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1974-10-25 第73回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月二十五日(金曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————    委員異動  八月十九日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     増原 恵吉君  八月二十日     辞任         補欠選任      星野  力君     立木  洋君  八月二十二日     辞任         補欠選任      立木  洋君     星野  力君  八月二十六日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     大鷹 淑子君  九月二日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     玉置 和郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 小川 半次君                 神田  博君                 高田 浩運君                 森下  泰君                 粕谷 照美君                 片山 甚市君                 浜本 万三君                 柏原 ヤス君                 星野  力君                 柄谷 道一君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     林  敏夫君        大蔵省主計局主        計官       梅澤 節男君        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       国松 治男君        文部省体育局学        校保健課長    倉地 克次君        厚生省公衆衛生        局長       佐分利輝彦君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  宮嶋  剛君        厚生省児童家庭        局長       上村  一君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局年        金課長      坂本 龍彦君        厚生省年金局資        金課長      山内 豊徳君        社会保険庁医療        保険部長     山高 章夫君        労働省労働基準        局監督課長    岸  良明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○社会保障制度等に関する調査  (医療保険財政に関する件)  (大腿四頭筋拘縮症に関する件)  (社会福祉施設インフレ対策に関する件)  (重症心身障害児・者に関する件)  (厚生年金等各種年金改善に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、理事に一名の欠員を生じておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事玉置和郎君を指名いたします。
  4. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 須原昭二

    須原昭二君 医療費引き上げと、それに関連をして健保財政について若干のお尋ねをいたしたいと思います。実は所要の時間が三十分程度でございますから、きわめて短いわけです。ですから、御答弁はひとつ要を得て簡明にお願いをいたしたいと思います。  まず、ことしの二月に医療費が一九%引き上げられ、十月に一六%と、年に二回引き上げされたことは、医療保険史上いまだかってない異例なことであります。最近の異常な物価高騰状況のもとで、病院の危機的な状況に照らして緊急やむを得ないものである、こういう判断で諮問案が認められたと思うのでありますが、しかし、それに伴って患者の負担増加考えますと、医療費があまりひんぱんに引き上げられることは、私は好ましくない、こう実は思います。  そこで、特に私が心配をいたしますことは、看護婦養成費用あるいは僻地医療救急医療等に関する特別の費用、さらに公的病院建設費といったようなものは診療報酬の中でまかなうことは、私は適当ではないと実は常々思っておるわけです。したがって、これには十分なやはり公費負担を行なうべきであると私は思うのですが、そういう点についてどうお考えになっておるのか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 年二回ということでございますが、年二回医療費引き上げを行なうということは、ほんとうに私も望んでいるわけではありません。御承知のように、二月の改定は昨年の十一月末の医業経営実態に即応いたしまして、その当時の実態に即して改定を行ない、御承知のように、十二月三十一日に答申が出て二月一日実施、こういうわけですから、二月の改定というのはことし分、まあ、なるほどことしには違いありませんが、これは二年越しの去年の暮れ、こういうふうに御理解を私ばいただきたいと思うんです。そういう改定をいたしましたが、御承知のように、春闘によって三二・九%という賃上げが行なわれた——いいとか悪いとか言っているのじゃないのですよ、私は。現実がそうなんですよ。それで、それに伴いまして病院医療従事者給与をやっぱり上げざるを得ないのです。お医者さんあるいは看護婦さん、その他の医療従事者給与を上げざるを得ない。そういうことを考えまして今回の一六%というものになったものでありまして、これはどうかやむを得ないものと御理解をいただきたいと思うのでございます。そこで、御質問の点でございます。私、ほんとうに非常に理解しているのです、その点は。たとえば、何もかも診療報酬の中でまかなう、こういうやり方についてはやはり相当反省をしなけりゃならぬだろう、こういうわけでございまして、たとえば、看護婦養成施設等についても建設費等について私どももできるだけ補助をするとかいう努力をしてまいりました。さらにまた、本年度においても、経常費についても補助しなければならない。そこで経常費の分について残っておりますのは、公立病院付偶看護婦養成所、これについてはまだ経常費補助は今年度実施してないわけでございますが、これなどは私はやっぱり来年度必ずこれはやらにゃならぬだろうと、こういうふうに考えております。来年度概算要求にも公立病院付属看護婦養成所に対する経常費補助、これは私はぜひやりたいと思っておりまして、来年度予算においては最大努力をいたす考えでございます。そのほか病院関係におきましても、御承知のように不採算医療とかガンとか成人病とか、いろいろ補助もいたしておりますが、そのワクはやはりもっと広げる必要があるのではないかというふうに考えておりまして、何もかもすべて医療費でまかなうというのではなくて、やっぱり医療費でまかなえないもの、なじまないもの、そういうものについては今後ともそういう方向で努力をいたしてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  7. 須原昭二

    須原昭二君 診療報酬でまかなうことは適当でない問題点はいま指摘をいたしましたが、看護婦養成の問題についてのことは具体的に来年度予算に計上されておる、これは非常に歓迎をします。しかし多くの問題点がありますから、これは可及的すみやかにひとつ善処していただきたい、かように思います。  いま一つ、この保険医療をめぐる問題として常常われわれが指摘をいたしている問題は、何といってもやはり差額ベッド料付添看護料差額あるいは特に最近話題になっております歯科差額徴収、こうした問題点は一向に長年われわれが主張しておるんですが解決されておらないわけです。医療費改定されればそれによって改善されるべきそういう節である、そういう改定されるときこそ一つの節であって、そのときこそこういう問題は処理をされなければならないと思うんですが、厚生省指導してもなかなか、実効があがっておらないというのが今日の時点です。したがって家族七割給付などが実現しても差額負担が大きくなっては実効があがらないのですね。したがって厚生省は、これらの差額問題の解決について常常われわれが指摘をいたしておる問題点ですが、今後どのような手だてで処理をしていくのか、こういう医療費改定されるときこそ変えなければならない一番絶好の機会だと思うのですが、そういうことがなされてない、その点は、どうこれから具体的な方針としてお考えですか。
  8. 北川力夫

    説明員北川力夫君) 差額の問題、すなわち入院の場合の特別室あるいは歯科差額あるいはまた、いまおっしゃいました付き添い問題、こういう問題は、先生指摘のように非常に現在の問題点でありまして、また、これを解決するのにも相当な努力を要する問題だと思います。先般の二月に診療報酬改定いたしました際に、こういった問題につきましては、三十九年以来の方針を特に改めまして入院差額ベッド、いわゆる特別室については基準を設けて指導をしているような現状でございます。その基準は、もう申し上げるまでもなく、一般的に差額があるという場合には二割以下に押える、特に公的なものについてはさらにそれを押える、国立は一〇%以下にしてもらいたいというふうなこと、あるいはまた差額を取る部屋は一人部屋かあるいは二人部屋だけに限る。それから、これは従来ないことでございますけれども、従来なかなかこの調査ができなかったわけでございますが、必ず今後は毎年一回七月に調査を行なう。今年は六月に調査を行ないました。そういうことによって著しく不当なものについては指導をし、改善をされない場合には適切な処分をすると、こういうことで、この問題については、私どもといたしましては今後十分な努力をしてまいるつもりでございます。いまおっしゃいましたように、さらに二回目の改定をやったわけでございますから、今後一そうこういう点はトレースをいたしまして差額問題の適切な処理をはかってまいりたい、かように考えております。  また、歯科の問題は非常に問題が多いことも事実でございます。もちろん地域差はございますけれども非常に問題が多い。これは昨年十二月の中医協でも問題になりました。大臣から特にいろいろその際に所信を明らかにいたしました。なおかつ、またいろいろ問題が多いものでございますから、今回この問題について保険診療における差額徴収に関して先般、今月の九日でございますが、中医協に対して、中医協の御恩児をいま伺っております。諮問中でございます。具体的な審議はまだ行なわれておりませんけれども中医協の場において保険医療から見てどういうような措置をとっていくかと、こういうことについて相当多角的な御検討お願いをしております。  それから付き添い問題も、これもまあ非常に大きな問題なんでございますけれども、昨年の八月に現在の付き添い状態というものを考えまして、従来のようなきびしい基準を一部緩和いたしまして、たとえば寝たきり老人でございますとか、そういった者については付き添いを認めると、こういう措置をとったわけでございますけれども、この問題は、より基本的にはやはり看護体制整備という問題にかかわる問題だと思います。そういうわけでございますので、省内におきましても、保険医療医務、両行政がよく連携をとって、基本的な看護体制整備の問題とあわせまして、その解決のために努力をいたしてまいりたいと、このように考えております。
  9. 須原昭二

    須原昭二君 非常に答弁は、適切とは言いませんけれども、非常に表現はうまいんですな。実際、内容というのは、努力する努力すると言われるけれど、なかなか努力実績があがらないんですよ。したがって、もう少しやはり厚生省はきびきびとした、実績のあがる、そういう方策をとってもらいたい。とりわけ一年に一回ずつ差額ベッド調査するということが基本的にきまった、これは目新しい問題点だと思うんですが、六月にやったというならば、これはひとつあとで資料として提出していただきたい。ぜひともひとつ、この問題点は長年の問題点ですから、基本的な問題にもかかわる問題ですから、ひとつぜひとも努力をしていただきたいと思います。  そこで、医療費の値上げによって医療納付費増加は実は巨大なものにのぼると私は思います。問題は、これが各種医療保険保険財政にはね返って、ひいては保険料引き上げに結びついてくる、こう言わなければなりません。この今回の医療費改定に伴ういわゆる支出増に対して、保険財政上どのように対処しているのか、基本的なものの考え方、これをお話を願いたいということと、もう一つは、財政基盤の非常に弱い国保や、あるいは日雇い健保には国庫負担増額など、特別な私は財源、財政措置を講ずべきであると私は思うんです。特に国民健康保険の問題については、昨年のたしか九月でしたか、厚生大臣国民健康保険法改正考えなければならない段階にきておるということを明確に、ここの当委員会で表明されました。さらにまた、市町村国保が七割給付になったら国保組合に対する国庫負担増額をするというのは、長年歴代の大臣が言ってきたことでありますが、これがなお実現をされておらない。ことしも実は四五%、市町村国保臨時財政調整交付金三百五十億——ゼロが三日五十億出たんですから、大きな前進だとは思いますが、国保組合に対しては二五%、しかもその交付金は若干三十億ぐらい増加しただけであります。こういう問題点をとらえて、今後特別な措置を講ずる基本的な考え方はどう固まってきておるのか、この点を明確にお答えをいただきたいと思います。
  10. 北川力夫

    説明員北川力夫君) ただいま、お話のように、今回の医療費改定は二回にわたって三六・三%という非常に大幅なものでございます。したがいまして、各種保険に及ぼす影響は決して少なくはございません。とりわけ、いま御指摘のございましたような足腰の弱い保険者保険財政を持っている保険経営主体、これにつきましては、その運営をどのようにして健全にしていくか、非常に大きな問題でございます。いまお話の中で、特に国民健康保険は、公営につきましても、また組合につきましても、今回の医療費改定以前からいろいろと問題が多いわけでございます。国保は、その体質から申しましても、歳入面においては非常に不十分でございますし、しかも、最近の傾向といたしましては、特に老人医療無料化等がございまして、しかも、老人が爆発的にふえているというような現状から見て、財政状況は非常に憂慮すべき状態でございます。そういう意味合いで、四十九年度におきましても、いま先生がおっしゃいましたように、定率の国庫負担以外に三百五十億の定額、これは大体二・三、四%に相当するわけでございますけれども、その程度のものをやったわけでございまして、今後、今度の改定が十月でありますだけに、どのように対処をしていくか、私どもといたしましては十分ひとつこの点は国保の被保険者負担が極端に増加をしないようにできるだけ抑制をするように、十分な施策を今後検討をして、予算編成の際にそれを反映をしていきたいと、このように考えているような次第でございます。  なおまた、国保組合につきましても、臨時財政調整交付金、本年度七十億円でございますが、これも従前からお話のありましたとおり、どういう形でこれを増額をしていくか、増率をするか増額をするか、どういうふうにするか、こういう問題がございます。国保組合の場合も相当大きな、相当多数のものがございますが、その財政の事情も区々ばらばらでございまして、どういうような措置をすれば、また措置をしたものをどういうふうに配分をすれば、最も公正適正になるかという問題もございますので、医療費改定がらみとの関連もございますから、そういう点は十分に検討いたしまして、予算編成の際にできるだけの措置をいたしていく、こういうつもりで現在検討を重ねている状況でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  11. 須原昭二

    須原昭二君 まあ、ちょうちょうとお話をいただいたんですが、どうも去年の答弁と同じことなんですよ。やはり私は、四五%の問題についても、市町村国保はさらに増率をしてくれ、あるいは国保組合については市町村国保並みにひとつ国庫負担を上げてくれ、これはもう毎年ずっと言ってきたことなんです。昨年もそのようなことについては同じ答弁なんです。これではわれわれ何べんここで質疑をしても同じことなんです。この点をひとつ大臣から明確にしていただきたいと同時に、国民健康保険法改正段階にきておると昨年九月に言われているわけです。もう一年たったんです。国民健康保険法を抜本的に改正する気持ちはないのかどうか。  さらに日雇属健康保険の問題については、十月の十一日ですか、社会保険審議会の席上で、通常国会審議未了に、廃案になってしまった。しかし、一番近い今度の国会に再提案をすると、こういうお話でありますが、日雇健康保険法についてはまだ給付改善が行なわれていないわけです。したがって、家族五割給付のまま、低水準のままに置かれているわけで、このままの再提案ではだめなんです。その給付内容というものを、内容を変えてくるのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。大臣から……。
  12. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国民健康保険につきましては、その経済基盤が脆弱でありますために、今日まででも実は努力をいたしてまいったつもりでございます。本年度も、御承知のように、率はなるほど四五%から五〇%にはなりませんでしたけれども、あの金額が大体二%、あるいはそれをこす程度の率になっておるはずでございます。そういうわけで、いつも答弁同じじゃないか、努力しないじゃないかとおっしゃるけれども、現実的には、四七・五%ぐらいの率にはなっておるはずでございます。  それから、国保組合のほうも、なるほど率としては上がっておりませんが、額としてはやはり相当上げておるつもりでございます。  そういうわけで、何もしていないんじゃないので、やっぱり苦しい財政の中で努力をしているということだけはひとつ社労先生方理解いただきたいと私は思うんです。  そこで、来年度においても、私はやっぱり来年度予算編成で一番むずかしい問題は国保問題だと思っておるんです。国保財政をいかに強化するか。これは私一番大事な問題だと考えておりますので、率になりますか額になりますか、最終的な決定はまだ見ておりませんけれども、私はできるだけ最近の国保財政、特に老人をかかえておるような国保、さらに低所得者が多い国保でございますから、私は来年度予算編成にあたっては国保財政強化のためには最大努力をいたす考えでございます。  それから次にお尋ね日雇健康保険法改正でございますが、先般成立いたしませんでしたことは、ほんとうに遺憾なことだと私も思っておりますが、できるだけ早くこの成立を私ははかることが必要だと思っております。すなわち先般提案いたしました法律改正内容家族給付改善の問題、それから満額医療費償還制度の導入の問題ということでございまして、よその健康保健法国民健康保険法などにおいてはすでに高額医療制度も導入されているのに日雇いだけ残っておる。ほんとうに私は残念なことだと思いますので、私はできるだけ早く成立をはかっていただくようにしなければならぬだろうと思いますので、次の国会において私はこの法律提案をいたしまして、その成立お願いしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 須原昭二

    須原昭二君 それはなるほど四五%が四七%台になった、あるいは二五%でも三十億ぐらいの金が追加されている、前進じゃないか、こうおっしゃいます。しかしながら、私は日本のそもそもの低医療政策というものを考え直さなきゃならない。日本国民の総医療費その中におけるところの国民所得に対する比率、そうしたものを考えれば国際的にたとえばアメリカの二分の一であり、デンマークの二分の一であり、あるいはドイツ、イギリスの三分の二と、こうした公費によるところの保険よりも社会保障公費負担というものが非常に低率にあるわけです。だから医師会の皆さんでも低医療政策なんだと、こういう保守的といわれる日本医師会でもそう言われることはここにあるわけであって、ちょっと上げたから前進しているんじゃなくて、抜本的にやはり考えなければならない。この点は特に大臣に申し上げておかなければならないと思います。  そこで次に移ってまいりたいと思いますが、健康保険は昨年の改正財政健全化対策を講ずるとともに実は家族七割給付あるいは高額医療というような給付改善、こうしたものがやられました。これは一つの新しい私は段階に到達をした、こう評価をしております。しかるに一年もたたないうちにあの悪名高き弾力条項を発動して保険料引き上げを実施しようといま政府はなされております。法改正にあたっては給付改善はもちろん医療費引き上げを見込んだ上で予算を組まれたと思うんですが、その見直しとの間にどのようなずれが出てきたのか、まずその点を明確に、時間がございませんからひとつ明確に要を得て御答弁いただきたい。
  14. 山高章夫

    説明員山高章夫君) 昭和四十九年度予算編成とただいまとのずれはどういうことかというお尋ねでございますが、昭和四十九年度予算を編成する際の財政収支の見通しといたしましては、昨年の制度改正による給付改善とかあるいは四十九年の二月からの診療報酬引き上げが、これは年度の全般に及ぶことになったわけでございまして、そのために四十九年度予算編成の際は千三十一億の赤字が出る、収支不足が生ずるというふうに見込んだわけでございます。それに対しまして四十九年の十月から調整料率を適用していただくということで、予算上は千分の四の引き上げをしていただく。それによります増収が約四百七億、このうち保険料収入が二百五十一億で連動していただける国庫補助が三・二%で百五十五億にのぼりますが、これで四十九年度収支不均衡を六百二十四億に圧縮すると、これは昭和五十年度収支残で吸収できるという見込み予算を組んだわけでございます。  ところが、御承知のように、ことしの大幅な賃金上昇に伴いまして、歳入の面では保険料収入が約五百億増収は見込まれることになったわけでございますが、その反面賃金の大幅な上昇に伴いまして、診療報酬の面でもこれを十月から二八%の引き上げをするという必要が生じてきまして、結局支出面では一〇%の国庫補助をいただいても六百六十二億の新しい支出増が生ずる。こういう実績を踏まえて四十九年度政府管掌健康保険収支を見直しますと、当初千三十一億の収支不足が生ずる見込みでありましたものが、予備費見込みまして八百三十六億、現在の段階で八百三十六億の収支不足が生ずるというふうになったわけでございます。
  15. 須原昭二

    須原昭二君 今月の十一日に、社会保険審議会に対して政府管掌健康保険保険料率を千分の五引き上げることについて厚生大臣がただいま諮問されております。この千分の五にした根拠はどこにあるのか、この点について御説明願います。
  16. 山高章夫

    説明員山高章夫君) 千分の五でお願いしております根拠は、ただいま御説明申し上げました八百三十六億の収支不足が本年度で見込まれるわけでございます。この八百三十六億をいかにして収支の安定をはかるかというのが重要な問題でございますが、被保険者の急激な負担増を避けるために、四十九年度年度でなく、五十年度と二カ年にわたりまして収支の均衡をはかってまいりたい、そういう見地から必要料率を算定いたしまして、千分の五でお願いすることにいたしたわけでございます。千分の五でお願いいたしますと、これによる増収が本年度四百四十四億、そのうち保険料が二百六十八億、国庫補助が百七十六億になりまして、結局本年度収支不足は三百九十二億になります。これは、まあ来年度増収で吸収されるという計算に立ちまして、千分の五でお願いいたしております。
  17. 須原昭二

    須原昭二君 そうすると、マイナスの八百三十六億、赤字の八百三十六億を千分の五の料率を上げることによって、まあ四十九年、五十年の二年間で収支を正常にする、こういうものの考え方だと端的に言えると思います。そういたしますと、弾力条項というのは、私は法律に認められている一つの要件ではございますけれども、現在のような諸物価の高騰の異常な事態のもとでは、弾力条項は逆に私は凍結しておいて、社会保障制度審議会やあるいは社会保険審議会の答申にあるように、二〇%の国庫負担をこれこそ導入をして対処すべきだ、こういう異常な事態だからそういうことをして乗り切るべきではないかと思うんですが、大臣、その点はどうですか。
  18. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 政管健保、これはまあ政管健保ばかりじゃありませんが、日本の医療保険というのは保険制度で成り立っておるわけでございまして、異常であるという点については私も十分理解はいたしますけれども保険によって保険料というものを納めていただき、さらにまたそれについては昨年の法改正によって保険料率を上げるに従って国の補助も出すと、こういう制度になっておるわけでございますから、なるほどその原因は異常であるにいたしましても、保険財政ということを考えてみれば、やはり被保険者の方々が保険料というものを納めていただく、増額していただく、これは私はすらっとお考えいただければ御理解いただけるのではないかと思うのでございます。
  19. 須原昭二

    須原昭二君 時間がもうあとわずかだそうですが、いつも大臣と論議をするところはそこなんですよ。相互扶助の原理に立って保険料でやっていくんだというものの考え方を基本的に変えなければならない時代にきておるんだと、保険のサイドから社会保障の制度へ切りかえていくことが医療におけるところの施策の前進だとわれわれは考えるわけで、あくまでも保険のサイドでものを解決をしていこうというものの考え方にいつも私は大臣と議論をするのが現況です。この点はひとつこの機会にもう一度かみしめて再考を促しておきたいと思います。  時間が来ておるようですから、総括してあと二点ぐらい申し上げてひとつお願いをしたいと思います。  政管健保の四十八年度の決算状況については見込みよりも大幅に好転していると思うが、その点はどうかということです。というのはどういうことかといえば、大幅に賃上げがなされております。したがって保険料収入がふえて予算見込みよりも好転しているのではないかという私はものの考え方を持っています。したがって、もし好転しておるとするならば、この際、保険料年度中途における引き上げは避けて据え置いてもよいのではないかというものの考え方に立っておる。その点についてひとつ御説明を願いたいと思います。  時間が来ておりますから、もう一つつけ加えて申し上げておきますが、標準報酬の最高限度額があるために保険料は実は頭打ちをしておるというのが現況です。最近の賃金水準の大幅な上昇によって最高限度額、いま二十万となっておりますが、これをこえる被保険者も非常に多く増加をしておるというふうに私は判断をいたします。したがってこの際、この標準報酬の上限を引き上げれば保険料収入の増となる、負担の公平の原則からいっても上限の引き上げは適切に行なわなければならないと思うんですが、その点はどのようにお考えになっておるのか。この点を一つつけ加えてお尋ねをしておきたいと思います。  時間の関係がございますから、以上で終わりたいと思います。
  20. 北川力夫

    説明員北川力夫君) 四十八年度の問題でございますが、確かにお話のとおり、四十八年度は私ども予算見込みましたのに比べて財政収支は相当に好転をいたしております。その原因は、御承知のとおり、四十八年の春の賃上げというものは見込み以上に大きかったこと、そういったことによって好転をした結果が出てまいっております。  四十九年度につきまして、そういうことを踏まえてどう見るべきかというお話でございましたが、四十九年度の問題は、先ほど医療保険部長からも申し上げましたように、最終的には非常に大きな赤字が出ることがほぼ明らかでございます。それは歳出の面におきましてすでに三月から七月までの実績が出ておりまするし、それから歳入の面も定時決定の条件をほぼ把握できる状況になってまいりましたので、歳入、歳出面とも大体財政を見込むファクターが確定をしております。それからそれにつけ加えて、十月から二八%の診療報酬改定があるわけでございますから、そういう意味合いから申しますと、四十九年度において、先ほど申し上げました大きな赤字が出ることも明らかでございますんで、そういう意味合いではやはり保険料率引き上げなけりゃならない、保険料を変更しなきゃならないということも御理解を願えるのではなかろうかと思います。  それから標準報酬の上限問題でございますが、現在の見込みでは大体ことしの十月で先般改正を御承認いただきました二十万という最上の等級のところにほぼ七%程度が滞留をするような状況になってまいると思われます。これはこれまた先般の法律改正で御承認願ったわけでございますけれども、新しく改正法には標準報酬の区別は被保険者が受けた報酬の水準に著しい変動があった場合においては変動後の水準に即してすみやかに改定措置がとられなければならないと、こういう規定が実は改正健保法には入れられたわけでございます。そういう意味合いがございますので、今回の保険料引き上げの問題ということは、まあ、その問題といたしまして、その問題と切り離しましてもやはり上限改定の問題というのは早かれおそかれこれは検討をしなきゃならない問題であろうかと考えております。
  21. 浜本万三

    ○浜本万三君 私は年金問題と大腿四頭筋短縮症の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初は、年金制度に関する質問でございますが、これはインフレ問題にかかわる事項につきましてお尋ねをいたしたいと思うわけです。  御承知のように、日本の高度経済成長政策の反省から、最近の政治の目は人間尊重、福祉優先の政治が要求をされております。特に最近の経済政策は狂乱物価を招き、深刻なインフレーションのもとで国民の生活は破壊をされております。特に低所得者老人など、あるいは年金生活者など弱い層にそのしわ寄せがなされておると思うわけであります。  そこで、年金制度の中で特にインフレに対してどのような対策を講じるかということは非常に重要な課題になっておると思います。そういう考え方のもとに、まず基本的な問題について大臣にお伺いをしたいと思います。  昨年の秋に引き続きまして、ことしも先般社会保障制度審議会から「当面の社会保障施策について」という意見書が出されました。同審議会が言っておりますように、「インフレーションの最大の弊害は、少数の豊かな人々を一段と豊かにし、貧しい人々を一段と貧しくするところにある。」というふうに指摘をされております。同審議会の意見番は、貧しい人々にもインフレの脅威からその生活を守るため幾つかの提言をされておるというふうに思います。政府はこの意見書を真剣に受けとめられまして、インフレ下での社会保障が有効に活用するために緊急を要するものは年内に実施をする、さらに積極的な法的措置や、五十年度予算案に織り込んでいくべきものは積極的に織り込んでいくなど、この意見書に対する厚生大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
  22. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨年来福祉優先の政治という国民の要望が高まった中にありまして、私どもも一日も早く西欧先進諸国並みの社会福祉を実現したい、こういう基本的な考えを持っておるわけでございます、基本的に。そういうふうな考え方に基づいて昨年の二月でき上がりました経済社会基本計画、この計画は、その後の物価あるいは経済情勢の変動によりましていろいろな手直しをしなければならぬものはたくさんあると思いますが、社会福祉の面だけは何とかこの目標を実現したいと考えておるわけでございます。すなわちあの計画によりますと、昭和五十二年度振替所得と国民所得との比率を八・八にする。すなわちまた一面社会保障給付費で申しますれば大体一〇%程度になるように努力しようというのがこの目標でございますが、この目標だけは何としてでも、よその問題は、たとえば公共事業その他の問題は手画しをするにしても、この問題だけは何とか解決しなければならぬ、こういう基本的な線を貫いていきたいと考えております。そういう基本的な考えを持ってこれを貫くための努力をいたしておるわけでございますが、それと並行して昨年の秋以来の物価の上昇、インフレ、こういうものに対処していくということが第二に大きな問題でございます。  そこでこのインフレに対応いたしまして、特に経済力の弱い老人、あるいは母子、あるいは身体障害者、こういう人々の生活を守っていくということが当面の私どもの大事な問題でございまして、こうした問題につきましてはすでに御承知だと思いますが、昨年の秋以来、物価動向に即応したスライド的な方式というものをずうっと採用いたしてまいったつもりでございます。すなわち、生活扶助あるいはまた社会福祉施設措置費等については昨年の十月扶助基準を急遽五%ほど上げ、年末においても一時金の増額を行ない、さらにまた三月においても一時金の増額を行ない、さらに本年度においては前年同月比二〇%の扶助金の引き上げを行ない、さらにまた六月からは四月の物価動向にかんがみまして六%の引き上げを行ない、さらにこの十月からはいわゆる消費者米価の引き上げに伴って三・一%の引き上げを行なう、こういうふうに弾力的に生活扶助基準改定を行ない、さらにまた年金受給者に対しましては、年金については物価スライド制をやりますということで、御承知のように本年の十月からあるいは十一月からこれをやる予定にしておりましたが、国会の御審議の過程において皆さん方の御協力もいただいて、物価スライド一六・一%を三カ月繰り上げて行なう、こういうふうなやり方をいたしてまいったわけでございまして、当面のインフレ対策としては、こういうふうな経済力の弱い低所得の方々に対しては物価スライド的な措置を臨機応変に行なう、こういう措置を講じてまいったことは御承知のとおりでございます。そうした中にあって、今回社会保障制度審議会がこうした事態に即してさらにこういうことをやったらどうだということを具体的に提案を、意見が出されたわけでございます。すなわち、来年におけるスライド制の実施の問題について、さらに老齢福祉年金の増額の問題について、具体的な提案がなされたわけでございまして、私ども社会保障制度審議会の意のあるところは十分尊重しながら、来年度予算に組み込めるものがあれば組み込んでいくと、こういう態度で臨んでまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  23. 浜本万三

