております。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 私たちの聞き及ぶところによると、このタンクはできて何か一年かそこらの非常に新しいものなんですね。そのタンクが安全の保障にたえるかどうかということの調査の責任、認可の責任は消防庁にあるというようにわれわれ聞いているわけなんですけれども、しかし、いま長官にお聞きしますれば、全国で非常にたくさんのタンクがあるものですから、消防庁の現在の能力、人員、機材からいって、こういう経済の高度成長政策に基づく石油コンビナート、石油タンクの増設に消防庁のほうの体制がたえられないのだというならたえられないで、実情をこの委員会で明らかにして、われわれは消防の小委員会もあるわけですから、それにこたえるような体制を国政にあずかる者としてやらなければならないわけですが、一体、できて一年もたつかたたないかのタンクの底が七、八メートルも亀裂してしまうというようなことは、消防庁としては全然予測できなかったのですか。
  149. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 先ほど申しましたように、屋外タンクというものが全国で九万基あるわけでございますが、こうした事故は初めてでございます。そういう意味におきまして、この事故原因につきましては十分に究明をしてその原因を明らかにして、自後の対策を立ててまいりたいというふうに考えております。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、これは火災発生の危険はないのでしょうか。もし火災が発生した場合にはどういう防災体制をとるのか。  もう一つは、現在非常に広がっていますね。この広がっていることに対する一つの防災体制、これは非常に不十分で、きょうの新聞にもますます広がっている、こう書かれているわけですが、これに対してはどういう措置をとっているのか。もし火災が起きた場合には一体どういう措置がとれるのか。それだけの体制を消防庁としては持っているのかいないのか、その点をはっきりさせてもらいたい。
  151. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 この事故のありましたタンクにはC重油類似品で、ほぼC重油でございますが、これが収容されておったわけでございます。このC重油の発火点は非常に高い点にございますので、火災の危険性は他の石油類に比べますと比較的少なかったわけでございます。そういう意味におきまして、火災が発生しなかったわけでありますけれども、もしこのタンクに引火性の非常に強いガソリンでありますとかナフサといったようなものがありました場合には、火災の危険性がなかったとは言い切れないというふうに考えております。ただ、この地域におきましては、地元消防機関の能力、あるいは各企業の自衛消防隊の能力、さらにはまた化学薬剤の備蓄状況等から見まして、その火災発生時におきまして適切な措置をとれば、大体火災の発生は防げるだけの資材は一応あったというふうに判断をいたしております。ただ、油が海面に流出をしたという、この海面の流出につきましては一応オイルフェンスによる防御策をとったわけでございますけれども、やはり流出油の量が非常に多かった関係オイルフェンスだけでは十分に守り切れなかった、こういうことになっているわけでございます。  その辺の処置につきましては、各企業による処理と同時に、海上保安庁のほうにおいてその処理をお願いをするということになるわけでありますが、現在、私どもがこの事故で感じましたことは、要するに油の処理剤というものが第二次公害の問題がございますので非常に使いにくいという問題がございます。それから最も適切な処理としましての油回収船というようなものが港に装備されていなかった。この点がやはり油を相当拡散させた大きい原因になったのではないかというふうに考えております。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 海へ流れ出してしまうと、これは消防庁から今度海上保安庁へ責任がだんだん行くわけですが、ますます油の害が広がっていく、オイルフェンスをかけたけれども、それで防ぎ切れないというような状態、それから油回収船も備えておらないというような状態なのですが、一体海上保安庁としては、いま流れ出している重油がどのくらいの量で、それがますます広がっていくのですから、それをどういう措置でその広がりを防ぐことができるのか、その対策をお聞きしたいのと、それから水産庁としては、このために漁民ですね、ノリだとかワカメだとかあるいはフグだとか、そういうような漁業の被害が約四十四億だとかいわれているわけですけれども、この被害はどのような額と大体概算見られるのか、その二つを海上保安庁と水産庁にお聞きしたいと思います。
  153. 山本了三

    山本説明員 お答えいたします。  まず初めに流出いたしました油の量でございますけれども、この量につきましては正確なものは報告されておりません。私どもが現在までのところ、回収船あるいは吸着剤、処理剤等を活用しまして処理をしたというふうに推定いたしておる量はすでに三千キロに及んでおります。したがいまして、それ以上のものが出ておるのではないか、そういうふうに考えます。  次に、流出油の防除対策でございますけれども、消防庁長官が答えられましたとおり、当初、オイルフェンスでもって川鉄の切り込み港湾内に流出油を押し込めるという策をとろうといたしました。しかし、オイルフェンスの能力が及ばなかったのか、結局外へ流出するという結果になりました。自後、必要に応じてオイルフェンスを張って油をとめるという作業をいたしました。  この流出油の処理でございますけれども、この処理の方式というのは、私どもが考えておりますのは、油が流れた場合には、その拡散をいかにして防止するかといえば、オイルフェンスで拡散を防止する、そこへたまった濃いものがあれば、それを回収船あるいは吸着のむしろ、マット、そういった物理的な方法で回収をはかる。その回収漏れでオイルフェンス外に出るとか、あるいは薄くなったもの等については油処理剤を用いてこれを拡散、乳化、分散処理する、そういう方式できておるのでございます。  それで流出油は、われわれの拡散防止の努力にもかかわらず、御承知のように水島水道を外へ出まして、備讃瀬戸から、西のほうは丸亀、多度津の沖のほうでございますけれども、東のほうは鳴門海峡を越して徳島沖に達しておるというのが現状でございます。これらの防除につきましては、私がさきに申しましたとおり、濃い部分については回収船等を動員してこれの回収に当たる、薄いものについては油処理剤で拡散、乳化、分散させる、それから陸岸に漂着いたしましたものについては、その濃い分については、非常に幼稚な方法でございますけれども、タモとかあるいは網等を使ってこれを除去する、もちろん海岸についてはブルドーザーその他でもって清掃する、大体こういうふうなことをやるわけでございます。これだけ範囲が広くなりますと、企業あるいは海上保安庁等の力ではとても間に合わないということで、当然に地方公共団体あるいは漁業者の応援を得て、地域住民の自衛体制というものの力を加えまして、総力をあげてその処理に当たる、そういう実情であります。現に私ども海上保安庁におきましては、水島に総合的な対策本部をつくっておりますけれども、玉野と水島、それから高松地区に地区対策本部を設け、その地区の対策本部はそれぞれそこに対応いたします県庁と連絡を密にしまして、県庁は漁業者と連絡をとり、漁船あるいは漁民に動員をかけておる、そして人海戦術も加えてこの処理に当たる、そういう努力を現在続けておる次第であります。
  154. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 これまで各県から報告がございました漁業被害でございますけれども、これは今後どの程度漁業被害が続くかという見通しのとり方いかんで若干県によって食い違いがございますけれども、とりあえずノリ養殖を中心にしまして、ほかにハマチあるいはワカメ等での漁業被害が末端から報告されましたのを集計いたしまして、現状で四十九億を若干こえております。しかし、これにはまだ兵庫県及び徳島県下での被害報告が入っておりませんので、今後、被害報告の数字はさらに上回るのではないかというふうに考えております。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 四十九億というばく大な被害が生じているわけなんです。  これは大臣にお聞きしたほうがいいと思うのですが、スケールが大きいですから。私としては、第一、企業が賠償の責任をのがれるわけにはいかないと思います。同時に、もし消防庁のそのタンクの安全性についての調査が不十分だったというようなことになりますと、これは国家賠償の責任を生じてくるわけなんですが、四十九億もの賠償は、一体どのようにして被害を受けた漁民にしていくおつもりなのか。まずこれはやはり内閣として考えていただかなければならない。  それから、ついでに質問します。  エネルギー庁の課長さんも見えておりますが、こういうばく大な石油コンビナートをつくりながら、そこへ油回収船も準備してなければ、いま聞けば、人海戦術で何か海へ流れている油をすくい取っていくよりほかに道がないというような体制になっているわけですね。そんな体制しかないところへこんな大きな石油コンビナートをつくらせるということ、コンビナートをつくるなら、同時にその地域の住民の営業を守り安全を守るような措置も行政指導としてしていく必要があると思います。もちろん、消防庁も責任がありますけれども、通産省としてもそういう行政指導をしていかなければならないと思いますが、こういう点はどうか。  それから最後に、この前私のほうの村上議員が子算委員会で質問した場合、消防庁は、全国のタンクをもう一度総点検して調べ直してみるというようにおっしゃったのですが、それは進んでいるのかどうか。それも予算上、体制上、人員上、とにかくいまの消防庁の予算ではたえられないのだ、こんなコンビナートが全国にできてきますからね。そういうことならそういうことで率直に言っていただけば、われわれも協力するのにやぶさかではありません。  いずれにしても、この損害の賠償責任はどこが負うべきか。通産省としては将来の通産行政の指導上、どういう観点でこの問題を災いを転じて福となすようにするための指導をしていくか。それから、総点検の模様はどのようになっているのかという三つの点をそれぞれお聞きして、私の質問を終わります。
  156. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  通産省といたしましては、大きなコンビナートによる近代工業というものは、それなりの一つの経済的な合理性はもちろん持っておるわけでございますけれども、そういった方式を採用する場合には、当然のことでございますが、それが近隣の住民あるいは地域全体に対して非常に安全である、あるいは公害の面からも適正であるということが前提条件になることは当然でございます。  それで、また若干観点を変えますと、現在の中東情勢からいたしまして、日本がさらに備蓄を進めなければならないということも、一つの国家的な必要性があるというふうに思うわけでございますが、その状況のもとに三菱石油がこういった災害を起こしたことについては、私どもとしても非常に責任を感じているところでございます。  今後の対策といたしましては、昨日、各精製企業を呼びまして、とりあえず年末年始の対策について欠けるところのないように、再点検の結果を今週中に私どものほうに報告するようにということを指示したわけでございますが、今後、長期的な問題としては、それぞれの関係官庁とも御相談をいたしまして、通産省としても強い決心で対策に臨みたい、そういうふうに思っております。
  157. 佐々木喜久治

    佐々木政府委員 このタンク事故の生じました原因につきましては、先ほど申しましたように金属材料、鋼材の材料問題、それから施工の問題、それから操作の問題、いろいろその原因が重なり合っているのであろうというふうに考えておりますけれども、その明確な原因をできるだけ早く明らかにいたしまして、それに基づいて必要な措置をとってまいりたいと考えております。  総点検の問題につきましては、いま通産省のほうから述べられましたように、通産省のほうからいま各会社のほうに指示を出されておるというふうに聞いておりますが、私どものほうは、さらに技術的な面を突っ込んでその原因を見きわめて必要な措置をとってまいりたいと考えております。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣の答弁の前に。これは現実に四十九億もの被害が生じておりますので、どういうようにしてこれを補償さしていくつもりか、その施策を、年末も控えておりますから、なるべく具体的にお述べ願いたいと思います。
  159. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 ただいまお尋ねございました点につきまして、被害が発生してすぐに、水産サイドて漁業被害額の把握とそれに対する対策を統一して処理をしようということで、水産庁の出先の神戸にございます瀬戸内の事務局が本部になりまして、香川県、岡山県その他の県と連絡をいまとって交渉を進めつつございますが、農林省の考え方といたしましては、これは直接のきっかけが何であれ、水島の製油所からの油による被害であることは非常に明白でございますので、当然その責任者がその損失を補償すべきである、こういう考え方に立って関係者を指導してまいっておるわけでございます。  これまでの折衝の経過で、香川県側につきましては、少なくとも年内できるだけ早い機会にとりあえず応急の措置をとる。具体的に申しますと、香川県に水産振興基金という県と市町村と漁業関係団体が構成している公益法人がございます。ここが三菱石油の裏書きのもとに県の信漁連から借り入れをいたしまして、これを漁連を経由して末端の被害漁業者に仮渡しをする、こういうことで方針を取りきめまして、具体的な額につきましていま漁連と関係の会社との間で話し合いをしておる段階でございます。それから岡山県側につきましては、実は水産側のほうの交渉の基本方針がまだ固まりませんで、いろいろ話し合いをしている関係もございまして、いま交渉途中でございますけれども、県からの報告によりますと、近々にこれについても基本方針をきめて具体的な額の折衝に入る、かような情勢にあるというふうに聞いております。
  160. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま農林省側からも御説明をいたしたところでありますが、消防庁関係を担当する者としてお答えをいたします。  また、各府県も関係ありますが、今回の水島の流出油事故については、三菱石油水島製油所からの油の流出によるもので、原因者は明らかだと考えております。そのタンクのつくり方が悪かったかどうか、監督の責任ということは今後また十分調査しなければなりませんが、まず第一義的に私は三菱石油が責任を負うて、原因者負担の原則によって被害漁業者に対する補償を行なうべきものである、かように考えております。
  161. 伊能繁次郎

  162. 和田貞夫

    和田(貞)委員 まず私は自治省のほうにお尋ねしておきたいのですが、私たちが仄聞するところでは、近く自治省が同和行政についての通達を出すのじゃないか、こういうようにいわれておるわけなんですが、そのことの真意をこの機会にひとつお聞かせ願いたい。そうでないのかどうか。
  163. 林忠雄

    ○林政府委員 同和行政につきましては、これはたいへん重大な問題だといたしまして、きょう私の省ももちろんでございますが、それぞれの所管の各省、これらを取りまとめております総理府でもって常々その正しいあり方についての指導をやっておる次第でございまして、最近起きました一つの不幸な事件もございました。これらを契機にさらに同和行政の全般の正しいあり方というものを各省とよく協議いたしまして、地方団体のほうにもしかるべき指導をいたしたい、こう考えております。
  164. 和田貞夫

    和田(貞)委員 正しい同和行政というのを一応自治省として各省間の意見の調整もおありのことだと思いますが、同和行政の正しいあり方というのは、これは一つしかないと思うのです。したがって自治省として、いま申し上げましたように通達を出そうとしておるのであれば、一体どのような考え方が同和行政としては正しいのだ、こういうように思っておられるのか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  165. 福田一

    福田(一)国務大臣 行政、でございますからして、同和行政の場合においても、これは同和関係の人たちに公平に行政の恩典が浴するということが原則でなければなりません。この点においては明瞭だと思うのであります。  ただ疑問になっておるのは、市町村がその経費の一部を何かある一つの団体の運動をするために出しておるというようなことがありますれば、これは私は考え直してもらわなければならないと思っております。
  166. 和田貞夫

    和田(貞)委員 特定の団体が運動するために予算を使っておる、こういうことですか。
  167. 福田一

    福田(一)国務大臣 市町村の経費の支出の内容におきまして、これは市町村の自治でございますから、必ずしもそれにむやみに干渉することがいい悪いという問題はございましょう。しかし、いずれにしてもその経費のうちに何かある特定の団体にだけ経費を支出しておるというような面がありとすれば、こういうものは是正をしてもらいたいと思っております。私は同和の中に一つ、二つ、三つの団体があるように聞いておりますが、どの団体に属する場合においても、どの団体の仕事をする場合においてもそういうようなことがあ、ってはならない、かように考えております。
  168. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は、特定の団体に予算を使わせよというような、こういうやぼなことは言うておらないのですがね。いま大臣の言われたように公費ですからね。公費を特定の団体に上げてその団体が使うというようなことは、これはいま大臣の言われたとおり。しかし私たちの言いたいのは、これは同対審答申が出されたこと大臣も十分御記憶のとおりであると思うのです。同対審答申が出されたその過程というものを十分見きわめてもらわなければならぬ。同対審答申にはっきりと書いておるわけですが、これはもう過去の長い間の歴史の中で戦後なお差別が厳存しておる、こういう認識の上に立ってこの差別を、心理的な差別にしても実態的な差別にしても、これを抜本的に解消しなくちゃならない。そのためには国が責任をもって国民的な課題として、しかもその事業を進めるについてはその地域の住民の自主的な運動過程の中で調和を保ちながら、協力しながら同和事業というものを進めていかなければならないというのが、これは同対審答申の基本であるし、それに基づいてつくられたのが特別措置法である、こういうように思うわけなんですが、そういう認識の上に立っての先ほど来の発言であるかどうか、お聞かせ願いたい。
  169. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま和田さんがお話になりましたような趣旨で行なわれなければならないと思っております。
  170. 和田貞夫

