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1974-10-25 第73回国会 参議院 決算委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月二十五日(金曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前川  旦君     理 事                 鈴木 省吾君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 田代富士男君     委 員                 岩男 頴一君                 遠藤  要君                 河本嘉久蔵君                 木内 四郎君                 世耕 政隆君                 永野 嚴雄君                 温水 三郎君                 案納  勝君                 小山 一平君                 須原 昭二君                 和田 静夫君                 二宮 文造君                 峯山 昭範君                 加藤  進君                 星野  力君                 田渕 哲也君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        警察庁刑事局長  田村 宣明君        大蔵省主計局次        長        田中  敬君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省関税局長  吉田冨士雄君        大蔵省理財局長  吉瀬 維哉君        大蔵省理財局国        有財産審査課長  佐藤徳太郎君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        国税庁次長    磯辺 律男君        国税庁税部長  横井 正美君        国税庁間税部長  星野 孝俊君        文化庁次長    内山  正君        農林省構造改善        局農政部長    犬伏 孝治君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        自治省行政局選        挙部長      土屋 佳照君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君        会計検査院事務        総局第五局長   中村 祐三君        日本専売公社総        裁        木村 秀弘君    参考人        国民金融公庫総        裁        澤田  悌君        中小企業金融公        庫総裁      吉岡 英一君        日本開発銀行副        総裁       福地  豊君        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和四十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十七  年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣  提出) ○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十二回国会内閣提出) ○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十二回国会内閣提出)     —————————————
  2. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、大蔵省とそれに関係する日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の部合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前川旦

    委員長前川旦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめてください。   〔速記中止
  4. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。  それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 和田静夫

    和田静夫君 昨日、田中総理大平大蔵大臣会談が行なわれて、そして田中総理は、文塾春秋記事問題が政局国会運営に大きな影響を持つという観点協議を持ちかけられたようであります、報道によれば。私は、実は本来、田中総理自身にここに来ていただいてこの問題というのは論議をすべきだと考えていましたので——そういう立場をいまも実は持っているのですが、しかし、昨日、田中大平会談が持たれてこのことが問題になったということになれば、きょうは幾つかの問題について、世にいう文春問題で若干の質問をいたしたい、こう考えます。  とりあえず、大蔵大臣にそういう意味お尋ねをするわけでありますが、文藝春秋の十一月号の記事に端を発しました田中総理の金権、金脈の問題というのは先日の衆議院でも取り上げられて、主としてそれは総理所得申告が十分なものであったかどうかという観点から質疑が行なわれたようであります。このときの国税庁側答弁は、きちんと申告していると思われる、こういう内容のものであります。この答弁は、国税庁が文字どおりそう思っているだけなのか、文藝春秋記事が出てこの問題が国民的関心を呼ぶに至って、一定調査をした上であの答弁をなされたのか、大臣から明確に答弁を願います。
  6. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 先日の御答弁は、従来の国税当局調査においてという意味でございます。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 そこで大蔵大臣、いわゆる国税庁のいう、総理はきちんと所得を申告していると思われるという答弁は、従来の調査に基づいたということでありますが、これで国民の十分な納得を得ることができるとお考えになりますか。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が国税庁から承っておるところは、総理大臣といえども納税者でございまして、特にきびしくするとか特に甘くするとか、そういうことはすべきものでもないし、そういたしていないということでございます。で、その限りにおきまして国税庁が公正な立場で、厳正な立場で徴税に当たっておるという姿勢は、国民から御理解をいただけるのではないかと思います。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 私は、少なくともこの記事が出て、いろいろの、言ってみれば疑いが持たれている、こういう状態ですから、やはりもう一ぺん正確な調査というものをやられるべきではなかろうかということを考えますが、大平大蔵大臣もおそらくそういうふうにお思いになっておるのじゃなかろうか。たとえば、いまの答弁国民を十分に納得させるものではないとあなたも判断をされたがゆえに、あなたは昨日の総理との会談で、この種の問題は基本的に総理個人にかかわるものであり、したがって、まず、総理がみずからの責任で適切な打開策を打ち出していかなければならないというようなことを述べられながら、情勢を十分見きわめ、誤りのない措置が必要だとの考え大平さんは明らかにされたと、こういわれておるわけです。これから私たち考えて直観的にとることは、あなたが、いわゆる適切な打開策というものをどういう形で想定をされているのか、そのことをひとつこの機会にお伺いをしたいわけです。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう田中総理とお目にかかりまして、外遊のお留守中御指示を仰ぐことがないかどうか、それから外遊中、私どもが気にかかっている、私ども所管案件について御感触を伺うということのために、官邸に総理をたずねて短時間お話をいたしたわけでございます。政局の問題につきまして深く立ち入る余裕はありませんでした。ただ、御案内のような事態でございますので、総理におかれてもいろいろ御心配されておることでございましょうし、私といたしましても、閣員といたしまして、協力者といたしまして、この事態をどのように受けとめて、どのように対処したらいいかについては、まだ私、考えがまとまっておるわけでもございませんので、よく検討さしていただいて、また機会があれば申し上げることあるべしということでお別れいたしたわけでございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 端的に言いますが、適切な打開策を具体的にいま構想していないけれども、ともあれ、適切な打開策が必要だと大平さんはお述べになった。その適切な打開策というそういう考え方の中には、総理個人財産公開といったようなことも含んでお考えになっていらっしゃいますか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 特にそういうことを念頭に置いて考えておるわけじゃございません。先ほど納税の問題につきましては、総理大臣といえども納税者にすぎないわけでございまして、総理大臣なるがゆえに厚薄があってはいけないことは当然のことでございまして、これは特に考慮しなければならない課題であるとは思わない、きわめてあたりまえにやってまいるべき性質のものであろうと思います。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 昨日、田中大平会談では、早期解散問題で協議をされたと報じられていますが、そういう御協議をなさいましたか。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) とんでもございませんで、私は、いま申しましたように、所管の仕事で御相談にあがったわけでございまして、政局の問題について深く立ち入る余裕はありませんでしたと、いま和田さんにお答えいたしたとおりでございます。  また第二に、私はまだ、こういう総理のことが問題になっておるわけでございますけれども、それが自由民主党なり、政界なり、政局なりというものにどういう影響があるのか、それはどのように受けとめて対処していったらいいかについて、私自身、方寸がまだ熟したものを持っていないわけでございますので、御進言を申し上げるまでの段階ではないわけでございます。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 この問題は、やはり事が一国の総理に関する問題です。たとえば大蔵省なり、いま大臣の御答弁にありましたように、所得税法二百四十三条があります、したがって、国税庁としての資料公開はできないと。あるいは、総理財産公開などというものをいま進言をするつもりはないなどと言っていたところで、これは私は、やっぱり非常な官僚的な答弁ではないかと思うんです。私がいま一番憂えなければならないことは、これらの記事中心にしながら、私も、かつてこの委員会で柏崎の原発地域の問題について取り上げたことがありますが、一切の問題についてやはり国民からの疑惑をなくして、それが大きな政治不信に、あるいは政治家個々不信に結びついていくという、そういう方向というものをなくするために謙虚でなければならない、いま一番求められるのは私はそのことだと思うのです。アメリカのニクソン大統領のあの辞任問題を私たちが想起するまでのこともありません。したがって、一国の総理がどういう政治姿勢をとっているかという、そういう高度に政治的な問題としてこれを考えておく必要があろう。大蔵大臣もこの問題に積極的に立ち向かわれて、しかも大平大蔵大臣は、田中内閣をささえられる一番大きな柱のようでありますから、解決をしていくという立場に立たれて、この委員会全体の調査協力をされてしかるべきだと思いますが、そういう資料提出あるいはその他いろいろの問題の提出などの協力を十分に約束をされますか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび繰り返し申し上げますように、総理といえども納税者でございます。したがって、国税当局の態度といたしまして、一般納税者と変わったことがあるとおかしいと思うのであります。私は、国税当局国民信頼にこたえて、厳正な税務の執行をいたしてまいっておると思いますし、今後もそうしなけりゃならぬと思っておるわけでございます。したがって、ただいままでの調査に不備があるとか、まあいろいろ問題が出てまいりました場合には、税法の示すところに従いまして適正に処理していかなければいかぬものと思います。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 もう一ぺん伺いますが、大平大蔵大臣田中総理に対して、文春問題の処理を誤らぬよう十分な手だてを講ずる必要があると進言をされたといわれているわけです、報じられているわけですが、この処理を誤らぬよう十分な手だてを講ずるというのは、どういう意味で、何をお考えになってのことですか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私、文春問題の処理などと言うた覚えはないわけでございまして、総理は、内閣の首班として、政治に対して最高責任をお持ちになっておるお方でございます。その総理についていま問われておる問題があるようでございます。したがって、政局最高責任を持たれているお立場誤りのない措置をされるのが、これはだれが申すまでもなく、御本人が最高責任者として自覚されておるに違いないと思うのであります。私ども協力する立場におきまして、もし何か御判断にお役に立つようなアドバイスがあれば、申し上げなければならぬ立場にあるわけでございますが、まだ私も、どのようにこの事態を受けとめて、どのように対処したらいいかの考え整理が十分にできませんので、まだアドバイスを申し上げるまでに至っていないわけでございます。しかし、引き続き自分もいろいろ考えていかなきゃいけないとは私も思っております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 自治省お尋ねしますが、田中総理後援会越山会に、港区の港商事という外国法人献金していると文春に書かれているわけです。この中で港商事は、私のところは外国法人だから、選挙への献金は禁止されているからということの意味を含んで、献金するはずがないと、こう、まあ否定をされているんだが、いわゆる献金しているというのは事実ですか。
  20. 土屋佳照

    説明員土屋佳照君) 先ほど港商事についてのお尋ねがございましたので、至急越山会等について調べてみたわけでございますが、この四十六年から四十八年度にかけましては、港商事からの献金は全然報告されておりません。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 越山会虚偽報告疑いがこの文春ではかけられているんですね。これについては調査をされましたか。
  22. 土屋佳照

    説明員土屋佳照君) われわれとしては寄付についての報告を受けている、これを公表するという立場でございまして、それ以外の、会社についてどうこう調査するとかいうことは全然いたしておりません。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 どうも私は、この文春記事全体が非常な信憑性があるものだとすると、当然に政治資金規正法二十四条の発動がなければならないと考えているんですが、そういうことにはなりませんか。
  24. 土屋佳照

    説明員土屋佳照君) 私どもとしては、先ほども申し上げましたとおり、規正法に基づいて政党その他の政治団体が収支の報告をなさる、それを公表するという立場でございますので、その報告以外のものがどうかということは、これはよくわからないわけでございまして、そういった事実があるかどうかということ、それはそれに基づいてそのときに判断すべきことだと存じます。直接私どもが、いまどうであるということについてお答えする立場にはないわけでございます。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 規正法二十四条の発動のために、一体それを決定づけるのはどこですか、どの機関ですか。あなた方の発表を受けてどこがどうするんですか、それじゃ。
  26. 土屋佳照

    説明員土屋佳照君) 結果的に申し上げますと、司法当局であろうかと存じます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 田中総理政治資金規正法上の後援団体越山会に、三協物産という会社が多額の実は政治献金をしているんです。私はこの三協物産というものについてはいま調査を進めていますが、この三協物産はこの六月に倒産をしています。そして社長は雲隠れをしています。この三協物産には、八千代信金東棉大光相互銀行が非常に大きな融資をしています。いま、三協物産の沼津の寮、相模原の設計事務所、寮、社長の自宅、駐車場、三協会館という会館などが競売に付されていますが、大光相互銀行はすべて二番以下に抵当権を設定していて、資金の回収は不可能で、その焦げつきは三十億にのぼるといわれているわけです。もちろん大蔵省もこの事実を御存じなはずでありますが、資金量二千億円程度の一新潟地方相互銀行が、なぜこのような無理な融資をしなければならなかったのか御存じですか。
  28. 高橋英明

    説明員高橋英明君) ただいま初めて伺いまして、そういう事実は存じておりません。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 いま私が述べたことは、私の調査によって大体もう明確でありますから、それでは、大蔵省の側はこれを調査して報告をしてください。
  30. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 調査いたします。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 私は最後に、この委員会委員長お願いをいたしますが、本決算委員会は、先ほども述べましたように、国民疑惑が晴れるまで、この文藝春秋記事に端を発した、国民関心を呼んでいる田中総理の身辺問題というものを、単に大平さんが述べられるような田中さん個人ということではなくて、この国のいわゆる総理として、そういう意味で取り上げ続けなければならないと思います。そして政府は、政治に対する国民信頼を取り戻すという、そういう高度な政治的判断の上に立って、資料の積極的な提示などを含んでこの調査協力をすべきでありましょう。そういう意思表示をこの決算委員会の名で私は実は行なうべきだと考えているのですが、この国民疑惑政治に対する不信の増大を何としてでも私たちは避けなけりゃなりません。そういう努力が払われるべきであります。  すでに幾つかのことがうわさになっています。たとえば、文春記事をさらに突っ込んで、鳥屋野潟減歩問題に目をもっと野党の側は向けるべきじゃないか、あるいは上越の新幹線の裏差益問題をもっともっと掘り下げてみるべきではないか、あるいは山中湖畔に目を向けなさいなどというような形で、この文春記事に端を発してそういうような多くの情報が乱れ飛んでいます。私は、そういう中では田中総理自身がたいへん気の毒だと思う。そういう意味も含んで、総理が、かつて衆議院段階で、幾つかの問題について俗にいう有名税として片づけるのではなくて、田中総理自身がみずから解明をしなければならない時期について十分考えていると答弁をされているわけですから、明確にその解明をされる機会国会としても与えてあげるのが、田中総理に対する私たちのある意味では義務でもあろうと、こう思う。  そういう意味で、本決算委員会は、この問題をわずかの限られた時間の個人の持ち時間の中で片づけてしまうという不幸な状態にすべきではないと思うんです。よって、第一に、小委員会決算委員会と並行的に発足をされる。かつて決算委員会の中には、虎の門公園地に対する小委員会など四十九回にわたる——非常に長い何回もの決算委員会委員会の実績もありますから、そういう形で小委員会をまず第一に発足をさせること。第二に、田中総理出席を求めること。第三に、文芸春秋のこの執筆をされた方を参考人として招請をすること。そういうことをきょうは求めておきたいと、こう思うのであります。どうぞ委員長中心として理事会で早急に結論をつけられるようにお願いをして、ここの部分の質問は終わりにしたいと思います。
  32. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいま和田静夫君からの御提案につきましては、たいへん重要な問題提起でございますので、取り扱いにつきましては、後刻理事会協議することにいたします。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 次に、大蔵大臣事務所事業所税について若干お聞きをまずいたします。  自治省をはじめ各省庁から、新税構想が出されて、その実現を希望しています。そうした中で、税の総元締めをもって自認している大蔵省だけが沈黙している状態なんです。まず、各省庁から出されている事務所事業所税内容の可否はともかくとして、この種の新税を創設すること自体について賛成なのか反対なのか、大蔵大臣考え方を伺いたいんです。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 都市財源充実等のために事務所事業所税というような構想各省から提案されておりますことは承知しております。しかし、大蔵省といたしましては、税についての責任ある立場でございまして、法人企業の総合的な税負担のあり方、さらに法人に対する既存の税制、特に地方税である事業税であるとか、法人住民税固定資産税等との関係をよく考慮しながら慎重に検討しなけりゃならない課題考えておりまして、賛成であるとか反対であるとかいう結論をまだ固めておるわけではございません。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 事務所事業所税の各省庁の案を比較してみましたら、こまかいところでは若干違っていますが、大筋では大体一致しています。すなわち、大都市等地域事務所事業所課税すること、それから、その事務所事業所一定規模以上のものであること、それから、収容する従業員数ないし固定資産税の額を課税の基礎とすること、税収規模を約四百億円から一千億円程度と見込んで、それを都市的施設整備等に使用するものとすることなどがそれでありますが、ただ、自治省はこれを地方税とするということを述べています。それから、他の省庁国税にするというぐらいがまあ大きな違いであります。  で、大規模事務所事業所ができれば、その地域に種々の財政需要が起きることはこれは明らかであります。事務所に通勤する者の交通機関、あるいは使用する水道、排出するごみの処理、あるいは冷暖房等から生ずる公害対策、それから消防施設の強化、この防犯のための警察力保健衛生対策など、国、地方が提供する人的なあるいは物的な公共サービスが必要になることも明らかであります。言いかえれば、事務所事業所は、このそうした公共サービスの上に活動し、機能できるわけであります。したがって、各省庁がそろって新税構想を打ち出した背景をたどると、こうした公共サービスに必要な財政需要に対応するためには、やはり、これはもう何か新しく財源を求めなくてはならないと判断をしたからだと私は考えていますが、いまの法人課税は、この収益を課税標準としているために、利益がなければ、その事業活動のため、国、地方の提供する公共資本を使っても税負担をしなくてもよいという、そういう仕組みになっていますね。大企業の社会的な影響の大きさを考えますと、私ははなはだ不合理な制度だと思う。事務所事業所税はこういう点を考慮して、この大規模事務所等担税力と、それから生ずる公共団体負担に対応しようとするものでありまして、財界の反対はともかくとして、一応世論の支持を得た新税ではないかと少なくとも私は考えているわけです。で、いまの江崎自由民主党幹事長代理、前自治大臣も、私との七十一国会における幾つかのやりとりの中で、「事務所事業所税につきましては、これはひとつ本年じゅうに」いわゆる昭和四十八年じゅうに「一つの新税源として体系を整えまして、来年度」いわゆる昭和四十九年度「からは実施できるような形で目下検討をいたしておるわけでございます」、こう私に明確に答弁をしているわけです。大蔵大臣はこの問題にもっと私は積極的に対処をされるべきだと以上の観点に立って思うんですが、いかがです。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど答弁申し上げたとおりの心境でございまして、いろいろな角度からこれは検討しなきゃならないわけでございまして、にわかに賛否を国会で申し上げるまで熟していないわけでございますが、いま申しましたように、各省からそれぞれ御提案があるほど熱心な提案があるということはよく承知いたしております。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 私が若干いま述べました見解について大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事務当局からこの問題についての見解はあとで、検討しておるとすれば述べさしたいと思いますけれども、私は元来新しい税金をつくって新しい税を納めてもらうというようなことはあまり賛成じゃないんでございまして、できるだけ税負担というのは軽いほうがいいと考えておるわけでございまして、新しい税目を設けるなどということは、よくよくの事情のない限りはやるべきことではないんではないかと、やや消極的に私は考えております。
  39. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 大蔵事務当局も、大臣からいまお話がございましたように、常に、税金を新たに設けるということについてはまず第一には消極的でございます。それはあに国税に限らず地方税に限らずそうでございます。いま和田委員がおっしゃいましたように、各省庁からいろいろな案が確かに出ております。しかも数年にわたって出ております。ほぼ一致しておることも確かでございますけれども、一致しておる一点は、確かに、都市財源として何か新たな財源をほしいということがまず急先鋒になって出ておるように思っております。私ども主税当局としますれば、財源の必要なことはそれといたしまして、やはり既存の税制の体系の中において考えられておる新税というものがどういう位置にあるべきかということから考えなければならないと思っております。そういう観点からいいますと、ただいま和田委員がおっしゃいましたように、事務所事業所が大都市にあるということで、それ相応のいろいろな負担をいたしております。それが非常に少ないということであればまた別の観点も必要でございましょうけれども所得だけにあにそれにたよっておるわけではございません。所得が多いときには確かに県税とし、あるいは市町村税としまして法人住民税というのを負担をいたしております。さらにそのほかには法人事業税というのを負担しております。それからまた固定資産税という多額の税金を負担いたしております。特に固定資産税は、私は、大都市にありますところの事業所についてはその応益負担としてはかっこうのものであろうと思っておりますけれども、これは現在の体系の中では非常に重いということで、実は調整措置が講じられているような段階でございます。そういうようにいろいろな税金でもって負担を得ておるとぎに、あるいはそれについて調整措置を講じておるさなかにおきまして、また別途に新しい税を考えろと。しかもそこで考えられております税というのは、私は、いろいろ課税標準はございますけれども、やはり一種の事業税と観念せざるを得ない税金だと思っておりますけれども、その一体考えておられる事業税たるものが、府県税たる事業税、現在ありますこの事業税と一体どういう関係にあるのか、あるいは市町村税たる固定資産税とどういうふうに調整して考えなければならないのか、現に取っております法人の住民税、府県段階、市町村段階に納めておる法人税割りというものと一体どういうふうに考えるべきか、そういう税制の体系からやっぱり新たなる検討を加えなければならないというのが私ども考え方でございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 次の問題に入りますが、農林省、千葉県の大網白里町にある農業振興地域法上の開発不許可地区を、農地転用を前提にして地崎工業が買収をして、国会で問題になって不許可になったという、そういうことが読売新聞の四月十九日号に報ぜられていました。ちょっとこの辺のいきさつを。
  41. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) 千葉県の大網白里町におきまして地崎工業株式会社が約百十五ヘクタールにつきまして建て売り分譲住宅の計画を立てまして、そのうち昭和四十七年の三月ごろから約三十六ヘクタールの農地につきまして農地法の許可を条件といたします売買契約をし、それによりまして仮登記をしたという、そういう事実が認められます。で、他方、この大網白里町は昭和四十八年の二月に農業振興地域に指定をされておりますし、また、同年三月に都市計画法に基づく市街化区域、市街化調整区域の線引きを行なう都市計画区域にも指定されておるわけであります。ところで、本年三月ごろからこの町で農業振興地域整備法に基づきます整備計画を策定する段階に至りまして、この地崎工業株式会社の住宅計画区域の取り扱いについて、市街化区域の線引きとも関連をいたしまして検討がされておりまして、その過程におきまして農林省及び千葉県当局にも種々協議がされたという事実がございます。で、その間、農業振興地域の計画上どう取り扱うかということで、転用不許可の新聞記事が出されたものというふうに考えられておりますが、具体的には転用許可あるいはその事前審査の申し出は現在まで出されておりません。したがいまして、これにつきましてはその申請なり申し出が出された段階において判断をすべきものというふうに考えておりますが、方針といたしましては、集団優良農地は確保するという方針のもとで検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省、この地崎工業の実は土地買収に二つの銀行が融資をしています。で、どことどこが幾らずつ融資をしましたか。
  43. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 北海道共済連と東洋信託銀行でございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 額は。
  45. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 信託のほうが三十二億、共済連が四十億でございます。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 この融資は、農地転用を前提として、そして転用されたあとのその土地の時価を評価をして、それを担保に融資がなされていますね。しかるにそれが農地転用されないということになりますと、この融資は過剰融資ということになりませんか。
  47. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 農地でございますので、それを正式担保にとっておるというふうには聞いておりません。で、まあ過剰融資かどうかということでございますけれども、その銀行は地崎工業というものに対しましてその信用でお貸ししていると思います。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省がこの土地に北海道拓殖銀行の支店設置を認めた合理的な根拠は何ですか、それでは。
  49. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 銀行の店舗を認めます場合に、大ざっぱに申しまして二つ基準がございまして、一つは銀行サイドの事情と申しますか、銀行の経営としてそこに店がほしいと。人口が多いとか、企業活動が盛んであるとかというようなところに出したいというような希望が出てくる場合と、それからもう一つは、急激に経済社会情勢といいますか、そういうものが変化しそうであったりして、そこに人口がふえていったりして金融機関の数が少なくて、預金者といいますか、一般人のほうに不便があるというようなときに認めるというのが大体大ざっぱな基準でございます。一般的には金融機関の数というのは、銀行から農協に至るまででかなりたくさんございますので、全体の方針としては抑制的な考え方でやっておりますので、一行につきまして、大体年に一カ店ないし二カ店というようなものを認めるというのが大ざっぱな方針でございます。  北海道拓殖銀行がこの地区に店を出しましたのは、北海道拓殖銀行——北海道という名前かついておりますけれども、私どもは一応、都市銀行ということで扱っております。都市銀行は、本店の所在地が東京であろうと北海道であろうと、全国的に店舗を整備するという考えを持っております。したがって、北海道拓殖銀行は、長年の歴史で北海道地区には稠密な店舗網を持っておりますけれども、本土にはあまり店舗がございませんので、北海道拓殖銀行の志向としましては、首都圏あるいは近畿圏といったようなところに店舗網を整備したいという、これが長年の願望でございます。逐次、先ほど申し上げました、一年に一、二カ店というようなことで整備してまいっております。したがって、神奈川、千葉、埼玉といったようなところにも逐次出しております。  大網町ですか、この場合は、あの辺が東京のベッドタウンとして将来発展するであろう、それから、銀行側の店を出したいと言ってきておりましたときの理由としては、国鉄がやがて複々線化するであろう、そうしますと、いずれそこは人口がふえてくるであろう、そういうところに私どもは先回りして店を出しておきたい、こういうことで認可した、こういうことでございます。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 この開発不許可地域ですね、これは、地区の開発を前提にして大蔵省が結果的には北海道拓銀の支店の設置を認めたということになりませんか。
  51. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 開発許可、まあ、宅地開発的なことがあの地区で盛んに行なわれておるだろうということは予想できたのでございますけれども、その開発許可を前提として店を認めたと、それほど直接的な関係はございません。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 結果的にはどうもそういうことになるんですがね。一説によると、これはほとぼりのさめたころにこっそり農地に転用してしまうんだという話が伝わってきています。そういうことが万々一あってはならないと思うから取り上げたんですがね。農林省はき然たる態度をもって、すでに四億もの金を投じたこの地域の農業構造改善事業をこれは継続すべきですよ。いいですね、それ。
  53. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) 先ほどもお答えいたしましたが、まだ許可申請等の段階に至っておりませんが、農業振興地域の整備計画におきまして農用地区域をどのようにきめるかということが、本件の取り扱いと関係があるわけでございます。この農用地区域の線引きにつきましては、現在手続中でございますが、その内容におきましては、本件土地のうち既成市街地に接続した部分及び将来市街化をはかることが相当と認められる区域につきましては、農用地区域から除外し、集団優良農地として農業振興をはかるべき地域については、これを農用地区域に入れるということで現在手続を進めておるというふうに聞いております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 いまいろいろ言われましたが、時間ももうないからあれですけれども、すでに四億もの金を構造改善事業で投じているわけでしょう。それはあなた、国民の税金を結果的にはむだ使いするというような形にならぬように心がけるのがあたりまえでしょう。そういう観点というものはしっかりお持ちになってこのことには取り組まれると、一言でいいです、そういう態度でよろしいですか。
  55. 犬伏孝治

    説明員(犬伏孝治君) いまお話のあったお考えはそのとおりでございます。われわれとしては、農業振興をはかるべき地域、これは集団的あるいは優良農地、これを確保していく、で、営農がその土地において十分行なわれるということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 最後に大蔵省。東邦信用金庫と、東京都中野区大和町二丁目二十八番六号在住鈴木康史さんとの間で係争中の事案があることは、これはよく御存じですね。
  57. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 係争中の事案のあることは承知しております。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 これは、鈴木さんの無記名預金の三百万円が東邦信用金庫にあったかなかったかという争いなわけです。私は、昭和四十六年の九月三十日の本委員会でこの事件に関連をして質問をいたしました。それ以来じっくり当事者の話を聞いたわけです。したがって、この裁判の成り行きには注目をいたしています。  そこで、ともあれ裁判中のことでありますから、事実関係がそこで明らかにされるのを待つほかないわけですけれども、金融機関の公共性にかんがみて、私は、どうも東邦信用金庫が実は非常に問題だと思う点があります。紛争の当事者であるこの鈴木さんに何ら誠意をもって接触しないということでありまして、民事の訴訟に入る前に、この鈴木さんがその無記名預金の金額、年月日、使用印を申し出たんですね。いやしくもそういうことがあった以上、資料を十分に信金側は提示をすべきですよね。そして、鈴木さんのほうが間違っているのならば間違っていると十分に説明すべきです。その上で訴訟になったのならば私はしかたがないと思うんですが、東邦信用金庫は金融機関として当然のそういう義務を果たしていない。そういうことをやっていない。していないどころか、ある一時期から鈴木さんを狂人扱いにしてみたり、鈴木康史などという人物と会ったことはないなどというような、まあ聞いたこともないという卑劣な態度に変わってきたわけです。  この東邦信金の態度というのは、昭和四十四年の二月七日、東邦信金の荻窪支店長古屋力三氏が、東京新聞の特報部の最首記者によって見破られて、そうして東京新聞が大きくこれを追及をしていました。そうすると、上からの指示によってそういう態度をとったんだと、こういうふうに言いのがれる。最首記者のそのときの取材テープも現存をしていますが、裁判になってしまった以上、これは大蔵省としてもその結果を待つしかないのでしょうけれども、私は、裁判に入る前に東邦信用金庫がこういう形の態度をとった、これはもう責められるべきものであると考えているんですが、大蔵省はいかがお考えになりますか。
  59. 高橋英明

    説明員高橋英明君) いま先生おっしゃいましたように、この東邦信用金庫と鈴木さんの係争の問題につきましては、まあ、係争になっておりますので、私、意見を差し控えたいと思いますけれども、一般に、金融機関が預金者等から苦情など申し出られた場合に非常に尊大であるとか、そういうような態度をとることはまことに好ましいことではございませんので、これは金融行政とか銀行行政以前の問題かとも思いますけれども、そういう金融業務というものが本来サービス業務であるという精神に徹して、お客に不快な思いをさせず、迷惑をかけないように随時指導してまいりたいと思います。
  60. 前川旦

    委員長前川旦君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  61. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記起こして。
  62. 田代富士男

