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1974-09-18 第73回国会 参議院 商工委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月十八日(水曜日)    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 熊谷太三郎君                 竹内 藤男君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 斎藤栄三郎君                 菅野 儀作君                 林田悠紀夫君                 福岡日出麿君                 阿具根 登君                 対馬 孝且君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        大蔵省銀行局特        別金融課長    窪田  弘君        農林省農蚕園芸        局審議官     二瓶  博君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁公益事業部長  大永 勇作君        中小企業庁長官  齋藤 太一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (当面の繊維政策に関する件)  (中小企業に関する件)  (私的独占の禁止及び公正取引に関する件)  (資源エネルギーに関する件)  (石油価格行政指導に関する件)     —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 小柳勇

    小柳勇君 きょうは、三つの問題について政府方針をただしたいと思います。  第一は、いまの国民生活、特に産業経済政策の中で物価問題に対して、通産大臣並びに経済企画庁中小企業庁はどういう取り組みをやっておられるかということが第一であります。  第二は、いま政府が行なっております総需要抑制政策、この政策のために公共事業が繰り延べされ、中小企業が非常に大きな不況に直面している、企業倒産も相次いでいる、この総需要抑制政策、いわゆる物価抑制のためにただ一つとっておる田中内閣のこの政策のために、たくさんの中小企業が倒れつつある。この政策を続けるならば、これから年末年始にかけて相当大きな混乱が生ずるであろう。この問題に対して通産省並び経済企画庁及び中小企業庁はどう対処するか、これが第二の課題であります。  第三は、わが国経済協力あるいは海外に対するいまの企業進出、このことによって、発展途上国におけるわが国が進出したその企業の製品が日本に逆輸入して日本中小企業を脅かしつつある、また、これが増大の傾向がある。特にお隣の韓国韓国では日本企業が昨年、ことし、急速に進出して逆輸入が開始されつつある。最近の日韓関係のこの実態を見まして、経済協力なり企業進出して、韓国が今日の経済繁栄をもたらしておるにかかわらず、日本政府並びに日本国民に対する反感、悪感情というものが顕著にあると新聞は報道しつつある。こういう問題に対して通産当局並びに中小企業庁などはどういうように対処するか、この三つの大きな課題を、一時間しかありませんから要点だけになるかわかりませんが、究明していきたいと思います。  そこでまず第一は、通産大臣に質問いたします。政府の現在の経済に対する基本的な認識とそれから経済運営基本的な態度です。  去る八月に、通産省基本的な方針予算の要求を背にして発表されております。その中でいろいろ重要な部分は、通産大臣考えは私も承知しています。具体的に石油指導価格解除され、基礎物資価格凍結も三十日には全面解除されることになる。しかし、消費者米価の三二%引き上げに代表されるように、また、現在、中医協が一六%ばかり引き上げがなされるようであるが、一連公共料金が軒並みに引き上げられる。したがって、第二波ともいうべき悪性インフレがまたこの十一月から十二月、正月にかけて押し寄せてくるであろう。この国民の不安及び田中内閣政治に対する国民不満、こういうものを取り除くために、通産大臣はどういう基本的な態度産業政策指導し、監督されようとするのか、通産大臣見解を聞きます。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 悪性インフレというようなものは今後は起こらないであろうと思いますし、また起こさせない考えでわれわれは断固としてやるつもりであります。  本年三月くらいから経済の調子は少し趣を異にいたしまして、いわゆる需給関係や投機的な要素というものは次第に影をひそめてまいりました。それで、石油元売り価格を八千九百四十六円に三月十八日から実施して行ないましたが、それ以来、今度は石油引き上げ等に基づくコストプッシュの原燃料費等を中心にする値上げが一面で行なわれてきたわけでございます。しかし、その反面において総需要引き締め等を行ないまして、また一面において石油輸入促進等もはかりまして、石油は非常に大量に入着をいたしました。それを背景にいたしまして物資はかなり豊富に在庫することになりまして、たしか八月末におきましては、昨年に比べて約三〇%近くの在庫積み増しという情勢になりまして、一部の総需要引き締めの結果からくるむしろ不況感が一部に漂うという状態に今度はなってまいりました。そのおもなものは建設とか不動産、繊維、それから自動車の下請家電関係、それから木材や合板や、あるいは木工具、そういうようなものにかなり深刻な不況が低迷してきつつある状態でございます。これは一面においては総需要引き締め、それから一つは原燃料高騰、両方のはさみ打ちにあってこういう状態が出てきているものと思います。  しかし、いろんな経済の徴憑を見ますと、情勢によっては投資意欲がまた頭をもたげてくる、そういう根強いものはまだございます。そういう面から、政府といたしましては総需要引き締めということをここで緩和する段階ではない、そういう認識に立って、この政策は引き続いてまだ行なわなければならぬと考えておりますが、物資が非常に豊富に、在庫もかなり豊かになってまいりました情勢にかんがみまして、いままでの事前了承制とかあるいはそのほかの介入規制措置というものは、場合によってはこれが価格の下ささえになるというおそれも出てまいりまして、それであの一連政策というものは石油需給適正化法等をお通しいただきまして、石油大量不足によって国民生活並びに国民経済に著しい影響が出てくるという情勢基本にしてやりまして、石油は、八月末の状態では七十二日分の備蓄を持つに至りました。  そういう情勢にかんがみまして、この規制解除いたしまして、そうして自由経済の正常な形にできるだけ早く復元しよう、それによって価格の自動的な調節、市場機能を回復して、この大量に在庫するということを背景にして値を下げる方向に持っていきたい、こう考えてきておるものでございます。そういう面から見まして、中小企業や、あるいは大企業の一部にはかなり深刻な金詰まりや売れ行きの不振、また一面においてはコストブッシュの面から苦しい状態が出てきておるということはよく承知しております。しかし、一面においてまだそういう意欲的な面も残っておりますから、やむを得ずしばらくこの情勢は続けていく、しかし、ケースバイケースによってそれらの困難な企業は、特に中小企業の場合はこれを倒産せしめないように救わなければならない、そういう考えを持ちまして政府系機関等を通じて、大体いままで五千億ないし六千億円の一四半期ごと割り当てをやってまいりましたが、千億ないし千五百億円ぐらいの積み重ねを、かさ上げをやりまして、中小企業、特に繊維等中心にいたしましていろいろ救済策も講じてきたところでございます。  そういうような政策の結果、不況のわりあいに倒産件数はいままではそれほど出てまいりませんでした。三月に千件をこしたのが一つあったと思いますが、それ以外は八百件ないし九百件でございました。これはやはり、政府系機関を主にしてささえてきた結果が非常に大きいと思っております。しかし、これからの情勢を見ますと、かなり深刻な事態も予想されます。そういう意味におきましてケースバイケースでそれらの問題については敏速に対応しよう、そういうことを大蔵、金融当局等とも話し合って適切な措置をとる用意をしております。しばらくこういう情勢で推移を見まして、特に年末関係情勢も見まして、その際における中小企業等の苦難をわれわれとしては全責任をもってお助けするという考えを持ちましてこの情勢を突破しよう、こう考えておるところでございます。
  5. 小柳勇

    小柳勇君 たくさんの問題の答弁をされていますが、公共料金物価との関係経済企画庁長官あとで質問いたします。  総需要抑制の問題でもう一問質問いたしますが、総需要抑制によって大企業は、昨年までの売り惜しみ・買い占めなど一連のあの企業やり方によってそう影響ないのではないか。まあ、建設業などは大企業影響は出ておりまするが、それでも蓄財があります。一番影響を受けておるのは中小企業下請産業ですね、これを一体政府としては、私もいまやっていることについては反対ではありませんが、いつごろまでやる見通しであるのか、お聞きいたします。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中小企業に対する対策といたしましては、もうことしの初めから一連政策をやっております。繊維であるとか、あるいは石油では一番打撃を受けましたネオンであるとか、あるいは建設業、このほかこういう不況産業と思われるものを指定いたしまして、それに対する特別融資ワクをつくったり、あるいは政府系機関につきまして割り当てをつくったりやってきたところでございます。今後もこういう政策を持続して、情勢によっては拡大していく、こういう考えでおります。
  7. 小柳勇

    小柳勇君 価格凍結を三月にやりましたが、それ以降物価の変動の状態を見てまいりますと、値上げ申請されたものは、もう軒並みに値上げが許可される。特に私どもがしゃくにさわったのは、あの七月選挙の重要な選挙の前に電気料金値上げされた。その選挙のさなかにも、一、二重要な値段引き上げがあった。現在その凍結解除後の情勢は、申請されたも一のはどんどん許可されるし、ある品物は下ささえ傾向にある。下がった品物は一向にない。いまおっしゃったように、品物在庫ふえ備蓄がふえていけば、ほんとうは供給がふえて需要が減ったら物価は下がらなければならぬのに、下がった品物一つもない。みな上がっておる。知らぬ間に、いつの間にか、またたく間に上がっておる。これは通産当局責任ではないかと思うんです。したがって、この基礎物資価格凍結解除後どういう配慮をして、価格の体系に対して指導なり監督の体制をとろうとするのか、質問いたします。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原燃料費並びに賃金がかなり上昇いたしました。そういう面からやはりいままで押えてきたものについて、まことに遺憾ではございますが、価格上昇を認めざるを得ないものもあったわけでございます。もし、そういうことを行なわない場合には物資生産されなくなって、かえって品不足を起こして、それによって価格高騰を来たす、そういう逆の現象が見込まれてきておるからでございます。そういう意味においては、物資生産は順調にいって物に対する恐怖感というものはなくなってきつつあると思います。  しかし、公共料金その他におきまして、原燃料費賃金値上げ等からいままで押えてきたものがどうしても押え切れない。特に国際物価割り高になってきたという影響はかなり出ております。またベースアップの問題もあります。そういう意味においては採算割れがして、たとえば減配あるいはいままでの留保金の取りくずし、こういうようなことまでやらなければやれないという状態に、ほとんど軒並みになってきておるわけでございます。そういう意味において、事業を継続させて供給安定性を持たせるという意味から、やむを得ず値上げを認めてきたものでございますけれども、われわれとしては、それを最小限にして、かつ、できるだけ時間的にこれを長引かせる、維持する期間を長引かせる、そういう配慮をもちましてやってきたものでございます。今後ともそういう抑制策をわれわれは堅持いたしまして、これ以上の物価騰貴という問題については、われわれとしては厳正に対処して、万全の措置を払ってまいりたいと思っておるところでございます。
  9. 小柳勇

    小柳勇君 企業社会性の問題とも・関連があるのですけれども、いま世間の人は、国民は、公正取引委員会は一生懸命に物価を下げる権限まで与えてもらいたいということで、物価引き下げに努力しておるけれども通産省というのは企業べったりで、企業申請した値段は全部上げるというような印象を持っています。国民生活安定よりも企業の収益を望んでおる、指導している、そう通産省に対してきびしい批判を持っています。いま、たとえば企業から申請してきたものでも、ものによって押えました、押えなければならぬと言っておるが、そのとおりだと思うが、具体的に大臣が御承知であれば、私はさっき、申請された物価はどんどん上がっておる、軒並みに許可されたと言ったが、いや、こういうものはこれだけ押えましたとか、下げましたとか、具体的にあったら教えてください。
  10. 天谷直弘

    説明員天谷直弘君) 価格凍結物資につきましては、三月十六日現在で凍結いたしました価格によりましては、コストをカバーすることができないという状況が長く続くような場合、その場合には生産コスト割れによって阻害される、そのことは国民経済上著しい悪い結果をもたらすということが考えられますので、そういう物資につきましては、申請があった場合に逐次査定をいたしたわけでございます。たとえば鉄鋼、アルミニウム地金あるいは合成洗剤化学肥料田植え機械等々の物資につきましてはそういう査定を行なったわけでございますが、この査定につきましては、査定基本方針といたしましては、エネルギーその他原材料の値上がり、これにつきましては企業企業努力をもっていたしましてはいかんともしがたいコスト上昇でございますので、これにつきましては値上げ申請を認めるという基本方針でまいったわけでございます。  で、現在なお通産関係では九物資が凍結されておるわけでございまして、あと三十六につきましては解除をされましたわけでございますが、解除された品目につきましては、解除値上がりしておるような物資は、きわめて例外的にはございますけれども、全体といたしましては、ほとんど値上がり傾向を示していないと言うことができようかと思います。  なお、査定幅等につきましては、物資によって種々まちまちでございますが、大部分物資は、二〇ないし三〇%の価格引き上げ申請に対しまして一三%から一七%程度値上げ査定を行なっておるというような状況でございます。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 いま答弁聞きましたが、値下がったものはないのです。上がったものは一六ないし一七とおっしゃいますが、私どもはいままで予算委員会でも原価公開を迫ってきました、通産省では査定したとおっしゃるんだから。国民は、当然どうしても上げなきゃならぬものは、これこれの資料がありますと言えば納得すると思うのです。で、冒頭に言いましたように、通産省企業べったりで、企業にもうけさせる、特に選挙前の悪い時期には、企業にもうけさして、そのもうけの中から自民党政治献金を取っている、そういう悪評まで飛んだ。言うなら、選挙によって、自民党選挙するたびに国民物価に悩まされるという、そういうきびしい批判すらあった。したがって、いま査定して当然これはコスト上昇で上げなきゃならぬものでございましたとおっしゃるなば、われわれがいままで主張してきたように原価公開ができますか。
  12. 天谷直弘

    説明員天谷直弘君) この価格凍結制につきましては、これは法律をもって行なっておるのではなく、行政指導で行なっておるものでございます。行政指導で行なっておると申しますのは、通産省の要請に対しまして、いわば契約ベースで、民間企業価格値上げする場合には通産省事前了承を得るということを約束したことによってこの制度ができ上がっております。そういうわけでございますので通産省が強権、まあ公権力をもって企業に対して原価を公表せしめるというようなことは、この行政指導の性格上適当ではないというふうに考えております。  そういうわけで、企業からいわば納得づくで出していただきました資料につきまして、通産省としていろいろ検討いたしまして、それで妥当な範囲で値上げを、許認可ではなくて了承をしておるというのがこの制度の本質であろうかと思います。基本的には、憲法なり民法なりの規定によりまして、企業価格を、市場メカニズムに従って自分で決定する権利を有しているというのが基本的なワク組みであろうかと存じます。そのワク組み石油危機等の非常に異常な事態によりましてうまくワークしないことになりましたので、暫定的な措置として、法律ではなく、企業との合意のもとでいわば一時的な目張りをやっておったということでございますので、法律なくして企業秘密を全部公開させるということは、あまり行政やり方として適当ではないのではなかろうかというふうに考えております。
  13. 小柳勇

    小柳勇君 大臣に、いまの重要な問題点をひとつ……。これはまだ出るか出ないかわからぬのでありますが、需給調整法案構想などというのが新聞にありますから、それとの関連もありますから、大臣見解を聞いておきましょう。  いまの答弁は、われわれは値上げ申請したときに、許認可ではなくて了承をしておる程度である、しかもその内容について公表することはよくないという意見、そういうものが、いまのこの物価上昇に対して国民が納得しない大きなガンです。内容を公表して、原価を公表して、これこれコストがかかるから、この会社にはこれだけの経費がかかるから、こうしなければ会社倒産ですと言えば、これは国民は納得すると思う。会社が持ってきた資料を見て——それはどの資料だって、これは値上げしなければならぬという資料が来ますよ。その資料を見て、国民にはないしょで、ああオーケー、これは通産省だけの権限ですと、こういうものが国民は、通産省企業べったりで、申請したものは全部物価を上げる、値段が上がる、だからこの物価上昇だという判定をしている。だから私どもが要求してまいりました、たとえばいま中医協が論議しているが、二八%値上げするにはちゃんとそのおのおのの積み重ねで、各コスト積み重ねでこれこれになるからこうしょうということで論議している。しかもそれには支払い側の代表も入って結論が出る。通産省了承しておる値段というものは、業者が出してきた資料、それを見て、そしてこれはやむを得ぬだろう。あと国民原価を教えてくれと言ったって、これは秘密です、企業秘密だ、それじゃ納得しないでしょう。そういうものが、いまの物価に対する国民不満だろうと思う。自民党内閣に対する国民不満です。しかし、これはいままでの通産省のしきたりもあろうから、原価公開、われわれが要求して、いわゆる物価を引き下げるために原価公開してくださいという、これに対する大臣見解を伺いたい。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれがいまやっておりますのは、かつては行政指導中心にしたやり方でありまして、それを需給関係が、こういうふうに供給が豊富になってまいりつつありますから、行政指導解除いたしまして、市場メカニズムによって価格を下げる方向にできるだけ持っていける、そういう考えもありまして、いまのような形になってきたわけでございます。それで行政指導をやっておりましたときにも、国民生活安定法に基づく標準価格というようなものは、これは広義の行政指導価格であると私は思っております。これを物統令によりまして統制経済という形になりますと、原価という思想が出てまいりますけれども標準価格の場合にも、いわゆる物統令的な原価という条文になっておりませんで、大体そのときの前後の価格需給関係を勘案してきめる、そういう趣旨のことばが書いてあったと記憶しております。  そういう状態でございますから、厳格な意味における原価というようなものをわれわれがいま出す基盤にはないのであります。統制経済をやれば戦争中のマル公制度という形になりまして、原価という思想も出てまいりますけれども、われわれのペース自体がいまそういう基調にはない。むしろ在庫を豊富にさせて流動していくという形が、自由経済考えるわれわれの一つ基調でもございます。そういう意味において原価という思想を持っておらないわけでございます。統制をできるだけ回避しようという思想からも来ておるわけでございます。でありまするから、原価公開するというのは不適当であると思っておるのであります。ただしわれわれが査定をする場合には、いろいろなファクターを厳格に見詰めまして、そして大体公益関係事業では六〇%台の申請が来ておりますが、これを三〇%ないし四〇%ぐらいに大幅に査定をして、そして、おそらくそれでは企業はなかなか採算もむずかしいという事態すれすれの線ぐらいでやっておるし、あるものによっては、これでは赤字ですと泣いてきているものもいざいます。しかし、それでも、需給関係等々を見まして、それでやっていけるとわれわれは考えまして、あえてそれを実行しておる、こういう状態なんでございます。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 三月の価格凍結の際にも論議されたものですが、自由経済ですから、自由放任であって、原価公開はできないということは、いまの情勢把握について、少し把握が甘くはないかと思うのですよ。いまここで物価問題を取り上げておりますのは、十月一日から軒並みに公共料金が上がるから、再び第二悪性インフレの波が押し寄せるであろう、これを押えるには国民総がかりで、通産省中心にして、あるいは経済企画庁なり、公共料金については各担当省国民の声を聞きながら、公共料金は上げないと、そのくらいの決心をしてかからぬと、また悪性インフレになるであろうという、そういうものを予測しながら私はいま質問をしているわけです。通産大臣冒頭にも、いや、もう悪性インフレにはなりませんと、そういうような前提でものを考えているから、どうもぴんとこないです、答弁が。そういう産業指導のあり方では、経済企画庁がどんなにがんばろうと、公取委員長がどんなにがんばろうと、どんどん上がるのじゃないですか、物価は。甘いですよ。またたく間に上がっていくでしょう、物価が。それじゃ、これはいま過去のことについて言ってもしょうがないが、これから通産省関係公共料金、たとえば電気とかガスとか、そういうものの値上げ申請があった場合には、少なくともこの商工委員会とか物価特別委員会などには、業者申請したその資料を示して、通産省が許可した、了承した値段の了解を求めるぐらいのことは答弁できますか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 業者が示したいろいろな資料をそのまま全部提示することは、企業秘密等々もあり、私たちは配慮しなければならぬところもあると思いますが、その要点、概要等については、御報告するのにやぶさかでございません。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 いまの発言——これは物価が上がらぬという見通しがあれば論議する必要はないんですよ、そういうことを。ただ私は、軒並みにまた上がるという見通しです。したがって、少なくとも通産省関係でそういうものが出た場合は、物価特別委員会とか、商工委員会には当然資料を出して了承を求める、それは国民の理解を求める一番近道であるし、当然やらなければならぬことだと思う。もう一回大臣答弁を求めます。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり公益事業も私企業でございますから、われわれが監督官庁としていろいろ精細に調べた内容等について、私企業として自分たちの利益を守るという場合もあり得るわけであります。そういう面から見まして、しかし、公益事業でもありますから、われわれとしては、委員会等につきましては配慮しなければならぬところもあると思いまして、この概要や要点につきましては、提出することにやぶさかでございません。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して。  ちょっといまの問題で私も御質問申し上げたいと思うのですが、私企業だから秘密を守らねばならぬ、それもわかる。しかし、公共性のあるものを、委員会が、国会が要求したのに、その資料を出せないということは一体何を意味しているか。企業だけを考えておられる。公共性がこれだけあって、公益性があって、物価問題が中心になって、そうして今日国民が非常な不安と不満を持っておる。そういうときに値上げ申請を出された、それを通産省の一部の人だけが見て、そうしてこれは上げるべきである、上げるべきじゃない——上げるべきじゃないということはほとんどなくて、出されたやつの幾ぶんかを削ったというだけがいままでの例です。私の時間でこれは質問いたしますけれども、先ほども小柳君が言いましたように、少なくとも公取は、業者通産省から逆にたたかれながらやっておるわけですよ。それで、通産省業者の代弁しかやっておらない。しかも資料が出せないということは一体何ですか。私は、これは当然委員会に出してもらいたい、こう思うのです。いまのような常識的な答弁じゃなくて、ほんとうに値上げをやらなければならない理由があるならば、そのままその資料を出していただきたい、こう思いますがね。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公益事業の場合は公共性を持っておるわけでございますから、先ほど来申し上げましたように、委員会の御要求があれば、できるだけ御協力を申し上げたいと思います。ただ、詳細、具体的なこまかい内容等につきましては、関係企業関連企業その他いろいろな情勢企業によってはあると思うのであります。そういう点を全部やるということは、あるいはもしそういうことになりますというと、真実を将来出さないという危険性も必ずしもなきにしもあらずであり、あるいはさらに、その企業自体の自由な営業権と申しますか、企業行為と申しますか、そういうものを侵害する危険性もなきにしもあらずという気もいたします。やはり自由企業基本にして、いまの経済運営をしているというのが、われわれの自民党基本考えでございますから、したがって、企業の利益もやはり一個の独立の権利なり利益として考えなければならぬ要素もあると思うのであります。そういう調和点を考えまして概要について御報告申し上げる、こういうふうに取り計らいたいと思います。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣がおっしゃることもわからぬのではないですけれども、それではこの狂乱物価といわれた油の問題で、通産省業者の言うなりにこれをわれわれに通知した、われわれに知らした。結果どうであったか、油はふんだんにあった、タンカーは油をおろすこともできないほど満載しておった。それなのに油がないということで、狂乱物価ということで物価を上げた。こういう問題もあなたは企業秘密だとおっしゃるのですか。そういうことを通産省自体もつかみ切らなかった、それが事実ですよ。それを企業秘密だということを前提に置いて、国民の生活を第二義に考えておるから、私は大臣のそういう答弁になると思うのです。国民の生活を第一に考えるべきです。そういう点で、私企業であろうとも、こういう巨大企業であって、独占的な企業物価値上げに対する申請については、詳細報告をしてもらうべきだ、提出してもらうべきである、私はこう思う、いかがですか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 油の例をおとりになりましたが、油の場合を申し上げますと、あの事件勃発前の九月末におきましては、日本のストックは約五十九日分あったわけであります。それで、OAPECが二五%削減ということを言いましたが、われわれは油会社その他といろいろ情報をとりまして、下期二八%減になるであろうという一応予測を立てて、それでいろいろ計算をしてみますと、日本経済を維持するに最小必要限というものは三十九日分でありました。その三十九日分がいつ来るかと計算すると、三月末という情勢になったわけです。そこで、どんなことがあっても十二月末までにできるだけ油を入着せしめないと、日本経済は、経済の先見性から三月末にそういうことになるということがわかれば、一、二月にトイレットペーパーみたいな事件が全企業に起こる危険性がございまして、そこで、われわれとしてはいろいろ外交的措置を講じまして、そうして、三木特使にも行っていただいたり、そのほか内面的にもいろいろわれわれはやりまして、幸いにその道がある程度打通されて、そうして、サウジアラビアを中心にするアメリカやオランダに輸出すべきものが停滞しておったもんですから、それを大量に日本が買い入れをやって、それが十二月末に入ってまいりまして、それであの危機を切り抜けることができました。それでも三月末には四十九日分に減ったのであります。それが最近に七十二日分までふえてきました。これはある意味においては、世界的に需要が減りまして、そして供給がふえたという結果になるのではないかと思います。  しかし、業者にしてみますと、八千九百四十六円ベースではとても採算がとれない。その後OAPECのほうで一ドル上げるとか、そのほかいろいろ向こうから微調整をやってきております。そのほかに為替レートが二百七十円ぐらいまででありましたのが、三百円になりまして、これだけでも相当な赤字がいま出つつあるわけであります。そして、にもかかわらず、まあ、われわれは八千九百四十六円でがんばってまいりましたが、最近の情勢を見まして、これだけだぶついてきたらむしろ供給力に圧倒されて乱売戦が起こる。それで一リッター百円のガソリンがツケの場合には九十三円とか、場合によっては八十円まで下がった情勢を見まして、これを規制解除して、むしろそういう方向に持っていったほうが消費者のためになると、そう考えまして解除した次第でございます。  そういう事情もございまして、経済のほかの物資につきましても、基本的にはそういうような考え基本的にいたしまして、総需要抑制在庫の過剰ぎみと、この二つの力を使って経済を安定させるという方向にいま懸命の努力をいたしておると、これが自由経済基調とするわが党の基本考え方を現実に適用した、まず妥当なやり方であるとわれわれは判断しておるわけでございます。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣は、自分の都合のいいことばかり言っておられるんです。じゃ、あの狂乱物価のとき、衆議院並びに参議院で暴露されたように、千載一遇だというようなことを業者が言ってもうかったことを一体どう考えておるのか。それを自由主義経済、それを認めておるんですか。国民がどんなに苦労してもいいと、自由主義経済だからどんなにもうかってもいいんだと、千載一遇だからうんともうかんなさいと、こういうお考えなんですか。そういうことをやったから、国民業者に対して信用しないんだ。だから私たちは、値上げせねばならぬその原因を知らしてくれと、こう言っておるんです。あなたは、自分の都合のいいことばかり言わぬで、この物価高になったその原因をもう少し考えてもらいたい。業者に、あなたが言うように、まじめにほんとうにこうなければできなかったんだということがあったか。千載一遇だ、この際もうけろと、こういうことを国民を犠牲にしてやったことは現実でしょう。そういうことがあるから、私企業であっても、大企業のこういう値上げに対するやつは出しなさいというんです。出すべきです。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の場合には、確かにそういう千載一遇というようなことがありまして、そのほかでもそういうものがありました。これははなはだ遺憾なことで、われわれはそういうものを見のがしてはならぬと思います。それで企業の社会的責任ということが非常に強く指摘されまして、われわれもそういう基本的観念に立ちまして、石油の場合には十一月、十二月のもうけの六百五億円というものを吐き出さして、大体外国では一月十日から二月二十日ぐらいまでの間に、十二月三十一日と一月一日の石油値段の落差約一万円、OAPECが一月一日から上げたわけですが、それを約一万円近くみんな上げたのを、われわれは三月十八日まで引っぱりまして、それで八千九百四十六円という、一万円よりかなり低い値段にきめたのでございます。その結果、いまの十一月、十二月のもうけは全部吐き出して、それだけでなくして、内部蓄積、あるいは役員賞与、配当等も、あるものは無配になり、あるものは減配をし、役員賞与も辞退する、そういうことで、それに対する国民の正義感に合致するように政策をやったのでございます。  そのほかの物資につきましても、あのころ御指摘されましたものにつきましては、われわれはそのつど行政指導をして引き下げ等を指示して執行してまいりました。あの狂乱の時代には確かに遺憾な点がありまして、われわれの政策が十分でなかったことを反省しております。  しかし、最近の事例につきましては、今度はコストプッシュ——原燃料費値上がり賃金のベースアップという二つの要素が入ってまいりました。そういう面から、これは別のステータスに立って価格を抑制するように努力しておるところでございます。
  25. 小柳勇

