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1974-08-09 第73回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月九日(金曜日)    午後一時二十六分開会     —————————————    委員の異動  八月一日     辞任         補欠選任      三治 重信君     柄谷 道一君  八月九日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     三治 重信君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴園 哲夫君     理 事                 大谷藤之助君                 原 文兵衛君                 栗原 俊夫君                 内田 善利君     委 員                 藤井 丙午君                 久保  亘君                 矢田部 理君                 小平 芳平君                 沓脱タケ子君                 近藤 忠孝君                 三治 重信君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  毛利 松平君    説明員        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        環境庁企画調整        局環境保健部長  橋本 道夫君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        環境庁水質保全        局長       大場 敏彦君        水産庁研究開発        部長       佐々木輝夫君        通商産業省産業        政策局消費経済        課長       斎藤 成雄君        通商産業省立地        公害局長     佐藤淳一郎君        運輸省自動車局        整備部長     田付 健次君        労働省労働基準        局長       東村金之助君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (環境行政についての所信表明に関する件)      ——————————
  2. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  去る七月十二日就任されました毛利環境庁長官から環境行政に関し所信を聴取いたします。毛利環境庁長官
  3. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 先般私は、はからずも環境庁長官を拝命いたしました。ここに就任のごあいさつを申し上げますとともに、環境行政に関し所信一端を申し述べたいと存じます。  今日、環境問題は、緊急に解決を要する重要な政治的課題一つであり、私は、国民の健康を保持し快適な生活環境を確保するという大きな目標のもとに、公害自然破壊防止のために、全力を尽くしてまいる所存であります。  大気や水などの環境資源は限られたものであり、一たび破壊によって失われた環境を回復することはきわめて困難なことであります。  私は、このような認識のもとに、発生した環境破壊を、あと追い的に処理するという受け身の政策に終わることなく、長期的、広域的観点から環境破壊未然防止するとともに、すぐれた人間環境を創出するという前向きの政策を展開してまいる所存であります。  具体的には、まず、公害の発生及び自然環境破壊未然防止するため、各種公共事業地域開発にあたっては、その計画の各段階において、環境に及ぼす影響防止策を事前に十分に審査する環境影響評価をさらに積極的に推進し、その確立をはかってまいりたいと考えております。  また、公害規制の一そうの強化をはかるため、各種公害にかかる環境基準排出基準設定見直し強化等各種施策を総合的に推進してまいる所存であります。特に、いわゆる総量規制につきましては、先般大気汚染防止法の一部改正案を御審議いただいた際における当委員会の御論議を踏まえ、目下、硫黄酸化物についてその実施上の細目検討を急いでいるところでありますが、硫黄酸化物以外の物質についても技術的な問題を解決し、できるだけ早期に対象物質に加えることとしてまいりたいと考えております。また、水質汚濁対策といたしましてもすみやかに総量規制を導入すべく努力してまいる所存であります。  自動車排出ガスの五十一年度規制につきましては、先般、自動車メーカー九社からその技術開発状況等について聴取したところ、ほとんどのメーカーにあっては、現状において完全に五十一年度規制目標を達成することは困難であるということでありました。私といたしましては、できる限り既定方針に沿った規制実施したいと考えておりますが、内容が技術的、専門的なものでありますので、目下、中央公害対策審議会で御検討いただいているところであり、この結論を持って最終的な判断をいたしたいと考えております。  また、公害による健康被害につきましては、公害健康被害補償法により補償給付支給等措置を講ずることとしておりますが、目下、その実施上の細目につき、中央公害対策審議会で精力的に御検討いただいているところであり、その結論を得て、近く、政令の公布をいたしたいと考えております。  公害防止と並んでいま一つ重要な環境行政の柱は、自然保護の推進であります。美しい国土、豊かな自然を保護し、これを次の世代に伝えるのは、われわれに課せられた責務であり、このため、昨秋明らかにした自然環境保全基本方針にのっとり、自然環境保全調査の結果をも参考として原生自然環境保全地域等地域指定の促進をはかるなど、積極的な自然環境保全政策を進めてまいる所存であります。  以上、環境行政に関し所信一端を申し述べましたが、これらの課題を達成するためには、子算面においても、また制度面においても、一そうの充実をはかる必要があると考えます。  私は、環境庁長官として、国民の健康の保持及び生活環境保全を確保するという環境行政の使命を達成すべく、全力を傾けてまいる所存でありますので、皆さま方の御支援、御協力を切にお願い申し上げる次第であります。  何とぞ、よろしくお願いいたします。
  4. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) それでは、本調査に関する質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 ただいま毛利長官から所信表明がございました。前長官三木さんのあとを受けて毛利長官がこれから公害並びに環境保全行政してまいるわけでありますが、もともと、現在の田中内閣がどうも金を中心とした政治を推し進めておる、まあこういうことが先般の選挙では大きく批判されたと思うのでありますが、公害はやはり金もうけと決定的に矛盾をした方向であらわれてまいりますから、こうした問題について新しくその任につかれた長官は、金もうけに主力を注ぐ田中内閣の行き方の中で、人間を大事にしなければならないという重要な部門を担当されて、基本的にどういう姿勢でこれから行政に臨まれるか、まずこの点を伺っておきたいと、このように思います。
  6. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 前長官の趣旨をよく体得いたしまして、人間尊重自然尊重立場を堅持しながら問題の処理に当たりたいと思います。
  7. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 何と申しましてもいわゆる公害というものは人間の存立をきわめてきびしく脅かしております。よごれた海では魚の背骨が曲がるというようなことが報道されており、農民が飼っておる家畜にも、牛や豚にかたわなものが生まれてくる、こういうことが報道されております。こういう問題が人間に無関係であるはずはありません。したがいまして、こういう公害を排出する排出源に対してどこまできびしく立ち向かっていけるか、これがやはりこれからの長官に課せられた重大な任務であると思いますが、ただいまいろいろと問題になっており、特に自動車排気ガスの問題等々につきましても、ただいまの所信表明によれば、既定された方向でやりたいけれども技術的になかなか問題がある、まあこういうお話です。もちろん技術的に解決しなければならぬ問題でありますが、それでは技術的に解決されなくても、されないままにやむを得ずということで押し流されていくのか、人間ほんとうに危険が迫ってくる、こういうことをきびしく認識するならば、技術的に解決されないまでどうするんだ、こういう問題が当然大きく長官の上にのしかかってくると思うんですが、これは一つの例でありますけれども、事業が進んでおる、しかしその事業人間に危険を及ぼすものを排出する、こうした二つの問題を含んでおるときに、基本的には長官はどういう態度で臨もうといたしますか。この辺は今後のこの行政に対する一番重大な一つのポイントであると思うんです。ものさしであると思うんです。新しく大任を受けられた長官としてこの辺をきびしく進んでいただきたいと希望いたしますが、長官所信をお伺いいたします。
  8. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 人間尊重があくまでも基本考え方でありますが、本件につきましては技術的な可能性に対するいろんな議論もあり、また専門的であり技術的であり、目下、中央公害対策審議会において審議継続中でありますので、この結論を待って、より広く、より深く問題の所在検討いたしまして結論を出したいと、こう考えております。
  9. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 これはある社会主義国の話でありますが、もちろん人間の英知がいろいろなものを考え人間生活を豊かにするために新しいものを次々に開発し、そしてこれを生活に寄与していくと、その方向は当然でありますけれども、いかに人間生活を豊かにする面でりっぱなものができても、その生活過程において同じ人間生命を脅かするようなものが副産物として出てくる、廃棄物として出てくる、こういう場面において、いかにりっぱなものができてもその生産過程人間生命を脅かすようなものが出てくる場合には、これを解決するまではこれを具体的な産業として製造に移させない、こういうことを言っておりますけれども、わが国においてはこういう問題について長官はどのようなお考えをお持ちでしょうか。りっぱなものができた、しかしこれをつくるにはどうも人間被害を与えるものが生産過程で出る、それが解決できるまでは幾らいいものができてもこれは生産に移させないというきびしい姿勢で臨みますか。この辺はいかがでしょう。
  10. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) いままでは汚染並びにこうした廃棄物に対する経験、なれ、検討というものが特に日本では足らなかったと思うんです。おそまきながらこうした問題に対する知識も検討も積み重ねてまいっております。そういう背景のもとに、あくまでも人間尊重を基調に置いてこういう問題の処理に当たらなければならぬ。いま先生がおっしゃるように、人間におそろしく害のあるものを目撃しながらそれを見のがすことは許せない、こう思います。
  11. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 これはまことに子供らしい一つのたとえごとなんですが、私が推理小説を読んだ中で、人を殺すのに、食べものの中にガラスの粉をまぜてある程度時間をかけて相手を殺すという推理小説を読んだことがありますけれども、いま出ておる公害、いわゆる公害廃棄物の中で、一度に消えてしまっていいならいいけれども、だんだん累積されていって、人間にたいへんな害を与える、こういうものがたくさん出ておるようであります。まあカドミあたりがその一つの例だろうと思うんですけれども、こういう問題があるときに、まあ少しく薄いからいい、ガラスの粉もあまりたくさんやってはいかぬが、少しならいいんだ、こういうようなものの考え方でやったんでは、これはたいへんなことが起こると思うんですが、まあ具体的な問題で申しますと、私群馬の出身で、四大公害一つとして安中公害というものがあります。で、これ初めどういうことが起こったかというと、初めあの流域で住んでおるコイが死んだと、その公害源安中東邦亜鉛から出ている、まあこういうことでした。当時私は県会議員をやっておりましたが、その問題を解決するために、それでは東邦亜鉛コイ池をつくって、コイ池の中を水を通してコイが死ななければいいではないかと、まあ当時としてはなかなか知恵を使ったつもりでやったわけなんです。ところが、その後コイが生きておってもこれはだめだと、重金属はコイにどんどん沈着していくんだと、まあこういうことがその後明らかになってきたわけです。で、いろいろ問題が起こっておるわけなんですが、いまでも東邦亜鉛営業は続けられております。で、付近人たちはまあ非常に恐々としておるわけなんですが、そこで私がお聞きしたいのは、これは決して公害源が多数ではない、単独の公害源である、こういうことですね。で、たいへんまあいろいろと御指導をいただいて薄められておると、こうは言っておりますけれども、やはりだんだんと累積することによって、付近人たちはたいへんな財産的にも土地土地でなくなるような危険が再び進んでいく、また命にも危険を感ずる、まあこういうことなんですが、ここで私は付近人たちに、絶対に出ないということを保証してもらうまでは承知はできまい。そこで、もし付近住民財産の危険、生命の危険を感じて中止を求める。中止を求めても一方ではこれは中止をしません。こうした場合に、私はきわめて具体的な命の危険を感じたときには、当然刑事的にも正当防衛というものが出てくると思うんですが、こうした問題に対して正当防衛、少なくとも緊急避難というような考え方が成り立つかどうか。緊急避難として、付近人たちがそうした被害を免れるためにある行動を起こす、こうしたことが認められるかどうか、そういうものの考え方に立てるかどうか、毛利長官所信をお尋ねいたしたいと思います。
  12. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 環境基準並びに排出基準を、そうした問題の弊害排除をするように、よりきびしく取り扱うということに問題の所在があろうかと思います。
  13. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 いや、いま少し親切に答えていただきたいのですけれどね。ただここで私がこうして質問しているのは栗原委員一人の質問ではないんです、これは。実際に財産を刻々と侵害され、さらには大切な命までも危機に追い込まれておる人たちの血の出る心持ちを私の口を通じて長官に問いただしておるわけなんですからね。したがって、これでほんとうに間違いないんだと言い切れる段階にいわゆる公害なるものが解消される技術的な徹底がない限り、やはり付近人たちはこれはものその危機を免れることはできません。そこで、そういう状況に置かれておる人たち自分財産を守り自分の命を守るためにある行動を起こす。決してその施設を破壊するとかそういうことではありません。ただ言えるのは、水をとめればこの事業はとまってしまうんですよ、水をとめれば。水をとめた場合にね、そのことが一方的に資本を守るという立場営業を妨害したという面からだけとらえられるのか。自分たち財産を守り命を守るために行なった正面防衛とまでいかなくても緊急避難としての行動であるという立場がとれるのか。現実にはすぐに命にかかわりがある、すぐに財産がゼロになるということではありません。現にその付近は今日まで土地土地の姿であったけれども、その土では何もつくれない。こういうことで現実に土の入れかえをやっておることはすでに御承知のとおりだと思うのですけれども、やはり緩慢ではあるけれどもそういう事態は依然として続いております。このことに対して付近住民は生きる人間として承知ができぬ、がまんができぬ、しんぼうができぬ、こういう立場に立つのは私はこれは当然だと思う。この場合にいま言うような行動が許容されるか、許されるかどうか。そして環境庁長官立場からそれは刑事的にはそうはまいりませんというのか。それは現実にたとえ遅々として累積されていくにしても、財産破壊され命が刻まれていくと、こういう事実がある限り、やむを指ざる緊急避難考えられる、このようにお考えなのか。これは非常にきびしいところですから、ひとつまあ御相談なすってお答えになってもけっこうですから……。
  14. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 住民サイドに立ってより理解のある態度でそういう事態の起きないように、いま先ほど申し上げましたような環境規制排出規制等にきびしい処置をしてまいりたいと、こう考えております。
  15. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 具体的には、もしもその事業が運営されることによって付近にたとえ遅々としてであっても累積されることによって付近住民財産を侵害し、付近住民の命をそこなっていくということが実証される限り、これには進んで徹底的な指導、ときには営業を停止する、こういうことまでもお答えになる所存でありますか。
  16. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) ただいまいろいろ御指摘ございますが、私ども法律の体系としましては、水質汚濁防止あるいは大気汚染防止その他いろいろな面にわたりまして過去整備をやってまいったわけでございます。法律上の権限もいろいろ与えられておりますから、たとえばいろいろ事故の問題が起こるとかそういうことがございますれば臨機応変に幾らでも対応できる道があるわけでございますが、現実の姿としましては、現にいろいろ問題が残っておるとは私ども思っておりません。むしろ過去のものがいろいろ残っておるにつきましては、いま御指摘のように土壌の改良その他を十分やっていかなきゃならぬ、また、もし問題があれば住民の側からする各種の御意見につきましては十分耳を傾けまして今後の制度改善等考えていかなきゃならぬと、こう思っております。
  17. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 いまのお答えによると、いま営業をしておるあの状況では心配はないんだと、こう言い切っておるわけですか。心配はあるんだけれども営業をとめるまでの危険はないんだという認識なんですか。その辺はどうなんですか。
  18. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 私ども、通常の形で営業されておる限りにおきましては、環境基準あるいは排出基準、こういうものを前提として規制をやっているわけでございますから問題はないと思っております。ただ、もし問題があるとすれば、その先に向かいまして、さらに新しい科学的知見等に基づきまして環境基準なり排出規制なりを強化していく、こういう方向で対処すべきであると思っておるわけでございます。
  19. 栗原俊夫

    栗原俊夫君 どうもいままでのあり方を見ておると、やはり企業の面に何としても偏向をしておるというような気分が免れないわけですよ、これは。そういう点について、先ほど私が長官にも伺いましたとおり、りっぱなものができたけれども、それを製造する過程においてある程度人間被害を与えるものが付き添う、こういうものについて新しく危険を包蔵したまま許すのかどうかという質問をしたわけなんですが、それはしないんだというなら、既設のものについてはどうなんだというのが私の聞きたいところなんですよ。すでに営業を始めちゃってるから、それを押えたのではあまりにも資本に対して影響が大き過ぎる、こういう立場で、つい惰性に乗ってずるずるとなっていく危険が多分にある、ここのところが非常に大切なので、端的に言えば、そういう形でやっていけば、何世代か先には日本人はかたわになっちゃいますよ、これは。そんな調子で、もし、基本的に公害環境保全のためにがんばる役所が、あちらの資本、こちらの資本に気がねをしながらやっていけば、あなた方の責任で守らなきゃならぬ日本が、日本人が、日本民族がこれはとんでもないことになるということをやはりきびしく胸にこたえてやってもらわぬと、これはとんでもないことになると思うんです。  ひとつ、新しく三木さんのあとを受けて引き受けられた毛利長官所信表明にもきびしい所信表明は出ておりますが、ひとつぜひとも、いろいろ今日進んだ文明開化の中でりっぱないろいろなものをつくり、人間生活を豊かにすることも大事であることはそうです、しかし、そのことにかまけて、守るべき人間を侵害し、人間をとんでもない方向へ持っていくようなことになってはたいへんだ、このように思いますので、ぜひとも、何もおそれずに日本民族を守るんだという基本的な強い信念で今後進んでいただきたい、このように心から希望いたしまして、以上で私の質問を終わらしていただきます。
  20. 久保亘

    久保亘君 先ほど長官所信表明をお聞きしたのでありますが、所信表明を単なる作文に終わらせないために、いま環境庁長官の真価を問う試金石となっているものは、五十一年規制中公審から答申をされております自動車排出ガス規制の問題であろうかと考えるのであります。この問題について、所信表明の中で、五十一年度規制についてはできる限り既定方針に沿った規制実施したいと言われておりますが、実際に長官が今日とられております措置は、中公審に対して、企業側要請背景にしながら再審議中公審に次められているということでありまして、この点については国民の側にはたいへん不満が多いわけであります。  それで、私がこの点に関して長官にまず基本的にお尋ねをしたいと思っておりますことは、中公審が四十七年の十月に答申をいたしました、この自動車排出ガスの五十一年度規制窒素酸化物に関する一キロ走行について〇・二五グラムの根拠はどこから生まれているのかということであります。特に、この〇・二五グラムという数値根拠が、国民の健康を守る一つの限界としてとらえられているのかどうかということについて長官の見解をまず明らかにしていただきたいと思います。
  21. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 先ほど再審査というおことばがありましたが、再審査といえばそうかもしれないですけれども、実は継続中であります。それは一点訂正を申し上げておきますが、その当時の経過についてはむしろ局長説明をさせます。
  22. 春日斉

    説明員春日斉君) 先ほど先生の御指摘がありましたように、昭和四十七年の十月三日に、「自動車排出ガス許容限度長期設定方策について」という中間答申中公審から長官のところに出されておるわけでございます。その中で、五十一年度規制のいわゆる〇・二五グラム・パー・キロメートルという目標は何を基準にしているかというお話でございますが、これはこの答申の中にも書いてございますが、「昭和五十年度ないし五十一年度を目途とした自動車排出ガス許容限度設定目標については、国民の健康の保護および快適な生活環境保全を図るとの基本的立場に立って、」云々、こういうことを述べておるわけでございます。
  23. 久保亘

    久保亘君 国民の健康と快適な生活環境を守る一つの限界的な数値として〇・二五グラムが設定をされたとするならば、そのことをどうして国民の健康を守るために実施をするかという立場環境庁がいまやらなければならない任務があると考えるわけです。  それで私がお尋ねしたいのは、四十七年に答申をされたものが、その後技術的、専門的理由延期または暫定的な規制値に緩和せざるを得ないかのような印象を与えるような形で中公審にさらに審議要請をされるという形になってくるまで、一体この問題について環境庁自動車業界は真剣にこの四十七年の答申実施するために技術的な面について努力をしていたのかどうか。それが五十一年規制にぎりぎり、もうどうにもならない時期がやってくるところで聴聞を行なうという形で業界からその実施は困難であるという回答を引き出して、そうしてその業界要請背景にして暫定規制値に緩和する。それだけではなくて、いま自動車業界が言っていることは実施延期であります。延期規制値暫定値への緩和というような二つの条件をもしも環境庁が認めるような形で進むとするならば、これはたいへん大きな問題であって、四十七年に答申をされた精神に基づけば、国民の健康を守るとか快適な生活環境を保持するということを環境庁がみずから不可能にしてしまうことになりはしないかと思うんですが、この点について重ねて御見解を承ります。
  24. 春日斉