    和田(貞)委員 通達が出されるという場合も、そういう観点に立って通達が出されるということでなくてはならないと思うのですが、それでいいのですね。
  171. 福田一

    福田(一)国務大臣 今度八鹿町に起きたような事件もございますので、ひとつ内部的に騒ぎが起きるとか、闘争とか、対立とかというようなことがないようにできるだけしてもらわなければならないということと、それからそういうような疑問のある経費などというものはなるべく使わないようにしてもらいたいという趣旨があってしかるべきだと私は思っております。
  172. 和田貞夫

    和田(貞)委員 だから、私はいま言われたことではなくて、私が先ほど申し上げた同対審答申の精神にのっとって同和事業というものは進めていくのだということが基本的な考え方に立っての同和行政でなくてはならないし、その観点に立った政府通達であるべきだと思うのだけれども、それでいいかどうかということです。
  173. 福田一

    福田(一)国務大臣 その通達があるにかかわらず間々こういうようなことも起きておるやに見られるから、そういう点も十分考えてもらいたい、こういう趣旨になるだろうと思います。そうでなければ通達を出す必要はないのです。すでに通達は出ておるのだから、いまさらそんな通達を新しく出す必要はない……
  174. 和田貞夫

    和田(貞)委員 通達は出さないのですか。
  175. 福田一

    福田(一)国務大臣 いや、そうじゃない。もうすでに通達のそういう趣旨は明らかになっているのですから、同対審の審議会の方針でも、答申でも何でもはっきりしているのですから、そのまま行なわれておれば、何らそれに屋上屋を重ねるようなことは必要ないと思う。だけれども、今度のような八鹿町のようなことが起きますと……
  176. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それはまたあとから話します。
  177. 福田一

    福田(一)国務大臣 あとからにしても、今度通達を出すのはなぜかというお話だから、原因を言わなければわかりません。だから、申し上げておるのです。そういうようなことがあったものですから、そういう場合においてはそういう疑義が起きるようなことはなるべくしないで、ひとつ仲よくやって、いわゆる公平の原則に従って同和行政が行なわれ、そうして差別というものがなくなるようにしてもらいたいという趣旨の通達になるべきではなかろうかと思う。  ただし、これは私は原案をつくったわけでもありませんし、まだ見ておるわけでもありませんから、いまあなたがどういうものを出すのだと言われるから、御趣旨に従って、中心になるようなものはこんなことじゃないだろうかということを考えている。しかし具体的にまだ起案しておりませんから、はっきり申し上げるわけにはいきません。
  178. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間の関係もありますので、あと進みたいと思いますが、方針としては変わっておらない、ものの考え方というのは変わっておらない。大臣の口拍子に出されました、かりにそういうことがあるとすればという、仮定の話をされておることもわかります。それが事実であるかどうかという、いま大臣の言われたようなことが、特定の自治体が特定の目的のために特定の団体に出すというようなことがあったとするならばということを言われたわけですからね。そのことはあるかないかということは仮定の問題ですからね。しかし今後出される通達としてもやはり政府の方針としては、先ほども申し上げたように、同対審答申の精神にのっとった同和行政を進めるという、こういう考え方のもとに、何回通達を出しても、その通達に流れる基本というものはそうでなくてはならないということを私は言っているわけであるから、その点については異議ないわけでしょう。
  179. 福田一

    福田(一)国務大臣 そうです。
  180. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そこで、一つは大阪の羽曳野市における同和向け住宅の入居の問題について現地でごたごたしているわけですね。その点についてひとつ、大臣が先ほど言われた公正、民主的、平等でなくてはならないというものの考え方に、私はいろいろと話をしながら、大臣だけじゃなくて関係各省のほうにお尋ねしていくわけなんですが、まず大阪のいま申し上げた同和向け住宅、これは解放行政の一環として、地域の環境をよくするという立場に立った地区の改良住宅あるいは公営住宅の建設という事業であるわけですが、大阪府では昭和二十六年、赤間文三さんが知事をやった当時ですね。赤間文三さんの知事の当時から、同和事業を実施するには公益法人大阪府同和事業促進協議会、略称府同促協というようにいっておりますが、こういう公益法人の団体をつくりまして、そして行政が同促協と協力してより効果あらしめるという考え方のもとに同和事業を進めてきておるわけです。念のために申し上げておきますが、この同和事業促進協議会には知事ももちろん入っておりますし、府下の全市町村長も入っておりますし、もちろん運動体としての部落解放同盟の代表者、役員あるいは学識経験者も入っておる全く政治色のない財団法人です。ところが昨年の十一月に羽曳野市に建設された同和地区向けの公営住宅、百戸建設されて、いま二十四戸建設中でありますが、この百戸の住宅が建てられたのは、部落差別に反対して解放行政を求めて、そしていま申し上げましたように、その一環である住宅の建設のために部落解放運動に結集した部落大衆の苦しい戦いの中で実現ができたわけです。にもかかわらず、建設が終わったこの百戸の住宅が約一年間今日まで放置され、そしてその間におきましては、先ほども申し上げました府同促協の第二十三回の定例総会の決議として、地元の実施機関の長である羽曳野市長に勧告をいたしております。あるいは五月に入りまして知事が調停に入りまして、知事、市長、そしていま申し上げた府同促協の三者による確認書が次のようにつくられておるわけです。その当時は羽曳野の津田一朗市長は、府下でただ一人だけ、彼が市長に就任するや府同促協を脱退しておるわけです。そこで知事が調停に入りまして三者で協定いたしましたのが、府同促協に復帰をする、これが一つ。したがって、羽曳野市も七月十六日にこの府同促協に復帰をいたしております。だから、もとどおり全府下の全市町村長がその府同促協の構成員になっておるわけです。二つ目は、住宅問題については府同促協との協議の上に立った入居選考委員会や実態調査を経て実施する、これが二つ目の協定事項です。この二つを骨子とした協定事項ができた。あるいは入居選考委員を選考するにあたっては部落会長、自治会長ですね、町会長です。その部落会長の意見を聞いて選考していく、こういう約束を部落会長との間にしておるわけです。いま申し上げましたようなそういう経緯を再びほごにいたしまして、十一月十九日、突如として記者会見をやりまして、その三つの経緯を振り捨てて、新旧区長さん八名おりますが、この八名を一方的に選考委員として委嘱状を送っております。そして委嘱を受けておらない者もある、受けた者もある。ところが、その委嘱を受理されなくても十二月のかかりになれば入居を行なう、こういうように記者会見で発表をしておるわけです。したがって、再び入居についての混乱が起こる、こういう原因をつくり出しておるわけです。(「市町村長がやるんだよ」と呼ぶ者あり)これが十二月十四日から十五日の未明にかけての羽曳野市の住宅入居紛争事件であります。羽曳野市の大西という市長公室長は、そのような記者会見のあとで何度も市長に進言したが市長は聞いてくれなかった、こういうように嘆いているくらいであります。これが羽曳野の住宅問題の紛争事件の最近におけるあらましなんです。  そこで、この一方的に市長が八人の選考委員を委嘱して四人しか受理しなかった。その四人で選考してしまった。もちろんその前に受け付けをするところにも問題があったわけであります。  私は、話をあとに進めるにあたりましてこの機会に建設省に……。公営住宅というのは一般向きの公営住宅もあれば特定目的を持つ公営住宅もあります。一般向きの公営住宅というのは住民一般を対象とするわけでありますから、これはどの自治体でもやっておることは大体同じようなことをやっておられると思う。しかし、特定目的に合致する公営住宅というのは、まずその特定目的に合致する資格があるかどうかということです。一般向きの住宅のように、さあ収入はどうであるとか家族構成はどうであるとかということだけでなくて、その特定目的に合致する資格があるかどうかということが一番大事な問題でありますから、だから、この点につきましてはやはりむずかしい問題なんです。そこで建設省は、こういう特定目的のところの公営住宅の入居にあたってどういうような事務をやればいいかということを行政指導されておるかということについてまずお聞かせ願いたいと思う。
  181. 吉田公二

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、一般向けといわゆる特定目的でございますが、特定目的の内容はいろいろございまして、母子世帯でございますとか身体障害者世帯、その他いろいろあるわけでございますが、特に同和向けの場合が御質問の点かと思いますが、いずれにいたしましても最終的には事業主体が判断するわけでございますが、その判断にあたりまして、同和向け公営住宅の場合にはそうした事情に精通している方あるいはそういった関係の団体、そういう方々の意見を入れましてその御協議によって運営していくのが一般的な形と存じます。
  182. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いま建設省が言われましたように、今後自治省も行政指導するにあたって聞いておいてほしいのですが、母子家庭、心身障害者、老人向け、それぞれの特定目的がある。これは市町村長が、この世帯は母子家庭である、この世帯は老人家庭である、この家庭は心身障害者の持っておられる家庭であるということは証明できます。住民票からいってみても、あるいは手帳からいっても証明ができます。市町村長が証明することができます。けれども、同和地区向けを目的とした住宅については市町村長は証明できません。先ほどうしろのほうから市長が、市町村長がと言われる発言もありましたけれども、この世帯は部落住民であるということは一体だれが証明するのですか。(「最終的には市長だよ」と呼ぶ者あり)そうですが。市長がこの世帯は部落民であるということを証明できるのですか。(「できますよ」と呼ぶ者あり)できるか……
  183. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  184. 和田貞夫

    和田(貞)委員 できないのです。だからこそいま建設省が言われたように、同和地区向けの住宅については証明ができないのだから、その地域の自主団体として自主的に運動しておる団体に相談を投げかけて、相談をし協力を得なければ、この特定目的を達する事業というものはできない、こういうことですね。にもかかわらず、いま例をあげました羽曳野市長は意見を聞いておらない。意見を聞くということを約束しておるのです。にもかかわらず聞いておらない。念のために言っておきますが、この羽曳野市長というのは共産党員の市長です。だからひとつそのことについては、いま建設省が言われたような行政指導は今後なおしてもらわないと困ると思うのですが、さらにこの行政指導を建設省や自治省はやってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  185. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまのようなお話は、原則論を申し上げますと、やはり具体的な問題についてこういう委員会でいずれが是でありいずれが非であるという判定を下すことは私はむずかしいと思います。現地においてどういうようなことが起きておったかというのは、知事とかあるいはまた市長とか町長とかいうような人が一番よくわかっておるわけなんです。いまあなたがおっしゃったことは間違いだと申しているのじゃありませんけれども、こういう場所でいずれが正しいか正しくないかという判断をすることば間違いであります。原則論しか言えないと思うのであります。  そこで原則論になりますが、いまのようなお話になりますと、一体同和の人たちがどれくらいいるかもわからないのに、建設省が戸数を何戸つくるとかなんとかいうようなことを一やはり全国的に基準で、ここには何百人いられる、だからここへはどれだけつくる、ここには百人いられるからこれだけつくるという基準というものがなければいけない。  私、実は同和のしろうとで教えていただきたいのですけれども、そういうふうなことは大体わかっているのじゃないか。私の聞いているところではいろいろの団体が三つばかりあるように聞いておる。その三つあるのはみんな同和の方であると認定をするのが、政治的に見れば正しい認定のしかたであると私は思うのです。その三つのものを対象にして建設省としては、あるいはその他のことにしても、保育所をつくるとかいろいろなことはほかにもあるだろうと思うのですが、そういうことをおやりになるについては、やはりそういうものを、全体の数字を一応は把握しているのじゃないかと思うのです。そこいらが私は実に残念なんですが、何とかもっと仲よくしてもらえないだろうか、行政をやっているわれわれとしては、何とかもっと仲よくしていただきたいと思うのでありまして、そういうような具体的な問題になって、適用が正しかったかどうか、羽曳野市の市長がやったのが正しいかどうか、あるいは府同促協がやられたことが正しいかどうかというようなことは、この委員会では判定すべき筋合いのものではない。これは場合によってはそういうことは申すと非常に問題になるのなら、やはり委員会でもって実地踏査をするとか、そこへ行って見てくるとかいうことでもしなければ、結論は出ないと思うのです。  私が先ほどから申し上げておるのは、とにかくそういう意味で予算を出すのだから同和関係の人はみんな仲よくして、みんなに平等に渡るような努力をしてもらいたい。それで市町村が何か金を使うような場合でも疑わしいようなことはしないようにしていただきたい、こういうことを言うことはちっとも差しつかえないのじゃないか。いまおっしゃったあなたのお気持ちを決してそこなっておらないのじゃないかという考え方でおるわけであります。これがいいか悪いかということになりますと、ここではちょっとお答えできない……(林(百)委員委員長、議事進行ですが、市長が共産党だとかなんとか、どうしてそういうことを言うのですか、それこそ差別ですよ」と呼ぶ)
  186. 和田貞夫

    和田(貞)委員 事実を言っておるのですよ。(林(百)委員「そんなことを言う必要はない、委員長、注意してください」と呼ぶ)
  187. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。(林(百)委員「議事進行ですよ。市長が共産党とは何ですか、何党だっていいじゃないか」と呼ぶ)
  188. 吉田公二

    ○吉田説明員 ただいま自治大臣のほうからお答えがございましたが、建設省といたしましても同和向け公営というものにつきましては、もちろん公営住宅でございますので、公営住宅法の規定に従うということは当然でございますが、その性格上同対審の答申でございますとかあるいは同和対策事業特別措置法、こういった趣旨にのっとりまして、地域の実情に即応したように適正かつ公正に実施していくようにという方針で指導をいたしておる次第でございます。
  189. 和田貞夫