    小柳勇君 委員会公開の問題は、具体的に問題が発生したときさらに追及いたします。きょうは一応いままでのところで、少し前進しましたから、具体的にはまた具体的問題が発生したときやります。  次に、公正取引委員長に、いまのに関連するわけですけれども一、通産省企業べったりであって、たとえば価格を引き下げたものについてはない。したがって、価格引き下げ権を公正取引委員会が持つべきであるという発言をされたことに、われわれ非常に力強さを先般から感じていますが、この臨時国会に向けて、公正取引委員長は、決意を新たにして独禁法の改正などについてお考えのようでありますが、お聞かせを願いたいと思います。
  26. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 簡単にお答えしたいと思いますが、これはもうすでに一部新聞に出ておりますけれども、本日の午後三時に新聞発表ということで約束をしております。したがいまして、その具体的な内容につきましては、それ以降でないと、私が申し上げることは、これは新聞記者クラブとの約束上できません。しかし、趣旨としては申し上げることはできると思います。  で、簡単にその趣旨を申し上げますが、この独占禁止法本来の目的としては、いわゆる簡単に言えば競争政策ということがありますけれども、一方において独占的ないろいろな弊害が生ずる場合があるので、これは排除しなければならぬということでありまして、今回の場合におきましては、これは昭和二十八年に削除されました旧八条の復活というふうなことでありますけれども企業が独占に近いような状態になって事実上競争が行なわれておらぬ、実質的にはないというふうなときには、これはこの状態を排除しなければならぬということで、一応企業分割という名前を用いておりますけれども、そういうことで対処したい。  それからもう一点は、その独占に近いような状態にまではいかなくても、いわゆる非常に高度の寡占であるという場合には、高度寡占のその業種に対しまして、いま打つべき手がございません。有効に打つ手がございませんので、せめてその中で、並行行為を行なっている——と申しますのは、価格面での競争が実質的にないと認められるようなものに対しまして、原価の公表を求めるということが考えられております。  さらに、これはもう最も実務の上では大きな影響がございますが、カルテルの問題に対して、私どもはいまほんとうの意味での有効な対処手段を持っておりません。確かに法律の上で必要な排除措置をとることができるということになっておりますが、その排除措置は、御承知のとおり、価格に触れる問題でもないし、そのほかの懲罰規定としても有効なものがない。そこで、カルテルは不当な価格つり上げであるという認識のもとに、これに対しましてそのもとの価格に戻すことを原則とする。ただし、いろいろこれは審決の時点においてその行為が行なわれてからの経過日数、経過月数がさまざまでございますから、したがいまして、実情に全く合わないようなもとの価格ということは強制しない。もとの価格に戻るということは、それぞれ競争状態にあったときの価格、ですから一律価格ではございません。差異のある価格、相当相違のある価格をもとにしまして、それにどれだけしんしゃくするかという問題が残りますが、まあいずれにしても、実情に合う限りにおいては原状回復を求めるということであります。  もう一点は、告発によって刑事制裁を求めるより前に、私はそれよりも課徴金を課することのほうがはるかに実際的であろう。これは外国の事例等も参考にいたしまして、カルテルを行なったものに対しましてしかるべき限度額を設けた課徴金を課して、カルテルをやっても利得にならぬ、もうけにならぬということをはっきりする。そういうことによってカルテル行為等を今後予防するのに非常に役に立つんではないか。カルテルがあまりに多過ぎますから、そういうもの、そういう会社に対して反省を求めるのにいいのではないか、これが一つの重要点でございます。  他に、株式の保有につきまして、いろいろこまかい説明は省略いたしますが、一般事業会社におきましても、つまり総合商社などを含めた一般会社におきましても株式をあまりにも多く持つ、つまり、借金をしてまでどんどん持つというふうな、そういう風潮は、これは好ましくない。これはむしろそう古い話じゃないんでして、ここ四十年代に入ってから特に目立つ傾向でございます。そういうものに対して、株式によって支配するというふうな傾向がなきにしもあらず、そういう傾向は、企業集団というふうな形成の観点からもこれは排除すべきものではないかということから、そういう事業会社の持ち株を制限する、同時に、金融機関の株式も百分の十という限度額は今日の事態においては少し甘過ぎるという感じを持ちまして、これを引き下げることを考えています。  他に、刑事罰は、いまの限度額が五十万円というのはいかにもひど過ぎますから、これは十倍ぐらいにするのは当然として——どの程度になりますか、そういうのを、改定を考えておりますと同時に、責任罰としまして会社の社長、会長等が十分内容を承知しながら計画を実行するのをほっといた、あるいは途中で知った場合でもそれを是正しなかったという場合には、罰金額だけでありますけれども責任罰を科するということであります。  その他には、不公正な取引方法の規制を強化する、それから既往の、すでに終わった独禁法違反行為についても排除措置がとり得る、これはいろいろ実務上の便宜の問題でございまして、そうすることが公平の原則にかなうという観点からでございます。  以上のような点について、ただいま法律ではありませんで、試案の骨子という形で公表、発表の準備を進めている段階でございます。
  27. 小柳勇

    小柳勇君 独禁法改正の問題は、午後、阿具根君から質問いたしますが、私は通産大臣に質問するために前もっていま聞いたわけですが、独禁法改正問題に関連をして私どもが感じておるのは、公正取引委員会物価を下げようと思って一生懸命にやっておるのに、通産大臣はどうも公正取引委員会の動きをブレーキかけておる、そういうような印象を受けるわけです。たとえばこう書いてある。「私個人としては拘束を排除して、自由、公正な競争をさせるべきだと思う。したがって、公取委は不公正な経済活動を破壊する爆発力だけをもつべきで、そのごの形成力までもつ必要はない。」、こういうようなことを某紙の編集局長と対談された記事があります。もちろん新聞記事でありますから、そっくりそのままことばを信用しようとしません。今日まで一連の、選挙前からのずっと通産大臣公正取引委員長との新聞の発言内容から推察をして、通産大臣はどうも公正取引委員長権限強化については反対だなと、そういう印象を持つ。これは国民一般の印象です。このことについて大臣見解を聞いておきたい。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま小柳委員がお読みになりました私の発言は、私はいたしました。また、国会の委員会におきましても個人的感触と前置きいたしましてそういう趣旨の発言をしたこともございます。公正取引委員会から正式な案がまだ提示されておりませんし、役所間のそういう原案送付ということもまだないわけでございますから、それを前に私が先走った議論をすることは差し控えなきゃなりませんし、われわれ通産省といたしましても、チームをつくりまして外国にも調査団を派遣したり、また、自民党といたしましても同じようにこの秋に備えていろいろ研究し、外国にも調査団を派遣している状態でございますから、公取側の原案の提示を待って党とも相談をし、また、通産省独自の見解も検討した上で正規の意見を発表したい、そう申し上げて、私は非常に慎重な態度を持しておりますし、今後もそうしたいと思っております。  ただ、委員の皆さま方から、隣に公取委員長を置いて、個人的感触でも言えないのかと、そういう御質問がございましたので、じゃ、個人的感触でお許しいただけるなら申し上げましょうと、そういうことで、原則的にいま独禁法第一条にあるいろいろな拘束や制限というものを排除して、そうして公正にして自由な取引を徹底させて、それによって国民生活及び国民経済を守る、そういう趣旨は非常に賛成ですと。つまり、自由競争、公正取引を徹底させるということが正しいと思いますと。われわれの考えは、やはり自由経済基本的理念といたしまして、価格市場機能、そういうものに依存することが長期的に見て安定性を持っておるし、国民の福祉にも役立つ、そういう創意くふう力を認めておらぬところには経済の発展も物価の引き下げも行なわれない、そういう基本的観念を持っておるわけでございます。しかし、それが弱肉強食になったり、阻害行為が起きた場合には、これを爆破して破砕をする。そうして徹底的に公正、自由取引き行なわさせる、競争を行なわさせる、そういう地盤を用意することが公取としては適当ではございますまいか。  かりに価格を指定して、これこれにせよとおきめになる場合がもしあったという場合を考えますと、ある期間のズレがあるわけでございます、三カ月とか二カ月とか。その間に石油危機のような変動があったり、あるいは春闘のようなことでベースアップが行なわれたり、そういうようないろいろなことでほかのファクターが入った場合に、じゃ、もとの原状回復をやるということが、実際それでやったら、品物生産されないで逃げてしまって、やみに流れる、そういう危険性が非常にあって、かえって消費者を阻害し、物資の流通が隠れてしまう。戦争中の統制経済みたいなことが行なわれる危険性がある。また、一部においては思惑が、非常にその際は流通過程等において発生すると思います。そういう場合にはかえって物価騰貴を誘発する危険性があります。そういう面から、経済は生きて流動しておるものですから、その生きている流動性に対応する柔軟な政策がないと、生きている自由経済に対抗する政策とはなり得ない。私たちは行政指導をやりまして、行政指導価格とか標準価格とかいろいろのことをやって、苦労してそういう感じを持ったわけであります。  じゃ、そのときに対応する価格に公取のほうでおきめになるという形になると、それは何が基準になるだろうか、そういう問題がございます。あるいは課徴金という場合も考えられますが、しかし、課徴金という場合には、そのスタンダードになる標準価格みたいなものが基礎にないと、いつからの何倍ということがむずかしい。そうすると、企業別にそれはとられることになると思いますけれども、なかなかそういう問題をめぐって、いざ実際行政ベースでやるとなるとむずかしくなる。むしろ公取というものは第三条機関として、そういう公正取引やあるいは過度の集中、そういうものが著しく目に余るというような場合にこれは爆破すると、そういうことはある程度考えられるけれども、形成力になるということは行政行為に類似したことで、非常に危険性が現実問題としては出てくる、そういう危惧をわれわれの経験からして申し上げたのであります。
  29. 小柳勇