    ○浜本万三君 大臣の御答弁では、社会福祉の面では積極的にその施策を進めるというお話がございましたが、昨年の九月だったと思うんでありますが、社会保障長期計画懇談会の中間報告というものがなされましたが、その中で肝心の年金や医療保障についての長期計画というものがまだ明らかにされておりません。引き続いて同懇談会におきまして検討を続けられることになっておると思うんでありますが、当初の予定ではその結論が昨年の十二月を目途とされておるというふうに伺っておるわけなんでございますが、いまだにその最終報告が公表されておりません。特に、社会保障の長期計画の策定というものは、今日のインフレ下ではきわめて重要であるというふうに思うわけです。ひるがえって、日本のいろいろなこの制度を見ておりますと、たとえば軍備の問題でありますとか、産業基盤強化の問題につきましては長期的な年次計画というものが策定をされまして、予算の先取りをいたしまして、着実にこれが実行に移されておるわけでございますが、しかし依然として社会保障や年金や医療保障に関する——国民の医療と老後を保障する問題につきましては、不十分な点、まことに遺憾であると思うわけです。特に老後の問題につきましては、年金、医療、雇用など総合的な社会保障体系の確立が非常に必要であると思うのでございます。で、そういう立場に立って考えますと、社会保障長期計画懇談会の結論というものは一刻も急がれなければならないと思うんでございますが、その最終答申の見通しはいつごろになるのか、大臣のお考え方を聞きたいと思います。
  24. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨年、経済社会基本計画に基づきまして社会保障長期計画をつくるための懇談会を設置いたしまして、関係各方面の有識の方々に御参加をいただいて今日まで御審議をいただいておるわけでございますが、その中で一応の目安のつきましたのは看護婦の需給計画、これはまあ一応目鼻がついております。それと同時に、社会福祉施設整備計画、社会福祉のための投資計画というのが今年の二月に報告をいただいておるわけでございまして、看護婦養成社会福祉施設整備につきましては一応の案をつくったわけでございまして、あと残りますのは年金、医療保険でございますが、まあ特に年金でございます。で、これは私、言いわけするわけでもありませんが、実は昨年の暮れくらいまでに何とかできない、だろうかというわけで設立当初は考えておったんです。ところが、御承知のような経済情勢になりましてね、経済の成長の見通しというのをつくることはなかなかたいへんなことになってきたわけでございます。たとえば本年度でも経済成長率をまあ六%とかなんとかというふうに言いましたけれども実質ゼロになるのじゃないかといったふうな状況でございます。そういうふうな経済成長の見通しが立てにくくなった。それからもう一つは物価の問題、まあ私どもは最近消費者物価等も大体鎮静しかかってきているような感じも受けておりますが、まあ今後これは予断を許さない問題でございます。そこで、来年の三月には前年同月比一五%程度にとめたいといったふうなことでせっせと努力をしておりますが、物価の動向をどうやって見定めるか、これはやっぱりなかなかむずかしい問題でございましょう。それともう一つの問題は年金にとって大事なことは賃金問題でございます。昨年の募れ、私ども、率直に申しますが、春闘において三二・九%という非常に高い賃上げになるとは考えてなかった。ところが現実行なわれたのであります。さらにまた、それじゃ五十年度どうなる、五十一年度どうなる、なかなかこれ、腰だめといいましても見通しを立てることが非常に困難だと、こういうふうなこともありまして、年金、医療保険等について確たる具体的な案をつくることのできないことを私もまことに残念なことだと思っております。しかしながら、いつまでも投げておくわけにもまいりませんので、年内にはある程度の腰だめをつくりまして、経済成長率を五十年度はどの程度にする、五十一年度はどの程度になるであろうか、この程度ならばこうなるというふうな、こういう程度の仮定を置いていくならば年金は五十二年度にはどうなる、こういうふうなことにして、仮定の前提をだいぶたくさん置きながらでも一つの目安をつけるようにしようではないか、こういうふうなことで現在真剣に御審議お願いしているという段階でございます。
  25. 浜本万三

    ○浜本万三君 じゃあ、年金額の目安の問題が五十二年を目標にお立てになるということなのでございますが、その第一歩になるのが五十年の年金額というふうになると思うわけです。  そこで、私は年金額の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思うんです。これはきのうの決算委員会でだれか、案納委員が発言されたというのですが、最近大臣が徳島か福島か私よく存じませんが、どちらかにおいでになった節に、五十年度の年金の引き上げ率については二二%程度にしたいと、で、二二%程度上げると平均年金受給額はおおむね七万円になるのだという趣旨のことをおっしゃったということを聞いておるのですが、その真意についてお尋ねいたしたいと思います。
  26. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 御承知のように、厚生年金、国民年金とも、昨年成立いたしましたときは五万円水準年金、これは間違いなくできたわけでございます。そこで、本年の八月からは一六・一%のスライドをいたしました。スライドを現実もういたしたわけでございます。一六%というのは四十八年度と四十七年度の比較においてですね、一六・一%ということになるわけで、四十八年度上昇率、年度間のですね、それが一六・一%ということでなりまして、そうすると五万円年金は五万八千五百円の水準になっておるはずでございます。現実に支給を受ける額というのは人によってみな違いますから、四万円の者もありましょうが五万円の者もある、五万円こす者もある、こういうことでございましょう。五万八千円のべースになっております。  そこで来年はどうなるかということですが、七万円年金をつくるという意味ではなくて、四十九年度の一年間の物価上昇は四十八年度に対していまの状況考えますと、二二%程度年度間の上昇率になるのではないでしょうか。ということになりますと、法律に基づいて二二%程度、これははっきりした数字は来年の五月にならぬと出ません。けれども、その程度の率が出るならば五万八千円ベースになっておりますから、それのさらに二二%アップとなれば、当然七万円をこす水準年金になるのではございませんかと、こう申し上げておるんです。というわけでございますから、ことしは五万八千円ベースは実現いたしました、スライドによって。来年になりますと物価スライドによって七万円水準年金になるでありましょうと。その二二%ということであるならば、それに見合った国の補助金、これは厚生年金については国が二〇%の補助をするわけですから、その金額は来年度予算で計上する、こういうことになるのではないかと、こういうことを申し上げたわけでございます。かりに二〇%にしましても大体七万円水準年金、こういうふうになる、こう申し上げたわけでございます。
  27. 浜本万三

    ○浜本万三君 そうしますと、大臣の物価上昇率が五月時点で二二%というお見込みなんでございますが、かりにその時点で二五%あるいは三〇%上昇するとすれば、そのように物価上昇分に応じてスライドをされるという意味にとって差しつかえございませんか。
  28. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはもう四十九年度の年間平均の、年間の消費者物価指数が四十八年度に対して二二%くらいだと見込んでおりましても、現実二十何%になればそのとおりにスライドをしていく、それはもうそのとおりでございます。
  29. 浜本万三

    ○浜本万三君 次は、福祉年金の問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけです。  まず、福祉年金の受給者が三十七年の拠出制年金の発足のときに漏れたわけでございます。しかし、これはあくまでも本人の責任では私はないと思うわけです。これは政府の責任で一定の限界を引かれたわけでございますから、あくまでもこれは政府の責任であるというふうに思うわけです。しかし、それらの方々がそのことによって生活が困難になっており、かつまたインフレの中で非常に大きな影響を受けておるとするならば救済することも同時に政府の責任であろうというふうに考えるわけです。したがって、福祉年金に生活保障的な色彩を加味すべきではないかというふうに私は思っておる次第であります。また、これに関しましては社会保障制度審議会の意見書によりますと、福祉年金については昭和五十年度一万円という目標については低過ぎるとの指摘もございます。インフレが進んでおります今日、その一万円年金というものを再検討する要があるという旨が述べられておるわけでございます。確かに老齢福祉年金をこれまで五千円、七千五百円、さらに昭和五十年一万円というふうに年次的な計画を立てて増額されたことは、これは評価するわけでございますが、あくまでもその計画は昨年の石油危機、物価急騰以前の考え方をもとにしたものでございまして、今日のような異常な物価上昇ということは予測しなかった段階であろうというふうに思うわけであります。そういう意味におきましても、老齢福祉年金の質を一そう高めるためにも生活保障的な色彩を加味することが妥当ではないかというふうに思っておる次第でございます。特に老齢福祉年金につきましては、現在約五百五十万に余る人が受給者であるということを考えますと、この水準を引き上げることは国民一般にとっては年金制度の一つの指標をつくることになるというふうに考えるわけでございます。そういう意味におきまして、この老齢福祉年金をさらに大幅に引き上げる御意思はないか。これは五十年度予算の中でございます。大臣から御答弁をいただきたいと思うわけです。
  30. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 老齢福祉年金は、もうすでに御承知のように、国民年金法制定の当時、すでにもう老齢になっておった方々に対しては、これは政府の責任と言いましても、すでに七十歳をこしておったような人は掛け金をかけるわけにいかないのです。そういうわけで、そういう方々にはひとつ敬老的な意味において、名前は年金でございましたが、そういう金を差しあげることにしようということで、御承知のように、敬老的な年金として発足いたしたわけでございます。当初は、御承知のように、千円とか毎年百円くらいずつしか上げなかったのでありますが、田中内閣ができまして当時三千三百円だったものを五千円に引き上げよう、七千五百円に引き上げよう、一万円に引き上げようということで、二年前は三千二百円だった、それが来年は一万円になる、こういうわけで私は相当上げたつもりでございます。そこで、この問題について社会保障制度審議会において何とか考えないかという意見が出ておりますことは私も十分承知をいたしております そこで大幅に見直したらどうか、こういう意見でございます。そこで一番問題になるのはその中にも書いてあります。社会保障制度審議会の御意見の中にもありますが、生活扶助との調整をはかれ、と書いてあるのです。これが非常にむずかしい実は問題なのでございます。と申しますのは、昭和四十九年度、ただいま十月一日三・一%扶助基準が上がりますと、無一物の最低生活保障という額が一人当たり大体一万五千円近くなっております。一万四千幾らになるんです、生活扶助基準は。来年かりに二〇%上げると仮定しますと一万六、七千円になるわけです。そこまで一体老齢福祉年金を上げることは適当であるかどうか、これは問題があるのです。と申しますのは、生活扶助というのは資産が全然ない最低生活の保障ですら、——保障ですらと言っては失礼かもしれませんが、それが一万六千円くらいになる。であるのに老齢福祉年金をいただける方は生活扶助の対象ではございませんから何かしらの資産があるという前提をしなければならぬ。そういう前提を置くとするならば、扶助基準よりも上回って老齢福祉年金を上げるということはどうであろうか、そこに問題があるわけでございまして、大幅にというのはこの審議会の御意見がどの辺の線を言うておられるのか私はわかりません。わかりませんが、扶助との調整もはかれと言っているのですから、ということになるとどの程度のところがいいのか非常にむずかしい問題だと思いますが、したがって、いま結論は出ておりません。けれども何かしらせっかくおっしゃる御意見でございますから、尊重しながら考えてみたい。予算の編成の際に十分考えてみたい、かように考えておる次第でございます。
  31. 浜本万三

    ○浜本万三君 前向きの御答弁をいただいてたいへんに感謝するわけでございますが、私の考え方をそこで申し上げて参考にしていただきたいと思うのでありますが、昭和三十四年だったと思うのですが、福祉年金が発足いたしましたのは。そのときに大体千円ではなかったかと思います。当時拠出年金が大体二千円でございましたので、拠出年金の約二分の一ということが考えられるわけです。先ほど大臣は五十年の厚生年金の給付が二二%上げれば大体七万円程度になる見込みだというお話がございました。大体厚生年金と拠出年金とそれから福祉年金との比率を見てみますと、大体厚生年金の半分が拠出年金、拠出年金の半分が福祉年金、こういうふうになっておるわけでございます。そういたしますと、大体その割りで計算をいたしましても福祉年金が大体一万八千円、弱者救済の立場から低所得者を保護するということを加味すれば二万円程度には最低なってもよろしいのではないかというのが私の考え方なんでございますが、いかがなものでございましょうか。
  32. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) たまたま国民年金制度が発足いたしましたときは二千円と千円、確かにそのとおりでございました。しかしそれは福祉年金を半分にするという意味ではなかったはずでございます。たまたま二千円、千円であったというだけでございます。そこで、いまお話しの額でございますが、そういうことになると、いま申し上げましたような扶助基準との関係で、扶助額よりも多くなる、これはやはりどうであろうか、そこに私は問題があると思うんです、最低生活の保障というのは生活扶助ですから。それよりも敬老年金が多くなる。全然保険料をかけてない方、しかも全額国費、こういうことであって見るとその辺はちょっといかがかと、賛成いたしかねるわけでございます。
  33. 浜本万三

    ○浜本万三君 次は、スライド制の問題についてお尋ねをしたいと思うんです。日本の年金制度を考えてみますと、自動スライド制として賃金スライド制と物価スライド制の二本立てになっておるというふうに思うのですが、私はこれはどうもおかしいんじゃないかという気がするわけなんです。私の見解としましては、むしろ物価スライドよりもすべて賃金スライドにしていくべきではないかという素朴な意見を実は持っておるわけでございます。  そういう意味で、第一に大臣お尋ねしたいのは、今後諸外国もやっておることでもございまするし、また賃金スライドというのは、ある意味では生活水準の端的な指標とも考えられまするので、スライド制全体を賃金スライドになさるおつもりはないだろうかということを第一にお尋ねしたいと思うんです。
  34. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは年金法の改正の際に非常に論議のあった点でございます。賃金スライドも一つ考え方であると私は承知をいたしております。しかし、こういうふうな長期的な給与実態、それにふさわしい生活の保障ということを考えてみますれば、やはり私はある一定の時点において水準をきめたならば、一定の時点において五万円とか何ぼ、幾らという水準をきめたならば、自後しばらくは物価動向に応じたスライドをしていくというのが私は適切じゃないかと、こういうふうに考えております。しかし、その間に賃金という問題もやっぱり加味しなければならぬ問題がありますから、いわゆる財政の再計算期においては賃金やその他生活水準というものもあわせながら考えていって、その財政再計算期においてまた新しい水準をつくっていくと、その際には十分考えるべきではないか。しかし毎年毎年については賃金スライドというものは私はあまり適当ではない、物価スライドが望ましいのではないかと、こう考えております。
  35. 浜本万三

    ○浜本万三君 かりに政府の土俵に上がりまして、物価スライド制を採用するという立場に立って考えましても、日本の場合にはあまりにも外国と比べまして問題があるのではないかというふうに思っております。諸外国の事例を見ましても、その指数が大体三%以下というふうにいわれておるようでありますが、日本の場合にはもう五%以上というのは諸外国の例に比べまして、少し高率ではないかというふうに思われるわけであります。またせっかくスライド制の導入をいたしましてもタイムラグが大きくて効果があがらないのではないかというふうに考えられるわけでございます。特に先ほど大臣からお話がございましたように、昭和四十九年度限りの緊急措置といたしまして、物価スライドの実施期間を繰り上げられました。これは私も評価をいたしたいというふうに思います。しかし昭和四十九年度限りの特別措置でなく毎年同じ時期に自動的に改定するような措置を恒久化すべきではないかというふうに思うわけでございますが、大臣のお考え方はいかがなものでございましょうか。
  36. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 三%、五%の問題はこの法案を、法律をつくります際にいろいろ論議のあったところでございますが、一応三%、五%各論にいろいろ意見が分かれたんですが、まあ五%程度が適当ではないか、審議会の意見等を考えましてやったわけでございまして、まあ五%程度が適当ではないかと考えております。  それから二番目のお尋ねのタイムラグを縮めるという問題、これはほんとうに私も同感なんです。でございますから、ことしも法律改正の際に皆さん方の御意見がありまして、何とかタイムラグを短縮できないか、まあ、ぎりぎりやりまして、三カ月でやったんです。これをやりますためには、何百万の人々の年金額がこうフラットできまっておりませんから、何万何千何百円、それに一六・一%をかけると、こういうわけでございますから、これはたいへんな作業でありまして、保険庁の職員ほんとうに御迷惑をおかけしたほどでございました。そこでまあ、ぎりぎりのところで三カ月繰り上げということをやったわけでございますが、先般の社会保障制度審議会のほうからも一つの意見が出ております。そういうこともありますので、きょうの時点ではまだ結論は出ておりません。もうしばらくこれは時間をかしていただいて、予算編成の際に審議会の御意見も尊重し、皆さん方の御意見も十分尊重しながら最もいい解決方法を見出すように努力いたしたいと思います。
  37. 浜本万三

    ○浜本万三君 その社会保障制度審議会の意見書の中で特にいい指摘をいただいておりますのが、「新年度早々からスライドされた年金が支給されるよう、一部予測値を採り入れるなどスライドの指標のとり方に特別の工夫を」加えたらどうかと、こういう提言がございます。私はこの予測値の問題は非常に重要であるというふうに思いますので、たとえば政府の経済指標と申しましょうか、そういう物価上昇見込みなどを早急に取り入れまして、とりあえず実施をすると、予測値とするというふうなことはできないものでしょうか、その点について伺いたいと思います。
  38. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この年金の物価スライドは、先ほど来申し上げましたように、昭和四十九年度の年間平均の消費者物価指数が四十八年度に対してどの程度上がってるかという最終結論が出るのは結局五月ころになるわけでございます、実際問題として。と申しますのは、本年の三月の最後の月の消費者物価指数が出ますのは四月の末から五月になるわけでございますから、年度間の平均が出るのは五月になるわけでございます。そういうことになりますと、予測値でやれといわれましても、やっぱり国としては責任をもってお金を差し上げるわけですから、確たる資料が全部そろうまではちょっとむずかしいんじゃないかという考えを私も持っておるんです。しかしせっかく社会保障制度審議会が専門の方々が研究された御意見でございますから、この問題も含めて予算編成の際にひとつ十分に考えてみたい、そして適当な結論を出すようにしたい、こう考えております。
  39. 浜本万三

    ○浜本万三君 次にお尋ねをいたしたいと思うわけです。  スライド制による財源の調達方法のことでございますが、これは私の考え方といたしましては、その財源は全部国庫で負担をすべきだという考え方を持っておるわけです。特にこれにつきましては、昭和三十七年の社会保障制度審議会の答申でも明らかになっておるわけであります。私は資料を取り寄せまして調べてみましても、たいへんいいことが書いてあるわけでありますが、積み立ての考え方につきましても、このインフレーションによる負担は国庫で負担をすべきだということや、さらにまたインフレや水準維持のためにも国庫が負担をしなければならないということがここに明記されておるわけであります。また今回の、たびたび出すようでありますが、社会保障制度審議会の意見書でも、「最近のような異常な物価上昇によって、年金の数理計算上従来の処理方式では、到底収拾できない場合には、スライドその他の不足財源に対して、国民の納得を得られる方途を示すべきである。」というふうに述べられていると思うわけであります。したがって当然国庫がすべて負担をすべきであるという見解に立つわけでありますが、大胆の考え方を承りたいと思います。
  40. 坂本龍彦

    説明員(坂本龍彦君) スライド制によって給付水準が上がってまいるわけでございますけれども、これに要する財源をどのように調達するかという問題につきまして、現在の法律ではこういった問題を含めまして少なくとも五年ごとに財政再計算をいたしまして、年金財政全体を洗い直しまして、長期的に見通して、保険料国庫負担でその将来の財政をきめていくという仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、スライドによって給付増加いたします分につきまして、これはスライドに限らず、財政再計算の際に全体の見地から洗い面すわけでございます。その場合に、国といたしましても、二割の国庫負担をいたすことになっております。当然、スライドに要した分についても二〇%は国庫が負担するという形になっておるわけでございます。また外国の例を見ましても、特にスライド財源というものを他の一般給付財源と区別している例はないようでございまして、こういう意味におきまして現在のたてまえといたしましては、財政再計算の際に洗い直しをいたしまして、将来の負担割合、保険料国庫負担負担区分によってきめていくと、こういう仕組みになっております。
  41. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間がだいぶ経過をしましたので、次は二つの問題についてお尋ねしたいと思うわけです。つまり財政方式の問題と、それから年金積み立て金の運用の問題についてであります。  まず、財政方式につきましては、従来は修正積み立て方式というふうに大臣は言っておられるようでございますが、この際賦課方式に改めるべきではないかという考え方を持っておるわけでございます。これについて大臣の御見解を承りたいと思います。
  42. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この問題も昨年来非常に論議のあったところでございます。そこで、まあ賦課方式、私も一つ考え方だと思います。特に老齢化社会が現出いたしまして、老人の数がある一定の安定した数字になれば、当然これは賦課方式にならざるを得ないと思います。しかし、そういうふうな状態になりますためには、すなわち老人層の定常化というものが実現するためには、まだやっぱり三十年、二十年かかるわけでございます。そこでそれを国民のコンセンサスを得て、若い人々が老人のお世話を全部いたしますと、こういうふうなコンセンサスを得るようにできるだけ努力をしなければならぬということは、私はそのとおりだと思いますが、やはりいまにわかに賦課方式に切りかえますと、世代間の負担の均衡というものが起こりまして、なかなかこれは容易ではないと思います。特にまた現在保険料を納めておられる方々の気持ちから言うても、いま私は若くて保険料を納めているけれども、これは自分たちのためと思って納めているわけです。それをもうきょうからあなた方の納めた金、現在またきょう納めている金はもうあなた方には戻ってきませんよ。お年寄りに全部行くんですよと、おまえさんたちの年金はおまえたちが年をとったときの若い世代の者に負担してもらうんですよと、こういうことが全労働者諸君のいまにわかにコンセンサスを得られるかどうか、この辺もなかなかむずかしい問題ではないか、かように考えておる次第でございます。
  43. 浜本万三

    ○浜本万三君 国民的合意を得る必要があるという大臣お話なんですが、そのためにも逆に言えば賦課方式はこういう理由でできないというような具体的な、やっぱり数値を示すべきではないか、そういうふうに私は思うわけなんですが、これについていかがでしょうか。
  44. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 大ざっぱに申しますと、現在は二十五人の若い人が一人の年金を差し上げるという形です。それが賦課方式になって、将来いきますと、三人に一人老人をめんどうを見なきゃならぬ、こういう形になるわけで、(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり)こういうことを申し上げれば、私は負担というものは非常にふえていくんだ、これは負担が非常にふえていくんだということははっきりわかるわけでございまして、そういうことは大いに国民にも普及したいものだと思っております。
  45. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間がないので、最後の運用の問題についてインフレと関係のあることだけをお尋ねしたいと思うのです。  いま積み立て額が大体十一兆余っておるというふうに思いますが、二割物価が上昇いたしますと大体二兆円あまり減価されるわけであります。貯金は目減りし、あわせて老後保障のための年金が目減りするということでは、労働者あるいは国民はまさに泣いても泣ききれないということだろうと思うのです。だから、そういう目減り分につきましてはやはり国が保障すべきであるという考え方があるわけなんですが、その点について大臣はいかにお考えでしょうか。
  46. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) 数字の点もございますので、私から御説明させていただきますが、ただいま御指摘のように、厚生年金、国民年金を合わせますと、四十八年末でも十一兆近くの積み立て金がありまして、ただ問題はこれが資金運用部に預託されまして運用されます場合の利回りにつきましても、御案内と思いますけれども、昨年来の経済動向に即しまして数次にわたる利率の引き上げも行なわれまして、現在十月以降は八%の運用利回りをもって年金資金が、特にまた資金運用部の中でも七年以上ということで、特別の利息を付して運用される仕組みになっているのでございます。私ども現時点での物価の動向との比較でものを見ることももちろん必要かと存じておりますけれども、年金制度を長期的な財政負担の仕組みとして見ます場合には、やはり長期的に見る限りはかなり安全、確率な運用の率として運用されていると見るべきではなかろうかと、したがいまして、ある短い時点での差という問題だけで議論するのはどうかということが一つの問題であろうかと思います。  もう一つは、これも御案内のとおりで恐縮でございますけれども、現在十一兆近い年金積み立て金もそれぞれの形でもちろん運用と申しますか、あるいは住宅あるいは厚生福祉施設あるいは病院といった形で物として運用されておりまして、その運用についてのいろいろなやり方についての御意向なり、国民的な期待をどうするかという問題もあるわけでありますけれども、そういう観点からこの積み立て金を見ていく必要があるのではないかというのが私どもの議論の過程でございます。
  47. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間がないので、以上で、いろいろ議論ございますが、年金制度の中で特にインフレにかかわる問題についての質問を終わりたいと思います。  次は、大腿四頭筋短縮症の問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけです。私は去る七月二十五日に大腿四頭筋短縮症の子供を守る協議会の方や、不幸病魔におかされております子供たちの陳情を受ける機会を得ました。その実情を聞きましてその悲惨な実態に実はがく然としたわけでございます。罪もない子供たちがたよりにしておった医師の治療によって、またさらに不十分な今日の医療行政の中で、このような実態がまだ解決をされていないということについて、きわめて遺憾の意を持っておるわけでございます。特に本件につきましては、従来は何か多発地帯だけだという、一カ所に集中して患者があるのだというふうに伺っておったわけでございますが、今日ではその患者の分布は全国的に拡大をしておるというふうに伺っております。また患者は例外なく乳幼児で、しかも大腿部の注射液が存在をしておるというふうに伺っております。よってこの病気の原因は注射との因果関係がきわめて深いことは明確であろうと思うわけでございます。今日、厚生省のほうでは薬の原因か、あるいはお医者の治療に問題があるのか、その点はまだ調査中であるというふうに伺っておりますが、ともかくこれを総称いたしまして、医師の治療によることはもう明確であろうというふうに思うわけでございます。この治療にはおかあさんやおとうさんのお話を聞きますと多額な治療費を必要としておりまして、患者をかかえた家庭はきわめて苦しい実態の中にあるというふうに思われます。以上のような観点から医療行政の最高責任者である厚生大臣は、早急に、しかも前向きの姿で具体的な対策を示されることを強く希望をいたしまして、以下二、三の質問を申し上げたいと思うわけであります。  まず第一にお尋ねをいたしたいのは、去る七月二十五日の代表者の方々の報告によりますと、千五百人程度患者がおられるというふうに伺っておりましたが、その後自主的な検診を進められた結果、四千人にのぼる患者が全国的にいるということが判明したというふうにいわれておりますが、この実態をどのように厚生省では把握をされておるか、まず実態の把握についてお尋ねをいたしたいと思うわけです。
  48. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この点につきましては、実は最近われわれのほうの研究班から診断基準を出したわけでございます。診断基準にはいろいろの御意見がございましたが、最終的に専門の研究班が討議した結果、たとえばしり上がり現象、ひざを曲げていくときに一緒におしりが上がってしまうと、こういうことを検査すれば大腿の直筋の部分の障害があるのが判定できると、こういう、一つの例でございますが、その角度をどのくらいにすれば障害の、要するに医療なり今後の観察を要する患者を発見する上での角度をどの程度に持っていけばいいか、これには、これは一つの例でございますが、一部の先生方には九十度というような、曲がっていくときの角度を九十度まで持っていくときにおしりが上がってくると、これでもって判定すべきだというような意見もあるようでございますが、今回の診断基準ではこれは六十度のところ、置いた足から六十度のところまでのところでおしりが上がり出すと、それ以上でおしりが上がってもこれはかなり機能的には問題が少ない、こういうことで六十度をもって一応診断の基準にする、これは例示でございますけれども、そのような一つ基準がきまった段階厚生省といたしましては都道府県に検診の具体的な対策について通牒を出したわけでございます。したがいまして、先生の、私も七月二十五日、父兄の方々とお会いしたわけでございますが、千五百人が四千人になり、最近では約一万人ではなかろうかというような記事もございますし、また大阪の一部の先生方の、大阪地区における幼稚園なり保育園児の数字からいったら、全国に推定すれば何十万になるというような御意見も、これは決して否定するものではございませんが、ただ、大阪地区のようなところの実態をそのまま農村その他を含めた医療の頻度、その他から考えましてそのまま適用できるかどうかという疑問もございますけれども、いずれにいたしましても結論としては診断基準をお示しし、各県にこの検診をお願いをするということで措置いたしましたので、おそらく本年度内、いわゆる会計年度でございますが、三月をめどに各県のこれらの実施の態様がつかめることによってほぼ実態が把握できると思いますので、結論的には診断基準を示さずに、従来の検診等で行なわれた数字も当然含まれると思いますけれども、正しい実態は診断基準が示され、各県で実施されたあとで把握できると、こういうふうに思っておる次第でございます。
  49. 浜本万三

    ○浜本万三君 現在の時点では、診断基準を示してそれによる診断を実施しなければその原因の究明がはっきりできないというそういうお話があったわけですが、しかし、いずれにしましても注射との因果関係があったことはもう間違いないというふうに私ども思うわけなんですが、今日の時点で一応その原因についてはどのような判断をなされていらっしゃるでしょうか、伺いたいと思います。
  50. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この点につきましては、先生先ほど短縮症ということばをお使いになりましたが、この短縮症というのは、学会の御意見は前前から短縮症ということばは先天性にごくまれに日本にはある、外国にはかなりあると、まあ民族的な違いがあるようでございます、この辺は私もよくわかりませんが。そこで今回のように、注射という治療行為を原因とすると思われるものは拘縮症というのが学会の一致した名称として使うという学会の御意見でございます。そのように、先天性のものはごくまれでございまして、今回の事件はほとんどが注射によるものであるというふうに考えますが、原因の詳細にわたりましては注射頻度が多い者に多発していることは事実でございますが、かなり頻度の軽い方でも発生していることから、学者の皆さんの中には注射液の混合のぐあい、組み合わせのぐあいとか、あるいは一部の学者の御意見によっては液自体の性質、これは今回の事件ばかりじゃなくて、注射液というものの人体との溶け込むぐあいに対する科学的な解明が必ずしも十分できていない。しかもそれが乳幼児の体質というものとの関連、それから人間の体質の中では、たとえば傷あとがケロイドといってふくらんでミミズばれのようになってなおる体質と、わりあいすなおに傷口がなおる体質とある、このケロイド体質というようなものと、この山梨のように四人に一人ぐらい同じ治療をかなり注射を受けた人でも発生してない例から、一部の学者の中には体質も関与しないかというようなことも含めまして、この原因の詳細についてはわれわれの研究班でただいま動物実験等を含めまして検討を進めておる次第でございまして、先生のおっしゃる注射行為がまずなければ起こらない、注射をしたから起こった、このことだけは事実として認めるわけでございます。
  51. 浜本万三