    田代富士男君 私は、国有財産の払い下げの問題につきまして質疑を行ないたいと思います。  最初に、昭和三十二年十二月二十一日付の建設大臣根本龍太郎名で告示されました建設省告示千六百八十九号の中に記されてあります千代田区の大手町にあります大手町公園は、いかなる理由によってできたのか、まず御説明をお願いしたいと思います。
  63. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 昭和三十二年に大手町公園が公園として都市計画決定されましたのは、当時、東京都が公園緑地計画を全面的に再検討いたしまして、その一環として行なったものでございます。このときの再検討では、従来、公園緑地として予定されておりました土地のうち、すでに住宅等に利用されてしまっているものとか、そういうその後の事実に基づきまして、実際に公園としての事業化が不可能と思われるようなもの、こういったものを廃止いたしますとともに、それにかわります公園予定地として、当時、都の財政も苦しいというような事情もバックにありまして、公園をどのように計画的に配置するのが理想的であるかというような意味よりは、むしろできるだけその用地費を節約できるような場所という意味から、国公有地、こういったものを主体として公園の予定地を確保しよう、こういう方針で行なわれたということでありまして、問題の大手町地区につきましては、ちょうどかなりの面積の国有地もありましたし、まあ当時の周辺地域の土地利用状況から見ましても公園が必要であろうと考えて、都市計画決定公園としての予定をいたしたということでございます。
  64. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長が申されたとおりに、緑地計画の再検討としてどうしてもあの大手町地区には公園が必要である、その必要な公園の用地を取得するにおいては、予算の関係で国有地等をお願いできるならばこれは目的に一致するものであるということで、公園が必要であるというたてまえから、三十二年に大手町公園が公園指定地に決定したわけなんです。  ところが、現在はどうなっているか。御承知のとおりに、都市公園制度が発足いたしましたのは明治六年でございます。昭和四十九年のことしは満百年目を迎える意義ある年です。このときに、大手町公園が、二・一二ヘクタールありました公園予定地が現在ではまぼろしのごとく消え去ってしまったじゃありませんか。いま局長おっしゃいました公園はどこにあります。まぼろしのごとく消え去った大手町公園、この一言で表現されるじゃありませんか。三十二年の十二月の二十一日に公園指定地に決定されて、現在ではまほろしのごとく大手町公園が消え去ってしまう。しかも、どうしても公園用地に必要であると認められたそこの公園東京都民をはじめ国民が願っていた公園が消え去った。このまぼろしのごとく消え去った大手町公園の経過を年度ごとに詳しくお願いいたします。説明してください。
  65. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 最初に都市計画が決定したのは昭和三十二年十二月でございまして、その後の経過を申し上げますと、昭和三十八年十月に二・一二ヘクタールから〇・四七ヘクタールに縮小する変更を行なっております。これは二・一ヘクタールの大部分を公園廃止するとともに、その隣接地区若干を追加するという形で行なわれました。で、その〇・四七ヘクタールとしてきまりました都市計画も、昭和四十七年七月に至りまして廃止いたしております。かわりに、同じ千代田区内の別の場所に若干の公園を同時決定している、こういういきさつであります。
  66. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長が説明されたのを端的に整理いたしますと、三十二年の十二月の二十一日に二・一二ヘクタールあった土地が、三十八年の十月の三十日に東京都市計画公園の変更によって大手町公園が変更されております。この時点でその土地が指定から外されておりますから〇・四七ヘクタールに減った。その〇一四七ヘクタールがまた四十七年の七月の十日に東京都の告示によりまして廃止され、千代田区内に児童公園として〇・一七ヘクタールに減らされてしまった。  じゃ、私、お尋ねしますが、三十八年の十月三十日建設省告示二千七百四十六号の東京都市計画公園の変更、このようにきめられたこの背景は、どういう背景があって、こういう都民の願いでありました公園ができる、そのように緑の少ない東京に緑をつくろうという、これがなぜ変更になったのか。まず三十八年十月の時点の背景を詳しく御説明願います。
  67. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 昭和三十八年に、先ほど申しましたように、大手町公園の都市計画決定を縮小変更いたしているわけでございますが、この理由につきましては、本件を審議いたしました東京都市計画審議会の当時の記録によりますと、国の庁舎建設計画、その他都道築造計画に伴って一部変更を加えるものである、こういうふうにされております。しかしながら、より直接的な理由としては、その後この土地が国有地と交換された経緯から見ても明らかなように、当時築地の中央卸売市場、これを拡張したいという都側の強い要望があり、この中央卸売市場の拡張用地といたしまして、その市場に隣接してちょうど国有地があったわけであります。これを確保するためにこの大手町の都有地と交換する必要があったからだと思われます。この地区は、その後の土地利用状況の変更、周辺の官衙計画等の進行から見まして、次第に人口も少なくなり、二ヘクタールにものぼる公園というものをこの場所に建設するという必要性が次第に薄らいできた。一方、都としては、卸売市場の拡張用地をそれに隣接する国有地を確保することによってその計画をぜひとも実現したいという要請もありましたために、公園の計画決定——せっかく計画決定した公園ではありますが、これをその見返りとして縮小することもやむを得ない、こういうふうに判断したものと思われます。  今日の目から見て、いよいよ緑の不足が著しい。公園緑地は少しでも多く確保しなければならないという今日の課題から見ましたときに、ふり返って見ますと、かわりの公園計画もなしに、ただ一方的に、既決定のせっかくの公園というものを縮小した、大幅に縮小してしまったということははなはだ遺憾でありますが、都市公園の必要性というものが財政的にも行政的にも大きく取り上げられたのはまことに残念ながら近年のことでございまして、当時としてその関心が薄かったということがいまにしてみれば残念だということでございます。
  68. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長がまぼろしのごとく消え去った大手町公園のその理由につきましていろいろ説明された。その中で私は納得できないものがあります。昭和三十二年の発足のときには、どうしてもこの地域に公園がほしいのだ、そのためには取得する土地は安い国有地をお願いしたいということで東京都は取得しております。それから、国の政策は一貫して緑化推進を続けております。それなのにいまの説明では、昭和三十八年度の説明では、この大手町公園の指定地になっているそこが、国の庁舎建設のためにというそういう国からの要請によりまして大手町公園がつぶされた。それは公園として必要であると三十二年は認めていたけれども、いまの説明では必要性が薄らいできた。三十二年のときは必要である、三十八年のときには必要性が薄らいできた。その裏づけは国の庁舎建設計画のためにという大義名分のもとになされた。で、いま局長は、代替地等も設定せずにこういうことをやったのははなはだ遺憾である、こういうような御答弁でありますが、せっかく経済的にも国有地であるならば市民のためにも供することができるのじゃないかと選んだ土地が必要性がなくなった。その裏づけは国の庁舎建設計画のためにということじゃないですか。これはどういうことなんですか。ここらあたりをもうちょっと説明してください。国の庁舎建設のために、大義名分、国からの要請によって、ここらあたりはっきりしてください。
  69. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 国の庁舎建設のためというふうに議事録では書かれておるわけでございますが、当時の実際の事情、その説明を審議会でいたしました担当者の話を聞いて、問い合わせてみましたところ、これはことばが非常に足りないわけでありますが、昭和三十四年に首都圏整備委員会で首都官衙地区整備計画というものを立てております。それが策定されたわけでありますが、その三十四年に定められた計画に基づいて、その後、霞が関地区は現在のように進展しており、一方、大手町地区につきましては、ちょうどこの公園の都市計画決定をした土地の北に隣接する地区に国の第一次出先機関をまとめて建てるという計画になったわけでございます。その後、三十八年に最初の第一合同庁舎が建設され、以後次々と建設されてきておりますが、そのような新しい事態が起こったと。そこで、その北に隣接して大きな官庁区域ができますと、その辺、周辺の土地利用計画というものもおのずから変わるべきではないか。特にこのように広い公園というものがこの場所では必要性が薄らぐ、こういうふうに判断したと、この旨を説明するつもりであったが、非常にはしょって説明したために、公園予定地そのものが官庁の予定地になるかのごとく表現されておるわけでございますが、その点はなはなだ遺憾でありますが、実情はそういうことでありました。まあ確かに周辺の土地の利用計画として国の第一次出先機関というもののビルが立ち並ぶということになれば、いよいよそこに、そのあたりの常住人口、夜間人口というものも減ってくるであろうというような見込みから、その時期には、三十八年におきましては大幅に縮小し、若干の公園を残しつつこのような変更を行なったものと、こう考えます。
  70. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長の話を聞いていますと私は疑問点がますます出てくる。この審議会の、東京都市計画地方審議会の会議録は不完全であるかのような意味に受け取れる。ことば足らずのために意を尽くしていないと言う。いま局長は、当時の担当者に聞いたらそういう説明であった。私も当時の東京都の責任者に、いまは東京都をおやめになっていらっしゃるその人にお会いして当時の様子を聞いております。その人からは、われわれはせっかく大手町公園の公園指定地をつくったけれど、国の庁舎建設計画ということでこれは変更されましたと、明確にその答えが——答えというか、その人のお話を聞いて帰りました。しかしそれは一対一の話です。公の場所へこれは出しましても裏づけがなくてはならない。局長責任者からはこの審議会のこれはことばが足りませんというのを聞きましたという、それも建設省とその人たちの一対一の話し合いです。そういう一対一の話し合いというものは証拠がない。そういう場合に基準になるために後々のための、計画等の施策の後々の証拠のために審議会の議事録というものは残るんです。局長の言うことも正しいでしょう。私が直接聞いたのも正しいでしょう。じゃ、どちらが正しいかとなった場合に、ことばよりもそのときの議事録というものを明確にしなくちゃなりません。その議事録には、はっきり書いてあるじゃありませんか。昭和三十八年十月十四日、この会議録の中に「最初は、大手町公園でございます。この大手町公園につきましては、国の庁舎建設計画その他都道築造計画に伴いまして、土地利用上一部の変更を加えたいと考えております。一部の縮小をいたします反面、追加地域といたしまして、現在の労働省が建っておりますが、あの庁舎が近く改築になりますので、あの部分六百坪を公園に追加いたしたいというふうに考えておる次第であります。」、局長、聞いておいてくださいよ、私の言っている最中に。私はこれ以外に質疑が、ありましたかと言ったら、これ以外に質疑はありません、この審議会においては。これにことばが足りなかったとかなんとかありますか。これ以外の質疑はありませんよ。大手町公園の場合はこれで認められている。あなたも聞かれた、私も聞いた。この証拠となるべき審議会の議事録では国の庁舎建設ということが大きな問題となって公園が廃止されてしまっている、これは明らかじゃありませんか。あなたの言いわけは信用できませんよ、どうですか。
  71. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 確かに先生のおっしゃるとおり、都市計画審議会の議事録は「国の庁舎建設計画その他都道築造計画に伴いまして、土地利用上一部の変更を加えたいと考えております。」云々となっておりまして、それ以外の質疑はなかったようでございます。私、申し上げましたのは、当時のそういう説明をした幹事の人がどういう意味で言ったのか。と申しますのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、中央の官衙計画というものが首都圏整備委員会昭和三十四年にきまっておりました。それは霞ケ関地区のほかに大手町地区が定まっておりまして、約四ヘクタール、行政機関の第一次出先機関というようなことできまっております区域がこの大手町公園の区域を含んでいない。ちょうどそこから北に隣接する地区四ヘクタールというふうにきまっているわけであります。三十四年にそういうふうにきまったものが三十八年にまた大手町公園の地区も含むように変更したという事実もございませんし、事実その後も北に隣接するところに第一次出先機関が次々と建ってきたわけでございますので、どうも大手町公園の地区そのものが官庁の建物になるという事実が客観的にないわけであります。  そこで、どういうことでそういう国の官庁計画というようなことを審議会で述べたのかということを私も疑問に思いまして確かめたところ、その土地そのものが国の庁舎の予定地にあるために廃止するというのじゃなくて、それに隣接する地区が大きく官庁街になるものですから、付近が官庁街として固まっていなかったときの考え方から見ての公園の必要性は薄らいだ、こういう趣旨だと聞いたわけです。それならばそれなりに私も理解できたものですからいまのようにお答えしているわけですが、ただ首都圏整備委員会では早くから中央官衙街整備計画というものを検討してきたわけでありまして、その三十四年にはっきりきまるまでは、霞ヶ関地区、大手町地区、代官町地区という三つの地区が計画案の対象として、まあその辺一帯を全体としていろいろ検討、計画されてきた、それが三十四年にはっきり固まって今日に至っておる、こういうわけであります。
  72. 田代富士男

    田代富士男君 これは局長と話し合っても、私の言っていることと——あなたは説明ばかりです。ちゃんと証拠があるんですから、証拠のとおりでいくべきですよ。相手からこう聞きました、こう聞きました、私も聞いているわけなんです。何回も繰り返しますけれども、それで、これはここに証拠がちゃんとあるわけなんですから、このように。  だから私局長に聞きますけれども、あなたは東京都に緑をふやしたいんですか、公園をふやしたいんですか。それとも公園は少なくするほうですか。端的に、一体方針はどっちなんです。
  73. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) ぜひふやしたいという立場であります。
  74. 田代富士男

    田代富士男君 それならば、ここに国の官庁の庁舎の計画はなっていたけれども、いまるる説明されました結論として、ここに国の庁舎は客観的には建たないようになったという局長の説明、あなたの説明に従ったとしましょう、私は、あえて言うならば。そうすると、この公園建設、公園の指定用地になっていた用地は、国の庁舎が建設されないならば、それは公園指定地としてもとへ戻すべきが国の本質じゃないか。いまあなたのおっしゃったとおりに都市公園はふやすべきであるというたてまえからするならば、国の庁舎建設計画のために公園指定地が廃止された、それの上の建物が建たないならば、もともとの公園指定地に国は戻す、これが国のとるべき措置じゃないですか。この点はどうなんですか。
  75. 吉田泰夫

    説明員吉田泰夫君) 確かに今日の国民の要望、私どもの使命というところから見ますと、公園というものはできるだけたくさん指定し、予算もつけて拡大していく、いやしくも一たん計画決定したようなものを、よほどの事情がない限り廃止とか縮小というようなことはすべきでない、そのようなことを行なう場合にも極力同等面積ぐらいのものを別途都市公園予定地として確保するという配慮があってしかるべきだと思います。まあ私どももその後の緑の不足というものの進行、国民的に緑が要望されている、特に大都市地域においてしかりという情勢を踏まえまして、最近におきましては一方的な都市公園の廃止ということには極力これを押える、またやむを得ない事情がある場合におきましても、代替地の公園を同時決定させるというような指導をしておるわけでございますが、まあ三十八年という時期におきまして、非常に国の公園の予算も足りない、各公共団体における公園に割り振られた予算額等も少ないということから、都としても、千代田区としても、あるいはこれを助成する立場にある国としても、なかなか公園が計画どおり進まないという事実もありましたし、何と申しましても公園、たとえば都市公園整備五カ年計画なるものが初めてできまして、ようやく五カ年計画に基づく長期の整備計画がつけられ、予算的にも飛躍したというのもごく最近の四十七年からのことであります。そういうことで、いまから振り返ればたいへんに遺憾であった、今後はそのようなことの決して起こらないようによほど戒めていかなきゃならないというふうに考えます。
  76. 田代富士男

    田代富士男君 局長は、いまから考えれば遺憾である。しかし、まぼろしのごとく大手町公園は消えてしまってから遺憾である。これは通るでしょうか。二・一二ヘクタールの公園予定地が〇・一七ヘクタールに減っている。それでそのようになってしまってから遺憾である。これでは私は、三十二年度の告示のときの趣旨にも劣ると思うのです。だから、大蔵省の最近の方針は、理財局長から各地方財務局長あてに、国有地の有効利用についての通達が出されております。それに基本方向等が述べられておりますが、国有地は従来よりも一そう公用、公共用の用途に優先的に当てなくてはならない。それから、都市の再開発に寄与するためにも、公園や緑地等のオープンスペースを確保することについて地方公共団体の一そうの努力をしていきなさい、配慮するようにという、これは四十七年にもこういう指導が出されておりますが、四十七年じゃなくてこれは以前からこういう姿勢というものはあったはずです。そうすると、この指導からも今回行なったそれは反するんじゃないか。これは大蔵省の理財局長もお見えになっていらっしゃいますから、その趣旨から、お考え、御見解をお述べいただきたいと思います。
  77. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) いま田代委員御指摘のとおり、私どもといたしましても国有地の処分にあたりましては、できるだけ公用、公共用を優先するとこういうたてまえをとっている次第でございます。本件につきましていろいろ御質疑がございましたが、当時私どもが聞いておるところによりますと、御承知のように東京都が築地の市場の拡張を何よりも優先した政策と考えまして、ところがその築地の市場の用地を獲得するためには相当膨大な資金が要る。その資金を捻出するための交換財産として大手町の都有地を出したかと、こう思います。そして、その場合のいまの議事録には、いろいろ国の要請によりというようなことがございますが、いま都市局長から御説明がありましたとおり、三十四年にはすでに当該地区には国の主要官衙庁、その他官衙を建設する予定はすでに消滅しているわけでございまして、そういう点からいきまして、あと残りは当該用地がほんとうに東京都の公園として確保することが適当であるかどうか、ぜひ必要であるかどうかというこういう判断からなされるべきものと思います。私どもといたしましては、公園全体の建設計画につきまして、東京都なり建設省の御意見を尊重してやっていきたい、こう考えております。
  78. 田代富士男

    田代富士男君 いま、東京都の築地の用地を確保するためにと、そういう要請もあったという話です。その話は私ども聞いておりますが、東京都から緊急にそれがほしいのだというような話ならば、いまその当時交換された土地はどうなっているか。その当時、いまから十年前に取得された土地が、緊急であるならばいま使われているはずです。交換された土地の一部しか使われていない、それが緊急であったでしょうか。私現場を見てきております。緊急であるならば使っているはずです。使われていない、一部しか使われていない。その根本は、ここにあります会議録に、国の庁舎建設計画のために公園が廃止された。これは一つの証拠ですよ。いまの東京都からの要請でも使われていないじゃないですか。こういう客観的に考えましてその理由は成り立たないと思います。だから都市局長も遺憾であるということを申されましたから、この話にとらわれていたらあとへ進みませんから一応これはおくとして、あくまで国の庁舎建設の計画のためで、市民のいこいの場所である公園が奪われて、大手町公園はまぼろしのごとくなくなってしまった、これが現実なんです。  そこで次に問題は移りますが、いま私が大手町公園の問題を主題といたしましたが、東京都の所有地でありました都有地が、国有地として移管された。国有地というものは国民共有の財産です。国民全体の土地です。  その手続上の問題ですが、あの大手町公園のあと地、いろいろ売り渡しがされておりますが、東京都から四十五年の四月十八日に東京都の都有地が八千二百九十平方メーター国へ移管されております。それから四十五年六月の十八日、国有地を大洋漁業、三和銀行に払い下げられております。大洋漁業には五千四百三十三平方メーター、金額にしまして三十二億六千百七十万円。三和銀行へは二千八百五十七平方メーター、十六億九千七百万円。それから四十八年三月二十六日都有地を国有地に移管された。これは八百二十三平方メーター。その八百二十三平方メーターが四十八年三月三十一日大洋漁業に払い下げられた。大洋漁業はその八百二十三平方メーターを八億二千五百五十三万八千三百二十円で入手をいたしております。いま私が述べましたとおりに、国有地を大洋漁業や三和銀行に払い下げた場合に、昭和四十五年の場合は二カ月間で払い渡し、東京都から移管している。そして大洋漁業、三和銀行は昭和四十八年の場合はたったの五日間、もう一度日にちを言いますと、四十八年三月二十六日、都有地を国有地に移管した。四十八年三月三十一日、それを大洋漁業に払い下げた。五日間でこのような手続がとられているわけなんです。このようなたった五日間で払い下げをしなくてはならない理由は何か。いま言うとおりに、国有地は国民財産です。そういうものを五日間やたった二カ月間ぐらいのそういうもので簡単にそういうような取り扱いをしてよいものか。ましてこれは都民の求めていた緑の公園の土地です。それを奪い上げて、五日間ぐらいで、それも一流企業の三和銀行や大洋漁業なんかに払い下げてよいのか。この点に対しまして大蔵大臣、いかがでございますか。
  79. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 確かに御指摘のとおり、一カ月なりあるいは五日という期間は非常に短いと私ども存じます。ただ、これは正式のこういうような契約が結ばれる前に、事前にいろいろな調査、その他のことも先行しておりまして、必ずしも五日というものが全然準備なしに行なわれた、こう私ども考えてはおりませんが、そういうような五日というような、たとえ形式的にしろこういう期間で処理したことははなはだ遺憾であると思っております。
  80. 田代富士男

    田代富士男君 大臣、いかがですか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま事務当局からお答えしたとおりでございます。
  82. 田代富士男

    田代富士男君 だから私は、これは私見になるかわかりませんが、国有財産国民の共有のものです。そういう場合には民間の土地と交換するというような場合には、交換される土地も国民のだれしもが喜んでもらえるような適当な場所を選ぶべきである。いま理財局長が、事前にいろいろ準備したとおっしゃるけれども、じゃあそういう払い下げをする場合に、いろいろな条件を伴ったいろいろなケースがあったはずです。また私はそれは国民に公表すべきです。そしてこれは最もよい条件である、そういうようなよい条件を加味したもの、そういう告示でもして、それを取り扱うぐらいの、国民財産ですから、やるべきじゃないか。それをいとも簡単に、五日間準備をしたとおっしゃるけれども、どうしてやったのか。なお、私はここでどうして大洋漁業や三和銀行や丸の内燃料株式会社——これは三井物産の関係、この丸の内燃料株式会社の上には三井物産の本社社屋を建てようという計画があります。こういうようなところへ払い下げをしなくてはならなかった理由です。端的にこれは御説明願いたい。
  83. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 私どもといたしましては、すでに当該都有地につきまして官衙庁の建設をする計画はございません。したがいまして当該都有地が公園として適当かどうかあるいは残しておく必要があるかどうかの判断をしまして、国としましては、ほかにたとえば公務員宿舎の用地とか、その他相当都内に緊急に代替地を要する事情がございまして、そういうものにつきまして代替地を提供する企業、こういうものと交換契約を行なったわけでございます。特に公務員宿舎の充足というものが強く言われておりますので、大洋漁業なり、当該払い下げを受けました企業が提供した代替地はそういう必要な施設を建築したわけでございます。
  84. 田代富士男

    田代富士男君 いま理財局長が公務員宿舎等の必要があるといういろいろな説明をされましたけれども、こういう、ここは言うなれば一番最初申し上げましたとおりに、東京都民の求める緑の公園になろうとしているところです。そこへ、私はそれだけの理由で大洋漁業や三和銀行やこういうところへ払い下げをしたという理由はほかにもいろいろあると思うんですよ。私ちょっと納得できないですけれどもね、それだけの理由では。私の納得できる——それは通り一ぺんの理由だと思いますよ、宿舎は……。それだったらばどこでもその程度の、宿舎程度のものだったら、提供できるところはこれ以外の企業は多々あります。よりもよってこういうような大手の企業に払い下げを、ましていろいろな手続は事前にやっていたと、五日間の手続、一カ月や二カ月の手続で扱われていると。私の納得できるような——私の納得できるようなということは私のうしろに東京都民や日本の国民の皆さん方が、それならばやむを得なかったと納得できるような説明をお願いします。いまの説明では納得できないと思います。
  85. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 実は公園設置の必要性につきまして、私どもは第三者として、逆にいろいろな意見を述べることは差し控えたいと思いますが、先ほどの建設省のほうの答弁からございましたように、当該地区は夜間人口もない、昼間は周囲はビル街であるというようなことから、おそらく都市公園計画を変更したのじゃなかろうかと思いますが、私どもといたしましては、いま田代委員が御指摘いたしましたとおり、代替地を急速に必要としていたという事情と同時に、官衙庁の建設計画もすでになくなっているという現状から見まして、当該地区が一つの重要なオフィス街、ビル街として運営されていくということも一つの土地の合理的な利用に沿うものではなかろうかと、こう考えている次第でございます。
  86. 田代富士男

    田代富士男君 だから私はそれでは納得できないと思うのです。オフィス街です。そうなりますと、もとの私がいまさっきから言っているこれに戻らざるを得ないんです、この議事録に。国の庁舎の建物が建ったならば、それは私は理解できますよ。国の庁舎建設計画と、そのために公園が廃止されたわけなんですから。これ建てる必要がなくなった。それならば戻すべきです。緑をふやすと建設省は言っている。理財局長も緑をふやしなさいと最近はおっしゃったところです。三十八年も、一貫して流れている。もう私はその時点の問題をとらえても納得できません。ましてここへ大洋漁業や三和銀行という大手の企業じゃありませんか。だからここに審議会の計画どおりに官庁の建物が、合同庁舎が建ったというならば、審議会が答申して建てているわけなんですけれども。そうすると、この審議会の答申と、審議会における審議の趣旨と、この民間のこういうオフィス街にするということはいいわけなんですか。じゃあこれは審議会の審議というものは踏みにじられたと解してもいいですか。そこらあたりどうですか。
  87. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 審議会の議事録にそういうような説明があったということは私も聞いております。ただ事実関係だけを率直に答えさしていただきますと、三十八年の場合も四十五年の場合も東京都から普通財産の交換申請がこちらのほうに出ておりまして、私どもといたしましては、そういう申請を受けまして処置したわけでございまして、その際大蔵省といたしましては、当該地区が国の官衙庁の敷地として利用されるということは当時思っていなかったわけであります。
  88. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと関連。  国有財産法の解釈をお伺いしたいのですが、国有財産法の十三条の一にこういう規定があるのですが、「公園又は広場として公共の用に供し、又は供するものと決定した公共用財産について、その用途を廃止し、若しくは変更し、又はこれを公共用財産以外の行政財産としようとするときは、国会の議決を経なければならない。」、で、あとただし書きが若干載っておりますが、ここで言う「公共用財産」とはどういうことなのか。  それから、田代委員がいままで指摘をしてきました、昭和三十二年に建設省告示で都有地にあるその当該地点が大手町公園用地として指定をされた。そして指定をされたまま四十五年——これはまだ廃止されておりません。——廃止したのか、これは。三十八年に廃止したんですか。
  89. 田代富士男

    田代富士男君 そうです。
  90. 二宮文造

    ○二宮文造君 三十八年に廃止したのですね。
  91. 田代富士男

    田代富士男君 もう一つの分が四十七年。二回あるわけなんです。
  92. 二宮文造

    ○二宮文造君 この「国会の議決を経なければならない。」、要するに大手町公園としてそこに公園を建設すると、こういう東京都の意向でもあり、また建設省もその意向で国の意向として告示をしたわけです。それがいま説明のような段階に発展するまでにこの十三条の一項は必要ないのですか。
  93. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 国有財産法十三条一項には確かに御指摘のような条項があるわけであります。ただしこの条項は国有地である当該財産ということでございまして、今回の場合は国有地でございませんので、都有地でございますので。
  94. 二宮文造

    ○二宮文造君 もう一ぺん。ここで言う「公共用財産」とは国有財産とはなっておりません、公共用財産となっておりますが、なぜこの条文で、それまでずっと国有財産ということをこの法律で言っておりながら、なぜここで「公共用財産」と特にことばを言いかえているのか。この辺御説明いただきたい。
  95. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 十三条に定めております「公共用財産」は、公園、緑地等公共に利用を提供しております国有財産でございます。国有財産法上の公共用財産でございます。したがいまして……。
  96. 二宮文造

    ○二宮文造君 国有財産法上の公共用財産
  97. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) そういうことでございます。
  98. 二宮文造

    ○二宮文造君 だから国会の議決は必要ない……
  99. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) はい。
  100. 田代富士男

    田代富士男君 いまお話がありましたが、私が端的に質問したのは、理財局長のあれがこの審議会の趣旨に反しているじゃないかということを聞きました、端的に。だから、このときには大蔵省からは当時の管財局長の江守堅太郎氏、それから関東財務局長の向井正文氏、同じく建設省からは当時の道路局長の尾之内由紀夫氏、住宅局長の前田光嘉氏、計画局長の町田充氏、こういうメンバーが参加しまして、国の庁舎建設計画のためということを質疑もなくこのとおりだということでやっていく、これが大蔵省も知らなかったでなくして、大蔵省の当時の管財局長、関東財務局長出席しておりますし、建設省の局長出席した上に、国の庁舎建設計画ということになっている。それに三和銀行や大洋漁業、また丸の内熱供給株式会社、これは三井物産の系統の。だから私は端的に大洋漁業や三和銀行は官庁でございますかと、これは質問をしたいところなのです。こういうやぼな質問はやめますけれども、この趣旨に沿わないじゃありませんかと、いまさっきいろいろ公務員の宿舎云々という話があったけれども、この趣旨に合わないじゃないか、この点は大臣いかがでございましょう。いま理財局長からお話を聞いたが、大臣いかがでございましょう、端的に。この趣旨お見せいたしますよ、大臣。(資料を示す)ごらんになってください。「最初は、大手町公園でございます。この大手町公園につきましては、国の庁舎建設計画その他都道築造計画に伴いまして、土地利用上一部の変更を加えたいと考えております。一部の縮小をいたします反面、追加区域といたしまして、二現在の労働省が建っておりますが、あの庁舎が近く改築になりますので、あの部分六百坪を公園に追加いたしたいというふうに考えておる次第であります。」とあります。これ以外に質疑応答はゼロです。このような国の建設計画ということなんです。
  101. 前川旦

    委員長前川旦君) 田代委員、席へ戻ってください。
  102. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たいへん恐縮でございますが、理財局長からもう一度答弁させますから、そのあとで私から。
  103. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 確かに田代委員の御指摘のとおりでございます。もし私どものほうの責任者出席しておりました席上でそういう説明が行なわれましたといたしますれば、大蔵省といたしましてはやはり発言を求めまして、そういう説明に関する部分は取り消しを求めるべきが至当であったかと、こう存じております。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、国有地の管理、処分、まあ取得ももとよりでございますけれども、国有地行政というものは土地ばかりでなく、不動産も加えまして、動産も加えまして、たいへん慎重にやらなけりゃならぬと考えます。しかるがゆえに、中央、地方を通じまして審議会を設けまして、御審議をいただいて御理解等を得た上で実行いたしておるわけでございますから、御指摘の審議会の議事の経過というものは確かに行政府といたしまして十分尊重してかからなければならぬと思うのでございまして、その審議会の審議内容につきまして、いま言ったような、いま御指摘のような事態が生じておるということにつきましては十分反省を加えなければならないものであろうと思います。
  105. 田代富士男

    田代富士男君 大臣が、これに対しては反省を加えなくちゃならないということはお認めになりました。矛盾点があるということを私は指摘いたしましたことをそのようにお述べになりましたから、これでこの問題をとどめますけれども、それで次に、こういう大洋漁業等を選ばれた、慎重に選ばれたということでございますが、四十五年六月の十八日に、いまさきも話しましたとおりに、大洋漁業が三十二億円で払い下げを受けた土地でございますが、この土地が協和銀行は八十億円の根抵当権の限度額を決定しております、限度額を。これだけでなくして、同じ日に、所有権移転請求権仮登記まで設定をしております。これは事実でございます。その証拠はここにあります。謄本がここにあります。さすれば、裏を返せば大洋漁業はそれほどまでに銀行に信用がなかった会社であったと見なされる。すなわち、八十億円の根抵当権の設定をされて、その同じ日に所有権移転請求権仮登記までやられている、信用がなかった、これは重大なことです。大企業とはいえ銀行から信用されないような企業国民の共有財産であります国有地を払い下げてもよいものであるかどうか、これ大臣いかがでございましょうか。いまの精神から考えてもどうでございましょうか。
  106. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 大洋漁業が当該地域大蔵省との間で交換いたしまして、そこに土地を取得し、それから交換予定地の土地を取得し、また当該用地にビルを建設するということは、膨大なる資金が要るわけでございまして、そういう点から協和銀行からの資金協力といいますか、融資を仰いだのではなかろうか。ただそれにあたりまして、御指摘の所有権の移転の仮登記、これがなされておりまして、これは大洋漁業の本社社屋及び貸し事務所として払い下げられた当該国有財産につきまして、将来その上に建設されましたものが所有権移転ということを前提としてそういう仮登記が行なわれたかどうか、こういう点がたびたび問題になるわけでございますが、これは御指摘によりまして、当事者のいろいろ説明を徴しましたところ、やはり八十億という融資を担保するための一つの手段としてなされたもの、こういうことを聞いております。一般的に国有財産の払い下げを受けた企業が、その上にビルを建築するにあたりまして、銀行から相当額の融資を仰ぐということは、私どもといたしましてもその事柄の性質上やむを得ないのじゃなかろうか、こう考えています。これはまた大洋漁業が特に資金力がないということを証明するものでもなかろう、こう思っております。
  107. 田代富士男

    田代富士男君 それは理財局長の言い分もそれはそういう言い方はあるでしょうけれども、一般の市民の立場から、いま所有権移転請求権の仮登記をされるということは、どういう立場でそういうことがされるかということは、一般市民の考えから言いましても、いまの局長の説明は説明として、しかしこういうことはわれわれから思うならばふしぎでしかたがない。だからいまさっきからたびたび言いますとおりに、国有財産国民の共有の土地です。こういうような会社に払い下げをしたときの最高責任者である大蔵大臣はだれであったのか、また国有財産を払い下げするときには審議会にかけなくちゃならない、その審議会がいつ行なわれたのかその当時払い下げをした最高責任者大蔵大臣はだれか、お願いします。
  108. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 当時の大蔵大臣は現総理でございます。
  109. 田代富士男

    田代富士男君 日にち日にち……。
  110. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 大洋漁業との交換は、第一次分と第三次分に分かれておりまして、第一次分につきましては、昭和四十五年の四月十八日、第五十九回の国有財産関東地方審議会の答申を得てやっております。これは東京都の間の交換でございますが、大洋漁業との交換は第一回が四十五年六月十八日、第六十回の国有財産関東地方審議会の答申によって行なっております。それからその次に第二次交換でございますが、これは昭和四十八年の三月三十一日、第九十回の国有財産関東地方審議会の答申を得た上で行なっているわけでございます。
  111. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと確認しますが、国有財産関東審議会ですね、審議会で議決したその日に払い下げの契約をなすったんですね、二回とも。
  112. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) データにつきまして担当課長からちょっと御説明いたします。——先ほど答弁で重大な誤りがありましたので訂正させていただきますが、四十五年当時の大蔵大臣は福田大蔵大臣でございまして、四十八年は愛知大蔵大臣でございます。どうも失礼しました。
  113. 佐藤徳太郎

    説明員佐藤徳太郎君) 第一回目の大洋及び三和との交換につきましては、第六十回の国有財産関東地方審議会、これは四十年の七月七日に行なわれた審議会でございまして……
  114. 二宮文造

    ○二宮文造君 間違いじゃないんですか、さっき六月十八日と言ったんですが。
  115. 佐藤徳太郎

    説明員佐藤徳太郎君) それは審議会への答申を得まして、四十五年六月十八日に交換契約を締結した、こういうことでございます。四十年七月七日開催の……
  116. 二宮文造

    ○二宮文造君 四十年ですか、もうちょっとはっきりしてください。
  117. 佐藤徳太郎

    説明員佐藤徳太郎君) 四十年でございます。四十年七月七日の開催の第六十回国有財産関東地方審議会の答申を得た上で、昭和四十五年六月十八日交換契約を締結しております。
  118. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから第二回——資料出さないからこんなことになるんですよ。資料提出拒否するからいけないんです。
  119. 佐藤徳太郎