    小柳勇君 午後また独禁法改正の問題はやると思います。  経済企画庁長官に質問いたしますが、時間もありませんから、質問、簡単にいたします。  一つは、これからの経済見通し。それから総需要抑制政策に対する長官の決意。いま一つは、公共料金がたとえば一〇%上がった場合に、消費者物価はどのくらい上がると判断されるのか。そして、私どもが言っているように、公共料金はもうとにかく押えなきゃならぬ。かつてある経済企画庁長官は、公共料金は一年間ストップすることを閣議で一生懸命にがんばられたと聞いています。いまの経済企画庁長官は、公共料金ストップについて決意されたことがあるのかないのか、一回も話を聞いてない。公共料金引き上げに対してどう決心をしておられるか、その三つを御質問いたします。
  30. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 三つのお尋ねでございましたが、第二番目の総需要抑制政策をどうするかということ、これは小柳さんと通産大臣との間で問答もございましたとおりでございまして、多少私の考え方がニュアンスが違うものがございます。これは、物価問題が今後におきましても引き続き最大の政治課題であるという考え方を持ちますので、そのたてまえから総需要の抑制、また、その一環としての金融の引き締め政策というものは当分続けなければならないと思いますが、他の一方において中小企業その他の企業の行き詰まり、経済の停滞、さらにそれから派生する雇用問題というような面がこれは世界の先進諸国でもそのとおりでございますが、わが国におきましても、そういう様相がいろいろの指標からうかがわれておりますので、それとの調整、調和をどうするかということを私は考えなければならないと思います。  もう一つは、当面の景気とか雇用の問題ばかりでなしに、これから先、日本の人口が毎年百何十万人ずつふえていくことを考えたり、あるいはまた社会福祉の充実というようなことを考えてまいりますと、今日、御承知のような、最近における経済成長の停滞と申しますよりもマイナス成長というような状況をいつまでも続けるわけにはまいりませんので、したがって、中期的の展望に立ちましても、やはりどうしても将来これだけはやっておかなければならないというような基礎的な物資等についての供給確保策ということも考えてまいらなければならないという問題がございますので、それを平面に並べてみますると、総需要抑制、金融引き締め政策をいつ切りかえるかという、こういうたいへんむずかしい問題になりますので、私は独特の表現ではございますけれども、これらの幾つかの問題を立体的に交錯させる考え方をとるものである。総需要抑制、金融引き締めはそのまま続けるが、さらに中小企業、雇用の問題、あるいは経済の縮小過程への落ち込みというようなものは、これを防ぐ所要な施策というものを立体的に組み合わせる。  将来の経済の問題につきましても、さらにまた国際収支の問題でありますとか、あるいはまた経済を成長させようと思いましても、申すまでもなく、エネルギー資源の国際的な供給の問題がございまして、わが国経済のあり方、あるいはわが国国民の生存というものは国際協調のうちにおいてのみ可能であることを考えますと、単に開発輸入をすればいいとかいうようなことだけでも解決しない面もございますので、これは私は経済企画庁でございまして、通産省とも全く同じものではございません。やはりまた、私のほうは物価局だけを持っておるものではございませんので、それらの問題を立体的に組み合わせまして、他の物価を落ちつけながら経済が行き詰まりにならないように、雇用が落ち込まないようにやると、こういうことでございます。抽象的でございますが、そういう判断でございます。  経済見通しにつきましては、まず物価の問題が第一でありますが、これは私は弁解せざるを得ませんが、昨年の十二月ないしことしの一月に立てました経済見通しというものは、いろいろの面でたいへん狂ってきております。  第一に、国際収支の面におきましても、これは輸入の面でも、石油価格が御承知のように四倍以上に値上がりをするというようなことは、昨年の十二月の終わりの段階ではまだ考えられておりませんでしたし、また、食糧などの輸入につきましても同じような事情がございまして、したがって、かなりの輸入の支払い額がことしの元旦の経済見通しよりもふえてまいるだろう、百億近いものが私はふえるのではないかと思います。しかし、幸い輸出も伸びておりますが、これがまたいろいろの問題がありますこと、国際的に国内を不況にしたままで輸出ドライブをかけるということに対する国際的な反発、批判というものもふえつつあるわけでありますので、輸入も伸びるけれども、それに比べてこの二カ月ぐらい輸出が伸び輸入は落ちついているんですが、そういう状況が続くとも考えられませんが、要するに、国際収支の見方は大きく変えてまいらなければならないと思います。  物価につきましても、通産大臣が言われたように、昨年の秋からことしの正月にかけてのようなああいう狂乱物価状況というものは私は全くないと考えます。それは先ほど来議論になりましたとおりのことで繰り返しませんけれども石油の問題に端を発し、それに便乗とか先取りとかいうようなことがからまりまして、たとえば卸売り物価などにおきましても、昨年の十二月は一カ月で七・一%の上昇、前月に比べまして。一月でも五・五%の前月に比べて上昇というような調子を、昨年の暮れから正月にかけて三、四カ月続けておりまして、これは過去の十年平均ぐらいで申しますと、一月間に三年分ぐらいの物価上昇をしてしまったような状況でございますが、現在におきましてはそういう状況ではございません。三月以降、よく御承知のように、卸売り物価、消費者物価とも対前月一%をこえることもございますが、一%を割る月もしばしばございまして、たとえば消費者物価でも東京都の八月の速報によりますと、〇・八%というような状況でございます。  私は自分で試算をいたしましたが、三、四、五、六、七、八の過去六カ月における各月の消費者物価の単純平均というものは一・一%あまり、一・一五%、これは単純平均であります。それから卸売り物価につきましても、三月以降は比較的落ちついておりますので、それは毎月の対前月上昇率が単純平均ですと〇・九%ぐらいでございます。これから先、御指摘のように十月は公共料金引き上げが、医療費などの問題をも含めまして集中をいたしますが、そういうものをかみ合わせてみましても、私は、おおむね過去六カ月のいま申し上げましたようなそういうゆるやかな上がり方をもって年を明け、そして来年の二、三月、ちょうど四十九年度の終わりを迎えると思うわけでありまして、そうしますと、これは、私どもの努力が決して成功したということだけではございませんが、たまたま昨年の物価上昇が非常にひどかったものでございますから、来年の二、三月ごろの卸売り物価、小売り物価の対前年同月の上昇率というものは、このごろ各方面で言われておりますように、消費者物価をとりましても十数%ぐらいの上昇でおさまる。一年前は、これが御承知のとおり二五、六%の上昇でございました。卸売り物価も一〇%ちょっとこえるぐらいでおさまるのではないかと、こういう見方でございますので、それに応じましたように経済見通しの物価ども修正をいたしてまいりたいと思います。  最後に、経済成長率は、これも非常に議論がございましたが、四十九年度は年間の経済成長は二・五%というように立てておりましたけれども、どうもことしの一−三月の経済成長はマイナスにおちいり、四月−六月がわずかに〇・六%しか上がらなかった、持ち直さなかったというような状況、また、最近の生産出荷等の、あるいはその他の指標をかみ合わしてみますると、二・六まで私はまずいくことは、総需要抑制政策を続けます前提のもとにおいてはなかろうと考えますので、これも経済成長率ゼロを含む低率成長というふうに直さなければならないと思います。  それから三番目の公共料金の問題につきましては、これはまあ常に口ぐせのように申しますように、極力抑制的態度をもって臨んでおります。したがって、それは引き上げ率におきましても引き上げ時期におきましても押えるだけ押え、延ばせるだけ延ばせるということをやっております。米価についても、国鉄につきましても、小柳さんは、内田君はそういうことについて過去一年間努力したことはないと、こういうおことばでございましたが、これは正真正銘私が、実は前のやめられました福田大蔵大臣と組みまして、そして国鉄の、せっかく今回つくっていただいた値上げ法律を六カ月間、法律まで直していただいて物価狂乱中延ばしました。米価につきましても、昨年の生産者米価引き上げにかかわらず、消費者物価はとにかく今日に至るまで一文も上げないということをやってまいった、その経済企画庁の私はまあ責任者でございますが、しかし、公共料金というものは、いつまでも押え込んでおきますと、結局それの仕組みがもたなくなりまして、非常に大きなまたいろんな弊害をあとに繰り越すわけでございまして、それを全部財政で吸収するということがなかなかむずかしい。  米につきましても、一年間ぐらいは生産者米価を上げても消費者米価は上げないで、その差額は国の財政で見さしたわけでありますが、それを続けるということは、一年間の問題ではなしに、もうこれからは、先に政府が買い上げるお米については、毎年去年の水準でしか売り渡し価格を上げないということでありますから、毎年それは根になって累積してまいります。その上に、もしその年の生産者米価を上げるといたしますと、新しい要素が乗っかってまいりますので、これは何千億とか一兆とかいう断面だけの数字ではない面がございますので、それらの配慮をいたしながら、経済企画庁国民生活を守るのが役割りでございますから、公共料金も多少無理がいっても、各省にもしんぼうをしていただくような発言を続けてまいりました。  ですが、これはまあ一言多いんですが、公正取引委員会のように経済企画庁長官は独立してその職務を行なうということになっておりませんので、とどのつまりは通産大臣と話し合ったり、農林大臣と話し合ったり、大蔵大臣と話し合わなければならないというところにですね、公取委員長のような勢いのいいことは私は言えないという点をお察し願いたいと思います。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 いまの答弁、もう長過ぎて要点がちっともわからぬが、あなたが十日の閣議で国民消費物価上昇率を報告されたのと、いまの答弁違うんですよ。それくらい統計というものは日々変わっていく。国民の生活実感というものは、あなたのいまの答弁のようでないんですよ。だからここで問題にしているわけだ。あなたは十日の閣議で、本年度の上昇率は二二%程度、また、来年三月ごろには対前年同月比一五%程度におさまるだろうと、こう言っている。したがって、まあいろいろこう言われますけれども経済企画庁に私が言いたいのは、その数字のやりとりではなくて、企画庁が本気で物価を押えるという態勢にあるかないかということを聞いているわけですよ。それを、公共料金も三二%もあの米は上がった。あのときでも、内田大臣は辞表を書いてほんとは抵抗しなければならぬでしょうに。これから、十月一日からまた年々公共料金が上がる。あなた御存じのとおりだ。そういうものが、暮れから春にかけて物価を上げるでしょうと言っているんです、いまの論争は。いまの七月、八月、九月ごろのこの物価の動きだけを通産大臣も経企庁長官も言っておられるけれども、私はそれよりもむしろ、十月一日から公共料金が上がりますから、これがいろいろの物価を刺激して国民生活が苦しくなるでしょうということをいま問題にして論議しているわけですから、ひとつ物価を押えるように努力してください。  中小企業庁長官に質問いたしますが、いままでのこの物価上昇、総需要抑制政策に対して、倒産が予想される中小企業に対してどう対処されるか、特に年末金融などに対してどのように考えておられるか、お聞きします。
  32. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) この総需要抑制、それから金融引き締めの進展に伴いまして、不況業種が漸次広がりつつあります。この四−六月は、繊維、それから建設業が主でございましたけれども、七月以後、自動車の下請あるいは部品関係、あるいは家庭電機の下請、部品関係、また製材、それから合板、家具その他の雑貨といったように、不況業種がだんだん広がる傾向にあります。  中小企業庁といたしましては、この金融引き締め等の結果、健全な経営を行なっておるにもかかわらず、金繰りがつかなくて倒産等の困った状態におちいるといったようなことを防がなければならないということで、政府系の三金融機関を動員いたしまして融資につとめておるところでございます。御承知のように、今年度は昨年度に対しまして二割の融資規模の拡大を年度当初から行なっておるところでございますが、そのもともとの本年度の二割拡大しました融資計画に加えまして、四−六月に千五百億の融資ワクの追加をいたしました。また、先週、当面の追加といたしまして、千億の追加をいたしたわけでございます。  さらに、民間の金融機関の融資につきましても、中小企業救済の特別融資制度というものを設けまして、通常よりも安い金利で不況色の強い業種に特別融資を行なっております。建設業繊維業等を中心に、これまでに五百数十億の融資を行なっておりますが、さらに、ただいま申し上げました自動車あるいは家電あるいは製材等の業種につきましても、ただいまの民間金融機関によります特別融資を実施をいたしたいということで、現在銀行協会と話を進めておるところでございます。こういったことで、金融面で手を打ちまして、なお今後の推移を見たいと考えておりますが、今後の情勢によりましては、さらに追加等のことも配慮してまいりたい、かように考えております。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業の皆さんが言うのは、金額の量の問題もありますけれども、手続の簡素化とか、それから無担保、無保証の金額をふやしてくれとか、せっぱ詰まった要求があるわけです。したがって、下部機関にも指令を出していただきまして、金額の増大と同時に、手続の簡素化及び無担保、無保証の融資額の増大などについて、これは政府部内でひとつ御検討願いたいのですが、いかがですか。
  34. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 金詰まりが深刻な状況でございますので、手続につきましては、極力急ぐように指示をいたしております。また、既往の債務の償還等につきましても、非常に経理内容が苦しくて償還が困難と認められます場合には、償還を一時猶予するというような配慮もいたしますように指示をいたしておるところでございます。また、担保等につきましても、担保の評価等をなるべく弾力的に考えまして、中小企業に金融が円滑にまいるように指導いたしておるところでございます。なおその点、徹底をはかってまいりたいと考えます。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 最後の問題。  韓国に対する経済協力企業進出、逆輸入の問題でありますが、昨年、ことし、韓国に対してわが国企業進出が非常に顕著になりました。しかも、その企業で製品が逆輸入傾向にもあります。  もう一つは、外務省にも聞きたいのでありますが、これだけ日本国民が協力しておるにかかわらず、韓国国民は、企業を通じて、あるいは——企業を通じてといいましょうか、対日感情が非常に悪い、そういうものを通産大臣としてはどうお考えであるか。あとで外務省に聞きますが、通産大臣は一体どういうふうにお考えであるか。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 韓国は隣邦でございますから、やはり日韓親善友好の実をあげて、共存共栄の方向でいきたいと思っておるわけでございます。それは過去においてもそうでございますし、現在においてもそうであります。韓国国民感情というものは、日本におるわれわれが考えるのとはまた多少違った韓国独自のものがあると思います。そういう点について、われわれも明治四十三年日韓併合以来の歴史を反省してみて、われわれ自体も深く考えなければならぬところもあるはずであります。そういう謙虚な姿勢をもちまして、日韓関係をできるだけ友好を増し、親善関係を増すように今後とも私たちは努力していきたいと思っております。経済問題につきましても、そういう観点から共存共栄の実をあげるように努力していきたいと思っております。  ただ、中小企業やあるいはそのほかの企業関係で、日本に対してかなり輸入されてきて、それが日本の市況を圧迫して、日本中小企業等の非常な荷もたれになっているという様相も繊維等ではございました。そういう点につきましては、やはり長期的に安定するということが望ましいことでございますから、秩序ある輸入と申しますか、あるいは秩序ある投資という面もこれは考えていくべきときではないかと思うのです。それらについては両国関係でよく隔意なき意見の交換をし合って、お互いでよく理解し合う、了解し合って事を進めることが適当である、そういうように思います。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 韓国からの繊維製品などの逆輸入の問題について、実績について答弁を願いたいのですが。
  38. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 繊維関係韓国への海外投資は、約一億四千万ドルにのぼっておるわけでございますが、こういった海外進出企業と逆輸入関係というのは、必ずしも明確につかみがたい面がございます。御承知のように、繊維産業におきましては、糸から織物、織物から二次製品という生産過程におきまして、商社等の流通過程が介在してくるために、なかなか直線的に把握できないという面がございます。あるアンケート調査によりますと、生産量の二、三%という数字もございますが、また反面、たとえば韓国等における繊維産業の生産能力と当該進出企業との関係を見ますと、絹織物あるいは化合繊織物等につきましては、かれこれ四%程度、綿織物につきましては一%程度ということになっておりますので、そういった能力面からいいましても、逆輸入自体さほど大きくないのではなかろうか。むしろ、昨年来繊維製品の輸入がふえておりますが、これは当該国における繊維産業の急成長に負うところが大きいのではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 具体的な例ですけど、これは京都新聞に出た広告ですが、本場大島で、こちらのほうの新柄本場大島が二十九万八千円、韓国産が六万九千八百円、こういうものが市場で売られているわけです、本場大島として売っているのですから。だから消費者の面でいうなら、二十九万八千円に似たようなものが六万九千八百円で買えるのだから、これは反対というわけにわれわれとして言えないですね。ただしかし、この業者としては大きな打撃でしょうし、特に日本のこの業に働く労働者は、韓国の低賃金に押されるということは火を見るよりも明らかですね。で、これは大島つむぎの一つの例ですけれども、たとえば西陣もありましょうし、博多織もありましょうし、あるいは私の地元では久留米がすりがございますが、久留米がすりも向こうのほうから逆輸入するということ。業者を集めて、製品をよくするようにということは指導しておりますけれども、われわれにも相談に来ておりますけれども通産省中小企業庁としても十分に——私もこれは安いのはいいなと思いながら、労働者の立場、あるいはこの業者の立場を考えますと、これを放任できないという気がいたします。実態についての十分な把握があるかどうか、お聞きいたしましょう。
  40. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま例示されました大島つむぎでございますが、これは私たちのほうである程度調査したところでは、韓国からの年間輸入量が三万反ないし四万反程度といわれておるわけでございます。現在国産がかれこれ八十万反ございますので、量的には四、五%ということで、必ずしも高くはないわけでございます。ただ、御指摘のように、いわゆる大島つむぎ、あるいは久留米がすりといったように、伝統的な国産品に類似する製品が入ってまいりまして、それによって生産者あるいは消費者に不測の影響を与えるということは、まことに好ましくないということでございます。  そういった観点から、従来からも関税法の規定に基づきまして、通関の際に原産地につきまして虚偽の表示をする、あるいは消費者に誤認させるようなまぎらわしい表示がある場合には、その表示を修正させるとか、あるいはこれに応じない場合には通関を拒否するといったような規制をとっております。さらに、この五月一日から計量法に基づく告示が適用されまして、これによりまして同様の虚偽表示あるいはまぎらわしい表示については排除命令措置がかけられると、かような形によって伝統的な国産品といわゆる輸入類似品とを峻別し得るようにいたしておるわけでございます。かたがた、こういったものにつきましては、そういった伝統的な製品の生産に従事しておられる方、あるいはこれを販売しておられる方がやはり積極的にその特性、優秀性というものをPRする必要があるんじゃなかろうか。先ほどの国会で成立いたしましたいわゆる伝産法に基づきまして、そういった商品についての展示会の促進もいたしたいと思っておりますし、かたがた、伝産法の指定を受けた商品につきましては、その旨を表示することもできるようになっておりますので、これは自己製品の信用の維持のために、あるいは消費者のためにも、より積極的に、われわれももちろんのことでございますが、業界としてもPRにつとめて、これに対処していっていただきたいと、かように考えております。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 最後ですが、通産大臣に……。  私ども、この選挙を通じて国民物価安定を訴えてきました。この通産省の来年度の方針を見ましても、物価安定が一番重点政策のようであります。で、たとえば原価公開とか、あるいは公正取引委員会権限強化、あるいは公共料金のストップなど、われわれ具体的に提案しながら、今日までも国会でいろいろ政府方針をただしてきました。時間が十分ありませんから十分な論議はできませんが、願わくは、この十月一日からの各公共料金値上げによって連鎖反応的に——少なくとも一通産省関係物価上昇は押えられますように、指導、指揮監督していただくことを心から期待し、お願いをいたしまして、質問を終わります。
  42. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私は、時間がありませんので、繊維問題にしぼりまして簡単にお伺いしたいと思います。  いまの産業で最も不況であるといわれておりまするのが繊維産業でありますが、もうすでに不況になってから一年半に近いわけですが、いよいよ、どろ沼的様相でますますひどくなるというようなことで、産地では非常な不安を持っておるわけです。それで、これから特に年末にもなるわけですが、これからの、最近の見通しについてまずお伺いをいたします。
  43. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) わが国繊維産業の現状を一言で申し上げると、天然繊維、化合繊系を問わず、あるいは川下、川上の別なく、非常に深刻な不況下にあるということでございますが……。
  44. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 特に絹織物の状況について、絹の状況について。
  45. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) さようなところから、特に金融を中心にいたしまして、中小三機関等から……。
  46. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いや、絹の……。
  47. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 絹だけでよろしゅうございますか。
  48. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 絹について、おもに。
  49. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 絹につきましては、先日、生糸の一元輸入に踏み切ったといったところから、そういった生糸が綿糸あるいは絹織物の形で日本に入ってくるのではなかろうかという懸念は、事実私どもも持っておったわけでございます。そういった観点から、絹織物あるいは綿糸の輸入等につきまして慎重に動向を見守っておったわけでございますが、かような国内不況の時期でございますので、輸入実績面では心配しておったような傾向は出ておりません。  若干数字的に申し上げますと、本年一−六月の絹織物の輸入は千百万平方メートルでございまして、昨年の同期に比べまして四〇%の減少でございます。それから絹糸につきましては、同じく一−六月で四四・六トン、前年同期に比べまして九九%、かれこれ横ばいではございますが、国内の生産量が一万六千ないし一万七千トンございますので、これにつきましてもさしたる増加を見せておるという段階ではございません。かような状況でございますので、当分の間、輸入動向を注意深く見守ってまいりたいということでございます。
  50. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いま、輸入のお話をいただいたんですが、それよりも今後繊維はどうなるのか。いま、大体丹後あたりにおきましても三割の操短をやっておるわけですね。まあこれくらい操短をやりましてもなお不況は深化をしておるという状況です。それで、これから先行きもっと不況になるのか、あるいはあるところで回復するような見込みがあるのか。どういうふうに通産省としてはお考えになっておるかということを言ってもらいたいです。
  51. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) その前に、丹後産地の概況につきまして若干申し上げたいと思いますが、丹後産地のちりめんにつきまして、この一−六月の生産額は約四千万平米でございまして、昨年一年間が九千八百万平米でございます。その意味からすると、生産はことしに入ってから若干低下をしておるということでございますが、帯につきましては、同じく一−六月で百八十九万本、昨年の一年間が三百万本でございますから、帯につきましては、むしろ昨年よりも生産は若干ながらふえておると、こういう状況でございます。そう申しましても、丹後産地も他の産地と異なることなく、やはり相当の不況に悩んでおるわけでございますが、今後の見通しということにつきましては、なかなか判断が非常にむずかしゅうございます。ただ、今回の不況一つには最終需要者の買い控え、それから商社、問屋金融の逼迫によるところの中間流通需要の減退、それに繊維一般につきましては輸入の増加といったような問題があるかと思いますが、そういった原因との関係、と申しますことは今後総需要抑制策と申しますか、金融政策がどこまで続けられるか。先ほど来の質疑の過程で、やはり当分の間継続せざるを得ないということからいたしますと、必ずしも先行き楽観を許さない状況にあるのではなかろうか、かように考えております。
  52. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私も先行きまだ楽観をすることはできないだろうと、かように思うわけであります。それで、これに対しましてはやはり不況対策をやっていかなければならない。ところが、絹織物は何といたしましても、まず、その原料の生糸が問題になってまいります。それで、生糸につきましては八月の一日から輸入を一元化するという措置をとってもらったわけですが、この六月から来年五月までの四十九生糸年度の生糸の需給見通しをまずお伺いします。
  53. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 四十九生糸年度——ことし  の六月から来年の五月までの間でございますが、これの需給の見通しはどうかということでございますが、まず生糸の生産量でございますが、これは大体三十二万俵前後ということになろうかと思います。それから生糸の輸入量でございますが、これは、現在のところ確定をいたしておりますものが四万四千俵ございます。さらにこれに期首の在庫、六月一日現在の在庫でございますが、これが四万七千俵ほどございます。したがいまして、現在時点では供給量は四十一万俵程度というふうに考えておりますが、ただいま先生からもお話がございましたように、八月一日から日本蚕糸事業団によります輸入の一元化という措置をとることになっております。現在時点におきましては、まだ一俵も事業団ということでの輸入はやっておりませんが、いずれこれに一元輸入分がさらにプラスされるのではないかということでございます。  以上が大体供給側の面でございます。  これに対しまして、消費のほうの関係でございますが、国内の生糸消費量でございますが、今後の景気の動向等にもよりまして、当然変わることも予想されるわけでございますが、現在のところ、大体三十五万俵程度というふうに考えております。これに期末の通常在庫は、大体二万四千俵というところが通常在庫でございますからこれをプラスする、さらに、すでに事業団が六月一日から中間買い入れをやっておりますが、現在時点までに四万五千俵ほど買い入れを行なっております。そういたしますと四十二万俵前後ということに相なりますが、過般の十三日の閣議におきまして、中間買い入れワクを現在の五万俵から十万俵に拡大をするという措置もとってございますので、今後の需給情勢によりまして、現在四万五千俵買っておりますが、さらにこれに相当の追加買い入れというものがあるのではないか、かように考えております。
  54. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そうすると、四十九生糸年度では大体四十一万俵の供給があるわけですね。そのほかに事業団がすでに四万五千俵買い入れておるということなんですから、需要関係からいくと、もうこれから輸入する必要はないということになるわけですね。だから、輸入が一元化されたわけなんですが、これからの輸入というものはあり得ないのだというような考え方でいいわけですか。
  55. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 輸入につきましては、八月一日から輸入の一元化措置をとったわけでございますが、その当時におきまして関係の各国、それからガットその他につきましてもおおむね十万俵程度この四十九生糸年度においては輸入することになるのではないかということでございます。ただいま四万四千俵ほどすでに輸入がございます。したがいまして、それを差し引きますれば五万六千俵程度のものは一応輸入するということに現在のところではなるのではないか、かように考えておるわけです。他面、追加買い入れワク、先ほど申し上げましたように十万俵の事業団の買い入れワクというのがございまして、現在四万五千俵ほど買っておる、したがいまして、今後も需給情勢によってはすでに事業団買い入れが出てまいる、輸入のほうは若干また五万数千俵程度輸入がある、こういう形になるわけです。
  56. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 国内の生産が三十二万俵で、輸入が大体平年度で十万俵と、こうしますね。四十二万俵くらいが国内で必要だ。ところが、いま普通に三割ぐらい操短しておるのですよ。そうしますと、大体三十万俵そこそこぐらいより要らないということになるわけです。その上にまたことし十万俵も一輸入するつもりだというようなことでは、これは生糸がだぶついてよけい市況が悪くなるということになるわけですね。だから、もう輸入は要らないんじゃないですか。
  57. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) いまのこの数字の面の差し引き勘定からいたしますと、いわばとんとんのような姿に相なります。ただ問題は、この昨生糸年度、これは十三万七千俵ほど輸入をいたしております。今回の輸入一元化措置にいたしましても、いわゆる従来の輸入増によります関係で需給バランスをくずしたそういう要因の面、これにつきましては、輸入制限というよりは適正な輸入量にしたいということで、十三万七千俵という前生糸年度に対しましておおむね十万俵程度という形で考えておるわけでございます。
  58. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 これからの蚕糸事業団の一元輸入にあたっては、十分よく国内の需給面を考えてきめてもらいたいと思うのです。  それからその次に、生糸の中間買い入れ価格ですが、現在キロ九千九百円ということになっておるわけですね。それで、これは政府が買いささえをやっておりまするから、これでいまの市況も、九千九百円より下がっておりまするけれども維持をされておるというような状況で、実勢はもっとこれよりはるかに低くてもしかるべきであるというような状況だろうと思います。それでこの生糸の価格は、四十七年はキロ七千円から八千円ぐらいというところだったわけですね。それが四十八年に急激に一万五千円ぐらいにまで上昇するということで、そうして現在生糸の買い入れ価格が九千九百円、こういうことになっておるわけです。それで、この九千九百円という価格は繭の生産の、家族労働賃金とかほかの作物に比較しまして、こういうぐらいじゃないと繭ができないというようなところからきておるのだろうと思うのですが、これはこの辺を今後も維持してやっていこうという考え方なんですか、あるいはちょっと高いというようなことも考えておられますか、いかがですか。
  59. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 現在、日本蚕糸事業団の中間買い入れ価格、これが生糸一キログラム九千九百円でございます。それで、この九千九百円といいますものは基準糸価というのが別途ございまして、これが一万円でございます。それでこの九千九百円で買い上げをいたしまして、事業団で買うということで一種のたな上げ効果が出ます。そういうこともございまして、大体基準糸価の一万円というものが形成されるのではないかということで、基準糸価の百円引きで現在九千九百円をきめておるわけでございます。  それで、まず基準糸価でございますが、この基準糸価につきましては、現在までの運用といたしましては、生糸生産費と同水準ということできめてございます。生糸生産費が最近の物価賃金上昇もございましてやや物価修正もいたしましたが、ことしの三月に基準糸価をきめましたけれども、その際は修正生産費が一万二十円でございます。これを一応まるめた数字と申しますか、ということで一万円というふうにきめておりまして、この基準糸価を達成したいといいますか、糸価がその線に行くようにということで中間買い入れ価格を九千九百円ということにしまして、現在、先生のおっしゃいますように市況が相当低迷をいたしておりますので、現在事業団で買い入れを続行をいたしておる、こういう状況でございます。  なお、この基準糸価は、ただいま申し上げましたように四十八年の生産費等を考えましてきめた線でございますので、この基準糸価というものは四十九生糸年度、来年の五月いっぱいまででございますが、これにつきましてはこの基準糸価は堅持をしていきたい。中間買い入れ価格九千九百円もこれを堅持をしていきたいという考えでございます。
  60. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、不況対策についてお伺いをいたします。  先ほどもいろいろお話があったのですが、まず操短をやり、休機をやっておりますので資金が必要になっております。ところがその資金につきましても、もうすでに長い間の不況でほとんどの担保物件が担保に入っておるというような状況になっておるわけであります。それから、実はこの流動資金にいたしましても、たとえば丹後の産地なんかになりますと、問屋との間が二百日の手形のサイトになっておるというような状況でありまするし、西陣では、問屋は手数料を取って委託販売をしておるというようなことですから、生産者はすべて資金を持たなければならぬというような状況でございます。そういうようなことでありまするので、無担保の融資、これがぜひなければならぬわけですが、なかなかそうはいっていないというのが現状でありまして、まず、担保という問題についてどういうふうにお考え願っておるか、これから改善の余地があるのか、こういうことについてお伺いいたします。
  61. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま担保なりあるいは流動性資金の問題についてお話があったわけでございまして、担保につきましては、無担保というわけにはまいりませんので、ケースバイケース企業の実態に応じまして、特に中小企業金融三機関の窓口等において弾力的に対処するように指導いたしておるわけでございます。また、無担保貸し付け制度ワクを拡大するといったようなことで対処いたしておるわけでございます。
  62. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 弾力的に考えるようにということは、担保がなくてもどうしても必要な場合は貸してもらえるというようなことになるのですね。
  63. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 無担保の貸し付けの問題について申し上げますと、これは繊維産業だけではなくて、全体の問題でございますから、対象といたしましては常時雇用者が五人以下の企業、いわゆる小企業者でございまして、これに対する貸し出し限度は二百万円以内、ただし、運転資金につきましては五十万円以内となっております。現在までの申し込み状況、八月十日現在でございますが、申し込み額は百五十七億になっております。第二四半期のワクは三百二十四億ございまして、かれこれその半分程度の申し込みがございまして、貸し付け額は九十二億ということになっております。
  64. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いまお話し願いましたのは、四十八年からできた小規模企業者に対する融資の問題ですね。この融資をやっていただくということは非常にけっこうなことだと思うのです。それで、特に繊維の小さい、零細な業者に対しましては、国民金融公庫の融資をぜひ活用してもらいたいと思うのです。そして、このいままできまっておるワクだけでは不足になるでしょうから、そのときはぜひこれをふやしてもらって、この制度が活用できるようにお願いしたいと思います。  それから、その他のもう少し大きい企業、それについても信用保険法の改正で、繊維倒産関連対象業種に指定をされたわけですが、こういうことによって相当救えることになるのでしょうか。
  65. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいまご指摘のように、繊維倒産関連対象業種としてすでに指定いたしておりますので、この指定によりまして保証限度額は二倍に拡大することになるわけでございます。
  66. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 その次は金利の問題なんですが、公庫融資が大体八分九厘で、商工中金になると九分四厘というようなことなんです。実際は、いま借りるにも担保がないということのほかに、金利がたいへんだということでなかなか借りられないんですね。そういうことから特にこういう不況な、零細なものについて何か新しいことを考えておられるということはないんでしょうか。
  67. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 金利問題につきましては、直接私が担当いたしておりませんので、しかたるお答えはできかねるわけでございますが、最近仄聞いたしましたところでは、むしろ預金金利との関係で貸し出し金利の引き上げという問題が出ておるようでございます。そういった意味合いから、政府機関の金利、現状でも必ずしも安くはないという判断もあるかと思いますが、こういう金利の引き上げの時期においては、この程度に維持するのがせいぜいのところではなかろうか。というのは、これは私の私見でございますが、御趣旨はよく担当の部局にも伝えておきたいと思います。
  68. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いまの金融状勢からそういうことはよくわかりますけれども、こういうような不況なものについて特別の金利の融資制度を設けるとか、そういうようなことが望ましいわけですね。だから、そういう問題についてお考え願いたいと思うわけです。  それから、いままで四月から六月の金融についてはワクをふやすとか、あるいは七−九もそういうことをやってもらったわけです。そうして、これからいよいよ十月に入り、もう年末も近づいてくるというようなことになるわけですので、この年末金融について十分配慮していただくことを同時にお願いしておきます。  それから、問題はいままでの融資についての借り入れ期間の延長でございます。この不況繊維産業についてやはりケースバイケースで期間の延長を考えるんだというようなことになっておるわけですが、みんな不況なんですね。それでケースバイケースでもなかなかやってくれないというのが現状なんです。そういうことですから、こういう不況の産業に対しましては一律に一定期間繰り延べるというようなことはできませんか。
  69. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 既往の貸し付け資金につきましては、一律一定期間繰り延べるという要望は業界からも出てまいっておるわけでございますが、やはり政府資金のたてまえといたしましては、あくまでケースバイケースと、その企業の資金繰り等に応じて弾力的に運用するというのがたてまえ論としてしかるべきかと思います。ただ、現実の問題といたしましては、かなりのものが返済猶予を受けておるというのが実態でございますし、かたがた、都道府県あるいは通産局等を通じまして個別に指導、金融についての相談にあずかるように通牒も出しておりますので、その面から事実上問題は解決していっておるものと考えておるわけでございます。
  70. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そういうように解決をしておればけっこうなんですが、ぜひ一律に、きわめて不況な産地については考えていただくようにお願いをしておきます。  それから、その次は輸入の問題なんですが、この生糸は一元輸入になったわけですけれども、撚糸ですね、撚糸はこれに入っていないわけですね。したがって、生気が一元輸入になっても撚糸でどんどん入ってくるというのでは困るわけです。それからまた絹織物が別に入ってくるというのでも困るわけですね。だから、そういうことですので、特に不況の、しかもこれがきわめて零細な個々の産業であり、そしてまた日本だけが使っておるというような伝統的な産業ですね。日本人だけが消費をしておるというようなものについて、そうしてしかもその輸入する国は、たとえば韓国であるとか、あるいは中国であるとかいうような国から輸入をされる場合にあたっては特別の考え方ができるのじゃないか、かように思うんです。まあ、アメリカとの繊維交渉においてアメリカがあれだけ強硬なことをやったわけですね。日本は、そこまでは日本が自由貿易を推進しておる国だということからできないという立場はあると思いまするが、しかし、そういうような特別のものについて二国間で交渉をして輸入制限をやっていくと、その期間ですね、いつまでもそうしようというわけじゃありません。そういうようなことは考えられませんですか。
  71. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 生糸につきまして輸入一元化に踏み切ったのは、いろいろ事情もございますが、特に特別法に基づいて養蚕農家対策という立場で最終的判断があったものでございます。これに関連いたしまして、より糸、絹織物等について特段の対策を考えたらどうかという御指摘でございますが、やはり数量規制といったような直接的な輸入規制については、十分慎重に対処する必要があるのじゃなかろうかと思います。  と申しますのは、より糸、絹織物についての特殊事情はわかるわけでございますが、ここまで踏み切った場合に、さらにその他の繊維製品、あるいはその他の雑貨製品等にも波及していくおそれがないとは言い切れない段階にございまして、特に国民経済的にも、あるいは繊維産業の将来性をかけても慎重に判断すべき問題ではございますが、さらに昨年の石油危機以来、世界各国の経済が非常に不安定な状態にあるわけでございまして、どこか一国が閉鎖的な動きを示した場合に、他の国がこれにならうと申しますか、そういうきわめて世界的、国際的にもむずかしい情勢にあるわけでございます。さようなところから生糸の輸入一元化に踏み切ったから、直ちにより糸あるいは絹織物に同じような措置をとるということはなかなか判断のむずかしい問題かと思います。  ただ、さような御指摘のような特殊事情はあるわけでございますから、関係の国と政府ベースあるいは民間ベースでよく実情を話し合って、秩序ある輸入を実行していくということが必要かと思います。先ほど申し上げましたように、当面のところ、より糸、絹織物ともに輸入が増加するという気配は見えてはおりませんが、さらに注意深く動向を見守ってまいりたいと、こういうことに考えておるわけでございます。
  72. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 ちょっとこまかい問題になりまするけれども韓国ではしぽりをつくっているわけですね、御承知のように。それで、このしぼりの原料というのは日本から輸出をして、そうしてそれに加工して日本に持って帰るというようなことになっているのでしょうか。それからまた、さっき問題になりましたつむぎですね、このつむぎも原料を持っていって持って帰るということになるのか、あるいは向こうでできました原料でつくっておるのか、その辺はどうなんでしょうか。
  73. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) しぼりにつきましては、大半のものが日本から原反として持ち込まれまして、韓国で加工されておりましたが、最近では韓国原反に移行しているようでございます。つむぎにつきましては、必ずしもはっきりいたしませんが、三分の一程度が現地のものであって、三分の二程度日本からの持ち込み、かように聞いておりますが、特につむぎにつきましては、その糸の織りあるいは染め等について特段のむずかしい技術も必要とするやに聞いております。
  74. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そうすると、韓国からの日本への絹織物の輸入は、生糸に換算しますると四十八年が一万八千俵というようなところですね。そうして韓国からの輸入はしぼりが非常に多いということなんですから、この一万八千俵というのは、それじゃ日本から輸出をして、そうして輸入をされておるというのが多いのでしょうか。
  75. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 最近、韓国でも自分で手がけておるようでございますが、一部のものはこちらから持ち込んでおるようでございます。
  76. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 それで、二国間の交渉の問題ですが、少なくも絹の小幅物だけでも、——これは日本の国内において着物として使うものですね。だから、そういうものだけでも絹織物の輸入を二国間で交渉して入れないようにするとか、何かそういう特別の措置考えてもらいたいと思うんですが、いかがでしょう。
  77. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 法律に基づいて、あるいは協定に基づいてといったような形ではなく、現に絹織物の輸入等につきましては、韓国政府とも話しておりますし、また当方、国内の関係商社等につきましても十分に自粛するように要請いたしておる段階でございます。
  78. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 それから、海外へ設備投資をして逆輸入という問題ですね。これはOECDで、まあ資本自由化ということで、海外へ設備投資をする場合に許可制度にかけるというわけにはいかぬのでしょうが、現在のように日本経済に非常に悪影響を及ぼしておるというような場合に、設備投資が海外に行なわれて、そしてそれがまた逆輸入されるというのでは困るわけです。そこで、そういうことについてすでに措置が行なわれておるのか、あるいはこれから行なおうとしておるのか、お伺いします。
  79. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 海外投資につきましては、ただいまも御指摘ございましたように、OECDの資本自由化コードに従いまして、一部銀行業を除いて、他は日銀の自動許可制、いわゆる自由化をいたしておるわけでございます。ただその場合にも、国民経済に重大な影響を及ぼす場合には事前にチェックをするということにいたしておりますので、繊維部門につきましても、計画によりましてはそれを縮小するように指導するとか、あるいは逆輸入をしないように指導するとかといったような行制指導を現在までやっておりますし、今後ともその方向で慎重に対処していきたいというふうに考えております。
  80. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いままでそういうことをやった実例はあるんでしょうか。
  81. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 大体申し上げて、進出件数の四分の一程度はただいま申し上げたような指導の対象といたしております。
  82. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 それから、これだけ繊維が余っておるわけで、しかし、低開発国におきましては足りなくて困っておると、ぼろをまとっておるというような者もおるわけですね。だから、経済援助として繊維を使いたいという要請は非常に大きなものがあります。それで、通産省としては、そういう経済援助の中へ繊維を入れていくというようなことはお考えになっておりませんか。
  83. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) すでに開発途上国との間に商品援助契約を結んでおります。この場合には、商業ベースで、かりに繊維を対象として輸入商談が成立し、その上で、両者合意の上でその計画に繰り込んでいくというような手続になっておるわけですが、これにつきましては、現実論としていままで必ずしも多くを期待できない状況にございますので、せんだっても業界の調査団が関係の諸国を回りまして、そういった商品援助契約のベースに乗って本邦の繊維製品を輸入するようにということで、いろいろ話しをしてきたようでございますが、かたがた、ある国からは、そういった援助計画にもかかわらず、無償で供与してもらいたいといったようなお話も出ておりますが、これにつきましては政府部内でまだ検討中でございまして、結論を出すに至っておりません。
  84. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 四十分になりましたので、終わります。
  85. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  86. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 阿具根登

    ○阿具根登君 独禁法の改正について御質問申し上げますが、午前中の委員会で高橋委員長から非常に意味の深いことばがありまして、細部まで自分の意見言えないのだ、決定を言えないのだ、こういうこともございましたし、いろいろ疑義もございますけれども、そんな問題はそんな問題として、ずいぶんいままで長い間の新聞公取委員長考え方が報道されております。その報道されたものを一応集約されたものもあります。これが決定と違っておったならば、そこは違うんだということを言ってもらいたい。そうであったならばこうだということでひとつ御答弁願いたいと思います。  私が集めました新聞記事によりますと、大体九本の柱で改正案を考えておられる、こういうことになっておるわけです。その第一の柱が企業分割である。これについてひとつ詳細なお考えを示していただきたいと思いますし、さらに、きょうの新聞では企業の業務提携に対しても規制をするのだと、こういうことが言われておる。これも含めて企業分割に対する委員長考え方を聞かしてもらいたい。
  88. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 先におことわりいたしますが、業務提携についてわれわれの委員会がいろいろ計画しておった、こういう記事が大きく出ておりました。私ども残念ながら何らこれについては関知いたしません。でありますから、どういう根拠に出て書かれたか、そういう点を私問題にする気はありませんが、その事実は私どものほうとしては承知しておりません、かようにお考え願いたいと思います。  なお、独占禁止法の中で企業分割ということが一つ問題になっておりますが、これは典型的な場合を申しますと、一社に生産力なり供給力が集中する、そうしてそれが圧倒的な力を持った場合には、そういう一種の独占状態がもたらす弊害というものはいろいろございます。結局競争がない場合でございますが、特別に、たとえば専売公社のようにはっきり、政府事業でありますけれども、独占でやったほうがいいのだという考え方に基づいた場合は一応別に置くとしまして、そのほかいろいろな事情で独禁法の適用除外になっているものもございます。そういうものは別としまして、一般に競争が実質的にほとんどないというふうな状態のもとではいろいろな弊害が予想される。  そういう弊害に対する規制はいまあるのかといいますと、昭和二十八年の改正以前にはとにもかくにも規定がありましたが——旧八条と申しておりました。現在はありません。そういうことで、そういう状態で現にあるかどうかということについてはたいへんデリケートなことでございますので、あるともないともはっきり申し上げられませんが、そういうおそれのあるものはございます。それに対して、最終的には企業分割することが競争をもう一ぺんさせるということに一番有効な手段であるということが、私どもがお願いしておりました独占禁止の問題研究会におきましても、分割することが競争再現に一番適当な手段であるというふうな意見が有力でございました。そこで、私ども直ちにこれをやったならば、分割をするというふうな考えは持っておりませんけれども、そういう規定を設けることが、そういう一社独占というふうな方向に走っていくのをこれは結局はよくないことであるということをはっきり法規の上で示しております。で、必要とあらば、随時——これはやたらに軽々しくではありません。分割の手続をとることができるようにしておく必要がある、こう考えております。
  89. 阿具根登

