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1974-08-02 第73回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月二日(金曜日)    午前十一時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 岩動 道行君                 河本嘉久蔵君                 野々山一三君                 鈴木 一弘君                 栗林 卓司君     委 員                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 吉田  実君                 大塚  喬君                 竹田 四郎君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 近藤 忠孝君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        大蔵政務次官   大野  明君        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵省主計局次        長        辻  敬一君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省関税局長  吉田冨士雄君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        大蔵省国際金融        局長       大倉 眞隆君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  大平大蔵大臣から所信を聴取いたします。大平大蔵大臣
  3. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先般、私は、はからずも大蔵大臣を拝命いたしました。  わが国経済内外にわたってきびしい試練に直面している今日、財政金融政策運営に当たる職責の重大さをひしひしと痛感いたしております。微力ながら自重自戒し、政策運営に誤りなきを期してまいる所存でございます。この機会現下内外経済情勢並びに財政金融政策につきまして私の所信の一端を申し述べまして皆さまの御理解と御協力を得たいと存じます。  わが国をめぐる内外環境が近年急速に変化してまいりましたことはつとに指摘されておるところでございます。特に昨年末の石油危機とそれに続く著しい物価の高騰は、わが国経済をめぐる国際環境のきびしさを如実に示したものでございました。  近年来、ドルを軸とする世界通貨秩序の動揺、第三世界の台頭、東西間の緊張緩和等のため国際経済が果てしなく多様化し、通貨資源経済協力等分野に種々困難かつ複雑な問題が時を同じうして出てまいりました。かくして世界経済はいよいよ混迷の度を深め、世界的規模を持つインフレの高進と相まちまして、事態はますます深刻になってきております。  申すまでもなく、わが国の直面する資源問題、国際収支問題の困難さは、世界経済相互依存の網目の中にわが国経済がいかに深く組み込まれているかを示すものであると思います。  現下の最重要問題である物価問題も、もとより国内的な諸要因をかかえておりますが、国際的な要因もまた無視できないものであります。また、これらの問題に加え、環境の汚染、破壊の問題も近年深刻の度を増してきております。  われわれは、まず、このような諸問題の発生によって、これまでのわが国の目ざましい経済発展の背景にあったきわめて恵まれた諸条件が大きく変化してきた現実を直視しなければならないと考えております。  このような物的側面に加えて、わが国では、過去の高い成長の過程で、ややもすると問題の解決にあたって安易な道を選びがちな風潮が生まれました。そのことば、幸か不幸か、恵まれた環境のゆえにさして問題となることなく、むしろ経済活動国民生活、さらには国民精神にまでこうした風潮が定着しつつあるかのように感ぜられます。  しかしながら、今後のきびしい環境への適応の過程にあたってわれわれに強く求められておりますものは、このような安易な態度を捨てて、自制の精神と節度ある態度を持することであると思います。  また、世界的な資源有限性が唱えられ、同時に資源が著しく高価なものになってまいりました今日、国民の一人一人が資源を大切にすることの重要性を真に理解し、これを着実に実行に移す努力が必要であると思います。生産活動及び消費生活のあらゆる分野にわたって使い捨てや乱費の風潮に終止符を打ち、物の持つ価値を最大限に引き出すことが肝要であると考えます。  以上申し上げましたような環境変化に対応いたしまして、経済政策の究極の目標である国民福祉充実を達成するために、現在まずなさねばならないことば経済の安定を回復し人心の落ちつきを取り戻すことであると思います。  このため、政府は、当面の経済運営あたりまして、まず国民最大関心事である物価の安定を第一の政策目標とし、強い決意をもってその達成をはかっておりますことは御承知の通りであります。  最近の物価動向を見ますと、昨年来進められてまいりました総需要抑制策効果が逐次浸透し、狂乱といわれた物価はようやく鎮静化傾向を見せております。本年初めまでは、我が国の物価上昇は、主要先進国のそれを上回っていたのでありますが、春以降は、諸外国に比してもかなり落ちつき示しているものと考えております。  しかしながら、今後は原油価格上昇に端を発するエネルギー及び基礎資材価格上昇や、春闘における賃金大幅上昇等コスト上昇要因波及的影響が懸念されるのであります。また、消費支出設備投資などの需要動きには、なお先行き根強い増勢がうかがわれるものもあるのであります。  このような情勢のもとにおきましては、コスト上昇が安易に価格に転稼されるような事態や、総需要の急速な拡大により再び需給の均衡を失するような事態は何としても避ける必要がございます。このためには現在の総需要抑制を堅持することが基本でなければならないと考えております。  したがって、金融政策運営あたりましては現在の引き締めを堅持いたしますとともに、公共投資につきましても抑制の方針を貫いてまいりますことは当然と考えております。  なお、わが国の産業の国際競争力が懸念されている現状に加えて、従来ほどには生産性の向上がはかりがたい状況のもとにおきまして、最も憂慮される問題は、賃金上昇物価上昇との悪循環でございます。この問題につきましては、私は、まず、物価の安定に全力投球し、その実をあげつつ、国民各層に広く理解を求め節度ある行動をとられるよう要請してまいりたいと考えております。  物価の問題と並んで重要な問題は国際収支でございます。  国際通貨情勢は石油問題が生じて以来きわめて流動的な状態を続けております。この間にありましてエネルギーの大半を輸入原油に依存するわが国国際収支は、四十八年度においてかつてない大幅な赤字を記録いたしました。その後、資本流入規制緩和流出促進策の手直しによりまして、長期資本収支は相当な改善を見ております。また、最近に至り、総需要抑制策の浸透もあって貿易収支面にも好転のきざしがあらわれております。しかしながら、情勢はなお流動的で、不断の注意が必要であり、引き続き国際収支改善のためには、一そうのくふうと努力を傾けてまいる必要があると考えます。  もとより、国際協調をその存立の基礎とするわが国といたしましては、自国の国際収支改善が、他国経済に新たな負担をもたらすようなことば極力避けねばならぬと考えます。したがって、節度と国際協調精神をもとに着実に国際収支改善をはかってまいることが、わが国のとるべき基本的な態度であると考えます。  以上申し上げましたように、わが国はいま、きびしい内外環境のもとで経済運営に細心の配慮を求められておる局面を迎えております。  この中にありまして、物価の安定、国際収支均衡をはかりながら国民福祉充実を達成していくことは容易ならない課題であると考えます。  顧みますと、過去の目ざましい経済発展もその過程は決して平たんなものではなく、国民の旺盛な活力とたゆまざる努力によりまして多くの困難を克服したあとに初めて達成されたものであったのであります。  国民がみずからの活力に自信を持ち、新たな環境に適応すべく、勇気を持ってその豊かな資質を発揮してまいりますならば、当面する困難を克服することば必ずや可能であると確信いたします。  われわれは、あせることなく、一歩一歩慎重に進路を見定め着実に問題を解決していかねばならぬと考えます。  私は全力を尽くし、まず第一歩である経済の安定の実現につとめ、もって真に充実した国民生活の基盤を確立してまいりたいと存じます。  皆さま方の御理解と御協力を切にお願いいたす次第でございます。
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、大野大蔵政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。大野大蔵政務次官
  5. 大野明

    説明員大野明君) このたび私は、大蔵政務次官を拝名されました大野でございます。まことに浅学非才若輩者ですが、よろしくお願いいたします。
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。   〔速記中止
  7. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。  これより、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 今回、福田大蔵大臣から、新しく大平さんが大蔵大臣になられまして、この点はおめでとうございます。  福田さんは、いまの田中総理に対しまして、たとえば日本列島改造論批判等もなさいましたし、あるいは総需要抑制ということについては、かなり福田さんは強く当初から申し述べていたわけです。退任されるにあたっても、物価問題はすでにレールが敷かれているんだ、あとだれがやっても同じなんだということばを残してやめられたわけでありますけれども大平さんは、いまの田中内閣の中では、田中首相に一番近い、こういうふうに言われているわけであります。また、外務大臣というお仕事をやっていた関係もあろうかと思いますけれども列島改造論があれだけ国論をわかしていた当時においても、特に列島改造論批判というようなことは私は寡聞にして聞かなかったわけであります。そういう意味では、おそらく田中首相の踏線にもっぱら全一的に御協力をなさってきたように私は思うわけです。しかし、あなたの所信表明の中にも申し述べられているように、各種需要が大きくなっていく、需要先行きがかたい、こういうような御判断もあるようでありますけれども国民は、福田さんはかなり締まり屋だという感じをやっぱり受けていたと思うのです。しかし田中首相は、これは土建屋的構想で、かなり列島改造についても、その後も否定はしておりませんし、やっていくんだということは、選挙中についても述べておられるわけであります。そういたしますと、公共投資をはじめとし、あるいは民間設備投資等についても、かなりの前向きの姿勢といいますか、そうしたものを田中首相個人発言からは聞かれるわけでありますけれども、そうした観点から考えてみまして、また去る、一週間ぐらい前でございますか、内田経済企画庁長官の八つのメモということも、総需要抑制はやるんだけれども、しかし何かしり抜けのような、あるいは弾力的に運営するとかいうようなことでございますし、あなたのこの所信表明の中にも、基本的には「総需要抑制策を堅持することが基本でなければなりません。」と、基本は総需要抑制策ということをとっているということでありますけれども、裏を返せば、総需要抑制策は原則である、かなり弾力的に運営をされるんではないだろうか、こういう趣旨のことも読み取れないことはないわけでありまして、そうした意味で、福田路線というものと、大平路線というもの、一体財政金融政策について若干の変動があるのかないのか、もうすでに御就任になってから約二十日近くの日数は経過しているわけであります。私どもこの臨時国会の中で、大平蔵相からその辺の感触も実は得たいと、そして今後の景気動向というものを、そうしたものの中で確かめていきたいというのが、私は国民の大きないま関心一つではないだろうか、こういうふうに思っているわけでありますが、おそらくあんまり明確にはお答えにならないだろうと私は思っているわけでありますけれども福田路線大平路線と具体的にどうなのか、この辺についての違い、今後の財政運営あり方についての相違というようなものについてひとつお話をいただきたいと思います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大蔵省仕事は、自由民主党内閣仕事でございますし、田中内閣仕事でございまして、大蔵大臣が更迭いたしましても、その性格に変わりはないわけでございます。  第二に、いま竹田さんもおっしゃいましたとおり、国民の願望はやはり経済の安定、もっと落ちつきを取り戻したいということであると私も思いますし、私の所信表明でも、そのことを政策の眼目にしなきゃならぬと申し上げたわけでございまして、福田さんの場合におかれましても、そういうことを政策道標といたしまして財政面金融面、その他いろいろ苦心、施策されてまいったことと思うのであります。幸いに去年の暮れから春にかけての異常な混乱期を脱しまして、春先から卸売り物価消費者物価動向もやや鎮静化傾向示してきておりまするし、諸外国に比べましてこの足取りは健全な歩みであると私ども考えておるわけでございまして、何としてもこの傾向を手がたく守り抜いていかなければならないのではないか、どなたが大蔵大臣になりましても、その軌道からはずれるようなわがままは許されないのではないかと私は考えております。私が大蔵大臣に任命されて、政策的に弾力的に配慮を加える幅というのは非常に狭いということでございます。  もとより、これから先、経済動きが国内外に起こってまいるわけでございまして、その節々につきまして、大蔵省として適切な処置を適時講じていかなければならぬことは当然の任務でございますけれども、この基本道標を見失うことなく、総需要抑制軌道からはずれるようなことがあってはなりませんし、その点は十分自重して事に当たってまいりたいと考えております。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 たいへんいまの物価動向、あるいは景気動向について、大平さんは、かなり安定的に推移をするだろうというふうな考え方のようでございますけれども、しかし、もう目前に、生産者米価が上がった、その見返しとしての消費者米価の問題というものが、おそらくここ一ヵ月近く後には、一体消費者米価はどうするのかという問題が具体的に出てくるわけです。そうすると、生産者米価が三七%も上がった。さらに加えて、昨年の消費者米価九・何%というものを考えれば、少なくともこれをそのまま消費者米価にはね返らせていく、食管会計問題ですね。