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1974-11-14 第73回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月十四日(木曜日)    午前十時七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加瀬  完君     理 事                 中村 登美君                 二木 謙吾君                 瀬谷 英行君                 阿部 憲一君                 栗林 卓司君     委 員                 岡本  悟君                 加藤 武徳君                 土屋 義彦君                 中村 太郎君                 山崎 竜男君                 太田 淳夫君                 河田 賢治君                 安武 洋子君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        運輸省海運局長  薗村 泰彦君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省船員局長  山上 孝史君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省港湾局計        画課長      大塚 友則君        海上保安庁長官  寺井 久美君        建設省河川局防        災課長      田原  隆君        建設省道路局企        画課長      浅井新一郎君        日本国有鉄道理        事        山岸 勘六君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○交通安全対策樹立に関する調査  (派遣委員報告)  (LPGタンカー第十雄洋丸貨物船パシフィ  ック・アリス号衝突事故に関する件)  (日本国有鉄道安全対策に関する件)  (カーフェリー安全対策に関する件)     —————————————
  2. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまから交通安全対策特別委員会を開会いたします。  交通安全対策樹立に関する調査を議題といたします。  まず、派遣委員報告を聴取いたします。瀬谷英行君。
  3. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 派遣報告を申し上げます。  派遣されました委員は、加瀬委員長をはじめとして、中村二木阿部栗林の各理事と、河田委員、それに私の七人で、去る十月二十二日から言二十六日までの五日間、沖繩県及び鹿児島奄美群島における交通安全対策実施状況について、沖繩県鹿児島県、大島支庁沖繩総合事務局沖繩県警察本部那覇航空交通管制部那覇空港事務所、第十一管区海上保安本部沖繩国際海洋博覧会協会九州海運局名瀬海上保安部大島運輸株式会社等からそれぞれ説明を聴取するとともに、実情を調査してまいりましたので、その主要な点について御報告申し上げます。  まず、沖繩県における自動車事故について申し上げます。  全国的には自動車事故減少する傾向にある中で、逆に昭和四十八年は死者百二十三名、事故発生件数対前年比一七・一%という全国一の増加率を示しております。本年に入りやや減少傾向にあるものの、一月から八月までの間、死者七十八人を数え、前年同月に比し八・八%減にとどまり、他府県の減少傾向に比しきわめて憂慮すべき状態にあります。これは、戦後二十七年間にわたる米軍占領下に住民のための道路整備等が著しくおくれたことと、鉄道軌道等能率的交通機関が全然なく、自動車輸送に依存する以外に何ら方法がないまま本土復帰を迎え、輸送需要増加自動車交通量の激増となった結果と思われます。したがって、この隘路を開くには、鉄道モノレール等大量輸送機関整備していくことが肝要であると思われます。  また、飲酒運転スピード違反、無免許運転による死亡事故が全体の五二・九%を占め、他の府県に例を見ないケースであることは、飲酒の機会の多いという習慣上の問題、比較的低価格で洋酒の入手を可能にしていた占領治下影響を無視できないと思われます。  このような事態に対して、復帰と同時に交通安全対策基本法をはじめとする関係諸法令が適用となり、基本法に基づく沖繩県交通安全計画を作成、各年度ごと実施計画により鋭意対策を講じているとのことであります。  具体的施策の第一としては交通安全対策推進体制でありますが、県の交通安全対策会議基本法に基づき設置されたものの、市町村段階では那覇市を除きいまだ設置されていないとのことであります。  第二に道路環境整備でありますが、明年に迫った海洋博を前に主要道路拡幅整備は大車輪で推進されているように見受けられます。これは、復帰以来、交通安全施設等整備事業四ヵ年計画昭和四十七年度より発足させ、沖繩振興開発特別措置法等により鋭意整備を進めているからと思われますが、復帰前、幹線道路大半米軍軍用道路であったため、歩道、横断歩道橋等交通安全施設はごく一部が整備されていたにすぎず、今後の整備は急を要するものと認められます。  なお、公安委員会関係事業に対して現在の四分の三の補助率継続要望する旨の発言がありました。  第三に、警察による指導取り締まりであります。本年三月交通死亡事故抑止対策要綱設定、特に死亡事故の多い国道五八号、三二九号、三三〇号、三三一号等道路における重点的取り締まり、飲酒運転絶滅風俗営業取り締まりとあわせ行なう等の措置実施しているとのことでした。  さらに、運転者のマナーの向上をはかるため、運転免許更新時等の講習実施交通安全思想の普及をはかるため、春秋の交通安全運動のほか、年末、年始及び毎月二十日の交通安全の日設定等、県独自の運動も進めているとのことでした。  また、沖繩県においては人口十万人以上の都市は那覇市のみで、自動車も全県の四〇%、約十万台がこの地区に集中しております。そこで、通勤交通の多い首里那覇を結ぶ県道でバスレーン設定、成果をあげているとのことでした。  次に、沖繩県交通方法変更対策について申し上げます。  沖繩県交通方法は、本土と異なり、歩行者左側通行及び車両右側通行で行なわれてきましたが、復帰によりこの制度の変更が必要となりました。しかし、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律により、復帰後三年を経過した日以降政令で定める日まで暫定的に従来の交通方法実施しております。現在、沖繩県交通方法変更対策本部閣議決定により設け、昭和五十一年度を目標に変更の準備を進めてまいりましたが、海洋博開催時期が延期されることとなり、石油危機に伴う情勢の変化等もあり、昭和五十二年以降に実施することで話を進めているとのことでした。しかしながら、海洋博を目ざして道路整備が進められている結果、変更時期が先に延びることはバス車体改造を含めより困難な要因がふえることが予想されるとともに、広大な米軍基地内と交通方法が異なることとなり、米軍関係車両の交通安全問題も危惧される点と思われます。なお、県側の考え方としては、この変更にあたり、国は県民がいささかとも損失をこうむることがないよう十分な行政、財政措置を講じてほしいとのことでした。  次に、沖繩国際海洋博覧会開催に伴う輸送体制整備状況につきましては、説明を聴取したほか会場を視察してまいりました。  海洋、博を訪れる観光客に対して、本土からの交通方法として、航空及び那覇港ないし直接渡久地新港エキスポ港への船便を考え、それぞれ整備を進めているとのことであります。また、島内の輸送方法としては、那覇港から渡久地新港エキスポ港へ、ホーバークラフト、水中翼船及び大型フェリーによる方法並びにバス輸送を予定しているとのことであります。そのため、新たな車両の購入を計画するとともに、国道五八号線、北部縦貫道路整備拡幅実施しておりますが、会場に至る本部循環線と交わる宮里交差点付近の混雑が予想されるほか、本土からフェリーで多数の車が流入し、レンタカーによる運転とあわせ、不なれな右側通行に混乱するおそれがあるので対応策が望まれます。  さらに、会場内の輸送システムとしては、幹線輸送機関としてKRT、補助輸送にCVSを建設中でしたが、南北四キロにわたるくの字型の会場を考えると、まだ考慮すべき問題があるようであります。  次に、沖繩周辺海域における海上交通安全対策実施状況について申し上げます。  第十一管区海上保安本部復帰に合わせて設置され、南西諸島のうち南部七十余の島嶼を含む沖繩県及びその沿岸水域約十一万平方海里を担当しております。この地域は、人員及び物資輸送大半海上交通にたよらざるを得ず、また、良好な漁場でもあるため出漁する県内外漁船も多く、さらに東南アジア方面への海上交通の要衝ともなっているとのことであります。昨年一年間の要救助海難は九十七件、そのうち漁船が全体の六〇%、船籍別では、県外船外国船が半分、トン数別では二十トン未満の船舶が半数を占めているとのことでした。また、離島県の特殊事情として救急患者搬送航空機により行なっているほか、数が少なく、また老朽化している航路標識整備拡充と、復帰前行なわれていなかった水路業務を鋭意実施中とのことでした。  次に、航空交通安全対策について申し上げます。今回は那覇航空交通管制部及び那覇空港事務所を視察し、説明を聴取してまいりました。  那覇航空交通管制部は、本年五月十五日米国政府から沖繩における航空路管制業務を引き継ぎ運用を開始いたしました。同管制部那覇FIRを担当し、当初より航空路監視用レーダーによる効率のよい高度の管制実施しており運用に当たる管制官本土及び米国において訓練を行なってきたとのことでした。  那覇空港は、二千五百メートルの滑走路を有する第二種空港で、沖繩離島に対する生活航路の基点でもあります。現在は米軍及び自衛隊との共同使用となっているため、逐年増加する便数及び乗降客数に対してエプロン及びターミナルビルが狭く、海洋博に備えエプロンの拡張を計画し、暫定的なターミナルビル建設中でした。なお、航空保安施設更新中とのことでした。  次に、奄美諸島の離島航路における船舶航行安全対策について申し上げます。  今回は、那覇港から約五千総トンの「神戸丸」に乗船し、与論島、沖永良部島、徳之島の各港に寄港し、はしけによる旅客及び貨物乗降、積み降しを視察しながら名瀬港まで行き、船内九州海運局等より説明を聴取いたしました。  同航路には、大島運輸照国郵船船舶が運航しておりますが、観光客釣り客増加により利用者が大幅にふえ、各事業者はこれに対し使用船舶大型化高速化及び運航回数の増強をはかってきております。その結果、特に船舶大型化により、旅客乗降等につきいわゆるはしけ取りの問題が生じております。この対策として、同航路を運航している各社に対し、運航管理規程中にはしけによる安全輸送確保のための作業を規定し、人員チェック等措置を講じさせ、作業の安全を確保させるほか、はしけ専用乗降口取り付け等船体構造上の考慮も行なうとともに、はしけが風下になるよう投錨位置を決めるなどの安全対策を講じているとのことでした。しかしながら、最も必要なことは船舶の接岸可能な港湾施設整備することであります。「神戸丸」で当日各島を回った際には、おりあしく台風の影響を受け、海上は荒れ模様で、特に沖永良部島のはしけ作業は難渋をきわめました。このような危険かつ非能率的作業を一刻も早く解消することが望まれます。地元の与論町、和泊町、徳之島町、及び天城町並びに同航路を運航している事業者よりいずれもその旨の強い要望がありました。  最後に、名瀬海上保安部より管内の船舶安全対策実施状況について説明を聴取いたしましたが、小型漁船が多く、また離島航路を数多く含んでいるため、海難事故防止に重点を置いて努力しているとのことでした。また島嶼の多い同地域においては、航路標識整備とともに、救急患者搬送用のヘリコプターの配置が望まれ、名瀬市よりその旨要望がありました。  なお、和泊町より本年五月打ち切りとなった交通安全対策特別交付金継続交付方について強い要望があったことを付し、報告を終わります。
  4. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 以上で派遣委員報告は終わりました。     —————————————
  5. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に、LPGタンカー第十雄洋丸貨物船パシフィックアリス号衝突事故に関する件について報告を聴取いたします。寺井海上保安庁長官
  6. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 十一月九日に起こりましたLPGタンカー「第十雄洋丸」と貨物船「パシフィック・アリス号」の衝突事故について御報告申し上げます。  まず、事故の概要でございますが、LPGタンカー「第十雄洋丸」は、液化プロパンガスなどを満載し、ペルシャ湾のラスタヌラから川崎向け浦賀水道中ノ瀬航路警戒船おりおん一号」を配備し北上中、十一月九日十三時三十八分ごろ同航路北端付近において、君津からロスアンゼルス向け出航中の貨物船「パシフィック・アリス号」が右舷前方を横切りの体勢で至近距離に接近してきたので後進全速としたが間に合わず、「パシフィック・.アリス号」の船首が「第十雄洋丸」の右舷リザーブタンク付近衝突いたしました。衝突と同時に、「第十雄洋丸右舷船首リザーブタンク付近に破口を生じ積み荷ナフサに引火し、両船とも火炎に包まれました。  「第十雄洋丸」の乗組員は出火直後海中飛び込み船外に退避いたしましたが、「パシフィック・アリス号乗組員の大部分は船内に閉じ込められました。  当時の海上模様は、曇り、北北東の風毎秒五メートル、波浪二十ないし三十センチメートル、視界は二ないし三キロメートルでございました。  なお、「第十雄洋丸」は、総トン数四万三千七百二十三トン乗組員三十八名、船主は雄洋海運株式会社でございます。また、「パシフィック・アリス号」は、一万八百七十四総トン乗組員二十九名、船主はリベリアのパシフィックバルクキャリヤー・インコーポレーション、用船者三光汽船株式会社でございました。「おりおん一号」は、東京湾エスコート株式会社の船で、約六十三総トンの船でございます。  事故後の措置といたしましては、次のとおりでございます。事故発生と同時に情報入手した第三管区海上保安本部は、巡視船艇二十隻及び航空機三機を現場に急行させ、両船乗組員救助及び消火活動に当たらせました。一方、九日十四時十五分には現地に第十雄洋丸パシフィックアリス号海難対策本部を設置し、海上自衛隊消防機関及び民間船舶の協力を得て、次の措置をとりました。  (一)遭難者救助といたしましては、現場に急行いたしました巡視船艇及び「おりおん」等民間船により、海中に飛び込んだ「第十雄洋丸乗組員三十三名及び「パシフィック・アリス号」在船中の乗組員一名を救助しました。十二日午前十時現在、両船乗組員二十一名の死亡を確認し、十二名の行方不明者につきましては、衝突現場付近海域の底引きを主体とした捜査を実施しております。  (二)消火活動といたしましては、「第十雄洋丸」は巡視船艇及び民間船舶の必死の消火活動にもかかわらず、猛烈な火勢衰えを見せず、大爆発を起こしつつ当時の風潮流に圧流されて横須賀方面に接近いたしました。このままでは付近沿岸浅瀬に乗り上げ船体火災等により大災害の発生が懸念されましたため、巡視船及び民間船により九日二十三時三十七分木更津沖浅瀬に曳航座州させ、漂流防止措置をとるとともに消火活動を続行しております。十三日午前八時現在火勢は相当衰えを見せておりますが、なお中央一、二、三番タンク及び右舷三番タンクより火炎が出ております。  一方、「パシフィック・アリス号」は、「第十雄洋丸」と同様、火災発生、炎上しつつ漂流を開始いたしましたが、巡視船艇等による消火活動により火勢衰えてきましたので、民間曳船興津丸」により曳航し、二十二時四十五分川崎沖錨泊させ、巡視船艇及び民間船舶により消火活動を続行した結果、十日十三時五十五分に鎮火いたしました。  (三)入港船舶に対する安全措置などといたしましては、事故情報入手と同時に、海上保安庁は、付近通航船舶に対し、注意喚起緊急通報を行ない、九日十八時「第十雄洋丸」を中心に半径二海里以内の海域航行禁止といたしました。  「第十雄洋丸」の座州及び「パシフィック・アリス号」の錨泊に伴い、十日零時中ノ瀬航路を除き浦賀水道航路航行禁止を解除いたしました。その後「第十雄洋丸」の火勢衰えましたので、十日十三時航行禁止区域同船から一海里の区域に縮小し、中ノ瀬航路航行禁止を解除いたしました。十二日二十一時航行禁止区域同船から一キロメートルの区域に縮小いたしました。  今後の措置といたしまして、十三日十時から学識経験者による第十雄洋丸事故対策委員会開催いたしまして、当面の措置について検討し、その結果に基づき早期に「雄洋丸」を港外に引き出すことにいたしております。  以上でございます。
  7. 加瀬完

    委員長加瀬完君) これよりただいまの派遣報告及び事故報告をも含め質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いまの報告だと、報告最後は十三日に学識経験者によって対策会議を持ったということなんですけれども、この「第十雄洋丸」はきょうのテレビ等によりますとまだ燃えているということでありますし、これを湾外に曳航するかのようなことが報道されておりました。そこで、学識経験者による会議の結果この船をどういうふうに措置することになっているのか、また、現在の状況ですね、まだ燃えているのか、あと何日ぐらい燃えるか見当がつくのかつかないのか、この報告書の一番うしろに「第十雄洋丸積荷状況」というのがありますけれども、この中にはナフサとかブタンとかプロパンとかというものの積載状況が書いてありますが、そのうちどれとどれが燃えて、どれが残っているのか、それらの残っている積み荷爆発といったような危険ということが考えられるのかどうか、それらの点について御報告を願いたいと思います。
  9. 寺井久美

    説明員寺井久美君) お手元に配付しました資料の中にこういう図面がございますと思いますが、これをごらんいただきたいと思います。  ただいま瀬谷先生の御質問にありますように、積み荷はこういう区画に分かれて積まれておりまして、現在燃えておりますのは、このまん中に、これはプロパンでございますが、プロパンの船倉がございまして、船首のほうから一、二、三と、この三つのプロパンが現在火を出しておるわけです。それからこのプロロバンは大体八メーターないし十メーター程度の炎を上げて燃えております。それからこの下側ナフサタンクがございますが、この一番タンクはすでに燃え尽きておりまして、現在この三番のナフサタンクから火が出て燃えております。したがいまして、残っておりますのは、この上側のナフサ四列とブタン、これは全然火がついておりません。この前にありますこれがリザーブタンクなんですが、この前のナフサが一部まだ燃え残っておるという感じでございます。  そこで、燃えている状態は、ちょうどガスコンロをひねってプロパンを燃やしていると同じような状態で炎を出してほとんど完全燃焼をいたしております。中のタンクには圧力がかかっておりますので、現在のところ、中に火が入るおそれはないだろうということでございますが、消火をいたしますと、液化ガスの性質上、それが空気より重いものですから、非常に広がってまた火がつく危険があるというようなことで、わざとまだ燃やしておるという状態でございます。  それからいつまでたてば燃え尽きるかという点につきましては、まだこれは燃えておる、つまりガスが出ておる開口の広さというものが正確につかめませんのでわかりませんが、相当長期間燃え続ける可能性がございます。  そこで、今後爆発する可能性があるかないかということでございますが、このタンクの中に酸素つまり空気が入ってある程度ガスと混合しない限り爆発のおそれは非常に少ないと思います。  そこで、昨日来専門家にいろいろ検討していただき、また現場も視察をしていただきまして、できるだけ早く湾外に引き出したほうがいいのではないかという御意見でございます。問題は、こちら側のタンクが燃焼してほとんどからに近くなっておりますので、船が現在傾き始めております。安全に湾外に引き出せるかどうかというような技術的な問題も含めまして昨夜来けさにかけてやっております。もし引き出せるという状態であれば、できるだけ早く湾外に引き出していきたいというふうに考えております。
  10. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 一体この船をどうするつもりなのかということですね。湾外といっても、ごみ捨て場へごみを捨てるようなわけにいかないわけですからね、燃えているのだから。やたらのところへほったらかしにしておくわけにいかないでしょう。かといって自力で動ける状態ではないはずだから、曳航しなきゃならぬわけです。その場合に、曳航していってどこに置いておくつもりなのか。水をかけるとかえってぐあいが悪いということですが、そうすると燃やしてしまうほかないわけですが、テレビ等で見ると、消防艇かどうか、そういったような船が水をかけているところが映っておりました。水をかけてぐあいが悪いものなら、水をかけるということは一体何のために水をかけているのかちょっとわかりませんが、それらのことは一体どのように理解したらいいのか、その点もお答え願いたい。
  11. 寺井久美

    説明員寺井久美君) まず、あとのほうの御質問にお答えいたしますが、水をかけておったわけでございますが、これは火勢を弱めると同時に船体を冷すために火災発生相当長期にわたって水をかけております。現在の状態は、先ほど御説明申し上げましたように、甲板上のマンホール、あるいはパイプのジョイント付近から火が出ておりまして、ほとんど完全燃焼をして、それがさらに広がるというおそれはしばらくございません。ほかにまだ燃えておらないタンクもございまして、そういったものの温度をあまり上げないように間欠的に水をかけるという程度に済ましております。また、消火をする際にはやはり化学薬品を使って消火をしなければならない、こういうことでございます。  それから引き出したあとどうするかという御質問でございますが、引き出して、これは海の状態にもよりますが、消火をすることができるならば消火を試みる。あるいは、どうしてもそういうことが不可能であれば、燃やし続けるよりしかたがございません。これはもちろんただ捨ててくるということでございませんで、ちゃんと監視船をつけて見ていなければならない。その後の具体的な方法につきましては、まだ結論を出しておりません。船の状態、火の状態等によって最終的に判断をしてきめなければいけない、こういうように考えております。
  12. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、どの辺に持っていってどこに置いておくかといったようなことは、いまのところはまだ見当がつかないと、こういうことですか。
  13. 寺井久美

    説明員寺井久美君) さようでございます。どの辺に持っていってどうするかという点につきましては、目下検討中でございまして、まだ見当がつかないというか、結論が出ておらないと申し上げたほうがよろしいかと思います。ただ、持ち出す場合に、少なくともできれば黒潮外側まで持っていかなければならないだろうということは常識的に考えております。ただ、それまで船が曳航でき得る状態でおるかどうかという点につきましてまだその確信がございません。これはやってみなければわからないのじゃないかと思います。
  14. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 黒潮外側というと、かなり沖ですね。たとえば伊豆の大島の近辺あるいはもっとそれより外側ということになるかと思いますが、これは完全な太平洋のまっただ中に持っていくと、こういうふうに解釈されますけれども、そういう太平洋のまっただ中に持っていくということは、これはもうこの船は使いものにならないということで処理するということも考えているのかどうか。これは原子力船「むつ」とは事情が違うけれども、火を吹いている船ですからね。確かに沿岸から見えるようなところにいつまでも置いておくわけにもいくまいという気がするわけです。最後的な処置は一体どうすることになるのか、その点もお伺いしたいと思います。
  15. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 大きくわけて二つの結果が考えられると思います。一つは、引き出したあと消火作業を行ないまして無事に鎮火した場合、これはそれなりの手配をいたしましてまたこの船を回収することができます。他の場合、消火がうまくいかないというような場合には、この船を場合によっては沈めてしまうより方法がないということも考えられます。いずれにいたしましても、どちらの方向で処理をするかということは、これからさらに検討を続けてきめていきたいというふうに考えております。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ、やっかいなことになれば、これは太平洋の沖に持っていって沈めてしまうという方法があるわけですが、そうすれば消火の必要もないわけですがね。その場合には、自衛隊の船か何か持っていって魚雷でもぶっぱなして沈めてしまうというようなことをやるのかどうかですね、そういう処置も可能なのかどうかですね、その点は一体どういうことになりますか。
  17. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 私がいま申し上げましたのは、あくまでそういう可能性でございまして、いま先生の御指摘のように自衛隊に依頼をして撃沈をしてもらうというような話は全く自衛隊ともいたしておりませんし、そういう可能性は確かにあるかと思いますが、これはやはりどういう方法で処理をするかということをもう少し詰めた上できめさしていただきたいと思います。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 沈めるといったって、そばへ寄れない状態で沈めるというのには方法がないわけですよね、これは。そうすると、海上保安庁で沈めるといったって方法がないわけでしょう。やっぱり大砲の標的か何かにして砲弾を撃ち込むとか、あるいは魚雷じゃもったいなければ砲弾でもって撃沈するとかという方法しかないわけですな。そういう最後的な段階も考慮しなければならないということは言えるわけですね。
  19. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ちょっと誤解があるといけませんので申し上げたいと思いますが、そばにもよれないという状態では現在ないわけでございます。ただ、まだ船体が相当過熱いたしておりますので、人が乗り込んでうろうろするというわけにはまいりません。  それから船内ガス状態その他もわかりませんのでやたらに乗船はできませんけれども、実は、船尾部につきましては、昨日も一部乗り込みまして、もやいの撃索の締め直し等をやっております。ですから、先生御指摘のように完全に近寄れないという状態では現在ないわけです。おそらくこのままの状態がしばらく続くだろうというふうに観測いたしておりますけれども、これもまあ火のついておるこういうガスでございますので予断は許しませんが、現在はそういう小康状態を保っております。
  20. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この報告によりますと、「第十雄洋丸」は「パシフィック・アリス号」によって横っ腹にぶつけられたというふうに理解されますね。自動車でいえば、四つかどでもってこちらの車が走っているところへ横っちょから出て来て横っ腹にぶつけられたというふうに理解されるわけです。だから、一体これは平たく言えばどちらが悪いのかということになるわけだね。これはどっちも悪いんだと言えばそれまでなんですけれども、自動車だったら普通はぶつかったほうが悪いということになりますわね。この場合は、航路の外だったのか内だったのか、法規上の事故責任というのはどちら側の船により多くあるのか。もっとも片っ方は乗組員がなくなっているので聞きようがないかもしれませんけれども、状況判断からすれば一体責任はどこにあるのかということ、その点をお伺いしたいと思います。
  21. 寺井久美

