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1974-09-20 第73回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月二十日(金寧日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  八月十四日     辞任         補欠選任      三治 重信君     柄谷 道一君  九月十七日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     三治 重信君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴園 哲夫君     理 事                 原 文兵衛君                 栗原 俊夫君                 内田 善利君     委 員                 井上 吉夫君                 菅野 儀作君                 宮田  輝君                 森下  泰君                 久保  亘君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 小平 芳平君                 沓脱タケ子君                 近藤 忠孝君                 三治 重信君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        運輸省自動車局        整備部長     田付 健次君    参考人        東洋工業株式会        社社長      松田 耕平君        トヨタ自動車工        業株式会社社長  豊田 英二君        日産自動車株式        会社社長     岩越 忠恕君        本田技研工業株        式会社常務取締        役        杉浦 英男君        名城大学助教授  石原 荘一君        武蔵工業大学教        授        古浜 庄一君        東京公害局長  上田 涼一君        大阪生活環境        部長       中川 和雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害対策及び環境保全対策樹立に関する調査  (自動車排出ガス昭和五十一年度規制に関す  る件)     —————————————
  2. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査のうち、自動車排出ガス昭和五十一年度規制に関する件につきまして、本日、参考人として、東洋工業株式会社社長松田耕平君、トヨタ自動車工業株式会社社長豊田英二君、日産自動車株式会社社長岩越忠恕君、本田技研工業株式会社常務取締役杉浦英男君、名城大学助教授石原荘一君、武蔵工業大学教授古浜庄一君、東京公害局長上田涼一君、大阪生活環境部長中川和雄君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめて。   〔速記中止
  4. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。  それでは、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、自動車排出ガス昭和五十一年度規制に関する件について調査を行ないます。  この際、各参考人に対し、委員会を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には御多用中のところを本委員会調査のために御出席いただき、まことにありがとうございました。自動車排出ガスの五十一年度規制の問題につきましては今日まで種々論議されてきましたが、本日はそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を述べていただきたいと存じます。  なお、本日の議事の進め方でありますが、午前中は参考人の方から順次各十五分程度意見を述べていただき、午後は委員の質問にお答えいただきたいと存します。  それでは松田参考人からお願いいたします。
  5. 松田耕平

    参考人松田耕平君) 東洋工業松田でございます。排出ガスに対する東洋工業のとりました経過を御説明申し上げます。  東洋工業は、昭和四十年に排出ガス研究対策会議社内に設置したときから、排出ガス対策推進努力してきました。自来、低公害車研究開発に対して、概算延べ百七十五億円の研究開発費並びに延べ約一千万マンアワー研究員を投入して研究開発推進してまいりました。わが社の低公害車開発方針は、現状排出ガス規制にパスすることを第一目標とするのではなく、蓄積された技術社会の要請に反映するため、現在可能な最高のものを社会に提供することであると考えております。その研究開発成果として、昭和四十八年五月には、五十年排出ガス規制値達成するロータリーエンジン搭載公害車マツダリーブスを発表することができ、その後、昭和四十八年十月には、レシプロエンジン車についても業界に先がけて低公害車マツダシープスを発表し、これらの低公害車には物品税自動車取得税の一部を免除するという、国の低公害車優遇税制の最初の指定を受けました。そして現在では、五十年四月より実施されます五十年排出ガス規制値に合格するマツダ公害車は、すでに六車種、五十九タイプに達しております。  次に、昭和五十一年排出ガス規制に対する東洋工業の考え方及び現状について申し述べます。現在、五十一年目標値達成するために二つ方針のもとに窒素酸化物低減を追求しております。その一つ方針は、五十年規制に採用している浄化システムベースにその改善をはかることであり、他の一つは、革新的なアイデアに基づく技術開発を目ざすという方針であります。昭和五十一年低減目標値達成するための対策技術現状問題点をまとめた資料を別にお届けいたしておりますので、御一読いただければありがたく存じます。一般的に、窒素酸化物低減させると燃費が悪化する傾向がありますが、われわれは、薄い混合気による新しい技術開発によりまして、窒素酸化物低減燃費低減の両者を満足させるべく懸命に努力を続けております。  まず、五十年規制に採用している浄化システム改善をはかるプロジェクトでは、サーマルリアクター方式または酸化触媒方式ベースとして、エンジン改良、さらには排出ガス循環装置を装着して窒素酸化物低減をはかることになりますが、この影響で、エンジンから排出される一酸化炭素及び炭化水素排出量の増加と走行性を悪化させる問題が発生します。この対策として二つ方法が考えられます。その一つは、混合比を濃いほうにセットするリッチセットによるあと処理装置酸化反応を促進する方法であります。もう一つ方法は、混合比を薄いほうにセットするいわゆるリーンセット方式で、これはリーンセットを可能にするエンジンの改造と、酸化反応をさらに促進するあと処理装置改善で対処する方法であります。前のリッチセット方法では、あと処理装置の負担が多くなり、使用中の劣化の問題や熱害の問題がありまして限界があります。また、あとリーンセットにつきましても、エンジンの失火やあと処理装置酸化反応限界がありまして、これにも窒素酸化物低減には限度があります。いずれの方法につきましても窒素酸化物低減には限界があり、〇・六グラム・パー・キロメーターを割る平均値昭和五十一年度に量産において達成することには大きな壁があります。現在、省資源の点より燃費のよいリーンセット対策を選び、実用化テスト推進しております。このアプローチにより、五十一年度、すなわち五十一年四月よりわれわれが達成できる窒素酸化物低減限界値は、ロータリーエンジンでは〇・六グラム・パー・キロメーター、従来のレシプロエンジンでは〇.七グラム・パー・キロメーター量産可能な平均値であります。  この壁を破るためのプロジェクトとして、五十年対策とは異なる革新的なアイデアに基づいて、幾つかのプロジェクト窒素酸化物低減の極限を追求しております。その研究開発の過程で、〇・二五グラム・パー・キロメーター達成可能性がないものとして研究開発を縮小した幾つかの方式があります。たとえば、ロータリーエンジンでの成層燃焼方式による(A)方式については、これはお手元資料では三ページにございますが、窒素酸化物レベルは〇・五グラム・パー・キロメーターで、燃費は未対策車に比べて約一〇%改善されるという魅力があるものもありましたが、〇・二五グラム・パー・キロメーター達成可能性がないため、別の方式研究開発に切りかえたものもございます。現段階ロータリーエンジン成層燃焼方式のうちで〇・二五グラム・パー・キロメーターの最も達成可能性の高いと考えられます(B)方式において、これはお手元資料では四ぺトジにございますが、窒素酸化物到達レベル実験車で〇・三グラム・パー・キロメーター平均値でありまして、窒素酸化物低減燃費についても高い可能性があり、非常に希望を持っています。しかし、低減目標値〇・二五グラム・パー・キロメーター量産達成するためには、燃焼方式のコントロール及びそれに関連する部品につきましてさらにきびしい精度と複雑さが要求され、現段階でそれに対処できる技術は得られておりません。また、この方式信頼性運転性コストなど、未確認、未解決の問題が多く、商品化までにまだ相当のテスト期間が必要でありまして、この昭和五十一年低減目標値達成する可能性及び実施可能時期の見通しが得られるのは昭和五十一年後半になると考えております。  窒素酸化物レベル低減するにつれて、その測定精度の問題がクローズアップされ、一段と高い精度が要求されてまいります。この問題は非常に複雑であり、問題の性格上、一般性のある解決が必要でありまして、一企業でこの研究改善を行なうにも限度がございます。現在、工業技術院が中心となり、これらの問題の解決推進されていますが、特に低い窒素酸化物レベル測定上の問題に的をしぼり、強力に推進していただきたいと考えております。  いずれにいたしましても、東洋工業といたしましては、これからもより完全な排出ガス対策を施した車の開発を目ざして努力を重ねていく決意でございますので、今後とも一そうの御指導、御支援をいただきますよう心よりお願い申し上げます。
  6. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) どうもありがとうございました。  次に豊田参考人にお願いいたします。
  7. 豊田英二

    参考人豊田英二君) ただいま委員長より御指名をいただきましたトヨタ自動車工業株式会社社長豊田でございます。本日は、国会の場におきまして私ども実情につきまして御説明する機会を与えていただきまして、深く感謝申し上げる次第でございます。  大気汚染の問題及びそれに関連いたします五十一年規制の問題は、何といたしましても解決いたさなければならない最重要課題であるということは十分承知いたしております。そこで、これらの対策に日夜研究開発を重ねておりますが、何ぶんにも技術限界に挑戦する問題でありますので、あらゆる努力を続けましたが、残念ながらその結果はいまだ達成できない状況でございます。そこで、いまの研究がどこまで進んでいるのか、また、どこに困難があるのか等につきまして、本日、当社実情を具体的に述べさしていただきたいと存じます。  私どもは創業以来、よい品、よい考えを基本理念として努力してまいりました。今回の大気清浄化につながる自動車排出ガス対策につきましては、メーカーとしての社会的責任を深く自覚するとともに、わが社の総力を結集し、あらゆる可能性を追求しつつその技術開発に最大限の努力を傾注いたしてまいりました。すなわち昭和三十九年より排出ガス対策に関する研究に着手、昭和四十年にはプロジェクトチームを組みました。さらにより深い研究を進めるために、同年、東富士研究所を着工いたしました。昭和四十三年には第一次排出ガス実験棟が完成いたしましたので、排出ガス対策プロジェクトチームのうち先駆的研究部門東富士研究所に移しました。そして開発を展開する部門として本社技術部門体制を整えてまいりました。研究開発費としては、昭和四十五年から昭和四十八年までに約二百九十五億円を投入し、昭和五十年末までにさらに約四百二十四億円を投入する予定であります。研究者昭和四十五年に五百十九名でございましたが、その後逐年増加し、昭和四十九年には千八百七十名の規模になっております。このように私どもは五十一年規制達成することをトヨタ基本方針として最大の努力を傾注いたしております。  五十一年規制技術面について申し上げますと、委員先生方はすでに御高承のとおり、一酸化炭素及び炭化水素低減する方法窒素酸化物低減する方法とは燃焼温度の点から考えて相反する関係にあり、この三成分を同時に低減するのはなかなか容易ではございません。特に乗用車の五十年規制は、規制が実施されていなかった時期に比べ、一酸化炭素は五%以下に、炭化水素は四%以下に、窒素酸化物は三九%以下にするという大幅な低減が要求されております。さらに五十一年規制は、窒素酸化物を八%以下に低減しなければならないというきびしいものでございますが、これは技術的に非常に困難な水準でございます。  ここで、トヨタがこれまで研究開発を行なってまいりました五十一年規制に対する排出ガス対策技術につき御説明を申し上げたいと存じます。  窒素酸化物に対するきわめてきびしい数値達成する道は、第一に、ガソリンと空気の割合、すなわちどのような混合比を使うか、第二に、還元触媒を用いるか、第三に、ガソリン性質組成等を変えるかの三つの手法に分類されます。トヨタはこれらのすべてに対しまして技術力を動員し、目標を〇・二五グラム・パー・キロメーター達成の一点にしぼり、研究開発を実施いたしてまいりまました。その第一の混合比からの研究といたしましては、濃混合比方式としてはリアクターシステムまたはこれに酸化触媒を組み合わせたシステムなどを、また理論混合比方式としては三成分同時処理システムなどを、あるいはまた希薄混合比方式としてはトヨタ燃焼制御方式等研究いたしました。なお、この分類の一つとして本田CVCCがあり、これも導入研究をいたしました。第二の触媒を用いる方式としては、還元触媒を加えたデュアル触媒コンバーターシステムその他の研究開発を重ねてまいりました。機能部品としては、サーマルリアクター自社開発のほか、豊田中央研究所日本自動車部品総合研究所米国デュポン社にも開発を委託いたしました。また、酸化触媒は約五千種に及ぶ研究のほか、海外十八社を含む三十五社の約二百種を研究し、還元触媒は約四百種の自社開発に加うるに十四社で約四十種に及ぶ検討をいたしましたし、三成分触媒は、自社のほか海外を含む七社を対象にそれぞれ研究開発を実施いたしました。このほかにガソリン噴射等も、日本一社、海外六社に対し共同研究をいたしました。次に、第三の供給燃料性質組成などを変更させる方式といたしましては、後述いたしますJPL水素添加方式をも含んだトヨタ独自の燃料処理方式等研究いたしてまいりました。  このように、考えられるすべてに対しまして幅広く研究開発を展開、推進いたしました。これらの研究の結果、このきわめてきびしい〇・二五グラム・パー・キロメーター数値は、現在の燃焼制御方式では到達不可能に近い見通しを持ちましたので、還元触媒方式による解決策を見出すべく、こ二数年間広範囲の努力と探索を進めまして、初期値達成することはできましたが、触媒耐久性等がなお不足なために、五十一年規制値を完全に満足することばできませんでした。また、燃料性質組成等の変更につきましては鋭意研究中でありますが、十分な見通しを得るには若干の年月を必要といたします。  なお、燃焼制御方式につきましてふえんいたしますと、ある程度窒素酸化物の値に押えることはできますが、実用的に規制値を満たすことはできず、また、現在の希薄燃焼制御方式から出る窒素酸化物還元触媒をもってさらに浄化することは技術的に不可能であります。さらに別種の研究につきましても世界的規模評価検討をいたしました。たとえば未公表の研究として西独ジーメンス社改良燃料によるもの、米連邦航空宇宙局の委託によるジェット・プロパルジョン・ラボラトリーの水素添化による燃焼制御、または米国ドレッサー社燃料微粒化による燃料制御等々を含めまして、研究につとめてまいりました。このように社内研究開発のみならず、国際的にも評価を加え、考えられるすべてについて研究開発を実施いたしましたが、現時点では〇・二五グラム・パー・キロメーター達成することはできませんでした。  続きまして、暫定値について申し上げますと、私どもはいままで申し上げましたとおり、昭和四十七年十月五日の環境庁方針告示に従い、〇・二五グラム・パー・キロメーター達成することのみに目標を定め、そのためのシステムを組み、研究開発を実施してまいりました。ところが今年六月聴聞会において環境庁より暫定規制値を提案してほしい旨の御要望がありましたので、即日検討に入りました。しかし、暫定規制値の設定には、いままでの開発結果を再検討し、さらに〇・二五グラム・パー・キロメーター対策用システムとは別のシステムに組み直し、耐久性等を含め、どこまで可能かを広範囲な製品について研究する必要があります。それには検討期間不足の点もありまして、先般環境庁にはとりあえず次のとおりお答えをいたしました。すなわち、五十年対策システムの延長上でたえ得る数値として、一部の車種について一・〇ないし一・一グラム・パー・キロメーター、その後の目標値としては全車種に対し五十二ないし五十三年に〇・九グラム・パー・キロメーターレベルになるかと思いますが、今後暫定規制値対策システムについて研究を進め、おおむね一年後にその結果を御報告申し上げることといたした次第でございます。特に窒素酸化物暫定規制値に関連いたしまして、試験法がきまっておりますので、窒素酸化物はほぼ車両の重さに比例して排出されます。すなわち、軽い車より重い車のほうが排出量が多くなりますので、車両重量窒素酸化物排出量相関性があることに御留意をいただきたいと存じます。このような技術的問題のほかに、生産品質保証という面からのばらつきの問題と、開発目標値規制値関係耐久性確認、さらには開発より生産に至るまでのリードタイムなどを十分に御配慮いただきますようお願い申し上げます。  さて、いままで御説明申し上げましたとおり、あらゆる有効と思われます方法につきまして幅広く検討を加え、研究につとめてまいりました。また今後も努力を続けますので、近い将来独自の方法によって、さらによい結果を得ることを確信いたしております。つきましては、私どものこのような実情から、五十一年規制値等につきまして若干の要望をさせていただきたいと存じます。  五十一年規制は五十年規制のままさらに二年間継続されるようお願いいたします。その後につきましては、五十年規制による大気汚染減少効果等の実績や技術開発の進歩及び社会経済情勢変化等を勘案して、総合的判断に立って妥当な規制値を再検討していただきたいと存じます。  次に、規制達成に関連して、組成、性状を明確化した無鉛ガソリンの健全なる供給測定機器開発、特に精度向上及び標準ガス開発などについて具体的、実質的な推進をお願いいたします。  以上、私どもがここ十年来本問題に関しましてたどりました経過を申し上げ、かつ若干の実情を申し述べさしていただいた次第でございます。  なお、本問題は資源コストその他国民経済国民生活、ひいては国民の福祉など広範な影響を及ぼすものと考えますので、大所高所の見地から格別の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  どうもありがとうございました。
  8. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) どうもありがとうございました。  次に岩越参考人にお願いいたします。
  9. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 日産自動車岩越でございます。参考人といたしまして、昭和五十一年度自動車排出ガス規制対策に取り組んでおります日産自動車現状について御報告申し上げます。  現在わが国公害問題、特に大気汚染問題につきましては、自動車排出ガスがその一因であり、大気清浄化のために定められました規制値を一日も早く達成することが私どもの大きな社会的責任であると考え、このため全社をあげて日夜努力を重ねている次第でございます。  では初めに、当社排出ガス低減対策に取り組んでおります概要の一端について申し上げますと、排出ガス低減させるための技術開発には、広範囲かつ多岐にわたる技術と、それに伴う各種実験を必要といたしますので、中央研究所、設計、実験等の各部門がそれぞれ業務を分担いたしまして研究開発を進めるとともに、これらの部門総合的連携を深め、より効果的な開発を促進させるために排気対策委員会を設け、総合的見地から万遺漏なきを期しておる次第でございます。一方、自動車産業総合産業でございますから、たとえば電子制御触媒各種制御機器等排気対策に関連するメーカーさんとの協力体制も大切でございますので、安全公害対策会議並びに安全公害特別委員会を設けて研究開発の促進をはかっておる次第でございます。私は、このために必要とする研究開発費につきましては、技術陣の必要とするものはすべて認めるという方針で、排気対策関係に限りましても昭和四十六年から四十九年の予定でございますけれども含めまして四百七億円余を投入してまいりました。四十九年度について申し上げますと、全研究開発費の五三%となっておりますし、また研究開発人員といたしましては、現在排気対策に従事しております者は約千六百名でございますが、これらが一丸となって努力を重ねておる状況でございます。  ところで昭和四十一年以降わが国自動車排出ガス規制は漸次強化されてまいりましたが、私ども規制を上回る諸対策を実施するとともに、実施時期の面でも規制に先がけて技術開発段階に応じ極力実施できるものは先行採用してまいりました。お手元資料の二ページのところにそのことを書いておきました。これらの諸対策によってどの程度排出ガス低減しているかについて数字で御報告いたしますと、昭和四十年に比較して、現在の私ども自動車炭化水素約六〇%減、一酸化炭素約七〇%減、窒素酸化物では約四〇%減になっておりますし、五十年排出ガス対策車ではさらに低減されて炭化水素一酸化炭素では九〇%以上の減、窒素酸化物では約六〇%の減少となる見込みでございます。  それでは続きまして五十年排出ガス対策概要について御報告申し上げます。  私どもは、五十年型車排出ガス対策として三つ方式基本として進めております。三ページから七ページにその辺を書いてございます。第一は、エンジン改良方式酸化触媒を付加する方式、第二は、トーチ点火層状燃焼方式で、第三は、ロータリーエンジンによる方式でございます。これらの方式の詳細につきましては、すでに御提出申し上げました補足資料をごらんいただくとして、ここでは時間の関係もございますので省略さしていただきます。  ただいま申し上げました三方式のうち、現状では、省資源見地から燃料消費量が最も少なく、また、これまでの開発成果が確立しておりますエンジン改良方式酸化触媒を付加するシステムを主体とし、トーチ点火層状燃焼方式ロータリーエンジンは、開発状況及びこれらの特徴を勘案いたしながら、一部の車種に採用いたしたく存じております。いずれにいたしましても、五十年排気対策につきましては規制値達成は可能でございます。しかしながら、排出ガス低減させますにはエンジン各部の改良各種低減装置を採用いたしておりますが、このほかにも車両全般にわたる改造が必要となってまいります。主要な個所といたしましては、エンジンルームの形状、冷却システム仕様、排気系統、触媒システム装着のための床の部分の形状、防熱板の採用等、数えあげたら切りがないほどでございまして、自動車全体に及ぶと言っても過言ではございません。現状では、五十年排出ガス対策車を実際の生産に移すため、工場の準備体制部品供給体制の確立に全力を傾注いたしております。五十年排出ガス規制に対処するためには、先ほども御報告申し上げましたように、革新的技術の採用並びに大幅な車両としての改造が必要でございます。このような大幅な変更は、私どもといたしましては初めての経験でございます。したがいまして、万全の配慮を払っておりますものの、革新的技術でありますだけに、たとえば予期し得なかったトラブルが多少なりとも懸念されるのであります。このような事態の発生を未然に防止するため、種々の対策を施すなど、従来のいかなる新技術採用のときよりもはるかに多くの努力を払わせております。さらに、顧客のあらゆる使用条件に対応するサービス体制を確立することが必要でございます。端的に申し上げれば、品質の安定した生産体制、万全のサービス体制が伴わなければ、いかに優秀な排出ガス対策車開発しても、その効果を十分に発揮することは保証できないと考えておるものでございます。  以上で五十年排出ガス対策概要説明を終わらせていただきまして、続きまして五十一年排出ガス対策概要について御報告申し上げます。  当社では、四十五年ごろから排気中の窒素酸化物を大幅に低減するにはどうしたらよいかという研究開発に着手いたしており、現在、実験段階における初期値といたしましては規制値を満足する数値も一部得られてはおりますが、耐久性の問題とか、運転性が著しく劣るとか等、対策技術の諸困難性から、本日までのところ、いまだ実用に供し得るめどをつかむには至らない状況でございます。五十一年度窒素酸化物の〇・二五グラム・パー・キロメーター達成すべきことを緊急の責務と考え最大の努力を重ねましたものの、かか互実情を御報告せざるを得ませんことはまことに遺憾に存じておる次第でございます。先ほど御報告いたしました五十年窒素酸化物規制基準一・二グラム・パー・キロメーター目標としたシステム改良によって〇・二五グラム・パー・キロメーター達成することはきわめて困難でございますので、現在、五十一年排出ガス規制対策として鋭意研究開発中のシステムは、これら技術改良して積み重ねるだけではなくて、新たに還元触媒などの新技術を採用することが必要になってまいりました。また、非常に精密な管理限界をいかにして確保するかも重要な問題と考えております。  これらの考えのもとに、私どもとしては、次の四つのシステムを主として、その他幾つかの研究開発を鋭意進めておる次第でございます。四つのシステムは、第一は、デューアルベッド触媒システム、第二は三元触媒システム、第三はトーチ点火層状燃焼方式に排気還流装置を付加したシステム、第四はロータリーエンジンに排気還流装置を付加するシステムでございます。これら個々の詳細につきましても時間の関係上省略させていただきますが、お手元資料の一〇ページから一二ページのところをごらんいただきたく存じます。ここでは、四つのシステム概要技術上の課題等について要点のみ御報告申し上げます。  まず、デューアルベッド触媒と申しますのは、基本的に一酸化炭素炭化水素低減するための酸化触媒に、窒素酸化物低減するための還元触媒を追加したシステムでございまして、実験室における初期値では、窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメーターに達しているものも一部にはございますが、熱対策、性能劣化防止策、耐久性の保持が不十分であり、また、システムとしての総合適合性についてもさらに研究を要するところでありますし、システムのコントロール技術がきわめてきびしく要求されます関係上、これら制御技術も十分研究を進める必要がございます。第二に、三元触媒システムでございますが、このシステム炭化水素一酸化炭素及び窒素酸化物の三成分を同時に転換する特性を持った三元触媒を使用して、電子制御燃料噴射装置、酸素センサーを組み合わせて、空燃比のフィードバック制御をきびしく行なう方式でございます。この方式では、三元触媒自体の耐久性が乏しいこと、空燃比コントロール技術がきわめてむずかしいので、さらに鋭意研究を進めてまいる所存でございます。第三は、トーチ点火層状燃焼方式に排気還流装置を付加する方式でございます。第四の方式としては、ロータリーエンジンに排気還流装置を追加する方式でございますが、この第三、第四の両方式とも、排気還流量をふやすことにより、運転性燃費が大幅に悪化いたし、五十一年規制に対し、いまだに見通しが得られていない状況でございます。  以上が五十一年排気対策に関する私ども現状でございますが、さきに環境庁長官殿より、現在開発中の五十年低公害車システム基本として、当面、窒素酸化物をどの程度低減できるかについて新たに御下問をいただきました。この点につきましては、あらためてその線に沿った実験を追加し、鋭意努力を重ねております段階でございますので、技術的根拠をもってお答えすることはむずかしいわけでございますが、達成可能なめどといたしまして、五十年度窒素酸化物規制値一・二グラム・パー・キロメーターの二五%減程度と考えております。しかしながら、かりにこれを実施に移すことにきまったといたしましても、五十年規制車のフォローアップ体制、新しいEGRシステム開発及びシステム全体の開発から生産に至る諸般の準備を考えますと相当の準備期間を要しますので、最大の努力をもってしても実施時期は五十二年度からになるものと思われます。  当日産自動車自動車排出ガス低減に関して、特に五十一年度窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメーター達成への企業姿勢及び開発状況につきましては以上御報告申し上げましたとおりでありますが、国民の健康保護及び生活環境保全をはかるため、企業の大切な社会的責任としてさらに一段と研究開発を促進し、もって御期待に沿うよう努力をいたす所存であります。しかしながら、自動車はその使用されている実情から考えますと、あらゆる職業の方々、そして性別、年齢を問わず幅広い方々によってみずから運転されているのが実態でございます。しかし、使用される外的条件は、あるいは地理的条件、気象条件、道路条件等千差万別と申し上げても過言ではないと存じます。これらの点から考えますと、自動車は専門家が運転される諸機器とは大いに異なっており、特に安全性、信頼性耐久性の点で格段の技術が要請されているものと考えております。万一不十分な研究開発、耐久試験等によって安全性を欠くことがあったような場合、人身事故にもつながる可能性があることを考えますと、自動車メーカーとしての責任を遂行するためにも慎重な上にも慎重なフォローアップを重ねなければならないと信ずるものであります。したがいまして、五十一年度窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートルの規制につきましては、万全を期して努力をいたしますので、いましばらく御猶予を賜わりたく、ここにお願いを申し上げて御報告を終わりといたします。どうもありがとうございました。
  10. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  次に杉浦参考人にお願いいたします。
  11. 杉浦英男

