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1974-08-01 第73回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月一日(木曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 稲嶺 一郎君                 木内 四郎君                 原 文兵衛君                 田  英夫君     委 員                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 亘  四郎君                 小谷  守君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 野坂 参三君    国務大臣        外 務 大 臣  木村 俊夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        法務省刑事局参        事官       根来 泰周君        法務省入国管理        局入国審査課長  小林 俊二君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (日韓間の諸問題に関する件)  (核兵器不拡散条約批准問題及び核軍縮に関す  る件)  (日中間の諸実務協定交渉等に関する件)  (在日米軍OTHレーダー基地に関する件)  (原水爆禁止大会参加のための南ベトナム臨時  革命政府代表の入国問題に関する件)  (沖繩県伊江島米軍射爆場における米兵の発  砲事件に関する件)     —————————————   〔理事木内四郎委員長席に着く〕
  2. 木内四郎

    理事木内四郎君) それでは、ただいまから外務委員会を開会いたします。  外務大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。外務大臣
  3. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 一言ごあいさつを申し上げます。  今回、はからずも外務大臣を拝命いたしました。内外の情勢が非常に多様化を加えまして、かつ、わが国を取り巻く国際環境もきびしくなっております中で、わが国外交もたいへんむずかしい局面を迎えておるおりでもございます。就任後は、国民皆さま方の御支援を得て、きわめて不敏ではございますが、全力を尽くして外交の衝に当たる所存でございます。特に本委員会皆さま方には、従来からわが外交につきまして格段の御指導と御鞭撻をいただいております。今後も何とぞよろしく御指導、御協力を賜わりますよう、切にお願いを申し上げます。
  4. 木内四郎

    理事木内四郎君) それでは、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないますが、質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  5. 田英夫

    田英夫君 外交問題の質問に入ります前に、一言国務大臣としての木村外務大臣の御所見を伺いたいと思いますが、きのうまで八日間にわたって参議院選挙後の臨時国会が行なわれていたわけでありますけれども、言うまでもなく、さきの参議院選挙参議院の半数が改選をされるという、新しい装いを持った参議院での国会であったわけですけれども、にもかかわらず、われわれの要求に対して田中総理大臣は所信を表明されない、また木村外務大臣が新しく就任されたにもかかわらず、その御所見を伺うこともできませんでした。こういう点については、国会というものの存在にかかわる問題と思いますので、この際、この点について外務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  6. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 申し上げるまでもなく、内閣一体性を持っております。したがいまして、今度の国会に対する私ども閣僚考え方は、田中内閣総理大臣をはじめとする一連の意見の中に表現されております。この点について、私、国務大臣の一人としての考え方はこの際差し控えたいと存じます。
  7. 田英夫

    田英夫君 大臣のお立場から、そういうお答えがくることを予想しておりましたけれども、これはそういうことで済まされる問題ではなくて、民主主義議会制民主主義の、いわゆる三権分立という大原則を踏みにじった行為である、このように考えざるを得ませんので、この点はこの委員会で深く追及をすることもできませんので、残念ながらこれだけにいたしますけれども、この点はこの速記録にもとどめ、そして公の場で私ども意見として申し上げておくことにとどめます。  そこで、国際情勢に関する質疑に入りますが、私は韓国の問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  いま韓国国内でどのような事態が起こっているかは、私からあらためて詳しく申し上げる必要もないと思いますので、まず伺いたいのは、あのような事態を引き起こしている朴正照政権というものを、外務大臣民主主義政権とお考えになるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  8. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ御承知のとおり、政府といたしましては、外国政治体制について論評することは差し控えたいと存じます。ただ、興国には韓国式民主主義というものもございましょうし、また、韓国の置かれておる、朝鮮半島における韓国の置かれておるいろいろ特殊な環境もございましょう。そういう意味におきまして、私どもはこの韓国における現在の状態が、自由人としてはいろいろ論評する立場もございましょうけれども政府立場としては、韓国なり民主主義体制が行なわれておる、こう言わざるを得ないと思います。
  9. 田英夫

    田英夫君 韓国なり民主主義というのがどういうものであるか、私はたいへん理解に苦しむわけで、実は外務大臣もそのことを御存じの上でお答えになっているというふうに考えざるを得ないのでありますけれども民主主義というものがあそこまでワクが広がるというか、あんな状態をさえもなおかつ民主主義と、韓国式とは言いながら、民主主義と言えるかどうか、これは私は世の中の皆さんが判断をしてくださると思いますので、あえてこれ以上申し上げません。そういうお答えをなさることはたいへん私は国民皆さん田中政権に対する不信感を強めるだけである、こういうふうに申し上げざるを得ないわけです。  そこで、いろいろお聞きしたいことはたくさんありますけれども、特に新しい問題として、昨日アメリカでは下院外交委員会委員会合同会議という形で公聴会が開かれております。その内容についてもすでに報道をされておりますけれども、その中で特に重要な発言は、アメリカ政府側発言として、韓国の安全の問題は日本の安全と大きなかかわり合いがあると、こういう意味発言をしておりますし、さらにキッシンジャー国務長官は、法る七月の二十四日に記者会見で、さらにそれを突っ込んで表現をしております。この点についても、すでに御存じのとおりと思います。そのことから考えますと、日本政府は、アメリカ政府連絡をとりながら、現在の韓国情勢についていろいろ対処をしていらっしゃると思いますけれども、思われるわけですけれども、その点はそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  10. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 特に、現在の韓国の政情その他について、米側連絡しておる事実はございません。
  11. 田英夫

    田英夫君 そうなりますと、現在の韓国に対するさまざまな対処というものは、日本政府独自で進められていると、こういうことになるわけですけれども、そこで伺いますが、現在、日本人青年二人が軍事裁判にかけられている。そして同時に、多くの韓国国民が同じように軍事裁判にかけられ、その中には有名な詩人の金芝河氏も入っているわけです。すでに判決も出ております。さらに、在日韓国人も多数逮捕をされている。これに対して木村外務大臣はどのようにお考えになっているのか。先ほどの、冒頭の質問を繰り返すことになりますけれども、この事態をどういうふうにお考えになるのか。この点を伺いたい。
  12. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いま御指摘ありました最近における韓国裁判処理事件のことでございますが、私どもは、韓国において行なわれました大統領緊急措置違反事件、これについて韓国人がその罪に問われた事件——問題と、韓国におきまして日本人学生二人がこの事件に違反したとして問われました事件とは、これは私ども取り扱いを異にしております。したがいまして、後者の日本人の二学生大統領緊急措置に違反したとして、いま裁判に付されております。この問題につきましては、当然韓国国内法に違反したという事実は韓国が認めておりますので、韓国国内法上の問題として、私どもはこれにかれこれ言うべき筋合いではないと思いますが、ただ同時に、その二学生裁判が公平に行なわれる二と、及び当然日本政府といたしましては、外国における邦人保護の任務がございます。そういう面からできる限りの措置をとっておる次第でございます。
  13. 田英夫

    田英夫君 いまの言われた意味をこういうふうに解釈していいかということです。政府外国にいる日本人保護をする義務がある、その意味から二人の日本人については他の韓国人逮捕者容疑者というものとは分けて考える。こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  14. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そのとおりでございます。
  15. 田英夫

    田英夫君 私はそのお考え、ある意味理解はできます。しかし、いま世界的に、いま大臣が言われたような韓国人がさばかれている問題は韓国内部の問題であるということ。それから日本人逮捕されているのも韓国法律を犯したから、それに対して、その問題についてはとやかく言うべきでないとおっしゃる。つまり内政干渉はしないとおっしゃることは、今度のような韓国政府のやり方に対しては適用されないというのが国際的な通念ではないかというふうに考えますけれども、その点はいかがでしょうか。
  16. 松永信雄

    説明員松永信雄君) これは一般論として申し上げますけれども、ある国におきまして人道あるいは人権の問題が起こり、それにつきまして一般的に広く国際的な世論というものが起こりまして、国連においてその問題が取り上げられるという事態は、これは事実として、たとえば南アフリカにおける人道問題が討議され、それについての決議がいろいろ採択されるというような状態はあるわけでございます。  ただ、一般国際法上の問題として申し上げますならば、人道上の問題を理由として国内問題に介入するということは、内政干渉であって認められないという原則はあるわけでございます。
  17. 田英夫

    田英夫君 条約局長の言われたとおり、人権の問題、人道上の問題にかかわるということになりますと、これは内政干渉などといっていることのできない事態があり得る。これがまさに今回の韓国状態であるというふうに、これは国際通念的に考えられていると思います。現に、先ほど申し上げたアメリカ議会公聴会の席ではまさにそれが出てきた。ライシャワー教授をはじめとして、証人として発言をされた皆さんの、あるいはアメリア下院議員皆さんのお考えというのは、その発想に基づいて発言をされていると思います。これに対してアメリカ政府の側は、きわめて政治的に、あるいは軍事的なそうした要因から答弁をしている、こういう状態だと思います。私もこの韓国事態というものは、まさに人権人道的立場から見て内政干渉などといっていられない事態である。これは金大中事件から始まってちょうど一年になるこの一年間の韓国状態を見れば、これはこまかく申し上げなくても明らかだと思う。特に日韓条約第四条に、両国は「国際連合憲章原則指針とする」ということ。さらに、「国際連合憲章原則に適合して協力する」というような表現も出ております。その国連憲章なるものは、基本的人権人間の尊厳、その他いろいろ並んでいますけれども、「確認し」ということばで始まっているわけで、そういう条文に照らしても、日韓条約という条文に照らしても、日本韓国との間では人権及び人道上の立場からおつき合いをしなければならない、こういう二とがはっきりしていると思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
  18. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 日韓基本関係条約及び国連憲章との関連において御質問がございましたので、私からお答え申し上げたいと思います。  基本関係条約の前文及び第四条に「国際連合憲章原則」ということをうたっております。ここで言っておりますところの「国際連合憲章原則」というのは、憲章第二条に規定された一般的な原則意味しているわけでございますが、具体的に申しますならば、日韓両国相互関係において憲章二条が掲げております主権平等であるとか、国内管轄事項不干渉、紛争の平和的解決等原則指針としなければならないということが書いてございます。また、両国経済社会または文化の諸分野において、相互の福祉及び共通の利益を増進するにあたって、これらの原則に適合して協力するということがうたってあるわけでございます。したがって、日韓両国いずれの場合をとりましても、日韓基本関係条約の効果によって憲章上の具体的な個別の義務を課されているというわけはございませんで、たとえば人権問題等について、両国憲章第二条の原則に従って行動しなければならないということではございますけれども、具体的にいかなる人権をどのように尊重しなければならないかということは、国連憲章原則そのものからは導き出されない問題でございまして、したがって、今回の裁判の問題につきまして、国連憲章原則そのものに反するかいなかということを論議することは適当ではないんではないかというふうに考えております。
  19. 田英夫