    説明員寺井久美君) まず、どこでぶつかったかということと、横っ腹にぶつかったほうが当然悪いのじゃないかということと二つございますけれども、海上衝突予防法におきましては右側の船が優先権を持っております。ですから、通常の状態ですと、これは横っ腹になるほど「雄洋丸」はぶつけられておりますけれども、こういう見合い関係では「雄洋丸」のほうがどかなければならないというのが一般原則でございます。  そこで、どこでぶつかったのかということになるわけでございますが、これはいまのところわれわれの調査では中ノ瀬航路を出たところ約百二十メートルか百五十メートル頭を出したところでぶつかっておるというふうに考えられます。しかし、これは今後まだいろいろ調査をしなければ最終的なことには決定はできませんが、大体そういう感じでおります。したがいまして、「パシフィックアリス号」のほうから見ますとこれは航路外でございますので、権利船である「雄洋丸」のほうがどかなければならない。ただ、両船とも衝突の危険が生じた場合には最善の回避努力をするというのがたてまえになっておりますから、その辺ではやはり両方とも問題があろうかと、こういうふうに考えられるわけであります。
  22. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 「第十雄洋丸」の船長は逮捕されたということでありますけれども、そうすると、この状況判断からすれば、「第十雄洋丸」のほうがより回避をする立場にあったと、こういうふうに理解されるわけですが、しかし、航路外であったのかあるいはその内であったのかといったようなことは、道路のようにあんまりはっきりしていないわけですね。普通自動車事故だったら、パトカーが来て白墨でもって場所をいろいろ書いてこうだったああだったということができるけれども、海の上じゃそういう白墨で書くわけにはいかない。この辺だったといったようなことをやっても、まさに文字どおり水かけ論になっちゃうわけです。はなはだこれは責任の所在というのはむずかしくなってくると思うのですけれども、海上交通の法規があるわけですね。この法規に照らしてみて一体法律的にこれは穴はなかったのかどうかですね、法的にもう少し詰めておかなければならないような問題点はなかったのかどうかといったようなこと、それから法規に照らしてみての両船の責任というものはどうなっておるのか、その点もお伺いしたいと思います。
  23. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 法規に穴がなかったかどうかという点につきましては衝突の原因が最終的に究明された暁にやはり判断しなければならない問題であろかと存じます。ただ、一般的に言えますことは、中ノ瀬航路という海上交通安全法に基づく航路内におきましては横切りを禁止しておりますので、「雄洋丸」はまっすぐ進めるわけでございます。先ほど申し上げましたように、現実に起こった衝突地点というのは航路の外である、おおむね外であろうかというふうに判断されるわけですが、この場合には、やはり「雄洋丸」のほうがぶつからないように速度を落とすなり調整をしなければならない、片っ方の「パシフィック・アリス号」のほうは進路と速度を維持しなければならない、こういうことになっております。したがいまして、その法律的な関係のみを見ますと、特にここに穴があったというふうには考えられないわけでございます。
  24. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、これは関係法規の点で不備な点があったのではなくて、全く両船の不注意であるということに結論としてはいまの御答弁ではなるわけなんです。不注意であったということになると、海上状況等がいろいろ問題になってくるわけですが、たとえば濃霧その他でもって非常に危険な状況であったとか、いう場合は別でありますが、どうやら当日はそんな状況ではなかったようだし、波浪もそんなに高くはなかったようです。すると、一体どういうわけでこんなことになったのか、ちょっとわれわれにもこれは海の上のことをおかの上で想像したのじゃ見当つかないわけですけれども、この点はいままでの調査によってはどんなような結論になっているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  25. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 御指摘のように、海上状態というのは、多少視界が悪かったかもしれませんが、それほど悪い状態ではなかったわけでございます。したがいまして、どうしてこういう事故が起こったかという点につきましては、やはりこれは専門的な見地からいろいろ御検討いただいて御結論が出ることだと思います。私どもは、現在、まあこれは調査中という段階でございますので、どっちが悪かったとかどうだったとかと申し上げる立場にないわけでございますが、一応現在までのところ両船の関係はこういうふうにあったと考えられるということを御紹介申し上げた次第でございます。
  26. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 状況等についてはどうもどうやら水かけ論みたいな話でわれわれにはよくわかりませんけれども、今度はこの船の被害なんですけれども、ちょっとぶつかったと言っちゃ語弊があるかもしれませんけれども、自動車事故に比較をすれば、出会いがしらにちょっとぶつかったといった程度のことなんですね、これは。ところが、実際には両船とも火だるまになってしまって、片っ方の「パシフィック・アリス号」に至っては、油を積んでいる船でないにもかかわらず、ほとんどが乗組員が焼死してしまったといったようなことなんですよ。構造上の欠陥がタンカーにはなかったのかどうかということですね。そんなにまあこすった——こすったと言っちゃ語弊があるかもしれないけれども出会いがしらにちょっとぶつかった程度でたちまち火を吹くということになると、まことにこれは危険だということになるわけです。特にぶつかった相手のほうが火をかぶるなんということは一体どういうわけなのか。「パシフィック・アリス号」もタンカーであって油を満載していたということならば、これは発火をするということは考えられるけれども、「パシフィック・アリス号」はそうじゃないわけでしょう。積み荷のほうは鋼材だというわけですね。燃えやすい品物じゃないわけです。これはどういうわけで逆に「パシフィック・アリス号」のほうが多くの犠牲者を出したのか、その辺の事情はどういうことになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  27. 寺井久美

    説明員寺井久美君) この辺の関係も実はもう少し詳しく調査した結果でないと確定的なことは申し上げられませんが、「パシフィック・アリス号」のほうが実は船の舷が低うございます。低い船の船首がちょうど舷の高い「雄洋丸」の船首付近の予備タンクといいますかリザーブタンク付近にぶつかったわけです。そのぶつかることによって大きな穴をあけまして、外板はもちろんでございますが、中のタンクまで穴をあけた可能性がございます。したがいまして、ナフサタンクに穴があきました関係上、ナフサが一気に吸き出した。その吹き出したナフサをこの「パシフィック・アリス号」が全船でかぶって火になった、こういう瞬間的な発火になって、むしろ鋼材しか積んでいないほうの船が焼えてしまった。そういう状態でございますから、外側からかぶっておりますから、外板のペンキその他は完全に燃えておりますが、むしろ中のほうがきれいであると。特にエンジンルームなどは全く燃えておらないというのが「パシフィック・アリス号」の状態でございます。また、「雄洋丸」のほうは、ぶつけられたほうの右舷は火をかぶりまして燃えましたが、左舷は全く燃えておりません。したがって、ペンキ等もきれいなままに残っております。どうしてこういうふうに火の気のないほうの船が燃えたかという点につきましては、やはり吹き出したナフサをかぶってそれに火がついて燃えた、こういうふうに考えられるのではないかと思います。
  28. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 「第十雄洋丸」の船体構造上もかなり危険があるということ、船体設計の点でも考えなければならないのじゃないかという疑問が当然生じてくるわけです、今回の事故で。この種の事故はいままで外国にも例があるのかどうか、その点はどうですか。
  29. 寺井久美

    説明員寺井久美君) この種の四万トン、五万トンクラスのLPGタンカー事故は初めてでございます。
  30. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 衝突して穴をあけられたということでこうもひどい状態になるということは、おそらく船主のほうでも考えていなかったことかもしれません。しかし、現実にこんな結果が生まれたわけですね。そうすると、当然今後この種のタンカーの構造の安全ということについては考えなければならぬことじゃないかという気がするわけですね。運輸省として、じゃタンカーの安全について再検討するという考えを持っているのかどうか。これは一つのきわめて大きな教訓として生かす必要があると思うのです。これはこの調子で今後また事故を起こすということになると、たいへんなことになる。しかも、それがタンカー同士だったなんということになると、なおさらえらいことになると思うわけです。その点はどうでしょうか。
  31. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 確かに先生御指摘のような心配があるわけでございますけれども、実は船体の構造上の問題につきましてまだ私ども船舶局のほうとも詰めておりませんし、運輸省として今後再検討するという段階にまだございません。ただ、御指摘の問題は確かにあろうかと思いますので、これは内部的に検討さしていただきたいと思います。
  32. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それと、ほとんど乗組員が全員なくなった「パシフィック・アリス号」なんでありますけれども、この船は乗組員の全員が台湾籍だということなんですね。しかも、船はリベリアだというんですね。まことにこれは奇妙な船籍ですね。もし国際的なトラブルを生じた場合ですね、乗組員が台湾籍である、相手国はリベリアだということになると、外交折衝なんかする場合にリベリアという国が責任をもって応待できるような状況になっているのかどうか、その点もいろいろと疑問が出てくるわけですが、その点はどうなんでしょうか。
  33. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いま先生のお話にございましたように、この「パシフィック・アリス号」というのは、ことしの一月に日本の船会社のイースタンシッピング株式会社というのが五年間定期用船を結んでそれで木材の運送等に使っておったのですが、ことしの八月に三光汽船がそのイースタンシッピング会社からさらに再用船をして、それで今回の鋼材をアメリカに運ぶ二航海をするための半年間の定期用船契約の再契約を結んで、その二航海目が今度の事故に遭遇したという事態でございます。この船主はリベリアのパシフィックバルクキャリヤー・インコーポレーションという会社でございますので、おそらくこのリベリアの船主は、船体保険それから賠償関係の保険というものをかけておると思います。したがって、事故の責任がどうなるかは今後の推移によりますけれども、一般的にいえば船主が責任を持つということであります。したがって、今回の事故についてはリベリアの船主が保険上の処理はするということだと思います。
  34. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この船の乗組員が台湾籍であるということになれば、当然これは台湾に遺族がいると思うのですね。この遺骨あるいは遺体の引き渡しといったようなことは、そうすれば、台湾から呼び寄せて行なわなきゃならぬということになるかと思うのですけれども、その辺の関係は一体どうなっているんですか。これは船主がリベリアにあるということであれば、そのリベリアの会社が責任をもってやっているのかどうか、現実に。  それからこれは外国のことになるからよけいなことだと言われればそれまでなんですけれども、そのなくなった乗組員に対する補償やら何やらというのは一体どういうことになっているのか。もしかりに「パシフィック・アリス号」に責任がありとすれば、その責任追及はどういう形で行なわれることになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  35. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 現在のところ、私どもは、実はこの「パシフィック・アリス号」の用船形態というものを調査はしておりますけれども、実際遺族対策などについてどういうことをやっているのかということは現状ではまだ承知しておりません。事故の関係は今後責任が明らかになることで、いろいろな裁判上の点とかむずかしい点がございますと思いますが、今後の事故処理としては、直接用船をしていたイースタンシッピング会社、それからさらに再用船をしていた三光汽船と、船主であるリベリアの船主との間にいろいろな関係が出てくると思いますけれども、基本的にはリベリアのパシフィックバルクキャリヤー・インコーポレーションというものが船主として責任を負う面が非常に多いということを思っております。
  36. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 報道によれば、この船の遺体はすっかり焼けてしまって白骨になって横たわっていたというふうな報道もありました。そうすると、おそらく遺体そのものがだれであるかという識別すら困難な状態になっているのじゃないかと思うんですよ。一体、この遺体はどういう処理をされているのか、これは引き取り手のないままそのまま放置されているのか、あるいは火葬して遺骨として保存をしているのか、このなくなった乗組員の遺体の処置等については一体現在どうなっているのか、その点をお伺いしたいと思うのですが。
  37. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 「パシフィック・アリス号」のほうは、代理店それから三光汽船のほうで収容されました遺体を仮安置して保管してございます。
  38. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 遺族との連絡なんかは、これはこういう場合ついていないんですか。たとえば日本の飛行機が外国で落っこったと、こういう例がありましたが、そういう場合は、日本の航空会社が飛んでいって家族まで連れていっていろいろな処理をやるということが行なわれてきておりますけれども、この船の乗組員の場合は、その点は一体どんなことを処置がされているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  39. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 外国船の場合、通常、日本にあります代理店がそのような連絡を全部やっております。今回の場合も、代理店が船員関係の手配をしていることだと思っております。
  40. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 よくわからぬわけですか。
  41. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ええ、私のほうはそこまで詰めて確認をいたしておりません、直接的には。
  42. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 わかっているのならば答弁してください、どうなっているのかわからないのならわからないでいいですが。
  43. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ただいま申し上げましたように、通常は代理店がすべてそういう連絡をすることになっておりますので、今回の場合も当然そういうことをやっておると考えておりますけれども、私どものほうではそれを直接確認はいたしておりません。
  44. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 海上保安庁のほうではわからぬということですが、運輸省のほうでもわからぬわけですか。
  45. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 私どものほうも、通常の場合は、外国の船主の場合は、国内で事故を起こしたといえば、その船会社の代理店が事故処理に当たるということで、この場合もそうだと思っております。
  46. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どうやら、話を聞くと、この「パシフィック・アリス号」の乗組員というのは、ほとんど全員が焼け死んでいる、その遺体もそのまま今日もどこかに置いてあるというだけのように聞き取れます。  そこで、この種の船のあり方ですね、これは問題だろうと思うのですね。籍はリベリアであって乗組員が台湾国籍である、それを日本の会社が雇って船を使うということですね。何でこういう形がとられているのか、その点はまことにふしぎな気がするわけですよ。また、この種の船に対して日本における海上法規の適用といったようなことあるいは行政指導ということが円滑に行なわれ得るのかどうかという疑問もこれは生まれてくるわけですね。それからその責任でありますけれども、責任の所在というものもどうも明確でないわけですよ。この点は一体どうなんでしょう。
  47. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 日本の国で貿易物資を運んでいます商船隊というものは、全部日本の船で運べればまことにけっこうなんでありますけれども、遺憾ながら現状は日本の船で運べているのが六割、それから残り四割は外国の用船を用いなければいけない。で、その四割のうちで、そのうちの六割が便宜置籍船といわれているリベリアとパナマの籍の船でございます。一方、この便宜置籍船と申しますのは、世界じゅうではリベリア、パナマを主体として世界の船腹のうちの二一%が便宜置籍船ということになっております。したがって、日本が日本船に頼ることができない部面を世界の用船市場でその船を雇うといたしますと、どうしても主として依存するのが便宜置籍の国の船ということになるのはやむを得ない状態でございます。これにまた用船の源を求めないことには、必要な資源の輸入だとか物資の輸出というのができなくなるという現状でございます。いま私が申し上げましたのは、日本に必要な船のうちの四割ぐらいは外国の用船によらなければいけないということを申し上げたのですが、さらに、日本の船会社を通じて用船しているほかに、日本の荷主が直接外国船を雇うというのがこれもかなりの部分がございます。そのうち、世界じゅうの船腹の中に占める便宜置籍船の比率が二十数%であると申し上げましたが、やはりそれぐらいの比率、二割ぐらいの比率で荷主が外国用船を雇うときに便宜置籍船を雇っているという現状でございます。  したがって、できれば日本船で全部運びたいのですけれども、外国船によらざるを得ない。外国船のうちには便宜置籍船が世界的に見てかなりなウェートを占めているので、どうしても日本が外国用船をいたしますときには便宜置籍船の国の船が入ってくるというのが現状でございます。したがって、私どもとしては、これをやめてしまうということはできませんので、いま先生のお話しございましたように、一つには、この便宜置籍船の安全面であるとか船員面であるとか規制を高めていくということに国際的な合意がなされる必要があるということと、それから日本に参りましたときには外国船については特に地形であるとか天然自然の現象であるとかということがよくわからない複雑な日本海域でございますから、取り締まりまた事前指導の面で安全確保ができるようにできるだけ事前に指導をしていくということをやっていくほかはないということに考えております。
  48. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 リベリアとかパナマに便宜置籍船が多いということなんですけれども、たとえば外交上の問題が起きた場合、リベリア政府はやはり日本の政府の交渉の相手にならなければならぬわけでしょう。その場合に、リベリアという国が責任をもってその交渉に当たるようになっているのかどうか。たとえば今度の事故について、船籍がリベリアであるならば、当然リベリアの日本にある大使館等の係官も出てこなければならぬことになるのじゃないかと思うのですけれども、それらの外交折衝の面においてリベリア国の日本における駐在機関の代表者等はタッチしているのかどうかですね、その点はどうなんですか。
  49. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 一般に、海運の関係というのは、海運の自由という原則が基礎になっておって、それでそれぞれの船の往来ということは世界的に自由に認められた上で、事故関係、安全確保の面については国際条約でお互いに加盟をして安全の施設なり安全の運航の方法なりを確保していこうということでございますし、それから不幸にして事故が起こった場合の処置としては、船主が保険を平素からかけていくということで、船体保険なり第三者に与える損害賠償の保険なりを確実にかけておくということでございまして、わが国の船社がリベリアの船を雇いますときにもその保険関係が完全にかけておるかどうかということは、これは船会社の常識としてはチェックをして用船をするということになっております。本件もその辺はリベリアの船主はかけておるようであります。したがって、平素の場合、また事故の場合にも、いきなり政府間交渉というようなことが行なわれることの必要がないように普通の商売の形態でそういった関係が確保されているという状態でございますが、本件の具体的な処置にあたってリベリア政府がどういう態度をとっておるかということは、間接的でございますけれども、私は現状では承知しておりません。
  50. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 要するに、この「パシフィック・アリス号」というのは、リベリアの船ではあるけれども、リベリアの政府そのものは一切その責任を持たない、こういうふうに聞き取れるわけですね。パナマにもそういう便宜置籍船があるとすればおそらくそういうことになるだろう。そうすると、たとえば国際的なトラブルが起きた場合の責任は一体どういうことになるのか、こういう問題が生じてくるわけです。日本でもそれじゃ日本に船籍を持っていてたとえば日本人以外の乗組員が乗っている便宜置籍船というような形のものがあるのかどうか、それはどうなんですか。また、それを許しているのかどうか。
  51. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 日本では、日本の船会社が海外に投資先を持ちましてその投資先がつくった船の船籍を便宜置籍国に置いているという例が約三十ぱいぐらいあるのではないかということを、私どもは実はこれは直接なかなかわからないのですが、間接的に調査をだいぶ前にしたことがございます。海外でそういった投資関係を確立して船がつくられた場合に、その船が便宜リベリアに置かれるということについてはわれわれはチェックをする方法は実はないということでございます。  それで、便宜置籍船が実はいけないことかどうかというのは、国際的に先ほども申しましたように海運の活動上かなりな活動を示しておりますので、その経済的な効用とかあるいは安全面のチェックが十分であるかどうかというような点についてはOECD等の国際の場で引き続いて検討はされておりますけれども、それに明確な判断を下すという段階には至っていないということでございます。
  52. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、「第十雄洋丸」の責任がどの辺にあるのか、どの程度のものなのか、それは専門家でないからわかりませんけれども、しかし、不幸にしてほとんど乗組員の全員が死んでしまった「パシフィック・アリス号」のあり方についてもこれは問題があると思うのですね。この船の国籍はリベリアである。しかし、リベリア政府はもう全然関知していない。乗組員は台湾国籍である。ところが、台湾政府は責任をとるという形にはなっていない。何か無免許のやみタクシーのような、あるいはやみトラックのようなそういった感じがするわけですよ。それで、そういうものをなぜ使うのか。運賃コストが安くてそのほうが便利がいいということで使われているのかどうかという疑問が出てくるわけですが、その点はどうなんですか。
  53. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 中の責任が非常に不明確であるという点でございますけれども、これは先ほど申しましたリベリアの会社であるところのパシフィックバルクキャリヤー・インコーポレーションという会社が乗り組ませておる台湾国籍の船員については、これは完全に責任を持つということでありまして、その雇用関係はパシフィックバルクキャリヤー・インコーポレーションと乗り組んでいる船員との間で完全に確立されていると私は思います。  それからリベリア政府は何らタッチしていないということでございますけれども、おそらく、船体安全の面で国際条約上の必要な設備をすると、それに基づいてリベリア政府として安全証書を発行するとかいうようなことはやっていることだと思いますし、また、その船員の配乗に基づくところのたとえば船員手帳であるとかというようなことについてもリベリア政府が責任をもってやっているので、そういった面で、どこにも属さない、だれも責任を持っていないというようなかっこうの船ではないということを私は考えております。
  54. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、政府と政府との間でいろいろ条約も結ばれることがある、それから法規の適用について国際法的にもいろいろ守ってもらわなければならぬことがある。それは当然日本政府はそれぞれの国の政府を通じてでなければこれは船にまで及ばないわけです。ところが、船の乗組員が全部台湾籍である。船の船籍はリベリアである。リベリアというところはどの辺だか私もよく知りませんけれども、アフリカのほうでしょう。ともかく台湾とはえらくかけ離れた場所ですよね。全然方角違いですわね。こういうことはどう考えても不自然だと思うのですよね。その不自然な状態ではたしてこれらの外国船に対するたとえば日本の国内法規の徹底といったようなこと、あるいは行政指導といったようなことが行き渡るかどうかという疑問は当然生じてくるわけです。したがって、この種の船のあり方ということは考えていかなきゃいけないのじゃないか。もっと端的に言えば、この種の船はなるべく使わないようにするということのほうが日本の船会社に対する行政指導としては正しいのじゃないかという気がするのですが、これはどうなんですか。
  55. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) まず、アフリカの国の船に台湾人が乗っているというような点が不自然なようにも考えられる点もございますけれども、日本の場合は日本船には日本船員が乗っております。これで防止だとか安全管理の面でいいのでけっこうなんでありますけれども、世界の海運から見ますと、実はいろいろな面での船の所有関係と船員の乗組員関係というものが別になっている例が多うございます。北欧の国の船に北欧でないところの国の船員が乗り組んでおる、それが一部混乗のかっこうであったり、あるいは船長さんがその国の人ですけれどもそれ以外はその国の人でないといったような例がたくさん見受けられるというのが実は世界の海運の現状になっているということでございます。  それから先ほども申し上げましたように、国と国との間というのは、通商航海条約でございますとか、あるいは海運協定とかでございますとか、そういうものが結び合うような基本的な関係については国と国との関係がございますけれども、海運界のこういった事故の事後処理というようなことについては、幸いにして古くから海事関係の条約とが法規とかというようなものが平素から確立されているという点と、それから保険などの関係が常時事故に備えて付保されているというような点から、いきなり国と国との問題になるという点が非常に少ないということでございます。  それから日本の荷物を日本船だけで運びたいというのは、私どもも平素から考えていることでございます。計画造船というようなことでかなり国が助成をいたしまして今日までそういう制度を続けてまいりましたし、ちょうど来年がかわり目になっていますので来年からも私どもの考え方としては、ある程度の国家助成を続けましてどうしても日本の船員の乗った日本の船をつくっていきたい、そういった積み取り比率をできるだけ上げていきたいということが私どもの念願でもございますけれども、遺憾ながら日本の貿易量に比べましては先ほど申し上げましたように日本の船会社だけの船とすれば六割ぐらいしかない、四割は外国の用船に仰がざるを得ないということで、この用船の比率が近年かなり上がってきているということが私どもにとっては非常に心配な点でございますので、私どもは来年度以降もできるだけ日本の固有の船をつくっていきたいということを考えております。  それからリベリアに限らず、外国の船が日本の近海へ来てかなり事故率が高いということで、必ずしも便宜置籍船の国に限らず、ほかの外国の船もかなり事故を起こす率が多いのが現状ではないかと、私どもは直接ではございませんけれども、保安庁なんかの数字はおそらくそんなことではないかと思うのですが、そういった場合には、便宜置籍船に限らず、外国船一般に日本の地形を教えたり、それから航法の指導をしたりということは、これは外国船一般に必要なことではないか。そのためには、外国船協会というような外国の船主の協会を通じて指導をするとか、先ほどお話が出た代理店を通じてよく事前に指導するとかということは、これは日本船以上に指導に努力をしていかなければならぬことではないかと思います。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 何か御答弁がたいへんに弁明じみて聞こえるわけなんですけれども、ただたまたま今回こういう異常な事故発生した。東京湾におけるタンカーの事故というのはかねがねおそれられていたことなんですね。これは何十万トンというタンカーがどんどんできてくる。それらのタンカーがもしも東京湾内で衝突して発火をするといったようなことになったらどうなるだろうということはいまでも心配があることでしょう。今回はたまたまLPGの船がぶつかった。しかも、相手の船はこういったような便宜置籍船である。国籍がリベリアで乗組員が台湾、こういったような変則的な船とぶつかったということなんですね。これはこれからの浦賀水道あるいは東京湾の海上交通の安全ということを考えた場合に、日本の政府としてもほっちゃおかれないと思うのです。行政指導といっても、行政指導が日本の船だけであれば問題はありませんけれども、外国の船の場合に、こういったような船籍はリベリアで乗組員は全然違うと。ことばだって違うでしょう、リベリアと台湾じゃ。これはまあどういうことばだか知りませんけれどもね。これはまるきり違うわけですよ。そういう形態の船がいまでも毎日のように出入りしているということ、それに対するそういったようなまあことばは悪いけれどもやみトラックとかやみタクシー陸上の交通機関と比較しちゃぐあいが悪いかもしらぬけれども、その種の船に対する行政指導がそれじゃうまく徹底するかどうかというと、これは疑問を抱かざるを得ませんよ。だから、どうしてもこれはこの種の便宜置籍船のあり方に対して検討する必要があると思う。また、そういう検討は、これは便利だからやっているんだと、コストが安いからやっているんだと、こういうものを使わなければはけ切れないから使っているんだということで済ましていていい問題じゃないような気がするんですね。その辺から言うと、海上交通安全法等についても法的にいろいろと検討してみる必要があるのじゃないかという気がいたしますけれども、その点はどうなんですか。
  57. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 便宜置籍船の問題と海上交通安全法という関係がちょっと直接的には結びつきにくうございまして、海上交通安全法のほうはまあいわば陸上で言いますような交通規則でございまして、その規則に従って船が航行することによって海上の安全をはかるというのが趣旨でございます。先生御指摘のように、こういう便宜置籍船に対していろいろの行政指導なり何なりの周知徹底が非常にやりにくいであろうということでございますが、確かに日本の船会社にひとこと言えばすみますようなことも何回も言わなければならない。代理店を通じていろいろわれわれも周知徹底をはかっておるわけでございまして、便宜置籍船の問題とは直接関係がございませんが、今回の事故の原因がはっきりいたしましたならば、それをもとに海上交通安全法なり何なりの改正の必要があるということでございますれば、やはりそれは十分手直しを考えざるを得ないと思います。しかしながら、現段階では原因がまだ確定いたしておりませんし、今後実際上の指導面を強化することによって避けられる面もあるかと存じますので、とりあえずはそういう方向で進ましていただきたいと思います。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それは、便宜置籍船とは直接結びつくかつかないかということより、まあ私は常識的に言っているんですがね。行政指導等が徹底しにくいじゃないかということですよ、これは。こんなことはきわめて常識的にわかるでしょう。たとえば航路設定、航行の規制、あるいは事故防止対策、それらの点は日本船に対して徹底をする方法はあるわけです。しかし、それを外国船にまで徹底する必要があるわけでしょう。必要があるんだけれども、外国船の中には、籍は国にあるけれども船員は全然別だと。それはもちろん多くの船舶には同一民族だけが乗っている船ばかりとは限りませんよ。それはわかりますよ。しかし、それは船長のもとに使われている乗組員の中にいろいろな国籍の人間がいるということはあり得ることである。しかし、これは、そっくりそのまま船籍のある国とはまるっきり方角も違うような、ことばも違うような船員が乗っているということは、どう考えてみても不自然だということになりますよ。こういう船に対していろいろな行政指導がすんなりと徹底できるかどうかということは疑問だということはだれが考えたってわかるでしょう、これは。そんな心配はないというふうには言い切れないと思うのです、現にこういう事故が起きているんですからね。この事故の原因がもちろんいまのところはどっち側によりあるかわかりませんけれども、まあこれはどちら側にも原因があるということになるのかもしれません。しかし、場所が場所ですからね、先ほども申し上げたように。はっきりと陸上の交通事故みたいに信号を無視したとか場所がこうだったとかいうふうに言えないわけですよ。ところが、現実には「第十雄洋丸」の船長は逮捕された。この船長を逮捕する必要があるのかどうかですな、この点もなぜ逮捕しなければならないのか、これもこの機会についでにお伺いしたいと思うのですが。
  59. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 私どもは法の実施機関でございまして、船長の逮捕等につきましては検察当局の指示を受けて行動いたしております。したがいまして、私どもからなぜ逮捕する必要があったかというのはちょっとお答えしにくいので、御容赦願いたいと思います。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これもやはり常識的な問題なんですが、逮捕というのは、普通、証拠隠滅だとか、あるいは逃亡だとか、こういうおそれがあって、しかもその責任も間違いないというふうな場合に逮捕されるわけでしょう。この場合は、証拠隠滅なんというおそれはないわけですよね。隠しようがないんだから、これは。また、船長が逃亡するといったようなことも考えられない。すると、何で船長を逮捕しなきゃならないのか。むしろ船長がこの事故の原因について有力な証言をする立場にあるのじゃないか、状況判断等は船長からよく関係官庁としても聴取しなければならないのじゃないかなという気がするんですよ。それを、検察側のやることだから知らないと、それは検察庁に聞いてくれと言わんばかりですが、それでいいのだろうか。運輸省として逮捕の必要性がないと思えば、これは検察庁とも話し合って逮捕しないで船長から事情をよく聞くということをやったほうがいいような気がするんですがね。それはもう検察庁の仕事だから全然知らぬと言って運輸省としては知らぬ顔をしているのはどうも解せないような気がするのですが、その点はどうなんですか。
  61. 寺井久美