    参考人杉浦英男君) 本田技研の杉浦でございます。  本日は社長の河島が出席いたしますべきところでございますが、おりあしく海外に出張をいたしておりますので、私が代理として参上いたしました。  当社は、戦後創業者本田宗一郎の技術を母体にいたしまして発足いたしました会社で、近く創立二十六周年を迎えますまだ若い会社でございます。企業の規模は、最近の年間売り上げで約四千三百五十億円、そのうち二千四百億円、約六割は輸出売り上げでございます。もともと当社は二輪車メーカーとして成長してまいった会社でございますが、およそ十一年前から四輪車の生産も開始いたしました。現在売り上げに占める四輪車の比率は約四割でございます。  さて、私ども自動車を製造する立場にあるものといたしまして環境の改善、交通の安全、資源の節約等の重要性は深く認識しており、特に排出ガス制御については昭和四十一年以来その研究を精力的に推進してまいりました。特に昭和四十四年マスキー法が排出ガス規制一つの大きな目標として掲げられまして以来、その目標を目ざして私どもは具体的な研究開発に一そうの拍車をかけてまいりました。すでに御高承のことかもしれませんが、私どもはこの排出ガス対策を進めるにあたって幾つかの有害成分の防除技術を並行的に研究してまいりました。そしてそれらを総合的に評価いたしました結果、最も望ましい方法としては、やはりエンジン本体の燃焼過程を改善することによって排出ガスをもとからきれいにするという方法以外にはないという認識に立ちまして、もっぱらその実用化に研究開発の重点をしぼってまいりました。これがCVCCエンジンシステムでございます。これを小型車ホンダシビックの車体に搭載いたしまして実用上の問題点をテストし、解明してまいったものでございます。  排気対策という新しいシステム開発にあたりまして、私どもはまずそれを構成する個々の部品や材料にまだ実証されていない技術を導入しないことが第一に大切なことだと考えました。未知の分野に属し、いまだ実証されていない技術を導入しないことによって、資源問題とか副次的な公害問題とかいったような意外な災いを将来とも起こさないで済むと考えたからでございます。私ども触媒といった一般的に効果があるとされておりますシステムを採用しないでいこうときめた理由の一つでもございます。また、現在の生産ラインの大部分の設備を流用して生産し得るということも排出ガス対策を時間的により早く実施できるという観点からシステムを選択する上に重要な要素であると考えました。さらに、排出ガス処理システムそのものの永続的な信頼性耐久性を確保するためにも従来のレシプロエンジンの改造によって排気対策をとるという方針を立てました。排出特性の相反します一酸化炭素炭化水素窒素酸化物という三つ成分を同時に低く押える方法として私どもがとりましたのが、ごく薄い空気と燃料混合気を用いてゆっくり燃やしまして、そのときの希薄混合気の着火性能を確保するためにもう一つの小さい燃焼室を設けたCVCCエンジンでございます。このCVCCシステムを小型車シビックに搭載いたしました五十年規制適合車は、昨年末より生産を開始いたしまして、現在までに約一万五千台をお客さまにお渡しすることができました。そしてこの十月から対米輸出向けの生産を開始する予定でございます。私ども研究陣、技術陣は、業務の最重点を目下五十一年規制適合のための技術開発、シビック一五〇〇以外の車種の五十年規制への生産の切りかえ、いま述べました輸出車の生産準備にしぼってエネルギーを結集いたしております。  さて、今日国民的な関心事であり、かつ社会的な強い要請として呼ばれております五十一年規制の問題でございますが、当然私どもはこれに対して企業として総力をあげて最大の努力をしなければならないことは強く認識いたしております。私どもは五十一年規制対策としてはこれを五十年規制対策の延長としてとらえ、したがいまして、すでに生産ラインにのせておりますCVCCの五十年規制対策エンジンをさらに改良いたしまして、NOの排出水準の低減可能性を求めるという線に沿って努力をいたしてまいりました。現時点では実験室において五十一年規制目標値である〇・二五グラム・パー・キロメーターを満たすものが出ておりますが、残念ながら自動車の総合性能という見方からしますと不合格と判定せざるを得ない状態でございます。言いかえますと、とてもこれでは社会が求めております自動車への期待ないしは要求を満たし切れず、このまま市場に出しましても安全の面、使い勝手の面、そういったものから見てとても受け入れていただけないであろうと判断せざるを得ないのが現状でございます。  これらの実情を踏んまえまして、自動車排出ガス規制に関しての本年七月環境庁長官殿よりの御要請に対して私どもが御報告いたしましたものの内容を要約いたしますと、次のようなものでございます。すなわち、当社ではCVCCシステムをもって五十一年規制目標値実験室的には達成いたしておりますが、いまの状態では、これが多量生産され、広く社会に受け入れられ、お客さんに喜んで使っていただける自動車とは言えないと現時点判断いたしております。私ども社会的責任一つとして公害対策の重要性を十分に認識し、今後とも引き続き技術開発を積極的に進めてまいりますが、〇・二五グラム・パー・キロメートルの窒素酸化物排出水準を生産的に実現するには、さらに燃焼方式に関する新しい研究開発成果の誕生を必要といたします。このような次第でありますので、今後とも適当な間隔で聴聞会のような機会をつくり、その間の技術進歩などを把握していただき、それに基づいて規制の適切なステップアップをはかっていただくようお願い申し上げました。  また、私どもが現在生産しております小型車を中心に五十一年規制暫定値について御報告をいたしました。これは、当社ばすでに五十年規制に適合する車としてシビックCVCC一五〇〇を生産し、販売いたしておりますが、その窒素酸化物排出水準に関する性能を踏まえて、今後技術開発成果の投入、品質管理水準の向上によって車の性能を維持しながら到達し得る窒素酸化物の水準は、一五〇〇CCのシビックCVCCにおいて〇・六グラム・パー・キロメートルであるということでございます。なおこの数値〇・六グラム.パー・キロメートルは、実験のデータからして、車両重量エンジンの特性等から必ずしもすべての車に共通して適用できるものとは考えておりません。以上が私どもからの御報告の概要でございます。  その報告書でも申し上げましたが、私どもといたしましては、現時点におきましては窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートルを実現いたしますには解決すべき技術問題点を含んでおり、社会に受け入れていただける限界として一五〇〇CCクラスの自動車において現在の技術水準では生産ベース平均値として〇・六グラム・パー・キロメートル付近に厚い困難性があると判断せざるを得ません。この問題点と申しますのは、第一は運転性能の低下であり、第二は燃料消費の増大、第三はエンジン燃料供給装置の品質管理の困難さとこれを解決するための生産技術の未開発、第四は付加装置の信頼性耐久性上の不安でございます。これらのうち第三、第四にあげました品質管理及び生産技術の問題や部品信頼性耐久性の問題は、これはメーカー自身で解決しなければならない事柄でございます。もし時間がいただけるならば、何らかの技術方法を見出して、よりよい方向に近づけてまいりたいと考えております。運転性能の低下や燃料消費の増大については、その完全な解決は理論的にははなはだむずかしいものでございまして、今後いろいろの技術方策の組み合わせで改善の方向にあるはずと考えておりますが、現在の状態では未対策車との混合使用における交通難の中での安全問題あるいは交通流れの不円滑、ないしは不経済といった問題でございます。これらは将来新しい研究開発成果誕生によってある程度解消されたとしてもなお問題を残すものと予想されますが、いずれも自動車に対する個人的ないしは国家的立場での価値観の問題で、公害対策の優先性との見合いで新しい価値観が社会に生まれてくるものと考え、またそう願っております。このような価値観が社会に生まれ、かつその普及を助長するためにも、また当面の環境を改善していく道程といたしましても、現に生産し販売されております低公害車に対する積極的な誘導のための対策が講じられることを希望する次第でございます。  環境の改善、交通の安全、資源の節約の重要性は私どもも強く認識するところでございます。また、その中における私どもの責任を果たす意味からも、私どもは〇・六グラム・パー・キロメートルの壁を乗り越え、さらに〇・二五グラム・パー・キロメートルという排出基準を実現するための技術開発を積極的に推進すべく一そうの努力を重ねてまいりたいと考えております。  どうもありがとうございました。
  12. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  次に石原参考人にお願いいたします。
  13. 石原荘一

    参考人石原荘一君) 名城大学助教授石原です。学生と一緒に二サイクルエンジンを現場で回しておりますが、現場の実験者をこういうところへ呼んでいただきましてうれしく存じます。  さて、きょうはこの委員会を通じまして政府、特に環境庁にお願いしていただきたいことを申し上げたいと思います。  排ガス規制昭和四十一年から始まりまして、四十八年、五十年、五十一年と強化されてきました。しかし、五十年、特に五十一年に至りまして自動車メーカー、いまおっしゃったように一斉にできぬという結果になってきたわけです。この間約十年、環境庁国民の世論も得て排気ガス無害化をメーカーに幾度も要請してきました。しかし、それは逆に見方を変えますと、政府はメーカーにただ日本公害密度が高いのでこれをやれやれと言うのみで、一体政府はそれ以外に何をしたかということを現場の者は思っている、それをぜひ伝えていただきたいと思います。具体的に言いますと、まず現在たとえば低公害車をつくる、それも燃料をシリンダーの中から出てから燃やすようなむだ使いをしないような、何というかエンジン本来のいいスタイルで燃やすためには、シリンダーの中にNOを出さないためには空気を余分に入れましたり、あるいは一度出た排気をもう一度シリンダーの中に入れるわけです。そういたしますと、そういったものは力にならないものを入れたわけです。ですから、与えられましたシリンダーに対して力が小さくなります。しかし、現在の税金の制度は、シリンダーの大きさに対して税金がかかっております。それから車の大小分類もシリンダーの大きさに対してなされております。交通機関いろいろありますが、自動車だけがこの車は何CCかという意識が非常に強くなっております。法規でシリンダーの体積がきめられ、しかもシリンダーが力を出すものであれば、小さいシリンダーでできるだけ力を出したいのは当然です。そして そのために非常に過激な燃焼をさせてNOxを出すに至る、あるいは鉛を入れてでも力を出そうとするに至る、そういった面があるわけです。ですから、シリンダーの大きさを基準に税金をきめるような非科学的なことは一日も早くやめる、ただメーカーにつくれつくれということのみでなく、政府内でできるそういったことをすべきです。  次に、現在五十一年の議論とは少し離れますが、別に鉛を入れるか入れないかという議論があります。いま入れては故障車が出るおそれがあるとかいろいろあります。しかし、現実に鉛なしのガソリンで走れる車も走っているわけです。しかし、ガソリンスタンドに行っても無鉛ガソリンはないわけです。どうしても鉛の入ったのを入れられるわけです。だからやがては、規制する議論は一方でやってもらってけっこうですが、希望者にはすぐに無鉛ガソリンがいま入れられる体制をつくるべきだと思います。  そういったことはまだたくさんこれはありますが、時間の関係でその辺にとどめて、そういった政府内部ですぐにできる、政府内部で当然すべきことを——環境庁公害問題を一本にしぼったといっても、ただしぼったのみに私たちには見えて、そういうことが置き去りにされている。そして最大の環境庁が怠ったことは、五十一年規制に対して環境庁が最も怠ったことは、エンジンの勉強をしてこなかったということです。十年間一体エンジンの勉強をしたか。ですから、いまのようにメーカー側からできぬと言われると、それに対して何の答えもできないわけです。メーカー技術者ができなければいたし方がない、そうなる。そのときに、たとえばCVCCならCVCCで考え方はいいが、ここのところをこれだけ犠牲にして何とかならぬかとか、そういったこと、あるいはほかのエンジンでも、もって具体的に、すべてを満足するエンジンはとてもできませんので、これとこれを犠牲にしてこれを得ることはできぬかとかいうことを技術的に述べる能力がないわけです。そういったエンジンの勉強を怠ったということがあります。たとえば、勉強のしかたはたくさんあります。町の発明家で大西さんという方がいわゆる大西無公害エンジン、あるいはまた別の方が、東大の教授で熊谷という方が熊谷式の無公害エンジン、これはメーカー以外のところでできたのです。これは非常にいい参考品ですので、環境庁みずからが出向いてそれを調べ、そしてそれをもってメーカーに当たれば、おまえの言い値とこちらの言う値はこうじゃないかということが言えるわけです。そういう力なしでただメーカーの言うことのみを聞かざるを得ないだらしなさに怒りを持ちます。  さて、もういまから勉強したのではちょっとおそいと思います。そこで、事ここまできたらどう切り抜けるかということになるわけですが、これは各メーカーに、まずたとえば燃費をどれだけ犠牲にしたらガスはどれだけきれいになるか、あるいは自動車製作費をどれだけ高くすればどこまでいくかと、いままでおやりになった数は非常に何千種類もおやりになったようにいまも説明されたわけです、それを全部さらけ出していただいて、そして環境庁のもとでその一覧表を、各メーカー突き合わせた日本じゅうの研究成果の一覧表をつくって、そしてこれを得るためには燃料不経済ここまでがまんしなきゃならない、あるいはこれを得るためには多少町の空気がサーマルリアクターであったまるかもしれないなんという計算をして、そしてどこで線を引くかということをきめなきゃいけないと思います。実験者として自分がエンジンを回して感じますことは、やはり五十一年規制をそのまま実行しましたら——これは五十一年というのは五十年も含むわけですが、それをそのまま実行いたしましたら、相当燃料経済の悪化、燃料をたくさん使わざるを得ない。自動車製作代が高くなる。それからほかにまだ私たちがはっきり言い切れないが、推測としては二次公害が起きる可能性もあるわけです。ですから、何が何でもやれというんじゃなくて、何を得るかという哲学を持たずしてきてしまった以上は、その一覧表をつくって、それに基づいてどこで線を引くかをきめるべきです。そして国民も、そういうどこで線を引いたかということを国民の目の前で引かれたならば、それを見て納得して、これ以上をメーカーに言うことはできないから、それで至らないところは自動車を使うことを慎もうと、そういうふうにいかなきゃいけないと思います。  最後に、理由をいろいろ述べる時間がありませんので、結論だけ二、三、別の考えを申し上げますが、きょうは四人の方が四サイクルエンジンメーカーです。で、私は二サイクルの実験者ですので、少しその立場から考えを言いますと、二サイクルのほうは五十年、五十一年規制、貨物の軽のほうはそのままいって燃料損とか、そういう何というか、燃料あるいは自動車製作費がべらぼうに高くなることなくして乗り越えるだろう。これは大西エンジンもその辺はマスターしている、あるいはほかの二サイクルメーカーもマスターされているんじゃないかと思います。しかし乗用車のほうは確かにむずかしいだろうと思います。確かにむずかしいだろうと思うというのは、われわれが実験していろいろくふうしている値はとてもそこに追いつかない、常識的に追いつかないということです。ただ、ここで言えることは、排気ガスの浄化装置をどれだけでも惜しみなく使えば、これは五十一年規制であろうと、それよりむずかしい規制であろうと、すぐいくわけです。しかし、それをどこでやるか、われわれ実験者の常識から見たら、五十一年規制の二サイクルの乗用車のほうはちょっとむずかしいなと思う。むずかしいなと思うことは、非常に犠牲が大きくなって、たとえばガソリン、こういう貴重なものをそのためにむだ使いしなきゃならぬなと思うわけです。それは二サイクルの立場から、ちょっと二サイクル屋さんの発言がなかったのでつけ加えさしてもらいます。  もう一つ、五十一年規制を完全に実施いたしましても、私は町の空気はきれいにならないだろうと思います。それから、それをさらにきびしい規制が実施されても同様に思います。これの理由を述べる時間がないので残念ですが、そういったことを考えております。  ですから、一日も早く町の空気をきれいにするためには自動車使用制限、これの検討を始めていただきたい。幾ら排気ガスをきれいにしても、たとえば日本公害密度八倍、だからきれいにせいと言ったって、この八倍をせめて二倍ぐらいにしなきゃきれいになるはずはないわけです。技術的な理由はもっと述べたいんですが、それぐらい、結論だけですが、自動車使用制限、これを早急に進めていただきたい、そのように思います。
  14. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  次に古浜参考人にお願いいたします。
  15. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) 武蔵工業大学の古浜でございます。私は約三十年間四サイクル・ガソリンエンジン、ツーサイクル・ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン研究をやってまいりました。最近ではロータリーエンジン研究も十数年間やっております。また約五年前から水素エンジン研究もやっております。皆さん自己紹介されましたので、私もさしていただきます。  さて、そういう私のいままでの研究歴から今回の五十一年度規制に対するサマライズをさしていただきたい、こう思います。この規則ができましたのはアメリカに出発いたしますので、やはりアメリカの現状をまず振り返らなければならないと思います。アメリカにおきましては、七五年規制値合格の研究開発というものは、皆さん御承知のように、非常に強力になされたわけでございまして、その成果は膨大な学術論文として私どもの目の前に積み重ねられているわけです。しかしながら、そういう研究をなされましたけれども米国の環境保護庁のEPAの考えでは、いままでのエンジン改良だけでは七六年度規制というものは無理であるというような観点に立ちまして、いわゆるアドバンストエンジン、新型エンジン開発に乗り出したわけでございます。新型エンジンと申しますのは蒸気エンジン、ガスタービン、ハイブリッドというようなものを当初主力にいたしました。その後ディーゼル乗用車であるとか、ロータリーエンジンであるとか、燃料電池であるとか、水素エンジンであるとか、そういうものも加えられまして膨大な国費が投入されたわけでございまして、現在もそれは続いております。  この初めの計画を読んでみますと、一九七三年、七四年には多数の実験車がアメリカの都市を走行していなければいけないわけであります。その結果に基づいていまごろは生産計画がなされているはずであったわけです。しかしながら、このようなEPAの必死の努力にもかかわらず、新エンジンは現在のところ一九八〇年以降でないと見込みがないというような結論になったそうでございます。そういう非常にむずかしいということがわかったと同時に、御承知のように石油危機というものが突然深刻になりましたので、これら両方から七〇年度規制というものが大幅にゆるめられたということだと思います。そのことは私の資料に書いてございますけれども、こまかいことは皆さん御承知でございますので、このようなアメリカ政府の態度で私どもがやはり勉強、参考にしなければいけないのは、石原先生もいまおっしゃいましたように、政府みずからが非常に熱心に取り組んだということだと思います。要するに低公害車達成を法規制で督励するということは非常に限界があると思いますね。ですから政府みずからがそういうむずかしい問題に取り組んでやってみて、ほんとうの問題点というものを正確に把握したということはたいへん貴重なもんだと思います。  いままで申し上げましたのはイントロダクションでございますけれども、それでは排出ガスに関するいわゆる基礎研究はどのように進んでいるかということを私の知っている範囲で申し上げますと、排気ガス対策の科学技術の特徴は、要するにいままでの私どもエンジンあるいは自動車技術屋さんだけではとても対応できない非常に範囲が広い分野にわたっております。たとえば、化学であるとか、反応であるとか、材料、電子制御、医学とか、非常に広い範囲の分野の専門家のお知恵をかりなければいけないわけでございます。最近約十年間アメリカにおきましては、宇宙工学研究者を含めまして自動車エンジンの中の排出ガスの問題の究明に取り組んできまして、エンジンの中で空気とガソリンがまざって燃焼いたしましてそれによって発生するガスの成分というものは、非常にこまかいことは別といたしまして、大綱はほとんど解明されました。特に現在問題になっております窒素酸化物につきましては、これは非常に独特の燃焼過程をしているわけでございまして、学術的に難問といわれておりましたけれども、最近はかなり明確にされました。したがいまして排出ガス低減方策はどのような手段が有効であって、またどのような手段はだめであるとか、あるいはどういう副作用が起こるであろうかということはもう専門家の間ではかなりはっきりしたことでございまして、その点、そういう観点からいろいろの判断がかなり的確にできるわけでございます。が、そういうことがだんだんわかるに従って、これは容易でないことである、その対策がなかなか容易でないということも同時にわかっているわけでございます。  現在の低減対策の基礎的なことはどうかと申しますと、いま申し上げましたような発生のメカニズムがはっきりいたしまして、それによってまあだれでもが考えられる方策が幾つもあります。で、そうしただれもが考えられるような方策は、ほとんど現在開発に供せられていると思います。しかし、従来考えられなかったような新しい方策というものはなかなか出てこない。たとえば排気循環装置といいまして、先ほどからお話がありますEGR法は一つの新しい方法だと思いますけれども、また複合触媒法も新しい方法だと思いますけれども、要するに、そういうものがちゃんと完成したものはまだでき上っていないということでございます。要するに、いままである技術を組み合わすことはもう全部やってみたけれども、それだけではだめなんであって、それに加えられるべき新しい技術といいましょうか、科学といいましょうか、そういうメソードをいま求められている時代だと、こう思います。  で、現在、いま申しましたのは世界を見通してということでございますけれども日本の場合には何か非常に独特な方法で、日本メーカーさんなりあるいは町の発明家がやっているように思われますけれども、これはやはり基本的に見ますと、組み合わせの技術にすぎないわけであります。まあ日本人は非常に器用ですから、そういう組み合わせによって一番いい値を人よりも早くぱっと見つけまして、世界的に話題になったものも二、三ありますけれども、しかし、現在行なわれているものの組み合わせだけでは五十一年値をミートすることはその延長上に私はないと思います。でありますから、まあ世界の現在のこの排気対策に対する動向は、古い方式の組み合わせということはもうすでにやり尽くしておりまして、やはりその基礎対策の新しいものを探求していくというところに私はきているように思います。で、そういう新しい探索をあらゆる方面から、必ずしも機械とか自動車とかでなしに、ほかの分野からもどんどん出てきて、そういうものができれば必ず成功するのではないか。まあしかし、それはここ一、二年とか二、三年にそういうものが全部実用化されるということは少し無理じゃないか、こう思います。  それではもう少し具体的なお話をさせていただきますと、まあいままでメーカーさんのほうから話がございましたので、できるだけ簡単に申し上げますけれども、この窒素酸化物とそれから一酸化炭素炭化水素——ハイドロカーボン、この三つを同時に取ってしまうということは、これはもうできないということはもうだれでもわかっていることです。これはする方法は、先ほど石原さんもあるいはありましたけれども、なくはありませんけれども、非常に馬力が下がるとか運転ができないとかいうことになるわけであります。でありますから、その三成分を五十一年度までにできなければどういうふうにするかということは、いまから申し上げるようなことで考えられると思います。  それはまず基本方針としましては、一酸化炭素とハイドロカーボンをまずあとで再処理してやる。その中には触媒とかサーマルリアクターがあるわけであります。で、窒素酸化物のほうはあとで処理が非常にやりにくいのでシリンダーの中でやってある。で、シリンダーの中でやる場合に燃料を非常に濃くして——先ほどのリッチミックスチャーでありますけれども、濃くしてやる方法と薄くしてやる方法があります。その中間の一番エンジンに都合がいいところはうんと窒素酸化物が多いわけですから、濃くしてやるということはたいへんガソリンがむだになるわけです。燃料がうんと必要になってくるわけです。で、薄いほうはそういう欠点は少ないのですけれども、馬力が下がったり運転が非常に不安定になります。まあ昔はそこでは運転できないものといわれていたわけですね。それがだんだん薄いほうに移ってきておりますけれども、そういうことなんであります。  したがって、現在行なわれております方法をここでもう一回まとめてみますと、酸化触媒法というものがございます。これは触媒によって一酸化炭素とハイドロカーボンを排除する、取ってしまう方法でありますけれども、もしも五十年規制の、たとえば一・二グラムというNOxが許されるのであればこの方法が一番いいと思いますね。なぜかといいますと、燃料の消費量も少ないし性能も犠牲になりませんので、この方法がいいと思います。ですけれども、NOxを〇・二五グラムまで下げるといたしますと、点火をおくらす方法であるとか、EGR、そういう付属的な方法を非常に大幅に取り入れなければだめだと思います。そうしますと、それらを取り入れることによってエンジンの性能なり燃料消費量なりいろいろな点が非常に劣化してくる、こういうふうに思われます。  その次がけさの新聞にも出ておりましたような還元触媒併用でございます。酸化触媒では窒素酸化物は取れませんので、窒素酸化物触媒で取ろうと、こういうやり方でございます。これが複合触媒といわれている、デューアルベッド法といわれているものでございますけれども、これに関しましては、実は私が存じ上げている範囲でありますと、かつてアメリカのモービルが中心になりまして世界的ないわゆる国際協力の研究委員会研究プロジェクトができておりました。これは日本の相当のメーカーも参加されておりますけれども、それが昨年か一昨年解散になりましたけれども、そのときにこのデューアルベッド方式は非常に研究されたようです。そのことを私どもが学会で、シンポジュームでお聞きしたときには、まあせいぜい二、三千キロしかもたないとか、アンモニアの発生によって効率がうんと落ちるというようなことをお聞きしたわけです。ところが、先日、この六月と思いますけれども、アメリカのEPAの役人が参りまして、そのときも、私ども自動車技術会でその方をお招きしていろいろ話を聞いたわけですけれども、デケーニーという方ですけれども、その方のお話でありますと、将来このデューアルベッド方式がかなり有望であるというようなお話がございました。かなり有望であるということは、デケーニー氏はアメリカの七六年度完全実施は一九九〇年ぐらいだろうと、こういうかなりのんびりした見通しでございまして、ですから有望であるということは来年いいとか再来年いいとかというよりも、もうちょっと先の見通しで有望であるということをおっしゃったように思います。まあその方法は、先ほども話がありましたように、精密に空気とガソリンを調合しなければいけません。非常に調合の範囲が精密でなければいけませんので、これは現在の気化器では非常に無理じゃないかと、それに対応するものとして新しい分野の研究が非常に現在盛んにされているわけでございます。  それからサーマルリアクター方式というものが御承知のようにあります。これは排気温度が非常に高いロータリーエンジンを濃い混合気で運転する際に非常に都合がいいやり方でございます。しかし、濃い混合気で運転するということは、先ほども申し上げましたように、燃料がそれだけむだになるわけでありますから、NOxを下げれば下げるほど燃料をたくさん食うと、こういうことになるわけでありますから、したがって、石原先生もおっしゃったように、ある限界があるわけです。それをどこでとるかということはやはり日本のエネルギー対策とか、そういうものとにらみ合わせてきめなければならないんじゃないかと思います。いままでの自動車の二倍も三倍も燃料食っていいかどうかというようなことはまあ常識的に考えてとても無理じゃないかと、こう思うわけです。  さらに、二サイクルのアフターバーナーというものが世の中でいままでいろいろいわれておりました。二サイクルエンジンの場合には、ちょうど四サイクルエンソンのNOx——窒素酸化物が非常にむずかしいと同じようなむずかしさでハイドロカーボンがあるわけでありまして、ですから、窒素酸化物のほうはもう問題ないんで、ハイドロカーボンをとういうふうにして——これは部屋の中で処理することはできません。とても現在の二サイクルの燃焼方式から見まして、それは何エンジンができてもそういうことはできないと思います。先ほど大西エンジンでできるようなお話もありましたけれども、私はできないと思います。が、あとでいろいろ対策をする方法は、現在いろいろ各メーカーから、アメリカのSAEの論文にも、日本メーカーの論文にもたくさん出ておりますが、たくさんありますけれども、まだ実用には至っていないと、こういうことが現状ではないかと思います。  それからさらに層状給気法というものがあるわけでございます。これは濃いほうでなくて薄いほうで完全に燃焼して、完全燃焼といいますか、普通は薄いほうでありますと、エンジンの運転ができないわけですけれども、それを安定して運転できる方法ということで、これはアメリカでは約三十年前にテキサコ石油会社が手をつけまして、現在まで努力をしているわけでありますが、アメリカの場合は実用化がまだされておりませんけれども、その層状給気法と、あと処理といいますか、サーマルリアクター的な効果を併用したものがCVCCだと私は思います。で、この場合も、ですから〇・二五グラムをミートするためには、非常に馬力が減少したりあるいは運転の安定化というものが非常にむずかしくなるんじゃないかと、こういうふうに思います。  で、もしも、このような、いま申し上げましたような幾つかの方法は、〇・二五グラムの五十一年の規制を普通の常識的にミートすることは無理だと思いますけれども、それでもどうしてもやらなければいけないという社会的なニーズがもしあったといたしますとどういう問題点が発生するかといいますと、いままでお話ししたとおりでございまして、ガソリン消費量が非常に大きくなる、したがってエネルギー対策に逆行するであろう、それから馬力が下がる、加速性が落ちる、そのために運転も非常にむずかしくなり危険も伴うであろう、あるいは再燃焼のためにエンジンの下のほうでいままでにはなかったような高い温度のガスが燃えているわけでありますから、そのために火災が起こるとか故障が起こるというような心配もあるようです。それから触媒のために白金を使っております、サーマルリアクターなどでは非常に高級な金属を使っております。まあ、そういうことから、資源の問題とかコストの問題も起こってくるでしょうし、それから非常に複雑な制御装置をたくさん使わなければなりませんので、そのための信頼性なり耐久性なりコストの問題も起こると思います。  以上申し上げましたようなことをもう一回まとめさしていただきますと、結論といたしましては、ですから、五十一年規制をそのまますぐやるということはとても無理であろう、これは世界の技術水準から見まして現状ではとても無理だと、こう思います。しかし、それでも絶対にやらなければいけないということになれば、先ほど申し上げましたような燃費、馬力、いろいろなものの犠牲を覚悟しなければいけません。極端なことを申しますと、私どもが現在やっておるような水素エンジンであるとか電気自動車であるとか、そういうものでもできるわけであります。ただ、それをだれも見向きもしないということは、いま申し上げましたような経済性とか、そういうものに不合格だからもう少し先の話だと、こういうふうに思います。したがいまして、まあ、ことわざに急がば回れということがございますけれども、現在各社で強行しておられるような、目先のいわば組み合わせ技術だと私思いますけれども、そういう組み合わせ技術を推し進めるよりも、やはり基礎研究あるいは新しい着想、そういうものを育てて、ほんとうの無公害エンジンあるいは無公害自動車というものを完成するようにみんなが力を結集したほうがかえって早道じゃないかと思います。  でありますから、今後の研究に対する私の提言をさしていただきますと、日本人独特の組み合わせ技術ですね、たいへん器用でよく組み合わせてうまいものをつくるという技術を持っておりますけれども、しかし、これをこのままいきますと、おそらく世界の技術水準に取り残されるのじゃないかと、こう思います。組み合わせ技術そのものでもいいわけですけれども、その組み合わせ技術になる基礎研究とか、あるいは先ほど申し上げましたような新しい分野の開拓的な研究を思い切って進めるべきだと、こう思います。その推進力は——日本にはそういう推進力になるものは何にもないわけでございますけれども、これはメーカーと大学がやるとかいろいろな案がありますけれども、やはり私ども大学人といたしましては、国の強力な援助でそういう基礎研究が大学なり研究所なりそういう中立のところで強力に行なわれる——先ほど石原先生かおっしゃったように、それによって国も現在の問題点を的確につかむこともできるし、あるいはそういう新しい技術の進展にも寄与することができるわけでございます。で、従来私ども学会でいろいろ活動します際にたいへん困りましたのは、メーカーさんが非常に秘密主義ですね。で、いろいろ聞いてみますと、どこでもみんな同じことをやっておられる。そういう秘密主義とか、または抜けがけ的に発表される、そういう目的で、私ども専門家の間では何もおっしゃらないのだけれども、新聞記者であるとかあるいは外国へ行ってはいろいろこういうふうにいいこういうふうにいいということを発表される。私どもが聞きましても、いまはまだ発表の段階ではない、いま発表の段階ではないというようなことで、たいへん私どもの学会とか専門家の集まってるグループでは、自分たちの研究で協力したいのだけれどもできにくいというようなことが現状でございます。そういうものはやはりお互いに改めていただきたいと、こう思います。  非常に広い分野の、先ほど申し上げましたように、応用の技術でございますので、もしも新しい発見ができますとかなり短い時間に達成するかもしれませんし、そうでなくて相当難産をしまして期間を要するかもしれません。先ほど申し上げましたように、デケーニー氏は約十五年ぐらいかかるのじゃないかと、こういうことを申しておりましたけれども、私もやはり五年から十年はかかるのじゃないか、みんなが一生懸命やれば、時間をかければ必ず達成できるのじゃないかと、こういうように思っております。  以上でございます。
  16. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  次に上田参考人にお願いいたします。
  17. 上田涼一