    ○阿具根登君 きょうの企業の業務提携についてはこれは知らないのだと、こういうふうにおっしゃるけれども、いまの話から見ても、企業分割のあなたの考え方から、競争をやっておらないのだというようなことになってくれば自由主義経済にこれは反するからというような考え方を述べられておるとするならば、これは企業が業務提携をやった場合も同じことじゃありませんか。生産から販売、技術、情報、すべてこういう点が、これは業務提携ということで抜けられてしまう、当然こういうことも考えておられると私は思うのです。それを私は知らない、新聞がかってに書いたんだ、そうじやないと思うのです。それじゃどういうことになるのですか。業務提携のやつはやっていいんだ、しかし、大きな企業で独占的な競争のないやつは分割させるのだと、これはちょっとつじつまが合わぬのじゃないですか、どういうようにお考えですか。
  90. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私は、その新聞記事を書くもとになるそういう考え方を、公正取引委員会として正式に取り上げて議題にしたことはないと、こういう意味で申し上げたのです。いまのお尋ねのように、業務提携によってのがれられるのは実際は合併なんです。合併を規制しておりますが、それを業務提携という形で実際には合併と同じ効果を来たすようなことをすれば、これは規制いたしますと、こういう考えはすでに持っておりますから、ただあらためて、たとえば記事の中に、私もちょっと見たのですが、二千社を対象に調査をするとかというふうな、大きく書かれるようなそういうことを、あらためていま取り上げている余裕もありませんし、そういうことをした覚えがないというだけなんです。しかし、その業務提携はいいのかというお尋ねであれば、私は、合併のしり抜けになるような業務提携は、これは制止していくつもりでございます。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 じゃ、それでけっこうなんです。おれはそういうことを知らないのだとおっしゃっても、これは新聞で書かれておるように、これを見のがしたら何のために分割をお考えになるのか。これはこれでしり抜けで全部抜けられますよ。だから当然こういうのは取り締まるのだ、当然その対象になるのだと、こうおっしゃれぱ、それで私も納得するわけなんです。そうしないと、結局新聞で書いてあるように、あなたは大上段に振りかぶって、そうしてその正常な姿に直すのだ、正常な競争力を持たせるのだと、こうおっしやるけれども、こういうのがあったんじゃ、これは何にもならない、みんな喜んで業務提携で逃げてしまいます。だから、これができないようにまずそういうのをやっぱり考えていかねばならぬ。公式におやりになったことはないならないでこれはいいですよ。ないならないでいいけれども、これだけの改正を考えられるならば、これがないということがおかしいのです。あなたがやられなかった、やられたは別として、当然これは考えなければならぬことだと、私はそう思う。そうせねばしり抜けになる。  それから、この分割の問題につきましては、通産省は違った意見をお持ちのようですが、通産省のお考え通産大臣にお聞きいたします。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたが、まだ正式に通産省に対して公取のお考えが来ているわけではございません。それで、衆議院の委員会におきましても、参議院の委員会におきましても、各論にわたる点につきましては答弁を遠慮させていただいております。ただ、一般的な感触を言えと言われましたから、午前中申し上げましたようなことを申し上げましたが、これはどの委員会でもそのように遠慮させていただいておりますので、各論につきましては論評を差し控えさせていただきます。
  93. 阿具根登

    ○阿具根登君 もうこの独禁法改正が叫ばれてから相当な時間がたっておる。そして新聞等で取り上げられてからもこれは数カ月、約半年、私の記憶では、新聞考え方を述べておられる。それに対して通産省が相談を受けないから何にもやらないのだ、返事できないのだと、これもおかしいと思う。午前中の討論のように、少なくともこれがいいであろうと、悪いであろうと、少なくともこうすれぱ物価は少しでも下がるのじゃないだろうか、国民の生活が少しでも潤うのじゃなかろうかという問題で取り組んでやっておるとするならば、通産省がこれに対して取り組まないというのはおかしい。しかし、すでにもう骨子はでき上がってしまっておるのです。これはまあ、あなた方が反対されるならばできないでしょう。まさか総理大臣が、通産大臣、大蔵大臣その他が全部反対したやつに、おれは出すのだと判は押さないでしょう。それなら、これだけのものが新聞で出ておるならば、当然その考え方が示されるべきである。大臣は返事されてないけれども新聞では返事がちゃんと載っておるのです。たとえば「麒麟麦酒のように制限的行為をせずに成長した企業の分割は」云々。それからこういうことをやるということになれば、商法改正等もやらなければならぬ、こういうことまでちゃんと載っておるのです、通産省考えとしてですね。  そうすると、大臣は、これについては私は何にも言わないのだ、相談を受けていないから私は知らないのだと、こう言っているけれども通産省考え方として——これは新聞のほうが通産省考え方をスクープされたのかもしれませんけれども、いずれにしても、通産省がそういうような考えを持っておるであろうということが私たちの資料の中に入ってきている。だから、通産省はここで、こういうところでお聞きすれば、私の考えとかなんとかと言われるけれども、大体こういうものを私たちは新聞で見て、ああ、通産省というのはこういう考え方だなというように思っておる。これについて、もしもいま公取で考えておる企業分割が行なわれるとするなら、法律を変えるとするならば、商法を変えなければならないことになるのかどうか、お二人からお聞きいたします。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おそらく新聞が取材をして、通産省考えらしきものを新聞に取材の結果をお書きになったのだろうと思いますけれども、いまのいろいろ具体的な各論については、通産省の中でもそういうチームをつくりまして一々検討して、特にケーススタディーを持ちまして、具体的にそれが適用された場合にどういういいところと悪いところが出るか、こういうのを実地に即して検討している最中なのであります。これは新聞その他で、あるいは高橋委員長の御答弁を隣で拝聴いたしまして、大体方向は見当がついておりますから、そういう点についてはいま検討はさせておりますけれども、その研究の結果、通産省として意見を表明するにはまだ時間がかかるわけであります。  そういう意味で、各論にわたる点につきましては遠慮させていただいておるのでありますが、まあ個人的な感触で疑問点を申し上げますと、たとえば過度の集中というものを分割するというには、それなりの理由もあると思いますし、弊害がある場合にはそういうことも一つの方法であると思いますが、また一面において、われわれが扱っている場合に——たとえば新日鉄なら新日鉄というものがあります。これは過度の集中じゃないと思いますが、ともかく新日鉄というものがあって、これがプライスリーダーみたいな形になって、丸鋼や鋼材の値段をかなり低いところでがんばってやっておる。ところが、弱小企業のほうは上げろ上げろといって、非常にそういう圧力がかかってきているという例がございます。それを新日鉄の力でプライスリーダーとしてずっと控え目に押えさしているという、そういう面もあるわけであります。  それが分割された場合に、みんな中堅企業みたいになっていった場合には、これはやはり上がっていく方向に雰囲気は出てくるだろうし、企業ごとにばらばらにそういうことが行なわれる可能性もあると思うのです。そういうようなケースとの関係はどういうふうになるのであろうか。麒麟麦酒の場合なんかでも、ほかの弱小企業のほうはシェアの関係から見ても大量生産にはかなわない。そういう意味で上げろ、上げろという可能性が非常にある。しかし、大量生産をやって売れているところは、コストのかげんで安いものですから、それでシェアを広げる。そういう自由競争のいいところもあるわけであります。それが分割された結果経費がよけいにかかって、また上がっていくという可能性がなきにしもあらずであります。そういうような面がどういうふうになるであろうか。それを予防するのにどういう配慮が要るであろうか、そういうような問題点も実はケーススタディーとしてはあり得るのです。いまの新日鉄や麒麟麦酒の例は、それがそのまま該当するという意味でなくして、そういう場合も二つの例としてはあるというケースとして抽象的にお考え願いたいのでございますが、そういう点もわれわれは疑問点として研究しなければならぬと思っております。
  95. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) ただいませっかく通産大臣からお話がございましたが、たとえば新日鉄、これは過去に公正取引委員会が合併を認めて、いろいろ批評が多かった問題だと聞いておりますが、そのようなものを、さしあたり私どもの今度の、いま規定しようと思っておる考えの中では分割の対象とは考えておりません。これははっきり申し上げます。そういう程度の、いまシェアとしても三二、三%に下がっているんじゃないかと思うんです。三四%ぐらいから若干シェアが下がっているくらいだと思いますが、いずれにしてもその程度のものは分割の対象に考えることではない。もっとはるかに高いシェアのものを対象に考える。ただし、これを一社だけにするか、あるいは二社がほとんど独占しておるという場合で、実際上競争がないという場合にもするかという点がございますが、いずれにしても、それは一社あるいは二社のシェアというものは相当に高いものであるということで、私どもはそういう規定をつくろうと、そうでないといたずらに経済界に不安感を与え、おびえてばかりいたんではこれは仕事になりませんから、そのようなことがないように十分規定の上でもそういうニュアンスを出すようにしたいと考えておるわけでありまして、私は、企業分割についてそうたびたびこういう手段を用いなくて済むように、合併の規制から始めまして業務提携も含めまして、なるべくそういう状態をなくすると、そして現にその方向へ行っているものについても、ほかの手段をできるだけ使って均衡をはかる。  麒麟麦酒の話など出ましたけれども、これは見方によって逆の見方もできるわけです。非常に一社だけが効率いいと、それはどんどんどんどんシェアが拡大して売り上げが伸びたからいいんですが、他のほうは全く停滞して、シェアが落ちてコストはどんどん上がる。これは非常に劣位にあるといいますか、競争上不利な立場におった場合には、粉骨砕身私は合理化によって何とかがんばっていくと、そして販路の拡張をはかるべきだと思うんですけれども、いまの日本企業体系なんか見ますと、極端な場合には支払いができない場合でも、ベースアップだけは同じに認めてしまうということがありますから、そういうふうなことで、コストが上がってもうどうにも売り値としては高くすることができない、低くすることもできないというふうなものがございます。こういうものはやっぱりゆがんだ体系と思いますが、直ちに私どもはそういうものを、それだからといっていま分割の対象に取り上げるというふうなことではございません。できるだけ弊害を是正する手段を講じた上でのことでなければならないと考えております。
  96. 阿具根登

    ○阿具根登君 お二人の意見がそれぞれ違うようですけれども、私もそう思うんですがね。大臣がおっしゃるのは、一番都合のいいときのことを言っておられるわけです。たとえば新日鉄なら新日鉄、こういう大企業が確かにいまの場合は押えておるかもしれません。しかし、その系列下の下請一般は一体どうなのかというと非常にみじめです。賃金も格差があります。そういうことがやられておっていいのかどうか。またこれが逆な場合はどうか。この市場をほとんど握っておるところが自分の都合で上げる、こういうことが逆な場合は当然考えられる、私はこう思うんです。だからいま公取委員長が言われたように、何もこれがすべてそれをやるというわけじゃないんだと、こういうのを持っておれば極端な場合にこれは使えるんだと、私はこういうふうに解釈をいましたわけなんです。  そうすると、大臣のほうは、これがあったら、極端に言えば角をためて牛を殺すようなことになるというようなことばになるかと、こう思うんですが、しかし、委員長のほうはこれを、たとえば新日鉄なら新日鉄、いま出ましたから、これは一つの架空の問題ですけれども、そういうものをやろうなんては思っちゃおりませんと、こういうことを言っておられるとするならば、何もあったからじゃまになるわけじゃない。これで一つ国民に対する安心感も与えられるというんならば、これはいいことじゃないか、私はこう思うんですが、これはいかがでしょうか。これは通産大臣にお尋ねいたします。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、公取委員会や委員長のお考えがいまどの程度のことをお考えであるか、まだはっきりしないわけであります。そういうしないままに群盲象をなぜるような形でやることはやはり弊害もあります。御迷惑をおかけする向きもあります。そういうような面から、これはやはり事務的にいろいろ質問もし、ためるところをためて、聞くべきところは聞いて、その上に立ってわれわれの考えを正式に申し上げたほうが誤解もなくていいと、いわんや、隣同士で仲のいい二人がすわり合って、そういう理論的な面で角突き合ったような印象を皆さんにお与えするということはなかなか友情を破壊する危険もありますし、あまり得策でないと思うのです。私は高橋委員長を非常に尊敬しておる一人として、ちょっとヘジテートするところがあります。そういう点で御容赦をお願いいたしたいと思うのでございます。
  98. 阿具根登

    ○阿具根登君 まるでよその国の問題を話しているんですね。お互い、いまおっしゃったように仲のいい人たちが群盲象をなぜるなんて、そんなことじゃないでしょう、これは。そして、しかもあなたは、公取委員長と一緒にこんな話をされたことはないかもしれぬけれども通産省は十分連絡をとっておられるはずなんです。また、そういう意見も知らないようだったら役所はつとまらぬと思うのです。だから、政治的にここであなたはそういう発言をされておるけれども、しかし、私たちが持っておる資料によりますと、全部通産省はみんな反対ですよ。  それじゃ、最後にこの問題でお聞きいたしますが、あなたはいまのままの公取のこの法律で——二十八年に変わったこの法律そのままで、これでいいと、こうお考えになっておるかどうか。それから、先ほどの商法の問題も答えてください。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまお答えしました中で、群盲象をなでるということばはあるいは不適切であったかもしれませんので、これは不適切であると思いますから、取り消させていただきます。  それから商法の問題につきましては、私は専門家ではございませんから、これは事務当局から答弁させますが、私が聞いている範囲では、事態によってはやっぱり商法の改正も必要ではないろうかという検討がわれわれの役所の内部においてなされているというようなことを聞いております。それから全般的に見まして、ここ十年来日本企業が非常に大型化いたしまして、ある程度は寡占化の傾向もございます。それから石油危機にかんがみまして、われわれも経済政策その他で反省すべき点も多々あったと思います。そういう意味において、いまここで独禁法を検討するということは非常に有意義であると思いますし、われわれのサイドから見て、この点は必要であると考える点も必ずしもないとは言えないと思います。したがって、そういう点についてはわれわれは積極的に支持したいと思いますが、われわれが危惧を抱いている点については十分御解明を願いたい、そういう立場でおるわけであります。
  100. 天谷直弘

    説明員天谷直弘君) 新聞に出ておりました商法改正の問題につきましては、通産省として商法改正の必要がある云々ということを申し上げたことはないと思いますが、あるいはその取材の過程におきまして、だれかが個人的にそういう意見を述べておるのかどうか、その辺は存知いたしません。商法は法務省の所管でございまして、あえて推察をいたしますならば、商法に企業合併の規定はありましても分割の規定はないというようなことを、だれかが個人的な意見としてあるいは申し上げたことが新聞に書かれたのではなかろうかと想像するだけでございます。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 二十八年の改正の場合はどうだったか、それをひとつお尋ねしますのと、公取委員長に、いま新日鉄の話が出ましたが、これは架空の問題として一つのなにとして出たが、あなたが分割命令も出さねばいかぬというような企業が幾つかあるというようなことをおっしゃったが、それはいまの場合商社をさすのかどれをさすのか、新聞でもいろいろ出ておりますが、公取委員長から伺いたいと思っております。
  102. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) せっかくのお尋ねなんでございますけれども、私どもはこれが法律案になるかならぬか、まずそれが問題でございますけれども、それとは別個にかようにいろいろ御審議願いまして、その過程においてこの分割の問題について具体的な例をあげたという例はないんです。それは今後も私どもそれは慎しまなければいかぬ。というのは、分割をすべきかどうかということについては、ずいぶん総合的な資料による総合判断ですね、縦横十文字に私は十分に捜査した上でなければ、該当するか否かということはうかつにはこれは言うべきこと、きめるべきことじゃない。おおむねこれは分割に該当するとなったあとでも、今度はその後において、それを取り上げた上で十分な調査期間が要る、審査期間が要るというふうに考えております。私はただそういう対象がいま全くないのかと申しますと、それは全くないんだったらこういう規定を入れることに無理をする必要はないんじゃないかという批判もございます。  ただ、この基準というものは私どもは先ほどたとえば新日鉄のような三十何%のものを対象にするというようなことはない、もっとシェアがはるかに高いものを考えているということを言いましたのは、たとえばアメリカなんかの場合には、分割ということを命ずる規定というのはどこにもないんです。要するに、独占を予防するという見地からだけで、独占を予防し、かつ、何と言いますか、抑制すると書いてあるのですが、そういう必要があった場合にはその是正を提訴できるとなっているわけなんですね。裁判所がきめる、もちろん訴えた側が、司法省の側がかくかくの理由によりこれに該当するということでやるわけです。そういう場合には、要するに、一番大事なことはシェアだけではない、シェアも非常に高くなければならない、同時に、すべての競争の面において、その競争が実質的にはないんだと、競争したくても全然競争にならない。ですから、一方の圧倒的な力で押え込まれておって、ほんとうの意味での競争がないんだと、こういう場合にやろうということでありまして、具体的な事例を出すことは非常に弊害だけがあるというふうに思いますので、それは差し控えたいと思います。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 こういうふうにして一条一条尋ねていけば、まるで法律案が出ておって、その法律案を審議しておる、こういうふうになりますし、いままでこんなことはやったことはないんですけれども、まだ法律案になるかならぬかわからぬ、だけど、今日の物価高に対する国民の関心がどれだけ高まっておるか、だから新聞でもこれだけこれを取り上げられるんです。まだ法律案にもなってない、それを新聞でもこれだけ取り上げて、国民に公取というのはこういうものだ、改正というのはこういうことを考えているんだということを私は国民に知らしてもらっておると思うんです。だから、まだ法律案でもないのにこうして一つ一つをお尋ねして、まるでもう法律案になって政府から出されたものに対して質問しているようなかっこうになりますけれども、その点は通産大臣のほうもひとつ、国民の皆さんが何とかして少しでも物価が下がるならばその法はどうあるべきか、国会では物価の問題一体何をやっておるんだろうか、結局は上がるじゃないかということが私は一番国民の不安の種だと思うから、こういう質問をしております。  時間がありませんから次にいきますが、次に、原価公開についてこれは確かにお考えになっておると思うんですが、午前中もちょっと関連質問で質問いたしたのですが、企業秘密事業者の秘密とは一体何だろうか、こう思うわけなんです。それで公取委員長にお尋ねしますのは、四十三条によって、「事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。」こうなっているわけなんですね。そうすると、この原価公開というものは事業者の秘密に属するものであるかどうか、この点をお尋ねしたいと思いますのと、通産大臣公開について、企業秘密があるから反対だと言われましたけれども秘密についてのひとつ御説明をお願いいたしたいと思います。私は、普通秘密といえば、製造過程におけるもろもろの問題が秘密であると思うし、こういう問題は私は秘密のうちに入らないと思うのです。だから、秘密の解明をしていただきたい。そうして必要があるならば、午前中の質問のように、やはりこういう原価公開というのは当然やらなければならぬと私は思うのですが、その点ひとつお二人にお尋ねいたします。
  104. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 若干答弁を簡潔にいたしますが、私ども考えでは、原価というものは原則的には企業秘密とされております。ですが、いまおっしゃいましたように、いろいろ製造のプロセスとかということに伴う技術的な秘密がございますが、これこそがまさにそれは企業秘密というに値すると。原価の場合は、これは、絶対的な秘密と称すべきかどうか。ですから、現在の法律にそういう一般に、他に秘密を漏らしてはならぬ、知り得る事項でも企業秘密は漏らしてはならぬという規定があるのは私は当然だと思って、その中に原価も入っております。であるからこそ、今回法律を条文をつくってやる、ですから、条文をつくってやれば、その限られた条件のもとでは原価の公表はできる。条文をつくらなければ、私どもはできないものだと、こう思っております。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事務当局をして具体的には御答弁申し上げますが、やはり現在の産業を見ますというと、産業秘密の擁護ということがかなり重要な要素になってきておりまして、各企業は非常な関心と注意をもって産業秘密の擁護をやっておるわけでございます。原価というものは、正確に外に出てくるというと、経営戦略あるいは市場の問題、あるいは科学技術、新しい発明、あるいは新品質の開拓や販売の時期、そういうようなものも専門家が見れば察知されるという危険性も必ずしもなくはない場合があり得ると思うのです。そういうようなところ等を考えてみまして、この点についてはやっぱり非常に慎重にやらなければならぬ、そういう一般的な考えを持っておるわけであります。
  106. 天谷直弘

    説明員天谷直弘君) 企業秘密につきまして、通産省の事務当局として企業秘密とは何であるかということを正式に議論し、あるいは定義をきめたというようなことはございません。したがいまして、常識に従って企業秘密とは何であるかということを一般的に申し上げますと、企業であろうと一個人であろうと、プライバシーというのは認められているというふうに考えます。プライバシーを秘匿する権利を持っているというふうに考えるべきではなかろうか。そこで、しかし企業と個人の場合は相違がございまして、企業というのは社会性を持っておりますから、その社会性あるいは公共の福祉との関係におまして、企業のプライバシーがある程度制限を受けるということはやむを得ないことがあり得ると思います。そういう場合には通常の場合は法律、たとえば公共事業規制するような法律によりまして企業のプライバシーが制限されるということはあり得るというふうに考えます。  公共事業につきましては、資源エネルギー庁長官がお答えになると思います。
  107. 大永勇作

    説明員(大永勇作君) たとえば公益事業の場合でございますが、原料をどこから幾らで買ったか、そういう点を公表すべきじゃないかというふうな御意見も料金改定の際に出るわけでございますけれども電気事業、ガス事業ともに油等の原料につきましてはいろいろなところから買うわけでございまして、あるところから、たとえばA社から高く買ったということが出てまいりますと、従来B社からは安く買っていたところも、それもやはり高いところにしわ寄せして上げるようにすぐ言ってくるというふうなことがございまして、なるべく原料を安く買うというふうな見地からは、そういった個々の取引についての、何といいますか、結果というものは、やはり公表しないほうがベターではないかというふうに考えております。
  108. 阿具根登

    ○阿具根登君 皆さんの答弁を聞いておれば、業者の都合のいいように、都合のいいように、こう言っておられるようであって、そのくらいのことわかりますよ。たとえば、油のことを言われたけど、どこから幾らで入れているぐらいは、それは、業者はそんなとぼけちゃおりませんよ。わかりますよ、そのくらいのことは。そういうことを、業者が安いものを買えないようになるからというようなことで、それで皆さんに値上げ申請されても原価を公表もできないということでは、いま当初から言っておりますように、まだ法律案でもないのをこれだけやっておるのは、物価をどうしたら下げられるかという問題に真剣にわれわれは取っ組んでおるからなんですよ。だからこそ多少そういうことがあっても、この際こういうことはやって原価を公表するのだというくらいの気持ちがなかったら、物価をどうして押えていけますか。  これでも私はなまぬるくてできないとも思います。これで万全とも思わない。またこれがいいとも思いません。しかし、いまよりも進んでおるのだ、少なくとも物価を下げるために、一生懸命やろうじゃないかという気持ちのあるときに、業者考え方ばかりをあなた方は言っておられる。通産省は一貫してそうだ。それでは私は、企業の代表だと、こういうように言われてもやむを得ぬ、こう思うんですよ。だから、何もさっきのやつも今度のやつも無理くり何でもかんでも出すというわけには言っておらないわけなんだ。それは企業には、さっきも言われたように技術の問題とかプロセスの問題とかいろいろありますよ。しかし、単純なこういう原価の問題なんかまで隠さにゃいかぬというなら、何にもやることはできない、何にもできないということです。私はやるべきだと思うんですよね。  それから次に、カルテルの価格の原状復帰命令についてお尋ねいたしますが、公取委員長は、私が前に見ておった新聞では、確かに原状復帰だということを言っておられたですな。カルテルをやった場合には原状復帰する命令と、こう言っておられた。それからしばらくたって、これはあなたの諮問機関から中間報告があってからだと思うのだけれども、課徴金の問題が出てきた。そうして、課徴金はドイツの例まで引かれまして、大体三倍ぐらい課徴金を打たにゃならぬ、こういうことだったのです。私は確かにそうだと思ったのです。もうけたやつだけ取り上げるなら、わかったやつが損で、これは何も効果ないですよ。やっぱり罰金取らにゃいかぬですよ。だから、確かにこれはいいと思ったところが、今度最終案のはまだお隠しになっておるからわかりません、私には。しかし、私がまとめた新聞記事によりますと、また最初に戻っておられる。どうもあなたもいま一人で一生懸命苦労しておられるから、風当たりも荒いだろうと思って一生懸命応援しておるつもりですけれども、右にゆれ左にゆれてもらっちゃ困るのですね。だから、ひとつこの課徴金の問題をどう考えておるか、はっきり言ってください。
  109. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) いま、この具体案はまだ公表しておりませんが、その考え方を簡単に申しますと、確かに西独ではカルテルに対して三倍という課徴金がございます。これはそれぞれ国によっていろいろ法体系というのは違うものですから、課徴金という名を向こうでは、これは厳格に訳しますと過料になっちゃうんです。過料というのは何でもないようですが、ばく大な過料になる。それを日本の公取に相当するカルテル庁が——カルテル庁の審決部、これは八部編成からなっております。一つの部は一人の審判長と二人の審判官で成り立っておりますが、これはあたかも行政裁判所のごとき性格を持っている面が多いんです。しかし、それだけじゃございません。とにかく審決部はそうでございますが、ほかの部門もあります。審決部ではそういう行政処分が認められておるんです。つまり三倍というふうな、超過利得といっていますが、この解明はなかなかむずかしいんですが、三倍なんです。私もかつて、あるいはやっぱりそういうことを言ったかもしれません、よく覚えていませんが。はっきり覚えておりません。私は、こういう席で三倍の課徴金を課するということを言ったかどうか、たいへん申しわけないけれども、覚えていませんが、新聞などに書かれたことはあるかもしれません。確かに独禁法研究会でも、相当額じゃおかしいので、倍ぐらいは少なくとも取ってもいいのじゃないかという意見が強かったのですが、そうなりますと結局制裁的な色彩がはっきり出ます。経済違反行為であり、経済法違反行為に対しましてそういうふうな制裁的な色彩を明白にしたものは裁判所でなければ、これは判決で下さなければできない、こういうのが大体法務省の考えのようであります。  なお、われわれ折衝中でありまして、どのように落ちつくか最終的なところは申しかねますけれども、制裁的な色彩が明白に出るようなものは困るのだ、つまり、私どものねらいは行政処分でやりたいということです。公正取引委員会がまずその課徴金を課しまして、もちろん不服があれば審判請求もできるし、訴訟に持っていけるんです。それは訴訟の権利を奪うものではありませんが、第一次的には公取が課しまして、それを受諾すればそれまでなんです。これは告発でやるということになりますと、裁判所でやるのでしたらいいわけですが、民事でやるか刑事でやるかむずかしい問題があるでしょうけれども、おそらく制裁的な意味合いを持つとなりますと、刑事的なものにならざるを得ないということになると、はなはだ実際的な応用の妙に欠くという点がございますから、そういういうことで私は、いまのところそういう色彩をあまりこう濃厚にしたものはむずかしいんじゃないかという観点に立っておるわけであります。
  110. 阿具根登