    田英夫君 そういうお答えが出てきますと、私が長々と現在韓国国内で起こっている事実について、新しく就任された木村外務大臣にお教えをしなければならないと、たいへん僣越ですけれども、そういう気持ちになるんです。しかし、それはこの短い時間の中でできませんから申し上げませんけれども、いま韓国のことを、実情を知っている人ならば、日本ペンクラブの藤島君のように、一定の考え方を持ってあらかじめ韓国に行った人は別として、冷静に公正に韓国事態を見る力があり、そして民主主義というものが何かということを知っている人なら、いまの韓国で起こっている事態というものが民主主義に反すること、人道人間の尊重に反するということをだれでも疑うはずはないと思います。ですから、私はそういう論議をここで実はしたくありません。そんなことをいま論議するほど日本政府日本国会も低いレベルのものではないと思います。外務省がお持ちの情報も、木村外務大臣が知っておられる事実も、そんなにお粗末なものではないと思いますから、私はいまの条約局長の御答弁は、残念ながらたいへん残念に遺憾に思います。  そこで重ねてお尋ねいたしますけれども国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約というのが一九六六年に採択されておりますけれども、これに対する政府のお考えを伺いたいと思います。これをどう扱うおつもりか、この中に規定されていることをどういうふうにお考えになるのか。それから日本政府はこれに対してどういう態度をとられるか。
  20. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 御承知のごとく、ただいま御質問がありました国際人権規約は六六年の国連総会で採択されましたけれども批准国数がまだ必要な定数に達しておりませんために発効しておりません。したがいまして、法律的な拘束力を有するという状態には至っておらないわけでございます。しかし、この国際人権規約については、いわゆる人権内容を具体的に規定しておりまして、人権概念についての普遍的な基準というものを設定、確認した内容のものであるというふうに考えているわけでございます。
  21. 田英夫

    田英夫君 日本政府はこれを批准されますか。そして発効の見通しをお持ちですか。——批准国会でやるわけですね。批准手続をとられますか。
  22. 松永信雄

    説明員松永信雄君) これはただいま申し上げましたごとく、いろいろな国も批准をためらっていると申しますか、批准していない状況がございますので、政府といたしましても、各国の状況ども見ながら検討しているという段階でございます。
  23. 田英夫

    田英夫君 この規約こそ実はまさに日本国憲法そのものだと思います。日本国憲法と全く同じ表現が随所に出てくる。表現の自由の問題、集会の自由、結社の自由、あるいは第九条には逮捕拘禁についての問題もはっきり掲げてあります。そういうものに対して消極的な態度をとっておられるところにも問題があると思いますし、この規約精神からすれば今回の韓国の問題に対する政府対処のしかたははっきり結論が出てくると思いますが、この点についての大臣のお考えをお伺いしたい。
  24. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 私から、適切なお答えになるかどうかちょっと存じませんけれども、現在日本はこの人権規約批准していないわけでございます。また韓国もこの当事国にはなっていないわけでございますから、この人権規約に言及して韓国との間で問題を論議するという関係はないというのが現在の状況であろうと思います。
  25. 田英夫

    田英夫君 いま条約局長言われたとおり、日韓問題についてこの規約を適用してということにならないのは当然だと思います。両国とも批准しておりませんし、この規約自体が発効していないわけですから。私が申し上げたいのは、こういう規約こそ日本世界に先がけて批准をし、そしてこの精神世界の中で大きく広める役割りを果たすべきであると思うにもかかわらず、自民党政府は歴代きわめて消極的な態度をとっていられる。こんなところに今度の韓国問題に対する政府の非常に消極的な態度が起因しているんじゃないか、こういう意味で申し上げたかったのです。  時間があまりありませんから、これ以上基本的な姿勢の問題について触れることを、続けることをやめますけれども、そこでずばり具体的な問題について伺いますが、金大中事件捜査は一体その後どうなりましたか。
  26. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 金大中事件は、御承知のように八月八日で満一周年を迎えようといたしておりますが、金大中事件特捜本部は従来と同様の捜査方針国内捜査を続けてまいりました。しかしながら、御承知のように、被害者被疑者重要参考人、いずれも外国にいる、こういう困難な条件のもとにおける捜査でございまして、国内捜査の端緒はほぼ洗い尽くし、現在では新しい事実が出ておりません。また、韓国側捜査協力に関しましては、昨年の十一月二日、金鍾泌総理が見えられましたときに、私どもが昨年九月五日に基本が合致をしたという事実で任意出頭を求めました金東雲一等書記官につきまして、その容疑性を認め、解任をし、かつ捜査を行なうことをお約束をいただき、捜査結果についての通報をいただくお約束をいただいております。しかしながら、その後、今日に至るまで、数次にわたる催促を行ないましたのですけれども、いまだ韓国側からの具体的な捜査情報の提供に接しておらない、こういう状況で、残念ながら金大中事件捜査は大きな進展を示しておりません。
  27. 田英夫

    田英夫君 早川太刀川両君が罪を犯したと言われているのが去年の十二月ですよ。金大中事件は去年の八月八日です。その犯人の金東雲指紋が割れているんですよ。早川太刀川両君の場合は、不当な、大統領緊急措置という国際通念からしても民主主義に反する不当な、法律とはいえないものに違反したといわれて、軍事法廷で二十年の懲役が言い渡された。片方はそれよりも半年も前の事件で、しかも指紋が照合して、この外務委員会の席で、警察庁の、佐々さんだったかどなただったか覚えておりませんが、責任者の方が、私がその指紋確度質問したら、しろうとが肉眼で照合できる程度の確度の高いものである。これは国際的な犯罪捜査の、科学捜査常識として、これはもう動かしがたい証拠ですね。それだけのものがあっていながら裁判にもかけられていない。これはどう考えてもおかしいんじゃないですか。それこそこの間の選挙である候補者が言っていましたが、まだ黙っていますかということをこの問題について申し上げたいと思いますが、木村外務大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  28. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 金大中事件ももう一年たちます。そこで、この事件につきましては、御承知のとおり、昨年十一月に韓国金鍾泌首相が参りまして、わが田中総理に会いました上で了解事項というものを出しておりますが、その際の了解事項がまだフォローアップされておりません。確かに金大中氏につきましては、その後における選挙違反事件に対する別件の裁判処理が進んでおる段階でございますので、率直に申しまして、この裁判処理が終わるまでは出国はむずかしかろうという見通しも持っております。しかしながら、先ほど警察庁から御答弁いたしました金東雲書記官捜査結果についての連絡、報告がいまだにございません。たいへん私はこの二つにつきましては、はなはだ遺憾であると、こう考えております。
  29. 田英夫

    田英夫君 遺憾に思っておられる点を、韓国側抗議ないし申し入れという形で言われる意思はおありになりませんか。
  30. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) すでに強く申し出はいたしております。
  31. 田英夫

    田英夫君 次は、日本で現在もなおかつKCIAがひそかに活動をしている事実が幾つかありますけれども報道にもその一部は出ておりますけれども、この点を政府はつかんでおられるかどうか、お伺いいたします。
  32. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 従来の国会でしばしば御答弁しましたとおり、私ども韓国外交官活動につきましては、疑わしい行為がないように、常に韓国大使館に対しても注意いたしておりますし、韓国大使館の側といたしましても、いろいろ慎重に行動していると思います。しかし、大使館の館員の一部にいま先生がおっしゃったようなKCIA職員がいるかいないかという点につきまして、私ども公式に確認する方法はございません。したがいまして、いろいろうわさ、情報等は私どもも耳にいたしておりますけれども韓国大使館のある職員KCIA職員であって、これが特別な行動をしているというようなことを公式に確認することはできないというのが現状でございます。
  33. 田英夫

    田英夫君 昨年の沢本三次事件関連をしてこの委員会で伺った朴載京という一等書記官が、現在も韓国大使館におりますか。
  34. 高島益郎

    説明員高島益郎君) その名前の書記官はおります。
  35. 田英夫

    田英夫君 この点は伺うだけにしておきます。  現在二人の日本人青年懲役二十年という、まさに常識では考えられないような刑を言い渡されているわけでありますけれども、その控訴の手続がとられたことさえ韓国政府は通告をしてきていない。これに対して外務省抗議をされたようでありますけれども、この二人の日本人青年の身柄について、これから政府はどういうふうになさるおつもりか、韓国政府とどういう交渉をなさるおつもりか、この点を伺いたいと思います。
  36. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 七月の十五日、この二人につきまして判決があった際、当時の大平外務大臣記者会見の席上表明いたしました見解におきまして、今後の二人の取り扱いにつきましては、日本政府といたしまして、韓国側において日韓友好関係の見地から適切な配慮を示すことを強く希望するということを申しております。私ども政府といたしましては、この基本的立場に立ちまして、適時適切な措置韓国に対しましてとっていきたいというふうに考えております。
  37. 田英夫

    田英夫君 この二人の身柄を強制国外退去という形にするかわりに、韓国側金大中氏は出国させない、それから謝罪特使を日本から出せ、経済援助をふやせ、こういう要求をしているというふうに伝えられておりますが、この事実はありますか。
  38. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう事実はございません。
  39. 田英夫

    田英夫君 そういう事実がないということをはっきりこの席でお答えいただきましたので、さらに伺いますが、日韓閣僚会議は、定期的には、今秋開かれるのが定期的な時期だと思いますが、これを定期的に時期どおりお開きになる意図があるかどうか伺いたい。
  40. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ことしはちょうど第八回目の定期閣僚会議の予定でございます。私どもこの一連の事件と定期閣僚会議とは関連せしめないという考え方は変わりございません。ただし、日韓定期閣僚会議というものが、日韓国民同士の相互理解の上に立って行なわれるべきである、お互いの友好親善の基礎の上に立って行なわれなければならぬという考え方は持っておりますので、現在のところ、第八回目の日韓定期閣僚会議の日程等を私どもが検討する雰囲気ではございませんので、いまだその検討が行なわれていないというのが現状でございます。
  41. 田英夫