    参考人上田涼一君) 東京公害局長上田涼一でございます。本日、参議院の本委員会で発言の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。  私からは、自動車排出ガス昭和五十一年度規制の問題が東京都の公害防衛計画にどう影響するかという点につきまして御説明申し上げます。  まず、都内の大気汚染状況について申し上げますと、まあ亜硫酸ガスのように都独自のよりきびしい規制と事業所の協力によりましてかなり改善されつつあるものもございますが、反面、窒素酸化物などは四十年代に入って急速に汚染が進行したまま見るべき好転がなく、大きな問題となっているものがございます。窒素酸化物は、炭化水素とともに光化学スモッグを発生せしめ、人体に急性の被害を与えるばかりでなく、それ自体としても人間の健康に慢性的な影響を及ぼすきわめて有害な物質でございます。しかも亜硫酸ガスとの共存による複合作用があることはこれまた御承知のとおりでございます。このような窒素酸化物につきましては、国におきまして昨年の五月、環境基準が定められたわけでございます。二酸化窒素について一日平均〇・〇二PPM以下というものでございます。東京のような過密地域ではこれを昭和五十五年度までに達成するという国の方針でございます。  この二酸化窒素の汚染の現状を見ますと、お手元資料の一ページの表にございますとおりたいへん悪い状態でございまして、環境基準に適合する日数が年間の五%しかない場所もかなり見受けられ、まあ山間部に近い青梅でも一年のうち三分の一は環境基準を越えている状況でございます。光化学スモッグにつきましても、お手元資料の二ページにございますとおり、毎年夏になりますと注意報が何回も発令されまして、被害の届け出が続発している実情であります。特にことしの五月には〇・三PPMという警報基準を突破したこともございました。そのため、少年少女がプールでの水泳や屋外運動を一番やりたい春から秋にかけての天気のよい日にかえってそれができない、こういう状態になっておりまして、小、中、高等学校における体育にも大きな支障を来たしていることは御承知のとおりでございます。以上のとおり、窒素酸化物及びこれから生ずる光化学スモッグによる大気汚染はきわめて深刻な状況にございまして、都民の生命と健康は重大な脅威にさらされております。  そこで、この窒素酸化物がどこからどのくらい出てくるかということが問題となるわけでございますが、東京都では昭和四十七年度に大気汚染物質排出係数算出調査という調査をいたしました。これは第一には、工場やビルなどの煙突の煙を分析したりあるいは自動車の走行テストをするなどの実地調査に基づきまして、原燃料の単位当たり及び単位走行距離当たりで各種の汚染物質がどのくらい出ているかといういわゆる排出係数を施設別にまた車種別に求めたわけでございます。それから次に、これと各施設別の原燃料消費量車種別の走行距離から東京都内の各発生源別の総排出量を算出したものでございます。その結果のうち、窒素酸化物の分をお手元資料の二ページにあげてございます。ごらんのとおり、窒素酸化物は年間九万六千トンが大気中に放出され、そのうち六八%が自動車から排出されることが明らかになっております。したがいまして、東京都におきましては窒素酸化物による大気汚染の元凶は自動車であり、先ほど申し上げた環境基準の達成いかんは、自動車排出ガス対策が適切に行なわれるかどうかにかかっております。  これら大気汚染をはじめ各種公害の防止につきまして、東京都では昭和四十六年に都民を公害から防衛する計画を策定いたしまして、以来毎年所要の改定を加えてまいりました。本年四月にはこの計画の一九七四年版を発表いたしております。この公害防衛計画では、まず汚染の現状と発生源の実態を分析いたしました。次に、計画の目標といたしまして環境の目標値達成期限を定め、これに到達すべき施策とその効果を示すという構成になっております。そこで、この計画で設定いたしました窒素酸化物にかかる目標について御説明をいたします。お手元資料の三ページにございますように、目標は二段階ございまして、最終目標昭和五十五年度までに一日平均〇・〇二PPM以下という環境基準値を達成しようというものでございまして、これは国の方針と同一でございます。それに至るまでの中間目標といたしまして、昭和五十二年度までに環境基準に適合する日数を年間八〇%確保しようということにいたしております。この一日平均で示されました目標値を年間平均値に換算いたしまして、それと現状の汚染濃度との比率から許容排出量を算出いたしております。目標値の環境基準を維持するためには、この許容排出量の範囲内に都内の窒素酸化物排出量を押えなければならないわけでございます。したがいまして、昭和五十二年度には五五%、昭和五十五年度には八二%という非常に大幅な率で総排出量を削減しなければならないことになります。  都民を公害から防衛する計画では、この総排出量削減のための施策を掲げ、また、それによる削減効果を計量化して示しております。これを表にまとめましたのがお手元資料の四ページにございます。この表は中間目標でございます昭和五十二年度と最終目標でございます五十五年度に分けましてそれぞれ計算をいたしてございます。まず現状がそのまま続くという前提で将来の総排出量を推計いたしますと、昭和五十二年度には十二万四千トン、五十五年度には十四万二千トンの窒素酸化物が都内で大気中に放出されることになり、固定発生源と移動発生源の割合はほぼ三対七になっております。  次に施策とその効果をあげてございますが、固定発生源につきましては、昭和五十二年度までにまず発電用並びに工場やビルの大型、中型ボイラーの排出量を二分の一ないし三分の一にするという規制を実施いたします。昭和五十五年度までには小型ボイラーも規制対象に加え、さらに大工場には脱硝装置を設置させまして排出量を十分の一にし、ボイラー以外の炉につきましても規制を行なうことにしております。ここでは目標主導的な観点からあらかじめ規制値とそれから実施年度を示すことによりまして、規制対象となる工場やビルの側の対応策をいまから講ずることができるようにいたしております。これら固定発生源対策による削減効果はお手元の表にございますとおり昭和五十二年度で一万一千トン、五十五年度で二万四千トンになると見込んでおります。移動発生源、すなわち自動車でございますが、これは四十八年度規制がすでに実施され、五十年度規制も実施が決定されておりますので、それらによる削減効果と、さらに問題の五十一年度規制につきましても都としてはあくまでも予定どおり実施されるものとして、それによる削減効果を見込んでおります。いずれも車種別に車両台数の伸び、また新車交代率による車齢構成の変化などを推定いたしまして、これに排出係数の変化を見込んで算出したものでございます。それらの自動車排出ガス規制により削減が見込まれます二酸化窒素の量は昭和五十二年度で五万六千トン、うち五十一年度規制で一万八千トン、また昭和五十五年度で八万六千トン、そのうち五十一年度規制で三万六千トンと相なるわけでございます。以上のように固定発生源、それから移動発生源、それぞれの対策による削減量の合計を現状のまま推移した場合の総排出量から差し引きました残りがこの表にございますとおり昭和五十二年度で五万七千トン、五十五年度で三万二千トンとなるわけでございます。しかし、先ほど申し上げました目標達成のための許容排出量以下にするためには以上の措置でもまだ不足がございまして、昭和五十二年度で一千トン、五十五年度で七千トンをさらに削減しなくてはならないのでございます。これが表の一番下の欄に掲げました「交通量削減等によりさらに削減すべき量」でございます。  要約して申し上げますと、固定発生源については思い切った規制を加え、自動車排出ガスにつきましても昭和五十一年度規制を完全に実施いたしましても、なおかつ総排出量を減らさなければ環境基準の達成という目標には至らないということでございます。そのためには、交通量の削減等の施策に待つしかないわけでございますが、かりにこの削減不足分を交通量削減だけで減らすといたしましても、たおかつ総排出量を減らさなければ環境して五十一年の状態に押え、五十五年度には三三%減らして昭和四十七年の交通量まで戻さなければならないというきびしい見通しでございます。このように都民が安心して暮らすことのできる環境を確保する、それも六年先のことでございますが、そのためには自動車排出ガス昭和五十一年度規制を当初の方針どおり実施することが何としてでも必要でございまして、それでもまだ交通量削減についてかなり思い切った施策が行なわれなければならないということでございます。不幸にしまして、かりに五十一年度規制が緩和ないし延期されるといたしますと、その分だけ削減量が減るわけでございます。この場合、五十五年度までに環境基準を達成するという目標を動かさないためには、削減量の減った分だけさらに交通量の大幅な規制その他何らかの抜本的な施策を行なわなくてはならなくなるわけでございます。換言いたしますれば、五十一年度規制が実施されない限り、昭和五十五年度時点でかりに固定発生源からの排出量をゼロにいたしましても環境基準にはとうてい到達することはできないわけでございます。また、これを交通量削減対策だけでカバーするとすれば、事実上はとても実現不可能な数字となりまして、東京都の都市機能を麻痺させることになるであろうと考えております。  私ども東京都政におきましては、都民の生命と健康を守ることを最重点といたしております。この点は国におかれましても全く同様であろうと存じます。したがいまして、環境基準達成という最低限の目標を放棄するわけにはまいらないと考えるわけでございます。そのためには、ただいまも申し上げましたように、昭和五十一年度規制の完全実施が大前提でございまして、もしそれができないのであれば、それにかわるどのような施策で総排出量の削減をはかられるのか、国におきまして具体的な方途をお示し願いたいと存じております。  自動車公害対策につきましては資料の五ページにもあげておりますが、駐車規制の強化、スクールゾーンなどの乗り入れ禁止地域の拡大、公共輸送機関確保のためのバスレーンの設置、あるいは車両制限令による通行規制など、現行法制の中ででき得る限りの努力は積み重ねております。しかし、対象が何ぶんにも移動する自動車でございますので、地方自治体としての努力にもきびしい限界がございます。したがいまして、基本的には国において自動車公害をなくすための総合的な施策を強力に推進されるとともに、地方自治体における有効な施策が担保されますよう、その権限の強化について真剣な御検討をぜひお願いしたいのであります。  以上で東京都としての発言を終わります。
  18. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  最後に中川参考人にお願いをいたします。
  19. 中川和雄