    説明員春日斉君) 重ねてこの中間答申先生の御発言でございますので引用さしていただきますと、この中間答申の中で、「この許容限度を達成するにあたっての防止技術の開発可能性について検討した結果、一部には米国の一九七〇年大気清浄法改正法が予定している規制に準ずる規制目標の達成には実用面においてきわめて困難であるとの見解はあったが、実用化を含めてその開発は必ずしも不可能ではないとの見解に達した。」ということでこういった目標値が与えられたわけでございます。非常に四十七当時の技術的見通しとしてはきわめて困難ではないか、しかし無理をすればできるのではなかろうか、こういうかっこうで目標値が与えられておるわけでございます。ところで、その目標値を実際に行ないます許容限度設定ということで行政化するにあたりましてはやはりこの中公審の中で特に指摘してございます。すなわち、それば「なお、許容限度設定にあたっては、防止技術の開発状況を勘案して行なうべきであり、」これが私どもが五十年規制を行なうにあたってヒヤリングを昨年行ない、それから五十一年度規制を行なうにあたって今回六月に約二週間にわたって行なったゆえんでございます。それから「防止技術の開発状況を勘案して行なうべきであり、その場合においても、許容限度設定年次をいたずらに遅らせることは厳にさけるとともに、技術的に可能な限り最もきびしい許容限度設定を行なうものとする。」と、こういう御指摘がこの中間答申にはあるわけでございます。私どもは本日から中公審大気部会の下に自動車公害特別委員会を設けまして、本日からその審議に入っておるわけでございますけれども、必ずしも先生がおっしゃるように、その審議の中で中間値と申しますか、暫定値と申しますか、そういったことを論議されることがおかしいというわけには私まいらぬと思います。すなわち、ここにございますように、「技術的に可能な限り最もきびしい許容限度設定を行なうものとする。」という御方針がございますので、その趣旨に従って現在委員会検討が行なわれておる、こういうことでございます。
  25. 久保亘

    久保亘君 私がお聞きしているのはですね、「防止技術の開発状況を勘案し」という答申の文面があることは承知をいたしておりまして、そしてその上でなお環境庁並びに業界に対して国民立場から不信を持ちますのは、これを一つの五十一年度規制をのがれるための抜け道に非常に利用するというやり方をしているんじゃないか。だから、これまで二カ年間の間ですね、この防止技術の開発状況を勘案をするということならば、どうして防止技術の開発についてもっとあなた方のほうも積極的にこれらの問題について取り組み、この二年間の間にやるべきことがもっとあったのではないか、こういうことをお聞きしておるわけです。
  26. 春日斉

    説明員春日斉君) この二年間の間にいたずらにメーカーは低公害車の開発に怠慢で、かつまた環境庁はそれを傍観しておったにすぎないという御指摘であろうと思うわけですが、私はそのようなことは必ずしもないと思います。なぜかと申しますと、すでに五十年度規制というものが本年の一月に告示されまして来年から始まるわけでございますが、この五十年度規制というものは、先生も御存じのとおり、世界で初めてこれを行なうものでございまして、きわめてきびしい規制でございます。五十年度規制すら実はアメリカでは現在達成できていない。欧米では窒素酸化物の何らの規制も行なっていない。このような現状を考えてみますると、私は五十年度規制までたどりつけたという技術的な発展というものはこれは大いに評価しなければならないと思います。そしてその五十年度規制、ともかく達成できるという基本には、この四十七年の十月の中公審答申というものが基礎になり、技術的に環境庁姿勢というものがメーカーの技術開発を進めさせたのである、かように私どもは考えておるわけでございます。  なお、五十一年度の問題でございますが、五十一年度規制は五十年度規制に加うるに、さらに窒素酸化物の削減というものを四十八年に比べますと約十分の一、五十年度規制に比べましても五分の一に下げるというものでございます。これはよく言われたことでございますが、マスキー法が一九七〇年に発表になったころ、これは内燃機関を否定する法律ではないか、そこまで言われたものをかくも五十年を経て五十一年の〇・二五の目標に向かって技術が徐々に進みつつあるということは、これもまた私どもは認めざるを得ないと思います。決してメーカーというものがサボリにサボった、あるいは環境庁は単にそれを傍観しておったにすぎないというようなことでは毛頭ないと私は確信いたしております。
  27. 久保亘

    久保亘君 それなら一つ具体的にお聞きしたいのですが、中公審答申に関連をして五十一年度規制の問題で、自動車業界九社の聴聞が行なわれておりまして、その聴問の結果では暫定値の問題についても応じられないとか、企業側としては回答しないとかいうのがほとんどであったはずです。ところが三木長官国民の世論を背景にしてこれらの企業環境庁に呼ばれて、一カ月以内にこれらの問題についての回答を求められておりますが、一カ月後には申し合わせたように、応じられないとか、回答できる問題ではないと答えた企業が〇・九グラムを一つのめどにしたようにして回答をいたしております。だから企業側は、ほんとうにやる気になれば一定の数値目標にしながら技術開発ができるのではないか、その辺に、環境庁自動車業界に対する姿勢に問題がありはしないかということを感ずるのですがね。
  28. 春日斉

    説明員春日斉君) 確かにヒヤリングを行ないまして、その過程におきまして暫定値と申しますか、中間値を示すことは困難であるという幾つかのメーカーがあったわけでございます。それには先生の御指摘は私も同感なんでございますが、メーカー側の主たる答えは、実は〇・二五グラムというゴールを一つ目標といたしましてわれわれは技術的な開発をやってまいりましたので、いまここで急にその中間値、どこまでならできるかというお問い合わせに対しましては若干の時間がなければ答えるすべがない、こういうようなことであったわけでございます。したがいまして、三木長官が一カ月の余裕のもとに協力してくれと、こういうお話でございまして、出ましたのが先生のおっしゃったようないきさつ、結果でございますが、しかしやはり何と申しましても五十一年度規制の達成の見通しは現段階では不明だというようなメーカーが大部分であることには間違いないわけでございます。これは技術的な開発の過程の問題でございまして、その点は私、メーカーがサボっているとかサボっていないと、必ずしもそういう問題ではなかろうと考えております。
  29. 久保亘

    久保亘君 時間があまりありませんので、この問題について少し詳しく質問することができなくてたいへん残念でありますが、私がそれじゃ環境庁長官に見解をもう一つ求めたいのは、中公審答申規制値〇・二五グラムをもし後退させる形で暫定値設定をされるということになります場合には、〇・二五グラムというのが国民の健康を保持し快適な生活環境を維持するために必要な規制値であるという前提に立ってものを考えた場合には、総量規制において何らかのこれにかわるべき措置がとられなければ、環境庁がその答申の内容を後退させることによって国民の健康と快適なる生活環境をみずから守ることを放棄するということになると思うんですが、その場合に、この数値を後退させられる場合には、それにかわるべき措置というのはどういうふうにお考えになっておりますか。
  30. 春日斉

    説明員春日斉君) 御承知のとおり、私ども自動車排気ガス規制を行ないます一つ目標は、これは終局的には人間の健康あるいは生活環境保全ということでございますが、直接的には窒素酸化物環境基準というものをいかにわれわれが維持達成するかということが一つでございます。それからもう一つは、光化学スモッグというような現象をなるべく早く取り去ろう、こういうことが直接的な目標になっているわけでございます。したがいまして、〇・二五ができなかったならば、その翌日から急に大気汚染がひどくなるというものではもちろんないわけでございまして、私どもは〇・二五というものに近づける努力はしてまいりますが、どうしてもできないというようなことがあれば、もっと全体的にわれわれは、現在行なっております排気ガス規制というものは新車のしかも乗用車に限られておるわけでございますけれども、使用過程車の規制あるいは貨物自動車、バス、ディーゼルの規制、そういったものもあわせて行なってまいる必要もございましょうし、あるいは走行距離数というものを何とか減らすというような具体的な方向にまでいかなければならないかもしれないわけでございます。なお、そういった問題は交通体系を新たに見直すというような問題も引き起こすでございましょうし、いろいろこれは私は手があると、かように考えております。
  31. 久保亘

    久保亘君 いろいろ手があるとあなたは考えられたってどうにもならぬのですね。それで中公審答申内容が業界の技術的、専門的な理由によってそのとおりいかぬかもしれぬという意味のことがこの所信表明でも言われておるわけです。それならば、中公審国民の健康を守るという前提に立って規制を行なおうとしている、その実質的な内容を確保するために、かわるべき措置というものに対しては具体的に示されなければいけないのじゃないですか。
  32. 春日斉

    説明員春日斉君) ただいま、御承知のように本日から中公審自動車公害専門委員会検討し始めたわけでございます。必ずしも、暫定値をつくるとかあるいは延期するとか、そういった段階にまだ論議がいっておるわけではない。要するに、大臣からの御発言がございましたように、われわれはいまだに〇・二五というものを達成することを一つの既定路線といたしまして、それに向かってばく進をしておる、こういうことでございますので、先生の御指摘はごもっともでございますが、いまの段階ではわれわれはあくまで〇・二五をやっていきたいということでございますので、いまから、できなかったら具体的にどうすべきであるというお話は私は避けたいと、かように考えておるわけでございます。
  33. 久保亘

    久保亘君 それでは、長官お答えいただきたいんですが、中公審審議をさらにあなたのほうから要請をされている、そのことは四十七年答申をぜひ五十一年度規制として実施してもらいたい、そのために中公審としてきちんとした結論を出してもらいたいという立場でいまあなたのほうからは言われているわけですか。
  34. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 既定方針を堅持したいというたてまえから答申を期待いたしております。いまおっしゃったように、お話の筋書きを聞いておりますと、すでに後退したかの印象で受け取られたようでありますが、いまのところそういう結論の上は立っていません。
  35. 久保亘

    久保亘君 それならば、私は現在国民の間では障害になってきたのではないかということで不安を持っておりますこの技術的、専門的な問題に関して業界側の意見もぜひお聞きしたいと考えておりますので、委員長のほうでしかるべき機会に業界の聴聞に応ぜられた九社の代表の方々を当委員会に御出席いただくようお取り計らいをお願いをいたしたいと思います。
  36. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 先ほど理事会で、いま久保委員お話のようなことで相談をいたしております。近いうちに結論が出ると思います。
  37. 久保亘

    久保亘君 この排気ガス規制の問題に関連をいたしまして、ひとつ簡単にお聞きしたいんですが、APOジャパン社という会社が、APOマークIIペーパーインジェクターという燃料節約と公害防止に役立つというふれ込みの自動車部品を大量に国内で販売をいたしておりますが、これについてすでに昨年の秋、APOジャパン社に対して通産省が、通産省のテストに基づいて、ほとんど効果がない、場合によってはかえって悪い結果を生むかもしれないというような立場に立って、あらためて公正な第三者機関にテストを依頼し、その結果が出るまで販売を自粛してほしいという勧告をAPOジャパン社に行なっております。そして一般消費者に対しては、この自動車部品は宣伝ほどうまみのあるものではないから事業参加を慎重にするようにという警告を行なっておりますが、その後も引き続きこの会社はこの自動車部品を通産省の勧告に従わず国内で販売を続けております。私はこれらのことについて、特に公害規制という世論の動向に便乗した形で、あたかも排気ガス規制に役立つかのような宣伝をしながらこの商品を売っているということについて何らかの対策を講ずべきものだと思うわけです。で、特に通産省が工業技術院とか化学品検査協会、車両検査協会等に依頼した調査結果もすでに明らかになっておるのでありまして、これらの結果からいたしますならば、これらの品物の販売を中止をさせるべき対策がないのか一これは通産省、だれかお見えになっておりますか。通産省のお考えをお聞きしたいと思うのです。  それから通産省が勧告いたしました際に、APOマークIIは公正な第三者機関によるテストを行なえということをやっておりますが、このテストは行なわれたのかどうか。行なわれているとするならばその結果はどういうことになっているのか。  それからこの公害防止とかエンジンパワーのアップなどを宣伝にしながら販売される自動車部品について、運輸省の自動車局においては、これらの商品について何らチェックする権限は有しないのか、あるいはチェックする必要はないのか。そういう点について関係の当局の御見解を承っておきたいと思います。
  38. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) 御質問の第一点の、昨年の十月行ないましたAPOに対する勧告の件でございますが、APOジャパン社に対しまして勧告をいたしました内容は実は二つございます。第一点は、ただいま御質問で御指摘のありましたように、このペーパーインジェクターの効果の点でございます。ペーパーインジェクターがAPOジャパン社の広告のとおりの効果があるかどうかということにつきましては、御指摘にありましたように三つの機関でいろいろ分析をいたしまして、そのテストに用いたものに関する限り、十分効果がありとは言いがたいという結論になったわけでございます。したがいまして、私どもはその点を同社に示しまして、こちらで分析をしたテストのものについてはこういうことだから、それがはっきりするまで、それが効果があるということがはっきりするまで販売を自粛したらどうかということを勧告したわけでございます。  それからもう一つ実は問題点がございまして、APOジャパン社の販売方法というのは俗にいうマルチ商法でございます。昨今いろいろなところでマルチ商法というのが問題を起こしておりますので、昨年の十月に申し渡しましたのは、マルチ商法というのはいろいろトラブルが多い、したがってこういう販売方法でやると摩擦が多いから、そういった販売の方法についても自粛検討するようにということを申し渡したわけでございます。この二番目のほう、マルチ商法の問題につきましては、現在法律上は何ら制限がございません。したがいまして、私どもが勧告をいたしましたのは、法律に基づいてどうというのではなくて、そもそも問題の多い販売方式であるから検討するようにということを言ったわけでございます。その後、昨年の暮れから産業構造審議会の流通部会に特殊販売小委員会というのを設けまして、こういったマルチ商法などを含めました特殊販売についてどうすべきかということを現在検討中でございますので、これについては近く、秋には結論が出るというふうに私ども考えております。  もう一つ、第一のほうの製品の問題につきましては私ども自粛をするようにと、製品の問題について疑問点があるから自粛するようにということを申したわけでございますが、このAPOジャパンという会社の商品は、当時におきまして販売しているものはこれ一品でございまして、これを中止しろということは、会社の事業をやめろということにひとしいわけでございまして、これは私ども本件について中止をさせるという法的な根拠もないものですから、問題が多いから自粛をしろということを申し渡したわけでございます。これに基づきましてAPOジャパン社のほうは、その後私どものほうに何度となく連絡をとりにまいりまして、そして現在テストを行なっておる最中でございます。御質問の第一点の中止を勧告したかどうかという点でございますけれども、繰り返しになりますが、自粛を勧告いたしまして、先方は私どもの意はわかってくれていると思っておりますけれども、ただ現在なお販売が続けられているというのは事実でございまして、私どもできるだけ早い機会に、先ほどの販売方法の問題として法的な根拠ができるならば、それに基づいてはっきりとした結論を出したいと考えておるわけでございます。テストのほうは繰り返しになりますけれども現在進行中でございまして、途中のデータにつきましては私どものほうに提出をしてまいっております。ただ、まだテストが全部終わっておりませんので結論を出すに至っておりません。  以上でございます。
  39. 田付健次

    説明員(田付健次君) いま先生からお話のございました燃費の節約とかあるいは出力の向上というような問題をあげました装置部品等につきましては、特に役所としてどうこうというようなことでは現在までやっておりません。ただし、私どものほうに、自動車に取りつけるものですから、いろいろと相談に見える方が多うございます。その場合には、内容につきまして私どもは直ちにその場で気がつきました点はお話しいたしておりますし、一般的には適正な第三者機関で公平な評価を受けるように、技術的な試験を受けるようにということで指導をいたしております。  それから一般の公害装置の中で特に自動車につけなければならないものというのがございますが、これは別途省令できめたものが三種類ございますので、その分につきましては内容を審査して指定をするなどの措置を通じて指導をいたしております。  なお、先ほどお話のありましたような義務づけられた装置でない、いわば燃費の向上、出力のアップといううたい文句の装置につきましては、実際に使用者がつける段階になりました場合には、みずからつけるというのはなかなかたいへんなものですから、実際には整備工場等へ出向くことが多いと思います。そういうことが考えられますので、私どもとしては整備工場のほうへ話をしまして、団体を通じて適正な指導を行なうようにと、特に使用者の方はその装置がどのためにあるかということがよくわからずにおつけになる方がいらっしゃると思いますので、技術的なコンサルタントとして整備工場のほうで指導をするように、お客さまを誘導するようにということの指導はいたしております。  それからなお、そういう一般的なものについて今後どうするのかと、あるいはそういうことを取り締まる必要はないかという点でございますが、私どもとしては、安全公害上さらにその必要度が高くなるにつれて当然その内容を、監督上の線を強化していくということは必要ではないかと思いますが、これまた実はいろいろ問題がございまして、今後検討してまいりたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  40. 久保亘

    久保亘君 この問題につきましては、いま自動車排気ガスがたいへん大きな問題となり、特に五十一年規制を目の前にしている段階で、この排気ガス規制に直接効果があるかのような誇大な宣伝のもとに、商社が販売員を全国にわたってつのるというやり方をしたわけでして、そしてそれに対して通産省が、この会社が販売を始めてから二年たって、この商品の効果について疑問を提示して自粛を勧告をした。そのために末端の販売員となって出資をしていた者は、そのまま品物をかかえさせられたまま、今日たいへん困っているわけです。だから、そういうものの商品に対しては、特に運輸省や通産省において何らかの措置ができるように——それからこの委員会で直接関係するものではないかもしれませんが、この商法というものを見ておりますと、これは明らかに公正取引委員会としても問題とすべきやり方ではないかと、このように感ぜられるわけです。そのネズミ算式商法についての規制については、秋に立法の措置を講じたいということをいま御答弁になっておりますが、その際には、やはり現在、化粧品とか洗剤とか、特にアメリカ資本のこれらの商品についての販売方式として、アメリカから伝わってきたやり方が全国に広がっておりまして、もし、この規制を行なう場合には、かなり大きな社会問題を生ずる可能性があります。したがって、特に誇大な広告やインチキな宣伝によってそういう販売員をつのったというようなものについては法規制を行なうと同時に、出資金の返還をこの出資者の要請に基づいて行なわせるような措置を並行しなければ意味がない、問題が大き過ぎると、こう考えております。すでにこのAPOマークIIの問題については、末端においては多く訴訟が起こっておりまして、この訴訟は通産省の勧告が発端となって起こったものであります。もしこのAPOの会社の第三者機関によるテスト結果が出て、その結果通産省のテストが間違っていたというようなことにでもなれば、今度はまたこの問題は違った角度で発展をする可能性を持っているわけでありまして、いろいろまた当局のほうでも御検討をいただきまして、次の機会にさらに詳細にお尋ねをしたいと考えております。  最後に、今年の七月九日に鹿児島県が発表をいたしました鹿児島湾魚介類の水銀一斉検査の結果について、環境庁並びに水産庁の見解をお尋ねしたいと思います。  この鹿児島湾の魚介類の水銀一斉検査は、四十八年の十一月から四十九年の一月にかけて鹿児島湾奥の牛根というところで採捕されましたタチウオに高濃度の水銀が検出されたことから魚介類の水銀一斉検査が行なわれるに至ったものであります。その結果、アマダイ、アカナ、マアジ、アナゴの四魚種に〇・六二三PPMから一・一六八PPMに及ぶ総水銀の平均値が検出されております。これは厚生省基準の〇・四PPMを大幅に上回るものでありまして、この一斉検査の結果に基づいて、その前に検出されましたタチウオを含む五つの魚種につきましては、現在漁獲の自主規制、市場での取り扱い中止が行なわれておりまして、すでに流通過程には全く乗らないように措置されております。この点については、すでに水産庁並びに環境庁も御承知のところだと思うのでありますが、私がお尋ねをいたしたいのは、今回この暫定規制値を上回る水銀値が検出された地域には水銀を排出する企業は全く立地しておりません。原因はいまのところ不明とされておりますが、その対策のためには原因究明が緊急の課題となっているわけです。したがって、環境庁並びに水産庁の原因究明対策についてのお考えをぜひ伺いたいのです。で、特にこの問題については、全国的にそのような検査を行なえば暫定規制値を上回る総水銀の検出があるかもしれないという一つの特異な事例となって出てきているわけでありますから、この鹿児島湾における事例を一つのテストケースとして、この原因究明のために、環境庁、水産庁が中心になられて鹿児島県と協力して早急にその原因究明に当たる必要があるのではないか、私はこのように考えておりますので、この点について御見解を承りたいと思うわけです。  さらに、この問題に関連をいたしまして、四十八年の十月から四十九年の三月にかけて水産庁の委託調査として全国各地で行なわれた水銀一斉調査の結果について、すでに水産庁に対して各県から報告が行なわれているはずでありますから、この調査の結果の概要について御報告をいただきたいと思います。特にこの水産庁委託の全国一斉調査の結果、すでに汚染水域として掌握されております九つの水域以外に異常な結果が報告をされている県または水域が存在すれば、その点については具体的に御報告をいただきたいと思います。私がその点について報告を求めますのは、この調査結果は人口動態などの調査結果とは異なって、異常が認められる場合にはすみやかにその対策が講せられなければならない国民の健康と生活に関する重大な問題でありますし、また、そこから派生をして漁民の生活権に大きな影響を持つ問題でありますから、この点についてはひとつ水産庁のほうからぜひはっきりした御回答をいただきたいと思います。  なおあわせて、ただいまの水産庁の委託調査によれば鹿児島湾の場合には異常が認められているのかどうかについても御報告をいただきたいと考えております。もし鹿児島湾の場合に、水産庁の同じ時期における委託調査で異常が認められないとするならば、県がある特殊な事件から出発して調査した結果高濃度の水銀汚染の実態が把握されるに至ったとするならば、今後海水の魚族の水銀の点検について、水産庁並びに環境庁としては抜本的に考え方を改めなければならない状態があるのではないか、この点についても御回答をいただきたいと思います。  それから三点目に、今回の一斉検査に基づいてとられた鹿児島県の措置によって規制値を上回る魚種の発見された地域の漁家で年間十万円以上の被害を受けるものが推定五十戸から六十戸に及ぶと見られております。中でもアナゴ採取を専業としていた十一戸については完全に生計の道を断たれる結果となっております。しかし、これらの措置国民の健康を守るために必要な行政措置でありますからやむを得ないのであります。しかし、これらの行政措置によって生計の道を断たれるあるいは被害の大きい漁家に対しては、補償及び漁政上の救済対策が当然必要と考えられるのでありますが、その点についてのお考えもお聞かせいただきたいと思います。  また、今回の鹿児島県の場合のように原因が今日究明されていない状態の場合、原因者負担の原則に立てば、これらの漁家に対する救済の手段がありません。したがって、水産庁に見解を求めたいと思いますことは、この原因不明による水銀汚染等によって漁家の生活に大きな影響を与える行政措置をとらざるを得ない場合の救済手段として、何らかの基金制度を設置をすることが必要となってくるのではないか、その点について私としましてはぜひ水産庁に積極的な検討を求めたいと考えているわけであります。  以上のような点について、それぞれ当局のお考えをお聞きしたいと思います。
  41. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ただいま御指摘のありましたように、鹿児島県が去年の暮れからことしの春にかけまして鹿児島湾内の魚介類の調査をいたしました。その結果、マアジ等五つの魚種につきまして御指摘のような暫定的な許容値を上回る水銀が含まれていた、こういったことでございますが、現在までの県の結果によりまして、肝心の水銀の発生源は不明であってどうも原因ははっきりしていない、御指摘のように湾奥のほうでは水銀が発生するような企業は見当たらない、こういった事態で、問題は魚介類等の汚染機構をいかにして解明するか、いかにしてそれを早く解明するかということに重点があろうかと思っております。環境庁といたしましても、県においていろいろ総合的な調査実施中でございますが、それに協力する意味におきまして、技術的な調査の設計とかその他技術的援助は惜しむつもりはございません。それと同時に、県の調査とあわせて国費を支出いたしまして、底質がどうどうなっているか、鹿児島湾の底質がどうなっているか、そういった底質の環境調査実施したいと、かように思っておるわけであります。  それから水銀等の調査がどうなっているかと、こういったことでございますが、この鹿児島県の調査のみならず、御承知のとおり、全国の水銀あるいはPCBの汚染にかかわる環境の総点検ということで四十八年度実施をいたしたわけであります。それぞれ環境庁、水産庁手分けして調査実施いたしたわけでございますが、水銀につきましては昨年度九水域をまあ発表申し上げた。それからPCBにつきましても、問題になる水域につきまして発表し、同時に漁獲の自主規制措置をとったということは御案内のとおりでございます。それらの水域をさらに見直し、同時にほかの水域につきましても調査を進めておりまして、現在その調査を取りまとめ中であります。発表の時期といたしましては、来月早々にでも学者諸先生、専門家の方々に御参集願って、その調査結果を報告し、いろいろ検討、評価をしていただきまして、発表申し上げたいと思います。  それから同時に、ただ事実だけを発表申し上げるのではこれは能がございませんので、いかにして底質を今後——その根っこになっている底質がよごれているわけですから、そういった汚染源が発生するわけですから、底質を除去すると、そういった底質の除去基準を、まずPCBにつきましては本格的な除去基準設定されておりませんので、水銀とあわせてPCBにつきましても、来月の早々を目途にいたしまして、除去基準設定して、中身とそれから対策というものをあわせて発表申し上げたいと、かように存じております。
  42. 佐々木輝夫