    和田(貞)委員 自治大臣、いま建設省はそう言っておられるのだから、これは専門ですから、特定目的を持った住宅については、やはり特定目的に合致するような事業が達成できるようにしなければならぬということがいわれておるわけですね。自治大臣はちょっと先ほどから誤解をしておられる点があるのですが、三つか四つ団体がある。仲よくしていったらいい。私はけんかするというようなことを一つも言っていない。私は、大臣が先ほど言われたように、公正、民主的にやっていかなければならぬと思うのです。だから、公正、民主的にやっていかなければならぬにもかかわらず、私がいま一つあげましたようにこの羽曳野市では、先ほども言ったでしょう、知事が調停して公正、円満にやっていこうということで、市長も同調して協定を結んだのに、市長がその協定を破って、一方的に八人の選考委員に委嘱して、その八人が全部受理されておらないのに、四人の選考委員だけで選考してしまったという無理があるわけです。だからそういうようなことは、公正、民主的であるというようにだれも思わないし、さらにそれでつけ加えて言うならば、これは実施機関がそれぞれやられるわけですから、羽曳野市という実施機関が入居者を募集された。募集されたということであれば、その募集にはかくかくしかじかという条件がある。まず申し込む資格というものがある。ところが、その申し込む資格要件があるにもかかわらず、受け付けたときにその資格があるかどうかということを調査されなければいかぬのですね。あまり長くなりますので、ここで一つ例をとって言いますと、たとえば市役所の職員ですが、桝野繁子という人がおる。桝野繁子という職員が申し込んでおるのですが、現住所欄には羽曳野市向野三の七の十一、住民票もそうなっているのです。ところが、同じ申し込み書の中の、住宅に困っている事情の欄には、現在すでに改良住宅に入居して六名以上の家族数になっているということを住宅に困っておるという事情にしておるのです。しかも、住民票に記載されておる住所と、住宅に困っておるという事情の中に書いておる住所と違うのです。さらに、実際はどうかというと、桝野繁子というのは別なところに住んでおるのです。向野の南団地というところに、夫の桝野昭重名義で二百三十三号に入っておるのです。一室を持っておる。ところが、その一室はからっぽなんです。そういうようなでたらめな受け付けをやっている。これが公正、民主的であるかどうかというようなことを判断願う一つの例なんです。あるいは当選をして入居者がきまった。せっかくきめておきながら、きめた中に資格のない者がたくさんおるのです。たくさんおるということに対しまして、これは公正、民主的な方法でやってないじゃないか、公正を欠いておるじゃないかということで、先ほどお話しいたしましたように、十四日から十五日の未明にかけて市長が入居を強行しようとしたときに、それは公正を欠いておるじゃないかということで、執行を中止してくれ、こういう申し立てを知事にやり、そういうような行政は不服だということで、住宅の選考に漏れた人たちが不服審査請求をやって、知事がその行政不服審査請求を受理するかどうかということはまだ結論が出ておらない。そういう中で警察官を百名動員いたしまして、警察官の協力の中でその入居の手続を強行している、こういうことでトラブルが起こっているわけです。その結果、ついこの間ですが、十二月二十一日に市長が入居を発表いたしました。当選しておった吉岡喜三郎、これは資格がなかったということで取り消しておる。あるいは北本慎介というのは、実は地区外に住んでおったということがわかっつてみずから辞退をしておる。あるいは市長が、すでに入居を決定いたしました、先ほど申し上げました市役所の職員桝野繁子あるいは和島義和、万野幸一、この三人についてはまだ保留するというような発表をするという、非常にずさんな形で募集され、ずさんな形で入居者が決定されておるというのが、この羽曳野の住宅紛争の大きな原因である。これが公正であるか、民主的な方法でやられたのか、平等なのかということをまずひとつ判断してもらいたいと思うわけです。  そこで、結論を申し上げましたけれども、そういうような公正でない、民主的でない方法で入居者が決定される過程を踏んでおるわけなんですが、にもかかわらず、なぜ警察がそういう不当な入居をさせようとする市長をたしなめないで、警察官を百人動員して入居手続をとらす協力をしたか、こういうことをひとつお答え願いたい。
  190. 福田一

    福田(一)国務大臣 私たちといたしましては、どういう事情がありましょうとも、そこに傷害事件が起きるような事態が起きた場合には、そういう傷害事件が起きないような措置をとることは警察の任務だと思っております。それが正しい主張であっても、正しくない主張であろうとも、そこに暴力が起きるようなこと自体を取り締まるのが警察でございますから、その点はひとつ今後もそのような方針で臨ませていただきたいと思います。われわれは暴力というものには絶対反対でございます。
  191. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは何も暴力はしていないのですよ。
  192. 福田一

    福田(一)国務大臣 私のほうで聞いているのでは、警察のほうからあれしたらいいと思いますが、ガラスが割れたり何かあるのですよ。何にも暴力がないのに、ガラスが割れる道理がないのです。やっぱりそれは何かがあるわけなんです。そうすると、ガラスが割れるようなことがあれば、そこでまたなぐり合いが起きないとは限らない。予防的な措置をとるということを一応認めていただきたい。  行政が公正でなかったとかなんとかということは、私はここでいまそのことをあなたから話があったから認めるというわけにはいきません。そういうことを一々自治大臣がやっていたら、これはとても生きてはいられない。(和田(貞)委員警察でいい」と呼ぶ)いや、その原則を申し上げておるわけです。  では、警察のほうからそのときの事情をひとつ説明したらいいでしょう。
  193. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 十一月十四日のケースでございますが、いまお話しのあったような形で入居するかしないかという問題でございますが、これをめぐって部落解放同盟側の方が現場に八百人ほど、部落解放同盟正常化府連の方が四百名ぐらい集まって、非常に緊迫した事態になったということで、一応管理者である市長からも、何とか不祥事件が起こらないように適正な措置をとってもらいたいというようなこともございまして、このまま放置しておきますと、いろいろな暴力事案、衝突事案が起きるおそれがある、そういうことで約五百名の警察官が現場で警備的な措置をとったということでございます。  それから、府のほうにもいろいろと行政不服審査法に基づく審査請求あるいは執行停止の申し立てを行なっていることは承知いたしておりますが、まだこの決定もないということでございますので、一応市長の管理権に基づく要請を妥当なものとして、そのような措置をとったわけであります。(「仮処分が出ているんだよ」と呼ぶ者あり)
  194. 和田貞夫

    和田(貞)委員 裁判所の仮処分が出ておるということは知っておる。わかっています。けれども一方では、先ほどのような不公正があるのでということで、入居に漏れた者たちが知事に対して行政不服審査請求をしておるのですよ。その結論が出ておらないのだからということ、現場警察はそういうことも判断して、市長から何回も要請があったけれども、なかなか出なかったのですよ。しかも夜間のことでもあるし、道路が狭いし、非常に混乱してけが人が出たらいかぬということを憂慮されて、市長から再三の要請があってもまだ市長に対して、朝になってからにしたらどうですかということを警察の署長は判断して、市長にも意見具申をしておるのですよ。にもかかわらず、なお市長は、これは新聞に載っておりましたけれども、けが人が出てもいいからやってくれ、こうでしょう。これは市長としてのやり方じゃないでしょう、考え方じゃないでしょう。むしろ私は現場警察署長の判断のほうが正しかったと思う。しかしながら警察に強硬措置の依頼を再三再四するから、そこまで言われるのであればということで、警察官が道をつくって入居者を団地に入れた、こういうことなんです。しかもこの団地にはまだガスもついてないのでしょう、水道もついてないのでしょう、電気もついてないのでしょう。一年もたっておるのだから、市当局が認めているように、補修せぬと生活できる状態じゃないということなんです。それをなぜ夜中にそこまでせにゃいかぬかという、こういう点が疑問視されるでしょう。建設省、どうですか。大体住宅に入居者が入れるというような正常な条件というのはどんなことですか。
  195. 吉田公二

    ○吉田説明員 公営住宅の措置につきましては、事業主体の状況判断できめるべきことでございますので、その実態の背景その他がどうなるかということによって事情はあるかと思いますが、先生おっしゃるように、非常に深夜であるとかあるいは電気もガスも出ないというような状態で入居するというケースはあまりないということは事実だろうと思います。
  196. 和田貞夫

    和田(貞)委員 正常な生活できる条件の中で——夜中に行ったところで、電気屋へ行ったところで電気が入らぬでしょう、水道屋へ行ったところで水道は入らぬでしょう、ガス屋へ行ったところでガスは入らないでしょう。しかも、一年もたっておるのだから壁の塗りかえもせにゃいかぬし、建具も張りかえなければいかぬ。そんなときになぜ夜中にそんなにせにゃいかぬ。しかも普通の状態で入居するというたら、やはりいかに道具が少なくてもトラックやあるいは軽四輪で家具を積んで入居していくというのが普通の姿ですよ。ところがそうじゃない、ほうき一本持って入居しにいく、毛布一枚持って入居しにいく。ただ入居したという事実をつくる、こういうことを何とかしよう、こういうことにほかならないのじゃないか。  そのような不正常な入居のやり方あるいは不正常な入居手続のしかた、あるいは建設省が先ほど言われたように特定の目的を持った公営住宅について、やはり特定の目的に合致するような、目的が達成することによって初めてその事業というのは効果があがることであるし、まして同和向けの住宅という問題については、これは解放行政の一環として住宅が建てられておるわけですから、その住宅が一つ一つできていくことによって部落の解放というのがなされていく、こういう効果をあげるような行政にしていかなくてはならないと思うわけであります。  このようなことについては、一つは警察にお願いしたいわけですが、やはり現場警察署長の判断が正しかった、そういう正しい警察署長の判断というものをもっと強く市長に要請してほしかった、こういう希望がありますし、建設省に対しましては、さらにそういう特定目的が達成できるような事業が進められるよう、今後なお自治体に対しましてひとつ行政指導をやっていただきたい、こういう希望を申し上げておくと同時に、自治省としてもひとつ各自治体に対してそういうような行政指導を今後ともやってもらいたいというように思うわけなんですが、簡単にひとつお答えをいただきたい。
  197. 福田一

    福田(一)国務大臣 御趣旨は、一応あなたのお話で、そういうような公平なやり方をすべきであるということはわかります。しかし、私は警察の立場から申し上げますが、とにかく夜入るのもおかしいかと思うけれども、それに関連して五百人も四百人も相対峙した形においてそういう事態が起きておれば、やはり警察としては何か事件が起きないような予防措置をとるということも警察の大きな任務だと私は思っておりますので、その点まではひとつお許しを願いたいと思います。大体、人が入るのに十人や十五人が、これは困るとかなんとか言ってわあわあ言っているぐらいのことで警察が出てきて、これはけしからぬとかなんとか、そういうことはやめなさいと言うことは私はいかぬと思いますけれども、何といっても百戸の住宅に入るのに双方千人ぐらいの人が出てわあわあけんかするかのごとき事態が……(和田(貞)委員「むちゃするからそういうことになるのですよ」と呼ぶ)いや、むちゃであろうと何であろうと、そういう暴力が起きるようなことはできるだけ防ぐというのが警察のたてまえでなければならない、私はこう思っておりますので、その点は自治体として公正にやれという意味ではよくわかりますけれども、そういうようなことが起きないようにお願いすると同時に、やはりあまり多数の威力を行使するような姿はなるべく差し控えるようにまた指導をしていただきたいと思うわけでございます。
  198. 吉田公二

    ○吉田説明員 建設省といたしましても従来と同様に、公営住宅でございますので公営住宅法の規定に従うのはもちろんでございますが、同対審の答申の線に即して適切に、かつ公正に運営されるように公共団体を指導してまいりたい、かように思います。
  199. 和田貞夫

    和田(貞)委員 先ほど例をあげました羽曳野市のような不公正な非民主的なやり方で、住宅をせっかく建てながら、公費を使いながら効果をあげることができないような結果に終わることのないように、ひとつ建設省のほうも自治省のほうも自治体に対する行政指導を強く要望しておきたいと思います。  その次に、八鹿高校の問題について触れてみたいと思うわけでありす。  十二月二十日の朝日新聞で、日教組が中央執行委員会決定で公式見解を発表いたしております。それによりますと、この問題の発端は八鹿高校の教師集団が被差別部落の生徒たちの教育要求に対する話し合いをかたくなに拒否し続けたことにあるとしている、こういうことが報道されておる。しかし、この日教組も、もちろんわれわれもでありますが、一部の生徒が言っておりますように、一部の生徒が暴力を肯定するとかそんなようなことにつきましては、日本社会党あるいは現地の部落解放同盟も暴力を肯定するというような考え方は全くない、こういうことをこの機会に明らかにしておきたいと思うのです。  なお、日教組の公式見解が出されましたように、やはり原因がある。十一月二十二日という時点から遠くさかのぼって、ことしの初めごろからその十一月二十二日の事件が起こるという原因がやはりあったのだ。これは簡単に申し上げますならば、兵庫県下でこの八鹿高校の同和教育というものは一番すぐれておる、一番先進的な同和教育をしておるといわれておったわけです。またそういうように言っておる方もある。ところが実態はそうであったかといいますと、残念ながらそうでなかったのです。八鹿高校の同和教育の実態というものは、いまあらわれておるわけですが、この八鹿町の地域全般に全く差別意識というものが充満いたしております。町の中でもあるいは学校の中でも、今日考えられないような差別発言がまき散らされるというような状態になっておる。学校の中で生徒たちが部落の出身の生徒をつかまえて、ヨツ、エッタ、こういうことばを平気で使う状態になっておるのであります。林田留里子という女生徒がおりますが、この林田留里子が一年生のとき、おととしです。教師が、同和教育の時間ですよと言いますと、生徒たちの中から、留里ちゃんの時間やよと、こういう発言があるというくらいであります。コーラを飲みに行くと、エタの留里ちゃんがコーラを飲みに行く、こういう生徒の発言がある。留里ちゃんは家に帰って泣きながらおとうさん、おかあさんに話しました。おとうさん、おかあさんは、この子をいまささえてやらないと自殺するかもわからないよという心配をいたしまして、夫婦で相談しておるのです。ある日二階で留里ちゃんが寝ておると、そっと母親が上がって、手を口のところに当てて、まだ息がしておるということで安心をしたくらいだということをこのおかあさんが訴えております。  これが学校における一つの例でありますが、そのような、白昼堂々と学校の中で、しかも部落の出身の生徒たちをつかまえて差別発言をまき散らすというような、こういう姿を見て、はたして先進的な同和教育であったか、進んだ同和教育がなされておったか、このことを非常に疑問に思うわけであります。こういうことについて文部省見解を明らかにしてほしい。   〔発言する者あり〕
  200. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御静粛に願います。
  201. 山崎平八郎