    田英夫君 最後にお尋ねしますが、韓国に対する政府の援助、いわゆる経済援助、これは日韓定期閣僚会議で毎年決定されてきたわけでありますけれども、昨年十二月には金大中事件後の世論の問題もありまして、かなり金額も減らされたわけですし、実際に閣僚会議の席上で討議をしないで、最後の決定だけをされたわけですけれども、今後、韓国に対するこの援助はやはり総額の決定は日韓閣僚会議でなされるのかどうか。むしろ私は、私の腹のうちを申し上げてしまえば、政府がやろうと思えば、最近できました国際協力事業団の中の一つのプロジェクトとして農業援助をやるとか、あるいは通産省関係で通産省の機構を通じて工業関係の援助をやるとか、そういう形で個々別々にプロジェクトごとに日本の機構がそれぞれ援助を決定をしていくと、その総額はつかめない結果になる。政府の、たとえば外務大臣なり大蔵大臣はつかんでおられても、国民の目の前にはわからない。税金を出している日本国民の目の前にはわからないという形になるおそれがあります。それを私はたいへんおそれますが、そういうことがあり得るかどうか、私はそういうことをなさっては困るという意味でもちろん申し上げているわけですが、その点についてあわせてお答えいただきたい。
  42. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) ただいまのお話でございますけれども日韓定期閣僚会議と離れて事務的に話し合いをいたしましても、そしてその経済協力政府借款なり、技術協力なり、あるいは民間の援助の形をとるにいたしましても、その総額は政府としてつかめるわけでございますし、国民の前に明らかにすることもできるわけでございます。
  43. 田英夫

    田英夫君 この韓国に対する経済協力、援助の問題について、これはまさに国民注視の問題と思いますので、私から申し上げるまでもないと思いますけれども、十分に御配慮をいただきたい。  これこそ最後に一言伺いますが、国連の問題です。  韓国が、最近単独で国連に加盟するという案を今秋の国連総会に出すというふうに言われております。そして、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の側は連邦制をとって、一つの国として国連に加盟をしようではないかと言っております。さらにその前提として、南朝鮮にいる国連軍の旗を立てたアメリカ軍は撤退をすべきだと、こう主張しておりますが、この国連加盟と国連軍撤退の問題について木村外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  44. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私ども政府といたしましては、基本的に申し上げますと、南北の平和的、自主的統一、これが一番望ましい朝鮮問題の解決であると、こう考えます。しかしながら、そこへ到達いたします前に、国連についての問題が当然出てまいります。したがいまして、私ども考え方といたしましては、ひとつの国連の普遍性という立場から申しましても、南北が同時に国連に加盟をするということは、何ら南北の平和的、自主的統一を妨げるものではないという考えに立ちまして、いずれか一方が国連に参加を希望すれば、これは国連がきめることでございますけれども、それについて私は基本的には南北両方の統一へ向かうひとつのプロセスとして望ましいのではないか、こういう考えを持っております。
  45. 田英夫

    田英夫君 国連軍の撤退はどうですか。
  46. 鈴木文彦

    説明員(鈴木文彦君) 北朝鮮が国連加盟に関連しまして、国連軍の旗をおろすとか、あるいは朝鮮半島にある外国軍隊の撤退を希望するとかいうことは、実は昨年の国連総会の朝鮮問題決議との関連でも、そういう話はあったわけでございますが、国連軍そのものが、歴史的に申し上げますと、御存じのように安全保障理事会の決議に基づいてできております関係上、この国連軍の処遇の問題につきましては、基本的には安全保障理事会でまず検討する問題であると考えます。したがいまして、いわゆる朝鮮問題そのものは、総会の議題として出た場合でも、そのもとの安全保障理事会における検討のいかんがこの問題の帰趨に非常に影響してくるというふうに考えております。
  47. 田英夫

    田英夫君 時間がありませんので終わりますが、いまの問題は、安全保障理事会の議題になれば、アメリカが拒否権を使ってでもこれに反対をする可能性がきわめて濃厚ですね。そうしたことを防ぐためにも、朝鮮戦争が終わってすでに二十年以上たっているこの状態の中で、しかも朝鮮民族は南北平和統一を強く望んでいることは、これは明らかな事実である。こういう状態の中で国道軍が南にいることがむしろ南北の統一を妨げているわけです。隣国としてこの点は、日本政府がむしろ積極的にアメリカを説得して国連の旗をおるさせる先頭に立つべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 いま田委員の質問された日韓問題について、私もお尋ねしたいことがたくさんあるんでありますが、重複するのはいかがかと考えますので、私ば、核兵器の問題一本にしぼってお尋ねをしたいと思います。  すでに御承知のように、去る五月、インドが初の地下核爆発実験に踏み切ったことは、これは言うまでもございません。これに関連をして、パキスタン原子力委員会のカーン委員長は、パキスタンはインドの脅威に直面し、核実験を余儀なくされるかもしれないとの談話を発表しました。インドという第三世界の国が事実上の核保有国になったということは、国際政治の上に与えるインパクトがきわめて大きいことを物語っているように思われます。  さらに、その後六月、中東を訪問したニクソン大統領が、同月十四日サダト・エジプト大統領との間に、また同月十七日ラビン・イスラエル首相との間に原子炉と核燃料の提供を約束したことは、中東における核開発競争に拍車をかけるものということができると思います。アメリカ政府は、完全な保障措置のもとで提供されるので軍事転用の危険はないと述べておりますが、インドの例を見ても明らかなように、軍事利用への転用は絶無とは言えないばかりか、アメリカ政府が核防条約に未署名のイスラエル、未批准のエジプトに核物質を提供することは、パワーポリティックスの思惑から、みずからこの核防体制を弱体化させるにひとしいと言わなければならぬと思います。また、その後六月十七日、フランスは南太平洋のムルロア環礁で大気圏内の核実験を行ない、以後七月二十九日までに五回の実験を相次いで行なっております。フランスの今回の実験が、水爆開発への仕上げとも見られておることは、これも御承知のとおりだと思います。また六月、時を同じくして中国も通算十六回目の核実験を行なっております。さらに六月二十四日、英国のウィルソン首相は下院で、英国が米国のネバダ州の核実験場で地下核実験を行なったことを発表いたしております。  以上のように、米ソはもとより、英、仏、中国のほか、新たに第三世界のインドも加わって、相次いでこの核爆発実験が行なわれ、新たなる核の季節の到来を思わせるのでありますが、このままエスカレーションを続ければ、さらに新しい核保有国の出現を促さずにはおかないと思われます。このような国際情勢のもとで日本はいかにあるべきなのか、どのような方向を選択しようとするのか、この機会に木村外相の所見を伺っておきたいと思います。
  49. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、わが国は、いかなる国のいかなる核実験にも反対であるということを従来宣明してまいりましたし、またそういう機会には、政府がその核実験をいたしました国に対して、厳重な抗議の申し入れをいたしますと同時に、国会におきましても、そのつど決議をいただいておるわけでございます。そういう意味におきまして、いま御指摘の世界的な核拡散傾向と申しますか、インドにおける核実験、またアメリカ政府のイスラエル、エジプトに対する核供給、原子力の平和利用ではございますが、核供給ということ等一連の事件考えますと、まるで世界が核拡散のとどまることを知らない傾向に進みつつあるという懸念はなしといたしません。その中でわが国が、この世界にどう一体進んでいくべきか、私はまずわが国基本的な考え方、すなわち、非核三原則を中心といたしまして、これは国会でも御決議が相なっておりますが、そういう立場をさらにはっきり明確にいたしまして、そういう世界的な核拡散の傾向に対して厳重な抗議をいたします。反対の立場を明らかにすると同時に、わが国がそういう核拡散の傾向に引きずられることなく、わが国自身の基本方針をしっかりかまえ、たとえば核防条約に対する批准の早期促進というようなことも、基本的には態度を変えずに進んでいきたい、こういう考え方でございます。
  50. 羽生三七

    ○羽生三七君 核問題につきましては、世界最初の被爆国である日本が、いかなる国の実験にも、いかなる国の核保有にも絶対反対であることはこれは当然でありますが、核実験に単に反対を表明するだけではなく、効果的な核軍縮への糸口をさがし求めなければならぬと思うのであります。この世界的な核軍縮の実現は、人類の理想であるし、それに到達するのは、これは容易なわざではないと思います。私はそれもよく承知いたしております。しかし、それがどんなに困難であっても、人類のあらゆる英知を傾けて、これを実現しなければならぬことは、今日の世界に課せられた重要な課題であり、責任であると考えております。そういう世界情勢のもとにあって、日本はいま申し上げましたように、世界最初の被爆国であり、さらに平和憲法の第九条を持っております。そういう日本は、核を持たないことを世界政治に参画する場合のマイナス要因に見るのではなくて、むしろプラス要因、これを誇りとして、国際政治の上のあらゆる場面を通じて、世界的な核軍縮を要求していく必要があると思います。この核兵器の保有が国の威信を高めて、あるいはその国の地位の高さを示す象徴と考えるような、そういう錯覚からすみやかに脱却する必要があると思うのであります。  そういう意味で、木村外相はもちろん、今秋の国連総会に出席なされると思いますが、この国連総会の場を通じて、外相の演説の中で、効果的な核軍縮を世界に訴えて、その実現の第一歩を踏み出すべきであると思いますが、外相としてはそういうお考えをお持ちになっているのかどうか、この機会に伺いたいと思います。もちろんジュネーブ軍縮委員会における西堀代表の動き等もありますけれども国連の場を通じて、外相は、相次ぐ核実験に抗議するのみならず、核軍縮のすみやかなる実現を世界に訴えるべき絶好の私は機会であると思う。外相の初の国連総会における演説の場を有効に核軍縮のために利用していただきたいと思いますが、その御所見があるかどうか、伺いたいと思います。
  51. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 申すまでもなく、私ども非核三原則を国の基本的な方針としております以上、当然世界に対して核軍縮を要求する権利があると思います。そういう立場に立ちまして、私どもは単に国連の軍縮委員会におけるわが国代表の発言にとどまらず一まだ私国連総会における演説の内容については検討しておりませんけれども、いま羽生先生のおっしゃいました御趣旨、当然日本として発言すべき筋合いと思いますので、その点も含めて今後検討してまいりたいと、こう考えております。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 核兵器に反対は当然でありますけれども、むしろいまの状況は拡散の、先ほど大臣からもお話ありましたように、核拡散の方向にあることはまことに遺憾にたえませんが、特にこの第三世界に核保有国が出現するということは、私はきわめてこれ重大だと思うんです。この根本は、核大国が核拡散防止条約やあるいはSALTの陰に隠れながら、依然として核軍拡の方向にあるということであると思います。大国がそういう姿勢のもとにある以上、その他の国に核禁止を求めても効果の薄いことは、これは言うまでもございません。いまや危険きわまりないこの核拡散の風潮を押えるには、これは私の全く個人的な所見でありますが、核抑止、核抑止理論でありますね、あるいは核が平和の保障であるという神話そのものから脱却する以外には私はないと思います。そして核抑止という神話からの脱却の中から、新しい次元の安全保障体制を築く努力が切実に要求されておるのが、今日の段階ではないかと思います。そういう意味からも、木村外相が核について特殊な日本立場を生かして、新しい発想のもとに国連総会発言されることを、私いま求めたのでありますが、それに関連をして、この核防条約の批准については、いまもお話がありましたが、来たるべき通常国会で確実に日本としては批准をなされることを、この席でお約束されることができますかどうか、伺っておきたいと思います。
  53. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、すでにわが国は核防条約に署名をいたしております。そこで、その際に三つの留保条件がございます。この留保条件の内容につきまして、私どもは完全ではございませんが、ほぼ達成できたという段階に立ち至っておりますので、それに伴う次善の措置と申しますか、たとえば原子力平和利用について査察保障措置その他についての予備折衝をすでに行なっております。これを経まして、私ども国内のこれは国民的基礎に立たなければならぬ条約でもございますので、与野党を含めまして、できるだけひとつコンセンサスを得た上で、私ども政府におきまして核防条約を次の通常国会にでも提出、御審議をいただきたい、こういう考えでございます。   〔理事木内四郎君退席、理事原文兵衛君着席〕
  54. 羽生三七