    説明員佐藤徳太郎君) 第二回目につきましては、四十七年の六月二十九日に行なわれました第九十回国有財産関東地方審議会に付議し、了承を得まして、大洋漁業とは四十八年三月三十一日に交換契約を締結いたしております。
  120. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと理財局長、さっきの説明はちょっともう一ぺん補足説明していただかなければなりませんよ。といいますのは第二回目の八百二十三平米につきまして契約をしたのは確かに四十八年三月三十一日であります。しかし、すでに国有地でありました。三十八年の十月三十日にこの労働省の一部の〇・二一ヘクタールは公園用地としてあとから追加指定になっています。よろしいですか。都市局長そうですね、〇・一二は。——国有地であり、昭和三十八年十月三十日に追加指定されております、公園用地として。そういう事実がありながら、四十七年の六月の二十九日に審議会で議決をさせるということは、第二回この追加になった分が、大手町公園廃止になったこの告示は四十七年七月十日ですから、廃止になる前に、用途廃止になる前に審議会で払い下げけっこうという議決をしておる。こういうことはよろしいんでしょうか。国有地であり、公園用地として指定され、なるほど契約は一年後かもわかりませんけれども、すでにその経なければならない手続として、審議会で議決をしたのが告示以前の日にちに議決するという、こういうことは許されましょうか。
  121. 前川旦

    委員長前川旦君) 答弁急いでください。
  122. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) いま御質問の場所でございますが、当該場所につきましては、三十八年十月三十日にすでに指定が解除になっておるわけでございます。
  123. 二宮文造

    ○二宮文造君 いいえ、そうではありません。——あ、そうですか。〇・二一のところじゃないんですか。追加指定になったところと場所が違うんですか。
  124. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 場所が違うわけでございます。
  125. 二宮文造

    ○二宮文造君 それからもう一点お伺いしますが、四十年の七月に国有財産審議会で払い下げ議決されたと、こうおっしゃいましたね。このときの大蔵大臣はどなたですか。
  126. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 田中大蔵大臣は、三十九年十一月から四十年六月まで大蔵大臣であられまして、あと福田赳夫大蔵大臣が四十年六月から就任されております。したがいまして、当時は福田大蔵大臣でございます。
  127. 二宮文造

    ○二宮文造君 じゃ、就任後だ。辞職後だ。
  128. 田代富士男

    田代富士男君 いまいろいろ質疑がありましたけれども国民の共有のこういう財産がいいかげんに扱われているということを私は端的に示しました。国民の、あくまで私は市民の代表として申し上げるならば、三十二億円の土地に対しまして、市民感情からするならば、八十億円の抵当権が決定されたということはどういうことか。一般の市中銀行で、中小企業の皆さんがお金を借りに行った場合に、大体六〇%から高くても六五%ぐらいです。そういうことから考えますと、大洋漁業のこの限度額八十億となっておりますが、六〇%あるいは八〇%と見積もっても百億から百三十億と見込まれる。ところが、あの土地の不動産屋関係の皆さんに聞きましたら、二百数十億円の評価がされている。大洋漁業は国有財産の払い下げを受けただけで、巨額の資金をやすやすと手に入れたことになる、やすやすと。だから私は、これは市民感情から言って、国民立場から言ってそういうことが許されてよいかどうか、これは大蔵大臣に尋ねたいと思うのですが、どうでしょうか。
  129. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 先に私がちょっと説明いたしたいと思いますが、当該土地、消防署の部分を除きまして第一回の土地でございますが、三十二億六千百万円で払い下げております。この払い下げを行なうにあたりましては、相続税の課税標準価格とかそれから売買実例とかそれから民間精通者の鑑定評価額、これを慎重に総合いたしまして価額を決定していくわけでございます。ただ当該土地がその後どのように値上がりするかということは、私どもも近傍類似価格その他から評価いたしますと、当該土地は四十八年の六月には約六十二億というような評価が与えられるんじゃなかろうかと、こう考えております。まあ八十億円の融資でございますが、現在のところ実行額は六十億になっておるわけでございます。そういう点から見まして、現在の土地価額相当額の融資が受けられているんではなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  130. 田代富士男

    田代富士男君 しかし、私は国民の声を代表していまさっき申し上げましたが、それでいま理財局長が所有権移転請求権の仮登記がされたことに対して、一般論的な答弁をされました。ところが私はここにその登記の謄本も持っておりますけれども、この所有権移転の仮登記をされている謄本をきょうも出席していらっしゃいます国有財産審査課長に、私の秘書がこれを見せまして課長さん御存じだと思います。その直後に課長は大洋漁業と協和銀行の関係者をお呼びになって、お呼びになったあとどうされたか。たぶん八月の三十一日だったと思います、お呼びになったのは。それで一週間の後にこの謄本が抹消されている。これは一体どういうことなんでしょうか。大蔵省はそこまで介入しなくちゃならないのか。協和銀行のほうから聞きましたら、大蔵省に呼ばれておこられましたと。大蔵省がおこった理由。そしていま言うとおりに、所有権移転請求権の仮登記がされている。それをこの謄本を見せたあとに抹消されたと。抹消しましたからこれはいいですよと、ただ単に済まされる問題でしょうか。大蔵省へ大洋漁業と協和銀行が呼ばれて協和がおこられた。だからここのあたり、おこられた理由——なぜ介入しなくちゃならないのか、抹消したのはなぜなのか。これは疑惑を持たざるを得ないんですが、どうですか。
  131. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 御指摘のとおり、所有権移転の仮登記というものが、向こうの説明によりますと、単なる債権担保のためだけであって、所有権の移転を目的にしたものではないと、こういう説明があるわけですが、仮登記までしてそういうことをする必要がなぜあるのかということを私ども当事者を呼びまして聞いたわけであります。すでに、先生十分御承知のように、所有権移転の仮登記があった場合には、万一債務不履行の場合には競売などの手続を経なくて財産を処分できると、こういうような一つのあれがあるわけでございますが、そういう説明を求めましたところ、むしろ、私どもが圧力をかけるというのじゃなくて、真意をただすという意味で呼んだわけでございますが、その後九月十日に至りまして自発的に抹消してきたというのが真相でございます。私どもとしましては、登記を取り消したから事態が変わる、こういうようなことには考えておりませんし、また、そうしろというような指導は一切しておりません。
  132. 田代富士男

    田代富士男君 大臣よくここで聞いていただきたい。私は今回の委員会質問をするためにいろいろな大蔵省資料お願いしましたが、こちらからお願いした資料はほとんど出ていません。これが大蔵省姿勢でしょうか。いま私が質問いたしましたその仮登記の基礎となる契約書、これも出してください、これも出てきません。今度は、抹消するについても、何らかのものがなければ抹消できないから、抹消された時点の基礎となる契約書も出してください、これも出てこない。それは大蔵省は予算を握っていらっしゃるから強いかわかりませんが、大臣、この姿勢だけははっきり改めてもらいたいのです。こういう姿勢で国有財産の払い下げ等をやられたらどうなりますか。いま端的に、これは所有権移転の問題、そういうむずかしい問題じゃありませんよと簡単に言うならば、それならば契約書を出しなさい。それは出せぬと言う。自発的に抹消してきたと、いいことばですね、自発的にです。自発能動ということがあります。しかし、自発的にといっても、呼ばれたという縁があるでしょう。呼ばれて協和銀行はおこられたと言っております。だから、おこられたから——自発的にと言うけれども、自発的の裏づけには、呼ばれている。何のために呼んだか。そうして抹消している。この一貫した……大臣いかがですか。ほかにもいろいろありますよ。いまさっき公園予定地が、東京都の築地の土地が必要であったとか何とか話が出ました。その点についても東京都から申し入れがあったならば、土地交換の文書を、契約書を、あるいは、その三十二億と鑑定した鑑定士等の名簿を出してくれと言ったが、これすらも出てこないのですよ、大臣。これは大臣はそこまで御存じないかわからないけれども、これは正してください。  どうですか。大臣いかがでしょうか。
  133. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一般的に公務員といたしまして国家公務員法上の守秘義務と申しますか、負っておることは田代さんも御承知のとおりでございまするし、税法税法といたしまして職務上の知り得たことをみだりに……どういう文言になっているか存じませんけれども税法上守秘義務が規定されておることと私は承知しております。したがって公務員の立場から申しますと、お見せしないというのでなくて、お見せできないのがたてまえであろうと思うのであります。しかし国会との関係におきまして、私ども国会の御審議を通じて最高機関のいわば監督のもとで行政をやっておるわけでございまするし、そこから与えられた権限の範囲内でやっておるわけでございまするし、国会もまた国政調査権をお持ちで、政府に対しましていろいろな資料の要求、意見の開陳を求められておることでございます。したがって国会の御要求に対しましては、よくよくのことがない限り私は応ずべきがわれわれの立場であろうと思うのであります。しからばそれはどこが限界かと、行政府と立法府の間にはどういう限界があるのかということは、個々の案件によりまして十分慎重に考慮いたしましてきめるべきものと思うのでございまして、そこは国会のほうも御理解をいただかなければならぬし、私ども国会の御要求というものは十分尊重してかからなければいかぬわけでございまして、その間ケース・バイ・ケースいろいろ御相談しながら御審議に御協力を申し上げたいと私は思います。
  134. 田代富士男

    田代富士男君 では、大臣質問する前に、いまそういうふうに前向きの取り組みをやるとおっしゃいましたから、これは委員長お願いしますが、大洋漁業、三和銀行、それから東京都との契約書、それから国有財産審議会の記録、それから評価鑑定書、これを提出していただくようにお願いをしたいと思います。
  135. 前川旦

    委員長前川旦君) 大蔵大臣、いま要求のありました資料提出できますか。
  136. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく検討いたしましてできるだけ御要望に応じなければいかぬと思います。
  137. 田代富士男

    田代富士男君 時間もありませんが、いま大臣、所有権移転請求権の仮登記がされている。それは一般論的に理財局長おっしゃいましたけれども、裏づけの背景を申し上げますと、大洋漁業の本店を建てる。そのために払い下げをされた。本店並びに貸し事務所となっている。それで当初計画された計画と二回にわたって計画が変わっております。当初の計画ではいま言うように本店と貸し事務所、二回目の計画は二十四階建てのビルに変わっております。このときには大洋漁業の本店、たな子として協和銀行が入るとなっております、二回目の計画は。それで大蔵省としてはあくまで大洋漁業に払い下げをしている。そして、五十二年の二月の一日までに建設をしなくちゃならないように、そういうふうにきまっております。ところがその大洋漁業の本店と——まあどういうビルの名前になるかわかりませんか——称されるビルの建設計画書は協和銀行の手によって一切行なわれている。協和銀行が使うのですから、地下の金庫の設備から何から全部協和銀行。二十四階建てのビルが大洋漁業の手によって計画されるならわかるけれども、協和銀行の手によってそれが設計図等が書かれている。この事実、これといまさっきから話をしております所有権移転請求権の仮登記がされている。これを一般論的に片づけられたけれども、これはそう簡単には、事実においてたな子として入った協和銀行がたな子でなくして主人ともなるべきメインにすわるような計画がされているこの事実、これをどう受けとめられるか。これは大蔵省の指示どおりにされているのか。そのような変更をされてもそれはしかたがございません、そのとおりでございますと認められるのか。そういういき方は遺憾であるのか。どちらかはっきりこれはけじめをつけていただきたいと思うのです、所有権移転の問題とからんで。また事実の問題、協和銀行の手によって二十四階建ての設計がされている。大洋漁業の本店ですよ。これは一体どういうことなんですか、はっきりしてください。
  138. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 御指摘のとおり、当初計画では本社が十二階の建物ということでございまして、現計画では二十五階建ての建物に変更されております。なお貸し事務所といたしまして協和銀行がその後入ってまいりましたが、協和銀行は銀行という、金融業というお客が入ってくるという立場上から一階から十二階までは協和銀行、十三階から二十五階までが大洋漁業ということになっております。このようなところで、面積比率だけで議論するわけにいきませんが、現在大洋漁業の使用する面積の予定が全体の五九%を占めるということを私ども聞いております。いま御指摘の設計その他協和銀行が行なっているというようなお話私初めて聞くわけでございますが、もし推察することを許されるならば、おそらく銀行の店舗としての構造上、下のほうに銀行が入るので全体の設計が銀行の設計によってある程度左右されるので、大洋漁業が協和銀行に建物設計その他につきましておまかせしてあるという関係ではなかろうかと、こう考えます。
  139. 田代富士男

    田代富士男君 私はこれは大事な問題だと思うんですよ。もう時間がありませんからまとめて言いますと、昭和三十二年に公園指定地になりました。それが昭和三十八年に国の官庁の建物が建つということで、公園がだめになりました。国の建物は建たずに、大手の業者へ、三和銀行や大洋漁業へ売り渡されている。大洋漁業は三十二億円で払い下げを受けた。担保は八十億円、国民から考えたら意外なほど。これが時価で二百数十億円、協和銀行は所有権移転後将来、いまから七年後ぐらいにはどうなるか。これは疑惑を持てばおかしいです。協和銀行のものになるかもわからない、そういう疑惑が持たれている。これは一貫したものです。昭和三十八年の公園指定地を変更さしたときの大蔵大臣田中大蔵大臣なんです。そうすると、いま福田大蔵大臣やら田中大蔵大臣が、大臣のときにいろいろこういう問題がなされてきている。これはいま国民が一番注目しているのは政府と大企業との癒着の問題、いま文勢春秋の問題では朝も問題になりましたけれども、はっきりしろということです。政府と大企業との癒着、一部権力者によりまして——当初は大洋漁業の本店は九階建てと聞いておりました。これで許可されている。これがいま二十五階になった。メインのところは協和銀行。たな子として入る協和銀行がメインにすわる、これも認めるという。なれ合いじゃないですか。こういうことを国民は許しますか。政府と大企業との癒着、それも都民の憩いの場所である公園用地を奪って大企業に提供し、その大企業のために政府がそういう動きを、公園配置するときにも国の官庁の建物が建つという名義のもとに取り上げている。一貫したものです。これは断じて許すわけにいかぬと思いますが、大臣どうですか、一貫して聞いていらっしゃって。この姿勢はこのままでいいんですか。こういう姿勢は改めなくちゃならないと思うんですが、大臣どうですか。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、国有財産の取得、管理、処分につきましては、国民財産の管理、処分でございますので、十分審議を尽くし、御納得がいくような措置をしなければならぬと思います。それが、相手が大企業であろうと零細企業であろうと、そこに差別があってはならぬと考えます。具体的な案件についての疑義をただされつつあるわけでございますが、私は本件につきまして国有財産当局に、私が承知しておる限りにおきまして非違はないと思いますけれども、なおよく御注意もございますので、検討いたしまして誤りなきを期したいと思います。
  141. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと資料の要求で、先ほど委員長から——田代委員か資料要求しまして、大臣もその御要望に沿いたいと、こういうお話で、先ほどたしか三点ほど簡単に言われていたようでありますが、もし誤解があると困りますし、もう一つ私気がつきまして、ぜひこれは追加したほうが田代委員の調査に都合がいいんではないか、あやまちなきを期すのじゃないかと思うものがありますので、もう一ぺん繰り返さしていただきますが、契約書、これはその契約書も大洋漁業、これは二回にわたっております。それから三和銀行、これは一回です。それから都との交換ですね、都との交換はこれは何回行なわれているのか、私どもにはわかりません。したがいまして、間違いなく一回ごとの契約書をお出しいただきたい。それから、先ほど言われました国有財産審議会の記録、これをお願いしたい、各件について。それから評価鑑定書、これは非常に膨大なものになりますから、その辺はこの内容はあまり膨大でなくてもけっこうです。大体あらましがわかればよろしいと思います。  それからもう一つ、先ほどの国有財産法十三条第一項の問題ですが、どうも私はっきり納得できません。といいますのは、〇・二一の、あとから追加された分ですね、これは今回の払い下げには関係ありませんと、こういうお話で私も言質よくわかりませんでしたので、そのままうのみにしましたが、関係がないどころか、現在東京都消防庁ですか、丸の内消防署ですか、並びに本庁があるところが、大洋漁業との交換の用地になったために、いま関係がないと言われた〇・二一ヘクタールのところへ東京都消防庁並びに丸の内消防署が移転をして、現に建築中である。これはところてんで追い出されているわけです。ですから、やはり私は先ほど国会の議決が要るんではないかという疑問がまだ残っております。しかし、その交換の日にちや中身が、全く資料を持っておりませんのでわかりませんから、特に十三条第一項の問題を頭に置いて、この辺の疑惑が晴れるような資料をひとつおつくりを願いたい、こういうわけです。これをひとつ委員長のほうから、以上申し上げましたことをお願いしたいと思います。
  142. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまの資料要求について答えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  143. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 最後の国有財産法第十三条一項の関係につきましては、できるだけ具体的に図面などを付しまして、御説明申し上げたいと思います。  なお、補足いたしますが、契約書でございますが、私企業の相互間の契約がもし含まれているといたしますれば、その当該契約部分に関するところは相手方企業の了承を得てから提出いたしたいと思います。
  144. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時三分開会
  145. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、昭和四十七年度決算外二件を議題とし、大蔵省とそれに関係する日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  146. 須原昭二

    ○須原昭二君 まずきょうは、問題になっております文勢春秋をめぐって大蔵大臣の所見を求めたいと思います。  文勢春秋十一月特別号、ここに持ってきておりますが、この「田中角栄研究——その金脈と人脈」並びに「淋しき越山会の女王」ですか、この内容について大蔵大臣はお読みになりましたか。まず率直にお尋ねをいたします。
  147. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 率直に申しまして、実はその特別号、私持っておりまして、いずれ機会を見て読まにゃいかぬと思っているんですけれども、ただいままでのところ見出しをぱらぱら見た程度でございまして、まだ読了するには至っておりません。
  148. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、少なくともこれだけ問題になっておるんですから、大蔵大臣、今晩でもひとつ二、三時間あれば読んでいただけると思いますから、ぜひともひとつ通覧をしていただきたいと、まずもってお願いをしておきたいと思います。ですから、内容があまりまだ目を通しておらないというお話ですから、具体的に所見を承ることはどうかと思うんですけれども、もう巷間伝えられておりますからお話を伺うことができるものであると実は感じまして、御所見を承っておきたいと思うんです。  まあ、文勢春秋と申しますと日本の代表的な月刊誌であります。したがって、そういう代表的な月刊誌ではあるけれども、雑誌にはほかならないものでありますから、この雑誌の記事であるからこそ、その信憑性といいますか、その真偽のほどは明確では今日の段階ではないと思います。したがって、文勢春秋に記載された田中総理のいわゆる金権主義と巧妙な財産づくりは、一国の総理としてこれが事実とするならばきわめて恥ずべきことである。さらにわれわれ、長として、総理として受けておるわれわれ国民立場からいっても、きわめて日本人として不名誉きわまりないものであると言わなければなりません。したがって、いま週刊誌等あるいはマスコミ等でいわれておることばの中に、端的に表現されることばの中に、こういう人物が日本の総理になっていること自体ぞっとするという表現が使われているわけであります。この表現は、もし事実とするならば、まさにぞっとすることでありまして、これが真実とあれば、国有地の払い下げといい、税のこの不当性といい、からくりの不明瞭さといい、大蔵省を舞台に仕組まれた疑いがきわめて濃厚になってくるわけであります。当の田中総理も、この件についてはいまだもって公式に言明を避けておられますし、大蔵省も、先ほどもいろいろ論議がございましたが、守秘義務だとか、いろいろことばをたてにいたしまして一切の公表をしないような空気にあります。したがって、ますますそういう状態でございますから、国民のほとんどは大きな疑惑を持っております。このままでは決して国民が承服するものではないし、納得をしかねない状態にあるといって過言でありません。  しかし、最近のいろいろの新聞を見てまいりますと、たとえば二階堂長官は、あんなものは気にしておらぬ、こういう表現が記者の皆さんとの対話の中に出てきておるわけです。きょう私はこの新聞を、ここに持ってきておりますのは毎日新聞でございますが、きのう大蔵大臣田中総理とお会いになったそうでありまして、その会談の模様を報じております。「〃文春〃問題が一斉にマスコミに取り上げられ、国会での追及も必至の情勢で心を痛めている。この問題をどう受け止め、どう対処するかについて、キミも考えてほしい」と大蔵大臣に問いかけておるわけで、協力を要請されておるようでありますが、これに対して大蔵大臣は、「今はまだ頭に対応策が浮かんでいないが、私も田中体制への最大の協力者として、真剣に考えておく。心おきなく二十八日からの外遊に行ってきてほしい」——この「心おきなく」という表現に私は、先ほど二階堂長官があんなものは気にしておらぬと、これと同じように、何か大平大臣も非常に軽々にお考えのような感じがしてならないわけであります。このような軽々な問題で処理して、このまま放置しておってもいいものかどうか。冒頭にひとつ大蔵大臣からこの点についてどうお考えになっているのか御所見を承っておきたいと思います。
  149. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中総理は、予定をいたしておりまする外遊に来たる三十八日には御出発と聞いております。これは大事な国務でございます。日本の国益を踏まえて全力投球をしていただかなければならないわけでございます。したがって、私は、まず公人としてこの外交案件に全力投球を願うということが当面の私のお願いであったわけでございます。
  150. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも感覚が私たちとだいぶんずれておるような感じがしてならないんですが、実はこの文春は私もまあたいしたことではないだろうと初めは新聞の広告を見てちょっと入手することをおくれまして、もうすでに売り切れてしまって全く手に入らない状態になってます。これほどやはり国民関心が高いわけです。同時に、一国の総理が全国民的に大きな疑惑に包まれているときなんです。特にこの文春、これは将来のことでありますが、ことしの私は菊池寛賞に当たるのではないかと実はそのぐらい評価をしておきたいと思うわけですが、こういう状態において私は少なくとも進んで疑惑政府自体がただすために全力投球をする、積極的にその指摘をされたことについて是か非を明らかにすることが私は国民に対する義務だと実は思います。そういう意思があるのかどうか、ひとつ大臣に承っておきたいと思います。
  151. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いやしくも最高責任を持たれておる総理大臣にまとわる問題として提起されておると思うのであります。これに対しましてどういう解明をされるのかされないのか、そしてそれはされるとしてどういう場面でいつやられるか、そしてどういう解明をされるのかということは総理自身がいろいろお考えのことと思いまするし、私ども補佐する者といたしましても、そういった点についてはいろいろ検討しなければならない課題であろうと思います。
  152. 須原昭二

    ○須原昭二君 解明されるのかされないのか、この焦点はまあ総理自身の問題である、したがって、それを補佐する大蔵大臣としては、その動向を見きわめつつというようなお話でございまして、その手だての問題についてはいまだ明らかにされません。ぜひともその手だてを、どういう方法で解明をされるのか、私は特にこの際お聞きをいたしたかったんですが、いま大臣のお話では、総理自身の問題だというような取り方をなされております。しかし、これは当面大蔵省を指揮されておる大蔵大臣にも大きな私は公務の上から関連があることであって、必ずしも総理自身の問題であると区切りをすることができない性質のものではないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
  153. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大蔵大臣という立場で申しますと、大蔵省の公務の執行、遂行は、相手が総理大臣であろうとどなたであろうとかげんがあってはならぬと思います。私は税務当局をはじめ大蔵省の者はそういう点について遺漏のない措置を講じておるものと信じておるわけでございます。総理大臣であるとかないとかいうようなことにかかわりなく、遺漏なく公務は執行いたしておるものと私は信じております。
  154. 須原昭二

    ○須原昭二君 遺漏なくこれは公務としてやるべきことはやっていくんだと、こういうお話ですから、その問題に関連をして後ほど大蔵省の国有財産管理の問題点についてお尋ねをいたしますが、その前に、何としてもやはり多くの疑惑を持たれて国民的な大きな話題になっておりますこの問題を一刻も早くただすことが私はいま国会議員に与えられた任務だと思います。そういう立場から、私はこの機会にお出ましをいただくことはどうかと実は考えましたけれども、警察庁の刑事局長さんにぜひともこの際お尋ねをいたしておきたいと実は思います。  もしこれが、この記載をされた記事内容が事実でないとするならば、明らかに私は一国の総理に対する大きな名誉棄損であると実は思います。しかし、この問題点についてはいまだに御本人からも、当の田中総理からも何ら意思表示がなされておりません。もし名誉棄損であるというなら堂々と誣告罪で訴えてやるべきであると思いますが、名誉棄損というのは親告罪でございますから、これが取り計らえない。そういたしますと、もしこれが——仮定の論議で恐縮でありますか、事実とするならばきわめて私は大きな不正の問題であり、犯罪的にきわめて色彩が濃くなってくる可能性が実はあると言っても過言でないと思います。そういう点からして、警察の司直の手によってこれは捜査をすべき段階にあるのではないかと思うんですけれども、その点は警察当局としてどのようにお考えになっているのか、所見だけ承っておきたいと思います。
  155. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 名誉棄損の問題でございますが、これはただいま御質問にございましたように告訴を待って捜査すべきことでございます。名誉棄損になるかどうかという問題は告訴の内容によって判断をいたすべき事柄になりますので、その内容が明らかにならない、告訴されない以前においてこれについてお答えをするということは、何と申しますか、できがたいことでございますので、そういうふうに御判断お願いいたしたいと思います。  それから犯罪の色彩が濃いのではないかというふうなお話でございますけれども文藝春秋記事につきましては、直ちに具体的な犯罪の疑いがあるというふうには認めがたいというふうに考えておりますので、したがいまして、これが捜査の対象になるというふうには考えておりません。
  156. 須原昭二

    ○須原昭二君 この文案だけを見ただけではまだ捜査をするに踏み切るだけのものではない、私はそれも大体了解をいたします。しかし、これが大きな課題になり、われわれが質問をこれから展開する中においていろいろの問題点が浮き彫りに出されてきた段階において、もしそういうような疑いが濃きものになったという段階においては、たとえ一国の総理というあれでも、一国民と同じように対処するという決意があるかどうかだけ伺っておきたいと思いますが、いかがですか。
  157. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 犯罪の容疑があります場合に捜査をするのは警察のこれは責務でございます。また同時に、捜査というものは慎重にやるべきこと、これまた御承知のとおりでございます。それが、したがいまして具体的な事案につきまして犯罪の疑いがあるかどうかということについては、それぞれの場合場合につきまして判断をして措置をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  158. 須原昭二

    ○須原昭二君 了解をいたしました。どうぞお帰りいただいてもけっこうです。御苦労さまでした。そこで、進んで大蔵省のほうへお尋ねをいたしますが、まず国有財産管理の機構の問題点です。大蔵省の国有財産管理の機構の問題でありますが、私の調べたところによりますと、昭和二十四年、大蔵省の設置法によって管財局でまず行なってきたと、こう解釈していいですか。その事実だけです、間違いありませんか。
  159. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 間違いございません。
  160. 須原昭二

    ○須原昭二君 次に、昭和三十九年には国有財産局となった。そして昭和四十三年に、現在のように理財局の一室六課一鑑定参事官によって行なわれている、こういうことになっております。そして理財局の二人の次長のうち一人がこの国有財産の管理を担当してきた、こういう歴史的な変遷があるわけでありますが、この事実関係については間違いございませんか。
  161. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 間違いございません。
  162. 須原昭二

    ○須原昭二君 昭和四十三年には、国有財産局という局があったものが、一応形として理財局に統合吸収されていることになっておりますが、実態的には課に実は格下げをされておることになっておるわけです。これはどういう理由になるものですか。
  163. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 当時、昭和四十二年の暮れでございましたが、閣議決定が行なわれまして、各省とも一局削減ということで、行政機構の簡素化を率先して行なうという大方針に基づきまして、理財局と国有財産局の合体が行なわれたわけでございます。当時省内にはいろいろ意見がございまして、国有財産局の合併以外にもいろいろな案が出されたわけでございますが、結局、一つの大きな意味で国の財産を管理する、要するに理財局の、旧理財といいますか、資金運用部、国債等を管轄します旧理財のほうでも大きな資金を管理するという目的を持っておりますし、国有財産という国の大事な財産を管理する、要するに財産管理の面で共通性があるので両局が合併してしかるべきだと、こういう意見になりまして合併が行なわれたわけであります。
  164. 須原昭二

    ○須原昭二君 一局削減という問題は私も歴史的に聞いております。しかし、どうしてこの国有財産局だけが消されたかという問題点についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  田中総理は、昭和三十七年十一月十八日、当時の水田大蔵大臣から引き継いで池田内閣大蔵大臣となっています。引き続き佐藤総理のもとで昭和四十年六月二日まで約三年間実は大蔵大臣の地位にあったということになっておるわけであります。当時田中大蔵大臣は、国有財産という大きな、膨大な機構があったわけでありますが、こういうものを使って実はせっせと国有地を民間に払い下げてしまったというようなことがこの文春に実は書いてあるわけです。そこで私は、この際明らかにしていただきたいということは、戦後の大蔵大臣の、歴代の大蔵大臣を名前をあげますと、たとえば池田さん、一萬田さん、佐藤榮作さん、水田さん、そして田中さん、その後にまた福田さん、水田さん、福田さん、水田さんと、こう歴史的に大蔵大臣が並んでおるわけでありますが、その中で実は文春が特異的に書いておることは、この三年間で日本国の国有財産が大量に処分をされたということを大々的に実は指摘をいたしておるわけです。したがって私は、この際計数的にこれを明らかにしていただきたいと思うわけで、歴代大蔵大臣の間におけるおのおのの任期中にどれだけの物件が処理され、その大きさあるいは面積、そうしたものの比率を明らかにしていただきたいと思うんですが、これはいま直ちにここに出してくださいと言っても、これは答弁が長くなりますからできないと思います。したがって、これは追ってひとつ委員長のもとへ委員会として資料を提供していただきたい、かように思いますが、できますか。
  165. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 土地につきましてはわりにできると思いますが、いま御指摘のように大臣の御在任期間、日割り等もやりますと相当時間がかかると思います。しかし、それにつきましてはできるだけ資料を整えたいと思います。
  166. 須原昭二

    ○須原昭二君 あまり簡単にならないように、克明にひとつ出していただきたいと思います。  もう一つは、国有財産がきわめて多く処分——払い下げされ、物件が極度に小さくなってしまった、そこに私は国有財産局が課に格下げされてしまったという要因が——なるほどわれわれ社会党もこの官僚機構があんまり大きくなってはならない、だからこれを極力制限をしなさい、一局削減をしなさい、これはわが党も賛成をしました。しかし、なぜ国有財産というような重要な局が、これだけ取り上げてなくなったかという理由のもとは、ここにも明らかなように、大蔵大臣田中さんの時代に多くの問題——国有財産処理をされてしまった、したがって物件が極度に小さくなってしまったから、もう局としての任務、仕事量が小さくなって、軽くなって、たまたまそういう機構改革の名に添えて実は国有財産局をなくし理財局に糾合してしまったのではないか、こういうふうに私たちは感ぜざるを得ないのですが、この文春との関連において、この点についての御所見を承っておきたいと思います。
  167. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 先ほど答弁申し上げましたとおり、当時、国有財産局を合体することにつきましては省内でも相当な意見があったわけでございます。だから、必ずしもまあ比較的スムーズに合併したという形ではないわけでございます。なお、現在におきましても国有地は総数で土地だけでも九百二億平米と膨大なものをかかえておりますし、また国有地の払い下げ処分等も累年行なわれてるわけでございます。また、国有地を公共のために役立たせるというようなことで、はなはだむずかしい行政を管轄しているわけでございます。したがいまして、機構の簡素化につとめるべき大蔵省としては若干恐縮なんでございますが、現在管理局ということで、国有財産を管理する一局を新設するよう行政管理庁のほうにいま要求中でございます。
  168. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは済んでしまってから局をもう一ぺん復活したってだめですよ。そういう国有財産局をなくして理財局に吸収してしまったという一つの事実……。  それからいま一つ、田中総理大蔵大臣就任中に一つの表徴的な事件として、もはや定説となっておる昭和三十八年九月の虎の門事件があり、盟友の——これは大蔵大臣も盟友ですけれども、そういう盟友ではなくて、全く盟友の小佐野氏が関係したといわれる国有地払い下げを大蔵省は許可しています、この期間に。そしてそれを契機にして小佐野氏は、いわゆる国際興業コンツェルンですか、これがこのときから飛躍的に飛躍を開始し始めたと実は文春が書いております。これは文春記事だけではなくて、いまや一般国民の定説になっているわけです。  大蔵省の国有財産管理機構のこうした変遷と、田中さんの大蔵大臣在任中という三年間の期限と、いま一つは国有地の大量処分——払い下げと、この三つの問題の関連をどうお考えになっておるのか。私は深いつながりがあると指摘をせざるを得ないんですけれども、この三つの関係について所見をひとつ大蔵大臣からお尋ねをしておきたいと思います。
  169. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが大蔵省はそういう特別の私情をもって行政をやっておるものと私は思いません。
  170. 須原昭二