はね返らせていくということになれば、その他の手数料の増高も含めて五〇%か六〇%というような消費者米価値上がりになるのではないか、こういうふうにいわれているわけです。そうしますと、消費者米価が五〇%近くも上がってくるということになりますと、これが消費者物価のウエート問題を通じて幾らしか上がらないということを政府が言っても、これはやっぱりそれに対する波及効果なり、あるいは便乗値上げなりというものは、これは必然的に出てくるわけですね。いままでの食糧関係の問題でも、私は具体的に出てきた実例というものを幾つか見ているわけです。最もひどいのは、電力料金が少し上がって、それと同時に干しうどんが十円も上がっていくというような便乗値上げが現実的にあるわけです。それはほかのものだって上がっていると思いますが、そういう形で当面消費者米価値上がりというようなものがあるわけでありますが、そう考えてみますと、今後の物価動向というものは、おそらくきょうあたり新聞を見ましても、ことしの秋には狂乱物価が当然起こってくる。まあ福田派は、実はそれが一つ機会だというふうにきょうの新聞あたりには出ていますが、機会になるのかならないのか、それは私どもにはわかりませんけれども自民党内部でも、秋には狂乱物価が起きてくるのだ、こういうふうに言われているわけであります。そうしてみますと、物価は、卸売り物価消費者物価ともある程度鎮静化してきた、なるほど現段階では若干鎮静化の様相はありますけれども、しかし、卸売り物価上昇の程度を見ますと、数日前に発表された数値でも、旬間の上昇率はそう低いわけじゃない、かなり高いわけです。そうしてみますと、今後の物価動向というものは、私はそんなに楽観を許されない状態であろうと思うのです。消費者物価とおそらく同じように国鉄運賃値上げがありますし、この付近でいえば、東京ガスの問題もあるでしょうし、あるいはタクシー、運賃値上げもある。まあその他各種料金値上げというようなものがあるというふうになると、どうも物価情勢というものは、ここでお述べになってある以上にきびしい条件が出てくるのではないだろうか、こういうふうに私は思うわけですが、この秋から冬にかけての物価動向というものは、もっときびしいのじゃないだろうかというふうに私は思うわけですけれども、これについて経済の安定、物価安定——経済の安定というのは、いま一番大きな問題は物価の安定だろうと思いますが、そういう状態がどうなるのか。この辺についてひとつ大蔵大臣の見通し、そうしたものをお聞かせいただきたいし、特に消費者米価の問題については、食糧会計の問題もあるわけでありまして、それに対して一体そのまま生産者米価値上げ分を、はたして消費者米価でそれによって埋めていくのか、あるいは今日の物価動向の中で、財政負担もある程度せざるを得ないのかどうか。税金の自然増収というものはかなりあるようでありますが、そういう面での一般会計からの補給によって、消費者米価というものをある程度その上昇率を押えていくことが私は重要であろうと思うのですが、その辺の考え方というものも、ひとつお示しをいただきたいと思うのです。  私は、なぜ消費者米価を特に問題にするかといいますと、五割も消費者米価が上がるということになりますと、これはたいへんな問題になるだろうと思うのです。おそらく食糧庁の消費者用の米の相当なこれに対する配置をしなければ、もう一部の地域ではおそらく米が不足をする、一種の米騒動に似たような情勢が起こらないという保証はなさそうに思うわけであります。そういう意味では、消費者米価あり方というものは、今後の景気動向をきめていく上の相当大きなウエートを占めるのではないだろうか、こういうふうに思うわけでありますが、その辺を含めて、ひとつ今後の物価動向についてお示しをいただきたい。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの経済政策の取り進めにあたりまして、注意してまいらなければならぬことは、一方において経済自体論理から申しまして、たとえばいま御指摘の米価の問題にいたしましても、どのぐらいのウェートを持っておるか、食管制度自体運営の歪曲された状態を是正してまいる必要もあるのではないか、それから財政自体も、一兆をこえるような食管会計繰り入れが妥当なのかどうかというような点は、経済論理の上から申しますと確かに問題があると思うのでありまして、それを合理的に是正すべきではないかという議論は、一方において非常に強いものがあると私は考えます。しかし一面、竹田さんもおっしゃったように、そういうことをやればたいへんじゃないかという、そういうことは、いま非常に微妙な心理的な影響というものを十分考えてやらぬと、経済論理だけを貫くわけにいかない、そういう環境にわれわれは置かれておると思うのでございます。したがいまして、非常に明快な考えで割り切るという勇気はなかなか出てこないのでございます。不合理はできるだけ是正しなければならないけれども、そのことの心理的な波及効果というものがどのように経済に返ってくるか、財政に返ってくるかというようなことも、当然念頭に置いてやらなければならないわけでございます。そのかね合いが最大心配事でございます。  秋の状況をそれではどのように展望しておるかということでございますが、せっかく春から夏にかけまして鎮静化傾向が出てきたことは事実でございまするし、諸外国歩みに比べて、より健全な歩みを見せておることもまた計数が示しておるところでございます。しかし、私が所信表明でも申し上げましたとおり、総需要というものは、なお依然として根強いものがございまするし、一部には設備投資の意欲さえ冷えていない面さえあるわけでございますので、こういうときでございまするから、この総需要抑制政策というものを手がたく堅持しながら、そのベースの上に立ちまして、最小限合理化すべきものは合理化していかなければならないし、社会心理的な波及度を最小限にこれまた押えていかなければならない。そういうことで、この夏から秋にかけて全力投球しなければならぬと考えております。その結果がどのようになってまいるかということは、神ならぬ身にはわかりませんけれども、できるだけこの上げ幅を最小限度に押えていくような努力をして、秋には数字をもって——これはごまかすわけにはいきませんから、数字をもってひとつ委員各位から御評価をいただくように、まず政府も一応やるべきことはやったじゃないかという御評価を得たいようにやりたいものだといま考えておるわけでございます。  それから消費者米価の改定の問題でございますが、これは竹田さんも御案内のように、第一次的には農林省のほうにおきまして、米審委員各位に、基本問題についてまず早急におはかりをいたたくことになっておりまするし、その御検討と相前後して、具体的に十月からの消費者米価をどうするかというような問題につきましても御検討いただくことになっておりますので、私といたしましては、そういう御審議の経過、結果、そういうものをまず承ってから考えたいと思っております。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 消費者米価についての事の重要性という問題については、大平大臣もかなりこれは理解をされているというふうには思いますけれども、具体的にその消費者米価をどうするかという問題は、おそらく米審等の結論もあるにいたしましても、やはりいまの前段の、全体的なお話の中では、ある程度は経済的な合理性だけで食管会計のつじつまを合わす、そういうことではどうも事態がそう簡単におさまらないだろう、やはり食管会計のそろばん勘定だけでなくて、何かの方法というものを考えているのだというふうな理解をいまの御答弁の中で私はするわけでありますけれども、今後のこの点は、情勢を見なければわかりませんけれども、私としては、あくまでもいま経済的な合理性だけを追求していくということになれば、やっぱり米の問題でも、例のトイレットペーパー、あるいは洗剤騒ぎ、こうしたものが起きないという保証はちょっとないと思うのです。こういう点では今後の財政運営にあたっても、ひとつ慎重にやってもらわなくちゃいけないだろう、このように思うわけでございます。  それからもう一つは、公務員給与の問題なわけです。これは私どもは、この臨時国会の中で公務員給与の問題はひとつ解決をしていきたいという趣旨であったわけです。なるほど人事院勧告が三二%等の給与の引き上げを出したわけです。この三二%のうちの約一〇%というものは、いままで前渡しという形で渡されていたわけでありますけれども物価情勢は二十数%という上がり方をしている。一般の民間の人は、もうこの春闘で三十数%という賃金をもらっている。しかし、比較的安い給与の公務員は、物価上昇にもかかわらず、一〇%増ししかもらっていない。しかも、臨時国会が十一月ということになると、民間の人に比べて半年以上安い賃金給与で、高物価にあたって生活をしていかなくちゃならない。しかも、秋の物価情勢はまあいろいろな見通しはあるにしても、たいへん心配される情勢だと、こういうふうに言ってよかろうと思うんです。そうなってまいりますと、公務員だけが、これはむしろ政治的な問題にからんでおくれているというふうに言ったほうが私はよかろうと思いますが、そういう意味では、公務員給与について、これはまあ大蔵省自体が言うべきことかどうかわかりませんけれども国務大臣大平さんとしては、これがいまの現状のままで置かれるということになれば、公務員というものが、特に生活上の負担というものは非常に大きいものになろうと私は思うんですけれども、こういう点で田中内閣として何らかの措置は、法律改正をしない——これ十一月でありますから、まあたいへん先になってしまうわけでありますけれども、その間に何らかの形での措置をしていかなければ、今後の物価情勢等考え合わせて、あまりにも過酷な条件の中で公務員が生活をしなくちゃならぬということになるんじゃないかと思うんですけれども、こういう面について、国務大臣としての大平さんのお考え方をひとつ聞きたいと思います。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 人事院制度がなぜ設けられたか、それから人事院勧告というものは尊重されなければならないものであるということは申すまでもないことでございまして、私どものこの勧告を受けて、これに誠実に対処していかなければならぬ課題であると心得ております。ただ、この勧告が先般なされまして、私も閣僚協の一員でございますけれども、この勧告の内容、構造につきまして説明を拝聴いたしたわけでございまするし、また大蔵省からは、一応の概算といたしまして、中央・地方を通じまして新たな財源がどれだけ必要——これをそのまま実施するとすれば必要とするであろうという概算の報告もございまして、これを受けまして、いま各省庁の間でこの問題についてどう対処したらいいかということについて鋭意検討をいたしておる段階でございます。遠からず第二回の閣僚会議を開いて問題点を持ち寄って検討を進めていく手はずにいたしておるわけでございます。  いま御指摘のような問題も十分念頭に置いて、私といたしましては、真剣にこの問題については対処していかなければならぬと考えております。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 真剣に対処していくということはあれですか、法律ができない前にでも何らかの措置を緊急にとるということを含めているわけですか、含めていないわけですか、どうなんですか。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府は、国会から与えられた権限の中で措置しなければならぬわけでございますので、政府の与えられた権限は、御案内のとおり給与法の改定を伴わないと一銭たりとも支出ができないわけでございますので、検討を通じまして、いま御指摘の方法論も含めて、政府としてどうするかという基本的な態度を遠からずきめなければならぬと思います。われわれといたしましては、鋭意検討して結論をなるべく早く急ぎたいと、そういう方法論を含めて急ぎたいと考えております。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 ひとつその点は、これはやっぱり自民党の人でも、この問題はそのまま放置をしておいていい問題だというふうには私は思いません。これが物価が全然上がらないというときならば、それは次の法律ができるまでひとつ待ってくれということが言えるわけでありますけれども、もう具体的に米もかなり上がる、国鉄運賃もかなり上がる、ガスも上がるだろうし、タクシーも上がるだろうしという、そういう段階ですから、とても私はその十一月まで公務員に対して——まあここに並んでいる皆さんは大体いいでしょうけれども、下級の公務員は、おそらくたまらぬと思うんですよ。ほんとうに生活ができないという事態であろうと思います。これについては、私は何らかの形で、やはり臨時的な措置をやっぱりとっていかなければ、公務に専念するというわけには私はおそらくいかないだろうと思いますけれども、これは特にひとつ真剣になって考えてもらわなければ困るだろうと思います。  それからもう一つ、公共事業の執行の繰り延べということを盛んにおやりになっているわけなんですけれども、しかし、この政府のやり方というのは、非常に一律的におやりになっているという弊害が私はかなりあると思いますね。一番それがひどいのは、学校建設だと思いますね。いつまでたっても学校の用地が買えない、つくれない。これは銀行の融資の問題も、融資規制についてもこれはからんでいるわけでありますけれども、そうした意味では、学校建設が非常におくれているという点が一つあると思います。  それから今次の各地においての災害、豪雨による災害というようなものを見ましても、特に都市近郊においては、下水道の整備がおくれているということが、被害件数を非常にふやしているということが言えるわけです。そのために浸水家屋が多くなったりしているというようなことも、やはり下水道の整備がおくれているからです。しかし、御承知のように、下水道というのはたいへん金のかかる仕事であります。これに対しても一律に抑制をされている。そうしたものがこれからの動向としてもおそらく都市近郊あるいは都市というものへの人口集中というものは、まあそう簡単に急激にやまっていくというものではないだろうと思います。若干、最近においては都市から、あるいは地方への人口の分散の傾向も若干あらわれてきてはおりますけれども、しかしこれが大流となるということはそう簡単にすぐにできるとは思えないわけです。そういたしますと、どうしても都市の住宅建設というものも、非常にいまはそのスピードは落ちておりますけれども、しかし、行なわれていることはこれは事実であります。そうなってまいりますと、そうした都市の近郊におけるところの下水道の整備というものも急いでいかないと、これはやはり一そう災害を大きくしていくわけであります。まあ大蔵省の土地の管理なんかも非常にずさんであったために、今度率直に言って横須賀あたりの災害というものは、大蔵省の所管の用地の土砂くずれがかなり多かったことも事実でありますけれども、まあそうしたこともおそらくそれは大蔵省の管理のずさんだけではなくて、下水道の整備という問題がおくれているために、それが大蔵省の土地の傾斜部分に下水の水が落ちてきて、それががけくずれを起こすというような、そうした事態に私はなってきたと思うんです。