    ○羽生三七君 このインドの核保有化に直面して、自民党の一部には、日本も核保有化の権利を、核保有の権利を放棄すべきではないという意見が再び台頭しているように聞いております。外務省と科学技術庁との間に、その点についての意見の食い違いがあって、いまだに核燃料物質の国内管理体制の整備に着手ができず、国際原子力機関との間に、保障措置協定の最終的な詰めに入れない状態にあるとも私聞いておるんです。そういう状態にあるのかどうか。日本政府がこのようなあいまいな態度を続けることば、日本が核武装の意図を持っているのではないかと外国から疑われても、私はしかたがないと思います。先ほど来述べてきたこの核軍縮へのモメントをつくり出すためにも、政府は核防条約について明確な態度を打ち出すべきであるし、いま外相はこの国会、与野党間のコンセンサスを得てと言われましたが、コンセンサスを得ることばもちろん重要でありますけれども政府自身として確固とした考え方を持って、この核防条約の批准を次の通常国会で成立させるべきだというその意思、主体的な意思そのものが明確になることが必要だと思いますが、あらためて、もう一回この点を伺っておきたいと思います。
  55. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府といたしまして、その意思に変わりはございません。また、政府部内においてこの査察保障措置につきまして、いろいろ異議があったかのごとく伝えられておりますが、現在それもございません。いまいろいろお話しのとおり、私どもは、将来日本が進むべき道は、核軍縮と申しますよりは、核の全面的廃止であるという考えに立ちまして、日本の当然置かれておりますこの国際的な立場役割り世界に訴えていくという考えで進んでまいりたいと思います。そういう方針に立ちます以上、この核防条約について早期批准をするについての、批准をお願いするについての政府立場は変わっておりません。
  56. 羽生三七

    ○羽生三七君 さきのことをもう一回繰り返すようなことになりますが、いま、たまたま外務大臣が触れられましたので、もう一回繰り返すわけでありますけれども、完全な核軍縮を実現するために、日本が率先して世界核軍縮会議を提唱されてはどうかと思うんです。もちろん現実にはこの種の問題がいかに困難であるかということを私はよく承知をしておるし、特に中ソが今日のような条件下にあるもとにおいては、一そうそれが困難であることもよく承知しております。しかし、そういう困難な情勢にあるにもかかわらず、私は日本がこの種の核軍縮の世界会議を提唱するにはいろいろな技術的な条件はあるにしても、最もいい立場に置かれておると思う。したがって、これも単に一般的に核には反対だというだけでなしに、国連総会の場なり、あるいはジュネーブ軍縮委員会の場を通じて積極的に世界的な核軍縮の会議の提唱を行なうべきであると思いますが、重ねてこの点について御意見を伺いたいと思います。
  57. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御意見に対して私は全く同感でございます。特に、私ども危険を感じておりますのは、先ほど羽生先生が御指摘になりました、いわゆる第三世界への核の拡散、これが最も危険だと思います。核を持っております大国はほんとうに核軍縮、核廃止への努力の前に、まず核危険の管理という立場に立って、もっぱらいろいろ話し合いを進めておる状態でございますが、私は、核が第三世界にまで拡散するようになれば、これは世界としてたいへんな危機だと思います。これは人類が英知をもってこれを防止しなければならないという世界的な世論が起こる時期が必ず私はあると信じます。そういう意味におきまして、私はこの恵まれた、ある意味で恵まれた日本立場ということを極度に発揮いたしまして、たとえ道程は遠くとも、これについてわが国外交基本として進むということが、わが国のこれから国際世界に対して信を博する最も大きな基本の一つである、こういう考えでございます。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほどの核防条約の問題にもう一度戻るわけでありますが、核防条約の再検討に関する予備会議が本年行なわれることになっておるはずであります。さらに明年の五月には再検討の本会議が開かれる、これも予定のはずであります。したがって、日本が再検討会議に出席して必要な発言を述べる機会を得るためには、核防条約の批准は通常国会のかなり早目に行なう必要があると思いますが、そういうことも考慮に入れてお考えになっておりますかどうか、お伺いをしたいと思います。
  59. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは、核防条約を政府が通常国会にかりに提出いたしましても、これを御承認願うのは国会でございますので、その時期については政府のほうからとかくは申し上げられませんが、できますれば、早くこの核防条約の御批准をいただいて、来年の五月に開かれますレビュー会議に間に合わせたい気持ちでございます。ただし、西ドイツもすでに批准はいたしておりますが、これはやはりEC内の、ユーラトム内のいろんな規制がございまして、まだ批准そのものは発効しておらないように聞いております。そういう面も考えますと、来年五月に開かれますレビュー会議日本がはたしてレビュー会議に正式メンバーとして出席し得るやいなや、また、西ドイツその他がその場に出席するかどうかということも、核防条約そのものの価値に非常に関係がございますので、かりに最悪の場合を想定いたしまして、日本または西ドイツがこれに間に合わないといたしましても、核防条約の加盟国間で正式のメンバーではございませんが、オブザーバーとして発言も許すというようなことも予測されるわけでございます。これは単に私の予測でございますが、そういうことも考えまして、できるだけ早く批准をしていただきたい、こういうような願いでございます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 それに関連をして、核兵器保有国がみずから先に核兵器を使わないという保障を取りつけることも重要だと思います。これは、昭血四十五年二月三日核防条約を日本が調印した際に、政府は声明を発表して、特に核兵器国が非核兵器国の安全のため実効ある処置につきさらに検討を続けることを希望する等、効果的な核軍縮を要望する声明を出しております。この批准についての態度を明確にすることは、いま大臣から御所見の開陳がございましたのでよくわかりましたが、これをさらに効果的なものにするために、さまざまな処置があると思いますが、残された処置があると思いますが、たとえば一九六六年の二月にジュネーブ軍縮委員会においてソ連のコスイギン首相が、核防条約の即時締結を求めるという主張の中で、核兵器を持たない国に核攻撃はしないとの提案を行なっております。  実は、私はこの問題について、一昨年一月ソ連を訪問した際に、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長と会談をした際に、このコスイギン提案が今日もなお生きておるかどうかを確認を求めまして、その確認を得ました。そういうこともありますが、日本政府としても核防条約についての批准態度を明確にするとともに、これらの条件を満たすような努力をさらに一そう続ける必要があると思います。ただ、通常国会に核防条約を批准せよと私は言うだけでなしに、さまざまな問題について、日本政府がそれを効果的なものにするための努力を続けるという四十五年の声明があるのでありますから、その声明を生かす意味においても、そういう努力を続けるべきであると思いますが、この点についてはどのようにお考えになっておるか。また、そういう努力をなされておる事実があるのかどうか、この機会に伺っておきたいと思います。
  61. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府としては当然続けるべき努力と存じます。今後もそのような努力をいたしたいと思います。
  62. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一つ、イスラエルに米国が原子炉、核燃料を提供する決定をしたわけでありますが、核防条約に参加しなくても核燃料が提供されることになれば、条約の土台そのものがくずれることになるのではないかとも考えられますが、この辺は条約上にはどういうことになるのか、伺っておきたいと思います。
  63. 鈴木文彦