    参考人中川和雄君) 大阪府の生活環境部長をいたしております中川でございます。本日は私ども意見を御聴取いただく機会を与えていただきましたことを心からお礼を申し上げます。意見を申し述べるにあたりまして、まず順序といたしまして、大阪府におきます大気汚染がどのような状況になっておりますか、特に自動車排出ガスによります汚染の現状を御説明を申し上げまして、次いで、ただいま概要をお配りいたしておりますが、大阪府が策定いたしました大阪府環境管理計画というのがございますが、これはおおむね国の環境基準の達成目標とすることを骨子といたしたものでございます。その目標達成するにあたりまして、自動車排出ガス対策をいかに推進すべきであるかということで述べさせていただきたいと存じます。  大阪府におきます大気汚染の現況についてでございますが、本府におきましては、大気汚染物質のうち硫黄酸化物につきましては従来から新ブルースカイ計画、大気清浄化計画などによる対策を強力に推進してまいりました結果、大幅な改善を見ておりまして、冬季におきますスモッグの発生は昭和四十八年一月以降解消をされておるわけでございます。その反面、夏季におきまして光化学スモッグが多発化いたしておりまして、被害の訴えが増加しております。また、その発生原因とされております窒素酸化物測定結果が高濃度を示していることから、窒素酸化物対策大気汚染対策の柱になってきたということが言えると思います。中でも、最近のモータリゼーションの進展に伴います自動車排出ガスの防止対策推進が緊急の課題となっておるわけでございます。  お手元に「自動車排出ガス防止対策資料」というのをお届けいたしておりますが、これの二ページをごらんをいただきたいと思います。二ページの表の一の一というのがございますが、ここに記載しておりますとおり、昭和四十九年四月末日におきます大阪府におきます自動車保有台数は百七十五万七千台でございます。特に過去五、六年間は年間十五万台程度の増加を示しておるわけでございます。三ぺ−ジの表の一の二にグラフがございます。十年前と比較してみますと、四ページの一の三の表にございますように自動車の保有台数は十年前の昭和三十八年当時の五十二万四千台から約三・三倍の伸びを示しております。この間の大阪府の人口の伸びは一・三倍でございます。また道路延長の伸びは一・二倍でございまして、これに比較いたしますと、自動車の保有台数の伸びは驚異的なものがあると言えると思います。  次に、大阪府におきます排出ガス汚染の現状でございますが、六ページの一の五に記載をしておりますとおりでございます。まず一酸化炭素につきましては、自動車排出ガス測定局二十五カ所、一般環境測定五カ所の合計三十カ所で測定を実施いたしましたが、自動車排出ガス測定局におきます測定値の年度平均値は五・一PPMないし六・二PPMでございまして、六カ所で環境基準をオーバーをいたしております。特に大阪市中心部の心斉橋付近では環境基準の日平均一〇PPM以下の条件を七・四%もこえておりまして、一時間の最高値は三三PPMと府下で最も高い値を示しております。次に一酸化窒素でございますが、窒素酸化物自動車排出ガス測定局十六カ所、一般環境測定局二十一カ所の合計三十七カ所で測定を実施いたしております。一酸化窒素は一般環境測定局の測定値の年度平均値が〇・〇〇六PPMないし〇・〇四九PPMであるのに対しまして、自動車排出ガス測定局は〇・〇三二PPMないし〇・一八六PPMと高濃度を示しているわけでございます。次に二酸化窒素について見ますと、一般環境測定局の測定値が年度平均値で〇・〇二三PPMないし〇・〇五二PPMでございますが、自動車排出ガス測定局は、〇・〇二七PPMないし〇・〇七〇PPMでございまして、大阪市から北東にございます国道一号線沿いの淀川工業高校では年度平均値〇・〇七〇PPMで最も高い値を示しております。二酸化窒素にかかります環境基準と対比してみますと、自動車排出ガス測定局のみならず一般環境測定局もすべてが環境基準を越えているわけでございます。特に国道一号線沿いの淀川工業高校では環境基準の約八倍の汚染を示しているわけでございます。次にオキシダントでございますが、府下四十四カ所において測定いたしましたが、測定値の年度平均値は〇・〇二五PPMないし〇・〇四六PPMでございまして、一時間値が環境基準の〇・〇六PPMをこえました時間数の割合は四・四%ないし一八・六%でございまして、これまた全測定局で環境基準を越えているわけでございますが、特に大阪市の中心部にございます淀屋橋の測定局では千五百四十五時間という時間をオーバーをいたしております。申し上げるまでもないと思いますが、光化学スモッグが多発をいたしますのは夏季でございます。夏季の三カ月、昼間八時間ということで考えますと、七百時間をオーバーしておれば三カ月間毎日光化学スモッグが出ている、オキシダントが間接的にオーバーしているということになるわけでございます。  また先ほども触れましたように、昭和四十八年度におきます光化学スモッグの発令は六ページの表の一の六に記載してございますように、予報が四十八回、注意報が二十六回、さらに大阪府下では初めて警報が一回発令をされているわけでございます。光化学スモッグの被害の訴え数は三千百二十二人でございまして、発令回数、被害の訴えとも昭和四十七年度を上回っているわけでございます。このような汚染がどのような形で進行しているかということを申し上げますと、都市部におきます自動車と工場の地上汚染の割合について申し上げますと、環境管理計画策定時の汚染解析の結果自動車排出ガスによります環境汚染に及ぼす影響が工場に比べまして非常に大きいことが判明したわけでございます。  九ページないし一〇ページの表をごらんいただきたいと思います。その右から二つ目の欄に「移動発生源による濃度」というものの横にカッコ書きで自動車の汚染の寄与率というものが示されております。その表にございます八地点中六地点で五〇%以上の汚染寄与率を持ちまして、特に各地域内の最高濃度出現地点では工場に比べまして四倍以上になっておるわけでございまして、特に大阪市地点では約八七%までが自動車による影響でございます。  このようなことから、大阪府におきましては府民の健康を守るための目標を定めまして、汚染物質別の環境容量を骨子といたしました大阪府環境管理計画を策定いたしておりますが、これは先ほど東京都からも御説明がございましたが、環境基準を達成維持するために許されます汚染物質の排出量はどのくらいであるかというのを推計したものでございます。大阪府環境管理計画の大気汚染物質にかかります目標値と削減率につきましては一四ページの表をごらんをいただきたいと思います。窒素酸化物の場合、工場につきましては、昭和四十五年度の排出量が十一万九千二百六十トン、約十二万トンでございます。これを昭和五十六年度には三万二千三百九十トンと約七三%削減をする必要がございます。自動車につきましては、昭和四十五年度の排出量三万一千八百トンを、昭和五十六年度には三千五百トン以下に約九〇%削減をする必要がございます。特に自動車交通が集中をいたしております大阪市地域につきましては約九四%削減をする必要があるとされておるわけでございます。  このような観点に立ちまして、自動車排出ガス対策の一そうの推進大阪府にとりまして緊急の課題となっておるわけでございまして、本日問題にされております昭和五十一年度規制大阪府環境管理計画の関係について申し上げますと、一九ページの表をごらんをいただきたいと思います。特に、この下欄の表をごらんをいただきたいと思いますが、窒素酸化物につきましては、自動車の伸びを考慮いたしまして、五十一年度規制が実施されますと、約三〇%、二八・二%というものの削減が五十一年度規制では期待をされるわけでございます。しかし、これだけでは、自動車の伸びを考慮いたしますと、排出量が五十六年度には二万三千トンということにまた上がってまいります。さらに、軽油を燃料といたします自動車につきましても同様の規制を実施いたしますと、約八二%の削減が見込まれます。規制後の排出量は五十六年度で五千九百トンということに見込まれるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、環境基準を達成維持するために自動車に与えられます排出許容量は三千五百トン以下でなければならないわけでございます。したがいまして、なお自動車の全体交通量の削減が必要と考えております。現在のところ有効な全体交通量の削減方策が確立されておりません上に、代替交通機関の整備等も期間を要しますので、発生源対策としての五十一年度規制の完全実施が、まず第一段階対策として必要欠くべからざるものであるというように私どもは考えております。したがって、これが予定どおり実施されますことを強く要望する次第でございます。と同時に、軽油を燃料といたします自動車に対しましても、同様の規制措置を講じられますとともに、全体交通量を削減するための有効な具体策を早急に樹立されますようあわせて要望をさしていただく次第でございます。  本府といたしましては、環境管理計画に定めます削減目標達成いたしますために、工場、発電所等の固定発生源もさることながら、自動車排出ガス対策を今後とも最重点として推進してまいる所存でございます。当面、本府といたしまして可能なものといたしましては、低公害自動車の導入及び普及促進、自動車排出ガスの街頭におきます検査、排出ガス減少装置取りつけの周知徹底、自動車運行自粛の啓発等をはかっております。そのほか、府下各地の大気汚染観測局の整備拡充をはかりまして、排出ガスの常時監視を行ないますとともに、排出ガス基礎調査、道路汚染調査等を実施をしておるわけでございます。また、大阪府警察本部等関係機関とも協議をいたしまして、先ほど東京都からも御説明がございましたが、バス優先化対策、駐車対策等を推進をしているところでございます。しかしながら、これらの対策には府県のみの力では何ぶん限度のある問題でございます。したがいまして、今後国におかれまして自動車排出ガスにかかります抜本的な対策、すなわち昭和五十一年度規制をはじめといたします発生源対策の強化とあわせて全体交通量削減のための具体策を樹立されますよう重ねて強く要望いたしまして口述を終わりとさしていただきます。
  20. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の意見の開陳を終わりまして、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  21. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  午前に引き続き、自動車排出ガス昭和五十一年度規制に関する件について調査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  22. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 私は、公害対策というのは常にその原点を忘れずに冷静に科学的に、そして総合的に進めなければならないというふうに思っております。公害対策基本法にも、環境基準について常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならないこと、公害防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより基準が確保されるようつとめなければならないことというようなことが公害対策基本法の環境基準について述べられております。公害対策というものは観念論で片づくものではございません。まして感情的になったり、いわんやヒステリックになったりしては公害対策にとってかえってマイナスになると思っておるのでございます。いわゆる絶対主義、あるいはオール・オア・ナッシングというような考え方ではなくて、原則を踏まえながら現実に即して解決していかなければならないと思っているのでございます。そこで、参考人並びに政府の関係者に若干の質問をいたしたいと思います。  最初に古浜参考人にお伺いをしたいのですが、アメリカのマスキー法はすでにその実施時期が延期されたと聞いております。そもそもマスキー法におけるNOxの規制が一九七五年のパー・マイル三・一グラムから七六年のパー・マイル〇・四グラムとわずか一年の間に極端に目標値低減を求めているという、そこに何か無理があるのかどうか、この点について参考人のお考えをお伺いしたいと思います。
  23. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) いまお尋ねで私は、何といいますか、そういう排気対策専門家じゃございませんので、エンジンの専門なんですけれども、いままで向こうに参りましたり、あるいはこちらに参りました役人のお話を総合して、私の知っている点から申し上げますと、もちろん初めにきまりましたのは、一九四〇年の時点に戻したいと、こういうことであったと思います。でありますから、学者によって算定のしかたが違いまして、たとえばウィスコンシン大学の先生なんかは九八%限度だと、これはもうとてもできないということを初めから主張しておられるわけでありますけれども、ですから、これはもう技術的なことを全然考えないできめたものだと、こういうふうに私は思います。要するに望ましい値だなと、ここまで下がれば申し分ないなと、こういうことできまった値でございまして、それでその目標でやってみたところが初めは何かうまい考えが急にできるのではなかろうかと思っていろいろなことをやってみたけれども、やはり技術的な壁がいまだに破れない、こういうことじゃないかと思います。よろしゅうございますか。
  24. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 環境庁にちょっとお伺いしたいのですが、一九七〇年にマスキー上院議員が一九六七年の大気清浄法——エアクォリティ・アクト・オブ・ナインティーン・シックスティセブン、この一九六七年の大気清浄法の排ガス低減目標値達成期限を一九七〇年にマスキー上院議員が改正して短縮した、これがいわゆるマスキー法といわれるのだと思います。ところが、わが国昭和四十七年十月三日に出された中公審の答申というものは、このマスキー法をほとんどそのまま引き写したというふうに聞いております。そういたしますと、私はいま古浜参考人に聞いたのですが、中公審の審議の過程で、あるいは中公審の答申の発表の直後に、わずか一年間で極端にこう低減する、すなわちNOxを、昭和五十年規制ではパー・キロメーター一・二グラム、五十一年規制ではパー・キロメーターを一挙に〇・二五グラムにするということについて、どこからも何か異論が出なかったのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  25. 春日斉

    説明員(春日斉君) わが国におきます四十七年十月三日のいわゆる中公審の「自動車排出ガス許容限度長期設定方策について」の中間答申によりますと、こういうふうに書いてございます。すなわち「現在の世界における最もきびしい規制基準、すなわち米国の一九七〇年大気清浄法改正法等が予定している規制と少なくとも同程度規制目標として許容限度を設定し、自動車排出ガスの排出総量を低減することが必要であるとの結論に達した。」ということでございますから、先生の御指摘のとおり、いわゆる一九七〇年の大気清浄法改正法の数値をそのまま持ってきていることは事実でございます。当時やはり、この中間答申にも書いてあるわけでございますが、この許容限度達成するにあたって防止技術開発可能性について中公審が御検討なさった結果、一部には実用面においてきわめて困難であるという御見解があったわけでございます。しかしながら、最終的には、「実用化を含めてその開発は必らずしも不可能ではないとの見解に達した。」、この中間答申にも書いておられるわけでございまして、当時、四十七年度の技術見通しということは確かにむずかしいけれども可能ではなかろうか、こういうところでコンセンサスが先生方の間にあったと思います。当時、しからば五十年度規制、さらに一年おいて五十一年度規制をそのままできるかどうかということについて、メーカー側の御意見あるいはその他の学者の御意見、いろいろあったとは存じますが、いわゆるこういった四十七年度の告示をくつがえすほどの声にはならなかったことは事実でございます。大きな声としては残っていなかったのでございます。
  26. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 それではメーカー側にお尋ねしたいと思いますが、岩越参考人にお尋ねします。  ただいまも私が質問した問題ですが、五十年規制、五十一年規制目標値が出されたこの昭和四十七年十月三日の中公審の答申について、メーカー側といいますか、岩越参考人は当時これをどのように受けとめたのかという点についてお答え願いたいと思います。
  27. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ただいま原先生の御質問でございますけれども、私たちとしてはこういう数値が一応マスキー法としてアメリカでも告示されましたし、できることならばこれをやらなければいけないというふうに思いましたけれども、非常にこれはむずかしい問題だというふうに考えまして、可能な限りの努力はいたしますけれども、それが完成が可能かどうかということについては非常にそのときから当社研究員一同疑問を持っておりまして、今日に至りますまで、先ほども申しましたように、五十一年度対策といたしまして四つのシステム開発しておりますけれども、不可能であるという状態を申し上げなければならないという非常に遺憾な状況でございますが、当時から非常にこれはたいへんだというふうに感じておりました。
  28. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 まあ当時非常にたいへんなことであると、可能かどうかということについてかなり疑問を持っていたけれども、何とかやろうということで努力をされてこられた、そういう受けとめ方で、またその後そういう努力をしてきたというようにお答えだったと思いますが、しかし最近になりまして、このNOxの五十一年規制というものは、この目標値達成はもうほとんど不可能であるということが、これはまあ岩越参考人だけじゃなくて、他のメーカー側の参考人の方からも言われておるのでございますが、まあ当時何とかやろうという気持ちは持っていたのでしょうが、どうしていまになってとてもできないと、達成が困難であると、無理であるという点について、その理由をもう一度はっきり申していただきたいのですが。
  29. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 当社では、このNOxを大幅に低減することにどうしたらよいかという研究には四十五年ぐらいから着手しておったわけでございます。その後、今日まで酸化触媒を主体として、レシプロエンジンの五十年対策車還元触媒を付加する方式と、NVCCエンジンロータリーエンジンなど多方面にわたるたゆまぬ努力を重ねてきまして、環境庁に御報告いたしましたとおり、まことに遺憾ながら、現在までのところ実用に供し得るシステム開発するに至っておらないわけでございます。で、還元触媒を使用したシステムは、初期値においては五十一年規制目標値の〇・二五グラム・キロメーターをクリアするものも出ますけれども、いまだ熱的、機械的耐久性というものが非常に不十分でございまして、システムとしてまとめ上げるのにはなお多くの技術的諸問題を解決する必要があるということに今日なってきたわけでございます。で、五十年の規制をやるのにも七年ぐらい前からかかっておりまして、それがやっと解決するめどが立ったというのに、五十一年のものをいますぐにこれだけのものができ上がるかという技術がいま開発できないということが、この目的の達成のためには努力を継続してまいりますけれども、非常に困難であるという結論に現状なっておると、こういうことを御報告いたしたいと思います。
  30. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 古浜参考人にもう一つお伺いしたいのですが、二サイクルのことについてなんですけれども、先ほどもちょっとお話がございましたが、五十一年規制のNOxが四サイクルにとって技術的に非常にむずかしいという反面、二サイクルの場合は規制値をクリアできる、NOxについては。しかし、HCが多くてこれの技術上の問題があるというようなふうに私ちょっとお伺いしたように感ずるのでございますが、この点について、技術的な点について古浜参考人どういうお考えか、お答えを願いたいと思います。
  31. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) 二サイクルのエンジンのことはあまりお話ししませんで、先ほどは主として四サイクルのエンジンのことについて私の意見を申し上げたわけでありますけれども、二サイクルの場合は、話がちょっとそれますけれども、たとえばアメリカで現在ディーゼルニンジンの規制をいろいろと計画しているようでございますが、この場合には窒素酸化物とハイドロカーボンを足したものが何グラムと、たとえば五グラムであるとか三グラムであるとか、そういうことを当初言っておりました。ところが、最近の向こうのEPAの方の話を聞きますと、やはり分けるのです。なぜ分けるかと申しますと、まあハイドロカーボンと窒素酸化物というのは大体同じぐらい有害なんだと、光化学スモッグに対しましては。ところが、個々の毒性を比較すれば、ハイドロカーボンは毒性は一般にないわけでありますから、窒素酸化物のほうがどちらかといえば有害であるから、やはり別個に規制したいと、こういう趣旨だと思います。したがいまして、二サイクルの場合にハイドロカーボンが少なくできないので現状では非常にむずかしい段階でありますけれども、四サイクルのエンジン窒素酸化物の〇・二五に落とすための技術可能性と、ハイドロカーボンを二サイクルで〇・二五に落とすための技術可能性とはどちらがむずかしいか、どちらがやさしいかということは、ちょっといまの段階では言えないぐらい両方ともむずかしいことだと思います。といいますのは、先ほども申し上げましたように、現在の技術をそのまま延長したのでは無理だと思いますね。やはり何かそこに新しい発明といいますか、そういうものがぜひ必要なんじゃないかと思います。そのために、いままでのやっぱりやり方ではだめだと、これはですから両方とも共通な問題だと、こういうふうに思います。
  32. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 古浜参考人にもう一つお聞きしたいのですが、マスキー法のいわゆる七六年規制、NOxについて、その実施時期が延期されたということでございますが、その延期の理由はいろいろあろうと思うのですが、どういう点にあるのか、特に私、関心を持ちますのは、私は交通事故防止の問題をかつてやっていたわけですが、五十年規制から五十一年規制日本で言う五十年規制から五十一年規制、マスキー法の七五年規制から七六年規制に移行する場合に運転の安全性との関連がどういうふうになるのか、この点について非常に心配しているのです。安全性に問題が出てきて交通事故がふえるというようなことになりますと、これまたやはり非常に大きな社会問題でございます。この点につきまして古浜参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  33. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) 私は現在の日本の五十年と五十一年の規制は、当初は五十一年が目標で五十年はその段階的な状態だと、こういうふうにいろいろいわれておりますけれども、しかし技術的に見ますと、非常に大きな違いがあるわけです。といいますのは、五十年のほうは窒素酸化物はたいしてむずかしくない、そのかわりにほかのハイドロカーボンと一酸化炭素をうんと下げる、こういうやり方なんですね。ところが五十一年は三つとも全部でありますから、したがって非常に大きな犠牲をしいているわけですね、エンジンなり車に対しまして。ですから、いままで、たとえば触媒法を使いますとそんなにエンジンの性能を犠牲にしなくても何とか運転性も安全に保てる、しかしさらに五十一年をミートするようないろいろな対策を現在わかっている範囲でやるといたしますと、先ほども申し上げましたように、エンジンの性能をうんと下げるような方法を併用しなければいけません。たとえばEGRであるとか、あるいは現在よりもさらに点火時期をうんとおくらして非常に運転しにくいエンジンにならざるを得ないと思いますね。したがって、それを操縦する人がそれになれてしまうまでには事故が起こらないとも限らないし、それからさらにあと処理といいますか、エンジンの下に再燃焼装置を非常にいままでよりも熱の発生の多いものを取りつけなければいけない、そのためにエンジンとか、自動車の故障だとか火災とか、そういう危険性もあると思いますね。  まあ、いずれにしましても一番私の申し上げたいのは、五十一年と五十年の違いというのは、ただ連続的なものではなくて、非常に不連続なんですね。非常にどちらからいってもエンジンに対する犠牲を極端に大きくしている。五十年の場合には一つ許していますから、それだけ何とか避ければほかのものはうんと下げられる、こういうことで根本的に違うというように考えております。
  34. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 環境庁にお伺いしたいのでございますが、マスキー法のいわゆる七六年規制、これはまあ実施の時期が延期になった、これはいろいろ理由があるわけでございます。そうしますと、マスキー法を手本としてわが国の五十年、五十一年規制が出ているわけでございますので、したがって、わが国の五十一年規制もやはりいろいろな観点からもう一回検討する必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  で、この昭和四十七年十月三日の中公審の答申の中に、この規制値を出したあとに「なお、許容限度の設定にあたっては、防止技術開発状況を勘案して行なうべきであり、その場合においても、許容限度の設定年次をいたずらに遅らせることは厳にさけるとともに、技術的に可能な限り最もきびしい許容限度の設定を行なうものとする。」ということが書かれているわけでございます。これの意味するところは一体どういうところにあるのか、そういう点を関連してお答えを願いたいと思います。
  35. 春日斉

    説明員(春日斉君) ただいま御指摘のとおり、この中公審の中間答申にございます「許容限度の設定にあたっては、」云々という話でございますが、これは確かに御指摘のようにきわめて、五十年度規制、五十一年度規制の実用化を含めて、その開発は必ずしも不可能ではないといっておきながら、片一方ではこういうふうに、もし設定にあたって防止技術開発状況をよく勘案してそれでも無理だというならば一番きびしい——技術的にいってきびしいところにしなさいというところはやや矛盾があるようにお感じであろうと思いますが、これは先ほども申しましたように、四十七年十月当時におきます技術的な可能性見通しというもの、これはやはりきわめてむずかしかった証左であろうと思います。したがいまして、私は、当時の中公審としては、やはりこの技術的に不可能という以上は、どうしても可能な限りのきびしいところに許容限度を置けということで、技術的なフレキシビリティーというものをここに担保したものであろうと、かように考えておるわけでございます。  したがいまして、もう一回申し上げますと、ともかく五十年度規制、五十一年度規制というものは目標値でございます、望ましき目標値、これはあくまでも達成したいのである、しかし、いよいよその許容限度を設定するという行政的な扱いをいたしますときには、十分技術的な水準を勘案してその可能性によってきめなさい、こういうふうに言っておるものと存じております。
  36. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 古浜参考人にもう一点お伺いしたいのですが、先ほど参考人の御意見の陳述の中に、水素エンジンとか電気自動車というようなものについてのちょっと言及があったように思いますが、水素エンジン、電気自動車というものが一体実用化できるものかどうかという点についてもう一回お伺いしたいのですが。
  37. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) 私は水素自動車をやっておりますが、もちろん将来性があるものと思っておるからやっておるのでありまして、ただ、それがいつになるかということはたいへんむずかしい問題じゃないかと思います。たとえば先日ある委員会でいろいろ私ども調査いたしました結果によりますと、現在の電気自動車、いわゆるバッテリーを使う自動車でありますと、ディーゼルエンジンを積むよりも大体十倍ぐらいコストがかかるそうです。まあ重さの点とか、そういうことを別にいたしましても、コストだけ——運転にいろいろなものを含めまして、コストですね。私どもがこの間試作しました水素自動車でありますとまあ三倍か四倍で済むということでありますから、少なくとも電池を使うよりはいまの段階でもかなりいいんじゃないか。ただ、将来いまの自動車が全部その水素にかわるためには、水素を非常に安くといいますか、非常に、何といいますか、手軽に使えるような一つ問題点と、それから自動車にコンパクトに積むための技術、それから安全、信頼性、そういう総合した学問の上に立って初めて可能なんで、エンジンだけでありますと、私は、そんなに十年も十五年もかかるのじゃなしに、三年か五年のうちに水素に最も適したエンジン開発するということはそんなにむずかしいことじゃないと、こういうふうに考えます。
  38. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 自動車排出ガスに対する大気汚染防止というものは、政府が単に法規制をすればよいという問題ではないと思います。実際に効果をあげるにはどのような方向に進めていったらよいのか、いままでのエンジンあるいはいままでの燃料を前提とした対策技術開発だけで足りるのか、新しいエンジン、新しい燃料開発をしなければほんとうに効果的な規制はできないのかどうか、そういうような点などについて政府自身がもっと積極的に努力をすべきではないかと思いますが、これはお二人の学識経験者の参考人の御意見にもありましたが、私は、そういう点で政府の努力が足りないのじゃないかと思うのでございます。そもそも公害対策としての技術開発というのは、政府の関係省庁、大学とか研究機関あるいはメーカー、これらのものがほんとうに虚心に真剣に協力して進めるべきものであると思います。したがって、そこにはいささかでも秘密主義があったり、あるいはまたおれのほうが先がけたんだとかなんとかいうようなやや売名的なものがあったりというようなことがあってはこれはならないんだと思うのでございます。私はそういうことをいつも考えておりますんで、このことを、政府はもちろんでございますが、きょう御出席関係参考人の皆さんにもお願いをいたしまして質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  39. 久保亘

    ○久保亘君 私は、排ガス規制国民の健康と快適な生活環境を守る国家的、社会的な要請の上に行なわれるものであると考えております。もちろん今日の経済体制のもとで企業採算性を全く無視することは困難であっても、少なくともこの要請は企業利益に優先して達成されなければならないものと考えるのでずが、この点についてメーカーを代表される参考人の方で、もし御異論がありましたら御意見を承りたいと思います。——特別に御異論もないようでありますから、そのような前提に立つで私はいろいろお尋ねをしてみたいと考えております。  最初に石原参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどの御意見の中で、五十一年規制は可能とも困難とも言える、それは規制強化レベル自動車の製作費とか維持費燃費などの増加をどこまで認めるかによってきまると述べられておりますが、このことは、これらの問題を一応度外視するならば技術的には五十一年規制は可能である、このような御意見であると承ってもよろしゅうございますか。
  40. 石原荘一

    参考人石原荘一君) それでけっこうです。ただ、何というか、五十一年度規制けっこうですが、あくまで話の上であって、それを可能にするためにはおそらく床面積一ぱいかそれでも足らなくて天井にも排気浄化装置がつくと、そういう前提で可能という意味です。先ほど環境庁からも言われましたけれど、ある値ができるできないじゃなくて、そういうふうに話の上でどんどんやればどこまでもできると。排気ガス規制されているのは三つ成分だけですから、その成分はそういう浄化方法によって取ることができるという意味です。
  41. 久保亘

    ○久保亘君 いまの御意見でありますと、実際に商業ベースの上での技術的な可能性というものはまだかなりむずかしいという御意見になりますか。
  42. 石原荘一

    参考人石原荘一君) 私のタッチする分野が二サイクルだけで、大きく見ることができませんが、その範囲では五十一年規制、貨物の分野ではできると思います。乗用車のほうはむずかしいと思います。
  43. 久保亘

    ○久保亘君 次に、東京都の上田参考人にお尋ねいたしますが、先ほど東京都の環境基準を達成する計画で、もし五十一年規制が前提になったとしても、五十五年度には三三%の車の交通規制を行なわなければ基準が達成できないという意味のことを述べられたと思いますが、もしそうであるとすれば、この五十一年規制を延ばしたという前提に立てば、そして環境基準の達成が車の交通を制限するという方法以外にないと、こういう立場に立てば、五十五年度には規制を受ける車は東京都は一台も走れない、こういうことになりますか。
  44. 上田涼一

    参考人上田涼一君) ただいまの御質問で、まあ一台も走れないことになるかどうか、ただいまちょっとすぐに計算できかねますけれども、これは積み残しが七千トンで三三%でございます。五十一年が規制できないといたしますと、その積み残しに三万六千トンが加わってまいるわけでございます。そういう大ざっぱな考えから申しますと、あるいはそういう計算上一台も走れないという非常に非現実な推計になるかと存じます。
  45. 久保亘