    ○浜本万三君 そうすると、私は医学についてはきわめて無知ですからこれはごく一般論として伺うわけなんですが、父兄の方の七月二十五日のお話によりますと、おおむねかぜでありますとかあるいは発熱、下痢、そういう症状に対して抗生物質を注射をした、そういうふうに伺っておるわけです。中には一週間に十回もしたというふうに、きわめて常識的には考えられないような治療の方法をなさっておられるわけなんでございますが、諸外国の例ではそういうかぜとか発熱とか下痢とかいう症状に対しては注射でなしに飲み薬でありますとか座薬でありますとか、あるいはその他の方法で治癒するというのが医学的な常識になっておってむやみに注射はしないんだと、特に抗生物質は。そういうお話を聞くわけなんです。そうすると、今度の原因はきわめて常識をはずれた医療行為によってこのような問題が惹起されたのではないかというふうに思うんです。特に最近は医療を受ける国民の機会というものが非常に多くなっておるわけでありますから、国民がわかりやすく常識的な治療を受けるようなそういう体制を行政当局としては指導していかなきゃならぬと思うんです。そういう意味におきましても、このような行為というものが常識的であったのかなかったのか、そういう点についてこれは一般論として局長の見解を伺いたいと思います。
  52. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生指摘のように、われわれもこの問題を契機に学者の皆さん方の御意見その他文献等を見ましても、外国では子供に注射、ましておとなにも注射行為というのはきわめて医療の中では少ないということは事実でございまして、日本がこの注射、投薬の行為が多いということはまた日本の医療の問題点一つとしても指摘されておるわけでございます。この点は一般論としてということでございますが、これを常識をはずれたという御意見もございましたが、実はこのような医療がある意味において日本の常識になっておるところに問題があると申しますか、たとえば注射を希望するおかあさんがあるというようなことも、これも事実でございまして、非常に端的に、薬を欲しがる、注射をしない医者は評判が悪くなると、まあ非常にこのような場で、私、ざっくばらんなことばを使わせていただきますけれども、これは世間的に一般にいわれていることであり、私は行政の責任の立場でも否定いたしません。そういう常識が問題があるのであって、しかも、その上にこのような乳幼児の医療の中で注射が多用されるということに対して、何らかこの指針のようなものを出せということでございますが、この点については、先生の御質問の趣旨を私は否定するものではございませんけれども、一般的に、医師が医師の資格を与えられて、医師法のもとに医療を行なう場合には医師の責任において医療行為がなされるのでございますので、行政当局が医療のこまかい点について指示をし、そのケースごとに判断されるべき医療についての通牒なり、あるいは指針なりを示すということは、非常に慎重を要するし、むずかしい問題でございます。そういう点も踏まえまして、われわれとしては、日本医師会が今回を契機に委員会の答申を受けまして、注射の乱用と申しますか、多用を慎むように、あるいは注射の場所等についてもおしりの上の三角の部分を使うほうが安全であるというような意見も医師会員全体に流したわけでございまして、医療団体である医師会という立場ではそのような医療のことについての一つ考え方を示すことができますが、行政当局が具体的に示すには非常に限定された内容の具体性を持ったものでない限り、たとえばペニシリンショックが流行したときに、ペニシリンの取り扱い方について、これは行政当局が一つの通牒を出しております。これには相当たくさんの手続なり、一般だれでも踏むべき常識的な病状の判断以前の問題として、医師としてペニシリンを取り扱う場合の共通的な注意事項として通牒を出せる性格のものでありましたので、これは出すことができたものと私は理解しておるわけでございます。
  53. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間がないので急いでお尋ねをしたいというふうに思います。すでにもう厚生省の対策についての御説明がなされておりますので、そちらに今度は切りかえましてお尋ねをしたいというふうに思います。  まず第一は、診断基準をおつくりになったと、そして十月十一日に都道府県に対して指示したというお話がございます。おそかったけれども、それはまあ、けっこうなことだというふうに思うわけですが、その基準の中で、先ほど屈伸角度六十度というふうなことをおっしゃいましたが、むしろこの場合の病気については筋がおかされておるところに問題があるのだから、診断基準がそういう屈伸角度だけでは不十分ではないかということを父兄の方々はおっしゃっておられるのですけれども、それについて局長考え方はいかがでしょうか。これがまず第一です。  それから次に、続けて質問をいたしますが、その診断基準をおつくりになるために厚生省は医者の方々に委嘱をされたわけなんですが、その委嘱されたお医者の中に、父兄としては必ずしも適切な治療をなさっていないという不信感がある方がおられるわけです。今度の原子力船「むつ」のように、やっぱり国民的に信頼がある人がそういう基準をつくったり、それから安全の問題についての考え方を申し述べれば比較的国民合意というものが早くでき上がるのですけれども、不信があるとなかなかうまくいかないというふうに思うのですが、そういう委嘱した医師の適切な判断をなさっておられるかどうかという点が第二。  それから第三番目の点は、診断の基準をおつくりになっていまから診断をされるわけなんですが、その際、当初、局長が、二十五日のお話では、三歳児に限って検診をするというふうなお話がございましたが、もうすでに相当患者が拡大をしておるという現状考えますと、三歳児ということに限らずに、疑わしいものは全員公費で診断をすると、そういうことが望ましいのではないかと思うが、その点についてどうか。  以上、三点についてお伺いいたしたいと思います。
  54. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 一点、二点については私からお答えし、三点については児童家庭局長からお答えしていただきます。  まず、屈伸角度だけというように受け取られますが、検診内容全体を見ますというと、子供の動作、すわりぐあい、走り方、歩き方、そういうようなものも総合してやるようにいたしておりまして、たとえば先ほどのしり上がり現象というのは大腿四頭筋といって四つの筋があるわけでございますが、一番正面にございます大腿直筋がやられたときにはしり上がりの問題をテストしなければなりませんが、少し横のほうから打った注射といいますと、横のほうに障害がある場合には違う検査もするようにしてございます。したがいまして、お答えとしては、屈伸角度だけできめたのではなしに総合的に判断するようにいたしたわけでございます。今後、しかしながら、専門の立場も含めまして、この診断基準等に御見解が、いろいろ非常に基本的な御見解が出てまいりますれば、私たちは学会の研究班におはかりして、これを受け入れ、なお充実していくことにやぶさかではないわけでございます。  まあ、これとやや関連いたしますが、研究班のメンバーに対する一部まあ必ずしもこの問題に十分な見識を持った方が入っていないんじゃないかという御意見でございますが、これは、私は決して個々の医師の能力を現在私、十分承知しているわけではございませんけれども、やはり班長をお願いし、その班長と相談の上で各般の関係の経歴ある大学教授あるいは国立病院、国立大学等の先生お願いしたわけでございまして、その点は結果的には私は個々の意見というものはかなり過小なものとなっておりまして、総合された合議の上で決定いたしておりますので、この点については一人一人の医師に対する若干の不信感というような御指摘でございますが、私は研究班総合としてはほぼ現在の整形外科学会、小児科学会を中心にした一つの御見解がまとめていただけたものというふうに信頼いたしておるわけでございます。
  55. 上村一

    説明員(上村一君) 三歳児に限ることはなくして、乳幼児全般につきまして検診を実施するつもりでございます。
  56. 浜本万三

    ○浜本万三君 ちょっと時間が過ぎて申しわけないのですが、次に大臣に要望しておきたいと思うのですが、要望が三つございます。  一つは、いま責任の所在というものは原因を究明して初めてなされるわけなんでございますが、いずれにいたしましても、医師の治療行為によってこういう結果が出たということは間違いないわけです。ところが、カルテは五年間の保存期間でございまして、あるいはこれがまあ焼却ないしは消失するおそれがございます。もし将来その責任を明らかにするためには当然カルテの保存ということを厚生省は指示しなければならぬと思うのでございますが、その点についてぜひひとつ指示をしていただきたいということが第一です。  それから第二番目は、いわゆる治療費の負担が父兄に非常に多い、そういう点について政府でこの治療費の負担を、治療費を公費で見るようなそういう措置を講じていただきたいと思うがどうか。  第三番目は、この種の被害者の救済制度を早急に確立してほしいということです。日本の今日の医療制度は、悪いことばで言えばもう売薬医療だというようなことを言う人がおるわけなんですが、私はよく知りませんけれども、そういうことを言う人がおるんですが、そうだとすれば、この種の弊害というものが今後起こり得る条件は非常に多いと思うのです。すでに、スモン、サリドマイド、コラルジルというふうな障害が起きておるわけでございまして、そういう問題が起こった時点で、それぞれ父兄や市民運動がこの問題の究明をみずからがはかって、そうしてこの加害者に救済、補償を請求するというふうになっております。そういうことではやっぱり対策が立ちおくれるということが考えられまするので、政府は早急に救済制度を確立するために検討していただきたい。そしてできれば次の通常国会提案をしていただきまして、国民が安心してこの種の障害に対処できるような措置をとっていただきたいと思うわけです。  以上三つの要望を申し上げたいと思うわけです。できれば回答をいただいた上で私の質問を全部終わりたいというふうに思います。
  57. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 厚生大臣ひとつ述べてください。
  58. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) カルテの問題については、現在の保存期間というのは適切だと考えておりますが、十分慎重に今後とも検討をしたいと思います。  それから、療育、医療費の問題でございますが、これは私どももできるだけ軽減をはかるようにしていかなければならぬであろうと、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから、薬の補償と申しますか、こういう問題については実は研究班をすでに現在つくっておるわけでございますが、まだなかなか思うような結論が出ておりませんが、私もできるだけ早い機会にそうした制度をつくりたい。こういうふうに考えておるわけでございます。
  59. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十分休憩      —————・—————    午後一時二十八分開会
  60. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬品による健康被害者に対する救済制度、これを厚生大臣は、齋藤厚生大臣になってからも再三、つくりますと、次の国会提案しますという答弁までなされたこともあったわけですが、今日の段階では被害者に対する救済制度がなかなかできそうもないというような結果になっているようですが、いきさつはお述べいただかなくてけっこうですが、見通しについて、どういう見通しに立っておられるか。聞くところによりますと、せっかくつくられた研究会もほとんど開かれておられないというふうに伝えられておりますが、その辺についてお尋ねいたしたい。
  62. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) ただいま先生指摘の研究会につきましては、昨年の初めにつくりまして鋭意検討を進めてまいったのでございますけれども、本年に入りまして、先生指摘のように、実は十分動いてない面がございます。事情はいろいろあるわけでございますけれども、しかし、私ども決してあきらめているわけではございませんで、おくれておりますけれども、さらに今後とも十分検討を急ぐという決意でおりまして、御期待に沿うべくさらに鋭意勉強もしたいと思っております。
  63. 小平芳平

    ○小平芳平君 検討を急ぐということは、もう数年来の同じ答弁でありまして、いま私が二つの点ではっきりした厚生省の態度をお答えいただきたい。  その一つは、齋藤厚生大臣はどちらかというとまずサリドマイドの和解を急ぐと、そして現在発生しているスモンその他の薬害被害者の救済を、まず現に発生しておられる被害者の救済を急ぐ、これが一つ。ということは、本格的な救済制度そのものはちょっとあと回しにするというようなふうに、そういう方針をとられているんじゃないか。いま局長答弁されるように、救済制度をつくるのを急ぐということは、これは一年ほど前のことであって、現在の厚生省ではまず現に発生しておられる被害者の救済を急ぐ、本格的な制度はむしろあと回しにすると、こういう方針ではありませんか。
  64. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 当面のサリドマイドその他を先にやって、救済制度をつくることはあと回しにする、そういう考えは実は全然持っておりません。並行的に進めていくべきものであると私は考えておりました。しかし、現在のところ研究会も十分動いてないようでございますが、私としては薬害の救済制度というものはどうしてもつくるべきものである、その必要もあるし、つくらなければならぬ、こういうふうに考えております。しかしまた、サリドマイドのような事件は差し迫った問題でもありますので、しかも原因もはっきりわかっておるわけでございますから、それは並行的に進めていってしかるべきである、こういう考え方で臨んでおったわけでございまして、決して私はあきらめなどはいたしておりません。その点ははっきりと申し上げておきたいと思います。
  65. 小平芳平

    ○小平芳平君 あきらめているというふうに私も断定はいたしておりません。ただ研究会は、それではことしに入って何回開かれましたか。
  66. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 本年に入って開かれておりません。
  67. 小平芳平

    ○小平芳平君 ということは、並行してやろうという御意思はわかりますが、昨年つくった研究会が本年に入って一度も開かれてない、そのことについて実際被害者の団体の方に対して厚生省は、委員の方が外国へ旅行していらっしゃるとか、お忙しい先生方だから云々と、こういう言いのがれを続けているということが私はよくないと思うんです。そういう言いのがれをいつもやっているんではなくて、並行してやることは並行してやると、並行してやるためには、ことしになって一ぺんも研究会やってないというようなことはむしろ並行してやる意思を失ったんじゃないかと、こういうふうにすらとれるわけです。したがいまして、まず、現に発生している被害者の問題を解決するならするということを一つ。これは間違いないわけですね。  それから並行してやるならばどういう見通しでおやりになりますか。
  68. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 本年に入りましてから開かれてないことは私もまことに遺憾でございます。ひとつ至急にこの問題を解決するために各方面の方々をお願いしておるわけでございますから、できるだけ早く開いていただいて、そして十分に御検討いただく、こういうふうに精一ぱい努力をいたす考えでございます。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 精一ぱい御努力されまして、いつごろまでに成案を得、成立をする、そういう目標を持っておられますか。
  70. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 先生も詳しく救済制度の中身についていろいろ問題があることも御存じかと思いますけれども、たとえば救済をすべき被害の範囲をどう考えるか、その中ではまたこまかにいきますと、因果関係の問題とか、あるいはまた医療費との関連とか、あるいはまたここで先生から御質問とかいろいろ議論もあったようでございますが、受忍すべき副作用の範囲をどう見るかとか、いろんな問題があったり、またこの制度を今度動かすのに組織体として基金をつくるのか、保険でいくのかと、あるいはまた費用分担につきましてどういうふうに考えていくのか、それぞれが個々にいずれも大きい実は問題でございまして、現実、研究会は理論的な究明をやると、問題点を詰めながら逐一理論的に答えを出しつつあるわけでございますが、問題の数もきわめて多うございますし、また個々の問題が実は甲論乙駁きわめて時間もかかるむずかしい問題でございますので、私どもこれまでの実は去年一年間やったわけでございますけれども、その経過を見ておりましてもなかなかたいへんなことだと私も思っております。そういう意味合いにおきまして今後これまでいろいろ問題点も出ましてある程度詰めも入っておりますけれども、なお問題点も相当残っておりますので、今後この研究会におきまして御議論をいただくのに相当な時間かかると思います。実は私も参りましてこの局長になりまして新しいわけでございますが、いろいろ聞くにつけましてもきわめてむずかしい問題が多いと思います。また現実これから一々詰めますのに時間かかると思います。いまここで先生の前でいつまでできるとお答えすることはできませんけれども、とにかく今日のこういう事態でございますから、私ども特に急がなくちゃいかぬと、局の力をあげてこの問題にかからなくちゃいかぬと、そのように存じております。
  71. 小平芳平

    ○小平芳平君 たいへん局の力をあげてと言われますと、何となく期待したくなる気持ちになるわけですが、どうも従来のいきさつから見ると、また同じことを言っているのじゃないかと、こういうふうに受け取らざるを得ない、いまの程度の御答弁ではですね。で、なおそれらの内容についてはあとで触れるといたしまして、本年四月八日の予算委員会の分科会で齋藤厚生大臣は、もう最初からまず現に発生している被害者の救済が先決だと言って、サリドマイドのことも例としておあげになったわけですが、で、サリドマイドの和解につきましては、当事者間の和解ですので、そのことについて、内容についてとやかく私が述べるべきではない筋だと思いますが、同じような厚生省考え方がこのサリドマイドの和解を一つの出発点として他の被害者に対する解決もはかっていこうというふうなお考えがあるとすれば、このサリドマイドの和解が他の被害者に及ぼす影響、それが大きいという観点から私は二つだけこの和解の中身について御質問をいたします。  この確認書ですね、第一点は、確認書では「衷心より遺憾の意を表する。」ということにしておいて、覚え書きでは、「衷心より遺憾を表するとは心からお詑をするという意味であること。」という点が一つ。それから第二は、福祉施策に関する事項で、たとえば住居あるいは公共施設、こういう点については「所管官庁を通じ努力する。」、それから教育については、これはどういう意味ですか、「入学選抜を受ける機会が奪われることのないよう関係教育機関を指導する。」、こういう趣旨のようですが、どういう意味ですか、これは。とともに、また、今後他の薬害被害者の案件を解決しようという厚生省の取り組みが、心からおわびするという表現はできない。「衷心より遺憾の意を表する。」ということ、そういうことしか言えないのか。福祉施策については所管官庁を通じて努力するというような現行法のワク内の努力目標しか掲げられないのかどうか。第三点は、いまの教育は一体どういうことを意図しておられるか、以下三点についてお尋ねしたい。
  72. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 先生御質問の第一点の確認書におきまして、遺憾ということばを使っていて、覚え書きのほうで、これは心からおわびをすることであるというふうに書いたのはなぜかというお話でございますが、まあ衷心より遺憾に思うということばは、役所自体が平素使うことばでございますけれども、まさに覚え書きに書いてありますとおり、心からおわびしたいということばでもあるわけでございます。要は和解の段階におきまして、役所としてはこういう気持ちをあらわすのに、このことばが適当であろうということを申し上げ、まあ、そのことで話がついたわけでございますけれども、先方の御意向もあって、覚え書きにそういう注釈をつけたということでございます。要するに訴訟で長い間争い、そこで被害者側と国等との間にいろんな論争もあったわけでございますけれども、そういう個々の詰めは別として、この際はもう大乗的見地に立って和解をしようということでございますから、そこでは両側のいろんな歩み寄りが実はあるわけだと思います。で、そういう過程でのこういう法案でございますから、双方が話し合い、いろんな話をしながら、苦労をしながら妥結したことでございますので、一字一句、双方に疑義があると思いますけれども、要するに確認書に出ましたことばにつきましては、役所としては遺憾に思いますと、衷心から遺憾に思いますということであります。どうもそれはわかりにくいということでございますから、覚え書きをつけるという経緯があったというふうに承知をいたしております。  それから、第二の努力するとか、つとめるとかという文言のものが多いじゃないかというお話でございますが、確かに確認書の中にはそういうことで、盛られた条項が幾つかございます。一例をあげますと、たとえば厚生省の関係で身体障害者に対する福祉事業の中での、たとえば補装具の交付とか、あるいはまた日常用具の支給に関する制度の拡充とか、そういうことが書いてございますけれども、これは一般的に身体障害者施策を進めろという規定なんでございますけれども、この付近のことになりますと、これは具体的には財政当局とも話をし、また国会でも御審議をわずらわし、いろんな過程を経て予算をきめるというふうな問題もございますし、ここですぐやるということを確認することも現実の問題としてむずかしゅうございますので、誠心誠意この方向でやるという立場に立ってつとめるということばにならざるを得ないという文言であります。また、その他、たとえば公共施設の整備関係等の条項を見ますと、他省関係、あるいはまた場合によりましては、関係の地方公共団体等のほうにつきましてもやってもらうという分野もございますけれども、その付近になりますと、これは実はうちの省だけでできることではございませんで、関係の当局に御検討をわずらわす、あるいはまた御検討の結果に基づいて予算要求をしてもらうというふうな道筋が必要でございます。そういうことを考えますと、これまた現実の問題として、うちの省だけで必ずやるという約束もできなかったということもございますので、努力をする、つとめるというふうな文言が入ったような形になったというふうに承知しております。  第三の学校の入学につきまして、入学選抜を受ける機会が奪われないようにという問題につきましては、よく世間で問題がございますけれども、身体障害者につきまして、あるいは高等学校、あるいは私立の中学校等におきまして、子供の選抜試験におきまして差別をするというふうなことがあるわけでございます。そういうことのないように、文部当局は文部行政の道筋におきまして十分指導をするということのように承っております。
  73. 小平芳平

    ○小平芳平君 選抜を受ける機会が奪われることのないようということは、選抜を受けられるということだけですか。それとも選抜を受けられる、そんなことはもう当然のことであって、入学してからのことは言っていないのですか。
  74. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) ここに書いてある字句に即しますと、「入学選抜を受ける機会が奪われることのないよう」ということでございますので、具体的には入学試験の願書を出したけれども、サリドマイド児のゆえをもってこれを断わるとか、そういうことのないように、そういうことだと思います。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 そんなあたりまえのことは確認する意味がないじゃないですか、入学願書を出しておきながら、サリドマイド児なるのゆえをもって、入学試験を受けることすら断わられることがないようにしますなんというのは。どうですか。
  76. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) まあ、先生からおっしゃいますようなことかもわかりませんけれども、しかし、サリドマイド児を現に持っておられますおとうさん、おかあさんにとっては、子供の教育問題というのはほんとうに御心配であろうと思いまして、まさにそういう御心配の中からこういう規定、条文が入ったのではなかろうかと思います。で、かつてもそういう事件がよく新聞紙上に出たこともございますけれども、身障のゆえをもって入学選抜について差別をした、あるいはするという話が問題になった場合もございます。そういうこともありましたために、おそらく親御さんとしても大きい御心配がおありであろう、特に教育問題は御父兄の御心配の的でございます。そういうことで入ったものだと思います。また、入学選抜の機会について差別を受けないということについて、はっきりと厚生大臣は文部省に対して申し入れをしまして、了承を得たということで、がっちりやっておくということで、また親御さんの御安心ができてきた、そういう和解の事項だと思います。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの問題は入学試験を受ける、受けさせない、受けさせるということの問題よりも、もっと大きな問題は、合格、不合格でしょう、合格、不合格の段階で差別されるということこそ、一番の大きな問題だと思うのです。そこで、これは時間が私も限られておりますので厚生大臣に端的に伺いますが、サリドマイドの和解にあたって、厚生省のとられたこういう態度、それは今後薬品被害者、あるいは食品による健康被害者に対する和解の話があった場合に、厚生省はこういう同じ態度で臨まれるのかどうか、もっと被害者の意思をよく聞いて、もっと被害者サイドに立った厚生省の受けとめ方を、私は必要と思うわけですが、大臣はこのサリドマイドでまず一つの事件が和解できたと、右へならえでこれからもやっていこうと、こういうことかどうか、いかがですか。
  78. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) サリドマイドの裁判と、そのほか現在起こっているそのほかの事例とにおいては、それぞれ特殊な違いが私はあると思います。ですから同じような形で、内容が同じ内容解決させられるものかどうか、私はそれは違うものがあると思います。それぞれによって、特殊な事情があり、特殊な解決の方法があると思います。しかしながら、基本的にはできることならば、そういう問題も和解なり何かの方法によって解決するような方向に進むことが望ましいと、こういうふうに私は考えております。結果的な内容については違うにしましても、何とか話し合いで解決するような方向に持っていくことが適当であり、それが必要であると、こういうふうに考えております。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣が、あるいは薬務局長が、先ほど来の御答弁を伺っておりますと、本格的な救済制度をあきらめておりませんと、つくりますと再三言っておられますが、やはり差し迫った問題として、私は、スモン病につきまして、サリドマイドとスモンとはいろんな態様の違いもありましょう。その態様の違いについては松下前局長が長々と述べておりますから繰り返していただかなくてけっこうですが、このスモン病に対する和解といいますか、救済措置というものが速急にとられるべきというふうに考えますが、いかがですか。
  80. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはもう先生承知のように、スモンとサリドマイドとでは因果関係なりその態様なりさまざま違うものがあることはもう御承知のとおりだと思います。しかし、いずれにせよ、こういう問題については、一般的に言うて、できるならば和解によって解決するというのが私は望ましいと思うのです。こういう問題を裁判によって争って、十年も十五年も争うという中で解決するということになりますと、単に私はお互いの憎しみと不信というものだけが残っていくような気がするのです。ですから非常な努力が要ると思いますけれども、話し合いによって解決するということが望ましいと私は思います。しかしながら、具体的にいまスモン病の訴訟について、それじゃ、いま何かそういうきっかけをつくる段階にあるかというと、まだ私はそこの段階にはないような感じがしております、率直に言いまして。そういう何かちょっと、いま和解したらどうでしょうかということを言うにはちょっとまだそこまでは熟していない、こういうふうに思います。しかしながら、一般的には、十何年も争っていくよりも話し合いによって多少なりとも不信感を解いて、そして解決するという方向にいけないだろうかという感じは私は持っております。ただ、非常に違いますのは、このサリドマイドのときには薬そのものがずばりその原因関係になっておるわけだ。ところが、スモンということになりますと、お医者さんの行為が何かしらそこに入っているのですね、これは。これはもう御承知のとおりだと思います。そういうふうなことがあるので、どういう方式が今後話し合いの中で適切な方式であろうか、私もその点は非常に苦慮しておるわけでございます。しかし、一般的に言うて、こういう問題は話し合いによって解決するということが望ましいものだなあと、こういうふうに私は考えております。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 その厚生大臣の一般的な御意見は再三伺っております。十年も十何年も争うよりも話し合いによって解決することが望ましいというその御趣旨は十分わかります。ただ、スモン病の場合、すでに早い人はやがて二十年近くなります。それから大量発生した四十一年——四十三年ころから数えても、すでにもう数年を経過をしております。厚生省の調べでは約九千三百名ですか、患者。これがおそらく潜在患者を入れたら二万ないし三万名になるではないかともいわれております。しかも、これらの患者の方々は年々悪くなっていく人が多い。自分はスモン病だということを隠して就職をしている。しかし、去年まではどうやら会社で働けたが、もう最近はとてもからだが動けない、そういうように年々悪くなっておられる方が多いということ、それから死亡者、自殺される方を含めて死亡率がうんと高いということ、こういう点、いま私の述べたこと、厚生省このとおりですか、いかがですか。
  82. 佐分利輝彦

    説明員佐分利輝彦君) まず、スモンの患者数でございますが、スモン調査研究協議会が過去二回にわたって全国的な実態調査をいたしておりまして、その報告によりますと、九千三、四百名の患者がいるとなっております。また現在……
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 繰り返さなくていいです、そのとおりかどうかで。
  84. 佐分利輝彦

    説明員佐分利輝彦君) はい。ただいまお話がございましたその他の点でございますが、もちろん一部病状の悪化する方もございますけれども、病状のよくなる方も少なくないわけでございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬務局長はサリドマイドが解決したから次はスモンだと、こういうふうに発表しているでしょう。どういう趣旨ですか。
  86. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) おそらく先生の手打ちの新聞がそうだと思いますが、私、就任しますにつきまして担当の記者が参りまして、サリドマイドは終わったけれどもスモンの問題がありますね、たいへんなものです、私もそう思います、この問題はしかしサリドマイドと違って、先ほど大臣もおっしゃいますように、なかなかこの事態を分析してみるとむずかしいような気がしますよ、たいへんな問題ですよというところまで申し上げた記憶はございますけれども、いま先生お読みのとおり申し上げたことはございません。ただ私としては、省といたしまして、サリド問題のほかにきわめて多くの被害者の方がスモンについてあるということ、そのことについて重大な関心を持っておるということを述べたわけでございます。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬務局長、写真入りで「サリドマイドが片づいたら次はスモン。これはサリドマイドよりもっとむずかしく、医療過誤の問題もある。これらが引き金となっていわゆる薬害救済制度が制度化されよう」、こういう発言をされたように報道されますと、実際の被害者はきょうかあすかと待っているわけです。それは公衆衛生局長が言われるようによくなるという、去年よりことしのほうがからだが軽くなったという人もおられるでしょう。しかし多くの方は、大臣、自殺されるということはよほどのことがあってのことでしょう。しかも、そうした苦しい中で、若い人も年輩者もいらっしゃる。そうした方々がサリドマイドが解決した、今度はスモンだと言われると、そうすると厚生大臣が先ほど述べられるように、一般的に話し合いされることはけっこうだとおっしゃるんですが、この患者さんが直接企業と、メーカーと交渉しても話がつかないわけでしょう。したがって、訴訟するか泣き寝入りかということになっているわけです。ですから、とにかく、厚生省が許可した薬を飲んでそうなったんだから、その厚生省がもっと責任ある態度を表明していただきたい。薬務局長のこれが全くの誤報なのか、それとも厚生大臣は先ほど一般的にはそういうことが望ましいとおっしゃるのですが、もう一歩進めてサリドマイドのきっかけをつくったと同じようなきっかけをつくっていこうという御意見があられるかどうか伺いたい。
  88. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほどもお答えいたしましたように、サリドマイドのときには薬そのものの直接の非常な問題があったわけでございます。スモンについては薬と患者さんとの関係の間に一つそこに医療行為というものが入っている、そこが非常に私むずかしい複雑な様相を呈しているものだと思うんです。でございますので、サリドマイトのように製薬会社——患者と、こうなりませんので、どういうふうな形によって話し合いをしたほうが話し合いができるのか、この辺がむずかしいところだと私は考えているんです。何かいい方法がないだろうかということを考えておりますが、まだ、いまのところ私にもいい知恵は出ておりません。しかし、できるならば何かのきっかけを——方式ですね、和解なり話し合いに入る方式というものがスモンについてないものであろうか、その方式について実はいま一番苦慮しているところでございます。私、率直に申し上げますと、そこが一番のむずかしいところだと、かように考えております。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、局長が言われたように、サリドマイドが解決したら今度はスモンだというほど厚生大臣は単純に、次にスモンに取りかかるというふうには考えられませんが、しかし何らかの機会を見て早くそういうきっかけをつかみたいと、早くそういうきっかけをつくりたいと、このように受け取ってよろしいですか。
  90. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いま御答弁申し上げましたように、いますぐ訴訟をやめて和解にという道は私はまだ時期は熟していないと思います。ただ、できることならば、そのサリドマイドとはまた違った何かの方式がないであろうか、その方式さえ頭に描けるならば話し合いということを提案してもいいんじゃないか、こういうふうに考えております。しかし、その方式というものが、これは非常にむずかしいものでございまして、そこに苦慮しておる段階である、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 苦慮しておられるがゆえに、きっかけさえあったらそういうふうにしたいと、こういう御趣旨でしょう。
  92. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そのとおりでございます。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、公衆衛生局と薬務局に伺いますが、スモン病を特定疾患にしておくということがおかしいですね、難病の特定疾患にしておくということは。したがいまして、質問の第一点は、ベーチェット、筋無力症、膠原病、まさしくこれは原因不明で難病の特定疾患でしょう。しかし、スモンの場合は、原因がキノホルム、そういう薬品による被害だというふうになった以上、特定疾患として扱うことはおかしいです。これは早く薬害被害者としての救済の道を立てなくちゃいけない。そういう意味からいって、いま厚生大臣が述べられるような、厚生省が中に立ってでも話し合いをするなり、救済の道を早く立てるべきだと、こういうふうに思いますが、それが第一点。それから第二点は、特定疾患のスモン班は四十七年、八年、九年で、三年経過いたしますが、今後継続して研究をされていかれるかどうか。同じようにベーチェット、筋無力、膠原病も三年で切れる、しかし、なお継続して研究していかれるのが当然と思いますが、いかがですか。
  94. 佐分利輝彦

