○南部参考人 四十七年以降
住宅の建設が非常に落ち込んでおるという先生の御指摘は、そのとおりでございます。四十六年度におきましては、公団といたしまして八万三千戸の
計画に大体マッチした戸数の消化をいたしたわけでございますが、実はそれ以降いろいろな問題がございまして、
住宅の建設をおくらさざるを得ないという現状に立ち至っているわけでございます。
その間の事情につきましては、本
委員会においても、一昨年、昨年といろいろお話がございましたように、
住宅だけは建っても水の手当てができないとか、足の手当てができないというようないろいろなほかの施策との斉合性に欠ける面があるという御指摘をいただき、また他方、地方公共団体との話し合いにおきまして、特に首都圏におきましては、どうしても人口抑制ということを県の方針とするというような態度が四十七年、四十八年と次第にはっきりしてきたわけでございます。これらの点につきまして、たとえば
住宅五カ年
計画の発足の年である四十六年度に、各県知事と私といろいろお話し合いをし、取りきめた
事項につきましても、その後、当初約束した戸数を下回ってほしいあるいは年間に発注する戸数もこれをスローダウンしてもらいたい、さらには、市によってはすでに発注した戸数についてその戸数を削減してもらいたい、こういうような要請にあっているわけでございます。これらにつきまして、全部公団法三十四条の規定に基づきまして、各地方公共団体、県、市はもちろんのこと、地元の住民とまでいろいろと話をしていくというような問題がございまして、七年、八年と事業そのものも進捗をダウンせざるを得なかった、このような現状にあるわけでございます。
本年度につきましては、この十二月までに、
計画戸数七万戸に対して一万四千戸くらいの発注をいたしておりますが、これはさらにその上に総需要抑制の見地から一・四半期、二・四半期におきましては債務負担行為そのものをダウンする、三・四半期、四・四半期におきましては資金供給そのものが押えられるというような事情が加味いたしまして、今日までこういう数字で来ておるわけでございます。
私どもといたしましては、できる限りいろいろな面で、いわゆる団地お断わりを解消する道はどうしたらいいのかという点は種々日夜努力しておる次第でございますけれども、この人口抑制の根幹になっているものは、一つは資源不足でございます。資源のうちで最も大事なのは水と緑であります。東京都内にいろいろな空地ができましても、これは緑に充てたい、避難緑地に充てたいということで、
住宅建設のほうに回るということが抑制されております。それから、近県の三県におきましては、これは水の需給の関係から、なかなか人口を、これ以上東京都民を引き受けるわけにいかないというような話がありまして、現在首都圏三県におきまして建てておる
住宅に対する入居も、地元が八割という線になっておるわけでございます。これはやはり外からの人口の流入をできるだけ防ぎたいという見地からこういう措置を三県知事と私とで話し合いをせざるを得ない、そういう条件で締結をせざるを得ないというのは、人口抑制の一つのあらわれでございます。年間八万戸やりました四十六年度の経験からいたしますと、このスピードは、ほかのもろもろの施設、たとえば医療施設であるとか、保育施設であるとか、あるいは足の問題、こういう問題と
住宅の建設のスピードが合わない、そのためにいろいろなトラブルがあとから起きるというような苦い経験を持ちまして、その後は市町村とじっくり話をして、そして話のつかない限りは見切り発車をしないという方針に
変更をいたしました。そういった関係で建設のスピードが落ちておる。
私どものほうで四十六年ころやりました高島平団地、これは二年間で一万戸の建設をやりましたけれども、その結果、保育所が足りない、保育所の施設はあっても保母さんの供給がこれに追いつかない、こういうような経験もしてきているわけでございます。したがいまして、大規模な団地におきましては
住宅を建てるだけではなくて、それに伴う生活環境のあらゆる施設を整備する、それに時間がかかる。足の問題、たとえば多摩ニュータウンも、できました当時は、これは足なしの陸の孤島である、こういわれました。本年ようやく私鉄が小田急、京王、開通いたしまして足の問題が解決した、この間にギャップが約三年ございます。このようにして、ほかのもろもろの施設とも歩調を合わせた建設をしていかなければいけないというような面もございまして、先生御指摘のようなスローダウンになっているわけでございます。
なお、地方公共団体は水、緑のほかに、施設問題あるいは財政問題、こういう問題がございます。特に町村等におきましては、この問題が非常に大きな問題になるわけでございます。教育施設に対する負担、こういうようなものにつきましては、現在五省協定に基づくところの立てかえ制度というものが施行されておりますけれども、立てかえられる金の金利に困るという状態もございますので、私どもといたしましては、建設当局を通じまして、これらの大規模な立てかえにつきましては十年間無利子、据え置きという制度をぜひ拡充してもらいたいということで、多摩につきましてはその制度が認められております。そういった制度を今後とも拡充していくように種々お願いをしておるわけでございます。
そのほか、足の問題につきましては、国鉄当局にも運輸省当局にも私が率先いたしましていろいろ
陳情申し上げておるというような状態で、現在のところは、さらに地方が負担に困るという問題につきまして、ちょうど自治省の特別交付税の交付時期にも差しかかってきておりますものですから、市町村にかわって、公団も一緒に自治省に特別交付税の増額を
陳情するというような措置も講じておるわけでございます。
いろいろ問題はございますが、
住宅に困っている皆さん方のために、しかも、できてから足なしあるいは水なしといわれないように、あるいは入居者が生活に不便にならないように、そういう配慮も全部伴って仕事をしていくというために、建設のスピードを落とさざるを得ない、こういう現状であることをお認め願いたいと思う次第でございます。