    ○久保亘君 東洋工業松田参考人にお尋ねいたしますが、東洋工業達成できる窒素酸化物量産可能な低減限界値ロータリーエンジンで〇・六グラむ、キロ当たりですね。それからレシプロエンジンで〇・七グラムであると述べられておりますが、この値は大型車についても可能なものと考えてよろしゅうございますか。
  46. 松田耕平

    参考人松田耕平君) どの程度の大型車か私わかりませんが、私どもで企画いたしております、来年出します大型と申しますのは、トヨタさんの車よりやや長さで二百ミリぐらい短くて、幅その他大体一緒ぐらいのサイズの、トヨタさんのセンチュリー・Cタイプと思います。目方が一トン五百四十キログラムぐらいのものでございます。それで明年出しますときは、もちろん五十年規制で出しますが、明年の秋には私ども申しております〇・六グラムにする予定でございます。
  47. 久保亘

    ○久保亘君 ということは、日産、トヨタのほうで少し説明をされておりますこの大型の場合と若干食い違いが出てくるということについては、東洋工業の現在の技術開発状況で考えれば可能性があると、こういうことで理解してよろしいわけですか。
  48. 松田耕平

    参考人松田耕平君) あくまでも私どもが申しました五十一年の可能であるところの〇・六グラム・パー・キロメーター暫定値についてでございます。
  49. 久保亘

    ○久保亘君 それから五十一年後半には五十一年規制についての見通しがつけられるという意味のことを述べられておりますが、現在の研究体制をさらに強化をすれば、五十一年規制見通しをつけられる時期はそれよりも早められると考えられませんか。
  50. 松田耕平

    参考人松田耕平君) 強化という意味が私ども社内だけの強化ではできませんで、新しい部品工業の協力あるいは開発等が必要でございまするので、それより前に見通しを立てることはきわめて困難であると私どもは思っております。これは最短距離の期間であると思っております。
  51. 久保亘

    ○久保亘君 それで引き続いてお尋ねいたしますが、一企業の研究開発には限界があるということを先ほどお述べになっておりますし、いまもそのような意味に解せられることを述べられたのでありますが、東洋工業がすでに到達されております、あなた方の公式な発表で到達されております現在の技術は、企業内の秘密としていまお持ちになっているのか、それとも排ガス規制社会的責任という立場に立って、求められればいつでも公開できるものとなっているのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  52. 松田耕平

    参考人松田耕平君) 第三者と特殊契約のないものにつきましてはすべて公開できます。また第三者との契約のものも、相談を相手とすることによって可能になる部門が相当量あると思います。
  53. 久保亘

    ○久保亘君 一企業では研究開発限界があると言われておりますだけに、きょう御出席になっております方々の御意見をお聞きしたいのですが、東洋工業としては現在到達している技術については公開できるという立場をおとりのようでありますが、メーカー間で今日のこの社会的な責任となっております排ガス規制について共同研究技術協力についてどれだけの積極的なお考えをお持ちなのか、豊田参考人並びに岩越参考人のほうから御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  54. 豊田英二

    参考人豊田英二君) お答えを申し上げます。  業界といたしましては、私たまたま工業会長をいたしておりますが、お互いの技術について相互に公開をしてその利用をすることを認めるという.申し合わせをいたしております。また、基礎的な問題並びに共通の問題につきましては、日本自動車研究所において研究をさせております。
  55. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 当社といたしましても、技術開発ということにつきましては協力をしてやるということで、これは数年前からアメリカのフォードをはじめ、あるいは石油会社と一緒になりまして、当社のほかに東洋工業さん、三菱さんも加盟されまして、この排気ガスの処理の問題に共同で開発をするということで、それぞれの分野をきめて共同の開発をすることに協力をいたしております。それはこういうような組織によって技術開発をおくらすのではないかというようなことで独禁法の問題がございまして、これはアメリカの司法省にこれを届け出いたしまして、そういうことではないということでこういうような共同開発が認められるということで、われわれとしてはわれわれの持っている技術というものに対しての進歩のために協力をするということにやぶさかでないわけでございます。ただ、先ほど申されましたような、どこまでのものかということについて、それぞれ研究方法が違っておりますししますから、その評価のしかたとか、そういうことについての考え方があると思いますけれども、ことに安全の問題なんかにつきましては、もうお互いにこういうものは私のほうで特許を持っておるものもお譲りしますということで、お互いにそういうことは必要に応じて融通し合っておりますので、それは協力体制をわれわれは持っておるというふうに考えております。
  56. 久保亘

    ○久保亘君 ただいまのような共同開発体制がもし完全に行なわれるとすれば、少なくとも一番先行しているメーカー窒素酸化物の排出基準までは、五十一年の規制、答申にあります規制の時点までには可能にならなければならないと考えるのですが、もちろん東洋工業のその〇・六グラム、〇・七グラムというのがそのまま認められるという意味ではありません。しかし少なくともそこまではこの共同開発ということについて業界が積極的に誠意をもって取り組まれるならば可能でなければならないと、私たちしろうとの考えとしてはそういうふうに思うのですが、その点について、どなたからでもよろしゅうございますが、日産、トヨタのほうでもし御意見をお聞かせいただければと思います。
  57. 豊田英二

    参考人豊田英二君) NOxの排出の問題につきましては、車の大きさ、エンジンの大きさその他によっていろいろ変化がございまして、またこれに対する対応策としていろいろな方式を私ども研究をいたしたわけであります。その結果といたしまして、先ほど申し上げましたように、私どもとして到達し得る限界は〇・二五グラム・パー・キロメーター目標にして努力をいたしましたので、これに到達することは不可能であるということを申し上げたわけであります。なお、その暫定値の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、新しく私どもシステムを組み直して研究をする必要がございますので、しばらくの御猶予をいただきたいということを申し上げた次第でございます。  以上であります。
  58. 久保亘

    ○久保亘君 いや、各メーカーによって研究方法などが違うということはわかります。しかし、いま五十一年規制に向かってあなた方が業界の社会的な責任を認識した上で最大の努力を傾けているのだと言われるのでありますから、そうであるとするならば、少なくとも共同開発についても合意に達するという前提に立てば、一番先行しているメーカー規制基準のところまでは到達できなければいけないのじゃないですか。それはどういう理由でできないわけですか。
  59. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 先ほども申し上げましたように、NOxの排出という問題は、車の大きさ並びにエンジンの大きさ等の関係その他によりまして変動があるものでございます。かようなわけでありますので、必ずしもある場合に到達をいたしましても、他の場合は困難であるという場合はあり得ると思います。なお暫定値の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、私どもは現在検討をさせていただいておる状況でありますので、ここで申し上げかねる次第でございます。
  60. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ただいまの窒素酸化物の〇・六か〇・七というのが可能ではないかということでございますけれども、これは豊田さんがおっしゃいましたように、非常に両者ともエンジンの幅が広いということも一つございますし、また車の重量が重くなるほど窒素酸化物がよけい出る、排出量がふえるということで非常に対策が困難になる傾向ということは、これは皆さん御存じのとおりでございます。で、われわれといたしましては〇・二五というのを目標にしていままでやっておりますので、〇・六でいいというならば〇・六の研究をしなければならない。従来は、五十一年は〇・二五ということをクリアしなければいけないということでやっておるのでありまして、いろいろのテストをやっているうちに、これはやってもだめだ、それじゃこれはまた別なことでやるということで〇・二五を目標にしてやっておりますので、〇・六を目標にしてやるというなら、これは別なことの問題になるというので、われわれといたしましては現在そういうような実験をやっておりませんし、先般、暫定値の問題が御下問ありましたときに、それでは暫定値としてどこが可能かということのめどをお答えしたという状況でございます。
  61. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると東洋工業は、いまの日産やトヨタの御意見によれば、あなた方は最初から〇・二五は無視して〇・六や〇・七の研究をおやりになったんでしょうか。
  62. 松田耕平

    参考人松田耕平君) われわれはあくまで〇・二五を目標にいたしましてやってまいりました。その中の一つとして五十年の対策をしたシステムを延長していく研究と、それ以外の革新的な技術を持っていく研究と、二つ研究を並行してやって、どちらも極限を目標としてやりまして、いまのところ出ましたのが〇・六と〇・七というのが現在の五十一年の四月より量産可能な技術であるということを申し上げた次第であります。
  63. 久保亘

    ○久保亘君 私は、たいへん専門的なことですから、わからないのかもしれませんが、ふしぎな気持ちがするんです。東洋工業のほうは〇・二五を追求して、そして、それを追求していく過程で〇・六まで到達し得たと言われるわけです。そうすると、トヨタや日産のほうは〇・二五というその目標値に向かって研究をしていたから、これがだめなんで、それならばそれよりも少し緩和された数値ででもつくるとなれば、これは全然別問題だと言われるのですが、常識的に考えればそうではないんじゃないかという気がするのです。石原参考人にお尋ねいたしますが、そういう問題については東洋工業の言っておられるほうがあなた方研究者の立場では一般的に考えられるのか、それともトヨタや日産が言われるように、〇・二五の目標値達成できなければ全然別の研究をやらなければ他の規制値に対する研究はできないものなのかどうか、その点をもしお聞かせいただければと思います。
  64. 石原荘一

    参考人石原荘一君) 確かに規制値をまず目標に置いてそれをやる。規制値が変わるとやり方は根本から変わると思います。根本から変わるという意味は、排気の浄化装置をただかえるということじゃなくて、エンジン本体も取りかえなければならないと思います。ですから、東洋工業でここまできたから各メーカーでやれというふうになれば、これはエンジンも含めて、エンジンの燃焼室の形から排気浄化も含めて全部の車に移行すれぱそれはすぐできると思います。
  65. 久保亘

    ○久保亘君 そうすれば、やっぱり先ほど言われたような共同研究、共同開発ということをもっと積極的に業界としてお取り組みになれば、一番先行するところまでは、もしも環境庁がその暫定値を求めた場合にはそこまではいけるという返事が寄せられなければならないのではないかと思うんです。やっぱり企業間の競争がこの社会的責任である排ガス規制の問題にまで持ち込まれて、お互いにいろいろと思惑をやりながらやっていたのでは、結局、いま言っておられるようにばらばらの意見になってまとまってこないのではないか、こういう感じがいたします。私は、そういう立場で五十一年規制の実現のために、東洋工業が言われますように、一企業だけの研究ではもう限界があるのだということであるならば、この際、各社の研究組織や体制をこの排ガス規制の問題に限ってでも総合的な機関にして、そしてこの要請にこたえるという努力を業界はやるべき責任があるのではないか、このように考えるのですが、この点についてメーカーの代表の方より、どなたか御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  66. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 各社でつくっております車は、それぞれユーザーの要望にこたえていろんな種類のものをつくっております。かようなわけでありますので、なかなかこの排気浄化の問題は、車それぞれについて解決をしていかなければならないような性格に現在なっております。かようなわけで、それぞれの車にそれぞれの対応策をしていかなければいけないということから言いますと、やはり共同開発をし得る範囲はおのずから限界があると考えます。私どもは、共同にやり得る部分につきましては自動車研究所等で研究をさしておるわけでありまして、各社のそれぞれの車に対する対応策としては各社がある意味で競争的に解決をするように努力をするという形をとりておるのが実情で、これが現在の問題を解決するのにいい方法であるというふうに私はえております。
  67. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ただいまの御質問でございますけれども一つの製品ができたということでありましても、それが全般に適用できる技術であって、そのほうが当社技術開発によるよりも早く実用化できるというものであるならば、その技術を導入することにわれわれとしてはやぶさかでございません。私のところで来年度運輸省の型式の試験を受けます車は三百三十台でございます。これだけ車が違っているものを一つのものでもってやるということはできない。一車種でやれば全部ができるというものではない。そういうように車のおい立ち、あるいはエンジンのおい立ちということでそれぞれ違っておる。ですから、全般的に適用できるものかどうかということはその内容として問題ではないか、こういうふうに考えます。
  68. 久保亘

    ○久保亘君 時間があまりありませんので、別の問題で少し日産とトヨタ関係してお尋ねしたいと思いますが、私は、この委員会が先月開かれました直後であったかと思いますが、ある新聞で川又さんといわれる方、日産の会長でございますか、この方が業界のある会合で、五十一年規制などできないことをやれと言うのなら、自動車業界は、国でやってもらおう、われわれは全部やめようじゃないかというようなことを言われたということが新聞に出ておりました。これを見ましたときに、私は、何か五十一年規制ができないということをずっと言ってこられた業界の皆さんの意見を代表される形で開き直った発言をされたような感じがするんですが、こういう発言について、あなた方もその会におられてお聞きになったんでしょうか。
  69. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) これは排気ガスの問題の五十一年式の規制値というものはできないという環境庁にお答えしました後に、各社ができなかったということで非常に困難な状況であるということの話に、どこもみんなできないんで非常にむずかしい問題だということで、これはたいへんな問題であるということの表現に言われたと思っております。
  70. 久保亘

    ○久保亘君 たいへん私は、業界を代表される方からこのような言い方で反発をされると、社会的責任ということを感じているのだと言っておられることと、全く逆の気持ちで業界はこの五十一年規制を見ているのではないかという感じがしてなりません。それとまた、五十年規制についても、以前は日産、トヨタは、その基準を達成することについてかなり慎重な意見を持っておられたと聞いておりますが、環境庁の告示が行なわれてからは、この達成は可能であるという立場に立たれたように聞いております。もし私の記憶が間違っておりますならば訂正をいたしますが、そのようなことからしてすでに、五十一年規制についての何らかの技術上の対応策も持ちながら、できることならば業界の利益を確保をしていくために、この際不可能であるということで逃げ切って、そして五十一年規制を免れようという気持ちが業界のどこかにあるのではないか、そういう気持ちが強くいたします。  だから、そのことと関連をして、業界のあなた方の社会的責任に関する良心について少しお尋ねしたいと思うのですが、最近発表されております五十年三月期のたいへん強気の増産計画がトヨタ、日産にあります。この増産計画は、会社側にはしかるべき理由と見通しがあってのことと思いますが、この増産計画については、五十年規制前、にかけ込み増産をやろうとしているのではないか、こういう不信の念があります。それで、この増産計画で販売される車は、あなた方の社会的責任という立場に従うならば、私は当然に五十年規制をクリアする車として売り出すだけの良心ある立場がとられるべきものだと考えるんですが、この強気の増産計画の車は、五十年規制をクリアする車として出されるのか、それとも、その前段階の車として売られるのか、その点について岩越参考人豊田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  71. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ただいま川又が申しましたことについて、非常に困難だということを申し上げたのですけれども、それがそうではなくて、できないということで免れようとするようなふうにお考えされるということはまことにわれわれとしては残念だと思います。そういうことは各企業としてはどこも考えていることはござい画せんで、みな〇・二五をクリアしたいということを考えて努力をしておると、こういうふうに私たちは理解しております。一社といえども早く数値をクリアしたいということは、われわれの研究員としてもこれだけ一生懸命多くの者が従っていながらできないのかということで、一日も早く完成したいという努力をしているのに対しまして、まことにできないと申し上げることが残念であるというふうに私も考えております。その点につきましては、表現がまずかったとすればたいへん遺憾な誤解を招くような表現であったというふうに存じまして、遺憾に存じます。  その次に御質問のございました生産の問題でございますけれども、今期の生産といいますのは、昨年の十二月以来大体国内は三〇%ぐらい生産減でございます。日本の経済の成長はゼロ成長であるということを申されますけれども、大体この七月以降からにつきましても平均三〇%マイナスであります。したがいまして、いまそれぞれ私たちがつくりたいと考えております数量も、前年の下期よりも大きい数字ではございませんです。したがいまして通計をいたしましてみた場合には、昨年一年間とってみましても二〇%以上の減であろう、こういうふうに考えまして、そんなに大幅な増産をするというようなことは考えておりません。したがいまして生産計画と五十年の年式の問題でございますけれども、これにつきましては、われわれのほうとしましては試験を受ける順序をすでに運輸省のほうにお届けしてございます。そういうことでやろうということでやっておりますので、その方式をくずすというようなことは考えておりませんのでということを御報告いたします。
  72. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私ども排出ガス対策を最も重要な課題ということで全社をあげて努力をいたしておりますことは重ねて申し上げたいと思います。で、ただいま本年の後半における生産計画の問題について御質問がございましたが、この分につきましては、現在まだかなり流動的な面もございますし、いま岩越さんからも申し上げたように、昨年に比べるとそれでもまだ下回る数字であるわけでありまして、通年一年を平均すればやはり相当下回った結果に相なろうかと存じます。  次に、五十年の規制車の問題につきましては、ただいま岩越さんから申し上げたように、運輸省の認定試験を受けておる段階でございまして、認定試験のスケジュールに沿って、私どもは五十年の規制に合格するものを逐次出していく予定にいたしております。
  73. 久保亘

    ○久保亘君 時間がありませんので、私の意見だけ申し上げておきますが、このトヨタ、日産が発表されておりますたいへん強気の本年度下半期の増産計画は、輸出の状況などから考えてまいりますと、国内需要を見込んだものだと考えております。国内需要の増大の一つの理由になるのは、五十年の規制を受ける車はコスト高になる、そこでこの五十年の規制を受けないうちにそれを一つの宣伝の材料に使いながら売るということになってくる可能性はないのか。であるとするならば、今日五十年規制を行なうという、五十年規制国民の健康を守るために必要であるという立場で規制が行なわれているという、その精神に逆行をするということになるであろう、私はこのように思うわけです。この点についてはいま御意見もありましたけれども、私どもとしてはそのようなことが次々に出てくればくるだけ、五十一年の規制についても、業界としては、一番最初に私が申し上げました、社会的責任に基づいて企業利益に国民の暮らしを優先をさせるという立場とは逆の立場で、あなた方がこの五十一年規制に対処されているのではないかという気持ちを持たざるを得ないわけです。ぜひこれらの点について、今日の国家的、社会的な要請に基づいて、業界が良心的で積極的な立場で対応されるように心から希望いたしまして、私の質問を終わります。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 前回当委員会環境庁の長官は、私どもの質問に答えて、五十一年規制は堅持すると繰り返し言われました。ところが、きょう各参考人、とりわけメーカー側の参考人意見を伺っておりますと、四社とも技術的には無理だという発言をなさっております。内容的には、あるいは程度の問題としてはいろいろ違いがあるようでありますけれども、結論的には、その点では一致しているように思われます。そこで、環境庁にお伺いをしたいのでありますけれども、もともとマスキー法ができたときに、マスキー議員は次のように述べています。自動車産業の都合よりも人間的な必要が先である。基準とは必要とされるコントロールの程度であるべきで、現在入手し得る技術程度であってはならない。そしてまた、それを受けて、一社でも基準に合格するエンジン開発をされたならば実施は延期をしないとも述べております。こういう基本的な理念に立ってマスキー法は出発をしたし、日本もそれに見習って五十年規制から五十一年規制へと進もうとしているわけでありますけれども、いま各参考人意見を伺って、今後環境庁として、そういう原点でものを考えるのか。マスキー法が延期をされたとも伝えられておりますが、延期についてもマスキー法をまねようとしているのか。そこら辺の環境庁の態度をまず明らかにしていただきたいと思いますし、同時に、どうしても技術的に不可能だということになるならば、総量規制、その他の方策を具体的に検討しているのかどうか、その点もあわせてお伺いをしたいと思います。
  75. 春日斉

    説明員(春日斉君) マスキー上院議員が一九七〇年、大気清浄法の改正法を提案するにあたりまして、確かに先生がおっしゃったように、現状技術の水準というものを無視し、あるいはコストというものを無視して、ひたすら健康の点から基準値を設けるのだと、こういうことを言っていることは事実でございます。その政治的理念の高さにはわれわれも敬服するわけでございます。しかしながら、マスキーは同時にこういうことも言っておるわけでございます。技術的な限界というものを無視するならば、やはり経済的な発展というものの間に矛盾が起きてくるだろうと、こういったことも実は申し述べておるわけでございます。たとえば、それは昨年の六月マスキー上院議員が東京に参りましたときも、そのようなことを申しておるのは御承知のとおりだろうと思います。私どもは、実際に行政としてこの自動車排出ガス規制を行なうにあたりましては、すでに先ほど原委員のお話にお答えいたしましたように、中公審の精神も、やはりそこに走っているわけでございますが、その最大許容値というものを設定するにあたりましては、現状技術水準というものを十分に勘案しなければならないと、こういうことでございますので、これは十分マスキー上院議員の理念と行政的なやはり現実というもの、これをあわせて考える必要があるのではなかろうかと、かように考えております。  それから、アメリカが延ばしたからこれも見習うのではないかという仰せでございますが、アメリカはアメリカでございます。日本日本でございまして、全くその点は参考にいたすつもりはございません。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は基本的な理念とあわせて具体的な問題についてもお伺いをしております。その一つは、一社でも基準に合格するエンジン開発をされれば実施を延期しないという立場に立たれるのかどうか、それが一つ。二番目には、どうしても技術的に無理だと、企業側ではなくて、環境庁がいろんな角度から判断をされた場合に、それに対応する措置として総量規制その他の手を具体的に考えているのかどうか、その点をお伺いをしておきます。
  77. 春日斉

    説明員(春日斉君) 先ほど、この点につきましては久保委員からのメーカー側に対する御質問がやはり同趣旨であったろうと思います。と申しますのは、ある社であるエンジンについてある水準が得られたから、ほかの社でもそれは当然その成績は得られるはずであるというお尋ねだったと思いますが、これはエンジンの大きさ、あるいは車の大きさによって窒素酸化物排出量というものばかなり大きく差が出てまいりますので、一つ車種一つの型式がオーケーになったといっても、それをすべての車に適用するということは私は技術的に無理だろうと思っております。それから、もし排気ガス規制というもの、五十一年度規制というものが完全に達成されなかったならば、それにかわるべき何らかの方法検討しているかということでございますが、もちろん私どもはそういった検討は行なっておるわけでございます。
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 何らかの検討ではなしに、その点を具体的に述べていただきたい。
  79. 春日斉

    説明員(春日斉君) これはこの前の本委員会でも私申し上げたのでございますが、現在中公審の大気部会、その下にございます自動車公害専門委員会検討中でございまして、五十一年に対していかなる対処をするかという御検討をいただいておるわけでございます。これは決して五十一年度規制を全面的にあきらめたとか、あるいは暫定値に決定したとかと、こういう結論がついておるわけではございませんので、いまの段階で私どもはいろいろな検討はいたしておりますけれども、具体的にこういうふうにやっていくのだというふうなことはまた申し上げる段階ではなかろうと考えております。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 長々とこの問題について質問するつもりはありませんが、検討しているもののうちおもなものはどういうものか、項目だけでもいいからあげていただきたい。
  81. 春日斉

    説明員(春日斉君) ただいたも申しておりますように、いま公表を申し上げる段階ではなかろうかと思います。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 総量規制というような問題を検討しているかどうか、その点だけ伺います。
  83. 春日斉