    ○阿具根登君 私が新聞で見たのと公取委員長考え方はだいぶん変わってきたですな。あなたは言ったか言わなかったかよく覚えておらぬとおっしゃるけれども、私は、いまさがせばここに持っておるんですけれども、あなたが言っておられるのは、たとえば過剰利潤を吸い上げただけでは何にもならないんだ、こういうことをはっきり言っておられる。だから、外国の例にもあるように三倍までぐらいの課徴金を取らにゃならぬ、そして、そのためには億単位のことも出るでしょう、しかし、そういう方々は不平があった場合、いまおっしゃったように裁判に持っていかれればいいのであって、私はやりたい、こういうことをはっきり言っておられるんですよ。数字まで出しておられるんですよ。億の単位まで課徴金を取るところも出てくるだろう、それもやむを得ないんだ、不満のある方は裁判に持っていけばいいんだ、そして超過利潤だけ取り上げたといったのでは何にもならないんだ、そこにほんとうに私はあなたの考え方は正しいと思ったんだけれども、いま変わってきたな、いまの話では。それは違うのですか。今度のあなたのこの改正の骨子にそれは入っておらぬのですか。
  111. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) ただいま残念ながらそのやり方をはっきり申し上げられないんですけれども、しかし、二倍とか三倍とか数字をうたいましても、その中身の点において非常にこの算出が困難であるという方法は避けなければなりません。それは私どものほうの能力の限度がございます。そこで方式は簡単にしまして、実質的には制裁的な要素もあって、カルテルをやってももうからぬで損をするというふうな制裁的な意味が実質的には含まれるようなものを私ども考えている、こういうことであります。
  112. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは次に進みたいと思いますが、さっきちょっと聞き漏らしたんですが、株式の問題で、大きな会社とは資本金が百億円以上とか、また総資産が二千億円以上というようなことも新聞に出ておりますが、これに対しての考え方と、金融機関の株式保有の問題は午前中お触れになったと思うんですが、もう一回聞かしてもらいたいと思います。
  113. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私どもはいまのところその数字は出しておりませんが、まあ当たらずといえども遠からずということでございましょう。相当大規模な事業会社の場合には、これは株式の保有にある限度を設けたいという考えでございます。それは昭和二十二年につくられた際の独禁法が、私は実情に沿わないものがあると思いますが、原則として株式会社は他の会社の株式を持ってはいけない。例外がございまして、はっきり言えば下請企業ですね。だから下請のようなものについては、株を持ってもいいと、こういうことになると思います。つまり、ただし書きつきなんですが、その場合でも商業ですね、はっきり言えば。商品の売買を主たる事業とする会社は除くと。言ってみれば商社みたいなものは商品の売買を中心とするものである。商社のようなものは、これは商品の売買、輸出入であれ国内の取引であれ、商業を中心とする。メーカーじゃないわけです、メーカーを中心としていれば、商社とは言えないと思います。こういうものは、その二十二年の当時では絶対的に禁止になっているわけです。  というのは、下請は要らない、下請会社というものが商業の場合には要らないのだという考え方だったろうと思います。ただし、この当時の法律の立て方に関する十分な解説は、ただいまのところ、さがしても十分得られません。断片的にしか得られません。でありますから、私どもはそれはいまは極端であって、そういうことを言っておったんじゃ実情に沿わないから、ある程度までは認めていいんじゃないか。しかし、それを越えるものについて、たとえば相当巨額の借金をして他社の株式を持つというのは、一体何の必要があるか。結局他社を、まあいろいろな意味があるでしょう、つき合いだという場合もあるでしょうが、一方では支配するということもはっきりした目的としてある。そういうことによって、事業会社も持ち、商社も非常に大きく持つ。で、何となく一つの集団的な競争。ただし、企業集団といいましても、その集団内の会社品物の取り扱いをその商社が独占しているというようなことはございません。それはむしろ一部にすぎないという主張を聞いております。  しかし会社が、事業会社であれ総合商社であれ、お互いにこれは金融機関以外の会社ということばでひっくくれますが、それらが無制限に株式を持っていいというのは、一体いかなる根拠によるものだ。むしろその理由はないのではないか。株式の持たれ合いになりますけれども、そういうものも含みますが、一体、払い込み、これは証券取引法の法の立場からの問題になるかもしれないけれども、お互いに払い込みしても、お互いのお金が行ったり来たりしているというふうなことでは、これは話になりませんから、そこで、こういう問題は別と……。これは証取法の証券市場の問題として考えていただくとして、私のほうの立場としては、ある一定規模以上の会社が他会社を支配するような目的が、初めは明確でなくても、だんだんにそうなってくる、そういうことは私は、公正な自由な競争を促すという意味においてはこれは不都合ではないか、こう考えまして、それに制限もする。  それから、最近になりまして、調査によりますと、上位の株主を金融機関が占めているという例が多くなっております。これは特に都市銀行の場合にその比重は高まっております。こういうことは好ましくないんじゃないか。金融の産業支配。別にこれはどっちが強いと限ったわけではありませんが、借り手のほうがもう借りるだけ借りてしまえば、かえって居直って強くなっている場合もありますけれども、しかし、これは別にしまして、通常の観念でいうと、金融機関は土にあるような感じを一般に持たれている、これだけ金詰まりになる場合もしばしばございますから、そうしますと、これが上位株主を占めるということは好ましくない。それを見ますと一〇%になっている。一つ会社の株式を一〇%以上こえて持っちゃならぬという制限は甘過ぎるんじゃないか、これをもろと低めることが適当である。  一方で、ことに商社がおそらく対象になると思いますが、大口の融資ですね。これは私どもの商社の調べでもわかっているわけですが、非常に大口な融資が行なわれているということにつきましては、大蔵省のほうで私どものほうと意向は全くその点一致しております。融資の面でも規制を加える、こういうことによって、これは金融の健全性ということもあるでしょうけれども、私どもはあまり一社に巨額な金が融資されるということによって、それらのものの今度犠牲となるものもある。融資と株式の両面から規制をするのが適当じゃないか、こう考えております。
  114. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、金融機関の株式の保有制限は一〇%は多過ぎる。新聞によっては五%をこえないように強化する。まあ五%までは言われなかったけれども、大体そういう考え方なんですね。そうすると、またこれは大臣に質問したら大臣はいやかもしれませんが、大臣としては当然こういう問題が出てくれば、相当大蔵省や通産省の意見というものは非常に強いものだと私は思うのです。通産大臣はどういうふうにお考えになっているか、いまの金融問題についてお尋ねいたします。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これらの点につきましては、まだ勉強不足でありまして、いろいろケーススタディーをやらしている最中でございますので、答弁は留保さしていただきたいと思います。
  116. 阿具根登

    ○阿具根登君 もっとこまかいことは後日にしましようし、おそらくきょうの夕刊では公取委員長の決定が出てくると思いますから、もうこのくらいで独禁法の問題はやめたいと思います。  それから、通産大臣に一点だけ御質問申し上げておきたいと思いますのは、エネルギーの問題で、当然これはエネルギー小委員会で詳細はお尋ねいたしますけれども、今日、油の問題が、去年から問題が起こって、石炭の見直しとかあるいは原子力発電所というような問題が出ておりますが、たとえば北海道の例を一つとっても、北電さんが伊達火力発電所をやるといった。そうしたらまだうまくやっていけない。非常にトラブルが起こってうまくいかない。さらに苫小牧なら苫小牧、まだ決定いたしておりませんが、これに火力発電所をつくるということになっておったのですが、いつの間にかこれが北電さんがこれをやるというふうになった。私は当初、伊達発電所は北電さんがやる、しかし、次にできるやつは電発がやる、こういうように理解いたしておりました。いつの間にかこれが変わったようですが、そういうことが一体いいことか、悪いことか。  私の考え方といたしましては、たとえば石炭の問題でも、通産大臣御承知のように、私たちは国内の産業であるし、唯一のエネルギーだから、これをつぶさないようにしてくれと再三国会でもお願いを申し上げた。しかし、いかにせん電力会社が石炭は一トンも使わぬということを明言してしまったのですね。そういう自分の利益だけで、公共性も何も無視して、そうして日本の国内石炭も何もこんなに疲弊さしてしまった大きな原因の一つは、私は電力会社にあると思うのです。それがこの前の電源三法でも御承知のように、六十年までに六千万キロワットの原子力発電所をつくるというようになったのです。ところがその敷地に対しても、非常に一企業では心配だ。なかなか困難。しかもその廃棄物の処理に至っては全くお粗末。これではやっていけぬというようなときに、通産省がその発電所の基地まであっせんして、そうして電力会社にやらせるというような動きがあると聞いている。私は、こういう日本エネルギーを、基本のものをなぜ営利会社にいつまでもやらせなければいかぬのか。特に危険の度合いから、国民の安心感から、将来のあり方から考えるならば、なぜ政府が直接関係している電発なら電発に、この原子力発電所になりあるいは火力発電所、こういうものをやらせないか、そのほうが地域住民も安心するんです。だからその基本的な考え方をひとつお聞きしておきまして、そのあとは小委員会でゆっくり私は質問申し上げたいと思いますが、いかがでございますか。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石炭の問題につきましては、われわれも非常に重要視いたしまして、石炭産業の振興については全力を尽くしていきたいと思っておるわけでございます。第五次の石炭対策を実施いたしまして、いま努力しているところでございますが、昨年末石炭鉱業審議会から提出された中間報告の趣旨を尊重して、石炭の活用をはかるための施策を実施しておりますが、今後の石炭政策については、本年七月の石炭鉱業審議会の報告を受けて、総合エネルギー政策の中における石炭政策のあり方について来月一日に同審議会に諮問をして、検討していただくことにしております。  なお、石炭火力につきましては、北海道並びに九州においてできるだけ早期に着工の方向に進めようと思って、鋭意努力しておるところでございます。この企業形態につきましては、いろいろな観点から検討を加えておりますが、一つには地元の府県等の意向、あるいは電力会社との調整その他も考えながら、総合的に検討しようと思っております。電発を活用するということも私は一案であると考えております。また、電発につきましては、原子力発電の中の高温ガス炉につきまして、この分野を大いに推進していただいたらいいのではないか。大堀総裁も非常にその点については熱意を持ち、研究も進めておるようでございますから、この点についてはわれわれも積極的に協力していったらいいのではないかと考えております。  具体的には長官からお答え申し上げます。
  118. 増田実

    説明員(増田実君) ただいま阿具根先生から電力の今後の発電施設、特に原子力について、これを電発にやらせるということをひとつ考えたらどうか、こういうお話でございます。私ども現在やっておりますのは、すでに実用化が諸外国において行なわれ、安全性についても問題がないとされておりますものにつきましては、従来も民間のいわゆる電力会社にこれを担当さしておるわけでございますが、ただ、新しい技術、先ほど大臣から申し上げました高温ガス炉につきましては、これが将来発電のためのみならず、また、多目的に利用されるということで今後の非常に有望な炉である。しかし、それにつきましては相当事前の研究、調査その他が必要でございますので、これを直ちに電力会社にやらせることにつきましては非常に問題があるということで、現在電発に対しましてこの炉の実用化というものを検討させ、近く実験炉の設置というものを行なわせると、こういうことで考えておるわけでございます。
  119. 阿具根登

    ○阿具根登君 大体わかりますが、本来ならば、原子力の発電所というのは、これだけ別な公団なら公団をつくって政府責任を持ってやらねばならぬ、私はこう思っておるのです。実際、この前法律案が通りましたけれども、その後、たとえば田中さんの郷里の新潟だって、これは問題があってとてもできそうにないのです。だから、こういう心配のあるものを心配のないようにしなければならぬ。これはもうここで私が質問すると、必ず心配ないようにするんだと、こうおっしゃるけれども、ならば、あの青森県の「むつ」の問題でもそうでしょうが。どうします。帰って来られぬようになりますよ、あのままだったら。あれは漁師が言っておったようになってしまったじゃありませんか。だから心配あるんですよ。  そういうものをなぜ利益だけ追求しておる民間にやらせるか。油が安かったら石炭が要らぬ、今度油が高くなったから石炭にやらしてくれ、また油が安くなったら、また石炭が要らぬというのでしょう。公共性も何も忘れて、自分の利益だけ追求しておる一企業にこういうものをやらせるのが間違い。特に原子力の問題等は、今後非常な問題を持っておる、はらんでおる。それを逆に——新聞で見ただけですからきめつけることはできませんけれども、なかなか基地をさがすのに問題だから、多少不便であっても通産省が基地はさがしてやって、そこで電力会社にやらせる。何でそんな甘ったるいことでできるかと思うのです。だから、少なくとも原子力発電については、これはもう一つつくるといえば屋上屋になりますから、いま幸い電発なら電発があるから、電発でもひとつ使ってやらせたらどうか。原子力発電はすべて電発でやらせる、民間私企業にはやらせない、あと処理が心配だ、ということに踏み切っていくべきだと、私はこう思うのです。そうしませんと、少しでももうかれば、公共性も何も忘れてしまって、そしてどんどん手を出してくる、私はこうなると思うのです。  だから、九州も長崎で、今度電発が五十万キロワットですか、二つ、百万キロワットをつくっていただくということで、電発がいま調査しておられるようですが、北海道なんかでも電発がやったら、もっと感情的に国民は電発ならということで、国がだいぶ出資しておるし、国の監督がきびしいのだからということもあると思うのですよ。それを今度は、わざわざまた一企業にすりかえられたというのは一体どういう理由か。  まあ、きょうはいいですから、この次の小委員会で詳細を私はお尋ねいたしますから。何か私の納得できない線がそこにある。だからひとつ、これは私の強い要望ですけれども、せめて原子力発電所くらいは民間にやらせない、廃棄物の処理が非常に危険である、また、途中でも非常に危険であるということでやっていただきたい。強くこれを要望いたしまして、質問を終わります。
  120. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は、独占禁止法の改正案について、あるいはまた中小企業対策について、この二点をお伺いをしておきたいと思います。  午前中からこの独禁法の改正の問題につきましてはるる質問があったようでございますが、いずれにいたしましても、本日の三時から初めて一般的に公表する、こういう公取委員長の発言でもございますし、あるいはまた中曽根大臣も、発表のなされていない、定義のなされていない法案について、細目にわたっては発言を差し控えさしていただきたい、こういうような発言が続いておりますので、私は少し角度を変え、そしていまから先は、この独禁法の改正案が提出をされた時点の論議の討議の大きな資料にしたい、参考にしたい、こういう立場から、少しお伺いをさしていただきたい、こういうように思っている次第でございます。  いずれにしましても、公正取引委員会におきましては、独禁法の改正の作業を鋭意進められておられるわけでございますが、大体構想的なものが十四日の新聞あたりで出ておりますが、最初にお聞きしておきたいことは、この新聞に掲載をされております独禁法改正の要旨にほぼ間違いがないかどうか、これをまずお伺いをしておきまして、そこから質問を進めさしていただきたいと思います。
  121. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私どもの立場としましては、はっきりきょう午後三時に新聞に発表をするわけでございまして、それまでの間は実のところ秘密にしておるわけです。これは作業の関係もございまして、途中でぼろぼろと作業途中のものが外に出るということは、ときによれば誤解を生むことにもなりますから、当然これは秘密がたてまえでございます。そういうことでやってまいりましたが、遺憾ながらいろいろなところから、まあ何といいますか、全く根拠のないような記事とは申しませんが、若干ニュアンスも違います。そういうことでありますので、出てみれば、公共の発表によって、私どもで出すものがそう飛び抜けて違ったものじゃないじゃないかという批判あとからあるかもしれませんが、いまその内容について、新聞記事の内容がほぼ正しいかどうかということについてはいささかお答えしにくい。しかし、私、午前中からずっと先ほどまで考え方というものについては、十分とは申しませんが、相当程度述べておりますから、何らかの点については御承知いただいておるのじゃないか、こう思います。
  122. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの立場から申し上げますと言いにくいといということでございましょうが、いずれにしましても、午前中からのいろいろな質問を通しまして、大体大綱については了解をしたつもりでございます。そういった立場から少し質問さしていただきますが、いずれにしましても、いままでこの独禁法改正についてのいろいろな記事が新聞紙上に出るたびごとに、またその半面、これに対する通産省考え方的なもあがいろいろと出ております。そういった関係各省の感触というものは、これはあくまでも新聞紙上の感触にすぎないわけでございますけれども、反対の意向が非常に強い、こういうことはこの新聞紙上でうかがわれるわけでございます。そういった動きの中から、今回通産省におきましては、いわゆる産業実態調査についてその調査を進めている、こういうことが載っているわけでございますが、この産業の実態調査については、その目的、あるいはまた調査対象、範囲、方法、こういった事柄を具体的にお伺いしたいわけでございますし、さらに、独禁法改正の問題と大きなかかわり合いがあるというふうに推察をされておるわけでございますが、この点について大臣の御答弁を願いたいと思います。
  123. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 通産省では、かねてから物価対策、消費者行政あるいは産業の効率化、その他産業計画全般に資しますために、産業の実態の調査をいたしているわけでございますが、その際、従来とも産業組織の面につきましても調査をいろいろといたしております。最近の事態にかんがみまして、特に寡占的な傾向が著しいといわれておりますおもな業種につきまして、市場構造、市場行動、それから市場成果この三つの面から光を当てまして、あらためて調査をし直しておる、こういう段階でございます。調査やり方につきましては、いろいろ技術的なこまかい問題がございますが、従来あります各種の統計資料をそういう光を当てた面から編成し直して、また、いま申し上げましたような観点からいろろ評価を加えるというふうなやり方で進めておる最中でございます。
  124. 桑名義治

    ○桑名義治君 その問題につきまして、これは一新聞でございますけれども、その結果が大体発表されておるわけでございます。これは通産省として正式には発表してない、こういうようなお答えが出てくるのじゃないかと思いますが、いままでのそういった中で、公正取引委員会の独禁法改正法案に対する企業分割のいわゆる反論的なものが出ているわけでございますが、この実態はどうなんですか。
  125. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 私、その新聞記事どれか存じませんが、従来発表いたしたことはございませんし、また、発表できる段階でもございません、まだ、作業途上でございまして。で、企業分割その他につきましても、意見がましいことは一切申したととはないはずでございます。
  126. 桑名義治

    ○桑名義治君 これは確かに九月十七日の新聞に載っかっているわけです。私は、この問題はあなたもおそらく御存じだろうと思いますよ、そうおっしゃっておりますけども。しかし、この問題は、「首位企業の集中度が五〇%であり、かっ第二位以下の企業と大きな格差のあるもの=写真フィルム、マヨネーズ、ビール、腕時計、自動二輪車、グルタミン酸ソーダ」云々、こう載っているわけです。そうして、寡占化が進めば、進んでいるところはむしろ寡占化がおくれているところよりもこれは非常に価格高騰が低い、だからこの寡占化はそう弊害はないんだというような記事なんですね。これは御存じないですか。
  127. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) その記事は私見ておりませんが、しかし、ただいま先生御指摘の内容でございましたら記憶がございます。約一カ月余り前でございますが、石油危機以前から、石油危機の最中で、一番物価が上がったといわれております三月ぐらいまでにかけまして、かねてから公正取引委員会でやっておられます寡占型業種、それから競争型業種その他五つぐらいの分類がございますが、この分類に従いまして、日銀の卸売り物価指数その他を使いまして、編成をして資料をつくったことはございます。特に発表はいたしておりませんが、私どもがその資料をつくりましたのは一カ月半ぐらい前のことだと思います。あるいはそれがおくれて出たのかとも思われますが。別にそれで評価を加えるということではなくて、いま申し上げましたような客観的な資料に基づいて分析をすれば、こういう結果になっておるという数字は出したことはございます。
  128. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどから私がお尋ねしている独禁法改正の問題とのかかわり合い、関連、これをお聞きしているわけですが、これがお答えがないようでございますが。
  129. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 何しろ大臣がたびたび御答弁になっておりますとおり、独禁法の改正案につきましては、私ども正式の連絡も受けておりませんし、また、わからない点が新聞などを見ましてもたくさんございますので、まだ意見を申し上げることができない段階でございますが、産業政策の一環といたしまして、寡占型業種が特にああいう場合に値上がりが高いのか、そうでないのかということは調べておく必要がございますので、先ほど申し上げましたように、かなり前にそういう調査をしたという実情でございます。
  130. 桑名義治

    ○桑名義治君 では、この調査は大体いつをめどにして完了するのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  131. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 一応のめどは、今月一ぱいぐらいに中間報告ができるようなことを目標にいたしまして作業をいたしておりますが、それで十分な調査ができるとも思いませんが、なお引き続きさらに詳細な資料を、必要に応じてつくっていきたいというふうに考えております。
  132. 桑名義治

    ○桑名義治君 はからずもいま局長のほうからお話がございましたように、現在の日本の産業機構というものが、非常に寡占化体制に入っていると、そのために実態を調査しなければならない、これはいまからの経済政策の大きな一つ資料としたいというようなお話でございますが、そうなってきますと、独禁法の一番の柱は、私は企業分割にあると思う。ほかの課徴金の問題やカルテル行為の問題、いろいろな問題がございますけれども、しかし、もとをなすのは、この企業の形態がどういうふうになるのか、いまから先日本経済というものはどんどん寡占化が進んでくると思いますが、そういった意味からこの独禁法改正に対する反対意見を固めるという資料づくりである、こういうふうに私は考えざるを得ないわけです。どうでしょうか。
  133. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 反対とか賛成とかいうことは、私どもいま一切白紙でございまして、もっぱら現在公正取引委員会のほうで御作成中と承っております案が出ましてから、ゆっくり研究をさしていただきまして、正式の意見をきめたいというふうに考えておるわけでございます。
  134. 桑名義治

    ○桑名義治君 これ以上お尋ねしてもおそらく答えが出てこないと思いますから、方向を変えますけれども通産大臣も先ほどから、企業というものはだんだん寡占化が強まってきたと、こういうふうに言われておりますけれども、では、企業の寡占化に対する功罪をどのようにお考になっていらっしゃるか、その点をまず伺っておきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ功と罪といろいろあると思いますが、罪の場合には、ややもすれば管理価格傾向を帯びてくる、硬直してくる、そうして競争が次第に色あせてきて停滞の気味になってくる、そういう危険性があると、これは学説でも指摘されております。また、功のほうを考えてみますと、能率が非常によくなってきている。これは大型化の結果でございましょうが、原単位の単価が引き下げられてくる。そして、中小企業的な不能率が解消して、量産のメリットがかなり出てくる、そういうような要素もあるだろうと思います。いわばスーパーと小売り商店みたいな関係が多少出てくるだろうと、こう思います。この功罪おのおの持っているところをいかに生かしていくかというところがわれわれ行政の要諦ではないかと思います。
  136. 桑名義治

    ○桑名義治君 この問題について、公取委員長の御意見も伺っておきたいと思います。
  137. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) これは、一般的に申しますと、寡占化というものは、結局ことばをかえれば企業の集中なんです。そして、競争力の弱いものがどんどん落後して、あるいは合併ということも含むでしょうが、合併によらなくても自然に淘汰されて、そして少数の企業市場を支配するような形になる。この場合、確かに規模のメリットというものが、技術的なものを含みますが、私はそれは無視できないと思います。規模のメリッとがあるということは争えない。しかし、じゃ、どこまでも大きければますます大きいほうが非常に効率的かといいますと、そうもいかないものがかなり多いと思うんです。これは、私は技術者ではありませんから、その点断言はできませんが、一般的な話を聞いたところでは、規模のメリットはある段階までは急速に進むわけです。しかし、一定の段階になったときには立地条件、その他いろいろの問題がございますが、たとえば一つのある種の工場を一カ所に全部集約することがメリットでない場合があるわけです。むしろ、一定規模の工場を適地に散在せしめたほうがメリットが高いと、こういう場合もございます。ですから、一がいには申せません。あるところの段階までいったら、その規模のメリットの上昇度が鈍ってくるであろうと思います。  そういうのが原則で、それに対して弊害のほうはかなり助長されてくる。まあ弊害が目に見えてくるということ、これは先ほど通産大臣もおっしゃいましたが、管理価格、——アドミニスタードプライスというのはアメリカでつくられたことばですが、要するに、もう早く言えば姿のないカルテルといってもいいようなものでございます。簡単に同調し得る体制ができ上がるわけで、それらの少数の企業の暗黙の了解によって不当に価格がつり上げられる。しかも、これは同じような調子で同調的にはね返りますから、証拠はないんですけれども、比較的安易に企業の利潤を本位にして形成される価格である。それをお互いに秘密協定でも何でもとにかく守っておりますれば、需要者の側は弱いほうを——弱いほうといいますか、一方を選んで買いたたくというふうなことはできないんであります。そういう点では、価格が非常に硬直的になってくるという点で、価格の上におけるマイナスはかえって強くなっていく。企業の利潤はむしろある程度確保される、こういうふうになってくるんじゃないかと思います。
  138. 桑名義治

    ○桑名義治君 通産大臣公取委員長の大体の御意見を伺いましたが、そういった事柄を一つ基本にしながら、今後これが提出をされた場合には、私たちはまた議論を続けていきたい、こういうふうに思っております。  もとに戻って申しわけございませんが、産業実態調査については、調査が終わった時点では全面的に公表するかどうか。と申しますのは、おそらくこれが明らかになりますと、日本の産業の寡占化というものが非常に大きな日本経済の骨になっている、いわゆる弊害等についてもおそらく赤裸々になるんではないか、明らかになるんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、この調査内容は明快に国民の前に明らかにされる決意であるかどうかお聞きしておきたいと思います。
  139. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、私どもの平素やっております調査活動の一環といたしまして、いまはそういう方面に光を当てて調査を続けておるというものでございますので、特にあらためて発表するということは現在のところ考えておりません。ただし、別に秘密にしなければならないということもございませんので、もし御要望があれば御要望に応じてできるだけの資料はどなたにもお見せするということにいたしたいと思っております。
  140. 桑名義治

    ○桑名義治君 それでは、できるだけの資料というのは、全面的にいわゆる資料を提出するということですか、それとも一部分的にしか提出できないということなんですか、どちらなんですか。
  141. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) くどいようでございますが、何しろ平素からわれわれはいろいろな調査をやっているわけでございます。今回のこの調査も、物価対策だとか、それから消費者行政だとか、そのほかいろいろの方面もコンバインして、産業政策というものはいろいろなもののバランスがございますので、コンバインした資料になっております。それでは、特にこれだけを抜き出して特別に公表するというような角度でつくっておりません。したがいまして、特に企業秘密に属するもの以外は私ども別に隠さなければならないとも思っておりませんし、かといって、あらためてこちらでそういう、たとえば分割がいいとか悪いとかいうことの資料になるという意味で公表するということも考えていないわけでございます。
  142. 桑名義治