そういう意味でも、やはり下水道の整備なり、あるいは学校建設なりという住民福祉の公共事業というものは、景気動向のいかんにかかわらず、これはある程度私は進めていくような措置をとらないと、災害を大きくしたり、あるいは教育というものの環境を著しく破壊をしていくというようなことにつながっていくと思うんです。そういう面での配慮というものは、一般的な、概括的な公共事業の抑制ではなしに、やはりきめのこまかい抑制というものを私はやっていかなくちゃならぬと思うんです。一方においては、すでにきょうの新聞あたりに見られるように、エチレンの設備投資を認めていくというような形が出ていっているわけでありますけれども、そうした点では、特に公共事業というものを一律的に、事業費もまた銀行の融資も同じようにとめていくというあり方ではなしに、もっときめのこまかい、必要なところにはこれは伸ばしていく、必要でないところはもっと極端に締めていくという形でのやり方というものをもっと徹底していかなければいけないんではないか、こういうふうに思うわけでありますが、そうした点では、総需要抑制あるいは公共事業の執行の繰り延べというものも、もっときめこまかく私はやっていかにゃいかぬじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、これは銀行の融資についても同じだろうと思います。大きなところで金の余っているところは、融資の規制けっこうでありますけれども、やっぱり小さなところ、ここではほんとうにいま銀行融資等が得られなくて倒産件数というのもふえてきているのが実情であります。こういう銀行融資の規制というものも、やはりいままでと同じような一律的な規制のやり方じゃなくて、うんと締めるところ、あるいは若干ゆるめるところ、こういうものが当然あってしかるべきでありますし、そうでなければ、国民の福祉というものが確保されないではないだろうかと、こういうふうに思うわけでありますが、その辺の見解を大蔵大臣に伺いたいと思います。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せになられることはよく理解もできますし、私どももそういう心がまえでいかなければいかぬと考えております。公共事業につきましては、去年からことしにかけまして、契約を抑制するという方針を貫いてきているわけでございます。去年に比べてことしはさらに一段強化をしてまいっておるわけでございます。しかし、この抑制されたワク内におきまして各省庁が、いま竹田さんが御指摘のように、学校にいたしましても、下水道施設にいたしましても、重点とおぼしきものにつきましては配慮できる余地はあるわけでございます。一律に規制しているわけでは決してないのでございます。行政当局におきまして、いま仰せのような趣旨は、このワク内におきまして十分賢明な措置をしていただきたいものと私ども考えておりますし、その余地は私はあると思っておるわけでございます。問題は、根本は総需要抑制政策の重要な一つのこれは柱でございまして、この柱自体をゆるがすというようなことにはならぬように堅持したいと考えております。
  18. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは大臣に質問いたす前に、ちょっと質問時間のことで委員長はじめ皆さんに御提案したいんですが、参議院の予算委員会では、御承知のように、質問時間が往復じゃなくて片道になっておりますね。ところが、この大蔵委員会では、質問時間というのは、答弁者の答弁を質問時間の中に入れておるわけです。ですから、答弁者の答弁が長いとどうしても質問時間が短くなります。答弁が不必要に長かったり、丁寧過ぎるような場合に、非常にわれわれの審議時間が短縮を余儀なくされるわけですから、これはぜひとも予算委員会にならって、質問時間を片道だけに計算するという方式に将来は改めていただきたいと考えておるわけです。これは、きょうすぐというわけにはいきませんが、ぜひ御検討をお願いいたしたいと思います。  きょう、大臣の御所見を承りますと、やはり物価の安定ということが何よりも現在の喫緊の政策課題だということを言っておられますね。前の大臣も、やはりこの物価の安定を他のいかなる政策にも先立って実施すべき政策課題だというふうに言っておられるわけです。ただ、前大臣は、この物価問題を、総需要抑制と、国民生活安定緊急措置法など物資三法による個別物価対策の強力な推進によって、両三月中には物価騰勢が鎮静化して、おそくとも四十九年の夏ごろまでには新しい価格体系ができ上がって、それが安定した形で動いていくようにいたしたいと、こういうふうに言っておるわけですね。大臣のきょうの御所見でも、現在は物価鎮静化しておるというような御議論もあったようですけれども、問題は、この新価格体系というものの中身なんです。前の福田さんのおっしゃった新価格体系というものは、決して高位安定ではないんだ、現状の是認ではないんだと、現状より若干下がったところで安定点を求めたいと言っておられたわけですね。ところが、きょう朝日新聞の社説を見ますと、日本医師会の会長の武見さんが、高物価の中で価格の安定を求めるべきであるということを言っておられるというようなこともちょっとございました。  そこで私は、まずその新しい価格体系というものの中身について、大臣はどの辺にめどを置いていらっしゃるのか、それをまず第一にお伺いしたいのです。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 去年の十月下旬に、じりじり小幅の値上げを見ておりました原油も、大胆な値上げが行なわれ、ことしの一月一日からさらにまた大幅な値上げが行なわれ、安定期の四倍にもなるという状況になりましたことは御案内のとおりでございます。したがって、高くなったから日本は遠慮するというわけにもまいりませんで、そういう高い原油の供給を受けまして経済を営んでまいらなければならぬ宿命にあるわけでございますので、そういう要素を価格体系の中で吸収してまいること、これはいやおうなしにやらなければならぬことであると思うのであります。同時に、春闘等を契機といたしまして大幅な賃上げも行なわれる、これが大きなコスト要因になっておることも事実でございます。したがって、こういった要素が個別価格の中にどのように吸収されて安定を見るかと、どういう水準で、どういう時期にそういうことが可能であるかということは、いまお尋ねを受けたわけでございますけれども、私はまだ確答を申し上げられるだけの自信がございません。いま私ども物価の安定ということに全力投球をしておると申し上げておりますのは、そういう不安定要因、そういう衝撃を受けた日本経済といたしまして、それを受けとめて、物価の中でそれを吸収して、それが吸収しつつある過程でございまして、その過程が、足取りが春先以降は鎮静化の方向をたどっておるということでございますから、この方向を手がたく維持してまいることにまず全力投球しようということでございます。そういう努力過程を通じまして、どういう水準において価格が安定した姿になってまいるかということが結果として出てくることと思うのでございます。われわれといたしましては、そういう衝撃要因を吸収する、同時に、各物資間のアンバランスというようなものも、料金等のアンバランスというようなことも逐次解消の方向に持っていきまして、ほんとうの安定に早く持っていきたいと思うわけでございますが、それがいっ、どういう水準でということはあまりに大きな課題でございまして、いまお答えする余裕がないことはたいへん恐縮に存じます。全力をあげて鎮静化の方向をくずさないように細心、周倒な施策をやってまいるということをいちずにいま考えておる次第でございます。
  20. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういたしますと、福田前大臣が言われた新価格体系なるものはまだでき上がっていないということになりますね。前の大臣は、二月の十四日の速記録を読んでみますと、両三月中にはこれが鎮静化して夏ごろまでには新価格体系なるものができ上がるというようにおっしゃっておられるわけですが、大臣は、いまそれがどの程度にこの水準を置くべきものか、確答する自信がないとおっしゃっておられる。といたしますと、そこに前大臣のおっしゃったことが完全に実現せられなかったという結果になるわけですね。大臣のお見通しではいつごろまでにそれが現実的なものになっていくのでしょうか。全然見当がつかないというのでは国民は困ると思うんですが、大体のめども立っていらっしゃらぬのでしょうか。また何らかの御抱負というようなものはお持ちではないんでしょうか。それをお伺いしたいんですが。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ一つの目安は、新しい原材料、食糧、燃料等が大幅に上がっちゃったと、それを吸収いたしまして、賃金も大幅に上がった、そういうことで形成された新しい個別価格というものでわが国の輸出が円滑に行なわれて、国際収支にもどじを踏むようなことのないようになる状況、そのように早くなりたいものと思うわけでございますが、寺田さんのおっしゃることは、その間国民がどこまで御協力をいただきますか、政府がどこまで、どういう政策が実行できますか、これからの要因が全部それに関連してまいるわけでございまして、私が一人力んでみても、これはなかなか——見当をつけてみても意味のないことでございまして、われわれといたしましては、せっかく消費者物価卸売り物価も対前月小幅な動きになってきたということでございますから、これを増幅しないように何としてもしなければならないんじゃないか。といって、そのために、これ、むちゃくちゃなこともできない。経済は生きものでございまするし、財政負担力も限度があるわけでございますから、いろいろな制約のもとで精一ぱいのことをやりまして、できるだけ小幅な状態に持っていくということがいまの課題であると私は申し上げたわけでございます。そういうことが国際経済との接触面におきまして一つの安定を回復してくるということになれば、あなたの言うおぼろげながら新価格体系というようなものもデッサンできるような状況になるのではないかと私は思うわけでございます。いま非常に微妙な段階でございまして、その日その日、一日一日細心の注意をもって事に当たらなければならぬということで精一ぱいな状況でございます。
  22. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 新価格体系について明確なお見通しなり方針を持っていらっしゃらないようですが、ただ、大臣のおっしゃった——国民協力も大切だというお話がございましたですね、いま。  ただ、私どもからいたしますと、なるほど需要が非常に多くて価格が騰貴する、だから、それは総需要抑制するんだということはわかるんですが、先ほど竹田さんもおっしゃった公共料金など、これはどうも最近の政府のなさり方を拝見いたしますと、コストップッシュだからもうしょうがないんだ、だから、どんどん認可する、それから消費者米価ども思い切って新しい生産者米価の分をかさ上げするというような方向にずっと行っているように思うんですね。こういう公共料金の値上げをどんどんこうやられますと、国民協力ということ以上に、この物価の引き上げについて政府はみずからその原因をつくっておるというような感じさえするわけですが、どうなんでしょうか、公共料金の引き上げについて、大臣はやはりコストプッシュだからしかたがないんだ、上げるだけ上げてしまえというようなお考えをお持ちではないと思いますが、その辺明確にお答え願えませんでしょうか。どういう御方針なんでしょうか。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 物価も料金もこういう状況のもとにおきまして、真にやむを得ない理由で上げなければならないものはあると思いますけれども、何でもかんでも無制限で上げていいなんていう考えは毛頭持っておりません。抑制的な態度政府として堅持していきたいと思います。ただ、いま申しましたように、原価要因が大きな変動があり、それが一時的でなくて、今後長く続いていくという展望の中で、いつまでも低目に無理やりに押えておきますと、これはかえって将来の需要者を非常に苦しめることになると思うのでございます。後遺症をできるだけいまの時代のわれわれが子孫に残さぬようにやっぱりしていく必要が私はあるのではないかと思うのであります。ただ、先ほど竹田さんも御指摘のように、そういうことはわかるけれども、しかし、いまの社会心理の状況というのは、寺田さんもまたあわせて御指摘でございましたけれども、公共料金の値上げということがいかに合理性を持っておりましても、そのことが社会心理的にどういう波及的な結果を及ぼし、ほかの物価あるいは料金等にゆえなく——ゆえなくと言うか、何と申しますか、心理的な波及効果を持つというような非常に微妙な状況でございますから、そのあたりは十分時期や程度、方法等におきましては、政府も十分配慮していかなけりゃならぬことだと思うのであります。
  24. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの公共料金の引き上げで、ことに消費者米価の引き上げの問題ですね、かさ上げの問題ですか、これでまあ非常に波及効果ということを大臣が重く見ておられる点は私も非常にけっこうだと思うんです。ことに私どもは、日本人の中でも米をたくさん食べる人というのは勤労者階級に多いわけですね。資産階級はおかずをたくさん食べて、あまりお米は食べない、副食が多い、あるいはそのほかの主食でまかなうというのですが、御承知のように勤労者階級というのは、非常に弁当箱などを見ましても、お米をたくさん食べますからして、いま九・二%の引き上げがすでにきまっておる。その上にさらに新しい新米価の部分をかさ上げするということになりますと、まあ勤労者階級、ことに貧しい人々に直撃的な打撃を与えるわけですね、一生活に。ですから、どうぞ消費者米価の引き上げという点は、大衆課税と一緒だというお気持ちで、これは大蔵大臣において非常に慎重にお願いいたしたいと思うんです。  それからこの際特に食管会計の問題、それから国鉄の会計の問題など、独立採算制という問題に徹底的にやっぱりメスを入れていただきたいと思うんです。ああいう独立採算にして、どうしても赤字を解消していく、経済論理からその赤字を放置することは好ましくないという大臣のお話がございましたけれども、私は、こういう公共的な価格ですね、これはやはり赤字が出ても、それは社会保障的な支出なんだという考えに立っていただきたいと思うんです。ですから、独立採算だからといって、赤字をともかく解消することだけに目をやって、そしてそれを消費者に転嫁していくということは、結果的には勤労者階級を困らせる大衆課税と同様なんだと、だから、そういう資本重点的な考え方を改めていく、その社会保障的な考え方でまかなうという、発想を転換さしていただきたいと考えておるわけです。その点だけ最後に大臣にお考えをお伺いして私は質問をやめたいと思います。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 料金値上げの必要になってきた場合に、それを利用者に料金の形で負担せしめるか、それとも一般納税者の負担の姿でやってまいるかという議論は、古くして新しい問題でありまして、いままでもずいぶん議論されてきたことと承知いたしております。寺田さんのおっしゃるような考え方も確かに成り立つわけでございますが、しかしまた、そうすべきでないという議論もまた成り立つわけでございまして、私はそれではどうかということを問われるならば、私といたしましては、原則はどうしても利用者の負担、したがって、会社とか、あるいは公社等の独立採算制というようなものをくずすべきではないじゃないかと考えるわけでございまして、そういうことを原則にいたしまして、現在すでに若干の社会政策的な配慮もいたしておると思うわけでございますが、直ちにこれを、あなたのおっしゃるように、社会政策の範疇の問題として扱えと、そういう発想の転換はできないかという御相談に対しましては、直ちに御賛成でございますと言うわけにはまいりません。