    説明員佐々木輝夫君) いまお話がございました水域の特に汚染経路等につきましては、水産庁としても、環境庁と共同して特別に重点的に、現在この問題が出ましてから県のほうへ特別な委託をいたしまして、さらに調査を密度濃く実施しておる段階でございます。  で、四十九年にやりました調査につきましては、先ほど環境庁のほうからお答えございましたように、全体環境と魚の水銀濃度を総合的に検討いたす必要がございますので、ただいま取りまとめ中でございます。なお、特にこういう人間の健康にかかわる問題でございますから、とりあえず漁獲の自主規制ということで、市場には出ないように県を指導し、県のほうもそういう措置をとっておるわけでございますけれども、それに伴いまして、先ほど先生のほうからお話がございましたように、現実にアナゴの専業者を中心にかなり生活上も痛手を受けている業者がございますので、これについて県とも打ち合わせをしながら、県のほうで当面のつなぎ資金をできるだけ早い機会に手当てをするということで、大体われわれが県から連絡受けています範囲では約三千万円程度の準備をいたしまして、貸し付け条件等を早急にきめて対策を講じてまいりたいと、こういうことを現在進めつつございます。  なお、こういったいわゆる工場排水等が近くになくて、原因が何とも把握できないという問題についての対処のしかたでございますけれども、これは水産庁といたしましては、やはりできるだけ原因をまず究明することに最善の力を尽くすべきだという考え方で、昨年の水銀問題のときにも、やはり遠洋のほうでおよそ人為的な環境汚染と関連がないと思われる、たとえばマグロであるとかあるいはメヌケ等で相当程度の水銀が検出されたこともございましたんで、全体としても、その食物連鎖等を通じての水銀の蓄積等の解明ということを急がなければいけないということで、四十八年度から東海区の水産研究所が中心になりまして、関係の大学等の協力も得ながら、研究に現在着手中でございます。私どもとしては、やはりできるだけ原因を究明した上で、適切な対策を講ずるということに最大の重点を置くべきだという考えで進めておる段階でございます。
  43. 久保亘

    久保亘君 さっき私がお尋ねいたしました中で答弁がなかったんですが、水産庁の一斉調査の結果、その結果が全部まとまっていないから九月にならなければ発表できないということですが、その報告の中で九水域以外に異常の認められている地域があったのかなかったのか、それだけをお答えいただきたいと思います。
  44. 佐々木輝夫

    説明員佐々木輝夫君) ただいままだ取りまとめ中でございますので、このほかに全然ないということもちょっと申し上げかねますけれども、われわれが県から連絡を受けている範囲では、ただいまのところは鹿児島県のこの問題だけでございます。
  45. 久保亘

    久保亘君 鹿児島県のは一斉調査の結果ではないんです。これは別の調査です。そのほかの県にあるでしょう。何か取りまとめ中ですからわかりませんと、あなた方がそんな言われる問題じゃないんですよ。県から報告がきて、そうして水銀汚染に異常があるということがあれば、来月発表しますからということで、それをそのままあなた方の引き出しに眠らせておっていい問題じゃないでしょう。そういう問題が出たら、すみやかに対策をやらなければいけない問題です。だから、あるかないかと聞いておる。なければいいですよ。あれば来月まで放置していい問題じゃない。だから、そういう地域がもしあれば、あるということを明確に言ってもらいたい。ないかあるか。それが報告を受け取ったら、封を切らずに何しているわけじゃないでしょう。あなた方みんなそれを見るはずです。だから、それはわかるはずです。
  46. 佐々木輝夫

    説明員佐々木輝夫君) 先ほど申し上げましたように、まだ全体的な検討を終わっておりませんので、ちょっと明確なことを申し上げかねますけれども、はっきりいままで総点検だけでなくて連絡を受けていますのは、いま御指摘のございました鹿児島湾の問題でございます。
  47. 久保亘

    久保亘君 時間がありませんから、あなた方時間切れで逃げるつもりかもしれぬけれども、そんなら、もし来月発表されたときに、そういうものがあったら、私がここでわざわざ指摘をしているんだから、あなた方の責任問題ですよ。各県から報告をした中に、すでに指摘され発表されているもの以外に異常を認めるような結果の報告があるかないかということについて、あなた方がいま関心を払わずに、ただ数字を扱うだけで、その書類を集めているということなら、あなた方の責任だと私は思いますよ。あるはずです、どこかに。だからそういう問題については、あなた方はもしあればはっきりすべきことだと思います。もし答弁したくなければいいですよ。
  48. 佐々木輝夫

    説明員佐々木輝夫君) 先ほど申し上げましたように、ちょっと全体的な検討をやらないと、いわゆる異常があるかないかということを、いまちょっと申し上げかねる段階にあるということであります。
  49. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) いま久保委員のほうから、原因不明の場合に一時救済するための基金を検討したらどうかという提起があったんですがね、これについて答弁ありませんですね、答弁ありますか。
  50. 佐々木輝夫

    説明員佐々木輝夫君) 原因者が明確な場合には、それぞれ県の段階で対処しておりますけれども、一般的に原因者不明の場合の扱いについては、まだ検討を終わっておりません。
  51. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官が就任をされて初めての委員会であり、また参議院選挙が終わっての初めての委員会でもありますので、公害環境問題に取り組む長官基本姿勢を中心にお伺いをしたいと思います。  先ほど長官から所信表明がありましたけれども、その冒頭のところで長官は、国民の健康を保持し快適な生活環境を確保するという目標に向けて環境破壊未然防止とすぐれた人間環境の創出のために前向きの政策を展開すると述べています。一応それは了解できるといたしましても、問題なのは、開発か環境か、あるいは企業利益か健康かという選択を迫られたときにいずれの立場をとるかということが基本的に問われるのではないかと思います。そのときに長官としてどうされるつもりなのか、そのことをまず伺いたいわけでありますけれども、特に長官は就任の際の記者会見では企業利益よりも健康と生命を重視すると述べているが、この所信表明ではその観点が抜けているように思われるのですが、その点はいかがでしょう。
  52. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 生命と健康に重点を置きます。
  53. 矢田部理

    ○矢田部理君 企業利益や開発よりも環境や健康を大事にするということでございますね。
  54. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) そうであります。
  55. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこでお伺いをしたいのでありますけれども、長官は同じ記者会見で悪名高い田中首相の列島改造論に触れ、列島改造論の中にも是認すべき点が多いと述べられております。もう御承知のように、列島改造論は高度成長の土建屋版ともいわれ、公害を全国に拡散をし、地価を暴騰させるなど世論のきびしい指弾を受けてきたわけでありますけれども、それをあらためて新長官の抱負を語るにあたって持ち出したことについては、環境行政姿勢に重大な疑問を感ぜざるを得ないのですが、その点はどうお考えになっておるのでしょうか。
  56. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 過密都市の解消、集中交通上の過密、こうした問題は解決の大きな問題であるという点からあの問題と関連を持って触れたということであります。どちらを選択するかという場合に、重点はあくまでも人間の健康と生命
  57. 矢田部理

    ○矢田部理君 この列島改造論をあらためてこの段階で持ち出したことについては、新聞ですら新長官に対する不安材料として指摘をしておるわけでありますけれども、いまでも列島改造論についてあなたは支持をされておられるわけですか。
  58. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 全部を支持しておるわけではないということは先般申し上げましたとおりであります。時間的な問題に問題がある、こういう情勢下にすぐ実行するということを考えておるものではない。
  59. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあ、そう伺っておきましょう。  三点目として、同じ記者会見の中で次のようなくだりがあるわけですけれども、公害防除の資金は膨大なものにのぼり、日本経済がどれだけ受け入れられるかの問題もあるという発言をしたと報ぜられておりますけれども、この発言は健康と環境を優先させるという基本姿勢に反するばかりか、公害基本法制定の際に問題となり、結局削除をされた産業との調和論の思想を復活させたものとも考えられるわけですけれども、したがってまた、環境行政の責任者として許すべからざる発言であるというふうに私は思うのですが、この点どう考えるか明らかにしていただきたいと思います。
  60. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) ちょっと御質問の趣旨が——私の言ったこと、必ずしもそういう趣旨で言っていないと思いますが。
  61. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は新聞に出ている長官の談話どおりの文章をいま読み上げておるわけです。
  62. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 私はむしろ、今日の公害並びに環境予算を一見いたしますと、わが環境庁において百五十億程度の予算であり、各省の予算を集計いたしましても、公害関係で三千四百二十一億、公害にしぼっても三千六十二億円、自然環境にしぼりましても三百五十九億円、さらに財政資金にしぼっても五千三百二十二億円という数字を考えてみたときに、環境問題、公害問題を徹底的に一ぺんにやれるものではないということは自覚しております。これをやろうとすればするほど、こんな程度の予算ではどうにもならないという実感の上に立ってものを言っております。したがって自分の省の予算をどうとかいうことではなく、各省の予算の基礎をいかにして各省と相談し合って、大蔵省はもちろん、理解と協議の上に立って、各省の予算をいかにふやしていくことにおいて、このわれわれの悲願とする健康と生命を守る公害問題環境の改善が果たし得るという立場でものを言っておるのです。あなたのおっしゃるような角度でものを言ったことはありません。
  63. 矢田部理

    ○矢田部理君 環境予算が不十分だという観点で言われたようにはどうもこの新聞の記事は読めないのです。そういう予算の問題としてではなしに、日本経済の受け入れ体制としてなかなかむずかしいのではないか、そういう問題を提起されているように読めるわけなんですが、そうではないんですか。
  64. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) いま御説明したような根底に立っての趣旨の発言です。したがって御質問のような趣旨で聞こえたとしても、国全体のワクの中に立って、いかにそのワクをより多くこうした問題に振り分けるかという困難があるという予想の角度の話で、あなたのおっしゃったような角度の発言ではなかったわけであります。
  65. 矢田部理

    ○矢田部理君 とすれば、そう伺っておきますけれども、もう一度確認的にお尋ねをしたいのは、私が先ほど述べたような意味で長官の談話を受け取るとすると、どうしても産業の発展との調和の中で公害問題を考えるというようなふうに考えられるわけですけれども、そういう態度をおとりになることもないことはこの際明確にできますね。
  66. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 私は、先ほど来申し上げておるように、生命と健康という問題公害の問題人類壊威につながる公害の問題、この環境の問題が一も二も三もいかに重要であるかという前提に立ってものを考えなければならない、実行しなければならないという信念に立っております。それだからといって、あなたの言う角度ではないけれども、一億国民が生きるために、存在するそれを無関心であってはならないということは私の心情にあります。
  67. 矢田部理

    ○矢田部理君 というのは、どういう意味でしょうか。
  68. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 産業が一億国民の生きる根底にあるということに無関心であってはならないと思います。世にいう一も十も、すべての悪の根源のごとく言う人がありますが、私はそういう立場はとらないという意味です。
  69. 矢田部理

    ○矢田部理君 無関心であれと私は言っているつもりはありません。問題は、そのどちらの立場長官として立つのか。
  70. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) だから先ほど申し上げたとおりです。
  71. 矢田部理

    ○矢田部理君 行政権の基本は何なのかということを問うているわけです。
  72. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 健康と生命に重点を置いて、公害環境の問題に一も二も重点を置いて考えております。
  73. 矢田部理

    ○矢田部理君 何に対して重点を置くかを私はお尋ねをしているわけです。
  74. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 矢田部君、答弁が終わってからお願いします。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 わかりました。  もう一回確認しておきますけれども、ただ健康を守るとか生命に重点を置くということではなくて企業の利益や開発よりもそのことを中心に考える、こういう趣旨でお伺いしてよろしゅうございますね。
  76. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) ちょっとたいへん失礼なんですが、御質問の聞き落とした点がありますが、私の聞いた理解した点でお答えいたしますと、二者択一論をお聞きになっているようでありますが、いま二者択一論をお答えするよりも、ぶつかったときに私は健康、生命、そうしたサイドに重点を置いて判断をしたいと、こういうふうに申し上げておきます。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 それでは具体的にお尋ねしたいと思うんですけれども、田中総理は参議院選挙の最中に、いま問題になっております排ガスの五十一年規制問題に触れて次のように演説をしております。技術的に言って無理だからマスキー法日本版五十一年規制延期もやむを得ない、こういう田中さんの演説に対して、当時の三木長官はこれに反発をし、公害問題は環境庁にまかせてくれと抗議をしているわけでありますけれども、長官はどちらの立場に立たれますか。
  78. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 公害問題は環境庁におまかせ願っていると信じております。総理の発言の真意は、私はいまつまびらかではないのでありますが、三木先生のとられた態度を尊重したいと思っております。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、所信表明の中で自動車の排出ガスの問題にも触れているわけでありますけれども、この文章を読んでみますと、「できる限り既定方針に沿った規制実施したいと考えております」と述べて、「できる限り」という表現で既定方針を貫くという当然の立場からすれば後退をしているのではないかと読めるのでありますけれども、その点はいかがでしょう。
  80. 春日斉

    説明員春日斉君) できるだけ既定方針に沿った規制実施したい考えであるがと申しまして、次に技術的可能性について種々の意見もあるので、また「内容が技術的、専門的なものでありますので、」と、こう続いておるわけでございまして、趣旨につきましては「既定方針に沿った規制実施したい」と、ここに重点がございます。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 ことばの問題になりますけれども、「できる限り」というのと、既定方針を堅持するというのはかなりニュアンスが違ったように受け取れるわけですが、この点はいかがですか。
  82. 春日斉

    説明員春日斉君) まあ、ことばではそういう御説もあろうかと思いますが、長官所信表明の中にあらわれておるものは、先ほど申しましたように、既定方針に沿った規制実施したい考えである、ただし「技術的」云々というところが続くわけでございます。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、現在でも五十一年度規制の完全実施を目ざし、努力をしているというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  84. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) そのような努力をいたしております。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこでお尋ねをしたいのですが、四十七年の十月に中公審答申があった際、その答申書を見ますと、先ほどもお話がありましたように、困難ではあるけれども不可能ではないという内容になっておりますね。その「不可能ではない」ということに重点を置き、ある程度技術的、専門的な見通しもつけて、五十一年度規制という方針を出されたのではないでしょうか。それをあらためてこの段階中公審に再審査といいますか、再諮問を求めて、技術的、専門的な検討をさせるというやり方がどうも私にはわかりにくいのですが、この辺はどういう関係になっているのでしょうか。
  86. 春日斉

    説明員春日斉君) 先ほどもお答え申し上げましたように、確かに、「規制目標の達成には実用面においてきわめて困難であるとの見解はあったが、実用化を含めてその開発は必らずしも不可能ではないとの見解に達した。」ということで、四十七年の十月の段階におきましてそういう技術的な見通しがあったことは事実でございます。で、それから四十七年の十月以降、技術の進歩発展というものあるいは開発が行なわれてきたわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、「許容限度設定にあたっては、防止技術の開発状況を勘案して行なうべきであり、」というこの答申の御指摘によりまして、私どもはヒヤリングを行なっております。そうして現状技術はどこまで来ておるか、最終目標を達成する技術はどうなっておるかというヒヤリングを行なった結果、〇・二五という最終目標値にはどの社もすべて達成することは可能ですと返答した社がなかったわけでございます。したがいまして、また中間答申に戻りまして、「技術的に可能な限り最もきびしい許容限度設定を行なうものとする。」と、こういう御答申の趣旨によりまして、しからばどこが一番そのきびしい、最もきびしい許容限度設定に当たるか、あるいはヒヤリングの結果はそうであっても、最終的には〇・二五は達成できるのではなかろうか、あるいはほんとうにできない、こういった点をやはり再諮問——再諮問と申しますか、諮問の継続をお願いをいたしております。こういうことでございます。
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから五十一年度規制というのは乗用車が対象になるわけですけれども、その規制が緩和されている軽量バスとか軽量トラックについては、今後の規制、どういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  88. 春日斉