    ○須原昭二君 きわめて明瞭簡単ですね。しかし、やはり文春のいっていることについて率直にひとつ、そういう一言で鼻をくくったような答弁ではなくして、国民がいま多くの疑惑を持ってるんですから、親切丁寧に解明するという私は姿勢が盟友大蔵大臣になくてはならぬと思うんです。  また、文春には一三一ページにこういうことが書いてありますよ。「この時期に」——すなわち田中さんが大蔵大臣在任中に、「目白の田中邸は一挙に二倍に拡張され、はじめて軽井沢に別荘ができ、巨大資産家田中氏へのレールもひかれる。」と、こう書いておるわけです。一体全体、文春がいっているように、その田中さんの財産づくりの発端は、何といっても大蔵大臣におけるところの国有財産の処分だと、こう明確に断定をしておりますが、こういう点からいって、国有財産の払い下げについてどのような反省なり、その考え方を持っておられるのか、あらためてひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  171. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 文藝春秋記事によりますと、グラフをもちまして各歴代大臣の在任期間中の払い下げの面積が表示されています。私どものほうで産業界に対する払い下げ、対照いたしますと、若干四十二、三年ころのケースはそごがございますが、ほぼそのような傾向になっています。  田中大蔵大臣御在任中の払い下げ件数がグラフによりましても多いというところを分析いたしてみますと、北海道における払い下げが非常なウエートを占めているということでございます。なお、詳しくはなかなか分析がむずかしいわけでございますが、御参考までに三十七年から九年までの全国、北海道、北海道以外と、それから三十六年——四十年、その前後の二年、ここまで調べたわけでございますが、ちょっと申し上げてみたいと思いますが、三十六年は四百万平米、三十七年が全国で千百万平米、三十八年度が四百四十万平米、三十九年度が千二百五十万平米、四十年度が三百六十万平米でございますが、北海道を除きまして数字をとりますと、三十六年が三百六十六万平米、三十七年が三百二万平米、三十八年が九十五万平米、三十九年が二百十六万平米、四十年が百九十四万平米ということでございまして、北海道の払い下げが大きかったということが、この大きな土地の面積を説明できるんじゃなかろうかと思います。北海道はいかなる理由かといいますと、当時、苫小牧開発が企画中でございまして、苫小牧関係の用地、これが非常にその中でも圧倒的なウエートを示しておりまして、そういうような形から北海道の苫小牧地区の開発のための必要用地のための払い下げが多かったということが説明できるわけです。
  172. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま面積の解明がなされましたけれども、私は面積と価格ですね、それは北海道でも土地の安いものはたくさんあるでしょう。しかしながら、関東財務局関係の中では高いものがたくさんあるはずです。価格上からいったらどういう数字が出ますか。
  173. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 台帳価額で全部のやつを修正するのはなかなかむずかしいので、台帳価額だけで申しますと、いまの三十六年——四十年を申し上げます。台帳価額で言いますと、三十六年が二十六億七千四百万円、三十七年度が九億九千七百万円、三十八年度が六億八千五百万円、三十九年度が十三億七千四百万円、四十年度が十二億三千六百万円、このような傾向になっています。
  174. 須原昭二

    ○須原昭二君 しかし、そういう問題点はひとつ後ほど一覧表にしてお渡しをいただきたいと思います。  そこで、もう一つは、田中さんの財産づくりはこうした国有財産の払い下げにまつわるもの、さらにまたは巧妙な田中さんの財産づくりと実は指摘をしておるわけです。まあ自分の手がよごれないように物件を巧みにころがしてつくられたという実感が強いというふうに表現がなされているわけです。  そこで私はお尋ねしますが、どんな法人組織といえども自主申告のいま形をとっているわけで、いわゆる確定申告を毎年一回ずつするわけです。そして税務署から決定額をいただいて納付をするというのがたてまえ。したがって、文藝春秋は幽霊会社等等いっておりますけれども、この雑誌に出てきております室町産業株式会社、新星企業株式会社、東京ニューハウス株式会社、パール産業株式会社、いわゆる田中さんの縁者が役員になっておるといわれております、あるいはまた田中さんがかつて、あるいは現在そういう役員についておるという法人でありますが、この確定申告額、さらに決定額ですね、所得決定額、これを設立以来年々やっておられると実は思いますが、これを資料として提出をしていただきたいということをお願いしたいんですが、出せますか。
  175. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 御承知のように、現在は法人税法では、一定の確定申告額並びに当該申告にかかります修正申告書等が提出されまして、それが一定の金額以上になりますと税務署にそれぞれ公示になるわけでございまして、いままでこの国会委員会等で御答弁申し上げますときには公示されました額についての御答弁で、それ以外の金額につきましてはごかんべんいただいていたわけでございます。したがいまして、もしこの場におきましてその公示されました金額についてどれだけかというふうな御質問でございましたら、直ちにいま資料を持っておりますのでこの場で御答弁申し上げるわけでございますけれども、それ以外のいわゆる公示金額に達していない年分の所得額につきましては、実はいままでここで御答弁申し上げたことはございませんし、それからまた、その申告に基づいての国税当局におきます処理の結果につきましても、またこれは御答弁申し上げることをお許しいただいておるという実績でございます。したがいまして、いま先生が御要求になりました、設立以来の各期のそれぞれの法人の申告額並びに確定額についての資料を全部出せというふうな御要求でございますが、この点につきましては、私たち国税当局といたしましては公示額だけにごかんべんお願いしたいという希望でございます。
  176. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは公示額だけということについて、私はこの際特に進んで総理のためにも、これだけ疑惑を、幽霊会社だといわれているんですから——普通のときならいいです、公示額だけでけっこうなんです。総理のためにも疑惑を晴らしなさいというのが私のものの考え方です。ですから、守秘義務だとかいろいろ言われているし、慣例があって、公示額以外は出せないんだという慣例があるかもわかりませんが、この際私は積極的にこれは公表して、やはり国民の批判を仰ぐ、疑惑をただしていく、そういう私は積極的な姿勢大蔵省になくてはならぬと思うんですが、大蔵大臣、いかがですか。
  177. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ただいま私のほうから御答弁申し上げましたのは、現在の税法に基づいて私たちでとり得る措置でございまして、特にこれはいわゆる田中総理関係法人といわれておりますけれども、それなるがゆえにどうこうというわけでございません。やっぱり私ら国税当局といたしましては普通の法人と同じように措置したいという考えがございますので、そのように申し上げたわけでございます。したがいまして、田中総理関係法人であるから特にきびしくするとか、あるいは特にゆるやかにするというふうなことば事務的にごうも考えておらないわけでございます。
  178. 須原昭二

    ○須原昭二君 普通の法人総理関係法人とを別に扱うのはおかしいというお考えですが、これだけ日本の国民はもちろん国際的な電波ニュースにも全部乗っているんですよ。幽霊会社だ、幽霊会社といわれない実態を明らかにするということです。これがいま最も正しいことではないか。特に大蔵大臣、盟友として田中さんの疑惑を晴らすためにも積極的な姿勢ではないか。だから大蔵大臣お尋ねしているんです。いかがですか。
  179. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公務の執行でございますので、盟友であれだれであれやはり公正にやるべきものと思います。
  180. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、あくまでもこの公示額以外は確定申告額並びに決定額を出さないと、こうおっしゃるんですか。明確にしてください。ますます疑惑は高くなるだけですよ、こんなことでは。明らかにしてください。
  181. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 事務当局といたしましては、提出することについてはごかんべんいただきたいということを希望しておるわけでございます。
  182. 須原昭二

    ○須原昭二君 審議が進まぬですよ、こんなことじゃ。明らかにできぬのですか。
  183. 前川旦

    委員長前川旦君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  184. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  185. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事務当局としては、総理関係であれ、だれのだれべえであれ、そういうことはやれないという立場を堅持しておるようでございます。で、私はそれがどういう根拠でどうなっているかをよくきわめまして、どうしても出せない、税法上出すことができないものでございますならば、須原さんにも御了解得なけりゃなりませんが、一度私に検討の余裕を与えていただきたいと思います。
  186. 須原昭二

    ○須原昭二君 少なくとも私はこの問題点については事前に通告をしてあるわけです。明らかにするかしないのか。ですから、検討の段階は、もう時間の猶予はたっておりますよ。この席上で出せないということでは私は後ほどの審議が、質問が継続できません。この際、出さないということでは了承できない、審議は続行できません。委員長、おとりなしを願いたい。
  187. 前川旦

    委員長前川旦君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  188. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  189. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 現在の法人税法の第百五十二条に……
  190. 前川旦

    委員長前川旦君) 発言者、ちょっともう少し大きい声で。
  191. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 現在の法人税法で言いますと、第百五十二条に「申告書の公示」という条文ございまして……
  192. 須原昭二

    ○須原昭二君 読み上げてください。
  193. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) はい。  「税務署長は、確定申告書又は当該申告書に係る修正申告書に記載された各事業年度の所得の金額(修正申告書については、その申告後の当該所得の金額)が二千万円(当該事業年度が六月をこえる場合には、四千万円)をこえる法人について、大蔵省令で定めるところにより、その法人の名称、これらの申告書に記載された当該所得の金額その他の事項を公示しなければならない。」ということで、大蔵省令ではその公示する期間であるとか、そういった手続的なことがきめられておりますけれども、実体の根拠はこの条文に基づいております。  なお、これは昭和四十六年四月以降、逆に言いますと、四十六年三月三十一日までに終了する事業年度につきましてはこれがその半分でございまして、法律改正によってそれが四十六年四月一日以降提出される申告書につきましては、それぞれ現在のような法律の規定になったわけでございます。
  194. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは私から申し上げますが、事務当局からの答弁は要領得ませんが、先ほど大蔵大臣から、事務当局としての立場とは別に真剣に検討するという御答弁をいただいておりますので、この問題については理事会で後刻検討いたしたいと存じます。そういうことで質問の続行お願いをいたします。
  195. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、わが党の実は選出の委員長ですから、私はこれ以上混乱をさしたくないんです。しかし、私はどうしてもこの際出してもらわなければ審議が進まない。きわめて残念です。こういうことをやっていると、ますます国民疑惑がさらに輪をかけていくことになるんです。積極的にやはり疑惑にこたえていくという姿勢がなくては、一番いま大切なのはそのことだと私は思うんです。  そこで、私はさらに大蔵大臣お尋ねしたいんですが、これらの田中さんの財産づくりについて、文春によれば、いずれもいわゆる室町産業だ、新星企業だ、あるいは東京ニューハウスだ、パール産業だ、こういう会社の役員につながる人たち、すなわち田中ファミリーと呼ばれる人によって行なわれている、田中総理自身は表面には出てこないで周辺から疑惑に包まれておると、こういう指摘があるわけです。であればこそ私は、この室町産業以下四つの企業の確定申告額あるいは決定額、これを年々ひとつ明らかにしてくださいと、こういうことを言っているんですが、これはいまの段階で出せないという。まあ委員長のお取り計らいで検討するということになりますが、検討ということは出すことと出さぬことと両方あると思う。きわめて遺憾です。だから、あくまでも私は出していただくということを要求しておきます。  こういうことでは、大蔵大臣、やみの黒幕だといわれているところがここにある。しかし、このままでは一国の総理責任は私は免れないと思うんです。疑惑は進んで私は晴らすべきだ、疑惑は進んでその是非を明らかにすること、これがいま一番日本国民のわれわれ国会議員としてもとるべき態度だと思うんです。私はもし総理みずからがそういうものを明らかにしない限り、疑惑に包まれておるところの国有財産の払い下げをめぐる、大蔵省自体として片棒をかついできたと指摘をされても何ら反論の余地はないと思うわけです。したがって、大蔵省のその責任立場にある大平さんがこの疑惑について積極的に釈明をする、総理個人の問題点だけではなくして、片棒かついできたといわれておる大蔵省としても積極的にこれを晴らしていくという私は責任があると思うのですが、その点責任を感じられませんか、大臣の所見を承っておきたいと思います。
  196. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大蔵省立場は、税の調査に関して知り得た秘密を開示することは適当でないからごかんべんいただきたいという立場でございますが、須原さんは国民疑惑解明するためにはこれを開示すべきであるということでございます。大蔵省といたしましては、巨額の税を数千万の納税者相手にいただいているわけでございまして、この税務の執行ということに対して非常に重い責任を持っておるわけでございます。したがって、その税務の執行ということにつきまして、それを守らなけりゃならぬという法益を感じるわけでございます。しかし、一方あなたの言われることも私は理解できないわけではないのであります。そこで、それをどの程度までぎりぎりできるものか、そのあたりは私に検討の余裕を与えていただきたいと思います。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、念のために申し上げておきますが、いまの答弁の中で、けさの私の所得税法二百四十三条との関係における理解と、いまの法人税法の理解とのどうも混濁が大蔵大臣の頭の中にもあるような気がするのです。私は田中角榮さん個人のいわゆる問題についてけさほどは取り上げましたから、二百四十三条との関係大臣答弁というものを一応了解をしておるわけです。しかし、いま法人税法百五十二条という関係で述べられたのは、四千万なら四千万以上のものについてはあなた方は公示の義務を負っているわけです。それ以下のものについては何も秘密事項じゃないのですから、あなた方がお出しにならないというような理由にはこの法からはならないわけです。そしてこれは通常、平常的な状態の論議ではありません。少なくとも一国の総理の身辺に関する問題であります。金脈に関する問題でありますから、この辺は田中さんをある意味では公明正大なものにするためにもこれら企業内容については明確にされるのが至当だ、これがわれわれの論理です。私はかつて三光汽船の問題を取り扱ったときに、なくなられた愛知大蔵大臣が、税法税法です、しかし、確かに問題があります、私は責任をもって調査を命じ、その結果について、決算委員会理事会を秘密にしていただいても、そこで資料を提示をいたします、こう言われたままなくなられたから、しり切れトンボになっていますけれども、そういう態度がいまやはり私は総理との関係において大蔵大臣姿勢として必要だ、こういうふうに述べておきたいと思います。
  198. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も田中さんのことについて逃げ隠れするつもり毛頭ないのです。(「逃げたら共犯だ」と呼ぶ者あり)この税務の執行から申しまして、この執行の厳正公平を期する上から申しまして、いろいろ税法上の約束が、規定があると思うのでございまして、私はその詳細はよく承知しておりませんけれども、その点よく解明さしていただいて、須原さんのおっしゃることがどこまでできるものか、ひとつ私に検討の余裕を与えていただきたい。それでいま所得税、法人税の区別なんかも詳細にわたって私はよく検討いたしておりませんので、検討さしていただいて理事会のほうに御返事をさしていただきたいと思います。
  199. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういうまあきょうはまだ時間を——検討さしてくれというお話ですから、非常に私は不満です。さらに、私はそういうことを言っておられるとさらにまた膨大に要求せざるを得ないのです。田中総理の、文藝春秋記事にもあるように、財産づくりの契機になったのは、まず国有財産の払い下げに端を発しておると指摘をしている。そしてファミリーといわれる人々のいわゆる役員になっておるその幽霊会社と称せられる室町産業、新星企業、東京ニューハウス株式会社、パール産業等々の幽霊会社をつくり、国有地を買い占め、さらにそれをころがしたとまで指摘をしているわけです。この真偽は不明にいたしましても、これだけ全国民——先ほどから申し上げておりますように、全国民が大きな関心を持ち疑惑を持っておる。いまや国内だけではないんです。国際的にも広く広がっているわけです。十月一日付のアメリカのニューズウイーク誌に至るまで膨大に紙面を割愛してこれを論評しております。こういうように国際的にも騒がれているならば、私は国有財産の総括責任所管省であるところの大蔵省は、行政的な責任としてその実態を調査し、公表すべきというのが積極的に疑惑を晴らしていく道だと思うわけです。そういう点についてどうお考えになっておるのか。  たとえばアメリカでは閣僚の私有財産はすべてガラス張りにすべき伝統がございます。すでに大蔵大臣は御案内だと思いますが、ニクソン前大統領はこれらの点について追及されて、現在でもロックフェラー副大統領ですか、議会で徹底的に調べられていますよ。議会が調べているんですよ。それにまた理事者はこれにこたえているわけです。特にこの議会の調査権は、本人にだけではなくして、さらに親類縁者にまで及ぶということが法制化されている。アメリカでそうですよ。こういう実態にかんがみるならば、これだけ疑惑に包まれた事件が出た以上、その国有財産所管の省であるところの大蔵省はこれを積極的に晴らすという努力、これが私は必要でなくてはならぬと思う。そういう意思があるのですか、ないのですか。この疑惑を明らかにするという積極的な意思があるのかないのか、この点だけ明確にしておいていただきたいと思います。いかがですか。
  200. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) けさほど和田委員からも御質疑がありました点に答えたところでございますが、そもそもこの問題、大蔵大臣としての立場からお答え申し上げますと、大蔵省といたしましては、国有財産の行政であれ、税務の行政であれ、総理大臣であろうとだれであろうと私は差別をつけずにやっておるともう確信いたしておるのでございます。そこで問題は、しかし須原さんがいま御指摘のように、雑誌その他で田中総理にまとわる問題が提起されてきておるわけでございまして、私は和田さんにもお答え申し上げましたように、一体これはどういうように、政府としてはどのように受けとめて、どのように処理していいのか実際私も苦慮いたしておるのです。普通、田中さんであれだれであれ、政府は公正にやらなきゃいかぬわけですから、田中さんのときに問題になったから、それじゃひとつあたふたと政府があわてまくって疑惑解明するためにその資料を整えて云々するなんていうことを、人によってそう考えていいものかどうか、それは私が実はいま非常に苦吟をいたしておるところでございます。  しかし、これはあなたが仰せになることも私は理解できないわけじゃないのです。これは要するに一国の総理にまとわる事件でございますから、疑惑は晴らさなきゃならぬ、政治の信用は取り戻さなけりゃならぬというあなたの御指摘も私全く同感なのでございます。それにどのように対応するのがよろしいかということについては、これまたこういう問題として初めてこういう問題が出てきたわけで、よく問題を整理して誤りのない道を考えにゃいかぬと思うのです。それは田中さんをかばうとか自由民主党をかばうとかという意味でなくて、私は率直にそういうふうに感じておるわけでございまするので、政府として、つまり大蔵省としてこの問題について、国有財産の行政あるいは税務の行政等で進んで疑惑解明に当たるべきかどうかということについては、もう少し私として検討さしていただきたいと思うんです。
  201. 須原昭二

    ○須原昭二君 ですから、私は、その実態がみずから解明できない、解明するために調査をしたり公表することができない、こういうふうないま空気ですから、ですから、できなければ私たち資料を出しなさい、われわれが調べますと、こういうことを言っているのです。それもいかぬということになると、これはもうくさいものにはふたをしていこうというその考え方に立たざるを得ないのですよ。ですから、私は時間が来てしまっておりますから、さらにもう一つ私はこの際明らかにしてもらいたいことがあります。あなたたちが積極的に調べない、調査しない、実態を掌握しないというならば、われわれが聞いて、われわれがその資料に基づいて調べざるを得ないわけです、そうでしょう。それで初めて国民疑惑を解くために国会は動いておるということになるわけです。われわれはそういう義務があると思うんです。  したがって、いま一つ私はお尋ねをいたします。田中総理大蔵大臣在任中というのは、先ほど田代議員の御質問にありましたように、答弁が、昭和三十七年十一月十八日から昭和四十年六月二日までと答弁をされたように記憶しておりますが、間違いありませんですね。
  202. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 三十七年の十一月ではございませんで、三十七年の七月から四十年六月までが大蔵大臣在任期間でございます。
  203. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、ちょうど大体三年間ということになりますね。この三年間において大蔵省が国有財産を払い下げた物件、いつ、だれに、幾らで譲渡したのか、払い下げたのか。特に大蔵省直轄で実は払い下げたものがあり、各地方における財務局を通じて独自に払い下げたものもあるでありましょう。全国を調べようといってもなかなかたいへんでありますから、大蔵省直轄のもの、特に関東財務局所管におけるところの地元でお渡ししたもの、これについて一覧表を出してもらいたいと思います。  国有財産の管理というものは、国有財産を払い下げた、そして契約をしたその段階で国有財産の管理の任務は終わっておるわけです。ここからが問題です。たとえばAという人に渡して、それがBを通じてまた幽霊会社に入ったとか、田中さんの個人の周辺に返ってきたとか、そういうことがいわれておるわけでありますから、したがってこの際登記簿謄本等々の閲覧をすればすぐその経過はわかるわけだ。したがって、いつ、だれに、幾らで払い下げ、それがどういう経過を至って今日だれの所有になっておるのか、この点についての資料をひとつ当委員会提出をされたい。いかがですか、これまた出せぬとおっしゃいますか。
  204. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 先生の御要求は全部の物件でございますか。関東財務局所管の土地なら土地……
  205. 須原昭二

    ○須原昭二君 関東です、大蔵省直轄と関東。
  206. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) これは相当関東財務局でも年間二千数百件の払い下げが行なわれておりますし、全国になりますとますます膨大な件数になると、そういうことで相当時日を要すると思います。それからすでに御承知のように用途を指定して払い下げたものにつきましては、用途指定期間中、いま十年になっておりますが、大体その後の移動状況などを監査して調査することになっておりますが、用途を指定しないものにつきましては、すべてそういう条件をつけておりません。したがって、膨大な物件が点々移動するということを全体にわたって調べますと相当な時日がかかると思いますが、その点を御了承いただければ、できるだけ御相談の上資料として……
  207. 須原昭二

    ○須原昭二君 後ほど具体的にそういう点を、地域を設定いたします。いいですか、出せますか。
  208. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) それではそういう資料につきまして、どの程度可能かということを御相談の上いたしたいと思います。
  209. 須原昭二

    ○須原昭二君 それはひとつ地域あるいはその規模の問題については、後ほど指摘をいたしたいと思います。それで、出していただけますね。
  210. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) そのでき得るところで提出いたしたいと思います。
  211. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、それは次の委員会までに出していただけますか。
  212. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 非常に調査の日数、その規模にもよりますが、次の委員会までの日程に間に合う程度のことはできるだけ努力したいと思います。
  213. 須原昭二

    ○須原昭二君 了解いたしました。  そこで、私は実は税務問題について多くの問題を指摘をし、お尋ねをしたかったわけですが、不幸にして一番問題点の室町産業、新星企業、東京ニューハウス、パール産業等の税金の問題についていまだに並行線です。これが解明されなければ、資料として出されなければ実は質問が続行できない、きわめて遺憾なことです。ですから、私は当委員会委員長を通じてお願いしておきたいのですが、このままでは質問は続行できません。したがいまして、私の質問については全部ひとつ保留をさしていただきたい。できるならば、私は次の委員会総理をひとつ召喚をして、この席にお呼びを願いたい。そういう上でひとつ質問を続行したいということをお願いしておきたいと思います。理事会でひとつお取り計らいをいただいて、時間が十分くらい残っておりますが、やめたいと思います。
  214. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいま須原委員からの総理の召喚の問題につきましては、先ほど和田委員からの質問の中にも出ておりますので、それを含めまして理事会で検討してまいりたいと思います。
  215. 須原昭二

    ○須原昭二君 専売局の皆さん、どうもすみませんでした。時間がなくなってしまいました。
  216. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは専売公社関係の皆さん、退席していただいてけっこうでございます。  速記をとめてください。   〔速記中止
  217. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こしてください。
  218. 二宮文造

    ○二宮文造君 私、あらかじめ質疑の通告はしてございませんけれども、あまりにも重要な問題でございますので、冒頭若干時間をかりて、先ほど来問題になっております件についてお伺いをしたいと思うわけであります。  けさほどの和田委員、あるいはまたいま須原委員から文春に掲載された記事の問題について御質問がございました。私は大蔵大臣答弁をお伺いをしておりまして、要するに心配はしている、ただ、どういうふうに対応していいのかその方法に苦吟をしている、こういうことで、朝から一貫した答弁のワクを出ません。そこで私は、はたしてそれでいいものだろうかという気持ちがしますし、まず、これだけのいま大きな問題になってきたそのものについて大蔵大臣は、いわゆる大蔵大臣として、あるいは先ほど来話がありました盟友大平氏として、あるいは国民の信託にこたえるべき政治大平個人として、やはり三者三様の受けとめ方があろうかと思います。この問題をこのようにぶっつけられてみてどういう感じで受けとめていらっしゃるか、まず、その感想を私はお伺いしたいと思います。
  219. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、大蔵大臣という立場では、先ほど和田さんや須原さんにも申し上げたのでございますけれども田中さんであれだれであれ、大蔵省の行政は、人によって軽重があってはならないということで進められておると確信をいたしております。だから、田中さんの問題が取り上げられたからといって、それじゃ田中さんという方、あるいは一納税者について、大蔵省という立場でいま疑惑解明するために、進んでこうするああするということをすべきか、あるいはすべきでないか、そのあたり私は、いま非常に苦吟をいたしておる一つの問題なんでございます。  第二の、盟友として、盟友は喜びもともにいたしますけれども、やっぱり悲しみも苦しみも一緒に分かってあげなければいかぬと思います。したがって、この問題につきまして、総理が非常に御心痛であろうと拝察しますし、私ども盟友といたしまして、やはりお役に立たなければならないんじゃないかと思います。したがって、この問題について何ができるか、何ができないか、そのあたり、私自身いろいろ考えて思いめぐらしておるところでございます。  第三には、一般の政治家という立場から申しますと、やっぱりこれは政治家のモラルというような問題が問われておる一つのケースだろうと思うのであります。で、この法律上許されるとか許されないとか、世間が寛容であるかないかというようなことと別問題といたしまして、政治家といたしましては、田中さんはじめわれわれやはり十分モラルの点につきましては戒めなければならないのではないかという感想を持っております。
  220. 二宮文造

    ○二宮文造君 前もってお断わりしておきたいのですが、私は文春記事の真偽を断定する資料を十分に持ち合わせておりません。ただ、あの記事を一読、二読、三読、四読してみますと、ずいぶんなつかしい固有名詞が出てまいります。たとえば虎の門公園あと地の事件だとか、あるいは光明ケ池の住宅公団への取得価格の問題だとか、あるいは鳥屋野潟の水面の問題だとか、さらにはまた信濃川の河川敷の問題だとか、室町産業とか、あるいは新星企業とか、ずいぶん私も心覚えのある、また、この決算委員会の席で何度かそういうことを口にもし、そのつど政府姿勢というものをお伺いした、そういう思い出があります。  ただ、あの記事をそのまま真偽を断定する十分な資料はいま持っておりません。しかし、その反響というものをいま考えてみましたときに、あの記事が出ましたとき、ほとんど全国民の人はあ然としたと思うんです、驚いたと思うんです。そして、中にはそれを否定する人もいたと思います。しかし、日にちがたち、いつの間にかさもありなんというような空気がさざなみのようにいま立ち始めました。すでにさいは投げられたわけです。さいが投げられておりながら、それに対応をする姿勢というものが明確を欠いておりますから、どうもそれがやがてさざなみにとどまらないで、大きな政治不信につながってくる、大津波になる心配さえもいま私どもはひしひしと感じております。きわめて憂慮すべき事態だと、こう私は認識しますが、大蔵大臣はどうですか。どのお立場でもけっこうです、憂慮すべき事態だと、こういう私の認識は誤りでしょうか。
  221. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何と答えますか、先ほど申しましたように、この問題、いろいろな角度から慎重に対応していかなければならない、処理しなければならない問題だと存じます。いわば政治全体の立場からも、行政の立場からも慎重に対処してまいらなければならない問題だと私は考えております。しかし、一連のこの事態、ちょっとことば、どういうことばを選択したらいいか、たいへんまあ深憂すべき事態であろうと思います。
  222. 二宮文造

    ○二宮文造君 新語と私はあえて言いたいのですが、「シンユー」というのはどういう字を書くのか、私もよくわかりませんが、大体私が求める答弁、それが言わず語らずに、いまの大蔵大臣のことばを選択しながら答弁をされているその姿勢の中に私は見つけたように思います。で、いまの答弁の中に、慎重に対処しなければならない。——なるほどそうです。慎重に対処しなければなりませんが、しかし、慎重にということにこと寄せて時を失しては政治不信が高まる一方です。不況の問題もありましょう。物価高の問題もありましょう。あるいはまた国民生活の問題もありましょうが、その根底にあるのは何といっても政治に対する信頼です。その信頼がなければ、何を説いてもそれは絵にかいたぼたもちになってしまいます。そういう意味で、慎重にということばの上に、直ちにとか、早急にとかいうことばを加えて答弁をしていただきたかったと私は思います。そういう意味で、私は憂慮すべき事態だと、こういう立場から、総理個人はもちろんのこと、国会政府も各政党も、それぞれの立場からこの真偽を解明する。それがいま私どもに与えられた国民の負託にこたえる最大の義務だ、私はそう思いますが、大臣の所見はどうでしょうか。
  223. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お説のとおり、この問題は慎重に対処しなければなりませんけれども、機を失してはいけないことは御指摘のとおりだと思います。その場合、先ほど私が午前中から午後にかけての御質疑にもお答えを申し上げましたように、総理大臣にまつわる点でございますので、総理大臣というお立場に力点を置いて問題を考えるべきか、それとも田中さん個人、一国民、一納税者、そういう立場で問題をとらえるかということ、両面があるわけだと思うのでございます。その場合、どのように、——両方とも大事なことでございます。民主社会におきまして、その人の地位にかかわらず、法の前に平等なんでございまするから、田中さんだからといって、特に甘くするということも辛くするということも私は間違いだと思います。そういう行政の立場からはそうであろうと考えますが、しかし、政治立場から申しまして、いやしくも総理大臣にかかわる問題として提起されておるということを忘れてはいけないと思うんでございまして、その点は、行政の立場を離れて、機を失せずこういう問題についてどのように対処してまいりますか、田中さん御自身どう対処しますか、政府・自由民主党がどう対処するか、これは十分考えられておることと思いますので、私も閣僚の立場におきましても、党員の立場におきましても、及ぶ限り御協力申し上げて、問題の処理を誤らぬようにしたいと思っております。
  224. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと論点か違うようです。私は、やはり総理大臣というところに力点を置いております。だから、なるがゆえに政治不信の大きな原因になるかもしれぬという事態を心配をして発言をしておりますし、また、総理大臣なるがゆえに、早く疑点を晴らさなければならないという立場で私は論法を進めております。そして、いま私申しました田中さん自身も当然のこととして、政府国会も各政党も、やはりお互いの立場でこの問題の解明に努力をし、そして国民の負託にこたえるべきではないかという私たちの感じ、これに対してはいかがですか。
  225. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会におかれて、どのようにこの問題を取り上げて御審議をされますか、それは国会がおきめになることでございまして、私はとやかく申し上げませんが、国会の御審議にあたりまして、政府としてできるだけ御協力申し上げていかなければならぬと思います。
  226. 二宮文造

    ○二宮文造君 ただ残念なのは、この問題が提起されて、私は先ほどさいが投げられたと、こう言いました。しかし、それに対する公式の見解が全くない。だから、冒頭に申し上げましたように、さもありなんという空気がいまや固定化しつつあります。これは重大問題です。で、私がいま総理個人ももちろんのこと、政府国会も各政党もと、こう立場をそれぞれ分けて申し上げたことは、大蔵大臣先ほど来、いわゆる税は法のもとに厳正に行なわれなきゃならぬ、こう再三繰り返しております。私も当然だと思います。  しかし、それでは先ほど和田委員の御質問のときに、こういう問題が提起されて、しかも、衆議院段階質疑があったときに国税庁の長官の答弁があった。それはどういう趣旨で答弁をされたのかと言えば、従来の姿勢を、いままでの姿勢をそのまま述べたにすぎませんという次長の答弁であった。しかし、問題は投げられたわけです、あらためて。済んでないわけです、あらためて投げられた。ところが、税の秘密保持という立場で、その問題については一切お答えできませんということになりますと、これを聞いている国民は、一方では重税に苦しんでいる人がいます。あしたもうすぐ、本日ただいま滞納処分を受けている人もおります。  そういう人たちから言わせれば、あんなに堂々と問題を提起されながら、やはり総理大臣というのは力があるんだなあ、われわれではどうしようもないことが。逆に今度は、総理大臣の場合は守り刀に使われてしまう。国民はやはり納税意識を低下するでしょう。また別の面から言いますと、先ほども須原委員からお話があった国有財産、きょうも田代委員が国有財産の払い下げの問題について、公園に指定されたものがいつの間にか大企業にくらがえしてしまっている、まことに残念なことだ、こういう趣旨での質問がありました。国民はほんとうにわが家がほしい、マイホームがほしい、一坪の土地でもほしい。そういう中で、国有財産があの表を見ただけで、田中さんの大蔵大臣のときに膨大な払い下げを受けている。あれはいいとも悪いとも書いておりませんが、あのグラフを見ただけで国民は何と受け取るでしょうか。ここにも税の問題についても、国有財産の管理ないし払い下げの問題についても大蔵省姿勢そのものを、国税庁姿勢そのものを問われる要素があの記事の中にあるわけです。しかも税の秘密だ、こういうことでほおかむりをされるんでは国民感情としてこれは受け取れない。これは事実だと思います。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕  また一方では、ほんとうに食うものも食わないようにしてせっせせっせと働かざるを得ない、そういう国民の皆さんがたくさんいらっしゃる中で、とにかく御殿の中で数十万円というコイを放っているという優雅な生活をする、それは個人の力ですからいいでしょう、世間的に考えれば。しかしそれは、あらためて問題として提起されたときに、国民は一体どういう感情で総理あるいは政治家、そういうものを見るでしょうか。政治そのものを見るでしょうか。ならば、これはどうしても政府国会も政党も、やはりこの与えられた課題に対してはお互いが責任を持ち、早急に究明をし、解決をし、国民の皆さんの疑惑に答える。もはや総理のプライバシーの問題じゃありません、個人の問題ではありません。政治そのものの問題になってまいりましたし、そういう意味でもう一度いわゆる税、これは方法はあると思うのです。  国税庁個人所得内容を発表できないとしても、たとえば四十八年度申告をこの三月にされました。国税庁が発表できるのはあの総額だけです。しかし、もし御本人がみずからそれを国民疑惑に答えるという意味で税の申告の中身を発表されることには、これはもう法には何ら抵触をしないわけです。そしてこういうわけですと、それだけのことが、楽しみも苦しみも悲しみも分け与うと、こうおっしゃった大平さんの助言によってそれが実現しないことは私はないと思う。それがまず国民の皆さんに対する総理自身が答える第一歩だろうと思います。はたしてその中身が正しいかどうかはそれからの問題です。こういうふうに姿勢をしっかり、慎重にやるということは、事を大きくしないように慎重にやるのではなくて、投げられた問題に対して赤裸々にぶつかっていく、こういう姿勢が慎重であり、解決の問題ではないかと思います。したがって、大蔵省所管の問題について私の意見を発表いたしました。その件について大蔵大臣の御答弁をいただきたい。
  227. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 二宮さんにおかれても、万般誤解は持たれてないと思うのでございますけれども大蔵省は、田中さんであれだれであれ、税の執行とか……。
  228. 二宮文造