  26. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 一応終わります。
  27. 大塚喬

    ○大塚喬君 大臣に質問を申し上げます。  先ほど人事院勧告について質問がございましたが、なるべく重複しないようにこの問題について質問を申し上げたいと存じます。  去る七月二十六日人事院勧告が出て、その中に、国会及び内閣が、本勧告を実現するために、すみやかに所要の措置をとられるよう切望する。と、こう述べておって、当然さきの臨時国会給与法改正案が提案されるものと期待をいたしておりました。ところが、ああいう事情でまことに遺憾でありますが、法案の提案がなされませんでした。そのあと、いまの大臣の答弁をお聞きして、第二回の閣僚懇談会もまだ開かれておらない、こういうお話をお聞きして、まことにその消極的な、熱意がどうも欠けておるんではないか、この問題に関して。そういう感じがしてなりません。しかし、現実には、この給与改定は、民間でもすでに三二・二%程度さきの春闘で大手企業の平均賃上げが実施をされております。それから現実に、さきの福田大蔵大臣も述べられたように、狂乱物価と、こういう時代で、現在公務員の給与については暫定勧告に基づく一〇%が支給されておるだけだ、こういう現状からしますと、まことにこの問題に関して、公務員に対してだけその無理を強制する、こういうことになるだろうと思うわけであります。したがって、政府がこのたびとった態度については、政府みずからが人事院の勧告を軽視をする、こういうことを天下に示したようなものでもありますし、当然このような経済の実情の中で、公務員の給与については何らかの暫定措置をすみやかにとられることが必要であると考えるわけでございます。この問題について現在成案というものはないにしても、さきの一〇%の暫定勧告に基づく支給というような実例もございますので、何らか考えられる措置があろうかと思うものですから、大臣のこの問題についての所見をお聞かせいただきたいと思います。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども竹田さんの御質問にお答え申し上げましたように、人事院勧告の重みというものはわれわれ十分心得えておるつもりでございます。さればこそ、これにつきまして誠実に対処しようじゃないかということで、第一回の閣僚会議を開いて検討を始めておるところでございます。  いま、それはそれとして暫定措置をとる考えはないかということでございますが、そういう方法論、つまりそれはやるとしてどういう姿で、方法でやってまいるかというようなことも含めまして、これからの検討にかかるわけでございますので、私がいまここで政府としてせっかく検討中の段階において、明快なお答えを申し上げられないのは非常に残念でございますが、昌頭に申しましたように、この問題につきましては誠実に対処しようといことで鋭意検討いたしておるというように御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  29. 大塚喬

    ○大塚喬君 すみやかにということをひとつ十分大臣に御認識をいただきたいと存じます。  それから引き続いてこれに関連して地方公務員の給与改定について、この実施のための財政計画案というようなものでも現在のところ大蔵省として検討されておりますかどうか。さらにまた、地方公共団体の職員の給与改定について政府財政負担はどのように現在それらにからんでお考えになっておるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 地方公共団体についての所要額は、すでに勧告済みの一〇%の概算改定分と期末手当の〇・三カ月増額分を含めまして概算約一兆二千四百四十億円という見込みでございます。このうち地方財政計画上措置されている額は約二千九百二十五億円でございますので、新たに九千五百十五億円ばかりの財源が必要となるであろうという概算でございます。これにつきましては、まず私どもが申し上げる前に、自治省当局におきましていろいろ問題点として御検討いただいておると思うのであります。この間閣僚会議では、これに関連いたしまして、まず定員の問題でございますとか、あるいは既定経費の削減の問題とか、いろいろ問題が提起されておるわけでございます。したがって、こういった問題は、まず第一次的には自治省のほうで御検討いただいて御相談をいただくことになると思うのでございますが、いま申し上げました数字大蔵省の一応の概算でございます。
  31. 大塚喬

    ○大塚喬君 時間があと五分足らずということでたいへん気をもんでおりますが、二番目に、中小零細企業の金融対策の問題についてお聞かせいただきたいと思います。  総需要抑制、金融引き締め、この問題だけでわが国経済産業構造の転換政策を伴わない限り、実際にこれを実施していく場合に、その弊害、犠牲というものは中小企業だけがこうむると、こういう現状であろうと思うわけであります。で、この総需要抑制という問題、これの一般的な政策から、個別的、選別的需要抑制に転換すべきであろう、こう考えておるところでありますが、具体的な意見を述べますと時間がなくなりますので、当面する問題について二、三質問を申し上げたいと存じます。  私どものところは、御承知のとおり足利、佐野という繊維関係の業界をたくさんかかえておるところであります。不況業種の緊急対策融資について、先ごろ一千五百億の緊急融資の措置がとられ、その後引き続いて民間金融ベースのネオン業界に対する緊急融資措置、さらに繊維中小企業業者、それから中小ガス事業者、中小建設業者と、引き続いてこれの緊急融資対策が考慮されておるようでありますが、その内容を調べてみますと、先ごろの一千五百億は別にいたしまして、これらの資金が民間の金融関係の資金をもって充当される、こういう実情であるようであります。この問題については、民間の金融機関の資金、これを充当するということも当然の話でありますけれども、これだけでやっぱり事終われりということでやってはならないと思います。いまのこの経済事情の中で、政府資金の充当ということも当然これに考慮されなければならないと思うわけでありますが、この問題についてどのようなお考えを持っておるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘の中小企業金融につきましては、総需要抑制政策のもとにおきましても、その資金面に難渋を来たさないように配慮してまいっておりますことば大塚さんも御承知のことと思うのでありまして、四十八年度下期におきましては、過去に例を見ない三千四百億という大規模の年末融資を追加いたしましたほか、五百億の年度末の追加を実施したこと、異例のことでございます。さらに本年度第一四半期の普通貸し付けにつきましては、本年五月に需要の減退、決済条件の悪化等により、不況に立っておる中小企業を救済してまいりますために千五百億円の増額を行なっております。したがいまして、第一四半期の普通貸し出しワクは七千億円となっておるはずであります。昨年度の四千五十五億円に対しまして約三千億円の増加となっております。また第二四半期につきましても五千六百億円を計画いたしました。昨年度に比しまして九百億円増額いたしております。このように政府関係中小企業三機関の貸し出しにおいては、十分配慮をいたしておるわけでございますけれども、今後とも中小企業金融につきましては、事態に即応いたしまして、貸し出しの優先度等にも配慮しながら機動的に対処していきたいと考えております。
  33. 大塚喬

    ○大塚喬君 時間がないので取り急いで申し上げますが、この不況業種の指定ということになりますか、私どもの地元の企業の中には、これらのさきに申し上げた企業以外にも家電関係の下請企業、それから自動車関連関係の下請企業、それからセメント、生コン関係の企業、これらがいろいろの事情の中でたいへん胸突き八丁、もうこれが限度だというところまできておるのが実情であります。こういう業種についての何らかの具体的な緊急融資の措置が考慮されられないものかどうかということが一点。  それから中小繊維企業関係の、これは民間金融機関ベースで三百億の緊急融資がなされると、こういうことでありますが、実際に本県の場合で申しますと百四十四件、私、栃木でございますが、十四億七千万の融資申し込みがございます。全国的な集計の数字も聞いたわけでありますが、三千九百九十三件、四百六億ということで、それぞれその融資の申し込みをされた人たちが、一体どういうふうに査定をされるんだろうと、いつごろ出るんだろうと、こういうことを心配いたしております。この問題についてひとつどういうふうに措置をされますのか、お聞かせをいただきたい。  それからもう一つの問題は、地方公共団体が公共用地、公用用地を先行取得をするということで、各県に開発公社、住宅供給公社、道路公社、こういうものを設けておりますし、さらに各市においても同様な公社を設けております。栃木県の場合で申し上げますと、開発公社で現在地方の金融機関から二百二十億の融資を受けております。住宅供給公社が二十七億、道路公社が七十億、合計三百十七億の融資を受けておるわけであります。そのほかに県内の十二市の各市で開発公社を設けておりますので、これらの額は実際は四百億ないし五百億と、こう考えられるわけでありますが、県の開発公社の場合に、その融資を受けた対象は、新四号国道、四号国道のバイパス建設の用地取得のためにその融資を受けておるわけであります。ところが、その融資を受けた額というのは、各銀行でワクをきめられております。その中からこれらの額が融資を受けておるわけですから、結局中小企業、民間の融資がそのワクの中からそっくり持っていかれる。国の事業のために県が開発公社を設けてそれらの用地を取得をする、その資金の需要のために民間中小企業が圧迫をされる、まことに納得できない現状であります。で、市町村、これらはまあ学校建設のための用地取得、こういうことでまた別に融資を受けておるわけでありますが、これも結局銀行の融資ワクの中から持っていかれてしまう。こういう現状で、実際にまあ県内の中小企業関係の金融がたいへん窮屈となって困っておる。当然国の事業は、どなたが考えていただいても、国の資金をもってまかなうのが至当であるのに、いまこのような現状の中で、中小零細企業を圧迫していじめて、そしてそういう金が持っていかれると、こういうことは何としてもがまんのできないところであります。資金ワクについても、資金量についても、ともかく今後重大な問題にこれが発展するおそれがあるわけであります。この問題についてひとつ大臣の今後の対策と申しますか、見解をお聞かせいただきたいと思います。
  34. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) ただいま御質問の緊急融資の点でございますが、本年一月に民間の金融機関が三千二百億という総ワクで用意いたしました。その中に現在までにネオンサイン、中小都市ガスあるいは中小繊維、中小建築業といったようなものを対象にするということになっております。  最初の御質問の、これ以外の業種で認定されていないものがあるではないかというお話でございますが、この業種の認定は、所管の官庁がその業界を把握しまして認定していただくということになっております。したがいまして、まあ家電の下請とか、あるいは自動車の下請といったようなものがおしなべて不況であるというような場合でございますれば、通産省のほうでそれを認定して銀行のほうに連絡すると、こういう形になっております。ですから、新しい業種の認定というのはそういうことでございます。  それから中小繊維工業に一応融資目標ということで三百億のワクをつくってお待ちしておるということですが、これは最近全国の件数、希望金額といったようなものが、先ほど先生のおっしゃいましたようにようやくまとまりまして、そうしていま銀行団のほうと折衝中でございます。まあ三百億に対して四百何十億かというのが出てきておりますが、三百億というのは一応融資目標でございますので、必ずしも三百億に圧縮するというようなかまえで話し合っているわけではございません。ただ非常にむずかしいことは、いままでの取引銀行と原則としてやりなさいということをやっておりますものですから、繊維業の特定地域に偏在している場合に、ある地方銀行のほうに希望が殺到するというようなことで、その調査に手間どっておるというふうに聞いております。  それから三番目の地方公共団体、まあ公社といったようなものが土地の取得をやるために、全体としてワクがあって、そのワクの中でやりくりするために、結果としては中小企業の金融が圧迫されるではないかというお話でございますが、まことにごもっともなことでございまして、貸し出し融資のワク規制というようなことをやってまいりまして、初めのうちは地方団体、地方公社というものを実は抑制する対象には入れないでやってきたわけでございます。それがいかに公共事業のための先行取得であるとはいえ、かなり伸び方が大幅であり、たいへんな額に達しましたものですから、ことしに入りましてから、地方公社のそういった土地の取得も、普通の貸し出しの増加の伸びのワク以下に押えてくださいというような通達を出しまして、そして中小企業金融というものを結果として圧迫するようなことのないようにという通達を出しました。で、まあ本年の一−三ぐらいまではまだその余韻が残っておりましたが、四月以降はそれも低下してきておると、こういうことでございます。