    ○山崎(平)政府委員 ただいまの御質疑に対しましてお答え申し上げますが、特に具体的例とされまして日教組の八鹿高校問題についての見解、これをもとにお話がございましたが、この件につきましては、その前文にもあらわれておりますように「更に時間をかけて究明する必要があるが、二度にわたる調査の結果を現段階で集約し、中間的に、その見解を」明らかにするということが表明されておりますが、文部省側といたしましても中間的な報告は受けておりますけれども、まだ実は最終的の詳細なる報告を受ける段階には至っておりません。しかしながら基本的にこの問題は、先般来文部大臣もいろいろ表明がございましたように、特に十一月の二十二日の事件が、外部等の者の暴力によりまして同校の教職員に多数の負傷者を生ずる不祥事件発生いたしまして、そのため学校の運営も混乱状態におちいったことはきわめて遺憾でございまして、まことに憂慮にたえないと存ずる次第でございます。  文部省といたしましては、この事態に対しましてまず何よりも考慮すべき問題は、授業の再開、回復ということをはじめといたしまして、学校運営の正常化をはかって、生徒の教育についてはもちろん、学校に対する父兄をはじめ地域住民の信頼を確保するのが第一であると考えまして、兵庫県の教育委員会と緊密な連絡をとりながら同教育委員会がそのために全力を傾け、具体的な措置に遺憾がないように期していただくよう指導してきたところでございます。  たまたま私去る十二月三日に、大臣——前の三原文部大臣でございますが、命を受けまして兵庫県庁を訪問したわけでございます。当日はたまたま県会中でございまして、昼休みの四十五分に限ってということでございましたので、非常に限られた時間であり、限られた話の範囲でございましたが、山口副知事それから教育長の白井さん、教育委員長の印部さん、この三人の方々を中心に四十五分間、十分に意見を取りかわしたわけでございます。  その内容は、私といたしましては、たいへん大きなけがをされた方を含めて二十七名入院されておられますが、そのときの病状、傷の模様はどうかということをお尋ねしましたが、大体いろいろ予想されておりましたように、軽傷の方々は職場に復帰する日も遠くあるまいという状態でございました。その十二月三日というのはたまたま国鉄のストライキの日でございまして、同校はそれを理由に授業を取りやめておりました。ところが前日の二日、御承知のようないろいろ警察当局の手が入りまして、たいへん危険な状態でもあったわけでございまして、私としてはできるなら病院を見舞いたいと思っておりましたが、それも差し控えまして、実は県庁だけの会談にとどめたわけでございます。このことは、県庁側及び教育長の話によりますと、事はすでに五月ごろからいろいろの模様が見えた節もある、そういうことで、実はこういう問題についてもう少し早くから積極的な手を打つべきであったという点については遺憾の意が表されたわけでございます。  ともあれ私どもといたしましては、まだ二十七名の方々が一日も早く職場に復帰していただくこと、現時点では、御承知と思いますが、きょう二十四日が終業式になっております。きょう授業を終わるわけでございますが、二十七名中すでに十九名の方々は退院しておられます。八名がまだお気の毒にも入院加療中でございます。そういう状態で、実はその教員の不足分を三十名ほど用意いたしまして、そのうち、事実お手伝いした者は十三名でございましたけれども、手伝い員を派遣しておりまして、その先生方の助力によって実は授業は、その後の日報をいただいておりますが、私が参りました翌四日からほとんど正常状態に近い状態に戻ったわけでございます。  そこで問題は、さらにこまかい問題も後ほどお答え申し上げなければなりませんが、文部省といたしましては、県知事及び教育委員長からいろいろ文書の御回答を願っておりますが、その中に表明されておりますことは、やはり先ほどの日教組の状態と同じで、現時点の中間的な報告ということで、詳細はできるだけ早く報告をいただくということになっておりますけれども、したがって、現時点では文部省として考えますことは、今後教員間に流れております差別感、その教育のやり方、そういうものをどのようにして早く解消するか。できるならば、要すれば、ある程度の異動等も考えましても、その差別感を少しでも早くなくすように、そういうことが目下緊急の要務であろうか、かように考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、一応授業は再開され、当時心配しておりましたところの無期限の休校などになりますと、受験を迎える生徒等もございますので、その点は最小の混乱にとどめ得た、かように思っております。ただし、まだ入院加療中の先生もおられますので、一日も早い快癒を祈るわけでございます。
  202. 和田貞夫

    和田(貞)委員 事後処置について、これは御苦労さんです。私はその点については、努力されたことについては敬意を表します。  私がお尋ねしておるのは、先ほども一つの例をあげましたように、いまちょっとお触れになられましたけれども、やはり十一月の二十二日という時点だけをとらまえるのではなくて、そういうようになってきたという奥深い同校の同和教育のやり方について私は問題があったということを指摘しておるのですが、その点はどうです。(「どうして学校に行かないのだ、自動車で行けば行けるじゃないか」と呼ぶ者あり)
  203. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  204. 山崎平八郎

    ○山崎(平)政府委員 その点は先ほど申し上げましたように、県の教育長からの文書の回答がございますが、その中でも遺憾の意が表明されております。読み上げますと、「解放研生徒の願いを拒否しつづけた教師群の行為にみられる差別性や、校内における差別的言辞の事実など、同校の教育が差別教育であったところに、この事態の原因があると考えます。」、こういうふうに明記されておるわけなんです。ところが、その後の詳報という問題は、申し上げたようにそのあとに、「文部省に対しては、事件の現象面にとらわれず、同和問題の本質を正しくとらえ、この視点にたって同校の同和教育の実態を、詳細に報告いたします。」こういう約束はされておりますけれども、まだ実はこの段階に至っていないわけでございます。こちらは待ちあぐんでおるわけでございます。
  205. 和田貞夫

    和田(貞)委員 前段の、教育委員会が文部省に報告しておるように、先ほど次官が読まれたように、やはり解放研生徒の願いを拒否し続けたこの教師集団の行為に見られるこの差別性、あるいは差別的な言辞が校内でまき散らされておる、そういう中で同校の教育が差別教育であった、こういうことは文部省としては認められておるわけですね。(「なぜ教師に会わないんだ、文部省は。教師に会わないで一方的に判断できるか」と呼ぶ者あり)
  206. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  207. 山崎平八郎

    ○山崎(平)政府委員 お答えいたします。  八鹿高校の同和教育が公正、中立の立場から適切に行なわれていたかどうかについては、県の教育委員会調査中の段階でございまして、その回答を求めているところでございますが、文部省といたしましては、元来、学校教育におきまして同和教育が今後とも適正に進められるよう努力いたしておる次第でございます。
  208. 和田貞夫

    和田(貞)委員 文部省が各県の教育委員会に指導されている同和教育の基本方針、基本指導の方針、これをひとつこの機会に明らかにしてください。
  209. 柴沼晉

    柴沼説明員 文部省としましては、同和教育は総合的な同和対策の重要な一環であり、その中心的な課題は同和対策審議会答申にも述べられているように、「法のもとの平等の原則に基づき、社会の中に根づよく残っている不合理な部落差別をなくし、人権尊重の精神を貫ぬくことである。」と考えております。  文部省におきましては、従来から同和教育の推進につとめてまいっておりますが、今後とも同和対策審議会の答申に沿いまして、同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画に基づきまして、同和教育の一そうの充実につとめてまいりたいと存じております。
  210. 和田貞夫

    和田(貞)委員 その中に、同対審答申でも述べられておるように「同和地区における住民の自主的、組織的な教育活動を促進し、住民みずからの教育水準の向上を助ける」ということもその目的に入っているんでしょう。
  211. 柴沼晉

    柴沼説明員 同和教育を進めるにあたりましては、地域の実態に即しながらあくまでも公正、中立な立場で進めてまいりたい、そのように考えております。
  212. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、この八鹿高校にあった五年の歴史を持つ部落研、部落問題研究会、せっかくありましたこの部落問題研究会に部落の出身の生徒も参加しておった。ところがこの部落問題研究会の活動というものが、先ほどお話しいたしました林田留里子をはじめといたしました部落出身の生徒たちは、せっかくの同和教育、せっかくのクラブ活動がなされても、ただ部落の歴史だけを話す、こういうことだけでは、先ほど例をあげましたように、留里ちゃんの時間やで、あんたらの時間やで、こういうように事済まされる、むしろないほうがいい、そういう同和教育をなされるのであればむしろ部落の出身の生徒たちは非常にみじめだという、こういう悲観的な観念を形成していっているわけです。そして部落研をやめる、こういうことになっておる。そういう中で、やはり差別にうちかっていく強い生徒をつくっていく、差別観念を克服して差別と戦ってうちかっていく生徒をつくり上げていくというのが同和教育の基本でなくちゃならない。それがためにこの部落の出身の生徒たちが、自分たちみずからのそういう強い力をつくるために部落解放研という自主的なクラブ活動を認めてほしい、こういうことを学校に要求をしておるわけです。学校側に要求しておる。  時間もありませんのでそう長く言えないわけでありますが、具体的に言えないわけでありますが、それがもうことしの卒業式のときから始まっている、もっと前から始まっている、それが何回も何回もそのような生徒たちの要求が入れられなかった。そこでついに十八日からすわり込みになった、二十一日の午後から断食に入った。そして先生たちに私たちと話してほしい、解放研の私たちとして話をしてもらえないのであれば、先生と生徒という間柄で話をしてほしいというところまで解放研の諸君たちが、部落出身の生徒たちが先生だちに訴えておるのです。そのようなことさえも聞かれなかった、拒否された、そういうところに問題があるわけです。(「顧問があるんだよ、顧問をつけろというのですよ」と呼ぶ者あり)いま顧問ということが言われておりますが、そのほかの体育部門や文化活動に対するいろいろなクラブ活動がありますが……   〔発言する者あり〕
  213. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  214. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そういうようなクラブ活動では、先生たちの中で、おれはこのバスケットボール部のクラブ活動の顧問になってやろう、私がこの何々の顧問になってやろうということであれば、先生たちの意思によって顧問になっておるにもかかわらず、この解放研をクラブ活動に正式に認めてほしいということになりますと職員会議を開きまして、個人個人が自分の意思で顧問になってはいけない、解放研の顧問には個人個人の意思によってなってはいけない、職員会議決定によってならなければいかぬというように、この解放研をクラブ活動に認めることだけに限って、先生方個人個人の意思さえも職員会議という名のもとに封じておる、ここらに問題があるわけなんです。それこそ全く他のクラブ活動と、解放研のクラブ活動を認めるにあたって差別性が充満した教師の態度と言わなくてはならないと思うのですが、どうですか。
  215. 柴沼晉

    柴沼説明員 いろいろ学校の中で差別的な言辞があったとかあるいはその指導に問題があったとか、そういうような点につきましては、私ども現在県の教育委員会に具体的な事実がどうなっているのかということで調査を依頼しております。ただ、県の教育委員会としては、現在授業の正常化あるいは教員の安全をはかるとか、そういうようなことに力を注いでおりまして、まだ現在の段階では詳細な報告が参っていない段階でございます。  ただ、いずれにしましても、先生方は自分の学校の生徒に対して指導を尽くすという職責があるわけでございまして、教員側に生徒との話し合いを進めて事態の穏当な解決をはかるように県教育委員会としても十分指導して、十分というのは言い過ぎかもしれません。県教育委員会として指導してきたわけでございますが、このような事態になって私どもとしてもたいへん残念に思っております。
  216. 和田貞夫

    和田(貞)委員 実態は把握できなかった。少なくとも私が先ほど申し上げましたように、学校における解放教育の主体というものは先徒にあるのです。申し上げましたようなせつない生徒の願いにこたえるというのが教師のつとめじゃないですか。そういう生徒の学習権の保障がないというような姿にしてしまう教師というものは、これは明らかに教育を放棄した、こういうことをいわなければならないと思うのですが、そのような考え方についてはどうですか。
  217. 柴沼晉

    柴沼説明員 授業放棄ということが学校教育一般論としまして…   〔発言する者あり〕
  218. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  219. 柴沼晉

    柴沼説明員 授業放棄ということは許されないことはもとより当然なことでございまして、御指摘のごとき当日の状況につきましては、現在、先ほど申し上げましたように兵庫県教育委員会からの詳細な報告を待ちまして慎重に判断してまいりたい、そのように思っております。
  220. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君に申し上げますが、そろそろ結論をお願いいたします。
  221. 和田貞夫

    和田(貞)委員 教師が生徒の言い分を聞かないというような教育がありますか、教師がありますか。それが実態なんです。   〔発言する者あり〕
  222. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  223. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私はここで、法務省来ておられますので、法務省に一回見解を明らかにしてほしいと思うのですが、一年間に法務省が把握しておる差別事案というのは一体どのくらいありますか。
  224. 森保

    ○森説明員 お答えをいたします。  法務省におきまして年間取り扱っておる事件の数でございますが、まず同和問題に対処をするために開設されました特設相談取り扱い件数、これは私どもいわゆる人権相談事件と、こう申しておりますが、人権相談事件昭和四十六年度におきまして二万五百十九件、昭和四十七年度におきまして三万一千六百八件、四十八年度におきまして三万五千三百九件であります。このうちいわゆる差別事件として私どもに地方法務局を通じまして救済の申し立てがありましたものは、昭和四十六年度において三十一件、四十七年度におきまして四十一件、四十八年度におきまして三十八件、こういうことに相なっております。
  225. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いまお聞きのように、年間三万件をこえるようなばく大な人権相談が法務省の出先にある。けれども、その差別事案として取り上げているのは三十件、四十件、この程度しか取り上げておらない。いま申し上げたように学校の中でも、町のまん中でもそういうような差別事犯というものがどんどん起こっておる。こういう訴えがなされておるけれども、それが処理されておらない。  そうすると、警察にお尋ねしますが、警察官が前におって、そうして部落の住民をつかまえて差別言辞を吐いたら、これは差別事犯の現行犯でしょう。それでも警察は何とかできないというのが実態じゃないですか。
  226. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 差別的言辞というのはどういうあれかわかりませんけれども、それが侮辱なり脅迫なり、そういうことになれば、その要件を満たせば、それは犯罪事実として問擬することができるというふうに考えております。
  227. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君、次の質問者がお待ちでありますからおまとめ願います。
  228. 和田貞夫

    和田(貞)委員 具体的に言いますと、部落の住民をつかまえてエタ、ヨツ、こう言われても、現行犯として警察官が逮捕しますか。
  229. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その間の事情をよく聞いて、そしてそういうふうに言われた人がたいへんな侮辱を受けたということがはっきりすればそういう問題になるという場合もあり得るというふうに考えます。
  230. 和田貞夫

    和田(貞)委員 されてないのですよ。警察は手のつけようがないと言うのです。しかし差別言辞を吐かれた側にとってみたら、そのことによって命を捨ててしまうというような事件が何ぼでもあるのですよ。一年間に何ぼあると思うのです。全くこの差別言辞というものは、文章で表現したりことばで表現するというようなことは人の命を奪ってしまうというような大きな暴力なんです。法務省は、そういうように差別言辞というものは暴力であるというように見解をとられないのですか。
  231. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 暴力というのは何かということでございますが、刑法の判例あるいは学問の上におきましては、最高裁判所あるいは大審院の判例によりまして、有形力あるいは物理的な力の行使、これがあった場合に暴力、こういうことになっておりますので、ただ言論等によりましてどのようなことばが用いられたとしましても、それは普通は暴力犯にはならないのではないか、こういうふうに考えられます。もっともこの言論等で用いられますことばが脅迫になるとかあるいは人の名誉を棄損する、こういうようなことになりますと、これは脅迫罪あるいは名誉棄損罪あるいは侮辱罪、こういった別の観点の犯罪が成立するのではないか、かように考えております。
  232. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君、恐縮ですが、おまとめを願います。
  233. 和田貞夫

    和田(貞)委員 はい。大事なところですからね。そういうように差別発言がまかれただけでは暴力というようには断定できないから、警察側がそれを暴力だというように暴力事犯として扱えない。ところがいま申し上げましたように、差別発言がまかれたことによって本人が命を断ってしまう、自殺未遂に終わる、そういうようなことはあなた方はわかっておるでしょう。現実にそういうことが同対審答申にも認められておるのです。そうなってくると、差別を受けた側にとってみたらどうするのですか。命がなくなるというような暴力を受けて警察が手当てをできないというような中で、差別を受けた側にとってはどうなるのですか。そこに起こってくるのが糾弾じゃないですか。そこに起こってくるのが確認じゃないですか。その差別言辞を吐いた人間に対して反省を求める、事実を確認する、そして今後そういう差別発言をまき散らさないような人間になってもらう、これが糾弾です。これが糾弾会です。そういう糾弾会というものは、それじゃ法務省は一体、これは暴力というように思っておるのですか。(「糾弾で自殺した者はどうするんだ」「黙れ」と呼ぶ者あり)
  234. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  235. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 お尋ねの糾弾会あるいは確認会と申しますものの実態がどういうふうなものであるかつまびらかに承知いたしておりませんけれども、民主主義社会にありましてはどのような形のものでありましても、またどのような原因あるいは動機あるいは主義主張に基づくものでありましても、暴力あるいは暴力的な行為は容認されない、かように考えますが、具体的にこの糾弾会あるいは確認会が暴力行為であるかないかというようなことは、その行為の具体的な内容が実際にどうであるか、その実情いかんによってそれが暴力行為に当たったりあるいはそうでなかったりということになるんだろうと思います。したがいまして、一がいに糾弾会、確認会なるものがどうであるというようなことは申し上げかねる、こういうふうに考えております。
  236. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君に重ねて申し上げますが、時間がだいぶたっておりますから……。
  237. 和田貞夫