    ○二宮文造君 わかっています、それは。
  229. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 行政の国有財産の処分とかにおいて取り扱いを……。
  230. 二宮文造

    ○二宮文造君 十分わかっています。だから違うことを言ってほしい。
  231. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 二にしちゃいかぬと考えておるわけですから、その点は御理解いただけていると思いますし、それから第二に、これを隠し回ろうなんて一つも思っていないわけなんですよ。大蔵省は、従来こういう問題を処理していく場合にとってきたルールがありますから、それに従ってやっておるということでございまして、この事件が起きたから、それでは国税庁のいままでのやり方も変えるんだなんというようなことをやったら、逆にあなたからおしかりを受けるだろうと私は思うのです。そういうことでなくて、あたりまえにこれを受けとめていっておるわけでございます。しかし、問題はあなたが後半御指摘になったように、総理大臣にからまる事件であるというところで、政治的な問題であるということでございまして、その場合は政治田中角榮として、また自由民主党といたしまして、これをどのように処置してまいりますか、いままだ明らかにいたされておりませんけれども、きわめてそれはどういう形であれ、いつやられるか、どういう形であるか私はまだわかりませんけれども、いままだなされていない。しかし、これは田中さん個人考えられておることでございましょうし、私どももどのようにすることが処理のしかたとして妥当であるかという点を、まあせっかく検討をいたしておるわけでございまして、別にこれを秘匿するとかいうようなつもりは毛頭ないことは御理解をいただきたいと思います。
  232. 二宮文造

    ○二宮文造君 くどいですがもう一ぺん言うと、いま御本人が、四十九年三月十五日までに申告されたその申告書の中身を、御本人が発表されることにおいては何ら法に抵触するものではない、また、それが国民の皆さんに与える影響というものはきわめていい方向に、私は国民の皆さんの疑惑に答える方法だと提起したわけです。私はそれも早いほうがいい、こう思うのですが、この私の案に対して大蔵大臣はどうお考えになりますか。それをすすめてみたいなあというお気持ちか、それともやっぱり慎重にやるべきだというお気持ちなのか、私は、もしそこに総理がいたら同じようなことを言います。そして総理に、発表するかしないか私聞きます。それをすすめる立場として、私はすすめますが、大蔵大臣は私と気持ちを同じくしてすすめるようなお考えはありますかどうか、再度念を押しておきたいと思います。
  233. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはまあ、一個人として総理がどういうようにそれを考えられるかの問題だと思うのでございまして……。
  234. 二宮文造

    ○二宮文造君 いや、すすめるほうです。考えるは別です。
  235. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 人からすすめるとかすすめないとかということによってどうこうという問題ではないと思いまして、総理が自分で御判断されることと思います。しかし、二宮さんはそういうことをやられることはたいへん解明に役立つという御意見であったということは伝えます。  それから、私自身がすすめるつもりがあるかどうかということでございますが、私は先ほど申しましたように、この問題をどのように受けとめてどのように対応したらいいかという点をいま苦吟しておる最中なんでございまして、まだ私の考え整理ができませんので、ごかんべんをいただきたいと思います。
  236. 二宮文造

    ○二宮文造君 私ども公明党としては、非常にこれは重要な問題であるということで、先ほども言いましたように、田中さん自身も当然のこと、国会政府も各政党も、国民の皆さんに対してこの疑惑解明に当たるべきである、こういう姿勢のもとにいま独自調査を進めております。しかし、これは事をあげつらうという意味ではありませんで、これは与党、野党の立場も何もありません。少なくとも政治信頼を回復する、国民に与えた疑惑を払拭する、そういう意味で私どもはやってまいりたいと思う。ですから政府におかれても、まあ特に大蔵大臣は私が提起したように、税の問題あるいは先ほど来皆さんも指摘したように国有財産の問題いろいろ所管事項の中でことあげされておる問題もあるわけですから、この面についてせっかくの、しかもそれは早急の対応策という名案を、ひとつ苦吟じゃなくてしっかり吐き出していただきたい、これは要望しておきます。  また、委員長におきましても、先ほど来、温水委員さんもおられましたけれども昭和三十九年にこの国有財産の払い下げの問題について決算委員会に問題が生じてまいりました。そのときに私どもは、小委員会をぜひ設置していただきたい、こういうことで、温水委員も当時おられましたけれども、与野党一致でこの決算委員会に、国有財産に関する小委員会を設置いたしました。小委員会はたしか三十数回も会合を重ねたと思いますが、それなりにいい方向に向いてまいりましたし、その後、先ほどちょっと田代委員が指摘したような驚くような事件もありましたけれども、国有財産の払い下げにからまる問題は、法の改正等々もありまして、やや小康を得たように私は自負しております。したがって、この問題は国会という立場からも、また、こういうふうな複雑な問題を処理するのは、どうしても決算委員会でなければならないと思います。どうかこの委員会に小委員会先ほど和田委員からも御提案がありましたけれども、小委員会の設置方をひとつ取りまとめていただいて、継続的に、早急にこの問題が取り扱える場所をつくっていただくようにお取り計らいをいただきたい、これは私の本題ではありませんので、この程度にしておきます。  次は、繊維の不況の問題についてそれぞれお伺いをしたいと思うわけです。  時間も差し迫ってまいりましたので、問題の本質が十分に明らかにできない場合もあるかもわかりませんけれども、御承知のように繊維業界の不況といいますのは、川上の原糸、原繊メーカーから、川下の加工業者に至るまでもうすっぽりと不況がおおっております。そして、しかもその暗雲がいつ晴れるかわからない、こういう状況に置かれておりまして、特にこの繊維の不況を、中小、中小というよりもむしろ零細といったほうがいいと思いますけれども、ニットあるいは縫製関係で実態を見ますときには、これはもうたいへんな問題が起きている。従来の需給関係の悪化が市況の下落を呼び、さらにそれが生産制限につながれば需給が改善する、そしてやがて市況が回復するというような景気循環的なパターンでは考えられないような不況に追い込まれております。いわば構造的な不況と、こう申し上げてもよろしいのじゃないか、これはもう御認識のとおりだと思います。  まあニットあるいは縫製関係では過剰設備の問題がございまして、さらにまた、それに加えて輸入の急増の問題がありまして、さらにはその裏返しのように輸出の鈍化がありまして、うんと減っております。そして、その上に政府がとってきた総需要抑制政策、これに基づく金融引き締め、需要の減退、在庫の増加、こういう問題が次々に起こってきました。そして受注量は激減をする、その中でも人件費や副資材は高くなる、加工賃は低下する、こういう状況で、まさに業界は倒産か廃業か、こういう選択を迫られているような、そういう事態だと思いますけれども大臣、こういうニットあるいは縫製業、まあそれだけではありません、繊維全般を含むわけですけれども、特にニット、縫製関係業者の現況がこういう状況であります中で、やはり総需要抑制という方策は堅持する、こういう立場でいまきておりますが、そういう基本政策に照らして、現況これほど苦境におちいっているこれらの業界を金融の面でどのように救済していくか、また、起死回生をはかる、こういう金融の方策はないものかどうか、この点ひとつ大臣にお伺いしたいと思います。
  237. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 総需要抑制策のもとに金融引き締め政策を長いこと続けておりまして、二十カ月をこえておりますので、全般に不況色が広まってきておりますことは御承知のとおりでございます。そこで、繊維業界という特定のことではございませんで、まあ繊維業界と同じような不況的なものはかなり広範な業界に広がっております。  ただ、私どもは中小企業に対しましてはできるだけ手厚いことをしようということでございまして、政府系三機関につきましても、すでに本年第一、二・四半期においてそれぞれ追加の措置を講じましたし、また、民間の金融機関にも頼みまして中小企業救済制度というものをつくっていただきまして、三千二百億のワク、これはあえて繊維だけではございませんが、そういうワクをつくりまして、一般の貸し付けよりは安い金で融通いたしましょうという制度を発足いたしておるわけでございます。そちらのほうは中小繊維業者の希望を全国的に取りまとめまして、大体銀行サイドのほうでは三百億ぐらいかという予定をしておったのでございますが、申し込みが四百八億になりまして、現在その四百八億の申し込みを受けて、それはまたそれで実行しつつございます。それからまた、これから年末にかけて金繰りがだんだんきつくなっていくと思いますので、当然中小三機関に対する年末の追加といったようなことを考えていこうと思いますし、それからまた、民間の金融機関に対しましても、中小企業が金融だけで倒産ということのないように十分配慮してほしい、そういう指導は続けていくつもりでございます。
  238. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと時間がありませんので、もうちょっといまのお話の中で数字的にも伺いたいんですが、肝心なことはまだ後に出てまいります。  それで、中小企業金融公庫の総裁がお見えのようですが、四十七年——いまちょうど決算か四十七年ですが、四十七年の業務報告書によりますと、いわゆる対米繊維輸出規制の実施に伴う特別措置、こういうことで、繊維産業向けの特別運転資金の貸し付けの実施ないしはドル・ショックに伴う第二次輸出関連中小企業向け緊急融資を実施した、こういうふうに業務報告書に記載されております。これは概況をお伺いする予定でありましたけれども、時間がございませんのでこれははしょりまして、そのいわゆる三機関による、特に中小企業金融公庫を通してのそれらの融資、これは私の聞いた範囲内では、二年据え置き、五カ年返済、こういうふうな特別の措置で、利子の補給もあったようです。  特別の措置で業界の窮状を救おうというので融資が始まっておりますが、このような状況になってきましたので、業界としては据え置き期間を延ばしてもらいたい、いわば返済を楽にしてもらいたい、延ばしてもらいたいという意向を要望しました。で、話がまとまりまして、据え置き期間は一年延長しましょう、二年が三年になると。ただ、業界が心配しておりますのは、返済期限、これは当初の予定のとおり七年ということは守ってほしいというような、あるいは違うかもわかりませんが、そういうようなお返事のように業界筋では受け取っておりますが、これは、そういうことではせっかく据え置き期間を一年延ばしていただいても、こういう構造的な不況というものを伴っている業界としてはやがてその資金繰りに困ってしまう。それはどうでしょうか、返済期限も順送りに延長される、こういうふうな話もあるんですが、どちらが真実なんでしょうか、この点をお伺いしたい。
  239. 吉岡英一

    参考人(吉岡英一君) お時間があまりないようでございますので、端的にお答えをいたしますが、お話のような状況があり、業界からの御要望もございます。ただ、この特別融資は利子補給等にも関連いたしまして簡単にもまいりませんので、ただいまそういう御要望に応じて検討しておるところであります。通産省と大蔵省との間でも目下検討中だと聞いております。
  240. 二宮文造

    ○二宮文造君 この据え置き期間が一年延びたということは、これはもう決定したわけですね。返済期限が延びるということは検討中——しかし、その検討中というのは、業界の要望を受け入れる筋のほうに検討中なんでしょうか。
  241. 吉岡英一

    参考人(吉岡英一君) かつてそういう措置をとったことがあるわけでございますが、最近そういう措置をとっておりませんので、重ねて業界の御要望がありましたので、それを受けて前向きで検討しておるということでございます。
  242. 二宮文造

    ○二宮文造君 了解しました。  ただ、公庫の場合は代理貸しが多いわけです。そうしてその窓口になる銀行は、御存じのとおり、資金繰りに困っております。したがって、これはやっぱり力関係といいますときに融資側のほうが非常に強いわけですから、そういううやむやな中に、いわゆる運営の要領として腹芸でそういうことが進められますと、どうしても力関係の弱い業者側は銀行に押されてしまいます。せっかくの御配慮が生かされない、こういう結果になりますので、この点はひとつ公庫なり、あるいは通産、あるいは大蔵省銀行局等から、こういう窮状に入っておりますので、特に頭を置いてこの返済の問題については業界の窮状を救済するという立場で何らかの指示、行政指導というものをいただきたいと思いますが、まず、銀行局長どうでしょう。
  243. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 返済猶予につきましては、従来からも個々の実情に応じてやっておったところでございますが、先般、追加をいたしましたときに、中小企業庁長官と私の名前で「特に経営状況が著しく悪化している中小企業に対しては、」「既往債務の償還猶予等について配慮していただいているところであるが、今後ともなお一層弾力的に対処されたい。」というような通達を出しまして、それが徹底するように、また、従来よりも弾力的に一そう配慮するようにという通達を出してございます。
  244. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから業界のほうとしては、業者ですが、この際、特別の長期、低利の融資が考慮されないだろうか、てこ入れしてもらえないだろうか、こういう意向が非常に強いわけですが、この点はどうでしょう。
  245. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 現在、特定の業界に対しまして特別低利の融資を実施しようという考えは持っておりません。
  246. 二宮文造

    ○二宮文造君 そう木で鼻をくくったような返事をされると……。これはほんとうにたいへんな問題なんです。  これはあとをちょっと聞いてください。繊維局の方もいらっしゃっていると思うんですが、私は、いままでの認識が、日本は繊維の輸出国である、こういうふうに考えておりましたけれども、この統計を見まして驚きました。これは、ほんとうに自分の不勉強をいまさらのように恥じるんですが、昭和四十八年のこの輸出入の推移を見ますと、逆転しておりますね。これは大蔵大臣は先刻御承知だろうと思うんですが、四十七年までは何とか輸出が多かった。ところが昭和四十八年、昨年度は輸入が一兆をこえておりますね。ところが輸出のほうは八千七百六十億円、ついにここで輸出入が逆転をしてしまいました。この逆転をしたその輸入の急増というのが、いま私が問題にしましたニット、縫製関係にたいへんな圧力になってきているわけです。で、この四十九年も八月までの月報は出ております。これもその輸出のほうが少ないんではないかと思います。おそらくこれは逆転したまましばらくの間経過するんではないかと心配しておりますが、いわゆるニット、縫製関係の輸入の急増の実態、これをひとつ、繊維局のほうから御説明願いたいと思います。
  247. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) ただいま御指摘になりましたように、四十八年以来繊維製品、特にニット、縫製品の輸入がふえてまいっております。最近になって若干伸び率は鈍化いたしておりますが、現在まで四十九年の一−八月の数字を申し上げますと、繊維製品関係では約十三億五千万ドルの輸入になっておりますが、それに対しまして輸出は二十一億八千万ドルで、製品ベースで比べますとまだ八億ドル程度輸出超過になっておりますが、御指摘の二次製品について比較いたしますと、布帛衣類がこの一−八月での輸入が二億九千百万ドル、メリヤス衣類が二億六千六百万ドル、その他二億一千五百万ドル、合計いたしまして七億七千二百万ドル、昨年の同期に比較いたしまして約二倍という数字になっております。
  248. 二宮文造

    ○二宮文造君 昨年の同期がまた前年同期に比べると二倍と、ちょっと私数字覚えておりませんが、そのような結果になっている。今度はその輸出のほうはもうこれは今昔の思いなんです。あの対米繊維輸出規制、で、政府間協定までやった、日本の商品がどんどんいって困るというのは、もうとっくに夢が破られてしまいまして、一時のいわゆる政府間協定のワクさえも日本はもう半分も消化できない、こういう輸出の現状に下がってしまいましたね。こういう輸出の関係からだけでもわかりますように、内需を非常に圧迫をしております。そこで業界では輸入規制というものをいまほんとうに、もう何といいますか、日夜のように輸入規制が何とかならないものだろうかと、業界の実情の中から泣くような思いで輸入規制ということを言っておりますが、政府はこの輸入規制ということばが、また、その内容がその他のものに影響する、大きな国際問題になるということで、なるべく規制ということばを避ける対策をお立てになっておりますが、この政府間協定をやらざるを得なかったあのときのアメリカの日本商品の国内市場に占めるシェアというのは、五%程度でしたね。いま日本では、ニットとか縫製品、まあものによってはいろいろ違いますが、三〇%、少ないのでも平均で二〇%、アメリカが騒いだときの四倍も五倍ものやはり輸入の急増によって国内業者は困っておるわけです。  したがって、この輸入の急増、まあ鈍化したとおっしゃいますが、八月から鈍化したとは言いますけれども、これはこれから先減る見込みは私ないと思うのです。ふえこそすれ減る見込みはない。これはもう御承知のような事情です。入ってくるのは韓国であり、台湾であり、香港であり、東南アジア、そこへ行っているのは日本の企業が行っておるわけですから、減ることはない。こうしますと、この業界の死活問題になる輸入の急増というもの、これを何とか調整をしなければならないのじゃないかと思うのですが、この問題について答弁いただきたい。
  249. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 輸入調整についてお答えいたします前に、いま消費と輸入比率の話がございましたので、ごく簡単に触れたいと思います。  アメリカがわが国に輸入規制を要求してまいりましたのは一九七〇年でございますが、その時点におきますアメリカの消費に占める輸入比率でございますが、これはテキスタイルオルガノンの資料によりますと、全体といたしまして八・八%、それからアメリカの消費の中での日本からの輸入分が二・三%、これは品目によって違いますが、全体はそうなっております。それからわが国における輸入比率でございますが、先生いま三〇%とおっしゃいましたが、これも計算のしかたによりまして違ってまいります。大体ものによりまして五、六%から一〇%前後のものが多いかと思います。ただ一つ、統計手順上、企業規模二十人以下のものはすそ切りと称しまして対象にいたしておりませんので、統計上出てくる数字よりもやはり若干下回る数字かと思います。いずれにいたしましても、昨年来わが国におきましても内需に占める輸入比率、平均いたしまして一四、五%というのが実情になっております。  さようなことに加えまして、不況が一段と深刻化するにつれまして、御指摘のように関係業界から輸入規制を非常に強く要望してきておるわけでございます。私もその業界の立場の気持ちというものはわからないわけではございませんが、いわゆる輸入規制、これを導入するかどうかということになりますと、少なくとも国際的な関係、あるいは日本の国民経済全体の立場、さらには繊維自体の現状と将来といったような観点から、これは慎重に検討せざるを得ないのじゃなかろうか。特に石油危機以来、世界各国の経済は非常に不安定さを増しておりますので、どちらかといえば各国ともに閉鎖的な経済に移りたいといった動きがございます。さようなところから、日本がここで輸入規制を導入した場合に、世界全体的にそういった動きが出てくる。その結果一番影響を受けるのはわが国である。かような点もございますし、かたがた、先ほど来先生も御指摘になっておりますように、製品全体で比較いたしますと、やはりまだことし一−八月でも八億ドル程度輸出超過になっておる。かような観点からなかなか輸入規制に踏み切れないということでございます。ただ、非常に大量に、また粗悪品が入ってまいりますことは、関係業界だけではなくて、消費者に対してもやはり多大の影響を及ぼすということから、われわれといたしましても問題のある商品ごとに個別に行政指導を展開しておる。  さらに、輸出統計に比べまして輸入統計がまだ十分整備されていないといったような実情でございますが、通関統計あるいは成約統計等整備して所要の行政指導をさらに強化して対処してまいりたい、かように考えております。
  250. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は、本来なら問題を提起してさらにまたそれをやりとりをしたい、こういうつもりでおりましたが、きょうは時間が、申し合わせの時間もあります。したがいまして思うにまかせません。ちょっとわき道にも、わき道といいますか、非常に大事な問題にも冒頭触れましたので、たいへん恐縮で、あと項目を羅列するような質問のしかたになりますが御答弁をいただきたい、こう思います。  まず、これは心理的な効果でたいした輸入規制にはならないかもしれないけれども、いわゆる関税率の適用ですね、これをいまの暫定税率からいわゆる通常税率に置きかえれば、それだけでも心理的な効果といいますか、そういうふうなものができるのではないか。まあ関税率を上げるということはこれはもう非常に影響も大きいので、永久にという問題ではない。ただ、市況が回復できると、そういうきざしが見えるまでのごく短期間の間でもこういう基本税率に格上げをする、引き上げをする、そうして輸入抑制の措置にする。現にもう国内市場は相当在庫もあるし、非常に急迫しているんで、そういう方式がとれないもんだろうか、こういう問題が一つ。  それから、先ほどちょっと言いましたように、輸入規制とこう言ってみたところで、しょせんは先ほど言いましたように、台湾、韓国、香港あるいは東南アジア、発展途上国に対する日本企業の進出あるいは技術協力です。まあいわば一つ屋根とも言いませんけれども、同じ息のかかったような間でお互いが垣を相せめぐというようなかっこうになっております。そして、進出しているのは大きなほうで、それからはね返ってきて、いま打撃を受けているのは零細企業だと、こういう関係になりますので、いわゆる大企業、商社の幅広いこういう経済活動が国内の零細業者を苦しめないように、より適切な行政指導をやるべきではないか、これをお考えかどうか。  それからもう一つ、いま在庫の急増というのが市況の圧迫につながっております。きょうも、新聞によりますと、通産大臣が衣料品の贈与のことを考えている、あるいは災害への何といいますか、供出、供与を考えているというような話がありました。特にバングラデシュの問題が新聞等にも散見しておりましたけれども、こういう贈与あるいは他に、需要をそっちへ振り向ける、そして政府資金によって、政府の買い上げによってそういうようなことをさせる、こういう具体案をどの程度までお詰めになっているのか、可能な範囲で、考え方でもけっこう、また具体的に煮詰まっている問題があれば、その点を朗報として業界の皆さんに教えてやってほしい、そういう意味質問します。  また、こういう通産当局の考え方について、要するに金の問題ですが、大蔵省当局がそういうことに積極的に協力する用意があるのかどうか、これもひとつあわせてお願いをしたい。  問題はその最後ですが、要するに冒頭に言いましたように、過剰設備、これはこの前も対米輸出の規制のときに、織機あるいはミシン、そういう機械設備の買い上げがありました。それでもまだ過剰設備をかかえているし、通産省は、いわゆる構造改革、これを業界指導の基本線において指導されているようでありますけれども、これがまだ遅々として進まない。たとえば今年度三百二十数億ですか、三百数億の予算を構造改善資金として用意されているけれども、実施要領の提示がおくれ、また、それを受けて立つ都道府県の窓口も、それがおくれたために要領を得なかった、あるいは今日になっては、地方公共団体も財政運営が窮屈ですから、どうもそういう面で思わしくない。おそらくこれは消化されないんじゃないか、それだけまた構造改善がおくれるんじゃないかという心配を私するわけですが、ここで過剰設備の問題を、どうこれから行政指導をされていくのか。また、その場合に、転廃業という問題が出てまいりますが、過剰設備あるいはまた業界の体質改善のための転廃業の対策、こういうものをどうお考えなのか。  これは非常に項目的に羅列をして恐縮ですが、答弁をいただいて、きょうの質問をこれで終わりたいと、このように思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
  251. 吉田冨士雄

    説明員吉田冨士雄君) 先生御質問の第一、関税率の問題でございますので、関税局長の私からお答えさしていただきます。  先生御案内のように、繊維の関税率、現行の関税率は大部分がガットにおいて譲許しているものでございまして、効果の点いかんという先生のあれもございますが、それ以前に、やはりガットの譲許税率を基本税率に戻すということは、国際的に非常に困難な問題があるわけでございます。現在、繊維の関税率につきましては、わが国では特にできるだけ、比較的高い税率を張っておりまして、また、特恵においては、特恵関税におきましても、できるだけの配慮をやっているわけでございますが、特に特恵関税その他の運用につきましては、輸入動向等も見きわめてやっていきたいと考えております。
  252. 田中敬

    説明員田中敬君) バングラデシュに対する無償援助方式というものを考慮できないかというお話しでございますが、バングラデシュにつきましては、同国はきわめて経済発展度の低い開発途上国である、特に洪水災害等があるという特殊の事情に着目して、そちらの事情でやった事業でございまして、お説のような、繊維事業の救済という観点から、かかる無償援助を財政的に今後続けていくということは考えておりません。
  253. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) 初めに逆輸入対策でございますが、これにつきましては、御承知のとおり、資本進出あるいは技術導入につきましては、だんだんとこう自由化してまいっておるわけでございますから、そういった点もございまして、海外に企業進出をしたものが、日本に逆輸入されてくるということが一つの不況の原因になっておることは、否定できないわけでございますが、問題といたしまして、国内産業に重要な影響を及ぼす場合には、これをチェックすることにいたしております。さようなところから、従前からもやっておるわけでございますが、今後ともさらにそういった指導を強化してまいりたいと、かように考えております。  それから次の、在庫の処理の問題については、ただいま大蔵省のほうからお答えになったわけでございますが、そのほかに、私のほうといたしましては、たとえば災害救助法によるところの救助物資の事前購入という点につきまして、先日も厚生省に協力を要請いたしまして、たしか十月八日付の通達をもって、各都道府県知事の協力要請方を厚生省のほうからも出していただいておりますので、こういった点からでも、少しでも需要喚起してまいりたいと、あるいは海外に対しまして円クレジットを設定いたしておりますので、これは相手方のニードに応じてということになりますが、そういった面も極力活用してまいりたいと、かように考えております。  それから次の、過剰設備の買い上げないしは処理の問題でございますが、これにつきましては、当面の不況対策という観点と構造的な観点、両面から慎重に検討すべきだと思いますが、御承知のとおり、昨年の国会で、いわゆる織機の登録の特例等に関する法律が出ておりまして、これに基づきまして、五年間で、当時登録いたしました約十六万台の織機のうち、四分の一を買い上げるといったような規定がございますので、こういう事態でございますから、五年と言わずに二年あるいは三年に繰り上げて買い上げていくということも必要かと思いますので、業界の実情に応じて対処してまいりたい。  それから、そういった対象にならないその他の業種につきましては、各業界の計画の煮詰まり方を勘案いたしまして、たとえば中小企業振興事業団にある設備の共同廃棄等の融資制度も活用してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  それから、新しい構造改善が非常におくれているというおしかりを受けたわけでございますが、先ほども冒頭に御指摘になりましたように、今回、同じく総需要抑制下にありながら、繊維産業が他の産業よりも非常に深刻な影響を受けておる原因の一つといたしまして、やはり繊維産業特有の構造的な問題が解決されないままにこの不況に突入したということにも、大きな原因があるかと思います。さような観点から、当面不況対策とあわせまして、長期的な構造改善を進めていくということは大いに必要であり、また急ぐべき問題かと思います。若干、正直に申し上げまして、準備がおくれておりますが、さらに一段と努力いたしまして、早急に、せんだっての国会で成立を見た新しい構造改善の方向に即応いたしまして、新しい繊維産業の改善を実現していきたいと、かように考えております。
  254. 二宮文造

    ○二宮文造君 海外の企業との調整——商社、大企業が出ているでしょう……。
  255. 橋本利一

    説明員(橋本利一君) それにつきましては、従来からも、進出していく場合に、一々チェックいたしておりますが、今後も、さらにその方向で指導してまいりたいと考えております。  ただ、御参考までに一言申し上げますが、たとえば韓国に出ておる企業の数等を見ますと、たとえばニットにつきましては、現地企業が七百六十五ございまして、そのうち日本から出ておるものは十九社、それから布帛製品につきましては、千五百のうち三十五社、一件当たりせいぜい十万ドルから二十万ドル程度ということでございまして、こちらから進出している企業の能力自体はさほど大きくない、むしろ、その地域における現地資本による急成長が一番大きな原因になっておるかと思いますが、いずれにいたしましても、行政指導は強化してまいりたいと思います。
  256. 二宮文造

    ○二宮文造君 技術協力があります。技術援助があります。——じゃあいいです。
  257. 加藤進

    ○加藤進君 わが党は、田中首相にかかわる政治的、社会的さまざまな疑惑については、今日までこの国会を通じて執拗な究明を行なってまいりました。  今回、文藝春秋がその特集でもってこの問題を新たに取り上げています。そこで大蔵大臣お尋ねするわけですが、この文藝春秋の特集号はまだ読んでいない、こういうふうに先ほど質疑に対してお答えをしておられるわけでありますが、特に読まれないという何か特別の理由があるのでしょうか、どうでしょうか。
  258. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 多忙をきわめておりまして、いずれ時間の余裕がございますならば読みたいと存じまして、資料は手元に整えてあります。
  259. 加藤進

    ○加藤進君 特集記事自身は読んでいない、忙しいからだと、こういうことですね。しかし、これに関しては新聞が連日のように報道しているわけですね。この新聞記事は、少なくとも多忙な大臣といえども目を通し、お読みになっていると思いますけれども、この新聞を通じて、この文春が取り上げた問題というのは一体どんな問題なのか、こういう点についてどのように理解されているのでしょうか。
  260. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 新聞も全部読んでいるわけじゃございませんが、要点は毎日目を通しておるわけでございます。田中総理にまとわる問題であると承知いたしております。
  261. 加藤進

    ○加藤進君 問題には相違ありませんけれども、単に問題が提起されておるというのではなしに、この記事内容を見てみると、あるいはそれを報道した新聞の内容を見ておれば、これがどのような性質の問題であるのか、単なる問題ではなしに、事一国の総理に対して重大な疑惑がかけられている。私はこういうふうに理解するのが当然だと思いますけれども、その点について重ねてお聞きしたいと思います。
  262. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 感想として加藤先生御指摘のような性格の問題と思っております。
  263. 加藤進

    ○加藤進君 だとしますと、田中内閣の、しかも重要な閣僚である、またその中で出されている疑惑そのものについてもこれは事大蔵大臣には直接関係するような問題にまで及んでいる。こういうことになりますと、さて大臣としてこれをいかになすべきかというようなことは、当然お考えになっておられると思いますけれども、その点については一体どうなんでしょうか。
  264. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今朝来の本委員会における御質疑に対して申し上げましたとおり、大蔵大臣といたしましての立場でお答えいたしますと、税金の問題にいたしましても国有財産の管理の問題にいたしましても、田中さんであれどなたであれ、人によって厚薄、軽重、差別があってはならぬということで、公明に大蔵省処理いたしていると私は信じているわけでございます。しかし、あなたがいま御指摘のように一納税者、一市民、国民である田中角榮氏は、いままさに御指摘のように政治最高責任者であられるわけでございますから、田中総理にまとわる問題として、政府はこの問題をどのように受けとめて、どのように対処したらいいか、私はいま考慮検討いたしているということを申し上げたわけでございます。また、これは田中さん個人の問題でもございますから、田中さん自身もお考えになっていることと思うのであります。政府として、特にこの問題を取り上げてどうするのがいいのか、すべきであるか、すべきでないのか、そのあたりは私は事柄が非常に慎重に処理を要する問題であると心得て、いませっかく考慮をいたしているところでございます。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  265. 加藤進

    ○加藤進君 一言で言うと、これだけ数々の動かしがたいような疑惑が出されておっても、田中内閣の重要な閣僚である大蔵大臣自身は、いかになすべきかなどというハムレットめいた心境にしか到達しておられない。これは私はきわめて国民から見ると、納得しがたい態度ではないかと考えます。この問題は、そういうふうにして時間を遷延さしておいていい種類の問題なのか、直ちにこれを調査して、国民の前に明らかにしなくてはならない問題なのか、その点について大臣どうでしょうか。どう思いますか。
  266. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府として、この問題をどのように処理してまいるのがいいかということは、いま検討中である、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  267. 加藤進