    説明員春日斉君) 五十年度からの自動車排出ガス規制は、中公審答申に沿いまして、確かに乗用車を対象といたしまして抜本的な規制実施しようという先生の御指摘のとおりでございます。で、軽量バスあるいはトラックにつきまして、乗用車並みの規制を直ちに行なう、全く乗用車と同じように行なうということは、技術的にこれは非常に大きな問題がございます。そこで一般的に実用化し得る排ガス防止技術で低減できる限りの許容限度を私どもは設定してまいってきたわけでございます。したがいまして、乗用車に比べますと、確かにトラックの規制と申しますのはゆるい規制がいまあるわけでございます。もちろん御指摘もございますように、わが国におきましては、軽量トラック等の汚染物質の排出割合がかなり高いわけでございますので、できるだけ乗用車並み規制を今後は目ざしまして、こういった問題につきましても、中公審の御論議を通じまして私どもは可能な限り行なってまいりたいと考えております。
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 国民の健康を守る、あるいは快適な生活を維持するという観点から見るならば、バス、トラックについても同様の措置をとるべきだと私は考えているわけでありますけれども、同時にもう一つ心配なのは、たとえばディーゼル車等については規制の計画すら弱いとされておりますが、この点はどうお考えになるでしょうか。
  90. 春日斉

    説明員春日斉君) ディーゼル新車、これはまあ新車の場合ですが、ディーゼルの新車の排出ガス規制につきましては、従来のディーゼル黒煙−−黒い煙でございますが、黒煙に加えまして窒素酸化物等について、本年九月から排出規制実施することといたしまして、去る五月の二十日、許容限度をすでに告示いたしてございます。窒素酸化物等について規制実施している国はアメリカ並びにカナダだけでございますが、日本も、やはり日本大気汚染状況からすれば私どもはやるべきである、まあそういう信念に基づいて告示をしてまいったわけでございます。で、この結果、ディーゼル新車の排出ガス量は、現状車に比べますと窒素酸化物は約二〇%、一酸化炭素で五%、炭化水素で一〇%程度の軽減が見込まれております。決して十分ではございませんけれども、そういった点をわれわれは今後とも伸ばしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういたしますと、バス、トラックやディーゼル車等が乗用車の五十一年度規制レベルまで基準を下げることができるのはいつごろの見通しなのか、その点を伺いたいと思います。
  92. 春日斉

    説明員春日斉君) これは全く技術的な見通しでないと、まあ精神的な、やりますというようなことじゃ何にもならないんでございますが、技術的に考えれば、いまのところいつごろできるだろうという見通しはございません。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 全く見通しなしで行政をやっておられるというのにもたいへん問題があろうかと思うんでありますけれども、たとえば五十一年度規制についても、少なくともそういう年度と規制値を置いたからこそそれなりの努力もしてこられたんだと思うんですね。それすらできないというのに、このバス、トラックなどについては年度的な期間も設けていないということになると、行政としては非常に寒々しい感じがするのですが、いかがなもんでしょうか。
  94. 春日斉

    説明員春日斉君) これは技術的な問題でございまして、バス、トラックという、まあ乗用車と比較してごらんになるとわかると思うんですが、同じエンジンでも積載量というものはたいへんに乗用車とトラックでは違ってまいります。たとえば、乗用車では一台平均一・八人ぐらいより乗らないわけでございますが、これはバスは十人も二十人も乗るであろう、同じエンジンパワーであってもですね。それからトラックはさらに何トンと載せる。したがいまして、同じ規制値をかけるというのは、これは不可能なことはおわかりいただけるであろうと思うわけです、技術論的に。したがいまして、乗用車並みのことはいますぐ見通しがつかないからといって、これはきわめてけしからぬという仰せは、まあ必ずしも技術的、科学的に立てば私はうなずくわけにはいかないと考えております。
  95. 矢田部理

    ○矢田部理君 ただ、五十一年度規制についての最近の環境庁のとっておられる態度も、どうも技術論とか、専門的な論議に押されているんじゃないか、言ってみれば、業界の意向に動揺しているんじゃないかという感じがうかがわれるわけですね。それだけに技術論をあまりに先行させると、あるいは重点を置くと、環境行政は進まないんじゃないかという危惧の念を抱いておるわけなんです。
  96. 春日斉

    説明員春日斉君) 公害行政で技術論を軽視する、無視するということは、おのずから私は公害行政の自殺行為につながると思うんです。もちろん先生のおっしゃることはよくわかるわけでございまして、たとえば、先ほど久保先生の御質問お答えいたしましたように、五十年度規制というものは、四十七年の目標値を設定したことによって初めて可能になったものと私は信じております。世界で初めて最もきびしい値に到達することができたのでしょう、かように考えております。そういう意味では、私どもはきわめてきびしい目標値というものを設定して、技術を促進させる役割り、起爆剤にいたしたいと、かように考えておることは先生のお考えと全く私は異なるところはございません。しかしながら、一方では、技術の進歩というものにつきましては、やはり常にテクノロジーのアセスメントというものをやりながら、先を見通していくと、こういうことが私は公害行政基本でなくてはならない、かように考えておるような次第でございます。
  97. 矢田部理

    ○矢田部理君 私がおそれておりますのは、技術を全く無視しろとか軽視しろとかということを言うつもりはないんですけれども、ただ技術的にむずかしい、あるいは採算ベースに乗らないという口実で実際の規制が引き延ばされること、それに引き回されることについて、行政としてはよろしくないということを申し上げておる。
  98. 春日斉

    説明員春日斉君) 仰せのとおりだろうと思います。私どももそのとおり考えております。
  99. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから次の質問ですけれども、中央公害対策審議会審議がきょうからまた行なわれているわけですが、この審議の内容や経過について公開すべきだというのが私たちの基本的な考え方です。特に、都民の健康や環境が問題になってる際に、全く密室で議論をする、審議の内容を明らかにしないという態度については理解ができませんので、ぜひその公開を原則とすべきだということを強く要請をしたいのですが、これについての考え方はいかがでしょう。
  100. 春日斉

    説明員春日斉君) まあ中公審の論議、とかく専門的な論議が多うございますけれども、いままで公開していないとはある意味では私は言えないと思う。ある意味では公開していると思う。と申しますのは、私どもは審議のたびごとに世論の代表者である新聞記者諸君には詳細に論議の内容につきましてレクチュアも行なっておりますし、質疑もいただいておる。そういうことで、私どもは密室でやっているというようなことはございません。ただ、とかく専門的なことでございますので、一般の方々を入れて行なうというような私は性格のものではないと、かように考えております。十分に先生の言わんとなすっておることはわかります。私どもも十分これはそういう意味では内容についてできるだけ知っていただくというような努力もしてまいりたいと思っております。
  101. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから、関連いたしまして、この審議会に対しては、たとえば住民代表であるとか、自治体の意見を十分に聞くような機会、これを保証すべきではないかというふうな考えを持っておるのですが、この点はいかがでしょう。
  102. 春日斉

    説明員春日斉君) 本日から行なっておりますのは、中公審の中の大気部会のさらに専門部会であるところの自動車公害専門委員会、したがいまして、この場におきましては非常に専門的な立場での論議が行なわれておりますので、その中に一般住民代表というような方々をお入れするということは私は適当ではないと思っております。ただ、中公審大気部会には必ずもう一回自動車の専門委員会から上がってまいるわけでございますが、その大気部会の中には自治体代表の方ももちろん委員としてお入りになっておるわけでございまして、先生のおっしゃるようなことは確保できると考えております。
  103. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が申し上げているのは審議会全部に住民代表や自治体を参加させなさいということではなくて、審議会自体としてそういう人たちや団体の意見や考え方を聞く機会をつくる気持ちはないのかと、こういう質問であります。
  104. 春日斉

    説明員春日斉君) これは、審議会の運営につきましては、審議会の委員長が中心になっておやりになるわけであります。私ども事務当局としては審議会のほうに申し上げることはやぶさかではございませんが、私どもがこうすべきであるというようなことは申し上げる段階ではないと思います。
  105. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまおっしゃったとおりだと思いますけれども、審議会に対してこういう方法で運営してはどうかという意見を申し上げるということは可能なわけでしょう。そういうこととして努力をしてほしいと思うんですが、これは要望です。  それから、もう一点だけ、産業廃棄物の問題について伺いたいと思うのですが、去る八月五日行政管理庁から産業廃棄物処理について、そのずさんな内容と改善措置についての勧告が出されたと思うのですが、これによりますと、処理基準違反の事業者や無許可の処理業者に委託をしている事例が三分の一に及んでおります。このことは行管庁の指摘を待つまでもなく、非常に重大な問題でありますので、環境庁として廃棄物処理の実態などをどういうふうにしてつかんでおられるのか、また、処理についてどのような具体的な指導、監督、さらには点検をしておるのか、この点を明らかにしてほしい。
  106. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 産業廃棄物の問題、御指摘のとおりゆるがせにできない問題でございます。環境庁としてももちろん重大な関心を持っておりますが、われわれ接触しております範囲といいますか、タッチのしかたは、現状におきましては産業廃棄物処理基準をきめると、そういう末端でのタッチのしかたしか残念ながら現在ではしておりません。役所の組織を申し上げるわけで恐縮でございますけれども、指導、監督というのは厚生省を中心にしてやっておりますし、この間の勧告も大体厚生省に対してなされた勧告であると、こういうふうに思っております。しかしながら、逃げ口上で申し上げるわけじゃございませんで、ただいま申し上げましたように、産業廃棄物処理、これは非常にゆるがせにできない問題でありますから、厚生省、それから産業廃棄物を排出する通産省、あるいはその他の産業省とよく連絡をとりまして、この問題の早急な解決策について検討しておりますが、その努力は続けていきたいと、こういうふうに思っております。
  107. 矢田部理

    ○矢田部理君 確かに厚生省などが中心になろうかと思いますが、この行管庁の勧告では、環境庁あてのものも内容的にはあるわけですね。その点ではよそごとではなく、具体的な対策と方法を検討してほしいと思うのです。  以上。
  108. 内田善利

    ○内田善利君 私はきょうは時間がありませんので、具体例は次の機会に譲りますが、環境影響評価について一般的にお聞きしていきたいと思いますが、きょうの所信表明にも、大臣は「環境に及ぼす影響防止策を事前に十分に審査する環境影響評価をさらに積極的に推進し、その確立を図ってまいりたいと考えております。」と、こういう所信表明でございます。また先日、わが党の二宮文造氏から、環境影響事前評価法制定について、総理大臣に対し質問主意書を提出しました。その回答が参っておるわけですが、これは総理大臣じゃございませんが、環境庁で作成したものと見て質問したいと思いますが、環境影響のチェックの徹底をはかる観点から、環境影響の評価については、特に立法化を含め、環境影響評価制度について慎重に検討を進めてまいりたいと、こういうことでございますが、大体いつをめどにしてこの立法化を進めていかれるのか、この制度についてですね、まずこの点についてお聞きをしたいと思います。
  109. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 環境影響評価につきましては、私どもとしましても極力その充実に努力をしておるところでございます。順序から申し上げますと、四十七年の六月の閣議了解に基づきまして関係各省庁、その当時はほとんどやられておられませんでした環境影響評価のための調査を極力実施していくような体制にいま持ってまいっておるわけでございます。また手法の開発等にも各省で努力をしておる段階でございます。また四十八年度は、国会におきまして関係個別法の改正を行ないまして、環境庁長官の意見を求める等の規定が入ったわけでございます。ただ問題は、この中身は非常に固まっていないわけでございまして、どういう調査項目についてどういう内容の調査をやるか、あるいはどういう方法で予測をするか、こういう点が非常に現在までまだまとめができていなかったわけでございまして、この点を中心にことしに入りまして相当の作業をしまして、特に公害防止計画部会の中にございます小委員会を中心に検討してまいったわけでございます。それで、その中間報告は六月の末に出ましたわけでございまして、その段階で、私どもとしましては、さらにその中間報告の検討をしてまいりました点を仕上げてまいると同時に、特にいま御指摘ございました制度自身の問題、特にまたその立法化の問題この問題を今後検討していくために専門委員会を置く、こういうことをいたしたわけでございます。現在、その専門委員の人選等をいたしておる段階でございますし、この専門委員会を発足させましたあとで、私どもとしましての調査内容等をこの専門委員会に御披露しました上で検討してまいりたいと思っておるわけでございまして、時期的には私どもとしましては、最低一年ぐらいかかるこういう考え方でおるわけでございまして、それだけ中身のりっぱなものをつくり上げていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  110. 内田善利

    ○内田善利君 一年をめどということですが、昭和四十年から法律に基づかない任意調査が通産省で行なわれて、そしてずっと事前評価がなされてきた。工場立地法ができて、法に基づいて通産省がやっておる。ところが四月八日、私は分科会で通産大臣に対して事前評価問題について質問したわけですが、とにかく事前評価がなされても、そのなされたところが安全だ安全だという報告がありながら、その地にはほとんど全部公害被害者、慢性ぜんそく病の症状の方が出ておられる。これについては詳しく四月八日にやったわけでございますが、こういったことで、まあ一年をめどということですが、開発、埋め立ては次から次に許可になり、認可になっておる、こういうことで、環境事前評価の問題と現実に立地されておる、埋め立てがなされておる、こういうこととの矛盾ですね、こういう点はどのように考えられるのか。特にまあ電調審の問題等、言いたいことばたくさんありますけれどもきょうは省きますが、非常に場当り的に環境庁指導がなされたとたんに埋め立てがなされたと、こういうことなんですけれども、こういったこととこの環境影響の事前評価との関係ですね、非常に遅々として進まない。で、きょうの所信表明にも、あと追い行政はやめると、このように長官も言っておられるわけですけれども、こういった問題について所見をお聞きしたいと思います。
  111. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) ただいま埋め立ての例をおあげになりましたが、法律的には昨年の公有水面埋立法の一部改正によりまして埋め立て免許の場合の基準が相当きびしくなっております。それからまた免許の中で所管大臣の認可にかかるものにつきましては、その中の特に環境上問題があるものにつきましては環境庁長官の意見を聞くと、こういう体系で法律整備されてるわけでございます。私どもとしましても、そういうような意見を求められた場合、十分これに対しまして私どもの考えているところが申せますように、機構的な整備もいたしまして、環境審査室をこの七月一日に発足させたわけでございます。  問題はその中身でございますが、中身につきまして、それでは公有水面埋め立てにあたってどういうような項目についてどういうような調査をするか、あるいは予測をするか、この点が一番問題でございまして、現在その点の作業を進めている、こういう段階でございまして、この作業のほうはこの秋には何とか結論に持っていけると、こういうぐあいなことを目途としましていま鋭意努力をしているという段階でございます。制度自身の問題はそういうことでございますから、まず中身を完成しまして、その上でこの裏づけをするためのさらに法律的な整備をしていく、こういうことを考えているわけでございます。
  112. 内田善利

    ○内田善利君 いま答弁がありましたように、非常に中身が問題なんですね。せっかく議員立法で瀬戸内海全法ができましたけれども、この運用面において非常にずさんな面があると私は見るわけですが、特にこの環境事前評価と公害防止計画という立場からいきますと、非常にずさんな中で次から次に開発、埋め立てが行なわれておると、こういう実態なわけですが、具体的に一つ一つ私は詰めていくつもりでしたけれども、時間がありませんのでできませんが、まあ一、上例をあげますと、六月の十八日に環境庁から埋め立て基本方針の通達がなされました。この通達の内容も非常に、一々申し上げませんが、内容は「軽微であること」というのが非常に多いわけですね。これはほとんど軽微であることということなんですけれども、軽微であるということであれば、どこを基準にして軽微であることというふうにきめるのか。海域環境保全上の見地というのも、水質への影響の度合いが軽微であること、それから埋め立てによる潮流の変化、これも隣接海岸への影響の度合いが軽微であること、あるいは埋め立て工事に伴う水質の悪化の度合いが軽微であること、こういう指示が出されてるわけですが、あるいは文化財等への影響の度合いが軽微であること、あるいは海水浴場等の利用に与える影響が軽微であること、あるいは水産資源保全上の見地、これも水産資源及びその利用に与える影響が軽微であること、こういうふうにずっと「軽微」「軽微」できているんですが、こういった通達で一体知事はどのような判断をするのか、このように思うんですが、こういった「軽微」にされた根拠を教えていただきたい。
  113. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ただいま御指摘になりましたように、瀬戸内海の埋め立ての基本方針につきましては、去る五月に審議会から答申をいただきまして、六月の十八日に各県に通知申し上げたという経緯になっております。その中身は、ただいま御指摘がありましたように、海域環境あるいは自然環境あるいは水産資源保全上の観点から十分な配慮が必要だということになっておりますが、その場合において影響が軽微である、水産資源に及ぼす影響が軽微である、あるいは環境保全上の影響が軽微である、こういったことが答申の表現として取り入れられております。具体的にこれをどう処理するか、こういった問題でございますが、結局は各個別のケースに即して各県知事が詳細なアセスメントをして判断していくということになると思います。ただ問題意識としては瀬戸内海環境保全審議会でもございまして、「軽微」とかその他一般的、抽象的な形でこの答申が書かれておりますから、その中身を具体的にどういうような中身にしていくかということにつきましては課題となっておるわけであります。したがいまして、この審議会からいただきました答申の前文にも、当審議会としてはいま答申をするけれども、その中身を具体的なものとするために引き続き調査審議を行なうこととしていると、こういうことなので、そういう答申をいただいているわけであります。したがいまして現在この瀬戸内海環境保全審議会の専門的な部会をつくりまして、その中でただいま先生が御指摘になりましたこの答申の一般、抽象的な表現をさらに具体的な肉づけをし、でき得べくば計量化していくと、定量化していくと、そういった定性的な表現ではなくして定量化していくと、こういった努力をいま審議会の諸先生に御審議をお願いいたしている最中でございます。
  114. 内田善利

    ○内田善利君 そういうことがせっかく行なわれておるならば、計量化がなされた、そしてそれを評価して私は埋め立ての許可はすべきじゃないかと思います。せっかくそういう先生方が計量化について、「軽微」ということばは非常にあいまいであるので、計量化されておると、ならば計量化したあとに私はこれはやるべきじゃないのか、それほど開発を急がなければならないのか。先ほど長官は開発か、どういう立場でいくかということで答弁になっておりましたが、私はやっぱり人間の健康を守るという立場であるならば、自然を守るという立場であるならば、もう少しその辺計丘化されて、その結果に基づいて、科学的な判断に基づいて埋め立てを許可するかどうかということをすべきじゃないか。軽微であるということを知事さんが判断されて、環境庁からこういう通達がきているから軽微だということで、私は環境庁に相談があったと思いますが、環境庁は軽微であるということでそれを認められたのかどうか、この点はいかがですか。
  115. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) その定量化——「軽微」その他の一般的あるいは抽象的な表現が定量化するまで免許してはいけないというぐあいに審議会でもおっしゃっているわけじゃありません。そういった定量化の努力は引き続きしていくけれども、その過程において免許あるいは承認した場合には随時本審議会に報告してくれと、こういったことが前文に書いてあるわけでございます。なお、この瀬戸内海の埋め立てにつきましては、決して埋め立てをルーズにしていくという考えは毛頭持っておりません。いただいた答申にもありますように、瀬戸内海における埋め立ては厳に抑制すべきだ、こういったたてまえはこれははっきりしておりますし、やむを得ずする場合におきましても、いろいろ環境保全上の見地というものを精査して影響が軽微な場合に限ってやるのだ、その他の特定の地域につきましては特にきびしい条件をつけて、できるだけ埋め立てるのは避けるべきだ、こういった趣旨になっておりますので、埋め立てというものは厳にやはり抑制すべきだ、こういう見地に立って私どもは運用していきたい、こういうふうに思っております。  この通達を出しましてから若干の埋め立てがございましたが、これにつきましてはいろいろ事前に県当局とアセスメントの中身等につきまして十分打ち合わせをいたしまして、ほんとうに必要最小限度のものに限って認め、しかも、それが瀬戸内海の環境保全上悪影響を及ぼさないというようなものに限って認めたつもりでございます。
  116. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁には七月一日環境審査室もできておるわけですが、これがそのチェックをできる機関であるかどうか、その辺は疑問に思いますけれども、こういったものもできておりますし、もう少し軽微であるということの評価をきちっとやるべきじゃないか。というのは、六月十八日に通達が出されて、六月二十五日には埋め立てを着工している、こういうことを考えますと、こういったせっかくの定量化しようということで検討がなされておるということでありながら、また、環境審査室も環境庁にできた、そういうことであるならば、私はもう少し慎重に科学的な事前評価をした上で許可が与えられるべきであったんじゃないか、こう思うんですけれども、こういったことがやはり地元の方々の疑惑を生んだりする原因になるんじゃないか、こう思うわけです。この点はどうなんでしょう。
  117. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ただいま先生が、六月二十八日に埋め立て免許になった、こうおっしゃいましたのは、おそらく豊前の火力の発電関係の埋め立てではないかと想像するわけであります。瀬戸内海の答申を私どもが審議会からいただきましたのが五月九日で、それから六月十八日にこれは各県に御連絡申し上げたわけであります。それから、ただいま御指摘ありましたように、七月一日に環境庁審査室ができた、こういった時系列になっておるわけでございまして、六月の二十八日に豊前火力について福岡県知事が免許をした、こういったことになっております。なっておりますが、これはたまたま偶然の一致でございまして、七月一日から審査室ができる前に意識的にやった、こういったことでもございませんし、従来環境アセスメントの実施という問題は、私から申し上げるまでもございませんが、何も室ができようができまいが、それ以前からやはり環境行政の推進として必要なことをやることには変わりないわけであります。もちろん、そういう意味におきまして、瀬戸内の埋め立ての問題につきましては、環境庁の各局あるいは各部局におきましてそれぞれの所掌にかかる環境アセスメントを実施してきたわけでございます。ただいま御指摘の豊前火力だったと思いますけれども、この埋め立てにつきましても、瀬戸内の埋め立ての基本方針というものは実際上五月九日に審議は終わっておりますから、それに基づいて県独自で環境のアセスメントをしようと、また、その過程において環境庁といろいろ打ち合わせもしておる、こういった形であります。ただ、具体的な県に御通知申し上げる日付が事務上の関係で六月なかばになってしまったということで、いささか接近しているような感じを与えるわけでありますが、事情はそういうことでありまして、県とよく連絡をとって、環境アセスメントの実施に遺憾なきを期している、こういったつもりでおります。
  118. 内田善利