  35. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初に、経済見通しの問題でございますが、最近の物価動向、先ほどの大臣の答弁では、鎮静の方向に云々と言っておりますけれども、いままでの上がり方が非常に激しかったですから。そういう点から見ていっても、一月以降の対前年度同月比、それを見ても、卸売り物価も月に三五%とか、あるいは消費者物価が二〇%というように高騰してきている。このままでいけば、これは経済見通しはどうしても改定をしなきゃならないだろうと思われる。四十九年の政府経済見通し、これは卸売り物価が一四・六%になっている。消費者物価上昇が九・六%の範囲におさめると、こういうことになっているわけですけれども、いまの状況ではこれはとうてい不可能なことだ。これは当然改定をするべきだと、そうでなければ予算の基礎もくずれなきゃなりません。この点についてのお考えはいかがでございますか。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま鈴木先生御指摘のように、経済の過去、最近の推移というものは異常なものがございまして、政府の立てました経済見通しに関連いたしまして、見直さなきゃならぬいろいろな問題が出ておりますことは、私もよく承知いたしております。しかし、まだ四月、五月、六月、七月と四カ月経過したばかりでございますので、これを改定するかどうかというような問題につきましては、今後の推移に待たなければならないのではないかと思っておりますので、いまこれについて改定云々というようなことについてまだ私が申し上げられる段階ではないと思っております。
  37. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 特に最近の国際収支の問題これ一つを見ても、貿易収支で最初は三十四億ドル黒字の予定であった。それが通産省の試算でも一億ドルぐらいになるだろうというのが貿易会議で言われたと、また、大蔵省の内部の資料では四億ドルの黒字に減少するというような、こういうことが言われている。そういうことになりますし、一方では大臣の所信表明のように、非常に国際収支は危い橋を渡らなきゃならない。赤字基調だということを言われる人がいるくらいであります。このままでいけば外貨準備高についても、現在は百三十二億四千万ドルともいわれていますけれども、前月比では二億ドルも減ってきている。これから先、いわゆるユーロダラーの書きかえのときにきますし、そういうような多くの問題があるときに、やはりこれは国際収支関係のほうなんかも見通しを変えなきゃならないだろうと思います。これが一つ。  それからいま一つは、この動向について大臣はどういうように対処をしていくか、一部日銀等では、日銀総裁がいわゆるオイルダラーの導入の検討、こういうことも言っております。まあそのほか、政府がいろんな対策をなさったことも知っています。輸出ドライブの規制の緩和とか、こういうことをやったことも全部わかっておりますが、それだけで、はたしてうまくいけるのかどうか、こういう点についての動向、見通し、また対策いかがでございましょう。
  38. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 大臣からお答えいただきます前に、最近の数字を若干申し上げます。  鈴木委員御指摘のとおり、本年に入りましてから貿易収支の赤字傾向が続いておりましたのでございますが、六月に至りまして、若干ではございますが黒字に転じております。七月はまだ正確な集計はできませんが、引き続きまして七月も黒字基調、幅は大きくはございませんが、黒字基調ではないかと考えます。  貿易収支面におきましては、輸出がどの程度伸びてくるかということがもちろん大事でございますけれども、同時に、輸入が最近のように落ちついたまま推移しておると、これにつきましては引き続き国内の引き締めを堅持していただきたいというのが、私どもの立場からのお願いでございます。  長期資本収支につきましては、最近ある程度改善の徴候が出てきております。年間、年度間を通じまして、政府の予定しております赤字幅以下にできれば押えたいと、長期資本収支の項目につきましてはこのように考えております。全体といたしまして、先ほど大臣が申し上げましたように、非常に注意深く推移を見守るべき状況でございます。
  39. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの、日銀総裁の言っているオイルダラー導入の問題、こういった点についてはいかがですか、大臣。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最近のオイルダラー取り入れにつきまして、若干緊張が見られたことは鈴木さんも御承知のとおりでございます。したがって、もっと長期にわたりまして安定した資金の確保という点を検討してまいるということは、当然われわれの責任であろうと思っておりますが、しかし、具体的にどういうものが主体になって、どういう国とやって、どういう時期にやるかということにつきましては、まだ固まっていないわけでございまするし、現にそういうアクションを今日の瞬間までまだ始めておりません。日銀総裁が記者会見で言われたことも、そういう理論的な可能性というものについて言及されたものと私は承知いたしております。
  41. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣としてはいまのところ、いまの瞬間は云々というような御答弁がありました。政府なんかは、日本銀行というような、そういう公的な機関をもって、産油国なり、そういうようなドルの十分に潤沢であるところから、ドルのいわゆる取り入れと申しますか、借り入れ、こういうことはどうしても検討しなければならない、こういう方向にあるということだけははっきりしておるわけですね、政府として。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 検討すべき課題であると考えております。
  43. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、物価問題で伺いたいのですが、政府は、参議院の選挙前に、物価安定のための短期決戦の目標は八割方達成したというようなことを言っておるわけです。私もそういう点について、そういう判断した根拠、そういったことがどうも実感ではわかりません。これは大蔵大臣いかがお考えでございましょうか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 確かに去年の暮れから春にかけての物価は異常な状況であったわけでございます。けれども、三月から、卸物価で申しますと、三月、四月と見てみますと、この一カ月間に前年同月に対しての上げ幅が〇・三、四月、五月の間を見てみますと〇・四、六月は若干電気料金等の値上げがございまして一・三となっておりますが、その幅は、先ほど私が申し上げましたように、アメリカに比べましても、英国に比べましても、独、仏に比べても、イアリアに比べましても、少ないわけなんでございます。したがって、日本といたしましては、この健全な鎮静化方向というものを堅持することに全力をあげたいということでございます。消費者物価についても、傾向といたしましては同様なことが言えると思うのであります。問題は、ムードに酔うことでなくて、冷静に事態に対処いたしまして、数字でもってお示しするようにしなければならぬじゃないかと思っております。
  45. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまムードに酔うのではなくてという話がありましたが、いま鎮静の方向ということで、ポイント幾つというような数字で言われたんですけれども、これは低いところから上がってきて、その上がり方がなったというのじゃなくて、高くなってしまってからのあれですからね。だから、それを安定と見るか、鎮静と見るのか、さらに本来ならば上がり過ぎたぐらい高くなった異常な物価上昇だった、それをさらに吸収をして下げていったところで、これが安定と見るのか、ここら辺の解釈がうんと違うと思う。大臣の言われている鎮静の方向云々というのは、もういままでに上がり尽くしてしまった上での上がり方が少なくなったという考え方のように伺いました。国民のほうのわれわれから言わせれば、そうじゃなくて、若干でも引き下がってきてもらいたいということなんです。つまりポイントというのでも何でもマイナスにしてもらいたい、そこのところがほんとうの鎮静じゃないだろうかと思うのです。これは議論になってしまいますけれども、そういう安定というのも、いまのままのお話だと、高位安定、高価格安定、こういうことのまま推移する、こういうふうにしか受け取れないわけです。その点くどいようでございますが、もう一度伺いたいと思います。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 鈴木さんの気持ちと全く同様でございまして、できるだけ上げ幅を少なくする、できればそれを下げる方向に持っていきたいのはやまやまでございます。で、問題は、異常な環境の変化があったわけでございまして、それが合理的に吸収されてまいりますならば、それ自体文句はないわけでございますけれども、そこに便乗等の要素が入りまして、不当に物価がつり上げられておるというような事態に対しては、これは許せないわけでございますので、そういう配慮も加えながら、鎮静化の方向を定着さして、できるだけ低目に押えていくということでなければならぬと思っております。
  47. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどお話にありました、いわゆる新価格体系の件なんですが、この新価格体系ができていくには、消費規制といういま一つの柱がある。一方では、いわゆる指導価格というのがあります。あるいは値上げについての事前承認制があります。こういったものを残したままでつくっていこうというのか、消費規制は続けて、いわゆる指導価格とか事前承認制のようなものははずしたときにできるというのか、この辺が非常に微妙なところだと思うのです。あるいは消費規制を野放しにしてしまうのか、先ほどのお話の総需要抑制からいえば、消費規制は続ける、そういう三つのいろんなのがあります。消費規制を続けながら指導価格も続ける、片一方ははずす、両方はずしちゃう、いろいろあるわけです。どの辺に新価格体系をつけるときのめどというのか、方法というのはお考えなんでしょう。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の承知している限りにおきまして、政府が新価格体系を構想して、このように持っていくんだということをきめたという記憶はないわけでございます。経済の国内的なバランスばかりじゃなく、国際的なバランスもとれる状況において、内外にわたって日本の経済が安定した足場を持つというような状態になって初めて、新価格体系というようなものもデッサンができるんじゃないかというように私は思うということを先ほどの御答弁でも申し上げたわけでございます。しかし、第一、国際的な要因も、石油その他の値上がりというのも一服したようでございますけれども、天候がまたおかしくなりまして、食糧等に不安がないわけではないわけでございまして、そういう国内にもまだ不安定要因がたくさんございまするし、そういったものを踏まえて、いま新価格体系というようなものについてゆうちょうな議論を申し上げるというところまでいかぬわけでございますことを御理解いただきたいと思います。
  49. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次は、税金の問題で、あと所得税のことと、相続税のことで伺って終わりたいと思いますが、「昭和四十九年度六月末租税及び印紙収入、収入額調」というのをいただきました。これを見ましても、所得税のいわゆる収入の進捗割合が昨年の六月末が一三・七%に対して今回は所得税については一九・四となっております。全般を通じても二〇・三%だったのが二四%というようにことしははね上がってきております。そういうのを見ますというと、四十九年度の税収の見通しは大きな狂いがいまのうちからこれほどであれば出てくるんじゃないか、多額の年度内の自然増収というものが確実にあるのではないかということがどうしても考えられるわけです。そこで、政府の税収の見通しをこの辺で改める必要があるんじゃないか。そうでなければ、さらにインフレによってここのところで非常に名目所得の増加もありまして、もちろん、名目支出もものすごくふえるわけです。そうしなければならないほど、大幅な賃上げをしなければならないほどにインフレであったわけですけれども、そういう名目所得の増加に伴って、予想外の、いわゆるこの前言われた二兆円減税の効果というものも消えてきて、そして負担が予想外にふえるということになっております。そこでどうしてもここら辺で所得税減税、年度内減税を、この「収入額調」一つを見ただけでも、これは当然やるべきだというふうに思わざるを得ないのでありますけれども、年度内の所得税減税ということをお考えになっておられますかどうか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 自然増収——四十九年度における税収見込みでございますけれども、確かにあなたが御指摘のように、ただいままでのところはたいへん税金の入りぐあいが順調であるようでございます。けれども、これは第一四半期、六月までのものでございまして、税金全体の進捗度合いも二四%にすぎない段階でございますので、年度間を通じましてどのくらいの自然増収が見込めるかなんということをまだはじきますには材料がきわめて不足でございます。したがいまして、いま年度内減税という御提言でございますが、所得税につきましては、本年度、初年度一兆四千五百億円、平年度一兆七千二百億円という大幅な減税を行なったばかりでございまして、かたがた現在、年度内減税を考えるというようなことはいま考えておりません。
  51. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの御答弁から、まだこれから先の税収見込みがわからないからということでありますけれども、   〔委員長退席、理事岩動道行君着席〕 それでは年度末じゃなくて、本年末近くになってきて、異常に税収が伸びているというようなときには考えられることもあり得るわけですね。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) しかし、ほかに歳出側から申しますと、いろいろ補正要因が大きく控えておるわけでございまして、直ちに、そういう展望につながるものと私は考えておりません。