    説明員(鈴木文彦君) 核防条約に加盟していない国に対して核兵器国が原子力平和利用のための核燃料あるいは原子炉を供給するということは可能でございます。ただ、そういったものを供与する場合に、国際原子力機関の規制のもとに服しまして、その当該二国間の供与については国際原子力機関が所要のセーフガードといいますか、査察といいますか、軍事転用を防止するための措置を結ばない限り、そのものの供与ができないという一つの仕組みになっております。  今度の、アメリカのイスラエルあるいはエジプトに対する核燃料あるいは原子炉の供給につきましては、ニクソン大統領が行きましたときに、一種の共同コミュニケという形で大筋の合意はできましたけれども、ただいま申し上げましたような二国間の査察を含んだ取りきめは、これから始まるというふうに了解しておりますので、その内容は、おそらく私が申しましたような国際原子力機関による規制措置に服するものであるというふうに考えております。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 終わります。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間が短いんですが、問題が幾つかあります。  第一点は日中問題です。日中の実務協定の進捗状況を簡単に御説明ください。
  66. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 実務協定につきましては、日中共同声明の中に四つ書いてございまして、先生御承知のとおりに、そのうちに航空協定と貿易協定はすでに発効いたしております。  残りました漁業協定及び海運協定につきまして御説明いたしますと、漁業協定につきましては、先般わがほうの代表団が北京に参りまして熱心に交渉をいたしましたけれども、協定の内容につきまして、いま直ちに合意し得ないということで引き揚げてまいりまして、その間、民間取りきめを来年の六月二十二日まで延期いたしまして、その民間取りきめのある間に、できるだけ早い機会に交渉を再開して政府間の取りきめを妥結させたいというふうに考えております。  それから海運協定でございますが、海運協定そのものは、現在東京で交渉中でございます。これも鋭意妥結に達するよう、交渉をいたしております。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、実務協定、航空協定が、間もなく第一番機が飛ぶであろう、もう当然これは正常化へ——二年たっておるわけでありまして、いま実務協定も、漁業協定が交渉決裂、海運協定もまだペンディング、当然平和条約に至ってはまだこれから。こういう日中間の正常化の現状ですね、これを外務大臣、具体的な平和条約の問題あるいは実務協定がはかどらないということを含めての正常化という現状をどう認識しますか。
  68. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は、日中共同声明以来の日中関係はきわめて円滑に、または満足すべき状態である、こう考えております。  そこで、いま御指摘の海運、漁業の実務協定でございますが、これはやはり実務協定でございますから、現実に両国の利害関係が衝突する場面もございます。これはイデオロギーの問題でも何でもございません。そこで、そういう場合に、早急にそれを解決すべきはもちろんでございますけれども、やはりそこに両国のいろんな事情を突き合わせまして、どうせ、これは長い間の協定になりますから、あまり、ただ締結の時期を急ぐことなく、両方がお互いに、相互に、譲るべきは譲って、互恵互譲の精神に立ってこれを締結したいと、こういう考えに変わりはございません。  また、日中平和友好条約、これも一昨年の九月二十九日の日中共同声明の一つの仕上げでございますから、これも急ぎたい気持ちに変わりはございませんが、日中平和友好条約と、残りました二つの実務協定の先後、どちらを先にするかということにはとらわれてはおりませんけれども、自然の勢いとしまして、やはり実務協定が先に結ばれて、今回の二つの実務協定と、前回、いままでに結ばれました二つの実務協定の上に立って、今後永久に日中間関係を設定すべき、友好関係を設定すべき日中平和友好条約が結ばれるであろうということが、私はきわめて自然な形ではないかと、こう考えております。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣就任以来、若干中国問題についての変わった動きがあるやに見受けるわけですが、そういう動きの中に含めまして、実務協定と並行して、当然利害が衝突しないわけです。もうこれは総仕上げですから、平和条約も実務協定と並行して、当然話し合いに入ってしかるべきときでもあり、また、大臣の新しい就任というときも含めて、それから正常化二年というときも含めて、もうそういうときじゃなかろうかと、利害関係が衝突する場合には、確かにお互いのこの実益を踏まえてと、やりとりしてと、こういうことはあります。総仕上げと言ったって、もう二年たっているわけですから、もうそろそろその二年というとき、また大臣かわったというとき、それを踏まえての総仕上げをもうしたっていいんじゃないでしょうか。そのためには、並行してやるということに別に何ら障害がないんじゃないでしょうか。大臣のこの見通しと抱負、いかがでしょうか。
  70. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私、まだ就任後一週間でございまするので、口幅ったいことは申し上げませんが、ただいまお話しのとおり、実務協定と日中平和友好条約を並行して審議する、お互いに話し合うということは、これは私は別にとらわれることはないと思います。ただ、両方、政府のいろんなステジュール、その他の点もございまして、自然に、いままで実務協定の二つの協定が先立って交渉されております。私は、いま御指摘のとおり、そういう問題も含めまして、できるだけ早い機会にこの二つの実務協定並びに日中平和友好条約も早期に締結されるように、今後とも努力を続けたいと、こう考えます。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣が就任間もなくて、口幅ったいと、私こそ口幅ったいことを言う立場じゃないですけれども、何かわれわれの感触ですと、田中・大平、このいわゆる、まあ大平さんが外務大臣は退きましたけれども、実際的には田中内閣の田中・大平——正常化の大きな役目を果たしたこの二本柱は厳然としているわけですね。そのうちに、田中・大平ラインのうちに、早くやっぱりこの平和条約を解決しなければならないという意図は十二分に中国側首脳部にあると、私たちはもうこういう確証を得ているわけであります。ですから外務大臣が、差しさわりがないと、あるいはなるたけ早い時期にと、こうおっしゃるならば、実務協定と並行して、早く時期が熟すとか、あるいは双方の政府のいろいろなとか言わないで、日本が主体的に、積極的に、田中さんも大平さんもやったわけですから、せめて木村外務大臣が、この平和条約に対しての積極姿勢から外務大臣の大きな仕事をおやりいただければと、私、こういう個人的意見も含めての見解持っているわけでありますが、重ねてでくどいようでありますけれども、ひとつ大臣いかがでございましょう、時期を待つとか、両政府間のとこう言わないで、どうでしょうか。
  72. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど御質問の中に、私の就任後若干変化があるということもございました。私の就任によって日中関係に何らの変更はございません。これは重ねてひとつ申し上げておきます。  それから、いま申し上げましたとおり、日中間で隔意のない、いま交渉が進められておるのが、実務協定のいまの進行状態でございますが、私ども田中内閣におります、しかしながら、日中関係につきましては、いずれの内閣ができましても、この基本方針には変わりがあり得ないという考えでございます。そういう意味におきまして、当然、いずれの内閣を問わず、また、外務大臣のだれかを問わず、この日中問題特に日中間における平和友好条約の締結については、これを早期に実現したいということに変わりはございません。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ変わりがないことは当然ですけれども、外から見ると、田中内閣の不安定性というのは、より何か不安定に見えるらしいですよ、外から見ると。ということは、何も木村さんになってから悪い意味に変わったということじゃないですけれども、けさの報道、これは外務省筋のという報道ですから、これについて真偽を確かめたいと思うんですけれども、何か大平前外務大臣が、正常化のおりに、中華民国航空機の青天白日旗は国旗ではないと、こう言ったことに対して、それはもう過去のことだと言ったか言わないというようなことが新聞報道でありますけれども、この真意はどうなんでしょう。外務大臣外務省筋のということで、各紙一斉に報道されていますね、けさ。お読みになりましたか、大臣、当然に読んだでしょう……。
  74. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 当然、新聞報道で拝見いたしました。しかし、この真意については、まだその発言者についてただしておりませんので、私がここで申し上げることは控えたいと思いますが、いずれ、外務省内のことでございますから、その当事者に対して真意をただした上で、また別の機会にお答えしたいと思います。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 だって外務大臣外務大臣が当事者に真意をって——どっちが——逆だよ。逆だよ、立場が……。
  76. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、外務省筋と言われておる中に、外務大臣外務省当局のある担当者がございます。私といたしましては、けさ、そういうことを新聞報道で拝見いたしましたので——ただ、報道の真偽を疑うわけではございませんけれども外務大臣としては、責任ある地位でございますから、その当事者について、もう一度真意を確かめた上でお答えしたいというのが私の考えでございます。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 その当事者であろうアジア局長、どうですか。
  78. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私は天地神明に誓って当事者ではありません。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあそれは天地神明に誓って——それじゃあこれずっと、局長さんに言ったって、天地神明に誓っちゃうでしょうからね、私はこう並べてどうどうと言ってもしょうがない。外務大臣、それでは、これは外務省筋ということで出たことは間違いない。マスコミの、新聞の報道、これだけ大きく出ているんですから。それじゃあ、それを真実として——だれが言った、言わない別にして、だれかから出たことは間違いなかろう。それについての外務大臣の見解はどうですか。
  80. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 一昨年九月二十九日に発出されました日中共同声明、そのワク組みを堅持すると、これが私の真意でございます。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、大平外務大臣が言われたこと、これは青天白日旗は国旗ではないと、こういう談話、これに対して現外務大臣もそのとおりであると、こうおっしゃるわけですね、変更はないと、こうおっしゃるわけですね。
  82. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日中航空協定締結の際に発出された、出ました外務大臣談話、これはもうすでに外務大臣談話として、私どももこれを踏襲したいと思います。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみませんね、私はちょっとしつっこいたちなもんですからね、もう一回同じことを聞きますよ。そうすると——なぜかならば、きのう一斉に、これも各紙で、船田さんが日台航空路線の再開について訪台する——これは外務大臣がかわったこの際、何らかのアプローチをするんではなかろうか、また、それに先行して小渕総務副長官が台湾と何か接触したらしいというような報道がありますですね、それを受けての私は外務省筋の見解だと思うんです。ですから、これについて外務大臣は、大平外務大臣は要するに絶対に国旗でないと、青天白日旗は国旗でないと、この意見はそのとおりであって、何ら外務省は変更はないと、こうおっしゃるわけですね、イエスかノーですよ、これは。
  84. 木村俊夫