    和田(貞)委員 暴力だとは断定しないのでしょう。するのですか。
  238. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 これは申し上げておりますように、ケースによりまして暴力の行使あるいは威迫等が行なわれましたならば、暴行あるいは傷害あるいは暴力行為あるいはいろいろな世の中の犯罪に当たる場合だってあり得るということでございます。
  239. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そういうことを言っておらぬ。あなたは現場をよく知っておるでしょう。確認会や糾弾会が、差別を受けた側にとってみたら、やる場合に必ず第三者を入れておるでしょう、あなた方の出先が入っておるでしょう。それでも暴力ですか。あなた方が出先の行政の代表として、責任者としてその糾弾会や確認会に出席しておるじゃないですか。それでも暴力ですか。暴力でないというように断定できないのですか。
  240. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 それは個々のケースによりまして、事情によって違う、かように申し上げておるわけでございます。
  241. 和田貞夫

    和田(貞)委員 だから、その糾弾会や確認会というのは暴力であるというように断定しないということでしょう。そうでしょう。首を振らぬとうんと言うてくれぬと議事録に残らぬじゃないか。
  242. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 先ほどお答え申し上げましたように、個々のケースによりまして具体的に判断さるべきである、かように考えております。
  243. 和田貞夫

    和田(貞)委員 首を振るということを議事録に入れておかなければならぬ。  ことばだけじゃないのですよ。文書で「部落民イコール暴力団。」部落解放同盟というのじゃないのですよ。「部落民イコール暴力団。部落差別促進同盟。ヨツというのは四本足、けだものということや、エタというのはよごれが多いということや、そんなヨツ、エタは公害よりも悪い、汚染源と違うか。」こういうような文書も書いたり、「エタ、非人のくせに大きな口を言うな、おまえたちは人間でなく動物なんだ、動物め」一例をあげましたらこういうようなことがどんどんどんどんとまき散らされておる。(「だれの文章だ、はっきり言え」と呼ぶ者あり)はっきり言いますと、ちゃんと書いてますよ。私は「赤旗」を読みまして、というように書いてますよ。(「だれだ、名前を言ったらいい」と呼ぶ者あり)ここにあるから、見せるから見なさい。
  244. 伊能繁次郎

    伊能委員長 静粛に願います。
  245. 和田貞夫

    和田(貞)委員 名前まで書いてありますよ。学校の子供たちに書かせていますよ。こういうものをも暴力だといえないか。
  246. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君、質問ですから静かにお願いいたします。
  247. 和田貞夫

    和田(貞)委員 現実にそういうように出されておるじゃないか。(「実際に書いたかどうか、当委員会調査しよう」と呼ぶ者あり)住所、名前まで書いておる。「赤旗」あるいは「兵庫民報」では抗議をどこどこへ出せと、こういうように書いておる。その中で一、二見てごらん。私は「赤旗」新聞を見てこういうように思いましたということを書いておるのですよ。  さらにどうですか、この姿が。この姿がどうですか。一体どうですか。警察庁、あなたの出先の兵庫県警本部長があの八鹿問題に協力したのですか。文部省、どうですか。兵庫県の教育長、共犯者ですか。警察庁、文部省、これはどうなんだ。(「共犯者と書いておるのか」と呼ぶ者あり)共犯者と書いておる。わざわざその共犯者のところにはテープを張ってある。テープをとるとこの姿だ。どうだ、文部省、兵庫県の教育長が共犯者か。警察庁、兵庫県の県警本部長が協力したのか。答えてくれ。協力したりしたらけしからぬ話だ。
  248. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田君、穏やかに政府にお尋ねを願います。少し不謹慎なおことばがあります。静かに願います。(「挑発されるからですよ」と呼ぶ者あり)ですから、静粛に願いますと言っておる。
  249. 柴沼晉

    柴沼説明員 今回の事件は八鹿高校における同和問題に関する生徒の部活動に対しまして、学校当局と教員側との指導の混乱に端を発したものでありまして、そのために兵庫県教育委員会としては混乱の拡大を防ぎ、生徒の指導が円滑に行なわれるよう、事件前から指導主事等を派遣して指導につとめたものであると私ども聞いております。校長やこの指導主事等が、事件当日学校施設内で暴力事件発生するに至るに対して、これを防ぎ得なかったことについてはきわめて残念に思っておりますが、それをもって校長や指導主事等が暴力に加担したものとはいえないのではないかと思っております。
  250. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 兵庫県警察部長本件犯人の共犯、協力者というようなことは絶対にございません。
  251. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私はやはり警察も文部省もその点は信用しますが、しかしその文書によれば共犯者であり協力者なんです。まことに遺憾だというようにあなた方こそ思わなければいかぬのじゃないですか。  委員長から時間の促進を受けておりますので時間がないわけなんですが、いまそのような新聞、そういうようなものがまき散らされると、いま渡しましたようなはがきになってあらわれてくる。ごく一部持ってきただけです。電話で、ことばで、はがきで、手紙でこういうようにどんどんどんどんと普遍的にある差別意識というものが蔓延するようにかり立てておるじゃないですか。そういう結果になっておるじゃないですか。  時期の問題にいたしましても、この機会に警察のほうにお尋ねしておきますが、たとえば共闘側のほうも負傷者が出ておるのですよ。共闘側のほうにも、たとえば坂本逸雄、左ひざ関節挫傷、診断書が出ておる。黒川弘美、右肩骨骨折、三カ月の入院を要すということで、いま和田山の病院に入院いたしております。あの路上におけるトラブルというのは全く二十二日だけじゃなくて、十八日以降まことに計画的に二十二日を迎えたというような、こういうような向きもあるのです。たとえば十七日の日曜日の日に先生たちに集まれということで神鍋のある旅館に集めて、十八日以降具体的に、十八日はどうするか、十九日はどうするか、二十日はどうする、二十一日はどうするかというような、こういう対策会議と称して戦術会議をやっておる。そして具体的に十八日、十九日、その二日間は、朝八時になったら警察前に集まれ、そこで二列になって学校へ集団登校しよう。三時何分になったら一斉に二列になって下校していこう、そして晩はどこどこの旅館に集まれ、こういうような具体的な計画が立てられておるんです。そうして二十二日に至っておるわけなんです。  二十二日の場合は、十八日、十九日、二十日、二十一日と同じように集団登校してまいった教師集団が、一たん職員室に入ってそして一定の指示をいたしております。教師たちは各教室に入って、きょうは授業は中止や、帰れ、こういうように指示しておる。しかも生徒に授業は終わりやということを告げると同時に、きょうは校門前でどんなことが起こるかよく見とけ、こういうように言っておる先生も数名おります。あるいは一つの教室の黒板に、いま申し上げましたように、きょうは校門前でどんなことが起こるかよく見ておけということをしたためております。そうして一たん図書館に集まった教師たちは、これも打ち合わせをしたとおり——打ち合わせもここにある。打ち合わせをしたとおり、各主任の連中、できるだけ年のいった人たちを先頭に配置をいたしまして、スクラムを組んで、教頭が出ていったらいかぬ、授業をやりなさい。これをけっ散らかし、校長がはだしになってそれをとめにきたにもかかわらず、そのことも聞かない。PTAの副会長がたしなめにきたけれども、それも振り飛ばして、わっしょいわっしょいと校門を出ていって、校門でその新聞に出ておる丸尾君が、何とか生徒と話をしてやってほしい、ほかの父兄たちも子供たちと話をしてやってほしい、校長もずいぶん努力をいたしておりますが、教師集団はそれを聞かないで学校から約三百メートル離れたところでトラブルが起こっておる。そして学校へ帰ってきた。学校へ帰ったきて体育館に入るまでに、どうですか、教師集団が学校を出ていくときに、子供たちが二階の窓からヨツ帰れ、エタ帰れの差別言辞をまき散らし、今度帰ってきたときには再び新館の二階から生徒たちがヨツ帰れ、エタ帰れと怒号しておるんです。そういうような背景の中で、差別を受ける側の部落住民が腹が立たないというのはおかしいじゃないですか。激高しないというのはおかしいじゃないですか。おこらないというのはおかしいじゃないですか。そういう背景の中で、これから警察がいろいろと取り調べられているらしいわけでありますが、そういう二十二日の事案というものは、問題というものは起こったわけです。  こういうようなことを十分頭に入れながら、原因というものを十分に探究しながら、ただ十一月の二十二日の時点だけをとらまえてどうこうするということだけじゃなくて、学校の運営、学校の教育のあり方、先生が生徒たちに対するところの態度、そういうものを十分踏んまえて今後の捜査活動というものを、それこそ公正、平等に取り扱ってもらわなくてはならないと思うわけなんですが、そのことについてはどうですか。
  252. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 現在八鹿警察本件捜査について特別捜査本部を設けまして、多数の捜査員を投入して暴力事件中心捜査を進めておるわけでございますが、もちろんそういう大規模な捜査を進めるにあたっては、その事件の背景、原因、いろいろな問題も当然調査しあるいは参考人から聞いて、事件の適正、公正な捜査をとらなければいけない、このように考えております。
  253. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これでよろしゅうございますか。
  254. 和田貞夫

    和田(貞)委員 もう一つだけ。
  255. 伊能繁次郎

    伊能委員長 それでは簡単に願います。
  256. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いまの十一月二十二日の問題については、これは司直の手によってやられるべきであろうと思いますが、私が長い間しゃべりましたその原因、十一月二十二日までになった原因というものを十分頭に入れなければいかぬ、そういうことを私は言っておるわけです。  さらに、私は警察のほうに質問しますが、先ほど法務委員会でわが党の横山議員が警察庁に質問いたしておりますあの本会議で金子満広君が質問した内容についてであります。それは非常に間違った発言がなされておるのです。正確に言わないとなんですから議事録を見ますと、たとえばこういうことを言っております。女教師まで裸にして水をかけるなど、——先ほど法務委員会でわが党の横山議員の質問に対してそういう事実は確認しておらないというようにあなたは答えておられる。あるいはこれも赤旗新聞で私は拝見したわけでありますが、赤旗新聞だけではございません、近畿の高等学校の教職員組合の協議会である近高連という組織が発行した新聞、それと赤旗の記事。バスケットのネットを写真に入れて、その下に「切れたチューブ、逆さづりのあとが歴然と」こういうように書いてある。これは私たちは事実調査をいたしましたが、何かわからぬけれども、そのバスケットのネットの裏側の支柱にあるちぎれたゴムチューブというものは、いまじゃなくて一年も二年も前からちぎれたあとがあった。そのことについて、町の高等学校の卒業生である山田正道というのと西田清隆というのでありますが、この二人が卒業生だから一番よくわかっておる、証言しますまで言っておる。金子満広君が本会議で発言いたしました、女教師まで裸にして水をかけるというような事実はありません。私たちが調査したところによりますと、先ほど名前を出しました林田留里子のおかあさん、担任の先生が平松という先生です。その平松という先生を、長くなりますのではしょって話しますと、実は女の人の月のものであった。その手当てを一回は便所で、一回は校長室の隣の応接室で、男の先生もおられたので二枚の毛布を目隠しにして、そしておかあさんが中に入って月のものの始末をして下着を着がえさせておるんです。それを水をかけて裸にしている、水をかけたことになりますか。  こういうようなたぐいを見てみましても、あまりにもひどい一方的な発言であり、一方的な報道であります。そのことによって結果的に、何回も繰り返しますが、充満する差別意識というものをよりあおり立てる結果になるというようなことをひとつ十分わきまえていただきまして、今後とも法務省なりあるいは文部省なり遺憾のないように措置をされると同時に、徹底して同和教育あるいは同和行政の推進のために努力をしていただき、これまた自治省としても、これからもひとつ万全の対策を立てて適正な行政指導をしてもらいたいと思います。ひとつこれを機会に、特別措置法に基づく同和行政がなお一そう充実した同和行政であって、一日も早く一切の差別がなくなるような世の中に仕立てていくように政府としても御努力をいただきたい。  このことについて、きょうは大臣が一人しかおられませんので、政府を代表して自治大臣のほうから、その政府を代表する決意のほどを述べていただくことにして、私の質問を、時間が来ましたので、やむを得ず終わらせていただきたいと思います。
  257. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまいろいろと御説明になりましたことも踏まえて、同対審の方針に基づいて、ひとつ今後いわゆる差別の撤廃がなされるように、政府としても努力をいたしたいと思います。  ただ、お願いをいたしたいことは、その間にあって行き過ぎとか、これはやはりいろいろの騒ぎが起きるのは何かそこに原因がありますから、そういうものがないようにお互いにひとつ御努力をお願いしたいということだけは御要望を申し上げます。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  258. 中山利生

    中山(利)委員長代理 小濱新次君。
  259. 小濱新次

    ○小濱委員 最後になりまして、なるべくかいつまんで御質問をしていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。  まず第一の御質問は、特殊地下壕対策事業費について建設省並びに農林省の方々にお尋ねをしていきたいと思います。  もう御存じのとおりでありますが、旧軍隊が設置した都市内の防空壕の実態調査について、その調査結果はどういうふうになっているか、まずここからお尋ねをしていきたいと思います。順序はどちらからでもけっこうですが、ひとつお願いをしたいと思います。
  260. 中野三男

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  全国の数字で申し上げますが、昭和四十九年七月一日現在の実態調査の結果によりますと、土地の陥没、人身事故あるいは犯罪の危険等が予想される埋め戻しを必要とするようなものが全国で六百カ所ございます。このほかに、当面現状のまま放置いたしましても将来においても全く危険がないと思われるようなものが、全国で約二千八百カ所ございます。これらの復旧に要します事業費の概算額は、一応全国で約百六十八億円というふうに私どもでは承知いたしております。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  261. 棚橋正治

    ○棚橋説明員 農林省の構造改善局におきましては、農地、農業用施設にかかる特殊地下壕について事業の実施方針を定めて、現状のままに放置しますと陥没による被害等の危険が予想されるものにつきまして埋め戻し、それから壕口の閉塞等を行なって災害の発生を未然に防止することをいたしまして、もって民生の安定をはかり、公共の福祉を確保することを目的といたしまして事業を実施しております。  現在までのところ、四十九年度におきましては新規に要望のございました二地区について採択をいたしまして、事業費で八百万円、国費でもちまして四百万円を割り当ていたしまして事業を実施しております。また全体の数でございますが、構造改善局長の通達によります採択基準に合致いたしますものがおおむね三十カ所でございます。その三十カ所につきましては五十年度以降も引き続きまして、先ほど申しましたような事業を実施いたす予定でございます。
  262. 小濱新次