    説明員寺井久美君) こういう非常に重大な事故でございますので、やはり船長の証言というものが非常に正確でありたいわけでございます。したがいまして、身柄拘束というようなかっこうで調査をしたわけでございますが、もちろんこういう必要な調査が終われば、運輸省と申しますか、この事故原因の究明について、直接船長からいろいろ事情を職取したいということは別途あろうかと存じます。ただ、犯罪の捜査につきましては、私どもはやはり検察庁の指示を受けて遂行いたしております。したがいまして、ほんとうの理由がどこにあったかということにつきましては、海上保安庁としてはいささかお答えしにくいということでございます。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは連れていかれちゃったんだから海上保安庁じゃ答えられないだろうと思うのですよね。ただ、この事故の問題について一番重要なかぎを握っていると思われる生存船長というものを持っていかれちまって、だからわかりませんというのが責任官庁としてはおかしいような気がする。それならば、検察庁のほうから出てきてもらって答弁してもらわなきゃならぬことになるのですな。その辺のあり方、ほかのことと違うんです、これは。証拠を隠しようがないんです、こんな大きな証拠は。勝手にどこかに持っていくわけにいかないんですからね。そうすると、証拠を隠されるということはないし、また、船長という立場、地位ということからいって雲隠れするということもあり得ないしということになれば、事故原因というものを責任官庁として究明するためには、むしろ船長を勝手に拘束されないほうがいいんじゃないかなという気がするから私は質問してみた。これはまるっきり検察庁の仕事で私は知りませんというのは、ちょっと運輸省としては責任を回避するような答弁のように聞き取れるから私は質問したわけなんです。むしろ、そんなことは検察庁と話し合って、それで事故原因は担当の官庁として明らかにしたいということを先にすべきじゃないんですか。やがて釈放されてから調べますというのじゃ、それだけおくれるわけでしょう、真相の究明が。真相の究明はやはり船長が重要なかぎを握っているのじゃないかなという気がするから私は質問したわけなんです。そうじゃないんですか。
  63. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 御指摘のとおり、船長の証言というものはこの事故原因の究明に非常に大きな要素の一つでございます。したがいまして、その限りにおきまして、私どもとしても、船長から事情聴取を行なって、先ほど申し上げましたように、衝突の起こった場所というのは大体中ノ瀬航路を出て間もなくであるというような推定ができる段階まで至っておるわけでございます。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあこれ以上質問してもそれこそ水かけ論になってしまうので、この問題については一応打ち切りますけれども、先ほどの派遣報告の中に関連してこれまた若干海上交通の問題で質問したいと思うのですけれども、今回委員会で離島航路の視察を現実に行なってまいりました。その中で離島からはしけ取りをやるという実態を見てきたわけですけれども、幸か不幸か台風の影響がありまして非常に船がゆれまして、そのはしけから乗客が乗り移るという状況をまことにあぶなくて見ていられないというような状況を現実に見てきたわけです。時間もかかるし、危険でもある。きわめて原始的なんですよ、やり方がね。これは大ゆれにゆれるはしけから乗客を一人一人本船に移らせる。その移らせるためには、本船に二人、はしけに二人付き添っていて、つまり四人がかりで一人の人間をようやく本船に移乗させると、こういうことをやっているわけですね。これはどうもやむを得ないと言えばそれまでかもしらぬけれども、こんなことをいつまでもやっているということでは船の運航の能率からいっても悪いし、また安全性からいってもいつまでもこんなことをやっているというのはどうかと思うんですよ。だから、方法としては、徳永運輸大臣もわれわれのあと来て現実に視察をされたそうですけれども、一刻も早く、大型船舶が着岸して、そのはしけ取りということをやらないで済むような港湾施設整備をするということが何よりも必要ではないかという気がいたします。これらの、これはもう今回われわれが視察をしたのは奄美の離島なんですけれども、奄美諸島あるいは沖繩に限らず、こういった方法に頼っている港湾はかなりあると思うのですが、それらの港湾施設整備するということは一体どの程度いま考えているのか、どの程度予算措置等が進捗をしているのか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  65. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 港湾局長が来ておりませんのでちょっとその点お答えできないのですが、私どもも実は船については着岸できて荷役ができるということが一番望ましいことでございますが、しかし、全国的にそういうことがどういうことになっているのかということについて、それに対する施設の面でどう考えているかというのは、港湾局からお聞き願いたいと思います。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このことについて、徳永前運輸大臣も視察をしたということだから、きょうは運輸大臣の出席を求めて、一体これらの離島航路についてどうするのか。まあ大臣はおれは見てきてやるぞというようなことを言っていましたからね。それじゃ委員会の席上で答えてもらおうと思ったんですよ。そうしたら、きょうは運輸大臣は出て来ないと、徳永さんはかわっちゃったからしようがないけども、かわった大臣も出て来ないということです。しかし、私のほうではそういう質問をするという話はしてあるんですよ。それに対して、運輸省としては、われわれは視察をして報告しているんだから、これらの問題に対して一体どうするのかということは答えてもらいたいと思うんですがね。
  67. 加瀬完

    委員長加瀬完君) それでは、いまの問題は、運輸省のほうで、午後冒頭に港湾局長を出席さして答弁させるように御連絡ください。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、時間の都合等もありますから、この問題は午後に答弁をしてもらうことにいたしまして、新幹線の安全等について質問したいと思います。  新幹線のATCが万全であるというふうに言われておりましたけれども、ここ何日間かの間にかなり事故が起きたということが報道されております。こういう状態で新幹線を運行していってだいじょうぶなのかどうか、これは国民のだれしもが疑問を抱いているところなんですがね。そのATCの故障あるいはそれに伴う運休といったような状況について御報告願いたいと思うのです。
  69. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  70. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記を起こして。
  71. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) ATCの故障問題につきましての御質問でございますけれども、ATCにつきましての故障といたしましては、いわゆる瞬時変化の現象ということで私ども証拠の残るものにつきましては原因は解明できているわけでありますけれども、いわゆるきわめて瞬時に変化する現象につきましてまだ乗務員の申告だけで記録等には残らないというものにつきまして発生いたしているわけでありますが、この問題につきましては専門家をこの問題だけに対処するように手配いたしまして十月の初めから研究を続けているところであります。  なお、一昨日、新大阪の構内におきまして、出るべからざるほとんど本線上において初めての異常現示といたしまして、二百十信号が二秒ないし四秒運転台の信号表示の中にあらわれ、これまた、しかも記録にも明確にその異常現示が載っておったわけであります。大阪の構内につきましては、かねてホーム一線の増設という工事をやっておりまして、きわめてむずかしい工事でありますので、先般も異線に進入するというCTCがらみの問題があったわけでありますけれども、今回の場合にはATCの問題でありまして、私どもきわめて重視しているわけでありますが、一昨日事故発生以来、何に原因するものかということ、それからまた、逆にどの装置が絶対に安全であるかと、いわゆるポイント等のルートに関係している部分がないのかというような探究の結果、いわゆるコムトラックからCTCという系統につきましてはすべて異常がないということがわかりましたので、それでは構内におきますATCを使用中止いたしまして、そうしてCTCの現場扱いという形の中でこれは保安上は十分安全を保ち得る方法でございまして、この方法によっておとといの夕方から列車運転をいたしているわけでありますが、この方法によりますと、どうしても現在本数の維持は保てません。したがいまして、現在は大体百九十数本の毎日の運転になっておりますけれども、そのうちの約四割はどうしても運転いたすことができないものでございますから、昨日ときょうと約八十本の運休をさせていただきましてそうして原因の探究に当たっているところでありまして、昨夜、一昨日異常を現示しました車を使いましてすべての試験をやったところでありますけれども、それらのデータをけさ持ち帰りまして詳しく調査をいたしておると同時に、さらに現地におきましてはもう一度その他の装置に異常がないのかという逆からの試験を繰り返しているところであります。できれば昨夜のうちに原因を突きとめ、けさから所定の運転に復したいということで当たったのでありますけれども、残念ながら、あるところまで追い詰めてはおりますけれども、これだと、これ以外にはないんだという確証が現在のところまだ得られない段階でありますために、理論的な詰めとあわせまして現在進めているところであります。おそらく、今夜もう一度最終的な試験を行なえば、申し上げられる結論が出るのではないかと思います。いずれにいたしましても、十二日も新しいATC関係の——十二日じゃございません、十一日の夜半から十二日の朝にかけての間合いでございますが、この間におきましてATC関係の工事もやっているわけでありまして、非常にむずかしい工事の中で十分に注意をするように言っておいたのでありますけれども、残念ながらそれらの一連の中で今回の現示があらわれたわけであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、この現示が他では発生しないということを再確認いたしておりますし、この場所は三十キロないし三十五キロ以内の運転しかいたさない場所でございますので、直ちにあぶないという問題には直結いたさないのであります。したがいまして、一応その場につきましての異常現示につきまして乗務員に十分教えて、そしてATCを使ってより多くの列車を運転するということも一面においては考えられるわけでありますけれども、昨今新幹線の状態等にかんがみましてこれはやはりそういう措置はすべきでないという判断に立ちまして約四割の運休をさしていただいておるような状況でございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 新幹線の安全等については、これはよくよく注意を払う必要があると思うんですよ。あの二百キロのスピードでもって脱線転覆といったようなことになれば、これは想像を絶する大惨事になると思うのですね。それだけに慎重の上にも慎重を期する必要があると思う。私ども、先般新幹線にも乗ってみましたし、線路の保守状況を夜間にわたって視察もしてまいりました。それから新幹線だけじゃなくて、房総線あるいは東北線といったような在来線の視察もやったわけなんです。そのときに、私は両方運転台に乗って感じたんですが、正直に言ってやっぱり新幹線のほうがこわいですよ。たとえば在来線の場合は、房総線だってずいぶん道床がこれは老朽化しております。千九百三十何年製と、つまり昭和の初期の線路を使っているといったような個所があるわけですね。だけれども、在来線の場合は、スピードがおそいし、また、目で見ても線路のぐあいの悪いところはわかりますよ。わかれば運転手は徐行するわけです。だから、そういったような個所については運転手の注意力でもって危険をある程度回避するということができる。ところが、新幹線の場合は、一たん走り出すと、ATCのほうからの連絡でスピードを表示されるわけですね。スピードメーター百六十というところまで出れば、その百六十キロに上げる、二百十の信号が出れば二百十キロに上げる。ところが、二百キロ以上のスピードになると、運転台でもって目で見て、あそこのところはぐあいが悪いとかいいとかわからなくなってくるわけですね。それは在来線とは全然違うわけです。しかも、わかったとしても、二百キロで走っているときに、これはぐあいが悪いと思ってとめようとしたって急にはとまらないわけですね。そういう危険性があるわけです。それだけにATCが万全ではないということになりますと、これは過密ダイヤについて再検討する必要があるのじゃないかという気がいたします。いままでの国鉄の方針はATC万全であるということを前提にしてダイヤも組み、それからスピードもその二百十キロというスピードで走ってきたわけですよ。そういう考え方が通用するかどうか、これは問題があると思います。それは新幹線の発足当初はたいへんに強気な発言が総裁からありました。私はいまでも記憶しているんです。絶対だいじょうぶだと、こういうふうに言われたんです。しかし、最近の事故の続発状況はだいじょうぶじゃないということを証明しているわけです。これはダービーで優勝した競馬馬だって、十年もたてば幾らむちでひっぱたいたって前のようには走れなくなるんですよ。新幹線もそういう老化現象というものがどうもあらゆる面で出てきたというふうに考えられてならないんですがね。そういう点を考えたならば、強気でもってこの過密ダイヤを継続する、あるいは高速運転を継続するということは、これは当然もう回避をするという考え方に立つべきだと私は思うのですが、それはどうなんですか。
  73. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 新幹線の七月以来の故障の多発につきましてはたいへん御迷惑をおかけしているわけでありますけれども、これが全く何といいますか、高速時におきましてきわめて危険な状態になったと、こういう現象はあってはいけないわけでありますけれども、そういうことも現実の問題としてはないわけであります。私どもといたしまして、二百十キロの運転がそれ自体として危険であるというものは、現在のところそういう判断には立つ必要がないというふうに自信を特っておりますために、二百十キロの運転をいたしているわけであります。  また、しかし、二百キロであっても過密ではないかということでございますけれども、大体七分ないし八分の時隔をもってダイヤが組まれているわけでありまして、入駅等においては五分等の時隔になる部面があるわけでありますけれども、しかし、現在の安全装置等から見れば、在来線におきますいわゆる自動信号機間におきます九十五キロ程度運転の中央線の通勤電車等に比較いたしまして、私どもはやはり新幹線のほうがより安全であるという自信を持っているわけであります。しかしながら、何を言いましても七月以来の故障におきまして非常に多くのお客さんに御迷惑をかけておりますので、これらの故障防止対策ということにつきましては、かりに今回の新大阪におけるようにいわゆる工事過程における事故あるいは故障、あるいはまた七月以来の大雨によるさまざまな故障というものがあったにいたしましても、これらを克服するだけの新幹線をつくっていくという前提で一生懸命やっているところでございます。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いまの発言はちょっと問題があると思うのですね。二百キロでも絶対安全であると、こういうふうに言われておりますけれども、絶対に事故がなければ、二百キロでも三百キロでも安全に違いないです。これは事故がないという場合のことなんです。現実にATCは故障を起こしている。これは万全じゃないということを立証しているわけです。ただ、その場所が、場所が場所だから、二百キロもスピードを出さないというのは、運転士の常識として出さないというだけの話です。あれは運転台で実際に見てみますと、ここまで出せといった表示が出るわけですよ。その表示に従ってスピードを上げていけば、これは二百何キロのスピードで走るわけなんですけれども、特に山陽新幹線なんかの場合はもっとスピードアップすることができるようになっているでしょう。しかし、二百キロ以上というスピードは、昔の飛行機のスピードですよ。新幹線よりも在来線のほうがよっぽどあぶないんだということだから、これもまたたいへんな話なんですね、これは。それでいいのかという問題が出てきますよ、在来線はもっとあぶないというわけですから。ただ、同じあぶないにしても、私は、四十五キロのスピードの事故と二百キロのスピードの事故では、事故のけたが違うと思う。その点を言っているんです。新幹線のほうがこわいというのはそれなんですよ。特に二百キロ以上のスピードで走った場合には、雨の降った日なんかは、雨水が下のほうから上へ上がってきますわね。また、道床の状態なんというのは、在来線でもって四十五キロや五十キロでもって運転をしている個所と全然違うわけですよ。在来線だったならば、運転台で見ていて、あそこのところはどうも悪いなとか、ここは何とかしなきゃいけないなとかいったようなことは、これは目で見てわかりますよ。しかし、二百十キロというスピードになると、目で見ていいとか悪いとかどうだとかこうだとかということは全然わからぬですよ、特に運転台で見ると。その意味で、私は、交通安全委員会も一度この新幹線に試乗をして、二百十キロのスピードの場合に運転台で見た感じがどんなふうになるのか、トンネルの中ですれ違ったらどんなことになるのかといったようなことを実際に視察をしてみたほうがいいんじゃないかという気がいたしますけれども、国鉄の説明を聞いていると、二百キロだろうと二百五十キロだろうと絶対安全なんだという話だから、それを信頼していれば、お客として乗っている分にはうつらうつら寝ながらそれは乗っていられるんでしょうね。しかし、実際にこの道床の現状を見て、あるいは運転台に上がってその運行の状況を体験してみるとそう簡単に絶対安全だとは安心しきれないものを感ずるわけですよ。いまのお話ですと、多少の事故があったけれどもやはり絶対安全なんだと、だから二百十キロのスピードを落とす必要はないんだと、こういうふうに聞き取れるわけです。しかし、計画は二百十キロのスピードでもってもっと列車本数をふやそうということでしょう。一番多いときは二百五十本も一日に走らせるということですが、それは考えてみてもわかると思う。昼間線路の保守作業はできないんですよ、あそこはね。始発電車が走り出すと、終電車までうっかり線路のそばに近づけないという状態でしょう。十分足らずの間隔でもってひっきりなしに走る。しかも、それは走る重量は十六両編成だと約千トン近くになるわけですね。千トン近い重量の新幹線が昔の飛行機並みのスピードでもって走るのですから、どんなに線路、道床を固めてみてもこれは相当くたびれるであろうということは想像にかたくないです。架線だってそうです。架線なんかの場合は、たとえば熱海とか小田原のような通過するところで見ていただけで、火花を散らしながら走っていきますよね。その火花を散らしながら走っていくのが一日に二百回も続けられるわけです。途中で取りかえだとかあるいは検査だとか全然できない状態ですよね。これはおそろしいと思いませんか。特に、昼間、日の当たるところで線路の保守作業ができないという状態がはたして安全と言えるかどうか。私は先般深夜にわたって線路の保守作業も見てきました。ところが、あの新幹線の高架の幅なんてものは、上がってみるときわめて狭いですよね。ぎりぎり一ぱいです。しかも、砂利の上で保守作業をやるということになると、手探り仕事ですね。至るところに照明が行き渡っているわけじゃないのですから、その手探り仕事でマルチプルタイタンパーというものはごう音を発して作業をやっている。しかも、深夜作業をやる労務者は外注の下請会社の季節労務者、出かせぎの季節労務者ですね。これはまことに保守の体制としては心細い限りですよ。こんなことをやっていていいのかという疑問が当然生じますよ。これは私はそう自信をもってだいじょうぶだというふうに言い切ってもらったんでは問題があると思いますよ。それならば、いままでの数多くのもろもろの事故を一体何といって説明をするか、説明できるかということをお聞きしたいと思う。
  75. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 数多くの故障は確かにあったわけであります。しかしながら、いわゆる運転事故といわれます脱線衝突あるいは列車火災というもの、脱線も鳥飼のところであったじゃないかとおっしゃられるかもしれません。あるいは火災も三島でボンネットの中でいぶったじゃないかというお話もあるかもしれません。しかし、それらに一つ一つに私ども対応してやっているわけでありまして、今日きょうも二百キロで走っている列車があぶないのかというような御質問に対しましてでありますから、私といたしまして、あぶないということであれば列車運転はしないという原則に立って決心をしているわけであります。結果的にあるいは架線が故障したとかパンタグラフが故障したというような個々の現象に対しましては、これは将来とも絶無にするということは残念ながら私の口からは申し上げかねることであります。ただ、一つ一つの問題に真剣に取り組んでいくと同時に、また、その現象に対しまして、安全である速度、その場所に対しまして安全であるという自信が持てるまで徐行をかける。私ども、乗務員が、どうもおかしいと、震動によっておかしいと感じた、体感によって感じたというような申告があれば、たちまちそこに徐行をかけ、現地に人間を派遣して、そしてその情報を確認の上、再び速度を上げているという手配をいたしております。したがいまして、きょう走っている二百キロの「ひかり」「こだま」ともに私は絶対に安全であるという確信を持っている、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 絶対に安全でなければ困るんですけれどもね、これは。しかし、いろいろと不安があるから、不安を除去するために適切な対策を講じているのかということが問題なんですよ。絶対に安全であるといっても、いままでの事故運転保安上重大な事故がなかった。これはいままでなかった。小事故だけだったかもしれません。しかし、線路の亀裂ということがあったり、私自身が実際に体験している新幹線の事故は、線路の亀裂等があったためにトンネルの中で何時間もとめられるといったような経験もいたしましたし、それから架線故障等で徐行するといったような経験もしているわけです。最近、新幹線に、まあ私はあまり新幹線に乗る機会は多くないんですけれども、たまたま最近に乗ったときは、ことごとく事故にぶつかっている。以前はそんなことなかったですよ。おそらく新幹線を多く使っておられる方は、特に動揺が激しくなったこと、事故の多くなったということを痛感していると思うんです。大事故になったのでは間に合わないから、一体これでいいのかと質問しているわけですよ。確かに、在来線と新幹線と比較すると、在来線よりも新幹線に金をかけているということは、それはわかります。在来線のほうが悪いんだということもわかります。ただ、在来線の場合は、四十五キロとか三十キロとかというふうに徐行することは運転手自身が線路の状況を見ながらやれる状態にある。もし間違って事故を起こせば乗務員そのものが命があぶないわけですから、これは慎重にならざるを得ないでしょう。ただ、新幹線のシステムはそう簡単にいかないシステムになっているわけですな。二百十キロ出せということになれば二百十キロ出す。出した場合にあぶないなと気がついても間に合わないようなスピードだというんですよ、これは。あのスピードでもしも脱線事故を起こしたといったようなことになったらどんなことになるだろうか、特にトンネルの中で二重衝突事故でも起こしたらどんなことになるだろうというと、これはたいへんなことですよ。そういう心配が絶対にないとは私は言いきれない。ATCだって、いままでに起きたATCの事故は大事故につながらないものだという説明があったように聞き取れますけれども、しかも原因が不明ということでしょう。そうすると、今後もATCが故障を起こさないという保証はないんでしょう。これは線路や架線だけじゃありませんよ。車両だってそうですよ。車両だって、いまのようにフル回転をしていて、車輪はえらいスピードで回っているわけです。したがって、車両が故障を起こさないという保証もないわけでしょう。つまり、道床、線路、車両、架線、上から下まで全部老朽化して何回かの事故をそれぞれ起こしているというのが現状じゃないですか。これが幸いにして大事故につながっていないというだけです。不幸にして一たび大事故に発展をしたらどうなるかということ、そういう可能性は絶対にないと、小事故はあっても大事故はないということは言い切れるかというんですよ。それは言い切れないのじゃないですか。その点はどうなんですか。
  77. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 私ども専門に携わる者として、ATC、CTC、あるいは車両、すべてできる限りの勉強をいたしているつもりでございます。もちろん私どもも、新幹線で事故が起こるとすればどういうものから起こりやすいだろうかと、その可能性が強いのは何だろうかというようなまあ反対側からの勉強があるわけであります。  しかし、これはまあなかなか申し上げにくいものでございますけれども、あえて申し上げますならば、いま私自身で一番こわいのはやはり車軸であります。しかし、この車軸に対しましては、一部問題になったことはかつてありますけれども、以来、新幹線の車軸がおかしい、現に使っている車の中でおかしいというようなものは——おかしいといいますか、おかしいというものはまあ取りかえるシステムができちゃっているわけでして、この車軸の検査体制、あるいは車軸のメーカーの技量というものは、おそらく——もちろん世界一の新幹線でありますから、世界一でなければならぬわけでありますけれども、大かた自信を持っていいと、これ以上やるとすればもちろん勉強しなきゃいけませんけれども、どういうふうにしてやれるのだろうかというような現在では最高のものをやっているという自信を持っているわけであります。次は、落下物が——落下物と申しますのは、いわゆる頭から、陸橋等から自動車が落ちてくるというようなこと、これがやはり非常にこわいわけであります。これに対してもできる限りの処置をやっているつもりであります。さらにあえて申し上げますならば、猛烈な地震というようなものがあるわけであります。これらは、新幹線というものに対応して現在の新幹線の力の状況の中で申し上げて、あるいは今後とも一番重点を置くべき事柄ではなかろうか、その他の問題につきまして。ほんとうに基本的に危険につながる現象というようなものが今後続発してそれが大事故につながるというようなことは私どもといたしてはさがせないと、こういうふうに申し上げているわけでありますけれども、しかし、小事故が大事故につながると、これまた非常に貴重な御意見でございまして、私ども、小さいものでも見のがすことのないように、最近におきましてスミスというような新幹線の情報管理センターでありますが、車両につきましても施設線路等につきましても詳細なデータを時系列的に常に把握できると、こういう体制を確立いたしませんと、これ以上ほんとうに安心のできると申しますか、故障をほんとうに極限に小さくしていくということはきわめてむずかしい状態にあると思いますので、それらの面からの攻め方というものもあわせていたしているところであります。  まあ非常に申し上げにくいことを申し上げたわけでありますけれども、しかし、私どもとしても、やはり逆の面からどういう状態の中で非常に危険な事故が起こるかということは、当然勉強をやっておりますということをあえて申し上げさしていただいたわけであります。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私が特に強調したいのは、あぶないと思ったときにはそれは適切な処置をとると。在来線の場合は適切な処置をとることによって大事故を未然に回避するということは可能なんですよ。わりあいとね。しかし、新幹線の場合は、あぶないと思ったときは間に合わないという危険があるわけですね。これはあぶないと思って乗務員の判断で事故を回避するということができる段階はいい。しかし、思ったときは間に合わない。たとえば、とめようと思ったって、約三キロ走っちゃうわけでしょう、新幹線の場合は。それは三キロも走らなければとまらないというスピードなんですからね。それじゃ、線路にあるいは架線に異常を発見したと、あるいは落下物があったと、そこでとめようとしたって間に合わないと思うんです。これは在来線の比じゃないですよね。在来線だったら、三キロも走らなくたってとまるわけですからね。だから、そういう点から考えると、二百キロ以上のスピードを保持しなければならないのかどうか、なぜ二百キロ以上のスピードでしかも過密ダイヤで運行しなければならないのかということは、これは安全の面からいうと問題があるというふうに思うわけですよ。  で、いま御答弁の中で明らかになったことは、新幹線より在来線のほうがもっと悪いのだと。新幹線ですら今日まで小事故が無数に連続をしておる、しかも動揺も激しくなっておる、これは否定できない事実です。ATCも故障したというんですよ。これだけの否定できない事実がありながら、なおだいじょうぶだといって強がりを言うということは私は責任者としては軽率なような気がするんです。強がりを言えるような状態でないから私どもは問題として取り上げているわけです。したがって、今後の問題として、これは総裁あるいは運輸大臣に答えてもらいたいと思うのですけれども、新幹線のいままでの十年の経験に照らして、これでいいのかということ、この過密ダイヤあるいはこのスピートこれをこのままこれ以上に継続をしていくということがいいのかどうか、それから今後山陽新幹線をはじめこれから開通をしようとしている新幹線がはたしていままでの経験を踏まえているのかどうか、あるいは上越新幹線東北新幹線等についてはたしていままでのようなあり方で——これはきょうは安全の問題だけ取り上げましたけれども、公害の問題等についても、はたしてこれでいいのかという問題はたくさん残ります。それらの問題については、私はむしろ大臣なり総裁からお答えを願いたいと思いますので、そういう点について十分な検討を加えた上で後ほど別の機会にお答え願いたいということを申し上げまして、一応私の質問を終わりたいと思います。
  79. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 私からも一言伺っておきますが、答えはあとでいいです。  国鉄は運輸大臣から新幹線については厳重な警告を受けているはずですね。それに対してあなた方は「新幹線の安全確保に関する対策について」という回答もしている。運輸大臣からきびしい注意を受けている側の答えとしては、ただいままでのお答えは私にはふに落ちません。したがいまして、運輸大臣の注意に対する十二分な責任を果たすような答えを次の機会にはお願いをしたいと思います。  午前の質問はこの程度とし、午後は一時二十分から始めることといたします。それまで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      —————・—————    午後一時二十五分開会
  80. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまから交通安全対策特別委員会を再開いたします。  午前に引き続いて瀬谷君からの質疑を求めます。
  81. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 午前中質問しました内容は、先般の特別委員会の視察の際に特に地元の島々の村長さんから直接陳情がありました。ちょうど非常に荒れた海でしたけれども、はしけに乗ってしぶきをかぶって本船においでになって、きわめて切実な陳情もございまして、おそらくこれはわれわれが回りました沖之永良部島、徳之島あるいは与論島、これらの島々以外にも共通の問題だというふうに考えますし、そのことについて徳永運輸大臣にも話をいたしましたところが、大臣も直接視察をして責任をもってこの地元の要望に沿いたいという発言も大臣の在任中に私は聞いた覚えがあるわけであります。そこで、大臣が視察をした経緯、結果等もあわせてお聞きをしたいというふうに考えております。
  82. 竹内良夫