    ○桑名義治君 この調査の結果が明らかになりましたら、いまあなたの御発言のように、詳細にわたって必要な事項についてはひとつ発表をするようにしていただきたいと思います。と申しますのは、冒頭に申し上げましたように、企業の実態、いわゆる寡占化の実態、いろいろなそれに対する弊害なりあるいはプラスなり、そういった功罪というものが一応そこで明らかになってくると思うんです。それはすなわち次のこの独禁法の企業分割に対する大きな示唆を与える資料になることは、これは当然なことでございまして、公正な立場からこの独禁法を検討する上においても非常に重要な資料になるというふうにわれわれは考えておりますので、その点はひとつ銘記しておいていただきたいと思います。  そこで、先ほど公取委員長から、独禁法の改正の要旨の云々についてお尋ねしましたけれども、明快なお答えはなかったわけですが、いずれにしましても、朝からの質疑の中で、新聞に載っておりますこの要旨に大体間違いがないというような感触を受けましたので、これに従って少しばかりお尋ねをしておきたいと思います。  この独禁法の改正構想におけるカルテル価格のいわゆる原状回復命令、これがこの項目の中にあがっているわけでございますが、この価格の据え置き期間は、新聞内容では六カ月以内というふうになっておるわけでございますが、大体どの程度一つのめどにしてお考えになっていらっしゃるのか、まず聞いておきたいと思います。
  143. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) この点まだ、そういう点を含めまして、発表直前でありますので、数字まで入れて申し上げることは控えたいのですが、あまり長いことやるということは考えておりません。それはかえって弊害になる。それから、必ず据え置き期間というものを付さなきゃならぬかという問題というものも、これは非常にむずかしい場合がありますけれども、私どもとして常に据え置き期間というものを付するとは考えておりません。それからさらに、価格引き下げ命令そのものも、これは昨年石油ショックで起こったような物価が狂乱状態だと言われるような、そういう状態におきましては、事実上もう毎月のように著しく物価の水準が変わっていくと、こういうふうな激しい動乱のときには、引き下げ命令をしてもそれはほんの一時的なものにとどまって、実態に合わなくなります。ですから、売るほうは売らなくなるし、買うほうは買いあさるとこういうこともありますから、そういう異常事態に対してどれだけ対処し得るかということ、これは私ども、もしそういうことが再び起こるということはないでしょうけれども、かりにあったらどうするか、そのときになって真剣に考えてみたいと思います。  全然手をつけないというわけじゃありません。それはそういう場合でも有効な手段と認めれば、それはもう期間の問題はございますが、引き下げ命令を発動するということもある。しかし、これを考えております背景は、何といいますか、静かなるインフレというのは、これは避けられないにしても、かけ足行進のインフレというものはそうたびたび来ないんじゃないか。いまのように政府が、き然として総需要抑制をとっておるという場合でしたら、特に物は上がるものも多少あるかわりに、片方で下落しているものもあるということでありますから、物価水準が著しく変更するというふうなことは今後も絶対ないとは言えないにしても少なくなる。したがいまして、大体平穏な時期——平穏といいましても、それは多少の好況、不況の波はございます。そういうふうな普通の場合を想定いたしまして、こういう引き下げ命令の条文をぜひつけておきたいという考えでありまして、いまそういう、何カ月かということについては直接のお答えになりませんが、考え方を申し上げました。
  144. 桑名義治

    ○桑名義治君 では、それこそ基本的な考え方でけっこうなんですが、カルテルが結成されたそのときからコスト上昇をする、その分ですね、これは企業の報告によってこれを認めるというふうに考えられるわけでございますが、この認定はどういうふうに計算をなさる予定なのか、そこら辺をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  145. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) この点についての考え方の基本を申します。  これは、原状回復というのは一般の値下げ命令と受け取られがちでございまして、公正取引委員会価格の余分なことに手を出すというふうに受け取られるのは誤解であると思いますので原状回復と言ったんです。ですから、カルテルという違法な行為を行なったものに対してだけそういうものをやるんであって、別に余分なことをするんじゃないといいますけれども、しかし、原状回復ということばに非常に強くこだわるならば、実態と全く沿わない場合でもやるのかという話になります。先ほど私は、場合によっては価格引き下げ命令を発動しないこともあると。それはおそらく課徴金だけにたよることになりますが、そういう場合もあるわけでして、いまのお尋ねのように、コストの面で変化が起こった場合どうするのかという点は、これは形の上ではおそらくそういうものをしんしゃくすることにせざるを得ないと思います。実態といたしましては、カルテル価格というものは、先ほど申したような、あまり極端な場合でない状態を想定すれば不当な値上がり分を含んでおります。これは明らかでありまして、そういうことに対して、これならば通用するはずだという程度価格に引き下げるというふうに考えておりまして、その点ではコストのやむを得ない分も考えるでありましょうが、しかし、それこそある程度辛く設定することは当然でございます。辛く命令しますけれども、だれもがそれじゃ相手にしない、そういう価格を強要するというのは私は本筋を誤ったものではないかと思いますので、そういう点は裁量の問題としていかなければならぬ。もちろんわれわれとしては内部においてガイドライン的な、あるいは内規のようなものをつくって対処して、でたらめにはやりませんが、そういう考えで実情と全く遊離した価格は強要しないということだけは申し上げておきたい。
  146. 桑名義治

    ○桑名義治君 では、通産省のほうにちょっとお聞きをしておきたいんですが、価格の原状回復命令というのは、自由経済の原則という立場から考えますと、前提という立場から考えますと、価格の不介入という、この原則を守らなきゃならぬと、こういうのが通産省としての考え方だろうと思いますし、また、ちまたに聞くところによりますと、公取がこういったいわゆる独禁法の改正をするということは、みずからそうやった自由経済の大前提を破ることになる、自殺行為であるというようなことを考えているという話を聞いておるわけでございますが、この点については、通産省としてはどういうふうにお考えでございますか^原則的に、それをお伺いしておきたいと思います。
  147. 小松勇五郎

    説明員小松勇五郎君) この問題につきましては、ただいま私どもの存じております情報では、判断いたしかねるほどむずかしい問題がたくさん含まれております。で、案が発表になりまして、いずれ公正取引委員会のほうから私どものほうにも正式の協議があると思いますので、その段階で私どものわからない点をよく聞きまして、その上で御意見を申し上げたい、こういうふうに思います。
  148. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は、公取が出してくるといわゆる独禁法改正に基づいて御質問をいましたわけではなくて、こういうことが起こった場合、こういうこの事柄そのものに対する通産省としてはどういうふうにお考えになりますかということを、基本的な問題を聞いているわけです。これとのからみで聞くわけじゃないんです。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般的感触を申し上げますと、公取がおやりになることは、われわれもその精神はよくわかります。そして価格引き下げをやろうと、また、管理価格の弊害をためようとする御努力についてはわれわれも敬意を表しますし、そういうようなお考えについてはわれわれも協力するにやぶさかではございません。私は、そういう点はわりあい淡白に、いいものはいい、悪いものは悪い、そういうふうに割り切っていこうと思います。だから、阿具根委員にお答え申し上げましたように、最近大型化してきている現勢にかんがみて、いまのやり方について検討をする必要があるということも申し上げておるし、必要であるとわれわれが考える場合には、積極的に協力するにやぶさかではない、そういう点も申し上げておるんです。  ただ、われわれは自由主義経済基本にしておる考え方を持っておるその考え方はいいと思っておるわけで、そういうもののよさがためられては、これはかえって価格機能が失われて、物価高になって消費者の迷惑にもなり、ひいては産業活動が萎縮して、それが結局は国民経済全般、あるいは国民生活全般にプラスにならない。そういうことのおそれをいろいろ現場を受け持つ者として持っておるわけでございます。そういう点について危惧を持っておりますから、公取側の御意見をよく聞いた上で、ケーススタディーをいまわれわれのほうはやっておりますから、それと当てはめてみて最終的判断をしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  150. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に、課徴金の問題についてちょっと一つだけお聞きしておきたいと思いますが、新聞に出ておりますこの公取の原案的なものをながめてみますと、課徴金を徴収するようになっておりますが、公取としてはこの課徴金の算定をしたことがあるでしょうかどうでしょうか。
  151. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 課徴金の算定と申しましても、その具体的な事例に当てはめれば、それはそうむずかしくない——むずかしいような、つまり算定できわめて困難であるような方法は避けたいと、こう考えております。それが通るかどうか、この点については私はまだ確言することはできません。そういう考え方でございますが、それでいいのかどうかという点になりますと、いや、非常にもっと厳密にこれの利得を計算すべきだというようなことになってくれば、これは私はたいへんむずかしいし、それからそういうふうにすることがいいのかどうか、多少とも制裁的な意味が入っておっても、その程度のことならば許されるのではないか、こう思いますんで、そういう方式でやればどの場合でも、いずれも直ちに限度額ははじき出せます。裁量する場合にですね、どの程度に裁量するかはそのときの情勢によると。カルテル行為を行なったものに対するいろいろこちらの取り調べの途中の過程におきましても、いろいろ過去の行状におきましても、悪質であるかないかとかというふうなことを多少しんしゃくするのは許されてしかるべきではないかと思います。
  152. 桑名義治

    ○桑名義治君 まだたくさん聞きたいことがございますが、時間の関係もございますので、これが提出された時点でいろいろとまた伺ってみたいと思いますが……。  いずれにしましても今回のこの独禁法改正の要旨が出ただけでも、あるいは新聞紙上でいろいろと記事になって出た時点で、関係各省からいろいろな反論的なものが出ているようでございます。いずれにしましても、この独禁法のこの改正案そのものがいわゆる提出された場合には、日の目を見るまでにはいろいろな紆余曲折あるいは圧力、いろいろなものがあると思いますが、それに対してあくまでも貫き通していくという強い委員長の決意がおそらく私はあると思うんでございますけれども、その決意のほどをお伺いをして、この質問を終わりたいと思います。
  153. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私どもがやっていることに対しまして、確かにいろいろな批判も、それから今後いろいろな方面からの圧力もあると思いますが、できるだけの努力をして、せっかく学識経験者、相当権威のある方々の御意見も十分承った上でつくりつつあるわけでございますから、この機会にぜひともその実現をはかるようにできるだけの努力をしていきたいと、こう考えております。よろしくお願いします。
  154. 桑名義治

    ○桑名義治君 では次に、中小企業対策について少々お尋ねしておきたいと思います。  この問題についても、午前中からるる質疑が行なわれたわけでございますが、現在、物価安定のために、いわゆる総需要抑制政策が行なわれているわけでございますけれども、これは当面どのくらいの期間を考えているのか、これをまずお尋ねしておきたいと思います。私の関知している限りにおいては、この総需要抑制というものが大体、ほぼでもけっこうですが、いつの期間まで堅持するのか、そこら辺がまだまだ明確じゃございません。なぜこういうことを聞くかといいますと、これは午前中からいろいろと御質問が出ておりますように、この事柄によって中小企業、弱小企業が非常な大きな危機を迎えていると、経済の見通しがつかないということから、いわゆる打つ手が考えられないという、そういう困難な立場にあるものですから、大体どこら辺までをめどにしてこの政策が堅持されていくのか、これをまず伺っておきたいと思います。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり政府政策といたしましては、原則的に当分の間は継続されていく、そういう表現で申し上げるよりしかたがないと思います。と申しますのは、やはりまだ一面におきましては、設備投資等に対する意欲も衰えておりません。それで、チャンスが来たらかけ出そうという気配のものもあるわけであります。そういう動向を一方に見、かつ今度は石油の事情等も考えてみまして、OAPECの動勢等も必ずしもそう楽観的なものばかりではありません。十月にはまたOPECの産油国の首脳会議もございます。そういうような面から見まして、この間の紛争についても、パレスチナ問題というものがまだ手がけられていない。一番の基本問題はパレスチナ問題から来て、ハイジャック等もあるわけであります。そういうような情勢全般を見ますと、国際的にはまだきわめて不安定な要因が石油にはあると思って、われわれは需要期がだんだん近づいてまいりますから、非常に深甚の注意をもって見守っておるところであります。もう一回そういうようなことが起こると、一番打撃受けるのはまた日本である、そういう意味においてはあらゆる情報を取りながら、深甚の注意をもって見守っておる状態でありまして、そういう面からも安易に総需要抑制を撤去するという段階ではない、そう見ておるわけであります。
  156. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、やはり経済見通しとしては、当分の間という表現しかできないということでございますね。  そこで、総需要抑制政策がいわゆる物価安定にどういうふうな結果をあらわしたか、これは中小企業としては、倒産という形は明快になっておるわけでございますが、私たちの見たところでは、物価安定というその目的に対しては効果があまりあらわれていないような感触を持っているわけでございますけれども、その点についてはどういうふうに認識をされていますか。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 少なくとも、年初以来続いた狂乱的な動向はおさまったと思います。それで四月以降は原燃料及び賃上げ等を中心にするコストプッシュという形でできてきておりまして、そういう意味において物価の騰勢率は落ちてきております。卸売り物価にいたしましても、月に前月比一%程度、それから小売り物価、消費者物価等については〇・八ないし一前後、そういうところに落ちついてきたのは、やはりそういう総需要抑制ということがきいてきてるんであろう、もしこれを総需要抑制しないで需要をもっと多くしておいたら、土地の騰貴とか、いま土地の値下がりが一部起きておりますけれども、そういうことも不可能であったんではないか、そういうふうに思います。
  158. 桑名義治

    ○桑名義治君 政府考え方としては、一応狂乱物価状態は脱出をした、そして卸売り物価は先月を見ると一%落ち込んだと、一応効果はあらわれてきた、こういう認識のようでございますが、しかしまあ、いずれにしましても個々消費者の実際が、品物を買ってるその状態あるいはその品物状態というものは決して安定をした方向ではないということが私は言えると思うんです。それと同時に、先ほどからいろいろと公共料金値上げ等の問題が出てきておりますけれども、この公共料金値上げはまた物価に大きくはね返ってくるということ、これはまた事実でございますし、そういった立場から考えますと、この総需要抑制の本来の目的である物価安定というものは、まだまだほど遠いものがあるというふうに私は考えているわけでございます。そこで、総需要抑制のための金融引き締めということが長期化になって、まあ中小企業、零細企業は相当な深刻な影響が出ておりますけれども、その実態を、事務局からでもよろしゅうございますが、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  159. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 最近の中小企業の景気の状況でございますけれども、総需要抑制策、それから金融引き締めが浸透するに従いましてきびしさを次第に増しておりまして、中小企業に関する主要な経済指標は悪化の傾向にございます。たとえば生産状況でございますけれども、昨年の暮れから前月比が毎月生産が下降状況にございまして、ことしの四月以降は去年の水準を下回る状況になっております。それからそれの裏返しといたしまして、在庫は二月以後毎月増大いたしておりまして、在庫率指数で見ましても、六月の水準ではドル・ショックのあとの昭和四十六年の十−十二月ごろの非常に在庫の多かったころの在庫率をさらに上回る状況になってまいっております。  倒産状況でございますけれども、ことしに入りまして三月に千件をこえる倒産がございましたが、その後も九百件あるいは八百件と高水準に推移をいたしております。業種別に見てみますと、四−六月ごろまでは建設業、それから繊維業が不況の一番大きな業種でございましたけれども、その後さらに自動車、家電等の出荷の不振を反映いたしまして、こういった機械部門の下請あるいは部品関係、それから建設関係の着工の不振を反映しまして製材業あるいは合板業あるいは家具、それからタイル、陶磁器といったような業界、それから輸出の不振を反映いたしまして金属洋食器でございますとか陶磁器等の雑貨関係、こういうものも不況ショックが強まってまいっております。  このように、金融引き締めなり総需要抑制策が浸透していく中で、中小企業事業活動はきびしい状態が当面継続するのではないかというように私どもとしては見ておるところでございます。
  160. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまお答えの、いわゆる倒産件数についての資料というものは、おそらく負債額一千万以上を対象にしたんではないかと思います。そこで私が特に申し上げたいのは、それよりもまださらに零細な企業が非常に大きな比重を占めているということです。その一千万以上のところではなくて、いわゆる小さいところの倒産件数、これを合わせればまだまだこんなものではない、一千件ぐらいのものではないと、こういうように私たちは見ているわけでございますけれども、そういった一千万以下で倒産をした数字、これを皆さん方政府としては把握をしているかどうか。そこまできめのこまかい行政というものが非常に私は今後また望まれてくるんだ、こういうふうに考えているわけでございますが、どうでしょうか。
  161. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) ただいま先生のお話のように、一千万以上の負債額のものにつきましては、東京商工リサーチ、あるいは帝国興信所等が毎月の倒産統計を発表をいたしております。それより小口のものにつきましては、私どものほうで東京商工リサーチに依頼をいたしまして、東京の二十三区、それから大阪、広島の三地域でモデル的に調査をいたしておりますが、それの数字によりますと、この三つの地域で三月が六百二十件、四月が五百九十件、五月が六百六十件、六月が五百二十件というような状況でございまして、前年が大体五百件前後でございますので、やはり相当倒産件数はふえておるように見ております。
  162. 桑名義治

    ○桑名義治君 三地域についてのモデル的な調査でさえもこれだけの数字があがってきているわけです。そうしますと、全国にまたがる数字を推定すると、ばく大な数字にあがってくるんじゃないかと思うんです。ところが、国民生活に最も密着したいわゆる商業活動、企業活動というものは、こういうところが私は一番見直しておかなければならない重大な点ではないか、こういうふうに思うわけですが、今後こういった零細な企業に対する対策というものを皆さん方はどういうふうにお考えになっておるのか。また、今後の倒産の動向についてはどういうふうな見通しを立てているのか、この辺をまずお伺いしておきたいと思います。
  163. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) こういった金融引き締めのあおりを受けまして、まじめに働いております中小企業倒産等のうき目を見るということは絶対に避けなければならないわけでございますので、私どもといたしましては、特に政府系の三金融機関を動員をいたしまして、つなぎ資金の金融につきまして万全を期しておるところでございます。それで、もともとの貸し出しワクを前年度に比べまして今年度は二割増加させておりますが、それでも足りない様子でございますので、四−六月に千五百億円の緊急追加をいたしましたし、また、九月の六日に当面の施策としまして千億の貸し出しワクの追加をいたした次第でございます。また、特に経営が著しく悪化しております中小企業者につきましては、既往の債務の償還猶予につきましても配慮するように、政府系機関につきまして指示をいたしております。  それから、民間の金融機関につきまして、中小企業救済特別融資制度というものを銀行にお願いをしてつくりまして、通常よりも相当安い金利で、特に不況色の強い業種に特別融資をいたしております。これまでにネオン業、地方ガス、中小ガス、それから繊維建設といった部門に約五百四、五十億の融資を行なっておりますが、さらに今後、ただいま申し上げましたような機械の部品、下請、それから製材、合板といったような業種にこの中小企業の民間の特別融資を適用してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、ことしの春の通常国会で中小企業の信用保険法の改正をしていただきまして、不況業種の指定をいたしますと、その業種につきましては、いわゆる信用保証と申しますか、信用保証協会が保証をいたします場合に通常の場合の倍額まで保証を受けられると、こういう制度を設けたわけでございますが、それの活用をはかりまして、不況業種を指定をして金融を受けやすくするような措置をとってまいりたいと、かように考えております。
  164. 桑名義治

    ○桑名義治君 その倒産の中のおもなるものは、先ほどお話がございましたように、建設業界、あるいは繊維業界というものが大きな比重を占めているわけでございますが、まずそういった意味から、繊維業界については先ほどからいろいろと質疑が行なわれたわけでございますが、この問題をさらに私もちょっと取り上げてみたいと思います。  たとえば、私の国元は博多でございますけれども、先日来から非常にそういった繊維業界が不況に落ちているということで、博多織あるいは久留米がすり、こういったところをたずねてみたわけでございます。博多織の一番大きな製造業者で、約二百五十人ばかりの従業員をかかえておるある工場でございますけれども、八月の十五日から約一カ月にわたりましてつくった製品が全部ストップされておる、出荷ゼロという現状に落ちておるわけです。その会社は売り上げ金が一カ月約一億円でございます。そしてさらに、きのうおとといから検討されているのは、約一カ月にわたりまして、操業を停止をするという事柄が業界の中で非常にいま真剣に検討されているのが現状でございます。そうしますと、この二カ月間だけで一つ会社を取り上げてみましても、約二億円の足が出るということになるわけでございますし、操業を停止いたしましても、結局、従業員に対する賃金というものはやはり七〇%、八〇%というものは払っていかなければならぬ、行く先これがもう一、二カ月続けば完全に倒産をしなければなりません。言うならば、博多織は日本の織物企業の中から消えてなくなる、こういう状況の中に完全に追い込まれてしまいましたというふうに博多織の業界では言っているわけでございます。これは、先ほどから長官が言っておりますように、ただ金融、いわゆる融資の面だけで解決のつく問題ではないということなんです。  で、まあ、中小企業対策といえば一番中心になるのは、皆さん方が口で政策的にお述べになるのは、たいていがまず融資の問題が表に出てくるわけです。この融資の問題は、久留米がすりにいきますとものすごい滞貨があります、実際に。だから、彼らが言うには、融資はもう幾らもらってもだめだ、返すめどがない、とするならば、これはつぶれる以外に手はありません、こういうふうにその現状を述べておりました。こういった現状をもう一ぺん、単なる数字の上だけではなくて、三割操短とか四割操短とかいうことではない、もう全面的な操業停止、これを検討しなければならない羽目に追い込まれている。しかも、いままでのつくった品物は全部出荷はできない、出荷ゼロという現況にあるということをお考えになっていただいておかないと、これはたいへんなことになると思うんですが、こういった異常なまでに追い込まれた地域のこういう伝統的な特産物については、これは特別な措置を私は講ずる必要があるんじゃないか、そうしなければこの日本のいわゆる伝統的な産業が、博多織なら博多織が完全にこの地上から消えていってしまうという実情にまで現在は追い込まれているという事実でございますけれども、これに対して通産当局としてどういうふうにお考えになりますか、お伺いをしておきたいと思います。
  165. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま博多産地を中心にして繊維不況についてお話があったわけでございますが、御指摘のとおり、融資だけでは解決のつかない問題があるかと思います。ただ、これも先ほど来質疑がかわされております総需要抑制策と申しますか、それに関連する金融引き締め策というものを当面堅持せざるを得ないという立場からいたしますと、現在の繊維不況の原因として考えられます消費者の買い控え、あるいは問屋、商社の金融逼迫によるところの中間流通需要の減退、こういった原因がやはり撤去し得ない状況にあるんではなかろうかと思います。さようなところから、金融だけではという御趣旨でもございますが、やはりセカンドベストとして減産資金あるいは在庫手当て資金について、先ほど中小企業庁長官からもお答えがありましたように、政府機関中心として資金融通の道をはかっていくというのがやはり当面の対策としてはやむを得ないのではなかろうかと、かように考えております。
  166. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどから皆さん方が、こういった中小企業、特に繊維業界に対する対策をお述べになっていらっしゃいますが、現実にはそういった事柄では救えない業界もすでにあるということでございます。だから、そういった立場で緊急的な特別な措置はとれないかということなんですが、どうでしょうか。
  167. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 緊急な措置として先生が具体的にどのようなことをお考えになっておられるか、非常にむずかしい問題だと思います。たとえば、積極的に需要の開拓ができないものであるならば海外援助物資に活用するとか、あるいは国として買い上げられないかといったような問題もお気持ちとしてはお持ちではなかろうかと推察するわけでございますが、ただ、国が買い上げるということにつきましては、これは繊維も非常に不況色の濃厚な業種でございますが、このところその他業種につきましても、やはり一様にさような不況の深刻化を見せておるわけでございまして、かたがた、自由主義経済をとっている限りにおいてすべてそういったものを国が買い上げるということは、やはり本来のやり方ではないのではなかろうか、かように考えるわけでございます。ただ、海外に持っていく問題につきましては、これはへたにストライプがかかって、そのために安輸出をするということになると、また別途の問題を引き起こすわけでございますが、すでに開発途上国との間におきまして商品の援助契約を結んでおりますので、そういった前提としてコマーシャルベースで話のついたものはそれに乗っかってくるということでございますが、そういった、どちらかといえばコマーシャルベースを前提とした商品援助の契約に繊維品が多く対象として繰り込まれるようにするのも一つかと思います。かたがた、一部の国から無償でというような話もございますが、これにつきましては、まだ政府部内で検討中であって結論が出ておりませんが、幸いにそういう話がつけば幾分なりとも先生のおっしゃる特別措置、緊急措置に沿い得るかと考えますが、なかなか一つの方法ですべてを解決するような方法が見当たらない。少なくともつなぎに金融でめんどうをみていぎだいというのが現状であるわけでございます。
  168. 桑名義治

    ○桑名義治君 繊維不況というものは、いわゆる総需要抑制という一つのあおりもあるかとも思いますが、ここ数年間における繊維製品の輸入というものが著しい増加をたどっていることも、これまた一つの大きな要因になっているんじゃないかと思います。昭和四十五年度に約十三億ドル、四十七年度約十八億ドル、昨年は倍増して四十億ドル、こういう勢いでいわゆる繊維輸入製品というものが増加をしているわけでございますけれども、こうやった事柄が一役買っているんじゃないかというふうにわれわれは考えるわけです。そこで食糧問題については、国内の需給をどの程度にするか、そういう一つのめどをつくりながら食糧政策は立てていかなければならぬわけでございますが、繊維についても国内の需要をどの程度に押えるか、その需給計画というものが立てられないものだろうか、こういうふうに私は考えるわけでございますが、どうでございましょうか。
  169. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 御指摘の点は、繊維について自給率をどう考えるかという問題につながるかと思いますが、通産省といたしましては国内産品につきましてどの程度まで自給率を高めるか、あるいは維持するかといったような目標設定はいたしておりません。ただ最近の近隣諸国、発展途上国における繊維産業の成長ぶりからいたしまして、やはり傾向的に輸入は増大するのではなかろうかと考えるわけでございますが、これに関連いたしまして、昨年の秋に繊維工業審議会から答申が出ておりますが、その答申の中の補足資料といたしまして、五十三年の輸入量は三十八万九千トン程度になるであろう、これは糸換算でございます。といたしますと、その時点におきまして自給率八〇%、輸入比率は二〇%になる、かような数字が出ております。  それから、ただいまも御指摘になりましたが、四十八年におきまして原材料——綿花、羊毛といった原料も含めまして繊維輸入が急増いたしております。これにつきましては、やはり昨年は特殊な事情があったのではなかろうか、非常に上期、特に春ごろから需要が顕著になった、あるいは円高基調に推移しておるといったような一時的な特殊事情もその原因になっておるかと思いますので、これの相場、特にこの四月以降輸入の動向は鎮静化を示しておりますので、昨年の輸入というのは一時的な原因も非常に影響したところのものであって、必ずしもあのレベルで推移するものとは私たちも考えておらないわけでございます。ただ、近隣諸国との関係からいたしまして、今後ともこの十月からスタートいたします新しい構造改善計画、いわゆる知識集約化産業になっていくということを真剣に進めていかなければ、自給率はなかなか維持できないと申しますか、輸入の増勢に拍車をかけることになるといったようなところから、官民ともに新しい構造改善に積極的に取り組んでいく、これの成否が自給率の高低をきめていくものであるという式のもとに真剣に取り組んでいくべきかと考えております。
  170. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間が来ましたのでもう一問でやめさしてもらいますが、このように中小企業、弱小企業というものが総需要抑制というこの政策のあおりを食いまして非常な危機に瀕しておることは事実でございますが、とりわけ年末についてはこれはたいへんな事態が招来するのではないか、こういうふうにうかがわれるわけでございますが、今後の問題は、年末にかけて相当の資金需要というものが予想されます。政府は年末の資金対策をどういうふうにお考えになっているのか。昨年は、三機関の年末のワクとして四千億余円の融資のワクが増ワクが行なわれたわけでございますが、ことしはそれを上回るものを用意する用意があるのかどうか、これをまず最後にお伺いをしておきたいと思います。
  171. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 総需要抑制策を進めていくにあたりましては、不当に中小企業にしわ寄せがこないように、十分中小企業配慮して進めることが必要かと存じます。そういう意味合いにおきまして、今後の情勢の推移を注目いたしまして、必要に応じまして中小企業に不当のしわ寄せの出ないように、できるだけの配慮をいたしたいと考えておりまして、例年やっております年末金融と申しますか、三機関の追加につきましても、今後の情勢の推移を見て十分配慮してまいりたいと考えております。
  172. 桑名義治