  53. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは私は、ぜひ年度内減税をやるべきだと思っております。  時間がないようですから、最後、相続税について伺いたいのですが、一つは、農家の相続税軽減の問題です。現在の相続税は六百万の基礎控除、あと被相続人一人について百二十万、二十年以上連れ添った場合に配偶者に対して六百万というような、そういうような非常にわずかな金額になっております。これがいわゆる控除でありますけれども、それに対してこのごろの狂乱的ないわゆる地価の高騰、物価上昇、こういうことが市街化区域はもちろんのこと、農地、農村地帯にまでも農地価格というものは上がってきている。これは、もう市街化区域以外のいわゆる調整区域であろうと何であろうと、その影響がまわりの近傍類地といいますか、その宅地の地価高騰の影響を受けて、毎年上がる一方です。そういうことで、農地の評価額が上がれば当然高い相続税になる。どこへ行っても、税務署の窓口へ巨額のものが出ております。あれを見てみましても、ほとんどが農家です。だから、農地を切り売りしなければ何億というような税金が払えないというようなことになってきております。私は、そういうところで、まじめに農業専業をやっていこうとしている者は、農地を切り売りすれば、今度は専業農家では食えなくなってくるというふうにならざるを得ません。そうしなければ税金が納められない、こういうような問題があります。この点について、大臣は一体どう考えているかということが一つ。  そこで、私のほうから申し上げたいのは、一反の農地の評価額がいろいろなかっこうで出てますけれども、私たちはこういう考えを持っているのです。長期的に営農に使われる、農業にずっと使われるという農地については、いわゆる農業収益、農業によって得る収益、それを基準にした評価にすべきだ。その土地自体の価格ではなく、農地から得られる収益によって農地としての評価額をきめるのが当然じゃないか。これが一つです。  それからもう一つは、農業後継者が相続の時点まで尽くしてきた、そういう経営実績については、これを考慮していく。経営にも将来が認められる農地規模が確保されるような、それから後も農地がちゃんと後継者に農業専業でやっていけるような農地基盤が確保されるような大幅ないわゆる後継者の控除、これを考えなきゃいけないのじゃないか。  それから三つ目は、共同相続人から相続の——みんなで相続するわけでありますけれども、その相続分を譲り受ける、そういうときにどうしても長子相続ではありませんから、農地を皆さんの相続税の分を払ったりして自分が買い受けなければなりません。そういう点で、相続分を譲り受けるときに必要な融資制度を、これは大幅に拡大をして何か手を考える、あるいは延納の条件を大幅に延ばすとか、こういうことを当然考えなければならないと思うのです。この点について、どうお考えになっているのか、もちろんこれは個人の製造業の事業主の場合にも同じように、機械まで持っていかれてしまって、あと残った人が仕事ができないというふうになってしまう、こういう例も多々ございます。そういう点もともに御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  54. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 最近におきます土地の価格上昇に伴いまして、相続税の課税が従来に比べて課税を受ける人たちの数もふえておることは御指摘のとおりでございます。たとえば、四十一年に死亡した人の中で、相続税の課税を受けた人というのは、百人につき一・四人の計算でございましたけれども、四十七年になりますと、これが四・四人になっておるということは、相続財産の中で土地のウエートが非常に大きくなってきておるということとも関連しまして、おっしゃるとおりだと思います。その中でも、それでは農家が一体どの程度ウェートを占めておるかということでございますけれども、四十六年度分について調べた実績しかございませんが、おっしゃいましたように、大部分が農家ということではございません。相続税を課税されました被相続人の中で、約三割がいわゆる農家でございまして、ただその農家の中でも先ほど御指摘になりましたように、純粋に農業だけをやっておる地方の農家の方もあれば、また都市の近郊におきまして、いわゆる宅地に近いような、価格の高い農地を持っておる農家もございます。その三割ありましたという中では、やはり何と申しましても、あとで申しました都市の近郊の農地を持っておる農家の人たちが非常に多いわけでございます。地方の純農業だけを営んでおるという人たちにつきましては、これは大部分はやっぱり課税になっていないような事態でございまして、むしろ農地以外に山林でございますとか、そのほかの財産を持っておるという総合的なものから相続税を納めておるというような事情でございます。ただやはりそうは申しましても、冒頭に申しましたように、最近の相続税の課税状況から申しまして、しかも、その価格上昇から見まして、私どもも現状がいいというふうには思っておりません。昨年課税最低限の五割引き上げをやっていただきましたけれども、今後も税制調査会の御意見等を参酌しながら、この問題は検討してまいりたいというふうに思っております。  それからその土地の評価に関連しまして、収益からむしろ評価をしてはどうかという御指摘でございます。確かにそういう意見も非常に有力でございますけれども、相続税の課税対象になります土地につきましては、事業用の資産もございますれば、また居住用の資産もございますので、一がいに必ずしも収益還元の方法がいいのかどうかというのも今後の検討課題であると思っています。それからまた単に売買実例から評価をいたしております現行の制度のもとにおきましても、かなり実際の売買実例は、むしろいろいろな喫緊の必要から売買が行なわれておるという事情もございますので、それを勘案いたしまして、宅地につきましても、農地につきましても、相当のしんしゃくをいたしておりますから、実際に現実に行なわれております売買実例から見ますれば、かなりまあ低い水準で課税が行なわれておると思っております。  それから後継者を確保するために、何らかのそれに値するような控除と申しますか、そういうしんしゃくをしてはどうかという御意見でございますが、これもやはり一つは、先ほども申しましたように、課税最低限の問題、あるいは税率の問題として処理をしなければならない問題でございますし、現在特に農家につきましては、後継者を確保するという意味におきまして、農地についての生前贈与について便宜な制度もございます。これもあわせて考えながら、御指摘の点も今後の相続税の問題としていろいろ考えてまいらなければなりませんが。  それから農地につきまして、特に農地の細分化を防ぐ意味におきまして、かなり数少ない人に相続をさせるという場合の相続税の負担の御指摘でございましたが、確かにこれも従来からいろいろ問題がございまして、昭和二十二、三年ごろでございましたが、そういう観点からむしろ相続税の計算におきまして、一人の人が相続をしましても、また法定相続人が全部相続をいたしましても、総負担としては変わらないというような制度を設けた次第でございます。そういうこともありましたし、また最近におきましては、相続税の延納の問題につきましても、税率をしんしゃくするというような制度改正もやっていただきましたから、今後はやはり相続税の負担と、それからそれが事業用資産として運用されておる問題として、どういうふうにこれを考えていったらいいのか、あるいは延納をやむを得ず受けなければならないときの金利が一体どの程度がいいのかというのもあわせて検討してまいりたいと思っております。
  55. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がもうないようですが、大臣は、この辺について、いま事務当局の話でありますけれども、今度のこの次の、昭和五十年度の税制改正のときには出てまいりますか、そういう方向でございましょうか、それだけ伺いたい。相続税……。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘の相続税につきまして、私が受けている報告では、相当検討が行なわれておるように承知しておりますので、審議会のほうでもいろいろ御相談しなければならないことになるだろうと思います。
  57. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 前の質問でも御指摘ありましたけれども、いま中小企業の不況による困難がたいへんなものであります。たとえば土木建設関係でありましても、もう出かせぎの仕事さえないという、こういう事態でありますし、特に繊維の関係を見てみますと、各地で軒並みに休業している。最近愛知県で、一宮あたりでありますが、仕事の量が半分に減っておる。それから工賃が三分の一にたたかれております。ですから、実際の収入は六分の一しかないという状況で、これでは実際仕事をやっていけないという状況であります。こういう状況の中で、一方では大企業は三月期の決算を見ましても、これはもう明らかなとおり、軒並みにばく大な利益をあげておりますが、これはいままで相当大もうけしております。さらに資金繰りも容易であるからでありますが、実際こういう中小零細業者の場合には、資金繰りも、さらに仕事もないという、こういうことで、政府の総需要抑制策をまともに受けまして、まさにその影響というものは大企業に対してではなくて、実際に中小企業に対して、もう集中的に起きているという状況であります。ですから、この総需要抑制策というのは、結局は中小企業の整理淘汰のために行なわれておるのじゃないかという、こういう指摘さえなされております。  そこで、大臣にお伺いしたいのは、こういう中小業者の、特に零細業者の窮状をどのように把握され、どのように考えておられるのか、それが第一点。  同時に、それに対しまして、先ほど融資の問題では拡大しているという、こういう御指摘もありましたけれども、必要な事態に対しては、さらに新しい制度、さらに融資の拡大を十分に考えるか、これは単に総需要抑制策をどう適用するかという問題よりも、いまおぼれようとしておるものをどうやって助けていくのか、こういう深刻な問題でありますので、そういう積極的な救済策をお持ちかどうか、この点をまず第一にお伺いいたしたいと思います。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国経済に中小企業が占める立場というのはたいへん重いものでございます。政府としては、中小企業の健全な運営、育成ということに不断に努力してまいらなければならぬと考えております。  近藤さんがおっしゃるように、大企業と中小企業をさい然と分けて、大企業はもうけて中小企業が困っておるという、私はそういうように理解しないんでありまして、大企業、中小企業というのは、いろいろな面で唇歯輔車の間にございますわけでありまして、一国の産業を形成していく場合におきまして、お互いに協力していかなければならないものでございまして、中小企業が非常に困窮し、弱体化するというようなことば、大企業にとりましても、また日本経済全体にとりましてもたいへん不幸なことでございます。政府としてはそういうことのないように、総需要抑制のもとにありましても、その影響が中小企業に不当に片寄ることのないように配慮しておりますことは、先ほど大塚さんの御質問に対してもお答えしたとおりでございまして、四十九年度第一、第二四半期における財政執行の抑制措置をとるに際しましても、中小建設業者に対し、受注機械の確保につとめるよう特段の配慮をいたしております。  また金融面におきましては、財政投融資事業について抑制措置を講じておる中で、政府関係中小企業三機関につきましては、抑制の対象から除外しておることば御案内のとおりでございます。さらに、第四四半期の貸し付けワクを千五百億円増額しており、健全な中小企業が、資金繰りの面で不当なしわ寄せを受けることのないように配慮いたしておるところでございます。しかしながら、今後とも中小企業金融につきましては、その実態に即しまして、真に緊急な資金需要に対しましては、貸し出し優先度等にも考慮しながら、機動的に対処してまいりたいと考えております。景気の指標でありまする倒産件数はいまあまりふえておるという傾向は見えておりません。資金繰りにつきましても銀行が慎重に対処いたしておると私は承知いたしております。中小企業の体質そのものも相当充実してきておると思いますので、非常に御指摘のように弱体化して、非常な困窮にあるというようには私は受け取っていないわけでございますけれども、今後の事態の推移に即応いたしまして機動的に対処していくつもりであります。
  59. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いま統計上の数字からそれほど困窮状況にあると思えないと、こういうことでありますけれども、これはぜひ、たとえば繊維の業者の直接実情を見聞されて、その点の理解を深めていただきたいと思います。  それから先ほど官公需の中小企業に大きく回しているという、こういうお話ありましたけれども、実際はなかなかそうなっていないという実情であります。たとえば具体的例を出しますと、大成建設が官公需工事を受注しているわけでありますけれども、さらに実際の仕事をしているのは中小建設業者がやって、中間のマージンを取っている、ですから、中小業者はよけい苦しくなるという、こういう状況でありますし、さらにごみ焼却場などの焼却炉を大手が受注して、しかし実際は中小業者のが入っておるという、こういう状況がございます。したがって、ここで、これは大蔵大臣基本的姿勢として望むわけでありますけれども、大企業が仲介をしないで、実際の施行者であるメーカー——中小のメーカーに実際に発注されるという、こういった国の基本的姿勢をぜひとも強く進めていただきたい。この点についてはいかがでしょうか。
  60. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) ただいま御指摘の問題は、直接は中小企業庁の所管の問題であるわけでございまして、あるいはまた中小土建業者の問題につきましては建設省の所管の問題でございまして、それぞれの所管官庁におきましていろいろな手を尽くしているところであると思いますが、なおまた関係官庁とも相談をいたしまして、私どものほうでも検討いたしたいと考えております。
  61. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それから次に、繊維業界全体が困難になっておるという理由の一つに、大商社などによって外国から繊維製品の輸入が急増しておるという、そういう状況にあるということは新聞等でも明らかでありますが、そういう中で、大正九年以来の大不況といわれるそういった事態が出ておるわけであります。そこで、これは国務大臣としての大臣にこの点についてお聞きするわけでありますが、外国からの輸入に対してどんな対処をされようとしておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  62. 吉田冨士雄