    説明員(竹内良夫君) 私ども奄美におけるいろいろ港湾の事情につきまして本特別委員会の御視察の際随行されました管理課長からもよく聞きましたし、その後徳永運輸大臣が行かれまして非常にこの現状に驚きまして、これはもうぜひ何とか整備しなきゃいかぬということを非常に強く決心されまして私どもに指示されました。現在、この奄美系統の離島でございますけれども、実は四十八年度まで自治省の所管でございまして、私ども、四十九年度本年度からこの事業に対しているわけでございます。八港に現在事業実施しておりますけれども、主といたしましてやはり定期船が寄港する港について重点的にやっていきたいというように考えております。現在のところにおきましては、この定期船の寄港する港におきましては千トンの船は接岸が可能でございますけれども、三千トン程度になりますと、亀徳であるとか、あるいは和泊ですか、そのほかに名瀬というようなところしか船が着かない。五千トンの船になりますと、奄美大島名瀬港しか船が接岸できない、このような状態でございます。先般の御視察の際には五千トンの船で行かれたわけでございまして、その際には名瀬港以外の港には着けない。したがいまして、はしけで輸送するというような運送が行なわれていたと思われます。私どもといたしましては、一応将来一万トンの船がこの定期船には寄港できるように岸壁を整備していく。まあいずれも九メートルの水深を持った岸壁でございますが、それを徳之島におきましては亀徳、平土野、それから沖永良部におきましては和泊、与論島におきましては与論港というところの港湾につきましては、いま言いました一万トンの船が接岸できるように、そのためには岸壁だけをつくるだけではございませんで、防波堤もそこに整備していく。大体現在の時価に直しまして約二百億円ぐらいの金額をここに投入して、いまのところは昭和五十四年を目標に整備していかなくちゃいかぬというように考えております。  その程度でございますけれども、御承知のような総需要抑制の時代でございまして、大体予算というのは一般の港湾の平均が横ばいになっているような形でございます。四十八年度と四十九年度の一港当たりの設備投資に投入できるお金が大体横ばいでございますけれども、この各島に対しましてはやはり五〇%ないし六〇%、またそれ以上の努力をしていかなければいま言った数字は完成できないというような状態でございますけれども、大臣の御指示もございまして、私どもとしては全力をあげて対処していきたい。  なお、ここら辺の問題につきましては、一応すべて国土庁の所管になっております。国土庁の予算の編成に対しまして運輸省がその仕事を引き受けていくというような形でこれを進めるわけでございますが、国土庁のほうと一緒になりましてできるだけ早くそれぞれの船が安全に接岸できるように努力していきたいというように考えている次第でございます。
  83. 加瀬完

    委員長加瀬完君) それでは、次の質問者に移ります。阿部憲一君。
  84. 阿部憲一

    阿部憲一君 最近、海上にも陸上にも交通事故が頻発することは非常に遺憾に思っていますが、特に午前中から問題になっております東京湾におきまするLPG船の事故、これはもう非常な大惨事を招いたわけでございますが、これについて先ほど瀬谷委員からもだいぶいろいろと質問されましたが、それに対してさらにもう少し当局の御説明を伺いたいと思いますが、このような事故で多数の船員、特に「アリス号」のほうでは一名を残してほとんど全員焼死というような悲惨な事件が起きてしまったのは非常に残念に思っておりますが、しかし、これがまだまだ不幸中の幸いだと思うのは、陸上に対する被害がいままで及ばなかったと、こう思うのですが、このような事故は、しかしながら、海上だけでない、陸上にも大きな影響を及ぼすものでございますので、今後このような事故の絶滅を期さなければならないと思いますが、先ほど来もお話しありましたように、LPGタンカー事故というのは初めてこのような大事故になったわけでございますが、これからしかしLPG船もふえる。ふえればって減ることはありませんし、また、大型化もされますので、このような事故が今後とも起こらないという保証はございません。むしろ、またこれからも起こるのじゃないか、こういうふうの想定もされます。  そこで、このような事故をなくすためには、申し上げるまでもなく、今回の事故の原因というものを徹底的に究明してこの再発を防止しなければならないと思いますが、これにつきましてまだ事故の原因は最終的にははっきりしないというような先ほど来の御答弁でありましたが、いままでの生存者である「雄洋丸」の船長その他乗組員なんかについての調査の結果、一応「雄洋丸」のほうに若干のミスがあったというように私ども想像しておりますが、その辺についての長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  85. 寺井久美

    説明員寺井久美君) けさほどの御質問に対する御答弁のある程度繰り返しになるかもしれませんが、まあ今回の事故に関しましては、御指摘のとおり、目下原因を調査中でございまして、断定的なことは申し上げられないわけでございますが、まあ一方または双方の船に海上衝突予防法等の順守に欠ける点があったのではないかと考えております。で、調査が終了いたしましたら、事故原因を十分検討した上、この種の事故の再発防止のためにあらゆる手段を講じたいというふうに考えておるわけでございます。  先生御指摘のように、「雄洋丸」のほうに若干の問題があったのではないかという点につきましては、けさほど御報告申し上げましたように、中ノ瀬航路をやや出たところで衝突が起こっていると現在のところ考えられるわけでございまして、もしそうだとすれば、やはり「雄洋丸」側に回避準備の行動が必要であったのではないか、これが実際には間に合わなかったという結果になっておりまして、この辺の関係はもう少し事実関係を詰めた上でないと最終的に決定はできないという点でございます。
  86. 阿部憲一

    阿部憲一君 そこで、いまのその船長ですけれども、一番のポイントが中ノ瀬海路を出たところかあるいは中ノ瀬のまだ中にいたのかということは相当の大きな問題だと思いますが、そのようなことを実際に調べるのにはやはり船長自体に対していろいろと状況判断等をさせた上でもって聴取しなければなりませんが、その肝心な船長が先ほど瀬谷委員からの質問がありましたように、検察当局によって逮捕されてしまったと。これは私どもちょっと考えましても、いまの海上保安庁なんかのお調べなんかにおいても、またそのほかの衝突事故調査なんかの上においても、逆に支障を来たすのじゃないかと、このように思いまして、むしろ海上保安本部としては、身柄を自由にしておいて、また自由の立場からいろいろの諸般の関係を見たりして判断を下だされるのが一番やりいいのじゃないかと、こう思いますけれども、その辺についてもう一度長官の御意見を承りたいと思います。
  87. 寺井久美

    説明員寺井久美君) けさほどの同趣旨の瀬谷先生の御質問に対しまして私のお答えがやや事実と違った点がございますので、この機会に訂正をさしていただきたいと思います。  まず、「雄洋丸」の船長が事故直後、当方の巡視船に乗っていただきまして消火活動その他で非常に協力をしていただいたこと、これが消火活動の最中に当方に全く被害が出なかった一つの大きな原因になっております。この点ははっきり御報告申し上げておきますが、私どもが今回の衝突事故に際してどうして「雄洋丸」の船長を逮捕したかという点につきましては、今回の事故衝突事故でございますが、多数の死亡者を出しております。非常に重大な事件でございます。したがいまして、確実な証拠を確保するために検察庁とも十分な連絡をとって逮捕ということに踏み切ったわけでございます。その理由といたしましては、「雄洋丸」の関係の乗組員はかなり生存いたしておりますけれども、相手船の「アリス号」のほうの船員はほとんど全滅いたしております。したがいまして、証言等が一方的に片寄るおそれがなしとしない。同時に、乗組員、関係者各自から状況を聴取いたしますわけでございますが、それらが相互に連絡して船主あるいは船長に一方的に有利になるようなことを避けるためにもやはり別々に事情を聴取する必要があると、こういうようなことから船長を逮捕に踏み切ったわけでございまして、けさほど私が申し上げましたように、検察庁の指示によって行なったのであるから当方はその理由は明確に申し上げかねるという点は私の認識違いでございまして、この点は訂正さしていただきたいと思います。
  88. 阿部憲一

    阿部憲一君 船長の重大なる過失、まあどちらかの船長の、ということが相当大きなこの事故の原因だと思いますが、しかし、このような過失を起こさせた原因というものはやはり相当ほかにあると思います。その一つは、いまの海上交通を取り締まる法律、いわゆる衝突予防法だとかあるいは昨年施行されました海上交通安全法におきまして突防止なり海上事故の絶滅というものには万全に対処し得ないだろうというような感じがするわけでございます。特にいまの中ノ瀬海域から出たとか出ないとかいう問題。ということは、中ノ瀬海域そのものをもっと対象を広めておかなければいけなかったのか、それとも、かえってああいった海域を設けたために今度のような事故が起きたかというのはいろいろ考えられるわけです。  そこで、私、長官にお答え願いたいことは、そのような法的の不備と申しましょうか、海上交通を整理する上においてまだ現行法だけじゃ非常に不備がある、あるいは盲点があると、このようなふうに今度の事件を通じてお考えになっているかどうか、その辺のところの御意見を承りたいと思います。
  89. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 阿部先生御指摘のように、海上衝突予防法の一つの例外的な規定として海上交通安全法が働いてその特定の航路の中だけで優先権があるわけでございますが、これがその航路を出て普通の状態になると、この間に出てすぐ右側優先が働いてまいりますから、この辺の取り扱いについては、ある程度の緩衝地帯といいますか、準備海域といいますか、そういうものがあったほうが望ましいということは事実でございまして、また、そのために、当庁といたしましても、これを横切る船は千メーター迂回をしろという指導をしてまいったわけでございます。この「パシフィック・アリス」号は、もし先ほど申し上げました百二十メーターないし五十メーターの地点でぶつかっておるとすれば、実は千メーター回っておらないわけでございます。こういうところに指導の不徹底というようなこともあるやに考えられますし、また、先導船をつけております。この先導船にまた十分危険防止の作業をやらせる必要もある。いろいろ法の実施面におきまして今後改善しなければならない面が多々あるように考えられます。この航路を延ばせばものごとが解決するというわけではございませんで、延ばしましてもやはり出たところで同じような問題が起こるという可能性がございます。したがいまして、私ども、この事故を教訓といたしまして今後十分検討いたしまして、法的な手当てが必要であればこれは何らかの形で手当てをする必要がある、また、実際面の指導あるいは当方の巡視船現場におけます指導等におきまして調節が可能であればそれでもやっていきたいと、とりあえずは実行可能な面からさっそく取りかかっていきたいと思っております。
  90. 阿部憲一

    阿部憲一君 大体わかりましたが、行政指導でもって極力このような事故を防止していきたいと、法改正はこれからの問題として考えるというような御意見でございますが、先ほど瀬谷委員からもお話しありましたように、日本船ならば行政指導しやすいし、外国船、特に先ほど来指摘あった便宜置籍船のごときは、よけい扱いにくい面もありましょうし、また、日本の港湾そのものになれない船というのも当然入ってくることも予測しなければなりませんから、そのような意味におきましても、私、行政指導もさることながら、もう少し衝突予防をするための何か措置を、抜本的と申しましょうか、そのような措置を講ずべきじゃないかと、このような気がするわけです。特にいまの中ノ瀬付近なんか、海上交通法の対象にしたように非常に交通量が激しいところでございまして、一日八百隻ですか、そのまま船舶が通行するわけですから、神様でない限りそれこそまたこのような事件が起こらないとも限りませんんし、また非常に起こる可能性が多いわけです。そこでいまお伺いしたのですけれども、単に行政指導に頼ると、あるいはまたいまの衝突予防法だのあるいは海上交通法などの多少の修正と申しましょうか、改正程度によってこの事故を今後防ぐということは私は相当危険じゃないかと思っています。  そこで、海上保安庁長官として何か抜本的な事故防止の対策をお持ちかどうか、伺いたいと思います。
  91. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 抜本的と申されましたけれども、抜本的な事故対策というものが具体的に私どもの頭の中に現在残念ながらあるわけでございません。ただ、先生御指摘のように、行政指導をいたしましてもなかなか外国船にはむずかしいという面があるのは事実でございます。したがいまして、私どもは、特に東京湾のこういう地域を航行する外国船につきましてはできるだけパイロットをとるように指導いたしております。まあこれも指導でございまして目下のところ強制力はございませんが、できるだけその付近の海域にも明るいし日本の関係法令にも明るいというパイロットを乗せて指導するのが一番効果的ではないかというふうに考えております。
  92. 阿部憲一

    阿部憲一君 私、抜本的と申し上げましたのですが、私の考えを申しますと、結局、LPG、まあこれはタンカーも含まると思いますが、こういうようなタンカーに対しての構造的な欠陥があるのじゃないか。ということは、逆に言えば、火災なんかに、あるいは衝突などに非常に弱い状況じゃないか。いま道路の上も盛んにこのガスを運搬したりする特殊な自動車が走っていることはわかりますが、これはこれで相応に相当の危険防止の措置は講じているとは思いますけれども、今度のような事件が海上に起きますということになりますと、やっぱりいままでのようなLPGあるいは一般のタンカーなんかに対する考え方というものをもっと改めまして、ちょっとした衝突、まあちょっとした衝突でなかったかもしれませんけれども、この程度衝突でもって衝突したほうの船も全焼して乗組員がほとんど全部一瞬のうちに死んでしまう、このようなことはやはり何とか手を打たなきゃならぬ。それにはまず考えられますのは、いまのタンカーの構造それ自体をもう少し手を加えて改めていくべきじゃないか。船舶局長はいらっしゃらないと思いますのでその辺の技術的なことはわかりませんが、そういった方策を講ずべきではないかと思いますが、その点お考えはいかがでしょうか。構造の問題について御意見をどなたか……。
  93. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 私も実は船舶の構造についてはよくわかりませんし、タンカーの構造がこのショックに対してどの程度のものであるかというような点につきましては、むしろ船舶局からお答えさしていただきたいと思います。もしきょうおりませんでしたら、またいずれかの機会にお願いできたらと思います。
  94. 阿部憲一

    阿部憲一君 それからもう一つは、結局、これは何も運輸省だけの問題だとは思いませんけれども、この狭い水域に重なり合ってそれこそ六百隻も七、八百隻も来る状態、それもまだ普通の汽船、従来の汽船だけならいいですけれども、いま申し上げたように非常に危険度を持った船をどんどん入れたり出したりしている、ことに最近大型化によりまして三十万トン一近々また五十万トンの船さえも建造されようとしていますのですが、そういうようなものまで考えますと、一体このままでいいのかということになり、やはり水路自体をもっと変えさせる。要するに、東京湾なら、このような浦賀水道からさらに中ノ瀬に入るというような航路に対してほかで油なら油を仮揚げするといいましょうか、そういうようなことも私は必要じゃないかと思っておりますが、これ以上過密化しましたらば、ほんとうにこれはもっと大きな事故につながると、このように思うわけでありまして、その辺のところも私がいま抜本的と申し上げた中に含まれているわけでございまして、ここいらはひとつどうか交通のほうの担当をなさっている海上保安庁並びに運輸省でもっと深甚なる考慮、対策を講じていただきたいと、こう思うわけであります。  なお、私、今度の事故につきまして、もう一つ、もちろん発生の原因の除去をするということは一番大切なことでございますけれども、発生してからの後の対策、これに対しても私は決して万全の備えがあるとはお世辞にも言えないと思います。ということは、結局、あの瞬間において、船が、しかもタンカーでない船のほうが全面的な被害を受けまして、乗組員がほとんど全滅するというような事故が起きましたけれども、そのような事故になってしまって、それはまあ瞬間的ですから防火施設その他等々では間に合わなかったということもありましょうけれども、しかし、何とかもう少し手があったのじゃないだろうか。非常に一生懸命に消火には尽力されたことはよくわかっていますけれども、それにしてもやっぱり事故が大き過ぎた。しかも、まだ一方の船は火災がおさまらないで燃え続けていると、このような状態です。これはやはり事故発生後の防火あるいは消火に対する施設というものをもっと考えなきゃいけないのじゃないか、強化しなきゃいけないのじゃないか、このようにも思いますが、その辺のところはいかがでしょうか。
  95. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 海上消火体制が必ずしも十分ではなかったのではないかという御指摘でございます。私どもといたしましては、東京湾のような石油化学工業地帯を携しております地域には、当然原油あるいは液化ガスというものを積載いたしました大型タンカーが入ってまいります。それに対応いたしまして、現場に直ちに到着して初期消防ができるという体制を当然とっておかなければならないわけですが、そこで、現在のところ大型消防艇が三隻は必要であろうというふうに判断いたしております。このため、海上保安庁におきまして、一隻の大型消防艇を購入いたしましたほか、民間関係社が協力いたしましてさらに大型消防船二隻を共同で建造するように指導いたしました結果、四十七年度に一隻建造されまして、四十八年の一月から就航いたしております。これが今般の事件でたいへん活躍した船でございます。さらに、五十年度——来年度でございますが、五十年度当初に一隻の建造が計画されております。これができ上がりますと、一応計画いたしました大型消防艇の体制が整うわけでございます。このほか海上保安庁といたしましては、東京湾に重点的に化学消防能力を持った巡視船を配属いたしておりまして、現在消防艇を除きまして二十五隻の巡視艇がおりますが、このうち十八隻には消防能力を持った巡視船おります。これらの船艇及び消防船艇の全部を合わせまして今回の事故に対応してまいった次第でございます。このほか、もちろんほかに消防機関がございますので、消防機関との間に業務協定を結んでおりますし、また、民間との協力体制——先ほど申し上げましたように——もとっております。また、タグボート等で相当消火能力を持っている船もございますので、これらを一丸といたしまして、事故のあった場合に消防活動ができるというような体制を目下とっております。御指摘のように、これはどこまでいけば十分だということはなかなかむずかしい問題でございますが、当面これらの体制で大型タンカーの火災の消火に当たれるというように考えております。
  96. 阿部憲一

    阿部憲一君 本件につきましてはまだ原因というものがはっきりいたしませんので、いろいろと想像した上でもって論議しましてもほんとうの対策というものを樹立することは不可能で、いずれそのうち原因がはっきりしました暁に重ねてまたこの問題についていろいろと当局にお伺いしたいと、こう思っております。  以上、けさほどの衝突事故に対しての質疑を終わりまして、そのあとちょっと新幹線の問題につきまして二、三お尋ねしたいと思います。  これは、申し上げるまでもなく、ATCの事故が先般来起こりまして、ことに今般新幹線の運行に非常に大きな打撃を与えているわけでございますが、このようなATCの事故そのものもまだ原因がわからないというような状況ですから、これについて重ねて御質問するわけにもいかないと思いますが、そのほかでも、新幹線は、過去十年間、どちらかといえば大きな事故もなくてすんできたことは幸いだと思いますが、しかし、新幹線の運転のストップあるいは遅延ということ、あるいはふくそうというようなことは絶えず繰り返されてきて、最近特にこれがひどくなっております。これは新幹線が初めできた当時、いまのようなATCの設備などもはっきりしない時分からのことでございますが、一番大きなのは雨による被害、台風とか豪雨とかによる被害、これが非常に新幹線の運行を妨げてきたわけでございますが、いわゆる雨に弱い新幹線、このような異名をたてまつられたわけですが、この点につきまして今年の七月の台風の影響でもって静岡県の丸子川で新幹線がだいぶ長い間ストップしましたがこのようなことに関連しまして、台風とか水害、さらに現実にはそれほど大きなことにならなかった地震というようなものを含めましての天災事故に対しての対策、これはどうなっていますか、このような災害に対して新幹線は安全であるかどうか、このようなことについてひとつ御説明を願いたいと思います。
  97. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 先生の御指摘のとおり、新幹線の三十九年開業当初、四十年にかけまして、のり面等の崩壊がありましてたいへん御迷惑をかけたわけでございますが、その後鋭意いわゆる盛土区間ののり面、あるいは河川改修に伴っての橋脚の補強等に努力してまいりまして、一応この災害に対しましては風速計あるいは降雨量の測定計というようなものを増備いたしてまいりまして体制を整えておったわけでありますけれども、昨年の七月の台風八号による降雨量は、私どもの想像を絶したものであったわけでありまして、また、御指摘の丸子川につきましては、河川改修がまだできていない川であったというようなことで、最高二十時間、約一日間この丸子川によって運行をとめなければならないという事態が発生したわけであります。以来、私ども、台風に対する問題といたしまして、この夏ものり面もやられた個所があったわけでございますけれども、やはり河川改修という問題を河川の管理者側と最重点的に御協力願ってこれに対応していかなきゃいかぬのじゃないかと、このように考えているわけであります。  なお、盛り土区間におけるのり面の補強につきましても、必ずしも現時点において万全であるということは申し上げかねるような状況でありまして、これから一そうこの点に力を入れまして、五十一年度末を目標にいたしまして約九十キロぐらいこののり面の強化工事をやりたいというようなことで先般運輸省にも申し上げたところであります。  なお、地震に対しましては、最悪関東大地震程度には対応できるという設計にはなっているわけでありますけれども、私ども、感震計というものを配置いたしまして、常識的には約震度三というような震度が感じられました場合には、まず列車を全面的にその区間に対して五分間停止させる、それから徐々に段階的に列車の速度向上をはかりまして、監視員を乗せまして、平常状態に戻すというのが常例になっているわけでありますけれども、これ以上震度四程度のものが感じられた場合には、列車を停止いたしまして、現在ではなお徒歩巡回で詳細に調べる、しかる後に運転を再開すると、これで震度四を感じた場合にはたいへん大きな御迷惑をおかけするわけでありますので、何かもう少しこの点の改善がないだろうかということで先般来鋭意勉強中でありますが、やはり目で確かめるということが一番安全でありまして、現在の段階ではまだ震度四を感知した場合には徒歩巡回をするというところを脱し切れないでいるわけでありますが、測定技術の改善等を含めまして努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
  98. 阿部憲一

    阿部憲一君 台風だとか風、雨なんかの被害というのは、単に新幹線だけじゃない、一般の在来の鉄道も被害を受けるわけです。それだけでなくて、一般の道路からまた付近の住民の生命財産までに大きな影響を及ぼすわけですが、むしろこのほうの総括的な立場におられるのは建設省と思いますが、これらの中小河川の整備などが非常におくれている、そのためにさっきも申し上げたような鉄道あるいは道路、村落等が被害を受けるわけですが、この辺についての整備は非常におくれているといわれていますが、その辺についてどのような対策をお立てになっているのか、ちょっと建設省の方にお伺いしたい。
  99. 田原隆