    ○内田善利君 この瀬戸内海の埋め立てをしていいかどうかということについて二十三ブロックに分けてあるわけですね。この二十三ブロックに分けるについて、何を根拠にしてなさったのか、この点を伺いたいと思います。
  119. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 瀬戸内を二十三ブロックに分けた理由でございますけれども、結局、四十七年、四十八年に瀬戸内海の総合調査を行なったわけであります。そのときに、滞留日数——いろいろ瀬戸内海の汚染度その他を判断する一つの有力な材料として滞留日数を計算しなければならない、こういうことが過程にあったわけでございますが、その滞留日数を計算する場合に、塩素量の分布からシミュレーションを行なって求めた、こういったことになっているわけでございます。滞留日数を計算するためにはやはり塩素量の分布という形で一つのブロックにまとめまして、そうしてそういったものをベースにしてシミュレーションを行なって滞留日数を計算する、こういったことになっておりますので、言うなれば塩素量というものは一つ環境の有力な指標でありますので、おおむねそれがイコールであるというところを拾い上げて二十三に分布づけした、こういうぐあいに聞いております。
  120. 内田善利

    ○内田善利君 私は、この環境庁の通達を見まして、こういう分け方がはたして妥当なのかどうか。塩分濃度だけで線引きをされた。この瀬戸内海は赤潮が非常に発生する、プランクトンの状態あるいは化学的な酸素要求量、そういったものをやはり考えた上でなされてないように思うんですね。塩分濃度だけで線引きをしていいものかどうか。非常に、何といいますか、場当たり的といいますか、ただ塩分濃度だけで線引きをしたということに疑問を持つんですけれども、この点はいかがですか。
  121. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 具体的な指標でそれを総合して数字で海域をどう分けるかということにつきましては、これはいろんな説があろうかと思います。私ども塩分濃度で一応分布をシミュレーション、滞留日数を計算する過程でそういう資料を使いましたので分けておりますが、何もこれは唯一の海域分布を区分する材料とは思っておりません。ただいま申し上げましたようにいろんな資料があろうと思いますが、これがいまどういうぐあいな指標で分けていいかということはいろいろ説がありますので、もう少し検討させていただきたいと思います。将来の勉強の課題とさせていただきたいと思います。
  122. 内田善利

    ○内田善利君 そうしますと、これは一応の分布で、これが基準になって埋め立てを許可するか、埋め立てはしちゃいけないかということのベースになるわけですね。そうですね。そうしますと、一応一時的なそういう分け方が基本になってこういう埋め立てを許可するか許可しないかということになってくるとたいへんな問題じゃないかと思うんです。  それともう一つは、いま豊前火力の問題が出ましたが、この四番の周防灘南部、この四ブロックが当てはまると思うんですけれども、ここを見ますと総合指数三〇〇以上は禁止、三〇〇以下は埋め立ててもよろしい、こういうわけですね。CODの濃度指数と滞留度指数とそれからCODの汚濁流入度指数、この三つを加えたものが三〇〇以上になれば埋め立て禁止、これ以下であるならば埋め立ててもよろしい、こういう資料だと私は思うんです。そうしますと、ブロックナンバー四の周防灘南部、ここはCODの濃度指数が一四八。どこを見ましても一四八以上というのはありませんよ、この二十三ブロックの中で。一番よごれておると私は判断するんです。私の判断が間違っていれば御指摘願いたいと思いますが、一四八以上というのは一つもありません。そして滞留度指数、これも一一四、非常に大きい部類に入るわけです。ところが、COD汚濁流入度指数というのは、工場ができてから、企業が立地されてから汚濁してくるCOD汚濁流入度指数だろうと私は思うんですが、これはまだ立地されていないんですから一一というのはあたりまえだと思うんです。そうしますと、COD濃度指数と滞留度指数を加えただけでも二六二になる。こういうことですから、三〇〇以上は埋め立て禁止、三〇〇以下は埋め立ててもよろしいという、こういう判断にこの表はできていると思うんですが、そうであればこれはちょっと問題じゃないか。これだけのことで埋め立て許可がなされていけば、ほんとう環境事前評価というのはできるのかどうか、これ疑問持ちました。  それから備後灘の広島県側が総合指数二九二、それから十六ブロックナンバーの播磨灘の中央部、この香川県側が三〇六。一方は三〇六です。一方は二九二。そうすると、十六の播磨灘中央部のほうは埋め立て禁止、ところが備後灘のほうは埋め立てしてよろしいと、こういうことになるわけですが、こういう三〇〇以上は埋め立て禁止、三〇〇以下は埋め立てしてよろしいと、こういうことになるんですか。この表についての説明を願いたいと思います。
  123. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 汚濁度それから滞留度それからCOD汚濁負荷量、こういったものの総合的な評価が平均を越える区域、つまりそれぞれの汚濁度なら汚濁度、滞留度なら滞留度、それぞれの指標につきまして平均を一〇〇といたしましてそれの指数、具体的な各水域の指数を求めてその総和が三〇〇をこえる、こういったことになるわけでありますけれども、こういった区域につきましてはこの答申上「埋立てはできるだけさけるように配慮すること。」、こういったことになっておりまして、その場合に埋め立てはできるだけ避けるように配慮するような留意事項といたしまして、公害防止とかあるいは環境保全に資するものとかあるいは汚濁負荷量の少ないものと、こういった条件に適合しない埋め立てはできるだけ避けると、こういった形になっております。そこでその他の水域につきましてはどういうことかといいますと、これは埋め立てをしていいということではございませんで、この答申全体の精神として瀬戸内の埋め立ては厳に抑制すべきものと こういうぐあいに考えていることに変わりございません。しかも、やむを得ず埋め立てをする場合におきましても、先ほど申し上げましたように、海域環境保全上の見地とかあるいは自然環境保全上の見地あるいは水産資源保全上の見地、こういった点につきましては十分な留意をした上でやむを得ず認める場合には認めると、こういったことになっているわけでありますから、安易に埋め立てを認めるというたてまえではございません。そのような形で運用するつもりは私ども持っておりません。  それからもう一つ先生の御指摘になりました点は、三つの要素、つまりCODの濃度指数あるいは滞留度指数、それからもう一つはCODの汚濁流入度指数、こういったものを単純に足して三〇〇という数字を出していく、三〇〇以上はきびしくすると、こういったことになっているのはいささか機械的ではないだろうかと、こういった御指摘だろうと思うわけでございますが、このCODあるいは滞留度指数あるいはCODの汚濁流入度指数につきまして、これをイコールの指数にしていいかどうかということにつきましては議論はあるところでございましょうが、この瀬戸内海環境保全審議会ではあまりこの点についての議論はなかった。若干まあございましたけれども、おおよその意見といたしましては、ほとんど全員に近い意見といたしましては、客観的な指数で埋め立てのよしあしをきめるとか、あるいは一つのものさしをきめるという場合には、やはりそういった海域の環境を示す指数の平均を求めざるを得ないだろうと。ある指数、ファクターを重く用い、ある他のファクターを軽くする、ウエートをつけるということは一つ考え方ではございますが、現状におきましてそのウェートをどうやってつけるかということにつきましても問題があろうかと思います。結局はやはり環境の平均的な指数というものをベースにして考えざるを得ないということで審議会の御答申を願ったわけであります。そういった形で先生が御指摘になりました四番の周防灘南部、あるいは十三番の備後灘、あるいは十六番の播磨灘中央部、こういったところにつきまして、あるものについては三〇〇近い、しかしあるものについてはかなり下だと、こういったことに議論が出てくるわけでございますけれども、しかし、たとえば周防灘南部二七三ということになっておりますが、こういったところはどんどん、じゃ埋め立てを認めるのかということではございませんで、こういったところにつきましてももちろん厳に埋め立てを抑制すべきだという基本原則はくずさないで運用しているつもりであります。
  124. 内田善利

    ○内田善利君 現に埋め立てやっているわけですよね。埋め立て工事を始めているわけです。これを見ましても一四八というのはどこにもないんですから、大阪湾の奥部、十九番です、ここは一四一です、大阪湾の奥部よりもよごれているということを示しているわけでしょう。これが審議にならないというのは私はおかしいと思う。早くやって許可しようという姿勢じゃないかと思うんですよ。これを見たら、科学的に検討していったら大阪湾の奥部よりもよごれている、どうしてかという疑問が起こってくるはずです。最高によごれているのは、瀬戸内海の中で一番よごれているのはここなんですから、これを埋め立て許可するという、こういう考え方——私はしてもかまいませんよ。データがはっきりして皆さんの事前評価の結果これでよろしいということであれば私はいいと思いますけれども、こういう状態で許可をしていいものかどうか疑問に思うからお聞きしているわけです。  またこれ時間がありませんので、また次に私は具体的に今度は聞いていきたいと思います。事前評価の問題は私が公害特別委員会におる間はお聞きしていきたいと、このように思っておりますのでよろしくお願いします。  それから、いままで埋め立てが許可された、しかし工事はやってない、こういうところも、私は響灘とか大分新産都市とかこういうところも、やはりせっかくこういう通達が出ておりますし、瀬戸内海保全法も議員立法で制定されましたし、こういったことからもう一回見直しをすべきじゃないかと思いますが、この点は長官いかがお考えですか。もう一回見直ししていくべきであると、このように思うんですが。
  125. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) すでに免許した埋め立てにつきましては、この基本方針がまた遡及して適用になるということは、これはちょっと事実上無理だと思っております。ただ実際すでに免許した埋め立てにつきましても、いろいろ免許する事前におきまして、市議会等の諸先生の事前の御意見なりを参考にしながら判断していた経緯もございますので、環境アセスメントは、これは全然やられてないで免許したというものではございません。やはりそれはそれなりの環境アセスメントはやっているものと私どもは理解しております。なお、工事実施段階におきましていろいろ汚濁とかそういった問題が発生しないように留意してまいる、そういうためのいろいろな見直しとかあるいは絶えず追跡していくということにつきましては、これは当然のことであろうと考えております。
  126. 内田善利

    ○内田善利君 この問題についてはまた後ほどに譲りますが、この通達には響灘のところには書いてあるわけですね。三〇〇をこえるときにはもう一回調査すると、こう書いてあります。調査していただきたいと思います。  それから今度は通産省に聞きますが、大分の第二期計画についての事前評価、これは七月末か八月の上旬までには結果を出すと、こういうふうになっております。どのようになっておるか、この点お聞きしたいと思います。  それから、風洞実験を中心にした通産方式でやっておられるわけですけれども、私は三菱重工長崎造船所の研究室にも二回行って風洞実験を見せてもらいましたが、この風洞値と、昨年の大分では四十八年の八月八日に、この実測値と非常に隔たりがあるわけですね。そういうことで風洞実験の値と実測値と、この隔たりを時間希釈係数で整合されておると思いますけれども、この整合性の詰め、これがいま〇・一五一律にかけているわけですね。ところが千葉とか水島あたりでは〇・二五と、こう聞いておりますが、大分ではこの〇・一五よりも小さい係数をかけようとなさっておる。〇・〇七五とか〇・〇五とかあるいはひどいのになると〇・〇〇三七五、こういう小さい値で検討されておると聞いておりますが、こういう小さい値になりますと、結局企業のSO排出許容量、これは大きくなってくるわけですね。そういうことでいいのかどうか。私は、このように風洞値と実測値が違う、風洞実験値と昨年の八月八日の実測値とこのように隔たりがあるということについては、もう風洞実験で耐えかねておると、それほど大分の上空はよごれているのだと、特殊地帯にあるんだと、こういうふうに考えるわけです。ことし四月八日の分科会で質問いたしましたときには、三千ノルマル立米ですね、これ以下に押えると言っておられますが、こういったことを考えますと、非常に私は矛盾点を感じますし、こういった事前評価がわれわれのわからないままに、だれも知らないままに評価が行なわれていっていると、こういうことについて、私はやはり公開の原則に従ってどういう風洞実験の結果になって、こうなっておるということを、むずかしいならむずかしいと——環境庁では三千ノルマル立米以下にしたいと、こう言っておられるわけです。それにもかかわらず、こういう小さい係数をかけていきますと、煙突から出るSO2の許容量は大きくなってくる、もっともっと大きくなってくる、こういうことを考えますときに、私は、こういう風洞実験値を基準にした、もとにした事前評価ははたしていいのかどうか、このように考えるわけですが、この点はどのように考えられておるのか。それと、この二期計画の詰めはいつごろできるのか、また、その詰めができましたならば公開していただきたいと思いますが、この点いかがなものか、その点お聞きしたいと思います。
  127. 佐藤淳一郎

    説明員佐藤淳一郎君) お答え申し上げます。  大分地区におきますところの大気関係の産業公害総合事前調査につきましては、四十八年の十月に現地調査を行ないまして、風や大気の乱れと拡散気象条件及び環境濃度、排出源の濃度の測定を行なってきております。現地調査に比べまして、その年間の気象状況及び環境濃度に関しますところの測定値を統計、解折しまして、当該地域の汚染状況を実績として分折したわけでございます。さらに本年にまいりまして、先生もおっしゃったように、風洞実験及び電算機によりますところのシュミレーションを行ないまして、風洞模型実験及び電算モデルの精度の確認を行なうための現状汚染解折を行なっている段階でございます。この方法につきましては、いろいろ確かにいろんな問題点があろうかと思いますが、これにつきましては、科学的の予測といたしまして、現在時点におきましてはこの方法が最もいいであろうという学識経験者の御知恵を拝借いたしまして、こういう方法を確立いたしてやっておるわけでございます。したがいまして、むずかしい問題でございますので、これの解折につきましては、単にわれわれだけじゃなくて、地元の関係の行政機関あるいはまた学識経験者で構成いたしますところの大分地区協議会で、できるだけ全般の広い御意見を組み入れるような方式で慎重に検討をしているわけでございまして、まだ最終的の結論は、実は得られておりません。  それから実績と予測が——予測といいますか、風洞実験の値が乖離しているじゃないかという問題も現実あろうかと思いますが、その問題につきましても、そういうような合わせるようなことを人為的にやるというようなことはこれは許されないわけでございまして、あくまでやはりこれは技術研究でございますから、政策的な問題じゃなくて、やはり科学的の良心に基づいて検討していくということをわれわれは期待いたしておりますし、そういう覚悟でわれわれはやっているつもりでございます。この点は御了解いただきたいと思います。
  128. 内田善利