    説明員佐分利輝彦君) まず、スモンを特定疾患に指定しておりますことにつきましては、確かにお話のように日本におきましてはスモンの原因がキノホルムという多数意見でございますが、欧米諸国におきましてはまだそれが認められていないわけでございます。そのような疾患でございますので、他にいろいろな援助の道が開けるまでは、特定疾患といたしまして、治療費の公費負担をすると同時に、その原因とか治療法の解明を続けていくべきではないかと考えております。  次に、第二の御質問でございますが、スモン等四十七年から調査研究を始めました疾患につきましては、かなりの研究成果があがっておりますけれども、まだ研究途上にございますので、特定疾患対策懇談会の御意見を聞いて今後も研究を継続するように努力をしてまいりたいと考えております。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 その懇談会の先生方のメンバーの方から私は、三年間ということで研究班は出発いたしましたが、いまもって治療の方法もわかってない、しかし厚生省予算上の都合で四十九年度で打ち切るというようなことがあったらたいへんなことになる、いままでの研究も結局結論を得ないまま終わってしまう、ぜひとも継続して研究すべきだと、こういう御意見なんですから、そのとおりでよろしいでしょう。
  96. 佐分利輝彦

    説明員佐分利輝彦君) 明年度予算要求に四十七年度から調査研究を始めました八疾患の調査研究費等要求してございます。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬務局長どうですか。いつまでもスモンを難病の特定疾患として、私のほうは関係ないみたいな顔をしているのおかしいでしょう。
  98. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 先ほど公衆衛生局長も答えましたように、スモンの被害につきましては、スモン調査研究班の報告におきましても、その大部分がキノホルムと関係あるというふうに推定はされましたけれども、なお一部問題が残っているということもおっしゃっているわけでございまして、原因面につきまして、具体的に、発生機序の問題とか、あるいは飲まなかった者から出たとか、そこらもなお究明する必要があるというふうなこともございまして、原因究明の余地もなお一部あろうと思いますし、また診断、治療の分野につきましてもなお考慮しているわけでございますので、私どもといたしましては難病がらみで今後とも検討してまいりたいと、かように存じております。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬務局がそういう責任のがれじゃだめだと言っているのですよ。薬務局長、あなた就任の弁で言っているじゃないですか、サリドマイドの次はスモンだと。これほどの薬務局長としての大事な責任の立場にありながら、難病でやってもらったから当分難病でいくんだというような、そういう責任のがれではだめだと言っているのですよ。
  100. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 私が申し上げておりますのは、技術的に原因究明なりあるいはまた診断、治療の基準なり等につきまして、いろいろな専門家のおられます研究調査班でやっていただきたいということを申し上げているわけでございますけれども、それはそれといたしまして、現実多数のスモンの患者につきまして、私どもが、大多数がキノホルムに関係ありという関連におきまして、先ほど来大臣も申されますように、救済の関係等につきましては、私どもはこれはじかに私ども自身が大いに検討もしなくちゃいかぬ、急がなくちゃいかぬ、そういう気持ちでおります。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、伺いますが、この難病は、まあ難病に対する見解も先生方によって違いまして、私も難病に対する見解は、難病とはこうだということについて意見もありますが、それは別といたしまして、いまの公衆衛生局の扱う難病は原因不明の難病として扱っているわけですから、必然薬品による被害を原因不明の難病として扱うなんておかしいです。国の行政としておかしいということを私は申し上げていることが一つです。  それから時間の関係でもう一つ厚生大臣、クロロキンとかコラルジルとかストマイとか、これも再三当委員会等で問題提起いたしておりますので繰り返しませんが、こうしたきわめてはっきりした薬品による被害ということに対する救済、それは、話が最初に戻りますと、救済制度をつくるために努力するとおっしゃるでしょう。しかし救済制度をつくるといって努力すると言いながら、ことしになって一ぺんも開いていないというような研究会で、いつ結論が出るか全然見当つかない。ひとつ大臣がそれこそ大所高所に立って、こうしたはっきりした薬による被害を受けられた方が何千人、何万人と発生しているというこの事実からして、一日も早く救済制度をつくる、それができないならば、個々にサリドマイドの例にならって和解するということになるかならないか、態様によって違いますけれども、何らかの大臣、対策を立てていただきたい。御決意を述べていただきたい。
  102. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は、こういう問題については積極的に解決するように努力をしなければならないと考えております。スモンの場合については、先ほど申し上げましたように、その薬が原因であると言われておりますが、その間に一つの医療行為というものが中に入っているという態様があるものですから、どういうきっかけがこの問題、この訴訟をあれして、話し合いで解決するという糸口をどうやってつかむか、その点について苦慮しているということを申し上げておきましたが、私はほんとうにこの問題は何とか慎重に検討を続けていかなきゃならぬ問題だと考えております。あくまでも裁判にまかせるんだと、こう言い切れないものが私はあると考えております。  なお、そのほかにクロロキン等の問題については、これはもうたびたび国会においてもいろいろ御質問いただきましたが、これはいわゆる薬の有効性と副作用との関連において、相当薬というものが大きな因果関係を持っておるものであるということについては私も十分認識を持っております。これなどについても、訴訟の数はかりに少なくとも、何らかのこれもきっかけがありますれば私は解決していくべきものではないかと、かように考えております。で、そういうふうな具体的な問題は別として、一般的に薬害の救済制度、これ、なるほどことしはさっぱり開かなかったというおしかりをいただいて、私も実ははなはだ申しわけないと思います。この問題については、私は大臣就任以来、たびたび当委員会でもお答えいたしましたように、何とかつくるように努力をしなければならぬと考えておりますから、今後ひとつ薬務局長のほうを督促、督励いたしまして、研究会においてもっと前向きな審議を続けられるように努力をいたす覚悟であることを明らかにいたしておきたいと思います。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間が過ぎましたので、あと一問、最後に薬務局長に伺って終わります。  先ほど指摘しました四月八日の参議院予算委員会分科会で、松下前薬務局長は、いままでこの被害者の方々の御意見を伺うことが不十分だったと、で、そういう被害者の実際の御意見を伺う点が不十分であったことを反省いたして、今後は十分被害者の御意見を伺うと、特に新しい制度を立てる場合には十分被害者の御意見を反映いたしますと、こういうように薬務局長はこの国会委員会で発言して答弁しておりながら、その後、薬害被害者の方が八月三日、十月五日をはじめとして、面会を求めても会わないとか、この間に非常に行き違いが多過ぎる、したがって、薬務局長、今回、まあ従来そういうことをあなたも御存じでしょう、局内におられて。ですから、薬務局長としてほんとうに被害者の現に苦しんでいらっしゃるスモン病患者をはじめ、いま指摘いたしましたような方々に対して、ほんとう国民のための薬務行政という点を出発として、被害者の方の御意見を十分お聞きして対策を立て、まして本格的な救済制度を立てるような場合には十分被害者の御意見を伺い、制度に取り入れると、これが当然の局長の任務と思いますが、いかがですか。
  104. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) 薬害被害の問題につきまして、被害者の方々のなまの声を聞くということは、私ども役所におります者にとりましてもきわめて大切なことでございまして、そういうお声があれば私どももできるだけそれを仰ぐようにいたしたいと思います。  ただ、私が聞いておりますところでは、いわゆる役所側と会うにつきまして、会見についての基本的なルールというものがなかなか守られないというふうなこともございまして、いろんな困難があったようなこともあるようでございますけれども、そういうことさえなければ、私どもお互いによく話し合うという意味合いにおきまして、会うことにつきまして私はいつでも応諾したいと思っております。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのルールを守らないのは、厚生省が守らないのか被害者の方が守らないのかということになるのじゃないですか。ですから、そういうことを言っていると、前局長の引き継ぎになっちゃう。あなたは新任局長としまして、十分被害者の声を聞き、そういう行きがかりのようなことを言うんではなくて、十分被害者の声を聞いてやっていきますということは言えませんか。
  106. 宮嶋剛

    説明員(宮嶋剛君) できるだけ被害者の方の声を聞いていきたいと思います。
  107. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 重症心身障害者の対策について伺います。  政府は、社会福祉施設整備五カ年計画、そして昨年の一月三十一日の田中総理大臣の発言、同じく二月の社会保障長期計画懇談会等に明らかなように、入所を必要とする重症児の全員収容を昭和五十年度中に行なうことといたしております。ところが、厚生省の五十年度予算要求の重点項目、重症児措置人員、これを見てみますと、昭和四十九年には一万八百五十二人、五十年に一万二千三百九人で、約千五百人の増加というところでとどめております。入所に必要な子供たちの全員入所という基本的な方針に変更はないのかどうかというその前提に立って、まず第一に、一万二千三百九人という数字は、昭和四十五年に入所が必要だと言われた数、厚生省調査になりますが、一万六千五百人というこの数とはどうも合いませんので、納得がいかないわけでございます。その辺の解明をひとつお願いをしたいと思います。  また第二には、五十年度整備計画の中に千百床という数が出ておりますが、これは、親が収容を希望している数、あるいは収容が必要だと厚生省側が認めた数になっていると思いますけれども、四十年、四十五年度調査の結果から考えてみまして、この千百という数字の根拠はどうも納得がいかないわけでございます。その意味で、もし新しい調査があったならば、その調査結果を報告をしていただきたいというふうに思います。  最初はそこまでです。
  108. 上村一

    説明員(上村一君) 重症心身障害児につきましては、かねてから申し上げておりますように、施設の整備を急いでおります。昭和五十年度には必要なベッド数はぜひ確保したいというふうに考えております。  そこで、本年の五月現在で、施設に入れる必要のある子供さんがどのくらいいるか調査をいたしまして、それに基づいて来年度整備量をきめることにしたわけでございます。で、この五月に調査しましたところでは、施設に入れる必要のあるというふうに出てまいりました子供さんの数が総計で二万三千四百人でございます。四十九年度までの計画で、これは予算の裏づけのある計画でございますが、施設が整備される量というのは約一万二千三百床でございますから、五十年度は残り千百床を整備すればいい、こういうふうに考えておるわけでございます。  で、いまお話ございましたように、四十五年度に身体障害者の実態調査をいたしましたときに、重症心身障害児の数を比べて調べてみた。そして、それに基づきまして当初五十年度を目標とする施設の整備の計画を立てたわけでございますが、前回の調査によりますと、いまのお話に出てまいりましたような一万六千五百人という数字があったことはたしかでございます。ただ、今回私ども考えております数字と、一万三千四百でございますが、それとの違いがありますのは、四十五年の調査では一応身体障害児の実態調査の中で、重症心身障害児がどのくらいいるかということをもとにして、もっと端的に言いますと、施設に入ると申しますのは子供の客観的な条件とそれから保護者の主観的な条件と二つが重なって施設に入るということになるわけでございますが、その中の主観的な条件と申しますか、親の希望についてはあまり聞かなかったわけでございます。  今回の調査は児童相談所を通じまして把握しております要入所の子供、それをつかまえまして、合計いたしますと二万三千四百になる、こういうことでございます。
  109. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そこ、数字はわかりました。けれども、お伺いしたいと思いますのは、たとえば昭和四十五年に総数が一万七千、で、今回の調査でいえば一万八千九百九十八で、大体二千人増加ということになっていますね。  それから施設に入所を要する数、先回は親の意向を聞かなかったという形で一万六千五百だということでございますが、そうするともう三千百人も入所しないでもいいという数が具体的に出ているわけです。二千人子供たちがふえていながら、三千百人も入所をしないでもいいという判断がなされているというところが問題点だというふうに思います。そしてまた施設に入所の必要がないといわれた数は四十五年度調査では五百名になっています。これは差し引きしたからそういう形になるんだというふうに思いますけれども、しかし今回はそういう形でいえば、数字の上では五千六百名近い子供たちが入所の必要がないという判断を受けていると思うんです。そうしますと四十五年度のその調査というのはわりかし推計的だったとか、いいかげんということばは使いませんけれども、きちんとした調査ではなかったということをお認めになるのでしょうか。  それから今回のその調査の中で、どうしてもお伺いしたいと思っているのは、親の意向をどのような形で聞いたのか。厚生省調査をとるということは、各県の児童相談所の報告をまとめられたものだと思いますけれども、その児童相談所は一つ一つの例をどういうような形で点検をされたのか、親の意向を聞いたのかということについてお伺いをしたいと思います。
  110. 上村一

    説明員(上村一君) 昭和四十五年に行ないましたのは、身体障害児の実態調査をいたしまして、そして、その身体障害児の中でダブルのハンディキャップのあるものを調べたと、この身体障害児の実態調査と申しますのは、百三十分の一の抽出調査でございます。  ことしの五月の調査は、先ほども申し上げましたように、昭和五十年度がとにかく重症心身障害の子供を入れます施設を整備する最終の目標である。その一番近い時点で調べてみることが必要ではなかろうかというふうに考えまして、児童相談所を通じまして、と申しますのは、このこういった重症心身障害児施設に子供が入るためには児童相談所に相談に参りまして、そして児童相談所が子供の状態を判定し、かつ親の意向を聞いて入れることが必要かどうかという最終的な取りきめをするわけでございます。したがって、児童相談所の把握というのが一番地についた具体的なものではなかろうかというふうに考えております。四十五年の調査が間違いだったということを申すわけではございませんけれども、いまの時点でもう一度調べてみたらこういう数字が出てまいったということになるわけでございます。
  111. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうしますと、いま御答弁によりますと児童相談所に相談に来た者というふうな言い方をしていらしゃいますけれども、これはそうすると来るのを待っているという形で、もう少し掘り起こしていく、きちんと調査をするという形になっているのかどうなのかというその質問が一つあります。  それともう一つ、たとえば相談に参ったときに、一体児童相談所ではどのような形でその親に話をするのかという、その基準のようなものがあるでしょうか。たとえば私も自分の教え子がその相談に来ましていろいろと話をしたんですけれども、自分の県にその施設がないときに、入れますか、入れませんかと、こう聞かれたら、とても簡単に遠い滋賀県まで入れようなんていう気持ちにはなれないというふうに思うわけです。そういうときに、その相談所の方々が、子供の教育権ということともからみ合わせていろいろな話をされると思いますが、在宅のほうがいいという考えをお持ちになっている場合には、またその話をする、説得をされる内容というものが違ってくるだろうというふうに思うわけです。そういう意味でこの差が出たんじゃないんだろうかという気持ちがいたしますので、児童相談所のもしお話し合いの内容がわかればお教えいただきたいというふうに思うわけですし、またぜひ、いまでなくてけっこうですけれども、それぞれの児童相談所の相談を受けた内容の詳しい各県別、できれば市町村別のような資料がありましたらいただきたいというふうに思います。その御返事があったあとで申し上げてもよろしいわけですけれども、私はそういう前提に立っていますから、また総数でこの五カ年間に二千人も増加をしているという形になっておりますので、今回の一千百床だけの増加ということで終わるということではないだろう、今後もまたきちんとした調査をおやりになって、これからもまた整備のために努力をするという、そういう姿勢かどうかということをお伺いしたいというふうに思います。
  112. 上村一

    説明員(上村一君) 児童相談所は御案内のように、児童問題の専門機関でございます。したがいまして、来る、何と申しますか、相談のケースを待ちかまえていて、それに相談に応ずるということだけじゃございませんで、ことに心身障害児の在宅対策を最近進めておるわけでございますが、その中で訪問指導をやりましたり、それからいるんな民間の相談事業を活用いたしましたりして把握しておりますので、何と申しますか、来るのを待っていたというふうなことは毛頭ございません。ただ、いまお話になりました具体的にどういう相談をしておったのかということにつきましてはいまつまびらかにいたしませんが、と申しますのは、個々のケースは千差万別でございます。子供の症状も千差万別でございますし、家庭の状況も千差万別でございます。したがって、その相談に応ずる相談員というのは専門の資格を要求しておるわけでございます。そういった中で、その子供に一番ふさわしい処遇のしかたを考えるということになってまいるんじゃないか。関連して御要求になりました資料につきましてはあとで個別的なケースとして事例的なものを差し上げることにしておいてよろしゅうございますでしょうか。  それからもう一つは、重症心身障害児施設の整備が五十年度で終わりとするのではなくて、さらに必要があればつくるつもりでございます。私ども五十年度が目標だと申しましたのは、とにかく重症心身障害児の施設というのは、児童福祉施設の中では非常におくれてスタートしまして、緊急に整備する必要があるということを考えて、計画を立てて整備しておる目標が五十年度で、しかしもうその後いろんな需要がまた出てまいると思いますから、そのときにはその必要に応じてさらに整備していく努力を惜しむつもりは毛頭ございません。
  113. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 たいへん各県の児童相談所が一生懸命にやっていらっしゃるという報告をいただきまして喜んでいるわけでございますけれども、そしてまた、今回で打ち切りではなくて、これからもまた考えていくという御回答をいただきまして、私は意を強くしていますが、しかしまた考えてみますと、施設のこの水準を考えてみますと、ただ食べさせる、排尿をさせるという、生きていくだけが精一ぱいじゃなくて、もう少しその施設の内容というものを、いまのような劣悪な条件の中では子供たちは入れられないけれども、もっと施設の内容がよくなったら私は子供を入れていきたいというおかあさんたちもふえてくるかというふうに思いますので、その意味で、いまの御返答を十分にこれからも生かしていただきたいという要請をいたしまして、次に移ります。  現在の収容率についてお伺いするわけですが、いま一体きちんと何床あって、そしてその何床の中の何%ができているのかということなんです、利用されているのかということを質問いたします。で、現実に入所希望者がありながら満床となっていないというふうに思いますけれども、満床になっていない理由というのは一体どういうふうに分析をしていらっしゃいますか。
  114. 上村一

    説明員(上村一君) 四十九年五月一日で調べましたときの数字で申し上げますと、この五月一日で一応整備しました病床というのは約九千五百でございます。で、この五月の時点と申しますのは、まだ四十八年度、四十九年度の計画で整備しております施設が、建設の完了が済んでおらない時点でございますが、この時点で病床を整備しましたのは約九千五百でございますが、まあ入っております子供は約八千四百、まあ千の開きがあるわけでございます。これはいま御質問ございましたように、まあ施設の整備は進めておりますけれども、一方でなかなか介護職員の確保ができないという事情もあって、残念ながら全部の病床を満たしきれないというのが実情でございます。
  115. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 まあ大体本年で施設の整備が終わるということはわかりましたけれども、今後方針といたしましてね、在宅対策に切りかえていいのかどうなのかという問題があろうかと思います。それはほかの施設と異なりまして、社会復帰を前提にした回収率を予測するなんということは非常に困難でございますし、これからも発生増加があるでしょうし、先ほど私が申し上げました施設内容が向上することによって入所希望者も増ということになりますから、やっぱりもっと継続をしていただきたいという要請をお願いをしたいと思います。  では、次に質問を移ります。第二は、重症児施設の整備水準と腰痛症多発による非常事態におちいっている施設の問題についてお伺いをいたします。  田中総理大臣は四十八年の二月の九日に衆議院の予算委員会でわが党の大原亨議員の質問に対して、荒れている病床の整備看護婦、医師の手当などに対しては先進工業国とみずから言っているんだから、それに恥じないりっぱなものをつくりたいと、こうおっしゃっております。で、その後編成されました四十九年度予算は、医療費の大幅なアップで、子供一人対介護人一人という一対一が運用上認められております。にもかかわらず、昨年来の狂乱物価、そうして悪性インフレの波は、事態を解決に導いたというよりはむしろ逆になっておりまして、施設の運営や経営を重大なピンチにおとしいれているという事実があるわけです。すでにもうマスコミにも報道されておりますから皆さん御存じのことと思いますけれども、島田療育園ではもう崩壊状態があらわれて、職員が措置権者である美濃部都知事に直訴をし、最終責任者である内閣総理大臣に面会を求め、また大村官房副長官に要求状を手渡すというようなところまできておりますし、また、先日私たち社会党のほうで視察に行ってまいりましたけれども、京都においては寝たきりの身障児を収容する花明学園、そしてわが国では唯一といわれるいわゆる動く重症心身障害児を収容しています木の花学園において職員の腰痛が多発し、園児の一時帰宅あるいは一時休園に至るかというような問題が起きております。  で、質問に入りますけれども、島田及び花明、木の花の人員不足、そうして労働強化に伴う腰痛多発に対して、まず第一に東京都並びに京都府の対応はどのようなものであったかということについて把握をしていらっしゃるかどうかをお伺いいたしますし、その次に、一体そういうような状況厚生省も御存じだと思いますけれども、国としては一体その事態の打開についてどのような手だてをされたかということをお伺いをいたします。
  116. 上村一

    説明員(上村一君) いまのお話にも出ましたように、京都の花明学園なり東京の島田療育園というのは直接には都道府県知事である京都府知事あるいは東京都知事が指導監督される立場にあるわけでございますが、東京都なり京都府を通じまして私ども把握しておりますのは、花明学園の場合には、四十八年度特別児童保護費であるとかあるいは年末慰労金であるとかインフレ手当という名目で約二千六百万円財政措置が講ぜられ、四十九年度の場合にはやはり特別児童保護費とか腰痛代替職員募集等の費用として約二千百万円交付することになっておるというふうに聞いております。  それから、東京都の場合には、四十八年度の場合には二万八千円。今年度四月から九月までは八万二千二百円、一人月額でございますが。それから十月から三月、これは医療費が上がったためでございましょうか、五万二千四百円、こういった助成をするというふうに聞いておるわけでございます。  国としましては、昨年の八月に、重症心身障害児施設の中で、特に年長の子供の割合の高うございました施設につきまして六千万円の特別措置費を交付いたしましたけれども、四十九年度の場合には、こういったその施設を含めました重症心身障害児施設の実情を考えまして重症指導費につきましても大幅に増額いたしましたし、医療費の面でも特殊疾患収容施設管理料を新設するといったような措置を講じてまいりまして、それによりまして重症心身障害児施設は全体として大幅な運営の改善がはかられておるのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  117. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 昨年たいへん大きく前進をしたということは私は認めながらも、前進をしたけれどもやっぱり問題が出ているというところで御質問を申し上げているわけです。  で、具体的に東京都の知事の裁断によりまして、一対一のために一人当たりまあ八万二十八百円を出す。そして春闘相場並みの賃金も保障しよう、腰痛代替職員も別ワクとして二十八名を認めようということで、園側もそれを了承し、職員側もこれを納得いたしまして、いま子供たちのために一生懸命にがんばっているわけですが、しかし、東京都のこのような努力だけではどうにもならない問題がいまあるわけです。たとえば島田にはいま百七十一名収容しておりますけれども、そのうち東京の子供たちは九十五人なんですね。で、地方各県からお願いをしている子供たちが七十六人ですけれども、この七十六人分が八万二千八百円にこうならなければ、いわゆるこの問題は解決をしないわけです。ですから、その島田にお願いをしているその各県に対して東京都並みに出してくださいというこの辺のところの御指導を国としてやる気がまえがあるのかないのか。私はやっぱりやっていただかなけれ、はならないというふうに思います。  そして第二番目に、金繰りの問題があるわけです。島田においては当面二千万円のお金が足りない。いま六千万円なければボーナスが支払えない、そしてまた四月から七月の差額もこれも支払えない、そしてまた業者支払いも滞っているというような状況もありまして、銀行からお金を借りるためにもやはり担保がなければ借りられませんから、父母会にお願いをいたしまして、一人二万円で千人、そして一千万円をつくって何とかこのピンチを乗り越えようとはしておりますけれども、とてもそんなお金では間に合うような状況ではありませんし、またいまお話しになりました花明や木の花なんかは年度末には七千八百万円の累積赤字が出るだろうと、こういうことも園のほうから報告がありましたし、そしてこの花明、木の花のほうではいわゆる労働組合と国側の中で労働協約というものが結ばれて、一対一をやります、そして週休二日制もやります、そして人事院勧告もそのとおり実施します、腰痛代替も別ワクにとりますということをお互いに了承しながら、また子供たちのために一生懸命にがんばっているわけですが、こういう努力に対して何とか国のほうでもこの年末を切り抜けるという、そういう力添えというものができないものか、またやっていただきたいという要請も込めて質問をいたしたいと思います。
  118. 上村一

    説明員(上村一君) 何と申しますか、個別的な施設ごとの特別の対処をするというのは国として非常にむずかしいわけでございます。島田の場合に運転資金に非常に難問があるという事実は私ども承知いたしておりますので、側面的にできるだけの援助はしてみたい、そういうふうに考えております。それから花明につきましては、京都を通じまして事情を聞いておりますが、赤字のあることは確かなようでございますけれども、いまお話しになった額のような大きな額ではなさそうでございます。  一般的にこれから重症心身障害児施設をどうしていくかという問題になるわけでございますけれども重症心身障害児施設の収入の主たる財源であります医療収入につきましては、ことしの二月の改定に続きましてこの十月再度引き上げが行なわれておるわけでございます。そこでどうするかということにつきましては、もうしばらく検討させていただきたいと思います。
  119. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 しばらく検討はけっこうでございますけれども、年末というのはしばらくたっちゃうとすぐ来るわけですから、それまでの間にぜひ善処方をお願いをしたいというふうに思うわけです。いま職員側のたいへんな努力と同時に園側の努力もありますし、父母のほうでもとにかく月に三日間はお手伝いに来ようとか、一週おきに日曜日はボランティアとして必ず来るようにしようとか、お互いが努力をしながら子供たちを守っていこうとやっているわけですから、国のほうにおきましてもそういう努力を認めて、その努力にこたえるような姿勢を出していただきたいというふうに思うわけでございます。その点で大臣はいかがお考えでございましょうか。
  120. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 重症心身障害児を扱って経営しておられる施設、これはもうほんとうに非常に苦労されていると思います。できるだけの努力をいたしてまいったつもりでございますが、まだ今後とも不十分な点が私は個別に見ますといろいろあると思います。そういう問題については個別にいろいろ相談に乗りまして、できるだけの善処方をいたしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  121. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 それでは花明、木の花あるいは島田に限らず、先回のびわこ学園の問題もありまして、とにかく職員の確保の対策についてどのように基本的に考えていくのか、具体的に対策をとっていくのかという問題があろうかというふうに思います。先ほどお話しになりましたように、入所必要者が八千五百名も待機しており、二一%の空きベットがあるというその原因の中にも職員が足りないからということがありますし、また、職員の退職年数を平均的に見ますと大体三年ということになっているわけです。これはもう日本の婦人全労働者が退職をする平均年数にも満たない、いかに劣悪な状況であるかということがわかるわけですけれども、そういうような状況になる一体原因は何かといえば、やっぱり労働条件が問題だということが一つと、いわれておりますように生きがいの問題があろうかというふうに思います。その労働条件が悪いから腰痛症が出てくるわけです。とにかく人をふやすということが第一条件ではありますけれども、この腰痛対策に対してどのように取り組んでいるかということをお伺いしたいと思います。これは四十八年の四月五日に田中寿美子委員の質問もありましたけれども、その時点からでもけっこうですが、どのように進展をしているか、労災認定も含めてお伺いをしたいと思います。  また、人手を、ふやさなければならないという意味ではいまの一対一でも足りないわけですし、一対一・五、つまりそういう人間をふやすことによって労働基準法がきちんと守られていくというような条件をこれからやっぱり整備をする必要があろうかというふうに思いますが、その辺のところはいかがお考えでございましょうか。  また、それとあわせていろいろな施設内の条件についてのお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  122. 上村一

    説明員(上村一君) とにかく重症心身障害児施設で腰痛が発生しないようにしなければならない点は全く御指摘のとおりだと思います。今年度職員の増員ができますように重症指導費の額を大幅に引き上げたのもそういう点に着目したわけでございます。  ただ、腰痛につきましては、医学的に見ていまだ解明されない点もあると聞いておりますが、これまでとりました対策としましては、いま申し上げました職員の増員をはかるような重症指導費の増額のほかに、施設における健康管理についての指導なり運搬などの省力化機器——大体一施設二百万円、そういった省力化機器を導入したり、ふろの設備の改善などをいたしまして腰痛の原因を除去するように持ってまいりたいと考えております。さらに今後の問題としましては、万一腰痛になられた場合の早期休養も大切でございますから、これに対処する措置ということも検討しなくちゃならないんじゃないか、そういうふうに思っております。
  123. 岸良明