    ○小濱委員 財政局長にお尋ねをしていきたいと思います。  ただいま建設省と農林省のほうから御説明がございましたような数字の内容になっております。その中でいろいろとランクが分かれているわけですが、A、Bランクに該当する防空壕の埋め戻しについて、政府は四十九年ないし五十二年の四カ年計画を立てて、二分の一国庫補助の決定をされました。この問題につきましては、四十八年、当委員会において御質問があったわけでありますが、そのときの会議録を少し参考にいたしますと、財政局長は「地方公共団体に高率の補助率で補助金を交付する、事業主体は地方公共団体、こういうことになるのではないか」こういうふうにおっしゃっておられました。「高率の補助率」こういうふうに説明をされたわけであります。またさらに局長は「先ほど大臣がお話しいたしましたように」これは江崎自治大臣でありますが、「起債なり、あるいは交付税なりということで、必要な財政需要に適切な処置をしていくということは、自治省の責務として当然であろうと考えます。」さらに江崎国務大臣は「日本は、実際問題として、いま経済的に困っておるわけじゃないですね。これは、景気過熱を鎮静させるという至上命令もありますが、少なくとも、国が責任をもって地方公共団体と話し合ってこの埋め戻しをするという努力をいたしますように、私、閣僚レベルでもよく話し合いを詰めたいと思います。」こういうことが委員会でやりとりが行なわれました。そして、いよいよ四十九年度から五十二年度までの四カ年計画を立てられまして二分の一国庫補助が決定されていったわけであります。二分の一というこの問題について、御答弁の内容とはだいぶ期待はずれになっているといわざるを得ないわけであります。この点について、これは財政局長からひとつお答えをいただきます。
  263. 松浦功

    松浦政府委員 私どもも戦時中の国の特殊の要請でつくられた防空壕、これの埋め戻しについては、できるだけ国の責任を明確にする意味で高率にすべきであるという考え方でこれまでも折衝してまいりましたことは事実でございます。ただこれは、過去の繰り言になるのかもしれませんが、防空壕の問題についていろいろ折衝するにあたりまして、発見されました不発弾の処理の問題との関連がいろいろ出てまいりました。向こうのほうが二分の一という形できめられております。そういうものとの関連等から、各種の折衝経過を経て、二分の一国で持ってもらって、あと二分の一については自治省で措置をしようということで妥結をされた、こういう経過があるわけでございます。
  264. 小濱新次

    ○小濱委員 不発弾処理が国の補助が二分の一だから、だからそれに準じてという、こういう御意見のようでございました。私はこの防空壕の埋め戻しに対する政府の姿勢が問題であろう、こういうふうに考えているわけであります。これはもう申し上げるまでもございませんが、当然国の終戦処理の一環であります。そういう立場から国が責任を持つことはもう当然であろうと思うわけですね。県、市町の地方自治体には負担をかけないというそういう見地からこの問題の対策を講ずべきである、私はこういうふうに昨年の八月のこの委員会であったと思いますが、その席上でもそのように申し上げ、そういうふうに期待を持っておったわけでありますが、どうもその辺が、また自治体に及ぼす影響ということが大きく問題が残っておるわけであります。そこで、その旧軍隊のつくった壕に対しては、これは国の直轄事業で行なう方法をとるんだという、そういうふうに私どもは理解をしておったわけですが、それがむずかしい、このようにおっしゃるならば、せめて高額の補助率にしてやるべきであるというふうに考えておるわけです。ひとつそういう補助率の問題はこれから自治大臣に、何か自治体の財政危機という立場、財政問題の立場からどうしても負担が大き過ぎますので、この点についての補助率はどうしても高額にしてもらわなければならないわけですが、自治大臣、いかがでございましょう、この点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  265. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えを申し上げます。  終戦処理の経費として見なければならないのを地方自治体が二分の一くらいの負担でやるというのは非常に困るという御趣旨と承っておるのでありますが、私、どの程度にいわゆる防空壕が残っておるのか存じませんけれども、一挙に解決するということではたいへんでありますが、年次を定めて順次、よく連絡をとっていただいて、そして事業をやっていただくということであれば、足らない分については場合によっては特交のようなもので埋めるということも一つの方法かと考えますので、今後考えさしていただきたいと思います。
  266. 小濱新次

    ○小濱委員 これは建設省と大蔵省にお尋ねをしていきたいと思います。——大蔵省は来てないようであります。私のほうの連絡漏れであったと思いますので、けっこうであります。  四十九年度の新規事業として、神奈川県では八カ所分が認められました。国庫補助金八千百五十五万円の内示を受け、すでに相模原市、大和市では交付決定され、事業が開始されております。特に神奈川県ではA、Bランクに該当する危険個所が全国の四八%、約半数を占め、事業費は約百十四億、このように見込まれているわけです。今回の新規事業八カ所は、事業個所の数が三百十一事業に対し二・四%、予算措置についても、新規事業分一億六千三百十万円で国庫補助金は二分の一で八千百五十五万円、これは総事業に対し一・四%でしかない。こうした現状から、四カ年計画の完全実施ができるのかどうか、疑問が起こってまいります。建設省、この見通しについてはいかがでございましょうか。
  267. 中野三男

    ○中野説明員 先生御指摘のように、この事業が昭和四十九年度から特殊地下壕対策事業として始められることに相なったわけでございますが、御指摘のように事業費で約一・七%、個所数にして約三%というようなところでございます。  今後の見通しでございますが、現在のところ私どもとしては、残りました事業費約百六十六億円を、昭和五十年度以降三カ年、四十九年度から四カ年でございますが、それを五十年度を初項といたしまして三カ年で等比達成といいますか、同じ倍率で伸ばしていけば完成するというような考え方で昭和五十年度の概算要求をいたしたわけでございます。建設省全体といたしましては予算要求の伸び率が一・二五倍というところに押えられたわけでございます。そういうきびしいワクの中でございましたけれども、五十年度は十一億四千万円という事業費で、要求伸び率は四・〇七倍という高い、額は少のうございますが、要求比率としてはたいへん伸ばしたつもりでございます。五十一年度以降もできるだけそういう趣旨でこの仕事の早期完成をはかりたいという考え方でございます。
  268. 小濱新次

    ○小濱委員 神奈川県内の埋め戻し市町数は計二十二市町でございます。四十八年八月県提出の資料によると、町内会のつくったもの八百五十カ所、軍その他がつくったもの千五百六十カ所、ちょっと先ほどの建設、農林省からの御説明の数字とは違っております。そういうわけで二重に市町が関係しているわけです。この事業の採択基準はどういうふうになっているのかということが、これは問題になります。  これは建設省でよろしいですか。
  269. 中野三男

    ○中野説明員 採択基準につきましては私どもだけの考え方でやることはできませんで、事業の実施につきましては大蔵省と相談をしながらやるわけでございますが、その段階で農林省とも協議いたしまして、同じような採択基準にほぼなっておるわけでございます。個所数は、先生がおっしゃいました昨年の八月の時点とことしの八月の時点ではかなり変わってきておるというのは、一つにはやはり、その後の調査の結果、小規模なもので埋め戻しを必要としないようなものもかなりある、あるいは非常に接近して穴の口がたくさんあります場合には、そういうものを合わせて一本にすることができるというようなことを私ども大蔵省と相談いたしまして、個所数はかなり整理されたわけでございます。しかしながら、復旧事業費はかなりふえるという結果になっておりますが、個所数はそういうことでかなり減っております。  採択基準につきましては、一カ所当たりの埋め戻し費が二百万円以下のものは公共の補助事業の対象とはしないというようなことに相なっておるわけでございます。
  270. 小濱新次

    ○小濱委員 採択基準が一カ所の事業費二百万円以上になっておって、それ以下はその補助事業の対象にはしていない、こういうことのようです。  自治省にお尋ねしますが、こういう状態なんですね。この二百万円以下という地域がたいへんに数が多いわけです。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕 しかも、その負担の区分でありますが、神奈川県の場合調べてみたのですが、最近の財政状況の不振を理由に寒川町の事業費については県は全然見ていないわけです。そうですけれども、そういう関係の市町では関係住民から責められるわけですね。ですから、どうしても埋め戻しをやらざるを得ない、こういう状態になりまして、結局財政力の弱い市町村がその負担を負う形になっている、そういう地域があるわけです。ですから大きな財源を持ち、そして補助事業の対象以上のものは、当然これは問題がないわけですけれども、それ以下の地域、非常に財政力の弱い市町村が悩んでいる、苦しんでいる、こういう状態になっている地域もあるわけです。こういう地域については、財政局長、どういうふうに措置を講じようとされるのか、お考えを聞かしてください。
  271. 松浦功

    松浦政府委員 小さな町村で一カ所埋め戻しをやってそれが五十万円だ、そういうようなことでございますると、特別交付税計算でもこれは端数になってしまいますのでどうしようもないかと思いますが、財政力の弱い団体で百五十万程度かかるようなものが五つも六つもまとまって当該年度に行なわれるというようなことになれば、当該団体の財政事情を十分勘案して、私どもも特別交付税の対象として取り扱っていくということを考えたいと思います。
  272. 小濱新次

    ○小濱委員 防空壕対策事業、ようやくここでその処置を講じようという出発をしたわけでありますが、その事業の推進をする上で最大のポイントは、何といっても地方自治体の財政負担をどうするか、こういう問題が起こってまいります。地方自治体要請は、防空壕の対策事業費を特別交付税の特定項目にしてほしいという願いがあるわけです。先ほど大臣からも特交という話もございました、あるいはまた局長からもそのような処置を講じていくという話がございましたけれども、この問題については、どうしてもいまのような形で国の助成措置を行なってもらえませんと、地方自治体では防空壕の埋め戻し費用はいまの持ち出し財源の中からはなかなかそのほうには回っていかないというのが実情であろう、こう思うわけです。そういう点で、よく御理解いただいているかと思いまするけれども、そうした地元の窮状ということをひとつよく御理解を願って、しかるべく処置をお願いしていきたい、こう思います。  そこで林野庁にお尋ねしたいのですが、四十九年度の予算要求、これが国費七千万円と出ておるわけですが、五十年度の概算要求は半分になっているわけですね。なぜ減らしたのであろう、こう思うわけですね。その点について……。
  273. 鈴木郁雄

    鈴木説明員 五十年度の要求につきましては、各都道府県と十分個所別に協議をいたしまして、岐阜県、その他北海道、長崎で要求がございましたので、このほど事業費を積算いたしまして要求いたしております。したがいまして、四十九年度予算より低くなっております。
  274. 小濱新次

    ○小濱委員 これは自治省にお尋ねしたいのですが、緊急性がないからということで、五〇%負担をしてまで埋め戻し事業に手はつけられないという。もっともな話だなとわれわれは理解をしているわけです。不要不急のものはあと回しにしてもいいと思いますけれども、この防空壕は土地の陥没による農地、家屋の損害のみならず、青少年の非行化の温床と化しているのが現状であります。危険性はないからといって放置しておりますと、こういう悪い人々のたまり場となって、そして非行化の温床と化していく、こういうこともありますので、どうしてもこの防空壕は埋め戻しをしなければならないなというふうに考えておるわけです。神奈川県の場合は四七%も全国の防空壕の数に照らして数があるわけです。そういう点で非常に大きく取り上げられておるわけですけれども、なかなかこの問題の解決の見通しがつきません。進んでいない。進まない理由は、いま申し上げましたような二分の一地元負担ということと、二百万円以下のそういう負担率の壕についてはその対象にならないということから問題になっているわけでして、どうかひとついろいろと事情をお聞きになって、そうしてこの問題に対する解決が一日も早くできますように、心あたたかい配慮をお願いしたい、こういうふうに思うわけです。この点についてひとつ財政局長からお答えをいただきたいと思います。
  275. 松浦功

    松浦政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、当該関連団体の財政力を十分勘案の上、特別交付税等により処理をいたします。
  276. 小濱新次

    ○小濱委員 戦後三十年近くも経過した現在、なお戦争のためのこのようなものが解決できないということはまことに残念である、こういうふうに考えます。いろいろと御答弁を願いましたけれども、どうかひとつそういう方向で努力をしてくださいますように強く要望いたしまして、この問題に対する御質問を終わります。
  277. 中山利生

    中山(利)委員長代理 小濱君に申し上げますが、大臣が五時十分までで御退席になるそうで、その前に岩垂君から大臣にどうしても質問をしたいという事項がございますので、五分間だけお時間をちょうだいしたいと思います。よろしいですか。  岩垂寿喜男君。
  278. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 貴重な時間をたいへん申しわけないのですが、国家公安委員長というお立場でお答えをいただきたいと思うのですが、給与法が、そして補正予算が昨日成立をいたしまして、警視正以上の幹部警察官にはここ一両日中に給与改定の差額が支給されることに、国家公務員ですからなるわけであります。第一線で歳末警戒に全力をあげて努力をし、また同時に一連の爆弾事件などを含めてその解決に命をかけて、住民の安全を守るために日夜努力をしている警視以下の警察官、これがただいま申し上げましたような理由で給与改定差額は支給されないという事実を御存じでございましょうか。
  279. 福田一

    福田(一)国務大臣 承知いたしております。
  280. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 このような事態になっていることについてどのようにお考えになっていらっしゃるか。そしてこのような事態が警察官の士気にあしき影響を与えているというふうに考えざるを得ないわけでありますが、このための措置を具体的に対策をお持ちになっていらっしゃるかどうか。この辺についてぜひ御検討をわずらわしたい課題をも含めて、関連でたいへん恐縮ですが承っておきたいと思うのであります。
  281. 福田一

    福田(一)国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかりますけれども、これは東京都のことで御質問だと思うのです。東京都は不交付団体になっております。それはもう十分御承知の上での御質問だと思っておりますが、不交付団体になっておりますというと、一部の下級といいますか、警察官に対しては東京都が当然考えるべき問題でございまして、不交付団体になっております以上、それを国としていま考えるということは、御趣旨のような気持ちはわかりますけれども、政府としては措置いたしかねると存じております。
  282. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自治大臣が先般参議院の予算委員会で不交付団体に対して起債などの手当ての方針を明らかにされました。これらの方針というものを承ったわけでありますが、それは私どもとしてはたいへん前向きな回答だと理解をいたしますが、これが現金化され、あるいは差額清算などについて具体的な措置がとられるように御努力をいただきたい、こういう要請をしたいと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  283. 松浦功

    松浦政府委員 私どもは繰り返してお答え申し上げておりますが、再算定の結果前年度と比べて大幅に減少した場合はと申し上げております。法律は通過させていただきましたけれども、税収入の見通しが全然立たないのに、私どもが措置をとるということは、お約束の趣旨からしてもできかねるというふうに考えております。しかも現金繰りの問題でございまして、財源の問題ではございません。自治体自身の御努力によって、いろいろとかけ回って資金をお集めになることもできるわけでございます。政府資金も二千億年末にあたって用意いたしておりますのでそれぞれの団体がそれぞれじょうずに立ち回っていただくというのが当然のたてまえであろうかと思います。
  284. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは、起債の一応のめどみたいなものは九百十億という金額が出ておるようでありますが、そういうふうに承ってよろしゅうございましょうか。
  285. 松浦功

    松浦政府委員 これは全然違うのであります。先ほど来申し上げておりますように、不交付団体で再算定の結果出た超過額が前年度の超過額を大幅に下回る団体について、当該団体の財政事情を見て起債の許可をいたしたい、こう申し上げてきたわけでございます。おそらくそんな金額にはならないと思います。
  286. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 以上で終わります。
  287. 小濱新次