    ○内田善利君 いませっかくの答弁ですけれどもね、それでは納得できないんです。風洞実験をいままで進めてきて、これを実測値と乖離し、はなはだしいわけですから、幅が大きいわけですから、これについてはやっぱり大分の条件がもう合わないと、風洞実験ではもう耐えかねておると、こういう私は想像をするわけですけれども、小さい、さらに二分の一とか三分の一とかいうような係数をかけていって整合をやったら、実測値と風洞実験値との整合をやったら結局煙突から出る亜硫酸ガスをもっと許すということになってくるわけですから、この点十分検討していただきたいと思うんですね。そういう事前評価がいままでなされてきた結果、四月八日に分科会で質問いたしましたように、評価されて安全だと言っているところみんな有症率が高いわけですから、ぜんそくの。そういうことを考えますと、やはりこの際こういった事前評価ももう少し科学的な住民のサイドに立ったといいますか、国民の健康を守る立場に立った事前評価をしていただきたいと、このように思うわけですね。先ほどの瀬戸内海保全法に基づく環境庁の通達にいたしましても、またいまの風洞実験値によるシュミレーションによっても、まだまだ私は不十分な状態で埋め立てがなされ、工業立地がなされておると、このように思うんですけれども、こういったことを早くなくするためにも、全力をあげてやっていかなきゃならないと、このように思うのです。こういったことについて環境庁長官、きょう初めての私どもの委員会でございますが、こういった事前評価について所信表明をなさっておりますが、こういったことについて一年をめどにやっていかれると思いますけれども、十分この件については検討をしていただいて、今後は公害防止をどうやっていくかという立場でいただきたいと、二のように思います。最後に大臣の所信をお聞きして、私の質問を終わります。
  129. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) いま御質問のあったように、まだ不備な規制等を一日も早く、環境規制並びに排出規制等々、不備な点を完備していただきたいと考えております。
  130. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 小平君。
  131. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっとその前に、定足数を欠いているので、自民党側が一人おられて……。
  132. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  133. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 公害による健康被害救済について若干お尋ねをいたします。  長官の先ほどの所信表明では、公害健康被害補償法により補償給付支給等措置を講ずることといたしておりますが、結論としては中公審でいま検討している、近く政令の公布をいたしたいと考えておりますということでありますが、その辺をもう少し御説明いただきたい。
  135. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 公害健康被害補償法につきましては、法律が成立しました段階におきましてもいろいろ御指摘がございましたように、政令その他の委任事項が非常にたくさんあるわけでございます。私ども、それいずれも調査の結果と関係がございますので、時期的にだいぶおそくなりましたが、現在、中公審で御審議をいただいておりまして、来週早々にも答申をいただいた上で政令その他の制定をしたいと、こう思っておる段階でございます。もちろん、これまでの附帯決議の御趣旨、あるいは公害患者、医療関係者等からのいろいろな切実な、あるいはまた適切な各種の御要請を考慮しながらその実施に当たるということでございまして、いましばらくお待ちいただきたいと、こう思っておるわけでございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 水俣病——熊本県の水俣病につきまして、認定の申請、あるいは認定された件数、現在行なわれている進行状況、それらの点について御説明いただきたい。
  137. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 御質問の熊本県の水俣病の認定問題につきまして、審査会での進行状況でございますが、四十九年六月末におきまして、申請件数は総数といたしまして三千百五件ございます。うち認定された者は六百五十五人でございます。保留になっているものが百三十一件でございます。否認は七十七件でございます。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、いま、六月には認定がなくて、七月、八月へかけて相当現地のほうでは作業を急いでいるということと、それから、それについての患者さん方の非常な不満が起きているという、そういう具体的な事実はわかっておりますか。
  139. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御指摘の点でございますが、いまさっきの数字からごらんになりましておよそ見当をつけていただけると思いますが、約二千四百人の人々、二千四百人近くの方々が現在まだ審査を受けてないという状態にあるわけでございます。この点につきましては、四十八年三月二十日の熊本地方裁判所の判決を契機といたしまして申請数が非常に急激にふえまして、昨年の六月中だけで一カ月で五百三十五件の申請があったということで、急増をいたしました。この点につきまして、認定促進方につきまして、本委員会におきましても、昨年来非常な御指摘を受けておった問題でございまして、その時点におきます問題は、非常に長く待たなければ、二年、三年、あるいはいまのままでいけば五年待たなければ認定の最終の順番が回ってこないというところに大きな問題がございました。そういう御指摘を受け、私どももきわめてこれは重大な問題であるということでございますので、この点につきましての認定促進対策ということで、今年の三月以来数回にわたりまして、認定促進のため、熊本県と環境庁が寄りまして、九州にございます全部の国立大学——国立、公立の大学と、それから国立病院系統に協力を依頼いたしまして認定促進をはかり、本年の夏、七月、八月に約五百名弱の方々の促進をはかるということで、先生方夏休みを返上していただいて、現在検診を続けているところでございますが、先生の御指摘にございました、患者さん方に不満があるという点でございますが、その点につきましては、先月の末、患者さんたちのグループの方が来られ、この認定促進で非常に荒くやられるのではないかというような御意見が、不安があるという話を聞きまして、この点につきましてはさっそく県に参りましてそういうことのないよう、いろいろお願いもし、先生方にも私どもお願いしておるところでございますが、患者さん方といたしましては、やはり促進されるということになりますと、今度は非常に荒くやられるのではないかということにつきましての不満を持っておられるという点につきまして、ごく最近私どもは書類としても承知いたしておるということでございます。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう前のお話ではなくて、私がもっと具体的に、現地ではこういうような問題が起きているのではないかということを政府として調べてほしいと言ってお知らせしておいた問題について御答弁いただきたい。
  141. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 先生からの御指摘の問題点でございますが、一つの問題点は、大学等からの協力に来ている医師がはたして水俣病の診断というものになれているかどうかという問題点に一つの御指摘がございました。この点につきましては、現在水俣病の認定促進のための検診に従事していただいている先生方は、各大学の医局の中核的な医師で、講師、助教授級の方々が、おのおの専門分科別にお出願ってやっていただいているという状態でございます。また、その検診の手技等につきましては、昨年七月以来、環境庁に設けられました、第三水俣病を契機として、はたして第三水俣病が発生したかいなかという重大な問題をめぐりまして、水銀汚染調査検討委員会の中の健康調査分科会におきまして、非常に詳細に全部の先生方が合議をされましてきめられました健康調査の進め方及び診断の諸問題等につきましての打ち合わせを十分含まれた方でございます。また、その検診の実技に参加された方々でございまして、そこについては私どもは全面の信頼をいたしているという状態でございます。  もう一点の問題は、検診のときに、ある患者さんの知覚検査のときに、針で知覚検査を——これは医学的に普通行なう方法でございますが、その検査をいたしたときに、胸のところから出血をしたということで、現地の患者さんが非常にこれは憤慨をしておるということにつきまして、先生からこの問題につきましての御指摘がございまして、さっそく県のほうに照会をしてみましたが、一例そういう患者さんがございまして、これは、この知覚検査と申しますのは、触覚と痛覚の検査をいたしますが、触覚のほうの検査は、やわらかい筆で皮膚をなでてみるということでいいわけでございますが、痛覚の検査は、医学的には、先端がわりあい鋭くないような針でこう突いてみるということが、これは医学の検査で当然普通に行なわれるわけでございます。その場合に、一人の方についてその血が出るというような事態があったということでございまして、主治医の方から、検査をした医師からその患者さんに丁重におわびをいたしたというような事実があったというように承知をいたしております。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのほかにも私の指摘した点がいろいろあるわけですが、もう一つ、第三水俣病といわれたその水銀汚染による中毒患者、第三水俣病といわれたそれがシロというふうに判定されたということはまあ報道等で伺っておりますが、その辺のいきさつはどうなっておりますか。
  143. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御指摘のございました第三水俣病の問題につきましてでございますが、この件につきましては昨年八月十七日にこの健康調査分科会の第一回の会合が持たれまして、そのときに態本大学が十年後の水俣病の研究班で提示されました十人の患者さんがございまして、これは対象地域として目された有明町において発見された患者さんでございますが、水俣病となかなか区別できない、あるいはどうも疑わしいと、あるいは疑わしいものにわりあい似てるというような部類に分ける患者さんでございますが、その患者さんたちの十名のうちの二名につきましてこの健康調査分科会におきましてその検診の成績を中心として討議が行なわれました。検診の成績は、一つは十年後の水俣病の研究班としておやりになりましたその患者さんにつきましての詳細な検診の成績、もう一点は、七月の末から八月の初めにかけまして約二十日間態本大学の第一内科に入院をいたしまして、そして態本大学の先生と九州大学の先生も共同で診断をされました、鑑別診断をおやりになりましたその両方の詳細なケースをもって議論をされまして、その結果、まず最初の第一回の健康調査分科会におきましては、二名の者については現時点においては水俣病とは診断される者はいない、二名については診断できないというような結論が出ました。それからそのあとの者でございますが、次には第二回の健康調査分科会におきまして佐賀県、福岡県の健康調査の結果につきまして三次検診のケースにつきましてこれまたこまかな成績を中心に検討した結果有機水銀中毒症と判定される者は見出されないという結論になり、第三回のときにおきまして、態本大学が有明町において指摘されました十人のうちの残りの八人の患者さんにつきまして先ほど同様の手続を経まして先生方が終日議論をされました結果、そのうちの一名、大矢野町におられて水俣湾でかなり長く生活をしておられた方は、その人は水俣病の疑いがあるということになったほかにつきましては、現時点では水俣病と診断できる患者はいないと判断をするという結論が出されたわけでございます。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁長官に伺いますが、先日砒素の被害者の方々に長官お会いいただいて、そうした直接被害者の方のお困りになっている事情、経緯等をお聞きになることがたいへん私は大事なことだと思っております。したがいまして、この水俣病につきましてもいまの御説明だけ聞いておりますと、きわめて何かスムーズに作業がはかどっているように説明されますけれども、非常にいろんな問題があるわけです。で、時間の関係で一つ一つここで申し上げる時間がありませんから申し上げませんけれども、長官もぜひそうした個個の被害者の事情をお聞きくださるということが大事なことだと思いますが、いかがですか。またお聞きになるお考えがありますか。
  145. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 承りたいと思っておりますし、なるべく早い時期にそうした機会を得たいと思います。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に不作為についての審査請求、これはどうなっておりますか。
  147. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 七月末までに不作為についての審査請求は百七十九件のケースについてなされました。その不作為の内容といたしましては、一つは、まだ認定審査会にかかっていない、早く審査をしてくれ、それが不作為であるというような御主張と、それからもう一つは、保留になっている患者さんでございまして、認定審査会で、ある一部のケースについては何度もおやりになったが、まだ見当がつかないということで保留になっている患者さんにつきまして、早く認定の結果を出してほしいということにつきましての百七十九件の不作為の審査請求書を持ってこられました。環境庁におきましてはそれを受理いたしまして、さっそくその促進をはかるべく急遽態本に飛びまして、そのことにつきまして十分打ち合わせをし、また県からも参りまして、できるだけ今月末までに誠意を尽くしてその処理をいたしたいということをいたしているところです。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 今月末までに誠意を尽くして何をなさるのですか。
  149. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 不作為請求につきましてどのように裁決をするかという問題でございます。その処理といたしましては、法律上は幾つあるかと申しますと、一つは、不作為請求の申請につきましていろいろ審査をしてみると、いろんな点で請求そのものの形式等が合わないのでだめだというものが中にあるかどうかという点が一点です。この点は十分両方で話し合いまして指導して進めるということで、そのような問題についてはまずないのじゃないかということでございます。  それからもう一点につきましては、この不作為の理由、不作為だという請求があるわけでございますから、どうしてそう長くなっているのかということを調べまして、これはどうしても長くいままでできなかった相当の理由があるといった場合には、まだこれからしばらくかかるという問題がある場合には、その不作為につきましての分につきまして、これはまだ不作為と判断するには当たらないということで棄却をするという問題が一つございます。これがいずれのケースがそれにはまるのかという問題になります。  それから第三番目は、この不作為の請求につきましていろいろ取り調べまして、これは早急に早く処理をすべきものであるというものがある、そう判断されましたならば、県に対してすみやかにこの問題につきまして処理をするようにということを環境庁の裁決として出す、この三つの種類がございます。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 その結論が八月末に出るということですか。いまお述べになったような結論を八月末までに出しますということですか。
  151. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま申しました百七十九件の不作為請求の問題につきましては、事務的には私どもどう見ても二カ月か三カ月かかるというぐあいにいろいろるる申しながら患者の代表の人とお話をいたしましたら、患者さんのほうの側としても、これはどうにも早く出してくれなければ困るという議論でございまして、何とか早く一カ月以内に出してくれというような御意見までございましたが、そこまではやはり無理だということで、八月の末までに最大限の努力をしてやってみよう、それが出ない場合には非常に重大な問題も起こるかもしれぬということは、私どもそういう問題の重要性を十分認識して当たるということで現在話がついている、そういうところでございます。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、先ほどの公害健康被害補償法に関係してくるわけですが、城戸局長の御説明だと、もうしばらく時間をかしてほしいということでありましたが、この第一種地域は汚染負荷量賦課金、第二種地域は特定賦課金というものが事業者に課されるということでありますが、そうしてこの補償給付のほうは特定賦課金、たとえば第二種、例として水俣病として事業者の特定賦課金によって補償給付費がまかなわれるということになっていると思います。結果、給付に要する費用が足りなくなる、あるいは多数の企業が相手でなくて、一企業が対象のような場合、第二種地域のような場合、十分な要するに補償給付費というものが確保できるか、できない場合はどうなるかという点についてはいかがですか。
  153. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) これは前提として、十分確保できるという前提でこの法律をつくっておるわけでございます。したがって、私どもとしましては、そういうような点に関しまして、全く制度が予期しないような異常な事態が発生するということは、この法律の中に織り込まれていないということでございまして、まあ仮定の事実でございますが、万一そういう事態が発生したという場合には、その段階でしかるべき措置をとる、これしかないということでございます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 私がお尋ねしている点は、その段階でしかるべき措置とおっしゃるのですが、補償給付費にこと欠くという事態は発生いたしませんか、だいじょうぶですかということですよ。
  155. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 私どもとしましては、給付は都道府県あるいは政令市におきましてやるわけでございまして、給付義務そのものはもう法律上確定しているわけでございまして、あとそれに見合った特定賦課金を取っていく、そういう体系をとっているわけでございまして、そういうことが起こらないようにやってまいりたいと思っております。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことが起こらないようにやっていって、しかも補償給付にこと欠くようなことがあってはたいへんなことです、これは。せっかく国が定めた健康被害補償法というものが、実際上お金がなくて補償ができないというような事態が起きるなんということはとんでもないことでありますが、そういうことが起きないという理由をお聞きしているんです。
  157. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 私どもとしましては、制度そのものを仕組みます場合に原因企業があるという前提でできておるわけでございます。したがって、万一原因企業がないというような事態がありました場合には、法律上の手当てをする、あるいは予算上の手当てをする、この点はまだ検討いたしておりませんが、そういうことをいたすことによって裏づけをしていくしかないわけでございます。いずれにしましても、給付自身にこと欠くようなことのないような措置をとってまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはないようなというんじゃなくて、はっきり給付にこと欠くようなことはいたしませんと、こういうことでなくちゃおかしいじゃないですか。
  159. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) 私申し上げたのは、先生おっしゃるような意味で申し上げたわけでございます。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは次に、砒素による健康被害者につきまして……。どうもこの砒素による健康被害者の場合は、過去の従業員であったという方と、それから環境汚染による被害者であるという点と両方に区別されるようでありまして、非常に対策がそのためにもおくれをとっているんじゃないかと思います。で、労働省と環境庁と双方に伺いますが、土呂久と松尾と笹ヶ谷に分けまして、第一次検診は何人実施して、労働省は労災認定を何人行なった、それから環境庁は第一次検診、要するに対象者何人のうち環境被害による公害病患者と認定された人が何人だということをお答えいただきたい。
  161. 東村金之助

    説明員東村金之助君) ただいま御指摘のようにいろいろ入り組んでおりますので、それを頭に置きながら申し上げますと、まず土呂久でございますが、土呂久地域の住民につきましては、元労働者を含め、その検診を宮崎県で実施いたしましたので、その際の第一次検診受診者のうち、元労働者が何名であるかは、私どもちょっと不明でございますが、元労働者のうち一名が労災の認定を受けております。  それから土呂久地区以外に居住いたしまする元労働者につきましては、私どものほうの宮崎労働基準局が九州大学に委託して健康診断を実施しました。第一次検診者は三十九各でございます。それで、そのうち労災の認定を受けた方は一名でございます。なおそのほかに、いま申し上げました三十五名の中に、法施行前の元労働者のうちに三名の方が砒素中毒の認定を受けております。  次は松尾でございますが、関係者はすべて元労働者と見られましたので、宮崎労働基準局がやはり九州大学医学部に委託して健康診断をいたしましたが、第一次の検診者は六十二名でございます。で、労災保険の認定を受けました患者さんは九名でございます。そのほかに法施行前の元労働者のうち二名の方が砒素中毒の認定を受けております。これはしかし労災保険の施行前の話でございます。  それから笹ケ谷でございますが、二の笹ケ谷地域の住民につきましては、元労働者を含めその検診を島根県で実施いたしましたので、先ほどの土呂久同様、第一次検診受診者のうち元労働者が何名であるか私どもちょっと不明でございますが、いずれにいたしましても、元労働者のうち砒素中毒患者と砒素中毒症とされた者が九名ございまして、これは法施行前の労働者でございまして、公害の認定を受けております。このほかに笹ケ谷につきましては、本人の申し出によりまして山陰の労災病院、これは鳥取県にございますが、山陰労災病院という病院で検診を行ないました者が三名ございますが、これらはいずれも砒素中毒として認定され、労災の補償を受けております。  以上でございます。
  162. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまの御質問の最初の土呂久のケースでございますが、土呂久のケースにつきまして、いま申しわけございませんが、四十六年から四十八年までの全体の検診総数がちょっとここにございませんので、認定審査をした人につきましてまず申し上げます。認定審査につきましては、本年の二月までに十八人が認定されております。このうちで、私どものほうでは住居歴を中心としてやっておりますので、この中で労災としての対象は何名いるかということは、いま詳細にはつかまえておりませんが、個票によりましては労働暴露があった者が何人かということは、またあとお答えをいたしたいと思います。それから第三次の検診者の対象としまして二十七名がいまございますが、それにつきましてはまだ審査が進んでおりませんで、そのケースにつきましての結論は出ておりません。  次は笹ケ谷のケースでございますが、これは本年七月三十一日におきまして十六名が認定されておりまして、十六名認定された者のうち七名は従業歴は全くございません。住居だけでございます。それから残りの九名は住居歴は当然ございますが、従業歴もございます。ただ、この九名の方は昭和二十二年以前の従業歴であるということで、公害健康被害救済特別措置法のほうに回ってきて認定をされる。しかしながら、労働歴だけではなしに住居歴もあるということで認定をされておるという事態でございます。  松尾の鉱山のほうにつきましては、労働省のほうの側の御調査ということで、地域としては、私どもは当時調査された報告の中に地域の問題はないというぐあいにその当時承っておりましたので、現在のところはまだ調査をいたしておりませんが、先日先生の御指摘もございましたので、この点は地元に再度調査をいたしまして遺憾のないようにしたいと思います。
  163. 小平芳平

    ○小平芳平君 非常にややこしくて、結局被害者は、いまの両省のお話を聞いただけでも、もううんざりしちゃうくらいなのが現状でありますが、その上にもう一つ大事な点が見落とされているということは、この宮崎県で倉恒報告というのがございます。倉恒先生を中心としたその報告によりましても砒素による健康被害は皮膚と鼻だけではない、いろいろ内臓疾患についての見解も倉恒報告には述べておられます。しかし、環境庁も労働省も砒素による健康被害を皮膚と鼻くらいに思って取り組んでおられるのが間違いじゃないか。したがって、労働省の場合は労災による補償額は十四級で五万円で打ち切りでしょう。これはまさしく鼻とか皮膚のことしか考えない、その結果二十年、三十年健康被害に苦しんでこられた方がわずか一時金五万円で国の制度からは打ち切られちゃう、こういうような結果になっているのではありませんか。したがって、労働省としても砒素による健康被害が内臓疾患にどう影響があるか、これを早急に対策を立てていただきたい。  それからもう一つ、労働省は、過去にこの企業に働いているときの健康被害であるということになれば当然企業被害の補償をすべきだということで進めておられると思いますが、いままでに具体的に企業がどういうことをしたかということを御答弁いただきたい。
  164. 東村金之助

    説明員東村金之助君) まず本件の業務上外の認定にあたりましては専門家をもって構成いたしまする検診班をつくりまして、内臓疾患についての検診項目をも含めまして検診項目を検診を行ないまして、さらにその結果を分析評価するための専門委員会を設け検討したところでございまして、その結果を尊重して結論を得たものでございます。しかし、ただいま先生の御指摘にもございました、つまり砒素の問題と内臓疾患との問題御指摘もございましたので、環境庁のほうとも連絡をとりながら労働省の関係機関の専門家もこれに参加しまして、ひとつその究明に取り組んでみたいというふうに考えております。  それから労災補償の補償とは別に、関係する企業に対する、何といいますか砒素患者に対する援助の問題でございますが、労働省といたしましても関係企業に対して実効ある補償が行なわれるよう指導しているところでございますし、これからも指導をしてまいりたいと思います。具体的な資料ちょっと手元にございませんで……。
  165. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 慢性砒素中毒の問題でございますが、最初四十八年一月に出されました専門委員会の意見では、砒素に対する、亜砒酸に対する暴露歴、それから皮膚の色素沈着及び角化、あるいは鼻中隔におきます瘢痕形成あるいは穴があいているというような状態及び髪の毛やつめの中の砒素の含有量というものを参考にしてやるということでございましたが、さらにこの問題もう少し広げるべきである、神経系統の問題というのが非常に御要望がございまして、その後さらに専門委員会を続けていただきまして、四十九年の五月、笹ケ谷のケースにつきましての判断条件として新たに専門委員会が出された報告によりますと、皮膚に砒素による中毒を疑わせる所見があるか、あるいは以前この砒素による皮膚症状があったというような既往歴がある人で多発性神経炎だけがいまはっきりしておるというような人も拾うということで、四十九年五月からは少し拡大されました。しかし、御指摘のほかの内臓疾患という問題でございますが、いま申し上げましたような砒素による中毒の条件がそろっておって内臓疾患もあるという場合には、これはもう当然に入ってくるわけでございますが、この内臓疾患だけあって、先ほど申し上げましたような皮膚の所見も鼻中隔の所見も何もないといった場合に、はたして砒素中毒として区分できるかということで、これは笹ケ谷のケースの場合も非常に御議論があり、また笹ケ谷のケースの場合に一時肝障害だけで分けられるかということで特別の調査もいたしましたが、なかなかそのときもはっきり分けられないということで今日に至っておるわけでございます。ただ、内臓だけの疾患につきましても、これは非常に重大な問題だということでございまして、先生の御指摘もございましたが、この点につきましては島根県と宮崎県の協力を得まして調査研究班を専門家を合わせて組織をいたしました。できるだけこの究明につとめて、それが明らかになれば、新たに判断条件を広げていくということで対処をいたしたい、こう思っております。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 一つ環境庁に伺います。  一つは松尾地区の環境汚染。松尾地区の環境汚染ば、いままでは無視されてきたのですが、松尾地区にも環境汚染があった。あるいは現に鉱滓が流れ出しているという点の環境汚染を大至急調査していただきたい、それが一つです。  それからやはり労働省と環境庁に分かれて、いまのように砒素による健康被害、内臓疾患にどういう影響があるかということを両方でやらなければぐあいが悪いのですか。
  167. 東村金之助