    説明員(岸良明君) ただいま厚生省のほうからお答えがございましたけれども、私どものほうといたしましては、この社会福祉施設関係におきまして労働条件の御指摘のとおり立ちおくれが、確かに問題がございますので、四十七年来この社会福祉施設を中心に相当に監督を強化いたしてきております。特に本年度におきましては、ただいま問題にしておられます重症心身障害児施設につきましては全施設を監督し、また適切な指導を行なうようにということで現在監督、指導の計画によりまして進めておる状況でございます。  なお、問題の解決にはやはり厚生省の力を十分やっていただくということが必要でございますので、厚生省との間に本省相互に緊密な連絡会議を開きまして、また地方におきましては、都道府県と地方の基準局の間でやはり情報の交換その他連絡を緊密にいたしまして現在行政を進めておるわけでございます。  なお、先ほど児童家庭局長からお話がありましたとおり、予防につきましては、厚生、労働両省で福祉施設の腰痛問題、これに対する研究会を開催いたしまして、七月の十六日に中間報告を得まして、その中間報告に基づきまして、現在指導を強化しておるという状況でございます。
  124. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 お願いしたいと思いますけれども、その中間報告書がありましたら後ほどお届けをいただきたいということでございます。  で、腰痛対策に対して、いまいろいろとお話がありました。そのことは一つ一つもっともだというふうに思いますけれども、もっと具体的に、たとえば週休二日制をほかの公務員に優先をしてとらせるというような指導をこれからやっていこうとか、あるいは一対一・五ということは一対一さえまだ十分でないような現状の中から考えてみて、とにかく休んだ人のかわり、腰痛代替者、この予算をどのように対処をしていくかとかというふうな具体的なまだ御検討がないように思いますが、そのことをお伺いいたします。  その次に、施設の職員の労働はなぜ九時間労働ということが許されているのかということについても、これも四十八年の四月の五日に質問をされておりますけれども、この辺の行政指導はどのようになっているのかということをお伺いいたしますし、それから病院勤務の看護婦さんの夜勤については、人勧ですらも一カ月に八日以内、こういうことになっていますにもかかわらず、具体的にはいまの施設の中で大体十回から十五回ぐらいもやっているという実情があるというふうに思います。この辺のところをどのような指導をやっていくのか、具体的な対策をお伺いをしたいというふうに思います。
  125. 上村一

    説明員(上村一君) この週休二日制の問題というのは、いまお話になりましたように、社会福祉施設につきましては、できる限り民間の動向などを考えながら入れていかなければならないという気持ちは持っておるわけでございますが、来年度直ちにというところまではまだ考えておりません。  それから腰痛職員の代替の問題でございますが、一つは労災の休業補償とのからみもあると思いますけれども、来年度ども考え方としましては、児童福祉施設全般について職員が病気になった場合のかわりをどうするかということは本腰を入れて検討してまいりたいというふうに思っております。  それから、児童福祉施設についていま一日九時間というふうなお話があったわけでございますが、私ども現在八時間ということでやっておるわけでございます。  それから夜勤の指導の問題でございますが、重症心身障害児施設、御案内のとおり病院でございます。そしてその看護婦さんが主力のスタッフになっておるところでございますので、一般の病院と同様最大月八日ぐらいというふうなのが私どもの基本的な指導方針でございます。
  126. 岸良明

    説明員(岸良明君) この基準法上、病院社会福祉施設につきまして、一日の労働時間が九時間になっているという問題でございますが、これは原則として御承知のとおり労働時間は四十八時間制でございます。しかしながら基準法の第四十条におきまして、公益の関連が特に深いような産業また特殊な事情のある産業につきましては、例外的に規定を定めることができるということになっておりまして、現在はこの病院社会福祉施設について九時間、五十四時間という制度をとっておるわけでございます。確かに先生の御指摘のとおり、この問題について非常に労働組合その他の側から改善をすべきである、こういう御意向がございまして、私ども非常に公共——特に社会福祉施設の場合でございますと、入っておられます方々の看護の必要性、あるいは病院の場合でございますれば公衆の利便ということと、また内側におります職員の労働条件、このかね合いをどう考えるか、非常に重要な問題だということで、私どもも慎重にいま検討しておるわけでございます。ただ、その行政指導といたしましては、全体にやはり時短の趨勢が進んでおるわけでございますので、やはり四十八時間の原則に入るようにこれは私ども監督指導をしておるわけでございます。また厚生省のほうでも何回かの打ち合わせ会議で非常にその点は真剣に取り組んでいただきまして、積極的な改善策を御努力されておるというふうに私ども考えております。
  127. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 いま病気や、あるいは腰痛症も含めた病気の大体代替職員についての検討をしてるということなんですけど、検討だけしてもらっては困るので、具体的にたとえば代替職員を置くためにこのような予算措置をしますという、東京都にゆだねるのではなくて、予算上そういうようなことをやっているかどうかというお伺いをしたかったわけです。  それは四十八年になりますけれども、私が立候補しようということを決意を固めたときに、私の教え子のほうからこの手紙を読んでくれということで、びわこ学園の父母会からの手紙、それから園長さんの手紙をいただいているわけなんです。中に、どうしても足りなくなったから、もうやってけなくなったから、自分があの子供を抱いていたときのこと、育てていたときのことを思って三日でいいから出てきてくださいという涙なくしては読めないような手紙だったわけですね。それはなぜかといえば、やっぱりお休みになった方のあとの代替職員が予算上ないということを言うんだという文書が中に入っておるわけです。その辺のところが本年度ちょっと運用上改善をされたのではないだろうかと思いますので、五十年度予算の中で、それがただ検討だけでなくて具体的に盛られておるかどうかということをお伺いしたがったんです。
  128. 上村一

    説明員(上村一君) これは概算要求を大蔵省に持ち込んでおる段階でございますので、簡単に申し上げることで御容赦いただきたいのでございますが、私ども年度こういった代替要員は確保したいという姿勢で予算要求に盛り込んでおるところでございます。
  129. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 いや、大蔵省に対して要求をしていれば、それを切るということは大蔵大臣問題点になろうかというふうに思いますけれども、大蔵省の方、来ておられましたら、ほんとに皆さんが自分のからだを痛めながら子供たちを守っていこうと努力をしていらっしゃる、それに対してこの要求はぜひ通していただきたいというふうに考えているところでございます。  最後に意見を申し上げたいというふうに思いますけれども、いま職員たちが非常に悩んでいる問題はやっぱり子供たちを療育するという医療の問題と同時に、教育の問題があろうかというふうに思います。ところが職員が二年あるいは三年でやめるためにその積み重ねが全然行なわれていかないという、そういう問題をからめておりますし、また非常に人手不足なものですから、自分たちがほかの園との交流をやり、とにかく交流をすることによって自分たち自身も高められていきたいという、この研修の場所が全然行なわれてないで、もう試行錯誤に追われているというところに生きがいが持てないという問題を持っております。  さらにまた実習生が園に来ますと、非常に感動して帰っていくんだ、ところが実習生の制度というものができていないために、来たり来なかったりだということになってますが、ぜひ実習生の制度を取り入れてほしいというもうさまざまな要求を持っておりますので、その職員の要求がきちんと生きていきますように、特にこの問題は教育と関連がありますので、昨年の一月三十一日に奥野文部大臣が、教育を進める上で医療福祉の分野と十分に連携を持つ必要があると言っておられますし、さらに国においては関係行政各機関相互の連絡調整をはかっていくと、そうお答えになっておられますので、ぜひともその調整をはかっていただきますように、ほんとう前進をいたしますように心からお願いをしたいというふうに思います。そのことは、たとえば島田に対して東京都からは派遣教師が四名出されております。ところがここのところにも問題があるわけで、たとえば東京の子供でない人たちにはめんどうを見なくてもいいという、こういう条件が出てくるわけですね、派遣教師が。ですから教育の問題と、人間として命を長らえていくという問題とをからませ合うということが、厚生省と文部省の間できちんとこの連絡がとれるようにお願いをしたいというふうに思います。これは私の社会党としての要請でございますけれども、この点に関する大臣の御答弁お願いして質問を終わります。
  130. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 社会福祉施設職員の勤務条件の改善の問題につきましては、実は四十九年度予算におきましても、厚生省御当局はこの問題を最重点事項の一つとして取り上げられまして、現実に四十九年度のいわゆる措置予算の中で種種の改善事項が盛り込まれておるわけでございます。そこで、五十年度をいかがするかという御質問でございまするけれども、現在五十年度厚生省がお考えになっております施設の職員の改善の御計画を現在事務ベースでお伺いし始めている段階でございまして、この問題も含めまして、現在五十年度予算の作業を始めたばかりの段階でございますので、本日御質問の点につきまして、具体的にきちんとした御説明ができないということを御了承賜わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、御指摘の点につきましては、今後の予算編成作業の過程におきまして、厚生省とも十分に協議いたしまして検討してまいりたいと思います。
  131. 国松治男

    説明員(国松治男君) 重症心身障害児施設と教育との連関でございますが、私どものほうも各都道府県の主管課長を集めました席等で、これから特に障害の重い子供の教育については、いままでのように養護学校に来れば済むというふうな形ではなくて、その施設の中に養護学校の分教室ができるなり、あるいは先生を派遣するなりというふうな形を考えていかなければいけないんだ。地元にあります施設と十分連絡をとるようにというふうなことで指導いたしておるところでございます。今後とも、厚生省ともまた連絡をとりまして、そういう指導の徹底に力を尽くしていきたいと、こう考えております。
  132. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 施設に働いておられる方々に対しましては、私ども最大改善措置を講ずべきものであると考えております。特に、まあ基準法違反だなんというようなことをいわれないようにこれはしなくちゃいかぬと思っているんです。基準法違反だなんということをいうて、同じ官庁の労働省からおしかりをいただく、これは恥ずかしい話だと私は思っております。それに特に重症心身障害児を収容している施設については、その子供さんたちがだんだん大きくなりますから、やっぱり人手だけじゃなしに、省力化の機械を相当導入していくという方向を考えていかなければならぬだろうと、かように考えております。教育の問題については文部省とも緊密な連絡をとりながら、最大努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  133. 片山甚市

    ○片山甚市君 粕谷照美さんのあとに続いて、引き続き重症心身障害児施設に関する質問をしたいと思います。  まず大臣に聞きたいのは、この施設は金もうけをしたり、あるいは利益を得たりということでつくられておるのかどうか。
  134. 上村一

    説明員(上村一君) お答えするまでもございませんが、児童福祉施設というのは児童それぞれ必要に応じて保護し、治療、訓練する施設でございまして、決して営利を目的として経営されるものではございません。
  135. 片山甚市

    ○片山甚市君 私は大臣に聞いたのでありますが、大臣がそういうことは答えるに及ばぬと思ったと思うのですけれども、申し上げるのは、この子供たちは介護をする、助けてもらう人がおって初めて生きていくことができる、また考えることができる。ですから、この施設は御承知のように赤字になったとか、行きづらくなったというのはそこにおけるいわゆる施設の運営上の問題である、そのことによって子供に支障を来たす。子供の養育、治療に支障を来たしたらいかぬと思うのですが、そのような立場から質問をしたいのです。すなわちいまの施設の調査をしてまいりますと、先ほども申しましたように島田療育園にいたしましても、木の花、花明にいたしましてもそれぞれの赤字が出ておる、その原因についていわゆる厚生省はどのようなことが一番大きな原因で起こっておるのか、お知りでしょうか。
  136. 上村一

    説明員(上村一君) 通常考えられますのは、収容されました子供について払われます費用だけで人件費がカバーし切れなかったという点が一番大きな理由ではなかろうかと思います。
  137. 片山甚市

    ○片山甚市君 それでは、重症心身障害児の治療、教育については、先ほども申されたように、昭和五十年度までに一万三千四百九人が施設に入ることができる見込みであり、五十年度には約千百床をつくることができる。そこでそのほかに五千五百八十九名程度の子供が在宅の見込みだとおっしゃっておられたと思いますが、間違いございませんですね。
  138. 上村一

    説明員(上村一君) そのとおりでございます。
  139. 片山甚市

    ○片山甚市君 そういたしますと、その計画どおりいくならば、建物、いわゆる入れ物は大体できたということに相なると存じます。いわゆる五千五百八十九名の子供たちが先ほども粕谷委員のほうから、質問したとおり、なぜこのようなところで在宅でおったらいいのかということについて具体的に調査の結果を知らしてほしいと思います。
  140. 上村一

    説明員(上村一君) ことしの五月に児童相談所を通じまして調べたところでは、いまお話のように入所する必要がない、在宅でいいというふうな子供が約五千あるわけでございますが、これを考えますのに、一つ重症心身障害児だけではなくて、一般的な心身障害児の対策を考える場合の基本になると思うのですけれども、やはり親としてはできるだけ自分の手元で子供のめんどうを見たい、これは障害児であろうとなかろうと変わりのない点だと思います。そういう気持ちが根っこにあり、それから在宅対策というのをここ二、三年特に重点を置いて進めてまいりましたので、その在宅対策が充実してきたということも一つの理由ではなかろうかと、若干自画自賛できますけれども、そういうふうに考えております。
  141. 片山甚市

    ○片山甚市君 そういたしますと、そこで厚生省の本音は、在宅のほうがいいのではないか、それほど実はこの施設は悪いのであります。大体二十四時間親がめんどう見るというけれど、親も寝なきゃならぬ。そうでございましょう。たいへんですなあ。その親がよそ見もできない、どないしておるんかしらぬけれども、金がようけいあるんですな、そんな人は。そうでなくて、施設がいかぬから、放り込んで何もめんどう見てくれぬというようなとこがあると思うから、かわいそうでかわいそうでかわいそうで行けないんですよ。そんな、園がよかったならば、施設がよかったならば、あれだけの子供を家に置いておくということだけにはならぬ。私はその人たちが申し込んで、そうして行ってみたのかどうか一度聞かなきゃならぬと思っていますが、これはいわゆる私たちが見ておる限りでは、五千五百八十九名ほどあるといわれる在宅の方々は、おそろしいおそろしい施設よりは何ぼつろうても自分の家のほうがええと思っておるんでないかと思います。いいますのは、そんな施設が悪いのかといったら、その人にとっての主観ですから。私が申し上げたのは、園は、この施設は金もうけでないですねと言ったら、大臣は、あたりまえじゃないか、何をそんな質問をしておるのかと言って、あなた、局長が、——私は厚生大臣に答えてほしいと言うても答えなかったぐらいの程度ですから。もうこれは言ったらあきまへんで、金がない言うたらあきまへんで、私は、経営上のことではないですね。こな経営で、金があるとかないとか違う。人間を大事にする、そのために施設をつくったのだ。施設を経営する、どっかにおる者をほったらかしにするということはないんだと、こう思いますから聞きました。そうしたら、そのとおりだ、こう言ったはずですから、あとで訂正しないでくださいよ。あとで金を出せというときになったら、いやいや御都合でいろいろ金がございませんと言うたらだめですから。そういうことで、増設の計画はあると聞きましたから確認しておきます。たとえば、いわゆる五千五百八十九名が入りたいと言ってきたらつくりますよと、先ほど。いま申し込んでないからいいけれども、ちゃんとこれで五十年でとんとんでいくようにしてありますから、こういうことですから、来年になりましたらまだ参議院は任期がございますので、やめませんから。きょう初めてでございますが、ちゃんと言いますから、それは覚えておいてくださいよ、よろしゅうございますね。そういうことであります。  その次に、いわゆる入所の必要はないという判断、根拠が私は問題としたのでありますけれども、この計画はやっぱり数のつじつま合わせになっておると思う。さらに、数のつじつま合わせというと、児童相談所がいいかげんにしたなどと言っているのではありません。大体、いわゆる一万三千四百九人が施設に入所できることになったという、できる来年。それはどういうことかというと、いまのインフレと何とでそれほどさあさあと施設ができるようになりましたか。土地の関係は落ちついたかもわかりません、あなたのほうが。民間でしょう、これ。民間もやるんでしょう。そうすると、これから家建つのも非常にできやすくなったですね。学校等のことでもたいへんな金でしょう。そうすると、民間がつくるとなれば相当のお金が要るんですが、国のほうの建てるのはよろしいけれども、民間のほうの、民間施設は、それはもう数に入れてない。千百というのは国が責任を持つ国立ですか。いやがらせに聞きますが、いやがらせに聞きますよ。千百というのは国が建てるのですね。それならば全額だからいけるんです。民間につくらせるならば補助金の関係がございます、何かやりますには金がなければできませんね。いわゆる、たとえば自分たちの休憩室をつくろう、自分たちの休息所をつくろうとしても学園によれば金がなくてできていない、そういう関係がありますから、この入所をするのについてこの人たち、数を合わしたと思いますが、それとおり、合わしたとおり建っていますか、千百名入れるようなものを建てることになっていますが、今度のこのインフレの中で建つんですね、計画どおり。もう一ぺん尋ねます。
  142. 上村一

    説明員(上村一君) 重症心身障害児施設、現在まで整備してまいりましたベッド数を設置主体別に見てみますと国立が六割を占めておるわけでございます。国はほかの児童福祉施設と違いまして、相当力を入れて整備してきたつもりでございます。来年千百床要求しておりますのは、国立と公法人立合わせての数字でございます。それで、現在のインフレの時代に建つかというお話でございますが、私どもこういった児童福祉施設を整備してまいります場合には、その法律上は私立の場合ですと国と県合わせまして四分の三の補助が出る、御案内のとおりでございますが、それが単価をできるだけ引き上げるように努力をして、何と申しますか、建つように努力をしてまいりたいというふうに申し上げたいと思います。
  143. 片山甚市

    ○片山甚市君 学校の建設の国の補助金の単価を見てもらったらわかるとおり、そんなことで建つようになってないんです。ですから大臣、しっかりと約束してもらってくださいと、こういうのです。何も善処などせぬでよろしい。そのぐらいは、たった千百名ぐらいの子供のことは、社会党の参議院の委員が言わなくてもやりますよと、こう言ってもらわなきゃならぬですね。私はなぜそう言うかといったら、やはりうんと大きい、世の中ひっくり返すほどの問題なら別ですけれども、動けない、考えることすら十分でない、それで力だけばか力あるような、その者を、預かっておる者たちを安心してやってもらおうとすれば、そこに働く人の条件をつくらなきゃならぬ、施設をつくるだけでなくて、−こう二つありましたから、まず先に施設をつくりますね。そうしたならば、できますねと言ったら、できますと、足りなければあとからしますよと言ったから、やはりもう一度念を押しておきます。千百名入れるようなやつを確実に五十年にはできるように、大蔵省に言わなきゃならぬのならもう一ぺん言いますから、今度折衝して概算要求するんでしょうから、だめだと言ったら委員会にちょっと来てくださいと、あのときにあんなこと言いましたけれどもとうとう認めませんからと、こう言ってください。われわれはすわり込みしてでもこれはやりますと、こういうことを言うておきますから聞いておいてください。そこで、在宅のいわゆる五千五百八十九名について、楽なことでございませんものですから、先ほどの別のお話のときのように、いわゆる生活保護世帯の人たちと比べたら福祉年金のほうが多くなるのでいやだなどというような話もありました。しかし、今度の場合は関係ございませんので、大臣のほうにも、ちゃんと介護手当を出してこの子供を十分に見れるように、いわゆる一万三千四百九人は施設に入って皆さんの力で何とかしてもらえる、われわれも努力する。ところが五千五百八十九名は家におるために一万円か五千円か、何ぼか、はした金やったらそれでしまいだ、施設に入ればそんな金でないことは事実です。そういうことのないように、おかあさんやおとうさんが子供を抱いておる気持ちをきちんとしてもらう、そういう制度を前進さしたいということ、それにふさわしいものを今度の予算で出すというんですから、きょうは金額的にお答えができれば、このぐらいの、いわゆる家庭における在宅の介護手当制度をつくりたい、こういうように答弁をしてもらいたいんですが、お考えがございましょうか。
  144. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはもうたびたび私が当委員会で申し上げてありますが、社会福祉施設整備の中で政府が最も力を入れているのは実は重症心身障害児の施設でございます。一応入所を希望する方々については五十年度に全部入れましょうということを去年から申し上げておるわけでございます。もとよりその施設は大半は国立療養所等でございますが、民間の施設の御協力もいただかなきゃならぬものもあります。したがって、私どもは来年度予算編成にあたっては、五十年度で希望をする一万三千幾らですか、その方方が全部入れるように最大努力をいたします。民間施設等においていろんな単価の問題あります。そういう問題についても大蔵省と十分相談をしてりっぱにそれが建つように最大努力をいたす考えでございます。さらにまた在宅療養を望んでおられる方々については、ことしは一万一千三百円、それにプラスして三千円という——三千円というのは新しい制度を昭和四十九年度つくったわけでございますが、これについても明年度予算編成にあたりまして適正な増額お願いすると、こういうふうにいたしたいと、かように考えております。
  145. 片山甚市

    ○片山甚市君 いま大臣のほうから具体的な数字でお話がございました。私たちあらためていま大臣のお考えになっておるような金額でいいのかどうかについては別のときに申し上げたいと思いますが、とにもかくにも一億一千万おる中で重症心身障害児といっていま顕在化されておるのは約二万名近い方々でございますが、このような方々が生まれないためにも、やはり妊産婦に関するいわゆる具体的な保健政策を、お金を使って十分に公的でめんどうを見て、妊娠中に起こらないように、生まれるときには完全にいい病院で子供が産めるようにすることを、厚生大臣、生まれてからいわゆる三年、三つになるまでは十分に親が介護のでき、いわゆる適当にしてもらわないと、やはりこういう子供は生まれてまいる。早いうちに手を尽くせば可能性があるのに、月日がおくれるばかりに全くなおらないということになる。こういうことについても、関連する問題、生まれてきた問題でありますから、生まれるまでの妊婦あるいは生まれた子供の衛生保健、いわゆる医療に関する問題について十分な配慮をされることは、こんな施設をつくらなくて済むことだということで、迂遠なようなことでございますけれども、大いに力を尽くしてもらいたい。これは私の意見であります、回答を求めるよりも。そうしなければ、あとからあとから生まれてくるようなことになればたいへんだ、こういうように考える。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕  そこで、先ほど私のほうの粕谷さんのほうから言いましたけれども、いわゆる年度内の緊急措置として、花明、木の花など、そこでは約七千四百万円程度のいわゆる赤字になることになっています。それから島田の場合はいまもお話のように六千万円程度が現に足りないことに相なっておる。年末の手当が出せないとか、ボーナスが出せないということになっておるのですが、このようなことが起こるのは、厚生省としても努力をしたでしょうけれども、責任があるんでもなければ、措置権者の東京都や京都府にも責任がない。これは個個の施設が全部責任だと思いますか。
  146. 上村一

    説明員(上村一君) まあ、もっぱら施設だけの責任であるということは申し上げるつもりはございません。
  147. 片山甚市

    ○片山甚市君 そこで、私は先ほどこのような施設は金もうけのためにやっておるのか、こういうふうに申し上げたのは、少なくとも国民の税金を使った施設でありますから、適切に、厚生省についても、東京都や京都府、各地方自治体、措置権者は努力しておると思いますが、子供たちのことを考えますと、今日のインフレの中でこのような事態をすみやかに解決する措置をとってもらいたい。きょうの私のお願いは、金額的にいまお金を幾ら出すかという話の前に、そうしてもらわないとならないと思っておるのです。  で、実はこの数日前に、兵庫県の西宮にある甲山センター砂子療育園からも同じようなことで、いわゆる東京都と同じような措置をとってもらわなければ廃園の事態が起こるし、同センターの子供たちにとってはたいへんなことになる、こういうように手紙が来ておるのです。私は、東京都あるいは京都府でとられつつあり、とっておられる問題を、重要なところから手を加えて実施をしてもらいたいのです。いわゆるこの措置費について、いま省が考えておるもの以上のものを出さないともたない。言いますと、東京やあるいは京都がお金を出したから何とかつじつまを合わせておるというのでは、他の施設もたいへんなことになるということで、ぜひともこの措置をとってもらいたいと思います。これがとれなければ、東京都で出しておるような問題を国がしなければ、弱い府県は、先ほど粕谷委員も言いましたように、追いついてきません。そういう意味でひとつお願いをしておきたいのです。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕  そこで、先ほども申しましたが、子供のための施設なのか、施設経営——営業のための施設なのかということについては、そうでないと言われておるのでありますから、子供のために、何回も念を押しますけれども、ぜひともお金を惜しむことなく具体的にしてもらいたいのです。で、実はこのような園の施設の赤字については、当面、すぐにでも、民間施設の赤字はたな上げにしてでも、その経理の状態や、その療育の状態を点検をして、先ほど申しましたように、要員措置の問題等加えて解決をしてもらいたいと思います。私はそういう意味で、国の施策のうちで顕在化しておるこのような施設の赤字をそのままほうっておくわけにいかないと思いますが、どのような手だてを加えて解決をしていただけますか。
  148. 上村一

    説明員(上村一君) 民間の重症心身障害児施設、相当数あるわけでございますが、その施設の中にはいまお話しになった意味での赤字が相当ある施設もあれば、まあ、それほどでない、あるいは全然ない施設もあるわけでございます。私ども先ほど御答弁申し上げましたように、個別的な個個の施設の赤字に対して国が直接にどうこうするということは非常にむずかしいというふうに考えますが、ただ重症心身障害児一般としてどういうふうに考えていくか、ことに本年度は大幅なベースアップがあり、各施設が人件費のアップに相当苦慮しておることは事実でございます。そして、重症心身障害児施設の収入というのは、主として医療費、先ほど御答弁いたしましたように、その医療費がこの十月一日から本年二回目の引き上げがあって収入増加がはかられている。しかし、いま申し上げましたように、ベースアップは相当大きかった。そうなりますと、医療費収入の増加だけでベースアップをまかなうことは困難だろうということも考えられるわけでございます。そこで、重症指導費についてどうするか、目下検討中でございます。
  149. 片山甚市

    ○片山甚市君 実は建物はできたがその中に働く人々の条件が整わなくて、あきベッドというか、空床があるということについてもおわかり願った。そして、いま申しましたように、この重症心身障害児に対しての労働条件を守っていこうとすれば、そこの経営について一定の保障がなければやっていけないだろうと思います。すなわち主として人の問題であり、また特に重症心身障害児の場合は、医療の万全な対策がなければなりません、看護婦の問題、医師の問題。そういうことで、木の花あるいは花明に行きましたけれどもほんとうに職員でなくてボランティアや父兄が子供を見なければならないほど、先ほどの話のあった腰痛の職員など休んでしまっておる。言わせてもらいますと、これだけのような建物、コンクリートの建物が、人間を大事にしようとして施設がつくられておるのか、施設のために子供が入っておるのかということに言わざるを得なくなる。それを解決しようとすれば、やはり私のほうの粕谷委員から言ったように、具体的な措置お願いしたいと思います。  そこで、労働基準局監督課長帰られたと思いますが、厚生省の場合は、労働基準法を違反をしてないと、こういうように言い切られたと思いますが、それでよろしゅうございますね。——そこで、労働基準法を守っておるし、こういうことならば、労働基準法六十三条で女子の労働者の就業制限について、女子年少者労働基準規則第七条が満十八歳以上の女子については、継続作業の場合は二十キログラム、断続作業の場合は三十キログラム以上の重量物を取り扱う業務につかしてはならないとなっておりますが、実はいわゆる治療、養育に携わっておる保母さんといいますか、養育員の方々は、婦人の方々が少なくありません。そういたしますと、そのようなことについて、先ほど大臣は、省力機械、何か機械で運搬をすると、こういうことだそうです。ということになるんですが、それも必要だろうと思いますが、しかし、いつもかつも機械で運べるような物体ではない、人間であります。そういうことになりますと、このような子供、これ以上の子供のおるところでは、男子にかえるのか、それとも具体的にどういうようにするのかということについて考えてみますと、まず、婦人については二人でつくのか、やらないのかということになろうかと思いますが、そういう基準法を守ろうとすれば、その子供をだいてふろに入れるときの話ですよ、ふろの話です、これ。まつ裸にした。入れるときに二人でやるとすれば、どうなるのかといったら人が要りますね。これはボランティアですか。この木の花、花明学園みたいにお父さんやお母さんが来られたり、来たり、あるいはボランティアが来たりして職員はあまりおれない。そんなような状態を続けさしておくことでないとすれば、人を必要とするんでありますが、この程度のことについて労働基準法を守るぐらいの人員は直ちにでもその措置権者及び施設に立ちますが、その経費を厚生省は見ますときょう言った、ということになりますね。
  150. 上村一

    説明員(上村一君) 私ども五十年度予算要求におきまして、こういった施設の職員の労働条件の改善のためにできる限りの努力を払うつもりでおるわけでございます。いま例にお出しになりました目方の重い子供を運ぶ問題というのは、私ももう少し検討さしていただきたいと思いますけれども、二人で運べばそれは差しつかえない。したがいまして、二人の子供を一人の保母さんが一人ずつ運ぶんじゃなくて、二人の子供を二人の保母さんが二回運べば、それはそれで一つの計算に合うんじゃないかというふうに思うんですけれども、御提起になりました問題でございますので、検討さしていただきたいと思います。
  151. 片山甚市

    ○片山甚市君 局長がおっしゃるのはりっぱなことですから。二人おらないときはほっておくことにする、こういうことに承知したいのですが、いかがでしょうか。(笑声)
  152. 上村一