    説明員吉田冨士雄君) ただいま先生御指摘のように、最近繊維、特に二次製品の輸入がかなり急増しておりまして、大体四十八年と四十九年を見ますと、三倍程度であります。ただ、御案内のように、繊維全体を考えてみますと、まだまだ輸出のほうが多うございまして、二次製品でも、四十八年を見ますと、四十八年の輸入は約二千百億に対しまして輸出が二千四百億、織物もやはり四十八年の輸入が千八百億に対しまして輸出は三千六百億、糸は大体両方千五百億ぐらい。したがいまして、糸、織物、二次製品を合計いたしますと、輸入は約五千四百億に対しまして輸出は七千五百億で、まだまだ輸出のほうが多いわけでございます。しかし、私どもといたしましては、特に関係局といたしましても、繊維につきましてはいろいろ問題があることも承知しておりますし、特に二つの点でいろいろ配慮しているわけでございます。  一つは関税率でございまして、関税体系の中で繊維製品に対しましては、比較的高い関税率の保護を行なっております。ただいま一般の輸入全体の税率は関税率五%でございますが、織物につきましては、繊維用品等織物類は八・二%、それから衣類につきましては一四%という税率でやっております。  もう一つは、いわゆる特恵の問題でございます。発展途上国からかなりやってきておりますので、   〔理事岩動道行君退席、委員長着席〕 特恵につきましてもいろんな点で繊維につきましては特に保護的な措置を講じております。その一つは、税率でありまして、御案内のように一般的な工業品につきましては、特恵関税はゼロでございますけれども、繊維のうちで特にセンシティブなもの、たとえば毛織物とか、あるいは下着類、そういうものにつきましては、ゼロじゃございませんで、一般税率の二分の一という税率をとっております。生糸とか織物は特恵から除外しておるということをやっております。  それ以外に綿糸とか、あるいは綿織物につきましては、いわゆる事前割り当て制でワクをつくってございます。また特恵をある程度停止するかしないかの水準の判断におきましても、下着類あるいは洋服類、そういうものにつきまして、大体十七品目につきましては毎日毎日輸入を管理しておりまして、いわゆる日別管理——一般は毎月毎月の管理でございますが、日別管理のこまかい配慮をやりまして、できるだけそれをオーバーした場合にはストップするということでやっております。  なお、ただいま先生の御指摘の点もございますので、今後も関税政策運営あたりましては、織物、繊維の輸入状況も十分見きわめながら対処していきたいと考えております。
  63. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、先ほどの中小企業に対する融資の問題でありますが、融資を拡大しておるし十分やっておる、こういう御指摘でありますが、実際にはほんとうに困難な条件をかかえている人々の実情に合わないというのが現状であります。そこで、実際役立つようにするためにはどうしたらいいのか。その一つは、たとえば金利でありますけれども、これは保証料込み八・九%程度でありますが、これ自体が苦況にある業者の実情に合っていないという、これが第一点でありますし、さらには、業者には担保余力がありませんので、産地組合を通すことになっている。こういった事態もあるために、上層の中小業者しかなかなか金が借りられないという、こういう状況であります。で、もっと実情に合った低利、長期の融資制度を考えてもらいたい。そういう点で、たとえばこれは昭和四十六年でありますが、ドルショックのときに金利が六・五%、返還期間が三年ないし五年という、こういう特別の緊急融資を閣議決定によって実施したということもあるわけでありますので、しかも、現在はドルショック以上に繊維業者の状況はたいへんになっておりますので、そういう特別の融資制度を検討される御意思があるかどうか、この点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  64. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 現在八・九、これは保証料込みでやっておりますが、この金利は、一般の、たとえば開銀とか、そういったようなところがプライムで九・四というのに比べまして〇・五低いということでございます。それから市中の都市銀行の約定金利なども九・四%以上になっておりまして、現在〇・五%ぐらい低くしております。これはすでに金利の面で私ども配慮しておるというふうに考えております。  それから前回ドルショックのときに例外的に措置をしたことがございますが、あの場合は、特定の業界ということではなくて、全日本的に影響が及ぶということがございましたのでやりましたことに特例的なことであると思います。現在、個別業界のために特定の個別の安い金利を適用するということは考えておりません。
  65. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 〇・四%低いから配慮しているのだ、こういう御指摘でありますけれども、実際窮状を見てもらいますと、そのこと自身がたいへんであるというこの状況を、ぜひ大臣も実際業者の実情をごらんいただいて、さらにこれはもっと低くして実情に合うような態勢をとっていただきたいというぐあいに考えますし、またドルショックのときには全日本的だったと申しますけれども、たとえば繊維などもかなり地域的に集中して、いわば一つの地域全部がその影響を受ける。それで繊維業者が影響を受ければ、当然その周辺の人も影響を受けるということで、かなり広範囲にわたる地域の問題でもありますので、この点もぜひ積極的にお考えいただきたいと思います。  そこで、次の問題でありますが、借りた金の返済期間がきたやつの場合に、返す金の手当てがつかない、こういった人がいるのが実情なわけであります。この点、実際実情をごらんいただきたいと思うわけですが、そこで、政府系金融機関の場合、返済期限がきたものを実情に応じて期間を延長することが可能だと思いますので、この点は今後積極的にやっていくかどうか。さらに返済期間を現行の一・五倍ぐらいにできないかどうか。さらに貸し出し金利の利子補給を行なって、さらに二%ぐらい下げる、そんなことができないかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。  最後に、大臣のほうから、こういう積極的な面についてどういう姿勢であるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  66. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 返済期限は、政府三機関の場合、業務方法書できまっております。大体原則としてということでございますが、一番短い国民公庫で五年以内、それから中小公庫では設備資金は十年、運転資金は五年、それから商工中金は設備が十二年、運転が十年、ということに一応きまっております。しかし、個々の実情に応じてそれを変更することはできるという規定になっておりまして、現実にも返済がむずかしいというものを延ばした例はたくさんございます。私、全部の機関については持っておりませんが、国民公庫の実績を調べてみますと、大体半期に五千件程度延ばしております。したがって、この点につきましては、実情に合ってそうぎすぎすしないでやっているのではないかと思われます。  それから利子補給の問題は、現在のところ考えておりませんが、大体中小機関等の政府機関のうちには、収益がもう赤字になっておりまして、全体としての補給を受けておる機関が多うございます。それでご了承いただきたい、こう思っております。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中小企業におかれては、非常に内外環境がきびしい中で、経営を維持してまいるということは容易ならぬことだと思います。で、政府といたしましても、中小企業が占める、果たす役割りということの重大性にかんがみまして、今後とも中小企業対策につきましては、いろいろやってきておりますけれども、なお、事態の推移に応じまして機動的に、かつ弾力的に対処いたしてまいりたいと存じております。
  68. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大臣にお尋ねいたします。  先ほど大平路線福田路線とどう違うのかという同僚委員の質問に対して、だれが大蔵大臣になっても、政策を弾力的に運用する幅はたいへん狭い、物価上昇がやや鎮静化した現状を手がたく守り抜いていきたいという趣旨のお答えをされました。受け取った印象から言うと、従来の政策を手がたく守りながらやっていくというように聞こえるわけですけれども、先般の自由民主党の両院議員総会の中で、田中総理がこういう趣旨発言をされたと官房長官談話でも言っております。読んでみますと、「首相は物価問題を深刻に考えており、ここまでくれば実施せざるを得ない政策を提示し、やるべきものは国民の批判を覚悟のうえで取り組むとの非常な決意を示した。」新しい思い切った対策をやっていくんだという疑旨の話をされたようでございますけれども、それと、先ほど大臣が言われた手がたく守っていきたいのと、何かこう感じが違っている気がいたしますけれども、この点について御意見があれば承りたいと思います。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 矛盾しないと私は考えます。そういう政策の基調は軽々に変改を加えてはいけないと思いますけれども、その態度を堅持しながら、これから出てまいりまする内外状況に対処いたしますには、田中総理のおっしゃるように一生懸命に勉強しなければなりませんし、果敢に処置するところがなければいけないことは当然だと私は思っております。
  70. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 具体的に現在、まあ秋以降ならよろしいんですけれども、こういう方向の新しい政策を出していくということが煮詰まっているわけではもちろんないのですか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま財政面金融面におきまして従来の基調を守りながら、ことしの補正をどのように考えてまいりますか、それから金融政策につきまして、この基調の上に立ってどういうことをなすべきか、なすべきでないか、そういった点は鋭意検討いたしておるわけでございまして、そういったものにつきまして、次の臨時国会におきましては、具体的な姿において御討議をお願いしたいものと考えております。
  72. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重要な政策問題について、何を伺っても次の臨時国会までたな上げをされますと、実はたいへん困るんです。それは残念ながらいたしかたないとして、感覚なりともお伺いをしておきたいと思うんですけれども物価の安定をはかるとして、その時期のめどは一体どのぐらいに置いておいでになるのか。これはなかなかお答えづらい点だと思います。そこで、もう少ししぼって、今後の物価対策の勝負どころは大体いつの時期に置いておいでになりますか。そういう想定があったら伺いたいと思います。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 毎日が勝負なんでございますが、不断に注意を怠ってはならないわけでございまして、私どもといたしましては、何としてもできるだけ早く安定を定着させるために日夜努力しなければならぬと思っておると、まあいまお答えするよりほかにないんじゃないかと思います。
  74. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日々努力の連続であることは言うまでもないんですけれども、それなりに、ではどこに山場を置いていかざるを得ないのか。  なぜこんなことをお伺いするかといいますと、再々田中総理発言を引き合いに出して恐縮ですけれども、その両院議員総会の中でこういうことも御発言になったようです。いかなることをしても、物価抑制を実行せねば来年の地方統一選挙には臨めない。これはもう物価という国民生活にからむ重要な問題が、なおかつ選挙とのからみで発想されてくるというのは、田中さんの性格面目躍如という気がするのですけれども、それはそれとして、来年の統一地方選挙までに物価の安定をはからなければということになると、やはり勝負どころの時期は来年春ということにあるいはなってくるのか。  七月二十九日の田中さんの発言のあとを受けたわけではないでしょうけれども、翌三十日に大蔵事務次官がある講演の場でこう言われました。来春闘で再び賃金が大幅に上がれば、日本経済は致命的な打撃を受けるであろう。  私は、問題の所在は否定いたしません。ただ、今後物価対策を考えていったときに、春、そして賃金ということがどうしても念頭に浮かんでくるのではないか。いかがお考えでございますか。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 来年の春が勝負どころであるなんというゆうちょうな考えは毛頭ありません。このただいま秋にかけてというのがわれわれにとってたいへんな課題でございまして、日夜全力投球しなければならぬと考えております。  物価が安定しなければ統一選挙云々ということは、田中総理の立場としては当然なことと思います。
  76. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 春ということでお伺いしていることを、もう少し意のあるところを補足して申し上げますと、いまおっしゃるように、物価はやや鎮静化いたしました。これは総需要抑制策をはじめとしていろいろな諸政策もありましょうけれども、平たく言いますと、便乗値上げができるところは大体やっちゃって一段落している。さてこれから何が残るかということになると、便乗値上げをするわけにいかなかったところが続々と価格の修正をせざるを得ない。いわばそういう半ば道に差しかかってきたのである。これから一体何が価格修正の対象になるかというと、先ほど来議論に出ております公共料金の問題だと思うのです。公共料金というのは、これも大臣が先ほどおっしゃいました。いかなる心理的波及効果があるのかを考えると、慎重に取り組まざるを得ない。この心理的波及効果が一体どこで出るかと言えば、ものは公共料金なんですから、国民の生活実感当番きびしく響くわけです。固有の消費者物価に対する上昇率の寄与がどのぐらいかという議論以上に、それは生活実感にきいてまいります。これはそのまま直接、ではほかの商品の便乗値上げを誘発するかというと、おそらくその途中で賃金引き上げという問題を間に介在させながら、本日の所信表明でもおっしゃいましたように、やがて来年賃金上昇物価上昇の悪循環が始まるのか、始まらないのか、問題は、そこで安易に価格に転稼できないような経済環境をどうつくるのか。  そこで、今日の日々の御苦労ということになると思うのです。その意味で私が春ということを申し上げたのは、来年の賃金問題が従来のように軽々に取り組んでいい問題だとは私は毛頭思いません。であるとすれば、その前の段階として、公共料金に一体どう取り組むのか、それが問われてこなければいけませんし、おっしゃるように日々の戦いだと思うのです。その意味で公共料金については、先ほど最小限度合理性は貫かざるを得ないだろうとはおっしゃいましたけれども、これから来年春までのいろいろな諸情勢を考えてまいりますと、従来と同じような赤字が出たから、しかたがないから公共料金を上げてくれということでほんとうに済むのだろうか。たいへん懸念を持つわけですけれども、先ほど来の議論ではありますけれども、あらためてお伺いいたします。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど竹田さんとのやりとりでも申し上げましたように、まあ経済合理性の追求ということでドライに割り切れるような状況ではない。あなたの御指摘のように、社会心理的な波及効果というようなものも非常に微妙なものがございます中で、御指摘の公共料金政策というふうなものも考えてまいらなければならぬわけでございます。  そこで、公共料金の問題につきましては、最小限度やはり合理性を貫かしていただかなければいかぬと思うんでございまして、これをいつまでも後遺症をあとに残すようなことを繰り返しておっては、私は決して庶民のためになるものとは考えないのであります。そういうこともあわせてやりながら、われわれが賃金の問題を考えるにいたしましても、物価の問題を考えていくにおきましても、まず国民理解協力が求められるようなところへどうしても持っていかなけりゃならぬということでございまして、単に国民に自重を促すということだけでは行き得ないわけでございまして、こういうことだから、ものはそうなんだというところまでどうしても持っていきたいと思うわけでございます。だからこそ、いませっかく鎮静化の方向にいっているわけでございまするので、これを手がたく定着さしていく方向に政策の基調を置いて努力していきたいと思っております。たいへん抽象的なやりとりで恐縮なんでございますが、具体的にいついつまでにどうこうなんという大胆なことが言える——言えたら非常に楽なんですけれども、私は決してそんななまやさしい事態ではないと思っておりますので、精一ぱいあぶら汗をかいて毎日がんばりますと言うこと以外に、いま正直なところを申し上げることはないわけでございます。