  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣——外務大臣自分じゃないですか。
  86. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) はい、わかりました。  外務大臣として発言いたしたいと思いますが、その当事者がいずれかにいたしましても、外務大臣といたしましては、一昨年九月二十九日の共同声明の線を堅持していきたいと思います。また、その当時出ました国旗についての外務大臣談話、これは日中航空協定に際して発出されたものであるという意味において、私どもはそれを踏襲したいと思います。日中航空協定に際して発出されたものであると。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあそうじゃないと……。そうすると、きょうの新聞報道が間違い……。アジア局長ですね、やっぱり守備範囲なんで、もう外務大臣がおっしゃったことでいいかと思いますけれども一言、けさの新聞ごらんになったんですね。これについての見解、念のために、当事者として。へますると外務大臣からおことばがあるかわかりません。いまお聞きになるというのですから、当事者だれだか。だから一応念のため、けさの新聞を踏まえての見解はどうですか。
  88. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私もただいま大臣のおことばどおり、日中共同声明の規定に従って日中関係をこれから維持していくという立場に従っておりますので、ただいま問題になっております日中航空協定締結に当たりまして、当時の大平大臣が申されました談話は、私どももそのとおり拳拳服膺していく態度でございます。その点につきまして、一点の疑義もございません。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 アジア局長拳拳服膺するということであります。  外務大臣、この日中問題で最後に一言、日台路線の再開について、新外務大臣としてはどういう見通しないし見解を持っていらっしゃいますか。
  90. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もうすでに御承知のとおり、日台航空路を断絶いたしましたが、この日台関係はすでに地域的の問題であるということが、日中共同声明の中ですでに明らかでございます。そういう意味におきまして、不幸にも実務関係の一つとしての日台間の航空路が断絶いたしました。これは当然ある時期におきまして、日台間における民間取りきめとして民間の間で復活されるべきことを期待はしております。しかしながら、政府としてこれに対して何ら手を下しようがないという態度ははっきりしております。したがいまして、それについて政府見通しいかんということになりますと、そういう責任ある立場におりません。私どもといたしましては、この実務関係の上に築かれた民間取りきめがなるべく早期に、両方の、両地域の、台湾地域と日本皆さんとの間の不便がないように、できるだけ早く復活されるということを期待しております。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 日韓問題一、二お聞きしたいのです、外務大臣。十六日の大臣就任の記者会見ですね、外務大臣は折り目正しい、筋の通った外交を推進していくと、こう言明された。これはもう活字になっておりますし、当然今もその意思は変わりないと思うんですが、いま社会党の田委員から問題になりましたこの例の早川、太刀川両事件につきまして、筋の通った正しい外交を推進した上でのこの最も合理的な解決策というのはこうあるべきだと、これはどういう解決策ですか。
  92. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もう先ほど田先生の御質問に対してお答えしました中で御了承いただけると思いますが、なお私が重ねて申し上げれば、日韓友好関係はこれはわが国外交政策の基本の一つであるということに変わりはございません。ただし、私どものやはり生活体験にもありますとおり、仲よかるべき隣近所とのつき合いがなかなかむずかしい。お互いに内事情もわかり過ぎて無理も言いたい。こういうことになりますと、純粋の外交処理以上にいろいろ感情とか誤解がそこに生じます。そういう面をきわめて冷静に、理性的に処理をしていくのが、これまた折り目正しい外交だと思います。そういう意味におきまして、私はこの日韓友好関係の長期的展望に立って、不幸な事件はできましたけれども、これはいま日韓両国の間ののどに刺さった骨であると。この骨をそのまま置きますと化膿状態になる。そういう意味におきまして、できるだけ早い機会に、この日韓両国間ののどに刺さった骨を除去しなければならない。これにはお互いに日韓両国政府、また日韓両国国民の冷静な感情、あるいは誤解をまじえないさばき、また政治的解決が必要であると、こういう観点に立ちまして今後も根強く私ども政府考え方韓国政府に申し入れその他をいたしたいと、努力を続けていきたいと、こう考えております。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 のどに刺さった骨だかやいばだか知りませんけれどもね、要するに矛盾しているんですよ。友好国である、ほんとうに友好国間のこういう事件が起こった場合の処置は国外追放でしょう。こんなきびしい実刑なんということは、もうどこの国でもあり得ないんです。そうなると、日韓というのは、友好国であるのかどうかも疑問じゃないですか。もし友好国であるとするならば、国外追放でしょう、その処置とするならば。おかしいじゃないですか。言っていることは全く矛盾しているのか、認識が矛盾しているのか。しかも国内法、国際法というものを踏まえてこういう問題処置しなきゃならないのだけれども、そこに感情や何かをまじえなきゃならないという大臣発言も、はたして折り目正しい外交になるかどうかも全く疑問ですよ。朴政権のこの友好というものを先にして、人権というものを無視しちゃっている、こういう処置が今回の処置じゃないですか。もっと早くこの処置に対して政府が、まあいろいろな問題があったでしょうけれども、もっと早く韓国に対して何らかの処置をすれば、両家の家族が言っていたように、ここまで来なかったんではなかろうかと、こう実刑が下ったとき、裁判判決下ったとき言っていました、くしくも。新聞も一斉にこう書きたてたわけです。日韓のお互いの、何かこう変な友好ムードが、人権というものを無視し、しかも法律というものを無視して、あるいはそれをさておいて、道徳とか感情というものを先行さすようないまの大臣のくしくも発言。もっと早くそこで処置すればここまで至らなかったじゃないかと、こういう反省は大臣していませんか。政府がもっと早くこれについて手を出すべきだ、友好関係だということがむしろ失敗だったと、こういう反省はしていませんか。
  94. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ政府といたしましては、常に力の足らざるところは反省いたしております。まあしかしながら、この問題御承知のとおり、やはり韓国日本は対等の外国同士である、これはもう当然でございます。そういう意味におきまして、韓国の内政に干渉してはいけない、これはもう国際法の原則。そういう意味におきまして、少なくとも韓国国内法に違反した者が韓国において裁判にかけられ、またそれを執行されるということは、第一義的には私はそれがむしろ国際法による原則だと思います。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、その裁判が公正に行なわれるであろうということは、当然人権上の問題でございますし、またそれに、裁判に伴ういろいろ日本政府としましての協力、また裁判後における邦人保護についての政治的な一種の了解と申しますか、それがいま国外追放とかなんとかいうおことばにあらわれたと思いますが、そういう面での努力は当然政府としてとらなきゃならない、こういう考えでございます。
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に、日韓問題一言。反共法、国家保安法、これは旅行者にも適用されますね。大統領緊急措置はいざ知らず、旅行者に……。
  96. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 韓国国内におきましては韓国法律が適用されるわけでございますので、その場合、内外人の差別はないと思います。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると大臣、これは日本の観光客は相当行っていますね、現在も。これはやっぱり一言注意すべきじゃないですか。大統領緊急措置にしましても、憲法に対する批判、あるいは官憲に対する批判、あるいは言動、一切そういうものを含めてやった場合には軍法会議に処すと、こうなっているのですよ、反共法、国家保安法。そうすると、旅行者が行く。知りません、そんなことは。観光で行くんですからね、逮捕されに行くんじゃないのですよ。早川さん、太刀川さんの場合には私は知りませんよ、報道されている面だけであります。ところが、これだって私たち大きな矛盾感じているんですよ。しかしながら、一般の、一年間に何十万という旅行者が、一言、反政府的な言動をしたために逮捕されても、これはやむを得ないのですよ。どうですか、大臣。こういうことについてはやっぱり相当政府が何らかの事前の措置をしなきゃならないんじゃないですか。民主主義の国だ、韓国民主主義なんでしょう、いま大臣がくしくもおっしゃったように。その韓国民主主義というものを一般旅行者、日本人によく知らせておかないとだめなんじゃないですか。危険ですよ、これは。どうです。
  98. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 韓国への一般旅行者につきましては、もちろん新聞その他報道を通じまして韓国の現在の情勢がどういうことであるかということについての一般的な認識はおありであろうかと思います。かてて加えて、私どもとしましては、韓国政府側からの情報に基づきまして、いろいろ危険なことも予想されるというようなことで、ことしの春、各都道府県に対しまして一般的な連絡といたしまして、韓国に行くにあたりましては慎重に行動していただきたいということを連絡いたしております。その結果、現在におきましては、従来の約半分ぐらいに一般旅行者は減っているというのが実情でございまして、私どものそういう警告はかなりそれだけの効果は発揮しているというふうに考えております。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは、その結果じゃない。全体的に海外旅行者は減っているんです。そんな結果じゃないです。一般都道府県に通告した、それがどういうふうに旅行者にいっていますか。旅行社はむしろ旅行に、コマーシャルベースでどんどん旅行熱をあおっているだけですよ。その結果なんて、外務大臣、その結果じゃないですよ。そんなばかなこと。それじゃ、どういうふうに都道府県に流れて、どういうふうに一般旅行者に流れているか、そんなことは常識です。韓国に行く人に、そういう国内法があるから、保安法があるから、反共法があるから、あんたは反政府的な言動をしたらたいへんですよなんて旅行社から、常識的にせよ、書類にせよ、刷りものにせよ、見せられた、聞かされたなんという例を知っていますか、外務大臣。アジア局長のお話はまるきり違いますよ。うそですよ、そんなことは。これは大問題なんです。だから私は、事実関係を踏まえていま言っているんです。アジア局長の通り一ぺんの話じゃだめだ、外務大臣、そんなばかなことはないですよ。外務大臣の話だ。もうアジア局長の話は済んだ。でたらめ言うな、アジア局長。だめだ、そんなの。そんな、通達した結果として半分に減ったなんて、何を言うか、そんなことは。きょうだって、それじゃ、羽田へ行って聞いてみましょうか、あんたたち知っていますかって、そのことは。知るわけないじゃない、そんなことは。でたらめ言うな。外務大臣
  100. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ことしの五月十一日の運輸大臣官房観光部長から国際旅行業協会に対しまして、特に、「韓国への邦人旅行者に対する注意喚起について」という文書を出しております。これは当然、外務省から運輸省に連絡をいたしまして出してもらったわけでございますが、その中で、「韓国においては、最近邦人二名が逮捕されるという事態が生じているが、かかる情勢に鑑み韓国への邦人旅行者に対する不測の事態の発生を防止するため、傘下会員に対し、」——これはエージェントでございますが——「韓国旅行を取り扱う場合は、特に下記の点に留意するよう周知徹底されたい。」と、こういう運輸省観光部長からの注意喚起をいたしております。また、外務大臣官房領事移住部旅券課長から各都道府県の旅券事務主管課長あてに、「韓国への旅行者に対する注意喚起について」という通牒を出しております。この内容について、もしおよろしければ……。
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこうです。いいですよ。時間がないから。あと一分三十二秒……。
  102. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 「韓国政府は従来から反政府運動に対しては厳しい態度で臨んできたが、本年に入り一連の大統領緊急措置を定め、反政府的行動及びかかる学生運動等に対する」……