    説明員(春日斉君) 当然検討いたしております。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 主として日産の岩越参考人にお伺いをしたいと思います。  きょう出席メーカー関係者のうち本田と東洋工業については、少なくとも実験段階では五十一年規制目標値はクリアしているというお話がありました。ところが日産とトヨタに関してはこれすらもできていない。そのことがすでにことしの六月のヒヤリングの段階でも述べられておるわけでありますが、現在の時点でもなおかつ実験段階でクリアしていないということでしょうか。
  85. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 先ほども申しましたように、初期値としてはクリアいたしましても、それが耐久性が十分であるか、あるいはまた熱的にもだいじょうぶか、機械的にもだいじょうぶかという実験の結果ではまだクリアしておらないと、こういう状況でございます。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 初期値としてはクリアをした一、二の例があると述べておられますけれども、その内容をもう少しく詳しく述べていただきたい。
  87. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 初期値と申しますのは、やっぱり〇・二五をクリアしたということでございます。しかし、それの耐久性がないということで、まだできないと、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が伺っておりますのは、どういう方式でどんな実験をしたら初期値がクリアをしたのかということをお伺いをしております。
  89. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) きょうはその実験方式、手続その他について準備してまいりませんものですから、私ちょっとお答えすることできませんでございますけれども、これは研究といたしましては、当然実験のいろいろなモードを加えて実験をしなければいけないことになっておりますから、それがその手続に従って実験をしておるということでございまして、日本では日本のモードがございますし、アメリカはアメリカのモードがあるということで、それぞれ違ったモードで試験をするわけです。ですから、その手続によってやっておるんでありまして、ただかってに実験をすると、こういうことではございませんです。
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや私が伺っておりますのは、手続がどうかではなくて、どういう内容の実験をやったら初期値がクリアをしたのかと、こう聞いているんです。その実験の内容、方式説明できませんか。
  91. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ちょっと私、技術屋じゃないものですから、それを御説明できないのは申しわけないんでございますけれども、会社としては五十年の数値をクリアするというのと同じ方式でやはり五十一年もやると、こういうことでクリアしなければいけないと思っております。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 それ以上の具体的な内容が述べられないとすれば、この質問留保しておいて、次の質問に移ります。  本日提出された資料の一〇ページだと思いますけれども、「還元触媒開発状況」というところがございます。ここの記載によりますと、二十五社の触媒メーカーから実に百十八種類に及ぶ触媒を取り寄せて各種実験を行なったと述べられておりますけれども、この実験はすべて失敗をしたんでしょうか。
  93. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) これは各種のものがございますから、それぞれ実験をいたしまして、先ほど申しましたように、あるものは初期値は合格したと、しかし現状としてはまだどれも全部が合格したということではございませんです。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 触媒のうち初期値がクリアをしたものがあるというふうに述べられましたが、その触媒はどういうものでしょうか。
  95. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) これは還元触媒と三元触媒でございまして、日本のテンモードの試験をしたものでございます。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 もうちょっと具体的に伺いましょうか。その触媒はGEM67というものでしょうか。
  97. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) いまの御質問の触媒でございますけれども、その中に一つGEM68というのもございました。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 GEM67では失敗をした後、GEM68というのを使って成功をされたということでしょうか。
  99. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 初期値はクリアいたしましたけれども、その後の数値でもって不合格だ、こういうことでございます。
  100. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのGEM68というのはアメリカのグールドという会社から手に入れたものでしょうか。
  101. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) グールド社の触媒でございます。
  102. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのグールド社は同じGEM68という触媒を使ってことしの二月ごろからずっと実験を繰り返してきた結果、方式日本のテンモードという方式でありますけれども、五十一年規制をクリアしたという重大な報告をアメリカのEPAになさってるのは御承知でしょうか。
  103. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) いまの御質問でございますけれども、私たちが聞いておりますのは自分で発表したんでありまして、EPAからの発表ではないと思っております。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が申し上げたのは、還元触媒を使って、とりわけ今度の場合にはGEM68という方式で春先の段階で四万キロ、ことしの八月の段階では実に六万キロという走行キロでクリアをしたという重大な報告をアメリカ環境庁あてに出しているということを御承知でしょうかと言っている。
  105. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) まだ環境庁に出したということは聞きませんけれども、そういう実験をしたという報告、そういう実験が通ったということの報告があったということは聞いております。で、どういうような試料であるかということは九月の十七日に当社にその資料がきております。しかし、どういう方法でやったかということについてはまだ聞いておりません。前に私のところでやりましたのは、これはグールド社の触媒というのは金属でつくってありまして、使用中にぽろぽろになってこまかい微粒子になって飛散しまして、あと酸化触媒の機能を劣化させるということが確認されたわけでございまして、グールド社の触媒は重金属系の材料を使用しておりまして、この微粒子が大気中に飛散しますと二次公害を引き起こすおそれがございます。で、これらの問題点解決しませんと実用化には供し得ないということで、われわれのところでも前のものは、実験いたした結果はそういうことに、ぼろぼろになったものが現物としてございます。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまあなたがおっしゃったのはGEM67のほうじゃありませんか。
  107. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 68もやっております。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 やっておるかどうかじゃなくて、ぼろぼろになって失敗をしたというのはGEM67のほうではありませんか。それで失敗をしたのでオキシジェンゲッターという方式も組み入れてGEM68という触媒をつくり、その触媒では成功してるんじゃありませんか。
  109. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) GEM68でもやはり粉が出まして成功いたしておりませんです。
  110. 矢田部理

    ○矢田部理君 じゃ、もっと詳しく伺います。  前提としてお伺いをいたしておきますけれども、グールド社というアメリカの触媒メーカーとあなたの会社は共同研究あるいは提携などを行なっておりますね。
  111. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) いたしております。
  112. 矢田部理

    ○矢田部理君 その提携関係のもとでアメリカで行なった実験はあなたのところのブルーバードを使って実験をされたのも御存じでしょうか。
  113. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 新聞の報道によりますとそういうふうに書いてございまして、われわれのほうとしては技術提携をしているんでありますから、アメリカで環境庁に報告される前に当然われわれのほうにあるべきだというふうに思っております。それが九月の十七日に報告書がきましたので、それについて討議をしたいということを先方に申し入れております。
  114. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が伺っているのは、端的に答えてほしいんですが、アメリカで実験の用に供したのはあなたのところのブルーバードという車であることを御存じですか、イエスか、ノーかで。
  115. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ブルーバードもその中の一つであろうというふうに思います。
  116. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのブルーバードを使って耐久性から見ても、燃費の点から見ても、経済性から見ても十分にだいじょうぶだ、もちろん五十一年規制は可能だという実験経過がグールド社より出されたのは御承知のようですけれども、その報告を今月の十七日に受け取ったということですか。
  117. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 今月の十七日に受け取りました。
  118. 矢田部理

    ○矢田部理君 十七日ですか。これは私どものほうにも環境庁資料に基づいてアメリカのラルフ・ネーダー氏が全米科学アカデミーあてに報告書を書き、五十一年規制には十分たえ得るという結論を下しているんですが、その実験内容に関する報告があなたの手元につい最近きておる、こういうことですね。
  119. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) はい。
  120. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこでお伺いをしたいのですが、グールド社との提携関係のもとでGEM68という触媒をいつごろ、どのぐらいの個数あなたの会社は受け取ったでしょうか。
  121. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ことしの初めに三個送ってまいりまして、それについて実験いたしました。その結果、やはり粉ができまして酸化触媒のほうに被害を与えるということでございます。
  122. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたは内容を正確に御存じなんでしょうか。
  123. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 粉になった現品は見ましたけれども実験のどの程度、どのときにこうなったかというのは、こういうときにここまでなったということの数値は私は知りません。
  124. 矢田部理

    ○矢田部理君 グールド社の話によりますと、去年の暮れかことしの初めごろ、あなたの会社にGEM67を四個渡した、そのうち一個はテストをしたけれどもだめだったということで返品になった、同じそのものをグールド社でテストしたところ、そんなことはないといって、もう一度その品物を渡したところ、再度あなた方のほうで実験をした結果、グールド社のほうには非常に結果がよかったという報告が出されているのではありませんか。
  125. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 当社のほうでグールド社にオキシジェン・ゲッターというのを当社が考案して教えているものでございまして、それをそのときに当社のほうでこれをやったら非常にいいということを教えてあげた報告だと思います。
  126. 矢田部理

    ○矢田部理君 オキシジェン・ゲッターが日産のほうで開発をされた、それをグールド社に教えられたというのは確かなようですが、いずれにいたしましてもその方式でGEM67という触媒をつくられた、その触媒耐久性の面から見ても、燃費の点から見ても十分に五十一年規制にミートできる、こういう実験経過がずっと春先から今日に至るまでアメリカで出されているのじゃありませんか。その報告は受けておりませんか。
  127. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) その報告によりますと、ハイドロカーボンが非常に早く劣化するという結果が出るということの報告を受けております。
  128. 矢田部理

    ○矢田部理君 二次的な問題を私が伺っているのではなくて、基本的な問題として五十一年規制が可能なような技術がすでにGEM68などで開発されつつあるのじゃないか、少なくとも実験段階では重要な成功をおさめているのじゃないか、そのことをあなたは認められませんか。
  129. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) やはり五十一年規制というのはNOだけではなくて、ハイドロカーボンの使用もクリアするのでなければ合格したということではないと思います。
  130. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論は繰り返しやる必要はないと思いますけれども、部分的に若干の修正をあるいは補強をしなければならぬ点があるいはあるかもしれませんけれども基本的には五十一年規制にかなうように、耐久性から見てもあるいはまた経済性から見ても、さらには安全性等も含めて可能だといろ結論が、たとえば全米科学アカデミーなどに報告をされて、それに基づいて実験が続けられ、六月ごろの段階まででは四万キロだったけれども、すでに六万キロについても保証がとれている、こういう報告じゃございませんか。
  131. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 御報告ばそういう御報告でありましたかもしれませんけれども、やはり粉じんが出るということになってきますと、そしてほかの機能をそこなうということではやはりクリアしたということではありませんし、当社としても先方にも当社の考え方というのを通じて実験をするのでありますから、できればできたということを申しますし、現状としてはまだサンプルもございませんから、実験もしないでどうのこうのということを申し上げるわけにはいかないと思います。
  132. 矢田部理

    ○矢田部理君 ここにそのオキシジェン・ゲッターというGEM67触媒の写真がございますけれども、こういうものもあなたのところには届いてございませんか。
  133. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) それは当社で先方に教えてやったのと同じものだそうでございます。
  134. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから、現物は当然知っているんじゃありませんか。現物も見ないでと言われたから、知らないのかと伺ったわけであります。いずれにしても、あなた自身はそのグールド社から出された報告書は読んでおられるんですか。
  135. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 私のところまでまだそれは届いたということは聞きましたけれども、内容がこういうものだということのところまではまだ報告はきておりませんです。しかし、われわれといたしましては研究をやっておるんでありますから、そういうものができ上がればよろしいと思いますけれども、やはりほかの条件も全部クリアしなければ、そこのところが一つできたからといって全般的にクリアするということにはならないし、他に二次公害を起こすというようなものであってはやはり商品として完成したということではないと思いますし、実験としては、われわれとしてはどういうことでやったかということについてなお議論をしてみたいと思います。
  136. 矢田部理

    ○矢田部理君 非常に困ると思うんですよ。重要な実験結果がすでに——もう最近の段階じゃありません。私どもが手に入れたのももう七月、八月の段階で手に入れておる。しかも、あなたの会社とグールド社との間には共同研究、提携関係すらあるわけでしょう。そこで重要な実験をし、有効な結果があらわれたのに、まだそれを読んでもいないで、実験段階でもむずかしいのだというふうな強調をされること、そのことに私は非常に大きな疑問を感ずる。技術的な問題よりも何ものかが大きなファクターとしてうしろにあるのではないかと、こういう懸念すら私たちは感ぜざるを得ないわけです。その点で先ほどあなたは、今後の課題としては還元触媒を使う方法規制値目標に向かって努力をされると言う、まさにその触媒を使って重要な成功例がある。六万手口にもわたって走行した結果でもあらわれている。燃費もだいじょうぶだというデータがそこにはつけられておる。こういうことを十分に考えて今後の技術開発規制値達成努力をしていただきたいというふうに私は思います。  それから時間がありませんので、トヨタ参考人である豊田さんのほうにお尋ねをしたいと思うんですが、あなたのところにもこのグールド社から相当数のGEM68という触媒が渡されておりますね。いつごろ渡され、その後どのような実験をし、実験の結果はどうであったのか、その点をお尋ねします。
  137. 豊田英二

    参考人豊田英二君) お答えを申し上げます。  資料の二十三ページに記載しておりますように、トヨタとしては昭和四十七年よりグールド社と共同開発をいたしております。で、現在はグールド社の02ゲッターも装着をして検討しておりますが、残念ながら数千キロで溶損またはばらばらになりますので、現在としては使用不能でございます。今後さらにテストを重ねて研究を続行したいと考えております。
  138. 矢田部理

    ○矢田部理君 いつごろ受け取ったものかという質問をしたんです。
  139. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 四十八年の初めに合金触媒を入手をいたしました。それから02ゲッターにつきましては四十九年の三月ごろ入手をしたわけであります。
  140. 矢田部理

    ○矢田部理君 失敗をしたのが先ほどから申し上げておりますようにGEM67で、ことしの春に受け取ったGEM68ではそうではないんじゃありませんか。グールド社に確かめたところ、その実験結果についてはまだ報告が到着をしておりませんというふうな答えでした。いまあなたのおっしゃったような状況だとすれば、重要な買いものであるはずだから当然グールド社に報告してしかるべきものと考えますが、間違いじゃございませんか。
  141. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 三月ごろ受け取ったと思いますが、現在テスト中であります。
  142. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、先ほど失敗をしたというのは私が申し上げたGEM67で、68はいまだ実験中だ、こういうことですね。
  143. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 訂正をいたします。三月に受け取りましたものも結果は悪くございました。(「悪かったんですか」と呼ぶ者あり)悪うございました。
  144. 矢田部理

    ○矢田部理君 そろそろ時間がきまずから終わりますけれども、GEM68の実験結果も出たのでしょうか、もう一回正確に。そうしてそれはアメリカのグールド社には報告をされたんですか、出たとすれば。
  145. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもの試験条件に合わせて試験をいたしました結果はよくありませんでした。その報告をしたかどうかまでいまつまびらかでありませんが、近日先方の会社から人が参りまして打ち合わせをする予定になっております。
  146. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどから質問を留保しておいたんですが、日産の参考人の方、そして豊田さんのほうで少なくともGEM68の実験経過、その内容、問題点等について当委員会資料を提出していただきたいと思うんですが、その点あと委員長のほうでお願いをしたいと思います。
  147. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) じゃ、いまばかりましょう。  いまの矢田部委員のほうからお話のありました実験資料委員会に御提出いただけますか。
  148. 豊田英二

    参考人豊田英二君) グールドと共同開発でございますので、先方との話し合いもありますのでこの席でちょっとお答えをいたしかねます。
  149. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) そういうことですが、矢田部君いいですか。
  150. 矢田部理

    ○矢田部理君 理事会であとでいずれにしてもおはかりいただいて……。
  151. 久保亘

    ○久保亘君 簡単に関連して、いまの問題に。  ただいまの問題に関連して、このグールド社は日産、トヨタ、三菱、東洋工業、富士重工、この五つのメーカーと契約を結んでいるはずですが、東洋工業に対しても四月末にGEM68を渡したというのがグールド社のほうの意見——意見といいますか、グールド社の報告であります。それで東洋工業のほうでもこのGEM68については実験が行なわれているのではないかと思いますので、もし資料をお出しいただける場合にはあわせてお願いを申し上げたい、こう思います。  それから環境庁のほうは、このGEM68についての報告を受けているんですか。
  152. 春日斉

    説明員(春日斉君) 私どもは、グールド社のGEM68ゲッター方式に関するレポートは二回にわたって報告を受けております。立ちましたついでに若干申し上げますと、確かにいままでの触媒の中ではすぐれたものの一つであろうと思います。ただ、先ほど参考人のどなたかおっしゃっておりましたように、グールド社のこのGEM68ゲッター方式は、COに対しては規制値を満足するけれども、ハイドロカーボンは低減がきわめてむずかしい、規制値はすべてのテストで満足するに至ってない、ことに手動変速自動車ではむずかしいようであるというふうにグールド社自身がその報告で私どもに申しております。それから燃料消費は、車の大きさ、走行状態等々によって大幅に増大する場合もあり得るようだと、こう言っております。かなりの変動幅があるようでございます。それからガス欠をはじめとするエンジンの異常運転状態に基因する種々の問題によって還元触媒の実用性についていろいろ心配があるんだが、この場合も高速時にガス欠が生じた場合は触媒が溶融すること、こういったことをグールド社自身が私どもに報告をいたしております。そして最後にこういうことを言っております。グールド社は、GEM68のゲッター方式でNOxの変換効率は非常に高い安定した性能を実証したと申しておりますけれども、みずからこの方式の設計についてはなお改良の余地がある、この点で自動車メーカーと共同試験体制を今後整えることは大切であろう、こういう報告を私どもにいたしております。
  153. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま環境庁のお話でありますけれども、どうも環境庁は、こういう点が問題だということだけを拾って説明をしているような感じが非常に強いわけです。どちらの立場に立つのか、はっきりしてほしいと思います。五十一年規制をやろうという立場で、より積極的に実験結果を生かそうとすることが大事なんじゃないかというふうに考えております。たとえば燃費の問題にいたしましても、テストではリッター当たり九キロ、高速道路ではリッター当たり十四・八キロという数値が出て、その資料が私のところにも届いている。そういう重要な事実をやっぱりこの際明らかにして、業者を指導していく、技術開発規制値に沿って推進をしていく、こういう努力をすべきだと思う。その点、最後に特につけ加えて私の質問を終わります。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初に運輸省に伺いますが、運輸省では、きょう参考人として四社の方が御意見を述べられておられますが、五十年規制について型式指定を受ける、運輸省から指定を受けなければ市販はできないわけだと思いますが、この四社の製品の中で、型式指定をすでに受けた製品、それから市販されている台数。それからなおかつトヨタ、日産については、型式指定を申請中で云々というような御答弁が先ほど参考人の方からありましたが、これらの進行状態はどうなっておりますか、御答弁いただきたい。
  155. 田付健次

    説明員(田付健次君) 現在五十年規制適合車としてすでに型式指定を終わりましたものは十一車種ございます。東洋工業車種、本田技研一車種、最近三菱自動車につきまして一車種ございました。その他のメーカーにつきましては、先ほど運輸省の型式指定を受けるという旨の御発言があったようでございますが、作業といたしましては現在まだ入っておりませんで、前広に通告をいただいておりまして、いずれ指定の作業に入るということになっている状況でございます。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 五十年規制のための型式指定は運輸省でどのくらいの期間かかるのか。いつころそれが申請が出されて、いつころ決定になるのか。そういう点は全く見通しなしにやっているわけですか。
  157. 田付健次

    説明員(田付健次君) 通常の型式指定でございますと、おおむね技術上の審査に一カ月、事務的審査に一カ月、合計ほぼ二カ月ぐらいの時間がかかっております。ただし、これは標準の場合でございまして、特殊なケースの場合には相当な審査が要りますので多少時間が延びるということもあります。全体の見通しにつきましては、行き当たりばったりでは私どもも事務的に処理ができませんので、先ほど申し上げましたが、前広に通告を受けながら全体の事務処理ができますように整理をいたして進めていくつもりでおります。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、五十年規制には間に合うんですか、間に合わないんですか。
  159. 田付健次

    説明員(田付健次君) 現在までに私どもが整理をいたしておる段階では間に合うことになっております。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、先ほど来五十一年規制についてのいろいろ論議がかわされてきましたが、運輸省としては技術的に見てそういう型式指定を五十一年規制車に出すためには、いつころまでに、どういう申請を受けるわけですか。
  161. 田付健次

    説明員(田付健次君) これは実は逆算をしないといけないわけでございますが、現在五十一年規制の適用時期その他はまだ未定でございまして、——未定と申しますのは、五十一年に〇・二五というNOx基準をやりたいということははっきりいたしておりますけれども、具体的な実施時期その他につきましては中公審の答申があった後にきまるということになりますので、その時期がきまりますと、それ以前にすべてが用意されなければなりません。かりに、−これはかりにの話でございますが、五十一年の四月から新型車がこの基準に適合しなければいけないということになりますと、その前までに作業を終えなければなりません。したがいまして来年の、少なくとも五十年の下期にはその作業にすでに入っていないといけないということであろうかと思いますが、いずれにいたしましても、五十一年四月にするのか十月にするのかというような問題がまだ整理できておりませんので、いまのところはちょっと決定的なお話はできませんが、全体の概要は、アウトラインはそのようなことで作業を進めることになると思います。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 こうした五十一年規制について先ほど来いろいろ御質問があり、また御答弁がありましたので、あまり繰り返したことは申し上げませんが、豊田参考人のお述べになったのは、特にこの五十一年規制については二年間はこのままにしておいてほしいという御意見ですか。五十一年規制は五十年規制のままさらに二年継続の上、その後の規制値各種状況を御勘案いただき再検討云々となっておりますが、どういう御趣旨でしょう。
  163. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもは先ほども申し上げましたように、〇・二五グラム・パー.キロメーターの達成に全力をあげて努力をしてまいりましたが、現段階ではその面では技術開発上のめどがまだ立っていない状況であり、暫定値について本年六月環境庁から御下問があったときより直ちに検討に入っておりますけれども、かりにこのシステムを五十年後半に決定いたしましたとしても、生産準備期間の関係から、最大の努力を払いまして生産を開始できるのは五十三年の春に相なるわけであります。で、かようなわけでありますので、現在はまだその基本的なシステムの決定をしておりませんので、先ほど申し上げましたように、二年間の御猶予をいただきたいということを申し上げた次第であります。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 ほかの社の方はどうなんですか。たとえば杉浦参考人は、そういうように二年間というような御意見は述べられませんでしたが、どのようにお考えですか。
  165. 杉浦英男

    参考人杉浦英男君) 私のほうは、先ほど午前中に申し上げましたように、現在まだ開発を続行しております。まだ二年間延ばしてくれということではなくて見通しは立っておりませんから、もう少し勉強させていただきたい、こう考えております。少なくも〇・六については五十一年の秋にはやりましょうということを御報告はしてございす。現在の段階です。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁はその二年間ということについてどう考えますか。
  167. 春日斉

    説明員(春日斉君) この問題につきましては、中公審の自動車公害専門委員会でただいま検討中でございますので、それらの御審議の結果によりたいと考えております。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 前回からそういうことを繰り返しておられますから……。それでは次にちょっと別の問題ですが、五十年規制についても、触媒、四社それぞれ違うように御説明なさいましたが、トヨタ、日産の場合は触媒によってCO等を減らそうというように伺いましたが、その触媒による新たな空気汚染が生じないかというような懸念はありませんか。これは杉浦参考人がちょっとそれらしいような発言をなさったかと思いますが、いかがですか。
  169. 杉浦英男

    参考人杉浦英男君) 私ども先ほど午前中申し上げましたのは、触媒等に、たとえば白金あるいはパラジウムというふうなものが使われ、あるいはその他の金属も使われておるようでございますけれども、それらが使われたときに二次公害を起こさないという保証がどこにもまだないということがあるもんですから、私どもはこれを使わないでやりたいというふうに考えたわけでございます。これが害があるという証拠はまだはっきりと私どもは握っておるわけではございませんし、とうてい私どものようなメーカーでそれを予期するところではございません。
  170. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁と運輸省に伺いますが、アメリカのEPAでもそういう論議があったというふうに報道されておりますが、その点についてはどう考えますか。
  171. 春日斉

    説明員(春日斉君) 先生の御指摘のとおりでございまして、米国におきましてもわが国の五十年度規制対策車と同じように七五年からカリフォルニア州を中心にいたしまして、酸化触媒を装置いたしましたいわゆる七五年車、これが売り出されてまいるわけでございます。で、触媒装置から排出されてまいります白金などの貴金属、あるいは硫酸塩、こういった二次物質によります汚染の問題につきまして、アメリカの環境保護庁は、触媒装置の使用を禁止するほどのものではない、かような最終的な判断をいたしておるようでございます。ただ、白金などの貴金属の排出が測定困難なほどの微量であるということ、それから私どもの現在使用しております日本ガソリンの硫黄分というものは米国のものよりもはるかに低い、こういったことを考慮いたしますと、現段階では私どもはあまり触媒の二次公害について問題にするほどのことはないように判断いたしております。しかし、この問題につきましては、今後の調査研究の結果に十分注意をいたしまして進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  172. 田付健次

    説明員(田付健次君) ただいま環境庁のほうから御答弁がありましたが、同じことでございますけれども、現在のところでは、特に問題であるというふうにはいわれておりません。しかし、今後どのようなことになるかにつきましては、やはり調査をするなりして万全を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  173. 小平芳平

    ○小平芳平君 確かに現在触媒による空気汚染防止をやったとします。で、その触媒による二次公害によって明らかに健康被害か発生するとか、そういうことがはっきりしていれば、アメリカでも日本でもそれを使うはずはないし、メーカーとしても、行政官庁としても、そのままでそういう車を生産し、販売できるわけはないわけですが、従来のいきさつからしても、そうしたたくさんの車がすべて触媒——すべてじゃないですけれども、たくさんの車がそういう装置をつけて走った場合どうなるか。で、特にこの五十年規制については、メーカーとしては豊田参考人あるいは岩越参考人のほうでは、触媒による五十年規制の型式指定を受けようと、こういうわけでございましょう。それが型式指定が通らないということはあり得ないわけですか、いかがでしょうか、そういう点は。
  174. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもは、その二次公害を起こさないというような十分注意をしたものを認定試験の場に出して試験を受ける用意をいたしております。できるだけの注意を払ってやっていきたいというふうに現在は考えておる次第であります。
  175. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 触媒の二次公害の問題でございますけれども、これは一昨年の十一月に運輸技術審議会の答申に出されておりますとおり、使用過程車の排出ガス対策についての触媒方式の場合、触媒に使用する金属は二次公害のおそれのある金属は使用しないというように述べられておりまして、それはニッケルであるとか、クロームとか、コバルトとか、マンガン、銅、こういったものは使ってはいけない、こういうふうになっておりまして、したがいまして、いま使うというふうに考えておりますプラチナやパラジウムは、それらの金属に含まれておりませんので、問題がないものと理解いたしております。また現在五十年の車としてアメリカで認証をとりましたものも、触媒をつけたもので認証をとっておりますので、そういうことがないというふうに考えております。
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 石原参考人とそれから古浜参考人に、いまの点について午前中にちょっと御意見を述べられた個所もあったように伺いましたが、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  177. 石原荘一