  78. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これから差し迫った政治課題である公共料金取り扱い問題が来年の賃金問題をからめて、いま御苦心がございますように非常に重要なかかわり合いがある。そこで、賃金物価の悪循環云々ということも、世界の中の日本という立場で考えてみると、賃金上昇がもたらすものが、一面どういう影響があるかというと、国際競争力の問題だと思うんです。で、これが怪しくなってまいりますと、円安という事態は避けられないし、円安という事態になったら、輸入物資はまた値上がりするわけです。  そこで、その問題を含めながら、一体どこが物価対策の一番めど、どこを一体押したら、いま大臣が御主張になっております国民理解協力が得られるのか。本来から、理解協力ということを田中内閣としてお考えなら、せめてその二つのことばぐらいは田中さんは一昨日国会で言うべきなんです。それをあえて、ここでは繰り返して申しませんけれども、片方で何千億、あるいは足すと一兆円だと言われているこの赤字をどうするんだというときに、抽象的な議論ですから、同じようなことで方向の話としてお伺いするわけですけれども、そこだけで決着をつけるのか。しょせんあと一、二年はなかなか落ちつかないんだから、この際新しく税金を取ってでもとりあえずそれは埋めていこうか。じゃ、どこから税金を取るかということになったら、昨今話題が出ております資産再評価ということも公共料金問題にからめて取り組んでいく。そうやってまず急場を押えながら、二年ぐらいかかって全部の交通整理をするか。おそらくこのようなことでいかないと、だれが見ても、引き算で出ている赤字というのは消えていかないんじゃないか。そういう政策の広がりで取り組んでおいでになりますか。まあもう時間がありませんから、こういう問題に対する取り組みとあわせて秋の臨時国会には納得ができる御提案をいただけますか。この点だけ伺って質問を終わります。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 物価政策を進めていく場合の肝心かなめの勘どころはどこにあるのかということでございますが、やはり内外経済の接着点になっておりまするやっぱり為替相場というようなものが、安定した姿において置いておかぬとたいへんだと思うのでございます。今朝からやや緊張が東京の為替市場もいたしておるようでございますけれども、これはあなたが御指摘のように、輸入がふえる、あるいは輸出を控えるというようなことになったりしたらたいへんなことでございまして、そういうことを、為替を安定させていくということのために、国の内外を通じて何をやらなけりゃならぬか、何をやっちゃいけないか、それが一番私は肝心かなめなところになるのではないかと思うのであります。国民の納得を得る、あるいは国会の御理解を得ると申しましても、手ぶらじゃできないわけでございまして、責任ある政府といたしまして御審議をお願いする以上は、それだけのかまえをして十分の御討議をいただかなければならぬ、そういう責任を、私あることば当然と考えております。
  80. 野末和彦

    ○野末和彦君 これまでの質疑を聞いておりますと、やはり大臣就任間もないせいもありまして、非常に抽象的なお答えが多いようなんですが、私のほうは、一つ具体的なお答えがいただけるような質問をしていきたいと思いまして、それは来年度の税制改正にあたって、一、二まあ時間のある限りお聞きします。  税の不公平ということが非常にいま問題になっていますから、その立場からですが、まず第一に例の長者番付が出ますといつも問題になっておりますあの土地譲渡所得の分離課税のことですね。この租税特別措置が五十年の末で切れるわけです。そのあとどうするかということですが、国民感情からいえば、当然これは完全廃止してほしいというところだと思うのですが、その辺のところ、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  81. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 土地に関しますところの現在とられております分離の特別措置は、おっしゃいますように五十年一ぱいで終わることになります。その制度につきましては、もちろんいろいろな批判もございましたし、またそれが意図しました政策効果というものもそれなりにまたあったと思いますが、いずれにいたしましても、五十年一ぱいで終わる制度でございますから、本年末に予定されております税制改正案の中には、何らかのこれ決着をつけまして、通常国会には御審議を仰ぐということでございます。  その方向はいかがかということでございますけれども、これは今後におきますところの税制調査会の御審議に待つべく、特に税制調査会におきましても第二特別部会というものの中で、緊急の問題としまして今後お取り上げいただくことになっております。
  82. 野末和彦

    ○野末和彦君 事務当局も人まかせに答えられちゃうと非常に困るのですね。これはもう人まかせの問題じゃなくて、それこそ八百屋のおじさんでも、ラーメン屋のおねえちゃんでも、もうこれ一体どうなるのだ、こんな矛盾した不公平な話はないだろうということを痛切に言っているわけですから。  そこで、大臣にお伺いしたいのですよ、何らかの決着をつけなければいかぬと、で、税調の答えを待ってということで、この場をひとつ逃げないで、大臣、どうでしょうかね、大臣個人的なお考えでけっこうなんですよ。これ、どう考えたってメリット、土地供給を促進させようという目的で生まれたこの分離課税の制度ですが、そのメリットよりもデメリットのほうが多いのじゃないかという声が一番大きいわけです。これについて大臣はどうお考えですか、それがお聞きしたいのですよ。やはり事務当局ばかりになりますと、大臣だれになろうが全然これ、変わらないわけですからね、やはり大臣に出てきていただいて、質問させていただくのですからひとつ大臣のお考えが聞きたいわけです。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私に対する御指名でございますが、私の立場は最終的に判断する立場でございまして、前もってべらべらしゃべっておったんではつとまらないわけでございます。したがって、十分関係機関において審議していただいて、それで最終的に決断をしなけりゃならぬわけでございます。きょうお取り上げいただいて、御意見の御開陳をいただくことも静かに拝聴さしていただいて参考にいたしたいと思います。
  84. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでしたら、じゃ今度は、いままで四十四年からもうあと一年残すまでとなったこの租税特別措置やってきたわけですね。これに対して大臣はどういうふうに評価なさいますかということなんですよ。土地供給の促進で、これは相当メリットがあったんですか、実際に。効果があったんですか。もし大臣がそう判断なさっておれば、これはもう事務当局の決着待つまでもなくよかったんだと、成功したということになりますし、何といったって、事務当局が全部いろいろ検討していって、その結果に対してというお答えは、いま私必要じゃないんですよ。一体この制度がいままでよかったのかどうか、効果があったのかどうか、それを大臣、これはお考えここでお話しになっても、全然いわゆる事務当局を左右するようなことにならぬと思うんですがね。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 詳細なことは私承知いたしておりませんけれども、制度自体にはメリットもあったしデメリットもあったと思います。じゃそれをどう評価するかということでございますが、ものごとを取り上げて何らかの解決の対案を出そうという場合に、あなたの言う、いままでやってまいりましたことのメリットとデメリットの評価についての吟味を抜きにして改定案が考えられるわけじゃないのでございまして、あなたの言う評価も含めまして、専門家の皆さまの十分の御討議をいただいて、そしてそれを十分参考にしながら決断してまいるべきものと私は考えております。
  86. 野末和彦

    ○野末和彦君 どうも専門家が全部結論を出して、それに最後決断下すんだったら、大臣なんかでなくたって、ぼくだってできるかもしれないですからね。考えがあるからこそ決断ができるので、どう考えても個人的な考えをおっしゃらないんですが、それでは、こういう税制だけで土地の問題が解決するということはもちろん考えておりません。私は、不公平という問題ですね、あらゆる分野で不公平というものが一番国民の感情をさかなでするようなこういう現実に、この土地の分離課税が非常に一つの典型的な例だということでお話ししているわけです。で、この税制をどういじるかということを税調の会長にこの間お聞きしたところが、やはりこれは土地税制だけを単独で切り離すということよりも、やはり政府の土地対策というものが非常にこれは重要なかぎであるというお答えだったんです。それで大蔵大臣国務大臣の立場で、土地対策、今後の土地対策をどうお考えになっているかということをお聞きしたいんです。この間の国土法もありましたけれども、あの程度のものでなくて、今後もう少し長期的な立場に立って、土地についてはある程度私権を制限することもやむを得ないであろうというようなお考えか、それとも私権の制限は全く考えずに土地問題を解決していこうということなのか、その辺の御所見もお聞きしたい。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 土地対策としてわれわれの政府が今日までやってまいったことで、それは先ほども申しましたようにメリットもあったでございましょうし、また私は、御指摘になるようなデメリットもなかったとは言えないと思うのであります。で、問題は、こういう環境におきまして、どういう土地政策が採択さるべきで、実行さるべきであるかという、そういう相対的な関係においていまの時点において何をすべきか、何をすべきでないかという視点から取り上げられるべきものであると考えます。で、カテゴーリカリーに私権の制限がいいか悪いかなんていう抽象論は私はたいへん意味がないと思うのでありまして、問題は、こういう状況のもとにおいてやるには、これだけのことをやらにゃいかぬというような取り上げ方であってしかるべきではないかと思っております。
  88. 野末和彦

    ○野末和彦君 どうもすぐそらされちゃうんで困るんですがね。それじゃもっと具体的にお聞きしますが、何かいつぞや福田さんがまだ大蔵大臣のころ、総理と地価凍結をするというようなことで合意したようなことがちらっと出て、またそれっきりになっちゃった。今度は大平大蔵大臣という立場で、また田中さんのお仲間で、一番田中さんに影響力を持つであろうと思われるのは大平大蔵大臣じゃないかと思いますが、どうですか、地価凍結なんていう話もありましたけれども、これはもちろんインフレの要因の幾つかに土地もあがっていました。しかし、最近土地は以前ほど激しくは上がっておりませんが、しかし、逆に言えば着実にまだ上がりつつあるし、土地というものはやはりこのままほっといていいわけじゃないんです。この地価凍結ということに関しては、大蔵大臣、この方向はお考えの中にありますか。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一般論といたしまして、私は、地価凍結とか、物価の凍結とか、賃金の凍結とかいう、いわば俗に言う、一般に言われている所得政策的なやり方なんていうようなものは、まあ政府の無能の告白だと思うのです。そういうことに至らないで、国民の生活を維持しながら、活力ある経済を維持していくように考えなきゃならぬわけでございまして、一般論として私は地価凍結などということがいいか悪いかと聞かれた場合に、そういうような手段に訴えなくて、地価が落ちつく方向に政策は持っていくべきものでないかと思うのでございまして、現に地価は鎮静化する方向にきておりますことは、野末さんも御承知のとおりでございます。しかし、まあ土地政策の全体のメカニズムを私よく承知いたしませんけれども、その中には、部分的に一定地域に限って政府や公共団体の権能で、特定の条件をもって地価についての権能を行使する場面が皆無であるとは私は思っておりませんけれども、一般論といたしまして、そういうような手段を講じないで安定させていくことをこそが望ましいし、そういう方向に私は努力していくべきでないかと思っております。
  90. 野末和彦

    ○野末和彦君 せっかくのチャンスですけれども、時間がなくて十分指摘できないのは残念ですけれども、そのほかにお医者さんの七二%の必要経費のこととか、間接税を今後どういう方向に持っていくのか、いろいろお聞きしたがったんですが、とりあえずきょうはじゃ土地の譲渡所得の分離課税、これも先ほど当局からも何らかの決着をつけるようなお話でした。私の考えでは、土地の供給促進ということはほとんど考えられなかったと思うのです。ある程度の効果はあげたというお話でしたけれども、しかし、売るほうから言うと、小口で売っていくよりも、大口で売ったケースのほうが多いので、結果としては大資本なり、大どころが買い占めて、一般の人にはおそらく効果の恩典はなかったんであろう、こういうふうに考える。それよりも不公平を拡大したという点、このほうが大きかったです。これはやはり許しておくことはできないと思うんですね。そういう点で、この分離課税の制度は、完全廃止という方向で検討してもらうのが当然であると、こういうふうに考えますので、税調のほうの答えと、同時に、事務当局に、その方向で前向きにひとつ取り組んでいただきたい、大蔵大臣にもそれをお願いしておきます。終わります。
  91. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会