  103. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこうです。それで大臣、私が言いたいことは、要するにそういう通達を出しても、旅行業者が一々、あんた危険だから行っちゃだめです、とは言わないというんです。注意しなさいとは言わないというんです。その点もう一回外務省から運輸省、そして運輸省から旅行業者、その一片の通達じゃなくて、厳重に言わないとこの二の舞いが出ますよ。二の際、くれぐれも注意をさせるべきだと、こういうことです。  最後に私、問題変わります。所沢のOTHであろうといわれるアンテナについて、外務省米軍にどう確かめたか。——十八日ですね。それから、防衛庁はこれをどう認識しているか。いわゆるこれと同じような巨大なアンテナ、あるいは二百五十キロワットなんという出力を出しているもの、あるいはLPアンテナ、指向性の強いアンテナ、これが所沢以外にあるかどうか。まとめて聞きます。  まず外務省としては、その米軍の報告、それから防衛庁には、これと同種類のアンテナが日本のどこかの米軍基地にあるのか、所沢以外に。その二点。
  104. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 所沢の補給廠内の通信施設は、俗にOTHトランスミッター、水平線ごし送信施設でございまして、この施設の機能は、ミサイルの発射の探知及び普通の通信を行なうものであると聞いております。  それから、第二点のお尋ねの、これと同種のものが日本に、ほかにもあるかということでございますが、これは所沢のほかに北海道の千歳及び沖繩の泡瀬にございます。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、これは、OTHアンテナがあることはもう明確であるというんですね。日本に三カ所あるというんですね。そうするとこれは、いままで問題であった核に対する戦略戦術的な機能に日本の基地が組み込まれているということですね。どうですか。これは大問題です。外務大臣、どうですか。もう一分ちょっと過ぎましたけれどもね、大問題じゃないですか、これ。日本米軍基地が、われわれが憂えていた、いま羽生先生からも質問があった、核について。そうすると、日本米軍基地がアメリカの核戦略に組み込まれているという事実ですね、このOTHシステムがあるということは。どうですか、これは。
  106. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 条約上の問題として申し上げますと、この施設はただいま政府委員から説明がありましたように、ミサイル発射の探知及び通常の通信ということを目的としているものと承知しておりますが、通常の通信機能につきましてはもちろんのことでございますけれども、ミサイル発射の探知の機能につきましても、それはアメリカの抑止力の維持に必要であるということにとどまらず、同時に、わが国の安全にも寄与しているというふうに考えているわけでございます。
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは大問題ですよ。私はもう質問時間が過ぎちゃったんですけれども、あと二、三分許してくださいよ。羽生先生が四分ばかり残っておるそうですから、私のほうに四分繰り込みます。御了承を得まして、ありがとうございました。  これね、安保条約第六条、日本の安全に寄与する。これは日本の安全のために寄与する。ところが、このOTHというのは、私言うまでもなく、専門家は御存じのように、これはICBM、大陸間弾道弾に対してのあくまでも探知でしょう、ミサイルというのは。そうでしょう。これが日本の中にあるということはいこれは確かにいままで国会においては論議されません。しかし、この安保条約の第六条にこれは抵触しないんですか。日本の安全のためにいいというんですか、これは。  と同時に、もう一つは、核戦略戦術の中にわが国は組み込まれていることについても、これは肯定できるんですか、政府立場として。外務大臣、その二点です。もうこれで大体時間でしょう。うまく答えればこれでおしまいですが、へまに答えると、またですよ。
  108. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ただいま条約局長からお答えいたしましたが、私も実は技術的にはあまりつまびらかにしておりませんが。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、いま言ったのは技術問題じゃないですよ。
  110. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) このOTHは核兵器の発射に不可欠なものではないと。したがって、核兵器としての、核兵器システムそのものの一部でもないと、こういう考え方でございます。わが国の安全の維持につきまして、わが国といたしましては核攻撃に対する抑止力を持たない以上、米国の抑止力に依存せざるを得ないということは、もうそのつど述べておるとおりでございます。この核抑止力を効果的ならしめるために、OTH等による探知施設が設けられているのでございまして、かかる探知施設をわが国に設置することは、米国の核抑止力をわが国に有効に及ぼすことに寄与するものであるというので、安保条約の目的に合致しておると考えます。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、もうこれでおしまいになります。  OTHレーダーの概要、一九六九年十月、技術と装備という中で、ソ連の技術士コノロフ中佐、ペルコフ少佐の書いたものがありますよ。読んでみましたか、これ。
  112. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだ読んでおりません。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 だめだ、だから。外務大臣がそんな、就任一週間だなんて、ちゃんとここに書いてあるじゃないですか。そんなね、核に対して関係がないなんと言ったらおかしいですよ、外務大臣。私残念だ。もう、よかったですね、外務大臣。これ先やればよかった。とんでもない話。明らかに核戦略の中に組み込まれているんですよ。ソ連だからこれはおかしいなんと言うつもりはないと思います、まさか外務大臣。そのためにちゃんと私これ持ってきた。こういう重大問題、これからまた衆議院ですから、衆議院でまたわが党しっかりやってもらいます。楽しみに待ってらっしゃい。こういうOTHレーダーというものは明らかに核戦略、しかもICBMに対しての探知レーダーだということがちゃんとはっきりしているじゃないですか。それに対して外務大臣がそんな——しかもミサイルとおっしゃったでしょう。まあミサイルと言えば数は核だけじゃないとおっしゃるかもわかりませんけども、そんな詭弁は許されません。ひとつ十二分に——もう十二分にと言ったってどうしようもない。この核戦略体系の中に組み込まれる。いま言ったような詭弁は断じて許されないということを腹に踏まえて、外務大臣このことを勉強してないというなら、勉強して、これは何とかやっぱり善後策を講じていただきたい。  これ以上時間も許されません。私は最後に要望なんてばかなことを言って発言の締めくくりになります。これ以上しかたありません。すみません委員長、時間をオーバーしまして。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 あしたから原水爆禁止世界大会が開かれることになっておりますが、南ベトナム共和国臨時革命政府の三名の代表が入国を希望したことに対して拒否された。これについて、きわめて遺憾に思うわけですが、端的にこの拒否された理由についてお尋ねしたい。
  115. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) お答え申し上げます。  従来、南ベトナム平和委員会関係者等未承認地域等からの入国については、これを認めないのが原則となっております。ただし、個々の入国案件ごとにその入国目的、必要性、さらに緊急性等を勘案いたしましてケース・バイ・ケースに対処してまいった次第でございます。  なお、これらいわゆるPRG関係者に対しましては、昨年の十九回大会に至りますまで、いずれも入国を認めた例はございません。で、今大会の高度に政治的な性格を考慮いたしまして、従来の方針を変更するだけの積極的な理由がないと判断いたしましたので、従来どおり入国を認めないという決定に立ち至ったわけでございます。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 それは理由になっていないんじゃないかと思うんですがね。第七十二国会で、当時の大平外務大臣が、人と人との交流については、政治的に非常な支障のない限り認めていく方針であるという答弁をされておりますし、現に南ベトナム共和国臨時革命政府の代表については、去年も入国しておりますし、ことしも四月に入国しているわけですね。さらに、原水爆禁止世界大会にはベトナム民主共和国がまだ承認されていない、国交樹立されていない時点でこの大会にすでに七回も参加しているわけですね。昭和四十六年のときには現にあのたいへんな北爆がありましたし、その翌年には機雷封鎖というふうな重大な事態があったにもかかわらず、承認していないベトナム民主共和国の代表も、すでにその前年も、その翌年も大会にはちゃんと参加している。こういうふうな状態考えるならば、いまあなたが述べられたようなやり方というのは、いままで認めてきたやり方を逆戻りさせる、こういうことに言わざるを得ないと思うんです。  そこで大臣にお尋ねしたいわけですが、昨年、国交樹立されてから、ベトナム民主共和国と日本政府との間で外交交渉が進められていると思うんですが、今日のこういう事態措置について、これがきわめてよくない影響をもたらすものだというふうに思うわけですが、この点は大臣はいかにお考えでしょうか。
  117. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 先生御指摘のとおり、いままでビエンチャンにおきまして、ベトナム民主共和国との間にいろいろ国交樹立後の話し合いを進めてまいっております。いま先生の御心配の南越の臨時革命政府代表の入国問題が、このような政府間の話し合いに何か悪影響がないだろうかという御心配でございまするけれども、私どもそのような懸念はないというふうに確信しております。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 ではこの点については今後ともあらためて究明していくことにして、この入国問題に関して再検討してほしいということを強く要望すると同時に、次の質問に移りたいと思います。  次に、沖繩の伊江島のあの問題になっております米空軍射爆場で起った米軍の発砲事件に関してですが、アメリカ側からは前言をひるがえして公務中である、こういうふうに通告してきたと聞いておるわけですが、行政協定十七条の適用に関して刑事裁判管轄に関する事項の第六には、公務に関する規定がされておりますが、アメリカからはどういう公務内容だと言ってきておるのか、その内容についてお答えいただきたい。
  119. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 御承知のとおり、この事件は七月十日に起こりまして、アメリカ側が日本側に対しましてこの犯罪通知をしてまいったのは七月十九日であります。その際には、アメリカ側は公務中であるということは主張しないというふうに、当初の米側捜査結果に基づきまして、そういう事実上の通報を行なったことはあります。しかし、地位協定の規定に基づいてわがほうに第一次裁判権を通報します最終日である七月二十九日には、やはり公務中であるということで、公務証明書を発出してきたわけでありますが、そのときに、その理由については特に述べられておりません。それからわれわれは、これに対しまして、現時点の捜査結果によりますと、公務中ではないという反証があると考えましたので、直ちに地位協定の定めるところに従いまして、その同日に沖繩地検の検事正からその旨をアメリカ側に通知しまして、そしてその結果、その翌日の三十日に日米合同委員会を開催して、公務中であるか否かの問題を討議いたしまして、その結果として、二の法律専門家からなる刑事裁判権分科委員会に問題の検討をゆだねたわけであります。その合同委員会の席上でどういう話をしたかということは、これは従来の慣例もありまして、日米双方ともに発表いたさないことになっておりますので、その点はお許し願いたいと思います。  ただ、何ぶんにも先方が公務中であるということを主張した以上、わがほうはこれに対して反証するために司法当局においても十分ないま検討を行なっておるところでありまして、その刑事裁判権分科委員会において先方の意見をさらに聴取し、また、日本側からそれに反証をあげて議論されることになると思います。われわれとしては、この刑事裁判権分科委員会ができるだけ早く開催されて公正な解決がはかられ、わがほうの主張をできるだけ貫くように努力いたしたいと思います。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 まあ公務中でないというふうに認められているということはけっこうだと思うんですが、途中でそういう態度アメリカの圧力で変更するようなことがないように、きびしく要求しておきたいと思うんですが、われわれは、いろいろと報道や、わが党の調査団の結果によりましても、事実上演習中であるという赤い旗がすでにおろされた以後であると、で、正門から入っても、まあガードマンも何ら注意しなかったと、そういう状態の中で草刈りが行なわれておったわけですね。こういう状態というのは、二十年間事実上認められてきた状態であった。ところが、突如としてキャロルとジョンソンという二名の米兵が車に乗って追っかけてきて、そして信号ピストルを発砲したというわけですが、この信号ピストルがどれだけの初速を持っておるかについては御存じですか。
  121. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 私は、まだその点につきましては、司法当局からその詳細については聞いておりません。  なお、こちらに検事局の方がお見えになっておりますので、そちらの方にお答え願いたいと思います。
  122. 根来泰周