    説明員(田原隆君) お答えいたします。  中小河川のこういう整備は知事が管理者となりまして、そして建設省の補助金と県の負担金で改修をやってまいっておるわけでございますが、全国で三千河川以上の河川についてただいま着工いたしておりまして、このような鉄道道路を包括するような場合に必ずしもその個所が全面的に改修されておるという状況には至っておりませんが、ただ、こういう河川を横断するような構造物をつくるような場合には、河川法の二十四条による占用と二十六条による工作物の設置ということに関して一般の場合許可を与えるという形になっておりまして、国鉄とかあるいは国に準ずる工事の場合には協議をして同様の効果をもって許可を与えたと同じような形で調整しながらやっておるということになっているわけでございます。その許可にあたりましては、治水上支障がない、逆に言えば治水上支障がないわけでございますから橋梁等がそのために被災することがないようにというような観点から橋梁の長さとか、けた下高とか、あるいはスパン——けたの長さだとか、そういうものを中心に一定の基準に従って審査し、かつ橋台付近がよく洗掘されることになりますから、それらがないように護岸等をつけるというようなことを許可条件にいたしてやっておるわけでございます。その他一般に河川の側から改修する場合にはそれらのことは十分当然のこととして河川の護岸についてやるわけでございますけれども、ただいま問題になりましたような丸子川のような場合におきましては、実は十年ぐらい前、新幹線が開通する前の工事中のことでございますけれども、同様の協議をやっておりまして、その節、橋梁の長さにつきましては将来——ここには改修計画がなかったのでございますけれども、将来改修する場合のことを想定いたしまして流量計算等をいたしまして長さを決定してまいったわけでございます。そして、橋台の取りつけ付近の護岸につきましては、通常コンクリート等のいわゆる永久と称されるような護岸をやるわけでございますけれども、なぜかこの場合はじゃかごで護岸をされておりまして、これが今度の水害にあたりまして洗掘決壊を受けてその復旧のために時間がかかったということになっております。先ほど国鉄のほうからも御答弁ありましたが、この地区の雨が昭和十六年までの最大が二百五十六ミリぐらいであったのでございますけれども、台風八号のときの静岡市の雨量が日雨量で五百ミリをこえております。そういう状況でございまして流量も非常にオーバーしておる。この地点が国鉄ができた当時の現況でいきますと二百トンぐらいの流下能力でございますが、それに対して流下能力一ぱいの水が出ておるという状況でございます。計画上のものは二百四十トンぐらいの流量に耐えられるようになっております。ところが、その後昭和四十二年から実は小規模河川として改修に着手してまいっておりまして、四十九年と五十年度で完了する予定になっておった個所でございますが、たまたまそういう運悪く改修ができでなくて、護岸もじゃかごであったために、現在応急工事がなされ、本復旧も今年度中に終わるという状況になっております。そういうように河川の数も非常に多うございますので許可条件の形で処理しているわけでございますが、それでも新幹線のみならず一般的にこういう国鉄線との関係を改良していくために、昭和四十九年におきましても、直轄河川について三十三ヵ所、それから補助のこういう中小河川につきまして九十ヵ所の構造改善工事をやっておる最中でございます。来年度以降もやはり相当の量やる予定でございますが、いろいろ河川関係の事業には住宅、下水道その他関連する、ことに先取りされる事業も多うございまして、なかなか意のごとく進まない状況でございます。
  100. 阿部憲一

    阿部憲一君 いまの新幹線では、新幹線だけじゃなくて一般の国鉄もそうですが、特に新幹線について思いますのは、先ほど来お話しありましたように、非常にスピードアップしているという関係でちょっとした事故が大きな災害に結びつくわけでございますが、特に私ども非常に危険だと思いますのは、一般の道路と新幹線と並行しているところ、あるいは立体的に交差しているというような場面が相当ありまして、そうすると、これはまあ新幹線事故ではございませんが、一般の事故として上から自動車が落ちてきたとかいうことのために非常に大きな災害を起こしている例もございます。そこで、新幹線がもしもそういうことがあったらたいへんなことになるのじゃないかと、このように思いますが、そういうような危険らしい、たとえば並行していてしかも新幹線の線路よりも上のほうに転落する危険がある個所がどのくらいあるんですか、ちょっと数を……。
  101. 浅井新一郎

    説明員浅井新一郎君) お答えいたします。  御指摘のように、新幹線をオーバーする道路の個所は非常にたくさんございまして、御指摘のように、万一転落事故等がありますと、その影響は非常に大きいということが予想されるわけでございますが、まあ一般道路につきましては、新幹線がかなり高盛り土になるということで、レベル差が相当あります関係で、接近等についてはあまり問題はございませんが、交差個所については確かに御指摘のとおりでございます。一般道路についての数字はちょっとつかまえておりません。高速道路について考えてみますと、全国でいま新幹線の計画中のもの、すでに計画として公表されている四つの新幹線について考えますと、全国で交差個所としては大体二十八ヵ所考えられておりまして、そのうち道路が上になるケースが十四ヵ所というふうに把握しております。
  102. 阿部憲一

    阿部憲一君 十四ヵ所危険なところがあると。それは、現在の新幹線並びにこれから敷設する予定の新幹線含めてでございますね、十四というのは。   〔委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕
  103. 浅井新一郎

    説明員浅井新一郎君) さようでございます。
  104. 阿部憲一

    阿部憲一君 これは御承知のように、たとえば、普通の乗用車はもちろんのこと、トラック等が落ちた場合には、除去しないうちに列車が入ってきて相当の大事故に発展するわけでございますけれども、そんなことで私どもこれは絶対発生しないような、要すればたとえば道路上にうんとしっかりした障壁、ガードレールのようなものを設けるとか何とかということを徹底させることによって防止できると、こう思いますけれども、このような場合に、ちょっと承るところによりますと、道路においてガードレールが必要なのにかかわらず、そのようなところに、国鉄がガードレールを敷設しているというようなことを聞きますが、これは、建設省、いかがですか。
  105. 浅井新一郎

    説明員浅井新一郎君) 新幹線と交差する場合の費用負担については、国鉄と建設省との間で協定を結んでおりまして、費用負担、これはまあ高速自動車国道の場合には、高速自動車国道鉄道との立体交差に関する建設省・日本国有鉄道協定というのがございます。これによってやっておるわけでございまして、これにはいろいろなケースについて費用負担の方法をきめておるわけでございますが、いま御指摘のような場合でこの協定に基づいてやりますと、大体において高速道路側でその費用負担をすることになろうかと思います。ただ、協定によりますと、新幹線工事のほうがあとになったような場合、新幹線そのものの建設費は原因者が負担するということになっておりますので、それに関連して必要になるようなガードレールはあるいは協定によりますと新幹線側ということになりますが、原則的には大体道路管理者側が設置するという形になります。
  106. 阿部憲一

    阿部憲一君 まあ原則としてはそうかもしれませんが、現実に個々の場合におきましては当然建設省がそのような事故防止のために防壁なりガードレールなりをしなければいけないような個所につきましてもなかなかしない、あるいはまた、すでに国鉄側でもってそのような施設をしたにもかかわらずその費用の負担ということに対して建設省のほうで非協力であると、そういうような声も聞いたのですが、これは国鉄さんのほう、いかがでしょうか、そういうケースをお聞きでしょうか。
  107. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 建設省直轄の道路につきましては、そういう問題は聞いておりません。ただ、道路には、先ほどのように、知事以下市町村管理の道路もございます。これらの道路が新幹線がつくられました以降におきまして環境の変化その他によりまして変更される場合があります。そういう場合は、原因者は道路管理者側と私どもにおいて、それで当方からも協議を申し上げまして、ひとつよろしく危険防止のためにお願いいたしたいと、こういうことで協議を申し上げているのでありますけれども、実際に道路ができる、ガードレール等の防護さくが十分でないと、なかなか協議が進まぬというような状態で私ども放置できるわけではございません。したがいまして、協議がととのわない、あるいはまた、相手側からひとつ国鉄のほうで先に費用を負担しておいてくれ、後において支払おうというようなことが事実としてあり得るわけでありまして、私どもといたしましては、環境変化があり、道路がわきに来るということになれば、放置できませんので、自衛的にどうしても先にやらざるを得ない、こういうような状況があるわけでございます。
  108. 阿部憲一

    阿部憲一君 そういうようなことで、まあ原則的には、いま企画課長がおっしゃったように、鉄道との間の協定はできているということでございますけれども、やっぱり広いあっちこっちの問題としては、どちらかといえば、そのようなために事故防止に対する対策というものはおくれているんじゃないか、また、現在そのようなことから事故防止に対する意欲が減っている、そのような風潮も起こすんじゃないかと、こういうようなことを心配されますので、この辺については原則的だけじゃなくて個々の問題につきましても建設省が国鉄あるいはその他市町村ともきちんと処理していただいて、ことに新幹線についての事故というものの危険性を考えました上で御処置願いたいと、こう思うわけでございますが、なお、私、このほかに、新幹線の事故ということを考えた場合に、あまりにも過密化しているということ、過密化と申しましょうか、要するに非常に新幹線がひんぱんに走っているということですが、一体、いま、「ひかり」と「こだま」というのは一時間にどのくらいの割合で走っているのでしょうか。   〔理事瀬谷英行君退席、委員長着席〕
  109. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 一日のダイヤの中でも非常に違うわけでございますが、一番多い場合で一時間に約八本——約八本と申しますのは、八本までには至っていないという状態でございますが、一時間をまたいで多いところで見ますと約八本弱と、このぐらいなのが一番多いところでございます。
  110. 阿部憲一

    阿部憲一君 八本弱ということは、結局、何といいますか、それこそ八分に一本ぐらいのということですね。
  111. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 八本弱、一時間に八本弱ということでございます。ヘッドといたしましては、したがいまして、七分半ぐらいのところが一番多いということになります。
  112. 阿部憲一

    阿部憲一君 それほど非常にひんぱんに新幹線が出ているわけですけれども、これをさらにいまの需給の状況からふやそうというような計画があると、かように聞いておりますけれども、これについては、あれですか、現実にそのような御計画をお持ちですか、また、実質なさろうとしておるわけですか。
  113. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 御承知のように、新幹線はいままでのところ年々お客さんが増加してまいっておりまして、私どもといたしまして、ダイヤ上一体どの辺までどういうダイヤで、つまりお客さんの需要がどういう輸送形態で需要が起こるのであろうかというようなことを考えてみますと、今後ふえる場合にも、いまたとえば「こだま」四本に対して「ひかり」四本というような形の中でいけば、ふえ方としてもやはり東海道新幹線では「こだま」「ひかり」とも五本、五本というような形でのお客さんのふえ方がするのじゃなかろうかということで現実にダイヤでの勉強もいたしております。しかし、これだけがダイヤの勉強じゃございませんで、たとえばいま非常に輸送困難が大きいわけでありますが、こういった場合にはどこかでその困難を吸収するようなものをダイヤ上一日のうちに設定することがいいのか、あるいはまた一日じゅうずっとばらしてしまうのがいいのかというような問題もあるわけであります。確かに五本、五本のダイヤというものは勉強いたしておりますが、これを実施するという決心はまだいたしておりません。
  114. 阿部憲一

    阿部憲一君 いまの非常なダイヤの過密化のためにレールが非常にいたむとかいうことですけれども、それをかえるというお話を聞きますが、結局レールが損傷するということもそのようなダイヤの過密化から多くの原因があるのじゃないかと思いますが、いわゆるテルミットの損傷、これは、あれですか、結局、列車の通過回数に比例してやっぱり損傷するものですか、その辺いかがですか。
  115. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 原則的には、おっしゃるとおりだと思います。
  116. 阿部憲一

    阿部憲一君 そうすると、それがまたテルミットが結局折れる原因になると思いますけれども、これが折れた場合には修復するのに相当時間がかかるわけでしょうか。
  117. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) このテルミット溶接部の折損が非常に多いために、四十六年度にテルミット溶接部に対しまして全部当て金をいたしました。したがいまして、テルミット溶接部が折れたからすく線路が——若干の開口はいたしますけれども、直線、通りとして狂うというような状況にはなっておりません。したがいまして、この折れた現象が現地でまたはCTCの中央に異常現示としてあらわれた場合には、即座にそこに異常運転すなわち三十キロ徐行の徐行をかけます。これはテルミットの溶接部が折れましても継ぎ目と合っておりますから一般の継ぎ目部と同じような状況になるわけでありますから、決して危険な状態にはならないのでありますが、その後現地を調査いたしまして信号関係の手当て等も必要になりまして、そういうために現地にそれらの所要の材料並びに関係職員が参りましてからですと約十分ぐらいで一応の応急処理が完成いたします。ただ、場所によりまして、その現地に到着する時間が相当かかる場合には、その部分の三十キロ除行をしている時間が長くなるということで関係列車が多くなるということでありますが、その部分だけのそれに関係する電流を通している以上、大体一キロ半から三キロぐらいの間の徐行でございますから、全体としては数分のおくれということになりますけれども、これが各列車がそういう状態になるということであります。一応応急処置をいたしまして夜間に再溶接をする、こういうのが一つの形としてなっているわけでありますが、したがって、テルミット溶接部が折れたから非常に大きな混乱、たとえば三十分以上のおくれがすぐ出てくるというものではございません。大体において大きいので十五分ぐらいのおくれを出す場合が累積してありますけれども、そう大きくこれが直結するものではございません。
  118. 阿部憲一

    阿部憲一君 テルミットがそれほど列車の遅延に影響を及ぼさないような措置をとっておられるということはわかりましたが、このほかにいわゆる架線の故障だとかあるいはパンタグラフの故障というようなことがさらに大きな支障になると思います。ということは、結局、いまのような過密ダイヤを組んでいる限りにおきましては、ちょっとしたそのようなことが多数の列車を運休したりあるいは遅延さしたりする原因になりますので、そういうことになりますと、現在のダイヤ自体も相当考えにゃいかぬと思いますが、それを、さらに、先ほど私が申しましたように、何といいましょうか、いまの四、四ダイヤでなくて五、五ダイヤにしようというようなことは非常に現状を無視した暴挙だとすら思いますけれども、この辺いかがでしょうか、もう一度。
  119. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 列車の本数と申しますのは、まあ先生に申し上げるのはおかしな話でありますけれども、結局、設備がどういう設備になっているか。たとえて申しますと、現在の東海道新幹線で私どもが何か故障等によって輸送障害が起きた場合の一番頭にきますのは東京駅の問題であります。結局、東京駅で列車がふん詰まりになってくるという状態が一番起こりやすい状態であります。このために結局上り列車も通れない。したがって、下りがおくれていくということでだんだん障害が大きくなるという状況を呈しているわけであります。そういうふうな意味で、今回、大阪駅をホーム一線増設するというようなことになりますと、これが非常に大きな袋になるわけであります。それからまた、東京駅につきましても現在一線増設中の工事をやっております。これらの関連とのにらみ合わせ、それからまた、ある時間帯で一時間に十本だからといっても私は必ずしもその部分だけをもって過密と言うことは当たらないのじゃないか、何かあった場合には回復しないというような面からの考察をしなければいかぬじゃないかと思うわけでございます。したがって、列車本数の多いところ少ないところというような異常事態の回復余力というものがどこに設けられているのかということがダイヤ作成上の技術になろうかと思うわけであります。現在、そういう意味で、必ずしも現在のダイヤで満ぱいだという考え方もいたしておりませんし、それからまた、一挙に五、五ダイヤをこのまま実施していいのだという決心もいたせない状態でありますが、今回新幹線のそれらの諸問題をプロジェクト・チームをつくって勉強するために委員会を設置し、いま鋭意勉強中でございます。
  120. 阿部憲一

    阿部憲一君 結局、おっしゃることはわかりましたけれども、何といいましょうか、基本的な国鉄の経営者の姿勢として、安全第一、無事故というような姿勢よりも、いまの新幹線の問題じゃございませんが、営業本位的な姿勢のほうが目立つわけですけれども、それは私ども非常に残念なことで、むしろやはり営業本位というよりも、人命尊重あるいは安全運転というほうに重点を置きかえてくだすってはじめて国民の国鉄に対する期待にこたえることができると、このように思うわけですけれども、以上で御質問を終わりますけれども、一言その辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  121. 山岸勘六

    説明員(山岸勘六君) 安全よりも営業優先というような私どもの姿勢がお感じになられるということは、私どもにとりましてまことに残念でありますけれども、先生のおっしゃられる意味も非常によくわかりますし、そういうふうに先生方から姿勢が見られるということにはわれわれも反省すべき点もあるのであると、このように思われるわけであります。十分御趣旨を体しまして、安全第一主義の国鉄の姿勢を——これはもともとそうなんでありますし、いまの総裁も特にこの点を強調されているわけでありますが、私どもの補佐役としても十分な役目を果たしていない面からも先生方からそう言われるのじゃないかと思いますので、一そう総裁の趣旨を体しましてわれわれ補佐役として最善の努力をいたしてまいりたいと、このように思っております。
  122. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に太田淳夫君。
  123. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、私からは、午前午後にわたりまして海難事故につきまして瀬谷議員、阿部委員からの質問も行なわれましたので、それと多少重複するところもございますが、こまかい問題も出てくると思いますが、多少お聞きしておきたいと思います。時間もあまりございませんもので取り急ぎ行ないたいと思います。  先ほど、海上保安庁の長官のほうから、中ノ瀬航路の出入り口付近の規制につきまして多少お考えが述べられました。これにつきまして、中ノ瀬航路の出入り口付近を準航路として船舶の航行を規制するという計画海上保安庁は持っていた。しかし、あの付近の海域を漁場とする漁民のいろいろな反対のためにこの計画はつぶれたと、こういうようなことも伝えられておりますけれども、このいきさつについてちょっとお聞きしたいと思います。
  124. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 海上交通安全法の立法の段階で中ノ瀬航路の出口を準航路として規制する動きがあったかどうかという御質問でございますが、航路の出入り口に当たります海域につきましては、航路に出入する船舶航路に入る場合、または航路から出て目的地へ向かって変針する場合に、方向を整えるために必要な海域として航路の出入り口からほぼ千五百メートルを海上交通法第三十条一項第一号に基づく政令で航路周辺海域として定め、そこでは船舶交通の障害となるような工作物の設置、工事作業を規制いたしております。これは航行制限とはちょっと違いますが、そういう工作物の設置あるいは作業といったものを規制いたしております。中ノ瀬航路の出口につきましても、七号、八号ブイから北のほう千五百メートルの海域航路周辺海域として指定されております。このように、航路周辺海域については、速力制限など船舶の交通ルールについて特別な規制は行なっておりませんで、海上衝突予防法からの一般原則によることといたしております。この考え方は海上交通安全法制定の段階から一貫して変わっておらないわけでございます。
  125. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 海上交通安全法によってただいま規制はされていないというお話でございましたけれども、実際問題として今回の事故を考えてみますと、多少船体が出入り口から出ていたところで実は起こっているということでございますけれども、この「雄洋丸」はどの程度のスピードでこの出入り口に差しかかっていたのか、それはおわかりになってみえますか。
  126. 寺井久美

    説明員寺井久美君) まだ最終的にはっきりいたしておりませんが、現在のところ、十四ノット前後で走っていたというふうに考えられております。
  127. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、先ほどの調査報告によりますと、「後進全速としたが間に合わず」とありますけれども、十四ノットの速度で後進全速とした場合、それでも大体前方に向かって前進をしてしまうと思うのですね。大体何キロぐらい前進をするんでしょうか。
  128. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 大体二キロぐらいの惰性がついていると思います。
  129. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この中ノ瀬航路の出入り口付近につきましてスピードの規制はしないというお考えでございましたけれども、たとえばあそこの出入り口周辺につきましては、徐行速度を設けて規制をしていくとか、たとえば陸上の場合ですと黄信号になりますけれども海上の場合にはそういうことはございませんけれども、一応そういった規制というのは考えられないでしょうか。たとえばスピードを十四ノットから十あるいは五ぐらいに落として確認してそこを通過するとか、そういうことはどうでしょうか。
  130. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 御存じのように、あの中ノ瀬航路は非常に直線的な航路であるために、現在速度制限はいたしておりません。これはなぜそうかと申しますと、船舶の航行そのものは船長の判断によりましてその時点の海面の状態あるいは見通し等を勘案して最も適当な速度で走っておるわけでございまして、そういうことから、特にここでいままで速度制限というようなことを考えておりませんでした。ただ、先生御指摘のように、ゆっくり走ったほうが安全であるということでございますれば、やはりある程度のそういう速度制限というような問題も考えていいのではないかと思います。ただ、これはやはり実際に船を動かしております船長あるいはパイロット等の関係者の意見を十分徴した上で考えなければならない問題だと思います。
  131. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 わかりました。  それでは、大型タンカーの場合ですと、海上保安本部の場合、運航者から船の安全対策あるいは事故処理対策等を記載した安全確約書を提出させるということでございますけれども、先日、ある報道によりますと、その程度のことしか行なわれていない、具体的な安全対策等はないのじゃないかと、こういうようなことも報道されておりました。いろいろな法律による規制というものがありますけれども、実際はこういった事故が起こってくるわけでございますが、いままでの問題あるいは将来の問題としまして、もっと具体的な安全対策あるいは行政指導というのをどのようにお考えになってみえるか。
  132. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ただいまの先生御指摘の新聞報道でまあ確約書を出させておるがあまり実行されておらないというようなことでございますけれども、やや誤解があるのではないかと思われます。と申しますのは、大型タンカーが東京湾に入港するときには、関係者からその船に関します安全確約書というものを提出させております。この確約書は、海上交通安全法及び港則法に規定いたします安全対策の順守に加えまして、水先人の乗船、追い越しの制限、レーダーの使用、ボイルオフガスの放出禁止、あるいは港内におきます警戒船の常時配備といったように、具体的な安全策を講ずることを関係者に確約させておるものでございまして、当庁といたしましては、この確約書を事前に審査いたしますとともに、具体的に指導してその上で船舶の入港を認めております。したがって、また、入港時には完全にこれが履行されているかどうかというようなこともチェックをいたしております。で、具体的でないということはやや間違いではないかと思います。こうした点、具体的に安全対策として指導しておるわけでございます。  それから次の御質問の具体的に現在どういうことをやっておるのかということでございますが、東京湾におきましては、海上交通安全法によりまして航路におきます一方交通など特別のルールがございます。このルールを順守させるとともに、タンカーなどの巨大船につきましては、航路の通航予定時刻の変更、夜間航行の制限、消防施設を備えた進路警戒船を配備させるといったようなことを指示し、実際に行なわせております。特に危険物を満載いたしました超巨大船が東京湾に入港するような場合には、海上交通安全法の指示のほか、パイロットの乗船など、具体的な安全策を講ずることを先ほどの確約でございますが確約させて、これを実施さしております。また、液化ガスのような危険物を積んでまいりますタンカーにつきましても、港内に停泊しておる間でも消火能力を持った消防船を配置する、こういったことを現在行なっているわけでございます。
  133. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ここで聞きたいことは、先ほどからの各委員の話もありますけれども、日本の港湾というのは非常なラッシュ状態です。船舶の出入りも激しい状態ですけれども、そのために海上交通安全法案というのが採択されたわけでございますけれども、四十七年の五月の十一日の衆議院の交通安全対策特別委員会でこの海上交通安全法が採択されたわけでございますが、そのときに四党共同提出の附帯決議がつけられていた、このように思いますが、この附帯決議の最初に書いてあることは、   政府は、本法の施行にあたり、東京湾、瀬戸内海、伊勢湾等における船舶航行の現状が、すでにふくそうその極に達していることにかんがみ、海上交通安全対策施策を総合的に推進して、所期の目的を達成するよう遺憾なきを期するとともに、とくに左に掲げる措置を強力に推進すべきである。  一 外海の適地に中継基地を設けパイプライン網の整備を急ぐ等、船舶航行ふくそうの緩和をはかると共に将来長期的に巨大船舶の内海航行について、上限規制等歯止めの措置を講ずること。  と、このように附帯決議がつけられまして採択されていると思いますが、この第一項を忠実に守って行政指導を行なっていればこのような事故は未然に防ぐことはできたのじゃないか、このように思うわけですが、その点お考えはいかがですか。
  134. 竹内良夫

    説明員(竹内良夫君) 私のほうからお答えいたします。  今回の場合は、LPGの船があのような形になった、また、ナフサ等が火災の原因になっているようでございます。したがいまして、もし「パイプライン」云々というこの附帯決議をそのまま実行した場合にはどうであったかということになりますと、必ずしも防げていたかどうかという点につきましては、ちょっとすぐにお答えできないと思うのです。ただ、この附帯決議のような形でもしシーバースを外海に設けまして、それをパイプラインで湾内のほうに持っていくというようなことが実現しておりますと、少なくとも現有の船が相当それによってコントロールされます。そういう点につきましては非常にプラス面があったと思います。  それに付帯して申し上げますと、実はこの附帯決議によりまして私ども鋭意そのような方向で研究を進めております。たとえば、東京湾の入り口のところにシーバースを設けましてそこで大型タンカーを受け入れましてそこからパイプラインで各地に持っていく、あるいは大阪湾の入り口にそのようなものを設けましてそれをパイプライン化していくというようなことも鋭意研究しているわけでございますけれども、この計画に関しましては、地方公共団体の問題、あるいは漁業者の問題、その他それぞれの企業のほうの関係の問題、いろいろございまして、関係者との間になかなか意見の一致を見ないところがございます。しかしながら、私どもぜひこの線を進めていきたいということで昭和四十六年以来相当な費用を投入いたしまして技術的な調査を進めている最中でございます。
  135. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 海上交通安全法に対する附帯決議としてこれが採択されたわけでございますので、その実施について政府は責任をもって臨んでいただきたい、このことを強く要望いたしておきます。  次に、いまシーバースの問題も出ましたけれども、このシーバースを湾の入り口に建設するというお話がいまありました。これは極力進めていただかなければならない問題ですが、現在でもやはり東京湾、伊勢湾にしましても、狭い湾の中にシーバースの新設が行なわれている、そういう計画もあるように聞いておりますけれども、こういった狭い湾内におけるシーバースの新設というのは今後禁止するような方向に持っていけるでしょうか、どうでしょうか。
  136. 竹内良夫

    説明員(竹内良夫君) 港湾内におきましてシーバース等を建設するというときには、当然安全上の見地から十分これを検討することが必要であると思います。私ども、港湾の計画に当たりましては、現在におきましては地方港湾審議会——港湾管理者を中心といたしますその港湾港湾における港湾審議会において安全チェックをしていただく、それから中央におきましては運輸大臣の諮問機関である港湾審議会の意見を十分聞く、さらに、港湾管理者が港湾計画をつくる際におきましては、海上保安庁の意見、そのほか地元の水先案内人の意見、また海難防止協会等の意見を十分聞きながらこのシーバース等の設置を考えていく、こういうような体制で計画を進めているわけでございます。しかしながら、私思いますに、実はそのうしろの石油精製所であるとかございますね、そういうところが将来何万バーレルつくるということがきまりますと、これに対応するシーバースをつくらないとむしろあぶないわけでございます。したがいまして、私はこの精製所を込んでいるようなところにできるだけつくらせないというようなことのほうがむしろ大事ではないか、たとえば東京湾等におきましては、今後はできるだけそのような工場の立地を規制するような方向で持っていくというような規制をとらなければ、シーバースだけをコントロールしても危険は去らないのではないかというふうに考える次第でございます。
  137. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 時間がなくて先に進みますが、船舶局長もお見えになっております。先ほど阿部委員から、この事故につきましてタンカーの構造に欠陥があるのじゃないかと、こういう話もありました。先ほどお見えになりませんでしたので答弁をお聞きすることができませんでしたからこの際お聞きしたいと思いますが、たとえばタンカーにそういった衝突事故があった場合に、これは今回のLPGの場合ですが、ナフサに点火して大きな事故になりました。この場合に、タンカーそのものにいろいろ構造的に衝突に対して強い強度を持たせるというようなこと、あるいは自動的に化学消火剤が噴射して消火に当たられるとか、そういったような設備を取りつけることができるでしょうか、それをさせるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  138. 内田守