    ○桑名義治君 十分配慮じゃどうも心配でしょうがないですが、昨年度を上回るだけの準備ができるかどうかということをまず伺っておきたいと思います。
  173. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) これからの推移によりまして検討いたしますので、どれくらいの規模になりますか、まだ現段階ではちょっと判断ができませんけれども、最近のこの不況の浸透度合いからしますと、相当額の追加が必要であろうというふうに見込まれるわけでございます。
  174. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 家庭灯油の件についてお尋ねをしたいと思います。  去る九月四日の参議院の物価特別委員会におきましても、一時間にわたりまして質問をいたしておりますから、特にその後の情勢などを踏まえまして、ポイントにしぼってお答えを願いたいというふうに考えます。  私はきのう、稚内の最果ての地に行ってまいったのでありますが、御案内のようにもう灯油問題は、北海道の場合は需要期に入っておりまして、すでに石油ストーブは、北海道ではほぼ八〇%のストーブはつけられているようです。稚内ではっけられているというよりは一年じょうついているという現状でございまして、いまなお五百三十万の道民が標準価格が幾らできめられるのか、いっきめるのかという問題については重大な関心を払われております。  そこで私は第一点、最初にお伺いしたいのは、八月二十八日の衆議院物価特別委員会、この間の九月四日の参議院物価特別委員会でも関連して質問をしておるのでありますが、衆議院の物価特別委員会では中曽根大臣が社会党の松浦委員の質問にお答えをしまして、六百五十円という、すでに今日上がっているいわゆる実勢価格についてどう考えるかという質問をしておるわけでありますが、この上げ幅の判断については、やはり私の感じとしましては、六百五十円というのは上げ過ぎであるという感じを持っていますということを明確に答えています。さらに九月四日の物特における楠政務次官の私に対する答弁は、新標準価格につきましては六百三円を目安にひとつ積極的にベストを尽くしたい、こういう答えが出されました。この点について私は、現状の北海道の灯油価格の趨勢はどういうふうに通産省側としては把握をされているか、これをまず第一点にお伺いをしたいと思います。
  175. 増田実

    説明員(増田実君) 現在の北海道の灯油価格につきまして、これは北海道庁の消費生活モニターからの報告が来ておりますが、十八リットル入りの一かん、八月十五日現在でございますが、配達料込みで六百五十八円という報告が参っております。なお、これにつきましては一応いろいろ価格がまちまちでございますので、その報告の内訳を申しますと、いま申しました十八リットルの配達料込みでございますが、六百円から六百五十円が五〇・七%、六百六十円から六.百九十円が三〇・七%、それから七百円以上というのが一八・六%という報告を受けております。これにつきましては、私どものほうも通産省のモニターを動員いたしまして現在調査を開始しておる、こういうことでございますが、いま御報告申し上げましたのは北海道庁の消費生活モニターからの報告でございます。
  176. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま北海道庁のモニターの調べが出ましたけれども、私は北海道生活協同組合で調査をいたしましたデータを基礎にしてこれから申し上げたいのでありますが、六月十五日現在の北海道における灯油価格というのは六百円から六百五十円台というのが大体七〇%を占めております、生協の調べでありますが。それが八月十五日現在に至りますと六百五十円から七百四十円台が逆に七二%を占めている、これは実際に生協が扱っているわけですから、そういう調べが明確に出されております。そういたしますと、今日の段階では六百円から六百五十円台というのが六百五十円から七百四十円台にすでに値上がりが肩がわりをされている、こういう実は趨勢になっているわけです。言うならば、近く政府が出されようとする標準価格に対しまして業界がデモンストレーションをもって高値価格標準価格としてきめさせよう、こういう圧力的な背景というものがそういう趨勢になってあらわれてきている、こう判断せざるを得ないわけです。そういう意味で、私は大臣にお伺いしたいのでありますが、こういった傾向に対しまして大臣としてどういう考え方のもとにこれから灯油問題を、標準価格をきめていこうとしているのか、この点をまずひとつ考え方からお伺いをしたいと思います。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 灯油は冬家庭における必需品でございますから、できるだけ安目に、長期的に安定させたい、そういう考えに立ちまして標準価格をいずれきめたいと思っております。現在いろいろの実勢を調べておりますが、北高南低と申しますか、北海道は高いが九州や沖繩へ行けば安い。これは気候のかげんで当然であります。そういう情勢を見まして、われわれとしてはできるだけ原価査定した考えをもちまして低目にきめるようにできるだけの努力をしていきたいと思っております。
  178. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 私は、いまのできるだけ安く押えるために努力をしていきたいという大臣答弁は、前回もそれなりに政務次官から答弁を受けておりますからあれなんでありますが、四十九年九月九日のこの間の毎日新聞の朝刊に、「配達込みで七百円台」、「通産省下旬にも新標準価格」という見出しで出ております。配達料込みで七百円台、こういうのが出ておるのでありますが、私はどうもこの点が、この前にも質問いたしましたところ、政務次官もはっきり答弁をしておるのでありますけれども、ことしの八月に価格凍結解除されて、いま新価格交渉が石油会社と大口需要家の間ではかなり進んでいますが、ナフサ、C重油、こういう大量に使っている石油化学、鉄鋼、電力業界、こういった力が強くて、製品がだぶついているために、これらの産業用の油種の大幅値上げはむずかしいという状況であるとはっきり書かれております。一方、灯油の卸値だけは、冬場の需要期を見越して一足先に一キロリットル二万五千三百円と政府がきめたわけだから、産業資本には甘く、庶民にはきびしいという批判は筋が通っているという指摘をされております。  この点についてエネルギー庁長官にお伺いしたいのでありますが、現実の問題として標準価格、先ほど私北海道を指摘しましたように、道はモニターで一部より見ていないわけです。生協というのは全体の商品を全部ほとんど扱っております。こういう面からの実態。現に稚内の最果ての地に私が行ったときには七百三十円、これはきのう現在の教字ですから。こうなってまいりますと、私は理屈を越えて、やはり通産省というのは当時きめた二万五千三百円、こういうものに対してほんとうに庶民のことを考えるのであれば、そして政策料金と言っているわけですから、政策料金であるならば私はずばり申し上げて、今日の段階では六百円を切るという行政指導が、この前はベストを尽くしたいということでありましたけれども、実際は行政指導がなされているとすれば、六百円台を割っていなければならないはずだ、あるいは六百円こえても六百三円。ところが現実はやっぱり六百五十円から七百四十円ということになっているわけです。これは一体どういう行政指導をなされているのか、この点について大資本のほうに、産業資本のほうには甘く庶民にはきびしくという、こういう批判を受けることも免れないのではないか、北海道の実態はそうですから、この点についてひとつお伺いしておきます。
  179. 増田実

    説明員(増田実君) お答え申し上げます。  まず、灯油の価格、元売りの価格が現在二万五千三百円になっております。これがほかの油種に比べて非常に高いんではないか、そういう議論も一応なされておりますが、これについてまず御説明申し上げたいと思います。  現在の二万五千三百円といいますのは、これは工業用灯油とは二千円の差をあけて低くしてあるわけでございます。この二万五千三百円は現在軽油及びA重油と同じにして、これは先生御存じのとおりでございますが、過去を見ますと、従来は灯油の価格は軽油及び重油より相当大幅に高くなっておったわけでございます。これは過去の数字を申し上げて非常に恐縮でございますが、たとえば昭和四十五年の十二月、軽油はキロリッター当たり九千五百円、A重油は九千六百円、このときに家庭用の灯油は一万二千百円であったわけです。  それから、四十六年の十二月も大体同様でございますが、一応正確を期すために数字を申し上げますと、軽油が九千八百五十円、A重油が九千八百円、それで家庭用灯油が一万八百円。若干格差が縮まっておりますが、やはり依然として高い。四十七年の十二月をとりましても軽油が九千八百円、A重油が九千六百円、家庭用の灯油が一万一千百円、それから工業用の灯油のほうが九千七百円ということで、いまるる数字を申し上げましたのは、従来、油種によりましていろいろ価格が違うわけでございますが、その中におきまして家庭灯油というのは軽油及びA重油より割り高であるというのが従来の実績であったわけです。これに対しまして、私どもは家庭用灯油というものが民生に直結する重要な生活物資だという考え。それから原油が、これはアラブがきめたわけでございますが、四倍に値上がりした。そのはね返りをできるだけ低く、家庭生活に与えないということで非常に強い行政指導をいたしまして、石油元売り業者に対しましては、軽油、A重油以上に絶対上げるなということで二万五千三百円に六月一日から押えて、それで、これにつきましては八月の十八日から一応ほかの石油価格につきましては凍結解除いたしておりますが、家庭用灯油につきましては、この元売りにつきましては依然として二万五千三百円で指導価格を維持しておるわけでございます。  それから次に、これが小売り価格にどのようにはね返るかということをまた数字をあげてちょっと申し上げたいと思いますが、二万五千三百円の元売り価格を、これは十八リッターで換算いたしますと四百五十五円になるわけでございます。その四百五十五円で元売りから出ましたものが途中の特約店とか、それから販売店、それから薪炭商とかガソリンスタンドその他を経由いたしまして、従来はこれは三百八十円の標準価格にいたしておりましたときに、この流通経費を百四十八円と計算しております。その流通経費を、灯油の元売りの価格が二万五千三百円に上がりましても、それをそのまま横ばいにするということで計算いたしましたのが、先ほどの四百五十五円にプラス流通経費百四十八円、六百三円、こういうことになるわけです。そこで、六月に一応標準価格をはずしたわけでございますが、指導といたしましては、流通経費については従来のとおり、つまり特約店あるいはガソリンスタンドその他におきます販売経費について、従来のとおりでということで指導いたしましたのが六百三円になるわけでございます。それで、ただこれにつきましては、薪炭商にいたしましても、あるいは特約店にいたしましても、個々の人件費が相当上がっております。これは一般的に上がっておりますのに、ここだけ上げないわけにまいりませんので、これの分をどこまで見るかということが今後の標準価格の決定の要素ということになっておるわけでございます。
  180. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 これは日本生活協同組合の神奈川県下の元売りと直接取引が成功したということでわれわれ実態把握をしておるわけですけれども、この動向を見ますと、大体すでにもう五百七十円台から五百五十円台で売られているんです。こういうことで入手をしてある程度そういう価格の見通しが立っているとしたら、通産省が今度新しく出される新標準価格は、いまエネルギー庁長官見解によると、これからの見通しによると、六百三円プラス人件費アップということになれば、二十円なり三十円なり上積みされるということになるんじゃないですか。しかし、結果的には実際に売られている、神奈川県下で直接取引をして、こういう五百七十円なり五百五十円なり落ち込んでおるとしたら、その最低の落ち込みが——大量に使う北海道、ドラムかん十本から十五本ですよ。一冬十万円ですよ、このいまの価格でいくと。こういった状況から判断してみて、私は、やっぱり結果的には業界の言い値ではないのかと、それが新標準価格となるのだったら、何もあえてきめる必要がないではないかと、こういう答えになんるんですよ。この点についてもう一回お伺いしたいんですが、この間は答弁の中で、九月中旬にきめますということだったんです。これは別にして、後ほど大臣に最後の詰めをしますけれども、いまエネルギー庁長官が言っておることは矛盾しているんじゃないですか。この点についてもう一回はっきりお答え願います。
  181. 増田実

    説明員(増田実君) いま先生のおっしゃられましたように、一部のところでは六百円を切っている価格の取引が行なわれております。これは先ほど大臣が申し上げましたように、北高南低と申しますか、神奈川県にいたしましても、またそれより南のところにいたしましても、現在家庭で、北海道と違いまして、まだ石油はたいておらないわけでございます。  それからもう一つ、これも対馬先生よく御存じのように、現在、石油が非常に販売が不振でございます。そのために製品のタンクというものは入り切れないぐらいに入っているということで、まあ不需要期であります。そういうところの若干の在庫調整というのが行なわれて、そのため非常に安い価格が出ております。これらの価格は、むしろ現在の実際の需要期でないときにあらわれてきます価格ということで私ども理解しておるわけでございます。  それに関連いたしまして、そういう価格がまだ出ております現在、この標準価格をあまり早くきめますことは、むしろ価格引き上げになるのではないか。それから厳密に計算いたしますと、ある価格というものが出てきますが、これは各種の価格について言えることでございますが、需給によって価格がきまる。灯油につきまして、私どもも灯油の安定供給だけはこの冬責任を持ってやりたいということで、石油業者に対しては大幅な増産、備蓄をさしておるわけでございますが、そういう需給の状況のもとには、むしろ原価計算をしましたよりも安い価格というものがここでできてくるということでございます。そういうことで、むしろ標準価格の設定につきましては、できるだけ需給で供給をふやす、そうして、むしろ理論値よりも低い価格を保ちたい、こういうことで現在やっておるわけでございます。
  182. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 中曽根大臣にお伺いしますけれども、いまのエネルギー庁長官答弁からまいりますと、前回の答弁よりも後退をしておるという感を免れないわけです。前回は六百三円という新標準価格にベストを尽くしたい、こういうことだったわけですよ。私はやっぱり先ほど申しましたように、すでに北海道の場合はどういうことを言おうと、これは現地の通産省の出先機関も認めておりますけれども、明らかに業界のデモンストレーションですよ。完全な圧力団体ですよ。  私は最近の例をもっと申し上げますが、小売り店に対して六百五十円以下で売るのであれば品どめをするという行政指導をしているんです。——行政指導というよりも圧力をかけているんですよ、メーカー側から。こういう徴候があらわれてすでに七百四十円台、網走では七百円、根室では七百二十円と、こうなっているんですよ。これは私、全部こういう状況を調べておりますから。そうなってまいりますと、大臣がこの前の石油パニックが発生したときに国会の場で、通産省というところは物をつくり物を届けるだけではない、国民にほんとうにしあわせを届けるところが通産省行政的な任務であるということをお答えになったことを私は聞いておるのでありますが、全く私はその考え方には賛同なんです。  大臣、そうだとすれば、国民にしあわせを届けるところだとするならば、北海道の道民はこの真冬をいま間近に控えて、まさに冷たい冬にならざるを得ないという、この灯油の倍もの値上がりによって、非常にやっぱり道民は憤りを感ずるというよりも、先行き全くもう灯油でもって下敷きになって野たれ死にしなけりゃならぬというのが率直に訴えられています。  一面また、中小企業の皆さんは燃料手当を支払っているわけですよ。ところが、結果的には灯油の値上がりによって、一冬十本なら十本に相当する燃料手当というものを出さなけりゃならぬわけです。そのうちに中小企業は八〇%であるとか、あるいは零細企業によっては六〇%とかということになるんです。結果的にはこれは企業側もある一定のやっぱり負担をせざるを得ないということになるんです、値上げ幅によって。こういう問題を考えた場合に、私は大臣にお伺いしたいのでありますが、この間の政務次官の答弁では、九月中旬をめどにして標準価格を設定いたします、これが第一点であります。私は最後の詰めとして確認したのであります。  第二点目は、新標準価格については六百三円、これに努力をしたい、私はその点納得しなかったんです。現実に五百九十円なり五百七十円を割っているんだから、そのレベルまで、どうせこれはいまエネルギー庁長官も申し上げましたように、二万五千三百円そのものが政策的な料金なんですから、政策料金であるとするならば、国民のこの家庭灯油の犠牲になる部分については政策的な料金の設定であっていいんじゃないかと、これこそ中曽根通産大臣が強調されますように、国民にしあわせを届けるという意味では、政策料金において、家庭の安い料金をもって道民にしあわせをやっぱり届けてやる。こういう点については、大臣、明確に——私はきょうこれをはっきり聞いて帰らないと、ただできるだけ低く、できるだけ早くなんというような抽象的な答弁では納得できないですよ。きょうはもうぜひこの場を通して、ひとつ大臣考え方を聞いて帰ってこいと、こういうことで私は帰っていきますからね。——津軽海峡渡ることできないですよ。きょうひとつ考え方を明確にしてもらいたいと、こう思います。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまエネルギー庁長官が申し上げましたように、灯油の問題はともかく国民生活に非常に緊切なものでもありますから、私としてはできるだけ安くきめるように努力してまいりたいと思います。しかし、これはいろいろ石油の時価の問題とか、技術的ないろいろな問題もあるだろうと思います。こういう点についてはエネルギー庁においていろいろ調査をしておるようでありますから、その最終的な調査の結果を待ちまして私は判定をくだしていきたいと、こう考えております。
  184. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、もう一回お尋ねをするんですが、できるだけ早く、できるだけ低くということは、それは考え方は抽象的な答弁を出ないんですけれども、前回六百三円ということで次官が答弁されているんですよ。私はなぜそれをしつこく質問するかと申しますと、いまエネルギー庁長官の私の受け取ったニュアンスですよ。六百三円プラス人件費というようなことをほのめかしていますね。そうすると、六百三円ということ自体もまた何かおかしくなってきているんじゃないか、結果的には業界の圧力によって、通産省はこれは癒着していないといっても、結果的には業界と癒着して、また標準価格というのは高値価格だと、こういうことを言わざるを得ないんですね、大臣。だから私はもう一回、いつの時点——北海道としてはやっぱりもう需要期ですからね、現実に朝晩ストーブたいているんですから。したがって、きめるとしたらいつの時期、この間九月中旬と言ったけれども、現実にきょうはもう、あと下旬の段階まで迫ってきているわけですから。まず日時を九月の下旬なら下旬を目安にしてきめるならきめたいと、このことをひとつはっきりしてもらいたい。  それと、もう一回お尋ねするんですが、次官は六百三円と言うときに、大臣はここでは言えないと、もう今月結論を出すという時期に来て腹が固まっていないのは、これはおかしな話じゃないですか。せめて目安としてぐらいのことはここで言ってもらわないと、道民は心配でたまらぬですよ。その点もやっぱり後退して、大臣が出てきてまた後退をするというようなことであっては私は納得できないですよ。ただ、そうでなくて、六百三円というこの前出ました目安額というものにベストを尽くすというのか、あるいはそれじゃだめだというのか、その点をはっきりしてくださいよ。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 通産省は、石油の業界と癒着しているというようなことはございません。われわれとしては、特に道民の皆さんの御要望も考えて、できるだけ低廉にしたいと思って努力をしておるところであります。しかし、一面においては、安定供給ということも大事でありまして、その価格が適切ならざるために品薄が起きたり、一部で品を切らせるというようなことで、また精神的パニックが起こるというようなことでは、行政としては成功したとは言えません。そういう意味において、安定供給ということも考えながらできるだけ低目にきめる、そういう考えに立ってきめていきたいと思います。  作業もいろいろ進捗しておるようでございますから、最終的な締めをいつごろやるか、いまのところいつというふうに正確にお答えするわけにまいりませんが、早晩、作業の終了次第、早目にきめていきたいと思っております。
  186. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 早晩ということは、できるだけ早いということなんだけれども、この九月下旬にやるといったら下旬という、すでに、大臣はそう言っても需要期なんですよ、問題は。だから、九月の下旬なら下旬ごろまでにきめるならきめるとか、何とかやっぱり答えを出してもらわぬと……。それから現実に、私は言ったけれども、公器である新聞で、この間の指導見解としては六百三円というように出ているんですよ。この点どうなんですか、もう一回、これはしつつこいようだけれども、九月下旬なら下旬にきめるならきめると、何日と私は言っていませんよ、それが一つ。  それから指導価格として、標準価格の目安として何ぽできめるのかということぐらいは、やっぱり目安にしてもらわぬと、私はこれは困ると思うんですよ。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ通産省としても調査をして資料を集めたり、計算等もしておりますが、最終的な固めとして、今週中に課長を北海道へ派遣いたしまして、現地を実際に調査して最新の情報を得て、それによってわれわれは最終判断をきめていきたい、こう思っております。
  188. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 今週中に北海道に派遣をしてきめたい、意見を十分に調査をしてきめるということですから、それで了解しました。  ただ問題は、価格の問題について大臣、私は少なくとも先ほども申しましたように、五百七十円、五百九十円で売られているという実態があるということを踏まえて、ひとつ庶民の立場に立ってこの価格をきめてもらいたいと、このことだけはひとつ明確に強調しておきたいと、こう考えますので、前回の、もう最後ですから申し上げますが、六百三円にベストを尽くしたいという考え方については変わりはないんですか、これを最後に一点だけ……。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、できるだけ低廉にきめたい、しかし、一面において安定供給ということも考えなけりゃならない、量を確保するということはやっぱり半面大事なことでもあります。そういう意味において、われわれとしては全力を尽くしてまいりたいと考えるわけであります。
  190. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それで、大臣はそれ以上言うことできないということですけれども、問題は、いま言ったように、先ほど調査を現地においてするということですから、調査をした段階で、私は現地へ行った場合に、道の関係とか、それから通産省関係とかという調査ではなくて、実際に北海道には消費者協会があり、消費者団体連絡協議会があり、それから生活協同組合がありますから、こういう関係をきちっと調査をしていただいて、なまの声を聞いていただいて、そうしてほんとうに北海道の実態というものをやっぱりつかんで、いま言ったように、少なくとも、いま神奈川県下で生活協同組合が取引されているような五百七十円なり五百九十円という、こういう低い価格でもってきめられるように、ひとつ最善の努力を払ってもらいた、このことを申し上げて質問を終わります。
  191. 安武洋子

    ○安武洋子君 繊維業界の不況の対策についてお伺いいたします。  いま、通産省繊維業界の不況の実態についてどのように把握をされておるのでしょうか、調査の方法、そして調査結果について簡単にお答え願いたいのです。ただ、全国的ということになりますと、非常に具体性に欠けますので、先日、兵庫県の西脇市に調査に行かれたことを聞いております。西脇市を中心にしてお答えいただきたいと思います。
  192. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 御指摘のとおり、現在、わが国繊維産業は非常な不況下にあるわけでございます。この実態の調査につきましては、本省の関係部局、あるいは各地の通産局、あるいは都道府県、いわゆる官庁をベースにする調査、それから中小企業関係の三金融機関、あるいは地方銀行、市中銀行といった金融ルート、さらには業界団体等からの情報を得まして実態の把握につとめておると、こういう状況でございます。  ただいま御指摘の西脇について調査結果を申し上げますと、播州の先染め産地につきまして、受注状況は七−九月は六五%、十−十二月につきましてはまだ五%程度しか注文が取れておりません。それから工賃につきましては、百五十本ギンガムにつきまして三十円、コストはおおむね九十円程度と承知いたしております。取引条件につきましても、従来現金一〇〇%であったものがこのところ五〇%、手形サイトも九十日程度となっております。それから倒産状況でございますが、七月におきましては完全休業しておるものが二百六十九社で約三千台。一部休業しておるのが二千台。八月、九月になりまして、若干これがふえまして、完全休業をいたしておりますのが三百二十五社で四千台。一部休業しておるのが三千台。  以上が播州の不況の実態でございます。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 業者のなまの声を聞かれておりますか。
  194. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 実は私、繊維不況の深刻化に伴いまして、各産地の実態を見てみたいという計画も立てたわけでございますが、Aの産地に行ってBの産地に行かないわけにもまいらないといったようなことで、日程を組むと東京を離れられないというような状況で、十分現地の事情を聞き得ないわけでございます。したがいまして、担当課長あるいは班長等をして現地の事情を聞かせておるわけでございますが、幸い、ちょうど一週間ほど前に西脇で生産性本部の講演会がございましたので、それを機会に私、日帰りで参りまして、現地の人たちとお話ししたわけでございます。時間の余裕が若干ございましたので、三つ四つの工場もかけ足で回ったわけでございますが、ある百数十台持っておるりっぱな工場が、片すみで三台程度しか機を動かしてないという実態も見てまいりましたし、かような状態になったので、西脇地区でも団体法によるところの生産調整をいたしたいということで、地元大阪地区の公正取引委員会の支部とも話し合いに入っておるといったような実情も聞いて帰ってまいったわけでございます。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、そういう調査の上に立って、いまのこの繊維業界の不況の主因ですね。これはどの点にあるというふうにお考えでございましょうか。
  196. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 繊維不況の原因についてはいろいろ言われておるわけでございますが、これを要約いたしますと、一つは、消費者の買い控えによる最終需要の減退。二つは、商社、問屋等の金融が逼迫してまいりまして、いわゆる中間流通需要が停滞しておる。三つは、昨年いろんな特殊事情も加味されたわけでございますが、繊維製品の輸入が増加した、かような製品との競合関係、この三つに要約して原因を考えられるかと思います。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 実は、私は、八月から九月にかけまして、東京都の墨田区のメリヤス業界、それから兵庫県の出石、但東町のちりめん、それからいま出ております西脇市の播州織、こういう業界を調査いたしております。その中で業者が不安を抱いている問題の一つ、それは、この不況はたいへんな不況だ、いままで見たこともない不況だ、だから先行きの見通しがない、不況は一体いつまで続くのか、見通しがほしいということですが、大臣はこの業者の声にどのようにおこたえになりますでしょうか。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 不況業種の中で、繊維関係が最も打撃を受けておるということはよく存じております。したがいまして、ことしに入りましてからも政府系機関の貸し出しの特別ワクを設定したのは、建設と並んで繊維に重点が置かれてありまして、鋭意努力し、また、民間関係特別融資三千二百億の中からも繊維関係に重点を入れて出さしておるわけであります。これはしかし、全般的な市況とも関係して、景気全般との関係もあるわけでございます。そういうわけで、いま景気をふかして、総需要抑制ワクをはずすという段階にはまいっておりません。しかし、といって倒産や何かが起こることはもうできるだけわれわれは回避しなければならない、こういう考えに立ちまして、一面においては金融措置等によって倒産を防いでいく。それと同時に、外国から来るものにつきましては、行政措置によりまして秩序ある輸入ということで抑制措置を講じていく。そして、内需につきましても時間の経過とともに次第に潤ってくるような、まあ少しづつ、ある局面を考えつつ進まなければならぬではないかというふうに将来の展望をいたしております。
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 それではいまの業者の見通しがほしいという、それのお答えにはならないと思うんです。  それから、この業者の要求の一つですね、これはいま自分たちの持っている要求に政府はどうこたえてくれるんだろう、こういうことなんですけれども、いま大臣がいろいろと不況打開のための対策をおっしゃったわけですけれど、私自身、業者の要求を実際に聞いたものを申し上げてみますと、第一番目に、休業補償制度の確立ということです。当面、無担保、無利子、無保証人の、長期の、緊急の新しい融資制度がほしいということです。そして最低工賃の確立。三番目には、徹底的な輸入規制をしてほしい。また四番目には、電気、ガス料金を据え置いてほしい。五番目には、在庫の凍結、それからそれの買い上げです。六番目に、商社の下請への在庫押しつけについて配意をしてほしい。また、仕事がいまないわけです。その仕事をぜひ確保してほしい。八番目には、休機の固定資産税を減免してほしい。——まあ小さなことですけれど、しかし切実な要求です。子供の学校にかかる費用、これを免除してほしい。学校給食の費用を免除してほしい。これはおも立ったものです。数々の要求が出されておりますけれども、実に切実な要求です。この切実な要求に比較して、いま大臣のお答えの中身といいますのは、金融面では、基本的には資金の増額、こういう措置だけと思いますけれども、これで十分とお考えでしょうか。
  200. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいまお聞きしました業界、あるいは事業者の希望、一々もっともなものと思いますが、ただ、いろいろ制度的な問題がございまして、必ずしも直ちにこれを実行に移し得るというものはこの段階で申し上げかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、先行き不安ということに対しましては、私たちといたしましては中小三機関中心に、あるいは状況によりましては市中民間金融機関中小企業向けの特別融資を活用することによりまして、将来へのつなぎ、企業の維持を、存続をはかっていくところに重点を置くべきではなかろうかと考えます。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから私は、現在の政府がとっておられる施策というのはたいへん中身が不十分だと、こういうふうに申し上げているわけです。一つの例として、金融面で中小企業庁と、それから大蔵省にお伺いしたいと思うんですけれども国民金融公庫の問題です。この国民金融公庫の貸し付け率、つまり申し込み件数と金額ですね。これと実績、どういうふうになっているか、この点についてお答えいただきとうございます。
  202. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 国民金融公庫の申し込みに対します貸し付けの割合でございますけれども、大体申し込みに対しまして貸し付けの割合が七〇%でございまして、ただいまのところもうほぼ七〇%で推移をいたしております。具体的に申し上げますと、四十八年度が、申し込みが一兆三千億でございまして、これに対して貸し付けが九千百六十八億で、約七割でございます。それからことしの四−六月でございますけれども、申し込みが三千七百六十六億に対しまして、貸し付け実績が二千六百九億円でございまして、大体申し込みに対して七割の貸し付け率で推移をいたしております。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、調査をいたしましたけれども国民金融公庫のこの金額から見た貸し付け率ですね。四十八年四月と四十九年の四月を比較してみますと、七六・二%から六九・二%、こう七%ダウンしているわけです。それからまた、第一四半期の四月から六月ですね、千五百億円の追加融資がされたにもかかわらず、これは五月には七一・二%、わずか二%しかアップされていないわけです。しかも貸し付けを申し込んでから融資を受けるまでには四十五日近くかかる、こういう訴えもきております。これが国民金融公庫の実態なのですが、このようにおたくのほうでも掌握なさっていらっしゃいますでしょうか。
  204. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 四十八年度、先ほど平均で七二%と申し上げましたが、確かに月別に見ますと、昨年の四月は七六・七%の貸し付け率でございます。ことしの四月が六八%でございまして、非常に貸し付けの申し込みが殺到いたしておりますので、若干貸し付け率は下がってまいっております。それから御指摘のように、いわゆる申し込みを受けましてから実際に貸し付けが実行されますまでの期間が、従来一番金融の正常時では二十五日ぐらいで推移をいたしておりましたが、最近は、ことしの六月で約三十日でございまして、七月が三十四日というように少し延びかげんになってまいっております。
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 それではお伺いいたしますけれども、もう三、四四半期が近づいているわけです。先ほど質問の中で、三金融機関に対して追加融資をするということをおっしゃっておられました。この資金需要がたいへん激しくなる年末を控えておりますので、これは当然のことです。先ほどはこの金額を明らかにされませんでしたけれども、大体どれぐらいを考えておられるか、明らかにしていただけませんでしょうか。
  206. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 当面の三機関の追加分といたしまして、今月の六日に千億の追加を決定をいたしまして、このうち三百億が国民金融公庫に回ることになっております。これによりまして、いわゆる手持ち日数と申しますか、申し込みされてから実際に貸し付けまでの日数が相当短縮できるかと思います。  さらに、年末の追加の問題でございますけれども、今後の推移を見まして、また、今回追加いたしました千億の貸し出しの状況等も配慮しまして、なるべく早くこの次の、いわゆる例年やっております年末追加を早目に決定を実施をいたすようにしたいと考えておりますけれども、どれぐらいの追加にするかは今後の状況等によりますので、まだ試算をいたしておりません。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、金額は追加をするけれども、額は明示できない、こういうことなんですね。その資金配分の面でお伺いいたしますけれども、もっと零細企業に振り向けるために国民金融公庫に配分を重点的に行なうべきだと、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  208. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) なるべく国民公庫に重点を置いてやっておりますが、同時に、中小企業の組合金融、これもいろいろ生産活動が御指摘のように不況状況になりまして、資金需要が非常にふえております。一般的に中小企業の資金需要がふえておりますので、その需要と申しますか、資金の申し込みの状況等も配慮いたしまして、三つ機関にその追加分を配分をいたしておりますけれども、御趣旨の国民公庫は特に零細な向きを融資する機関でございますので、その中でも最も重点を置いておるところでございます。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 重点を置くとお答えいただいたわけで、けっこうなわけですけれども、いままでの実績を見ますと、そういうふうにはなっていないわけなんですね。ですから、中小企業金融公庫、これは第一四半期ですけれども四百億、それから商工組合中央金庫に六百五十億で、国民金融公庫四百五十億、第二四半期には中小企業金融公庫で三百億、それから商工組合中央金庫で四百億、国民金融公庫三百億、決してここに重点的に振り向けられていると考えられないわけですので、今後ぜひ国民金融公庫に配分を重点的に考えていただきたいということを強く要望いたします。  それから続いてお伺いいたしますけれども、最近の報道によりますと、三金融機関の金利引き上げの問題が盛んにいわれているわけですけれども、この点について確認をさせていただきたいわけです。  いまのような時期に金利を引き上げるということは、たいへん中小企業対策として重大な問題があると思うわけです。中小企業者の願いに反するわけですから、何としてでもこういうことをすべきでないと思いますけれども、この点について通産、大蔵の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  210. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) ただいま預金金利の引き上げが決定をみたと申しますか、検討中でございますけれども、それを受けまして郵便貯金の資金運用部に預託いたします分の金利が上がるかと思います。そういたしますと、その資金運用部資金、つまり、郵便貯金等を原資といたしまして資金運用部がいろいろ財政投融資として資金の運用をはかっておりますけれども、そのコストが上がってまいるわけでございますが、どの程度のいわゆる財投の原資のコストが上がることになるのか、まだ私どもそういった確定的な数字を実は大蔵省から伺っておりません。したがいまして、それがどういうふうに政府系金融機関の貸し出しのコストの面で影響がくるのか、実はまだ算定ができない状況でございますので、正式な検討を行なっておりません。しかし、今後の考え方としましては、コストが上がりました場合にどういうふうに三機関の経理に影響を及ぼすことになるのか、それから三機関の貸し出しの問題としまして金利、いわゆる質の問題と貸し出しの量の確保という問題とどちらをどのように重点を置いて考えるか、そういった点を総合的に判断をいたしましてこの問題は結論を出したいというふうに考えておるわけであります。
  211. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) ただいま企業庁の長官から御説明申し上げたとおりでございますが、最近、長期金利の一連の改定がございましたが、これは最近の物価情勢等もございまして、お金を借りている人が資金提供者に比べて得をしているんじゃないか、いわゆる債務者利得があるんじゃないか、こういうことも勘案いたしまして、最近の金利の実勢等を勘案して、精一ぱいのところで預金金利の改定をいたしたわけでございます。こういたしますと郵便貯金の金利も上がることになります。また、郵便貯金特別会計が運用部に預託する金利も上がります。これはまた運用部の貸し出し金利にもはね返る、こういうことになりまして、考え方といたしましては、中小金融の金利を上げるのは、それは好むところではございませんが、やはりこういう状況のもとでは引き上げざるを得ない、こういうふうに考えております。その実施の時期等については、まだ今後検討することになろうかと思います。
  212. 安武洋子