    ○加藤進君 ただ、検討をされる場合にも、この点だけは明らかにしておかなくてはならぬ点だと思います。すなわちここで出されているような数々の疑惑、これは単に文藝春秋が特集によって事あらためて出した疑惑ではないと思います。私もこの問題について、すでに十年前、衆議院において信濃川河川敷にからまる当時の田中幹事長の不正問題について国会で追及したことがあります。事柄は非常に深く、そして遠い根源にあるわけです。したがって文勢春秋に今回新たに問題が出されたわけですから、この機に及んでどうすべきかを検討中であるということは、私は許しがたい態度であると思います。少なくともこれがはたして事実であるか事実でないのか、これをよく調べて明らかにしなくてはならぬという性質の問題だ、疑惑である、こういうふうに私は考えますけれども、その点大平大臣はどうお考えになりますか。
  268. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどからも御答弁申し上げているとおり、大蔵省といたしましては、行政というものは相手方によって態度を二にしてはならないと考えておるわけでございまして、総理大臣は一納税者として、税法上特別扱いをしておるつもりはございませんし、国有財産に特別の便宜を総理大臣だから与えなけりゃならぬとは、私は心得ていないんです。ですから私は公正に行政は行なわれておるものと確信をいたしておるのであります。しかし、この問題はいま仰せのような姿で、田中総理大臣というお立場の方にまつわる事件として、いま仰せになるような問題として、権威ある雑誌を通じて持ち出されておるという事実は隠れもない事実なんでございまして、それに対して政府はどうするか、田中さん個人はどうするかという問題、これはかりそめにも軽率にやっちゃいけない問題だと思うんでありまして、十分検討を加えて慎重に対処していかなけりゃならない問題であると私は心得ておるので、そのことについていま思いをめぐらしておるところでございますから、どうする、こうする、どういう時期にどういう形でどうするかというようなことは、またどうする、どうしないかというようなことについてまだお答え申し上げるところまで熟していないということを率直にけさあたりから申し上げておるわけでございます。
  269. 加藤進

    ○加藤進君 私の特にお聞きしたいのは、こういう疑惑がわれわれの前に提起された、だとするなら、田中内閣の閣僚として、あるいは田中内閣自体としてこれを放置してはならない、事実かどうかというこの点の問題を正しく調査する、事実かどうかを確かめる、こういう決意だけは持っておられると私は考えるわけですけれども、そう受け取ってよろしゅうございましょうか。
  270. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申しましたように、私は大蔵省は公正に行政は行なっておると確信をいたしておるわけでございます。それから、この問題を私どもほうっておくというようなことを言っておるわけじゃないんでございまして、この問題は一つの政治の問題として出てまいっておるわけでございまして、総理大臣としてもどう処されるかお考え中でございましょうし、政府としても、政府に関連した問題につきましてどうするのが政治の筋道なのか、そういう点についてせっかく検討いたしておるわけでございます。そういうことが明らかになってからまた御相談をいただきたいと思います。
  271. 加藤進

    ○加藤進君 この問題につきましてはすでに当の田中首相自身が次のように国会答弁しているんですよ。それは昭和四十七年の七十国会衆議院予算委員会においてわが党の松本善明議員の質問に答えてこう言っています。「私は先ほどから述べましたように、ほんとうに解明さるべきものはすべて解明していただきたい、こう考えております。」——これが昭和四十七年の国会における答弁です。残念ながらその後、解明していただきたいとは言われながら、みずから進んで解明するという熱意は今日まで示しておりません。しかし、田中総理のこのことばは生きておるわけです。田中総理解明してほしいというわけですよ。これに対して私たちは何らためらうことなく進んで解明する、これが国会責任でもあるし、当の政府大臣諸公の私は責任ではないかと考えるわけでございます。これは田中内閣のことによったら運命にかかわる重要な問題であると私たちは認識しています。同時にこれは大平大蔵大臣としても決して対岸の火災でもなく第三者の問題でもない問題である、すなわち大蔵大臣としても、この問題の究明を進めていくならその責任が関わるべき問題だと私たち考えておるわけでございますけれども、その点について大蔵大臣はどのように認識されておるのでございましょうか。
  272. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど来の御質疑で、大蔵大臣としてどう考えるか、政治家としてどう考えるかということについて、すでにこの委員会で御答弁申し上げておるとおりなんでございまして、私の見解が急に人によってお答えが変わるはずのものではないわけでございます。先ほど二宮さんにもお答え申し上げたとおりでございますし、結論は、くどくどしゆうなりますけれども大蔵大臣としての立場で申しますと、大蔵省の行政は公明に行なわれておる、人によって差別はしていないつもりだと思う、私はそう確信しておるということはたびたび申し上げておるとおりでございます。しかし、この問題は総理大臣にかかわる問題として提起されておるわけでございますので、総理大臣がどのように対処されますか、また総理大臣をいただいておる政府としてこの問題、一体どう対応したらいいかということにつきましては、目下鋭意検討をいたしておるわけでございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  273. 加藤進

    ○加藤進君 重ねてお尋ねいたしますが、大平大蔵大臣はあの文春の特集で出された疑惑の中で、これは自分の責任にかかわる問題だ、自分の責任が問われるような重大問題だ、こういう認識はございませんか、ございますか。ございませんならございませんでけっこうでございますけれども、どうでございましょうか。
  274. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は見出しを見た程度でございまして、まだそれを十分克明に読了いたすいとまを持っていないわけでございます。近いうちにこれを読んでみたいと考えておるわけでございます。
  275. 加藤進

    ○加藤進君 その程度の認識では国民は迷惑しますよ。しかもこの問題は国内だけにとどまっておりません。外国はとりわけ大きな反響をもってこれを迎えています。日本のウオーターゲート事件だと、こうもいわれておるわけであります。外国では日本では認識が薄いようだけれども、これは政治家のモラルの問題だ、こんな問題がいまさら日本では起こっておるのか、こういう批判もされておるわけであります。こういう国際的な反響について、かつて外務大臣でもあられた大平大蔵大臣、これは内閣の重要な閣僚としてどういうふうにお考えになりましょうか。
  276. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この問題、政治のモラルが問われておる問題であるという私は認識を持っております。その点は加藤さんと共通だろうと思うのでございます。これは総理大臣であろうとだれであろうと公人といたしまして十分モラルの問題というのは一般的にきびしくあらねばならぬ、戒めてかからなきゃならぬ問題だと私は心得ております。
  277. 加藤進

    ○加藤進君 田中総理をめぐる疑惑の中に重要問題として脱税容疑という問題があります。この点についてあなたはどういうふうに受けとめられておるんでしょうか。
  278. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、わが税務当局は、田中さんであれ、どなたであれ、税務は疎漏なく申告を受け、調査をし、調定をいたしておると私は確信をいたしておるわけでございまして、私にこういう脱漏がございましたという報告は受けておりません。
  279. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、疑惑は出されたけれども、しかし大蔵省としてはすでに国税庁も申告も受け調査もしている、疑惑はないと考える、こういうお考えでしょうか。
  280. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 少なくとも私の手元に疑惑があるという御報告はまだちょうだいいたしておりません。
  281. 加藤進

    ○加藤進君 この疑惑についてあなた自身はどうお考えになりますか。
  282. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、田中さんも一納税者といたしまして納税義務につきましては厳粛に考えられておると思いまするし、国税当局においてもこの調定にあたりまして適正に処理いたしておるものと確信しております。
  283. 加藤進

    ○加藤進君 大臣の確信だけではちょっと納得しかねるわけで、担当の政府委員もおられると思いますし、国税庁の方もおられるわけでしょう。一体この問題についていままでどのような調査が行なわれたのか、調査はやられたのか、あるいはやられなかったのか、その点について明確なお答えを願いたいと思います。
  284. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 田中総理自身の申告所得税の問題、それからまた田中総理に御関係があるといわれております各種法人法人税の問題、それにつきましては必要に応じて所要の調査をやっております。もちろんその場合に田中総理自身について調査をするというふうなことは、これは御多忙な方でございますから避けておるようでございますけれども、いろいろな報告を求め、あるいはその関係者あるいは秘書の人の出署を求めたり、そういうふうなかっこうで田中総理個人所得税の問題については処理をいたしております。また、その関係法人につきましても通常の法人と同じように一定の周期を置きまして実地調査あるいは机上処理等によって審査を終了しております。
  285. 加藤進

    ○加藤進君 重ねて確かめておきたいと思いますけれども、ともかく田中総理についても申告所得税あるいは田中総理の直接関係しておられる法人についてもすでに調査はしてあります、こういうふうなお答えでいいですか。
  286. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) そのとおりでございます。
  287. 加藤進

    ○加藤進君 もう一度お尋ねしますが、その調査には間違いはないんですか。
  288. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 現在までの調査の終了した限りにおいては正当に処理されたものと思っております。
  289. 加藤進

    ○加藤進君 ともかくいままでの調査では間違いない、自信が持てる、こういうことですね。
  290. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) さようでございます。
  291. 加藤進

    ○加藤進君 これはきわめて重要な発言でございますから、いまの答弁については、あなたは責任を持たれますね。
  292. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ただいままでの調査に関する限りにおいては適正に処理されたものと考えております。
  293. 加藤進

    ○加藤進君 私は、後刻この問題については事実に基づいてお尋ねをするつもりでございますから、その点はただいまは保留しておきます。  そこでお尋ねしますけれども、いままでは調査したと、こう言われるわけでありますが、これからはどうでしょうか。調査されるんですか、されないんですか。
  294. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 一般に個人であれ法人であれ、調査を一応終了いたしましても、その後に新しい事実あるいは新しい資料等が出た場合にはあらためて調査をして前に一応終了した調査の補完をするということは、これは通常の処理でございます。これは納税者総理大臣であろうと、あるいはいわゆる一市民であろうと、その取り扱いについては全く違いないわけでございまして、したがいまして、そういったことから考えますと、国税庁といたしましては、今後さらに調査の必要がありというふうに考えました場合には調査をするということになろうかと思います。
  295. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、あなたは文藝春秋のその特集はお読みになったんでしょうか。
  296. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 読んでおります。
  297. 加藤進

    ○加藤進君 読んだ上でこれは調査を必要とするとお考えになったのか、どうでしょうか。
  298. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 一般的に税務の補充調査をする、あるいはあらためて調査をし直すといったきっかけをつくりますのは、もちろんこういった新聞、雑誌等からの資料あるいは税務署のほうで独自に収集いたしました資料であるとか、各種の資料を総合しました上で、その上でさらにこの資料をどのように活用して再調査をする必要があるかどうかということを検討するわけでございます。したがいまして、私たちも、この文藝春秋記事というものは、そういったいろんな意味における広い意味の税務資料の一つであるというふうに考えております。
  299. 加藤進

    ○加藤進君 昭和四十五年以降のものについてはまだ時効にかかっておりませんね。更正決定は出るわけですね。やろうとすればできるわけですね。
  300. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 除斥期間は申告期以降五年間ございますので、その間におきましての一応更正はできるわけでございます。ただ、これは先生十分御承知かと思いますけれども、通常の場合のいわゆる過少申告につきましては三年間で除斥期間が終了いたしますので、五年間にさかのぼります場合にはそれ以上の場合でございます。
  301. 加藤進

    ○加藤進君 それでは聞きますけれども、この田中総理自身所得申告について申告には間違いはない、こういう責任ある答弁いただけますね。
  302. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ただいままでの調査の範囲内においては適正に処理されたものと思っております。
  303. 加藤進

    ○加藤進君 新たに重大な疑惑国民の中に出ています。その疑惑には根拠があります。これについて国税庁は、そのような問題について国税庁責任をもって事態を明らかにする、こういう責任があると私は思います。国民疑惑にはこたえなくちゃなりません。そのためになお新たなる調査の決意を持っておられるかどうか、重ねてお聞きします。
  304. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 国税庁としましては正当な課税、それが相手がどういった方でありましても、正しい正当な課税ということが私たちの理想でございますから、必要とあらば調査をするということは申し上げてよろしいかと思います。
  305. 加藤進

    ○加藤進君 私は必要があらばという仮定の問題を聞いておるわけじゃないです。国税庁がこの問題についてどう認識しているのか、調査の必要があるのか、あるいは調査の必要がなしと言われるのか、その点をはっきりお尋ねしているわけですから、明確に答えてください。
  306. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 先ほど申しましたように、再び調査をする場合には、各資料信憑性、あるいはそれの重要性等を判断してやるわけでございますので、ただいまこの時点においてそれを調査をする、あるいはしない、そういったことをまだ申し上げる段階ではないかと思っております。
  307. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、国税庁には今日のところ、田中総理所得申告等々について、あるいは関係企業について疑惑を持たれるような点はない、こういう認識ですか。
  308. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) それはただいま検討中でございます。
  309. 加藤進

    ○加藤進君 検討中なら検討中で、どのような点がいま検討になっておるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  310. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) これも先ほど申しましたように、各種資料を総合して私たちは一つ一つ詰めてまいりますので、いまこの時点においてこの点である、あるいはあの点だということを、私たちの持っている具体的な疑問点についてここでお答えをするのは適当ではないかと思いますので、御遠慮さしていただきたいと思います。
  311. 加藤進

    ○加藤進君 これは国会ですよ。国会で私は国税庁に対して問題を聞いておるわけです。それじゃ答えにならぬじゃないですか。検討すると言われておるのだから、検討するのには問題があろう、それはどのような問題でしょうか、その問題をいまどのように御検討中なのか、これをお聞きする権利がありますよ、それをお聞きしているんです。どういう点ですか、たとえば。
  312. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) それはまさに検討中でございまして、ここでお答えを申し上げるのはお許し願いたいと思います。
  313. 加藤進

    ○加藤進君 これはきわめて重要な問題でございまして、国税庁はすでに検討を始めているという。そしてわれわれは国会でこれを論議しておる。こういう中に、国税庁は検討中だけれども、どのような問題を検討しているかについては言えないと言う。どこに差しさわりがあるんですか。
  314. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 法律的に申しますと、あるいは私はまだ究極的に詰めておるわけではございませんけれども、一つにはやはり法人税あるいは所得税の調査事務に従事する職員の守秘義務の問題にも関連するのではないかと思っております。
  315. 加藤進

    ○加藤進君 あなた、守秘義務とおっしゃいますけれども、当の総理は、問題を明らかにしてほしいと言っています。本人自身がそういう意味で守秘義務についてはもう解除しておると同様です。当の本人がそうなんですから、その点については遠慮なくやっぱりこの問題についての事態解明することはできるんじゃないですか。本人はどうぞと言っている。国会で言っているんですよ。国会で言っているのに、なぜ国税庁はこれに対してメスを入れないんですか。
  316. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) メスを入れる入れないということではございませんで、この場におきまして、どういう点を税務上疑問点としてわれわれが考え、それをどういうふうに解明しようとしているかということをここで申し上げるのは、やはり広い意味におきます守秘義務に関係するのではないかと思いまして、御答弁を御遠慮申し上げたいと申し上げたわけでございます。
  317. 加藤進

    ○加藤進君 憲法には法のもとにおける平等という原則が立てられています。国税庁あるいはその傘下の国税局、税務署は一般の市民に対してどんなふうなことやっているんですか。申告書が出されると反面調査、そのために自殺まで追いやられた市民がたくさんあるんですよ。そういうときには遠慮会釈なくこの問題についての調査調査といって、納税者に対して非常なきびしい措置や態度をとっています。これに対してどうですか。事柄は日本の国政をあずかる総理大臣です。総理大臣というような地位にある人に対しては、手心を加えなくてはならぬというのですか。大臣みずからが、どうか私の身のあかしを立ててくださいと、こう言っておられるのに、あなたたちはそれにも責任をもって手を加えようとしないんですか。これで法のもとにおける平等ということは成り立ちますか。納税をしっかりやってください、国民の義務です、こういうことを国民一般に胸を張って訴えられますか、どうですか。
  318. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 私が御答弁申し上げておりますのは、調査をしないということを申し上げておるわけではございませんで、必要の場合には調査をいたします。それは総理大臣でありましょうと一市民でありましょうと、税法の前においては同じような納税者でございますから、同じようにいたしますということを申し上げておるわけでございまして、ただ、この場において、それではどういった点を問題としているのかというふうな御質問に対しましては、これはこの場で御答弁申し上げるのは御遠慮いたしたいということでございます。
  319. 加藤進

    ○加藤進君 それでは、とにかく鋭意この問題については調査中である、調査をする、そういう立場ですね。
  320. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 調査の必要あるかどうかを検討中であるというのが正確かと思います。
  321. 加藤進

    ○加藤進君 まことに答弁で逃げてもらっちゃ困るんですよ。国民がどれだけこの問題について関心を持っているのか。しかも、その疑惑の当の官庁は、少なくとも国税庁は免れることはできぬ、こう見ているんですよ。事柄は国民納税意欲にもかかわる問題ですよ。大臣に対しては調査もしないで、われわれに対してだけこんなひどい調査をする。一体これで、納税ということは憲法に保障された義務としてやるのか、これくらい切実な問題として受けとめられておるんですよ。それでもなおかつ、いま問題にするかどうかを検討するというくらいの程度なんですか。それをはっきり言ってください。
  322. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 一般にいままでの過去のことにつきましては——過去の調査をやったかどうかというようなことについては申し上げるわけでございますけれども、今後どういうふうにこの問題を税務上運んでいくかという問題につきましては、御答弁をここで遠慮させていただきたいというわけでございまして、決してここで調査をしないということを言っているわけでもございませんし、それからまた必ずやりますということをお約束しているわけでもございませんで、いずれにしましても、これは今後の国税庁判断の問題であろうかと思っております。そういった意味でわれわれは御答弁申し上げているわけでございまして、もちろん総理といえども税法の前には同じような納税者であるという基本的な考え方は、国税庁はこれはごうも疑いを持っていないところでございます。
  323. 加藤進

    ○加藤進君 重ねて問題の重要性を申し上げますけれども、ともかく文春の特集で大きく取り上げられたということは、もうあとへ引けませんよ、第一に。国会でもすでに今度もまた大きく取り上げられつつあります。これももう引けません。今後も追及は私たちも大いにやろうと思っております。こういう状況で、国際的にも大きな反響を呼んでおるというような状況のもとで、しかも当の責任官庁である国税庁が、調査一つ積極的に踏み切ろうとしないなどということになりますと、事柄は非常に重大な影響を持ってきますよ。私はその点については、国税庁に聞くよりも、大蔵大臣、この点についてはどうお考えになりますか。
  324. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど答弁申し上げましたように、政府といたしましてどのように処理してまいりますか、せっかくいま検討をいたしておるところでございます。
  325. 加藤進

    ○加藤進君 それでは国税庁あるいは大蔵大臣進言申し上げたいと思います。いま国税庁にからまる田中総理疑惑というのは、まず申告所得の額と、その申告所得の額に見合わないきわめて異常な資産の増大という問題があります。これはお認めになると思うのです。したがって、これから調査するかしないかを検討するなどという問題ではなく、私は要求します。総理所得財産の問題については、とにかくその疑惑を解くために調査を始める、こういうことをはっきり国会で明言してほしいと思います。いかがですか。
  326. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) この場で私は国税庁としては調査をしないと申し上げているわけではございません。しかし同時にここで調査をするということをここでお約束するというのもいかがかと思いますので、その点は返答を留保さしていただきたいと思います。
  327. 加藤進

    ○加藤進君 それではいつまで待てばこの問題をあなたたち立場からはっきりさせられるんですか。いつまで検討されるんですか、その期限を聞きたいんです。
  328. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 私たちは決してこの問題は軽々しくすべき問題ではなく重要な問題と考えております。そういった意味におきまして最重点的にこの問題の検討をいたすつもりでおります。
  329. 加藤進

    ○加藤進君 もし最重点的に検討されるというなら、私がいま申しました田中総理所得財産の問題については厳格にこの疑点を晴らしていただきたい。このことをお願いしておきます。  そこでお聞きしますけれども国税庁には高額所得者の脱税を防ぐために機動調査官がおりますね。機動調査官、資料調査官こういういわばシステムがちゃんと確立していると聞きますけれども、それはそのとおりでしょうか。
  330. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) そのとおりでございます。
  331. 加藤進

    ○加藤進君 もう一つ聞きます。これら調査官は週刊誌、日刊誌、新聞、テレビ、町の中でのゴシップについてまで専門的に情報を収集する、こういう役目が負わされているそうですけれども、これも事実ですか。
  332. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 先ほどそのとおりでございますと御答弁しましたのは、正確に言いますと国税庁本庁には置いてございませんで、それは現場の国税局及び税務署に配属になっているわけでございますが、そのときによっていろいろな資料の収集のやり方ございます。その中にはそういった町のうわさ、あるいは新聞雑誌等の記事からヒントを得るというふうなこともその中の資料収集の方法の一つでございます。
  333. 加藤進

    ○加藤進君 したがって、そういう機構がつくられておるわけだから、この機構をフルに運用する、こういうふうに理解していいですね。
  334. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) それはこの問題に限らずそういったポストがあるわけでございますから、そのポストに任命された調査官というのは自己に与えられた任務に最善を尽くすというのは、これは言うまでもないことでございます。
  335. 加藤進

    ○加藤進君 なおもう一つ。こういう有効な資料を集めて直ちに調査するという任務を持っている査察部というものまで設けられておるわけですね。今日その査察部において、この問題について何らかのいわば情報というものが反映しておりますか、おりませんか。
  336. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 査察部のほうでどういった資料を収集してそれをどういうふうに活用しているかということにつきましては、これはいままで公表されてきたことがございませんので、その点についてはお答えいたしかねます。
  337. 加藤進

    ○加藤進君 少なくとも出されました私たち疑惑、この問題についてはこれらの機構による調査の対象になるということは言えるんでしょうね。
  338. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 査察調査の対象にするかしないかということ、これはまさに国税の中でもきわめて重要な極秘事項でありまして一種の犯罪捜査でございますから、その点につきましては御答弁申し上げるのは御遠慮さしていただきたいと思います。
  339. 加藤進

    ○加藤進君 私はここに、写しでありますけれども、「重要資料せん」という文書を持っています。これはマル秘と書いてあります。「重要資料せん」というのがあります。この「重要資料せん」というのは、これはどういうものでしょうか。
  340. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 税務署、国税局には、それぞれの取引先あるいはまたそういったことで収集いたしました資料がございまして、その中で特に重要と思われるものにつきましては、内部的にそういった意味でより分けておるということでございます。
  341. 加藤進

    ○加藤進君 この「重要資料せん」は、高額所得者やその資産について重要な情報を記録し、その活用事績についてまで記入して、コンピューターにもこれを入れて覚えさしている、こういうシステムになってますね。そこで私聞きますけれども田中総理のこれらの疑惑については、やっぱりこのコンピューターに当然かかっておると思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  342. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 実はそれをコンピューターに入れておるかどうかということにつきましては、ちょっといまその「重要資料せん」がすべてコンピューターに覚え込まされているかどうかということにつきましては、いま必ずしもはっきりいたしませんので御答弁を避けたいと思いますけれども、おおむね重要な資料というものはそういったコンピューターであるとか、あるいはいろいろなシステムを使いまして整理されておるということは事実でございます。
  343. 加藤進

    ○加藤進君 だから私は聞くんです。田中総理はそれに入っているか。田中総理はこういう「重要資料せん」の対象になっておるのか。あるいは室町産業やその他のいわゆる田中直系といいますか、田中自身所得である企業、これらの企業については、当然「重要資料せん」の対象にならなくちゃならぬ。これは当然でしょう。なってますか。
  344. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ちょっと私は急でございますので、はっきりした御答弁ができませんけれども、「重要資料せん」と申しますのは、必ずしもその対象によってきめるというものではございませんで、その資料内容そのものによって振り分けておると私はそういうふうにいま理解しておりますが、ちょっと先生の御質問につきましては、いま明確な御答弁ができかねる次第でございます。
  345. 加藤進

    ○加藤進君 国税庁の担当官とあろう者がそんなことを知らないんですか。「重要資料せん」は、何もあれこれという特定の人、特定の対象じゃないんでしょう、これは。高額所得者、その資産、これがどうなっているのか、正常であるかどうか、これを情報として収集して、そして集計するものでしょう。このために出されておるマル秘なんです、これはね。私はあえて聞きたいのは、田中総理のこの問題、田中総理の申告所得の問題、あるいは田中総理の邸宅をはじめとする資産の問題、これはかかっておるのかどうか。事は一国を代表する総理大臣ですよ。国税庁の担当官がそれがかかっておるかかかっておらぬかということさえ何ら知らないなどということは、これは国会に出る資格ないですよ。あなたはどう思いますか。わからなければ、調べて直ちにこれに対して答弁してください。
  346. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) いま急の御質問なんで、はっきりした御答弁ができないのは非常に申しわけないと思っておりますけれども、おそらく重要人物、大資産家、あるいはそういった大口取引等に関連する資料というものは、整理され、ファイルされていることと思います。
  347. 加藤進

    ○加藤進君 それでは、調べれば出てきますね。いま調べてください。
  348. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) それを外部に、どういった人を「重要資料せん」の対象にしておるかとかどういった資料をそこにファイルしておるかということは対外的に申し上げておりませんので、その点についての御答弁は御かんべんいただきたいと思います。
  349. 加藤進

    ○加藤進君 私は今日重大な疑惑が持たれている田中総理についてだからあえて言うんですよ。そんなのがこの「重要資料せん」にひっかからないなどということになったらこれ何のことですか、何のための調査ですか。委員長委員長お願いします。この問題についてはけじめをつけなくちゃならぬと思うんです。至急委員会としてもこの点の調査を敏速に行なって、これを決算委員会に、はたして田中総理の資産あるいは所得内容がこの「重要資料せん」の中に明確にあるのかどうか、これは確かめていただきたい。このことをひとつ委員長お願いしておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  350. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまの加藤委員のお申し出につきましては、本日終了後開かれます理事会で正式に議題といたしまして検討いたします。
  351. 加藤進