    ○小濱委員 大臣、御退席を願います。  建設省に相模川流域下水道事業について伺いたいと思います。  相模川流域下水道事業は、水資源の確保と水質汚濁防止、市街地の健全な発展などを目標に、神奈川県が事業主体となり関係十二市町と協力しながら、昭和四十四年以降事業を推進してまいりました。この事業規模は、計画面積三万二千百八十二ヘクタール、計画人口は百八十七万人、管渠延長九十四キロ及び左右両岸の処理場建設二カ所となっております。昭和四十八年度末の進捗状況は平塚市、厚木市、伊勢原市の一部を含み、処理面積で五百三十三ヘクタール、処理人口で四万四千人である。これは全体計画との比較で処理面積は一・六%、処理人口は二・三%であり、大幅なおくれが明らかになっております。しかも、以上は右岸についてであり、左岸については全く処理されていないというのが実情であります。こうした事業のおくれている理由は何かということをひとつ御説明願いたいと思います。
  288. 井前勝人

    ○井前説明員 相模川の流域下水道の進捗状況につきましては、いま先生が御指摘のとおりでございます。御案内のように、下水道事業は流域下水道を含めまして全般的に非常に立ちおくれておるわけでございますが、その立ちおくれを取り戻すためにいわゆる五カ年計画を樹立いたしまして、それによって逐次計画的な整備をはかっているところでございますが、相模川流域の場合は計画規模も非常に大きく、かつ事業費も膨大になるわけでございまして、それに見合う下水道全体の予算規模等が必ずしもまだ十分でないというようなことから、なかなか地元の御要望に十分こたえ切れていないのが現状である、これがおくれている原因であろうかと思っておる次第でございます。
  289. 小濱新次

    ○小濱委員 それでは四十九年度の実績、また五十年度以降の計画についてはどうなっているかというその見通しについてもひとつお答え願いたいと思います。
  290. 井前勝人

    ○井前説明員 四十九年度につきましては、現在事業実施が進められておるわけでございますが、事業費は約五十二億で実施されております。これによりまして、現在右岸のほうはすでに四十八年度から処理開始をしておりますので、引き続きまして左岸のほうの処理場の建設を急いでおるところでございますが、予算等の規模から左岸のほうの供用開始の目標は一応昭和五十一年ごろになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  291. 小濱新次

    ○小濱委員 この事業の推進について、現地に参りますと非常にいろいろな障害が起こっておって、そしてぜひ進めろという強い要望がございます。高度経済成長から福祉優先の政治、これは時代の大勢になっております。したがって、公共事業についても道路などの産業基盤整備と下水道などの社会資本整備とを明確に区別する必要があると思うわけですね。当面望まれるのは生活関連施設の重点的整備であると思うわけです。この点についての見解はどういうふうにお持ちになっておられましょうか。これもひとつ建設省から。
  292. 井前勝人

    ○井前説明員 公共事業全般の問題につきましては、総需要抑制という大きな政策でございますから、その趣旨にわれわれも協力する必要があると思うわけでございます。ただ、その中でも下水道につきましては、環境保全上必要な施設でございますので、具体的な問題としましては、たとえば昭和四十九年度の予算におきましては下水道の予算の伸びも一般に比べまして若干高いほうに確保してございますし、また、補助率等の問題につきましても昨年大幅に引き上げていただきましたし、それからまた、繰り延べにつきましても一律ではなくて、関連公共の中に入ります下水道につきましては若干優遇されまして四%になっておるわけでございまして、総需要抑制の中でもやはり重点的に事業を実施していくということで政府としてはやっておるわけでございますので、その中でわれわれも精一ぱいの努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  293. 小濱新次

    ○小濱委員 現実の問題としてすでに当該地方公共団体では、政府の事業計画に合わせて公共下水道の整備を先行的に進めている地域がございますが、特に関係市町においては流域下水道の幹線との接続ができないというのです、落ちるところがないわけですから。したがって、いまどんどん下水道を設置しておりますけれども、流れ落ちるところができないので、処理率はゼロという形になっている自治体があるわけです。みじめというか、まことに現地ではみじめですよ。惨状というふうになると思いますよ。地方自治体では乏しい財源をやりくりしながら一生懸命先行的に整備を進めている。そういう実情を政府は理解していると思いますけれども、計画どおりに事業を何とか進めさせてあげたいという気持ちから、特にそういう地域に対する配慮というものは、一そう理解を持って努力すべきであると考えておるわけですが、この点についてはいかがでございましょう。
  294. 井前勝人

    ○井前説明員 やはり基本的には、下水道全般が現在でも全国の普及率で非常に低い、二〇%程度という背景があるわけでございます。その中で相模川流域下水道も、やはり下水道全般の取りかかりが非常におそかったということもこれありまして、思うような整備が進んでいないのではないかと思います。御承知のように公共下水道と流域下水道というものはバランスをとっていくのが大事なことだと思いますけれども、遺憾ながら公共下水道と流域下水道とのバランス、必ずしも十分とれておるとはわれわれも考えておらないわけでございます。若干流域下水道等の先行投資がありますが、相当膨大な金が要る、しかしそれに対する十分な予算がまだ確保されておらない、そういう多少ちぐはぐな地域もあろうかと思っております。そういうことを一日も早く解決するには、やはり全体の下水道の予算を確保する必要があるということで、われわれもいろいろ努力しておるところでございますが、今後ともその予算の確保等につきましては、そういうひずみがないような方向に努力していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  295. 小濱新次

    ○小濱委員 多少ちぐはぐという地域もあろうかと思いますけれどもと言うけれども、違うのですね。一つの例を相模原にとってみますと、相模原市では昭和四十二年度以降公共下水道整備を進め、四十八年度末で市街化区域の六・五%に当たる三百六十九ヘクタールの面整備を、事業費二十三億千三百万円かけて完了いたしました。さらに四十九年度末には四百五十一ヘクタールの整備を予定しているわけです。しかしながら、相模原流域下水道幹線との接続ができないわけですね。それがためにいまだに処理率はゼロ%、このゼロ%ということによってまたいろいろな影響が出てくるわけですね。これは御存じのとおりであります。下水道に関する先行投資が成果をあげていないということになりますが、当初の予定では相模原では四十九年接続、それが現在は三年おくれの五十二年接続に変更せざるを得ないような実態になっておるわけです。ところが、いまのままでは五十二年接続も見通しが薄くなっておるわけですね。もう三十七万の人口です。そこばかりじゃないのですよ。隣の座間市、海老名市あるいは大和市、あの辺が全部一緒になって左岸の流域下水道に落ち込んでいく下水道の整備をやっているわけですが、向こうの幹線ができないものですからどうにもならない。五十二年度もまず不可能であろうという見通しになってしまった。ですから、現地の実情と御認識とに大きな違いがあるように私どもは感ずるわけであります。  それで、公共下水道事業費の内訳は、国庫補助金二七・五%に対し一般財源一一・八%、起債が四二・二%、受益者負担金が二二・八%となっておる。この中には多くの問題が含まれている。この多くの問題というのを少しお話をしてみますと、国、県に対する下水道関係予算も、処理率ゼロ%のために要求しにくくなっているわけですね。したがって起債についても容易に認められない。具体的に言うと単独事業の起債も四十九年、ことしから認められなくなっているわけです。その次に、市の財政もますます危機的様相を深め財源対策に苦慮している。相模原市の流域下水道の負担金は総額の二九%、すでに十二億七千万円負担をしているわけです。三番目には、一般住民も受益者負担金が世帯平均二万七千円、これに加えて浄化槽の購入など多額の負担となっているわけです。また自治会などが施設下水道組合八十五を設置、組合加入世帯で九千六百九十、管渠延長七十七キロメートル、一家庭平均十万円から十五万円も拠出し配管を進めている。このように市も住民もともに協力し合いながら積極的に整備を進めてきた、こういう経緯もある。  幹線事業の推進が望まれているわけでありますが、政府の基本的姿勢が大事になっているわけですね。とにかく相模原というのはその名のとおり、サガミッパラというのです、サガミハラといわないのです。なぜサガミッパラというかというと、全部平地で山がないのです。ですから、その平地に下水道を設置するにはたいへんな苦労があるわけですね。高いところから低いところへ流れていくなら問題はないけれども、全部平地なんです。ですから、そういう地域ではどんなに苦労をしているか、幹線に早くつなぎたいという努力をしているのです。人口はもうどんどんふえている、いま一番の悩みはその下水道なんです、それから学校施設なんです、こういう地域の実情というものをよく知ってもらいたいと思うのですね。政府の基本姿勢について、これは私も建設大臣に会う予定ですけれども、お帰りになったならばよく話をしてもらわなければなりませんが、きょうは代表でおいでになっているわけですから、ひとつ御意見を聞かせていただきましょう。
  296. 井前勝人

    ○井前説明員 私どもは、いわゆる生活環境の整備と水質汚濁の防止、この二つから非常におくれている下水道を急ピッチに整備すべきだということで、従来鋭意努力を重ねてきておるわけでございます。そのために現在第三次五カ年計画を実施しておりますけれども、その内容ではこういう環境基準あるいは生活改善に対応するには不十分であるというような観点から、来年度予算要求にあたりましては、現在の五カ年計画の内容の改善を含めましていまいろいろ検討を進めておるところでございます。そういうことによりまして汚濁問題あるいは環境の改善に精力的に努力していきたいというふうに考えているところでございます。
  297. 小濱新次

    ○小濱委員 現地では、国庫補助、一般財源、起債、受益者負担、こういう数々の困難を乗り越え、市側も住民もともに協力し合いながらこの事業を推進してまいったわけであります。ですからこれは現地としては相当大きな悩みでありますので、この問題に対して御努力を願わなければならないわけです。いま御答弁をいただきましたが、この問題に対するより力強い御支援をお願いしたいと思います。  それからもう一つお尋ねしておきたいと思いますが、相模川に戸沢橋という橋があります。この右岸のほうは厚木から平塚にかけて事業が進んでいるわけですね。そして、四之宮の平塚の浄化装置を利用して、流域下水道に落ち込んだ汚水が浄化されて川に流されていく、こういう形になっているわけです。いよいよ左岸を始めるわけですが、この左岸の流域下水道の設備は相当長い年月を要することになるわけですね。したがって戸沢橋付近で幹線を横断させて、どういう管になるか知りませんけれども、橋に大きな管渠をつないで左岸に接続をする、こういう形にでもしていかないと、右岸の整備がおくれておりますし、右岸の住民はどこにも下水道処理の施設がないので困窮しているわけですから、その対策としてこういう計画はどうかという声もあるわけです。当然建設省としてはお考えになっておられると思いますが、左岸の流域下水道事業計画と合わせて、いまのような幹線を横断させ左岸に接続するという計画はどうなのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  298. 井前勝人

    ○井前説明員 先生のお話の戸沢橋でございますか、ちょっと具体的に私よく存じ上げておりませんけれども、この計画は相模川をはさみまして左岸と右岸に御承知のように二つ処理場を設けまして処理するという計画になっておりますが、御指摘のように左岸のほうが若干用地買収の関係でおくれておりまして、目下建設を一部やっておる段階でございます。したがいまして左岸と右岸とぴちっとあくまでもいくのではなくて、やはり有無相通ずるようにいま県のほうといろいろ話をしておりますけれども、暫定的にはたとえば右岸のほうの処理場はもうすでにできておりますから、一部相模川を横断して、左岸の処理場ができるまでの暫定措置としては右岸の処理場へつなぐということも考えられるというふうに、県のほうともいろいろ相談をしておるわけでございまして、現実にもそのような形のほうがより効率的ではないだろうかというようなことで協議はしておるわけでございます。
  299. 小濱新次

    ○小濱委員 ひとつせっかく膨大な予算をかけて、そして流域下水道をつくっていただいて、そして県民のための飲料水確保をしていこうという遠大なねらいがあるわけですから、いまのような形でまいりますというと非常に見通しが先になってしまいますので、いろいろとまた数々の支障が出てくるという憂いを持って御質問したわけですから、御努力を一そうお願いしたい、こういうふうに思います。  次に、特定環境保全公共下水道事業について、先ほどお話がありましたように第三次下水道整備五カ年計画、四十六年から五十年、に基づき下水道整備が進められているわけでありますが、これらは都市計画事業として施行するものに対象事業が限られているわけですね。ここのところこのために都市計画事業以外の下水道整備は全く推進されていないというのが実情になっておりますね。たとえばの話でありますが、これも神奈川県の例でありますが、芦ノ湖、相模湖、津久井湖など、すぐれた環境資源であり、国民的自然環境ともいうべき湖沼の水質汚濁が急激に進行しているわけです。この現状を抜本的に解決するには、良好な自然環境として保護するため下水道の整備を促進することでありますが、これらの整備を推進するには当該自治体の財政では負担し切れず、また汚染の原因は観光客などに基因するものが多いわけであります。この点から、特定公共下水道事業を国庫補助の対象事業として下水道整備計画の中で整備を推進すべきである、こう思うわけです。この点については建設省、いかがでございましょう。
  300. 井前勝人

    ○井前説明員 御承知のように、現在下水道事業は第三次五カ年計画で実施しておりますが、これは下水道整備緊急措置法に基づいて第三次が行なわれております。この緊急措置法の中では、先生御指摘のように、都市計画事業として実施するものについてのみ予算の補助ができるというふうになっております。ところが、いま御指摘のような問題が、やはり大事な湖等につきましてその汚染がだんだんひどくなってきておる、何とかしてこういう地域の下水道もやる必要があるということから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、現在の五カ年計画を変えまして、その中で新たな施策としてそういう都市計画区域外も下水道をやられるように、その内容を盛った第四次の五カ年計画を現在いろいろ検討しておるところでございまして、それによりましてできるだけ御趣旨に沿うような、そういう地域の下水道をやれるような方向でいろいろ検討していきたい、かように考えておるわけでございます。
  301. 小濱新次

    ○小濱委員 どうかひとつ、これはまたその地域に住む者としてはこの事業計画は最大の願いなんですね。あそこの湖が汚染され、そしてその汚染度合いが目に見えるような形になってまいりますと、すぐれた観光資源としての価値を失っていくわけですね。ですから、この整備、推進についてはぜひともひとつ御説明のように御努力をしていただきたいと思います。  なお、建設省にお尋ねしておきたいことは、下水道事業の国庫補助率について特段の配慮をしろ、こういう私の意見でありますが、したがって自治省に対しましても、起債充当率を地方負担額の十分の十とすべきである、こういうふうにも考えているわけです。こういう特殊な事業でありますので、そういう御努力を心から私どもは念願しているわけですが、これについて建設省と自治省からひとつお答えを願いたいと思います。
  302. 井前勝人

    ○井前説明員 下水道の国庫補助対象の範囲につきましては、これはいわゆる五カ年計画とセットになるべき内容になっております。したがいまして、いまの五カ年計画の中ではもうすでに省令でもってどういうものが補助対象だということをきめておるわけでございまして、それを改善するにはやはり五カ年計画を新たに検討しなければ改善ができないわけでございます。そういう意味もございまして、第四次の五カ年計画を検討しておるところでございまして、その中でも若干その補助対象率の改善につきまして改善されるように検討をしておるところでございます。
  303. 松浦功

    松浦政府委員 ただいまお尋ねの特定環境保全公共下水道事業、これはことし新規に建設省が御要求になっておられ、私どもとしても非常にけっこうな事業であるということで、下水道事業全体の事業量はできるだけよけい確保できるように大蔵省にも側面的にお願いをしておるところでございます。そうなりました場合に、これに対しまする起債の充当率をどうするかということでございますが、現在下水道事業については受益者負担制度というものが一般公共下水道にはあるわけでございます。それ以外は全部国庫補助と起債ということでまかなうことをたてまえにしております。これにつきましては、一般公共下水道のように必ずしも受益者がそうたくさんはないような気がいたしますけれども、芦ノ湖のまわりでございますと周辺の旅館等は非常に受益があるわけでございます。その受益をどういう形で運用していくかという問題ともからめまして、国庫補助と地方債で受益者負担さえ取ればあとは全部まかなえるという方向で起債の充当率をきめるということで努力をしてまいりたいと思います。
  304. 小濱新次