    説明員(上村一君) そういうことを申し上げたわけじゃございませんで、ことしの予算でも相当人員がはりつけできるだけの手当ては講じたつもりでございますから、職員がそういった状態であるとはとうてい考えられないと思います。
  153. 片山甚市

    ○片山甚市君 そういうお話がいただけると楽しみにして質問しました。実は、直接介護要員一対一なんですか。演説は要らぬでしょう、わかっておるん、だから。
  154. 上村一

    説明員(上村一君) 四十九年度予算で重症指導費を計上いたしましたときには、かりにそれを人件費に置き直せば一対一になり得るというふうな計算の基礎にしてございます。
  155. 片山甚市

    ○片山甚市君 その人件費は昭和何年のいわゆるお金で計算をされましたか。
  156. 上村一

    説明員(上村一君) 人件費としてと申し上げたわけでございますが、人件費として計算をします場合には、四十九年度当初ということになるわけでございます。したがって、もっと立ち入って申せばこれからあるべきベアというのは入っておりません。
  157. 片山甚市

    ○片山甚市君 実は、これはそのときの人件費ということばは国家公務員の賃金をさしたことと存じますが、いかがですか。
  158. 上村一

    説明員(上村一君) 私ども児童福祉施設の措置費の基礎になります人件費につきましては、国家公務員に格づけをしてそれに基づいて計算をいたしております。
  159. 片山甚市

    ○片山甚市君 そういうことで実はインフレが高進をしていく中で、施設の費用は御承知のように国家公務員がきまっても大体四カ月から五カ月ぐらいあとでないと府とか県のをあわせて措置ができないのが現状です。国がしてもなかなかできない。そういうような形で、ここにおる、働いておる人たちの労働条件は皆さんがお考えになるよりもずっとよくない。非常にきびしい仕事ですが、この人たちは子供気違いといわれるように、子供が好きで好きで、子供がちょっとよくなったらそれでもう、そのことでいわゆる介護職員はこないによくなったと言って宣伝をして、こうしたらいいんだというようなことを言う人が大体集まってきている。一般社会の中で出世をしようだの、局長さんになろうとか課長さんになろうなどというようなさもしいことを考えない、まともなことで言えば自分の仕事を非常に大切にした人が多くおられると思うんです。ですから、いま申しましたように、この労働基準法に違反をしないようにしますし、それは具体的にしましよう。その次に賃金はどうなってますかと言うと、いわゆる当初のベアが含まれていません。含まれて今度計算するときにはよそよりも四カ月も五カ月も六カ月もおくれて実施をされることになる。そこで、実は民間の施設でございますから、皆さんはお役所ですからいいんですけど、民間の施設の人たちはその先の見通しがない限り、その施設の人はお金を出すことはできませんですね。なかなか自分たちとして、いろんなところから寄付をもらってやってます、できませんから、すみやかにそういう措置をとってもらわなきゃならぬ。いわゆる賃金の問題について、人件費の問題についてはそのようなすみやかな措置を、ずっとおくれる措置になっていますから、早くしてもらいたい。そこで具体的なことを言いますと面接介護要員が一対一だとおっしゃっていました、直接。そういう人件費組んであるんだと、だから、今度洗ってみてなかった場合は請求しますから、ここの席上のお約束ですから、渡してあるんだけど、そんなことはだめだと言わないでください。一対一でですね、人が雇えるようになっておる、人件費が。そういうことですから、あらためてやる次のときに聞きたいと思います。  そこで、私の手元にありますところの木の花、花明学園というところの施設では、  「1、職員の配置は対象者一に対し直接介護職員一とする。腰痛代替については別枠とする。職業病による休業者ならびに週三日以上の勤務軽減者には一名につき一名の代替職員を補充し、週一乃至二日の勤務軽減者には二名につき一名の代替職員の補充を協定する。給食職員についても同様に協定する。」  二つ目に、「1職業病による休業者には休業期間中の賃金(諸手当を含め)一〇〇%を保証することを協定する。2労災を申請した者に対しては申請した時点から休業及び賃金一〇〇%保障することを協定する。3労災認定者には賃金一〇〇%保証することを協定する。」  三つ目に、「賃金は人事院勧告に従い一九七四年九月から実施することを協定する。」  四つ目には、「週休二日制(週四十時間制)を花明、木の花学園に関し実施することを協定する。」  このことは実はそこの施設で約束したことなんですが、先ほどから申しましたように、????要員が一対一になり、腰痛の代替職員を配置をしてもらえるということになり、これは職業病の場合はお金が出ますから、この対策は四〇%ぐらいの保障だと思いますけれども、実際上。そういうことをしていただけるように、いわゆる措置権者及び国が具体的に措置をしてほしい。そして、特に週休二日制については、先ほど粕谷委員に対してお答えがありましたように、前向きに努力をしたい。こういうことがありましたけれども、このようなところにおける週休二日制というのは皆で一二の三で週休二日制とりませんね。おわかりですか。日曜日に大体休むことないんだから、で休むんですから。そのようなことについて週休二日制というのは連続にするのか、一日はさむのか。これを、そのところと、労働過重とわかるように、週の労働時間四週にわたるものですね、四週について休暇が何ぼかという規定の上ですから、そういうような意味で、週休二日制について試行してもらって、その結果、効果があれば全国に広げたらいいと思う、まずですね、そういう意味で先ほど言ったように六千万か七千万円ぐらいの赤字についてはその経営者が心配しないように、とりあえずたな上げにして、これからそういうことの具体的に起こらぬような措置をとって、職員に対してはいま申しましたような具体的な協約が実施ができるようにしてもらいたい。それは先ほど個別の施設について政府としてはとやかく言う筋合いじゃありません。こういうような言い方にとれましたので、とやかく言ってほしいのです、このときは。とやかく言ってもらってけっこうです。そのかわりこの七千万か六千万か知らぬけれども、それぐらいのことは心配せずにちゃんとしてやろうと、こういうことになりますね。先ほどからのお話によれば人間を大切にする政府になったというんですから、そういうようにお答えを願いたいんですが、はい、片山委員言うとおりですと、こうなりませんか。
  160. 上村一

    説明員(上村一君) どうも恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように国として個個の施設がそれぞれきめました給与なり勤務条件に応ずるようにそれぞれの施設ごとに手当てを講ずるということはむずかしゅうございますが、いまお話の花明学園につきましては私、京都府を通じていろいろ調べておる最中でございまして、まあ、どうするか京都府とも相談をしてみたい、こういうふうに考えております。
  161. 片山甚市

    ○片山甚市君 そのような事態であれば省として政府としてはほったらかしにせずに善処をするようにしたい、こう言っていただきましょうか。子のような私が申し上げるような事態、たとえばあなた見てくれぬから……。行きましょうか。子供を見る人が休んでしまって、腰が痛いとかなんとか言って、そしておかあさんとおとうさんが来やりボランティアの人が来たりして園を回しておるわけですね。めしを食うだけ、おしっこやうんこを取りかえるだけが仕事になってしまっておるんです。その木の花、花明学園というのはあるんだけれども外側は鉄筋でしょう、厚生大臣きれいでしょう。中へ入ってそうなんです。その隣にはちゃんと幼稚園みたいのもあれば何もあるんです。そこだけ四十二名の花明と、それと木の花の十下名のところがずいぶん苦しいんです。あそこは松花苑という組織でしょう。あるんです。松花苑という、ある宗教団体が経営しておるんです。そのところだけはそうなっておるというのは、それはちゃんと手当てをしてもらわなきゃならぬ。社会福祉法人松花苑ですね。その中に花明学園、木の花学園と、こうなっておるはず。そうですね、統括したら、——ほかにもあるんですよ、老人ホームも。それは黒字なんだな、黒字かどうかしらぬけれども。そこだけぱっとなっていますでしょう。それで個別にと、こう言われても私わかりにくいんです。そこで、そういう事態が、職員がものすごく苦しんでおるんで、職員がしておる、職員が子供を大事にするんですよ。建物じゃないんです。理事長でも園長でもないんですね。職員が子供のめんどうを見ていて初めてその子供は人として扱われることになる。そこの職員がおらなければどうにもならない。ですから、あなたがいま言われたように個別のことについてはいま調べ中でありますが、調べた結果、廃園にひとしいと言いませんが、非常に職員が予定どおりおらない。あなたが言う一対一どころでない、もっとおらない。それから行き届かない。こういうことになればそれができるようにする、こういうようにできませんでしょうか。特に私がお金のことを申し上げたのは、たな上げをしてくれと言ってすぐにただにしてくれと言っているんじゃないんです。結局赤字のことを考えなくてこれからのことを考えられるように、これからのことを確立してからあと六千万か七千万はこうしますと、これからもさらに赤字が続くことになっておってその穴埋めをするということはできませんでしょう。先ほど言ったこれは経営と違いますね、園は。金もうけしておるんじゃないと思っていますねと言ったんです。そうですと言った。そんなら金もうけしてないんですから、子供のためにやったお金ですから、それを国及び措置権者を含めて、当然施設もやりますが、努力するのは普通じゃないでしょうかと、こういうことです。
  162. 上村一

    説明員(上村一君) 私は施設は金もうけするものではないと申し上げましたけれども、経営じゃないとまでは申し上げたつもりはないわけでございます。  それからお話の中で、まあ赤字六千万なり七千万とおっしゃいました。私どもが京都府を通じて聞いておりますのはそれよりも相当低うございますけれども、それをたな上げしろとおっしゃる意味も、この経営主体は社会福祉法人信光会という私もよく存じておる団体でございますが、そこに金を貸しておるのは別の金融機関、御案内のとおりでございます。そこで繰り返しになりますけれども、京都府を通じて事情をよく調べておりますが、そして、できる限りの御相談はしたいと思っておりますけれども、繰り返しになりますけれども、施設の個別的な事情に即した対策というのは国にとって非常にとりにくいということは申し上げておきたいと思うのです。
  163. 片山甚市

    ○片山甚市君 いまおっしゃったことはそれはよくわかっているんです。個別のことじゃなくて、これが大体重症心身障害児施設に共通する腰痛の問題とかあるいは一対一の直接介護要員がおるようになっていないとかいうことになる。賃金の問題も同じことですね。物価の上昇によるところのこれは施設もありますが、先ほどから言うように医療費改定をし、こういうことにしましたから何とかなるでしょうと言っている。私は何とかならないときの話をしているんです。皆さんのほうがおっしゃるように、政府が言うように、何とかなるならば言わなくてもいいと思うのです。ですから個別の問題だって重症心身障害児の施設には原則的にもうあしたからでも週休二日制ということで子供のめんどうを見れるようにしなければからだが続きません。うそと思ったら、局長さん、おことばがあったら、一緒に一週間行きましょうか、行ってお帰りになってから、こんな天国のように楽なところはないとおっしゃるかどうか、一ぺん行ったらわかる。厚生大臣さんも一緒に行かれたらおわかりになると思う。それほどのことをしておる人に対する措置をとろうとしておるのです。何も私は、一般論ですよ、ただそこへ行って見たから言っておるのじゃない。私も淡輪学園(愛の家)を持っているんですから、それは言いません、そんなことは。一年間にどれだけの金が足りないかも知っていますよ。それはカンパを集めたり、いろんな寄付を集めたりして、わずか三十名の施設を持っているものでも年間に六百七十万円の金を集めないと、その施設が人間らしく毎日ふろに入れて、そういう子供というのはおしっこぱあっとして、うんこしていますし、三日ごとにふろ入れたらいけませんのや、一日に二回も入れなければならないようなこともあるんですよ。そういうようなところのものから見たら、このような赤字はほんとうに皆さんどういうふうにできたのかと言ったら、子供がいとおしいと思っている間にできたのか、私はできたと言っているのです。それはそういうことは国及び措置権者のほうでしなければならぬ。しかし私はつとめてこれは国が国立的にやるべきだ、地方自治体に見てもらうということではない、そういうように考えますから、そこの団体から頼まれてたな上げせいなんと言っているのじゃない。借金で頭が痛い、おかあさん、おとうさんからもいわゆるお金を集めるとかそんなことをしなくても国はあり余る金があって、いろいろと問題が起こるようなところですから、そのぐらいの金を融資をしたか、担保をしたからといって国がつぶれることはないと思うから、非常に偉大な国だと思っているから、たったそのぐらいのことを心配せずにやるようにしたらどうか。そういうことはいまは第二びわこ学園の問題言いませんでした。それから先ほど言った砂子学園のことを言いました。これも同じなんですよ、個別じゃなくて大体そういうところについては、おおむねいまのインフレによってたいへんな事態になっておると思うから、私は具体的にこれとこれとについてできません、いや、すると申されませんと言われたことはもうそれ以上問い詰めません。しかし、私のほうはそうすべきだとだけ申し上げておきます。すべきだ、あなたのほうはそれは個別のことはできませんという、こういうふうにしておきましょう。  それでは、続いて実は五十年度予算の中で重症指導費の八万六千七百九十二円についてでございますが、人件費の見込み方はどういうことになっておるのでしょうか、いつから国家公務員並みということで払うことになりましたか。
  164. 上村一

    説明員(上村一君) 五十年度の重症指導費につきましては、一応四十九年度の重症指導費をベースにいたしまして、それで基礎的な考え方は同じでございます。したがって、人件費につきましては、これからと申しますか、四十九年度において重症指導費を考えました場合と同じような構想に立っておる。これは予算折衝中の状況でございますので、どうもあまり立ち入って申し上げることは差し控えさせていただきます。
  165. 片山甚市

    ○片山甚市君 実は、この赤字の問題はすべてかかりまして中心になるのは人件費なんです。おわかりを願いたい。人件費の増高が園の赤字で、園は人によって動かしておって、物で動かしておるのではないのです。そこで、今回策定をされようとする金額について三二%の人事院勧告がすでに見積もられておることになると思う。こういうようにまずなる。そうしてもらわなければ困る、いまの三二%の人事院勧告。同時に、こういうところで働いている人たちに対して、さらに具体的に相当の割り増しの、たとえば例は正しくありませんけれども、東京であれば、東京の職員と同じ程度のものが全部に行き渡る。それでいいんじゃないんですよ。そのぐらいのことをする。また、このようなところで働いている人たちには、学校の先生には一〇%ほどのお金をつけることになったりしたぐらいですから、厚生大臣も文部大臣に負けないように、たったこれだけの人のことでございますから、それだけのお金はどうぞ受け取ってください、その保母さんが要らぬと言っても、受け取ってくださいと、こういうことを言えば、あたたかな厚生大臣だと思うと思います。ところが、こういうような重症心身障害児に対するところにおける苦労というか、そういうものについては、非常に行き届かないと、こう思います。  そこでもう一度聞きますけど、医療費の中に、人件費に該当するものは入ってませんか。医療費の値上げをしましたね、今度の診療報酬に関して。それについては今度のいわゆる重症指導費とあわせて、人件費に該当するのはどのぐらいに考えられていますか。
  166. 上村一

    説明員(上村一君) 医療費の個々の項目の中で、何が人件費に相当するかというのは非常にむずかしゅうございます。重症心身障害児施設の場合の医療費のおもなものというのは、室料とか基準寝具加算とか看護料とか、それから基準看護の加算でありますとか、給食料とかそれから入院時医学管理料とか給食加算というのがありまして、その中のどの部分が人件費に該当するかというのは、非常にむずかしいわけでございますけれども、かりにその重症心身障害児施設が基準看護の一類ということをとっておれば、少なくとも看護一婦さんについては、四対一の割合で配置される人件費が入っておるというふうに考えられると思います。
  167. 片山甚市

    ○片山甚市君 厚生省としては精一ぱい重症心身障害児のために考えておられることと思いますから、これ以上突っ込むことはやめますけれども、少なくとも今回実施する三二%の人件費が、いわゆる国家公務員の人勧がまず遡及される。その上で、遡及されるというか、組まれておる。いままで払ってありませんから、おそらくされたらできる。来年もおそらく政府は一五%ぐらい上げられると言っておるんですから、賃金はね、政府や資本家は。ですから、そのぐらいのものぐらいは考えておいてくださいね。いやほしいんでないんです。私のほうの施設は、それだけしてくれとってもいいんですから、まず予定で。先くれておってもいいんです。そのぐらいのもの、それほどお金が、——お金じゃなくて人が足りなくて困っておる。お金がないんじゃなくて、人も足りません。こういうことを言っておきます。  そこで、こういうふうなことになりますと、先ほどの島田療育園との関係あるんですが、地域格差をつけるというような考え方はないですね。
  168. 上村一

    説明員(上村一君) 一つの私は問題点だという認識は持っております。  児童福祉施設一般の措置費を計算いたします場合に、その給与につきましては、国家公務員に右にならえをした計算のしかたをしておりますから、その地域によって高い低いが出てくるのは一つの事実であるということは、私もよく承知しておりますけれども、国が予算を組みますときに、国家公務員以外のものによることがはたして妥当かどうかという点も問題だろうと思います。お話しになった点は、問題点として認識はしておるつもりでございますけれども、いま直ちにどうこうということまでは申し上げかねます。
  169. 片山甚市

    ○片山甚市君 私は地域格差をつけることについては、全く反対の立場で、どんなことがあってもつけてもらったら困る。理由は、この人たちはやはり先ほど申しましたように、婦人の介護員の方方は三年なり四年なりでおやめになっておる事情もあります。願わくはそういう練達の士がいろいろと長くおつとめ願う。そうして御結婚されたり何かしてかわるときには、横に行って賃金の格差がなくて、兵庫県におる人が山形県に行くこともできる、結婚したり何かした場合には。そういうような個人の意思によって保障されるようにしなきゃならぬだろうと思うんです。いまの消費状態からいえば、国家公務員の賃金あるいは大都市の地方公務員の賃金など単に比較してどっかに差をつけよう、そして地域差をつけようなどということになりますと大混乱が起こる、こう思いますから、私はこのことのないように、そういうことについては全面的な反対をしておきたい、これは私の意見です。  最後に就学猶予、免除の克服についてですが、文部省のほうの御計画で、昭和五十四年までにすべての養護学校の教育の対象となる児童生徒の就学ということで、義務教育の拡充整備計画の実施状況がございましょう。先ほどのお話は園及び園の中にいわゆる養護学校の分校をつくるか園に派遣をするか、そうしてあるところ、一定の量のあるところ、人々のおられるところでは養護学校のようなお話でございましたが、実はこれは介護をしていかなければなりません、学校へ行くときに。そういう関係から、移動するのに非常に困難を生じますので、どっかに養護学校をつくったからそこへ集まってこいということを、そこに行くまでの一時間なり四十分なりというのは、子供にとっては死ぬ思いをすることもある、何もわからずに行く子もあります。そういうことで、実はこの教育のあり方をどのようにお考えになっているのかということについてお聞かせを願いたいと思います。以上です。
  170. 国松治男

    説明員(国松治男君) いまのお話でございますが、養護学校を義務制にいたしますために、これだけの学校が必要だろうということで、私ども推定数を立てまして、五十四年度に向かって各県を督励しておるわけでございますけれども、その数字を消化いたしますには、具体的に県でどの地域にどういう症状のお子さんがどれだけいるかというふうなことを考えながら、学校の分布、いま言いました分校の設置あるいは分教室の設置あるいは教員派遣というふうな形態の多様さも含めて検討していただきたいというふうに申しておるところでございます。そういうふうな形でやりませんと、いまお話のような問題があろうかと思います。しかし、ある意味ではかなりの人数が集まって、お互いに子供同士の接触があるということが、教育上重要なことになりますので、その養護学校のほうにスクールバスを持つとかというふうなことについても、補助をいたしておるというふうなことでございます。
  171. 片山甚市

    ○片山甚市君 整備過程にあるんですけれども、猶予申請を強制的に行なわせる例が全国的な調査、私の所属する全電通という労働組合がやったんですが、そのような施設が今日あると思うのですが、そういうことはおわかりになりませんでしょうか。そんなことはありませんか。いままで猶予申請を強制する、府県にですね、この子を学校に行かさぬようにちゃんとしてください、こういう園が、学園があるのがあるんですが、そんな事実はないと思いますか。
  172. 国松治男

    説明員(国松治男君) まあ、今日私どものほうにも入ってきております情報は、養護学校が足りませんために、親のほうが御希望になりましても、なかなか入れない場合があるというふうに聞いております。このためにも養護学校の義務制をぜひとも達成しなければならないというふうに考えております。また就学指導が適切に行なわれますように、各教育委員会に就学指導委員会というふうなものを置いて、そうしてこれは非常にむずかしい問題なもんでございますから、そういう委員会の中で、多人数の意見の中でこの子供をどうすればいいだろうというふうなことを、県の教育委員会あるいは市町村の教育委員会も慎重に考えてくださいというふうなことで、そういう制度を考え指導しておるところでございます。
  173. 片山甚市

    ○片山甚市君 私は、就学猶予を、免除を克服して義務教育を受けさすためには特に子供の状態に合ったものをどのようにつくり上げるかということで関係の皆さん、特に文部省の大きらいな日教組の方々ともよく話をしてもらわなければいかぬと思います。実は現場の先生がこれこそ天職——言い方はいろいろいう言い方はあるでしょう、聖職だという人もおるそうだが、聖職だという、——こんな子供のことをすることこそ聖職にふさわしいなどと思ってもらえるような、——労働者ですから、日教組の皆さんを労働者から聖職にせいなどということを言っておるのと違うのですよ。しかしこれはそのようにしなければできないことだと思いますので、いわゆるその条件を整えるのには子供の状態が全体的に把握されて、その子供の教育をどのようにするかということは現場の労働者が発言ができるような機会がなければ、上から押し込んだのではだめだと私は思います、自分が子供を預かっておった立場から。それで特に子供のおる近くに、でき得ればバスなどというようなことを言わないで歩いて行けるか、ほんとうにバスで行っても五分か六分ぐらい。バスに乗ったら五、六分。歩いたらたいへんな時間ですから、そういうようなところに来てもらう。バスですが、近くに来てもらいたい。そしてこの場合は金さえ出せば解決するのではなくて、このような子供をどのようにしたいという希望がなければいけません、願いが。ただ憲法に書いてあるし法律に書いてあるから義務教育をしてやる。人間、世の中はそういうものだと言わないで、人間ということを自覚して人生を終われるようにこうしようという、聖なるものを求めたい、こう思います。ですから、その点では日教組とよく話をしてもらわないといかぬことだ。というのは、そういうことでなければ創造性がありません。私はそう思います。そこで、既存の施設、いままでのいわゆる重症心身障害児または精神薄弱施設といわれる施設の状態を見てもらって、その敷地、設備、そのようなものを改善することによってより一対一みたいな教育ができるものを求められるかもわかりません。全部じゃありませんよ。ですから、そういう点ではいままでのいわゆる社会福祉施設の、子供を単に預かっておって御飯を食べさしておるのだということではなくて、教育の一環、中なのだ。施設そのものが教育の一部なのだ。教育というのは知識を教えるところではなくて知識以上のもの、徳育もありましょう、あなたたちが言う。そんなものをちゃんとしてもらいたいと思います。そうしなければこれは学校へ行かすということで形式的に行くだけのことになってくる。このためにはむずかしい方式をやめて学年がないようにしてもらいたい。一年たったら卒業できるとあなたたちはすぐに思う、金が要るから。もう二年おったら三年おったら卒業させる。こんなものはなかなか卒業しない。一年生も二年生も三年生もあらへんということになりましょうが、すれば、比較的に、学年がないということはクラスがないということじゃないですよ。レイジネスというか、自分でできるのにということがないとは言いませんよ。そういうふうにしてもらいたいのですが、学年をやっぱりつくってやりますか。あなたは二年いたのだから卒業、三年いたら卒業。卒業式ができるような子供で重症心身障害児や精神薄弱施設がうまくいきましょうか。それはたいへんな質問でございますから答えてください、いかがでしょう。
  174. 国松治男

    説明員(国松治男君) 御承知でございますように、重い障害の子供に対します教育につきましては私どものほうもまだある意味では手探り、事例の積み上げというふうなことでやっておりまして、いまお話のありましたことも一つ検討課題ではないかというふうに思っております。  現在の制度の中では普通の障害を持っていない学校でございますと、教育課程というのを定めております。盲ろう養護学校につきましても教育課程を定めておるわけでございますけれども、重複の子供等につきましてはその特例として、いまの学習指導要領の中で小中学校等にはございません養護訓練という領域を設けておりますけれども、そういう養護訓練を主にした教育というふうなことが考えられるのだというふうなことを示して、最初に申し上げましたように、手探り的に何か可能なものを見つけていくというふうなことで進めておるところでございます。  私どものほうの重い子供の教育というのは、いまの検討課題というふうに承知をいたしておりますので、今後とも検討を進めていきたいと思っております。
  175. 片山甚市