    ○加藤進君 私はなお申し上げたいことがございますし、またわが党の進めておる独自の調査につきましては今日の質疑においては一言も触れることはできませんでした。しかし、いままでの答弁をお聞きしても、事柄がこれだけ深刻かつ重大になっておるのにかかわらず、当の大蔵大臣あるいは国税庁も全く国民から見たら何をやっているのかと言わざるを得ないようなあいまいな態度です。私はそのことについては納得いきません、本日の答弁については。私はこの点については、われわれの質疑の背後には国民があるということ、納税義務を持つ国民があるということ、このことを考えても今回の田中総理にからまる脱税容疑については徹底的にこの問題を明らかにしていただかなくてはならぬ。私はその責任大蔵大臣にあり、そしてまた国税庁にある、私はそう言わざるを得ないわけでございます。  またこの問題の究明が進めば、これは田中内閣の運命にもかかわる問題でありましょうし、これは事柄によっては大平大蔵大臣政治生命にもかかわる問題であるという点は、十分銘記しながら、今後国会の審議を尊重していただきたい。このことを心からお願いして私の質疑を終わります。答弁お願いします。
  352. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重要な問題でございます。政府といたしましても慎重に対処していきたいと思います。
  353. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ただいま大臣が御答弁申し上げましたように重要な問題でありますから、私たちは慎重に検討してまいりたいと思います。
  354. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 先ほどから文芸春秋の十一月号に出ております田中総理個人及び田中派の金脈関係についての質疑が行なわれておりますけれども、これはきわめて重大な問題でございますので、私も本論の質問に入る前に二、三大蔵大臣にただしておきたいと思います。  文芸春秋に出ておることに対しまして田中総理は、公私混同だということを言われましたけれども、しかし事実を否定はあながちされていないようであります。この公私混同があるならばこれをはっきりさせるのがやはり必要かと思います。こういううやむやのまま放っておくのは、私は現在の政治不信に輪をかけるものであり、きわめて重大な段階を迎えておる日本の経済や社会の情勢の中でこれ以上政治不信を高めていくというのはきわめて危険なことと言わざるを得ないと思います。本来ならばこれはやはり田中総理に直接聞くべき問題かと思いますが、ただ脱税の疑いとかあるいは所得申告の正否についての疑惑が持たれております。これはもちろん大蔵大臣の管轄の問題であります。したがって大蔵大臣としても田中総理にかけられておるこれらの疑惑をはらすために当委員会においてはっきりした報告なりあるいは釈明が行なわれるべきかと思いますけれども、この点についてどう考えておられるかまずお伺いしたいと思います。
  355. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題につきましては今朝来お答え申し上げておるとおり、大蔵省といたしましては、総理大臣でございましょうとだれであろうと一納税者でございまして、その課税の捕捉、調定につきましては、私は厳正公平に処理いたしておるものと確信をいたしておるわけでございます。私は税務当局に信頼を置いておるものでございます。ただこの問題が田中総理にまつわる問題として提起されておるわけでございまするので、一私人、一納税者の単なる問題以上の要素を持っております。したがって、それにつきましてはどのように受けとめて対処してまいるかという点は、いませっかく考え整理中であると申し上げたわけでございまして、これを田渕さんおっしゃるように関心も持たず、処置もしない、政府として放置しておくなんというつもりは毛頭ないわけでございまして、どのように政府処理すべきものか、あまり前例のない問題でございますので、せっかく検討をいたしておるわけでございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思うのであります。
  356. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 具体的な方法については検討中かと思いますけれども、ただ大蔵大臣として、現在疑惑が持たれておるこの疑惑をはらすための処置をする義務があるということはお認めになるわけですね。
  357. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政治や行政は公正公明でなきゃならぬわけでございますし、私は税務行政も、国有財産行政も公明に行なわれておると確信しておるということは先ほどからるる御答弁申し上げておるとおりでございます。しかし、この事態はこういう姿において提起されておりますので、今後なおよく検討さしていただきまして、新たに究明すべきものがございますならば究明していかなきゃならぬことは当然と思います。
  358. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大蔵大臣の現在の立場とすれば、正当に処理されておるというふうに確信を持たれておると思いますが、国民の目から見た場合にそれがわからない、非常に疑わしい、したがって正当に処理されておるということならば、それが国民の前に明らかにされなければならないと思います。したがって、正当に処理されておるということを確信されておるいなにかかわらず、そういう措置をとられる必要があると思います。これは大蔵大臣責任かと思いますが、いかがですか。
  359. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はそういう確信を持っておりまするし、いま国税庁側からも御答弁がありましたように、ただいままでのことにつきましては処理に間違いはないものと思うという確信が述べられておるわけでございます。しかし、総理大臣案件であろうと、どの案件であろうと、ただいまの処理で見のがしておるというような事項があとで明らかになってまいりますならば、それを取り上げて究明していかにゃいかぬのは、これは当然の道行きだと考えています。
  360. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在のこの脱税に関する疑惑と同時に、これは昔の話になりますけれども田中総理大蔵大臣時代に職権を乱用した事実もいろいろ言われておるわけです。たとえば小佐野賢治氏のハワイのプリンセス・カイウラニ・ホテルの買収契約、これが無効になるおそれがあったときに、当時は認められていなかった法人の在外資産取得のための外貨送金、これは大蔵当局はなかなかこの要請を認めなかったわけでありますけれども、突然契約の最終日に許可が出た、こういうことがあるわけです。また昭和三十八年九月の虎の門国有地の小佐野賢治氏への払い下げ問題、これについても当時の田中蔵相の職権乱用という疑いがある。まあ大平大蔵大臣ならこういうことはされないと思いますけれども、この点に対する見解はいかがですか。——大臣にお伺いします。
  361. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま田渕先生お尋ねの事件につきまして、私よく承知しておりませんので、役所のほうの実務のほうから事情を聴取してみたいと思います。
  362. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあこれはほんの一例でありまして、そのほか田中総理のこの大蔵大臣時代のいろいろな疑惑というのはたくさんあるわけです。もちろん現在の大蔵大臣としましては、この先任の大臣のしたことにいろいろ手をつけるというのはなかなかやりにくいことかと思いますけれども、しかし少なくともこの文芸春秋でもこういうそれに類したことが載っておるわけでございますけれども、こういう疑惑を持たれておることについては、田中さんの在任中のやったことについてやはり調査されるべきかと思います。そしてこの委員会に対して報告をしていただきたいと思いますけれども、その意思を持っておられるかどうかお伺いをしたいと思います。
  363. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 調査をすべきかすべきでないか。つまり、こういう問題田中さんであろうとどなたであろうと、私は公正に処理いたしておると思っておりますので、あらためて一体これを、また田中さんの時代のケースを取り上げて検討してみるべきかみるべきでないか、実はいま思いあぐんでおるところでございまして、検討をさせていただきたいと思います。
  364. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあいずれ本委員会で小委員会が設置され、田中総理答弁お願いし、まあこれは後刻の理事会で検討されると思いますけれども、詳細な質問はそのときに譲らしていただきたいと思います。  そこで、一応この問題は以上にいたしまして、本日予定しておりました土地税制についてお伺いをしたいと思います。この土地税制の中で、昭和四十四年度から実施された長期譲渡所得税の軽減措置のねらいは言うまでもなく土地の供給を促進する、そして住宅用地を確保する、こういう点にあったと思いますけれども、実際にはまず第一としましては、土地は宅地需要者にはあまり回らない。そして、大法人や不動産業者の買い占めを促進しただけに終わっておる。第二点としましては、年率三〇%に達する地価の著しい高騰をもたらして、庶民のマイホームの夢を無残に打ち砕いてしまった。第三点としては、多くの土地成金を生み出して、それに対する税を不当に軽減したために社会的な不公平を助長させた、こういう悪い点だけが出ておるわけであります。こういう点について、政府はどのように評価しておられるか、お伺いをしたいと思います。
  365. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) いま田渕委員が御指摘になりました現在実施せられております土地の特に長期譲渡所得につきましての課税の特例の効果でございますけれども、確かにおっしゃいましたようにその土地が非常に譲渡が多かったということがございます。これはもちろんそれを意図しまして税制の特例措置を講じたわけでございまするからその効果があがったとまずは認めなければならないと思っております。サンプル調査調査いたしたところによりますれば、大体その特例措置を始めました四十五年、その前の四十四年から選択適用を認めましたけれども、それから四十八年までの経過を見てみましても、長期で大体四百五十万円ぐらい土地の譲渡があったということになっております。あるいはまた長期の譲渡所得にあたります土地の譲渡価額が約四十一兆円あったということでございまして、これはまさに所期のとおり土地の譲渡が非常に多くあったというふうに私どもは見ております。もちろんその土地がかなり法人に入った、あるいは不動産業者に入ったということはございますけれども、それはその後におきましておそらく宅地造成という手を経ましてマイホームにあたる宅地に売られるということが経過としてございますから、そういう効果も私どもは認めざるを得ないと思っております。  地価が非常に上がったではないかという御指摘でございますが、これは確かにその期間におきましても土地の価格は上昇をいたしておりましたけれども、それがはたしてこの税制の結果であるかと申しますればいろんな要素がこれには影響いたしておると思います。この税制がこの地価の高騰をもたらしたものではないというふうに私どもは思っております。  土地成金が非常にふえたではないかという御指摘でございます。これも確かにそのとおりでございまして、その間におきますところの毎年の高額所得者のかなりの上のほうの大部分の人たちというのはこの土地の譲渡でその所得が生まれたということはそのとおりでございます。しかし、これは先ほど申しましたように、そういうふうに土地が売られるということを意図しまして若干の期間の税制上の不公正ということもあえて踏み切りましてこの特例措置をやった結果であるというふうに思っておりますから、総じまして私どもはこの税制というのは五十年、来年一ぱいの期限でございまするけれども、これを始めましてから今日までの状況ではやはりまず第一次的には所期のとおりに土地の譲渡というのはかなり動いたというふうに見ております。
  366. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はその土地がかなり動いたからこれが効果があったというふうには見られないと思うんですね。やはり土地が動くというのはやっぱり庶民の住宅用地、国民の住宅用地の確保ということができなけれらなはないと思うのです。その点に限って見るならば、住宅用地というものはあまり確保できなかった。しかも地価が上がって庶民のマイホームの夢は遠のいた。それに対して片っぽは多少の社会的な公平を犠牲にしても、そういう政策目的は達成されるならばそれは認めようという、その意味の軽減措置だったと思いますけれども、こっちの面は著しいその社会的な不公平を生んだ。そしてそれに対しては庶民の住宅用地というものは安くもならないし手にも入らない、こういう点から見ると、この法律の総合的な評価としては私はあまり芳しいものではないと思います。いかがですか。
  367. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) この税制でもってねらいとしましたところは、農地でございますとかまだ宅地になっていない山林でございますとか、そういうものが大量にまず売りに出てこられてそれが宅地に転化するということをねらったわけでございます。したがいまして、直ちに宅地が宅地として売られるというのはそれは一つの効果でございましょうけれども、大口のものが多量に出るというためにはやはり農地なりそういった山林なりというものが宅地用地として売られるということが第一次的には必要なわけでございます。したがいまして、そういうものがそれを業としておる不動産業者とかあるいはその会社とかというのに入るということはまたその次の段階として宅地として譲渡されるという期待が持てるわけでございます。で、そういうことをさらに促進いたしますために、法人が持っております土地を売りましたときには重課するという制度ができましたけれども、望ましい宅地の供給の場合にはその重課制度をはずすというようなことでそれを促進もいたしますし、また譲渡を受けました土地ができるだけ早くまた次に売られますように土地の保有税を強化するという措置もその後に講じましたから、両々相待ちましてやはりこの制度というのは、御批判もございましょうけれども、私は所期の効果をあげてきたと思っております。
  368. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は所期の効果をあげたというような評価は誤りだと思うのですがね。たとえば東畑前税調会長自身がですね、土地税制は失敗だったということを認めておられるわけです。政府だけがこれは所期の効果があがった。そして国民大衆はマイホームの夢を打ちくだかれた。これはちょっとおかしいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  369. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 税制調査会長であられた東畑さんがおっしゃいましたことは、必ずしもいま田渕委員がおっしゃったそのままではございませんと思います。土地の税制についての十分の配慮を当初からやらなかったということについての御反省があったと思っております。したがいまして、先ほど申しましたように、土地の長期譲渡所得につきましての分離制度を導入しまして、そのあとで四十八年からでございましたか、先ほど申しましたように、法人の土地の重課制度とかあるいは個人の不動産業者の土地の譲渡を重課する制度あわせまして望ましい宅地供給についてはいずれもその制度をはずすということで宅地供給を促進する制度を導入しましたり、土地を持っておるものにつきましては税金を重くしまして、なるべく早く売らせるという土地の保有税制度を加味しましたから、そういうものを初めから確かにワンパッケージとして持っておれば非常に両々相まった制度と言うことができると思いますけれども、そういうものをあとから追加したという点につきましては、確かに東畑さんのおっしゃるように、十分の措置が初めから講じられなかったという点はございます。
  370. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 やはり一つの政策というものは総合的なものが必要なんで、したがってこの分離課税が成功であったかどうかを結果を見て判断しなければならないと思うんです。現実に国民大衆が大都市周辺に住宅地を求めようと思っても買えません。こういう現実があるわけですね。こういう現実が出ておるのにこういう税制が成功だったということは言えないと思います。大臣はどう考えられますか。
  371. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この土地政策はいろんな角度から評価せなけりゃいかぬと思うんでございまして、その功罪は税だけ——田渕さんもそういうつもりでないだろうと思いますけれども、税制のデメリットだけに帰するというおつもりではないだろうと思いますけれども、それは無理ではないかと思うのであります。ただ、こちらが申し上げておるのは、土地の移動というものが比較的ひんぱんにこの税制に触発されて行なわれたということは、確かにこの税制にもメリットがあったということをごく謙虚に申し上げておるわけでございます。この税制を執行いたしますならば土地問題が非常にスムーズな解決になるだろうと、あるいはその糸口に乗るだろうというようなことを政府といたしまして初めから過大な価値評価をしておったことでないことは御案内のとおりでございまして、土地全体の政策の中の一つの一環としてこの税制はそれなりの役割りを期待してやったわけでございますから、その限りにおいては一応の成果をおさめたものと私は考えております。
  372. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただ、この税制は土地成り金について税金をうんと軽くするというきわめて大きな問題点を持っておるわけですね。こういう問題点を持った法律を施行したのも、一つはやはり宅地供給が促進されればこれは非常にけっこうだという目的があったからだと思います。ところが、この二つを比べてみないといかぬと思うんです。この犠牲と効果を比べた場合どちらが大きかったか、私は社会的な不公正を助長させた犠牲のほうがはるかに大きかったのではなかろうか、こういう気がするわけです。この点についての評価はいかがですか。
  373. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 犠牲は確かに税制の普通の税率を適用しないということにあると思います。それはそのときにもうすでにわかっておったことでございまして、通常の本則の課税を行なう場合とそれから三期に分けまして一〇%、一五%、二〇%という分離の税率を使うというところのデメリットというのはこれは明らかであります。そういう税制の本則を曲げてまでも土地の供給を促進しようということを当時から意図したわけでございまして、先ほど来申しておりますように、その意図どおりに土地の供給というのは非常に促進をせられました。その中で、おっしゃいますように、まだ最後の需要者でありますところの個々の人たちの宅地に至っていないという点はございますけれども、それはやむを得ないタイムラグでございまするから、それを阻害するような法人なりあるいは個人の不動産業者においての課税を重課する、あるいは場合によればその重課をはずすということ、それからまた土地を持っておるということにつきましての税金を高くしてなるべく早く最終の需要者に売らせるということとのかみ合わせをやってということでメリットをさらに高めるということでございまするから、それぞれはやはりこの税制を導入しましたときに予測されておったとおりというわけでございます。
  374. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はそれは実態を正しく把握しておられないと思うんです。やっぱり一番必要な大都市周辺の土地はあまり出ていないんですよ。たくさん出ているのはむしろ地方のほうです。地方のほうを大法人とかデベロッパーが買い占めをしておる、あるいはゴルフ場をつくったり何かしておるというのが実態なんです。あるいは売った人がまたその金で新たに土地を投機で買っていくと、これが現実でして、大都市周辺の一番必要なところで住宅地は何ら供給されていない。  私はなぜこういうことを言うかというとですね、今後この法律は五十年の終わりで期限が切れるわけですけれども、これからの税制についてものを考えるときに、いままでの実績に対する正しい評価がなければ正しい政策が出てくるはずがないと思うのです。大蔵省の当局はそんな事実に即さないいいかげんな評価をされておるというのは私は非常に問題だと思うのです。この点はいかがですか。
  375. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私どもも現に市街地あるいは市街地周辺でできれば売りに出てもらいたかったと思いますところの農地その他がそんなに売られなかったということは十分わかっております。しかしそれは何もこの税制が阻害したというわけでございません。やはりかなりの土地の値上がりというのを期待した地主がこの私どもの税金を安くしてまで早く売ってほしいという要望にこたえなかっただけでございます。それは私どものとりました税制に沿ってもらえなかったという点では残念だということだけでございまして、しかし全体としては所期の効果をあげたと思いますから、そういう段階を経た上で五十一年度からどういうような土地に対する税制をとるかということを今後検討してまいりたいと思います。
  376. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は当初この税制ができるときに、まずきざみの問題に問題がある、大都市周辺の土地の値上がりのテンポから比べたらはるかに低い税率のアップですね。これじゃ大都市周辺の土地は出ないだろう、こういう指摘も委員会でされたと思います。数々のそれに対する危惧あるいは問題点も予算委員会あるいは大蔵委員会等で私のみならず各党の委員から出された。しかしそういうものについてのらりくらりと答弁をして、結局税制を実施したところが結果としては何ら成功しなかった。これが現実じゃないかと思うんですね。おそらく幾ら言ってもお認めにならないかもわかりませんが、それならばこれからこれをどうされるか、五十一年以降について政府はどう考えておるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  377. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 五十一年以降この制度をどういうふうにするかということは、現在税制調査会でも検討を始めていただいておるところでございます。もちろんその際には、当時ございました——いまでもございます土地の譲渡益については重課すべきではないかという意見がある一方で、さらにはやはり供給を促進するためには普通の税率を下げてでも早く供給をさせるべきではないかという意見が依然としてあることはあの当時と同様でございます。私どもは一応この制度がかなり成功をおさめたという段階、しかもおっしゃいますように、なおまだ土地の値上がりを待っている土地も相当あるという事態を踏まえながら五十一年度の制度を税制調査会で御検討願いたいと思っております。
  378. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 だいぶこれ認識のずれがあるようですが、あまり時間もありませんからいずれあらためてまた質問をしたいと思ますが、問題は、次は、利子・配当課税あるいは富裕税についてお尋ねをしたいと思います。  インフレが激しくなって所得分配の不公平というものが拡大しております。  そうしてフロー、ストック両面における不平等の拡大を是正するため、税制における所得と富の再分配機能を強化する必要が高まってきております。先日大蔵省がまとめられた四十七年度分の所得税の所得階層別税負担率、これによりますと、所得は二千万円以上になると逆に税負担率が低くなるという逆累進の傾向を示しておるということが明らかにされております。これの元凶は言うまでもなく、土地譲渡所得に対する軽減措置あるいは利子配当所得の優遇税制、この二つだと思います。土地税制については、ただいま申し上げたとおりでありますけれども、もう一つの元凶である利子配当所得についての政府考え方を聞きたいと思います。
  379. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 利子配当の分離課税制度その他の特例につきましても、五十年で期限がくるわけでございますので、税制調査会で検討を始めていただいておるところでございます。これも一体どういうふうに今後持っていくのかということにつきましては、今日におきますところのわが国の経済それから貯蓄の状況、投資の状況その他を総合的に勘案をいたしまして、年末までには来年度税制改正の一環として決着をつけたいというふうに思っております。
  380. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いずれにしてもこの大蔵省報告によるように逆累進性というものが明らかになっております。これに対する是正は考えなければならないと思うんです。この点はどう考えておられるかということが一つ。それからそれの元凶はやはり土地譲渡所得と利子配当課税にある。したがって、この二つの税金はやはり従価の方向で検討しなければならないと思いますが、この点についてどう考えておられるか、この二つの点についてお伺いをしたいと思います。
  381. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) いま田渕委員が御指摘の、この間新聞に出ました表は、この春に参議院の予算委員会だったと思いますけれども提出した資料でございますが、それは実は先ほど来御指摘のような土地の長期譲渡所得についての分離課税がそういった結果を生んでおるということの証左でございまして、あそこに出ております利子配当は実は総合課税をされておるものが出ておるものでございまするから、それは御指摘のようにむしろ累進に乗った課税が行なわれておるということでございまして、土地の問題があそこに大きくクローズアップされたというふうに思っております。でも、いずれにしましても、こういった資産に関しますところの所得が十分の総合課税所得税制の中に把握していないということは確かでございますし、それはまたそれで先ほど来申しましたようないろいろなねらいというものはございますから、そのねらいとそれから税制の本則をそこの特別措置として採用するということのメリット、デメリットを今後なお年末までに検討いたしたいと思っております。
  382. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 あと一分になりましたので、最後に大蔵大臣に二点お伺いしたいと思います。キャピタルゲイン税は来年度から創設の方向だということが新聞の記事に出ておったようにうかがいますが、ほんとうにこのキャピタルゲイン税を創設されるつもりかどうか、これが第一です。  それから次は、いろいろの、たとえばインフレによる土地と資産の値上がりあるいはこの土地税制とか利子配当所得に対する税制の欠陥によって単にフローの面だけでなくて、ストックの面の不平等が拡大しております。これに対する対策としてやはり富裕税というものの創設が必要と思いますけれども、この点についての大臣見解をお伺いをしたいと思います。
  383. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) いま田渕委員がおっしゃいましたキャピタルゲイン税といいますのは、実は所得税でも土地の譲渡所得とかでおわかりのように、キャピタルゲインの課税はすでにやっておるわけでございます。それがもちろん分離特別税率であるという……。
  384. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは証券の分じゃないかと思いますがね。
  385. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 株の譲渡所得につきまして、現在原則として非課税でございまするから、それを課税すべきではないかという御意見でございまするが、現在年間五十回あるいは二十万株というような条件を満たせば事業所得に該当するとして株の譲渡所得課税いたしておりますから、そういった現在原則として非課税である。あるいはそういった条件に該当すれば事業所得として証券の譲渡益について課税をするという問題、この問題については、現在やはり総合的に勘案をしなければならないということで検討いたしておりますけれども、これは少しく法人課税の問題とも関連いたすものでございまするから、私はもう少し時間がかかるのじゃないかというふうに思っております。
  386. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 来年度の税制政正一般でございますけれども、この間、政府の税制調査会改選がございまして、新たな陣容を整えまして御審議をいただいておるわけでございまして、私といたしましては、その御審議の経過と結果を十分見た上で来年度の構想を固めたいと思いまするけれども、ことしは大きな減税もやらしていただいたと承知いたしておるわけでございまして、来年にはあまり大きな野心的なプログラムは期待していないわけでございまして、できるだけじみちにやってまいりたいと思います。税制調査会の御審議を待って考えてみたいと思います。いま特にこうしたいという具体的なねらいは持っておりません。
  387. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 以上です。
  388. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうは大平大蔵大臣は当事者でもないのにだいぶお気の毒な立場だとさっきから同情しているのですけれども田中総理大臣がここへ出席されてお答えにならない以上、これはやはりもうしばらくがまんしていただかなければなりませんわけで、私は、田中総理の申告所得と、それから取得された財産との関連についてそのあたりから質問をしたいと思います。  まず、軽井沢で別荘、土地をお買いになりまして、個人法人と三つあるわけですけれども、少なくも二カ所は角榮氏の名義でありまして、これは約三千坪あります、軽井沢に土地が。反面、総理の公示された所得金額とこの評価を計算しますと、はたして買えるのかどうか素朴な疑問を抱くわけですが、所轄の税務署ですね、角榮氏に関する所轄の税務署がどこで、そしてこの土地と別荘を取得された時点においてお尋ねを、例のわれわれがよく受け取るお尋ねを出したかどうか、それをまずお聞きしたい。
  389. 横井正美

    説明員(横井正美君) 田中総理の所轄税務署は小石川の税務署でございます。お尋ねを出しますのがこういう場合には通常でございます。
  390. 野末陳平

    ○野末陳平君 通常でありますから、田中総理にはお尋ねを出したかどうか。
  391. 横井正美

    説明員(横井正美君) 出しておると聞いております。
  392. 野末陳平

    ○野末陳平君 出しておると聞いておりますというのが非常に困るのですがね。それではあなたはお尋ねを出したというリストがあるわけです、税務署に。そのリストを、控えですね、これをごらんになってお答えになっているのか、それともただ聞いてそれだけで済まされている、そういう返事なのか、どっちなんですか。
  393. 横井正美

    説明員(横井正美君) 私どもお尋ねにつきましては、機械的に登記所から資料が参りました場合等におきまして、一般的に機械的に出されるわけでございますが、これはある時期を過ぎますと申告の審議が終わります段階では廃棄になるという場合が多いようでございまして、私現物は確認いたしておりません。
  394. 野末陳平

    ○野末陳平君 その辺が無責任だと思うんですよ。ぼくはもう前から何回も、去年からこの問題に関しては国税庁資料資料と言っているけど、全然出してくれない。今度、きょうはずっと朝からあるように、この問題は非常に疑惑を呼んでクローズアップされてきて、にもかかわらず、はたしてそういうお尋ねを出したかどうか、その内容はどうなっているか、ここで発表しないまでも、そのぐらいの確認をするのがあたりまえだと思うんですね。私らはとにかくこの点を、お尋ね出してあるのかどうかということからきょうは質問するから、その辺をよく確認して答えてもらいたいと、それが秘密で言えないなら言えないで、それは別ですよ、問題は。そうでしょう。なくなっちゃったかどうか、それだってわからないんでしょう。要するに機械的に聞いて向こうの返事をそのままでいまお答えになっているわけでしょう。そんな怠慢な無責任なのはぼくはないと思うんですなあ、この問題に対して。これだけ疑惑がさっきから続いていて、全然その当局者が守秘義務以前でしょう。あなたの責任で、あるいはこちらが要求しているんだから、当然とにかくあるかどうか、これは確認してなきゃ。その上で答えられないというならまた議論になりますよ。どうなんですか、これは。お尋ねほんとうに出しているんですか。断言できますか。
  395. 横井正美

    説明員(横井正美君) 出しておると聞いております。
  396. 野末陳平

    ○野末陳平君 だから聞いているなら聞いているで出してないですよ。出しているならば出したという控えは必ずありますからね、税務署には。そうでしょう。買いものしたら、その買ったものの金額とその人の所得の大きさとを比較する表がありますよね、税務署に。で、資料担当がそれを見て判断の上でお尋ねを出すのが普通でしょう。だからもし出していると聞いていて、そのとおりだと信用しているならば、せめて出したという控えぐらいは持ってきて反論しなさいよ。出していないんだから。これはここでもって言えませんけど、コピー出しますか。それだけ、内容じゃないんだ。お尋ね出したかどうかのコピー、控え持ってきますか。
  397. 横井正美

    説明員(横井正美君) 控えはございません。
  398. 野末陳平

    ○野末陳平君 ございませんって、どうしてございませんってわかるんですか。あなたは聞いてきただけでしょう。それを聞いて、ございませんと向こうが答えたの。それとも何であなたはそこで断言できるの、控えがないって。税務署ってそんないいかげんなこと、お尋ね出すときに控え一々だれに出したと、そんなの全然とっていない。まさかそんないいかげんなことは言わないでくださいよ。
  399. 横井正美

    説明員(横井正美君) 訂正いたします。現在ないと聞いております。ただ一般的にお尋ねを出します場合、発件簿等におきましては、大ぜいの案件でございますので、一括して出しておるというのが実情でございます。
  400. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういう何となくあいまいな、突つけばすぐ何かぼろが出るような答えをしているから、ますます総理は特別扱いされているんじゃないかと。とてもあの所得で、それは高額の所得だけれども、この別荘を買えるわけないと、これだけの土地を。そういう素朴な疑問があっても、おそらくわれわれならやられるのに、総理は特別扱いされていると、こういうふうに思っちゃうわけですよ。そういう疑惑濃厚になるわけですよ。とにかく出してないんだけれども、それについてここで水かけ論をやってもしようがないから。ぼくだってもらいましたよ。ぼくが家を建てたとき、練馬の税務署ですけれども、来ましたよ。ちゃんと、記入して返しましたよ。公開してもいいですよ。そういうことは、控えなんて四十七年だから二年なってないでしょう、まあ二年でしょう。そんなものはなくしているわけはないんだから、まあいいや。あんまりいいかげんだよ。国税庁長官どうしたんですか。ぼくは国税庁長官にきょうは質問しようと思っているんだから。  そこで、ちょっと国税庁長官いないと困るけども、じゃあ大蔵大臣、いま小石川税務署ということでしたがね、所轄は。ここで角榮氏に関するこの問題特に最近クローズアップされた問題に対して、マスコミが取材に来たら取材に応じないようにという署長の名前で箝口令が出ているけれども知っていますか。
  401. 横井正美

    説明員(横井正美君) その点は私存じておりませんけれども、けさほど来御審議の過程で出ましたように、総理も一納税者でございまして、法のもとに平等であるということを裏返しいたしますと個人の秘密につきましては税務署ではお知らせできないということでございますので、お断わりをしておるということではないかと存じます。
  402. 野末陳平

    ○野末陳平君 秘密を守るのはいつもなんで、特にこの問題に関してマスコミが取材に来たらという、この最近のことですよ、ここ一日、二日のことですよ。これだって水かけ論だからいいですよ。何から何までくさいんだから、隠そう隠そうとしているんだから、隠せば隠すほど不利になるんだから、あなた方の偉い人が。  そこでちょっと角度を変えますがね、よくお金持ちとか、財界人とかがこういうことをやるんですよ。つまり、個人財産をその所有あるいは管理を法人の名義にしておく、あるいは社長さんが自分の財産——土地とか家を会社の名義にしておく、あるいは別荘を、そういうケースがざらにありますね、ありますね。ただ、これは法的に税法上問題がなければそれで通っているんだと思うんですが、これは国税庁としてはかまわないことだと、いわゆる個人の資産を法人名義にしてそのまま管理、所有しても全然かまわないんだという解釈でずっとこの問題に対して接しられているわけですか。
  403. 横井正美

    説明員(横井正美君) お尋ねの場合は、たとえば軽井沢の別荘五千九百十一坪——文春でそのようになっておりますが、これは東京ニューハウスの名義であると、これが総理財産ではないかと、それを総理がお使いになっていると、こういうことなどに関連してであるかと思いますが、私ども税法の上から考えますと、会社財産を持っておる、それを会社の代表者でございますとか、あるいは第三者でございますとか、それが使うということは往々にあることでございまして、その場合におきまして税法調査をいたしまして処理をいたしておりますが、この該当の場合におきましてはけさほど国税庁次長から御答弁しましたように、総理関係会社につきましては必要に応じて調査をいたしまして、いままでのところ適正に処理されておると、こういう実情にございます。
  404. 野末陳平

    ○野末陳平君 具体的に言いますと、目白台二の三の九に約百坪ばかりの土地がありまして、これが謄本ですけれども、土地がありまして、これは総理のお宅から歩いて一分ぐらいのところにある土地ですけれども、名義が田中カズエさん、それから田中持策さんというこの二人の方の二分の一登記でもってこの土地がここに載っております。このカズエさんという方は明治四十四年のお生まれで、聞くところによると角榮氏のお姉さんだそうです。そして去年までは目白の角榮さんのお宅におられたようですけれども、ことしの一月にこの土地に家が新築されまして、ここへ引っ越してこられたと、その新築された家は六十坪。もう一人の持策さんというのは養子になるわけで、つまりいまの田中カズエさんの娘さんの御主人ということですから、角榮さんとの関係でいくとこれはめいの御主人ということになりますね。いずれにしても身内ですね。それで現在このうちに住んでいるわけです。これは住民票ですけども。ただこういう身内とはいえ一般の方ですから、本来だったらここで名前を出すのも非常に申しわけない気もしますが、なぜここで取り上げたかといいますと、この問題の土地が実は去年まで室町産業というところの、さっきから名前が出ていますが、室町産業というところの所有だったわけです。はっきりこう出ておりますから、これはもう間違いないと思うんですが、室町産業の所有だったわけです。そこで、あえてここで取り上げたわけです。国税庁長官にお伺いしますが、室町産業という法人の角榮氏との関係においてあなたの御存じのことをちょっと説明してください。総理との関連においてですよ。——法人だから調べているでしょう、いろいろ。いままでずっと調べて適正な処置だということになっていますから。
  405. 前川旦

    委員長前川旦君) 国税庁答弁急いでください。
  406. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) ただいま私の手元にございます室町産業につきまして、田中角榮氏との関連という御質問で調べてみたわけでございますけれども昭和四十一年三月末から四十七年三月末までの間におきます主要株主、それを見ますと、田中角榮氏の名前は一応大株主の中に出ておりません。しかし、あえて申し上げますならば、新潟交通株式会社が筆頭株主であるとかあるいは日本電建が株主であるとか、あるいは新星企業が株主であるとかいったような、いわゆる通常田中角榮氏の関連会社であるといわれておる会社が大株主として連なっておりますし、そのほか、個人株主といたしましてはやはりそういった文藝春秋に出ておるような方のお名前がここに出ております。
  407. 野末陳平

    ○野末陳平君 株の関係でそれだけ関連があるということでけっこうですが、そのほかにうわさではもういろいろ言っていますが、私はうわさとか文藝春秋記事というものとは無関係に、私が知る限りにおいて室町産業と田中角榮氏の関係について言いますと、まず一番目は、角榮氏の疑惑あるところ常に室町産業の名前がありました。いままでも出ました信濃川の河川敷の買い占め、柏崎の原発用地の買い占め、ここに常に室町産業は登場をしておりまして、マスコミでは黒いつながりというような表現もしております。それから二番目は、いま国税庁のほうからも話がありましたけれども責任者が角榮氏の昔からの親友であり、また株の関係もかなり関連会社で持ち合っているということ、あるいは社員はいなくて、役員がやはり身内の人であるというような、そして何をやっているかというと、非常に変則的な会社で、事務所がきちっとあってそこに社員が出勤していると、あるいはきまった電話番号に社長が出てくるとかという会社でもないというような点で、いずれにしても役員構成が田中角榮氏の身内であるということですね。そうして三番目、現実にいま角榮氏がお住まいになっている目白のあのお宅のあの土地の一部が室町産業の名義になっています。これはお調べになればわかりますが、昭和四十一年の時点で約百六十坪ばかりですけれども、少なくもその室町産業の名義の土地の上に田中さんが住んでいるわけで、これはもうこの室町産業と田中角榮氏が他人であるということは当然もう言えないわけなんですね。ですから、私はこの室町産業というのは角榮氏の分身であると、さらに言えば陰の部分であるというふうに思っておりますから、それを踏まえて、この目白台二の三の九という場所のこの土地約百坪について所有権移転の状況を言いますから、そちらの課税台帳のほうで確認してくださればけっこうです。まず室町産業がこの土地を買ったのは昭和四十六年の二月九日に所有権が移転ということになっています。原因はもちろん売買ですから、前の持ち主から室町産業が買ったわけですね。そして昭和四十八年の三月二日に所有権が移転して、さっき言いました田中カズエさんと田中持策さん親子に二分の一登記でもって所有権移転の記載があります。これはそちらでも確認できますね。
  408. 横井正美

    説明員(横井正美君) おっしゃるとおりだと思います。
  409. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで問題は、まずこの田中カズエさんと持策さんのお二人ですけれども、この土地が約百坪、一億数千万です、当時のお金で、当時の相場で。そして新居、これが、うちですね。このうちが幾らぐらいで建っているか、それは解釈いろいろありますけれども、少なくも、六十坪ですから、三千万ぐらいするかもしれません。そうするとこの土地と家と、これを合わせて約一億数千万というこのものを取得できるかどうか、非常に判断に苦しむんですがね。このお二人が、プライバシーに立ち入って申しわけないが、このお二人はどうでしょう。前板橋に住んでいたけれども、この板橋の税務署のリストの中で高額所得者として公示所得の対象になったことがここ十年ある人ですか、どうですか。
  410. 横井正美

    説明員(横井正美君) 総理の姉にカズエさんがあり、その息子さんに持策さんがあるということは存じております。それからいまのお尋ねでございますが、公示になったことはございません。したがって、公示以下の所得ではなかったかと思います。ただ、御承知のように不動産の購入にあたりましては当年の所得だけから土地、建物を買うと、こういうことではございません。過去の預金等をおろす場合、あるいはまた財産を処分する場合、あるいはまた他の財産、あるいは当該財産抵当権を設定する場合等ございますので、私どもは、先ほど総理の軽井沢の別荘も同様でございますが、カズエさん、持策さんの件につきましてもその辺の説明を求めまして適正に処理いたしております。なお、いま非常に多額の数字があげられましたけれども、それほど多額のものではないのではないかと、こういうふうに聞いております。
  411. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうかもしれませんよ。だけどそれをはっきり言わないから、これに対して、公示された所得の中だけでない、ほかから出ている金があるというなら、どういうものかそれを言わなくちゃ——言えないわけでしょう、プライバシーだということで。それをはっきり言ってくれなければ、こちらのほうもとうてい買えそうもないと、一体どうなっているんだろう、資金の出どころは、ことによったら角榮氏かもしれないなとか、いろいろ考えるでしょう。そういうことをはっきり言ってくれなくちゃ困りますよ。私はある程度わかっていますけれども、これはプライバシーですからこれ以上追及しませんけれども。いずれにしても、たとえばいまぼくの言った値段は高いと言いましたけれども、これは角榮氏は御存じのとおり身内思い、きょうだい思いの人ですからね、室町産業を通じて安く売ったかもしれないし、あるいはただで、まあ一億近いこの高級住宅地の百坪をプレゼントしたかもしれないし、そうなれば贈与税の対象になっていなきゃおかしいし、その辺やっぱりはっきりおっしゃっていただけばもっとすっきりするんですが、いかがですか。
  412. 横井正美

    説明員(横井正美君) 資金の調達の中身につきましては納税者のきわめて重要な秘密に関することでございますので説明を遠慮さしていただきたいと、かように存じますが、担当の署におきましては説明を求めまして心証を得まして適切な処理をしておる、こういうことでございます。
  413. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあいいでしょう、これは身内とはいえども一般の人ですから、これ以上追及するという気はありません。ただし、四十八年というのは角榮氏が総理大臣になった翌年ですから、その時点でもって所有権の室町からいまの移転がごく一般的な売買だったのか、それとも財産を身内にころがして、また買い戻していくというような、いままで角榮氏はそういうパターンで何回かおやりになっておりますから、そういう合法的な一つの財産管理所有の方法かもしれないと思ったり、いずれにしても他人でない、他人に売ったわけではないと、身内の所有でそのまま土地があるということが非常に疑問があるところなんですがね。これはそちらはっきりできないから、問題の点を時間もありませんから、指摘をしたいんです。室町産業が持っていたのは、田中総理大臣になる一年前から、大臣になって——総理大臣ですよ、大臣になって一年という、足かけ二年間です、総理になってから名義がかわったというのは理由があるのかないのか、その辺のことはわかりませんが、少なくも室町産業は田中の分身だと私は思っていますから、田中角榮氏の。この土地は角榮氏のもので、いわば目白の私邸の土地の拡張ともとれるわけなんです。ちなみにこの四十六年の時点で角榮氏に売ったという、この方に直接聞いていないので、これはちなみにと申し上げるわけですが、聞いてみましたら室町産業へ売ったのではない、角榮氏がほしいというので売ったということを言っておりましたが、これは直接ではありません。しかし、近所の人はあれは角榮さんのものだということを言っておるのは確かなんですが、何よりもさっき言ったように、室町産業の名義であるその土地が現実には田中角榮氏の所有であるという、実質的、名前と実とのこのパターン、このつながりでやはり室町産業名義の百坪の土地も私は田中角榮氏が自分の私財を法人名義で所有する方法を当てはめたのだと解釈している。それ自身が悪いとか、いいとかあるいは税務上問題があるとかということをいま言っているわけじゃありません。この土地も角榮氏のものである、目白に、あの邸宅のほかに、もう一つ百坪ではありますが、角榮氏は土地を持っていたのだということを言いたいわけです。  そこで初めから戻りますと、田中総理大臣田中角榮氏は総理大臣になる一年前の四十六年から始まりまして、まずこれを百坪買い、そうして二番目にこれは東京ニューハウスになっていますから、この辺はまだいろいろあるでしょうが、現実には田中角榮氏のもの、実質的には。名義上はともかくこれを買い、そうしてこれは現実に角榮氏の名義ですが、これをまた軽井沢で買い、それでこれを買い、つまり二年の間にちょっと考えられないような高額な不動産を取得しているわけですよ。どう考えても、税務上さっき数字は出しませんでしたが、ここ数年の角榮氏の公示所得金額はいかに多くても、やはり個人でなく、個人法人と、所得とか財産をごっちゃにしているという、非常にその辺にすっきりしない面があるわけです。いままでの調査では適正だとおっしゃるかもしれないけれども、あらためてこれは別のルートで公示された所得以外に、別のルートで金を持ってきているんではないか、そういう疑いを、私は根拠を持っておりますが、そちらで資料が出せませんから、再調査お願いするということにとどめますが、不正申告あるいは脱税というような疑いも濃厚なわけなんです。  そこでどうでしょか、この件に関してこの二、三年——四十六年、四十七年、四十八年、このあたりの角榮氏の所得と、そうして資産取得の状況と、この辺の関連をもう一度そちらが再調査してこの委員会資料を出してもらえるかどうか。
  414. 横井正美