    参考人石原荘一君) 触媒の不安はあると思います。それはいまNOxが問題になっているように、それはかって十年前私たちがエンジン実験しておりまして、私はたまたま自分の専門が排気ガスを分析して中の様子を推察する排気ガスを初めからしておりましたが、その当時はNOはなくても、そういう計算ができたり——NOx、いまになって知ったわけです。それでいまの測定器でもしはかれなくても、またずっと後にもっとPPMよりこまかいのがはかれるようになったとき、ほんとうの毒はこれだったと、触媒をつけたことによってこういうのが出る可能性があると思います。
  178. 古浜庄一

    参考人古浜庄一君) 私は触媒専門でないのでよくわかりませんけれども、先ほどもお話ししましたように、この六月にアメリカのEPAの方の、それに対するたいへんこまかい御報告を聞く機会があったのですけれども……。で、私どもも二次公害というものが一時騒がれましたので関心を持っておりまして、重金属による公害はほとんどないようですね、EPAでいろいろはかられた結果によりますと。ただ先ほど環境庁の方がおっしゃいましたように、硫酸による硫酸ミストの問題がある車、また、ある走行のときに問題であるというようなことで非常にたくさんの実験をいまやっておられまして、何か三年間これを続けるのだと、それでもしも問題があれば触媒はやめるのだ、ですけれども全般的には先ほどの御報告、私の得た情報とおそらくもとは同じかもしれませんけれども、いまのところ危険性は非常に少ないように聞いております。
  179. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう御意見をもとにしまして、運輸省としては触媒でも、触媒についてのこまかい点は抜きにして型式指定をするということですか。
  180. 田付健次

    説明員(田付健次君) 触媒の危険な問題があるかどうかということについて全く無視をしておるということでは決してございませんが、現在のところにおきまして市販に出そうなものにつきましては、とりあえず問題がなさそうでありますので、それについて所要のエミッションレベル達成できるやいなや、さらに耐久性の問題別の問題等を審査してまいるつもりでおります。
  181. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから環境庁としましては、先ほどもこの点は御指摘があったんですが、二酸化窒素にかかる環境目標達成ということを掲げているわけです。しかし、いまここへきて五十一年規制がどうこうというふうに、このように議論になってきたということは、その環境目標達成そのものが土台がゆらぐのではないか、環境庁としてはあくまでこの環境目標達成をやるという考えなのか、その点はいかがですか。
  182. 春日斉

    説明員(春日斉君) この五十年度規制あるいは五十一年度規制目標値を定めましたのは、四十七年の十月であることは再三申し上げたのでございますが、実は窒素酸化物、NO2の環境基準を定めたのは昨年の五月でございまして、窒素酸化物の環境基準を定めます以前に、この自動車排気ガスの目標値を定めたわけでございまして、いわばその自動車の排気ガス規制目標値と昨年定めました窒素酸化物の環境基準が必ずしもドッキングしておったわけではないんです、少なくとも四十七年の段階におきましては。しかしながら先生の御指摘にもありますように、これが大阪におきましても、東京都におきましても、その他の地方自治体におきましても、すべて窒素酸化物を五年あるいは八年で環境基準を達成するためには、やはり自動車の排気ガス規制というものはさらに五十一年度規制によって強化していくことが基本である、こういうことには私決して間違いはないと考えております。したがいまして五十一年度規制値というものはそういう意味で私どもは何とかしてこれは達成することを念願いたしておるわけでございます。
  183. 内田善利

    ○内田善利君 いままで参考人の方、あるいは質疑者への答弁をお聞きしておりまして、結局ただいまも質問ございましたが、環境基準の〇・〇二PPMを守ることはできないというふうに私は推察したわけですけれども、四十七年にきめた、四十七年十月三日の時点におきまして、企業ではむずかしいけれども、困難であるけれども、何とかして達成したいということで出発したと、ここに至りましてそれができない、また学者の先生も不可能であると、このように言っておられたように思いますが、こういったことで一番困るのは国民であるわけです。環境基準の〇・〇二が達成されない、いまだにもって酸化窒素の中で生活しなければならないと、そういうことになってくるわけですが、環境庁としては何とかして、いまの答弁を聞いておりますと達成していきたいということでございますが、企業メーカーとしては達成できない、こういうことですが、私は何とかして努力したいということで出発した企業としてやはり社会的な責任がおありなのかどうか、この点をまず各メーカーの方々にお聞きしたいと思います。  そして環境庁には、この環境基準が、〇・〇二が守られなかった場合には一体どうされるのか、国民の前に何とかしてこの環境基準を守ろうということで出発したものが、いまになってできないということに対する環境庁の責任と申しますか、道義と申しますか、そういったことについてお聞きしたいと思います。  それから、もう時間がありませんのでひっくるめて質問いたしますが、五十一年度までにそれでは各メーカー目標として、先ほど——いままでの答弁ではできないということですが、暫定目標としてどこまでならできるというのか、国民の前にはっきりこの席でお示し願いたい。ここまでまいりましてまだできないでは、先ほどの答弁では、いましばらく御猶予願いたいというのが日産の方、またトヨタ参考人も答弁の中でしばらく御猶予願いたい、こういう答弁がありましたが、しばらく御猶予願いたいではもう私たち国民は許されない段階にきておる、このように思うわけでございますが、一体暫定的に五十一年度までにどれだけならいけるという目標をはっきりお示し願いたい、そのように思います。  それからもう一つは、五十一年度実現可能な規制値をお示し願うことと、もう一つは、しばらく猶予願いたいということですから、いつまで猶予願いたいということか、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  184. 松田耕平

    参考人松田耕平君) ロータリーエンジンについては〇・六グラム・パー・キロメーターが五十一年四月より、またレシプロエンジンにつきましては〇・七グラム・パー・キロメーターが同じく五十一年四月より可能でございます。〇・三グラムの実験研究いたしておりますものは、〇・二五グラムができるかどうかの見通しが立ちまするのは五十一年の後半になると思っております。これは過去の経験からいたしましてその程度時間がかかるものと推察いたしております。以上でございます。
  185. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもは企業活動を通じて社会福祉に貢献することを考え、より公害の少ない安全で価格的にも満足していただけるような車をつくることを目ざして努力をいたしておる次第である。先ほどの四十七年に五十年規制目標値が定められまして以来、私どもはこれに向かいまして全力をあげて最大の努力を払ってやってまいった次第でありますが、はなはだ残念でありますけれども、現在の段階では目標値に到達することはできないのでございます。それで、また五十一年にどういう数字ならばできるかという御質問でございますが、これに対しましても、先般環境庁にお答えを申し上げましたように、私どもとしては〇・二五に向かって直進をいたしておりましたので、中間の値について何らかのことを言えという御質問にはなかなかお答えをすることがむずかしい状況に立っておるわけであります。それで、先般お答えをいたしましたのは、五十年対策システムの延長上でたえ得る数値として一部の車種については一・〇ないし一・一グラム・パー・キロメーター、その後の目標値としては、全車種に対し五十二年ないし五十三年に〇・九グラム・パー・キロメーターレベルになるかと思いますが、これについては、この数字に対する対策システムについて研究を進めさしていただきまして、おおむね一年後にその結果を御報告申し上げることにいたしたわけでございまして、はなはだ残念でありますけれども、御要望のような数字にはなっておらないのでございます。  なお、しばらく御猶予ということを先ほど申し上げましたが、午前中の陳述において要望として申し上げたのを重ねて申し上げさしていただきます。五十一年規制につきましては、五十年規制のままさらに二年間継続されるようお願いをいたします。その後につきましては、五十年規制による大気汚染減少効果等の実績や技術開発の進歩及び社会経済情勢変化等を勘案して、総合的判断に立って妥当な規制値を再検討していただきたいということでございます。
  186. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 当社といたしましても五十一年の規制の〇・二五という数値目標に進んでまいりまして、先般環境庁から七月二十日に暫定値数値についての御下問がございまして、それにお答えいたしたわけでございますけれども、五十一年につきましては、準備期間を考えると、一部は五十年の一〇%減というのは考えられる。それ以後の五十二年につきまして可能はどこかということでございますけれども、大体二五%減の目標、五十二年から二五%減のところならば一つ目標として研究が完成するんではないか、こうじうふうに考えておる次第でございます。
  187. 杉浦英男

    参考人杉浦英男君) 私どものほうは、おそらく五十一年の後半までには全生産平均値としての〇・六を達成すべく進めてまいります。また、〇・二五グラム・パー・キロメートルのNOxの排出水準につきましては、先ほど午前中に申し上げましたように、新しい研究開発成果の誕生を必要といたします。したがいまして、はっきりあしたできるかもしれませんし、あるいは何年たってもできないかもしれないわけですけれども、おそくもやはり五十一年の後半までにはめどをつけたいと、こう考えております。そのように進めさしております。
  188. 春日斉

    説明員(春日斉君) 御承知のとおり、窒素酸化の環境基準と申しますものは昨年の五月設定いたしたわけでございますが、これは公害対策基本法の第九条によって定めたものでございまして、いわゆるわれわれの健康あるいは生活を保全する.ための望ましい行政上の目標値でございまして、いわゆる自動車の排気ガス規制の〇・二五とか、あるいは一・二グラム・パー・キロメートルというような規制値とはいささか概念が異なるわけでございます。したがいまして、先ほど小平先生の御質問にもお答え申し上げましたように、環境基準と排出基準とは、この場合設定しました日時も異なっておりますし、必ずしもドッキングいたすわけではございませんが、何と申しましても、最終的な目標は環境基準を達成するためにそういった排出基準というものを用いていくわけでございますから、その意味で私どもは何とかして五十一年度規制というものは達成したい、かように申したわけでございます。しかしながら、どうしてもできないというようなことならばどうするかという重ねての御質問でございますが、問題は、窒素酸化物の環境基準というものを達成するのは、地域地域によってすこぶるバラエティーに富んでおりまして、決して一つ方法窒素酸化物の環境基準を達成できるというものではないわけでございます。ことに工業用地域あるいは工場のない都市、あるいはその他の町村というふうにかなり手法も変わってまいります。それから現在五十一年度規制規制の範囲外にございますところの乗用車以外の車の規制、あるいは使用過程車の問題、そういったものもあわせて今後規制を強化することによって、私は先生の御指摘になるような方向に、これは地域地域によって違いますけれども、いけるものと考えておるわけでございます。
  189. 内田善利

    ○内田善利君 ただいまの答弁に対してもう一言お尋ねしたいと思いますが、それは先ほども東京都の参考人の方からお話があっておりましたが、排出される酸化窒素の六八%は移動性発生源から出るNOだと、こういうことなんですが、このようにNOの発生源が大部分は自動車であるということになりますと、環境基準が、目標が守られないということに対して、いままで一生懸命に努力をされてきたとは思いますが、環境基準が守られないことに対する、まあ国民に対する道義的責任といいますか、そういうものをお考えなのかどうか、この辺もう一度各メーカーの方にお伺いしたいと思うのですけれども
  190. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) どなたか代表で。
  191. 豊田英二

    参考人豊田英二君) お答えを申し上げます。  私どもは、私どもに示されました五十一年規制を何とか達成しようということで、何回も申し上げましたように、最初はきわめてこれはむずかしいということであったわけですけれども、しかしどうしてもやるべき問題であるとして私どもは全力をあげて取り組んでまいったわけであります。しかし本日の段階になって、残念ながらこれができないということを申し上げざるを得ないのははなはだ遺憾に存ずるわけでありますが、ただいまお話がありましたような環境基準との関係については、いろいろな諸般の方策をお考えいただいて、これが達成できるようにお考えをいただくようにお願いを申し上げたいということを申し上げさしていただきます。
  192. 内田善利

    ○内田善利君 もう一言環境庁にお願いします。あるいは運輸省がおられたら運輸省にお願いしますが、もしこの環境基準の〇・〇二が守られない——五十一年度規制か、十一月出てくるであろうと思われる中公審の答申によりまして決定されると思いますが、そういう場合には交通量の削減というような手も私は打つべきじゃないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
  193. 春日斉

    説明員(春日斉君) そういったことも含めまして私ども検討をしなければならぬと思っております。
  194. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは短時間でございますから、端的にお伺いをしたいと思うわけでございますけれども、いま問題になっております五十一年規制の問題がこれほど重要課題になっておるのは、明らかに国民の健康と命を守っていくという立場、それから生活環境を保全していくという立場でぎりぎり一ぱいのところへきておるというところできわめて重大な問題になっているわけでございます。  そこで、最初にお伺いをしておきたいと思いますのは、いわゆる移動発生源の車排ガス公害の人体に及ぼす影響の寄与率でございますけれども、この点で東京都では、先ほどの御報告では約七割近いというふうなお話でございましたし、私大阪ではかねがね大阪は固定発生源のほうが寄与率は高いんだというふうに伺っておったわけでございますが、午前中の参考人のお話では、そうではなくて自動車の割合が非常に大きな影響を持っておる、寄与率を示しておるという旨の御説明がございましたけれども、そういった点はどういうことになっておるのか少し具体的に伺っておきたいと思うんです。
  195. 中川和雄

    参考人中川和雄君) 先ほどお配りいたしました「自動車排出ガス防止対策資料」の一四ページにございます二の二の表をもう一度ごらんいただきたいと思います。全国で一番面積の狭い大阪におきまして、御承知のように堺泉北臨海工業地帯等の臨海工場群並びに大体工場、事業場が六万五千ございますが、多数の工場が立地しておりますので、ただいま御意見がございましたように、昭和四十五年度で推計をいたしてみますと、固定発生源から発生いたします窒素酸化物排出量は十一万九千二百六十トンということでございます。工場が割合で申し上げますと約八割ということになります。これに対しまして自動車が三万一千八百トンで、排出総量に占める割合は二〇%ということに移動発生源がなるわけでございます。しかしながら、御承知のように工場の場合は高煙突等で高所で拡散をされるわけでございまして、地上を走ります自動車と比較いたしますと、地上寄与率といいますか、すなわち一般環境に与えます影響は相対的に低くなってまいるわけでございまして、さきの八対二の割合が逆転をいたしまして、自動車のほうが先ほど御説明申し上げましたように工場の四倍にもなる地点があるということでございます。そういう意味で、私ども東京と立地条件が違いますけれども、やはりこの自動車排出ガス対策というものが重要であるという認識をしておるわけでございます。
  196. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そういう点で従来私ども認識が浅かったわけでございますけれども、特に車公害というのは人体に及ぼす影響というのが非常に大きいということが大阪の陳述では明らかになったと思うんです。最初にお伺いをしておきたいと思いますことは、先ほどからの論議の中で技術論を中心にしてできるのかできないのか、できそうなのにできると言わないんじゃないかというふうな印象を深くするような論議がたくさんあったわけですけれども、私は自動車の排ガス公害というのが光化学スモッグという点で住民に大きな被害と不安を与えているという点が一点でございますけれども、同時に、直接的にその沿線の住民の被害というのが、特に幹線道路等を通じて住民の被害はきわめて深刻になっている。たとえば、これまあ時間がございませんので詳しく申し上げられませんけれども大阪市が四年ぐらい連続して調べておるわけでございますけれども、この資料によりますと、これは同じ行政区で約数百メートル離れて幹線道路と直接影響のない地域との比較対象をやって、住民の意識調査、それから健康調査等をやっておるデータが出ております。どのくらい具体的に出てきておるかというと、たとえば自覚症状では暴露地域——幹線道路の沿線では目の異常というふうに言われているのが暴露地域では二九・五%、対象地域ては——幹線道路から約二、三百メートル離れた地域では一二・七%になっている。それから鼻詰まり、これは暴露地域では二七・二%、対象地域では一六・四%、それからせき——のとの違和感ては暴露地域ては四一・七%、対象地域では二〇%、倍以上になっている。それから、ぜんそくの多発です。これは暴露地域では六・七%であり、対象地域ではゼロなんです。こういった状況がかなり克明に実は調査をされております。時間がありませんから詳しく御紹介は申し上げませんけれども、まず最初にお伺いしておきたいと思いますことは、こういった自動車の排ガス公害によってきわめて人体に深刻な影響と被害を与えておるわけですけれども生産メーカーとしてそういった点の認識をどのようになさっておられるか、これは皆さんにお聞きしたいのですけれども、時間がありませんので、豊田参考人と日産の社長岩越参考人のお二人の御見解を簡単にお伺いをしたい。
  197. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもはこの公害問題について重要な問題であり、また国民の健康上も欠くべからざる問題であるということを十分認識しておるつもりであります。こまかい数字については必ずしも存じてはおりませんけれども、十分私どもはそういった認識のもとに、会社をあげてこの問題に取り組んでおるつもりであることを申し上げたいと思います。以上でございます。
  198. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 大気汚染の問題につきましては重大な緊急を要する問題で、それについて排出ガスが一部の原因であるということについてわれわれとしては十分な認識を持っているわけでございます。したがいまして、この排出ガス規制の問題については全社的に実現に努力するということで現在まいっている次第でございます。その内容につきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、各都市の汚染低減計画というものに対しまして、われわれとしてはその研究のために御協力ということを惜しまないつもりでいろいろ御協力をいたしたいというふうに考えております。
  199. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまそういった人体に及ぼす影響というのは十分認識しているということですね。で、ちょっとお伺いしたいのですけれども、四十八年の十一月三十日の朝日新聞によりますと、本日参考人にお見えの日産の岩越社長さんが、四十八年十一月二十九日の就任のごあいさつの中で、人がばたばた死んだわけではないしという御発言をなさったというふうに報道されております。で、いま承りました御見解とはたいへん違う重大な暴言だと思うのです。午前中から、あらゆる可能性を追及して社会的責任を認識してというふうに言っておられますけれども、しかし昨年の十一月にはこういう御発言をなさったということ、これは報道されているんです。真偽のほどを伺いたい。それから現在の御見解を伺いたい。
  200. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) いまのお話でございますけれども、先般社長就任のときの質疑応答の際に誤解を招きましたことについてはまことに不徳のいたすところで遺憾に存じております。先ほどから申しましたように、人命の尊重、環境保全は最大の課題だと考えて、自動車排出ガス対策に真剣に取り組んでおる次第でございまして、誤解を招いた表現であったということはまことに遺憾に存じております。
  201. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ人がばたばた死んだわけではないしというふうなお考えの基本的な姿勢の上では、これは五十一年規制というようなものはおそらくできないというのは当然だというふうに私は思うのです。その点でメーカー基本姿勢というのはきわめて重大だと思っております。  さらにお伺いをしたいんですけれども、まあ現在では人命の尊重、環境保全が大事だというふうに言っておられますから、これはいまの段階ではそのとおりお伺いをいたしておきます。  それから、もう一つお伺いをいたしたいのは、やっぱり五十一年規制というのができるかできないかと、あるいは技術的に不可能だというふうなことがずっと論議をされておりますけれども、やる気がないんじゃないかというふうに考えざるを得ないというのが先ほど岩越参考人の御発言にもこの一端がうかがえるんですけれども、もう一つはこういう点がある。これは「今月のインタビュー」という百二十二号なんですが、日本自動車工業会専務理事の中村俊夫さんという方が六月の七日に山本治という方とのインタビューでどういうことを言っているか、これはもう企業の姿勢が端的に明らかにされると思うのですけれども、ちょっと読み上げてみたいと思うのですがね。「国際的には五十年、五十一年の排気ガス規制、あるいは全面無鉛化とか、およそ外国人が聞いたら〃ナンセンス〃の一言で片づけられることが日本では強引にやられている。これでは五十一年の四月以降、外国庫は一台も日本に入ってこれなくなるかも知れない。それによって、もし外国が報復的に輸入を禁止したら、日本自動車会社はやっていけませんよ。もっと、国際協調の立場から問題を処理してほしいと思うんですが、どうも日本は最悪の事態が起きないとわからないんですね。」というふうに、これはインタビューで発言のとおりなんですね。自動車工業会の専務理事、これはもと通産省のお役人なんですがね。自動車課長をやっておられた方です。こういう考え方というのが自動車工業会の本音だということになったら、これはほんとうに五十一年規制を本気でやり抜くために努力をしてきたというふうに国民がすなおに受け取れるかどうかということです。そこでお伺いをいたしたいのは、自工会の会長をしておられる豊田参考人に、これがほんとうに自工会の本音なのかどうか、この姿勢について明確に御意見を伺いたいと思うのです。
  202. 豊田英二

    参考人豊田英二君) ただいま御指摘がありました、自工会の中村専務理事がインタビューで申し上げたことについては、若干ことばの不十分な点があるいはあったんではないかというふうに思い、誤解をされたことにつきましては会長として申しわけないと存じております。工業会の考え方は、先ほど来メーカー各位からも申し上げたものの総合計でございまして、十分この問題を重大な問題として工業会をはじめ各社それぞれ全力をあげて取り組んでおるのでございます。中村専務理事の話は若干外国の事情についてお話をしたと思いますが、その外国の事情のお話をするのにあたって誤解を招くような発言があったことをおわびを申し上げます。
  203. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 外国の事情について不十分で誤解を招くということであって、内容は自工会の基本的な御見解ですか。どこがそれじゃ誤解を招いて、どこが不十分なんですか、いまの中村俊夫さんの御見解は。
  204. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 基本的な、何といいますか態度が誤解されるような形になっておることをおわびを申し上げたいと思います。
  205. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは五十年規制、五十一年規制と騒いでいるのはナンセンスだというようなことではないんですね、いまは。
  206. 豊田英二

    参考人豊田英二君) そうであります。
  207. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんから、たくさんお聞きしたいことがあるのですけれどもそれくらいにいたしまして、基本的な姿勢を明確にされたという点になりますと、それでは私はトヨタ、日産のいわゆるビッグツーといわれている両者ですね、この五十一年規制に対する態度というものはきわめて手ぬるいのじゃないかというふうに思うのですよ。これはなぜかといいますと、ちょっと添えますけれども、たとえば本田の参考人杉浦参考人にお伺いしたいのですがね。四十八年の五月二十三日に経団連会館で記者会見をなすって、河島喜好さんとおっしゃるのですね、現在の社長、当時専務だったそうですが、それから川島喜八郎専務ざん、二人が経団連会館で記者会見をして、五十一年規制はCVCCで商品化は可能だと言ってみえを切っておられる。それは昨年の五月ですよ。ところが、けさ午前中の陳述では〇.六グラム・パー・キロメーター、これは責任持ちます、こういうことなんです。去年そういうふうにおっしゃったのがどうして現在では〇.六に後退をされたのか、これはちょっとお伺いをしておきたい。
  208. 杉浦英男