    説明員(内田守君) まず、今回の事故につきまして「第十雄洋丸」が構造的に問題があったかどうかという問題でございますけれども、これはこれから原因探求がいろいろな面で行なわれると思いますが、いまの段階では私は「第十雄洋丸」について特に構造上という面からの欠陥はなかったというふうに考えております。これはその配置それから諸設備がいわゆるこの種世界的にいろいろありますLPGタンカーとしては標準的な構造のものでございます。  それからそれはさておきまして、今後こういう船の衝突構造あるいは消防設備について改善の余地はないかということでございますけれども、まず原則的なことを申しますと、現在、構造の面も含め、特に消防設備等については、御承知のIMCOにおいていろいろ検討がなされているわけでございます、この種の船につきまして。これにつきましては私どもも積極的に参加していろいろ議論をやっておるのでございますけれども、予想といたしましては来年の秋ごろには採択されるだろうというふうに考えておりますけれども、その中身はそう飛躍的な形にはなかなかなり得ないわけでございます。これは、経済的な事情と申しますよりも、たかなか技術的にむずかしい面がございまして、そう飛躍的な形にはなり得ない。まあそれはさておきまして、現在のわれわれのほうの従来のやり方を含めまして、そういうものについて御説明いたしますと、タンカーというものは、LPGも含めまして、そういう大型化に伴いまして、従来からいろいろ特に消防設備について検討を進めてまいりました。で、すでに数回逐次その成果というのは法令なりそれから通達なりに取り入れておるわけでございます。ただ、船舶という非常に限定された構造のものでございますので、船舶自体の施設であらゆる火災に対応し得るというような消防設備というのは技術的にも非常に因難である。したがいまして、こういう船舶の火災に対応するものといたしましては、むしろ初期消火、初期の段階でこういうものを消火してしまうという対策に非常に重点が置かれておるわけであります。そういうことでございますけれども、それにもまして特にこういう危険物の船についてはそういう火災の発生を未然に防止するというのですか、むしろ事故が起こらぬような方向にいろいろな対策を立てるということが肝要だというふうに考えております。ただ、いろいろ開発要素がございますので、冒頭にも申しましたように、われわれといたしましては、特に消火剤とか、それからそういうようなものについて、これは世界ともそうなんでございますけれども、いろいろ開発を進めておる。今回の事故にかんがみまして、これは陸上のデータもいろいろとっておるわけでございますけれども、今後の開発というものについては一そう推進をはかっていきたいと、こういうふうに考えております。
  139. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、午前中からも問題になりました便宜置籍船の問題についてちょっとお聞きいたしますけれども、わが国に入港してまいります外国船のほとんどが便宜置籍船だといわれておりますし、これはいろいろな経済的な問題、税法上の問題、そういったものがあって便宜置籍船を利用していく、日本の船舶だけではとても足りない、こういうお話でございました。そのとおりだと思いますけれども、この便宜置籍船の場合に、その船員の方々がやはり基礎的なそういった航海法規というものを知らない者が多いということが問題点としてよくあげられているわけでございますが、この点について、特に、国籍が違いますけれども、立ち入り検査を行なうことができるのかどうか、あるいは、狭いこういった日本の湾内に入ってくるような場合には、強制的に、まあ強制的にと言ってはなんですが、水先案内を制度化すべきじゃないか、このように考えますけれども、その点どうでしょうか。
  140. 山上孝史

    説明員(山上孝史君) 便宜置籍船は外国船でありますので、わが国の船員法、すなわち船員の保護をはかることを目的とする船員法、これの適用はありません。それから船舶職員法、これは船舶職員の配乗について規制する法律でありますが、これも適用がありません。ということで、便宜置籍船の船員の実態につきましてはさだかでございません。  それからあとの御質問の水先の強制の問題でありますが、この浦賀水道につきましては現在水先法に基づく強制の水先区にはなっておりません。しかし、四十五年以来、浦賀水道通峡船舶の安全確保についてということで、海上保安庁から、外国船につきましては極力水先をとるようにという行政指導をしてまいっております。しかし、法律的には強制水先区になっておりませんので、日本船舶外国船舶も強制の対象になっておりません。
  141. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それを、日本に入ってくる場合には、先ほどお話がありましたように、安全確認書を出すわけですから、そのときにきちんとパイロットを乗せるように強烈な行政指導を行なっていくことはできないでしょうかどうでしょうか。大体入ってくるのはわかるわけでしょう。
  142. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 先ほどの確認書と申しますのは、非常に大きい超大型タンカーについて始めております。すべての外船についてこれをやっておるわけではございませんで、その辺全般的に強制できるかどうかについてはかなり問題がございます。  パイロットの乗船につきましては、私どものほうもいろいろ行政指導をいたしておりますが、なかなか全部の船がとるという状態に至っておらないわけでございます。この辺は、今後、今回の事故にもかんがみまして、さらに検討さしていただきたいと思います。
  143. 山上孝史

    説明員(山上孝史君) 強制水先区につきまして、たとえば浦賀水道を対象にするかどうか、その他の問題につきましては、ことしの四月に運輸大臣の諮問機関であります海上安全船員教育審議会に諮問をいたしまして目下その審議会の審議をお願いしております。したがいまして、この浦賀水道の問題につきましてもその一環として御検討をお願いしているという段階でございます。
  144. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 わかりました。  時間もあれですので、最後に長官にちょっとお聞きしたいのですが、現在富津沖で「第十雄洋丸」は炎上中でございますが、これを他の場所へ曳航することと、航海中受けた漁民の損害を補償するように千葉県の副知事と県漁連代表から陳情を受けましたでしょうか。
  145. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 漁民の漁獲に影響を与えないように努力をしてもらいたいということと、それからこの船をほかに動かすことはできないであろうかというお話は受けました。
  146. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その点については午前中にお話しありましたので一応了解をいたしておりますが、現在まだ炎上中です。昼間も御説明を聞きましたように、あとタンクが何ヵ所か残っているわけですが、これは圧力がかかって爆発するおそれはないというお話もありましたけれども、もしも第四タンクですかが爆発した場合には、燃料タンクが破れて相当な重油に引火していくのじゃないか、あるいは重油が流れ出すのじゃないか、こういうおそれを漁民の方は持っているようでございますけれども、その点についての対策はどうなっていますか。
  147. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 私どもも、その重油が流れ出ることについて非常に心配いたしております。したがいまして、海上保安庁が中心になりまして、民間団体も含めて、重油が流れた場合の防災対策ということでオイルフェンスその他油処理剤等の準備をいたしまして、いつでも出動できるような体制に現在なっております。しかし、けさほど御説明申し上げましたように、現在の燃え方の状態では早急にタンク爆発するということは考えられないだろうというのが専門家の意見でございます。至急にまあ何とか処理をしたいというふうに思います。
  148. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、このような事故が二度と起きないことを当然私たちは望むわけでございますけれども、ここで、この事故のためにたくさんの人命が損傷されました。なくなった方もおみえになります。どうか今後この日本の狭い湾口をかかえた特殊事情を考慮されまして万全な安全対策を講ぜられることを要望しまして、質問を終わらしていただきます。
  149. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 太田君の質疑は終了したものと認めます。  次に安武洋子君。
  150. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、きょうこの交通特別委員会に運輸大臣の御出席をお願いしました。そして、御出席していただけませんでした。理由は、きょう各部局の事務内容の説明をお受けになる、こういうことでしたけれども、私はこれは理由にならないと思います。それは江藤大臣は運輸問題のベテランでいらっしゃる。もしベテランでいらっしゃらないにしても、何をおいても国会に出席なさる義務があると思います。人心を一新するという今度の新内閣の大臣が、国会よりも部局の説明をお受けになる、このことを優先されるというのは、私は国会軽視のあらわれではないかと思います。ですから、このような態度、これは正しくない。ですから、私は、このことに厳重に抗議をして、質問に移らせていただきたいと思います。  けさから「第十雄洋丸」と「パシフィック・アリス号」の衝突事件がたいへんに問題になっているわけです。この事故といいますのは、指定航路内に適用される海上交通安全法第三条、それと航路外に適用されます海上衝突予防法第十九条、この矛盾が一つの原因になって引き起こした事故ではないかと思うわけです。指定航路を出たとたんに海上衝突予防法が適用されるわけですけれども、指定航路航行中にもし右側から横切る船を見つけた場合に、いついかなる状態でも回避準備ができるものかどうかということをお伺いしたい、それが一点です。  そして、お互いにこういう場合には自分のほうに優先権がある、こういうふうに誤認する場合もあるわけです。これで事故が起こるという場合があります。今度のような海上交通安全法とそれから海上衝突予防法、この矛盾が生ずる航路の出入り口付近、この安全について具体的な対策は早急に立てるべきではないかと思います。そして海上交通安全法の第三条、この検討も必要ではないかと思いますけれども、この御見解をお伺いいたしとうございます。
  151. 寺井久美

    説明員寺井久美君) まず、海上交通安全法の適用されている航路筋を横切る船が右側から出てきた場合に回避できるかという御質問でございます。中ノ瀬航路について申し上げますと、水深の関係で大きな船は回避行動を行なうことが非常に制限されます。したがいまして、中ノ瀬航路を航行中の大型船舶に優先権を与えまして、横断船がこれにぶつからないように規制しているわけでございます。  それから出入り口付近について早急に具体策を講ずるべきではないかという御意見は、まことにごもっともと存じます。航路を出てすぐ海上衝突予防法に基づきます右側優先の原則が働いてまいりますので、これに対応する余裕を与える必要があるということでございます。ただ、視界が十分でありますれば、右側から航路前方を、航路内ではなくて航路外の前方を横切る可能性のある船が近づいたときには、減速してこれを避けるという準備をする義務が当然航路通行の船にあるわけでございますが、今回の事故が起こったことでもございますし、やはりその先に何らかの指導を行なう必要がある。そういうことで、中ノ瀬の場合は、一キロ離れて横切り船は迂回するようにということを指導いたしておりまして、これが現実に守られなかった可能性があるわけでございます。したがいまして、当面、私どもは、さらに航路の出口付近で船舶相互で危険な見合い関係が生じないような航行を行なうように指導を強化いたしたいと考えておりますし、また、警戒船をもう少し十分に活用いたしましてこうした衝突を未然に予防したいということを考えております。
  152. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、そのエスコートシップの問題についてお伺いいたしますけれども、エスコートシップをつけるということはどのようにきめられているのでしょうか。エスコートシップのまあ機能ですね、無線機を積んでいなければいけないとかと、そういう規定があるのかどうかということをお伺いしたいですし、また、本船との距離はどのように定められているか、そういう規定があったら聞かせていただきとうございます。
  153. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 航路警戒船は、海上交通安全法に基づきます管制上の指示ということでつけることになっております。先生ただいま御質問のどのぐらいの距離を離れて走るかというような点につきましては、現在具体的な規定がございません。それから設備といたしましては、消防能力を必ず持っているということのみでございまして、通信連絡等の通信施設についてある種のものを必ず持っていなければいけないという規定にはなっておりません。したがいまして、私どもは、やはりこういった通信連絡に必要な施設を持ち、十分に事前警戒ができるような指導を今後行なっていかなければならないというふうに考えております。
  154. 安武洋子

    ○安武洋子君 至急にやはりいまの距離とかそれから機能とかという点で規定をつくっていただいて指導をお願いしとうございます。  今度のあの事故は、先ほど申し上げたように、海上交通安全法の第三条二項、それから具体的には第十二条ですれども、それに見られるように、タンカーのような危険な船も含めた巨大船を過密な航路や港湾に自由に出入りを許しているという巨大船優先、この姿勢を当局がとっておられるところに私は問題があろうかと思います。ですから、巨大船優先の考え方を改めていただきまして、巨大船とか危険物積載船の過密航路への航行を厳重に規制していただくということが事故をなくする何よりのもとだと思いますので、ぜひこの点をやっていただきたいということを申し入れさせていただきます。  それとともに、私は、タンカーとともに海のもう一つの危険物といわれておりますカーフェリーの問題についてお伺いしたいと思います。  昨年の五月の十九日に「せとうち」の事故が起こっておりますけれども、この事故の際にカーフェリー安全対策がたいへん問題になりまして、去年の七月の十一日に衆議院の交通特別委員会で私どもの平田委員質問いたしております。この質問に対しまして、カーフェリーの運行ダイヤについて見直し検討を行ないつつある、こういうふうな御答弁をなさっていらっしゃいます。で、「せとうち」の事故以後、カーフェリー安全対策についてどのように対策を講じられたか、特に過密ダイヤの見直しについてはどうなっているのかということを簡潔にお答え願いとうございます。
  155. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いまお話しのカーフェリー事故が昨年の五月にございました。そこで、私どもは、その後、発航前の点検の厳格な励行、運航管理体制の強化、安全教育の徹底、操練の励行、旅客船に対する避難要領の周知徹底、機関の点検整備について具体的に指示をいたしました。それから八月には、総合的な対策として、これは第一次の安全対策というのはすでにやっておりましたが、第二次の安全対策として、構造設備の改善、フェリーターミナル施設の安全確保、運航管理体制の強化、乗組員の乗務体制の強化、海上交通関係法令の指導強化、立ち入り検査等の監督体制の強化等の安全対策を推進しております。  なお、監督体制の強化のために、地方の海運局に運航管理官七名、船舶検査官六名、船員労務官五名、合計十八名、本省に運航管理官一名の増員を行ないました。  運航ダイヤの再検討というお話がございましたが、運航ダイヤの再検討については、ことしの一月から五月にかけて全カーフェリー航路について再チェックを実施いたしまして、船舶の性能、乗下船の作業、機関の整備、操練の実施等の時間、あるいはダイヤがおくれた場合の調整余裕、いろいろな要素を検討した結果、十四航路について余裕のあるダイヤとしてこれを改善させることにいたしました。
  156. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま対策をお答えいただいたわけですけれども、「せとうち」以後やはりフェリー事故は続発しているわけです。カーフェリー事故の原因といいますのは、世界でも有数の船舶がふくそうする海域、この過密な運航、こういう基本的な問題を無視しまして、岸壁の整備の整わないのに運航を強行する業界、それと無秩序に航路の認可を与える運輸省、こういう姿勢に最大の原因があると思うわけですけれども、「せとうち」以後フェリー事故が起こっております。この発生件数、それから内容、これをお知らせ願いたいと思うのです。これも簡潔にお願いいたします。
  157. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 四十八年に起きました全国のカーフェリー事故は十九件でございます。そのうち、瀬戸内関係が十二件ございます。四十七年は全国が十二件、瀬戸内が七件、四十六年は全国で十一件、瀬戸内が七件というふうになっております。  その事故の内容でございますが、まず、衝突関係が四十八年は七件、四十七年が五件、四十六年が四件、乗り上げ関係は四十八年はございませんで、四十七年は二件、四十六年が一件、それから機関の故障が四十八年が四件、四十七年が二件、四十六年が二件、火災が四十八年二件、四十七年一件、四十六年二件というふうになっております。この海難の数と申しますのは、私どもは要救助海難ということで集計いたしております。したがって、他の統計とやや数字が違うことがあるかもしれません。申し添えておきます。
  158. 安武洋子

    ○安武洋子君 要救助海難の件数としては合っておりますけれども、それ以外にもたくさん小さな事故が起こっておりますね。まあ事故はなくなっていないわけです。一番事故の危険をはらんでいるといわれる具体的な東神戸のフェリー埠頭、神戸−高松カーフェリーの現状について私はお伺いしたいと思います。  まず、東神戸にカーフェリー埠頭がありますけれども、これは神戸の東部の海岸埋め立てをやりまして、第三港区と第四港区の間を通ってカーフェリーが出入りをしているわけです。この水路の幅は一体何メートルあるのかということ。両岸には企業が並んでおりますけれども、この企業の並んでいる両岸にも船が停泊するわけです。このために水路がどれほど狭まるのか。実際にカーフェリーなどの船舶が航行する可能な水路幅は何メートルぐらいになるのか、この点についてお伺いいたしとうございます。
  159. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 先生御指摘のフェリー埠頭でございますが、水路の幅は五百メートルございます。で、両側百メートルずつを両岸に係留する船舶の操船水域といたしておりますので、フェリーが通行するいわゆる水路と申しますのは三百メートルということになります。
  160. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、その三百メートルの水路幅でフェリーの行き違いができますのでしょうか。
  161. 寺井久美

    説明員寺井久美君) これは行き違いができるということになっております。
  162. 安武洋子

    ○安武洋子君 行き違いができるとおっしゃいましたのですか。
  163. 寺井久美

    説明員寺井久美君) はい。
  164. 安武洋子

    ○安武洋子君 ここに使われている船のトン数というのは二千トンから三千トンぐらいの船なんですが、行き違いができましょうか。
  165. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 船の行き違いのできる幅と申しますのは、大体、船の長さの二分の一あれば行き違いができるということになっております。そこで、小さなフェリーは当然できるわけでございますが、ここに出入りいたしておりますフェリーの中で大きいものもございます。したがいまして、総トン数五千トン以上の船舶——大体五千トンで約百二十メーターの船長がございます——については行き違わないように航行管制実施して安全をはかっております。
  166. 安武洋子

    ○安武洋子君 この水路は船舶が非常にたくさん通っているわけですけれども、定期・不定期合わせて往復で通常一日にどれぐらい通るか。特に一日のうちに最も頻度の高い時間帯、これは何分間に一隻ぐらい通るかということをお答えいただきとうございます。
  167. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 本年の八月の調査によりますと、一日平均の通行船舶は二百八十九隻になっております。この内訳を申し上げますと、五百トン未満の船が百七十四隻、五百トンから五千トンまでの船が百二隻、五千トン以上の船が十三隻ということになっております。
  168. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっと待ってください。いまお答えが抜けました。一日のうちで最も頻度の高い時間帯というのは何分間に一隻ぐらい通るかということをお尋ねしたのですが、そのお答えをいただいておりません。
  169. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 一番多い時間帯は何時ごろかということでございますが、十二時から一時まで、それから午後の八時から九時までの間が特にフェリーの多い時間帯でございまして、この間隔は大体五分ないし十分間隔でございます。
  170. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま水路の出入り口に航行管制をされておりますですね。この航行待ち、いわゆる沖待ちということが起こっておりますのですけれども、これでダイヤのおくれが非常に出ていると聞いております。月のうちにどれぐらい航行待ちがあるのか、把握なさっておられますでしょうか。
  171. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ただいま御質問の具体的な件数というのは承知いたしておりませんけれども、運航上あまり大きな支障はないというふうに理解しております。
  172. 安武洋子

    ○安武洋子君 航行待ちが全然ないというふうに把握なさっていらっしゃいますか、あるということはお認めになりますか。
  173. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 航行待ちは当然ある時期にあると思います。しかし、それで全体の運航が阻害されるような待ち時間というようなケースは非常に少ないというふうに理解しております。
  174. 安武洋子

    ○安武洋子君 少し私と認識が違うわけですけれども、しかし、航行待ちということは、これは正常な状態でないわけです。やはりそこは過密であるという証明になると思うのですね。これは一つ間違えばたいへんな大きな事故につながるという危険性をはらんでいると思うのですけれども、私はこの航行待ちということが起こるということは過密の証明だと思います。そのことについてはどうでしょう。
  175. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 航行待ちが即過密であるという御意見でございますが、非常に過密になれば航行待ちが生ずることは当然でございます。しかしながら、このフェリー埠頭近辺に出入りいたしますのはフェリーのみでございませんし、小型船舶が非常に多いことは先ほどの件数で御了解いただけると思いますが、こういった船舶おりまして航行の安全をはかるためにフェリーをとめたほうがいいという場合が何がしかあるわけでございます。したがいまして、これが非常に過密であるというふうに直ちに理解するわけにはいかないのではないかと思います。
  176. 安武洋子

    ○安武洋子君 私か発着時刻表で調べますと、六時から十三時までの五時間にフェリーだけで四十回の出入りがあるわけです。ですから、一時間に八回通ることになります。だから、七分か八分にフェリーだけで一回通るというふうになるわけなんですけれども、これでも過密じゃないでしょうか。これは普通の状態なんでしょうか。私が聞くところによりますと、通常、一つの船が通る、次の船が通るまでには大体十五分間ぐらい置くのが普通だと聞いておりますけれども、いかがなんでしょう。
  177. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 水路を通る船舶の関隔が何分が限度であるということにつきましては、水路の幅なり航行船舶の大きさなりによって一がいには言えないことではないかと思います。ただ、ただいま先生御指摘になっております神戸のフェリー埠頭の場合、この水路の関係ではやはりもう現在よりも多く船を入れることが好ましくないというのが現場の判断であるようでございます。
  178. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、もう具体的にお伺いします。神戸の東埠頭から発着する最もフェリーの多いのが高松航路なんですけれども、現在一日に何社で何隻で何便出ているか、こういうことを聞きとうございます。
  179. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 神戸と高松の間には四社六隻のカーフェリーが就航しておりまして、各船ともに一日二・五往復、全体で十五往復でございます。
  180. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま何とおっしゃいました、各社とも二・五……。
  181. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 一日二・五往復六隻でございますので、全体で十五往復でございます。
  182. 安武洋子

    ○安武洋子君 この航路のダイヤのおくれが非常に目立っているわけです。九月中に二十分以上のおくれを出している便数はどれくらいか、このことをお調べでございましょうか。
  183. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 本年一月の数字によりますと、入港回数が全体で九百十三回でございますが、そのうち、予定時間内に発着したものが三百七十五回で三〇・九%、十分以内の遅延が百七十二回で一八・八%、二十分以内の遅延が二百二十回で、二四・一%、三十分以内の遅延が百六十八回で二〇・六%、三十分をこえる遅延が五十一回で五・六%でございます。
  184. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、そういうダイヤのおくれの原因をどのようにお考えでございましょうか。
  185. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 私どももこのダイヤの遅延の原因についてはよく調査をしてみたいと思っております。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 調査をしてみたいって、これだけのおくれを出しておりますのにまだ御調査をなさったことはございませんのですか。
  187. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いろいろな事情があると思いますので、一度現地とよく連絡をして正確に原因を探求したいと思っております。
  188. 安武洋子

    ○安武洋子君 それじゃ全くお話にならないわけで、こういうカーフェリーの運航状態について責任をお持ちの当局としては私はたいへん無責任なお答えだと思います。そういうことでありながら、先ほどの水路については過密でないと、こういうふうなことをおっしゃいますけれども、なぜ過密でないんでしょう。先ほど浦賀の問題についても、浦賀で幅が千四百メーターで七百メートルずつの対面コースだと、中ノ瀬は七百メートルで一方通行、いろいろな状態がありましょうけれども、ここはわずか三百メートル、こういうところで沖待ちも起こっている。そして、先ほど言いましたように、七分なり八分なりの間隔でフェリーだけでもが出入りしていると、こういう状態を過密とお認めにならない。しかもダイヤのおくれを大幅に出している。そのことも御検討ないということはどういうことなんでしょう。
  189. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いまお話しのように、入港する水路が狭くて航行待ちによっているという原因もありましょうし、また、途中の天然現象によることもありましょうし、また、船の性能による点もございましょうし、いろいろな原因が考えられますので、推測ではいけませんので、一度正確に私どもの調査をさせていただいてお答えしたいということでございます。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、その調査は何日までにしていただけますか。
  191. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) できるだけ早くさしていただきたいと思います。
  192. 安武洋子

    ○安武洋子君 できるだけ早くというのはあまりにも抽象的でわかりかねますので、日にちを切ってくださいませんか。
  193. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) その原因にもよりますと思いますので、現地とよくお打ち合わせをして、できるだけ早くということでお認め願いたいと思います。
  194. 安武洋子

    ○安武洋子君 たいへん無責任ですけど、押し問答してもしかたがないので次に移らせていただきますけれども、神戸−高松間の航海距離は何キロで、フェリーの航行時間は何時間でしょうか。
  195. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 百二十キロで、航行時間は現在のところ四時間十分でございます。
  196. 安武洋子

    ○安武洋子君 そうしますと、六隻で十五便と先ほどお答えいただきましたので、その計算をいたしますと、一隻で二往復半、こういうことになりますね。ですと、これは二十時間以上航行していると、こういうことになるわけなんですけれども、バースの停泊時間は一回で何分ぐらいなんでしょうか。
  197. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 大体バースに三十分から四十分停泊しております。
  198. 安武洋子

    ○安武洋子君 先ほども申し上げましたように、実際には非常にダイヤのおくれがあるわけですね、おたくもこれをお認めになっていらっしゃいます。このダイヤのおくれを取り戻すために時間をもっと切り詰められているという現状なんですが、その三十分から四十分間の間に、車を積み込んだり、車どめをしたり、それから乗客も乗せたり、一方では先ほど言われましたおたくが指導なさったという発航点検、これをするわけなんですけれども、こういう時間で三十分を切るわけですけれども、十分でございましょうか。
  199. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) できるだけ能率をあげてこの時間帯にいろいろな必要な処置をさせるということでございます。
  200. 安武洋子

    ○安武洋子君 おたくは行管から勧告をされておりますね。私、資料を持っておりますけれども、こういう短時間ではなかなかできないと思うのですね。ですから、行政管理庁から、車どめをしていない車も見られる、しかも平穏なときだけでなくて荒天の際にも車どめを使用していないものも見受けられるけれども、こういうものについては十分に指導するようにということで勧告も出ているわけです。なかなかこういう短い時間で車どめをするとか乗客の安全を確保するということはできないのじゃないですか。
  201. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 作業基準の中でも車どめの励行ということは私どもも安全上必要なことだということでやらしております。どれだけの時間が十分に必要かということはございましょうけれども、私どもはこの時間内に励行させて安全な運航をさせたいと思っております。
  202. 安武洋子