    ○安武洋子君 中小企業対策を重点的にやるとおっしゃりながら、いまのようなお答えが出るということはたいへん遺憾なんです。こういう金利引き上げについては、金利引き上げをしないようにもう一度再検討をよろしくお願いいたします。  次に進めますが、民間金融機関の問題について大蔵省にお伺いしたいと思います。  中小企業信用保証協会の保証つき融資ですね。これは優先的に取り扱うよう民間の金融機関に対して指導を行なうべきだと思いますけれども、この点いかがお考えでございましょう。
  213. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) 信用保証協会の保証は、御承知のように、保証力、信用力の十分でない中小企業者に対しても信用が供与されるように一つの仕組みとしてつくられているものでございます。これを優先的にたとえば別ワクにするかどうかというふうな問題になりますと、これは全体の金融引き締めをやっている中でございます。その中でこれをどう扱うかというふうな問題になるわけでございます。実は従来、金融に比較的ゆとりのありました時期には、たとえば銀行等でも一般のワクと保証協会の保証がついている貸し出しのワクというものを分けて運用していた銀行があることは確かでございます。これは全部ではございませんが、一部そういう運用をしていたところもございます。しかしながら、最近のようにだんだんワクが窮屈になりますと、銀行は別にするゆとりがございませんものですから、だんだんにそのワクを一本にしている例があるようでございます。しかしながら、私どもといたしましては、健全な中小企業が不当なしわ寄せを受けないようにという指導をいたしておりまして、保証協会の保証がついているものも含めまして、適正な運営がなされるように指導しているところでございます。
  214. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのような不況期に別ワク設定をはずすということは、非常に問題があると思います。たとえば中小企業信用保険法ですね。第七十二国会で改正されて、第二条四項の三号が追加されて、倒産関連保証の特例、これを設置しておりますけれども、これに逆行するものじゃないでしょうか。御見解はいかがでしょう。
  215. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) ただいま御指摘の改正は、倒産関連等しわ寄せを受ける者が不当な、まあ苦境におちいらないように、こういうことできめこまかな配慮をしたわけでございます。ただ、信用保証協会の保証つきの融資を別ワクにするかどうかという点がありますと、これは金融引き締めのワクをどう設定するかという問題でございまして、全体の総ワクの中で保証協会の保証つきのものと一般のものとを別々に運営してやってまいりたい、こう考えております。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま都市銀行などでは、保証つき融資については別ワクをはずしておりますけれども、優良先企業については、これは通常特ワクというシステムで各支店の貸し出しワクに含めないでどんどん貸し出しを行なっているわけです。ですから、これは非常に矛盾していると思いますけれども、こういう特ワクのシステム、これこそをなくして、そうして私は別ワク設定、これを中小企業のために復活すべきだと思います。そのことを強く申し入れいたしたいと思います。そのように銀行側にぜひ指導をお願いいたします。  それから次に、業者の大きな要求である輸入規制の問題についてお伺いいたします。  これは、中曽根通産大臣は、四月三日の衆議院商工委員会の特繊法改正案の審議の際に、「過度の輸入が国内産業を圧迫することになるということもまた考えなければならぬところであります。われわれはそれを人為的に制限しようという気持ちはございませんけれども、その辺はやはり国内市況との見合いというものも考えなければならぬところであって、そういうような情勢判断を誤らないように、われわれは商社の自重を促していかなければならぬと思います。」、こういう御答弁をなさっていらっしゃるわけです。この御答弁をなさいましたのが四月です。それからもう五カ月を経過しておりますけれども、いま四月よりも不況がさらに深刻になっている。こういう状況行政指導ではだめだという何よりの証拠だと思うわけです。で、もう行政指導にこだわらないで、ガットの緊急条項あるいは関税定率法九条の二、これを適用すべきだと思いますけれども、この点、通産大臣にお伺いいたしたいと思います。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は貿易立国の国でありまして、輸入も大事ですけれども、輸出でまた生きていかなければなりません。いまのような関税定率法あるいはガットの場合、あるいはセーフガード、国際協定による場合、そういう場合もいろいろ考慮してみる点もまた必要かもしれませんけれども、ただ、必ずそれは報復を受けるということが随伴してまいります。そうした場合に、かえって世界じゅうからそういう立場で日本が見られたり、報復を受けたりするということは、わが国の存立上ゆゆしいことが起きないとも限りません。そういう点から考えてみますと、プラスとマイナスを考えてみて、われわれとしては消極的にならざるを得ないのが現状であります。しかし、国内の繊維産業の窮状をわれわれは拱手傍観しているわけにはまいりませんので、事実上行政指導等によりまして秩序ある輸入が行なわれるように、関係業者に対しては統計なりあるいはそのほかの手段を通じて自重を促してきておるのであります。そういう結果、この三月以降は輸入については昨年に比べてたいへん減ってきていると思います。これをゼロにするということは、また国際関係上むずかしい点もありますが、国際関係と国内関係との調整について、われわれとしては非常に心胆を砕きながら努力してまいっておるつもりであります。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのお答えでは、輸入規制はこれはできないということで、業者の要求にこたえていただけないと思うわけです。輸入規制ができないなら、せめて商社の規制をお願いしたいわけなんですけれども、同じ国会の中でやはりこれは大臣が御答弁なさっていらっしゃるのですけれども、「第三番目には、国内の流通過程におきまして、強いものが弱いものに対して、その強い立場を利用して取引条件その他で劣悪なことをしていることがないようにする、これは繊維関係では非常に重要なポイントになっております。」、こう御答弁になっていらっしゃるのです。大臣は、こういう御答弁に基づいて具体的にどういう措置をおとりになったんでしょうか。
  219. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま申し上げましたように、直接輸入規制をとるということは、諸般の事情から慎重に対処しなくちゃいけないわけでございますが、国内の需要動向を無視したように大量に輸入が入ってくる、あるいは粗悪品が入ってくるということは、生産者のみならずやはり消費者にも多大の影響を及ぼすということでございますので、われわれといたしましては、輸入関係の統計を整備すると同時に、関係商社を招致いたしまして、輸入等について自粛を要望すると同時に、すでに通関して国内にある輸入貨物等についても、市場に放出する時期等について慎重に対処するように指導いたしておるわけでございます。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の問いにお答えがはずれていると思います。私、いま大臣の御答弁を読み上げまして、国内の流通過程においては強い者が弱い者を利用して、その強い立場を利用して取引条件とかその他の劣悪なことをしていることがないようにする、こういうふうにおっしゃっているわけです。この御答弁に基づいて具体的にどういう措置をおとりになったでしょうかということをお伺いしております。
  221. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 取引改善協議会というものを現在準備をいたしております。学識経験者を中心としまして委員会を構成しまして、関係団体あるいは消費者等も含めまして専門の調査委員というものを委嘱をして、実態を把握すると同時に、その調査結果を学識経験者からなる委員会にかけて審議をいただく。そういったことから取引一般につきまして、たとえば繊維業界では必ずしも文書による明確な契約というものが不存在の場合が多い、あるいは返品だとかキャンセルの場合のルール等がきまっておらない、むしろ力の強い者が弱い者を圧迫するというのが現実でございますので、そういった取引慣行全体を含めましてこの取引改善協議会で一般的なルールを策定してこれを実行に移していくということで、現在その委員、専門委員等について人選に入っておる段階でございます。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の調査しましたところでは、東京のある業者なんですけれども、私のところへ訴えてきております。これは婦人物のニットセーターの製造業者です。冬物を中心にして内外織物、蝶理、ミカレディ、市田、こういうところから注文生産を受けてきておりますけれども、例年なら夏にこの納期が来るわけで、全部納品できるわけです。しかし、ことしはその三分の一しか納入させてくれないわけです。あと三分の二は自分のところで在庫で持っていなければならない。だから資金操りがもうたいへんに苦しいと、こういうことを言ってきているわけです。大臣の御答弁にもかかわらず、そしていま学者などを集めてそういう会をつくるんだとおっしゃっておりますけれども、こういう緊急事態に間に合わないわけですね。ですから、こういう業界に対して下請いじめをしないようにという、もっと強力な行政指導というものがおできにならないわけですか。こういう例に対しては具体的にどのようになさろうとお考えでございましょう。
  223. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 御指摘のように、不況のしわ寄せを親企業下請企業に及ぼすということは、これは極力排除すべきであると思います。それがかりに独禁法あるいは下請代金支払遅延等防止法等の条件に合致するものであれば、それに基づいて措置をするということになるわけでございますが、その段に至らないものにつきましても、先ほどお答えいたしましたような取引改善のルールをつくることによってこれに従わせていきたいと考えるわけでございます。その間、事実上私のほうとしても、せっかく調査してそれに応じて指導を続けていきたいと思います。
  224. 安武洋子

    ○安武洋子君 たいへんなまぬるいお答えで、お答えにならないと思いますけれども、もっと行政指導を強めるよう文書なり口頭なりで指導していただきたいということを要求いたします。  次に、中小企業信用保険法の運用の問題についてお伺いいたします。  第一に倒産関連指定業種の問題です。これは、先ほど来質問の中でよく出てきておりましたのですけれども繊維建設、中小ガス以外にも、いま自動車、家電の下請メーカー、繊維機械メーカー、それから建設関連の合板メーカー、こういうところも非常に不況なわけです。当然業種指定をすべきだと思いますけれども、この点いかがでございましょうか。
  225. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 先生御指摘のように、現在指定されている以外に、自動車の下請、家電の下請あるいは建設関連の製材、合板といった業界が最近不況の度合いを強めておりますので、ただいま追加指定をすべく検討をいたしておるところでございます。
  226. 安武洋子

    ○安武洋子君 それに繊維機械メーカーをぜひお加えいただいて検討していただきたい。そして、ぜひこれを業種指定していただきたいと思います。これは強く御要望申し上げます。  それから第二番目に、倒産関連保証の特別融資についてですけれども、少なくとも私は、これは特利あるいは無利子、このようにすべきだ、利子補給をすべきだと、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。
  227. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) 繊維機械につきましても、追加指定につきまして検討中でございます。  金利につきましては、八分九厘という金利で貸し出しをいたしておりますけれども、これは御承知のように、現在の民間の金融機関の金利から申しますと相当低い金利でございまして、しかも、設定の場合には歩積み両建てといったようなものもございませんので、現実にも相当低い金利になっておるんではないかと考えております。ただいまのところ利子補給等による特別金利ということは考えておりません。
  228. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは普通の融資と違いまして、倒産関連のための特別融資なんですね。だから倍の貸し出しをするだけではこれはだめなわけです。仏つくって魂入れずといいますけれども倒産関連の趣旨がいまおっしゃったお答えでは私は生きないと思います。金額をふやすだけでなしに、利子補給をして初めてこの法の趣旨がほんとうに生きるんじゃないか、あたりまえのことじゃないかと思いますけれども、重ねてお伺いいたします。
  229. 齋藤太一

    説明員(齋藤太一君) すでに貸しましたものにつきまして、返済等が非常に困難になったような企業につきましては、返済猶予等につきまして弾力的に扱っておりますけれども、金利の点につきましては、政府系金融機関は民間よりも非常に安いことでもございますし、それからもう一つ民間の特別融資制度を設けまして、繊維等特別融資を行なっておりますが、これも通常ですと十数%の金利になりますところを、政府系と同じ八分九厘に、保証料込みで八分九厘ということで金融機関にお願いをしまして、通常よりも安い金利で出してもらっておりますので、そういうふうに民間の通常の場合より相当安いということで、さらにそれ以上に利子補給をしての特別金利ということは、ただいまのところは考えておりません。
  230. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、法の趣旨が全然生きないではないかということを申し上げているわけです。これは普通に出るわけでなしに、倒産関連のための特別融資だということで金利がほかよりも安いということは、私はお答えにならないと思います。ぜひこういう点も検討していただきたいということを申し入れまして、次に移らせていただきます。  いま、現在ですね、繊維労働者がどのような状態に置かれているか、実情をどうつかんでいらっしゃるかということを簡単にお知らせください。
  231. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 一部においては一時帰休の動きがある。中には、必ずしも十分に賃金の支払いが行なわれておらないといったような向きもあることを承知しております。
  232. 安武洋子

    ○安武洋子君 実に簡単なお答えなんですけれどもあとで西脇の問題については触れさせていただきます。  きょうの新聞報道で、大阪の阪本紡績と子会社の常陸紡績ですね、十七日に大阪地裁岸和田支部に会社更生法の適用を申請していると、こういう記事が出ております。会社の発表では、負債額六百億、従業員約一千人です。で、このままではほっておきますと連鎖倒産が出ることも考えられますし、労働者が非常に不安な状態に置かれている、こういうふうに思うわけです。通産省はこの実態を把握なさっていらっしゃいますでしょうか。
  233. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま御指摘になりましたような状況は、大阪の通産局からも報告が入っております。本日朝、阪本紡績が大阪地裁に会社更生法による手続を申請し、十七日付で受理されたと承知いたしております。  それから、従業員対策でございますが、阪本紡の従業員は四百五十三名、関連会社である常陸紡績の従業員が三百三十四名、合計いたしまして約八百人の従業員をかかえているわけでございます。この従業員につきましては、現在、ただいま申し上げましたように申請書が受理された段階でございますので、それが認められて更生手続に入れるかどうか、あるいは更生手続に入った場合、どのような形で再建が計画されるかということにかかってくる問題であるかと思います。さようにまだ未確定の要素も多いわけでございますが、事従業員という重要な問題でございますので、私たちといたしましても、従業員対策につきましては労働関係の省庁とも十分連絡をとりまして、少なくとも労働者に迷惑がかからないように、前向きに対処いたしたいと考えております。
  234. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま何よりも必要なことは、この下請への影響ですね、これは最小限にとどめること、それから労働者に対してこのしわ寄せを持っていかないようにすること、こういうことだろうと思うのですが、通産省としては具体的にこの点についてどのようにお考えでしょうか。
  235. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま申し上げましたように、まだいろいろと未確定要素も多いわけでございますが、われわれといたしましては、この問題につきましては波及倒産が起こらないように極力手を打ちたいと、かように考えております。ただ幸い、いま御指摘の下請等につきましては、当方の現在調べたところでは、染色、織布含めまして約二十社程度というふうに理解いたしておりますので、これに対する債権の確保あるいは対策というものを、従業員対策とあわせて十分に意を用いていきたいと考えております。
  236. 安武洋子

    ○安武洋子君 この問題については十分な対策をおとりいただきたいということを申し入れいたしまして、西脇の問題に移らせていただきます。  西脇では、先ほどお答えの中にありましたけれども、いま私のほうでつかんでおりますには、すでに百人をこす解雇者が出ております。大手といいましても、四百名程度会社ではこの一時帰休を百十四名やろうとしているとか、あるいはまた大手といわれる三百七十名ほどの会社では、十月の一日から十二月の三十一日まで七十一名、年が明けて一月の七日から三月の三十一日まで七十一名と、こういうふうなことで一時帰休をしようとしております。この一時帰休については、労働基準法の第二十六条に基づいて休業期間中平均賃金の百分の六十以上の休業手当を払うべきであると、こう考えますが、これはいかがでしょうか。
  237. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 御指摘のとおり、法律に従って支払うべきものと考えます。
  238. 安武洋子

    ○安武洋子君 そのとおりなんですけれども、しかし、いまの企業にはこの休業手当を支払う能力がないわけです。  で、私が調査したことを申し上げてみますと、従業員が十四名のある企業の社長さんがおられるわけです。ここでは親子三代六十六年この繊維の仕事をされているわけですけれども、かってない六十六年ぶりの不況だと、どう切り抜けてよいか見通しがつかないけれども、じっとしているわけにはいかない、こういうことで織機六十八台中五十台はとめておられるわけです。そして、ワゴンを仕立てまして従業員労働者五人と一緒に乗って山陰、北陸、こういうところに直売に出かけております。直売と言えは聞こえはいいわけですけれども、これは行商です。六人がかりで売り上げは平均わずかに六万円。ここからガソリン代、会場費、食事代、宿泊費、こういうものを引きますと利益というものはほとんどないわけですけれども、しかし、じっとしているわけにもいかない、こういう状態です。たとえ十五人でも社長さんです。三代続いてきたこういう織物業の当主が行商をしなければならない、しかもわずかな売り上げしか得られない、こういう状態大臣は哀れにお思いになりませんでしょうか。  しかもこの人は、昭和四十五年の七月には工場を改築しております。建物に千二百四十万円、電気関係に七百八十万円、それから織機に千六百万円、土地代五百四十万、合計で四千百六十万の投資をしているわけです。そして借金を四千五百万持っている。このために月六十五万ずつ返済しなければならない。労働者一人当たりいまのままなら月に十万円の赤字で、これは西脇市当局も労働者一人当たり七万円ぐらいは出るだろう、こう言っておりますので、あまり大差のない数字だと思いますけれども、いまの状態をどう持ちこたえたらいいか行き先がまっ暗だ、こういうふうに言っているわけです。これはこの業者ひとりだけでない。西脇の平均的な状況なわけなんです。  こういう西脇の状態と、また私、墨田にも調査に入ったと申し上げましたけれども、ここでは、夜になれば留置場に入れてほしい、そうすればあす食べる心配をしなくてもよい、そしてまた、いままでのような融資ならもう借りても返す当てがない、こういうことも言われております。  それから兵庫県の出石町、但東町のちりめん、ここでは一反織れば千五百円ずつの赤字になる。そしてこれは農業で行き詰まったわけですね、自民党の農業政策の失敗です。だから、今度は機に行けばこういうふうな不況に見舞われるし、五割休業しているけれども、何の休業補償もない。こういう状態の中で、織機の値段が昭和四十一年には八十五万ぐらいのときの工賃、これが一万八千円ぐらいから二万円、それがいま四十八年には織機の値段が倍の百七十万ぐらいにもなっているのに、工賃は相変わらず一万八千円から二万円なんです。この伝統ある地場産業が滅びようとしている。過疎の村がこのままではますます過疎になる。もう織物業では食べていけないので、土方に出る人もある。こういう状態なんですね。  大臣、こういう状態をお聞きになれば、きっと心をお痛めになると思いますけれども、この人たちが決して悪いわけじゃないわけです。これはいまの政治責任で、この責任の一端をになっておられるのが大臣です。だから私は、この状態企業に法に基づいて休業補償をせよと、こういうことは、これはないそでは振れないことでできる道理がないわけです。実行不可能です。だから業者の中には苦しまぎれにこの六割の休業補償、これを失業保険で肩がわりしよう——まあ過去にもあった実例ですけれども、こういう明らかに失業保険法上の違法行為、こういうものをする業者が出てきてはたいへんです。だからどうしてもこういう違法行為をさせないためにも、またそのしわ寄せを労働者に持っていかないためにも、いまこそ無利子、無担保、無保証人、長期、こういう融資をぜひすべきだと思います。これでなくては中小企業も労働者も救えない。いまそこまで来ているわけです。ですからこの無利子、無担保、無保証人、長期、この融資を前向きに、ぜひ大臣、検討していただきたいのですが、いかがでしょうか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうお気の毒なケースが出てきつつあることを私もよく承知しております。私の県にも織物がございまして、先般石川県へ参りましたときにも、そういう数字の話をお聞きいたしました。非常に胸を痛めておるところでございます。われわれといたしましては、倒産防止という面から、ともかくそういうケースバイケースに応じまして金融面でまずささえる、そして事業を継続できるようにしておく。そういうような考えに立っていろいろ金融措置も講じておるわけでございますが、業界全体としては、ある場合には製品の凍結、その全般に対する金融措置考える、そういう形によってこの窮境を打開していくように努力していきたいと思っております。
  240. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのでは、私が時間をかけて現状を申しましたそれはお聞きいただけてないのかと、こう思いますけれども、私は、こういう際にこそ、いままでの融資でなく、新しく無利子、無担保、無保証人、長期の融資をしてくださいと、こういうことを強く申し入れておるわけです。これはおできにならないわけですか。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 無担保、無保証人というのは小口金融、経営改善資金についてはやっておりますが、無利子というのはまだやっておりません。これは大蔵当局その他とも相談しなきやなりませんが、ごく特殊の場合を除いては非常にむずかしいと思います。ごく特殊の場合についてはいまやっております。
  242. 安武洋子

    ○安武洋子君 ぜひ前向きに検討をお願いいたします。  そして、こういう際にこそ、私は主張したいのですけれども、私どもの党が常日ごろ主張しております国と自治体、それから親企業の出資による安定基金制度、これはつくらなければならないと思うのです、休業補償をこういうものですべきではないかと私は思います。こういう中で、私のこの要求、私は、大臣は拒否されないと思いますけれども、これはいかがでしょうか。このお答えを聞いて私の質問を終わりたいと思いますけれども、ぜひ前向きのお答えをいただきとうございます。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在のこういう窮境打開につきましては、追って推移に応じましていろんな対策を考えていかなきゃならぬと思っております。現状の対策だけでいいとは決して思いません。いまお話しになりましたお考え一つの案として拝聴させていただき、心にとめておいて参考にいたしたいと思います。
  244. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会