    ○片山甚市君 最後です。  そういうことで大臣のほうでお願いをしたいのは、このような施設は人の和があり、その職員がいわゆる重症心身障害施設で働くことに誇りの持てる職場にしてくることが、その子供たちを勇気づけ、また人への自覚を高めることができる、自覚ができると思う。それも、悲しいことですが、よくなって社会に出て働けるというような望みがないだけに、それこそ捨身、身を捨てたような気持ちで、きれいな気持ちでやらなければなりません。このようなことにお金を使えば使うほど功徳があると思います。われわれのように金をもうけるためにはどんなこともしてもいいというような今日の状態を改める見本は、大臣もおっしゃったように、私はここにある。厚生省は、政府重症心身障害児老人あるいは保育所の問題にだいぶ力を注いでいますというような意味のことを何回かおっしゃっておることを聞いてきました。きょうも聞きました。ですから、もう一度言っておきます。いまの施設はこのインフレの中でたいへんな赤字や職員の苦しみや足りないことが起こっておるのですから、政府は万難を排して、特別な閣議決定をしていただいても、こんな子供だけにはとりあえず何とかしてやろう、こういうことをやっていただきたい。全国の精神薄弱施設の愛護協会の研修会が大阪で開かれたときにも、そこの職員が三日間、先生の話をメモを取り続けておる姿を見たときに涙が出てとまらなかったのです。私は、自分たちが、冷たい世の中だとよくいわれるけれども、あの人たちのあのあたたかさを見たときに、その人たちに恥じないことをしなければならぬと思いました。ですから、私の話は御承知のように大阪弁ですし、質問をするといったら聞く、物価のことを演説しませんから、初めてはわかりにくいと思いますが、これからおいおいおわかりになると思う。で、十分にわかってもらって、いわゆるわれわれ、この国会があたたかい政治をしくための熱のある委員会にしてもらいたい。そういうことで、未熟な者でありますが、先ほどから、来年はどうしても介護要員を一対一・五、こういう粕谷委員が言いましたように、願うし、介護手当の問題についても、一万三千円出しているからいいとかなんとか言わないで、なるほど施設に行っていないけれども、国というのはいつもこうしてめんどうを見てくれるんだ、だから世の中の連帯にそむいちゃいかぬ、おかあさんもおとうさんも、ありがたい世の中だなと手を合わせられるようなことにしてもらって、そこから光がさすんだと、元気な者、欲の強い者、金がほしゅうてほしゅうて何ぼでも金を取ろうというような人間に、何ぼ金をやっても、そんなものはくそにもならぬと、こう思う。  ですから、ひとつ、私のきょうの話は、私たちの社会党が愛といたわりを求めて何とか日本政府がこの意見をいれてこの砂子学園やあるいは花明学園や、島田療育園や第二びわこの問題を、個別の施設の問題でなくて、うずいている問題をまず解決する。うずいていないのはいろいろな事情でまだ発病していないのだ。間もなく一斉に蜂起したらどうしますか。いま起こっている病気をなおす、こうしてもらいたいことをお願いをいたしますというか、発言をしまして、私は齋藤厚生大臣に大いに期待してやってきましたのですから、まあ、そうでないかなあという思いをもって終わるところです。どうか、こういうものの願いも理解をしてもらって、ひとつ実施をしてもらいたい。終わります。ありがとうございました。
  176. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 片山委員の先ほど来の非常に御熱心な御意見をまじえての御質問、十分拝聴いたしました。私ども重症心身障害児のお世話をしておられる方々、ほんとうにたいへんだと思います。それから民間でそういう施設を経営されている経営者の方々もたいへんな御苦労だと思います。しかし、そういうお気の毒な人が生きる喜びを感じさせるように、お互いにこれはしでいかなけりゃならぬ問題だと思っておりますし、今日まででも重症心身児の収容施設につきましては、できるだけの処遇はしてきたつもりでございますが、今後とも最大努力をいたしたいと思います。
  177. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大腿四頭筋症について質問いたします。  この病気は、よく調べてみますと、非常に深刻な問題を含んでおります。子供が早くなおればいいと思ってやった注射が、こうした病気の原因であるらしいというふうになっておりますが、一体ほんとうの原因は何なのか、またどう治療すればいいのか。こういう親たちがたくさんおりますし、今後たくさん出てくるわけでございますが、厚生省はこれまでにどういう努力をしていらっしゃったかお聞きいたします。
  178. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 大腿四頭筋の拘縮症の問題につきましては、過去に集団的に、けさほども御質問ございましたように、発生の例が湯河原あるいは福井等にございまして、今回の山梨の大量の発生を契機にいたしまして、この問題がいろいろ具体的な対策の上に乗ってまいる必要が出てきたわけでございますが、このような言い方をしますと、学会でこの例が発表されたのは二十年前である、これをなぜ医療関係者が承知して注意を向けていかなかったかという、非常にごもっともなお尋ねがその前にあるわけでございますけれども、従来学会等の発表と、全国何万という医療に従事する医師の情報としてそれを的確につかみ、医療の中に生かす、こういう問題については日本のみならず、各国とも必ずしも十分な体制ができてないということがございまして、これはわれわれも医療情報の対策室をつくりましたので、この問題は今後学会等で障害が発生するような発表というものの情報というものは、常に担当者をきめ、学会の情報というものを取り入れながら、このような問題について、やはり二十年経過後に初めて取り上げるというようなことのないようにしていきたいというふうに思っているわけでございますが、この問題につきましては、正直申し上げまして、山梨の事件を契機にして行政的な面の対応を具体的にいたしておるわけでございます。  具体的には研究班の設置、まず診断基準というものの確立が必要でございますので、これは九月末をもって確立したいということで父母の会などにお約束しておりましたが、若干おくれましたけれども、十月十一日をもって研究班の最終的結論をいただいて、診断基準を各都道府県に流して検診を進めることといたしております。  そのほか医師会委員会をつくりまして、注射の部位あるいは注射の問題等についての基本的な考え方を各会員に流されましたけれども、これを受けてわれわれ研究班といたしましては、今後やはり子供の注射ということの特質も一踏まえ、あるいは先ほど来お答えいたしていますように、子供の体質の問題等も含め、それから回数の多い注射に多発しているという実例と同時に、比較的少数例の六本ぐらいの注射でも発生しているという事例がございますし、このようなことで、この事件と直接かかわりのないこととして、ある学者から注射液の溶血性の問題等が提案されたりいたしております。  そのほか、これを受ける子供の体質、子供がほぼ同じような回数の注射を受けておりましても、発生している例と発生していない例とあるというようなことに対しても、学者の意見としては、若干そのような受け取る生物としての個体の反応のしかたにそれぞれ差がありはしないかという非常にむずかしい問題ではございますが、このようなことも触れておるわけでございまして、原因の究明については研究班の一つの課題でただいま取り組んで動物実験等もいたしております。  そのほか、予防的な意味といたしまして、医師会の御発表の注射の部位等の問題だけじゃなくて、この原因ともからむことですけれども、やはり予防対策として、真にやむを得ないときにも、やはり子供、乳幼児、特に未熟児というようなものに対して注射療法を、口から薬液がとれない場合、注射療法をどうしてもやらなければならぬ場合も出てまいりますから、基本的にこのような子供たちに対するこの注射の行為が障害を残さないための予防対策というものも当然研究の対象にしなければなりません。ただいま十八名の、二個班の研究班でこれに取り組んでおりますけれども、当然、さらに研究班の専門性を考えますと、拡大し、また研究者の範囲も広げなければならないだろうという予測をいたしておりまして、来年度予算等にも研究費等について特段の配慮をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  179. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 佐藤班、堀班という、この二つの班を設けて、一つの成果として診断基準がまとまりましたが、これは一歩前進だと思います。しかし、問題の核心はこれから研究されていくわけでございます。最も重要なこの原因の点、また父兄が期待している治療法、こういうことについては、研究項目が定められて研究されるわけでございますが、厚生省としては、この研究はいつをめどにして出させようとしているか、この点お聞きしておきたいと思います。
  180. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生指摘の治療法、先ほど落としましたが、きわめて重要な問題でございまして、これが一番急がなければ、診断基準の次に治療法の確立を急がなければならないという判断に立っております。それで全国の千カ所の病院にただいまアンケート調査を研究班から出しております。これは、過去において大腿四頭筋拘縮症に関する治療を受けた患者の実態についての調査をいたしております。それは手術をした例もあると思いますが、その予後についての調査も含めております。湯河原のケースはもう十年経過したわけでございますが、手術成績が必ずしもよくないという意見もございます。それから、ケースによっては手術がかなり効果があがった報告もございます。したがいまして、ケースによっての治療法は、端的に申してまだ一般的な意味の、この場合はこれをやればいいという方式が必ずしも確立していないというところに非常に大きな問題がございますけれども、いずれにいたしましても、それぞれの経験者と、医学の理論に基づいて研究を、検討いたしていただいておりますので、治療法については少なくとも早く急がなければならぬというふうに思っていますので、この中間的な見解については三月までの本年度内を目途に、実態調査の結果とあわせましてある程度のまとめをしたい。  それから原因の究明は、これは時間がどうしてもかかる、費用と時間がかかりますので、来年度の四月以降の対策として考えております。おおよその方向としては以上のような判断で進めたいと思っております。
  181. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ところで、この研究班の調査のための予算を見ますと、それぞれ百五十万組まれております。非常に少ないと私は思います。たった百五十万ぐらいの費用でこうした調査費がまかなえるのかどうか。まあ一般に厚生省関係のこういう研究開発費というものは非常に少ない。これもその例外に漏れてない。もっと十分な予算を出していかなければ結局研究もおくれていくと。これはもう早く治療にかからなければならない問題であるだけに、もっと費用を出して治療法の発見に全力をあげるようにすべきだと思います。まあ一千万ぐらいは出すのがあたりまえじゃないかと、こういうふうに思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。
  182. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 二個班、合わせて三百万という研究費の僅少であるという御指摘でございまして、この点につきましては、率直に申しまして研究というものの内容、機械を購入すれば相当の費用も要る。動物実験等、特殊なサルなどを使いますとばく大な費用がかかるというような、研究費というものの性格にも、研究の性格にもよって費用との関係が出てまいると思うのでございまして、私は決して言いわけを申し上げるわけではございませんけれども、確かに受ける感じからは僅少じゃないかという感じを受けられると思いますが、このそれぞれの経験された資料なり検討の材料というものを持ち寄り討議し、そして判断を加えていく。一部、佐藤班では動物実験を開始していまして、これらの費用はまだ必ずしも十分これで間に合うかどうか。来年度は少なくとも先生のおっしゃるような原因の究明となりますと、かなり動物実験その他も加えなければなりませんので、これらの点については先生指摘のような範囲の金額を確保する必要があると判断いたしておりますので、今年度予算についてもこれでどうしても不足の分ができますならば、国立病院の運営の一環としても費用を捻出して対応したいというふうに考えております。
  183. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、診断基準の通達に関してお尋ねいたしますが、問題は潜在患者の早期発見、また専門的な療育指導だと思います。これがただ一片の通達で、またそれに対する事後報告、これを求めるだけで、はたして積極的に取り組むかどうか、厚生省が各自治体に対して積極的に真剣に取り組んでいけるような何らかの手を打つべきではないか、通達の出しっぱなしにしてはならないと、こういう点を心配してお尋ねするわけでございます。
  184. 上村一

    説明員(上村一君) 診断基準が出されました五日後に私どもこういった症状の子供さんを早期に発見をして早期に適切な治療上の指導を行ないたいということで網の目を張りめぐらすことにしたわけでございます。御案内のように母子保健の仕事あるいは児童福祉の仕事というものはすべて自治体を通じた仕事でございます。そこでやりましたことは、すでに御案内かとも思いますけれども、一般的な幼児の健康診査、それから三歳児の一般健康診査、これを第一段階の網の目にいたします。そこでは健康診査の項目といたしまして子供の身体障害の状況ということも見つけることにいたしております。そこでそういった下肢の異状がある子供につきましては今度は三歳児につきましては精密検査で、それ以外の、主として幼児になると思いますけれども、これは身体に障害のある子供に対する療育の指導、こういうものを行なうことによりやっていきたいと。そしてこういった三歳児精密健康診査あるいは身体に障害のある子供の療育の指導については、先ほど出されました診断基準に従ってやってまいる。さらに、そういった一般的な最初の網の目にかからなかったような子供については療育指導そのものを通ずることによって発見につとめ、しかも適当な指導をやってまいりたい。そのためには当然こういったことを行なうんだという広報活動が必要だと思いますし、この仕事を担当します保健所につきましては、そういった病気があると診断された者については名簿までつくっていただいて、しかるべき機会にその報告も求めるということにしたいと考えておるわけでございます。一片の通達の出しっぱなしということはございません。
  185. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで何らかの手を打つべきではないかとお尋ねしたことをさらに具体的な質問にさせていただきたいと思いますが、この病気の子供を持つ親は非常に深刻な立場に立っておりますので、ほとんど療育指導を求めてくると思います。この療育指導を行なう保健所、ここはそういう人たちに対して十分な対応ができるかどうか、この点、いかがでしょうか。
  186. 上村一

    説明員(上村一君) 対応できるように私ども予算措置は本年度講じてまいる、現在こういった療育指導を行ないます保健所につきましては一応の予算があるわけでございますけれども、必要に応じて捻出をして徹底をはかってまいりたいというふうに考えております。
  187. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) ちょっと補足させていただきます。  私、保健所長の経験から申しまして、療育相談というのは地元の整形外科の医師をお願いいたしておりますので、その医師自身は専門家でございます。ただ回数が少ない地域がございますのを先ほど局長からお答えしましたように、その必要があるならば予算上も考慮して、開催の回数等も地域によっては考えていただくということが可能になろうかと思っております。建物そのものなり機能なりはレントゲン装置もございますし、なおこの病気の必要な判断というものに対する対策としては療育相談はかなり当初の相談の窓口としては十分であろう。ただ医療を施すとなりますと、育成医療の指定医療機関である病院を活用する必要がある、こういうふうに考えます。
  188. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 保健所が十分その機能を発揮できるようにしていかなければ、この問題は前進しないと思います。また発揮できるかどうか、いまの御答弁で私の心配が解決されたわけではございません。  そこで、定員削減の資料を見ますと、三年間に約九百人の人が減らされている。こういう減らされている保健所に今回の検診という仕事がふえてきているわけです。だれが考えても保健所の仕事はたいへんなオーバーになると、はたして十分その機能を発揮できるか、こういう具体的な点を見てお聞きし、またこれに対してどういうお答えを厚生省がなさるのか、ただしておきたいと思います。
  189. 上村一

    説明員(上村一君) いまも医務局長からもお話ございましたように、こういった療育の指導につきましては、保健所の定数内の職員だけではなくて、必要に応じまして、ことにこういった部面というのは整形外科等の専門家が必要でございますから、そういう方を嘱託して行なうつもりでございますから、一般的な定員削減の中におきましても、所期の目的は達成されるものと期待いたしております。
  190. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 つもりがつもりじゃならなくなった場合に、せっかく基準はできたけれども、検診はどうやらできても、はたしてそれから先の父兄が特に望んでいる治療ということが前進するかどうか。医師の問題をおっしゃいましたけれども、医師の問題にしてみても、充足状況は足りないわけですね。定員に対して現員はほんとうに少ない。医師の場合は四一%の充足率ですよ、これ。これではたして医師がやるのだからできる、できるつもりだ、頼んでくるのだからできるだろうという、そういう姿勢では私は必ず期待はずれの結果が起きるのじゃないか、こういうふうに思います。もう少しその点、真剣に考えていただかなければならないのじゃないか。もう少し、あなたの取り組み方が積極的でなければならないと、こういうふうに思います。
  191. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生指摘のように、保健所の行政機関としての県の知事から委任を受けた保健所長が、仕事をしています保健所の医師の定員は、確かに五〇%を割った、たとえば所長一人だけあるいは所長も現在いなくて、よその所長が兼務している、それから予防課長というのが医師でほしいのですけれども、これがいる保健所は全国にも大都市にわずかしかないというようなことで、充足率が四十何%というのは保健所本来の行政を担当する医師が不足しておるわけでございます。先ほど児童家庭局長からお答えし、私からもお答えしましたように、この療育相談というものは、週のある日を定めまして、その地域の整形外科の専門医師にある時間帯来ていただいて、相談事業をいたします。で、今回このような希望する方がその保健所その他、市町村が療育相談に定めた日にその保健所に行って受けるように指導いたすわけでございますので、この整形外科の専門医は定員外で、事業に伴う予算として非常勤職員のお手当等でお願いいたしております。で、定員削減の問題等、保健所の機能全体を弱めるという一般論としての先生の御指摘は、私は否定するものではございませんけれども、この相談事業の内容は、いまの行政担当者の医師の充足とはちょっと別の事業として行ないますので、これが予算上不足するようならば、児童家庭局としてはこれをさらに追加して充足してでもやりたい、こういうお答えでございますので、その点はだいじょうぶであろうと思っておるわけです。
  192. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 だいじょうぶだとおっしゃるんですから、これ以上くどく申し上げなくてもいいわけですけれども、私が調べたところによりますと、これはある自治体で、検診だけならいつでもできるけれども、肝心な療育指導となると、専門医の確保がなかなかできない。通達に基づく診療の体制がまだ整っていないと、こういうふうに言っております。ですから、厚生省は東京とか、大阪とか、非常に条件のいいところを考えていらっしゃるわけじゃないと思いますけれども、この点だいじょうぶだと、ほんとうに私はだいじょうぶにしていただきたい。まあ、だいじょうぶだとおっしゃったんですから、これ以上時間もございませんので申し上げません。  そこで、この親たちはみんな心から保健所で行なわれる療育指導というものに期待しているわけです。いままでどこへ行っていいかわからないでいる父兄もたくさんございます。また、行っても適切な指導や治療を教えてくれるところもない、また、相当お金をかけてやっても、大体失敗しております。それは手術をいつやったらいいか、どういうふうにやったらいいかということは、まだまだこれから研究されていく問題だと思うんですが、一体そういう体制がいつ整えられるのか、いつ始められるのか、先ほど検診は、この実態調査が本年度——来年の三月までにはできると、治療もできるような体制を並行してやっていきたいと、——治療のほうじゃなくて、研究班の中間報告ですね。じゃ、一体その療育指導をいつから始められるのか、その点はどのように指導していらっしゃるのか、お聞きしておきたいと思います。
  193. 上村一

    説明員(上村一君) いまその私ども保健所の中で、療育担当の保健所というのは、五百八十をきめておるわけでございます。その保健所で先ほど来お話出ておりますような療育相談というものを活発に行なうように期待しておるわけでございます。問題は、そこで療育指導を受けたあとの治療をどうするかという問題でございます。まあ、根本的にはその一番的確な治療方法をいかにするかという重要な課題が残されておることは、先ほど来お話があったとおりでございますけれども、そういうものが明確になりました場合、あるいは明確にならない時点でも、簡易なものはいいかもわかりませんけれども、それにつきましては御案内のように育成医療という制度がございまして、公費負担による医療が行なわれておるわけでございます。その病院の関係は全国で約千三百ばかり、整形外科の専門病院中心に指定しておるわけでございます。したがって、一方で診断基準ができましたので、早期発見、早期指導の網の目をきちんと固め、それから、育成医療を通ずることによって治療ができる体制、育成医療による治療ができる体制というのは一応あるとお考えいただいていいのじゃないかと思います。
  194. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この療育指導する保健所が五百八十八ございますね。これは少し少ないのじゃないか、もっとふやす考えがおありかどうか。
  195. 上村一

    説明員(上村一君) 全国で保健所八百幾つもある中の五百八十でございますから、相当数指定していることになると思うのですが、そうしてまた一般の保健所でもその指定を受けた療育保健所の相談を受けた中身で指導するということも行なわれるわけでございますが、県の判断によって、療育相談をする保健所をふやすことも当然あってしかるべきではないかと思います。
  196. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、この病気に関する補償の問題についてお尋ねしておきますが、この病気はその原因からいっても難病とか、奇病、こうした病気とは違う、ほぼ注射が原因であるということが明らかになっているわけでございます。これは政府も認めております。認めておりながら、育成医療の対象として給付の面では他の病気と同様に扱っている、これはおかしいんじゃないか、当然全額国庫負担、または公費負担にするという形で見ていくべきではないかと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  197. 上村一

    説明員(上村一君) その原因の問題と申しますか、原因に責任のある問題は別にいたしますと、身体に障害のある児童であることは間違いないわけでございます。そうして、身体に障害のある児童に対しては、すでに何年も前から育成医療という制度があって、公費負担による医療の給付を行なっているわけでございますから、あらためてこういった子供たちについて別の医療制度をつくるのはいかがなものかというふうに私は考えているわけでございます。
  198. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ある地方では、これについての補償の問題が起きて訴訟になっております。私は、もしこの問題について政府が四頭筋はほかの病気とは違う特殊なものだという考え方を無視して、このままの態度でいくならば、あちらでも、こちらでも私は補償を求める訴訟が起こってくるだろうと、こう思います。いたずらに混乱を起こさないためにも、この患者に対する補償問題については、医療機関側と厚生省側とが十分に話し合って、真剣に患者側の立場に立った円満解決のための行政指導というものを行なっていってもいいのじゃないかと、こういうふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  199. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 補償ということばになりますと、私必ずしも法律の専門家ではなくて医者でございますけれども、やはり過失というようなものの問題との関連でございませんと、いきなり医療関係者、まあ医療行為そのものが非常に傷をもって傷を制すると俗にいわれますように、非常に危険な行為であるという見方も一面あるわけでございます。非常にそういう紙一重の行為であると、そういうような医療行為そのものの過失等の立証というものは非常にむずかしい問題でございまして、そういう点からも医療関係者が、患者と医師という個人の間に行なわれた医療行為である結果の今回のこの問題について、補償という先生のおことばの気持ちは非常に広い福祉的な意味を含んでいるというような感じは受けるわけでございますけれども、補償ということば自体だけをかりに取り上げて、お答えをするとするならば、やはりその問題との関連がどうしても出てくる。ただ予防接種のように、国が義務として定めた、受けるべしとしたものによって、無過失であっても事故が発生した場合については、国がただいま、補償と申しますか、いろいろ内容に異論はありましょうけれども、いたしておりまして、個々の医療行為について、確かに、薬害的な問題としていろいろ議論されますように、問題がございます。こういうような注射の行為、そしてそれは患者の病状に応じて医師が判断してやったと、こういうような内容から考えた医療行為というものの中で、補償問題というのは、外国でも非常にこれは明らかな過失のある場合は除いて、非常に取り扱いの上にいろいろ——アメリカなどでは、こういう問題がだんだんうるさくなると、結局医師が民間の健康保険などに入って、そして患者との間に支払いをする。そうすると、もう自分の医療費を患者からたくさんいただいておかなければその保険がペイできないというような議論に立ちまして、非常にアメリカの医療費が高いという背景の一つ——そういう補償といいますか、そういう医療患者に対する事故が、いわゆる過失というものが明らかになった場合、相当ばく大な費用を払わなければならぬ、こういうような関連等もございまして、各国のいろいろの制度をわれわれも調べています。けれども、補償ということばからはいまの問題というものにすぐに取り組むことはなかなかむずかしい問題である。お気持ちはよくわかりますし、また一部福島県等で訴訟のあることも承知いたしておるわけでございます。
  200. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 このままにしておけば、この問題が必ず訴訟問題に発展していく、そういうことを非常に心配して、重ねて大臣にお聞きしておきたいのですが、こうしたたいへん長い時間を要する裁判によって決着をつけさせるという、第三者のことのように厚生省が見ていないで、早期に公正な解決をはかる方法をとるべきじゃないか。医道審議会というような厚生大臣諮問機関もあることでございますので、その点、大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  201. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この問題はほんとうに最近非常に大きな問題になりつつあることは私も十分承知をしており、今後の推移について十分関心を持たなければならぬ問題だと、かように考えております。しかし、まだ、先ほど来局長が御答弁を申し上げましたように、原因、責任、明らかでもありませんし、医療行為として行なったことでもありますし、補償という問題がそこに出てくるのかどうか、非常に私はむずかしい問題だと思っておりますが、今後の推移というものについては十分関心を持ちながら見守ってまいりたいと、いまのところさように考えておる次第でございます。
  202. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、通達の中にある広報についてお伺いしたいと思います。  この病気は早期発見、早期治療が非常に大事だと。ところが実態は、驚くことに父兄が知らないでいる場合が非常に多い。これは大阪の検診のデータですが、二千名の中で一四%も患者がいる。これは無差別で検査をしたんです。また、山梨の都留市の旭小学校で六十三名の児童を検診したところが、その中に十二名の患者がいた。しかもその中で、中症というのは相当ひどい状態ですが、中症以上の児童が三名いて、その三名が親も知らないでいた。この子は行儀が悪いとかと言って頭を一つたたくぐらいでそのままでいた。最近は行儀よくすわらせるとか、そういうことが非常にだらしなくなっておりますし、いすの生活が多いので、知らないでいる父兄が非常に多いということを痛切に感じているわけです。ですから住民に早く、よく知らせると、自分の子供はそうじゃないかと気がつくことがまず検診の初めだと思うのですね。ただ来るのを待っているだけではなくて、知らせるというこの広報活動が非常に大事じゃないか、こういうふうに思います。そこで、この大事な広報活動を国が各自治体にまかせていていいものか。まあ国が必要な予算を出すというようなふうにして自治体が十分な広報活動ができるようにすべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  203. 上村一

    説明員(上村一君) さっき申し上げましたように、一番最初の網というのは、乳幼児の一般健康診査なり三歳児検診でございます。乳幼児の一般健康診査というのは相当ひんぱんに行なっております。それから三歳児健康診査も大体月に一回ぐらいやっておるわけでございますから、かりに御承知なくても見つけ得る機会はきわめてひんぱんにあると思います。ただ、こういった受けなかったような人については、さっき申し上げましたように、療育の指導ということがあるわけでございますが、これは相当PRを要するんではないかということで、先ほど来御指摘の通達の中でも、自治体の広報活動を通じてPRしてくれというのは、結局いつ、どこでやるかというのをきめますのは自治体でございますから、自治体の広報が一番地域の人々の目につきやすい。国としても機会をとらえてPRするようにはしていきたいという気持ちは持っております。
  204. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 国でも機会をとらえてPRしていきたいというお話を、私、もう少し積極的にしていただきたい。これは永続的に検診されるものではなくて、ここで一挙に徹底的にやれば、ある患者の数というものは正確につかめるのではないか、こう思いますので、厚生省は、国として、国の立場でこの広報をやると、そういうふうに言っていただきたいのですけれど、いかがですか、その辺。
  205. 上村一

    説明員(上村一君) お話のように、こういったその症状のある子供さんができる限り保健所の療育指導を受けるようにPRしなければならないというふうに思っております。
  206. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 総理府の方にお伺いいたしますが、厚生省がもしこの問題で広報してくれと頼んだら、総理府はこれを受けてやりますか。
  207. 林敏夫

    説明員(林敏夫君) 総理府といたしましては、厚生省ともよく協議いたしまして、この問題についての必要な広報活動を実施してまいる所存でございます。
  208. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 総理府は頼まれればやりますというわけでございますから、厚生省の意見一つできまるわけです。そんなもったいぶって慎重に検討するほどのこともないんじゃないですか、基準まで出したんだから。みんなこういうことは知っていなさいと言うぐらいのことをやれるぐらいの厚生省じゃなきゃあ、何をやっているのだと、こう言われてもしようがないと思うのですね。ですから、ぜひ総理府に、こういうふうに広報してくださいと、しましょうというふうにやってくださいよ。
  209. 上村一

    説明員(上村一君) やるつもりでおります。
  210. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 よろしくお願いします。
  211. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 柏原君、そろそろ時間です。
  212. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 文部省にお伺いいたします。これが最後でございます。  これは三歳児の検診で発見できる、これは非常にありがたいことですが、発見できない場合がございます。そうなれば学童の検診がどうしても必要になってくるわけです。十五日に厚生省が文部省に対して協力依頼を出したそうですが、文部省ではこれを受けてどう処置するのか、また各学校や教育委員会に対してその旨の通達を出していらっしゃるのか、また出そうとなさるのか、これはぜひ文部省から学童検診をやっていただきたい。これは三歳児で発見されない子供があるかもしれないんですね。そのデータを見ますと一番子供の背の伸びるのが四歳から五歳、三歳ぐらいのときはほんとうにまだ小さくてぷくぷくしているわけです。それがぐんぐん伸びてきて学校へ行ったころにその症状が出ている子供もいるわけですよ。そういうものをそこでまたつかまえるということは、私は当然じゃないか、このグラフをごらんになればわかるんですけれども、一歳、二歳、三歳、四歳、五歳、六歳で、五歳のところが一番多いんですね、五つぐらいのとき。保育園、幼稚園でもやるでしょうけれども、学童で——決してたいへんなことではないんですから、やりなさいというふうに文部省が通達を出していただければやれるわけですから。この点いかがですか。
  213. 上村一

    説明員(上村一君) 朝の御質問にもお答えいたしましたけれども、この検診というのは三歳児に限るつもりはございません。一般的な乳幼児の検診もいまも申し上げましたように……
  214. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 三歳児以上になるとなかなか行かないんですよ。
  215. 上村一

    説明員(上村一君) それから、その乳幼児についてもやるつもりでございますし、さっきお話しのように大いにPRをいたしまして療育指導を受けさせるようにやってまいりたいと思います、厚生省といたしましては。
  216. 倉地克次

    説明員(倉地克次君) 私どもといたしましては、先生の御発言にございましたように厚生省から協力依頼の文書もいただきましたので、各都道府県などにこれを通知いたしまして、その趣旨の徹底をはかりまして、学校などにおきます健康診断でありますとか、さらには健康相談に際しましては、これらの疾病の発見につとめまして、その疑いのあります児童、生徒につきましては保護者に連絡いたしまして、もよりの保健所の療育相談を受けるように指導するようにしているところでございます。
  217. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一つ、学校でやらせないんですか、身体検査とか健康診査やりますね。そこではやらせない、行きなさいと言うだけですか。
  218. 倉地克次