    参考人杉浦英男君) お答えいたします。  たいへん申しわけございませんが、私いま先生がおっしゃった五月二十三日の発言の詳細について明確に記憶をいたしておりません。ただその当時から、いま社長の河島でございますけれども研究所の所長をつとめておりまして、五十一年規制もCVCCで商品化は可能だ、五十一年に可能だというふうに申し上げては決していないと思います。私どもとしては先ほど来申し上げておりましたように、CVCCを用いまして五十一年規制を五十年の規制の延長ととらえております。したがいまして、これで勉強をどんどん進めていけば、研究開発を進めていけば可能であろうというふうな発言であったかと私は理解をいたしておりますが。
  209. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私が聞いたわけじゃないので、あなた御当人じゃないから何に書かれているかということだけ御紹介を申し上げておきましょう。日刊自動車新聞の五月二十四日付です。それに書いてあるのがこういうふうに言われている。ちょっとそのとおり読みますと、記者会見をしアメリカのマスキー法七六年規制について「緩和修正が望ましいと思っているが、現行法どおり実施されてもCVCCエンジン商品化は可能である」というふうにお述べになっておられる。そのあとあれですよ、解説も、できるというふうな解説になっているわけなんです。この新聞記事ではこうなっている。だから昨年の五月にそういうふうにみえを切っておられて、いよいよ実施に踏み切るかどうかという段階になって今度は〇・六だというふうに言われますと、非常にいわゆるビッグツーと比べればずいぶん小さい会社で御苦労なさっている、そうしていい成果をあげておられるというところが、がっと後退をしたというふうに私どもは受け取るわけです、率直に申し上げて。何かがあったのではないかというふうに率直に感じざるを得ない。これはあなたのほうを追及しているのじゃないのですけれども、そういうふうなことがあった。非常に不信を国民の立場としては抱かざるを得ないということを申し上げておきたい。  それからもう一つは、にもかかわらず、あなたのほうは、けさの陳述でも、実験段階では、すでに五十一年規制達成できているというふうなお話だとか、あるいはたとえば運輸省の低公害自動車の審査時のデータというふうなのを拝見いたしましても、マツダ幾つかの車種では、大体〇・三八から、いい値では〇・二九というふうな、五十一年規制に近い数値というのがすでに出されているというふうな状況だとか、あるいは東京都ですでに使っておる車のテストをなさったのでも、これは〇・三に近い値というふうなのがすでに測定をされているというふうな状況を見まして、これはその点についても少しお聞きをしたいんですけれども、時間がありませんので、最後にお聞きをしたいのは、こういうふうに思うんですよね。たとえば東洋工業とか本田技研さんが、自動車業界としてはどちらかというと小さいところで、たいへん苦労して、そうして一定の成果をあげて、五十一年規制の間近まで迫るという努力をなさっておられる。これは私たいへん努力は称すべきだと思います。たいへん努力をしておられるというふうに、これは率直にお見受けするわけです。それに比べたら、午前中から言われたトヨタでは、何かようけい、七百億ぐらいの研究費をつぎ込んで、千八百人の研究陣で、日産も数百億をつぎ込んで、千六百人というようなことをおっしゃっておられて、実際にそうだと思うんですけれども、それだけのばく大な資金と研究陣をつぎ込んで、どうして東洋工業や本田技研さんが到達をしているレベルまで到達できないのか、これは私ども全くしろうととして非常に疑問に思うわけです。これはもう時間がないですから、私、疑問に思う内容を申し上げますから、それについて御見解だけあとで伺いたいと思います。  これは一つは、サボってやる気がなかったんじゃないか、あるいはアメリカのマスキー法が延期されたんで、努力を途中で放棄したんじゃないか、あるいは企業利益の追求のために、開発はされているんだけれども、できないできないと言ってやらないのと違うんだろうか、あるいはたいへん失礼だけれども、両社はきわめて技術水準が低いんだろうかというふうに考えざるを得ないわけです。その点について豊田参考人岩越参考人さんのお二人の御見解を伺いたいと思います。
  210. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、最大の努力を傾け、またあらゆる可能性を追求しましてやってまいりました。しかしながら、五十一年規制につきましては、非常に技術的にもむずかしく、またリードタイムの問題も含めまして、現段階では〇・二五グラム.パー・キロメーター達成はいかなる方法でも達成困難であるわけであります。で、現在私ども達成困難であるということは残念ではありますが、しかし、私ども触媒を使うという方式でアプローチをいたしておりましたので、その方法自身について間違っていたとは思っておりません。触媒を使いまして、初期値においては一応満足するような数字になっておるわけであります。もちろん、耐用年数、耐久力は全然不十分でありますので、実用にはならないのでありますが、そういった状況下にあるわけであります。また、私どもは、本田さんの開発されましたCVCCは有力な手段の一つであるというふうに考えましたので、本田さんが発表されますと同時に、提携をいたしまして、開発をいたしておる。しかしながらCVCCというものは、原理的に重い車が軽い車よりNOxの排出量が多いというものでございまして、現在私ども実験車両を走らしておりますが、その実験車両におきましては、車の重いことを考えますと、ほぼ本田さんと同じような水準にあるのではないかというふうに考えております。
  211. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) ただいまの御質問にお答えいたしますと、当社といたしましても、何とかしてこの五十一年の規制値をクリアしたいということで、研究員を動員して仕事をさしておるわけであります。研究員といたしましても、自分が研究している仕事を早く完成して世の中に認めてもらいたいという努力をしているのは当然だろうと思います。そしてまた私が、その実態を皆さん方にここでもってお話しすることが非常にへたで、十分に御説明できないのがまことに残念なのでございますけれども研究員は一人残らず早く完成したいというつもりで仕事をしております。ただ残念なことには、非常に車種が多いということがございます。いまトヨタさんからのお話のように、車の重い車種もありますし軽い車種もありますし、そのすべてのものができ上がるということでないと、規制値一つでありますし、また技術というものは妥協を許さないというのが技術の根本的な精神だろうと思っております。そういうことで、今日まだできないということを申し上げなければならないということを非常に残念に思っているわけでございますが、アメリカが緩和をしたから対策を抜いたんではないかというような御質問もございますけれども、先ほど来申しましたように、当社といたしましては、それが済んだ、そういうことになった後でも、現在でも三元触媒をやるとか還元触媒をやるとかということで、先ほど御指摘があったように、グルード社との間でもいろいろな技術提携をして進んでおるのでありまして、アメリカの動向いかんでわれわれが研究を停止しているというようなことは絶対にございません。何とかしてやり遂げたいというのが当社研究員の総意でございますことを申し添えてお答えといたします。
  212. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと了解しがたいんですけれども、時間がありませんので、私はここで終わります。
  213. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 東京都の公害局長上田参考人にお伺いしますが、先日行なわれました七大都市自動車排出ガス規制問題調査団、聴聞されたあと、〇・二五に近づけることは可能と考えられるという、こういった趣旨の、これは見解だと思いますが、あるいは何といいますか意見があったと思うのですが、それを述べた理由について、東京都としてはどういうお考えなのか、この点について、時間がありませんので端的にお答えいただきたいと思います。
  214. 上田涼一

    参考人上田涼一君) お答えいたします。  先般十三、十四と行ないました七大都市によります調査団は、自動車メーカーさん九社においでをいただきまして事情を聴取を行なったわけでありますが、その結果を端的に申しますと、一部の学経の先生の印象といたしまして、あるメーカーさんが、これは技術的に解決困難だと言っておられる問題について、他のメーカーさんは必ずしもそれはそれほどむずかしくないというように、そこいらの点で必ずしも統一した形の答えは出てこなかった、また経済的な面、技術的に可能か不可能かということは何を前提とするかということで、自動車の商品としての価値のうち、何を犠牲として考えるかという、これをやはり私たちはこの調査団の調査を通じまして一つのやはり大きな今後の問題ではなかろうかという感じを持ったわけでございます。そこで、先生の最終的なお感じといたしましては、少なくともいまメーカーさんが目標として言っておられる値よりは下回る形で実施ができる技術を持っておられるのではないか、そういう心証を得たということでございます。
  215. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 たとえば、それは具体的に申しますと、東洋の場合はNOx〇・六にするには〇・三から〇・九のばらつきがあるという、こういう説明をしていると思いますが、本田では、〇・二四の場合のばらつきは、これは実用段階になってもプラスマイナス〇・〇七であるという、こういった説明があったと思います。そんな時点をさしておられる、こう聞いてもよろしいんでしょうか。  それからもう一つトヨタの場合、この場合には、触媒が大体三千から六千キロぐらいしかもたないという、こういう説明があったんですが、溶けてしまう、こういった説明があった一方、三菱のほうでは四万五千キロも走れる、そしてその場合に、四万五千キロ走っても、〇・一から〇・七へ劣化、要するに劣っていくだけの話なんだという、こういった、お互いに同じ問題についてもそれぞれ全く違う説明がされているという、そんな点を専門家の立場からそう判断されたと、こう聞いてよろしいんでしょうか。
  216. 上田涼一

    参考人上田涼一君) そのとおりでございます。ただ一点、ばらつきの点でございますが、私どもの理解では、本田さんの言っておられました〇・七という幅は、これは一つのキャブレーターを使ってやられたときの実験値の幅が〇・七である。ただ、それを実際の量産の中で、その幅ではこれはむずかしいだろう、しかし、そういうものは相当コントロールはできるであろうという、そういう御答弁で、東洋さんの場合には、現在実際の量産体制の中でこのばらつきはどうしようもない、そういうようなお答えであったかと思います。
  217. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あと一点だけ。これは各企業にお伺いしたいのですが、自動車の販売競争がたいへん激しいということは公知の事実でありますけれども、そのために、売らんがためのあの手この手が使われている。そんな中で、これは自工会の内部でも大問題になった問だとされておりますが、たとえばこれは三菱自販が本田の自動車を中傷して、本田軽セダン販売打ち切りか、馬力低下で性能上使いものにならなくなってしまう、本田系列店をアタックして三菱系列に引き入れようという、こんな社内の文書を出してセールスに指導したという、そんなことが業界の中で大問題になって、三菱があやまったという、こんな事例もあったようでありますし、さらにこれは、自工会の会長をやっておられるトヨタでも、たとえば交通読売新聞というような新聞の中に、まさにいま買い入れどきだと、そしてそれは、性能低下、燃費の増大、コストアップなどが予想される五十年規制はいま買えばフリーパスだと、そういったことが書いてある新聞をセールスが持って回って、そして売って回っているという、こんな事例が具体的にある。いわば、私どもが理解する限りでは、五十年規制をむしろ商売上一つのてこにして、いままさに公害車をたくさん売り込もうという、いまある設備があるうちにたくさん売って、一刻でもこの五十一年規制を延ばせばそれだけ大もうけできる、こんな姿勢じゃなかろうか、このように販売の面から見ても理解できるわけでございます。そんな面について御見解を伺いたいと思います。これはお二人、日産、トヨタ両方。
  218. 豊田英二

    参考人豊田英二君) 私ども業界におきます販売競争という問題は、まあ非常に競争が激しいというふうに世間でごらんになっておられます。私ども自身がそう思っておるわけではございませんけれども、そういうふうに見られておるわけであります。それでありますけれども、工業会といたしましては、ある程度の範囲の一お互いの話し合いで、何といいますか、たとえば広告宣伝等についてはある程度の範囲で進めるというような考え方をとって現在はやっておるわけでありますが、それ以上はやはりお互いの自由競争で仕事を進めておるというのが実情でございます。いま御指摘のありましたようなことをセールスマンがやっておるということは、私どもの思うこととはだいぶ食い違っておりますので、はなはだ申しわけないというふうに思うわけですが、なかなか末端まで徹底しない面もございまして、申しわけないと考えております。それから現在の車をどんどん売っていこうというようなお話もございましたが、そういったっもりで私どもはやっておるのではございませんで、やはりお互いの仕事を中心にして進めておりますけれども、現在の規制前の車を無理やりにうまい話をして売り込もうというようなことを考えておることは全然ございません。また、かりにそんなことをしても、私どもとしては必ずしも利益があるわけではございませんので、そういったことを考えてやっておるメーカーはないであろうというふうに考えます。
  219. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 自動車の販売につきましては、これは自由競争というたてまえで販売をやっておることは事実であります。お互いに公正な取引をしようということで、割賦の条件にいたしましても、通産省から御調査もありますし、われわれといたしましては、そういう範囲の中での競争として、お客さんがどの車を選ばれるかということで、われわれの車の性能を販売するのだと、こういうふうに考えておるわけでありまして、よその車を批判するとかということで需要を喚起するというような考え方は毛頭ございません。また先ほど、来年の車が出るまでによけいつくって売るのではないかというお話がございますけれども、そういったことも全然ございませんで、先ほど申しましたように、この上期の総生産台数から申しましても、前々、前期に比べて三〇%も減っておりますし、多少下期の需要というものが起きてくるかもしれないということを考えましても、対前年、あるいは前々年よりも多く生産をするというようなことも実際問題としては考えておりません。したがいまして、われわれといたしましては早く五十年規制の車を販売したい、こういうことでいろいろの研究あるいは生産の準備を進めているというのが実情でございます。
  220. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一点、四十九年八月十四日付の日刊自動車新聞というその記事によりますと、トヨタカローラ兵庫でありますが、社内に教育委員会をつくっていろいろセールスの教育をすると、その中で、戦術としてはセールストークの基本を、ガソリン無鉛化に関するもの、排ガス五十一年規制の内容に関するもの、こういったことがございますね。先ほどの新聞の残った、売ったというような面から見てみますと、まさに五十一年になるとたいへんだから、いまのうちに買えということをセールスポイントにしているというぐあいにしか考えられないわけです。もしそうでないというなら、これは十分に社員教育を、再教育をされたいと思います。と同時に、いまのお二人の発言でもありましたが、いまの設備を使って売れるだけ売ってしまうという気はないんだと、こうおっしゃるなら、いままさに人命にかかる大問題になっているこの五十一年規制に到達するために、もしそこに少しでも近いものが先発メーカー開発された場合は、いまある設備をやめて新しいものに切りかえるまでには一定の時間がかかりましょうけれども、直ちにそれをやめてでもその生産に取りかかるといった意思があるかどうか、この点をトヨタ、日産それぞれお伺いしたいと思います。
  221. 豊田英二

    参考人豊田英二君) セールスマンの教育の問題でありますが、いまお話がありましたように、無鉛化の問題あるいは五十年規制の問題というのは、これを私どもメーカーとしてつくりましてお客さんにお売りをするわけでありますけれども、私どもが企図したような使用をしていただく、あるいは取り扱いをしていただくということが非常に重要な問題であります。で、そういった問題が十分でありませんと排ガスが思ったようにいかないとか、あるいは安全の問題において問題が起こるとか、いろんな問題があり得ますので、やはり私どもとしては、こういった新しいものについてはよほど十分にセールスマンに教育をいたさなければ目約を達することはできないという考え方でございまして、無鉛ガソリンの問題あるいはいまの五十年規制の問題等についてはセールスマン教育あるいはサービスマン教育の実施をしておるわけであります。それと先ほど御指摘がありましたような問題とは若干違う問題であるというふうにお考えをお願いしたいと思うわけであります。  それから次に御質問がありました問題でありますが、私どもはできるだけ早く無公害の車を、五十年規制に合う車をつくっていきたいということで、いま懸命な努力をいたしております。また、それはすでにスケジュールに乗っておるんでありまして、このスケジュールどおりにいま進めることが最も早く目的を達することができるというふうに考えておりますので、どうかそのように御理解を賜わりたいと存じます。
  222. 岩越忠恕

    参考人岩越忠恕君) 五十年の規制車をつくるということに対してわれわれもスケジュールを組んでおりまして、すでに型式の検査を受けるというところまでスケジュールを立てておりまして、それには何よりもまず工場からつくらなければいけないということでございます。工場をつくり、型をつくり、そして生産をして取りつけるということで、そこらにすぐつくれということでできるものではないという、非常にこの五十年規制につきましても、日本規制値というものはほかの国に比べて、またアメリカの暫定規制値に比べましても四倍ぐらい日本のほうがきつい内容になっております。したがいまして、そういった性能のいいものをわれわれがつくり上げるということに対しての生産から計画をしておるんでありまして、きょうやめてすぐにできるか、こういうものでもございません。また触媒にいたしましても、その内容でございますけれども、これの製造技術あるいはそれに対してどういうふうに含浸するかという問題非常に新しい技術を要するものはたくさん入っておりまして、われわれとしては一日も早くそういった技術を完成しなければ、でき上がった商品というものに対しての信頼というものが持てないということでは困るというふうに考ええやっておるんでありまして、御趣旨には沿ったつもりで生産をやって計画をしておるというふうに御了解願いたいと思います。
  223. 三治重信

    三治重信君 だいぶ時間もたちまして、重複を避けて御質問をさしていただきたいと思うんです。  本日の陳述人の説明によって、また学者の参考人からもお話を聞きまして、五十一年規制というのはなかなか技術的にむずかしいというふうに感じております。そして各社もこの五十一年規制を直ちにやる分については御猶予願いたいというのが従来一貫の姿勢で、今日においても私はあまり変わっておられないように感じます。したがって、この規制値をとことん政府が推していくと、こういうことになりますと、たいへん国民経済的にも混乱を来たすんではないか、そこに何らかのコンセンサスを必要にする段階にきたんじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、環境庁の責任者、全体としてひとつ今後この五十一年規制というものについて技術的に不可能なものと感ぜられるわけですけれども、そういうものに対していま現在どういうふうに考えておられるか。
  224. 春日斉

    説明員(春日斉君) 五十一年度規制値いかにあるべきかということにつきましては、先般から繰り返しておりますように、ただいま中公審の自動車公害専門委員会のほうで鋭意検討中でございますので、その結論によって判断いたしたいと考えております。
  225. 三治重信

    三治重信君 それから大阪東京中川さんと上田さんにお聞きしますんですが、この五十年規制が完全に実施されますと、新車一台当たりで一.二〇だと規制前のNOxの排出量が三九%に規制されると聞いておるわけです。もしもこれでいきますというと、どの程度今後このNOxが改良されるか、これでもなお光化学スモッグなんかが起きる可能性が非常に強いと、これではあまりたいして関係ないのかどうか。ひとつ大体のところと申しますか、そういう研究はされているかどうかお伺いをしたいと思います。
  226. 中川和雄

    参考人中川和雄君) 先ほど御説明を申し上げましたように、五十年規制で移行しました場合は、現状維持でまず五十三年ぐらいまでいけるんじゃないか。それから五十一年規制予定どおり実施されました場合は、車の相当な伸びを考えましても、五十四年のまん中ぐらいまでは削減はある程度期待できるんではないか。しかし、いずれにいたしましても、大阪の都心部のようなところではそれでは環境基準の達成が困難であるということでございます。
  227. 上田涼一

    参考人上田涼一君) 先ほど沓脱先生の御質問で、固定発生源と移動発生源の寄与につきましては地域的な違いがあるという、その旨が大阪参考人のほうから出ております。東京の場合には、御案内のように、固定発生源の比率が大体三割くらい、それから移動発生源が圧倒的に多くて約七割という寄与率になっております。そういう前提でございますので、東京の場合には、やはり自動車に対する規制いかんに、規制がどういうふうになるかということがかなり大きな影響を持ってまいります。かりに五十年規制のままでまいりますとしますと、五十一年度規制が行なわれる場合に減ると思われます約一万八千トン、これは減らなくなるわけでございます。そういうことで、先ほど五十二年度で、環境基準に対して約一千トンまだ積み残しがあると、これは五十一年規制を前提とした場合に一千トンと申し上げたわけでございます。これにさらに一万八千トンが加わってまいります。こういうことで、一千トンの場合には、これはまあ交通量といたしますと、約三%ぐらいの規制で済むだろうと。これを五十五年度まで延ばした場合にどうなるかということでございますけれども、先ほどお答えいたしましたように、五十五年度では五十一年度規制が行なわれた場合に考えられる削減度は三万六千トンとふえてまいります。これが結局そのまま積み残しになりますので、五十一年規制が完全に行なわれた場合にも、なお五十五年度において七千トンの積み残しがあるわけでございますが、それにさらに三万六千トンが加わってまいるということで、これはやはり環境基準に対してそれだけのまだ悪い状態でございますので、かなりなやはり被害その他光化学なるものの発生は考えられるというふうに考えます。
  228. 三治重信

    三治重信君 このNOxの規制につきましての検査の問題でございますが、これはおもに運輸省かと思いますが、実施の機関で、この一・二〇をさらに低下さしていきますというと、測定器具が現在開発が非常におくれていて、または測定技術的にもばらつきが非常に出てくるんだと、こういうようなことを聞いておりますけれども、もしもこれを実施していく場合に、この調査や検査機械器具、またそれの技術者、技能者、その機械メーカーというものの指導体制生産というものは万全でいく計画はお持ちでありますかどうか、お伺いじます。
  229. 田付健次

    説明員(田付健次君) 五十年規制、五十一年規制、いずれも新車に対します規制でございますので、メーカーが車をラインオフするまでの間に所要の設備で試験をするということができますので、少なくも新車のテストをする限りにおきましては、これはしかるべき技術者がおる場所で相当な精度を持ったNOの測定ができるものと信じております。ただし、使用過程車になりますと、これは車検場で検査をしなければならなくなります。こうなりますと、実はまだそれらしい測定器が現在ありませんし、今後の問題として残ってまいると思いますが、現在問題になっております五十一年規制につきましては、メーカーにおいて測定する限りにおきましては一応できるというふうに考えられます。
  230. 三治重信

    三治重信君 いまのお話だと、新車の試験許可をするといいますか、試験する場所においてはだいじょうぶだけれども、実際に町に走っている自動車についての今後のNOxの検査という体制は全然まだ考えられていないみたいなんですが、それは別に考えなくても、またこれはどこで実施するのですか。どちらでもけっこうだと思いますが。
  231. 田付健次

    説明員(田付健次君) 実は使用過程車の段階規制につきましては現在NOxの規制がございません。現在までにありますのは、一酸化炭素炭化水素についてございます。これはいずれもテスト機器が開発できておりますので、車検場に備えまして検査をいたしております。お考えをいただきたいのは、現在使っている過程での検査をするということになりますと車検場での検査になりますので、まあ率直に言ってわりあい短い時間に能率をあげて検査をしなければなりませんので、そのための便利なテスターがほしいと、こういうことになるわけでありますが、将来ともそのことにつきまして対策をとっていかなければならないということになろうかと思いますので、テスターの開発はこれから進めてまいるということでございます。
  232. 三治重信

    三治重信君 以上でおわかりのように、日本のいまの自動車規制は、私はまだエンジン自動車そのものの規制にあまり熱中し過ぎておって、全体の環境、それとパラレルに進む関連の規制体制というものがほとんどできていないような気がいたします。そしてこのアメリカがマスキー法をつくって、またさらに延長するというおもな理由は、私はこの技術よりむしろ石油パニックのいわゆる経済的な影響のほうが強いと聞いておりますけれども、しかし、このNOが非常に技術的に困難なのに挑戦をしていく場合に、ただ、自動車メーカーにどうしてもやれと、これでもまだかと、こうやってみても、やはり国のこれに対する指導体制というものができないと私は非常にまずいんじゃないか。それでひとつ環境庁にお願いいたしますが、アメリカのほうでは、こういう技術的な問題につきましてはNASという、アメリカの全米科学アカデミーと、こういうふうな法律までできて、非常に大きな組織ができて、これが各部面で社会的な問題が出てくると、その道の専門家だけでなくて、関連の部面の学者を各分科会に集めて、そうして検討をしていくと、こういうふうなことを聞いておりますが、こういう問題について、やはりわれわれのこの排出ガス規制については、いままでの日本のわれわれがやっていた行政のように、ただ審議会を一つつくって、専門委員を集めて委嘱して、そうしてそれに対して中間答申を求めて、それで行政をやっていくと、これではおさまらぬようになってきたんじゃないか。どうしても、そこに技術者を、個々でなくして、それに関連する部面も広げて、それがバランスをとれて改善をされていく体制をとりませんと、いま、この自動車規制は世界最先端、どこの国にも例のない、日本で世界に最先端をとってやっていく技術開発、こういうことからいきますと、私は非常にそういう環境庁として技術者を単にそれぞればらばらでなくして、もっとNASのように、それぞれの問題について適時ひとつ総合的に各部面で一緒に行動して活動していく体制が必要じゃないかと思うのですが、そういうことについて、環境庁のほうでは排出ガスの今後の政府の取り組み方の問題についてどういうふうにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  233. 春日斉

    説明員(春日斉君) ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスの活動と申しますか活躍につきましては、私どもも心得ておりますが、それと同じような組織が日本にはないことは事実でございます。まあいわば学術会議というような組織がそれに当たるのかもしれません。しかし、私どもは直接NASに相当するものとしては、やはり中央公害対策審議会というようなもの、さらに、その下にあるそれぞれの専門委員会というようなもの、これがそれに相当するのであろうと思います。さらに、それをささえるものが環境庁公害研究所であり、それから運輸省、通産省のそれぞれ国立の専門研究所であろうと思います。さらに、そういったもののバックといたしましては、各大学研究所等の御研究もあろうかと思います。しかしながら、アメリカがNASという組織を使いこなしているということは、私どもうらやましいわけでございます。できる限りそういった先生の御指摘のような方向に、私どもは単に排気ガスの問題のみならず、公害行政一般を考えてまいりたいと、さように思っております。
  234. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) それでは本件に関する本日の調査はこの程度といたします。  参考人の方々には、朝以来、たいへん長い時間御意見をお述べいただきまして、いろいろ参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会