    説明員(横井正美君) 最後のお答えにつきましては、所得につきましては公示されました額以外申し上げられないわけでございますが、私どもは、総理案件と申しましても被納税者でございますから特別に特別扱いをいたしておるわけではございませんで、同じようにいたしております。  そこで、ただいま御指摘になりました案件の中で、いままでのところ、私どもはこの目白台の二丁目の御指摘の土地は、田中カズエさん、持策さんが自己の資金でおやりになったものと、総理とは無関係なものと、このように了解いたしております。  それから五千九百十一坪につきましては、これは東京ニューハウスが会社として行なっておることということで了解いたしております。したがいまして、総理のこの過去の蓄積なり、あるいは最近の所得なりからお買いになりましたものは約三千坪ではないかと、このように思っておりますが、それについても御説明を承りまして、いまのところ適切に処理をいたし、格別の問題があったと、こういうふうには聞いておらないわけでございます。今後におきましては、先ほど国税庁次長から申し上げましたように、特別の必要が起こりましたならば、あらためて調査いたすこともあるということを申し添えておきたいと思います。
  415. 野末陳平

    ○野末陳平君 ちょっと違うんだよ、カズエさんが自分の金で買ったとかなんとかということを聞いていないんです。田中総理が室町産業の名前で二年間土地を所有していて、四十六年の時点で買い始めて——この軽井沢の別荘って、そのあたりをもう一度調べるかということを言ったわけです。まあそれは適正だとおっしゃるから調べないんでしょうけれども、こちらもほかの資料を出していいんですけれども、あなたのほうがきっとそれに対して、さっき言った公示所得以外のお金について言えないというんで非常に困るんです。  それからもう一つ、特別扱いしていないようなことを言いましたけれどもお尋ね出していないのに、出していると思う——そちらは思っているだけでしょう、聞いておりますだけでしょう。私のほうは、お尋ね出していないんだから、それを知っているわけだから、お尋ね出していなきゃ、特別扱いしているとこっちが言ったって、あなたが幾ら弁解したってこれは納得できないですよ。  もう時間がないから、もう一つ、室町産業、法人について、いままでの適正だということになっていますが、しかし、適正だと言いながら、これは直接大蔵省関係ではないけれども、不動産の売買の免許は持ってないんだから、もう現時点で。それなのに不動産売買をしている。これについてはいいですよ、建設省かどっかの担当でしょう。しかし、この室町産業の事業内容というのが非常にあいまいなんですよ、不明な部分がものすごく多い。だから、この土地を買った、私が指摘をした、この土地を買ったこの時点で、特に売買の実態を中心として、もう一度調べ直さなきゃだめだというんですよ、いままで済んで、もう適正だからといってすましたら——これは別にこれだけを言ってるんじゃないですよ、その他もろもろの田中総理に関する疑惑というのは、全然晴れないんだ、怠慢なんだ、無責任なんだよ、いままではよかったって——この問題がクローズアップされて、じゃあといって洗い直しているかっていうと、洗い直してないんだもの、全然。そういういいかげんなことでもって、国会審議におざなりな返事されちゃ困るんですよ、それを、だからやってくださいよ。  大蔵大臣、最後に聞きますよ、もう時間が過ぎましたから……。  これね、プライバシープライバシーという問題がさっきから出ましたけれども、プライバシーは、いわば田中角榮氏個人の利益と人権に関する問題ですね、しかし、この疑惑をこのままにして、うやむやにして、国民政治への信頼を失わせるという、との二つを、どちらをあなたはとるんですか、角榮氏のプライバシーを守ることのほうが大事なのか、疑惑を解いて、政治への信頼を取り戻すという国益と、こういう面、これ、どっちが大事だとあなたは考えているんですか、さっきからあいまいでわからないんだ。これだけはっきりしていれば、おのずからそちらの方針が立つと思うんです。最後にそれだけを言ってください。どうせきょうはもう疑惑があるままで、角榮氏に関する疑惑は朝から解けないままですけれども、この姿勢を、はっきり、どちらを選ぶか、どちらが大事だと思っているのか、最後に一言お願いします。
  416. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中——国税庁側からも、私からもたびたび申し上げておるように——総理大臣といえども納税者でございます、税法の前に平等でございます。したがって、税の公正な執行に当たりまして、税の調査に当たりまして知り得た秘密というものは、これを秘密にしていくということは田中さんだけでなくて、何千万という納税者の権利を保護し、税務の執行を保証してまいる上から私は必要なことであろうと思っておるわけでございます。誤解のないようにお願いしたいんでございますけれども、たびたび申し上げているように、田中さんであるから特別の扱いを国税庁はいたそうといたしているわけではないことでございます。しかしながら、この問題は田中さんも一納税者であられますけれども内閣総理大臣といういまお立場にあるわけでございまして、国税庁の問題を離れまして、政治の問題としてどのようにこれを取り扱ったらいいものかという点につきましては、田中さん自身もお考えでございましょうし、政府としてどのように対処したらいいか、いませっかく検討いたしておるところでございまして、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  417. 松岡克由

    ○松岡克由君 長いこと御苦労さまでございます。人間というのは一カ所に大体医学的に言って二時間が快適の限度だそうで、はるかに越えたところへすわってたいへん苦痛だろうと思います。肉体条件がわかりますので、ひとつ簡潔に質問をしていきたいと思います。  いま私もるる伺っておりましたが、ごく素朴な立場で、私も大衆から選ばれた議員の一人として、テレビなりまたは委員会そういったところからお呼びがありましたときは、私はすみやかに出て、あの頭脳明晰な総理のことなのだから疑惑は晴らしてくれると私は信じておりますので、またそれができないならば、総理を即時やめるべきだと、われわれは素朴にこう考えておりますので、ぜひそういった状態になるように、またひとつ大蔵大臣個人的なつながりもあると思いますので、政治立場から、いろいろな立場から晴れるような、ひとつアドバイスを心からお願いすることを一言つけ加えて質問に入ります。この問題は大蔵大臣が一言うんと言ってくれるとおしまいになってしまうので、あとは聞き流していらしてけっこうでございます。入場税の問題についてしぼって伺いたいと思うのでございますが、これ過去いろいろと興業者側または演じる側、いろいろな意味から陳情があったりまたは申し出があって今日まで来ているんですが、私なりの解釈を加えて一応質問いたします。  入場税の変革、これずっと見ていますと、まあ御承知のとおり昭和十三年に日中戦争、いわゆる日支事件、これにつまり特別税法として登場しているわけですね。要するに戦費調達ということですか、お金が要るから集めるということですね。その後まあこういろいろと変遷がありまして、一時は地方税のほうに移管されたことがありますが、いま国税として今日まで残っている。で、私はまあ二つの目的が私なりに考えられる。一つはいま言ったとおり確かな目的で、軍事費の調達であるということ、戦費調達ですな。それからもう一つは、あの戦争体制のときに、あまり浮かれてはいかぬと、やはり押えるものは押える、ぜいたくは敵だという発想でございます。その二つのように私は思います。ところが、その二つの理由というのは、完全にもうここで私は終わって、むしろとどめておくのは、そういった意味からでは戦争の影がつきまとっているような感じもします。これを今日まで存続させている理由というのを簡明にお答え願います。
  418. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 入場税がわが国で創設をされました経緯は御指摘のとおりでございます。ただ、入場税がなぜ今日まで国税体系の中に、あるいは場合によれば地方税の中に残ってきたかということを考えますれば、それはやはりサービスに対する課税というものは、一つには入場税、一つには娯楽施設税あるいは汽車、飛行機に乗りましたときの通行税、あるいはレストランにまいりましたときの料理飲食等消費税というようなもので、サービスに対する課税の一環として今日まで残ってきたのだと思います。もちろんその生まれは、おっしゃいますように戦争に関連がございましたけれども、今日まで残ってきたという理由はそういうところにあるんだと思います。
  419. 松岡克由

    ○松岡克由君 まあ理由はどうでもつくと思うんですね。理屈ととりもちはどこにでもつくと言うんで、まあ変なところですが、子供が生まれたのを、寝ているうちにできちゃったとは言いにくい、やっぱり生まれた理由をあとで考える。家庭設計だ、やれ日本の前途だということをいろいろ考えますんで、その理屈はつくがね、結果においてはあとからつけた理屈ということになるんでございますね。ぼくみたいな言い方をまさか行政官庁としては言いにくいでございましょうがね、かりに入場税を認めたとしても、ちょっと私は首をかしげたくなることがある。事実確認のために伺いたいんですけども、税率の推移といいますか、移り変わりをひとつ、時間も時間ですから簡単にできるでしょう。
  420. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 創設当初は一〇%で発足をいたしましたけれども、だんだん戦争中には二〇〇%という税率に至りました。その後漸次軽減をされまして、今日には一〇%あるいは五%という税率でございます。
  421. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうですね、たいへんに二〇〇%というときもあるんですね。そしてまたどんどん少なくなっていると、これは認めます、低くなっております。それから問題は免税点なんですけれども、これはどのくらいになっておりますか、いま。
  422. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 現在免税点は、映画、演劇等の一般の興業所につきましては百円、競馬場等につきましては三十円となっております。
  423. 松岡克由

    ○松岡克由君 大蔵大臣も黙っているのも退屈でしょうから質問しますがね、百円でいま興業が打てるとお思いになりますか。大蔵大臣でなくてけっこうですよ——大蔵大臣に伺いましょうか。百円で興業ができると思いますか、入場料百円で一つの興業というものが、映画、演劇。
  424. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常に残念でございますけれども、私自信がある答弁できませんので……。
  425. 松岡克由

    ○松岡克由君 ええ、けっこうです。
  426. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 現実にいまおっしゃいますように、非常にりっぱな劇場で行なうについてはなかなか百円という入場料ではむずかしいかと思いますけれども地方におきましては、臨時開催をいたしておりますところでは、かなり百円以下のものがございます。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
  427. 松岡克由

    ○松岡克由君 それは、やけくそで百円にしているの。それから、ごくレベルの低い——そう言うと悪いですけれどもね、ただよりはましだという芸が百円取っている。質のいい紙芝居なら、もっと取るんですよ、いま伝統が大事にされていますからね。それで、取っていないの、しょうがないから百円劇場をやったり、百円映画会をやっているんでね、百円で興業が成り立つわけないんです、これはもう常識から考えて。大劇場はやらぬだろうって、地方ならやっていると。やっているのもあるかもしれませんが、たとえば私はできませんですよ。一応東京の一流芸人のトップクラスを走っていますがね、できませんですね。  私は、免税点というのは、たいへん娯楽でも高いものを見に行くと、ある程度税金がかかると思いますよね。これはしかたがない。それにかかってくるから、その免税点があるから、ああいいなと、安いなあと思うんです。ないなら話がつくんですよ。たとえば百円のものでやっていると。五百円も五千円もあるうちの百円は免税してくれるというならあるんですけれどもね。これは、あんまり大きな声で、百円もやっていますから心配ないという答えは、それはあまりにも非常識だな。これは私は言ってほしくない。大体、百円でやれるなんて居直ってほしくないですよ。たけだけしいですよ、少し。ありゃせぬ、そんなもの。冗談言っちゃいかんです。もしそんなことを思っているんなら、頭がどうかしていますよ。そんなものありますか、あなた、百円で。どう、百円持って何か見に行ってごらんなさい、東京で。東京の地方でもいいですよ。ないんですよ。
  428. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 課税の実績から申しまして、たとえば見せものに非常に百円以下というものが多うございます。入場人員で申しましても、百円以下で三三・二%という数字を示しております。私が先ほど申しましたのも、地方で臨時開催として、そんなにりっぱな劇場でないところでやっているのにかなりあるということを申し上げたわけです。
  429. 松岡克由

    ○松岡克由君 それはそれでいいですけどね、ぼくは一般感情を中心として質問していますからね、一般の人たちの感情がわかるように、その質問において。おれ、おそらくわからないと思うな。そんなに、地方でも見せものをやっているから、百円があるから……。  私は、やっぱり免税点というのは、映画、演劇、寄席が——映画、演劇とうたっているんですよ。ないんですよ。私はね、これはなまじないならないでいいんだ。あるから腹が立つ、百円ぽっちでという意味で……。だから、私はね、そういうものを百円でもまけてやる、免税点があるんだと、法律に掲げておいてどうだといっている態度は、あまりおりこうな方法でないと思うんです。もしこれをおりこうな方法でいい方法だと思ってやっているならたいへんな間違いだ。認めたくないだろうけども間違いだ、これは言い切れる、ぼくは、断言。意見が違うかもしれないけれどね、違う意見だから突っぱねちゃいかぬです、こういう場合は。これは庶民の感情を大事にせにゃいかぬです。  税収入と比率のこと伺いますが、昨年、四十八年度入場税の収入、また国税との比率というのを聞かしてください。
  430. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 四十八年度におきましては、入場税収入額は百十四億円でございました。国税収入額は十四兆四百七十八億円でございました。したがいまして、入場税の国税収入中に占める割合は約〇・一%となっております。
  431. 松岡克由

    ○松岡克由君 百十四億、〇・一%ですね。たいへん微々たる収入だと、これは大蔵大臣もそう思いますね、たいへんパーセンテージも低いと。私はみんなから恨まれている——これはぼくだけ恨んでんじゃないんですよ、言っておくけど。これはきみの偏見だというような目つきが感じられるんですが、それは大きな間違いで、私は皆さんの意見の上で成り立っているつもりですから。むずかしいことは知らぬが、庶民感情だけは大事にして今日まできている人間ですから、その辺あんまり甘く見てもらっち困る。だから、みんなにまで恨まれても、私は〇・一%、百億あたりでもってこれ固執する必要はないんじゃないかと、むしろこういうものを撤廃してくれるとたいへん善政を感じると、大平大蔵大臣が後世に残るんだ、百億円でね。銅像が建って、私も質問したかいがあって、あいつを参議院に送ってよかったなんてことになるんですがね。どうでしょうね、私は、いまさらこれ、もう百億円のあれで、まずこれは軍備調達にする、自衛隊に大砲のたま買ってやるわけにもいかぬだろうし、ましてもういま文化を抑圧するっていう必要もない、こんなにまで、文化庁までできて芸術だ、文化を盛り上げている現にですね、これ大臣がやめようと、きょうはいかぬが一年後にやめようと一言言ってくれると、これ質問終わって家へ帰れるんですがね、大臣も。どうでしょう、意見聞いて、大団円にしませんか。
  432. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も若いとき税務署長をいたしておったとき、たまたまこの税金が創設する、国会を通過いたしまして、この執行をやりました三十数年前を思い出します。いま、松岡君からこれについての御質問を受けて、これを廃止したらどうだということで意見を求められておるということでたいへん感慨無量なるものを覚えます。で、私は、税収が少ないから云々とか何とかいうことでなくて、税収の多い少ないにかかわらず、それぞれの税目はまじめに検討し、改廃を検討していくべきものと思うわけでございます。また、すでに、この入場税問題につきましては、先般来、私も各方面から御意見を聞いておるところでございまして、ただいまここですっぱりやめたいものだと申し上げたいんでございますけれども、せっかく税制調査会等でもいろいろ御検討いただいて、来年の税制全体についての構想を御審議いただいておる途中でございますので、決定的な御答弁は差し控えさしていただきまして、せっかくあなたからきょう御質問がありましたので、これについては真剣に検討いたしますという、その改廃につきまして検討させていただきますということでひとつ御了承をいただきたいと思います。
  433. 松岡克由

    ○松岡克由君 いみじくもなるたけそういうふうにしたいという、その一言を私はたいへんにうれしく思っております。  これは国税庁のほうに伺いたいんですけれども、税金なぜやっているかとぼくなりに考えたわけですわね、なぜこういったものが残っているか、置いてあるか。まあ税金っていうのはこれ新しくつくるとたいへん抵抗がありますわな、新設するとね。新設していいものは、まあ美人税ぐらいのものじゃないかなんて冗談言ったんですが、これなら文句も出まいなんて笑い話があったぐらいなんです。で、まあ置いておけばとにかく復活できるだろうと、そういうまあ復活、それを拡大することもできるんじゃないかと、これはげすの勘ぐりというかもしれない、やじ馬根性というかもしれないが、やっぱりげすの追い求める心理、やじ馬のバイタリティーというものをやっぱり認めないといかぬので、左前になったときに財源になるんじゃないかと、財源確保に。私はこれは違う。もしそういう気持ちがあったとしたら、これは絶対違うのであって、私は入場税というのは将来、財源になり得ないということなんですね。その理由ということは、私はいろいろといま娯楽でも多様化しておりまして、昔みたいに入場、ああいったものを一本ということがあり得ない。非常に芝居でも演劇でも——芝居といったら歌舞伎のことですが、その以外のいろんな演劇においても、または演芸においても、ごくあたりまえなことになっている。あたりまえというのは、これはもう何と言いますか、ごく人間の一部ということになってしまっているんですから、私はこれを追い求めても広がらぬし、またこの入場税を広げて、これから財源確保するような事態が起きたら、これは国はたいへんなところにいっちゃっているんじゃないかと思うんですね。そういう意味において広がりっこないし、将来においてもこれ以上望めない、どんどん低くなっている。私はやっぱりやめるほうへ持っていくのが、私はものごとのあたりまえな意見なのではないか。ましてそれが評判の悪い現内閣において善政につながるなら幾らでも点数を上げるべきではないかと老婆心ながら申し上げたいのでございますけれども、そういう事実というもの、いま言ったぼくのものの見方というのは否定しますか、否定できない面がありますか、どうです。
  434. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 税収を非常にこの入場税にたよっておるかということになりますと、先ほど、四十八年度においては〇・一%のウエートしか占めていないということを申しましたけれども昭和十三年に創設しましたときには、やっぱり〇・三%程度でございました。したがいまして入場税に多くを期待するということは過去にもあんまりなかったし、今後もおそらくおっしゃいますように、そんなに期待はできないと思います。私はむしろ冒頭に申しましたように、サービスに対する課税というものを、入場税だけでございませんで通行税、それから料理飲食税というようなものと一体として考えるというところに税制の意味があるんだろうと思います。
  435. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうまた判断しないと片手落ちだとか、いろいろな面が出てくると思うのですがね。私は今回、入場税一本にしぼっております関係上、どうしてもそういった意見が先行するという、こっちの意見もおそらくわかってくれると思います。  それから文化庁、どなたかお見えになっておりますか。——いまいろいろと芸術や文化を国が保護しようというのがありますね。大衆演芸にまでそれ伸びてきてくれているんですがね。私個人の意見は、あまりありがたくないので、滅びるものはどんどん滅びると、抵抗するだけして滅びていくのが私は大衆の文化だと思っているんですがね。変にあまり具体的には言いませんが、人の名前出しませんが、変に私は援助するということも、ここに至っては考えものになっておりますですがね。それは私の意見として聞いておいてほしいのですけれども、私は何といいますか、税金をわりと国へ持っていっちゃっているんで、文化庁のほうへ、また、もとに戻ってきているのかもしれませんが、意外に、税をもし置いておくならば、そういった文化面において還元しているということを感じないのですがね、この点どうでしょう。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  436. 内山正

    説明員(内山正君) 芸術文化関係の入場税が減免されている、非課税になっている分野がございますけれども、多くの場合は課税されているわけでございますが、その税収入が文化行政に反映されているかという御質問でございますが、私どもその全体の要素は存じませんが、文化行政予算は近年、年々相当な伸張を示しておりまして、行政活動が活発に進められてきておるというような実感でございます。
  437. 松岡克由

    ○松岡克由君 委員会自身としても、これからいろいろありますので、手短かに進めます。意見だけ承っておきます。  入場税の中に非課税対象というのがありますね、税金のかからないもの。この免税点のことはさっきちょっと触れましたけれども、問題になるのは催しもの、内容によって非課税になったりならなかったりするものがある。この範疇の説明をひとつ簡潔にしてほしいんですが、どういうことでしょうか。これは文化庁のほうかな、そうじゃないか、大蔵省国税庁ですか。
  438. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 入場税につきましては、非課税規定というのがございまして、まず一つは、文化の振興というようなもので、たとえば芸術祭のようなものを非課税にいたしております。それから二番目には、文化財保護法によって助成の措置を講じておるもの、たとえば伝統的な文楽というようなものについても非課税がございます。それから三番目は、国立劇場におきましては伝統芸能の催しがございますから、それは非課税にいたしております。それから四番目は、学生などのアマチュアスポーツにつきましては、これは非課税にいたしております。五番目は、先生に連れられて参りますところの生徒が映画などを見に行きます場合、そういう場合の団体入場については非課税にいたしております。
  439. 松岡克由

    ○松岡克由君 御承知のとおり昭和四十一年に国立劇場が開場しましたですね。ところがこの劇場でやった同じ演題、同じレパートリーですね、同じものを俳優が同じように演じたのをほかの劇場でやると、歌舞伎座でもいいですし、新橋演舞場でもいいと、ここでやると税金がかかる、入場税がかかるわけですね。それはおかしいと興行側が過去クレームをつけましたら、国税庁の長官通達によって条件づきで無税となったわけです。この根拠を聞かしてくれませんか。
  440. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 国立劇場におきましては法律の明文で、先ほど申しましたように、全部のそこに催される伝統芸能が非課税になっておるわけでございます。それから歌舞伎等につきましては、先ほど文楽を例にいたしましたけれども、文化財保護法により助成の措置を講ぜられた文化財の公開としまして、たとえば伝統歌舞伎というようなものがそこに該当するわけでございます。  それで、なぜ当初そういうことになっておったかというこの理由でございまするけれども、国立劇場におきましては大体のところはいわばフルテキストでずっと、なかなか一般には見られない形で上演をされておるということでございますし、歌舞伎座等におきましては残念ながらその一般人口に膾炙しておる、非常に受けのいいところだけのいわゆるさわりだけをやるというようなところからそういう違いがあったと思いますけれども、それも御指摘のように、その中でもやはり同じようなものというのは、伝統的な歌舞伎といたしまして非課税措置が講ぜられるようになりました。
  441. 松岡克由

    ○松岡克由君 これは余談なんですけれども、残すということの解釈の違いをちょっと感じたのですが、私どもも古典芸能をやっておるのです。やっておると現代に受けないとどんどんなくなっていくんです。なくなっていくのを何とか復元しようとすることは不可能なんです。大衆は肌で知っておりまして、なくなるものはなくなるだけのちゃんと論理的な説明がつくんです、はっきりと。これはそのとおりなんです。もし時間があったらゆっくり今度は酒でも飲みながらお話ししますけれども、なくなる理由があるのですよ。だからそれを私は変に——リバイバルすることも大事です、過去こういうことがあったということは大事ですが、それは書物でもいい、あそこへ出して麗々しく興行して、金をとって見せるのには苦痛ですよ。大平大臣がすわっているよりももっと苦痛な状態になるのだから、私はそれはもう一ぺん考え直す必要があるような気がします。法解釈はいろいろあると思うんですけれども、免税基準を私なりに調べたら、演劇の中のおもな配役が歌舞伎保存会の会員であること。第二に明治二十年代までに初演され、現在も常備演目とされているもの。またはもう一つ三つ目に、伝統的な演技演出を基調として上演されているもの。要するにクラシックで、昔の古格を保っているということですわ、一口に言えば。それもだんだんだんだんいろいろな条件が広がりましてふえてきて、いま九百近くまで演目が広がっているという、喜ばしいんですけれども、この指定した演目のリストを文化庁がつくったんですか、どれはいい、どれは要らないというのを。
  442. 内山正

    説明員(内山正君) 文化庁におきまして文化財保護審議会の専門委員の意向を十分聞きながらこのリストをつくったものでございます。
  443. 松岡克由

    ○松岡克由君 これは聞いたでしょうね。それを認めたのは国税庁ですね、判定したのは。そうですね。
  444. 星野孝俊

    説明員星野孝俊君) 国税庁は文化庁のほうで作成されましたその資料によりまして適用基準並びに演目一覧表を作成しております。
  445. 松岡克由

    ○松岡克由君 文化庁がそう言うのだから間違いないだろうということでやったわけですね。
  446. 星野孝俊

    説明員星野孝俊君) 文化庁の御意見を尊重しておるわけであります。
  447. 松岡克由

    ○松岡克由君 この判断というものはたいへん微妙で、これからいまみたいに広がっていってしまうと、広がったということはどういうことかというと、同じやるなら歌舞伎座でもいいじゃないかというのが広がってくると、国立劇場でやるなら認めるものなら、自分でいうと、私が古典落語で、御存じないかもしらぬが、うまいんですわ。これはたいへんにうまい。と、これをやって感動させることができますからね。感動したのを国立劇場で、私は小劇場でやってもおかしくないだけのものをやる自信があると、これは認めると。ところが、このレパートリーを同じ演者が今度は寄席でやると、大道でやると、——やることは可能ですからね。選挙なんかずっと大道でやってましたから、ぼくはね。そうなってくるとそれも認めざるを得なくなってくるというんでね、非常に混迷してくるんですね。その辺の覚悟はもうあったと思うんでございますけどね。まあだけどどう考えても、私は、同じ演目に対して、そういったいろんなことがあるから、これはクレームつけていったけども——興行側から、同じ——歌舞伎座でなくて何悪いんだと。それはもっともですからぬ、どんどん広げてくる。その広げてくる解釈というのは、一つは、親切に聞こえるけどね、私は、そのときこそ、国立劇場でやるものは国から金をもらってるんだから、国立劇場でやるものは無税だ、と私は言い切ってくれたほうがよかったような気がするんです、いまとなっては。どうでしょう、この意見。
  448. 内山正

    説明員(内山正君) 先ほどから説明がありましたように、国立劇場で行なわれる伝統芸能は無税ということになっておりますが、もう一つ非課税の対象としては、重要無形文化財、あるいは記録作成等の措置を講ずべき無形文化財として選択をされた文化財等を含む、いわゆる国の助成の措置を講ぜられた文化財のみを公開する場所という一つの規定があるわけでございます。その場合に、たとえば文楽やあるいは雅楽等につきましては、これを公演いたします団体はおのおの一個でございますけれども、歌舞伎やあるいは能楽等につきましては、国の指定を受けております、重要無形文化財の指定を受けますときに、いわゆる演者、演目、あるいは演技、演出等についてある要件を付して指定をしております。そういうものがいわゆる国指定の歌舞伎であり能楽である。で、一般的に全国に散らばっております能楽師のやる能楽が全部重要無形文化財ということになっておりませんし、歌舞伎についても同様でございます。で、入場税法の規定に従いまして国の助成の措置を講ぜられた文化財という場合には、いわゆる国の指定による重要無形文化財に指定された、いわゆる当件を満たした、そういうものを対象として考えるということでございまして、その適用基準というものを専門家の意見を徴しましてつくっておるわけでございます。したがいまして、その適用基準はいわば重要無形文化財に指定されるときの要件にできるだけ近いものという形で定められているということでございます。
  449. 松岡克由

    ○松岡克由君 あのねえ、重要無形文化財というそれ、個人に与える称号はいいです。個人がどう——えらいここに芸人が来ても、または役者さんが来ても、尊敬する者はする、しない者はしない。これはそうです。音楽だって、どんな名曲聞かしても、疲れてらっしゃるときはうるさいし、騒音に感じると。いい例が、落語なんてそうなんですよ。こんなものなくたっていいんですよ、落語がなくなると米の値が下がるって問題じゃないしね。こんなものなくたっていい。しかし、その落語において生きがいを感じる人もいると。これは何も落語と言わなくてもいいですよ。音楽聞いて、クラシック聞いたってわからぬ、ジャズのほうがいいと。しかし、クラシック聞くことによってもうあすへのかてになると思ってる人もいると。文化ってのはそういう面を持ってる。だから、その当人はこれはえらい人だって上げるのはまだいいとしてもね、これはえらいんだから税金がかからないと、客がかかわり合ってくるわけですな。私はこういうことはたいへんによろしくない。うっちゃっときゃいいんです、大衆に。もちろん守らなきゃいけないってこともあります。守らなきゃいけないから、この人はえらい人なんだと、文化勲章持ってるんだ、また功労者なんだってのはいいけども、それを一般大衆にまでかかわり合ってくるとこれはいい迷惑で、国が文化に介入してくるということになるのです。これはたいへんに私は困った状態で、まあ親心からなったんだろうと私は思うんでございますね。またはその免税基準というの広げたほうがいいだろうからという、まあ文化基準じゃないという言い方もまたできるかもしれませんが、いずれにしても、これは金が取れる、これは税金がかかる、かからないということにおいてやはり一般大衆というのは判断してしまう、これは取れるからえらいんだと。で、それをリードしていく——またリードするつもりでやったんでしょうから、おえら方に聞きまして。そのリードするということが私は文化においてたいへんな僣越だと思うんでございます。私はね、うっちゃっといてくれていいんですよ、文化なんというものは。私はね、だからそういう意味において、税金の一部という話から変わってきましたけども、国の判断でこれがどうだ、これがこうだと判断する段階はいろいろあるけれども、その文化の本質まで干渉してくるなと、これはたいへんなことでございます。だからたとえば逆に言うと、もっと広げていくと、これはよけいなことかもしれないが、妙なファシズムの政権ができまして、国がこれは文化財だと、これはどうのこうのときめていくという日にはえらいことになると、だからこういうことにならぬためにも私は最後の一言、もう取るか取らないかということなんですが、なるたけなら入場税というものは、こういったものは私は撤廃していくほうに進めたほうがいいというのがまあ演者の場合を考えたり、または演題文化、いろんな面において突っついてきた理由なんですけれども、どうぞひとつこの取るか取らないかという最後の一言にかかってまいります。ひとつこれからの方針というのを聞かしてくれませんか、聞かしていただかないといま言ったことがしょせんスズメのさえずりであり、それこそ蚊がとまったほどにも感じないと困るんでございまして、ひとつこの意見を尊重してくれると、尊重した上でやれるものならやると、もうこれでおしまいにしますから、大平先生ひとつ。
  450. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま入場税あるいは文化政策等について貴重な意見を拝聴できたわけでございます。御意見をよく心にとどめまして入場税の問題につきましては検討してまいりたいと思います。
  451. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ただいま大臣が仰せられたとおりでございまして、いまの御意見も参酌しながら入場税全体の問題もあわせて今年度の税制調査会ではもちろん検討さしていただきます。
  452. 松岡克由

    ○松岡克由君 文化論としての意見をひとつ……。
  453. 内山正

    説明員(内山正君) 広く国民が芸術文化に親しむ機会を増大させる、そして芸術公演の、芸術文化の普及、振興に資するという観点からは、ただいま松岡委員の御指摘のように、芸術公演の入場税についてはできるだけ減免されることが望ましいと私ども考えておりまして、ただ、いろいろの税体系その他の問題もありましょうと思いますので、十分に検討をしていくべき問題であると考えております。
  454. 松岡克由

    ○松岡克由君 最後に一言。国が文化面にあまり介入すべきものでない、それにおける弊害というのを私は言いたいというその一言をつけ加えて質問を終わります。
  455. 前川旦

    委員長前川旦君) 大蔵省関係審査につきましては、一応質疑は尽きたわけですが、質疑者から小委員会の設置、資料要求及び参考人出席要求等の申し出があり、また須原委員からも質疑保留がなされておりますので、理事会での協議の結果によりましては後日再び審査を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会      —————・—————