    説明員東村金之助君) 私申し上げましたのは、話が前後いたしましたけれども、環境庁のほうでおやりになる中に、労働省のほうも一緒に連絡をとりながら、参加してやると、こういう意味でございまして、別にやるという意味じゃございません。
  168. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 先生指摘の松尾のケースでございますが、松尾のケースにつきましては、先生最後に御指摘になりましたように、四十七年一月に松尾の問題が出ましたあとで、宮崎の労働基準局が現地を調査いたしまして、そのときに労働省の出された正式の四十八年二月の報告によりますと、一般住民への影響可能性を見出すことはできなかったということも一つの材料になっておりまして、いままで私ども参っておりませんでした。この点につきましてはつい先日、患者さんたちがお見えになり、いろいろのお話も聞き一この点につきまして宮崎県にさらに照会するとともに、早急にその調査をして、その必要性につきましての検討をいたしたい、そういうぐあいに考えております。
  169. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁長官、この前、長官はいまの橋本部長お話よりももう少し具体的にメンバーを編成して至急検討をいたしますというふうにおっしゃっておられました。その辺を労働省のほうも、環境庁のその健康調査を一緒にやるというのですか。まあ、入ってともにやりたいという姿勢のようでもありますので、とにかく環境庁で大至急問題に取り組んでいただきたい。いただかないと、この前もお目にかかった方々のように、ほんとうにもう苦しい状況にあるわけですから、十年、二十年、三十年と苦しい中を戦ってこられていらっしゃるわけですから、至急結論を出すようにしていただきたい。
  170. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) 先般お目にかかったときに申し上げたように、至急御要望にこたえるべく努力いたします。
  171. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう少し具体的に、どういう手順でどういうふうに進めるということはわからないわけですか。
  172. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 具体的な手順でございますが、まだはっきり固まっているわけではございませんが、まず私ども、当面この補償法を動かすということに非常に追われておりますので、それの九月一日ということにわれわれは制約されます。ただ、宮崎県にはこれはさっそく照会もいたしております。また先生の御指摘になった先生に、私はさっそく電話をいたしてみましたが、お二人とも御不在中で、まだ連絡もとれません。そういうことで、この補償法のほうから手があき次第、私どもはすぐさま現地の問題につきましてもやはり行ってみるということまでしてみて、一回対処いたしたいと、そういう考えであります。また、研究班のメンバーにつきましては、労働衛生研究所の坂部部長もこちらのほうに関係をしておりますし、労働省の中で砒素の問題の検討をしておられる先生方も関係しておられますので、労働省のほうとは十分連絡のとれる形となっておりますので、御了承をお願いしたいと思います。
  173. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  174. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に、環境庁長官にお伺いいたしますが、いまの質問にもございましたが、砒素の被害者にお会いになったということでありますし、今後ほかの患者にも積極的にお会いになりたいという、こういった御意見でありましたが、まず最初に、この砒素の被害者にお会いになって実際どんな印象を受けられたか、そして今後、たとえばイタイイタイ病や水俣病、四日市ぜんそくの患者にお会いになるといたしましても、実際、環境庁へ来いといいましても、なかなか来れないわけでありまして、現地へどんどん行かれて積極的にお会いになる、そういった御趣旨か、その点まず最初にお伺いしたいと思います。
  176. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) お目にかかって事情を承りましたが、非常に気の毒だと思うと同時に、できる限り、そうした人々に積極的に機会をつくってお目にかかりたいと、こう思っております。
  177. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 一言でおっしゃったわけでありますけれども、実際二の被害者の苦情はほんとうにたいへんなものでありますし、むしろことばに尽くせないというのが実情であると思うわけでありまして、そこで、きょうの所信表明拝見したしたけれども、やっぱり被害者の実情に対する御理解についてはうかがえていないというのがちょっと問題になるのでありますけれども、まず、日本は世界に例のないイタイイタイ病、水俣病、これを発生させたわけでありますので、まず被害者をほんとうにその立場に立って救済していくという、これを公害行政基本にしていただきたいと、これが私の希望であります。  そこで、次の質問に入りますが、そういうほんとうにたいへんな実情に対して、いまの公害行政基本になっております公害対策基本法、私どもは、こういう実情に対しては、これすらもが、まだきわめて不備な点がありますし、日本共産党では、それに対しましてこの不備な点を指摘して改政案も出しておりますが、これを十分に取り入れて、改正の方向に進んでもらいたいわけでありますが、きょうはその改正の問題よりは、現にありますこの公害対策基本法を具体的に早急に進めていくという、いわば実施段階の問題だと思います。  そこで、先ほどの大気の問題についてはいろいろ御質問があったんで、いま水質汚濁の問題について伺いたいと思うんですが、総量規制について水質についてもやりたいと、こういった所信表明でございましたが、これを実際いつごろのめどで、実際どんな中身でやっていこうとされているのか、その概略についてまずお伺いしたいと思います。
  178. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 水質の、現在濃度規制規制をしているわけでございますが、だんだん問題が出てきて、総量規制を早く実施しろという声が高まっていることは私ども十分承知しているわけであります。ただ、私の前任者あるいは前々任者等が御説明申し上げておりますように、一定の与件というものが必要でございまして、つまりある一定の水域でのその環境のキャパシティがどうなっているか、そういった問題、それから実施上の問題として計測メーターといいますか、計測機器を具体的に開発しないと実効ある取り締まりができない、こういう問題もございましょうし、あるいは計測の手法として、現在CODあるいはBODを使っておりますので、それにかわるべき、あるいはTOCなり、あるいは別のものとか、そういった手法をどれにとるか、こういったことも、機器の開発の問題として解決しなきゃならない問題があるわけであります。そのほか、具体的にある水域でのキャパシティといいますか、環境基準を達成すべき汚濁の量と、それに許容される汚濁の量——許容されると言っては少し言い過ぎ、逆なのかもしれません。それ以内におさめるべき汚濁量、こういったものができますれば、それをさらに具体的に業種、工場別に分けなきゃならない。その場合の業種、配分をどうするか、こういった問題、かねてからいろいろの問題があるわけでありまして、それを具体的にいま詰めている最中であります。私どもはそういったことができ次第、できるだけ早く、汚染の進んでいる、ことに閉鎖的な水域につきまして、総量規制というものを導入していきたい、できるだけ早くしていきたい、こういうふうに思っております。
  179. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの話、聞いておりますと、何か入り口に振りかかって、何かまだ暗中模索しているというような、そういうような状況のようにも聞こえますし、できるだけ早くと申しましても、それがいつごろになるのか、ちょっと見当もつかないような話でありますけれども、もう少しその点ははっきりしないものでしょうか。
  180. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) まあ入り口にということでございまして、これは私の説明が悪かったわけでございますが、入り口のところで戸惑っているということではございません。かなり作業もし、勉強も内部でしているつもりでございます。ただ、大気の場合等と違って、言いわけがましいことになりますが、技術的な側面で、かなり解決しなきゃならない面が多いということを申し上げたわけでありまして、一生懸命私どもはその早期実現に努力したいと、こう思っておるわけであります。いつごろかと、こういうお話でありますけれども、まあでき得ればそういった問題が解決し次第、早ければ五十一年、あるいは五十二年、そのぐらいのことを一応目標にして、われわれは内部でいま事務的に作業を進めておる段階でございます。
  181. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 また今度一般的な問題に戻りますけれども、ともかく将来の問題、将来の公害をなくしていくという、これが公害対策基本でありますけれども、現状は過去の被害すらまだ十分に補償されていない、また、振りまかれた害すら戻されてないという、これが現状でありまして、その面に対して環境庁としても、もっともっとやるべきことがあると思うんですが、その点で、私自身はいままで弁護士として、いわば公害発生企業の責任を法廷の場で追及するという、こういった仕事をしてきた関係から、率直に、幾つか公害行政に対する具体的な問題を感じておるんですが、この一つとして、たとえば被害状況を具体的に明らかにしろというのが一つであろうこと、しかも、まず第一であることは間違いないわけでありますし、先ほど来のいろんな官庁の答弁も、まさにその点を明らかにしておるわけでありますが、もう一つは、因果関係をすみやかに具体的に明らかにしていくという、このことがほんとうに大事だと思うんです。現にたくさんの被害者は、その因果関係が明らかでないために、加害企業すら特定できない、また、大体そこだろうと思いましても、それに対して要求もできないという、まあその因果関係が明らかにならないところで戸惑っているという、これが状況であります。こういった点で、国が積極的にこの因果関係を明らかにするために、もっともっとやるべきことがあるのじゃなかろうか。被害者に実際力がないわけでありますから、そのために研究機関をもっともっと充実して、被害者の申し出がなくてもすみやかに、被害者の申し出があれば直ちに因果関係を明らかにするための努力をする、こういった点について積極的にお考えかどうか、お伺いしたいと思います。
  182. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) ただいまの因果関係の問題でございますが、これは確かに民事上の争いになりました場合でも、因果関係の問題が一つの中心であることは間違いないわけでございます。で、私どもとしましては、これまでもいろんな場合に原因の究明ということをやってまいったわけでございますし、今後もその考え方に変わりないわけでございます。ただ、この場合は民事上の争いを裁くと申しますか、調停等いたします公害等調整委員会の機能の問題もあるわけでございますので、私どもとしましては、環境庁立場におきましてできるだけの御協力をしていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  183. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いま公害等調整委員会お話ございましたけれども、実際被害者の人はそこにいく前の状況が問題なわけですね。ここへいける段階は因果関係についても一定の確信を持ち、大体いけるだろうという見通しがあるからここに出すわけでありますし、またあるいは裁判所にも出すわけでありますけれども、もっとその前の段階ほんとうに困っているという、これが実情であります。それからもう一つ、たとえばイタイイタイ病、水俣病、かなりはっきりした具体的な公害病については国が因果関係を明らかにして公害病認定しておるわけでありますけれども、しかし実際認定したあとも学者がまたこまかい議論をやりまして、そのこまかな議論がまた法廷に持ち込まれて裁判が延びてくるという、こういった点があって実際の裁判を進める被害者はよけい裁判の延長ということで困っているという、そういう実情であるわけです。そこでもっと実は、一つはそういう因果関係論争に対して私はもっと明確な態度をとり切れないのかということが一つと、それからもう一つは、そういう公害等調整委員会に出てくる前のもっとすみやかな国の動き、それができないかという問題、この点についてお伺いしたいと思います。それからもう一つの紛争がありますと、何か紛争のある事件については国や県が一つの見解を出すことをちゅうちょしているというそんな印象を受けるわけですね。そんなことを絶対にやめてもらわなきゃいけませんけれども、そんな問題についてもお答えいただきたいと思います。
  184. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御指摘のございました点は、私どもの新しく発足しました環境保健部の一番中核的な事項でございまして、そのために調査につきましては保健調査室というのを設けまして積極的に進めていこうとしておるわけでございます。御指摘のありましたような事件の問題だけでなく、やはり恒久的に一つ継続的なサーベーランスの形をやるべきであるという予防的な観点ということを、現在化学物質等では次第にそういう体系に入ってまいりまして、そのほかの実験的な研究と合わせて次第に効果をあげ得るものというぐあいに考えております。  もう一点、学問と行政と裁判のことにつきましてのいろいろな御指摘がございましたが、学問的にはやはり限界があるところで、この踏み切りということが行政や裁判のおのおのその与えられた時点での問題でございますが、裁判の踏み切ったことが学問の最終結論ではないということも、これもまた非常に重大な問題でございまして、その点で学問の良心が維持され得るということも、これも同時に考えなければならないことであるというぐあいに私ども考えております。そういう点におきまして、新しい知見はできるだけ明らかにして、それによる積極的な対策を打つというような角度で私どもは行政機関としての最善の努力をいたしたいというぐあいに考えております。
  185. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それから国が実際公害の発生源になっている問題、たとえば騒音等はその一つでありますけれども、それからその他については薬害などでは国の責任が追及されているという、こういう問題があります。公害ほんとう防止し、対策を立てなきゃいけない国が加害者になっているというたいへん深刻な問題でありますけれども、こういった問題について基本的にどういうお考えを持って臨まれるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  186. 城戸謙次

    説明員城戸謙次君) ただいまの前半の騒音の問題でございますが、これは新幹線の問題、あるいは航空機騒音の問題、あるいは高速自動車道等の問題、いろんな問題におきまして共通に現在の一番大きな問題になっていることは私どもよくわかっているわけでございます。これに関係しまして、私どもとしましてはまずそういうような関係の公共事業を行ないます場合に問題が生じないように今後やっていくということが中心であるわけでございまして、そういう点の努力を関係各省ともしてまいりたいと、こう思っております。  それから後段の薬の問題でございますが、これは実は環境と直接的な関係がないわけでございまして、むしろ薬事法その他の厚生省所管の法律の関係で対処される、またもし被害者が出れば厚生省におきましてその対策を立てる、こういう種類の分野でございますので、私ども厚生省と密接に連絡をとりながらやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  187. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういう問題が生じないように努力をしたいということでありますけれども、実際上はたくさんの被害が出ておるわけでありますし、実際裁判になっている問題もあります。これは被害者の側から見ますと、国が被告になって、しかも全力をあげてそれに対処した場合ですね、これはきわめて強力なる相手になって、たいへん裁判も困難になってくるという、いわば国が公害を出しながら、さらに裁判で被害者によけいな努力を払わせているという、こういったことにもなっているわけでありますね。こんな点について長官どうお考えか、ひとつ御意見を述べていただきたいと思います。
  188. 毛利松平

    国務大臣毛利松平君) いま城戸局長お答えした点であるいは尽きておるかと思いますけれども、国が当然責任を負うべき立場を明確にすべきだと思います。
  189. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまそれはそれでお伺いしておきます。  次に、今度は振りまかれた公害をどうもとへ戻していくかという中で、たいへん大きな問題になっております土壌汚染の復元の問題についてお伺いいたしますけれども、これは環境庁長官所信表明の中で、「あと追い的に処理するという受け身の政策に終わることなく、」と、はっきり言われておりますが、いわばもっとその前の、実際カドミウム等で土壌が汚染された、それをもとへ戻すという、いわばあたりまえのことを実現するという、それだけにすぎないわけでありますけれども、現状はなかなかうまく進んでいないという、これが現状であります。この点につきましては、私どもこの汚染土壌をもとへ戻していくということは、いま申し上げたとおり、まかれた害は必ずどんなたいへんなことであっても、どんなに金がかかっても、もとどおりにするという、こういう原則が確立することによって、今後将来の害を防いでいく国の行政ができていくんだと思うのです。それさえできなければ、将来の害を防ぐといいましても、なかなかそれは実現が具体的にならぬだろうと思うわけであります。まずそういう点で、土壌汚染問題はきわめて重大な問題でありますし、これをどうやって実現していくのか、これをほんとうに成功させていくかどうかということは、公害行政のある意味では基本になるんだろうと思うわけでありますけれども、そのような認識をしておられるかどうかということ。  それからもう一つ、これは三木長官が、水俣病裁判が判決ありましたときに、不知火海の水銀をもとへ戻すと、その汚染をなくしたいということを、その事業をしたいということを言われたわけであります。これは考えてみますと、もうきわめてたいへんなことであります。で、いわば海の底にある水銀をこれは除去するわけでありますから、そういった点から見ますと、いま陸の上にある重金属の除去さえたいへんうまくいっていないという、こういう状況から見ますと、海の中のことをどうやってやっていくのかということはよけいむずかしいわけでありますけれども、そういう意味で、どんなことがあっても陸上の汚染をもとへ戻さなければいかぬというぐあいに考えておるわけであります。この点について、土壌汚染問題をたいへん重視すべきだと思いますけれども、その点について長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  190. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 御承知のとおり、土壌汚染問題は非常に大事で、しかも非常にむずかしい問題だと私ども理解しております。一たん過去のいろいろな蓄積によって土壌が汚染されて、そこにたとえばカドミウム米等の汚染米が発生する、あるいは農作物の生育が阻害される、こういった形で一たんよごしてしまったものをなかなかもとへ戻すということは非常にほかの場合よりもむずかしいということがありますので、やはり発生源でそういう根絶するということが一番基本じゃないかと思います。と同時に、発生したものにつきましては、できるだけ早くこれを復元するという形で私ども努力していきたいと思っております。ですから、いま御指摘になりました土壌汚染された地域につきましては御承知のとおり土壌汚染防止法がございます。これを、法律をできるだけ最大限に活用して、その指定の促進、事業の積極化という施策を展開してまいりたい、こういうふうに思っております。  それから、これと並んで、同じくやはり蓄積公害、蓄積性の公害という意味でPCB、あるいはただいま御指摘になりました水銀の問題、こういった問題もなかなか、たとえば原因者が非常に多岐にわたる、あるいは原因者が不存在の場合があるというような形で、場合によっては、観念のしかたによっては土壊汚染そのものよりもむずかしい、いわゆる狭義の土壌汚染よりもむずかしいというケースもございますので、この問題についても取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  191. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その具体的な問題につきましてはこのあとまたお聞きいたしますが、いまもう一つお聞きしたいのは、指定対象物質としてカドミウム、銅などまだ限られておりますね。本年砒素が指定されるということでありますけれども、亜鉛については、これは四十八年四月二十日の衆議院の委員会におきまして、共産党の中島武敏議員の質問に対して、三木長官は、四十八年中に調査をして四十九年じゅうには指定をするという、こういった答弁をしておるわけであります。その四十九年もだいぶたっておるわけでありますけれども、実際これはどう進んでおるのか、これについてお答えいただきたいと思います。
  192. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 指定有害物質の指定の問題でございますが、ただいまは、先生指摘のとおりカドミウム及びその化合物、それから銅及びその化合物というぐあいに二つが指定されておりまして、当面私どもの日程にのぼっておりますのは、先ほども御議論ありました砒素の問題これを早く取り上げていきたい、こういうふうに思っております。具体的に申し上げますれば、今月の半ばぐらいにそのための審議会を御参集願って、そこで砒素の指定基準というものをおはかりして、早急にその砒素の汚染地域を対策地域として指定する場合の基準を確定していきたい、かように思っております。それから、そのほかにも鉛、亜鉛、こういった問題が次ぐわけでございますが、ただいま先生指摘になりました亜鉛につきまして私どもその必要性は十分に理解しておるつもりでおるわけですが、残念ながら、調査それから実施というテンポが、具体的には、三木長官おっしゃったラインよりも私ども事務の遅延のために一年ぐらい、ワンテンポずれており申しわけなく思っておりますが、亜鉛につきましては四十九年調査という形で、五十年以降にできるだけ早い時期に指定していきたいと、かように思っております。おくれたことははなはだ申しわけなく思っておりますが、おくれはできるだけ早く取り返したいと思っております。
  193. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それから次に発生源の問題で、これは鉱業審議会から「金属鉱業等に係る蓄積公害対策のあり方について」というものが出ておりますけれども、これは拝見しますと、一面、国が積極的な対策を立てていきたいという、そういう評価すべき問題もあるんですが、中身をちょっと拝見しますと幾つか気にかかる点がありますので簡単に質問したいと思います。  その一つは、企業の責任がだんだん後退していくんじゃなかろうか。国が積極的に出ることによって企業の責任を免罪するような面がありやしないか。たとえば、現存する事業者にのみ責任を負わせることば適当でないというような、そういう場合があるという指摘があったり、また、これも一四ページによりますと、「今後、国が主体となり、被害者救済の観点から、汚染米の発生、稲作休止等による損失を救済するための積極的な施策を地方公共団体、関連企業等と一体となって講ずべきである。」という、こういった指摘によって、国が出ることによって、本来第一次的に責任がある企業が責任が免れるという、そういう面がありゃしないかという、そういった問題がありますし、その「付論」——一番最後のところを見ますと、「蓄積公害に関する費用負担等については「法の不遡及」の原則にのっとり再検討が望まれる。」あるいは「今後、必要に応じて特別の立法措置検討すべきである。」、こういった指摘もあります。これをそのまますなおに読みますと、鉱業法百九条の改正  これはむしろ改正じゃなくて改悪して、いまある企業の責任がこの不遡及の原則によってなくなってしまうんじゃなかろうかと、こういった心配があるんですが、その点、実際どんな議論をされておりますか、この点について伺いたいと思います。
  194. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 通産省のほうからお答えが後ほどあろうかと思いますが、これについての環境庁としての考え方を申し上げます。  私どもは、蓄積公害のむずかしさということは、それは十分理解しておるつもりであります。ただし、そういう意味で、非常に蓄積公害をかかえている県の県知事さんが非常に御苦労なさっておる、どうも国はめんどうの見方が少し冷たいんじゃないか、県にばかりまかしておって国は救助の手なり何なりを差し伸べない、それはPPPの原則はいいけれども、結局は地方住民は非常に困っておるという現状をどうしてくれるんだという、そういう焦慮感というものは現実に地方自治をやっていらっしゃる知事さんにはおありだろうと思うわけであります。そういったやはり感情といいますか考え方が、そのただいま先生指摘になりました答申面にも出ておると、こういうふうに思います。ただ、私どもとしては、国が積極的に乗り出してこの問題を解決するということをそこで強調していることは間違いではない、かように思っております。従来、国の乗り出し方が弱かったという指摘はやはり反省しなきゃならない、こういうふうに思っております。しかしながら同時に、そのために、やはり企業の責任といいますか、PPPの原則というものがあいまいにされてあってはこれはおかしいと、本筋からはずれると、こういうぐあいに思っております。ですから、国が積極的に乗り出すのはいいけれども、国が一義的に解決すると、第一義的に国だという思想には同意できない、ただし、具体的に公害汚染者、発生源者が現実しない、現実にだれも存在していない、そういった場合には、それは幾らPPPであるという原則をやっても、現実には困っている農民なり住民がいるわけですから、それについて国が積極的にあるいは地方公共団体と手を握って乗り出すということは、これはそうしなければいけないだろうと思っております。汚染者が不存在の場合にはそうしなけりゃいけないだろうと思います。それから汚染米についてもやはり同じ、汚染米の処理についても同じような考え方が私どもは言えるんじゃないかと。汚染米が現実に発生して、そのために汚染者が明確であるという場合には、それは国の責任を直ちに持ってくるのはそれはおかしい、国は何にもしなくていいという議論にはならないですけれども、それはおかしい、かように思っております。要するに、私どもの考え方といたしましては、国が積極的な姿勢を出すのはいいけれども、しかし、そのためにPPPの原則というものがあいまいもこになってしまってはいけない、こういう考え方でこの問題については処理していきたい、かように考えております。   〔委員長退席、理事栗原俊夫君着席〕
  195. 佐藤淳一郎