    説明員(根来泰周君) 現在捜査中でございますので、詳しいことは申し上げかねますけれども事件が起こった後に、米軍及び検察庁あるいは警察の立ち会いのもとにその殺傷能力といいますか、そういうことを実験したということになっております。どの程度かということは、ちょっと把握しておりませんのですけれども、そういう報告が参っております。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 そういうのは早く調べてもらわぬといかぬと思うんですが、われわれの調べておるところでは、この薬きょうが十四センチ、直径が四・一センチ、しかもこれ上に向けて発砲した場合には八百メートルも飛ぶ、これだけの初速を持っておるわけですね。これが七メートルの至近距離で逃げておる山城さんを撃ったわけですから、一般的に言われる場合に、これだけの初速のあるピストルを七メートルの至近距離で撃った場合には、これは傷害事件になるんですか、それとも殺人未遂ですか。
  124. 根来泰周

    説明員(根来泰周君) 現在捜査中でございますので、何とも申し上げられません。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 一般的にそういう場合には、どう判断されますか。この問題と関係なくしてもけっこうですが。
  126. 根来泰周

    説明員(根来泰周君) これは、いまおっしゃいましたピストルとかそういう武器の場合と、本件のような信号銃といいますか、その場合とは少し形態を異にすると思いますけれども、一般的にピストルとかあるいは空気銃とかいうものがそういう至近距離で撃たれた場合は、殺人という場合もあり得ると思います。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 この件に関しては、特にわれわれ重視しておるのは、前回、先日ですが、わが党の瀬長亀次郎、正森成二、二人の代議士が現地に行って調べたわけですが、そこでいろいろと供述者の話を聞いたわけですが、こういうふうに述べられているわけですね。——山城安二さんと山城盛安さんと二人の方が述べられている話によりますと、米軍が発砲した後、車に二人を連れ去った、そこで米兵が話したこと、それをガードマンである宮里豊信という人が聞いた、その話によると、米兵が何を言ったのか、演習場にいるやつはみんな撃ち殺してやる、こうはっきりと米兵が述べたということを証言しているわけです。この件に関してどのようにお考えですか、こういう事実が明らかになっているということについて。
  128. 根来泰周

    説明員(根来泰周君) ちょっと、その前提にほうが私どものほうで把握しておりませんので、これについていま意見を申し上げる機会じゃないと思いますので、ごかんべん願いたいと思います。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 結局これがわれわれが明確に調べ、供述調書もとって明らかにされている内容です。そうすると、アメリカ側が言っている公務中というのは、きょうの新聞報道にもありましたように、高官からの指示であるということが述べられておりますし、しかもこれが事実であるとするならば、アメリカ側の言う公務中というのは、日本人を射殺することも含めて公務中だというような状態になり、これゆゆしき問題だと思うんです。先ほど申し上げましたように、この件に関しては第一次裁判管轄権を完全に行使して、犯人を逮捕して、そして殺人未遂事件として厳重に処罰されるようにきびしく要求して、次の質問に移りたいと思います。  次の問題は、先ほど来問題になっております日韓の問題についてですが、先ほどの大臣答弁で、いわゆるいま逮捕されておる二人の学生の問題と切り離して対韓援助をやっていく、こういう考え方であるというふうに述べられましたが、まあ今日のあの金大中事件以来、二学生の重罰の裁判に関しましても、これはきわめて日本側にとっての主権侵害であるという事実が明らかにされてきているわけですが、こういう中でもなおかつ対韓援助、経済援助を進めていくという理由はどういう理由からですか。
  130. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 日韓関係には経済関係、民間の経済関係がずっと継続しているわけでございまして、この経済関係の中には、いわゆる広義の経済協力——輸出信用とか投資というものも含まれているわけでございます。そういう経済の流れは非常に長期にわたっているものでございますし、それが両国の民生にも寄与しているわけでございますので、そういう民間の経済の流れは、これは政府措置にかかわりなく動いているわけでございます。問題は政府の経済協力政府ベースの経済協力がどういうふうになるかということでございますけれども、これも、すでに進行中のものはこれを継続するというほうが経済効果的にもなるわけでございまして、進行中のものはこれは進行させていくということであろうと思います。  で問題は今後のものでございますけれども、これも昨年の閣僚会議で、両国間でコミュニケを出しておりますけれども韓国側から具体的案件があれば所要の検討を行なった上で適切なものには協力をしていくということが、両国の経済協力関係の基礎としてうたわれているわけでございますので、具体的な案件があれば事務的には検討するということであろうかと思います。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 結局こういう事態というのは、主権侵害されて、相手側からたくさんなぐりつけられておる、だけど援助はいたします、援助はいたします、こういうふうなやり方だと思うのですが、いまの答弁では、どうしてそうしなければならないのかという答弁にはなっていないと思うのですが、もう一度重ねて質問します。
  132. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) どうしてというお尋ねでございますけれども、国と国との関係におきまして、貿易関係、経済協力関係というものは常時流れているわけでございまして、その中で特に適切でないものは今後の方針としてこれは再検討していくということはあろうかと思いますけれども、民生の安定に資するようなものは、これはやはり具体的案件が民生の安定に資するか、あるいは適切なものかという検討を進めるのは、国と国との関係がある場合には、どこの国との間でも行なわれていることであろうと思うわけでございます。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 大臣にお尋ねしますが、こういうふうな政府態度をきめたということについて、先ほど田委員の質問に対しては、アメリカ側とは何ら連絡した事情にはないとお答えされているわけですが、アメリカのキッシンジャー米国務長官が二十四日の上院歳出小委員会で述べた内容によりますと、アメリカはアジアにおける韓国の政治的、戦略的重要性を考慮する。韓国政府の行動に感心できなくても、同国に対する経済、軍事援助を認めるべきだと決定した。また同長官は、韓国日本にとりきわめて重大な地位にあり、米国政府の判断には日本政府も同調している。こう述べているわけですが、このアメリカの判断に日本政府が同調したという事実関係はどうなっておりますか。
  134. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 特にいまキッシンジャー国務長官発言に対して同調したという事実はございません。しかしながら、いままでの長い間の日米間のいろいろ考え方の中におきまして、いまお述べになりましたキッシンジャー国務長官発言の趣旨と申しますか、そういう面については、すでに何度かの機会、たとえば日米共同声明等の機会ですでに明らかにされておりますとおり、日米間においてはそれについての意見の相違はございません。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら今回、新たな重大な事件韓国で起こっている、いわゆる韓国で起こっているという後において話し合いをしたいという、こういう、同調したという事実はあるんですか、ないんですか。
  136. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう事実はございません。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、こういう重大な事態が起こって後、話し合いがなされていないというのであるならば、アメリカ政府のこの判断に日本政府が同調したということは、キッシンジャーがうそを言っているというふうに大臣が述べたといってもいいわけですか。
  138. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私はそうは申しておりません。ただ、現時点におけるキッシンジャー国務長官との話し合いが、この問題について具体的に行なわれておりませんと申し上げておるので、キッシンジャー国務長官基本的な問題について述べられた面について、先ほど申し上げましたとおり、日米両国間においてすでにたびたびの話し合いが行なわれ、また、その点については見解の相違がないということを申し上げております。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 この件に関しては、いつも結局事実上、アメリカ日本、そして韓国との間でのいわゆる軍事的な関係ということが優先しているということをあらためて示したものだと私たちは考えております。こういう点についても、今後とも新たな機会を設けて質問をしていきたいと思うわけですが、さらにもう一つの点で、先ほども出されておりましたが、いわゆる韓国の中央情報部員が日本に一体どれだけ来ておるのか、いま知っておる範囲内、また、どれだけどういうことをやってきたのか、いま調べて知っておる、わかっておる範囲内で答えていただきたい。
  140. 高島益郎

    説明員高島益郎君) それは従来、国会お答えいたしておりまするけれども韓国外交官のうち、中央情報部員そのものとして来ているということはないというのが韓国政府立場でございまして、私どもはそれ以上に公式に韓国政府を追及することはできません。現実にすべて外交官外交官として来ておりまして、その前身が、たとえば中央情報部にかつて勤務したことがあるというふうなことはございましょうけれども、現実に大使館員であり、かつ同時にKCIA職員であるということはないというのが公式の説明でございます。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 これは去年からたいへんな、重大な問題になっておるわけですし、これについては当然政府としては十分な調査をし、対処するということが必要だと思うんですが、こういうものが今後明らかになった場合に、国外に退去を命ずるというような措置をとる考えはおありですか。
  142. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 外交官として日本に来ている以上、その外交官としてふさわしくない行動をするというような特別な事情がある場合は別といたしまして、そうでない限りにおいて国外追放するということは、国際慣例上できない相談でございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 だけど、金大中事件の場合でも、もう先ほどはっきりされたように、指紋が現に採取されておる、明確な事実として判定されておる金東雲が公然と帰っているわけでしょう。また、それに反して、日本の場合でいうならば、二人の学生韓国で、つまりでっち上げの事件によって、事実上このような重大な裁判の判定が下されている。これはきわめて対照的なわけですね。こういうような状態の中で今後そういう事態が起こっても、そういう国外退去の措置をとることができない、それはどういう理由からですか。
  144. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 御承知のとおり、金東雲書記官につきましては、当時、国外追放、いわゆるペルソナ・ノン・グラータとしての措置をとっております。今後も同様なケースが起きた場合には、同様に考えて、必要な措置をとるということはいえるかと思います。ただ一般的に申しまして、これは外交官としての待遇というのは、国際的にきまっておりまして、特別に外交官にふさわしくない行動があった場合を除きましては、国外追放というようなことはやらないのが習慣でございます。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 この問題についての答弁はきわめて私は不満でありますけれども、次の質問があるので、次の質問に移らしていただきます。  沖繩の北部の四つのダムで、アメリカ軍が演習を行なうという問題について、報道によると六月十八日、大平前外務大臣が、小坂沖繩開発庁長官との協議で、完成後アメリカ軍の演習に使用させることになっておる沖繩北部のダムについて、演習中止をアメリカ側に要請することをきめたというようなことが出されておりますけれども、その後、アメリカ側に申し入れる機会があったと思うのですが、すでに申し入れが行なわれたのか、行なわれないのか、いかがですか。
  146. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 北部訓練場内の米軍によるダムの使用の問題に関しましては、従来から国会でもいろいろ論議されておりまして、わがほうとしては、米軍側に対して、汚染防止に関して万全の措置をとるよう、たびたび申し入れておるわけであります。いま御指摘がありました小坂総務長官から当時の大平外務大臣に対するお話もわれわれは承っておりまして、アメリカ側に対しても、汚染防止に関して重ねて万全の措置をとるよう申し入れております。ただし、訓練をやめてくれというようなことは、われわれは、このことは申しておりません。この演習場というものを提供している目的からいたしまして、やめるように言うことは、ちょっと提供目的に反しますので、いたしておりません。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 いつ申し入れましたか。
  148. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) われわれは日米合同委員会の席上、随時会合いたしておりますので、この席上で申しております。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 ところで、演習を中止してほしいという問題についての件は、福地ダムだけについてですか。
  150. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) いま福地ダムは、ほとんど完成しているわけでありますが、その他のダムにつきましては、まだ完成していないと承知しておりますので、われわれとしては、もちろんこの演習場内の一般の問題として話してはおりますが、その他の問題については、まだこれからの問題であります。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 時間がきましたので、最後に大臣に特に強くお願いしておきたいのは、いよいよあしたから原水禁世界大会が始まるわけです。何としても入国させるようにもう一ぺん強く要求して、私の質問を終わります。
  152. 原文兵衛

    理事(原文兵衛君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会