    ○安武洋子君 思っておられるのはけっこうなんですけれども、現にしていないという行管のこの監察結果に基づく勧告が出ているわけなんですね。そして、こういう勧告が出ているのにかかわらず、いまもそういう状態があるということなんですけれども、おたくのほうはこの行管の勧告を無視されるわけですか、こういう短いバース時間しかないということで。
  203. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 行管の勧告は十分守っていきたい、もし現場でそういうことが行なわれていないのだったら厳重に取り締まっていきたいと思います。
  204. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、そういうことにいたしまして次に移りますけれども、先ほどのように船は大かた走りっぱなしということになるわけです。じゃ、時間をかけた点検修理というのは一体いつの時間に行なわれるのでしょうか。
  205. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) この停泊時間の中でできるだけ日常の点検を実施させます。それから月間に一回、あるいは二十日に一回というものを整備点検日といたしまして、そのときは一往復休航するということで徹底的な整備実施させる。それから年一回の法定の検査を実施させると同時に、六ヵ月に一回速力の低下を防止するために底洗いを実施させております。
  206. 安武洋子

    ○安武洋子君 一ヵ月に一回休航しておりますか。おたくの資料はそういうふうになっておりますか、私の資料では全然そういうふうになっておりませんけれども。
  207. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 私どもの調査では、月間に一回、一往復休航するということになっております。
  208. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういう調査結果がおたくのお手元にありますか。
  209. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 各社違いますが、月間に一回、二十日に一回、それから四十日に一回、それから休航日がありませんけれども毎月一日と十五日を点検日として航海中及び停泊中に重点的に実施するという、それぞれの各社のやり方が私どもに参っております。
  210. 安武洋子

    ○安武洋子君 航海中それから停泊中といいましたら、先ほどのあの短いバース時間と走っているときに点検をするというだけで、一定の時間をとって点検をするということではないということですか。
  211. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 現状ではそうなっておりますので、私どもはこの点は一度調査をいたしまして必要があれば休航ということで整備をさせるということにしたいと思っております。
  212. 安武洋子

    ○安武洋子君 先ほどのお答えではまるで休航しているようでしたけれども、実際にはちゃんとこういう点を調べて責任をもってお答え願いたいと思います。結局、あまり何もなさっていないということですので、運航監理官の問題についてお伺いいたします。  運航監理官といいますのは、先ほど安全対策として設けられたとおっしゃいましたけれども、どういうお仕事をするのでしょうか。
  213. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 運航管理規程の基準に基づいていろいろこまかい仕事がございますが、運航管理規程を定めさせるとか、あるいは運航計画をつくらせる、それに対する安全性を確認するとか、その他安全運航上旅客が順守すべき事項の周知をいたしましたり、海難の処理に当たる等いろいろな仕事がございます。
  214. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは海運局長さんがお出しになった「運航監理官の新設に伴う事務処理について」という文書です。この中を拝見しますと、もう実に膨大な仕事があがっておりまして、いまお答えになりましたのはほんとうの概要だけなんですね。ここに読み上げておりましたら時間がないので全部は申し上げませんけれども、先ほどおっしゃったようなこととともに、旅客船及び事業所の立ち入り監査それから指導、この監査の中には長距離航路では年に一回その他については二年間に一回の割合で乗船監査をするとか、旅客の安全確認に関する監督で旅客船の事故の原因調査及び事故の記録統計をとるとか、それから運航開始前の安全確認検査の実施とか、実にたくさんのことをしなければならないということになっておりますね。これは間違いございませんですね。——じゃ、お伺いいたしますけれども、一体この運航監理官というのは神戸には何人配置なさっていらっしゃいますのでしょうか。
  215. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いま先生お話しのように、大事な仕事をたくさんかかえて実はやらしております。従来地方海運局の輸送課というところでこういう仕事をさしておりましたのですが、安全面が非常に大事であるということで、私ども、ことし四十九年度からこういう運航監理官を置くということで、実は全国的に七名、各局に一人ずつ配置をいたしました。なお、こんなことでは不十分だというおしかりを受けると思いますけれども、なかなか役所の定員増員ということがむずかしい時節でもございますので、私どもはその運航監理官に従来その仕事をしていた輸送課の課員を運航監理官付で発令するという便宜の措置をとりましてこの仕事を重点的にやらせるということにしております。  なお、七名と申しましたのは、全国で十地方局がございますが、そのうちで北海道と東北と新潟とが実は欠けております。そこで来年度の予算要求にこの三局にも運航監理官が置けるようにということを予算要求をしております。また、現在置いております七局については、運航監理官のほかに各一名ずつの増員を要求中でございますが、なかなか役所の定員というものが窮屈なおりでございますので、この増員要求の達成については私どもも特に重点的に努力を今後とも続けていくつもりでございます。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 この実に膨大なお仕事ということはお認めになったわけですけれども、いま伺えば一名しかいないと。それで便宜的に発令をしたとおっしゃいましたけれども、その人数をお伺いいたしておりません。それをお伺いいたしとうございます。で、いま増員一名要求中だと。二名でこんなお仕事がおできになるとお考えでしょうか。
  217. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 私も十分でないということを考えておりますけれども、地方の海運局の中のやりくりによって必要な仕事はしていかなければなりませんので、来年度一名ずつの増員要求ということで、内部的にはいろいろ人のやりくりをして大事な仕事をやっていかなければいかぬということでございますが、なかなか地方の海運局でも逆にこの仕事に応援するといいましても遊んでいる職員があるわけでございませんので、非常に窮屈な定員関係にあるということは御了承を得たいと思うのでございます。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 お答えが抜けております。便宜的にこの仕事に対して発令をしたという人数をおっしゃいませんでしたけれども。
  219. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 調べてお答をさせていただきたいと思います。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 何もお調べにならないでお答えになるくせがおありかと思いますけれども、ほんとうにいるんですか。先ほども休航もしていないのに休航させているというふうに不確認なお答えばかりで、たいへん信用できかねます。
  221. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 正確なお答えを申し上げないといけませんので調べさしていただきたいということでございます。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 二名でできるお仕事でないということはお認めだろうと思う。まして、いま一名なんですね。ですから、運航監理官を安全対策のために置きましたということですけれども、これは安全対策になっていない。しかも、この内容を見ましたら、どれもゆるがせにできない問題ばかりなんですね。ですから、こういう点についてももっと真剣に考えていただかなければならないと思うのです。いままでのお答えからいいましても、安全対策をやりましたとおっしゃいますけれども、作業基準それから運航基準が定められておりますけれども、いま私が具体的に申し上げました高松航路について見ても、これは安全基準、作業基準を守ることのできないダイヤだと思うのです。これはお認めになると思うのですけれども、いかがですか。
  223. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 作業基準、安全基準を定めてそれをできるだけ守らせるということでございますので、いまのダイヤが全く作業基準、安全基準を守れないダイヤであるということには私どもは考えておりません。
  224. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、全く守れないなんて申し上げておりませんけれども、守ることができないというふうなダイヤでないでしょうか。現に、バース時間の問題にしても、それから船は走りっぱなしと。先ほどおっしゃったように休航もしていないわけですね。ですから、安全点検もできていない。しかも、ダイヤのおくれは出ている、沖待ちもあると、これだけの具体的な事例をあげております。これでもダイヤが過密でない、無理な航行でないとおっしゃるんでしょうか。
  225. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 先ほど申し上げましたように、各社で違いますけれども、二十日とか、一月に一回とか、四十日に一回とか、ある社は実は休航日はなくて一日、十五日を重点的な点検日としてやっているということでございまして、これは守られていると思います。で、先生お尋ねでございますから、もう一度確かめさせていただきたいということを申し上げたわけであります。  それからいろいろな点がございますけれども、私どもはもう全く——全くと申し上げたらまたしかられますけれども、作業基準、安全基準が守られないダイヤであるとは思っておらない。しかし、遅延の原因がどこにあるかということをよく調べさしていただきたいということを先ほどからお願いをしているわけでございます。
  226. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、お伺いしますけれども、現在のあそこの高松航路フェリーの利用率ですね、一体どれぐらいになっていましょうか。
  227. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 四十九年一月で、平均利用率は、旅客につきましては、関西汽船が二一%、加藤汽船が一七%、日本通運が二〇%、四国フェリーが二〇%、それから車両の積載につきましては、関西汽船が四六%、加藤汽船が四五%、日本通運が六八%、四国フェリーが四六%でございます。これは一日平均でございますので、便によってはかなり乗っているという事情がございます。
  228. 安武洋子

    ○安武洋子君 車を積んだ場合でも利用率は半分に満たないわけですね。ですから、この過密ダイヤの緩和を見直すということはできるのじゃないでしょうか。
  229. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 私、一日じゅう平均と申し上げたのはその意味で申し上げましたので、これは便によっては時間帯によってたいへんふくそうするというようなことがございまして、一日じゅう走っている船の平均がかりに日本通運の車両の部につきましては六八%でございますが、これは平均が六八%と申しますと、便によってはかなりふくそうしているということでございます。私ども、安全が一番大事でございます。また、しかし、片一方では輸送力の充足ということも大事でございますので、この数字で五〇%以下であるからまるでがらがらであるので一日二・五便を減便することは簡単ではないかということは少し違うと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  230. 安武洋子

    ○安武洋子君 平均で半分に満たないということは、なるほどたいへんふくそうしているときもある、しかし、その反面たいへんすいているときもあると、こういうことにもなろうかと思うのです。減便ということだけでなくて、全面的なダイヤの見直しというものはできないものかどうか、検討する余地はないものかどうかということでお伺いいたします。
  231. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) いま申し上げましたように、便によってかなりでこぼこがあろうかと思いますが、それかといって、かりに二・五便を二便に減らすということで、いいふくそうしている時間帯だけに増便をするということになりますと、またその時間帯のふくそう度がたいへんなことになりまして、いまではもうすでに先ほどからも御指摘がございますようにかなりそのカーフェリーのターミナルをバースを利用いたしましてこのダイヤを編成しているということでございますから、ひまなときはやめて忙しい時間帯に集中するということもできません。それから現状二・五便でかなり便によっては並んで積み残しがあるということも聞いておりますので、繰り返すようですが、安全は第一でございますが、輸送力の充足ということについても十分考えていかなければならぬのじゃないかと思っております。
  232. 安武洋子

    ○安武洋子君 この高松航路といいますのは、明石海峡を通過しますね。明石海峡といいますのは、浦賀水道どころの騒ぎでなくて、日本で一番船の過密地帯で、こういうところも通り抜けると。そして、先ほど申し上げたような出入り口の狭さと過密という問題があるわけなんです。ですから、私の資料では欠便が出ております、ダイヤのおくれで。おたくのほうの資料ではこの欠便というのは出ておりませんでしょうか。どうしてもダイヤのおくれが欠便を生み出すというふうなことになっておりまして、私どもの資料では欠便ということなんです。いかがでしょう。
  233. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 手元に持っておりませんので、よく調べさせていただきたいと思います。
  234. 安武洋子

    ○安武洋子君 沖待ち、欠便、こういうものが起こっている。しかも、それでもなおどうして過密だということをお認めにならないのですか。一度現地に行ってお調べになるなら、どれほどやはり過密で危険であるか。しかも、明石海峡というああいうふくそうしたところを減速もせずにね。しかも、春先には霧がたいへん発生するところです。そういうところを全速力で減速もせずに通り抜けるという危険性というものを十分に私は認識していただきたいと思います。御認識がたいへん不足じゃないかというふうに思うのです。ですから、そういうことでは、もし不幸にして事故が起こったときにどうなるのだろうかという心配があります。何よりもまず事故が起こったときには乗客とか乗組員の安全を確保しなければならないわけなんですけれども、避難をするという点でどういう措置がとられておりますか、それをお伺いいたしとうございます。
  235. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 先ほど諸規定の整備について申し上げましたが、そのうちで、事故処理基準について、事故のある場合の避難について規定をいたしております。
  236. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま少し具体的におっしゃっていただけませんでしょうか。
  237. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) ここに事故処理基準のひな型がございますが、これはことしの六月にわがほうからマニュアルを示したものでございまして、これは総則、それから総則の中には事故の範囲、事故処理にあたっての基本的な態度、通信の優先処理、模擬演習というようなことを規定してございます。第二章は非常連絡でございますが、非常連絡については、船長の非常連絡、非常連絡事項、運航管理者の船舶の動静の把握、第三章は事故の処理につきまして規定してございますが、運航管理者の指揮をする事故処理の組織、医療救護の連絡、現場の保存、事故原因の調査、それから第四には非常対策本部の設置、それの中身は組織・編成、職務分掌その他を規定してございます。
  238. 安武洋子

    ○安武洋子君 その事故処理基準に基づいて模擬訓練ということでなさったのだろうと思いますけれども、ことしの九月二十日に連絡船で救難訓練をなさっておられますね。客船、カーフェリーの合同救難訓練です。このときには、「国鉄自慢の救命シューター開かず」というようなことで新聞にも報道されておりますけれども、救命シューターが開かなかったと。それから自動点火するはずの発炎筒がマッチやサイターのお世話にならなければ発火しなかったと。それからあわてて縄ばしごをおろしたら、それが金具がからんで海面まで届かずに宙ぶらりんになったと。そうして、同時におろした救命いかだ四隻もからみ合ってシューターの上に落ちて二隻は使いものにならなかった。だから、模擬乗客の四十人が脱出する予定が十一人で中止になったと。まあこういうふうに、まだいろいろと書いてありますけれども、これは避難訓練ですからハプニングで済まされますけれども、これがほんとうなら、ハプニングで済まされないわけなんです。こういう事態について一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  239. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 運航管理者は年に一回以上そういう模擬演習をやらなければいかぬということをこのマニュアルに規定してございまして、いまお聞きした話は、高松で模擬演習を行なったときのお話だと思いますが、不時の事故に備えて私ども平素からこういう訓練をやらして一朝事あるときの準備をさせたいということを今後とも考えていきたいと思います。
  240. 内田守

    説明員(内田守君) いま具体的に御指摘がありましたので、その点だけお答えさしていただきます。  シューターが開かなかったことにつきまして、当時さっそく国鉄——これは国鉄の宇高連絡船で行なわれたことなんだろうと思いますけれども、当時さっそく国鉄当局と合同で調査いたしましたところ、まあ詳しいこと申し上げると長くなりますが、要するに、船内に窒素のガスボンベがございます。そしてそれをパイプでつなぎましてその窒素ガスがシューターに入るようになっているわけでございますが、このシューターに取りつける部分に急速に窒素ガスを膨張させるための弁がございます。この弁はアスピレーターと言っているわけでございますけれども、そのアスピレーターの弁に異物が詰まっているということであったわけでございます。その後調査いたしましたところ、それ以前に、いま申しました窒素ガスボンベを国鉄が委託して検量いたすわけでございます、窒素ガスの漏れを調べるために。毎年検量いたすわけでございますが、その検量するところのパイプのつないであるところの袋ナットをまあむちゃくちゃにと言っちゃおかしいのですけれども検量後締め過ぎまして、パッキングであるすず箔の小片がちぎれちゃった。ちぎれたまま放置してあったために、それがいま申しましたゴムパイプを通じましてアスピレーターに詰まったという特異な現象でございます。さっそく事後のシューターにつきましてチェックいたしますと同時に、いま申しましたゴムパイプをかえるとか、それから検量は専門のサービスステーションにやらせるとかいうような指導をとっております。  それからいわゆる加工品——救命炎とかそういう炎を発するものでございますが、それが、いま御指摘のございましたように、本来それぞれ使い方は違いますけれども、ひもを引っぱれば出るはずのものが、マッチでつけてもつかなかったというお話でございますけれども、これはこの加工品の取り扱いというのは非常にむずかしゅうございまして、この救命訓練のときにはどうしても試験をやるということで、いずれも有効期間を過ぎて廃棄処分にしてあったものをこの際やってみようじゃないかということで使用したというふうに聞いております。  それから縄ばしごにつきまして長さが足りなかったというのは、縄ばしごを繰り出すときに御承知のように横にところどころにステイがあるわけでございますが、これがからみ合って十分縄ばしごを繰り出さないまま脱出訓練をやったということで、そのあとすぐ縄ばしごを繰り出したというふうに聞いております。
  241. 安武洋子

    ○安武洋子君 これはほんとうの事故でなかったからいまのような御説明で済んだわけでございますけれども、ほんとうの事故ではこういうことではとうとい人命が失われるというふうな大惨事にもなりかねないわけですね。私はこういうことではだめだと思うのです。ですから、救命具の再点検、これはやっぱり厳重に行なっていただきたいと思いますし、それから先ほどからいろいろお伺いしたわけなんですけれども、実際に現状を御存じないという感じを深くいたしました。  いま私は一番事故の危険性をはらんでいるのじゃないかという東神戸のフェリー埠頭周辺の問題についてお伺いしたわけですけれども、たいへん認識が違うようです。調査も不足だとおっしゃって、またいまから調べてというふうなこともおっしゃっておられますので、一体実際にどんな危険な目に乗客もそれから乗組員の方もさらされているかというふうなことで私は具体的な対策を早急に立てていただきたい。それで日を限ってやはり事故発生してからではおそいですので立てていただきとうございます。それはどういう手を打たれたかということをやはり発表していただきたい。このことを要求いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  242. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 先ほどのところで一つだけ訂正さしていただきたいのですけれども、遅延の状況を申し上げましたが、あれは神戸だけではなくて、神戸と高松と両端の着時間の遅延関係が両方含まれておりますから、それを訂正さしていただきます。いずれにいたしましても、よく遅延の現状を調べさしていただいて、先生のところへ御報告さしていただきます。ただ、高松−神戸間だけで東神戸の阜頭がやっているわけではございませんので、いろいろ総合的に考えなければいかぬ点がございますと思いますので、よく調べて対策を考えて先生のところへ御報告さしていただきたいということでございます。
  243. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 私もあるいは言い間違えているのではないかと思いますので、訂正あるいは確認の意味でもう一度申し上げておきますが、水路の幅と船の長さの関係でございます。水路の幅の二分の一の長さの船まではその水路内で行きかうことができるという常識になっておりまして、これを申し上げたかったのですが、あるいは船の長さの二分の一というふうに申し上げたかもしれませんので、その点を訂正さしていただきます。
  244. 加瀬完

    委員長加瀬完君) それでは、日にちは限らなかったけれども、いま安武委員の指摘の点は調査をなさっていただくということなんですね。それではそれを確認いたします。  安武委員質疑は終わりました。  次に栗林卓司君。
  245. 栗林卓司

    栗林卓司君 最近の船舶衝突事故のことでお伺いしたいと思いますけれども、事故の経過を見ますと、九日の十三時三十八分に衝突して、同時炎上し、十四時十五分海難対策本部設置と、こう進めながら、十八時に半経二海里以内航行禁止ということを発表されました。この二海里というのは、二海里未満に近づけば危険が起るかもしらぬということを含めていわば腰だめの意味もあったのだろうと思いますから、これをたてにはとりませんけれども、二十一時の「第十雄洋丸」の位置を見ますと、横須賀港の岸から二海里を欠けたところまで接近しております。その意味では一時可能性としてたいへん危険な状態に立ち至ったと、こういうことだと思うのですが、間違いございませんか。
  246. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 横須賀の近くまで圧流されましたときの状態は、まだ船が非常に激しく燃えておりました。これはその後誘爆を引き起こしますと非常に危険であるということで現在の富津沖まで移動させたということでございます。それから富津沖に参りまして、消火活動を続けた後、ある程度火勢もおさまってまいりました。一応、先生御指摘のように、二マイルというのが腰だめであるかという御意見もございますが、まあ安全をとってかなり広範囲の水面を航行禁止にいたしました。現在は半径一キロということでやっております。
  247. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで「第十雄洋丸」が一番横須賀に接近した場所というのは、いただいたこの地図で見ますと、浦賀水道の出口にたいへん近い。今回は中ノ瀬航路の出口で起こったのですけれども、浦賀水道の出口から近いということは、相当深刻に受けとめておいていいのではないかと思いますが、間違いございませんか。
  248. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 相当深刻にという御趣旨がちょっとわかりかねますが、浦賀水道の近くまで流されたことは事実でございます。
  249. 栗林卓司

    栗林卓司君 意味を補足いたします。いまの規定によりますと、たとえば木更津港から出航した船というのは、東京湾外に出ようと思うと、いやでも中ノ瀬航路の前方を横断しなければいけない。同じように、浦賀水道航路の前方を横断しながら湾外に出るしかない。木更津港から出た船というのはこの二ヵ所の横断を避けられないわけです。横断がいわば今回の事故の大きな背景であるとすると、中ノ瀬航路の出口で起こった事故可能性というのは、同様に浦賀水道航路の出口でも起こらないとは絶対に言えない。しかも、この場所は港にきわめて近いという意味で、今回の事故も将来への対策を考える場合に相当深刻に受けとめておかなければいけないのではないかという意味でお伺いしたいのです。
  250. 寺井久美

    説明員寺井久美君) その点は、先生御指摘のように、航路の出口、入口の問題につきまして深刻に受けとめております。
  251. 栗林卓司

    栗林卓司君 そういった意味では、中ノ瀬航路の出口も浦賀水道航路の出口も性格は同じなんですけれども、事故にからめて中ノ瀬に話をしぼりながら若干お伺いしたいと思います。  先ほどの御答弁では、横断する船は千メートルの迂回を指導しておりましたという話でしたけれども、この指導というのは守ってくれなければ困るわけです。その意味では相当強い規制の意味を含めた指導をされてこられたと思うのです。このことは、航行する船長には終始徹底されているでしょうから、逆に言うと、中ノ瀬航路から北上する船長は、横断する船は千メートルの迂回を守るであろうという期待感が出たとしてもあながち間違いとは言えない、そうなりますね。
  252. 寺井久美

    説明員寺井久美君) そういう指導をいたしておりますから、船長がそういうことを考えたとしてもふしぎではございませんけれども、必ずその船は曲がるのだということを前提に自分は直進していいということにはならないと思います。
  253. 栗林卓司

    栗林卓司君 それはおっしゃるとおりでして、しかもこれはいま検察にかかっているわけですから、そのことにからんでいまお伺いするつもりは毛頭ないのです。ただ、同種の事故をどうやって起こさないで済むかという意味で規制のあり方を議論する意味でお伺いしているのですから、別にいま係争中の問題ということでより必要以上に慎重にならなくてもけっこうだと思います。  そこで、いまお答えのように、そういう期待感が出たとしても、別に注意義務を免除することにはならぬけれども、まあなるほどわかるかもしれぬ。問題は、横断する側から見ますと、この行政指導の千メートル迂回を守るか守らないかは海上衝突予防法の義務を免責する事由にはならないはずです。したがって、横断する船から見ると、千メートル迂回というのは比較的軽い印象に受けとめられがちになる。そうなったとしてもあながち間違いとは言えない、こう言えると思うのです。
  254. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 千メートル迂回という指導をやっておりますのは、できるだけその出口の近くで船が行き会わないためにやっております。したがって、これはまだ指導でございまして、それ自体強制力が必ずしもございません。そういう点で、海上交通法そのものの規則を順守して走るという船長もおりまして直進をしたとしても、それ自体は私は間違いではないと思います。ただ、明らかに船が出てきておるということを認めたならば、必要な迂回操作の準備にかかるというのが非常に近寄った場合の相互の船長の義務になっております。ですから、行政指導という形でやっておりますところに多少問題があるかと思いますけれども、反面、あまり複雑な規則をつくりますと、これがまた守りにくいというような面もございます。その辺は今後十分検討して、そういう出会いが起こって衝突事故にならないように万全の努力を払っていきたいと思います。
  255. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまのお答えで気持ちとしてはわかるし、含まれている気がするのですけれども、ただ、大切なのは、千メートル迂回の指導を守らなくても海上衝突予防法の免責にならないから、相互に注意義務はもちろん当然のこととしてあるとしても、片一方の横断する側は、中ノ瀬航路を北上する船長の側に比べると、千メートル迂回ということがあんまり強く頭に入らない。北上する船のほうは、あれだけきびしく言われているんだから、当然横断する船はそれを守るだろうという期待感が生まれてくる。これが一般論として相互の誤認の原因になるかもしれない。その意味で私がお伺いしたいのは、千メートル迂回なぞということを指導しなかったほうがよかったのではないだろうか。もしするとしたら、明らかに法律で明記をしながら海上衝突予防法に対する特別法の位置をあてがいながらきめるべきではなかったのだろうか。しかも、この中ノ瀬航路の進行前方と、それから浦賀水道の進行前方というのは、木更津から出る船はいやでも横切るわけです。そうなってくると、行政指導でやることが気持ちはわかっても事故誘発の可能性なしとしないという反省をここで一つしておく必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  256. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 非常に心理的な問題でございますが、先生御指摘のようなことも私は考えられないわけではないと思います。したがいまして、今後どういう対策をとるかという場合に、ただいまの先生の御意見も十分考慮さしていただきたいと思います。
  257. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで、十分御考慮いただきたいわけですけれども、今日もきょう現在まだ船が動いているわけです。その意味で、いま燃えている船はまあ起こったことはしかたがないとしても、どうやって再発を防ぐかということになると検討は急がなきゃいけない。ですから、具体的な検討はもちろん専門家の皆さん方が考えるとしても、法改正も含めて、たとえば横断部分についてある領域をきめてそこを全部通るということも一つの案でしょうし、少なくも法律の面で明らかにしながらいささかも先ほど来申し上げているようなおそれがないようにするということも含めて、至急御検討いただきたいと思うのですが、重ねて伺っておきたい。
  258. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 法改正をするほうがいいかどうか、いろいろ議論があるかと存じます。私どもも、実際、法律上の規則の問題と、それが実際上どういうふうに行なわれるかという問題を十分検討いたしました上、もちろんそれが法改正をするのがベターであるという結論になりますれば、法改正をし、かつまた、その他必要な措置を講じさしていただきたいと思います。
  259. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで、御検討いただきたい点の一つとしてつけ加えて申し上げたいのですけれども、中ノ瀬航路を北上している船とそれを横断している船を比べてどちらのほうが進路選択の自由があるかといったら、文句なしに横断側にあるわけです。そこで、衝突をする場合にどう、避けろと言っているかといいますと、海上衝突予防法をたてにとれば、そこで言っているのは、当該コンパス方位に明確な変更が認められないとき衝突のおそれがあるものと判断しなければならない。ところが、中ノ瀬航路を北に行くのは、曲がって見ようがない。先ほどお伺いしたら、その航路の幅を守りながら何度ぐらい首を振れるかといったら、せいぜい五度ぐらい、平たく言えばまっすぐ進む。まっすぐ進んでいるから、七号ブイを越えてなおかつまっすぐという約束は何にもない。出るまで横断側から見るとわからない。今度出たところで気がついたとして、これは先ほども議論に出ました後進全速をかけて約二千メートルぐらい突っ走っちゃった。後進全速ではかじがよくきかないですからよたよたと前に行ってしまうしかしかたがないし、また、後進全速をかけずに一生懸命曲がろうとしても曲がり切るまで七百メートルかかる。しかも、中ノ瀬航路を北上する船がどっちに行くのかは、はたから見ていれば七号ブイを越えるまでわからない理屈になる。ということのまま放置していくことは一体どうなんだろうかと思ってたまたま港則法を見てみた。同じようなケースですね、港の出入りのことですから。港則法では、釈迦に説法ですけれども、どう書いてあるかといいますと、なるほどその辺は時宜に適して書いてある気がいたしました。十六条を見ますと、「船舶は、港内及び港の境界附近においては、——出口付近ですね——他の船舶に危険を及ぼさないような速力で航行しなければならない。」中ノ瀬航路は、速力に対する規定は先ほどのお答えのようになかったんです。それでよろしいのかということが港則法ではきめてあるのですから、同じように限定的な航路をきめたら、その出口に対する配慮としてはやっぱり同様に配慮すべきじゃないか。では、その出る船に出して港則法はどうなっているかといいますと、十五条では、「汽船が港の防波堤の入口又は入口附近で他の汽船と出会う虞のあるときは、入航する汽船は、防波堤の外で出航する汽船の進路を避けなければならない。」こちらのほうがよっぽど船の動きを知っている人が書いた法律じゃないか。海上交通安全法については、なるほど区域はきめたわけです。きめたけれども、出口については残念ながらどこにも書いてない。事故が起こったいまから見ると検討不備であったと言わざるを得ないし、これも含めて——こうしろというんじゃないですよ。これも含めて検討なさるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  260. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 先生の御意見は、検討の際に十分考えさしていただきます。
  261. 栗林卓司