    説明員(倉地克次君) 学校で行ないます健康診断、それから健康相談で厚生省のほうからいただきました診断基準に基づきまして、その疑いのある児童、生徒を発見するようにつとめるわけでございますけれども、何ぶんにも学校医の先生方は必ずしもそのほうの専門の方でもございませんので、さらに保健所の療育相談を受けるように指導したほうが適切ではないかというふうに考えております。
  219. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後でございますので、重複する項目はなるべく避けながら要点的に質問をしたいと思います。  まず第一に、医療費の再引き上げと医療保険関連する諸制度の抜本改革の関連についてであります。私も長い間厚生省関係の審議会の委員をしておったわけでありますが、昭和三十年十月から四十四年の八月の間に医療に関する関連諸制度の抜本改正につきましては厚生大臣もお持ちだと思いますが、これだけの答申、具申がなされているわけでございます。これに引き続いて四十五年、四十六年に社会保険審議会、社会制度審議会はいずれも医療制度抜本改正に対する答申ないし意見書を厚生大臣に提出をいたしております。時間の関係でそのすべてに対して触れることは避けたいと思いますが、これを要約いたしますと、今日までの厚生行政が財政対策に終始しまして、関連諸制度の欠陥、不合理が是正されていない。しかも経済社会の急激な変化のもとで行政はことごとく立ちおくれている。その結果、矛盾はますます拡大されていることを指摘いたしまして、健康管理体制いわゆる包括医療体制の確立や医療供給制度の整備、医薬制度の改革、公費医療と保険医療の分野の明確化、さらには診療報酬体系の根本的是正などを政府に対して注文をしているわけであります。きょう冒頭、須原委員の質問によりまして、大臣医療費の年二回の引き上げは好ましいことではないけれどもやむを得ない措置であった、了承してほしい、ということにつけ加えて、看護婦養成補助、不採算医療に対する補助差額問題等に触れまして一歩前進が行なわれたことを述べられたわけでございますが、確かに一歩前進であることは認めますけれども各種審議会の具申によるこれらの抜本改正問題についてはなお遅々として進まずというのが率直な批判ではないかと思うのであります。このためにやはり必要なことは、医療保障基本法の制定、これは民社党が社会、公明両党の御協力を得まして三党共同で提案をいたしておりますけれども、二回にわたって審議未了廃案のうき目に至っております。またこのような審議会答申を文字どおり尊重するとすれば、社会保障に関する中期計画の策定及びこれを達成するための年次計画なるものが早急に立案され、本審議会で審議されるのが至当であろうと考えられるわけでございますが、本件に関しまして医療保険の前提問題、関連諸制度の抜本改正について、大臣として積極的などのような御意思を現在お持ちであるのかどうか、まず冒頭お伺いしたいと思います。
  220. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 医療保険の抜本改正という問題は数年来叫ばれてきておった問題でございまして、自由民主党の中においても調査会をつくりまして検討をし、さらにまた社会党、民社党、公明党、各党においても抜本改正の必要性をとなえ、それぞれ必要な法案の提出をされたこと、私も十分承知をいたしております。そこで、医療保険の抜本改正ということになりますと、私は昨年来申し述べたことでございますが、関係者の利害関係がなかなか複雑でございまして、直ちに抜本改正あるいは医療基本法というものをつくろうということになりますとなかなかたいへんなことでございまして、関係各方面の合意を縛るということは非常に困難な状況でありました。そこで、私はこうした問題のとらまえ方としては、医療基本法あるいは医療保険の抜本改正、そういうふうに大上段に振りかざしてこの問題に取り組むよりは、問題ごとに解決をしていって、国民が喜ぶ一つ一つの問題を積み重ね方式によって解決をしていくことが適当ではないか、こういうふうに考えた次第でございます。したがって、積み重ね方式によって医療保険の根本的な解決にまでいくように努力をすべきであるということを考えて、実は昨年、健康保険法の改正においても、すなわち労働者の家族の五割給付を七割給付にするとか、あるいは日雇健康保険については不幸に成立しませんでしたけれども、やはり同じように家族給付を五割から七割にするという法案を提案する、さらにまた高額医療償還制度というものを導入しましょう、医療費負担を軽減するためにこれを導入しましょうということで、健康保険国民健康保険、すべて共済組合、これは全部にこれを導入するという措置を講ずるようにいたしたわけでございます。もちろんこれによって医療保険の基本的な改革ができたとは私は考えておりません。もっともっとなすべきものがたくさんあるわけでございまして、そういう問題を一つ一つ解決していって、そして医療保険の抜本改正の目ざす方向に近づける、そういうふうに努力することのほうがかえって国民に喜ばれるのではないか、こういうのが私の基本的な考え方でございます。
  221. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣の積み重ね方式というのは一つの方法であろうと思います。しかし、現状のまま診療報酬体系や医療供給体制の整備というものが遅々として進みませんと、私は弾力条項の限界に達するのは、これはもう時間の問題ではないか。再びこの種の問題が積み上げ方式をとる以前の問題として大きく爼上にのぼってくることを危惧するものであります。そういう意味におきまして、時間の関係でこれ以上の意見は、質問は避けますけれども、どうぞ各種審議会の答申というものをもう一度熟読玩味願いまして、この中に各会が望んでいるもの、しかも審議会答申は大部分において満場一致の意見を形成しているわけでございますから、この早急な実施のために御努力を願いたい、こう思うわけであります。  次に、その抜本改正一つの大きな項目は、診療報酬体系の是正という問題ではなかろうかと思います。社会保険審議会が四十六年に出しました答申の中にも「医療費増大の一つの原因は、診療報酬体系の不合理にある」、明らかに指摘をし、これに伴いまして、抜本改正の方向として八点を指摘いたしているわけでございます。なお、社会保障制度審議会も、医療保険にからまる問題の根源の大半は診療報酬体系にあるので、政府はあげてその強い推進に当たるべきであるということを意見として具申をしているところでございます。ところが、残念なことに、これは昭和四十九年十月六日の読売新聞でございますが、中医協委員であった土屋清さんの辞任の記事が出ておりました。この記事の中に、「日本医師会の顔色ばかりうかがう厚生大臣、いがみあう診療側と支払い側委員。これでは国民の声は反映されません」と述べられ、「所得番付の上位に並ぶ開業医より公立病院の方が苦しいのは事実でしょ。ところが、厚生省告示は、この多数意見に耳を貸さず、診療側の少数意見をいれた。公益代表の意見さえ無視されるようでは、もう終わり」である、こういう新聞記事が出ているわけでございます。厚生大臣はその後これを尊重したという見解を発表されておるわけでございますが、この一連の問題によりまして、国民の医療不信の声が高まったことは、私は否定できない事実ではないかと思います。そうして考えますと、たまたま四十六年九月に社会保障制度審議会が、これらの問題にすでに着目をいたしまして、医療協議会の改組を意見として具申をいたしております。大臣すでに御承知だと思いますが、第一点は、支払い側、医療側、公益側の委員数を八・八・四から八・八・八に改めるということ、さらに国民医療費に対しての報告を作成する必要な権限を中医協に与える。また、これは最も重要な部分ですが、診療報酬について両側委員の意見が対立し、もし事が急を要すると認めたときは一定の厳格な条件のもとで公益側委員審議を終結して、その意見を報告することができるようにする。この三点の中医協のいわば改組を提案いたしているわけでございます。私は今後医療費問題を解決していくためには、この制度審の意見というものを尊重して、診療報酬体系適正化のための、これを運営する中医協の機構そのものにメスを入れない限り、その前進は期せられないのではなかろうかと考えるわけでございます。これは非常に高度の政治的な問題でございますが、すでに答申がなされましてから三年余を経過いたしておりますので、その後の厚生省検討の経過及び大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  222. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ことしの二月の診療報酬改定について、私がいかにも医師会寄りだといったふうな批判のあったことも、私も承知いたしておりますが、あの当時の事態において、昨年の大混乱のあとを受けた中医協の答申でございましたので、あの当時の事態においては、私はやむを得ずああいう措置をとったつもりでございまして、私は私なりに多数意見を尊重したつもりでございます。  なお、中医協の問題でございますが、診療報酬の適正化をはかるということは、もとより当然大事なことでございます。この問題については、わが自由民主党の中にも、中医協を解体すべきであるという意見のあることは、私も十分承知をいたしておりますが、私は厚生大臣として責任を持っている限りにおいては、いまそういうことを申し上げることはできないと思います。すなわち中医協が本来の使命、本来の機能を発揮できる段階にあるならば、私はその機構というものを続けるのはやむを得ないことだと考えております。したがって今回の、十月一日施行になりました診療報酬改定にあたりましても、支払い側もそれから診療側も一致して、いまの事態においてはやむを得ないというふうに了承をいただいておるわけでございまして、中医協本来の使命を私は十月の改定においては果たしていると思っておるわけでございまして、この問題は慎重に取り扱っていくべきものではないかと、かように考えておるものであります。したがって、将来、中医協の解体といったふうな、あるいはまた中医協の改組という問題が起これば、それはそのときには、今日まで出されましたもろもろの意見を十分尊重して考えなければならぬときがあるいは来るかもしれません。来るかもしれませんが、いま私が中医協の改組をどういうふうにするとか、中医協は解体すべきであるということを、いまの時点において、責任ある私としては何とも申し上げることはできない、こういうように御了承を願いたいと思います。
  223. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常にこれは重要な問題ですので、本日直ちに明確な回答を求めることは無理だという事情はわかります。私の指摘いたしましたのは、本年十月の時点がどうだこうだというのでなくて、やはり今後わが国の医療保険をめぐる関連諸制度、これを整備していこう、これは諸般の意見ではなくて、これは審議会の満場一致意見でございます。そういう点からしますと、この中医協のあり方については避けて通ることのできない問題ではなかろうかと思うのであります。まあ今日までのいろいろな経緯を考えますと、やはり各層の中に、社会保障制度審議会の意見を尊重して、私は解体と言っているんではございません。中医協というものが、よりよき機能を発揮できるように、意見を尊重した改組というものが行なわれることが妥当ではないか、このような意見が強くございますので、ひとつこの問題につきましては、大臣積極的に、前向きにひとつこの改組問題に対して御努力を願いたい。それがまた、わが国の非常に利害が激突し、この中で問題点が幾つも発生しております医療保険制度の大きな一歩前進をもたらすことになるのではないかと、こう私は思っているわけでございます。  次に、時間の関係で問題を移しますが、現行医療保険制度、確かに大臣指摘されましたように、ここ数回、特に前回大幅な改革が行なわれたことにつきましては大きく評価をいたします。しかし、国民保険体制ができ上がったと言い、また高額医療負担の制度ができたと言いましても、現行保険にはなお多くの欠陥というものがあるわけでございます。その最大のものは、付添看護料の問題であろうと思います。保険局長は一部に条件を緩和した、こういうことを言っておられますけれども、いま東京及び東京周辺で看護婦有資格者を一日付添看護としてお願いをいたしますと、八時間労働で四千五十円、泊まり込みの場合三時間時間外手当をつけるということで、これが千八百九十円、業者手数料五百九十四円、実に合計一日の付添看護料は六千五百三十四円にのぼるわけでございます。無資格の方におきましても、同じような方式で算定いたしますと三千二百五十円、千五百円、手数料四百七十五円を合算をいたしますと、五千二百二十五円という負担になるわけでございます。このような実態は形の上からは皆保険が整い、かつ高額医療に対する負担が健保で行なわれるといたしましても、一カ月病床に伏しまして、付添看護人をつけますと、それだけで二十万の金を要するということになるわけでございます。これに差額ベッドの問題、さらに三万円の自己負担の問題等を考えますと、この付添看護料差額ベッドの解消是正なくして国民保険の実は生かされない、こう私は思うのであります。確かに一部の条件緩和がございましたけれども、はたして現在の付添看護を要するという基準が適正なのかどうか、この点に対してはまだまだ不備があろうと思いますし、認められた場合でもこれは償還払いでございますので、一時的には約三十万近くの金を個人で負担しなければならないという問題に発展するわけでございます。この付添看護料実態大臣特に御承知だと思いますけれども、この是正策に対する前向きの御回答をお願いをしたいと思います。
  224. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最初の第一問についてだけ私が答弁いたしまして、あと保険局長から答弁させますが、診療報酬の適正化のためには中医協が本来の機能を発揮できるように改組すべきである、その点に厚生大臣はもっと勇気をもって取り組めと、こういう御質問でございます。この問題については、私は従来から中医協診療報酬決定についてその本来の機能が発揮できるというふうに努力をしていくということがまず一番大事なことだと考えております。そこで将来の問題として、将来中医協が本来の機能を発揮することができないような事態になるということになりますれば、そういうことになりますればそれは当然中医協の改組ということが一つの問題になると思いますが、いまそういう段階に入っているかどうか、私は多少疑問に思っておるわけでございます。しかもこの問題は改組をするとなると、国会法律提案して行なっていかなきゃならない、こういう問題でございますから、まあ、さしあたり私としては本来の機能が発揮できるように全力を尽くします。そしてまた、将来どうしても本来の機能をいまのような機構では発揮できないということになったときには、今日までの各方面の意見を十分尊重いたしまして善処するようにしなければならぬであろう、かように考えておる次第でございます。  残余の質問に対しましては保険局長から答弁させます。
  225. 北川力夫

    説明員北川力夫君) ただいまお尋ねのございました付添看護料の問題でございますが、確かに仰せのとおり皆保険下の医療サービスといたしまして、付添看護の問題がいわゆる差額の問題とともに非常に大きな問題であり、早急にこれは解決していかなきゃならない問題であることは私どもも十分に承知をいたしております。で、先ほども申し上げましたとおり、付添看護料につきましてはこれは先生承知かと存じますけれども健康保険の場合にはいわゆる基準看護をやってない病院についてこの制度があるわけでございます。したがいまして、この問題のより基本的な解決は現在の基準看護制度というものを中心にした病院看護体制をどういうふうに整備をするかという問題が基本にあると思います。これは病院整備並びに人的ないわゆる看護婦というマンパワーをどのようにして整備、充実をして提供していくかという問題があるわけでございますけれども、そういう問題を解決いたしますと同時に、やはり並行して現行の付添看護料制度というものについても、十分な改善をしていく必要があると思うわけでございます。そういう意味合いで実は前々からいろいろ御要望もございましたので、昨年の八月に従来はこの付添看護料というものの基準を非常に厳密にやっておりまして、病重篤にして常時監視を要するものと、あるいは病重篤ではないけれども、術後常時監視を要するものというふうなことで、ある意味では抽象的にして末端で非常にシビアな運用をするというようなことをやっておりました。これを最近のたとえば老人性疾患あるいは交通事故などの状況考えまして、その範囲内において運用上改めまして、現行制度下における付添看護料の適用範囲を拡大をし緩和したわけでございます。  なおまた、その料金につきましても、いま慣行料金としての御指摘がございましたが、現在は、先般のこの料金の改正によって看護婦の場合は三千三百五十円というふうに従来のものに比べますとかなり改正をいたしております。ただ、今回十月に診療報酬改定がございまして、基準看護料、看護料全般も御承知のとおり三五%の引き上げがございましたし、また従来からこの付添看護料の基本的な考えとしておりますところの、いわゆる医療職関係の給与改善というふうなものもあるわけでございますから、そういう意味合いで早急にこの実態との乖離がなるべく少なくなるように努力をしてまいりたいと、このように考えているような次第でございます。繰り返して申し上げますが、より基本的には、こういった付添看護料の問題と、それから基本的な看護体制整備ということをセットにしてワンパッケージで今後考えていくべきである、これが私どもの現在の考えでございます。
  226. 柄谷道一

    柄谷道一君 基本的には看護体制整備充実、そこにある、これはもう御指摘のとおりであります。しかし、この看護体制の完備というのはその実現までに相当の時間をこれは要するわけでございます。そうしてまいりますと、いま私が指摘いたしましたように、あまりにも患者及び患者をかかえる家族にとって現行の付添看護料というのはほんとうに生活の根底をゆさぶるほどの大きな負担であるということは、これはもう明らかでございますから、若干の前進が行なわれたことは私は承知しておりますけれども、もう一度こうした実態の上に立って現在の付添看護料、たとえば公費医療については公費による付添看護制度を創設するとか、また一般の疾病者につきまして看護を要する範囲というものをさらに拡大をし、完全看護が受けられるための体制をとり、それを医療保障の対象にする、こうした前向きの対策というものについて当局において再度洗い直しをし、期待にこたえるような成果をあげていただきたい、こう思うものであります。  これともう一つ関連がありますのは差額ベッドの解消でございまして、これも社会保険審議会は「今日の差額ベッドは、保険制度の機能を著しく阻害しており、国の助成策のもとに必要な病床数の早急な確保をはかるとともに、差額ベッドに対する規制を強化し、その解消をはかるべきである。」ということをこれは指摘しているところでございます。なかなかこれは病院、診療所等の経営の根幹にもまたがる問題ではあろうとは思いますけれども、少なくとも国公立の医療機関に対しましては施設、設備に関する資金を国庫負担とし、独立採算制というものについてこれを改善する、そのような措置によりまして国公立の病院差額ベッドというものは早急にこれは解消することが可能なのではないか、いわばこれは政府の決断にかかる問題ではないかと思うのであります。このような観点から審議会の答申どおり今後差額ベッドというものは解消の方向をとろうとしているのかどうか、特に国公立病院差額ベッドのあり方に対してどのような対策を準備されているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  227. 北川力夫

    説明員北川力夫君) 確かに四十六年にちょうだいいたしました社会保険審議会の答申には、いま先生のおっしゃいましたような解消をはかるべきであるという御意見でございます。私どもはこの差額ベッド、いわゆる特別室の問題につきましては、その特別室料の負担があるために必要な医療が妨げられないように配慮すると、患者さんが希望しないにもかかわらず差額ベッドに無理無理入らされる、そういう事態がないようにするということをこの問題の処理の基本的な方針考えておるわけでございまして、そういう意味合いで実は三十九年以来指導をやってまいったわけでございます。しかしながら、昨年の健保法等の改正の際にもこの問題は非常に強く議論をされ、いろいろな問題、角度からいろんな御提言をいただいたわけでございますが、要するに三十九年の規制の方針以来相当この差額ベッドが野放図になっているということでございましたので、本年二月の診療報酬改定の機会に三十九年につくりました基準を一部変更いたしまして、新しく規制の姿勢を明らかにいたしました。それは特別室に関する基準というものは個室または二人部屋に限る、それからその収容は患者さんの御希望があった場合に限る、またそういった特別室についてどのような料金で、どのような条件でお入りいただくかということについても、病院の中にはその旨を明示をして事前に十分にお話し合いをする。それからまた、全体の差額ベッドの割合というものは、いま先生からお話のありましたように解消をはかるべきであるという御意見でございますけれども、やはり中には差額ベッドというものを、特別室というものを御希望になる方もあるわけでございますので、そういう点のことも念頭に置きながら、マクロといたしましては全病床のおおむね二〇%以下、しかしながらいまお話に出ました公的な病院につきましてはさらにこれに配慮を加える、特に国立病院については一〇%以下に押える、こういうことで一つの基本的な考え方を出して、従前の方針を改めたわけでございます。また、こういうふうに改めました結果はできるだけ不断にトレースをして、指導を繰り返して、もしそういったことが繰り返されてもなお改まらない場合には監査を行なう。また、従来差額ベッドにつきましては、四十三年とそれから四十七年の二回しか調査が行なわれておりません。特に四十七年は、私的な医療機関は一切調査ができなかったわけでございます。それをこの二月の機会に、毎年七月に必ず一回調査をする、こういうようなことにもいたしまして、特別室問題というものについて、新しい行政上の指導方針をきめて現在もこれに従ってやっているわけでございます。問題は、いま先生もおっしゃいましたように非常にむずかしい問題でございます。しかし、この社会保険審議会の御提言にもありますように、保険制度の機能を著しく阻害するというふうなことがないように、できるだけこの皆保険下における特別室問題というものをいま申し上げましたような観点から最小限度の必要性にこたえられるということ、それからまた、希望しない者についてまでこれが強要されるようなことがないようにと、そういうことで今後も指導を徹底してまいる、こういう方針でおりますので、どうか私どもの新しいこの方針につきましては、それなりの御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  228. 柄谷道一

    柄谷道一君 四十分に時間が限定されておりますので、さらに突っ込むことは時間の関係でやめまして、いま申し上げました付添看護の問題、差額ベッドの問題、そのほかにもいろいろ現行保険の中には矛盾が発見できるわけでございます。たとえば、かつて政府各種保険のプール制ということを上程、問題にされたことがあったわけでございますが、一挙にプール制ということが困難であっても、たとえば一定期間組合健保なり、政管健保に加入をしている、しかし定年退職と同時にそれは国民健保に移管される、条件の低下をもたらす、元気で働いているうちはこれらの政管ないしは組合健保であって、いよいよ疾病というものに対して保険制度の手助けを得なければならないときには条件の低い国保に移管されている、こういう問題があるわけでございます。そういう点を考えますと、これは一つの試案でございますけれども、一定期間健康保険の被保険者であった者が定年退職した場合は高齢者の公費医療を受けるまでの間は従来の保険の管掌とし、退職時の本人負担分を本人は支払う、こういう方法を一つ創設することによって財政的なプールにも役立ちますし、しかも被保険者としての条件の低下が防げるわけでございます。なお、国保及び日雇い健保については御質問に対する中でお答えされておりましたけれども、私の手元にあります資料では、中小総合健保約五十四組合が現在赤字財政である、こういう財政赤字を余儀なくされている現状にかんがみまして、少なくとも事務費については国庫負担を行なう等の方法によりこれまた国がこれらのバランスをはかっていく、こういうことも必要だと思うのでありまして、これらの問題に対しても質問したいところでございますが、時間の関係から問題点指摘のみにとどめまして、この種現行保険制度の各種矛盾について、ひとつ厚生省でこの改善、改革のための必要な措置を早急にとっていただきたいことを要望し、次の質問に移りたいと思います。  質問は、支払い基金制度の改革についてでございます。  支払い基金のあり方につきましては、すでに社会保障制度審議会、社会保険審議会がその基金制度の抜本改正をはかる必要性を指摘いたしますとともに、基金発足当初における法的な性格と現在の法的な性格というものは非常に変化がある、少なくとも現在の基金の業務は実態的には国の業務そのものの性格にきわめて近いという観点から支払基金法の抜本改正の提議を行ないますとともに、事務費及び施設費につきましては国庫負担及び補助の導入ということを示唆しておるところでございます。これに基づきまして具体的な施策をそれぞれ専門的な委員会を設けて検討するようにという答申が行なわれまして社会保険診療報酬支払基金の中で拡大特別委員会を設けましてこの検討を行なった結果の要望意見書が去る十月十八日厚生大臣に提出されているところでございます。まあ現在の基金——業務要員一人当たり大体一万二千件ぐらいの取り扱い件数を持っております。さらにその取り扱い金額は業務要員一人当たり七千万ないし八千万円の医療費を取り扱うきわめて重要な意味を持つ機関でございますし、かつ現在の保険体制への推移、公費医療を中心とする医療保障の諸行政が逐次支払い基金の業務として加わってきている、こういう情勢を考えますと、私は基金制度の抜本改正及び国の負担のあり方についてすでにメスを当然入れなければならない時期ではないかと思うのであります。まして今回の基金内において設けられました委員会は、公益側、保険者側、被保険者側、診療担当側、この四者の満場一致の意見による要望でございまして、すでにこの種の問題につきましては方向は定まったと、残るは厚生省当局の勇断に待つのみと、こう考えられるわけでございます。基金法抜本改正問題に対する大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  229. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど答弁はなくてもいいということでお述べになりましたいろいろの問題、退職者の保険の問題、これなどはやっぱり相当慎重に考えていかなければならぬ私は問題だと考えております。  それから、そこで御質問の支払い基金の改革の問題についての御意見でございますが、支払い基金は医療保障制度のほんとうに根幹をなす大事な仕事でございます。しかもこの仕事に従事される職員の事務量、困難さ、これはほんとうにたいへんなものだと思って、私も深く敬意を表しておるものでございます。  そこで、これについては改めるべきものも私はたくさんあるのではないかと思いますが、法律改正を要する事項も相当あることを承知いたしております。したがいまして、法律改正を要する事項についてはいま直ちにこれをどうするということを申し上げることはできませんが、予算関係で措置する事項につきましては、できるだけ国の負担をふやしていくとか、国の補助をふやすとか、そういう問題については、私は今後できるだけ努力をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  230. 柄谷道一

    柄谷道一君 基金の人件費、事務費の負担をふやすように努力したいということでございますが、これも現行法によりますと、基金法第十九条の規定に、基金の事務の執行に要する費用はすべて基金に業務を委託する保険者等の負担とするということが明記されておりますように、これは法律上、大臣のせっかくの御答弁でございますが、これを行なおうとする場合の一つ阻害があるわけでございます。確かに基金法そのものの改正をこれは必要とするわけでございまして、本日、最初の質問でございますので、直ちに法律改正の準備に着手するという答弁は非常にむずかしかろうとは思いますけれども、御答弁の中に基金の実態について深い理解を示されておる大臣でございますので、これはひとつ、積極的に早急に基金法の改正問題について省当局の検討を進めていただきたい、このことをお願いをいたしておきます。  最後に、年金問題について若干の御質問をいたします。  本日の新聞によりますと、昨日厚生大臣は、決算委員会における社会党案納議員の質問に答え、年金財政再計算は二年繰り上げ、五十一年度当初から実施をしたい、私見ではあるがという前置きはつけられたそうですが、そのような答弁がなされたことが新聞に報道されているわけでございます。非常に積極的な意欲について評価するものでございますが、ここに書いております、五十一年度当初から実施したい、——そのまま読みますと、来たる三十日に開かれる社会保険審議会厚年部会に基本的な省の態度を説明をして早急に実質的な作業に入る、そして法律的な手続を経て五十一年四月という年度当初から新しい年金を実施したい、こういう意図と読み取れるわけでございますが、そのとおり理解してよろしゅうございますか。
  231. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私の発言があるいは正確を欠いたのかもしれませんが、五年ごとに財政再計算をやるということになっておるわけでございますが、最近の物価あるいは賃金の動向から考えまして、二年くらい繰り上げまして五十一年度の冒頭に改正法律案を提出したい、こういう考えを持っておるわけでございます。したがって、四月一日からそれを実施するという意味じゃございませんで、五十一年度に法案を提出いたしたいと、こういうことでございます。ということは、もう御承知のように、私がそうしたいと思ったって国会法律案をこれは出さにゃなりませんので、四月一日実施ということは、なかなかこれはたいへんなことでございます。五十一年度の冒頭に国会財政再計算を行なう法律案を提出いたしたいと、かように考えておるということを申し上げたんでございますが、多少ことばが不十分であった点は訂正さしていただきたいと思います。  なお、厚年部会に云々というお話がございましたが、その五十一年度改正をめどにした準備を厚年部会にすぐ出すという意味ではございません。厚年部会における勉強項目として、厚生年金についてはこういう問題がいろいろありますよということを勉強のために資料を提出しましょうと、こういうことでいま準備を進めておるわけでございます。
  232. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ、これから検討に入られるわけでございますが、時間の関係で多くを指摘することはできませんが、確かに現行年金制度、多くの面においてまだ矛盾をかかえていると思います。各年金の制度間の格差が依然として大きい、水準が老後の生活を保障するに十分でない、こういう大きな問題点をかかえておりますが、たしか浜本委員の御質問に対してだと思いますが、老齢福祉年金はいわゆる敬老的なものであると、こういうお答えがございました。確かに、無拠出老齢福祉年金のスタートは御指摘のように敬老的なものであったと、これは事実そのとおりでございます。しかし、今後各種年金を横断するひとつ是正を行なっていこうということになった場合に、老後生活を安定させるためのナショナルミニマムというのは一体どこにあるのか、そういう大もとに触れての論議の中から厚生年金、国民年金、老齢福祉年金、そういうものを横断する一つのもうそろそろ年金に対する基本的な姿勢というものを打ち出すべき時期に入っているのではなかろうかと私は思うわけでございます。  そういう意味で、いまこれから問題点がある、検討しようと言われるわけでございますが、その種年金のナショナルミニマムの検討、こういうことに対して私はぜひ厚生大臣の問題提起として入れていただきたいとこう思うわけでございますが、御所見を承りたいと思います。
  233. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 厚生年金、国民年金を通じまして、昨年皆さん方の御協力をいただいて成立いたしました五万円水準年金というものは私は画期的な大筋のものであったと思います。その大筋はでき上がりましたけれども、幾多考えなければならぬ問題がたくさんあるわけでございます。老齢福祉年金で申しますれば、まさしく出発当時は敬老年金でありまして、金額も非常に少なかったのでございますが、だんだんと増額されてすでに現在七千五百円と、こういうふうになってまいりますと、そこに社会保障的な色彩というものがだんだんとやっぱり深まってきているということを言うことができると思うのでございます。特に来年一万円ということになりますれば、その色彩はだんだんと強まってくるわけでございます。  そういうふうなことを考えてみますれば、厚生年金あるいは国民年金、共済年金、さらに恩給、そういうもの全体を通じて、やはり最低の年金額というものを統一的に考えていくという方向も、これは私は一つの大きな考えなけりゃならぬ問題だろうと思います。そういう意味合いにおいて、今後法改正というふうなことになりますれば、いまお述べになりましたようなそういう問題を十分研究をいたすようにいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  234. 山崎昇

    委員長山崎昇君) そろそろおしまいにしてください。
  235. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間があれですので、あと二つ簡単に御質問します。  一つは、今後の検討の中での年金賦課方式についてでございますが、これも九月五日、日経、朝日、読売等に報道された記事によりますと、二階堂官房長官、橋本幹事長は、来年度予算をめどに年金を賦課方式に切りかえることについて意見が一致したと、厚生省はこれに対してなお問題ありとしているというやの記事が出ております。この年金賦課方式の問題について現状における大胆の所見を聞きたいというのがその一つであります。  最後に、これは第七十二回通常国会における予算委員会審議の中で、わが民社党の中沢伊登子君及び高山恒雄君の二名から、在職老齢年金について二〇%削減されている問題について指摘いたしましたところ、当時の内田厚生大臣代理からは、二〇%引くのは、国庫負担二〇%は御遠慮願いたい、こういう趣旨で引いているのだという御答弁があり、それに対するいろんな意見の集約の結果、最終的に当時の大蔵大臣であった福田さんは実態調査をして善処したいと、こういうお答えをされているわけでございます。すでに三月の時点でございまして、この在職老齢年金、お約束によります検討結果が一体どうなっているのか、これをお伺いします。
  236. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まず第一の賦課方式、修正積み立て方式の論議につきましては、昨年来当国会においてもいろいろ御審議願ったところでございます。一言で申しますと、私どもは現在でも修正積み立て方式、これは考えようによれば修正賦課方式かもしれません、これはある意味からいいますと。というわけでございますから、私は財政方式というものにはあまりこだわる必要はないんじゃないか、ただ考えなければなりませんことは世代間の負担の不均衡、これをなくすようにしていくということがやっぱり一番大事な問題であるということ。それから厚生年金については、現在保険料を納めておられる方々は、自分たちの老後の年金のためにと思って保険料を出しておるわけでございます。現在の十兆になんなんとする積み立て金も、私どもの年とったあとのことの年金の原資として保険料を出しておると、こういう考えでございますから、それをにわかに賦課方式に切りかえて、さあ皆さん方のお納めいただいたものは全部現在の老人に差し上げますよ、いままで保険料お出しいただいたけれども。あなた方の年金は後代の労働者の方々に出していただけますよと、こういうことを言うことになるわけ、極端な言い方をしますと。ということになると、はたして現在保険料を納めておられる方々のコンセンサスを得られるかといったふうな問題もあります。そこで、私はあまり財政方式にはこだわりませんで、要するに現在の経済状況のもとにおいて年金水準額はどの程度が適当であるか、どの程度の年金額を国民が望んでおるのか、その適正なる年金水準をいかにきめるかということが中心でありまして、それがきまりますれば、それをもととして財政方式をいろいろ加味し考えていくと、こういうことが賢明ではないだろうかと、こういうふうに私は考えておるものでございます。  それから高齢在職者の問題でございますが、六十歳から六十五歳までの方々については、五万円になるまでは、給料が安くて三万円ならば残りの二万円は年金で払うと、こういう仕組みになっておりますが、この五万円ということについては、これは御承知のように今年度すでに一六・一%のスライドをいたしましたので、すなわち五万八千円のベースにすでになっているわけでございます。それを五万円の頭打ちにする、これは適当ではない。おそらく来年は——現在五万八千円のべース、それが昭和四十九年度の消費者物価指数が二〇%以上上がるとかりに仮定いたしますと、来年度の年金水準は七万円にもなるわけであります。ところが法律は五万円というふうになっておりますので、これはやっぱりスライドした額に合わせて法改正を私はすべきじゃないか、こういうふうに検討しておるわけであります。すなわち、来年になりますれば七万円までになるように年金を支給する、こういうふうにすべきではないかと、こういうふうに考えております。  それと同時にもう一つ、六十五歳以上の方、いわゆる六十五歳以上の方の問題については、おまえらはどういうふうにいま研究をし準備しているかと、こういうお尋ねになるわけ。で、現在は御承知のように国の負担分の二〇%は御遠慮いただきたい、こういうことになっておるわけでございます。これは研究してみますと、なかなかむずかしい問題があるようでございまして、まだ結論は得ておりません。そういうことだけ率直に申し上げておきます。
  237. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間の関係がありますので、もう要望といたしますが、時間の関係で意を尽くせませんでしたけれども、医療保険制度、厚生年金制度、それぞれいまたくさんの問題点をかかえていることは、これは事実でございます。その点について大臣の勇断を求めますとともに、特に厚生年金につきましては、でき得れば来年当初から実施に移されるように、その意気込みをもって各種審議を推進していただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  238. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 委員長から一言要請しておきますが、きょうの質疑を通じて委員から要求のありました資料については、すみやかに作成をして全委員に配付するよう指示しておきますから、確認をしたいと、こう思います。  本調査に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会