    ○小濱委員 関連して、屎尿処理施設の用地補助及び単価の問題についてお尋ねをしていきたいと思います。  厚生省、おいでになっていましょうか。屎尿処理施設の建設に伴う超過負担が地方自治体で大きな問題になっていることは御存じのとおりであります。一例をあげれば、現在相模原市で計画している一日当たり二百キロリットルの屎尿処理施設の場合、事業費の総額は三十四億円かかる。これに対し現行補助制度では国庫補助の基本金は、キロリットル当たり二百三十一万六千円、これの二分の一である。したがって、補助金総額は二億三千百六十万円、二百キロリットルかける二百三十一万六千円かける二分の一であり、三十四億円の事業費総額の一割にも達していないのが実情である。この原因は、建設費がキロリットル当たり八百万円であるところを、国庫補助基本額ではキロリットル当たり二百三十一万六千円、差し引き五百六十八万円の単価差があり、さらに用地補助を認めていないことに原因がある。  お伺いしておきたいことは二点ございますが、緊急を要する屎尿処理施設の整備を促進するため、補助単価の引き上げという問題、これが一点。また用地補助については、用地取得が建設促進のポイントになっているため、廃棄物処理に関する国庫補助事業の交付要綱に、工事に最小限必要な用地は国庫補助の対象とするとあるように、すみやかに所要の措置を講ずべきであるというのがお伺いしたい第二の点であります。厚生省から御答弁を願いたいと思います。
  305. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 屎尿処理施設の整備についてでございますけれども、私どもの生活に最も密接な関連のある施設でございますので、例年補助内容の改善につとめてまいったところでございますけれども、御指摘にございましたように、最近特にこの施設整備費が高くなりまして、実際に要します経費と補助単価との乖離がはなはだしくなっております。私どもといたしましては、生活関連施設といたしまして、明年度も重点施策の一つにしておるわけでございまして、大幅な改善をはかるために最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。  それから用地についてお話がございましたけれども、御指摘にもございましたように、交付要綱では入っておるわけでございますけれども、いかんせん、単価が低いために実際上は効果を発揮しておらないというのが現実でございます。これにつきましても、単価のアップという形でもって改善をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  306. 小濱新次

    ○小濱委員 そうすると、補助単価については実勢単価まで何とか引き上げたい、それから用地補助については努力をする。努力じゃちょっと弱いな。もう一ぺん御答弁を願います。そういうふうに理解していいですか。
  307. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 補助基本額でございますけれども、実勢になるたけ近づけたいと思うわけでございますが、屎尿処理施設の性格上、各市町村でおつくりになる場合にかなり大きな差がございます。先ほどは八百万円というお話でございましたが、四十八年の補助対象額を全国平均をいたしますと、四十九年はまだ出ておりませんが、四十八年では三百四十二万七千円でございまして、市町村がいろいろなくふうをされますためにかなり差があるわけでございます。私どもといたしましては、現在のやり方は規模かける単価、こういうやり方でやっておるわけでございますけれども、将来はもっときめのこまかいやり方をする必要があるのではなかろうかと考えまして、研究をしておるところでございます。  用地費につきましては、単価を上げることによりましてその中で解決をしてまいりたい。それから、これは起債の対象にもなっている、こういうことを申しておきます。
  308. 小濱新次

    ○小濱委員 厚生省は退席していただいてけっこうです。  次に、最後に環境庁についてお尋ねをしていきたいと思いますが、最近、自然の開発など自然環境が非常に破壊されており、このまま進むと後代の子孫に引き継がなければならない国民の財産が失われ、非常に憂えるものであります。国民共有の財産であるこの自然を守るということから、幾つかの問題について御質問をしていきたいと思います。  神奈川県箱根町、ここの例をまた申し上げたいと思いますが、全体が国立公園、また四十六年に同町全体に都市計画法を適用いたしまして、それに伴って用途地域の指定が今度は行なわれようとしているのでございます。したがって、箱根町は都市計画法に基づく用途地域の指定と自然公園法に基づく特別地域の指定とが重複しておるわけでございますが、その規制内容として、たとえば建蔽率の相違が見られる。すなわち、都市計画法では三〇%、自然公園法では二〇%となっているわけでありますが、このように二重に法がかかった場合、現地としてはどういうふうにするのか、ひとつ環境庁から。
  309. 宇野佐

    ○宇野説明員 御指摘のように、自然公園法による特別地域と都市計画法による用途地域が一部重複しているわけでございますが、私どもといたしましてはこういう形は必ずしも好ましいとは考えていないわけでございまして、今回、御指摘の箱根につきましても、できるだけその特別地域と用途地域がダブらないように調整をいたしたわけでございます。ただやはり場所の性格上、一部やむを得ず重複をしているものがございまして、御指摘のような二〇%と三〇%という差ができたわけでございますが、私ども自然公園の管理にあずかる立場といたしまして、箱根の自然環境の保全という立場から、二〇%以下に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。関係の行政機関と十分連絡を取り合いまして、そういう形で御協力願えるように調整をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  310. 小濱新次

    ○小濱委員 この点について、関係の建設省との話し合いは合意しているのですか。
  311. 宇野佐

    ○宇野説明員 具体的にはいま二〇%と三〇%は、それぞれの法律あるいは許可の審査基準、こういうものできめておるわけでございます。これを一般的に合意するわけにはまいらないわけでございますが、箱根の地区につきましては、特に町の都市計画のほうの関係にも、私どものほうの管理事務所の職員も出向きましていろいろ御説明をいたしまして、御協力を得られるようにしておるわけでございます。箱根につきましては県の管理事務所もございますし、私どもの管理事務所もございますし、それぞれ意思を疎通し合って調整をしてまいるというふうに私は聞いておるわけでございます。
  312. 小濱新次

    ○小濱委員 都市計画法の施行によって、住民はどちらによったならばいいのかということで非常に戸惑っている面があるわけですね。建設省と話し合いで、まだ合意に達していないようでございますけれども、建設省と話し合いで住民が納得するような内容を示してやるべきだと思うのです。片方は二〇%だ、片方は三〇%だ、その間にはさまって住民はどうすればいいのか。あり余っているものをこれは利用しているわけじゃないのですから、やはりぎりぎり生活している人たちが、そういう法律に縛られて非常に難渋しているということがあるわけですから、これはぜひ納得するものを示してもらいたいと思うわけですが、いかがでございますか。
  313. 宇野佐

    ○宇野説明員 私どものほうの担当の者が、先日は町議会の全員協議会まで参りまして御説明をしたというふうなこともございますし、それから、今回私どものほうが公園計画の見直しをやっております。特別地域の指定の拡大もやっておるわけでございますが、一部には、特に住民の生活に使われている地域、こういうところはむしろ特別地域からはずしまして普通地域にいたしまして、それを用途地域といいますか、都市計画のほうの側の規制にゆだねるというようなことで、この二重行政の解除といいますか、そのようなことも努力をいたしたわけでございます。そういう点では私ども努力をいたしておるつもりでございますが、なお重ねまして、十分な調整がはかれるように、住民の方に迷惑がかがらないような措置はとってまいりたいと思います。
  314. 小濱新次

    ○小濱委員 よろしくお願いしたいと思います。  次に、箱根地区については、町民は箱根の自然を積極的に守ろうと考え、仙石原の湿原地に五千三百万円も町の一般財源から支出して、その保護に当たっているといわれている。県でも二子山、ここはハコネコメツツジの生息地として五千二百万円も出して土地買収し、保護につとめている。こうした一方、駒ケ岳にスケート場が開設されているが、ここもハコネコメツツジの名所であるが、ここへ来る観光客によって天然記念物が持ち去られ、いまや壊滅寸前に追いやられているという。県、町は真剣に自然保護に対処しているが、このような状況では今後ますます自然が破壊されていきますし、この対策に苦慮しているという、こういう状況がございます。このハコネコメツツジというのが高山植物になっているかどうかわからないのですが、高い地点に繁殖をするツツジなんですね。珍しいツツジだ、こういわれているわけです。したがって、これが自然が破壊され壊滅寸前にあるということでございますので、これらの地区に対する今後の対策、これは環境庁でやはりよく現地を理解していただき、それに対する御努力を願わなくちゃならぬと思うわけでありますが、ひとつお答えを願いたいと思います。
  315. 宇野佐

    ○宇野説明員 箱根の地区につきましては、国立公園になったのは戦前でございますが、戦後、首都圏に近いとかあるいは交通事情が非常によくなったということで相当開発が進んでいるということは事実でございます。私どもといたしましては、こういう状態を放置することは好ましくないというふうに考えておりまして、先ほども御説明申し上げましたように、特別地域拡大するとか、あるいは特別保護地区を新たに指定をするとか、そういうような公園の管理の強化ということをはかるつもりで、最近その準備を進めておるわけでございます。先日は自然環境保全審議会におはかりをいたしまして、その方向につきまして御承了も得たわけでございます。  そういうことで一般的には対処してまいりたいと思うわけでございますが、いま先生から具体的にお示しのございました点に関して少しお答え申し上げますと、箱根の仙石原の湿原地域の保全のために県が土地を買い上げたケースが四十二年にございますが、環境庁——当時は厚生省でございますが、これに厚生省といたしまして初めての土地買い上げの補助金もつけたわけでございまして、その当時から私どもとしては箱根の湿原の保護ということに努力をいたしておるつもりでございます。  例のハコネコメツツジでございますが、私どもこれは十分に保護してまいりたいと思いまして、今回のそういう公園計画の改定、管理の強化の面でも、スケート場のございます駒ケ岳の山頂、この地域につきましては、最小限度の施設敷地といいますか、最小限度の区域を除きまして、あとは第一種特別地域として規制を強化していくような地域の指定をいたすつもりでございます。こういうふうな面でできるだけその管理強化、自然保護につとめてまいりたい、こういうつもりでございます。
  316. 小濱新次

    ○小濱委員 次に、環境庁にまたさらにお尋ねをしておきたいことがございます。  農林省は最も自然保護に力を入れるべき駒ケ岳において、十八万八千九百六十三平方メートルにも及ぶ広大な土地を昭和三十年に伊豆箱根鉄道と賃貸契約を結んでおるわけですね。農林省は四十八年四月一日に賃貸契約の更新を行なっているわけです。期限は、県や町の意向を無視して一方的に五十一年三月三十一日までに延長されております。このことについては町、県、国とで設けられている連絡会議で当然協議されているはずでありますが、どのような協議が行なわれていたのか。箱根町の町長に伺いますと、連絡会議には契約のことは出なかったと答弁しております。環境庁及び農林省は当然町、県の意向を聞くべきであった、こういうふうにわれわれ理解しておるわけですが、いろいろと私どもは地元を歩きますとこういう問題が出てまいります。やはりこれが大きな地域の問題に発展しておりますので、この際ひとつ環境庁からお答えを願いたいと思います。
  317. 宇野佐

    ○宇野説明員 ただいまの駒ケ岳の問題でございますが、これは私どもの行政に関して申し上げますと、昭和三十三年に当時の厚生省が認可をしたわけでございます。当時の情勢と最近の自然保護強化の情勢とは非常に違ってまいりましたので、私どもといたしましては、今後のこの施設の増築とか拡張ということにはきびしい姿勢で対処するというふうに考えておるわけでございます。  いま御指摘の農林省の国有林でございます、国有林の用地の貸し付けの際にどういうふうな相談があったかということは、私ども承知いたしておりませんが、私どもの側から申し上げますと、今後は、先ほども申し上げましたように、きびしい姿勢でこの施設の拡張等が行なわれないように規制してまいりたいというつもりでございます。
  318. 小濱新次

    ○小濱委員 さらに伺いたいことは、現在箱根町は観光開発などによって芦ノ湖の水は年々汚染されており、その浄化のため、下水道計画など町では真剣に取り組んでおるわけです。ところが一方において、政府が四十八年十月宿泊施設として許可した、現在建築中の芦ノ湖ホテルがあります。最近、四十九年十月、環境庁はプリンスホテルの建設を認めたようでありますが、芦ノ湖や箱根の自然を守ろうとする住民の動きに対して、片や大手業者の開発を認めているということは、これは自然保護に対する環境庁の真剣な態度が見られないことになるのではないか、われわれはそういう疑念を抱かざるを得ないわけでありますが、この点どうお考えになっておりますか。
  319. 宇野佐

    ○宇野説明員 御指摘の箱根プリンスホテルあるいは芦ノ湖ホテル、これにつきましては国立公園計画のいわゆる利用計画というものに基づきまして、個々の行政判断によりまして、認可に際しましては、施設の大きさ、高さ、色彩、いろいろな問題、いろいろな点を周辺の状況と勘案いたしまして、できるだけ自然環境の保全にそごしないような措置をとってまいったつもりでございます。  また特に芦ノ湖汚染という問題につきましては、汚水排水の基準等につきましてもできるだけきびしく条件をつけてやってまいったつもりでございます。全体といたしましては、箱根のこういう開発施設は今後あまり拡大をしないというような方向で私どもは考えておる次第でございます。
  320. 小濱新次

    ○小濱委員 最後に、一般町民には屋根の色あるいは看板の大きさなどもきびしく規制されているわけですね。さくなんか全然入れないわけですね。へいなんかはできない。これも自然保護の見地からは当然であると現地では理解しているわけであります。一方においてはゆるやかな規制を行なうということは、今後の自然公園の保護はむずかしかろう、こういうように思います。あくまでも住民の協力がなければ自然保護はできないといっても過言でないと思います。行ってみればほんとうにわかるように、住民がどれほど苦労をして自然保護について、環境保全について努力をしているかということはよくおわかりになるかと思うわけですが、そういう点からも公平かつ正しい規制を行なうことを私どもは強く要望するわけであります。  最後に、ひとつ今後の環境庁のこの問題についての決意といいますか、将来構想についてお答えを願って、私の質問を終わりたいと思います。
  321. 宇野佐

    ○宇野説明員 先生御指摘のとおり、現地の住民の方々の御協力なしでは自然環境の保全はできない、そのとおりでございまして、私どももそれは十分に認識をいたして今後の行政運営に当たってまいりたいと思う次第でございます。  いろいろ御指摘のございました点で、大企業に対してはゆるやかで住民の方にはきびしくやっているというようなお話もございましたが、私どもとしてはそういうような誤解といいますか、そういうことの疑義の生じないように、法の運用にあたりまして厳正にやれますように、最近審査基準というものをはっきりさせた次第でございます。これによりまして今後は厳正に処理していく。またあらかじめどういうものが許可されないか、あるいはされるか、その許可の対象になるか、そういうものも住民の方はじめ一般の方に十分御理解の上で協力していただけますように、そういうことも措置をいたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、箱根に限らず、私ども自然公園の環境の保全といいますか自然の保護には十分注意をしてまいりたいと思う次第でございます。
  322. 小濱新次

    ○小濱委員 たいへんおそくなりました。長時間御協力を感謝いたしまして、私の質問を終わります。
  323. 中山利生

    中山(利)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十四分散会