    栗林卓司君 それでは、そういうことでお願いしながら次の問題を伺いたいと思います。  先ほども質疑が出ておりました警戒船の「おりおん一号」、これはどこにいたんですか。まず、事故発生当時にこの船はどこにいたのか、お伺いします。
  262. 寺井久美

    説明員寺井久美君) この「雄洋丸」の約三百メーター前方にいたというふうに報告されております。
  263. 栗林卓司

    栗林卓司君 それで、現在推定される衝突地点というのは、中ノ瀬水道の出口から何メーターぐらいのところですか。
  264. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 水道の出口の線から約百二十メーターと推定されております。
  265. 栗林卓司

    栗林卓司君 すると、本船をうしろに置いちゃって衝突するかどうかわからないで警戒船がとっとことっとこ三百メートル先を行っていたということですね。なぜかについて責任者から事情聴取はされましたか。
  266. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 「おりおん」の船長については、目下調査を進めているようでございます。いままでわかっております点は、「パシフィック・アリス」が右前方から近づきつつあるということを発見して、この「おりおん」が飛び出しまして前に行ったために三百メートル程度衝突の時点では先になったと、こういうふうに報告されております。
  267. 栗林卓司

    栗林卓司君 「パシフィック・アリス号」というのは、事故の経過から見ると、ほとんど船内でもって命を落とされたわけですね。だから、その時点では中にいたんですね。「おりおん一号」というのは、先ほどの御説明によりますと、消火設備はあるけれども、あとは大したものはない。どうやってこれは知らせるのか。  そこでお伺いしたいのは、一体何メートル前方を航行すればよろしいのか。それからその前に行く警戒船というのは、最低どの程度の規模の装備を持っていなければいけないのか。先ほどのお話では、規制法も何にもないとおっしゃいました。ないからけしからぬという話をいまここでしてもしようがないのであらためて伺うのですが、しかもこれは大至急急ぐんです。この間あったからきょうないだろうと言えないのがこの手の事故です。その意味で、どのぐらいの装備を想定されますか、また、それをどうやって至急展開しますか。
  268. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 先ほどお答え申し上げましたように、消防設備は必ず持っておること、それから大きなタンカーが走りますが、そのタンカーが航路内を航行する程度の速力を持ったものといったようなことを現在まで指導しております。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、無線によります通信設備その他が必ずしも十分でございません。これは早急に整備をさせる必要があろうかというふうに考えて、目下どういう点を整備すればいいかということを事務的に検討さしておる段階でございます。
  269. 栗林卓司

    栗林卓司君 私もしろうとですから、たいへんしろうとらしいことを伺います。  この前方右翼警戒船というのは、警戒船ということが見てわからなければ困りますね。わかれば、ああ、うしろにでっかいのがついているという話になるわけです。このわからせることが何よりも先じゃないですか。
  270. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 御指摘のとおり警戒船であることがわからなければいけないわけでございまして、そのために、警戒業務に従事しておりますというこの船はピカピカ回る緑の光の旋光灯をつけております。
  271. 栗林卓司

    栗林卓司君 その緑の光の旋光灯というのは、警戒船特有の表示であるということは周知徹底されているわけですか。知らないからお伺いします。
  272. 寺井久美

    説明員寺井久美君) これは周知徹底しております。
  273. 栗林卓司

    栗林卓司君 それはわかりました。  あと残るのは、今回のように線内に入っちまって、まあそれでも無線装備があればこうやってとめることはできるのでしょうけれども、何らかの警報能力とか、それから本船に対して何メートルということもきめなければいけないことだと思いますが、これも含めて至急おきめいただけますか。
  274. 寺井久美

    説明員寺井久美君) この航路警戒船は、大型船が航路の中を通航いたします場合に、比較的小型の船が近づかないようにということが一つございます。それからただいま問題になっておりますように、航路の出口で危険を防除しなければならない。この点につきましてどういう手段を講じなければならぬかということは、先生御指摘のように、至急にきめて指導しなければならぬわけでございます。ただ、何メーター先ということを一律にきめられるかどうか、私もちょっと自信がございません。しかし、ある位置におって特に出口に近づいた場合にはこういうことをしろというようなことは、かなり具体的にきめて指示をしておかないと、またこういう事故を繰り返すおそれもございますので、そういう点は十分検討して指導したいと思います。
  275. 栗林卓司

    栗林卓司君 それで、その規制を行政指導にするのか、あるいは別個の法にするのか、これはそこまで立ち入って私も意見を申し上げるあれもないものですから、ただ、海難事故というのはたいへん入り組んだ関係になるものですから、そんなことも十分御研究の上で、どういう規制にしたらいいのか、至急これはお取り計らいいただきたいと思うのです。それまでの間、出口については、これも知らないからお伺いするのですが、従来以上に巡視艇配備等の対策は講じておられるわけですか。
  276. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 従来以上にということでございますが、現在のところはあの付近にたくさん巡視艇がおりまして警戒に当たっております。通常の場合には、航路筋に必ず巡視艇が一隻警戒に当たっております。ですけれども、航路はかなり長うございますから、片方のほうの端にいるときに片方の端まで目が届かないというようなことは当然ございます。巡視艇を従来以上に配置して警戒に当たればもちろんよろしいわけでございますが、いろいろ巡視艇も任務を持っておりまして、必ず二十四時間そこに張りつけておけるかどうかという点につきましては、私どもまだちょっと自信がございません。しかし、できるだけそういう地点につきましては巡視艇を出しまして警戒に当たらせたいというふうに考えます。
  277. 栗林卓司

    栗林卓司君 そう数はございませんというお答えだと思うのですけれどもただ、最初にお伺いしたように、ある意味では、中ノ瀬水道の航路から出口で起こったのが不幸中の幸いだったのかもしれないのです。これが浦賀水道の出口だったら、もっと大惨事になったわけでしょう。あの中ノ瀬の出口というのは、ちょうど東京湾のどまん中ですから、わりあい離れているわけですね。その危険がいま起きないというのはだれも言えない。先ほど来のようにいろいろな法規制とか何かといっても時間がかかるし、慎重に検討してということになるわけですけれども、その危険をどうすれば一番早く解決できるのか。巡視艇をたくさんつけるといったってなかなかそうはいかない話になりますが、何か確実にきくものを急がないといけないのじゃないか。それはずいぶんお悩みの点だと思うのですが、何から手をつければ一番確実に安全が担保できると、時間的にですよ、お考えになりますか。
  278. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 現在までやっておりますいろいろな航行上の手当てにつきまして、これが完全に守られるということがまず大切だろうと私は考えております。したがいまして、新たに何かする前に、現在やっていることが守られているかどうか、これをもう一度守れということをやる必要があろうかと思います。  その次に、こういう特に出入り口の問題につきましてはやや問題が複雑になりますけれども、早急にやはり一つの方針をきめましてこれを実施に移さなければならぬ。実施に移します際に、やはり行政指導の至らざる点、いろいろ問題がございます。それからパイロットにお願いをするというようなこともございますし、やはり総合的に方針をきめまして、できるだけ早い時期に対策実施に移さなければならない。現在何もしないでほっておるのか、こういうことになるかと思いますが、それはそれなりに私どもの巡視艇でいままで以上にある意味では警戒に当たっております。したがいまして、そういうある意味の現場職員に対する無理をいつまでも強要できませんので、できるだけ早く私どもは基本的な方針を打ち出したいと思っております。
  279. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの守らせるのが一番重要だと、私もそう思うのです。そこで、守らせるためにどうするかということで実は便宜置籍船の話も含めて出てくるわけですけれども、たとえば今度の「パシフィック・アリス号」も、木更津港の港の口までは水先案内がついていた。外はもちろん規制がないからおりちゃったらぶつかっちゃった、こうなるわけですね。そこで、海上交通安全法をつくったときの趣旨に照らして、あれも交通がたいへんふくそうする地域を限定して特別に適用したわけですけれども、その趣旨を生かして、少なくも当該地域については港外であろうと強制水先制度を導入する。法律改正が間に合わなきゃとりあえず行政指導で先行的にやってしまうということのほうが、いろいろこの件についてもこれまで議論があった点ですけれども、ちょっとこれは急がなきゃいけないのじゃないか。国内の日本国籍船に対してさえ守れというのはたいへんなわけですから、いわんや何が何だかわけのわからない日本語が通用しない人たちにどう周知徹底するかということになると、わかっている人を乗り組ませるのが一番いい。その数がいるかどうかまで調べておりません。おりませんが、これが一番急ぐのじゃないか。法改正はあとでよろしいから、行政指導でもとにかく海上交通安全法が想定している地域については強制水先案内をつけるというようなところまで踏み切らないと、守らせるということにならないのじゃないでしょうか。
  280. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 先生御指摘のように、確かに強制水先にして乗せれば一段とそういう外国船が不なれな日本に来て航行する場合に安全度が高まるという点、私も全く同感でございます。先ほど船員局長がお答えを申し上げましたように、全般的に強制水先にするかどうかというのは、目下検討中だそうでございます。私どものほうは、できるだけ水先を積むようにということを従来から勧奨しております。外国船に対しては特にこの点を再度強く要望したいというふうに考えております。
  281. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは船員局長の御関係とおっしゃいましたか。
  282. 寺井久美

    説明員寺井久美君) パイロットは、実は船員局のほうの管轄になっております。
  283. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、船員局長に同じ趣旨でお伺いします。
  284. 山上孝史

    説明員(山上孝史君) ことしの四月に運輸大臣の諮問機関であります海上安全船員教育審議会に運輸大臣から諮問をいたしました。諮問事項といたしましては、「水先を強制すべき港または水域の設定に関する方針について」ということでありますが、それに応じまして目下この審議会におきまして水先部会という部会を設け、さらに小委員会を設けて審議中でございます。現にきょう午後小委員会で審議中ということでございます。
  285. 栗林卓司

    栗林卓司君 審議会ですから、先の話まで代表してお答えはできないでしょうけれども、会議が踊らないで急いでいるのでしょうか。
  286. 山上孝史

    説明員(山上孝史君) 審議会の御審議でありますので、私のほうから見通しを申し上げることもいかがかと思いますが、私といたしましては、できれば本年度じゅうにどういう港あるいは水域を強制水先区にすべきであるかというものさし、これについての中間的な御報告をいただけたらという希望を持っております。
  287. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで一つお伺いするのですけれども、確かにいろいろ御議論されると今年度じゅうというような話になると思うのですが、木更津から出た船は、好むと好まざるとにかかわらず、東京湾の外に出ようと思ったら、二回横切るわけです。こういう部分的なところだけ先行的にいわばむずかしい法律論をやるとちょっときなくさいのだけれども行政指導でやらしてくださいというような余地はありますか。
  288. 山上孝史

    説明員(山上孝史君) 行政指導としては現在でもそういう指導は当然可能でございます。私どもといたしましては、そういう行政指導を海上保安庁にしていただきたいと、こう思っております。  なお、法律上強制水先区にするかどうかという問題につきましては先ほどお答えしたとおりでございますが、いまの先生の御意見も私のほうから審議会に御披露して御審議をお願いしたいと思っております。
  289. 栗林卓司

    栗林卓司君 それで、法改正じゃなくて、行政指導に限っていくと、たいへん力強いお話を船員局長がされたのですけれども、これはそうは言っても、水先案内人組合があるし、なかなか話は合わぬと思いますけども、少なくも東京湾を画一的にやったらどうしようもないですから、急ぐところからだけでもやっていけばその分だけ事故可能性は減るわけですから、せめて部分的にでも海上保安庁のほうでそういう指導を強化していただきたい。これはもちろん便宜置籍船を含む出入りする全船舶という指導は急いでやることができそうに思いますけれども、そういうことでよろしいですか。
  290. 寺井久美

    説明員寺井久美君) ええ、そういうことでけっこうでございます。ただ、先生御存じのように、水先の組合がいろいろございまして、その間の調整ということは残っております。
  291. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題は事故をどうやって次のステップの材料に生かしていくかが事故の正しい扱い方と思いますので、なるべく急いでいまの点等も進めていただきたいと思います。  それからちょっと話題は変わるのですけれども、これは私も積極的な材料を持っているわけじゃないので、あるいはうろんなお尋ねになるかもしれません。衝突したときにナフサに引火して燃えてしまったとあるのですけれども、この「第十雄洋丸」というのは最初建造したときにはあそこのタンクにはナフサは入れない前提あるいは入れない予定で建造されたという話を聞きましたけれども、船舶局のほうでしかるべきお答えがあったらお伺いしたいと思います。
  292. 内田守

    説明員(内田守君) 御承知のように、「第十雄洋丸」は日立造船の因島工場で昭和四十一年七月に竣工した船でございますが、これは船体構造は御承知のように日本海事協会に入級しておるわけでございますが、竣工時から日本海事協会の登録では液化石油ガス及び原油混載船ということになっておりますし、それからまた、LPG船につきましては、われわれのほうでいわゆるタンカーの規制に加えて大臣の指示事項がございます。その指示事項も当時昭和四十一年七月に竣工したときに指示しておるわけでございますが、その指示につきましても、いま申しました混載船としての設備を指示しておるわけでございます。
  293. 栗林卓司

    栗林卓司君 しろうとの質問で恐縮ですけれども、LPGガスと原油混載船というその原油の中にはナフサも入ってしまう、いわば同義語として扱ってしまえるのでしょうか。というのは、なぜこんなことをお伺いするかといいますと、原油はたしか衝突しただけじゃ燃えない、ナフサは燃えてしまう、これだけの違いがLPGと原油混載船ということだけで入ってしまうのかどうか、つけ加えて御説明いただきたいと思います。
  294. 内田守

    説明員(内田守君) 正確に申し上げますと、引火点六十五度Cという数字であらわしておりまして、ナフサもこれに包含されております。それからなお、ちょっとよろしゅうございますか。——構造の話なんでございますけれども、この船は船体の中心部にいま申しました独立のLPGタンクがございます。そのLPGタンク外側は御承知のポリウレタンで防熱されておるわけでございますが、その外側にやはり空所があるわけでございます、仕切りが。その空所が幅は約七十五センチぐらい十分とってありまして、それから底部にも空所をとってありまして、そこへたとえば鎮火性ガスを非常の際投入できるような空所がつくってありまして、混載と申しますのは、その空所の外側のウイングタンク、いわゆる外側タンク、そこがいま申しました原油等の搭載を認める構造になっておるわけでございます。
  295. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、いまの御説明事故に即しながら繰り返しますと、いわば不燃性のものを入れて、外側にある発火点六十五度以上のものと中のLPGとの接触を妨げる構造になっていたけれども、衝突のときにその中間のあいているところも含めて突き破ってしまったということですか。
  296. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 一番外側ナフサがございまして、それからいま船舶局長が御説明しました空間があって、それから断熱材がありましてプロパンが入っている、こういう構造になっておりますが、いままで私どもが了解している範囲では、衝突によって舷側に穴があきましてナフサタンクをこわした。ただ、それが中までは行っていないだろうというのがいまの観測でございます。というのは、現在——失礼しました、中のLPGのタンクまでは行っていないだろうと。と申しますのは、現在もLPGのタンクから火を出して甲板上で燃えておりますが、これは上のパイプ等の接合点から吹き出しておるわけで、横には全く出ておりません。したがいまして、中まで突き破ったということではないというように判断しております。
  297. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうしますと、これはいずれ鎮火して現場を見ながらということにならないとほんとうのことはわからないのでしょうけれども、一つの可能性として言えるのは、その外側ナフサを積んだ。まん中に緩衝地帯のような不燃性のあるものを入れる仕組みになっている。したがって、外でかりに発火しても、中のLPG本体には行かないように考えていたのだけれども、どこかで不ぐあいがあったらしいという想定——想定ですよ、想定は成り立つのでしょうか。
  298. 内田守

    説明員(内田守君) 不ぐあいといって本船特有の不ぐあいであるかどうかというのは議論はいろいろあると思います。ただ、先ほど申し上げましたように、こういう船型のタイプというのは、現在世界的にもLPGの典型的な、別に風変わりなタイプの船でございませんし、そういう意味で不ぐあいという表現をどういうふうに理解していいかという問題になるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、現在LPGのそういう問題につきまして構造それから消防設備についてはIMCOでもいろいろわれわれも参加してやっておるわけでございますけれども、こういう大量に要するにLPGを塔載するこの種の船のいろいろな施設というのは、いろいろな最善の努力はするにしても、結局、初期消火でとめるとか、あるいは災害を未然に防止するというのがとにかく肝要で、一たん大火災になってしまってからのいろいろな対策というのは技術的にもきわめて困難であるということでございます。
  299. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまのお答えのように、ありきたりの型でございましてたいして珍しいものではございませんということを逆にすると、取り越し苦労すればじゃ心配かなという話になりますし、ですから、今回のことを契機にしながら船舶そのものの構造なり、消火面に当てた検討なり、あるいは人命救助に当てた設備の状況なり、そういったものはこれを機会に積極的に見直しをしていきますと、これまでもやってまいりましたがこれからもやりますと、そう受け取ってよろしいですか。
  300. 内田守

    説明員(内田守君) 具体的に申し上げますと、先ほど来構造とかそれから消火設備について今後こういうことを機にしまた国際的にも続けていきたいということを申し上げたのでございますけれども、さらに救命設備等につきましても、先生おっしゃるように、「ぼりばあ」「かりふおるにあ」以来、われわれも真剣にいろいろ開発を含めて取り組んできておるわけでございますし、その場合に単に救命設備なら救命設備の一つの器具の改良改善ということではなかなか全体的な改善にならないということで、たとえば救命なら救命システムとして検討いたしまして、そしてその中における個々の器具の役割り、それから開発の推進の仕方というようなとらえ方をして数年来からやっておるわけでございますけれども、特に今回の事故というようなものを契機にいたしまして、さらにつけ加えるべきものはつけ加える、それから開発を促進しなければいかぬようなものもあるかもしれませんし、その辺のことで今後一そうそういう改善開発というものを進めていきたいというふうに考えております。
  301. 栗林卓司

    栗林卓司君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  では、最後に一点だけお伺いして質問を終わりたいと思うのですけれども、これはちょっと大き過ぎでとりとめのない話で、どうやってお尋ねしたらいいか迷っているのですけれども、先ほどほかの同僚議員の質問にもありましたが、東京湾あるいはもちろん伊勢湾、瀬戸内もそうですけれども、これ以上入ってくる船をふやしていいのかどうなのか。これはシーバースの新設問題にも触れてくると思うのですけれども、これは海上保安庁にお伺いするのがまず順序だと思いますが、大体これがもう目一ぱいでございますと、航行量から見てですね、そういう判断というのは海上保安庁が主として担当になっておきめになるのでしょうか。
  302. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 交通容量がどういう状態にあるかということにつきましては、まあいろいろ専門家の間でも意見があるようでございます。ただ、私どもの海上の安全を確保するという職務の立場上からいたしますと、やはり、保安庁として、この交通量がこれでは多過ぎるとか、あるいは港内の事情からいってこれ以上船を入れるのは危険が多くなるというような判断はせざるを得ないのではないかと思います。ただ、具体的に東京湾で交通量がもう目一ぱいでこれ以上一隻も入ってはだめだというようなことまですぐ結論が出せない状態でございます。浦賀水道の交通量が多いと申しましても、船の大きさが非常に区々でございまして、陸上の道路のようにこれでもう一ぱいと簡単に出てこない、そういう悩みがございます。しかしながら、安全とのかね合いで船の性能あるいは航行管制の行なえる範囲、能率その他等の相関関係でこの安全性というものあるいは交通量の扱える限界というものが出てくるのではないかというふうに考えております。
  303. 栗林卓司

    栗林卓司君 港湾局の計画課長がおいでになっていると思いますのでお伺いしますけれども、今回の衝突事故を見て何ともやり切れないのは、両方の船とも陸上の基地にとってなくてはならない船なんです。したがって、たまたま思いついて東京湾に入ってきたわけじゃない。そう考えると、いま海上保安庁長官も言われた定量的に何が限度かということはなかなか言えないわけですけれども、極力それを具体的に詰めながら港湾局としての作業をしていかなきゃいかぬのじゃないか。  そこで、いまいろいろ御計画をお持ちだと思うのですが、その計画を立てるにあたって、東京湾の船舶収容可能量といいますか、そういったものをどのような認識で見て、将来展望としてはどういったことを考えながら港湾設備、シーバースを含めた今後の計画を進めておいでになるのか、お伺いしたいと思います。
  304. 大塚友則

    説明員(大塚友則君) 私どもは、御承知のように、主として貨物輸送需要といったものの面から東京湾にどのくらいの施設をつくったらよいかということを検討し、その立場から港湾計画を立てるわけでございます。ただ、その場合、当然その船舶の入港、出港といったものが伴うわけでございますから、需要があるからといってそれを単に需要サイドの面からだけで計画を立てるということはまずいわけでございます。したがいまして、私どもが計画を立てる場合には、当然その計画実施することによってどういった船舶交通の需要が出るか、あるいは船舶がどういうような交通をするとかというようなことを十分海上保安庁とかあるいは関係の水先あるいは海難防止協会、そういったものと十分調整をとりながら計画をやってまいってきております。たとえば現在のシーバースの問題でございますが、これの増設につきましても、私どもは必ずしもこれは好ましくないというふうに思っております。ただ、先ほど冒頭に申しましたように、シーバースというのは独立で需要が出てまいるわけではございませんで、結局は背後の工場立地なりあるいは増設新設、そういったものに伴って発生する需要でございまして、やはりそういった面からの規制というものもあわせて考えていかなければならないというふうに考えております。
  305. 栗林卓司

    栗林卓司君 背後のとおっしゃいましたので、一つつけ加えて伺いますけれども、背後の陸上交通の状態がどうかということも含めて御検討になりますか。
  306. 大塚友則

    説明員(大塚友則君) ちょっと舌足らずで申しわけございませんでしたが、貨物が動けば、船の運航のみならず、背後における陸上交通、自動車交通、そういったものも当然起こると思いますので、その面につきましても道路管理者等と十分御相談をしながら計画を進めてまいっております。
  307. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの私どものはだで来る感じからいいますと、どこへ行ってもまあパンクだわという話ですね。そうすると、なるほどいろいろな需要はそれぞれの立場であるでしょうけれども、これからは抑制的に運用していかなきゃいかぬと言ってもそう大きな間違いはないと思います。そうは言いながら、なかなか利害関係がからむ問題なんですけれども、先ほど海上面については海上保安庁とも十分な討議をしてというお話ですけれども、何かそういったものを一つのテーブルで権威をもって議論をするような機関が、これも知らないから言うのですが、今日あるのでしょうか。
  308. 大塚友則

    説明員(大塚友則君) 役所間のそういった場といたしましては、関係六省庁のほうで集まって絶えず検討をいたしております。それから公式の審議会でございますが、これは港湾審議会というものがございまして、港の計画についてはそれぞれ個々にその審議会を通じて検討していただいております。これは運輸大臣の諮問機関でございます。もちろんその中にはあらゆる関係の方々が入っておられるわけでございます。
  309. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは念のために海上保安庁に伺うのですが、いまの港湾審議会には海上保安庁としても当然出席をされていろいろ御発言になると、そう理解してよろしいですか。
  310. 寺井久美

    説明員寺井久美君) 海上保安庁長官委員になっておりますので、当然そういう場が与えられております。
  311. 栗林卓司

    栗林卓司君 まあこれは広がりの広過ぎる問題ですから、これ以上くどくどしく申し上げるつもりはありません。先ほど同僚委員から海上交通安全法の附帯決議も含めて要請した点でもありますし、私が申し上げたいのも全く同じことでございまして、問題は今回の不幸な事故をどうやって将来のマイナスを減らすように生かしていくかということだと思いますし、今後シーバースの建設等も含めてきびしく見直しをしながらそれぞれのつかさつかさでの業務遂行をお願いしたいと思います。  以上申し上げて、質問を終わります。
  312. 薗村泰彦

    説明員(薗村泰彦君) 委員長、ちょっとよろしゅうございますか、台湾の遺体のことがわかりました。午前中瀬谷先生から御質問いただいたときに調査不十分でお答えできなかったので、お昼に調べてまいりましたので、ちょっと御報告さしていただきたいと思います。  台湾関係の遺体の処理につきましては、日本の用船者であるイースタンシッピングが連絡役になりまして、すでに十三日に四体を、それから引き続いて十四日に十六体を丁重に取り扱って航空便で台湾に移送したということでございます。
  313. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ほかに御発言はございませんか。——御発言ないと認めます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。   午後四時四十六分散会