    説明員佐藤淳一郎君) この「金属鉱業等に係る蓄積公害対策のあり方について」という答申でございますが、これはことしの春に鉱業審議会に諮問したわけでございまして、この御答申の性格は政府原案を御諮問したわけではなくって、関係者の方々、農林関係の方々あるいは学識経験者の方々等々網羅してこの審議に御参加いただいたわけでございまして、御参加いただいた方々の御意見をそのまま実はここに書いたわけでございます。したがって、これを実行するかどうかはこれからの政府の姿勢の問題でございますので、この点はあらかじめ御了解いただきたいと思います。  この背景となりますものは、実は日本の鉱山は、わざわざ私から申し上げるまでもなく、農業と並んで非常に古い産業でございますし、したがって、しかも、いま非常に問題になっておりますところの非鉄金属というのが非常に産業的に古いと。しかし、採掘の権利という非常に強い権利を保有している裏返しの義務として、要するに、鉱業権者は非常に古い鉱業法に基づきまして無過失ではあっても賠償しなければならぬと。それから、自分がやらなくても、鉱業権を持った人は、最終鉱業権者はとにかく賠償するんだという、ですから、姿勢としては非常に強い被害者救済の法律に基づいて鉱業法は運用されておるわけでございます。したがって、先生の御指摘になっておりますところの企業側については、実はほかの法律よりも非常に強い法律できておるわけでございますが、確かに、この答申を読むと舌足らずのところがございまして誤解を受け得るところがございますけれども、現実の現在する鉱業権者につきましては、あくまで鉱業法に基づきまして厳重に責任を追及いたしておりますし、いささかも偽りはないわけでございますけれども、   〔理事栗原俊夫君退席、委員長着席〕 何といいましても、もう千年以上の古い産業のために昔の公害が蓄積されてそのまま残っておると、しかもそれが、だれが掘ったのか、それからかりにわかっておっても資力がないとかということで、だいぶその被害者、特に農民でございますけれども、農民者が泣き寝入りになっているケースがいままであった、これを何とかしてやらなきゃいかぬということでいろいろやってきておるんでございますけれども、実はだいぶ地方自治体のほうにいろいろ形式的に御迷惑かけている、その面が、実は今度県の代表の方も入っておられまして、鉱業というものの歴史的経過にかんがみて国がもう少し表面に出るべきであるという強い意見がここに出されたわけでございまして、決して企業救済という意味は全然ございませんので、その点は御了解いただきたいと思います。
  196. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それでけっこうなんですが、この「付論」というのはおそらく少数意見だろうと思いますけれども、その少数意見としても、法の不遡及の原則により再検討しろとか、立法が必要であるという、こういう意見が出ますと、これはやっぱり鉱業法百九条の企業の責任は幾らかでも軽減すべきだという、こういう企業側の意見がかなり強く主張されているのではなかろうかと、そういったことを率直に感ずるわけであります。そうしますと、これはあの百九条があるためにやっと被害者が公害裁判に勝てたという、やっぱり歴史的な段階を経てきたたいへん貴重な法律でありますし、あれがなければこれほど公害行政も進まなかっただろう、こういうことでありますので、そういう意見には動かされずに、ぜひともあの百九条お守りいただきたいということを特に要望するわけであります。  そこで、次に具体的に、いま神通川流域で進められております土壌復元事業、これはその規模の大きさ、場合によりますと数千町歩に及ぶかもしれませんし、また実際にたくさんの公害病患者、イタイイタイ病患者が出た数少ない地域でありますし、ここの復元事業がどのように行なわれるかということ、これが日本じゅうの土壌復元事業のいわば基本になるということでたいへん大事だと思いますので、そこでお聞きしたいわけであります。  まず、第一番目でありますけれども、これは判決後二年たっておりますし、それから、これは裁判が終わったあと、三井金属と被害団体との協定に基づきまして汚染土壌の復元の一切の責任を三井金属が負担する、費用も負担するという、そういった協定までできて最も有利な条件にある、こういった状況でありますけれども、しかし判決後二年たった今日、いまだに地域指定ができていないという、こういう状況であります。それで県当局のほうは、本年三月までに第一次地域指定を行なうという、こういったことを言っておりましたけれども実際できておりませんし、まあこれは非公式な見解ですけれども、本年度中は無理じゃないかという、こんな指摘をされているわけであります。で、いま問題になっておりますのは、あの汚染地域全体の地域指定じゃなくて、ともかく現にはっきりした地域、いわば第一次地域指定を求めているわけでありますけれども、それすらもがそういう状況であるということは、これは被害住民がたいへん不安に思っておりますので、この地域指定について実際どうなっているのか、これを一刻も早くやる点についてどうなのか、この点について御答弁願いたいと思います。
  197. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) いまお尋ねの神通川流域にかかる土壌汚染対策地域の指定の問題でございますが、一番調査が進んでおりますのは、神通川の左岸区域でございます。それからこれにつきましては、四十六、四十七、四十八と調査を、それぞれ農林省の調査、あるいは環境庁調査、県の調査というぐあいにいろいろ織りまぜて調査をしております。で、調査をほぼ完了いたしましたので、今月末を大体目標にいたしまして、左岸の流域区域につきましては土壌汚染対策地域として指定をするべく現在作業中であるというふうに県から私どもは聞いております、今月末を目標にして。で、おおむね対策地域の面積は六百ヘクタール前後になるんじゃないかというふうに私ども聞いております。あと、対策地域に指定するだけでは問題は解決しないことは当然でございまして、その次に来たるべき問題としては対策計画を早く樹立するという問題と、それから費用負担の問題で、ここは比較的問題が片づいているところでありますから、対策事業にいち早く着手できるところでございますから、それが早く着手する、こういったことであろうと思います。この問題につきましては、できるだけ早い時期に、でき得れば具体的な目標を県に相談いたしまして、タイミングというものを相談いたしまして、できるだけ早い時期に対策計画の樹立とそれから事業の着手ということに力を注いでいきたいと思っております。県のほうもかなりこの問題については急いでおりますから、そんなにおそくならないんではないかと私ども思っております。  それから右岸につきましては、いま調査中でありまして、もう少し調査継続してなお追加してしていきたいと、かように思っております。
  198. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その地域指定をするにあたって、具体的にはまあ汚染地域だということが調査してわかった地域でありますけれども、そういう調査の中でもいわゆる残ってしまう地域ですね、穴あきと申しますか、これはどうしても出てくるわけでありますね。この点については、地元の町議会の代表からも先日陳情があったと思いますけれども、これは実際事業をやる場合に、そんな小さな部分を残してやること自身はきわめて不便でありますし、また、いままでの調査の結果そこから汚染が出てないというだけの話であって、今後も出るかもしれない、そこを残してしまった場合にはきわめて不利益、今後もたいへんな問題が起きる可能性がある。で、あらゆる観点から見まして、そういう穴をなくしていくべきである、こういった地元の強い要請がありますが、その点についてどういうお考えでございますか。
  199. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ただいま六百ヘクタール程度が指定されると、指定されることになるだろうと聞いていると申し上げましたが、そのほかに虫食い、いわばその六百ヘクタールだけを指定しますと、虫食い状態になると、それで、その虫食いの状態が百数十ヘクタールというように聞いておりますが、そこは、現在までの調査の結果虫食いになるという意味は、一PPM以上のカドミウム米——カドミウムを含んだ米が産出されていない、まあこういったところでございますが、そういった虫食い状態になる。それで、地元の方々は非常にその点について懸念されて、事業実施するにしても、ぽつぽつスプロール的に穴があいておったんでは仕事は円滑にスムーズに流れない、まあこういったことでたいへん心配していらっしゃるということは私どもよく聞いております。これにつきましては、私どもの考えとしては、まあ県ともいろいろ相談いたしましたが、その虫食いのところをもう一回県自身で調査すると、こういう御意向がありますので、それはぜひやっていただきたい、こういうふうに思っております。それから、まあかりに県でできませんでありますれば、ややタイミングが少しずれますが、国費でこういったものの調査も補完ということはこれは可能だろうと思っておりますので、御期待に沿っていきたいと思っております。  それから、そういったかっこうでやって虫食い部分が解消されれば、それはそれなりに指定という形でいいわけですが、それでもいろいろ調査をした結果、虫食いがまた出てきたということは、これはあるのではないかと思うんです。その場合には、具体的に対策事業実施するときに、いろいろな虫食い状態をそのまま放置しておいてやるとなると、まあ交換分合その他にしてもなかなか支障が出てくる、こういったことがありますので、その点についても、その善処方について県と相談していきたいと思っております。県は、実施段階においてやはりそのまま、虫食いのそういうスプロールの地域をどうするかということは、これは非常にたいへんな大事な問題だから真剣に考えていきたい、こういうふうに言っておりますので、よく県と相談してこの問題は処理していきたいと、かように考えております。
  200. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは県と相談というよりもむしろ国の指導性を発揮願いたいわけでありますけれども、ことにいまの御意見でも、もう一度調査をして出てくればという話でありますけれども、そうしますと、その分だけまた地域指定がおくれ、事業がおくれてくるという、それこそいま県が問題にしておるとおり、今年度の指定は無理かというような、そんなような状況が出てくるわけでありますね。これはいわば復元という問題から見ますと、あの地域全部をやっぱり汚染させておるわけでありまして、その一つ一つのたんぼをもとへ戻すというよりは、その地域を昔どおりの農業ができるような地域にしていくという、これがほんとの復元の意味だと思います。そうなりますと、まあ大半、大部分が虫食いであると問題でありますけれども、いまのような場合に、小さい、少ない場合は、むしろそれを一緒にやるというそのことが、ほんとうにその地域ぐるみを完全にもとへ戻していくという、こういう考えがむしろこれは合理的であり、常識じゃなかろうかと思いますし、そしてまた現に三井金属は被害者全体に対して復元いたします、こういう約束をしているわけですね。そうしますと、これはごく常識的に見て、調査を待つまでもなく、小さな場合には一緒にやっていくという、こういった点で御指導願えないものかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  201. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 法律に基づく対策地域の指定ということになりますと一定の要件がありまして、それに従ってわれわれは指定せざるを得ないわけであります。ですから、かりに虫食いが出たと、現に出ようとしていると、そういった地域につきましては、いち早く県と相談して県のほうで追っかけて調査をしていただく、こういうっもりでおるわけです。ただし、その調査の結果を待っておっては、いまの当面指定すべき六百ヘクタールがまた指定がおくれてしまうということではいけないので、これは地元農民の希望でもございました、それだけは早くやってくれということですから、切り離して早くやりたい。それから追っかけて調査をいたしましたものにつきましては、追っかけて調査結果に応じて指定していきたい。それからさらに調査してみたけれども、やはりカドミウム米の汚染地域としての指定要件に欠けておったということが判明するケースも先ほど申し上げましたようにあるかと思いますが、それについては事業実施段階で何かうまい方策がないか、これについてよく県と相談して、まあ指導しろとおっしゃいますが、指導していきたいと思っております。
  202. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 具体的例といたしますと、愛知県の刈谷でも、これはきわめて小さな範囲でありますけれども、復元事業をすでに実施して、やはり同じような穴あきができて池のようになってしまうということで、これは県が企業と話してやはり企業の費用で全部買い上げしたという、こういった例も県にあるわけでありますね。この場合には、もう神通川流域の場合には三井金属がはっきりと復元約束しているわけでありますので、こういった点ではかえってやりやすいんだろうと思いますし、こういった点ではさらに積極的な方策を望みたいと思うわけであります。  それから、いま六百ヘクタールについて第一次が始まろうとしておるわけでありますが、この第二次以降の補充調査がさらに行なわれるわけであります。この点で特に問題になりますのは、県のほうでは調査の場合二・五ヘクタールに一カ所ということですね。これは国の基準に従ってまじめにやっておるわけであります。しかし、これは実情に合わないというのが被害住民の実際の意見でありますし、またこの二・五ヘクタールに一カ所というのは、大気汚染の場合にはそれは確かにそのとおりですね、適切な調査方法だと思いますけれども、水質汚染の場合にはその川に沿って汚染が進行しているわけでありますから、ですから二・五ヘクタールでありますと、一番大事な場所は逃げてしまうという、そういう感じもあるわけであります。そういった点で今後の補充調査にあたっては、この水系とか地形そういうものに従って、むしろある場合には住民の指示に従って調査地点をきめていくという、そういったことでないとほんとう汚染状況がわからないのじゃなかろうか。先ほどの虫食いの状況も、そういった調査の方法にもすぐ関係がありゃしないかと思いますし、またそういう点では、この調査の方法について国の基準をむしろ水質汚染に合うような基準にできないのだろうか、この点について答弁をお願いします。
  203. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 土壌汚染防止法に基づきます一連の調査の体系でございますけれども、農林省でやっております概況調査というのがございます。これはかなり全国網羅的にやっておって、したがってその網の張り方といいますか、それが荒いわけでございますが、具体的にいえば、水田でいえば千ヘクタールについて一点、畑について二千ヘクタールに一点、こういった調査がまずあるわけで、それが概況調査でございます。そのほかに細密調査という形でこれは環境庁が担当しておりますが、それはいま先生指摘になりました二・五ヘクタールに一点調査と、こういったことになっているわけであります。二・五ヘクタールに一点という機械的な方法ではいささかいろんな点で不備が出てくるんじゃないか、こういった御指摘でございますけれども、二・五ヘクタールになぜきめたかということにつきましては、これはやや経緯的なことにわたるわけでありますけれども、これも農林省で調査しておりますのは、この上に概況調査の中間ともいえます農林省でやっております土壌調査というのがございまして、これはいわばバックグラウンド、汚染のバックグラウンドを調べるための調査といっていいと思いますが、これは二十五ヘクタールに一点の調査をしております。これをさらにその精度を高めるためにその十分の一の二・五ヘクタールでやると、こういった形になっておりまして、それで二・五ヘクタールに一点というのが土壌汚染防止法の調査体系の末端調査ということになっているわけであります。ただ、いま御指摘になりました点で、二・五では不十分じゃないかという点がこれはあり得ると思います。あり得ますが、その点につきましては、これは県等の補足調査というものとあわせて補っていきたいと思います。その点は県単独でいろいろ補足調査ということもやっておる県もありますから、それは両方補い合いながら全きを期していきたいと思います。
  204. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ただ、市街地の現地では実際こういうことも伺っているわけであります。県は国の基準によってまじめに二・五ヘクタール、一カ所ずつやるわけですね。それに対して住民のほうは、それじゃ実情に合わないから、こっちも調べてくれと言いますと、それでは恣意的になり、作為的になるからだめなんだと、こういうことを言うわけであります。その場合には国の基準ほんとうに県をがんじがらめにしておって、実情に合わないような調査でもやっぱりやっていくという、これがむしろ現状なわけでありますね。ですから、そういう点では、むしろ水質の場合も具体的な——たとえば上流が、ここが汚染されておれば、その次も必ず汚染されてくるというのは常識でありますし、そういう水系に従って具体的な調査ほんとうに進められるのかどうか。その点では、国がその点柔軟な態度を示されれば、それは県は喜んでそのとおりやるわけであります。むしろ国の基準が逆に実情を正確に把握させていないという、これが問題点であります。
  205. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 国は統一しなければならないという立場がございますので、やはり二・五というぐあいに統一した方法で二・五ヘクタールに一点という形の調査体系というものは、これはすぐしたくないと思っております。ただ、県の段階で、これに補足する意味で、それはそれなりにやり、さらに流域等の関係で汚染の連続性というものが考えられる場合には、その他の地域を補足して調査していただくということは、これは十分に価値のある調査だと私ども思っております。そのようにしていただきたいと思います。
  206. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次の問題として、先ほど指摘もありました今度復元事業計画の問題でありますけれども、地域指定があり、それから計画をつくっておったのではおそいわけでありますね。そこで、これはぜひ御指導をいただきたいわけでありますけれども、地域指定の準備を進めると同時に、実際上の計画、その作業を進めるように、そしてまた、実際これ土壌の復元問題でありますと区画整理事業になりますが、実際権利関係の調査だとか、また実際進めていく場合にはやっかいな問題がたくさんありまして、地域指定があってから始めたんでは、またそれで二年、三年も先にいってしまうという、そういう関係もあるわけでございます。その点で計画を早くやること、そうしてそういう準備を早急に進めるという、こういった点について、どうお考えか。
  207. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 仰せのとおりであります。比較的この地区につきましては費用負担の問題が農民の方々の御努力によりまして、三井との間で協定ができておりますから、その問題は比較的容易に片づきやすい。ほかの地域でもいろいろの問題の対策計画をつくるときに、費用負担計画をどうするかということが一番の問題で、それさえきまれば、あとは比較的スムーズにものごとが流れるというのが、ほかの地域の通例でございます。この地域は、ただいま申し上げましたように、そういった難点は一つまたいで通れるわけでありますから、早く指定し、すぐ追っつけて計画を樹立するというぐあいに指導してまいりたいと、こう思っております。
  208. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今度その復元事業の中身の問題として、たとえば客土何センチやるのか、具体的な問題も含めて、また県の立場とそれから住民の要望との間にだんだん差が出てくるわけですね、こういう問題、これについては、むしろ住民の意向を中心に考えていくべきではなかろうか。と申しますのは、自分のたんぼが汚染されているのをもとに戻すという、こういったことでありますから、一生懸命いろいろ専門家にも頼んで、かなり詳細なマスタープランを持っておりますし、また一番いい方法、今後後世にたんぼを残していくために一番いい方法を考えているわけですね。それに対して県の考えておられることあるいは国の考えておられることとの間に違いがあると、またそこで問題が起きてくるという、こういう点では、復元の内容についてはできる限り住民のつくった案を基準に進めていくという、こういった御指導をしてもらえるものかどうか。  それからもう一つは、いろんなことを進めていく場合、法律的には県は市町村長の意見を聞くということになっております。そうなりますと、そこだけの意見を聞いて、実際には当事者である住民の意見は聞かないまま事業が進んでしまうという、こういった面のトラブルも現にあるわけであります。こういった点で、手続的にも法律上はないけれども、やはり本人のことをやるわけでありますから、そういう意見を十分聞いてやるように、そういった御指導をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  209. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 具体的な事業につきましては、たしか三ヘクタール程度の試験圃場をすでに設置して、ここで事業実施処方せんを考えているわけであります。ですから、そういった処方せんを参考にしながら事業実施計画を立てていくということになろうと思いますが、その具体的内容につきましては、市町村長の意見を聞くのは当然でございますが、住民の意見を十分に反映させるということは当然でございます。そのためにアンケート調査等もやっているように聞いておりますので、そういった住民の意見を十分反映させながら、しかしまた、あそこの広大な地域でかなりの客土をやりますので、これは相当な事業になりますので、現実的な処理も一方において考えていかなければならない、こういうふうに考えております。
  210. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に一点。いま第一次地域指定があるかどうかということでございますけれども、全面的には事業はいつになるのかというこの点がまだはっきりしてないようですね。この点について、これは地元住民の要望としますと五十年には事業を始めてもらいたいと、こういう要望が強いわけなんで、五十年には事業が始まるようなこういった御指導をお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  211. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 五十年というふうにおっしゃいましたが、まだ県のほうとよく——都合を聞いてみないとわかりませんので、できるだけ早く住民の方々の希望を反映して実施するように県に呼びかけていきたいと思います。
  212. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  213. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。  本件に関する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時四十五分散会